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【33:33:33】投下スレ【条件3:真相への到達】
1
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/03(日) 06:44:08
作品発表用スレの3スレ目です。
作品に対する意見を募集する場合は、「仮投下」ないしは、それに準ずる注意書きをお願いします。
2
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/03(日) 18:11:27
スレ立て乙です
3
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/03(日) 22:18:02
スレ立て乙です!
4
:
◆WYGPiuknm2
:2012/06/08(金) 20:22:56
申し訳ありません、延長します
5
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/08(金) 23:57:09
投下乙でした!
阿部ちゃん、占い嫌いの理由ってそんなかよ!
純也・水明に続いてクローディアも殺し合いの根本否定派に……と思ったらシザーに
バッツンされてしまうとは。
ヘザーがクローディアに対して見せた、愛憎混ぜ混ぜな感情は見事でした。
6
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/09(土) 18:12:08
前スレ投下乙です
流石マーダー唯一の期待の星(?)!流石の貫禄シザーマン!そこに痺れる(ry
神まで吸収しちゃって完全回復を遂げた彼は更なるハッスルを見せてくれるのだろうか
しかし阿部ちゃんは相変わらず殺伐とした世界の数少ない清涼剤だな
期待の星が近くに居るからいつ殺られるのかといつもハラハラしてしまうけど…
7
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/09(土) 19:51:34
cAkzNuGcZQさん、投下乙でした!
なんてこった、クローディアが殺されちゃった!この人でなし!(褒め言葉)
ヘザーとクローディアの愛憎渦巻く心理描写がたまらなく切ない!
エドワードはマーダーの星としてハッスルしてくれていますなあ
力も取り戻したことですし、トリックスター的な活躍にも期待できそうな予感!
そして阿部ちゃんの(多分)MMRネタに吹いたw そういえば阿部ちゃんの年齢だとリアルで読んでてもおかしくないな
もうホラゲロワ三大清涼剤は阿部ちゃん・ジム・小暮さんしか考えられないぜ!
この三人にはぜひ死亡フラグを華麗に回避して何事もなかったかのように生還して頂きたいw
8
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/10(日) 01:04:47
投下来てたw
…代理投下してたらさるさん…なんで一時間たったのにさるさんのままなんだよ…
申し訳ないが日曜勤務あるから2時まで起きれないよ…
9
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/10(日) 13:15:13
代理投下中に落ちた者ですが代理の代理、ご苦労様でした
お手数おかけしてすみません
改めて感想書きます
うわあ、上で既に言われているがヘザーとクローディアの愛憎渦巻く心理描写がマジで凄まじいなあ
ここまで濃いのはそうそうないぜ。そしてクローディアはここで脱落かあ…お疲れ様です
シザーマン、さすが一つのホラーゲームの看板しょってるだけあるわあw
ホラゲロワ三大清涼剤…辞書があるなら加えたいなあw
10
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/10(日) 16:36:59
感想ありがとうございます!
>>5
クローディアって、神は人々を救う存在って信じてるんですよね。なのでこんな考察になりました。
レナードのように選ばれた者のみが楽園に行けるって思想だったらまた話は違ったとは思いますが。
ヘザーとクロが見事とは嬉しいお言葉!w ありがとうございます!
>>6
シザーは唯一の強マーダーですからね! というかクリーチry
VS阿部ちゃんは……あるんでしょうか?w 果たして勝つのは期待の星か、天然の星か。
>>7
シザーはいつの間にかはぐれて病院や研究所に突然現れても不思議のないお方!w
阿部ちゃんはきっとマガジン派です。信じてます。
>>9
いつも代理投下ありがとうございます!
ヘザーもクローディアも本当はきっとお互い大好きなんじゃないかなーと妄想したらこんな話が出来ましたw
ホラゲロワ三大清涼剤は何かいつの間にか編纂室に入ってましたw
WIKIへの収録も完了です。ご確認下さい。
代理投下して下さった方々、支援の方もありがとうございました!
11
:
◆WYGPiuknm2
:2012/06/11(月) 02:19:23
期限までに投下できそうもないので予約を一旦破棄します。
長時間キャラを拘束してしまい、申し訳ありませんでした。
12
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/11(月) 06:22:13
了解であります!
リベンジを期待してますよー。
13
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/11(月) 23:22:52
では代打俺!
霧崎水明@流行り神
長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム
予約で!
14
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/11(月) 23:38:53
予約ktkr
最有力主人公候補の水明さん、次はどう動くのか!?
15
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:41:54
霧崎水明@流行り神
長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム
投下します。
16
:
鬼の霍乱
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:42:30
観光パンフレットには載ってすらいない道を南下し、突き当たった頃。
シビルから聞いていた事だったとは言え――――唐突に訪れたそれには、水明もユカリも驚きを隠せなかった。
時刻は丁度午前一時。
何処からともなく響き出すサイレン。
町中が、蠢き始めた。
血と赤錆。赤と黒をベースとした、不快と不安を刺激する風貌が消えて行き、その代わりに辺りを覆い出したのは白い濃霧。
ゴーストタウンには変わりはないが、視覚的、精神的にはまだ優しい、一般的な様相の町並みが現れる。
ほう。と水明が感嘆の息を吐き出した。それに機敏に振り返ったユカリは、彼の前に掌を突き出した。
何かを言おうと開かれた水明の口が、不可思議そうに止まった。
「余計な都市伝説とかはいらないからね」
一拍を置いて水明は、その少しこけた頬に苦笑を見せた。
「別にお勉強をさせようとしたわけじゃないんだがな。ただ、映像化されたキングの『霧』よりはまだ視界が利くようだと思っただけさ」
「……無駄話には変わんないじゃん」
何処となく気恥ずかしさを覚えたのか、ユカリは顔を赤く染め、水明から顔を逸らす。
一頻り、辺りの建物を照らして様子を確認すると、観光パンフレットに挟んでいた一枚の用紙を取り出した。
「ねえ……これってさ、ルールに書いてあったよね……?」
用紙の上に懐中電灯の光を当てるユカリの目線は、とある一点を見つめていた。
水明は、敢えて見ずとも該当箇所は頭に入れてあった。
「オジサンさ、さっき氷室邸が町の一部として機能してるって言ってたよね……? このルールも……やっぱりおんなじなんじゃないのかな?」
「ふむ。つまりルールも町の一部として機能している、と」
「……うん。だって、今のサイレンって……」
言葉を濁すユカリだったが、言わんとする事は水明にも通じていた。
17
:
鬼の霍乱
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:42:53
“ルール2。サイレンで街は裏返る”
裏返る。その意味の解釈次第ではあるが、“ルール2”が今起きた現象を書き表していると見るには何の不自然さも無い。
そして、ルールの一つが――――それも超常現象としか考えられない事象が確かに機能していると言うのならば、他の全てのルールが同様に機能していると考える事にもまた不自然さは無い。
いくら水明の弟、風海純也の側でルールや名簿と現実に食い違いを見つけようとも、ユカリにとってそれは伝聞に過ぎない。
実体験としてルールを実感したユカリが改めて不安を抱いてしまうのは、やむを得ない事だ。
「そうだな。はっきり言ってしまえば、ルールが町の事象に組み込まれていないと断定することは俺には出来ない」
自ら言い出した事だったが、否定の言葉を期待していたユカリは意外そうに水明を振り返った。
ユカリの目に、真剣な眼差しを返し、水明は続ける。
「サイレンの鳴る町。霧の立ち込める町。それからさっきまでの赤錆の世界は全て“都市伝説・サイレントヒル”の噂として語られているものだ。
それらの事象が起きたとしても、それは単にサイレントヒルという町の特色とも言える。
ただ、今の変化がチラシに書かれている“ルール2”と符合しているように見えるのも確かだ。
つまりこの場合の変化は、そもそもの町の事象として起きたものなのか、ルールとして起きたものなのか、可能性としてはどちらとも取れるってことだな」
曖昧に、ユカリは頷いた。
なんとなしに、用紙に目を落として。
「後者にしても、そもそもの町の事象がチラシに書かれただけだという可能性もあるが……。
いずれにせよ、どちらと断定するだけの判断材料は無い。だがな、そんなことはどっちでも良いし、どうでも良いことなんだ」
「……どうでもいいって?」
「さっきも言ったが、殺し合いのルールと町の異界化には直接的な関係は無いと俺は考えている。弟のおかげでな。
……直接的な関係が無いのなら、ルールを無視したところで怪異の中枢にいる者の気を損ねることも無いだろう? まあ、要するに――――」
水明は一旦言葉を切ると、ユカリに歩み寄り、手を伸ばした。
僅かに構えるユカリだったが、彼の手が目的としたのは、ユカリの持つ用紙とパンフレットだった。
「重要なのは、怪異の原因を突き止めることだ。
根底から外れているルールが町の事象として組み込まれていたところで、俺達のやることは変わらない。
君は友人達を見つけたい。俺は原因となったものを突き止め怪異を終わらせたい。それだけさ。そこに殺し合いのルールが関わってくる余地はない。必要以上に構えなくても良いんだ。
ルールを真に受けて殺し合いに乗るような輩が危険なのは否定しないが、町に跳梁跋扈している魑魅魍魎に比べればまだ話が通じるだろうよ」
言っている間に、水明はパンフレットからもう一枚の用紙を取り出していた。
その用紙は、地図と抱き合わせとなっていたルールの用紙。
それを予め出されていたルールの用紙と合わせ、地図を見ながら右手に取ったペンでパンフレットに書き込みを始める。
18
:
鬼の霍乱
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:43:20
「それでも、君がどうしても気になるというなら………………よし、こんなところだな」
そしてパンフレットのみをユカリに返し、一度口元を吊り上げると、水明は二枚のルールの用紙に両手をかけた。
――――彼の手の中で、紙の破られる音が繰り返し立てられた。
「ちょっ……!? 何してんの!?」
「これでどうだ? 気休めくらいにはなるだろう?」
「気休めって……いいの? ……地図だってあるのに」
「構わないさ。このルールは俺達には不要なものだからな。地図は今、簡易にだがそのパンフレットに書き写した。心配はいらない。……もう一度言うぞ。殺し合いのルールなんて、今はもうどうでも良いことなんだ」
会話の最中に、バラバラに千切られた用紙が、開かれた水明の手からヒラヒラと地面に落ちた。
その様が、ユカリには妙に儚げに見えた。
「なんか……ごめん」
「ほう? 珍しく素直じゃないか。普段からそうなら岸井くんも楽なんだろうがな」
それは、先程水明が似た者同士の親友に言われたものと同じ様な言い回し。
そうとは気付かず口にした水明に、晴れない顔をしていたユカリは、大きなお世話、とそっけない呟きを返して、いたずら小僧の様に笑う彼を睨みつけた。
水明には、例によって意に介した様子は全く無い。
「さてと。恐らくここはネイサン通りと言って良いんだろう。東に向かえばすぐに町と外との境目だ。何があるのか一応確かめて――――」
そこで言葉を止めた水明は、眉間に皺を刻んでいた。
東からの風に乗る、仄かに漂う異臭。明らかに、先程まで二人が嫌という程嗅いできた臭いだった。
ユカリもそれに気付き、水明に声をかけた。
東に目を向けた二人が見るのは――――闇に混ざる真っ白の濃霧だけ。
しかし、その先に何が居るのかは、二人とも容易に想像がついていた。
「……確かめるのは、次の機会にするとしようか。行こう。もたもたしているとまた厄介なことになりそうだ」
「うん……!」
細切れになったルールの用紙が二人の足に踏みつけられ、蹴られた拍子に舞い上がった。
風に乗ったそれは中空で散り散りにばら撒かれ、ささやかな紙吹雪となり、すぐに霧の中に溶け込む様に消えていった――――。
【E-5/ネイサン通り/二日目深夜】
19
:
鬼の霍乱
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:43:38
【霧崎水明@流行り神】
[状態]:精神疲労(中)、睡眠不足。頭部を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)。右肩に銃撃による裂傷(小。未処置)
[装備]:携帯電話、懐中電灯
[道具]:10連装変則式マグナム(10/10)、ハンドガンの弾(20発)、宇理炎の土偶(?)
