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コンペ・ロワイアル【本編 その2】

1 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:12:57 ID:Evn30/MU0



ーー心は特殊な領域である。地獄から天国を創り出すことも、天国から地獄を創り出すこともできる。



【当企画について】
・コンペ形式で参加者を募集し、最終的に企画者の◆SvmnTdZSsU氏が名簿を決めたロワです。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎。
・自由度の高いロワを目指します。

【基本ルール】
・誰も人を殺さずに一定時間経過すると首輪爆破。
・優勝賞品は『何でも願いを叶える権利』
・会場からの脱出は不可能。
・首輪が爆発すると絶対に死亡不可避。
・能力制限は書き手一任。
・優勝すると『願いを叶える権利』が与えられる。
・参加前に所持していた武装は解除・没収済み。

【放送について】
・放送は6時間ごとに行われる。(初回放送のみ例外。ロワ開始から1時間前後を想定)
・放送毎に、過去六時間の死者の名前、残り人数、次に増える禁止エリアが発表される。
・参加者の割合的な理由により、禁止エリアの増加割合は放送毎にランダム。

【MAP】
ttps://gamewith.akamaized.net/img/original_b7ee9b5606dac7fdbde04617a1766f00.jpg
・マップにはNPCが居ます。どう扱うかは書き手の自由。

【デイパック】
・全ての参加者はゲーム開始後「デイパック」を渡される。以下中身。

・地図:マップを印刷した安っぽい地図。
・食料:インスタントラーメンと缶チューハイ(ストロングゼロ)×3個だけ。お湯は現地調達。
・ルールブック:基本ルールが書かれている紙。A4用紙。初回放送にて裏側に全参加者の氏名のみ浮き上がる。
・ランダム支給品:現実出展かフィクションのアイテム。最大3つ。

【書き手ルール】
・予約期間は1週間。延長宣言無しでそれ以上経過すると予約は解除扱いになります。
・予約期間中に書ききれない場合はさらにもう1週間の延長が可能です。
・ゲリラ投下もアリです。
・参加者の追加はNG。

【主催者について】
・主催者がどの程度参加者に干渉できるのかや、監視の度合いは書き手一任。

【NPCについて】
・書き手一任。
 ただし上記の『参加者の追加はNG』に引っかかりそうなNPCはご遠慮ください

【参加者の現在地について】
・誰がどこに居るか登場話で明記されていない場合、描写と矛盾しない範囲で好きに設置可能。
・地図にない施設を追加する場合は詳細を書いていただくと助かります。

【追記】
・「書きたいものを書く」というコンセプトなので、基本的に上記のルールに記載されていない事は大抵許されます。

【キャラクターテンプレート】

【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[状態]:健康状態とか精神状態とか
[装備]:手に持ってたりすぐ使えるアイテム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品など
[思考・状況]:基本行動方針:
1.
2.
3.
行動・思考の優先順位など
[備考]参戦時期、その他、SS内でのアイテム放置、施設の崩壊など。

【支給品の名前@出典】
ここに↑の支給品の詳細を書く。

【時間表記について】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の0時からです。

【まとめwiki】
ttps://w.atwiki.jp/compe/

2 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:15:08 ID:Evn30/MU0
現時点の名簿
〇は生存している参加者、●は死亡した参加者です。

5/6【ジョジョの奇妙な冒険】
◯エンリコ・プッチ/◯豆銑礼/◯空条徐倫/◯岸辺露伴/◯ディアボロ/●ホル・ホース
4/5【アイドルマスターシンデレラガールズ】
◯夢見りあむ/●高垣楓/◯千川ちひろ/◯島村卯月/◯新田美波
3/4【ゴブリンスレイヤー】
◯ゴブリンスレイヤー/◯牛飼い娘/●令嬢剣士/◯勇者
3/4【Re:ゼロから始める異世界生活】
◯ナツキ・スバル/●レム/◯レグルス・コルニアス/◯ペテルギウス・ロマネコンティ
3/4【Fate/Grand Order】
◯藤丸立香/◯マシュ・キリエライト/◯ラヴィニア・ウェイトリー/●沖田総司
3/3【グラブルーファンタジー】
◯コルワ/◯ナルメア/◯カリオストロ
3/3【銀魂】
◯坂田銀時/◯志村新八/◯沖田総悟
2/3【この素晴らしい世界に祝福を!】
●佐藤和真/◯アクア/◯ウィズ
2/3【スーパーマリオくん】
◯マリオ/◯ヨッシー/●ピーチ姫
2/3【クレヨンしんちゃん】
●野原しんのすけ/◯佐藤マサオ/◯ロボひろし
0/2【タイムパラドクスゴーストライター】
●佐々木哲平/●藍野伊月
1/2【大帝国】
●グレシア・ゲッベルス/◯レーティア・アドルフ
2/2【とある科学の超電磁砲】
◯白井黒子/◯美山写影
2/2【進撃の巨人】
◯エレン・イェーガー/◯ライナー・ブラウン
2/2【魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
◯有栖川理愛/◯清良トキ
1/2【ファイナルソード】
●ぉ姫様/◯勇者(主人公)
2/【チェンソーマン】
◯デンジ/◯パワー
1/2【ドラえもん】
●野比のび太/◯ドラえもん
2/2【東方project】
◯レミリア・スカーレット/◯八雲紫
2/2【ドラゴンクエスト3】
◯アルス(男勇者)/◯アリス(女勇者)
2/2【モンスター烈伝オレカバトル】
◯聖帝エーリュシオン/◯老将エンキ
1/1【ONE PIECE】
◯シャーロット・リンリン
1/1【ドキドキ!プリキュア】
◯菱川六花/キュアダイヤモンド
1/1【黒衣の少女探偵 月読百合奈】
◯月読百合奈
1/1【青鬼】
◯ひろし
1/1【妖怪の飼育員さん】
◯鳥月日和
1/1【快獣ブースカ】
◯ブースカ
1/1【鬼滅の刃】
◯甘露寺蜜璃
1/1【ドラえもん のび太と鉄人兵団】
◯リルル
1/1【刀使ノ巫女(アニメ版)】
◯燕結芽
1/1【アカツキ電光戦記】
◯アカツキ
1/1【大阪万博2025】
◯命の輝き
1/1【ペーパーマリオ オリガミキング】
◯ハサミ
1/1【こじらせ百鬼ドマイナー】
◯飴宮初夏
0/1【Akinator】
●アキネーター

3 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:15:31 ID:Evn30/MU0
0/1【からかい上手の高木さん】
●西片
0/1【オーバーロード】
●クレマンティーヌ
1/1【IT それが見えたら、終わり】
◯ペニーワイズ
1/1【呪術廻戦】
◯真人
1/1【BACCANO バッカーノ!】
◯ラッド・ルッソ
1/1【血界戦線】
◯ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ
1/1【UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
◯サーニャ
1/1【魔法少女リリカルなのはA's】
◯ヴィータ
1/1【野原ひろし 昼飯の流儀】
◯野原ひろし?
0/1【コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
●星野輝子
1/1【Twitter】
◯クッパ姫
1/1【13日の金曜日】
◯ジェイソン・ボーヒーズ
1/1【ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
◯シャドウ茜
1/1【魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF マテリアル娘-】
◯レヴィ・ザ・スラッシャー
1/1【志村けんのだいじょうぶだぁ】
◯変なおじさん
1/1【バトルロワイアル(実写版)】
◯桐山和雄
0/1【うしおととら】
●シャガクシャ
1/1【ワールドウィッチーズシリーズ】
◯シャーロット・E・イェーガー
1/1【Re:CREATORS】
◯煌樹まみか
1/1【ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
◯コーガ様
0/1【クッキー☆BB】
●RRM姉貴
0/1【艦隊これくしょん】
●足柄
0/1【刀剣乱舞】
●和泉守兼定
1/1【リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
◯粕谷瞳
1/1【水曜日のダウンタウン】
◯クロちゃん
1/1【輝光翼戦記 天空のユミナ】
◯翠下弓那
1/1【11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
◯リーゼロッテ・ヴェルクマイスター
1/1【最悪なる災厄人間に捧ぐ】
◯クロ(リーダー)
1/1【Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
◯神楽鈴奈
1/1【真夏の夜の淫夢】
◯平野源五郎
1/1【ウマ娘 シンデレラグレイ】
◯オグリキャップ
1/1【ドリフターズ】
◯土方歳三
1/1【ミスミソウ】
◯野崎春花
0/1【例のアレ】
●Syamu-game
1/1【そんな未来はウソである】
◯佐藤アカネ
1/1【刀語】
◯とがめ
0/1【大番長 -big bang Age-】
●斬真狼牙
0/1【meme】
●絶叫するビーバー

88/112

4名無しさん:2023/01/08(日) 09:52:13 ID:Zkhpe/dY0
age

5名無しさん:2023/01/23(月) 17:24:22 ID:bytMSKJ.0
age

6 ◆j1W0m6Dvxw:2023/02/12(日) 19:28:46 ID:hmJm2OHg0
age

7名無しさん:2023/04/15(土) 18:12:33 ID:FsGk56Zc0
下がり気味なのでage

8 ◆7PJBZrstcc:2023/04/21(金) 20:02:30 ID:0v9JWc/c0
スバル、土方、リルルで予約します

9 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:26:27 ID:HQ6z0mUk0
投下します

10三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:27:29 ID:HQ6z0mUk0
 結論から言うなら、リルルは高台へと到着した。
 いくら浮遊床が特殊なものとはいえ、あらかじめそういうものだと理解していれば対処もできる。
 更に言うなら、彼女は飛行能力もある。
 一定時間飛び続けると首輪から警告が来るとは言え、飛べるのだから落ちる道理はどこにもなかった。

「しかし、何もないわね」

 高台を探索しながら呟くリルル。
 そもそも彼女がわざわざ会場の隅にあるジャンク・ジャンクションを目指しながらこの高台に登ったのには理由がある。
 まず第一に、主催者の意図を確かめるためだ。
 多少、どころではない変な仕様があるものの、こうして足場を用意している以上何らかの理由があるに違いない。
 と考えていたのだが、現実には彼女から見て理由になりそうなものは見当たらない。

 これはリルルの視点の問題なのか、今はまだ無いだけなのか、そもそも存在しないのか。
 それを判断する術を彼女は持っていない。

 ともかく、何もないのなら仕方ないとばかりに、リルルは高台から辺りを見回すことにした。
 まだ夜は明けてないものの、風景はやはり平地より高所の方がよく見える。
 そしてすぐに見つけた。

 何かに乗った人影が、同じく何かに乗った人影に追われている姿を。

 それを見たリルルは即座に高台から飛び降りた。
 もしかしたら追われている人影が探しているのび太、哲平のどちらかかもしれない。なお、ドラえもんは流石に暗がりでも見れば分かるだろうから除外している。
 そうでなかったとしても、レグルスの情報を何か握っている可能性がある。
 どちらでもないにせよ、他の参加者を助けて恩を売っておくのは悪いことではない。
 最悪の状況として、二つの人影がどちらも殺し合いに乗った参加者の可能性もあるが、その時は両方殺せばいい。
 何にせよ、彼女がこの二人を見逃すという選択肢は存在しなかった。





 スバルはキラーパンサーに乗り必死で黒服の剣士、土方から逃げていた。
 スバルにとっての計算外は、土方が即座に追ってきたことだ。
 前のループでは幼稚園の建物の中にいて、スバルの接近に気付いて襲ってきたので、幼稚園に近づきさえしなければ接触することはないと考えていた。
 しかし現実には、土方はスバルの存在を察知し、今もなお追ってきている。
 彼は、自身が放つ魔女の残り香のことを完全に失念していた。


 一方の土方も、現状の追走劇に関しては予想外だった。

 土方が追いかける理由としては、当初としては怪しげな気配を感じたからというだけだった。
 しかし彼がスバルに追いついた瞬間、追っていた相手は一分の迷いも見せることなく脱兎の如く逃げ出した。
 ここで土方は疑問に思う。

 何故逃げる?
 殺し合いに乗っているのは確かだが、少なくとも今追っている相手はこれまでに遭遇したどの参加者でもない。
 あれは全ての他者に怯えているとか、こちらを怪しんで逃げを選んだとかではない。
 明らかに、こっちが殺し合いに乗ったことを知っているから逃げている。
 判断は理解できるが、どこでそれを知ったのかが分からない。
 気づけないほどの距離から遠目で見られたというなら話は終わるが、この暗闇の中そんなことが可能なのだろうか。
 捕らえて聞き出すべきかもしれない。

 土方はそう考えて追おうとするも、スバルはキラーパンサーに飛び乗って逃走してしまった。
 いくら廃棄物(エンズ)といえど、瞬間ならいざ知らず追走戦で魔物を超える走力は出せない。
 どうしたものかと思案するも、すぐにNPCである十匹ほどのスタルホースに乗ったゴブリンの群れが現れ、彼に襲い掛かった。

 土方はゴブリンの群れを認識した瞬間、即座に幽霊を呼び出し馬上のゴブリン達を殺していく。
 すると、乗り手を失ったスタルホースの群れは即座に大人しくなり、新たな乗り手を歓迎べく土方をじっと見る。
 彼は即座に飛び乗り、スバルへの追走を再開した。


 そしてスバルと土方の二人は気づけばG-2にたどり着いていた。
 どこをどう逃げたのかスバルは覚えていないが、気づけば二人とも川に架かった橋を渡っていた。
 いつまで逃げりゃいいんだ、とスバルが焦り始めた頃――

11三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:28:08 ID:HQ6z0mUk0

「そこまでよ」

 空からピンク髪の少女が降りてきて、スバルと土方の二人に向けて油断のない瞳を向けながら、それぞれ両手の人差し指を突き付ける。
 突如現れた少女、リルルに対する二人の反応は大きく異なった。

 まずスバルは、止めようと思った。
 こっちを警戒するのは仕方ないにしても、今後ろにいるのは鉄の扉を切り裂き、ゲレゲレを一度は殺した程の剣士だ。
 少女の実力がラインハルトほどだったとしても、それを判断する術はスバルにはない。

「逃げ――」

 だからスバルは逃げるように叫ぼうとするが、それより早く土方は幽霊を呼び出しリルルに突撃させた。
 彼からすれば、突如現れた少女は自分よりは強いかもしれないが、今戦おうとしている剣士より強いかは分からない。
 ならば危険を忠告し、逃がそうとするのは彼の中の必然である。
 だが――

 ジュッ

 リルルの指先から放たれた熱戦が幽霊を消滅させたことで、スバルの認識は切り替わった。

「うおっ!?」

 対抗手段を持つにしてもまさか指先からビームを撃つとは思わなかったので、驚くスバル。
 しかし彼は今まで魔法を使うハーフエルフや鬼、精霊など人外には慣れた身。
 すぐにそういうものと理解し、自分を助けた以上おそらく殺し合いに乗っていない上に頼れる相手だと認識し、キラーパンサーから一旦降りた。

 一方の土方も幽霊があっさり消されたことには驚いたが、即座に意識を切り替えてリルルを睨む。
 少女の姿をしているからと言って甘く見る気はない。
 彼の陣営には少女でありながら戦場の経験がある炎を操るジャンヌや、少女ではないものの氷を操るアナスタシアがいる。
 目の前の相手もまた、そういう類なのだと判断した。

 
 だが二人の思考とは裏腹に、リルルは土方のみならずスバルも警戒していた。
 そもそも彼女が土方を攻撃したのは、スバルを助けるためというより、殺し合いに乗っている相手を排除するための意味合いが強い。
 それに彼女には、どうしても一つだけ確かめなければならないことがある。

「……一つ、あなたに聞かないといけないことがあるわ」
「な、何だよ」

 あまりにも剣呑なリルルの態度に思わず戸惑うスバル。
 しかしそんなことはどうでもいいとばかりに、彼女は問うた。

「あなたの名前、佐々木哲平?」
「……は?」

 質問の意図が理解できず、現状を忘れ思わず呆けるスバル。
 そんな彼にリルルは凄む。

「答えなさい」
「い、いや違えよ」
「そう。ならいいわ」

 威圧感に屈し素直に返答するスバルを見て、剣呑さを解くリルル。
 なんかあったのか、と思うが今はそれどころではない。
 しかしリルルはスバルに続き土方にも同じ質問をした。

「多分違うでしょうけど、一応聞くわ。あなたの名前は?」
「…………」

 これにどう対応するか、土方は少々悩む。
 別に答える義理はないので無視して斬りかかってもいいが、スバルと同じく質問の意図が理解できない。
 素直に考えれば佐々木哲平という男に何らかの恨みがある、と考えるのが妥当だが、その割に少女は顔を知らない。
 顔を知らないのだから名前を聞いていると考えれば推測できれば、それはつまりあったことのない相手に敵愾心を抱いているというわけで。
 まあ、そんなことはよくあるといえばよくあるのかもしれない。
 自分だって、薩摩というだけで島津豊久に敵意を向けたりしたのだから。

12三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:28:39 ID:HQ6z0mUk0

 だからここで考えるべきは、この質問にどう返すかだ。
 選択肢は大きく分けて三つ。

・素直に本名を名乗る
・偽名を名乗る
・無視する

 さっきも考えたが、無視するのが普通だ。
 だが偽名を名乗り、場を混乱させるのも手だろう。
 戦で裏切り挟撃は当たり前。偽装を用いて土方歳三が殺し合いに乗っていることを隠すのも立派な戦術だ。
 しかし土方はこれを脳内で却下した。

 土方は最初に異世界の新選組に所属する二人の沖田と遭遇している。
 この時沖田達が土方を土方だと認識しているのだ。
 沖田総悟の知る土方十四郎とも、沖田総司の知る土方歳三とも違うにもかかわらず。

 つまり、それだけの情報を理解する程度には会話を交わしたということだ。
 己の大切なものの為、何も関係がない相手はおろか、異世界とは言え同僚に手を掛ける覚悟があるにもかかわらず。
 もっとも、彼の願いは大切なものを取り戻したいと言う、とても情の深いものだ。
 それを念頭に置けば、これは必然かもしれない。

『日本武士と戦えたちと思うだが』

 そして、この殺し合いの前に戦った島津の言葉が、彼の選択肢を決める。
 たとえ目の前の二人がどんな反応をしようとも。

「……元新選組副長、土方歳三だ」
「土方歳三だって!?」

 土方が名乗ると、スバルがおおいに反応する。
 服装はともかく、外見は同郷なので知っている様だ、と土方は考える。

「俺も随分と有名になったものだな」
「知らねえだろ。百年後の日本だと新選組の知名度は抜群だぜ。
 あんたを知らない今の日本人なんて、赤ちゃんぐらいのもんだ」

 賊軍だった筈の新選組が後世には随分と名が残っているらしい。
 三国志の董卓か、それとも同じ廃棄物のジャンヌか。
 いずれにせよ、ロクなものではあるまい。

「あんたに分かりやすく言うなら、今の日本じゃ新選組の扱いは三国志や水滸伝みたいなもんだ。
 英雄だよ英雄」
「……何?」

 しかし、スバルの言葉は土方の予想を裏切り、むしろ評価されているようなものだった。
 そのことに彼は思わず動揺する。

 もしそれが事実なら。
 俺の願いは、もしかしたらとんでもない空回りではないのか。
 いや、もしかしたらそれは目の前の少年の世界だけの話かもしれない。

 まさかの真実に土方は、ここが殺し合いの会場であることすら忘れ、動揺する。
 しかし殺し合いである以上、土方の事情を敵が考慮する理由はない。

 リルルは土方が動揺した一瞬の隙を突いて、ビームを放ち川に突き落とした。
 だが慌てる土方ではない。
 幕末において日本泳法、水術は武芸の一環として扱われており、古来は川や海を甲冑を着用したまま泳ぐものだったという。
 さらに彼には、為次郎という嵐の日に川で泳いで渡ると言う逸話を持った兄が居る。
 その兄に土方は新選組の支援者である佐藤彦五郎と連名で為次郎に当てた手紙も現存している。
 ならば、弟である土方歳三にも泳ぎの心得があってもおかしくはないだろう。
 更に言うなら、今の彼は廃棄物(エンズ)である。
 仮に泳ぎの心得が何一つなかったとしても、川に落とされた程度でどうこうなる存在ではない。
 川に落とされただけならば。

