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没ネタ・妄想SSスレ

1 ◆rgg2/UGNQg:2011/12/01(木) 00:23:07 ID:e5rsTO8E
悔しい思いを新たな糧にッ 『納得』はすべてに優先されるぜッ

2名無しさん:2011/12/17(土) 00:32:07 ID:KNI3QBCs
次スレの>>1のためのAA改変してたけど
よくよく考えたら>>1でネタバレ(徐倫が死ぬこと)するのだめじゃーん&いまいち元ネタに忠実な改変にならない
って思ったのでここに投下(いいのかな?)。近日中にAA持ってくるからお待ち下さい



              _,,. - ..,_
            ,.イ‐-、     丶、      登場話で死ぬジョジョロワ参加者がいるそうだ……
           / i   ',       ハ     その参加者は得てして他の参加者よりもとても上手に
 .           ,'  ヽ.  }、       !i    バトルを展開するのだが……
           i   F‐、{ \     ,ィ.!
           /¨ヽ. l: :l :〉>: `:ー一';ル'    前作で活躍しすぎると次作であっさり死ぬ危険性を
        ,..ィi:f:ゝヽ {<ヽ〉: :i : : : :》:}     前の参加者から教わっていないため
       /_;.::l入__、 :l.i: ィt:ッ、シ、 ;.ィfフ     つい 死んでしまうのだ
 .    /:::L.ノ:::i: : :.l: : )): : ̄ : : ,:i `/、
   /::::::::i::r‐'ハ: : \' i.: : : :._'´: !:/:::::ヽ    だが 前の参加者(ジョジョ2nd)は教えないのではなく
 ./:::::::::/ト、ー'::::::;\: :\: : ←-`オ:::::::::::::',   そのまた前の参加者(ジョジョ1st)教わっていないので
 ::::::::::::/::::::l::::\::( ):::/. ̄ ヽ:`ニ/::__::::::::::i   . .. . . .. .
 ::::::::::〈:::::::::i::::::::::>::⊥..__,,.彳ヽ::(_  i::::ノ   教えられないのだ
  ̄`ヽレ-、:::\::::::::___:::::\ ll. レ'" /:/
 :::::::::::ノ:\:::::::::∨  r':__..ノ__ll    〈::}.       ジョジョロワ生還者は次のジョジョロワで
 :::: ̄::::::::::\:::::::}    / i >':´ ̄: 〉、     短命な者が多く なぜ死にやすいのか気付いてさえもいない
 :::::::::::::::::::::::::)、::\ / l/: : : 、: : /: : }、
 ::::::::::::::_:_:/::::ヽ::/l /l: : : : : :.}/: : : /: i
 ::::::::::::::::::::::::_\:::/ l/l i: : 、_ノ": : : : /: : iヽ.  徐倫は短命だったな
 ::::::::::;:::::'"´:/ 几 /i l ';: : : : : : : :l / : :/:./            _
 ::::::::::::::::::::// /::::::`::ー.、 V: : : : -‐' : i: i: / __..、,.. -‐y…ニ¨ ̄ ヽ
 :::::::::::::::::::l i i:::::::::::::::::::l_,,..ヽ-‐…''ニヤ¨二....f.⊥=ニカ ! rニ¨`>-‐‐
 :::::::::::::::::::〉.〉 ヽ-‐ニ丁Lー{ニ⊂ニヽ「r‐‐、 \‐‐-、 .i´ ̄  ( _

3名無しさん:2011/12/17(土) 00:54:56 ID:juSe3R4s
神父の煽りスキルマジ半端ないw

4名無しさんは砕けない:2012/01/07(土) 20:31:58 ID:7YuadVuc
【ルーシーとネクロファンタジアより 没ネタというか没シーン】

                     ,. -‐ニァ''¨´ ̄ ̄¨゙丶、       
            _.. --‐==<ヽ /ニ --‐‐      \   ,  '
         , '´,.ィ'´  二ニ ミ`'´             \/   
        / / /      li               /
      / / /       A  l  l  V.       / /          _/
      ,' / ./   / /  ノ l ',  V  ヽ     //",,゙ """ /    ヽ 
.      i / /  / ,.ィ   /   ヽ V  ヽ  \   ヽ、    /ノ       / 『味』 ウ・  こ
     l. ,' /  ./ // /  J    \  ヾ\. ヽ  /\     /彡 ""  |/  だ  ソ・  の
.       レ ,'  ,' ´ . //_,,..ィZク¨゙''ー-xヽ \     | i  、゙ー''"彡     /|   ぜ   を・  味
.      i. i  ,'  / ヾ-'"ィニ、= ..__,.  l\,   ,,/ ヽ、,,_ \   ,イ / |      :   つ・  は
      Vi  i  / =キゥ   ''゙fフカ¨フ'     ,,,..-'"    ー、==-ヽ'"/ / ヽ     :   い・
       \ l ハ.i._ヒノ   宀冖´    く  ゙`   ヽ゚ノ`ー=、_ ///     ∠  :   て・
         ヽ!i、 i /  、          \ヽ      ̄ ̄ //       ノ     る・
         ll ', i.、ァ-‐ 、!           (ヽ          //     ̄ノ
         乂i ハ i )vソ             >、       //      /    ̄ヽ、
          ,Xーヽ,ニ、.、          /'"´ 'i     //      /       ∨ヽ/
           .  f└‐`オ        ,i|  ,"__}    //  /  /    
.            , >‐''¨´         ヽ_人`'′ //  /  /
          ,.イ.   !    . .:        / i'゙' /-─‐‐''/_/_
        _,,<      `┬==¨`丶、:::   ヽ、___,,,, -‐‐  ̄
     _,,<:::丶、   U ', l  i l  iハ:        ヽ\

5由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/14(火) 18:42:41 ID:waP9vPik
ん……こんなとこまで来るなんて君たちも物好きだね。

――なに?「俺の話で使ってるパロディの元ネタを知りたい?」

おいおい……あんまりそういうメタな発言をするもんじゃないよ。
俺が言えた事じゃない?まあそう言うなって。
ま、せっかくここまで来てくれたんだ、君たちには話してあげよう。


まずは『欲望』からだな。
“仮面ライダー”はオーズの事だね。タカ!トラ!バッタ!っていうアレさ。
まあ俺は仮面ライダーやってる時間にテレビを見れるような生活してないんだけど。

