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界螺旋聖・遠方見聞録

34彗斗:2013/03/03(日) 01:00:16 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
十四乃呪印 天昇の月 〜誓いの盃〜
「……皆起きてるか?」
 メテオは皆が返事をしない事を承知でこう言った。勿論、誰一人として返事を返す者はいなかった。
 まだ月が夜空に高く舞い上がっているような時間帯である。流石にもう探索を諦めたのか、天人族は誰一人として空を飛んでいなかった。
 メテオは寝ていた場所から歩を進め、黒い大空に浮かぶ白々しい光を放つ月が見える縁側にゆっくりと腰かけた。
「ここに初めて来た時、俺は何かの間違いかと思った。いつの間にか記憶の片隅に追いやられていた場所だったからな……」
 そこで言葉を止めたメテオは人の気配を感じて後ろを向いた。そこに立っていたのは……桜だった。
「アンタは幼かった私達の前から忽然と姿を消した……その時、私も爽も何があったかは知らない。でも、アンタはこうしてまた私達の前に現れた」
 そう言った後、メテオの隣りに正座で座り言葉を続けた。
「私はね、二度も同じ事を繰り返したくないの。本当は……」
――貴方を戦場に連れ出す様な事はしたくない……
 それは心の底からそう切に願っている……そんな感じを帯びた言葉だった。
「……それは意外だな。いつもはあんな事を言ってるお前が……」
「…………」
 それっきり二人は黙って黒い大空を見上げた。無数に月の周辺以外の暗い大空に輝く星、そして……
「あっ、流れ星」
「……俺の名前の意味、知ってるか?」
 流れ星を見てかメテオは自分の名前の意味を語りだした。他に話題の糸口が見つからなかったと見えた。
「俺の名前の意味は流星、流星はとにかく儚く拙い。地に落ちるよりも早く、秒単位で燃え尽きる流星だってある……。そんな流星はどこか人の一生に似ている所があるのではないか……それなら人々に頼られ、身近な存在であるように……そう考えた俺の兄貴が考えてくれた名前なんだよ」
「人の一生の様に儚く拙い……か…」
 桜はそれを聞いた後、スクッと立ち上がりメテオの顔を見下ろして優しくこう呟いた。
「人の一生って物は必ずしも、儚いとか拙いとか言う枠にはまらない物なのよ。その生きた一生が拙くもなり、同時に幸せにもなる……その人生の評価を決めつけるのは他人じゃない。自分自身なのよ」
 そう言った後、フラ〜っと何処か奥へと消えていってしまう桜。メテオは慌てて
「お…おい。何処へ行くんだよ?」
 声を掛けたが桜は顔の横で右手を左右に振ってこう答えた。
「もう私は寝るわ。まだちょっと二日酔いが覚めてないから、なかなか寝入る事が出来ないのよ……」
 メテオは内心、見え透いた嘘を……と思ったが口には出さなかった。そして縁側を柔らかく照らす月の光に背を向けメテオの体も桜と同じ様に建物の暗闇の中に消えた。
 だが……
「流れ星 拙く光る 蒼光の 夢見るよりも さらに短く……」
 この様な言葉をメテオの口元が言ったかのように見えたが幻覚なのだろうか……?


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