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777ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平 ◆Sick/MS5Jw:2011/02/19(土) 02:07:52 ID:HgiVeuOw0
「まあ……誰を連れて戻ろうと、仲良く蜂の巣だろうからね」

当然のように唯湖は協定の無視を口にする。
憤りを覚えた様子もなく、ごく自然な成り行きを告げる口調だった。

「今、丘を下っている最中に撃たれなかったのは、君がいたからだ」
「……」
「君にもそのくらい分かっているだろう。だから親切にそういうことを聞く」
「……厄介払いをしたいだけです」
「やはり優しいね、君は」
「……」

ざあ、と夜を含んで吹く風が、梢を鳴らす。

「余裕、あるんですね」
「人生は楽しむものだよ」
「……言うわりに、楽しんではいなさそうですけど」
「はっはっは」

唯湖が、笑う。
今度の笑い声には、色がついていた。
微かな愉悦の、色。

「なかなかの慧眼だ。お姉さんは少し感心したぞ」

ぽんぽんと、親しげにちはやの肩を叩くと、嫌そうに顔をしかめるその脇を抜けて、
林道の先へと歩を進める。
ややあって足を止めた唯湖が、振り向かないまま、告げる。

「……楽しくはない。楽しくなどないさ。生きることは」


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