次に君らには『執筆』の話をしたんだっけ?
えーっと、“女子高生が経営者の理念について書かれた本をもとに弱小野球部を甲子園に導く物語”は『もしドラ』だ。
もしも……野球部の?女子高生が?どっち先だっけ?正式名称言えないんだよ俺。
それと“己の血液を賭けた狂気の麻雀対決の物語”は『アカギ』。鷲巣麻雀のことだね。どこのメーカーだっけ、透明の麻雀牌販売してたの?
それから“驚異の戦闘民族が不思議な七つの宝玉を求めて戦う物語”はご存知『ドラゴンボール』。
俺としてはヤムチャとかクリリンとか、一般人から見れば相当強いんだけど作中では弱いキャラが好きなんだよねー……そうそう、ドノヴァンとか。

その後は『演者』か。自作自演の話だったね。
“えっやっぱりこれって自演合戦だったの?”は皆が話してたセリフの一つだよ。覚えてない?
後は“格闘家”だ。これは『長島☆自演乙☆雄一郎』さん。たしかプロレスに転向したんじゃなかったっけ。テレビで見なくなったなー。

次の『取柄』はちょっと特殊、かな?
“パッと見が一般人と大して変わらないアイドル”は最近増えてるから特に具体的な名前は挙げないよ。
で、問題なのが“愛と夢”だ。これは……うーん、この世界でないどこかで行われた、今回のようなバトルロワイヤルのエピソード、とだけ言っておこうかな。

えっと、次は『憤怒』だっけ。技の名前を叫びながら、って話。
真空波動拳はリュウ、釘パンチはトリコ、ティロフィナーレはマミさん。
俺は当たらないと思うんだよなー、逆に瞬獄殺なんかは当たると思う、絶対。

ドルドが登場した『発見』も取柄のように特殊かな。
“スタンドと能力が一致しない”ってのは……これも別の世界のバトルロワイヤルでの話と言っておくか。
――ん?2nd荒木?エピローグっぽい没ネタ? なんだ、俺よりよっぽど詳しいじゃん。

それから『獲得』。ギャンブルで棒倒しってのは俺実際にやったことあるんだよ。
ここで出てきたのは“握力で白の牌を作る”ところだね。『ムダヅモなき改革』の轟盲牌って技だ。
あのマンガを読み始めて麻雀に興味持ったんだよ、実は。

『空気』では空気キャラってどういうキャラよ?って話だったね。
“酸素比率が6%を下回る大気を吸えば即気絶する”ってのは『グラップラー刃牙』に出てきた猛毒・柳さんの必殺技。
漫画やアニメ見た後って妙に真似したくならない?フュージョンとか二重の極みとかさ。
俺もやったよ、顔に手のひら当てて。でもアレだね、それで真空出来たら俺ぁこんな生活してないと思うよ、ハハハ。


さて……こんなとこかな。
気が向いたらまた教えてあげるよ。気が向いたらね。
だってパロディの解説ってダジャレを説明するのと同じくらいつまらないと思わない?
ま、そのうちね、そのうち……

6名無しさんは砕けない:2012/02/14(火) 22:58:12 ID:lb1YJfIE
なんか小賢しくてイラッとくる文だなぁ
ケンカ売ってるわけじゃないよ
ありのまま感想を書いただけなんだ すいません

7 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/14(火) 23:51:29 ID:waP9vPik
我ながらこの文の小賢しさには困っていますorz
最初の2作品あたりまでは割と丁寧な言葉で「俺パート」書いてたんですが、それがだんだん暴走気味に。
今更このスタイルを変えるのもどうかなと思いつつ……
まぁ、ここは没SSって事で勘弁してくださいorz本編ではどうにか気をつけていきます。。。

8没話 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/02(金) 19:08:39 ID:vxbHauxU
億泰……億泰よ……

お前と形兆には悪いことばっかりしてたなぁ……

殴った事も一度や二度じゃないもんなァ……

謝ろうと思ったことだってあったんだぞ……

でもなァ……俺のこたぁもうどうでもいいんだ……

頼むから……あいつに……もう出ていっちまったがよ、いつか会う時が来るならよ……

×××に……母ちゃんに、悪かったって言ってやってくれよ……

***

「親父……」
目が覚めた億泰は自分の身体に違和感を覚える。
背後に悪寒を感じてとっさに避けたものの防ぎきれなかった傷には包帯が巻かれ。
更には自分が何者かに抱きかかえられている。

「いいえ、私はあなたのお父さんではないわ」
状況を把握しきれていない億泰に優しくかけられたその声は女性のものだった。
先の夢がフラッシュバックする。まさか、まさか……
意を決し、その先を聞く。
「お、お袋……?」

「――いいえ。でも、貴方がそう感じたいのなら、私のことを母と呼んでも良いわ」

帰って来たのは否定の言葉。しかしそれは紛れもなく“人の親”の言葉だった。
そして、そこまで聞いて気付く。彼女の顔色が見る見るうちに悪くなっていくことに。

「ふん……あの蟲男はともかく、このカーズの目を盗み切れると思っていたか?
 女ごときがこそこそと。誰が介抱していいだなんて言った?」

聞こえてくるその声を待っていたかのように女性が崩れ落ちる。
ずるり……どしゃっ、という音とともに彼女の背後に確認できた男はカーズであった。

億泰は動けない。女性が上に圧し掛かってきているのもある、恐怖もある。
そんな彼を見かねてかカーズの方から口を開いてきた。

「仇打ちでもする気分になったか……んん?
 この青い男と一緒になってかかってきても良い……ぞッッ!!」
言い終わると同時に高々と飛びあがる。カーズのそのまた背後からバオーが切りかかっていたのだ。

二人は早々に路地を飛び出し戦いを再開しだした。
億安も慌てて後を追おうとする。奴だけは許せない。
しかし、それを阻むものがいた。億泰の手を掴み、ゆっくりと喋り出す。

「貴方は……誇り高く生きなさい。私を刺したあの人に対する“仇打ち”でなく……自分の意思で戦いなさい。
 どんなに負けても良い。その代わり、気高さだけは忘れてはいけない」

腹から血を流し、手に込める力も細々としたその女性は、その苦痛を一切表情に出さずにそこまで言い切って、ひと息ついた。
そして、億泰の目をまっすぐ見て、こう言った。

「貴方がもし……息子に、ディオに会う事があるのなら。
 さっき言った言葉を、誇りを忘れるなと、そう、伝えて頂戴」

それきり、彼女は動かなくなった。

***

後略【ディエゴ・ブランドーの母 死亡】

9没話 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/02(金) 19:09:43 ID:vxbHauxU
と、こんな話を考えていました。
穴だらけで読みにくい文章ですが、まあ没ネタですし。

