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チェンジ・ロワイアル part4

1 ◆5IjCIYVjCc:2024/01/27(土) 15:52:18 ID:A3HUuRCo0
【当企画について】
・様々なキャラに別のキャラの体を与えてバトロワをする、という企画です。
・コンペ形式で参加者の登場話を募集します。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎します。

【参加者について】
・このロワの参加者は皆、自分の体とは別人の体で戦うことになります。
・参加者として扱われるのは体を動かす精神の方のキャラクターです。
・精神と体の元になるキャラの組み合わせは自由です。

【ルール】
・全員で殺し合い、最後に生き残った1人が勝者となる。
・制限時間は3日。
・優勝者だけが元の体に戻れる。
・優勝者はどんな願いでも叶える権利を得る。
・参加者は皆爆弾入りの首輪を嵌められている。これが爆発すると如何なる存在でも死亡する。
・主催者は権限により首輪を独自の判断でいつでも爆破することができる。
・主催者が「これ以上ゲームを続けることは不可能」と判断したらその時点で全参加者の首輪が爆破される。
・参加者は最初、会場のどこかにランダムにテレポートさせられる。
・NPCなどは存在しない。
・ゲームの進行状況等は6時間ごとに行われる放送でお知らせする。
・定期放送ごとに禁止エリアが3か所発表される。
・禁止エリアに立ち入ると首輪が5分後に爆破される。
・禁止エリアが有効となるのは放送から2時間後。
・禁止エリアに立ち入った場合、首輪は事前に警告音を鳴らす。

【支給品について】
参加者にはデイパックというどんなものでも入る小さなリュックが渡されます。その中身は以下の通りです。
・地図:会場について記されている。
・食料(3日分):ペットボトルの水やコンビニ弁当など。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。最初は入っていません。本編開始とともに配布について放送でお知らせされます。
・ルール用紙:ルールについて書かれたA4サイズの紙。
・ランダム支給品:現実、フィクション作品などを出展とするアイテム。最大3つまで。
・身体の持ち主のプロフィール:このロワで与えられた体の元の持ち主について簡単に記してある。記載事項は名前、顔写真、経歴、技能といったものなど。
【追加支給品】
・コンパス:方位を知るためのアイテム。手持ちサイズの小さなコンパス。赤い針が北を指す。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。五十音順で記されている。身体についての記載は無い。

【支給品についての注意事項】
・2021年9月22日現在、既に登場している参戦作品以外からの出展で支給品を登場させることを禁じています。

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の24時からです。

【時間表記】
深夜(0〜2)
黎明(2〜4)
早朝(4〜6)
朝 (6〜8)
午前(8〜10)
昼 (10〜12)
日中(12〜14)
午後(14〜16)
夕方(16〜18)
夜 (18〜20)
夜中(20〜22)
真夜中(22〜24)

【状態表について】
・状態表には以下のテンプレート例に示すように[身体]の欄を表記することを必須とします。
【状態表テンプレート例】
【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]

・死亡者が出た時は以下のように表記してください。
【名前@出典(身体:身体の名前@出典) 死亡】

【予約ルール】
・予約する場合は3週間を期限とします。
・期限を過ぎて何も連絡が無ければ予約は取り消しとなります。
・予約を延長する場合はもう1週間までとします。
・予約が入っていないキャラならば予約なしのゲリラ投下も可能です。
・予約期限を過ぎた場合、同じキャラを再予約ができるのは5日後とします。

まとめwiki:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/
専用したらば:ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18420/

488薄霞 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 20:59:19 ID:pXczJh9A0


「ぐうう…(くそっ…確かに魔力とやらが回復しているような感覚も出てきた…)」

ギニューはかなり気分を悪くさせられたが、虫の効果は本物のようであった。

(………やはり、言う通りに奴の肉体を奪いに行くべきか?)

ギニューは段々とそんな気分になっていく。
アプリのメッセージ越しのハワードの話はどこまでが本当のことかは分からない。
JUDOの着けていたベルトが本当に黒幕で、肉体の方を奪ってそれをすぐ外して無力化できたとしても、そこから本当にどうにかできるかも疑わしい。
だがもし本当のことだったら確かにそうでもしないと出し抜けないし、本当じゃないとしても元々向こうが持つ力は強力な方だ。
それに孫悟空の肉体を何らかのアイテムの中に確保していることも、やはり先にJUDOの方から奪うことはどちらにしろ自分にとって良い手だとは考えられる。
その方法として立てられた作戦はどちらかと言えば卑劣なものであり、あまり気が進まないところもあったが、それもこの際仕方がないところがあった。

それともう一つ、ギニューは今の身体を捨てたいと正直思っていた。
今、虫を食ってしまったからだ。
体の中に虫がいると思うだけで気分は最悪だった。
それ以外にも、体の中を食い破られるような苦痛もまだ続いていた。
出来ることなら、すぐにでもこの身体から離れたかった。
だから、ハワードの話にも乗ろうかという気分になっていた。


『こうなったら仕方がない。とりあえず今回はお前の言葉に乗ってやる』
『そうか、感謝する』

ギニューは了承の返答を送る。
それに対する感謝を表す返事を確認する。
そこまで見た後、アプリを閉じて荷物をまとめる。

そして洞窟の外で見張りをやらせていた祈手に声をかけ、作戦の内容の詳細な説明を行った。
もちろん、誰と相談しながら立てたものかは伏せてだ。
そして、JUDOに対する誤魔化しのために、全集中の呼吸による剣術の型をこの時少しだけ教えておいた。
ここまである程度までの準備を終えたら、共に作戦のための次の目的地に向けて移動し始めた。


◆◇◆


それから少し歩き、網走監獄の外の方で待機を始めた。
少し待った後にスマホにJUDOが1人になったという連絡が来て、そこから作戦は開始された。
ギニューはボンドルドの祈手に対しストライカーユニット、魔法のじゅうたん、フリーガーハマーのミサイルを1つ、それからスマホ以外の持ち物を祈手に預けた。
祈手には作戦の要となる部分について説明し、他の細かい部分はお任せする形になった。
そしてストライカーユニットのフラックウルフFw190D-6を装着し、魔法のじゅうたんも持ちながら真上の方へと上昇していった。
スマホについては、自分が持ったまま落下したらその衝撃で壊れてしまう可能性もあるため、クッション代わりに前に奪ったもう1つのデイパックの中に先に入れてから、そのデイパックごと元々持っていたデイパックの方に入れる形にしておいた。
落下したら壊れてしまう可能性があるものとしては、フリーガーハマーも同じため、必要となるだろうミサイルを1つだけ持っていった。
専用の砲台から発射するのではなく、手で投げて使うためだ。

そして空のかなり高い場所にまで上昇し、そこで体の腹の方を下ににしながら魔法のじゅうたんも片手で掴みながら自分の下に広げた。
もう片方の腕ではミサイルを抱えておいた。
その後網走監獄の敷地内の上の方にまで移動し、そこで待機を始めた。
この間もずっと虫による腹の苦痛は続いていた。

祈手もそれと同じ頃にニンニンコミックフォームになり、気配を消しながら網走監獄の方に侵入した。
祈手はその後教誨堂の中に入り、そこでモノモノマシーンを使った。
そこで出てきたアイテムを確認し、すぐに使えるもの…ゴーゴー焼き山菜はその場でさっさと食した。
その後教誨堂の中で分身を2体出して、それぞれアークワンと斬月・真に変身させた。
そして作戦通り斬月・真の分身の方はそのまま教誨堂で隠して、アークワンの分身と共に外に出て跳躍してJUDOの方に向かった。


ギニューが空の上で待機を始めてすぐの頃に、戦闘音が聞こえてきたため祈手が動き出したことを察知した。
下の方を覗いてみた時、赤い龍が空を昇って行くところが見えた時も少し慌てさせられた。
だが幸いにも何とか、自分の存在をそこからで察知されることはなかったようだった。
やはり今が真っ暗な真夜中であることと、下の方にじゅうたんを持って体を隠していたことが功を奏したのだろう。
赤い龍がやがて倒された時は安心した。

489薄霞 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:00:43 ID:pXczJh9A0
全貌が確認できたわけではなかったが、下の戦闘の際に発生した火花等でJUDOの様子が少し見えたこともあった。
その時、何かJUDOが何十人にも分身しているように見えた時は、本当に作戦通りいけるのか心配になった。
けれども最終的には、下の方で大爆発が起きた。
規模はこれまでより大きかったが、それが圧裂弾によるものであることはすぐに分かった。
だからそれを合図とし、ギニューは魔法のじゅうたんから手を離して、相手が死にやすいよう頭を下に向けながら急降下していった。

爆発による爆炎で、辺りは少しの間照らされた。
短い時間だったがそのおかげで、ギニューは上からJUDOの位置を確認することができた。
そこからミサイルを、JUDOの少し前の方を狙って投げた。
ゲルトルート・バルクホルンの怪力の魔法を使いながら勢いよく投げたため、ギニュー自身が急降下するよりも速く地上に向かって行った。

ミサイルが地面に着弾すると同時に、ギニューはJUDOの方を見ながらボディ・チェンジのために叫んだ。


◇◆◇


そして今、2つの時間が合流する。


大首領JUDOは、叫びながら落下してきたギニューと目を合わせた。
その次の瞬間に、JUDOの視界が変わった。
JUDOの視界一杯に映ったのは、天地の逆転した世界だった。

ギニューに与えられた作戦は、成功という結果となった。
仮面ライダーディケイドに変身していた状態でも、ボディ・チェンジの効果は発動されていた。
門矢士こそがディケイドの存在そのものとも言えるためか、たとえディケイドの顔でも素顔とほぼ同じと言えるかもしれないため、ライダーの仮面を被った状態でも精神の入れ替えは可能だったのだろう。

JUDOが空の上のギニューに気付けなかったのは、きっとギニューが仮面ライダーではなかったから。
ギニューは一度変身したことはあれど、そのためのアイテムももう捨てたような形になっていた。
それに対しJUDOは、仮面ライダーしか見てないような状態になっていた。
仮面ライダーに変身した状態の祈手とその分身達しか見てなかったから、上に隠れていたギニューに気付けなかった。
一時的に仮面ライダーの力を手離した状態になっていたために、JUDOはギニューの気配を感じ取るのが難しくなっていた。

ゲルトルート・バルクホルンの肉体に入れ替えられたJUDOは、そのまま速度を引き継いで急降下していく。
元々ウィッチだったわけでもないのに、この状態から急な方向転換ができるわけがない。


『グシャ』

そうして成す術なく、JUDOは頭から地面に叩きつけられる。
かなりの高所から勢い付けられたそれによる衝撃は、ゲルトルート・バルクホルンとしての肉体の脳天を砕き、全身の骨も粉砕し、内臓も潰れる。
頭部から潰れていったことで、見ただけではそれが元々誰の肉体だったのか分からないくらい頭部・顔面も酷い有り様となる。
脚に履かれていたストライカーユニットのフラックウルフFw190D-6も、落下の衝撃で壊れてバラバラになっていた。
そんな風に無惨な肉塊となったそれは、体を逆さに頭が先端だけ地面に少しの間埋まった形になった後、やがて仰向けに倒れ込む。
それから少しした後、空の上からギニューが持っていた魔法のじゅうたんがひらひらと近くに落ちて来た。

こうして、古より人類の歴史の陰で暗躍し、様々な悪の組織を操ってきた大首領、
彼の世界における仮面ライダーの祖と言える存在であり、今は仮面ライダーの破壊者となっていたそいつは、ここで自分に何が起きたのかも認識できるようになる前に、その精神を砕かれた。
因縁深い仮面ライダー達と全く無関係な形で、その巨悪は滅ぼされることとなった。



【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS(身体:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ) 死亡】

490薄霞 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:02:00 ID:pXczJh9A0


ボディ・チェンジが成功した後、ギニューは直ぐ様腰からディケイドライバーを少し強引気味に取り外す。
それにより彼は手に入れた門矢士としての姿をその場に晒す。

「スゥー…ハァー…」

ギニューは一度深呼吸する。
その後腹を押さえながら、前の身体にあった腹痛が今の身体では存在しないことを確かめる。
その後、辺りを見回して現状の様子を確認する。

(生きている奴は誰もいないようだな…)

そうしてギニューは、この網走監獄にいるのが今は自分1人だけであることを確かめる。
先ほどの連絡でもあった通り、桐生戦兎が率いていた一行の生存者達は、この場から既に逃亡してしまったようであった。

(!………そうか、奴らが死んだか)

見回している内に、ギニューは今自分が作ったもの以外の死体を2つ発見する。
それこそまさに、前に自分が狙えと指示された桐生戦兎の肉体であった佐藤太郎と、自分が少し腹立った宇宙人であるエボルトの肉体となっていた桑山千雪の死体であった。
これらは、自分達が来る前の戦いでJUDOが殺害した者達なのだろう。
死体は2つとも首を切断されており、首輪を取り外されている。
外された首輪はどちらも、現在自分が背負っているデイパックの中の方に入れられている。
そして桐生戦兎が死亡したことは、以前の指令にあったように彼を狙う必要が無くなったということだ。
彼は首輪を外せる可能性があったらしく、もうこれで彼を頼りにして首輪を外すことは考えられないこととなった。
もっとも今のギニューとしては、首輪はもう外す必要は無いかもしれないと認識しているが。
本当にこの手に持つディケイドライバーが黒幕で、その力を引き出すには今の肉体の門矢士も必要なら、今着けている首輪も爆弾の無いダミーのものかもしれないと考えているからだ。
また、桐生戦兎が殺されていることは、彼に支給されていたネオディケイドライバーもJUDOに奪われたことを意味する。
その証拠に、今自分が奪った肉体に装着されていたのは、ネオディケイドライバーの方だった。
おそらく、先ほどの話にあったように白いディケイドライバーとの融合を果たしたのだろう。
今はまだ確認していないが、その証拠として確かにディケイドライバーはJUDOが持っていた荷物の中からは消滅していた。

(……アレらも壊されたか)

ギニューは次に、祈手に渡した変身ベルトが2つとも粉々に破壊されてしまっていることを確認した。
もっとも、今のギニューにとってそれらはもう必要は無さそうなものであった。
ディケイドライバーに自己修復機能があると聞いたために、前の自分がやったみたいに壊されたとしても、すぐに直るものだと認識していた。
それならば、代わりのベルトは必要無い。
むしろ、何かのきっかけで敵に奪われて使われたりでもしたらと考えると、それを防ぐために破壊してしまった方が良いのかもしれない。
それこそ例えば、前回の戦いで自分がエボルトから荷物ごとベルトを奪って使ってみた時のように。



そういったことまで確認した後、ギニューはゆっくりと歩きながら先ほどまで自分が中にいた肉体の死体の方に近付いていく。
そしてその背に背負われたデイパックを取り外し、中からもう1つのデイパックを更に取り出し、その中からスマホを取り出す。
ハワードはここまで終わったら次にどうすれば良いかの連絡を行うというメッセージを送っていた。
だからやることが終わったことを報告し、次に何をさせるつもりだったのかを聞き出そうとしていた。

ギニューがスマホを起動してみると、アプリのアイコンにメッセージが来ていることを表すマークが付いていた。

(………何だ?通知がたくさん来ている…?)

