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チェンジ・ロワイアル part4

1 ◆5IjCIYVjCc:2024/01/27(土) 15:52:18 ID:A3HUuRCo0
【当企画について】
・様々なキャラに別のキャラの体を与えてバトロワをする、という企画です。
・コンペ形式で参加者の登場話を募集します。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎します。

【参加者について】
・このロワの参加者は皆、自分の体とは別人の体で戦うことになります。
・参加者として扱われるのは体を動かす精神の方のキャラクターです。
・精神と体の元になるキャラの組み合わせは自由です。

【ルール】
・全員で殺し合い、最後に生き残った1人が勝者となる。
・制限時間は3日。
・優勝者だけが元の体に戻れる。
・優勝者はどんな願いでも叶える権利を得る。
・参加者は皆爆弾入りの首輪を嵌められている。これが爆発すると如何なる存在でも死亡する。
・主催者は権限により首輪を独自の判断でいつでも爆破することができる。
・主催者が「これ以上ゲームを続けることは不可能」と判断したらその時点で全参加者の首輪が爆破される。
・参加者は最初、会場のどこかにランダムにテレポートさせられる。
・NPCなどは存在しない。
・ゲームの進行状況等は6時間ごとに行われる放送でお知らせする。
・定期放送ごとに禁止エリアが3か所発表される。
・禁止エリアに立ち入ると首輪が5分後に爆破される。
・禁止エリアが有効となるのは放送から2時間後。
・禁止エリアに立ち入った場合、首輪は事前に警告音を鳴らす。

【支給品について】
参加者にはデイパックというどんなものでも入る小さなリュックが渡されます。その中身は以下の通りです。
・地図:会場について記されている。
・食料(3日分):ペットボトルの水やコンビニ弁当など。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。最初は入っていません。本編開始とともに配布について放送でお知らせされます。
・ルール用紙:ルールについて書かれたA4サイズの紙。
・ランダム支給品:現実、フィクション作品などを出展とするアイテム。最大3つまで。
・身体の持ち主のプロフィール:このロワで与えられた体の元の持ち主について簡単に記してある。記載事項は名前、顔写真、経歴、技能といったものなど。
【追加支給品】
・コンパス:方位を知るためのアイテム。手持ちサイズの小さなコンパス。赤い針が北を指す。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。五十音順で記されている。身体についての記載は無い。

【支給品についての注意事項】
・2021年9月22日現在、既に登場している参戦作品以外からの出展で支給品を登場させることを禁じています。

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の24時からです。

【時間表記】
深夜(0〜2)
黎明(2〜4)
早朝(4〜6)
朝 (6〜8)
午前(8〜10)
昼 (10〜12)
日中(12〜14)
午後(14〜16)
夕方(16〜18)
夜 (18〜20)
夜中(20〜22)
真夜中(22〜24)

【状態表について】
・状態表には以下のテンプレート例に示すように[身体]の欄を表記することを必須とします。
【状態表テンプレート例】
【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]

・死亡者が出た時は以下のように表記してください。
【名前@出典(身体:身体の名前@出典) 死亡】

【予約ルール】
・予約する場合は3週間を期限とします。
・期限を過ぎて何も連絡が無ければ予約は取り消しとなります。
・予約を延長する場合はもう1週間までとします。
・予約が入っていないキャラならば予約なしのゲリラ投下も可能です。
・予約期限を過ぎた場合、同じキャラを再予約ができるのは5日後とします。

まとめwiki:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/
専用したらば:ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18420/

2 ◆5IjCIYVjCc:2024/01/27(土) 15:57:54 ID:A3HUuRCo0
4スレ目を建てました。
前スレが足りなくなればこちらに投下してください。

3 ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:24:31 ID:3pAQFX7M0
スレ立てお疲れ様です
引き続きこちらに投下します

4自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:25:35 ID:3pAQFX7M0



戦いが始まったと分かれば杉元のスイッチが即座に切り替わる。
全方位から常に死が迫る日露戦争を、骨の髄まで味わって来た男だ。
動くべき時に動けない愚行を今更犯す筈も無く、右手を跳ね上げ引き金を引く。
コルト・パイソンが火を吹き、肉の壁と見紛う脚を食い千切った。
更には内部で爆破した弾丸が神経を破壊する。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

残念ながら巨人への効果的なダメージにはならない。
対未確認生命体用の特殊弾も、規格外のサイズを誇る巨人相手では豆鉄砲に等しい。
的が大きい故、自他共に認める射撃下手の杉元でも当てられるのはほんのちっぽけな慰めか。
大した傷で無くとも攻撃は攻撃、小癪な真似に出た一匹の虫が最初の標的に選ばれた。

地上の蟲に鉄槌を下す神の如く、上空より襲来する足底。
大質量の急接近に空気が悲鳴を上げ、危機感をこれでもかと高めさせた。
道で蠢く目障りな蟻を潰すように、人間一人の命が容易く奪われる。
だが自らの終わりを黙って受け入れるかは別。
纏わり付く死を幾度となく跳ね退けたからこそ、只の人間でありながら不死身の異名を手に入れた男なら尚更だ。
迫る脅威を火薬に、自らを弾丸に変え疾走。
蓬莱人の身体能力でも十分な距離を取らねば無事では済まない。

「うおおおっ!?」

回避成功を喜ぶ暇もなく、振り下ろしたばかりの足が襲って来た。
たっぷり蓄えた猪のような親指が視界いっぱいに映り込む。
骨が折れる程度では済まない、半身が粉砕されるのは確実。

5自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:26:09 ID:3pAQFX7M0
「甜花!」
「う、うん……!」

死を遠ざけ、巨人に立ち向かうのは杉元一人の役目に非ず。
金塊争奪戦でアイヌの少女や脱獄王がそうだったように、此度も彼の仲間が黙っていない。
ビルドと斬月、合図へ頷き二人の戦士が銃撃を開始。
ライドブッカー、ドリルクラッシャー、無双セイバー。
三つの銃口から放たれたエネルギー弾が巨人の足を狙い撃つ。
爪が割れ肉が弾け飛び、病院前の地面を赤く彩る雨が降り注ぐ。

「痛っ!爪!爪が当たった!」

杉元の額へ爪の欠片が突き刺さったが事故である。
ともかく蹴りの勢いが僅かに弱まり、反対に杉元は両脚の筋肉を総動員。
数秒前までの位置を巨人の足が通過、背中へ嫌な風圧を感じながら跳び退いた。

仲間への援護が上手くいった代償として、怒りの矛先が二人のライダーに変更。
同じ銃撃でも威力で言えば彼らの方が上、しかしうなじ以外の攻撃は決定打になり得ない。
再生が始まっている足で地面を踏みしめる姿から、攻撃が堪えた様子は微塵も無し。
殲滅を促す脳からの指令と、絶えず湧き出る憎悪に突き動かされ拳を振り下ろす。
拳一発蹴り一撃が災害級の威力だ、直撃すれば仮面ライダーの装甲があっても無事では済まない。

「ま、やっぱりそう来るよな…!」

敵意が今度は自分達に向けられるのも承知の上だ。
巨人の蹴りを杉元が躱した時点で、ビルドはとっくに次の行動に出ている。
ライズホッパーに跨り、後ろに斬月を乗せ準備完了。
拳が地面に叩きつけられたのは猛発進した直後のこと。

6自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:26:50 ID:3pAQFX7M0
「ひぃん……!は、速い……!」
「キツいだろうけど振り落とされるなよ!」

猛スピードで駆けるライズホッパーに、斬月は目が回りそうだった。
変身せずにいたら確実に地面を転がっていただろう。
とはいえ相手が相手だ、ビルドだけならまだしも斬月が一緒ならばこれくらいの機動力は必須。
巨人が大股で一歩踏み出せば、たったそれだけで呆気なく追い付かれる。
加えて巨人は肉体の密度が薄い、巨体に反して俊敏な動きも可能という厄介さ。
巨人討伐に慣れた調査兵団であっても、基本は『遭遇しない』のを大前提とする理由の一つ。

しかしライズホッパーは、飛電インテリジェンスが開発を行ったスーパーマシンだ。
全速力の巨人であっても簡単には追い付けない。
これが殺し合い開始直後のような暴走だったら、巨人はビルド達から引き離されたままだろう。
されど忘れるなかれ、今の巨人は洗脳と憎悪の影響で対象の殲滅に最適解を弾き出す殺戮マシーン。
速度で勝る相手だろうと決して逃げられない。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

大地を陥没させん程に踏みしめ跳躍。
ただそれだけで暴風が巻き起こり、装甲越しから容赦なく叩きつける。
上空から眼下の標的へ狙いを定め拳を突き出す。
落下の勢いも上乗せした一撃の急接近は、走行中のビルド達へ更なる警鐘を鳴らす。
ライズホッパーの速度を上げるも猛烈な悪寒は消えてくれない。
ビルドの脳がフル回転し次の行動を決定、走っているだけでは拳を避けるのは不可能。
だが手はある。

7自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:27:31 ID:3pAQFX7M0
「ちょっとだけ無茶やるから耐えてくれ!」
「えっ?ひゃっ、きゃああああああっ……!?」

拳が振り下ろされた先に哀れな死体は無い、潰された地面が見えるだけだ。
直撃の寸前にハンドルを操作し、何とライズホッパーは前方へと大きく飛び跳ねた。
地面を離れ宙へと逃げ込んだ安心は長続きせず、再び脅威が急接近。
どこへ行こうと関係ない、降り立つ前に捕えるべく巨人は反対の手を伸ばす。
巨大な掌に掴まれ、後は握り潰されるか腹の底へ真っ逆様の二択。
尤も、それを予測できないビルドではない。

斬月の手を取り、ライズホッパーを乗り捨てる形で跳ぶ。
落下するバイクには目もくれず、伸びたままの腕へ着地。
じっとしていれば摘ままれるか潰されるかだ。
ラビットフルボトルの成分でハイジャンプを行い、巨人から遠ざかる。
無論、巨人がそのまま見逃すのは有り得ない。

「ピ〜カ〜!!」

相手の動きに注意を払い続けるのはこちらも同じ、でんこうせっかで追いかけて来た善逸が妨害に動く。
鬼との戦い、特に上弦や無惨との死闘では1秒たりとも集中力を切らせなかった。
僅か一瞬の気の緩みが即座に死へ繋がるのを、嫌と言う程に知っている。
気絶しそうな恐怖の中でも巨人から決して意識を逸らさず、ピカチュウのわざを発動。
天空より降り注ぐ一筋の光。
神が下す裁きの如く、眩い雷光が巨人を――貫かない。

「ピカ?ピカアアアアアアア!?(あれ?ええええええええ!?何で!?今雷落ちたよね!?)」

まさかの大外れに、たちまち頭はパニック状態。
空から巨人目掛けて雷を落とした、自分の攻撃なんだからそれは間違いない。
なのに当たらなかったのは一体どういう訳か。
幾ら何でもあんな巨大な相手に外す、なんてことはないだろうに。
DIOや姉畑には綺麗に命中したのが、何故今に限って外れるのだろうか。

8自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:28:24 ID:3pAQFX7M0
かみなりはでんきタイプのポケモンが使う中でも高火力のわざだ。
しかし10まんボルト等と違い、常に必中する訳ではない。
天候によって命中率が左右され、晴天時には半分の確率でしか当たらない。
現在は日がほとんど沈んだ為、晴天時程低くはないがそれでも確実に命中するかと言えば否。
雨天時に起きたPK学園での戦いの時とは異なり、こういったかみなりが外れる事態も出てくるのである。

そういったポケモントレーナーの常識を善逸が知る訳が無く。
まして対峙中の巨人にはもっと関係無い。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

また一人滅ぼすべき者が目の前に現れた。
それだけ分かれば十分であり、それ以外を考えなどしない。
完全に再生を終えた足が地面を蹴り上げる。
拳の餌食に選ばれたのは、人間よりも小さな生物。
なれど巨人が止まる理由には断じてならず、振り下ろす鉄拳はさながら巨岩の投擲。
青褪め甲高い悲鳴が耳を劈こうとも知ったことではない、黄色い体躯が拳の真下に消え失せる。

手をどかせばそこには赤い染みが、見当たらなかった。

「ピ、ピカ〜〜〜〜〜〜!!!!!」

汚い高音の叫びは標的がまだ無事な証拠。
音の発生源を即座に探し当て、我武者羅に駆け回る黄色い体躯を睨み付ける。
但し巨人が見たのは、複数体のピカチュウが逃げる姿だった。

「ピカピ!?ピッピカチュウ!?(ってあれ!?なんか俺増えてる!?)」

自分のことながら善逸も困惑を隠せない。
これもまたピカチュウが使えるわざの一つ、かげぶんしんだ。
名前の通り分身を作り出し、攻撃の回避率を上げる効果を持つ。
今さっき潰されたのは分身の一体であり、本体はこうして逃げ延びた。

増えたなら纏めて潰せば良い。
巨人が足を振るえば、たったそれだけで分身全てが薙ぎ払われて消滅。
あっという間に本体一匹へ逆戻り。
再度かげぶんしんを行う余裕は与えず、掌が善逸の逃走を阻む。

9自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:29:10 ID:3pAQFX7M0
「どおおっせええええいっ!!!」

なれば巨人を阻む者もまた、当然の如く現れる。
颯爽と駆け付けた不死身の杉元、抜き放つ得物は和泉守兼定。
鬼の副長と恐れられ、英霊にまで至った剣豪の愛刀。
杉元が知る老剣士程使い慣れてはおらずとも、蓬莱人の身体能力と自らの技能で補う。
気合一閃を絵に描いた刃は、巨人の指を数本纏めて斬り落とす。

「ついでにこれもだ!」

善逸を掴む筈の指が無くなり、黄色い獣はすり抜けるように逃げた。
憎悪の矛先は最初と同じく杉元へ変更。
だが杉元は動じない、殺気だなんだを向けられるのは最早日常茶飯事。
刀を納め両手を自由に、翳した掌から火球を連続で発射。
弾幕ごっこと違って見栄えを全く考えない、威力優先の火炎地獄。
たちまち肉が焼ける臭いが立ち込めた。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

それがどうしたと言わんばかりの咆哮。
体中が焼かれようとも知ったことか、火球諸共薙ぎ払う。
腕を振るう単純な動作が、まるで大木を叩きつけたかの強力無比な一撃と化す。
跳んで避け切れるかは微妙なところ、自ら地面に倒れ込みやり過ごすのを選択。
頭の上を大質量が横切る感覚、思わずヒヤリと寒気が走った。

「杉元!」

自身を呼ぶ声に何だと聞き返さず、意図を察知し急ぎ後退。
入れ替わりに前へ出たビルドがカードを取り出す。
巨人と目が合い、こちら何をする気か察したかは不明だが腕が伸ばされた。
次の手に出る前に叩きのめすつもりか。

10自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:30:01 ID:3pAQFX7M0
『メロンスカッシュ!』

突如横合いより投擲された物体が腕に命中、肉を削ぎ骨を砕く。
ロックシードのエネルギーで強化されたメロンディフェンダーだ。
敵の意識が外れたなら大技をぶつけるチャンス、ゲーム内でのお約束である。
これは画面の向こうの世界では無く現実で、実行に移した斬月は緊張感に襲われているが。

『FAINAL ATTACK RIDE BUI・BUI・BUI BUILD!』

斬月が標的にされる前にビルドも動かねばならない。
ディケイドライバーにカードを装填、解放されたエネルギーがグラフ型の滑走路を作り出す。
スマッシュを撃破した蹴り技はここでも健在、グラフを滑り急加速し巨人へ足底を叩きつけた。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!??!』

咄嗟に両腕が伸ばされるも、瞬間的なスピードはビルドに軍配が上がる。
脚部へ当たった足底のキャタピラが高速回転、蹴りの勢いに加えて皮膚を削り取っていく。
時間を置かずに再生こそされるだろうが、巨体を支える箇所の損傷だ。
巨人の体勢が崩れ膝を付く。
痛覚が薄い巨人が痛みへ叫ぶことはない、代わりに悉く小賢しい真似に出た者達への憎悪を一層滾らせる。

そしてこの瞬間に5人目の戦士が動く。

「変身!」

『蒼き野獣の鬣が空になびく!ファンタスティックライオン!流水三冊!紺碧の剣が牙を剥き銀河を制す!』

物語の語り手を思わせる電子音声が剣士の降臨を知らしめる。
青い装甲と胸部のライオンはそのままに、より重厚さを増した姿。
右肩には神獣が、左腕にはおとぎ話の力をそれぞれ纏う。
神楽も一度は見たが、自身が変身を行うのはこれが初めて。

11自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:31:10 ID:3pAQFX7M0
仮面ライダーブレイズ・ファンタスティックライオン。
三冊のワンダーライドブックで変身するブレイズの強化形態。

「おっしゃ!やってやるアル!」

巨人は膝を付き、意識は完全にビルドら4人へ向けられている。
少し離れた位置でブレイズになったブレイズは完全にノーマーク。
康一を助け出すには正に絶好のタイミングだ。

飛行能力を持つブレイズならばうなじへ近付くのも難しくない。
そう考え飛び出そうとした所へ戦兎が待ったを掛け、自分達が隙を作るから待つよう言われた。
反論する前に各々動き出し、悩んだが勝手な行動が大きな過ちを引き起こすのは自分が一番分かっている。
逸る気持ちを抱え続け、とうとうその時は来た。

右肩のペガサスボールドが天を翔ける力をブレイズに与える。
翼を広げ地から足を離した際の機動力は、タケコプターとは比べ物にならない。

(これならいけるネ…!)

自由に空を飛び回る解放感に、こんな状況でなければ喜んだかもしれない。
僅かに浮かんだどうでもいい感想を追いやり、意識全てを巨人へ集中。
自分の罪を知っても責めず、仲間として受け入れてくれた者達が作ったチャンスだ。
つまらないミスでふいにするのは許されない。
村で康一に何が起きたか考えるのも、助け出してから聞けば良い。
銀時を失って錯乱した自分を立ち直らせてくれた康一を、託された聖剣で取り戻す。
決意の固さはそのまま柄を握る力の強さに変わる。

12自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:31:51 ID:3pAQFX7M0
(もう少し…!)