流用できるかもと思ってカットしましたが、最初と最後の『俺パート』では「勝者の定義」について話すつもりでした。
本編中ではこの後、戦闘に億安が合流 or カーズがなかなか立ち去らず、そこを母親に押さえつけられてバオー合流
→カーズ逃走→逃げたカーズ・倒せなかった二人。ここでの「勝者」は誰だ?→最後まで自分の信念を貫いて死んだディエゴの母が勝者だ
……という流れを考えていました。
母のいない(写真には写ってたけど)億泰に、Dioの母が遭遇。
“DIO”の母と錯覚した億泰は本当に“ディオ”にそれを話せるときが来るのか!?
なーんて、妄想です。

10 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:15:23 ID:9iQe6KeE
うお、思いもよらない人物登場…これはこれで見てみたかった、と言ってみる
ていうかDIOと億泰の会話とか想像を絶するwしかも明らかにかみ合わない…w
ifっていい単語ですね!
後ほど自分も没話をひとつ投げておきます

11没話「角砂糖は命より重い?」 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:39:02 ID:9iQe6KeE
――破損、不具合共に無し。
――特殊装備類、重・軽火器類、問題なし。
――体調はすこぶる良い。

(どういうことだか、直ってやがる。おれはあの『バオー』を追っていたはず……)

小さな店内、ふたつしかないテーブル、彼はその一席に掛けていた。
ドルド『中佐』と本来は階級呼称がつくが、ドルドは彼を無能呼ばわりした組織を見返すべく、半ば自棄になって独断専行を決行していた――はずだった。
この店を調べた際に見つけた鏡で確認したが、橋沢育朗こと『バオー』に切られた首はおろか燃やされた人工皮膚や人工頭髪まで元通りに治療されていた。
一皮むけば文字通りグロテスクな金属覗くサイボーグのドルドだが、今の彼は気取った山高帽に黒いマント、伸ばした(植え込まれた)黒髪を丁寧に撫でつけ流している容貌も相まって、少々時代錯誤の感はあれどいかにも紳士然とした風体だった。

「現在位置は『F−9 レストラン トラサルディー』か……しかしなんなんだ、この地図は?」

子供がやたらめったらに書き殴ったラクガキのような、ふざけた地図を片手にドルドは呟く。
わけのわからないことだらけだった。
暗闇で目が覚めたとき、脱走に限りなく近い独断専行に追手でもかかったのかと思っていた。
だが、あの舞台上の老人が現れ――演説の時点で頭がイカレているとしか思えなくなった。
殺し合いの祭典だなんて――どうかしているんじゃあないか?
説明というには余りにも乱暴な宣言と、殺人。
ああ、あれは殺人だった。戦場を駆って2500人も殺してきた己だからこそわかる。
ひとの首をオモチャか何かのように軽々と吹き飛ばした事実。
このゲームはあのイカレた爺さんの言うとおり、人を殺すことが推奨されたゲームなのだろう。

「組織の仕業かとも思ったが……どうもそうじゃあなさそうだ。
 もっと上、ってことか……? 想像もつかないな」

ドルドが所属していた組織『ドレス』は、大元を辿れば旧日本軍の流れを組む大掛かりな極秘研究組織だ。特殊工作部隊中佐とはいえ一軍人に過ぎないドルドに、それ以上の話は流れてこなかったが、米軍――合衆国まで噛んでいたという噂も耳にしたことがある。
しかし、現場で任務に赴くドルドにとっては上層部がどこのどいつだとかは些細なことだ。
上司と言えなくもない、霞の目博士らからの痛烈な皮肉に煮えくりかえっていた頭も、あの魔法かまやかしのような舞台を見たことで、氷水でも浴びせられたようにクールダウンした。
わけのわからないことはたくさんあるが、どうやらバオーの件から外されたらしい以上、新たな『上司』の『指令』に従うことはやぶさかではない。

「まあ何にせよ、お墨付きというのも悪くない」

――犬みたいなこの首輪だけは頂けないがね。

組織において順調に、至極順調に出世してきたドルドは、このゲームにおいても優秀な成績を残すことを決めた。
彼にとって殺人とは、人道にもとる忌避すべき汚らわしいことでもなんでもなく、単なる『仕事』に過ぎなかった。更に付け加えるなら、彼は実に『仕事熱心』なほうでもある。
狩られる側より、狩る側に。強者であることが彼の矜持。
サディスティックな期待感に舌舐めずりし、ドルドはこれといった収穫のなかった店内を後にすべく立ち上がった。

「……ん?」

いま、床が揺れたような――

12没話「角砂糖は命より重い?」 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:39:25 ID:9iQe6KeE
「なぁ〜〜〜〜オメェェェよォォォォォ――――角砂糖持ってねェかァァァァ?」

『そいつ』はさも当然のように、固いはずの床からずるりと頭を生やしている。
常人ならば一呼吸目は驚愕に硬直し、二呼吸目にあらん限りの悲鳴を上げる――そんな全くもって気色悪いことこの上ない構図に、ドルドはしかし息を詰めて踏み止まった。

(な……なんだ、コイツは……組織の超能力者か何かか?)

「聞こえねぇのかァ? なんかヘンな格好だしよお、頭ぁイカレてんのかぁ?
 持ってねーならよー、用はねーんだよッ! 殺すぜェェェッ?!」

今にもグルグルと唸りだしそうな勢いで唾を飛ばしながら告げられた台詞は、子供が癇癪をおこしているようでもあった。
床から生えている男は、どうやら大変に直情的で気の短い性質らしい。まるで言葉を喋る野生の猛獣だ。

(――悪くない、コイツは『簡単そう』だ)

ドルドは恐ろしい勢いで思考を巡らせ――答えた。

「……角砂糖、角砂糖か。きみは角砂糖が好きなのか?」
「あぁ? オメー持ってんのか? もったいぶらずに寄越せよオイッ」

ドルドの余裕混じりの発言に気分を逆撫でられたのか、用心深く地面からこちらを窺っていた男は水辺からあがるようにずるりと全身を乗り出し、ドルドに掴みかかろうとしてきた。
その動きは素早く、ハイエナが獲物に飛び掛かるかのようだったが――――間一髪、ドルドの機械化された右手が男の額にぴたりと『セット』された。
掴みかかっていた男の手が、勢いを失ってだらりと両脇に垂れさがる。表情はうつろになり、寝ているのだか起きているのだかわからない。