ギニューはアプリに付いた通知のマークを見て違和感を覚える。
そのマークは、アプリに来ている新たなメッセージが十数件も来ていることを表していた。
まだこちらの状況を報告していないのに、大体は言われた通りのことをやってみせたのにこんなに連続で多量のメッセージが来ているのは何かおかしいような気がした。
ギニューはアプリを開き、新たに来ていたメッセージを画面に表示した。





『この大馬鹿者が!!!』
「!?」

491薄霞 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:04:05 ID:pXczJh9A0
アプリを開いて早々に現れたのは、大きな怒りを表す言葉であった。
上に少しスクロールしてみれば、『おい』『待て』『一旦止まれ!』『やめろ!』『話を聞け!』『こっちを見ろ!!』等といったメッセージがいくつか届いていた。
まるで、ギニューが先ほどまでやっていたことを止めようとしていたかのようだった。
自分に今回の作戦をやるように提言したのは、これらのメッセージを送ってきたハワードのはずなのに。
何故このようなメッセージが届いていたのか、その答えはすぐに分かることになる。

『ようやく見たか!』

ギニューがメッセージを開いたことで既読の印が付き、相手側もギニューが今メッセージを見たことを認識した。

『おい、どうした?』

ギニューはそれに対し疑問を呈する返事をする。
これに対する返答も、すぐに来ることになる。

『最初に言っておく。これまでお前とここで対話していたのは、私ではない!』
『私が本物のハワード・クリフォードだ!』
『さっきお前が知った殺し合いの真実の情報は全てデタラメだ!』
『テラパゴスは黒幕でないしやる気パワーは集めておらんしディケイドライバーに自己修復機能は無い!』
『お前は騙されていたんだ!!』
「…………は?」

新しく届いていたメッセージ群の意味、それはギニューが先ほど山中の洞窟でやり取りしていた相手は、ハワードになりすましていた別人だったということだった。

492偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:07:44 ID:pXczJh9A0
(くっ……ようやく届いたか。奴が何とか生きているのは不幸中の幸いだったか…)

主催陣営本部のとある場所、そこでフリーザの肉体のハワード・クリフォードはスマホの画面を眺めながら顔をしかめていた。
実のことを言うと、ギニューの肉体を門矢士のものにチェンジさせられたことについてはハワードの考えに対する不都合はあまりない。
けれども、チェンジに至らせるまでの方法がギニューの命も危険に晒すものであったため、馬鹿者というメッセージを送ってしまった。

ハワードは元々、スマホを通じてギニューと秘密裏に繋がるとしても、ギニューがスマホを手に入れてからしばらく後にするつもりだった。
具体的に言えば、佐倉双葉の無力化が出来てからのつもりだった。
何故なら、佐倉双葉の本業はハッカーだからだ。

彼女が元は天才的なハッカーだったという情報はハワードも知っていた。
スマホをただギニューに奪わせるだけでは、遠隔で何か妨害を受ける可能性も考えていた。
だから、ギニューが確かにエボルトから荷物を奪えたという情報を確認したら、彼女が怪しい動きをしていたとこの殺し合いの『ボス』に提言しておいた。
そこで話し合いがあった結果、彼女には刺客が差し向けられることとなった。

だがそれに対し、彼女の方は何とこの主催陣営本部から逃げ出すという選択肢をとった。
しかも、そのために本部内に設置されていた転送装置を使い、しかもそれを時限爆弾で爆破・破壊してしまったとのことだ。
しかし彼女はその際に、転送先を戦闘が行われている最中な網走監獄の方にしてしまった。
そのようにした理由は、実は彼女の想い人がピンチな状況だったらしい。
だがそれはともかくとして、この方がハワードにとっては都合が良かった。
彼女が戦闘に参加していれば、こちら側に遠隔のハッキングで干渉することはより難しくなる。
本当にそこまでのことが出来る技術を持っているかどうかはともかくとして、結果的に彼女をこの本部の外に追放することができた。
これで安心してギニューに話ができると思っていた。

しかし、異変は起きてしまった。
いざアプリを開いて対話を始めようとしたその時、スマホが自分の操作を受け付けなくなった。
そしてメッセージアプリの画面の上では、勝手に自分の名前を騙った書き込みが次々と出てきたのだ。
これにはハワードも驚愕した。

スマホの操作権は何とか取り戻そうとはしたが、思うように動かなかった。
けれども何故だか急に、自分の操作を受け付けるようになった。
そうなったのは、ギニューが空の方に上がり始めた頃だった。
そのためにハワードが慌てて送ったメッセージはなかなかギニューに届かなかった。
まるで、犯人はもうこのスマホの操作は必要としていないかのようだった。

ハワードが動かせるようになる前に書き込まれた勝手なメッセージの内容は、どれもこれもデタラメな内容ばかりだった。
テラパゴスという名前の伝説上のポケモンは、確かに一応ハワードのいた世界にも残っていた。
しかしその詳細は全くもって不明なもの、どんな力があるのかもはっきりとは分かっていないはずだ。
それがまさか、確かに伝説上では亀の姿をしているらしいからといって、ここでこんな形でその名前が出されるとは思ってなかった。
マーメイドアクアポッドややる気パワーがどうたらこうたらは完全にここが初耳な単語だ。
一体全体どこからこんな嘘話を持ってきたのか、何の目的があってのことなのかと思ってしまう。
参加者の支給品の1つが黒幕だっただなんてのも、あまりにも大胆な嘘だ。
おかげでギニューが、それを奪って有効活用しやすくなるボディ・チェンジを行おうという話に乗るきっかけになってしまった。

ギニュー自身はそれらの内容に対しては半信半疑のようだった。
けれども最終的には、ハワードを名乗る別人の話に乗ってしまった。
この段階では、たとえ嘘で騙されているとしても自分に有利な方向にリカバリー可能だと判断してしまったのだろう。
孫悟空の肉体の参加者を、JUDOがアイテム内に確保していることもきっと理由の1つだったのだろう。

493偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:09:00 ID:pXczJh9A0
そして、今回ギニューにこのようなことをさせた目的については、ある程度まで想像がつく。
1つは、この殺し合いにおける危険人物であるJUDOを排除すること。
そしてもう1つは、門矢士/ディケイドの肉体の中から「激情態」の力を失わせることであろう。
激情態の力は世界を破壊するという「覚悟」に由来するもの。
そのため、その力は精神との結び付きもあると考えられる。
それにJUDOが激情態を入手できたのは、彼がこれまでの戦いで門矢士の肉体に馴染んできたからというのもあった。
それが急にその肉体に慣れてない別人と精神を入れ替えるなんてことをしたら、激情態の力は消えてしまうだろう。
実際、ギニューと入れ替わった瞬間に、ディケイドは激情態ではなくなっていた。
これらの結果を作り出したことは明らかに、この殺し合いを妨害しようとしているものだった。

(今回のこと…まさか、奴の仕業か?…いや、もしくは…)

ハワード・クリフォードは、今回起きた出来事の「犯人」について考えていた。

今回のことについて、ハワードが最初に疑いを向けたのはボンドルドだった。
自分が佐倉双葉の動きに気付けたのはボンドルドの言葉がきっかけだったため、その時からこうなることを予見して自分の思い通りにしようとしていたのではないかと思った。
だが、落ち着いてみるとそれは違うのではないのかという思いも出てきた。
今回のことで、ボンドルドの部下である祈手が1人死んだ。
まだ使えるようにする方法はあっただろうに、あんな風に死ぬように誘導するのも違和感があった。
それに、彼がこの殺し合いを妨害しようとするのも考えにくかった。
自分たちの中では、どうも彼がこの殺し合いの黒幕に最も近しい立場にいるようであったからだ。

だから、犯人は別にいるとハワードは考える。
条件に合うのは、今回のことを起こせる技術力を有している・使える状態にある者であり、この殺し合いを妨害する何かしらの理由も有している者だ。
該当する相手は、1人だけ考えられた。


斉木空助、弟の肉体が殺し合いの参加者の1人にいるあの男が、今回のことの裏にいるのではないか。

ハワードがそこまで考えを巡らせた、その時であった。



『ドォンッ!!!』
「!?」

ハワードのいる場所よりも離れた、主催陣営本部内のどこかで大きな爆発音が鳴り響いた。
その直後に、本部内で非常事態を知らせる警報アラームも大音量で鳴り始めた。




『すまない、こちらの方で緊急事態が起きた』
『また後で連絡する』

「えっ、あっ、おい!」

スマホの画面に、ここでの対話を一旦打ち切るという旨のメッセージが表示された。
実は先ほどの山中でメッセージを送ってきた人物は別人の偽物、殺し合いの真実についての話も嘘っぱちだということは分かった。
だがそれ以上の詳細な話は中途半端な状態のまま終わってしまった。
ギニューはアプリに『おい』『どういうことだ』『説明しろ!』といったメッセージを送るが、それに対する返信は来ない。
送ったメッセージに既読マークも付かない。
ギニューこのまま、正体の分からない誰かに騙されてこの状態になったという意識を抱えながら動かなければならなくなった。


「…………ま、まあ……俺もあまり信じてはなかったし、な……」

ギニューは振り絞るようにそう言いながら、無理矢理立ち直ろうとする。
けれどもそこには、動揺が隠しきれていなかった。
騙されたことに対する悔しさを、無理にでも隠そうとしていた。

「邪魔な奴は片付けられたし、こいつの肉体が強力なのは確かなのだし……それに、しんのすけのことも確保している…のだからな」

そういったことも自分に言い聞かせて、今のこの状況に問題は無いと思おうとしていた。
確かに、今回のことで今後の殺し合いの大きな障害になるであろうJUDOは始末できた。
前の肉体にもそれにしかない長所は存在していたが、今の肉体もこれまでの戦いを通して大きな力があることが分かっているため、リカバリー可能だと思っていた。
ベルトも黒幕じゃないのなら、むしろ今後これを使うことに対する問題も無かった。
自己修復機能が無いのなら、壊されないように注意する必要は出てきてしまった。
けれどもそういったこともされないくらい力で圧倒出来れば、その心配も無いはずだ。

強いて言うなら、騙されたのであれば、本当に前にJUDOと戦っていた者達がこの近くから逃げていったかどうか怪しくなるところだろう。
特にその集団の中には、技の使い方を忘れさせる技の使い手(雨宮蓮)がいるはずだ。
警戒すべきあの相手も含めて急な奇襲をしてくる可能性があることについては、不愉快で困らされることである。

494偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:10:40 ID:pXczJh9A0
だが、ギニュー自身はこの時点ではまだ気付いていない大きな問題が存在していた。
1つは、前の戦いでギニューも感じていたパワーアップ…ディケイド激情態の力が、ボディ・チェンジを行った瞬間に失われてしまったこと。
そして2つ目は、JUDOが封印していた孫悟空の肉体の参加者…野原しんのすけを、前の戦いでJUDOの作戦に利用するために解放してしまったこと。
その結果確かにJUDOの思い通り桐生戦兎を殺害し、その結果手に入れた力でエボルトも倒した。
だが最終的には、しんのすけは他生存者たちを連れてこの網走監獄から脱出してしまったのだ。
ギニューが考えている、今の肉体が結局使えなさそうであればしんのすけを解放してボディ・チェンジを行って孫悟空の肉体を手に入れるという企みは、もう不可能になってしまっているのだ。
ギニューがそのことに気付くのは、時間の問題だろう。

495偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:11:38 ID:pXczJh9A0
【B-2 網走監獄/真夜中】

【ギニュー@ドラゴンボール】
[身体]:門矢士@仮面ライダーディケイド
[状態]:肉体的疲労(大)、ダメージ(小)、精神的疲労(特大)、イライラ(大)、動揺、コンプリートフォームに約2時間変身不可能、コンプリートフォーム21に約2時間変身不可能、ビルド・ジーニアスフォームに約2時間変身不可能、ボディ・チェンジを約2時間使用不可能
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ、ケータッチ21@仮面ライダージオウ、ライドブッカー+アタックライド+ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ほしふるうでわ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、スマートフォン@オリジナル
[道具]:基本支給品×10、トビウオ@ONE PIECE、賢者の石@ドラゴンクエストシリーズ(次回放送まで使用不可)、警棒@現実、海楼石の鎖@ONE PIECE、逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト(天逆鉾の効力により変身不可)、ぴょんぴょんワープくん@ToLOVEるダークネス、精神と身体の組み合わせ名簿×2@オリジナル、レインコート@現実、プロフィール(クリムヴェール、ピカチュウ、天使の悪魔)、シロの首輪、モノモノマシーンの景品×2
[思考・状況]
基本方針:ジョーカーの役割を果たしつつ、優勝し、主催を出し抜き制裁を下して、フリーザを完全に復活させる。
1:このオレが騙された…?誰が?何の目的で?
2:本当に騙されたのであれば、ここから逃げていったであろう者達(大崎甜花、雨宮蓮)が急襲してこないか警戒する。
3:ハワードは主催側を裏切るつもりなのか?真意を知るために、次の連絡を待つ。
4:……次の連絡もちゃんとハワード本人が来るよな?正直少し心配だが。
5:孫悟空の体はいずれ奪う。何なら、次にボディ・チェンジが使えるようになればすぐにでも解放して奪ってもいい。
6:あの時の女(杉元)の肉体が不老不死であることが少し気になる。場合によっては孫悟空の代わりに奪う候補になるかもしれん。
7:水の呼吸は使えたが、ヒノカミ神楽とかももう少しコツを掴めば使えそうな気がする。
8:帽子の男(蓮)を要警戒。ボディ・チェンジをするのに奴の存在は厄介だ。
9:炎を操る女(杉元)、二刀流の女(ジューダス)にも警戒しておく。
10:ここにはロクでもない女しかいないのかと思っていたが、さっきの絵美理とかいう頭のおかしいうるさい女と比べたら、他は全然マシなやつらだったかもしれん。
11:さっきの奴(絵美理)が気にしていたヒイラギにも警戒。何らかの力を隠し持っているのか?
12:ち○こはもうしばらくは見たくない…
[備考]
※参戦時期はナメック星編終了後。
※ボディチェンジによりバルクホルンの体に入れ替わりました。
※全集中・水の呼吸、ヒノカミ神楽は切っ掛けがあればまた使えるかもしれませんが、実際に可能かどうかは後続の書き手にお任せします。透き通る世界が見れるかも同様です。
※水の呼吸は可能となりましたが、炭治郎の体の時より技の精度は落ちるようです。
※主催側のジョーカーとしての参戦になりました。但し、主催側の情報は何も受け取っていません。
※ボディチェンジは普通に使用が可能ですが、主催によって一度使用すると二時間発動できない制限をかけました。
※杖@なんか小さくてかわいいやつを使いました。
※野原しんのすけ(身体:孫悟空)が囚われたアリナ・グレイのキューブ型結界が手元に無いことにまだ気付いていません。
※門矢士の肉体から激情態の力が消えましたが、そのことにまだ気付いていません。
※ディケイドとしての力は現在クウガ〜ジオウ+ゼロワン、セイバーのカードが使用可能です。
※アナザーディケイドウォッチの残骸に残っていた力を吸収した影響で、ディケイドのスペックが幾らか強化されました。
※オーロラカーテンによるワープが使えるようになりましたが、エリアを跨ぐ程の移動は時間を置かなければ不可能に制限されています。具体的な時間は後続の書き手に任せます。
※残りの景品の詳細は後続の書き手に任せます。
※ネオディケイドライバーの力を吸収し、ディケイドライバーがネオディケイドライバーに変化しました。
※ネオディケイドライバーに入っていたカードも前の持ち主から受け継いでいます。
※ディケイドのスペックが完全にネオディケイドのものになりました。

496偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:14:10 ID:pXczJh9A0
※「虹@クロノ・トリガー、基本支給品×5、竈門炭治郎の斧@鬼滅の刃、フリーガーハマー(9/9、ミサイル×8)@ストライクウィッチーズシリーズ、ミニ八卦炉@東方project、魔法のじゅうたん@ドラゴンクエストシリーズ、精神と身体の組み合わせ名簿@オリジナル、大人用の傘、アタックライド烈火大斬刀@仮面ライダーディケイド、君が父さんに突き立てたブラフォートの剣@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険」が周囲に散らばっています。

