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リレーSSスレッド

1名も無きフレンズ:2020/02/07(金) 10:00:46 ID:Op18dN2k0
このスレッドは、みんなで
リレーSSを書いていくスレッドです。

ご利用の前には、以下の説明を必ずご覧ください。

ーーーーーー「リレーSSとは?」ーーーーーー

大勢でSS(レス)を物語の内容に沿って
順番に執筆(投稿)していきます。
それを何度も繰り返し続けて
物語を書いていくのが「リレーSS」です。

ーーーーーー「リレーSSの書き方」ーーーーーー

・前の方が書いたSS(レス)の続きを考えて
SS(レス)を執筆(投稿)してください。

・SS(レス)が、リレーSSや当スレッドへの
「感想・報告・返信・質問・回答・審議」などと
混ざってしまうのを防ぐため
SS(レス)の文頭には、前の方のSS(レス)への
レスアンカーを打ち込み、レス番号を指定して
そこへ、必ず「続き」と付け加え
そのあとに、SS(レス)の本文を入力してください。

たとえば、前回のSS(レス)を書いた方が
>>1だった場合は 「>>1 続き」 といった具合です。

・惜しくも書き込みのタイミングが合わず
続きのSS(レス)が2つ以上になってしまった場合
後続の方は、先に書き込まれたSS(レス)の
内容に合わせてSS(レス)を執筆(投稿)してください。
また、SS(レス)の続きが被らないよう
書き込む直前に当スレッドをリロードしての
確認を強く推奨します。

ーーーーーー「当スレッドのルール」ーーーーーー

まず、当掲示板の【ローカルルール】を
必ず、守ってください。

次に、SS(レス)の題材は
「けものフレンズR」を第一に考えてください。

続きまして、当スレッドは
【sage】進行でお願いいたします。

結びに一言、失礼いたします。
間違えても大丈夫です。
何度でも挑戦してください。
決して、失敗を必要以上に悔やまないでください。

説明は以上です、ご一読いただきありがとうございました。

以下 >>2 から、物語が始まります。
それでは、皆さん、よろしくお願いいたします。

当スレッドは「自治スレッド」にて賜りました
皆さまのご助言のお力添えで完成しました
このたびは、厚く重ねて感謝を申し上げます。
皆さま、おかげさまで大変お世話になりました
どうも、本当にありがとうございました。

81名も無きフレンズ:2020/03/03(火) 15:54:04 ID:cHAtgxpI0
>>80のツづきでス

お昼頃、ついにアンドロイド探索隊が結成及び出発する時がきた。
最初の目的地はアードマン大聖堂から東に数百キロの「ワーナー森林地帯」
たとえ、行手を遮る黒い影が待ち受けていようとも、茨の道しか目の前になくとも
とにかく、ライト様から授かった腕輪の示す通りに進むしか道はないのだ。

「皆、出発の準備はできたかしら……グスッ、忘れ物はない?」
リタは目に涙をためて、不備がないかを確認するように促す。
「全員、無事に帰ってきてよ……いつでもご馳走を用意して待っているから」
バブスは努めて明るいそぶりをしていたが、眉間にはシワを寄せていた。
「辛いわ、私たちは拠点から離れられないなんて……でも忘れないで、心はいつもそばにいるから」
ウェンドレンはアンドロイド探しに向かう選抜メンバーを
一人一人力強く抱きしめると、キャンピングカーに食料をありったけ積み込んだ。
「これはね、わたしが作った秘蔵のお酒よ、すっごくいいやつだから大事に飲んでね」
ウェンドレンは、いや、お酒は結構ですと遠慮するともえたちに
いいからつべこべ言わずに持って行きなさいと大量の酒瓶を押し付けた。

タチブルーはタチイエローやタチシルバーと共に拠点の防衛につくため
皆と共に戦えないことをエジプトガンに詫びた。
「一緒に戦えなくてごめんなさい……エジプトガンさん、みんなのことを」
「おい、泣きそうな顔するな、なにが来ようと私が守ってみせる……次に会う時は服を着てなよ」
「はうぁっ! やっぱり言われたあああ!」
タチイエローはともえたちから離れることをバツが悪そうな顔をして謝った。
「ともえ、今朝はああ言っておいて、直接力になれなくて本当にすまない」
「ううん、拠点を守ることは大事なことだよ、頑張ってね、でも無理しないでね」
「ああ、お互いに怪我や病気もなく、笑顔でまた会おうぜ」
そこへ、タチシルバーが横から口を挟んだ。
「ワタシたちの仲間が目的地周辺で合流する予定よ、予め伝えておくけど内気な子だから
 申し訳ないけど面倒をかけるかもしれないわね」
「そうなんですか? でも、ありがとうございます、ふふっ、早く会って仲良くなりたいなぁ」
タチシルバーはともえの様子を見て、ちょっと変わった子ねとぼそりと呟いた。

いざ、出発の時がきた! さあ、鬼が出るか蛇が出るか! エンジン始動!!
「「「「「「「いってきまーーーーーす!!!!!!」」」」」」
キャンピングカーへと乗り込んだ、ともえ、イエイヌ、ガメ、ナメラや
空中を飛翔するエナガ、キゴシツリツドリが元気よく旅立ちを告げる
ヤブツカツクリは座席に腰掛けたまま、案内役を買って出たエジプトガンを睨みつける。
オオムジアマツバメはエジプトガンの真似してクールに無言で敬礼をした。
運転席のバビルサは、シャンスをおさめた収納棚のケースを一瞥すると
キャンピングカーのエンジンをつけて、A.Iによる自動運転機能モードを選択する。

「「「「「「いってらっしゃーーーーーい!!!」」」」」」
ウェンドレン、バブス、リタ、タチブルー、タチイエロー、タチシルバーは
大声で手を振り、心では皆の無事を願っていた。
シスターたちはライト様への祈りを捧げる。
(((ライト様、どうか皆を危険からお守りください)))

キャンピングカー、発進!! 土煙をあげ、道無き道を走り出す!!

82名も無きフレンズ:2020/03/03(火) 15:56:20 ID:cHAtgxpI0
>>81ノツヅきでス
「いってきます、か……」ともえはその挨拶言葉になぜだか無性に懐かしさを覚えた。
「なんか、ボクっちは少しだけワクワクしてきたよ」ガメが自嘲気味に笑う。
「わたしはすごいドキドキしてきたわ」ナメラは興奮を隠せないようだ。
「ともえさん、帽子は持っていますか?」イエイヌが帽子の有無をともえに尋ねる

「うん……ほらね、ちゃんと持っているよ」
ともえは鞄から帽子を取り出した。
「ともえ、今ちょっとでいいから帽子をかぶってみてくれないか」
ガメが掌を合わせて、ともえに拝む姿勢をとる。
「そうね、昨日はいろいろあって見れずじまいだったもの、私からもお願いするわ」
ナメラもともえの帽子姿が気になるようだ。
「ともえさんは……帽子が苦手なんですか?」
イエイヌはなんとも言えない顔つきで、もじもじしながらともえを見つめた。

「わかった、じゃあ……かぶるよ」
ともえは3人の熱意に押されて、ようやく帽子をかぶることにした。
「ど、どうかな?」

「「「おおおおおおおおおお!!!」」」
車内にて3人の歓声が響く。
「!」
ヤブツカツクリは突然の大声にビックリしたのか体をびくつかせた。

「ヒューっ! ぴったり似合っているじゃないかー! この衝撃は初めてだよー!」
「本当ね、私以上に帽子姿が素敵な子がいたなんて」
「ともえさん! その……嬉しいです!!」
ガメはともえの帽子姿を褒めちぎり、ナメラはいたく感心したようで
イエイヌに至っては、喜びのあまり言葉がうまく出てこないようだ。

「そ、そうかな……えへへ、じゃあ、これからはずっとつけていようかなー」
ともえの宣言にまたも車内が沸いた。
「!!」
ヤブツカツクリは再度、驚いて飛び跳ねた。

「ガメちゃん、ナメラちゃん、イエイヌちゃん
 あたしにこの帽子を届けてくれて、どうもありがとうね」
ともえのお礼の言葉で、3人はとても満ち足りた温かい気持ちになった。
「どういたしまして、いやー、それにしても届けたかいがあったよ」
「ええ、そうね、いいものが見れたわ、一仕事完了ね」
「わたしは帽子のおかげでともえさんと出会えました
ガメさん、ナメラさん、わたしを誘ってくれて、どうもありがとうございました」
イエイヌはガメとナメラにピシッと礼儀正しくお辞儀をし、感謝を伝えた。
「ははっ、偶然さ、こちらこそイエイヌくんにはお世話になったよ、お疲れ様」
「そうね、あなたがいなくては、私たちもこうして
 ともえと再会することはできなかったもの、感謝するわ、ありがとうね」

バビルサは4人の仲睦まじい光景を眺め終えると、すやすやと寝息を立て始めた。

オートドライブのキャンピングカーは、エジプトガンの先導に従い
ブロロロロー ブロロロロー ブロロロロー と安全運転で走行する。

ともえたちの摩訶不思議な冒険の日々がドラマティックに始まったのであった。

83名も無きフレンズ:2020/03/03(火) 17:23:06 ID:cHAtgxpI0
>>82ノツヅキデス

ともえたちが出発してから数時間後の拠点では、早くも問題が発生していた。

「なっ! なんでエジプトガンさんがいないんですかあああ!!」
「お、落ち着いて、コンゴウインコさん」
「だって、モモイロペリカンさん! ようやく、こっちはエジプトガンさんと再会できると思ってい たのにこんな仕打ちはあんまりじゃないですかあああ!!」

2人の鳥のフレンズがアードマン大聖堂へ訪れて
シスターやタチコマたちを困らせていたのであった。

「あなたたち2人はエジプトガンとどんな関係なの?」
ウェンドレンが2人から事情を聞こうとするも事態はますます混乱するばかり

「エジプトガンさんはわたしと長年の付き合いの想い人なんです!!!
今、エジプトガンさんはどこにいるんですか!!ここにいるって聞いたんですよ!!」

全体的に赤い羽を多く持ち、それでいて色とりどりの色彩豊かな羽を身にした
コンゴウインコは血眼になり、エジプトガンを求めるあまり、冷静さを欠いているのか
ウェンドレンに鋭い爪を持った腕をカチカチと鳴らして、掴みかかろうとしていた。

「ああっ! コンゴウインコさん、ダメです! どうか穏便にお願いします!
えーっと、はい! エジプトガンさんは私たち【スカイジェッツ】のリーダーなんです!
……もう我慢できません! コンゴウインコさん! ごめんなさい! いきまーす!」

「グワワワーッ!苦しい!モモイロペリカン、わっ、わかったよ、もう暴れないからやめてくれ!」

水に溶けて馴染みそうなほど薄い桃色がゆったりとした雰囲気と良く似合うモモイロペリカンは
コンゴウインコを羽交い締めにするとそのド派手頭に目掛けてカプッと覆いかぶさり
動きを完全に封じて、大人しくさせることに成功した。

「「「いったいどっちが本当なのよ!!!」」」
いきなり押しかけてきた2人が巻き起こす珍妙な騒ぎにドッと疲れてしまった
ウェンドレンたちは初対面だろうと関係ないわと手厳しくツッコミを入れた。

「聞いた……もしかするとあの子たちの誰かが教えたってこと?」
タチシルバーは何かに気がついたようで静かに機械制御室へと向かった。





「目覚めよ……悪の戦士よ……愛しき我が子よ」
光のない真っ暗闇に不気味な姿が蠢き、おどろおどろしい声が轟く。
「我が力よ……災厄をもたらし……邪悪なる命を与えよ」
揺れる空気、渦巻く風、地面が崩れ、炎が噴出し闇のなかの影を照らした。
ビリビリと走る電流にごろごろと響く稲光、バシャバシャと水しぶきが起こる。
そして、紫色をした二つの丸い発光体がバチンと音を立てて闇に浮かび上がった。
「お前の名は……ミセリアだ……」

闇の光の持ち主、ミセリアと呼ばれた少女はパチパチと目を瞬かせて、気怠そうな声を放った。
「おはよう、パパ……お腹がすいたわ、朝ごはんはなに?」
すると、闇の中からどこからともなくメロンが現れた。
「わー! 美味しそうね、ありがとう、パパ、いただきます」
ミセリアが紫の瞳を輝かせると、メロンは一瞬で爆発四散した。
「……ごめん、パパ、制御に失敗しちゃった……お願い、もう一個ちょうだい」
ミセリアが申し訳なさそうに再挑戦を懇願すると、また暗闇の宙にメロンが浮いていた。
「ありがとう、好きよ、パパ」
再度、ミセリアが紫の光を放つと、メロンは徐々に輪切りにされていった。
ミセリアはメロンを上品に口元へと運び、しつこすぎない軽やかな甘みと熟れた果肉の柔らかさを存分に心ゆくまで味わった。
「とっても美味しいわね……パパも食べる?」
ミセリアがメロンを宙に浮かべると、闇は息をするようにそれを吸い込んだ。
「ごちそうさまでした……ふわぁ、なんだか眠くなっちゃった
 パパ、一休みしてから作戦開始でもいい?」
闇はなにも言わなかったが、ミセリアがその場で横になろうとすれば
地の底からベッドが湧き上がってきた。
砂や泥にまみれていたのにも関わらず、闇に閃光が駆けると、ベッドや枕は綺麗になっていた。
「パパ、ありがとう、パパのことが大好きよ」
ミセリアがベッドに入れば、暗闇からシーツがゆっくりと降りてきた。
「おやすみなさい、パパ」
ミセリアはシーツに包まってすやすやと穏やかな寝息をたて
闇はさらに深く濃く、されど静かに黒く染まった。

84名も無きフレンズ:2020/03/06(金) 03:03:59 ID:KFmrOrhg0
>>58-83を書いてみた感想と反省です

まず、私は度が過ぎた行為による失態を晒したことを皆さんにお詫びしなくてはなりません。
リレーSSの体をなしていない行動、禁じられた個人による連続投稿をスレを存続させるためにやむなくとはいえ、ルールを定めた張本人が破り、挙げ句の果てに>>59で声高に掲げた、1日1レスの更新を志す目標すら守れず、創作者として、いや、人間として未成熟なことこのうえなく、恥ずかしい限りの奴です。
このような事態を招いてしまったこと、そして、見境なくネタに食いつく姿勢で他スレで惚けて、肝心の物語の続きを書くことをほったらかしにしていたことを自分でも本当に心の底から情けなく悲しく、怒りを覚えます。
皆さんには、見て見ぬ振りをするしか手の施しようのない、私の見苦しい様を見せつけてしまったことで、さぞご不快な思いをされたことと存じます。
私は創作をするよりも前に人としての常識を身につけるべきでした。
皆さんのご期待に添えなくて本当に本当に申し訳がございませんでした、ごめんなさい。

続きまして、第1話の感想と反省ですが
参考書を読みながら執筆したとは思えない、我ながら酷い出来栄えだと思います

以下は自己分析による評価です

多いから減らすべき箇所は
読点、名詞、感動詞、助詞(特にと、に、へ)こそあど言葉 オノマトペ で
少ないので増やしたほうがいい部分は
句点 動詞 形容詞 形容動詞 と判断しました

他に直すべき点は、一度に出すキャラクター多すぎるから減らすこと
オーバーで面白くない表現を出来る限りなくすこと
陳腐な描写はなしにすること
話のテンポが良くないのは見直して、余計なものは省くこと
誤字脱字、誤用が目立つから必ず確認してから投稿すること
場面転換の前後に繋がりを感じられないから、もっとお話の自然な流れを重視すること、です

85名も無きフレンズ:2020/03/06(金) 04:48:21 ID:lKPX2SFc0
そして、私の物書きにおける最大の弱点は視点移動(一人称or三人称)が定まらないことと
説明が下手なうえに情報が過不足なことです

これからは物語の視点を三人称と決めて執筆を進めることにし
説明は明確な要点だけを記述することにしてみます、例えるなら……
TVアニメ「戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー」並のテンポで場面転換をしたいですね

グダグタと失礼しました、懲りずにめげずに挑戦あるのみで創作に取り組んでいきます
何かありましたら、遠慮なく気兼ねなくお声掛けください、誤ちを正していく努力を図ります
リレーSSの続きも引き続き奮って皆さんにご参加いただけると恐縮です、よろしくお願いします

86名も無きフレンズ:2020/03/06(金) 14:59:28 ID:sdh.KGfo0
提案
本編の合間にKFM(けものフレンズメッセージ)を入れてもよろしいでしょうか?
また、誰に声をかけるかを安価で指定できます

