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決闘バトルロイヤル

1 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:16:15 l3H6j8iU0
――決闘開始の宣言をしろ、磯野!

――決闘開始ィィィ!


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2 : 決闘開始 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:17:24 l3H6j8iU0
 世界は一枚のカードにより生まれた。
 そんな奇想天外な話、誰も信じないだろう。

 世界には無数の可能性世界がある。
 それらは並行世界とも呼ばれる幾重にも枝分かれした可能性だ。

 例えば何度も世界の滅びを目の当たりにした女神と魔王が居る。
 しかし彼らの世界も並行世界の一つに過ぎず、所詮はその枠組みを出られない。

 謎の生命体・ワームとアーリー・オブ・ジャスティスの激闘が繰り広げられた端末世界も、所詮はただの並行世界。
 その世界ではワーム達が侵略者だったが、もしかしたら別の世界では全く異質の存在になっているかもしれない。

 この世から平成生まれだけを滅ぼそうとする勢力により、世界を平らにされそうになるも平成が溢れ出たおかげで守られた世界があった。
 これもまた一つの並行世界。その物語に登場した魔王はその世界で特殊な姿に変身しているが、他の世界でそうはなれない。

 この世には無数の並行世界が存在する。
 首の骨を折られて死亡した者が亡霊として呪詛を垂れ流す世界。平和な日常を過ごしていた少女が在り方をねじ曲げられた可能性世界。永遠の切り札となった男がかつての友人と再会し、異形から人間に戻ることが出来た世界。復讐を誓った少年が少女達と知り合い、真の黒幕が妹だと気付き討伐を成し遂げた世界。
 元不良の男が自堕落なフリーターになる世界と、彼がリベンジを誓ったことで変化した世界。

 様々な世界が存在するが、それら全ては冥府により統括されている。

「これより決闘(デュエル)のルールを説明する」

 サングラスを掛けたスーツ姿の男がマイクを片手にルールの説明を開始する。
 ちなみに決闘と書いてデュエルと読むのだが、一部の参加者はこの言葉に聞き覚えがある。

「バカ野郎!こんな状況で何がデュエルだ、磯野!!」

 特徴的なリーゼントの男がルール解説者に向かって声を張り上げた。
 だが磯野の呼ばれた男は顔色一つ変えることなく、言葉を続ける。

「本田ヒロト!この場で参加者が声を張り上げることは違反行為である。これ以上騒ぐ場合……」
「ふざけんな!オレ達を拉致して、何がデュエルだ!!」

 違反行為なんて知ったことじゃない。彼にとってデュエルとはこんな他人を拉致して行うようなものじゃない。

「待て!それ以上は危険だ、本田くん!!」

 奇抜な髪型の少年が、本田の行動を静止する。
 しかし本田に引く気はない。親指を立ててサムズアップすると自分を心配する友人に力強く笑い掛けた。

「大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――」

 ボン☆

 軽快な爆発音と共に本田の首と胴が分かれた。
 先程までサムズアップしていた男は親指を立てたままに崩れ落ちる。

「本田くん――――!」

 友人を失った少年の絶叫が響き渡る。
 ある者は少年と同じように本田の死を悲しみ、またある者は磯野に対して怒りを強めた。
 だが彼らは声すらも発せない。この場で発言を許されている人物は磯野、本田ヒロト――そして武藤遊戯(アテム)のみ。
 それ以外はかつて磯野が所属していた海馬コーポレーションの社長すらも声を発することが出来ない。これもまた首輪の効果の一つだ。


3 : 決闘開始 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:17:43 l3H6j8iU0
 本田ヒロトが違反行為をして殺されるという一連の流れ――これら全ては主催者によって練られた計画だ。だから本田だけは声を発することを許可した。遊戯については決闘王(デュエルキング)である彼の存在は様々な参加者に影響を与える可能性がある。だから最初に彼の存在を知らしめてやった。それに決闘王すら何も出来ず、本田が死ぬのを眺めることしか出来ない――この状況は特定の参加者にとって、より絶望的にも見えるだろう。

「このように違反行為をした者には罰が与えられる。他の決闘者の方々には、ルールを守ってデュエルをしていただきたい」

 遊戯の絶叫を気にも留めない様子で磯野は淡々とルール説明をする。
 サングラスでその瞳は隠されているが、それがまた不気味な雰囲気を演出している。目を見えない相手が何を考え、どんな表情をしているかだなんて誰にもわからない。

「詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる」

 磯野は手短にルールを説明した後、片手を上げる。
 それは幾度となく繰り返した開戦の合図。この場に集う決闘者ならば、馴染みの深い者もいるだろう。

「それでは――」

「――待て、磯野」

 何処からか声が響き、磯野の声がピタリと止まる。
 闇だ。闇が磯野の傍に集まり、収束している。
 会場の緊迫感が一段と増す。腕に覚えがある者こそ、あの闇の危うさを本能で感じ取ってしまう。

「私からも挨拶をしよう。我が名は冥界の魔王ハ・デス」

 闇が魔王の形を成す。
 頭部から生えた巨大な二本角に人の顔面のような禍々しい装飾。髑髏を連想させる凶暴な胴体。
 この世に悪魔が存在するのなら、きっと彼のような者を指すのだろう。

「私は一枚のカードより生まれた存在だ。この言葉の意味を知る参加者も何人か居ることだろう。
 信じるも信じないも貴様ら次第だが――この世界で実体を得た私は冥界の王として君臨した。そして貴様らを駒としてゲームを始めようと思ったのだ。特に人間共はこういうゲーム――デュエルが好きなのだろう?」

「この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い」

 ハデスは参加者達にそれだけ告げると、その場から消え去った。
 磯野は多少動揺するが、それでも決して自分の職務を忘れない。これまで何度も決闘の司会進行をしていただけのことはある。

「気を改めて。それでは――」

 再び磯野は片手をあげ、独特なポーズを取る。
 サングラスで視線は隠されているが、それでも彼の表情が迫真であることは参加者全員に伝わった。

「決闘開始ィィィ!」

 磯野が声を張り上げ、決闘開始の宣言をする。
 そしてバトルロイヤル形式のデュエルは始まった


【本田ヒロト@遊☆戯☆王 死亡】

『主催』
【磯野@遊☆戯☆王】
【冥界の魔王ハ・デス@遊戯王OCG】

『参戦確定』
【武藤遊戯(アテム)@遊☆戯☆王】


4 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:19:42 l3H6j8iU0
『ロワルール』
※最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。
※6時間毎に放送で死亡者の名前が読み上げられる
※参加者が所持していた武器は基本的に没収。支給品として本人に支給される可能性もある
※一部の参加者には制限が掛けられている。その他にも様々な変化を施されている可能性がある
※会場にはカードゲームのモンスターも解き放たれている
※参加者名簿はタブレット内に記載。基本的にタブレットに名簿閲覧とメモ帳アプリ以外の機能はないが、一部特殊なタブレットが支給品の代わりに配られている可能性もある。
※参加者が正式に確定次第、タブレットにて名簿を開示。それまでは白紙。選考に落ちた参加者の末路は、決闘者諸君で考えるべし
※参加者によっては様々な制限を掛けられている。制限については各々に支給された説明書に書かれている

※参加者に与えられるもの
・海馬コーポレーション製のデイパック。大概の物は何でも入る
・不明支給品1〜3。支給品には説明書も付属
・水と一日分の食料
・名簿が記載されたタブレット。それ以外の機能はメモ帳アプリくらい
・説明書(ルールブック)
・文房具一式
・懐中電灯

『書き手ルール』
※登場候補話を募集。条件は特になし。採用された場合、一話退場でも参加者は名簿に載る。支給品も参戦作品関係なく、好きなものをどうぞ。期限は7/1の0時まで。
※決闘ロワなので武藤遊戯(アテム)の参戦は確定。つまりアテムの候補話は必ず採用。複数投下された場合はその中から最低でも一つは採用
※施設などは自由に生やしてください。把握の難易度を下げるためにNPCは遊戯王と仮面ライダーのモンスターや怪人に限ります、
※デュエルディスクとデッキはセットで1つの支給品として扱う。また仮面ライダーのベルトなど変身アイテムを支給する場合も変身に最低限必要な道具一式で1つの支給品として扱う。
※一部のデバイスには支給品枠を一つ使用して『首輪感知』などのアプリがインストールされている場合がある
※SAOの心意システムは問題なく作用します

地図
ttps://w.atwiki.jp/duelrowa/pages/11.html

まとめwiki
ttps://w.atwiki.jp/duelrowa/


5 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:22:24 l3H6j8iU0
OPとルールはこんな感じです。質問などあれば答えます
とりあえず2作だけですが候補作を投下します


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6 : ご注文は毛玉ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:23:20 l3H6j8iU0
「なんだこの毛玉は……?」

 風見雄二はもふもふの毛玉――のようにしか見えない兎を弄っていた。
 何故か支給品としてデイパックに入っていたが、どう見てもこれはただの毛玉だ。手榴弾などを偽装しているにしても、あまりにももふもふが過ぎる。目や口がついていることすら謎だ。

「やめんか!いつまで弄り回すんじゃ!」
「ん?……お前、喋るのか」

 急に喋り始めた毛玉をジッと眺める。……どこからどう見ても、喋る毛玉だ。物珍しい喋る毛玉だ。
 だが魔界にでも君臨してそうな異形を見た今となっては、そこまで驚きもしない。雄二は至って冷静である。

「わしは訳あって、喋るうさぎじゃ」
「毛玉よ、いったいどんな訳があってうさぎが喋るようになるんだ。というかお前、その見た目でうさぎなのか……」
「わしにもわからん。おまじないでもかけられたんじゃろ」

 実際この喋るうさぎ――ティッピーは嘘をついていない。
 幼い少女におまじないを掛けられた結果、男はうさぎにその人格を宿らせることになったのだから。
 ちなみに元が人間だとか、そういうことは意図的に伏せている。状況が状況だから会話こそしたが、色々と事情を説明するとややこしくなると判断してのことだ。

 だが雄二からしたら、急におまじないだと言われてもなにがなんだかわからない。動物が喋れるようになるおまじないがあるなら、今頃世界中の動物は喋りまくってることだろう。仮にその対象がうさぎ限定だとしても、今まで喋るうさぎなんて一度も見たことがない。今回が初めてだ。

「ほれ。わしなんかより、説明書を読まんか」
「ああ。俺としたことが忘れていた。……それにしてもまさか毛玉に指示される日が来るとはな」
「うさぎじゃ!何度説明したらわかるんじゃ!」

 何度も毛玉と言われたことに腹が立ったのか必死に訂正を求め始めたティッピーを「なるほど」「すごいな」「悪いのは君じゃない」と適当にあしらい、雄二は説明書を読み始める。
 ちなみにこれらのワードは相手や‎状況次第では更に面倒な事態を引き起こすのだが、まあこの毛玉なら大丈夫だろう。こんな毛玉が鮫さんポーチやヤブイヌポーチをいきなり勝手に作れるはずもない。だから安心してルールの把握に専念出来るというわけだ。

「毛玉。お前、ティッピーっていう名前なのか」
「うむ。わしの名前はティッピーじゃ」

 ルールが記載された説明書にはこれといって目新しいことは書いていなかった。というよりも、サングラスの男が律儀に説明していた通りの内容だった。
 だが支給品説明書――これが重要だ。例えばティッピーの説明書には名前やアンゴラウサギという品種。メスであること。
 そしてなにより――

「ティッピー。お前が人間だったというのは、本当か?」
「本当じゃ。まさかそんなことまで記載されてるとはのう……」
「そうか。娘のチノやその友人達が巻き込まれていたら、どうする?」
「守ってやりたい。だがわしにはどうにも出来ん……」

 ティッピーの説明書に記載されていること。
 それは名前や性別の他に、喫茶店のマスターの心が宿っていること。今は孫娘のチノの頭の上によく乗っかり、チノとその友人を見守っていることなどが書かれていた。ラビットハウスという名称も説明書に記載されている。

「なるほど。ならばチノとその友人は俺が守ろう」
「気持ちは嬉しいが、お前に何が出来るんじゃ?」
「俺は普通の学生だから、出来ることは限られている。だが無力な少女達が暴漢にでも襲われていたら、その時は最善を尽くそう」

 ティッピーの疑問に対して一切迷うことなく、すぐに答える。
 その堂々とした姿はどう見ても普通の学生というには出来過ぎている。これも人生経験の賜物だろうか?――ティッピーは雄二が普通の学生でないことを見抜いた。


7 : ご注文は毛玉ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:24:07 l3H6j8iU0
 だが彼の事情を詮索するつもりはない。チノやその友達を――日常を守ってくれると力強く言ってくれた好青年に迷惑を掛ける気はない。

「よし。じゃあ次はチノの友達やお前の知り合いの名前を教えてくれ。名簿が映し出された時に確認する」
「ココア、リゼ、シャロ、千夜、マヤ、メグ、青山……。あとはワシの息子のタカヒロじゃ」
「……ココア?飲み物の話か?」
「ややこしいが、チノの友達の名前じゃ。姉みたいな存在でもある」
「珍しい名前だな。いじめの標的にでもされそうなキラキラ具合だ」

 冗談を交えつつティッピーと会話しながら、チノやティッピーの関係者の名を紙にメモしていく。せっかく文房具が支給されているのだ、これを活用しない手はない。

「ほう、律儀にメモしているのか。ちなみにフルネームだと保登心愛、天々座理世、桐間紗路……」
「……わざとやってるのか?それに宇治抹茶やブルーマウンテンってなんだ?お前の知り合い連中はそんなにも飲料が好きなのか?」
「うじまつ、ちやじゃ。それに青山はペンネームじゃ」
「なるほど。それにしても喋るうさぎといい、飲料みたいな名前といい、よくわからない世界だな」

 世界は無数に存在する――。あの異形はそんなことを言っていたが、まさかここまでよくわからない――想像していたよりもファンシーな世界まであるとは思わなかった。
 とりあえず先程書いた名前を消し、フルネームに訂正する。当然だが下の名前だけ――とかよりもフルネームの方が好ましい。そもそも『メグ』については本名ですらなく、ただのあだ名だった。『チノ』や『シャロ』など他の名前も珍しいばかりだからティッピーがフルネームを教えるまでは『メグ』もそういうものだと思っていた。

「わし以外はそこまで変わった世界でもないはずじゃ」

 どうやらこの毛玉、自分が異質な存在だという自覚はあるらしい。
 そんな他愛もない会話を繰り広げていた時――

「喋るうさぎとは……。驚きましたね」

 長髪で白衣の女――いや、声の感じ的に男だろうか?
 驚いたという言葉を口にしている割に落ち着いている男が声を掛けてきた。見た目と声にギャップを感じるが、その絶妙なミスマッチが不思議と風格を際立たせている。

「タカヒロよ、早々に合流出来るとは幸先が……。……誰じゃ!?」

 人違いを起こした毛玉が相手の顔を見て驚いた。

「とりあえずこの喋る毛玉は放置するとして――。あんたは何者だ?」
「この状況では警戒されても仕方ありませんね。まずはお互いの自己紹介や情報交換でもしましょうか」

 こうして俺は白衣の男――神宮寺寂雷と出会った。
 ラップで他人を回復させるとかいう意味不明な能力を持つ謎の医者に――。

【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、ティッピー@ご注文はうさぎですか?
[思考・状況]基本方針:バトルロワイアルからの脱出
1:チノとその知人、友人達を守る
2:まずは神宮寺寂雷と会話してみるか
[備考]
アニメ版グリザイアの楽園終了後からの参戦。

【神宮寺寂雷@『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima】
[状態]:健康
[装備]: ヒプノシスマイク@『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:バトルロワイアルからの脱出
1:まずは喋るうさぎやこの青年と会話してみましょうか
[備考]
最終回後からの参戦。


8 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:24:37 l3H6j8iU0
投下終了です
続いてもう1作投下します


9 : Dear My Sister/死を喰らう者とココアの覚悟 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:25:57 l3H6j8iU0
「これは……どういうことだ……?」

 高身長の軍服男――櫻井戒は困惑はさていた。
 彼は愛する者と一騎打ちをした末、トバルカインという異形と化したはずだった。しかし何故かトバルカインではなく人間――櫻井戒として参加している。
 こんな奇跡を起こせる人物にも心当たりはあるが……もしも彼らが関与しているとしたら状況は最悪だ。何も関わっていないと願うましかない。
 まあ本当に彼らが関わっているのなら、ルール説明などの司会進行役はサングラスの男よりも聖餐杯に任せそうだが。

「何もわからない状況で予想をしても仕方ないか。……それに螢や霧咲さんが心配だ」

 霧咲鏡花と櫻井螢。彼らにはどうか普通の日常を送ってほしい。
 だが霧咲さんが巻き込まれている可能性は、否定出来ない。双頭の鷲(ドッペル・アドラー)が壊滅したにせよ、所属していた過去を消す事は出来ない。もしも主催者が自分のような特殊な人間ばかり集めているとしたら、彼女も巻き込まれているかもしれない……。
 そういう意味では螢も不安だ。櫻井の一族というだけで何かと標的にされる可能性がある。相手はわざわざ僕をカインから人間に戻した上で参加させるような主催者だ。何か考えがあって参加者を選定しているなら、螢が巻き込まれている可能性もある。

 ベアトリスは――。
 ベアトリスは、あの夜に死んだはずだ。自分がこの手で、殺した。

「……」

 血に塗れた手を見つめる。
 実際は何も付着していない。――だがこの手は、ベアトリスを殺害した手だ。
 もしもベアトリスが蘇っていたら、――もしもそんな奇跡が起きたなら。僕は今度こそ、君を救いたい。守りたい。

 主催者は一つだけ願いを叶えられるらしい。……でも、誰かを殺した果ての蘇生なんて君は望まないだろう。

 だから僕は――。

「チノちゃん〜!」

 そんなことを考えている時だった。誰かを探しているような女の子の声が聞こえたのは……。
 まるで一緒に日常を送っていた頃の霧咲さんのような、元気で明るい声だった。


10 : Dear My Sister/死を喰らう者とココアの覚悟 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:26:38 IQuCEPZ60
 〇

 いきなり知らない場所に連れて来られて、殺し合いを強要される。
 そんなあまりにも日常からかけ離れた状況に保登心愛は不安になっていた。
 デュエルとかゲームとか。そんな言葉を使っているが、これは殺し合いだ。見せしめにされた本田の死体が脳裏に焼き付いている。

「どうしよう……」

 この時ばかりは持ち前の明るさもなりを潜め、不安と緊張感が全身を支配する。
 怖い。それが殺し合いに対する率直な感想だった。

 それでも何か行動をするしかない。ずっと何もせずに居ても、きっと誰かに殺されるだけだから。
 だから勇気を持って支給品を確認して――もふり。

「……え!?」

 とんでもないもの――というかもふもふが出てきて、素っ頓狂な声をあげてしまう。
 そう。もふもふだ。それは紛うことなき、もふもふだった。
 王冠を頭に乗せた真っ黒なうさぎ――。

「あんこ!?」

 甘兎庵の看板うさぎ、あんこだった。
 自分のよく知るうさぎと出会って、ココアの気持ちが少しだけ和らぐ。もふもふを抱っこして、微笑んで。

「これぞアニマルセラピーだね!」

 そんなことを元気良く言うが、あんこは無表情で無反応。いつも通りのあんこである。
 だがそれがココアにとっては嬉しい。いつもと変わらない態度のあんこだから、心を落ち着かせることが出来る。日常こそがココアの居場所で、大切なものだから。

「ありがとね、あんこ。いつもの調子に戻ってきたよ!」

 抱っこしていたあんこに感謝し、その場に降ろすと再び支給品の確認作業に入る。

「チノちゃんを守れそうな物が入ってたらいいなぁ」

 普段と変わらないあんこのもふもふによって調子を取り戻したココアにはチノを守るという意識が芽生えていた。
 もちろんシャロや千夜も守るつもりだが、やっぱり一番最初に思い浮かぶのは妹の姿だ。ちなみにリゼについては本人がなんとかするだろうからあまり心配はしてない。ココアなりの信頼でもある。

「チノちゃん、きっと怖がってるから……お姉ちゃんの私が助けてあげなきゃ……」

 そう言いながら、一本の大剣を取り出す。太陽のような装飾が特徴的な大剣だ。普段のココアなら重くて持てそうにもないのに、不思議と簡単に持つことが出来た。なんなら少し軽いようにすら感じる。

「チノちゃん!私、実は剣士の才能があったみたいだよ!!」

 調子に乗って大剣を振り回すココア。ちなみにあんこは無表情で呆然とそれを眺めているだけで、ツッコミ役不在のボケというなんとも言えない状態に……。
 それから暫く堪能して、支給品の説明を読み始める。

「ココア専用ソード……!?」

 予想外の名前に思わずキラキラと目を輝かせながら説明を読み進める――が、その内容は非常に簡素なものだった。
 保登心愛が並行世界で手にした力を引き出す。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する。――説明に記述された内容はただそれだけだった。

「すごい!私の名前が書いてある!!」

 保登心愛とフルネームで名指しされた紙を見てビックリ。説明通りならこの武器は本当に『ココア専用』ということになる。

「早速、試してみようかな……!変身!!」

 ココアが元気良く変身という言葉を口にすると、ラビットハウスの制服から一瞬で並行世界――きららファンタジアのココアの服装へ変化を遂げた。不思議と全身に力が漲り、説明が嘘じゃないと実感する。

「ほんとは魔法使いみたいな感じが良かったけど……これならチノちゃんを守れそう……!」

 ココアはチノのお姉ちゃん。妹を守るのはお姉ちゃんの役割だ。
 だから力を手に入れたのなら、後は大好きな妹へ向かって突き進むだけ。
 ココアは気合いを入れて、チノの名を叫ぶ。

「待っててね、チノちゃん。今からお姉ちゃんが助けに行くよ!」

 そしてココアは大声でチノの名を呼び、探し始めた。


11 : Dear My Sister/死を喰らう者とココアの覚悟 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:27:51 IQuCEPZ60
 〇

「事情はわかったけど……こんな場所で大声を出すのは危険だよ。やめた方がいい」

 とりあえず元気良く妹を探していた女の子――ココアちゃんに注意をした。
 どうやら彼女は妹のチノちゃんを探すために大声を張り上げていたらしい。妹を心配する気持ちは僕にも痛いほどわかる。だが彼女の行動はこの状況だと明らかに自殺行為だ。ベイやマレウスのような人物が聞いたら獲物を求めて寄ってくるだろう。なにより聖餐杯のような悪辣な参加者に目を付けられたら最悪だ。純粋そうな子だからこそ、ああいう人間には警戒しなければならない。

「うん。もう大声を出さないようにするね!」

 注意を受けた彼女はすぐに理解してくれた。まだ出会って間もないが……聞き分けが良い、純粋で元気な子だと思う。
 さっきの行動も妹のチノちゃんのためで、それだけチノちゃんのことを大切に思っている証拠でもある。……まあ血の繋がりはないようだけど、二人の在り方を否定する気はない。姉妹は姉妹だ。

「わかってくれたなら大丈夫だよ。僕にも大切な妹がいるから、君の気持ちは痛いほどわかる」

 妹のためなら――。
 螢のためなら、僕が総てを引き受けるから――。

「じゃあ。戒さんも妹を探してるの?」
「妹が巻き込まれたって断定するにはまだ早いけどね。ココアちゃんの妹のチノちゃんだって巻き込まれてない可能性もある」
「うん。たしかにまだ名簿すらわからないもんね!も〜、早く教えてほしいよ!!」

 僕はこういう陽気なタイプには弱い。ころころと表情を変える姿が可愛くて、思わず微笑してしまう。

「あ!戒さんが笑った!!」

 ココアちゃんが嬉しそうに歓喜の声をあげた。……何か嬉しいことがあったのだろうか?

「戒さんの笑顔もいいね!素敵だよ!!」
「……僕の笑顔?」
「うん。戒さん、ずっとムスッとしてるように見えたから……」

 ずっとムスッとしてる――無愛想ということか。
 別に不機嫌なつもりじゃないけど、彼女には悪いことをした気がする。

「ごめん。別に怒っていたわけじゃないんだ」
「なるほどね。なんだか知り合ったばかりのチノちゃんを思い出すよ!」

 自分もココアちゃんの陽気な姿に霧咲さんを少しだけ思い浮かべていたが、ココアちゃんも僕を見てチノちゃんを思い出したらしい。チノちゃんが僕のような性格なら、もしかしたら彼女も陽気なタイプに弱いのかもしれない。


12 : Dear My Sister/死を喰らう者とココアの覚悟 ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:28:06 IQuCEPZ60
 ――そんな他愛のないことを考えて、久しぶりの日常を味わってる気がする。
 でもここは日常とは相反する場所だ。それくらいココアちゃんも理解しているに違いない。

「話は変わるけど。もし殺し合いに積極的な参加者が居たら、僕に任せてほしい」

 情報交換した時にココアちゃんは支給品で力を得たと言っていた。でも彼女は日常を謳歌するべき人間で……こんな殺し合いで戦うべき人間じゃない。チノちゃんのこともあるし、姉妹二人で仲良く元の場所へ戻してやりたい。……それにもし螢が参加していたら、脱出した後のことはココアちゃんみたいな純粋な子に託したい。僕は一度カインになった身で、主催を打倒して脱出成功としてもどうなるかわからないから。

「戒さんだけに辛い思いはさせないよ!今なら私も戦えるから……二人で頑張ろうよ!!」
「君にはチノちゃんが待ってる。戦うべきじゃない」
「それなら戒さんだって――」
「僕は一度死んだ身だよ。主催者を倒しても、螢が待っている元の場所に戻れるとは思えないな」

 カインのことを説明しても理解するのが難しいだろうから、わかりやすい言葉に置き換えて説明する。

「そんなの、やってみないとわからないよ!」

 ココアちゃんが必死に言い返してくる。その言葉は反論と呼ぶには幼稚で感情的。まだ知り合ったばかりの僕に、どうしてそこまで感情的になれるんだろうか。
 今のココアちゃんが少しだけあの時のベアトリスと重なって――つい、困ったように苦笑いしてしまう。
 だが今はあの時と違って切羽詰まった状況じゃない。僕がカイン化する必要もなければ、螢が人質に取られてるわけでもない。

「私は戒さんだけが傷付くなんて嫌だよ。それに私はチノちゃんのお姉ちゃんだから――私だって、戦えるよ!」

 チノちゃんのお姉ちゃん。
 ――なるほど。それが彼女を支える原動力か。まるで僕と同じだ。
 きっと止めようとしても、彼女は止まらない。チノちゃんのお姉ちゃんという自負があるから、それが傍観を良しとしないはずだ。
 それに自分が死んで、ココアちゃんやチノちゃんを守る人が誰もいなくなったら……その時はココアちゃん自身が戦わなければならない。それなら僕が生きてる間に共闘や訓練して、少しでも戦う術を身に付けた方が彼女のためかもしれない。
 ――妹を持つ人間として、チノちゃんを守りたいというココアちゃんの気持ちは痛いほどわかるから。

「……僕の負けだよ、ココアちゃん。ただし無茶せず、危険だと思ったら逃げることだけは約束してほしい」
「ありがとう、戒さん!うん、約束するね!!」

 ココアちゃんの表情がキラキラと明るくなって、元気よく返事をしてくれた。彼女はら感情の変化が本当にわかりやすくて、その姿が可愛くて。またつい微笑してしまうと、ココアちゃんも一緒になって笑顔になった。

 ――それにしても、この王冠を乗せたうさぎはなんだろう?

【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]: ココア専用ソード@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、あんこ@ご注文はうさぎですか?、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:チノちゃんや戒さんと一緒にバトルロワイヤルを終わらせるよ!
1:戒さんと一緒にチノちゃんやみんなを探す
2:戒さんの妹探しにも協力するよ!
[備考]

【櫻井戒@Dies irae Verfaulen segen】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:とりあえずココアちゃんを守る
1:チノちゃんや螢、霧咲さんを探す
2:ココアちゃんを鍛える…?
[備考]
終了後から参戦。
聖遺物を本人支給されてない代わりに見知らぬ場所で聖遺物が破壊されても死にません。また攻撃も普通に通用します。これらの説明は戒に支給された説明書に記載されています

『支給品紹介』
【ココア専用ソード@きららファンタジア】
保登心愛に支給。ココアがが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出す。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する。変身中はきららファンタジアの『せんし』のココアの衣装に服装が変わる


13 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/22(日) 17:28:23 IQuCEPZ60
投下終了です


14 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:45:17 tmGMWUzM0
投下します


15 : バッドエンドのその先へ/Clossing Truth ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:45:48 tmGMWUzM0
神託:お前は新たな"絆(きぼう)"を得る。







おまえは"運命"であらねばならない。



おまえは"騎士"であらねばならない。



おまえは"希望"であらねばならない。



なぜなら、おまえは"プリンセスナイト"なのだから。

■ ■ ■


16 : バッドエンドのその先へ/Clossing Truth ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:46:33 tmGMWUzM0
「………ほう。」

男が、立っていた。

恐らく、その姿を少年は生涯忘れる事が無いだろう。
永遠の闇の中で唯一輝ける光の中心。数多の希望も絶望を抱え込み、永劫の荒野を渡り歩く偉丈夫。
曰く、その在り方は正しく神というべきか。燦然と輝き靡く黄金の髪。その煌眼は絶対神の如く、少年を見つめている。
まるで恐ろしいものを目の当たりにしたようにその眼を見開き、開いた口が塞がらないとはまさにこの事であろう。まさに現状の少年がその状態だ。
未知への恐怖、眼前の美丈夫への疑問、そして絶望、期待。雁字搦めに絡まった、そんな思考が少年の脳内で巡り巡りと渦巻いている。

「……あ、ぁ。」
「何、心配することはない。私もここに来て少々困惑しているものでな。と言っても、この面構えでは恐れられても仕方はないか。」

さもあっけからんと告げる男の常態に、少年は怖さと不気味さを混ぜ合わせたような寒気に襲われる。
これが人のカタチを生した機械人形だとか、人の皮を被った化け物だとか、ならまだ納得できた。
だが、間違いなく目の前にいるのは人だ。文字通りの人間だ。
少年には、それが余りにも恐ろしかった。

「……あ。」
「先ずは起き上がってくれると助かる。もう少し落ち着けるべき場所で大人しく話し合いたい所だ。」

だが、その超然的で優しい態度を崩さず、男は少年へと手を伸ばす。
話し合わなければ分からない。少年は一度恐れも震えも圧し殺し、彼の手を取る。
その手は、太陽にも似た、聖母の包容にも似た、暖かく心地よい感触であった。


17 : バッドエンドのその先へ/Clossing Truth ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:46:44 tmGMWUzM0


「なるほどな。」

静寂に包まれるとある場所のとある一室にて。先の男と少年は言葉を交わす。
お互いが知り得る、そして話せる限りの情報が交錯し、お互いの知識となった。
お互いの名前、仲間の名、敵の名。
新西暦、アストルム、プリンセスナイト、星辰光、神祖、神殺し、その他お互いの世界のetcetc……。

「参考になった。」
「……。」

一定の相互理解に十分、と男は言葉を打ち止める。
少年は、男の言葉につられて話してしまったというのもある。
少年の知り得る事、ほぼ全てを。そして、"諦めた"という己が罪も。

「……君の犯した選択を、私は咎める気など無い。そもそも私は君は別の世界の住人だ。私が君の経歴にどうこう述べるなど烏滸がましい。」

少年の心を見透かすように、男は教師のように語り掛ける。
その諦めに罪は無いと。
光の如き諦めの悪さや、神祖(オレ)たちのような達観しすぎた精神性を持ち得ている訳でもなく。
ごくごくありふれた、光でも闇でもない、絆を紡いで来た少年を責めるなど、見当違いであった。

「だからその上で、問おう。俺は今からこの殺し合いの打破にを目標とさせてもらう。勿論、多少の私欲はあれど、誰かを救うと言う寄道(かんじょう)も許容しよう。」

そして少年に告げる。それは話してくれた少年への感謝を込めて。

「その為に、俺は誰かの絆を蹂躙するだろう。」

ただただ、残酷な真実を告げる。
誰かを救うということは、誰かを救わないという事。
残酷な現実。正しくて余りにも苦しい真実。

「……ッ。」

少年は否定しようとして、否定できなかった。
あの光景から目を伏した自分にその資格など有りはしないと。

「俺は、俺たち神祖は今迄そうしてきた。誰かを切り捨て、誰かを救う。――ああ。俺の敵になるというのなら構わない。その時は心苦しいが、容赦も心残りもなく叩き潰してやろう。」

内心を見透かされたような言葉が続く。
正しく神であり、その千里眼の如き黄金の色彩は、少年の心の全てを理解しているようで。
もしも、諦めという名の過ちを、見捨てたという原罪も。
全てを覆して、みんなを助けられるというのなら。

「だがもし、俺と共に征くと言うならば、それを俺は受け入れよう。覚悟や信念は、その道程の中で積み重ねていけば良いのだから。それに、見捨てるのは一度やっただろう、痛みの経験は辛い事だが為になる。」

結局のところ、少年は罪悪感に呑み込まれただけなのだろう。
神様の優しさが、彼の心にとどめを刺してしまったようなもので。
彼と共に征く、ということは誰かの絆を踏み躙る、ということで。
その選択が、少年にとって余りにも残酷な事であって。

「……安心するが良い。お前の願いも、希望も、全て私が導いてやろう。」
「………ぅ。」

まるで観念したかのように、少年は再び諦めた。
つまるところ、少年は神と共に征く選択をしたのだ。
神祖は、少年の肯定を示す頷きを、その神々しさを保った微笑みを持って見つめていた。

絆を守るため、絆を否定する。蹂躙されるさまを、見て見ぬふりをする。
いや、今更彼がその行いを否定する資格など、とうの昔に無くなっているであろう。
因果は返ってくるもの。――過去からは、逃れられない。
いつか繰り返した、その為に目を瞑った、その宿業が今になって、背負うことになっただけ。

もう迷わない。迷ってられない。
覚悟を決めろ。目を瞑った時に、全て諦めて、それでも諦められなくて。
だから、往くしかない。例え誰かの絆を踏み躙ってでも。
最初(はじめ)に、神祖との絆を紡ぐことを選んだ時点で、プリンセスナイトに他の選択肢も後戻りの手段も消え果てたのだから。


18 : バッドエンドのその先へ/Clossing Truth ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:47:04 tmGMWUzM0
■ ■ ■

情報が足りなさ過ぎる。と言うのがこの男。
"神祖"グレンファルト・フォン・ヴェラチュールが最初に出した第一結論であった。
この場所で最初に出会った少年、ユウキと名乗る彼から得た情報は。
あくまで彼と彼を取り巻く世界に係わる情報でしかなかった。
ここにオウカがいれば意気揚々、興味津々に彼に質問攻めに問い詰めていたであろう。
聞き出せる事は凡そ聞き出せた。そして自分たちとは異なる歴史からの迷い子であることも。
少年は頼れる仲間たちと絆を育み、危機を乗り越えて、そして彼は仲間を庇い呆気なく死んだことも。
―――そして少年が、諦めたことを。

だが、それは逆だ。逆を言えばそれだけだ。現状の打破や解析に繋がる情報は殆どなかった。
共通する点を言えば、自分もユウキも知らない内にここに呼び込まれていたこと。
そしてバトル・ロワイアルという下賤で不気味な催しに巻き込まれたことぐらいだろう。
その他で言えば首輪の危険性、進行役の存在、見せしめに殺された名も知らぬ誰か。そのぐらいか。

だが、試行錯誤(トライアンドエラー)はいつものこと。そこは都度修正や変更を加えれば構わない。
自分がどれだけ強かろうと、賢かろうと、優れようと。そうと驕れば敗北からの終焉は必須。
"神祖"であろうと一人で出来る事には、意外にも限度というものがあるのだから。

神祖(なかま)も居ない。懐刀(かたうで)も居ない。
だが、新たな仲間(きずな)は出来た。
プリンセスナイト、絆を育んだ仲間に秘めたる力を接続し供給する。謂わばエネルギータンク。
当人の実力は兎も角、異能の有効範囲の大きさは仮想測定では規格外というべきか。
絆の力、当然の如く理解している。味方とすれば心強く。敵に回せば斯くも恐ろしい。

すべきことは多い。
首輪の解析。
いるかも知れない仲間たちの捜索、及び脅威への対策。
万が一、神殺しがいるという前提の上での今後の方針も。
特にこの首輪は厄介だ、全く未知で埒外の法則や技術が成されているのか。
恐らくは星辰光の出力にも大幅な制約が掛けられていると予測される。
そも、法則違いの未知の世界で正常に星辰光が発動出来るのか、という疑問も浮かび上がるが。

だが、似たような困難は何度も乗り越えてきた。何度も潜り抜けてきた。
だからこそ、今回もまた、立ち止まるつもりはないということで。

(頼らせてもらうぞ、プリンセスナイト。)

その信頼に偽りも矛盾もなく。大神素戔王は歩み突き進む。
煌めく明日のため、希望も絶望も、全てを礎に。
絆の騎士も大神に続く。それが、最悪の未来であることを未だ知らず。
どうしようもなく間違えた彼に、輝かしい未来など訪れるのか?
輝ける未来か、残酷な終焉か。それは文字通り、言葉通りに、神祖(カミ)のみぞ知る。というのだろう。


【グレンファルト・フォン・ヴェラチュール@シルヴァリオ ラグナログ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いの打倒。
1:主観視点における情報が少なすぎる以上、現状把握及び目ぼしい情報回収を優先。
2:仲間の捜索。
3:もし神殺しがいた場合における想定での対策を思案。
4:彼(ユウキ)には頼りにさせてもらう。
[備考]
※参戦時期は少なくともルーファス・ザンブレイブの死亡後。
※神祖としての不死性・再生力及び星辰光の出力に制限が掛けられています。

【ユウキ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康、覚悟
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:絆を取り戻す。例え誰かの絆を踏み躙ってでも。
1:今は、彼(グレンファルト)と共に。
[備考]
※参戦時期は第15章第5話、選択肢『目を伏せる』を選んだ直後。
※プリンセスナイトとしての力の供給に関する制限は後続の書き手にお任せします。


19 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 17:47:16 tmGMWUzM0
投下終了します


20 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:37:27 U4/yr7DY0
以前辺獄ロワに投下したものを手直しして二本投下します


21 : しかし、誰もが何かを成せるのか? ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:38:27 U4/yr7DY0
 あらゆる世界から決闘者が集い、デュエルを強要される殺し合いの会場。
 その一角にある街角にて、現代においては少々古めかしい和服の少女が一人、勃然と佇んでいた。
 少女の名前は斑目るり。金沢にある名家、班目家の三女である。
 そんな彼女はただ、現状に当惑していた。

「ここ、どこ……?」

 るりは殺し合いに来る前、班目家に送られた死の予告に怯えていた。
 しかし、自分が一度危なかった時に、客人として来ていた金田一に助けられ、るりは彼に懐く。
 そしてその夜、るりは父親への嫌悪からか他の何かか知らないが金田一の部屋に行き、様々な感情が混ざり合って泣き出してしまう。
 それを金田一は必死に慰め、明日になったら一緒に遊ぶと約束してるりは自分の部屋に帰っていく――

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

 最中で殺し合いに呼ばれてしまった。
 現状を何も吞み込めない中、るりより年上の少年が殺され、当惑のまま会場に放り出される。
 とにかく何かしないと、と思いコソコソと建物の陰に隠れる彼女。

 とりあえずデイパックに入っている物を調べよう、としたところでるりの傍に別の人影が現れた。
 彼女が人影の方へ視線を向けると、そこに男が立っていた。
 男の外見は金髪碧眼の外国人で、るりからすれば大柄の男であり、彼女が怯えるには十分だ。
 しかし、彼女が男に怯えたのはそれだけではない。

 るりは、男の瞳が恐ろしかった。
 恐ろしく冷たい視線。自分のことを何とも思っていない視線。
 父が自分や母、姉達を見ている時と同じものを彼女は感じていた。

「ひっ!?」

 るりは咄嗟に男から逃げ出そうとするが、なぜか体が急に動かなくなってしまう。
 彼女は必死に動こうとするが何もできず、男はただ悠然と近づいてくる。

 そして男はるりの首に腕を回す。

「安心しろ。せめて痛みは一瞬だけで済ませてやる」

 そう言って、男はるりの首をあっさりとへし折った。
 こうしてとある12歳の少女、班目るりの生涯は幕を下ろす。

 殺し合いに呼ばれなかった別の未来では、血を分けた実の兄に殺されていた彼女。
 果たして今の死に様と本来の死に様、どちらがマシだったのだろうか。

【斑目るり@金田一少年の事件簿 死亡】


22 : しかし、誰もが何かを成せるのか? ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:38:59 U4/yr7DY0





 班目るりを手に掛けた男、ヘクソンは淡々と彼女のデイパックを回収しようとしていた。

 彼は殺し合いに呼ばれる前、ある野望の為に動いていた。
 千年前に封印された魔人、ジャークを蘇らせ世界の支配を企んでいた。
 その過程でたまよみ族と組み、たまゆら族や埼玉のとある一家と小競り合いもあったが最終的にジャークは復活。

 しかし当のジャークは千年の間に力を失った挙句ただのオカマとなっていた。
 野望の失敗を悟ったヘクソンはせめてその場から逃げ出そうとするが、足を撃ち抜かれそれもできない。
 結局、彼は警察に捕まった。

 はずだが、気づけばこうして殺し合いに巻き込まれていた。
 ヘクソンは考える。

 どうやったかは分からないが、とにかく自分を警察から連れ出し、足を治してまで殺しあわせようとする男と、冥界の魔王を名乗る怪物。
 それがどんな意味を持つのかは、ヘクソンには分からない。
 心を読むなどの超能力を持ち、実際に主催者の心を読もうとしたがそれはかなわなかった。
 何も考えていなければ何も読み取れないこともあるが、あの場合は明らかに違った。
 恐らく、何らかの方法で心に鍵をかけて対策しているのだろう。たまよみ族の首領も似たようなことをしていた。

 そしてヘクソンは殺し合いに乗った。
 利用し、利用されるなどよくあること。こうして命を握られている以上、逆らうのは得策ではないだろう。
 優勝してなおいいように使われない保証もないが、その時はその時だ。
 それにもし、主催者の言うこと全てが本当ならば、ジャークを超える力を身に着け、今一度世界征服を狙うのも悪くない。

 こうしてヘクソンは殺し合いの場に降り立ち、早速一人目を殺害した。
 彼は殺してもいい場面でも殺さないことも多いが、だからといって殺せない人間でもない。
 なので少女の死体を見ても特に感慨にふけることもなく、デイパックだけ回収しようとしたのだが、その前に懸念が発生。

「誰だ」

 建物の陰に問うヘクソン。
 気配こそ消えているもの、心が読める彼はそこに誰かがいることは丸わかりだった。

「……お前がその少女を殺したのか?」

 隠れていても無駄と察したのか、男が一人素直に出てくる。
 男の風体は異様だった。
 トレンチコートにソフト帽。それだけなら古臭いですむが、コートからは洗っていないのか異臭を発している。
 そして何より、彼の顔が不気味だ。
 人間が持つものではなく、白と黒が互いに蠢き、されど決して交わることのないままに動き続けている覆面を被っていた。
 あの覆面は一体何で作られているのだろうか。ヘクソンは少しだけ気にかかった。
 しかし、目の前の男はヘクソンの内心など分かる筈もなく、再び問いかけてくる。

「お前がその少女を殺したんだな」
「そうだ、ウォルター・コバックス。私が殺した」
「俺はロールシャッハだ」

 そう言うと、ロールシャッハはデイパックから刀を取り出し、ヘクソンに殴りかかる。
 名乗っていない名前を当てられても、ヘクソンが人を殺したと言っても何一つ動揺などしない。
 ただ人殺しという悪を許さない、という強い意志を携えてヘクソンに向かっていく。
 しかし――

「当たらんな」

 ロールシャッハの攻撃は、ヘクソンにはかすりもしない。
 よく鍛えられていると言ってもいいロールシャッハだが、ヘクソンには通じない。

 ヒマヤラで獣同然の生活をすることで超人的な身体能力と超能力を手に入れた彼にとって、ロールシャッハは常人の範疇でしかない。
 故に攻撃など当たらず、逆に腹に拳を叩き込んで反撃。
 ロールシャッハはその程度では怯まず、今度は蹴りを叩き込んで来ようとする。
 それをヘクソンは足払いでバランスを崩すことで攻撃を止めた後、ロールシャッハの背後に周り首に腕を回す。
 これでるりと同じく彼の首もへし折ろうとするが、次の瞬間、ヘクソンはロールシャッハから飛びのいた。

 その直後、ヘクソンの顔がさっきまであった場所にフックが先についたワイヤーが発射される。
 これはロールシャッハに支給された、彼愛用のワイヤーガンだ。

 そんなものを自分に向けて撃つなど、さっきまでロールシャッハの心にはなかったはず。
 ということは、首に腕を回された瞬間に思いついたということだ。
 驚くべき発想力。恐るべき判断力と言わざるを得ない、とヘクソンは感じた。
 そしてワイヤーを外してなお、ロールシャッハは再びヘクソンへと金属バットを携えて走って来る。


23 : しかし、誰もが何かを成せるのか? ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:39:28 U4/yr7DY0

「付き合いきれんな」

 まだ殺し合いは始まったばかり。
 にも関わらずこれ以上戦うのは下策と判断したヘクソンは、懐から一枚のカードを取り出し、即座に使用した。

 そのカードの名前はぶっとびカード。
 桃太郎電鉄シリーズに登場し、使用すると自身をランダムで移動させるカードだ。
 ヘクソンは支給されていたこのカードを使い、離脱を選んだ。

「さらばだウォルター・コバックス。二度と会うこともあるまい」
「ふざけるな」

 決して逃がさないとばかりにロールシャッハは刀をヘクソンに投げつけるが、彼はそれが当たるより先に転移した。



 そしてヘクソンがさっきまでいた場所とは違うどこか。
 少なくともロールシャッハから離れた場所に転移したヘクソンは、とりあえず近くの建物に入る。
 そして――

「ハァ……ハァ……」

 ロールシャッハの前では余裕ぶっていたが、実際は少々疲労していた。
 とはいっても、この疲労は戦い疲れではない。あの程度ならヘクソンは息一つ乱すことはない。
 ならばなぜ疲れているのか。

「何だあの男は……? 本当に人間か……?」

 ヘクソンはロールシャッハの思考の読みすぎで疲弊していた。

 ヘクソンは人の心を読む能力があるが、それ故の弱点も存在する。
 例えば心で何も考えず、歌いながら敵が向かってきた場合、平時なら思考など関係なく振り払える攻撃を成すすべなく喰らうことがある。
 また逆に、あまりにも雑然、混沌としすぎた思考を読んだ場合、脳にダメージを負うこともある。

 だがロールシャッハの思考はどちらでもない。
 何も考えていないわけでもなく、雑然としすぎていたわけでもない。
 いかにこちらを殺すかのみに特化した思考だった。
 だが――

 セックスに囚われた娼婦。
 少女の骨を貪る犬。
 ただ漠然と毎日を生きる大衆。
 白紙にぶちまけられた黒のインクが作り出す、何の意味も持たない模様。

 そして、自身が原子一粒残さず消滅する最期。

 ヘクソンから見て、ロールシャッハという男は異常だった。
 今まで見てきた誰よりも人の闇を知り、誰よりも狂っていた。

「化け物め……」

 毒づきながらもヘクソンは体を休めることを選ぶ。
 まだ殺し合いは始まったばかり。未だ見ぬ強敵もいる筈なのだから。

【ヘクソン@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康、精神的疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、斑目るりのデイパック(基本支給品、ランダム支給品1〜3)
[思考・状況]基本方針:優勝し、ジャークを超える力を手に入れる
1:まずは少し休息する
2:あのロールシャッハという男、本当に人間なのか……?
[備考]
参戦時期はクレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡終了後です。
足を撃ち抜かれていましたが、治療されています。


24 : しかし、誰もが何かを成せるのか? ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:40:00 U4/yr7DY0





「逃がしたか……」

 消えた男、ヘクソンを追ってロールシャッハは辺りを探すが、一向に見つからない。
 そもそもこの辺りにヘクソンはいないのだが、それを知る術はロールシャッハにはなかった。

 とりあえず投げたバットとワイヤーを回収し、ロールシャッハは出発する。
 彼はヘクソンのことを諦めるつもりもなく、また他にもいるであろう殺し合いに乗った参加者を許すつもりもなかった。

 そして、自分を生き返らせた主催者も。

 殺し合いに呼ばれる直前、ロールシャッハは南極に居た。
 世界一頭のいい男が考えた最悪のジョーク。
 冷戦を引き起こさせないためにニューヨークにいる数百万の住人を殺し、いないはずの宇宙人が攻めてきたというでっちあげを作り、人々を団結させるという作戦。
 ロールシャッハは友人であるダニエルと共にそれを止めようとしたが、失敗。
 結局、ジョークは真実となった。
 それでもロールシャッハは真実をぶちまけようとするが、それを世界にただ一人の超人であるDr.マンハッタンが阻む。

 彼は抵抗しなかった。
 ロールシャッハの顔と言って憚らないマスクを取り、ただのウォルターとして死んだ。

 だが彼は再び蘇る。ロールシャッハの顔を携えて。
 『なぜ』だとか『どうやって』だとか、そんなことに興味はない。
 ただ確かなのは、ロールシャッハに対し怪物と男は、殺しという悪を強要している。
 ロールシャッハは殺し合いの主催者を許す気はない。なぜなら彼はヒーローだからだ。
 それは殺し合いに乗った者も同様である。

 生き返らせてやれば犬の様に従うとでも思ったか?
 命を盾に取れば跪くとでも思ったか?

 笑わせるな。そして教えてやる。
 俺はお前らが主催する殺し合いに巻き込まれたんじゃない。
 お前らが、俺との殺し合いを始めたんだ。
 だからそこで、俺に殺されるのを待っていろ。

 そうだとも――

「俺は絶対に妥協はしない」


 しかしロールシャッハは知らない。
 彼が携えるその刀の名前は絶刀「鉋」
 四季崎記紀が作った完成形変体刀十二本のうち一つであり、剣士が持つと人を斬りたくなる毒があることを。
 それは彼の精神性のみで無自覚に押さえ込まれており、彼以外の剣士が持てばどうなるかは分からないことを。

 ただでさえ危険なワイルドカードが、恐ろしいものを携えて進んでいく。


【ロールシャッハ(ウォルター・コバックス)@ウォッチメン】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:絶刀「鉋」@刀語、ワイヤーガン@ウォッチメン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:主催者を打破し、悪を裁く
1:さっきの男(ヘクソン)を探し、殺す
2:その他殺し合いに乗っている者も容赦するつもりはない
[備考]
参戦時期は死亡後です。


【ぶっとびカード@桃太郎電鉄シリーズ】
ヘクソンに支給。
使用することで自身をランダムな場所に転移させることができるカード。
使い捨てなので、一度使うとなくなる。

【絶刀「鉋」@刀語】
ロールシャッハに支給。
四季崎記紀が作った完成形変体刀十二本のうち一つ、頑丈さに主眼が置かれたもの。
鍔や鞘がないのが特徴であり、斬るよりも突く方に向いている直刀。

【ワイヤーガン@ウォッチメン】
ロールシャッハに支給。
撃つとフックのついたワイヤーが飛び出す銃。
ロールシャッハは人に向けて撃つこともある。


25 : 再演 ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:40:40 U4/yr7DY0
「クソッ! どこまでも俺を嘗めてくれる……!!」

 黒を基調にしつつ赤も混じったデザインのコートを身に纏った男が、怒りのあまり己の拳を近くにある建物の壁に叩きつける。
 彼の名前は駆紋戒斗。かつては己の為に強さを追い求め、弱者が犠牲にならない世界を望んだ不器用な男だ。
 そんな彼は今、猛烈な怒りを覚えていた。

 戒斗の怒りの理由は、この殺し合いが気に入らないから、というのもある。
 元々彼は「弱者は強者に踏みつけられるしかない」と嘯きながらも、何よりもそんな世界を憎んだ男なのだ。
 しかし殺し合いの主催者は、力を武器に参加者達を脅しつけ、そして願いが叶うという餌で参加者達を釣ろうとしている。
 こんな振る舞いを戒斗が気に入る筈もない。
 かつての彼なら、殺し合いを真っ向から叩き潰し、主催者が持つであろう願いを叶える力を奪い取るべく行動しただろう。
 だが今は違う。

 今はもう、願いを叶える力にすら興味はない。
 なぜならば

「俺を蘇らせれば、お前達の考えた通りに動くとでも思ったのか……!!」

 戒斗は一度、既に死んだからだ。

 この殺し合いに呼ばれる少し前、彼はある戦いに挑んでいた。
 それは黄金の果実を求める戦いだ。
 黄金の果実とは、手に入れれば今の世界を己の願うままに作り変えることができるとされる、凄まじい力を持った果実。
 彼はその果実を手に入れ今の人類を滅ぼし、彼が望む命で地球を満たそうと考えていた。

 しかしその野望に正面から立ちはだかった男がいた。
 その男の名前は葛葉紘汰。彼は今の人類を守るべく戒斗に戦いを挑んだ。

 互いに死力を尽くした戦い。その戦いに勝利したのは紘汰だった。
 戒斗は己とは違う強さを持った紘汰に敗北した。
 強くなるにつれて優しさを失うと思っていた戒斗に、紘汰は否を叩きつけたのだ。
 そして戒斗はこの世を去った。

 はずだったが、彼はここにいる。
 彼はそれが腹立たしくて仕方ない。

 もともと彼は、どれだけ叩きのめされようとも、己が屈さない限り負けではないと考える男である。
 裏を返せば、己が負けたと思えばそれを素直に認める男だ。
 敗者復活戦があったとしても、参加する気など毛頭ない。
 人類を滅ぼそうなどとは、もう考えていない。
 にも関わらず主催者は生き返らせたのだ。ならもうこれ以外の道は、彼の中には存在しない。

「冥界の魔王ハ・デスなどと言っていたな。オーバーロードとは違うようだが……
 だがまあいい。貴様が何者であろうとも、俺が必ず叩き潰す!!」

 戒斗は主催者に向けて、真っ向から宣戦布告を叩きつけた。
 もしこれに怯え首輪を爆破するなら奴らは所詮その程度。
 今更惜しむものでもない命一つで、主催者の底の浅さを露呈するだけだ。

 しかし、戒斗の叫びから幾分か過ぎても首輪が爆発する気配はまるで見えない。
 ならばいい、とばかりに彼は歩き出そうとするが、そこに別の参加者から声がかかる。

「すいません。少しいいですか?」

 戒斗が声のした方に振り向くと、そこには彼と同じく殺し合いの参加者である男が、猫背で立っている。
 男の外見はボサボサの髪。目の下に濃い隈。そして裸足でヨレヨレの白Tシャツに、ダルダルのジーパン。
 戒斗には、目の前の男の外見が酷く異様に見えた。
 だが同時に、男の瞳には強い意志が備わっているように戒斗は感じた。

 もし自分を利用して甘い蜜を啜るような奴ならば無視して立ち去るつもりだったが、そうではないらしい。
 そう思った戒斗は話を聞くことにした。

「俺に、何か用か?」
「はい。あなたが発した主催者への宣戦布告が聞こえまして、よかったら私も一緒に戦わせてもらえませんか」

 男の語る言葉は、戒斗にとっては予想通りだった。
 だからこそ、一つ聞かねばならないことがある。


26 : 再演 ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:41:11 U4/yr7DY0

「共に戦うか。それはいいだろう。
 だがお前に何ができる。俺には戦う力があるが、お前にはあるのか」

 戒斗は目の前の男を鋭い目つきで睨む。
 これは彼の試金石。この程度で怯むなら、目の前の男に用などない。

「何ができるか、ですか……
 私は多少の格闘技ができますが、この殺し合いでどこまで通用するか分かりません。
 かつては世界一の探偵と呼ばれたこともありましたが、私の頭脳が役に立つ保証もありません」

 男は目を伏せ、自信なさげに戒斗の問いに答えていく。

「ですが」

 だがここで男は目を見開き、戒斗を真っすぐに見つめる。
 その眼差しは、戒斗に勝るとも劣らないほどに強かった。

「何もできないからと言って、諦めるつもりもありません。
 私、こう見えても結構負けず嫌いなので」
「そうか」

 男の答えに、戒斗は満足気に返事をする。
 彼はこの瞬間、目の前の相手を強いと認めたのだ。





 行動を共にすることを決めた二人は、近くにある喫茶店に来ていた。
 互いのことを何も知らないので、まずは自己紹介を兼ねて情報交換することにしたのだ。
 お互い喫茶店にあるテーブルを挟んで席に着く。
 その時、Lが椅子の上で体育座りで座るという変わった座り方を見せ、戒斗が訝し気にそれを見るが

「この座り方でないと推理力が40%ほど落ちるので」

 と言い、そのまま特に直すことも無いまま自己紹介を始める。

「ではまずは私から名乗りましょう。
 私はLです」
「……ふざけているのか?」

 しかしいきなり躓いた。
 いきなり自分をアルファベット一文字で呼称させようとすれば、戒斗の不信感も当然ともいえる。
 Lもそれに気づいたのか「すみません」と言いながらも釈明する。

「私は仕事の都合上、いくつか名前を持っていまして。その中で一番通りがいいものを選びました」
「……そういえば探偵とか言っていたな」
「はい。まあ、通称ですが本名よりは知られています。ですが意外でした」

 Lの心底予想外だったと思わせるような言動に、戒斗が疑問を示す。

「何がだ?」
「私の名前はキラ事件を捜査する都合で、結構知られてしまったと思っていたので」
「……キラ事件? 何だそれは?」

 戒斗が続けて放った疑問に、Lは言葉を失った。
 Lからすれば、キラ事件ほど世界に知れ渡った事件は存在しないと言ってもいい。日本人ならなおさらだ。
 しかし戒斗は知らないと言う。

 キラ事件。
 ある日突然、世界中の犯罪者を心臓麻痺で抹殺する謎の存在『キラ』。
 Lはキラの正体を探り、法で裁かせるべく警察と協力し捜査していた。
 その結果、キラは日本人であることと、死神が落とした、名前が書かれるとその人を殺すデスノートを用いて、キラとして活動していることを突き止める。
 そして、ノートの持ち主もほぼ確信していた。

「キラ事件はさくらTVを筆頭に、テレビでも盛り上がっている筈ですが」
「そんなTV局を俺は知らん」


27 : 再演 ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:41:43 U4/yr7DY0

 ここまで話して、二人は互いに前提がおかしいことを察した。
 そこで二人はお互いが持つ情報を晒しあう。

 戒斗はアーマードライダー、インベス、オーバーロード、ヘルヘイムの森、黄金の果実について。
 Lはキラ事件、デスノート、死神について。
 更に――

「俺だけではなく、お前も既に死んでいるか……」
「驚きです。
 それだけでなく、お互いに時代が違うことも」

 二人とも、既に死んでいることが発覚した。
 Lはキラの正体をほぼ確信していたが、証拠を掴み切れず、先に殺されてしまったのだ。
 そして時代の違い。
 戒斗は2013年に死亡したが、Lは2004年に死亡していた。実に9年も時間の差が開いている。

 最後に、二人とも違う世界の住人であることも。

 Lが戒斗の話す情報を知らないのは、ある種当然だ。
 何せ未来の話である上に、アーマードライダー以外はある時まで秘匿されていたのだから。
 しかし、Lの話は戒斗からすれば過去の話。
 その辺りの時期は戒斗にとって忌まわしい出来事もあり、世間の事情どころではなかったが、いくらなんでもそれほどの事件ならば知らない方がおかしい。