紙に書かれたメトラトンの印章、自動車修理の工具
七四式フィルム@零〜zero〜×10、鬼哭寺の御札@流行り神シリーズ×6、食料等、本物のルールと名簿のチラシ、他不明
[思考・状況]
基本行動方針:純也と人見を探し出し、サイレントヒルの謎を解明する。
1:街の南西へ向かい岸井ミカと式部人見を保護する。
2:アレッサ・ギレスピーと関係した場所、および氷室邸を調査する。
3:そろそろ煙草を補充したい。
4:氷室邸は異界からの脱出口になるかもしれない?
※ユカリには骨董品屋で見つけた本物の名簿は隠してます。
※胸元から腹にかけて太陽の聖環(青)が書かれています。
【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】
[状態]:精神疲労(中)、頭部と両腕を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)
[装備]:懐中電灯
[道具]:太陽の聖環の印刷された紙@サイレントヒル3
地図を書き込んだサイレントヒルの観光パンフレット、(水明が書き写した)名簿
ショルダーバッグ(パスポート、オカルト雑誌@トワイライトシンドローム、食料等、他不明)
[思考・状況]
基本行動方針:チサトとミカを連れて雛城へ帰る
1:ミカを助けに街の南西に向かう。
2:とりあえず水明の指示に従う。
3:チサトを探したい。
4:無事とはいえシビルが心配。
※[[Edge of Darkness]]〜今作の時間帯の間に、小暮、風海、ミカと電話で連絡を取った可能性も有り得る事とします。
※水明が破り捨てたのは、骨董品屋で水明が書き写したルールの用紙と、裏面に地図が描かれているルールの用紙です。
20
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/16(土) 08:44:51
短めですが、投下終了です。
ご指摘、ご感想ありましたらよろしくお願い申し上げます。
21
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/16(土) 20:59:22
投下乙にございます。
殺し合いとは一体なんであったのかw
サイレン以降だからもう屍人の脅威はないわけだが、
水明さんは多分バイオ勢には弱いもんなあ
22
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/17(日) 03:42:06
投下乙です!
女子高生とオジサンの2人もよいコンビですなぁ。
しかし物理攻撃力の低さはなんとかならないものか。
例えミカと人見と合流できたとて、攻撃力が上がることはないだろうし
ただハーレムが出来上がるだけの予感。
23
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/17(日) 07:01:45
投下乙!
水明さんは静丘勢や闇人には強いけどバイオ勢相手には貧弱なんだよな…。例え4人集ってもリッカー一匹で全滅しそうだ
早いとこシビルやヒロインコンビと合流してくれ!
24
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/19(火) 00:32:27
感想ありがとうございます!
>>21
殺し合いとは……何だったんでしょうねえw
屍人に限らず、闇人の狙撃も怖い水明さんであります。
>>22
女子高生が人見先生の魅力に惹かれてハーレム崩壊も有り得るかと!
物理は……ユカリのテンルーチョップでどうにか。
>>23
屍人闇人も狙撃があります!
リッカーどころか志村一人でも全滅があるのが水明さんのいいところなのかもしれませんw
代理投下ありがとうございました!
WIKI収録も完了です。ご確認下さい。
25
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/06/22(金) 17:10:14
投下乙です
いいコンビだなあと思える反面、いつ崩壊するのかが怖くなるのがロワなんだよなあ
謎解き系もいけそうだがバイオ勢が来たら終わりそうなのは同意
他の組と合流して欲しいが…もう一波乱あるか?
26
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/06/27(水) 21:01:53
>>25
感想ありがとうございます!
水明さんは乙式、スプリットヘッドと来てますからね。少し休憩でもよさそうですが、縞パン先生の死体が進行方向にありますなw
果たしてどうなることやら。
次の予約は今しばらくお待ちを……!
27
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 00:13:12
ゲリラ投下致しまする。
28
:
蒼い朝
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 00:13:40
ふと空を見上げたのは、生物としての本能だろうか。
深い霧と、今は蒼くなりつつある闇。
どす黒い血液で額にへばりつく金髪の隙間から見えるのは、それだけだ。
しかし、確かに感じる気配がある。
予感と言い換えても良いかもしれない。
目に見えるものではないが、遥か頭上から『彼女』の苦手とするものが広がり始める予感。
暗闇が薄まるにつれて、『彼女』の身体を焼くものが静かに密度を増してくる予感。
「このままでは、まずい、ですわね……」
脳を取り込み、記憶の再生までは完了したが、未だに肉体の全てと融合を終えた訳ではない。
この肉体のままでは、間に合わない。急がねば、ならない――――。
迫る危険に、本能が後押しされるかのように。
『彼女』の宿主――――北条沙都子――――の死体の表皮が、唐突に不自然に蠢き始めた。
肉体の表面だけを覆っていた『彼女』の組織。
小柄な身体を動かすだけならばそれでも充分だったのだが、危険を感知した今、悠長に構えている場合ではなかった。
肉が押し潰され、骨が砕ける小気味悪い音が、ワゴン車付近に立つ北条沙都子の肉体から鳴り続けていた。
それは可能な限り早く、効率良く融合を果たす為の作業だった。
体組織を取り込み、『彼女』のものへと変換していく為の単純な作業。
殊に時間のかかる記憶の取り込みは最初に済ませてある。後は、そう時間を取られる事は無い。
やがて、霧の向こうから日光が路地に差し込み始めた、その時。
光に反応するかのように、北条沙都子の小柄な肉体は急速な肥大化を見せた。
衣類が破れ落ち、中から現れたのは滑りつく灰色の体表に数本の触手を携えた、人型のフォルムをした巨大なヒル。身体組織の融合は、完全に果たされたのだ。
今もどこか北条沙都子の面影を残しているそれは、肥大した足でアスファルトの上を滑るように移動し始めた。
『彼女』の躯体の最大の弱点である、紫外線から逃れる為に。
そして、己の食欲を満たす為に。
【E-2/ワゴン車付近/二日目早朝】
【女王ヒル@バイオハザードシリーズ】
[状態]:第一形態(北条沙都子よりも一回り大きめ程度のサイズ)
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:日光から逃れられる場所で食料を探す
1:日の当たらない場所へ潜む。
2:食料を補給する。
※北条沙都子の肉体と融合を果たした事により、北条沙都子に擬態する事が可能です。また、北条沙都子の記憶を持っています。
29
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/07/06(金) 00:14:40
投下終了であります!
ご指摘、ご感想ありましたらよろしくお願い申しあげます。
30
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/07/06(金) 21:23:54
投下乙です。
女王ヒルが怪力屍人に(見た目)!
イメージ的に水死人的な感じ? メーデーさんみたいな?
二本脚よりも這いずった方がもう早いような気がするけども、
その辺は沙都子の思考模倣に影響されてんのかな?
足なくちゃ走れないじゃんって。
足なんて飾りなのに!
31
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 22:25:34
>>30
感想ありがとうございます!