 ジャッ

 何の音だ、と土方が思った瞬間、彼は手足が白い粘液で固まっていた。
 前に視線を向ければ、そこには何やら銃を構えたスバルの姿が。

 この銃の名前は瞬間接着銃。
 とある世界の22世紀の道具で、効果は強力な接着剤を弾として撃ちだすというもの。
 いくら土方が廃棄物(エンズ)となり人間を超えたとしても、この接着剤は人間より巨大なロボットを拘束できるほどのものだ。
 時間を掛ければ拘束を解けるかもしれないが、下は川だ。
 仮に彼が泳ぎの名手だとしても、手足を固められて泳げるわけがない。
 廃棄物なので死ぬことはないが、ただ流されるしかできない。

「あれで死んだかしら……?」
「いや、あの接着剤は五分しか効果がないらしいぜ。早く離れたほうがいいな」

 一方、リルルとスバルは流されていく土方を見ながら、どこか物騒な会話をしていた。
 しかしスバルがそう言うと、リルルは素早く移動する準備を整え、声を掛ける。

「それなら、手早く移動しましょう。
 私はジャンク・ジャンクションへ向かうつもりだけど、あなたはどうする?」
「そうだな……」

 リルルの問いに頭を悩ませるスバル。
 さっきは気付かなかったが、冷静になると川を越えたということは、おそらく自分はF-3のレイジー・リンクスから東へ逃げてきたらしい。
 つまり、B-2にあるジャンク・ジャンクションに向かう彼女について行くと、途中までは一度通った道を戻ることになる。
 しかし、やっと出会えたまともで話の通じそうな相手と、ここで別れていいものか。

「俺は――」

 スバルの出した結論は――

13三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:29:04 ID:HQ6z0mUk0

【G-2/早朝】

【リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
[状態]健康 怒り レグルス、佐々木哲平への嫌悪感(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、とうぞくのかぎ@ドラゴンクエスト3、『子』という文字が12個書かれた紙@妖怪の飼育員さん、ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC、藍野伊月の基本支給品、防御スペルカード@ファイナルソード
[思考・状況]
基本行動方針:ジャンク・ジャンクションへ向かい、首輪解除の部品を入手する
1:スバルの返答待ち。一緒に行くか一人で行くかは別にどっちでもいい
2:佐々木哲平に会えば、藍野伊月のことを話す。
3:レグルスはまた会ったら確実に殺す。土方歳三も
4:ドラえもん、のび太と合流する
[備考]
※アイノイツキとの会話で、彼女の過去、現在を知りました。
※処刑されそうになっていた所を、ドラえもん達に助けられた直後からの参戦です。
 原作版、羽ばたけ天使たち版どちらを参考にしても問題ありません。
※佐々木哲平をタイムマシンを悪用した犯罪者だと認識しました。ホワイトナイトを盗作したと判断しています。
※飛行能力に制限があり、一定時間以上飛び続けると、首輪が点滅し始めます。

【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)、土方への警戒心(大)、魔女の残り香(中)
[装備]:キラーパンサー@ドラゴンクエストV、瞬間接着銃@ドラえもん
[道具]:基本支給、お守り@こじらせ百鬼ドマイナー
[思考・状況]基本行動方針:
1:少女(リルル)と行動するか、それとも――
2:レム、無事でいてくれ!
3:『天国』なあ……宗教家ってやっぱ禄なヤツいねぇな!
4:本物の土方歳三までいるのかよ……
[備考]
※エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
※参戦時期は聖域に向かう前後。
※『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。
※『死に戻り』にも制限が掛かっています。以下一覧
 ・『死に戻り』には回数制限在り。正確な制限回数は現在不明
 ・セーブポイントは主催者側の意思で設定、変更される
 このうち、スバル当人が把握しているものは『死に戻り』の回数制限のみです。
 これ以外にも制限があるかは現在不明です。

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]健康、異様な気配(魔女の残り香)への警戒心(中)、動揺(大)、川に流されている
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる
1:新選組が英雄……?
[備考]
※参戦時期は単行本4巻終了時点。
※召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
 また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。
※魔女の残り香を感じ取れます。
※川に流されていますが、特に何もなければ生存します


【瞬間接着銃@ドラえもん】
ナツキ・スバルに支給。
撃つと強力なゲル状の接着剤を発射する銃。
その拘束は強力で、撃たれた相手はゴキブリみたいに地面にへばり付くことになる。
下が地面でなかったとしても、手足が固まって動けなくなるだろう。
あくまで撃ちだすのは接着剤なので攻撃力はない。

本ロワでは制限として撃ちだされてから5分で接着剤は消滅し、拘束は解ける。

14 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:29:31 ID:HQ6z0mUk0
投下終了です

15名無しさん:2023/05/12(金) 19:55:22 ID:X9kGQCbw0
下がり気味なのでage

16名無しさん:2023/06/06(火) 21:35:48 ID:xH9H4isU0
下がり気味なのでage

17名無しさん:2023/06/07(水) 11:45:01 ID:0D09GH560
投下でもないのに無意味にageるな。誰も喜んでないからなそれ。

18 ◆7PJBZrstcc:2023/06/08(木) 23:03:26 ID:OdqX.GgA0
日和、ブースカ、シャドウ茜、パワーで予約します

19 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:50:57 ID:TpNWiI/w0
投下します

20人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:51:38 ID:TpNWiI/w0
 H-4の森の中をあてもなく彷徨っていたパワーだったが、しばらくすると森を抜けていた。
 彼女自身も把握していないが、気づけば南下していたのだ。
 そしてそのまま特に誰とも遭遇することなく、同じエリアの名も無き街のような地帯に辿り着くのだが――

「飽きたのじゃ!!」

 パワーは思わず叫んでいた。
 何せ、彼女は殺し合いに乗っていて、なおかつ特に葛藤もなく殺しに乗り気である。
 そんな彼女がただ森を彷徨うだけで時間を使うことを好むだろうか。
 当然好みはしない。
 更に言うなら、彼女が令嬢剣士から奪い取ったトランスチームガンとバットロストフルボトルを使おうとしたものの、使い方が分からず結局デイパックに放り込んだ一幕があった。
 使い方を示す説明書きはあるものの、それは令嬢剣士のデイパックに眠ったままなのだから、仕方ないといえば仕方ないのだが。

「ん。そうじゃ!」

 ここでパワーはあることを思いつく。
 それは彼女が持っているデイパックだ。
 最初適当にデイパックに手を突っ込むと出てきたのがアヌビス神で、彼女と気が合いそのまま話を進めていたが、ここで改めて調べておくのも悪くないと考えたのだ。

「ワシはIQが100あるからのう! 当然覚えておったのじゃ!!」

 誰に言っているのか分からない言い訳じみた言動をしながら、パワーはデイパックに手を突っ込み、最初に触ったものを適当に引っ張り出す。
 するとそれはデイパックよりはるかに大きいのか、徐々に表れつつパワーの視界を覆う。
 やがて完全に出ると、そこには一台の車があった。
 知る人が見れば二代目フィアット500、ルパン三世の愛車で有名な車だと気づくだろう。

「何じゃこの車は?」

 パワーが疑問に思っていると、手には車に関する説明書きを持っていた。
 どうやら車と一緒に出てきたようで、彼女は特に躊躇することなく読み始める。
 そこにはこう書かれていた。

『東山コベニの愛車』
「コベニ……? 誰じゃったか……?」

 説明書きに書かれている名前を見て、聞き覚えがある名前だが誰だったか思い出せず頭を捻るパワー。
 ちなみに東山コベニとはパワーと同じ公安対魔特異課の一員であり、彼女とも面識はある。
 だがすぐに思い出せるほど深い仲ではない。
 しかしパワーは時間がかかりつつも思い出した。

「おお、トンガリを刺した奴じゃな!!
 おのれ……! あやつ、ワシに隠れてこんな車を持っておったとは、許せんのじゃ!!」

 物凄く理不尽な怒りをコベニに向けるパワーだが、車の持ち主はこの場にはおろか殺し合いにすらいない。
 そして怒っている当人はすぐにその怒りを忘れ、とりあえず車に乗り込み、発進させようする。
 しかし彼女は、車を運転するための知識がなかった。

「ミルドラースとかいう人間はなぜこんなに使いにくいものを支給したのじゃ……やはり人間は嫌いじゃ……」

 ミルドラースが人間ではないということを知らないせいで、とんだ飛び火を人間に浴びせるパワー。
 しかしこの車は殺し合いの為に主催者が支給した物。
 免許を持たない子供や車が存在しない世界の参加者もいる中、使えない物体だと思われないための工夫も当然ある。
 具体的には、説明書きに車の動かし方が書いてある。
 パワーはそれに気づき、早速読み始めた。
 そして数分後――

「ハハハハハハ! やはりワシは天才じゃ!!」

 そこには元気に車を疾走させるパワーの姿が。
 こうして彼女は進み始めた。
 特に目的地を定めないまま。

21人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:52:16 ID:TpNWiI/w0





 ブースカとシャドウ茜の追いかけっこは一進一退みえて、その実ブースカに圧倒的な不利がかかっていた。
 理由は二つ。ブースカの疲労とシャドウ茜の速攻にある。
 彼女に遠目とはいえ離れたはずなのに即座に見つかり、更に彼女にはバイクが支給され、猛スピードで追ってくるなどブースカ達からすれば予想外もいい所。
 ロクに回復する時間もなく、おまけにいくらラーメンを食べたからと言って、元々大食漢であるブースカにとっては焼け石に水。
 更に付け加えるなら、制限によりブースカニウムの消費が増えている今となっては、最早逃げることすら辛くなっていく。

 一心不乱なブースカの悪あがきも長くはもたない。
 結局、隣のエリアH-5の中でブースカは力尽きかけ、飛ぶことすらままならなくなっていく。

 そして――



 バッ!!



 突如現れた車にブースカは轢かれ、運ばれていた日和と共に宙をあらぬ方向へ舞い、やがてそれぞれ地面を転がっていく。

 ゴッ

 幸いなのか、ブースカは無事だった。
 撥ねられ地面を転がされ、力が制限されている今ではさすがのブースカもダメージが0とはいかないが、とにもかくにも生きてはいた。

「うう……ひーちゃん、大丈夫?」
 
 自らの痛みに呻きつつも、日和を心配するブースカ。
 しかしその心配は無に帰す。

「……え?」

 ここでブースカ達を追ってきていたシャドウ茜が追いつき、バイクから降りて目の前の光景に呆然となっている。
 遅ればせながらブースカも気付く。
 日和は血まみれで倒れていた。
 それも元々流していた肩からの血ではなく、頭からだ。
 近くには血の付いた石が。
 これだけあれば、誰でもここで起きたことに見当がつく。

 日和は車に轢かれ飛ばされた衝撃で地面を転がり、その時に頭を打ったのだ。

「……ひーちゃん?」

 ブースカが心配気に日和に呼びかけるも、返事はない。
 それどころか、息をしているようには見えない。
 血は止まらず、顔色はどんどん悪くなるばかり。
 肌の色もどんどん冷たくなる。

「ひーちゃん!!」
「やめるんじゃ!!」

 なおも必死になって日和に呼びかけるブースカを、ここまで何も言えなかった目玉おやじが止める。
 否、本当は分かっているのだ。
 ブースカの知能は小学校五年生並である。
 それだけあれば、目の前の光景がどういうものか理解できる。
 だが、感情がそれを受け入れられないだけなのだ。

 誤魔化す必要もない。はっきり言おう。
 鳥月日和はもう死んでいる。
 この殺し合いの中で華々しく散った沖田総司や、悲劇と絶望の中で潰れた西片ような物語性など無く。
 暴走する車に轢かれ頭を打って死ぬという、まるでテレビのニュースに映し出されたありふれた事件のような一幕で。
 シャドウ茜に『改心』させられることもなく、あるいは逆に本当の意味で改心させることも無く、何一つ言葉すら残すことなく、彼女の生はここで終わった。


【鳥月日和@妖怪の飼育員さん 死亡】
【残り87人】


「この……『悪党』め!!」

 目の前の日和の死に激昂したのはブースカではなく、シャドウ茜だった。
 自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたスカルが鉄パイプを取り出し、パワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

「な、何をするのじゃ!!」
「うるさい!!」

 いきなり引きずり出されたことに憤るパワーだが、シャドウ茜がそれ以上の怒りで封殺する。
 彼女の激昂には理由がある。
 彼女にとって『交通事故』は少々特別だ。

22人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:52:47 ID:TpNWiI/w0

 そもそもシャドウ茜が正義を志し、悪党を改心させようとしたのは、母親が轢き逃げで亡くなったのがきっかけである。
 彼女はその車の運転手を目撃していたが、その運転手は国会議員の大和田だった。
 当然彼女はそれを証言したが、警察は聞いてくれなかった。
 それどころか大和田の秘書が犯人ということになっていた。
 どういう経緯でそうなったのか彼女には分からないが、大和田が何かして秘書に責任を押し付けたに違いない。
 秘書は自殺し、家族は今も周りからの誹謗中傷に苦しんでいる。

 茜は大和田を許せない。
 自身の母を殺しながら、何の裁きも受けずのうのうとしていることを。
 そして警察も許せない。
 正義の味方のはずなのに悪を見過ごし、罪なき別の誰かが苦しんでいるのを救おうともしない。

 だからだろう。
 茜には、今目の前にいるパワーが許せない。
 人を轢き殺しておいて何の罪悪感も抱いていないであろう態度が、どこか大和田を思い起こさせるからだ。

 一方、パワーはそんな茜の事情など一切知らないが、とにかく目の前の少女が自分を責めていることだけは読み取れた。
 しかしそんなもので怯むパワーではない。
 彼女は理論武装を掲げ、自分が悪くないと心から信じ反論する。

「ワシが悪いのではない。ウヌのせいじゃ」 
「何を……!!」

 まさか自分のせいにしてくるとは思わなかった茜が動揺するが、パワーは構わず言葉を続ける。

「ウヌがあの女とあの悪魔を追い回さなければ、ワシはあやつらを轢かずに済んだ」
「なっ!?」
「何じゃその態度は……まさかワシのせいにするつもりか?」
 この……人殺しがぁ!!」
「違う!!」

 パワーの余りにも詭弁の過ぎる言い分に怒る茜。
 だがここには、それ以上の怒りを携えたものがいる。


「プリプリのキリリンコ、カッカッカ!!!」

 ブースカだ。
 今までは日和の死をただ悲しんでいたが、パワーと茜の責任を押し付け合うような会話に我慢ができなかった。
 故にブースカはどっちも許さない。
 日和を直接轢いたパワーも、その前に日和を刺したシャドウ茜も。

「待て、落ち着くんじゃ! 日和との約束を忘れるな!!」

 目玉おやじはその様子を危うく思い、必死に引き留めるが当のブースカは最早聞こえていなかった。
 ただ怒りのままに、まずはシャドウ茜へと拳を振り回しながら疾走する。
 ブースカの超能力の一つ、怪力なら彼女にも対抗自体は十二分に可能だろう。
 その攻撃が当たればの話だが。

 BANG!

 ブースカがシャドウ茜へと向かっていく最中、パワーを未だ抑えているスカルの手元には銃口から煙を吹く散弾銃が。
 スカルはブースカの足を見事打ち抜き、そのまま転ばせた。

「うわああああああああああああああ!!」

 転んだブースカの元にシャドウ茜とスカルが一気に詰め寄り、互いに手に持つ武器を全身全霊で振り下ろす。
 アサシンタガーが、鉄パイプがブースカの体を幾度も蹂躙する。
 彼女はただ恐ろしかった。
 人ではないものの純粋な怒りと、それがもたらすであろう暴力を。
 そこに正義などない。
 死を恐れるがゆえに、原因を取り除こうとする、あまりにも原始的な欲求でしかない。

 だがここまでなら、ブースカはこれを振り払えたかもしれなった。
 彼はいくつもの超能力を持ち、その中の一つには怪力がある。
 それを使えれば、シャドウ茜とスカルを振り払い、まだ戦いという概念に持ち込めるだろう。

 カランコロン

 しかし現実はそうはいかない。
 ブースカの頭にある王冠が地面に落ちてしまった以上は。
 スカルの殴打が偶然にも王冠を叩き落としたのだ。

 ブースカの王冠はブー冠といい、彼が使う超能力はここから発生するエネルギーブースカニウムを消費して使用する。
 それゆえ、ブー冠がブースカから離れると、彼は超能力が使えなくなってしまうのだ。
 だからここからはただの蹂躙だ。

「いたい、よぉ……」

 ブースカには、最早呻くことが精一杯だ。
 それでも震え、抵抗しようとするが、何にもならず、やがて彼も日和と同じく動きを止める。
 シャドウ茜とスカルの暴力に晒され、力尽きることしか出来なかった。


【ブースカ@快獣ブースカ 死亡】
【残り86人】

23人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:53:13 ID:TpNWiI/w0

「ハァ……ハァ……」

 動かなくなったブースカを見ながら息を整えるシャドウ茜。
 止めを刺したのは彼女のアサシンダガーだったが、そんなことに意味はない。
 そもそもスカルも所詮は彼女が作り出したものなのだから、どうあっても彼女が殺したのと同じことだ。

「……違う」

 シャドウ茜は必死に否定する。
 何をと問われれば、己の行動の意味を。
 断じて、ブースカを殺したのは恐怖にかられたからではないのだと。

「違う! 違う違う!!
 私は正義で! こいつも、あの女も、『悪党』だから改心させなきゃいけなかったから!!」

 ただ一人必死に否定するシャドウ茜。
 傍らのスカルが何やら声をかけているが、それすら聞こえない。
 自分は正義だと、必死に叫ばなければ壊れてしまいそうで。

 日和とブースカの死体という、かつて命だった二つの物体が、責め立てているように感じる。
 これがお前の正義か。
 こんなものがお前の言う改心なのか、と。

「そうよ!! これが、正義よ!!」

 必死に訴えていたシャドウ茜だが、ここで彼女はようやっと気づく。
 この場にいたはずのもう一人の登場人物、パワーの姿がない。
 乗って来た車と共に、既にこの場を去っていることに。

「……絶対に許さない」

 新たな悪を見つけ、改心を誓うシャドウ茜。
 それが義憤か逃避か、判断してくれるものは誰もいない。





「なんという野蛮な人間どもじゃ!!」

 スカルの拘束が解けた瞬間にコベニの愛車に乗り込み、あの場から逃げ出したパワー。
 彼女はあからさまにシャドウ茜の行動を侮蔑しつつ、二対一は不利という考えから逃走を選択した。

「じゃがそもそもこの殺し合いに優勝できるのは一人だけ。
 どうせあやつらもいずれは仲間割れするに決まっておる。そうなればワシの勝ちじゃ」

 そしてパワーは勘違いしていた。
 スカルもまたこの殺し合いの参加者の一人と思い、殺し合いに乗っている者同士が一時的に手を組んでいると考えていたのだ。
 だからいずれコンビも解消されると彼女は推測した。

 だがスカルは参加者ではなく、シャドウ茜が作り出したものでしかない。
 そもそも首輪がついていないのだから参加者でないと気づくことは難しくないのだが、パワーはあの状況でそこまで見ることはできなかった。

「まあしばらくは離れておくとするかのう! せっかく車も手に入ったのじゃしな!!」

 ハハハハと高笑いするパワー。
 彼女は何も変わらない。ただ理性ある魔人としての振る舞いをするのみ。
 そして彼女は気付いていない。
 この車に乗っているのは彼女だけではないことを。

(すまぬ! すまぬ! すまぬ!)

