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仮投下スレ

195黄金の乙女たち ◆NZZhM9gmig:2016/09/30(金) 12:41:12 ID:2/2/5o6M0

 だが『再誕』とは文字通り、再び誕生するという事。そして『再誕』を果たすためには一度死ななければならない。
 かつて女神アウラが、自らを犠牲にすることで“薄明の女神”として新生ように。
 モルガナの目的が果たされ『再誕』が発動すれば、『碑文』の宿主であるトワイスは、その反動で死に至る。
 しかしそうして発動した『再誕』で蘇るのは、当然トワイスではない。
 その事を、『再誕の碑文』を宿すトワイス自身が理解していないはずがない。
 だというのに、オラクルには、彼がその事に怖れを懐いているようにはとても見えなかったのだ。

「……驚いたな。そんな事を、まさか、他ならぬ君が口にするとは。
 預言者といえども、全てを知ることは出来ない、という事か」
 そんなオラクルへと、トワイスは本当に意外そうに口にした。

「君は以前こう言ったね。
 私には未来がない。そもそも選択をする余地が残っていない、と。
 その通りだ。サイバーゴーストである私は、トワイス・H・ピースマンという人間の残像に過ぎない。
 故に、終焉は約束されている。私には未来がなく、選択の余地がなく、結末は変えられない」

 それは、以前交わした会話の焼き直しだ。
 過去の亡霊と未来の預言者。
 コインの表と裏のような両者は、それ故に語ることなどすでにない。
 けれどトワイスは、しかし、と言葉を続ける。

「私の結末が変えられずとも、未来の全てが決まっているわけではない。
 今を生きる“彼ら”の結末は、いまだ空白のままだ。
 いやそもそも、未来が始めから決まっているのなら、“預言者”などと言う存在は不要だろう」

 “預言者(オラクル)”が必要とされているのは、モルガナの目的に沿うように布石を打つためだ。
 だが未来が決まっているというのなら、そんな必要はない。
 GMが、あるいはプレイヤーが何をしようと、未来は定められた形に収束する。
 だが現実にはこうして“預言者”が必要とされている。それはつまり、未来は不確かなままだという事の証明に他ならない。

「未来が決まっていない以上、私のする事は変わらない。
 より良き未来に繋がるよう、バトルロワイアルを進展させる。
 “選択”はすでに終えている。そのために私は、今もこうして欠片であり続けている。
 余白(わたし)を埋めるだろう“彼ら”の未来が、美しい紋様(アートグラフ)を描くようにと――――」

 それは、以前には語られなかった“今を生きる者”の話。
 トワイスの口にする“彼ら”が誰を表しているのか。それはオラクルの“観る”未来からはわからない。
 オラクルが見るのは数多に分岐する未来であって、過去は勿論、現在ですらないからだ。
 だが一つ確かなことは、トワイスは常に“前進”する事――喪失に見合うだけの成果を望んでいる。
 そしてこのデスゲームで、何かを喪失しているのは一方だけ。
 だからきっと、トワイスの口にする“彼ら”とは――――

「さて。そろそろメンテナンスの時間だ。もうじき“彼女”も帰ってくる。
 その前に、私は私の“役割”を果たすとしよう」

 そうして、トワイス・H・ピースマンはこの部屋から退室した。
 彼の“役割”である、“記録”を行いに行ったのだ。
 残されたものは、テーブルの上の【其ハ声ヲ預カル者(ロストウェポン)】と、結局ただの一度も口のつけられなかったコーヒーだけだ。

「……“彼女”、ね」
 残されたコーヒーを見詰めながら、オラクルはぽつりと呟く。
 トワイスの口にした“彼女”とは、モルガナのことではない。

「“彼女”――VRGMユニット、ナンバー001。ラベリング“■■■”……いえ、今は“■■”だったかしら。
 最初のゲームマスターである“彼女”は、いったいどんな“選択”を選んだのかしらね」

 ある意味において、このデスゲームの発端となった少女。
 彼女がいなければ、このバトルロワイアルはあり得なかった。
 だが彼女ほどモルガナを意に介していないGMもいない。
 それならば、“彼女”はいったい何を想い、ゲームマスターとなったのか。


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