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コンペ・ロワイアル【本編 その2】
1
:
◆7PJBZrstcc
:2022/11/27(日) 17:12:57 ID:Evn30/MU0
ーー心は特殊な領域である。地獄から天国を創り出すことも、天国から地獄を創り出すこともできる。
【当企画について】
・コンペ形式で参加者を募集し、最終的に企画者の◆SvmnTdZSsU氏が名簿を決めたロワです。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎。
・自由度の高いロワを目指します。
【基本ルール】
・誰も人を殺さずに一定時間経過すると首輪爆破。
・優勝賞品は『何でも願いを叶える権利』
・会場からの脱出は不可能。
・首輪が爆発すると絶対に死亡不可避。
・能力制限は書き手一任。
・優勝すると『願いを叶える権利』が与えられる。
・参加前に所持していた武装は解除・没収済み。
【放送について】
・放送は6時間ごとに行われる。(初回放送のみ例外。ロワ開始から1時間前後を想定)
・放送毎に、過去六時間の死者の名前、残り人数、次に増える禁止エリアが発表される。
・参加者の割合的な理由により、禁止エリアの増加割合は放送毎にランダム。
【MAP】
ttps://gamewith.akamaized.net/img/original_b7ee9b5606dac7fdbde04617a1766f00.jpg
・マップにはNPCが居ます。どう扱うかは書き手の自由。
【デイパック】
・全ての参加者はゲーム開始後「デイパック」を渡される。以下中身。
・地図:マップを印刷した安っぽい地図。
・食料:インスタントラーメンと缶チューハイ(ストロングゼロ)×3個だけ。お湯は現地調達。
・ルールブック:基本ルールが書かれている紙。A4用紙。初回放送にて裏側に全参加者の氏名のみ浮き上がる。
・ランダム支給品:現実出展かフィクションのアイテム。最大3つ。
【書き手ルール】
・予約期間は1週間。延長宣言無しでそれ以上経過すると予約は解除扱いになります。
・予約期間中に書ききれない場合はさらにもう1週間の延長が可能です。
・ゲリラ投下もアリです。
・参加者の追加はNG。
【主催者について】
・主催者がどの程度参加者に干渉できるのかや、監視の度合いは書き手一任。
【NPCについて】
・書き手一任。
ただし上記の『参加者の追加はNG』に引っかかりそうなNPCはご遠慮ください
【参加者の現在地について】
・誰がどこに居るか登場話で明記されていない場合、描写と矛盾しない範囲で好きに設置可能。
・地図にない施設を追加する場合は詳細を書いていただくと助かります。
【追記】
・「書きたいものを書く」というコンセプトなので、基本的に上記のルールに記載されていない事は大抵許されます。
【キャラクターテンプレート】
【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[状態]:健康状態とか精神状態とか
[装備]:手に持ってたりすぐ使えるアイテム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品など
[思考・状況]:基本行動方針:
1.
2.
3.
行動・思考の優先順位など
[備考]参戦時期、その他、SS内でのアイテム放置、施設の崩壊など。
【支給品の名前@出典】
ここに↑の支給品の詳細を書く。
【時間表記について】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の0時からです。
【まとめwiki】
ttps://w.atwiki.jp/compe/
137
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:22:40 ID:3dZG5jzc0
スッ
しかし悪いことは往々にして重なるものだ。
何やら音がしたと思った次の瞬間、さっきまで二人の近くにいた筈のジェイソンが姿を消した。
二人はもしや、と思ってハサミの方を見てみるとそこには――
「く、来るな〜〜!!」
視界に映る距離にてハサミが必死に逃げる様と、転移を繰り返しながら追いかけるジェイソンの姿があった。
すぐに慌てて追い掛けようとする豆銑だが、そこにゴブリンスレイヤーが声をかける。
「いいのか?」
何を、と聞き返しそうになる豆銑だがすぐに気付く。
自分が言ったことだ。いざとなれば己の命を優先すると。
だからゴブリンスレイヤーは問うのだろう。ここで退くべきではないのか、と。
理屈では確かにそうだ。このまま追いかければ、怪物のみならずあのハサミとも戦わなければならなくなる。
脅威が一つから二つに増えればそれだけで死亡する可能性は増える、ごく当たり前の話。
「理屈で言うなら、ここで退くのが賢いのだろうな」
「ああ」
「だが言ったはずだぞゴブリンスレイヤー。約束は神聖なものだと」
しかし豆銑に退く気はない。
客観的に見れば彼に非はないだろう。
敵が黒子と同じ転移という予想もつかない能力を用い、更にハサミの逃走という予想外が重なった結果だ。
だが他の誰が豆銑を庇い立てようとも、彼自身がその理屈で逃げることを許さない。
「私は’かませ犬’の役割を果たして見せると言ったのだ。まだ役割を果たしていない以上、逃げる気はない」
「そうか」
「もっとも、ソルティ・スプリングに白井達がいないのなら藪蛇を出す必要もあるまい。大人しく退かせてもらうがな」
豆銑の言葉にゴブリンスレイヤーは頷き、二人は出発する。
目指す先は黒子達がいるはずのソルティ・スプリング。もっとも、なんらかの理由でいないのであれば話は変わるが。
もしそうならそれはそれでいいが、いるとするなら犠牲が出る前に辿り着かねばならない。
二人は急ぎ歩を進める。
直後、二人の辺りを漂っていた人魂が消えた。
◆
「何でボクを追いかけてくるのさ〜!!」
ハサミは必死になって逃げながら愚痴る。
いや、自身では逃げているつもりはない。
これは一時撤退だ。
自身だけでは流石に面倒だから、かつて作ったことのあるヒャクメンハリボテメットや、さっき作ったハリボテのゴブリン版みたいなのをもう一度作り、けしかけようと言うだけ。
断じて、無様に逃げ出しているわけではない。
だからあの怪物が知らない奴二人と戦っている隙を見て動いたのに。
なぜか二人と戦うのを止めて追い掛けてくるとは思っていなかった。
こんなことになるなら、いっそあの二人と組んで戦うべきだったかな? とハサミは一瞬だけ考える。
しかしそれはすぐに霧散する。
ブンボー軍団一の技の使い手のボクが、どこの誰とも分からないヤツと手を組むだなんて。
ホル・ホースの時とは違う。
あの時はハサミが圧倒的に有利な状況で、気に入ったから引き込んだに過ぎない。
対して今はどうだ。
この状況で手を組むよう言えば、まるで自分の身が危ないから助けてくれと言ってるようじゃないか。
そんなこと、事実がどうであれそう見られることが我慢ならない。
だからハサミは必死に飛ぶ。
適当な参加者かNPCさえいれば、未だ勝機はあるはずなのだから、と信じて。
138
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:22:59 ID:3dZG5jzc0
kill mum kill mum kill mum
ジェイソンにしか聞こえない「ママ殺して」の声を耳にしながら、彼はハサミを転移を繰り返して追い掛ける。
ハサミが逃げる傍に転移し、しかし捕まえることなく逃がす。
これを幾度か繰り返すことで、ジェイソンは普通に移動するより早くソルティ・スプリングへ辿りつこうと言うのだ。
こう聞くとそんな面倒な手間を踏む必要性があるのかという疑問がわくだろうが、ジェイソンの転移には制限が掛かっている。
転移は対象を追跡するときのみ使用可能。
ジェイソンと対象が互いに認識している時のみ使用可能。
互いに同じエリアにいる時のみ使用可能。
使用できるのは対象が逃走、隠伏している時にジェイソンが追跡するときのみ。
このいくつも折り重なった制限がジェイソンの転移には掛かっている。
その制限に彼は気付いたのだ。
気づいたからこそ、こうして活用し移動している。
ジェイソンがソルティ・スプリングを目指す理由は一つ。
ゴブリンスレイヤーと豆銑に現状攻撃が通用しない以上、一旦他の対象を殺すと決めたからだ。
そしておあつらえ向きに施設がある。だからそこを目指す。
ハサミを殺してもよかっただろう。
しかしかまけていては現時点では殺せない二人に絡まれ、面倒になるかもしれない。
だから避けた。それだけのこと。
あの二人が追いかけてこようがこまいが、どうでもいい。
いずれまた会えたのなら殺すだけ。
kill mum kill mum kill mum
母か、あるいは己の望む声を耳に、ジェイソンは殺戮の為に動き思考する。
そこに意義などない。
最早ズレにズレた復讐譚に、意義などあるものか。
ここにいるのは殺戮の為だけに動く怪物、ジェイソン・ボーヒーズ。
◆
時は少し、具体的には第一回放送より少し前に戻る。
F-7 ソルティ・スプリングに黒子達四人は居た。
本来なら更に遠く逃げておくべきだが、それを成せない理由がある。
「ハァ……ハァ……!」
それは、黒子の疲労にあった。
ただでさえ消耗が制限により激しくなったうえで、制限がなくてもギリギリな重量を、連続で転移させ続けたのだ。
今や彼女の体力は限界とまではいかないが、これ以上転移するには無理がある程度の疲労となっていた。
当初は初夏が黒子を背負って移動することも提案された。
しかし小柄と言えど人間、それも疲労している相手を運ぶのはかなりの重労働だ。
初夏が力持ちの逸話のある妖怪ならいざ知らず、彼女は飴舐めであり、そんな能力はない。
おまけにもうすぐ朝になり、見通しもよくなるだろう。
真夜中なら夜闇に紛れて逃げると言う道もあったが、それも難しくなる。
「こうなったら仕方ない。一旦どこかに隠れて休もう。
これだけ建物があるんだ。そう簡単には見つからないさ」
そこで写影が提案したのは隠伏だった。
黒子の疲労が激しく、また見捨てるつもりがない写影からすれば、休ませるのは必須。
しかし野ざらしで休息をとるなど、いつ追手が現れるかもしれない状況でやることではない。
豆銑とゴブリンスレイヤーが逃げ出すとは思っていないが、敗れる可能性も考慮しなければならないのだから。
しかしどこかに隠れようにも、何があったのかこの辺りはボロボロだ。
彼らは知らないが、ここでは既に死亡した艦娘とガンマン。そして帰還させられたウマ娘が黎明にて戦っていた場所である。
そんな事実を知らない彼らであれど、何らかの戦いがあったことだけは想像できる。
139
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:23:22 ID:3dZG5jzc0
「あそこなら大丈夫そうだけど」
初夏が比較的無事な建物を見つけ、二人と二匹はそこに入り、窓から見えない位置に腰掛ける。
写影は黒子を寝かせようと思ったが、当人は動きにくくなると拒絶。
ならばせめて軽く何か飲み物でもとデイパックに手を掛けたが、ここで問題が発生した。
「飲み物がお酒しかない……」
この殺し合いで支給される基本支給品は地図と食料とルールブックである。
そしてその食料の内訳は、インスタントラーメンとストロングゼロがそれぞれ三個ずつである。
ストロングゼロとは、2009年にサントリーから発売され、今なお人気を誇る缶チューハイである。
そう、缶チューハイである。酒である。
水分補給にならない飲み物である。
そんなものを未成年に支給しているのである。
正直、主催者は何を考えているのだろうかと、写影はツッコミを入れたくなった。
未成年飲酒についてはこの際横に置いておくとしても、下手をすれば水不足で動けなくなる参加者が出るかもしれない状況で殺し合いなど、どう考えてもおかしいだろう。
「じゃあ……これ飲む?」
すると初夏がおずおずとデイパックから瓶に入った液体を取り出す。
中にあったのは紫色の液体とも少々言い難い何かであった。
思わず黒子は問う。
「これ、何ですの……?」
「ひ、ひみつ」
「そこで口を濁らせると恐怖しか湧いてきませんが!?」
小声で叫びながら非難するという器用な芸当を見せる黒子。
それに弁明すべく初夏は瓶についていた説明書を見せながら口を回す。
「死ぬことはないって説明書に書いてたから大丈夫だと思うけど……」
「死ぬ!?」
だが初夏の口から出てきた物騒な言葉に写影が反応し、彼は思わず説明書をひったくって読む。
するとそこはこうあった。
『幽霊型モンスターポウの魂。
飲むと回復するかダメージを負う。このダメージで死亡することはないので安心』
「嫌だ……」
「だからひみつにしたかったんだけど」
説明書を見た写影の嫌悪感たっぷりな言葉に、思わず呟いてしまう初夏。
何をもってこんなものを支給品に選んだのか理解に苦しむ二人だった。
一方、黒子は説明書こそ読んでいないものの、二人の顔色を見ればあまりよくないものだとは想像がつく。
しかし初夏がこの場で出してきた以上、別に毒ではないだろうと判断し、黒子は瓶を初夏の手から奪い、勢いよく飲み始めた。
「ええい、女は度胸ですわ!」
「ここ度胸を出す場面じゃないと思うけど!?」
写影のツッコミもなんのその。黒子はポウの魂を飲み干した。
すると――
「少し、体が楽になりましたわね……」
黒子の体力がわずかながら回復した。どうやら当たりを引いたらしい。
とはいえ回復したのはほんの僅か。まだまだ万全とは言い難い。
しかし今は移動した方がいいだろう、と彼女が初夏にあきビンを返しながら考えた所で――
「イーッ!」
外から何かの声が聞こえた。
獣の鳴き声ではなく、明らかに人の声。
参加者かはたまたNPC、なおここにいる全員が未だ人間のNPCと遭遇していないので確信はしていないが、ともかく誰かがいる。
しかし、敵か味方か分からない相手がいる場にノコノコ出ていくのは、現状賢い行いではないだろう。
140
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:23:52 ID:3dZG5jzc0
「じゃあ僕がちょっと様子を見てくるよ」
なので写影が一人様子を見に行こうと立ち上がった。
黒子が万全なら自分がいくと言うだろうが、今は違う。
ならば彼からすればこの場にいる唯一の男が行くべきであろう。なお、いのちの輝きは性別がよく分からないので除外する。
「えっ」
一方、初夏としては驚きのひと言である。
曲がりなりにもこの場にいる中では一番年上であろう自分が、明らかに年下の少年の背に隠れるというのはいかがなものか、と考える心はある。
それにレーダーも持っているのだから、探ると言う意味なら自分の方がいいだろう。
なので写影を引き留めようと立ち上がりかけるも――
「飴宮さんはできれば黒子の事をお願いします」
「う、うん……」
押し切られてしまえば、初夏としては言い返しにくかった。
こうして彼は建物を出ていくが、直後――
『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』
ミルドラースの放送が始まった。
流れる放送を最低限だけ聞いて後は聞き流しながら、写影はさっきの声が聞こえた場所に向かう。
放送については気になるが、黒子達が聞いてくれるだろうし自分は死者の名前の中に気になるものが無いかだけ確認した。
結果、オグリキャップだけ後から付け足されているように感じる部分は気になるが、後は気に留めるほども無かった。気に留める余裕がなかったとも言う。
少なくとも、ゴブリンスレイヤーが探している牛飼い娘がいないことだけは明白だったので、気にしても仕方ないと考えたのだ。
そうこうしている間に写影は目的地に到着する。
そこで彼が見たものは――
「イーッ!!」
「この辺りには誰もいなさそうですね」
白い覆面と全身タイツを付け、棒のような武器を持った怪しげな男数人と
「GOOOOB……!」
写影が見たゴブリンより数回りは大きい、されど成長したと感じる巨大なゴブリンが覆面男の集団を従える姿があった。
もしもゴブリンスレイヤーがこの場にいれば、あるいは、このコンペロワの主催者ならば、ゴブリンロードを思い出すだろう。
そう、ここにいるのはゴブリンロード。小鬼の王。
しかしこの殺し合いの主催の一味にして、会場に降り立った小鬼王ではない。
ならばこのゴブリンロードは何者か。
それを説明するには、ここから更に時を遡らなければならない。
◆
時は第一回放送前の黎明。場所はE-8。
シャガクシャがはぐれメタルの倒した報酬として現れた宝箱を開けた者がいる。
それは参加者の誰でもない、NPCのゴブリン二匹だった。
うち一匹が宝箱を開けると、中には光線銃と思わしき物体が現れ宝箱は消滅。
「GOB!?」
箱が消滅するという光景にゴブリンは一瞬驚くも、即座に意識はさっき出てきた銃に向かう。
銃を持つゴブリンは、試しとばかりに他のゴブリンに銃口を向け引き金を引いた。
「GBGBGB!!」
すると銃口から光が照射され、浴びたゴブリンはゴブリンロードへと進化を遂げてしまった。
この光線銃の名前は進化退化放射線源。
22世紀のひみつ道具にして、光を浴びせると浴びせた対象を進化させたり退化させることができるものだ。
その光によりゴブリンはゴブリンロードへと進化したのだ。
141
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:24:13 ID:3dZG5jzc0
「GBGB」
一方、進化退化放射線源を手に持つゴブリンはこの光景を見て、早速自分も進化しようと動く。
グシャリ!