 車内のパワーから見えない位置に、目玉おやじが隠れ潜んでいた。
 彼はパワーが逃げ出すのを見て、咄嗟にここで残っても無駄死ににしかならないと判断し、彼女の車に乗り込んだのだ。
 しかし彼の心中はあまりにも暗闇に飲み込まれていた。

 いくら仕方ないと理由を付けることはできても、心を通わせた仲間をむざむざ見捨てて逃げたことは、彼の中で大きな傷となっていた。
 そして更に傷を広げるであろう決意を、彼は掲げる。

(すまない日和。わしはお前さんの願いを叶えられん)

 日和はシャドウ茜を説得し、仲間にしたがっていたが目玉おやじはできるとはもう思っていない。
 彼女は死亡し、ブースカも後を追うように逝ってしまっただろう。
 だから彼は決意する。日和の想いを無下にする決意を。

24人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:53:48 ID:TpNWiI/w0

(わしはあの女を殺す)

 弔いなどではない。ただ目玉おやじの決意としてシャドウ茜を殺すと決めた。

(そしてこの女もじゃ)

 そしてもう一人、パワーも同様だ。
 目玉おやじは運転手をこっそりと睨む。
 かつて妖怪の王だった彼にも分からない異世界の存在だが、そんなことは関係ない。

 この場には物として持ち込まれたが、ここに在るのは意思ある命。
 ただ一匹の妖怪として、彼は化物討伐を心に誓う。


【H-5/早朝】

【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康、精神的動揺(大) 『マイ・ディア・クイーン』の顕現、岸部露伴のバイクに搭乗中
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.逃げた悪党を追いかけ、改心させる
2.あの女(パワー)は絶対に改心させる。
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
4.どうせ皆、悪党なんでしょ………………そうに決まってる! そうじゃなきゃ……
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。

【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている、コベニの愛車運転中
[装備]:血の剣@チェンソーマン、コベニの愛車@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド の使い方が分かりません。
スカルを参加者と思っています。
車の中の目玉おやじに気付いていません。
どの方向に逃げたかは次の書き手氏にお任せします。


※G-5 東部にて以下のものが放置されています。
 鳥月日和、ブースカの遺体。
 鳥月日和のデイパック(基本支給品(カップ麺全滅)、アリアドネの糸(1本)@世界樹の迷宮シリーズ、ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森)、ブースカのデイパック(基本支給品(食糧は全滅)、アリアドネの糸(2本)@世界樹の迷宮シリーズ)。
※コベニの愛車@チェンソーマン の内部に目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎 が乗り込んでいます。


【コベニの愛車@チェンソーマン】
パワーに支給。
デンジとパワーの同僚、東山コベニが給料を貯めて買った車。
本来ならコベニは家族の送り迎え用にするつもりだったが、結果としては味方ごと敵の暗殺者を轢く、落ちてきた味方のクッションになる、敵へのトドメを刺す武器として扱われるなど散々である。
第一回人気投票七位。

本ロワでは支給品の説明書きに車の動かし方が書かれている。
これさえ読めば物理的に乗り込めない、もしくはハンドルやペダルに手足が届かない、とかでもない限り誰でも使えるようになるだろう。

25 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:54:15 ID:TpNWiI/w0
投下終了です

26 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 14:41:07 ID:TpNWiI/w0
すみません。ミスが発覚したのでこの下の文を

>自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたスカルが鉄パイプを取り出し、パワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

から

>自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にシャドウ茜はバイクを運転していたクイーンからスカルに切り替え、持っていた鉄パイプを振るってパワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

27 ◆j1W0m6Dvxw:2023/06/10(土) 22:43:09 ID:2Nk13DiA0
日和ー!ブースカー!!( ;∀;)
まさか第一放送前に死ぬとは………
何があってもおかしく無いのがパロロワとは言え悲しい( ;∀;)

28 ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 18:53:52 ID:zDmalwHM0
ゲリラ投下させて頂きます。
先に言っておきますと、メタ的な事情によりオグリキャップを生還させる話になっております。

29メッセージは唐突に ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 18:57:11 ID:zDmalwHM0
 地図から見て横長に建てられている洋館、そこがマサオとオグリキャップが先程入った建物だった。

 裏口の厨房から入り進むと、オグリキャップが大きな冷蔵庫を発見する。

(冷蔵庫… いや、マサオを守る)

 一瞬は冷蔵庫内の中に保管されてあるであろう食料に期待し、その扉を開こうと思ったのだが、幼い子供の同行者であるマサオが居ることもあり首を横にブンブン振って自身の食欲を振り払う。

「あの〜、ガマンしよ?」

 そんな彼女の姿を見てマサオがそう声を掛ける。

「そう、ガマンだガマン。」

 オグリキャップは冷蔵庫を発見したことによって発生した突発的な食欲を抑え、同行者と共に移動を続行。

 そうして食卓がある部屋にたどり着く。
 そこに食料は何もない。

 大きな扉を開け、一行は大広間に出る。
 赤いカーペットなどやシャンデリア等目立つものはあるが、それといってめぼしいものはない。

 一行はそこで金色に輝く手摺り付きの大きな階段を発見し、オグリキャップはマサオを抱えてそれに登る。
 一段一段に大広間のものと同色のカーペットが敷かれており、移動もさほど苦痛ではなかった。

 登った先は廊下であり、そこにはいくつかある部屋につながるドアがある。

 二人はひとまず登ってすぐの場所にある部屋に入る。

「うっわ〜、広ぇ部屋だぁ!」
(大きなベッド…!)
 そこは、大きなベッド等が目立つ広い部屋だった。
 ドアを閉め、二人は一旦休憩をしていこうとした、その矢先────


 オグリキャップの体が突然光出した。

 「え!? オグリキャップ…! 体が光ってるよ!?」
「…ホントだ。」

 それを目撃したマサオに声をかけられたことでオグリキャップもそれに気づく。

「どうも」
「「!!」」

 更には、先程までお互い気配すら感じもしなかったネルシャツ姿の男性が突然にも出現した。

「私は… 一般通過爺とでもお呼びください。
 主催者のメッセンジャーとしてやってきました」

 現れたのは一般通過爺だった。

「突然ですが、『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上でオグリキャップの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。
 ご安心ください。彼女は生きたまま、無事に元の世界へとお帰しします。
 また、彼女が現在ご所持されていらっしゃる支給品は全てここに残させて頂きます。
 では、私からは以上です。」

 彼がメッセージを告げ終えると、光に包まれるオグリキャップの頭からスタンドDISKが飛び出し、そのまま落下する。
 そして、彼女は会場から無事に退場し、そのまま元の世界へ送還してもらえる事になったのだ。

【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ 生還】
【残り85人】

 その場所には他に彼女が所持していた支給品も一緒に落ちている。
 そして、一般通過爺の姿も見えなくなっていた。

30メッセージは唐突に ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 19:00:30 ID:zDmalwHM0
 また、マサオは知らず、一般通過爺からも伝えられなかったが、支給品の布団と枕のセット、山盛りの炒飯、ブードゥー人形も支給前の状態に戻された上で元の世界に戻してもらえる事になった。

「そ…そんなあああああッ!!」

 だが、その場にマサオだけは残されてしまった。

【H-6 リテイル・ロー西側 洋館の一室/早朝】
【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:恐怖(大)、心理的ショック(大)、失禁
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけ達を探す
1:オグリキャップー!!
2:ヴィータちゃん、立香さん、行かないで……
3:しんちゃんを探したいけど……
4:いざとなったらひらりマントで自分の身を守る
5:しんちゃんのパパが二人...?
[備考]




※現在、マサオがいる部屋にスタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、オグリキャップの分の基本支給品、ランダム支給品×2(お菓子の類ではない)が落ちています。
※コルワに支給されていた布団と枕、岸辺露伴に支給されていた山盛りの炒飯、クッパ姫に支給されてブードゥー人形@ウマ娘 シンデレラグレイは支給前の状態に復元された上で元の世界に戻されました。

31 ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 19:01:02 ID:zDmalwHM0
投下終了させて頂きます。

32 ◆dxXqzZbxPY:2023/06/30(金) 21:28:31 ID:MJJFbEs60
他の参加者がオグリキャップの強制生還を知ったらどういう考え&行動をとるのか気になりますね…場合によっては面倒な事になるかもしれませんね

33名無しさん:2023/07/01(土) 18:34:24 ID:Ive.cSIE0
>>『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上でオグリキャップの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。

いや、だったら最初から参加させなきゃ良いでしょうが!?(゜_゜;)

34名無しさん:2023/07/01(土) 20:38:42 ID:ulsV.Ubc0
>>いや、だったら最初から参加させなきゃ良いでしょうが!?(゜_゜;)


そんなことはあなた以外みんな分かってますよ。
最初から参加させなきゃ良いじゃなくて、採用してしまった以上は読者も書き手もどうすべきか悩んでて、挙句の果てに役立たずのコンペロワ企画者は何もせずバックれたし、妥協を重ねた結果が今回の投下です。
そんな今更なことを書き込まないでください。

35名無しさん:2023/07/05(水) 01:29:53 ID:Rhzhm.cE0
投下乙です
ウマ娘のレギュレーションが確定したの採用後ですもんね……
最善の判断だったと思います……!

36 ◆7PJBZrstcc:2023/08/13(日) 14:17:29 ID:9zgP0quo0
クッパ姫、デンジ、エンリコ・プッチ、佐藤アカネ、とがめ、野崎春花 予約します

37 ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:16:32 ID:CGpEoJEE0
投下します

38命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:17:13 ID:CGpEoJEE0
 異様だった。
 殺し合いに乗った少女、野崎春花を五人の人間が囲う光景は。

 五人のうち二人、とがめと佐藤アカネは春花に襲われた被害者だ。
 二人とも下手人を殺す気はないが、彼女を見る目はは当然の如く厳しい。

 対する二人、クッパ姫とデンジが睨むのは春花ではなく、とがめとアカネである。
 二人から見れば、春花と合流できたと思ったらいきなり襲われたと主張してきているにすぎないのだから、当たり前といえば当たり前だ。
 しかしデンジのデイバッグを盗み、二人から逃げるように去っているという事実がある以上、分が悪いのは間違いない。

 最後の一人、プッチはそれどころではなかった。
 はっきり言って彼からすれば、春花は殺し合いに乗っていると思っている。
 彼女がデンジのデイバッグを盗むところを目撃しているうえ、スタープラチナを出していた以上十中八九戦闘していたのは確か。
 そしてその相手がNPCでなければとがめとアカネの二人であることはほぼ確定している。
 ならば、殺し合いに乗っていると考える方が自然だろう。

 だがそれよりもプッチにとって重要なのは、春花がスタープラチナのDiscを持っているという点である。
 彼の最終目的からすれば別にそこまで必要なものではないものの、スタープラチナが敵に回るという可能性はできれば排除したい。
 担い手が空条承太郎ではないとはいえ、その力が強力無比なのは間違いないのだから。

 そしてこの五人に囲まれる春花は今、迷っていた。
 最初こそ幸せな世界を手に入れる為優勝を目指すと決断したものの、最初に遭遇したペテルギウスには殺されかけ、次に出会ったクッパ姫とデンジには絆されかけ、そして今は負けて追い込まれている。
 ここで『最初は殺し合いに乗っていたけど、今はやめました。もう一度仲間にしてください』といえば、少なくともクッパ姫とデンジの二人は許してくれるだろう。
 しかしアカネが嘘を見抜く能力の持ち主である以上、この言葉は本心でなければ通用しない。
 そして春花には、今それを本心で言える自信はない。
 そんなにあっさり鞍替えできるのなら、最初から殺し合いに乗ったりしない。
 いくら迷い揺らぎ始めているとはいえ、彼女の家族に対する思いは軽くはない。

「なあクッパ。デンジ」

 各々がそれぞれの事情で口を閉ざす中、最初に口火を切ったのはプッチだった。

「……なんだ」
「なんだよ」
「私が野崎春花を追う前に言ったことを覚えているか?」
「あ〜っと、スタンドがどうこう言ってたやつか」
「そうだ」

 プッチの問いに答えるのはデンジ。
 彼はプッチが春花への疑いを晴らすのならさっさとやってくれ、とばかりにプッチを見る。
 その期待に応える、というわけでは無いが、プッチは話しかけた。

「野崎春花。少し、いいかい?」
「……あなたは?」
「私の名前はエンリコ・プッチ。
 今はクッパとデンジに同行している者で、普段はアメリカのグリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所において神父をしている」
「なあなあクッパちゃん」
「なあアカネ」

 プッチが自己紹介をしている後ろでデンジととがめがそれぞれ、同行者にあることを尋ねようとしていた。

「「しんぷって(とは)、何だ?」」
「えっと……」

 二人の質問が被っていることはともかくとして、質問の内容に困るアカネ。
 彼女からすれば神父について知っていることなど、教会にいる偉い人くらいの知識が精々であるが、あっている保証もない。
 なので言い淀む一方、クッパ姫は自信満々だった。

「なんだキサマら知らんのか。
 神父とはな、結婚式で結婚する夫婦に向かって誓いますか? と聞いてくる人の事だ」
「あぁ〜なんかテレビで見たことある奴か〜!!」
「神父をそんなゲームのNPCみたいな一言だけの存在にするんじゃあないッ!」

 クッパ姫の間違っているわけでは無いがあまりにも正確性に欠けた情報に怒るプッチだったが、すぐに収め春花へ向き直り話を戻した。

「ハァ……ハァ……まあクッパたちのことは今はいい。
 いや微塵もよくはないのだが、日本人はキリスト教に明るい人が少ないと聞いているし、どうやらキノコ王国にはキリスト教が伝わっていないようだ。
 ならばまあ、仕方あるまい。知らぬのなら教えるのが先人の務めだ」
(いいんだ……)

 息を荒げ疲弊するプッチの言葉に、思わず内心でツッコミを入れてしまう春花。
 しかしいつまでもそんな雰囲気は続かない。
 プッチは真面目な顔で春花に目線を向けると、背にホワイトスネイクを出現させた。

39命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:17:41 ID:CGpEoJEE0

「あなたもスタンドを……っ!?」
「さて野崎春花。これは君の言う通り私のスタンドだ。
 詳しく話す気はないが、私のスタンドは人の記憶を読むことができる。
 私はこれからこれで君の記憶を読もうと思う。理由はわかるね?」
「私が、殺し合いに乗っているかどうか確かめる為ですか……」
「そうだ。そして君が今持つスタープラチナならば抵抗できるだろう。
 私はそのスタンドについてよく知っている。君が本来の使い手でないことを差し引いても、そのスタンドは強力無比であることに変わりはない。」
「……」

 語るプッチとは対照的に口を閉ざす春花。
 なぜなら、彼女には目の前の神父が次に何を口にするのか予測がつくからだ。

「だから私は君が次にスタープラチナを出現させた瞬間、殺し合いに乗ったものとして判断させてもらう。
 聖職者として恥ずべきかもしれないが、場合によっては殺害も辞するつもりはない」
「なっ!?」
「オイオイオイ〜! そいつはちょっとやべえんじゃねえの〜!?」

 プッチの発言に驚愕するクッパ姫と、思わず諫めるデンジ。
 彼らは春花が殺し合いに乗っているとは思いたくないし、もしそうであったとしても殺して止めるという選択肢を持ち合わせていなかった。
 そして、持ち合わせていないのは二人だけではない。

「え、いやいやそれは流石に……」

 アカネもまた、プッチの発言に引いていた。
 彼女は春花が殺し合いに乗っていると骨身にしみて分かっているが、それでもやろうとしていることは凶行を止めさせることであり、殺すつもりはない。
 現代日本で育ったごく普通、とは少々言えない部分もあるが、それでも平和な場所で生まれ育った年相応の少女の価値観での判断だった。

「……」

 一方、とがめはプッチの発言に何も言わない。
 確かに彼女はアカネに合わせ、春花を積極的に殺そうとはしていない。
 だがとがめが生きていた時代は決して戦乱ではないものの、剣士や忍者が当たり前に存在する尾張時代。
 そして、その時代で自分の復讐のために殺しを覚悟し、許容している彼女は春花が死ぬこともまた受け入れていた。
 少なくとも、自分やアカネが死ぬよりは。

「わ、私は……」

 そして最後、春花は完全に詰んでいた。
 無抵抗でも抵抗しても殺し合いに乗っているとこの場の皆に晒される。
 抵抗しなければ殺されることはないかもしれないが、どうあっても願いを叶えることはできなくなると考えたほうがいいだろう。
 ならば――

「私は、殺し合いに乗っています……」

 先に全てを曝け出すことにした。
 どうせバレるのなら、いっそ全てを素直に話すことにした。

「うぬぅ……」
「春花ちゃん!?」
「やはりか」

 春花の告白にショックを受けるクッパ姫とデンジ。
 一方、プッチとしては予想できた話だった。最初からそのつもりで話を進めており、その通りの結末になっただけであった。
 だが次の問答ではそうはいかない。

「しかしなぜ、君のような少女が殺し合いに乗ったのかね?」
「……死んだお父さんとお母さんと、妹のしょーちゃんとまた、一緒に暮らしたくて」

 春花が紡ぐ壮絶な言葉に、誰も二の句が継げなかった。
 あまりすすんで人を傷つけるようには見えない彼女が殺し合いに乗っているということは、それ相応の理由があるとは思っていた。
 だがこれほど端的かつ、明確なものがあるとは思っていなかった。
 特にアカネは、目の前の春花が嘘をついていないことが分かるので、思いはひとしおだ。
 それでも何か話そうと先陣を切ったのはとがめだった。

「しかし春花、そなたに何があったのかは聞かないが、復讐しようとは思わないのか?
 例えば私は父上が殺されて、その復讐のために色々頑張っている最中なのだが」
「言い方軽いな!?」

 とがめのサラっと語られる復讐譚に、思わず言い方にツッコミを入れてしまうクッパ。
 しかし春花の返答は変わらず重い。軽くなるわけがない。

「復讐なら、終わらせました。
 お父さんとお母さんを燃やした人たちを、私は皆殺しにしたんです」
「マジかよ……」

40命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:18:07 ID:CGpEoJEE0

 春花の告白に、デンジの唖然とした呟きだけが辺りに響く。
 彼女の言葉に誰もが思う。
 一体何が彼女をここまで追い込んだのか。見た所ただの少女が、ここまでの覚悟を決めてしまえた理由が分からない。
 しかし誰もそれを聞こうとは思えない。

「野崎春花」

 やがてプッチが再び口を開く。
 彼の声色は慰める訳でもなく、かと言って糾弾するわけでもない。どこか淡々としたものだ。
 しかしそれが春花には、まるで慈悲のように思えた。

「君の気持ちは分かる、などとは言わない。
 だが私も昔、妹を失ったことがある。だから、家族を失う苦しみは分かるつもりだ」
「プッチさん……」
「あの時は思ったよ。妹はなぜ死ななければならなかったのだろうか。
 なぜ赤ん坊の時、私ではなくウェザーを連れて行ったのか。
 なぜ私は教会で婦人の告白なんか聞いてしまったんだ。
 なぜ私は神父になんかになろうとしたんだッ!
 なぜ人と人は出会うのだ!? 出会わなければあんなことにはならなかったのに、とね」

 プッチの徐々に熱を帯びていく言葉の意味が、春花のみならず誰も理解できない。
 だが彼の言葉に嘘はない。それだけは、アカネでなくとも理解できる。
 そのまま彼の話は続く。

「妹の死について彼女は何も悪くない。
 それでも妹が死んだのは、友人の言葉を借りるなら引力によるものだろう」
「引力ゥ? なんだそれ?」

 到底つながっているように感じないプッチの言葉に、意味が分からず思わずデンジが口を出す。

「引力とは、本来なら物体が引き合う力のことだが、この場合はそうだな……運命と言ってもいいかもしれないな」
「キサマ……妹が死んだのを運命で片づけるのか?」

 プッチの物言いに思わず食って掛かったのはクッパ姫だ。
 クッパJrという息子や、多くの部下を大事に思っている彼女からすれば、まるで妹の死を仕方なかったかのように語るプッチの言い分は気に入らない。
 だがプッチも引かない。

「そうだ。でなければ妹はなぜ死ななければならなかった?
 彼女は何も知らず、ただ恋をしただけだ。呪われるべきはこの私だ。
 だがそれがなんだ? どんな理由があれば、私の妹が死んでいいことになるんだ?」
「それは……」

 プッチの質問に言葉を止まらせてしまうクッパ姫。
 そもそも彼の妹のことなど何も知らないのだから、何かを言いようがない。

 その様子を見て、クッパ姫が何も言う気がないと判断したプッチは、春花に向き直り話を続ける。

「野崎春花。同じような傷を持つ者としてお願いだ。
 殺し合いに乗るなんてやめ、私と『天国』を目指さないか?」
「そんな、私が今更天国なんて……」
「ああいや、そういう意味じゃない。私の言う『天国』は死後の世界のことではないよ」

 プッチの誘いに目を逸らして断る春花に対し、彼は『天国』の意味を語り始める。
 それはこの殺し合いで最初、スバルに語り拒絶された内容そのままだ。
 人類が生まれてから滅ぶまで全ての運命が定まり、それを皆が理解している世界。
 先が理解できるゆえの『覚悟』こそが、人々の幸せなのだと、プッチは熱く語った。
 だが――

41命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:18:37 ID:CGpEoJEE0

「何言ってるの、この人……」

 アカネには理解できない。
 未来を知るということがどういうことなのか、彼女はプッチ以上に理解できるがゆえに。
 それを幸福だと心から断じる彼の性根は狂っているとしか言えない。

