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失踪中の六太

1名無しさん:2006/04/24(月) 00:18:08
尚六もの。エロなし。リレスレの途中から別展開させてもらいます。
うまくないんで、あらすじぽくなったらすいません;
読んでほしいのとスパムに負けないためとでたぶんあげていきます。

2名無しさん:2006/05/04(木) 15:53:23
視点の統一とかそういうテクニック的なこと全然わからないんで勝手な文となります。

リレーの途中(だいぶ前)から設定だけ借ります。記憶喪失で行方不明となった六太。
(田舎で人身売買事件が起こった後)。
風漢恋しさで勝手に王宮まで飛んできましたが、不正な侵入であるため
おそらく王であると思われる風漢に会いたくても会えず、
敷地内に隠れ棲んでおります。

3名無しさん:2006/05/04(木) 16:06:46
勝手に王宮の敷地内に入ってはいけないとわかってはいたが、六太はいったん
飛び込んだここから出ていく気にはなれなかった。不正な侵入が見つかれば強制
送還されることは目に見えている。まして半獣と知られればどんな罰を受けるか
しれない。
 ひたすら人目につかぬように暮らすしかなかった。
 しかし六太は良い場所を見つけた。
 王宮の庭の片隅にひっそりとある祠である。
 毎日供え物の係の者が来るのと、日に何人か女性の参拝客が来るのと以外は
人気も無く静かな場所である。
 供え物は様々な果物、そして料理に菓子。
 お腹が減っていても、肉など動物性の食品は何故か苦手な六太であったが、
ここの供え物の料理や菓子は不思議と口に合った。六太の苦手とする材料は
使われていないようなのだ。
 供え物に手を出すなんて、という躊躇はあった。だが背に腹は代えられない。
おまけにこれだけ六太好みの料理だ。飢えた六太は食べずにはいられなかった。

4名無しさん:2006/05/04(木) 16:17:25
 暮らすにおいて屋根は不可欠である。六太はしばらくこの祠で暮らすつもりだった。
だが、心配は食べてしまった供え物だ。今日でここに棲みついて三日目となるが、
料理の皿をさげに来た係の者たちが不思議そうに首をひねっている様子が、六太の
隠れている場所から見えてしまった。
「料理がきれいに食べられているなんて。祠の供え物を食べるような不届き者が
王宮内にいるかしら」
「不届きというより変よねえ。王宮では食べ物は充分に支給されるし、いくら
上等に作られた料理といっても、こういう野菜ばっかりの料理は普通の人間なら
物足りないはずなんだけど。盗んでまで食べるかしら」
彼女たちが帰ってしまると六太はひとまずはほっとしたが、今後も食べ続けて
大丈夫だろうかと不安も頭をもたげてきた。

5名無しさん:2006/05/04(木) 16:33:10
 しかしこの祠はなんなんだ、と六太は思う。
 訪れるのは女性ばかり。
 彼女たちが声に出して願う願いごとは皆、似通っていた。
「どうぞ、私めにあなた様のような美しさをお与えください」
 昨日はその女の様子があまりに真剣だったので、獣形で祠の隅にうずくまって
くつろいでいた六太は思わず体を起こした。
 のぞいて見るとそこにいるのはごく普通の女性ではあったが、その声の真剣さに
六太の角がなぜかうずいた。
 気がつくと光を宿しはじめた角からは放射が始まり、離れた場所にいる女を
微かだが優しい光に包みこみ始める。
「へえ」
六太がびっくりしたのは、何故か女が先ほどとは違って見えはじめたからだ。
顔かたちが変わったわけでもないのに、何かきらきらしい空気が女に備わり、
もはやかなり美しいといっていい女性がそこにいた。

6名無しさん:2006/05/04(木) 16:47:38
女は帰っていった。
「なんかよくわからないけど、おもしろかったな」
六太は機嫌よく、もとの片隅にもどると人間形態に戻り、頭には布を巻いた。
過去の記憶は無い六太であったが、髪を人目にさらすと恐ろしいことが起こる、
そんな気がして、人間姿のときには必ず布を巻くようにしているのである。

