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着ぐるみと顔

3名無しの作家さん:2019/04/03(水) 13:15:46 ID:uKfwwxlM
…目が覚めると、体全体に拘束感が存在した。
顔も、耳も、腕も、足も、胴も、股間も。
全てを何かが覆っている様な感じがするのに、開かれた目の先は何も覆われておらず、呼吸も特に問題はない。
どうやら場所は制作場ではなく、さっきの更衣室のようだが、誰もいないらしい。
「誰かいませんかー」
と一応呼んでみた後、何とかして体を見まわそうとする…が、ここで異常に気付いた。
顔が動かない。完全に首が固定され、正面しか向くことが出来ない。
しかもよく分からないが、なぜか頭の上に何かかずっしり乗っている感じがずっとしている。
ならばと手足を動かしてみたら、こっちは何とか動いたが、どうも着ぐるみの手足が動物のものらしく、四つん這い以上の立ち上がりが出来ない。
更衣室には鏡もあるはずなのに、四つん這いしか出来ないから鏡の高さまで首を上げられないし、首が固定されているからドアの方も向くにも体全体を動かさないとみることすら出来ない。
(これは、僕はどんな着ぐるみ姿なんだ… まさかこのまま売られるとかそんなことは)
と不安になった時、ドアが開いた。
 
「真弓君、早く起きたね」
「課長、僕は今どんな状態なんですか!鏡を見せてください!」
「いいけど、ちょっと今動くの大変だろ。ちょうどよく首輪とリード持ってきたから、これで引っ張ってアゲル」
と、なぜか大きな器具を取り出し、僕に巻き付けようとした。
…だがそれはなぜか僕の首の「上の重さ」にかかり、それなのに課長がそこをひっぱると体全体が引っ張られた。
自分はペットじゃないと言いたかったが、それよりも現状説明を求める気持ちが強かったため、やむなくそれに従い課長に繋がれ歩くことにした。
歩いている内に足音が蹄鉄似だったから、どうやら僕は馬か牛の着ぐるみを着ているらしいことはわかりつつあったが、それと首が動かない理由にいまいち思い当たれず、只重みを抱えて歩くのがつらかった。
社内になる大きな鏡の前に案内され、初めて見た僕の姿は…
「何ですか、この妖怪は?!」
…栗毛の、大型な馬であり、背中には鞍もあり、それなりに着ぐるみと分かるくらいにはデフォルメも聞いている姿。
だがその長い首の真下には、本来存在しないはずの「人間の顔」が刻まれていた。
…そう、今の僕は、「馬に刻まれた顔」と化していた。


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