……の前に、思うところありまして。
せっかく感想下さったのに申し訳ありませんが、修正版投下致します。
32
:
蒼い朝 修正版
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 22:30:42
ふと空を見上げたのは、生物としての本能だろうか。
深い霧と、今は蒼くなりつつある闇。
どす黒い血液で額にへばりつく金髪の隙間から見えるのは、それだけだ。
しかし、確かに感じる気配がある。
予感と言い換えても良いかもしれない。
目に見えるものではないが、遥か頭上から『彼女』の苦手とするものが広がり始める予感。
暗闇が薄まるにつれて、『彼女』の身体を焼くものが静かに密度を増してくる予感。
「このままでは、まずい、ですわね……」
脳を取り込み、記憶の再生までは完了したが、未だに肉体の全てと融合を終えた訳ではない。
この肉体のままでは、間に合わない。急がねば、ならない――――。
迫る危険に、本能が後押しされるかのように。
『彼女』の宿主――――北条沙都子――――の死体の表皮が、唐突に、不自然に、蠢き始めた。
肉体の表面だけを覆っていた『彼女』の組織。
小柄な身体を動かすだけならばそれでも充分だったのだが、危険を感知した今、悠長に構えてはいられない。
肉が押し潰され、骨が砕ける小気味悪い音が、ワゴン車付近に立つ北条沙都子の肉体から鳴り続けていた。
それは可能な限り早く、効率良く融合を果たす為の作業だった。
体組織を取り込み、『彼女』のものへと変換していく為の単純な作業。
殊に時間のかかる記憶の取り込みは最初に済ませてある。後は、そう時間を取られる事は無い。
――――周囲の蒼さが消え、霧の向こうから日光が路地に差し込み始めた、その時。
光に反応するかのように、北条沙都子の小柄な肉体は急速な肥大化を見せた。
衣類が破れ落ち、中から現れたのは滑りつく灰色の体表に数本の触腕を携えた、人型のフォルムをした巨大なヒル。
宿主の肉体は全て自身のものとした。身体組織の融合は、完全に果たされたのだ。
これで、死体を操るよりも遥かに俊敏に動く事が出来る。危険から――――『彼女』の躯体の最大の弱点である紫外線から逃れる事が出来る。
数度、感触を確かめる様に触腕を靡かせると、『彼女』は肥大した足でアスファルトの上を滑るように移動し始めた。
ズルリ、ズルリと立てられる擦過音。次第にその音は硬質を帯びていく。まるで、革靴が立てる足音の様な硬質を。
軟体の躯体はいつの間にか凝縮し、滑りついた体表に人間や衣類の質感を持たせている。
数秒後――――『彼女』の全身は、宿主であった北条沙都子の姿へと完全に擬態していた。
攻撃擬態。融合が『彼女』の生物としての生存本能故の行動であるならば、獲物を捉える為の擬態もまた生物としての本能だ。
北条沙都子を模したそれは、光の強まるその場から迅速に離れ行く。
危険から逃れる為に。
己の食欲を満たす為に。
33
:
蒼い朝 修正版
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 22:35:19
【E-2/ワゴン車付近/二日目早朝】
【女王ヒル@バイオハザードシリーズ】
[状態]:人間形態(北条沙都子に擬態)
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:日光から逃れられる場所で食料を探す
1:日の当たらない場所へ潜む。
2:食料を補給する。
※北条沙都子の肉体と融合を果たした事により北条沙都子に擬態する事が、また、女王ヒル第一形態になる事が可能となりました。
第一形態のサイズは、取り込んだ北条沙都子の肉体とそう変わらない大きさとします。
※北条沙都子の記憶を持っています。
---------------------------------------------------------------
以上で修正版投下終了です。
微妙なニュアンスの変更をしたくなりましてこの様な形に。
ご指摘、ご感想ありましたらよろしくお願いします。
34
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/06(金) 22:44:15
>>30
改めまして、感想ありがとうございました!
這った方が早そうな気は、書いた後に自分でも思ったのですw
なので微妙にニュアンス変えてみました。そんな変わってないとかは気にしてはいけませぬw
35
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/07/11(水) 23:50:24
投下乙です
さて、女王ヒルさんは獲物に出会う事が出来るでしょうかw
ヒルのキモさがよく出てるぜ
36
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/07/14(土) 20:35:55
投下乙です
あと、先月末から復刻版サイレンマニアックスが販売中だそうですW
37
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/07/18(水) 23:41:25
っと、反応遅れましたが感想ありがとうございます!
>>35
時間帯は進んでますが一応付近には色んな獲物がおりますな。
よりどりみどりなのではないかとw
>>36
既に購入済みであります!
……去年の内に情報が出ていてくれたならば……。
38
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/01(水) 21:27:26
長谷川ユカリ、霧崎水明予約いたしたく候
39
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/01(水) 23:31:36
期待にござ候。
40
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/02(木) 15:01:07
予約キター
41
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/03(金) 02:43:52
水死体で思ったんだが、サイレンマニアックスの魔声で羽生丸の網に掛った死体って
サイレン2で赤い津波に巻き込まれた漁師なのかね?都市伝説調査隊の設定では
数年前に夜見島近海で「羽生丸」という釣り船が行方不明てあったが・・・
42
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/03(金) 21:59:52
あれは完全なフィクションじゃなかったっけ? 原作とは一切関係ないような事をどこかで言ってた気が。
漁師はみんな夜見島かサイレントヒルに飛ばされているはず!w
43
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/03(金) 22:48:22
もしかしたら羽生丸もトルーカ湖に浮かんでたりしてW
44
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:25:17
投下します。
45
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:26:40
(一)
むかしむかし、ある所に大きな門がありました。
その門の向こうからとてもこわく、とても悪い怪物がおりてきて、人をつかまえては、自分達の仲間にしてしまうのです。
まわりの村に住んでいる人は怪物がこわくて、だれも外には出られません。
それを聞いた主さまはとても困りました。
こまってこまって、うーん。うーん。とうなり声をあげるけど、どうしたらいいかなんてわかりません。
そこへ神さまに仕える巫女さまがやってきました。
とてもやさしく、とても良い人です。
主さまは巫女さまに門を閉じてくれるようにたのみました。
巫女さまは主さまの願いを聞いて、門へとむかいます。
やさしい巫女さまは自分のからだを縄にかえて扉を抑えつけてみようと思いました。
だけども門は巫女さま一人ぶんの力では閉まりません。
それでも巫女さまは門を抑えつけるのをやめませんでした。
主さまも村人もやさしい巫女さまを助けるために、次々と新しい巫女さまをつれてきました。
巫女さまたちはなんども、なんども、門のところへ行きました。
しかし、最後の巫女さまは好きな人がいたので嫌がりました。
でもそうしているうちに村人たちは悪い怪物になってしまいます
主さまも村人もこれまでに縄になった巫女さまたちも怪物になってしまいました。
やさしいやさしい巫女さまにとってそれはとてもかなしいことです。
仕方なくからだを縄にかえ、扉を完全に閉じ、村人たちを元に戻しました。
46
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:27:11
ある時、いなくなったはずの怪物たちよりもさらに大きな怪物がやってきました。
その怪物はとおい所から、別の道を通ってやってきたのです。
大きな怪物はいいました。
『おれにはけんもやりもやくたたずだった。ゆみやもてっぽうもはねかえしたんだ』
なのにどうしたことだと、怪物は泣き出しました。
『たったのひとことでおれはしんでしまった、もうあいつにはあいたくない。だから、もんをまもるからかわりにおれをかくまってくれ』
巫女さまは大喜びでいいました。
『わかりました、それじゃあもしあなたが嘘を吐いたときのために、あなたを殺したじゅもんを教えてくれたらかわってあげましょう』
大きな怪物は口に出さないよう、じゅもんを地面に書きました。
――Tu fui,ego eris……
じゅもんを胸に刻みつけた巫女さまは、好きな人に会いにいこうと歩きはじめました。
風のささやきが巫女さまの背中を後押しします。
かいぶつは、小さくなっていく巫女さまの背中を見おくってました。
いつまでも、いつまでも――見えなくなっても、ずっと。
47
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:27:50
(二)
呻き声と拙い足音が通り過ぎる。
大分距離が離れているが、音はねじ込むように耳朶にその響きを残した。
傍で、ユカリが安堵の――そして幾ばくかの苛立ちも籠った吐息をつく。
彼女は、預けた携帯電話の液晶画面を見つめていた。純也からのメール以降、誰からも連絡はない。
少しでも携帯電話の寿命を延ばすならユカリを咎めるべきだ。ずっと見ていたところで、連絡が来るわけではない。
だが、このまま放っておこうという気持ちも同時に湧き起こる。多少投げ遣りになる程度には疲れてきているらしい。
結局のところ、好きにさせたままでいる。使えるか分からない充電器は別にしても、予備の電池は持ち歩いている。
水明は自身の溜息を呑み込んで、天井を見上げた。淡い光の中で、ぶら下がった白熱灯の表面が鈍く光っている。
ガソリンスタンドの管理小屋も兼ねたコンビニエンス・ストア内は埃っぽい湿気が充満していた。
隠れているカウンターの裏は窮屈だった。店員のものだろうか。古いプレイ・ボーイ誌が何冊も床に積まれ、大胆な格好で腰かけた金髪女性が挑戦的な眼差しを投げかけていた。
カウンターの背後を守るようにして並ぶ冷蔵庫の電源は入っておらず、店内を反射するガラス戸の奥にペットボトルの影が鎮座しているのが分かる。
水明はカウンターから顔を出した。窓ガラスの向こうで、復活した街路灯が闇を照らし、白い風景を浮かび上がらせている。その霧の中で蠢く人影がゆっくりと消えていく。