だが、頭に布を巻いていても恐ろしいことは起こるものだ。
それは翌日やってきた。
六太がうつらうつらしているときに、どやどやと祠を取り囲む人数の足音がしたのだ。
「おい、誰かいるのだろう? いるかいないかぐらい気配でわかるんだぞ。
勝手に供え物を盗むとはふてえ奴だ。罰を与えてやる」
六太は恐怖ですくみあがった。慌てて獣形になると口に衣服をくわえ、祠の裏口から
繁みの中へと逃げ出した。
「あっ、今、何か、裏口から出ましたぜ」
「何か騎獣のようなものの影が見えましたが、動きが速くてよく見えませんでした」
「うむ、そうか、逃げだした騎獣が勝手に住みついていたのかなあ。それにしては
盗み食いというのは変だが」

7名無しさん:2006/05/04(木) 16:54:25
食べ物つきの棲家を奪われた六太。
しかたなく庭の繁みなどを寝床とし、果樹から果物を盗む毎日が続いた。
そして何かの気配。王宮内には不思議と良い気配の流れてくる場所があり、
六太はそういう場所で日なたぼっこのようにその気配を浴びるのが好きだった。
それが王気というものだとは六太は知るよしもなかったが。
ときどき廊下を歩く風漢の姿が垣間見えることがあり、六太は、やはり風漢は王で
あったか、と身分の差に悲しくはなったが、どきどきしながら、目でその姿を
追って懐かしむのだった。

8名無しさん:2006/05/04(木) 17:14:59
延麒が失踪してから。
そのお触れを知らぬ者は国内にいなかった。
いや、それは触れとして人々に伝わったのではない。
そのような人心を脅かすようなことは徹底的に伏せられていたから。
だが、人の口に戸は立てられない。
人々は今では皆知っていた。
延麒が失踪し行方不明であること。王は民を心配させないよう、そのことを伏せてい
ること。そしてもしも延麒を見つけだした者には、どんな報酬でも願いのままに
与えるつもりがあること。
今や、誰もが延麒を見つけ出して国を安んじる手伝いをしたい、そして多大な報酬
も得たいと夢見ていた。

さて、王宮であるが。
祠詣でで美しさを手に入れた女がいると評判になっている。
そんなことで美が手に入るものかと笑ってすます者もいる。
しかし、もしそれが本当であるならば、祠詣でで効果が得られるとするならば、
それはもしや、延麒が王宮内に戻っている証拠ではないのか。
さらに。庭の繁みの中に、何か光る白い生き物を見たと噂する者もいて。

「あいつのことだ。勝手にここまで飛んできて、庭でふらふら暮らすことも
無いとはいえん」
いや、本当にいるのではないかと。麒麟が王の場所を知っているように、王も
また、なんとなく麒麟の気配を察することができる。
「姿を見せぬなら、おびき出せばよい。麒麟一匹、菓子などで釣りあげることが
できるかもしれん」
そのような言い方を、と渋い顔を見せる者もいたが、女官たちは、
「では麒麟釣りの宴を庭で楽しく行いましょう、でも参加者だけで内密の宴に」
と、いそいそと準備を始める。

9名無しさん:2006/05/11(木) 23:14:03
王宮でこっそり暮らす六タン、ペリーぬ物語みたいでカワユス

10名無しさん:2006/05/11(木) 23:45:39
>9
読んで頂けて感激……おりを見て書き続ける勇気がわいたです。

11名無しさん:2006/05/18(木) 23:50:21
つ、続きを早く・・・・・

12名無しさん:2006/05/19(金) 23:44:22
>11
ありがとうです。今日は少し続きを書くつもりです。

13名無しさん:2006/05/19(金) 23:55:44
今日も六太は良い気配の流れてくる場所で、やわらかい雑草の上に寝転んでいた。
風漢に逢いたい。逢えばこの良い気配をもっと身近に感じられるのに。
二人でしゃべったりできるのに。体に触れることもできるのに。
でも逢うことはできない。
そのように行きつ戻りつする思いに次第に疲れてきた。お腹も減っているせいで
元気がでないのだ。最近は果樹園の見張りも厳しくなり、盗みも困難になっていた
のである。
それでも良い気配は気持ちよく、六太は空腹を感じながらもうとうととし始めた。
半分眠ったような意識の中に、人々が、がやがやと何かを準備するような雰囲気が
流れてくる。
そして。
楽しそうな音楽が流れてきて、六太のまどろみは破られた。

