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【日常α】眠らない魔都・異能都市【その19】

696アリス=テンス・バースデイ:2019/02/05(火) 01:47:50 ID:ciGK1LWQ0
>>695

「夜のなのに明るいのってとっても不思議なキブンになれるから、真ん丸お月さまは好きよ。
 大砲に乗って月に行ってみるのがいいかしら。きっとステキな冒険になるわ」
少女の真っ赤な瞳を見つめるのもまた、爛々と輝いた赤色。
頭上に鎮座した大きな王冠の、金色のアーチに守られた大きな大きな宝玉のように、純粋に赤い。

「はじめまして。アーリル。
 そうよ、私はアリス。今はアリス=テンス・バースデイ」
アーリルに合わせるように、椅子から飛び降りて歩いて寄っていく。
それに続いて従者たちもアリスの後ろにぞろぞろと集まってくる。
金髪にくりっとした碧色の瞳で統一された彼らは、やはり揃って視線を虚空に、そして取り出された手紙に向ける。
言葉を発するような場面は無いが、代わりにボディランゲージを主とした感情表現をメインにしているらしく。
驚いたまま目を丸くするもの、虚空の方に興味をしめし手を伸ばしてみるものなど、幾分かの個性はあるようだった。

「だから、同じ匂いがしたのね。
 優しくて、私に面白いことをいーっぱい教えてくれそうな匂い」
同じ雰囲気の答えを知れて、上機嫌そうに頬を緩めて。
「いい? 大事に運ぶのよ?」
手紙を従者の一人、肩にバッグを下げた少年に念押ししてから手渡す。
こくり。と一度大きく頷いてから後ろの方にまわって、バッグの口を開き始めた。

「どうして、わざわざ手紙なんかを届けさせたのかしら?
 ……きっと、何か大事なことに違いないわ。帰って読むのを楽しみにしておくわ」
久々に聞いたアイリスという名前も、心が躍るような言葉だった。それが上機嫌の原因なのもある。
ふふ。無意識に小さな吐息が漏れだすくらいには、外から見ても嬉しそうな様子を見せる。
振り返って、急に涙をあふれさせるアーリルに驚きながら、慌てて寄って。
「ど、どうしたのかしら? 撫でてもいいわよ!?」
かつてアイリスにそうしたように、王冠をおさえて、真っ白で小さな額を差し出して。


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