天井から引っ掻くような物音が聞こえた。小鳥が屋根の上で遊んでいる時と似た物音だが、音の主が小鳥のように可愛らしい大きさでないことはその響きから容易に想像がつく。まだ動くことは得策ではないようだ。
もう何度目になるだろうか。
何かしらの異常を感じたら立ち止まり、何処かに身を潜め、成り行きを待つ。幸い、隠れる物陰は豊富にあった。しかし、それは同時に死角が多いということでもある。
自然と早足になるのとは裏腹に、実際の移動時間は減っていった。それでも、岸井ミカが連絡をくれたクラブはもう通りを一本隔てた場所まで来ている。
だが、そこから動くことができない。身体を腐らせた亡者たちの数が増えている。
元々そうなのか。それとも、何かに引き寄せられているのか。後者の場合、引き寄せている"何か"について、最悪のケースがどうしてもちらついてしまう。
もし、人見か小暮のどちらかが岸井ミカを保護出来たならば、おそらくは何らかの連絡があるはずだ。
それがないということは、まだそれぞれ合流できていないのだ。もしくは、連絡をよこせるような状況にはいないのか。それとも、保護されていたとしても、当の岸井が名乗れるような状態にないのか。
いや、そもそも電話が繋がらないという状況も考えられる。最後に見た時も、携帯電話の電波状態は圏外であった。
引いては、本当であれば繋がらない状況で通話できたことが例外なのであって、現在不通であっても不思議はない。そもそも、いつまでも電話が使える保障があるものでもない。
だが、用もないのにこちらから電話するのは躊躇われた。
安否の確認は、一旦気にしてしまえば終わりがない。
便りがないのは無事な証拠――そう、割り切るのが一番なのだと自戒する。
物事をどれほど突き詰めていっても疑念は残る。確実ではないのだから――絶対はないのだから、不安は在り続ける。
ましてや、命を懸けられた状況であれば尚のことだ。
不安へ対抗するには、人は信じることしかできない。信じることで、心の均衡を保とうとする。
厳しい目で解すれば、これは逃避と言われるだろう。だが、同時に救いでもある。
信頼と不安は、常に表と裏だ。
死のリスクは、いつでもすぐ隣に存在するのだ。暗がりで、そっと息を潜めている。
亡者の呻き声が、幾分か近くで聞こえた。ユカリが僅かに身じろぎをした。足音が通り過ぎていく。
亡者たちはどうやら主に視覚に頼っているらしい。聴覚や嗅覚も機能しているようだが、用心して身を隠せば取りあえずは凌ぐことができる。
しかし、それは彼らが人と差のないことの証でもあるように感じられた。
48
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:28:14
水明は、ベルトに挟んだ拳銃の重みに意識を向けた。
人でないと確信が持てない以上、撃つことは出来ない。いくらでも言い繕えるだろうが、本心は人道的な理由ではないことを己が一番よく知っている。
単に、怖いのだ。
明らかな化け物を仕留めることでさえ、吐き気を及ぼすほどの嫌悪感に苛まれた。
だが、いつか必ず撃たねばならないときが出てくるだろう。覚悟を決めるその時を延々と先送りにできるほど、この町は甘くないはずだ。
水明は口元を指で揉んだ。口の寂しさが無性に気になった。煙草はカウンター脇の棚に幾つか並んでいるが、手に取る気分にはならなかった。もっとも、吸えるような状況でもないが。
ふと、中学時代の友人――に含めてしまってもいいだろう――の姿が浮かんだ。団子鼻に引っかかった眼鏡――その度の強いレンズの向こうに、小型犬のような瞳が鈍い光を放っている。
彼ならば嬉々として、あらゆる真相の可能性を追求しようとひた走るだろうか。
風の便りで警察機関に就職したと聞いていたが、脳裏に浮上した彼の姿は中学生のままだった。
多分、とても懐かしい光景を目にしたせいだ。
己にとって転機と言える、忌まわしい事件――幼馴染とクラスメイトを失ったあの日の公園が、この町に在った。
霧にこそ包まれていたが、それは記憶に残る景色と寸分違わぬままで眼前に広がっていた。違わぬからこそ、偽物だと断定できる。
しかし――と、水明は微苦笑に頬を歪めた。サイレントヒルが映し出すのは、その者の心の景色だ。あれは、あの日から彼がずっと前に進めていないことの証左かもしれない。
足を前に踏み出しているようで、その実、あの公園の敷地内をぐるぐる回っているだけに過ぎないのか。皮肉めいた感情が煙のごとく胸中に立ち昇る。
古ぼけたファイルを抱えたまま、まだ中学生の自分が内側に眠っている。
しかし、この町から抜け出せなければその足踏みすら止まってしまう。
郷愁にも似た想いを掻き消し、水明は巫女の童話に思考を向ける。
一言で言えば、童話は奇妙なものであった。登場する巫女の身上が、それを語る氷室霧絵自身と所々重なるところから、この内容には彼女の精神が少なからず影響している代物と捉えられる。
気になるのは、まず、物語の中で事態が解決していないことだ。
物語は、呪文を胸に刻んだ巫女が封印に身を変えた怪物を残し、想い人の許へ向かうところで終わっている。
巫女は想い人と一緒になれたであろうことは想像がつく。ハッピーエンドとも言えるかもしれない。
しかし、扉の件が放置されてしまう。怪物はそのまま大人しくしているだろうか。呪文は使われることはないのか。起承転結の転で止まり、結末にまで至っていないのだ。
そもそも、何故封印を解く呪文を童話は示しているのだろう。
憶測とはいえ、アレッサか、町そのものに不都合があるからこそ扉を怪物で封じているのではないか。
殺し合いのルールがそうであるように、呪文そのものは無意味なのか。
だが、氷室霧絵は呪文そのものに忌避感を覚えたという。
門の封印が解け、災厄が齎されることを恐れたのだと彼女は言っていた。
サイレントヒルは心が大きく影響を与える町だ。童話を読めば、呪文の役割は当然頭に入っている。たとえ、呪文そのものが無意味でも、役割を認識して口に出せば効果は顕在化するかもしれない。
"言霊"という思想がある。言葉には魂があり、良い言葉を口にすれば吉事が起こり、よくない言葉を口にすれば凶事が起こるという考えだ。名前を付けられることでモノがそれに縛られるようになるのと同じように、言葉に乗っただけでも事象に意味が起こり、型が生まれ、形を持つ。
事象の具体化は物事を矮小化させることがある反面、枠に嵌めて定義づけられることで力を持つようになることもある。
後者のケースが、言霊の発現だと言えるだろう。
例えば、実話怪談の蒐集家の間には"封印された話"というものがある。書いたり話したりすると変事があるので発表できないという代物だ。当然語られないのだから、憶測が憶測を呼び、ファンの間では、どんな恐ろしい話なのだろうと好奇の対象となっている。
しかし、実際は何の変哲もない、普通の怪談であるらしい。仕事の関係でそうした蒐集家の一人と言葉を交わす機会を得た際に教えてもらったことだ。特別恐ろしいわけでもなく、忌わしい謂れがあるわけでもない。そうであるにも関わらず、語ることができない。
49
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:28:37
つまり、原因は内容ではないのだ。語ることそのものに障りがある。都市伝説における"牛の首"も、元を質せばこうした"封印された話"の一つであったのかもしれない。
内容如何に関わらず、怪談を語ることに怪異が潜む。言葉となることで、怪異が形となって現実を侵食するようになる。
しかし、そうであればこそ、呪文は隠されるべきではないだろうか。無論、無意味が組み合わさって意味を持ってしまったイレギュラーなケースであるとも考えられなくはない。
だが、もしも――呪文を教えることこそが目的だとすればどうだろうか。
気になるのは、この呪文が、あくまで音としてでしか認識できないことだ。異国の言葉を、ダイレクトに意味として脳が理解できるような状況にも関わらずだ。
この事実こそ、呪文が無意味である証左とも言えるかもしれないのだが、呪文として使われた言葉の意味を考えるとそうではないように思えた。
怪物を殺す呪文"Tu fui,ego eris"――墓碑銘に刻まれるラテン語の一つだ。
意味合いは"私は貴方と同じく生きていた、あなたもやがて私と同じく無に還るだろう"とでもなるだろうか。誰にでも訪れる死の普遍性を示した言葉だ。死の呪文としてそう外れてはいない。
一方で、直訳すれば"貴方は私であり、私は貴方であった"となる。
言葉通り受け取れば、巫女と怪物の同一性を示すことにもなるのだ。巫女は怪物であり、怪物は巫女だ。封印の一部として、両者は共通する部分を持つ。
死の呪文は怪物から伝えられた。主体は怪物になる。とすれば、呪文は後者の意味に変じるのではないだろうか。つまり、封印の交代、もしくは同化だ。
呪文を唱えたものが、怪物となって封印を担う役割になってしまう。たとえ境界の裂け目を突き止められたとしても、怪物を殺す呪文は町にとって不利益でなくなる。
いや、こうしたメビウスの環を形作ることこそが真意とすれば、呪文は餌だ。試さないことには呪文が有効かはわからない。そして試せば、裂け目に辿り着いた者は消える。
同時に複数人いた場合は呪文が無効という経験は残るが、感情として"封印は解けない"という想いが強まる。下手をすれば、現実に封印そのものを強化することにも繋がりかねない。
伝え手によって二重の意味を同時に持つために、呪文は音としてしか認識できない。
あくまで町は閉じようとしている。そのまま、永遠の箱庭でも作るつもりなのか。
目的はさておき、怪物を除けるには別の方法、もしくは呪文が必要と考えた方がいい。
そして、もう一つ。なぜ氷室霧絵は封印の前に放り出されていたのか。裂け目が見つけられないことに越したことはないのだ。呪文の媒介者として必要だったのか、それとも――。
思考に沈み込んでいると、近くで間の抜けた低音が聞こえた。
音の源へ視線を向けると、ユカリが腹部を焦った様子で押さえつけている。指の隙間から似たような鳴き声が漏れた。
その緊張感を欠いた音色に、水明は失笑した。
この状況に巻き込まれてから六時間以上経過している。ろくに休憩もしていなければ、食事も摂っていない。一度意識すれば、水明自身の胃も不満を訴えて捩り動こうとする。
ユカリは無駄な努力を止めたようで、身体を脱力させて溜息を吐いた。
「……なんか、食べる気しないよね。今は普通だけどさ」
短く詫びた後で、ユカリが囁いた。カウンターのラックに積まれたスナック類のことだろう。何の変哲もないが、つい先ほどまで汚泥と錆に塗れていたことは想像に難くない。
50
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:28:58
「まあな」
同意を返すが、手に取りたくない理由はユカリが示したものばかりではない。
頭をよぎるのは"黄泉竈食い"のことだ。黄泉の国の釜で煮炊きしたものを食べると、二度と浮世に戻ることは出来ない――。
この町に有るものは、すなわちこの町が生み出したものだろう。人々の心を反映したとしても、それを仲介するのはあくまで町の力だ。
では、町の力とは何なのだろうか。
元々、この町は先住民にとっての聖地だった。すなわち、地脈や気と称される大地のエネルギーの強い場所であったと考えられる。
だが、力そのものに意味はない。力の持つ性質は、その向かう方向に左右されるものだ。
