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テスト投下スレ

1子供好きの名無しさん:2009/05/09(土) 13:42:28
規制で投稿できない場合や、
SSの意見を聞きたい場合に。

153名無しさん:2010/05/22(土) 03:34:11 ID:uNNqcsfI
【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱&貧血&エナジードレインによる消耗で行動不能、全身に軽度の凍傷、
    背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストⅤ
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:リンク…エヴァ…死なないで…。
第一行動方針:どうにか、したい
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第三行動方針:ニケ達と合流する。
第四行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。名前しか知らないヤムィヤムィが少し気になる。
第五行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]:拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
    インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。

【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕と顔は無事)、左腕出血(軽度打撲)、背中出血(深い切り傷)、以上応急処置済み。
    精神負担中、足と両手に軽度の凍傷、右肩に深い刺し傷、腹部打撲、出血と軽度エナジードレインで行動不能?
[装備]:カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:パジャマ。変身を解いたらショーツ一枚。
[思考]:??????
第一行動方針:この状況をどうにかしたい。
第二行動方針:リンク、インデックスと情報交換する。
基本行動方針:はやての遺志を継いで、なんとかする。(なのはと一緒に)ゲームからの脱出。
[備考]:深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
    カレイドルビーは臨時放送を聞いています。
    贄殿遮那@灼眼のシャナはグレーテルの足元に転がっています。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:魔力消費(中)、両手首に浅い傷、背中に軽度の凍傷(治療済み)、頬骨と肋骨一本にヒビ、
    胴部打撲、密着エナジードレインにより昏倒
[装備]:なし
[道具]:なし
[服装]:シーツでできた服
[思考]:……。
第一行動方針:これまでに殺した人たちに謝る……
基本行動方針:自らの罪を償う。自身の想いに素直になる。………………。
[備考]:深夜12時の臨時放送を完全に聞き逃しました。

【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
 [状態]:左太腿と右掌に裂傷、左肩に打撲、足に軽度の凍傷(治療済み)、強い決意
 [装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
 [道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)、クロウカード『希望』@CCさくら、
     歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
     じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
     祭具殿にあった武器1〜3つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
 [服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
 [思考]:守るんだ!仲間を!
 第一行動方針:なのは達を守る。
 第二行動方針:エヴァと協力してグレーテルを倒す。
 第三行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
 第四行動方針:ゲームに乗った人間は、説得する。
第五行動方針:戦い終わったらエヴァを説得したい。
 第五行動方針:死者蘇生の可能性を探す。
 基本行動方針:ゲームを壊す。その後、絶対に梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
 参戦時期:エンディング後
 [備考]
 リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは次以降の書き手さんに任せます。
 (少なくとも剣ではないと思われます)
 祭具殿の内部を詳しく調べていません。
 カレイドルビーと情報交換しました。これまでのアリサの動向を知っています。
 なのはに対する疑念を捨てました。

154第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE:2010/06/16(水) 22:19:23 ID:1/VrcDY6
古人曰く
始まりの時、まず混沌を創造した絶対者が、次に生み出したものは光であった。
光は昼と名づけられ、続く闇は夜と名づけられた。
光陰は巡り、世界に二度目の朝が来る。

古人曰く
この日、絶対者は混沌を二つに割り、天上と天下の別を生み出した。
しかし、この世界において、絶対者はそんなことをしたりはしない。
何故なら、天上と天下を分けるのは混沌自身に課せられた役目なのだから。

世に放たれし86の混沌。
既にそのうち50と9が天の上へと召されて消えた。
天の下に存在を許されるそれは、たったの1。

神聖なる運命が最後の裁きを下すまで、絶対者はその手を下さない。
行なうは、ただ囁くこと。
優しく、厳かに――――そして何より、残酷に。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ――夜の帳を潜り抜け、朝の光に浴する幼子たちよ。
 私は君達に、心からの称揚と労いの言葉を贈ろう。

 おめでとう。
 君達は過酷な運命に打ち克ち、この試練の島で一昼夜生き残った。
 流された聖別の血は、その類希なる魂をより一層輝かしいものへと変えただろう。

 そんな君達だからこそ、これから私が放つ言の葉を、すなわち、第二回目の定時放送を聞く権利がある。
 言うまでもないことではあるが、二度同じことはない貴重な機会だ。
 心して聞きたまえ。

 まずは、向こう半日で追加される禁止区域を発表しよう。


   7時より A-4
   9時より H-1
  11時より B-8
  13時より H-6
  15時より F-2
  17時より E-5


  ――以上だ。

 これから一時間後に次の禁止区域が発動し、以後は二時間毎に数が増えていく。
 前の放送の時とルールは変わらない。
 禁止区域に踏み込む危険さも、今までと同様だ。
 せっかく残った尊い命だ。愚昧な方法で散らしてしまわないことを祈っているよ。

155第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE:2010/06/16(水) 22:20:08 ID:1/VrcDY6


  ――――次に前回の放送から今までの間で、不幸にも命を散らしてしまった者の名前を発表する。
  
 03番   アルルゥ
 08番   一休
 17番   金糸雀
 20番   キルア
 21番   ククリ
 22番   グリーン
 33番   白レン
 36番   鈴木みか
 38番   蒼星石
 45番    ニア
 46番   ニケ
 49番   野上葵
 52番   野比のび太
 55番   雛苺
 62番   古手梨花
 66番   ベルフラウ=マルティーニ
 70番   メロ
 73番   吉永双葉
 74番   李小狼
 77番   梨々=ハミルトン
 78番   リルル
 79番   リンク
 86番   ヴィクトリア=パワード

   ――以上23名だ。


 聞いてのとおり、選定の儀は已然、滞りなく運んでいる。
 3人殺しのご褒美を求める声はますます高く、こちらの支給が追いつかないほどだ。
 私もまさか、このルールがこれほどの好評を勝ち得ることになるとは、思ってもみなかったよ。
 勇気を持って提案してくれた少年には、この場を借りて感謝を述べておくとしよう。
 ああ、無論、支給が遅れている者の元には、この後、すぐにQBを派遣する。
 好きな褒美を受け取ってくれたまえ。

 それから、あと少しでご褒美に手が届くという者は、急いだ方がいいかもしれない。
 当然のことだが、人数が減れば、他人を殺せる機会も減ってしまうことになる。
 今なら殺せるという状況に出会ったら、早めに実行に移すことだな。
 実は、私の宝物庫には、今回ご褒美として渡すことにしたものの中でも、
 一番強力な、素晴らしいアイテムがまだ残っていてね。
 運良く手に入れば……零からの逆転も夢ではない代物だ。
 もし、絶望に心が曇るようなことがあれば、私のこの言葉を思い出して欲しい。

 最後に。
 君達は選ばれた人間だ。誇っていい。
 開始直後にはあれほどいた君達の同胞も、今や三分の一以下の人数になった。
 その時間の分だけ、その犠牲の分だけ、君達は確実に救世主に近づいている。
 ついに救世主が現れたあかつきには、私は跪き、最上級の礼をもってこれを迎え、
 然る後に、その願いを寸分の違いもなく成就させるであろう。
 世界を救う道のりは辛く、険しい。
 君達もその途上で焼けるような苦しみを味わうことだろう。
 しかし、その魔境を越えた先には、只々救世の福音のみが待っているのだ!
 救済の時は近い。
 
 次の放送は午後六時だ。
 そのときには、更なる練磨を積んだ君達にまた会えることを願っているよ。
 
 ――今回の放送は以上だ。

156第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE:2010/06/16(水) 22:20:57 ID:1/VrcDY6


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

岩盤を刳り貫いたような荒々しい広間に、再びの静寂が戻る。
豪奢な玉座に身を沈めたまま、この世界の絶対者――冥王ジェダは満足げに唇を歪ませた。
滲み出る喜悦の所以は、先刻終えたばかりの放送か。それとも、右手が弄ぶ銀の輪か。
か細い蝋燭の炎が揺れて、一瞬、輪の表面を照らし出す。
鈍い光沢を返す金属の表には、確かに、“太刀川ミミ”の銘が刻まれていた。


古人曰く
光や混沌が創造されるより以前、始まりの時よりさらに昔、
そこには闇だけがたゆたっていた。

天上と天下が別れ、
この世の全てが生まれ出て、
幾星霜の時が過ぎても、

闇は今も、ここにいる。

157子供を○○する名無しさん:2010/06/18(金) 22:10:08 ID:Ns3p0fa.
ところで問題ない場合は書き手本人が本スレ投下するの?
それとも代理投下して欲しいの?