 故に、二人はお互いを異世界の住人と断じたのだ。

「考えてみれば、ヘルヘイムは世界を渡り歩く存在。
 ならば、ヘルヘイムに浸食されていない世界があってもおかしくはない」
「ヘルヘイムですか。
 私の知識ではギリシャ神話に伝わる死者の国の一つなのですが、実情とはかなり異なるようですね」
「死者の国か。言い得て妙だな」

 戒斗から見て、ヘルヘイムに浸食されたあの世界は、世界として死んだと言っても過言ではなかった。
 王は民を導く気など無く、強者が好き勝手に暴れまわり、最期には全滅したのだから。

「ところで戒斗さんは、主催者がなぜ殺し合いを開いたと考えますか?」
「どんな理由があろうと俺には関係ない」
「ええ、どんな理由であろうと止めるつもりです。
 ですが私達は知らねばなりません。それが主催者を倒す一助となるはずですから」

 Lの問いに戒斗は素気無く返答してしまったが、Lはそれに負けじと強く言い切った。
 とはいえ、これ以上ここで顔を突き合わせても何かができるわけでは無い。
 なので、お互いどちらともなく立ち上がり、店の外にでようとするが、ここでLが戒斗に声をかける。

「すみません戒斗さん。
 よろしければ、武器を譲ってもらえませんか。私の支給品には武器になりそうなものはなかったので」
「……これを使え」

 そう言って戒斗はLにある物と、その説明書を渡す。
 それは戦極ドライバーとロックシード。アーマードライダーに変身するために必要なアイテムだ。

「……ありがとうございます。しかし戒斗さんには――」
「俺にはもう必要ない」

 それだけ言って戒斗は地面を踏みしめ先に進み、Lもまた横に並ぶ。


 殺し合いに抗う二人の死者の、進撃が始まった。


28 : 再演 ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:42:09 U4/yr7DY0


【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを力で叩き潰す
1:殺し合いに乗っている参加者は潰す
2:首輪を外せる参加者を見つける
[備考]
参戦時期は死亡後です。
クラックを開き、インベスを呼び出すことは禁止されています。

【L@DEATH NOTE】
[状態]:健康
[装備]:量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武、バナナロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み、武器の類はなし)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
1:駆紋戒斗と行動する
2:他の参加者を探し、情報交換をする
[備考]
参戦時期は死亡後です


【量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武】
駆紋戒斗に支給。
仮面ライダー鎧武における変身ベルト。
ロックシードと合わせて使うことで変身可能。
量産型とついているのは、このタイプだと所有者認定など無く、誰でも使用可能となる為。

【バナナロックシード@仮面ライダー鎧武】
駆紋戒斗に支給。
エナジーロックシードの一種。
戦極ドライバーに装填し、使用することでバロンアームズへと変身可能となる。
上記の量産型戦極ドライバーと合わせて一つの支給品として扱われる。


29 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/22(日) 18:42:34 U4/yr7DY0
投下終了です


30 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 19:46:26 tmGMWUzM0
投下します


31 : 夢幻の邪悪 ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 19:49:33 tmGMWUzM0
「なによこれ?」

氷雪の大地で少女が一人、立ち尽くしている。
その姿こそ年相応であるものの、その色彩は余りにも澱み濁っている。
蠱惑的な顔色からは少女の童顔に似合わない大人びた表情。
そんな彼女が、この雪積もる場所で立ち尽くし、呆然としている。

「……誰だか知らないけれど、余計なことをしてくれたわね。」

少女――否、リースという女は苛立ち気味にただ呟いた。
今でも思い出すあの忌々しい最後。
星の勇者――原住民共を言葉巧みに騙し、祭器の杖の継承者の身体を奪い。
聖槍を手に入れ、後少しで邪魔者を始末できたというのに。
奴らの余計な真似で、主導権を一時取り返されて――。

「……まあ、こうやってまた都合よくこの体を使えるのだけは、感謝してもいいかしら。」

現状のリースの身体は、杖の継承者たるイヴという原住民の身体を乗っ取った時のもの。
今のところイヴの精神が顕在化していないところを見るに、イヴの精神だけ取り除かれた?などと思考する。

「と、まあ、これからどうしようかしらね。」

何はともあれ、こうやって生き返ったのは運がいい。
外面上こそイヴの身体である分取り繕うのにも然程苦労しないだろう。
支給品の方も念の為に調べる。星遺物こそ入ってはいたが、透き通った水晶のような水色の剣はあった。
説明書に記されたその剣の名は『青薔薇の剣』

「……まあ、これは使えるかしら。……それよりも……。」

確認し終え、再びデイバッグにしまい込む。
そして、もう一つ。主催であるハ・デスの言葉「私は一枚のカードより生まれた」という意味。
元々リースは人間で、情報工学の権威として名を馳せる科学者の一人。
その肩書を活かし、鍵の研究チームであるパラディオンに在籍した実績もある。
ただし、その目的は鍵の力を利用し創世神話に伝わる大いなる闇を手に入れようとしたのであるが。

「もしかしてその一枚のカードって、その大いなる闇かしら?」

大いなる闇、デミウルギア。それに触れし存在に存在に呼応し神の所業を行う者。
神の原型、その名を掲げた一種のプログラム。
もしそのカードが大いなる闇と同一ならば、それを使ってハ・デスを生み出した何者かが背後にいるということだろう。

「でも、それが本当なら……。」

あれが創世神話の大いなる闇と同一なのかは分からない。だが、明らかにあれの背後にいるには神の力に匹敵する絶対的ななにかであろう。

「ふふ……。」

リースは妖艶に笑う。元々神の力を手に入れようとした自分だ。
もしハ・デスの背後にいるものが本当に神の力を持ちし者ならば。

「手に入れてやるわ……その神の力。そして今度こそ私は……!」

笑う。数千年も経て愛して止まぬその己が野望の成就への道筋を喜びながら。
イヴ"リース"は、笑っている。


【夢幻崩界イヴリース@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、青薔薇の剣@SAO、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考]
基本:主催(やつら)の背後にあるであろう"力"を手に入れる。
1:この体は色々と使えるわね……。
[備考]
※「1枚のカード」が大いなる闇デミウルギアと同一かもしれないと考察しています。

『支給品紹介』
【青薔薇の剣@ソードアート・オンラインシリーズ】
夢幻崩界イヴリースに支給。アンダーワールドの北の果ての山脈の永久氷塊と青い薔薇を元に作られた。
刀身は半ば透き通っており、切り口を「凍結」させる性質を持つ。
筋力値や権限レベルが足りない場合は使うことすら出来ないが、このロワではその成約は取り払われている。


32 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/22(日) 19:49:44 tmGMWUzM0
投下終了です


33 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:52:01 ai1CgR6I0
投下します


34 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:54:03 ai1CgR6I0
ゴーストタウンと化した無人の市街地を歩くスーツ姿の男性がいた。
彼の名は須藤 雅史、この男は刑事であり仮面ライダーである。
と言っても今の彼はライダーとしての力を保有しておらず、無力な一般人に等しい存在であるのだが
そんな彼は周囲を探索しながら脳内で状況を整理していた。

(私はライダーバトルでの戦いで命を失った筈、なぜ生きているのでしょう)

須藤がこのデュエルに参加させられる以前はライダーバトルという殺し合いに参加し
自らが契約していたモンスターに捕まり捕食され、死亡していた。
肉体が喰われていくあの恐怖と苦痛、決して夢なんかでは無い。
思い出すだけで今でも冷や汗が流れてくる。

「……ーン、すみまセーン!」

「あのー……聞こえてマスカー?」
「……!?失礼、考え事をしていたもので」

須藤の目の前に制服姿の金髪の少女が現れて、須藤の顔を覗き込むような姿勢で見つめていた。
考え事をしていたとはいえ、ここまでの接近に気づかなかった己の不用心さが嫌になる。

「不躾な質問デスが、貴方は殺し合いに乗っていマスか?」
「まさか、これでも私は刑事でしてね。この事件を何とか解決したいと思っていた所ですよ」
「オゥ!刑事サンでしたか!それは安心デース!」

胸ポケットに入れておいた警察手帳は没収されていなかったのもあり
目の前の少女は疑う事無く信じてくれたようだ。
刑事と言っても、彼は自分の目的のためなら命を奪う事も厭わない悪徳刑事であり
このデュエルにおいても、どんな手段を使おうが生き残ろうと企んでいた。

「早速ですが、いくつか質問してもいいですか?」
「もちろん構いません。私も色々聞きたいことがありマス」


35 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:54:37 ai1CgR6I0


「刀使に荒魂……すみませんが聞いた事も無い話ですね」
「そうデスカ。不思議なこともあるデース」
「勿論、疑ってはいませんよ。エレンさんが嘘を付くような子には見えませんからね」

彼女の名は古波蔵エレン
御刀と呼ばれる日本刀を用いて荒魂と戦う刀使である。
だが今は御刀である越前康継は没収されており、須藤の支給品にも刀が無かった事から
刀使としての力が行使できない状況であった。

この情報交換で得られた情報は須藤には信じがたい事だが
仮面ライダーやミラーワールドなど不可思議な現象は既に体験しており
現に今だってこうしてデュエルに巻き込まれている。

ちなみに仮面ライダーの情報は一切、エレンには伝えていない。
優勝を狙う以上、いずれは切り捨てる存在だ。
必要以上に情報を与える必要は無い。
と言ってもライダーに変身出来ない現状ではさほどメリットにはならないが。
ともかく、ここで出会った古波蔵エレンとの協力関係の構築は有益と考え
須藤雅史は自身の生存確率を上げるためにもこの少女を利用しようと考えていた。

その時だった――――

「ふーっ!ふーっ!ふーっ!」

2mを優に超える大男が須藤とエレンを補足し、ゆっくりと歩いていた。
筋骨隆々の身体は手も足も極度に発達した筋肉で丸太の様に太く
目は血走っており、スキンヘッドで額にMの文字が浮かび上がっている。
酷く興奮状態にあるのか息も荒く、須藤とエレンを睨みつけたまま進んでいる。

大男の名はスポポビッチ。
魔術師バビディによって洗脳され、悪の心が増幅し強大な力を得た人間である。

「止まってください。これ以上近づくと撃ちますよ」

須藤は支給品である拳銃を向けるが
警告を受けたのにも変わらず、スポポビッチの歩みは止まらない。

(様子がおかしいですね。クスリか何かでもキメているのでしょうか)
「気を付けてくだサイ!あれは普通じゃありまセン!」

「ふーっ!ふーっ!」

聞こえているのか。聞こえていないのか。
どんどん接近していくスポポビッチ。


36 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:55:20 ai1CgR6I0
パァンッ

「ぐぅぅぅっ!」

拳銃から放たれた弾丸がスポポビッチにの右膝に命中した。
スポポビッチは膝を付き、足を止める。

「須藤サン!」
「彼は警告を無視して近づいてきました。撃つのは止む無しです」
「……違いマス。あいつから離れてくだサイ!」
「どういう意味です?」

エレンは発砲した須藤を責めたのではない。
彼女は察したのだ、目の前の敵は銃弾で止まるような男では無い事を。

「ふぅぅっ!ふぅぅっ!」

スポポビッチは立ち上がる。
右ひざを撃たれている筈なのに、二本足で力強く立っている。

「馬鹿な……足を撃たれて立ち上がれる筈が……」

スポポビッチの右足からは出血はおろか銃痕すら消えかかっていた。
須藤は目の前にいる大男が普通の人間ではないと確信し、迷うことなく再び引き金を引いた。

パァンッ

二度目の銃声が鳴り響く。
弾丸がスポポビッチの胸元へ沈み込む。

「フンッ!フンッ!フンッ!!」

スポポビッチは何事も無かったかのように歩き出した。
そして一歩歩く度に接近し、須藤との間合いを詰めていく。

(化け物め……)

「ハァ――ッ!!」
「ぬぅっ!」

助走を付けたエレンは高く飛び上がり。
掛け声と共に放った飛び蹴りがスポポビッチの顔面を蹴り上げる。
エレンの蹴りをまともに受けたスポポビッチは後方に大きく吹っ飛ぶ。

「ここは私が食い止めマース!その間に須藤サンは逃げてくだサーイ!」
「しかし、それでは貴女が……」
「心配はご無用デース。刀使は簡単にはやられマセン」

「ぬぅぅぅん!!」

標的をエレンへと変えたスポポビッチは唸り声と共に
ハンマーを振り回すような勢いで大振りのパンチを繰り出した。

「遅いデス!」

「ぐぉっ!?」

スポポビッチの単調な動きは読みやすく。
攻撃に合わせてカウンターのブローを鳩尾に叩き込んだ。
スポポビッチの表情は苦痛に歪み、姿勢が低くなると。

「これで……ノックアウトデス!」

「うごぁぁっ!!」

エレンの強烈な右アッパーがノーガードになっていたスポポビッチの顎を捕らえた。
スポポビッチの巨体が宙を浮き、うつ伏せになってダウンした。


「うぐぐぐぐぐっ!!」
「まだ立ち上がるんデスカ。そのタフネスさは見上げた物デス」

すぐさま上体を起こし、スポポビッチは立ち上がり、エレンに向かって突進していく。
エレンも合わせて駆け出しスポポビッチへ接近した。

「うおおおおおおおおっ!!」

スポポビッチは両腕を大きく広げてエレンに向かって手を伸ばした。
大きな手が触れる寸前でエレンはスライディングで
スポポビッチの股下に滑り込んで右足に蟹ばさみを仕掛けた。


37 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:56:15 ai1CgR6I0

「あがががっ!?」
「これで一気に終わらせマス!」

バランスを崩して地面に叩きつけられたスポポビッチへ
反撃の隙を与える前に頭部へハイキックを放つ。
顔を押さえながら怯んだスポポビッチの腹部へ正拳突きを放ち
うずくまった所へ次々と連撃を与え続ける。

「ハァァァァ――!!」

「うぐぅぅぅっっっ!!」

エレンの凄まじいラッシュにスポポビッチは何もできず
ひたすら防御の姿勢で攻撃を耐えていた。

「これでぇ!!」

スポポビッチの構えが緩くなった隙を突き
エレンの回し蹴りがスポポビッチの側頭部へ命中。
スポポビッチの身体は前のめりに倒れ
ズシン!と鈍い音を鳴らしながらうつ伏せでダウンした。

「ハアッ……! ハアッ……! ハアッ……!」

数十発にも続く連撃を行ったのだ。
エレンの体力は消耗し、息が切れる。
汗が制服に染み込んで少し気持ち悪い。

「少し……疲れマシタ……」
「エレンさん!まだ終わってません!」

「えっ……」

須藤の声に反応してエレンが振り返った時には、もう既にスポポビッチは立ち上がっていた。
消耗の激しいエレンと比べて、スポポビッチは特に疲労している様子もない。

「うがぁぁぁぁっ!!」
「キャアッ!」

反応が遅れたエレンの顔面にスポポビッチの拳が叩きつけられる。
衝撃で吹き飛ばされたエレンは民家の塀に衝突する。

追撃の踏みつけをエレンは地面を転がりながら回避。
立ち上がったエレンはスポポビッチが次々と振り下ろす拳を紙一重で避け続ける。
今だに余力のあるスポポビッチと比べてエレンの体力は徐々に削り取られる。

「あぐぅっ……」

ついに回避が間に合わなくなったエレンは
左頬に命中し、地面に叩きつけられた。

(このままでは私は負けてしまいマス……そしたら須藤サンや他の参加者達も……)

間違いなくスポポビッチによって殺されてしまうだろう。
彼は他の参加者を皆殺しにするつもりなのだ。

(それだけは……絶対やらせマセン!!)

「ぐふふふっ……ぬぅ!?」

勝利を確信していたスポポビッチの前にエレンはもう一度立ち上がった。
刀使として人々を護るために目の前の暴漢を止めなければならない。

エレンに残された力は殆ど残されていない。
最後の力を振り絞ってエレンは跳躍した。

「ハァアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

全身全霊を込めた回し蹴りがスポポビッチの顔面へ迫った。
それだけの余力を残していたことに気付いていなかったのか。
スポポビッチは反応する間も無く蹴りが命中し
顔がぐるんと、曲がっては行けない方向へ首が回転した。


38 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:56:57 ai1CgR6I0
「そ、そんな……」

スポポビッチの顔があるはずの場所が後頭部になっている。
首が180度回転したのだ。
明かな即死だった。

「私……人を殺して、しまいマシタ……」

バトルロワイアルを止めるべく刀使の力で人を護ろうとした結果、人を殺してしまった。
例え相手が殺し合いに乗っていたとはいえ、殺害してしまったという事実は変わらない。

「エレンさん、これは正当防衛でも貴女は何も……まさかそんな!?」
「……っ!?」

須藤に続いてエレンも気付いた。
スポポビッチが起き上がり、動き出しているのを
両手で自らの頭を掴むと、元の方向へと首を戻し
首の骨と頭蓋骨が再び接着され、折れた首が元通りになった。

スポポビッチが生きていたことでエレンは殺人者ではなくなった。
だが、それは喜ぶべき事態とは程遠く
スポポビッチという名の殺戮マシンが再び動き出すという絶望的状況であった。

「うあぁ!!」

一度、戦意喪失したエレンは頭部をあっさり鷲掴みにされ
空高く持ち上げられていく。

「ぐふふふふっ……ふんっ!」

「アグゥッ!」

スポポビッチは嗜虐心に満ちた表情でエレンの腹部を思いっきり殴り付けた。
拳はエレンの柔肌を沈み込ませ、身体はくの字に曲がり、苦痛に歪んだ表情を見てますます興奮してきたのか。
スポポビッチはより苛烈に腹部を殴り続けた。

「ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!」

「ガフッ!フグッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ア゛ッ!ガハアッ!アガァ!」

殴られる度にエレンの口から血がごぽっと吐き出され、目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。
その凄惨な光景を目の当たりにしていた須藤はゆっくりと距離を取っていた。

(彼女も相当腕の立つ人でしたが、奴には勝てそうもありませんね。
 援護しようにも、それで私が狙われれば命は無いでしょう。ここは引くのが得策ですね)

そうして須藤はエレンを見捨てて戦地から離脱していった。

「ふふふっ……」

スポポビッチは両手でエレンの頭部を掴むと丸太の様に太い膝が迫り
エレンの顔へ向けて勢いよく膝蹴りが叩きこまれた。

「ア˝ガァッッ!!」

鼻が潰れ、鼻骨が粉砕され、鼻血がドバドバと零れ落ちる。
前歯が砕け、唇はズタズタに切れている。
美しく整った美貌が破壊されていく。

「ハハハハハハハハッ!!」

スポポビッチが高笑いしながらエレンの右足を掴むと
ブンブンと振り回しながらエレンの体を地面や周囲の壁に叩きつける。

「ガハアッ!ゴハッ!ゲボッ!ゲッホッ!ガフッ!アガッ!ガッ!ギャアッ!」

ゴキャッ!グチャッ!と肉が叩きつけられる音を堪能したスポポビッチは
エレンを地面に落としたあと頭部をゆっくりと踏みつけた。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!!!!」
「ふひひひひひひひっ!!」

ミシミシと頭蓋骨が押し潰されていく激痛で断末魔の悲鳴をあげるエレン。
それを下衆な笑いで見下したら徐々に足を力を入れていくスポポビッチ。
その時、黒く大きな物体が猛スピードで特攻し、スポポビッチの背中に勢いよく衝突する。


39 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:57:22 ai1CgR6I0
「ぬぐっ!?」

エレンを嬲るのに夢中になっていたスポポビッチは受け身も取れず吹き飛ばされる。
突っ込んできたのは黒のワゴン車であった。

「うぐぐぐっ!」
「バレたら免許剥奪ですね」

この程度で殺せるはずは無いと理解している須藤は
うつ伏せになっているスポポビッチへと迷わず突っ込み、コンクリートの壁まで押し潰す。
スポポビッチの動きを封じたのを確認した須藤は
一旦、ワゴン車から降りるとすぐさまエレンの元へと向かう。

「今の内に逃げますよ」
「……須藤、サン」

須藤はエレンを置いて逃げ出していたかに見えたが
支給品のワゴン車を使って救出に来ていた。
エレンを後部座席に乗せた須藤はその場から移動するべくすぐさま発進した。

だが、ワゴン車は一向に前に進まない。
アクセルを踏み続けているのに故障したのか。
ふとバックミラーを見るとそこには、血走った目をしたあの男の顔が映し出されていた。

「ぬぅぅおおおおおおっ!!」

背後でスポポビッチが両腕でワゴン車を掴んでいた。
唸り声と共に車体が持ち上がっていき、後輪が虚しく宙を回り続けている。

「その汚い手を離してください」

須藤はスポポビッチに向かって三発の銃弾を撃ち放つ。
弾丸はワゴン車後部のリアガラスを貫通しスポポビッチの顔面へ飛んでいく。

「ぐがぁぁぁあああ!!」

ワゴン車を持ち上げて両腕が塞がっていたスポポビッチは防御すら出来ず銃弾を撃ち込まれ
その内の一発はスポポビッチの右目に命中。
苦痛でワゴン車から手を離した瞬間、ワゴン車は猛スピードで走り出し
右目が再生し、痛みが収まった頃にはもうワゴン車の姿は見えなくなっていた。

「ふぅーっ!ふぅーっ!うがぁぁぁあああ!!!!」

怒りの咆哮を上げるスポポビッチ。
その怒りは全ての参加者を血祭りにするまで収まることは無いだろう。

【スポポビッチ@ドラゴンボールZ】
[状態]:ダメージ(微小)、疲労(小)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状態]
基本:全ての参加者を殺害して優勝する。
1:次の獲物を探す。
[備考]
※参戦時期はバビディに洗脳後、天下一武道会に参加する前です。


40 : 暴力と蹂躙の権化、残虐なるスポポビッチ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:57:46 ai1CgR6I0


「すみま、セン……私のせいで、須藤サンが危険な目に……」
「貴女はよく戦いました。今はゆっくり休んでください」
「ありがとう、ございマス……少し、おやすみするデス……」

そう言うとエレンは意識を手放して眠りについた。
須藤はそんなエレンの寝顔を見てほくそ笑む。

最初はエレンを見捨てて逃げるつもりだった。
しかし、須藤はその選択肢を選ばずエレンを救出した。
もちろん、くだらぬ正義感で動いたのではない。

仮面ライダーに変身出来ず、戦う術が無い須藤がスポポビッチのような化け物に対抗するには
しばらく、善人の振りをして多数の仲間を作る必要がある。
そこで、もし未成年の少女を見殺しにして逃げ出すような刑事だと他の参加者達に知られでもしたら
須藤の信頼は完全に失い、誰からの協力も得られなくなるだろう。

それなら命がけで化け物から彼女を護ったという体裁を得る方が後々有利になる。
幸いにもこちらには頑丈なワゴン車が支給されている。
リスクはあったが結果として賭けには勝ち、エレンを回収後、スポポビッチから逃げ切る事が出来た。

(貴女にはこの後もしっかりと働いてもらいますよ。私が生き残るためにね)

【古波蔵エレン@刀使ノ巫女】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、鼻骨粉砕骨折、前歯一部欠損、睡眠中
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗りまセン!
1:須藤サンと一緒に殺し合いを止めマース!
2:今は少し休みマス。
3:あの大男(スポポビッチ)は放置できマセン!
[備考]
※アニメ終了後からの参戦です。

【須藤雅史@仮面ライダー龍騎】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60@現実
[道具]:基本支給品一式、ワゴン車@現実、ランダム支給品0〜1(確認済み)
基本:殺し合いで勝ち残る。
1:しばらくは善良な刑事の振りをするとしますか。
2:エレンさんにはせいぜい役に立ってもらいましょうか。
3:あの大男(スポポビッチ)から出来るだけ離れるとしましょう。
4:ライダーデッキでもあればいいんですが……。
5;エレンさんの刀(越前康継)もついでに探しておきましょう。
[備考]
※死亡後からの参戦です。


41 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/22(日) 19:58:23 ai1CgR6I0
投下終了です


42 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:37:06 RQAuQboI0
投下します


43 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:40:49 RQAuQboI0
なんで?どうして?なんで自分が?
現在進行形の理不尽に対して、意味の無い自問自答を繰り返す。
だがそんなことをしていても、ガラガラ、、ガラガラ、、と、
少しずつだが確実に自分に近づく金属を引きずる音と共に背後から来る男からは逃げられない。

「はぁー-、はぁー-、はぁー-、、ッッッ!」

もつれそうになる足をどうにか保たせ、ひたすら走り続ける。
狭い道は駄目だ。
行き止まりとかがあったら追い詰められてしまう。
広い道も駄目だ。
遮蔽物の無い場所ばっかり通っていても撒けはしない。
ただでさえ大の大人、それも男性に対して彼女はただの高校生。
それに体格は周囲に比べて大分劣っている。
混乱した頭でただただ逃げる事ばかりを選んだ結果、ついに疲れ果て座り込んでしまった。

(い、息を!何とかして息を整えてまた走らないと!
じゃないと、、じゃないと!)

「なんだぁ……鬼ごっこは終わりかあ?」

「あ……」

ゴキゴキと音を立てて首を回しながら、追跡者である蛇柄のジャケットの男、
浅倉威が獲物、桐間紗路の顔を覗き込む。


44 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:42:41 RQAuQboI0
「ひっ!」

驚いて飛びのいた、、つもりだったが、脚がいう事を聞かず、体を逸らす程度にとどまる。
それを見て浅倉は嗜虐心と、狂気がたっぷりの目を血走らせ、
口を三日月型に歪める。

「あ、ああ……」

「じゃあこっちで俺を楽しませろ、、ああっ!」

力任せに紗路の足元に一撃、彼が手にした鉄パイプが振り下ろされる。
そして間を置かず、頭上高くまで振り上げられ、今度は紗路の脳天めがけて

「はい、バーン!」

「……?」

下ろされない。
代わりにテレビの向こうでしか聞いたことのない銃撃音と、
金属が地面を転がる甲高い音が響いた。
相変わらず恐怖で動かない体だったが、何とか目を開けると、
銃声が聞こえた方に、長い金髪に碧眼の青い学制服(?)を着た自分と同じくらい少女と、
ブーツ以外上下白の衣装に身を纏った、どこか女性的な雰囲気の男性がいた。

「女の子イジメちゃ、、いーけなーいんだー♪」

「なんだあ?お前らが遊んでくれるのか?」

挑発的にチッチ、と指を振る白ずくめに、
浅倉はポケットから紫色のカードケースを取り出して舌なめずりをする。

「つかさちゃん、あの子の事よろしく」

「ええ。戦闘は腕に覚えのあるあなたに任せる。
そして諜報員の私は他の参加者からの情報収集に専念する。
なんど確認しても完璧な布陣ね!」

「ええ、だからあの子の事はくれぐれもお願いね」

バチコーン!と、効果音と共に☆が飛んでそうなウインクを決め、
紗路のもとに向かう諜報員、東城つかさには目もくれず、
浅倉はカードケースを構えながら白ずくめの男、KIZZYに向かって駆けだした。
その腰にはいつの間にか銀色のバックルが巻かれている。

「変身!」

宣言と共にベルトにカードケースをセット。
無数の灰色の残像が重なり合い、
紫色の毒蛇を思わすアーマーと仮面が浅倉を文字通り”変身”させた。

「な!?」

「あら、KIZZYさんだけじゃないのね」

「え?それって……」

つかさの呟きに、紗路がKIZZYをよく見てみると、
浅倉が変身した仮面ライダー王蛇の攻撃を転がって避けたKIZZYの手には、
青い奇妙な装置が握られている。


45 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:43:17 RQAuQboI0
<マッハドライバー!>

腰に当てられた装置から銀色のベルトが伸びてKIZZYの腰に固定される。
王蛇の追撃をスロットを開けながら飛びのいて回避し、
ポケットから取り出した白いバイクを模したアイテム、シグナルバイクマッハ取り出す。

「なんだ?お前もライダーなのか?」

KIZZYはその質問には答えず、一度シグナルマッハに口づけすると、
ドライバーのスロットにセット。

<シグナルバイク!>

待機音が鳴り出すのを待って、ゆっくりと、スロット上部に指をかけ、

「じゃあアンタに倣って、、Let's 変身!」

<ライダー!マッハ!>

スロットを優しく押し込み、変身シークエンスを発動。
白い円柱状のエネルギーの中で、ライダースーツと白いバイクを模した戦闘装甲が装着された。
追跡、撲滅、いずれもマッハ!仮面ライダーマッハの誕生である。

「さ、可愛がってあげるわ!下品な方のコブラちゃん♪」

「なんでもいい、、俺を楽しませろぉお!」

死をまき散らす紫の毒蛇と、穢れなき白を纏うラスカルが、不浄の島で激突した。


46 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:43:34 RQAuQboI0
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:健康、戦いへの愉悦、仮面ライダー王蛇に変身中
[装備]:王蛇のカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを楽しむ。
1:目の前のライダーと戦う。
2:目についた奴と戦い、殺す。
[備考]
※特になし

【KIZZY@HIGH&LOW】
[状態]:健康、仮面ライダーマッハに変身中
[装備]:マッハドライバー炎@仮面ライダードライブ
     シグナルバイクマッハ@仮面ライダードライブ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:女の子を守り、この殺し合いを終わらす
1:目の前の男(浅倉)と戦う。
2:戦闘は自分が引き受け、つかさちゃんに女の子の保護を任せる
[備考]
※特になし


47 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:44:01 RQAuQboI0
殴り、殴られるたびにお互いの拳、装甲にオレンジ色の火花が散り、
さっきの鉄パイプとは比較にならない派手な音が響き渡る。
戦闘の素人である紗路から見ても、明らかに次元のおかしな戦いである。

「さて、それじゃあ私達は行きましょうか。あ、立てる?」

そんな戦いを前にして、冷静に動くつかさは、紗路の目には若干奇異にすら映った。

「な、なんとか……って!いんですか?
あのキジ―って人一人にして、、」

「うーん。確かに良くはないのだけれど、あんまり派手な音の近くに居ると、、」

「いると?」

「ああやってキャンサーとはまた違う怪物が集まって来るのよね」

そう言ってつかさが指をさす方を見ると、
ヤゴをマッシブな人型にしたようなモンスター、シアゴーストが無数現れ、
ゆっくりと、だが確実に二人を包囲するように集まってきていた。


48 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:44:21 RQAuQboI0
「あー、なるほどってちょっと待ってください!
な、なんですかアレ!?着ぐるみかなにか、、ですよね?」

「残念ながら違うわね。
同じのとさっきKIZZYさんが戦った時、血を流してたもの」

「嘘、、じゃ、じゃあこんな数どうすれば……」

さっき浅倉から逃げていた時から輪をかけて青くなる紗路。
だがつかさは余裕の笑みを浮かべると、紗路の肩を叩き、

「心配無用よ。この私に抜かりはないわ!」

そう言ってさっき浅倉の鉄パイプを撃ち落とした銃、ゼンリョクゼンカイキャノンを構える。
上部のギアを、左側目のディスプレイが光るまで回す。

<お覚悟 チャンバラパワー!>

<GOGO!BANBAN!>

「はい、バーン!」

<ダイゼンカイ!バキューン!>


49 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:44:38 RQAuQboI0
銃口から発射された三色の光が、
地球の平和と、人々の笑顔を守り続けて来た戦士の姿を借りて実体となった!

<ドカーン!>

赤き外道を討つ姫君、侍戦隊シンケンジャーのシンケンレッド!
青き二刀流の剣士、光戦隊マスクマンのブルーマスク!
人の身で秘剣を習得した烈車戦隊トッキュウジャーのトッキュウ5号!

「え、ええ!?中から人が出て来た!?」

「あら、なんか和泉さんだけ仲間外れで可哀そう」

「お知り合いなんですか!?」

「いいえ全く。完全に初対面だわ」

「???」

もしつかさの言う和泉さん…和泉ユキが居ようものなら

『いやチャンバラパワーなんだか出てくるわけねえだろ。
てかそもそも全員31Aと戦闘スタイル以外関係ないし、色さえタマしか合ってないわ』

と、華麗に突っ込んでくれそうなものである。

「さ、とにかくこの場は彼らに任せて先を急ぎましょう!」

「え?あ、はい!」

三人の戦士たちが開けてくれた道を走る二人。
紗路はもう体力も殆どつきかけだったが、
今度は戦闘音が完全に聞こえなくなるまで止まることは無かった。


50 : 鬼ごっこ 毒蛇とスカウトとメメントモリの美少女 ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:44:56 RQAuQboI0
【東城つかさ@ヘブンバーンズレッド】
[状態]:健康、体力消費(中)
[装備]:ゼンリョクゼンカイキャノン@機界戦隊ゼンカイジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:なんかこう、アイドル的にワルモノにお仕置き、みたいな?
1:この子(紗路)と一緒に
2:戦闘はKIZZYさんに任せ、私は情報収集に専念する
[備考]
※ゼンリョクゼンカイキャノンの召喚機能は、
つかさのセンタイ知識がほぼ絶無なので、かなり種類分けが緩くなってしまうようです。

【桐間紗路@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康、体力消費(大)、困惑(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:未定
1:もうなにがなんだか……
2:今はとにかくこの場から逃げる。
[備考]
※特になし。


51 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/22(日) 20:46:13 RQAuQboI0
投下終了です。
絶妙に読みにくくてすいません。


52 : ◆s5tC4j7VZY :2022/05/22(日) 20:46:54 DxgWRQ3A0
遊戯王……青春でした。
投下します。


53 : 全員皆殺しデース! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/22(日) 20:49:27 DxgWRQ3A0
雑草のように生き抜いて、その中でも楽しみを見つけることも忘れないという。日本人は、本当に強いんだなって思いました
草彅剛

「それでは、ジャパ―ニーズガールこと徳田みみはハ・デスが言っていたことは本当だと思うのですか?」
「はい。おそらく」

そういうと、みみと呼ばれた少女は自身の支給品の一つを外国人に見せる。
可愛らしいキャラクターの瞳がする花を。

「私に支給されたこの”ファイアーフラワー”説明書を読むだけでも私の世界には存在しませんから」

握りしめたみみのもう片方の手から火の玉が出され、外国人はWowと驚く。

「確かに……そのような花は私の世界にも存在しまセーン!)

少女の実演から外国人は頷き、理解する。
本当に無数の世界というのが存在することを。

「そうですか。それと私のことはドグダミと呼んでください。わりとそう呼ばれてますので」

そう名乗るは徳田みみ。
この春、高校へ入学した一年生にして雑草研究部。
夏休みの合宿中、風呂に入るところ、みみはこの決闘の決闘者として選ばれた。

(それにしてもまさか、私が生み出したゲームがこのようなことになるとは……)

長髪の外国人は落ち着いた様子でみみと会話をしながらも内心驚愕で満たされている。
男の名はペガサス・J・クロフォード。
天才ゲームデザイナーにしてゲーム企業【インダストリアル・イリュージョン】の名誉会長にして決闘者。

(ということは……私が生きているのも、どんな願いを叶えるという眉唾も本当ということですか)

ペガサスにはどうしても叶えたい願いがあった。
しかし、その願いは自身の敗北で幕が下り、命さえも失った。
そう、ペガサスは死んだのだ。
闇の大神官の魂の一部の手によって。

(シンディア……私は……もう一度君に会いたい)

もし、本当に叶うのなら、立体幻想化(ソリットビジョン)なんか必要ない。
直に話すことができ、かつ触れることができる方のほうがいいに決まっている。
そう、幻想よりも現実。
故にペガサスは優勝を狙う。
己が生み出したカードの掌で踊ることになると理解しながらも。

「ところで、ドクダミガールは怖くないのですか?殺し合いをさせられることに」
「もちろん、怖いです」
ペガサスの質問にみみは正直に答える。
決闘という名前こそだが、ようはバトルロイヤル。
殺し合いと同じだ。
そしてその答えはもっともだ。
一女学生でしかない身。
フィクションのような状況をさせられることに恐怖を感じないわけがない。

「でも……この殺し合いの場所でも雑草たちは逞しく咲いています。それに見たこともない草花もありますから。だって……」

この決闘の舞台でもタチイヌノフグリといった雑草は堂々と咲いている。
グッと両手を握りしめると顔を上げ。

「世界は雑草(たからもの)で溢れていますから」

キラキラとした瞳でペガサスを見つめる。
雑草があれば、彼女は挫けない。彼女は諦めない。
だって、廃部寸前だったザッケンをその雑草魂で存続させたのだから。
魔王に雑草魂を見せつけるまでだ。


54 : 全員皆殺しデース! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/22(日) 20:49:57 DxgWRQ3A0
「……フ。それじゃあ、まずは仲間を集めましょうか。おそらく私たち以外にも抗う者はいるはずでしょうから」
「はい。そうしましょう。……あ!」
再び、見たこともない草花に目を輝かせると、みみは匍匐前進とは思えないスピードで近づくと観察を始める。
その様子に苦笑しながらペガサスはみみの姿を見つめる。
しかし、その顔は一気に冷酷に変わる。

「……」
(雑草が宝?……馬鹿をいっちゃいけまセーン。シンディアは雑草なんかではありませんし、いうなれば”オドンドグロッサム”唯一無二なのデース)

雑草が宝?
そんなわけがない。
むしってもむしっても再び成長して伸び、害を与える植物でしかない。
宝とは光り輝き得難く尊い。
所詮は一女学生。
high school生活を義務教育の延長のように毎日を無為に生きて、グローバルな眼を持たぬからそんな世迷言を平気な顔で言えるのだ。
まぁいい。彼女の存在は優勝する上での隠れ蓑としては最適だ。

(せいぜい私の夢の養分として枯れてもらいますよ。雑草ガール)

【ペガサス・J・クロフォード@遊戯王(原作)】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(トゥーン)@遊戯王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:優勝して、シンディアを蘇らせる
1:ひとまずマジック&ウィザードの創造主としての立場を活かして対主催のグループをまとめる
2:対主催の仮面で競合相手(優勝狙い)を減らし、最後は優勝する
3:雑草ガールを上手く利用する
[備考]
原作、獏良に千年眼を奪われて死亡後からの参戦。
千年眼の力は使えますが、罰ゲームなどの能力は制限されています。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(トゥーン)@遊戯王】
ペガサスに支給。ペガサスが愛してたまらないトゥーン・ワールドを中心にしたデッキ
トゥーンだから平気デース!は現実にやったらリアルファイトに発展するのでやめましょう。

【徳田みみ@ザッケン!】
[状態]:健康 見たことない植物に興奮(大)
[装備]:ファイアーフラワー@マリオシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:生還。そして、ここで得た雑草を持ち返る
1:ペガサスと行動を共にする
2:見たこともない雑草を収集する
[備考]
17話終了後からの参戦。

『支給品紹介』
【ファイアーフラワー@マリオシリーズ】
徳田みみに支給。握りしめると火の玉(ファイアーボール)を出すことができる。
植物を愛するみみにとって火気厳禁。現状は宝の持ち腐れ


55 : 全員皆殺しデース! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/22(日) 20:50:09 DxgWRQ3A0
投下終了します。


56 : False memory ◆EPyDv9DKJs :2022/05/22(日) 20:51:28 MzcvfdzE0
投下します


57 : False memory ◆EPyDv9DKJs :2022/05/22(日) 20:53:02 MzcvfdzE0
『思い出させてやんよ。オマエの愚かな記憶と……アタシの愚かな記憶をね───』

 少女の記憶にヒビが入った。
 ずっと探していた。洗脳された友達を助けようと。
 その為に一人で調べて此処まで来て、組織とも戦うことを選んだ。

『オマエは皆に認められて、陽の光を浴びてきたのさ。だけど……ずっと日陰にいたアタシは?』

 少女の記憶に亀裂が入った。
 見え隠れする本当の記憶。友達は洗脳されてなどいない。
 友達は見下されるのが嫌で、自らの意思で彼女から離れたと。
 自分が上になるために、犯罪組織へ入ることを受け入れた。
 しかし、少女は受け入れられなかった。耐えられなかったのだ。

『現実を受け入れずに───』

 少女の記憶は、本来の現実を想起させる。
 少女が持つ弓は感情の操作ができ、その応用で記憶の操作も可能だ。
 手紙を見たことで、彼女は自分を刺した。一発や二発ではその絶望の感情は消えない。

 何度も、何度も。十発程度では足りない。
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何百と言う虹の矢で自分を貫いて、その絶望を───記憶を絶った。





 草原の上で、一人の少女が立ち尽くす。
 彼女を色で例えるならば、虹が相応しいだろう。
 白色を基調としているが、髪はオーロラのような虹色に輝く。
 何かの遣い、と言われたらそうですと言われても不思議ではない。

 少女の名前はクピタン。
 洗脳された友人を助けるために旅をしてきた少女『だった』。
 だが彼女は記憶を取り戻した。友人、トリステットは洗脳はされてなかった。
 全て自分で選んだ道で、しかもそのやりとりは既に三度目であると言う。

「リス、ちゃん……」

 友達でいるつもりだった。
 ずっと一緒に旅をしてたから、
 かけがえのない大切な友人だと。
 でも、きっと何処かで見下していたのだと。
 探していたのも、自分が安心したいだけの独りよがり。
 自責の念に苛まれていた中で、殺し合いへと彼女は巻き込まれた。

「ア、アア───ッ!!」

 こんな状況なのに涙が止まらない。
 皆から気味悪がられ、忌み嫌われたトリステット。
 皆から崇められ、常に賞賛され続けてたクピタン。
 立場は違えど、この関係はずっと対等だと思っていた。
 上も下もない───でもそうじゃなかった。全ては彼女の妄想だ。
 絶望の感情を取り除いた結果、そう思い込むことになっただけの物。
 紛い物の記憶に酔って一人追い続けた、トリステットの言う通りの愚か者。

「───ッ!」

 耐えられなかった。
 自分の感情が絶望の色に染まる今に。
 武器が入ってると言われたデイバックを漁りだす。

「ない、ない……!!」

 彼女が求めているのは虹の弓。
 占星武器(ホロスコープ)と呼ばれる使用者を選ぶ武器だ。
 彼女は虹の弓で感情を操作して、自分を刺し穿って絶望の感情を、記憶を消した。
 今回もやろうとしたが入ってない。自分の髪のような色をした虹色の弓は何処にも。
 弓はあったものの、それは虹の弓ではない。矢は魔力で作れても、感情の操作はできない。
 虹の弓がなくてはこの感情を、この記憶を消すことはできない。

「あれがないと……」

「両手を挙げて、ゆっくりとこっちへ向いてもらう。」

 だから人が近づいていても全く気づけなかった。
 殺し合いであると言う場だと言うことを漸く理解する。
 早く虹の弓を探したかったが、カチャリと言う音は覚えがある。
 彼女のいた世界にも、銃と言うものはあったのだ。
 少なくとも今すぐ殺すことはしないのは分かっており、
 素直に弓を置いて、両手を挙げたまま振り返る。

 そこにいたのは、学生服の少年だ。
 ボタンも締めて帽子もかぶっていると言う、
 規律を守った模範的な学生らしさが感じられる。
 中性的な顔つきに女性にも受け取れる声で性別の判断は付かない。


58 : False memory ◆EPyDv9DKJs :2022/05/22(日) 20:54:44 MzcvfdzE0
「あ、あのすみません。私は乗って───」

『僕にの言うことに従え。』

 その言葉と瞳を見た瞬間、彼女の意識は落ちた。







「……面倒なことになったな。」

 少年、直井文人は夜空を見上げて一人ごちる。
 敬愛する音無さんの為に行動していたはずが、いつの間にか殺し合いだ。
 死んでもどうせ復活する、とは少し様子が違うのもあって警戒していたところ、
 クピタンの声を聞いて、彼女の周りを顧みない行動に仕方がなく催眠術で黙らせた。

(音無さんに見つかったら怒られるから、直ぐに解除するけど。)

 此処にいるかどうかはともかくとして、
 音無さんがいたら彼の信用を貶める行為はなるべく避けたい。
 だから彼女が殺し合いに乗るかどうかと、騒がしくしてた理由を聞く。
 今は従順に聞き、聞きなれないワードは改めて聞き返して彼女の人となりを理解した。

(偽りの記憶か。)

 話を聞けば、自分に対する皮肉かと思った。
 人を催眠術で都合のいい夢を見せて成仏させる。
 以前やろうとしてた自分と、彼女のしてたことが妙に被るのだ。
 自分にとって都合の悪い記憶を消して、友達と思い込んだ相手を追い続ける。
 初対面だし悪い人ではないが、正直なところ彼も少しこの執着には引いていた。
 自分にとっての音無がトリステットなのだろうと言うこともあるのと、
 誰からも認められなかった自分が、大多数から忌み嫌われたトリステット。
 そういった共感があったため、他人事のように言う程引いたわけではないが。
 しかし困った。これだと解除したら、下手を打つと自殺や暴れる可能性もありうる。

 直井自身は殺し合いを一先ず乗るかどうかは保留としていた。
 労力が違うし、彼女の話を聞けば空の世界に生きていた別世界の住人。
 この先も別世界の人間と出会う可能性があるなら警戒は必要になる。
 彼女の世界には星晶獣と言う存在もいるらしいのでは、自分一人では限度がある。
 優勝するにしても脱出するにしても、今は余計なことをしないでおくのが一番だと。
 だからどちらにしても障害となりうる彼女を殺す、と言う選択肢は取れなかった。

「仕方がない。さっきのように騒がれるのも困る……」



 ◆ ◆ ◆



「ぞういうごどだっだんでずね〜〜〜!!!」

 涙と鼻水で酷いありさまになってるクピタン。
 直井は簡単に自分が此処にいるまでの経緯を語ったが、
 虹の弓によって感受性が人一倍強いため、かなり涙もろい。

「ハンカチをどうぞ。」

 人物像は概ね聞いたので、
 特に驚かず冷静にハンカチを渡す。
 素直に受け取って涙を拭い、鼻をかむ。

「ありがとうございます……洗って後でお返ししますね。」

「それでクピタンさん。貴女の記憶を一時的に封印しました
 少なくとも貴女がこんな状況であっても錯乱するような内容だ。
 だから僕が一時的に封印することにした……此処までは理解してますね。」

 直井は自分が彼女にしたことを素直に話した。
 ただし、催眠術では確実に人聞きが悪く信用を失いかねない。
 特に相手が女性だ。あらぬ疑いを持たれることは好ましくなかった。
 だから『記憶を封印と解除ができる』と言う風に誤魔化している。

「あ、はい。私と似たことができるんですね。」

「ですから、暫くの間は勝手ながら記憶を封印したままにします。
 現状、僕一人では襲い掛かる敵を退けられるだけの状況ではないので。」

 素直に話すことで信頼を得る。
 少なくとも殺し合いに乗るような性格ではない。
 だから素直に話す方が後々困らないだろうと。

 ついでに戦力も彼女はかなり弓の名手のようだ。
 大量の矢を何度も撃つことができる。自分ではなかなかできない。
 銃と言う武器はあれどもやはり数の差と言うのは大切である。
 散々生徒を洗脳してきた直井だからこそ数の強さは理解していた。

「そうですか……すみません、取り乱してたみたいで。」

「ただ、僕の能力がちゃんと機能してるかは分かりません。
 ふとしたきっかけで戻る可能性もあるので、気をつけるように。」

「はい!」


59 : False memory ◆EPyDv9DKJs :2022/05/22(日) 20:55:04 MzcvfdzE0
 昔の自分であれば、即座に殺していただろうな。
 なんて思いながら明るく振る舞う彼女に少し冷めた目で見る。
 自分で都合の悪い記憶を消し続けてきたうえに築かれた人格。
 その事実を知ってれば、常人であればそうなるのも無理からぬことではある。

「ある程度人数が揃って戦力が安定した時、
 能力を解除します。そこからどうするかは貴女次第で責任は取りません。
 貴女の性格から殺し合いに乗ることはないとは思いますが、乗る場合は撃ちます。」

 手に持つ銃を向けられて、あわあわと手を振る。
 勿論撃つ気はないので謝って撃たないよう直ぐ降ろすが。

「ではいきましょう。此処では撃たれ放題だ。」

 開けた草原にいてはどうなるか分かったものではない。
 武器の確認もちゃんとしたいので早急に此処を離れる。

(私の消えた記憶、どんなのなんだろう。)

 絶望の感情が消えた少女は空を眺める。
 答えなど出てこない。空の頂を超えた星のように。

 本来ならばとある少女とのやり取りで、
 気持ちに整理がついて改めて友を探すことを選んだ。
 やがて彼女と、犯罪組織の時に共闘した騎空団に合流することになる。
 此処にいる彼女は、そうはならなかった物語だ。
 一人の青年に認められた少年と、一人の少女に認められなかった少女の物語。

【クピタン@グランブルーファンタジー】
[状態]:精神疲労(極大・しかし記憶の封印でなかったことになってる)、記憶改竄
[装備]:何かの弓(詳細不明)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(記憶改竄により忘れてるが本来は確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:リスちゃん、待ってて!
2:虹の弓を探さないと。
3:ナオイさんの知り合いや団長さんたちもいるのかな。
4:私の封印した記憶、どんなのなんだろう。
[備考]
※参戦時期はマリオネットスターズ、6-3〜EX-2でティコと話すまでのどこか。
※虹の弓がないため、魔力で矢を精製は出来ますが感情の操作や色を見ることはできません
※直井の催眠術で以下の効果を受けてます
 ①トリステットに告げられた真実を覚えてない(6-3以降の会話と自分に矢を刺した行為を忘れてる)
 ②直井の催眠術を見たことを覚えていない
※直井の能力を自分と類似した記憶の改竄と教えられてます。

【直井文人@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタ92@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:生還。ただし最悪の場合は手段を問わない。
1:音無さんがいたら全力でサポートする。アホ共は知らんが同じ行動を選ぶだろう。
2:暫くはクピタンさんを利用……は言い方が悪いな。彼女と行動する。
3:催眠術、制限されてる可能性もあるから気をつけるべきか。
4:戦力が集まり次第彼女の記憶を戻す。後は彼女次第だ。

[備考]
※参戦時期は少なくとも改心後(六話)以降
※催眠術は長時間彼から離れた、死亡した場合解除されます。
 また、少なくとも無数に催眠術は使えない程度に制限されてます。
 可能な人数は現時点では不明。
※現在クピタンに記憶の記憶を封印してます。
 また、彼女に対しては記憶を封印できる能力と説明してます。
※クピタンからグランブルーファンタジーの世界の情報を得てます。

【ベレッタM92@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
直井に支給。イタリア軍で正式採用されたが性能の陳腐化が指摘された銃。
人の命を踏み躙るゲームを止めるため奔走した、一人の少女がこの銃を手にしていた。


60 : ◆EPyDv9DKJs :2022/05/22(日) 20:55:46 MzcvfdzE0
投下終了です


61 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:20:26 6ze6Ve2k0
投下します


62 : ウソツキな大王とウソツキの天使 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:21:48 6ze6Ve2k0
「ケケッ、オレっちに無断で冥界…地獄の王を名乗るとは、いい度胸してやがる」

上空を見上げながらそう笑うのは、小学生くらいに見える男の子だった。
しかし、その正体はただの子供ではない。
彼の名はゴクオー。
初代閻魔大王、地獄王である。

最初の場所にて、ハ・デスという化け物は、地獄の別名である冥界…その魔王だと名乗った。
奴が何者なのかは分からない。
冥界とはいっても、自分の知る地獄とは別の存在かもしれない。
しかし、奴が地獄の関係者である可能性がある以上、放っておくわけにはいかない。

「…ジュウオウはいないが、こいつは没収されてなかったか」

ゴクオーがデイパックから取り出したのは、変幻自在棒。
ウソツキの舌を抜き、ウソのつけない舌を授けるための道具だ。
かつて、ゴクオーが地獄に落ちた人間を裁くために幾度も振るった愛器である。

「…誰か来たな」

ゴクオーが愛器の様子を確かめるために変幻自在棒を適当に振り回していると、一人の参加者が現れた。
その参加者は、人間の世界で言うところの高校生くらいと思われる少女だった。
向こうもこちらの存在に気づき、綺麗な金髪を揺らしながらこちらに向かって走ってきて…

「あっ」

盛大に転んだ。

「おねーさん、大丈夫?」
「あっ、うん…えへへ、こんなとこに一人ぼっちで、やッと人に会えたから慌てちゃった」
「ウソつくなよ、手から血ィ出てんじゃん」

ゴクオーはそういって少女の怪我した手を握って見せる。
それに対して少女は、

「あはは、だいじょぶ!ぜんっぜん平気だよ」
「……!!」

何でもないように、笑った。

「……おねーさん、名前は?」
「あっ、私はコレット。コレット・ブルーネルだよ」


63 : ウソツキな大王とウソツキの天使 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:22:38 6ze6Ve2k0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

ゴクオーとコレットは、お互いに情報交換をし、それぞれが全く違う世界の住人であることを知った。
もっともゴクオーは、地獄のことには触れず、あくまで八百小5年2組の小学生としての自己紹介だが。

「世界を救うための神子、ね…」
「うん、お父様のような立派な天使様になって、大好きな人がいる、私たちの世界を救うんだ」
「……………そうか」

ゴクオーが思い出したのは、自分たちの世界の天使。
コレットの世界の天使は自分の世界の天使とは全然違う存在のようだが。
コレットを見ていると、その思考の在り方は似通っているように思えて、なんとなく癪だった。

「ご、ゴクオーくん?どしたの?顔怖いよ?」
「…なんでもねえよ。それよりコレットおねーさん、チョコ食べない?」
「…え?チョコ?」
「…どしたの?なんかびっくりした顔して」
「う、ううん、じゃあ、いただこうかな」

コレットはゴクオーからチョコレートを一切れ受け取ると、パクリと食べる。

「どう?美味しい?」
「うん、甘くておいしいよ〜」
「…おねーさん、誰かさんみたいにウソが下手だね」
「え?ウソ?」
「実はオレっちの支給品の一つ、カレーの材料だったんだ」
「…!」

コレットは驚愕の表情でゴクオーを見つめながら、ゴクリと…カレーのルーを飲み込んだ。


64 : ウソツキな大王とウソツキの天使 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:24:37 6ze6Ve2k0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「…どうして分かったの?私がウソついてるって」
「最初に違和感を覚えたのはおねーさんの手を握った時だよ」
「…ああ、私、全然痛そうにしてなかったもんね」
「それもあるが…それ以上に違和感があったのはあんたの言葉だ」

『あはは、だいじょぶ!ぜんっぜん平気だよ』

「オレっち、前に同じような言葉を吐いた人間を、見たことがあるんだよ。そいつは、泣きそうなほど困ってるのに、笑って言ったんだ。『ぜんっぜん平気だよ!』ってな」
「…強い子なんだね」
「だけど、さっきのおねーさんの台詞から感じたのは、びっくりするくらいの『無』だったんだよ。痛みが鈍いとかでもねえ、強がってるわけでもねえ、本気で何も感じてねえ奴の言葉だった」
「…うん、もうすっかり慣れちゃったけど、本当に何も…感じなかった」
「それでオレっちは、痛覚以外にも感覚を失ってるんじゃねえかって思って、チョコと偽ったカレールーを渡してみたら…案の定だ」
「…すごいね、ゴクオーくん!探偵さんみたいだよ」
「さっき話してた、天使って奴の代償なのか?」
「……うん」

コレットは話す。
神子の試練を果たすたびに、五感を失いつつあることを。
眠れなくなり、味を感じなくなり、痛みを感じなくなっていったことを。

「…おねーさんは、後悔してないの?人間としての生活に、未練はないわけ?」
「うん、だいじょぶ!私が頑張れば、世界は救われる!その為なら、ぜんっぜんへい…」

コレットの言葉が最後まで紡がれる前に。
突然、彼女の舌はゴクオーの持つ棒によって挟まれた。


65 : ウソツキな大王とウソツキの天使 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:25:58 6ze6Ve2k0
「へ!?ご、ゴクオーくん!?」
「あんたには二つの道がある。一つは、人として生き、大好きな人と一緒に過ごす道。もう一つは、天使として人の生を捨て、世界を救う道」

「コレットさん…あんたが本心から進みたいって思ってる道は、どっちだ?」

「ウソなしで、答えろ」

ゴクオーの突然の豹変と迫力に、コレットは驚きと恐怖で目を見開く。

「私の、道は…」

そこで一度目をつぶるコレット。
そして再び目を開けた時、その瞳は強い意志の灯った輝きをしていた。

「…ロイドやジーニアスと、人として生きてた日々は、楽しかった。これからも、みんなと一緒にいたい……だけど!」

「それ以上に私は、みんなが生きてる、大好きな人たちが生きるあの世界を、救いたいの!これが今の私の…本心だよ!」

強い意志を持った眼差しで、こちらを怖い顔で睨みつけるゴクオーを睨み返す。
ゴクオーは…挟んでいた彼女の舌を解放した。

「…ちぇ、どうやら今のあんたの言葉…ウソじゃねえみたいだな」
「…ゴクオーくん、あなたはいったい」
「驚かして悪かったな、それじゃあコレットおねーさん、行こうぜ!」

ゴクオーは、まるで何事もなかったかのようにコレットに背を向けて歩き出した。
そんなゴクオーの背中を、コレットは慌てて追いかける。

「コレットおねーさん」
「な。なに?ゴクオーくん」
「おねーさんの世界はオレっちとは別の世界だから、オレっちにはどうすることもできないし、それがおねーさんの決めた道なら、止めない。だけど、一つだけ言っておくぜ」
「う、うん」
「さっきオレっちは、あんたに二つの道があるって言ったが…あれはウソだ」
「う、ウソ?」
「ああ…『どっちも選ぶ』…そういう道を考えてみたって、罰は当たらないと思うぜ?」

かつて、サタンに現世と地獄、どちらを選ぶか問われた時。
魔男に天子と世界、どちらを守るのかを問われた時。
彼が選んだのは、どちらも守ることだった。

「どっちも選ぶ…そんなの…」
「…ま、ともかく、まずはここを抜け出さなきゃどうにもならねえからな。行こうぜ!」
「…うん」

こうして、地獄王・閻魔大王と天使見習い。
対極の存在である二人は、殺し合いの脱出という同じ目的に向けて、歩き出すのだった。


66 : ウソツキな大王とウソツキの天使 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:26:31 6ze6Ve2k0
【ゴクオー@ウソツキ!ゴクオーくん】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:変幻自在棒@ウソツキ!ゴクオーくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1、カレーの材料セット@現実
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出し、ハ・デスを懲らしめる
1:コレットと行動
[備考]
※参戦時期は魔男編終了〜邪仏編開始前
※ジュウオウの召喚や地獄への招待は不可能です

【コレット・ブルーネル@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:手に軽い怪我
[装備]:手裏剣@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:元の世界に帰る
1:ゴクオーと行動。何者なんだろう
[備考]
※参戦時期は第三の試練クリア後〜しいな加入前(正規ルート)
 時期の都合上、睡眠欲や味覚、痛覚を失っています。
※ゴクオーから「八百小5年2組としてのゴクオー」について聞きました。
 地獄関係のことは聞いていませんが、ただの人間でないことは感じています。

【変幻自在棒@ウソツキ!ゴクオーくん】
ゴクオーに支給。ウソツキの舌を抜き、ウソのつけない舌を授ける棒。
ウソのつけなくなる時間は制限により30分ほどとなっている。

【カレーの材料セット@現実】
ゴクオーに支給。名前の通りカレーの材料。
カレールー、たまねぎ、にんじん、肉、じゃがいものセット。

【手裏剣@テイルズオブシンフォニア】
コレットに支給。彼女の専用武器。
手裏剣だけど、分類としてはチャクラムである。


67 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/22(日) 23:27:08 6ze6Ve2k0
投下終了です


