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オリロワA part2

938WHATCHA GONNA DO? ◆VdpxUlvu4E:2025/09/01(月) 19:05:46 ID:K/ppzQN20


 紗奈の発案による、『ルーサー・キングに放送を聴かせない。運が良ければポイントを回収する』という作戦を首尾良く成功させて、二人は港湾から撤退した。

 C–3のブラックペンタゴンへと続く道で、ジャンヌとりんかは後方を振り返り、ルーサー・キングが追ってこない事を確認した。
 放送を聞く為に、離れた場所に身を潜めた紗奈の元へと直に向かわず。
 一先ず別の方向へと逃げて、ルーサーの目を誤魔化したのだが、果たして上手くいったのか。
 これから、C–4森に隠れている紗奈と合流して、放送の内容を確認しなければならなかった。
 
 ────気不味い。

 かつて憧れたヒーローと共に在りながら、りんかの心は暗い。
 何故、ジャンヌ・ストラスブールが此処に居るのか。ドミニカマリノフスキの様に、裏社会の事情を全く知らない者ならば、流布された悪評を信じただろうが。
 そもそもの話として、りんかはジャンヌの悪評自体を知らない。
 ジャンヌが囚われ陵辱の限りを尽くされていた日々は、奇しくもりんかが壮絶な陵辱と虐待を受けた日々と重なる。
 更にその後は、洗脳されて道具として扱われていた為に、ジャンヌの風評について知る事など出来なかった。
 それでも、過去の経験から、ジャンヌが“アビス”に送られた事情を察する事は出来る。
 無論、この様な事は、気軽に訊ける事では無く、話せることでも無い。
 只の冤罪という可能性も有る。何方にせよ、口にし辛い事柄だった。

 「あ…あのっ、ジャンヌさんは、この刑務で出会った人は……」

 必然的に、刑務に関する話になる。

 「出逢った人…ですか?」

 深い翠の瞳を向けられ、りんかの脈は一気に上がった。
 
 「あ…あのですね。危険な人とかいれば、教え合った方が良いんじゃないかって、私と紗奈ちゃん、連続で襲われましたし!!
 鎖付き鉄球振り回す人とか、ルクレツィアというゾンビみたいな女の人とか!ソフィアさんとか!!」

 ジャンヌのソックリさんは、気分を害しそうなので言わない。漢女はジャンヌと共闘した様なのでこれも言わない。
 
 「えっ……」

 「お…お知り合いでも!?」

 テンション上がり過ぎて、挙動がおかしくなっているが、そこはそれ。

 「ルクレツィア…彼女に襲われて、良くご無事で……いえ、彼女だからこそ無事で済んだ……」

 「じゃ…ジャンヌさんも?」

 ジャンヌは我が身を抱きしめた。
 “血染めの令嬢”の名を見たときにも感じた痛みが、全身に生じ、ジャンヌの精神を蝕みだす。
 耳朶に蘇るのは、血染めの令嬢の声。
 

 ────私達は、同類ですね。

 ジャンヌの右脚をもぎ取りながら、令嬢が囁く。

 ────己に従い我道を歩み、例え殺されても、在り方を変えられない。いえ、変えない。

 指先を腹に沈め、内臓を撫で回す。

 ────貴女は正義と慈愛で、私は悦楽と愉悦で、誰も彼も、等しく扱ってしまう。

 血濡れの少女が笑いかけてくる。

 ────共に己が心のままに、心の求めるままに生きて、死ぬ。

 苦痛を引き出す。生命を握る。邪悪な行為に酔い痴れながら。
 
 ────同類同士である私達は、別の形で出会えていれば、お友達になれたかも知れませんよ?

 限り無い親愛の情を向けながら。


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