※「圧裂弾@仮面ライダーアマゾンズ、アークドライバーワン+アークワンプログライズキー@仮面ライダーゼロワン、フラックウルフFw190D-6@ストライクウィッチーズシリーズ、ゲネシスドライバー+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、ビルドドライバー(プロトタイプ)@仮面ライダービルド、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド、忍者フルボトル&コミックフルボトル@仮面ライダービルド、ラビットフルボトル&タンクフルボトル@仮面ライダービルド、ハザードトリガー@仮面ライダービルド」は破壊されました。



[支給品紹介]
【桜の純潔を破った血を啜った刻印蟲@Fateシリーズ(Fate/zero)】
魔術師の間桐臓硯が使役する虫である刻印蟲(淫虫)の1種。
遠坂桜が5歳の時に間桐家の養子となって間桐桜となってすぐの頃、桜の純潔(処女)を破って流れた血を啜った。
Fate/zeroにおいては、第四次聖杯戦争の戦いで瀕死となった間桐雁夜を回復させるために食わせるという形で使われた。

[モノモノマシーンからの景品紹介]
【アタックライド烈火大斬刀@仮面ライダーディケイド】
仮面ライダーディケイドが扱うアタックライドカードの一種。
『シンケンジャーの世界』において志葉丈瑠/シンケンレッドとの共闘中に出現したカード。
ディケイド・コンプリートフォームがシンケンレッドから借りた烈火大斬刀を持った状態でディケイドライバーに装填して使うと、百花繚乱という名の火炎の斬撃を飛ばす技を発動した。

【ハザードトリガー@仮面ライダービルド】
ビルドドライバーの機能を拡張させるデバイス。
仮面ライダービルドのベストマッチフォームをハザードフォームへと強化する。
中にはネビュラガスの成分から開発された万能強化剤「プログレスヴェイパー」が充填されており、使用中はこの強化剤が徐々に変身者に浸透してハザードレベルを上昇させる。
強化剤の浸透が脳にまで達すると、変身者は自我を失い、破壊衝動に呑まれて暴走してしまう。

【ゴーゴー焼き山菜@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド】
食べると体力の回復と一時的に移動スピードが上昇する効果がある野草を炒めた料理。
ここに登場したものは、ゴーゴーニンジンから作られていた。

【君が父さんに突き立てたブラフォートの剣@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
ジョナサン・ジョースターがディオ・ブランドーとの戦いに使用したはずの剣。
たしか、ディオがけしかけた騎士のゾンビのブラフォードを倒した後、ブラフォートからもらったもの。
もともとはLUCKの文字が持ち手に刻まれていたが…たしかブラフォートが血でPと書き足してPLUCKにした。
ジョナサンはこの剣を君が父さんに突き立てたと言いながらディオを斬ったが、ディオは別にこの剣を父さんに突き立ててはいなかったはず…多分。
この剣の出展をうろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険としてるけど、第一部のファントムブラッドの方も同タイトルシリーズの動画で出ているから…この出展でも何も問題はないとは、思う。

497偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:15:17 ID:pXczJh9A0



時間をまた…細かく言えばハワードが爆発音を聞いた少し前の頃に遡る。

主催陣営本部内の廊下、そこの曲がり角の近くで壁を背に向けながらビクビクしながら角の向こう側の様子を伺っている者がいた。
紫の髪の高校生の少年、鳥束零太…その肉体を与えられた旅館の若おかみの少女、関織子だ。
壁に背を隠すような形で立っているため外から見たら少し分かりにくいが、彼女は首に引っ掛ける形で中に何かが詰まっている風呂敷を背負っているようだった。
また、頭には同じ主催陣営の男の斉木空助が頭部に着けている装置…テレパスキャンセラーと同じものを着けていた。
彼女は、自分が角を曲がって進もうとしている先に誰かがいるかどうかを確認しようとしているようだった。

『安心しろ。今なら誰もいない。それよりも早く急いで離れよう』
「ひっ…!?」

頭の中だけで男の声が響く。
その声に織子は驚いてしまう。

『……今は周囲に人影は無いようだから問題ないが、そう一々反応していたら良くないことになるかもしれないぞ』
(ご、ごめんなさい…)

織子は頭の声に対して謝罪する。
彼女は元々既に、その声の主とはこの状態になることを了承していた。
けれどもこうして頭の中で第三者の声が内側から勝手に響く感覚は、まだ慣れないものだった。
そのためつい、声を漏らしてしまった。

織子の聞いた声の主は、ジャン=ピエール・ポルナレフの霊のものだった。
彼女は今、肉体の鳥束零太の肉体の能力である「口寄せ」によりその霊を憑依させている状態にあった。
これができるようになったきっかけは、斉木空助の部屋を訪れたことであった。



関織子がボンドルドから頼まれた子守の仕事…それを行う直前に聞いたポルナレフからの頼みごとを、彼女は既に終えていた。
織子はS.K.…斉木空助の部屋に時間が空いた時に赴き、そこで重要な話を聞いた。
今、自分達と同じ状況にある者達が殺し合いを行わされていること、その目的、自分が子守を頼まれた子供たちの正体、全てを聞かされた。

はっきり言って、織子はそれらの話についていけなかった。
殺し合いを行っていること自体信じられなかった。
確かに仮面で顔を隠して全身黒ずくめなボンドルドやその部下の人たちは色々と怪しいところがあるとは思うが、あれだけ優しいあの人たちまで積極的に殺し合いに協力しているなんてことは、簡単には受け入れられなかった。

だが最終的には、その話を信じるしかなかった。
証拠として、死体を1つ見せられた。
かつてギニューを主催陣営のジョーカーとする際に渡した木曾への支給品、それを海中から回収する際に一緒に付いてきていた村紗水蜜の肉体の死体、それを見せられた。
斉木空助はその死体を自分の部屋に運び込んで保管していた。
刀によって付けられた大きく凄惨な斬り傷のある死体を見せられて、殺し合いが本当のことであることを嫌でも信じさせられてしまった。
それを見せられた時はとても戦慄し、同時に大いに悲しい気持ちにさせられた。
人の死というものへの関わりとしては、ユーレイ(幽霊)とは違い、完全に物言わぬ死体と向き合うことになるのは両親が事故で亡くなった時以来だ。
相手は初めて見る相手であったが、その時のことを思い出して、動悸が大きく乱れたこともあった。
けれどもおかげで、殺し合いについての話を真剣に聞かざるをえなくなってしまった。

そして織子は、今後において自分にやってもらいたいことを空助から頼まれた。
その一つが、ポルナレフの霊を今の自分の肉体の中に匿うことであった。
これは、いざという時に織子が精神的に動けなくなったら、代わりにポルナレフが体を動かすためでもあった。
それから、もしもの時に「悪魔憑き」という能力を発動できるようにするためというのもあった。
悪魔憑きは元々、空助が鳥束の能力を研究して発現させることに成功した能力だ。

498偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:16:15 ID:pXczJh9A0
悪魔憑きは口寄せにより霊を肉体に憑依させている時にしか使えないものである。
霊が憑依している状態で殴られる等して肉体に誰かから直接的に衝撃を与えられると、肉体から鳥束自身の魂が飛び出し、自身に衝撃を与えた相手から魂を追い出して肉体を乗っ取るという能力だ。
この際に残された鳥束零太の肉体の方は、口寄せで憑依させていた霊だけが残って肉体を動かすことになる。
織子がこの悪魔憑きを使うことになる際は、織子が相手の肉体を乗っ取り、ポルナレフが鳥束の肉体を使うことになる。
その際、鳥束の肉体は確定でダメージを負ったものとなるが、ポルナレフはそれを引き受けようとしていた。
そんなことになったとしても、織子の魂を守るためだ。
織子はそのようにダメージを他人に押し付ける形になることに思うことが無いわけではない。
だが、まだ実際にその能力が必要な状況になっていないことには、強くは拒否できない。

そういったことも含めて織子の役割が黒幕にバレないようにするために、テレパスキャンセラーも付けさせられた。
そして織子に与えられた役割は、ただポルナレフと共に行動することだけではない。
もっと重要なことがあった。
そのために必要なものは、今も背負われている風呂敷の中に入れられている。


織子とポルナレフは今後、斉木空助の代わりを果たさなければならないのだ。





「よし、これでもう返してあげられたね」

斉木空助は自分の部屋の中で、パソコンを操作していた。
彼はそれを使って先ほどまで、ハッキングを行っていた。
ハッキング先はハワード・クリフォードが持つスマートフォンだった。
そうして彼は遠隔でそのスマホの操作を一時的に奪い、ハワードのフリをしてギニューとSNS上で会話していた。
ハワードの推測通り、ギニューを騙して危険な存在であるJUDOを排除させるために。
たとえ、ゲルトルート・バルクホルンの肉体が犠牲になったとしても。

どうやってハワードのスマホをハッキング下かと言うと、実はポルナレフの霊を利用してのものだった。
現在彼らがいるこの世界において、幽霊は生前の思い入れの深いものであるならば触れることができるようになっていた。
それは元々、空助のいた「斉木楠雄のΨ難の世界」で確認された現象だった。
これを利用して、ポルナレフとは彼が生前持っていたパソコン越しにコミュニケーションをとっていた。
そして今回、ポルナレフがここで唯一触れるそのパソコンをハッキングに利用した。
ポルナレフのパソコンからパーツを一部取り外し、空助が自作したスマートフォンにも接続可能なメモリ端子の外側カバーに組み込んだ。
そうすることで、そのメモリを霊のポルナレフにも持ち運べるようにした。
メモリにはコンピューターウイルスが仕込まれており、それが空助のパソコンからでも操作できるようプログラムを組み替えられるようになっていた。
ポルナレフはこのウイルス入りメモリをハワードの下まで運び、こっそりとスマホに差し込んだ。
コンピューターウイルスはメモリを差し込むだけでもウイルスを仕込めるようにできていた。
目的を果たした後のメモリはポルナレフが空助の部屋にまで持ち帰った。

こうして遠隔操作することを可能な状態にして、ギニューがスマホを起動したタイミングでSNSをハワードのフリしてメッセージを送信した。
けれども空助はギニューへの用が終わった後は、遠隔操作を止めてハワードにスマホの操作権を戻した。
もう、自分側が動かす必要が無いからだ。
ハワードが今後元々やろうとしていたギニューとの対話をやろうとすることについても問題は無いと判断した。
ハワードが今回の騒動の犯人が自分であることを察するだろうことについても、問題は無い。
何故なら、今から自分はいなくなるからだ。


『コンコン』
「ようやく来たか」

空助の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
その音の主は、ここに来るように言っていた関織子ではない。
彼女は前に既にここに来て話をつけた。
ポルナレフと共に今後は自分の役割の代わりをやってもらうことも説明した。
殺し合いの舞台の方に行ってしまった佐倉双葉との通信も、今後は彼女がやることになるだろう。
そんな織子は今、これからこの部屋で起きることに巻き込まれないようにするために気持ち急ぎ目に離れているところだ。

499偽ニセモノ物バカリ量 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:24:47 ID:pXczJh9A0


空助の部屋の前には、ボンドルドの祈手達がいた。
ここにおいて彼らは3人いて、その内1人がドアをノックした。
彼らはそれぞれ、3種の仮面ライダーに変身していた。
白いフードと琥珀色の仮面が目立つ白い魔法使い(ワイズマン)、白い眼をした野性味あふれる赤いピラニアのようなアマゾンアルファ、
そして黒い体の上に蛍光的な緑が映える姿をしたゲーム:仮面ライダークロニクルの伝説の戦士、クロノス。
これらに変身している祈手の肉体は、それぞれ本来の変身者である笛木奏、鷹山仁、そして壇正宗のものとなっていた。

彼らがここに来たのは、斉木空助の拘束、もしくは粛清のためだった。
前に起きた佐倉双葉の主催本部からの脱出、そして前の網走監獄の戦いにおいて双葉と野原しんのすけの動きが急に不自然なものになったこと。
それらの裏に斉木空助が関わっているという疑いがかけられていた。
斉木空助は、主催陣営を裏切っているかもしれない者として扱われることとなった。
そのためにまず逃げられないようにするために、3人はいざとなったら力を行使できる状態でここに来た。
こんな事態になった遠因の一つに、自分達を従えている者もいることにも関わらず。

3人の内、白い魔法使いがドアノブに手をかける。
ドアノブを捻り、空助の部屋に突入しようとした。

『カチリ』

ドアノブが捻られると同時に、空助の部屋の中からそんな音が聞こえた。





「それじゃあ、さよならだ」








『ドォンッ!!!』

斉木空助の部屋が、大爆発を起こした。
3人の祈手達はそこで発生した爆炎に呑まれた。
爆炎と爆風は、部屋に隣接した廊下も埋め尽くす大規模なものだった。




【備考】
※斉木空助と、笛木奏・鷹山仁・壇正宗の肉体のボンドルドの祈手達については、しばらく生死不明なものとしておきます。

500 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:26:08 ID:pXczJh9A0
投下を終了します。

>>466
ご意見ありがとうございます。
確かに、本ロワの内容の進行の現状と私の執筆速度を考慮すると、基本の予約期限を3週間のままとするのは確かに短いかもしれません。
そのため、基本の予約期限を4週間に変更したいと思います。
なお、延長制度は無くさずに1週間あるままにしたいと思います。

501 ◆5IjCIYVjCc:2024/09/08(日) 21:49:50 ID:pXczJh9A0
少し修正の報告です。
ギニューの状態表の道具欄に、桐生戦兎の首輪、エボルトの首輪を追加しました。

502名無しさん:2024/09/08(日) 22:53:11 ID:yJP8uChY0
投下乙です
いやあ…これがここ数話絶好調だった反動というやつか
まさかここでJUDO退場とは
やっぱボディチェンジ、大逆転の切り札だけども、入れ替え前のチートスペックを発揮できなくなった辺り、原作で悟空とボディチェンジした時のギニューっぽい

内紛勃発主催陣営は、空助は、どうなったのだろうか

503名無しさん:2024/09/29(日) 17:50:59 ID:Ks5y4MZw0
続きが楽しみです!

