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オリロワA part2
445
:
氷の偶像
◆H3bky6/SCY
:2025/06/08(日) 13:35:08 ID:IwbDKrGw0
朝日に煌めく草原には、まるで神の吐息が残されているかのような静謐が漂っていた。
冷たい空気は夜の名残をわずかに引きずりながらも、神聖な祈りの気配に満ちていた。
ジルドレイ・モントランシーは片目をゆっくりと開き、凍りつくような視線をその先に送る。
視線の先――朝露に濡れた草原に、ひとりの女が静かに祈りを捧げていた。
囚人服であるはずの衣が、朝日を受けて淡く輝き、まるで神聖な法衣のように見えた。
彼女は掌を重ね、瞼を閉じ、誰かの魂に静謐な祈りを捧げている。
きっと、この地で倒れた名も無き誰かのために、彼女は祈りを捧げていたのだろう。
ジルドレイの呼吸が止まる。
青空の下、清らかに祈るその姿こそ、彼が心の中で数え切れぬほど夢見た、あの人だった。
ただ一人の聖女。その理想。その幻影。
そして、次の瞬間。
彼は崩れ落ちるように膝をついた。
「……ああ……ああ……!」
風が吹いた。
それは草原を撫でる優しい朝風ではなかった。
ジルドレイの内奥から噴き出した、歪んだ信仰の冷気。
喜悦、感動、崇拝――いや、それらを模した陶酔と狂気が雫となってぼれ落ちる。
「見つけた……見つけたぞ……ついに……! 私の、ジャンヌ……私だけの、貴女が……!」
風の音に紛れても、その嗄れた声は確かに届いた。
ジャンヌは静かに目を開け、声の主に視線を向ける。
そして――彼女の目に映ったのは、自分自身の姿だった。
驚愕を声には出さず、しかしジャンヌの顔に戸惑いと緊張が走った。
十五歳の自分。まだ現実を知らず、ただ理想だけを抱きしめていた、純粋無垢の頃の古い鏡。
違うのは、片目と片腕、そして髪の色だけ。
だが、最も決定的に違ったのはその眼差しだった。
慈しみでも哀しみでもない。戦意でも、情熱でもない。
そこにはただ、命を持った蝋人形のような虚無と執着が宿っていた。
「貴女に……ようやく……ようやく、会えました……」
恍惚とした笑みを浮かべ、ジルドレイは立ち上がる。
残った左腕を広げ、一歩、また一歩とジャンヌへとにじり寄っていく。
その動きに、ジャンヌは一瞬身を引き、眉をひそめた。
「……貴方は……何者ですか?」
毅然と問う。
明らかな警戒があったが、それでも相手を理解しようという意志がそこにはあった。
ジルドレイは応えない。
ただ、頬に穏やかな笑みを貼り付けたまま、再び口を開いた。
「ジャンヌ……ジャンヌ・ストラスブール……本当に……貴女なのですね?
ああ、なんという神の采配か……この邂逅、まさに奇跡……!
いや! これはもはや、奇跡などという生温い言葉では足りませぬ……神慮の祝福そのもの……!」
片膝をつき、胸に手を当てる。
それは祈りであり、讃歌であり、崇拝そのものだった。
「申し遅れました。私は、ジルドレイ・モントランシー。
貴女の姿に、貴女の在り方に魅せられ、貴女の影を追い続けてきた者です。
本当に御身を拝謁する誉に授かれる日が来ようとは……このジルドレイ幸甚の極みにございます!」
ジャンヌはその姿を凝視し、目を細めた。
困惑と警戒を押し殺しながらも、彼の姿をしっかりと見つめる。
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