うなじまで後もう僅かの距離。
背後からの気配に気付いたのか、巨人の首が揺れ動いた。
それでも速いのは自分の方だと勝利を確信、ブレイズの聖剣が寒風諸共うなじを切り裂く。

「これで…!」

取ったと、その場にいる全員が思った。
康一を閉じ込める肉の檻をこじ開け、無事救出。

そんな都合の良い展開は、キンッという音と共に否定される。

「なっ!?」

流水は巨人のうなじを正確に狙った。
本来巨人討伐に用いる装備で無くとも、ブレイズの能力と無数のメギドを斬って来た流水があれば、康一本体を引き摺り出すのも不可能ではない。
だが現実の光景は無情だ。
流水はうなじを斬れず皮膚に弾かれた。
皆が作ったチャンスは脆く呆気なく失われ、巨人の瞳がブレイズをハッキリ捉えて離さない。

巨人となったエレン・イェーガーの能力は、単に巨体を利用し暴れ回るだけではない。
ロッド・レイスが所持していた薬により手にいれた硬質化。
正史において、ライナー・ブラウンを始め巨人化能力者との戦闘で幾度も発揮された力だ。
当然精神が別人になっても硬質化能力は健在。
東エリアの街で起きた戦闘時でも使われ、雨宮蓮を始めとした参加者達を大いに苦戦させた。

硬質化に関しての情報を戦兎達に教えなかった件で、神楽を責めるのは酷だろう。
何せ神楽が覚えている暴走した時の康一は、このような能力を一度も使わなかった。
こんな力が巨人にあったなど、神楽にだって予想外。

13自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:32:37 ID:3pAQFX7M0
といった事情も巨人の知ったことではない。

またもや滅ぼすべき蟲が現れた。
不意を打つつもりだったようだが硬質化を破れず、結果間抜けにも凍り付いたまま。
殺さない理由がどこにあると言う。

「っ!!あっぶね…!!」

小蝿を仕留める気安さで平手打ちがブレイズを襲う。
硬直から咄嗟に動けたのは、やはり万屋銀ちゃんの従業員として数々の大事件を解決して来た経験からか。
ファンタスティックライオンの固有能力の一つ、肉体のゲル化を使用。
液体を叩いたところで無意味。
しかしこれも制限の対象になっているのか、ブレイズの意思とは無関係に短時間で実体化。
尤も既に地面へ着地を終えており、ビルド達に並ぶ。

「な、何で急にカッチカチになったネ?新八みたいに一人でシコシコやってるアルか?」
「シ……!?あ、あの、それって……あうう……」
「んなハッキリ言ってやるなよ。男ならまぁ…」
「ピカ!?(なななななんで俺を見るの!?)」
「急に下ネタぶち込むんじゃないよ。ってかそんな場合じゃないでしょーが」

ほんのちょっぴり流れたギャグ漫画の住人ならではの空気は、巨人が発するプレッシャーで消し飛ぶ。
おふざけが通用する時間は完全に終わりだ。

二本足でどっしりと大地に立ち、地蟲を睥睨する憎悪の化身。
姿形はこれまでと何ら変わっていない。
しかし纏う存在感が否応なしに理解させる。

ここからが地獄の始まりだと。

14自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:33:24 ID:3pAQFX7M0
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

天地を揺るがす雄叫びが開戦の合図。
体を支える左足はそのままに、右足を大きく振り上げ指先が空を睨む。
踵部分が硬質化、断頭台の如く降ろされた鉄塊に全員の肌が総毛立つ。
避けろと言ったのは誰か、短い言葉を聞き届けるより早く跳び退く。

巨体を利用し、硬質化で威力を高めた踵落とし。
直撃せずとも発生する衝撃波が吹き飛ばす。
己の意思とは無関係に体が宙を舞い、地面への激突は時間の問題。

「俺は…不死身の杉元だ!!」
「ピカ〜〜〜!?」

異名を名乗り上げ己を鼓舞、足場のない状態でありながら踏み止まる。
幻想郷の住人だから可能な飛行能力だ。
偶然傍を横切った黄色い獣を掴み、直後眼前へ迫る拳。
慌てて急降下し回避、頭上を通過する鉄拳を見ないままに善逸を降ろす。
巨人の二撃目を一々待つつもりはない、再度飛び上がり火球を連射。
場所を空中に移しての第二戦だ。

「ホアチャアアアアアアアッ!!!」

杉元とは別方向から飛翔する青い剣士。
ブレイズも飛行能力を駆使して落下を防ぎ、攻撃を再開。
海賊の船長のようなフックを振り回し、ライドブックの力を引き出す。

ブレイズの動きに呼応し空中に水が生み出される。
真下に流れ落ちる筈の水はなんとリング状へ変化。
更には妖精やライオンがリングを通って現れ、巨人に攻撃を仕掛ける。
おとぎ話の住人達を味方に付ける、これこそ変身に使った二冊目のライドブックの力だ。

15自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:34:09 ID:3pAQFX7M0
炎の弾幕と妖精が狙うのは巨人の両腕。
腕を一時的にでも使用不能にさせれば、再びうなじを狙いに行ける。
だが巨人の腕に二人の猛攻はまるで効果が無い。
うなじを守ったのと同じ硬質化を、今度は両腕に使用。
僅かな焦げ目と掠り傷が精一杯の悪足掻きなど、脅威には程遠い。
しゃらくさいとばかりに左右へ拳を突き出した。

「チッ…!」

巨体からは考えられない程に速い。
攻撃を中断し回避へ集中。
掠めるだけでもまず致命傷は免れず、おまけに避けても発生する暴風で体勢を崩される。
死線を何度も潜り抜けて来た杉元と言えど、ここまで巨大な敵との戦闘は未知の領域。
気付かぬ内に緊張の汗を流す。

拳の通過位置を大きく移動し背後を取る。
ブレイズも同じ考えだったのか、反対方向から巨人の背を狙うのが見えた。
腕の破壊が難しいなら、多少無理してでもうなじを攻撃。
名刀と聖剣を抜き、囚われの少年が埋まっている箇所へ急接近。
硬質化はさせぬとばかりに振るわれた二刀はしかし、切っ先すらも届かない。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

腰を大きく捻り、伸ばした腕が半円を描く。
ストレッチにも似た動きを巨人が行えば、それは災害と変わらない。
全身を叩きつける暴風に揉みくちゃにされ、強制的にうなじから引き離される。
武器を落とさず握り締めれただけでも奇跡に近い。
装甲を纏うブレイズでもノーダメージは恐らく不可能、生身の杉元は言わずもがな。
ロクな受け身も取れないまま、あわや地面の染みと化す。

16自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:34:53 ID:3pAQFX7M0
『KAMEN RIDE GHOST!』

『レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ!ゴースト!』

『メロンアームズ!天・下・御・免!』

『ジンバーメロン!ハハッー!』

待ち受ける末路は二人の仲間の手で変えられた。
仮面ライダーゴーストとジンバーメロンアームズの斬月が、それぞれ杉元とブレイズの元へ急行。
前者は幽霊のように浮遊が可能であり、後者はメロンディフェンダーを使った飛行能力を有する。
杉元達を空中で受け止め事なきを得た。

「助かった!」

礼もそこそこに、またもや放たれた拳を避ける。
善逸以外は空中戦が可能であれど、状況は何も良くなっていない。
さりとて文句を言っても始まらない。
手持ちの武器をガンモードに変形し、ゴーストは二丁の銃からエネルギー弾を発射。
斬月もゴーストに倣い、ソニックアローで矢を射る。
二人が狙うのは巨人の顔面、怯ませ隙を作り出す。

硬質化させた腕で防ぐも、巨人を相手取るのはゴースト達のみではない。
うなじ部分を目指し杉元と神楽が再度接近。
エネルギー弾の掃射に気を取られ、今度は一手反応が遅れる。
しかし、正気を失っても脅威の察知能力までは失くしていない。
刃の到達を待たずに跳躍、後方へ轟音を立てて着地。

巨人が大きく動けばその分空気は揺れ、余波が周囲に被害を齎す。
咄嗟に距離を取ったお陰で巨人に衝突こそされなかったが、吹き飛ばされるのは避けられなかった。
そこを助けたのはゴースト。
パーカーゴーストを複数召喚し杉元達を支える。

17自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:35:32 ID:3pAQFX7M0
『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

巨人はうなじへの攻撃を避ける為だけに跳んだのではない。
降り立った場所は丁度、聖都大学附属病院のすぐ傍。
着地の振動だけでガラスが大量に割れるのもお構いなし、白亜の宮殿をガッチリと掴む。

「おい、まさか……」

嫌な予感は見事に的中。
壁に亀裂が走ったかと思えば、力任せに引き剥がす。
一階部分と既に禁止エリアへ面した病棟こそ無事だが、残りは巨人の得物と化す。
標的は無論、空を飛び回る目障りな連中。
存分に怪力を駆使し投擲、命を救うための施設が無骨な凶器へと変わった瞬間だった。

「っ!神楽!」
「わ、分かったネ!」

名前を呼ばれただけで瞬時に意図を察したのは、命懸けの戦いには慣れているからか。
ゴーストがカードを取り出し、ブレイズは聖剣の柄に手を置く。
一刻の猶予も無い、焦りを隠さず各々迎撃に移る。

『FAINAL ATTACK RIDE GHO・GHO・GHO GHOST!』

『流水抜刀!ペガサス!ライオン!ピーターファン!三冊斬り!ウォ・ウォ・ウォ・ウォーター!』

6体のパーカーゴーストと一体化し、それぞれの紋章エネルギーが右脚に力を宿す。
英雄たちの力を借り技の威力を更に強化した横で、ブレイズも剣を引き抜いた。
流水の力の源である水がエンブレムから湧き出し、渦潮へと変え鉄塊目掛けて射出。
飛来する病院の勢いを一時的に押し留め、流水片手に突撃。
ゴーストもまた蹴りを放ち、高威力の打撃と斬撃が病院を粉砕する。
パラパラと地面へ小雨のように破片が落ちる中、巨人は既に次の手に出ていた。

18自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:36:19 ID:3pAQFX7M0
「おいまたかよ!?」

悲鳴染みた声が出るのも無理はない。
今投げたのは二階から上の箇所、ということは一階部分はまだ使える。
吹き抜けと化したロビーに手を突っ込み、さっきと同じく引き剥がした。
もう一度投げるつもりだろうが、技を放ったばかりのゴーストとブレイズが動くにはほんのちょっぴり遅い。
となれば、残る二人がどうにかするのみだ。

「仕方ねえ!気合入れろ大崎!」
「う、うん……!」

『ロックオン!メロンオーレ!ジンバーメロンオーレ!』

プレッシャーと恐怖で縮こまりそうになるも、ソニックアローを強く握って震えを誤魔化す。
二つのロックシードから流れ込んだエネルギーが、アークリムに充填され緑に輝く。
杉元もまた炎の翼を展開し、両腕に霊力を集中。
具体的なイメージは出来ていない、ただ目の前の障害を叩きのめす殺意を糧に技を形作る。

「今だ!」

巨人が投擲の構えを取ったタイミングでそれぞれ撃ち込む。
病院が目の前まで飛んでくるのを、わざわざ待つ意味はない。
ソニックアローを振るい、アークリムより緑の光刃が巨人を切り裂く。
タイミングを合わせた杉元の掌からはこれまでの火球ではなく、一筋のレーザーが放たれた。
妹紅のスペルカード、『原罪【正直者の死】』を思わせる攻撃だ。
手から離れかけた病院の残骸諸共、斬撃と光線が薙ぎ払う。

巨人が手にした凶器は木っ端微塵に砕け、煙が巨体を覆い隠す。
二撃目も凌いだ、だが終わりはまだやって来ない。
自身を包む煙を払い除け、巨人は地を蹴り跳ぶ。
追い打ちを掛けられ更に破壊された病院には見向きもしない。
一蹴りでこちらを見下ろす羽虫達の元へと辿り着く、否、彼らをも見下ろす位置まで跳んだ。

19自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:37:01 ID:3pAQFX7M0
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

鼓膜を破りかねない咆哮を発し、右手を振り下ろす。
硬質化で一点を強化した拳を食らえば、人間など途端にひき肉だ。
巨人が自分達の頭上を取ったその時点で、全員回避へ動き出している。
されど此度は落下の勢いをも味方に付けた、悪夢の如き一撃。
直撃を避けても、地面を叩いた衝撃波は空にいようと関係なしに襲い掛かった。

「んなくそ…!」

何とか宙で踏み止まろうとしても上手くいかない。
というか飛行能力自体が発動されない。
不死以外で妹紅の肉体に課せられた、もう一つの制限がここで影響し出す。
支給品で飛行可能となったジューダス等と違い、杉元は肉体の能力で最初から空を飛べる。
但し永久的に飛ぶ事は不可能であり、一定時間経過で杉元の意思に関係無く地へ落とされるのだ。

これまで飛ぶ機会は度々あったものの、長時間の飛行は今回が初めて。
制限へ気付くには遅過ぎた。
為す術なく砲丸のように吹き飛んだ挙句、病院とは名ばかりの瓦礫の山へ突っ込む。

「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
「きゃあああああああああっ!?」

ライダーに変身し重量が増していようと最早関係無い。
浮遊能力でさえまともに機能しない中、ゴーストの視線が捉えたのは自分同様吹き飛ばされる白武者。
彼女が空を飛ぶ為の盾は、足元を離れ何処かへ姿を晦ましている。
それを見た時、既に自分が受け身を取るなどは二の次となった。
パーカーゴーストをどうにか呼び出し、彼女の元へと向かわせる。
英雄達が彼女を受け止めるのが見えると同時に、全身へ衝撃と痛みが来た。

20自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:37:52 ID:3pAQFX7M0
「がはっ……」

ゴーストが纏う防護スーツとパーカーの恩恵で。これでもダメージは抑えられた方。
とはいえ流石に無傷とはいかず、吹き飛んだ時の勢いも殺せていない。
ドライバーが外れて変身解除、佐藤太郎の肉体を戦場に晒す。
処置を受けた箇所と新たに負った傷へ、冷たい夜風が酷く沁みる。

「戦兎さん……!」

パーカーゴースト達のお陰で斬月は無傷で着地できた。
駆け寄る白武者へ安堵の笑みを浮かべるも、向こうからしたら全然笑えない。
自分を守るために、彼はまた傷付いた。
頑張ろうと、彼の力になろうと決意したのに結局はこうだ。
仮面の下で顔がくしゃりと歪む。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

甚大な被害、されど全滅には未だ至らず。
それを怒れる巨人は断じて認めない。
求めるのは自分以外の死。
生存者が一人でもいる限り巨人は止まらない、憎悪は掻き消えない。
絶望感と死を予感させる大地の震動。
圧倒的な暴力の化身を前に、ちっぽけな存在が立ち塞がった。

「ピ、ピカアアアアアアアアアアアア!!!!」

巨人を相手取るには余りに小さい体躯。
黄色い体は怯えで蒼白に変色し、放って置けば倒れそうなくらいに震えている。
溢れる涙は両目がふやけんばかりの量。
今すぐにでも逃げ出したい、考え付く限りの名前を口にし助けてくれと叫びたい。
骨の髄まで蝕む恐怖に蝕まれ、己が情けないと自覚しながらも善逸が選んだのは戦闘の続行。
赤丸の頬がバチバチと放電、溜め込んだ電気を解き放つ合図だ。
邪悪なスタンド使いにも絶叫を上げさせた10まんボルト、だが今回ばかりは大きな効果を望める自信が無い。

21自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:38:40 ID:3pAQFX7M0
「一人でカッコ付けてんじゃねーヨ……」

小さな体に抱え込んだ不安を笑い飛ばし、隣へ女が並び立つ。
オレンジ髪の海賊は額から垂れる血を拭い、恐れを微塵も宿らせない視線で巨人を射抜く。
既にブレイズの変身は解除された、再生能力もない生身のまま堂々と現れるのは自殺行為。
だが神楽の目は死んでいない、勝負を投げ出し自暴自棄になったつもりはない。

「男が馬鹿やったら、止めるのは女の役目ってマミーがしょっちゅう言ってたネ。姉御や家賃家賃うるせーババアも同じこと言う筈アル」

得物は聖剣ではなく細い棒。
うなじを斬るのはおろか、殴れば逆にへし折れそうな巨人相手には頼りなさを覚える武器。
だけど神楽には分かった。
理由は上手く言えないけれど、今の自分ならこの棒の力を引き出せる気がする。

「だからお前がこれ以上馬鹿やる前に、二日酔いの銀ちゃんみたく大人しくさせてやるネ」

雲が現れる。
空を覆い隠し星の輝きを遮る無粋な帳に非ず。
神楽の背後へ黒々とした雲が出現し、時折電気を迸らせる。

本来、この技を神楽が使う事は不可能。
魔法の天候棒が手元にあっても、技を使うのに必要な知識が神楽にはない。
気象学を熟知し、天才的なセンスの持ち主であるナミだからこそ使えたのだから。
しかし、PK学園でDIOを吹き飛ばしたように此度もまた、神楽自身にも説明は付かないがやれると分かった。
善逸が幾度も放った電撃が、肉体に宿る記憶を呼び起こしたのか。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

具体的な理由は分からない。
ただ今は、目の前で望まぬ暴力を強いられる仲間を取り戻す。

22自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:39:28 ID:3pAQFX7M0
「雷光槍(サンダーランス)=テンポ!!!」
「ピ〜カ〜チュウウウウウウウウウウウウウ!!!」

光が巨人を貫く。
呪いを祓い、憎悪を焼き潰し、閉ざされた魂を照らす輝き。
黒雲から放たれる一条の光と、ピカチュウが最も得意とするわざ。
重なり合った二つの電撃が雷の槍となり、巨人の進行を押し留めた。

『!!!!!??!!』

巨人にとっても予想外の威力だったのか、猛烈な痺れに動きが止まる。
強靭な生命力を誇る動物系古代種の能力者にも、絶大なダメージを与えた技だ。
そこへ10まんボルトの威力も加算されれば、巨人と言えども無視できない。
堪らず片膝を付く間にも痺れが襲い、鬱陶しくて仕方ない。

『ッ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

なれど、巨人は己の沈黙を受け入れない。
少しばかり動きが鈍くなったから何だと言う、この程度で滅びから逃れられるなど有り得ない。
自らの憎悪を燃料に立ち上がる。
握り締めた拳を硬質化、狙うは大技を放った直後の一人と一匹。

「ピカ〜〜!?(ぎゃああああ!また立った!お姉さん早く逃げないと…!)」
「うぐ…康一…!」

変身解除される程の勢いで地面に叩きつけられ、悲鳴を上げる体に鞭打って巨人を止めたのだ。
技が命中したとはいえ、神楽の方も息切れを起こし座り込む。
隣で善逸が何と言ってるのか不明だが、焦り自分を急かしてるのは間違いない。
言われなくてもじっといしているつもりはない、しかし巨人が黙って逃走を許してはくれない。

怒りの鉄拳がまた一つ罪を重ねる、それを防ぐは手首を射抜く緑の矢。
再生し掛けた箇所がまたもや焼かれ、焦げた臭いが漂う。
ギロリと、擬音が聞こえそうな射殺さんばかりの視線。
睨み付けられた白武者はビクリと震え、心臓が五月蠅いくらいに鳴る。

「うぅ……」

神楽達を助ける為咄嗟に矢を放った。
絞り出した勇気に巨人が返すのは感心の拍手ではなく、絶対的な暴力。
自身を苛む痺れを振り払おうと、大股で一歩進む。
たったそれだけで足底が斬月のカメラアイを覆い隠し、終わりまでの時間を短縮。
怪獣に踏み潰される映画のモブキャラはこういう心境なんだろうか。
一瞬浮かんだ場違いな感想諸共、蟻のように潰される。

23自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:40:34 ID:3pAQFX7M0
『KAMEN RIDE DRIVE!』

守ると約束した少女の死へ異を唱えるは、高らかに名を上げた電子音声。
視界の端に赤い影が映り込み、次いで感る浮遊感。
体が地面から離れてる、まさか死んであの世に昇る真っ最中なのか。
悪い想像に思わず顔を上げ、見えたのは赤い仮面の戦士。
初めて見るけど自分の知るヒーローだと分かり、そこでようやく彼に抱き上げられると気付いた。

真っ赤装甲、胴体部分へ装着されたタイヤ。
まるで車をモチーフにしたかの姿は、仮面ライダードライブ。
相棒のベルトと共に機械生命体との戦いに挑んだ、とある刑事が変身した戦士。
最上との戦いの際にも見なかったライダーであり、能力は未知数だがこの場においては変身して大正解だ。
ドライブの基本形態であり、高速戦闘に特化したタイプスピード。
一時的に高速移動を可能にし、斬月の救出にも間に合った。

視覚センサーが巨人の動きを細かく把握、集約された情報がメット内部に表示。
神楽達が放った電撃は残留しているらしく、一挙一動がこれまでよりも幾らか遅い。
となれば今しかない、戦況を一気に変えるにはここ以外になかった。
勝利への法則が組み立てられ、道筋が完成。
後はその通りに動けるか否か。

「ひゃっ……!せ、戦兎さん……!?」
「甜花。このまま動くからあいつの足を狙えるか?」
「え、そ、それって……抱っこしたまま……わ、分かった……!」

上擦った声で承諾。
巨人への恐怖はある、戦うことへの緊張感だって全然無くなってない。
でも彼が、助けになりたいと思ったヒーローが自分を頼ってくれた。
プレッシャーと、同じくらいの嬉しさと、勇気をくれる。

24自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:41:26 ID:3pAQFX7M0
頷き合い、ドライブの全身を反重加速フィールドが覆う。
用いるのは二本の足だけであるにも関わらず、スーパーカーをも追い越すトップスピードを発揮。
上空より振り落とされる拳に方向転換、ブーツ部分のグリップパーツが急激な移動にも振り回されないようアシスト。
余裕の回避をやってのけた。

『ロックオン!ソイヤッ!メロンスカッシュ!』

生きたモンスターマシンに乗りながらにも関わらず、斬月の狙いは正確無比。
生身の人間を遥かに上回る視覚センサーと、射撃精度の低下を防ぐソニックアローのレーザーポインダ。
戦極凌馬が開発した高機能システムにアシストされ、エネルギー矢を発射。
足首部分の肉が弾け飛ぶ。
ただでさえ痺れが抜けていないのに加え、ドライブのスピードに翻弄された結果だ。
硬質化が間に合わず被弾を許すこととなった。

『FAINAL ATTACK RIDE D・D・D DRIVE!』

斬月の攻撃は始まりに過ぎない。
矢が放たれたのと同じタイミングでカードを装填、タイヤ型のエネルギー体が複数出現。
本来は敵を包囲し蹴り技に繋げるが、今回は使い方が違う。
エネルギー体はドライブ自身を背後から弾き飛ばし更に加速、地面を削りながら装甲ブーツが巨人の足へ追い打ちを掛ける。
骨をも砕き、皮数枚で繋がった足がどうなるかは言うまでもない。

『!!!!!!??!!』

巨体を支える二本の内、片方損傷の影響は少なくない。
巨人の意思を嘲笑うように足首が引き千切れ、途端にバランスを崩す。
踏み潰されるだけのちっぽけな蟲にしてやれた、二度目の屈辱。
再生が完了するまでを、敵は待ってくれない。

『KAMEN RIDE SABER!』

『勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』

斬月を降ろし、新たなライダーの力を解放した
勇ましい名乗りと共に火柱が立ち昇る。
火炎を切り裂き現れたのは、ドライブとはまた違う赤のライダー。
ゼロワン同様令和の時代で物語を紡いだ、ある小説家のもう一つの姿。
仮面ライダーセイバー。
全知全能の書を巡る争いを終わらせ、二つの世界を守った剣士。

25自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:42:23 ID:3pAQFX7M0
そして、もう一つの炎が迸る。

「ぐうるおごあああああああああああああああああああ!!!!!」

瓦礫が四方八方へ弾け飛ぶ。
戦線復帰を妨げる無粋な檻は必要無いとばかりに堂々と参戦。
最早言語としてまともに機能しないナニカを叫ぶそいつへ、誰もが意識を向けざるを得ない。

夥しい量の赤を全身に塗りたくった少女。
老いて色を失ったのとは違う、一種の美しさが宿った白髪すらも赤に染めて。
だというのに生命力へ満ち溢れている。
最も死へ近い有様でありながら、誰よりも激しく己の死を否定する。
何度死に誘われようと抗い跳ね退け、冥府の遣いすらも戦慄させるその姿やまさしく――