87名も無きフレンズ:2020/03/10(火) 05:52:09 ID:MDxw0rCc0
01 〈ともえ〉
「ヤッホー! こんにちは! おっと、ごめんね、いきなり声かけられたら、ビックリしちゃうよね
 はじめまして! あたしはともえ、いつだって元気いっぱい! よろしくね!
 ねえねえ、君はなにが好き? あたしはね、動物が大好きなんだ!
 可愛くていい匂いがするし、なによりも触り心地がたまらないんだよね!
 つい、たくさん撫で撫でしちゃうよー! あとはね、絵を描くことも好きだよ!
 絵はいいよね、描いてて楽しいし、見返せる思い出にもなるから
 そうだ! 今度、あたしと一緒にお絵描きをしない? 君のことを描いてみたいな
 その時は、あたしのお友達のイエイヌちゃんを誘ってくるね
 君のお友達にも会ってみたいな、みんなで集まって仲良く遊ぼうよ!」

02 〈イエイヌ〉
「はっ、はじめまして、わたしはイエイヌです、よろしくお願いします!
 あっ、そうだ! もし、喉が乾いていたり、体が冷えてましたら、温かいお茶でもいかがですか?
 こちらはわたしが淹れたものですが、お近づきの印にどうぞ!
 ええっと、お口に合いますか? 熱過ぎませんか? 渋くはないですか?
 えっ! 美味しいですか! さじ加減が丁度良いですか!?
 そ、そんなに褒められると……ありがとうございますー!嬉しいですー!
 わたし、お茶の作り方にはちょっとだけ自信があるんですよー!
 昔、ヒトに教えてもらったんです、今までずっと練習してきたかいがありました!
 えへへ、今度、ともえさんにも飲んでもらいたいな〜
 はい、ともえさんは、わたしの大好きな大切な方なんです!
 あなたのことも好きですよ、いつでもお茶をお淹れしますー!」


【輝きに満ちた驚異の野生パワー、様々な個性を持つアニマルガールたち
 君が親友になれるのは、果たして誰だ!?
 君が出会う、君のフレンズ 仲良し!超動物生命体!けものフレンズ!】

88名も無きフレンズ:2020/03/10(火) 05:57:02 ID:MDxw0rCc0
03〈ウェンドレン〉
「はじめまして、私は名前はウェンドレン、サフォークの羊よ
 えっ、素敵な毛並みですって? ふふっ、ありがとう
 この白いモコモコした毛は私の自慢なの、これのおかげで雪が降ってもへっちゃらなんだから
 そうそう、私はアードマン大聖堂でシスターをしているの
 仲間のバブスとリタは心強い友達で、普段から一緒に行動しているわ
 それから、私はお酒を飲むのが好きで、自分で作ったりもしているの、いわば自家製ってやつね
 大事なお酒なんだけど、バブスとリタはこっそりいただこうとしょっちゅう狙っているのよ……
 まったく、困ったものよね
 でも、心配しないでちゃんと対策はしてあるわ、私のお酒は誰も知らない秘密の場所に
 隠してあるんだから、二人がどんなに探しても絶対に見つけられっこないわ
 さて、そろそろ夕食の時間ね……よかったら、あなたもご一緒にどう?ご馳走するわよ
 ここで私たちが出会えた奇跡をお祝いして、特別に秘蔵のお酒をわけてあげてもいいわ
 野苺をじっくり漬けてたっぷりと仕込んだ、とびっきり甘酸っぱい果実酒よ、いかがかしら?」

04〈 シャンス〉(代行でバビルサとライト)
「………………………………」←(※動かないシャンスです)
「クッ……やはり、ダメか……やあ、失敬、私の名はバビルサ
 皆からはドクターとも呼ばれているよ、まあ、ドクターバビルサとでも呼んでくれ
 もしかして、君は機械いじりが好きかい? そうであれば喜ばしいな
 私は研究が好きだから、ここで科学者をしているが、機械工作も好きなんだ
 だけど、私は今、壊れてしまったアンドロイドのシャンスの修理に大変手間取っているんだ
 あと、リルル回路というパーツさえあれば、シャンスを完全に直してやれるんだが
 だが、生憎そのリルル回路を持っていないんだ、はあ……どうすればいいんだ」
「我名はライト、汝は随分と悩んでいるようだな」
「えっ! ラ、ライト様ァ! どうしてここに!」
「バビルサよ、すまぬが我についての解説は手短に頼む、時間がない、話を急いでくれ」
「はっ、はい、わかりました、ああ、突然で驚くのも無理はない、君にご紹介するよ
 こちらのこのお方はライト様、元神様の偉い方なんだ
 ところで、ライト様、シャンスを完璧に直すにはどうしたらよろしいでしょうか?」
「うむ、まず、シャンスを直すにはリルル回路の他にも必要なパーツがある」
「えええっ!? 本当ですか! それはどんなパーツなんですか!?」
「すまぬ、もう時間がきたようだ、また次の機会に伝えよう……さらばだ!」
「そっ! そんなぁ!ちょっと待ってください、って……もう行ってしまわれたか……
 仕方ない、ライト様は地上に長時間いられないのだから……取り乱したりしてすまなかったな
 しかし、他に必要なパーツがあったなんて、驚いたよ、次に会えたら忘れずに必ず聞かなくては うーん、それまではどうしようか……よし、決めた!
 もし、君の都合がよければ、是非とも君がこれまでに体験してきたことを
 私に聞かせてくれないか、私はヒトの研究もしているんだ、ヒトから直接話を聞ける機会なん
 滅多にないんだ、頼む! 私はヒトの正体を知りたいんだ!」


【輝きに満ちた驚異の野生パワー、様々な個性を持つアニマルガールたち
 君が親友になれるのは、果たして誰だ!?
 君が出会う、君のフレンズ 仲良し!超動物生命体!けものフレンズ!】

89名も無きフレンズ:2020/03/10(火) 09:03:14 ID:MDxw0rCc0
05〈エジプトガン〉
「私はエジプトガン、セルリアンを倒すことが私の役目だ
 アードマン大聖堂を拠点として、普段は各地の見回りをしている
 敵が出た時は真っ先に私へ知らせてくれると助かる、頼んだぞ
 ……なんだ、他に何か聞きたいことでもあるのか?
 ん? 私の得意なことか? 特にないぞ、思い当たらんな
 ん? 友達とは、仲が良いかって? おい、友達とは誰のことを指しているんだ?
 先に言っておくが、シスターたちは友達ではないぞ
 皆には過去、世話になった恩があり、今は共にセルリアンと戦う仲間たちだ
 よくコンビを組んでいるタチコマ(タチブルー) あいつは素直で信頼できるいい仲間だ
 それに、私より強いしな……しかし、あの格好だけはどうも好かん、目に毒だ
 それから、オオムジアマツバメたちは近くの森で暮らす鳥のフレンズ仲間たちだ
 むっ! 黙って、静かにしろ……見ろ、あそこだ……小さいが何体もセルリアンがいるな
 たとえ、お前が見つけられなくても、私のこの眼が奴らの姿を確かに捉えた
 話はまた今度だ、これより戦闘態勢に移る、余計な手出しは無用だ、助けなど必要ない
 あの程度なら私一人でも十分に対処可能だ、お前はさっさと安全な場所に退避してろ……
 行くぞォ! セルリアンめ! 粉々に打ち砕いてやるッ!」

06〈タチコマ〉(タチブルー)
「やあ、君からの通信を今か今かと楽しみ待っていたよ、僕はタチコマ
 僕には、僕と良く似た造形や名称を持つ「タチコマフレンズ」に属する仲間がたくさんいるんだ
 それで、皆からは識別のため「タチブルー」とも呼ばれているよ
 少々、安直なネーミングな気もするけど、青いボディが僕の一番の特徴だから仕方ないね
 えっ? 艶々と光って、とても綺麗だって?
 えへへ、ありがとう、僕もこのカラーリングは結構お気に入りなんだ
 エジプトガンさんからは、目に良くないから服を着ろって、よく叱られるけど
 残念なことに僕のボディだと、お洋服はあまり似合わないんだ、それが恥ずかしくて
 進んで着用する気になれないんだよね……この話はエジプトガンさんには内緒だよ
 それと、僕は昔「公安9課」に所属していたんだ
 えーっと「公安9課」ってのはね、極秘に悪い奴らと戦う組織で「攻殻機動隊」ともいうんだ
 それにしても、懐かしいなぁ……はぁ……草薙少佐やバトーさんにまた会いたいよぉ……
 ああっ! いけない! なんだか湿っぽい話ばかりになっちゃって、ごめんね!
 とにかく、今日は連絡してくれてありがとう、君と話せたからかな、気持ちがスッキリしたよ!
 また連絡してくれると嬉しいな、あっ、そうだ! いいことを思いついた!
 ちょっと、待っててね……こうして……ああして……よしっと!送信完了!
 お待たせ! たった今、僕の仲間たちに君からの通信にはすぐさま応じるようにと伝えておいたよ
 なにかあったら、遠慮なく僕らを呼んでほしい、困った時はいつでも君の力になるよ
 というわけで、これからも僕たち「タチコマフレンズ」をよろしくね!」

【輝きに満ちた驚異の野生パワー、様々な個性を持つアニマルガールたち
 君が親友になれるのは、果たして誰だ!?
 君が出会う、君のフレンズ 仲良し!超動物生命体!けものフレンズ!】

90名も無きフレンズ:2020/03/10(火) 09:16:32 ID:MDxw0rCc0
07〈ダーク〉(代行でミセリア)
「………………………………」←(※喋らないダークです)
「……もう、パパったら、しょうがないわね、私が代わりに出るわよ
 はぁい、そこのあなた、お元気かしら? 私はミセリア、悪のサイボーグ戦士として生まれたの
 こちらは私のパパのダークよ、パパは全てを滅ぼす闇の力を持つ邪神
 つまり、この世の誰よりも強いんだからね!
 そして、私は邪神の子供ってわけだから、私もかなり強いのよ!
 私はこれからパパと一緒に、手始めにこの平和でつまらないジャパリパークを恐怖で支配して
 それから、世界中を暗黒の闇に包み込んで、心ゆくまで悪いことをして、全部を壊していくのよ
 楽しみにしていなさいね、あなたがここで抵抗しても無駄、パパや私には絶対に勝てっこないわ
 私にはパパから貰った特別な力があるんだから、よし、いい機会だし
 今日は特別に私の力を少しだけ披露してあげる、ほーら、よく見てなさい
 ハァーッ!
 どう、驚いたでしょ! 私がちょっと念力を放てば、あんなに硬くて大きかった岩でも
 一瞬で真っ二つになっちゃうのよ、本気を出せばもっとすごいことができるわ
 あなたがパパに平伏して絶対の忠誠を誓い、私の世界征服を一緒に手伝ってくれるのなら
 命はとらないであげるわ、さあ、どうする?
 すぐに決めろとはいわないけど、パパの邪魔をするなら私が許さないわよ……
 よく覚えておきなさい……さっきの岩みたいにあなたを壊してあげるから……覚悟してね
 えっ? なんなの?パパ? ……うん……そろそろ、作戦開始の時がきたのね、わかったわ!
 私の力でジャパリパークを真っ暗闇にして、光の輝きを全ていただいてきちゃうわね!
 名残惜しいけど、また会いましょう、その時にいい返事を期待しているわ、じゃあね
 パパ、いってきまーす! よーし、まずは二人目のアンドロイドをぶっ壊してやるわよー!」


【邪悪に溢れた脅威の破壊パワー、危険な武装を持つ悪の軍団の恐怖
 君は仲間になってしまうのか!?
 君を襲う? 君の強敵! 争え! 闇の戦士たち、ダークサイボーグ!

91名も無きフレンズ:2020/03/13(金) 04:18:43 ID:VdR8W59U0
>>83の続き

「KEMONOFRIENDS」←タイトルコール&ミュージックスタート

♩〜 WAKE UP !

虹色の光から目覚め 誰の心もBeautiful Life
共に幸せ 願い生きる Happiness Happiness 平和なPlanet

喜び笑う愛に 手にした力 駆け出す道を閉ざされても Kemono Friends !!
Confront Evil !! Animal Girl !! 輝き溢れた Brave 明日へ
Confront Evil !! Animal Girl !! 形の違った 命よ 吠えろ

永遠に望む The World of Kindness

前回のあらすじ 「けものフレンズR リレーSS」では!

眠りから目覚めたヒトの少女"ともえ"は自らが記憶喪失であることに気づく。
自身の置かれた状況に困惑したともえは、突如として現れた謎の怪物"セルリアン"に襲われるも
その場に居合わせた超動物生命体"フレンズ"に助けられ難を逃れる。
ともえはフレンズに導かれ、辿り着いた"アードマン大聖堂"にてしばしの安息を得るが
再びセルリアンの襲撃が発生したうえに、晩餐会の儀式にて降臨した神の化身"ライト"から
セルリアンを操り、一連の事件を引き起こした黒幕
邪神"ダーク"の誕生にまつわる話とこれから近いうちに起こるであろう災いを知らされる。
そして、ともえたちはライトの助言に従い
ダークに唯一対抗できる力になり得る"アンドロイド"へ助けを求めるべく
捜索隊が結成し、意気揚々と旅立つも
既にダークは行動を開始しており、恐るべき悪魔の子が解き放たれていたのであった。

92名も無きフレンズ:2020/03/13(金) 08:24:12 ID:q5eBsjjQ0
報告
次回レス以降、続きを書く際にコテハン&トリップをつけますがよろしいでしょうか?
特にご意見がない場合は使用させていただきます、失礼しました

93十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/14(土) 03:08:02 ID:K4TMW0HI0
反対意見が見つけられないので>>92での宣言通り、コテハン&トリップを使用させていただきます

さて、今回の「けものフレンズR」は
この緑あふれる大自然の中から物語を始めるとしよう。

ともえたちがアードマン大聖堂を旅立ってから早くも一週間が経った。
光の化身、ライトより授かった腕輪の導きに従い、目的地の「ワーナー森林地帯」を目指すご一行。
出会って間もない頃には、お互いがどう相手に接すればよいのかと迷い
皆、どこか遠慮していた節がみられたものの
寝食を共に過ごすことで徐々にだが、確実に打ち解けあい
今では皆が仲間としての意識や理解を深めつつあった。

94名も無きフレンズ:2020/03/14(土) 11:14:14 ID:K4TMW0HI0
>>93の続きです

いよいよ、ワーナー森林地帯に差し掛かったころ
キャンピングカーのA.I(人工知能)ナビゲーターが
運転席に備え付けられた黄色いランプを点滅させ、車中へ音声案内を始めた。

《お知らせします、残量エネルギーが残り僅かです。補充をお願いします》

「やれやれ……ここにきてエネルギー切れか」
バビルサはパワーメーターを横目で確認しボヤいた。
「ふむふむ、そういうことか……なるほど、どうやら日光充電が十分にできていなかったのがエネルギー切れの原因だな……ここ数日はずっと曇り空が続いていたので仕方あるまいか……」
ぶつぶつと独り言を交えながら、バビルサは自動運転機能を解除して、運転を手動に切り替え、ブレーキをゆっくりと踏み、徐々にスピードを落としていく。
キャンピングカーの行手を先導していたエジプトガンが異変に気づき、運転席側の窓をコツコツと叩いたので、バビルサはすぐに窓を開けた。
「どうした? なにかあったのか?」
「ああ、こいつのエネルギー切れさ。一旦、どこかに停めてからの充電が必要だ」
「そうか、充電完了にはどのくらい時間がかかりそうだ?」
「そうだな……今日は快晴だから数時間あれば大丈夫だ、問題ない」
「了解……それなら、皆にはしばらくの間、羽を伸ばしてもらわないか……辺りを見たところ、ここいらの自然は前と変わらず見事なものだ。川は清く澄み、空気も綺麗だ、おまけに食べ応えのありそうな木の実がなった木々も多い」
「そうか、ならばともえたちにはそこいらで遊んでくるように言おう。その後、私は昼寝でもするが、君もかなりお疲れだろう? よかったら一緒に一眠りどうだい?」
「いや、断る……私は平気だ、皆のそばで周囲の警戒にあたることにしよう」
「じゃあ、そういうことなら皆の面倒を頼むよ」
「ああ、任せろ」
バビルサとエジプトガンは相談を終え、決定事項を皆へと伝えた。
「おーい! みんなー! 今からキャンピングカーを休ませるから遊びに行ってもいいぞー!」
「ただし、遠くへ行ったり、危ないことはするなよ……私が見張っているから、そのつもりで」

