したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

133煌月の鎮魂歌7 16/17:2015/11/12(木) 20:52:33
 氷の蒼の視線がまっすぐにユリウスの心臓に射込まれた。
「お前には訓練の一環として同行してもらう。実地訓練だ。まだ聖鞭に触れさせること
はできないが、鞭を使った闇の者との戦闘がどんなものか、その身で味わってみるのが
いいだろう。ただし気を抜けば死ぬ。そのことを忘れるな」
「お待ちなさい、アルカード。危険です」
 焦ったように崇光が立ち上がり、一瞬ユリウスに目を走らせて口を結ぶと、思い切った
ように、
「今夜はあなたの力が弱められる夜だ。あなたが出向かずとも、僕とイリーナがなんとか
します。それにユリウスはまだ実戦に出すべきではない。彼が──その、死にはしない
までも傷ついて、最終決戦の時に動けなくなっていたらどうします。もう彼の代わりは
いないのですよ」
「だからこそ、私が行く」
 黒い微風のように歩み寄ってきて、アルカードはマントの中から一巻きの鞭を取り出
した。ユリウスがブロンクスで使っていたものではないが、ずっと細身で、それでいて、
身を休めている怜悧な猟犬のような、抑制された獰猛さを感じさせる品だった。
「彼の不足は私が補う。初めての実戦が最終決戦というのでは本末転倒だ。訓練にも座学
にも限界はある。実戦が彼にとってはもっと有効な授業となるだろう。ついてくるか?」
「……なめんじゃねえぞ、おい」
 氷蒼の瞳の奥にきらめく金色の光をユリウスは見た。一瞬頭に霞がかかったように
くらりとしたが、歯を食いしばり、差し出された鞭をむしりとった。なめした革が
慣れた蛇のように指に吸いついた。
「他人に守られるような俺じゃねえよ。上等だ。退屈なお勉強よりゃ、確かに俺にゃ
こっちがお似合いだ。あんたは後ろでだまって見てりゃいい。闇の者だかなんだか知ら
ねえが、ブロンクスの毒蛇にどんなことができるか、しっかり見届けるがいいや」
「つまり、さっき感じたいやな臭いは本物だったってことね」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板