「俺は……不死身の杉元だ!!!」

不死鳥の如き翼を広げ、両手が放つもまた火炎。
大地を、空気を、人を焼き潰す灼熱の塊。
『不滅【フェニックスの尾】。
そこに美麗さはない、殺意を収束させた砲弾が憎悪を撒き散らした巨体を焼く。

「相変わらずメチャクチャだな…」

『FAINAL ATTACK RIDE SA・SA・SA SABER!』

杉元に驚かされっぱなしな自分へ、呆れ笑いを浮かべる。
ああしかし、中の奮闘をこうも見せられたなら柄でもなく滾ってしまうじゃあないか。
こういうのはアイツのが似合うだろと、どこぞの筋肉馬鹿を思い出しカードを装填。
セイバーへの変身後、手元に現れた剣が炎を纏う。

火炎剣烈火のエンブレムが生み出した炎はやがて、燃え盛る竜へと変化。
不死身の兵士に負けじと剣を振るう。
竜と不死鳥、二体の伝説が同じく伝説上の怪物を喰らう。

26自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:43:17 ID:3pAQFX7M0
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

右腕が消し炭と化し、全身は焼け爛れた。
なれど憎悪と言う名の炎は、自身を苦しめるどんな火よりも激しく燃えている。
立てないからどうした、片腕が使えないから何だという。
腕はまだもう一本残ってる、自分は死んでない。
何より、滅ぼすべき者達が滅んでいない。

憎悪の理由も分からず、何故滅ぼすのかも考えられず。
止まる事の出来ない己への嘆きなど抱く訳もなく。
硬質化させた左拳を振り下ろす。

『流水抜刀!ワンダーライダー!』

『この動物!この動物の力が、剣に宿る!』

だが巨人が止まらないように、彼女は仲間を決して諦めない。
傷の痛み、重しと化して体中へ纏わりつく疲労。
その全てを知ったことかと捻じ伏せ、聖剣を抜き放つ。

泥棒猫の肉体に再度装着される装甲。
水流を断ち切り現れた姿は先程と一変。
百獣の王の意匠はそのままに紫のフードを纏う
スペクター激昂戦記。
流水の本来の使い手が出会った戦士の力を秘めた、ブレイズの派生形態。

姿形が今更変わろうと巨人が特別な反応を見せはしない。
そうだ、相手が誰でも関係無い。
たとえ打倒主催者の志を共にして、再会を約束した仲間であっても。
葛藤も迷いも一切宿らせない、無慈悲な拳が振り下ろされた。
大地を叩き、周囲一帯を覆い隠す土煙。
仲間であった筈の少年の手で、余りに呆気なく少女の物語が幕を閉じる。

27自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:43:55 ID:3pAQFX7M0
『必殺読破!流水抜刀!この動物一冊斬り!ウォーター!』

なら、今聞こえたこれは何だ。

拳の下に少女はいない。
どこに行ったとの答えは、遥か頭上から電子音声が告げる。
纏う炎は己が身を滅ぼす為に非ず、自由を手にした鳥のように羽ばたく為だ。
見上げる者と見下ろす者、人と巨人の視線が入れ替わればそれは終わりの始まり。
憎悪を断ち切る剣が煌めく。

「康一…今助けるアル!」

宣言を聞いても巨人がブレイズを見る目は同じ。
憎悪以外何もない、忌々しい害虫へ向ける目だ。
今更そんなもので怯みはしない。
自分がしくじり、巨人が猛威を振るい続けた先に待つのはきっとロクなもんじゃあない結末。
康一にとっての悲劇が約束されている。

地球に来て、万屋銀ちゃんの従業員としてかぶき町に住んで随分経つ。
色んな依頼を受けて、それを解決したのだって一度や二度じゃない。
珍騒動に巻き込まれるのだってすっかり慣れたけど、全部が笑い飛ばせるバカ話で終わった訳じゃない。
時には人が死ぬような事件だってあった。
殺した奴、殺された奴、そいつらと関りの深い人々。
誰もが幸せなんかじゃ無かった、細かい違いはあっても良いことなんて無かったのだ。
友を、そして家族を失う悲しみ。
誰かの命を奪ってしまう絶望。
どちらも知ったからこそ、康一に自分と同じ苦しみを与えるなどあってはならない。

28自由の代償(中編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:44:27 ID:3pAQFX7M0
『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

咆える、怒りを籠めて咆える。
それでも間に合わない、残った腕の迎撃も、うなじの硬質化も遅過ぎる。
特大の電撃に始まった総攻撃と、放送前に起こった戦闘での消耗。
疲労が足枷となったのは巨人も同じだった。
まるで、彼をこれ以上進ませまいとするように。

「康一ィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!」

彼女の剣を届かせるように。

阻む全てが遅い、誰にも止められないし止まってやらない。
正しいことに使えるはずと、そう託してくれた流水でやり遂げるのだ。
水と炎、対となる力を纏った聖剣が走る。
切り裂く、彼を閉じ込める檻を。
本当の彼を踏み躙る、憎悪の鎧を。

「―――――――――――――――――――」

それは何と言ったのか。
変わらぬ憎悪か、或いは少女へ向けた感謝の念か。
拾い上げた者は一人もおらず、彼自身にも分からない。

巨人はもうここにいない。
解放された少年を迎える風が吹き、今度こそ幕が下りた。

29自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:45:21 ID:3pAQFX7M0



朽ち果てた大樹か、役目を終えた砦か。
これまでの死闘が嘘のように、巨人は身動ぎ一つしない。
本体であるエレンが解放された以上、残ったのは単なる抜け殻。
見上げる杉元の目には以前変わらぬ警戒心が浮かぶが、小指の爪程の敵意も感じられない。
ややあって、これは本当に脅威にならないと判断。
両手に集めた霊力を引っ込める。

「取り敢えず一安心、にはまだ早いか…」

脅威が去って全て解決とはならない。
予期せぬ襲撃への対処に追われたが現在も自分達は禁止エリアに留まったまま。
脱出までの時間はまだ残されている、しかしこれ以上の問題が起きれば流石に危機感を抱かざるを得ない。
捜索予定の人物が向こうからやって来たのは、別行動を取る必要が無くなって良いのだろうが。

「康一!しっかりするヨロシ!」

件の人物は巨人から解放されてから目を覚まさない。
うなじに埋まっていたのを引き千切ったせいか、本来あるべき四肢は喪失。
だが少しずつ元の形を取り戻してるのがこちらからも見えた。
蓬莱人とは別に、再生能力と思しき力の持ち主らしい。

「康一…!何で起きないネ……」

ブレイズの変身が解除されたのも意に介さず、神楽は何度も仲間の名を呼び掛けた。
元々体力の消耗が激しいライドブック三冊に加え、スペクター激昂戦記を使ったのだ。
頭頂部に設置された剣型の調整装置、ソードクラウンが変身解除を実行。
ナミの姿で康一の肩を揺さぶる。

30自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:46:12 ID:3pAQFX7M0
不安から目尻に涙が溜まる神楽の元へ、仲間の顔色も曇り始める。
あれだけ死力を尽くしたのに結局無駄。
そのような結末を否定するべく、比較的冷静な戦兎と杉元が様子を見る。
一見死体と勘違いしてもおかしくない、瞼が固く閉ざされた顔。
しかし虫の呼吸のように小さくも、確かに発せられる呼吸。
康一がまだ生きていることを知らせる音だ。

「あんだけ暴れ回って気を失ってるだけか?傷も…こりゃ治ってんな」
「これなら動かしても問題無い、か…?詰めれば車の後ろに乗せて――」

パチリと。
眠た気に擦るでなく、夢と現の狭間を彷徨うでもなく。
何の前触れも無しに瞼が開かれた。

口が止まった戦兎の傍で、神楽が驚きと安堵を表情に出す。
瑞々しい果実と同じ色の髪を揺らして、少年の肩に手が置かれた。
大丈夫カ、平気アルか?もう心配ないネ。
仲間の帰還を心から喜ぶ顔が少年の瞳に映る。

「――っ!」

瞬間、杉元の背を駆け抜ける獣のような悪寒。
これは違う、これは仲間に向ける顔じゃない。
信頼し合える者に向けて良い目ではない。

この目には見覚えがあった。
自軍の兵士を殺された露助ども。
片割れを殺した自分を付け狙う第七師団の一人。
それから、そう。
鏡に映った、忌々しい狙撃手への殺意に燃える自分自身。

憎悪を宿らせた目に、神楽を少年から引き離すべく手を伸ばし、

31自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:47:20 ID:3pAQFX7M0
「っ゛あ…!!」

猛烈な熱さに遮られ、指先すら届かずに引き飛ばされた。
杉元以外の4人も被害は避けられない。
目覚めた少年を中心に爆発が発生、高温の爆風が襲う。
ライダーの変身を解かずにいた戦兎と甜花はまだマシ。
善逸も、何より最も距離の近かった神楽はモロに爆発の被害を受けた。
激しい蒸気を伴った爆風が、惜しげも無く晒したナミの素肌を容赦なく焼く。

「あああああああああ!!」

皮膚が焼き潰れ、耐え切れずに上がる悲鳴。
康一に異変が起きたという理解を拒むかのような、猛烈な痛み。
喉が枯れる程に声を張り上げるだけでは到底誤魔化せない。
堪らず瞳を瞑り、さっきまでとは違う理由で涙が流れる。

(急になにアルか……あっ、こ、康一…!)

悶え苦しみながらも仲間の存在で我に返った。
常人ならば、とうに頭から抜け落ちてもおかしくない。
潜り抜けて来た修羅場の数と、これ以上仲間を失う恐怖が神楽を引き戻した。

尤も、既に手遅れだが。

32自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:49:24 ID:3pAQFX7M0
「ごぶっ」

口から何かが吐き出されたと気付くのに数秒。
重たいものを二つぶら下げた胸の、片方が妙に痛いと感じるのに数秒。
目の前に、見たことのない化け物がいると分かり、全てがようやく繋がった。

「え、が……あ…」

黒い化け物だった。
顔も、四肢も、見える範囲のほとんどが黒。
肩と頭部の装飾は鳥の羽のよう。
人と同じ二本の足で立ち、二本の腕を持つ。
人に近い形であっても、人とはかけ離れた異形。
そいつが自分の胸に腕を伸ばし、真っ直ぐ貫いている。

「あ……」

よく見れば手には青いエンブレムの剣。
吹き飛ばされてた際に落ちたのを拾い、それで刺した。
仲間が託してくれた武器を凶器に使うなど、本来なら許せない。
けれど怒りは湧かない。
だって、分かってしまったから。
爆発が起きた直後にいきなり現れた化け物が、一体誰なのか。
そんな筈ないと否定したいのに、現実を突き付けるのは化け物の恰好。

黒い肉体を包む茶色の衣服。
確かこれは、彼の体が元々来ていた『調査兵団』とやらの制服で――

33自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:50:25 ID:3pAQFX7M0
「康一…?」

問い掛けへの返事に化け物の口が開く。
言葉は一つとして出ず、神楽の喉へ噛み付いた。
既存の生物に当て嵌まらない部位に噛み千切られ、噴き出る鮮やかな赤。
顔が血で汚れても構うことなく食事を続ける化け物だが、ふいに神楽を放り捨て飛び退く。
ご馳走を捨てた理由は肩を掠めた光弾。
セイバーに変身したままの戦兎が放った、ドリルクラッシャーの銃撃だ。

「神楽…!」
「んの野郎…!!」

吹き飛ばされこそしたが装甲でダメージを軽減。
横では火傷を負いながらも、肉体の生命力で死を逃れた杉元が歩兵銃を構える。
詳しい事態は把握出来ていない。
分かるのは仲間が襲われた、その一点があれば動く理由には十分過ぎる。
それぞれの武器を片手に化け物へと駆け出す。

「エコーズ!!!」
「なっ!?」

接近の妨害に出たのは新たな異形。
人型をしたソイツの出現に気を取られた戦兎を狙う、小柄ながら鋭い拳。
咄嗟に片腕で防御を行うも、異形の正体を知る者が見れば失敗だと口を揃えるだろう。
前方にいた杉元を巻き込み前のめりに倒れる。

「うおっ!?おい早くどけって!」
「そうしたくても体が…どうなってんだ…!?」

体が異様に重い。
見た目に変化は無いが。明らかに異常だ。
重りを付けられようと軽やかな動きが可能なセイバーの身体能力でさえ、まともに指一本動かせない。
原因はいきなり目の前に出て来た、小柄な異形。
そいつの攻撃を受けたからだと推測したところで、動けなくては意味が無い。

34自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:51:29 ID:3pAQFX7M0
「ピカアアアアアアアアアアアアアア!!!」

故に動ける者がどうにかする。
爆風を完全に避けれはしていないが、非常に高いすばやさを誇るポケモンの体だ。
咄嗟にでんこうせっかで距離を取り、ある程度は負傷を抑えられた。
得意の10まんボルトを放ち、電撃が化け物の全身に流れる。
巨人とは違う等身大の相手なら、十分なダメージとなった筈。

善逸の予想を裏切り化け物は電撃に無反応。
呻き声一つ上げず、鬱陶し気に軽く首を振っただけ。
しかし直後に突き刺さった矢は無視出来なかった。
緑に輝く光に貫かれ、羽に覆われた肩から血が滴り落ちる。

戦兎同様、変身を解かなかった為に重傷を免れた甜花だ。
訳も分からぬ内に吹き飛び、置き上がったら神楽が血まみれで倒れている。
脳内が混乱に支配されながらも攻撃を行えたのは、十数時間の間で殺し合いの空気を散々味わった影響か。
命中を喜ぶ余裕は持てない、慌ててもう一度弦を引いた所を睨まれた。

「ひっ……」

黄色に輝く瞳に射抜かれ、凝り付いたみたいに体が動かない。
相手は巨人よりもずっと小さい、なのに今の方が恐ろしく感じる。
どす黒い憎悪が瞳のずっと奥まで渦巻き、甜花の精神へコールタールのようにへばり付く。
尊大にこちらを見下すDIOや、理解不能の狂気を秘めた姉畑とはまた別種の恐ろしさ。

「っあああああああ!!」

なれど甜花の放った矢は役目を果たした。
痛みに意識が逸れ、戦兎の動きを封じた異形が消滅。
自由を取り戻せたと分かるや否や、杉元と共に化け物へ斬りかかる。

烈火が肉を切り裂き、歩兵銃の殴打が叩き込まれるのは化け物も御免だ。
憎悪に燃える瞳は変わらないまま、踵を返し疾走。
怒声や困惑が背中にぶつかっても僅かな視線すら寄越さない。

「エコーズ!」

ダメ押しとばかりに叫び、先程とは違う姿の異形が出現。
長い尻尾が文字に変化し自分の足に貼り付ける。
「ビュゥーン」との擬音が正に聞こえそうな速度で逃走。
自分が喰った女への罪悪感に、後ろ髪は引かれない。
自分が齎した破壊と惨劇に、残された者がどうなるかを考えやしない。

伸ばし続けた仲間の手を振り払い、見る見る内に戦場から遠ざかった。

35自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:52:44 ID:3pAQFX7M0
○○○


体が妙に軽い。
胸と、首と、体の色んなところが熱かったのに、今では何も感じない。
ぼやけ始める景色に見知った顔が映り込む。
ハッキリ見えはしないけど、良い雰囲気じゃあないとは何となく分かる。

「――!?」
「――、――」
「っ――。――……」

困ったことに声もちゃんと聞こえない。
だけど、何の話をしてるのか分からない程鈍感になった覚えは神楽に無い。
自分を生かそうとしてるんだろう。
どうにか助けられないか必死になってるのを、嫌には思わない。
でも無理なことは、他ならぬ神楽自身が一番理解している。

何度も戦って、何度も傷付いて、最後には三人で生きて万屋に帰って来れた。
出会った時からずっと変わらない三人だから、きっと最後は何だかんだで上手くいった。
だから多分、もういつもの三人じゃなくなった時。
万屋銀ちゃんが万屋銀ちゃんじゃなくなった時点で、こうなると決まっていたのかもしれない。
なんて、最期が近いせいか自分らしからぬ考えを抱く。
そんな自分が何だかおかしくて浮かべたヘタクソな笑みは、果たして仲間達の目にどう映ったのだろうか。

(康一……)

残されたほんのちょっぴりの時間で考える、自分を殺した少年のこと。
康一に何があったのかを神楽は知らない。
どうして康一が自分を殺したのか、理由だって分かる筈がない。

(ごめんなぁ康一…私馬鹿だから、康一が大変な目に遭ってるの全然知らなくて……本当にごめんなぁ……)

自分が別の選択を取っていれば、こんな事にはならなかったのではという後悔。
グレーテが現れた時、もっと落ち着いていられたら。
康一が一人で村の方へ向かわずに済んだんじゃあないか。
或いは、グレーテの追跡は自分に任せて欲しいともっと強く言ってれば。
巨人になって暴走するような、康一が追い詰められる事態も起きなかったのではないか。
どれだけ後悔を重ねても、過去の選択は覆らない。
カイジとの出会いに始まり、ボンドルドを倒すと意気込んだ自分達の結末はもう決まった。

36自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:54:03 ID:3pAQFX7M0
(康一…私は怒ってないネ…他の奴が何言っても、怨むなんてみみっちい真似しねーヨ……だから、もう終わりにするアル……)

死にたいと考えたんじゃない。
かぶき町に帰れないこと、定春を残してしまうこと、銀時と新八の死を皆にちゃんと伝えられないこと。
全部が叶わないのは当然悔しい。
それでも康一へ怒りを向ける気にはなれなかった。
望まぬ殺しに手を染める絶望がどれ程苦しいか、誰かの大切な人を奪う罪の重さを神楽は知っているから。
康一もきっと心の底、自分を支えてくれた本当の彼は犯した間違いに深く傷付いているから。
そんな彼をこれ以上苦しめたくない。
だからもう、殺すのは自分が最後であってくれと願う。

後悔と、未練と、知ってる顔が次々に浮かんで来る。
どいつもこいつも一度見たら二度と忘れられない、非常に濃い連中ばっかりだ。

――ババア、家賃は払えねーけど定春を頼むネ。

――姉御、新八のこと教えられなくて本当にごめんアル。

――ヅラ、私と銀ちゃんの為にんまい棒はちゃんとお供えしとけヨ。

――サド野郎、最後だから神楽様がお前のことも少しは考えてやるネ。

そうして最後に出て来たのは、ムカつく笑みを浮かべたアイツ。
ぶん殴ってやりたいスカした顔は、今だけいつもと違って見えた。

全く、よりにもよってこいつが一番最後に顔を出すなんて

(女々しいんだヨ……馬鹿兄貴……)

37自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:54:47 ID:3pAQFX7M0



冷たくなった彼女が何を意味するのか。
分からない者が一人もいないからこそ、余計に現実が重く圧し掛かる。
治療に必要な道具は全て瓦礫に埋まった。
姉畑の支給品にあったポーションを飲ませようにも、もう助かる段階は通り過ぎていた。
結局のところ、戦兎達が神楽にしてやれたことは何も残っていない。

「…桐生、あんまり時間ねえぞ」
「……分かってる」

冷静に移動を促す杉元は正しい。
禁止エリアが機能する前に移動しなければ、それこそ本当に全滅だ。
康一を追いかけたくとも、追跡に時間を掛けたせいで脱出が間に合わなくなるかもしれない。
これ以上留まってはいたずらに自分達の命を死に近づけるだけ。
早急な禁止エリア外への移動は、何も間違ってない。
故に、戦兎の口から反論の言葉が出ることはなかった。

「……っ!」

だからといって、何も感じない筈がない。
仲間がまた目の前で死んだ。
助けられる力が、正義のヒーローの力が自分の手にはあったのに。
無力感を喚き散らしたとて解決にはならない。
一度零れ落ちた命を拾い上げるチャンスは、二度と巡って来ない。
そうやって冷静を装い激情を抑えつけても、痛いくらいに握り締めた拳が戦兎の心情を物語っている。

「神楽、さん……」
「ピカ……」

力無く名前を呼んでも、変な語尾で返事はない。
自分のせいで人が死んだと罪悪感に苦しんだ時、お前のせいじゃないと言い切った彼女はもういない。
一緒にあの人の死へ想いを馳せた彼女はどこにもいない。

過ごした時間は短くても、仲間だった少女の喪失が彼らの胸に痛みを与える。
見上げた空には星々が、地上の死など知らぬとばかりに顔を出す。
いっそ憎たらしいくらいの輝きを、杉元は言葉無く睨み付けた。

38自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:55:39 ID:3pAQFX7M0
◆◆◆


走り続けてどれくらい経ったか黒い化け物…カラスアマゾンには分からない。
背後を見ても負って来る気配は無く、自身の疲労もピークに達している。
以上二つにより足を止め、どっと息を吐いた時にはもう異形の姿はなかった。

元々カラスアマゾンはある少女の遺体にアマゾン細胞を移植し生まれた、シグマタイプのアマゾン。
だが康一は溶原性細胞の感染が原因で変化を遂げた。
それ故、実験で生まれたカラスアマゾンとは細部に違いが見られる。
尤も本来のカラスアマゾンである『彼女』を知る精神側の参加者はおらず、気付けるとすれば感染源の肉体の記憶を得た錬金術師くらいだろう。