158子供を○○する名無しさん:2010/06/21(月) 18:39:26 ID:UiuOwcgU
少し早いけど立てました
ぎりぎりで立てるよりいいと思うし

ロリショタバトルロワイアル26
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277112367/

159前編冒頭に追加 ◆Xdenpo/R4U:2010/06/22(火) 01:05:15 ID:wrpR9LcQ
ヴィータが見た光景は正しく現場検証のそれだった。
もっとも、マッドサイエンティスト然とした表情の歪みを除けばという前提が必要になるが。
着用している白い病人着が時折実験用の白衣のように錯覚してしまいそうになる。

「まあ、大したことは分からなかったわね」

雨後の泥に塗れた人形、およびその周辺の地面を手で触れながら捜査していた紫穂が立ち上がり、
ヴィータの眼が微かに細まる。
(やっぱり、手で触れてたな……)
エヴァンジェリンに見破られたせいか、紫穂からはある種の開き直りのようなものが感じられた。
接触によって発動する何らかの能力。
ヴィータにはそれを完全に推察することなどできなかったが、
触れた物体の見たものや記憶を読むことができるのだろうというあたりはつけていた。
そうであるなら紫穂と交渉したときのことにも筋が通るし、目の前で行われていた捜査とも合致する。

「冥王さまの躾能力に疑問を感じたことくらいかしら。
 蜂さんに関わるなって言った舌の根も乾かないうちに蜂さんのほうから参加者に接触してきているんだもの。
 それとも死者はノーカウントなのかしらね。あるいはさっきの放送自体何かのカモフラージュなのかも。
 嫌だわ、頂点が揺らいだらこの世界のルールに疑問を持つ子がでてきちゃうかもしれないのに」

相も変わらず笑う姿を見て、決まりだなとヴィータは思った。
紫穂は当然気づいているものと思って名前を出したのだろうが、
ヴィータは先ほど飛び立った姿がQBだったということに、今の今まで気がつかなかった。
原因は雨で視界が不明瞭だったこと。だが、それなら紫穂も同じ条件だ。
そしてヴィータ自身は、単純な動体視力なら紫穂に負けているとは微塵も思っていない。

「埋まっていたのはその人形含めて3人。
 あと分かったことといえば……私たちの目的地はもう近いということかしら」

紫穂の怪しく光る瞳が壊れた人形に向けられた。
やはりヴィータに対して能力の核以外を隠蔽する気は失せているらしい。
あえてそこの人形から情報を読み取ったことを強調することで、
自身の能力の絶対性をアピールしておきたいのだろう。
(今更んなことしなくったって乗ってやるよ、どこまでだってな)
静かに歩き出した紫穂の背中を焼くように睨み付けながら、ヴィータは彼女の後を無言で追った。


   *   *   *

160紅からは逃げられない ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:24:55 ID:O55C9ohY





走る。走る。走る。
不機嫌な低音でエンジンが唸る。
桃色のネコ型バスが、まるで本当の野獣になったかのように温泉街を駆ける。
店の看板をすり潰す。
宿の生垣を削り取る。
商品棚を吹き飛ばす。
暴れる獣はしかし、哀れ手負いの逃げる寝子。

飛ぶ。
背負った炎の翼が燃える。
飛ぶ。
標識がねじ切れる。
飛ぶ。
ガラスが砕け散る。
飛ぶ。
木造の軒が発火する。
赤い目の復讐者が阻む全てを焼き尽くして追いすがる。

「ヴィクトリアッ!! 右ッ!」
「分かってる! それと今は太刀川ミミッ!!」

死に物狂いのスピードで走るバスの車内。
喉を限りに、半ば悲鳴のような声で叫ぶ。
ほぼ時差なく、車体が急に右へとぶれる。

そして、トリエラを光が捉えた。

窓の向こう。
早送りの景色を赤とオレンジの炎が塗り潰す。
直後、雷でも落ちたかのような大爆音。
つい一瞬前までバスがいた空間を、火炎の舌が舐める。
黒い舗装コンクリートがコールタールへと戻る高温に、トリエラは思わず身震いした。

だが、彼女は知っている。
この攻撃には「タメ」があることを。
猫のような俊敏さで割った窓から身を乗り出し、狙い、発砲。
弾丸は狂いなく、空の目標へと向かう。

だが、彼女は知っている。
敵にとって、ハンドガンなど足止めにしかならないことを。
案の定、シャナが日本刀を一振りしただけで、銃弾は無へと帰った。
迎撃のため、ミサイルのようなスピードが若干緩んだが、それだけだ。

「ちっ」

狙撃者の舌打ち。
状況は、悪い。

161紅からは逃げられない ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:26:00 ID:O55C9ohY


「――君達――――運命に―――――――れんの――昼夜――――ちわ――――魂――」


放送が流れている。
この島にいる者にとっては貴重な情報源が頭の中を流れていく。
聞かなければ。
そして、記憶しなければ。
いや、それだけではまだ甘い。
書き留めなければ。
トリエラは思う。

だが、彼女はそれをしない。
否、できない。

エンジン音。
破砕音。
擦過音。
爆発音。
発射音。
そして、怒号と悲鳴。
あらゆる音が放送の聞き取りを阻害している。

そして、それにも増して放送の記録を難しくしているのは、
言わずと知れた、シャナの猛追。
この怪物少女が空を飛ぶスピードは、恐ろしいことに、バスのそれを僅かだが上回っている。
それでも、トリエラとヴィクトリアが何とか生き延びているのは、
無駄に長い人生の中で余技として身につけた、ヴィクトリアの運転技術と
悲しいほど短い人としての人生の中で叩き込まれた、トリエラの狙撃技術とが
奇跡的なバランスでシャナを撹乱しているからに他ならない。
もし、どちらかが放送を聴くために集中を乱せば、その途端、バスは炎に呑まれ、爆発炎上。
二人はめでたくあの世行きになるだろう。

「ショックに備えて!」

ヴィクトリアが怒鳴る。
強烈なGがトリエラに襲い掛かる。
ギャリギャリとタイヤが地面へ過剰に擦れ、不快な悲鳴を上げた。
進行方向に対してほぼ九十度旋回、道路に横たわる形になったバスの窓から、見る。

まるで大蛇の開かれた口のように迫る、炎の渦。
その毒牙にかかり、まずガラスが赤熱し、泡立ち、溶けていく。
次いで、合成素材で張られたシートが、水の染みるように燃え上がる。
そして、剥き出しになった生のトリエラを、
その顎が丸呑みにするかと思われたとき、不意に視界が切り替わった。

目の前には、何の変哲もないビルの壁。
バスが間一髪、横道に逃げ込むことに成功したのだ。
急な旋回がこのためであったことに思い至り、彼女は安堵のため息をついた。

162紅からは逃げられない ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:28:12 ID:O55C9ohY
しかし、已然、危機的状況は変わらない。
ヴィクトリアが手を滑らせて、運転をミスすれば、その時点でゲームオーバー。
トリエラが機を読み間違えて、射撃のタイミングを誤れば、ゲームオーバー。
もし、両方がうまくいき続けて、現状を維持できたとしても、
そのままでは、やはりいずれゲームオーバーだ。

何故なら、トリエラの手にある銃弾は無限ではない。
初めに装填されていた分は撃ち尽くし、マガジンは既に二つ目に突入している。
デイパックに残っているマガジンは残り二つ。
つまり、残りの弾丸はおよそ二十発。
これらが全てなくなれば、最早、あの加速を抑えられる武器は存在せず、
それは即ち、デッドエンドを意味する。

懸念はまだある。
それは……

「……ちっ、最悪だわ」

忌々しげな運転手の呟きに顔を上げ、窓の外を見ると、
トリエラはもう一つの懸念が早速、現実のものとなったことを知った。

先ほど、炎をかわすために飛び込んだ横道。
両側を建物に挟まれたその細い道が不意に途切れ、バスは大きな一本道へと躍り出ていた。
視界が開け、前方に見えるのは、まっすぐに伸びた道路と広がる平原のみ。
あれほどごちゃごちゃと立ち並んでいた建物の群れは、もう一つも見えない。
これらの景色は、今、彼女たちが踏み込んだ道が、
北東市街を抜け、南へと向かう幹線道路であることを雄弁に語っていた。

「まずい。これじゃ追い詰められる」

これは二人にとって致命的な事態だ。
彼女らがシャナの追撃を凌いでこれた背景には、温泉街の入り組んだ地形がある。
細かい路地を頻繁に曲がりながら逃げることで、
トリエラ達は爆発的な加速を持つシャナの飛行から何とか逃げ切ってきたのだ。

