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( "ゞ)半分のようです/ ゚、。 /

1ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 23:44:04 ID:OeZSkNlQ


 少女が一人、音もなく街を歩いておりました。


/ ゚、。 /


 きょろりと辺りを見回しながら、人の間をすり抜けます。
 露天の店を覗き込み、街燈の明かりで影を踏み。

 やがて少女は立ち止まり、時計塔を見上げました。
 針がもうすぐ天辺に来て、あの大きな鐘が鳴るのを見たかったのです。



 かちり、きりきり。


 するとどうしたことでしょう、時計塔の脇の路地裏から、時計のような音がします。
 少女は路地裏を覗き込みました。


(  ゞ)


 かち、かち、音を立てていたのは、黒い機械仕掛けでした。
 煉瓦の山にもたれて、まるで固まっているかのようです。


(  ゞ)    / ゚、。 /


 少女が目の前に立っても、動きません。


/ ゚、。 /「何をしているの?」

.

22ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:10:39 ID:y8wJk332

(´<_` )「おおい、姉者」

(´<_` )「ただいまなのりゃ」


http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/2/f/2f698be5.jpg


 空から、紋様のついた機械をつけた、男たちが降りてきました。
 デルタの身体とは、全然違う材質です。


∬´_ゝ`)「噂をすれば。兄者はどうしたの」

(  _ゝ )キュウ

(´<_` )「ちょっとはしゃぎすぎてな」

(´<_` )「大人しくして貰ったのりゃ」

∬´_ゝ`)=3「……幾つになってもしょうがないわね、全く」

(´<_` )「時に姉者、そこに居るのは機械仕掛けのようだが」

∬´_ゝ`)「ええ。……まあ、襲ってはこないみたいよ」

(´<_` )「ならいいんだ。俺たちも疲れてた」


 機械の翼を畳み、男の一人はこきこきと首を鳴らします。

.

23ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:12:47 ID:y8wJk332

(´<_` )「姉者、おなかすいたのりゃ」

∬´_ゝ`)「はいはい、用意するわ。弟者、兄者を運んでちょうだい」

(´<_` )「把握した」

∬´_ゝ`)「末者、先に行って妹者に伝えてちょうだい。お客さんも二人追加って」

(´<_` )「分かったのりゃ」


 男の一人は気絶した男を担ぎ、少年はふわふわ浮いて同じ方向へ去って行きました。

.

24ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:13:24 ID:y8wJk332

∬´_ゝ`)「あんた達、ご飯食べていきなさい」

/ ゚、。 /「どうして?」

∬´_ゝ`)「何か気が抜けちゃった。ついでだから、色々話をしていってよ」

/ ゚、。 /「ふうん。分かった」

( "ゞ)「私は人の食べるものはいらないよ」

∬´_ゝ`)「あの子らに言えば、何か持ってると思うわ」

/ ゚、。 /「わたしは水がいい」

∬´_ゝ`)「ええ? それだけじゃ……」

/ ゚、。 /「水じゃないと駄目なの」

∬´_ゝ`)「……ええい、もう、まとめて面倒みるわ!」


 むん、と腕まくりをして、女はずんずん歩き始めました。


∬´_ゝ`)「ほら、早くおいでなさいな」


 ダイオードとデルタは、一度顔を見合わせて、それから並んで女の後を追ったのでした。

.

25ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:14:21 ID:y8wJk332
+++++



( ´_ゝ`)「それで全く、つーの奴ときたら暴走して大変だったんだ」

(´<_` )「兄者もはしゃいで、人のことは言えないがな」

(´<_` )「大変なのは僕たちなのりゃ」

l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者の面倒見て、お疲れ様なのじゃ」

( ´_ゝ`)「妹者! お兄ちゃんは労ってくれないのか!」

l从・∀・ノ!リ人「お疲れなのじゃ」

( *´_ゝ`)「うんうん、大変だったぞー」


 女の家は、流石家という家でした。
 両親は遠くで出稼ぎしているとのことでしたが、食事はやかましく楽しげでした。

 ダイオードは姉者の横に、デルタは身体が大きかったのでテーブルの横に座っておりました。
 二人はそれぞれ、水と油をすすります。

.

26ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:16:06 ID:y8wJk332

∬´_ゝ`)「それで、暴走は大丈夫だったの?」

(´<_` )「ああ、ヒッキーが居たからな。あいつはちゃんと力を使えるし。
      それにヒッキーに抑えられなくても、ミルナが居るからな」


 ほら、と出された画には、奇妙な武器を携えた三人が写っておりました。


http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/1/3/1329ab77.jpg


∬´_ゝ`)「あら本当。それにしても、皆ケガがなくてよかったわ」

(´<_` )「鍵持ちが二人とも居たし、滅多なことじゃヴィップは負けないのりゃ」

/ ゚、。 /「鍵持ち?」

( ´_ゝ`)「ヒッキーとつー、この左右の二人のことさ」

(´<_` )「真ん中がミルナ。二人は、ミルナから直接鍵を貰って、力を使えるんだ」

( ´_ゝ`)「はーあ、やっぱり機械を通さなくても力が使えるってのはいいなぁ」

l从・∀・ノ!リ人「ねえねえ、兄者たち。お土産はまだなのじゃ?」

( *´_ゝ`)「お、勿論あるぞー! ほら、これが川珊瑚で――」

.

27ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:16:42 ID:y8wJk332


 流石家の話は続きましたが、
 じぃ、と。
 ダイオードは、画の男を見詰めていました。


/ ゚、。 /


( ゚д゚ )


 錠の掛かった、真ん中の男を、食い入るように見詰めておりました。


.

28ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:18:38 ID:y8wJk332
+++++



o川川o)


 知らないよ、知らないよ。




      「     」


 雑音ばかりの声。
 聞こえない、でも知っている。
 いいや知らない、いいや、知っている。


.

29ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:20:00 ID:y8wJk332


o川川o )


 こっちを、



 こっちを、向いて、



o川   )o



 君は、




    「     」




 おれは


.

30ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:21:27 ID:y8wJk332
+++++



 流石家に見送られて、二人はまた歩き出しました。
 彼らの忠告通り、国境からは遠ざかり、寒いけどいい所だよと教えられたシベリア方面へ向かいます。

      、    。 ざくざく、ざくざく。


/ ゚、。 /「ねえ、デルタ」

( "ゞ)「何だい、ダイオード」

/ ゚、。 /「わたし、なんだと思う?」

( "ゞ)「さあ。人だと思っていたけれど」

/ ゚、。 /「人じゃないの」


 デルタはダイオードに視線を向けました。

.

31ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:22:07 ID:gNxQKIvo

( "ゞ)「そうなのかい」

/ ゚、。 /「でも、なんなのかは分からないの」

( "ゞ)「そうか。私も分からないよ」

/ ゚、。 /「そうね。でも、少しずつ分かる気がするの」


 ダイオードは立ち止まって、腕を広げました。
 ふわりと風が立ち上り、ダイオードの頭に白い花が咲きました。
 それは以前より、幾分か大きいようでした。


/ ゚、。 /「こうすると、わたしはわたしなの」

( "ゞ)「そうか」


 ダイオードは落ちた花を小さく千切り、風に散らします。
 地面に触れると、それは緑の草を生やしました。

.

32ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:23:01 ID:y8wJk332


/ ゚、。 /「ねえ」


 柔らかな草をいじりながら、ダイオードは問いかけます。


/ ゚、。 /「デルタは、なにかしらね」


 ちり、と胸の奥の回路が、焼けた気がしました。
 知らない少女の後ろ姿が一瞬浮かびます。


( "ゞ)「さあ。機械仕掛けは機械仕掛けだよ」


o川川o)


 知らないよ。

.

33ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:23:50 ID:y8wJk332
+++++


 うねる街道を進み、ダイオードとデルタは町に辿り着きました。
 村ほど小さくはなく、街ほど大きくはない、中くらいの町でした。


( ∵)「おい」


 二人が店を見ておりますと、声を掛ける者がありました。


/ ゚、。 /「何?」

( "ゞ)

( ∵)「捕らえろ」

( ∴)


 仮面をつけた男たちが、二人にじりじりと近づいておりました。


( "ゞ)  ( "ゞ)  ( "ゞ)


 デルタにそっくりな、機械仕掛けもまた、近づいておりました。

.

34ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:24:34 ID:y8wJk332

( "ゞ)「ダイオード」

/ ゚、。 /「デルタ」

( "ゞ)「掴まっておいで」

/ ゚、。 /「うん」


 デルタはダイオードを抱え上げると、一気にそこを駆け抜けました。


( ∵)「逃がすな!!」


 男たちは追いかけてきます。
 通りを抜け、店の合間を抜け、壁を駆け上がり、もうすぐ引き離せそうです。


      「止まれ、機械仕掛け」


 不意にデルタの身体が固まりました。
 バランスを崩し、膝をつきます。

.

35ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:25:17 ID:y8wJk332

/ ゚、。 /「デルタ、」

( "ゞ)「行って」


 そこは狭い路地でした。デルタの身体でいっぱいいっぱいになるほどの。
 デルタはダイオードを手で押しやります。


( "ゞ)「はやく」


 また、声を聞かない内に。
 あの声は何故だか、ダイオードの言葉よりも、タカラの言葉よりも、自分の言葉よりも。
 言うことを聞かねばならない、気がするのです。


/ ゚、。 /「……分かったわ」


 頷いて、ダイオードは走り出しました。
 その姿が曲がり角に消えるのを見届けて、デルタは完全に動きを止めました。

.

36ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:26:40 ID:y8wJk332

爪'ー`)y‐「何だ。案外、機能は残っていたのか」


 かつ、かつ、高い靴音と共に、煙草を燻らせた男がやってきました。
 周りに仮面の男たちを従えています。


爪'ー`)y‐「なら、捕らえろと言った方がよかったか。まあいい、これからだ」

爪'ー`)y‐「こっちを向け」


 壁に挟まれながら、何とかデルタは男の方を向きます。
 やはり、逆らえませんでした。


爪'ー`)y‐「自律機構デルタ型……357番か。
       確か……ああ、記録ではヴィップの街で置いてきたんだったか」

( "ゞ)

爪'ー`)y‐「となると、その街が怪しいか。次の目的地はそこにしよう」


 男は楽しそうに笑って、デルタの頭を指の背で叩きました。


爪'ー`)y‐「壊れたと思っていたが、存外役に立つ。
       さあ命令だ、機械仕掛け。お前と共に居た少女を捕らえろ。そして殺せ」


.

37ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:28:31 ID:y8wJk332

( "ゞ)

( "ゞ)「……な、ぜ」


 立ち上がりそうになる身体を律し、デルタは声を絞り出しました。
 ほう、と男は興味深そうにデルタの目を覗き込みます。


爪'ー`)y‐「暫く命令系統から外れて、代わりに記憶でも掘り起こしたか。
       やはり完全に制御しないといけないな」

( "ゞ)「きお、く」


 デルタは知らず、胸に手を遣っていました。
 幾度か見た、知らない少女の幻影。


爪'ー`)y‐「そう。……だが最早、お前には関係のないことだ。とうに失われた身体のもの。
       お前に必要なのは、俺の命令だけ」

爪'ー`)y‐「ビコーズ、ゼアフォー、機械仕掛け共の制御をしろ。この町を焼いて探し出せ」

( ∵)「は」

( ∴)「かしこまりました」


 デルタに煙を吹きかけて、男は笑います。


爪'ー`)y‐「自律機構デルタ型357番。半神ダイオードを殺せ」


.

38ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:29:27 ID:y8wJk332
+++++



/ ゚、。 /


 ダイオードは走ります。
 誰にも見つからないで、と言うタカラの声が思い出されました。

 ばたばたと前方から足音がして、は、とダイオードは足を止めました。
 目の前以外に道はありません。
 引き返そうとした時。


    「こっちだ」


 ぐい、と手を引かれ――そのまま上方へ身体が浮き上がりました。


( ゚д゚ )


 錠を掛けた男がダイオードを抱えて浮いておりました。
 流石家で見た画の男です。


( ゚д゚ )「行くぞ」

”/ ゚、。 /


 ダイオードが頷くや否や、いえ確認すらしてなかったかもしれません、男は空へ飛び立ちました。

.

39ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:30:56 ID:y8wJk332

 幾つか塔や屋根を経由して、男は時計塔の鐘の下に降り立ちました。


( ゚д゚ )「俺はミルナ。お前は」

/ ゚、。 /「ダイオード」

( ゚д゚ )「やはりそうか。よく無事だった」


 ミルナはダイオードの背を優しく叩きました。


( ゚д゚ )「分かるな。俺とお前は同じだ」

/ ゚、。 /「分かる。でも、分からない」

( ゚д゚ )

/ ゚、。 /「もう少し、もうすぐなの。それを探していたの」

( ゚д゚ )「……そうか。そうだな、お前はまだ幼体だ」


 白と灰の目が、じっとダイオードを見詰めます。
 ダイオードの目がそこに映り込んで、うっすら赤く見えました。


( ゚д゚ )「お前を見つけた奴は、優しい奴だったんだろうな」

/ ゚、。 /「どうして?」

( ゚д゚ )「穏やかだからだ」


 ふと、タカラの顔が浮かびました。
 タカラはいつも、笑っていました。時々、辛そうに、寂しそうに、でも優しく。
 いつだったか、ごめん、と泣いていたことを思い出しました。
.

40ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:32:09 ID:y8wJk332


( ゚д゚ )「俺は半分。お前は全部。分かるか」

/ ゚、。 /「分かる」

( ゚д゚ )「だから俺は人の姿で安定している。
     けれどお前は全部だから、人の姿では安定しない」

/ ゚、。 /「……そっか」


 言われてみれば、確かにそのようでした。
 ではどうすればよいのか。


( ゚д゚ )「……お前を、研究所に連れ戻すべきなんだろうな」

/ ゚、。 /「どうして?」

( ゚д゚ )「俺がヴィップに与しているから」

/ ゚、。 /「分からないわ。どうして?」

( ゚д゚ )「……ああ、お前には関係のないことなんだ。ヴィップもシタラバも」


( -д- )


 ミルナは目を閉じ、長い息をつきました。

.

41ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:33:18 ID:y8wJk332


( ゚д゚ )「俺の力を一つ貸す」


 やがて目を開けたミルナは、錠の一つを外しました。
 しゃらり、涼やかな音がします。


( ゚д゚ )「それでお前は、分かるだろう。その後は好きにしろ」

/ ゚、。 /「いいの?」

( ゚д゚ )「ああ。俺は半分。人である俺も、そうじゃない俺も、結局どちらかだけを選べない」

( ゚д゚ )「だから俺は、お前の好きにして欲しい」

/ ゚、。 /「……うん」


 ダイオードは錠を受け取ります。
 それはとても馴染みのある、落ち着いた力でした。
 ほんの少し力を込めると、手の中で溶けてゆきます。


/ ゚、。 /


 それが全身に染み渡って、ダイオードは、理解しました。


/ ゚、。 /


 ふわりと髪が浮き上がり、頭の上に蕾が生えました。

.

42ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:34:14 ID:y8wJk332

( ゚д゚ )「ダイオード」


 どおん、と爆音と激しい揺れがミルナの言葉を遮りました。
 町のあちこちから、火の手が上がっています。


( ゚д゚ )「炙り出す気か」

/ ゚、。 /「ミルナ」

( ゚д゚ )「俺は行く。じゃあな」

/ ゚、。 /「ねえ。どうして、決めたの?」


 今にも飛び立とうとしていたミルナは、ダイオードに振り返りました。


( ゚д゚ )「……俺が好きだと思った感情を、そう思った奴らを、大切にしたいからだ」


 ミルナは、くしゃりと乱暴にダイオードの頭を撫でました。


( ゚д゚ )「お前の選択を、俺もまた大切にしよう」


 微かに笑って、今度こそミルナは飛び立ちました。

.

43ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:34:50 ID:y8wJk332


/ ゚、。 /「ミルナ」

/ ゚、。 /「……いつか、返しに行くわ」


 呟いて、ダイオードは立ち上がります。


/ ゚、。 /「デルタ」


 探しに、行くのです。


.

44ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:35:45 ID:y8wJk332
+++++



 怒号と爆音と火の熱気が町を包みます。
 火そのものは大分消し止められ、煙と蒸気が立ちこめておりました。


( "ゞ)


 がしゃん、がしゃん、とデルタは町を歩きます。
 足元が覚束ない気がするけれど、機械仕掛けにそんなことはないのでした。


爪'ー`)y‐『これ以上ヴィップが力をつけては困るんだよ。だから半神をヴィップから引き離す』


爪'ー`)y‐『捕らえれば大きな力になるだろうが、なにせ扱いが難しくてね。
       使うなら機械仕掛けの方が効率がいい。ならば、』

爪'ー`)y‐『殺してしまうのが、後腐れなくていいんだよ』


 機械仕掛け。
 命令で動く機械仕掛け。
 その底にある記憶はいつかの残滓。

.

45ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:36:27 ID:y8wJk332


 布の隙間に白い花弁を見つけて、ぎゅっと握りしめました。


爪'ー`)y‐『……人だったかなんて、些細なことだろう?』

爪'ー`)y‐『機械仕掛けよ』


( "ゞ)


 がしゃん、がしゃん、


( "ゞ)


 がしゃん。


 デルタは足を止めました。


/ ゚、。 /


 ダイオードが、佇んでいました。

.

46ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:37:21 ID:y8wJk332

/ ゚、。 /「デルタ」

( "ゞ)「ダイオード」


 デルタはゆっくりと腕を伸ばします。
 ダイオードは動きません。
 爪がダイオードに届きそうになって――ぴたりと、止まりました。


 がしゃん


 大きな音を立てて、デルタは膝をつきました。


( "ゞ)「ころさなくてはならないんだ」


 命令だから。
 機械仕掛けだから。


/ ゚、。 /「そう。なら、ちょうどよかったわ」


 ダイオードはデルタの前に膝をついて話しかけました。

.

47ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:38:17 ID:y8wJk332

/ ゚、。 /「あのね。わたし、人でも機械仕掛けでもないの」

( "ゞ)「知っているよ」

/ ゚、。 /「だから、この姿だと安定しない。別な姿にならないと、大人になれない」

( "ゞ)「そうなのかい」

/ ゚、。 /「でもわたし、生まれてからずっとこの姿で、自力では破れないの。
      わたしは全部なんだけど、そこは全部じゃないの」

/ ゚、。 /「だから、あなたが助けてくれないかしら」


 ぎぎ、と首を傾げる音がしました。


/ ゚、。 /「わたしを殺して、生まれ変わらせて」


( "ゞ)

/ ゚、。 /

.

48ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:39:23 ID:y8wJk332


( "ゞ)「君も、私に君を殺せと言うのだね」

/ ゚、。 /「ええ。他の人じゃ、ちゃんと殺してくれるか分からないし。
      殺された後、捕まってしまうかも」

( "ゞ)「殺したら、戻らないのだろう」

/ ゚、。 /「そのようね。大人になったことがないから、どうなるか分からないけど」

( "ゞ)「君が」


( "ゞ)「君が、殺して欲しくないと、言うのなら、と」


 そうしたら。
 ――そうしたら?
 命令には逆らえないのに?


.

49ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:40:07 ID:y8wJk332


/ ゚、。 /「泣いているの」

( "ゞ)「泣いていないよ。機械仕掛けは泣かないからね」


 ダイオードは、デルタの冷たい頬に手を遣りました。
 緋色の瞳がデルタをじっと見つめます。


http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/7/c/7c1737ce.jpg


/ ゚、。 /「――そう」


 つぅ、と蒸気が結露して、デルタの顔を伝いました。


.

50ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:41:04 ID:y8wJk332


/ ゚、。 /「デルタ。わたし、大切にしたいってことを覚えたの」

( "ゞ)「たいせつ」

/ ゚、。 /「ミルナが言っていたの」

/ ゚、。 /「タカラには元気でいて欲しいし、
      この前会った流石の人たちも、怪我とかしないで欲しい」


 ダイオードは、流れる結露を拭いました。
 蕾が、ふわり、香って膨らみます。


/ ゚、。 /「デルタと一緒に居たいと思うのも、大切なの」


 花が、溢れる力が、


/ ゚、。 /「……もうすぐ咲くの。そしたら、この身体じゃ駄目なの」

( "ゞ)


 大切、とは。

.

51ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:41:51 ID:y8wJk332

( "ゞ)「ダイオード」

/ ゚、。 /「なぁに、デルタ」


 どうしたことかとデルタは思いました。
 自分が何を言おうとしているのか、分からないのです。


( "ゞ)「……ダイオード、」


 どうしても、それきり言葉が続きません。


/ ゚、。 /「ねえ、デルタ」

( "ゞ)「何だい、ダイオード」




/ ゚、。 /「あなたがいて、よかった」


 ぎしり、デルタの腕が鳴りました。


.

52ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:42:35 ID:y8wJk332


 ごう、とデルタの目の前に情報が溢れます。


 知らない街を見詰める知らない少女。
 けれど確かに知っている彼女。


o川川o)


 川o  )


 こちらを振り向いて。


o川* ー )o


 白黒、  ノイズ、



      「      ?」



 聞き覚えのない男の声。
 口から。


.

53ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:43:15 ID:y8wJk332



o川*゚ー゚)o




 不意に、色が、




o川*^ー^)o



.

54ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:43:51 ID:y8wJk332




        「しあわせ だよ」




.

55ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:45:35 ID:y8wJk332

( "ゞ)



( "ゞ)

( "ゞ)「……ダイオード」

/ ゚、。 /「なに?」

( "ゞ)「君は、幸せかい?」


 ダイオードは、ぱちりと目を瞬かせました。それから少し考えて、答えます。


/ ゚、。 /「しあわせ、なんじゃないかしら」


 いつもと殆ど変らぬ表情でした。
 けれどもデルタには、それが彼女の笑顔と重なって見えました。


.

56ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:46:18 ID:y8wJk332


( "ゞ)

/ ゚、。 /


( "ゞ)「さようなら、で合っているかい」

/ ゚、。 /「さようなら――またね」




      「ありがとう」



.

57ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:47:19 ID:y8wJk332
+++++

 りん、ごぉん、りぃん、ごん


( ,,^Д^)「……相変わらず、ここは鐘の音しか聞こえませんね」


( ,,^Д^)+

( ,,^Д^)「え?」


( ,,^Д^)つ+

( ,,^Д^)「これは、ダイオードの」


( ,,^Д^)つ+

+
( ,,^Д^)つ


 花弁は、こう、と輝いていました。
 そしてゆっくりと、ゆっくりと光に溶けて――タカラの身体を包み、消えていきました。


( ,,^Д^)

( ,,^Д^)「……あたたかい」

( ,,;Д^)「……っ」

( ,,ぅД;)「何で、僕、泣いて……」


( ,,;Д;)「……ダイオード……?」

.

58ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:48:01 ID:y8wJk332


l从*・∀・ノ!リ人「姉者ー! 見て見てなのじゃ!」

∬´_ゝ`)「なーに、って何これ!」


 妹者と姉者の目の前には、一面の緑が広がっていました。
 白い花が、点々と緑を彩っています。


( ´_ゝ`)「おお、見事なもんだ」

(´<_` )「急に不思議なのりゃ」

(´<_` )「まったくだ」

( ´_ゝ`)「いいじゃないか、これで暫くは羊の餌に困らないぞー」

(´<_` )「ふ、確かにな」


 妹者のはしゃぐ声に、兄弟は顔を綻ばせました。


.

59>>57訂正:2014/03/24(月) 00:49:59 ID:y8wJk332
+++++

 りん、ごぉん、りぃん、ごん


( ,,^Д^)「……相変わらず、ここは鐘の音しか聞こえませんね」


( ,,^Д^)+

( ,,^Д^)「え?」


( ,,^Д^)つ+

( ,,^Д^)「これは、ダイオードの」


( ,,^Д^)つ+

      +
( ,,^Д^)つ


 花弁は、こう、と輝いていました。
 そしてゆっくりと、ゆっくりと光に溶けて――タカラの身体を包み、消えていきました。


( ,,^Д^)

( ,,^Д^)「……あたたかい」

( ,,;Д^)「……っ」

( ,,ぅД;)「何で、僕、泣いて……」


( ,,;Д;)「……ダイオード……?」

.

60ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:51:00 ID:y8wJk332


(*゚∀゚)「はー、何とかシタラバ追い返せたなー」

(-_-)「……疲れた」

(*゚∀゚)「お疲れヒッキー。しかし見つからなかったな、半神」

(-_-)「……」


( ゚д゚ )


(*゚∀゚)「何見てんのー、ミルナー」

( ゚д゚ )「花」

(*゚∀゚)「お、ほんとだ。てかお前、花を愛でる趣味とかあったっけ?」

( ゚д゚ )「ない」

(*゚∀゚)「何だよー、冷たいなー」

( ゚д゚ )「いいから後片付け行け。ずっと武器出してるのは俺もキツいんだ」

(*゚∀゚)「はーいはい」

.

61ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:51:55 ID:y8wJk332

(-_-)「……ミルナ」

( ゚д゚ )「何だ」

(-_-)「嫌になった?」

( ゚д゚ )「……」

( ゚д゚ )「いいや」

(-_-)「そ」

( ゚д゚ )「何でそう思った」

(-_-)「ミルナのもう半分は、同じことしたいのかなって」

( ゚д゚ )「……どうだかな」

(-_-)「僕は報告行ってくるよ」

( ゚д゚ )「ああ」

(_- )「そうだ、ミルナ」

(_- )「ミルナのもう半分も、僕は好きだからね」

( ゚д゚ )「……」

(   )ノ「じゃ」スタスタ

( ゚д゚ )

( -д- )「……ありがとう」

.

62ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:52:47 ID:y8wJk332



爪'ー`)y‐「半神は確認できず、か」

( ∵)「は」

爪'ー`)y‐「ヴィップ側には渡っていないんだな?」

( ∵)「は。それは確かかと」

爪'ー`)y‐「ならばよし」

( ∴)「それと、自律機構デルタ型357番ですが」

爪'ー`)y‐「何だ」

( ∴)「例の、街中に蔦が溢れた時間以降、所在不明です」

爪'ー`)y‐「……ふん」

爪'ー`)y‐「捨て置け。元々、既に廃棄してあった筈の機体だ」

( ∴)「は」

爪'ー`)y‐「下がれ」

( ∵)「失礼致します」( ∴)

.

63ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:53:29 ID:y8wJk332


爪'ー`)y‐「……」

爪'ー`)y‐「……どうせ、もう死んでいる」

爪'ー`)y‐「お前は、あいつじゃなかった。キュートも、思い出にしかいない」

爪'ー`)y‐「……あれは幻影。俺は、これからも機械仕掛けを作り続ける」

爪 ー )y‐「……だからこれは、ただの、感傷に過ぎないんだ」

.

64ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:54:40 ID:y8wJk332
+++++


 シベリアへ向かう道を、機械仕掛けが歩いておりました。
 頭の一部に蔦を生やし、ぼろぼろの布をまとって、土を踏みしめます。

 ざくざく、ざくざく。


( "ゞ)


     、    。


( "ゞ)


 機械仕掛けは、顔の横に手を遣りました。
 そこに、ふわりと白い布が絡みます。


/ ゚、。 /


 一反木綿、と他方で呼ばれるそれは、喋りません。


( "ゞ) / ゚、。 /

.

65ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:55:30 ID:y8wJk332


( "ゞ)「ダイオード」


 だから、名前を呼ぶのは機械仕掛けだけです。


/ ゚、。 /


 同じなのか、機械仕掛けには分かりません。
 ただ、一反木綿は機械仕掛けについてくるのです。


( "ゞ)「シベリアは、まだもう少し先だよ」

”/ ゚、。 /


 ざくざく、ざくざく。    、    。


 機械仕掛けと一反木綿は、共に歩き続けます。




             了

.

66ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 00:57:53 ID:y8wJk332
使用作品
No.34
http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/e/e/ee9f037a.jpg
No.50
http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/2/f/2f698be5.jpg
No.49
http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/1/3/1329ab77.jpg
No.26
http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/7/c/7c1737ce.jpg


使わせて頂いてありがとうございました!
投下開始は一応時間内だったけど、特にまとめさん、すみませんすみません

67ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 01:45:59 ID:???
乙 読み入った。

68ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 03:24:55 ID:???
余韻のある静かで良い終わりだった


69ブーン系の名無しさん:2014/03/24(月) 23:50:28 ID:BQOau9q6
語られなかった部分を想像したくなる話だな
面白かった、乙

70ブーン系の名無しさん:2014/03/28(金) 06:40:54 ID:lnn1BzBY
いい雰囲気だ
好き

71ブーン系の名無しさん:2014/07/25(金) 22:28:09 ID:???
タカラを気にかけるダイオードの、分からないことでも誰かに聞かなければ落ち着かない感じ、すごく愛しい
淡々としている中に想いが息づいていてとても好き


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