キャンピングカーから降りたともえたちは、体を動かそうと
実り豊かな森に駆け出し、すぐに木の実狩りで夢中になっていた。

「見て見てイエイヌちゃん、あたしはこれだけ集めたよー」
「わー、こんなにたくさんすごいですねー! 私も綺麗な木の実を見つけてきました」
「いいなー! 真っ赤で美味しそうだねー!」
「へへっ、ボクっちは大きなキノコを採ってきたよ」
「ねえ、ガメ、それ毒キノコじゃないわよね……」
「ん? それなら食べても平気なキノコだ、前にちゃんと調べたからな」
「おっ、本当かい? 良かった、安心したよー、教えてくれてありがとう」
「ふっ、たいしたことはない……エジプトガンさんのためにもっとたくさんの食料を集めなくては」
「ふふっ、オオムジアマツバメさんったら張り切ってますね、私も頑張ろうっと」
「けっ、馬鹿らしい……俺は手を貸さないぜ、にしてもこの辺の土はなかなか質がいいな、俺は気に入ったぞ」
「まあまあ……でも、この森の自然はうちも好きですね、特にあの木なんかはぶらさがるのに丁度良さそう」

エジプトガンは、皆のはしゃぐ様子を黙って眺めながら
常に周囲の警戒を怠らず、辺りを見渡していた。

95十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/14(土) 12:26:13 ID:K4TMW0HI0
コテハン&トリップを付け忘れましたが>>94の続きです

「おっ、隠れるのにはおあつらえむきの場所があるな」
皆から離れて土いじりをしていたヤブツカツクリは小さな洞窟を見つけ、しげしげと中を覗き込んだ。
「うひょー、こりゃ真っ暗ですねぇ、うち、探検してみたいなぁ」
キゴシツリスドリも興味ありげに後へ続く。
「いや、入るのはなしだ……はぐれると厄介だ、あまり皆から離れるな」
エジプトガンは、洞窟の出入り口でうろうろしていた二人のそばに近寄り
明るい陽の中、ぽっかりと滲んだ真っ暗闇へ視線を向け、強く念を押した。
「むぅ、少々残念ですがたしかに危ないですもんね、わかりました」
「……おい、こいつとまとめんなよ、はなから俺にその気はないぜ」
「ならいい……うん、そろそろ充電も終える頃合いだな、よし、帰るぞ」
エジプトガンは二人を連れて洞窟から立ち去ろうとしたその時、背後から聞いたことのない声がした。
「ちょっと待って……あなたたちはフレンズよね?」

「!?」「えっ!」「誰だ!」
予期せぬ呼び声に驚いたエジプトガンたちが振り返ると
洞窟の中から黒い影が現れ、こちらにゆっくりと歩み寄ってきていた。
「いきなりで悪いけど、私のお相手をしてくれないかしら?」
まるで霞みがかった夜空のように黒い体は陽光を浴び、その全容が明らかとなった。
すらりとした手足に黒と白が混じった体毛、そして、妖しい光を帯びた紫色の瞳
エジプトガンはその姿を一目見て、ただものではないと感じた。

「おい、お前たち二人は急いで皆と合流し、バビルサにこのことを知らせろ……早く行け!」
「はっ、はい!」「うっ、うん、わかった」
エジプトガンはこの場が危険だと判断し
二人に指示を伝えて逃すと、正体不明の何者かの前へ一歩進み出た。
「私の名はエジプトガンだ……貴様は何者だ、なんのようだ」
「私の名前はミセリア、邪神の力を持ってして暗黒を誘う者よ、よろしくね」
「!?…………ダークの尖兵、つまり悪魔ってところか」
「その言い草は失礼ね、ちょっと頭にきたわよ……決めた、まずはあなたの輝きからいただくわ」
「輝き、だと……なにをしてくるかは知らんが、貴様が敵であることを知った以上は容赦しない」
「ふふっ、凄んで睨まれても怖くなんかないわよ、どうにもならない力の差を教えてあげるわ」

96十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/14(土) 14:40:07 ID:K4TMW0HI0
>>95の続きです

エジプトガンとミセリア、敵対した両者は揃って相手の出方を伺い、膠着状態にもつれ込んだ。
じりじりと互いの間合いを図る二人は、同じ動きをしながらも心境は実に対照的であり
徐々に強張った顔つきになりゆくエジプトガンに対し、ミセリアは唇に意地の悪い笑みを浮かべて余裕そうな表情を見せている。

このままでは拉致が開かないと踏んだエジプトガンは意を決してついに動いた。
翼を大きくはためかせ、ミセリアへ一気に詰め寄る。
ミセリアが「ふん、正面からなんて無駄よ」と迎撃を構えた瞬間に
エジプトガンはその頭上を素早く飛び越え、背後に回り込み手刀を放つ。
「もらった!」風を鳴らし、太い木の枝でも容易く切断するパワフルな一撃が
ミセリアの無防備な背中に振り下ろされた。

「!?ッ」しかし、その攻撃は命中寸前で大きな音を立てて弾かれてしまった。
「グゥッ……なんだ! 今のは……なにが起こったんだ!」
エジプトガンは今ので左手首を痛めたのか、右手で抑え込み、呼吸を荒くした。
「動きはいい、力もなかなかあるみたいね、でもそれだけじゃ私には勝てないわ」
ミセリアは後ろを振り返りもせず、淡々とした口調でエジプトガンの強さを評した。
エジプトガンはミセリアの発言を無視して再度、飛びかかり
今度は腕を掴んでミセリアを自分の正面に向かせて、そのまま高く跳ねた。
エジプトガンは空中で一本背負いの態勢に移り、ミセリアを宙から地面へ叩きつけようとした。

「おりぁッ!……なにッ! グワァッ!?」
だが、投げ飛ばされたミセリアは翼も見当たらないのに宙へ浮遊し
そればかりか、エジプトガンはまたも目には見えない
なにかの衝撃によって吹き飛ばされ、落ち葉を巻き上げて地面を転がった。
「すごいでしょ、私の力……空も飛べるし、なんでも跳ね返せるのよ」
ミセリアは圧倒的な優位にいることで得意げになり、自身の不思議な力を自慢した。

エジプトガンは木にもたれかかり、なんとかといった様子で立ち上がった。
「クッ……」
エジプトガンは闘志を失わずとも、自分に勝ち目はないと思っていた。
こちらの攻撃技が全て効かないのであればどうすればいい? 奴の弱点はなんだ?
そこを探らねばならぬ……でも、どうやって?
「よし、私もちょっと本気を出しちゃおうかな」
エジプトガンは無邪気な声に本能的な恐怖を覚え、次に空気を伝わるなにかを肌でとらえたその時
「ウッ!?……ハァ……ハァ……」
腹部に殴打の衝撃が走り、痛みのあまり悶え伏せた。
そして、同時に周囲の木々が次々と亀裂を入れられて
あっという間にまとめてなぎ倒されていくのを見てしまった。
「おおっと、やりすぎたわね……まあ、いずれ全部壊しちゃうからいっか」
ミセリアは口に手を当てて、わざとらしくおどけた。

97十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/14(土) 16:10:20 ID:K4TMW0HI0
>>96の続きです

「これで勝負はついたわね、エジプトガン……あなたの輝きをもらうわよ」
ミセリアが膝をついたエジプトガンを見下ろして両手をかざすと
エジプトガンは抵抗する間もなく体の自由を奪われた。
「へー、まだ私と戦うつもりなんだね」
エジプトガンは翼や手足の動きを封じられ、たとえどんなに絶望的な状況下に落ちようとも
一言も泣き言を漏らさず、その鋭い眼差しはミセリアを睨むことをやめなかった。
「でも残念無念、これで終わりよ」
ミセリアの右腕がどす黒く染まり、エジプトガン目掛けて突き出される。

だがしかし!? ミセリアの頭上に大きな白い影が飛びかかった。
「うわっ! なに! なんなの! キャッ!?」
さらに、3つの影が左右背後から現れ、一斉にミセリアを取り囲んだ。
ミセリアはそれらを身を翻して回避し、両腕を組み合わせ、防御姿勢へと構えた。
「……助かった、お前たちには感謝する」
エジプトガンは念力から解放されると、すぐに立ち上がり
傍へと降り立ったフレンズに窮地を救われた礼を述べた。
「フレンズは助け合いの精神よ、さあ、私たちと一緒に奴と戦いましょう」
「ああ、だが用心してくれ、奴は変わった強い力を持っている……私の名はエジプトガンだ、是非よろしく頼む」
「私はボブキャット、よろしくね、それとこの子たちは私の友達の……」
「アジアンゴールデンキャットよ、名前が長いから私のことはアンジーって呼んでね」
「私はマーブルキャットっていうの……仲良くしようね」
「ワ、ワタシはジャングルキャットだよ!」
「私たちは皆、猫のチーム"キャットファイブ"の仲間でもあるのよ」
「いつも、セルリアン退治をしているから戦いに自信はあるわ」
「それにあとから、すごく強いもう一人の友達が駆けつけてきてくれるから、それまでは辛抱してね」
「あと、5分もすれば来てくれるよ!」
「そうか、それは心強いな」
エジプトガンは4人のフレンズと共に戦列に並び立つ、闘志再炎!!

「ふん、不意打ちなど二度とは受けないわ……私の念力で痛い目みせてあげる!」
ミセリアはとどめを邪魔されたことにたいそう腹を立て、衝撃波を5人に向けて飛ばした!

98十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/15(日) 01:33:52 ID:IoFrgSrc0
>>97の続きダヨ

しかし、ボブキャットたち、キャットファイブの4人は身軽に散開し
各自が衝撃波をひらりと避け、エジプトガンも地に伏せてなんとかやり過ごした。
ミセリアは全員が無傷で衝撃波を乗り越えたことで怯み
実力が未知数である猫のフレンズ4人を警戒した。
「ふーん、まぐれにしては上出来ね……ならこれでどうかしら?」
ミセリアは両手を突き出し、左右の腕を交互に二度振り下ろした。
その宙を切る動作のあとに続いて、風が唸りをあげ、再び衝撃波が発生する。
「みんな! 気をつけて! 今度は連続でくるわよ!」
「ああ! ちゃんとわかってる!」
ボブキャットたちは目には見えないはずの衝撃波を軽やかな跳躍で飛び越えた。
「おっと、危ない」
「へへっ、どんなもんだい!」
そして、4人は瞬く間にミセリアへ接近し前後左右を取り囲んだ位置についた。
「なっ、なんで、攻撃があたらないのよ!」
うろたえたミセリアは、慌てふためきながら四方を注視する。

「上にご注意ください」
ボブキャットがにやりと笑った。
「は?」
つられてミセリアが空を見上げると、眼前に茶色いなにかが映った。
「遅い!」
隙を見計らい飛翔していたエジプトガンの両足を揃えた強烈な飛び蹴りがミセリアの顔面をとらえた。
「ギャッ!!」
ミセリアは悲鳴をあげてもんどりうち、顔を抑えその場に倒れ伏した。

99十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/16(月) 01:11:14 ID:qB8Y52QA0
>>98のづつぎてず

「当たった」
エジプトガンは足振りの反動で宙返りをし、空中で態勢を立て直すと緩やかに着地した。
頬は高揚し赤くなっていたが、その瞳だけは冷たくミセリアを見つめている

「えっ」 「なっ!?」 「あっ!」 「ヒャッ!」
異様なほど冷静なエジプトガンとは違い
ボブキャットたち4人は、エジプトガンの予想外であった本気の攻撃行動
躊躇なしに急所を狙った危険な蹴りを目の当たりにし、思わず声を上げて困惑してしまった。

「ヴグワアアアッ!! 目ガアアアアアッ!! ヴヴヴヴヴッ!!」
ミセリアはくぐもった声で苦痛を叫び、両手で目元を覆い、地べたをのうたちまわる。
「お前たちの助太刀には感謝、あとは私がやる」
エジプトガンはボブキャットたち4人に手短な礼を述べるも
目を合わせるだけで底冷えしてしまいそうなその眼差しはミセリアから目を離さず、警戒していた。
そして、エジプトガンはミセリアにとどめをさすべく、指で音を鳴らし、早歩きで近づいた。

「お、おい、いくらなんでもこれはやりすぎだろ」
「悪い奴とはいえなにもここまで手荒にしなくても……」
アンジーとマーブルキャットの二人は顔を青ざめて、エジプトガンに苦言を呈した。
「情けは無用、奴は悪魔だ」
「それって、どういうこと? 私たちは無力化したうえで、あなたに事情を聞いてから倒すべきか判断するつもりだったのよ」
「悪かった、だが私は最初から倒すつもりだった、詳しい話は後にしてくれ、今はこいつにとどめをさすのが先決だ」
エジプトガンはボブキャットからの疑問を跳ね除け、握り拳を構えた。
「ね、ねえ……それって」
ジャングルキャットが震える指で、エジプトガンの脚先に飛び散って付着したと思われる白いまだら模様を示す。
「こいつの血だな」
エジプトガンはミセリアの真横に立ち、頭上へ拳を叩き込むべく狙いを定めた。

ミセリアはうずくまり、嗚咽混じりに呻き
激痛で泣き喚き、白色の液体が指の隙間からぽたぽたと垂れていた。

「…………」
エジプトガンは無言で拳に力を込めると、迷いなくおもいっきり振るった。

100十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/16(月) 16:13:42 ID:qB8Y52QA0
>>99の続きです

だがその瞬間、苦し紛れの抵抗なのか、ミセリアがおもむろに片腕を突き出した。
ミセリアの挙動に構わず、拳を振り抜くエジプンガンだったが、その判断が不幸を招いた。

破壊目的で振るわれた拳は、手刀と同様に見えないなにかで阻まれてしまった。
「クッ、みんな離れろ!」
反撃を予測したエジプンガンは後ろの4人へ退避するよう指示を飛ばし
同時に羽ばたいて距離をとろうとしたが遅かった。
「ッ!?」
紺紫の閃光がエジプンガンを照射する。
光の発生源は標的を見据えていた。
白く濡れた手のひらから風が起こり、エジプンガンの頭上を吹き抜けた。
「ウゥッ!! グアアアアアアッッ!!」
強風に煽られ、崩れ落ちたエジプンガンは絶叫を上げる。空では羽毛が飛び散っていた。

101十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/16(月) 21:12:05 ID:zwnzUGto0
>>100の続きです……"エジプンガン"なんてフレンズはいませんよね……誤植がひどくてすいませんでした、意識が朦朧とした状態で書くべきではなかったです、失礼しました。

うつ伏せで悶え苦しむエジプトガンを一瞥したミセリアは
宙をひらひらと舞う羽毛を血走った片目で心ここあらずといった風貌で見つめていた。
ミセリアの右目は、蹴りでつけられた裂傷と今もなお流れ続ける白い血が惨状を物語っている、
とうに光は半分へと絶たれていた。

エジプトガンと一番距離の近かったマーブルキャットは
咄嗟にエジプトガンへ駆け寄り、抱き抱えて引きずり起こした。
「しっ! しっかりして、エジプトガンッ!! ……あっ!?」

マーブルキャットの目に映るは赤い点々、そして鼻にかかる独特の匂い。
うめくエジプトガンの頬には数々の血痕が残されていた。

102名も無きフレンズ:2020/03/18(水) 14:31:32 ID:bxHGbTpQ0
>>101の続き

「あ、あ、たっ、大変……にっ、逃げなくちゃ、は、早く、早く!」
エジプトガンの怪我の具合にショックを受けたマーブルキャットは半ばパニックに陥るもなんとかエジプトガンを自身の肩に寄りかからせ、どうにか担ぎ上げると、大慌てで皆の元まで連れて行った。

「翼が……」
「どっ、どうしようー!」
ボブキャットとジャングルキャットは、傷の状態に絶句する。

「よくもやりやがたっなッ!」
アンジーは今もなお虚に立ち尽くすミセリアへと怒りをぶつけた。
しかし、その行動に身の危険を感じたのか
ミセリアは自我を取り戻したかのように叫び、無我夢中の有様で宙を切った。
「ゔわあああああああーーーッ!!」

「危ないッ! みんな、急いでここから逃げるのよ!」
ボブキャットはマーブルキャットと共にエジプトガンを担ぎ上げ、走り出すも
周囲には衝撃波の集中発生が起こった。
ぶつかりあった衝撃波同士が空気の流れを大きく乱し
大木はぶちぶちと嫌な音をたて、幹が真っ二つになったかと思えば
バラバラに裂けていき、根すらも地面ごと吹き飛ばされた。