504<削除>:<削除>
<削除>

505 ◆5IjCIYVjCc:2024/12/15(日) 21:31:23 ID:7DmLLHHk0
志々雄真実、キャメロット城、遠坂凛で予約します。

それからついでですが、本ロワは第四回放送となったら、そこからを最終章とし企画主である私1人で書くことにすることを考えていることを報告します。

506名無しさん:2024/12/16(月) 20:54:12 ID:V4MSuSIU0
了解した。

507 ◆5IjCIYVjCc:2024/12/30(月) 16:17:32 ID:6yt69eKE0
申し訳ありません、急病のため予約を一旦破棄します

508 ◆5IjCIYVjCc:2025/01/06(月) 23:19:41 ID:Qmq09S..0
改めて、志々雄真実、キャメロット城、遠坂凛で予約します。

509 ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:04:21 ID:eNjl2nDw0
投下します。

510Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:05:28 ID:eNjl2nDw0
「何の成果も得られなかったわね…」
「ええ、そうでしたね…」
『ったく。無駄に期待させやがって』

キャメロット城と遠坂凛の2人は今、急ぎ気味で街の中をマシンディケイダーに乗りながら駆けている。
2人の顔には、大いに陰りがあるように見えた。
グリードもキャメロット城の中で悪態を付く。

彼女らは、自分達が今いるエリアが禁止エリアとして有効になる前に、ここにあるエレン・イェーガーの家の中を調べようとしていた。
そのために、多くの協力者達とも別れることになった。
しかし、期待していたような成果は全く得られなかった。

凛はこの舞台の施設のどこかに、主催者内の裏切り者が置いたかもしれない物を見つけることを期待していた。
地図上の施設情報が後出しだったことから、そんな物がどこかに存在することを期待していた。
けれども、そんなものは無いかのように思えてきた。

……実は、エレン・イェーガーの家の中には、一応ある情報が記されている物は存在していた。
けれども、凛達はそれを見つけられなかった。
そこまで探す時間が無かったからだ。
それにもし見つけられたとしても、それは彼女らが期待していたような情報ではない。
そこにあったのは、「進撃の巨人の世界」についてのある真実が書かれた手記のだ。
エレン・イェーガーの父親であるグリシャ・イェーガーが地下室の中に隠して遺したものだ。

地下室自体は凛達も見つけていた。
地下室の扉はキャメロットに無理矢理こじ開けさせて中に入った。
しかしその部屋の中を探しても、役立ちそうなものは見つけられなかった。
前述のグリシャ・イェーガーが遺した手記は、机の引き出しの中の底板の更に中の方に隠されていた。
短い時間の中では、そんな細かいところまで探すことはできなかった。

結局、凛もキャメロットも最終的に諦めてエレン・イェーガーの家を後にした。
2人はバイクに乗り、キャメロットの運転で禁止エリアの中からの脱出を目指した。
何も見つからなかったことにグリードはふてくされ、バイク運転中に表に出てこようとすることはなかった。



街中でバイクに乗っている途中、禁止エリアとして有効な時間になったためか、2人の首輪からアラームが鳴った。
同時に、ボンドルドの声で5分後に首輪が爆破されるという旨の音声が流れた。
その時はバイクの速度を上げ、首輪の爆破から逃れるために急いだ。
それからの禁止エリアからの脱出はすぐだった。
2人は道路に沿いながら北から街を出て、そのまま禁止エリア範囲から外に出た。
首輪からの音声が消えたことでそれは確かなものとなった。
禁止エリア範囲から出た2人はそのまま道路の上を走り、西側の方を目指した。
そちらの方に向かった協力者達と合流するために。

バイクに乗った2人は道路の上を走り続けていた。
そうして走っている途中のことであった。

511Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:06:23 ID:eNjl2nDw0
「!」
『キキィッ!』
「キャッ!?」

キャメロットがバイクに急ブレーキをかけた。

「キャメロット、どうしたの?」

キャメロットの背中の方にしがみついている状態の凛は前が見えなくて何故急ブレーキがかけられたのか分からない。
しんのすけの小さな身体ではなおさらだ。
けれども少し冷静になれば、何が起きたのかの予測はできる。

「まさか…」
「はい、凛。…誰かいます」

キャメロットの視線の先の道路には、大男が1人立っていた。
その男はほぼ半裸な露出度の高い格好をしていた。
男の周囲の道路や草原は戦闘による破壊の跡が見える。
もっとも、それはその男の仕業ではなかったが。
しかしそうは言っても、キャメロットは男のことを警戒せざるを得なかった。
立ち塞がる男からは、凄まじい殺気が醸し出されていたからだ。

凛もキャメロットの後ろからひょっこりと顔を覗いて相手の姿を確認する。
異様な威圧感を出す半裸の大男と言うと、アインツベルンのバーサーカーのサーヴァントを思い起こす。

「……あなたは何者ですか?…この殺し合いに、乗っていますか?」

初対面の相手にキャメロットはそう質問する。
彼女のその態度は、警戒を色を隠していなかった。

「ハッ、乗るだとか何だとか、そんなこと聞かずとも分かんだろ?」

男は一笑に付してそう返す。

「戦いに来たんだよ、俺は。どっちが生き残るべき強い奴か、決めるためになあ!」

男…志々雄真実は、手にしたエンジンブレードの刃の凛とキャメロットに向けながらそう力強く宣言した。



この殺し合いの舞台における南西の森エリア、そこで志々雄真実は電話ボックス が使えるようになった後にそれを使用した。
その結果たどり着いたのは、放送でも伝えられた通りC-5の村の中であった。
志々雄が電話ボックスによるワープで来たその村において、まず目に入ったのは盛大に倒壊した旅館だったと思われる建物の残骸の山だった。
さらに近くを見てみると、何やら巨大な足跡らしきものもあった。
その足跡は、自分直属の部下である十本刀の一員に入れていた巨人と呼べる程の体躯を持つ男、不二のものよりも一回り大きなもののように見えた。
旅館…地図上において春の屋と記されたその施設を破壊したのはこの足跡の主である巨人だと考えられた。
この足跡の持ち主のことや、そいつがどこに行ったかについては興味を惹かれたが、これを追うのは止めにした。
足跡も何時のものなのかは分からない、追っていっても無駄足を踏むかもしれない。
それよりは、前々から考えていた通りB-1の網走監獄を目指すことにした。
もしかしたら足跡の主も、モノモノマシーン狙いでそちらの方に向かう可能性も一応は考えられた。

志々雄は歩いて村を出た。
そして地図上において、C-4にかかっている橋の方を渡って、そこから山を越えて網走監獄の方に向かおうと考えた。
橋を渡るために、そこに繋がる道路の方へと向かった。
そして道路の方へとたどり着き、そこから少し歩いたところで、志々雄は一旦足を止めることになる。
その周囲では、おそらく戦闘行為によってできたと思われる破壊の痕跡が見られたからだ。
これを見つけたことで足を止めた志々雄は、さらに別のことに対しても気を引かれることになる。
志々雄はそこで、遠くからだんだんと近付いてくるエンジン音を聞いた。
何かが近付いてくることを察した志々雄は、その何かを確かめるためにその場で待つことにしたのだ。

そしてやがてその音の発生源…バイクのマシンディケイダーに乗ってきた者達が現れた。
現れたのは若い女に弱そうな小さな子供、しかしこの殺し合いの環境ではそんなことは関係ない。
人が来たのなら網走監獄に向かうのは一旦中断。
ここからは、殺し合いの時間だ。

512Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:08:03 ID:eNjl2nDw0


「……あなたがそのつもりでいるのなら、私は止めさせていただきます」

殺意を向けてくる志々雄に対し、キャメロットもバイクから降りて一歩前に出る。
そして装備していたエターナルソードを抜剣し、刃を志々雄に向けて構える。
さらに剣には風王結界(インビジブル・エア)で風を纏わせて光の屈折で透明に見えるようにする。
こうすることで、間合いを測りにくくする。

「ほう、味な真似をするじゃねえか」

剣を透明化させたことに対して志々雄は感嘆する。
風を操り、空気の層による光の屈折で透明化するなんて芸当は、今の志々雄の身体であるエシディシの仲間、ワムウも行っていたことだったりする。
志々雄がそれを知っていて今のような反応を示した訳では無いが。

「凛は一先ず下がっていてください」
「キャメロット…」

キャメロットは後ろ手で凛を制しながら下がるように言う。
凛は心配そうな顔をしながらも、バイクから降りて言われた通り数歩後ろに下がる。
今の凛には戦う手段がほとんど無い。
全く無いわけでもないが、回数が限られている。
相手のことがほとんど分からない今は、そう簡単には動けなかった。
歯痒い思いがありながらも、凛は一旦様子見の姿勢をとっていた。

「それじゃ…早速行くぜ?」

相手もやる気になったことを確認した志々雄は次の行動に移す。
何もなかったもう片方の手に小物、ヒートメモリを取り出して持つ。
そのメモリを手に持つエンジンブレードのスロットの中に差し込む。
前回の戦いでは色々あって使えなかったそのアイテムを、今回は使った。
出し惜しみなく、自分に使える技を発動しようとした。

『HEAT! MAXIMUM DRIVE!』
「壱の秘剣、焔霊」

エンジンブレードにヒートメモリ熱き記憶から熱が充填され、刃が赤く染まり炎を纏う。
これは本来は無限刃のギザギザの刃に染み込んだ人間の脂を摩擦で発火させて使用する技、前々の戦い等でもやったものと同じくその再現だ。

「シャアアアッ!」

志々雄は地面を勢いよく蹴り、スピードをつけてキャメロットに接近してくる。

「!」

アルトリアの身体の直感…が変化したスキルである輝ける路が発動し、キャメロットにほんの少しだけ未来を読ませる。
しかし、彼女が感じ取ったのはあまり良い予測とは言い難かった。
相手の技をまともに受けるべきではないという警鐘が彼女の脳内を駆け巡った。

「クッ!」

キャメロットは咄嗟に、後ろに下がりながら剣を自分側に引くように少し上げる。
そのようにしながら同時に、風王結界の風を少し解放する。
それらの風は、周囲に散るように解放された。

志々雄の剣に纏っていた炎が、その風に飛ばされる。
炎はキャメロットの方には向かわず、彼女の周囲の方に散らばされる。
しかし、全てがそうなった訳ではない。
少し小さくなったものの残った炎を纏いながら志々雄の剣は確実に相手目掛けて振るわれる。
その刃に対しキャメロットは先ほど述べたように剣を少し引いて受けの姿勢をとっていた。

『ギイィンッ!!』
「…ッ!」

受け止めた剣の重さにキャメロットは苦悶の表情を浮かべる。
気を抜いたら直ぐにでも剣を弾き飛ばされそうだった。
エシディシの身体の腕力とエンジンブレードの重さから放たれた一撃は、ステータスが低下しているとはいえサーヴァントの身体でも伝わる衝撃は凄まじかった。

513Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:09:02 ID:eNjl2nDw0
「そらそらどうしたァッ!」
『ギンッ』『ガンッ』
「ぐっ……かっ…!」

志々雄の猛攻にキャメロットは押され始めた。
相手の最初の技の発動を許してしまったことで、体勢を不安定にさせられてしまった。
そうしてできた僅かな隙を逃さず、志々雄は連続で何度も斬り込んできていた。
キャメロットは今は自分の身を守るので精一杯だった。
相手の持つ剣からは強い熱もまだ発せられており、熱さによる焼けるような不快感も悪影響を及ぼしていた。

「ッシャアッ!!」
『ガアァンッ!!』
「!しまっ…」

志々雄はやがて、それまでよりも強い力を込めて剣を切り上げた。
その一撃により、キャメロットは剣を大きく上げされられた。
それに連なって両腕も頭の上の方にまで上がることになり、胴ががら空きになる。

(もらった!)

相手が上げられた腕を下げる前に、志々雄は素早く剣を引いて構えを変えて、その空いた胴に目掛けて突き刺そうとする。
キャメロットも腕と剣を下げる暇もなく、相手の剣先は自分目掛けて真っ直ぐに吸い込まれようとしていた。

『代われ嬢ちゃん!』

『ガキンッ!』
「!?」

志々雄の剣先は確かにキャメロットの体…具体的に言うと胸の辺りを突いた。
しかし、その刃は深々とは刺さらなかった。
何かとても硬いものに阻まれた。
相手は鎧等を着込んでいない状態のはずなのに。

「ソラアッ!」

志々雄が驚愕して一瞬動きを止めた隙にキャメロット…ではなく、グリードが攻撃する。
志々雄の剣を止めるため、グリードが強制的に自分の方を表に出した。
これにより彼らのアルトリアの身体、相手の刃が迫っていた胸部を最強の盾…体内の炭素を操作して作ったダイヤモンドの盾で覆った。
そして確かに志々雄の攻撃を防ぐことができた。
グリードは上げられていた剣を志々雄に向けて振り下ろそうとする。
グリードの方が表に出たことにより、その剣は風王結界の風を維持できず、元のエターナルソードの姿を現していた。

『ザンバシッ』
「…なっ!?」

グリードが振るった剣は、志々雄に受け止められた。
ただ、今の驚きは受け止められたことそのものによることではない。
自分に剣が迫っていることに気付いた志々雄は、咄嗟に剣を持っていない左手を前に突き出した。
それも、相手に手の平を向けた状態でだ。
結果、エターナルソードの刃は志々雄の左手の人差し指と中指の間の方に入っていった。
その刃は、それらの指の股の方にまで食い込んだ。
しかし、刃はそこから少し斬り裂いたところで止められた。
志々雄が人差し指と中指を閉じて力を込めて締めてきたからだ。
刃は一応手の平の中央付近までは斬り裂けていた。
けれども、指の付け根から斬られたことの痛みを苦しんでいる様子はなかった。
グリードが驚いたのはその点についての方だった。

514Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:09:57 ID:eNjl2nDw0
「さてと……てめえ、一体どうなってんだ?その体のこともだが、急に人が変わったみてえじゃねえか」
『ギュウウ』

志々雄は、刃が刺さった左手をその状態のまま握り込む。
左手の剣に斬られた部分は柱の男の肉体の特性で再生したため、そんなこともできていた。
そんな状態のまま志々雄は相手に話しかける。
志々雄も相手が急に人格までが変わった様子であることには気付いたようだ。

「ハッ!そっちもずいぶんな体してんじゃねえか。お前もホムンクルス…って訳じゃなさそうだが」

グリードも志々雄に対して悪態をつく。
しかしその顔には微かに冷や汗がかかれていた。
相手の握力はかなり強いらしく、剣を刺している状態でも固定されていた。
グリードでもそこから動かすことはなかなか難しかった。

だがそれでもやはり、相手は自分の手の平を貫通しているという普通は無いだろうシチュエーションで刃を掴んでいる。
いくら握力が強くても、完全なる固定は難しいようだった。
直ぐには無理でも、力を加える回数を重ねれば少しずつならずらして抜くことも出来そうな感じがあった。
その間に相手が自分の剣で攻撃してこようものならダイヤの盾で防御すれば良い、まだこの状況からでも挽回は出来そうだと判断していた。

「フン、この状態でも諦めねえのは良い根性してんじゃねえか」

グリードが自分の剣を志々雄から外そうとしていることには志々雄自身も直ぐに気付く。

「だが、そう上手くいくかな?」

そして志々雄もまたそれを放っておくことはしない。
ここで自分から攻撃しても相手は謎の硬化能力で防ぐかもしれないことは察している。
だから、これまた別の手段をとろうとする。

志々雄は自分が右手で持つエンジンブレードの剣先を、自分の左手の甲の方にまで素早く持ってきた。
左手の甲には相手方の剣先が貫通して突き出ているが、それのやや上辺りの方に刃を一瞬置いた。

「弐の秘剣、紅蓮腕!」

そう叫ぶと同時に、志々雄は自分の左手の甲を斬りつけた。
その際、相手方の刃に自分の刃を擦り付けながら自分の剣を引いた。
斬られた甲から、血が大量に吹き出て、周囲に飛び散っていった。

勢いよく噴射された血液は、グリード&キャメロットの方にも降り注ごうとしていた。
それに気付いたグリードは、急いで自分の上半身の方を黒いダイヤモンドの盾で覆っていった。

「……グアアアアッツゥッ!!?」

相手が急に血液をかけてくるという得たいのしれない行動に対し、咄嗟に体を盾で覆ったところまでは良かった。
しかし、ここで引き起こされた事はグリードの想像を越えてきた。