「おかしいぞキサマ!」
「全く同感だ」

 クッパ姫ととがめもまた、プッチの言う『天国』など受け入れない。
 二人は敵意を以て彼を睨む。

「……」

 そして春花は何も言わなかった。
 ただ背にスタープラチナを顕現させ、プッチに向けて戦意を向ける。
 これだけで、彼女の思いは理解できるだろう。

「そうだよな春花ちゃん。
 二度も大事な奴殺されたくねえよなぁ〜!!」

 ギュイイイイインン

 デンジから響き渡るチェーンソーのエンジン音。
 それと同時に現れるは、頭と両腕にチェーンソーを生やした、悪魔でも魔人でもないもの。
 チェンソーマンがここに来た。

「くっ……! なぜだ! なぜ誰も私の『天国』を受け入れない!!
 2……3……5……7……11……」

 一気に四面楚歌の局面に陥ったプッチは叫ぶが、誰もそんなものは聞き入れない。
 素数を数えながら思考する彼に残された手は二つ。
 一つは現在可能かどうかは不明だが、未来の悪魔と契約すること。もう一つは、彼のデイバッグに残る最後のランダム支給品。
 彼が選んだのは――

 バッ

 プッチは素早く自身のデイバッグに手を入れ、最後のランダム支給品を取り出した。
 それは一見すると紐で封された古ぼけた巻物でしかない。だがこの場に小鬼殺しの銀等級冒険者がいれば、それが何か分かっただろう。

         ゲート       スクロール
 この巻物は《転移》が記された巻 物。
 それも、かつてゴブリンスレイヤーが使ったのと同じく、海底に転移先が繋がっている物だ。
 これを開けば

「え……? あれ……?」
「とがめ!?」

 海底から地上へとつながったことで、猛烈な水圧がウォーターカッターとなって前方へと襲い掛かる。
 ここで前方となる方向にいた者は、とがめだった。
 彼女はかつてゴブリンスレイヤーが倒したオーガと同じように、上半身と下半身が分断されていた。
 『堅剛月餅』の効果など関係ない。
 例えばHPが100しかないのに9999のダメージを受ければ、仮にダメージを50減らせたとしても即死するのみだろう。

「まったく……こんなもの、奇策も何もないではないか……」

 愚痴りながら薄れゆく意識の中、とがめが最期に思い浮かべるのは一人の男のこと。
 それは仇を討とうとした亡き父ではなく、仇そのものでもない。
 彼女が復讐のために手に入れた『刀』、鑢七花のこと。

「七花……私は、おまえが……」

 とがめが七花に何を言い残そうとしたのか、知ることが出来るものはいない。
 きっと本来の最期と同じではないのだろう。
 なぜなら本来の最期は、殺害者の情けにより最期の言葉を残す時間があった。
 だけど今ここでそんな時間はない。彼女自身が思考する体力がない。
 だからここまで。誰にも届かず何も分からない言葉がただ、虚しく空を切っただけ。


【とがめ@刀語 死亡】
【残り84人】

42命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:19:05 ID:CGpEoJEE0


 だがとがめの死などプッチからすれば、障害が一つ消えた程度のものでしかない。
 周りが彼女の突然の死に動揺する隙を見て、彼は彼女の死体の横を走り抜ける。

「あっ! 待ちやがれ!!」

 プッチの逃走に気づいたデンジが追いかけようとするも、その時あることが起こった。
 それはプッチにとって幸運なことに、とがめのデイバッグの中身がさっきの衝撃でぶちまけられたのだ。
 中身は基本支給品一式に、緑茶とオレンジジュース。
 そして4級未満の雑魚呪霊、蝿頭。

「なんだコイツは!? クリボーの一種か!?」

 クッパ姫が突如現れた蝿頭に驚くも、即座に倒そうと炎を吐く構えをする。
 蝿頭は木製バットで簡単に祓える程度の雑魚。彼女なら手間暇など掛けることもなく一瞬で追い払い、即座にプッチの追跡に移行できるだろう。
 何もなければ。

「ぬおっ!?」

 しかしそうもいかない。その時、蝿頭とは関係なくある出来事が起こった。

「なんだ!? ワガハイの人形が消えたぞ!?」

 なんと、クッパ姫が持っていたブードゥー人形が手元から消えてしまったのだ。
 これはガイドライン違反によりロワ進行に支障が出ることを恐れた主催者が、オグリキャップとシンデレラグレイ出展の支給品を送還したことが理由なのだが、タイミングが悪いせいで彼女達はこう勘違いしてしまった。
 蝿頭には、何か物体を消滅させる能力があるのではないか、と。

 こうなれば迂闊なことはできない、と慎重になってしまったクッパ姫達とは対照的に、グングンと疾走し逃げていくプッチ。

 ブン

 せめてもの悪あがきに、春花はスタープラチナでラグマイト鉱石を投げつけたが、プッチのホワイトスネイクで防がれてしまい、逃走を妨げることはできなかった。


 不運により生じた誤解で危険人物を逃してしまったクッパ姫達。
 誤解が解けるのにそこまでの時間はかからないだろうが、この僅かな隙に生まれた時間が誰に何をもたらすのか。
 そんなことは、誰にも分からない。





 一方、必死に逃げながらプッチは考える。
 勧誘にまたも失敗したのみならず、あの場で一人殺してしまったからには最早クッパ姫、デンジ達と敵対は避けられないだろう。
 こうなれば未来の悪魔と契約することも視野に入れなければならないかもしれない。

 だが契約すると言っても、向こうにその気はあるだろうか。
 確かに最初は向こうから契約を持ちかけたものの、一度は素気無く断ったのだ。
 それを状況が不利になったからと言って契約したいと言って、向こうが頷くだろうか。
 最悪、私を見限ってあの場にいた他の者に契約を持ちかける可能性すら存在する。

 色々考えるプッチだが、何を差し置いてもまずは逃走に成功しなければ話にならない。
 なぜか向こうは現在足を止めているものの、いつまた追いかけてくるか分からない。
 ならば、何としても距離をとるかどこかに隠れ潜むしかないだろう。


 どれほど他者に否定されても、プッチは己の正義を信じている。
 何でもすると誓ったあの時から、彼は『天国への階段』を登ることを決してやめはしない。

43命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:20:12 ID:CGpEoJEE0


【F-5/早朝】

【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:目の前の化け物に対処する
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る
4:プッチめ、ワガハイをコケにしたことは許さんぞ!
5:ペテルギウスに出会ったら倒す
6:そろそろワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……?
[備考]
※性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
※スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。
※マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。
※春花と情報交換をしました。
※ホワイト・スネイクの能力について把握しました
※長時間女性でいることで性格に影響が出ているかもしれません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康、動揺、チェンソーマンに変身中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:目の前の化け物に対処する
2:プッチはぶっ殺す。
3:パワーかぁ〜合流したくねえ〜! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。
4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……?向こうの世界では一般なの?
5:未来の悪魔うさんくせぇ〜!将来こんなのと契約してアイツ(早川アキ)大丈夫?
[備考]
※時間軸は永遠の悪魔の後。
※春花と情報交換をしました。
※ホワイト・スネイクの能力について把握しました
※異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:
[道具]:基本支給品、星型の風船@タイムパラドクスゴーストライター
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:目の前の化け物に対処する
1:春花とプッチに凶行をやめさせないと
2:とがめ……
[備考]
※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。
  しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。。

44命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:20:35 ID:CGpEoJEE0

【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(大)、背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量))
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する…?
1:目の前の化け物に対処する
2:プッチの『天国』は絶対に受け入れない
3:ペテルギウスを殺すため、強力な支給品を集める。
4:デンジさんの支給品については後で調べる。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※スタープラチナのDISCを装備しています。
※スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。
※クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー、のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:とりあえず逃げる
2:未来の悪魔と契約するか……? いやしかし……
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:機会があればスタープラチナのスタンドDISCをとり戻したい。承太郎の記憶DISCもあればいいが…
5:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
6:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
※参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
※ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
※デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
※制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
※NPC 未来の悪魔@チェンソーマンが同行中です。参戦時期は少なくとも早川アキとの契約後。
  基本的にプッチに合図されるまでは隠れて移動していますが、勝手な行動をする場合も多々あります。


※F-5にとがめの遺体と参謀エンリルのナイフ@モンスター烈伝 オレカバトル、基本支給品、缶飲料2本(種類は緑茶とオレンジジュース)@呪術廻戦(アニメ版) が放置されています。
 そこから少し離れた所にラグマイト鉱石@Re:ゼロから始める異世界生活 が放置されています。


【《転移》の巻物@ゴブリンスレイヤー】
エンリコ・プッチに支給。
元々は書き記した場所まで繋ぐ門を生み出す古代の遺物。使い捨て。
ゴブリンスレイヤーは海底に繋ぐことで水責め、ウォーターカッターにするなどの使い方をした。
本ロワで支給されたものも同様に、海底に繋がっている。

45 ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:21:04 ID:CGpEoJEE0
投下終了です

46 ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:21:53 ID:H4Jk8qt60
ゲリラ投下します

47別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:22:35 ID:H4Jk8qt60
 エーリュシオンは少し考えた末、西を目指すことにした。
 地形を利用して情報格差で有利なエリアへの移動も考えたが、裏を返せばそれは自分の情報を持っている相手に十分な時間を与えてしまうことも意味する。
 無論、再び自分と相まみえるまでに殺されている可能性は十二分にあるが、そうでなければ厄介なことになるだろう。

 これは拙速なのか石橋を叩いて渡る慎重さか、はたしてどちらなのだろうか。

 だが選んだとなれば行動は早い。
 エーリュシオンは早速西へ向けて出発する。
 方位磁石も無しに西へ向かえるのかという言葉もありそうだが、そこは天使。
 人間を見下すだけあって、人間だと間違えそうな部分で間違えたりはしないのだ。
 しかし道を間違えてなければ問題が発生しないのかと言われると、そんなことはない。

 まず、エーリュシオンの出発地点はD-6とD-7の中間地点である。
 この辺りは地図を見てもらえば分かる通り、ここから西に向かえば小さな山が彼の行く手に立ちはだかる。
 山を登る気には毛頭なれない彼は小山を南沿いに迂回して進むことにした。

 さて、ここまでの過程で何が問題なのかというと、まず一つはエーリュシオンが他の参加者と遭遇できていないこと。
 なお、時間軸的にはC-7からD-7 シフティ・シャフトに移動したエレン・イェーガーや、同じ場所にいる桐山和雄と遭遇する可能性もあるにはあったが、結果としてそれは起こらなかった。

 それはさておき、エーリュシオンにはもう一つ問題が発生している。
 何かというと――

「GBGB!」
「GUIII!!」
「GBGYRRR!」

 群れと称してもいい程の数のゴブリンが、彼の眼前に立ちはだかっている。
 それも全てが陰茎を滾らせ、彼に情欲を向けながら。

(どういうことだ?)

 エーリュシオンがこの状況で最初に覚えたのは、疑問。
 彼はこの殺し合い開始直後、ウィズとキュアダイアモンドと戦闘する前に、実はゴブリンと遭遇している。
 最初見たときはこんな醜悪な舞台装置を設置するか、と多大な嫌悪感を抱いたが、自身に性欲を向けてはいなかった。
 こう違和感が浮き彫りになると、抱くのは嫌悪ではなく疑問である。
 しかしその答えはすぐに見つかった。

「キィーッ! あの男をレイプしろぉ!!」

 ゴブリンの群れの奥には、どう見てもゴブリンではない緑色の異形、メガデス怪人が指揮官の体で堂々と立っていた。
 怪人はどこからか緑色の光線、ホモビームを放ち、撃たれたゴブリンは意のままに陰茎をいきり立たせ、エーリュシオンに立ちはだかる群れの一員となった。

「あれには舞台装置を操る力があるのか」

 この流れからあの異形にはNPCを操る力があると考えたエーリュシオンは、ゴブリンの手が届かない所まで飛翔してそのまま勢いよく怪人へと突進する。
 人間ならば道具か異能か。あるいは技術を持たなければ舞えぬ空。
 しかし彼は天使。生まれ持ったものだけで自在に飛ぶことが出来る。人が地面を歩けるのと同じように。

 ガシッ

「キィーッ!」

 メガデス怪人は飛んできたエーリュシオンにホモビームを放とうとするが、それより先に首を掴まれる。
 ギギギと鈍い音を立て、いつでもへし折れることをアピールしつつも、しかしエーリュシオンは首を折らない。
 その理由は極めて簡単だ。

「貴様、この醜悪な舞台装置を操れるな?」
「ハイ(素)」

 命の危機の余り、思わず部下であるメガデス戦闘員の語録が飛び出すメガデス怪人。
 そんな彼に対し、エーリュシオンは何を思うでもなく淡々と話を続ける。

「ならばこれより、この醜悪な舞台装置共を我の意のままに動かせ。断れば、汚らわしい貴様に相応しく浄化してやろう。
 だが従うのであれば、その間だけ生かしておく慈悲を与える」

 この言葉に逆らう術を、メガデス怪人は持ち合わせていなかった。なお、了承しても首から手は離れない。
 従う素振りを見せた怪人に対し、エーリュシオンが出した最初の命令は、現在いるこのC-7で他の参加者をゴブリンに探させることだった。
 一も二もなく即座にゴブリンへ指示を出すメガデス怪人。
 しかし、このエリアに生存者はいない。少し前なら前述した通りエレンがいたのだが、今あるのは市街地にあるクレマンティーヌの死体のみ。
 更に言うなら、彼女のデイバッグはエレンに持っていかれているので、見つけた所で何のメリットもない。
 つまり、エーリュシオンは完全に時間を無駄にした。

「おのれ……!!」
「グエエエエエ!?」

 怒りのあまりメガデス怪人の首を握る手を強めてしまうエーリュシオン。
 しかしそんな無駄なことをしている時間はないと考え、即座に次の手を打つことにした。

48別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:23:38 ID:H4Jk8qt60

「おい、この近くに泥人形が集いそうな場所はないのか?」
「そ、それなら西の方に採掘場がグエエエエ!?」

 エーリュシオンは西から来た上で参加者と出会っていないので、西の方にある施設の情報など必要ないと考えている。
 だがそんな脳内当てをする能力がメガデス怪人にあるわけなく、彼は強権を振るう天使の機嫌を損ね再び首を絞められた。
 それでもなお、彼はまだ諦めず即座に違う場所を示した。

「ならば北の方にも市街地があったはず!!」
「そうか」

 メガデス怪人がもたらした新たな情報を聞き、エーリュシオンは首を絞める手を緩め、早速出発する。
 途中、NPCのゴブリンに遭遇する場面もあったがメガデス怪人のホモビームで洗脳するもよし、洗脳したNPCを宛がうもよしと対処法はいくらでもあった。
 なので何一つ問題が発生することなく、彼らは目的地であるC-5の市街地に辿り着いた。

「その醜悪な舞台装置共を散らして参加者を探させろ」

 街に着いた途端のエーリュシオンの指示に従い、メガデス怪人はゴブリンの群れを市街地に散開させる。
 するとしばらくしてから、どこからか轟音が響き渡るのを彼らは耳にした。
 エーリュシオンはメガデス怪人とゴブリン一匹を引き連れ音のする方へ向かうと、そこには窓の割れた一軒家があった。

 彼らは知らないが、ここは鈴奈とひろしが精神の具現化であるカタルシスエフェクトとペルソナをぶつけ合った決戦の地。
 ジオと一斉射撃の波状攻撃とフラクタルスライサーがぶつかり合い、両者が吹き飛ぶほどの爆発が起こった場所である。
 当然、そんな爆発が起きれば影響は当人だけでなく周り、環境にも及ぶ。
 その爆発により家のガラスが内側から吹き飛び、外から見れば内側から窓が割れた家となっているのだ。

 家を見ながらエーリュシオンは考える。

(ここで泥人形同士の戦いが起こったのは間違いない。だが今、泥人形共はどうしている。
 まだ中に居るのか? それとも逃げたか?)

 ここまで考え、埒が明かないと判断したエーリュシオンはゴブリンに様子を見に行かせることにした。
 その際、持ってこれそうならデイバッグを持って来いという指示もして。

 そう考えていると、家の中に様子を見に行ったゴブリンがデイバッグを二つ持って戻ってきた。
 更に中には二人の参加者が気絶していることも伝えた。ゴブリンは参加者が使う言語は使えないので、ジェスチャーで。

「そうか」

 ゴブリンの報告を聞いたエーリュシオンはデイバッグを奪い取ったかと思うと

 ゴキリ

 メガデス怪人の首の骨をへし折り、ついでに報告してきたゴブリンを蹴り飛ばして殺した。


【メガデス怪人@真夏の夜の淫夢シリーズ 死亡】


 エーリュシオンのこの行動には理由がある。
 まず前提として彼は、メガデス怪人のことを何一つ信用していなかった。
 元々こちらを犯そうとしてきた相手だから、当たり前である。
 力づくで無理矢理従えていたものの、いつまでもそれにリソースを割きたくはない。
 なのでここらで潮時と考え怪人を殺したのだ。
 それに他の参加者を見つける当てはあった。

 彼が考えたのは、優勝するために他の参加者を探すのではなく、逆におびき寄せる手法だ。
 神楽鈴奈とクロという狂信者二人はともかく、最初に出会った亡者とキュアダイアモンドは生意気にも正義感が強そうだった。
 ならば、適当に破壊活動をしていれば誘い出すのはそう難しくないだろう。

 エーリュシオンはメダロックを天に掲げると、剣に光が集っていく。
 そしてそのまま勢いよく剣を振り下ろすと、かのエクスカリバーのごとく光がビームの様に進み、目の前の家を貫いた。
 やがて光が晴れると、そこには瓦礫の山と化した一軒家の姿が。

「さて、離れた場所から様子を見つつ、名簿を確認するとしよう」

 中にいる参加者のことなど一切興味を持たず、彼は近くの家に入っていく。
 その傲岸な振る舞いに天使の要素など欠片も見いだせない。
 もっとも、彼に言わせればそれこそが泥人形の戯言なのだろうが。


 そして彼は知らない。
 今さっき吹き飛ばした家の中に、彼が嫌悪感を抱く狂信者の一人である神楽鈴奈がいたことを。

49別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:24:34 ID:H4Jk8qt60


【C-5 市街地/早朝】

【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:度重なる戦闘により蓄積したダメージ(中)、先程の狂信者たち(神楽鈴奈、クロ)に対する強い嫌悪感、ミルドラースに対する激しい怒り
[装備]:原罪(メダロック)@Fate/stay night
[道具]:ひろしのデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×2)、神楽鈴奈のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品1~2)
[思考・状況]基本行動方針:優勝して"ミルドラース"を打ち滅ぼす。その後、穢れた世界を浄化すべく地上にいる全ての命を消し去り、不毛の砂漠にする。
1:ひとまず名簿を確認する
2:救われない世界は消し去るのが最善、それが天命だ。
3:一刻も早く優勝し、"ミルドラース"およびそれに組する者たちすべてを未来永劫消滅させる。
4:キュアダイヤモンド、神楽鈴奈にクロ、およびD-5にいたもう2人の参加者(ライナー、シャーロット)は見つけ次第、跡形も無く消し去る。
5:奴ら(神楽鈴奈、クロ)は、たかが泥人形ごときに何を期待しているのだ?所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろうに。
[備考]
ウィズの爆裂魔法により、デイバッグ及びその中の支給品が消滅しています。
本来『七つの大罪』にまつわる様々な特攻効果を持っているが、制限により以下の2つの効果のみ発動しています。
【色欲の罰】:女性と戦う際、攻撃力が2.75倍に上昇する。
【傲慢の罰】:彼に最もダメージを与えたものに対して、攻撃力が約2.5倍近く上昇する(現在はウィズが対象となっている)。
クロ(リーダー)の姿を『黒い影』という形で視認しています。
ミルドラースを、「魔王を従えし真の魔王」である『魔皇』だと認識しています。





 突然だが、少しだけコンペ・ロワイアルの会場の話をしよう。
 まずこの殺し合いの会場の地下には、下水道が存在する。
 現時点で確認されているのはI-8 パラダイス・パームズの地下のみだが、状況を考えるならH-6 リテイル・ローとも繋がっているだろう。
 そして街はC-5の市街地やF-8、G-8のフェイタルフィールドなどいくつかある。
 ならば、下水道は会場全土とまではいかなくても、かなりの広範囲にわたって存在すると考えていいだろう。
 故に――

「ん……くっ……!」

 エーリュシオンが破壊した一軒家の下に下水道があったとしても、おかしくはない。
 結論を言うなら、鈴奈とひろしの二人は地下にあった下水道に落下した。
 エーリュシオンの放った攻撃は家のみならず下の地面にまで影響を及ぼし、崩壊の衝撃が地面を破壊し地下と通ずる穴が生まれ、二人はそこに落ちたのだ。
 その衝撃か、鈴奈は気絶から目を覚ました。

 さてここで考えて欲しい。
 地上にある家の中から下水道に落下して、即座に目を覚ますことが何もなしにできるだろうか。
 下水道にクッションなどない。仮に水の中に落ちたとしても、それは地面よりはマシくらいであって決してノーダメージとはならない。
 なばらどうして鈴奈は目を覚ますことができたのか。答えは彼女の下敷きになったものにある。


【ひろし@青鬼 死亡】
【残り83人】


 鈴奈の下に、ひろしの遺体が横たわっている。
 これが答え。落下の際、彼がクッションの代わりになったから鈴奈は死ななかった。

 別に、ひろしが殊勝な思いで鈴奈のクッション代わりになった訳ではない。互いに気絶していたのだから、何かができるわけがない。
 ただ落下の最中、たまたま彼が彼女を庇うような位置取りに偶然なっただけ。
 そんな幾千、幾万。あるいは幾億分の一の確率が今ここで起こったにすぎない。

「……え?」

 そして鈴奈もひろしの遺体に気付く。
 さっきまで殺そうとしていた、先輩ではない誰かの死体を見て彼女が何かを思うより先に――

『――――』

 放送が聞こえる。
 禁止エリアを告げる、一区切りがつく放送が。

50別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:25:01 ID:H4Jk8qt60


【C-5 市街地 下水道/早朝】

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:ダメージ(大) 聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大) 片足を負傷
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:優勝し、先輩がいた場所に帰る
1:???
2:夢でも現実でも、先輩の言葉を信じて戦う
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんであの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
[備考]
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。


※C-5 市街地にゴブリンの群れがいます。どう動くかは不明です。
※C-5 市街地にある一軒家が一軒瓦礫の山となりました。
※C-5 市街地 地下において、ひろしの遺体とスカルの仮面@Persona5 が放置されています。

51 ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:25:28 ID:H4Jk8qt60
投下終了です

52 ◆bLcnJe0wGs:2023/09/27(水) 18:00:14 ID:k2MrJTWI0
企画主様がまだ戻って来ていませんが、そろそろ放送に入るというのはどうでしょうか?