これが、直線における単純な競争になったらどうなるか。
足の速い人間と、そうでない人間が鬼ごっこをする場合を考えてみればよい。
足の遅い者でも、木や障害物をうまく使って、回り込みながら逃げれば、
普段、徒競走では絶対に勝てない者が相手でも、そう簡単には捕まらない。
だが、何も遮るもののない、グラウンドのど真ん中で、足の速い者と一対一になってしまえばどうか。
後には、能力どおりの単純極まりない結末が待つのみだ。

163紅からは逃げられない ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:28:51 ID:O55C9ohY

だからと言って、後戻りするわけにもいかない。

後ろを振り返ると、ちょうど、「ようこそ海鳴温泉街へ」と書かれたアーチ状の看板が
真っ二つに断ち割られて崩落するところだった。
赤い翼の追跡者も二人に着いて既に街を出ている。
ここで反転するのは、自殺行為以外の何者でもない。

コーナーを周っての最後の直線。
決戦の火蓋は望まぬまま切って落とされた。
状況を打開する一手は。
どうすればいい。
どうする。

「……トリエラ、あなた、拳銃以外の火器の扱いに自信は?」

もつれる思考は、死ぬも生きるも一蓮托生の性悪女から、
問いかけがあったことで中断された。

「一応、一通りは習ったけど」

ヴィクトリアは前を向いたまま少し黙り込むと、
おもむろに口を開いた。

「私に考えがあるわ」

164紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:30:07 ID:O55C9ohY
都市計画もろくに立てられていないような、うざったいガラクタの街が途切れ、
代わりに地平線の彼方まで続く一本道が現れたとき、シャナは思わず喜悦の表情を浮かべた。

(よし、これで勝った)

心の中で勝ちを確信し、されど奢らず、
確実に最後の詰めを図ろうとする彼女の額には、珠の汗が浮かび、呼吸は僅かならず乱れている。
自動人形達が土壇場で持ち出した大型自動車に対する追走劇は、
相応の体力をシャナの身体から奪い去っていた。

炎の翼の自在法で空を飛ぶことに対する負担が普段に比べて大きいことは、とっくの昔に気づいていた。
ただ、同時に、これくらいの負担が何だと甘く見ていたのもまた事実。
付きまとう枷は、ある程度の時間、スピードを上げて飛び続けることにより、
二倍、三倍の勢いで増大した。
加えて、制動の部分についても制限が効いているらしく、
あまりに加速がつくと、細かい速度調節やベクトルの制御が思うに任せない。
おかげで、さっさと爆砕するはずだった敵にいいように翻弄され、ここまでの逃亡を許してしまった。

しかし、有利な環境条件を手に入れた今、それももう終わりだ。

一気呵成に距離を詰め、とどめをささんと心に決める。
当然、銃弾による撹乱があると踏み、警戒しながらの飛行だったが、
意外なことに、褐色肌の自動人形は車中に隠れたまま、顔を出さない。

(諦めた……と考えるのは危険ね)

不気味な沈黙に警戒を強め、少し速度を落としてじりじり詰める方針に切り替える。
亀の歩みのように少しずつ距離が縮まり、ようやく炎弾の射程範囲に敵を納めたころ、
不意に、ひょこりと褐色の自動人形が顔を出した。
何を企んでいるのかと、一瞬、表情を硬くしたシャナだったが、
敵が手に持っているものを見て、整った眉間に皺が寄る。
上半身と右腕だけを外に出し、射抜くような視線で
こちらを睨みつけた人形の手にあったのは――おなじみのハンドガン。

(考えた末の結論がそれ?
 だとしたら……やっぱりおまえは愚かだわ)

追い詰められた小物が無い知恵を使おうとしたが、
結局、何も思いつかず、従来通りの手で行くことにした。
そんな他愛もない結論に彼女は納得した。
そして、目の前の哀れな敵を消し去るため、左手に力を込める。
存在の力を巧みに織り上げ、掌の上で渦巻く炎に変えていく。

(今の状況なら、さっきみたいにチョロチョロ逃げられる心配はない。
 もう一発くらい被弾したって関係ない。
 この一撃で、確実に……壊すッ!!)

必滅の決意。
ますます猛る紅蓮。
敵のトリガーが引かれるのも気にせず、
左手の炎弾を――――――

165紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:31:00 ID:O55C9ohY





「!?」





――――――放たない。
代わりに放たれたのは、右手の楼観剣。
反射的に出た刃が切り裂いたのは……無視を決め込んだはずの銃弾だった。

何故、彼女はそのような行動に出たのか。
フレイムヘイズの身体を生命の水で強化した肉体は、
魔次元における制限の下にあるとはいえ、9ミリの銃弾一発でどうこうできる類のものではない。
先程のような不利な環境での戦いであり、ダメージが蓄積する恐れがあるならまだしも、
今のような状況で、神経質に反応する必要はないはずだ。
にもかかわらず、迎撃を選んだのは……狙われたのがシャナではなかったから。

「……自動人形がッ!!」

目を剥く。歯を剥く。
この島に来る前には無かった凄まじい憎しみの貌。
そんな彼女の胸元で揺れながら、沈黙を守る者……天壌の業火アラストール。
そう、敵が狙ったのは彼だった。
正確に言うならば、シャナの中を満たす偉大なる紅世の王が
目として、耳として、口として用いる神器、コキュートスを狙われたのだ。

無論、このペンダント型アーティファクトは、神器の名に恥じない耐久性を持っている。
並大抵の攻撃で破壊されることはあり得ないし、
彼女自身、常日頃、戦場を伴にしているにもかかわらず、これの損壊を案じたことはほとんどない。

ただし、それはあくまで、元の世界での話だ。

冥王ジェダが作り上げたこの世界は、元の世界とは何もかもが異なっている。
物心ついて以来、ほとんど離れたことのなかったアラストールとあっさり引き離された。
封絶は使えず、炎は弱まり、飛行の自在法は消耗が大きい。
「この世の本当のこと」を知っていたはずの彼女にも、
まったく理解できない脅威がそこかしこに跋扈し、
挙句の果てには、生命の水を飲まされて、「しろがね」にまでなってしまった。
全てが未知の法則で動く異形の世界。

果たして、この世界で、9ミリ弾はコキュートスを破壊しないだろうか?

おそらく、しない。
まず、しない。
99%しないだろう。
それでも、シャナは銃弾を打ち落とさずにはいられなかった。

166紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:31:55 ID:O55C9ohY
(絶対に許さない……絶対に、壊す!!)

かけがえのないものを奪われかけた怒りが、しろがねの記憶に残る憎しみの扉を開け放った。
濁流のように流れ出た憎しみは、小さな胸で暴れ回り、大きな炎となって渦を巻く。
赤い灼眼が憎悪の薪を巻き込んで、さらに赤く。血のように赤く。

だが、はちきれんばかりの感情に身を任せ、攻勢に出ようとしたシャナを押し留めたのは、
当のコキュートスに宿る、親しき魔人の声。

「シャナ、心を乱すな。敵のハッタリに過ぎん」
「……分かってる。大丈夫だから」

胸が溶け出すかと思えるほどの熱い心を何とか押さえつけ、
まだ辛うじて冷たいままの脳を意識的に活動させる。
その結果、導き出されるのは一つの仮説。

(もしかして……)

試しに、炎弾を放つそぶりを見せると、読みどおりのタイミングで弾丸が発射された。

(やっぱり)

敵は、どうやら、彼女の攻撃の出を読み取って、それに合わせる形で射撃を行っているようだ。
相手のアクションに被せて潰す、後の先の戦術。
これを的確にやられると、自然、状況は膠着し、長期戦の様相を呈してくる。
そうなれば、持久走で不利なのは、ガソリンで走るバスより自力で飛ぶシャナの方に決まっている。

しかし、彼女の怜悧な理性は、もう一つ、別の事実もはじき出していた。
褐色の自動人形が用いている獲物は何の変哲も無い拳銃だ。
拳銃にはそれぞれ、必ず装弾数というものが決まっている。
弾が尽きれば、絶対に弾倉を交換するための僅かな隙を生ずる。

当然、敵はそれをカバーするため、何らかの手段をとってくるだろう。
褐色の自動人形は自らの仕事に専念せねばならないので、警戒すべきはもう一人、運転手の方。
おそらくは、バスにアクロバティックな機動をとらせ、攻手をかわす方向で来る。
ならば、対応してこちらが採るべき戦術は何か。
簡単だ。
相手がどう動こうが、回避しようのない攻撃を繰り出せばいい。

「決めた」

切るカードは炎の大太刀。
まだ自動人形どもには一度も見せたことのないこの技で、視界180度、全ての範囲を薙ぎ払う!!