68 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/23(月) 00:05:07 AlBEjZ9M0
あ、すみません
自作「ウソツキな大王とウソツキな天使」ですが、5年2組ってなってるとこ、6年2組でした


69 : ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:08:43 YGUPxCao0
新ロワ乙です、投下します。


70 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:11:04 YGUPxCao0
――欠けた翼で飛んだ、醜い星の子ミカヅキ











月明かりの下、一心不乱に駆ける白が一つ。
息を切らせ足を動かすその正体は少女。
三つ編みにした桜色の頭髪が、馬の尾のように揺れ動く。
魔法少女の環いろはである。
強化された身体能力に物を言わせて走り続ける理由は、希望の魔法少女として力無き人々を守る為。
ではなく、逃亡。
勝ち目の無さを実感した怪物から、少しでも距離を取る為であった。

「――――ッ!!!!!」

全力疾走中の身体を急停止、つんのめりそうになるのを堪えて、背後へと跳ぶ。
直後に空気が裂かれ、付近の木々がへし折れる。

「ハッ、ハッ…!」

追いかけていた筈の敵は、何時の間にか追い越していたらしい。
そこから何をしたのか。
蹴りを放った、ただそれだけ。
たったそれだけで木がご覧の有様となった。
いろはの細い腰など、スナック菓子よりも簡単に粉砕されるだろう。
恐るべき速さと強さを兼ね備えた化け物。
ではその化け物とは、一体全体どのような存在なのか。
見上げる程の巨体を持った怪物?或いはヒグマなどの野生動物に似ている?
それとも高性能の殺戮マシーン?
否だ。何せその化け物は外見だけなら人間そのもの。

「……」

時代錯誤な軍服に身を包んだ、長身の男。
その筋のマニアが見たら、過去のドイツ軍の制服だと唾を飛ばしながら熱弁するだろう恰好。
暗闇の中にあってもギラギラと輝く赤い瞳で、まだ15歳の少女を睨みつけている。
そんな存在こそが、いろはと対峙している化け物であった。
主催者による決闘(デュエル)開始宣言後、困惑から覚める間を与えずいろはに襲い掛かり、
僅かな攻防を以てして彼女に「勝てない」と理解させた怪物。


71 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:12:44 YGUPxCao0
「クッ…」

左腕のクロスボウを構えるいろはの頬を汗が伝う。
何もいろはが圧倒的な弱者という訳ではない。
元々宝崎で魔女を狩っていたのも有り、怪物との戦闘が始めてではなく、
神浜市を訪れてからもソウルジェムの調整と、ウワサとの戦いを経て、魔法少女になり立ての頃より遥かに強くなった。
並大抵の相手ならば一人でも勝てる。
問題は今現在睨み合っている男は並以上、間違ってもいろは単独で相手取ってはいけない存在だということ。
信頼するチームみかづき荘のメンバーもいない状況で、いろはがするべきは逃走のみに集中する事のみ。
しかしその逃げるという行動すら、非常に難しいと来た。
ここから自分はどう動くべきか、フル回転する脳が答えを弾き出す暇をも許してはくれない。
言葉一つ、呼吸する音すら発さず男が疾走。
地面が抉れる程の力強さで迫る相手に、いろはもまた全身を総動員して動く。
男の拳が空を切る。回避の成功を安堵する余裕は無い、直撃せずとも空気の揺れだけで吹き飛ばされそうだ。
再度距離を取りながらクロスボウを連射。ガトリングの如き速度でピンクの矢が男を射るべく殺到。

「……!!」

あろうことか、男が取ったのは回避ではなく真っ向から突っ込んでくるものだった。
両の腕を振り回し矢をはたき落とす。
時折、防ぎ漏らした矢が命中し軍服に赤い染みを作る。
痛みとは集中力を削ぎ、動きの勢いを低下させるものだ。
だというのに男がいろはへ迫る速度に微塵も衰えが無い。
矢が肉を貫いた痛みに顔を歪める事すらしない。
最初にいろはと出会った時と一切変わらぬ無表情。
ほんの僅かな表情筋も動かさず、こちらを殺しに襲い来る姿は冷酷無比な殺人ロボットのようだ。
確か以前、リビングで鶴乃とフェリシアがそんな内容の映画を観て大騒ぎし、さなを驚かせた為に揃ってやちよに叱られていたっけ。

一瞬、そんな光景を思い浮かべたいろはへ、再度拳が放たれた。

「ストラーダ―――」

だが手応えは無い。
拳が貫いたのはいろはの柔らかな肌でなく、脱ぎ捨てられた純白のフードのみ。
見失った標的の行方を男が察知するより一手早く、魔法少女が矢を放つ。

「―――フトゥーロ!!!」

闇を切り裂くように、桃色の矢が上空へと向かって行く。
これまで以上に魔力を籠めた一撃は、男とはあらぬ方へと放たれた。
だがこれでいい。
いろはは血迷ったのでも無ければ、勝負を捨てたのでもない。
一直線に空へと向かった矢は、次の瞬間、雨のように地上へと降り注いだ。
桜色の光は夜闇に映えるが当然見栄えだけの技では無い。
男の逃げ場を塞ぐように矢は広範囲から降り注ぐ。
今のいろはが出せる最も強力な攻撃方法だ。
逃げ場無し、となるだろう。


72 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:13:49 YGUPxCao0
普通ならば。

男は矢の豪雨を見ても表情を崩さない。
「この程度」、十分対処が可能だから。
上半身を捻り力を込め、矢が到達するまさにその寸前に解き放つ。

回し蹴り。中国武術や空手、その他多くの格闘技で用いられる蹴り技の一つ。
男が放った回し蹴りは、技というより兵器と呼ぶべきだろう。
矢が消し飛ばされ、草花諸共地面が抉れ、ある程度の距離があったいろはすら余波で吹き飛んだ。
背後から勢いよく引っ張られるかのような感覚、次の瞬間には背中への衝撃と変わる。

「―――ッ!!!??!!」

痛いとか、そういう言葉を口にする暇すら皆無。
全身の肌が総毛立つ殺気へ危険信号を鳴らし続ける脳の指示に従い、全力で身を捩る。
次いで轟音。自分が激突した木が、太い幹を素手で吹き飛ばされた。
尤もいろはには木などよりも、もっと気を回さねばならないものがある。
直撃だけは避けた、しかし完全には避けられなかった。
右腕が、上腕二頭筋部分の肉がほぼ無くなっている。
骨まで失い皮一枚で繋がっているに過ぎない腕は、今にも引き千切れそうにブラブラと揺れるだけ。
中学生の少女が受けるには、余りに酷な傷。
途端に襲い来る激痛に泣き叫ぶ事すら、いろはには許されない。
歯を食い縛り、流れる涙を無視し回復魔法を発動。
ビデオの逆再生のように失われた血肉と骨が元の形を取り戻していく最中も、男は容赦しない。
これまで同様に距離を取ろうと足を動かすいろは。
しかし遅い。回復中とはいえ右腕の痛みは、いろはから集中力を奪い去る。
迫る蹴り。咄嗟に左腕を盾にし、無意味と思い知らされるかのように体が宙に浮く。

「がっ……」

背中に二度目の衝撃と痛み。
今度は木ではなく地面に激突したかららしい。
チラリと視線を動かすと、そこにはボウガン共々ひしゃげた左腕。
こっちも治さないとなと思うも、視線を上げればそれが不可能だと嫌でも理解する。
男がこちらを見下ろしていた。
人形のように表情が変わらないと言うのに、両の赤い瞳だけはゾッとする程にギラ付いている。
いろはを傷付けた事への罪悪感は全くと言って良い程感じられず、さりとて嗜虐趣味があるようにも見えない。
見た目は人間でも魔女のように話が全く通じず、アリナ・グレイの狂気とはまた違った何かを秘めている男。
一体全体何者なのか気にならないと言えば嘘になるが、正体を探る時間は残されていないだろう。
きっと次の瞬間には顔を潰されでもされる。
ソウルジェムが破壊されなければ死なないとはいえ、流石にそうなったらマズいかもと存外呑気な想いが浮かぶ。


73 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:15:52 YGUPxCao0
(死ぬのかな……)

死んだら自分はどこへ行くのだろう。
天国だろうか。それとも地獄?
魔女と化したとはいえ、元は魔法少女だった者達を手に掛けて来たのだ。
あの世で裁かれるのかもしれない。
でもそれじゃあ魔法少女は全員が地獄に堕ちる事になってしまう。
幾らなんでもあんまりだ。本当に天国と地獄が存在すればの話だが。

死者の行きつく先がどこであれ、願わくば逝ってしまった皆に会える場所であって欲しい。
満開の桜の下で、ういと、灯花と、ねむとの再会を果たすのだ。
三人とも怒るだろうか。こんなにも早く命を落としてしまった事を涙ながらに責めるだろうか。
それについては申し訳ないけど、せめて三人を抱きしめるのは許して欲しく思う。
もう二度と離れ離れにならないよう、力いっぱい抱きしめたい。
ほんのちょっとだけ苦しいかもしれないけど、その分うい達も抱きしめ返してくれたら嬉しい。
その後で、三人にまたお弁当を作ってあげよう。
美味しいといってくれた豆腐ハンバーグ。向こうではきっと病気じゃないのだから、お肉のハンバーグでも良いかもしれない。

再会を望むのはあの娘もそう。
救えなかった、環いろはの希望のせいで、魔女へ変えてしまった魔法少女。
自分は彼女の事を分かった気になっていただけで、その実まるで分ってあげられなかった。
だから救うどころか、最悪の結末を招いてしまった。
もし彼女と会えたなら、謝りたい。
謝ってどうにかなる話ではないし、向こうからしたら二度と会いたくないのかもしれない。
それでももう一度会いたい、会わねばならない。

妹たちにまた会えるのならここで死ぬのも悪くないのではないか。
頑張らなくたって良いんじゃあないか。
甘い毒への誘惑が、いろはを堕とすべく耳元で囁かれる。

そうだ、その通りだ。
神浜市で自分は十分頑張った。
だから、無理して生きる理由なんてどこにも――


74 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:20:16 YGUPxCao0
(――――――――――違う)


理由なら、ある。
生きなければいきない理由が、確かに存在する。

「や、ちよ、さん……」

自身の願いのせいで苦しむあの人の支えになりたくて。
あの人の抱える痛みを少しでも癒したくて。
簡単に死んでなんかやらないと、約束したではないか。

思い出す。
初めて自分の名前を呼んでくれた時の笑みを。
奈落の底へ落ちて行く自分へ必死に手を伸ばした時の叫びを。
万年桜の下で再会を果たした時に流した涙を。
年長者の癖に負けず嫌いの意地っ張り。
突き放したような態度の裏では人一倍寂しがり屋の優しい人。
やちよとの約束を破って死ねない、死んでたまるものか。

(生きないと……)

生きねば、ただそれだけを思い続ける。
最早死を受け入れる気は消え失せた。
なのに心に反して、現実はどこまでも厳しく、そして残酷だ。
いろはが今から何をしても間に合う事は無い。
男がいろはへ手を下す方が圧倒的に速いのだ。
どれだけ生を望んでも、弱ければ無意味。
思うだけではなく、自力で生を掴み取らなければ終わりが訪れるだけ。
いろはには力が足りず、男には力があった。
弱者が死に強者が生き残る。


そんなありふれた末路を、否定する者が一人。


振り上げた拳を収め、軍服の男が大きく飛び退いた。
バッと顔を上げ見据えるのは、何時の間にやらいろはを庇うかのように立つ何者か。
身に纏うのは遥か昔の異国、日本のものであろう着物。
時代錯誤なのは服装のみならず、握り締めた得物も同じであった。
軍のサーベルとも違う刃物は、正にジャパニーズサムライの証、日本刀ではないか。

突然の乱入者に、いろはは傷の痛みも忘れて呆気に取られる。
恰好の奇抜さも相まって脳内はシェイクされたように絡まるも、間一髪の所を助けられたとは理解。
ぐぐっと頭を動かし恩人の顔を視界に入れ、凍り付いた。

月の光に照らされた男の顔に浮かぶは、相対する敵に殺意をぶつける三体六つの眼。
人間では有り得ぬ容姿は、誰がどう見ても化け物と呼ぶに相応しい姿だった。


75 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:21:15 YGUPxCao0



大尉と、戦場を共にした者達からそう呼ばれていた男が、己の感情を貌に現わす事は無い。
しかし内心では震え上がる程の喜びで、血が沸き立ち臓腑が震えている。
戦場に突如として参戦した侍、姿を目に入れた瞬間に理解した。
こいつは強い。相手にとって不足はない、最高の化け物だ。
喜びは表情では無く、蹴りに乗せて伝える。
侍の首を狙い凶器と化した脚の一撃。
常人ではそもそも脚が振るわれたと気付くのも不可能なソレを前に、侍は選ぶのは後退でなく前進。
最小の動きで頭を下げ、数本の頭髪がハラリと宙を舞う。
それが地面に落ちる前に、侍の右腕が動く。

――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮

抜刀した勢いを殺すことなく、横薙ぎに振るう。
単純極まりない動作。そう嗤えるものがどこにいようか。
人間の限界を鼻で笑うかのような速度の一撃だというのに。
再度後退し刀を回避する大尉。抜き身の刃は肉体どころか軍服の端にすら届いていない。
ならばこれはなんだ。何故避けた筈の身から、血が噴き出ている。

――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り

再び横薙ぎに振るわれる刀。
距離は開いている。故に切っ先すらも大尉へ掠らない。
しかし大尉は理解する。
わざわざ刀身をこちらへ当てる必要も無く、一度振るわれてしまえば斬撃が到達するのだと。
迫る圧倒的な死の臭い、戦場では常に嗅いでいた、そこら中に糞をぶち撒けたかのような悪臭。
ぶるりと細胞一つ一つへの刺すような痛み、何よりも自分が生きていると実感させられる感覚が、頭で考えるまでもなく身体を動かしてくれる。
侍を高く見下ろす位置へと大きく跳躍。
あのまま突っ立ていればどうなったか、三日月状の斬撃が大盤振る舞いで二つも寄越されていた。
技を外した真下の侍へ、ギロチンのように脚が振り下ろされる。
ギョロリと、侍の持つ刀に浮かんだ複数の眼が大尉を睨み付けた。
侍は何も言わない。だが刀の眼はこう伝えているようだ。
「それも見えている」と。


76 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:22:11 YGUPxCao0
――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月

三日月が、襲い来る。
太陽が新たな一日を告げる祝福の光ならば、月は終わりを告げる為の光か。

「ッ!!」

血を撒き散らしながら大尉は落ちて行く。
無様に叩きつけられるのを回避したのは見事。
そのすぐ隣へパラパラと落ちる肉片。防御に回した大尉の左腕。
ついさっきまで標的にしていた少女と同じ動きをするとは、何たる皮肉か。

「……」

腕を落とされたと言うのに、大尉には怒りも焦りも恐怖も無い。
むしろ、こうでなくてはと心が躍る。
このくらいはやってのけてもらわねば困るのだ。

とはいえ、大尉の内心など侍には知った事では無い。
現にどうだ、大尉が立ち上がった時には既に侍は、手負いの魔法少女と共に戦場から離れていた。

「あっ、あの…!」

そう声を掛けたは良いものの、次に言うべき言葉が咄嗟に浮かばない。
自分を抱きかかえ移動中の男を、いろはは困ったように見上げる。

「舌を噛む……。暫し……口を閉じていろ……」

間を開けて淡々と返されると、益々言葉に困った。
聞きたいことは沢山ある、しかしこの状況では後回しにせざるを得ないだろう。
言われた通りに黙ろうとして、その前に一つだけ言っておかねばならない事を告げた。

「あの、助けてくれてありがとうございます」


77 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:26:40 YGUPxCao0



自分は一体何をしているのだろうか。
律儀に礼を告げた娘を見やりながら、黒死牟という名の鬼は自問自答を繰り返す。
自身に何が起きたか、最期の光景は忘れる事など許さぬとばかりに、黒死牟の脳裏へ刻み込まれている。
鬼喰いの少年と自分の子孫から最後の抵抗を受け、二人の柱によって完膚なきまでにトドメを刺された。
いやそれだけでは無い、黒死牟にとっては忘れたくとも叶わない記憶。
侍とは程遠い化け物へと堕ちた自分自身、己の心を打ち砕くには十分過ぎるあの瞬間。
生きてきた何もかもが虚無でしかなかった鬼は地獄に落ちる、その筈だった。
なのに目を覚ました黒死牟を待ち受けていたのは地獄の閻魔による責め苦ではなく、冥界の魔王を名乗る異形から命じられた屠り合い。
さしもの黒死牟もすぐには事態が呑み込めず困惑していた所、目に映る光景は一変。
気が付けば夜の森へ放り出されていた。
まさかこれが地獄なのかと考えはしたが、ヒヤリとした空気も、草木の匂いも、生きていた頃と全く同じ。
信じられないが、自分は死者の蘇生という鬼の始祖にすら不可能である奇跡を身に受けたのか。
冥界の魔王の力に息を呑んだ時、聞こえて来たのは何もかが争う音。
近付いてみればこの手で殺した子孫、時透無一郎と近い年頃だろう娘が殺されかかっていた。
そうして戦闘に介入し今に至るのだが、黒死牟にとっては自分でやった事ながら理解出来ない。
確かに自分はこの場における具体的な方針を決めていない。
今からでも屠り合いに勝ち残る、それも一つの手。
と言うか取るべき選択肢などそれ以外にないはずと分かっていても、一度砕け散った心には一向に戦意が宿ってくれない。
あの終焉を味わって尚も優勝の可能性を考えた己の救いようの無さに、自嘲する気力すら無い。
だが、だからと言って何故名前も知らない人間の娘を助ける真似をしたのだろうか。
まさか今更になって、侍の真似事をする気なのか。
そうすればほんの少しでも、終ぞ手の届かなかった日輪に近付けるとでも期待しているとでも?
下らないと自分で考えた事へ嫌悪感を滲ませ、内心で吐き捨てる。

(ならば……何故だ……)

答えの出ない堂々巡りに苛まれながら、兄として生を受けた男は駆ける。
その腕に、姉として妹を救えなかった少女を抱えながら。


【環いろは@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)、ソウルジェム(穢れ:小〜中)、右肩負傷(ある程度回復済み)、左腕負傷(使い物にならない)、抱っこされてる
[装備]:クロスボウ(破損)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]:基本方針:殺し合いを止める。
1:今は大人しく運んでもらう。
2:軍服の男(大尉)を警戒。
[備考]
※参戦時期はファイナルシーズン終了後。
※ドッペルが使用可能かどうかは後続の書き手に任せます。

【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(中)、抱っこしてる
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
【思考・状況】:基本方針:分からない。
1:娘(いろは)を連れて戦場から離れる。何故私はこんな事をしている……?
[備考]
※参戦時期は死亡後。

【虚哭神去@鬼滅の刃】
支給品ではなく黒死牟が能力で生み出した刀。
刀身に複数の眼球と血管が浮かび上がった、異様な見た目をしている。
折られても即座に再生、長さを変えられる他、全身から生やす事も可能。


78 : ミカヅキ ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:27:39 YGUPxCao0



敵は闘争ではなく撤退を選んだ。
僅かに惜しいと感じつつも、そう後を引き摺るものでもない。
何せここは殺し合い。
他にもあの侍のような化け物がゴロゴロいるに違いないのだ。
ならソイツらと戦えばいいだけのこと。
生前最後の戦場となったロンドンに比べれば小ぢんまりとしているが、構うものか。

自分は殺し合いに乗った。
但しハデスの犬となって、願いを叶える為に駆け回る為ではない。
ここにいるかどうかは不明だが、自分が付き従うのは少佐だけなのだから。

殺し合う理由はたった一つ。
あの夜の再演を。ヘルシングのドラキュリーナが自分を討ち滅ぼしたように、同じく自分を殺せる者を求めるから。

戦って死ぬ。
望みはそれだけだ。


【大尉@HELLSING】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ、左腕欠損、再生中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:闘争の中で死ぬ。
1:参加者を探して殺し合う。
[備考]
※参戦時期は死亡後。


79 : ◆ytUSxp038U :2022/05/23(月) 01:28:14 YGUPxCao0
投下終了です。


80 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/23(月) 01:36:30 clAROUXA0
みなさん候補作の投下ありがとうございます!
投下します


81 : 泣き虫のヒーロー/大切なお姉ちゃんを追い掛けて ◆QUsdteUiKY :2022/05/23(月) 01:38:17 .dx7Hdb20
 紫の布を身に纏った骸骨達がが少女に迫る。
 カードゲームのモンスター――それが彼らの正体だ。名をワイトという。
 カタカタと不気味に口を震わせながら、嘲笑う。自分よりも弱小な存在を小馬鹿にする。

「ち、近寄らないでください……!」

 少女が必死に声を張り上げるが、彼らは聞く耳を持たない。むしろ自分よりも弱い者を見て喜んでいるようだった。

 そしてワイト達は襲い掛かり――

「おりゃあ!」

 ――リーゼント頭の少年が、少女に迫っていた骸骨を殴った。特攻服(トップク)を身に纏い、その背中には東京卍會と刺繍されている。
 思いっきり攻撃を受けて、ワイトが破壊される。所詮は攻撃力300、守備力200の弱小モンスター。多少は喧嘩慣れしていたら勝てる相手だ。
 だがそれは数が一体だけの場合の話。攻撃が弱いが集まると大変なのが、彼らの性質である。

「――ッ!」

 一体破壊したことで、どうしたというのだ。‎まるでそう言ってるかのようにカタカタと嘲笑うワイト達が、リーゼント頭の少年を取り囲む。

「こ、このままでは……」

 このままでは助けに来てくれた人が、殺されてしまう――。
 そんなことを考えオドオドする少女を無視して、ワイト達は襲い掛かる。

「一緒に逃げましょう!このままでは、あなたが……」

 少女が心配そうに声を掛ける。この大群から逃げられるはずもないのに。
 ――ワイト達を倒さなければここから逃げられないことを、少年は理解している。

「たしかにオレ一人じゃ、勝ち目は薄いかもしれねぇ。――それでも引けねぇ時だってあンだよ!」

 少年がワイトを殴り、破壊する。しかし数の差は圧倒的で、背後から他のワイトが羽交い締めにしてきた。
 だが――攻撃手段は何も拳だけじゃない。

「絶っっ対ぇ、負けねぇ!」

 羽交い締めにされた少年は前方から迫るワイトに、頭突きを食らわせる。圧倒的に不利な状況なのに、何故だか不思議と笑っていて――。
 それが少女には理解出来なかった。どうしてこんな状況で笑っているのか、わからなかった。

「オレは花垣武道の背中を追いかけてっからよぉ……」

 花垣武道――それは少年にとって、ヒーローだ。
 泣きながら踏ん張って、みんなを助けてくれる憧れの男。――泣き虫のヒーロー。

 少女は少年のことを何も知らない。
 しかし確たる意志で戦おうとする彼の姿は――少女の心を動かした。

「背中を追いかけてきた、ですか……」

 少女にも大切な人がいる。
 背中を追い掛けた――っていうと、何か違うけど。それでも大切なお姉ちゃんがいる。
 こんなに好きなことは、本人には内緒だけど――香風智乃は保登心愛のことが大切だ。なんだかんだで大好きだ。

 このままこの骸骨のせいで二度と会えなくなるなんて――そんなのは嫌だ。
 だから少女は――今、この場に居ない姉に向かって話し掛ける。

「私も……戦います……。見ててください、ココアさん。これが私の――変身、です……!」

 デイパックから取り出した白銀の剣を握り、その言葉を口にした瞬間――少女の服装は一瞬にして変化。身体に力が漲り、少年を羽交い締めにしていたワイトを斬る。

「女の子が気合い入れたんだ。オレも負けられねぇな!」

 解放されたリーゼント頭の少年が、ワイトを再び殴り始める。そして少女がワイトを斬る。
 状況は拮抗した。しかしワイトの群れはしつこく、なかなか終わりが見えない。

「ふあ〜あ……」

 建物の屋上から一部始終を眺めていた孤高の浮き雲が、欠伸をして立ち上がった。
 その鋭い瞳は、ワイト達を見据えている――。


82 : 泣き虫のヒーロー/大切なお姉ちゃんを追い掛けて ◆QUsdteUiKY :2022/05/23(月) 01:39:29 .dx7Hdb20

 〇

「緑たなびく並盛の〜♪」

 ――いきなり現れた黄色の鳥がどこかの学校の校歌を歌い始めた。

「大なく小なく並がいい〜♪」

 意味不明な言葉に少年と少女は困惑し、ワイト達は自分達よりも遥かに弱そうな存在を嘲笑う。そしてワイトの拳が黄色の鳥へ向かって放たれて――

 ガ シ ャ ン !
 ワイトの身体が崩れ落ちる。
 それも一体だけじゃない。一体、また一体と次々に破壊されていく。その光景はまるで肉食動物が小動物を一方的に咬み殺しているようでもあった。

「噛みごたえがなさすぎるね、君達」

 瞬く間にワイト達は全滅し、リーゼント頭の少年と青髪の少女。そして学ラン姿の少年だけがその場に残った。

「なに見てんの?」

 呆然とこちらを眺めている少年少女に対して、学ランの少年が声を掛ける。

「た、助かりました……。ありがとうございます」
「君たちを助けたつもりはないよ」

 感謝してきた少女に対して、学ラン姿の少年は雑に返事をする。彼は孤高の浮き雲だ。自分の判断で自由に行動したに過ぎない。単純に誇りを持って戦う小動物――沢田綱吉のような存在を二人も見つけたから、気になっただけだ。もちろん沢田綱吉に比べたら未熟だろうが、伸び代は感じられた。
 小動物は時として弱いばかりの生き物ではない――学ランの少年、雲雀恭弥が小動物の沢田綱吉から学んだことだ。

「……助けたつもりはないけど、興味はある。小動物なりの生き延び方を、君たちは知ってそうだからね」

 たとえ小動物でも、覚悟や誇りがあれば強くなれる。生き延びることが出来る。
 これは殺し合い。正真正銘の弱肉強食だ。――だからこそ、この小動物達の真価が試される。
 雲雀は気まぐれに彼らを助けた理由なんて、それだけに過ぎない。

「……もしかして主催をぶっ倒すために一緒に戦ってくれるって意味なのか?」
「主催者なんてどうでもいいよ。僕は僕のやりたいようになるだけだ。まあ……着いてくるなら勝手にするといいさ」

 雲雀の言葉に少年と少女は嬉しそうに顔を見合わせた。

「ありがとな。オレは千堂敦だ、よろしく」
「私はチノです。よろしくお願いします……!」

 二人は握手をすると、雲雀の方を同時に見る。
 雲雀はそれを無視して歩き始めると「雲雀恭弥」と雑に名前を教えた。

「チノと雲雀か。よろしくな!」
「はい。敦さん、雲雀さん……よろしくお願いします」

 二人は改めて挨拶をするが、雲雀は彼らを無視して我が道を進む。そんな孤高の浮き雲をチノと千堂は慌てて雲雀を追い掛けた


83 : 泣き虫のヒーロー/大切なお姉ちゃんを追い掛けて ◆QUsdteUiKY :2022/05/23(月) 01:39:40 Q58OQltI0
【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]: チノ(せんし)の剣@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:敦さんや雲雀さんと一緒にがんばります
1:ココアさんやみんなを探したいです
2:ティッピーはどこでしょうか……?
[備考]

【千堂敦@東京卍リベンジャーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:チノや雲雀と主催者を倒す。絶っっ対ぇ、負けねぇ!
1:もしかしてタケミチや他の東卍メンバーもいるのか?
2:小動物ってなんだ?
[備考]
少なくとも原作の250話、斑目獅音を倒して以降からの参戦

【雲雀恭弥@家庭教師ヒットマンREBORN!】
[状態]:健康
[装備]:雲のブレスレットVer.X@家庭教師ヒットマンREBORN!
[道具]:基本支給品、ヒバード@家庭教師ヒットマンREBORN!、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:僕はやりたいようにやるだけさ
1:香風智乃と千堂敦の小動物二匹には興味があるよ
2:沢田綱吉も参加してるかな?
[備考]
少なくともシモン編終了以降からの参戦

『NPC紹介』
【ワイト@遊戯王OCG】
通常モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200
どこにでも出てくるガイコツのおばけ。
攻撃は弱いが集まると大変。

『支給品紹介』
【チノ(せんし)の剣@きららファンタジア@きららファンタジア】
香風智乃に支給。チノが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すための白銀の剣。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する。変身中はきららファンタジアの『せんし』のチノの衣装に服装が変わる

【雲のブレスレットVer.X@家庭教師ヒットマンREBORN!】
雲雀恭弥に支給。ボンゴレ雲の守護者、雲雀の専用ギア。
アクセサリーはハリネズミと手錠があしらわれたブレスレット。
形態変化(カンピオ・フォルマ)することで改造長ラン姿になり、ボンゴレギア専用のトンファーを装備する。
トンファーは従来の仕込み機能に加え、後端からチェーンブレードが伸びる。
このチェーンブレードは雲属性の増殖によって長さの調整ができ、遠距離攻撃が可能になった。
その他、アラウディの手錠やロールの球針態など、ボンゴレ匣時の戦闘法も健在。
また、形態変化するとどういうわけかヒバードはリーゼントになる。


84 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/23(月) 01:40:08 dTOk9xzw0
投下終了です


85 : ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:50:29 xFH1OvWo0
投下します


86 : 夜に駆ける ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:51:05 xFH1OvWo0

一目見た時から「気に入らないヤツだ」と、DIOは思った。
相手もそう思ったのか、言葉を交わす間もなく視界に銀の閃光が奔る。
最強のスタンドたる「ザ・ワールド」の優れた動体視力を以ってしてもなお、閃光としか言い表せない脅威。
それが、DIOの首を刈る――瞬間よりも更に短い時間、時は止まる。

「やれやれ、東洋人は野蛮で困るな」

そう言って、DIOは軽く肩を竦めた。振り向く敵。顔立ちこそ東洋人の男に見えるが、病的に白く長い髪や鞭のように伸縮変形した両腕からして実性別などわかったものではない。
DIOは視覚ではなく感覚、第六感ともいうべきもので敵手の真髄に触れる。
こいつは人ではない。自分と同じ、人間を超越した存在――吸血鬼、あるいは鬼(オーガ)、悪魔(デーモン)などと形容されるに近いモノだと。

「ここは一つ、紳士的に行こう。私は、」

さらに言葉を続けようとしたDIOだが、向き直った東洋人の顔を見て閉口する。そいつは、一言で言えば怒り狂っていた。
眼尻は裂けんばかりに見開かれ、眼球は充血して真っ赤に染まり、こめかみには太い血管がどくどくと波打っている。
何より、その瞳。疾く死ねと言わんばかりに殺意を漲らせた、言葉も通じぬ怪物(モンスター)。
怪物は駄々っ子のように両腕を振り回す。その延長線上にあるもの、全てが微塵に砕かれていく。
見る間に瓦礫と化していく周囲の状況をよそに、DIOは静かに微笑んだ。



【吸血鬼】DIOと、【鬼の始祖】鬼舞辻無惨の、それが出会いだった。


87 : 夜に駆ける ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:51:50 xFH1OvWo0

「やれやれ……どうしたものか」

DIOは無人の車両の中で、一人呟く。
連続した最後の記憶として、自分はジョースターの一族と戦っていたはずだ。
花京院典明を殺し、ジャン=ピエール・ポルナレフを一蹴し、ジョセフ・ジョースターの血を吸い取り、そして空条承太郎と戦い。
敗れた、と認めるのは業腹だった。が、認めざるをえない。あの瞬間、たしかにDIOは追い詰められていた。
挙げ句、承太郎は足をヘシ折られ這い蹲るDIOを見下ろし、「ぬきな! どっちが素早いか試してみようぜ……というやつだぜ」と、クソのような「公平」な勝負を持ちかけてきた。
頭が爆散しそうなほどの屈辱を感じ、しかしそこから必ず逆襲してやると決意した瞬間に、DIOの視界は一変したのだった。

「ホンダ、ユウギ、イソノ、そしてハデス。ハデスはたしか冥界の王とかだったか?」

ぶつぶつと独り言ち、DIOは与えられた荷物を確認していく。理由は理解できないまでも、状況は受け入れられる。
DIOは、いやDIOだけでなくあの「決闘開始」の宣誓された場にいた者はみな、途方もなく大きな力に絡め取られ、弄ばれているのだろう。
それがなんであれ――たとえ神であったとして――良いだろう、今は従ってやろうではないか。
だが忘れるな。このDIOをコケにした者は誰であろうと許さない。イソノとかいう道化、ハデス神、この場にいるのなら空条承太郎も。
勝利し、支配する。そのたった一つの満足感を得るために、DIOは突き進むだけだ。

そして差し当たり、一つの指針も得られた。先ほど戦った東洋人の男だ。
あれは、人間ではない。おそらく吸血鬼でもないが、人を喰う者ではあるのだろう。奴の口からはDIOも慣れ親しんだ匂い、血の香りがした。そして人の肉の臭いも。

会話する気もなくいきなり牙を剥いてきた男を、DIOは当然死を以って償わせようとした。だができなかった。
時間を止める異能、最強のスタンドたるザ・ワールドを以ってして、致命打を与えられなかったのだ。
DIOの記憶では、承太郎との戦いの中で時を止める長さは10秒を越えた。はずだ。

だが、男の攻撃を前に時を止めたとき、明らかにDIOが意図するタイミングよりも早く時は動き出した。
体が覚えている感覚と、現実のズレ。それがためにもう一歩を踏み込むことができず、手ぬるい反撃しかできなかった。
もし一撃で仕留め切れなければ。男はすぐさま逆襲してくるだろう。実際にしてきた。
ザ・ワールドの拳で首をヘシ折られながらも、時が動き出した瞬間90度ズレた視界から当然のように伸長する腕、触手を振り回してきた。
動きのイニシアチブをDIOが握っていたからこそザ・ワールドで弾くことができたが、あれが万全の状態で放たれれば、時を止めねば防ぐのには手を焼くだろう。
それほどの威力、それほどの速度。そしてビデオの逆回しのように元の形状に戻っていく男の首。
あれは明らかにDIOの、吸血鬼の再生能力を凌駕している。DIOとて同じ芸当は可能だが、かかる時間は雲泥の差だ。
まるで「傷ついた瞬間に再生が始まっている」ような。


88 : 夜に駆ける ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:52:05 xFH1OvWo0

時を止めたザ・ワールドのラッシュで全身を男を粉々にすることは可能だろう。だが、それで死ななければ? いかに最強のスタンドとはいえ、不用意に近づき過ぎれば回避の余裕もなくなる。
さらに、DIOにザ・ワールドがあるように、ヤツにも奥の手がある可能性も否定出来ない。
そして頭も回る。何度か時を止める内に、怒りに満ちていた双眸は何がしか吟味する色を帯びていった。おそらく、時を止めたことに気付いたのだろう。その瞬間にDIOは撤退を即断した。
男の攻撃で崩壊寸前だった地下空間は、ザ・ワールドが軽く小突いただけで崩落した。身をくらますのは容易かった。

男の体の謎を解いて再生能力を無力化するか、一撃でチリひとつ残さず消し飛ばすか、あるいは弱点を見出すか。
殺し切れる手段を用意せねば、今はアレを殺せない。そして――DIOは一つ目も二つ目も選ぶ気はなかった。やるなら三つ目だ。
あの男の弱点を探しだし、効率的に破壊する。頭脳、魂、精神、そういった部分だけを除去する。そして、残ったボディをいただく。

ジョナサン・ジョースターのボディに不満があるわけではない。DIOには存在しないのだが、実家のような安息を感じるボディである。
だがそれ以上に、あの東洋人のボディは魅力的だった。
吸血鬼でもスタンドでもなく、だがそれ以上の破壊力と再生力を併せ持つ。
そこにこのDIOの頭脳とスタンドが――文字通り――乗れば、それこそが「神」を超える「王」の誕生と言っても過言ではない。
「神」のおわします座を「天国」とするならば、この決闘遊戯こそはそこへ至るための階段であろう。

屍を積み上げ、その背からなる階段を踏み鳴らし、DIOは天へと至るのだ。


【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:「神」を追い落とし、すべてを手に入れる「王」となる。
1:東洋人(鬼舞辻無惨、名前は知らない)の弱点を見つけ出し、ボディを奪う。
2:
[備考]
承太郎との最終決戦最終盤からの参戦。


89 : 夜に駆ける ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:52:40 xFH1OvWo0

一方、残された無惨は、当然怒り狂っていた。
何一つわからぬ。何一つ理解できぬ。ゆえにすべて叩き潰す。目に映る者、物、あらゆるすべてを。
止まってなどいられない。走り出さねばならない。無惨には時間がない。
鬼舞辻無惨の寿命はもうすぐ尽きる。それが感覚としてわかる。

無惨ら鬼を狩る気狂いの集団、鬼狩りとの最後の戦いで、無惨は無惨の元から離反したはぐれ鬼である珠世を取り込んだ。
その際に投与された薬がかつてないほど無惨を追い詰めた。凄まじい速度で加齢する薬。体の分裂を阻害する薬。他にも何かあるかもしれないが、無惨には未だにそれが何か掴めていない。
取り込んだはずの珠世の意識も自らの内に感じることができず、ただ一分一秒刻々と寿命が消し飛んでいくことだけが確信としてわかる。

薬を分解しようと試みたが、それには意識を自閉して「全精力を傾けるほど集中」しなければならないという感触を得た。
僅かでもその行為に手をかけるだけでひどく疲労し、さらに周囲への警戒も一切できなくなる。
数時間で済むか、十数時間かかるか。いずれにせよ長時間無防備を晒すことには変わりなく。
数百年ぶりに頭蓋に鳴り響く死の足音に焦燥する無惨でも、本田とかいう男の囀った言葉は耳に入っていた。
この場には無惨だけではなく多くの人間がいて、殺し合いを迫られている。
もし薬の分解中に一人でも接近を許せば、そいつがもし鬼狩りどもの刀を携えていれば、あるいは陽が射すまでに終わらなければ。結果を想像するだけで無惨は激昂し、手近な物を殴りつけて破壊した。

数分前に話しかけてきた黄金の髪の男のことを思う。人ではない、無惨が生んだ鬼とも違う、奇妙な空気を纏う男だった。
思考する間もなく無惨はそいつを殺そうとしたが、黄金男は謎の傀儡を――血鬼術とは当然別物だろう――駆使して、幾度も無惨の牙から逃れ続けた。
無惨が知覚できぬほどの速度で叩き込まれた傀儡の拳は、鬼狩りの刃ではないため無惨を滅することはない。はずだ。

だが、これも確信としてわかったのだが、「自分は鬼狩りの刃で頸を落とされなくとも死ぬ」。
頭蓋吹き飛ばされようが臓物抉られようが瞬時に再生は始まるのだが、その速度は無惨の感覚からすればかなり鈍麻していた。
全身を一気に砕かれれば? 七つの心臓と五つの脳を一挙にすべて砕かれれば、無惨は死ぬ。
そして、黄金男はそれができる敵であった。

男は無惨の神速と呼べる攻撃に一切被弾することなく、あまつさえ数度の反撃を打ち込んできた。
無惨は当初、己を超える疾さかと激怒したものの、何度か繰り返すうちにこれは違うと気付いた。
まったく同じなのだ。体の数カ所に叩き込まれる拳の痛み、その出がかりが。一秒一瞬のズレもなく、まさしく同時。
悠久の時を生きる鬼だからこそ、今まで考えもしなかった力。


90 : 夜に駆ける ◆IJm9UABvE6 :2022/05/23(月) 01:53:23 xFH1OvWo0

「時を……止める、術」

無惨がそれに気付いた瞬間、男も気付かれたことに気付いたのだろう。
無惨と黄金男は互いに油断ならぬ敵と認識し合い、またここでお互いの手の内を暴かぬまま戦い続けることは得策ではないとの思考も一致した。
もし男が時を止める力を現界まで行使し攻撃をしてきたら、身体各所に散らばった脳と心臓がすべて粉砕されるだろう。そうなれば無惨の敗北だ。
だが、それが正答であると男は知らない。ゆえに、退く気配。
無惨は男が撤退の動きを見せた時も追わなかった。時間を凍てつかせるあの力を攻略しなければ、無惨も黄金男を喰らうことはできない。

喰らう。そう、あの男を喰らえば。
瞬間瞬間に蒸発していく無惨の寿命を、残り僅かになりつつある「時」を、止めることが出来る。今も無惨を追い立てる死の狂騒曲も鳴り止むだろう。
道は見出だせた。鬼狩りと珠世に潰されかけた未来から離脱する一筋の光明を。

生きるために。死なないために。今、無惨はあえて苦難の道を選ぶ。
残り僅かな命を楽観に委ねるのではなく、より確実に生き永らえる道を。
「鬼の王」はもう一人の「吸血鬼の王」の頸を狙い、闇に溶けていった。



【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:誰であろうと殺す
1:金髪の男(DIO、名前は知らない)を喰い殺し、時を止める力を手に入れる。
2:鬼狩りがいたら殺す
[備考]
無限城決戦終盤からの参戦(寿命残り数日)。分裂不可。再生能力は今のところ健在。


91 : 名無しさん :2022/05/23(月) 01:54:36 xFH1OvWo0
投下終了です


92 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:49:02 lohv8krw0
虚獄書くつもりで把握してたらハマったんです。
投下します


93 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:49:32 lohv8krw0
目を覚ましすとそこは……

→『柔らかな砂と静かな波音がする海辺。自分はLucidの姿で立っていた』
『強めの風が頬を撫でるビルの上。自分は帰宅部部長の姿で立っていた』

ココに呼ばれる直前……より正確に言えば、
あの見知らぬ男の首が吹っ飛ぶ場面ではなく、それよりもう少し前。
最後にメビウスで見た光景を思い出そうとするが、上手くいかない。
他の皆も、、帰宅部や楽士の連中も呼ばれているのだろうか?
なんて考えていると、背後から足音がする。
ふり返ると、、

「まさかあなたも巻き込まれていたなんてね」

何時も通り、だがその上に確かな警戒心纏って琴乃先輩、柏葉琴乃がそこに居た。
それも仕方ない。今の自分の姿はLucid。
帰宅部とは敵対する存在だ。


94 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:49:55 lohv8krw0

「もう知ってると思うけど改めて、帰宅部の柏葉琴乃よ。
楽士のLucidさん、でいいのよね?」

自分は無言で頷いた。

「私はメビウスの輪を乱しかねない帰宅部の一員。
そしてアナタはそれをよしとしない側の一員。
でもこの場においては同じ鳥かごの鳥だと思わない?」

そう言って彼女は自身の首に巻かれた首輪を指さす。


95 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:50:14 lohv8krw0
「私は現実に、あなたはメビウスに帰りたい。
今この場に限ってなら、私達、いい関係を結べると思わない?」

そう言って右手を差し出す琴乃。
もし、Lucidに表情筋が有ったなら、何とも言えない笑みを浮かべていただろう。
まさか、この姿で彼女と肩を並べて戦う事になるなんて思わなかったのだ。
一瞬迷ったようにか、少し考えたように見えたかは分からないが、
Lucidは琴乃の手を取った。

「ありがとう。帰宅部、活動開始ね」


96 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:50:30 lohv8krw0
【呉越同舟帰宅部】
【Lucid@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ-】
[状態]:正常
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘から”帰宅”する
1:琴乃先輩と共に帰宅部として行動する
2:この姿はだいぶ怖がられそうだな……
[備考]
※この姿でいることに関して何らかの弊害が起きるかについては、
後の書き手様にお任せします。

【柏葉琴乃@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ-】
[状態]:正常
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘から”帰宅”する
1:Lucidと共に行動する。
2:彼の姿、特に顔はどうにかならないかしら?
[備考]
※特になし


97 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:51:26 lohv8krw0
同時刻、点対称にして真反対の位置にて




目を覚ましすとそこは……

『柔らかな砂と静かな波音がする海辺。自分はLucidの姿で立っていた』
→『強めの風が頬を撫でるビルの上。自分は帰宅部部長の姿で立っていた』

ココに呼ばれる直前……より正確に言えば、
あの見知らぬ男の首が吹っ飛ぶ場面ではなく、それよりもう少し前。
最後にメビウスで見た光景を思い出そうとするが、上手くいかない。
他の皆も、、帰宅部や楽士の連中も呼ばれているのだろうか?
なんて考えていると、背後から足音がする。
ふり返ると、、

「部長も、巻き込まれていたんですね」

何時も通り、確かな警戒心と生理的な嫌悪感を隠そうともせず、
天本彩音がそこに居た。


98 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:51:56 lohv8krw0
「部長がいるってことは、楽士も……あの変態どももいるんでしょうか?」

→『さあ、分からない』
『殺し合いをさせたいなら、その可能性も高い』

「そうですよね。名簿も、
なぜかしばらく見れないみたいなこと言ってましたし」

そう言って彼女は自身の首に巻かれた首輪を指先で少し持ち上げた。

「あの、すいません。自分で言うのもなんですけど、、私、もう限界近いんです」

そう言って震える体を鎮めるためか、右腕をさする彩音。
その顔は、今にも泣きそうでいながら、苦虫を噛み締めてるようにも見える表情だ。
恐らく最初に呼び出された時、周囲には男性の方が多かったんだろう。
この短い間に、彼女のストレス許容量はもう、
表面張力でギリギリ持っているに等しい状態らしかった。


99 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:52:16 lohv8krw0
「しかたない……」

『落ち着くまで待つよ』
→『次の放送まで別行動をとろう』

仲間同士では有るが、無理強いは出来ない。
下手すれば、冗談抜きで命が危ういレベルで、彼女の男嫌いは深刻だ。

「そうしてくれると助かります、、」

「じゃあまた、次の放送までにこの建物の一階に。
帰宅部、活動開始だ」

足早に下階に降りていく彼女を見送り、建物の中から誰かが出たのを確認すると、
彼も屋上を後にした。


100 : 正邪ダブルフェイス ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:52:41 lohv8krw0
【吉志舞高校帰宅部】
【主人公(男性)@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ-】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘から”帰宅”する
1:これkらどこに向かうか決める。
2:彩音とはしばらく別行動をとる。
3:第一回放送までにここに戻る。
[備考]
※特になし

【天本彩音@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ-】
[状態]:健康、パニック(中、時間経過で回復可能)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘から”帰宅”する
1:とりあえず気持ちを落ち着かせる。
2:なるべく男には会いたくない。
3:第一回放送までにここに戻る。
[備考]
※特になし


101 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/23(月) 19:53:15 lohv8krw0
投下完了です。


102 : ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:44:35 FisBlFxQ0
投下します。


103 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:45:26 FisBlFxQ0



「なるほどな〜〜」


 緑色の髪に緑色の瞳の少女がルールブックを確認する。
 【莫迦げている】、それがルールブックを見ながら彼女が抱いた最初の感情であった。

 彼女の世界にも【デュエル】という言葉はあった。
 だが、それはこのような殺し合いではない。
 彼女の世界のデュエルそれはヒュージと呼ばれる化け物との1対1での戦闘である。
 と言っても、それが戦場で重視され使われていたのは彼女の一つ上までの世代である。

(この首輪に使われている技術……百由がいたら解析とかは任せられたかもな)

 自身の首に手を掛ける。
 手にひんやりとした感覚と異物感が伝わっていく。
 いたら頼りにはなるが、出来ればいない方がいい友人のことを思い出す。
 【装着者の拘束】と【遠隔操作による爆発】をこの首輪サイズに収める技術。
 あのハ・デスと名乗る冥界の魔王が言っていた『この世にある無数の世界』という言葉から察すれば。
 このような技術が発達した世界もあるということが分かる。
 
(違う世界か……うーん、あまりピンとは来ないな)

 一先ず、深く考えるのは一旦やめておく。
 だが、考えるのは決してやめない。
 人間、考えるのをやめてしまえばそれでこそ終わりだ。
 そして、今は足りないものが多すぎる。
 
(まずはあの少年を探すか)

 最初のあの場であの首輪が爆発した少年『本田ヒロト』が死に間際に呼んだ少年。
 唯一あの場で声を発することが許されていた『遊戯』と呼ばれていた少年。
 彼ならばあのハ・デスについて何かを知っているかもしれない。
 
(『タンキエム』は流石に無いか……いや、あったところで人にCHARMを向けることは出来ないな)
 

 彼女――――『吉村・Thi・梅』は名門ガーデン百合ヶ丘女学校に所属しているリリィである。


 彼女は対ヒュージ用決戦兵器『CHARM』を操ることが出来るリリィと呼ばれる存在である。
 そして、リリィは人類を守る存在であり、人にCHARMを向ける――――ましてや人を殺すなどしてはならない。

 支給品を確認し、武器になりそうなものはあった。
 説明書も読み、使い方も理解したが、使う気にはなれなかった。
  
(あくまでも護身や威嚇用だな)

 こんなものでも一応装備はしておく。
 もしも万が一が他者と戦闘になった場合は覚悟を決めるしかなかった。
 
「さーて、行こうか」

 ようやく言葉を口に出す。 
 今まで首輪に盗聴器が仕込まれている可能性もなくはないと考えたのだ。
 だが、ここは気合を入れる意を込め、口に出しておく。


104 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:46:08 FisBlFxQ0

 決して足取りは軽くはない。 
 これから何が起こるかなど予測など出来ないことは分かっている。
 『幻想可視力(ファンタズム)』を持っていたら少しは見えたかもしれない。


 そして、一人




「――――ごきげんよう、お嬢さん」
「ごきげんよう」





 いきなり声を掛けられた。
 梅よりは明らかに年上。
 金髪に黒いセクシーなドレスの妙齢の女性。

 その手には黄金色の剣。

「申し遅れた、我が名は、クリスティーナ・モーガン。
 栄えある【王宮騎士団(NIGHTMARE)】の強く美しい副団長さまだよ」
「……吉村・Thi・梅だ」


 ――――そして、その剣から滴り落ちる赤いモノ。

 
「おんやぁ、お嬢さんにはこのクリスティーナさんがどう見えている?」
「いやぁ、こういうことはあまり口には出したくはないんだがな」

 その後ろには着物を着た男性が倒れていた。
 いや、正確には男性ではない――男性だったモノか。
 すでに胴体と首が切り取られ、血の水たまりの中にいた。

「――――ワタシをこんな下衆な殺し合いに乗った人間と見下すか?」
「そうだな」

 梅は臨戦態勢を咄嗟に取る。
 それとほぼ同時にクリスティーナの凶刃が梅目掛けて迫りくる。

 金属同士が衝突したような甲高い音が周囲に響き渡る。

「ほぉう、中々いい反応だ」 
「梅じゃなかったら真っ二つなっていたゾ?」
「減らず口だな、小娘」

 にやりと口角をあげて笑うクリスティーナ。
 それはまるで新しい玩具を見つけた少女のように。


105 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:47:28 FisBlFxQ0
 その剣は重く、速く、鋭い。
 明らかに対人戦闘に慣れたクリスティーナの剣劇。
 対して梅は防戦一方。
 得物の差がある。
 対人戦闘の経験の差もかなりある。
 
「お前、梅と話し合いをする気はないのか?」
「生憎ワタシは退屈だったんでな、このデュエルとやらは『退屈しのぎ』には丁度いい」
「退屈しのぎだと?」
「ああ、そうさ、何か文句でもあるか?」
「………………」

 ――――『ああ、今日は運が悪い。』と梅は思ったがもう遅い。

 出会ってしまったのだ。
 この殺し合いに乗った側の人間と。
 それもすでに一人殺している可能性が十分に高い。
 あくまでも可能性が高いだけ、確証は持てない。
 
 
「さて、そろそろ貴様との戯れも飽きてきたな」
(――何か来るのか?)


 クリスティーナの黄金色の剣から何か高濃度のマギのようなものを感じる。
 これは避けなければ命の危機と直感的に感じる。
 咄嗟にバックステップで距離を取る。





「―――――――乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)」 




  
 クリスティーナの剣から放たれた光が梅の身体を飲み込んだ。


106 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:48:08 FisBlFxQ0
 ◆  ◆  ◆


「ふぅん……」

 支給された剣を降ろし、クリスティーナは一息つく。
 彼女の持つ異能は『絶対攻撃、絶対防御』である。
 攻撃を放てば必ず命中し、相手の攻撃を避けられるというものだ。


 しかし、だ。

 あの少女には当たらなかった。


 一見無敵でチートのようにも思える『絶対攻撃、絶対防御』であるが穴は存在する。
 一つ、あくまでも相手の能力や行動、周囲の環境の膨大な情報を瞬時に計算する事によって成立するのだ。
 ならば、クリスティーナの頭の処理を追いつかない事象が起きたならばどうであろうか?
 