ほんの数秒前まで自分たちのいた場所が一気に蹂躙されるのを見てしまったアンジーは冷や汗を吹き出し、マーブルキャットとジャングルキャットが悲鳴をあげた。

そんな中、ボブキャットたちの前方から誰かが駆け寄ってきた。
どうやら、側から見た状況の危険性を理解できていないらしい。

「みんなー! ジョフを置いていくなんてひどいでちよ!」

背丈の小さい、むくれた顔のフレンズは開口一番に不満を漏らした。

「ジョフロイネコ! あなたもすぐにここから離れるのよ! ついてきて!」
「ジョフ! 急いで逃げるぞ!」
「ジョフさん! 走って!」
「早く! ジョフ!」

ボブキャットたちは口々にジョフロイネコ、通称"ジョフ"に退避だと訴えるがジョフロイネコはぽかんとした顔で首を傾げた。

「ん? そんなに慌ててどうしたんでちか?」

その時、後方より一際大きな衝撃波が迫り来るのを全員が感じ取った。

アンジーとジャングルキャットは左へ飛び、エジプトガンを担いだボブキャットとマーブルキャットは右に跳んだ。
ようやく身の危険に気づいたジョフロイネコも衝撃波を避けようとし跳躍の態勢を構えるが
「あっ!?」焦ったせいか足をもつれさせ、転倒してしまった。
今度の衝撃波は地面をえぐりながら展開しているため、たとえ伏せたとしてもあの位置では巻き込まれてしまうだろう。
「「ジョフ!!」」
ボブキャットとアンジーの二人は血相を変えて、ジョフロイネコの元へと救援に回るが、もう間に合わない、二人の位置とジョフロイネコとでは距離が離れすぎている。

「やあああああああッ!!」ジョフロイネコは恐怖を叫ぶが衝撃波は止まらない。

ジャングルキャットとマーブルキャットの二人はこれから起こるであろう恐ろしい光景を見たくないがため、目を瞑った。

「任セロッ!」

その風変わりだが頼もしさを含んだ声は、うすら目で意識を失いかけていたエジプトガンの耳にもハッキリと聞こえた。

何者かが高速で現れ、ジョフロイネコの前に立ち塞がり、衝撃波とぶつかりあう。
バチバチと光の輝きが宙に弾け散り、衝撃波がかき消されていった。

ジョフロイネコが歓声をあげる。
「助かったでち! スエールテ!」
ボブキャットも呼びかける。
「ありがとう、スエールテ、きてくれたのね!」

「皆、遅レテスマン、怪我ハナイカ?」

アンジーは首を振り、状況を伝えた。
「いや、私たちは無事だが、マーブルキャットの隣にいるフレンズ、エジプトガンが重症なんだ」
マーブルキャットはエジプトガンを抱えて、涙目で駆け寄る。
「急いで傷の手当てをしないと、このままじゃ……」

「……ヒドイコトヲ……許セン、セルリアンノ仕業カ? ナラバ直チニ殲滅スル」

「セルリアンかどうかはわかんないけど、やったのはあいつだよ」
ジャングルキャットは徹底的に破壊し尽くされた森の跡地に立つ、ミセリアを指差した。

「ソウカ……アイツガヤッタノカ、フレンズヲ傷ツケルダケデナク
 森ヲコンナニ荒ラストハ……皆ハ先ニ研究所ヘ迎エ……任セロ! 外敵ハ絶対ニ倒ス!」

「アンドロイド闘士、スエールテ、役目ヲ実行、目的……危険ノ排除!」

103十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/19(木) 02:11:47 ID:RxSOpHCo0
>>102の続きです……(ナハハ! 笑えるほど文章がうまくならないZ!)

スエールテは眼に真っ赤な光を灯すと、全身を白熱させてもうもうと体から煙を噴出した。
周囲に巻き上がった蒸気がスエールテの全身をまとわりつくように包み込む。

スエールテの存在に気がついたミセリアは形相を険しくし、苦悶を堪えて
両腕の掌を左右から打ち付け、これまでで一番破壊力のある衝撃波を放った。
大気の歪みが強烈に震えて凄まじい風圧を起こし、広範囲を粉砕していく。

だが、迫る脅威にスエールテは微動だにせず、至って涼しい顔で衝撃波に飲み込まれた。
すると、漂っていた霧は瞬時にして光の膜を描き、激しい火花の壁を作り出す。

「無駄ナ抵抗ヲヨセ、ソノ程度デハコノ電磁バリアハ破レヌ……大人シク諦メロ」
スエールテは鉄壁防御の電磁空間の中から、抑揚のない声で降参するように諭した。

しかし、それでもミセリアは衝撃波を繰り返し打ち続けた。
その間にも目から溢れる白い血はとめどなく足元へと落ちていく。

そして、遂に力を使い果たしたミセリアはぐらりと膝を折り、地に崩れ落ちた。
「……ううっ、もうだめ……いたい……」

「次ハ俺ノ番ダ、犯シタ罪ノ報イヲソノ身デ受ケロ」
バリアを張り巡らし、衝撃波をものともせずに前進してきたスエールテは
息も絶え絶えなミセリアにたいして、赤熱し高温を帯びた拳をぐいと構えた。

「パパアアアアアッ!!助けてェーーーッ!! 」
だがその時、ミセリアの慟哭と共に地中から次々とセルリアンが湧き上がる。

104十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/19(木) 07:54:32 ID:pPrDiUTw0
>>103の続きと悲しみ(まさかリレーSSスレッドがこんなことになるやだなんて思いもしていませんでした、これでは完全に私の独占場じゃないか、もう私は荒らしだよ、体中に風邪を集めて、巻き起こせ、荒らし、荒らし、ですよ)



もし、戦い慣れしていないフレンズならば不可解な現象に慄くところだが
アンドロイドのスエールテは躊躇いも動揺を起こさない。

ミセリアを庇おうとしたのか、狭間へ割り込んできたセルリアンたちの頭上へ
スエールテは真っ赤に燃えた高熱拳を順に叩き込んだ。
ぐちゃりと耳障りな音がし、セルリアンはたちまちひしゃげてしまう。
地中より這い上がり数を増していくセルリアンは、反撃行動に移り触手を伸ばしてスエールテを包囲するも電磁バリアに阻まれる。
襲撃目標に近づけないセルリアンたちは、バリアの外側で右往左往していたが
スエールテは電磁空間内から腕を突き出し、セルリアンの核をぶち抜き駆除していく。

スエールテがセルリアンの殲滅に手間取っている間
ミセリアはその隙に逃げ果せるべく、瀕死の体で這いつくばり、洞窟へと転げ落ちた。

スエールテは最後の個体を両手で挟み込んで握り潰し、崩壊を確認すると、洞窟内を覗き込む。

洞窟内は当然だが薄暗く、無音で動く物は見当たらなかった。
念のためフレンズが中にいないかを調べるため、目のサーチ機能を使用したが
こちらにも気にかかる反応は一切なかった。

スエールテは策を講じるため、頭部に携えた連絡機を作動させた。

「……コチラ、スエールテヨリシーラ博士ヘ、応答願ウ」
すぐに返事がきた。
「ああ、スエールテ君、状況は君の眼を通して把握しているよ、ぶちかましてOK」
スエールテは秘密兵器の実戦投入のお許しをいただくと、右手首を高速回転させた。
「了解、放射熱線ノ使用許可ヲ承認……5.4.3.2.1.FIRE!!」
スエールテの手首は回転運動による摩擦熱の作用で超高温に達し
まもなく5本の指の先から、夕焼けより濃い色をした熱線が洞窟に放射される。
小さな洞窟は燃え広がる炎に炙られ、岩壁や泥砂の位置が鮮明になり
じめじめとしていた空気は熱をはらみ、からからに乾燥していく。
「焼却終了……以前、対象ハ生死不明、痕跡ヲ捜査スルカ?」
スエールテは炎を止め、連絡機に手を当てた。
「うーん、そうしたいのはやまやまなんだけど……君もとうに気がついているはずだろ」
「背後ノ見知ラヌフレンズノ一団カ」
腰を下ろしたスエールテの後ろでは、ヤブツカツクリたちから緊急事態を知らされ
現場へとようやく駆けつけてきたバビルサたちがいた。
「そうだよ、無視はできないから、君の案内でこちらへ連れてきてくれないか」
「了解ダ、事情ヲ伝エ次第ニ連レテ行ク」
「頼んだよ」
スエールテは連絡機のスイッチを切り替えると、右手首を捻り、踵を返した。
スエールテの力を目に焼き付けたバビルサは、胸の内の恐怖を振り払い、問いかける。
「君はアンドロイドなのかい?」
「俺ハアンドロイドノスエールテダ」
スエールテは質問を簡潔に返答し、自分の姿に怯えるフレンズを目にした。
「…………今日ハヤケニ珍妙ナコトバカリ起コル」
スエールテは、ともえをじっと見つめて、肩をすくめた。
「エ、エジプトガンさんはどこにいるんだッ!」
「喧嘩腰はやめてくださーい!」
「まあまあ、落ち着いて!」
オオムジアマツバメは、今にもエナガとキゴシツリスドリの制止を越えて
スエールテに食ってかかろうとしていた。
「エジプトガン……ソレナラ大怪我ヲシテイタノデ、俺ノ友達ノフレンズガ治療ノタメ研究所ヘ運ンデ行ッタ」
「!?!?!?!?!?」
「…………マジかよ」
オオムジアマツバメとヤブツカツクリは信じられないと言いたげな顔で動揺した。
「今カラ、研究所ヘ案内シヨウ、俺ニツイテコイ」
スエールテは行き先を示すと早歩きでその場から移動し始めた。

105名も無きフレンズ:2020/03/20(金) 04:36:44 ID:Lh5ypUYw0
>>104の続き

「あ、ごめん、ちょっとだけ待っててくれないか」
バビルサはスエールテに一声かけると、白衣のポケットからガーゼを取り出し
洞窟入り口あたりの岩壁から滴り落ちていた白い液を拭い、直接ではなく手で仰いで臭いを嗅いだ。
「ッ!?…………これは、偶然……なのか?」
「バビルサさーんッ! 早く行きましょうよ!」
「……わかった、待たせてごめん、行こうか」
エジプトガンを心配するあまり、いてもたってもいられない様子のオオムジアマツバメにせかされたバビルサは「考えすぎか……」と呟き、皆の待つキャンピングカーに乗り込んだ。
バビルサはともえとイエイヌをチラ見し、硬い表情で癖っ毛の目立った自身の頭を数回かき、スエールテの後から車を走らせた。

106名も無きフレンズ:2020/03/20(金) 09:23:01 ID:cfm/fZ020
>>105

バビルサたちは、車以上の速さで先頭を走るスエールテに従い
15分ほど後を追い続け、研究所までの一本道に入り込んだ。

ここまでの道のりにて、スエールテはなぜか地図にはない道を進んでいたが
案内自体は迅速かつ正確にして丁寧なもので
なるべく車でも難なく通り抜けられる道を選んでいた。

(これには理由があるはず……たとえば、普段使う通り道には見せたくないものがあるとか)

バビルサの予想通り、目を凝らしてみれば
登り坂となった道のところどころには、真新しき血痕が染み入っていた。

(やはりそうか……血痕の多さからして傷は相当ひどそうだ、皆が後方で大人しく待機してくれて良かった、パニックになりかねない……エジプトガン……頼むから五体満足でいてくれよ)

バビルサはエジプトガンの無事を願いつつ、スエールテの思惑を無駄にしないため、研究所と呼ばれた施設の赤錆びた門をくぐり、スピードを落とすと、車を無造作なフリして、鮮明な血溜まりが残されていた路傍の上に停めた。

(すぐに真実は伝わるだろうが……それでも皆の不安は煽りたくない)

車からいの一番に降りたバビルサはスエールテにたいして、頭を下げた。
「スエールテ君、ここまでの道案内をありがとう……心ある配慮にも感謝する」
前者の言葉は普通の声量だが、後者はスエールテに近寄り小声で礼を述べる。
「イヤ、別ニ褒メラレルコトデハナイ、君ノ判断ノ方コソ優レテイタ……シーラ博士ヘ、スエールテ只今帰還、及ビ、指令通リオ客サンヲ連レテキタ」
スエールテはわずかに口角をあげたが、神妙な顔つきにもどって連絡機をいじくり、来客の到着を知らせた。

107名も無きフレンズ:2020/03/20(金) 11:07:16 ID:cfm/fZ020
>>106の続きです。

研究所はアードマン大聖堂と比べて小さな屋敷で、古ぼけた扉には「ワーナーズ・ハウス」とこれまた劣化して朽ちかけたプレートにその名が記されていた。
「やあ、待っていたよ」
扉がばたんと開き、バビルサ同様に白衣姿で眼鏡をかけたフレンズが忙しさを浮かべた顔で一同を出迎えた。
「はじめまして、シーラよ……きみはバビルサ君で間違いないよね?」
「なぜ、私の名前を?」
「少し前にきみの友達と出会って話をね、君と私は雰囲気が似ていると聞いていたんだ、そういうこと」
「なるほど、タチコマたちの誰かだな……ともかく、突然押し掛けたりして礼儀がなくてすまないが、私の仲間のエジプトガンがここで世話になっていると、君の友達から伺ったんだ、それで……その、怪我の様子は……」
「うーん……意識を取り戻したし、出血も治まったから、このまま安静にしていれば大丈夫ね、少しくらいなら君たちと会話もできそう」
「よ、良かったよーッ!」
会話する二人の後ろで、オオムジアマツバメは安堵したのか顔をほころばせた。
ともえやエナガたちもホッと息をつく。
「……今から会わせてあげる……けど、心の準備はしておいて」
だが、シーラは表情を曇らせ、厳しい顔で皆に注意を促した。再び、空気が重くなる。

研究所の狭い廊下をぞろぞろとひしめきあうフレンズは
近くの者と互いに顔を見合わせては、不安を物語っていた。
バビルサは皆の中で一番暗い表情をしていたイエイヌのそばに並んで静かに話しかける。
「イエイヌ君……きみだけに配慮ができなくて申し訳なかった、ごめん」
「……いいえ、バビルサさんは悪くないです、私は大丈夫ですから」
イエイヌは口では平静さを装っていたが、表情は変わらず苦しげであった。

イエイヌは知っていた、目では見えなくてもわかってしまうのだ。
車中からでも感じ取れる、道で度々あった夥しい痕跡があったことを
シーラの手からも消毒液混じりに微かにしていた、大嫌いな血の匂いを

過去の忌まわしき出来事、忘れられないあの日のことを思い出してしまう。

ともえはイエイヌの手をそっと掴んだ
イエイヌは多少だが表情を和らげてその手を握り返す。

シーラは一足先に病室に入り、しばらくしてから皆に手招きをした。

「「「「「「ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」」」」」
部屋になだれ込んだ全員は、エジプトガンの姿を一目見るなり絶句した。
「皆、心配かけてすまなかった……」
ともえたちはエジプトガンの詫びが全く頭に入ってこなかった。

血染めの包帯越しでもわかる、正面からみて左右非対称な姿。

エジプトガンは左翼を失っていた。

108十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/20(金) 13:46:17 ID:cfm/fZ020
>>107の続きです。(コテハンとトリップ、なくてもいい気がしてきました)

憧れの人の痛ましい姿を目の当たりにして
雷に打たれたかごとく衝撃を受け、言葉を失っていたオオムジアマツバメは
やがて、火がついたようにおいおいと号泣し出した。

「ングウウウッ! アアアアアアアアアアアーーーーッッッ!!」
「オオムジアマツバメ、落ち着け、大丈夫だ……」
「アウウウウウッ!!エグッ、ウッウッ! ヴッヴエエエエーーーッッ!!」
オオムジアマツバメは人目を忘却したのか、エジプトガンのもとへ一目散に駆け寄り、胸元へとしがみつき、わあわあ泣きはらした。
「……まだ戦うことはできる」
「アアアアアアッ! ヤダヨオオオオオッッッ!! ヴワアアーーーッ!!」
エジプトガンは咽び泣くオオムジアマツバメを静かに抱きしめた。

エナガやキゴシツリスドリは茫然と立ち尽くすばかりであったが
オオムジアマツバメの悲壮な叫びに同調して、涙をポロポロとこぼし
感情のままに声を上げていった。
「ううっ、こんなことって……ああ……あああああッ!」
「うわああああんッ! ひどすぎるよおおおおーーーッ!!」

エジプトガンはベッドからよろよろと立ち上がり、両手を左右に大きく広げ
オオムジアマツバメもろともエナガとキゴシツリスドリを抱き寄せると
胸を大きく震わし、自身もおぼつかない声ですすり泣いた。
「……皆、ごめん」

ともえたちは口をつぐみ、こぞって目を擦り、悲しみへと暮れる最中。
ヤブツカツクリが足を踏み鳴らして、エジプトガンに啖呵をきる。
「エジプトガン、お前……それじゃあもう飛べねぇじゃねぇかッ!」
その言葉でオオムジアマツバメたちの泣き声が一段と大きくなる。
「誰にやられたんだッ! 言えッ! 俺がそいつを同じ目に合わせてやるッ!!」
ヤブツカツクリは泣きながらも怒りで肩を震わせ、唇を噛みしめた。