そうと決まれば、あとは容易い。
おとりのアクションで銃弾を釣り出し、弾切れを待つのみ。

167紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:33:10 ID:O55C9ohY


一発目。
楼観剣が打ち落とす。


二発目。
急降下して軌道を外す。


三発目。
夜笠で受けた、その直後。
逃げ出す野生動物のごとく、俊敏な動きで褐色の自動人形が窓の奥へ退く。
瞳にその事実が映し出されるやいなや、



シャナは押さえつけていた憎しみを一気に解放した。



それはさながら火山の噴火のように。
巻き上がった憎悪は、空気を切り裂く轟音とともに炎へと転化する。
楼観剣から突如、天を突く火柱が燃え上がり、太陽を焼き尽くさんばかりに伸びていく。
巨大な、まるで神の振るう剣のごとき轟炎は、青い空を焦がして黒く染める。
その、超弩級の大刀を、豆粒のような少女はしかし、見事に御した。
振りかぶられた刀が、僅かに地面を擦れる。
すると、その一瞬だけで、青草の生える地面が黒一色に焼き付けられた。

同時、炎の翼が爆発とともに空気を叩く。
小さな身体が砲弾のように飛んでいく!!


「死ぃぃいいねええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」


角度、速度、温度。
いずれも申し分ない一撃に、止め処ない煮え滾る感情を乗せて。
叫んだ言葉を生んだのは意識か、それとも無意識か。

関係ない。全て消し飛ばせば関係ない。
そう言い聞かせ、灼眼を向けた先。




何故か、無表情で窓から顔を出す、褐色の少女と目が合った。

168紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:34:01 ID:O55C9ohY
危険だ、と思う間もなかった。

少女の手元で何かが弾けた。
そこから何かが飛び出した。
そして。



爆音とともに、炎の翼が弾けて消えた。




「!!!!?????」


ミサイルのように加速された体は一気に制御を失い、空中に投げ出された。
バランスが狂い、世界が回る。
心の平衡が崩れ、火柱が消える。
土でない、固い何かを突き破る。
まるでビル一個分の瓦礫が頭上に降り注いだような、凄まじい衝撃が襲い、意識が磨り減る。
アラストールが何か言っている気がするが、それももう聞こえない。

そして、あらゆる感覚が失われ、気絶の闇に落ちる直前、シャナは見た。

自分の内側を満たす赤。
フレイムヘイズを構成する紅世の王の存在。
そのそこかしこに癌のように粘りつき、脈を打って増殖する、銀の存在。



銀の、憎しみを。







【H-3/道路沿いの民家/2日目/朝】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化、気絶、消耗(大)、全身に打撲等のダメージ(回復中)
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ、あるるかん@からくりサーカス
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯
[思考]:憎い。
第一行動方針:自動人形(トリエラ・リルル・ヴィクトリア)は絶対に破壊する。
第二行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、ロボットのリルル、ホムンクルスのヴィクトリアを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
    神社を拠点にする計画も知っています。
    弥彦、キルア、アラストールと情報交換しました(どの程度かは次の書き手任せ)
    第二回放送を聞き逃しました。

169紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:35:05 ID:O55C9ohY





人気のない廃墟のビル街に一台のバスが停まっている。
可愛らしい意匠を施されたピンクの猫型バス。
本来ならば、子供達を満載にしていなければならないその車中には、しかし、
今はたった二人の子供しかいなかった。

「……はぁ」
「……ふぅ」

二人は幼稚園児用に設えられた小さなシートに脱力して寝転がり、
ああとかううとか言葉にならない呻きを漏らしながら、ダラダラしていた。
そのダラダラ具合といったら、本来の世界でこのバスに乗っていた先生が見たら、
思わず叱り飛ばしそうなほどだ。
だが、彼女らにとって幸いなことに、ここに咎める大人はいないし、
仮にいたとしても、彼女らは「やだ! ダラダラするもん!」と駄々をこねたに違いない。

それほどまでに、二人――トリエラとヴィクトリアは疲れていた。
肉体的に、というよりも、精神的に。
まあ、先程まで、見た目はか弱い少女だが、中身はいかついドラゴンのような敵と
延々、命がけの追いかけっこを強いられていたのだから、
何とか逃げ切った今、緊張の糸が切れるのも無理はない。

「しっかし、危なかったわねー」

横になったまま、トリエラが呟く。
その声には全くもってふにゃふにゃしていた。

「私のおかげ。この貸しは高いんだからー
 そうね、グラーフアイゼンで勘弁してあげるわー」

負けないくらいのふにゃふにゃ声でヴィクトリアが返す。
やはり、ぐだりとシートに身を預けたまま。
いつもの棘のある調子も、何だか元気がない。

「えー? 実際撃ったのは私なんだから、それでチャラじゃない? フツー」
「あの支給品は私のよ」
「使えない支給品なんて持ってたって、意味ないでしょうがー
 ってか、あんなもんあるならもっと早く言いなさい」
「うるさいわね。忘れてたんだからしょうがないじゃない」
「まぬけー」
「うるさい」
「ドジー」
「うるさいうるさいうるさーい」

朝の穏やかな陽気の中、幼稚園バスのなかには少女たちの、微笑ましい会話。
その平和な風景を見ていると、
一瞬、ここが殺し合いの場であることを忘れてしまいそうになる。

「だいたい、そのドジの作戦で助かったのは誰ー?
 私がドジならお前はバカよ。バーカ、バーカ」
「……まあ、確かに効果的があったことは認めるわー」

今、二人がこうして力を抜いて休むことができるのは、
ひとえに、ヴィクトリアが土壇場で提案した作戦のおかげだ。

170紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:36:15 ID:O55C9ohY

「胸のペンダントの正体を見抜いた洞察力もたいしたもんだしね」

作戦の第一段階。
それは、コキュートスに向かって発砲することで、敵の足止めを図るというもの。
アイテムリストと詳細名簿の併せ技により、
シャナとコキュートスの関係を類推することのできた、
ヴィクトリアならではの策と言えるだろう。

「人質とるみたいで気は進まなかったけど……ね」
「あら、そのわりには、進んで撃ってたように見えたけど?」
「……しょうがないじゃない。死ぬよりましー」

だが、それだけでは彼らの生存は覚束なかったはずだ。
牽制で放てる銃弾は有限だし、何より、装填の際、隙ができる。
銃の扱いに慣れているトリエラの手によるリロードなので、僅かな隙だが、
それでも、あの怪物、シャナが攻撃を放つには十分すぎる。

そこで、立案されたのが作戦の第二段階。
もし、ヴィクトリアの推測が当たっていれば、
シャナはコキュートスを狙撃されたことにより、激怒する。
そして、怒りに燃えた敵の前で、隙を見せれば、
必ずそこを突き、こちらを殺し尽くそうと突っ込んでくるはずだ。

第二段階の肝は、その敵に予想外のカウンターを食らわせること。
シャナは決して考えなしの力自慢ではない。
当然、こちらの隙の原因が、銃のリロードであることを理解する。
ならば、本来ならばどう頑張っても装填が間に合わないタイミングで攻撃を繰り出せば、
相手の虚を突き、逆転のカウンターパンチを極めることができるはず。

そのために選ばれた武器がヴィクトリアが持っていた支給品、ペンシルロケット。
あらかじめ、銃を持った右手とは逆の左手に、敵から見えないようにこれを準備しておき、
弾が切れた時点で、一瞬、頭を引っ込め、銃を放棄。
すぐさま窓際へととって返し、両手で発射する。
ペンシルロケットは特殊な武器ゆえ、素人には照準が難しいのだが、
そこは、治安活動のため、あらゆる現代武器の使い方を叩き込まれたトリエラ。
何とか狙い通りに炎の翼を撃ち抜き、敵をまくことに成功した。

「全部、あんたが書いた筋書きどおりに行ったわねー」
「そうよ。感謝しなさい」
「筋書き通り、シャナ怒ってたわねー」
「………………」
「怖い顔して、恨みで全身がはちきれそうなぐらい」
「………………」
「もう、仲良くはなれないだろうな」
「…………当然よ。
 お前がもし、自分の大事な人に同じことをされたら、お前は許せるの?」

「……絶対に許さない」

「……そういうことよ」
「だよねー」

もぞもぞと、もどかしげにトリエラが身を捩る。

171紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:37:06 ID:O55C9ohY
他にも考えたくないことは山ほどある。
放送を聞き逃してしまった。
誰が死に、誰が生きているのか分からない。
禁止エリアも分からない。
イエローとひまわりは街に置き去りだ。
小太郎とタバサの安否は分からない。

首輪について、少し進展があると思ったら、直後にはこのザマ。
しかし、だからといって、立ち止まっているわけにはいかない。
こうしている間にも、事態は刻一刻と悪化している。
だから、立ち上がり、動き出さなければならない。
そんなことは分かっている。

