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14グスタフ・E・アバルキン:2015/08/31(月) 16:13:30 ID:0qL03RZw0
>>13
「…………」

銀の白刃が、白銀の世界に一際輝く。その後、ドスリと鈍い音が、モスクワの街に響き渡った。
少女の最期の一撃。真の全霊の剣。それは聖遺物を持ったまま、最早動かぬ彼の心の臓を、完璧に貫いていた。……即死だった。

彼は目の前で倒れ伏す彼女の近くに、同じ様に斃れた。既に彼から命の灯は消えていた。
━━━━━━だというのに。彼の右目の光だけは、未だに消えていなかった。

「━━━━━━━━━━━」

彼は倒れたまま、目の前の少女の右手を掴む。まったく生気のない腕、しかしそれと対照的にギラギラと光る右眼で、炙られた十字の紋章を見……笑った。
彼は既に、剣に貫かれ絶命した。それなのに笑い声を上げた。何千人分とも思えるほどの、大きな笑い声を。
彼を蝕む呪いはあまりにも大きかった。グスタフ・エフセエヴィチ・アバルキンという人物は、ずっと前に殺されていたのだ。
彼が聖遺物を手にしたその時から、意思も肉体も、存在すらも、そのすべてが聖遺物(ソビエト)に取って代わられていた。
あの力は、共に戦った戦士たちに。その思想は、理想を夢見た人民たちに。そして彼の存在理由は、その実情に。
人の皮を被ったСССРの意志は、仕留めた青十字を見るや、歓喜の笑いを上げていた。

「ハハハハハハ!」「ハハハハ!」「ハッハッハッ!!」「ХАХАХАХХАААА!!!」
「掴んだぞ」「フィンの愚か者め」
「同志の仇を!」「粛清だ」「粛清だ」「粛清だ」
「粛清だ!」

赤き瞳の輝きは最高潮に達する。それぞれ違う声が、口も開かぬ彼から響き渡る。
ソビエトを形作った者たち。一人一人の怨念は集積し、彼という殻を被って、そして次なる世界を作ろうとしていた。
彼は少女の右手を掴みながら、鎌を持つ彼の腕を動かし、憎き十字紋章を抉り取ろうとする。

「Это(我等)……」「…… наша(の)」「победа(勝ちだ)!」

しかし、それは叶わなかった。"意志"の力のみで、生命活動を停止してなおその殻を動かすなど、いかに強大な呪いと言えど、長く続きはしない。
右目の光は、次第に弱まっていく。鎌を持った手から力が抜けていく。
人の皮を被ったソヴィエトは代弁者を失くした今、ただ意志として散りゆく最期に、この世への執着を呟いた。

「……馬鹿な━━━━━ここで━━━━終われるものか━━━━━━」
「━━━━━━━まだ━━━いけるだろう━━━━」
「━━━━━ルーシに━━━━━━━━━━━━平和を━━━━━」

やがて右目の光は消え、その声は鎌へと吸い込まれていく。意志は鎚へと飲み込まれ、彼は今度こそ、少女の右手を握ったまま、「ロシア」の大地に命を散らす。
その手から、呪われた遺物がこぼれ落ちる。その鎌と鎚は、かつての労働者たちの団結の証。かつての戦士たちの勇気の証。そして、ねじ曲がった狂気の証だった。


モスクワの空。飛び交う軍用ヘリコプターの一機。"それ"は、この戦いのすべてを映し出していた。
その映像はロシア政府の本部。聖遺物を知る、政治の最高官たちの部屋へと繋がっている。

『……終わったか』『……見込みはあったのだがな』
『まあいい。また新たな"殻"を着せてやればいいさ……"あれ"にはな』
『……代わりを探すのは、骨が折れるがね……』

このロシアの中心に渦巻く、聖遺物を巡ったどす黒い陰謀。ソヴィエトから続く暗い謀略の下で、亡国の意志は再び崩壊する。
首都の中心。屍と化した彼を弔うかのように、ソヴィエトの象徴は静かに燃えていた。

/これで終わりでしょうね、お疲れ様でした。
/長らくお付き合いさせて申し訳ない


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