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TSFのSS「魔封の小太刀」

31luci★:2010/03/12(金) 14:44:35 ID:???0
「今日どこに行ってたんだ? 連絡取れなかったぞ」
 食事を取りダイニングの椅子で一段落取っているところに涁が話しかけてきた。正直言って、あまり話をする気分ではないのだけれど。おやじ殿はテレビを見ながら大笑いしている。
「それはすまなかったけど……実は、最近変な夢をみるんだ」
 俺は掻い摘んでお濃、八郎太、そしてその時の様子を話していた。
「――そうか。それで? 心理学の本でも借りてきたのか? それとも、前世とでも思ったのか?」
「どちらかと言うと後者。だから、図書館行ってこの辺りの歴史を調べてきたんだ」
 ちらっとおやじ殿を見ると、こちらには背を向けて頬杖をついている。涁は俺の隣に座って少し目を細めて俺をまっすぐ見ていた。何故前世などという言葉が出たのか、少し不思議だった。珍しくオカルティズムを刺激するような内容だったのだろうか。
「で、戦国時代くらいか、この辺りは後藤という家があったらしい。知ってる?」
 頭を振る涁に、言葉を進めた。
「後藤武篤、この人が家系図の最後に載ってる人物で、彼は三男二女儲けたらしい」
「なんでその時代、というかその後藤何某がいた時代が、お前の夢の時代と同じだって思うんだ? 仮に前世としても特定できないだろう?」
「それは……口伝があって、それに刀鍛冶の事が」
「それが八郎太だっていうのか? 馬鹿らしい。全然意味ないだろ。もっとこう――歴史的事象とか名称とか何か理由があるんだと思ったぞ。お前、そんな事に感けてないで直ぐ連絡取れるように待機しとけよ」
 文句だけ言うと、返事も待たずに涁は自室に行ってしまった。
 確かにそれが特定する証拠とは言い難いのは分かってる。でも、直感的にそう思った。この系図の女がお濃で、この口伝にある刀鍛冶が八郎太だと。
 涁には話せなかったけれど、もう一つ興味深い事も分かった。御厨は後藤家の家臣だった。それが後藤家が近隣の豪族に滅ぼされると権力を得、地域を支配したのだ。
 後藤が滅び御厨が台頭……それは裏切りのせい? ただの偶然? 
 もし、前世というなら、もし、御厨が後藤を裏切っていたなら、俺の姿がお濃と瓜二つというのは皮肉に満ち溢れている。或いは、何か作為的なモノがあるような気がするのだ。
「玲、その話面白そうだけど、この件が終わってからにしような」
「?!」
 突然耳元で囁かれ、椅子から立ち上がっていた。湧きあがる鳥肌と寒気に細い両肩を抱いていた。
「お、おやじ殿っ、変な事しないでください!」
「……ふふん、隙があるが悪いのだ。目の前の事に集中集中」
 笑い声を残して去っていくおやじ殿に、俺はやはり嫌悪感を感じずにはいられなかった。


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