「あの小娘、まだ何かを隠していたか?」
 
 当たる直前に梅の身体が一瞬で消えたようにも見えた。
 今まで戦闘でずっと隠していたのははっきりわかった。

 あの小娘はただの女学生ではないことはわかった。。
 最初の挨拶でクリスティーナの放った微かな殺気に即座に気付いていたのだ。
 普通の女学生ならまず気付かない程度の殺気を察するほどの警戒することなどない。

 そして、あの身のこなしからどこかで戦闘訓練を受けている可能性が高いと察する。  
 ならば、ここには普通の人間などほぼいないと考えていいだろう。

 これにはクリスティーナのテンションが上がる。
 強者が多い分には彼女の楽しみが増えるのだから。

「まあいいだろう。ワタシはワタシが楽しめればそれでいい。
 にしても、あのハ・デスとやら随分と無粋なことをしてくれるな!」

 もう一つ、ロワ特有の制限である。
 クリスティーナは今の戦闘で全力を出したわけではない。
 ほんの僅かではあるが身体が重いようにも思えたが。
 それについてはこの緒戦で気付けたのは彼女にとっては重畳であろう。
 
「と、なればこの枷を外す必要があるようだな」

 クリスティーナの手にはすでに首輪があった。
 勿論、クリスティーナ自身の首輪ではない。

 この殺し合いの場で最初にクリスティーナが見つけた着物のイケメンの男は既に死んでいた。
 周囲には争った形跡はなく。
 口元からの吐血をしていたようにも見えた。
 恐らくは肺に何か重い病でもあったのであろうか? 知らんけども。
 ともかくすでに死人ならば問題ないだろう。
 ということで、首輪のサンプルは必要だ。
 きっと何かの役には立つであろう。


107 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:48:36 FisBlFxQ0
「これを解析して外せる人材がいればいい、いなければ……まあそのときはその時だ」

 全ては血湧き肉躍る闘争のため。
 この殺し合いという舞台は彼女の暇潰しには丁度良かった。
 ならば感謝をしなければならない、あのハ・デスとやらに。

 そして、最後には冥界の王と全力で殺し合うのも悪くはないだろう。

 今の彼女の一番の望みはハ・デスとの全力での殺し合いなのだから。

「さあ、宴の始まりだッ!!」

【クリスティーナ・モーガン@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:高揚、疲労(微小)
[装備]:約束された勝利の剣@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜5(確認済み)、首輪
[思考]
基本方針:殺し合いを楽しむ。
1:ハ・デスと全力で殺し合いたい。
2:強者との殺し合いたい。
3:あの小娘(梅)が生きてたらまた殺し合いたい。
4:首輪を外せる人材の確保いなければいないでも別にいい。
[備考]
※参戦時期は不明。(少なくとも主人公(ユウキ)と面識はある時期)


 ちなみに死んでいたイケメンの着物の男の名は『橘右京』。
 サムライスピリッツに出てくる居合の達人の美形キャラである。
 美人薄命という言葉があるように彼の身体は重い病を患っていた。
 元々身体がそんなに強くない彼であったためか、この環境の急激な変化には耐えられるわけなく。
 持病が悪化するのも無理がなかったのかもしれない。

【橘右京@サムライスピリッツ 死亡】


108 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:48:59 FisBlFxQ0

 ◆  ◆  ◆


「ふぅ……」

 梅は大きく息を吐き、整える。
 あの剣から出たビームが当たる直前に発動させた自身のレアスキル。

「……梅のレアスキルが『縮地』じゃなかったら絶対蒸発しているところだったゾ……」

 リリィには【レアスキル】と呼ばれている特殊能力がある。
 梅の持つ『縮地』もそのレアスキルの一つである。
 効果としては空間のベクトルを逆転換させて異常なスピードでの移動可能にするものである。

 常人ではまず視認は不可能の超スピードでの空間跳躍。
 それが可能なのが彼女である。

 初見ならばまずは何が起こったかもわからないであろう。
 原理が分からなければ、対処法もない。
 あの一瞬だけはクリスティーナを出し抜けたが、それも今回限りだろうか。

「本当に全く……もう」

 だが、これではっきりした。
 ここにはこんな殺し合いに乗った輩もここにはいる。
 しかも、こちらとの対話も一向にしようしないと来ている。

 この状況は非常にまずい。
 戦う力の無い者からしたら非常にまずい。

「あの少年は大丈夫かな……」 

 自分の心配よりも他人の心配をする。
 ――――吉村・Thi・梅という少女は優しいのだ。

 リリィたるもの、人命を奪うことなどしない。


「しっかし、この剣面白いな! こんな見た目なのに!」


 そして、どこか楽観的な思考な持ち主なのだ、
 そんな彼女に支給された剣は明らかに剣の形をしていなかった。

 だって、これでっけぇ人参なんだもの。


109 : 終わりには花束を 始まりには賛美歌を ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:49:29 FisBlFxQ0
【吉村・Thi・梅@アサルトリリィ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ニンジンブレード@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
基本方針:殺し合いから脱出。
1:あの遊戯という少年を探し、保護する。
2:首輪の解除法を探す。
3:殺し合いに乗った者やあのおばさん(クリスティーナ)には厳重に警戒する。
[備考]
※参戦時期はアニメ最終回以降


『支給品紹介』
約束された勝利の剣@Fate/stay nigh
セイバーが持つ剣。
アーサー王伝説でよく知られるかの有名な聖剣『エクスカリバー』である。


ニンジンブレード@グランブルーファンタジー
見た目は斬るよりも切られる方が似合うかもしれない。
しかし触れてみれば、想像以上に堅く鋭いことが分かる。
偏見を捨て、覚悟を持って構えてみた時、それは立派な剣となるのだ。


110 : ◆DJ6C0hLJds :2022/05/23(月) 20:49:51 FisBlFxQ0
投下終了です。


111 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/23(月) 21:28:51 2tilZHIE0
投下します


112 : ボーちゃんの川流れ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/23(月) 21:29:48 2tilZHIE0
木々が覆い茂る薄暗い森の中で、一人の少年が歩いていた。
少年の名は『ボーちゃん』、名前の通りぼーっとしているような顔つきではあるが
その瞳にはこの理不尽なデュエルに抗おうとする強い意志が込められている。

「今こそ……かすかべ防衛隊が……立ち上がる時……!」

ボーちゃんはかすかべ防衛隊として様々な難関を乗り越えてきた。
今は一人だが、他の仲間達がいれば同じように立ち上がるだろう。
まずやるべきことは、この森を抜けて共に殺し合いを打破する同士を見つける事だろう。
見た目によらずしっかりとした考えを持つボーちゃんは、すぐさま行動に出ていた。

「この川……深い……!!」

水の音がする方向へ向かったボーちゃんの第一声であった。
道中が川によって足止めされており先へ進めない。
水の勢いも強く、深いために泳いで突き進むには危険な川である。

「迂回して……進もう……」

川を渡るための橋を探すべく迂回しようとしたその時。
素早く動く小さな影の存在がボーちゃんに向かってくる。

「ボォウッッ!!?」

勢いよく背中を押されたボーちゃんの体は宙を舞い。
川の中へとドボン!と沈み込んだ。

「ごぼごぼっ!……あぶっ!あぶぅぅっ!」

川に流されながらもボーちゃんは必死に手を動かした。
水の中でもがき苦しみながらも川岸まで泳いだボーちゃんは
川の傍に生えた雑草に向かって、手を伸ばすと。
藁をもすがるような想いで掴んだ。

「ボーっ……ボーっ……」

川岸から顔を出したボーちゃんは呼吸を整えるべく酸素を吸い
川から脱出するべく体を起こそうとする。


113 : ボーちゃんの川流れ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/23(月) 21:30:51 2tilZHIE0
「ああっ!出てきたらダメですよ〜!」

すると何かがボーちゃんに向かって走ってくる。
ボーちゃんが声の聞こえた方向へ顔を上げると
そこには自分よりも年下であろう幼い少年が目の前に立っていた。

少年の名は『フグ田タラオ』

森の中でボーちゃんを見つけたタラオは
気配を殺してボーちゃんを追跡し、殺せるチャンスを伺っていたのだ。

「大人しく死んでく〜ださ〜い♪」

タラオは小憎たらしい顔をしており、神経を逆撫でさせるようなイラッとする喋り方をしながら
右足を上げて勢いよく、ボーちゃんの顔を踏みつけた。

「えいえいっ♪えいえいっ♪」
「やめて……やめ、てぇ……」

ボーちゃんは流されない様、雑草を必死に掴んで耐え続ける。
ニコニコな笑顔でボーちゃんを蹴り続けるタラオだったが
いつまでも死が見続けるボーちゃんの姿に段々と不機嫌になっていた。

「もう!しつこいですね〜。あっいいことを思い付いたですぅ♪」

近くに丁度いい重さの石を見つけたタラオは
両手を使って石を持ち上げると、ボーちゃんの頭に狙いを定めて
勢いよく石を投げ落とした。

「うんしょっ、うんしょっ、それ〜!!」
「ボッ!?」

石が直撃して鈍い音が響き渡る。
ボーちゃんの額が裂けて血が噴き出る。
雑草を掴んでいた手から力が抜け落ち、体が川の中に沈んでいく。
薄れゆく意識の中でボーちゃんの耳からは声が聞こえていた。

『ほっほ〜い!ボーちゃ〜ん!早く早くぅ〜!』

(しんちゃん……)

『ほら、さっさと行くぞ』

(風間くん……)

『今日はリアルおままごと始めるわよー!』
『ええ〜、またぁ……』
『何よ。何か文句でもある訳?』
『ひぃ〜!な、無いです!』

(ネネちゃん……マサオくん……)

かすかべ防衛隊のいつものメンバーがそこにいた。
確かにボーちゃんの目には見えていた。
自分を迎えに来たメンバー達が手を振って呼んでいる。

(待って、皆……今行く……)

ボーちゃんは走り出した。
仲間達がいる暖かい光の元へ。
それが彼が最期に見た光景であった。

【ボーちゃん@クレヨンしんちゃん 死亡】


114 : ボーちゃんの川流れ ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/23(月) 21:31:13 2tilZHIE0


「ふぅ〜、一息ですぅ〜♪」

その頃、ボーちゃんが川の中へ沈み込む様子を確認したタラオは笑顔で休憩を取っていた。
そう、笑っていたのだ……人を殺したというのに。
タラオは殺人に対する罪悪感は欠片も感じていなかったのである。
むしろ達成感を得ていたタラオはルンルン気分で来た道を戻っていた。

「あっ!あったです♪これは僕が有効に活用してあげますからね〜♪」

そう言いながらボーちゃんのディバッグを回収するタラオ。
ボーちゃんを突き飛ばした時に体から荷物が離れていたのを把握していた。
そうして中身から役に立ちそうな物だけを探して、奪って持って行った。

「それにしてもあのお兄さんはおマヌケさんでしたね〜。おかげで僕はとっても助かったですぅ♪」

タラオはこのデュエルにおいて他者の命を奪うのに何の躊躇も無かった。
なぜ、そんな残酷な事を平気で出来るかというと……。

(僕は家族にとって無くてはならない重要な存在なのです。
 考えても見てください。カツオ兄ちゃんは勉強もせず遊んでばかりいていつもお爺ちゃんに怒られている不良息子で
 ワカメお姉ちゃんはいつもパンツを見せびらかしている羞恥心の欠片も無い下品な淫売です。
 磯野家で優秀な子供は僕しか存在しないのです。だから僕は何をしてでも生き残るべきなのですぅ)

周囲に甘やかされて育ったのだろう。
あまりにも自己中心的で身勝手な思想に染まっている。
自分に都合の良い言い訳を並べて自己正当化しているのだ。

ゆとり教育の弊害で生まれたこの怪物は
決して自分の考えを改めようとはせず、反省もしないだろう。
ただ己の欲望のために周囲を害して生き続けるのだ。

【フグ田タラオ@サザエさん二次創作】
[状態]:健康
[装備]:無し、
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2〜6(確認済み)
[思考・状況]

基本:生き残るべきは僕なのですぅ♪
1:どんな手を使ってでも生き残るですぅ♪

2:僕は何も悪くないですぅ♪
[備考]

※性格が二次創作出典なので原作よりもクズな性格になっています。
※ボーちゃんの死体は川に流されました。
 どこまで流されたかは後続の書き手に任せます。


115 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/23(月) 21:31:45 2tilZHIE0
投下終了です


116 : 不滅の誠 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:46:03 H8aanBjI0
投下します


117 : 不滅の誠 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:47:49 H8aanBjI0
 溜息を吐きながら殺し合いの舞台を歩く、一人妙齢の女性。
 結んだ紅色の髪を揺らし、茶褐色の制服を着こなす姿は気品のある顔立ち。
 どこかの令嬢とも受け取れるような端麗な姿をしているが、
 実際に彼女は名家の御嬢様と言う肩書が存在している。
 なので、ある意味その認識は間違ってるものではないだろう。

「頭の痛い状況ですこと。」

 今の状況に溜息を吐きながら額に手を当てる。
 頭を悩ませる仕草の一挙手一投足、どれもが嫋やかに感じさせるものだ。
 彼女、此花寿々花は荒魂を祓う巫女『刀使』と呼ばれる仕事をしている。
 諸々の事情で療養していたが、今はハ・デスなる存在に殺し合いを強要された一参加者に過ぎない。

(少なくともこれは荒魂関連ではないことは分かりますが、一体……)

 タギツヒメと言った超常的な存在には縁はあるが、
 このような状況に追い込まれた経験は彼女にはない。
 人の悪意や悦楽と言ったものすら感じられる殺し合いは、
 タギツヒメが関与してることではないだろうことは十分に伺える。
 彼女が殺し合いに招くのであれば、まず筆頭は折神紫のほうだ。
 療養してる自分の存在を放り込む意味も薄いのだから。

「仕方ありませんわね。余り刀使が解決する事柄ではないのですが。」

 やれやれと言いたげに溜息を吐く。
 刀使は本来は荒魂専門の、所謂公務員のような立場であり、
 同時に荒魂以外の事件には関与してはならないように制定された。
 とは言え、この状況ではそうも言ってられないことは分かり切ったことだ。
 この状況が警察どころか、刀使であっても解決が容易でないのだから。
 刀使である以上御刀は必須。だから武器になるものはないかと、
 支給品を漁ってみれば出てきたものに彼女は一瞬思考が止まる。

「……ふざけたことをしてくれますわね、本当に。」

 出てきたものを握り締めると、彼女は憤りを隠せない。
 刀使は神力を引き出す為には御刀が必ず必要になるが、
 出てきたのは確かに刀である上に、それは紛れもなく御刀。
 自分が用いる九字兼定ではない。長さも少しばかりこちらが長い。
 しかし、その武器の姿には酷く見覚えのあるものだった。
 イチゴ大福ネコのストラップがなくともこれが何かはわかる。
 デフォルメされた兎のシールが貼られた鞘なんて、一振りしかいない。

「にっかり青江……」

 折神親衛隊の一人であり今は亡き仲間、燕結芽の御刀。
 命を落とした彼女を埋葬と言う名の処置を施した後、
 この御刀の行方がどうなったについては分からなかったが、
 こんな形でこの御刀と出会うとは全く思わなかった。
 こうして再会したことに関して、怒りがこみ上げてくる。
 生者を今もこうして弄び、死者である結芽の墓荒らしでもするかのような、
 人をあざ笑うかのようなその所業は、感情的な同僚を諫める彼女とて看過することはできない。

「冥界の魔王と仰いましたか。
 さしずめこれは自身の名の肩書き、
 それを証明の一端としたいのでしょう。
 ですがその私『達』への宣戦布告、後悔させてあげますわ。」

 御刀を抜いて、彼方を見ながら宣誓する。
 一筋縄ではいかない。それはたとえ折神紫であっても、
 嘗てタギツヒメと立ち回ったあの六人でも同じことだ。
 否、下手をすればあの時突入した六人よりも無謀だろう。
 此処には彼女達のような信頼できる仲間も、武装も何もない。
 あるのは嘗ての仲間が握っていた御刀、精々それぐらいだ。
 だからと言って諦めるようなら、長年同僚をライバル視などしていない。

「暫くの間借りますわよ、結芽。」

 一言断りながら御刀を抜いて写シ、迅移などをやってみると、
 自分が持つべき御刀でしかできないはずの能力の行使ができる。
 理屈は分からない。彼女は政治方面の仕事もこなしていたはいたが、
 この手のことに理解があるタイプの発想力はないため、考えるのはやめた。
 一先ず、普段の御刀とは違う為間合いや重さに慣れようと軽く素振りをする。
 練習試合と言った類で結芽と相対した都合、何度も戦った御刀ではあるものの。
 いざこうして使ってみると数センチ程度の差は勝手の違いが出て少しばかり振り回される。
 まるで、奔放な性格をした結芽のようだ。

「へー、結構な太刀筋じゃないの。」

「!」

 咄嗟に聞こえた声に思わず迅移で距離を取る。
 周囲に人がいるとは思っておらず、警戒心を強めていく。
 今のが不意打ちであれば、ただでは済まなかったのだから。

「あ、ごめんごめん。こっちは殺し合いする気ないから、気にせずどーぞ。」


118 : 不滅の誠 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:48:48 H8aanBjI0
 相手は彼女よりは年上ではあるだろう、黒スーツにコートを羽織った成人男性だ。
 ヘラヘラと笑いながらお構いなくと手を振っているものの、当然スルーなどできない。
 というより、ヘラヘラしてるくせに視線は此方を注意深く見て全く油断してない様子だ。
 仮に敵であっても、相手が無手の今斬りかかっても明確に仕留められるとは感じにくい。

(能ある鷹は爪を隠す。警戒を怠ると危険とみますが……)

 一方で不意打ちはできたであろうこの状況で、
 それをしてこないと言うことは相手は敵の可能性は薄い。
 結芽のように本気の相手と戦いたいから声をかけた、
 とかの可能性もあるので楽観視はしないでおく。

「貴方が殺し合いをしないのであれば、
 そんなことはせずに早急に協力を求めるのが定石かと。
 それとも、貴方は別に乗らないと言うわけではないとでも?」

「あー、そういうつもりはないんだ。
 殺し合いもするつもりはないんだが、ちょいと色々あってさ。
 言う前に一つ。おたくってオカルトとかファンタジーって信じる?」

「一応は、信じる側にはなるかと。」

 荒魂の存在が大分オカルトやファンタジーに足を突っ込んでいる。
 あれがどのような手段で意志を持てるのか、何故ノロができるのか。
 そういった存在は十分に、オカルトだなんだとそっち系の分類になるだろう。
 しかし、その返事が一体何を意味するのかは理解しかねるものだったが、
 すぐに分理解させられる。彼女が日本人であるならば、当然の反応で。

「んじゃ、名乗るとするかな。」










「俺は新選組の三番隊隊長、斎藤一。一ちゃん……は、なしでよろしく。」

「……はい?」

 笑顔と共に出された名前に、気の抜けた声で返してしまう。
 斎藤一と名乗った人物。最初は寿々花も何を言ってるのか分からなかったが、

「理解が追いつきませんわ。」

 話を聞いてみればもっと頭を抱えるような内容でしかない。
 サーヴァント、マスター、聖杯、人理、異聞帯(ロストベルト)。
 次から次へと飛び交う数々の固有名詞は彼女でも悩ませるものだ。
 しかも、今目の前にいる飄々とした彼があの歴史で名高い斎藤一なのかと。
 歴史オタクと言うわけではないにしても、イメージとは大分かけ離れている。

「ま、そりゃそうだろうね。別に無理に信じなくてもいいよ。
 生憎と、その名前の通りに色々言われるのは慣れてるわけだし。
 あ、一応神秘の秘匿? とかあるから、必要以上に言わないでねこれ。」

「荒唐無稽なことを言って信用を落とせば、
 後が困るでしょうから貴方はあの斎藤一本人でしょう……恐らく、
 と付け足さざるを得ないことは、申し訳ありませんが加えさせていただきますわ。」

 相変わらず飄々とした雰囲気なのでそのまま流す。
 歴史上の人物であるし彼と出会ったことはないので、
 一概に本人だと納得はしかねるが、こんなところで重度のコスプレイヤーとか、
 そんな人物がいると思う方があって欲しくないので一先ずそっちで納得する。
 彼が纏う雰囲気が常人のそれではないのも一応は信用した要因でもあるのだが。

「トジにアラダマねぇ……異聞帯の人間って言っても、
 地域的にあり得ないか。君日本人だしどうあっても交わらないよね。」

「私にそれを尋ねられても困るのですが。」

「だよねー。」

 異聞帯(ロストベルト)。
 剪定されてしまった別の人類史。
 カルデアが目指す(殺す)別の人類史。
 真っ先に思ったのはそっち側の人物かと思うも、
 ただ、斉藤の言う通り異聞帯は日本には存在しない。
 彼女が異聞帯の人間であることはまずありえないことだ。
 もし残ってる異聞帯が日本文化と融合してしまった場所だとか、
 特殊な微小特異点とかであれば話は別かもしれないが、それ以上は考えないことにした。
 そういうのはカルデアの人達や頭脳に長けたサーヴァントに頼るべき事柄であり、
 自称マイナー剣士と名乗る彼がするべき領分ではない。

「となると、もっと違う別の何かってとこかな。」

 特異点でも異聞帯とも違う、異星の神とも無関係な存在か。
 なんにせよ、今の斎藤一は汎人類史の側で召喚されてることだ。
 マスターやカルデアの職員がいた場合のことを想定しておきたい。
 ただでさえ過酷なのだから、いないでほしいのが本音ではあるが。

「それで、そっちはどうする? 胡散臭いマイナー剣士の同行とはお断りかい?」

「貴方がマイナーな剣士であれば、
 世の剣士の大半はマイナーになりますが……まあいいですわ。
 エリアが広すぎる以上、固まって動くのは得策ではないでしょうが、
 私は本来の力が取り戻せてない状況。此方からお誘いするつもりでした。」


119 : 不滅の誠 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:49:10 H8aanBjI0
 刀使の力は何故か九字兼定ではないのに行使できるが、
 本来の力よりも劣っている。本来以上の力は余り期待できない。
 もしも参加者にタギツヒメがいようものなら、まず確実に敗北する。
 あるいはそれに匹敵するだけの強者がいるならば猶更危険だ。
 自分の御刀が手に入るまでの間は、彼と行動するのが得策だろう。
 マスターがいないと言ってもサーヴァントならば常人よりも十分に強い。

「だったらよろしく頼むよ、此花さん。
 俺は斬ることと逃げること以外は期待しないでくれよ?」

「逃げる、と言ういい方は余り好みませんわ。
 戦略的撤退、生き延びることもまた役割の一つかと。
 貴方の場合移り気のある人間、と呼ぶのは失礼でしょうし。」

 斎藤一は新選組で最も長生きした男だ。
 世渡り上手、と言う言い方は彼には失礼だろうが、
 戊辰戦争を筆頭に死を回避し、当時としては長寿な七十歳以上も生きながらえた。
 完全に本物かどうかは疑わしくは思うが、そうであれば彼の優れた判断能力は頼れる部分だ。

「そう言われると照れくさいなあ。
 つっても、そんときは此花さんが逃げ優先で。
 俺は影法師。過去の亡霊みたいなもんなんでね。
 だからと言って簡単に死に急ぐつもりはないけども。
 マスターちゃんとかいたら、もっと死ぬわけにはいかないんで。」

「そういうのであれば……ところで、貴方は刀はありませんの?」

 斎藤一であるのならば、
 刀の一本ぐらいあってもいいはずだが、
 どうも無手の状態で少しばかり訝る。

「あるけど使いたくないんだよねぇ。これなんだけど───」

「ッ!」

 そう言って支給品の中から出てきたのは赤黒い鞘の刀。
 彼が少しだけ鞘から抜いた瞬間、怖気が走り思わず距離を取って御刀を抜く。

「気付いただろ? これは誰かが使ってた妖刀さ。
 使う奴にも降りかかる呪い付きでね。使いたくないでしょ? これ。」

「……失礼しましたわ。」

 彼はサーヴァント、常人を超えた存在だ。
 使えば鬼に金棒と言ったものかもしれない。
 一方でデメリットも十分に備わっている代物。
 どれだけ戦うのか分からない中、そんなもの使う気にはなれないのは、
 ノロを受け入れた寿々花も理解していることであり、すぐに御刀を収める。

「そういうことで俺は現在殴る蹴るしかできないんだわ。
 そっちに刀はない? 二本あれば最高なんだけども……」

「残念ながらありませんわ。そしてこの御刀もいわば形見。
 貴方に貸すことについては、状況次第とさせてもらいますわ。」

「残念、って言いたいがそんな大事なものじゃ、
 こっちだって進んで使いたいって思わないから安心しなって。
 ただ、マジでやばくなったら流石に借りるからそこは割り切ってくれる?」

「ええ、そこはお願いしますわ。」

「じゃ、一先ず適当に放浪しますか。」

 話もひと段落付いて、二人は動くこととする。
 此処からは会話に費やした時間を取り戻すように、
 迅移とサーヴァントのスペックを以って素早く動き出す。
 力が劣ってると言えども、迅移の速度についていけている。
 それだけで彼の言っていた英霊の存在は本物であるという証明には足りうるものだ。
 訝っていた自分が軽く馬鹿らしく感じてしまう。

(それにしても新選組……これも因果かしら。)

 斎藤一は元々暗部での仕事が多いから他にも不明なことも多い。
 流派も、出自も不明。謎の多い人物として紹介されることもザラで、
 創作物においては色んなトンデモ説を使った話も存在してる。
 ただ数少ない彼と言う人物に対してわかることとして、
 彼の流派はともかくとして、彼が属した新選組の流派である天然理心流は、
 燕芽の流派と同じでもあるのだから。

【此花寿々花@刀使ノ巫女】
[状態]:主催に対する怒り
[装備]:にっかり青江@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(刀はない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗りませんが、敵を斬らないつもりはありませんわ。
1:斎藤一と行動する。

[備考]
※参戦時期は真希が独断行動中。
 アニメか刻みし一閃の燈火かは現時点では不明。
 後者であった場合、結芽救出の旨はまだ伝えられてません。
※御刀は九字兼定ではありませんが刀使の力は行使可能です。
 ただし本来の力よりも落ちてます。


120 : 不滅の誠 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:49:29 H8aanBjI0
【斎藤一@Fate/Grand Order】
[状態]:マスター不在によるステータス低下
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(刀はない)、アズサの妖刀@グランブルーファンタジー
[思考・状況]基本方針:新選組らしくやりますよって。
1:マスターちゃん達いる? いない方がいいんだけど。
2:此花ちゃんと暫く行動してみる。
3:最悪妖刀に頼るしかないのはいやだねぇ。

[備考]
※参戦時期は少なくともノウム・カルデア(二部三章)完成以降、
 かつカルデアに召喚された斎藤一です。
※マスターが不在の為ステータスが低下しています。
 契約次第でステータスが上下しますが、令呪がつくかは不明です

【にっかり青江@刀使ノ巫女】
此花寿々花に支給。元々は燕結芽が用いていた御刀。
珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀で折れず錆びない。
御刀に選ばれた者は刀使として写シなどの能力が使用できるが、
首輪の影響か選ばれてなくとも刀使であれば能力が行使できる。
元々は鞘にイチゴ大福ネコのストラップがあったが、
これは彼女の同僚が形見として持ち歩いている為ない。
ただ、鞘には可愛らしい兎のシールが貼られてる。

【アズサの妖刀@グランブルーファンタジー】
斎藤一に支給。嘗てアズサがしゃれこうべが転がる廃村で手にした妖刀。
星の力を喰らったことで斬った相手を老若の呪い、要するに幼くすることができる。
薄皮一枚程度でも斬れば二十代の女性を子供に子供に変える程度には若返るが、
若返りは一個人に対して一度きりで、どの程度若返るか不明。個人差はあるかも。
妖刀であるため使用者の肉体を蝕み出血、視力低下など何が起きるかは分からない。
妖刀が砕かれれば呪いの進行は止まり、斬られた相手も元に戻る。


121 : ◆EPyDv9DKJs :2022/05/23(月) 21:49:58 H8aanBjI0
投下終了です


122 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/24(火) 00:38:29 KxOxXzGc0
投下します


123 : きららの名を知る者来たれ! ◆NIKUcB1AGw :2022/05/24(火) 00:39:34 KxOxXzGc0
宇治松千夜は、困惑していた。

順当にいけば、彼女も殺し合いという状況におびえたり友人一同を心配したりといったよくある反応を見せていたのだろう。
だが、そうはならなかった。
会場に飛ばされた直後、異様な物体が目の前に現れたからだ。
それは、和を感じさせる壺だった。
だがどう見ても、普通の壺ではなかった。
その壺には、手足が生えていた。
そして千夜はそこまで気づいていないが、口の部分に首輪がはめ込まれている。
どうやらこの壺も、参加者であるらしい。

(えーと……。これは、前衛芸術?
 それとも、ロボットか何かなのかしら?)

独特のセンスを持っている千夜だが、それでもこの物体を受け入れるのは難しかったらしい。
棒立ちでどう反応したらいいか頭を悩ませている千夜に対し、壺が先に動く。
壺が取った行動は、手にしたマラカスを千夜に投げつけるというものだった。

「えっ……? きゃっ!」

思考がついて行かずその行動をただ見ていた千夜だったが、マラカスが肩に当たるとさすがに悲鳴をあげる。
一撃でどうにかなるような攻撃ではないが、かといって決してこけおどしではない。
頭にでも当たれば、命に関わる可能性もある。
ここに来てようやく、千夜は目の前の壺が自分に敵意を抱いていることを理解する。

(ど、どうしましょう……。武器は……あるかもしれないけど、確認してる余裕はないし……。
 逃げるべきかしら? あんまり足は速そうじゃないし)

千夜がそう判断し、逃げだそうとした直後。

「いやああああああ!!」

絶叫と共に、赤いバイクがその場に突っ込んできた。
バイクは壺に激突して木っ端微塵に砕き、その衝撃で横転した。

「……ええー?」

まさかの展開に、また思考停止寸前に陥る千夜であった。


◆ ◆ ◆


「いやー、驚かせてもうてすまんなあ。
 友達の真似して動かしてみたはいいものの、いきなりスピード出てしもうてなあ」

頭にできたこぶを撫でながら、主張の強い眉毛がチャームポイントの少女が謝罪の言葉を口にする。

「本気で死ぬかと思った……」

その後ろでは、長い黒髪の少女が真っ青な顔で呟く。

彼女たちは、犬山あおいと秋山澪。
千夜に語った話によると二人は殺し合いが始まった際にすぐそばに配置され、共に行動することにしたのだという。
しかしあおいに支給されたバイクを、彼女が適当に動かした結果暴走。
後ろに乗っていた澪もろとも、猛スピードで走り出す羽目になってしまったらしい。

「少し位置がずれてたら、私が轢かれていたのかしら……」
「ごめん、本当にごめん」
「堪忍なー」

真剣な顔で頭を下げる澪に対し、あおいは柔らかな笑顔を浮かべたままでいまいち真剣味が感じられない。

「犬山! おまえもちゃんと謝れ!」
「えー、謝ってるやん」
「笑いながら謝ったって、誠意が伝わらないだろ!」
「まあまあ」

語気が強くなる澪を、千夜がなだめる。

「じゃあ、こういうのはどうかしら。
 許す代わりに、私も仲間に入れてくれない?」
「え、いいのか、それで。
 むしろ、私たちの方こそ仲間になってほしいと頼むべきなのに」
「ええ、いいわ」
「もちろん、オッケーやで。
 よろしく頼むな、宇治松ちゃん。
 ……なんか宇治松ちゃんって、フルネームで呼び捨てにしてるみたいやな」
「だったら、千夜ちゃんって呼んで?
 友達もそう呼ぶし」
「了解や、千夜ちゃん!」
「おまえたち……。まあ、いいけど……」

殺し合いの場とは思えないほど緊張感のない千夜とあおいの会話に、澪はため息を漏らす。

「でも、3人やとちょっと困るなあ」
「何がだ?」
「バイクに3人乗るのは、さすがに無理やろ」
「まだ乗る気だったのか!?」


124 : きららの名を知る者来たれ! ◆NIKUcB1AGw :2022/05/24(火) 00:40:33 KxOxXzGc0


【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】
[状態]右肩打撲
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:友人たちが心配
[備考]
参戦時期は高2進級後。


【犬山あおい@ゆるキャン△】
[状態]ダメージ(小)
[装備]エンヤライドン@暴太郎戦隊ドンブラザーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:友人たちが心配
[備考]
参戦時期はクリキャン以降。


【秋山澪@けいおん!】
[状態]ダメージ(小)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:軽音部メンバーが心配
2:大丈夫か、こいつら……
[備考]
参戦時期は高3進級後。


【エンヤライドン@暴太郎戦隊ドンブラザーズ】
ドンモモタロウの専用バイク。
前方に装備されたアバターシールドにより、高い防御力を誇る。
ジュランティラノと変形合体して「ドンゼンカイオー」になれるが、この機能は制限により封印されている。


【宇治チャチャチャ@南国少年パプワくん(SFC版) 死亡】
※宇治チャチャチャの首輪とデイパックが、周辺に放置されています。


125 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/24(火) 00:41:33 KxOxXzGc0
投下終了です


126 : ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 05:32:10 HBvrKEtc0
投下します


127 : だいじなもの ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 05:36:19 HBvrKEtc0
「えーっと、とりあえず」

「また違うところに来ちゃった、ってことでいいのかな……?」

 紺と白で構成された落ち着いた隊服が、朱のマフラーを目立たせる。まるで極東の忍のような格好をした少女、ショウは、そうつぶやくと困ったように少し笑った。

 彼女はポケモンの生態を調べ、図鑑を完成させるため、ヒスイを西へ東へと走り回っており、今はフィールドワークを終えてコトブキムラへ帰るところであった。……のだが、たどり着いたのはコトブキムラではない、よくわからない場所。いたのはこれまたよくわからないいろんな格好をした人たちと、

「モンスター……」

 空を飛ぶカマキリ、鎧を着た隻眼の大熊、血のように赤い目を光らせる狂犬……。モンスターボールを投げても反応はないし、意思疎通もできそうにないそれらは、ポケモンというよりは、はっきりとモンスターと言ってしまったほうがいいだろう。
 ショウがそれらを見てまた違う場所に転移してしまったのだと理解するまでに、時間はかからなかった。

「さて、これから、どうしようかな」

 二度目の転移。ゆえに飲み込みは早いが、心配がないわけではない。一度目はラベン博士やテルを初めとするコトブキムラの面々が迎え入れてくれたし、自分についてきてくれるポケモンもいた。だが今回はかなり状況が違う。

『本田くんーーーー!』

 本田ヒロトと呼ばれた少年の頭と身体が離れる光景が、友人だろう少年の絶叫が、脳内を過り、びくりと身体が震える。
 『デュエル』とあのサングラスのおじさんは言った。ポケモンバトルも人同士のデュエルの手段として用いられることがあるが、開始時のあの光景を思い返すに、今回デュエルと呼ばれているそれの凄惨さはポケモンバトルの比ではないのだろう。そんなものに参加させられるような人たちが、今までショウに接してくれた人たちのように優しいとは限らない。
 ひとりだと非力で、逃げ回ることしかできない。だからこそ、状況と協力できそうな人をよく見極める必要がある。

「とにかく、ここだとモンスターから逃げるだけで終わっちゃうし、誰か変な人が来ちゃうかもしれないから……。よし! 何か安心して立てこもれるところを探そう!」

「ヒスイ地方へ帰るためにっ!」

 ずきり。

「……?」

 ヒスイで鍛えられ、足にだけは自信があった。帰るために、今は進む。一瞬、どうしてか胸が痛んだが、すぐに気を取り直すと、ショウは大きなデイパックを背負って立ち上がり、ふんす! と意気込んで野兎のように駆けていく。

 その先に何が待っているかも知らずに。


128 : だいじなもの ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 05:40:41 HBvrKEtc0
「ここは……?」

 モンスターの攻撃を持ち前の逃げ足と回避で華麗に躱しながら、あてもなく走り続けていたショウの足が、突然止まり、顔は驚きでいっぱいになる。

 見えたのは、4階建てくらいの、コンクリートでできた大きな建物。上部には何も映っていない大きなテレビモニターがついており、それを黒い枠と柱が支えている。上の方になればなるほど横に広くなる、どう支えているのか不思議なその建物を、ショウは知っている。看板を見なくてもわかってしまう。

 ヒスイに来る前、ショウがいた場所、そこに住む人ならみんな名前を知っている、とても有名なテレビ局。

「テレビコトブキ……」

 罠かもしれない。誰かいるかもしれない。そんな考えはすっかり消え失せて、ショウの足はテレビコトブキへと向かう。

「社会科見学以来だな」

 内装はそのときに見たものと特に変わりない。
 入ってまず正面に見えるのは受付。いつも女の人が立っていて、ここでくじの結果を教えてくれたりもする。そこから左を見れば、ポケモンバトルができる広めのスペースがあり、右を見れば、ソファがふたつとテーブルがひとつ、そしてその奥にさらにテレビがある。

『雪が 見たい…… だから キッサキシティ』

『3速! 4速! ギアチェンジ!
 最新型 じてんしゃの お求めは サイクルショップ 『自転車人力』』

『今日は トバリデパート 嬉しいが ある 場所』

『ちょっと ニンマリ 新しい ポケッチ アプリ!
 お求めは コトブキシティ ポケッチカンパニー まで!』

『世界が 違う ホテルグランドレイク』

 テレビからは、今はCMの時間なのか、昔から変わらないお馴染みのCMが繰り返し流れ続けている。

「懐かしいな。フタバはキッサキほど積もらないから、積もったときが嬉しくて、ジュンたちと遊んで……」

「自転車の練習、上手くこげなくて転けまくったな」

「デパートで買ったピッピにんぎょう、まだあったっけ?」

「初めてピンクのポケッチ買ってもらったときは、友達に自慢して回ったなあ。私が一番乗りだったんだよねっ!」

「わあ、グランドレイク、CMで見るだけでもすごいなあ! そういや今度行こうねって話してたな。けど結局行けなくて……」

「……懐かしいなあ」

 ぽたり。

「あれ」

 目から、何かが零れ落ちる。

「あはは、ダメだなあ、私」

 零れ落ちたのは、雫。

「今は、今はヒスイで頑張らないといけないのに」

 それも、ただの雫ではなく、

「ヒスイに、帰らないといけないのに」

 ひとつ落ちればキリがなく、

「あは、あはは、私、わたし……」

 悲しみに合わせては流れ落ちる、

「ぁ、ぁあ……うあぁぁあぁ……!」

 涙──。


129 : だいじなもの ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 05:42:59 HBvrKEtc0
 忘れたフリをしていた。

 ヒスイに帰る。帰って、ポケモン図鑑を埋めるためにヒスイの地を走って、登って。そして帰ってきたら、コトブキムラのみんなに迎えてもらう。それが私の幸せで、生きる道。
 だってそう思わないと悲しいから。
 そう思わないと立っていられないから。
 そう思わないと走っていられないから。
 だって、

「いきなり、つれてこられて」

「全てのポケモンに出会えって」

「ヒスイのみんなが優しくて、私も頑張って」

「痛かったけど、怖かったけど、キングやクイーンを鎮めて」

「たくさんポケモンつかまえて」

「それは全部、シンオウに帰るためで」

「シンオウにかえるためにこんなにがんばってきたのに」

「それがいちばんのちかみちってしんじてたのに」

 説明書には書いてあった。「最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。」と。
 デュエルキングになれば、ヒスイ地方に戻らなくても、直接シンオウ地方に戻れるじゃないか、そう思うだろう。
 だが、ショウにとって、これはそういう問題ではなかった。
 彼女は、ヒスイのために動くことが、ヒスイのポケモンと触れることが帰る術だと思って今まで頑張ってきた。
 バサギリ、ドレディア、ウィンディ、マルマイン、クレベース、そして……。あんなに大きなモンスターに直接襲われるなんて初めてだった。
 それでも頑張った。必死に頑張った。辛いときがあっても、周りの人が、厳しい気候を受け止めて成長するヒスイの大地のように優しく受け入れてくれた。いなくなるのは寂しいけど、でもショウはいつかきっと故郷へと帰れるよと。だから泥だらけになっても走り回れた。走り回ってきた。
 だが、その結果訪れたものはこれだ。
 ある日突然こうなって、ある日突然近道が示されるのなら、今まで無理して頑張らなくてもよかったんじゃないか?
 痛くて、痛くて、熱くて、痺れて、冷たい、あの辛く苦しい想いは一体なんだったんだ? 一体なんのためにあったんだ?
 そもそも、これは近道なのか?
 周りからのバックアップやポケモンは強くても、彼女自身は非力だ。こんなの、近道に見えて遠回りさせられただけじゃないのか? あんなに泣きながら頑張ったのに? どうして?

「わたしが、なにをしたっていうの……!」

 そういうこともあるよね。

 そんな言葉で割り切れるほど、ショウは器用じゃない。むしろ、今までのヒスイでの努力は無駄で、こんな神の采配でどうにでもなってしまうんだよと、突きつけられているように思ってしまう。
 彼女はどうしようもなく不器用で、優しくて、

 どうしようもなく物事の重さを理解できてしまう。

「かえりたいよぉ……」

 不確かな少女の願いは、テレビの笑い声にかき消される。
 だいじなものが、砕ける音がした。

【ショウ(女主人公)@Pokémon LEGENDS アルセウス】
[状態]:パニック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
もう私、どうしたらいいの……?
基本方針:わからない
[備考]
参戦時期はクリア後、クリア後ストーリー攻略前


【NPC紹介】
フライングマンティス@遊戯王OCG
風属性 レベル4 昆虫族 ATK/1500 DEF/800
飛行能力を持ったカマキリ。昆虫が大好物。

剣闘獣アンダル@遊戯王OCG
地属性 レベル4 獣戦士族 ATK/1900 DEF/1500
高い攻撃力で敵を追い詰める、隻眼の戦闘グマ。恐るべきスピードと重さを誇る自慢のパンチを受けて倒れぬものはいない。

暗黒の狂犬@遊戯王OCG
闇属性 レベル4 獣族 ATK/1900 DEF/1400
かつては公園で遊ぶ普通の犬だったが、暗黒の力により凶暴化してしまった。


130 : ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 05:43:43 HBvrKEtc0
投下終了です


131 : ◆ubA0xF9sfU :2022/05/24(火) 09:35:09 HBvrKEtc0
>>129
生やした施設の紹介を忘れていました、すみません

テレビコトブキ@ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド/シャイニングパール

コトブキシティ北側にある大きな地方テレビ局
外観:4階建てのコンクリビルで、外には大きなモニター(動いていない)が設置されている
内装:1階→正面に受付カウンター、右手にソファとテーブル、その少し奥にテレビ(ついており、ゲーム内で流れているのと同じテレビ番組、CMが流れている)
   2階〜3階→広いスタジオ 撮影用機材多数
   4階→局長の部屋 テーブルや椅子が多い
   各階の1番右奥に階段とエレベーターがある


132 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:18:50 t.asiczg0
皆様、投下乙です
私も2作品ほど投下させていただきます。

こちらは以前、エロトラロワに投下したものを一部手直ししたものになります。


133 : 小さき英雄、『英雄たちの父』と出会う ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:19:50 t.asiczg0
とある森の中で、一人の少女が叫んでいた。

「ハ・デス!アタシは絶対に、あんたの言いなりにはならない!この戦いを止めてみせる!」

その少女の名前は、南条光。

ヒーローにあこがれ、また人々の笑顔を何よりも愛する少女である。

その彼女が、怒りに燃えていた。

この殺し合いを始めたものに、怒りを燃やしていたのだ。

「…そういえばデイバッグというものが配られていたな。まずはそれを確認しよう。」

そうやってひとしきり叫んだからなのか少し落ち着きを取り戻した彼女は、自分に配られた支給品を確認することにした。

しかし支給品を確認しようとしたその時、突如として自分と同じように何かを叫んでいる男の声が聞こえてきた。

「……何だ、今の声は…?それにさっきの声、どこかで聞き覚えのあるような……?」

彼女はその声の主が何者なのか、そして自分と同じように主催者への怒りを燃やしている者なのかを確認するために支給品の確認を後回しにして、声の聞こえた場所へと向かっていった。

そしてそこで見たものとは……

------------------------
一方、南条とは別の場所……

「ハッハッハッハッハ!あの悪魔も、なかなかやるなぁ、オイ!」

そこには左手で顔を覆いながら笑い続けている、奇妙な姿をした大男がいた。

その男の右半身はまるでギリシャ彫刻のような、端正な男性の姿をしていた。

それに対し左半身は鋭い牙と無数のとげが生えた、まるで悪魔を思わせる姿をしていた。

更に右手首には青白い稲妻を思わせる刃が、左手首には巨大な漆黒の鎌が生えていたのだ。

それはまさしく、『悪魔』というべき姿をした男だった。

「確かに余はティタノマキアに勝利して神々の王となり、またギガントマキアに備えて数え切れぬほどの英雄を生み出した……それを考えれば、このような催しに呼ぶのも納得がいくものだなぁ!」

その男は、興奮していた。

それはほかならぬ、自分がこのような催しに呼ばれたことについてだった。

彼は、自分が今までに残してきた功績を踏まえて自分をこのような催しに呼んだのだと結論付けていた。

「しかし……余に力を示すでもなく、このような首輪を付けさせて参加させたこと……それが気に入らん!」
「余に助力を申し出るならば……それ相応の誠意を見せるべきだろう、オイ!」

しかし彼は同時に憤っていた。

それは自分を勝手にこのような場に呼んだことについてだった。

「そしてもう一つ、気に入らんことがある……それは貴様が余の兄上、『ハデス』の名を騙っているという事だ!!」
「故に余の兄上の名を騙る痴れ者よ!貴様はこの、『魔神ゼウス』が直々に裁きを下してやろうぞ!」

そして彼は天を仰ぎながら、どこかで自分を見ているであろう主催者たちへと宣戦布告をしたのだった。

彼の名は『魔神ゼウス』、とある異界にて【母たち】と呼ばれる存在の意にそぐわなかったことにより封印された『悪魔』である。


134 : 小さき英雄、『英雄たちの父』と出会う ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:20:16 t.asiczg0
「……さて、そこにいるヤツ…覗き見とはいい趣味だな!その身を雷に焼かれたくなければ、今すぐ余の前に出てくるがよい!」

そうやって彼が宣戦布告を終わらせた後、自分の姿を覗き見ている南条光に向かってそう言ったのだ。

「……ああ、それは済まなかった…突然大きな声が聞こえてきたから、何事かと思ってきたんだ」
「アタシは南条光!ちびっこに夢を与える"ヒーロー"に憧れ、みんなに夢と勇気を与えることを願う"人間"だっ!!」

それに対して彼女は、少し申し訳なさそうな顔をしながら彼の前に姿を現し、自分の名とその信念を名乗った。

「ほう……『英雄(ヒーロー)』に憧れるか!ニンゲンの小娘にしては見所のあるやつだなぁ、オイ!」

そしてゼウスは、南条光のその名乗りを痛く気に入ったらしく笑いながら答えるのだった。

その後、ゼウスがひとしきり笑い終えたことを確認した彼女は、頭を下げながら彼にある頼みごとをした。

「いきなりで済まないがゼウスさん!アンタの力を見込んで頼みたいことがあるんだ!聞いてくれないか!」
「それは何だ?申してみよ、んん?」

ゼウスはそれを受けて、一切の動揺を見せることもなく彼女のその頼みごとについて聞くことにした。

南条光の頼み事、それは……

「アタシは今、この戦いを共に打倒する仲間を集めている!そこで、アンタの力を借りたいんだ!」
「アタシはさっき、アンタがあの主催者に向かって宣戦布告をする姿を見た!だからきっと、この戦いを打倒するために動く……そう感じたんだ!」
「だから……アタシの仲間になってくれ!」

自分とともにこの戦いを打倒する仲間になってくれ、というものだった。

「ほう、自分の"仲魔"となり、ともに戦ってほしいと願うかニンゲン!……ならば、余に力を示せ」

それを受けてゼウスは、自分に力を示すのならばともに戦ってもよいと、そう答えたのだった。

「……"力を示せ"……?つまりそれって、アンタと戦えってことか?」

彼女はゼウスのその言葉に対して、自分と闘えと、そう言っているのかを念押しした。

「理解が速くて助かる、そういうことだニンゲン!余の助力を求めるならば、まずはお前の力を示せ!」
「……と言いたいところだが、お前は見たところ本当の"闘い"というものを知らぬ小娘であろう?違うか?」

彼女のその確認に対しゼウスは、まさしくその通りなのだが、今のお前にそれだけの実力があるようには見えないと、そう答えた。

「ああ……悔しいけれどアタシはまだ、"ヒーロー"に憧れるだけの子供で、今のアタシにこの戦いを止められるだけの力はないんだ……!」

それを受けて南条は、ごもっともだという事をとても悔しそうな表情で答えるのだった。

「故にお前に命ずる!この会場を巡り、力を付けよ!そしてこの余が満足するような強者となれ!」
「これはその餞別だ!受け取れ!」

そしてゼウスは彼女に対し一つの命令を下し、自分のデイバッグの中に入っていた『刀身が湾曲し、また全体的に繊細な彫刻が施された剣』を渡すのだった。

「……ゼウスさん、この剣は一体……?」

彼女が困惑しながらゼウスに尋ねると、彼は笑いながらこう答えた。

「その剣の名前は『月光のナイフ』という、祭事にも使われたといわれている剣らしい!」
「遠慮はいらん!余にはこの、『ケラウノス』と『アダマスの鎌』がある!故にほかの武器など必要ないのだ!」

自分にはすでに、"自分が一番信じられる武器"があるからそれはお前にやると、そう答えたのだ。

「そうか……ありがとう!大事に使わせてもらうよ!」

彼のその言葉を受けた南条はそれに感謝し、先ほど彼が言った通り会場内を巡る旅へと出ることにした。

そして旅立とうとする彼女に対してゼウスはもう一つの命令を下した。それは……

「ニンゲン!お前にもう一つ、命令する!」
「これより先、余を満足させるその時まで、勝手に死ぬことは許さん!分かったか!!」

『決して死なず、ここに戻ってくること』だった。

「……ああ!もちろんだ!」

彼女はその激励の言葉に対し、短くそして力強い言葉で答えるのだった……。


135 : 小さき英雄、『英雄たちの父』と出会う ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:20:42 t.asiczg0
【南条光@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、魔神ゼウスの容姿と声に対する若干の疑問
[装備]:月光のナイフ@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには絶対に乗らない。主催者に立ち向かう。
1:ともに主催者に立ち向かう仲間を探す。
2:目の前にいる男(魔神ゼウス)に力を示し、ともに戦う仲間になってほしい。
3:この『魔神ゼウス』は声といい姿といい、仮面ライダーに関係する奴なのか……?
[備考]
特撮キャラ及びその出典作品に関する知識を持っています。
どの程度の知識があるかは、後の書き手さんに任せます。
少なくとも、『仮面ライダー』シリーズに関する知識は持っています。


【魔神ゼウス@真・女神転生DEEP STRANGE JOURNEY(ディープストレンジジャーニー)】
[状態]:健康
[装備]:ケラウノス、アダマスの鎌
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:自らの兄の名を騙る痴れ者(冥界の魔王ハ・デス)に裁きを下す。
1:あの痴れ者(ハ・デス)は、直々に裁きを下す。
2:それまでは、強者との戦いを楽しむ。
3:もしこのニンゲン(南条光)が自分を満足できたならば、その時は力を貸すとしよう。
[備考]
ケラウノスとアダマスの鎌を没収できなかった関係上、支給品の数が減らされています。


【月光のナイフ@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 砂漠に住み、そのほとんどが女性たちで構成されている一族『ゲルド族』が作った、繊細な彫刻が施された剣。

 美しい曲線を持つ刃の切れ味は大変鋭く、かつては祭事にも使われたといわれている。


【ケラウノス@真・女神転生DEEP STRANGE JOURNEY(ディープストレンジジャーニー)】
 魔神ゼウスの右手首に取り付けられている、青白い稲妻のような刃。

 原典であるギリシャ神話においてゼウスが振るう最強の武具であり『雷そのもの』であるとされる武器。

 出展作品では強大な稲妻を放ち、更に相手の防御力を4段階まで弱体化させてしまうという能力を持っている。

 なお魔神ゼウスの身体の一部となっているため、彼にはその分支給品の数を減らされるという制限をかけられている。


【アダマスの鎌@真・女神転生DEEP STRANGE JOURNEY(ディープストレンジジャーニー)】
 魔神ゼウスの左手首に取り付けられている、巨大な漆黒の鎌。

 原典であるギリシャ神話においてゼウスの父である農耕神、『クロノス』が振るったとされる巨大な鎌であり、
 これをもってクロノスは自らの父である天空神、『ウラヌス』を失墜させて神々の王になったと言われている。

 出展作品ではゼウスがテューポーン退治の際にケラウノスとともに振るった武器とされており、
 強力な一撃を加えるほか自身の攻撃力を2段階上げる効果を持っている。
 
 なおケラウノス同様こちらも魔神ゼウスの身体の一部となっているため、その分支給品の数を減らされるという制限をかけられている。


136 : 小さき英雄、『英雄たちの父』と出会う ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:21:14 t.asiczg0
投下終了です。

続いて、もう一作品投下いたします。


137 : 神(GOD)の名を持つ獣 ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:21:51 t.asiczg0
殺し合いの会場の中にあるレストラン、そこに巨大なハンバーガーがあった。

だが、そのハンバーガーは誰かが頼んだ料理ではなかった。

何故ならそのハンバーガーには鋭い牙が生えており、そしてその身体を大きく揺さぶるなど明らかに生きている様子だったからだ。

その怪物の名はハングリーバーガー、食われる側から食う側へと回ったハンバーガーの怪物である。

しかしこのハングリーバーガーは明らかに様子がおかしく、何か痛みを感じてのたうち回っているようにも見えた。

それはこの怪物が、先ほど近くにいた"野球選手の格好をした男"を丸のみにしてからずっとだった。

それから怪物が絶叫のようなものを上げると上のバンズから穴が空き、そこから強烈な顔をした男が飛び出してきたのだ。

「いただきま――す!」

そして、そのままの勢いで飛び出すとその男はさっきとは逆にハングリーバーガーを一口で飲み込んでしまったのだった。


―― 彼の名はマツイヒデキ、『東京カイアンツ』という球団に所属している野球選手であり、"ゴジラ(GODZILLA)"の名に恥じぬバケモノである……。


【マツイヒデキ@ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん】
[状態]:健康、腹一分目
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いから脱出し、球場へ向かう。
1:まずは腹いっぱい食べ、その後ほかの参加者を探す。
[備考]
※参戦時期は少なくとも海外移籍する前。


『NPC紹介』
【ハングリーバーガー@遊戯王OCG】
儀式モンスター
星6/闇属性/戦士族/攻2000/守1850
「ハンバーガーのレシピ」により降臨。
フィールドか手札から、レベルが6以上になるよう
カードを生け贄に捧げなければならない。

 鋭い牙が生えた巨大なハンバーガーの姿をしており、どう見ても悪魔族とかそういう種族にしか見えないのだが、なぜ"戦士族"なのかはいまだ不明。


138 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/24(火) 20:22:24 t.asiczg0
これにて投下終了です

以上、ありがとうございました。


139 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/24(火) 21:08:30 KsZxmG3Q0
投下します


140 : 腹ペコ少女たちよ大志を抱け! ◆2dNHP51a3Y :2022/05/24(火) 21:08:49 KsZxmG3Q0
「一体どこなのでしょうか、ここ……。」

地図を両手で見下ろしながら周囲を見渡す少女――白き聖女エクレシアは見たこともない景色を前に驚きの表情のまま歩いていた。
教導院でも見たこと無いような、余りにも高すぎる高層の建造物を時折見上げ、思わず口を開けながら。

「……それにアルバスくん、一体どこへ行ったのでしょう……?」

驚天動地の光景に圧されながらも、彼女の心の内に秘めていたのは、かつて彼女が救った少年、アルバスの事だ。実のところアルバスという名前はエクレシアの呼称であり、アルバスは「白」という意味である。
ハ・デスという魔王によって告げられた、デュエルと言う名の殺し合いの舞台。
そして許せないという感情と同居する、謎多きハ・デスへの疑念の感情。
一枚のカードから生まれたという素っ頓狂な発言が、特にエクレシアの頭にこびり付いていた。

「……ううん。こうしちゃいられない。」

自分は白の聖女で、アルバスくんは大切な仲間。奮起し、歩みは止めない。
もしかしたらアルバスくんもフルルドリス姉さまも巻き込まれているかもしれないと思い。
……なんて思ってたら唐突に鳴り響く腹の音。

「………まずいです。またお腹……。」

お腹が減った。単純明快ながらも当人にとっては只事ではない。
何しろ、アルバスと大霊峰相剣門へ向かう最中に呼び出され、食事休息が取れてないタイミングで呼び出されたのだ。更に言えば我慢できずに支給品内にあった食料品をあらかた食い尽くしてしまった始末。
エクレシアはその清楚な外見に似合わず意外に大食らい。所謂「ごはんたくさんたべるタイプ」であり、その調子で食い尽くしてしまったボケをかましてしまったのだ。

「はぅぅ……。」

一転して、空腹からの弱気な声が漏れ出す。
腹が減っては戦は出来ぬとはよく言うが、今の彼女は特にそれ。
というか半ば自業自得であるがも、本人は緊急事態。
が、捨てる神あれば拾う神あり。そんな彼女に救世主の手が差し伸べられた。

「どうしたんですか?」

それは、綺羅びやかなティアラを頭に乗せた、如何にも王女様というべき風貌の少女。

「……ええっと、どちら様で?」
「何やらお腹が減っているようなので、思わず。」

突然の来訪者に呆然とするエクレシアを後目に、その王女様なニッコリとした笑顔で彼女の手を取れば。

「ちょっとこっちまで来て下さい! 今から美味しいものを軽く作ってあげますから!」



○ 



「おいしぃぃぃぃ〜!!!」

数十分後、会場内に設置されたとあるレストラン。
机に並べられた、先程の少女が作ったであろう大盛りご飯やチキンソテーを頬張り舌鼓を打つ聖女の姿。

「いえいえ。私もお腹が減っていましたので、えへへ。」
「ペコリーヌさん、で良いんですよね。本当にありがとうございます! それにこんな美味しいごはん、食べたこと無かったから。」

先程エクレシアを助けて料理まで振る舞ってくれた少女の名前はペコリーヌ。
空腹だったエクレシアをこのレストランに連れ、店内に残っていた材料でテキパキと料理を作成。それをエクレシアにご馳走したわけで。
ちなみにエクレシアの隣でペコリーヌもテーブルいっぱいに乗せられた料理を疲れ知らずに食い漁っている。

「お腹が減ったらお互い様ですし、美味しいご飯が好きな人に悪い人はいないと思います!」
「あははっ、いつかアルバスくんにもこんな美味しそうな料理をご馳走させてあげたいです! 勿論フルルドリス姉さまやフェリジットさんにシュライグさん、キットちゃんにもです!」
「その時は一層腕を振るって美味しいものを用意します! あ、ユウキくんやコッコロちゃんやキャルちゃんも一緒に!」

殺し合いの舞台には余りにも似合わぬ光景で、少女二人の会話は更に弾むのであった。
簡易ながらも情報交換を兼ねた食事会は穏便に進む。
白の腹ペコ聖女も、ランドソルの腹ペコ王女様も、元の世界で待つ仲間たちの為に、この殺し合いを打ち倒すことを誓うのである。


141 : 腹ペコ少女たちよ大志を抱け! ◆2dNHP51a3Y :2022/05/24(火) 21:09:05 KsZxmG3Q0
【白の聖女エクレシア@遊戯王OCG】
[状態]:健康、食事中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:主催の打倒、殺し合いからの脱出
1:ペコリーヌさんと食事しながらお話。
2:アルバスくん、何処にいるのでしょうか……?
[備考]
※参戦時期は大霊峰相剣門へ向かう最中

【ペコリーヌ@プリンセスコネクトRe:Dive!】
[状態]:健康、食事中
[装備]:王家の装備@プリンセスコネクトRe:Dive!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:主催の打倒、殺し合いからの脱出
1:エクレシアさんと食事をしながらお話する。
2:ユウキくんやみんなの事が心配
[備考]
※参戦時期は最低でも第一部終了後

『支給品紹介』
【王家の装備@プリンセスコネクトRe:Dive!】
ペコリーヌに支給。王家に伝わる特別なティアラで、装備者に特別な力を授ける。
しかし、この装備の力を発動すると酷く燃費が悪くなるということで、使用すると著しくカロリーを消費するという。『王家の装備』の出力は消費カロリーに比例する。


142 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/24(火) 21:09:20 KsZxmG3Q0
投下終了します


143 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:04:59 EcIgHYpA0
皆様、投下お疲れ様です。
僕も投下させていただきます。
コンペロワに投下した作品に大幅な加筆を行った作品になります。


144 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:05:50 EcIgHYpA0
「……」

『決闘』と称された血生臭い殺し合いが巻き起こりつつあるバトル・ロワイアル会場。
その片隅で、オレンジ色の髪にブレザー姿の寝ぼけ眼の少女がとぼとぼと歩いていた。

「……」

歩き続けた先に、寝ぼけ眼の少女は小さな公園にたどり着いた。
ブランコと滑り台とシーソーしか遊具が無く、あとは公衆トイレとベンチしかない本当に小さな公園だった。

「!」

公園に入ってすぐ、寝ぼけ眼の少女はベンチに人が座っているのに気がついた。
赤い髪に左手だけの手袋が印象的な自身と同い年位の少女だ。

「……」
「あ、あの……」
「!?」

突然寝ぼけ眼の少女に話しかけられ、赤い髪の少女は目を丸くする。

「と、隣、良いかな?」
「ど、どうぞ……」

赤い髪の少女から許可を貰うと、寝ぼけ眼の少女は赤い髪の少女の隣に腰を下ろす。
ただし、二人の少女の間には一人分のスペースが開けられていたのだった。

「え、えっと……君も参加者、なんだよね?」
「うん……でも、人殺しをする気は無いから、安心して」

寝ぼけ眼の少女からの問いかけに、赤い髪の少女は恐る恐るといった様子で頷いた。

「あ、うん・・・えっと、ボクは宮下アキ。友達からは『アギラ』とか『アギちゃん』って呼ばれてるよ」
「私はチセ、羽鳥智世。よろしくね」

寝ぼけ眼の少女……アキと赤髪の少女……智世の二人は、自己紹介を済ませるとそのままベンチに座ったまま、再び口を閉ざした。

「「……」」

アキも智世も傍目からは冷静沈着に見えたが……

(き、)
(気まずい……!)

内心ではもの凄く気まずい思いをしていた。

片や智世は、人ならざる存在を惹き付ける『夜の愛し仔(スレイ・ベガ)』にして、イギリス在住の本物の魔法使いの弟子(兼未来の嫁)。
片やアキは、『カプセル怪獣 アギラ』の魂をその身に宿した怪獣娘。

出自も能力もバラバラだったが、共通して『初対面の相手との能動的なコミュニケーション』という物が余り得意な方ではなかったのだ。
しかも今、二人がいるのは殺し合いの場。
初対面の相手と気軽に仲良くなれるような環境ではない。

「「……(どうしよう………?)」」

相手とどんな話をすべきなのか分からず、智世もアキも黙りこんだままベンチに座り込んで数分が過ぎていく……。


145 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:06:23 EcIgHYpA0
「もしもーし」
『?』

不意に背後から声をかけられ、二人はつい振り返った。
そこには……

「バアッ!!」
『うわああぁぁ!!』

大人の背丈程の巨大な髑髏が血走った目で二人を睨み付けており、二人の少女は思わず悲鳴を上げたのだった。

「……へっへっへっへっへっへっ」

髑髏はまるでイタズラが成功した子供のような笑い声をあげると……

「……よっと!」

……一瞬にして繋ぎの服を着た金髪の少年に変化したのだった。

「驚かしてゴメンな。女の子が二人して思い詰めた顔してたから、和ませようと思ってさ」

金髪の少年は屈託の無い笑顔を浮かべていた。
突然の事態に智世もアキも言葉が出ない。
そこへ智世が少年に声をかけた。

「き、君は……?」
「オイラは、オバケの風郎太。よろしくな♪」
「お、オバケ……?」
「うん、オバケ」

少年……風郎太は満面の笑みを浮かべながら自身を『オバケ』と称した。

魔法使いの弟子(兼未来の嫁)として、普段から妖精や精霊といった『人ならざる存在』と親しくしている智世であったが、
自ら『オバケ』と名乗る者と会うのは初めての事であった。

「……でも足あるし、頭に三角形の布も無いよ?」

一方のアキは風郎太を指差しながら、
いささかトンチンカンな発言をしたのだった。

「いや、それは『オバケ』じゃなくって『幽霊』の特徴だから」

アキの発言に風郎太は真顔でツッコミを入れるが、アキはまたも首を傾げた。

「?『オバケ』も『幽霊』も同じじゃないの?」
「いや、全然違うから!」
「あ、あのね宮下さん……」
「『アギラ』でいいってば」


☆☆☆


風郎太のおかげ(?)で、幾分気持ちがほぐれた智世とアキは、風郎太も交えて情報交換を開始した。
だが………

「『超人』に……『超人課』?……ごめん、聞いた事ないや」
「『怪獣娘』……『GIRLS』……そんなの、聞いた事ないけど……」
「『魔法使い』って……輝子さんの仲間か?」

……お互いの『常識』があまりに違い過ぎて、3人の頭上には大量の?が浮かんでいた。

アキは自らを『国際怪獣救助指導組織、通称『GIRLS』に所属する怪獣娘の一人』と説明したが、智世も風郎太も『GIRLS』という組織だけでなく、『怪獣娘』の存在すら知らなかった。

アキが怪獣娘について、『過去に地球に出現した怪獣の魂を宿した女の子の事』と説明して風郎太は一応理解したが、智世にとって『怪獣』とはテレビや映画の中だけの『架空の存在』であり、それが実際に出現したなんて話は、一度も聞いた事がなかったのだ。

同じく、智世が自分について『イギリスで修行している魔法使いの弟子』(嫁云々は話がややこしくなるので伏せた)だと語っても、アキにとって『魔法使い』とは絵本の中だけの存在という認識だったし、風郎太にいたっては「魔法使いって、魔女っ娘の仲間かなんか?」とか真顔で聞いてくる始末だ。

更に、風郎太は自らを『人々の平和を守る『超人』達を守る超過人口審議研究所、通称『超人課』の一員』と語ったのだが、やはりアキも智世も『超人課』なる団体を全く知らず、そもそも『超人』なる存在に関しても『テレビや映画に出てくる正義の味方』としか認識していなかったのだ。


146 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:06:58 EcIgHYpA0
「えっと……ところで、今年は何年か分かる?」

智世が何気なくそんな質問をすると……

「えっ?神化45年だろ?」

………風郎太は真顔でそう答えた。

「『しんか』………?しんかって、何?」
「何って……今年の年号に決まってんだろ?」
「えっ?今年の年号は『平成』だよ?平成29年」

風郎太の言葉にアキはそう答える。
智世の背中に何か……冷たい感覚が走った。

「え、えっと……できれば、『年号』じゃなくて『西暦』で言ってくれると助かるかな?私、今、イギリス暮らしだから」
「えっ?『西暦』だと……確か……」

風郎太は少し考えた後に答えた。

「……1970年くらい、かな?」
『えっ?』

風郎太の返答に、アキも智世も目を丸くする。

「1970って……な、何言ってるの?今は2017年だよ?」
「……はぁ?」

アキが口にした年代に、今度は風郎太が目を丸くする。

「ね、ねぇ?そうだよね?」

アキは見るからに困惑の表情を浮かべながら、智世に同意を求める。
だが……智世の顔はアキ以上に青ざめていた。

「いや……私がここに来る直前に見たカレンダーには……『2018年4月』って書いてあった……」




『………どういう事?』

お互いの常識だけでなく、時間の認識すら異なっている。
更に詳しく確認すると、アキと智世は1970年代の日本の年号は『神化』ではなく、『昭和』だと認識していた。

一体これはどういう事か?

