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818
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◆LuuKRM2PEg
:2019/12/21(土) 21:39:56 ID:RP1d2.yA
名護啓介と共に、門矢士はD-1エリアの病院に辿り着いていた。
ここでは、キングの罠によって命を奪われた津上翔一が眠っている。名護から彼が眠る場所まで案内してもらったが、苦い記憶をほじくり返したはずだ。
その償いとして、せめて総司のことを翔一に伝えたい。
「津上翔一。啓介から聞いたぞ……最期まで総司の無事を願っていたと。だけど、総司のことなら心配するな。あいつはもう、一人で飛べる」
津上翔一がどんな男であるか、士には全くわからない。
かつて、『アギトの世界』にて芦河ショウイチは葦原涼のように荒んでいたが、他者を思いやり続ける熱い心を持ち続けていた。大切な人間を守るために戦っていたショウイチや涼の姿を忘れられる訳がない。
だから、ショウイチのパラレルにして涼の仲間である翔一も、強さと優しい心を持ち合わせた男のはずだった。
「お前が最期に何を想ったのか、俺は知らない。だけど、お前のことだから総司たちの無事を願っていたはずだ。
翔一も知ってるように、あいつらはみんな強いぞ? 真司、麗奈、修二、リュウタロス、そして総司と啓介……転んで怪我をしても、最後には立ち上がっている。だから、翔一は何も心配しなくていいんだ」
総司は翔一の命を奪ったことで絶望していたが、それでも士の命を守ろうとしてくれた。彼の心の強さは、翔一の影響もあったはずだ。
真司と麗奈だって充分な強さを持っているし、二人のように三原修二とリュウタロスが成長する可能性もある。だから、翔一が心配する必要はないことを伝えたかった。
「翔一はゆっくり休んでいろ。そして、みんなのことを見守っていればいい……翔一の分まで、俺達が戦ってやるから。俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダーだからな……覚えておかなくてもいいが」
そう言い残して、翔一が眠る地から背を向ける。
「士君、もういいのか?」
「ああ、総司たちのことはもう伝えた」
伝えるべきことは山ほどあるが、今は翔一のことばかりを考えていられない。残るは翔太郎と一条、それに紅渡など探すべき相手はいる。
「啓介、翔一は確か言っていたそうだな。中途半端でもいいから、生きろと」
「その通りだ。彼は、死にいく最期の時まで、自分の傷に目を向けずに……一条に生きろと言っていた。いいや、一条だけじゃない。翔太郎君や俺も含まれていた。
そして、彼は最期まで総司君の身も案じていた。だから、総司君を救ってくれた士君のことを感謝しているはずだ」
「だったら、俺達はここで待たないといけないようだな。総司は旅に出て、一条薫と翔太郎の二人もサーキット場で特訓している最中だ。
それに、真司達もいつかここに戻ってくるかもしれない……その時、帰る場所が滅茶苦茶になっていたら安心していられないだろ?」
大ショッカーによって用意された病院だが、名護や総司たちは確かに同じ時間を過ごしていた。真司や麗奈、三原やリュウタロスもいたはずだ。
一度はキングによって滅茶苦茶にされたが、名護たちがここで絆を培ってきたことは変わらない。憩いの空間が壊されても、立て直すことができる。
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