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もしもタイムボックス

1絶望ニート:2012/01/20(金) 20:44:23 HOST:26.226.210.220.megaegg.ne.jp
僕は、40歳になった。
独身である。女とつきあうどころか、まともに会話した事もない。
仕事はしてない。親と同居している。山奥の小さな町で暮らしている。
30歳までは派遣工として1人暮らしを頑張っていたけれど、30歳になると自分の中で何かがかわった。

20代までは(一生独身でもいいや)と思っていた。心のどこかで、30代は遠い未来だと思っていた。
だが、30歳になると、独身喪男の自分が嫌になった。
カップルを憎しみの目で見るようになった。子供連れだと殺意の目で見るようになった。
休日は、1日中、古本屋で漫画を読んでいた。
僕の仕事は、コンベアの上に部品の入った容器を載せる仕事だった。時間が空けば、工場内の掃除。
そんな自分に絶望し、(こんな仕事に、こんな私生活、これで一生を終えるのか!?)と思うと全てが嫌になり、辞めた。

30代は、家でテレビを見て過した。昼は2時間サスペンスを見た。夜は2時間映画や刑事ドラマだ。
たまに派遣工として貯めた金で買った車でドライブ。車で古本屋に行って漫画を読んだり、レンタルDVD店に行ってDVDをレンタルして観たりと、
そうやって10年を過した。

そして40歳になった。僕は、死ぬための旅に出た。

2絶望ニート:2012/01/21(土) 18:56:19 HOST:145.214.12.221.megaegg.ne.jp
僕は、観光地である山に来た。
周りには観光客やハイカーがいた。子供連れの家族もいた。殺意の目で見た。

僕は、父親になりたかった。幸せな家庭を築きたかった。
だが、女の誰一人、小柄で冴えない顔で運動音痴で非力で弱虫でまともな仕事をしてない僕など、相手にしなかった。
僕を知ってる全員が、哀れみと蔑みの目で見た。

僕は誰もいない道を歩き出した。
適当なところで死のうと思った。

歩いて行くと、出店があった。
「お客さん。寄って行かないかい?」と老婆が言った。
「何の店ですか?」と僕は言った。
「お前さんの願いを叶える店じゃよ。ヒッヒッヒ」
「どうせ、叶えないよ」
「お前さん。死のうと思っとるじゃろ。そういう人しか、この店は見えないんじゃ」
「どういう事ですか?」
「ワシは、異次元の世界から来たんじゃ」
「異次元。うそだ〜」
「本当じゃ。さ、願いを言いなされ。どんな願いも叶えてしんぜよう」
「だったら、僕を子供の時に戻せる。女として、そして背が高く美人で、運動神経抜群の女に」
「出来るとも。このもしもタイムボックスに言いなされ。パラレルワールド、異次元の世界に行き、お前さんの思う人生を過せるじゃろ。最初は『もしも』と言って、最後は『たら』と言うんじゃよ」
僕は半信半疑で、「もしも、僕を、背が高く美人で運動神経抜群の女として子供の時に戻れたら」

周りが光った。
世界がグニャグニャした。
僕は目をつぶった。
そして目を開けた。部屋の中にいた。

3絶望ニート:2012/01/21(土) 19:24:39 HOST:145.214.12.221.megaegg.ne.jp
(ここは、どこだ?)
見覚えがかすかにあった。幼い頃に住んでたアパートの部屋だった。
僕は、2階建てベッドの2階にいた。
下を覗いた。幼い男の子が寝ていた。(弟の敬太だ。本当に戻ったのか?いや、異次元世界に来たのか?)
自分の体を見た。小さくなっていた。股間を触った。無かった。下着の中に手を入れた。やはり無かった。女の子になっていた。

部屋を出て、階段を下りた。
「おはよう。コウミ」と母親が言った。若かった。
僕の名前は、村瀬煌実と書いてコウジだ。この世界ではコウミだった。
「今日から、いよいよ小学1年生ね」
「小学1年?」
「どうしたの?寝ぼけてるの?早く、ご飯食べなさい」
僕は、朝食を食べた。

僕は、服を着た。ドレスアップした女の子の服だった。(これがスカートか)と僕は思った。
母親と弟とアパートを出た。父親は、仕事にでかけていた。
「おはよう。コウちゃん」と女の子が言った。同じ年の郁美だった。
以前の世界では、小学校4年が終わった3月に引っ越した。郁美とはそれ以来会っていない。僕は、コウちゃんと呼ばれていた。
「どうしたの?コウちゃん」
「何でもないよ。イクちゃん」
「今日から小学校だね」
「うん」
タクシーで、小学校に行った。