「っ!!うああああああああああ!!!」

アマゾンから人の姿、エレンに戻った康一は突然叫び出す。
逃走時に持ったままの聖剣、流水を地面に何度も突き刺した。
癇癪を起こした幼子のようだと笑う者は、皆一様に彼の顔を見れば口を噤むこと間違いなし。
地獄の悪鬼すらも裸足で逃げかねない程の、修羅の形相。

「憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!」

殺し合いの阻止を誓った正しき心のスタンド使いが、一体どこにいるという。
安全圏を逃れる覚悟をカイジに問われた時に切った啖呵は、なんだったのか。
神楽を気遣い聖剣を託した優しさなど、最初から虚構に過ぎなかったのでは。
広瀬康一という少年を形作った軌跡の全てを否定する憎悪が、口から垂れ流される。

確かに、神楽達は康一の巨人化を解除した。
暴走する康一を解放し、巨人の猛威を食い止めた。
だが根本的な解決には至らない。
そもそも康一が巨人になり暴れ回った原因は、両面宿儺がやったケロボールの洗脳電波。
巨人になったのは「滅ぼせ」と繰り返し囁かれ、肉体の記憶に宿る憎悪が急激な覚醒を促された為。
幾ら巨人化が解除されても洗脳は解かれず、ましてエレンの奥深くに眠っていた憎悪と康一自身が向き合わない限り、本当の意味で助けたことにはならない。

39自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:58:08 ID:3pAQFX7M0
洗脳、憎悪、そしてアマゾン化の影響で新たに植え付けられた食人衝動。
康一を支配する三つの感情。
もしここに康一本来の精神も加われば、きっと異なる展開を見せただろう。
欲しい物を出す杖を振った小さな生物達や、数時間前のギニューのように、複数の心へ振り回されたのかもしれない。
しかし康一に宿った心は反発せず、重なり合ってより強固な意志となった。

「憎悪のままに」「喰らって殺して腹を満たし」「全てを滅ぼす」

それこそが今の康一にとっての全て、絶対的に正しい一つの道。
この地に巨人は彼以外にいない。
エルディアとマーレの両方とも関係無い。
杜王町を恐怖に陥れた連続殺人鬼は一足先に退場。
本来の憎しみを、怒りを向けるべき者はいない。
康一自身も具体的に何を憎んでいるのか分からない。
だから憎悪の矛先は、生きている残りの参加者全てに向けられるだろう。

「駆逐してやる…一人残らず滅ぼしてやる…!」

一人の少女の物語は終わった。
だが呪いの物語はまだ続く。

少年の憎悪が新たな物語を始めたのを歓迎し、呪いは嗤う。
進撃の魔王が再び君臨する時を楽しみにしながら、ゲラゲラゲラと嗤い続ける。



【神楽@銀魂(身体:ナミ@ONE PIECE) 死亡】

40自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:58:51 ID:3pAQFX7M0
【D-3 聖都大学附属病院跡/夜】

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大・処置済み)、全身打撲(処置済み)
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン、サッポロビールの宣伝販売車@ゴールデンカムイ、しのぶの首輪、工具箱
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを打破する。
1:神楽……。
2:フリーザの宇宙船に向かい柊達と合流する。
3:甜花を今度こそ守る。一緒に戦うなら無茶しないようにしとかねぇと。
4:広瀬康一はどうなってる?巨人以外にも何らかの力があったのか?
5:斉木楠雄が柊の中にいたのか?何故だ?何か有用な情報を得られればいいのだが…
6:佐藤太郎の意識は少なくとも俺の中には存在しないということか?
7:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
8:首輪も外さないとな。工具は手に入ったしそろそろ調べたい。
9:エボルトの動向には要警戒。桑山千雪の体でおかしな真似はさせない。
10:柊に僅かな疑念。できれば両親の死についてもう少し詳しいことが聞きたい。
11:柊から目を離すべきでは無いと思うが…今はどうにもできないか。
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードはゼロワンとセイバーが入っています。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ジーニアスフォームに変身後は5分経過で強制的に通常のビルドへ戻ります。また2時間経過しなければ再変身不可能となります。

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身火傷(中)、霊力消費(大)、再生中、一回死亡
[装備]:神経断裂弾装填済みコルト・パイソン6インチ(5/6)@仮面ライダークウガ、三十年式歩兵銃(3/5)@ゴールデンカムイ、和泉守兼定@Fateシリーズ
[道具]:基本支給品×5、神経断裂弾×27@仮面ライダークウガ、ラッコ鍋(調理済み・少量消費)@ゴールデンカムイ、鉄の爪@ドラゴンクエストIV、青いポーション×1@オーバーロード、黄チュチュゼリー×1@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド、ランダム支給品×0〜1(確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:……。
2:あのカエル(鳥束)、死んだのか…。
3:俺やアシリパさんの身体ないよな? ないと言ってくれ。というか本当にないんじゃねえか?
4:なんで先生いるの!? 死んじまったか……。
5:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
6:DIOには要警戒。
7:精神と肉体の組み合わせ名簿が欲しい。
8:何で網走監獄があんだよ…。
9:この入れ物は便利だから持って帰ろっかな。
10:本当に生き返ったのかよ!?蓬莱人すげえッ!
11:ラッコ鍋は見なかった事にしよう…。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウー、フジヤマヴォルケイノ、正直者の死、フェニックスの尾に類似した攻撃を覚えました
※鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。また自分が戦兎達よりも過去の時代から来たと知りました。

41自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 01:59:37 ID:3pAQFX7M0
【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大・処置済み)、全身に火傷、精神的疲労(極大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:あの人(神楽)まで……
2:お姉さん(杉元)達と行動
3:しのぶさんも岩柱のおっさんも、また死んじゃったんだな……
4:煉獄さんも鳥束も死んじゃったのか……
5:無惨が死んだのは良かったんだろうけど……
6:炭治郎の体が…まさか精神まで死んでないよな……?
7:……かみなりの石?何かよく分からない言葉が思い浮かぶ…
[備考]
※参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
※現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」「10まんボルト」「かげぶんしん」の4つです。
※他に使える技は後の書き手におまかせします。
※鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。また自分が戦兎達よりも過去の、杉元よりも未来の時代から来たと知りました。
※肉体のピカチュウは、ポケットモンスターピカチュウバージョンのピカチュウでした。

【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大・処置済み)、服や体にいくつかの切り傷(処置済み)、戦兎やナナ達への罪悪感、決意
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、PK学園の女生徒用制服@斉木楠雄のΨ難
[道具]:基本支給品、デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ、甘奈の衣服と下着
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:神楽さん……。
2:戦兎さんの…力になりたい……。
3:皆に酷いことしちゃった……甜花…だめだめ……。
4:ナナちゃんと燃堂さんにも……謝らなきゃ……。
5:なーちゃん達…大丈夫かな……。
6:千雪さんと、真乃ちゃんのこと…戦兎さんならきっと……。
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネスによりDIOへの激しい愛情を抱いていましたが、ビルドジーニアスの能力で正気に戻りました。

※神楽の死体の傍にデイパック(基本支給品)、魔法の天候棒@ONE PIECEが落ちています。
※仮面ライダーブレイズファンタステックライオン変身セット(水勢剣流水無し)@仮面ライダーセイバーとスペクター激昂戦記ワンダーライドブック@仮面ライダーセイバーは神楽が装備したままです。

42自由の代償(後編) ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 02:00:25 ID:3pAQFX7M0
【D-3(戦兎達から離れた場所)/夜】

【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:エレン・イェーガー@進撃の巨人
[状態]:疲労(絶大)、ケロボールの洗脳電波により洗脳中、謎の憎悪、溶原性細胞感染、食人衝動
[装備]:水勢剣流水@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん、精神と身体の組み合わせ名簿@チェンジロワ
[思考・状況]基本方針:全て滅ぼす
[備考]
※時系列は第4部完結後です。故にスタンドエコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。
※巨人化は現在制御は出来ません。参加者に進撃の巨人に関する人物も身体もない以上制御する方法は分かりません。ただしもし精神力が高まったら…?その代わり制御したら3分しか変化していられません。そう首輪に仕込まれている。
※戦力の都合で超硬質ブレード@進撃の巨人は開司に譲りました
※仮面ライダーブレイズへの変身資格は神楽に譲りました。
※放送の内容は後半部分をほとんど聞き逃しています。具体的には組み合わせ名簿の入手条件についての話から先を聞き逃しています。
※元の身体の精神である関織子が活動をできることを知りましたが、現在はその状態にないことを知りません。
※アナザーウィッチカブトは宿儺に無理やり奪われました。
※ケロボールによる洗脳は、時間経過により解ける可能性はあるものとします。具体的に何時解けるかは後続の書き手にお任せします。
※エレンの肉体の参戦時期は、初めて海にたどり着いた頃のものとします。
※オリジナル態の体液が傷口から入り込んだ為、溶原性細胞に感染しました。カラスアマゾンに変身が可能です。

43 ◆ytUSxp038U:2024/02/04(日) 02:01:17 ID:3pAQFX7M0
投下終了です

44 ◆ytUSxp038U:2024/02/06(火) 22:29:15 ID:Ld1lVBQs0
桐生戦兎、杉元佐一、我妻善逸、大崎甜花、雨宮蓮、エボルトを予約します

45 ◆ytUSxp038U:2024/02/07(水) 01:20:13 ID:80FrbLm.0
したらばの投下スレに投下しましたので、確認をお願い致します

46 ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:42:48 ID:c7OW47L.0
投下します

47LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:45:43 ID:c7OW47L.0
一つの争いが終わればまた新しい争いが始まる。
一人が死ねば二人目の死者が必ず現れる。
なれど、再び争いが起こるまでには一時の静寂が訪れる。
それは奇妙な運命に導かれた、あるスタンド使いが始めた殺し合いでも同じ。

今宵語られるは次の舞台が整うまでの繋ぎ。
或いは、決して断ち切ることのできない因縁の物語。





幸運と言って良いのだろう。
魔法のじゅうたんで戦場を去ってから、これといったトラブルにはぶつからなかった。
道中またしても面倒な輩に目を付けられる事態も考えていたが、嬉しいことに取り越し苦労で済んだ。
神様もお情けくらいは掛けてくれるらしい。
皮肉気な笑みを隠さずに独り言ち、エボルトは地面へ降りる。
目的地であるフリーザの宇宙船まではまだ遠い。
近くに設置された聖都大学附属病院は禁止エリア内で、立ち寄るのは不可能。
にも関わらず移動を中断したのは、ここまで自分達を運んだ道具が原因。

「こりゃ無理か」

橋を渡って草原を進み、いざ山を経由の段階まで来たは良い。
問題は魔法のじゅうたんではこれ以上進めないこと。
飛行する際の高度が低いせいで、木々が聳え立つエリアを追い越して移動が出来ない。
速度が出せる為平地での移動にこそ役立てるものの、欠点が無いわけでもなかった。
下手に低空飛行で突っ切って木に引っ掛かり破けてしまい、使える道具を一つ失いたいとも思わない。
よって、ここからは徒歩で行くしかないだろう。

48LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:46:39 ID:c7OW47L.0
「ったく、アイドルに肉体労働させるなんざ気が利かねぇな」

愚痴を零しつつトランスチームガンを取り出す。
ボトルをセットし、手早くブラッドスタークに変身完了。
すぐ傍で電子音声と火花が散っても起きない相棒を担ぎ、山中へと足を踏み入れる。
変身後の身体能力なら蓮を運んでの移動も、生身よりは体力を使わずに済む。
ブラッドスタークの機能なら敵襲にも賊座に対処可能。
変身しない理由を探す方が大変だ。

舗装などされていない山道を駆ける。
オリンピック選手など目でない速度を出していながら、足音は一切聞こえない。
ブラッドスタークには直線戦闘のみならず、暗殺にも向いた機能が複数搭載されている。
音を立てず、標的の背後へ一気に接近可能なバトルシューズもその一つ。
高機能なセンサーを持つ仮面ライダーならまだしも、生身の人間相手なら存在を気取らせないくらい容易い。

木々の間から時折こちらを覗き見る星々には一切関心を抱かず、黙々と進む。
やがて進行方向に変化が訪れた。
代り映えのしない緑の檻の中にポツンと建つ、木造の一軒家。
どこをどう見ても自然に作られるものではない。

(確か……ああ、竈門家だったか?)

地図に載っていた施設の中に、そんな名前があったのを思い出す。
ジューダス達が戦った痣の少年が同じ姓なのは放送で知った。
ということはここは竈門炭治郎の住まいか。
我が家まで巻き込まれてご愁傷さまと、欠片も同情の籠っていない謝罪を口にし近付く。
動体反応は検知されない。
赤外線センサーを起動し調べても、確認出来たのは無人の空間のみ。
問題無いと分かり、遠慮なく上がり込む。

49LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:47:08 ID:c7OW47L.0
『戸の開け方も知らない奴が来たのかねぇ…』

破壊された入り口を見やり眉を顰める。
余程切羽詰まって、戸を開ける時間も惜しいとばかりに飛び込んだのか。
誰がやったにしろ何とも野蛮だ。
続けて目に飛び込んだのは、物言わぬ何者かの頭部。
生前の顔はおろか、性別すらも判別不能の惨い有様だ。
大方首輪を手に入れてから泣き別れした頭を放置、そんなところだろうと興味無く結論付ける。
残しておきたいとも思わないので、裏の方へ乱雑に放り投げ掃除終了。
まさか街で別れた魔術師の体とは思わず奥へと移動。
やはり人どころか虫の一匹も見当たらない。
担いだ相棒を畳の上に寝かせ、変身を解き一息つく。

「ま、ちょいと休憩しても罰は当たらないだろ」

ダグバとの戦闘後は殺し合いに乗った参加者との接触を避けるのもあって、すぐにあの場を離れた。
魔法のじゅうたんとブラッドスタークでの移動で大分距離を離し、多少は体力回復の時間に充てられる。
戦兎やしんのすけに会うのが遅れるのは避けられない。
しかし流石に自分も蓮も消耗が激しい。
気を抜いた途端に体の節々が痛みを訴え、休ませろと脳へ要求を突き付ける。
ディケイドを始め敵対する参加者との交戦を考えると、コンディションに気を遣うのは間違っていない。
加えて10年かけて慣らした石動でないばかりか、ネビュラガスすら注入されていない体にブラッド族のエネルギーはやはり劇薬だ。
今の状態でダグバの時と同じ強化を行えば、ほぼ確実に肉体が限界を迎え死ぬ。
本当に、何故この体を自分に宛がったのかという疑問は今更だ。
いずれ来るだろう新たな闘争に備え、可能な限り疲労は抜いておきたい。

50LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:47:46 ID:c7OW47L.0
腰を下ろしだらしなく姿勢を崩す。
相棒は寝たきり、体の持ち主もダグバの一件で相当憔悴してるのか咎める様子はない。
壁にもたれかかりぼんやり室内を眺める。
電気製品の類は一切置かれておらず、明かりと言ったら少し開けた障子戸から入り込む月の光くらい。
古き良きとは言っても古過ぎやしないだろうか。
少しの間休めれば良いので贅沢を言う気は無いが、施設を設置するにしても現代らしい民家では駄目だったのかと思わなくもない。

デイパックを開けコンビニ弁当を取り出す。
失われた体力を取り戻すにはとにかく体を休ませ、食べるしかない。
デミグラスソースがたっぷりかけられたオムライスを口に運ぶ。
疲れ過ぎていると逆に食欲も湧かないのか、咀嚼が酷く億劫だ。
食わねばと分かっていても、スプーンを持つ手が止まりそうになる。
水で無理やり流し込み、何とか完食。
ルブランのカレーに比べれば決して良いとは言えない食事を終え、ぼんやり天井を見上げること十数分。
ふと思い出したようにもう一度デイパックに手を伸ばした。

「……」

指に引っ掛けた参加者共通の拘束具(アクセサリー)を眺める。
アルフォンスによると、錬金術で解除を試みたが失敗したらしい。
何でも錬金術そのものは発動したが、首輪への錬成は無効化された。

「どっちなんだろうな」

首輪自体に錬金術を無効化する仕掛けが組み込まれているのか。
アルフォンスが気付いていないだけで、錬金術を扱う精神に細工されたのか。
それとも、別のカラクリがあるのか。

錬金術の仕組みについて詳しく聞いておけば、考えの幅を広げられたかもしれない。
残念ながら知識を持つ少年は行方知れずで、もし発見できても話を聞ける状態かは不明。
蓮が知ったらすぐにでも探しに行きたがるだろう。
とはいえしんのすけとの合流の件を持ち出せば、話も聞かずに飛び出すなんてことにはなるまい。

51LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:48:23 ID:c7OW47L.0
首輪を置き、残りの二つも取り出し並べる。
累の母、アーマージャック、ダグバ。
サイズに多少の違いこそあれど、三つとも赤いカバーで覆われた同じ見た目。
真ん中の首輪を手に取り指で軽く叩く。
コツコツという音が静まり返った部屋の中で、やけに大きく聞こえた。
当たり前だがこの程度の衝撃で爆発したりはしない。
より強い力が外部から加われば、肉体の生命力に関係無く死に至る。
本来は首が吹き飛ぶ程度では死なない存在だろうと、一切の例外なく。

(あいつらはどうだったんだ?)

しんのすけの愛犬であり、家族であった参加者。
シロは犬飼ミチルの体を与えられたが、紆余曲折あって鬼に変貌した。
鬼に変えた張本人、耀哉の説明から察するに鬼は太陽の光以外で殺せない。
実際、撃たれた箇所や斬り落とした下顎が短時間で元通りとなったのは見た。
恐らく、爆発で頭と胴体が泣き別れしても死には至らない。
本来ならそうでも、殺し合いでは鬼の生命力とて弱体化を余儀なくされている。

耀哉のように最初から鬼の肉体を与えられたならともかく、シロは後天的に鬼になった参加者だ。
まさか参加者が気付かぬ内に、シロの首輪に鬼の生命力を無効化する仕掛けを施した訳ではあるまい。
となれば耀哉に与えられた肉体、無惨の持つ能力を制限された影響か。

「まぁ、解体(バラ)してみればその辺も分かるだろ。そっちは天才物理学者様を頼りにしますかね」

何が正解にしても、さっさと首輪を外したいのは変わらない。
必要なのはアルフォンスが言っていた通り、錬金術に頼らない昔ながらの方法。
工具を使った分解で何とかするしか無く、エボルトの知る限り可能な知識と技術の持ち主は戦兎だけ。
早急に会いたいところだが今どこにいるのやら。
欠伸を一つ漏らしながら首輪を仕舞い、指先が別の物に触れる。

52LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:49:17 ID:c7OW47L.0
純白の外装と、血よりも尚赤いコア。
人類滅亡に執念を燃やした人工知能同様、悪意を糧とする鎧。
アークドライバーワンは若き社長から所有者を次々変え、現在はエボルトの手に渡った。
蓮達との共闘や敵の消耗具合が影響したとはいえ、エボルドライバーも無しによく勝てたものだと自分でも思う。
自分も向こうも争いとは一生縁の無いアイドルの体、条件は同じでも変身するシステムの性能の差や、踏んで来た場数が勝敗を分ける。
トランスチームシステム同士なら勝てると自惚れた道楽息子を思い出し、形だけの嘲笑が浮かぶ。

天秤をこちらの勝利に傾かせた理由の一つとして、ダグバが大きな隙を晒したのも大きい。
街での戦闘時、ゲンガーが死ぬ原因となった砲撃。
強く警戒し然るべき大火力が放たれるまさにその直前、呆けたように動きを止めたのだ。
油断を誘う為の演技なのかと考えたくらいには、酷く無防備。
生きるか死ぬかの戦闘中、そんな真似に出ればどうなるか分からない筈も無いだろうに。
殺し合いを楽しむにしたって、今考えても少々不自然に感じる。
同時に今更ながらダグバの様子へどこか既視感を覚え、ややあって思い出す。

アーマージャックを殺した時の自分だ。

(ってことは…ある意味真乃ってお嬢ちゃんのファインプレーになるのかねぇ?)