その時、智世の脳裏にある事が浮かんだ。

「……別の世界」
『?』

智世が口走った言葉に、アキと風郎太は首を傾げる。

「……あのハ・デスって人が言ってたよね?『この世には無数の世界がある。この決闘でも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある』って」
「そう言えば……」
「確かにそんなこと言ってたなぁ〜……オイラ、難しくてちんぷんかんぷんだったけど」
「つまり……私達はそれぞれ『全く違う別の世界』……『パラレルワールド』とか、そういう感じの場所からここに連れて来られた。だから、お互いの『常識』も『時間』も、全然違う……そういう事、なんじゃないかな?」
『………』

あまりに突拍子も無い話だったが……アキも風郎太も、確かにそう考えるとつじつまが合う気がしていた。

過去に怪獣が出現し、その魂を宿した『怪獣娘』が存在する世界。
世間一般から隠された場所で、『魔法使い』が存在する世界。
『昭和』の代わりに『神化』という年号が採用され、『超人』的な存在が人助けを行っている世界。

少なくとも、アキや智世、それに風郎太は全く異なる3つの世界から連れて来られたと考えれば……全てのつじつまがぴったりと合った。

「なんだか、SF映画みたいな話だね……」
「……まぁ、どっちかって言ったら、『ファンタジー』か『オカルト』だけどね」

アキのこぼした感想に智世は苦笑いを浮かべる。

「えっと……つまり、あれがああだから……」

一方、風郎太は智世の話を理解しようと、必死に頭を動かしていたのだった。


147 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:07:47 EcIgHYpA0
☆☆☆


「………で?これからどうするんだ?」

智世の話をどうにか理解できた風郎太が、アキと智世に今後の方針を聞く。

「どうする?って言われても……」
「……どうしようか?」

アキと智世はお互い顔を見合せながら、首をひねる。

進んで人殺しをするつもりは無い。
だからといって、この会場から脱出する為の手段も方法も思い付かない。
そもそもアキも智世も、自分から能動的に行動するのはあまり得意ではなかった。

「「…………」」

アキと智世はまたしても、黙り込んでしまった。

「……もしもーし」
『?』

二人が黙り込んだままでいると、風郎太が声をかけてきた。
顔をあげると……

「バアーッ!!」
『うわああああっ!!』

……風郎太が自身の首から上をワニに変化させて鋭い牙が生えた口を大きく開けており、アキと智世は悲鳴を上げた。

「まったくさぁ……一々考えこむ度に難しい顔して黙り込むの、止めようぜ?一応ここ、『殺し合い』の場なんだし」
『ウッ……』

風郎太は首から上を元の姿に戻しながら智世とアキにツッコミを入れ、風郎太に痛い所を突かれたアキと智世は苦い顔を浮かべながら風郎太の意見に納得する。

ここは殺し合いの場。
殺人に嫌悪感や拒否感を持つ者ばかりとは限らない。
中には『どんな願いも叶える』という甘い誘惑に乗る者もいるはずだ。

それにもしかしたら……自分たちの友人や知り合いもこの会場のどこかにいるかもしれない。

『………』

そこまで考えて、アキと智世は互いの顔を見合せながら静かに立ち上がった。

「……確か、しばらくしたら支給されたタブレットに参加者の名簿が出るらしいから、それまで少し待とう。それで、もしも名簿の中に知り合いの名前があったら、探して合流しよう」
「……うん。私もそれでいいよ」

アキが今後の方針を決めると、智世もそれに同意し、二人は顔を見合せながら笑った。

「よーし!んじゃあオイラは、この会場から出られるまで、二人の事を守るぜ!違う世界の人でも、『超人を守る』のが超人課の仕事だからな!」

風郎太はニッカリと笑いながら、自身の胸を叩いた。
その姿を見ながら智世は苦笑する。

「『超人』って……私は『魔法使い』であって、超人なんて凄いものじゃないよ?」
「問題ねぇよ。超人課じゃあ、宇宙人でも怪獣でもロボットでも妖怪でも魔女っ娘でも、『人間より凄い力を持ってて、その力を人間を助ける為に使う奴』はみんな『超人』扱いだからな」
「………なんだかアバウトっていうか、結構いい加減だね」

風郎太の語る『超人』の定義に少し唖然となる智世であった。


148 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:08:13 EcIgHYpA0
【羽鳥智世@魔法使いの嫁】
[状態]健康、少し気持ちがほぐれた
[装備]無し
[道具]基本支給品、不明支給品1〜3
[思考]
基本:人殺しはしたくない
1:名簿が表示されるまで待機
2:名簿を確認して、知り合いがいたら合流する
3:アキと風郎太と行動する
4:私は『超人』じゃなくて『魔法使い』だよ……
[備考]
単行本第9巻時点より参戦(2018年4月は、単行本第9巻の初版刊行日付参照)。
アキと風郎太より、『怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜』世界と『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』世界に関する大まかな情報を入手しました。


【宮下アキ(アギラ)@怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜】
[状態]健康、少し気持ちがほぐれた
[装備]無し
[道具]基本支給品、不明支給品1〜3
[思考]
基本:人殺しはしたくない
1:名簿が表示されるまで待機
2:名簿で知り合いの名前があったら、探して合流する
3:智世と風郎太と行動する
[備考]
アニメ第二期からの参戦です。
智世と風郎太から『魔法使いの嫁』世界と『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』世界に関する大まかな情報を入手しました。

【風郎太@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]基本支給品、不明支給品1〜3
[思考]
基本:人殺しはしない
1:超人課の一員として、アキと智世を守る
2:知り合いがいたら合流する
[備考]
第一期終盤(神化43年)から第二期序盤(神化46年)の間からの参戦です
アキと智世から『怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜』世界と『魔法使いの嫁』世界の大まかな情報を入手しました。
アキと智世を『自分とは違う世界の超人』と認識しています。
制限により、変身しても首輪は外れません。


149 : 夜の愛し仔と怪獣娘と時々オバケ ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/24(火) 22:08:45 EcIgHYpA0
投下終了します


150 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:30:02 WtBdwc9M0
投下します。


151 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:30:40 WtBdwc9M0
「決闘って……というか!ここってもしかして南極!?」

氷の雪原に佇むのは着物の少女。
少女の名は関織子。
旅館”春の屋”の若女将。
正直、若女将なんて始めは乗り気ではなかった。
”ああー、旅館の仕事ってたいへんー”と愚痴を言ったこともある。
しかし、あかねさんやグローリーさんといった宿泊客の笑顔を見るうちに旅館業の仕事が楽しくなり、また傷心中だった織子を支えた幽霊であるウリ坊達との別れといった紆余曲折を経て、織子は立派な若女将として成長した。
今日も、新たな宿泊客の笑顔のために奮闘する最中、決闘者として選ばれてしまったのだ。
そんな織子が磯野と呼ばれた黒服の男の人の決闘開始ィィィ!と張り上げた声と同時にバトルロイヤルの舞台に降り立ったのは、一面の氷のエリア。

「あの磯野っていう人が言っていた決闘って……殺し合いという意味……だよね」

直接殺し合えとは言ってはいないが、確かに言っていた。最後に一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と栄光を与えると。
それと、自らを冥界の魔王と名乗ったハ・デス。
幽霊であるウリ坊や美代ちゃん。それに鬼の一族の鈴鬼くんと友達だった織子はすんなりと受け入れることができた。
次に織子の脳裏に浮かぶのは独特な髪型の男の人……たしか遊戯さん。
そして遊戯さんが呼んだ本田さんの首が飛び……命を奪われたこと。
あたしはそれをみたとき、ふとお父さんとお母さんが浮かんだ。
梅の香神社のお祭りの帰り道、あたしの両親は車のフロントガラスへ突っ込んできた一台のトラックに奪われた。
お父さんとお母さんの死を乗り越えたから今も若女将として働けているが、やはり、目の前での人の死は織子には充分堪える出来事である。

「ウリ坊……美代ちゃん……鈴鬼くん」

小さい声で彼らの名前を呟く。
いけない。
きちんと彼らとお別れができたはずなのに。
目元の滴を袖で拭う。
ここで、弱気になっちゃだめ……っ!

「と、とりあえず……このライダーベルト?っていうのを巻き付けなきゃ」
(正直……おもちゃみたいにしか見えないけど……)

気を取り直して織子は支給品を確認する。
最初に出てきたのが、ベルトとカブトムシの形をした機械だった。
男子なら喜んで装着するだろうが、織子は女子。
それも最高学年である6年生。
正直、玩具にしか見えないライダーベルトはちょっと恥ずかしい気分。
ましてや機械オンチである織子はライダーベルトに半信半疑。
不安に織子は自身の支給品であるライダーベルトを着物の腰に巻く。
和服にライダーベルトの組み合わせは少々独特。

「えっと……これが説明書ね」

とりあえず、必要なキーワードを頭に叩き入れると、氷エリアを歩く。

「あ!ペンギンだわ」

織子の視線の先に見えたのは、人ではなく動物。
やはり氷エリアなのかそこにいた動物はペンギンだ。
しかし、直後に織子は驚愕することとなる。

「私はペンギンではありませんよ」
「えっ!?」
(ペンギンが喋った!?)

ペンギンは優雅にお辞儀をすると自己紹介を始める。


152 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:31:38 WtBdwc9M0
「私はペンギン・ナイトメア。またの名を大滝修三55歳!」
「大滝修三……って人の名前じゃない!?」
(5……55歳!?あたしのお父さんより年上だわ!?)

織子はペンギンの名乗りに驚きを隠せない。
だってどこをどうみてもペンギンの姿なのだから。
しかし、ペンギンの自己申告はけっして嘘ではない。
いまでこそ、マジック&ウィザードのモンスター”ペンギン・ナイトメア”の姿だが、れっきとした人間である。
本名、大滝修三。
海馬コーポレーションの重役グループ通称BIG5の一人である。

「それで。お嬢さん。君の名前は?」
「あ、関織子です」

織子の自己紹介に大滝は顎に手を置き、ふむ……といった様子。

「ふむ……関織子。見たところ小学生なのかな?」
「は、はい。小学6年生です」

普段、小学校では知らない大人の人に個人情報を教えてはならないと教わるが、この特異な状況。
質問に正直に答えてしまう。

「やはり!うんうん。私の見立ては間違いなしだ。それにしても……このような決闘に君のような子供が参加させられるなんて、親御さんが知ったら深く悲しむでしょうな」
「……ッ」
「……おや?もしかしてご両親は既にお亡くなりのようかな?。よければこの私、大滝修三55歳が君のお父さんとなってさしあげましょうか?」
「はぁ!?」
(な、何をいっているの!?)

BIG2である彼は人事担当。
人を見る眼が長けている。
面接に来る人物を徹底的に調べ上げる。
織子のほんの少しの表情で、親を亡くしたことを見抜いたのだ。

「け、結構です!」

織子は背を向けて走りだす。

「ヌフフフーフー!逃がしません。いでよボルト・ペンギン」

大滝は、にがしてなるものかとデュエルディスクにカードをセットする。
セットされたカードが光りだすと、実体化する。
実体化したボルト・ペンギンは本物のペンギンのように腹で氷を滑り、織子の前へ回り込む。

「きゃ!?」

ペタンと尻もちをつく。

「突然逃げるなんて失礼ですねぇ〜。ま、私には夢があるので、どちらにせよ君のお父さんにはなれませんが。さぁ観念しなさい。関織子12歳。おとなしく私の夢のために斃れるのです」
「あなたの夢……?」

大滝の”夢”という言葉に織子は反応する。
自分の命が狙われているという最中にも関わらず、耳を傾ける。
若おかみとして染みついている証拠。
大滝は目を細めながら語りだす。

「そうです。私には夢がある。若い肉体を手に入れ、ペンギンランドを建設するというねぇ……」

大滝の家庭は両親の不和で家庭崩壊といっても過言ではなかった。
そんな心が荒んだ大滝を癒したのがペンギン。
本の中で書かれていたペンギンの両親が協力し、卵を温め合う内容に心を強く打たれた。
それから、近くの水族館のペンギンを観ることが日課となった。
来る日も。来る日も。
そして月日は流れ、海馬コーポレーションの重役にまで出世した大滝の夢はあと一歩というところまで来た。
しかし……

”ふぅん。ペンギンだと?白と黒ならパンダのほうがマシだ。却下だ大滝”

社長の無慈悲な一言。
大滝の夢は敗れ去った。
だが、大滝は諦めなかった。
一度目は、ペガサスと手を組み、海馬コーポレーションを奪う計画を立てた。
二度目は、己のクビをかけたデュエルモンスターズクエスト。
そして最後の三度目は剛三郎の実子である乃亜の力での復讐。
どれも失敗に終わり、最後は唯一の存在証明であった電脳世界からの存在消去となったことで完全なる死を迎えたはずだった。
だが、天は大滝を見捨てなかったのか、こうして四度目の挑戦の機会が与えられたのだ。

「どうです?素敵な夢でしょう?だから……「ふざけないで!」

身体を起き上がり、織子はまっすぐ大滝を見据える。

「あなたは、人の命を奪った人達の力で夢を叶えるんですか!」
「……はぁ、君のような子供にはわからないでしょう。いいですか?大人の世界は無邪気な子供の世界とはわけが違うのです!夢を叶えるためならば悪魔に魂を売ることも時には必要なんですよ!」

魂を悪魔に売るですって!?
あたしだって……もし、本当に願いが叶うならお父さんとお母さんにまた会いたい。
一緒に春の屋で住みたいわ!
でも、あたしがそんな行動をとったらお父さんとお母さんは笑顔をみせないわ!
それに……春の屋の若女将としてお客様の笑顔にさせることだって……っ!

「そんなこと分からないし、分かりたくもない!あたしは、そんなあなたの夢のために斃れてたまるもんですかっ!」

「……変身!」

『HENSHIN』


153 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:32:03 WtBdwc9M0
カブトゼクターをベルトに装着し、掛け声を放つ。
織子の身体は……言葉通り変身した。

「なっ!?」
大滝は目の前の現象に驚愕する。

「そ、その姿は一体……?」
(カブトムシ……これは昆虫族モンスター?)

「わっ!わ!本当に変身出来ちゃった!?」

勢いに任せて変身を試みたけどまさか、本当に変身できるとは。
マスクドフォームの姿に織子は戸惑う。
大滝はその隙を見逃さない。

「やりなさい!ボルト・ペンギン!」

大滝の命令を受け、ボルト・ペンギンは両腕の鞭をカブトへ振るわれる。
勢いある鋭いスピードで電撃の鞭がカブトの胸を痛めつける。
カブトの胸からバチバチと火花が舞い散る。

「きゃあ!?」

ビュン!ビュン!!ビュン!!!と風を斬る鞭。
強固のアーマーを有するマスクドフォーム。
実際は大きなダメージではない。
だが、友達と喧嘩をしたことこそあれど、戦闘経験なんかない織子にとって悲鳴を上げるしかない。
変身したのはいいが、なすすべもなくボルト・ペンギンの猛攻に防戦一方。

「ふふん!その姿は見掛け倒しですか?関織子12歳」

織子の拙い動きに大滝はニヤニヤと口元を歪ませる。

むっか〜。なによ!子供だからって馬鹿にした言い方!というか人の名前の後に年齢を付け加えるなんて失礼じゃない!
普段、お客様に丁寧な接客を心がけているが、やはりまだまだ子供。
同年代だと強気な面もある織子。
年上とはいえ、余りにも人を馬鹿にした態度にはむっとする。
織子は凄い技を披露しようと……

「見てなさい!キャストオフ」

『CAST OFF』

『CHANGE BEETLE』

「なっ!?」
(姿がチェンジした?)

マスクドフォームからライダーフォームへ
続けさまに織子は行動する。

「えっと……クロックアップ!」

『CLOCK UP』

「んん?……消えた?」

軌道音と同時にカブトの姿が消えた。
もっとも正確に言うと消えたではなく移動した。
マスクドライダーシステムに搭載されているタキオン粒子。
それを全身に駆け巡らせることにより時間流を操ることができる。
結果、超高速のように移動できるのだ。
ただ……機械オンチである織子が初変身で自在に使いこなせるはずはない。
大滝の横をそのまま通り過ぎると、はるか遠くへ移動してしまった……

「むむむ……!残念。取り逃がしてしまいましたか」

急に姿を消したかと思えば、気配が完全に失った。
織子を取り逃がしたことに落胆する。
しかし、この決闘はまだ始まったばかり。
ボルト・ペンギンをカードに戻すと大滝は即座に切り替える。

「まぁいいでしょう。お互い生きていればまた会うでしょうから。それより若い肉体とはいえ、もう少しグラマーのほうが私の好み。やはり真崎杏子16歳のような……ね」

今度こそ、若くてピチピチな肉体を得て、新たな生を謳歌する。
頑張れ!大滝修三55歳。負けるな!大滝修三55歳。


154 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:32:19 WtBdwc9M0
【ペンギンナイトメア(大滝修三55歳)@遊戯王(アニメ)】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(ペンギン)@遊戯王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:優勝して、若くてピチピチな肉体を手にいれる
1:新たな決闘の場へ移動する
2:関織子12歳とは、再び対峙したら今度こそ斃す
3:武藤遊戯に出会ったら復讐する
4:やはり理想の肉体は、真崎杏子16歳
[備考]
アニメ、乃亜編終了後からの参戦。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(ペンギン)@遊戯王】
ペンギン・ナイトメアこと大滝修三55歳に支給。大滝が愛してたまらないペンギンを中心にしたデッキ
デュエル中に相手の名前に年齢をつけて呼ぶのはマナー違反なので、良い子の決闘者は決してマネしないように

☆彡 ☆彡 ☆彡

「はぁ……はぁ……」

変身が解除され、乱れた息を整える織子。
決闘経験なんかない織子の初戦としては、まぁ及第点といったところだろう。
さらに仮面ライダーへ変身していたおかげか、それほど大きな負傷とはならなかった。
思い描いていた結果とは程遠いが、ひとまずほっとする。
しかし、ペンギンナイトメアこと大滝修三との決闘を経て、一人の小さき決闘者は目覚めた。

「ウリ坊……美代ちゃん……鈴鬼くん……あたし、負けないから!」

若女将は立ち向かう。
冥界の魔王に。

【関織子@若おかみは小学生(映画)】
[状態]:負傷(極小) 疲労(極小)
[装備]:カブトゼクターとライダーベルト@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:決闘からの脱出
1:自分と同じ方針の決闘者を探す
2:あのペンギン……大滝さんには注意する
3:早くこの仮面ライダーの力になれないといけないわ
[備考]
映画終了後からの参戦。

『支給品紹介』
【カブトゼクターとライダーベルト@仮面ライダーカブト】
関織子に支給。”天の道を往き、全てを司る男”天道総司がマスクドライダーカブトに変身するために使用するカブトムシ型のメカとベルト。
祖母を愛する一面が織子と適合し、変身することができた。


155 : 決闘ロイヤルだよ!若おかみ! ◆s5tC4j7VZY :2022/05/24(火) 22:32:32 WtBdwc9M0
投下終了します。


156 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:46:38 82sKLb7I0
投下します


157 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:47:59 82sKLb7I0
 様々な者を集めた殺し合い。――生存競争。
 それは様々な世界で行われている。そしてこの男――橘朔也もまたそんな世界で戦ってきた者の1人だった。

「まさかまたバトルファイトのようなものが始まるとはな……」

 バトルファイト。アンデッドという異形達による殺し合い。最後まで生き残った者が勝者というルールまで、この殺し合いとそっくりだ。
 ただしバトルファイトにはジョーカーアンデッドという例外的な存在も居た。彼が優勝することで世界はダークローチというゴキブリのような異形が無尽蔵に湧き、世界を滅ぼしてしまう。

 そして人間の心を持つジョーカーアンデッド――相川始が優勝したことで、橘の世界にはダークローチが出現。世界は終焉へ向かう。

 ――剣崎さえ、いなければ。

 橘の世界は仮面ライダーブレイド――剣崎一真に救われた。
 親友を心から助けたいと願い、世界をも守りたいと思った剣崎はキングフォームを酷使することで自らがジョーカーとなった。
 ジョーカーが一人だけ生き残れば、世界は滅ぶ。しかしジョーカーが二人存在したら、世界は滅ばない。ダークローチによる害は消え失せる。

 ――そして剣崎一真は永遠の切り札となった。
 かつての仲間とは二度と再会出来ない。何故なら相川始がジョーカーで、自分もジョーカーになってしまったから。彼らが近くにいるだけで、闘争本能を刺激されて戦わなければならなくなってしまったから。
 それでも剣崎は自分の選択を後悔していない。それが剣崎一真という男で、彼のそういう性格は橘もよく知っている。

 仮面ライダー剣の世界の青空は剣崎が守った。仮面ライダーブレイドが、世界を救ったのだ。
 それは紛れもない自己犠牲。しかしヒーローの体現者ともいえる存在だった。

 だが橘は剣崎の正義感溢れる優しい性格を理解しているが――それでも唐突な別れを惜しまないわけでもない。
 ジョーカーになってしまった剣崎を救いたい。先輩として、仲間として……剣崎を人間に戻してやりたい。――そう考えてしまうのは、エゴだろうか?

 きっと剣崎は今もどこかで運命と戦っている。あいつはそういう男だから。

「剣崎……」

 支給されたギャレンバックルを片手に取り、今はもう会えない仲間の名を呼ぶ。
 橘朔也は剣崎一真をジョーカーから人間に戻してやりたい。――そしてこの殺し合いに優勝したら、どんな願いでも叶えられる。


158 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:48:12 82sKLb7I0
 胡散臭い存在を信じるのもどうかとは思うが、あの悪魔からはそんなことを可能にする説得力が感じられた。凄み――とでも言うのだろうか。そんなものが橘には伝わってきた。それに冥界の魔王という肩書きが本当なら、ジョーカーを人間に戻すくらい容易いかもしれない。魔の王ならば、それくらい出来ても不思議じゃない。

 だが――。

「きっとお前なら、こんな運命にも立ち向かうんだろうな……」

 ――橘朔也は剣崎一真のことを信じている。
 今は遠く離れた場所にいるが――それでも彼らの心は固い絆で結ばれている。
 だから剣崎がこの場でどんな行動を取るかなんて、わかっている。戦えない人々のために自らが戦い、その命を守るはずだ。――そして己が命を犠牲にしてでも主催の魔王を倒す。

 橘の知る剣崎一真とはそういう男だ。
 もしも橘が殺し合いで最後の一人まで生き残り、願いによって剣崎を人間に戻し、始を人間にしてもきっと彼は喜ばないだろう。
 何故なら自分が優勝するということは、他の人々を殺す事に他ならないから。そんなことをあの剣崎が許すはずもない。きっと悲しむに違いない。

「剣崎……。俺もお前みたいに運命と戦うことに決めた」

 ならばやることは決まっている。
 橘朔也――仮面ライダーギャレンは剣崎の分まで人々を守る。もちろん魔王も倒す。
 それが今の自分に出来ることだ。剣崎を人間に戻す方法については殺し合いが終わった後に考え、研究したら良い。

 相手は冥界の魔王。その肩書きに偽りがないことなんて、一目見ればわかる。あいつは今まで戦ってきたどのアンデッドよりも強い。おそらくカテゴリーキングよりも……。あの風格は――圧倒的な強者感は、生まれて初めて見るものだった。

 怖くないと言えば嘘になる。不安じゃないと言えば嘘になる。あんな化け物を見て、恐ろしいと思わないわけがない。
 だが剣崎なら――あいつなら絶対に立ち向かうだろう。それが剣崎一真。それこそが仮面ライダーブレイド。
 だから信じられる仲間の代わりに今度は自分が人々を守る。

 敵が冥府の世界に君臨する魔王だろうが関係ない。最後に残ったものだけは――剣崎がジョーカーになってでも救おうとしたこの世界だけは守り抜く。

 ――何故なら橘朔也は仮面ライダーだから。


159 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:49:38 82sKLb7I0
 〇
 日常を謳歌していた少女が居た。言動こそ軍人気質だが、実は可愛いものが好きなちょっと変わった少女。モデルガンやコンバットナイフを携帯しているという常識的に考えて色々と危うい面もあるが、なんだかんだで平和な日常を過ごしている。

「殺し合いだと……!?あいつは本気で言ってるのか!?」

 ツインテールの少女はいきなり殺し合いに巻き込まれて取り乱していた。彼女の名は天々座理世。普通の人に比べたらちょっと変わっているが、平和な世界に住んでいる少女だ。

「いきなり拉致されたと思ったら今度は殺し合いをしろって、めちゃくちゃ過ぎるだろ!」

 当然だがリゼは何も自ら進んで殺し合いに参加したわけじゃない。いきなり目の前で真っ暗になって、目が覚めたらこんな事になっていた。
 拉致をされたことについては自分の不注意だ。いつ誰に連れ去られたのかもわからないが、油断していた。――なんて、そんなふうに許せるはずがない。自分の不注意だとか以前に、これは立派な犯罪行為だ。

「あの冥界の魔王とかいうコスプレ野郎、ふざけやがって。警察に突き出してやる……!」

 リゼは主催者のハデスに対して怒りを募らせる。コスプレ野郎とはハデスのことだ。
 本人は冥界の魔王と名乗っていたが、リゼはそれをあまり真に受けていない。そもそも急に見たこともない異形が現れて魔王だなんて言われても、信じられるわけがない。リゼはハデスの正体は間違いなくコスプレした変人だと思っている。

 これは本田の死がどう見ても超常的な不可思議現象じゃないということも原因だ。本当に魔王なら不思議な力で殺害して力を誇示したら良いのに、そういう殺し方をしなかった。

 問題はルール違反に対するペナルティだ。違反者はあのリーゼントのように死ぬらしいが、どうやら警察に突き出すという行為自体はルール違反に該当しないらしい。
 もしもそれがルール違反ならとっくにリゼは殺されている。――まあ単純に自分の動向を観察されていない可能性もあるのだが。

(……つい口に出してしまったけど、結果的にルール違反じゃないことがわかったから収穫だな)

 感情的になって出してしまった言葉だが、それによってルールについて多少は理解出来た。自分の首が未だに繋がっていることを確認して、リゼは胸を撫で下ろす。

「でも精神のブレは戦場だと命取りになる。気をつけなきゃな……」

 心を落ち着かせるために、大きく深呼吸。
 突然の出来事につい取り乱してしまったが、自分がこんな有り様でどうする。リゼには友達が存在するが、みんな普通に日常を過ごしていただけの一般人だ。もちろんリゼも一般人には変わりないのだが、多少ならば戦うことも出来る。もしもココアやチノが参加していたら、完全に無力な彼女達を守れるのは自分だけだろう。
 だからリゼは冷静になろうと精神を落ち着かせる。


160 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:50:12 82sKLb7I0
――自分がみんなを守らなければならないから。

 あまりにも重い責任がリゼにのしかかる。それでも挫けず、連絡手段の有無を確認。

「やっぱり服以外は身ぐるみを剥がされてるか……」

 連絡手段どころかモデルガンやコンバットナイフすらも無い。どうやらそれらは没収されたらしいとリゼは判断する。

「次の手段だ。犯人が用意した物を使うのは、あまり気が進まないけどな……」

 所持品を没収されているなら、このKCという不思議なロゴが入ったデイパックに頼るしかない。リゼは磯野やハデスのことを信用していないし、出来ればこれに頼りたくはなかった。
 だが何も武器がない状態は非常に危うく、殺し合いに積極的な者に見つかったら殺されてしまう。それにもしかしたら警察に連絡を取るために使えそうな道具が入っているかもしれない。
 わざわざ警察への連絡手段を用意するほどお人好しな主催者だとは思えないからあまり期待してないが……とりあえず確認してみなきゃわからない。なにより武器だけでも確保しておきたかった。

「これは……槍か!?」

 幸いにも武器はすぐに見つかった。デイパックに入ってた槍を手に取り、まじまじと眺める。実物としてはあまり見慣れないものだが、それは間違いなく槍だった。

「出来れば銃が良かったけど、何もないよりはマシかな……」

 リゼが得意とする武器はどちらかと言えば槍よりも銃だ。もしも銃が入ってたら大当たりだったが、素手よりは幾分かマシなので槍でも良しとする。

「おい、ハデス。こんな武器を配られても、私は殺し合いなんて絶対にしないからな!」

 おそらく武器の配布は殺し合いを活性化させるためだ。人間を殺すためには武器が必要だ――それをリゼはよく理解している。
 だから自分は絶対に殺し合いなんてしないとハデスに言うと、槍の説明書を読み始めた。

 これは殺し合いを円滑に進めるためにばらまかれた武器だ。ハデスを信じる気はないが、ここに書いてあることに偽りはないと憶測する。殺し合いの武器として配られたから性能や説明に信用が出来るというのは、なんとも皮肉な話ではあるが……。

「リゼ専用スピアー?……見間違いか?」

 説明書に記された名前を見て、困惑する。そこには自分の名前が書いてある上に専用だなんて名付けられていたからだ。
 何か変な見間違いでもしたのだろうかと、目をゴシゴシと擦ってもう一度読む。――何も変わらない。

「読み間違いとかじゃなくて、本当にこんな名前だったのか。……私っていつから槍に自分の名前を付けられるような有名人になったんだ?」

 意味不明な武器名に困惑しながら、説明書を読み進める。
 名前こそふざけてるとしか思えないものだが、その形状は立派な槍だ。どんな変な名前でも武器として扱えることは変わらない。

「変身って……ふざけてるのか……?」

 説明書を読んで再度困惑――というか呆れ果てる。
 並行世界で手にした秘められた力を解放するとか、本人の意志に応じて変身するとか。そんなことを書かれても悪ふざけとしか思えない。
 これはとんでもないハズレ武器を引きたのかもしれない――そう思って槍を眺めるが、やっぱり槍は槍だ。その精巧なクオリティはよくある特撮の玩具には見えない。
 ちなみに変身することで盾まで現れるらしい。本当に意味不明だ。デタラメを書いて困惑させる目的だろうか?

「いや……まあ試しもせずに否定から入るのも、良くないよな……」

 どう考えてもデタラメとしか思えないし、ハデスとかいうコスプレ男が悪ふざけの産物でよこしてきとしか思えないが……。それでも何も試さないよりは、試してみた方が良いのかもしれない。なにせこれはココアやチノ達を守るための武器だ。戦うための手段だ。


161 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:50:24 82sKLb7I0
 それに相手はいつの間にか自分を連れ去るという謎の技術もあったわけで、もしかしたら本当にこの槍にも何か力が秘められているのかもしれない。

「えーと……こうでいいのか……?」

 槍を握り、力を込める。瞳を閉じて神経を集中――。誰か居たら恥ずかしいが周りには誰もいないはずだから、とりあえず形から入る。

「――変ッ身!!」

 そして力強く魔法の言葉を口にすると――盾が現れ、リゼの服装が変化した。全身に力が漲り、戦士としてより高みへ至ったことを実感する。

「本当に出来た!あの説明書、嘘じゃなかったのか!!」

 ダメ元で試しにやってみたら、まさかの変身成功でビックリする。槍や盾も身軽に感じるし、身体能力の向上というのも嘘じゃないらしい。

「……よし。これならココア達を守ることが出来るな!」

 戦う術を得たことでリゼは喜ぶ。
 警察に連絡する手段が見つからなかったことは残念だが、予想外の力を手に入れた。コスプレ男ハデスは殺し合いを促進させるために投入した武器だろうが、そんな悪用はしない。これは友達を守るための力だ。

「待ってろよ、みんな。ハデスは私が倒す!」

 リゼは主催者を倒して殺し合いを終わらせることをココア達に誓う。
 もしもみんなを見付けたら、もちろん助けるつもりだ。それが身内の中で唯一戦える、今の自分の役割だから。


162 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:51:15 82sKLb7I0
 〇

 それは橘が剣崎の代わりに運命と戦うことを決意して、少し時間が経った時のこと。

「――変ッ身!!」

 聞き覚えのある――というか自分がよく口にするフレーズが聞こえた。
 変身――それは仮面ライダーならば誰しもが口にする言葉だ。
 仮面ライダーギャレンこと橘朔也がそれを聞き逃すわけもなく、聞き間違えるわけもなく――少女が気合いを入れて変身する声が耳に入った。
 女性の仮面ライダーに心当たりはないが、こんなイレギュラーな状況だ。もしかしたらハデスが独自に研究、開発して新たなライダーシステムを生み出したのかもしれない。

「状況は未だに掴めないが、とりあえず確認しに行くしかなさそうだな」

 そして橘は少女の声が聞こえた方角へ向かう。声の大きさからして位置はあまり離れていないという確信があった。
 そしてその予想は的中し「変身」と口にしたと思われる少女の姿はすぐに見つかった。槍と盾を手にした、少し気が強そうな少女だった。

「さっき変身したのは君か?」
「ああ。たしかに私だけど……誰だ、あんた」

 いきなり見知らぬ男に声を掛けられてリゼが警戒する。普段ならともかく、ここは殺し合いという場だ。初対面の相手には多少なりとも警戒心を持ってしまう。

「俺は橘。仮面ライダーギャレンだ」
「私の名前はリゼだ。……仮面ライダー?それって何かの称号か?」

 仮面ライダーという単語を交えつつリゼに挨拶するが、相手の様子からしてどうやらその意味を理解していないらしい。
 橘が読んだギャレンバックルの説明書には仮面ライダーという文字がしっかりと記載されており、この少女がライダーシステムを支給されたのなら仮面ライダーという言葉の意味が理解出来るはずだ。
 すっとぼけているだけの可能性もあるが――橘は彼女の服装や槍と盾の形状に着目する。

「その槍や盾はどうやって手に入れた?」
「さっき言っただろ。変身だよ、橘さん。この槍を握って気合を入れると変身出来たんだ。盾はその副産物だな」
「なに?ライダーシステム以外にもそんなシステムがあるのか……!?」

 未知のシステムの存在に橘が驚く。彼の世界には仮面ライダーやアンデッドが存在するが、こういうタイプのシステムは見たことがない。――この瞬間、互いの世界が違うことを橘が察した。

『この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い』

 橘はハデスの言葉を思い返す。

(ハデスのあの言葉は本当だったというわけか)

 無数の世界。いきなりそんなことを言われてもピンと来なかったが、こうして他の世界の技術を目にしたことで実感する。どうやらハデスの言う通り、この世には無数の世界が存在するらしい。

「私もよくわからないから、詳しくは説明書を読んでくれ」

 そう言って橘にリゼ専用スピアーの説明書を渡す。そこに記された並行世界という単語を見て、ハデスの言葉の説得力が更に増した。しかしこの説明書に記された並行世界のリゼという言葉から考えるに、今自分と話しているリゼは本来、何の力も持たない一般市民なのだろうか?

「リゼ。君は決闘者という言葉に聞き覚えはあるか?」
「ハデスの言ってたことか?それなら私も初耳だ」

 リゼの言葉に偽りはない。それは彼女の態度からも伝わってきた。

「橘さんは知ってるのか?」
「俺も初めて聞いた言葉だ。ハデスはら様々な世界から決闘者を呼び寄せたと言っていたが、どういうことだ……?」

 橘はハデスの言葉が引っ掛かっていた?
 少なくともこの場にいる二人――橘とリゼは決闘者じゃない。それどころか言葉の意味すらも知らない。これはいったい、どういうことだろうか?

(情報が少ない今、そんなことを考えても仕方ないか。ハデスについては地道に手掛かりを探すしかない……)


163 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:51:45 82sKLb7I0

 橘はハデスについて考えることを一時的に中断した。色々と気になることはあるが、今は後回しだ。情報が出揃っていない状態で考察しても答えは出ないだろう。

「……そういえば橘さんは仮面ライダーギャレンって言ってたけど、結局仮面ライダーってなんなんだ?」
「簡単に説明するとアンデッドという化け物と戦って人々を守る存在だ。……大切な人は守れないことも多いけどな」

 小夜子と剣崎。あの二人のことを救うことは出来なかった。
 伊坂やカテゴリーキングを倒すことは出来ても――小夜子と剣崎を助けることは不可能だった。剣崎は自分で覚悟を決めて、自分で運命と戦う道を選んだ。だがそれでも――どうにかしてあいつを救える方法がなかったのかと、そう考えてしまう時がある。

「そっか……」

 リゼは橘の事情を深くは追求しない。……追求してはいけないと思ったから。
 それでも一つだけ、どうしても頼みたいことがある。

「橘さん。私もみんなを――友達を守りたいんだ。……だからもし良ければ、私を特訓してくれないか?」

 リゼの頼みに橘は暫し思案する。
 これまで戦いに無縁だった少女を鍛える。それは必然的にこちら側に引き込むことになるだろう。
 普段ならばすぐに断っていたかもしれない。睦月のような特殊な状況ならともかく、一般人を巻き込むような行為には抵抗がある。
 だが今は殺し合いという特殊な状況だ。本人が自分自身を守るためにも強くなって損は無い。もちろん橘もリゼのことを守るつもりだが、自分が助けに行けないような状況が訪れる可能性も否定出来ないから。

「わかった。リゼ、君には俺が戦い方を教えよう」
「それは助かる。ありがとな、橘さん!」

 こうして橘朔也と天々座理世による師弟が結成された。
 大切な仲間のため。友達のため。彼らは戦う道を選ぶ――

【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:橘さんと一緒にハデスを倒してみんなを助ける!
1:橘さんに特訓してもらう
2:みんなは私が助けなきゃな……
[備考]

【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:健康
[装備]:ギャレンバックル@仮面ライダー剣
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:剣崎の分まで人々を助ける。ハデスも倒す
1:リゼを守る
2:リゼに戦い方を教える
3:決闘者の意味すら知らない参加者まで集められてるのは、どういうことだ?
[備考]
最終回後からの参戦


『支給品紹介』
【リゼ専用スピアー@きららファンタジア@きららファンタジア】
天々座理世に支給。リゼが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すための槍。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する他、専用の盾が現れる。変身中はきららファンタジアの『ナイト』のリゼの衣装に服装が変わる

【ギャレンバックル@仮面ライダー剣】
橘朔也に支給。♦A「CHANGE」のラウズカードを差し込んでから腰に宛がう事で、自動的にベルトが伸びて腰に装着される。
「変身」の掛け声と共にターンアップハンドルを引く事で、「Turn Up」の電子音声と共にリーダーが回転し、
ギャレンアーマーを分解した等身大のカード型エネルギーフィールド「オリハルコンエレメント」が装着者の前面に放出され、エレメントを通過する事でギャレンに変身する。

適合者以外がゲートを通過する事は不可能で、適合者以外が触れたら弾き飛ばされる。その習性を利用することで攻撃にも防御にも応用できる。
ラウズカードはJ、Q、K以外が付属されている。
当然だが変身後はギャレンラウザーも現れる。ラウズアブゾーバーは付属されていない。


164 : 永遠の切り札が齎した意志/二人目の弟子 ◆QUsdteUiKY :2022/05/24(火) 23:51:59 82sKLb7I0
投下終了です


165 : ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 00:57:36 5u.RwYfY0
投下します。


166 : ただ一つの「ホント」を手に入れるために ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 00:59:35 5u.RwYfY0
『やちよさんが自分のせいで誰かが死ぬって思ってるなら、私がそうじゃない前例になります』


嘘つき


『やちよさんの願いがねじ曲げられてしまったのなら…私はそれを撥ね退けてみせる。それくらいできます!』


嘘つき


『私、簡単に死んだりしません。約束します。やちよさん』


いろはの、嘘つき





トドメを刺すべく槍を振り下ろせば、伝わって来るのは肉を貫いた不快感。
長年の戦いで慣れてしまった、命を奪う感覚。
初めて魔女対峙に挑んだ時はどうだっただろうか。
あの頃はどうしようもなく弱くて、魔女を倒すどころか生き延びるだけでも精一杯だったっけ。

不意に浮かんだ過去への感傷は、短い悲鳴により掻き消される。
得物を引き抜くと、途端に濁った血が溢れた。
目が痛くなるような紫の胴体に、頭部からは二本の角。
悪魔と呼ぶのが相応しい見た目のソレらの死体が4体、今殺した分も含めれば5体転がっている。
魔力パターンが明らかに違い、結界が展開されていない事から魔女やウワサの使い魔ではないようだが中々に力はあった。
神浜市の強力な魔女に慣れていない魔法少女だったら、あっという間に切り刻まれていただろう。

青い衣装の魔法少女、七海やちよには関係の無い話だ。
キュゥべえと契約し早7年という歳月は、他の魔法少女を寄せ付けない圧倒的な強さをやちよに齎した。
戦闘のエキスパートであるデーモン数体が相手になったとて、そう易々と後れは取らない。
勝利への感慨に浸る事も無く、変身を解きソウルジェムを確認する。
穢れは大したことない。今すぐグリーフシードが入り用ではないが、やちよの表情は晴れない。
調整屋で都合して貰ったグリーフシードは懐から綺麗さっぱり消え失せており、デイパックにも入っていなかった。
神浜市にいる間は魔女にならないと知っていても、そう頻繁にドッペルを出すのが危険なのも事実。
そもそもここが神浜市かどうかすら判断が付かない。


167 : ただ一つの「ホント」を手に入れるために ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 01:00:54 5u.RwYfY0
「どういう状況なの、これ……」

現在の状況はやちよにとって何もかもが不可解だ。
気が付いたら身動きが取れなくなり、リーゼントの少年が殺され、見知らぬ男と化け物に殺し合い(デュエル)を強要された。
不覚にも気付かぬ内にウワサに足を踏み入れ巻き込まれたかとも考えたのだが、このような噂は聞いたことが無い。

他に可能性の高いものとしては、マギウスの翼のよからぬ計画。
具体的にどれくらいかは不明だが、マギウスの翼は組織として決して小さくないだろう。
連中が掲げる魔法少女の解放と殺し合いがどう繋がるかは知り様が無いものの、死者が出ている時点で唾棄すべき内容だろう事は分かる。

しかしこれがマギウスの翼の手によるものだとしたら、疑問も生まれて来る。
最初に殺し合いのルール説明をしたのは磯野と言うらしいサングラスの男。
魔法少女で構成された組織が成人男性を駒として使っているのは、首を傾げざるを得ない。
大体ああいった場での司会進行はマギウスの里見灯花自らが行いそうなものであるが。
何より磯野以上にやちよが気になったのは、ハ・デスと名乗った怪物。
あの男を目にした時、やちよは久しく全身が凍り付くような感覚を味わったのだ。
今まで対峙してきた魔女やウワサを凌駕する程の、圧倒的な存在感。
姿を見せ、言葉を口にしただけでハ・デスの持つ尋常ならざる力を感じた。
あれ程の怪物、たとえマギウスの翼であっても御し切れるとは到底思えない。

(結局、何がどうなってるのか分からない、って事ね…)

重苦しいため息をつく。
マギウスの翼が関わっているいないどちらにせよ、魔法少女としてこの馬鹿げた催しを止めたい気持ちはある。
だが同じくらい思う。どうしてこのタイミングでなのか。
正直言って、今はこんな殺し合いに関わっている余裕は無いと言うのに。

いろはがいなくなった。
記憶ミュージアムの崩壊からやちよを助ける為に、自ら手を離し奈落へと落ちて行った。
あの時やちよは確かに見た、いろはの身体に巻き付いたリボンを。
アレは間違いなく巴マミが魔力で作り出した物。
一度目は水無神社でいろはを魔女と勘違いし、二度目はマギウスの手先と化し襲って来た魔法少女。
マミのリボンに絡め取られたいろはがその後どうなったかは分からない。
だからマギウスの本拠地を突き止め、いろはを取り戻すべく神浜中のウワサを潰して回っているというのに。


168 : ただ一つの「ホント」を手に入れるために ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 01:03:06 5u.RwYfY0
よりにもよって何故今なのか。
焦りと苛立ちで端正な顔が歪むのを抑えられない。


《あなた、まだ分からないの》


酷く耳障りな声がした。
誰なのかは考えずとも分かる。

《いつまで無駄な事を続けるのかしら》

昔からこうだ。
やちよが取り返しの付かない過ちを犯した時、大切な仲間を失った時、
決まってこの声はやちよを嘲笑うように囁く。

《環いろはは死んだのよ?》

《あなたの願いのせいで、あなたと関りを持ってしまったせいで》

《何時まで現実から目を背けるの?》

相変わらずこちらの心を容赦なく抉るような言葉の数々。
聞く必要は無いと思っていても、体が震え出す。

《かわいそうな環いろは。あんなにあなたを信じていたのに、あなたの願いで殺されるなんてね》

「黙れっ!!!」

耐え切れずにやちよは叫ぶ。
周囲を射殺さんばかりに睨みつけ、激情のままに否定の言葉を叩きつけた。

「勝手なことばっかり言わないで!いろはは死んでない!あの娘は、私と約束したのよ!
 死んだりしないって!傍にいてくれるって!」

いろはが生きていると信じているからか、或いは最悪の結果から目を逸らす為か。
血を吐くようなやちよの叫びに、声はもう聞こえなくなった。


169 : ただ一つの「ホント」を手に入れるために ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 01:04:35 5u.RwYfY0
興奮冷めやらぬまま、やちよは足早にその場を去る。
とにかく、マギウスの翼が無関係ならば早急に殺し合いを止めた後脱出。
反対に関わっているなら好都合、どうにか引き摺り下ろしていろはの居場所を吐かせた後潰してやる。
グリーフシードの確保も必要だろう。じっとしている暇は無い。

(いろはは絶対に生きている……。邪魔をするならマギウスじゃなくても容赦はしない…!!)

自分を壊してしまいそうな怒りを抱え、先の見えぬ暗闇を射抜く。
その瞳は希望を与える魔法少女とは思えない程に、苛烈な色を伴っていた。


【七海やちよ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(確認済み、グリーフシードは無い)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:殺し合いにマギウスの翼が関わっているのなら引き摺り下ろし、いろはの情報を吐かせる。
2:殺し合いにマギウスの翼が関わっていないのなら、早急に脱出。
3:グリーフシードを手に入れておきたい。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン2話で黒江と遭遇する前。
※ドッペルが使用可能かどうかは後続の書き手に任せます。

『NPC紹介』
【デーモン・ソルジャー@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1900/守1500
デーモンの中でも精鋭だけを集めた部隊に所属する戦闘のエキスパート。
与えられた任務を確実にこなす事で有名。


170 : ◆ytUSxp038U :2022/05/25(水) 01:05:22 5u.RwYfY0
投下終了です。


171 : ◆BrXLNuUpHQ :2022/05/25(水) 02:41:30 3ZgDzsKc0
投下します。


172 : おっことSoulburnerのデュエルロワ ◆BrXLNuUpHQ :2022/05/25(水) 02:45:12 3ZgDzsKc0



 グツグツとマグマが流れる火山を見上げる和服の少女が一人。
 関織子ことおっこは、唖然とした顔で見上げていた。
 おっこは温泉旅館『春の屋』の若おかみだ。
 両親と共に事故に会い、一人生き残った彼女は、父方の祖母に引き取られて暮らしている。
 家の手伝いとして小学生ながらに若おかみとして働き、個性豊かなユーレイや鬼と共に、春の屋に泊まるお客様におもてなしをしてきた。
 それはたしかに、ふつうの子供とは言い難い人生だろう。親戚に引き取られるのも、不思議な存在が見えるのも、家の手伝いをするのも、一つ一つはそう珍しくなくても、全部一人で当てはまるなんてことは早々ない。
 でも、それだけだ。人とは違う人生を歩んでいても、超人的な生命力を持っていても、マンガのようなバトルなんてない。ただの給食が好きで機械音痴な小学生の女の子だ。
 そんなおっこが突如として参加させられた、この命がけの決闘。

「あの磯野っていう人が言っていた決闘って……殺し合いという意味……だよね」

 自分で口に出して、思わず背すじに寒いものを感じてブルっと身が震える。
 あの冥界の魔王と名乗ったハ・デスの言葉は、おっこには嘘だとは感じられなかった。
 春の屋に住み着いているユーレイのウリ坊や美代、鬼の鈴鬼といった面々とひとつ屋根の下で暮らしているからだろう、人ではないと感覚で理解した。
 そしておっこの頭に浮かぶのは、つい先ほどの惨劇。本田と呼ばれていた高校生ぐらいの人の首が、冗談のように爆破される光景だ。

「おばあちゃん……エツ子さん……康さん」

 気がつけばおっこは、自分の首に手を当てて呟いていた。
 もし、彼らが同じように首輪をつけられていたら、そう思うと心臓が早くなる。彼らだけではない、真月のような同級生や花の湯の人、もしかしたらこれまでのお客様まで巻き込まれているのかもしれないのだ。とても冷静でなどいられない。
 ギチギチと痛む心臓を服の上から抑えながら、おっこは駆け出した。
 ここにはウリ坊たちはいない。ユーレイである彼らに首輪をつけられないだろうことだけは安心できるものだが、それは助けも得られないということだ。自分でなんとかしなくてはならない。
 あてもなくおっこは下山をはじめる。もともとそんなに高くない山とはいえ、和装で山を行くのは無理がある。さすがのおっこも疲れてきたところで山小屋を見つけた。やっと着いた、と達成感と共にドアを開けようとした直前に、おっこは音に気づいた。

「この声……泣いてる?」

 そっと耳をすませば、山小屋の中から少年のような泣き声が聞こえる。扉の窓から中を覗き込むと、赤い何かが見えた。人だ。赤いボディスーツに、赤い奇抜な髪型をした男の人だ。膝を抱えて、怯えた様子ですすり泣いている。
 なぜだかおっこには、その姿がとても小さく見えた。外見だけならおっこより年上のはずなのに、まるで美代と同じぐらいの、小さな子供のように思えた。
 コンコンとノックすると、すすり泣く声が止まった。

「入っていいですか?」

 問いかけるおっこの言葉に、応えは返ってこない。
 だが、1分、2分、3分と扉の前で立ち続けて、ふいに扉が開いた。

「悪ぃ、待たせて……もう平気だ」

 そう言う少年の顔は、さっきまでの小ささをまるで感じさせないものだった。


173 : おっことSoulburnerのデュエルロワ ◆BrXLNuUpHQ :2022/05/25(水) 02:46:09 3ZgDzsKc0



「ほら、コーヒーだ。ミルクもあるぞ。」
「ありがとうございます。」

 山小屋の中におっこを招き入れた少年は、手際良くコーヒーを2つ入れると、カウンターに置いた。
 少年はしばらくおっこと目を合わせずにどこか遠くを見ていた、オレンジの瞳は赤く充血していてまだ少しうるんでいる。それでもおっこには、何かさっきと違って見えた。

「……ここまで歩いてきたのか?」

 少年の最初の言葉はそれだった。コーヒーを飲み干しておっこに目を向けると、眩しいものを見る目で言う。おっこが肯定すると「すげぇな」と苦笑いした。

「俺はダメだった。自分が誘拐された、そう思ったら、腰が抜けてへたりこんじまった。情けねえ、乗り越えたはずなのに……」

 心の傷をおっこは感じた。
 心に傷を負った人は、ときどきひどく寂しい顔をする。おっこは激変する生活でさびしいなんて思う間もなかったけれど、傷痕はその人の人生を前に進むのを防いでしまうのだ。
 おっこは傷を傷と思う間もなく春の屋での生活に馴染んだ。それはそれまでのおっこの人生にはないウリ坊という存在や若おかみという仕事が傷になったからだ。傷は傷でも、おっこを成長させる研磨のような傷。それがあるから、両親やそれまでの生活をなくしても笑顔を失わなかった。
 この男の人も、今はそうなのだろうと思った。きっと何か傷があって、でもそれを乗り越えたのだ。それでも、傷はどこかに残っている。おっこが抉られなかった古傷を少年は抉られている、なんて言葉ではわからずとも、「辛い過去にちょっとくじけそうになった」と理解した。

「私は、不安だったんです。私のおばあちゃんや大切な人が、同じように巻き込まれちゃったんじゃないかって思ったら、いても立ってもいられなくて走っちゃって、だからその……いろいろ手伝ってください!」

 おっこは何も考えず話していた。気がつけば口が動いて、伝えなきゃいけないと思ったことを話していた。
 今、言わなければいけないと思った。
 突然まくし立てたおっこに、少年はキョトンとしていた。やっちゃった、そう思ったおっこの前でまた少年は苦笑いして「強えなぁ」とつぶやいた。

「俺は、自分が誘拐されたことしか考えてなかった。家族とか大切な人とかそんなこと、なにも……ああーっ! ダッセェ! しめっぽいのはらしくねえぜ!」

 スイッチが入った、おっこはそう思った。
 おっこの飲んでいたコーヒーを一息にあおると、少年はビシッと指を前に向ける。
 自分のコーヒーを飲まれたことにも気づかずに、少年から目が離せない。

「ハ・デス! こいつは俺からの宣戦布告だ! お前がなんの目的でこんなことをしてるのかは知らねえ! だが必ずこの俺がお前をぶちのめす! 決闘だ!」

 それは堂々たる宣戦布告だ。さっきまでの膝を抱えて泣いていた姿からは想像もできないほどに、燦然と輝くような生命力を感じさせる覇気がこもっている。見ているおっこまで心を熱くさせるような『熱』を感じて、おっこも思わず立ち上がる。そして「がんばりましょう!」と言ったところで。

「あ、そういえば名前なんでしたっけ」

 少年はガクッと、指を差した姿勢のままコケた。

「今聞くのかよ! キマらねえなぁ」
「ご、ごめんなさい」
「俺は、穂村尊、いや、Soulburnerだ」
「そうるばーなー?」
「ああ、このカッコしてるからな。まあどっちで呼んでもかまわないぜ。君は?」
「関織子です。おっこって呼んでください!」
「わかった、おっこちゃん。じゃあ」

 ニッと笑ってSoulburnerは拳を突き出す。おっこは少し考えて、同じように拳を突き出した。

「一緒にこんなクソッタレなゲーム、ブッ壊してろうぜ!」
「はい!」

 ガツンと拳と拳がぶつかる。
 お互いの熱を、たしかに二人は感じた。


174 : おっことSoulburnerのデュエルロワ ◆BrXLNuUpHQ :2022/05/25(水) 02:54:41 3ZgDzsKc0



 関織子は両親を交通事故で失い、春の屋のみんなと出会い、立ち止まることなく『おっこ』になった。
 穂村尊はロスト事件で心に傷を負い、両親を交通事故で失い、それでも立ち上がり『Soulburner』になった。
 この決闘場で二人が何者になるかは、まだ誰も知らない。



【関織子@若おかみは小学生!(原作)】
[状態]:疲労(極小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘からの脱出
1:ソウルバーナーさんと協力する
2:おばあちゃんたちが巻き込まれていないか心配
[備考]
鈴鬼と出会った後からの参戦。

【Soulburner(穂村尊)@遊☆戯☆王ヴレインズ】
[状態]:不屈の心
[装備]:デュエルディスクとデッキ(転生炎獣)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:ハ・デスの打倒
1:おっこちゃんと協力する
[備考]
原作終了後からの参戦。


175 : ◆BrXLNuUpHQ :2022/05/25(水) 02:55:08 3ZgDzsKc0
投下終了です。


176 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 03:03:36 I0vygoSg0
投下します


177 : 希望の未来を途切れさせるかよ ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 03:04:52 I0vygoSg0
 神代凌牙ことシャークは悲劇的な運命を辿っていたが、九十九遊馬とアストラルが未来を切り拓いたことで彼も宿命から解放された。
 ようやく手に入れた平穏。命を懸けたデュエルの行われない平和な世界。

 だがそんな日々も長くは続かずシャークはこうして殺し合い――いや、命を賭した決闘に再び巻き込まれている。

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

 サングラスの男がそう話した時――シャークにはなんとなくこの計画の趣旨が理解出来た。
 それもそうだ。彼は何度も命を賭して、大切なものを賭して決闘をしてきた。
 だからいきなり連れ去られて決闘を強制されようが、そこまで極端に動じることはない。もちろんイラッとはするのだが。

『大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――』

 人が死んだ。人が死ぬ光景を見るのは初めてじゃないが――やはり気分が良いものじゃない。
 あの本田とかいうリーゼント頭とそいつに声を掛けた男はきっと友人同士だ。シャークに彼らの関係性を深く知ることは出来ないが、それくらいあのやり取りだけでわかる。

 だからこそ本田は遊戯と呼ばれた友人達のために刃向かった。違反行為と言われても、諦めずに立ち向かった。
 彼を見て無様だとか、滑稽と笑う者もいるだろう。本田の行為はシャークから見ても馬鹿そのものだった。

 ――そうだ。あいつは間違いなく馬鹿だ。それもどっかの誰かみたいなタイプのお人好しときた。

 シャークは本田の死に様に一人の少年を重ねた。友達思いで、どんな強敵にも立ち向かう折れないハートの持ち主――九十九遊馬。

「イラッとくるぜ……!」

 悲劇はもう何度も見てきた。この手で好敵手を屠ったこともあった。
 それでも――何度見ても決して見慣れるものじゃない。

『この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い』

 無数の世界。アストラル世界やバリアン世界を知るシャークにとっては何も驚くことじゃない。冥界の王という存在は初耳だが、そういう存在が居ても何ら不思議ではない。シャークは苛立ちを募らせながらも、頭は冷静に現実を受け入れている。

「全世界の決闘者か。これは思った以上にまずいかもしれねえ……」

 全世界の決闘者――その言葉に偽りはないだろう。自分もいつの間にか連れ去られていたのだ、他の決闘者が同じように巻き込まれても不思議じゃない。
 そして全世界の決闘者ということは、おそらく遊馬も巻き込まれている。カイトやIVやベクターやミザエルも巻き込まれているだろうが、あいつらは良い。あいつらなら今回の決闘でも乗り越えられる。

 ――だが遊馬はダメだ。説明書を読む限りこの決闘はルール無用の殺し合い。自分達が命を賭してやっていた決闘とも違う、本当の意味で殺し合いだ。
 まあベクターのような悪辣な輩も遊馬はなんとかしてきた。それはシャークもよく知っている。

 だがベクターのような奴が何人、何十人も居たらどうだ?
 きっと遊馬のように純粋で優しい人間はロクな目に遭わない。都合良く利用されるに違いない。
 これが自分達の知る決闘なら遊馬のことを心配する必要もそれほどなかっただろう。むしろ彼が未来を切り開くと信じる事が出来た。
 だがルール無用の殺し合いを決闘と言うのなら、話は別だ。卑怯も騙し討ちも、なんでもありの殺し合いで生き抜くには遊馬はあまりにも優しすぎる。それにあいつは何かと無茶をし過ぎだ。

「フッ……。俺がなんとかするしかねえか」

 九十九遊馬を死なせない。それがシャークが真っ先に決めた目標だった。
 遊馬だけじゃない。カイトも、IVも……一応ベクターも。そして璃緒も。誰も死なせる気はない。
 せっかく遊馬が導いた希望の未来だ。それをわけもわからない冥界の魔王に奪われてたまるか。


178 : 希望の未来を途切れさせるかよ ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 03:05:39 I0vygoSg0

 冥界の魔王だろうがなんだろうが、真っ向からぶっ倒す。全世界から決闘者が集まってるならカイトやIVのような共に戦うことの出来る決闘者がいるはずだ。もしかしたらアストラルも――。

 だからそれまで――

「絶対に死ぬんじゃねえぞ、遊馬!」

 最高の決闘が出来た生涯の友――九十九遊馬。
 どんな逆境も人を信じる力と諦めない心で――かっとビングを胸に戦い続けた親友。

 彼を意地でも殺させないために、神代凌牙はデュエルディスクからカードの剣を抜く。

「バレてねえと思ってたのか?」

 シャークの言葉に反応して、周りからモンスターの群れが現れる。彼らは皆、シャークを狙っていたモンスター達だ。
 どうやって獲物を痛め付けるか考えつつ、機を窺っていたようだが――その存在はとっくに知られていた。

「俺は手札からビッグジョーズを召喚!」

 シャークが《ビッグジョーズ》をデュエルディスクにセットすると、大型の鮫のモンスターが召喚された。目の前の存在がモンスターを駆使するタイプの参加者――決闘者だと知ってNPCのモンスター達が警戒態勢に入る。

「更に俺は魔法カード《アクア・ジェット》を発動! 水属性モンスター1体の攻撃力を、このターンのエンドフェイズまで1000ポイントアップする!」

 シャークのマジックコンボが華麗に決まり、攻撃力2800となったビッグジョーズがNPC達を一気に破壊。一掃してしまう。
 所詮NPCはNPCだ。参加者同士の殺し合いの妨害にならない程度に強さを留められている。攻撃力2800のビッグジョーズに攻撃宣言をされてしまえば為す術なくやられるのは必然だった。

「なるほど。ここだとデュエルディスクでモンスターが実体化するってのは本当みてえだな」

 デュエルディスクの調子を試すついでの初陣を終え、シャークは遊馬を探すために突き進んだ

【神代凌牙@遊☆戯☆王ZEXAL】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(神代凌牙)@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:遊馬の導いた希望の未来のために主催者を倒す
1:遊馬を探す
2:カイトやIVが居たら協力するか……?
[備考]
参戦時期は最終回後

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(神代凌牙)@遊☆戯☆王ZEXAL】
神代凌牙に支給。神代凌牙ことシャークが愛用しているデッキ。
リアルでは激弱のエアロシャークもアニメ効果だとバッチリ使えるエースモンスターに!