だけど。
だけどもう少し。

もう少しだけ、休憩が欲しい。






【G-7/廃墟の街/2日目/朝】
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:肉体疲労(中)、精神疲労(中)
    頭部殴打に伴う頭痛。胴体、胸部に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、
    右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数8/8)
    ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ(一部破砕)
    グラーフアイゼン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0
[道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図
    US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×8
    インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん )
    回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
[服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ
[思考]:もう少しだけ休憩したい。
第一行動方針:第二回放送の内容を確認する。
第二行動方針:仲間との連絡、もしくは合流。
第三行動方針:シャナに対しては態度を保留。(和解は難しい?)
第四行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう
基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]:携帯電話には、『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。
    トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。
    第二回放送を聞き逃しました。

     ※トリエラは仲間と分かれる前、朝になったら、以下の作戦に則って行動するつもりでした。
      まずシェルターまで全員で行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう。
      シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。
      それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。

172紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:37:50 ID:O55C9ohY


【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:肉体疲労(小)、精神疲労(大)首輪解除、太刀川ミミに瓜二つの顔
[装備]:幼稚園バス@クレヨンしんちゃん、i-Pod@東方Project、
    スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER、魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2(食料のみは1人分)、天空の剣@ドラゴンクエストⅤ、
    塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、
    ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×4@mother2
    アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし)
    マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、
    思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0〜1
[服装]:制服の妙なの羽織った姿
[思考]:もう少し休憩。
第一行動方針:第二回放送の内容を確認する。
第二行動方針:仲間との連絡、もしくは合流。
第三行動方針:氷結、石化魔法の使い手を捜す。
第四行動方針:首輪や主催者の目的について考察する。そのために、禁止エリアが発動したら調査に赴きたい(候補はH-8かA-1)
第五行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。インデックス、エヴァにできれば接触してみたい。
基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す
参戦時期:母を看取った後。能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。
[備考]:首輪が外れた事により能力制限が外れている可能性も有ります。
    第二回放送を聞き逃しました。

    ※首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。
     ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる?
     更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。


【幼稚園バス@クレヨンしんちゃあsdfsdfghjkl;:

173紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:38:21 ID:O55C9ohY


















     ――ソノトキ、視界ガ紅ク染マッタ。

174紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:39:16 ID:O55C9ohY
それは突然のできごとだった。
バスの直上に何かぶつかるような音がした刹那、
窓から見える世界全てが、血のような紅に染まったのだ。

二人同時。
慌てて体を撥ね起こす。
感覚を研ぎ澄まし、周囲の変化を観察。
間もなく、起こった事態を把握した。

世界が紅く染まったのではなかった。
染まっていたのは窓だった。
バスに嵌っているガラスというガラスに、
赤い、血とも肉ともつかないゼリー状の物体がべったりと付着していたのだ。

「何……何が起こったの!?」

あまりの異常事態に声を震わせるトリエラ。

(これは……?)

その横でヴィクトリアは、目の前の赤に対し、確かな既視感を覚えていた。
自分はどこかでこれを見たことがある。
あれはどこだったか……確か……

「あっ」

記憶の糸と糸が繋がる。
答えが出る。
だが、それを口にする前に。




「おはよう。
 選ばれし中でもさらに選ばれし子供たちよ。
 君たちは幸運だ。
 本来ならば、最後の一人になるまで再び見えることはできないはずだったこと私と……
 来るべきときが来る前に、もう一度逢瀬を重ねることができるのだから」




周りの赤全体から、荘厳な声が響く。
まるでいくつものスピーカーから少しずつ遅れて放たれているような不気味な韻律。

二人はこの声を知っている。
いや、この島にいる者なら、誰一人知らぬものはない、
そして、決して忘れられることのない、声。
その持ち主は……

「ジェダ……ドーマッッ!!」

怒り、恐れ、緊張、その他様々な負の感情がないまぜになった、ヴィクトリアの叫び。
それはあたかも、この島に生きる子供たちの感情を代弁しているかのように響いた。

175紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:40:07 ID:O55C9ohY

「いかにも」

唐突に、微震がバスを襲う。
カタ……カタカタと、車中のガラスが一斉に振動音を奏で始める。
見れば、窓に貼りついている血塊の全てが、まるで意思を持つアメーバーのように
脈打ち、蠢き、そして、一挙に動き出した。
車全体を覆っていた醜い肉は、みるみるうちに割れた窓へと殺到。
今や、赤い濁流のように車内へ流れ込んでいた。

そして赤は、ちょうどトリエラとヴィクトリアの中間あたりの地点へ、
自然の法則に逆らって、溜まり、埋もれ、積み重なり、ある一つの形をとっていく。
細身の長身。スタイルに優れたボディ。
体にぴたりと貼りつく、宗教家のような、学生のような藍の衣装。
背負われた、明らかにこの世のモノではない鋭角の翼。
不自然に尖った頭からは、触覚か、角のようなものが二本伸びている。

「君たちには、こちらの姿の方が馴染みがあるかな」

死人を連想させる青白い顔がニヤリと歪む。
ほの見えた口の中は、煮詰めたようにどす赤かった。



「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」



咆哮一閃。
ヴィクトリアがジェダに襲いかかる。
右手を固めた本気の手刀。
ありったけの殺意を腕に込め、相手の臓腑を貫き、抉り、そのまま砕かんとする必殺の一撃。

しかし、その反抗の暴力は、
ジェダがゆるやかに、優雅ささえ感じさせる動きで彼女の腕を掴んだだけで、
あっさりと止められた。

「ふむ。元気そうで何よりだよ、太刀川ミミ」
「あっ」

渾身の攻撃を止められ、体が硬直した一瞬の隙に、
冥王は掴んだ腕を放さぬまま、強引にヴィクトリアの体をシートへと押し倒し、
そのまま、上へと覆いかぶさった。

「実のところ心配していたのだ。
 外れないはずの首輪が……何の手違いか外れてしまっていたようだったからね」

言いながら、その青く細い指で彼女の首筋を撫でる。
ほっそりと白い、染み一つない美しい首。
その感触を楽しむように、ゆっくりと指を這わせ、何度も往復させる。

176紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:41:12 ID:O55C9ohY

「変に爆発して、もし怪我でもしていたら大変だ……そう思っていたのだが」

首には飽きたのか、今度は逆の手で下半身をまさぐる。
スカートをめくり上げ、健康的な生の美脚を慈しむようにさする。
肉付きのいい感触を確認するため、軽く揉んでみることも忘れない。
この時、首筋を触っていた手は、抜け目なくセーラー服の中へと滑り込ませている。
柔らかい腹の肉を感じるのも早々に、ここ百年余の間、ずっと未発達の胸へと手を伸ばす。
僅かだけ膨らんだ双丘を、指先で押し、そして戻す。

ヴィクトリアは自らの下顎を噛み砕かんばかりに、歯を食いしばる。
怒りと屈辱で脳はほとんど白熱し、爬虫類のように引き絞られた虹彩からは
殺意が無尽蔵に放たれている。
しかし、それでも、彼女は抵抗することができない。
何故なら、この上なく優しいタッチで体を弄びながらも、
冥王は巧みに反抗の動きを殺し、また、同時に、
星の重力にも並ぶかと思われるほどの威圧感を漲らせていたからだ。
それは、無言のうちにこう語っていた。

『逆らえば、ただでは済まさない』

ヴィクトリアは人外の化け物、ホムンクルスとして百年の時を生きてきた。
恐れられ、疎まれることはあっても、嬲られたことなど一度もなかった。
それがこうも……こうも容易く……
人生で始めての衝撃が与えたのは屈辱……ただ屈辱。
感情のやり場がない彼女にできることは、目尻に溜まった涙が決して流れないよう、
必死で耐えることくらいしかない。

「……どうやら、大した怪我はないようだ。安心したよ。
 それから……トリエラ」

いつのまにか銃を抜き、ジェダに向かって構えていたトリエラは
自分の背筋をとてつもなく冷たい何かが走り抜けるのを感じた。

頭をヴィクトリアの胸にあてがい、心臓の鼓動を聞いたままの姿勢で、冥王は続ける。

「無益なことはやめておくことだ。
 そんな玩具で私をどうこうできないことくらい、聡明な君なら分かるだろう。
 それに……つまらん理由で脱落したくはあるまい?」

ギン。
その言葉を聴いた途端、トリエラが最早、微塵も感じていなかった首の違和感が一気に膨れ上がる。
それをはっきりと思い出したとき、無駄な抵抗の意思はあっという間に萎えていった。
銃を下ろすことはしなかったが、それは「お前の思い通りにはならない」という
精一杯のポーズであって、おそらく冥王にとっては、
すねた子供がそっぽを向くのと、何ら変わりのない行動にしか映らないことだろう。

