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仮投下スレ

194convert vol.3 to vol.4 ◆NZZhM9gmig:2016/09/30(金) 12:39:01 ID:2/2/5o6M0


     -1


「いらっしゃい。丁度コーヒーが入ったところよ。飲んでいく?」

 “その部屋”へと入るなり、部屋の主たる老婆はテーブルの上のカップにコーヒーを注ぎながらそう言った。
 テーブルに置かれたカップは二人分あり、自分がこの部屋に訪れることを彼女が予知していたことがわかる。
 老婆の素性を考えれば、それはおかしなことではない。
 何しろ彼女――オラクルは、マトリックスの世界において“預言者”と呼ばれた存在なのだから。

「気づかいはありがたいが、遠慮しておくよ。
 ここへ寄ったのは単に、約束を果たすためでしかないからね」
 だが来訪者――トワイスは席に座ることなくそう答え、インベントリから取り出したアイテムをテーブルへと置く。
「『第四相(フィドヘル)の碑文』の欠片(ロストウェポン)。……そう。オーヴァンから彼への贈り物ね。
 この“世界”で彼と『碑文』との繋がりを知るのは、オーヴァンだけだから」
 そう言ってオラクルは、視線を部屋の隅へと向ける。
 そこには安楽椅子に力なくもたれ掛かる、壮年の男性(ワイズマン)――のアバターをした少年(火野拓海)の姿があった。

 ワイズマンがこの部屋にいるのは、彼の身柄をオーヴァンから引き取った榊が運んできたからだ。
 一先ずの安置所として、同じ預言者のいる部屋を選んだのか。それとも別の目的があって、わざわざこの部屋に運んできたのか。
 いずれにせよ、AIDAに侵食され意識を封じられた彼は、こうして自身の事が話題に上がっても目覚める様子を見せない。
 おそらく今の彼は、その体に剣を突き立てられたところで、指示がない限りは身動き一つ取らないだろう。

「ついさっき、スケィスが倒されたわ。
 マハも、ちょっと変わった形ではあるけれど、すでに覚醒している。
 これで覚醒した『碑文』は六つ。残る二つが目覚めるのも、そう遅くはないでしょうね」
 世間話のように紡がれたその言葉は、“預言者”であるオラクルの言葉であるからこそ、重い意味を持っていた。
「そうか。モルガナの目的は、恙なく果たされているという訳だ。安心したよ」
 だがトワイスは、むしろ気が楽になったとでもいうかのようにそう言葉を返した。
 そのあまりのそっけなさに、さすがのオラクルも僅かばかり表情を変える。

「………………。
 あなたは本当に、それでいいの?」
「いい、とは?」
 僅かな間を置いて掛けられたオラクルの問いに、トワイスは静かに訊き返す。
 質問の意図が読み取れなかったのか、それとも解った上で、そう訊き返したのか。

「私達ゲームマスターには、その“役割”と一緒に『碑文』が与えられている。
 それは戦う力としてではなく、それぞれの“役割”を果たすため。
 私の『運命の預言者(フィドヘル)』がそうであるように、あなたの『再誕(コルベニク)』もそう。
 けど“モルガナの望み”が叶えられた時、『再誕』を司るあなたは――――」

 オラクルの役割は、“預言”の力を使い、モルガナの目的に沿うようバトルロワイアルの流れに布石を打つこと。
 以前にファンタジーエリアの小屋で、茅場明彦/ヒースクリフとオーヴァンに接触したのもそのためだ。
 あそこで二人と接触していなければ、このバトルロワイアルの状況は現在とは大きく違ったものとなっていただろう。
 それが“選択”を司るという事。
 あの小屋での“選択”によって二人は決別したが、場合によっては、二人が手を組む未来もあり得たかもしれなかった。
 仮にそうなってしまえば、GM側にとって大きな不利となっていたことは想像に難くない。

 対してトワイスの役割は、バトルロワイアルで起きたあらゆる事象を“記録”すること。
 トワイスが『再誕の碑文』を与えられているのも、その関係からだ。
 ……いやそもそも、八相という存在自体が、本来は“ある目的”のためのデータ収集プログラムに過ぎなかった。
 それがモンスターとして存在しているのは、アウラあるいは腕輪所持者への対抗手段として、モルガナがプログラムを変質させたからだ。
 その八相本来の役割を、トワイスは『再誕の碑文』によって代行しているのだ。
 そしてその“目的”――つまりモルガナの望みが果たされた時、トワイスの“役割”は終わり本来の『再誕』が発動する。


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