あの時ダグバは気付いたのだろう。
体の持ち主の意識が復活していることを。
二回目の定時放送の内容から考えるに、真乃の意識が復活したのはそれよりも前。
ダグバは全く気付かず、好き勝手殺し合いを楽しんだ。
但し永遠に知らないままとはいかなかったようで、ダグバからすれば最悪の、エボルトには実に最高のタイミングで真乃の存在を認識。
結果的に真乃はダグバ撃破に大きく貢献したと言って良い。

本当に真乃の意識が復活していたのかどうか、今となっては確かめようがない。
わざわざ調べたいとも思わず、ダグバが死んだ以上然程興味も引かれない。
千雪に話したところで、更に精神へ負担が掛けるだけでメリットはゼロ。
あえて怒りを引き出し成長を促す元の計画での常套手段も、ハザードレベルと無関係の肉体でやっても完全に無意味。
どちらにせよ、彼女達にとっては悲劇と言う他ないだろう。

53LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:50:10 ID:c7OW47L.0
首輪と入れ替わりに白と赤、手に入れた二つのベルトを取り出し見比べる。
エボルドライバーを元に開発された地球産のライダーシステムではない、エボルトの知らない技術。
開発者やそれぞれのエネルギー源に興味はあれど、説明書にそういった記載は見当たらなかった。
ブラッドスタークへ変身可能な為、進んでこれらを使う気は今の所無し。
ただ放置して拾われ余計な戦力強化をされるよりは、こうして自分の元に確保した方がマシだ。
戦兎が装備に困窮しているようであれば、白い弓兵への変身ツールをくれてやっても良い。

(問題はこっちか)

もう一つの機械、アークドライバーワンを眺める目は心なしか険しい。
本来の力を取り戻した仮面ライダーエボル程ではないと自負するも、強力なことには違いない。
少なくとも殺し合いで見たライダーの中では現状トップクラス。
公平さを期す為か時間制限こそ設けられているが、これ程の装備を入手出来た収穫は大きい。
だが強大な力というやつにはいつだって、何かしらのデメリットが付きもの。
闘争心を高め好戦的な性格に変貌させるクローズチャージや、理性を失い制御不能の殺戮マシーンと化すハザードフォームなどがまさにそれ。
確実にそうだとは言えないが用心するに越したことはない、どうせならそこらの詳細も説明書に載せて欲しかった。
気が利かねえなとボヤきドライバーを仕舞う。

「う……」

視界の隅で青年が小さく身動ぎするが、瞼は閉じられたまま。
思い返せば、アーマージャックに始まり自分と同じくほとんど連戦続き。
最初の放送を超える前は手頃な拠点を見付け、じっくり戦力や情報収集に動こうかと計画したのが今や懐かしく感じる。
戦闘に次ぐ戦闘で得たものと失くしたものがそれぞれある中、未だ残ったままの一つが相棒のペルソナ使い。
何だかんだ、殺し合いで最も付き合いの長い相手だ。
情は無くとも貴重な戦力、睡眠中の護衛くらいは引き受けてやる。

例えば、そう。

「……」

今竈門家に近付いて来た者の対処とか。

キーキーと鳴く蜘蛛が参加者の接近を知らせる。
蓮のデイパックから拝借したスパイダーショックを放っておいて正解だ。
休憩時間も許してくれない何者かに、空気を読めよと内心で文句を言う。

ともかく来てしまったなら仕方ない。
ギジメモリはまだ抜かず、スパイダーショックには蓮を守るよう命令。
望まぬ敵か、望んだ相手か。
気怠さを隠そうともせずに、ボトルを活性化し装填。
血濡れの装甲を纏い、もてなす準備は完了。

『全く…退屈しねぇな』

54LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:52:17 ID:c7OW47L.0



嵐が過ぎ去った後は不気味なくらいに静かだ。
聖都大学附属病院、そう呼ばれていた施設は最早存在しない。
患者の傷を癒し、心に寄り添うドクター達の戦場である純白の城。
地図に記載された設置場所には瓦礫の山と、辛うじて残った立ち入り不可能な病棟。
禁止エリアの機能を待たず、聖都大学附属病院は完全に施設としての役目を終えた。

恐ろしい相手だったと、誰もが口を揃えるだろう。
永遠を支配した邪悪の化身とはまた違う、強大な敵。
多対一でありながら、常に不利を強いられたのは自分達だった。
ただ歩く、ただ腕を振る、ただ身動ぎをする。
たとえ攻撃の意思を宿さない動作一つでも、地上の命を複数纏めて刈り取ることが可能。
そのような存在が明確な敵を以て殺しに来たなら、それはもう意思を持つ災害と同じ。
悪童に踏み潰される蟻の気持ちを嫌でも味合わされた。
幸運だったのは無駄に逃げ惑い足底の汚れになる虫と違い、抗う術が自分達にはあったこと。
死へ誘い、地の底へ引き摺り込むべく伸ばされた腕を払い除けた果てに生存を勝ち取った。
それでも先の戦いは間違いなく自分達の敗北。
仲間の死は覆せず、喪失の痛みは消し去れない。
なればこそ受け入れ次の戦いに備えることが最善の選択、そう理解しても簡単に割り切れないのが人間の性だ。

作業をする戦兎と杉元の間に会話は無い。
黙々と神楽の支給品を回収し、腰に巻かれたベルトを外す。
青い仮面ライダーに変身するアイテムの内、聖剣は持ち去られた。
変身不可能でも念の為デイパックの奥底へ仕舞う。

「ピカ……」

か細い鳴き声が膝の上から聞こえ、甜花はぎこちなく頭を撫でた。
外へ出されたサッポロビールの宣伝カー、その後部座席で一人と一匹は作業の様子を見守っている。
自分達でやるから待っててくれ、戦兎にそう言われた時すぐには頷けなかった。
荒事に慣れている戦兎達に任せるのが正しいのだろうけれど、でも何となくモヤモヤしたものを感じて。
手伝うと口に出すのも、向こうにはお見通しだったらしい。
大丈夫だから休んでてくれと言って、余計な心配をかけさせまいと見せた笑顔。
戦兎を信頼する切っ掛けとなった笑みとは違う、悲しみを隠す仮面。
そんな顔をされては何も言えず、黙って頷くしか出来なかった。

55LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:53:00 ID:c7OW47L.0
柔らかい掌に撫でられる最中も善逸の顔色は優れない。
普段だったらもっと違う反応を見せたろうけど、とてもじゃないがそんな気にはなれなかった。
人が死んだ。
鬼殺隊の仲間が死に、この地で出会った者が死んでいく。
放送で知らされ、或いは目の前で最期を見る度に突き付けられる。
結局自分は、今も昔も遅過ぎるのだと。
兄弟子が苛立ちの裏に隠した幸せの箱に空いた穴を、終ぞ埋められず。
ようやっと自分がアイツにしてやれたのは、全てが手遅れになってから。
頸を斬る以外に何一つやれる事は無かった。
殺し合いでも同じだ。
鳥束が死んだ、煉獄が死んだ、しのぶが死んだ、悲鳴嶼が死んだ、脹相が死んだ、神楽が死んだ。
彼らの死を変える為にやれる事が、たとえ人の体で無くとあっただろうに。
戦う力ならある、なのに動き出すのが遅過ぎる。
喪失と無力感という、決して慣れない痛みに俯く。

(恐い、な……)

二人の男が後始末をし、もう一匹は自分の膝の上。
言葉の交わされない空間に漂う息苦しさを感じて、口には出さず甜花は思う。
死ぬことが、誰かに殺されるということがこんなにも近くに感じる。
テレビの向こう側で凄惨なニュースが流れるのを見て、妹と一緒に恐いねと話す。
なんてことのない日常の一幕が、遥か遠くの幸福にさえ見えてしまう。
恐いのだ、人が死ぬというのは。
喜んで死ぬ人なんて誰もいなかった。
泣いたり、苦しんだり、正気を失ったり。
良い人も悪い人も、皆嬉しいとか楽しいとは真逆の顔で死んでいった。
自分はまだ生きている、だけど人が死ぬのを見るのはこんなにも恐い。
ついさっきまで生きて、自分と話をした人が死んでしまったのも恐い。
恐くて、でも同じくらい悲しい。
家族や283プロの皆よりも、ずっと短い時間しか一緒にいなかったのに。
もう二度と話せない、本当の体に戻ってお別れを言うのだって出来ない。
現実を直視すれば、怪我をしてないのに胸の奥が痛かった。

56LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:53:42 ID:c7OW47L.0
「向こうでやって来る」

バックルを外された死体を背負い、短く告げた杉元の言葉に疑問は抱かない。
何をするつもりかは分かる、自分達が見ている前で出来ない理由だって分からない筈がない。
思う所は勿論ある、しかし必要なことだとも理解している。
杉元の判断を責めはしない、たとえ反論してもそれはただの我儘だ。
故に一瞬浮かんだ感情的な言葉を握り潰し、本当に言うべきことを口にした。

「悪い…頼んだ」
「おう」

こちらを見ないままの短い返答。
物言わぬ女を運び、瓦礫の山のずっと奥へと足を運ぶ。
戦兎達からは見えない位置で死体を降ろす。
閉じた瞼は永遠に開かず、艶を失った口は何も語らない。
何百と目にした魂を失った器に、今更杉元が動揺を見せることは無い。
仲間が逝った。
言葉を交わし、共に飯を食い、肩を並べて戦った者の死。
とうに慣れた喪失が喉を降る。
家に帰りたがっていた者の死を見るのだって、日露戦争では珍しくもなかった。
殺し合いで失って、でもまだ残っているものが神楽にはあったのだ。
帰れる場所があったのに願いは叶わない、杉元が思う以上に無念だったろう。

57LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:54:20 ID:c7OW47L.0
「…悪いな」

しかし杉元が足を止め、戦いを投げ出す理由にはならない。
首輪の回収もそうだ。
禁止エリアに進んで入りたがる者がいるとは思えず、死体を放置しても首輪を奪われる可能性はゼロに等しい。
だが確実にないと断言できず、DIOのような者の手に渡るくらいなら自分達の役に立てた方がずっと良い。

千切れ掛かった首を斬り落とすと、役目を果たした刀を鞘に納める。
突き殺し、斬り殺し、刺青人皮を剥ぐ。
人体を壊す感触は、アシリパと一緒にチタタプする時とはまるで違う。
彼女には一生経験して欲しくない、そんな感触だ。
首輪を拾い、死体にはシーツを被せてやる。
破壊されたベッドの残骸近くに落ちていたものだ、破けているが頭部を隠すくらいなら問題無い。
埋葬する時間も無いので、やれることと言ったらこれくらい。
霊安室諸共瓦礫の下敷きと化した赤毛の少女の死体は、残念ながらもうどうにもならなかった。

来た道を戻って戦兎に首輪を渡す。
噛み締めるような表情で受け取る姿に、余計な言葉は何も言わない。
これでやる事は全部終わった。
禁止エリアにまだ留まる理由も無く、当初の予定通りナナ達との合流を目指す。
宣伝カーを発車させれば、病院があった場所は徐々に遠ざかる。
チラと背後を見やり、甜花の瞳には小さくなっていく戦場跡が映った。
5人でカップラーメンを食べた、ほんの少しの暖かい時間。
二度とやって来ない光景にぎゅっと唇を噛み、視線を前に戻す。
それっきり、誰も振り返りはしなかった。

58LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:55:16 ID:c7OW47L.0
◆◆◆


このまま宇宙船まで宣伝カーを飛ばす、といきたいがそうもいかない事情があった。
最短で宇宙船に行くにはD-2を経由し北東に走らせれば良いが、禁止エリアな為不可能。
となると、どうあっても草原を離れ山を移動しなければならない。
当然だが車が走れるよう舗装などされておらず、宣伝カーで行くには限界がある。
鬱蒼とした森に阻まれ、これ以上車で進むのが無理な事は全員の目にも明らか。
ここから先は徒歩で行くしかなかった。

「足元気を付けろよ」

注意を促し杉元が先導する。
極寒の北海道をアシリパと共に旅し、自然の脅威をもアイヌの知恵を借り生き延びて来た男だ。
日が落ちた山の中を歩くくらい訳も無い。
山中は視界が悪く、星や月の光も木々に遮られている。
言われた通り足元にも気を配りながら進んで行く。

「ピカ…?(あれ、今なんか…)」

暫く歩き、不意に足を止め訝し気に周囲を見回す。
気のせいだろうか、善逸の耳には自分達以外のナニカが動く音が聞こえた。
野生動物の類では無い。
この島にいるのは集められた参加者のみ、それ以外の生物は虫の一匹すら生息していない。
なら本当に気のせいか、それとも誰かが隠れていたのか。
善逸の様子に3人も異変を察知、緊張感が辺りに漂う。

「俺達に気付いて隠れたのか…?」

呟きへの答えを馬鹿正直に返す者はいない。
警戒を強め移動を再開、いざという時には直ぐにでも戦えるようベルトを装着しておく。
仲間が一人死んだばかりでも、お構いなしに次の戦闘が始まるのが殺し合いだ。

59LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:56:09 ID:c7OW47L.0
また暫く進んだ先で、一行の前に木々以外のものが姿を見せた。
木造建ての一軒家。
現代日本出身の戦兎や甜花にとっては、歴史資料館にでも行かなければまずお目に掛かれない古風な民家。
山中にポツンと建てられており、街に設置された家々とは違う参加者に縁のある施設。

「これは…悲鳴嶼と脹相が会ったっていう場所か?」
「ピカ、ピカピ…(じゃあ、ここが炭治郎と禰豆子ちゃん達の家…)」

山中にある竈門家で脹相と遭遇したと、病院での情報交換で悲鳴嶼は言っていた。
病院の北部に設置しており、場所も聞いた内容と間違っていない。
もし炭治郎の意識が本当に復活していたら、自分達の生まれ育った家まで利用されたのに何を感じたのだろうか。
友の心情を思えばやり切れず、無意識の内に苦い顔を作る。

「そうかぁ…ここで……」

何とも言えない顔で頷く杉元の脳裏に浮かぶのは、デイパックの奥深くに封印した鍋料理。
タイミング的にも恐らくこの家で、二人はラッコ鍋を食べたのだろう。
周囲を山に囲われた、どれだけ騒いでも聞き咎められない狭い空間で。
亡き仲間二人にあれこれ邪推するべきでないとは重々承知だが、ラッコ鍋の一件は杉元自身も経験があるだけに考えてしまう。
相撲か何かで発散できたのか、それとも一線を超えたのか。
気まずい態度の裏にはどんな過程があったのだろうか。
頭を振って邪な想像を追い出し、物言わぬ家に近付くと入り口が破壊されているのが確認できた。

「あいつらどんだけ激しく…い、いや何でもねえ!」
「さっきからどうした…?」

一人で勝手に慌てる杉元に、仲間は困惑するばかり。
微妙な空気が流れ出すのも束の間、有無を言わさず全員身を引き締めることになる。
出入り口の戸を失い、光が見えない黒一色の空間に蠢く者が見えた。

「っ…」

電光石火の動作で歩兵銃を構え、一点を睨み付ける杉元に隙は見当たらない。
いつ戦闘に発展しても問題無く動ける。
彼に倣いそれぞれ装備を取り出し、竈門家に潜む何者かの出方を待つ。
相手の姿が見えないのは、圧倒的な力を振りかざす敵と対峙した時とはまた別種の緊張感だ。
ロックシードをキツく握り震えを誤魔化す甜花の横で、善逸の全身には冷汗がダラダラと流れる。

「誰だ?」

短く、同時に十分な威圧感を籠めた問い掛け。
そっちがいるのには気付いてる、妙な真似はせずに出て来い。
二文字の中に宿った意図を相手は正確に察したらしく、ゆっくりこちらへ近付く気配があった。
警戒と恐怖の視線を一身に集め、正体不明の存在からはくつくつと笑いが漏れる。

60LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:57:12 ID:c7OW47L.0
『おいおい、そこまで警戒しなくても良いだろ。こっちは一休みしに立ち寄っただけだぜ?』

渋みを感じさせる壮年男性の声が4人の耳に届き、暗闇から現れたのは赤い怪人。
戦国の世を駆けた英傑の甲冑とも、西洋で名を馳せた騎士の鎧とも違う。
血を被った色の装甲を纏い、碧のクリアゴーグル越しに来訪者達をねっとりと眺める。
値踏みされているかのような視線に、杉元が眉を顰めるのもお構いなしだ。
頭頂部から爪先まで完全に隠し、発せられた声でしか性別は確認出来ない。
中身が誰かは不明、しかし纏った装甲については杉元にも察しが付く。

「また仮面らいだあとかいうやつかよ…」
『自信満々に答えてもらって悪いが不正解だ。正解は…そいつに聞くんだな』

己を睨む銃口が見えていない訳ではあるまい。
だというのに怪人はいっそ呑気と言って良い程に、緊張感がまるで無い。
撃たれたところで掠り傷にもならないと高を括っているからか。
杉元の口から出た戦士の名を否定し、一人の青年を顎で指し示す。
怪人の装甲と同じカラーリングのツナギを着た彼は、この場の誰よりも険しい表情だった。

姿を現す直前、声を聞いた瞬間猛烈な悪寒に戦兎は襲われた。
大蛇に巻き付かれ、首に毒牙を突き立てられる気分はこれが初ではない。
旧世界の戦いで幾度となく味合わされたのは、今でも鮮明に覚えている。
一度は完全勝利を収め、破滅を求める王相手に共闘して尚も忘れらない苦い記憶の数々。

強張る戦兎を見てさも楽し気にそいつは言葉を紡ぐ。
世界が創り変えられても、決して断ち切れない因縁で繋がれた英雄へと。

61LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:58:19 ID:c7OW47L.0
『折角感動の再会なんだ。もっと嬉しそうにしたらどうだ?戦兎ォ?』
「好き好んでお前に会いたがる奴なんかいるわけねえだろ、エボルト」

嘲り交じりに絡み付く戯言を、明確な拒絶の意思を以て切り捨てる。
吐き捨てた四文字の名前に、一同へ驚愕と更なる緊張が走った。
戦兎が最も強く警戒していた最悪の宿敵。
それが今、目の前にいる。

「おい桐生、こいつが…」
『おっと、その様子じゃあ俺のこともちゃぁ〜んと紹介してくれたようだな?』

警戒の色が濃くなったのは分かるだろうに、エボルトの態度から焦りはまるで読み取れなかった。
一挙一動を見極める杉元の目に鋭さが増す。
視線だけで殺せるならとうに二桁を超える敵意をぶつけ、構えた歩兵銃は決して降ろさず、引き金から指を外さない。
人を食ったような態度で真意を隠す得体の知れなさは、どことなく鶴見を思わせる。
だがエボルトの場合はより不気味だ。
飄々とした言葉と態度を繰り返していながら、その実人間味というものが恐ろしく感じられない。
戦兎から人間でないとは聞いていたが、ある意味納得がいく。
人間の体になっていようと、根本的な部分で人間らしさを持ち合わせていない怪物。
DIOや巨人のプレッシャーとは違う、気付かぬ内に首を絞め上げる蛇のような気持ち悪さがあった。

必要とあらば動ける準備は出来ている。
しかし今はまだその時ではなく、「見」に徹して待つ。
蛇の視線を真っ向から受け止め、怯まず睨み返す戦兎がどうするかだ。

62LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 22:59:15 ID:c7OW47L.0
『元気そうで何よりだよ。どこの誰かも分からない体にされて、呆気なく死んじまわないか心配してたんだぜ?』
「お前に心配される程、落ちぶれてねえんだよこっちは。…ここじゃまた“スターク”のままなんだな」
『全く悲しいことになァ。俺を呼ぶなら相応の待遇があるだろうに。お前の方は、元の体と同じ顔で嬉しいんじゃないか?佐藤太郎の顔に変えてやった甲斐もあったってもんだ』
「…そうだな。今ので余計最っ悪の気分になった」
『悲しいこと言うなよ。こっちはお前に会いたくて会いたくて、飯も喉を通らなかったくらいだ』

言葉を投げ合う両者の間に友好関係は微塵もない。
キャッチボールというよりデッドボールを繰り返す、剣呑さを隠さない会話。
皮肉と毒の応酬も頃合いを見て打ち切り、先に本題へ入ったのはエボルト。
まさか向こうからやって来るとは思わなかったが、戦兎との再会はこうして叶っている。
となれば戦兎への『お願い』をそろそろしても良いだろう。

『再会を祝してコーヒーでも淹れたいところだが、生憎豆も道具も置いて来ちまってるんでね。本題に移らせてもらう』
「……これをどうにか外せって言うんだろ」
『正解!』

そら来たと、予想通りの展開に戦兎は顰めっ面で首輪を叩く。
エボルドライバーの修復の時と良い、エボルトは戦兎の技術力を評価している。
首輪解除の要求されるくらい、とっくにお見通しだ。
よく分かってんじゃねえか、そう笑って頷く蛇とは正反対に戦兎は渋面を作る。

『ったく、そこまで嫌そうな顔しなくても良いじゃねぇかよ』

呆れを口にしつつ、戦兎の反応は思った通りのもの。
むしろ素直に承諾された方が、却って何か裏を疑う。
こちらの首輪解除に乗り気でないなら、それはそれで問題無い。
やる気を出させる簡単な方法があるのだから。

『ま、俺の為に働くのが嫌ってんなら別に良い。だったら――』

トランスチームガンを取り出し操作。
武器の存在に杉元からの敵意が膨れ上がるが、攻撃の意図は全くない。
宇宙服にも似た血濡れの装甲が消え失せ、生身の体を晒す。
10年もの間居心地を満喫した宇宙飛行士ではない。
哀れにも星狩りの器に選ばれた、偶像の姿がそこにあった。

63LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:00:21 ID:c7OW47L.0
「こいつを助ける為と思えば、少しはやる気も出るだろ?」

「……っ!」

黒のリボンで結われた髪を揺らし、これまでとは似ても似つかない声で言う。
浮かべる笑みは軽薄そのもの。
整った顔立ちのせいか美貌は損なわれてないけど、自分の知るあの人は絶対にしない顔。
初めて会った時、名前で呼んでくれたあの人の笑顔とは全く違う。
283プロで出来た最初の友達と、同じ筈がない。
なのに、今目の前にいるのは紛れもなく――

「千雪、さん……」

自分の声が一体どれ程震えているのか、甜花には分からない。
彼女の名前をちゃんと言えたかどうかすら判断出来ない。
組み合わせ名簿を見た時から、千雪の体が巻き込まれているとは知っていた。
体に入った精神が、よりにもよって最悪の部類だとも分かっていた。
だけど、いざこうして目の当たりにすると想像以上のショックで頭がおかしくなりそうだ。

