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Fate/clockwork atheism 針音仮想都市〈東京〉Part3

769天体のメソッド ◆0pIloi6gg.:2025/08/31(日) 21:26:27 ID:GKRVG56.0

「そんなこと、ないもん……」
「反論する元気があるなら、いつまでもうじうじしてないでしゃんとしなさい。
 わたしはあのホムンクルスは嫌いだけど、あんたがそんな調子だとあいつも困るでしょ。多分」

 とはいえあの場で天梨が健在だったなら、ホムンクルスは祓葉を探しに行くとか言い出す可能性もあった。
 赤騎士蠢き祓葉舞い踊る地獄の新宿から離脱できる理由を作ってくれたのには、やっぱり感謝している。
 が、仮にも同盟相手な彼女がこうだとこの先困るのは本当だ。
 ほぼ初対面の相手にだいぶズケズケ言った自覚はあるが、そこはカウンセラーの当たりが悪かったと諦めてほしい。
 わしゃわしゃときれいな薄紫の髪を泡立ててやりながら、アンジェリカはぽつり問う。

「……元気出た?」
「……出た、かも。
 でも……そうだよね。私がこんなじゃみんなにもっと迷惑かけちゃうし。ありがとう、えっと――アンジェリカさん……?」
「ん。アンジェリカ・アルロニカ。ホムンクルスから聞いてるでしょ。
 あとアンジェでいいよ。うちのサーヴァントとあと厄介な後輩一名はそう呼んでる」
「じゃあ、アンジェさんだ」

 本人も言う通り、ちょっとは元気が出たらしい。
 まだ本調子には程遠いというか、無理してる感が傍目にもわかるが、それでもさっきまでに比べれば随分マシだろう。
 安堵してから、らしくないことをしてしまった、と少し気恥ずかしくなった。
 
 時計塔のアンジェリカ・アルロニカは、決してこんな面倒見のいい人物じゃなかった。
 いつも現状に辟易していて、いつも苛立っていて、そしていつも諦めていた。
 自分の未来を諦めてるような人間が、他人の辛さなど慮れるわけもない。
 もしそんな余裕が彼女にあったなら、ノンデリ発言で友人と決闘を演じることもなかったろう。

 変化の理由はいくつか考えられる。
 意地でも望みの未来に食らいつかなきゃいけなくなったことがもちろん一番だ。
 実際に死にかけて、いろんなことを知って、ますますその気持ちは強まっている。
 だけどそれを筆頭に挙げられる"いくつか"の中には、やはり"あいつ"の存在も含まれていた。

 ――厄介な後輩。

 出会ったばかりの自分を命がけで守り、先輩と慕い、屈託のない無邪気な顔を向けてきたあの女。
 他人の運命を遊び感覚で狂わせておきながら、毛ほどの邪悪も見て取れない超越者。
 興味はないが、もしも魔術世界の道理ですら説明できない本物の神様がどこかにいるのなら、それはああいう性格をしてるのかもしれない。

 神寂祓葉は神様で、人間だ。
 世界はその矛盾を許容しない。
 ヒトはその矛盾に耐えられない。
 彼女と共に生きられる人間はいない。
 じゃあ、わたしは。わたし達は。
 あのとても綺麗(あわれ)な女の子に、何をしてやればいいのだろう?


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