「……フン、他愛ないものだな」

身体の実に半分以上を機械化されているドルドは、いたる部位に武装を仕込んである。
男の額に突きつけられているのは右手の人差し指。すぐに補助具が展開し、『ドレス』の科学者共のオモチャのひとつである『催眠装置』が機能し始める。
対多数ではあまり展開できない装備のひとつだが、一対一の状況かつ至近距離まで詰められれば結構な性能を発揮する便利なオモチャだ。
超能力者相手は試したことがなかったが、催眠状態に出来なかったときは――その時は、手甲部に仕込んだ機銃で頭ごと吹っ飛ばせばよかった。試すだけの保険はあったわけだ。

「さて、色々吐いてもらうとしよう――」





13没話「角砂糖は命より重い?」 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:39:51 ID:9iQe6KeE
セッコはどうすればいいのかわからなかった。
ただひとつ理解していることは『ここには何もない』ということだけだった。
だだっ広い野原の真ん中、表現するならそういうほかない。セッコは夜空の天井を目にしながら目を覚ました。
土の匂い、草の匂い、風の匂い。原始的な匂いの充満する中で、生き物の臭いだけが酷く希薄だった。ほとんどしなかったと言ってもいい。
セッコがブチャラティを追って居たはずの広場でも、もっとヒトの臭いがした。気配があった。
まずセッコは反射的に『チョコラータ』を思い出した。セッコにとって頼るべき相手は、彼を置いて誰が居るだろう。頭の良いチョコラータなら、セッコを導いてくれるに違いない。
チョコラータは言っていた。
『ミスタは仕留めた』『オレたちは無敵だ』
チョコラータがチョコラータである限り、セッコはその言葉を無条件に信じている。それがセッコの気質でもあり、処世術でもあったからだ。

「で、電話……携帯電話ッ!」

あの老人はなんと言っていただろう?
『バトルロワイアル』『殺し合い』『なんでも与える』そう言っていた気がする。

がさがさと体中を探りまわし、目当ての携帯電話はおろかチョコラータのハンディカムまで持っていないことに気づき、セッコはギリギリと歯ぎしりをした。
チョコラータに怒られる。くれると言っていたご褒美の角砂糖も投げてもらえないかもしれない。

あの老人はチョコラータよりも頭が良いのか?強いのか?お金持ちなのか?
セッコにはわからない。ただ『ぽっ』と出てきた爺さんより、セッコを大事にしてくれていたのはチョコラータだ。遊んでくれたのもチョコラータだし、頭をなでたり背中をかいたりしてくれたのもチョコラータだ。

「なんだぁ、この紙っぺら」

傍にあったデイパックをぶちまけて見つけたものは、味気なさそうなパンに水と、道具が少々。角砂糖なんてどこにも入ってやしない。
何か書いてあるのかと折りたたまれた紙っぺらを開けると、ころりとペンダントが転がり出てきた。大きくてきらきらした綺麗な赤い石がはめ込まれたものだったが、セッコにとっては特別価値のあるものではない。捨てるのも何なので持っておこう、その程度のものだ。

「……どうする、どうする、なんでチョコラータいねぇんだよォ……」

目印も何もないこの場所は、地図をみたところでよくわからない。
チョコラータは、このわけのわからない町のどこにいるとも限らない。
老人の言葉は……信用できるのかわからない。
ないないづくしのなかで、セッコが思ったのは『角砂糖食いてぇなぁ』という、本能に基づいた欲求だった。

「とりあえずよー、誰かのいるところに行きゃあ『ある』んじゃねぇかなァァアァァ」

そしてセッコは探し出す。オアシスでその場に潜り、自らが持つ原始的な才能でもって捉えた、もっとも近距離にいる『誰か』を。





14没話「角砂糖は命より重い?」 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:43:20 ID:9iQe6KeE
ここまで書いて、放置しましたw
登場話を想定して書いていましたが、いまいち話が転がっていかなかった、というのが理由です
どちらも既に登場話が書かれましたので、供養がてら置いていきます

15 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/08(水) 23:31:17 ID:OkYQDzBY
ズガン枠がドノヴァンで、2ndのセルフパロディ・ガシッボカッされる→
ディスコが教会到着したらドノヴァン襲撃→
しかし「当たらなければどうという事はない」で最後の切り札としてドノヴァンが投げた破裂するディスクも返されて死亡→
それを見ていたプッチ神父(ガシボカで操ったのは神父の命令ディスクだった)がディスコをスカウト、仲間に引き入れる→
「なんであの場に4人(プッチ、HP、ディスコ、ミキタカ)いるんだよミキタカ救えねーじゃん」とミスタ涙目

……そんな話を考えてました。ドノヴァンごめんねw

16没話「暴君」 ◆q87COxM1gc:2015/02/08(日) 00:04:14 ID:FELhrfrc
「悪の教典」後、もし花京院が堂々と姿を現していたら。
そんな「もしも」の話です。


救急車の中から顔を覗かせていた者たちは、何を話し合ったのか一人を残し全員中へ引っ込んでしまった。
外に残ったのは空条承太郎のみ。たった一人で、花京院の元へ歩いてくる。
その足取りに迷いはない。
おそらく、花京院が本物か、信用できる相手なのかを見極めるためだろう。かつて仲間であった空条承太郎であれば、花京院のことをよく知っている――そう思ってのことだろう。
だが、それは花京院にとって好都合だった。
「よう、花京院」
何を考えているのか分からない、抑揚のない調子で承太郎が声をかける。足は止まらない。
花京院は内心でほくそ笑む。
仲間の死を伝え、動揺したところを一気に叩く。
シンプルだが、獲物は目の前にいるのだ。下手に長引かせて襤褸を出す前に、決めなければならない。

「ジョジョ…実はあそこの池の中に、アヴドゥルさんが…」

指し示した方向に承太郎が向くのを確認すると同時に、己のスタンドを出す。

そして次の瞬間。

花京院は全身を殴られて宙を舞っていた。
(え―――――――――?)
予備動作などなかった。スタンドを出す所さえ見えなかった。気が付けばすでに、己の体は再起不能なまでに痛めつけられていたのだ。
いくら素早い動作ができる承太郎のスター・プラチナであろうと、ほんの数秒の間に花京院の額に肉の芽があるかどうかを調べ、さらに殴り倒すなどできるわけがない。
つまり。
時を止めた空条承太郎は、なんの迷いもなく隙を見せた花京院典明をボコボコにしたのだ。

「バッ、バカな…いつ、見破った…ッ!!」
「見破ってなんざいねーよ。ただ、殴ってからじっくり考えようと思っただけだ」

そう。彼は、全ての判断を後回しにしたのだ。
花京院が操られていようと偽者だろうと、取りあえず殴ってから考えればいい。
再起不能になってから、じっくり調べてやればいい――――。
空条承太郎は、そういう風に考えた。