あれは、彼女であって彼女ではない。
千雪とは全く別の存在が好き勝手に体を動かしている。
分かっているのに、目を覆いたくなるような悪夢そのものだ。
甜花の記憶を優しく彩るあの人が、怖気が走る赤で塗り潰される。
甜花も好きなあの人の笑みが踏み躙られる。
耐え難い光景がすぐ傍にあって、自分はただ震えてばかりで目を逸らす事すら出来ない。

64LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:03:08 ID:c7OW47L.0
「ああ、成程ねぇ」

そんな偶像を、蛇の瞳は捉えて離さない。
捕食を待つだけの獲物のように。
面白半分に散らされる花のように。
細い首を舌が撫で、ゆっくりと毒を流し込む。

「戦兎相手にお姫様ごっこを満喫してたって訳か。良かったなァ、て・ん・かちゃん?」
「――――っ!!」

あの人の声で。
あの人の顔で。
あの人と同じように名前を呼んで。

「ひぅ……」

猛烈な嫌悪感に視界が滲み出した途端、目の前に赤い背中が見えた。
恐くて気味の悪い赤とは違う。
とっても派手だけど、ずっと自分を守るために戦ったヒーローの背中だ。

「やめろエボルト。お前が軽々しく甜花の名前を呼ぶな」
「そう怒るなって、俺なりの軽いジョークだよ。悪かった悪かった」

怒気を孕んだ言葉をぶつけられても、涼しい顔で受け流す。
話を無駄にややこしくする気は無かったが、見知った相手がいるとついつい口が滑ってしまう。
感情が無いにも関わらず、戦兎や万丈だと興が乗るのは地球での暮らしが長かった影響か。
少々どうでもいいことを考える。
とはいえ話が脱線するのはこっちも望む所では無い。
向こうもふざけたちょっかいの相手は御免らしく、険しい顔で本題へと話を戻した。

65LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:04:17 ID:c7OW47L.0
「先に聞かせろ。そもそもお前は殺し合いでどう動いて来た?」
「乗ってないから安心しろよ。馬鹿正直に優勝を目指したところで、帰してくれる保障はゼロ。素直にご褒美をくれるかだって信用できない。ならアイツらを片付けてから帰った方がマシだ」

これもまた戦兎が予想した通りの答え。
先程の言い方からしてエボルドライバーは手元に無い。
幾ら何でもブラッドスタークだけで優勝を目指す程、自惚れた男ではない。
エボルトと言えども、いやエボルトだからこそ安易に皆殺しは選ばなかった。
殺し合いに乗ってないからと言って、信用などは絶対に出来ないが。
だが他者の体、それも甜花と縁の深い人間の肉体を放って置く気は最初からない。
精神がエボルトという大き過ぎる問題を無理やり飲み込み、答えを口にする。

「どの道お前の巻き添えにさせるつもりはないんだ、首輪は外す。…但し、この先勝手な真似は一つもさせない。こっちの指示には全部従ってもらう」
「おお恐い恐い。皆の人気者のアイドルを飼い犬扱いとは、ずいぶん穏やかじゃねぇな」

わざとらしく肩を震わせる女の皮を被った蛇に、戦兎が向ける目はどこまでも険しい。
こういう態度で相手のペースを崩す奴だとは、嫌と言う程知っている。
一々構わないし、こちらの要求を撤回するつもりもない。

「強がるなよ。お前に余裕が無いことくらい、こっちは全部分かってんだよ」
「ほぉ…」

軽薄な笑みは変わらない、代わりに彼らの周りの空気が一段冷え込む。
背後でビクリと少女が震えたのを気配で察した。
恐がらせて申し訳ないと思うも、ここで引き下がってエボルトの勝手を許す訳にはいかない。

66LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:05:01 ID:c7OW47L.0
「エボルドライバーは無い、別の体も乗っ取れない、パンドラボックスだって持ってない。これで優勝出来る程他の参加者が甘い奴らじゃないことくらい、お前だって理解してるだろ」

仮面ライダーエボルだけがエボルトの脅威ということではない。
だがそれでも、旧世界で猛威を振るった時に比べれば弱体化を余儀なくされてるのは事実だ。

「だから優勝じゃ無く脱出を選ぼうにも、首輪を外すアテは俺以外に見付からなかった。もうすぐ24時間経つってのにこれなんだ。今から都合良く俺より素直に外してくれる奴が出て来るのがどんだけ現実的じゃないか、言うまでもない」

若しかしたら、戦兎以外にそういった技術の持ち主が参加していると考えられなくも無い。
が、都合良く見つかるかは別の話。
大人しく協力するか分からない、第一生きてるかも定かではない。

「殺し合いに参加させられた時点で俺達全員主催者に負けたみたいなもんだ。だからお前でさえ常に後手に回るしかない。何でもかんでも自分の思い通りに動かせた地球じゃねえんだよ、ここは」

ファウストや難波重工といった組織を使う事はできない。
エボルドライバーやパンドラボックスという、圧倒的な力で押し通す事もできない。
自由が封じられている点では、地球に来た時よりも遥かに不利な状況だろう。

「もしお前一人が馬鹿やったせいで首輪を外す前に俺が死ねば…エボルト、詰むのはそっちの方だ」
「否定できないのが辛いところだな」

反論するでもなく、肩を竦めてあっさり肯定。
戦力だったら、蓮を始め多数の者と繋がりを得た。
しかし首輪解除に関しては指摘通り、戦兎の替えが利かない。

67LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:05:52 ID:c7OW47L.0
「一人、まぁ首輪のあれこれで役立ってくれそうな奴がいたんだが……散々暴れ回った挙句どっかに行っちまった。あいつに比べりゃ、美空は手のかからないガキだったとつくづく思うよ」

誰を指して言ってるのか戦兎にも、彼らのやり取りを見守る者達にも見当が付かない。
件の人物について考えるのは後で良い。
如何なる答えをこの男が返すか、それによってこっちも取る手が変わってくる。

「ま、ボンドルド達を始末したいってとこはお互い同じなんだ。揉め事を起こさないよう努力はしてやる。仲良くやろうじゃねぇか、万丈が嫉妬するくらいになァ?」
「気色悪いこと言ってんじゃねえよ」

ヘラヘラ笑い肩に乗せて来た手を乱暴に退けたいが、千雪の体に手荒な真似はできない。
向こうから離すのを顰めっ面で待つしかなかった。
キルバスのように共通の敵がいれば手を組むのに躊躇は抱かない男だ、こちらの要求が受け入れられたのに驚きはない。
尤も信頼を向ける気は一切なく、引き続き警戒は勿論行う。
新世界を創り数多の死が無かった事になった今でも、禍根であるこの男への怒りは消えていない。
何が切っ掛けでエボルトがこちらの予期せぬ動きに出るか不明な以上、決して油断は出来なかった。

「そういうことだ。話も纏まったことで、宜しく頼むぜお三方」

戦兎の肩から離した手を軽く振り、交渉成立をアピール。
精神がエボルトというだけで、美人でもここまで胡散臭くなれるとは。
傍らで呆れる戦兎に、杉元から疑問が飛ぶ。

「桐生、お前が決めたんなら一々文句は言わないけどよ。良いんだな?」

エボルトが妙な真似をしでかさないよう、こっちで監視する。
病院でもその通りに話し合った為、今更反対だ何だと騒ぐ気は無い。
甜花との約束や、戦兎自身の決断を否定はしない。
だからこれはあくまで確認。
打倒ボンドルドの目的は同じでも、決して安心して背中を預けられない奴を引き込む。
そのリスクを理解の上で、エボルトと取引を行ったのか。
キロランケと尾形の裏切りに遭い、アシリパと引き離されたことのある杉元だからこそハッキリ確かめたかった。

68LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:07:24 ID:c7OW47L.0
「ああ、こいつの好き勝手にはさせない。だからエボルトの事は俺に任せて欲しい」
「…そうか。まぁ乗り掛かった舟だ、いざとなったらぶん殴って…は無理でも俺もこいつを大人しくさせるさ」
「本人前にしてそれ言うかねぇ普通。仲良くやろうって気が無いのは悲しいぜ、おい」
「ちょ、やだ聞きました桐生さん!この女こっちの会話に出しゃばって来たんですけど!?」
「やめなさいよその気持ち悪い話し方」

杉元自身、アイヌの金塊争奪戦で多くの者と共闘経験がある。
なれど裏切りの心配なく、心から信頼し合える者は多くない。
白石や谷垣でさえ、出会った当初は敵同士だった。
今も昔もハッキリ味方と断言出来るのは、それこそアシリパやフチらアイヌの者達くらい。
敵味方の入れ替わりが激しいのは今に始まったものではない。
戦兎同様決して無防備な背を向けはしないが、同行自体は受け入れる。

「甜花も…今はそれで良いか?」
「う、うん……千雪さんの首輪も、外してくれて……へ、へんな、ことさせないの……甜花も賛成……」
「…悪い、もう少しだけ待っててくれ。エボルトを追い出す方法も絶対に見付ける」
「あ、謝らなくても大丈夫、だよ……!戦兎さん、約束守ってくれて……だから……大丈夫……」

本当は今も千雪の体がエボルトの傀儡となっているのが辛いだろうに。
今すぐ解決できない自分へ歯痒さを抱く。
頭の痛いことに、精神と肉体の入れ替えがどのようなシステムかは依然不明なまま。
現状、主催者の元へ辿り着く以外に知る方法は無い。

「ピカー…ピッピカチュウ…ピカ……ピカ〜…!(危ない奴だけどしょうがな……いやでも恐いし……いやでもメチャクチャ綺麗なお姉さんだし…いやでもな〜…!)」
「あっ、善逸くん……なーちゃんの時みたいに、千雪さんにえっちなこと……考えちゃダメ……!」
「ピカ!?ピ、ピカピー…(え゛!?い、いや俺はそんな決してそんなまさかそんな…)」
「動揺し過ぎだろこいつ」

あからさまな動揺を露わにする黄色い珍獣に呆れが集まる。
一方で奇妙な見た目と鳴き声から、エボルトはゲンガーから聞いたポケモンの特徴を思い出す。
一応殺し合いに乗ってる可能性が無いとも言い切れないらしいが、だがこの様子では違うだろう。
杞憂で済んだと、ゲンガー本人が知る機会は残念ながら訪れなかった。

69LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:08:06 ID:c7OW47L.0
「さて、と。桐生戦兎様御一行に加わったなら、相棒のことも紹介しとかねえとな」
「他にも誰か一緒なのか?」
「まぁな。今は夢の世界を堪能中――でもないか」

振り返ったエボルトの視線の先を追うと、ついさっき出て来た暗闇。
戸の残骸を避けながら、夜の色とは別の黒が顔を見せる。
ベストに帽子が特徴の青年は困惑をハッキリ顔に出し、共犯者に目で説明を求めた。

「よう、丁度良いタイミングで起きたな」
「エボルト…。この人達は…それにアルフォンスはどこに……?」
「一旦落ち着けよ。順を追って説明してやるから、まずはこれでも飲んどけ」

自分が意識を落としてる間に何があったのか。
知らない内に随分と事が進んだようにも見えて、状況を受け入れるのにこんがらがっている。
寝起きで、疲れもまだ抜け切ってない頭には優しくない。
軽く混乱気味な蓮とは対照的にエボルトはマイペース。
デイパックから手付かずの水を投げ渡し、水分補給を促す。
自分が少々落ち着きを欠いているとは、蓮にも自覚があったのだろう。
言われるがままキャプを開き口を付ける。

「……っふう」

一口程度のつもりが、気が付くと夢中で喉の奥に流し込んでいた。
思った以上に体は水分を欲していたらしい。
乾き切った喉を潤し、冷水が意識を引き締めさせる。
改めてこの場に集まった面々の顔を見回すと、やはりエボルト以外とは全員初対面。
ミチルが持っていた地図で確認した、病院付近にいた者達だ。
殺し合いに乗っていないグループと上手く合流出来たのか。

70LOST COLORS -桃源郷エイリアン- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:09:24 ID:c7OW47L.0
「立ち話もなんだ、その辺も含めて中でお喋り会といきたいんだがね」
「こっちも話をするのに反対はしない。ただ、あんまりのんびりもしてられねぇ」

エボルトとの遭遇で足を止めたが、本来の目的はナナ達との合流。
脹相が死んだ今、宇宙船に戦闘が可能な者は残っていない。
合流が遅れたせいで二人共呆気なく殺される、そのような事態が起こらないと何故言い切れるのか。
エボルトから相棒と呼ばれた青年や、彼らの持つ情報などは聞きたい。
本来なら腰を据えてじっくり整理すべきだろうけれど、今はナナ達の安全確保が先だろう。

事情を簡潔に説明すると、向こうは顔を見合わせ頷き合った。

「じゃあしんのすけはミチルの友達と一緒に…?」
「そうなるだろうな。ってことは一応安心、と言って良いのかねぇ?」
「ミチル…確か柊が言ってたクラスメイトのことか?どういうことだ?」

思わぬ名前に詳しい説明を求めれば、ざっくりだが蓮が話す。
曰く、自分達にはしんのすけという仲間がいたが、諸事情で遠く離れたエリアに移動した。
支給品の中に数時間前の居場所が分かる地図がある為、しんのすけは宇宙船にいると把握。
時間的にもしんのすけがナナ達と会った可能性は高く、恐らくは協力して襲撃者を撃退に追い込んだと考えられる。

「ま、襲われても戦えない訳じゃあ無いだろうぜ。そっちも相棒も体力に余裕があるってんじゃないなら、休憩がてら話ぐらいはしても良いと思うがね」
「それは……」

戦兎達と、蓮を含めた5人が沈黙する。
どちらも仲間と急ぎ合流したいことに変わりはない。
しかしここで齎された内容、東西それぞれの参加者が思わぬ形で行動を共にしている。
ミチルが強く信頼を寄せていたナナと、詳細は不明だが承太郎の体だった燃堂。
後者はともかく、前者はしんのすけを絶対安心とまではいかなくとも色々とサポートできるだろう。
それにしんのすけは徐々に孫悟空の肉体に慣れ、アーマージャックを蓮達と共に打ち倒すだけの力を発揮可能。
懸念事項だった、ナナと燃堂だけでは襲われた時に対処が難しい問題も一応解消された。
無論、だからといって宇宙船へ向かうのを先延ばしにして良いという事にはならない。
ミチルやゲンガーの死を聞き、悲しんでいるだろうしんのすけの支えになってやりたい。
ただエボルトの指摘通り、体力的に余裕がないのもまた事実。
ダグバと巨人、戦いの結末に違いは有れど楽に勝利を収められる相手では無かった。
移動を強行し途中で息切れを起こしたせいで、余計到着が遅れるとなっては目も当てられない。

しんのすけ達が戦った相手とて無傷では済まず、すぐに再戦可能ではない筈。
DIOは地下通路の方へ向かい、宇宙船へ来るには時間が掛かる。
康一もまた相当に体力を消費した、だから神楽を喰った直後は戦闘の継続ではなく逃走を選んだ。
宇宙船にいる者達が、即座に闘争の渦に引き込まれる可能性は高くない。

「…分かった」

暫しの躊躇を挟んだ後、渋い顔ながら頷く。
数が揃っているだけでは有利になれない程、殺し合いに乗った者達は強敵揃い。
自分達の消耗具合へロクに気を配らずいるのは悪手、少しでも万全に近付けておくのは間違っていない。
よりにもよってそれを因縁深い地球外生命体から指摘されたのは、余り良い気分とは言えないが。

兎にも角にも話は纏まった。
ここからは互いが持つ情報の擦り合わせ。
東と西、反対のエリアで起こった闘争の記録の開示だ。

71LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:12:53 ID:c7OW47L.0



代々炭焼きを生業にした一家の住まいにて、顔を突き合わせるは5人と1匹。
裕福でなくとも幸せが満ちた竈門家も、殺し合いでは一施設。
呪胎九相図と鬼狩り、川越市の殺人鬼が訪れた場所にて行われる情報開示。

橙色の炎が室内を淡く照らし、冷えた空気に熱を灯す。
杉元が手早く着火した囲炉裏を囲い、黙っていても始まらないとエボルトが音頭を取った。

「軽く自己紹介して本題に行こうじゃねぇか。俺の紹介は戦兎が手間を省いてくれたようだがな?」

後半の皮肉は無視して各々名前を言い、まどろっこしいのは抜きで情報交換に入る。
戦兎達からはPK学園での戦闘と、病院前での死闘。
エボルト達からは風都タワー及び東側の街、そして竈門家に来る直前のアクシデント。
生存中の仲間と危険人物の動向を主軸に話は進む。

「アルフォンスが……」

聞かされた内容は決して良いものばかりではなかった。
共に街を出発した錬金術師は正気に戻らず、どこに行ったかは不明。
暴走しても絶対に止めると決意しておきながらこの始末。
自分が気を失わずにアルフォンスを大人しくさせていたら、竈門家には彼もいた筈だろうに。

蓮の精神を軋ませる情報は康一についてもだ。
街でキャメロット達と共に遠ざけた巨人が、戦兎達にも襲い掛かったらしい。
対処法を知る神楽がいた事もあって、元に戻すのは成功したと言う。
だが康一はカラスのような怪物になり神楽を殺害、逃亡し行方を眩ませている。
巨人化から戻せば解決する、その考えは最悪の形で打ち砕かれた。
神楽やゲンガーの仲間だった少年が何故凶行に走ったのか。
巨人やスタンド以外にも何らかの力を隠し持っていたのか。
疑問は尽きないが確かな事は一つ、新八の仲間でもあった少女の危機に自分は間に合わなかった。
仕方ないと分かっていても、簡単に切り替えられれば苦労はしない。

72LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:13:32 ID:c7OW47L.0
「DIO、ねぇ……」

打ちのめされる怪盗とは反対に、星狩りは得られた情報をゆっくり噛み砕く。
毛先を弄りながら口に出したのは、戦兎達が幾度もぶつかった強敵の名。
今は亡きスタンド使い、承太郎が強く警戒していた相手だ。
話を聞く限り、一筋縄ではいかない相手なのが嫌でも分かる。
承太郎と同じようにスタンドを使うだけでなく、仮面ライダーにまで変身するのだから確かに厄介だ。
しかもどういう訳か銃で頭を撃たれても死なない、異様な生命力まで持つ。

「で、相棒が使ってるのと同じベルトをソイツも持ってると」
「メモリの色は違ったけど、多分雨宮のベルトと同じライダーシステムだ」

思わず自分のロストドライバーに視線を落とす。
ジョーカーと違って白い仮面ライダーらしいが、自分以外にもベルトとガイアメモリが支給されてるのは驚きだ。
それも殺し合いに嬉々として乗る危険な奴とあれば、内心非常に複雑。
元の持ち主が翔太郎と同じ善人なら、こんな形でライダーの力を利用されたのはさぞや悔しいだろう。

尤もこの場の全員知らないが、DIOは彼らの与り知らぬところで既に死亡。
脅威が一つ減った、と安心するにはまだ早い。
DIOを殺した男は世界の破壊者として真に覚醒し、今尚健在なのだから。

「同じベルトって言えば、まさかお前の方にもソレがあるとは思わなかったぜ?戦兎」

話はDIOからマゼンタ色の仮面ライダーに移る。
ディケイド、複数のライダーの力を操り風都タワーで猛威を振るった破壊者。
変身者の名前こそ不明だが、脅威の程は実際に戦った蓮達がよく分かっている。
一体どれ程のライダーの力を持つのか、疑問は戦兎にも支給されたディケイドライバーが答え。
20を超えるライダーのカードが入っており、敵の手数の多さには軽く眩暈がした。
蓮達が戦ったディケイドとは色と、描かれたクレストの数が違う。
その為戦兎が持つディケイドライバー程の変身は出来ないかもしれないが、油断ならない敵なのに変わりは無い。
同時にそれ程の手数を誇るライダーに変身可能なら、ビルドドライバーの代わりを十分果たせるのにも納得がいった。

73LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:14:30 ID:c7OW47L.0
また蓮とエボルトは直接の戦闘こそ行ってないものの、銀髪の剣士も注意すべき敵として伝える。
遠めに見ただけだが、キャメロット(グリード)と承太郎の二人掛かりでも苦戦する強さの持ち主。
更に承太郎から、銀髪の剣士こそ坂田銀時を殺した張本人との情報を得ている。
銀時の仇が誰かを知り、最も感情を震わせる少女はもういない。
もう一つ、新八を殺したのが誰かも蓮達は知っていた。
ただ銀髪の剣士と違い、件の殺害者であるホイミンは既に脱落。
何よりホイミンは明確な殺意で新八を殺したのではなく、恐らく肉体の悪影響を受けて望まぬ殺しに手を染めた。
神楽が知ったら怒りの矛先を失っただろう内容も、本人がいない今となっては残された者に後味の悪さを残すだけだ。

「ピカピ……」

肉体の悪影響による暴走を受けたのはホイミンだけではない。
善逸ら鬼殺隊の長、耀哉も複数の被害を齎した。
善良な参加者を鬼に変える、幾つもの悲劇を生み出した無惨と同じ真似に出たのは善逸もショックが大きい。
柱達がこの事実を知らずに二度目の死を迎えたのは、幸いと言って良いのだろうか。
大手を振って喜ぶ気には全くなれないが。

