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Fate/clockwork atheism 針音仮想都市〈東京〉Part3

767天体のメソッド ◆0pIloi6gg.:2025/08/31(日) 21:24:50 ID:GKRVG56.0

「ホントはずっと、つらかった」

 吐露する言葉は、アヴェンジャー達について語るのとはまた違う声色だった。
 
「日本中が私を嫌って、憎んで、馬鹿にしてる。
 口に出したらだめだと思って我慢してたけど、正直、擦り切れちゃいそうだった。
 みんな死んじゃえばいいのにって思ったことだって、一回や二回じゃない。死んじゃおうかなって思ったことも、そう」

 でも。
 天梨は、天使と呼ばれた少女は、続ける。

「けどあの子が、それを壊してくれた」

 煌星満天はきっと、自分がそう大それたことをした自覚なんてないだろう。
 だとしても、輪堂天梨を最も救ったのは間違いなく彼女の存在だ。
 悪魔というキャラで売っている少女に用いる表現としては不適当かもしれないが――天梨にとって彼女は自分などよりよほど光だった。

 だって、自分に挑戦してくる人なんて久しくいなかったのだ。
 悪魔の登場はまさに青天の霹靂。
 心を覆う闇色の澱を吹き飛ばして、彼女は颯爽割り込んできた。

 ―――勝負だ、天梨。

「裏切っちゃった。あの子の勇気も、優しさも」

 勝手に舞台を転げ落ちて、真っ逆さま、奈落の底。
 哀れ。惨め。そして醜悪。
 自分がいかに穢いものかを、堕天の翼を広げた瞬間に嫌というほど思い知った。

 あの時天梨が覚えたのは、喪失感と罪悪感。
 けれどそれだけじゃない。
 確かな快楽が総身を突き抜けていく感覚を、彼女ははっきりと記憶している。

「私はあの子が追いかけてくれるような、そんなアイドルでいなくちゃいけないのに――」

 嫌いな誰かを踏み潰すことは気持ちがいい。
 間違いなく悪徳ではあるが、ヒトとして誰もが当然に持ち合わせる性質でもある。

 しかし輪堂天梨はあの瞬間まで、本当にその感情を知らなかったのだ。
 誰も憎まず呪わず、誰かの破滅に一切の他心なく心を痛められる。
 善良のお手本のようなメンタリティは、この猥雑とした時代においてはひとつの狂気だ。
 輪堂天梨は破綻者である。そんな類稀な精神構造を持って生まれた少女が、悪意の味を覚えてしまった。

「こんな私じゃもう、"みんな"の天使でいられない」

 シャクシャインとの運命も。
 満天との勝負も。
 全部、天梨自ら駄目にした。


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