「嘘だろ、承太郎…」
「本当だ」

花京院はそのまま意識を手放した。







「え〜っとぉ…」
救急車の中から様子を見ていた仗助は、恐る恐る承太郎に問いかける。
「あの…実は、ナンかおかしい所があったから殴ったんスよね?」
「いいや」
「えっ」
これには、花京院の情報を伝えた康一も青い顔で頬を引きつらせた。情報が間違いである可能性だってあったのだ。
「も、もしなんもなかったらどうするつもりだったんスか…!!」
「謝ろうと思っていた」
「え?」
「もし、あいつに肉の芽もなく誰かの変装でもなかったら、謝ろうと思っていた」
『…………………』
その答えに、全員が絶句する。
そして、同じことを思う。

自分に、怪しいと思われるような情報がなくてよかった、と。

もしそんな話があったら、まず間違いなく問答無用で承太郎に殴られていただろう。
ボコボコにされ、再起不能になり、そして情報が誤りだと分かったとき、彼はこう言うのだ。
『すまん』
と。

ジョセフは天を仰いだ。

ああ、神様。
私の孫はどうしてこんな風に育ってしまったのですか。

たとえ回復できる仗助がいたとしても、かつての仲間を出会い頭で再起不能になるまで殴ったりはしない。
そんなことをすればまず自分が相手からの信用を失い、周囲からも『危ないやつ』と見られる。
攻撃が失敗したらますます泥沼の始まりだ。確実に死闘になる。
なぜ攻撃したと問われて、本物か確かめようと思ったからだなどと答えれば火に油だろう。

花京院の肉の芽を抜く承太郎を横目で見ながら、ジョセフはもう一度大きくため息を吐いた。

17没話「暴君」 ◆q87COxM1gc:2015/02/08(日) 00:09:58 ID:FELhrfrc
何となくこの承太郎ならやりかねないと思って書いたものでした。
ほぼギャグで、最初から本編に載せるつもりはなかったのでこちらに。

18没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:23:50 ID:r/knd2Mo
月明かりの差し込む暗い部屋で、一組の男女が向かい合っている。
片手に持ったデイパックを前に突き出している男の名はサンドマン。 
手の中のエメラルドを弄びつつイスに腰掛ける女の名はミラション。

数秒前、ミラションは『賭け』を提案し、サンドマンはそれを受けた。
―――『命』ではなく『物』を賭ける勝負を。
そして賭けるのは、己の手に持つ品である。


ミラションはテーブルの上に散らばったカードを何枚か集めると、
テーブルの中央にエメラルドの包みを置いてサンドマンに向けて話し始める。

「……とりあえず座ったら? それとも、立ったまま勝負するつもり……?
 ああ、それとその荷物はこっちに渡してくれる?」
「………………」
「別に何もしやしない。勝負が終わるまでイスの上にでも置いておくだけ。
 あたしも宝石をテーブルに置いた……」
「………………」

サンドマンは無言のままデイパックにもう片方の手を添えてミラションに手渡し、三つのイスのうち真ん中のものに腰掛ける。
受け取ったミラションはドアの近くのイスの上にデイパックを置き、
窓側のイスに座りなおしたところで一つの疑問を口にする。

「そういえば、勝負の前に一つだけ聞いておきたいんだけど。」
「……さっさとしてくれ。」

やれやれ、とかぶりを振りつつ、ミラションは聞く。

「あんた、どうしてこの建物に入ってきたの? ……あたしが中にいるってわかってたの?」
「外から窓に人影が見えた。……それだけだ。」

なるほど、とミラションは頷く。
一人では心細いが篭城を決め込む以上、なるべく参加者との接触は避けたい。
しかも、この男は自分に気付かれないように忍び込んできた。
もし彼が「その気になっていた」場合、下手すれば自分は今頃天国行きである(何故か地獄に行くとは思えなかった)。
となれば、自分の存在が如何にして露見したのかは第一に知っておくべきことだったのである。
今後は窓際で目立つ行動は控えるべきだ、と心に付け加えたところでエメラルドを見つめるサンドマンが口を開く。

「質問に答えたのだからオレの方からも一つ聞かせてもらおう。
 先程も聞いたがその宝石を何処で手に入れた?」
「……最初に持たされた荷物の中にあった紙に入ってたのよ。」
「……紙?」

そういえばそんなものもあったか、とでも考えているのか無表情ながらもわずかに眉をひそめる。
対するミラションは、彼がエメラルドを欲しがる理由など知ったことではなかった。
サンドマンを尻目に、床に散らばっているトランプに手を伸ばす。

「それで……、何のゲームをするの? ……二人ならブラックジャックでもやる?」
「……ブラックジャック?……何だそれは?」

19没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:24:41 ID:r/knd2Mo
「………………は?」

伸ばしていた手を引っ込め、さすがに驚いた顔でサンドマンの方に向き直るミラション。

「その絵札を使うのか? すまないが、オレはそれを使った賭け事はよくわからない。」
「……あんた、ブラックジャック知らないの? ……どれだけ田舎ものなのよ。どこの生まれ?」
「……アリゾナだ」
「アリゾナぁー? ……あんた、その格好コスプレじゃなくて、ホントにインディアン?」

サンドマンはアメリカ先住民の部族である。
部族内の掟を破って白人の本を読み、知識を身につけていたとはいえ、あくまで限定されたものでしかなかった。
1890年当時、トランプそのものはアメリカでも発展しており、ポーカーなどは有名だったもののそれは白人の話であり、
彼が実際にトランプに触れる機会が無かったとしても無理のないことである。

「……ポーカー知ってる? トランプってわかる?」
「名前ならば本で読んだ覚えがある、しかしルールはよくわからない。」

これはひどい……と心の中で呆れる。
相手がこれでは荷物を巻き上げるのはともかく、『取り立て人』を試すのは難しそうである。
なにせ、発動の条件は『ルール』を破るなどして『心に負い目』が存在することである。
破ったとしても相手が「ルールがわからなかったからしかたない」と開き直れば『負い目』が出来ず、
『取り立て人』が現れない可能性もある。

「それじゃあ……、あんたは何で勝負したいの?」
「『賭け』には乗った。勝負の方法はそちらで決めて構わない。オレはそれを受けるかどうかを決める」
「………………」

面倒くさいヤツだ、とミラションは思う。
そもそも、自分の常套手段は相手に『ルール』を決めさせ、それを『自ら破らせる』というものである。
自分が何もかも『ルール』を決める、ただし受けるかどうかは相手が決めるというのではまるで立場が逆ではないか。
それとも、これは自分から冷静さを奪うための作戦なのだろうか。