そんなトリエラの態度を見て、ジェダは満足したのか、再び、ヴィクトリアに意識を移した。

「さて、大事なかったとはいえ、首輪が外れてしまったのは、こちらの落ち度だ。
 お詫びに、君に私から一つプレゼントをしよう」

ヴィクトリアを貪っていた上体を起こすと、おもむろに、両腕を彼女の首へと巻きつける。
死の予感に瞳が見開かれ、表情が硬直する。
だが、予想に反し、ジェダの両手は柔らかく両側を包み込んだだけで、
しばらく経った後には、触れると同じように、ゆっくりと離していった。
しかし、手がすっかり肌を離れた後も、何故か首の違和感が消えない。
不審に思い、自ら触って確認すると、そこには――――

177紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:43:04 ID:O55C9ohY



「新しい首輪だよ」



逃れた筈の枷が。
滅したはずの絶望の象徴が。
銀の首輪が、また嵌っていた。



崩れ去る。


辿り着いたはずの結果。

勝利への一歩。

築いたはずの優位。

秀でた自らへの自信。

生還へと伸びかけていた階段。


一切合財が、音も立てずに崩れ去る。



「私はそろそろ戻るとするよ。
 あまり君たちばかりを贔屓するわけにもいかないからね。
 では、頑張ってくれたまえ。
 私はいつでも、君たちのことを遠くから見守っているよ。
 ククク……ヒャーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

腕を大きく広げる。
ジェダの背後の空間が、口を開けるようにパックリと裂け、赤斑の異次元が現れる。
瞬きをする刹那、冥王はその口に呑まれるようにして消えていった。


後には、耳障りな哄笑の、僅かな残滓だけが響いていた。

178紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:44:07 ID:O55C9ohY



【G-7/廃墟の街/2日目/朝】
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:肉体疲労(中)、精神疲労(中)
    頭部殴打に伴う頭痛。胴体、胸部に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、
    右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数8/8)
    ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ(一部破砕)
    グラーフアイゼン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0
[道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図
    US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×8
    インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん )
    回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
[服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ
[思考]:呆然。
第一行動方針:第二回放送の内容を確認する。
第二行動方針:仲間との連絡、もしくは合流。
第三行動方針:シャナに対しては態度を保留。(和解は難しい?)
第四行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう
基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]:携帯電話には、『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。
    トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。
    第二回放送を聞き逃しました。

     ※トリエラは仲間と分かれる前、朝になったら、以下の作戦に則って行動するつもりでした。
      まずシェルターまで全員で行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう。
      シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。
      それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。

179紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:44:42 ID:O55C9ohY


【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:肉体疲労(小)、精神疲労(大)、太刀川ミミに瓜二つの顔
[装備]:幼稚園バス@クレヨンしんちゃん、i-Pod@東方Project、
    スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER、魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2(食料のみは1人分)、天空の剣@ドラゴンクエストⅤ、
    塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、
    ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×4@mother2
    アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし)
    マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、
    思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0〜1
[服装]:制服の妙なの羽織った姿
[思考]:呆然。
第一行動方針:???
基本行動方針:???
参戦時期:母を看取った後。能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。
[備考]:第二回放送を聞き逃しました。

    ※首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。
     ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる?
     更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。


【幼稚園バス@クレヨンしんちゃん】
しんのすけ達が通う、ふたば幼稚園の通園バス。
ネコを模したピンクの車体がキュート。
ちなみに、原作でも、今作中ばりのカーチェイスを演じたことがある。

180紅からは逃げられない(後編) ◆PJfYA6p9PE:2010/07/17(土) 16:45:20 ID:O55C9ohY
投下終了です。
本スレでご支援くださった方はありがとうございました。

181Point of Return ◆Xdenpo/R4U:2010/09/05(日) 17:54:01 ID:2zLybEgU
魔女狩りの魔女は戦場に降り立った。
地に転がるは死人と半死人、相対し屹立するは絶対強者。
人の領域を超越した赤銅肌の化け物が冷徹に嗤う。
場に存在する事象全てが彼女の味方と化し、一戦交えたばかりだというのに内包する気力の充溢さは計り知れない。
正に化け物。
だが、彼女はそこで甘んじない。
一片の容赦も油断もなく足元のボロ人形、高町なのはを片手で持ち上げ対峙した魔女に見せ付ける。

「裏切り者さん、この意味がお分かりかしら?」

嗤う。
尚も嗤い続けるその顔が。
パアン!
という破砕音に飲み込まれた。
砕け散った氷の弾丸が周囲に飛散し、白い靄が生まれる。

「生憎と全く分からんな。
 この私がそんな善人に見えたか?」

右手に魔法の射手の残照を燻らせ、闇の福音もまた嗤う。
迷いも躊躇も追憶もその嗤いの中には居場所がない。だが、

「ええ、よーく見えるわ。あまりにぬるすぎて気持ち悪いくらいよ」

彼女にはその居場所が見えた。
水蒸気がはれ着弾点が露になる。
頬に小さな傷。
魔法の射手の一矢程度では怪物はおろか普通の人間とて殺すことなどできはしない。
その僅かな傷が人質を傷つけずに行うことができる、精一杯の虚勢だということをどこまでも残酷に表していた。
(……分かっていたさ)
突きつけられた事実を視神経に焼付け、エヴァは決意する。
やはり、全てを救うことなどできはしない。
もとより高町なのはは終わっている存在。袋小路から抜け出せない者。
エヴァが拘泥する理由など最初からなく、見捨てるという選択肢をとることにも何ら抵抗はない。
その内情を見透かしたかのように、グレーテルが笑みの質を変える。
そのまま片手だけで槍を振りかぶる。次いで地面をめくるように広く広く横薙ぎにした。
所作は一見優美にすら見える。だが付随する事象は苛烈の一言だ。
その動きは槍ですらない。むしろ斧のような取り回しだ。
それも片腕であの大質量を振るう様は悪夢のような威圧感を伴っている。
掘削された床が山吹色の洪水の後押しを受け、大小様々な破片とともに牙を剥く。
エヴァはこれを冷静に瞬動で大回りに回避する。
回避できた、はずだった。

「……ッ」

瞬動先で右腕に展開した対物障壁に幾多もの光と破片が衝突し、やがて音が止んだ。
腸わたを煮えくりかえしたような苦渋を浮かべるエヴァ。
その背後には何かが伏している。
何かは、二人の少女だった。共に気を失った動くこともままならないか弱い存在。
その構図もまた、語りたくもない一つの想いと事実を雄弁に物語っていた。

182Point of Return ◆Xdenpo/R4U:2010/09/05(日) 17:54:30 ID:2zLybEgU
「ふふ、大した悪党がいたものね」

エヴァの心が解体された。
最早、見せ掛けの脅しも悪態をつくこともできない。
エヴァがとれる反抗手段は一つずつ潰され、残ったのは殺意を込めた瞳で射竦めるだけだった。

「そういうことやった子を知っているわよ。あの男の子、勇者様とおんなじね」

貴様に言われんでも分かっている。
あぁ滑稽さ。袂を分かったあの莫迦どものするような行動と同じことをしているのだからな。
それでもな。
もういないかもしれないんだ。
こいつら以外に悪を打倒しうる正義の味方になれるような連中が。

「だったら末路も同じであるべきだと思うの」

なぜ死んだ。ニケ。リンク。
ここに立つのは私じゃない。弱者を守り悪の前に立ちはだかって勝利すべきはおまえたちだったはずだろう。

サンライトハートの飾り布が眩い光に転化する。
突撃態勢。いかにエヴァといえど正面からまともに受けきる術などない。
だが、身をかわせば後方のインデックスとアリサの身体が粉微塵に散らされる。
エヴァに残ったものは多くなかった。
だから差し出した。
満足に動かない左手ではなく自由に動く右手を。
差し出し、二の腕で抱え込むようにインデックスを、手の握力だけでアリサを掴み、
突撃準備態勢のグレーテルに背を向け工場の奥へと無様に逃げ始めた。
右手が塞がった。即ち反撃手段の放棄。
逃げる。プライドも屈辱感も溝に放り捨てて、入り組んだ迷路のような工場内を縫うように飛ぶ。
逃げ切ってインデックスとアリサを隠せればまだ勝負になる。
だが、大きすぎる荷物を抱えたエヴァがヴィクタースリーからいつまでも逃げ切れるはずがなかった。

「……くそ」

行き止まりに追い詰められ、エヴァは呻いた。
壁をぶち抜くために動かせる腕などない。

183Point of Return ◆Xdenpo/R4U:2010/09/05(日) 17:54:59 ID:2zLybEgU
「もう逃げないのかしら?」

グレーテルが照準を定めるように突撃槍をエヴァに向ける。
距離は10歩分。両腕が使えず、足だけで姿勢制御を行っているエヴァに避けられる状況ではない。
死刑宣告とばかりに、槍が光を放ち始める。

