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避難所用SS投下スレ11冊目

618Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2017/03/01(水) 23:05:03 ID:7SD9eaBU

 しかし、ワルドが話を続けてきたので、それ以上その場で考えをまとめる余裕はなかった。

「それで、だ。その伝説の実力がどれほどのものかを、ちょっと知りたいと思ってね。手合わせ願いたい」

「へっ? ……ええと、あんたとディーキンとが……手合わせ?」

 ディーキンがきょとんとしているのを見て、ワルドはにやっと笑うと、自分の腰に差した杖をぽんぽんと叩いて見せた。

「そうだ。つまり、これさ。あまり堅苦しくない言い方をすれば、殴りっこ、とでもいうのかな?」

「アー……」

 ディーキンは困ったように頬を掻いて、さてどうしたものかと考え込んだ。
 タバサに挑まれた時と同じで、やりたいかやりたくないかと言われればもちろん後者であるのだが……。

「……その、また今度、戻って来てからじゃ駄目かな? 今は大事な頼まれごとの最中だし、余計な怪我をするようなことはしない方がいいんじゃないの?」

 とりあえず無難にそう言っては見たものの、ワルドは首を振って豪快に笑ってみせた。

「心配することはない、ちょっとした手合せだよ。どっちも大怪我なんてしないし、今日は休みじゃないか。休む時間はたっぷりあるさ。……それとも、おじけづいたのかい?」

 挑発するようなワルドの物言いに、ディーキンは反論するでもなく素直に頷く。

「もちろんなの。あんたは強そうだし……、ディーキンは、痛いのは好きじゃないもの」

 ディーキンが気弱そうに肩をすくめてそう言うのを聞いて、ワルドは拍子抜けした様子で顔をしかめた。

「……伝説ともあろう者が、ずいぶんと弱気なことを言うじゃないか。それでよく、ルイズの使い魔が務まるね?」

「イヤ、ディーキンは大事な時にはちゃんとルイズのために戦うよ。でも、今は……」

「いやいや、今だからこそ必要なことさ! つまり……、そう、実力だ。同行者として、互いに実力を知っておくことはいざという時のために大切だろう? まさにその、大事な時のためだ!」

 ワルドはやや強い口調で、そう主張した。
 彼としては、まずルイズの前でこの使い魔を負かして見せることが大事だった。
 どうせ今はルイズも見てはいないのだし多少強引に説き伏せることになっても構わない、まずは勝負の場に引き出すことだ。

「……それにね、僕としては、婚約者の使い魔である君が本当に頼れるものかどうかを確かめたくなったのだよ。使い魔君、さあ、君にいざという時に本当にルイズを守って戦う勇気があるのなら、今僕と戦いたまえ!」

 ディーキンは、ワルドの挑戦的な物言いを聞きながら顔をしかめた。
 言葉だけを聞いていると婚約者を案じて使い魔に勇ましく対抗心を燃やす男と言った風情なのだが、どうも本気でそう思っているのか疑わしい。
 こうして正面から話し込んでみると、キュルケの言ったとおりだということがよく分かった。
 熱のこもった言葉とは裏腹に、この男の目はまるでブラックドラゴンの瞳のように冷たいままなのだ。
 敵かどうかはまだわからないが、少なくとも善人だとは思えない。

 とはいえ、このまま断り続けても承服してくれそうにないので、仕方なく曖昧に頷いた。

「わかったの、考えておくよ。……でも、とにかく食事が終わってからにして欲しいの。せっかく用意したのが駄目になっちゃうし、食べてからの方が力も出るでしょ?」

「よし、いいとも。それでは、食事の後に中庭でやろう。ここはかつてアルビオンからの侵攻に備えるための砦だったからね、練兵場があるんだ」

 ワルドは、これで話がまとまったと満足していた。
 もとよりルイズの前で使い魔の頼りにならぬことを示してやるために持ちかけた話なのだ、彼女が起きてきて食事をとってからでなんら問題はない。
 多少は実力を警戒していたが、痛いから手合せは嫌だなどと泣き言を吐いてみっともなく自己弁護をする意気地のない亜人の子供に過ぎないとわかったからには、伝説であろうが取るに足らぬ。

 ディーキンは頷いてワルドと別れると、今度こそ皆を起こしに向かった……。


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