(仕方が無い、『取り立て人』はひとまずおいておこう……)

『常識』を知らないヤツに『ルール』の縛りは無いも同然。
幸い、勝負方法を好きに決めてよいのなら後でいくらでもやりようはある。
賭けに勝って得られる物の価値も正確にはわからない以上、ミラションはひとまず賭けに勝つことのみを考え始めた。

「……そうね。……それじゃあ、この窓から外を見て、次に通るのが男か女か当てるってのはどう?」

適当に思いついたことを口にする。
サンドマンは首を横に振りつつ長いため息を吐き、

「悪いが、次にいつ誰かが通るかわからない以上、その賭けは受けられない。
 そこまで時間は無駄にしたくない。 ……それに、その賭けは『公正』ではないだろう。
 オレが先にどちらに賭けるか決めて良いならば話は別だが。」

と切り捨てる。

20没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:25:35 ID:r/knd2Mo
ちなみにこの賭け、少し考えればわかることであるが
バトルロワイアルの最初の説明は多くの参加者にとって「見知らぬ場所」で行われた。
そこにいきなり連れてこられた参加者はとりあえず周りを確認する。誰だってそーする。
そして辺りを見回したときに正確な人数はわからずとも
『男の方が圧倒的に多い』ということはすぐにわかる。

加えて、殺し合いの場でしかも時間は真夜中である。
女が一人で歩き回ることは少ないだろうし、
理由があって動くとしても、こんなどこから狙われるかわからない通りは避けるだろう。

同行者がいる場合はどうか、その場合も答えは変わらない。
なぜならば多くの場合、その同行者は男であり、女は男の後ろから着いていくものだからである。
偏見と捉えられるかもしれないが、ここにこうして殺し合いに乗ろうとせず閉じこもっている女がいることを考えると、
あながち的外れとはいえないのではないだろうか。

無論、何かから逃げている、もしくはよほど肝の据わった女性が偶然通りかかるという可能性はあるが、
それを当てにするよりはだんぜん男に賭ける方が有利である(もちろん、この考えは二人とも理解していることであった)。


それはさておき、ミラションはというと

「ええ……そうね。 ま…確かに公正じゃないわね……ちょっとした思いつきで言ってみただけ…」

ギャンブルに焦りは禁物。冷静さを失わず、勝負方法を探して部屋の中を見回す。

―――目をつぶって腕組みをしたまま待っているサンドマン。
―――壁に掛けられた絵。
―――アンティークが上に並べられた棚。
―――時計が時を刻む音以外物音一つしない窓。
―――床に散らばるトランプ。
―――コーヒー、チップ、エメラルド、トランプがあるテーブルの上。

「それじゃあ…… こういうのはどうかしら……?」

言いつつ立ち上がり、テーブルの上を指差す。
そこには、サンドマンのデイパックとミラションの前に、まるであらかじめ配られていたかのような裏向きのカードがそれぞれ五枚づつ残っていた。
先程集めたカードの一枚、クラブの5を見せながらミラションは言った。

「トランプにはこういうふうに、絵柄と数字、もしくは文字が描いてある……。
 数字はそのまま、Aは1、Jは11、Qは12、Kは13。
 それぞれの数字と文字は四枚づつある……」
「……それで?」
「見ての通り、あたしと荷物の前には伏せてある5枚のカードがある。
 あんたは、この5枚のカードの数字の合計はどっちが大きいかを選んで賭けてもらう。」
「……やりたいことはわかったが、それだけか?」
「それだけ。……もちろん、賭けた後の『めくる』とき以外で伏せてあるカードに触れたり、
 息を吹きかけたりするなどでめくってはいけない…… カードを別のものに変えるのも駄目。」
「……5枚の合計が同数だった場合は?」
「その時は、お互いのカードのうち、最も数字が大きいものを比べ、数字が大きいほうが勝ち。
 それも同じならマーク……スペード、ハート、ダイヤ、クラブの順で勝敗を決める……」

21没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:26:32 ID:r/knd2Mo
順番にカードを見せつつ、説明を行う。
サンドマンは頭の中でルールを整理しているのか再び目をつぶった後、目と口を同時に開いた。

「……『めくる』のはどのように行う?」
「そうね、実演してみようかしら…… 両手を前に出して、あたしと同じように……」

サンドマンが両手を出すと、ミラションは裏向きのカードを二枚、それぞれ手の前に置くと、自分も両手を差し出した。
次いで左手の親指を左のカードの端に乗せて、右手の親指を右のカードに乗せる。
サンドマンにも同じように、ミラションとは左右逆の手で指を乗せさせる。

「こうやって、カードのそれぞれの端を二人の指で抑えて、テーブルの外側にスライドさせる……」

左手と右手、それぞれの手を外側に開いてゆき、カードを1枚づつテーブルの両端まで移動させる。

「そして、端まで来たら人差し指を添えて、二人でいっしょにめくる……」

言いながら、両手のカードをゆっくりとひっくり返す。サンドマンもそれに従う。

「これなら、時間を止めでもしない限り相手に気付かれないようにカードをすり替えることは不可能。
 実際にやるときは、自分のカードは左手、相手のカードは右手でめくる。
 めくる順番は手に近い方、すなわち自分から見て左のカードから。 ……どう?」
「……問題ないだろう。」
「グッド! ルールは今説明した通り… そして『やる』と決めたときからゲームはすでに始まっている…
 あたしは、あんたが数が小さい方を選ぶのにこのエメラルド。」
「いいだろう。オレは、オレが数が大きい方を選ぶのにそこの荷物を全部賭けるッ!」
「グッド!」


こうして、前置きは長くなったがバトルロワイヤルにおける、命ではなく物を賭けた最初の『勝負』が開始された。


「もちろん、あんたがカードを選ぶ間あたしは腕を組んで座って見てるだけ…
 あんたがカードにちょっとでも触れたらあたしのもの……」

まずは『選択』。
宣言どおり、腕組みをしてテーブルの上を注視するミラションに対し、
サンドマンも腕組みをしたままテーブルの上、特に伏せられたカードを交互に見ている。

(さて、どう出るかしら……)

ミラションはサンドマンの方を伺うが、あいも変わらずの無表情であり、今のところ怪しい動きはない。

(……っていうか、ポーカーも知らないくせにポーカーフェイスは一流ですってか?)