しかしそれより早く、先にゴブリンロードとなったゴブリンが銃を持つゴブリンを踏み潰した。
せっかく強くなれたのに、自分と同格の存在を許す理由は何一つ存在しない。
死体から進化退化放射線源を奪い取り、彼は気ままに進む。
「イーッ!」
するとしばらくしてから、今度は白い覆面と全身タイツを纏う、棒のようなものを持った男の集団が現れた。
首輪をしていない為NPCであることは一目瞭然である。
そんな彼らの名前はメガデス戦闘員。
C-7に現れC-5にて散ったメガデス怪人の部下である。もっとも、コンペロワでは特に上下関係は存在しない別々のものとして扱われているが。
ともかくメガデス怪人戦闘員たちは一斉にゴブリンロードへ、手に持つ武器を向ける。
一方、ゴブリンロードは試しに進化退化放射線源をメガデス戦闘員の一人へと照射した。
すると、今度はメガデス戦闘員の覆面と白タイツが消え、ただの人間へと様変わりした。
ゴブリンロードは戦闘員を退化させたのだ。
元々悪の組織メガデスは超人サイバーZ1号2号や怪人を見れば分かる通り、人間を改造することで勢力を増す組織。
なので、戦闘員も当然改造されている。
ならば退化させれば人間に戻るのは自明の理というものだろう。
グシャリ
人間に戻されたメガデス戦闘員は即座にゴブリンロードに殺された。
それを見た残りの戦闘員は即座に武器を手放し、土下座しながらこう言った。
「許してください。何でもしますから」
ホモ特有の何でもする発言を聞いたゴブリンロードは、ならば自分に従えとばかりに手を振るう。
意図を察した戦闘員たちは即座に恭順を選び、王に従い進んでいくのだった。
こうしてゴブリンロードと戦闘員たちは参加者や他のNPCを従えるべく歩んでいたのだが、特に何の成果もないまま今に至る。
◆
ゴブリンロードがメガデス戦闘員数人を従えている光景を目撃した写影は、素早く黒子達の元へ戻ろうと決意する。
幸い、未だ向こうには気付かれていないので情報を伝えるのは難しくないだろう。
しかし、状況はここで一気に変化する。
「は、はなせ〜〜〜〜〜!!」
どこからか悲鳴か聞こえたかと思うと、二人の参加者が姿を見せる。
否、この言い方は正確ではないだろう。
正しくは、ハサミが持ち手の部分をジェイソンに掴まれた状態でゆったり歩いて悠然と現れた。
ハサミは必死に抵抗しようとしているが、持ち手を閉じられた状態では上手く踏ん張れないのか、喚くだけでジェイソンの手を振りほどくことはできない。
(そんな!? 豆銑さんとゴブリンスレイヤーさんは!?)
仲間が足止めしているはずの怪物が現れ、動揺する写影。
二人が命惜しさに逃げ出したとは思わない。
ならば殺されてしまったか、何らかの方法でジェイソンが逃げ出したかのどっちかだろう。
ともかく、この場から一刻も早く離れなければ、と写影は音が出ることも辞さず駆け出す。
142
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:24:37 ID:3dZG5jzc0
一方、ゴブリンロードは余裕だった。
今の自分は強いうえ、手下もいる。
おまけに目の前の参加者は無数の傷だらけで、ボロボロだ。
何やら喋る刃物を持っているが、どう見ても大きくて振り回しにくいだろう。
あんな武器を使うなんて馬鹿だ、と見下していた。
「イーッ!!」
メガデス戦闘員の一人がジェイソンに棒を持って向かう。
ゴブリンロードが行け、と目線で命じた故に。
戦闘員は素早くジェイソンに近づくと、「腰が入ってないんだよ腰が!」と上司に叱られそうな突きで攻撃する。
だがジェイソンがそんな突きでダメージを負うようならば、ホル・ホースは死ぬことはなかっただろう。
事実、ジェイソンは意にも介さずハサミを振るい、あっさりと戦闘員は両断される。
「イーッ!!」
「あっ...。チョットコ…」
「うはぁ...」
続いて残りの戦闘員が勢い込んで、あるいは怯えながらもジェイソンに向かう。
しかしそんな彼らもハサミの一振りであっさり命を散らし、残りはゴブリンロード一匹。
ブウン!
ジェイソンはハサミを振り上げ、兜割りの要領でゴブリンロードの頭に叩き下ろそうとする。
だがゴブリンロードはただのゴブリンではない。
ここまで成長してしまえば、四方世界基準で考えるなら銀等級冒険者でもなければ対処が難しい、十二分に強者として扱われる存在である。
故にこれくらいのことはできる。
ガシッ!
ゴブリンロードは振り下ろされるハサミを、白羽取りの要領で受け止める。
手にある進化退化放射線源が少々邪魔だと感じつつも、今それを捨てることに意識をやればその瞬間頭を割られるだろう。
なのでゴブリンロードは少々抑えにくい体制で踏ん張るしかない。
ギギギ
二人が触れるハサミから軋む音が聞こえる。
和泉守兼定の戦いで負ったダメージを回復しきれないままジェイソンと遭遇し、さらなるダメージを負ったところで今はこの仕打ち。
ハサミの体は限界に近かった。
「い、いやだ! ボクがこんなところで、こんな死に方をするなんて!!」
ハサミは悲鳴をあげるが、二体の怪物にそんなものを聞き届ける神経はない。
ただ目の前の相手を殺す為、あるいは生きる為にただ力を籠める。
しかしその時もとうとう終わりが来た。
ピキピキ
ハサミの体が少しずつひび割れていく。
まるで終わりを宣告するように。
「ボ、ボクはブンボー軍団一の技の使い手なんだ――」
それを察してハサミは叫び、必死に暴れようとする。
しかし怪力を持つ怪物二体を振りほどくことができないまま
パキン
ハサミの体が割れ、持ち手の部分と刃の部分で二つに分かれる。
これは人間で言うなら上半身と下半身が力づくで割られたようなもの。
すなわち、ハサミの死を意味する。
ブンボー軍団一の技の使い手は強大な怪物ではなく、ジェイソンに襲われた数多の被害者の一部として終わりを迎えた。
【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング 死亡】
【残り79名】
143
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:24:58 ID:3dZG5jzc0
一方、ハサミの体が割れたことで二体の怪物は互いに大きくバランスを崩す。
そこから先に体勢を整えたのはジェイソンだった。
彼は身体を大きく一回転させたかと思うと、その勢いのままハサミの持ち手をゴブリンロードの首へと叩き込む。
「GBGB!!」
いきなり首に攻撃を叩き込まれ苦しむゴブリンロード。
その隙を突き、ジェイソンは次にゴブリンロードの頭にハサミの持ち手で殴りつける。
もしこの攻撃が並の人間によるものならダメージなどたいしてなかっただろう。
しかし怪力を誇るジェイソンの攻撃ともあれば話は別。
一撃でゴブリンロードの頭はひしゃげ、そのまま絶命した。
ジェイソンはハサミの持ち手を捨て、代わりに刃の部分を拾いある場所に目を向ける。
そこはさっきまで写影がいた所。だが今はいない。
しかし居たという事実さえあればジェイソンには十分。
次の瞬間、彼は姿を消した。
ゴブリンロードの手にある進化退化放射線源が、死亡した時の衝撃で指が引き金を引き、光線を発射し続けているということに、ジェイソンはついぞ興味を持つこと無く。
◆
「大変だ! ゴブリンスレイヤーさん達が足止めしている筈の怪物がすぐそこに来てる!!」
「えっ!?」
「何ですって!?」
隠伏という目的を忘れ大慌てで戻って来た写影は、黒子と初夏の二人にジェイソンの到来を告げる。
その情報に二人は驚くも、ならばこんなところでじっとしている場合じゃないとばかりに、即座に立ち上がり脱出を図ろうとする。
しかし――
スッ
それより早く、ジェイソンがこの場に現れた。
「瞬間、移動……!?」
「そんな……!」
ジェイソンが瞬間移動可能という事実に驚愕する写影と初夏。
さて、ここで今一度ジェイソンの瞬間移動に関する制限を確認しよう。
転移は対象を追跡するときのみ使用可能。
ジェイソンと対象が互いに認識している時のみ使用可能。
互いに同じエリアにいる時のみ使用可能。
使用できるのは対象が逃走、隠伏している時にジェイソンが追跡するときのみ。
ここで重要なのは、あくまで認識さえしていればいいので別に互いに目視が必要ではないということ。
すなわち、お互いいることさえ分かってさえいれば隠伏しようとも意味がないということである。
先ほど写影が足音を立てて移動したとき、ジェイソンはゴブリンロードやメガデス戦闘員と戦いながらも写影の存在に気付いたのだ。
しかしそんな事実を知る者はこの場においてジェイソン以外存在しない。
そしてそれを鑑みる道理もない。
彼は手にあるハサミの刃を無造作に投げつける。
グサッ
無造作なれどジェイソンの怪力で投げられた刃を躱すことも防ぐこともこの場の誰にも適わず、あっさりと刃は初夏の腹を貫く。
「にげ、て……!」
この状況で初夏にできることは、生きている残りの仲間に必死に逃亡を呼び掛けるのみ。
それを最期に、彼女はごくあっさりと息を引き取った。
【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー 死亡】
【残り78名】
144
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:25:17 ID:3dZG5jzc0
「縺ェ繧薙※縺薙→繧偵☆繧九s縺!」
初夏が殺された直後、ここまで静かだったいのちの輝きが何かを叫び、ビームをジェイソンに向けて発射する。
だが普通のゴブリンすら怯ませるほどの威力しか出せないビームが、プロボクサーのパンチ連打を受けても微動だにしないジェイソンにいか程の影響を与えられるというのか。
事実、彼は何一つ怯むことなく次のターゲットとばかりにいのちの輝きへと歩を進める。
「逃げますわよ!!」
しかしそうはさせないとばかりに黒子は叫びながらいのちの輝きの体を掴み、同時に初夏のデイパックを回収した写影も黒子の腕を掴んだ。
直後、二人と一匹は転移する。
転移先はさっきまで写影がいた場所。すなわち、ハサミやゴブリンロードがジェイソンに殺された場所でもある。
「縺輔▲縺阪?縺ィ縺薙m縺ォ謌サ縺励※!」
転移した直後、いのちの輝きが何かを叫ぶ。まるで逃げることを非難するように。
それを黒子は諭す。
「あなたにとって飴宮さんは大切だったようですが、だからこそ逃げなければいけませんわ。
あの方は最期にそう言ったでしょう」
「雖後□雖後□!」
まるで聞き分けのない子供の様に騒ぐいのちの輝きだが、いつまでもそうしてはいられない。
ドゴォ!
なぜなら、追いかけてきたジェイソンが一塊になっている三人に向けて拳を振るったからだ。
なすすべもなく喰らい、二人と一匹はそれぞれバラバラになりながら地面を転がる。
「グググ……かはっ!!」
「黒子!!」
血を吐きながら立ち上がる黒子と、そんな彼女を心配しながらも同じく立ち上がろうとする写影。
一方、いのちの輝きは死体となったゴブリンロードの傍で動かないままだ。
死んでいるのか生きているのか、この距離では分からない。
「まあ生きているなら見捨てるようで心苦しいですが、ここは少なくともどちらか一人が残りもう一人が足止めに徹する他無いようですわね」
「だったら僕が!!」
黒子の息絶え絶えな中で吐き出される言葉に対し、写影は力強く宣言する。
そうだ。その為に僕がいる。
この殺し合いでそう動くと決めている。
どんな手を使おうとも、どんな犠牲を払おうとも。黒子を守ると決めている。
「言いそびれたけど、実はその為の力になりそうな支給品も――」
「お断りですわ」
しかし黒子は写影の決意に否を唱え、彼を別の場所に転移させた。
どんな理由があろうとも、風紀委員(ジャッジメント)が一般人の陰に隠れるなどあってはならない。
なにやら隠し玉があったようだがそれも関係ない。
例え自分より強いことが明確な超能力者(レベル5)、敬愛するお姉様御坂美琴であろうとも、黒子は同じことをするだろうから。
「とはいえ、今の私にどこまでこの殿方の相手を務められるのやら」
決意を固めたはいいがどうやって足止めするかと考えたその時、不思議なことが起こった。
145
:
MONSTER PANIC
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:25:41 ID:3dZG5jzc0
「ゆるさないぞ――――――!!!」
グシャリ
なんと、さっきまでいのちの輝きが倒れていた場所に別の生物が現れた。
外見は水色の粘土で人型を作り、顔には口だけを用意したものに、顔の周りへまるでオスのライオンのたてがみみたくいのちの輝きを巻きつけたようなもの。
ちなみに首輪はいのちの輝きの部分に巻き付いたままだ。
殺し合いの参加者の誰もが、いや主催者であろうとも知ることはないが、見る者が見ればこういうだろう。
大阪万博2025マスコット、ミャクミャクのようだと。
「あなた、人の言葉を喋れましたのね……しかも可愛らしい声で」
突如喋り出した推定いのちの輝きに対し、黒子は唖然としながらもどこかズレた言葉を零す。
実の所、この突然現れたミャクミャクらしき生物はいのちの輝きである。
ゴブリンロードの死体が放ち続ける進化退化放射線源の光の偶然浴び、この姿へと進化を遂げたのだ。
もっとも、件の進化退化放射線源はいのちの輝きにより踏みつぶされてしまったが。
いのちの輝きは怒っていた。
それは自らの命を脅かす敵、ジェイソンに対して。
あるいは、好奇心や好意を抱いていた相手である最初に優しくしてくれた初夏の命を奪われたことに対して。
一方、怒りに燃えるいのちの輝きに対して黒子は静かに告げる。
「申し訳ありませんが、動けるようでしたら一人で逃げていただけるとありがたいですわ。
私、これからあの殿方のお相手を務めねばなりませんので」
黒子は逃げるよういのちの輝きにも告げる。
生きているのなら逃げられるようにしたいという思いは、何も人間だけに適用されるわけではない。
明らかに敵意を示しているならともかく、さっきまで行動を共にしていた相手への対応ならば当然のこと。
しかし、それを当然だと思っていたのは黒子だけだった。
ジュッ
いのちの輝きは、さっきジェイソンに放ったものとは比べ物にならない威力のビームを黒子に放ち、彼女の上半身を焼き尽くした。
「な、にを……」
「さいしょにいってた! ゆうしょうすればねがいをかなえるけんりをくれるって!!
だからゆうしょうしてあめみやをいきかえらせるんだ!!」
黒子は見誤っていた。いのちの輝きが初夏に抱く感情の重さを。
否、彼女でなくても見抜けなかっただろう。なにせ、いのちの輝き自身でさえもさっきまで抱いていたのは好奇心だったのだから。
しかしジェイソンに初夏が殺されるのを見て初めて気づいた。
いのちの輝きが彼女に抱いていたのは好奇心だけではなく、もっと別の重い感情ものもあると。
それを人間に置き換えるのなら、子供が母親に抱くような感情。
すなわち、愛情。
その為に殺し合いに乗るなんてことは間違っている、と黒子は言いたい。
しかし、焼き尽くされた今では最早口が動かない。
ならば彼女の願いは一つ。
(写影、どうかあなただけでも生き残って……)
この思考を最期に、白井黒子は息絶える。
愛によって、彼女の命は尽きてしまう。
【白井黒子@とある科学の超電磁砲 死亡】
【残り77名】
146
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:26:12 ID:3dZG5jzc0
◆
「あるんだ! だから――」
「美山写影?」
ソルティ・スプリングに到着したゴブリンスレイヤーと豆銑を迎えたのは、デイパックを背負い、傷を負った状態で突如現れた写影だった。
黒子がテレポートを使えることは知っている二人からすれば驚くほどのことではないが、たった一人で現れた事実で察せられることもある。
すなわち、黒子達はここに来た上で怪物、ジェイソンと遭遇し一人逃がすのが精一杯だったということ。
「すまない」
だからゴブリンスレイヤーの口から出た言葉は、謝罪だった。
どんな理由があろうとも、自分達があの怪物を逃がしたせいで、おそらくさっきまで共に行動していた仲間が死亡したのだろうから。
しかし写影はゴブリンスレイヤーの謝罪に対し、首を横に振って応対する。
二人に非はないと示したうえで、彼は言葉を紡ぐ。
「別に二人が悪いだなんて思ってない。それより早く黒子を助けに行かないと!」
「ああ」
「場所なら僕が案内するから二人も急いでついて――」
「当て身」
自らのダメージなど気づきもしてないのか、言葉と気持ちを逸らせる写影に対し豆銑はトン、という音を立てて首元を叩く。
すると体は傷に抗えなかったのか、写影はごくあっさりと気絶した。
この光景に疑問を呈したのはゴブリンスレイヤーだ。
「どういうつもりだ?」
「生きているとは正直思えないが、それでも白井を助けに行くのは私だけだ。
ゴブリンスレイヤー。君は美山を連れてここから離れろ」
豆銑の言葉にゴブリンスレイヤーは少々驚く。
それは自らの命を優先するはずの男が言った殿を務めるという言葉以上に、写影を気絶させたということについてだ。
ゴブリンスレイヤーには、彼を気絶させる意図が分からなかった。
それは案内役が居たほうがいいという理由以外に、もう一つある。
「シャエイには何か、あの怪物に有効打を与える当てがあったようだが」
ゴブリンスレイヤーには、写影が何か有効打を持っているからこそ案内役を買って出ていると考えていた。
彼はいくら気が逸っていたとしても、わざわざ危険な場所に理由もなく出向くたちではないと判断していたために。
臆病ではなく、足手まといにならないために。
その意見は豆銑も同じだ。
「そのようだな。
元々何かを隠していたのは察していたのだが、この状況で有効かもしれない手立てだったとはな」
「信用していなかったのか。それならなぜ逃がして一人で行こうとする」
豆銑の写影を信用していなかったという言葉に対し、当然の疑問を口にするゴブリンスレイヤー。
黒子達を助けに行くのはいいとしても、写影を連れて行かない理由にはならない。
「責任だ。私が美山写影を信用していないということと、我々が約束を果たせなかったことに因果関係はない」
「それは俺も同じだ」
写影を連れて行かない理由には納得しつつも、豆銑一人で行こうとすることには納得しないゴブリンスレイヤー。
だが豆銑には反論がある。
「そうかもしれんな。
だが美山写影を逃がさなければ、白井黒子の献身が無駄になる。
私が生かすと約束した相手の、命をかけた行いを無為にするな」
「ならば俺が行くという手もあるだろう」
豆銑の言葉に、今度はゴブリンスレイヤーが反論する。
彼には分からなかった。自分の命を優先すると言ったはずの豆銑が、なぜ死ぬ確率の高い道を進もうとするのかを。
それほどまでに、彼にとって約束という物は重いのかと。
「ゴブリンスレイヤー。君は冒険者と言ったな。
依頼を受け、冒険をする者と」
「ああ」
「ならばこれは私からの依頼だ。美山写影を連れて逃げてくれ。
私に、約束を果たせなかった責任を取らせてくれ」
「……そうか」
豆銑の言い分に納得したわけではない。
ただ、これ以上ここで問答しているべきではないとゴブリンスレイヤーは判断した。
いつ来るかも分からない怪物という脅威を前に、豆銑は決して判断を変えないと理解したがために、ゴブリンスレイヤーは退いた。
147
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:26:31 ID:3dZG5jzc0
「何を勘違いしているのか知らないが」
そんな、まるで仲間を死地に追いやるかのような振る舞いを見せるゴブリンスレイヤーを見かねてか、豆銑は助け舟を出す。
「私は死にに行くつもりはない。勝算はある。
その為には美山写影が背負っているデイパックから紙を取ってくれ。飴宮が抱えていた怪物に支給されていた紙だ」
「あれか」
豆銑の言葉を聞き、死にに行くわけでは無いと信じたゴブリンスレイヤーは彼の要望に応じ、気絶している写影の背にあるデイパックから紙を取り出し、渡す。
一見するとただの紙だが、見たままでないことを彼らは知っている。
保護をすると決めた後、道すがらに飴宮から聞いていたのだ。
「南に行く」
「分かった」
これ以上やれることはないと判断したゴブリンスレイヤーは、行く先を告げる。
勝算があるのなら、生きて戻るつもりがあるのなら追いついてほしいという願いを込めて。
それだけを告げてゴブリンスレイヤーは写影を背負いながら思考する。
マメズクを疑うつもりはない。
彼が勝算があると言った以上、何かしらはあるのだろう。
それはいい。考えることは別にある。
「ミヤマ」
ゴブリンスレイヤーは写影に声をかける。
気絶している彼が返答するわけはないが、それでもゴブリンスレイヤーは語り続ける。
「お前は、シライを助けようとした。
勿論、まるで無策ではないのだろうが、それでも――
お前は、あの時の俺より正しい。
姉の死をただ見ていただけの俺より、よほど」
なぜこんなことを言っているのか、ゴブリンスレイヤー当人すら判断しがたい。
仲間を失った写影に対し、不器用に慰めているのか。それとも同情しているのか。
聞き手が気絶している中そんなことを言っても、何の意味もないだろうに。
【F-7/朝】
【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康、美山写影を背負っている
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、白井黒子のランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:ミヤマを連れ南下する
2:怪物(ジェイソン)に対処する手段を考えておく。マメズクが対処できるならそれが一番だが
3:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
4:これでよかったのか……?