53名無しさん:2023/09/27(水) 23:56:57 ID:gs9sznFA0
放送の前に黎明で止まってて、
戦闘不可避の銀時達のところだけは放送前に処理しないと難しいかと
そこ以外であれば他は最悪放送後にしても問題ないと思いますが

54名無しさん:2023/09/28(木) 07:12:19 ID:U1qGYAS60
銀時たちのパートは早朝に到達してますよ

55名無しさん:2023/09/28(木) 19:01:58 ID:O/dPLFSk0
>>54

あそこから放送まで、状況からして何かしら起こりそうだから、
放送後に回すかそれまでに書くかが悩む所ですね。

しかし企画主が役に立たないと他に書く人がいても方向性が定まらなくて大変だと思います。
まあ今更戻ってきてもなあとは思いますが。

56名無し:2023/10/16(月) 11:21:36 ID:pOwyrbH20
佐藤マサオ予約します。

57 ◆7PJBZrstcc:2023/10/20(金) 23:07:14 ID:3UYOlmDs0
蜜璃、変なおじさん、クロちゃん、りあむ、ディアボロ、ザメドル 予約します

58 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:02:00 ID:7QUyk5sI0
投下します

59負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:05:04 ID:7QUyk5sI0
 紆余曲折あったものの、現在プレザント・パークにいる五人の参加者達は、それぞれが持つ情報を交換しようとしていた。
 なお、ディアボロだけは全員最低二メートル以上距離を取っている。
 キング・クリムゾンの射程距離がそれくらいなので、彼以外の四人は距離を取らざるを得なかった。
 りあむと変なおじさんは距離を取るつもりはなかったが、クロちゃんと蜜璃がそれを止めたのだ。
 もっとも、彼は今キング・クリムゾンを使用できないのだが、それを四人はまだ知らない。
 しかし、その前にどうしても気になって仕方ないことを、蜜璃はディアボロに尋ねる。

「……あの、その服は……?」
「これか?」

 それは、ディアボロの現在の服のことだった。
 彼は今、全身にマントを纏っている状態だ。
 無論、顔こそ出しているものの、それ以外は全て隠れている。
 そんな彼の姿は、はっきり言ってまあまあ怪しかった。

「不慮の事故のようなものだ。服が上半分燃えてしまってな。
 仕方がないからこんな服を着ている」
「……もしかしてそれって、ボクのせい?」

 ディアボロの言葉に思わず口を挟むりあむ。
 状況を考えると、自分のせいであることは容易に想像がついた。
 彼女がディアボロに拾われていると認識するより前の最後の記憶は、襲ってきた黒服の剣士に炎をまき散らしながら抵抗している所だ。
 その時の流れ弾が他の誰かに命中しているかもしれない、と彼女は今更ながら青褪める。
 彼女は死にたくはないが、それと同じくらい何もしていない相手を殺したくもなかった。

 実際は流れ弾どころではなかったのだが、別にディアボロはその辺りを掘り下げるつもりはなかった。
 思うところがないといえば嘘になるが、それよりも情報交換を重視したかったのだ。

 そして始まる情報交換。
 まずはとはいっても話すことはそう多くない。
 蜜璃、変なおじさん、クロちゃんの三人が知っている参加者は一人も参加していない為、話すことがない。
 強いてあげるなら新選組の沖田総司と土方歳三くらいだが、りあむは日本人なので知っており、ディアボロからしてみれば外国の偉人くらいの扱いでしかない。
 昔の人間がいること自体は驚きだが、それだけだった。

 だが話は終わらない。
 今ここに居る蜜璃、変なおじさん、クロちゃんとは別に、ディアボロたちが来るより先に合流していた牛飼い娘、ひろし、瞳についての話もする。
 もっともひろし、瞳の二人は殺し合いに知人が呼ばれているわけではないので、残っている牛飼い娘の幼馴染であるゴブリンスレイヤーという男が信用できる、という情報くらいしかない。

「…………チッ」

 そしてこの話を聞いたディアボロは思わず舌打ちをした。
 情報が手に入ったのはいいが、それとは別に自身の悪評が外にばら撒かれていては、彼としては問題視するのは当然。
 救いがあるとすれば、いざとなればこの場にいる面子が多少は庇ってくれるだろう、という点だろうか。
 少なくとも、ジョルノやブチャラティが参加者として存在する時よりはマシだろう、とディアボロは無理矢理にでもプラスに考えることにした。

 次にりあむの知人は高垣楓、千川ちひろ、島村卯月、新田美波の四人である。
 しかしあくまで彼女も彼女の知人も特殊能力を持たないただの日本人女性。
 りあむ含めて五分の四がアイドルではあるものの、ディアボロみたいな能力も無ければ蜜璃みたいな戦闘技術を持ち合わせているわけでもない。
 故に彼女は四人を自分と同じ事務所のアイドルと、そこの事務員と説明した。
 実際はちひろ以外の三人は異世界転移を経験し、技能こそ持ち帰らなかったものの朧気ながらその時の記憶を持っているのだが、その事実をりあむは知らない。

「……というか、本当に知らないの? シンデレラガールだよ?
 ディアボロサマは外国人だからまあ仕方ないとしても、日本なら結構有名だと思うんだけど……」
「知らないしん」
「うんうん」
「私はまず、そのアイドル? っていうのが分からないわ……」

 りあむの言葉に対しそれぞれ返すディアボロ以外の三人。
 とはいえそこは牛飼い娘との会話で異世界の存在を察していた三人。ここに書かれているアイドル達も異世界の存在なのだろうと察することはできた。

60負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:06:07 ID:7QUyk5sI0

「なんか色々ごちゃごちゃしてる……多重クロスってやつ?
 ……めっちゃやむ」

 一方、悪魔の実を筆頭に不可思議な物は目撃していたものの、異世界という可能性は思い浮かばず、更に言うなら追加で悪魔の実について聞いてみたものの誰も知らないことから、現状で最低六つの世界観が存在することに気付くりあむ。
 その結果、彼女は猛烈に頭を抱えるのだった。

「……最後は私か」

 そしてディアボロだが、彼に関しては話すことはあんまり無い。
 何せ、彼をよく知る上に殺し合いに参加しているスタンド使いについてなら彼より圧倒的に詳しいクロちゃんがこの場にいるのだ。
 むしろディアボロは、りあむと並んで教えてもらう立場である。

「……はえー」

 このロワに参加しているディアボロ以外の五人のスタンド使いの情報を聞き、思わず呆けるりあむ。
 彼女にとっては元から超能力者がいるだけでも驚きなのに、それがクロちゃんからすれば漫画のキャラなのだから、もう言葉も出ない。

「ふむ……」

 一方ディアボロは、クロちゃんの話を聞き考える。
 まずはホル・ホースについてだが、彼に関しては知っている情報とそこまで差異はなかった。
 しいて言うならクロちゃんのもたらした情報量が元々の知識より多かったが、そこは別にどうでもいい。最初から大したことは知らない。
 空条徐倫という女がアメリカの不動産王の曾孫で、なおかつ一族にスタンド使いが多いことには驚きだが、それもまた殺し合いに関しては重要とは思えない。
 何よりもディアボロにとって重要だと考えたのは、プッチについてだった。

 エンリコ・プッチ。
 ディアボロから見れば十年以上先の未来で、理解不能の理想を掲げた男である。
 未来を知りたいというのは分かるが、嫌なものや苦難が訪れることを理解しているのなら避けたいと思うのが普通だろう。
 勿論、避けられない場合は勿論あるが、それでも出来る限り避けるのが人間だろう。事実、エピタフを持っていたころの彼はそうしてきた。
 だがそんなことはこの際どうでもいい。
 他人の主義主張など、大なり小なり理解できないものがあるのは普通のことだ。
 そしてディアボロは別に、会ったことも無い神父のことなど理解する気はない。

 彼にとって重要なのは、プッチのスタンド『ホワイトスネイク』だ。
 他者のスタンドと記憶をDiscにして取り出し、装備することで記憶を覗いたりスタンドDiscを頭に入れることでスタンド使いにする能力。
 ディアボロは自身のスタンドとドッピオはこのスタンドに抜かれたのではないか、と考えていた。
 その場合、プッチはこの殺し合いに協力していたにもかかわらず参加させられていることになるが、まあそういうこともあるだろう、とディアボロは思う。
 元々ギャングをやっていた身からすれば、裏切りなどままある話だ。別にプッチはギャングではないが、企みの大層さで言えば一介のギャングを圧倒的に上回っている。

(探すべきか?)

 プッチの悪行などどうでもいいが、この殺し合いに関係があるのなら接触するのも手だ。
 別にディアボロは殺し合いの打破を目標としているわけでは無いが、情報が多いに越したことはないだろう。
 もっとも、情報を持っている保証はない。
 もし殺し合いの主催者と関わりがあるとして、普通に考えれば殺し合いに参加者として放り込んだ時点で、他に情報が渡らないように手を打つ。
 記憶を消したり、話そうとするだけで首輪を爆破するなど、対策はいくらでも思いつく。

(今はそこまで考える必要はないか)

 ここでディアボロはプッチに関する思考を打ち切った。
 主催と関わりがあるかどうかさえ定かではなく、あったとしても情報を持っていない可能性が高い。
 そんな相手に会ってもない段階で、これ以上思考するのは時間の無駄だ。
 それに、ディアボロには気になる事がもう一つある。

「おい」
「何だしん?」

 ディアボロはクロちゃんに話しかける。
 理由は、一つあることを確認したいからだ。

「一つ確認したいのだが、私がゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を喰らってからの話は、お前が読んだ漫画だとどれだけ描かれている?」
「どれだけって……何回か殺されただけだしん」
「内容は?」
「な、内容……?」

 ディアボロに鋭い眼つきで睨まれながら問われるクロちゃんは、必死に答えに関する部分を思い出そうとする。
 いくら彼が既読者だからと言って、キャラに関することならともかく細かい描写までは覚えていない。
 しかし、ディアボロからすればその反応だけで十分だった。

「いや、お前の反応で分かった。描かれているのはどうやら私が体験した死に様の、ほんの一部らしいな。
 ならばこの話は恐らく知らないだろう」

61負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:07:05 ID:7QUyk5sI0

 そう言ってディアボロはクロちゃんだけでなく、この場にいる全員に視線をやる。
 そして全員の注目を集めたところで、ディアボロは語り始めた。

「私は以前、似たような殺し合いに何度か参加している」
『!?』

 突如ディアボロよりもたらされた情報に驚愕する一同。
 特に、彼を知るクロちゃんの驚きはひとしおだ。

「そ、そんな話……!」
「無かったか。だろうな。
 だが私にとっては事実だ」

 ディアボロは以前巻き込まれた殺し合いについて語り始めた。
 ルール自体は今参加している殺し合いとそこまで大きな差はない。
 しかし前の殺し合いは参加者の人数が数十人であったことや、知人同士を数人ずつ纏めて参加させていることが多い。
 また、オープニングでは言っていないがミルドラースの語る放送は他の殺し合いだと大体六時間ごとで、禁止エリアの発表の他に死亡者の発表もあった。
 他にも、首輪を爆発させれば本来その程度で死なないであろう存在も死亡することが多かった。
 という内容を語ったが、この殺し合いの打破に役立つかどうかは今の時点では誰も分からなかった。

 とはいえ、何かヒントがないかと考える一同だったが

 ギイィィ

 いきなり扉の開く音が響いた。
 何の警戒もしていないのか、あるいは中にいる五人に気付いていないのか。
 何一つ淀むことなく足音を鳴らし、五人のいる部屋に入って来る。
 五人は入ってきた者に注視するより先に、ヒュンと風切り音が聞こえた。
 そこで鬼殺隊の柱として戦う蜜璃だけが気付く。
 彼女だけが追えるほどの速度で、入ってきた者から何かの木片が投げ込まれたからだと。
 そして木片は変なおじさんの顔面へと一直線に向かっていることに。

 その木片に対し、彼女は――





 時は少し遡る。
 C-4にて体を再生中のザメドルは、その間何もしないというのも退屈なので支給品を検めていた。
 とはいってもブーストにんじんは消費し、残っているのはよく分からない木片と帽子のみ。
 その帽子は少々サイズが大きいシルクハットで、つばの部分には仕込み刃が隠されていた。

「つまらん」

 一応武器に分類されるものだが、血界の眷属(ブラッドブリード)たるザメドルからすれば無用の長物。
 元々大概の武器より素手で攻撃した方が強い彼にとっては、暇つぶしに使えるおもちゃが精々だった。

 身体が治るまでの手慰み代わりにシルクハットの刃を出し、投げ始めるザメドル。
 しかしそんな彼の前にNPCが現れた。
 明らかな異形。木でできた子供ほどの身体、髪の毛代わりの葉っぱに、まるでタコのような口。
 殺し合いの参加者は誰も知らないが、このNPCの種族名はデクナッツという。
 そのデクナッツが三匹、横並びで現れた。
 現れた三匹は一斉に口から木の実をザメドルに向けて放った。

「ふん」

 その木の実をザメドルは避けることすらせず受ける。
 一般人ならば多少のダメージにもなるだろうが、彼からすれば風で飛んでくる砂埃にも等しい。
 いや、砂埃の方が鬱陶しさは上だろうか。
 ともかく、デクナッツの攻撃はザメドルに一つとして何かをもたらすことはない。

 だがそれはそれとして、いつまでも無視するほどザメドルはデクナッツに無関心に離れない。
 彼は気だるげにシルクハットを投げつける。
 するとそれの軌道は彼から見て一番右から一匹ずつ命中していく。そしてシルクハットは一番左のデクナッツの横に落ちた。
 しかし、デクナッツ達は少し動きが止まったかと思うと、また何事もなかったかのようにザメドルに向かって木の実を放つ。

62負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:07:56 ID:7QUyk5sI0


「ほう」

 ここで自身の攻撃に死なないデクナッツにザメドルは初めて興味を抱く。
 単に不死なのか、それとも特殊な方法でなければ倒せないのか。

 だがザメドルは一々倒し方を思考したりはしない。
 もし不死なら気が狂うまで痛めつければいい。
 それとも特殊な方法でしか倒せないのなら、癪だが無視して移動してもいい。
 腹立たしくはあるが、金泥するのも馬鹿馬鹿しい。
 しかしまだ諦める段階ではない。

 ダッ

 ザメドルが強く踏み込み、一瞬で彼から見て一番左のデクナッツの元に近づき、そのまま頭を掴む。
 次にまたも同じ様に踏み込み、今度は真ん中のデクナッツをまた同じように、今度は逆の手で頭を掴む。
 最後に両手に持ったデクナッツを、残った最後の一匹に向かって投げつけた。

「「「ピー!?」」」

 投げつけられた側と投げられた側が同じ悲鳴を上げ、その場に揃って倒れ伏す。
 即座に三匹は起き上がるが、彼らの眼前にはザメドルが興味深そうに見つめていた。

「ピー!? ニイサンイチバンを無視するなんてあんまりだッピ!」
「驚きだな。まだ死んでないのか」
「あんまりすぎるから、こっちもあいつらに不利になる情報を渡すッピ!」

 ザメドルがデクナッツ達の耐久力に軽く驚く一方、当人たちはヤケクソ気味に情報を吐く。

「参加者のカリオストロはぱっと見金髪の女の子。
 だけど実際は何年生きてるかも分からない錬金術師。もしかしたら参加者の首輪も外せるかもしれないッピ。
 ……ゴーマさま、ゴーマんなさい。なんちて」

 デクナッツのもたらしたその情報は、彼らの耐久力を優に上回るレベルの驚きをザメドルに与えた。
 しかし彼らはそれだけ言って去っていこうとする。

「逃がすわけがないだろ」

 ザメドルは咄嗟に落ちているシルクハット拾ってを投げつけるが、デクナッツ達の姿はそこにはなく、完全に消失していた。
 あまりにも不可解な生物だと思うザメドルだが、そもそも自分達のいるHLも大概だったので、そういうものだと割り切ることにした。
 少なくとも、当てもなく首輪を外す方法を探し回るよりはよっぽどマシだ。

 そうこうしている間に再生も完全に終了したので、ザメドルは当初の予定通り北へ向かうことにした。
 少なくとも彼にとっては幸いなことに、あれからは大したNPCが現れることも無く参加者のいそうな施設、プレザント・パークへと到着した。
 中に誰かがいることは察していたが、彼は特に警戒することもなく入っていく。
 彼ほどの存在になると、警戒という概念が必要ない。
 最初に戦った勇者も、次に戦った四人も、強者ではあるのだろうがそれだけだ。
 なのでむしろ、警戒が必要となるほどの強敵が欲しいくらいだった。


 そんなことを考えながら部屋に入ると、中には五人の人間がいた。
 ザメドルが探す錬金術師カリオストロらしき姿はない。ならば加減する必要はないとばかりに、彼はデイパックから神界の木片を取り出し、適当に投げつけた。

 ザメドルはここまで遭遇してきた他の参加者のせいで、一つ勘違いしていた。
 最初に出会ったのは勇者を名乗る少女と、彼女を逃がした空間転移の術式を使う何者か。
 次に出会ったのは四人がかりで一人失ったとはいえ、血界の眷属(ブラッド・ブリート)と打ち合える程度の使い手。

 それらにしか遭遇していないザメドルはこう思った。
 この殺し合いの参加者は須らくある程度の戦闘力か、何らかの技能を備えている。
 まるで牙狩りのように。
 なのでこれは試金石。
 この程度も対処できないなら問答をする気にもならない。
 さっき話に聞いたカリオストロという錬金術師に一致する特徴の持ち主もいない。
 首輪を外す当ての有無だけ問い、なければ皆殺しにする。どうせ有能な斥候になりはしない。
 しかし、どうやら皆殺しにする必要は今のところないらしい。
 なぜならば

「恋の呼吸陸ノ型 猫足恋風!」

 蜜璃が己の日輪刀を以って、神界の木片をバラバラにしたからだ。

63負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:08:58 ID:7QUyk5sI0

 ズガガガガガッ!!