179 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 03:05:54 I0vygoSg0
投下終了です


180 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:14:33 4.1xxbCA0
投下します


181 : 救おうとする剣士と救えずとも乗り越えた剣士 ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:15:41 AHUBAZUE0
 雷の剣士と水の剣士――二人の剣士が互いの刃を交わす。
 どちらも仮面に隠れてその表情は見えないが、非常に緊迫感のある状況で勝負は互角。

「どうして君と戦わなければならないんですか!?僕達は仲間のはずです!
「すまない、倫太郎……。だが世界を救うにはこれしかないんだ」

 水の剣士・新堂倫太郎の問いかけに対して雷の剣士・富加宮賢人が答える。
 彼らは同じソードオブロゴスの仲間。そして倫太郎にとって信じる力で共に絶望の未来を変えた友達だ。

 どんなに過酷な物語でも倫太郎は自分を絶対に諦めなかった。そして賢人もまた自分の想いを貫き、ストリウスに立ち向かったことを倫太郎は知っている。
 飛羽真を決めた三人で――いや全ての仲間と共に最悪の未来を回避し、物語の結末を決めたはずだった。

 だが今この場にいる彼らは賢人は明らかに様子がおかしい。まるで前の賢人のようだった。

「何を言ってるんですか!?僕達はみんなでストリウスを倒したはずです、思い出してください!!」

 この世界を――物語を終わらせようとしていた黒幕のストリウスは倒した。みんなの想いが未来の物語を生み出した。
 それなのにどうして賢人は過去と同じような発言をしているのか――倫太郎には皆目見当もつかない。
 まずは殺し合いが始まり、すぐに賢人に出会った。心強い仲間と再会出来て喜び、ハデスを倒そうと気を引き締める倫太郎だったが――そんな彼に向かって賢人は刃を向けた。

 仮面ライダーブレイズと仮面ライダーカリバー。二人の仮面ライダーの激突はこうして幕を開けた。

「お前こそ何を言ってるんだ……?」

 倫太郎の言葉に賢人が困惑する。
 彼はストリウスを倒したと言っているが、そんな覚えはない。そういう未来ならば見たこともあるが……現実として起こったわけじゃない。

「まさか記憶喪失にでもなったんですか、賢人!」
「俺は何も記憶を失っちゃいないさ。これまで見てきた絶望の未来も――この頭に焼き付いてる」

 賢人は記憶喪失でもなければ、狂ったわけでもない。彼は幼馴染の飛羽真を救うため、孤独に戦っている。
 何度も飛羽真が死ぬ未来をみてきた。倫太郎はストリウスを倒したと言っているが、もしも仮にそれが本当だったとしても――メギドを倒したところでこの未来は変えられない。世界は滅び、飛羽真は死んでしまう。

「いいや賢人は明らかに記憶を失っています!証拠として昔の賢人が言っていたことをまた言ってるじゃないですか!!」

 ――賢人にとっては現在進行形の悩みでも、倫太郎にとっては過去のことだ。

 賢人は紆余曲折を経て再び仮面ライダーエスパーダに戻り、飛羽真や自分と共に戦った。そして激戦の末にストリウスを倒し、世界を救ったのだ。


182 : 救おうとする剣士と救えずとも乗り越えた剣士 ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:16:12 RNxsZkCc0
 それなのに何故か賢人は再び聖剣を封印しようとしている。それどころか命すらも狙ってきているように見えた。

「気が動転してるのか……?」

 倫太郎の態度を見て賢人は彼が焦燥感からおかしくなったと判断した。
 だがそれもまた間違っている。倫太郎は何も狂っていない。ただ二人が連れてこられた時間軸が致命的なまでに噛み合ってないのだ。

 ――倫太郎は世界を救い、父親までもを乗り越えた時間軸から連れてこられた。だから当然、賢人も自分と同じ時期の存在だと思っているし、過去の言動を繰り返す彼を記憶喪失だと思い込んでしまったのはそれが原因だ。賢人がエスパーダに変身していないことも引っ掛かっている。

 ――一方の賢人は聖剣を封印して世界や飛羽真を救おうとしていた時期から連れてこられた。だから倫太郎の言葉が意味不明でしかないし、失礼だが焦燥感でとち狂ったんじゃないかとすら思っている。メギドを倒しても救われない未来を見たのに、倫太郎がストリウスを倒したからなんとかなったとでも言いたそうな口調で話していたのも不可解だ。

 倫太郎と賢人はお互いにすれ違ったまま、一進一退の攻防が続く。だが仲間に対して手加減しつつ説得を試みている倫太郎は防戦一方で。賢人が優勢だ。
 もしもこの場に飛羽真が居たら何かが変わっていたのかもしれないが、残念ながら彼の姿はない。

「賢人……あなたはいったい、何をしようとしてるんですか!」
「この決闘で優勝して俺が世界を救う。……世界を救うにはそれが一番確実で手っ取り早い」
「それが剣士の言うことですか!?」

 倫太郎には理解が出来ない。世界は救われたのに、どうして未だに賢人はこんなことになっているのか。記憶喪失なのか、ハデスに何か仕組まれたのか――そういう考えが頭を過ぎる。

「冥界の魔王は最後の一人まで生き残れば願いを叶えると言った。人々を殺すのは心苦しいが……世界や飛羽真を救うためにはこれしかない」
「自分の願いのために人々を殺すなんて、そんなことが本当に正しいと思ってるんですか!?」

 倫太郎が問い詰める。その顔はマスクに隠れて見えないが、彼の怒り顔が賢人には思い浮かんだ。
 それはマスターロゴスの剣士としての感情じゃない。まるで友達や仲間を叱るような態度で……賢人の心が僅かに揺らぎそうになる。
 そもそも富加宮賢人は本来、他人の命を奪えるような性格じゃない。いつもの彼ならば倫太郎と手を組み、ハデスに立ち向かっていたことだろう。

 ――だが今の賢人は最悪の時期に連れてこられてしまった。
 世界を救う。飛羽真。そのために剣士を襲い、聖剣を封印してきた。
 巻き込まれたのはその最中のことで必然的に世界や飛羽真を救うことが第一目標となる。
 更には主催者には願いを叶える力まであるらしい。いつもの賢人なら疑うところだが、今の賢人にはその言葉がスっと入ってしまった。ハデスの風格を見て「彼なら本当に願いを叶えられる」という説得力を感じてしまったのも大きいだろう。
 冥界の魔王に世界や飛羽真の救済を願うとは皮肉な話だが、それで救えるならばこの決闘を受け入れよう。
 それほどまでに賢人の精神は追い詰められている。

「俺は世界と飛羽真を救う。……倫太郎、お前のことも後で必ず救う」
「そんなことさせません!僕は剣士ですから……大切な人や世界は僕が守ります!――もちろん、他の人たちの命も!!」
「この殺し合いで死ぬ人たちも含めて救ってもらうように俺が願うから大丈夫さ。冥界の魔王なら死者蘇生なんて造作もないはずだ」
「全く意味がわかりません。少しは正気に戻ってください!」

 防戦一方だった倫太郎が押し返していく。
 このままでは賢人は本当に人を殺めてしまう。そうはさせない。仲間や友達として、賢人にそんなことはさせたくない。
 だから倫太郎も賢人と戦う覚悟を決めて、自分も攻め始める。

「……もうわかりました。賢人の暴走は僕が止めます!」

 もちろん賢人と違って命まで奪う気はない。だが口で説得しても無意味だということがよくわかった。それならもう、互いの剣に想いを乗せて戦うしかない。


 ――だが最初から本気で襲って来ている賢人と途中まで防戦一方だった倫太郎では分が悪すぎた。それに命を奪う覚悟さえ決めた賢人とそうじゃない倫太郎。勝負の行く末は見えているようなものだった。

 結論から言おう。倫太郎は善戦こそしたが、賢人に敗北した。


183 : 救おうとする剣士と救えずとも乗り越えた剣士 ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:17:09 g942288g0
 仮面ライダーブレイズが変身解除され、生身の倫太郎が地に伏す。賢人の方もそれなりに負傷したが、倫太郎を変身解除まで追い込んだ時点で彼の勝ちだ。

 カリバーが剣を構える。倫太郎を――ソードオブロゴスの仲間の姿をしっかりと目に焼きつける。今から彼は仲間の命を奪うのだ。後で蘇生させる予定だが――それでもなかなか情は捨て切れない。

「また会おう、倫太郎。――これで話は終わりだ」

 仮面で隠れて涙は見えないけど……今にも泣きそうな顔で覚悟を決めて、カリバーは剣を振り下ろした。

 ガ キ ン !

 ――カリバーの闇黒剣月闇が何者かに受け止められた。

「何者だ……!?」

 まさかこのギリギリのタイミングで乱入者が現れるとは思わず、賢人が驚きの声をあげる。
 乱入者の正体は少年だった。額にバンダナを巻き、耳の尖った剣士。手にしている剣は漆黒で、まるで夜空を思わせる。
 剣士といっても賢人や倫太郎のような存在ではなく、ファンタジー世界にいるような――そんな雰囲気を感じさせる少年だった。

「僕は――」

 賢人の問いに答えようと少年が口を開く。どちらの名前を名乗るか少しだけ迷って――より自分にとって特別な方を選んだ。

「僕は血盟騎士団のノーチラスだ!」

 ――以前は忌々しい記憶だと思っていたけど、今はもう違うから。
 だから彼はエイジではなく、ノーチラスと名乗った。

『辛いことがあったからって、過去の自分を否定するような奴に負ける訳にはいかない!』

 ――かつて黒の剣士が口にしていた言葉を思い出す。
 アインクラッドで起きた出来事は辛い。大切な人を失ったことはあまりにも辛い。
 だからってもう自分の過去を否定する気はない。ユナを生き返らせるために他の人々を犠牲にすることもしない。

 ハデスはどんな願いも叶えると言った。それを利用したらきっとユナを生き返らせることだって出来る。かつて自分がやろうとして失敗したことを、今度こそ達成出来る機会が訪れたのだ。

 ――そんなことを理解した上でエイジはハデスと戦う道を選んだ。
 諦めたことを諦めれずに振り返るのは、もうやめにしたから。


184 : 救おうとする剣士と救えずとも乗り越えた剣士 ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:17:24 g942288g0
 自分は黒の剣士のようにはなれない。そんなこともわかってる。それでも諦めない。主催者に立ち向かう事が危険だと承知して、それでも立ち向かう。

 彼はもうあの時のエイジじゃないから。
 エイジはこのゲームに巻き込まれる直前、PoHという自分が勝てるはずもない圧倒的な格上に立ち向かい、そして敗北した。
 だが負けたというのに――痛い思いをしたというのに、不思議と嫌な気分にはならなかった。
 自分のやるべきことをやって、ユウナに見守られて、そして――――。

「服装の変化……?変身か――!?」

 エイジのアバターがALOのものから、SAO時代のものに――血盟騎士団の服装に変化する。
 それは賢人も知らない未知の技術。そしてエイジの心の力であり、在り方が反映されたもの。
 ――それが心意。システムすら上回る人間の意志の力に他ならない。

 そしてアバターの変化と共にステータスも向上。負傷している賢人はエイジに押し負け、何発も攻撃を浴びせられる。
 そしてまだ倫太郎も居る。彼は「間一髪で助かりました。ありがとうございます」と礼を言うと立ち上がり、再び水勢剣流水を構える。

 賢人と倫太郎だけで対決していた時から状況は変わり、二対一。それも相手は未知の技術で戦う剣士で負傷もない。
 賢人としては不利な状態になってしまったが、彼の第一目標は優勝して世界と飛羽真を救うこと。今この場で無理をしてでも彼らを殺す理由などない。
 だから賢人は迷わず撤退を選択した。願いを叶えるためなら、情けない姿を晒そうが構わない。

「――ッ!待ってください……!」

 倫太郎が痛みを堪えながら追い掛けようとするが、疲労と負傷でまだ上手く身体が動かせない。最初は説得するために防戦一方だったこともあり、賢人よりも倫太郎の方が傷が深い。

 エイジは賢人を追い掛けることもせず、倫太郎と共に居た。このまま放置しても危険だし、未知のアバター技術を駆使する彼と情報交換しようと思ったのだ。ハデスに自分だけで勝てないことも理解しているから、倫太郎次第だが共闘も視野に入れている。
 ちなみに賢人や倫太郎などソードオブロゴスの剣士達はアバターを使っているわけじゃなくて仮面ライダーという存在に変身しているだけなのだが、今のエイジはまだそんなことを知らない

【富加宮賢人@仮面ライダーセイバー】
[状態]:負傷(小)、疲労(中)
[装備]:闇黒剣月闇&邪剣カリバードライバー&ジャアクドラゴンワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して世界と飛羽真を救う。もちろん決闘の犠牲者達も救う
1:あの謎の剣士は何者だ……?
2:誰であろうと殺す
3:倫太郎のあの意味不明な言動は……?
[備考]
参戦時期は聖剣を封印して回ってる最中

【新堂倫太郎@仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏】
[状態]:負傷(中)、疲労(大)
[装備]:水勢剣流水&聖剣ソードライバー&ライオン戦記ワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘に巻き込まれた人たちは僕が守ります!
1:賢人を追い掛けたいのですが、身体が動かないので休憩します……
2:どうして賢人が記憶喪失に……
3:助けに来てくれた剣士と話し合いたいです
[備考]
参戦時期は本編終了後から。父とのやり取りを含め、全て記憶を覚えています

【エイジ@ソードアート・オンライン(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:夜空の剣@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝してユナを蘇生させる気はない。ハデスと戦う
1:しばらく剣士の男と休憩する
2:剣士の男が変身していたアバターについて知りたい
3:黒の剣士が居たら今回は共闘も視野に入れる
[備考]
参戦時期はソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworldの17話でPoHに敗北してから。
普段はALOのアバターですが心意によって血盟騎士団の頃のアバターになることが可能で身体能力が向上します


185 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 13:17:55 g942288g0
投下終了です


186 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:14:45 PFHA.JMw0
投下します


187 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:16:03 PFHA.JMw0
 最初はモブでしかなかった。
 モブのまま、NPCのように生きて。
 で、解放されたら人生詰んでいた最悪の人生だ。
 詰んだ中で、もう一回同じ世界へと呼ばれちまった。
 後悔しない世界にいたことが後悔したのが理由で後悔しない世界についた、
 なんてクソみてえな話だ。後悔する権利すら奪われるなんて。

 でも、今はボーナスタイムだと思った。
 今回のオレは命懸けで戦うことができる存在だって。
 しかも、こんな元モブだったオレと一緒に連携できる後輩もいる。
 どうみても主人公じゃん? これ。モブができることじゃあねえだろ?
 お先真っ暗は変わらないし、この世界は嘘だ。現実に戻ったら詰んだ人間だ。
 でも、こういうのも悪くねえなとは思えた。今だけがオレの人生であり、
 モブだったオレが主人公でいられる唯一の瞬間がそこにあったんだよ。
 ……で、次はこれかよ。

「ふっざけんなよテメエエエエエッ!!」

 殺し合いの舞台であるにもかかわらず、
 一切の遠慮なく叫びながら周囲に当たり散らす存在がいる。
 アスファルトで舗装された路上にはトゲがついた甲羅のカメや、
 巨大な一つ目に翼の生えた悪魔、ハサミを持った蜘蛛等、ある世界でモンスターと呼ばれるNPCだ、
 冥界の魔王ハ・デスによって参加者を狙う舞台装置の存在だが、彼等にもそれなりの意志はある。
 おびき寄せると言った狡猾さを売りとするモンスターがいる以上、それは当然の事だ。
 しかし、それ故に襲おうとしている存在の状態を前にすると、畏怖するものだ。
 相手は人間だ。眼鏡をかけて、黒を基調とした恰好の学生ぐらいの年頃の。
 それだけ聞けば至って普通の存在であり、弱小な存在に見えるだろうが違う。
 人にはない黒い角を二本生やし、常人なら見ただけで悲鳴を上げそうな形相で、
 モーニングスターを振るって暴れるその姿は、悪鬼にも負けず劣らずの姿と言ってもいい。

「一体どんな確率だと思ってやがるんだよ!!
 こちとら三度目だぞ!? 前世で何人ぶっ殺したんだよ俺はァッ!!」

 キレ散らかしながら周囲を囲むモンスターを薙ぎ払う。
 近づくことなどできるはずがなく、何体かはすでに逃げ出してる。
 彼の怒りはもっともなものだ。最後の幸せの絶頂期を奪われたようなものだから。

 風祭小鳩はまともな人生を送ったことがなかった。
 彼はアストラルシンドロームと言う、仮想世界『メビウス』で学園生活を過ごす事件に巻き込まれた。
 その時彼の意志はなくただNPCのように、モブキャラのように機械的に学園生活を送ることになる。、
 帰宅部の活躍により元凶となるバーチャドール『μ』が倒されたことで現実に戻ってみれば、
 彼は高校生活を一切送ることもないままに既に五年も過ぎて、その上で成人してしまった。
 学歴は絶望的だ。就職はできず、元凶となるバーチャドールのを作った会社の訴訟も進まない。
 当たり前だ。バーチャドールが自我を持って仮想世界で学生で過ごすよう仕向けたなんて事件、
 どうやったって立証できない悪魔の照明であるので、事が簡単に進むはずがなかった。
 彼は怒りをぶつける相手すらいないまま、次はリドゥへと巻き込まれ再び学園生活を送る。
 二度目は楽士と戦う帰宅部の一人として戦う道を、NPCと言うモブから解放されたのに。
 次は偽りの学園生活すらも奪われた問答無用の殺し合いだ。これで彼にキレるな、
 と言う方が土台無理な話だろう。至極真っ当な怒りだけが其処にあるのだから。

「ぶっ殺されたくなきゃとっとと散りやがれェ!!
 そんでも残るってんなら死んどけてめえらあああああ!!」

 開始早々モンスターに囲まれていたが、火に油を注ぐ行為に等しい。
 カタルシスエフェクトは問題なく使える。戦闘能力も現実とは違う。
 彼の叫びと攻撃を受けて、次々とNPCが離れていく。
 こんなの相手にしていられるかと言わんばかりに。

「おー、荒れに荒れてるねぇ。」

 近くの高台から彼に声でもかけてるのか、
 あるいは単なる独り言のように呟かれ、小鳩もその存在に気付く。
 小鳩同様に黒を基調とした、何処かロックバンド感ある恰好をした橙色の髪の少年だ。
 彼を見下ろす表情は人を苛立たせるには十分すぎるような下卑た笑みを浮かべており、
 イラッとした表情になったのは言うまでもないことだ。

「邪魔してんじゃねえ!!」

 周囲の敵を薙ぎ払ってから、その勢いのまま近くの高台を狙って振るう。
 カタルシスエフェクトによって生み出された武装はそのまま少年を狙うが、
 普通に飛び降りて特に怪我らしい怪我はないまま同じ大地に立つ。

「おいおい、俺にかまけてていいのかよ?」

 やれやれと手を挙げると、
 再び小鳩や少年の周囲にはNPCのモンスターが群がる。


188 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:16:34 PFHA.JMw0
「うぜえ……うぜえうぜえうっぜえええええええッ!!!」

 邪魔をするなと言わんばかりに近くの敵から順に、
 モグラたたきでもするかのように振るってモンスターを破壊する。
 小規模の台風のような存在を相手に、彼一人で大半は倒されていくが、
 攻撃範囲的に流石にもう一人の方の背後にまでは届くことはない。

「こっちも試してみるか。」

 支給されたものの中から、白と金で構成された煌びやかな銃を取り出し放つ。
 閃光のような眩い光は何体かには直撃するが、思うようには当てられない。

「ま、銃なんて文明の利器なんぞ前世はなかったしな。こんなもんか。」

 当たり前だよなぁ、とでも言いたげに軽く溜息を吐く。
 そうこうしてる間にも亀が爪を立てながら迫るが、
 難なくよけながら銃を捨てて、今度は一枚のカードを手にする。

「ハ・デスも変な趣味してやがるぜ、本当に。」

 腕に付けていた赤い機械が音を立てながら変形していく。
 腕からサーベルでも出たかのような変形をするが、最終的な形はいただ。
 手にしたカードをそこに置けば、少年の背後に突如降り立つ巨大な戦士にモンスターが足を止める。
 黄色と白を基調とする色合いをした、翼と剣を持つ何処か機械的にも見える姿には、
 戦闘していた小鳩もその存在に軽く視線を奪われる。

「飽きるほど聞いたセリフではあるが、
 俺も言わせてもらうとするか───ホープ剣・スラッシュ!」

 手を伸ばしながら指示をすると、
 翼を広げた戦士がその手に握る剣を敵へと振るっていく。
 一体、一体となぎ倒されていく頃にはすでにモンスターは何処かへと散り散りになっていた。

「……これがあいつの見てた視点か。」

 三メートルはあるであろうその戦士の背を見ながら、
 少年は物思いにふけていると、ジャラジャラとした音で背後を見やる。
 まだカタルシスエフェクトを解除してない小鳩はそこに健在だ。
 ただ、少しだけ落ち着いたのか表情は多少レベルでましになってるが。

「おい、テメエどっちだ。」

 さっきの下卑た顔、
 まともな奴がするものではないだろう。
 殺し合いに乗った奴と思う方が自然ではあるが、
 今の流れは助けられたようにも見受けられて対応に困る。

「ハッ、キレてる癖に妙なとこで理性的じゃねえか。
 開始早々知り合いでも殺されちまったか? あのリーゼントとか。」

「知らねえ。いきなり有象無象に落とされてムカついてんだよ。」

「有象無象だ? 何の話だよ?」

「……ま、話しちまっても変わんねえか。」

 別にもう隠すようなことでもないだろう。
 面白みもないが、彼にとってはどうしようもない人生の顛末を。
 今隠しても、どうせ何処かでキレて帰宅部以外にも説明する時が来るだろうし、
 こんな奴でもいいから今のうちに慣れておこうと半ば諦め気味に語った。

「神様気取りに騙されちまったってか?
 傑作じゃねえか! ヒャハハハハハ!」

 で、返事がこれだ。
 腹を抱えて下卑た笑いを返される。
 普通に腹が立ちモーニングスターで彼の前に叩き落とすが、
 驚いたり怖がったりする様子は全くなかった。

「テメエぶっ殺されてえのかよ!!」

「俺様みてーで、おかしくって腹痛いわぁ。」

「……は?」

「ま、俺も似たようなものってわけだ。」

 笑みはそのままに、再び両手を軽く挙げる。
 彼は真月零、と言うのは人間として活動する際の名前でまたの名をベクターと言う。
 バリアン世界を救うために対となるアストラル世界を滅ぼすべく、
 ナンバーズカードを所持するアストラルと敵対していたバリアン七皇の一人。
 何ともぶっ飛んだ話を聞かされるが、メビウスにリドゥともう慣れている。
 今更別の世界があり、そっちでも別の世界があるなんてありふれたものだ。


189 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:17:10 PFHA.JMw0
「するってーと、テメエ悪党の類かよ。」

 言ってしまえばベクターはゲスな悪党な部類に入る。
 バリアン七皇のほとんどは彼の手によって倒された。
 闇討ち、騙し討ち、裏切りは最早彼の十八番。平たく言えばゲスの極み。
 その一言で済ませられる程度には悪逆非道の限りを尽くしていた。
 当然のことだが警戒心を強めてモーニングスターを構える。

「ゲスな奴に人を蹴落とす殺し合いとか、面白いこと考えるよなぁあいつも。」

 悪びれた様子もない物言い。
 要するにいつも通りの事をすればいいだけだ。
 外道をほぼ最初から最後まで只管突き進んでいった男。
 叩き潰すのが賢明ではあるのだが。

「……じゃあなんでオレに味方するような行動取ってんだよ。」

 なら、明らかに内容と行動が一致しないことの方が疑問だ。
 しかもそんなこと語れば普通敵対して当たり前だろうに。

「まあ、良かれと思ってだ。ちょいとセンチな気分で喋っただけだ。覚えなくてもいいぜ。」

 一瞬の静寂が通り過ぎると、ベクターはこう返した。
 何か意味ありげな一言であったのは否めず首をかしげる。









 ベクターの心の奥に踏み込みますか……?








 はい     →いいえ

 それ以上は踏み込まなかった。
 と言うよりも、どうでもいいが近いだろうか。
 なんか理由はあるんだなと察するが、踏み込むほど彼と親しくはない。
 自分は帰宅部であれば誰であっても親密にできるぶっちょと違うのだから。
 劉都と親密なんて、小鳩からすればお断り案件ではあるわけだし。

「ま、少なくともテメエの邪魔をするつもりはねえよ。
 帰宅部だったか? そういう連中がいたら声ぐらいはかけてやるよ。」

 話が終わると召喚されていた戦士は消え、
 近くの銃も回収してベクターはその場から去り始める。

「んで、結局テメエは何がしてえんだよ。そこはっきりさせろってんだ。」

「小綺麗な御託を掲げて戦うなんざクソくらえなんでな。
 善人と簡単につるむほど、俺様はお人好しでもねえのは知っただろ。
 必要なら俺は他人を欺く、蹴落とす、そして殺すのは変わらねえさ。で、そんな奴について行くか?」

「……やめとくわ。」

 必要なら殺すかどうかは、茉莉絵のときでも殺す方を部長に勧めている。
 ただ、あれは生きてるだけで地獄のような生活だからと言うだけの話。
 多分こいつは殺し合いには乗らないが、殺しについては躊躇はしない。
 こいつと一緒にいるって言うのは、楽士と一緒にいるようなものだ。
 それは窮屈で仕方ないし、散々縛られてきた彼としては自由である方がいい。

「そっちが敵になるつもりがねえなら、オレは別にどうでもいいさ。
 後ついでに名前はなんだ? そっちの知り合いに会った時面倒だし。」

 自分達を窮地に陥れた件や何度も敵対したマキナ、何より自分が一番キレたQP。
 オブリガードの楽士とは何人も、何度もぶつかったが殺すに至ることは決してなかった。
 これ以上敵対しないのであれば別にそれ以上は気にしない。善寄りとは言えないだろうが。

「ベクター……いや───真月零とでも名乗っておくか。じゃあな眼鏡。生きてたらどっかで。」

 その一言と共に、彼は何処かへと去っていった。










「まったく仏でも諦めそうなのを諦めねえとかいかれてるぜ遊馬君よぉ。」

 つまらない友情ごっこで手痛いしっぺ返しを受けて、
 その後も数々の裏切りの場面を目の前で目撃してきた。
 七皇のリーダーにすら『人の心はない』と言わしめる上に、
 道連れにしようと言う意味でその手を握り返した相手を、
 助けるべき奴だと認識できる要素が一体どこにあると言うのか。


190 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:17:27 PFHA.JMw0
『あぁ、いいぜ、真月。お前を一人になんてしない。お前は俺が守ってやる!』

 道連れにする。どうせこれで折れるだろう。
 そう思ってみれば、遊馬はその手を離そうとはしなかった。
 何度裏切っても、騙そうとも。人の心ができるまで信じ抜こうとする。
 彼のかっとビングに外道を続けてきたベクターも、ついに根負けした瞬間だ。
 言葉による偽善ではなく、本気でこっちの手を取ろうとしてきた誇張抜きの善人。
 あの時の言葉が脳裏に焼き付いて離れることはなく、複雑な気分だ。

「あー、めんどくせえことになったな。」

 とは言えだ。あれだけ突っぱねてきたのに今から改心します。
 なんてことをあっさりするのは少々癪に障る。
 だから殺し合いには反抗するが甘ちゃんとは違って、
 かなり狡猾な手段であっても遠慮なくやるつもりだ。
 ある意味小鳩がついてこなかったのは正解でもある。
 外道な手段も辞さない相手で回りにとっては協調性のない存在だ。
 一緒にいたらろくなことにはならないから賢明な判断とは思う。
 もっとも、ついてきたところでそんな忠告するつもりは一切ないが。

「希望に希望に希望、とことん俺を絶望させたくないのか?」

 支給品は全部言葉通りのものだ。
 希望の担い手が使っていたデュエルディスクに、
 希望を意味する星の獣に関わる銃、そして希望皇ホープ。
 ハ・デスはこれをランダムで支給してないだろとすら思うが、
 まあどっかの輩に奪われるよりかはましかと受け入れることにする。
 暫くはこの希望は預かっておこう。本当の希望の担い手に渡るまでの間だが。

「さあて……良からぬことを始めようじゃないか。」

 束の間のディストピアを舞台に小鳩は殺し合いを生き抜く。
 束の間のユートピアを手にベクターは殺し合いを歩んでいく。

【風祭小鳩@Caligula2】
[状態]:ハ・デスに対する怒り(特大・ただある程度落ち着いた)
[装備]:カタルシスエフェクト
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスぶっ潰す。主人公から降ろしたツケ払いやがれ。
1:ぶっちょや帰宅部がいたら合流を目指す。
2:真月って奴は、まあ敵じゃないんだろな。知り合いいたら言っとくか。
3:楽士いたらどうするよ。

[備考]
※参戦時期はエピメテウスの塔攻略中、
 かつ個人エピソード完全クリア済みです。
※部長の性別は採用された場合、かつ後続の方に一任します。
※カタルシスエフェクトは問題なく発動します



【真月零(ベクター)@遊戯王ZEXAL】
[状態]:ちょっとセンチな気分
[装備]:ショット・オブ・ザ・スター@グランブルーファンタジー、九十九遊馬のデュエルディスク@遊戯王ZEXAL、No.39希望皇ホープ@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:ハ・デス相手に良からぬことを始めようじゃねえか。
1:とりあえずどうするか。
2:ナッシュや遊馬がいたら少しだけ協力は考えてやる。ナッシュは……いややっぱやめとくか。
3:この支給品はあいつに返す。俺が持つもんじゃねえだろ。
4:帰宅部ねぇ。ま、いたら声はかけるか。

[備考]
※参戦時期はドン・サウザンドに吸収による消滅後。
※ドン・サウザンドの力、及びバリアン態等の行使は現状できません。
 力が残っていて、バリアンスフィアキューブがあれば別かも。



【ショットオブザスター@グランブルーファンタジー】
ベクターに支給。アーカルムの転生で手に入る新世界の礎と呼ばれるシリーズの武器だが設定上の特別な武器ではない。
其は希望の"星"より齎されし銃。繰り出される閃きは闇夜を切り裂き、未知を拓く道標となる。
光属性の攻撃が可能で光属性を強化する戦車と星の希望、体力と攻撃を強化する光の神威のスキルを持つ。
スキルセフィラマキシ・ライトは本ロワとはほぼ関係ないので除外。

【九十九遊馬のデュエルディスク@遊戯王ZEXAL】
ベクターに支給。遊馬が普段から使っているデュエルディスク
一応鈍器としては使えるかもしれないが、本領はデュエルの為のもの。

【No.39希望皇ホープ@遊戯王ZEXAL】
ベクターに支給。ナンバーズと呼ばれる100種類(100種類ではない)のカードの一枚。
遊馬を象徴するモンスターであり、希望は数々の姿を持っているが、これは最初のホープ。
オーバーレイユニットを消費することで攻撃を防ぐ効果があるが、彼はこれしかない為素材はない
またちゃんとした手順で召喚してないので、ステータス程の攻撃力や効果も発揮しないかも。
出典がZEXALなので、所謂アニメ版で自壊効果、攻撃のを防ぐスペルスピードが2、ナンバーズ特有の耐性等、
いくつかOCGとは性能が違う部分もあるが詳しいことは割愛。


191 : 束の間の■■■トピア ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:21:22 PFHA.JMw0
【NPC】

【モンスタートル@遊戯王OCG】
レベル3 水属性 水族 攻撃力800 守備力1000
トゲのついたこうらを身につけたカメ。とても凶暴で人になつかない。

【D(ダーク)・ナポレオン@遊戯王OCG】
レベル2 闇属性 悪魔族 攻撃力800 守備力400
心の悪しき者がつくった目玉の悪魔。ダークボムで爆破攻撃。

【ガニグモ@遊戯王OCG】
はさみを持つクモ。
相手を糸で動きを封じ、カニばさみでしとめる。


192 : ◆EPyDv9DKJs :2022/05/25(水) 14:22:59 PFHA.JMw0
投下終了です


193 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:04:30 JWtrSRSU0
投下します。


194 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:06:21 JWtrSRSU0
人間。自分に呪いをかけた者たち。
人間。自分に痛みを与えた者たち。
人間。自分の同胞を脅かす者たち。

暗く、やや肌寒いぐらいの山の中。
スーツの男が歩いている。

彼はオルフェノクだった。
異界から侵食する森の果実とは、また別の進化をたどった怪人である。
つまり逆に言えば、かつては彼も人間だった。
自らの運命に悩み、苦しみ、考えて考えて、
内に眠るオルフェノクの衝動を抑えて、人間と共存する道を選んだ。

人間の中には、、もちろん悪人もいるだろうが、
善人だって相応にいるはずだと、種族が違えど、分かり合えると思っていた。
だが違った。
奴らは自分を、仲間を、オルフェノクを傷付け、排そうとした。
許さない。許せるはずがない。

「ふざけるな……っ!」

サングラスの男も、ハ・デスも許せない。
よくも自分を、”オルフェノク”を殺し合いの玩具などにしようなど、
理不尽極まる事をしでかしてくれたな。
そんな怒りが、腹の底からグラグラと煮え立ってくる。

「あれは……」

少しでも怒りを覚まそうと、ひたすら山路を歩いていると、
彼はようやく他の参加者を見つけた。
緑色の髪を二つ結びにした小学生ぐらいの女の子だ。

(人間なら、今ここで!)

スーツの男の顔が、姿が、熟れ過ぎた果実を潰すような音と共に、
灰色の馬の意匠を持つ怪人、ホースオルフェノクに変貌する。

「はっ!」

変身した彼は大きく跳躍し、前を歩く少女の前に躍り出た。

「うわ!?え?あ、、」

驚いた少女は道の端、土の崩れやすい所を歩いていたせいもあってか、
そのまま下の道まで転がり落ちる。
再び跳躍したホースオルフェノクは手に魔剣ホースソードを出現させ、
少女の前に立ちふさがる。

『せめて、君がオルフェノクになれるように……』

切っ先は正確に少女の心臓に向ける。
そして思い切り、勢いをつけて


195 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:06:54 JWtrSRSU0
『よせ!』

落ちて来たのとは反対側、下の道から、何かが大きく跳躍して現れる。
背中の白いボアと、それにつながる様に伸びた白い尾。
メリケンサックのような突起のついた拳。
両脚がイヌ科動物の後ろ脚の様に変形した怪人、ウルフオルフェノク疾走態!

「おい、大丈夫か?」

熟れ過ぎた果実を潰すような音と共に、ウルフオルフェノクは人間態、乾巧の姿に戻った。

「うん、、おじちゃんは、良い魔女?」

「俺のどこが女に見えんだよ?
それに誰がおじちゃんだ。まだそんな歳じゃねえ」

そんな歳まで生きられんならだけど。
と、巧は心の中で付け足した。
オルフェノクは皆、その急激な進化の代償に短命。
短い時が過ぎれば、灰となって何も残さず消えてしまう。
そんな儚い存在だからこそ、自分たちの方が人間より尊いと考えるのかもしれない。

「木場、、お前何やってんだ?」

しかしホースオルフェノク、木場勇治は違ったはずだ。
巧の知る木場勇治は、人間とオルフェノクの共存の道を志し、
そのために同族にも人間にも疎まれながらも、戦っている男の筈だ。

『邪魔をするな。同胞はなるべく手にかけたくない』

そう言ってホースソードの切っ先を向ける勇治、否、ホースオルフェノク。

「どうゆう意味だ?」

『その子は人間だ。早く、、オルフェノクにしてやらないといけない』

巧は上着の前を外しながら、苛立ちを隠さず問いかける。

「お前、、なんでそっちについた?」

『君こそ!いつまで人間に幻想を抱いている?
俺と君は変わらないはずだ。なんで君こそこっち側に来ない?
人間の側に居たって、誰も真剣に助けてはくれない!
寿命の事だってそうだ!君は死ぬのが怖くないのか!?』

巧は自分の背後にいる少女を一瞥だけすると、

「怖いさ。けどウジウジ考えたって仕方ねえ。
そんな事で時間潰すぐらいなら、子供の未来を守るのに使う!」

思い切り上着を翻し、白と黒のベルトがあらわになる。
そのベルト本体には、”スロットが無い”。

「ファイズのベルトはどうした!?」

「さあな!変身!」

<Standing by……>

銃のグリップにも見えると言うか、グリップにしか見えない携帯電話型ツール、
デルタフォンが巧の声で起動し、
腰のベルト、デルタドライバーに下げられたビデオカメラ型マルチウェポン、
デルタムーバーにセットする!


196 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:07:45 JWtrSRSU0
<Complete.>

ドライバーから伸びたフォトンストリームが巧の全身を流動し、
黒い堕天使の意匠を持った鎧にその身を包ませた。
仮面ライダーデルタ、変身完了。

「行くぜ!」

「ふん!」

デルタが手首のスナップを利かせたのを合図に走り出す両者。
先に攻勢に出たのはホースオルフェノクだ。
上段からホースソードを振り下ろすが、デルタはそれを肩で受け止めた。

「何!?」

「ファイア!」

<Burst mode>

ベルトに下げたデルタムーバーをバーストモードに移行させ、
柄の根元を狙って全弾発射。
折れたホースソードは青い炎を上げて消失した。
ホースオルフェノクはすぐさま銃を払いのけるが、デルタはそのまま肉弾戦に移行。
自然死の結果オルフェノクに転じた故に、高いスペックを持つホースオルフェノクと、
拡張性を犠牲に、高出力を実現したデルタ。
両者の能力の高さゆえに、小範囲の嵐のような肉弾戦が始まった。
デルタの尖った肩を利用したタックルがホースオルフェノクを吹っ飛ばし、
ホースオルフェノクの一角獣のような角の頭突きがデルタを跳ね飛ばす。
場所を変えながら人間が食らえば簡単に頭が吹き飛ぶようなパンチが、
人間が食らえば逆『く』の字に折れ曲がって吹っ飛んで行くようなキックが、
木々をなぎ倒し、地面をえぐり飛ばし、岩を砕き壊し、応酬されていく。
言葉は交わさない。
言葉は必要ない。
2人の拳に乗った熱く、激しい感情だけが、お互いの本気を伝えあった。

「はぁ、、はぁ、、どうした乾!ファイズでなければそんな物か?」

「オルフェノクで流行りのジョークか?笑わせんなよ」

再び手首をスナップさせるデルタ。
ホースオルフェノクは再び魔剣を創り出し、構えをとる。
先ほどまでと、空気が変わるのは同時だった。
さっきまでの絶えず震えた動の空気は一変し、
張り詰めた静の空気が漂い始める。

「待って!」

そこに予想外の闖入者が来た。
さっき巧に助けられた緑髪の少女だ。
その手にはさっきホースオルフェノクに落されたデルタムーバーが抱えられていた。

「これ!」

「お前、、借りが出来たな。下がってろ!」

ドライバーにセットされたミッションメモリーをセット。

<Ready>

銃身が伸び、デルタ最大の攻撃の前準備が完了。
最後に変身の時と同じようにデルタフォンのマイクを口元に当て、

「チェック!」

<Exceed Chage>

銃に装填されたポイント弾を剣を構えて突っ込んでくるホースオルフェノクに発射。
剣で受け止めるホースオルフェノクだが、着弾したエネルギーが三角柱状になって拘束される。
デルタは銃をホルダーに戻し、腰を落とし、下から敵をねめつける様に見据えると、

「はっ!」

飛び上がって宙返りを撃ち、右足を突き出す!

「はぁあああああ!」

飛び蹴りが回転を始めたエネルギーと共に魔剣を削る

「……ッッッあああああああああ!!」

武器の崩壊と引き換えにポイント弾を弾くことに経成功したホースオルフェノクだったが、
飛び蹴りまでは防ぎきれず、胸部に炸裂。
不完全ながら決まったルシファーズハンマーはホースオルフェノクを変身解除させることに成功した。

「木場……」

「必ず、、必ず君も分かるはずだ。今の自分が、どれだけ歪な存在か!」

そう言って勇治は懐から何か瓶を取り出し、一気に煽ると再び変身してその場を去った。


197 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:08:33 JWtrSRSU0
それを見送ると、巧も変身を解除し、ため息をつく。

「もう出てきていいぞ」

ガサガサと茂みの中か少女が這い出て来た。

「もう行っちゃった?」

「ああ。今から追いかけても間に合わねえだろうな」

そう言いながら巧はやり方がややがさつだったが、
頭に乗った葉っぱを取ってやった。
そうやっていると、時々髪の毛の隙間から火傷後のような物が見えた。

(火事とかじゃこうはらねえ。もしかして誰かに……)

嫌な話だ。そう思っていると少女の方から口を開いた。

「ねえ、おじ……お兄さん、お名前は?」

「乾巧だ。そう言うお前は?」

「ゆま。タクミは、変身も出来るし、キョーコを助けられる?」

「キョーコ?お前の姉ちゃんかなんかか?
もしかして、同じように呼ばれてるってことか?」

「わかんない……けど、オリコってお姉ちゃんが、
もうすぐキョーコが死んじゃうって……」

そう言ってゆまは今にも泣きそうな顔で、
転んだせいで泥だらけのスカートをきつく握りしめた。

「……はあ、仕方ねえ。
木場がいる以上、真理や啓太郎が居ない保証もねえし、あいつら探すついでだ。
お前の姉ちゃんも探してやる」

「ほんと?」

「ああ。ほら、行くぞ」

「うん!」

ゆまは手の泥をスカートで拭くと、巧の手を取った。


198 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:09:29 JWtrSRSU0
【木場勇治@仮面ライダー555】
[状態]:健康、疲労(中)、胸部にダメージ(大)、怪人態
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:人間を皆殺しにし、残るすべてのオルフェノクと脱出する。
1:まずは休める場所で傷を癒す。
2:それが済んだら同胞を探しつつ、人間を殺して回る。
3:乾巧とは次会った時に決着を着ける。
[備考]
※本編からの参戦か、劇場版からの参戦かは後の書き手様にお任せします。

【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:健康、疲労(中)、人間態
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:人間を守り、この決闘から脱出する。
1:ゆまと行動する。
2:もし居るなら真理や啓太郎、あとついでにゆまの姉ちゃんを探す。
3:木場……一体何が有ったんだ?
4:
[備考]
※キョーコこと佐倉杏子をゆまの実姉だと勘違いしています。
※デルタギアはドライバー、ムーバー、フォン、ミッションメモリーの四点で一つの支給品扱いです。

【千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、転んだせいで泥だらけ、疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:キョーコを助けに行く
1:タクミと一緒にキョーコやタクミのお友達を探す。
2:あの怖い人(木場)、会いたくない、、。
[備考]
※オルフェノクを会話できる魔女のような物だと思っています。


199 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/25(水) 17:10:24 JWtrSRSU0
投下終了です。
タイトルは『終わりの雷雨と子連れ狼』です。
入れ忘れていました。以後気を付けます。


200 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 18:23:08 fY6Dti1Y0
投下します。


201 : ある一般人参加者からの視点 ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 18:23:43 fY6Dti1Y0
 ─俺は先程、義妹4人を大学に行かせる為の資金を稼ぐ為に勤めていたアルバイト先のファミレス内にあったテーブルから謎の強烈な殺気を感じとり、昔から責任感の強かった自分でも抗えない生存本能に従って店長にバイトの辞退宣告をして店から脱出したところだった。

 ─そしたら俺はいつの間にか知らない場所にいて、首輪をはめられていた。
 他にも多数の生物もおり、その中にはあからさまに『この世のものではない』であろう姿の生物もいた。
 それらに驚いて声を発しようにも、何故かそれすらも出来なかった。

 ここで首輪の話に戻るが、先程のファミレスの件と同じ様に、その首輪からも生存本能から『下手に手を加えてはならない』という感覚が自分の中で駆け回り初めた。

 そんな状況を飲み込めずに怯えていたところに現れた、磯野という男から『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』と言われて『詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』と説明された時はその訳が分からず混乱した。


202 : ある一般人参加者からの視点 ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 18:24:18 fY6Dti1Y0
その直後に『バカ野郎!』などと言って磯野という男に反抗を示す態度をとっていた人物がその首輪を爆破され、彼の知り合いと思わしき奇抜な髪型の少年が絶叫しているのを目の当たりにした。
 そこで俺が首輪から感じとっていた首輪への危険性が確かなものになった。
 ─だが、俺を含め、首輪をはめられていた参加者達の中で、先程の二人だけが声を発することがよく分からなかった。

 その次には磯野の周辺に黒い靄の様なモノが纏わりついてきた。
 それから程なくして、『ハ・デス』と名乗るまがまがしい姿をした怪物と形容すべきモノが現れ、これまた意味のわからないことを話し出した。
 俺はすぐに思った。 奴らに逆らえば死ぬと。

 『決闘開始ィィィ!』という磯野のけたたましいデュエルの開始宣言によって奴らからの説明会が漸く終わった。
 
 ─そして今、俺は『会場』と呼ばれる場所に突然連れて来られて、周辺という周辺から感じとられる殺気に怯えているところだ。

【ファミレスのアルバイト店員@呪術廻戦】
[状態]:健康、混乱(大)、恐怖感(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み?)
[思考・状況]:義妹達の為に金を稼ぎたいが、ここは一先ず己の生存本能に従う。
1:この周辺は危険だ、俺の生存本能がそういっている…!
2:義妹達が巻き込まれていないか心配。
3:『デュエル』の説明やハ・デスの話していたことがよく分からん!
[備考]
※偽夏油達が訪れていたバイト先のファミレスで、彼らの使用していたテーブル周辺から己の生存本能だけで身の危険を感じとり、先んじて脱出した方の店員です。
※参戦時期はバイト先のファミレスを脱出した直後。
※能力制限は特にありません。
※『デュエル』のルールを余り理解していません。
※ルールブックをよく確認していません


203 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 18:24:40 fY6Dti1Y0
投下終了です。


204 : ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:00:05 .6c7Xf0g0
投下します


205 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:00:47 .6c7Xf0g0
「何処だろう...ここ...僕はしんのすけ達とかすかべ防衛隊の会議をしていたはずじゃ...?」

一人の少年、風間トオルは今の状況に困惑していた、目を覚ますとサングラスを掛けたスーツ姿の男が決闘(デュエル)というのを開催と断言していた、最初は『ただの』ゲームなのかと思っていた...しかし、本田と呼ばれる人物の首から上が爆発してしまった…それを見た人は誰もが納得するであろう『リアル』なゲームだった...

「うっ...思い出したら気分が...」

様々な修羅場をくぐり抜けた風間でも実際は幼稚園児、映し出された光景はさすがに見るに堪えない光景だった

「とりあえずこれからどうしたらいいんだろう...僕がいるってことは皆も連れてこられてるのかな」

風間の言う『皆』とは、風間と同じかすかべ防衛隊のメンバー、『野原しんのすけ』、『佐藤マサオ』、『桜田ネネ』、『ボーちゃん』のことだ
自分が巻き込まれているということは他のメンバーが巻き込まれていても不思議ではないと考える風間、今までもかすかべ防衛隊皆で事件に巻き込まれたこともあれば皆で力を合わせて強敵に立ち向かうことだってあった

「とにかく、困った時は誰か頼りになる大人に相談しなさいっていつも幼稚園で教わってたから誰か探そう...とりあえず暗いから懐中電灯は...あ、あった」

誰か頼りになる大人を探すため風間は歩き始めた



────



とある場所では三人の少女が集まっていた

「これからどうしましょうか...」
「とりあえず協力してくれる人を探した方がいいかな?かな?」
「まぁそれしかなさそうね...」

右目が翡翠、左目が紅玉のオッドアイで金髪の少女『高町ヴィヴィオ』、橙色に近い茶髪と青色の瞳を持つ少女『竜宮レナ』、桃色がかったブロンドの長髪と鳶色の瞳を持つ『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
彼女達はこの会場に転送された後直ぐ出会った、最初はお互い警戒しあっていたが話している内にデュエルに乗ってないということが分かり三人で行動していた

「それにしても人を殺すなんて...あの主催悪趣味すぎるわね」
「そうですね、平気で人を殺して...許せないです...!」

主催に対してルイズは呆れ、ヴィヴィオは怒りを露にしていた...その時...

「すみませーーん!!」
「「「!?」」」

突然声が聞こえ殺し合いの場というのもあり三人は警戒した、しかしそこで現れたのは…

「男の子…?」

自分達よりも遥かに年が下であろう子供を見てヴィヴィオはそう呟いた


206 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 19:01:22 fY6Dti1Y0
失礼します。
>>202の備考欄にある『偽夏油達が訪れていたバイト先のファミレスで、彼らの使用していたテーブル周辺から己の生存本能だけで身の危険を感じとり、先んじて脱出した方の店員です。』を
『偽夏油達が訪れていたバイト先のファミレスで、彼らの使用していたテーブル周辺から己の生存本能だけで身の危険を感じとり、一人で脱出した方の店員です。』
に修正させていただきます。


207 : ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:01:24 .6c7Xf0g0
すみません、sageしてなかったので再投下します


208 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:01:45 .6c7Xf0g0
「何処だろう...ここ...僕はしんのすけ達とかすかべ防衛隊の会議をしていたはずじゃ...?」

一人の少年、風間トオルは今の状況に困惑していた、目を覚ますとサングラスを掛けたスーツ姿の男が決闘(デュエル)というのを開催と断言していた、最初は『ただの』ゲームなのかと思っていた...しかし、本田と呼ばれる人物の首から上が爆発してしまった…それを見た人は誰もが納得するであろう『リアル』なゲームだった...

「うっ...思い出したら気分が...」

様々な修羅場をくぐり抜けた風間でも実際は幼稚園児、映し出された光景はさすがに見るに堪えない光景だった

「とりあえずこれからどうしたらいいんだろう...僕がいるってことは皆も連れてこられてるのかな」

風間の言う『皆』とは、風間と同じかすかべ防衛隊のメンバー、『野原しんのすけ』、『佐藤マサオ』、『桜田ネネ』、『ボーちゃん』のことだ
自分が巻き込まれているということは他のメンバーが巻き込まれていても不思議ではないと考える風間、今までもかすかべ防衛隊皆で事件に巻き込まれたこともあれば皆で力を合わせて強敵に立ち向かうことだってあった

「とにかく、困った時は誰か頼りになる大人に相談しなさいっていつも幼稚園で教わってたから誰か探そう...とりあえず暗いから懐中電灯は...あ、あった」

誰か頼りになる大人を探すため風間は歩き始めた



────



とある場所では三人の少女が集まっていた

「これからどうしましょうか...」
「とりあえず協力してくれる人を探した方がいいかな?かな?」
「まぁそれしかなさそうね...」

右目が翡翠、左目が紅玉のオッドアイで金髪の少女『高町ヴィヴィオ』、橙色に近い茶髪と青色の瞳を持つ少女『竜宮レナ』、桃色がかったブロンドの長髪と鳶色の瞳を持つ『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
彼女達はこの会場に転送された後直ぐ出会った、最初はお互い警戒しあっていたが話している内にデュエルに乗ってないということが分かり三人で行動していた

「それにしても人を殺すなんて...あの主催悪趣味すぎるわね」
「そうですね、平気で人を殺して...許せないです...!」

主催に対してルイズは呆れ、ヴィヴィオは怒りを露にしていた...その時...

「すみませーーん!!」
「「「!?」」」

突然声が聞こえ殺し合いの場というのもあり三人は警戒した、しかしそこで現れたのは…

「男の子…?」

自分達よりも遥かに年が下であろう子供を見てヴィヴィオはそう呟いた


209 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:01:59 .6c7Xf0g0
─────



遡ること三分前

「懐中電灯があっても暗くて良く見えないなぁ...」

風間は頼りになる人を探すため歩き続けていた
懐中電灯があるとはいえ今は深夜...懐中電灯だけでは照らしてくれる幅はそんなにない

「にしても何でこんなことに…」

風間は何故幼稚園児である自分が殺し合いなんかに参加させられているのか全く分からなかった

「とりあえず早く頼りになる人を探そう」

考えても仕方がないと思った風間は引き続き他の参加者を探し始めた
その時...