「ピカ、ピカチュウ…(でも、煉獄さんはやっぱりあの人のままだったんだなぁ…)」

決して望まぬ凶行に走らされた者がいた一方で、己を貫き通した者もいる。
善逸との再会叶わず死亡した煉獄は、蓮達の仲間であるしんのすけを守るために戦い抜いたとのこと。
乗客たちの命を守り上弦の参相手に一歩も引かなかった益荒男は、この地でも己の魂を燃やしその果てに力尽きた。
悲しみは消えない。
もう一度会いたかったし、炭治郎達にも会って欲しかったと思う。
だけど、煉獄が自分達が知る煉獄のままだったと知れたのは、少しだけ救いになれた。

しかしその顔もすぐに曇り出す。
鬼殺隊でありながら害を齎す存在に変貌したのは耀哉以外にもう一人。
炭治郎は体を奪われただけでなく、人を殺してしまった。

74LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:16:00 ID:c7OW47L.0
「ぎにゅう…ギニューか。そいつが脹相と体を入れ替えた奴なんだな?」
「多分、な」

他者との肉体入れ替え能力を持った参加者、ギニューにも要警戒が必要だ。
体を奪う力は勿論のこと、戦闘技能も非常に高い。
ジューダス達の元から撤退後は、どういう経緯か宇宙船に行きしんのすけ達と戦った。
現在はバルクホルンの体に変わり、付近に潜伏してる可能性は非常に高い。

「あ、あの……雨宮さん、たちが会ったっていう女の子なんだけど……」

おずおずと手を上げ、おっかなびっくりな質問。
甜花が聞きたいのは蓮達が戦った白黒の仮面ライダー、その変身者について。
少女は名乗らなかったが、外見の特徴が当て嵌まる人物を甜花は一人知っている。
心臓がいやに五月蠅い、声がいつも以上に震えてる、嫌な予感が止まらない。
でもそんなのは嘘だと、自分の勘違いだと強く言い聞かせ最悪の予想から目を逸らす。

「あの子は……」

甜花の様子に、素直に教えるべきが迷いが生じる。
数時間前の現在地が分かる地図、それに表示された画像を指させば良い。
だがもし甜花にとって好ましくない事実ならと考えると、本当に良いのか躊躇してしまう。

ここはやはり――



→【正直に教えよう】
【嘘を言って誤魔化そう】
【地図は俺が飲み込んだ】



嘘で誤魔化したって長続きはしないし、先送りにしてもいずれは知ることになる。
残酷な現実だろうと伝えるべきだろう。

75LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:17:02 ID:c7OW47L.0
迷いを振り払うように地図を広げ、画像に指を当てる。
見惚れる笑みで殺し合いを望んだあの女の子に。

「うそ……」

人差し指の先には甜花も知っている少女。
甘奈と千雪同様、殺し合いに体を利用された、同じ事務所のアイドル。
櫻木真乃の画像をハッキリと指差していた。
彼女の体になったダグバなる者が、どうか殺し合いに乗ってない人であって欲しい。
抱いた願いは呆気なく否定され、受け入れ難い現実が降り掛かる。

そして、甜花を襲う悪夢の如き事実がもう一つ。

「エボルト…この女の子は……」
「殺したよ。首輪も拾った」

「……っ!」

何でもないように、まるで邪魔な虫を叩き落としたと言わんばかりの気安さでアッサリ口にした。
頭が殴られたみたいにグラグラする。
強い力で締め上げられたように苦しい。
甜花の世界を彩る大切な星の一つは急激に輝きを失い、冷たい石になって砕け散った。

76LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:18:33 ID:c7OW47L.0
「真乃ちゃん……そん、な……」

記憶の中の笑みが色褪せ、寂しくて痛ましいモノクロになっていく。
妹と自分の二人だけで完結した世界を新しく変えてくれた、大切な一人。
283プロでできた友達で、果穂と同じく自分がちゃん付けで呼ぶ女の子で。
その子が体を勝手に使われた挙句に、最悪の結末を迎えた。
巻き込まれたのは体だけだと、安心出来る訳が無い。
帰る体を失った真乃が一体どれだけショックを受けるか、甜花には想像も付かない。

(もしかして……)

もっと嫌な予感が掻き立てられる。
二回目の放送で青白い体の男が言っていたではないか。
参加者の間で、肉体側の意識の復活が起きていると。
具体的に誰がとは説明されなかったけど、それに真乃が当て嵌まる可能性だって否定できない。
仮にそうだとしたら、真乃は本当の意味で死んでしまったことになる。
しかも、エボルトはよりにもよって千雪の体で殺害に及んだ。
精神が違うからと言って、それが何の慰めになるというのか。

ちょっと前に、283プロの皆で合宿に行った時。
真乃と相部屋になった千雪が、楽しそうに話してくれたのは覚えてる。
楽しくて逆に眠れず、二人で羊を数えようとしたら結華が笑って。
トランプや枕投げの相談、肝試しは智代子が恐がるから保留。
そんな風に更けた初日の夜を教えてくれた千雪は、本当に楽しそうだった。

「真乃ちゃん……なんで……」

誰にも汚されたくない大事な世界は、無慈悲にも踏み躙られた。
大事な友達だ、大事な友達を殺す。
何があっても望む筈がない悪夢は現実のものとなり、甜花の心が悲鳴を上げる。

77LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:19:29 ID:c7OW47L.0
「エボルト、お前…」
「責められる前に言わせてもらうけどな、ありゃどうにもならなかった。俺だって苦労したんだぜ?」

睨み付ける戦兎へ事も無げに返すが、別に嘘は言っていない。
交渉のテーブルを蹴飛ばし殺し合いを望む輩だ、何を言っても止まりはしないだろう。
殺さず拘束に留めておいても、余計なリスクを抱え込むだけ。
第一あの場では、体力を激しく消耗した状態で蓮を守り尚且つアルフォンスを大人しくさせねばならなかった。
生かすメリットの無いダグバにまで気を遣ってやるような、お人好しのヒーロー扱いされても困る。

「……」

気絶している間の事の顛末に、蓮は暗い顔で黙り込む。
承太郎達を殺した白黒のライダーは死に、脅威が一つ去った。
だけど達成感や安堵は無く、抱くのはどうしようもない虚しさと無力感ばかり。
仲間の仇が死んだところで、承太郎やゲンガー達が戻って来る訳じゃ無い。
それに精神はともかく、体は何の罪も無い甜花の友達。
巻き込まれただけの少女の体が失われたのを、どうして喜べようか。

それでも蓮にはエボルトを責める気は無かった。
気を失い余計な負担をかけた自分が、一体どの口で文句を言えるという。
何より怒りに身を任せてメタモンを殺した自分に、そんな資格があるとは思えない。

「……桐生さん達に見て欲しいものがある」

一人を除いて通夜のように重苦しい空気が流れる中、意を決したように蓮は流れを変えんとする。
デイパックを開き、仲間の一人から渡されたメモを開く。
正直、蓮自身ここに書かれた作戦には半信半疑だ。
仮に主催者の元まで辿り着けたとしても、本当に上手くいく保障はどこにもない。
しかし、見る者によっては希望となるのもまた否定はできない。
共有すべき情報として、ジューダスのメモを戦兎達に見せる。

78LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:20:31 ID:c7OW47L.0
「過去と未来の同一人物……過去の自分が死んだのにどうして……いや、呼ばれた時点でそれぞれの時間軸が独立してるのか…?」
「色々ややこしいが要は……あー、あれだ。俺ら全員元の体に戻れて、死んだ連中も生き返るみたいな感じか?」
「正確に言うと、殺し合いそのものが起きなかったことになるって話だ。今こうやってお喋りしてるのも綺麗さっぱり忘れて、元の生活を謳歌出来るのさ。何せ、殺し合いが起きないなら俺達が会った事実も消えるんだからなァ」

説明されても杉元にはいまいちピンと来ない。
話のスケールが大き過ぎて理解が少々追い付いていないだけでなく、死を無かったことにするというのがどうにもしっくり来ない。
不格好でも足掻き続け、目の前にチラつく地獄への片道切符を幾度も破り捨てて来た。
死ぬ気が無いから生を掴み取るのではなく、死んだ後で事実を否定する。
何と言えば良いのか、嫌悪までは行かずとも微妙に受け入れ難いと感じなくも無い。
死が余りにも身近な世界を駆け抜けて来た男なら尚更だ。
悪党はともかく善人がそれで救われるのであれば、大声で否定する気は無いが。

「ピカ…ピカチュウ……?(ってことはしのぶさん達は…無理だけど…でも炭治郎は死なずに済むんだよな……?)」

理解するのに苦労すれど、善逸にとっても悪い内容では無い。
殺し合いが無かったことになるとは即ち、無惨を倒した後の生活に戻れるという事。
自分は勿論、炭治郎だって生きて禰豆子と平和に暮らせる。
と言ってもこれで助かる鬼殺隊の関係者は、善逸と炭治郎の二人だけ。
殺し合い関係無く元々死者だった柱達の死は覆せない。
仕方ない話であるが、結局煉獄達との再会が叶わないのは寂しさを感じずにはいられなかった。
だが炭治郎と、鳥束や神楽の死が否定されるのであれば成功させる価値はある。

79LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:21:22 ID:c7OW47L.0
「本当に……そんなことが……」

甜花もまた衝撃的な内容に言葉を失う。
涙で潤んだ瞳には悲しみ以外に、もしかしたらという期待が宿った。
メモに書かれてる作戦が成功すれば、真乃は殺し合いなんて知らずに今まで通りアイドルが出来る。
千雪は体を利用されずに済み、甜花が大好きな本当の笑みを見せてくれる。
自分と甘奈だって、恐いことが全部頭から消え去り283プロでの日々に戻れる。
反対する理由はどこにもない。

(でも、それって……良いのかな……)

なのに、心の何処かで迷いも生まれる。
殺し合いが無かったことになってしまえば、戦兎達との出会いも消えてしまう。
甘奈に誘われ飛び込んだ世界で多くの出会いを通じ、アイドルとしての自分に自信を持てたからこそ思う。
殺し合いという場所でも、出会った人達との繋がりは否定してはいけないものだと。
思い出すだけで震えが走る恐い目にもあったけど、同じくらい大切にしたい記憶がある。
真乃達が助かるなら、作戦の成功を願って当たり前だ。
だけど、守ると約束してくれたヒーローを始め、仲間と言える人達を忘れてしまって本当に良いのだろうか。

「あれこれ考えたくなるだろうが、まずは生き延びるのが第一だろ。作戦に関しちゃ後でジューダスとじっくり話し合えば良い」

俺は乗る気は無いがなとの本音は声にも態度にも出さず、無難な言葉で話を締め括る。
互いが持つ大体の情報は話し終えた。
もう暫しの休憩を挟めば、再び宇宙船に移動となるだろう。

80LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:23:06 ID:c7OW47L.0



「アシリパさん…アシリパさんは……ヨシ!いないなっ!」
「ピカピカァ〜〜〜〜…(禰豆子ちゃんもいない…良かったぁ〜〜〜〜〜…)」

指で名前を一文字一文字なぞって、繰り返し確認。
念入りにやっても嬉しい事に、アシリパの名はどこにも載っていない。
白石や他の知り合いの名前も無く、自分の体も勝手に使われていなかった。
考えていた最悪の事態は無事回避。
安堵でつい大声を出したが、今だけは許して欲しい。

膝に乗せた善逸も頭上の声に驚かず、安心して気が抜けている。
炭治郎だけでなく禰豆子まで巻き込まれた日には、冷静さなど木っ端微塵に吹き飛ぶこと間違いなし。
幸い肉体側で知っている名は炭治郎と無惨の二人だけ。
禰豆子を始め、自分の関係者が他に体を奪われていないのは素直に喜ばしい。

一回目の定時放送の後から方針に付け加えた、精神と体の組み合わせ名簿の確認。
時間は掛かったがようやく実物と出会え、結果は杉元・善逸両名にとって朗報。
相棒であるアイヌの少女も、近々求婚する予定の少女も殺し合いには不在。
危険な輩に体を利用されておらず、心底ホッとした。
これで本当に杉元の関係者は何故か姉畑だけという疑問が残ったが、そこはもう考えない。

「しっかしまぁ、こういう形で見れるとはな……」

友好的な参加者に会えたら、組み合わせ名簿を見せてもらえるよう頼むつもりだった。
実際には名簿の所持者の方が先に、目を通した方が良いと渡して来たのだ。
余計ないざこざに発展せず確認出来たのだから、別に不満は無い。
ただ流石に、戦兎が最も警戒を向ける相手から譲渡されると少々複雑。

81LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:23:57 ID:c7OW47L.0
名簿を渡した本人は壁に寄り掛かり、片手でフルボトルを弄んでいる。
杉元の視線に気付いてはいるのだろうけど、大袈裟に反応するものでもない。
傍目にはぼんやり部屋を眺めているとしか思えないが、実際には会話の真っ最中。
この家の中で、エボルトだけが存在を知る女と。

(感動の再会おめでとさん。思わずウルッとしちまったよ、なぁ千雪?)
(そんな嘘を堂々と吐いて楽しいですか?)

何を言ったところでこの男には効果が無い。
分かっているけど我慢できず、吐き捨てる口調になる。
体を自由に動かせれば、今の自分は苦々しい顔をしてるだろう。

(甜花ちゃん…本当に甘奈ちゃんの体で……)

エボルトの言葉に同意したくは無いが、甜花の無事が分かって込み上げるものがあったのは本当だ。
同じ顔だけど、間違いなく甘奈の体だと分かる。
アルストロメリアの一人として、これまでずっと近くで姉妹を見て来たのだから。
体は甘奈、でも浮かべる顔や見せる仕草は彼女の姉。
大崎姉妹は本当に精神と体でそれぞれ巻き込まれていた。
改めて突き付けられた現実に胸が締め付けられ、同時にこうして再会が叶ったなら直接言葉を掛けてあげたい。
沢山恐い思いをしただろう彼女を抱きしめて、少しでも安心させてあげたい。
真乃の件もあってか、余計に強くそう思う。

但し、自分の体に巣食った怪物はそれを許してくれなかった。

82LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:24:42 ID:c7OW47L.0
(どうしても駄目なんですか…?少しの間だけでも……)
(言った筈だ、これはお前の為でもあるってな。大好きなアイドル仲間を前にして消えたくないだろ?)

返って来たのはにべもない拒否。
しかし理由に関しては千雪も理解しているだけに、強く反論できない。

二回目の放送でハワードが伝えたように、身体側の意識の復活は主催者の望むところではない。
千雪に関しては放置して問題無しと判断されたのか、現在に至るまで消される気配は無い。
だがもし、エボルトが肉体の主導権を千雪に返した場合どうなるか。
本来殺し合いでの行動を許可されていない身体側の意識が、平然と行動してしまったら。
主催者を誘い出す為ならその手に出るのは有り。
しかし千雪の意識を消されるだけならまだしも、問答無用で首輪を爆破されれば流石にお手上げだ。
最低でも首輪を外すまでは、千雪の意識を表に出すべきではない。

(俺も心苦しいんだがねぇ。お前に何かあったら、ファンの連中やプロデューサーに顔向け出来ないからなァ?)
(……)

こちらの心配など微塵もしていない癖に、よくまあペラペラと口が回るものだ。
言い返そうと口を開きかけるも、意味など無いのでぐっと堪える。
それにエボルトの言う通り、ボンドルド達が排除に動かないとも限らない。
自分が消え、それで甜花の精神に負担を掛けるのは千雪だって望まないのだから。

「あ……あの……!」

計ったようなタイミングで声が掛かる。
緊張を隠せていない声色に横目を向ければ案の定、ビクリと身を竦ませる少女が一人。
千雪の存在に気付いてる訳ではないだろうに、偶然とは恐ろしいものだ。

83LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:26:27 ID:c7OW47L.0
「俺とお喋りでもしたくなったか?そりゃ実に光栄だが、不要に近付いちゃいけませんって戦兎は言ってくれなかったのかねぇ?言いつけを守れない奴になったら、この女もさぞ悲しむだろうよ」
「う……あう……」

いつも自分と甘奈に向けてくれる優しい眼差しでは無く、獲物を前に舌なめずりする蛇のような目。
どんな時だって自分と甘奈を絶対に悪く言わない言葉ではなく、思いやりなんて欠片も無い軽口。
意を決し話しかけても、たったこれだけで言葉に詰まる。

「お前と話しに来たんじゃない。邪魔だから黙ってろ」

続けて余計なちょっかいを出される前に助け船が出された。
甜花を庇うように前へ出た戦兎へ、冗談が通じない奴と言わんばかりの呆れ笑いを見せる。
分かってはいたが甜花だけで話に来たのではなく、戦兎(ヒーロー)同伴らしい。
とはいえ、戦兎の役目はあくまでエボルトに余計な口出しをさせない事。
用があるのは甜花の方、しかし目的はエボルトとの会話ではない。

「あ、ありがとう戦兎さん……うん、もう大丈夫……」

緊張を少しでも解く為に深呼吸を一つ。
まだ恐いけれど、いつまでも怯えていたってしょうがない。
W.I.N.Gの時とは違う理由で心臓が五月蠅い。
一歩、二歩、三歩と前に出て戦兎が視界から消える。
でもすぐ後ろに立ち、何かあったら直ぐにまた自分の前に出る気でいてくれる。
出会った時からずっと優しいままの彼に安心し、少しだけ緊張が解れた。

『彼女』と目を合わせる。
瞳の色は同じでも、やっぱり自分が知ってるあの人ではない。
こんなに近くにいるのに会えない寂しさに、胸が痛いくらい締め付けられた。

84LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:27:23 ID:c7OW47L.0
「千雪さん……」

名前を呼んだあの人の意識が目の前で囚われている事を、甜花には知る由も無い。
こうやって話すことが無意味かもしれないとは自覚しても、言いたい事があった。
たとえ何の意味も無いとしても、届けたい言葉が甜花にはある。

「甜花……ここに来てもいっぱい迷惑かけて……戦兎さん達にも……酷いことして……」

戦兎にずっと守ってもらって、PK学園でもナナと燃堂に迷惑をかけて。
挙句の果てに洗脳され、DIOの手先として戦兎達に武器を向ける始末。
今でも思い出すと罪悪感が胸を抉り、自分が嫌になる。

「今もまだ、ダメダメなところはいっぱいで……で、でも……!甜花に何ができるのか、まだちゃんと分かってないけど……それでも……!」

それでも、守ってばかりや迷惑をかけてばかりの自分ではいられなかったから。
優しくて信頼できるヒーローだって、支えてくれる人がいないときっと苦しいままだから。
彼だけに押し付けるのではなく、一緒に頑張りたいと決意したから。

「甜花も、戦兎さん達と一緒に……千雪さんのこと、絶対助けるから……!」

途切れ途切れで、しかし揺らぐ事の無い意思の籠められた言葉。
真正面からぶつけられても、『彼女』は何も言わない。
言葉を忘れるくらいに感動したんじゃあなく、言葉を口に出す価値も無いと思っているから。
『彼女』の体に閉じ込められ男在は、戦兎とは真逆の存在。
この反応は分かり切っていた。

「……」

でも何故だろうか。
一瞬、ちょっとでも目を逸らせば気付けないくらいの一瞬だけ。
こちらを見つめる『彼女』の目が、自分の知ってる優しい色へ戻ったように見えたのは。

85LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:28:07 ID:c7OW47L.0



出発の時間までもう僅か。
疲労とおさらばまでは行かなくても、戦闘可能な程度には体力も回復して来た頃だ。
各々準備を行っている竈門家の外で、エボルトは軽く体を動かす。
ダグバとの戦闘を終えた直後よりはマシになった。
後は戦兎達と共にフリーザの宇宙船に行き、必要な人材を纏めて確保すれば良い。

(運が向いて来た…って言うには気が早いか)

ディケイドを始め敵対者は少なくない。
未だ全容や具体的な戦力も判明していない、主催者との戦いも考えれば多少なりとも気を抜けるのは今が最後かもしれない。
だが流れは決して悪くない筈だ。
ようやっと戦兎と合流し、首輪解除のスタートラインに立てた。
サンプルとなる首輪も戦兎の方で確保した分を合わせ、十分な数。
必要無くなったらモノモノマシーンで武器に変えれば問題ない。
おまけに柊ナナの居場所も分かり、しんのすけと合流すれば会えるのだから一石二鳥。
戦兎はこちらを強く警戒していたが、これも予想通り。

(心配しなくても“今は”大人しくしといてやるよ)

尤も、何でもかんでも馬鹿正直に従ったり打ち明ける気は勿論皆無。
懐に仕舞ったナビとの連絡手段や、ジューダスの計画を潰すつもりでいることなど。

86LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:29:03 ID:c7OW47L.0
それに機を見て戦兎がどの時間軸から参加しているかも確かめねばなるまい。
『マスター』や『スターク』ではなく、ハッキリ自分を指してエボルトと言った。
エボルドライバーの存在を把握していた。
これだけではまだ、戦兎が自分の知らない未来から来たと断定出来ない。
美空に憑依したベルナージュが教えたり、葛城巧が残したデータでも見ていれば十分知れる内容だ。
未来で自分の計画は問題無く進んだのか、それとも予期せぬトラブルに見舞われたか。
場合によっては帰還してからの方針も見直す必要が出て来るのだから。