エシディシとしての肉体に流れる血液、その温度は500℃程という超高熱だ。
そんな高温の液体が、グリード(達)の上に全体的にかかってきた。
上半身を覆う黒ダイヤにより皮膚に直接血液がかかることは防がれた。
ダイヤモンドの発火点はおよそ600〜800℃らしく、それにより500℃の血液により体を直接燃やされることはギリギリ避けられた。
だが、ダイヤモンドは熱伝導が高い。
質量数12の炭素原子が99.9%で構成された単結晶合成ダイヤモンドの室温における熱電導率は銅のおよそ5倍程はあり、これは全ての固体物質中で最も大きいと言われる(wiki調べ)。
それにより、盾を通じて超高温は内側の体の方に直ぐに伝わっていった。
おかげで、盾で守っていたにも関わらず体の方には火傷が負わされた。
また、体の方は発火点まではいかずとも、服はそうはいかなかった。
血液がかけられた部分から発火し、結局のところ上半身はある程度炎上した。

「ソォラアッ!!」
『バキィッ!』
「ガハッ!」

志々雄は更に追い討ちをかけてきた。
熱にグリードが苦しみ始めた瞬間に左手から相手の剣を引き抜き、そのまま拳に握り固めた。
そしてその左の拳を、相手の胸元目掛けて放った。
拳は胸に直撃し、グリード達は後方に吹っ飛ばされた。

志々雄が噴射させてばらまいたエシディシの血液は、グリードの剣を握る手や腕の方にまで飛んできていた。
それによる突然の高温に驚き、グリードは自分が持つ剣を握る力が弱まっていた。
そして今殴られて吹っ飛ばされた衝撃により、剣も完全に持てなくなっていた。
彼らが持っていたエターナルソードは今、志々雄の目の前に落ちていた。

515Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:11:43 ID:eNjl2nDw0


エシディシは、自分の体の中の血管の位置をある程度なら操作できると考えられる。
この殺し合いにおいても、志々雄は自分が扱うエシディシの手の爪の間から血管を飛び出させて血液を噴射することができていた。
それの応用で、志々雄は自分の左手の甲付近に血管をある程度集め、血圧も上げることを試みた。
そこを自分で斬りつけることで、本来の自分の技である紅蓮腕の再現をやってみようとしたのだ。

「……あまり、再現できたとは言い難てえか?」

本来の紅蓮腕は、自分の手甲に仕込んだ火薬を無限刃を擦らせて発生する火花で着火して爆発させる技だ。
今回の志々雄はその代わりに、今の自分の身体を流れる高温の血液を爆発的に撒き散らした。
…とはいっても、実際に爆発が起きた訳ではない。
思い付きでやってみたが、技の再現としては少し甘い部分があったように感じた。
上手いこと剣を擦り合わせたことで発生した火花が、飛び散った高温の血液や脂に連鎖的に引火して爆発のようになってくれたらなんてことも少し期待していたが、流石にそう簡単にそんな現象は起きなかった。
結局は爆発を起こしているのではなく液体を撒き散らしただけのため、もっと別の技として扱った方が良いかもしれない。

「だがまあ、効果はあったな」

志々雄は自分の目の前に落ちたエターナルソードを拾い上げる。
今回の技により相手から武器を手離させることに成功した。

「ほう…なかなか良い剣みてえじゃねえか」

エターナルソードが秘める力を知ってか知らずか、志々雄は剣をまじまじと見つめる。


「スゲーナ・スゴイデス!」
「!」

志々雄が剣を眺めていた隙に、新たな動きがあった。
これまで戦いを静観していた遠坂凛が、一枚のトランプを掲げた。

「アクション仮面参上!」
「カンタムロボ参上!」
「ぶりぶりざえもん、再び参上」

トランプが掲げられたと同時に発生した光の中から、アクション仮面、カンタムロボ、ぶりぶりざえもんの影が召喚された。
彼らを召喚できるトランプはもう残っていない、これが最後だ。
だが、出し惜しみするわけにはいかなくなった。
今キャメロットらだけで戦わせてみた結果、彼らは大きなダメージを負ってしまった。
今後のことがどうとか言っている場合ではない、使える手札は何でも使わなければここを乗り越えることは出来ない。
今戦っている相手はそれ程のものであると、凛も判断していた。

「しんのすけ君!また会えたな!」
「そういうのは後!あんた達、とにかくあいつをやっちゃって!」
「了解した!」

凛は一先ずアクション仮面達に攻撃を指示する。
再会の挨拶等はしている暇は無い。
凛の言葉に応え、彼らも指示に従い志々雄に対し攻撃を仕掛けようとする。

「アクションビーム!」
「カンタムパーンチ!」

アクション仮面はアクションビームを、カンタムロボはカンタムパンチをそれぞれ繰り出す。
彼らの放った光線とロケットパンチは、志々雄の方へと真っ直ぐに向かう。

「フンッ」
『ビシャアアア』

攻撃に対し志々雄はまず、エンジンブレードとエターナルソードを体の前で交差させた。
先に飛んできたビームがその刃に当たり、防がれた。

「シャアアッ!」
『ガキンッ』『バキンッ』

次に飛んできたカンタムロボのパンチの方も、その両手に持った剣をどちらも振り回し、それらをぶつけて防いだ。
剣を叩き付けられるように凪払われたロケットパンチは、大きな斬り傷を付けられながらあらぬ方角へと吹っ飛ばされた。
しばらくした後、ロケットパンチはカンタムの腕に戻った。

516Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:13:25 ID:eNjl2nDw0
「やはり一筋縄じゃいかないようね…」

先の攻防の中で、相手は確かに左手の平を剣が貫いていた。
しかし今はそんなことがなかったかのようにその手で2本目の剣を握って振り回している。
相手は明らかに、再生能力を備えているようだった。
自分で自分の体を傷付けることに躊躇が無いことからも、それが伺える。

「ここはやはり、もう一度私の出番のようだな」

考察をしている凛の隣を、同じくらいの大きさの影が1つてくてくと歩きながら通り過ぎる。
そいつ…ぶりぶりざえもんは志々雄真実の方に近付いていく。

「あんたまさか…」
「……?」
凛はぶりぶりざえもんがやろうとしていることを察する。
志々雄はその謎の豚がのこのこと自分に近付いていくことが理解できず、とりあえず観察して何をするつもりなのか確かめようとする。
志々雄の目の前まで来たぶりぶりざえもんは、振り返って志々雄に背を向けながら凛達のいる方を向く。
そして刀(千歳飴)を構えながら、前の時と同じようなことを言う。

「さあ、どこからでもかかってくるがいい!」
「やっぱり!」

ぶりぶりざえもんの行動に、凛は呆れ果てた。

「前にも言っただろう、私は常に強い者の味方だと」
「あんた本当いい加減にしなさいよ!?」

ぶりぶりざえもんの裏切り行為は前にもあったことだ。
その時は結局悪影響はそれほどなかったため、そこまで本気では怒っている感じはない。
けれども、今はこんなことでふざけている場合ではない。

「ふん、もっともらしいことを言うじゃねえか。豚野郎」

ぶりぶりざえもんに対し、志々雄はわざとらしく感心したように言う。

「さあご主人様、今からコイツらを私の刀の錆にしてご覧にいれ…」
「それじゃあ、早速役に立ってもらおうか」
『ドスッ』
『ガシッ』
「え?」

志々雄はぶりぶりざえもんの言葉を無視しながら一歩前に出て近付く。
左手に持っていたエターナルソードを、近くの地面に突き刺して置いておく。
そして空いた手をぶりぶりざえもんの頭に置き、そのまま鷲掴みにした。

「あの、何を…」
『グイッ』
「わわっ!?」

志々雄はぶりぶりざえもんを真っ直ぐに持ち上げる。
その時の志々雄の目は、とても冷たいものになっていた。

『グンッ!』
「えっ!?」

志々雄は持ち上げたぶりぶりざえもんを、自分の体に押し付けた。
具体的に言えば、腹の部分に押し付けた。
ぶりぶりざえもんは、押し付けられた所から志々雄の…エシディシの肉体に取り込まれていった。


「…熱っ!うアッツ!!アッッチャアアアアアァァーッ!!?」

取り込まれていくぶりぶりざえもんは、高熱による苦しみの声を上げた。
取り込まれていく部分から、エシディシの高温の肉体によりその身を焼かれていった。
500℃の血液が流れるその肉体の中はまさしく、鉄板焼きの上のようなものだろう。

「あっあっあっ、止めて、チャーシューにしないであ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…………」

柱の男は、体全体で他の生物を補食することができる。
自分の体に触れた相手を取り込み、細胞の一つ一つから消化液を出し、細胞の一つ一つで喰っていくのだ。
志々雄は今、エシディシの体を利用してそれをやっていた。
しかもエシディシには前述したように超高温の血液が流れている。
これによりぶりぶりざえもんには今、「焼く」と「喰う」の工程が同時に行われていた。

「この世の摂理は弱肉強食、真に強い者の側に付くのは間違っているとは言わねえ。だがな……何もせずただ強者の隣で甘い汁を啜ろうとするだけの奴はいらねえ」

志々雄がそう言い切ると同時に、ぶりぶりざえもんは完全に取り込まれた。
志々雄の言葉は、もう相手には届いていないようだった。

517Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:15:57 ID:eNjl2nDw0


「……何、何なの、あいつ…」

志々雄の行動に凛は戦慄していた。
自分の体全体で他の生物を喰らう、そんな存在を見るのは初めてのことだった。
再生能力を持つ命を直接的に喰らう存在、これだけだと吸血種の一種か何かのようにも思える。
だが今対峙している存在は、もっと別の何か、そんな気も感じていた。

「き、貴様…何てことを…」
「何もそこまで…」
「フン、こっちに近付いてきて背中を見せる方が悪いのさ」

志々雄の行いに戦慄しているのは残されたアクション仮面達も同じだった。
それに対する志々雄の態度は、何てことも無いかのようだった。
志々雄にとって、今回のことはどちらかと言えば実験的な意味合いが強かった。
柱の男の能力の1つ、体全体を使った補食を試すチャンスがあったからやってみただけのことだ。
相手が人間ではなく豚の姿をしていたことからも、抵抗は少なかった。
もっとも、人間相手でも必要そうなら躊躇わずにやるつもりもあったが。
補食によるエネルギー補給で少しでもの体力回復も狙っていた。
これまでに傷付いた体の再生にエネルギーは使われているはずなので、その消費した分の回復もしたかった。
その目論見もその通りとなり、志々雄はぶりぶりざえもんを食った分の体力が回復している感覚があった。

(……ぶりぶりざえもん…)

凛は先ほど悲惨な最期となったぶりぶりざえもんのことを考える。
あいつは確かに二度も自分達を裏切ろうとしたし、全く役に立たなかった。
それでも、心の中に何かモヤっとしたものが残った感じがあった。
あんなのでも、おバカな言動が多少は心の清涼剤になっていたのかもしれない。
…いや、それは流石に過大評価か。

(とにかく、あいつはどうすれば…)
「くっ…」「ムウ…」

凛達は志々雄の所業に驚き、動きが少し止まっていた。
身体のどこからでも捕食するという能力を見せられたことで、攻めあぐねているところがあった。
機械の体のカンタムロボは取り込まれる可能性は低いが、アクション仮面の方は接近戦を行おうとすれば体を食われる可能性がある。
カンタムロボは接近、アクション仮面は遠距離から攻撃しようとすればカンタムロボもアクション仮面の攻撃の巻き添えを喰らう可能性がある。
となるとどちらも遠距離から攻撃するしかないが、前と同じように攻撃を防がれるかもしれない。
凛はここからどうするのがベストなのか、考えを巡らせていた。

そうなっていた時に、凛の考えに関わらずに新たな動きを見せる者もいた。


『ビュン!』
「あっ、ちょっと!」

それは、先ほど志々雄に殴り飛ばされたグリードだ。
両手が黒のダイヤモンドに覆われていることから、まだキャメロットに戻っていないことが分かる。
そして片方の手には、志々雄に奪われたエターナルソードの代わりに別の武器が握られていた。
アルトリアとしての青いドレス衣装は、ところどころ一部が焼け焦げてボロボロにもなっていた。
火傷の方は、ホムンクルスとしての再生能力により治っている。
そんな状態のグリードは、凛の隣を素早く駆け抜けて、志々雄のいる方へと向かっていった。


「その刀は…!チッ!」

志々雄がその武器を見て驚いたような反応を見せる。
それでも志々雄は手に持つ剣を相手に向けて構える。
先ほど近くに刺し置いたエターナルソードも念のためもう一度拾っておき、迎撃に備える。

グリードが今持っている武器…刀の名は逆刃刀。
志々雄真実にとって人斬りとしての先輩であり生前の最後の宿敵である男、緋村剣心が「不殺」の誓いのために所持していた刀だ。

「オリャアッ!」

グリードは跳びながら逆刃刀を振りかぶり志々雄に叩き付けようとする。
先のことのおかげで、自分の体で直接攻撃しようものなら大火傷することは分かっている。
とは言っても、盾も無しでは結局他の攻撃等から身を守れない。
だから今はダイヤモンドの盾を展開しながらも逆刃刀で攻撃しようとしている。

518Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:17:05 ID:eNjl2nDw0
『ガアァンッ!』

逆刃刀とエンジンブレードの刃がぶつかり合う。
それと同時にグリードは着地し、そのまま志々雄と鍔迫り合いを始める。

「まさかここでその刀を見ることになるとはな。そんな斬れない刀を使って、てめえも誰も殺さないようにするつもりか?」
「ハッ!これしか無いから仕方なく使っているだけだ!」
「まあそうだよな。そんな奇特な奴、あいつしかいねえだろう」

片手で持ったエンジンブレードだけで受け止めながら、志々雄はグリードに声をかける。
志々雄の表情は、喜ばしさと忌々しさ、どちらも混ざったような複雑な感じになっていた。
実際彼の内面もまた同じで、表情はそれがそのまま反映されていた。
自分と相容れない最期の宿敵が扱っていた武器を見て、忌まわしいという気持ちとほんの少しでもリベンジになるかもしれないという気持ちがない交ぜになってきていた。
そんな気持ちになりながらも、志々雄はその刀をまだ押し止めていた。
これに対してグリードが両手で握って力を込める形に変えても、状況は変わらなかった。

「!」
「アクションビーム!」

グリードとの鍔迫り合いの隙に、アクション仮面が攻撃を仕掛けてきた。
志々雄から見ればエンジンブレードを持つ右側に向けて、アクションビームを撃ってきた。
その方で持つ剣を今別のことに使用中のため、ビームを防ぐのに使えないであろうことからそちら側の方からアクション仮面は仕掛けた。

「フン!」
『ギャリッ』『ガンッ!』
「グッ…!」

アクション仮面が行動しようとしていることに気付いた志々雄は、素早くエンジンブレードを動かして相手の刀を切り払った。
刀の側面に沿って手首のスナップで刃を少し上げて走らせて、相手の体勢をほんの少し崩す。
その後に腕を動かして刃を反対側に少しずらし、腕を勢いよく戻して横から強く刀を叩き、それでより相手の体勢を崩す。
そうした直後、志々雄は後ろ向きに跳んだ。
志々雄は、アクションビームをギリギリのところで避けれた。

「カンタムパンチ!」

志々雄がビームを避けた直後で、カンタムも攻撃を試みる。
ロケットパンチを右腕だけ飛ばし、志々雄の左側の方から攻めさせる。

「シイィィッ!!」
『ガンッ!』『バキンッ!!』

これに対しても志々雄は素早く反応する。
両手の2本の剣を振り上げ、順番にロケットパンチに向けて叩き付ける。
最初にぶつかったエターナルソードの刃が、飛んできたパンチの威力を殺して止める。
直後に振り下ろされたエンジンソードの刃が、前に斬った時に付けた傷を捉えた。
その傷から刃がロケットパンチの中に入り、そこも切り裂いていった。

