したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

クエスト修練場

11GM ◆xNINjA/Ii6:2017/08/10(木) 19:18:48
「…旨いは旨いから、またイヤになるよな」
「味はいいんだよ、味自体は」

出立より数刻、だいぶ遅めの昼食時。
道中の馬車内で、肉汁…というより、脂汁したたる芳醇なパイを頬張ってぼやく狩人達。

「それな」
「わかる」

同じくモソモソとパイを齧りながら、口々に同意する聖職者達。
性質が似ているのか、パーティー結成ごく僅かだというのに十年来の友人のように打ち解けている。

「俺チェリーパイが良かったなあ」
「でもそれ絶対砂糖バカみたいに入れたヤツだぜ」
「な。バカがバカみたいに」
「…じゃあ生チェリーでいい」
「いっそ採ってこいよ」

…打ち解けすぎて、どうにも緊張感に欠けるきらいはあるが。
それでもまあ、空気が和やかというのは良いことの筈だ。
少なくとも、氷の牢獄めいたヴァンパイアハンター達の纏うそれに比べれば天地雲泥の差である。

そういえば、出立直前に見かけたその隣には、いつの間に引き込んだのか…自分達と同じ年頃の娘が二人、怯えた顔で佇んでいた。
…首筋や胸元にいくつも見えた赤紫色の痕については、気に掛けても詮無い事だろう。
せめて、彼女達の無事を…安寧とはいかずとも、無事の存命を祈るばかりだ。

「お。アレがそうか?」

物思いに耽る頭を振って、歓談に興じる事暫し。
誰とも無く問いかける声に行く先を見れば――そこには、今朝方出てきた黄金のキラキラ城とは正反対の姿。
なるほど古城、所々罅割れて苔や蔦に覆われてはいるが…その佇まいがむしろ、周囲に広がる草原や森と見事に調和した、ある種荘厳なまでの静寂な美しさを映し出していた。

「なんか…」
「…うん。こっちのがいいわな」
「むしろ雇い主の城の方が忌わしかったしな」

異口同音の感想。
目の前のそれは討伐対象の居城に違いないのだが…それにしても、である。
ともあれ、城門付近で馬車を降りる一行。
同じく微妙な顔をした他のパーティーとともに周辺を探ってみたところ、城への入口は四つに分かれているようだ。

このまま真っ直ぐ城門を進むか、裏の門へ回るか。
または右側の小さな通用門から入るか、あるいは左側にある枯れた地下水路から侵入するか。

…傾く陽を背に受け考えた、君達の結論は。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板