ヨーロッパからの入植による先住民の迫害、伝染病、刑務所で行われた処刑、そしてアレッサ・ギレスピーの起こした異界化――そうした忌わしい出来事によって力の方向が歪められてしまったのだろう。
謂わば、何重にも折り重なった"死"に侵食されているのが今のサイレントヒルという土地だと言えるだろう。
数多の死が土地そのものに影響を与えると言われても、気分的な問題以上の障害がないように思えるかもしれない。
しかし、そうだとは限らないのだ。
"穢れ"というものがある。目には見えないが、在ると信じられてきた。思想や宗教というよりも、日本人の文化や思考を形成する上での基盤の一つといってもいいだろう。かといって、日本固有のものではなく、ユダヤ教やイスラム教、ヒンドゥー教などにも同質のものが多く見られる。
"穢れ"は、"罪"と同様の物として並べられるが、簡単に言えば、人為的なものを"罪"とし、自然的なものを"穢れ"と大別する。神道に於いては、罪は"天津罪"と"国津罪"と二部され、前者は共同体を阻害する犯罪であり、後者は人為的・自然的に人が疵付く事象を指す。"穢れ"は後者に該当する。
"穢れ"を多く付着させた人間は祭事に関わることを禁じられ、人との接触すら制限されることとなった。人が生きている限り蓄積していくものだが、犯罪や病、出産の際にはより強く身体に付くとされた。その最大のものが、死した際に付く"死穢"である。
そして、重要なのは"穢れ"は伝染するということだ。
三大格式の一つである『延喜式』において、"死穢"は甲乙丙丁と強さが四段階に分けられている。そして、死人を出した――つまり、甲の"穢れ"に包まれた家に招かれ食事をした人間は、乙の"穢れ"に感染し、持ち帰った先の家族までが汚染される。それ故に、人が死んだ場合には三十日の、家畜が死んだ場合には五日の謹慎が定められていた。
とはいえ、この伝染は人を介するごとに弱まり、期間を経れば消える。禊や祓を受けることで落とすこともできる。
だが、消える暇もなく"死"が続いたとしたら、どうなるのだろうか。
無論、そのような場所は世界中にある。
しかし、サイレントヒルは聖地となるほどの強い力を持つ土地だった。
そして、おそらくはその力の流れが歪められ、"穢れ"を祓うのではなく、むしろ引き込む様な性質に変わっている。いわば、サイレントヒルという地が一つの大きな付喪神に変じてしまった。
行き場を無くした"穢れ"は払われることなく、土地に滞留し続けるだろう。それはやがて澱みのようになり、サイレントヒル全体がその中に沈んでいる。
そうだとすれば、己たちは"穢れ"の中で呼吸し、動き回っていることと同義だ。
頭をよぎるのは、先ほどまで町を侵食していた血錆のことだ。
サイレントヒルは、土地そのものの記憶も反映するのだろうか。あの血錆は、土地を汚染する"穢れ"の象徴のようでもある。
水明は自分の持ち物に視線を置いた。
持ち物は町の変化に影響を受けない。これはシビルの経験から導き出せるし、影響を受けるならば町に入った時点で変化しているだろう。町の所有物ではないから、影響の外にあると考えるのが自然だ。
だが、"穢れ"は中に入ったものを汚染する。
いずれは外から持ち込んだ物も町に囚われる。いや、物だけでなく、人間も――。
また、情けない音が聞こえた。
微苦笑を漏らし、水明は鞄からスナックバーを取り出した。そして、羞恥で俯いているユカリに手渡す。入れっぱなしだったせいだろう、包装が潰れてしまっている。
「町に来る前に買っといたもんだ。見てくれは悪くなってしまったが、中身に影響はない」
「……加齢臭が染みついてそう」
「大人の魅力というんだよ、そういうのはな」
51
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:29:35
空気の中に、微かに甘い匂いが混じった。
ふと、水明は違和感を覚えた。周囲に目立つ音は、ユカリの咀嚼する音だけだ。
それ以外に目立つ音が聞こえない。周囲をうろついていた亡者たちの足音が――ない。天井の気配もなくなっている。
ユカリも気づいたのか、気味悪そうに首を巡らせている。
不気味な静寂が店内を包んでいた。
「……外に出てみる。長谷川はまだ中にいるんだ。外で何か起こっても、事態が落ち着くまで絶対に動くな」
ゆっくりと立ち上がり、水明は出口へと近寄った。
ガラス戸から外を伺うも、霧の中にあるのは動かぬ家々の影だけだ。その光景は何処か空々しく映った。
扉を開ける際、蝶番の軋みが酷く致命的な物音のように感じられた。しかし、予感と反して、開けた途端に覆いかぶさってくる襲撃者などはいなかった。
外に出た水明の周りで、霧が音もなく動いている。
羽ばたきを耳が拾った。思わず屋根の下から出した顔を引っ込めるが、こちらに気付いた訳ではなさそうだ。羽音は遠ざかっていく。
音は北から聞こえてくる。通りに出て見やると、湖畔に立つ街路灯の明かりの中で、何かを襲うように急降下する大きな影が見えた。その真下では、複数の人影が霧の中に消えていく。
通りに居たものたちは、何かを追いかけて行った。そのように見える。
しかし、全ての亡者たちがある一つの獲物に惹きつけられるなどあるだろうか。
だが、事実、通りから彼らの姿は消えている。耳を澄ますと、鳥の様な鳴き声が微かに響く。音の方角から推測するに、彼らは湖畔を東へと向かったようだ。
わざわざ、彼らを呼び集めるようにして誰かが逃げているのか。
この不自然な光景に水明は口を曲げたが、移動する好機には違いない。
足早に店に戻って、ユカリを呼んだ。
怖々とした足取りで、ユカリは水明についてくる。何もいないという状況を怪しむように、忙しなく彼女は周囲を見やっていた。
ふと、ユカリの動きが止まる。
釣られて、水明もまた通りの南へと視線を向けた。
霧の向こう――十数メートル先に人影が立っていた。詳しい容姿までは分からないが、十代半ばの少女のようだと判別できる。
影はこちらに気付かれるのを待ってたかのように、一拍の間を置いて南へと去っていく。
「ミカなの!? ねえ!」
そう叫ぶが早いか、ユカリが駆け出した。
「おい、待て!」
引きとめようとするも、水明の手をユカリはすり抜けた。
舌打ちして、水明はユカリの後を追った。思いのほか、彼女は健脚だった。髪を振り乱す彼女との距離は、想像以上に縮まらない。
少女の影は、こちらを誘うように一定の距離を保ちつつ逃げ続ける。
あれが、ユカリの知る岸井ミカであるはずがない。水明は彼女の容姿を見たことがないが、それだけは断言できる。
どうして――この霧で"少女"と判別できるのだ。まるで、霧が少女を避けているようではないか。
遠目だが、あの影は車の前に飛び出してきた少女と似ている――つまり、アレッサ・ギレスピーと。
「落ち着け、長谷川!」
漸く追いつき、水明は引き倒すようにユカリの肩を掴んだ。
過呼吸に陥ったように喘ぐユカリは、それでも水明の拘束を逃れようとしていた。
水明は通りの先を睨みつけた。
現れた時と同じように、人影は唐突に消えていた。いや――一瞬だけ、紫紺の裾が霧の中ではためいた気がした。
「ここ、は――ミカは……?」
52
:
Obscure
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:31:52
ユカリが呆然としたように呟いた。その場で膝をついた彼女から、水明は手を放した。
随分と走ってしまったようだ。シャツのボタンを幾つか外して、上気する身体を落ち着かせる。
水明は脇に目を向けた。
アルケミラ病院と掲げられた建物が、鉄柵門の奥で威圧感を以て水明たちを出迎えていた。
【B-6/キャロル通り・アルケミラ病院前/二日目黎明】
【霧崎水明@流行り神】
[状態]:精神疲労(中)、睡眠不足、空腹、頭部を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)。右肩に銃撃による裂傷(小。未処置)
[装備]:携帯電話、懐中電灯
[道具]:10連装変則式マグナム(10/10)、ハンドガンの弾(20発)、宇理炎の土偶(?)
紙に書かれたメトラトンの印章、自動車修理の工具
七四式フィルム@零〜zero〜×10、鬼哭寺の御札@流行り神シリーズ×6、食料等、本物のルールと名簿のチラシ、他不明
[思考・状況]
基本行動方針:純也と人見を探し出し、サイレントヒルの謎を解明する。
1:岸井ミカと式部人見を保護する。
2:アレッサ・ギレスピーと関係した場所、および氷室邸を調査する。
3:そろそろ煙草を補充したい。
4:氷室邸は異界からの脱出口になるかもしれない?
5:門の怪物を倒すには別の手段、もしくは呪文が必要?
※ユカリには骨董品屋で見つけた本物の名簿は隠してます。
※胸元から腹にかけて太陽の聖環(青)が書かれています。
【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】
[状態]:精神疲労(中)、頭部と両腕を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)
[装備]:懐中電灯
[道具]:太陽の聖環の印刷された紙@サイレントヒル3
地図を書き込んだサイレントヒルの観光パンフレット、(水明が書き写した)名簿
ショルダーバッグ(パスポート、オカルト雑誌@トワイライトシンドローム、食料等、他不明)
[思考・状況]
基本行動方針:チサトとミカを連れて雛城へ帰る
1:ミカに会いたい。
2:とりあえず水明の指示に従う。
3:チサトを探したい。
4:無事とはいえシビルが心配。
※キャロル通り付近に居たクリーチャーたちはネイサン通りの公園方面へ移動しました
53
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/04(土) 00:32:25
以上です。
指摘等ございましたらお願いします。
54
:
乙
:2012/08/04(土) 11:04:05
霧崎とユカリの安定感はガチ
55
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/04(土) 16:02:50
投下乙でした!
氷室邸脱出口説の考察も順調に進んでおりますな。
どうやら単に呪文を唱えるだけではグラトンは消えてくれない方向性かな?
こうなると更に童話の続きも出てきそうな予感。
そして舞台はアルケミラに!
人見やミカがどうなっているのか。
地味に最近出番の増えたアレッサはどう動くのか。
まさかの団子鼻小型犬眼鏡に出番があるのか。
色々気になってきますな!w
56
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/06(月) 19:43:23
備考追記です。
※表世界になったため、ナイト・フラッターはエア・スクリーマーに変化しました。
エア・スクリーマー
出典:『サイレントヒル』シリーズ
形態:多数
外見:ケロイドのような肌をした翼竜
武器:嘴と足の爪
能力:翼で飛行し、上空から急降下して噛みついたり、すれ違いざまに爪で攻撃を仕掛けてくる。
攻撃力★★☆☆☆
生命力★★☆☆☆
敏捷性★★★☆☆
行動パターン:普段は上空を飛び回っている。大きい個体は仲間を呼ぶ習性がある。
備考:ナイト・フラッターの表世界での姿。
57
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/06(月) 20:13:19
>>54
さん
ケビン組と同じような安定感を持つチームでさあね……ということは……
>>55
さん
童話の続き、ありますかね!?