「ひっ!?」
「え、なになに?」
「何だしん!?」

 直後、バラバラになった木片が投げつけられた勢いのまま変なおじさんの後ろの壁に激突し、轟音を響かせる。
 それにりあむ、変なおじさん、クロちゃんの三人は驚くばかりだったが、ディアボロは完全でないものの今起こったことを理解し、三人に説明し始める。

「……あの男が何かを投げて、それをミツリがバラバラにしたのだ。
 だが投げられたものの勢いがすさまじかったので、そのまま後ろに進んでいったがな」

 ディアボロの解説を聞き驚くとともに、即座にザメドルがいる方を向く三人。
 彼らの瞳には明らかな恐怖が浮かんでいた。

 一方、ザメドルはまあまあ機嫌が良かった。
 彼からすれば最低限求めるものを、目の前の集団のうち一人は持っていたのだから。

「こんばんわ、お嬢さん」

 故にザメドルは蜜璃に話しかけた。
 その顔に悪意はない。いっそ朗らかとも言えるほどの笑顔だった。

 そんな彼を蜜璃達五人は訝し気に見る。
 いきなり攻撃してきたかと思えば、今度は逆に挨拶をしてきた男に対する対応としては、妥当なところだ。

「僕は今首輪を探す方法を探していてね。
 君達は何か心当たりがないかい? もしくはカリオストロとかいう、金髪で錬金術師の少女と今まで遭遇していればその情報でもいいのだが」
「随分なご挨拶だな」

 話すザメドルに対し、ディアボロは破壊された変なおじさんの後ろの壁を一瞥した後、話の主を睨む。
 だが彼の視線による非難を、ザメドルは軽く受け流して弁明のような主張を始めた。

「何、あれはただの試金石さ。
 首輪を外す方法を探すためにできれば他の参加者と協力関係を築きたいところだが、すぐに殺し合いで死んでしまっては意味が無いからね」

 ザメドルの言葉にそれぞれ恐怖や怒りを覚える五人。
 彼の言葉を裏返すなら、使えないなら死んでもいいと、自分以外の命をなんとも思っていないと宣言しているに等しい。
 そして、そんな相手と好き好んで組みたいと思う者は普通いない。
 故にこれは必然。

「悪いけど」

 代表して蜜璃が口を開くが、思いは一つ。
 ザメドルを鋭い眼つきで睨みながら、彼女は決別を宣言する。

「私、いたずらに人を傷つける人にはキュンとしないの」
「そうか」

 蜜璃の言葉を受けてザメドルもまた睨むような眼つきで彼女を見つめながら、こう返した。

「残念だ」

64負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:10:22 ID:7QUyk5sI0





 結論から言おう。甘露寺蜜璃がザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカに勝つ手段は、少なくとも今ここには存在しない。
 いくら彼女が鬼殺隊の柱に上り詰めるほどの才能、実力、修練、経験を持ち合わせているからと言って、それでも血界の眷属(ブラッドブリード)には届かない。
 もし彼女と同じ柱、あるいはそれに類する実力者が後二人か三人いれば話は変わったかもしれないが、ここにいるのは二人を除けばほぼ一般人。
 ディアボロは一般人とは言えないが、スタンドが使えない今は一般人相当の力しか持たない。
 りあむはメラメラの実を食したが、迂闊な攻撃をすれば味方を巻き込む可能性の方が高い。
 クロちゃんはキャッスルロストフルボトルを使えば戦いの場に立つことはできるが、今の彼はフルボトルを役に立たない玩具だと思い込んで、使うという選択肢がない。
 変なおじさんはまだ支給品を調べていないので論外。
 故に蜜璃は孤軍奮闘を強いられていた。
 結果はこうだ。

「んぐ……」

 全身傷だらけの血まみれとなり、片膝をついて息を切らせる蜜璃の姿があった。
 彼女のその様を見下ろしながら、ザメドルは語り掛ける。

「どうだい? 今僕の軍門に下るのであれば、君もあそこの四人も生かしてあげよう。
 首輪を外す方法を見つけるまでという期限もつけよう。どうだ?」
「ハァ……ハァ……」

 優し気に語り掛けるザメドルとは対照的に、蜜璃は未だ息切れを続け答えを出さない。
 一方、傍観者たちはこっそりと話し合っていた。

「もうこれ言うこと聞いた方がいいんじゃ……」
「そ、そうだしん! このままじゃ皆死んじゃうしん……!」
「黙ってろ。あの男が我々にそんな優しくすると思うのか?
 いいように使い潰されて、ロクなことにはならないのがオチだ」
「でも……」

 服従を選ぼうとする変なおじさんとクロちゃんに対し、ディアボロは反対する。
 りあむは二つの意見を聞いて迷う。
 確かにディアボロの言う通り、従ってもロクなことにならなさそうだが、だからといって逆らえばクロちゃんの言う通りこの場で皆死んでしまうだろう。

「そうだよ……ディアボロさんの言う通り……
 こんな人の言うこと聞いちゃ、ダメだよ……」

 もめそうになる四人に対し、会話が聞こえていたのか息絶え絶えに蜜璃が服従を止める。
 その様を見れば従いたくないと皆は思うも、だからといってどうすることもできないのでは、と思ってしまう。

「いや、手はある」

 しかしディアボロはこう断言し、りあむのデイパックに手を突っ込み中から一冊の本、、土ガミの書を取り出し開く。

「え、何その本? ボクの支給品そんなのあったの? てか何でディアボロサマは知ってるの!?」
「その説明は後でしてやる。だが今は聞くな。
 いいか。私は今からこれを使って奴に隙を作る。その間に全員それぞれで逃げるぞ」
「なんでそこまでするしん……」

 ディアボロの自己犠牲めいた言葉に疑問を覚えるクロちゃん。
 彼が知る限り、とても自己犠牲などするタイプには思えないからだ。
 実の所、ディアボロ当人としても犠牲になりたいわけではない。むしろ他の誰かにやらせたかった。
 しかし今土ガミの書の効果を知っているのは彼だけで、人にやらせるなら説明書を読ませなければならないが、そんな時間はない。
 ならばこうするしかない、とばかりに彼は土ガミの書を使う。
 すると彼は、緑の甲羅に黄色の手足と頭を持った、まるで折り紙で出来たような、大きさは五メートルはあるであろう巨大な亀に変身した。
 これがとある世界で亀であるノコノコに崇められる神、土ガミである。

「こんな隠し玉があったのか。驚いたな」

 ザメドルが土ガミとなったディアボロに感嘆している。
 一方、りあむ達も変身したディアボロを見て唖然としてしまったが、当人は構わず手足と頭を甲羅の中に入れ、跳び上がって地面を揺らす。
 その衝撃でりあむ達三人は外に吹き飛ばされ、ザメドルは反対の方に転がった。
 そのままディアボロは溜めに入り、更に大きな地震を起こそうとする。
 当然、ザメドルが黙ってそれを見ている理由はない。
 しかし――

65負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:11:05 ID:7QUyk5sI0

「やあああああっ!!」

 そこに蜜璃が割り込んでくる。
 実力の差は誰の目にも明確だが、無視することはできない。
 なぜならば

「この女、相も変わらず首輪狙いか……!」

 蜜璃の狙いはザメドルの首輪だからだ。
 彼女が所属する組織、鬼殺隊は鬼と呼ばれる存在を殺すための組織。
 鬼は日輪刀という特別な刀で、鬼の首を斬ることで討滅可能な存在。
 言うならば、彼女の剣筋は元々首を狙うことが得意分野。
 そして今、全ての参加者には決して無視できない物、首輪が付いている。
 その首輪を執拗に狙われれば、いくらなんでも無視することはできない。
 故にザメドルは悪手だと感じながらもディアボロを無視し、蜜璃の対処に集中していた。

 ズウウウウウウウン!!

 その間に溜めは終わり、ディアボロはさっきよりも大きな地震を起こす。
 これでザメドルにも多少ダメージが入ったが、それよりも大きな出来事が起こる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 なんと、二回にわたって起きた地震の影響で、彼らが今いる建物が崩壊し始めたのだ。
 これを見てディアボロとザメドルは逃げ出そうとする。
 ディアボロはもとより、ザメドルであっても崩壊する建物の一部が首輪に当たってしまえば爆発して退場となりかねないからだ。
 しかし、ここで退かないものが一人いた。

「やあっ!!」

 蜜璃は未だ逃げる気配も見せず、ザメドルに攻撃を仕掛ける。
 これに驚いたのはディアボロだ。
 彼としては土ガミの力で今いる建物を崩壊させれば逃げる隙くらいは作れるだろうと考えていた。
 だが彼女の判断は自身が逃げることではなく、ザメドルを倒すことを優先した。
 彼女から見ればザメドルは、彼女が倒してきた鬼と同じ。
 決して人と相容れぬ、倒さねばならない敵。

 ディアボロは蜜璃の判断に驚きこそすれ、止める気はない。
 実際、ザメドルが死んでくれるとディアボロとしても都合がよく、なおかつ彼が彼女を必死になって止める理由はない。
 彼女もブチャラティと同じタイプの人間だと判断しただけだ。
 運が良ければ再び合流し同行できるかもしれないが、出来ないならそれはそれで仕方ない。
 そう考えたディアボロは変身を解除し、彼女達に背を向けてこの場を走り去っていく。

 そして崩落しかかる建物の中で、一人の人間と一体の化物の最後の殺し合いが始まる。
 まず動いたのは蜜璃。
 彼女がする最後の恋の呼吸は、壱ノ型 初恋のわななき。
 大きな踏み込みからしなり一太刀で敵をすれ違いざまにバラバラにする技だ。
 これだけで並の鬼なら即座に殺せるが、相手は並の鬼とは比べ物にならない強者、ザメドル。

 ザメドルはなんと、蜜璃の日本刀を動体視力で見切り左手で鷲掴みにし、そのまま自身の方へ引き寄せたのだ。
 避けるにしても防ぐにしても耐えるにしても、まさかそんなことをしてくるとは思わなかった蜜璃は、成すすべなくザメドルの方へ引き寄せられる。
 そして引き寄せた当人は逆側の腕で蜜璃の身体を全力で殴りぬけた。

 ドドオン!!

 ザメドルの腕は蜜璃の体を貫通し、その命を散らしたと考える。
 彼は崩落する建物から脱出すべく即座に腕を体から引き抜こうとする。
 しかし――

「抜けな……っ!?」
「あああああああああああああああ!!」

 蜜璃は未だ死んでいない。
 己の身体を以って、ザメドルを足止めする。
 奇しくもそれは彼女の師、煉獄杏寿郎が上弦の参、猗窩座と戦い、押しとどめるべく行ったことと同じだ。
 なおかつ彼女は雄たけびを上げ、ザメドルの首輪を引きちぎるべく日輪刀を捨て、両手をただひたすらに伸ばす。
 ここが平地ならば、なんの意味もない悪あがきで終わっただろう。
 だが今は崩落しかかる建物の中で、瓦礫が万が一にも首輪に当たらないようにするため急いで脱出しなければならない。
 この状況では、彼女の悪あがきが功を奏するかもしれない。

 ザメドルは焦る。
 それは、この殺し合いの前に「密封」された時よりも、さっき首輪が鳴り始めたあの時よりも。
 もしかしたら、彼の生の中で初めての経験かもしれない。
 この極限の最中で彼は――

66負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:11:45 ID:7QUyk5sI0


 一方、崩落した建物を背に逃げながらディアボロは思う。
 先に逃げた三人と再び遭遇できるかは知らない。
 そもそも、一緒に居るのかすら知らない。
 だからどうした、と彼は思う。
 彼にとって大事なのは、ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破ること。
 その為にいずれはあの化物に対処する方法を見つけねばならないだろうが、まずこの場を生き延びなければ話にならない。
 故に彼は走る。
 その様にかつてあった筈の、帝王の誇りが一欠片も無くても。


【C-3 プレザント・パーク/早朝】

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:とにかく逃げる
2:ディアボロって人、クロちゃんがいうほど危なくはないんじゃない?
3:あの金髪の人怖いね〜
[備考]
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:とにかく逃げる
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
5:ディアボロよりあの金髪の方がヤバイしん
[備考]
※殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
※フルボトルをただの玩具と思っています。
※「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。

【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:恐怖(大)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:とにかく逃げる。怖い、死にたくない
2:ディアボロサマに蜜璃ちゃん、大丈夫かな……
[備考]
※メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
※参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:とにかく今は逃げる
2:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
3:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
4:あの化物(ザメドル)をどうにかする方法を探さねば……
[備考]
※参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
※殺し合いに何度か参戦した経験あり。
※スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。
 『ホワイトスネイク』でDiscにされて抜かれた可能性もありますが、真実は現在不明です。
※自身以外の「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


※変なおじさん、クロちゃん、りあむの三人が一緒に行動しているかバラバラになっているかは次の書き手氏にお任せします。
 ディアボロは確定で現在別の位置にいます。

67負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:12:27 ID:7QUyk5sI0





 C-3 プレザント・パークにある一つの建物が、戦いの衝撃で崩壊した。
 その傍らに、一つの人影が跪いている。
 人影は焦りからか息を切らせていたが、やがて笑いへと声色が変わっていく。

「ハハハ……まさか私が本気で焦る日が来るとは思わなかったな。
 いやはや、凄まじいなこの殺し合いは。全く――」

 ここで人影は立ち上がるが、この影の表情はさっきの笑みとは異なり、怒りを携えて小さく呟く。

「度し難い」

 その人影にあったのは、怒り。
 牙狩りではない、彼らより弱いであろう人間達に翻弄されたことに対する屈辱感。
 それが人影、血界の眷属であるザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカが抱いた感情だった。
 人間と化物。生き残ったのは化物である彼だった。


【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃 死亡】
【残り82人】


 ザメドルは建物が崩落する中、ある決断をした。
 それは、己の右腕を捨てること。
 身体から腕が引き抜けないのなら、腕を捨てればいい。
 いずれ再生するのだから、今捨てても問題はない。
 奇しくもそれは、彼女の師が戦った猗窩座と同じ決断だった。

 しかしそもそも、人間相手にそんな決断をしなければならないことが、ザメドルには屈辱だった。
 だから彼は決意する。
 さっきまで戦った蜜璃が逃がした四人を、出会えば必ず殺すことを。
 だがまずは――

「この右腕が再生するまで待つとするか。
 ……また待つのか」

 己の腕が再生するまで待つべく、彼はその場に腰を下ろした。


【C-3 プレザント・パーク/早朝】

【ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ@血界戦線】
[状態]:ダメージ(小)、右腕欠損(再生中)、怒り(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、スピードワゴンのシルクハット@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]基本行動方針:せっかくだからこの殺し合いを楽しませてもらう。
1:再生が終わるまで待つ。またか。
2:この首輪は忌々しいからさっさと外したい所。ひとまずはカリオストロという錬金術師を探してみるか
3:広い会場を一人で探索するのは骨が折れるから、有能な斥候は手に入れたいとは思う。
4:彼ら(アカツキ、結芽、総悟)とはまた戦いたいものだ。牙狩り程ではなさそうだが。
5:あの四人(変なおじさん、クロちゃん、りあむ、ディアボロ)は次会ったら殺す
[備考]
※原作第八巻『幻界病棟ライゼズ(後編)』より、クラウスに「密封」された後からの参戦です
※首輪の制限により、一定以上のダメージを喰らった場合自動的に密封状態となり、事実上の脱落となります
 今回の戦闘でどの程度のダメージが蓄積されてるかは後続の書き手にお任せします。
※再生能力、戦闘能力はある程度低下しています。
 再生能力は高いものの連続して(常人においての)重傷を負うと、再生が少しだけ追いつきません。
※カリオストロの外見と錬金術師であるという情報を得ました。


※神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル は破壊されました。
※C-3 プレザント・パークの一部の建物が崩壊しました。
※甘露寺蜜璃の遺体と彼女のデイパック(基本支給品、ランダム支給品×2)、甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃 がC-3 プレザント・パークの崩壊した建物の下に放置されています。


【スピードワゴンのシルクハット@ジョジョの奇妙な冒険】
ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカに支給。
ロンドンの貧民街、食屍鬼街(オウガーストリート)のボスだったスピードワゴンがかつて持っていたシルクハット。
一見普通のシルクハットだが、実は鍔の部分に仕込み刃があり、投げることで飛び道具として使用できる。
作中の描写を見る限り、結構軌道は自由自在。


【デクナッツ三兄弟@ゼルダの伝説シリーズ】
原作では最初のダンジョン、デクの樹サマのなかに登場する特殊なデクナッツ。
三匹同時に現れ、真ん中、右、左の2→3→1、通称ニイサンイチバンの順で倒すとダンジョンボスであるゴーマの秘密を教えて去っていく。
本ロワでは同じ順で倒すか全てのデクナッツへ同時に攻撃を加えると参加者、NPCいずれかの情報をランダムで教えて去っていく。もしかしたら主催者の情報も吐くかも。
死亡はせず、一度去るとランダムに違う場所にリポップする。

なお、去っていくときのセリフは情報の内容にかかわらず「ゴーマさま、ゴーマんなさい。なんちて」だッピ。

68 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:13:12 ID:7QUyk5sI0
投下終了です

69名無し:2023/12/11(月) 15:07:31 ID:nuPvEK/g0
>>52
Twitter見てましたけど、どうやら更新が
途絶えてるため無理な感じですね

70名無し:2023/12/11(月) 15:07:49 ID:nuPvEK/g0
>>52
Twitter見てましたけど、どうやら更新が
途絶えてるため無理な感じですね

71 ◆bLcnJe0wGs:2023/12/11(月) 17:12:12 ID:WCbKX7760
>>69
自分が何か月も前に書き込んだ話ですのに返信ありがとうございます。
そうですよね…。
実は自分も企画主様のTwitterは見ていたのですが、もう戻ってくる気配はない様に見えますね。

72名無し:2023/12/12(火) 18:30:53 ID:SxvfotWI0
>>71
こうなれば、勝手に進んだ方が楽

73 ◆bLcnJe0wGs:2023/12/17(日) 18:03:23 ID:6YCp.nJQ0
皆様お忙しい中失礼します。
用件から話しますと、モンスター烈伝オレカバトルの後継作にあたる作品(ここでは詳しい言及は控えさせて頂きます。)のガイドラインが先日公開されました。

その後継作品にはオレカバトルに登場したキャラクター(いずれもこの企画には登場していないもの)がアレンジを加えられた上で続投されることが公表されており、今後もこちらの企画内で登場させたままでいると、何らかの問題が発生することを懸念しております。

現在では企画主様も不在ですので、その間に該当作品出典のものを送還、消費等の状態がある場合は支給前の状態に戻した上でそうするといった対処をとってはいかがでしょうか?