「敵ハ"サイボーグ"ダ」
「サイボーグ?……それがなんなのかを詳しく教えてくれないか」
スエールテが唐突に口にした聞き慣れない言葉に、バビルサは説明を要求した。

「私が説明するわ、肉体に機械を組み込むことで運動能力を補助しているヒトのことをサイボーグと呼ぶのよ」

スエールテに代わって、サイボーグについて話すシーラ。
涙にまみれていた皆の表情がさらに豹変する。
特にバビルサ、イエイヌ、そして、ともえは動きを止めた。

「そうね、詳しい話は別の部屋でしましょう、今すぐサイボーグのことを知りたかったら私についてきて……強制はしない、この部屋に残っても構わない、でも、エジプトガン、あなたはベッドに戻って大人しく寝ていなさい」



別室にて、スエールテは巨大な画面のついた機械のケーブルを接続し
シーラとバビルサは操作板の調整を施していた。
「手伝ってくれてありがとう、バビルサ君……状況は複雑だけど、きみと会えたことは喜ばしいよ」
「シーラ、私も同感よ、あなたとは趣味が合いそうで嬉しいわ」
「……二人トモ、作業遅レテル、手ヲ動カセ」

ともえたちは、またも見知らぬフレンズと出会い、会話を交わしていた。
「あら、あなたたちはエジプトガンが話していたお友達ね、名前はたしか」
「こんにちは、あたしはともえだよ」
「はじめまして、わたしはイエイヌです」
「はじめまして、こんにちは、私はボブキャット、それから、この子たちは私の猫友達、皆、順番に自己紹介を」
「ジョフはジョフロイネコのジョフでち! 立派な大人なんでちよ!」
「アジアンゴールデンキャット、アンジーって呼んで」
「私はマーブルキャット、またお友達が増えて嬉しいの」
「ジャングルキャットだよ、よろしくね」
「ボクっちはヒョウモンガメ、可愛い子ばっかりだね、ナメラ」
「あたしはヒョウモンナメラ、ガメとは長年のつきあいにして、魅力のある子をプロデュースしていく同志よ……うん、みたところ、大人っぽさと無邪気さが際立ったチームね、イカしているわ」
「ムフーッ! ジョフは大人なんだから当然でち」
「お前たちがエジプトガンを助けてくれたんだな、今この場にいないオオムジアマツバメたちに代わって礼を言う、ありがとうな」
「あなたはヤブツカツクリね、エジプトガンからは頼もしい子と聞いているわよ」
「!……そ、そうか」
「オ前タチ、準備ガ整ッタ、今スグ画面前方ニ集合シテクレ」
スエールテの呼びかけで、ともえたちは会話をやめ、電源の入ったモニターを見つめた。

109十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/20(金) 16:52:39 ID:cfm/fZ020
>>108の続き(設定作りは楽しい、文章書きも楽しい、出来はひどい、憎い、悲しい、悔しい)

シーラは映像を表示させる前にともえたちへ警告をする。
「先に伝えておくけど、今から画面に映すのはスエールテとサイボーグが戦った際に記録したものだ、ちょっとどころじゃなくて、かなりショッキングな映像といえる……暴力や血が苦手な子はこちらの閉鎖された防音部屋の中で待機することをお勧めする、映像が終わったら、敵の特徴と対処だけを教えてあげるから、無理な視聴ははしないように」

「イエイヌちゃん、あたしと一緒にあの部屋に行こう」
ともえは心配してイエイヌに退避を促すも、イエイヌは首を横に振った。
「いえ……わたしなら大丈夫です、敵の姿はこの目でしっかりとみます……」
「わかったよ……でも、嫌になったら、迷わずあたしに教えてね」
「はい、ありがとうございます」

シーラが映像記録の再生ボタンを押すと、画面には
得体の知れない力で森の木や大地を破壊していくサイボーグが現れた。
体格はともえやイエイヌと同程度
星のない夜空のような真っ黒い体に毒々しい光を放つ紫の瞳
だが、片目には大きな傷があり、そこから白い血をどろどろと流していた。

バビルサは「……うへー、サイボーグの血だったのか……あげる」としかめっ面でポケットに入れっぱなしにしていた血の染みたガーゼを取り出し、シーラへ渡して譲渡並びに処分を目論んだが、シーラは「いや、いらない、サンプルならスエールテがもっと状態が良いもの採取してきた」と断った。
バビルサはその辺に捨てるわけにもいかないので、仕方なくまたポケットにガーゼを突っ込んだ。

暴れまわるサイボーグは傷の痛みに苦しんでいるのか、呂律の回らない叫びを発している。
イエイヌは凄惨な光景に耐えられなくなり、耳を前方に倒して、がくがくと震えだした。
すかさず、ともえはイエイヌの肩に手を回し、優しくさすった。
ヤブツカツクリは両手で握り拳をつくり「やっぱり、あの時のあいつだったのか」と怒りをあらわにした。

シーラは皆の様子を見て、映像を止めにし、モニターの電源を切った。

「……動画はここまでにして、エジプトガンやボブキャットたちの証言とスエールテの分析結果を報告しよう。まず、こいつは悪のサイボーグとでも呼ぶべきだな。
自身の体から衝撃波を空中に放つことで攻撃を行い、同時に敵の攻撃を防ぐ。
衝撃波には数種類のパターンが存在しており、対象を弾き飛ばすものや切断するもの
さらには、跡形もなく粉々にするものが確認できる……
いずれも危険極まりない力だ。おまけにセルリアンを呼び出すことも可能ときた。
それと、あの目の傷はエジプトガンがつけたとのこと」

「エジプトガン、すげぇな……あんな奴を相手にしていたなんて」
ヤブツカツクリがたまらず驚嘆を漏らす。

「エジプトガン曰く、当初、悪のサイボーグと対峙した際には
1対1では勝ち目はないとみたが、自意識過剰で注意散漫であるため
その隙を突くことさえ出来れば勝てると思ったとのこと。
そこへ、ボブキャットたち4人が騒ぎを耳にして、エジプトガンと共に
悪のサイボーグに応戦、ボブキャットたちは空気の振動を体毛で感知することで
衝撃波を避けて、動揺を誘った。その隙にエジプトガンが蹴りでサイボーグの
目を著しく損傷させた模様……ボブキャット、ここまでに間違いはないか?」

「間違いないわ、付け加えるなら私たちは最初何も知らなくて、とりあえずでサイボーグを取り押さえるつもりだったの、だから、エジプトガンが容赦なく蹴り飛ばしたのには驚いたわ」
「それには理由があるんだ」
ボブキャットの報告に納得のいく説明をしようとバビルサが口を開くが
シーラはその必要はないと遮った。
「いや、我々はすでにエジプトガンから理由を教えてもらったよ、君たちがここにきた目的をな……邪神に悪魔、にわかには信じがたい、だがこうしておそるべき力を持ったサイボーグが現れ、自ら邪神との関係を思わせる発言をしていたことをエジプトガンが証言している……
とにかく、今は信じた方が納得がいくと判断した。
あとは映像の通りだ、スエールテに負けたサイボーグはどさくさに紛れて、姿を現した洞窟へと逃げ込み行方をくらませた。残骸が確認できないことから、おそらく奴は生きている。
ここからが大事だ、よく覚えておいて欲しい、対処法だが、サイボーグは重大な損傷を負わされたことで油断をなくし、なりふり構わない無差別攻撃を仕掛けてくるはずだ。
だから、次に遭遇した際はスエールテに任せて、絶対に戦うな、すぐに逃げろ。
威力の強い衝撃波をくらえばフレンズの体ではひとたまりもない。
残念ながら、スエールテだけが唯一の対抗馬だ、いい、戦いはしちゃだめ、身を守ることに徹して
それと、ジョフ、大人ならもう少し冷静に周囲を見てから動くように、以上」

110十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/20(金) 16:58:32 ID:cfm/fZ020
>>109のスズキ、じゃなくて続きだよ!

「ジョフは反省しているでち!」
ジョフはぷりぷりと怒り、ますます大人からかけ離れていく。
その背伸びした振る舞いに心を揺さぶられたともえは「ジョフちゃん、抱かせて」と
半ば暴走気味に動き出すが、幾分か落ち着きを取り戻したイエイヌに
「ダメですってば」と腕を掴まれ敢なく今回は断念した。

イエイヌが話題を切り替えようと、ボブキャットへ気がかりにしていた疑問を尋ねる。
「そ、そういえばボブキャットさんたちは衝撃波を体毛で感知して避けたとシーラさんは仰っていましたね、それって練習すればわたしたちにもできますか?」
「多分できないと思うわ、練習とかではなく、私たち猫が生まれ持った特技みたいなものなの」
「猫のヒゲは空気の流れを感じとることが出来る、だから空気を伝わる振動、衝撃波に気づくことができたということですか?」
「そうよ! 正解! ともえ、あなたよく知っていたわね、偉いわ、すごく賢いのね」
ともえの指摘にボブキャットたちは体毛を逆立てて関心を示した。
「他にも猫のヒゲは、距離を測ったり、湿度を感じたりができるんだ、あと興味があるときはヒゲが前方に向く、つまり、今の私たちはともえに興味津々なわけ」
アンジーが得意げに猫の髭について語り出す。
「私たちはね、フレンズ化した際に全身にその力を宿したみたいなの」
続いてマーブルキャットが説明に補足をする。
「だから、私たちは衝撃波の方向や範囲が手にとるようにわかったんだ」
ジャングルキャットはサイボーグとの戦いから未だ興奮が冷めないようだ。
「ジョフは他にもすごいことができるでち! どんなに辛いものだってへっちゃらでち」
「嘘こけ、キャットファイブ一の甘えん坊なおチビがなにをいう」
ジョフロイネコの口からでまかせらしき発言にアンジーが呆れ顔でピシャリと言う。
「うううーッ! ジョフはもうおチビではないんでち! 大人なんでちよ!」
「まあまあ……それにしてもすごいんだね、君たちは」

たちまち押し問答が起きそうな雰囲気を緩和するべく、ガメとナメラが会話に加わった。
「可愛いだけじゃなく、誇れる特技もあるんだね、恐れいるよ……それと比べて、悪のサイボーグ相手じゃ、ボクっちの甲羅じゃ頼りないね……ハァ……足手まといだよ」
「あたしの鞭も役に立ちそうにないわね……自分の無力さに腹が立つわ」
ヒョウモンコンビのガメとナメラは自分たちはお荷物だと自虐した。
「そんなことないよッ! ガメちゃんもナメラちゃんも強いんだから自信を持って!」
ともえが二人に喝を入れる。
「あの時、セルリアンをカッコよくやっつけてくれたこと、絵にもしてあるんだよ、ほら」ともえは鞄からスケッチブックを取り出し、ページをめくると
教会を背景に武器を構えるガメとナメラの絵を指差した。
「まあ! 勇ましいわ、それにこの色使い……いい感じね、私は素敵な絵だと思うわ」
「へー! ガメとナメラ、ともえの言う通りカッコいいよ」
「うん!構図も見事なの、ヒーローみたいだね」
「こんな戦いがあったんだね、二人の必殺技みてみたいなー」
ボブキャットたちは口々に、ガメやナメラを褒めちぎり、又、ともえの絵のうまさも讃えた。
「ありがとう、ともえ、君に絵を書いてもらえてボクっちは感激だよ!」
「あたしもすっごく嬉しいわ、大切な宝物になるわ」
ガメとナメラはともえに感謝し、たちどころに元気になった。
「ジョフたちだって5人揃ってのスペシャルな大技があるでち!!」
ジョフロイネコは自分たちも負けじと声高に口走った。
「でも、あれは未完成だし、だいだいジョフがいいとこ取りしようと好きかってやるせいで連携取れないから全然使えないんだよなぁ」
アンジーは腕を組み、不満げな顔で痛烈にジョフロイネコを批判した。
「まっ! またジョフのせいでちか! もう怒ったでちよーーーッ!!」
「怒りたいのはこっちだよ! 今日だってヘマやらかすし! 心配ばかりさせて」
またも一緒即発の空気に逆戻りしてしまう、あわや大喧嘩か、とそこへ
「ケンカはよせ」シーラが仲裁に入った。
「さあ、キャットファイブの諸君、掃除の時間だ、各自持ち場へ急行、駆け足」
「あ、そうだったわね、ごめんなさい、皆、急で悪いけど、私たちは用事があるからまた後でお話ししましょうね」
「うん、頑張ってね、てか、私も手伝うよ」
「ありがとう、でもすぐ終わるから平気よ、ともえたちはゆっくり休んでてね……よーしッ! キャットファイブ出動! 手分けしてさっさと片付けるわよ」
「「「「おおおーーーッ!!」」」」
ボブキャットたちは5人は、脇目も振らずに部屋から駆け出しっていった。

111十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/20(金) 17:18:26 ID:cfm/fZ020
>>110の続きだ

「ともえ、どうして猫のヒゲについて知っていたんだい?」
シーラがともえに疑問を問いかける。
「えーとね、シスターたちから借りた本があって、そこに書いてあったんだ」
「……その本を見せてくれないか?」
「うん、いいよ、はい」
ともえは鞄から、動物図鑑と【ジャパリパークの記録日記①】を取り出した。
「!?…………なるほどなるほど、そうかそうか、ありがとう」
シーラは合点がいったとうなずいた。
「そう? あたしからもシーラちゃん一つ質問をいいかな?」
「いいよ、なにかな?」
「キャットファイブって、なに? 5人の猫ってこと?」
「そうだよ、ボブキャットをリーダーに行動するいわば猫の5人組のチーム名さ」

「シーラ博士、ソロソロ俺ハ休息ニ行クガイイカナ?」
「ああ、そうだね、お疲れ様でした」
「オ先ニ失礼スル」
スエールテも部屋から退出していく。

「さて、私たちも出ようか……よかったらここを案内するよ」
「それはありがたい話なんだが、それよりも先に君へ見て欲しいものがあるんだ」
シーラの申し出にバビルサが断りを入れ、頼みごとをする。
「うん? 別に構わないけど、見て欲しいものって何?」
「私の友達のアンドロイド、シャンスに会わせたいんだ」
「ついにきましたか、今日はドキドキがおさまりそうにないね……今は車の中だっけ?」
「ああ、そうだ、今は壊れて動かない……ここにくれば直す手掛かりがあると教えられたんだ」
「なにがあったのかはエジプトガンから全部聞いたよ、さあ、善は急げだ」

112十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/21(土) 00:17:13 ID:m/TXF.VI0
>>111の続き

バビルサの手により錠を解かれ、シャンスが陽の元にさらされる。
血色のないヒトそっくりな顔は、つぎはぎのパーツで形を保っていた。
「見事なもんだよ、ここまで直すのはさぞ大変だっただろう」
「そこそこ骨が折れたよ……でも、皆の手伝いのおかげでなんとかね
 それにシャンスとは約束がある、そのためなら」
シーラは工具箱を持ち出しながら、バビルサの努力の証を認めた。
バビルサははかない物憂げな目をして、シャンスの額をかすり傷だらけの手でなでた。

「こことここ、回路を二つやられている……
これらを新しいパーツと取り替えれば、再起動するはずだ」
「一つはリルル回路か……もう一つの回路はなんだ?」
シーラはバビルサと共に簡易な処置で塞がれていた胸部を開き
注意深く綿密に損傷箇所を確かめ、シャンスの完全修復に必要なパーツを断定した。
「マルル回路だね」
「マルル回路? 無知ですまん、リルル回路との違いはなんだ」
「あいにくだが、私も回路の詳細は君と同じく無知同然だよ
いまだにパーツの必要性と取り付け方しかわからない
時々、スエールテの中身を見て、彼から教示を受けているのさ
スエールテはこう言っていた、私たちの体で例えるなら
リルル回路の働きは息を吐くようなもので、マルル回路は息を吸うものなんだって」
「では、呼吸を司る器官、いやアンドロイドなら別の意味での機関なのか」
「本当のところはスエールテにもわからないらしい……
 うん、君にはこのことを話すことが許せそうだ」
シーラは工具箱の中から青い小箱を取り出した。
中を開けば、リルル回路とよく似たパーツが一つ、清潔な布に包まれていた。
「……これがマルル回路だ、見た通り一つしかない、大切なものなんだ」
「…………わかるよ、大変貴重なものだ」
「……私は万が一の際、スエールテに使おうと今までずっと厳重に保管しておいた」
「…………うん」
「……だから、きみがリルル回路を見つけた暁にはこれを譲渡しようと思う、それまでは……未使用で置いておきたい、力になれず申し訳ないが、これだけはわかってくれ」
「いいの、結局リルル回路がなければどうにもならないことは事実だし、シーラ、あなたが友達の安全を守りたいと思う願いは痛いほどにわかるよ」

