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オリロワ2014 part3

109THE END -Somebody To Love- ◆H3bky6/SCY:2019/02/17(日) 23:27:11 ID:yyQSrX5o0
「わっ!? 何!? 何だろうこれ」

突然の戸惑うような大声に、次は何事が起きたのかと、3人の視線が一斉に集まる。

「な、なんかファミコン、ファミコンみたいなのが!?」

あわあわと戸惑う九十九の目の前には半透明な四角いウィンドウが浮かび上がっていた。
突然の怪奇現象ではあるのだがそれ以上に、普段ゲームやパソコンなどとは縁のない九十九にとって未知の代物すぎてどうしていいのか分からないようである。

「え、どうしたらいいの? どうしたらいいの?」
「落ち着いて」

あたふたと戸惑う九十九の背後に回った亜理子が落ち着かせるように肩に手を置いた。
横から顔を出しウィンドウを覗き込むと、中央に手紙の様なアイコンがチカチカと点滅していた。
細い指を伸ばして亜理子がアイコンにタッチしようとするが、指は空中に浮かんだウィンドウ画面をすり抜けて触れることができなかった。

「私では操作できないみたいね。九十九さん。操作できるか試してもらえるかしら」
「……え、あ、ハイ」

テンパっていた九十九は反射的にその指示に従い画面に向かって指を伸ばす。
恐る恐ると言った風に伸ばされた指が空中の画面に触れた。
ピロンと小気味良い音が鳴り、画面の手紙アイコンが開かれるアニメーションが流れた。
そしてウィンドウにテキストが表示される。

「え、これって…………」

そこに表示されていた文字を見て、九十九がますます困惑する。


【 田外勇二 さんからプレゼントが届いています! (1) 】


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

田外勇二が最期に成したことはなんだったのか。

あの時、あの瞬間、己が命を残り数秒となったところで、勇二はワールドオーダーの支給品の中からそれを見つけた。
操作方法を読み込む時間はなかったが、幸いにも九十九と違って勇二は親の甘やかしもありこの年でスマホに触れた現代っ子だったから、それがどういう物であるかはすぐに理解できた。
そのインタフェイスはよくやっていたゲームのアイテムボックスそのものだったから。

手早く操作する画面に表示された送り先は5名。
生き残った参加者のデフォルメされたアイコンと名前が並ぶ中から勇二が最期の希望の送り先に指定したのは、一二三九十九だった。

勇二と九十九の縁は一度邂逅したあの時だけ。
治療を施したものの同行者を斬り、敵対したまま別れてしまったようなそれだけの最悪な縁。
それだけだったけれど、それがあったからこそ、勇二は彼女に決めた。

仲間や家族と言える相手が全員死んでしまった勇二にとって殆ど選択肢がなかったというのもある。
自業自得の面があるにしても生き残った面々は、勇二にとっては知らない相手か敵対者ばかりだった。
それに父の同僚であるボンバーガールという選択肢もあった。
正義のヒーローなのだ、希望を託すにこれほど相応しい相手もいないだろう。

だが、時間のない極限の状況の中、勇二の指は自然と一二三九十九のアイコンを選んでいた。

それはきっと、あの邂逅に何か心に残るモノがあったからだろう。
聖剣なんか捨ててしまえと、真正面から勇二を叱りつけたあの時の九十九の言葉が妙に頭にこびりついて忘れられなかった。
聖剣に囚われていた勇二にはついぞ理解できなかったが、聖剣を破棄した今の勇二にならその意味が理解できる。

だから名前だけしか知らない遠くの正義よりも目の前で見て感じた正義を信じてみようと思った。
勇者を巡る騒動を経て、勇二が得た僅かな成長。
それが天秤を動かし、運命を分けた。

祈る様に少年は希望を送る。
縁は流転するように巡ってゆく。
この結末を導き出したのならば、あの間違いにもきっと――意味はあったのだ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


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