74 ◆7PJBZrstcc:2023/12/17(日) 23:08:08 ID:Dgcyv.qA0
>>73
ガイドライン確認させてもらいました。
その上で私としては、オレカバトルの後継作にあたる作品(こちらも詳しい言及は控えます)が明確に同一世界線の続編であると明記されない限りは、ロワに参加させたままで問題ないと判断しています。
ただ、後継作にエーリュシオンとエンキが登場した場合、設定がオレカバトルと差異がなければ、その時は改めて考え直した方がいいかもしれません。

75 ◆7PJBZrstcc:2024/01/01(月) 21:50:52 ID:j4xfpiTI0
サーニャ、勇者(ゴブスレ)、紫、ラッド、瞳、牛飼い娘、ディアボロ 予約します

76 ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:39:33 ID:4DHS.Iaw0
投下します

77少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:40:19 ID:4DHS.Iaw0
 ギュイイイイイイイイイイイン

 ラッドが手に持つチェーンソーの金切り音が、B-4の森の中で響く。
 音を鳴らしながら彼は目の前の怪物、打擲の剛激手へ向かって走りながら、あることを考えていた。

 それはすなわち、目の前の怪物はなんなのかについてだ。
 どう見ても自分と同じ参加者ではないだろう。見た目もそうだが、そもそも首に自分と同じ首輪が付いていない。
 殺し合いの主催者が言っていたNPC、という奴なのだろうか。
 最初に出会ったメイドが殺していた舌の長い怪物と同じ類。
 殺し合いの主軸ではない、邪魔なら殺すかいなすか、あるいは使うしかないただの舞台装置。
 しかし、あのメイドであろうとも目の前の怪物はそう簡単な相手とは思えない。

「つまりアレか? こんなほうれん草食ったポパイでも戦ったことなさそうな化物をよ、余裕でぶっ殺せる奴も俺と同じ参加者になってるか!?
 おいおいなんだよそりゃ!? そんな奴はこう思ってんだろうなぁ。
 俺は強いからこんな殺し合いも遊び感覚で優勝できて、ついでに誘拐されたのはムカつくから主催者も殺しとくか、ってさあ!!
 ……そういうのは自分は絶対死なねえって思ってんだろうな! おいおい、そんなバケモンぶっ殺せたらと思うと過去最高にテンション上がってきたぜ!!」

 一人騒ぐラッドに対し、彼に相対する怪物、打擲の剛激手は何かを発することなく拳を振るってくる。

「ハッハァ――ッ! そんなパンチ当たるわけねえだろうが!
 ジャック・ジョンソンやデンプシー見習えやバ――――――――カ!!」

 しかしラッドは打擲の剛激手のかぎ爪を躱すと、ヒャハハハハハハと狂気の笑い声をあげながら足元へ潜り込みチェーンソーを振るう。
 彼の狙いは足。
 こいつがどれほど強くても、二足歩行である以上足をどうにかすれば立てなくなり、殺すのは一気に簡単になるだろう、と考えたからだ。
 だが

 ガガガガガガガガッ

 打擲の剛激手の足から生じた音は、肉の裂ける音ではなく、例えるならコンクリートをドリルで工事するような、とても生物から発生したとは思えない音だった。

「はぁ!?」

 驚愕の声を上げるラッドだが、打擲の剛激手を知るアイオリスの冒険者ならば驚きはしないだろう。
 なぜなら、その怪物は世界樹の迷宮において上層である23階に存在するFOE。
 そこに到達できるまで鍛え上げ、装備を整えて初めて戦う資格を有する存在。
 ラッドの身体能力と今持つチェーンソーでは、手が届きはしない。

「クソったれが!!」

 そんなことは露知らず、まさか足が切れないとは思っていなかったラッドだったが、とにかく一度距離を取らなければならないと考え、チェーンソーを一旦止める。
 しかし彼が打擲の剛激手から離れるより先に、新たなNPCが二体現れる。
 それらは歩き回る骸骨で、手にはそれぞれ剣と槍を持っている。
 参加者の中で言うのなら、藤丸立香とマシュ・キリエライトなら見覚えがあるだろう。
 人理修復の中で現れる、RPGで言う所の雑魚敵。そんな存在。
 そのスケルトン二体はラッド目掛け武器を構えて向かっていく。だが――

 ズガァン!!

 二体は打擲の剛激手の腕によってあっさりと散らされてしまった。
 この怪物に敵味方の区別などない。これに近寄るものは平等に餌食となる。

 打擲の剛激手にとっては当然の生態でも、ラッドにとっては僅かに生まれた好機。
 彼は即座に背後に周り、なんと怪物の身体を登る。
 彼の狙いは目玉。
 いくら体が硬くても、流石に目玉はそうじゃないだろうと考えたからだ。
 
 ギュイイイイイイイイイイイン

 再びチェーンソーを起動させながら、ラッドは打擲の剛激手の右目にそれを突き立てる。
 肉を抉る刃の音と共に、打擲の剛激手は目玉を抉られる痛みの余り、苦悶の咆哮をあげる。

「お前を殺せる奴はいたとしても、少なくとも俺には殺されねえと思ってたよな?
 だって俺よりお前の方が強い化物だもんな、じゃあ仕方ねえよ。俺だって逆の立場だったらそう思っちまうかもしれねえしな。
 でも! だからこそ! 俺はお前をぶっ殺したいんだよ!! だから殺すわ!!」

 ラッドは打擲の剛激手の眼前に移動し、未だ続く苦悶の声に負けないほどの狂気の叫びを見せる。
 彼は勝ちを確信していた。
 いくら敵が怪物でも、目玉を、ひいては頭を抉られて死なない生き物はいないだろうと、そう考えていた。
 その考えは間違ってはいないだろう。しかし甘い。
 彼は考えるべきだった。
 目の前にいる生物は怪物なのだから、人間にできないことが出来るかもしれない、と。

78少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:40:49 ID:4DHS.Iaw0

 ジュッ

 次の瞬間、ラッドの身体は焼けただれた状態で地面を転がった。
 打擲の剛激手が何をしたかについては、一言で説明が終わる。
 目から熱線を出し、彼を焼いたのだ。
 咄嗟にチェーンソーから手を放し、腕で顔を庇ったものの、それでも上半身は焼けただれる。

 ギュイイイイイイイイイイイン

 ラッドの手から離れても、チェーンソーの躍動は未だ止まらない。
 尋常ではない痛みに苦しみながら、打擲の剛激手はトドメを刺すべく腕を振るう。
 こんなところで終わりなのか、と己を嘆くラッド。

(すまねえルーナ。お前との約束、守れそうにねえ)

 己の生を諦めるラッド。
 だが――

 ズパン

 何かが切れる音が聞こえ、薄れゆく意識の中ラッドは見る。
 彼に向けて振るわれた打擲の剛激手の右手が、長髪の少女によって斬り飛ばされる光景と

「大丈夫ですか!? 今治療します!!」

 己の治療をすると言う、誰かも分からない少女の姿。
 それらを最後に、ラッドは意識を失った。





 時は少し遡る。

 勇者とサーニャは困惑していた。
 理由は紫が持つ卵かけご飯にある。
 彼女が持つそれは茶碗一杯分しかない。
 仮に茶碗というものをこの場で初めて見たとしても、それがどう考えても分け合うには少ないことは明白だろう。

 そんなことは、当の紫も分かっている。
 ただ即座に出せる温かい食べ物がこれしかなかったうえに、おそらくこれから消耗するであろうサーニャに食べ物を渡さないというのは、曲がりなりにも仲間として行動するのにあまりにも不義理ではなかろうか。
 と考えつつ、かといって自分が食べなければ二人も遠慮しかねないので、なくなく三等分を提案したのだった。
 しかし、結果は御覧の有様である。
 
「まあ、それはそうでしょうね」

 とはいえ、いくらなんでもこれだけですませるつもりはない。
 足りないことなど最初から分かっているのだから、別のものを追加すればいいだけの話だ。
 そう考えている紫は自身のデイパックからあるものを取り出す。
 それは香霖堂にて食料を菓子類に交換した際、初回特典ということで他の二人より多めに貰った紫だけが持つもの。

「破亜限堕取(バーゲンダッシュ)よ」

 そう言って紫が取り出したのは、小さなカップに入った人数分のアイスクリームだった。
 だがただのアイスではない。そんなものを、体を温めろと言われた直後に出す彼女ではない。
 これには食べると体力と魔力を回復させる効果があるのだ。

 さて、この破亜限堕取を知る者、参加者の中で例えるなら坂田銀時や志村新八がそれを知れば「ただのアイスにそんな効果あるかァァァァァ!?」とツッコミを入れるだろう。
 しかし、これには確かにそんな効果がある。
 それはなぜかというと、出展が違うからだ。
 この破亜限堕取はアニメ版銀魂の物ではなく、『銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり』のものだからだ。

 銀玉くえすととは、2007年にDSで発売された銀魂のゲームである。
 ジャンルはRPG。故に回復アイテムが存在するが、そのうちの一つが破亜限堕取なのだ。
 これが、紫が香霖堂の食料を菓子類に交換した際、こっそり霖之助が混ぜてくれたものだ。
 説明書きもあったことから、本来なら支給品扱いの物なのだろう。

 紫が最初からこれを出さなかった理由は一つ。。
 破亜限堕取の効果がどれほどか分からなかったことだ。
 体力と魔力を回復させることは分かっても、どれほどかが分からないのだ。
 死にかけていても全快するのか、はたまた切り傷も直せないほど微量なのか。
 そんな不確定なものの上に、サーニャが体を温める方向に話を持って行ってしまったので、ますます出しにくくなってしまった。
 だが卵かけご飯で微妙な顔をされ、代案もなしというのは紫の沽券にかかわりそうだったので、やむなく破亜限堕取を出したのだった。

「治るって言うならボクは貰うよ!」
「いや冷たい物は……」

79少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:41:22 ID:4DHS.Iaw0

 という説明をすると、制止するサーニャの声も聞かず勇者は紫が持つ破亜限堕取を一つ貰い、中身を丸呑みした。
 すると彼女は即座に頭を抱えてしまう。

「ど、どうしました!?」
「頭キーンってする……」

 心配するサーニャに対し、勇者の返答はあんまりにもあんまりだった。
 しかしすぐに立ち上がったかと思うと、彼女は二人に笑顔を見せる。

「でも傷も魔力も治ったよ。ほらほら」

 そう言ってピョンピョン飛び跳ねる勇者。その姿にさっきまでの負傷は確かに存在しなかった。
 実は魔力に関しては完全回復していないのだが、戦うのに支障がない程度には回復している。

「なら私も」

 今度は取り出した紫当人が破亜限堕取を食べる。
 するとさっきまで確かに大きくあった力の消耗による疲労が抑えられ、再び使える位にはなった。

「ま、能力を使うのに支障はないわね」

 使いすぎれば話も変わるが、と後ろに付け加えつつ回復したと告げる紫。
 疲労はともかく怪我が治っているかどうかは見れば分かるので、サーニャもひとまずは問題ないと判断した。
 ならばとばかりに、紫は出発すべく行く先を示す手元のビブルカードを見る。
 それが指し示す先は北東。
 こうして彼女達三人はビブルカードが導くままに進むのだった。

 この時、紫の気が変わって自身のデイバックから他のビブルカードを取り出そうすれば気付いたかもしれない。
 その中にあるビブルカードの内一枚、斬真狼牙の分が焼失してしまっていることに。


 そしてビブルカードに導かれるままB-4に来るまで、彼女達にトラブルはなかった。
 勇者、ヒーラー、スキマ妖怪が揃っていれば、万全ではなくとも大概のNPCに負ける道理はない。
 すると突然、轟音が彼女達の耳に届く。
 何らかの金切り音に、怪物のものとしか思えない咆哮。そしてそれらに負けないほどの男の叫び。
 それらが聞こえた途端、三人は即座に音のする方へ向かった。
 元々瞳のビブルカードを当てにしていたのはとにかく他の参加者に会うため。
 ならば明確に存在する参加者、それも危機に陥っているであろう存在をより優先するのは勇者とサーニャの中では当たり前であった。
 紫もまた、ここで二人に反対する理由もないので大人しくついて行く。
 たどり着いた先で見たのは、火傷を負った男に襲い掛かる異形の怪物の姿だった。

「やあっ!!」

 勇者は即座に怪物、打擲の剛激手へと飛び掛かり右手を切り飛ばし攻撃を防ぐ。

「大丈夫ですか!? 今治療します!!」

 その後ろではサーニャが男に向けて必死に声をかけるが、声を掛けられた方は返事することなく意識を失ってしまった。
 だが打擲の剛激手は未だ健在。
 眼球で稼働し続けるチェーンソーによる痛みに耐えかね暴れまわるが、それは勇者からみれば隙でしかない。
 怪物が腕を不規則に上に振り上げた瞬間、勇者は怪物の懐に飛び込み、手に持つエクスカリバーを横に一閃。
 それだけで、怪物の上半身と下半身は両断され、あっさりと息絶える。
 この時、怪物の上半身が地面に落ちた衝撃で目に刺さっていたチェーンソーが破壊されたが、それに気づく者はいなかった。

「あらあっさりね」
「元々弱ってたからね。この人がほとんど弱らせて、ボクはおこぼれを貰っただけだよ。
 ってそうじゃなくて、この人大丈夫なの!?」

 紫の称賛のそこそこに受け取り、勇者は目の前で大火傷を負っている人影を心配する。
 その心配の声に対し、サーニャは宣言した。

「魔力は相当使いますが……必ず助けます」

 サーニャの言葉を勇者はただ真摯に受け止める。
 ここで自分にできることは、余計な口を挟むことではなく、二人をNPCや危険な参加者から守る事だけだろう。
 そう考えた彼女は護衛の意志を固めるのだった。

 一方、会話に入らなかった紫は一人警戒する。
 警戒相手は今サーニャが治療している相手。
 治療に異議を挟むつもりはないが、何せ相手がどういうスタンスの参加者なのかまるで分からないのだ。
 だがそんなことを言ってもサーニャは治療を止めないし、勇者も紫の言い分を否定はしないが肯定もしないだろう。
 なので紫は一人こっそりと警戒するのだった。

 そして紫の懸念は正しい。
 ここで治療されている人影、ラッド・ルッソは殺人鬼であり、この殺し合いにおいても殺したい相手を殺そうとしている。
 その事実がを彼女達が知った時どうなるかは、今の時点では誰にも分からない。

80少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:41:48 ID:4DHS.Iaw0


【B-4/早朝】

【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:ダメージ(大)、上半身に火傷(大)、気絶
[装備]:スタングレネード@現実
[道具]:基本支給品、
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を見つけて殺す! とにかく殺す! 殺しまくる!
1:あの怪物(打擲の剛激手)を殺す
2:その後にひろし、牛飼い娘を殺す
[備考]
※参戦時期はフライング・プッシーフット号に乗りこむ直前からとなります。

【勇者@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:約束された勝利の剣@Fateシリーズ、包帯(ところどころに巻いてる)
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)
[思考]基本行動方針:こんな殺し合いを許してはおけない。
1:サーニャちゃんとこの人(ラッド)を守る
2:助けが欲しい人はなるべく助けたい。
3:彼(ザメドル)は倒さないといけない。
4:紫さん、サーニャちゃんと同行。
[備考]
※最低でも魔王を撃破した後からの参戦です。
※約束された勝利の剣の性能は知ってはいますが、
 現状は切れ味のいい剣程度で扱っています
※ランダム支給品の二つはエクスカリバーと交換されました

【サーニャ@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
[状態]:幻惑の学聖ボタンの強化効果(回避率、命中率上昇、魔族属性に有利)
[装備]:幻惑の学聖ボタン@大番長、サーニャの十字架@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、鳥の死骸@ミスミソウに刺さっていた棒状の物(洗浄、消毒済み)
[思考]基本行動方針:出来るだけ生命を救う。
1:この人(ラッド)を治療する
2:紫さんと勇者さんと同行。
3:傷ついた人は助けたいけど……
[備考]
※参戦時期は少なくとも固有のストーリー経験済みです。
※幻惑の学聖ボタンの効果で魔族属性に該当する敵に対して強化効果を得てます。
※治癒能力は低下していますが、元々役割がヒーラーなのでそれなりに回復できます。
※能力を用いた死者の蘇生は不可能となっております。

【八雲紫@東方Projectシリーズ】
[状態]:力の消耗(小)
[装備]:緋舞扇@グランブルーファンタジー、ビブルカード(粕谷瞳)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換、破亜限堕取×1@銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり 含む)、ビブルカード×2(シャーロット・E・イェーガー、土方歳三)、卵かけご飯@現実
[思考]基本行動方針:一先ずは異変解決
1:この男(ラッド)を警戒
2:勇者ちゃんとサーニャと共にビブルカードの示す先へ向かわないくても、いいかしらね
3:霖之助さんは変わらないようで安心した。
4:レミリアは……ほっといても大丈夫でしょ。
5:ミルドラースの目論見とか、その辺考察しておきたいかも。
6:この食べ物(卵かけご飯)は、しまっておくわ……
[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降です。
※境界を操る程度の能力には制限が掛かっており、行使した場合大幅に力を消耗します。
 ・能力を用いた遠所への移動は2マス先のエリアまでであれば可能です。
※サーニャ、紫、勇者のランダム支給品は森近霖之助の能力、
 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』で鑑定済みです。
 ただし使用方法は分かっていません

81少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:42:18 ID:4DHS.Iaw0





 一方その頃、紫達三人が当初目指していた粕谷瞳は、牛飼い娘の手に引かれ疾走していた。

 牛飼い娘は一度街に戻ることにしていた。
 理由としては、心情的にひろしを探したい気持ちはあったが、それを優先するには今の瞳を連れるのは危険が過ぎる。
 なので一度戻ることで彼女をプレザンドパークにいる仲間に預けることにしたのだ。
 
 懸命に走る牛飼い娘とは対照的に、瞳はただ虚ろに流されるだけ。
 最早生きる気力すらあるか分からないが、それでもついて行ってはいた。

 ザッ

 そこに一人の男が現れる。
 全身を怪しげなマントで覆いつつも、しかし顔だけは何の意地か出している、ピンクに黒の斑点を髪につけた男だった。
 この特徴的な髪を見て、牛飼い娘はクロちゃんから聞いた話から目の前の男が誰かを見抜く。

(この人、危険だって言ってたディアボロ……!?)

 思わず足を止め、警戒する牛飼い娘。
 それでも咄嗟に銃を構えないのは、彼女が根本的に戦いに向いた人間ではないことの証明だろうか。

 一方、ディアボロもまた、目の前の女性二人がクロちゃん達から話を聞いた牛飼い娘と瞳というメイドであることに気付いた。
 それに加え、虚ろなメイドの瞳はともかく、牛飼い娘が警戒していることにも気付く。

(別に見捨てていくことに抵抗はないが……)

 ディアボロとしては少々考えなければならない状況だ。
 見た所二人は彼がさっきまでいたプレザンドパークへ向かっている様だが、ここで襲撃者のことを伝えず見捨てていくことは簡単だ。
 しかしそれがクロちゃん達に伝わってしまえば、一度勝ち得た評価は最底辺へと落ちるだろう。
 だがここで警戒されている自分からの情報を信じさせることに時間を使うことで、さっきの襲撃者と再度遭遇する可能性もある。

 ディアボロの選択は――


【C-4/早朝】


【牛飼い娘@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM31@現実(予備弾3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いはしない
1:彼(ゴブリンスレイヤー)を探す
2:瞳を守る。ディアボロを警戒
3 :一度街に戻って瞳を預けてからひろしを探したい
[備考]
※参戦時期は原作9巻終了後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【粕谷瞳@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]:回復用キノコ×4@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品
[思考]
基本:???
1:とりあえず牛飼い娘と同行する。
[備考]
※参戦時期は本編開始前となります。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:牛飼い娘と瞳に対処するか、それとも無視するか――
2:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
3:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
4:あの化物(ザメドル)をどうにかする方法を探さねば……
[備考]
※参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
※殺し合いに何度か参戦した経験あり。
※スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。
 『ホワイトスネイク』でDiscにされて抜かれた可能性もありますが、真実は現在不明です。
※自身以外の「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


※チェーンソー@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage は破壊されました。


【破亜限堕取×3@銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり】
紫が香霖堂で食料と交換した菓子類の中に混ざっていたもの。
本来なら参加者の一人志村新八の姉、志村妙の好物というだけのアイス。
だが出展がアニメ版銀魂ではなくRPGである銀玉くえすとのため、食べるとHPとMPが回復する。


【スケルトン@Fate/Grand Order】
FGOに登場する雑魚敵。武器を持った骸骨というしかないキャラ。最初の特異点である冬木から登場する。
持っている武器は剣だったり槍だったり弓だったりと様々。
本来なら神秘を持たない攻撃は通用しないと思われるが、本ロワではどんな攻撃でも問題なく通用するものとする。

82 ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:43:11 ID:4DHS.Iaw0
投下終了です。

そしてこの話でペニーワイズと桐山和雄以外の参加者が早朝までたどり着いたので、ここらで放送を投下したいと思います。
ですが他の書き手氏に放送前に書きたい話があれば、今月11日まで待ちますのでその間に書きたい話がある方は予約してください。
なければ12日のどこかで私が放送を投下します。私事で遅れる場合はまた連絡いたします。

83 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/04(木) 11:24:59 ID:POgClnYI0
>>82
投下お疲れ様です。
いつも自分が書いた作品のリレーや出したNPCの処理を氏にやらせてしまっていて申し訳ございません。

また、放送の報告ありがとうございます。
オレカバトル出典のものをどうするかについての意見も拝見させて頂いたのですが、例の続編もまだ正式リリースがされておらず、企画内に出ているキャラやアイテムが続投されるかどうかもまだ判明していないため、こちらでの途中送還を実行してしまおうと考えております。
それともう一つ、本日は書き込みや作品の執筆に使用しているスマートフォンを点検に出し、結果次第ではそのまま交換しようと思っております。
その際にトリップも現在のものから変更しようと思っています。
その場合はこちらのスレ内でも報告させて頂こうと思っています。

マシュ、ラヴィニア、エンキ、エーリュシオンで予約させて頂きます。
また、予約中にも先述した様にトリップを変更させて頂こうかと思っております。

84 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/04(木) 20:26:16 ID:POgClnYI0
>>83
機種変更は終わりました。
トリは変更しないことにします。