113十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/21(土) 02:04:34 ID:m/TXF.VI0
>>112の続き

シーラがバビルサに条件付きでマルル回路を譲渡することを取り決め、約束を交わしている頃。
ともえたちはエジプトガンの見舞いにきていた。
「……ともえ、お前たちも敵を見たのか?」
皆が無言でうなずくと、エジプトガンは充血した赤い目で虚空を睨んだ。
「……はぁ、まさかと思って来てみれば予想通りだったわけだ」
先に病室へと戻っていたヤブツカツクリがエジプトガンの頭に巻かれた包帯をぶつくさ言いながら取り外し、新しい綺麗なものをしっかりと巻きつけていく。
「ありがとう……手間をかけてすまないな、ヤブツカツクリ」
エジプトガンは傷が痛むのか、自分を恥じているのか、節目がちで礼を口にする。
「別に……ふぅ、しっかし、こいつらときたらあんなに騒いだ挙句
 看病にはあたらず、揃ってこのざまとはな」
ヤブツカツクリは包帯を強めに固定すると、脇の椅子と小机に腰掛け、肘を立てた。

オオムジアマツバメ、エナガ、キゴシツリスドリの三人は泣き疲れてしまったのか
焦燥した顔つきで、もう一つのベッドに並んで眠りこけていた。

114十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/21(土) 09:34:00 ID:dIL7XO820
>>113の続き

「……ともえ、イエイヌ、拠点を出た日のことを覚えているか……
私はあの時、同じ失態は二度しないとお前たちに宣言したな」
「……うん」
「私は傲り高ぶっていたんだよ……もう自分が負けるわけないって……」
「エジプトガンちゃん」
「自分が情けない……皆には多大な迷惑をかけた、あまつさえこんな惨めに……」
エジプトガンは沈んだ顔つきで自身の不甲斐なさを責めた。
窓から差し込む光は夕焼けの始まりを告げ、空は徐々に赤く染まりつつあった。

「おい、エジプトガン……自責に駆られるのは構わないけどよ、オオムジアマツバメたちの前では絶対にうだうだ言うな……泣きたいなら今みたいな時にしろ」
ヤブツカツクリは唇を尖らせ、目線をエジプトガンに合わせて早口でまくしたてる。
「でないと悪影響だ、こいつらもつられていつまでも泣くだろうよ」
「……助言に従うよ、たしかにお前の言う通りだ、私はこれ以上皆に嫌な思いをさせたくない」
エジプトガンとヤブツカツクリは、オオムジアマツバメたちの横たわるベッドを見守り、3人の乱れた寝息には胸が締め付けられるような思いをしていた。
「あと、お前は皆に迷惑をかけたと言ったが、少なくとも俺は迷惑だなんて思っちゃいない……俺たちを身を挺して危険から逃してくれたことは、感謝してもしきれない……俺たちを助けてくれて本当にありがとう、エジプトガン」
「ヤブツカツクリ……」
「なぁ、もう片方の翼は動くか?」
「ああ、こっちは運良く無傷で済んだ、いつも通りに動かせる」
「そっか、ならさ……さっきは怒りに任せてああ言っちまったけどよ、怪我が回復したらもう一度空を飛ぼうぜ、お前がその気なら俺はなんだって手伝ってやるからさ……俺なりの恩返しとでも思ってくれ」
「ありがとう、ヤブツカツクリ……ウゥッ、ありがとう」
ヤブツカツクリはおもむろに立ち上がり、下を向いて頬をかき
「……じゃあ、俺は一旦散歩に行くぜ……また、あとでな」
ともえたちに小声で耳打ちをすると
「お前らももうちょいしたら気をきかせて、部屋から離れろよ……」
部屋からそそくさと出て行った。

だが、ヤブツカツクリは廊下に立つと、寂しそうな顔になり
誰にも聞こえないようにぽつりと呟いた。
「オオムジアマツバメ……俺は嫌だったけど、言ったからな……」

115名も無きフレンズ:2020/03/24(火) 02:02:56 ID:QgU6JsAk0
>>114の続きです

ともえたちは、ヤブツカツクリの気遣いにならい
事件前に皆で集めた果実やキノコを机へ山盛りに積み上げ
「また、あとで様子を見にくるね、お大事に」と部屋から立ち去ろうとしたが
扉の前で、休息を終えたのであろうスエールテと鉢合わせる。
スエールテは二冊の本と銀色の光沢をした一枚の巨大な櫛のようなものを両腕に抱えていた。
「オ前タチニコレヲ渡ソウ、受ケ取レ」
ともえは表紙にジャパリパーク記録日記②と④と書かれた本を受け取り
エジプトガンは珍妙な物体を突き出されて言葉がうまく出てこず、反応に困っていた。
「許可ナラバ、先ホドシーラ博士ヨリ頂戴シタ」
「……スエールテ、これはなんだ?」
「エジプトガン、ソレハ"鉄の翼"ダ……オ前ノ新シイ左翼トナル」
「……これをつければ、また空を飛べるのか?」
「ソウダ……取リ扱イ方法ハ怪我ガ完治シタノチニ教エヨウ」
「ありがとう、その時はよろしく頼む」


「トモエ、オ前ニハ是非トモ見テモライタイモノガアル、ツイテキテクレ」
スエールテは有無を言わせぬ態度でともえたちを薄暗い部屋へと案内した。
そこでは、さまざまな物品が棚や床へ所狭しと陳列してあり
天井では照明を遮るほどによくわからないなにかがぶら下がっていた。
「ココハ普段使ワナイモノヲ片付ケテオクタメノ倉庫ダ、大半ガシーラ博士ノ作ッタ発明品バカリダガ……過去ノ時代ノ遺物モ保管シテアル」

スエールテはガラスのケース内に置かれていた小さなロボットを取り出した。
「コイツハ、ラッキービーストトダ……昔ハコイツガタクサンイテナ、共ニ治安維持ヤ環境保全ニアタッテイタンダ」
「もう動かないの?」
「……限度ヲ超エテシマッタ、修理シタトシテモスグニ壊レテシマウ」
「……どうして、あたしに見せたかったの?」
「……コイツッテ、見タ通リ可愛イダロ、オ前ナラ気ニイルカト思ッタンダ」

116十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 03:59:17 ID:QgU6JsAk0
>>115の続きです

「ラッキービーストハ、俺ガ作ラレルヨリモズット早クニ製造サレテイタヨウダ、ソノ本ニ詳細ガ書イテアル」
ともえはスエールテにもらったジャパリパークの記録日記②を開くと
確かにたくさんのラッキービーストたちがベルトコンベアにずらりと並び
製造されている光景が写真として残されていた。

ともえは続けて記録日記④を開こうとしたが、思わぬ出来事が発生する。
叫声が廊下に響いた、驚いて何事かと様子を伺えば
ほうきを手にしたアンジーと雑巾を握りしめたジョフロイネコの二人が真っ赤にした顔を突き付けあい、ケンカをおっぱじめていた。

「お前は雑巾で窓を拭く係だろ!」
「でも、ジョフはほうきがけをやりたいんでち!」
「誰がどこを掃除するかは皆で決めたはずだ、今さら文句を言うな!」
「ちゃんと理由があるんでち!」
「なにをいう!雑巾掛けがやりたくないだけだろ!」
「ひっ、ひどいでち! んーッ! アンジーなんかこうでち!」
「うわっ! こんのおおおッ!」

ジョフロイネコは怒りを抑えられず、丸めた雑巾をアンジーに投げつけた。
アンジーは反射的にほうきをフルスイングして、雑巾をかっ飛ばす

「ブニャ!?……うええええっ、ばっちいのが口についたでちよおおおおおッ!!」
「……お前が自分勝手なわがままだからそうなるんだ!自業自得だ!」

見事なフォームで跳ね返された雑巾はストレートに宙を飛び、持ち主の唇を強引に奪った。

「そこまで! 二人ともケンカはやめなさい!」
「そっ、そうだよ〜、怒っちゃだめなの〜」
「あのー、その……ジョフ、大丈夫?」

騒ぎを知り、ボブキャットとマーブルキャット、ジャングルキャットが
モップやちりとり、水の入ったバケツを床に置き、仲裁に入るも時すでに遅し

「うわあああああんッ! どうせジョフは皆の嫌われ者なんでちよおおおおおッ!!」
ジョフロイネコはわあわあ泣きながら、表へと飛び出してしまった。
「ジョフちゃん!」「ジョフロイネコさんッ!」
ともえとイエイヌが後を追う。
「君たちは行かなくてもいいのかい?」
ボブキャットたちはガメからの問いかけに
「いいの、一人で落ち着く時間も必要よ、少し経ってから迎えに行くわ」と
いつものことだからねとでも言いたげな身振りをし、掃除の続きを始めた。

117十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 05:30:07 ID:QgU6JsAk0
>>116の続きです

ジョフロイネコはワーナーズ・ハウスの庭で寝転がり、ふてくされていた。
ともえがそばに近づき、猫撫で声で話しかける。
「ジョフちゃん、皆にごめんなさいして仲直りしよう、あたしも一緒にいくからさ」
「いやでち……どうせ、ジョフはのけものなんでち、このままひとりでいるでち」
「でも、ずっとひとりじゃ寂しいよね」
「…………ジョフは大人だから、ひとりでもちっとも寂しくなんか……ならないでち」
「ッ!? そんなのだめです!」
ともえの説得に耳を貸さないジョフロイネコの投げやりな言葉に
イエイヌは急に怖い顔をしてずいと前へ出た。

「知っていますか? 孤独の苦しみってのは耐え難いものなんですよ!」
「ひとりじゃ、楽しいことも嬉しいことも悲しいことにかわってしまいます!」
「ジョフロイネコさんなら、お友達と笑いあえる喜びを知っているはずです!」

イエイヌは普段からは考えられない必死の口ぶりでジョフロイネコに
自分はヒトの帰りを待ち続け、長い年月をひとりぼっちで過ごしていたことを語る

そして、イエイヌは誰にも話したことのない自分の過去を話した。

「昔、わたしには大切なお友達がいました、でも、つまらないことでケンカしてしまい
きまずくなったわたしは二人から離れしまいました」
「その時、わたしはどうしていいかわからずにボーッとしてところをセルリアンに襲われて……
シベリアンハスキーさんと柴犬さん、わたしを探しにきてくれた二人が……
わたしのせいでお友達は……」

そこまで話したイエイヌは、目を擦り、鼻を鳴らした。
「……ジョフさん、ごめんなさい、変な話をしちゃって……あなたに説教する資格なんてわたしにはありませんが、わたしはあなたに」
「わかったでち」
ジョフはスクッと立ち上がり、イエイヌの言葉を遮った。
「思い出したでち、ジョフもひとりでいた時があったでちから……」

「ジョフは雑巾掛けがやりたくなかったわけじゃないんでち……背が低くて届かない位置の窓拭きだけはアンジーに頼もうとしたんでち、でも、そんなこといったら、またおチビってからかわれるでち、それが嫌だったから、つい当番を替わるように言っちゃんたんでち……そんなことで意固地になるのも変な話でちよね」

「ジョフ! そうだったのか……すまなかった、私が悪かった」
物陰から様子を伺っていたアンジーは、ジョフの本心を知り
いてもたってもいられなくなり、頭を下げて、謝罪をした。
「お前の気持ちを考えてやれなくて、本当にごめん」
「ジョフもアンジーに雑巾を投げたりしてでち、ごめんなさいでち」

118十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 07:42:20 ID:QgU6JsAk0
>>117ノツヅキデス

地上に夜が訪れ、静けさが眠りを誘う頃。
常時暗い地の底はおぞましい呻き声と乱れ切った吐息でよどめいていた。

「パパ……ごめんなさい、せっかく治してくれたのに、やっぱり私もう……目が見えないみたい」
アンドロイド闘士に追い詰められて、命からがらダークのもとへと逃げ帰ったミセリアは
父であるダークの手で治療を施されていた。
ダークの不思議な霧の効果で傷の痛みを軽減したミセリアであったが、損傷の激しかった右眼を摘出される際には痛覚が限界に達し、気の狂うような地獄の苦しみを延々と味わった。

処置後、ミセリアは顔の傷痕を手で覆い、今度は屈辱に悶えていた。
目蓋や涙腺は残されたが、水晶体や網膜をなくした目は虚な穴を晒している。

「ううっ、あのフレンズだけは目の敵にしてやる……パパ、私は次になにをしたらいいの?」
ミセリアが闇に訴えかけると、地面がぐらぐらと揺れだした。
震源地と思わしき、闇の中で立ち尽くす影の足元から黒い水が湧き上がる。
黒い水は空中にとどまり、球形とした型を保ち、ミセリアの目の前で浮遊した。

「パパ? これはなに?」
「ダークが作った特製の義眼だ」
「えっ! だっ、だれなの!?」
ミセリアの疑問に答えたのは父ではなく、闇より姿を現した面識のない少女であった。
その少女の頭は赤、青、黄となんとも奇抜でド派手な色をし
端正な顔立ちを際立たせる白い瞳は微笑を漂わせていた。

「私様はディスティヒア、ダークの子でお前の妹だ」
ミセリアは、自分を嘲笑うかのような目線や尊大な口調ぶりから
性格が傲慢な子だな、と自身のことは棚に上げて内心そう思った。
「そうだったの、これからはよろしく、ディスティヒア」
「よしてくれ、私様は馴れ合いが嫌いだ」
ディスティヒアはミセリアの挨拶を何食わぬ顔で拒否した。
「ムッ……まあ、いいわ……パパ、ありがとう、大事に使うわね」
ミセリアは苛立ちをあらわにするも、それより先にと父への礼を述べ
闇に漂う黒い目玉を掴み取り、自分の欠けた体に埋め込んだ。
慣れない行為に不快感と痛みを覚えるミセリアだったが驚愕の声をあげる。

「ああっ!?……パパーッ! すごいッ!! 目がッ! 私、また目が見えるわーーーッ!!」

義眼は特製といわれるだけあり、凄まじい機能を兼ね備えていた。
模造された神経を持つ義眼は、たいした痛みも引き起こさずに肉と一体化し
ミセリアの目としての機能を開始し、視力を蘇らせたのだ。

「ありがとう! 私は心の底からパパを愛しているわ! 世界一大好きよ!」

子からの感謝を闇は黙って聞き入れ、暗黒からメロンを現した。

「うんッ! 任せて……フンッ!」

右眼を失ったいま、念力の加減は不安定になるはずだが
精神力を発揮したミセリアは前回よりも綺麗にメロンを切り分けた。
ミセリアはガッツポーズを決めるとまずは父にと、メロンを届け
続いてディスティヒアにも分け与えようとした。

「ディスティヒア、あなたも食べましょうよ」
「いらん、私様はしもべを作っている最中だ」
「……しもべ?」
「面倒なことをやらさせるしもべが必要だ」

会話が打ち切られ、気まずい雰囲気にのまれる邪神と悪魔たち。

「海だ」

用事を思いついたのか、ディスティヒアはそれだけ言い残し、地上へと向かっていった。

119十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 09:46:04 ID:QgU6JsAk0
>>118の続きです

ともえたちが悪のサイボーグの存在を知ってから、一週間が経った。
エジプトガンは驚異的な早さで回復していき、たとえ、飛行はできなくとも
残された右翼をはばたかせ、空中を軽やかに跳躍し間合いを詰め寄り、攻撃や回避に徹する
戦闘スタイル(ヒットアンドアウェイ戦法)に磨きをかけた。

そして、喜ばしいことに今後、左翼がまた生えてくる可能性があることを
傷痕を検査していたシーラ博士はエジプトガンや皆に伝えた。

「ほっ、ほっ、ほっ……本当なんですかーーーッ! やったーーーーーッ!!」
「オオムジアマツバメ、声がフクロウみたいになっとるよ、うちも嬉しいけど」
「わあー! 良かったですね! エジプトガンさん」
「皆、ありがとう……また翼で空を飛べるときには、皆でどこかへ遊びに行こう」
「!?……なななんと、はぅわーーーッ! 夢に見たエジプトガンさんとの
デートがついに現実に……生きてて良かったー!! 絶対ですよ!約束ですよ!」