アレッサは裏主役みたいな感じでしょーかねえ
58
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/07(火) 18:11:30
投下乙です
考察は進んでる安定感のあるチーム。なのにサイレントヒルの泥沼にどんどん足を踏み入れてる様で安心できねえw
原作の童話の雰囲気がよく出てていい。続きが来たら…
59
:
◆TPKO6O3QOM
:2012/08/07(火) 21:19:26
>>58
サイレントヒルを深く理解できることは、町と同化しちまうことに繋がるのかもしれませんねえ。
続き……本当は怖い童話スタイルなのか、ハッピーエンドなのか、ヒロインのキャストが変わっているのか……
気になるところですな
代理投下、ありがとうございました。
60
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/12(日) 11:53:24
隙間録という形に便乗いたしまして、
三上隆平@SIREN2
三上脩@SIREN2
加奈江@SIREN2
予約で!
61
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/12(日) 18:36:53
中々興味深い予約ですな
本筋にどう絡んでくるのか楽しみだ
62
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/15(水) 22:36:45
アグラオフォテスがあれば黄泉竈食いも何とかできそう
63
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/15(水) 22:37:02
アグラオフォテスがあれば黄泉竈食いも何とかできそう
64
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/15(水) 23:04:05
水明先生って多聞ポジション?
65
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/16(木) 07:43:44
>>63
屍人が死ぬ事になってるから、死んでしまうかとw
>>64
共通点はあると思うけどどうだろう?
多聞って結局どんなポジションだったのかよく分からんw
多聞に限らず、サイレンの登場人物みんなに言えるかもしれないけど。
66
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:06:50
三上隆平@SIREN2
三上脩@SIREN2
加奈江@SIREN2
投下します!
67
:
MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:07:55
【 三上脩 】 夜見島/蒼ノ久集落/三上家二階 1976年某日 20時09分29秒
【 三上脩 】 夜見島/蒼ノ久集落/三上家二階 1976年某日 20時09分30秒
【 三上脩 】 夜見島/蒼ノ久集落/三上家二階 1976年某日 20時09分31秒
【 三上脩 】 夜見島/蒼ノ久集落/三上家二階 1976年某日 20時09分32秒
「あのね! おねえちゃんがきょうね、おねえちゃんのおかあさんのおはなししてくれたんだよ」
父親が整えている布団の中から、三上脩の幼い声が上がった。喜びの込められた純粋な声だ。
眠りに落ちる前のほんの僅かな時間。脩がその日一番の出来事を語るのは、三上家の日常的風景だった。
「ん?」
「かみさまがしんだの。そしたらおねえちゃんのおかあさんがうまれたんだって」
「はっはっは。神様か。おねえちゃんがそう言ってたのか?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべて頷く脩に対し、父・隆平はぎこちない笑みを返していた。
“お姉ちゃん”――――数ヶ月前に夜見島港の岩場に流れ着いていた少女、加奈江の事だ。
少女は記憶を失っていた。身元を証明する様な私物も無く、その身に何が起きたのか、一体何処の誰なのか、未だに誰にも分からない。
脩が少女に妙に懐いてしまった事や、少女が隆平の亡き妻・弥生に瓜二つだった事等々の事情から、隆平には少女を捨て置く事は出来なかった。
故に発見したその日から、隆平の家で保護する運びとなり、今に至る訳だが――――その加奈江の言動や行動には、誰の目にも奇妙に映るものが多い。
少女が脩に対し、夜見島に古くから伝わる文献――とても一般的には知られていないはずの代物だ――の一部を詩として語っていた事もあった。
少女は一体何者なのか。隆平が少女の事を思い浮かべる度に頭をもたげてくる疑念。
この時にも同様だ。隆平の笑みの裏には、その疑念が生まれていた。
68
:
MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:08:40
「それでね、おねえちゃんのおかあさんはね」
隆平は話を続けようとする脩の頭に、緩やかに手を乗せた。
その眼差しは、加奈江の事を案じる気持ちとは裏腹に、優しく、暖かい。
「脩。もう遅いからな。お話はまた明日聞かせてくれるか?」
「わかった!」
「お休み、脩」
「おやすみなさい!」
脩が目を瞑ると、隆平は息子の頭を撫でていた手を静かに離して立ち上がった。
電気が消され、隆平が階段を降りていく足音のみが脩の寝る和室内に届く。
脩は閉じた目の中で加奈江から聞いた“お話”を反芻していた。
明日、父親に話して聞かせる事をとても楽しみに思いながら。
おねえちゃん おはなししてくれた
おおきいかみさま しんだ
おねえちゃんのおかあさん うまれた
いっぱいうまれた
おねえちゃんのおかあさん とんでいった
とおいところ しらないところ いっぱいとんでいった
おねえちゃんもいけないところ いっぱいとんでいった
みかみしゅう 4さい
69
:
MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:09:21
【 加奈江 】 夜見島港/沖合 1976年08月03日 05時46分46秒
【 加奈江 】 夜見島港/沖合 1976年08月03日 05時46分47秒
【 加奈江 】 夜見島港/沖合 1976年08月03日 05時46分48秒
【 加奈江 】 夜見島港/沖合 1976年08月03日 05時46分49秒
空が明るさを増していく。
海面に浮かぶ加奈江に、朝日は容赦無く降り注ぎ、身体を徐々に焼いていく。
身を隠す場所は無い。全身を包む海水は黒衣の代わりにはなりはしない。もう加奈江が助かる望みは何処にも無い。
だが、それを選んだのは他ならぬ加奈江自身だ。
母の力を受け入れて母の元へと帰還する。その道も無い訳では無かった。
帰還してさえいれば、こうして光に焼かれる事も無かったのだが――――。
脩。
脩を、守りたい。
脩を、母の住む世界――――虚無の世界へと送り、殻として扱いたくはない。
加奈江はその一心で、母を裏切り、帰還を拒んだのだ。
島民達に追い詰められ、海へと落下した場所が灯台付近だったとはいえ、その灯台にあった小舟が流される二人の側に漂ってきたのは本当に幸運だった。
脩を助ける為の唯一の希望。身体に残された力を振り絞り、どうにか小舟まで泳ぎ切り、脩をそれに乗せる事には成功した。
あいにくそこで力尽き、自らが乗り移る事は叶わなかったが、構わない。舟の上だろうと下だろうと、どうあれ加奈江が陽光から身を守る手段は無いのだから。
残る不安は――――救助隊に発見されるまでの間、脩の体力が持つかどうか。
それは運次第となってしまうだろうが、出来るだけの事はした。助かって欲しい。助かってくれるはずだ。そう祈るしかない。
70
:
MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:09:59
加奈江は安らかに両目を閉じた。
これでもう、鳩としての使命も終わりだ。
陽光に曝された身体は、数分もしない内に全てが焼き尽くされるだろう。
呆気無いと言えば、実に呆気無い最後だ。自分が帰還しなかった事に、母は落胆しているだろうか。
それでも加奈江には後悔は無い。
このまま消滅しても。母を裏切る結果となってしまっても。
脩を、守りきれた。それだけで、充分だ。
脩の安否以外には、後悔も、未練も、加奈江の中には無い。
――――ただ。
加奈江の脳裏には、とある疑問が生じていた。
それはあの赤い津波の中での事。
あの津波は、母が自分を呼び戻す為に引き起こした現象だ。
津波そのものは幻に過ぎないが、現世に干渉する母の力が形として現れたものだ。それは、間違いない。
しかし、あの時。
加奈江が赤い津波に呑み込まれ、写し世へと流れる濁流の中で脩を守ろうと必死に抗っていた時。
濁流の中に、“母のものとは異なる力と意志”が紛れ込んでいた事に、加奈江は気が付いたのだ。
母の力が、巻き込まれた島民達を写し世へと引きずり込んでいく最中に、その異なる力が確かに“写し世ではない何処か”へと通じる入り口を開いていた。
加奈江には心当たりの無い、謎の力と意志。
母のものとも、出来損ないの屍霊達のものとも違う力だったが、それでもあの力からは、何処か母と近しいものを感じ取れた。
そして、あの意志からは、何処か加奈江のものと似た想いが感じ取れた。
加奈江と、似た想い――――。
加奈江の、脩に対する想いと似た――――。
あれは――――そう。
誰かに対する、思慕、だったのではないか――――。
しかし、一体あれは、何者の力と、意志だったのか――――。
71
:
MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:10:32
閉じていた瞼が光に焼かれ、溶け落ちて。視界が無理矢理に開かれた。
脩が小舟から、加奈江を見つめていた。
何が起きているのかまでは理解し切れていないだろうが、溶けゆく加奈江の身体を、脩が見つめていた。
「脩、見ちゃダメ」
後悔も未練も無かったはずが、たった今生まれた悔いがあった。
このままでは脩に、自身が人間ではないと悟られてしまう。
脩に、泥々に溶解する自身の身体を見せつけてしまう。
それだけは、どうしても嫌だった。
「見ないで」
脩には、醜く消える姿を見られたくなかった。
怯えさせたくなかった。
嫌われたくなかった。
だが、今の加奈江に残された力は無い。
願いを口に出す事すら、加奈江にはもう、出来なくなりつつあった。
「脩、見ないで」
それが最後の言葉となった。
海水と同化する様に、自らの身体が溶けていく。
意識もまた、同様に。
暗く落ちる意識の中。加奈江は、見ないで、とそれだけを願っていた。
脩が見つめ続ける中。加奈江は、ただそれだけを願っていた。
――――Continue to SIREN2
72
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/16(木) 23:16:21
以上で投下終了です。
ご指摘、ご感想ありましたらよろしくお願い申しあげます。
>>61
す、すみません。隙間録という事なので彼ら自体は全く本筋に絡んできません!w
73
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/17(金) 21:15:34
投下乙でした。
遠いところというと、羽生蛇村の堕辰子よりも遠いとこなんでしょうかね。
ニュアンス的に。
SIREN世界だけでなく、他の世界も闇那其の欠片から分岐?
74
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/20(月) 00:54:49
感想ありがとうございます!