『ボンッ!』

エンジンブレードはやがてロケットパンチを完全に両断し、直後にその拳は爆発した。
この瞬間、カンタムロボは片腕だけで立ち尽くすことになってしまっていた。


(私と代わってください!奴に対抗するには剣技が必要です!)
『けどよ…またあの血をかけられたらどうすんだ?盾があってもアレなら、直はもっとヤバいかもしれねえぞ』
(それは…そうかもしれませんが…)

これまでのことから、相手は高い剣技を持っていいることが考えられる。
そしてキャメロットとグリードなら、キャメロットの方が剣の扱いを心得ている。
だからここはキャメロットの方が相手により対抗できるかもしれない。
しかし、キャメロットでは相手の攻撃を素肌のまま受け止めてしまうかもしれず、そうなってはグリードの盾越しの時より酷いダメージになるかもしれない。
盾があっても熱は貫通するため先ほどでもダメージは酷かったが、それでも無いよりはマシだったかもしれない。
ダメージを受けた時にそれを治すのもグリードじゃないとできない。
そういったこと等を考えると、代わることに躊躇する気持ちも少し出てくる。
攻撃を防いだりダメージ回復の時だけ代わるにしても、それだと短時間で何度も代わることになりそうで、これはタイミング等の問題で難しそうに思える。

519Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:18:51 ID:eNjl2nDw0


「なあ、お前…やっぱその刀だと戦いにくいだろ。こいつを返してやろうか?」
「何…?」

志々雄は突如、先に奪ったエターナルソードを見せびらかすような持ち方をながらそんなことを言ってきた。
その直ぐ後に、志々雄は左腕を地面に対して水平寄りに動かしながら、エターナルソードを後ろの方に振りかぶる。

「そら、受け取れ!」

志々雄はエターナルソードを、横向きに力を込めて思いっきりぶん投げた。
エターナルソードは地面に対して水平な状態で高速で回転しながら空中を飛んで行った。
しかしそれは、剣を獲られた張本人であるグリードの下には飛んで来なかった。

「え…」

エターナルソードの行き先は、後ろの方で戦いを見守っていた凛の方であった。

「危ない!カンタムブーメラン!」

カンタムロボが咄嗟に背中のウイングを残った左手で取り外し、ブーメランとして投げつける。
ブーメランは空中のエターナルソードの方へと向かう。

『ドスッ』『ボンッ!』

エターナルソードはブーメランに突き刺さる。
ブーメランとなっていたウイングのブースターが壊れたことにより、爆発する。
カンタムロボはこれで右腕だけでなく背中のウイングも失うことになった。
爆風によってエターナルソードは凛のいる方とは別方向に飛んで行く。
ただしそれは、グリードらのいる方から離れていく方向であったが。

「っのやろ…!」

エターナルソードが投げられたことでグリードは一瞬凛のいる後方へ視線を向けさせられた。
けれどもカンタムロボによって阻止されたことで、再び志々雄へと対峙しようとする。

「…!?」

しかしグリードは再び動きを止めてしまう。
異様な光景がそこで見て取れた。

志々雄の左手の平から、刀の先端が生えてきていた。
その刀は、ニョキニョキと少しずつ這い出てきていた。
やがてその先端は、"折れた"状態で手の平の中から完全に飛び出て来た。
志々雄はその折れた刀の先端を左手の平で摘まむようにキャッチする。

「もう一発(いっぱぁつ)!」

志々雄は刀の先端も、凛のいる方へと投げつけた。
刀の先端も、ブーメランのように地面に水平に回転しながら凛の下へと飛んで行った。

「うおおおおお!!」

これに対して動けたのはアクション仮面だった。
アクション仮面は凛の下へと駆け出した。

「しんのすけ君!」
「きゃ!」

アクション仮面は走りながら自分の膝下くらいの大きさのしんのすけボディの凛を抱きかかえる。
走って移動しながら抱きかかえたことで、ギリギリ凛のいた場所を刀の先端が通過したところで避けさせることができた。



志々雄が今投げた刀の先端は、前の南西の森での戦いでDIOが持っていた時雨のものだ。
志々雄が折ったためにDIOが捨てたその刀を、志々雄は念のため回収していた。
電話ボックスが使えるようになるまでの待ち時間の時、試しに周囲を探してみたら発見できた。

そしてその刀の先端を、自分の体内に隠すことを思いついた。
突如として身体の中から飛び出させてみれば、不意を突けるかもしれないと考えた。
再生能力と肉体操作能力のある柱の男の肉体ならば、体内に刃物を隠していても戦闘能力への影響は少ないとも考えられた。
隠し場所には左腕の中を選んだ。
腕の中ならば咄嗟に取り出してすぐに手に持って扱えるためだ。

念のため、折れた時雨の残りの部分と、もう1つのDIOが落としていった黒刀である秋水も探して拾って回収しておいた。
これらは本当に一応回収しておいただけで、今後使わない可能性の方が高そうだが。

それに今投げた先端の欠片は、ずっと高体温の身体の中に入れていた後に思いっきりぶん投げたため、もうボロボロになって使いものにならない可能性が高いだろう。




「おい!…くそっ!」

凛の方へ向けて二回も連続で攻撃が仕掛けられたことにグリードは注意を逸らされてしまった。
結果的に何とかなったが、どちらもグリードは止められなかった。
このことにより、グリードは集中力を大きめに乱された。
それでも何とかもう一度志々雄に向き直ろうとする。

520Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:21:55 ID:eNjl2nDw0
「余所見ばっかしてんじゃねえぞ!」
「ガッ…!?」

しかし、完全に向き直る前に志々雄の行動を許してしまった。
志々雄は空いた左手を伸ばし、それでアルトリアとしての顔面を掴んできた。
その際、志々雄は左手の親指を口の端に引っ掻けてきた。

「なへるんひゃ…」

グリードは顔から全身にダイヤモンドの盾を展開する。
相手が熱でも攻撃するのが分かっているのではあれば、まだ耐えやすい。
盾越しでもダメージは受けるが、その先から治していけば良い。
先は突然のことだったため剣を奪われるという失態を演じてしまったが、今度はそうはいかない。
グリードは心構えをしながら、反撃しようとしていた。

しかし、グリードには1つ知らないことがあった。
グリードは今、相手が血で攻撃するためには自傷行為が必要だと認識していた。
前の攻撃の時はそのようにしていたからだ。
けれども、それはエシディシの肉体の能力の本領ではない。
エシディシは肉体操作により、わざわざ道具で傷口を作らなくても血管を外に出すことができた。
志々雄はかなり前の戦いでもそれを行えていた。
そして今、志々雄はグリードの顔を掴んだ左手親指の爪の間から、血管を外に出していた。

更にもう1つ、グリードには誤算があった。
グリードが最強と自負するダイヤモンドの盾には、穴があった。
原作でそんな描写がある訳ではないが、ここではそうだと解釈する。
それは、呼吸のために必要な穴だ。
目の部分であるならば、透明なダイヤモンドで覆えば良い。
しかし、呼吸穴ならばそうはいかない。
体内にまでも盾を張り巡らせる訳にもいかない、肺を塞ぐようなことをすればやはり酸素が体に取り込まれず窒息してしまう。

これらのことが意味することはただ1つだけだ。

「溺れな」
『ドピュルルル』

志々雄は、グリードの反撃がある前に左手親指から口の中に血液を流した。

「ぐぼっ…ごばぼぼぼぼぼぉっ!!?」

グリードの口内に灼熱が広がった。
超高温の血液は、喉奥の方にまで流れていった。
焼かれることによる激痛が、口から体中を駆け巡る。
気管や食道を焼きながら流れていく血液はやがて肺や胃へとたどり着き、そこに穴を焼き開けて更に下へと流れ出る。
そうして他の内臓をも沸騰する血液が焼いていく。
体は発火点を越え、口の中から火も吹き出してくる。
口の中から溢れた血液や体の中から外に貫通して流れた血液により上半身の服にも火がつき、燃え広がる。
目にも高熱は伝わり、眼球内の水分が沸騰し視力も奪われる。

『熱い!熱い!熱い!!熱い!!!』

内臓を焼かれながらも、ホムンクルスとしての再生能力が直ぐに治していく。
このおかげで、彼らの命までには届かない。
しかし治しても治しても、また直ぐに焼かれていく。
燃焼と再生が連続で繰り返されることで、死ぬこともできず余計に地獄のような苦しみがグリードを襲う。
ダイヤモンドの盾で体を覆うこともできなくなっていく。
再生に必要な賢者の石の中の命も、毎秒消費されていく。
――この感覚を、グリードはどこかで味わったことのあるような気がした。
――しかし、今はそれを思い出している暇は無い。



「ん゛ーーーっ!!ごぶお゛―――っ!!!」
「その人を離せ!」

グリードを体の内側から焼かれている志々雄に対し、カンタムロボが止めるべく向かって来た。
カンタムロボは志々雄に向かって走りながら跳び蹴りを繰り出した。

「ソラッ!」
『ブンッ!』

志々雄は左手で口を掴んでいたグリードを持ち上げる。
そしてそれを、カンタムロボに向かってぶん投げた。

『ドンッ』
「ぐおっ…!」

グリードとカンタムロボは空中でぶつかった。
カンタムロボは怯み、志々雄にキックが届く前に地面に落ちた。
グリードも別方向の地面に落ちて倒れる。
口の中から飲まされた血液を垂れ流しながらピクピクと痙攣していて、起き上がる様子はなかった。
投げられた際に右頬の肉が引き千切られ、口の右側は裂けていた。
千切られた小さな肉は、志々雄の指からエシディシとしての肉体の方に吸収されたようだった。

高熱で攻められていた際に背負っていたデイパックの紐が切れたようで、それも投げられた時に地面の別の所に落ちていた。
けれども逆刃刀はまだ、手から離さず握っていた。

『HEAT! MAXIMUM DRIVE!』
「それじゃあ、次はお前にもご退場願おうか」

志々雄は空いた左手で、エンジンブレードにヒートメモリを抜き差しする。
その視線の先には、何とか立ち上がろうとしているカンタムロボがいた。

「シャアアッ!」

志々雄は剣に炎を纏い振り上げながらカンタムロボの方に向かっていく。

521Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:23:24 ID:eNjl2nDw0
「くそおっ!」
『バンッ』『ボロッ』
「うおっ!?」
『スカッ』

志々雄はカンタムロボに対し剣を斬りつけようとした。
しかし刃が届きそうになった瞬間、カンタムロボは残った左腕で地面を叩いた。
その衝撃で、カンタムロボの上半身と下半身が分離した。
本来なら分離するたまには背中のブースターを推進力にしないといけないのだが、それは破壊されてしまった。
そのために地面を叩いた衝撃の反動を利用して分離し、志々雄の攻撃を避けた。
しかし、ここからかこんな状態で動くための方法が無い。

「カンタム…パーンチ!!」
「ぐおおっ!?」

これがカンタムロボにできる最後のことだった。
残った左腕をロケットパンチとして志々雄に撃ち出した。
ロケットパンチは志々雄に命中し、後方へと吹っ飛ばした。

「ふん…まあ最後っ屁としては及第点といったところか」

しかし、志々雄はそこまで遠くに吹っ飛ばなかった。
エシディシの身体とエンジンブレードの重さもあり、片腕だけのロケットパンチではあまり動かすことはできなかった。
カンタムロボ自身もこうなることは分かっていた。
自分に出来るのは、少しの時間稼ぎだけだもいうことも。
志々雄はまたカンタムロボの方に近付いてくる。
ロケットパンチの腕はカンタムロボの方に戻ってきたが、これをもう一度撃つ隙はもう作れない。

「わ、私が消えても、正義の魂は消えな…」
『ザンッ!』
「があっ…!」
『ドスッ』

志々雄はまだ火を纏っていたエンジンブレードでカンタムロボの上半身を斬りつけた。
左腕でカンタムロボは防御しようとするが、その意味もあまり無い。
斬りつけて大きな傷を作った後、ダメ押しに志々雄は剣をカンタムロボの胸の辺りに突き刺した。

「じゃあな」
『バチッバチッ』『ボンッ!!』

志々雄が剣を引き抜き、少し離れた後にカンタムロボは爆発した。
残された下半身もそれに伴い、その場から消滅していた。



「ハアアアッ!」
「!」
『ガキィン!』

カンタムロボを破壊した後の志々雄に攻撃が仕掛けられる。
志々雄が攻撃をエンジンブレードで防いだことで金属音が鳴る。

「次の相手は私だ!」

攻撃してきたのは、エターナルソードを持ったアクション仮面だ。
先ほど志々雄がカンタムロボの相手をしていた隙に、剣を拾っていた。

「……私ももうすぐ消える。けれども、最後までお前の相手をするぞ!」
「あなた、まさか…」

凛はアクション仮面が今からどうしようとしているのかを察する。
そしてそれが、この場において最適解であることも。

自分たちだけではもう、目の前の大男に敵わない。
これまで出会った、他の協力者達の手も借りなくてはならない。
だが、そう簡単に相手から逃げられるとも思えない。
だから、トランプの効果の時間制限のあるアクション仮面が一人残り足止めしようというのだ。

「そいつは妙案かもしれねえが…お前が消えた後でも俺はあのガキに追い付けたら全部無駄だろ」

志々雄が問題点を指摘する。
今の志々雄の認識では、逃げるとしてもしんのすけの身体の凛が一人だけとなっている。
身長のかなり低いしんのすけの身体では、最初にここまで来るために乗っていたバイクを運転出来ない。
その身1つだけで走って逃げても、アクション仮面が消えるか倒された後に、大きな体で身体能力も高い状態の志々雄に追い付かれるかもしれない。

「それには及びません!」
「!」
『ガキンッ!』

別方向から志々雄に向けて新たな攻撃が飛んで来た。
志々雄はエンジンブレードを咄嗟に振ってそれを防ぐ。

「ほお…まさかまだ生きていたとは」
「……ええ、彼のお陰で」

志々雄に攻撃してきたのはアルトリアの姿をしたグリード…ではなく、キャメロットだ。
少し見ない間に人格が切り替わっていた。
内側から焼かれたことによる大ダメージは治っているようだった。
顔の引き裂かれていた右頬も元に戻っている。
頭の後ろで纏められていた髪はほどけ、下ろされた状態になっていた。
そんな彼女の服装についてだが、とても酷いものになっていた。
何と、ドレスの上半身がほとんど燃えたり破れたりして失われていて、ほぼ半裸な状態となっていた。
右腕の袖どころだけでなく、パフスリーブまでもが焼失して両腕両肩が丸出しになっている。
胸の小ぶりな乳房や腹回りまでもドレスが焼失して露出しているが、それを恥じる様子は無い、と言うよりは恥じている余裕が無い。
体中の至るところに張り付いている燃えカスや煤等が彼女がどうしてこんな格好をしているのかを示すものとなっている。


志々雄としては、キャメロットがまだ生きていることには驚いている気持ちがあった。
最初に負わせた火傷を治してきたことから今の自分と同じく自己再生能力があること自体は予測していた。
しかしまさか、超高温血液を大量に飲ませても復帰してくる程のものだとは思っていなかった。

522Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:26:03 ID:eNjl2nDw0
キャメロット側の方も、今は全く平気という訳ではない。
ダメージはグリードが治してくれたが、それによる消耗は激しかった。
再生のために賢者の石の中の命をほとんど消費してしまっており、そのことも申し訳ない気持ちが出てきている。

また、実は今はグリードの意識は眠っている状態になってしまっている。
高熱でかなり苦しめられたことと、全力で再生に力を注いだことで精神力をほとんど失ってしまったようだった。
次に彼が何時起きてくるかは分からない。
賢者の石の力をほとんど使ってしまったらしいことを考えると、もう再生能力ばかりに頼るわけにもいかなくなる。
致命的なダメージを受けないように、要注意しなければならない。