14名無しさん:2006/05/20(土) 00:04:35
なんなのだろう。
六太は音楽の流れてくるほうへと歩いていき、繁みを掻き分けて潅木の葉っぱごし
にそちらのほうを覗いてみた。
見ると、やはりそこには風漢の姿があった。
そして二十人ばかりの女たち。中には楽器を演奏している者もいる。
この人々の前には、うっとりするようなご馳走が並んでいて。菓子や果物もふんだん
にあった。風漢も女たちも、皆楽しそうに語らいながら酒を飲んだりしてくつろいで
いる。

15名無しさん:2006/05/20(土) 00:17:44
六太は気がついたときには繁みの中から出てしまっていた。
立ちつくして、ただ呆然と風漢のほうを見ている自分があった。
もちろん風漢も人々もこちらに気付いた。
風漢の顔が「こちらに来い」と言っているように見えた。
女たちも微笑みながらこっちを見ている。
六太は行きたくてたまらなかった。でも。自分は半獣だし不法侵入の身だ。
「さあ、こちらにいらっしゃいませ」
一人の女が立ち上がり、そう言いながらこちらに歩を進めてくる。
捕まえられるのかも、と六太は思った。最近は祠でも果樹園でも捕まりそうな経験
ばかりしているので警戒心が強くなっていたのだ。進み出てくる女を前にして、
思わずあとじさってしまう。
「六太、ここに来い」
と、突然、風漢の声がして、六太はびくっと立ち止まった。
もともと風漢のそばに行きたかったということもあるが、何故かその声に逆らえなく
て、六太はおそるおそる近づきはじめる。

16名無しさん:2006/05/20(土) 00:33:33
とうとう六太は風漢のすぐそばまで来た。久しぶりに間近に見る風漢の顔から目を
離せなくて、吸いつけられたように風漢の目をじっと見る。
風漢の目にも口元にも歓迎するような笑みが浮かんでいる。
このままじっと見つめ合ったまま、どうかなってしまう、何故か息が止まりそうになって
六太がそう思ったとき、いきなり背中を風漢の手ががしっと掴んだ。
そのまま引き寄せられる。風漢の顔がさらに間近に迫る。どうかなりそうなほどの
「良い気配」の洪水に六太は意識が遠のきかけた。田舎にいた頃は慣れていたのに
急に会うとなんだか呼吸すら乱れるほどの衝撃だ。
「さあ捕まえたぞ」
呆然としたままの六太は風漢の隣の空いていた椅子に座らされた。
「まあ、ようございましたこと」
「さすがでございますわ」
女たちは嬉しそうにホホホと笑いながら六太のために給仕を始める。

17名無しさん:2006/05/20(土) 00:49:20
風漢に話したいことがいっぱいあって胸がつまりそうだった。
でも半獣の身で、不法侵入の身で、話していいのだろうか。
それに、良い気配に溺れそうで体もどうにかなりそうで。
なのに何故だろう。食べ物を給仕されると、飢えにまかせて食べずにはいられなかった。
風漢になごやかに見守られていると、心の中にあったつかえがとれるようで、
そのせいか堰を切ったように食べ続けてしまう。
だがひとしきり食べ終わると、心配ごとが頭をもたげてくる。
こんなはなやかな席にみすぼらしい服装で場違いな自分。
さらにいやなことも思い出してしまった。延麒のことだ。
自分が今、座っているのは王である風漢のすぐ隣りの席だ。しかも豪華な椅子。
六太が来たとき空いてはいたが、これは延麒のために用意されていた席ではないのか。
六太はそわそわし始めた。今この瞬間にも延麒が来たらどうしよう。
自分はこの席をあけ渡さねばならないだろう。延麒の美しさを見せつけられてしまう
だろう。風漢と延麒が仲良くしているところも見ねばならないかもしれない。
今、風漢はこんなに優しく六太を見守ってくれているが、延麒が来れば、もう六太に
は目もくれないのではないだろうか。