>>73
羽生蛇村は加奈江も頑張れば行けるんではないかと思いますw
他の世界も起源は闇那其『だったのかもしれない』、というイメージではありますね。
まあだからといって全てが全く同じで同一世界という訳ではなくパラレルはパラレルなので、例えばバイオとクロックが同一世界、みたいな事は考えてませんが。
というわけでございまして、問題無さそうなのでWIKIに収録させて頂きました。ご確認下さい。
75
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/21(火) 18:51:15
投下乙です
思慕、ねえ…
本ロワの謎が徐々に明かされつつある中で最後はどうなるか…
76
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/21(火) 21:26:11
>>75
感想ありがとうございます!
思慕は、実は本編のどこかで匂わされているのであります。
まあ加奈江の盛大な気のせいという可能性もなきにしもあらずですがw
そんなわけでありまして、隙間録もう一つ行きます。
ジェイムス・サンダーランド@サイレントヒル2
予約で!
そろそろ本編動かせやというお叱りが聞こえてきそうですが、そちらは今しばらくお待ちを。
77
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:00:49
隙間録
ジェイムス・サンダーランド@サイレントヒル2
投下します!
78
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:04:33
窓の外には、真っ白い霧が充満していた。
目を凝らしても、映るものは流れゆく霧の動きと、流れの隙間に時折見える木々の陰ばかり。
相変わらずの、ホワイトアウト。“レイクビュー”とは名前負けも良いところだ。
本来は静かで美しい湖畔の景観も、これでは誰かの心を安らげる事は出来そうにない。
やはり、それも――――私のせいなのだろうか。
ホテルの図書室で、木製の小さな椅子に腰を落ち着かせたまま、私はこれまでの経緯を振り返る。
町の異常や、町を跋扈する怪物は、自分と何かしらの関係がある。薄々は勘付いていた事だ。
それと同じく、町に到着してから一度として晴れる事の無かったこの不自然すぎる濃霧も、やはり自分と関係していたのだろうか。
目を背けていたかった現実を覆い隠そうとしていたのか。
それとも無くしてしまった記憶を追いかける焦燥感が形となって現れていたのか。
いや、どちらにしても既に私は現実を理解している。
妻との――――メアリーとの思い出が残るあの部屋で。つい先程確認したビデオテープの映像で、全ての記憶は取り戻されている。
それでも、未だに霧は晴れていない。町も私も、怪異から開放されていない。記憶を取り戻しただけでは、終わらないのだろうか。
――――当然か。結局私は、肝心な事は何も成していないのだから。
耳につけているヘッドフォンの音が途絶えてから、どれくらい経ったのだろう。
聞かされていたのは、絶望と苦痛の始まりの声だった。
妻の担当医から、彼女の余命を告げられた、三年前のあの日の思い出。
もう記憶は取り戻しているというのに。この場で改めて現実を突き付けられて。
呆けた様に眺める霧の中には、この三年間の苦しみが映像となり、走馬灯の様に移り変わって。
最後に浮かんだものは、もう誰の温もりも感じられない、空っぽになってしまった冷たいベッドだった――――。
やはり、向き合わねばならない。
自分の心に対して。そして、死なせてしまった――――いや、殺してしまった妻に対して。
けじめをつけない限りは、この怪異は恐らく永遠に終わりを迎える事は無いのだ。
それが例え、どの様な結論であり、どの様な結末に至ろうとも。決着は、私自身でつけなくてはならない。
私はゆっくりとヘッドフォンを耳から外し、デスクの上に戻した。
そしてナップザックをデスクの上に置き、中から道具を一つ一つ取り出して並べていく。
ブルー・クリーク・アパートの一室で見つけた、『白の香油』。
ガソリンスタンドに置き忘れられていた、『書「失われた記憶」』。
歴史資料館の割れたガラスケースに展示されていた、『黒曜石の酒杯』。
そして、この図書室でつい今しがた手に入れた、『赤の祭祀』。
町をさ迷い歩く中で、何故だか手にしてしまった道具の数々だ。
その理由も、今ならば分かる。
私は惹かれていたのだ。この町の、とある伝承に。
79
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:05:02
この町は、サイレントヒル。
ここには古から伝わる神達と、それを崇める人々がいた。
彼らは、力を持っていた。非現実的な――――死をも否定する力。
死者を、甦らせる事の出来る力。
もしもその伝承が真実であるならば――――。
トルーカ湖の中央辺りに浮かぶという離れ小島で、これらの道具を用いて死者蘇生の儀式を行えば、メアリーは、還ってくる。
私は、それを求めてしまった。
現実から逃げ出して、都合の良い記憶を作り出し、己の醜さからは目を背けていたくせに。
心のずっと奥底では、妻が甦り幸福だったあの頃を取り戻すという希望を求めていたのだ。
――――そんな事が、許される筈もないのに。
妻の顔に枕を押し付けた時。
枕の下で必死に抵抗していた彼女の力強さは、今の私の手には鮮明に蘇る。
あの痩せ細っていた身体のどこにそんな力を残していたのか。
それは、気を抜いてしまえば私の方が押し負けてしまう程に強い力だった。
三年間の闘病生活で体力などすっかり失われていた筈なのに。
死にたくない。
生きていたい。
その想いを剥き出しにして、メアリーは最後の時まで力強く抵抗した。
そんな、本心では決して死など望んでいなかったメアリーを。
薬の副作用と死の恐怖に苦しみ、外見も性格も醜く変わり果ててしまったメアリーを見ている“私”が辛いから。
治る見込みなど無いメアリーを、いつまでも介護していなくてはならない地獄の様な日々から“私”が解放されたいから。
そんな、己の醜いエゴで殺しておきながら――――あまつさえ、そうする事がメアリーの為なのだと、その責任すら転嫁しておきながら。
彼女と共に幸福に生きる未来を求める事など、許される筈がないではないか――――。
80
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:05:54
デスクに並べた道具を一瞥し、私はもう一度窓の外に目を向けた。
記憶は全て取り戻した。
この町に来た本来の目的も。
妻が今どこに居るのかも。
その目的の為には、儀式の道具は必要ない。私には、その資格もない。
このまま、ここに置いていこう。
そして、そろそろ向かわなくてはならない。
この先で“私の中のメアリー”が待っている筈なのだ。
これ以上逃げている訳にはいかない。答えを出しに行かなくては。
一面が乳白色で覆われているこの殺風景な霧の世界も、それで晴れてくれると良いのだが。
妻との思い出の景色をこのままにしておくのは、とても忍びないのだから。
私は立ち上がり、図書室の扉を開いて――――。
――――それが、十時間程前の出来事。
81
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:06:38
私が図書室を出て、異形と化した妻の幻影と対峙し、そして当初の目的――――トルーカ湖での入水自殺を果たしてから、岸辺で目を覚ますまで。
時間にしてみれば半日も経過していない筈だった。
その間に、一体何が起きたというのだ。
現在の時刻は、午前二時半を回ったところだった。
私は今、再びレイクビューホテルの図書室に戻って来ていた。
いや、“戻って来た”という表現が正しいのかどうかは良く分からない。
レイクビューホテルは、本来とは全く別の場所に存在していたのだから。
そうだ。今は何故か、このサイレントヒルの町並みが変化しているのだ。
濃霧に包まれた岸辺で意識を取り戻し、訳の分からぬままに町の中に戻り、さ迷い歩いて、私はその事に気が付いた。
このホテルもさっきまでは湖の北岸にあった筈だが、今はどういう訳だか湖の東側に存在している。こうして辿り着いたのは、はっきり言えば全くの偶然だ。
その時点では、本当にここが私がさっきまでいたレイクビューホテルなのかどうかも断定は出来なかった。
私がこの図書室まで戻って来たのは、それを確かめる為でもあったのだ。――――いや、他に向かう宛が無かったのも事実なのだが。
そして結論を言えば、位置は変化していても、ここは間違い無くあのレイクビューホテルの様だ。
図書室内の書物も、デスクの上に置きっぱなしのヘッドフォンも、動かした椅子の位置も、私が最後に触ったままの形で残されていた。
建物の間取りも、覚えている限りの範囲では違和感は無い。ここが別のホテルだという可能性はまず無いだろう。
ただ一つだけ、この図書室内にはさっきとは異なる部分があった。
確かにデスクの上に置いた筈の二つの道具と、二冊の本。
死者蘇生の儀式で使用する道具と本が、全て消えて無くなっていたのだ。
どうやら誰かが持ち去ったらしいが、あれらの道具の意味を知っての事だろうか。
誰かが誰かを甦らせようとしているのだろうか。
だとしたら――――。
――――いや。
それは私にとっては大した事ではない。
あれらの道具が何処に消えようと。誰が使おうと。私にはもう関係は無い。
重要なのは――――こちらだ。
私は顔を上げ、窓の外の濃霧に目を向けた。
そう。
重要なのは、こちらだ。
怪異は、今もなお続いている。
終わっていないどころか、その度合いを増している様に思える。
どういう事だ。
私はまだ、罪を償えていないという事なのだろうか。
まだ、思い出せていない記憶があるのだろうか。
それとも、今度こそ私は狂ってしまったというのか。
或いは――――これは私とは無関係の事なのか。
82
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:08:05
分からない。
私には、何も分からないが。
とにかく、私は戻るしかないのだろう。
もう一度。
この町の中へ。
この、真っ白い霧の中へ。
私の罪が許されたのかどうかを知る為に――――。
【D-3/レイクビューホテル/OPより約14時間前】
【ジェイムス・サンダーランド@サイレントヒル2】
[状態]:困惑
[装備]:無し
[道具]:黒革の手帳
[思考・状況]
基本行動方針:怪異の原因を突き止める
1:私はまだ許されていないのか……?