「ウ、グッ…ゲホッ、ゴホッ」

後遺症もまだ残っていた。
飲まされた血が固まったものが気管等に残ってしまっているようで、その影響で咳き込んでしまう。
それに熱もまだ残っているようで、頭がクラっとしている感覚がある気もする。

「おいおいどうした?体調が悪そうに見えるが」
「……それでも、動かなくてはならないのです。守りたいものを守るために!」

志々雄も指摘する通りだ。
だけども、今はそれを気にしている場合でもない。
ここを生き延びるためには、自分がバイクを運転して凛を乗せて離れるしかないのだ。



「デエェヤアッ!」「ヤアアァッ!」
「シイィ!」
『キンッ!』『カアン!』

アクション仮面とキャメロットがそれぞれ武器を志々雄に振るう。
志々雄はそれを自分が持つ剣で捌く。

「ヌオオォッ!」
『ギインッ!』『ギリギリ…』

やがて、アクション仮面と志々雄とで鍔迫り合いの形になる。
アクション仮面は元々剣術も芸達者だ。

「そのままでお願いします!」
「ヌウ…?」

アクション仮面が一時的に志々雄を押さえた形になったところで、キャメロットが後ろ向きに跳んで少し離れる。
そこで彼女は、刀に風を纏わせ始める。
ただしそれは、この戦いの最初の頃にやったような風の結界を張ることを目的としたものではない。

「離れてください!」
「ハアッ!」
「ヌッ…」

キャメロットの言葉にアクション仮面が後ろに跳んで志々雄から離れる。

「風王…鉄槌(ストライク・エア)!」
「グオオ!?」

アクション仮面が離れた瞬間に、キャメロットは刀を突いて圧縮した風を志々雄に向けて解き放った。
志々雄は風に押され、離れた所に飛ばされる。

「しんのすけ君!今の内に!」
「分かったわ!」
「凛!行きましょう!」

志々雄が離れた隙に、凛とキャメロットが停めてあったバイクの方に急いで向かう。
志々雄は離されたといっても、全重量の関係でそこまで遠くまで行っていない。
ここは時間との勝負だ。

「君!これを!」
「えっ?あっ!」
『パシッ』

キャメロットがバイクに乗ろうとした直前、アクション仮面がエターナルソードを投げ渡してきた。
キャメロットはそれを咄嗟に受け取る。

「その刀だけじゃ扱いづらいだろう!持って行ってくれ!」
「ですが、あなたは…」
「大丈夫だ!何とかするさ!」
「っ…分かりました!」

キャメロットは武器を手放したアクション仮面を気遣うが、問題ないと返される。
急がなければならない現状、そう言うのなら信じて飲み込むしかない。
キャメロットは逆刃刀含め自分が持っている武器を凛のデイパックに入れさせてもらう。
バイクに跨がり、エンジンをかけて出発の準備をする。

523Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:27:19 ID:eNjl2nDw0
「しんのすけ君…いや、凛君!」
「え?」

凛もバイクに乗ってキャメロットの腰辺りに掴まった所で、アクション仮面に声をかけられた。
アクション仮面はその時初めて、しんのすけではなく凛の名前を呼んだ。

「時間を稼ぐのはいいが…別に、アレを倒してしまっても構わないのだろう?」
「……………ええ、遠慮はいらないわ。がつんと痛い目に合わせちゃって」
「そうか。ならば、期待に応えるとしよう!」

アクション仮面が背中を見せながら言ったことに凛はそう返す。
もし本当にアクション仮面がそれを実現できるだけの実力があったとしても、時間制限的にそれは不可能なのことはアクション仮面自身も分かっている。
それでもそんな言葉をかけてきたのは、自分を奮い立たせるため、そして少しでも凛達の心に余裕を生ませるため。
それもまた分かっているからこそ、凛は上記のような言葉を返した。

「行きます!」
『ブン!』

凛がアクション仮面と最後のやり取りをした直後で、キャメロットはバイクを発進させた。
キャメロットのコンディションの影響で蛇行運転気味になってしまったが、何とかこの場から離れていった。


◆◇


「お前…本当に1人で俺を倒せるつもりなのか?武器まで手放してしまってよ」
「さあな……だが、何故だか彼女には、この場ではああ言うべきだと思ってしまったのさ」

戻ってきた志々雄とアクション仮面が相対する。
志々雄は剣を構えて、殺意を向ける。

「それじゃあ本当に丸腰でもやれるかどうか、確かめてやろうじゃねえか!」

志々雄は走りながら剣を振りかぶり、アクション仮面を斬りつけようとする。

「アクションパンチ!」
『バキッ』
「アクションキック!」
『ゴンッ』
「ぬ…」

アクション仮面はパンチやキックで剣による攻撃を弾く。

「シャアッ!」
「ムンッ!」

それでも力任せに斬りつけようとする志々雄に対し、アクション仮面は地面を転がりながら避ける。

「アクションビーム!」
「グウウ…」

避けた先でアクション仮面は片膝を着きながらアクションビームを放つ。
志々雄はそれをまたもエンジンブレードを前に出しながら防ぐ。

「この…!」
『ドッピュン!』
「くっ…!」

ビームを防御しながらも、志々雄は指の爪の隙間から血管針を伸ばす。
そしてその中から沸騰した血液を発射する。
アクション仮面はビームを取り止め、またも地面を転がって攻撃を避ける。

「どうした、このままで本当に俺を倒せるのか?」
「ぐう…」

今の状況はアクション仮面にとって芳しくない。
制限時間はもうすぐそこまで迫っているが、このままでは大したダメージも与えられずに終わってしまう。

「む?」

そんな中、アクション仮面はあるものが落ちていることに気付く。
それは、キャメロット(とグリード)が戦いの中で落としてしまったデイパックだ。

「これは…」

デイパックの口は開いており、そこから1つの品がこぼれ出ていた。
アクション仮面は思わずそれを拾って手に取る。
それは、赤く輝くとても美しい大きな宝石であった。

「凛…キャメロット……私に、力を貸してくれ…!」

この宝石が一体何なのかは全く分からない。
けれどもこれは、キャメロットたちが持っていたものであることは確かだ。
だから、彼女らの想いも背負っているんだと自分を奮い立たせるために、宝石を強く握りしめる。

「そういえば、お前の名前を聞いていなかったな」
「……志々雄真実だ」
「そうか。ならば志々雄真実!私の最後の一撃を受けてみろ!」

アクション仮面はアクションビームの構えをとる。
そこに、今まで以上の力を込めて。

「アクション……ビーームッ!!」

524Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:29:04 ID:eNjl2nDw0



「…?」

アクション仮面がビームを放とうとした時だった。

『ボゴン』
「グアアアッ!?」

宝石を握りしめていた右手から、その手の甲を貫きながらレーザービームのようなものが放たれた。
そのレーザーは、アクション仮面が手の甲を前に向けて構えていたため、真っ直ぐに志々雄の方に向けて高速で飛んで行った。
アクションビームよりも速かった。
もっと細かく言えば、レーザーは志々雄の顔に向かって行った。

「うおおっ!!?」

志々雄は咄嗟に頭を横に振って避けようとする。

「ガアアアアアアァァァッ!!?」

しかし、完全には避けきれなかった。
レーザーは志々雄の左目に命中した。

「あっ…ぐあ…」

左目を貫かれたことで志々雄が体をぐらつかせ、片膝をついて崩れ落ちた。
レーザーに貫かれた時、志々雄にはこの殺し合いが始まってから今までで一番の"痛み"が走った。
脳も傷ついたのか、気分も急激に悪くなった。

「な、何だあ、こりゃ…?」

左目から開けられた穴に志々雄は違和感を覚える。
そこに開いた傷は、再生速度が遅くなっているようだった。

「く…そ…」

志々雄に焦りの感情が生じる。
今の攻撃で受けたダメージは今までで一番大きなものだ。
このままでは、相手は本当に自分の命に届きうる。
志々雄は左目を手で押さえてよろめきながらも立ち上がり、剣を構え直す。
やられる前にやる、そうしようと思いながらアクション仮面の方に向き直る。


「ああ……もっと早く気付けていれば……」

しかし志々雄が立ち上がった時、アクション仮面は甲が貫かれた右手を見ながら悔しそうな顔をしていた。
その視線の先には、先ほど拾った赤い宝石があった(手に穴が開いたといっても、宝石が通り抜けて落ちる程の大きさではない)。

その直後に、アクション仮面の姿がかき消えた。
トランプの効果の制限時間が来てしまったのだ。
アクション仮面が消えた後、彼が持っていた宝石は地面に落ちていった。



「…………ちっ、締まらねえ最後だな」

志々雄は顔をしかめながらアクション仮面が消えた場所に近付く。
まさかこのタイミングで相手側が時間制限で消えるとは思わなかった。
自分が大きなダメージを負わされた直後にこんな結果になったことには、まるで勝ち逃げされたかのような気分にさせられる。
どうせなら自分の手で直接殺したかったような気持ちにさせられる。

「しかしあいつ、何を見てたんだ?」

志々雄はアクション仮面が立っていた場所までたどり着く。
そしてそこの地面に落とされた物体を探し始める。

「これは…」

志々雄にとって、その物体…宝石は初見のものだ。
しかし、その身体側であるエシディシにとってはそうではなかった。

この宝石に光が入り込むと、光は中で何億回も反射され、やがて一点から凝縮されて発射される。
その威力はまるでレーザービームのようなものだ。
更にこの宝石には、今の志々雄の肉体である柱の男の弱点である太陽光、それと同等のエネルギーである"波紋"を増幅して発射する効果も持つ。

アクション仮面はこの宝石を握り込んだままアクションビームを発射しようとした結果、宝石の中でビームのエネルギーが凝縮され、手の甲を貫きながら発射された。
アクションビームは波紋ではないが、赤石の中でエネルギーが増幅されたことで僅かながらに太陽光に近いエネルギーを持ってしまったようだった。
それにより、レーザーを受けた部分だけ傷は治りが遅くなっていた。


宝石の名前はエイジャの赤石。
柱の男が究極生命体になるためにも必要なものでもある。

525Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:31:27 ID:eNjl2nDw0
【C-5とC-4の境目付近 道路/夜中】

【遠坂凛@Fate/stay night】
[身体]:野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん
[状態]:疲労(大)、精神的ショック(大)、乗車中
[装備]:
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜2(煉獄の分、刀剣類はなし)、煉獄の首輪、逆刃刀@るろうに剣心、エターナルソード@テイルズオブファンタジア
[思考・状況]基本方針:他の参加者の様子を伺いながら行動する。
1:奴(志々雄)から離れて雨宮君達との合流を目指す。
2:あいつら(アクション仮面達)…無茶しちゃって…………1人自業自得かもしれないけど……
3:キャメロットと行動、グリードはどうしようかしら、そもそもまだ生きてんの?
4:サーヴァントシステムに干渉しているかもしれないし第三魔法って、頭が痛いわ。
5:私の身体に関しては、放送ではっきり言われてもうなんか吹っ切れた。
6:身体の持ち主(野原しんのすけ)を探したい。多分雨宮君達の方が先に見付けそうね。
7:アイツ(ダグバ)倒せてないってどんだけ丈夫なの。っていうかもっとヤバくなれるってなんなのよ。
8:アルフォンス、ちょっとマズいことになってない?
9:施設とかキョウヤ関係者とか、やること増えてきたわね……
10:亀?カメラ?どういうことなのよ。
11:ある程度戦力を揃えて、安全と判断できるなら向かうC-5へ向かいたかったけど……もうそれどころじゃないわ…
[備考]
※参戦時期は少なくとも士郎と同盟を組んだ後。セイバーの真名をまだ知らない時期です。
※野原しんのすけのことについてだいたい理解しました。
※ガンド撃ちや鉱石魔術は使えませんが八極拳は使えるかもしれません。
※御城プロジェクト:Reの世界観について知りました。
※地図の後出しに関して『主催もすべて把握できてないから後出ししてる』と考えてます。
※城プロ、鋼の錬金術師、ポケダンのある程度の世界観を把握しました
※ゲンガーと情報交換してます。

526Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:31:57 ID:eNjl2nDw0
【キャメロット城(グリード)@御城プロジェクト:Re(鋼の錬金術師)】
[身体]:アルトリア・ペンドラゴン@Fateシリーズ
[状態]:グリードとの肉体共有、マスターによるステータス低下、疲労(極大)、上半身ほぼ裸、服の破片や煤等が体中に貼り付いている、スカート部分が破れてる、精神疲労(大・キャメロットの精神)、複雑な心境(キャメロットの精神)、運転中、体温上昇、咳気味、グリードの精神の沈黙、賢者の石内の命がほぼ枯渇
[装備]:マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
[道具]:
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの物語を守り抜く。
1:奴(志々雄)から離れて雨宮さん達との合流を目指す。
2:凛さんを守る。
3:アーサー王はなぜそうまでして聖杯を……
4:白い弓兵、ディケイド、銀髪の剣士を警戒。これ以上あの弓兵の被害が広まる前に……
5:グリードの物語も守ります。ですが、もし敵に回るなら……
6:リオン・マグナス……その名は忘れません。
7:アクション仮面達のことも忘れない
7:かなり大変な格好になってしまいましたが、今は気にしている場合ではありませんね…
8:エターナルソード、使わせてもらいます。
[グリードの思考・状況]基本方針:この世の全てが欲しい! ボンドルドの願いも!
0:………
1:欲しいものを全て手に入れる。けどどういう手順で行くかねぇ。
2:取り敢えずキャメコに力を貸してやる。もし期待外れなら……
3:親父がいねえなら自由を満喫するぜ!
4:あの野郎(志々雄)…
[備考]
※参戦時期はアイギスコラボ(異界門と英傑の戦士)終了後です。
 このため城プロにおける主人公となる殿たちとの面識はありません。
※服装はドレス(鎧なし、FGOで言う第一。本家で言うセイバールート終盤)です
※湖の乙女の加護は問題なく機能します。
 約束された勝利の剣は当然できません。
※『風王結界』『風王鉄槌』ができるようになりました。
 スキル『竜の炉心』も自由意志で使えるようになってます。
 『輝ける路』についてはまだ完全には扱えません。
 (これらはキャメロットの精神の状態でのみ)
※賢者の石@鋼の錬金術師を取り込んだため、相当数の魂食いに近しい魔力供給を受けています。
 →賢者の石の中の命がほとんど消費されました。魔力供給量が減るかもしれません。
※Fate/stay nightの世界観および聖杯戦争について知りました。
※Fate、鋼の錬金術師、ポケダンのある程度の世界観を把握しました。
※グリードのメモ+バリーの注意書きメモにはグリードの簡潔な人物像、
 『バリーはちょっと問題がある人だから気をつけて。多分キャメロットさんが無事なら乗らないと思う。
  後産屋敷さんはまともに喋れてないのもあるから、殆ど人物像が分からないのも少し気をつけておいて。』
 の一文が添えられてます。
※グリードに身体を乗っ取られましたが現在は彼女に返しています。
※グリードが表に出た時スキル、宝具がキャメロット同様に機能するかは別です。
 湖の乙女の加護は問題なく発動します。
※グリードの記憶は少なくとも二代目(所謂グリリン)であり、
 少なくとも記憶を取り戻す前のグリードです。
※グリードが表に出た時はホムンクルス由来の最強の盾が使えます。
 最強の盾がどう制限されてるかは後続の書き手にお任せします。
※キャメロット城の名前をキャメコと勘違いしてます。
※一度石化された後腕が砕けたので右腕の袖が二の腕までになってます。
 →服の上半身部分がほとんど消失しました。ほぼ半裸です。服の破片や煤なども体中に貼り付いています。
※ゲンガーと情報交換してます。