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
6:なぜ俺たちは本名で名簿に載っていない?
7: 異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
[備考]
※時間軸はゴブリンロードを討伐した後。
※第一回放送を聞き逃しました
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(中)、精神的ダメージ(大)、気絶、ゴブリンスレイヤーに背負われている
[装備]:イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品×3(初夏、写影、いのちの輝き)、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー、あきビン@ゼルダの伝説シリーズ、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、何かの紙@出展不明、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
[思考・状況]:基本行動方針:???
1:黒子、僕は……
[備考]
※第一回放送を聞き流しているので大部分があやふやですが、少なくとも死者に牛飼い娘がいないことは把握しています。
148
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:26:52 ID:3dZG5jzc0
◆
「ぎゃあああああああああああ!!」
豆銑はソルティ・スプリングに到着し黒子達やジェイソンを探す。
すると何やら聞き覚えのない声の悲鳴が聞こえたので、とりあえず悲鳴のする方へと向かってみる。
そこで見たものは白井黒子の遺体と
「いやだああああ! なに、なんなのこれ!?」
足をへし折られ苦しむ、全身青に顔周りに赤いたてがみのようなものを持つ謎の生物だった。
豆銑には、あれが何なのかまるで想像がつかない。
まさか道具の効果で進化した、飴宮が抱えた怪物、いのちの輝きが進化したものだとは夢にも思わなかった。
「ぼくはゆうしょう、ゆうしょうするんだ!!」
足を折られ苦しみながらそれでも優勝すると叫びつつ、いのちの輝きはビームを放ちジェイソンを焼き尽くす。
それは白井黒子を焼き尽くし、死に追いやったビーム。
しかしジェイソンにその程度のダメージで死に追いやることなどできない。
それで死ぬのならホル・ホースの銃撃で終わりを迎えていただろう。
彼は怯む様子など微塵も見せることなく、いのちの輝きに拳を浴びせる。
その様子を物陰で隠れて見ていた豆銑は、一瞬だけ二体の怪物同士を潰し合わせれば何もせずとも問題ないのでは、と考える。
しかしどちらかが逃げてしまえばその目論見は潰えるし、万が一結託されても困る。
やはり自分が行動すべきだと結論付け、彼はデイパックからあるものを取り出す。
それは一見するとただのメガホンだが、実際は違う。
これは『無生物さいみんメガホン』という。
無生物さいみんメガホンとか、とある世界の22世紀に存在する道具。
このメガホンは無生物に催眠を掛けることができ、性質を変化させられるのだ。
重い荷物の入ったダンボールに風船だと思わせれば軽くなり、漫画本に鳥だと思わせれば自在に空を舞う。
豆銑はこのメガホンで己の手にある傘にこう催眠をかけた。
「お前はコウモリだ。空を自在に舞うコウモリだ。
そしてこの紙を合図したら、あの怪物二体の上で開くんだ。
それだけしてくれれば、後は好きな場所へ飛んでいけばいい」
豆銑が催眠を掛けると、野崎春花の傘はバタバタと羽ばたき始める。
そして豆銑が写影のデイパックから取り出した紙を渡すと、バタバタと飛んでいき、ジェイソンといのちの輝きがいる地点から数m上空に留まった。
しかしここで羽音に気付いたのか、ジェイソンは何やら上を見上げる。
そして飛んでいる傘を見て訝しく思ったのか、彼はいのちの輝きの顔面を踏み潰そうとしつつこの場から去ろうとする。
「マズイ!!」
ここで豆銑は、ジェイソンがやろうとしていることを勘づき慌てて止めるべく飛び出した。
幸いジェイソンはいのちの輝きを踏み潰すべく片足を上げている。ならば隙はある。
「ドギー・スタイル!!」
豆銑はスタンド能力で自らの身体を伸ばし、ジェイソンの足に引っ掛ける。
そしてそれを勢いよく引っ張った。
グラッ
するとジェイソンはバランスを崩し、今にも転びそうになる。
両足で地面に立っているならこの程度で彼のバランスは崩せなかっただろうが、片足ならばできなくはない。
ここで豆銑は叫んだ。
「今だ開け――――――ッ!!」
その叫びはコウモリと化した野崎春花の傘への合図。
声に従い傘は空中で紙を開く。
149
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:27:11 ID:3dZG5jzc0
ドドドドドドドドドドド
すると紙が開ききった直後、そこから現れたのは一台のタクシーだった。
なぜ紙を開くとタクシーが現れるのか。それにはまずエニグマというスタンドから説明しなければならない。
エニグマとはジョジョの奇妙な冒険4部に登場するスタンドである。
能力は人や物などを紙にしまうこと。
このスタンドで本体である宮本輝之輔はラーメンや銃などしましつつ、人間の恐怖のサインを見ることを趣味としていたがここでは別の話。
彼は、このスタンドでタクシーもしまっていたのだ。
その紙がここでは支給品となっている。
単に車を支給するなら他の参加者に支給されている黒塗りの高級車など、スタンドを介さないものもある。
なので当然それらとの違いもあるが、今は重要ではない。
今重要なのは、車が上空から怪物目掛け落ちているということだ。
勝った、と豆銑は思った。
これなら怪物も死ぬだろう、よしんば生きていたとしても足止めには十分だろうと。
だが万が一がある。ここは確実に怪物がタクシーに潰されるまでは見届けておこう、とも考えた。
青い怪物が放つビームは脅威なので警戒はするが、避けることはできるだろう。
この判断が隙になるとは考えなかった。
タクシーが落ちるまでの時間はほんの数秒。その間にできることなど流石にないと思考した。
その判断は正しい。
ジェイソンだけならここで出来ることはただ潰されるのみ。
いのちの輝きも痛みに耐えるのが精一杯で、タクシーをどうにかする気力がない。
しかし、豆銑には思いもよらなかった。
この状況に一手打てる支給品が、ジェイソンの手元にあることを。
グイッ
「な、何ィィィィ――――――――――ッ!?」
次の瞬間、なんと豆銑はジェイソンの懐に収まっていた。
これはホル・ホースに支給されていた手にとり望遠鏡の効果だ。
この望遠鏡が持つ効果でジェイソンは豆銑を引き寄せたのだ。
ジェイソンは支給品を集めた際に効果も確認していたのだ。
いくら脳が小さくても、説明書きを読むくらいはできる。
手にとり望遠鏡の効果には一度使うと数時間は使えない制限が掛かっているが、それは既に解除されている。
なのでここから先、引き寄せることはできなくとも引き寄せられることはできるが、今は余談だろう。
一方豆銑は何が起こったのか分からないまま手にあるメガホンは潰され、ジェイソンの腕に体はギギギと締め付けられる。
いわゆるベアハッグと呼ばれる締め技のようなものだ。
もっとも、片手が望遠鏡に塞がっているのでいささか変則だが。
「うおおおおお――――ッ!! ドギー・スタイル!!」
豆銑は自分の体を補足することでジェイソンの腕から脱出しようとする。
しかしもう遅い。
彼自身の命令で落としたタクシーが、一人と二体の怪物へと降り注いだ。
ズガァァァアアアアアアアアン!!
◆
150
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:27:40 ID:3dZG5jzc0
グラグラ
それからどれほど時間が経ったのだろう。
動かない筈のタクシーが揺れ動いたかと思うと、ゴロンと地面を回転し下に車輪を付けたあるべき姿へとなる。
そしてさっきまでタクシーがあった場所の下から、一つの人影が起き上がった。
その人影は顔にホッケーマスクを付けていた。
その人影は体中に傷跡があり、頭にはいくつもの銃創があった。
その人影は手に望遠鏡を持っていた。
その人影は、ジェイソン・ボーヒーズだった。
そして彼の足元には、タクシーに潰され動かなくなった二つの死体。
豆銑礼といのちの輝きが死に絶えた姿が、そこにはあった。
【豆銑礼@ジョジョリオン 死亡】
【いのちの輝き@大阪万博2025 死亡】
【残り75名】
ところで、いのちの輝きに支給されたタクシーには、紙にしまわれている以外にも他の支給された車にはない特徴がある。
それは――
「おれ、こんなところ走ってたっけなあ〜?」
運転手のNPCが付属しているという点だ。
エニグマがしまっていた本来のタクシーも運転手ごとだったので再現されているのだ。
このタクシーに乗り、目的地を言えばそこに連れて行ってくれる。それが役割。
しかし――
グシャリ
ジェイソンにそんなことは関係ない。
そこに生きている命があるなら彼は殺す。それが彼の在り方。
怪物、ジェイソン・ボーヒーズは未だ止まらない。
【F-7 ソルティ・スプリング/朝】
【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日】
[状態]:全身の数ヵ所に切り傷や刺し傷、無数の銃創(特に両腕と脳)、全身火傷、ダメージ(大)、何れも殺人に支障なし
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』は使用不可)@ドラえもん、
[道具]:基本支給品×3(ジェイソン、ホル・ホース、ハサミ)、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー、ランダム支給品×1
[思考・状況]:基本行動方針:皆殺し
[備考]
※参戦時期はフレディvsジェイソン終了後。
※首輪の爆発か全身を消し飛ばされない限り何度でも復活します。
※part9でやった他者の肉体乗っ取りは制限により使用できません。
※映画内で時折見せた瞬間移動能力を有しています。
能力に関する情報は以下の通り
ジェイソン、追跡対象者が互いの存在を認識している事が必要
同じエリア内でのみ可能。
対象がジェイソンのいるエリア外へ抜けると再び同じエリア内に入るまで使用不可
瞬間移動の利用は逃走・隠伏する対象を追跡する場合のみ。
攻撃を回避する等の手段には使えない。
以上の制限を自身でもある程度把握しました。
※瞬間移動以外に原作、ゲームで使用した超能力を有しているかは不明です。
※第一回放送を聞き逃しました
※進化退化放射線源@ドラえもん は破壊されました。
※E-7とF-7の境界にレールガン(弾切れ)@実写版バイオハザード、幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険 が放置されています。
※F-7 ソルティ・スプリングに以下のものが放置されています。
白井黒子、いのちの輝き、豆銑礼の遺体、ゴブリンロードとメガデス戦闘員の群れの死体、鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲、豆銑礼のデイパック(基本支給品)
また別の場所に飴宮初夏の遺体、簡易レーダー@バトル・ロワイアル。
※進化退化放射線源@ドラえもん、無生物さいみんメガホン@ドラえもん は破壊されました。
※野咲春花の傘@ミスミソウ はどこかに飛んでいきました。どこに行ったかは次の書き手氏にお任せします。
151
:
さよならが言えない
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:27:57 ID:3dZG5jzc0
【ゴーストクッキー@マリオ&ルイージRPGシリーズ】
豆銑礼に支給。
二枚一組のテレサ型のクッキー。初出はマリオ&ルイージRPG4。
使用すると一定時間攻撃を受けてもダメージを受けなくなる代わりに、マリオとルイージも攻撃できなくなる。
相手がひたすら攻撃してくるのでパターンを覚えて回避に役立てよう。
本ロワでは使用後も攻撃を仕掛けることは可能だが、効果が発揮されている間はいかなる手段を以っても相手にダメージが与えられなくなっている。
【ポウの魂入りビン@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
飴宮初夏に支給。
カカリコ村の奥にある墓地などに登場する雑魚敵のポウが倒された時、魂を一定時間残す。その魂はあきビンに詰めることができる。
魂は大人時代のハイラル城下町にあるゴーストショップで売れる他、飲むこともできる。
飲んだらダメージか回復のどちらかが発生する。
本ロワでは飲んだら回復かダメージのどちらかが発生する飲み物だが、ダメージが発生したとしても、このダメージで参加者が死亡することはないものとする。
また、中身がなくなるとあきビンとしても運用可能となる。
もしかしたらどこかでなにかと交換できたかもしれない。
【あきビン@ゼルダの伝説シリーズ】
↑の中身がなくなった後のビン。
中に薬や妖精、牛乳、魚などいろいろなものを入れられるアイテム。
素早く振ることで一部ボスの攻撃を跳ね返すことができる。
本ロワでも、もしかしたら参加者やNPCの攻撃の中に跳ね返せるものがあるかもしれない。
【進化退化放射線源@ドラえもん】
35話にて現れたはぐれメタル撃破の報酬の宝箱の中身。
光線銃型の道具で、この道具から照射される光を生物または物体に浴びせると進化、もしくは退化した姿に変化させることができる。
また、生物の頭脳だけを進化させ姿はそのままということも可能だが、このロワでは不可能とする。
【無生物さいみんメガホン@ドラえもん】
豆銑礼に支給。
無生物に催眠を掛けることができるメガホン。
物に向かってメガホンで「君は○○だ」と呼びかけることで物に別の性質を持たせることができる。
このできる範囲は広く、掃除機をスーパーカーにしたり箒や絨毯に空を飛ぶ効果を持たせたりも可能。
また、鳥やウサギだと思わせることで命を与えることもできる。
本ロワではこの道具でかけた催眠は十分ほどで解ける。
また、一度使うと一定時間使用不可能となる。
【タクシーが入ったエニグマの紙@ジョジョの奇妙な冒険】
いのちの輝きに支給。
元々は四部に登場する宮本輝之輔がスタンド能力で紙にしまっていたタクシー。運転手もセット。
本ロワでも変わらずタクシーと運転手がセットで支給されている。
ただし運転手は一度紙から出すとNPCとして扱われる。
【メガデス戦闘員@真夏の夜の淫夢シリーズ】
正式出展は超人サバイバーZ 02。
悪の組織メガデスの戦闘員。外見は仮面ラ○ダーに出てくるショッカーの色違いみたいな白の全身タイツに覆面。
トレーニング中であろうとも男に触られると感じる。
基本的に「イーッ!」と叫ぶが普通に喋ることも多め。
棒術で戦う。
なお、原作ではトレーニングシーンはあるが戦闘シーンが存在しないので棒術で戦うのは本ロワ独自設定である。
【タクシー運転手@ジョジョの奇妙な冒険】
四部に登場するエニグマにしまわれていたタクシーの運転手。
本ロワではロワ会場の地図にある施設、もしくはエリアを言うことで、そこまでタクシーで運んでもらえる。
タクシーが壊れているなら代わりの車を用意しよう。
152
:
◆7PJBZrstcc
:2025/01/29(水) 21:28:43 ID:3dZG5jzc0
投下終了です
何かおかしな点、不明な点がありましたら指摘よろしくお願いします
153
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:22:03 ID:???0
投下お疲れ様です!