85 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/07(日) 21:35:06 ID:oS6z6AyQ0
申し訳ございません。
予約破棄させていただきます。

86 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:33:28 ID:k40zP/SM0
放送を投下します

87第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:34:22 ID:k40zP/SM0
 コンペ・ロワイアルの開始から六時間。
 あるいは真の開幕を告げる放送から四時間半。
 時間にして午前六時。
 これより会場に流れるのは最初の定時放送。
 真の開幕を告げたイレギュラーではなく、バトル・ロワイアル本来のルールに記載された、絶望を告げるもの。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 ミルドラースの声が会場に響く。
 この声に参加者が覚える感情はいかなるものか。
 だがいかなるものであっても彼は看過しない。
 ただ、彼は告げるべきを告げるだけ。

『この放送は禁止エリアについて発表するためのものだ。
 今回は最初の放送から四時間半後だったが、本来は六時間ごとに行う。
 よって次に放送を聞くのは、十二時ということになるな。もっとも、それまで生きていられたらの話だが』

『では禁止エリアの発表と行こうか。

 二時間後にA-6
 四時間後にD-5
 六時間後にI-5

 以上の三つだ。
 そしてせっかくだ。もう一つ諸君らにとって重要な情報をくれてやろう』

 ここでミルドラースは、会場にいる参加者には見えないが邪悪な笑みを浮かべる。
 もっとも、そんなほくそ笑んだ顔を想像できる参加者もいるだろうが。

『それは、コンペ・ロワイアル内で今までに退場した者の名前だ。これからは定時放送において禁止エリアと共に発表してやろう。
 参加者の中には知人や一方的に見知った者を探したり、警戒している者がいるだろう。
 だが死者の捜索に金泥したり、既に死んだ相手を警戒されても滑稽なだけだ。
 面白くはあるが、殺し合いにおいては進行を妨げるだけなのでな。
 心して聞くがいい』

『ではいくぞ。

 絶叫するビーバー
 クレマンティーヌ
 アキネーター
 Syamu game
 RRM姉貴
 藍野伊月
 和泉守兼定
 星野輝子
 野原しんのすけ
 西片
 野比のび太
 ピーチ姫
 令嬢剣士
 足柄
 ホル・ホース
 沖田総司
 佐々木哲平
 グレシア・ゲッベルス
 斬真狼牙
 ぉ姫様
 佐藤和真
 レム
 高垣楓
 シャガクシャ
 鳥月日和
 ブースカ
 とがめ
 ひろし
 甘露寺蜜璃

ああ、あとオグリキャップを忘れていたな。
以上。合計30名だ』

88第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:34:54 ID:k40zP/SM0

『素晴らしい! 既に参加者の四分の一以上が退場しているではないか!
 もし死者が出なければ参加者の首輪を全て爆発させることになるかと思っていたが、そんな興ざめしたことにはならなさそうでなによりだ』

『そしてもう一つ朗報だ。
 先ほど呼ばれた名前の数が多すぎて、覚えられないという者もいるだろう。記録する術を持つ者も少ないからな。
 だが安心せよ。
 参加者の名前が書かれた名簿を見るがいい。
 この殺し合いを退場した者の名前は赤く染めておいた。これで万が一聞き逃したとしても安心だな。
 ついでに禁止エリアの方も同様だ。地図もそのエリアは赤く染めているから、安心して近寄らないようにするがいい』

『余談だが、A-6に存在する香霖堂についてだ。現状、少々隅にありすぎてせっかくの施設が台無しだ。
 なので禁止エリアに選ばれたことと合わせて移転することに決定した。移転場所は、次の放送で発表するとしよう』

『それからこれは詫び入れだが、実は一部の参加者の支給品をこちらで没収している。
 これに関してはこちらの不手際だ。代わりにランダム支給品を同じだけ与えているので、どうかそれで許してはくれまいか』

『最後に、とても大切なことを言っておこう。
 この放送以降の予約に置いて、最終的な時間が朝ならば、放送前に参加者が退場しても第二回放送前の退場者として扱うと明言しよう』

『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
 次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』





「お疲れ様」
「……マキマか」

 放送を終えたミルドラースは、彼の元に現れたマキマに対し訝し気な表情を見せる。
 最初の放送の時もそうだが、彼女はなぜ自分の元に来るのか、ミルドラースには理解できなかった。

 彼らは断じて仲間ではない。
 立場こそ同じ主催者であり、この盤上を成立させている存在だ。
 互いに必要としあっていると言っていいが、それでも彼らの間には格差がある。

 ミルドラースとマキマには、見えている物が違う。
 自分には見えていないものが彼女には見えている、と彼は確信している。

 これから我はそんな相手に弱みを見せるかもしれない。
 恐れながらも、彼は一歩踏み出しある問いかけをする。

「マキマよ」
「何かな?」
「貴様は、あの意味を知っているのか?」

 ミルドラースが問うたのは、どう聞いても参加者に向けた物とは思えない『この放送以降の予約に置いて、最終的な時間が朝ならば、放送前に参加者が退場しても第二回放送前の退場者として扱うと明言しよう』一文について。
 聞いたところで答えが返って来る保証はない。
 仮に返答されても、それが真実かどうかを確かめる術はない。
 それでも、彼は問う。

「私も完全に分かっているわけじゃないけど」

 ミルドラースの問いに、マキマは困り顔で応じる。
 彼女の表情は演技ではなく、本気で困っているような、そんな風に見える。

「分かっていると思うけど、あれは参加者に向けた物じゃない。
 じゃあ何に向けたかって言うと、この殺し合いを認識している外側にいる者に向けた物」
「外側?」
「うん。外側。
 コンペ・ロワイアルが始まる前……ううん。私達が生まれるより前から確かにある、決して触れられない筈の場所。
 そして、私達がたどり着くべき場所でもある」

89第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:35:28 ID:k40zP/SM0

 ミルドラースに対して話していた筈が、いつの間にかまるで決意を晒すような語り口へと変わっていくマキマ。
 その様を見ている彼に、意味は伝わらない。
 だが

「らしいよ」
「……らしい?」
「アルタイルちゃんがそう言っていただけだからね。
 正直なところ、私にはまだよく分かっていないんだ。
 参加者にも一部なら理解者がいるみたいだけど、誰の事なんだろうね」
「知るか」

 マキマの言い分を切り捨て、去っていくミルドラース。
 得るものがなかったとは言わない。
 しかし、肝心な部分はよく分からないままだった。

 その後すぐに悪魔神官からマキマが香霖堂に足を運んでいたという情報を得るが、それはまた後の話。





 ミルドラースとマキマが話していた部屋とは別の場所で、アルタイルがあるものを見上げる。
 彼女の視線の先にあるものは、巨大な魔力を内包する器。
 見る者が見ればこう称するだろう。
 ホーリーグレイル、聖杯。
 数多の集められた参加者の元の世界のうち一つ、支給品を含めればいくつかの世界で行われている儀式、聖杯戦争。
 その戦争の果てにある物が、コンペ・ロワイアルの会場にもあった。

「……サーヴァントが落ちたか」

 小さく呟くアルタイル。
 視線の先にある聖杯に魔力が溜まったのを感知すれば、それに気づくことは難しくない。

「藤丸立香は最初の段階で儀式とは予測していたが、まさか聖杯戦争とは思っていないようだな。
 まあ、それはそうか。数多の異世界が集うのなら、知らない儀式の可能性も考えなければならないうえ、沖田総司だけが自分と同じ世界と感づけば、聖杯戦争をしているとは思えんだろうよ」

 独り言を続けるアルタイル。
 誰が聞いているわけでもない。否。彼女は誰かが聞いていたとしても気にも留めていない。

「わざわざ出展をすり替えた甲斐があったものだ。あのままでは沖田総司も名簿の別の行に書かねばならず、気づかれていたかもしれないからな。
 彼女達が住んでいる世界だけでなく、Fateシリーズ以外の出展の参加者にも、我々が召喚したサーヴァントが紛れているとな。
 もっとも、サーヴァントも我々に召喚された記憶などないのだから、閲覧制限を掛けていた野原ひろし? と違ってヘブンズ・ドアーでは見ることすら不可能だ」
 
 何故ここまで話すのかは、この場で分かるのはアルタイルだけだ。
 ミルドラースの手下や他の主催が聞いているかなど、現時点では定まっていない。
 にも拘わらずここまで話す。

 まるで後付けの設定を、既定の事実として定めるかのように。

「さて、気が早いがミルドラースに顔を出しておくか。
 次の放送は私の担当だからな。それを伝えておくとしよう」

 こうしてアルタイルはミルドラースの元へ向かう。
 その様に淀みはない。
 予定外など既にいくつも起こっているのに、彼女はまるで動じていない。

「規定などない。未来など定まっていない。
 ならば私が動揺する道理がない。最後だけが決まっていれば、途中などアドリブでいい。
 極端な話、サーヴァント以外なら外側の都合で帰還者が多少出ても何とかはなる。
 そういうものだ、この話は。

 そうだ、目的だけは成し遂げるとも。
 最後の最後だけは、我々が掴んでやる」

90第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:35:54 ID:k40zP/SM0


◆ 


 同じ頃、コンペ・ロワイアル会場にて。
 ゴブリンの巣穴から、一匹のゴブリンが地上に現れた。
 否、知らぬものが見ればそれをゴブリンと認識できるだろうか。

 成人男性よりも大きな体を持つ、筋骨隆々のその姿。
 かのゴブリンスレイヤーならこう言うだろう、ゴブリンロードと。
 誰であろう、真のOPにて現れた主催陣営の一角、小鬼王である。

 なぜ地上に現れるのに四時間半もかかったのか、それは小鬼王が目的地に向かう途中こう思ったからだ。
 何も自分で行かなくても、適当にNPCのゴブリンを宛がえばそれで充分ではないか? と。

 しかしその企みはあえなく潰えた。
 ゴブリン達はてんでバラバラの方向へ向かい、ある時は淫欲を操られ参加者の良いように使われ、ある時は別のNPCの洗脳効果に操られ良いように使われるなど、ロクに役割を果たせてはいなかった。
 なので小鬼王は業を煮やし、自ら殺し合いの場に降り立ったのだ。

 ところで、ゴブリンの巣穴と言うとコンペ・ロワイアル会場において現在描写されているのは、いのちの輝きの出発点だけである。
 しかし、ゴブリンは会場のいたるところに存在している。
 故に、巣穴も一つだけとは限らない。
 つまり、現状小鬼王がどこにいるかは不明である。



 第一回放送と同時に様々な動きを見せる主催者勢。
 しかし、それと参加者の動きはまた別物。
 ぶつかり合うかすれ違うか、はたまた同じ方向を向くか。
 その答えは未だ見えず。
 


※A-6 香霖堂が別のエリアに転送されました。どこに転送されたかは後の書き手氏にお任せします。
※コルワ、岸辺露伴、クッパ姫のデイパックにランダム支給品×1が転送されました。
※第二回放送はアルタイルが担当します。これは現時点での決定で、後で何らかの理由で変更される可能性もあります。
※ゴブリンロードが会場の地上に出現しました。どこに現れたか、どこを目指しているかは次の書き手氏にお任せします。

91 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:37:15 ID:k40zP/SM0
投下終了です。
今から予約については自由にお願いします。

これからも本企画をよろしくお願いします

92 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/12(金) 19:49:46 ID:N6I2o78c0
>>91
企画主様が不在である中、放送投下お疲れ様です。
今後もこちらでリレーを続行させて頂くのかは今のところ未定ですが、

93 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/12(金) 19:51:10 ID:N6I2o78c0
>>92
誤って途中送信してしまったので続き
まだまだ読ませて頂こうと思っております。

94名無しさん:2024/01/12(金) 20:08:26 ID:yZaioj2E0
投下および放送乙です
予約がどうのとかいうミルドラースとか出展がどうのいうアルタイルがメタいw
ミルドラース、あっちのミルドラースだったりしないよね?

95名無しさん:2024/01/15(月) 18:04:52 ID:YIHTKERk0
>>73
公式サイトから閲覧出来るお問い合わせフォームにあるQ. 著作物の利用について教えてください【その他】の項目にて著作物の利用について、原則として個人のお客様へは許諾をさせていただいておりません。と明記されていました。

96 ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:24:12 ID:QoZkAXGM0
ゲリラ投下します。
先に言っておきますと、オレカバトル勢を帰還させる話です

97出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:24:46 ID:QoZkAXGM0
 G-9 荒野にて、コーガ様とマシュが遭遇する。
 彼女が車を降り、一瞥する。
 この行為を警戒しているものと捉えたコーガ様は、自身の両手を上げ、必死に武器を持っていないことと戦う気がないことをアピールする。
 それが功を奏したのか、車からマシュ以外の者も降りてきた。

 何やら怪しげな触手を抱えるアルビノの少女。
 イーガ団の幹部が持つ刀を携える老騎士。
 そして、思わず目を見張るほどの美少年。
 前の二人は知らないが、最後の少年についてコーガ様は聞き及んでいた。

(こいつ……理愛が言っていた清良トキじゃないのか!?)

 まさかこんなところで遭遇するとは、と言いたくなるも我慢して声を抑えるコーガ様。
 幸か不幸か、その様を目の前の四人に気取られることはなかった。
 だが危険人物が混ざっていると知った以上、コーガ様は慎重に話題運びをしなければならない、と考えた所で――

「な、なんじゃ!?」

 いきなりエンキの体が発光し始めた。
 さらに――

「どうもおはようございます。
 私のことは一般通過爺とでもお呼び下さい。主催者のメッセンジャーとしてやってきました」

 何の前触れもなく、紅のネルシャツを着た老人が五人の前に現れた。
 気配もなくいきなり現れた相手に対し、咄嗟に構えるエンキとマシュ。
 思わず固まるラヴィニア。
 トキはそんな彼女を庇いつつ下がり、コーガ様は特に迷うことなくそれに続く。

 そんな五人の動きに対し、特に反応することなく老人は言葉を続ける。

「突然ですが、『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上で老将エンキと聖帝エーリュシオンの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。
 ご安心ください。お二人は生きたまま、無事に元の世界へとお帰しします。
 また、お二人が現在ご所持されていらっしゃる支給品は全てここに残させて頂きます。
 では、私からは以上です」

 老人の語る言葉は、ここではない別のエリアでオグリキャップが帰還させられた時と変わらないメッセージ。
 しかし、何もできないまま問答無用で返された彼女とは違い、エンキは一つ質問を投げかけた。

「待て、わしの参加がこの殺し合いの運営に危ういとはどういうことだ!?」
「正確にはあなたと聖帝エーリュシオン、それからあなた方の世界から持ってきた支給品なのですが……
 いえ、どちらにせよ答える義理はありませんし、仮に答えた所で理解できません」

 一般通過爺のあまりに一方的な物言いに戸惑いを隠せない五人。
 しかしここでコーガ様がこう切り出す。

「おい、なんだかよく分からないけどそのじいさんとエーリュシオンとかいう奴だけが返されるのか!?
 ついででいいから俺様と、あとそこのあやしい触手持ったガキも返してくれていいんじゃないか!!」
「無理です。少なくとも今は、あなたとラヴィニア・ウェイトリーを帰還させる理由はありません」

 コーガ様の懇願を切り捨てる一般通過爺。
 ちなみにここでコーガ様が自分だけでなくラヴィニアも付け加えた理由は、単純に保身である。

 ここで懇願したところで返してもらえる可能性は、はっきり言って低い。だが言わなければ絶対に返してもらえることはない。
 ならば言うだけ言いつつも、同時に子供を心配する一面を見せれば、後に何かあっても残った女から庇ってもらえるのでは? とコーガ様は考えたのだ。
 なお、トキについては全く信用していない。理愛の話を聞けば当たり前ではあるが。

「こんな中途半端にいなくなってしまいすまん。
 だがせめて生きてくれ。マシュ、ラヴィニア。それから――」

 ここに至ってもうどうしようもないことを受け入れたエンキは、謝罪の言葉を口にする。
 だが彼の言葉は最後まで紡がれることなく、途中で消えて行ってしまった。
 それと同時に一般通過爺もまた姿を消す。
 来るときに気配を感じさせなかったのと、同じ様に。

98出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:25:37 ID:QoZkAXGM0





 一方同時刻、C-5 市街地においてはエーリュシオンが激怒していた。
 それも無理はないだろう。
 そもそも無理矢理呼びつけておきながら、都合が悪くなったから帰れと言われて、怒りを覚えない者がいるだろうか。
 せめてもの腹いせにメッセンジャーである一般通過爺を切り殺すが、その行いに意味などない。
 エーリュシオンもまた、オグリキャップやエンキと同じく光っている以上、帰還させられることは最早規定だ。

「おのれぇぇぇぇえええええ!!」

 怨嗟の叫びをあげながら消失するエーリュシオン。
 後に残るのは、彼に支給されたデイバックと、彼がゴブリンに奪わせた二つのデイバックのみ。
 彼の周りに誰もいない。
 そして離れていても彼を思う誰かもいない。


【老将エンキ@モンスター烈伝オレカバトル 生還】
【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル 生還】
【残り80人】


 そして二人が帰還した直後に放送が流れ始める。
 否が応でも現実を突きつける、あの絶望が参加者の耳に入る。


【G-9 荒野/朝】

【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ボロボロ、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める
1:いや、アンテン様関係なく脱出できるのかよ!? なんだよそれ!?
2:脱出したい。アンテン様でも他の手段でもいいから
3:よくよく考えたら死体を集めりゃいいんだから、別にわざわざ俺様が殺して回る必要ないよな?
4:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
[備考]
※本編死亡後の参戦です。
※支給品は全てまみかによって没収されました。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:体に無数の傷(中)、疲労(小)、ゴブリンへの嫌悪感(中)
[装備]:トヨタRAV4@例のアレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)、いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)@Fate/Grand Order
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:エンキさん……!?
2:先輩や他のサーヴァントの皆さんと合流したい……
3:エンキさんは別の世界の方でしょうか……?
4:"ネルガル"と"エンリル"はこの殺し合いとは関係がないのでは……?
5:黒幕は第二魔法を自在に扱える存在……?
[備考]
※参戦時期は少なくとも、第1部第六章「神聖円卓領域キャメロット」以降です。そのため自身の宝具などについて把握しています。
※目の前の老人(老将エンキ)をその特徴から、メソポタミア神話の主神『エンキ(エア)』ではないかと推測していましたが、異世界ということで推測を捨てました。
※老将エンキから、"ネルガル"と"エンリル"、"マルドク"に関する情報を得ました。
※"藤丸立香"が殺し合いに参加していることを把握しました。

99出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:26:12 ID:QoZkAXGM0

【ラヴィニア・ウェイトリー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、ゴブリンへの恐怖、嫌悪感(大)
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。元凶に立ち向かう。
1:えっ……?
2:違う世界……?
3:ゴブリンはもう嫌
[備考]
※参戦時期は死亡後。そのためカルデアや魔神柱、アビゲイルの正体などを知っています。

【清良トキ@魔法少女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:望遠鏡@ゼルダの伝説 風のタクト
[道具]:基本支給品一式、ホモコロリ@真夏の夜の淫夢、スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス、
[思考]
基本:せっかくだから楽しませてもらう。だけど、一筋縄ではいかないかもしれない
1:しばらくは大人しく、ただの高校生清良トキとして行動する。とはいえ、大人しくする必要性は少し減ったかな
2:ミリアは…見つけたら手伝ってもらうかな
3:違う世界か……そこにもキリエライトさんやウェイトリーさんみたいな素敵な子がいるといいな
4:ホモコロリは隠しておく
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※ゴブリンを配下にできますが、現在配下はいません。


※G-9 荒野に風斬り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、エンキのデイバック(基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み))
 C-5 市街地に原罪(メダロック)@Fate/stay night、ひろしのデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×2)、神楽鈴奈のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品1~2)、一般通過爺の死体
 がそれぞれ放置されています。
※島村卯月に支給された禁断の薬、ザメドルに支給された神界の木片、佐藤アカネに支給された参謀エンリルのナイフ、とがめに支給された堅剛月餅、ホル・ホースに支給されたトリケラゲノムはそれぞれ支給前の状態に復元された上で元の世界に戻されました。
 代わりに五人のデイバックにそれぞれランダム支給品×1が転送されています。
 また、支給品没収に伴い卯月の『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化が解除され、氷の魔法使いから人間に戻りました。同じくアカネの『堅剛月餅』も解除されました。

100 ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:26:42 ID:QoZkAXGM0
投下終了です


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