したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

130煌月の鎮魂歌7 13/17:2015/11/12(木) 20:50:34
「代々長子の男性がエルンストという名で家令を勤めてきたのですが、その名を継いだ
兄上が亡くなられましてね。戦争で未亡人になっていた彼女が呼び戻されて、こちらの
家政を見るようになったというわけです」
「はん。俺と似たような身の上ってわけか」
 鼻を鳴らしてユリウスは椅子にそっくりかえった。
 とたん、射るような眼孔に射すくめられて、反射的に身を堅くした。茶器を手にした
ままの無表情な老夫人が、灰色の目を矢のように鋭くこちらに向けている。
「わたくしは自らの血筋に誇りを持っております」
 細いが、その声は激しかった。お前などといっしょにするなという絶対の拒絶を、
ユリウスは感じ取った。この屋敷に来てからずっと感じていたものが、一瞬にして
人の形をとり、目の前に立っているようだった。
「兄が死んだことは悲しいことです。けれども、わたくしの務めははるか五百年、
いいえそれよりも前から、我が家に引き継がれてきた名誉ある任務。ベルモンド家に
お仕えすることがわたくしの運命であり、生命です。ご本家からお呼びをいただいた
ことを光栄に思いこそすれ、拒否するなどとはみじんも考えたことはございません」
「そうかよ。お偉いこったな、ばあさん」
 一瞬であれ鶏がらのような老婆に気圧されたことを隠すように、ユリウスは身を
乗り出して熱い茶をがぶりと飲んだ。のどを焼くその熱ささえ、老婆から突きつけ
られた拒絶と挑戦の証に思えた。
「それじゃあんたはあいかわらずラファエル坊やに仕える身で、俺はあくまで鞭を
使うために引っ張ってこられた道具扱いでしかないってことだ。思い出させてくれて
ありがとうよ。安心しな、俺は坊やに対してどうこうしようなんて思っちゃいないし、
こんなお堅いお屋敷に一生縛りつけられるのもまっぴらなんでね。仕事が終わりゃ
即座にこんな家おん出て、なつかしのニューヨークへまっすぐ帰ってやるよ。こんな
古くさいかちんこちんの家の主なんざ、あの車椅子坊やを座らせときゃたくさんだ」
「ラファエル様を愚弄することは許しません」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板