やはり怖いですねジェイソンは。
まさにホラー映画の虐殺シーンと言わんばかりの大混戦、たいへん見ごたえがありました。
対主催もマーダーも区別なく理不尽を押し付けてくるのは、ホラー映画界を代表するバケモンなだけありますね。
かがやき君のミャクミャク様への進化はおお!となりました。なに味方にフレンドリーファイアしてんだい。
優勝を目指してさえいなければ、あと2カ月に迫った万博開催までに生き残れたかもしれませんね。
私もバケモンにはバケモンをぶつけんだよというわけで投下します。
内容に少し過激な描写があるため、もしSNS等で内容に触れる方はキャラ名を検索避けして頂けると助かります。
154
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:23:57 ID:???0
■■■
必要だったんだ!なにか拠り所になるものが!信じられるなにかが!
■■■
私、なにを、してたっけ。
鈴奈の頭の中に浮かぶのはそれだけだった
なにか、やらなくてはいけないことがあったはずだと。
「……何、この匂い」
目の前は真っ暗で何も見えない。
そんな中、どこからか漂うのは、夏場の女子トイレのような汚水の匂いだ。
鈴奈はランチメイト症候群を患っている。
この匂いは、過去に人目が怖くなり、便所飯をしていた辛い記憶を想起させる。
「って、なんだ、ここって……」
よく周りを見れば、女子トイレの個室だった。
人の目が怖くて逃げていた彼女の、かつての殻だ。
「……そうだ、早く部室に行かないと」
寝ちゃってたのかな?と思い扉を開ける。
向かう場所は帰宅部の部室。今の鈴奈にとって一番大事な場所だ。
メビウスに来た最初の頃は、μに造られた中学時代の友達のコピーとだけ交友関係を築いていた。
一年二組は全て鈴奈のためだけに作られた、魂なきクラスメイトだ。
そんな孤独な鈴奈を救ったのが、同じ帰宅部の部員達だ。
一緒にお弁当を食べたことも、歌を聴いてくれた事もある。
何より、『俺が付いてる』とまで言ってくれた大切な先輩が居る。
外を出て、暗い廊下を手探りで進んでいくと、闇の中にぼんやりとした光が見えた。
学校の片隅にある、吹奏楽室を改装した部室だ。
この居場所がある限り、便所飯をしていた頃のような惨めな思いはもうしない。
楽しげな歓談の聴こえる部室の前に立ち、扉を開けた。
「おつかれー」
「やぁ、鈴奈ちゃん」
「待ってたよ、一緒にお弁当食べよ」
「はい!」
扉を開ければ、いつも通りの光景だ。
仲の良い美笛を始め、いつものメンバーが揃っている。
佐竹笙悟、峯沢維弦、響鍵介、柏葉琴乃、守田鳴子、篠原美笛、天本彩声、琵琶坂永至だ。
過去に不慮の事故で居なくなった鼓太郎を除けば、帰宅部の仲間がこの場に揃っている。
「あれ?部長はまだでしょうか」
それは、何気ない言葉だった。
鈴奈の想い人である先輩こと帰宅部の部長がこの場にいなかった。
「は?」
部員たちの視線は一斉に鈴奈へと向いた。
「え?何ですか皆さん……?」
「……居るわけねぇだろ」
「何、言ってんの、鈴奈ちゃん」
「あのさ、そういう事冗談でも言っちゃ駄目だってわかんないかな?」
「お前、自分が何したか分かってないのか」
何だか訳が分からなかった。
鈴奈への悪態は止まらず、エスカレートする。
「ひっ!な、なななな、なんでっ……そんな眼で見るんですか!」
「そうか、ならお前はもう部員じゃないな」
「それにしても、よくもまあのうのうと部室に戻って来ようとしましたね。貴方、恥ずかしくないんですか?」
「喋らないでくれるかしら。貴方の声聴くと虫唾が走るの」
「人殺しが……!」
部員達が思うままの武器を発現。
剣、弓、鎚といった装備を構え、鈴奈へと襲いかかった。
「ヒィッ!」
155
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:25:35 ID:???0
部室から飛び出し、外から鍵をかける。
背後から罵声が聴こえることに、どくどくとした心臓の音を響かせ、ただ全身全力で駆ける。
「なななな、なに、これ……」
ひとごろし?
そんな事言われても、思い当たることがない。
体力を使い切った鈴奈は廊下の床にしゃがみ込む。
息を立て直しながら、立ち上がることも出来ない。
「これは夢、なのかな……?」
ガタガタと震え、頭を抱えすがるように呟く、叫ぶ。
どこかで自分が、なにかしでかしたしたような気もするが思い出せない。
「ハッ!夢なわけねえだろバーーーーカ!」
「あ!……み、水口さん!」
小馬鹿にするように、不意に背後より声をかけられた。
水口茉莉絵。別名楽士ウィキッド。
人間の繋がりを忌み嫌い、破壊する事に悦を感じる女だ。
かつて彼女の撒いた情報により、何日も飲まず食わずで監禁されたことがある。
限界を迎えた部員達が互いに罵り合う光景は鈴奈にとってのトラウマだ。
人との繋がりを大事にする鈴奈にとって最悪の相性を誇る相手だった。
「まさか、あなたが変な嘘を流したんですか!」
かつて帰宅部の仲間である守田鳴子を利用し、部員達を仲違いさせた女である。
また、良からぬことをしたのだろうと思い当たった。
「はぁ〜〜???何、人のせいにしてんだ!脳味噌詰まってんのか?じゃあお前の無駄にデッケェケツの下にあんのはなんだ!」
「え……?お尻……?ひっ……!」
ふと気づけば、ぐちゃりと、嫌な触感がする。
クッション、なんてものじゃない。
「え、あ、嘘、なんで……」
見覚えのある髑髏の仮面。
それがコロリと転がりれば、見覚えのある顔になる。
「お前が踏み殺したんだろ!どっかの鼓太郎みてえにさ!」
響鼓太郎。それはかつて、楽士シャドウナイフを救おうとし、目の前で事故死した少年だ。
鈴奈にとって初めて目の当たりにした人の死であり、トラウマとなっている。
「人様殺しといて、逃げてんじゃねぇよ人間のクズが!」
「違います!私じゃない……私じゃない!」
ウィキッドを突き飛ばし、また逃げる。
ぜぇぜぇと、なんだか分からない焦りを抱え、ここじゃないどこかへと。
逃げ込んだ場所は市立図書館。
入部前の鈴奈が、メビウスにおいて落ち着ける居場所にしていた場所だ。
そこは、かつてのように心を安らげる平穏な地ではない
通りすがる人間達は、みんな鈴奈を遠目で見てはヒソヒソと嘲笑う。
そんな中でフードを深く被った一人の少年が、ゆっくりと近づいた。
「見損なったよ鈴奈、そんな人間だったなんて」
楽士、少年ドールの姿であった。
当初は敵としての出会いだったが、メッセージアプリ『wire』のIDを交換する程度には関係性が構築された仲だ。
「ああああああああああ!もう嫌だあああああ!やっぱ人間なんて、信じるんじゃなかった!」
そんな彼も絶望したように嘆く。
慟哭に合わせて大量の人々が人形へと変わり、鈴奈へと襲いかかる。
「違うんです!これは、何かの間違いで……!話を聞いてください!」
その言葉は人々の怒号でかき消え届くことはない。
逃げるしか無かった。
走り続けた。限界まで。
これは嘘だと、どこかに本物の先輩は居るのだと信じるために。
パピコ。宮比温泉物語編。シーパライソ。ランドマークタワー。
メビウス中の思い当たるところを全て走り回る。
全ては徒労に終わり、心ない言葉を浴びせられ、無駄に心を苦しめただけだった。
156
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:27:05 ID:???0
そうして逃げ続け、最後に駆け込んだ場所は、学校の女子トイレ。
そこは聖域だ。鍵をかけて隠れてしまえば、昔のように彼女の心を守る殻になる。
「先輩!先輩はどこですか!……返事してください」
マナーモードのように震えながらスマホを叩く。
どれだけメッセージアプリ『wire』で入力しても、既読が付くことはない。
「バカじゃねぇの?現実見ろよ!お前が殺したんだろうが!」
「ヒッ!」
バァン!と扉を叩かれた。
そのたびに鈴奈は震え、悲鳴を上げる。
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」
扉の外の声は次第に大きくなり、親しき者たちの声が混ざる。
彼らは扉を乱暴に開け、入り込もうとし、そのたびに隙間から顔が覗く。
覗く顔はコロコロ変わり、言葉を吐いては鈴奈を追い詰める。
鈴奈は自分の心を守ろうとするように、無理矢理閉じようとする。
「ち、ちが、私のせいじゃ……」
「弁護の余地もないな、その臭っせえ舌の根焼いて、二度と喋れなくしてやるよ!」
「あーあ、なんでこんな奴と一緒にお弁当食べちゃったんだろう」
「ちょっ、そういうこと言わないで!無理無理無理無理!気持ち悪い!吐きそう……オエー」
「やめて……本当に、やめてください!」
「ほんっと、気持ち悪いですよね?。人様に迷惑かけるぐらいなら、今すぐ死んで豚の餌にでもなったほうがいいですよ?」
「うん、その通り!今すぐ死んでくれる?部長殺しの最後の瞬間!これはバズの予感!」
「そうだ、死ねよ人殺し」
「今すぐ死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
扉は過剰な圧力に限界を迎え、叩き壊れた。
鈴奈の心の奥にずかずか踏み込むように、狭い個室へと何人もの人間がぞろぞろと侵入、鈴奈を取り囲む。
「死ね」「死ね」「死ね」
そうしてせかすように、死ね死ねと手を叩きだす。
その行為はただ、鈴奈の死を望む為のもの。
「嫌!やめてください!」
鈴奈だってやるときはやる。
もう限界寸前だ。心を守る為の正当防衛はする。
「これは夢!夢!夢!悪い夢!居なくなってください!」
カタルシス・エフェクトの槍を発現
これも夢なのだと思い込む。
隙を見せた瞬間を狙い、目の前へと槍を突き刺した。
「痛い!痛いよ……鈴奈ちゃん、何するの……」
「あ、あ……」
美笛が痛がるそぶりを見せた事に、思わず動揺する。
夢であると思い込んではいるが、心優しい鈴奈はその姿に心を痛める。
「鈴奈ちゃんが、居なくなれって言ったんだからね……」
美笛の胸に空いた穴から、空気が入り込んでいき、身体が膨らんでいく。
人体構造を無視して真っ赤に充血していくその姿は、まるで赤い風船だ。
ぶくぶくと膨らみ、美笛が本来忌み嫌う肥満体型のようになる。
爆発寸前まで到達したとき、身体から頭部へと一気に空気が流れ込み風船のように破裂した。
157
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:28:07 ID:???0
「ぼひょつ!」
奇声を挙げ、ばぁん、と美笛の頭が爆発した。
それはまさに、赤い風船が破裂するようで。
「あ、え……嘘」
「ふーん、部長だけじゃなく私達まで殺すんだ」
「アンタのせいだから」
「お前のせいです、あ〜あ」
「人殺しが!!この人殺しがァァァ!!」
悪夢は終わらない。
ぱぁん、ぱぁん、と一人、また一人と頭部が膨らんでは破裂していく。
彼らは最期まで鈴奈を責め立て続けた。
血肉のシャワーを浴び、嫌な体温を感じる。
鈴奈の望み通り、この世界には誰も居なくなった。
「え、ねぇ待ってください!違うんです!嫌!私、そんなつもりじゃなかったんです」
言い訳を聞くものはいない。
周囲には首から上を失った遺体が転がっている。
生き別れとなった首からは血が止まらない。
「ひっ!」
壊れた蛇口のように勢いよく、どろどろした血がトイレの個室へと流れ込む。
どれだけ手で抑えようとしても止まることは決して無い。
「止まって!止まって!ごごぼっ、ごぼっ!」
血は止まらない。人間の体積を超えた量を放出しても止まらない、ずっとずっと流れ続ける。
洪水の様な血の濁流は鈴奈の腿、腹、胸、肩と次第にかさが上がっていき、最終的に鈴奈の全身が浸かった。
「ごぼっ、たす……けて……!」
血の中で溺れながら、思わず天井へ手を伸ばした。
なにかに引っ張られた感覚があった。
鈴奈は気が付くとホールの中にいた。
ライブハウス、グラン・ギニョール。
この世界に来る前に最後に居た場所だ。
「……せ、先輩」
喉に絡んだ血を吐きながら息を立て直す鈴奈の目の前には、大切な先輩の姿があった。
俺が付いてると言ってくれた、彼女にとってのヒーロー。
ずっと居なくなったりしない、彼女だけの神様。
その顔を見ただけで、思わず涙を浮かべ鈴奈は安堵した。
「先輩が、助けてくれたんです……ヒッ!」
鈴奈は一瞬、もしかして今までのは全部悪い夢だったのかなと思った。
そんなことはなかった。
痛々しく、全身の骨が砕け、血で真っ赤に染まった彼の姿に気づいたからだ。
自分がそうしたのだと、この瞬間理解した。
なんで?生きてるの?なんて疑問も言う前に、真っ先に謝罪の言葉を告げた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
叫ぶように続ける。
SNSのショート動画をループ再生させるように鈴奈は同じ言葉を繰り返す。
「ごめんなさ、あ」
先輩はにこりと笑った。
鈴奈はそれ以上謝罪の言葉を紡ぐ必要が無くなった。
158
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:29:45 ID:???0
「あ、え、」
撃たれたからだ。
先輩の姿が、透明人間の楽士Lucidへと変わる。
一発だけではない、二丁拳銃による連射を繰り返し、完膚までなきに止めを刺す。
Lucidはチッチッと指を振るう。
ここに来る直前の光景を繰り返すように。
鈴奈のトラウマを逆撫でするように。
人さし指を振るい、ジェスチャーした。
限界まで追い詰められたところを救済し、心の底から信用させてから、裏切った。
まるでそんなとき、どんな顔をするのか見たかったように。
それが、人間を壊すのに一番良い手段だと分かっているように。
(どれが、ゆめ、なんだっけ)
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#center(){これは、夢なのか、現実なのか…}
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汚水のかぐわしい香りが漂う不衛生な下水道。
参加者のみならず、NPC達も利用した生活排水は、数分居ただけでも汚臭が身にこびりついて離れなくなる。
そこには今しがた不幸な事故により、無情にも命を終えたひろしと、その上で気を失った鈴奈の姿があった。
西片を捕食した後、恐怖の匂いを嗅ぎつけた最強の捕食者、ペニーワイズは、気絶した鈴奈の姿をとらえた。
「ふぅむ、サプライズプレゼントの具合はどうだい?」
ペニーワイズは先ほど回収したばかりのエコーズを発現している。
そのスタンドは3つの効果があるが、そのうちの一つACT1だ。
その言葉を生み出す力は相手の精神に影響を及ぼす。
例えば、『信じて』のように言葉を信じさせることもできる。
この効果は、つまり脳に直接、働きかけるということだ。
ならば上手くやれば、夢を思うままに操る事も容易だろう。
奇しくもどこかの災厄世界の幽霊が行った手法を、偶然にもペニーワイズは実行した。
幸いにも、いや鈴奈にとっては不幸せな事だが、この場所は下水道だ。
匂いというものは記憶に深く結びつけられている。
この汚臭は友達がおらず、一人で便所飯を食べていた辛い記憶が蘇る。
そんな状況下で『彼女を責め立てる言葉』を送り続けたのだ。
その心の奥でトラウマを何倍にも膨らませ、踏み躙った。
夏油傑に祓われた名もなき呪霊ですら相手に犯される悪夢を見せる程度の事は出来るのだ。
上位存在たる『それ』に出来ないはずがない。
「リアルさが足りない?見分けがつかない夢の世界はお前にとっては十分現実だろう?」
そもそも臆病な鈴奈である。
刺激できるトラウマは数多くあった。
ウィキッドによる部室での監禁、鼓太郎の事故、孤独な便所飯、そして大切な先輩からの裏切り。
そんな光景をRemixして繋げてやった。
いずれ一つでも1人の女子高生が抱え込める許容量ではない。
「え……?」
悪夢から覚めた鈴奈は唖然とした。
ぼんやりとした頭は次第にはっきりし、悪夢が終わらないことを瞬時に理解させる。
「ヒィッ!」
目の前には巨大なピエロが居た。
その両手で全身を握られている。逃げることは叶わない。
今まさに、頭から丸ごと食べられる直前という状況だった。
「やぁ、モーニングコールの具合はどうだった?」
放送が流れ出すが、聴くほどの余裕は鈴奈には無い。
地獄の様な悪夢から、いつまでも醒めないことへの絶望だ。
159
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:31:32 ID:???0
「誰がお前のような根暗女と帰りたい、お前はいつだって独りぼっちだ」
ペニーワイズの顔が、コロコロと姿を変える。
声色を変え、ただただ、責め立てる。
「『私』は、『おれ』は、『オイラ』は、」
それは、鍵介、笙悟、維弦、鼓太郎、琵琶坂。
それは、琴乃、彩声、美笛、鳴子。
それは、鈴奈の中学生時代の友達である亜衣。
それは、フードを被った少年、2面性のある魔女。
それは、鈴奈が思いをよせる、ただ一人の先輩。
「愉快なピエロさ。そしてお前も踊らされる道化だ。最期にお前の大好きな先輩とキスしな、別れのキスさ」
御馳走を前に『それ』は口を大きく広げる。
先輩に化けた顔が裂けていき、捕食者としての姿を晒す。
「さあ、浮かぶ時間だ!」
「……い……な」
「ん〜〜なんか言ったかいスズナ?」
最期の泣き言でも聞いてやろう。
そうペニーワイズは口元に聞き耳を立ててやった。
&sizex(7){「……先輩はそんなこと言いません!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」}
「うぉっ!」
度し難いほどの大声か下水道すべてに響いた。
これには、ペニーワイズといえど思わず手を離した。
鈴奈がこれまでに人生で発した最大級の声の、さらに何倍もの大きさで。
心の奥に溜まっていたなにかを、勢いよく放つように。
そして、黒く禍々しい衝動が彼女の身を包み。棘のようなものが鈴奈の体内から生えた。
鈴奈の心は今、限界を迎えた。
ペニーワイズは追い詰め過ぎた。
鈴奈は殺し合いが始まってから―――いや、始まる前から常に心の奥で苦しみ続けていた。
カタルシス・エフェクト・オーバードーズという技がある。
暴走寸前ギリギリまで心の力を解放し、自らの力を強化する帰宅部員の切り札。
神楽鈴奈はこの殺し合いに呼ばれる直前、その力を発動し戦闘していた。
その上、この殺し合いに呼ばれてからは、アリアによる調律が受けられない状況下でカタルシスエフェクトを連発。
本来カタルシスエフェクトを発動するには心の力の調律が必要になるのだが、その調整が出来ていないのだ。
そのうえ、ひろしを事故で殺すという殺人経験。
さらに彼女のトラウマを逆なでする、他人から見られ、ボロクソに存在を否定されるという地獄。
ただの女子高生が耐えられる量はとうに超えている。
するとどうなるか、心の調律は崩れ、不安定に、攻撃的になる。
カタルシスエフェクトは制御を失い、メビウスの住民であるデジヘッドとして暴走したのだ。
のちに二代目帰宅部に入部するはずだった風祭小鳩の逆だ。
そもそもカタルシスエフェクトはデジヘッドと同じ力を調律によって制御したもの。
ならば調律出来なくなった時点で、逆説的な変化もありうる。
前兆は既にあった。
この殺し合いにおける鈴奈の行動もそうした事情により裏付けられる。
本来は心優しくて内向的な鈴奈が、エーリュシオンに煽られた程度で激昂したこと。
スカルの仮面を被ったひろしをLucidだと見間違えたこと。
デジヘッド化の片鱗が出ていた初期衝動だ。
衝動に抑えが効かず、認知が歪んでいたならば説明が付く。
「な、あああ〜〜?」
ペニーワイズとしても想定外だった。
先ほどまで絶望を叩き込んでいた女が一瞬にして、恐怖を克服したのだ。
ペニーワイズの幻覚は『これは夢』だと強く思い込むことで対処出来る。
奇しくもデジヘッドという、現実から目を背け、都合の良い夢に捕らわれた存在となった鈴奈には効果は無い。
幻覚を理想で上書きした形だ。
160
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:33:51 ID:???0
ペニーワイズの体が煙を立てて縮んでいく。
デジヘッドは辛い現実から目を背け、理想に盲信した存在。
そうなると現実の辛い記憶、苦しい記憶を忘れてしまうのだ。
恐怖を糧とする『それ』にとって、相性は最悪となる。
「偽物は、居なくなってください!」
駆け出す。目の前の現実から目を背ける為に。今度こそ目を覚ます為に。
鈴奈が発現したその槍が、心臓を貫かんとした。
「なああああ〜〜〜〜!