18名無しさん:2006/05/20(土) 00:53:57
さて風漢こと尚隆であるが。
「なんだ、もう食べないのか?」
と声をかけながら、尚隆は胸もつぶれる思いだった。
六太がこんなにも飢えていたとは。
それに何かに怯えるようにびくびくとしていて。
もう何も心配いらない、飢えることもない、とわからせてやらなければ。

19名無しさん:2006/05/20(土) 01:25:36
しかし六太のほうはといえば。
六太は既に、もうここを辞さねばを気持ちを決めていた。
風漢とは離れ難いけれど。ここを辞したらもう今度はいつ、このように一緒に過ごせる
のかわからないけれど。そんな日は一生来ないかもしれないけれど。
でも。延麒がここにやってきて、風漢の暖かい視線が自分から離れ、延麒だけに
注がれるのを見たくはないから。なんだか一気に食べただけで、まだ全然、風漢と
話していないけれど。話たいけれど。
「あのさ、風漢……オレ、もう帰るよ…ちょっと心配なこともあるし……たくさん
食べちまって……ごちそうさま」
楽しげな音曲が流れる中、自分の声が場違いなものに聞こえる。
「なんだ。もう食べんのか」
風漢は優しく、そして気遣わしげに六太を見つめている。
六太はますます不安になってきた。
もし風漢に祠や果樹園での盗みのことがばれたら、きっと軽蔑されることだろう。
いつか漏れ聞いた話では、六太がたびたび盗んでいた果樹園は、風漢が目に入れても
痛くないほど大事にしている延麒用のものであったというし。
六太ははやく辞さねばと思ったが、思わず情けないことを言ってしまっていた。
「あのさ…あの、食べ物を少し持って帰ってもいかな…あの…」
思えば、これからも飢えとの闘いの生活が続くのである。そんな言葉が出てしまうの
も無理はないかもしれないが。

20名無しさん:2006/05/20(土) 01:39:32
六太の言葉を受けて風漢は女の一人に指示を与えた。
言われ女は優雅なしぐさで食べ物を大きな布に包みはじめる。
包み終わって女がこちらへ向け微笑むと、六太は包みへと手を伸ばした。
だが、六太の手が包みに触れることはなかった。
触れる直前に、六太は抱き上げられていた。
あ、と思う間に、六太は風漢の腕の中にいたのだった。
風漢の声が間近で響く。
「さて、帰るぞ。その包みは俺の部屋に運んでくるように」

21名無しさん:2006/05/20(土) 01:53:45
宴席から遠く離れた庭の片隅で、獣形の六太は雑草の中にうずくまり、今日の出来事を
思い出していた。
もう夜だ。昼間の出来事が嘘のように思えるほど今は静けさに包まれている。
久しぶりに風漢の間近で過ごした。暖かく包まれるあの感じ。
六太はうっとりとした後、さびしさとまぎらわそうと前足の間に鼻づらを埋めた。
ずっとあのまま風漢と一緒にいられたらよかったのに。
でもそんなわけにいかなかった。風漢に抱き上げられて、息もとまるほど嬉しかった
けれど、でも一緒に行くわけにはいかなかった。
風漢の部屋などに行けば、それこそいつ延麒が来るかわからない。
だから六太は逃げてきた。
六太は獣形になれば足が速い。風漢の腕の中で変身して咄嗟に逃げてきたのだ。
おかげで食べ物の包みももらいそこねてしまった。
六太はせっかく再会した風漢から離れた寂しさ、さらに空腹感にも苛まれながら、
なかなか寝つけない夜を過ごさねばならなかった。
昼間あんなに食べたのに、晩になればもうお腹がすく。
昼間、風漢にあんなに優しくしてもらったのに、逃げだしてしまって、もう会えないと
いう喪失感。
今日は風漢と過ごす暖かさを味わってしまったから、今晩はいつもよりよけいに
寂しい。


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