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没作品供養スレ
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疵 ソロネの変異ネタ
:2009/04/20(月) 17:58:10
影。そして、激しい痛みと、真っ白に消える視界。衝撃が身体を揺らす。耳鳴りと眩暈が世界を曇らせる。
なにが起こったのか、ソロネにはまったく理解できなかった。理解する暇もないまま、ドアを開けた次の瞬間に、
衝撃によって意識も認識もなにもかもを吹き飛ばされてしまった。今はただ、全身に走る痛みだけがある。
身を任せた車輪が砕け、足や腕が歪み千切れた姿で、なんとか首だけを上に向ける。影が奔るたび赤い瞳が軌跡を
描き、天使が躯へと変わっていく。影が腕を振るうたび赤い闘気がうなりを上げ、天使を切り刻んでいく。
目の前で行なわれているそれは、虐殺と呼ぶことすらおこがましいようにソロネには思えた。卵を空中で離せば、
地面に落ちて割れる。川に物を投げれば、水に飲まれ流される。それと同じように、影は天使を殺していく。それは
さも当然、まるで天の摂理であるかのような錯覚すら覚える光景だった。
「……あれは、なんだ?」
かすれる声でソロネはつぶやく。その声はもはや死に強く彩られており、清浄なるものではなくなっていた。
あれは人間ではない。断じてない。人間は薄汚れた泥人形に過ぎないが、しかしそれゆえに不純が混じることこそ
あれ真になにかになることはできないはずだ。あれは人間では生り得ない、悪意と敵意の純粋な塊だ。
だが、あれは悪魔なのだろうか。悪魔は人の念が生むものゆえに純でありえる。しかしそれは同時に単純化されて
しか存在し得ないという弱点にもなる。それゆえにあの世界の卵と化したボルテクスではいずれかのコトワリに追従
するしか己の意志を示す道がなかったのだ。だが、あの影を殺戮へと衝き動かしているものは、なんだ? 腕を失い、
正気を失い、それでも血を求める姿は、煌天の衝動に身を任せた悪魔に似てはいるが、まるで違うものだ。狂気では
あるが、悪魔の本能からなるものとは違った、本能と理性とそれぞれを狂わすものとが入り混じったもの。いったい
なんと呼ぶのかはわからない、そもそも名づけられているのかもわからない、狂気より狂ったなにか、悪魔では持ち
得ぬ、人間にしか持ちえぬ恐るべきなにかだ。
「人でも、悪魔でもない者」
ソロネはまたつぶやく。その声には、畏怖と、そして怒りがこもっていた。
(許せぬな)
心の中で、別の気高き声が響いた。聞き覚えのある声だったが、その主のことは思い出せない。思い出したくても、
もう散漫になりつつある意識では不可能で、ソロネはただそれに強く同意した。
(このような者の存在も、このような場の存在も、このような不穏な企みも……すべて認めてはならない)
炎のように、暖かく、激しく、力強く、透明な声が続けて、冷たくなっていくソロネの身体を内から突き上げる。
力が、わいてくるのを感じた。しかし自分の身体と意識が、その力に耐えられそうにないこともまたわかった。
(神罰を与えねばならん。私が、"神の炎"が、粛清に赴こう。体を貸せ、兄弟。我が"力"をその箱庭に顕すために)
声が言い終えると同時に、力が爆発するのをソロネは感じた。光が体からあふれる。流れ込んできた"力"が自分を
飲み込み、作り変えていく。
ソロネの意識が、これが死なのか再生なのか、よくわからぬまま、ただ、消えた。
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