527Awake ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:32:43 ID:eNjl2nDw0
【C-5 道路/夜中】

【志々雄真実@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[身体]:エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(大)、左目から後頭部にかけて貫通する大穴(この部分のみ再生力低下中)
[装備]:エンジンブレード+ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、炎刀「銃」@刀語、アルフォンスの鎧@鋼の錬金術師、時雨(三分の一程折れている)@ONE PIECE、秋水(鍔が一部欠けている)@ONE PIECE
[思考・状況]基本方針:弱肉強食の摂理に従い、参加者も主催者も皆殺し
1:この石(エイジャの赤石)は…
2:奴ら(凛、キャメロット)を追う
3:首輪を外せそうな奴は生かしておく
4:戦った連中(魔王、JUDO)を積極的に探す気は無い。生きてりゃその内会えんだろ
5:再びあいつ(JUDO)と戦う時が来たら、自分の身体が再生能力を持っていることは忘れる
6:未知の技術や異能に強い興味
7:日中、緊急時の移動には鎧を着る。窮屈だがな
8:一人殺したってことは、”ものものましーん”が使えるんだよな?
9:だが、自分の首輪を外すためには、残しておくための首輪の予備も必要になるか?
10:あいつ(DIO)は…もうダメだな
11:まさかこんなところであの逆刃刀を見ることになるとはな…
[備考]
※参戦時期は地獄で方治と再会した後。
※JUDOが再生能力を封じて傷を付ける能力に目覚めたと認識しています。
※DIOはもう死んだものだと認識しています。
※スゲーナ・スゴイデスのトランプで召喚されたぶりぶりざえもんを捕食しました。
※アルトリア(グリードと肉体共有中)の肉の欠片を吸収しました。

※周囲に「基本支給品、エイジャの赤石@ジョジョの奇妙な冒険、グリードのメモ+バリーの注意書きメモ、銀時の首輪」が落ちています。



【支給品紹介】

【エイジャの赤石@ジョジョの奇妙な冒険】
エイジャと呼ばれる宝石の一種。
中でもここにあるのは、ローマ皇帝も所有していた純度の高いスーパー・エイジャと呼ばれるものである。
この石は光を当てると、中で何度も反射しながら光を増幅させ、一点に凝縮・放出してまるでレーザー光線のようにしてしまう性質を持つ。
放出された光線はとても高い威力を持つようになる。
柱の男の一人であるカーズは、この石の力が自分の求める効果を持つ石仮面の完成に繋がると考え、仲間達と共に狙っていた。
また、波紋のエネルギーも増幅、光線のように放出させることもできる。

528 ◆5IjCIYVjCc:2025/01/27(月) 23:33:07 ID:eNjl2nDw0
投下終了です。

529 ◆5IjCIYVjCc:2025/03/23(日) 16:28:06 ID:MA60bkdU0
【リレー制度の停止のお知らせ】
ご無沙汰しております、企画主です。
この度は、チェンジロワの今後の進行について重要なお知らせをしに来ました。
本ロワはもう私以外に話の予約をする人がいないようなので、ただ今をもちましてリレー制度を廃止することにしようと思います。
今後は私1人で執筆することになります。
書き手用ルールも全て撤廃し、今後は私の自由に書かせてもらいたいと思います。

今後の進行については、予約期限のルールも無くなるため、私がキリの良いところまで書けたと感じたら話を投下する形になるかと思います。
なお、何の連絡も無いまま待たせ続けることになるのも問題かもしれないとも感じますので、月に一度は進捗を報告できたら良いなとは考えています。
私については自分でも遅筆だと感じているために投下は不定期になり、完結までには時間がかかることになると思います。
前述した進捗報告についても、絶対に月に一度は出来るとは、必ずそうするといった約束は出来ません。
私が他の企画で書きたい話がある場合や、リアルの事情でしばらく書けない時期が出てくる可能性もありますが、それらの点についてはどうかご了承願います。

先に報告しておきますと、5月〜6月にかけてはリアル事情で執筆することが難しく投下できないです。
4月も少々活動し難くなる可能性もあります。
一応、こちら側に全く顔を出せなくなるものではないはずです。
けれども、こちらでの進捗報告に来ることもこの期間の間はおそらく無いかと思います。

ここまで企画を続けて来られたのは、本ロワのリレーを進めてくださった書き手の皆様や、感想をくださった皆様のおかげです。
誠にありがとうございました。

530名無しさん:2025/03/25(火) 20:37:36 ID:stCOAhJs0
相分かりました。楽しみにしています。

531 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 20:48:56 ID:CykjoBsE0
閑話を投下します。

532 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 20:52:19 ID:CykjoBsE0
※今回の話は演出等の都合上、登場人物達の名前を出さずに進めます。ご了承ください。
※今回伏せ字になっているものが何なのか、今後明かされることはありません。

「オラオラオラーッ!!邪魔するぜぇ!!」
「ケンカの話の時間だ!!『ガンッ』コラ痛(ッタ)…」
「あ……お邪魔します…」

「「「!!?」」」

牢獄の中に、突如として3人の人物が現れた。
……その者達の内2人は、人の姿をしていなかっが。
1人は、ピンク髪の少女。
1人は、オレンジ色のなんかトゲトゲした一頭身。
1人は、全身水色でプルプルして角ばったやつ。
以降、彼らのことはそれぞれピンク、オレンジ、水色と呼ぶ。

彼らは突如として、狭い牢獄の中に3人で出現した。
その内のオレンジが叫びながら牢の鉄格子を蹴ったが、逆にそれにより足を痛めて踞った。
ピンクだけ礼儀正しくあろうとしているように見えた。

彼らが現れたことに対し、牢獄の外にいた2人の看守と、この空間の主の立場の者が驚いたような反応を見せる。

「……ってアレ!?■■■の奴がいねえぞ!?」

復帰したオレンジが、周囲を見て驚いたような反応を見せる。

「くっ…やはりあのバリアには敵わなかったということか」
「ちくしょう!こうなるんだったらもっとたくさん海苔を貼り付けておくんだった!俺がおにぎり食べたかったばかりに…!!」
「いや……それでも結局■■■■■■■さん達は入れなかっただろうし、そもそもここ4人で入れる広さじゃないでしょ」

大袈裟に後悔するような反応をする2人に対し、ピンクが冷静にツッコミを入れる。

「じゃあ■■■の方に巻いたら、おにぎりになって通れたんじゃねえか?」
「いや■■■■■■■さんに海苔を巻いてもおにぎりにはならないよ!!?」

更に畳み掛けられたボケた発言に、ピンクはツッコミの声を大きくしてしまう。


「おい……何だお前ら?どこからどうやって入ってきた?」

牢獄前の2人の看守の内の1人が質問する。
看守達は少女の姿をしており、青い看守服に身を包んでいる。
彼女らはそれぞれ右目、もしくは左目に眼帯を着けている。
先ほど質問したのは、右目に着けている方だ。
ついでにもう1人いる主という者は、空間の中央辺りで机の前で椅子に座っており、顔は長鼻があるのが特徴的だ。
以下、彼らのことは右眼帯、左眼帯、長鼻と呼称する。

「どこから入ったって、外からに決まってんだろ」
「どうして入れたかっつーと……奇跡の光が導いてくれたの!後は終盤だからってのとリレー制度が無くなってなったからってのもあるな」

右眼帯からの問いに水色とオレンジが答える…が、いまいち意味不明な回答だった。

「……あなた達は何者かという質問にも答えてください」

左眼帯が更なる返答を求める。

「えっと……実は私たちは、本当ならここに存在しちゃいけなくて…」
「……それは当然だろう。我々にとってお前達は招かれざる客…」
「あーいやいや、そーゆーことじゃねーんだよ。これはもっと深ーい意味での話でなー」
「……何の話だ?」

先ほどよりも更に要領を得なくて曖昧な感じの返事に疑問符が浮かべられる。

「ま、お前らには理解できないだろうな。このレベルの話は✨」
「…………(イラッ」

まともに話を取り合おうとしないように見える相手達に対し、イラつきが溜まっていく。

「………話を変えよう。お前達の目的は何だ?」

長鼻は一先ず、次に気になることについて聞い出そうとする。

「あの…すみませんが、少しだけこの場所を使わせてください!一応、ただここに居させてもらえればそれで良いんです!」
「ほう……それは何のためにだ?」
「えっと……詳しいことはまだ話せなくて……。ただ、ここが監獄であることが都合が良いらしくて……」

質問に対しピンクが答える。
しかし彼女も、まだ話せないこともあるようだった。
彼女らもまた、自分達が何故ここに来なければならなかったのかの理由の全てを知っている訳でもないようだった。

533 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 20:57:44 ID:CykjoBsE0
「そんな態度で、お前達のような得たいの知れないものをこのまま置いておくと思うか?」

長鼻は威圧的な言葉を投げ掛ける。

「ここから出ていけ。さもなくば死ね」

そして冷たい声で、そう言って突き放した。

「面白れぇ…やってやろうじゃねえか…!!」
「げっへっへ!!このまま何もせずに待っているのも癪だと思ってたんだ!!」
「ちょっと2人とも!そんな煽らなくても良いでしょ!?」
「俺たちだって暴れてえんだよ!!!ずっと何も出来なくて我慢していたからなあ!!!!」
「全員が出られる訳じゃないところからせっかく選ばれたんだ!!!爪痕くらい残させろよ!!!」

ゲスな顔で小物臭い態度取りながら好戦的な様子を見せるオレンジと水色に対し、ピンクが諌めようとする。
それに対する気迫に満ちた反論は、またまた一部意味不明で変なところもあった気がした。

「主、ここは我々にお任せを」
「こんなやつら、私たちだってこれ以上一秒たりとも見ていたくはありません」

少女看守の2人が牢に近付く。
彼女らもまた謎の侵入者達を追い出そうとしている。

『ガチャ』『ギィ…』

オレンジ達のいる牢の扉が開かれる。
これでもう後は、戦うだけだ。

「おい、アレの用意は大丈夫か?」
「ああ!!バッチしここにあるぜ!!!」
「よし、それじゃあ行くぞ!!!」

オレンジと水色がそれぞれどこからそれぞれあるものを手元に取り出し、構える。

それらは、どちらも、にんじんであった。

「この聖剣ニンジンカリバーの錆にしてくれるわ!!!!」
「この聖槍ニンジミニアドで貫いてみせる!!!!」
「「うおおおおおおおっ!!!!」」

2人はにんじんを構えながら牢の外に飛び出て、看守少女達に向かって突っ込んでいった。
※ニンジンソードとは別物です。


◆10秒後……


「「負けちゃった…」」
「だろうね」

残念でもなく当然、負けました。
ボッコボコにされました。
むしろよく10秒ももった方です。


「さて…では早速消えてもらうとしようか」
「囚人未満の不法侵入者達にここにいる資格はありません」
「今すぐ回れ右して出ていくなら、見逃してやらんこともないぞ」

改めて、長鼻達が殺気を放ってくる。
看守少女達が、互いに警棒とカルテを手の中で弄びながらじわじわと近付いて来る。

「や、ヤバいよ2人とも…」
「くっ…!」
「こんな時、アイツがいてくれたら…!!」

3人もこの状況には流石に慌て始める様子を見せる。
オレンジと水色は尻餅をついた状態のまま後ずさろうとする。
その時だった。



「フォーッ!!」
『ガシャアンッ!!』

まず、掛け声と共に牢の鉄格子が破壊される音が聞こえた。

『ボウッ!!』『ジュワッ』
「「!」」『ダッ』
「「ぎゃああああああああああぁぁぁぁっ!!!!?」」

次に、破壊音が聞こえてきた方角から火炎が放射された。
看守少女達はそれに気付き、咄嗟に後ろに跳んで回避した。
炎はオレンジと水色を飲み込み、焼いた。

「わー♪美味しそうに焼けてるー♪」『メラメラ』
「いただきまーす♪」『パチパチ』

炎が晴れた後、焼かれた2人は手に持っていたにんじんを見ながら笑顔で目を輝かせた。
炎により、にんじんが丁度良い感じに焼けていた。
彼ら自身にも、火は燃え移っていた。


「火火火(ヒヒヒ)。よくここまで耐えてくれたな」
「フォーフォフォ。お陰で我らも来られたぞ」
「あ、あなた達は…!」

新たに2つの声がこの空間に響いた。
ピンクはそれに対し、その声の主を知っているかのような反応を見せる。

534 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 21:00:07 ID:CykjoBsE0
「……まさか新手が来るとはな」

声の聞こえてきた方にあるのは、ピンク達が出現したものとは別の牢だ。
その牢の鉄格子の扉が、壊されて開けられていた。
そして牢の中には、2つの人影が存在していた。

1人は、アイスホッケーのマスクのような顔をした、背中から巨大な左手を生やした大男だった。
もう1人は、帽子を深く被って、煙草を咥えている、顔に大きな火傷の痕もある男だ。

今後は彼らのことをそれぞれ、左手男と煙草男と呼称する。


左手男は、背中の巨大な左手で強引に取り外したことでひしゃげた牢の扉を掴んでいた。
『ガシャン』
男はその扉を投げ捨て、空いた巨大左手を自分の体に背中から掴ませる。
巨大左手の人差し指の先にはもう1つ手が存在しており、その手の平は男の頭を掴むように置かれた。


「無礼者共め……これ以上この場を荒らされてたまるか!」
「おっと、落ち着けよお嬢ちゃん。俺たちはここには争いに来た訳じゃねえんだ」

煙草男はそう右眼帯に言って話を続けようとする。

「……いきなり仲間ごと焼こうとする者たちを、信用できると思いますか?」
「フン、こいつらは仲間ではない。ただ行動を共にせざるを得ない状況になっているだけだ」
「あっ、おい。変に煽るなって」

左眼帯の発言に対して不遜気味な態度を取る左手男に対し、炎を放った張本人である煙草男が諌めようとする。


「何人で来ようとも無駄だ。我らがお前たちを認めることはない」
「火火(ヒヒ)っ。いつまでも粘り強く交渉させてもらうさ」
「我らには果たさねばならぬ使命があるのでな」

威圧的な長鼻の言葉に、男たちは怯まずにそう答える。
彼らの間で、新たな睨み合いが開始されていた。



「おいし♥」「おいし♥」『『モグモグ』』『『メラメラ』』
(……本当に大丈夫なのかなあ…)

一触即発な状態の者達を尻目に、オレンジと水色はにんじんの丸焼きを美味しそうに食べていた。
彼らの体はまだ燃えている状態のままでだ。
ピンクだけは、この状況に対して不安そうにしていた。

535 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 21:01:08 ID:CykjoBsE0
投下終了です。
タイトルは「閑話:サバイバー」とします。

以前にも連絡していた通り、5月と6月はリアルの事情でこちらでの活動は難しく、投下や報告をすることは無いと思います。
改めて、ご了承願います。

536 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 21:01:44 ID:CykjoBsE0
また、ついでの連絡ですみませんが、以前私が投下した「Jの奇妙な冒険/懐玉」と「Jの奇妙な冒険/玉折」のタイトルを、それぞれ「Jの奇妙な冒険/ファントムブラッド」と「Jの奇妙な冒険/戦闘潮流」に変更したいと考えています。

変更されるのはタイトルだけで内容は変わりません。

537 ◆5IjCIYVjCc:2025/04/30(水) 21:08:29 ID:CykjoBsE0
先ほど投下した話について、最後に以下の1文を追記します。




あっ、今回の時間帯は真夜中としておきます。


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