とはいえ、互いの時間軸が違う可能性は戦兎も考えていた事だ。
明治や大正の日本から連れて来られた仲間達。
杉元の知り合いで死んだ筈の姉畑が参加しているが、ナナの仮説では死ぬ前の時間から参加しているかもしれない。
極め付けは過去と未来の同一人物、リオン・マグナスとジューダスの存在。
これらを考えれば、同じ世界出身でも連れて来られた時期というものはバラバラな可能性はある。
仮に殺し合いに参加したエボルトが戦兎の知る、『キルバスとの戦いの後に地球を去ったエボルト』でないとすれば。
新世界を創る前のエボルトなら、不用意に情報を明かすべきではない。
特にエボルトを倒す決め手となった新世界を創る方法は、絶対に知られてはならない。
たとえ新世界の事を知ったエボルトが生還しても、自分が帰る世界には何ら影響しないとも考えられる。
だからといってエボルトの好き勝手を許すつもりはなく、戦兎の方でも互いの時間軸に関する話には十分注意を払うつもりだった。

とにかくまずは宇宙船でしんのすけ達と合流。
後の話はその後で追々考えて行けば良い。
頭の中を整理し、ふと人の気配にチラリと背後を見やる。
帽子で目元を隠した共犯者の足取りが、何となく重いものに見えたのは気のせいではないだろう。
ついでに些細な違いを一つ発見。

87LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:29:44 ID:c7OW47L.0
「あのナイフはくれてやったのか?」
「ああ、元々杉元さんのみたいだった」

ミチルの支給品から見付けたのを使わせてもらったが、持ち主が現れたので返却。
三十年式銃剣は杉元の元に戻った。
蓮には既に複数のペルソナと、仮面ライダージョーカーへの変身ツールがある。
使い慣れたリーチの武器を手放したとて、然程問題にはならない。

外見は高校生くらいで、元の体の自分と同じ。
しかし中に入った精神は大人の男性というのもあってか、さん付けで呼んでいる。
そんな雑談を一つ挟んで、視線を真っ直ぐに合わせる。
出発前の軽いトークがしたいんじゃあない。
真剣な話だと目で伝えれば、共犯者も聞く姿勢に移った。
尤も何を聞かれるかは分かっているが。

「どうして桐生さんの事を黙っていたんだ?」
「向こうが素直に協力してくれるか分からなかったのが一つ目。俺と会う前にくたばる可能性を考えりゃ、首輪を外せる奴がいるって期待させるのも悪いなぁと思ったのが二つ目だな」

予め台本が脳内にセットされてるのか、間を開けずにスラスラ返答。
悪びれる様子は微塵もなく、責めるような視線も意に介さない。

88LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:30:52 ID:c7OW47L.0
「……」

この男が胡散臭いのは今に始まった事ではない。
だが今回ばかりはエボルトへの不信感を、蓮自身もなあなあで済ませられなかった。
戦兎の情報を黙っていただけではない。
竈門家での二人のやり取りを見れば察しは付く。
エボルトと戦兎は前々からの知り合い、しかも決して友好的な仲ではない。
言動の軽薄さに呆れてるとかそんな優しいものではなく、明確な敵意を向けられていた。
あそこまでの恨みを買うなど、単なる揉め事とは違うだろう。

元々信用できない部分はあったが、戦兎の件で余計に分からなくなる。
果たして、この男と協力を続けて大丈夫なのかと。
もしや自分が考えてる以上に、この男は危険な存在なんじゃあないかと。

「相棒に疑われるってのは悲しいが…ま、こればっかりはお前が決めたら良いさ」

悩む蓮とは正反対にあっけらかんとした態度。
疑惑の視線も何のその、普段通りの口調を崩さずに告げる。

「俺との関係を終わらせたいってんなら、まぁ仕方ねぇか。ここで相棒関係解消は寂しいけどねぇ」

関係解消。
エボルトが信用できないから、ここで彼との関係を断つ。
ルブランでの握手を無かった事にする。
まさか向こうからその選択を促されるとは思わず、困惑を視線で伝えても軽薄な笑みは変わらない。
時折何を考えているのか分からない部分があったけど、今は特にそうだ。
言葉に詰まった蓮にエボルトは何も言わない。
答えが出るのを待っている。

89LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:32:01 ID:c7OW47L.0
「俺は……」





→【相棒を終わらせる】
【相棒を続ける】





【相棒を終わらせる】
→【相棒を続ける】










『本当にこの選択で良いのだろうか…』

【相棒を終わらせる】
→【エボルトの共犯者を続ける】





細く白い女の手を取る。
ルブランの時と同じ握手。
十数時間前と一緒なのは、手を握られた相手の顔もそう。
驚きを浮かべた相手に、蓮はこれで良いんだと自分へ言い聞かせた。

確かにエボルトは信用できない部分が多々ある。
しかし、ここに来るまでに何度も助けてもらったのも変えられない事実。
エボルトとの共闘が無ければ、命を落としていたかもしれない場面は少なくない。
ひょっとすると、最初にアーマージャックと戦った時点で殺された可能性だって否定できない。
故に、再び手を取る選択をした。
たとえ自分の想像を超える悪人でも、この男との協力はこの先も必要だから。
怪盗団の仲間のように信頼で結ばれてはいなくとも、道化師のアルカナという生まれた絆は消えないから。

だからこれで良い。
何も、間違ってなんかない。

90LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:33:32 ID:c7OW47L.0



あくまで。
ただの推測、根拠など何も無い戯言かもしれないが。
蓮がエボルトと手を切らなかったのは、心の奥底で喪失を恐れているからではないか。

怪盗団の活動をこなし、ペルソナ使いとして幾つも修羅場を潜って来た。
パレスの攻略のみならず、殺し合いでも彼の強さは健在。
新たな絆を育み、他者の命を奪う悪と戦った。

だが元の世界と殺し合い、それぞれの戦いで大きく違うものが一つある。

それは仲間の死。
志を共にした者達の喪失。
怪盗団が時に心身に傷を負う事はあっても、命まで失う事態は起きていない。
しかし矢に選ばれたスタンド使いが用意したこの地では、何人もの仲間が蓮の元を去った。
悪党のオタカラを華麗に盗み、仲間と改心の成功に達成感を得るのとは違う。
強大な敵を倒しても、決してハッピーエンドで終わらない。
何度戦いを生き抜いても、仲間の死は防げない。

無論、戦いの放棄を選ぶつもりは微塵もない。
ベルベットルームでの決意は嘘ではない。
だけど、度重なる仲間の死が心の裂け目をより深く抉っていないと何故言い切れるのか。

91LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:35:16 ID:c7OW47L.0
蓮は怪盗団のリーダーであり、今は切り札の記憶を宿す仮面ライダー。
戦う力を持った戦士、だが同じく高校生の少年だ。
次々目の当たりにする死に心が磨り減る筈が無いと、断言出来る理由がどこに存在するという。

信用は出来ない、もっと警戒するべき。
そのような男でも最初に出会ってからずっと行動を共にした、相棒なら。
喪失を恐れ関係を断てなかった可能性は、誰にも否定できない。
仮に蓮がもう少し先の未来から連れて来られていれば。
仲間であり、敵であり、ライバルのようでもあった探偵に生かされた後だったら。
異なる展開があっただろうが、たらればでしかない。

所詮は可能性の話だ。
もっと冷静に考え、単に協力が必要と判断を下した結果に過ぎないかもしれない。

確かな事は一つ。
怪盗と星狩り、共犯者という歪に結ばれた絆は終わっていない。

「相棒だろ、俺達は」

そう言った蓮に、相手はやはり何も言わない。
ただとっくに見慣れた笑みを浮かべるだけ。
どこか作り物めいた表情の女が蛇になり、自分を頭から飲み込む。
脳裏に浮かんだ気味の悪いイメージが妄想かどうか、蓮には判断が付かなかった。

92LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:38:20 ID:c7OW47L.0
【C-3 竈門家/夜中】

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、全身打撲(処置済み)
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン、サッポロビールの宣伝販売車@ゴールデンカムイ、仮面ライダーブレイズファンタステックライオン変身セット(水勢剣流水無し)@仮面ライダーセイバー、スペクター激昂戦記ワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、しのぶの首輪、神楽の首輪、工具箱
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを打破する。
1:フリーザの宇宙船に向かい柊達と合流する。
2:甜花を今度こそ守る。一緒に戦うなら無茶しないようにしとかねぇと。
3:エボルトには要警戒。桑山千雪の体でおかしな真似はさせない。
4:広瀬康一はどうなってる?巨人以外にも何らかの力があったのか?
5:斉木楠雄が柊の中にいたのか?何故だ?何か有用な情報を得られればいいのだが…
6:佐藤太郎の意識は少なくとも俺の中には存在しないということか?
7:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
8:首輪も外さないとな。工具は手に入ったしそろそろ調べたい。
9:歴史の修復についてジューダスって奴から直接詳しい話を聞きたい。
10:柊に僅かな疑念。できれば両親の死についてもう少し詳しいことが聞きたい。
11:柊から目を離すべきでは無いと思うが…今はどうにもできないか。
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードはゼロワンとセイバーが入っています。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ジーニアスフォームに変身後は5分経過で強制的に通常のビルドへ戻ります。また2時間経過しなければ再変身不可能となります。
※自分とエボルトがそれぞれ違う時間軸から参加している可能性を考えています。

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身火傷(小)、霊力消費(大)、再生中、一回死亡
[装備]:神経断裂弾装填済みコルト・パイソン6インチ(6/6)@仮面ライダークウガ、三十年式歩兵銃(3/5)@ゴールデンカムイ、、三十年式銃剣@ゴールデンカムイ、和泉守兼定@Fateシリーズ
[道具]:基本支給品×6、神経断裂弾×26@仮面ライダークウガ、ラッコ鍋(調理済み・少量消費)@ゴールデンカムイ、鉄の爪@ドラゴンクエストIV、青いポーション×1@オーバーロード、黄チュチュゼリー×1@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド、魔法の天候棒@ONE PIECE、ランダム支給品×0〜1(確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:柊達の所に行く。
2:あのカエル(鳥束)、死んだのか…。
3:俺やアシリパさんの身体がないんだよな!よしっ!
4:先生は死んじまったか……。いや本当に何で先生だけいたの!?
5:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
6:DIOには要警戒。
7:エボルトの奴にはこっちでも警戒しとく。
8:何で網走監獄があんだよ…。
9:この入れ物は便利だから持って帰ろっかな。
10:本当に生き返ったのかよ!?蓬莱人すげえッ!
11:ラッコ鍋は見なかった事にしよう…。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウー、フジヤマヴォルケイノ、正直者の死、フェニックスの尾に類似した攻撃を覚えました
※鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。また自分が戦兎達よりも過去の時代から来たと知りました。

93LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:39:20 ID:c7OW47L.0
【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、全身に火傷、精神的疲労(極大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:お姉さん(杉元)達と行動
2:しのぶさんも岩柱のおっさんも、また死んじゃったんだな……
3:煉獄さんも鳥束も、あの人(神楽)死んじゃったのか……
4:無惨が死んだのは良かったんだろうけど……
5:炭治郎の体が…まさか精神まで死んでないよな……?
6:殺し合いが無かったことになるなら、炭治郎達も助かるのか……?
6:……かみなりの石?何かよく分からない言葉が思い浮かぶ…
[備考]
※参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
※現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」「10まんボルト」「かげぶんしん」の4つです。
※他に使える技は後の書き手におまかせします。
※鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。また自分が戦兎達よりも過去の、杉元よりも未来の時代から来たと知りました。
※肉体のピカチュウは、ポケットモンスターピカチュウバージョンのピカチュウでした。

【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、服や体にいくつかの切り傷(処置済み)、戦兎やナナ達への罪悪感、エボルトへの恐怖と嫌悪感(大)、深い悲しみ、決意
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、PK学園の女生徒用制服@斉木楠雄のΨ難
[道具]:基本支給品、デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ、甘奈の衣服と下着
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:真乃ちゃん……。
2:戦兎さんの……力になりたい……。
3:皆に酷いことしちゃった……甜花…だめだめ……。
4:ナナちゃんと燃堂さんにも……謝らなきゃ……。
5:なーちゃん達……大丈夫かな……。
6:千雪さんを戦兎さん達と一緒に……助けなきゃ……!
7:殺し合いが無かったことになる……本当に良いのかな……?
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネスによりDIOへの激しい愛情を抱いていましたが、ビルドジーニアスの能力で正気に戻りました。

94LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:40:09 ID:c7OW47L.0
【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、SP消費(大)、体力消耗(大)、怒りと悲しみ(極大)、ぶつけ所の無い悔しさ、メタモンを殺した事への複雑な感情
[装備]:煙幕@ペルソナ5、T2ジョーカーメモリ+T2サイクロンメモリ+ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品×6、ハードボイルダー@仮面ライダーW、ダブルドライバー@仮面ライダーW、スパイダーショック@仮面ライダーW、新八のメガネ@銀魂、ラーの鏡@ドラゴンクエストシリーズ、精神と身体の組み合わせ名簿@オリジナル、2つ前の放送時点の参加者配置図(身体)@オリジナル、耀哉の首輪、ジューダスのメモ、大人用の傘
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:西側のエリアに向かい、しんのすけや協力出来る一団やと合流する。
2:仲間を集めたい。
3:エボルトとの共闘は継続する。これで良い、筈…。
4:今は別行動だが、しんのすけの力になってやりたい。フリーザの宇宙船にいるみたいだ。
5:どうして双葉がボンドルド達の所にいるんだ?助け出さないと。
6:アルフォンスはどこに行ったんだろう…正気に戻したいが…。
7:体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
8:ディケイド(JUDO)はまだ倒せていない気がする…。
9:新たなペルソナと仮面ライダー。この力で今度こそ巻き込まれた人を守りたい。
10:推定殺害人数というのは気になるが、ミチルは無害だと思う。
[備考]
※参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。フタバパレスまでは攻略済み。
※スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。
※翔太郎の記憶から仮面ライダーダブル、仮面ライダージョーカーの知識を得ました。
※ベルベットルームを訪れましたが、再び行けるかは不明です。また悪魔合体や囚人名簿などの利用は一切不可能となっています。
※エボルトとのコープ発生により「道化師」のペルソナ「マガツイザナギ」を獲得しました。燃費は劣悪です。
※しんのすけとのコープ発生により「太陽」のペルソナ「ケツアルカトル」を獲得しました。
※ミチルとのコープ発生により「信念」のペルソナ「ホウオウ」を獲得しました。
※アルフォンスとのコープ発生により「塔」のペルソナ「セト」を獲得しました。

95LOST COLORS -liveDevil- ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:40:38 ID:c7OW47L.0
【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、千雪の意識が復活
[装備]:トランスチームガン+コブラロストフルボトル+ロケットフルボトル@仮面ライダービルド、グレートドラゴンエボルボトル@仮面ライダービルド、スマートフォン@オリジナル
[道具]:基本支給品×4、フリーガーハマー(9/9、ミサイル×9)@ストライクウィッチーズシリーズ、ゲネシスドライバー+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、アークドライバーワン+アークワンプログライズキー@仮面ライダーゼロワン、ミニ八卦炉@東方project、魔法のじゅうたん@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1(シロの分)、累の母の首輪、アーマージャックの首輪、ダグバの首輪、精神と身体の組み合わせ名簿@オリジナル、大人用の傘
[思考・状況]基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす。
1:宇宙船に向かいしんのすけと合流。柊ナナもいるとは嬉しいおまけ付きだな。
2:ナビからの連絡を待つ。トラブルでもあったのかね。
3:蓮達を戦力として利用。アルフォンスの奴は…どうしたもんかねぇ。
4:首輪解除は戦兎に任せる。天才物理学者様の腕の見せ所ってやつだな戦兎ォ?
5:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい。
6:自身の状態に疑問。
7:このエボルボトルは何だ?俺の知らない未来からのプレゼント、ってやつか?
8:ほとんど期待はしていないが、エボルドライバーがあったら取り戻す。
9:柊ナナにも接触しておきたい。
10:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える。
11:推定殺害人数が何かは分からないが…まあ多分ミチルはシロだろうな(シャレじゃねえぜ?)
12:ジューダスの作戦には協力せず、主催者の持つ時空に干渉する力はできれば排除しておきたい。
13:千雪を利用すりゃ主催者をおびき寄せれるんじゃねぇか?
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。
※ブラッドスタークに変身時は変声機能(若しくは自前の能力)により声を変えるかもしれません。(CV:芝崎典子→CV:金尾哲夫)
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。
※主催者は最初から柊ナナが「未来を切り開く鍵」を手に入れられるよう仕組んだと推測しています。
※制限で千雪に身体の主導権を明け渡せなくなっている可能性を考えています。
※自分と戦兎がそれぞれ別の時間軸から参加していると考えています。

96 ◆ytUSxp038U:2024/02/12(月) 23:41:09 ID:c7OW47L.0
投下終了です

97 ◆ytUSxp038U:2024/02/24(土) 00:12:52 ID:4qSqfWJA0
檀黎斗、ジューダス、大首領JUDOを予約します

98 ◆ytUSxp038U:2024/02/29(木) 15:39:58 ID:Ri0tUaKQ0
投下します

99孤独のB/極限のdead or alive! ◆ytUSxp038U:2024/02/29(木) 15:42:24 ID:Ri0tUaKQ0
収穫があったと言って良いのだろうか。
掌に収まった機械を見つめ、ジューダスは僅かに眉を顰めた。

これといったトラブルに出くわす事も無く目的地に到着。
警戒していたディケイドも現れず、早速風都タワー内の調査を開始。
黎斗はエントランスホールと地下駐車場に、ジューダスは展望室にそれぞれ別れた。
エレベーターを出てざっと見回すと、数時間前に訪れた時と何ら変わりはないように見える。
所々が破壊された壁や柱も、踏み付けられ汚れたマスコット人形も、ホミスライムが逃げて行った割れたガラス窓も。
自分達は去ってから誰も来なかったのだろうか。
念の為に警戒は解かず、土産売り場やレストランコーナーを調べるも特に変わったところはない。

続いてエレベーターに乗り、前回来た時には行かなかった第二展望室へ移動。
第一展望室よりも狭いスペースを見て回り、辿り着いたのは制御盤が設置された部屋。
本来であれば一般客は立ち入り禁止の場所だろうと、殺し合いでは関係無い。
躊躇も抱かず足を踏み入れ、隅に追いやられたドラム缶にふと視線が向かう。
蓋の上へ無造作に置かれた黄色い機械。
手に取ったそれにジューダスは見覚えがあった。

『何でしょうかねこれ。というか、蓮君が似たようなの持ってませんでしたっけ?』

シャルティエの言う通り、これは仲間の一人が使っていた機械と酷似している。
蓮が使っていたのは黒色で、こっちは黄色という違いこそあるが。

「ここは蓮と新八の肉体と関係の深い場所だろう。なら、あいつらが使うのを想定して隠しておいた。そんなところか」

その内片方は使う機会を永遠に失くしたが、もう一人はまだ生存中。
蓮に渡せば今後の戦いの役に立つ。
仲間の戦力が強化されたのは良い、ただ凛が考えていたのとは残念ながら違う。
殺し合いに乗っていない者全員が有利となる情報や道具は、こっちでは見付からなかった。
とはいえ収穫ゼロで肩透かしを食らうよりはマシである。
ジューダスの方はこれ以上調べる場所が無い。
風都タワーを調査中のもう一人との合流に行き、向こうの報告を聞く。
それが済んだら、いよいよ『本当の目的』を果たす時だ。

100孤独のB/極限のdead or alive! ◆ytUSxp038U:2024/02/29(木) 15:42:56 ID:Ri0tUaKQ0
「……」

エレベーターで降りる最中、頭は既に戦闘態勢へ切り替わる。
剣を抜く事態になるかどうかはまだ不明。
だが相手の返答次第ではそうなってもおかしくない。
どんな展開になったとしても、即座に動けるようにしておかねばなるまい。

エントランスホールに戻り受付まで進むと、白い人影がジューダスを待っていた。
大層な金を掛けただろう衣服を着こなす男の姿が、傍らのガラスに映し出される。
偶然かはたまた狙い通りか、『鏡』となる物の近くは確保済み。
無表情の裏で警戒度を引き上げ、黎斗の近くまで寄る。
ニコニコと人の良さそうな顔で迎えるこの男の真意は何か、明確にするなら今しかない。

「調査は終わったのかいジューダス君。残念なことに私の方は、これといって役に立ちそうなものは見付からなかったよ」
「蓮が持っているのと同じ道具が一つあった。僕の方もそれくらいだ」
「そうか…となると、遠坂さん達の方に期待するしかないようだね」

本心から大した収穫が無いのを落胆しているのか。
仮にそうだとしても殺し合いを止める決定打の不足を嘆いているからか、或いは単に自分の役に立つものが無いが故の苛立ちか。
心の声を聞けない為分からない、確かなのは黎斗の魂は相変わらず悪として感知してる事。

「出発前に聞いておきたいことがある」
「何かな?急に改まって…」

唐突な問いかけにも動じた風は無く、あくまで大人らしい態度を取る。
演技か素かはこれからハッキリする筈。


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