――――Continue to Silent Syndrome
83
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:08:29
【アーカイブ解説】
【白の香油@サイレントヒル2】
ガラス瓶に入った白く濁った香油。
Rebirthエンドを見る為の必須アイテム。
【黒曜石の酒杯@サイレントヒル2】
黒曜石で作られた古めかしい杯。
Rebirthエンドを見る為の必須アイテム。
【赤の祭祀@サイレントヒル2】
ある古き神について書かれている。
Rebirthエンドを見る為の必須アイテム。
語れ。
我は真紅のものである。
嘘と霧は、彼らではなく、また我である。
汝らは我が一人であることを知っている。
そう、一人は我である。
おお、信じる者よ。
四百の僕、七千の獣と共に
言葉を聞き、そして語れ。
太陽の下にあっても、
それは忘れてはならない。
無限の盲目と降り注がれる矢、
それは我の復讐である。
枯れ行く花の輝きと否定される死者、
それは我の祝福である。
汝らは我と我の司る全てを
沈黙のうちに称えよ。
赤き心臓の四方へ放つ誇り高き香りよ。
白き酒を満たす杯、全てはそれに始まる。
84
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:09:45
【書「失われた記憶」@サイレントヒルシリーズ】
この町やその近辺の伝承や歴史について書かれている。
サイレントヒル2ではRebirthエンドを見る為の必須アイテム。
サイレントヒル2・マリア編やサイレントヒル3にも同様のアイテムが登場する。
一、
その名前は、この土地を奪われ、そして追われた彼らの伝承に由来する。
『静かなる精霊眠る場所』、ここでいう精霊とは自然世界における構成要素であり、同時に死者であり、崇めるべき存在だという。
そしてこの伝承は、そう呼ばれるこの土地が、神聖な祭祀のための場であったと語る。
しかし最初に彼らからこの土地を奪い、移住したのは、今この町に住んでいる人々の祖先ではない。それより前にも、移住者たちはいた。
その時は、この町は別の名前であった。だが、それが何という名前なのかは、記録はなく、知る者もいない。
わかっているのは、その名前があったということ、そしてこの町が何らかの原因により、一度は放棄されたということだけである。
二、
根強く期待――それは信仰と言い換えても良い――されているのは、『死者の復活』という奇跡である。
光落ちた丘の上で獣は歌う
その言葉は血に、
その滴は霧に、
その器は夜に
かくして墓は、ただの野に変わり
すべての民は再会の怖れと喜びにふける
スチェルパバの救いの下に
私は迷わず
古い伝承の中にもそれは語られる。
元々、この宗教では必ずしも死は終わりではなく、死者は過去の存在ではない。
死は人を精霊あるいは自然へと帰す通過点でしかない。それも可逆な変化である。
85
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/25(土) 21:15:12
以上で投下終了です。
タイトルは「Born From A Wish――隙間録・ジェイムス・サンダーランド編」です。
長すぎる為に名前欄に入りませんでしたw
というわけでございまして、ジェイムスの参戦時期を決めてみましたが如何でしょう?
ご指摘、ご感想ありましたらよろしくお願い申しあげます。
86
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/26(日) 21:12:41
投下乙でした。
入水エンドから来てたのか。
そして、OPが実質的に一番古い時間ではないってことが判明ですね。
OPの前から存在する参加者は他にも居たってことでしょうかね。
ヨーコとか、ブラッドとか、一話死亡キャラはその口なのかも。
死者蘇生の道具は、登場時期的に死んでた人物が復活している裏付けに繋がっていくんでしょうか。
87
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/08/26(日) 23:34:48
投下乙です
え〜と、さすがに頭がこんがらってきたw
だが直感的に面白くなってきてるかもなあ
最後に参加者たちがとんでもないババを引かされそうw
88
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/27(月) 20:33:42
感想ありがとうございます!
>>86
ちょっと表現間違えましたw
ジェイムスの参戦時期を決めたのではなく、参戦の時間帯を決めたのでしたw
入水エンドから参加というのは◆dQYI2hux3oさんの「罪と罰」で定められた事です!
ジェイムスは色々考えてこの形になりました。
夕方から参加という方が無理が出てしまう気はするんですよね。
まあ、OP以前の時間が存在するのもSIRENなんかではよくある事! という事で一つw
ヨーコや深紅なども可能性はあるかもしれませんが、個人的にはSDKがそうなんじゃないかと思ってますw
死者蘇生の道具は……どうなるんでしょう? まあ今後の展開次第という事で!
>>87
す、すみませんw
今回の話は要するに、
前半部分が原作でのジェイムス→後半部分がサイレントヒル入りしたジェイムス
となってます。
確かに元ネタが分からないと意味不明かもしれませんね……。
参考までに動画を。
前半部分につきましては↓のパート35〜Rebirthエンド、In Waterエンドを見て頂ければ幸いですw
ttp://www.nicovideo.jp/mylist/15972514
参加者たちは最後……やはり展開次第という事で!
89
:
◆cAkzNuGcZQ
:2012/08/27(月) 20:34:58
っと、言い忘れ。
代理投下ありがとうございました!
収録は……今回はもう2、3日様子見てからにします。
90
:
ケルブに美味しく頂かれました
:ケルブに美味しく頂かれました
ケルブに美味しく頂かれました
91
:
◆czaE8Nntlw
:2012/09/15(土) 01:09:14
ハリー・メイソン@サイレントヒル
太田ともえ@SIREN2
マービン・ブラナー@バイオハザードシリーズ
ライイングフィギュア@サイレントヒル2
を予約します。
92
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/09/15(土) 05:32:13
久々の氏の予約はとても嬉しいのですが、一つだけ確認です。
本編中ではなくて議論スレで設定された事ですが、
第ニ回サイレン以前に登場した半屍人は海送り状態で裏世界に取り残され、
次のサイレン以降までは表には出てこれない事に決まっていたと思うのですが、今回のマービンは大丈夫なのでしょうか?
93
:
92
:2012/09/15(土) 09:26:56
訂正。
議論スレではなくWIKI編集スレでありました……。失礼。
94
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/09/15(土) 10:48:02
すみません……失念しておりました…。
では、予約を
ハリー・メイソン@サイレントヒル
太田ともえ@SIREN2
シビル・ベネット@サイレントヒル
バブルヘッドナース@サイレントヒル
ライイングフィギュア@サイレントヒル
に変更させていただきます。
95
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/09/15(土) 12:01:14
>>94
おお! 期待であります!
しかしトリが!w
96
:
◆czaE8Nntlw
:2012/09/15(土) 12:30:40
度々申し訳ありません…orz
ハリー・メイソン@サイレントヒル
太田ともえ@SIREN2
シビル・ベネット@サイレントヒル
バブルヘッドナース@サイレントヒル
ライイングフィギュア@サイレントヒル
予約します。
97
:
クケケでグギャギャな名無しさん
:2012/09/15(土) 12:36:02
楽しみにしております!
98
:
◆czaE8Nntlw
:2012/09/16(日) 13:39:26
ハリー・メイソン@サイレントヒル
シビル・ベネット@サイレントヒル
太田ともえ@SIREN2
バブルヘッドナース@サイレントヒル
ライイングフィギュア@サイレントヒル
投下します。
99
:
◆czaE8Nntlw
:2012/09/16(日) 13:39:53
一面を白く染める霧を懐中電灯の光が丸く切り裂いていく。
ハリー・メイソンは隣を歩くともえの横顔をチラリと眺めると、再び視線を前に戻した。
彼女が着いて来ると聞いた時に感じたのは頼もしさではなく不安だった。恐らくそれは彼女も同じことだろう。民間人が連れ添って行動するより、警察官であるジル達と行動した方が安全なのは言う迄もない。
ただ、自分には我が身の安全を確保するよりも大切な事があった。それは背中の彼女の事であり、愛娘の捜索でもある。
トモエも同じように何か胸に抱くものがあるのだろう、そうでなければ戦闘経験のない一般市民と行動を共にするといった不利益な行動を取るはずはない。生憎とそれが何なのかを伺い知る事は出来ないが。
「どうして…ケビンはあんなことをしたのかしら。」
不意にトモエが口を開いた。本人は気丈に振る舞っているつもりだろうが、彼女がショックを受けているのは誰の目にも明らかだ。
彼女はケビンの死に際して自身に少なからず責任があると考えているようだが、責任があるという点では自分も同じ、あの場にいた全員が責任者だ。
何せ、彼の死をただ見ていることしか出来なかったのだから。
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◆czaE8Nntlw
:2012/09/16(日) 13:41:50
「彼のことかい?」
「ええ…どうして、ケビンは自分が死ぬと分かってるのにあんな無茶をしたのかしら。……勘違いしないでね、ハリー。私は彼の後を追うつもりはないから。」
「それは安心したよ。私の“目”になってくれるんだろう?目を失っては私も困るからね。」
微笑みを返しながらハリーは言った。
彼が何故あのような行動に出たか。彼と親しかった訳ではないし、どのような性格であったかという事さえ知らない。だから彼が命を失った時にも憐れみの情を抱きこそすれ、悲しいとは思わなかった。
ただ、彼の決意は自分のそれと似通っていたのかもしれない。
自分も、トモエも。そしてケビンも。
何故進んで自分の身を危険に晒す?
まるで自分の命などいらない、くれてやると言うように。そこまでして守るべきものは?
「…私は彼についてよく知らない。君やジル程長い間一緒にいた訳でもないし、ジムのように友人だった訳でもない。でもね、彼の考えた事が少しだけ解るような気がするんだ。」
「どういう事?」
「私は、人間には譲れないものが一つはあると思うんだ。
私にとってのそれは娘だ。私は娘の為ならなんだってする。自分の命だって惜しくはない。
彼はきっと、譲れないものを守ろうとしただけなんじゃないかな。…慰めにしか聞こえないかも知れないが、彼のお陰で私達はここに生きていられるんだ。」
「譲れないもの…?」
「そうだ。君にもあるはずだよ。そうでなければわざわざ私に着いて来たりしないだろう?」
ハリーに疑問を投げ掛けられたともえは一瞬だけためらい、帯に挿した拳銃のグリップをなぞりながらはっきりと告げた。
「私は、ケビンに守ってもらったから。だから私はケビンの代わりに誰かを守ってあげようと思ったの。
ケビンの代わりに誰かを守ってあげる事が、私の“譲れないもの”よ。」
「感謝する。私も、私の譲れないものを早く見つけてやらないとな。」
「ええ、私も……!?
ハリー、あれ!!」
ともえの叫び声にハリーは内心舌打ちしながら振り返った。すぐ前方、15メートル程先にナース服を着たモンスターが歩いている。
(こんなに近くに…霧の所為で気付かなかったか……。)
ハリーは内心で舌打ちしながら振り返った。ミヤコを背負っている状態では銃を撃てない。銃の初心者であるトモエの射撃もあまり期待出来ないだろう。
だが、幸いにも相手は自分達に気付いていない。ならばこのままどこかに隠れてやり過ごすのが得策だ。
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