「何か言い残すことは?」
「殺してやる」

グレーテルは一瞬目を丸くした後、舌なめずりをしながら口角を吊り上げた。

「良いわね。そういう強がり方」

山吹色が噴射。グレーテルが飛ぶ。
ヴィクター化によりその身は既に人の限界を超えている。
常人ならば容易くブラックアウトするような過加速度、それすらも強化された肉体には枷とはならない。
エナジードレインにより噴射燃料も十二分。
ゆえにその突撃は瞬動の域に迫る、刃持つ陣風だった。
危急的脅威を前にエヴァは動かなかった。
身を屈め見上げるようにグレーテルを睨み付け、一瞬だけ抱えられた高町なのはに視線を移し、……逡巡した。
何かを迷い、そして振り払い。
彼女は静かに怨嗟をあげた。

「おまえは、私が必ず殺しに来てやる。脳髄に叩き込んでおけ……!」

瞬間だった。
エヴァの足元の影が意思をもったかのように蠢き、泥沼に沈み込むようにエヴァと抱えられた少女二人を飲み込んだ。

「!?」

獲物を食い損ねた突撃槍が目的地に到達したのはその一瞬後のこと。
影を使った転移魔法。
三流の捨て台詞を吐き捨て、悪の魔法使いは完膚なきまでに敗走した。


バトルロワイアル開始から丸一日。
定時放送が新たな朝の到来を告げる。


   *   *   *

184 ◆Xdenpo/R4U:2010/09/05(日) 17:56:03 ID:2zLybEgU
Point of Return は以上です。
続きはタイトル変更になります。

185なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 20:58:29 ID:Yzb87MqE
見ていた。

――は……発射! 発射!!

――発射! 発射!! 発射!!!! 発射!!!!!!!!


見ていた。

――ぶ……武装錬金!

――お、おい! 動け! 動けよ!! 武装錬金! 武装錬金!!


聞いていた。

――なん、でだよ……

――なんでだよ! どうせ誰も生きられないんだ! お前らだってわかってるだろ!
  最後の一人にならないと死ぬんだ! なら殺して何が悪い!!


聞いていた。

――イヴだって私と同じだ!!
  全員殺して! 全部忘れて暖かいところに帰るために殺してるんだ!!

――お前らが全員死んだら! 私は全部忘れて! 帰れるんだ!!


全て聞いていた。

――殺せって言われたから殺して悪いか馬鹿野郎!!

―――――――――――――――――――――――――――ギガデイン


耳を聾する、重く、崩れるような轟音と。
目を眩ます、白い、白い紫電と。
そして、確かに崩れ去った、人の形と。

意識があったのはそこまでだった。

186なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 20:59:35 ID:Yzb87MqE





「ん……」

膝の上。
さくらが、身じろぎしながら瞼を開く。
まだ眠そうな、不快そうな目覚め。
しかし、見下ろすヤミヤミは、心底嬉しそうに顔を輝かせた。

「目が覚めたんですねさくら! よかった……」

もぞりと。
覚束ない動きで身をもたげようとするさくらを、慌てて両手で支える。
彼女は上半身を起こすと、焦点の合わない目であちらこちらを見やっていたが、
やがて、橋の上に横たわる赤黒い物体のところで視線を止めた。

「敵は倒しました。心配ありません」

光景を補足するように言葉をかける。
静かに優しく、安心を与えるように。
しかし、目の前の少女に反応は見られない。
ただ、ぼんやりと死骸の方に目を向けているだけだ。

「……さくら?」

少しおかしい。
もしかしたら、打ち所が悪かったのかもしれない。
肩に手をかけ、顔を覗き込む。
その眼は、既に覚醒した者のそれだったが、瞳の黒には何か言い知れぬ違和感があった。

「何で……?」

するうち、さくらの震える唇が言葉を発する。
小さな声は何故かとても平坦だった。

「……ごめんなさい。
 こんなことになったのは私のせいです」

一瞬の間があった後、顔を曇らせて、応える。
襲撃、アルルゥの死、傷つけられた仲間達。
さくらもそれを悲しんでいる。自分や、レックスと同じように。深く。深く。
ヤミヤミは一連のさくらの反応をそう理解した。

「私がいけなかったんです。
 アルルゥさんの本当の気持ちもよく知らずに、自分勝手に答えを出して、飛び出して……
 そのせいでアルルゥさんは死んでしまいました。
 さくらを傷つけてしまいました」

だから謝罪した。
謝ったからとて、必ず許されるとは思っていない。
罵声を浴びせられることも覚悟していた。
そんなことよりも、自分の罪から逃げてしまうことの方が怖かった。
だが。

187なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:00:34 ID:Yzb87MqE

「何で殺したの……?」
「………………………………、え?」

しばらくの間、ヤミヤミには何のことを言っているのか理解できなかった。
だが、相変わらず動いていないさくらの視線の先を追って……気づいた。

「……彼女のことを言っているのですか?」
「…………」

返らぬ答えが、肯定を示していた。

「あの少女は敵でした。
 発言も行動も彼女が殺し合いに積極的な殺人者であることを示しています」

そんなことはあなただって分かっているでしょう。
知らず、語調にそんな調子が含まれた。

「……敵だったら殺していいの?」
「それは……仕方のないことです。
 そうしなければ仲間を守れませんでした」
「そんなことないよ」

ゆらりと、さくらが立ち上がる。
まだ湿ったままの木橋の上を静かに歩いていく。
ところどころ焼け焦げ、血管の模様が浮き出た死体の傍に向かって。
ヤミヤミはただそれを見ていることしかできない。

間もなく、さくらは死体を直下に見下ろす位置へ立った。

「この子の武器はレックス君には全然効いてなかった。
 他の武器も持ってたみたいだけど、それも使えなくなってた。
 そんな子が、それ以上、どうやって私たちを攻撃するの?」
「殺さずに捕えるべきだったと言いたいんですか?
 でも、私たちに捕虜を作る余裕はないんじゃないですか?
 見張りにさく労力の問題や叛乱の危険だって……」


「私はそんなことを言ってるんじゃないよ!!」


さくらがついに叫んだ。
その強い調子に気圧される。
予想だにしなかった展開に、戸惑いを隠せない。

「……この子、言ってたよね。
 殺さないと帰れないから殺すんだ。
 殺して何が悪い……って」
「確かに言っていました。
 自分勝手な理屈です」
「そうかな?」

思わず顔を上げると、さくらが真っ直ぐこっちを見ていた。
表情は何故か奇妙な半笑いだった。

188なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:01:36 ID:Yzb87MqE

「ヤミヤミちゃんは全然、考えなかった?
 みんなのところに帰るために殺し合いをしようって、本当に、少しも考えなかった?」

そんなことを言われても、分からない。
想像することすらできない。
何せ、彼女にはここ数時間より前の記憶が全くないのだから。
ヤミヤミにとっての『みんな』とはここにいる人達のことなのだから。

「私は考えたよ。
 でも、すぐにやめようって思った。
 殺し合いなんて嫌だったから。
 死ぬのも嫌だけど、殺す方がもっと嫌。
 他の人を殺してまで、生き延びたくないもん。
 だから、私は殺し合いなんてしないぞって決めたの」
「…………」
「……でも、この子はきっと違ったんだね。
 他の人を傷つけて、殺してでも、元の場所に帰りたかった。
 もしかしたら、この子にも、優しいお父さんや、ちょっといじわるだけど頼りになるお兄ちゃんや
 大切な友達や……好きな人……がいたかもしれないね。
 この子は、何をしても、そこへ帰りたかったんだよ。
 私との違いは、多分そこだけ」
「……あなたは何が言いたいんですか?」

言ってから気づく。
自分の言葉に刺々しいものが混じっていることに。
この話の行きつく先は分からないが、
どうやらあまり愉快なところではなさそうなことを、薄々悟りつつあった。

「アルルゥちゃんは言ってたよ。
 『みんなで協力すればきっと帰れる』って。
 レックス君もベルカナさんもその意見に反対したりしなかった。 
 もちろん、私も賛成だよ。
 ヤミヤミちゃんはどう?」
「反対するわけない……です」
「そうだよね。なら」

さくらは一呼吸置いて、言った。




「何でこの子を仲間に入れてあげなかったの?」




聞いた途端、頭がカッと熱くなる。
ヤミヤミから相手の感情を推し量る余裕が急速に失われていく。

189なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:02:33 ID:Yzb87MqE

「この子、泣いてたよ。
 泣きながら言ってたよ。『殺すしかないんだ』って。
 でも、私たちはそうじゃないことを知ってる。
 『みんなで協力すればきっと帰れる』って信じてる」