どうでもいいことを考えつつも注意は逸らさない。
すでに勘付いているかもしれないが、ミラションは伏せてあるカードの数字を「知って」いる。
それも当然、彼女は最初にこの部屋に入った者である。
伏せてあるカードをめくって確認しようが誰も咎める者はいないし、
『ルール』を決めた後でも、言わなければバレるはずも無い。

しかし、同時に「それがどうした」とも思うかもしれない。
ミラションが知っていたとしても、選ぶのはサンドマン。
もし、彼がまぐれだろうがなんだろうが、数字の合計が大きいほうを選んだらどうするつもりなのか。
……それは、今はまだわからない。

22没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:27:14 ID:r/knd2Mo
そして………………



「………………決めた。オレは、こちらに賭けるッ!」


暫しの逡巡の後、決定。
サンドマンが選んだのは、ミラションとは逆、自分の荷物の前に伏せられている側のカード。

「グッド! それじゃあ、勝負ね……」

ミラションはそう言ってゆっくりとイスから立ち上がると、
荷物が乗ったイスをどかしてから元の位置に戻り、カードに手を伸ばした。
サンドマンも立ち上がり、自身の選んだカードの正面に移動すると同じように手を伸ばす。

二人はお互いの顔をちらり、と眺めてからカードへと視線を向ける。
この時点で(少なくとも表向きの)駆け引きは終了、残るは結果のみである。
二人の手がゆっくりとカードをめくっていく。




―――1枚目
ミラション  スペードの6。
サンドマン   ハートの8。


言葉はもう交わさない。



―――2枚目
ミラション   クラブのK、 計19。
サンドマン   ハートの4、 計12。


相手の顔を見ることもしない。



―――3枚目
ミラション  スペードのA、 計20。
サンドマン   クラブの8、 計20。


同点。しかし、二人のポーカーフェイスは全く崩れない。



―――4枚目
ミラション  ハートの10、 計30。
サンドマン  スペードの8、 計28。

23没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:28:12 ID:r/knd2Mo
ここに至ってようやく二人は顔を上げ、ちらりと互いの表情を伺う。
サンドマンがいまだに無表情であることを確認し、ミラションは僅かな疑問を抱く。

(こいつのこの余裕はなんなんだ……?)

汗もかいていないし、呼吸も乱れている様子は無い。
エメラルドを見た時の鬼気迫る表情はすっかり消え失せて落ち着き払っている。

(ハッタリが上手いのか、それとも自分の勝ちを確信してますっていう自信か……
 まあいい、仮にイカサマをやったとしても、そのときこそ『取り立て人』がお出ましになるだけだ。)

ミラションは気にしないことにして、残ったカードの最後の一組に視線を戻す。
サンドマンも再びカードへと目を向け、二人はゆっくりと、両手の指でカードをスライドさせていった。


―――いいところではあるが、サンドマンが冷静なのには当然理由がある。
実は彼もまた、ミラションと同じくめくる前から伏せてあるカードの数字を知っていたのである。
だが、サンドマンが部屋に入ってきてからミラションが知る限り、彼がカードを調べた様子は無かった。
第一、カードをめくってはいけないという『ルール』があるのに何故『取り立て人』を現すことなく数字がわかるのか。
その答えを知るためには、一度賭けを始める前に戻ってみる必要がある。

そもそもサンドマンは、トランプを見たことが無いとまでは言っていないし、言葉自体は知っていた。
それならば、細かいルールは知らずとも、「何に使われるものなのか」ということを知っていてもおかしくは無い。
サンドマンがトランプに持っていた概念―――それは当然、「賭けに用いられる道具」である。
それを認識していたからこそ、彼は行われる『賭け』にテーブルの上のカードが関わってくると考えた。
故に、ミラションがテーブルのカードを集めた後に未だ残されていたカードを当然怪しく思った。
そして、ある「細工」を行ったのである。

普通、『賭け』をする場合、人間は向かい合って座るものである。
そしてテーブルの上にも、イスのすぐ前にカードが置かれていたのは窓側とドア側の向かい合った二ヶ所であった。
しかし、サンドマンはミラションが座っていた窓側のイスの向かいにあるドア側のイスには座らず、わざわざ真ん中のイスに座った。
何故そこに座ったのか。それは、その位置が最もベストだったからである。
サンドマンが座る直前、ミラションはエメラルドと包みをテーブルの中央に置いた。
そう、これが中央に置かれたからこそサンドマンは真ん中のイスに座ったのである。

エメラルドに何の意味があるのか?―――実は、何も無い。
サンドマンにとって重要だったのは、包みに一緒に入っていた「砂」である。
彼は会話の最中に不自然にならない程度にため息を吐き、両側のカードに向かってわずかな量の砂を飛ばした。
(この時、カードの前に座っていては自分の目の前にあるカードの方に砂を飛ばせなかったのである)

飛ばした砂は、カードとテーブルの間にあるわずかな隙間に入り込む。
後は、自分の能力で砂を通してカードの絵を確認するだけである。
当然、砂はそんなに奥までは入っていかないためカードの全体までは見えなかった。
しかし必要な情報、すなわち数字か文字はカードの端に描かれていたため不都合は無かった。
こうして、サンドマンは一切カードに触れることなく数字を見ることが出来たのである。
後は適当な理由をつけて数字さえわかれば勝てるようなゲームを相手に提案させ、それを受けるだけでよかった。

24没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:29:01 ID:r/knd2Mo
残った1枚は相手の女が7、対して自分のカードはJ。
合計は37対39で自分の勝ち。
もし違ったならば、それは女が『ルール』を破ってカードをすり替えたということ。
自分に非はないのだから、相手の負けになるという寸法であった。

ちなみに、彼はこの行為を不正だとは砂粒ほども思っていない。
『ルール』で禁止されているのは『めくる』、あるいは『カードに触れる』行為であって『見る』という行為は禁止されていない。
よって自分は『ルール違反』はしていない。
第一、見てはいけないならば何を理由にカードを選べというのか。
この思考はサンドマンがトランプの『ルール』を知らないゆえに生まれた思考であるため、
ミラションの『取り立て人』も手出しが出来なかったのである。