「コウちゃんとは、違うクラスだね」と郁美は言った。
「そうだね」
入学式が終わり、クラス写真を撮り、教室に入った。担任の先生の自己紹介が終わった。

「コウちゃん」と2人の女の子が言った。同じアパートに住んでいる美由紀と望だった。僕より年上の女の子である。
そこに郁美と郁美の弟と母親が来た。
「じゃあ、煌実とイクちゃんは、ミユキちゃんとノゾミちゃんと一緒に帰りなさい」と母が言った。「娘とイクちゃんをよろしくね」
「うん」と美由紀と望は言った。

翌日、僕は、郁美と美由紀と望の4人で学校に行く事となった。

4絶望ニート:2012/01/21(土) 19:48:57 HOST:145.214.12.221.megaegg.ne.jp
僕は、クラスの男女合わせて1番背の高い女の子だった。
前の世界では、クラスで2番目に背が低かった。クラス替えをしても、いつもクラスで2番目だった。
僕は、Fランクとはいえ大学を出ていた。ちなみに小学校の時は100点取って当たり前だった。中学までは成績は5だったが、高校では平凡、全国模試から出来なくなった。
授業は、簡単すぎた。
「お母さん。僕じゃなくて、私、公文に行きたい。それと英語を習いたい」と言った。僕は暗算だけは、苦手だった。計算はいつも筆算だった。英語、学校のテストは良かったが、全国模試は1問も出来なかった。
「英語?何で煌実は英語を知ってるの?」
「え、ちょっちね」
僕は、公文と英語塾に行き始めた。
それと柔道にも行き始めた。前の世界ではスイミングスクールに行っていた。
(頭脳はそのままだけど、体力は小学生の体力だな。体が小さいから当たり前か)と僕は思った。

休日は、郁美達とママゴトで遊んでいた。前の世界でもそうだった。

風呂には、父と弟との3人で入っていた。前の世界でもそうだった。

勉強は出来て、当たり前だけど・・・、運動も出来た。(最高の人生だ)と思った。
だだ、立ちションが出来ないのが不便だった。
僕は、スカートを穿いて学校に行っていた。クラスの男子がスカートめくりをしたり、滑り台では下から覗いていた。僕は(元は男だとも知らないで)と思っていた。
喧嘩になると、僕は止めに入った。
「女のくせに生意気だぞ」とクラスのガキ大将が怒鳴り、僕に向かってきた。僕は一本背負いで投げた。前の世界では、いつも僕を苛めてた奴だった。

1年が過ぎた。

5絶望ニート:2012/01/21(土) 20:15:33 HOST:145.214.12.221.megaegg.ne.jp
小学校2年の時、前の世界では、初めてドッジボールを体育でしたが、
僕は、ドッジボールの時、いつも最後に残っていた。
僕は最初(避けるのだけは、上手いのか?)と思っていた。でも、次回から僕を最後までぶつけないから、僕は最後に残っていた。
ドッジボールでは、強い人から当てて行き、弱い人を最後に残す。僕は、最後に残るのが嫌だった。最後に残るのが嫌なので、ぶつけられやすいポジションにいた。だが、僕にぶつけなかった。
最後に残った僕を、クラスメイトは、敵も味方も笑いながらボール回しをし、飽きたところでぶつけていた。
僕は、ドッジボールの後はいつも泣いていた。クラスメイトは、笑っていた。

この世界では違った。
僕は女の子だが、クラスで1番力があった。柔道をしてるおかげでもあった。
僕はボールをぶつけていた。僕は活躍した。
「村瀬さんて、女なのに強いんだね。可愛いし、運動神経抜群だし。いいな」とクラスメイトは言った。


小学校3年になった。
体育で水泳が始まった。小学校1・2年の身長では、プールの底は深かった。
教室で男女一緒に着替えた。
僕が、タオルを巻き下着を脱ぐと、後ろの席の徳田というガキ大将の男子がタオルを取った。
「村瀬のおしり丸見え!!」と大声をだした。
前の体育の相撲で、僕に負けた腹いせだったのだろう。
僕は、徳田の方を振り向いた。徳田は、僕の股間にくぎつけになった。僕は「私の体、見れて嬉しい?」と笑いながら言った。
僕は、羞恥心というものを感じなかった。むしろ、そんな行為をした徳田が可愛かった。

僕は前の世界でも水泳だけは得意だった。
この世界で、本格的に泳ぐのは初めてだったけど、簡単に泳げた。
「村瀬さんって、スイミングスクールに行ってるの?」
前の世界では行ってたが、「行ってないよ。ちゃんと泳ぐのは今が初めてだよ」と僕は言った。
「村瀬さんって、天才ね」