「それは」

「じゃあ、何でそれを言ってあげられなかったのかなあ?
 『大丈夫だよ。殺さなくても帰れるよ』って……
 そう言ってあげれば、この子と私たちは友達になれたかもしれないのに」

「友達って……」

「でも、レックス君は代わりに雷を落とした。
 雷に打たれて、この子はこんな風になっちゃった。
 何で? ねえ、何で? 何でこんなことになったの?」



「でもッ!!!」



ついに、ヤミヤミが叫んだ。

「そいつは……そいつはアルルゥさんを殺したんだ!!!」

凄まじい激情が胸の中で沸騰していた。
さくらが何でそんなことを言うのか分からなかった。
いや、本当のことを言おう。
その瞬間、ヤミヤミは確かにさくらのことを憎悪していた。

「それがどうしたの?」

しかし、さくらは冷静だった。
ある意味では。

「私だって人を殺したよ。
 レックス君だって、アルルゥちゃんだって殺したって言ってた。
 ヤミヤミちゃんだってそうなんじゃないの?
 この子と少し前までの私たちと何が違うの?
 私だって、アルルゥちゃんが死んだことは悲しい……すごく悲しいよ!!
 でも、だから……だからこそ、もうこれ以上、人を殺しちゃいけないんだよ!!」

そして、さくらはとうとう、決定的な一言に至った。


「私たちが帰るためなら、敵を殺していいって言うんだったら……
 それはこの子のやってたことと何も変わらない。
 私も、ヤミヤミちゃんも、アルルゥちゃんも、レックス君も……
 私たち、ただの人殺し仲間になっちゃうよ!!!」


刹那、意識が激情に白く塗り潰された。
理性の検閲を経ることなく、ヤミヤミは地を蹴ってさくらに飛び掛っていた。
もう、不快な言葉を一秒でも聞いていたくなかった。

190なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:03:33 ID:Yzb87MqE


「……『風』《ウインディ》!!」


しかし、その突撃は突如現れた風の壁に阻まれた。
見えない大きな掌にはたかれるようにして、ヤミヤミは後方へと吹き飛ぶ。
背中が橋の踏み板と擦れ合う音が聞こえる。

とっさに立ち上がるのと、我に返るのとは同時だった。
理性が行動に追いつくと、激情は冷え、かわりに圧倒的な罪悪感がせり上がる。

「……ご、ごめんなさい、さくら!!
 わた、私、そんなつもりじゃ……」

狼狽する。
顔から血の気が引き、舌が絡まるのが分かる。
許しを請うて見た、その先には。

さくらが立っていた。
この上なく悲しそうな、辛そうな顔で立っていた。
その顔は決してヤミヤミを責めてはいなかったが、
二人の間には、今や、グランバニア城の堀よりも広く、深い断絶ができていた。

しばしの沈黙。
雨による増水が納まりはじめた水濠の、わずかに流れる水の音だけが、辺りを支配していた。

やがて、さくらが踵を返す。
向かう先は城とは逆方向。
ヤミヤミは必死に脳を働かせ、彼女を引き止める言葉を探したが、
無情にも、記憶の沼から金言を引き上げることはついにできなかった。
代わりに引き上げられたのは、つい先程、さくらが放った一つの問いばかり。
即ち、『何でこんなことになったのか』。

(何で、どうして、何で、何で……)

ヤミヤミは混迷を極める心を抱えたまま、レックス達に助けを求めることも忘れ、
ただ呆然と立ち尽くしていた。
さくらは豆粒のように小さくなっていき、やがて、視界の彼方へと消えた。

そして、この事態の原因となった人物――南千秋は
もう二度と蘇ることのない体を飽きもせず横たえていた。
ただ、その焼け焦げた唇は、まるで嗤っているかのように歪み、
高温に晒されたせいで白く濁った瞳は、こう言っているように見えた。

「お前だけ幸せになれると思うなよ」と。

191なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:04:29 ID:Yzb87MqE




【F-3/城門前/2日目/朝】
【ヤミヤミ(イヴ)@BLACK CAT】
[状態]:疲労(大)、10歳前後の容姿。混乱。
[装備]:レミリアの服、エッチな下着@DQ5、返響器@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2、光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、
    フック付きロープ@DQ5、神楽の傘(弾0)@銀魂、エーテライト×1@MELTY BLOOD、
    胡蝶夢丸セット@東方Project、ラグーン号操船マニュアル、病院服、ただの布切れ
[服装]:レミリアの服、その下はエッチな下着
[思考]:何でこんなことに……
第一行動方針:さくらとの関係を何とかしたいが、どうしていいか分からない。
第二行動方針:レックス達が戻ってくるまで待つ。
第三行動方針:ブルーや蒼星石から『イヴ』について聞きたい。
第四行動方針:私は『イヴ』には戻らない。
基本行動方針:大好きな人達をヤムィ(冷たい私)にさせたくない。
[備考]:記憶をすべて消し去りました。元世界の記憶、この島での記憶、共にありません。
    再びヤムィヤムィ(ヤミヤミ)と名乗ることにしました。






さくらは南へ南へと歩を進めていた。
もちろん、目的地などない。
ただ、もう城へと帰れないことだけは、はっきりと感じていた。

(……何で、あんなことになっちゃったんだろう……)

彼女もまた、この問いに心を悩まされていた。
さくらが先刻口にしたことは、概ね彼女の本音だったが、
では、あのような言い方で、このタイミングでヤミヤミにぶつけるのが
正しいやり方だったかと問われれば、一抹の疑問を感じる。

だが、一方で、仕方ないとも思ってしまう。

梨々は死んだ。雛苺も死んだ。
そして、小狼も死んでしまった。

最早、自分が心を繋いだ人々はこの島には残っていない。
だから、せめて、もう自分の目の前でだけは、誰も死んで欲しくなかった。
その矢先、あの子が死んだ。
仲間になれるかもしれないと思った人達の手で死んだ。

もう、どうしていいか分からなかった。
だから、感情の赴くままに喋った。動いた。そして、去った。
そのことをどう考えていいかすらもう分からない。
分からない。
分からない。
分からないことだらけだ。

192なかまはずれ ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:05:16 ID:Yzb87MqE

(……小狼君に、会いたい)

ふと、そう思った。
死んでいてもいい。会いたいと思った。
あの聡明な少年なら。
先達の魔術師として自分を導いてくれた男の子なら。
この世で一番、誰よりも大好きなあの人なら。
死んでいても、何かを示してくれるのではないか。
さくらはそう思った。
それは蜘蛛の糸よりもなお細い希望だったが、
今の彼女にはそんなものくらいしか頼るものがなかった。

(……小狼君を、探そう)

澱む意識の中、そう決めた刹那、目の端に何か輝くものが映った。
見れば、川に架かる橋の下、暗がりになった川辺で、何かがキラキラと光を放っている。
誘蛾灯に吸い寄せられる昆虫のように、さくらは土手を降り、湿った河原へと踏み込んだ。
腐った水の臭いが鼻をつく只中、あったのは泥水をたっぷり吸い込んだ大きな布包み。
光は、その隙間から漏れ出ている。

おそるおそる手を伸ばし、結び目を解く。
すると、これまで押さえられていた光が橋の下の影いっぱいに広がった。
そして、同時、さくらはそれが何であるか完全に理解した。

赤と緑とピンクの輝きに彩られたそれは、
割れ、砕け、拉げ、折れ、欠けた、泥まみれの、ビスクドールの残骸。



――雛苺の、成れの果てだった。



その、かつて顔だった部分に、この上ない恐怖の表情を認めたとき、さくらは膝をついた。
全身が泥で汚れるのも忘れ、彼女は蹲り、声をあげて泣きじゃくった。
今の今まで、忘れていた涙だった。


【F-5/橋の下/2日目/朝】
【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:魔力消費(中)、肉体疲労(中)、精神疲労(大)、核鉄二つで回復中、全身泥まみれ
[装備]:核鉄『シルバースキン・アナザータイプ』@武装錬金、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)@武装練金、
    クロウカード『水』『風』、リインフォースII@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品×2
[服装]:梨々の普段着
[思考]:うわあああああああああああ!!!!ああああああああ!!!
 第一行動方針:泣く。
 基本行動方針:小狼(の死体)を探す。
[リインフォースIIの思考・状態]:???、レックス達と話をした

※さくらの眼前に、雛苺の残骸と、真紅、翠星石、雛苺のローザミスティカがあります。

193 ◆PJfYA6p9PE:2010/09/12(日) 21:05:40 ID:Yzb87MqE
投下は以上です。


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