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修正SS投下スレ

198 ◆LuuKRM2PEg:2014/05/04(日) 22:10:01 ID:r9Nmo5jM0
再度、修正版の投下をさせて頂きますので、問題点がありましたら指摘をお願いします。
(今回はせつな死亡シーンの加筆という方向性で)

 ロッソ・ファンタズマ。 
 まだ理想に燃えていた頃、あのテッカマンランスという奴に殺された巴マミと一緒に特訓した末に会得した魔法だった。
 忘れられないあの日から、もう二度と他人のために使わないと決めていたはずなのに、佐倉杏子は感情任せに使ってしまった。いつもならそんなことはないはずなのに、今回だけ使った理由がわからない。
 無意識の内に使ったことに驚いたが、今の杏子にとってそこまで重要ではなかった。魔法の一つや二つが使えた理由なんて、後で考えればいいだけ。
 今の杏子は、キュアパッションを助ける方法しか考えていなかったが、答えは見つけられない。

(このままじゃ……死んじまう! また、死んじまう!)

 だから杏子は焦っていた。
 命が徐々に尽きていってしまうキュアパッションの姿が、自分一人を残して死んでしまった家族のみんな、それにフェイトやユーノと重なって見えてしまう。このままでは、キュアパッションもみんなと同じ運命を辿るだけ。
 それに抗う為に、杏子はキュアパッションを連れて必死に駆け抜けていたけど、何も変わらない。

(どうして……どうしてだよ!? どうしてだよ!? どうして、みんな……!?)

 妹だけじゃない。力を貸してくれた人達が次々と死んでいく。
 どうして、次々と自分の前からいなくなってしまうのかがわからない。
 胸の中に様々な感情が湧きあがるが、どうすることもできなかった。その鬱憤を晴らすかのように、杏子は叫ぶ。

「おい! しっかりしろよ、おいっ!」

 必死に走った甲斐があってか、ランスの元から逃げ出すことに成功した。しかし状況が良くなっている訳ではなく、時間の経過と共に悪化している。
 腕の中でぐったりとしているキュアパッションの呼吸は既に弱弱しくなっていて、青白くなった唇からはゆっくりと血が流れていた。風穴の空いた脇腹や腕から流れる血の勢いは止まる気配を見せず、杏子の衣服や地面を容赦なく汚していく。
 あんな槍に刺されては、骨や臓器も無事でいる訳がない。魔法少女である自分ならまだしも、人間が変身するプリキュアがそんなダメージを受けたら致命傷になるに決まっている。

「くそっ……何か、何かないのかよ!?」

 戦場から離脱する際に確保しておいたデイバッグの中を杏子は漁るが、傷を治せるような道具は何一つ見つからない。自分達のサイズに合いそうにない胴着を引き千切って包帯代わりにしても、止血にすらならないだろう。
 まだ微かに息があるとはいえ、長くないのは明らかだった。殺し合いの場には病院なんてものはないし、ガイアメモリを使った胡散臭い男のような医者もこの場にはいない。
 しかも、逃走の最中に焦って左翔太郎や相羽タカヤのいる風都タワーから離れてしまったので、誰かに頼るのも不可能。
 マミや美樹さやかのように癒しの魔法さえ使えれば可能性があったかもしれないが、杏子の得意分野は幻覚や幻惑。魔女を倒す以外に誰かを助ける力はなかった。
 つまり、キュアパッションを……東せつなを救う手段を、杏子は何一つ持ち合わせていなかったのだ。フェイトやユーノの時のように、彼女を見殺しにするしかないと悟った瞬間、頭部がハンマーで殴られるような錯覚に陥ってしまう。

「杏、子……ゴホッ!」

 そんな中、肝心のキュアパッションはぼんやりとした瞳でこちらを見上げながら口を開いた瞬間、血を吐き出してしまった。

「喋るんじゃねえ、傷に響くだろ!」
「……もう、いいの。私はもう、長くないから……」
「そんなこと言ってるんじゃねえ! てめえは……せつなは、あたしの事が心配じゃなかったのかよ!? あたしが心配なら、弱音なんか吐くなよ!」
「ごめんね、私が弱いせいで……杏子を、苦しめることに、なって」
「謝るな、謝るんじゃねえよせつな! 今、あたしが何とかしてやるから待ってろ!」

 震えるキュアパッションの手を力強く握りしめながら杏子は叫ぶ。
 無論、どうにもならないのは杏子が一番よくわかっていたが、納得などしたくなかった。
 だから必死に嘘を言い続けたが、そんなことをしたって死への運命を変えられるわけがない。慰めにすらならない、無意味な行動だった。


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