オオムジアマツバメたちの歓声から離れた場所で
ヤブツカツクリとスエールテは聞き耳をたてつつ会話をしていた。

「……シシッ、どうやら俺やお前が手伝うまでもなかったみたいだな」
「機械ノ翼、ヤハリ俺ガツケナクテハイケナイノカ……」
「おいおい、あのかってぇやつって本来はお前のだったのかよ」
「ウム……シーラ博士ガ俺ヲ改造シタガッテイテナ、飛行機能ハ不必要ナノダガ」
「……それさ、俺がつけたら空を早く飛べるかな……いや、やっぱりいいや」

「ヤブツカツクリ、ちょっといいか」
「なんだよ、エジプトガン?」
「翼が治ったら、オオムジアマツバメたちとどこかへ遊びに行く約束をした
お前も一緒にこないか、来てくれたら嬉しい」
「……そりゃめでからなぁ……まあ、なんだ、その日が近くなったら教えてくれよ」
「わかった、ありがとう、楽しみにしている」

「……ナゼ、素直ニ参加スルト言ワナカッタンダ?」
「……恋敵の誘いにほいほいと従うほど、俺はやわじゃないぜ」
「……ヨクワカランガ、ナルホドナ」

その頃、ともえたちは外でボブキャットたち
ファイブキャットの連携必殺技の練習相手を務めていた。
「よーし、どっからでもかかっこーい」
ガメが甲羅を構えて、ボブキャットたちの攻撃に備える。
「鞭を使えないとは難儀ね」
「ナメラさん、これは練習ですから」
「怪我しないように気をつけようね……ボブキャットちゃんたち、始めていいよ」
ともえ、イエイヌ、ナメラの三人は連携の妨害役として、配置についた。

「皆、いくわよ!」
ボブキャットの掛け声に四人が続く。
「おう!」「わかったの」「うん!」「いくでち!」
ボブキャットは抱えていたボールを思いっきり、蹴り飛ばした。
「猫ダイナミックアタック! GO!」五人は一斉に前方へ走り出す。
空高く上昇したボール目掛けてアンジーは大きく跳躍した。
「マーブルキャット!」
アンジーは空中でボールを片手で弾き、マーブルキャットは両腕を構え
勢いよく落下してきたボールを受け止めると、その場を突っ切る。
「通さないよ!」
「ジャングルキャットちゃん! はい!」
進路に立ち塞がるともえにボールをとられないよう
マーブルキャットはジャングルキャットへボールを投げ渡す。
ジャングルキャットは素早く、頭突きでボールを再度、空へ飛ばした。
「いっけー! リーダー!」「やらせません!」
イエイヌが跳躍してボールに手を伸ばすもボブキャットのほうが速かった。
「うふふ、これならどうかしら?」
ボブキャットは落下地点で待ち受けるナメラを察知し、ボールを投げた。
「ジョフ! それっ!」
ジョフロイネコはボールを持ち、投げる姿勢をとった。
「おおっと、正面からかい?」
ガメはジョフロイネコの挙動を注視し攻撃への抵抗姿勢を身構える。
ジョフロイネコは振りかぶってボールを投げ、なかった。
「アンジー!」「なにィ! しまっ……」
アンジーはジョフロイネコの放ったボールを掴み、ガメの背中にぶち当てる
ことはなく、ポンとゆる〜く当てた。
「や、やられたよー」ガメは本気でこられた際を想像し冷や汗をいて、へたり込んだ。
「よっしゃ! 最高の働きよ、ジョフ!」
アンジーがジョフロイネコを抱きしめ、遅れてボブキャットたちも加わる。
「やったでち! 始めて最後までできたでち!」

「うひひ、猫ちゃんたちのいい匂い〜」「だっ! だめですよ! ともえさん!」
ともえはどさくさにまぎれて猫の集いにわが身を滑り込ませ
ほのかな温かさを堪能するもイエイヌに羽交い締めにされて、つまみ出された。
「イエイヌちゃんのいけずぅ〜、あっ、でもこれはこれで幸せ」
ともえはイエイヌのハグに体を任せて、とろけるのであった。

120十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 11:59:54 ID:QgU6JsAk0
>>119の続きです。

フレンズは幸せを共に感じ、笑い合う。

だがこの時、平穏を乱す危機がすぐそこまで迫っていたのだ!

晴れた青空をどこからともなく漂ってきた黒い雲が覆っていく。
雲の中では不気味に蠢く怪しい影の群れがワーナーズ森林地帯を見下していた。
そこに潜むなにかを、スエールテのセンサーが感知した。
シグナルはレッド、デンジャーをコールする。
「……!……敵襲ダ」
ボブキャットたちの毛並みも突然の天気の急変には反応を示し、風にそよいだ。
「変ねぇ、あのあたりの雲だけが真っ黒だなんて……」

ともえたちの胸騒ぎをビートアップさせる、青天の霹靂
土砂降りと雷がワーナーズ・ハウス周辺に轟々と降り注ぐ。
異常気象にたじろぎ、身動きできないともえたちのもとへ
危機を知らせにスエールテが高速移動で駆け寄る。
全身を白熱させて蒸気を噴き出している姿に、緊急事態ではないかと身構えるともえたち。

「皆、家ノ中ニ避難シロ! 早ク! セルリアンデハナイ敵ガキタ!」
「そっ、それって! 悪のサイボーグが現れたってこと!」
「ソウダ! 俺ハ一体ニバリアヲ張リオ前タチヲ守ル、急ゲ! 来ルゾ!」

その瞬間、電撃が攻撃する意思を持つかのようにともえたちを取り囲み、一気に円を狭めた。
「きゃあああああッ!!」「うわあああッ!!」「ひえええええッ!」
ともえたちの悲鳴が電磁バリアの中で響く。
スエールテの無敵のバリアに阻まれて、行き場をなくした電流は、やがて地に放出された。

「アンドロイド闘士、いい性能だ」
電磁バリアを挟んで向こう側、見たことのないヒトが黒雲から姿を現した。
「貴様、データニハナイガ、新型ノ悪ノサイボーグカ」
「悪ではない、この世界では弱いもの、負けたものが悪だ」
「違ウ、優シサヤ思イヤリガナク、欲望ヲ満タスタメ心ヲ傷ツケルモノガ悪ダ!」
「思想は個人の勝手だ、だが私様には通用しない……回路をいただく」

平行線の押し問答を続けながら、スエールテの右手首が高熱を帯び始める。

「……以前、貴様ノ仲間ト交戦シタ際、皆ト約束ヲシタ……絶対ニ倒ストナ!!」

腕に取り付けたカウントダウンタイマーが予告を告げる。

「ならば、約束を撤回すべきだ、私様は姉のミセリアと違う」
「俺ハ嘘ヲツケナイ……アンドロイド闘士ノスエールテダッ! クラエッ!!」

スエールテは周囲の安全を確認すると電磁バリアを解除し
間髪入れずにFIREの合図で放射熱線を悪のサイボーグに浴びせた。
陽炎を伴い、悪のサイボーグは炎に包まれ、爆発に飲み込まれた。

「……自己紹介が遅れた、私様はディスティヒア、父はダーク、悪のサイボーグ戦士だ!」

真っ赤な爆炎を受けた身で関わらず、火傷ひとつない悪魔の爽やかな笑みが恐怖を誘う。

「なんて奴なの」「こ、怖い」「ともえさん、私の後ろへ」「あたしだけ隠れてられないよ」

「みんなあああッ!! そこにいればスエールテの負担になるぞ、こっちへ早くくるんだ!」
「私たちではどうにもならない相手だ! せめて、余計な邪魔をするわけにはいかない!」
バビルサとシーラ博士の避難勧告にスエールテも同調して電磁バリアを再起動する。
「……今ノ内ニ行ケ! オ前タチヲ戦イニハ巻キ込ミタクナイ!」
「うっ、うん」「スエールテ、頼んだわよ」「頑張ってでち」
ともえたちは一人残らず、ワーナーズ・ハウスに篭り
窓際で押し合いへし合いをして、スエールテの勝利を信じ、無事を願って見守った。

121十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 12:48:40 ID:QgU6JsAk0
>>120の続きです。

「電磁バリアはいいが炎はたいしたことがない、その武器は貧弱だ」
「ッ!?……スグニ取リ消セ、今ノ侮辱ヲ……」
「先入観を持つのは良くないが、君はアンドロイドの割に感情豊かだ」
「モウイイ、塵一ツ残サズ、焼キ尽クシテヤルゾオオオオオッ!!」
ディスティヒアの挑発にスエールテは全身を焦がして最高潮の怒りを見せつける。
「それだけ高性能ということか、ヒトと変わらない思考……だが、心など不必要だ」
「受ケテミヨ! 10倍火力ノ超放射熱線ヲッ! 50.49.48.47……」
「愚かにもご丁寧に必殺技を宣言するとは思わなかった……やはり、感情は妨げだ」
「1.FIREAAAAAAAAAA!!」
「わっ?」
ディスティヒアはわずかに動揺をみせたが
避けることも防御の構えもなく炎を超えし熱光線と化した光に包まれた。
赤き正義の火は怒りの動力に応え、白き光として悪を穿つ。
ディスティヒアは跡形もなく空にまぎれたのであろう
センサーは敵の消滅を知らせ、シグナルはイエローにかわる
そして、スエールテの右腕はあまりにも過剰な出力がもたらした代償に溶けていた。

「勝ッタ……俺ハ勝ッタ!」
ワーナーズ・ハウスもドッと歓声で震える。
「スエールテ、ありがとう!」「強いぞー! カッコいいぞー!」「今、新しい腕を用意するからな」

「騙された私様が悪いけど、騙した君も大概だ」
センサーが唸り、シグナルはレッドに早変わり
勝利の歓喜はたちまち消え失せ、スエールテは動揺で思考が止まる。
「!?!?ドコダッ!!」
「ここだ……こいつは今の分のお返しだ」
白い霧が吹き荒び、スエールテの右腕を凍結していく。
ディスティヒアが無から現れ、ため息をつく。
「私様でなければ死んでいるところだ」
「クッ……ナゼダ、ドウシテセンサーニカカラヌ」
「痛覚はなし、それは喜ばしいことだ、動揺は悪手だ
だが冷静な分析は褒めておこう……情けだ、一撃で済ませよう」

ディスティヒアの黒く塗れた抜き手がスエールテの胸部を貫いた。
アンドロイドは無言で機能を停止し、フレンズがかわりに悲鳴と絶叫をあげた。

122十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 13:40:42 ID:QgU6JsAk0
>>121

「あっ……回路は二つだ、ならば、一撃ではなく二撃だ、一つ多く騙して悪かった」
ディスティヒアはパーツを掴み、自分の間違いを詫びた。
スエールテはその声で目に光を灯し、胸部に突き刺さった腕をがっしりと自らの両腕で絡めた。
「オ互イ様ダッタナ」
「ん? 死んだふりとは見事だ」
スエールテは体内の電気エネルギーの放電態勢に移る。
空気中の粒子が激しく振動し、一瞬で収縮した電光が弾け飛び拡散して炸裂し
直視すれば失明するほどの光がスエールテとディスティヒアの体を満たした。

スエールテは頭部の連絡装置に体内の回線を繋ぎ、密かにシーラ博士やフレンズとやりとりを交わし、あらかじめ、危険を伝えていた。
もちろん、このことを知らない森に住むフレンズがいないか、センサーでの探査も怠らない。
ワーナーズ・ハウスのフレンズは光を見ぬよう一同が床に伏し、スエールテとの再会が叶うよう、悪のサイボーグの敗北を祈った。

光は直におさまるが、肝心のスエールテから報告がない。
シーラ博士は嫌な想像をかき消し、立ち上がって外の様子を確認すると連絡機を手から落とした。
機械のアンテナがへし折れたが、誰もそのことは気にせず、演技ではない本物の叫び声をあげる。

スエールテとディスティヒアは、放電前と変わらずの姿勢でいた。

「私様には電気も炎も効かない、残念だ、壊すのがもったいない」
「グッ、俺ハ負ケルワケニ……」

ディスティヒアは腕を引き抜き、回路を眺めた。
「これはリルル回路だ、マルル回路は……あとにしよう、せっかく作ったしもべたちのテストに使おう」

スエールテは放電をしたうえにリルル回路を失ったことで機能の大半を喪失した。
「…………ウッ、動ケナイ」

ディスティヒアはいまだに不気味に漂う黒雲に空いた手を向け、大層な身振りで手招きをした。

「ゆけッ! 13人の異形兵士よ! 宿敵、アンドロイド闘士を倒すのだ!……一度、言ってみたかった、最高の気分だ」

召集の合図だったのか、続々と稲光が地に落ち、次々と爆発が起こる。

スエールテのもとに駆け寄ろうとしたフレンズの目に飛び込んできたのは
奇声をあげてくねくねと揺れ、まさに異形な姿をした怪物たちの軍勢であった。

「よし、名乗りをあげよ、そして、邪魔者たちを片付けてしまえ」

123十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 15:15:23 ID:QgU6JsAk0
>>122の続きです。

うきうきノリノリ気分なディスティヒアの号令で、異形兵士の怪人たちは順番に名乗りをあげていく。

「マダーコー!」「スルメイカー!」「クルマエビッ!」「ズワイガニー!」「バフンウニー!」「ミズクラゲー!」「アオウミウシッ!」「ベニサンゴー!」「イトマキヒトデー!」
「シライトイソギンチャク!」「ホタテガイッ!」「フナムシー!」「ワーカメー!」

怪人たちから名乗りを見せつけられたともえたちは口々に率直な感想をぶつける。
「な、なに、こいつら……」「き、気持ち悪い……」「旨そうな奴もいるわね」

「さあ、怪人どもよ、お前たちの力を私様に見せてみろ、かかれーッ!」
「タコタコー!」「イカイカー!」「エビエビー!」「カニカニー!」
ディスティヒアの指示で怪人たちが動き出し、触腕を振り回して
ハサミを打ち付け、泡を吐き出し、うねうねと体をくねらせながら、ともえたちに襲いかかる。

イエイヌは牙を剥き、ナメラは鞭を取り出し、エジプトガンは手刀を構え
ヤブツカツクリは脚に力を込め、ボブキャットたちは爪を備えた。

「待てェーッ!」
フレンズ VS 怪人軍団の死闘が始まろうとした瞬間に響き渡る勇ましい声。
何者かが森の中から、黒い乗り物に跨り、両陣営の間に割ってきた。
「あ、あなたは……だれなの」
「貴様! いったい何者だ!」
ともえとディスティヒアの戸惑いが重なり合う。

「わたしは悪のあるところ必ず現れる、勇気のフレンズ、"ワンダー1号"だ」
黒と白を基調としたメカニカルなスーツにブーツ、ベルトが光沢を放ち、風にはためくマフラーと顔全体を覆い隠したマスクをした正体不明のフレンズは、拳を握って名を答えた。

唖然とした皆のことなど歯牙にもかけず、ポージングを決めたかと思えば、高く跳躍をするワンダー1号に見惚れたのか、はたまた驚いて動けないのか、その場の誰もが固唾を呑んだ。
「行くぞッ! ワンダーーーッキィーーック!!」
ワンダー1号は空中で一回前転すると開脚し、そのまま姿勢を維持して、先頭にいた敵のマダコを力を携えた勢いで蹴り飛ばした。

「タコオオオオオッ!!」
マダコはキックの衝撃でふっとんで地面を転がり、ふらふらと立ち上がろとしたが、耐えきれなかったのか断末魔をあげて、爆発して粉微塵になった。

124十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/03/24(火) 23:50:55 ID:QgU6JsAk0
>>123の続きです。

快挙か暴挙か、ワンダー1号突然の必殺技に度肝を抜かれた一同であったが
晴れ舞台を台無しにされたディスティヒアが怒号を喚く。
「お、おのれーッ! よくも仲間をー!」

「今だッ! ドォーッ! ワンダーーッパァーーーンチ!!」
後方より雄叫びが轟く。ともえたちはまたも見知らぬフレンズの登場に腰を抜かした。
その謎のフレンズはワンダー1号と同様に宙に飛び上がり、固く握った拳の腕を引くと、落下しながらアオリイカの頭部に手加減なしの鉄槌を振りかざした。

「イカアアアアアッ!!」
殴りつけられたアオリイカは額から火花を噴き出し、よろめいた後に倒れ、砂塵を巻き上げた爆発に散った。

「たっ、助けてくれてどうもありがとう」
ともえがお礼を伝えると、太い腕と脚を茶色いプロテクターで装甲したフレンズは
「いや、皆が無事ならそれだけでいいのさ」と親指をたてて尻尾をぶんぶんと振り
ディスティヒア率いる怪人軍団の前に立つ。

