したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

952 ◆gFOqjEuBs6:2011/04/09(土) 14:38:12 ID:D5cW9/Q.0
 




 広いラボとは言え、彼女ら二人による戦場としては些か狭く感じられる。
 びゅおん、と風が唸る音は、しかし第三者にとっては耳を劈かれる程の高音であった。
 トーレが紫の閃光となって駆け抜ければ、覇王が床を蹴って、縦横無尽に跳び回る。
 二人が動く度に研究室に設置された備品が破壊されてゆき、戦闘の傷跡が刻まれてゆく。
 研究品は地べたへぶち撒けられ、ガラス類は音を立てて割れ、照明は破裂して無くなる。
 これで何度目の接触になるだろうか。
 大股で飛び跳ねた覇王と、音速を越えたトーレが接触した。
 どごんっ! という不吉な音と共に、覇王の腹部に強烈な一撃が叩き込まれる。
 それが蹴りか、拳か、はたまたそれ以外の何かか、なんて事は解りはしない。
 何の加速手段も持たない覇王では、トーレ相手にはハンデが大きすぎる。

「はっ……はぁっ……はぁ――」

 息も絶え絶えに、覇王がフラ付く脚で床を踏み締める。
 頭部に装着していた漆黒のバイザーはとうに破壊された。
 騎士甲冑は腹部から大きく裂け。
 スカートやソックスは切り傷だらけ。
 手甲はひび割れ、腕だって切り傷だらけだ。
 白い素肌をあちこち露出させるも、それは赤い血液によって汚れて見える。
 肩口から滴り落ちる血液を手で押えながら、覇王は揺れる視界で前を見据える。
 蒼と紺のオッドアイが、紫の閃光を捉えた――

「ハ――っ、ぐぅ!」

 紫の閃光に向けて、覇王の拳を叩き込んだ。
 同時に閃光は掻き消えて、拳に鋭い痛みが走る。
 今の一撃で、右腕に装着していた手甲がばらばらに砕けた。
 かつん、と音を立てて落下した手甲だったものなど意にも介さず、方向転換。
 180度身体を回転させ、両腕でガードの姿勢を作る。

「――ッ!」

 感じたのは衝撃。
 鋭いのか鈍いのか、今はもう解らない痛みを両腕に感じ。
 気付いた時には自分の身体は大きく後方へと吹き飛ばされていた。
 がしゃん! とけたたましい音を響かせて、覇王の身体が後方のデスクに叩き付けられた。
 何に使うのかも良く解らない研究資料が散らばって、覇王の眼前で舞う。
 眼前の紙切れを振り払い、覇王はそれでももう一度立ち上がった。

「どうやらそれなりの根性はあるようだねぇ、覇王」

 嘲笑う様なスカリエッティの声が聞こえた。
 蒼と紺の双眸(オッドアイ)に白衣の男を捉えて、しかし今はトーレの襲撃に備え、拳を握り締める。
 戦えば戦う程、攻撃を受ければ受ける程、戦いという行為そのものに没頭してゆくのが解る。
 しかし、これで良く解った。どうやら自分は、こういう人種らしい。
 戦いの中でしか自分を見出せない、どうしようもない戦闘狂。
 戦えば戦う程、使命感よりも自分自身の本能が暴れ出す。
 靄が掛かって居た感覚は、今では随分と敏感に感じる。
 そうだ。これが……これこそが、本当の覇王の戦い。
 忘れようもない、この感情こそが、本当の自分なのだ!

「――ツァッ!」

 左脚を軸に、振り上げたのは覇王によるハイキック。
 右足の甲が紫の閃光を捉えたかと思えば、覇王のブーツはボロボロに引き裂かれていた。
 右足のソックスは最早細切れとなって消え、白く細長い脚を守るものは何もない。
 血まみれになった右脚が床を踏み締めるよりも先に、覇王の身体に激痛が走る。
 腹部に酷く重たい一撃を受けて、それを痛みと捉える頃には自分の身体は床を転がって居た。
 くの字に折れ曲がった身体は、何度か床にたたき付けられて、止まる。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板