小学校4年が終わった3月、引っ越すことになった。
「コウちゃん。今まで楽しかったよ。元気でね」と郁美は言った。同じ年頃の子供たちとお別れパーティーをした。

6絶望ニート:2012/01/22(日) 20:07:18 HOST:223.168.200.121.megaegg.ne.jp
引越し先は、漁村だった。
転校先の小学校は、制服だった。
僕は制服を着て小学校に行った。
「転校してきた村瀬煌実です」と僕は言った。
「村瀬さんの席は、あの後ろの開いた席だ」と先生が言い、僕は歩き出した。
机の上に置いてあった筆箱に当たり、筆箱を落とした。鉛筆・消しゴム・定規が散らばった。
僕は、しゃがんで拾い始めた。
クラスの生徒達は、僕のスカートの中の下着を見ていた。その視線に気づいた僕は、この小学校、前の世界では女子は全員ブル間着用だった事を思い出した。この世界も同じなのだろうか?
掃除の時間、僕は雑巾がけをすることになった。クラスの男子達は、僕の下着をチラ見したり、ジーと見たりしていた。
他の雑巾がけをしてる女子は、スカートの中はブルマだった。やはりこの世界も女子は常時ブルマ着用だった。
体育の着替え。
隠す女子もいれば、堂々と着替える女子もいた。村瀬煌実の体は、背が高くスマートで胸も大きかった。僕は堂々と着替えた。


中学生になった僕は、バレー部に入った。
この時の身長は178cmになった。前の世界の僕は、身長155cmの男だった。
僕はバレー部で活躍した。

高校生になった僕は、吹奏楽部に入った。この時の身長は188cmになった。
「その身長なら、バレー続けなよ」と友達は言ったが、
「吹奏楽やりたいんだよ」と僕は言った。僕はトランペットを吹く事となった。
前の世界では、中学では部活強制加入で吹奏楽部だったが、高校では帰宅部だった。35歳を過ぎたとき、高校時代帰宅部だった事をめちゃくちゃ後悔した。
この世界では、高校では吹奏楽部をやろうと思っていた。中学でバレー部だったのは、バレーで体を使うことにより身長を高くするためだった。
夏には野球部の応援演奏をした。

高校2年の秋、3年が引退し僕は部長になった。僕は、ボランティア演奏をすることにした。
幼稚園や保育園や老人ホームに行き、演奏をした。その後には、幼児達と遊んだ。

7絶望ニート:2012/01/22(日) 20:27:31 HOST:223.168.200.121.megaegg.ne.jp
女の子に生まれ変わった僕だったが、男子に恋をする事など一度もなかった。
服装は、ミニスカートだった。背が高く美人の村瀬煌実のミニスカート姿を見る男の目線が、僕は気に入っていた。

前の世界では、僕は高校の時、意味も無くFランクの大学に行くことにしたが、30歳を過ぎた時、車が好きになった。マイカーを買いドライブをし始めたからだ。
35歳を過ぎた時、自動車整備士になれば良かったと後悔した。
だから、この世界では、自動車整備の短大に行く事にした。
「村瀬、成績がいいから大学目指したらどうだ?」と先生が言ったが、
「自動車整備士になりたのです。そして編入して大学に行きます」と僕は言った。

高校卒業前に、自動車免許を取った。
自動車整備の短大に行き、僕は自動車整備の勉強をした。父に普通車を買ってもらった。軽自動車では190cmの体では、運転出来なかった。
2年後、僕は編入して、大学に行った。
ジャズサークルに入り、大学生活を楽しんだ。

自動車会社に就職した。自動車店で働き始めた。

休みの日には、混浴に行った。
男が、村瀬煌実の裸体を見ていた。僕は、その視線に興奮していた。

草食系の男と知り合い、プロポーズを受けた。好きではなかったが、嫌いでもなかった。友達程度だった。
だけど、子供を生みたいという気持ちが強く、結婚した。
前の世界では、父親になりたかった。家庭を築きたかった。だが、全ての女達は、小柄で冴えない顔の僕を哀れみと蔑みの目で見ていた。

子供を生み、僕は40歳になった。すると目の前が真っ暗になって意識を失った。
「コウミ、お母さん」と夫と子供達が叫んだが、僕の意識が戻ることは無かった。

8絶望ニート:2012/01/22(日) 20:33:39 HOST:223.168.200.121.megaegg.ne.jp
病院のベッドに小柄な男がいた。
男は40年前に、山奥の洞窟で発見された。
男は病院に担ぎ込まれた。
免許証から、村瀬煌実<ムラセコウジ>・40歳・男だとわかった。

体のどこにも異常が無かった。脳も活動していた。だが、どうやっても目覚める事は無かった。
両親は、息子が目覚めるのを待っていたが、老衰で死んだ。
村瀬煌実は、栄養チューブで生きていた。
40年経ち、80歳になったある日、村瀬煌実の心臓は止まった。


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