そして、遂に最後のカードが開かれた。




―――5枚目
ミラション  ダイヤの7、計37。
サンドマン  J―――












                  ―――JOKER。














「………………!? なんだ、これは!?」
「あら、ジョーカーね。」

確かにカードの端を見る限りそこにはJの文字があったが、これは明らかに他のカードとは違う。
驚くサンドマンに対し、ミラションはすました顔で




       「それは不吉な『死神』のカード。数値は"0"のハズレカードよ。」




そう告げた。

「……な……に……?」
「合計はあたしが37であんたが28……」



             「ゲームオーバーだ―――サンドマン。」

25没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:30:16 ID:r/knd2Mo
月明かりの差し込む暗い部屋で、一人の女が座っている。 
平然と人をダマせる精神を持つそいつの名はミラション。
彼女は最初の賭けに勝利したことで優越感に浸っていた。


(それにしても、あいつ意外と素直に出て行ったわね。
ジョーカーについて問いただされた場合はババ抜きの話でもしてやろうかと思ってたけど、少し拍子抜けね。
……まあ、向こうには反論の材料が無いし、怒り狂って襲ってこられたらたまらないから別にいいか)

『賭け』のとき、ミラションはサンドマンが『ルール』を知らないならば当然ジョーカーを知らないだろうと考え、
カードの説明時にジョーカーについて質問が無いことからその考えに確信を持った。
そこで、『ルール』を知らないサンドマンには複雑なイカサマをするまでもなく、
知らないのを逆手にとってハメるだけで十分だと考えたのである。
もしも、サンドマンが逆を選んでいたらそのときはジョーカーを貴重なカードとしてKよりも高い14扱いにするだけでよい。
カードのすり替えは『ルール違反』になるため、どう転んでも彼女の勝ちは揺るぎなかったというわけである。

中立で公正な『ジャッジ』となる第三者がいればこう上手くはいかなかったが、あの場にいたのは二人だけ。
しかも、勝負方法は公式のルールなど存在しない即興のゲームである。
結局は「言ったもの勝ち」なのだ。

「さて、何が入ってるのかしらね?」

見つめるのは当然、先程の『賭け』で得た戦利品。
自分から動く気はないが、ああいう常識知らずなヤツばかりならば他の参加者から所持品を撒きあげまくるのもいいかもしれない。
心の高鳴りを抑えきれずに自分のよりも少しばかり重い気がするデイパックを引き寄せ、開けてみる。









            ―――しかし 中は からっぽだった……。









「………………え?」

デイパックを持ち直す―――空っぽとは思えない「重み」がある。
今度は振ってみる―――これまた空っぽとは思えない「音」がする。
それでも、中には何も入っていない。

調べてみると、すぐにデイパックの底に「ズシリ」と「ガサガサ」という文字が書かれて、
いや「貼り付けられて」いるのを見つけた。
これはなんだ、と思う間もなく文字は跡形も無く消滅していく。
完全に消え去ると同時に手にかかる重みもなくなり、残されたのは何の変哲も中身も無いデイパックのみ。

「と、取り立て人………………」

スタンドが現れている様子は無い。
となると、最初にサンドマンが「賭けた」時点からデイパックは空だったことになる。
すなわち、賭けた荷物はこれで全部。
『ルール違反』はない上に『賭け金』は全て取り立てたのだから、『取り立て人』は現れない。

「あ、あ、あ、あの野郎ォォォーーーーーーーーッ!!!」

空のデイパックなど篭城には何の役にも立たない。
それどころかこの時間帯に一人で二つのデイパックなど持っていてはあらぬ疑いをかけられる可能性もある。
『賭け』に勝って得たものは文字通り「お荷物」だと知り、ミラションは絶叫するしかなかった。

―――こうして。
場合によれば「全て」を兼ね備えるジョーカーを「何も無い」と言ったミラションは
サンドマンの「全て」が入ったように見せかけた「何も無い」荷物を掴まされることになったのであった。

26没話「オールオアナッシング」:2015/08/22(土) 01:31:00 ID:r/knd2Mo
月明かりが照らす街を一人の男が再び駆けていく。
意外と図太い神経を持つそいつの名はサンドマン。
彼は賭けに負けても、大事なものは失わなかった。


彼がデイパックを空にしておいたのは何のことはない、「必要ない」からだ。
戦闘の際は自分の身一つで戦うのだから、動きを妨げそうな荷物はなるべく少ない方がよい。
紙や小物はリストバンドなどに隠しておけるし、
その他の道具もスタンド能力で体のどこかに貼り付けておけば落とす心配はない。
そういった意味でサンドマンにとってデイパックはかさばる荷物でしかなく、
賭けに使えたのはむしろラッキーだったほどである。

ミラションの潜む家から東に向かいつつ、サンドマンは先程までの出来事について思考をめぐらす。

あの欲が深そうな白人の女の事を気の毒とも思わないし、悪いとも思わない。
『ジョーカー』は怪しいとは思ったが、『ルール』を知らない自分が何を言ってもおそらく無駄だ。
形見のエメラルドは惜しいが、あれ以上賭けを続けてもおそらく自分の首を絞めるだけだろう。
女を殺して奪い取るという選択肢もあったが、
情報も揃わないうちに「敵」を増やすようなリスクのある行動は避けたい。
そう、自分に足りないのは情報、ひいては知識である……ここは一旦、退くべきだ。
あの時は勢いだけで相手の提案に乗ってしまったが、今後は迂闊なことは控えよう。
エメラルドは機会を見つけて……なんなら、あの女が「脱落」した後にでも回収すればいい。

と、ここまで考えて彼は自分がした質問と、その答えを思い出す。

―――その宝石を何処で手に入れた?
―――……最初に持たされた荷物の中にあった紙に入ってたのよ

確かそう言っていた。
自分に支給された紙にも、何かが入っているのだろうか。
最初の説明のとき、確かスティール氏は武器を用意したとか言っていた記憶がある。
バトルロワイアルが始まる際に無くした自分の短刀か、あるいは他の刃物ぐらいはないだろうか。

そう思いつつ立ち止まり、折りたたまれた紙を取り出して開いてみる。
紙から出てきたのは―――

「………………なんだ……これは……」








自身の目に映るものが信じられない。
こんなものがあんな紙一枚のどこに収まっていたというのか。








大量の金塊、宝石付きのアクセサリー、札束―――
そこには誰もが目を奪われるであろう、『宝の山』があった。
めったなことでは後悔しないはずのサンドマンが、デイパックは「必要」だったかもしれないと考え直してしまうほどの―――

27 ◆LvAk1Ki9I.:2015/08/22(土) 01:34:20 ID:r/knd2Mo
チャット記念ということで、以上で投下終了です。
実際に投下していたら『獲得』と同じような指摘を受けることとなっていたかもしれません。
『もしDIO』以前に書いたものなので文章力についてはお察しください。
それでは。


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