「ん?あれは…」

そして風間が見つけたのは三人の少女だった

「良かった!人だ!それに女の人みたいだし…とりあえず声を掛けてみよう…すみませーーん!!」

こうして風間とヴィヴィオ達は出会った…



────



そして今に至る

「最初に会えた人がヴィヴィオさん達で良かったですよ!」
「それは私達もだよ、それにしても一人で行動してたなんて風間君まだ小さいのに凄いね!」
「い、いや〜、そんなことないですよ///」

互いに自己紹介を終えヴィヴィオに褒められた風間は素直に照れた、もしこんなところを彼の友人であるしんのすけに見られていたら冷や汗ものだろう

(それにしても…3人とも綺麗な人だな〜///)

まるで自分が日頃見ている魔法少女もえPのように綺麗な顔立ちをした年上の女の子を見て風間は心の中で率直な感想を言った

「なに人の顔ジロジロ見てんのよ、変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」
「い、いやそんなことないですよ!///」
「ルイズさん失礼ですよ…」

しかしルイズに見抜かれた気がした風間は焦りながらも誤魔化した

「あの、突然やってきてなんですが、僕もヴィヴィオさん達と行動していいでしょうか…?一人だとどうしても不安で…後ひょっとしたら僕の友達がここに来てるかもしれないので…」
「全然良いよ!むしろ大歓迎だよ!まだ幼稚園児の風間君を放っておくなんてできないしね!お二人も良いですか?」
「私はもちろん大歓迎だよ!だよ!」
「ルイズさんはどうですか?」
「…二人が賛成してる中、あたしだけがダメなんて言えるわけないでしょ?でも仕方なくだからね!別にあんたが心配とかこれっぽっちも思ってないんだから!」
「あ、ありがとうございます!!」

風間のお礼の言葉にヴィヴィオとレナは微笑み、ルイズは照れたのか頬を染めてそっぽを向いた
こうして風間は三人と共に行動することにした、彼らが待つ先は光か闇か…


210 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:02:14 .6c7Xf0g0
【風間トオル@クレヨンしんちゃん】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:春日部に帰る
1:三人(ヴィヴィオ、レナ、ルイズ)と行動する
2:デュエルってなんだろう…?
[備考]
※映画の出来事を経験しています
※人が死ぬほどの事態というのは理解してますがデュエル(殺し合い)については上手く理解できてません

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはvivid】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:デュエルに乗らずここから脱出する
1:二人(ルイズ、レナ)と行動し、風間くんを保護する
2:主催の人は絶対に許さない
[備考]
※参戦時期は本編終了後

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:デュエルには乗らない
1:人殺しなんてくだらないわ
2:二人(ヴィヴィオ、レナ)と行動し、トオルを仕方なく保護する、本当に仕方なくなんだからね!
[備考]
※魔法などの能力制限があるかどうかは次の書き手に任せます

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:皆で協力して生き残る
1:二人(ヴィヴィオ、ルイズ)と行動し、トオル君を保護する


211 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:02:40 .6c7Xf0g0
投下終了します、途中事故ってすみませんでした


212 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:02:57 ECORfE/s0
投下します


213 : Marionette Nighthawk ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:03:28 ECORfE/s0
黒江という魔法少女は、魔法少女としても只の人間としても、余りにも普遍で普通過ぎた。
魔法少女、たった一度の願い事を退化に、魔女と戦う使命を課せられた運命の奴隷。
魔女は強い。歴戦の勇士か才能あるものでなければ楽に倒せず、そうでないものが難難辛苦を背負い戦って。
魔女を殺してグリーフシードをかき集める。それの繰り返し。
正義の味方ごっこや一匹狼など実力がなければやる余裕など無いのだ。

黒江という少女は、『普通』過ぎた。
ある日出会った弱い自分よりも余っ程弱かった白いあの子。
猫を助けるために結界に突っ込んだか弱いあの子。
そして嘘をついて見捨てた自分に、最後まで感謝した自分に手を降っていたあの子。

黒江という人間は、余りにも『普通』だった。
こんな愚かな彼女に手を伸ばす希望の光は在った。
だが、よだかの取りである彼女にその輝きは余りにも眩しかった。
光は時に悪影響をもたらす。それが抽象的であり、概念的であり。
一度澱んだ心の照らされる光は拷問にも等しいものだと。
彼女は魔法少女になったその理由すらも、魔法少女として生きていく内に忘れ去った。
誰にもなれず、何処にもたどり着けない。
それが良かったのだろう、それが彼女にとっての唯一の救いなのだろう。

魔法少女の使命、と言う名の呪い。
何れ魔女となり、刈り取られる為だけの肥料。
終末の運命を前に、彼女の心はただ安らかに死を選ぶ。絶望と言う名の希望(きゅうさい)の太陽へと呑み込まれる。

燃え続ける、燃え続ける。希望(し)と言う炎に呑まれたよだかの鳥は、いつまでもいつまでも燃え続ける。



――今でもまだ燃えています。
燃え続けているということは、つまりは死ねなかったようです。


214 : Marionette Nighthawk ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:04:01 ECORfE/s0
○ ○ ○

「全く、いきなり身投げだなんて驚いたよ。命が勿体ないじゃないか。」
「あ、れ……?」

夜空に照らされる白い砂浜の上で倒れ伏す少女、黒江を上から覗き込む白を基調とした服装の男が、物珍しい目線で黒江を見下ろしている。
一体自分に何が起こったのか、という混乱のまま黒江は男の顔を見ているだけの状態。

黒江は少しだけ思い出す、自分が魔法少女でなくなった、つまり死ぬことが出来たと思っていたら。
何故か生きているしハ・デスとかいう魔女みたいなのにいきなり殺し合えと言われて。
どうして生きているんだと錯乱状態のまま、前も見ずに崖から崩れ落ちて。
これでもう楽に慣れるならいいやと目を閉じて。

「あ、あの……。」
「失礼。まあ貴女に何があったのかは今は問いませんよ。」

物腰柔らく、男は黒江へと語り掛ける。
上品な振る舞いに、見るからに良印象な雰囲気を醸し出す男に対し、黒江の混乱もほんの少し収まった。

「ええと、すごく失礼な事を聞くようですけれど……乗っていません、よね?」
「乗っていない……? ああ、この殺し合いの事かね? どうして私がこんなくだらない催しに乗らなければならないのやら。」

黒江の心を見透かすかのように、男はあっけからんと、さも当然のように答えた。

「……私、わからなくなったんです。死ねたと思ってたら、何故か生きていて。」
「ふむふむ。つまり辛いことあったということだね。可哀想に。その言い方だと自分の人生に苦しんでいたとかかな?」
「そんな生易しいものじゃないですよ。ただ、何処にも行けなかっただけ。誰にもなれなかっただけ。」

黒江の絶望とは、正しく誰にもなれなかった己の虚無そのもの。
満たされる器など無く。最初からひび割れたガラスの板。グラスではなくただの板。
何を注ぎ込まれても、ただ汚れるだけだった。

「だから、死にたかったんです。」
「……。」

沈痛な黒江の独白に、思わず男もほんのり表情が暗くなる。
見ず知らずの他人が、こんな話をされて、行き場のない感情をどう扱えば良いのか。
だが、男の次の言葉は、黒江の想像を遥かに上回る意外なものだった。

「……じゃあ何も考えなければ良い。」
「何も考えなければいい? どういうことです?」
「簡単な話だよ。私はこんな殺し合いに巻き込まれるのなんてまっぴら御免だ。何事も平和が一番、だと良いんだけど今回みたいに人生は前途多難と言うわけで。……苦しいことも、悲しいことも、辛いことも、そんな事考えないで生きていけば良い。まあ、私のような楽観的になれと言うのは、些か無茶な返答なんだけど。」
「……私には、無理そうです。そんな生き方は。」
「そうだね。人間そう簡単には変われないからね。でも、変えることは出来る。……行く宛がないなら、私と一緒に来るかい?」

何も考えなければ良い。単純で複雑な答えを提示された。
だが、魔法少女という複雑な世界で生きていた黒江にとってはそれは難しい内容でもある。
それを見透かしてか男から出た提案、自分と一緒に来るかどうか。

「ん? 大丈夫かどうかは心配ないよ。私の周りは物騒でね、これでも最低限の身の守りぐらいは出来るのさ。」
「……聞いてもないのに答えられても。でも、貴方の言う通り行く宛なんて無いんです……。」
「それは了承と受け取っても良いのかね?」
「……勝手にして下さい。」

詰まる所。黒江は多少男に絆されてしまったわけだ。
高貴な服装で、それで丁寧な立ち振る舞いと言動。
死にたいと思っていた自分を心の底で自嘲しながらも、別に悪くないかと割り切って。
もしかしたら、あの子にまた会えるんじゃないかなと、別にどっちでも良い感情も拾い上げて。

「……そういえば、お名前の方、聞いてもいいですか? 私は黒江っていうんですけど。」
「ああ、それが君の名前なんだね。今後とも宜しく、黒江くん。――で、私の名前だけれど………」


215 : Marionette Nighthawk ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:04:25 ECORfE/s0


















「私の名前はフェルディナント。ナビスという組織の議長をやっているものだ。」


216 : 風間くんのハーレム物語?だゾ ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:04:32 .6c7Xf0g0
度々すみません、言い忘れてたことなんですが、この作品はエトラロワに投下した拙作のタイトルと内容を修正したものになります


217 : Marionette Nighthawk ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:04:41 ECORfE/s0
【黒江@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ(アニメ版)】
[状態]:健康、困惑(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:私、これからどうしよう……。
1:なんだろう、このフェルディナントさんって人。悪いようには見えないけれど……。
2:成り行きでフェルディナントさんについていく事になっちゃったけど……。
3:いろはさん、私は……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。

【フェルディナント@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:???
1:???
[備考]


218 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/25(水) 19:04:58 ECORfE/s0
投下終了します


219 : ◆.EKyuDaHEo :2022/05/25(水) 19:05:29 .6c7Xf0g0
割り込み申し訳ありませんでした…


220 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/25(水) 19:21:38 fY6Dti1Y0
>>219
こちらこそ、割り込み申し訳ごさいませんでした…。


221 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/25(水) 20:52:35 OF0.LNOE0
投下します


222 : 便乗商法、私の好きな言葉です ◆NIKUcB1AGw :2022/05/25(水) 20:53:47 OF0.LNOE0
森の中を、全身黒い体色の人ならざるものが歩いている。
その存在の名は、メフィラス星人。
広い宇宙でも、有数の知能を誇るとされる宇宙人だ。

「いやー、なんか大変なことになっちゃったなあ。
 殺し合いなんて、参加させられるより参加させる側だと思うんですけどねえ、私。
 いや、どっちかっていうと、って話ですよ?
 本当に殺し合い開くつもりなんてありませんから」

一人であるにもかかわらず、誰かに語りかけるようにしゃべる続けるメフィラス星人。
これは別に、精神のバランスを崩しているわけではない。
一種の職業病だ。
このメフィラス星人は、地球で街ぶら番組のMCをしていた個体なのである。


◆ ◆ ◆


数分後、メフィラスは他の参加者に遭遇した。

「おお、あれは!」

メフィラスは、驚きをあらわにする。
発見したのが、同じメフィラス星人だったからだ。
自分よりかなりマッシブな肉体だが、特徴的な頭部の形状と黒い肌は見間違えようがない。
ここからは便宜上、MCのメフィラスを「メフィラスA」、筋肉質のメフィラスを「メフィラスB」と呼称する。

「やあ、どうもどうも。まさかこんなところで、同族に会えるとは」

フレンドリーな態度で近づくメフィラスA。
だがそれに対しメフィラスBが返したのは、顔面へのパンチだった。

「ほげえっ!」

うめき声と共にメフィラスAは吹き飛び、近くの木に激突する。
それでも、メフィラスAはまだ対話を諦めない。
ゆっくりと立ち上がり、落ち着いた声で再び語りかける。

「よそう。メフィラス星人同士が争ってもしょうが……ぎゃああああ!!」

メフィラスAが言い終わらぬうちに、メフィラスBが手から光線を放つ。
光線はメフィラスBの顔面を直撃し、彼に致命傷を与えた。

「せめて……最後まで言わせて……ほしかった……」

無念の言葉を残し、メフィラスAは息絶えた。

「ふん、のんきなやつだったな……。
 別の星で暮らしていたメフィラス星人か?
 俺がメフィラス星を滅ぼした張本人だとは知らなかったようだな」

屍と化したメフィラスAを見下ろしながら、メフィラスB……もとい、「メフィラス大魔王」は呟く。

「これからウルトラの星に攻め込もうというところで連れてこられ、体まで縮められ……。
 不愉快なことこの上ない!
 だが、これだけのことをやってのける連中だ。そうとうな力を持っているのはたしかだろう。
 どんな願いでも叶えるというのも、あながち嘘ではなさそうだ。
 ならばその力、この俺が奪い取ってやる!
 そしてそれを持って、改めてウルトラの星に攻め込もうとしようか!」

力強く叫び、メフィラス大魔王は笑う。
全ての敵をおのれの力で滅ぼせるという、絶対的な自信を胸に抱いて。

【メフィラス星人@ウルトラ怪獣散歩 死亡】


【メフィラス大魔王@ウルトラマン超闘士激伝】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品2〜6(メフィラス星人の支給品を回収済み)
[思考・状況]基本方針:皆殺し。その後主催も倒して、力を奪う
[備考]
※参戦時期はウルトラの星への侵略を開始する直前
※制限により、人間サイズまで縮小されています


223 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/25(水) 20:54:45 OF0.LNOE0
投下終了です


224 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:50:46 Pxaoau1c0
皆様、投下お疲れ様です。
2作品連続投下させていただきます
コンペロワや辺獄ロワ等に投下した作品に細かな修正を行った物になります。


225 : スパイダーマン:バトロワバース ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:51:33 Pxaoau1c0
床一面、そして壁一面に『デュエル・モンスターズ』のカードが敷き詰められた薄暗い一室……そこに『スパイダーマン:スパイダーバース』のBlu-ray&DVDセットのケースが置かれた。

☆☆☆

OK!じゃあもう一度だけ説明するね?

僕はマイルス・モラレス。

放射性の蜘蛛に噛まれてから、今まで数ヶ月間……この世にたった一人の『スパイダーマン』だ!

後は知ってるよね?

僕は他の次元からやって来た『スパイダーマン』達と一緒にキングピンの野望を打ち砕いて、
僕の世界の初代スパイダーマン『ピーター・パーカー』の代わりに、街とそこに住む人達を救う毎日を送っていたんだ。

そしたらある日……突然妙な事が起きたんだ。

本当に妙な事が。

どういう訳だか……僕はいきなり爆弾入りの変な首輪を付けられて、『殺し合い』に強制参加させられてしまったんだ!
まるで『ハン◯ーゲーム』みたいだよ!

説明の場所には、僕以外にも何十人もの人達が集められ、見せしめに僕より少し年上、高校生くらいの男の人が殺されてしまった……。

何の罪も無い人達を誘拐して、殺し合いをさせるなんて許せない!
僕は絶対に、この『殺し合い』を止めてみせる!

☆☆☆

会場についてすぐ、僕は森の中をスイングしながら移動してた。
幸か不幸か、僕のスパイダーマンスーツとスーツに付いてるウェブシューターは、取り上げられなかったんだ。

僕が会場に送られた時、周りには他の参加者達の姿はなかった。
一刻も早く巻き込まれた人を助けないと!

僕は木々の生い茂る森の中を急いで移動していく。
しかし、こうやって森の中をスイングしてると、ピーターと一緒にアルケマックスに忍びこんだ時を思い出すなぁ……なぁ〜んて僕が考えていた時だった。

突然、目の前の空中に、背中から天使みたいな翼を生やした黒い服の女の子が現れたんだ。

しかも僕がスイングで移動しようとしていた場所に!

「うわぁっ!どいてぇー!!」
「……えっ?」

僕は女の子に向かって叫んだけど、少し遅かったみたいだ。


226 : スパイダーマン:バトロワバース ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:53:14 Pxaoau1c0
僕は天使みたいな翼のある女の子に、空中で正面衝突しちゃったんだ!

「うわあぁぁ!?」
「きゃあああ!?」

女の子の方も受け身が取れなかったみたいで、僕達二人は森の中に墜落しちゃったんだ。

「イタタタ……」
「うーん……」

幸い、小枝や落ち葉がクッションになっておかげで、僕も女の子にも目立つケガはついていなかった。
僕はぶつかってしまった女の子に覆い被さっている態勢になってて、女の子の方は地面に仰向けに倒れてた。

それにしても、改めて見てみるとキレイな娘だなぁ……。
歳はだいたい僕より少し上くらい。
銀色の髪を肩に付くか付かないかくらいに切り揃えていて、下手なアイドルやセレブ歌手以上に整った顔をしている。
背中から黒い羽根の翼が生えてる事と合わせて、なんだか教会の絵から抜け出したみたいな神々しさすら感じてしまう程の美少女だ。

グウェンやペニーとどっちが可愛いかなぁ〜……って、何を考えているんだ僕は?

「……だ、大丈夫!?ケガしてない!?」
「う、うん……平気」
「ゴメンね!いきなりぶつかったりして……」
「私の方こそ……よそ見しててゴメンね」

女の子が僕に謝りながら起き上がろうとした時だった。

ふにょん!

「きゃっ!」
「……えっ?」

僕の手が、なんだかものすごく大きくて柔らかくて手触りの良い感触を感じ、目の前の女の子が小さな悲鳴を上げた。
ま、まさか……。
僕は恐る恐る自分の視線を女の子の顔から下の方に下げる……そうしたら……。
僕の右手は、
目の前の女の子の、
スパイダー仲間のグウェンやペニーよりも二周りか三回りくらいは大きな胸を……
鷲掴みにしていたんだ!

「うわあぁぁ!ご、ゴメン!!」

僕は慌てて、女の子の胸から手を離したけど……これが余計に不味かった。

ビリリッ!

『・・・えっ?』

僕はあまりに慌て過ぎていて、パワーの制御ができていなかったらしい。
僕の右手は女の子の服にくっついていて……
僕が手を離そうと瞬間、女の子の服の胸元の辺りの布が一緒に破けて……
女の子の、
僕の数少ない女子友達であるグウェンやペニーよりも遥かに大きな胸が……
剥き出しになってしまったんだ!!

「……キャアアアアアアア!!!」
「うわあぁぁ!?ごごごごゴメン!!」

女の子は剥き出しになった胸を両手で隠しながら悲鳴を上げ、
僕も慌てて女の子から顔を背けた。

クソっ!何やっているんだ僕は!?
いくらわざとじゃないからって、これじゃあ『痴漢』と変わらないじゃないか!?
僕が自己嫌悪と罪悪感に震えていると……。

「……どうした!?大丈夫か!?」

……僕と女の子の前に、また別の参加者らしき人が現れた。

黒い詰襟の服に赤いマフラーを身につけて、左手に包帯を巻き付けたピンク色の短髪の男の人だ。
ペニーに似ている顔つきからして、アジア系……それも中国か韓国か日本辺りの人だ。

「……えっ?」

突然現れた男の人は、固まってしまっていた。
それはまあ、そうだろうなぁ……。
何せ今、僕は全身タイツにマスク姿という格好で歳の近い女の子に覆い被さっていて、その女の子は、服の胸元が破かれて胸が丸出しの状態なんだから。
うわぁ〜……自分の事だけど、凄い犯罪チックな光景じゃないか。

「あ〜……」

男の人は僕達を眺めながら顔を赤くして、頬を指で掻きながら所在なさげにしていた。
そして……

「……す、すまない。邪魔をしたみたいだ。ち、ちゃんと避妊するんだぞ?」

……おもむろにそう言うと、僕達から背を向けて歩きだして……

「いや待って!ちょっと待って!!」

ここで変な勘違いされたまま立ち去られると、スッゴク不味いんだけど!
僕、レイプ犯扱いされちゃうよー!!

僕は必死に男の人を呼び止めた。


227 : スパイダーマン:バトロワバース ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:53:46 Pxaoau1c0
☆☆☆

一面に『デュエルモンスターズ』のカードが敷き詰められた薄暗い一室……そこに置かれていた『スパイダーマン:スパイダーバース』のBlu-ray&DVDセットのケースの両脇に、
テレビアニメ版『うたわれるもの』のDVDボックスと
『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』のBlu-rayボックスがそれぞれ置かれた。

☆☆☆

私、カミュ!
オンカミヤムカイの第2皇女!
今はウルトお姉さまと一緒にトゥスクルって國にいるの!
トゥスクルはスッゴク良い國でね、アルちゃんって友達ができたんだよ!
それからねぇ………

(以下、省略)

☆☆☆

俺は人吉爾朗(ひとよし じろう)。

厚生省所轄『超過人口審議研究所』、通称『超人課』のメンバー……いや、『元』メンバーだ。

俺は超人課の一員として、人々を守る『超人』達を守り助ける為に努力を重ねてきたが……ある事情から超人課を出て、今は在野の一人として超人を守る活動を続けている……。

一応、俺自身は『ただの人間』を自認しているが……俺の体の中には、世界の破滅を望んでいる『怪獣』がいる。

今のところ、俺は自分の中の『怪獣』の力を制御できてはいるが……もしも暴走すれば、数えきれない被害が出るほどの危うい力でもある。

俺については……とりあえずこんなところだ。

☆☆☆

「ハァァァァ……」

僕は森の中で体育座りしながら深い、深〜〜いため息をついていた。

後ろからはごそごそと衣擦れの音がしているけど、僕はまっすぐ正面を向いていた。

そこに、あのピンク色の髪の男の人が僕の背中にポンっ!と手を置いた。

「まぁ、その……悪かったな。色々勘違いして……」
「いや……元はと言えば僕が悪いから……」

ピンク髪の男の人から背中を擦られながら、何だか自分が無性に情けなく思えてきた。

『参加者を救う』とか息巻いてたのに、見ず知らずの女の子に、不可抗力とはいえ痴漢まがいのことをするなんて……大したヒーローだよ、僕は。

これじゃあ、ピーターやグウェンに笑われちゃうなぁ……。


228 : スパイダーマン:バトロワバース ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:54:14 Pxaoau1c0
「えっと……もう良いよ」

背後の衣擦れの音が止んで、あの黒い翼の生えた女の子の声がした。
どうやら支度が終わったみたいだ。

振り替えると、さっき僕がセクハラを働いてしまった翼の生えた銀髪の女の子が、大きな木の根元にちょこんと座っていた。

さっき僕が破いてしまった服の胸元には、隣にいるピンクの髪の男の人が首に巻いていた赤いマフラーが巻かれて、胸を隠していた。

まぁ、よく見るとだいぶ胸の谷間が見えるんだけど……丸出しよりはまだましな格好だ。

僕は女の子に向き直ると、前に社会の授業で教わった日本における最大級の謝罪を表す姿勢……『ドゲザ』のポーズをした。

「……本当にゴメン!!わざとじゃないとはいえ、女の子にあんな真似しちゃって……本当にゴメン!!」
「もう……別にもう気にしてないって言ったじゃない。あれは事故!もう忘れようよ?ね?」

とんでもないセクハラをしてしまった僕を、黒い羽の女の子は軽く許してくれた。

優しい子だな……。

もし学校のクラスメートに同じ事したら、例えわざとじゃなくても一生口聞いてくれなくなっちゃうのに……。

「……あ」

そこで僕はまだ自己紹介をしていない事に気づいて、マスクを外した。

ピーターには『誰にも正体を明かすな』って言われたけど、あんな真似を働いちゃった相手なんだからしっかり顔を見せて挨拶しないと。

「えっと……遅くなったけど、僕はマイルス」

僕は女の子に右手を差し出した。

「……私はカミュ。よろしくね、マイルス君?」

女の子……カミュはニッコリ笑いながら僕の手を握り返し、僕らは握手を交わした。

散々な出会いだったけど、思えばグウェンの時も似た感じだったんだ。

きっとカミュとも友達になれる。
確証はなかったけど、僕にはそう思えた。

「……俺もまだ名乗ってなかったな」

それまで黙っていたピンク色の髪の男の人が、握手し合う僕とカミュの手の上に自分の手を置いた。

「……人吉爾朗(ひとよしじろう)という。よろしくな」

男の人……爾朗さんの顔には、優しげな微笑みが浮かんでいた。

ヒトヨシジロウ。
やっぱり日本人なんだ。

日本人は黒髪黒目が多いって聞いたけど、ピンクの髪の人もいるんだ……僕は変なところで感心してしまった。

「うん!よろしくね、ジロウおじ様!」

爾朗さんに向けてカミュは笑顔を向けていたけど、それに対して爾朗さんはなんだか複雑そうな表情を浮かべていた。

「お、『おじ様』……俺はまだ20代なんだが……」

あぁ〜。

爾朗さんの呟きを聞いて、僕は爾朗さんの気持ちを理解してしまった。

確かに……20代の人が若い女の子から『おじ様』と呼ばれるのは色々複雑な気持ちだろう。

というか、『おじ様』というのは、単に『おじさん』と呼ばれるよりも老けているイメージがある呼び方だ。

僕の知り合いだと、ノワール辺りにピッタリなイメージがある。

まぁ……ノワールも実際は19歳くらいらしいから、若い女の子から『おじ様』なんて呼ばれたら複雑な気持ちになりそうだけど。

「あっ!ゴメンね、ジロウ『お兄様』!」
「いや……その呼び方もちょっと……」
「……ハハハ」

カミュとコントみたいな掛け合いをする爾朗さんの姿が滑稽に思えて、僕はつい笑いを漏らしたのだった。


229 : スパイダーマン:バトロワバース ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:54:46 Pxaoau1c0
【マイルス・モラレス(スパイダーマン)@スパイダーマン:スパイダーバース】
[状態]:健康、罪悪感と少々の自己嫌悪
[装備]:スパイダーマンのコスチューム@スパイダーマン:スパイダーバース、ウェブシューター@スパイダーマン:スパイダーバース
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:人を助ける
1:カミュと爾朗と行動する
2:僕はなんて事を!
3:カミュの胸……柔らかかったな
4:スパイダー仲間がいるなら、合流する
[備考]
本編終了から数ヶ月後の時間軸からの参戦。
スパイダーマンのコスチュームは支給品ではありません。
ウェブシューターはコスチュームの付属品です。

【カミュ@うたわれるもの】
[状態]:健康、服損傷
[装備]:人吉爾朗のマフラー@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:人殺しはしない
1:マイルスや爾朗と行動する
2:知り合いがいるなら合流する
[備考]
『散りゆく者への子守歌』〜『偽りの仮面』の間のどこかから参戦。
服の胸元が破けており、人吉爾朗のマフラーを胸元に巻いています。
マイルスと爾朗を『トゥスクルから遠く離れた國の人』と思っています。

【人吉爾朗@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康、首周りが涼しい、少しショック
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:人を助ける
1:マイルス、カミュと行動する
2:『おじ様』と呼ばれてショック
3:知り合いがいるなら合流する
[備考]
第二期(THE LAST SONG)の中盤から参戦。
まだ『おじ様』と呼ばれるような年齢ではありません。
カミュに自身のマフラーを貸しています。
マイルスとカミュを『海外の超人』と思っています。


【スパイダーマンのコスチューム@スパイダーマン:スパイダーバース】
マイルス・モラレス(スパイダーマン)@スパイダーマン:スパイダーバースの初期装備。
マイルスやピーター・パーカーを初めとする蜘蛛の力を持ったスーパーヒーロー『スパイダーマン』達が、ヒーロー活動を行う際に着用しているクモの巣模様の全身タイツ。
マイルスの物は黒地に赤いクモの巣模様が描かれている。

【ウェブシューター@スパイダーマン:スパイダーバース】
スパイダーマンのコスチューム@スパイダーマン:スパイダーバースの付属装備。
化学合成した蜘蛛糸を発射するスパイダーマンの代名詞的アイテム。
元々は『初代スパイダーマン』ピーター・パーカーが開発した物だが、マイルスが装備している物はピーター・パーカーの叔母・メイが作った物。

【人吉爾朗のマフラー@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
人吉爾朗が元々所属していた超過人口審議研究所(通称・超人課)からの出奔後に常に首元に巻いている真紅のマフラー。
現在は服の胸元が破けてしまったカミュ@うたわれるものに貸し出され、カミュの胸元にさらしのように巻かれている。


230 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:55:24 Pxaoau1c0
続けて投下します


231 :  乙女の危機!変態魔剣カオス! ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:56:08 Pxaoau1c0
「うわぁ〜!スッゴく綺麗!」

和服姿の少女……新生・帝国華撃団花組の隊員である天宮さくらは、
目の前に広がる雄大な景色を眺めて思わずそんな感想を口にした。

とはいえ、ここは観光地でもリゾートでもなく、殺し合いの場。
景色に見とれている場合ではない。

ボヤボヤしてると後ろからバッサリなのだ。

「誠十郎さん……は、いないか」

周囲にはさくらが思いを寄せる隊長や信頼する花組の仲間達の姿は無い。

参加させられたのはさくらだけなのか?
それとも会場のどこかにいるのか?

今の段階では見当もつかなかった。

ここは自分で何とかするしかない。
そう思ってさくらはデイパックを開いて、自身の支給品を確認した。

「……これは」

デイパックから最初に出てきたのは、黒を基調にグロテスクな装飾が施されたゴツい西洋式の大剣だった。

「西洋の剣か……できれば日本刀の方が良かったかな?」

多少の文句を言いつつも、さくらはその剣を手にして型通りに降ってみる。
愛刀である天宮國定に比べて少々重かったが、振るえない程ではない。

また、さくらのデイパックには他に武器になりそうな物は入っておらず、当面はこれで我慢するしかなさそうだった。

支給品の確認を終えると、さくらはいつもは天宮國定を下げている左脇に大剣を下げ、自身のデイパックを肩に担いだ。

「よし!」

準備を終え、さくらが歩きだそうとした……その時だった。

「……きゃあっ!」

突然、尻を撫でられるような感覚がさくらを襲ったのだ。

「だ、誰かいるんですか!?」

顔を赤くし尻を両手で押さえながら、慌て周囲を見渡すさくらだったが……先程確認した通り、周囲にさくら以外の人影は一つも無かった。

「……?」

気のせいだったのかな?
そう思ってさくらは再び歩きだした……が、

「キャアアア!!」

今度は胸を触られる……どころか、両乳房をグワシっ!と鷲掴みにされるような感覚に襲われ、さくらは両手で胸を隠しながらその場に屈み込んだのだった。

「だ、誰!?誰なんですか!?」

さくらはまた周囲を見渡したが、やはり人影らしき物は全く見えなかった。

「???」

何が何だか分からず、さくらは少し泣きそうになりながらも、とぼとぼと歩きだしたのだった。

(ぐふふふふ……)

その時。
さくらの左腰にぶら下がる剣が、静かにほくそ笑んだ。
よく見れば、その剣の鯉口には顔のような物が見てとれるだろう。

(やーっと、やぁーっと、ピチピチギャル(死語)の使い手じゃ♡いやぁ〜長かったのぉ〜♪︎)

この剣の名は『魔剣カオス』。
ルドラサウムというクジラみたいな超越存在が産み出したとある大陸において、
『最強』を誇る『魔人』と呼ばれる存在を傷つけられる意思を持つ伝説の剣の一振りである。

ただし……その中身はとんでもないスケベ親父。
長い剣としての一生で、
男ばかりに使われてきた鬱憤を、
この場で晴らす気満々であった。

(むふ〜♪︎えぇの〜♪︎えぇの〜♪︎ピッチピチのムチムチ(死語)じゃわい♡では、もう一回……)

カオスの刀身から、目に見えないオーラの触手が伸びていく。

その先端はワキワキと卑猥な動きをして、袴の上からでもほどよく鍛えられている事が分かるさくらの尻を撫でようと……した所で空を切った。

(あれ……?)


232 : 乙女の危機!変態魔剣カオス! ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:56:49 Pxaoau1c0

カオスはもう一度オーラの触手を伸ばしてみるも……やはり、さくらの尻にはたどり着かない。

というか……さくらの左腰にぶら下がっていたはずなのに、
何だか目線が先ほどよりも高くなっていた。

(えぇっと……)

そこでカオスは自身の頭の上、すなわち柄の部分を掴まれている事に気がついた。

そして視線を前に向けると……そこには、さくらの顔があった。

「へぇ〜……貴方の仕業だったんですか……」

さくらは口調こそ穏やかだったが、まるで汚い物を見るような、軽蔑するような視線をカオスに向けており、
眉毛の端はピクピクと痙攣して、額にはうっすら青筋が浮かんでいたのだった。

「いや……あの……」
「あっ、喋れるんですか?喋る剣なんて初めて見ましたけど、あれだけやったんだから覚悟はできてますよねぇ〜?」

それだけ言うと、さくらはカオスの柄から手を離した。
カオスの刀身は重力に従って地面に落ち、
カキーンという金属音を周囲に響かせた。

「な、何を!?」

さくらはカオスの言葉に耳を貸すこと無く……
カオスの刀身を踏みつけ始めた。

「ちょっ!ちょっと待て嬢ちゃん!止めるんじゃ!」

カオスが止めるように懇願しても、さくらはカオスの刀身を何度も踏みつける。

何度も、何度も。

何度も、何度も、何度も。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。

「ちょっ!本当、待ってくれ!!ワシが悪かった!ワシが悪かったから!!」

カオスが謝罪の言葉を口にしても、さくらの踏みつけは止まらないどころか段々威力が上がっていくようだった。

その姿はまるで、怒り狂う鬼神のようであった。

さくらがカオスを踏みつけ始めて……だいたい10分程経った時である。

「ちょ、ちょっと貴女!何してるの!?」

別の参加者がそこに通りがかり、カオスを踏みつけ続けるさくらを見て唖然となった。

ビスチェと剣闘士の鎧を組み合わせたようなコスチュームを着た、さくらよりも少しばかり年上の女性だ。

コスチューム姿の女性はさくらを羽交い締めにし、カオスに対する折檻を止めさせたのだった。

「ちょっと!何があったか知らないけど、落ち着きなさい!」
「は、離して!離して下さい!女の敵に誅伐を!」
「おぉ!お姉ちゃん頼む!助けてくれ!!この嬢ちゃん、話聞いてくれんのじゃ!」

喋る剣に折檻を行う和装の少女、そしてその和装の少女を羽交い締めにする鎧姿の女性……それは端から見ると、なんともカオスな光景であった。


233 : 乙女の危機!変態魔剣カオス! ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:57:35 Pxaoau1c0

☆☆☆

それから更に15分後……

「ふぅ〜ん……なるほど。話は分かったわ」

ようやく落ち着いたさくらとカオス双方から話を聞いたコスチューム姿の女性……ダイアナと名乗った……は、さくらと共に両腕を組みながら、地面に横たわるカオスに向けて軽蔑するような視線を送っていた。

「……私も、意思を持つ剣なんて初めて見たけど……ここまでスケベな剣があったとは驚きだわ」
「全くですよ!」

ダイアナの言葉にさくらは鼻息を荒くしながら同意する。
あまり、うら若き女性がしてはいけない姿だった。

「なんじゃいなんじゃい!ワシばっかり悪者扱いしおって!」

女性2名から蔑まれ、カオスは不機嫌そうにカタカタと刀身を振るわせた。

「ワシは魔人も切れる伝説の魔剣じゃぞ!良いではないか!?ちょっと胸や尻、お触りするくらい!減るもんじゃなしに!まん◯触られるよりはマシじゃろうが!?」
『………』

全く反省する様子が無いカオスの態度に、さくらだけでなく、ダイアナも『一人の女性』として……静かに切れた。

「……こいつ、叩き折りましょうか?それとも、ハンマーか何かで粉々にする?」
「手緩いです!溶鉱炉か何かに放り込んで、ドロドロに溶かしちゃいましょう!!」
「……すいません。調子乗りました。命だけはご勘弁を」

……女性2名がにこやかに自分の処刑方法を相談し合う姿を間近で目撃し、流石のカオスも早口で謝罪するしかなかった。

☆☆☆

その後、カオスは『今後決してセクハラ行為を行わない』という条件を泣く泣く受け入れ、何とか助命されたのだった。

「良いですか!?今度またあんな事したら、重り付けて海に沈めますからね!?」
「は、はい……」

さくらの左腰にぶら下がりながら、カオスは情けない返事をする。
その様子を眺めながら、ダイアナは肩を竦めたのだった。
まる

【天宮さくら@新サクラ大戦】
[状態]:健康、不機嫌、まだ少し怒り
[装備]:魔剣カオス@Ranceシリーズ
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(内容は確認済み)
[思考・状況]
基本:会場からの脱出
1:この剣サイテー!!でも、しばらくはこれで我慢しないと……
2:花組の仲間がいるなら合流する
3:とりあえず、ダイアナさんと行動する
[備考]
アニメ版からの参戦

【ダイアナ(ワンダーウーマン)@DCエクステンデッド・ユニバース】
[状態]:健康、呆れ
[装備]:ワンダーウーマンのコスチューム@DCエクステンデッド・ユニバース
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:人を助ける
1:こんなエッチな剣があるなんて……
2:知り合いがいるなら合流する
3:さくらと行動する
[備考]
『ジャスティスリーグ』後からの参戦
コスチュームは支給品ではありません。
詳しい能力の制限などについては、後の書き手さんにお任せします。

【魔剣カオス@Ranceシリーズ】
老舗アダルトゲームメーカー『アリスソフト』製作の人気作『Ranceシリーズ』に登場する伝説の魔剣。
主に主人公であるランスが所持・使用し、ランスの事を『心の友』と呼ぶ。
作中世界において『無敵結界』を持つ『魔人』を切る事ができる意思を持つ剣だが、その中身はとんでもなく下品なスケベ親父。
本来は適合しない者が使用すると最終的に自我崩壊を起こすのだが、このロワにおいては誰でも使用できるように調整されている。
かつては『シーフ・カオス』という人間だったのだが、『魔人や魔王を倒せる力』を願った結果、現在の姿となった。
その他詳細はwikiを参照のこと。

【ワンダーウーマンのコスチューム@DCエクステンデッド・ユニバース】
ダイアナがスーパーヒロイン『ワンダーウーマン』として活動する際に着用しているコスチューム。
正確にはダイアナの出身種族『アマゾン族』の女戦士が使用する鎧の一種で、ビスチェ(胸から胴体を覆う女性用下着の一種)と剣闘士の鎧を合わせたような肌の露出が多いデザインが特徴。
ダイアナが故郷である『セミスキラ』を出奔してから100年近く愛用しており、(時系列順における)使用開始当初は原作コミックにおけるワンダーウーマンの衣装のような鮮やかな赤・青・金色の彩色だったが、現在(21世紀以降)はミッドナイトブルーとダークレッドの彩色に統一されている。


234 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/05/25(水) 21:58:01 Pxaoau1c0
投下終了します。


235 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 22:59:37 80W69lDQ0
投下します


236 : Restart Our Engine ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 23:00:37 80W69lDQ0
 冥界の魔王は人間界の法律に縛られない。ハデスからしたら人間など矮小な存在に他ならず、彼らの法で自分を裁くことは不可能だと思っている。
 だから警察官だろうがなんだろうが――どんな地位の者でも呼び寄せている。
 それは仮面ライダーであり警察官として数々の事件を解決してきた男――泊進ノ介も例外ではない。

「デュエル……決闘か。あの魔王はそう言ってたが、これはもう決闘なんかじゃない。立派な事件だ」

 他に誰も参加者がいない場所で進ノ介は誰かに話し掛けるように言葉を発した。
 何も事情を知らない者が見ればただの独り言だ。一人で何かを語っているようにしか見えない。

「ああ。その通りだ、進ノ介。この事件、とてもじゃないが決闘と呼べるものではない」

 デイパックの中から独特な男の声が返事をした。聞き覚えのある声にデイパックを開け、その中からベルトを取り出す。

「やっぱりベルトさんも巻き込まれてたのか」

 ベルトさんを手に取り、眺めながら嬉しそうに話し掛ける。まるで暫く会えなかった相棒や友人に接するかのように。

「久しぶりだな、進ノ介。鎧武に起こされた時よりも状況は最悪のようだが……」
「ああ。決闘やゲームなんて聞こえの良い言葉を使ってるが、ルールを確認する限りこれはただの殺し合いだ」

 ――最後の一人まで生き残った者にはデュエルキングの称号を与えるという一文はよくわからないが、そんな遊び染みた称号で誤魔化される気はない。これは事件で、ハデスは犯罪者だ。

「それにしても私がこのデイパックに詰め込まれていることによく気付いたな」
「簡単な話さ。あいつは色々な世界から決闘者を集めたと言ってた。決闘者っていう言葉の意味はわからないけど、それが決闘――つまり戦闘が強い奴っていう意味なら俺だけ呼んでも意味ないだろ?」
「そういうことか。相変わらず頭の回転が早いようで何よりだ」

 ベルトさんの液晶画面がにこやかに笑う。数種類の顔が用意されている、表情豊かなベルトさんだ。

「別にこれくらい普通だと思うけどな。さて、今度は俺の質問に答えてくれないか?……質問っていうかベルトさんに意見を聞きたいんだ」
「いいだろう。私も出来る限り君に協力するつもりだ。どんな質問でもしたまえ」
「ベルトさんはあいつのことをどう思う?」
「あいつ――というと冥界の魔王のことかね?」
「ああ。俺はあの肩書きは嘘じゃないと思った。上手く言い表せないが、そういうオーラのようなものを感じたんだ」

 進ノ介の言葉を聞いてベルトさんは思案する。機械の身体だとオーラという神秘的なものを肌で感じる事は出来ないが――魔王の堂々とした態度は確かに嘘やハッタリとは思えない。それに自分や進ノ介が二人揃って何も知らない間に拉致されたということもある。冥界の魔王――という肩書きは大袈裟にも聞こえるが、そう言われても納得出来るような存在であることは認めざるを得ない。

「少し考えてみたが、私も進ノ介と同じ意見に辿り着いた。確かに奴は本当に冥界の魔王なのかもしれない」
「やっぱりベルトさんも俺と同じ意見か」

 相手は冥界の魔王。大層な肩書きからして強そうだし、実際こんなものを開いているのだからかなり強いのだろう。
 一番賢い選択は彼に逆らわずになんとかして最後の一人まで生き残ることだ。積極的に誰かを襲ったりもせず、他人に見つからないような場所で引き篭ってれば自然と数も減る。


237 : Restart Our Engine ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 23:01:00 80W69lDQ0
 そんなことは当然のようにわかるが――泊進ノ介は警察官だ。市民の平和を守ることが使命だ。それはこの決闘でも変わりない。どんな場所でも泊進ノ介は警察官で、仮面ライダードライブだ。

「今回の敵はこれまで以上に強大だ。どうする?進ノ介」

 ベルトさんが進ノ介の意志を問う。そんなもの、聞かなくてもわかっているはずなのに――。

「市民の平和を脅かすハデスを倒す。――またひとっ走り付き合ってくれるか?ベルトさん」

 進ノ介から期待通りの返答を聞いて、ベルトさんが微笑む。

「当然だ。そのために私はここにいるんだからね」

 ベルトさんの心強い返事に今度は進ノ介が笑う。お互いに信頼し、心(ハート)で通じ合っているからこそ彼らのやり取りはこの決闘でも今までとさほど変わらない。

「そういえばタケルやウィザード……あと神様達もこの決闘に巻き込まれたんだろうか?」
「それは私にもわからない。だが私達が呼び寄せられたということは、彼らもまた集められた可能性は高いだろうね」

 天空寺タケル、宝生永夢、操真晴人、葛葉紘汰――彼ら仮面ライダーは進ノ介の頼れる仲間達だ。共闘した回数こそ少ないが、彼らが参加していたらきっと自分のように事件解決を目指すだろうと進ノ介は信じてる。

『俺たちは仮面ライダーだ。お互いに離れていても』
『その心は一つ。もしまた危機が起きたら』
『そうだな、一緒に戦おう』

 共闘した後、それぞれの場所へ帰る前のやり取りを思い出す。
 この事件も仮面ライダーみんなで力を合わせて、必ずハデスを倒す――進ノ介は自分の心にそう誓った。

【泊進ノ介@仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー】
[状態]:健康
[装備]:ドライブドライバー&シフトブレス&シフトカー(シフトスピード)@仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:他の仮面ライダー達と協力してハデスを倒す
1:他の仮面ライダー達を探す
2:決闘者ってなんだ?
[備考]
本編終了後から参戦


238 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/25(水) 23:01:20 80W69lDQ0
投下終了です


239 : ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:39:01 Omz.olJk0
投下します


240 : 敗北 ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:42:20 Omz.olJk0
丸太のような太い腕を振り下ろし、アスファルトで舗装された道路と、そこに倒れ込んだ少年の頭部を粉砕した。

こうして午の戦士・迂々真は、このバトルロワイアルにおける初戦を白星で飾ったのだった。


【迂々真@十二大戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:勝利する
1:まずは一勝。幸先がいい。
2:干支十二家以外からも参加者がいるのだな。
[備考]
本編開始直前からの参戦
本人はこのバトルロワイアルを十二大戦であると思っています。


241 : 敗北 ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:43:06 Omz.olJk0


◆◆◆


「そんな……」

戦闘音を聞きつけた緑谷出久が現着したのは、迂々真がその場を立ち去った数分後のことであった。

粉々に砕け散ったアスファルトの中に倒れる大柄な人物。
襤褸のようなダークグリーンの衣服をまとい、そこから伸びた白い腕からは鋭く分厚い白銀の刃が生えている。しかしそれらは今、夥しい量の血で赤く染め上げられていた。
出血量、飛び散った脳漿。誰が見ても手の施しようがないと判断できる―――死体だった。

ゲーム開始からまだ三十分と経っていないにも関わらず死者が出てしまった。
冬のインターンでエンデヴァーが言ったように、間に合わなかったせいで人の命が落ちたということだ。ヒーローとしてそれは大きな敗北に他ならない。

それ自体もショックであったが、彼を打ちのめす要因はもう一つ。
頭部を砕かれ屍を晒すその人物を緑谷出久は知っていた。

「鎌切くん……!」


鎌切尖。
クラスこそ違えど、出久と共にヒーローを志し研鑽を積む―――雄英高校の一年生だ。


「―――ッ!!」


悔悟に震えようとする喉を、焦燥に駆け出そうとする脚を。
理性で抑え込み、為すべきことを考える。

(……まずは情報収集だ。
 遺体の状況、周囲の痕跡。得られる情報をありったけ! 鎌切くんの死を無駄にはしない!)

歯を食いしばり、黒鞭を伸ばす。
物のように扱うことを心の内で詫びながら、鎌切の遺体を少しずつずらした。

4代目の個性・危機感知が発動しない―――罠が仕掛けられていないことを確認し、遺体を検分する。


242 : 敗北 ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:43:55 Omz.olJk0

大きな外傷は二か所しかない。直接の死因となったであろう頭部の圧壊に加えて右足――脛のあたりが折れている。
鎌切尖の戦闘スタイルは高い機動力で相手を翻弄し、個性・刃鋭によって生やした刃で必殺の一撃を喰らわせるものだ。
周辺の建物に残っている足跡は鎌切のブーツと一致する。
更に、砕けたアスファルトの下の地面をよく見ると縦長の凹みが四か所並んでいる。
非常に大きかったため一瞬気づけなかったが、これは拳の痕だ。
何発も殴っていればこうも綺麗に痕は残らない。これらのことから鎌切の頭部は拳の一撃によって破壊されたのだろう。

下手人の人物像を想像する。
一瞬思い浮かんだのは『血狂いマスキュラ―』こと今筋強斗だ。


しかしそうなると一つ疑問が浮かぶ。
「この刃……こぼれてる。ボロボロだ」

そう。鎌切の腕から伸びた刃は無惨にこぼれていた。
鎌切の個性・刃鋭で生み出された刃は鉄をもたやすく切り裂く。それは対抗戦でも目の当たりにした事実。
一方、マスキュラ―の防御能力は筋肉を増強することによる衝撃の中和こそが肝となる。
かつて出久の100%のスマッシュにすら耐えたマスキュラ―の肉体でも、まともに刃をその身に受ければ深手を負うかもしれないし、少なくとも出血は免れないはずだ。
しかし刃のこぼれて欠けた部分には血がついてない。

それだけならば硬質な武器と打ち合った結果刃こぼれしたと想像しただろう。
だが出久は刃に引っかかっている小さな“それ”を見逃さなかった。

「これは……皮膚片か!」

この遺留物によって、出久の脳内の下手人像は大きく変わる。

(恐らく鎌切くんと戦った相手の“個性”は切島くんと似たようなものだ)

雄英高校一年A組、切島鋭児郎。
彼の個性・硬化は身体を硬化させるというシンプルなものだ。
最強の矛にも最強の盾にもなれる強力な個性だが、硬度以上の攻撃を受ければ破られてしまうこともある。
実際、インターン中に体から刃を出すヴィランと戦った際には切り傷をいくつも作っていたし、死穢八斎会での戦いでは敵の拳を受けて皮膚が大きく剥がれていた。
皮膚片が刃に付着していたということは、鎌切の刃は敵に届いたものの小さな傷を作るに留まったのだろう


243 : 敗北 ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:44:33 Omz.olJk0


得られた情報を基に鎌切の最期を想像する。

何らかの事情で戦闘状態に陥った鎌切は、対抗戦で見せた身軽さで機動戦を展開し敵を翻弄した。
そうして隙ができた敵に刃を振るうも敵の個性で通じず、後の先を取られるような形で足を折られて機動力を奪われ、そして――――

「……ッ!!」


ぎり、と奥歯が鳴る。
拳を握り締め、鎌切の亡骸を目に焼きつける。


「ごめん。鎌切くん。今は時間が惜しい」

そう呟き、45%のOFAと「発勁」で空へ。更に黒鞭を使い、屋根の上を駆ける。

鎌切は直接戦闘を得意とするタイプのヒーロー。退却メインの戦法だったとはいえ、爆豪とも渡り合った強者である。
このバトルロワイアルは、そんな彼が三十分と経たずに命を落とす修羅場だ。
こうしている間にも戦う力を持たない参加者が蹂躙されているかもしれない。遺体を別の場所に安置する時間すら惜しかった。


「もうこれ以上誰も死なせない。絶対に!」


それこそがヒーローの責任だ。


【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:健康
[装備]:ヒーローコスチューム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:バトルロワイアル参加者全員の救出
1:もう誰も死なせない
2:鎌切を倒した敵を確保する。
[備考]
参戦時期はNo.327以降

【鎌切尖@僕のヒーローアカデミア  死亡】


244 : ◆ylcjBnZZno :2022/05/26(木) 00:44:58 Omz.olJk0
投下終了です


245 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/26(木) 06:12:09 BYHfmCSc0
投下します


246 : 決闘に放たれた切り札 ◆OmtW54r7Tc :2022/05/26(木) 06:13:49 BYHfmCSc0
「決闘(デュエル)…か…」

剣崎一真は、暗い顔でそう呟いた。
磯野という男とハ・デスという怪物によって宣言された決闘という名の殺し合い。
それは、まるで―

「バトルファイトみたいじゃないか…!」

バトルファイト。
それは、剣崎の世界で行われた、アンデッドという名の不死者達による生き残りサバイバル。
この決闘が、バトルファイトと関係あるのかどうかは分からない。
だが、しかし…それでも考えずにはいられないことがあった。

「俺が…ジョーカーが優勝してしまったら、どうなるんだ?」

ジョーカー。
それは生物の始祖達によって行われたバトルファイトにおいて、どの生物の始祖にも属することがないイレギュラー。
ジョーカーがバトルファイトにおいて最後まで勝ち残ってしまった場合、「破滅の日」が訪れ、世界は滅ぶ。
実際剣崎の世界は、相川始というジョーカーの勝ち残りにより発生した大量の怪物により滅ぼされかけた。
そんなジョーカーである自分が…決闘という名のバトルファイトに呼び出された。
あのバトルファイトとは全く違う催しだったとしても…不吉な可能性を考えずにはいられない。

かといって、剣崎に死ぬことは許されない。
剣崎はアンデッドという不死の存在とはいえ、こうして首輪をつけて参加者となっている以上、殺すないしは封印はできるのだろう。
ルールにあった禁止エリアに入っても、なんらかの処置がされて脱落することはできるのだろう。
そうすれば、この決闘でジョーカー優勝によりなにかが起こる…という懸念は払拭される。
しかし…自分がいなくなった場合、自分の世界がヤバいのだ。
そもそも剣崎一真は、元々は普通の人間だった。
それがジョーカーになったのは、ジョーカー相川始によりもたらされる「破滅の日」を、自分がアンデッドになることでバトルファイト継続状態に戻して回避するためだった。
ジョーカー剣崎一真とジョーカー相川始。
この両者が存在し続ける限り、バトルファイトは永遠に続き、「破滅の日」は訪れない。
しかし、どちらかの存在が消えてしまえば、再び「破滅の日」が訪れるのだ。

勝ち残ればこの決闘で何かよくないことが起きるかもしれない。
かといって脱落すればバトルファイトが終わり自分たちの世界は滅ぶ。

「くそっ、どうすればいいんだ!」

自縄自縛状態に陥り苦しむ剣崎。
ジョーカーが勝ち残った時、この決闘は何かが起きるのか、何も起きないのか
それはまだ、誰にも分からない。

【剣崎一真@仮面ライダー剣】
[状態]:健康
[装備]:ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:決闘に乗るつもりはないが、しかし…
[備考]
※最終回後からの参戦
※ジョーカーである自分が勝ち残ることでこの決闘になにかが起きるのではないかと考えています

【ブレイバックル@仮面ライダー剣】
BOARDの製作したライダーシステム。
適合者はこれを装備することで仮面ライダーブレイドに変身できる。
付属のラウズカードはスペードのA~K。

【ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣】
仮面ライダーブレイドの強化アイテム。
Qのラウズカードで起動し、Jでジャックフォーム、Kでキングフォームに変身することができる。


247 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/26(木) 06:14:22 BYHfmCSc0
投下終了です


248 : そーなのかー ◆s5tC4j7VZY :2022/05/26(木) 06:42:30 1ZwpIyVE0
投下します。


249 : そーなのかー ◆s5tC4j7VZY :2022/05/26(木) 06:42:58 1ZwpIyVE0
「へっ!その雑魚モンスターを蹴散らせ!ダイヤモンド・ドラゴン!ダイヤモンドブレス!」

男の命令を受け、ダイヤモンド・ドラゴンは口からブレスを相手モンスターへ吐く。
攻撃力2100のブレスは対戦相手の少女が召喚している小天使テルスを飲み込み、消滅させた。
形見の羽根がひらりと場(フィールド)へ残される。

「オラオラ―!これ以上は時間の無駄だぜ!さっさとサレンダーしたらどうだ!」

決闘中、対戦相手にいきがっている男。
男の名は名蜘蛛コージ。
デュエルキングである武藤遊戯と同じ童実野高校の不良男子。
バトルシティに参加していた彼は決闘に勝利した相手に交渉もといカツアゲを行っている最中、新たな決闘の場へ誘われた。
始めは何が何だか戸惑う彼だったが、直ぐに事態を理解すると優勝するべく、出会った少女に決闘を申し込んだ。

「んー?しないけど」
「はぁああ!?……チッ。まぁいい。オレが勝利したらテメェの支給品は全て頂くぜ!」
「えー?確かアンティは支給品一つのはずだったよね?」
「気が変わったんだよ!いいかぁこの決闘では、オレがルールだ!さもなきゃ十万払うんだな!」

一度は闇遊戯(アテム)の罰ゲームを受けたが、残念ながら強奪癖は治らないだけでなく更生した様子は見られない。
一方、名蜘蛛と決闘(デュエル)をしている少女。
少女の名はルーミア。
幻想郷に住む”妖怪”の一人。

―――バッ

突如、ルーミアは両手を横へ広げる。
まるで、磔にされたメシアのように。

「あ?……なんだ?そのポーズは?」

残念ながら名蜘蛛には伝わらず、訝しむ結果としてなるだけだった。

「聖者は十字架に磔られました」っていってるように見える? 」
「はぁ!?見えねーよ!つか、テメェ頭ヤベェんじゃねぇか」

悪態をつく名蜘蛛。
幻想郷の住人の行動は時に奇異にみられることもある。

「そーなのかー」
「……それじゃあ、私のターンだね」
「は!いまさらどんなカードを出そうと、オレのダイヤモンド・ドラゴンには敵わねぇよ!」

俺の持つ最高のレアカードであるダイヤモンド・ドラゴン。
ダイヤモンドにドラゴン。
正に強靭!無敵!最強の組み合わせ。
このダイヤモンドドラゴンの力でオレは優勝する。
願いはどうする?
4630万……いや1兆円とかどうだ
へ、へへ……オレの輝かしき栄光の道(ロード)が見えているぜ!
それとハ・デスとかいう糞野郎にはお礼参りをやるぜ!。

「手札より増殖を発動」」

ルーミアの場に2体のトークンが増殖される。

「は!時間稼ぎのトークンか?往生際がわりぃな!」

ルーミアは名蜘蛛の言葉に反応せず、続ける。

「そして、このトークン3体を生贄に捧げ、このカードを召喚」

☆彡 ☆彡 ☆彡


250 : そーなのかー ◆s5tC4j7VZY :2022/05/26(木) 06:43:13 1ZwpIyVE0
「な……オ……オレのダイヤモンドドラゴン……が?」
(そ、それにあの姿……あれは一体どういうわけなんだ……?」

闇。
そう、名蜘蛛のダイヤモンドドラゴンは飲まれた。
ルーミアに召喚された深き深淵の闇に。
ダイヤモンドドラゴンのイラストとテキストはぐちゃぐちゃになった。
赤子が黒のクレヨンで塗りつぶしたように。
それは名蜘蛛が決闘者として心が死んだからだ。

「おいしかったー?」

ルーミアの言葉に闇は応じ、消え去る。
ルーミアはよかったねといった表情でウンウンと頷く。
そして、名蜘蛛の方へ顔を向けると……

「それじゃあ、こんどは私の食事だねー」
「はぁ!?」
(意味がわからねぇ……なんだ食事って……ッ!?ま、マジかよ!?)

ルーミアは一歩ずつ名蜘蛛に近づく。
名蜘蛛は足が竦んだのか一歩も動けない。
ここは幻想郷ではない。
決闘は決闘でもスペルカードでの決闘ではない。
一人になるまでのバトルロイヤル。
敗者が受ける罰ゲームは”死”
ニコリと無邪気な顔が……

「く…くるな!くるんじゃねぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」
「それじゃあ……いただきまーす」

………

【名蜘蛛コージ@遊☆戯☆王 死亡】

「ごちそうさまー」

満足そうにお腹をポンポンと叩く。

「さて……と、どうしようかなー」

ルーミアの興味を引いているのは磯野という外来人の背後にいる冥界の魔王ハ・デス
ハ・デスが身に纏う闇のオーラ。
ルーミアの能力は”闇を操る程度の能力”
非常に嫉妬心があると同時に魅力的だ。
あれを食してみたい。

「ん?」

また参加者であろう決闘者を見つけた。
ルーミアは近づくとニッコリし……

「ねぇ、あなたは取って食べれる人類?」

【ルーミア@東方Project 】
[状態]:健康 
[装備]:デュエルディスクとデッキ(邪神)@遊戯王
[道具]:基本支給品2(自分と名蜘蛛)、ランダム支給品1〜4(自分と名蜘蛛)
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを食す(優勝・反抗でちらでもいい)
1:とりあえず、目の前の決闘者と会話する
2:決闘を申し込まれたら応じる。勝ったら場合によりいただきます
[備考]
東方紅魔郷 霊夢に敗北後からの参戦。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(邪神)@遊☆戯☆王R】
ルーミアに支給。死んだペガサス蘇らせようとした天馬夜行による邪神を中心にしたデッキ

※名蜘蛛のデュエルディスクとデッキは死んだエリアに放置されています。
詳細は後続の書き手様に委ねます。


251 : そーなのかー ◆s5tC4j7VZY :2022/05/26(木) 06:43:24 1ZwpIyVE0
投下終了します。


252 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/26(木) 10:17:27 hEhqegg20
投下します


253 : ご唱和ください、彼女の名を! ◆FiqP7BWrKA :2022/05/26(木) 10:18:08 hEhqegg20
「参ったわね……」

その一帯の中で一番高いビルの屋上。
眼を開けるのもきつい様な風の中、一人の華奢な少女が下界ギリギリに立っていた。
彼女の名はキャル。
アストルムと言う電脳世界に囚われたプレイヤーの一人で、
曰く、美食殿のかけがえのない一員。
曰く、最悪の暴君、覇瞳皇帝の下僕。
曰く、裏切り者の恥知らず。
曰く、かつて裏切った仲間たちとの真の絆を得た者。
そんな彼女の手には、黒、青二色の奇妙なアイテムが握られている。


ウルトラゼットライザー


光の国がある宇宙の脅威を収束させるための切り札として開発した強化アイテムである。

「散々いろんな魔物を操ってきたけど、
まさか自分が魔物になる日が来るとはね」

毎度毎度美食殿の仲間たちととんでも大冒険に巻き込まれているキャルは、
この遥か彼方の外星人たちの超科学の産物を簡単に受け入れる事が出来た。
それと同時に確信も有った。
この戦い、多分自分の仲間たち、とくに美食殿や、
トウィンクルウィッシュの連中も巻き込まれているだろうと。

(トウィンクルウィッシュの連中は大丈夫だろうけど、
ユウキはふらふら誰かについて言っちゃいそうだし、
コロ助はユウキの事となると暴走するし、
ペコリーヌは食事出されたら毒盛られても気付かないで食べそうだし……)

決して口には出さないが、
少なくともキャルのイメージではかなり心配な連中だ。

「さっさと助けに行ってやるから待ってなさい」


254 : ご唱和ください、彼女の名を! ◆FiqP7BWrKA :2022/05/26(木) 10:18:31 hEhqegg20
キャルはゼットライザーを構えると、トリガーを引いて起動し、
セットで支給されたウルトラアクセスカードを挿入する。

<モモチ・アクセスグラッテド!>

「モモチ?まあいいわ」

そう言って今度はスラッガーを模したメダルスロットに怪獣メダルを二枚、
超古代怪獣ゴルザ、超古代竜メルバの物をセットする。

「グリムフュージョン!」

<ゴルザ!メルバ!>

スロットをスライドさせメダルを読み込み、最後に天高く掲げる!

「チェンジ・モンスターフォーム!」

<ゴルバー!>

ライザーのクリスタルから放たれた光が四角いゲート、
フェイクヒーローズゲートが出現し、キャルの体をインナースペースに収納。
彼女の肉体を強化する形でゴルザ、メルバのパワーを得て、
暗雲の中より、闇の合体怪獣、ゴルバーとして出現した!