……なぁんてね。ほぉら、こっちさ、手の鳴る方へ」
ピエロとはおどけるものだ。そしてアドリブも効く。
記憶を覗いたということは、デジヘッドの特性も当然すでに知っているということだ。
槍に貫かれる瞬間、『それ』はテレポートにより姿を消した。
鈴奈の数十メートル後ろに現れ、ひらひらと手を振るう。
「逃げないでくださ……え?」
振り返る鈴奈。
目にしたのは、潰れたはずのひろしの死体だ。
折れた骨でどうやっているのか不明だが、実際立っている。
ペニーワイズの力は幻覚だけではない。
自在に物を動かすテレキネシスという超能力もある。
作中では幻覚も混ざっているため、どこまでのことが出来るかは不明だが、
相手の身体をフワフワ浮かべたり、ヘンリーのナイフを病室に送り込むなどは実際にやっている。
その力でひろしの遺体を自在に操り、鈴奈へと向かわせた。
「せ、先輩!」
だが、彼女の眼には、それがスカルの仮面を被ったひろしでは無く、愛する先輩の姿に映ってしまった。
これはペニーワイズの幻覚ではない。
デジヘッドの眼は無意識下で、映る物を自分の理想に変えてしまう事がある。
男性恐怖症の天本彩声の眼にメビウスの住民全てが女性に見えたように。
ひろしを踏み殺してしまったこと。先輩に裏切られたこと。
ふたつの現実を受け入れられなかった鈴奈の脳は、それが怪我の一つもしていない、五体満足の先輩の姿に映ってしまった。
「はは、そっか、これはやっぱり全部夢だったんだ!」
ひろしの遺体は千切れかけの手を動かし、『ウソウソ』とでも言いたげなジェスチャーをする。
その瞬間、裏切られたという現実も、殺してしまったという現実も、彼女の頭の中で全て無かった事になった。
「先輩が死ぬわけない!私が先輩を殺す訳がない!私を裏切る訳がない!俺が付いてるって言ってくれましたもんね!ああ、良かった!」
デジヘッドの盲信性が悪い方向に作用していく。
人間の脳は追い詰められると、どれだけあり得なくて都合の良い嘘だろうと、それに縋ってしまう習性がある。
デジヘッドとなった者は衝動のままに動く、辛い出来事を忘れさる。
恋人や家族の死を忘れて幸せな夢の中で生きる者たちは数多い。
メビウスの住民は誰もが現実との矛盾、ホコロビに気づけない。違う、気づこうとしないのだ。
本来の鈴奈ならばともかく、追い詰められて暴走した罪悪感は、彼女の正気を容易く奪いさった。
鈴奈は、先輩に駆け寄ろうとした。
無事だった事が嬉しかった。
思いっきり、すっ転んだ。
エコーズACT3は重さを変える。
その力で、鈴奈の足を急激に重くした。
「もごっ!(動けなっ)」
「ハハハ!大好きな先輩とキスできて幸せかい?」
転んだ鈴奈は抱きついてキスをするように、ひろしの遺体へと覆い被さる形となった。
早く退かないと、と思えど身体が抑えつけられたように重く、言うことを効かない。
それどころか、ひろしと共に徐々に地面へと埋まっていく。
「も、も”も”っ……!?」
「それにしてもお腹が空いたな。何が食べたい?ピーナッツ?綿あめ?ホットドッグ?」
いつの間にかペニーワイズの縮小が止まっていた。いや、再び大きくなっている。
これまで通りのペニーワイズなら、相手が恐怖を克服した時点で終わっていただろう。
だが、今はエコーズという新たな超能力が宿ったのだ。
それを利用して、新たな恐怖を与えてやれば、何の問題もない。
身体全体が重くなる。鈴奈の筋肉では到底動かせない程に。
もがく事もできず、型を嵌めたように、鈴奈の形に合わせてぴったりと地面に穴が空いた。
「……そう!忘れちゃいけないポップコ-ン!スズナは好きかい?」
161
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:35:28 ID:???0
まだまだ体重の上昇は止まらない。
2倍、3倍へと膨らみ続ける。
これだけではダメージにならないが、その下にいる者には別問題だ。
「私は大好きだ。跳ねるからさ。そら、ポンポンポン!ポン!ポン!ポォン!」
5倍、10倍。
下敷きとなったひろしの遺体が押し潰され、ポンポンと小粋のいい音を立てて断裂していく。
スタンドの強さは精神力の強さを由来とする。
ペニーワイズは相手の恐怖により強くなる。
つまり、鈴奈が怖がるほどに、重量が加速度的に跳ね上がり、ミンチ化が進むということだ。
自分のせいで大事な先輩が潰れていく。
内臓が潰れて、破裂して、肉が跳ねる感覚を、鈴奈は身体で感じる。
認知の歪んだ鈴奈にとって、それは先輩を自らの体重で潰しているのと変わらない。
「ハハハハハハ!どんどん重たくなるぞぉ〜。ポップコーンと御一緒にジュースもどうだい?」
「もごっも、ごごご!ご!もも(あ、やだっ……もうやめてください!やめて!嫌っ、嫌あああああああ!!!!!!)」
数十倍、数百倍か。測定できない程に鈴奈は重くなった。
ひろしの身体がミンチとして潰れていく。鈴奈はプレス機となった。
トン単位へと膨らんだ圧力で人体が圧縮される。血液、内臓、脳漿が搾りたてジュースの如く勢いよく溢れ出すのを身体で感じる。
鈴奈は穴の中で、染み出したそのプールを零距離で浴びる事になる。
遺体に溜まっていたガスが急激に圧縮され、高熱を放つ。
砕けた細かい骨の破片が圧力で勢いよく刺さる。
人体で最も頑丈な頭蓋骨も叩き割れ、頭部が破裂、その中身が押されるままに勢いよく飛び出す。
鈴奈の口と鼻から、ひろしの肉片や脳味噌が入り込み反射的に嘔吐反応を促す。
「おぇづ、おぇええええええ」
嘔吐したところで何も変わらない。
首も瞼も動かす事も出来ない今、吐瀉物はプールに混ざり、直接顔に浴びる事になる。
鈴奈のファーストキスはゲロ味だった。
自らの胃液でその綺麗な肌を焼いていく。
まだまだ重くなる。あまりの重さに地盤が陥没、下水道の流れが変わり、勢いよく鈴奈へと流れ込む。
汚水、肉片、脳漿、嘔吐物が混ざった液体が喉に絡みつき鈴奈を苦しめる。
「お、ごこごこごご!ぼっ!」
「まただ!また、殺したなスズナ!お前のせいで大事な先輩がバラバラだ!お前のせいで死んだんだ!」
地獄の苦しみはひろしの遺体が、地面の染みになるまで続いた。
鈴奈を救おうとした勇気ある少年の思いは何もかもが無情に終わる。
その願いは反転し、遺体すらも追い詰めるための呪いとして余すところまで使われた。
粉砕された肉片は次第に下水の流れに混ざって流れて溶けていき、残ったのは存在したことを示す染みだけだ。
どれだけの時間が過ぎたか、汚水で膨らまされた腹と共に、鈴奈は茫然自失した。
「は、はは……いや、いや、やだ、先輩が……なくなっちゃった」
その僅かな染みも、少しずつ水に溶けていき、もう目の前には何もない。
こんな状況、デジヘッドの盲信性があれど処理出来ない。
できるわけがない。
「これは、ゆめ?」
「現実さ、お前のせいであいつは死んだんだ」
「……わたしの、せい?」
「そのとおりでございまぁす!!」
「あ、は、ははははははははははははははは!」
鈴奈は完全に壊れた。
現実逃避出来る分量を完全に超え、恐怖はオーバードーズした。
「うーーーん。受け入れられないかい?OK!特別サービスだ!そんな鈴奈には、素晴らしい夢の世界にご招待だ!
「……いや……ゆめはいや!………ゆめはもういやあああああ!!」
「なあに、心配することはないさ!」
鈴奈にはもう訳がわからない。涙を流し、呂律の合わない言葉を吐き、四つん這いで這って逃げ出そうとする。
何の意味もない。
『それ』は鈴奈の頭を掴み、無理矢理瞼をこじ開ける。
そうしては口を大きく、文字通り引き裂けたほどに広げた。
体内から溢れた死の光が鈴奈を包みこむ。
それが偽りの光(Lucid)であれど、もう鈴奈は抗えない。
「さぁ、友達になろう!大丈夫さ!『俺がツイてる』!」
162
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:42:28 ID:???0
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#center(){どれが夢? }
#center(){どれが現実?}
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「ヒィィィイ!訳が分からねえ!」
男達が逃げていた。
彼らは名前を覚える必要も無いNPCの吸血鬼だ。
このあと死にます。
「どうしてこんな目に!」
あまり必要ないが、一応何があったかを解説する。
彼らは、エーリュシオンの帰還により放置されていた鈴奈とひろしのデイバッグをたまたま拾い、中身を物色。
「ストゼロがあったぞ!」「でかした!!」とキメて猫ミーム動画の如くハッピーハッピーハッピーしていたところ、気絶していた女を発見。
当然の如く襲おうとした。
一応彼らの紹介をすると、先頭を走るのが名もなき吸血鬼。ユカポンというアイドルのファンをしている。
後ろに続くのが伊藤大祐、田所興起、虻谷、広沢満之という暴力と性欲に溢れた男共である。
ちなみに後ろの4人も色々あってウイルスに感染し、吸血鬼になっていた。
彼らがNPCとして殺し合いに呼ばれ、人間を辞め、意気投合し手を組むまでに笑いあり涙ありのドラマが百万文字程あったのだが、特段面白味もないので省略する。
そんなこんなで彼らは気絶中の鈴奈に対して、股ぐらをイキり立たせていた。
女は血に塗れ、汚水のクソみてェな匂いもするが、ライフラインが壊滅し、不衛生な世界に住む吸血鬼にとってその程度は些細なことだ。
大祐は「おっ、この子胸デッケェじゃん」と刹那的な快楽にウキウキだった。
田所は「コイツ、琵琶坂のとこで見覚えあんぞ!」とストレス発散にいたぶるつもりだった。
虻谷はデュフデュフ笑っていた。
広沢はユカ略と共に肛門調教するつもりだった。
そんなわけで男達はファック&サヨナラからのR-18G展開にしようと近づいた。
「うわ、『身体に落書き』ってやつか?」
大祐が馬乗りになり、服を脱がそうとしたところ身体に描き込まれた文字に気づく。
そういうフェチなのかと誤解した。
「なんだこりゃあ……?『KILL』……ぅ!」
「あ”あ”、あ”ああああ”あああああああ!!!!!!」
「あああああああああ!うるせェな!」
彼女は悲鳴とも嘆きともとれる大きな慟哭を発した。
少女が目を覚まし自分の状況を理解すると、一瞬でその姿を変貌させる。
ネオン管のようなものが刺さった異形の怪人となった。
そのまま目の前の現実を否定する。
どこからか槍を発現すると、一差しで大祐のマイナスドライバー(意味深)を貫いた。
「痛でえええええええ!」
「ヒィッ!コイツやべェぞ!お前ら逃げろ!」
解説終了。冒頭に戻る。
もちろん彼らはただ無様に逃げるわけではない。
そのへんに無から生えていた弓矢やら日本刀やら西洋剣やら破壊の鉄球やらを手に鈴奈を迎え撃つ。
素人のそんな小細工が通用する相手ではない。
瞬く間に、刺され、壊され、捩じ切られ、貫かれ、叩かれて数を減らしていく。
狂暴で再生力の高い吸血鬼といえど、それ以上の殺意と暴力を振るわれては何の意味もない。
「ま、待ってくれよ……悪かったからさ……ゆるしてくれよ! な! な!」
彼らは必死に命乞いをした。
彼女はもう何も聞きたくないようで、通じなかった。
&color(red){【伊藤大祐(NPC)@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage 死亡】}
&color(red){【田所興起(NPC)@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ- 死亡】}
&color(red){【虻谷(NPC)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘 死亡】}
&color(red){【広沢満之(NPC)@黒衣の少女探偵 月読百合奈 死亡】}
&color(red){【ユカポンファンの吸血鬼(NPC)@彼岸島 48日後… 散る】}
163
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:43:48 ID:???0
■■■
一度人を殺したら「殺す」って選択肢が
俺の生活に入り込むと思うんだ
■■■
初の殺人を終えた鈴奈は、特に思うこともなく彷徨う。
夢遊病患者の如くふらふらと。
身体にかかった血を拭くことすらしない。
今の鈴奈には何本ものネオン管が刺さり、身体を貫いている。
これはあくまで、身体から溢れた泥質化した感情の象徴であり、実際に刺さっているわけではない。
とは言え全身に被った真っ赤な血肉と合わさり、非常に痛々しい姿だ。
「ハハハハハ!鮮血、ビューティフォー!」
その姿が、ペニーワイズには面白くて仕方がなかった。
NPC達の血溜まりのうえで、愉快に楽しくスキップからのダンスをキメた。
この鈴奈が辿り着かなかった未来には、マリオヘッドという存在がいる。
意識をコントロールされ、傀儡として動くようになったデジヘッドだ。
支配元から直接力を与えられる分、本来のデジヘッドより強化されている。
「初めての殺人おめでとう!これで本当にお前は人殺しだ!スズナに大きな拍手を!」
ペニーワイズは鈴奈を捕食するのではなく、自らの手駒とすることを選んだ。
かつてヘンリー・バワーズに『殺せ』『皆殺し』などと殺人を唆し、ルーザーズクラブに恐怖を味あわせたように。
マインドコントロールは元々ペニーワイズの得意技。
さらにダメ押しとして精神へ直接干渉するエコーズまである。
そのスタンドの力は自殺寸前まで追い詰められた広瀬康一の母を正気に戻せる程だ。
逆にいえば、その力を反転させれば今以上の地獄に叩き落とす事もできる訳だ。
鈴奈の身体に描き込まれた『KILL』の文字は、デジヘッドとしての溢れ出す攻撃性を周囲への殺意として塗り替えて、何倍にも増幅させた。
「近くに面白そうな子達がいるみたいだしね、たっぷりと恐怖を味合わせてきてごらん!」
レミリアやドラえもん、クレマンティーヌなどの記憶を見て、この世界には自分の様な超能力を持つものが居ることを知った。
鈴奈の記憶におけるデジヘッドや、ひろしが使ったペルソナもそれだ。
だから、それを利用する。そうすればもっと恐怖を味わわせることが出来る。
鈴奈は呪われた。もう後戻りは出来ない。
ゲラゲラゲラゲラと、道化は愉快に笑う。
それはまさに玩具で遊ぶ子供。
上位存在にとっては、どんな人間も糧であり玩具にすぎない。
「スズナはず〜っと一人ぼっち!仲間なんて一人もいない!友達なんて全部ウソ!みんなお前を裏切った!だけどもう安心だ!大親友の『俺が憑いてる』!」
164
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:45:12 ID:???0
■■■
Ah あてなく泣いている 欠けた心は檻のようで
■■■
「……せんぱいは、おれがついてるっていってくれた……だから、みんなを」
『KILL(殺せ)』
「……はい、ころします、わたしがせんぱいをころしたから、せんぱいはわたしをすてた、でもそれはゆめで、あれはげんじつで、これはまぼろしで……ゆめはもういや……」
『KILL(殺せ)』
「……はい、だから、わたしはかえるんです、せんぱいといっしょに、だからころして、ゆめからさめるの、ゆめはつらいから、くるしいから」
『KILL(殺せ)』
そんな未来はウソである。
元の世界に帰ったところで、先輩は鈴奈を裏切り、すでに見限っている。紛れもない現実だ。
彼女が進む先は、喜劇ですらない。茶番ですらない。
ただのピエロだ。
観客のいない孤独な道化には、笑い声すら起きやしない。
『KILL(殺せ)』
鈴奈の頭の中は、もうめちゃくちゃだ。
理不尽に玩具にされ、好き勝手掻き回され、整理なんてされていない。
理想郷での幸せな時間は壊された、心の中の聖域は陵辱された、夢は安息の地では無くなった。
彼女を休ませるものはもう何もない。
生き続けるだけで、この世の全てが苦しみとなった。
(もう、わからなく、なっちゃった)
裂いて、繋いで、裏表が混ざったメビウスの輪っか。
どちらが夢でどちらが現実か。全てがホントで全てウソ。
光は闇になり、闇も光になる
白と黒が混ざったモノクロの輪は、もう、ほどけない。
『KILL(殺せ)』
頭の中でμの歌が鳴り響く。
この世界に呼ばれる直前、グラン・ギニョールで流れていた曲だ。
それは、恋人の死を受け入れられず、壊れてしまった者の叫びである。
ほら、ここに在(い)るじゃないか!
