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オリロワ2014 part3

96THE END -Relation Hope- ◆H3bky6/SCY:2018/11/11(日) 22:25:48 ID:9FwNdzk60
「無駄なんかじゃ――――――――ないッ!」

少年の咆哮。
それに呼応するように地の底から無数の糸が飛び出した。

「だが芸がないな。『霊力』は『触れられない』」

その手は先ほど見たばかりである。
同じ手を喰う、ワールドオーダーではなかった。
この世界では霊力で他者に干渉することはできない。
これで攻撃も拘束も不可能。
だが、攻撃を防がれたはずの勇二は表情を変えることなく告げる。

「――――そうだ。お前は咄嗟の場面で無難な世界を選ぶ」

ワールドオーダー。
世界の法則すら塗り替え支配する超越者。
だが、この男は世界の支配者であれど戦士ではない。
常に勝利に向けて最良の状況判断が出来るとは限らない。

地中から伸びる糸の勢いは止まらなかった。
そもそもワールドオーダーを狙っていない。
ワールドオーダーを過ぎ去り、遥か天へと向かって伸びてゆく。

そして糸が飛び出したのはワールドオーダーの足元からだけではなかった。
少なくとも、ワールドオーダーの確認できる視界の範囲、全ての地面から伸びる糸。糸。糸。糸、糸、糸、糸、糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸。
これが全て地中に仕込まれた勇二の霊力によるものだとするならば、いったいどれ程の霊力を地の底に流し込んだと言うのか。

天に向かって伸びあがった糸は周囲の糸と共に巻き上がりながら一本の太い綱のように編みこまれれゆく。
生まれた綱は更に絡み合って太い一本の柱となり、その柱が更に連なり折り重なってゆく。
それが世界各地で次々と繰り返されながら空を目指す様に真っ直ぐに伸びて行く。

「なん、だ?」

世界の支配者が始めて漏らす戸惑いの声。
天に向かう折り重なるそれはまるで大地から生まれた白い翼のようである。
翼は天に達し、幾重もの断層となって遂には天を覆い隠した。
少年の可能性が無限の白い翼となって、空も大地も何もかもを包み込む。
その異様に異常を重ねた光景に、これ以上続けさせるのはまずいと直感したワールドオーダーが世界を革命する。

「『霊力』は『消滅』する」

霊力は存在を許されない世界。
霊力で編まれた糸は世界の法則に従い消滅するはずだが、その世界は――――もう古(おそ)い。

「――――――――『無駄』だ。もうここはお前の『世界』なんかじゃない」

ヒラリと、空から一枚の白い羽が落ちた。
穢れ無き白壁は消えず、世界を囲む卵の様な白い壁はそこに在り続ける。
もはやそれは霊力などと定義されない別の何かとして成立していた。

「ここはお前を倒すために創り上げた、僕の『世界』だ」

成立した世界はもう止められない。
ここはもう確立し隔絶された別一個の世界だ。
敵が世界の法則を塗り替える支配者ならば、少年は世界その物を創り上げる。

神に至るほどの才能がいずれ至る領域。
少年は勇者と言う反則(だんかい)とこの地における過酷な経験を経て、その領域に到達した。

産まれたのは未完成の世界の卵。
未完成であるが故に、何者にもなれる少年の可能性。

「ああ……そう言えば、あの魔女の縁者だったか」

世界すら創造せしめる究極の魔女。
あれの性格からしてお気に入りの子供に手遊び程度に世界創造の瞬間を見せていても不思議ではない。
そこから世界の創り方を会得したか、恐るべき才覚。

「――――そう来なくては」

ワールドオーダーと呼ばれる男が歯を噛みしめながら、口元が吊り上るのを隠しきれないと言った風にこれまでに見たこともないような笑顔を見せた。
世界の敵と戦うのだ、世界一つ創り上げるくらいはしてもらわなければ困る。
この感覚は何年、年百、何億年振りか。
ようやく敵に出会えた。
期待に胸が震える。

ワールドオーダーの能力は戦いに向いた能力ではない。
世界と個人では、そもそも”戦いにもならない”のだから。
同じ土俵で戦える敵など居るはずもなかった。
だが、今なら。この相手ならあるいは。


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