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【イベントB】欲望渦巻く魔都・異能都市【その9】

355焔リンネ:2019/03/04(月) 20:30:47 ID:ciGK1LWQ0
>>354

「……!!」
熱くは無い。急激に勢いを増す炎に驚いただけ。
余りにも怖くて、人に対して力を使ったことは無かったが、吸血鬼となればなおさらだ。
何が起きるのかわからない。だが、手ごたえは感じる。
少しして、さらに強いエネルギーの波が、手のひらに、中の髪束に押し寄せてくる。
確実に前に進んでいる。ぐっ、とより強く握りしめる。力を使えばいいだけなのに、自然と身体にも力が籠るのを感じた。

「アイ、リス……さん?」
炎に包まれていた時のシルエットから、少しの違和感は覚えていた。
直接目にして、それが間違いではないと知ったが……そんなことは些細な事だった。
いつの間にか槍を捨て、温かい笑みを浮かべてアーリルが抱き付いていくきょうだいのじゃれ合いを見て。
リンネ自身も、姿こそ違えど立ち居振る舞いに懐かしさを覚えていた。間違いなく、彼だ。

「はい。えっと、あの……」
今度はリンネの番とアイリスに微笑みかけられて、思わず言葉が詰まる。
もう一度会えたら、なんて考えていなかった。
もう一度投げかけられた、微笑みを前にしてどうしていいのかわからない。
頬を伝う涙を止めることも、それを頼むこともできなくて。
孤独な少女のほんの少しの想いで、故にとても大きな思い出が蘇り、感情の波が押し寄せる。
気付いた時には、アーリルと同じように、抱き付いていた。
「会いたかった、です」


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