鈴奈は、そっと骸骨の仮面を撫でた。
「私を、どうか許してください……」
一粒の涙と共に漏らした小さな声は、溢れ出す殺意の音に埋もれた。
鈴奈自身を含め、聴いたものは誰もいない。
※C-5にNPC達の遺体と武器が転がっています。
※鈴奈とひろしが落ちたC-5の地下下水道はIT本編でペニーワイズが拠点としていたものとします。
※ひろしの遺体は粉砕され下水に流れていきました。もう見つかりません。
165
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:52:11 ID:???0
【登場NPC紹介】
【吸血鬼@彼岸島 48日後…】
彼岸島におけるマスコットキャラ。エテ公のついでに配置されていた。
雅様が日本本土にばら撒いた吸血鬼ウイルスに感染した元人間達。人間の3倍の力と高い再生力を持ち、高い凶暴性を誇る。
基本的に人間を見下しており、餌か玩具かオナホ程度にしか見ていない。
本当に半年前までただの人間だったのか?と思うほどの蛮族。
ちなみに今回登場したのは166話でユカポンを襲い肛門性交を覚えさせた個体である。コイツいつもロワで女襲ってはズガンされてんな。
他の個体が呼ばれているかは不明。もう出ないかもしれない。
吸血鬼の血を一滴でも体内に入れてしまった人間も、ウイルスに感染し新たな吸血鬼となる。
明さんは何度も血を浴びてるのになんで感染しないんだ?
【田所興起@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
周りの迷惑を顧みず、μを熱狂的に応援する狂信者の一人。
独りよがりな性格ゆえμや楽士のコントロールも効かず、身勝手な『エゴヘッド』と呼ばれ忌み嫌われている。(公式サイトより引用)
CV:杉田で名前が田所な人間の屑。なんだこれは……たまげたなあ
【伊藤大祐@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
粕谷瞳と同じくシークレットゲームのプレイヤーの一人。
であるが、参戦時期は本編開始前の為、互いに面識なし。
後先のことを一切考えない刹那的な快楽主義者であり、隙あらば監禁レイプを仕掛けてくる最低のフナムシ野郎。
エロゲのエロ部分の担当者。人気投票7位。
【虻谷@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
エロラノベのエロ部分の担当者その1。
キモデブ巨チンの竿役。通称アブラミ。理愛とラブラブ初エッチした。いいなぁ。
巨チンとは言えトキくんほどの大きさではない。
【広沢満之@黒衣の少女探偵 月読百合奈】
エロラノベのエロ部分の担当者その2。
月読家に恨みを持っており、校長である月読彩の『生きた張形』として百合奈達を陵辱した。
校長のキャラが濃いので竿役としては相対的に地味。
166
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:52:56 ID:???0
【C-5 朝】
【ペニーワイズ@IT/イット “それ”が見えたら、終わり。】
[状態]:ピエロの姿、健康、興奮
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:捕食者として、この催しを楽しむ。
1:餌を探す。できれば子供が良い。
2:レミリアのような特殊能力を持った相手は注意する。
3:スズナを利用し、より良い恐怖を引き出す
※参戦時期は『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の前。
※対峙した相手の記憶を読むことができます。
※テレポートの範囲は半径20m以内で、一度使用したら十分間使用出来ません。
※透明化、テレパシー、マインドコントロール、テレキネシスなどといった能力に制限があるかどうかは不明です。
※クレマンティーヌ、レミリア、ドラえもん、神楽鈴奈の恐怖を抱くものを把握しました。
【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:ダメージ(大)、片足を負傷、ストレス(極大)、嘔吐、全身から汚水の匂い、嗅覚麻痺、全身が血で塗れている
マリオヘッド化@Caligula2、エコーズによる『KILL』の文字、『夢を見る』と『人の上に乗る/乗られる』ことに対しての心的外傷
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル、スカルの仮面@Persona5、原罪(メロダック)@Fate/stay night
[道具]:基本支給品×2(ストゼロは全消費)、ひろしのランダム支給品×2、神楽鈴奈のランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:■■■て
1:みんな、ころさ、ないと
2:ゆめからさめたい、ゆめはもういや
3:ゆめってなんだっけ?
4:どれがげんじつ?これはどっち?ゆめはさめなきゃ
5:あれ、わたし、なんでかえりたいんだっけ?せんぱいはわたしをすてた
6:せんぱいはどこ、わたしがころした
7:それはゆめ、ちがう、げんじつ、うそ、いきてる、ほんとう、まぼろし、わからない
8:ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……
9:たすけて
[備考]
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
琵琶坂生存ルート。男主人公です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。
→夢と現実と幻覚の区別が付かなくなりました。
※『夢を見る』『人の上に乗る/乗られる』ことにトラウマを感じます。今後その様な事があればフラッシュバックが発生します。
※デジヘッド化にマインドコントロール&エコーズの精神干渉が合わさりマリオヘッド@Caligula2に変化しました。
目にした人間に対して無差別に襲いかかります。
カタルシスエフェクトは使えませんが、敵デジヘッドが使うような槍状の武器は使えます。
Lucidや暴走小鳩が、銃やモーニングスターを使っていたのと同じ様なものです。
※吸血鬼の返り血を浴びました。ウイルスに感染したかは現状不明です。
167
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/07(金) 01:53:35 ID:???0
投下終了です
タイトルは
161までが『妄想凶/狂ザナトリウム』
162からが『ある少女のパラドクス/パラノイア』です
168
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/02/08(土) 08:37:24 ID:???0
ガバがあったので田所のセリフだけ下記に変更します
田所は「この制服、メビウスの連中じゃねえか!」とかつて閉じ込められた腹いせにいたぶるつもりだった。
wiki収録はこれからwiki管理権限の移行手続きを進めて、特に異論がなければその後にしようと思います
169
:
バッドレディスクランブル
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/02(水) 09:56:31 ID:woIv0/1Y0
短いですが投下します
170
:
バッドレディスクランブル
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/02(水) 09:57:45 ID:woIv0/1Y0
『野比のび太』
「え。」
あれから南のE-8の橋を移動終えると、
その最中に流れてきたミルドラースの放送に、間抜けな声が出た。
彼にとってどれほど大事な存在か。それは最早語る必要はないだろう。
そんな彼は死んだ。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット。
全てが分からないまま、再起のため立ち上がろうとした矢先の出来事だ。
実感が全くわかない。危険な旅はいくらでもあった。それでもなんとか乗り越えた。
魔王やら鉄人兵団やらなにやら、命懸けどころか人類の存続に発展したことだってある。
でも、もうそれは叶わない。あの子供部屋で帰らぬ人を寂しく待つのは、自分側になると。
なお、西片と合流したのは西片が死んだエリアから南なのに、
また南へ向かっているのは、E-8に橋があるからだ。
吸血鬼の弱点である流水を知っていた。あれは、
幻覚だからこそ再現された行動の可能性はあるかもしれない。
それでも、今も皮を超えた先で嘲笑っているのではないかと考えると、
腹立たしく思えてならない。そういう理由もあってその方向に移動していた。
実際は、下水道でよろしくやっているわけなのだが、そんなの知る由もなく。
だから橋を渡って、東へ行くことを決意したわけなのだが。
「ああ、ダメそうだな。」
落胆、と言うよりは仕方ないか。
と言った感じの声色でレミリアは呟いた。
懸念してた通りだ。リルルと言う人物は生きてるようだが、
彼にとってののび太と言う人物は自分で言う、パチュリーを超えたものだ。
彼女ももしパチュリーがいて死亡したら、流石に動揺が隠せず震えた声がでたかもしれない。
だから仕方がないことではある。
「……再起不能と言ったところかしら。」
だがそれとこれとは別だ。
再起できないようなら彼は此処に置いていく。
その考えについて揺らぐことは決してなかった。
厳格に踊らされたのは自分もなので強くは言えないが、
トラウマを相手に立ち向かわず一目散に逃げ出した彼女にとって、
ドラえもんの評価と言うものは概ね地に落ちていると言ってもいい。
せめて再起するよう背中を押した。突き落とす意味ではなく、前へ進ませるため。
けれどダメだった。仲間を死なせ、大事な存在を喪った彼は最早まともに立ち上がれない。
存外そんなもんだ。人間ではないロボットではあるが、妖怪からすれば人間とそう変わらない思考だ。
幻想郷では赤子のような存在とされるレミリアでも齢500歳だ。既に妖怪としての価値観がある。
人の生き死に強い感情は生まれない。多分、霊夢や魔理沙が寿命で死んでもいつか忘れてしまう。
吸血鬼とはそれぐらい長寿だ。だから西片の死も今こそ自分の責もあるがゆえに重くとらえてはいる。
それでも、きっと忘れてしまう。殺し合いが終わるころか、或いはこの戦いの最中ですらありうる。
別にそれを悲しいとも思わない。記憶とはそうやって入れ替わってくのだから、当たり前のことだ。
そして、それが長い時間を生きる妖怪のありふれたあり方の一つなのだ。
人間のように悲しみに暮れる時間は、人間の時間から見ても酷く短い。
「……誰かくるわね。」
置いていくとするか、
そう決めたレミリアだったが、
妖怪である都合聴力も人並み外れたレミリアが察知する。
川の流れの中聞こえてくる、大地をける重い鉄の音。
鬼が出るか蛇が出るか、NPC、或いはあの怪物が再来してくるか。
いつでも先制攻撃できるようにと、その手には槍を持って構えておく。
待ち続けていると出てくるのは、子供を抱えている鎧の男───ゴブリンスレイヤーだ。
「……ゴブリンではないが、敵か。」
ゴブリン以外に関しては尋常じゃないレベルで疎い彼だが、
彼女の背中に映える翼は少なくとも人間でないことの証明だ。
なお、彼の世界にも吸血鬼がいたりするのだが、それは割愛させていただく。
だから身構える。祈り持たぬ者は、往々にして人間とは離れた容姿を持つのだから。
あくまで彼はゴブリン専門の男だ。それ以外に関しては特別強い力を持ってるわけではない。
写影を守りながら戦うのは難しいだろう。しかし、それでも豆銑から託された存在であり、
嘗ての自分に重なるような少年を守らなければならない苦境であるのは確かではあるが、
その程度で諦めるような思考を持ち合わせてはいない。
「敵、ねぇ。じゃあ私の横に項垂れているこいつを殺さない理由を考えてもらおうか。」
171
:
バッドレディスクランブル
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/02(水) 09:58:21 ID:woIv0/1Y0
横にいるドラえもんは完全に無防備だ。
今彼女が持つ傘て頭を叩き潰せばそれで殺せる。
それぐらいに無防備な相手を放置する危険人物などいない。
(ドラえもんがロボットであると言う認識をしてない以上そういう認識である)
妥協か、許容か。それは定かではないが、少なくとも殺し合いに乗る人物でないことは伺えた。
「……分かった。だが俺達は北東から逃げている身だ。
お前たちも避難しておけ。力があるなら別だが。」
「吸血鬼にそれを問うか? せっかく来ておいて、
逆走になるのは癪だが……見殺しにすると信用に関わるか。」
株は大暴落と言ってもいい相手だが、
面倒を見てくれる相手が見つかったのに見殺しにするほど薄情でもない。
この六時間、ほとんど同じエリアをぐるぐる回るように動いてるな。
なんてことを思いながら、レミリアはドラえもんを抱えてゴブリンスレイヤーと移動する。
速度を上げるついでだからと写影も担げば、ゴブリンスレイヤーはいつも通りの速度で、
二人抱えててもレミリアの膂力とスピードならばその程度大して苦にもならなかった。
一応合流することができたので、一先ず四人……とは言うものの、
気絶している写影と、精神的に折れてるドラえもんでは会話にならない。
完全にレミリアとゴブリンスレイヤー、二人だけの会話に落ち着いてしまう。
移動の途中、名前を知らないが怪物であるジェイソンに襲われた顛末を話していく。
それとレミリアからは第一回放送についての話を伺ったが、予約がどうとか、
わけのわからないことは一旦放置として、生存者に彼女がいるのは彼にとっては安心だ。
もっとも、この死人の数だ。あまり悠長なことを一手られる余裕はないのだろうが。
「怪物、怪物……ああやだやだ。怪談なんて、幻想郷の連中だけにしとけっての。」
もはや怪談噺の怪物の類ではないか。
幻想郷にでも居座って、さっさと霊夢にでも退治されてろ。
そんな感想を抱きたくなるような敵と戦っていたらしい。
「お前の言う方の怪物か。恐らく、俺では難しいだろうな。」
受けた攻撃の内容から察するに、
自分にとってのトラウマを利用した幻覚を用いる。
もしも、自分が最も苦手とするものは何かを考えた。
ゴブリンは憎む敵であり、トラウマとは別なので除外だ。
しかし、もしあるとするならば───それは姉になるのだろうかと。
ただ、見ていることしかできなかった。彼女が凌辱され惨殺される様を、壁の隙間からずっと。
あの地獄のような光景を再現された時、果たして姉を捨て置いてゴブリンを殺せるのか。
そう問われると、答えに悩む。精神攻撃に関しての耐性は悪趣味なゴブリンでできているが、
そういう方向での攻められ方は少ない。だから、どうしたものかと少しばかり頭を悩ませる。
彼は自分を最強や優秀だとは思わない。ゴブリン相手にだって死ぬ。その可能性を常に考慮し、
優れたな装備や優秀なアイテムをなるべく残さないよう配慮した装備構成にしてるのもそれだ。
「お前の人生も、相当厄介そうだな。」
人間のトラウマなんていくらでもあるだろうに。
即決で倒すのが難しいと言えてしまうその冷静さ。
ドラえもんには持ち合わせてないものを持っているようだ。
頼もしくはあるが、霊夢や魔理沙程の強さも期待できない難しさ。
まあ、紅魔館の妖怪や人間を全員タコ殴りにしてくるような連中を比較する、
なんて連中と比較する方がおこがましいと言われればそうなのであるのだが。
「えーっとゴブレットスレインだっけ?」
「ゴブリンスレイヤーだ。小鬼殺しやオルクボルグと呼ぶ奴もいる。」
「随分多彩な称号だこと。良いわ。こいつ(ドラえもん)預けるから、
目的地でもどこにでも行きなさいな。そっちの怪物、私が相手をするから。」
「……本気か? 単独で挑むのは至難とみるが。」
確かにレミリアの力、精神性。どれも高水準だ。
辺境の地の槍使い達にも負けず劣らずか、それ以上の存在。
だからと言って、あの怪物相手に一人で立ち向かえるとは思えない。
無論、レミリアの実力をちゃんと見ていないから、と言うのもあるのだが。
「私は今気が立っている。ストレス発散ができる相手が欲しかったところだ。」
手の爪を立て、悪魔のようなぎらついた顔と笑みを浮かべるレミリア。
散々コケにされた上に逃げられている以上、プライドの高い彼女のストレスはマックスだ。
それに、ドラえもんを置いていく口実もできている。ここらでちょっとストレス発散に勤しむ。
厄介だからなんだ? その程度で恐れるレミリアではない。彼女が恐れるものがあるとするなら、
それこそあの時出てきた、悪魔の妹ぐらいなのだから。
172
:
バッドレディスクランブル
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/02(水) 09:58:44 ID:woIv0/1Y0
「……ならば持っていけ。クロコの支給品だ。
俺たちの時は使う暇や使い道がなかったが、
お前にならば何かあった時に役立つかもしれない。」
写影に渡すべきかもしれない。
そう思ったものの、状況が状況だ。
彼女がジェイソンを引き受けると言うのならば、
勝率を少しでも上げるための最適解な行動をとるべきだと。
「悪魔への貢ぎ物か。いいだろう。受け取ってやる。
その対価、このレミリア・スカーレットが怪物退治でその対価を支払ってやる。」
黒子の支給品を受け取ると、レミリアはゴブリンスレイヤーの反対側へ駆け出す。
豪速。そうとしか言えない速度で駆け抜けていく姿は、どれだけこちらに合わせてたか分かるものだ。
あれならば勝てるのだろうか。いや、絶対はない。賽の目が一を出すように、些細なことで人は死ぬ。
ゴブリンスレイヤーの生きた世界とは、そういうものなのだから。優れていても死ぬときは死ぬ。
とは言え、せめて彼女の生還を願うことだけはしておきたくはあった。
「……しかし、ドラえもんと言ったか。重すぎる。すまないが起きてくれ。」
ドラえもんの体重はほぼ130キロにも及ぶ。
とても常人が運べる重量ではなく、直ぐに声をかけるゴブリンスレイヤーだった。
【E-8/朝】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:悲しみ、精神疲労(特大)ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖、精神が折れてる
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、スコップ@幼女戦記、西片のデイバッグ(基本支給品のみ)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:あの怪物(ペニーワイズ)をやっつけるため、仲間を探す
3:のび太くん……
※四次元ポケットは回収されました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:苛立ち、屈辱感、自分に対して戸惑い(小)
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー、折り畳み傘@現実
[道具]:基本支給品、目隠し(血塗れ)@水曜日のダウンタウン、白井黒子のランダム支給品×1〜2
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:リルルと言う少女を探す。
2:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。
3:怪物を殺す為に策を練り、仲間を集める……まるで人間みたいね。
4:向こうの怪物(ジェイソン)退治。この苛立ち、アンタで解消させてもらうわよ。
5:ドラえもん……ま、残念だが仕方ないか。
[備考]
※参戦時期は紅魔郷終了後からです。(EXではないためフランが地下から解放されていません)
【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康、美山写影を背負っている
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:ミヤマを連れ南下する
2:怪物(ジェイソン)に対処する手段を考えておく。マメズクが対処できるならそれが一番だが。
3:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
4:これでよかったのか……?