「ま、またしても……貴様は誰だ、誰だ! 誰だ!?」
「わたしはワンダー2号! 悪の行われるところ必ず行く、優雅のフレンズ、ワンダー2号さ!」
「二人のワンダー、1号に2号だと……」
「そうだ、わたしたちはフレンズの平和と自由を守るために生まれたワンダーフレンズ」
ワンダー1号がワンダー2号と背中合わせをして戦闘態勢を整える。

「悪のサイボーグ戦士! お前たちの蛮行を見逃すわけにはいかないッ!」
「心の醜い怪人どもめ、よく覚えておけ!……正義は必ず勝つということを!」

「ぐぬぬ、こざかしい……怪人たちよ、まずは奴らから倒せッ!」
再度、怪人軍団は各自の武器や特技を披露し、ワンダー1号と2号に大勢で迫る。

125十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/26(日) 15:52:59 ID:DU9eahig0
>>124の続きです。(一ヶ月ぶりの更新で申し訳ない。物語を始めた以上は最後まで書き連ねます)

不意打ちに等しい先制攻撃で数は減らしたものの、11対2では分が悪いのは変わらず。
ともえたちは直ちにワンダー1号と2号へ加勢すべく、戦乱へと参戦する。
その時、林の茂みからなにかが虚空を通り、バフンウニの胴体に命中した。
「ウー!」
金切り声をあげて途端に動きが鈍くなったバフンウニ。
抉れた穴からはオレンジ色の艶に濡れた中身が漏れ出ていた。

「皆、お待たせ! 助っ人参上!」
呆気にとられた皆の元へ、タチコマたちと同じく、機械で体躯を装甲し
さらには、背中に大型の速射砲を携帯した銀色のフレンズが残火を過って現れた。
「ハウ! よく来てくれた、感謝する!」
「エビィ!?」
エジプトガンは交差した両手の手刀で、スパッとクルマエビの首を跳ね飛ばし、仲間に状況を伺う。
「ハウ、ウチコマはどうしたんだ?」
「エジプトガン、私も聞きたいことは山ほどあるけど話はあとで
 今は殲滅任務を続行! いざ、行くぞー!」
ハウの背負ったタンクが火を噴き、機銃掃射の礫がバフンウニの刺ごと身を崩していく。
「ニー……」
「エ、ビ……」
鉄の猛威を全身で受けたバフンウニが息絶えるころ、クルマエビも痙攣を数回ほどしてすぐに動かなくなった。

126十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/27(月) 23:59:01 ID:qez49yS20
>>125の続き

 「ちくしょう! 次から次へと邪魔しおって……ええい! 怪人たちよ、怯むでない、私様がついている! これよりおおいに暴れるぞ!」ディスティヒアは仲間を討たれてうろたえる怪人軍団を鼓舞し、自身も戦闘へと参加するべく陣地の中心に降り立った。

 「サセルカ」シーラとバビルサに担がれていたスエールテは目にわずかな光りを点して、二人の介助を振り解き、左腕から先端にアンカーのついたワイヤーを射出。隙だらけであったディスティヒアの両腕を絡めとった。

 「チッ、この程度で私様の動きを封じられるとで思っているのか!」
ディスティヒアは高熱を発してワイヤーを外そうとしたが、かなりの耐熱性に優れているようで微塵も溶けなかった。「ああ、もうじれったい!」

 「やめるんだ! スエールテ、これ以上戦えばお前は……」ディスティヒアが地団駄を踏んでいる間。シーラはスエールテの肩を掴み、戦前から引き離そうとしたが、スエールテはその手を払い除け、ニヒルな笑みを浮かべ、ショートした体でぎこちなく敵地へと前進し、なけなしの電力で背後に障壁を作り、最後の賭けに出た。「イヤ、俺ハ大丈夫ダ、ナニセ機械ダカラナ」

 「壊れたら死と同じだ! 私の気持ちがわからないのか! お前は私の」シーラは電磁の壁の向こう側から、あらんかぎりの声で叫ぶ。「ワカッテイルサ! シーラ!…… 申シ訳ナイガ修理ヲ頼ムゾ……束ノ間ノ別レダ、サラバダ!」スエールテはシーラの慟哭を聞かまいと遮り、ワイヤーを一気に巻き戻して、ディスティヒアを引き寄せた。「くっ……最後まで私様を欺くとはやるではないか……だが私様には貴様の力など何一つ通じぬぞ!」ディスティヒアはスエールテの健闘に感心するも余裕の表情は崩さなかった。「……フッ、ソレハドウカナ……本当ニ最後ノ手段ダ、少ハ効クハズサ」スエールテはディスティヒアを引きずり、両者の姿は森の中へと消えていった。

127十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/28(火) 14:50:04 ID:PyEjEAWk0
>>126の続き

 「戻れッ! スエールテ! よせッ!イクナアアアアアッ!! 」遮蔽物が効力をなくし、シーラはすぐさま二人の後を追ったが、その進路にズワイガニが立ち塞がり、太く発達した両腕の鋏でシーラへ襲いかかった。
 「危ないッ! ……えっ!?」バビルサは我が目を疑った。「ガニニニニッ!」「あああああッ!」激情して野性の雄叫びをあげるシーラ、はだけた白衣であらわとなったその腕は筋骨隆々としか言いようがないほどに膨れ上がり、真っ向からズワイガニの鋏を受け止めてガッチリと組み合っている。「私の、邪魔を、するなッ!?」「ガニィィィッ!!」ズワイガニは腕力勝負に敗れ、妨げに出た報いを受けた。シーラは引きちぎった腕を握力のみで粉砕し、鋏状の部分を念入りに潰す。「ハアハア……これでもう縫合はできないぞ」

 「なっ、なんて馬鹿力なんだ……フンッ!」「ガニッ!」バビルサはシーラの変貌ぶりに身震いしつつ、泡を吹いたズワイガニのガラ空きになった背後へ、助走をつけた突進を行い、大きく跳ね飛ばした。ズワイガニは装甲のおかげで致命傷は免れたが、呻き声を漏らす。「ズワイ……」

 「やったか?」「いや、やってない!」バビルサとシーラは息を切らし、急に身動きをやめたズワイガニを注視して驚愕した。ズワイガニの体表は黒ずみ、尻がミチミチと嫌な音をたてて開いたと思えば、その裂け目より鮮やかな赤い体色のズワイガニが這い出た。「ズワイワイ!」喪失した両腕が生え揃っている。「どうやら、脱皮による再生能力をお持ちのようだね」シーラは左右の拳を鳴らし、口元を歪めて目を細めた。

 「シーラ! 二人でコイツを片付けてからスエールテの援護に向かう、彼もそれを望むはずだ、異論はないな!」「ああ、わかった! 力を貸してくれ!」バビルサはシーラとタッグで、ズワイガニを完膚なきまでに叩き潰そうと戦いを挑む。

128十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/29(水) 07:17:15 ID:.VX/QVHY0
>>127の続き

 一方その頃。エジプトガンとハウは殻を開閉しながらじりじりと迫るホタテガイに対峙していた。互いに出方を窺い続ける中、ついにハウが先制に動いた。「目標をセンターに入れてスイッチ!……あれッ、も、もしや……」「どうしたんだ?」「……ごっ、ごめんなさい、弾切れみたい」ハウは鉄の弾幕で化け物どもを撃滅せんとトリガーを引いたが、銃身が威勢よく回転するだけで、空の弾倉は騒がしくも虚しい音を立てた。
 「ここは任せてくれ、私が前面に出る、後方を頼むぞ」言うが早いかエジプトガンはホタテガイへひらりと飛びかかり、力を込めた手刀を浴びせたかと思えば、素早く右翼を翻して後退した。「堅い……」エジプトガンはいましがたに赤く腫れた右腕をさすり、敵の堅牢な殻を鋭い眼で睨みつけ、突破口の緒を探す。
 「やっぱり、弾切れだ……うう、森でセルリアンの相手なんかするんじゃなかった」ハウは予備弾薬を所持しておらず、肝心な時に役立たずな自分を恥じる。「ハウ、お前にしてはやけに迂闊だな……さては事情があるんだろ」エジプトガンは連携攻撃に転じるべく目配せをしつつ、ハウに疑問をぶつけた。「それが……」その時、会話する二人の様子など目もくれず、一人のフレンズが羽をバタつかせ、木陰を突き抜けて走り寄ってきた。「ああッ!? エジプトガンさーーーんッ!!」「あっ! あいつは……ちょっ!」「うわあーーーッ! やっと会えたーーー!」「お、おい! 待て、離してくれ!」「イヤです! もう離しませんッ!」エジプトガンは赤や黄、緑の羽毛をした鳥のフレンズ、コンゴウインコに出会い頭に激しい求愛を受け、強靭な嘴と爪を鳴らした愛情表現に身悶えした。
 「ダメですよ、コンゴウインコさん! ハウさんから大人しく待っているように……」「モモイロペリカン……お前もきたのか」ハウは敵を尻目に地面で抱擁へともつれ込んだ二人をどうにかしようとしたところ、薄い桃色の羽をなびかせた鳥のフレンズの登場に頭を抱えた。「すっ、すいません、飛び出していったコンゴウインコさんが心配でつい……」モモイロペリカンは申し訳なそうに腰をかがめ、コンゴウインコの騒ぎを静めようとした。「なにしてるんですか! コンゴウインコさん……って、リーダー!? お久しぶりです、って……どうしたのですか、翼が……」モモイロペリカンはコンゴウインコをエジプトガンから引き離し、このうえないほどに目を見開いた。それはコンゴウインコも同様でようやくエジプトガンの左翼が失われていることに気がつき、みるみるうちに顔面蒼白となり、言葉もでないまま茫然と立ち尽くした。「……いろいろあって、その……」「話は後、後にして! ここは戦場。今は目の前の敵に集中!」口ごもったエジプトガンを制し、ハウは三人を一喝した。
 「コンゴウインコ、モモイロペリカン……お前たち二人は下がっていろ」エジプトガンは再び、攻撃態勢を構え、右翼を展開した。しかし、コンゴウインコは目の色を変えると口を大きく開けて、嘴で音をがなり立てた。「よくもエジプトガンさんの翼を……ギャギャギャギャギャギャーーーッ!!!」羽を広げて跳躍したコンゴウインコはホタテガイの殻を鉤爪と嘴でメチャクチャに突き回し、破片を飛び散らせた。「ホッタテ!?」ホタテガイは身の危険を覚えたのか殻を開き、コンゴウインコを殻で挟もうとしたが、そこをエジプトガンとハウに左右から腕で押さえ込まれ、動きに隙が生じた。「ギャギャギャーッ」「ガイーッ!?」コンゴウインコは丸出しの中身を晒したホタテガイをなおも抉りかかり、黒い点を逐一に刻み潰していく。ダメ押しにモモイロペリカンがホタテガイが包んでいる丸く大きな白い球を掴んで、思いっきり引っ張り抜いた。「ホ、ホ、ホ……」ホタテガイは蝶番をだらりと全開にし、その場にバタンと倒れ伏した。

129十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/30(木) 08:49:38 ID:2WKoddUg0
>>128の続き

 「ギャーッ! ギャーッ!」「コンゴウインコさん、もうやめてください!」モモイロペリカンに残骸の叩き割りを諌められたコンゴウインコは「ゼェゼェ……」と肩で息を切る。溜飲は下がらず、怒りがおさまりつかないといったようで、興奮のあまり白目をむき、その場にしゃがみ込んだ。
 「お前たち、大丈夫かッ!?」目標の沈黙を確認したエジプトガンは、ハウにコンゴウインコたちの護衛を任せ、すぐ近くでアオウミウシの退治にてこずっているオオムジアマツバメたち4人の援護に回った。「はいッ! なんとか」「こいつめ! 蹴っても絞めても今ひとつ手応えがねぇぜ!」アオウミウシの体は非常に柔らかく、そのうえ粘液で体表が滑り、並の打撃技や関節技が全く効かないのである。
 「こうなったら……オオムジアマツバメッ! 例の"アレ"をやるぞ!」ヤブツカツクリはそう言い放ち、両足でグッと力強く地面を踏みしめた。「えっ! で、でも"アレ"はまだ未完成だし……オオムジアマツバメは突然の宣言に尻込みする。「いつやるか! 今でしょ!」「……わっ、わかった! ……みっ、見ていてください、エジプトガンさん! あたいたちのとっておきです!」オオムジアマツバメはヤブツカツクリの煽りに乗り、程なくして決心をつけた。「エジプトガン! エナガとキゴシツリスドリから目を離すなよ!」「ああ、任せろ……無茶はするなよ」そして、二人は密かに練習していた連携技を披露するべく陣形を整え、互いに頷き合って合図を行い、今もなお不気味にくねり続けているアオウミウシを穿ちに出た。
 「ほーら、こっちだ! ノロマ!」軽やかに飛翔したオオムジアマツバメはアオウミウシの周囲を高速で旋回し、移動範囲を抑制した。アオウミウシは目が悪いようで速すぎる動きを捉えられず、自分から逃げることすらも叶わなかった。「ウ〜ミ〜ウ〜シ〜」やがて、アオウミウシは目眩を引き起こしたのか、足元がふらふらとおぼつかない様子になった。「いくよッ! ヤブツカツクリ!」「おうよッ!……デュワッ!」応答が伝わり、オオムジアマツバメは一気に加速して上空へと突き抜け、ヤブツカツクリは残滓程度の辻風など物ともせず、砂埃と共に足音を響かせてアオウミウシへ急接近し、懐へと後ろ回し蹴りをぶちかました。「ウシッ!?」山なりの軌道を描き、中心を的確に狙ったキックはアオウミウシを空高く弾き飛ばし、かなりの痛手を負わせたようだ。
 だが、まだ終わりではない。「てやァーーーーーッ!!」「ダアアアアアアーッ!!」一方は天空より舞い戻り、片やは大地を蹴って空を駆ける。浮遊した3つの体躯は上中下の間隔をあっという間に狭めて重なり「「デュアルウィンド!!」」「ウミッ!?」二発の息の合った同時蹴りが挟み込みの一撃を決めた。ど真ん中にされた哀れな獲物は衝撃を一身に受けて、体液を全身からドバッと噴出、無残に破裂した。

130十一 ◆ahYIRbY3u.:2020/04/30(木) 08:50:19 ID:2WKoddUg0
>>129の続き

 「…………改良の余地はあるが、いい連携だ」「あわわわわわッ……えらいこっちゃ!」「エ、エジプトガンさんッ!? だっ、大丈夫ですか!」「大丈夫だ、問題ない」アオウミウシを文字通りに蹴散らしたオオムジアマツバメとヤブツカツクリだったが、汚水まみれのエジプトガンとその背後で右往左往するエナガとキゴシツリスドリを目の当たりにし、両者は揃ってバツが悪そうな顔をした。
 「二人ともやりすぎーッ! エジプトガンさんが庇ってくれたおかげで、うちたちはバケモンの汁を浴びずに済んだけど、エジプトガンさんは……ううっ、おいたわしい」「そうですよ! 今度からは事前に退避の通達をしてくださいね」エナガとキゴシツリスドリは俯いた二人にお説教をしながら、エジプトガンに付着した大量のゲル状物質を自身の羽で拭いとる。「ありがとう、もう十分だ。結局、お前たちの羽を汚してしまったな……すまない」エジプトガンはエナガたちに礼と詫びを告げ、縮こまったオオムジアマツバメたちへと近寄り、目線を合わせてから、柔らかな口調で話しかける。「そんな暗い顔するな、お前たちは本当によくやったぞ、戦いが終われば改善策を共に考えよう……よし、勝利の記念にハイタッチだ、手を出せ」「ハ、ハイッ! 次こそは完璧に決めます!」オオムジアマツバメは差し出された手に自身の掌でおずおずとだがベッタリと触れ合う。憧れの存在に活躍を認めてもらえたことで有頂天となったオオムジアマツバメは恍惚した表情を浮かべ、技術の向上を声高に誓った。
 「フン……俺は遠慮するぜ、未完成というなら完成した暁にやりたいからな」だが、反対にヤブツカツクリはそっぽをむき、俯くどころか座り込んでしまった。「どうした、もしかして怪我でもしたのか……脚を見せてみろ」「なんでもねぇよ! チッ……。なんでもないんだ、ああ……。悪いけど放っておいてくれ……」明らかに不自然な変わり様、誰がどう見てもヤブツカツクリは冷静さを欠いている。「そうか、わかった……辛い時は無理するなよ」エジプトガンは突然の異変を気にしつつも、エナガたちへと身ぶりでこれ以上の追求は控えるように伝えた。三人は静かに首を縦に振る。
 「……さて、次だ。お前たちは警戒を怠らずに休め、いいな」目と鼻にまとわりつく磯臭さをこらえて、エジプトガンはさらなる戦地へと急ぐ。


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