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
6:なぜ俺たちは本名の状態で名簿に載っていない?
7: 異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
8:怪物(ペニーワイズ)か……俺では難しいだろうな。
[備考]
※時間軸はゴブリンロードを討伐した後。
※第一回放送を聞き逃しましたが、レミリアから聞いてます。
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(中)、精神的ダメージ(大)、気絶、ゴブリンスレイヤーに背負われている
[装備]:イエロー・テンパランスのスタンDISCC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品×3(初夏、写影、いのちの輝き)、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー、あきビン@ゼルダの伝説シリーズ、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
[思考・状況]:基本行動方針:???
1:黒子、僕は……
[備考]
※第一回放送を聞き流しているので大部分があやふやですが、少なくとも死者に牛飼い娘がいないことは把握しています。
173
:
バッドレディスクランブル
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/02(水) 09:59:14 ID:woIv0/1Y0
以上で投下終了です
174
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 16:33:20 ID:zB0V7AIo0
ナルメア、カリオストロ、百合奈で予約します
175
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:15:06 ID:zB0V7AIo0
投下します
176
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:15:36 ID:zB0V7AIo0
C-1、人の姿なし。
D-2、人の姿なし。
E-3、人の姿なし
F-3、人の姿なし。
「なんっでだよ!!」
座席のソファをボフボフと叩きながら、
まったく参加者に出会えない状況にカリオストロが苛立つ。
人数で言えばこの参加者の総数で言えば出会わない確率は極めて低いものになる。
せっかく時間をかけてまで時間制限付きとは言え移動できる足を手に入れたのだ。
もっと人と出会えてもいい頃ではないかと人がいそうな場所を次々と調べ続けて、
最終的に妥協して名前のありエリアがあるF-3まで行ったのに此処にもいない。
いや、F-3のふたば幼稚園には人がいた痕跡があったので決して外れではないが、
その当人も何処かへと行ってしまったようで、現在は手掛かりが一切存在しない。
なお、素直に最初に南に行っていれば甘露寺を筆頭に多くの参加者に出会えたのかもしれないが、
同時にザメドルと言うカリオストロだろうと、どうしようもない戦力にぶちあたっていたので、
これについては幸運と捉えるか不幸と捉えるかは、少々判断しかねるところだろう。
「一度南へ向かってみます? 支給品は酒と乾麺だけ。
とてもではありませんがこれだけで食料を賄えれません。
最悪飲み水の確保に川や湖周辺で水の調達をしてるとかは。」
「ありえるぜ……というかオレ様達も水の確保は必須だ。
川の水がどの程度のものか見ておくのも一応手になるしな。」
この戦い、食料をどんな手段で確保するのかも勝負がかかっている。
食糧難に陥ればそれだけで致命的だ。腹が減っては戦はできぬと言う言葉のように、
この程度、というよりまともに食料をよこす気がないこの現状は全参加者が抱える問題だ。
参加者同士で奪い合っても酒と乾麺だ。どのみち長続きしない。どこかで調達の必要がある。
『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』
誰と出会うこともないままに、ミルドラースの放送が始まった。
放送結果は当然、いいものではない。
彼女たちはそもそも誰とも出会えてない。
だから誰が危険だとか、誰がいい人だったかか分からない。
結果、兼定と言った知己が死に、大勢の参加者がこの世を去っただけ。
誰が善良で、誰が殺されても仕方ないような人物だったか図ることもできない。
気落ちするのはやはり比較的一般的な世界にいた百合奈ではあるものの、
放送が終わればすぐに痛車を運転し、目的である河辺へと向かう。
二人以降誰とも参加者に出会ってないから甘いものだと思っていた部分は、
確かにあったと自覚はしている。凌辱とかこそされた経験は確かにあれども、
他者の命を奪うほど殺伐とした世界を生きていないのだからまっとうな思考だ。
けれどカリオストロ達とは一蓮托生の覚悟を決めた身だ。必要であれば人を殺す。
その覚悟を決めておいていざ人の死を前にして、いつまでも立ち止まるわけにはいかない。
運転ができるのは自分だけだ。自分が止まればそれだけ助けられる人が助けられない。
一人でも多く命を救え。探偵の趣旨とは違うが、その志は真っすぐありたかった。
(予約についてはどういうこった……?)
唯一カリオストロはミルドラースの最後の言葉を考える。
予約とは何なのか。何かが予約して始めているのか。
疑問点は全く尽きないないようではあるものの、
それを中断せざるを得ない状況が始まった。
「ユリナちゃん、カリオストロちゃん! 参加者がいたわ!」
天窓から人を見つけたナルメアの一言に急ブレーキをかける。
参加者と出会えたのは良し。この六時間において、
最も情報も何もかもが不足しているのは自分達だと自覚している。
問題はどちらか。敵であれば予定通りに、味方たりうるのであれば情報交換を。
川辺から這い上がってきた、ずぶ濡れの男に対し、三者はおりながらそれぞれ得物を構える。
「……貴様らに問おう。新選組を知っている奴はいるか?」
川を流れ、這い上がりながら土方は考えていた。
新選組は時代の敗者ではなく、英雄としてあったのか。
スバルがいた世界だけかもしれない。そう思ったがゆえに聞かずにはいられない。
自分達の歩みは、いかようなものとして扱われているのかと。
「新選組? カネサダの奴がたまに言ってたな。」
「……兼定に会っているだと?」
177
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:15:58 ID:zB0V7AIo0
「刀剣男子っつー、刀に魂が宿った存在みてーなもんだよ。
んでカネサダはその一人で、たまに新選組の話をしてたな。
まあ、此処では会うことはなく放送で呼ばれちまったわけだが。」
愛刀である和泉守兼定が人となり、それにより面識がある。
何とも奇妙なものだと思うが、自分自身廃棄物(エンズ)であり、
非業の死を遂げた人間が、怪物が、常軌を逸した力の黒王を見てきた。
現代も平安時代には付喪神の概念が存在していたこともある。
特別驚くことはなく、淡々と話を進めていく土方。
「私の方が詳しいかと。土方歳三……新選組の副長、でしたわね。
沖田総司も和泉守兼定も放送で呼ばれてるのを見るに、土方歳三本人のご様子で。」
此処で前に出るのは現代日本で活動していた百合奈だ。
『誰なの?』とナルメアが尋ねると、新選組の活動内容を掻い摘んで解説していく。
成績優秀である百合奈にとって、新選組の説明についてはわけのない出来事だ。
「で、言っちまえば俺様と同じ過去の人間ってわけか。
ま、てんっさい錬金術師であるオレ様は封印って形で生きてたが。」
「……それで、貴様の世界では新選組はどういう扱いだ。」
「……中には沖田総司の病弱を筆頭とした、
判官贔屓によるものも否定はできないと思いますが、
武士よりも武士たらんとした立ち居振る舞いを筆頭として、
数々の人間ドラマ……失礼、横文字だと伝わらないかもしれませんね。
人間が生きてきた物語がそこにありました。義を通さんとしたその姿は、
やがて英雄や憧憬たる存在として扱われ、小説、ゲーム……ではなく遊戯、創作、
様々な媒体に取り扱われるようになり、今も歴史家にも人気の高い方々になります。
ただ、幕末や明治と言ったあの時代そのものに憧れを抱いた人も多いとは思いますが。
坂本龍馬、高杉晋作、桂小五郎……現代においても伝わる偉人も大勢いたことですので。」
スバルも言っていたことだが、やはり新選組は敗者・賊軍ではないらしい。
寧ろ英雄や憧れと言った、羨望の眼差しを向けられるような存在になっているようだ。
函館で死を迎え、知ることなく終わった自分達の誠の旗は、未来にも知れ渡っている。
ならば、別に優勝を目指す理由も特別ないのではないだろうか。
このまま、優勝をせずとも目的が果たされてるのではないか。
そんなわけ、あるものか。
「危ないッ!!」
ナルメアが閻魔で土方の一刀を防ぐ。
鉄の扉も容易く切り刻むことのできるパワーを持つ土方の刃は、
いかに十天衆の最強の刀使いと称されたオクトーを相手にしたナルメアでも鍔迫り合いになる。
確かに新選組は先の未来でも生きているのだろう。
恐らくは、漂流物や廃棄物に纏わる自分の世界であっても。
それは事実だ。確かに、彼の名は後世に伝わっており、
本来あるべき未来においてもある人物も新選組を褒めちぎった。
だからと言って、戊辰戦争の経緯、幕末の動乱の世を生み出した島津。
彼らを許すことなど到底できない。本来血筋でこそあれども無関係である、
先祖である島津豊久相手ですらただならぬ妄執を向けていたのが彼だ。
様々な世界で称されようとも、その未来を辿らなかった彼には止まる理由がない。
奇しくもその真っすぐな有様は、別世界の沖田の知る土方と同じ思考でもあった。
「ナルメアさん! 今援護を……」
178
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:16:38 ID:zB0V7AIo0
鍔迫り合いの最中、ナルメアの横をすり抜けていく新選組の隊士。
攻撃を受けるとまずいと距離を取るも、隊士はナルメアを狙わない。
狙うのは百合奈だ。
「ユリナ! テメエは自分の身を守れ!」
彼女を狙うのはただ一つ。もっとも弱い存在だからだ。
ナルメアは刀の構えから手練れであったのは十分にうかがえる。
新選組でも戦えば苦戦は強いられるだろうと確信を持つだけの実力を持ち、
事実人間離れしたパワーで切りつけても得物の性能の良さもあり防いでいる。
後方のカリオストロは同じ黒王軍のアナスタシアのような前線をメインとしないタイプ。
距離のある状態で隊士を飛ばしたところで迎撃されるのがオチであり、
最終的に選択肢が絞られたのは、現代知識を持っている百合奈になった。
確かに刀の構え方は素人のそれではないが、一方でそれはナルメアほどではない。
だから隊士で優先的に攻撃するのは百合奈と、最初から決めていた。
「クッ!」
小烏丸天国には詠唱をすれば攻撃力が増強できるが、
妖力やそれを代替えできるものがない彼女には無用の長物。
得物の性能自体はいいため隊士一体との剣劇はできてはいるが、
言い換えれば一帯を相手するだけで手いっぱいな状況に持ち込まれる。
「チッ! させねえよ!」
カリオストロが他の二体の隊士の地面から光輝く槍を突き出す。
迎撃を狙ったものだが腐っても、いや幽霊でも隊士なのか攻撃を避けた。
近づくことができないと判断したのか、隊士はカリオストロの方へと殺到していく。
「御嬢様を集団でナンパとか新選組っつーのは礼儀がなってねえなぁおい!」
「二人とも───」
二人を警戒する暇などどこにもない。
相手は廃棄物の土方歳三。気を配りながら戦う余裕などない。
迫る剣技を、持ち前の抜刀術で甲高い音とともに防ぎ、剣劇を続ける。
数々の魔物を屠り、憧れた剣豪のため鍛錬を続けた熟練の刃は、
廃棄物相手であろうとも見劣りすることなく凄まじい斬り合いになっていく。
常人から見れば何をしてるのか分からない、火花がそこら中に散っていくだけの光景。
その真実は互いに高速の剣技によって刃をぶつけあい、互いに一撃を叩き込むためのもの。
一定距離で幽霊も消えるかもしれないと、ナルメアはうまいこと距離を取りながら土方と切り結ぶ。
途中にゴブリンなどのNPCが点在しており襲い掛かってくるが、所詮彼らの敵に非ず。
戦いの邪魔、とすらされないかのように切り結んでる間についでで切り刻まれていく。
血肉の一片すら彼らは浴びることなく、走りながら互いの刃をぶつけあっていく。
(相当な得物だ。あまり無理をすればこちらの方の刃が折れかねない。)
土方が相手するナルメアの刀はおでんが用いたその世界での極めて少ない名刀の一振り。
並の剣士では扱えないそれを、いかに特殊な力を持った刀と言えど無意味に切り結び続ければ、
何方の刃が先に劣化していくかなどは、想像するに難くない出来事だ。
(ならば。)
信長には戦略家としては未熟と評される土方ではあるが、
戦況を見極める戦術家としての才はあると評価もされている。
この膠着する状況を打開する手段の確立事態は、そう難しくなかった。
デイバックから何かを取り出そうとし、ナルメアは距離をとる。
取り出す暇を与えないと攻撃を仕掛けたが、土方は地面をスライスし、
それを蹴り上げ、飛び道具兼視界の妨害用としての二つの手段に変えて攻撃してくる。
廃棄物になってからは士道に反するとしてやらなかった、生前はやった砂利かけの目つぶしの類だ。
即座に飛来する大地を切り刻み、視界を開けるものの、既に土方の目的は終えていた。
構えるのは風神の盾。同時に土ごと彼女を吹き飛ばす豪風が吹きすさび彼女を吹き飛ばす。
そして、それに追いつくような尋常じゃない速度で、土方はナルメアへと斬りかかった。
「新選組隊士、確かに一人一人強いですわ……ですが!」
ザンッ、とでも音が聞こえそうな程に幽霊を両断する百合奈。
相手は亡霊と言えども本物の新選組ではあるが、一体一体の攻撃力は高くない。
確かに体には黒いゴシックな服には多少の赤い筋が刻まれ負傷は免れなかったものの、
元より小烏丸天国が業物としての性能が破格だ。剣術としての優れた彼女であれば、
幽霊ぐらいであれば十分に対応でき、カリオストロの援護もあり幽霊は処理できた。
後は土方一人だけだが、そこへ吹き飛ぶように転がってくるナルメア。
「ナルメアさん!? 大丈夫でして!?」
腹部から軽く噴き出す出血。
致命傷ではないようなのでナルメアもすぐ立ち上がり、
無事であることに安どの息を吐く百合奈。
しかし。
「……は?」
179
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:17:59 ID:zB0V7AIo0
カリオストロから、間抜けな声が出た。
ナルメアが突如として、近づいた百合奈へと斬りかかったからだ。
攻撃が来るなど一切予想してなかった百合奈の黒服は赤黒く染め上げられる。
ゴポリと血反吐を吐きながら、膝をついて、ゆっくりと地に伏せる百合奈。
どうして? そんな困惑が百合奈の表情から手に取るようにわかるだろう。
今まで誰一人として斬られてないからすっかり忘れられがちのことではあるのだが、
毒濁刀には斬った相手を洗脳する特性を持っており、ナルメアはこれに斬られた。
しかも使用者も魂を食われる行為も、廃棄物である土方ならば耐えられるデメリットだ。
(クソゥ、ユリナは致命傷だ、あれはもうオレ様の治癒術でも助からねえ!
しかもナルメアは多分、なんかの洗脳を受けちまってやがる!
いくらオレ様でも二対一でこの状況はまずい! 畜生、博打するしかねえ!)
「ウロボロス! アルス・マグナ!!」
赤と青、二対の蛇が高速で回転しながら雷光をまき散らす。
当たれば少なくないダメージではあるが、当たればの話である。
見れば大したことはなく、足を止めて攻撃が止まるのを待つだけだ。
上から、横から攻め入っても問題はないが思わぬ反撃があるやもしれない。
せっかく手に入れた手駒をむやみにダメージを負わせるわけにはいかないのもある。
だがカリオストロもまた、これによりダメージを与えるのは目的ではない。
「イッケエエエエエエエエエ!!」
全速力で痛車へと乗り込んで、アクセルを全力で踏んだ。
安全運転とか、座席に着くとか一切考えてない、ただのアクセル。
いつでも逃げられる程度に魔力をタービンリアクターに残しておいたお陰で、
カリオストロ一人でも運転自体は可能だが、当然後のことなど考えていない。
ただこの場から逃げる以外の選択肢が今の彼女にはなかった。それだけだ。
土方ならば追おうと思えば追える可能性はあったが。百合奈の支給品もある。
捨て置くわけにはいかずそれを回収するころには、カリオストロの痛車の姿はない。
遠くで爆発するような音がしたので、カリオストロが逃げた方角自体は分かる。
しかしナルメアの洗脳がどの程度のものか。支給品の確認など状況の確認も必要だ。
風神の盾も置きっぱなしであり、待ったなしの追撃をするのは少々難しいだろう。
本来ならば、新選組の名を冠する戦闘機に搭乗した男により新たな道を見出した土方。
しかし此処にあるのは、島津への怨嗟を捨てきれぬ、幕末の亡霊である。
「半日どころか半分も使えなかったな……」
アクセル全開で飛ばし、着地も何もかも考えなかった行動だ。
当然突貫工事で作った痛車など保つわけがなく、着地と同時に大破している。
カリオストロ自身は場数を相当踏んでるのでこの程度の問題は些事であり、
大破する前に痛車から飛び出して転がりながら土を盛り上げ、壁として展開して防護した。
なので大事には至ってないが、移動手段も失った上に有力的な仲間も失ってしまい、
あまつさえ同じ空の世界の仲間は洗脳されていると言う最悪の状況に持ち込まれている。
「クソッ……天才錬金術師であるオレ様が、一瞬で辛酸舐めさせられるか……!!」
いつだったかパラケルススにメタられた時のような、酷い苛立ちを覚える。
順調かどうかはともかく安全な滑り出しをしたと思えば一気にそれらを喪った。
救いが、よりもよって人に出会わなさ過ぎてナルメアが安全な人物だと言う情報が、
コルワや一部の参加者からしかの伝達だけというのが余りにも皮肉であることに余計苛立つ。
180
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:18:24 ID:zB0V7AIo0
だからと言って立ち止まってる場合ではない。
このまま一人でいても土方に追われる可能性は高い。
どの方角に飛んだかもわからない。湖に突っ込んでないのを見るに、
少なくとも南西に向かったと言うわけではないようではあるが、それぐらいだ。
場合によっては川を飛び越えてエリアを飛んだ可能性もある。とにかく、
痛車から離れるようにカリオストロは走り出すが、その速度は余り早くない。
元々カリオストロは病弱な身体を肉体を作ってそっちに魂を映した存在だ。
だから満足な運動はできておらず、彼女は泳ぐことすらできないほどに運動神経が乏しい。
移動手段が欲しかったのはそれもあったが、失ったものは仕方ないと割り切り、移動していく。
(ああ、私死ぬんですのね……)
血が流れる中、彼女は思う。
自分は死ぬのだと。斬ったのはナルメアだと。
何故なのか分からない。一般的な世界を歩んだ彼女にとって、
分からないことが多すぎる。刀で斬られた相手が洗脳されました、
そんな理由をこの思考が朧気になる間の僅かな時間で見出すのは不可能だ。
(撫子……)
思い出すのは親友の撫子だ。
事件は解決した。校長達は逮捕されたが、
それでも一度は脅しの材料に利用された身ではある。
だから唯一笑顔を見せられる、彼女のことが気がかりだった。
けれどもその記憶もやがて朧気になっていき、命の燈火が消えていく。
近寄る土方に、一矢報いることすらできぬまま散っていくのはなんと無力か。
覚悟を決めてもこのザマで、自分の無力さを呪いながら、彼女の瞳から光が消えていった。
「……どうやら本物だったらしいな。」
妖刀の類なのは幽霊を操る都合なんとなくではあるが察してたが、
本当に他者を操れると言うのには少々懐疑的な部分はあった。
しかし効果は抜群だ。支給品を確保し、駒も用意できた。後必要なのは、
今後戦っていくだけの備蓄ぐらいなものである。
「香霖堂……探してみるか。」
何やら店のようなものがあることが示唆されていた。
物資の調達ができる可能性があることに越したことはない。
カリオストロを追うか、或いは香霖堂を探すか、さらに参加者を減らすか。
新選組は止まらない。不退転の道を歩み続ける。
たとえ、どんな道であろうとも。
「ふふっ……」
洗脳されたナルメアは笑っていた。
何故笑っているのかは本人も分からない。
ただ、自分のすることは土方のために人を斬ることのみ。
それだけを考えていればいいのだから。
【月読百合奈@黒衣の少女探偵 月読百合奈 死亡】
【残り74名】
【F-4 朝】
【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]健康、異様な気配(魔女の残り香)への警戒心(中)、動揺(小)
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品×2(自分、百合奈)、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品×0〜3(自身のは確認済み、百合奈の分は不明)、小烏丸天国@11eyes -罪と罰と贖いの少女-
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる。
1:新選組が英雄だとしても、俺は島津を筆頭に許せぬものがある。
2:ナルメアを利用する。
3:小娘(カリオストロ)を追うか、香霖堂を探すか。
[備考]
※参戦時期は単行本4巻終了時点。
※召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。
※魔女の残り香を感じ取れます。
【ナルメア@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(中)、洗脳状態
[装備]:閻魔@ワンピース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]基本行動方針:この殺し合いを止めるために主催は倒す。
1:参加者との接触。できれば情報が得られるタイプの人。
2:斬る。土方の為に、只管に斬る。
[備考]
※最低でも100フェイトエピソードが終わった後からの参戦です
※毒濁刀に操られています。
解除の方法は少なくとも毒濁刀の破壊等です。
181
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:18:43 ID:zB0V7AIo0
【??? 朝】
【カリオストロ@グランブルーファンタジー】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、苛立ち、
[装備]:シンフォーザベルゼ@Death End Re:Quest
[道具〕:基本支給品、ランダム支給品×2、百合奈作即席ジャマー@現地調達?
[思考]基本行動方針:殺し合い? 下らん。
1:名前のない建造物を調べていくが、何もなさそうだし普通に人探し。
2:首輪解除のための材料集め、基首輪を集める。
3:↑乗ってるが引きこもってる奴ができれば理想だがな。
4:首輪集めるメリットは他にもあるかもだから気を付けておくか。
5:命の輝き…少し興味があるな。
6:ミルドラースは何を考えてるんだか…考察材料が欲しい。
7:ナルメア、ユリナ……クソッ。
8:ヒジカタは絶対ぶちのめす。カネサダには悪いがな。
[備考]
※参戦時期は少なくともイベント『アルケミスト・デザイア』以降
※兼定、美波、楓、卯月、エレンとの面識はあるものの
兼定 :アニメ『活撃刀剣乱舞』の世界の兼定。即ち本家とは面識がない
エレン :エレンは空の世界の住人=平行世界の人間なので当然面識はない
デレマス勢:夢落ちと思ってる。ただ二人と違い面識がある可能性はある
リルル :同名の別人であるため一切の関係がない
※カリオストロ作自動車@現地調達? は大破しました。
※首輪には何かしらの使い道があると推測してます
しかし、首輪の解除もしないうちに消費するつもりはありません
※簡潔な程度に主催者の考察として
①:典型的な儀式の供物(可能性:低)
・百合奈と言った一般人も巻き込んでて質を問わない?
・憎悪や殺意を混ぜ込んだ蟲毒のような類か?
・NPCだけでやり合えばいいようにも感じる
・疑問:規模の割にやることが地味すぎる
②:ミルドラースは『敵』でありその為の戦力強化(可能性:中)
・一般人や支給品の存在意義が確立される
・支給品に自分たちが調整した武器を試すことができる
・NPCの存在意義も出てくる
・疑問:こんなことできるなら月の民も余裕で過剰
③:アーカルムシリーズに使う戦闘データのシュミレート(可能性:大)
・一般人や支給品は勿論、NPCにもばらつきはあるが意味がある
・別の世界の人間を呼び込むことで更なるシュミレートを重ねられる
・首輪の存在理由もこれにょって乗る、乗らない関係なしにデータが集めやすい
・疑問:こっちの方が質のいいデータ収集になるのかと言う疑問
※E-4以外の近隣のエリアのどこかにいます
どこにいるかは後続の書き手にお任せします。
182
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/04/09(水) 21:19:25 ID:zB0V7AIo0
以上で「舞い謳え胡蝶 ■めるものが」投下終了です
183
:
◆7PJBZrstcc
:2025/05/18(日) 21:52:57 ID:Ao0ZANaU0
ゲリラ投下します
184
:
「ねぇ今何処?」「会場ん中」
◆7PJBZrstcc
:2025/05/18(日) 21:53:29 ID:Ao0ZANaU0
コンペロワ会場北西部にて、三人の男女、りあむ、クロちゃん、変なおじさんが疾走している。
三人が疾走するのはひとえに逃走の為。
彼らは名を知らないが、ザメドルという圧倒的な力の持ち主である吸血鬼から逃げる為だ。
その為に彼らは走る。
「ハァ……ハァ……」
「もう無理だしん……」
しかしどれほど走ったか彼ら自身ですら分からない頃、クロちゃんと変なおじさんが息を切らして地面にへたり込む。
二人ともいい年と言えるような年齢なのだ。
そのうえでこんな整備されてたグラウンドとは真逆のような走りにくい場所で、長時間全力疾走を強要されれば体力を消耗して疲れるのは無理もない。
幸いなことに件の吸血鬼や他の参加者、それにNPCも周りには見えない。
なので二人に次いでりあむも腰を下ろす。
いくら二人より二回りは若くて、おまけにアイドルとしてトレーニングを積んでいるとはいえ、やはり疲労はするものだ。
『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』
「えっなになに!?」
するとその直後、いきなりミルドラースの声が響く。
三人が戸惑うが、大魔王の放送は止まることなく進む。
『では禁止エリアの発表と行こうか』
そして始まる禁止エリアの発表。
大人しく聞く三人だが、ここでりあむがあることに気付く。
「……そもそもボクたち、今どこにいるの?」
「「……さあ?」」
三人は現在位置を把握していなかった。
逃げるのに必死でどっちに向かったかも曖昧なうえ、そもそも人間は真っすぐ歩けない生き物だ。
真っすぐ進んでいるつもりでも実はグルグル同じところを回っている、ということもよくある。
ただでさえ必死に走っていた状況で、なおかつ真っすぐ進んでいないとなれば、どこにいるのか分からないのは必然だった。
とはいえ禁止エリアのA-6、D-5、I-6は出発点C-3から見れば、D-5以外はそこまで近い位置ではない。
おまけにD-5にはディルディット・タワーという目立つ施設があるが、彼らの視界にそれらしい建物は見えない。
なのでひとまずは大丈夫だろう、と三人が結論づけたところで放送は更なる情報、脱落者の名前を告げる。
『ホル・ホース』
「えっ」
次々と告げられる名前に対し、最初に反応したのはクロちゃんだ。
彼が知るホル・ホースという男は抜け目がなく、そう簡単に死ぬとは思っていなかった。
だが現実は殺し合い開始六時間以内での脱落だ。
クロちゃんからすれば危険人物であるので死を悼むことはないが、驚きは隠せなかった。
『高垣楓』
「そんな……!」
次に反応したのはりあむだ。
彼女にとっては偉大なシンデレラガールズの一人にして、尊敬する先輩。
決して、こんな殺し合いなんかで死んでいい存在ではなかった。
『ひろし』
『甘露寺蜜璃』
「「「……」」」
そして最後に三人そろって反応するのは、ひろしと蜜璃の二つの名前。
もっとも、りあむにとっては話に聞いただけの相手なので少々芳しくないところもあるが、蜜璃に関しては素直にショックを受けている。
なにせ、殺し合いに乗って襲い掛かって来た男を相手に足止めをかって出てくれた相手の死なのだ。
おまけに殺し合いに乗った方の名前らしきものは呼ばれていない。
仮に相打ちになったとするなら、放送でひろしと蜜璃の間にそれらしい名前があるはずなのだから。
『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』
ミルドラースの放送が終わり、ショックが抜けきらない三人。
しかしコンペロワは彼らを休ませない。
彼らの元に、三匹のNPCが現れた。
185
:
「ねぇ今何処?」「会場ん中」
◆7PJBZrstcc
:2025/05/18(日) 21:53:52 ID:Ao0ZANaU0
一匹目は巨大な鳥のNPC。
鋭い一対のかぎ爪が特徴のこのモンスターは、ヘルコンドル。
参加者の中では勇者ロトの二人であるアルスとアリスなら知っているだろう。
二匹目は一頭身の体に手足を生やし、魔法の杖を持っていることが特徴のNPC。
名を、きめんどうしと言う。
これもさっきのヘルコンドルと同じく、参加者の中では勇者ロトの二人であるアルスとアリスなら知っているだろうか。
三匹目は三つ目で鳥の翼を持つ、まるで二本足で立つグリフォンのようなNPC。
名を、サイレス。
さっきの二匹とは違い、このNPCを知る参加者は居ないだろう。
さて、実はこの三匹のNPCにはある共通点があるのだが、これを分かる人はいるだろうか。
一つはドラクエシリーズ出展であること。
もっとも、初出が上二匹は3だが、最後のサイレスは6なので今一つ共通点とは言い難いだろう。
そんな三匹の確実な共通点、それはバシルーラという呪文が使えることである。
バシルーラとは、対象をどこか遠くに飛ばしてしまう呪文である。
戦闘中に使えば相手を戦闘から除外できるという、通じれば強い呪文である。
実はある程度狙いを定めて飛ばすことができるらしい話もあるが、少なくともここではあまり関係なので語ることはない。
そのバシルーラを、三匹のNPCはりあむ、クロちゃん、変なおじさんそれぞれに向けて使用する。
「「「わああああ〜〜〜〜〜〜〜!!」」」
呪文に対し抵抗する余地のない三人は、成すすべもなく飛ばされていく。
どこに飛ばされるかは誰にも分からない。
もっとも、それぞれ別のNPCから呪文を受けたので、飛ばされる場所がバラバラなのは確定している。
ただし、この呪文で飛ばされても飛ばされた先に何もなければ死ぬことはない。
しかし、そんな事実を知らない三人はただ叫ぶことしかできず、成すすべもなく会場の空を舞うのだった。
【???/朝】
【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:恐怖(大)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:わああああああああ!?
2:ディアボロサマ、大丈夫かな……
3:楓さん……蜜璃ちゃん……
[備考]
※メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
※参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。
【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:わああああああああ!?
2:蜜璃ちゃんとひろしが死んだなんて…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
5:ディアボロよりあの金髪の方がヤバイしん
[備考]
※殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
※フルボトルをただの玩具と思っています。
※「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。
【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)、疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:わああああああああ!?
2:蜜璃ちゃん、ひろし君……
3:あの金髪の人怖いね〜
[備考]
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。
※三人はそれぞれ違う場所に飛ばされました。
【ヘルコンドル@ドラゴンクエストシリーズ】
巨大なワシのような鳥系の魔物。初出は3
結構いろんなところに出現するところと、バシルーラで有名。氷系や風系の呪文に弱い。
【きめんどうし@トルネコの大冒険シリーズ】
一頭身でピンク色の魔法使いモンスター。初出は3だがNPCとしての出展は外伝。
ドラクエ本編ではメダパニの使用頻度が高いが、トルネコシリーズではバシルーラの使用頻度が高い。
本ロワでもバシルーラの使用頻度が高い。
【サイレス@ドラゴンクエストシリーズ】
三つ目で二足歩行する鳥の翼を持った魔人モンスター。FFの白魔法ではない。初出は6
マホトーン、バシルーラの呪文を使用する。
186
:
◆7PJBZrstcc
:2025/05/18(日) 21:54:21 ID:Ao0ZANaU0
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