『へえ、2枚でこれはなかなかね』

本来65メートルの巨体を誇るゴルバーだが、流石にハ・デスたちもゲームバランスを考えてか、
そのサイズは15メートル有るか無いかになっていた。
だがキャルの元居たアストルムの基準で考えれば、十分大型に分類されるサイズだ。
ゴルバーは咆哮を上げると背中の羽を広げて飛び上がる。

『さあ行くわよ!』

ただそれだけで屋上の端を壊し、猛烈な余波を発しながらゴルバーは飛び去った。


255 : ご唱和ください、彼女の名を! ◆FiqP7BWrKA :2022/05/26(木) 10:18:53 hEhqegg20
【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:健康、ゴルバーに変身
[装備]:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ
     ウルトラアクセスカード@ウルトラマンZ
     怪獣メダル(ゴルザ、メルバ)@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、
     怪獣メダル(超コッヴ、ガンQ、レイキュバス)@ウルトラマンZ
[思考・状況]基本方針:恐らく巻き込まれてるだろう仲間たちと共にこの事件を解決する。
1:まずは空から仲間たちを探す。
2:全部メダル使ったらどうなるのかしら?
[備考]
※ウルトラゼットライザーは、アクセスカード、
 ファイブキングを構成する怪獣のメダル5枚で一個の支給品扱いです。
※ウルトラアクセスカードは、一番最初に支給された参加者の物のみ支給されています。
※ウルトラゼットライザーは変身の際に、
 インナースペース(安全圏)にいる時間が短くなる様に、
 怪獣の力が本来のスケールで出せない調整されています。
 恐らく、ウルトラマンに変身する際も、同様であると考えられます。


256 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/26(木) 10:19:23 hEhqegg20
投下終了です。


257 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/26(木) 20:43:42 yiaEJ3XA0
投下します


258 : 水属性担当の二人 ◆NIKUcB1AGw :2022/05/26(木) 20:45:11 yiaEJ3XA0
「何が決闘じゃ! こんな殺し合いが決闘と呼べるか!」

海を臨む崖の上で、褐色肌の青年が叫ぶ。
彼の名は、梶木漁太。日本でトップクラスとされるデュエリストである。
その割に作中での戦績は散々だったりするが、何せ比較対象が蟲野郎とか
魔法カード使ってるのを見たことない脳筋だったりするので相対的に印象がいいのは間違いない。
まあそんなことはどうでもよく、彼はこの戦いに激しい怒りを抱いていた。
かつて梶木は、大会で遊戯と決闘したことがある。
殺された本田という男は、たしか遊戯の友人だったはずだ。
それを目の前で殺され、遊戯がどれほどの悲しみを味わったかなど想像に難くない。
梶木は、遊戯と深い付き合いがあったわけではない。
だが自分を負かした相手として、一定の敬意は抱いている。
その男を理不尽な手段で悲しませた存在を、許すことなどできない。

「殺し合いなんぞせんぞ、俺は! 薄汚い貴様らの決闘、俺がぶち壊してやる!」

どこかから監視しているであろう主催者に対し、梶木は堂々と宣戦布告する。

「うんうん、やっぱりこんなの、許せないよねえ。
 天国に行けそうにないじゃん」

すると、彼の言葉に応える声があった。
梶木が振り向くと、そこにはサンバイザーをつけた水色の髪の少年が立っていた。
背丈から判断して、小学生くらいだろうか。

「なんじゃあ、おまえは」
「俺、キャップ! 俺もお兄さんと一緒で、こんな殺し合いを決闘と呼ぶなんて許せないんだ」
「ほう、おまえもデュエリストか」
「そういう呼び方はされたことないけど……まあそうかな。
 とにかく、そういうわけだからさ。お兄さん、俺と手を組んでくれない?」
「おう、もちろんじゃ! 仲間は多いに越したことはないからの!
 俺の名前は梶木漁太! よろしく頼むぞ!」
「よろしく、梶木!」

梶木が差し出した手を、キャップが握る。
年下から呼び捨てにされたことに一瞬むっとした梶木だったが、キャップの名前や外見から外国人なのだろうと判断しとがめないことにした。

「よし、まずはもっと仲間を集めるんじゃ!
 殺し合いに反発する輩は、俺たち以外にもたくさんおるはずじゃからな!」
「オッケー! みんなで天国行こうぜ!」

そして、二人は勢いよく走り出す。
彼らはまだ、気づいていない。
お互いがプレイしているゲームが、全くの別物であることに。


【梶木漁太@遊☆戯☆王】
[状態]健康
[装備]デュエルディスク&梶木のデッキ@遊☆戯☆王
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:こんな決闘はぶち壊す!
1:遊戯が心配じゃ
2:城乃内もおるなら、合流したいのう
3:羽蛾や竜崎は……どうでもいいか
[備考]
参戦時期は決闘都市終了後


【キャップ@デュエル・マスターズ キング】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:こんな決闘はごめんだね!
1:梶木について行く
2:ジョーたちも巻き込まれていないか心配
[備考]
参戦時期は十王篇開始直後、ジョーと同じ学校に転校してきたあたり


【デュエルディスク&梶木のデッキ@遊☆戯☆王】
デュエルディスクと、梶木が愛用する「海」デッキのセット。
デッキの構成は、決闘都市でのものに準拠。


259 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/26(木) 20:46:09 yiaEJ3XA0
投下終了です


260 : ◆0EF5jS/gKA :2022/05/26(木) 22:42:19 7q5iGDyk0
投下をさせていただきます。
企画主様、新しいパロロワの企画をありがとうございます。


261 : 偉大なるう○ちじゃっ! ◆0EF5jS/gKA :2022/05/26(木) 22:42:48 7q5iGDyk0
「クソじゃ!」

「それは殺し合いに対して言ってんのかな…?」

目の前にいるピンク色でとぐろをまいた
う○ちへの疑問を隠せない少年がいた。
そのう○ちにはもちろん首がないので
首輪はとぐろの先っちょに装着させられていた。
これでは首輪ではなくとぐ輪ではないか。

そして疑問に思っている少年の本名は一応あるがいつも孫と呼ばれている。

「クソじゃ!」

「まあ殺し合いはクソだよね…」

目の前のう○ちが自身のことをクソと
言っているのか、それとも殺し合いそのものを
クソ呼ばわりしているかについてはわからないが
こんな殺し合いは確かにクソ同然だろう
いや、クソは一応肥料にもなるので(現代のクソは栄養がありすぎるから例外と思われる)
役には立つからこんな役に立つどころか
イヤなことしかないと思われる殺し合いは間違いなくクソ以下なのだ。

「こっこれはっーーーー!!!!!」

そのとき孫にとってはいつも聞いている老人の声が
ピンクのう○ちの後方から
響き渡ったと思うと、猛ダッシュでう○ちに近づき
美しいフォームで滑りスライティング土下座を
華麗に決めたではないか。

この老人こそ通称でんじゃらすじーさん、
この世のありとあらゆる危険から回避する方法を
教えてくれる一人の老人である。

「…おじいちゃんが変なことをするのはいつものことだけどさ
一応聞くよ、なにやってんだじじい。」

「このおおばかちんめがっーーーーー!!!」

じーさんはくわっと目を開き、
青筋立てまくりで鬼のように怖い顔になったのとほぼ同時に
ぼさぼさになった両サイドのひげから
ミサイルが飛び出して孫を目がけて爆発した。
いきなり発生した珍事にう○ちは目を丸くしてびっくりした。

「フンが〜〜〜〜〜!!!!」

あまりの威力に黒焦げとなり
倒れてピクピクしながら
苦痛の叫びをあげちゃう孫。

「な、なにすんだじじい…」

「こーんのアホーーーー!!!バカカカーーーー!!!!!
お前は自販機のおつりを取り忘れたことに気づいて
戻ってみたら、引っ越す予定の親戚のいとこに取られたあげく
アタリでもう一本ののみもんを目の前で
ゲットされたときくらいダメダメじゃーーー!!」

「とりあえずだめってのはわかったけど…なにがしたいんだよ…」

じーさんは真面目な顔つきになり一呼吸をして落ち着いてから孫に問いかけた。
このじじいが意味不明で理不尽に振る舞うのはいつものことだ。

「孫よお前はこのう○ちが本当にただのう○ちだと思うのか…?」

「土下座までしたから普通じゃないとは思うよ…」

「ではお前たちにも教えよう、ピンクう○ちくんの偉大さの理由を…」

(様付けまでとうとうしちゃったよ…)

こうしてじーさんのうんちくに存在する
このピンクう○ちへの説明が始まった。



じーさんは知的な雰囲気でも作りたくなったのか
いつの間にか白衣を着用し、大学卒業式で見られたりする
四角の帽子をかぶっていた。


262 : 偉大なるう○ちじゃっ! ◆0EF5jS/gKA :2022/05/26(木) 22:43:13 7q5iGDyk0
「まずこのう○ちは見ての通り
1980年に連載開始されたDr.スランプに
登場するう○ちなのじゃ」

「へ、へ〜〜そうなんだ」

「今の若者はたぶん知らないと思うが…いや、
2016年にドラゴンボール超がDr.スランプと
コラボした時にこのう○ちも登場したからの…
このう○ちは意外と知られていたりするのか?」

「まぁ、とにかくこのう○ちはDr.スランプのう○ちじゃ。
そして孫よ、このDr.スランプの人気ぶりは知っているな」

「詳しく読んだことはないけど昔に流行って
大人気の漫画・アニメだっていうのは知っているよ。」

そうDr.スランプは大人気なのだ
作中で使われた「んちゃ」とか「ばいちゃ」などの
いわゆるアラレ語も当時すんごい流行った。
あの○―トたけしもアラレちゃんのパロディをやったことがあるのだ。

とにかくアラレちゃんは全国の人気者であった。

「そしてこのう○ちの影響力も凄まじいものでな…
Dr.スランプアラレちゃんが放送された他国でうんちを書かせると
とぐろをまいたうんちが書かれるという結果がでたのじゃ!!」

「ええっーーーー!!!ホントかよ!
さすがにウソじゃないの!!??」

ま、まさかそれは本当だというのか
孫の中で激しい衝撃が走りぬける。
日本人にう○ちを書かせたら
とぐろをまいたアレになるのは既に知っている。

だが一部とはいえ海外でもあのとぐろが書かれるとは…

孫はまた一つ立派な知識を身につけた。

「いやいやいややっぱりうそでしょおじいちゃん!!」

「そう思うのか、この結果は
探偵○○○スクープという番組でだされた
結果にして真実なのじゃぞ!!」

「まじで!!!??」

どうやら真実らしい、
長く続いているテレビ番組で明らかになった調査結果であれば
疑う理由はもうなくなった。
孫の中でこのう○ち対するゆるぎない畏敬の念が根付いた。

「海の外のいろんな国にも影響を与えるう○ちくんはすてきじゃあ…
わしたちもこれくらいの影響力がつくれるとよいのお…」

「そうだねえおじーちゃん、おれもこのう○ちくんの偉大さがちゃーんとわかったよ♡」

じーさんと孫の表情は目がアヘって鼻水が都会にある
広い公園の噴水みたいにびょんびょん飛び出ていた。
孫はなんかもうやけになってるようにも見えた。


263 : 偉大なるう○ちじゃっ! ◆0EF5jS/gKA :2022/05/26(木) 22:43:40 7q5iGDyk0

畏敬の意識があるのは解説したじーさんも同じだった、
下ネタ満載漫画の主人公としてこのう○ちくんを
尊敬せずにはいられないのはもう本能みたいなものであった。

「さぁわかったか!!このう○ちくんの凄まじい
影響をわかったじゃろう!!頭をさげんかーー!」

「「う○ちくん最高じゃああああ!!」」

老人と少年が心からの畏敬とありったけの崇拝心をこめながら
ピンクでとぐろをまいたう○ちくんへ力強く土下座し
会場のどこかで傍から聞けば意味不明なう○ちくんへの咆哮がけたたましく響き渡った。
そしてう○ちくん本人はえっへんと得意げで誇らしい表情だった。



ああ…わしは今間違いなくこの世でいっちばん幸せ者じゃあ…
こんなに影響力いっぱいのう○ちくんに素敵に出会えるなんて…
もう幸せすぎてちょっとこわい気分じゃ…

なんかもうハッピーすぎてモチベがダイナマイトじゃ…
こんなクソデュエル絶対にとめる…
今のわしなら簡単にちゃちゃっとできるじゃろう…
なぜならわしはしあわせだからじゃあ…

【うんちくん@Dr.スランプ】
[状態]健康、誇らしい気持ち。
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:こんなデュエルはクソじゃ!
1:自分のすごさを改めて認識して誇らしい気持ち。
[備考]
※首がないので首輪はとぐろの先っちょに付いています。

【じーさん@絶体絶命でんぢゃらすじーさん】
[状態]健康、うんちくんへの敬意と崇拝心(特大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:うんちくんは素敵じゃあ♡
1:こんなに素晴らしいう○ちくんに出会えたわしは幸せじゃあ♡
2:デュエルをなんとしてでも止める。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手様にお任せします。

【孫@絶体絶命でんぢゃらすじーさん】
[状態]健康、うんちくんへの敬意と崇拝心(特大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:もううんちくんすげーや♡
1:とりあえずうんちくんすんごいや♡
2:デュエルにはとりあえず乗らない。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手様にお任せします。


264 : 偉大なるう○ちじゃっ! ◆0EF5jS/gKA :2022/05/26(木) 22:43:54 7q5iGDyk0
投下は以上です。


265 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:45:21 tQ0zZCvg0
投下します


266 : 死の床からの目覚め ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:46:26 tQ0zZCvg0
「うーん、どうしよっかなー」

 数多の世界から呼び出された決闘者が集う会場のどこかに、一人の少女が立っている。
 小学生程の体格に紫の長髪とサイドテールが目立つが、やはり一番目を引くのは彼女が持つ一振りの刀だろう。
 彼女の名前は燕結芽。
 折神家親衛隊第四席の、刀使である。

 そんな彼女は今、惑っていた。
 彼女を知るものならば珍しいと目をむくであろう、本気の困惑だった。

「結芽、死んじゃったよね?」

 そう、結芽は自身の生存に戸惑っていた。
 ここに来る前、彼女は親衛隊として、反逆者と戦っていた。
 中で一番強いであろう少女、衛藤可奈美との戦闘を楽しんでいた。

 しかし、その最中に結芽の持病が出る。
 それでも戦い続けたが敗北。
 そして最後には彼女は、自身が所属する学校の学長に看取られてこの世を去った。

 だが結芽はここに生きている。

 別に死にたいわけでは無い。
 こうして生きている以上、彼女はまた同じように生きる。
 彼女には欲しいものもやりたいこともあるのだから。
 それでも――

『……結芽……楽しかった……か?』
『――うんっ』

 結芽の一番の望みは、きっともう叶っている。

 彼女の願いとは、誰かに覚えていてもらうことだ。
 七歳の頃に不治の病に侵され、ただ病室で弱り続けていく日々。
 次第には両親すら来なくなって、自分は見捨てられたのかとすら思った。

 実際は弱っていく結芽を、彼女を愛する両親が見ていられなかったという方が正しいのだが、その事実を彼女は知らない。

 しかし、折神家の頂点折神紫が結芽に施したものは、病気こそ解決しなかったが、彼女に戦う力を与えた。
 それからの日々は、彼女にとって幸せと言ってもよかった。
 だからこそ、死からの蘇生という非現実を許容しかねているのだが。
 すると、特に前触れもなく――

「本田ぁぁぁああああ!!」

 と誰かの叫び声が聞こえたので、結芽はとりあえずその方へ行ってみることにした。
 刀使の能力を使えば、声のした場所にたどり着くのはあっという間だった。
 そこには、結芽より年上、高校生くらいの金髪の男が、拳を地面に叩きつけながら嘆き悲しむ姿を見せていた。

 ここで結芽は思い至る。
 最初の場で爆破されたおにーさんは、別のおにーさんに『本田くん』と呼ばれていたことに。
 そして目の前のこのおにーさんも本田っておにーさんの仲間で、その死を悲しんでいるのだと。

 そうだとすれば結芽にできることはない。
 茶化すつもりは全くないが、だからと言って慰めてあげられるほど言葉を尽くせるタイプでもない。
 そしてそこまでする義理もない。
 なので気付かれないようにこの場を去ろうとしたが、次の言葉は聞き逃せなかった。

「何で死んだ俺が生きてて、生きてたお前が死んじまうんだよ!!」
「――おにーさんも死んだの?」

 結芽が思わず出した声に驚いた男は、ここで彼女の存在に気付いたのか大仰に彼女の方へ振り向く。
 男は彼女が持つ刀に一瞬目を奪われるも、すぐに相手が殺し合いに乗っていないと判断したのか、少々言葉を選びつつ返答する。

「……ああ。まあ、信じられねえかもしれないけどさ」
「いや信じるよ。だって結芽もだからね」

 結芽の言葉に驚く男。
 とてもそうとは思えない彼女の振る舞いに、彼は半信半疑だ。
 しかし――


267 : 死の床からの目覚め ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:47:35 tQ0zZCvg0

「ゴホッゴホッ!!」
「お、おい大丈夫かよ」

 急に咽る結芽を心配する男。
 更に彼は目を見開く羽目になる。
 なぜなら、彼女の咳には吐血が混じっていたからだ。

「えっと、結芽は病気でね。それで死んじゃった。まあ今も罹ってるけど」
「びょ、病院とか行かなかったのかよ?」
「行ってたよ。入院もしてた。でも治らなかったよ」

 それ以上は語る気はない、とばかりに目を逸らし、代わりに話を促す結芽。
 男は応じ、話し始めるが、その内容は更に信じられないものだった。

「闇のゲームに古代エジプトの千年アイテム……
 そしてカードゲームって、ゲームで人が死ぬわけないじゃん」
「いや普通は死なねえけど、そのゲームは普通じゃねえんだって」

 男の言葉を胡散臭そうにする結芽。
 事実、信じられないことを言っている自覚のある男は、食い下がろうにも心情に食い下がりにくい。

 そうして結芽は男への興味をなくした。
 信じられないことを言っているとは思っているが、こんな状況で嘘をつく理由もない。
 ならば、彼女が男に興味を持つ理由がない。
 いくらカードゲームが殺し合いの体を擁することがあっても、それは彼女が望む戦場ではない。
 だから彼女は踵を返そうとするのだが、その前にふとこんなことを呟いた。

「思ったんだけどさ」
「何だよ?」
「あの冥王ハ・デスって奴、人を生き返らせることができるんじゃない?」

 結芽の言葉を聞いて、男は目を見開く。
 それを見て彼女は、余計なことを言ったかも、と少し焦る。
 普通に考えれば、この言葉は殺し合いに肯定的な発言だ。
 さっきの発言は彼女にしては珍しく、何の意図も隔意もない。
 思い付きをつい口に出してしまったようなものだ。
 彼女にも、そのせいで人を殺し合いに駆り立てるのは流石にどうかと思う程度の善性はある。
 しかし、男の言葉は彼女の予想を裏切るものだった。

「……なら、あいつをぶっ倒して、生き返す方法を手に入れれば本田が蘇るってことかよ」

 男は、戦意を滾らせていた。
 殺し合いに乗るのではなく、反ることで目的を果たそうとしていた。

 一瞬呆ける結芽とは対照的に、男はデイパックの中身を検め始める。
 最初に出てきたのはデュエルディスクとデッキ。彼女は知らないが、それは男の私物だ。

「へっ。やっぱこいつがねえとな」

 満足気な顔で腕にデュエルディスクを装着する男を見て、結芽は今度こそこの場を去ろうとする。
 だが男は思わず呼び止めていた。

「いや、いきなりどっか行こうとすんなよ!?
 お前も一緒にあのハ・デスと戦おうぜ!!」
「戦うのはいいけどさあ。結芽、人とつるむの嫌いなんだよね。
 仲間は好きだけど、理由もなく一緒に戦うとかはしたくないの」
「そーかよ……」

 結芽の勝手な発言に、思わず呆れる男。
 しかし引き留めるような真似はせず、代わりに何らかの錠剤を一錠を手渡した。

「……なにこれ?」
「支給品にあった万病薬だってよ。飲めばどんな病気でも治るらしいぜ」

 男の説明を胡散臭く思う結芽だったが、まあいいかとばかりに薬を飲んだ。
 そして結芽は男から離れていくのだが、ここで彼女は己の体に起こった以上に気付く。

 体の調子がいつもよりいいのだ。
 否、これほど調子がいいのはいつぶりだろうか。
 まるで体から病気がなくなったかのように。

 それもそのはず。なぜなら結芽が飲んだのは万病薬。
 結芽の世界でも男の世界でもない別の世界の二十二世紀に存在する、どんな病気でも治す薬なのだから。
 二十一世紀前半では不治の病でも、二十二世紀では治る病気だったのだ。

 とはいえ、結芽はいきなり病気が治ったとは思っていない。
 長年苦しめられた病魔がいきなり消えたと思うほど、彼女は楽天家ではなかった。
 しかし調子が良くなったことは事実。
 自身の死因を弱めてくれたお礼ぐらいはするべきだろう。
 そう思った彼女は男の元へ戻った。


268 : 死の床からの目覚め ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:47:59 tQ0zZCvg0

「うーん……」

 戻って結芽が見た光景は、タブレット片手に唸る男の姿だった。
 どうやらどこへ行くのか考えているらしい。そこに彼女は声をかける。

「とりあえず、近くの建物でいいんじゃない?」
「ああそうだな……ってお前!?」

 いつの間に戻ってきていた結芽に驚く男。
 そんな彼に彼女は簡単に理由を説明する。

「おにーさんがくれた薬のおかげで調子いいから、そのお礼。
 しばらくは結芽が守ってあげる」
「守ってあげるってお前な……」

 結芽の守ってあげるという発言に拒否感を示す男。
 確かに彼女の実力を知らなければ、いや知っていたとしても、少女に守られるというのは抵抗があるだろう。
 しかし、そんな感情は知ったことではないとばかりに、彼女は無理矢理話を進めた。

「折神家親衛隊第四席、燕結芽。おにーさんは?」
「……あ、あぁ。城之内克也だ」
「そう。じゃあよろしくね、城之内おにーさん」

 これ、何を言ってもついてくる気の奴だ。と城之内は諦めの境地になる。
 だが元々彼の周りには我が強い人間が多いので、気にはするもののある程度はスルーできた。
 そんな彼の反応をどう見たのか、結芽は安心させるように言う。

「大丈夫。結芽は強いよ。刀使の中でもね」
「刀使ってなんだ?」

 安心させるために行った言葉に対する、城之内の反応に信じられないと言わんばかりに驚きを見せる結芽。
 そう。二人はまだ、世界観の違いに気付いていない。


【城之内克也@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:主催者を倒し、本田を生き返らせる。
1:まずは遊戯や他の参加者を探す
2:刀使ってなんだ?
[備考]
※参戦時期はバトルシティ準決勝一回戦にて敗北した後から蘇生するまでの間です。

【燕結芽@刀使ノ巫女(漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:九字兼定@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:体の調子がいいお礼に、しばらくは城之内おにーさんに付き合う
2:刀使を知らない?
3:強い人とは戦いたいけど、場合によっては我慢してもいいかな
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※九字兼定でも写シなどは使えます。
※万病薬@ドラえもん の効果で病気が治りました。が、半信半疑です。
 荒魂がどうなっているかは当選した場合、次の書き手氏にお任せします


【万病薬@ドラえもん】
城之内克也に支給。なお、支給されたのは一個だけ。
飲めばたちまちどんな病気でも治せる薬。
22世紀の技術では治せない病気はないらしいが、裏を返せば病気以外、老衰や怪我には効かない。と思われる。

【城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王】
城之内克也に支給。
ギャンブルカードが多めな城之内構築デッキ。
エースは真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)、時の魔術師、サイコショッカーなどなど。

【九字兼定@刀使ノ巫女】
燕結芽に支給。
元々は彼女の仲間である此花寿々花の御刀。
本来なら刀使にしか力を引き出せないが、このロワではそれ以外の存在でも使用可能。


269 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:48:24 tQ0zZCvg0
投下済み


270 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/26(木) 22:54:37 tQ0zZCvg0
>>269
すみません。投下終了の間違いです


271 : ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:22:22 CHebBNdU0
投下します。


272 : 失楽園 ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:24:17 CHebBNdU0
「わぁ!かっわいい〜♪」
「だよねー。とってもふわふわだにゃー♪」

最後の一人なるまで終わらない命を懸けた決闘。
これより先、数多の悲劇を生み出すであろう会場には似つかわしくない光景がそこにはあった。
ぬいぐるみと戯れる二人の少女。
片や小学生、片や幼稚園児と参加者の中でも特に幼いだろう彼女達の表情にあるのは笑み。
少女達の姿は到底殺し合いなどと物騒なものには結びつかない、優しさに溢れていた。

と言っても最初からほのぼのとした空気だったのではない。
幼稚園児の少女、桜田ネネは会場に放り出された直後は恐怖で泣き出しそうになっていた。
普段のネネは気が強く、かすかべ防衛隊のメンバー(特に佐藤マサオ)から恐れらているが、やはりまだ5歳の女の子。
数々の大冒険を経験してきたと言っても、人が死ぬのを間近で見せられてはいつもの態度は維持できない。
理不尽に決闘へ巻き込んだハ・デスへの怒りが大きかったなら、どこからか取り出したウサギのぬいぐるみに八つ当たりしていただろう。
生憎と今は怒りよりも恐怖が勝り、途方に暮れていたのだ。

ネネがもう一人の少女に出会ったのはそんなときだった。

『こんな夜中になにやってるのかにゃー?夜更かしすると成長ホルモンの分泌量が減って、新陳代謝が滞るからお肌が荒れちゃうよー?』

いきなり現れたかと思えば呑気な言葉を投げかける少女に、ネネは飛び上がりそうなくらい驚いた。
ネネの反応にクスクスと笑いながらもマイペースに話を続ける少女に、何時の間にやら恐怖が薄れているではないか。
こんな状況だろうと自分のペースを崩さない姿に野原しんのすけを重ね、安心感を得たのかもしれない。
少女は時折難しい言葉を使って小馬鹿にしたような口調となった。
何となく、天敵の酢乙女あいを思い起こさせる態度に少々不機嫌となったのも、恐怖を薄れさせる要因となったのだろう。

尤もその苛立ちもすぐに消え去ってしまったが。

「何だか魔法みたい!」
「正確にはリアルソリッドビジョンシステムって言うらしいけどねー」

少女のデイパックに入っていたカードの束と、セットする腕輪のような道具。
それらを使い少女がカードの絵柄である、羽の生えた犬のぬいぐるみを現実に出現させたのだ。
ぬいぐるみはフワフワで触り心地が良い。
おまけに本物の犬のようにスリスリとネネに身体を押し付け、懐いている様子。
愛らしさ抜群の様子にネネはすっかり虜になっていた。


273 : 失楽園 ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:25:14 CHebBNdU0
「くふふ、気に入ってくれて何よりだよー。それじゃあ、別のカードも試してみるね」
「他にもあるの!?見たい見たーい!」

期待を込めたネネの視線に応えようと、別のカードをセットする。
それだけの簡単な動作を終えると光が溢れ、犬のぬいぐるみとは違うシルエットが見えた。
今度はどんなぬいぐるみなのかと期待する表情は、すぐに曇る事になる。
現れたのは可愛さとは程遠い外見の物体。
まるで鉄格子のように糸鋸で覆われた、ギラついた刃の丸鋸。
中央部には赤く光を放つ吊り上がった目。
何とも気味の悪い姿だ。

「…あんまり可愛くなーい」
「うーん、失敗しちゃったかにゃー?じゃあこんなのはどう?」

再び新しいカードを取り出す少女。
今度こそ可愛いぬいぐるみを期待したら、さっきまでネネと戯れていた犬が消えてしまった。
消えたのは丸鋸も同じだ。
吸収されたように犬と丸鋸は溶け合い、やがて全く別の姿となる。

「ヒィッ!?」

出現したモノに、ネネは思わず上擦った悲鳴を上げた。
無理もない事だろう、現れたモノからは犬のぬいぐるみの面影が完全に消え去っていたのだから。

見る者によってはクマのぬいぐるみと答えるかもしれない。
だが胴体は綿の詰まった布ではなく、回転を繰り返す丸鋸だ。
異様なのは顔面部も同じ。バックリと縦に割れた顔、裂けているかのように開かれた口、
何より頭部にも複数の丸鋸が生えた姿は不気味としか言いようが無い。

「趣味が悪いねー」

大人であっても顔を顰めそうなぬいぐるみを前にして、少女の口調は軽い。
一方でネネは気味の悪いぬいぐるみに恐怖を抱いていた。
日頃ウサギのぬいぐるみでストレス発散しているネネだが、このクマからは言い知れぬおぞましをひしひしと感じている。


274 : 失楽園 ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:26:20 CHebBNdU0
「ね、ねぇおねえさん!もういいから…」
「そだねー。もう用は無いからね」

折角出してくれたのに怒られるかな。
少しだけ不安だったけれど、少女は特に気分を害した様子もなくあっさり承諾してくれた。
安堵で胸を撫で下ろすネネ。
怒られずに済んで気が緩んだのか、そこでふと気付く。
自分はまだこの少女の名前を聞いていない。

「おねえさん、まだおねえさんのお名前聞いて無かったんだけど…」
「うん、だって教えてないからねー」
「ネネのお名前教えたんだから、おねえさんのも教えてよ」
「わたくしが何て言ったか聞いて無かったのかにゃー?」


「もう用は無いって言ったばっかりだよ?」


疑問がネネの口から出る事は無い。

「ごぼっ」

代わりに出たのはおかしな言葉。
夏休み、プールで遊んだ時に水中で息を吐いたのと似ている。
今回出したのは透明な泡ではなく、赤い液体だが。
何が起きたのかを全て正確に理解しているのは、名乗らなかった少女だけ。
さっき出した丸鋸がクマ、そいつがギザギザした爪をネネの小さな身体に突き刺した。
無論勝手に動いた訳では無い、召喚者である少女の意思に従ったまで。

パクパクと餌を欲しがる魚のように、ネネは口の開閉を繰り返す。
その度に血が溢れお気に入りの服を汚していく。
クマが腕を上げると菓子でも摘まみ上げたように、ネネの身体が宙へと浮かぶ。
実際、クマにとっては菓子と同じかもしれない。
真っ赤な牙の生え揃った口の中へネネを放り投げ、そのまま咀嚼する。

ペッと吐き出した首輪。
僅かに付着した肉片が、さっきまで人間が填めていた事の証拠だった。


【桜田ネネ@クレヨンしんちゃん 死亡】


275 : 失楽園 ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:27:31 CHebBNdU0



「もぉ、食べるんならちゃんと食べてよー」

カードに戻したモンスターへの愚痴を漏らしながら、里見灯花は首輪を拾い上げる。
軽く振って肉片を振り落し、そそくさとデイパックに仕舞った。
ついでにネネのデイパックの中身を自分のへと移し替え、乱雑に放り投げた。
一仕事終えたとばかりに軽く伸びをする。
こういう雑事は羽たちの仕事だが、マギウスの翼が実質崩壊した今となっては灯花のマギウスという立場も機能しない。
救いを求めて集まった魔法少女は周りにおらず、代わりはモンスターを召喚するカードデッキとディスク。
人間のように細かい指示を与える事は期待出来そうも無いが。

「贅沢言ってられないのは分かってるけどね」

尖らせた唇から不満が飛び出す。
魔法少女の力は健在であれど、ドッペルが正常に機能する保障は無いなら使えるものは何でも使うべき。
そう分かってはいるが、現状はマギウスの翼を率いていた時より手が足りないのも事実。

ないものねだりしたってどうにもならないと分かっているので、切り替えていく。

(ソウルジェムには傷一つない。一応試したけど魔法少女にもなれる。
 と言う事は砕け散った魂の修復くらいは造作も無い。何でも願いを叶えるって大きく出るだけの力は持ってるって事かにゃー)

ソウルジェムが完全に砕け散り、灯花は命を落とした。それは間違いない。
ハ・デス本人が有する能力か、はたまた別の力なのか。
どちらにしても願いを叶えられる「なにか」を、主催者はモノにしているのだろう。
生き残った一人の願いを本当に叶えてくれるかは、正直疑わしい所であるが。

(だから馬鹿正直に優勝を目指すだけじゃ駄目だよねー)

ハ・デスに願いを叶えて貰うのではなく、力を奪い取って願いを叶える。
その為に首輪の解除は必須項目だ。これがある限り、勝ち目は100%無いのだから。
灯花が推測するに、ソウルジェムにも何か細工がされている可能性が高い。
わざわざ魔法少女である灯花を生き返らせたうえで参加させたのだ。
間違いなく、ハ・デスは魔法少女の真実についても把握している。
となれば、魔法少女の場合は首輪の爆破に連鎖してソウルジェムも破壊される、といった仕掛けが施されていないとも限らない。
後でじっくりと調べておきたい所だ。

ハ・デスの持つ力があれば、今度こそ全ての魔法少女を救済できるかもしれない。
イヴがアリナと同化してしまったせいで当初の計画はおじゃんになった。
だがまだ可能性が残されているのなら賭けてみる価値はある。

ネネを殺した理由はそう深いものではない。
単純に、生かしておく人材とは思えなかったから。
同じ魔法少女であったり、灯花が勝ちを見出せる技能の持ち主であったならまだしも、年相応の力しか持たない子どもなど生かした所で邪魔にしかならない。
だからモンスターの試運転による練習台として使った。


276 : 失楽園 ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:29:22 CHebBNdU0
「首輪と支給品はわたくしが役に立ててあげるから、感謝してよね」

罪悪感を欠片も感じさせない言葉。
既に灯花の中ではネネへの関心は消えかかっていた。
彼女の心を揺さぶるのは二度目のチャンスという、この決闘(デュエル)。
そして、

「…………いろはお姉さま」

その名を口にした途端、視界が滲み頬を雫が伝う。

「ごめんなさい、お姉さま…。お姉さまの言葉が届いてないわけじゃないの…。お姉さまのお傍にいたくないわけじゃないの…。
 ただ……わたくしはやっぱり、お姉さまを救いたいの……」

自分がやる事はいろはへの裏切りになる。
あんなに体を張って自分とねむを止め、涙を流して一緒に居て欲しいと言ってくれたあの人の願いを踏み躙る行為だ。
そんなことは百も承知。

自分、ねむ、うい、そしていろは。
4人で過ごしたあの病室には、溢れんばかりに幸福が詰まっていた。
幸福をくれたいろはを助けたい。その為なら幾らでも手を汚したって構わない。
きっとここにねむがいても、灯花と同意見だろう。

「大丈夫だよお姉さま。あの時も言ったけど、お姉さまが罪を感じる事は無い。
 だってこれは全部、わたくしが手を汚してやる事なんだから」

間違いを一緒に正してくれると言った。
記憶を失っていたとはいえ、殺そうとした自分の事を許してくれた。
これからも傍に居て欲しいと言ってくれた。
その言葉だけで、もう灯花は十分救われた。多くのものを貰った。
だから今度こそ自分がいろはに返す番。
どれ程の犠牲が出ようと構うものか。全ては必要なコストだ。

「だってわたくしたちは、お姉さまの為に魔法少女になったんだから」

だから、あの人の為なら何だってできる。
例えその先の未来に、自分の居場所が無くなっているとしても。


【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜5、ネネの首輪
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。

【素良のデッキ@遊戯王ARC-V】
アカデミアの柴雲院素良が使うデッキ、デストーイ・ユニット。
ファーニマルとエッジインプの混合デッキである。


277 : ◆ytUSxp038U :2022/05/26(木) 23:30:37 CHebBNdU0
投下終了です。


278 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:17:32 VXbC5hO.0
投下します。


279 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:18:18 VXbC5hO.0
「最後に勝ち残った者の願いが叶う決闘(デュエル)…殺し合いという訳ですか。その過程で人々の悲鳴が会場から響く事でしょう…先程のように。退屈はしなさそうです」

会場の一角で1人男はほくそ笑む。ソードオブロゴスの元締めであるマスターロゴス「だった」者。しかし縛られ続けていたその地位を捨てて自由を求めた末、神を名乗るも最後には否定され道化として死んだはずの男、イザク。それがこの男の名である。男にとってこの決闘という催しは、少なくとも退屈とは程遠い物ではあった。

(先程の流れと殺された男の死に方に
今のこの首輪の感触…主催はこれにより参加者の命運を握っている可能性が高そうです。
…どのような思惑があるのかは知りませんが…この催しを開いた事、そして私を蘇生した事には感謝してあげましょう…しかし)

上から目線ながらも心中で感謝を述べるイザクだが、表情に浮かぶのは怒りのそれである。

「…しかし、神であるこの私を…主催者側ではなく参加者として招き、このような首輪によって縛るとは…許し難い…!」

人々を争い合わせようと演説した事のあるイザクからすれば、参加者側ではなく主催側として催しを楽しみたかった。しかし今は神であり自由の身である筈の自分が、(おそらくは)この首輪一つに命を握られている…その状況が彼は気に食わなかったのである。

(…ストリウス…!!)

イザクは自分をこの催しに参加者として招きそうな相手に心当たりがあった。協力者の振りをして裏切り、神である自分を見下ろし嘲りながら、物語を終わらせた忌々しき詩人の男。ストリウスの事である。

(この私にひれ伏さず、見下し嘲笑った奴が主催側にいるのなら…あの磯野と呼ばれていた黒服や、冥界の魔王などとほざいたハ・デスとやら達と共に神の前に平伏させ、あの時の私以上に惨めな物語の終わりを迎えさせてあげます。
…居ない可能性もありますが、まあいいでしょう。どちらにせよ奴らを私は許すつもりはない!!
とはいえ、優勝した方が手っ取り早いでしょう…しかし剣士共がこの催しに呼ばれている可能性も考えると…煩わしいが、以前までのように慎重に動いた方が良いのかもしれません。
…とりあえずはバッグの確認です。バックルとライドブックがあれば、優勝し主催の寝首をかいた方が早いので助かりますが…)

怒りが煮えたぎりながらも、どう動くにせよ慎重に動くべきと方針を定めたイザクは次にルール説明の際に触れられていたバッグの中を見る事とする。

「…バックルもライドブックもないようですね…しかし剣はある。珍妙な形ですが……まあいいでしょう」

バッグの中にはドゥームズドライバーバックルもオムニフォースワンダーライドブックも無かった為、とりあえず目に付いた秋刀魚を模した形の鞘と柄な剣、サカナマルをイザクは手に取る。聖剣の類やソロモンの主武器である大いなる剣ことカラドボルグが入っているのが望ましかったが、そうは言っていられなかった。
そして残りに何が入っているのかを見ようとしたところで…殺意に気付いて剣を構える。その直後、ヤゴに似た形をした人型の白い化け物がイザクの付近へと集まって来た。

「…メギド…ではなさそうだ。首輪が無いのは惜しいですが、試し斬りには丁度良い…と言ったところでしょうか」

殺し合いに乗った参加者であれば、殺して首輪を回収してみるのも良かったかも知れない…と考えているイザクだが状況は悪い。囲まれてこそいないが剣一本で相手をするには少々厳しい程の数敵はいる…だが彼は笑みを浮かべ余裕を持っていた。
理由は二つ、持ち前のポジティブ思考と自身の実力に確かな自負があるからである。生身の状態で聖剣の二刀流によってセイバーとカリバーを圧倒出来る実力を持ってすれば、殆ど消耗せずに勝てるだろう…そう彼は踏みつつ、相手達との距離を計っていた…ところであった。

「そこから離れてっ!」

少女の声が聞こえて来たのは。そしてイザクは内心では怒る。

(せっかく性能を試そうとしていたというのに…いきなり現れたかと思えば…神である私に指図だと…!?)

怒りを内心に隠しながらも、慎重に動くべきと方針を定めていたのもあってどうにか剣を構えたままその場から離れる。
声に反応した化け物たちはイザクよりもそちらの方へと向かい…
───その直後であった。

「…天神の…怒号!!」

現れた少女がそう叫ぶと同時に、口から黒き暴風が吹き荒れて…先程までイザクがいた地点と、射線上にいた化け物達を消し飛ばしたのは。


280 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:19:05 VXbC5hO.0
ーーーー

ウェンディやナツ達を見送った後、気付くとアタシはこのデュエルの場にいた。
なにこれ…夢?さっきまでアタシ、リオンやみんなと一緒にいて…あれ?首に何かが……なんてこと考えてたところに、あの磯野って黒服の人がルールを説明しだして…ヒロトって男の人が声をあげて、それを遊戯って男の人が止めようとして……ポンって音が鳴ったと同じぐらいで、ヒロトって人の方の首と身体が離れた。

…遊戯って人の悲しみに溢れた叫び声と、ヒロトって人「だった」死体から血があふれて、こぼれて……夢では無いってことだけは、わかった。
…アタシはなにもできなかった。
治癒が間に合わないのは分かりきってた、分かりきってた……でも……でも……動けなかった。
…なにもできないまま、悔しさを感じていたアタシは説明が終わった後……気付いたらこのデュエルの会場に放り出されていた。



「……冷たい。
……『愛』を感じれないよ、こんなの…」

首に付けられたこのなにかの冷たい感触に、思わず声が出た。
…『愛』がない。ここに連れてこられてからアタシが、このデュエルを開いた人たちに思った率直な想い。
…戦うこと自体は、そんなに嫌いじゃない。でも…でもあんな、殺すだけじゃなくて、一方的にひどい殺し方するなんて……。

「……アタシは、あんな『愛』のカケラもないことする人たちを止める」

暫く考えてから、そう決めた。…もしリオンやジュラさんたち蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のみんなや、ウェンディやナツ達妖精の尻尾(フェアリーテイル)がこのデュエルに巻き込まれてたら…止めようとすると思うから。

「…そうだ、遊戯って人、探さないと…」

友達を目の前であんな『愛』のないひどい形で奪われた男の人の事を思う。もしアタシも…あんな風に目の前で友達の…ウェンディの命を奪われたらと思うと……全部理解できるなんて思わないけど、あの人の悲しみが察せれた。…優勝って選択肢にすがっちゃってもおかしくないくらいには、悲しいはずだから。…探して…場合によっては止めなきゃ。
…とりあえず、誰か…あの人たちを止めようって考えてる人と会いたいな。
そう思いながらアタシは周囲を見ながら歩く。いつもなら歩いてる最中に何度もドジして転けちゃうところ…だったけど、不思議と転びはしなかった。……戦ってる間の時みたいに。

-

しばらく歩いてたけど、バッグの中身を見てなかった事に気付いたすぐ後に…男の人が白い人型な魔物…?みたいなのと睨み合ってるのが見えた。男の人はお魚みたいな何かを構えてて首になにか…多分アタシに付けられてるのと同じものがあったけど、魔物みたいなやつには見当たらない…あの「磯野」って黒服や「ハ・デス」って名前と、冥界の魔王って肩書きを名乗ってたのが放ったやつかな?
…あんな武器にならなさそうなので戦おうとするなんて…無茶だよ、助けに行かなきゃ…!
そう思ったのと同時にアタシはとっさに駆け出し、男の人に声をかける。

「そこから離れてっ!」

男の人は何か言いたげにしていたけど、大人しく離れてくれた…あの魔物みたいなやつはこっちにきてる…なら!

「天神の…怒号!!」

息を吸いそのままアタシは、天空の滅神魔法による技を使った。


281 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:19:57 VXbC5hO.0
ーーーー

(…腹立たしい、が。従って正解だったようです。今の状態であの暴風に巻き込まれたら…ひとたまりもなかったでしょう。神の力を振るえれば耐える事は可能、洗脳も狙えますが…それが無い現状では優勝よりも打倒を目指した方がいいのかもしれません)

化け物たちを消し飛ばした暴風と、その使い手の少女に内心警戒を強めるイザク。それに気付かない様子の少女は…少し警戒した素振りを見せつつ、彼へと話しかける。

「さっきはごめん、怪我…とかしてない?」
(この娘、誰に口を聞いていると…!)
神である自分に対して馴れ馴れしそうな話し方をしてきた事にまた怒る…も、その事実(少なくともイザク当人の認識では紛れもない真実である)をまだ言っていないのと、慎重に行動すると決めていた為耐え、穏当に対応しようとする。

「いえ、貴女のお陰で無傷ですよ」
「よかった…間に合って…」

ホッとした様子で少女は息を吐いた。
一方イザクは
(…そろそろ先程の黒き暴風について聞いた方が良さそうです)
と考えながら口を開く。

「失礼、助けて頂いた事には感謝します。宜しければお名前と…この決闘(デュエル)に乗っているかを聞かせて貰いたいのですが、いいですね?
……私はイザク。今は……一介の剣士で、乗る気はありません」

先手を打っておこうと思い怒りを抑えながら言葉を紡ぐイザク。剣士達が自分のようにこの場に招かれている可能性を考慮すると、「マスターロゴス」であった事は下手に言わない方がいいだろうという考えであった。彼の剣は軽いが実力は本物である。

「名前?…うん、いいよ。
アタシはシェリア。蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリア・ブレンディ。天空の滅神魔法を使う滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)。…あ、デュエルに乗る気はないからっ!よろしく、イザクさん」

そう言って少女───シェリアは、人懐こそうな笑みを浮かべる。
一方先のシェリアの発言を聞いたイザクの心中は…

(…魔法ですか、しかし…ワンダーライドブックに封じ込まれている伝承の中にあのような黒い暴風は……今、滅神と…?滅神…神を…滅する…??)
自身にとって不穏な単語を聞き軽く混乱状態になっていた…も、ポジティブな思考…先程の「滅神」などというイザクからしたらロクでもない単語は自分の聞き間違いに過ぎないのだと思って落ち着きを取り戻す。
(……聞き間違いでしょうか、念のため…更に聞いてみた方が良さそうですね)

「…なるほど、わかりました。しかしひとつ気になる事が…滅神魔法、とは何の事です?」
「あれはアタシの、悪い神様を倒す為の魔法だよ」

(……まあ、まあいい……でしょう。神の力を振るえない現状では、この少女は戦力としては有用となる筈。最低でも神の力を再び我が手に収めるまでは、猫を被らねば最悪消し飛ばされかねません……苛立ちが募りますが、それしきの負担は背負わねば)
「…そうですか、これは心強い」

内心では警戒し、慎重に動く事を改めて確認しつつもイザクは返答した。

「…そうだ、アタシからも聞きたいことが…イザクさんがデュエルに乗らない理由って、なんで?」
「理由ですか。そうですね……かつて私も、あの友を理不尽に奪われた男のように…愛する者を理不尽に奪われた。そのような行いをするあの主催者達が許せないのです」
(…と言えば満足なんでしょうか?あんな男たちの事などはどうでも良い。神である私を主催ではなく参加者として招いたあの者どもが気に食わなくて苛々しているだけなのですよ)

そう本心を隠しつつ虚偽の過去を語るイザク。対してシェリアは…それをあっさり信じ込んだのか、複雑そうな表情を浮かべ黙っていた。
そして少し後、彼女は口を開く。

「……『愛』を奪われる……辛いね、やっぱり…。
……アタシは、戦うのは嫌いじゃないけど…でも、あんな風に『愛』のかけらもない、ひどい殺し方をするあの人たちを…止めたいんだ。だからこのデュエルには乗らないし、乗れないよ」
「…愛の為、ですか…素晴らしい」
(愛、ですか…そのような物の為に戦うなど下らない。しかし…御し易そうな事は喜ばしいですね)

そう言葉をこぼすシェリアに対して、イザクは内心では斬って捨てるも、戦闘力以外の利用価値を見出した。故、情報交換も兼ねた提案をしてみる。

「一つ提案を…宜しければ、私と共に主催者たちへと抗うのはどうです?」
「うん、いいよ。よろしくイザクさん!」
(断られたらどうしようかとも思いましたが…ひとまずはこれでいいでしょう。となると…とりあえずは情報交換が急務となりそうです)

相手があっさりと受け入れた事に少し困惑するも、ポジティブに好機なのだと考えイザクはそれを飲み込んだ。

神を自認する男と、神を滅する為の魔法を使う少女の行く末やいかに。


282 : ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:20:51 oTEYcQlo0
投下します。


283 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:21:17 VXbC5hO.0
【イザク(マスターロゴス)@仮面ライダーセイバー】
[状態]:健康、殺し合い主催とストリウスへの怒り、シェリアへの苛立ち(小)と警戒(中)
[装備]: サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:主催への報復と自身の生還
0:まあいいでしょう
1:とりあえず情報を交換するとします
2:今はかつてのように猫を被った方が良さそうです…
3:神の力を再び振るえさえすればあのような少女1人…とは言えなくなってきたのかもしれません
4:ストリウス…どうであろうと貴方は許さない…!!
5:腹立たしいですが、今は使えるものは全て利用すべき
6:マスターロゴスであったことは今は伏せておきましょう
7:神山飛羽真ら剣士共が居るかどうか…それによって今後どうするべきかも変わってくるでしょう
8:バックルやライドブックがどこかにあるのなら、是非探しておきたいところです
9:今は主催に反抗する者として動くつもりですが、優勝も選択肢としては考えておくべき…でしょう
10:魔導士…とは?
11:得れるのならば首輪を得たいところです
[備考] 死亡後からの参戦です。
ストリウス@仮面ライダーセイバーが主催に居るのではと疑問を持っています。
支給品の中には聖剣やライドブックは入ってなかったようです。

【シェリア・ブレンディ@FAIRY TAIL】
[状態]:肉体的疲労(小)、安堵、武藤遊戯に対しての心配
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:『愛』のない主催の人たちを倒す
0:アタシはあの時、なにもできなかった…悔しいよ
1:イザクさんと一緒に主催の人たちを倒す
2:…遊戯って人、大丈夫かな…できれば探したいけど…
3:…剣士って事は、イザクさんが持ってるあの魚みたいなのは…剣…?
4:リオン達やウェンディ達が巻き込まれてないか、心配だね
5:…あれ、なにか忘れてるような…?
[備考] 第423話の「愛しているから」にて、ウェンディやナツ達を見送った後からの参戦です。
バッグの中身を確認するのを忘れています。
治癒能力と自己回復、また滅神魔導士としての特性である自身の属性(シェリアの場合は風)と同一の物質やエネルギーの捕食によるパワーアップには首輪により制限がかけられています。制限がどれだけなのかは後続にお任せします。
本田ヒロトが見せしめで殺された際、自分が動けなかったのが首輪の効果によるものだという事に気付かず、勘違いしています。

『支給品紹介』
【サカナマル@侍戦隊シンケンジャー】
シンケンゴールドこと梅森源太が戦闘にで使用する秋刀魚みたいな形をした鞘と柄をした刀。切れ味が落ちない効果があるシケンレス鋼なる合金で刀身が出来ている。鞘も頑丈で打撃に使用したり防御に使用したりも可能。
他、折神及び侍巨人を操る際には操縦桿の役割を果たし、また寿司ディスクを装填すると斬撃を連続で繰り出すサカナマル百枚おろしという技を使用可能…だがどちらもイザクの元に支給されているかは現時点では不明。

『NPC紹介』
【シアゴースト@仮面ライダー龍騎】
ヤゴのような形をした白いミラーモンスター。口から吐き出す種子を人間に植え付けたり糸で動けなくした上で捕食する。二足歩行する他行動時は不気味な鳴き声を発するのも特徴。
作中終盤や劇場版である「EPISODE FINAL」ではミラーワールドから現実世界へと多数出現、人間達を襲い混乱を生み出しながら進化体であるレイドラグーンやハイドラグーン(「EPISODE FINAL」のみ)に変貌している。
本ロワではレイドラグーンやハイドラグーンに進化するかどうかは不明。


284 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:22:06 VXbC5hO.0
投下終了します。タイトルは「神と神を滅せし魔導士、邂逅する。」です。


285 : ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:23:32 oTEYcQlo0
投下宣言が投下と被ってしまいました、大変申し訳ありません。

改めまして、投下します。


286 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:25:01 oTEYcQlo0
 殺し合い――あまりにも現実離れした目の前の光景を、ただの夢だと思いたくて、自らの頬を優しくつねる。そこに刻まれた微かな感触を信じたくないから、今度は先ほどよりも、ほんの少し強めに。

「……痛いです。」

 幾度かそれを繰り返し、その度に感じる痛み。ただただこれが夢でないという現実が重ねて突き付けられるばかりだった。連鎖的に、磯野という男に逆らった少年が殺されたことも、次は自分がああなるかもしれないということも、現実なのだと理解せざるを得ない。

「ああ、これも全部――」

 現状の認識は、じんじんと痛む頬によって現実逃避等も混ざることなくできている。

 その上で――自らが、これまでの日常には決して巣食うことのなかった悪意に晒されているのだと、改めて理解した上で。

「――私がこんな目をしているのが悪いのですね……。」

 桜ノ宮苺香は目を細めたまま、そう言い放った。

 ドS・ツンデレ・妹――各従業員が自身にコンセプトを付与し、その属性で接客するコンセプト喫茶、スティーレ。そんな一風変わった普通ではなくとも平常の範疇を大きく逸脱はしない日常の中、誰かから殺し合いに巻き込まれるほどの恨みを買った覚えなど苺香にはない。

 それならば――コンプレックスでもある、目付きの悪さ。これがまた悪い方向に機能したのだろう。こんな目付きをしているから戦いに飢えているとでも受け取られたのだろうか。

 実際のところはさておき、目付きとは裏腹に人一倍の優しさを持つ苺香の想像力は、それ以上の答えを導き出すことは無かった。

「……だったら、スティーレの皆さんは無事なのでしょうか。」

 そして、それと同時。その日常が崩れ去ったことへの不安が、再び巡ってきた。自分の目つきの悪ささえも私の魅力として、私を受け入れてくれた場所。決してこんな催しなんかに壊されていい場所なんかではない。絶対に、誰も巻き込まれていてほしくないという想いと――反面、誰かがいてくれないと心細いという不安も、少々。


287 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:25:42 oTEYcQlo0
「っ……! 最低、ですね。私いま、何を……」

 たった今湧き上がってきた気持ちに蓋をするように。僅かとはいえ、大好きな人たちが殺し合いに巻き込まれていて欲しいなどという想いを抱いた自分を罰するように。ぱちん、と両の手で頬を叩く。

「……よし。」

 さらに頬に重ねられたその痛みは、自戒を込めたこともあり、先ほどのものよりもいっそう痛い。でもその痛みこそが、前を向く契機となった。

「なよなよしていても仕方ありません。まずは配られているものを、確認しないと……。」

 今のところはこれが夢ではないと分かったのみで、それ以上は一切向き合っていない。マイナスから始まった実感をただただゼロに戻しただけだ。

 この世界に満ちた悪意を前にして、こうも素早く気持ちを切り替えられる者は決して多くはないだろう。その点については、苺香の鈍感さが功を奏したと言うべきだろうか。何にせよ、苺香は心機一転、支給品のデイパックを漁り始めた。

「これは……なんでしょう? 私専用の……クリスタル?」

 そこには『桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル』と書かれた、字面通り水晶のようなものが入っていた。説明書も付属しているようだが、未だ残っている動揺もあり、情報を直ぐにインプットできる自信もない。個別の確認を掘り下げるのは、いったんデイパックの中身をひと通り見終わってからでも遅くはないだろう。

「それと……花札のようなものでしょうか。」

 次に取り出したのは、中央に三本の剣が描かれた緑色のカード。周囲は金色に縁取られており、上部には『光の護封剣』と、おそらくイラストの名称を指しているであろう名前が書かれていた。

 用途も分からずじまいのカードもいったん保留とし、次の支給品を確認し始める。

「あっ……これなら分かります!」

 最後に出てきたのは、ティーカップとソーサー、茶葉とお湯入りのポットを揃えて1セットとしている、何の変哲もないティーセットだった。

 職業柄、茶の淹れ方も最低限であるが知っている。それが殺し合いの役に立つかどうかは疑問であるが、それでもほんの少しだけ、これまでの日常に帰ってきたような、そんな気持ち――理解の内側にあるものへの安心感が、ふと襲ってくる。


288 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:26:48 oTEYcQlo0
「さて……って……え?」

 マクロの確認を終えたため、次は個別の支給品について確認しようとした、その時だった。ふと足音を察知し、顔を上げる苺香。目の前で、自分より少し背の低い少女がこちらを見ていた。

 足を震わせながら立っているというよりは立ち竦んでいるその様子からは、彼女が怯えているのが分かる。さらには、緊張を表すかのごとくぐにゃぐにゃにブレているその尻尾――

「――ってあれ……? 尻尾、ですか?」
「あわわわ……」

 さらによく見ると、少女には尻尾のみならずツノまで生えている。その見てくれは典型的な悪魔のそれだ。

(コスプレ……でしょうか。)

 苺香自身、スティーレの従業員服でこの世界に連れてこられている身。コスプレ喫茶の類だろうか、と勝手に想像を膨らませた上で、それ自体への疑問は浮かばない。

「あの……。」
「ひっ、な、ななななんですか?」

 ひとまず声をかけてみると、少女の声色にさらに怯えの色が濃く表れる。今にも逃げ出しそうな形相の少女は、腰が抜けてしまっているのか、その場に留まって動かない。

「そんなに怖がらなくても、いいですよ。」

 優勝した一人だけが、生き残ることが出来る。ならば殺し合いに乗り、他人を蹴落としてでも藁を掴むのは、やむを得ないことなのではないか、と苺香は思う。だけど――

「殺し合いなんて、やりたくないですもんね。」

 それは私の、属性なんかで飾らない、たったひとつの本音。

 日常の中に、ほんの少しだけブレンドされた非日常。時に辛く、苦しいこともある日々を属性という装飾で、彩って欲しい。そんな非日常を、私たちは全力で作り上げてきた。


289 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:27:26 oTEYcQlo0
 それでも、食事を真に彩るのはスパイスではなく、料理の側だ。私たちが作り出す非日常は、日常をより楽しく、意味のあるものにするための味付けにすぎない。だからこそ、メインディッシュの味すらも損なわせてしまうような決闘という劇薬なんて、認めるわけにはいかない。

 殺し合わずに元の日常に帰るなんて、手段と目的が真反対を向いていて、矛盾しているかもしれない。だけど、一緒に手を取り合える人がいれば何とかなるって気も、どこか湧いてくる。だって私は、お客様を怖がらせてしまうのに接客業に就きたいという矛盾を乗り越えて、今の居場所を見付けたのだから。

 だからきっと、大丈夫。

 あの日、私の運命ごと変えてしまうような、そんな不思議な出会いがあった。街角の、ガラス越しの何気ない出会いであっても、人は大きく変わることがある。殺し合いの舞台であっても、この縁は、出会えた奇跡は、大事にしたい。だから、差し伸べるんだ。

「で、でも……」
「……まだ、警戒してて落ち着かないみたいですね。」

 仕方ありません、と小さく漏らし、デイパックの中に手を突っ込む。先ほど確認したハーブティーは、パッションフラワーと呼ばれる種類のものだ。それには、鎮静作用やストレス軽減作用のある効能分が含まれている。この子の怯えも、これで多少は軽減されるだろうか。

 唐突にデイパックを漁り始めた苺香を、目の前の少女は不思議そうに見つめている。その視線を感じ取り、ふと顔を上げると、少女と目が合った。

 不安に寄り添うかのごとく、苺香は静かに告げる。このハーブティーを飲むと、心も落ち着きます、と。

「大丈夫ですよ――」

 安心してもらえるように、表面にとびっきりの、笑顔を浮かべて。


290 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:27:56 oTEYcQlo0
「――すぐ、楽にしてあげますから。」
「っ……!!!ㅤきっ……」

 静寂に包まれた森の中に、張り裂けんばかりの絶叫が響き渡った。



「――ききかんりーっ!!!!」





 私は吉田優子、15歳です。活動名のシャドウミストレス優子を略してシャミ子って呼んでください。

 ある日突然ツノと尻尾が生え揃った新米まぞく……だったはずなのですが。宿敵には出会い頭に片手ダンプで助けられ、それからも色々と雪だるま式に借りが増えていってます。先日なんて夢の中で迷子になった時に闇堕ちしてまで助けにきてくれて、とにかく雪だるまぞくが止まりません。

 どうにかこうにかで借りを返したい、そんなまぞくなのですが。何と、決闘なるものに巻き込まれてしまいました。先生曰く、法律で禁止されているらしいのに、です。

 できることなら皆で仲良くなって、そして皆が生きて、帰りたい。そう意気込んで、よいやさー!ㅤと、突き進んでみたはいいのですが……最初に出会ったのは、まぞくを殺す目つきをした人。

 桃色のヒラヒラした服を着ていたので魔法少女かもしれません。お茶のようにしばかれる――そう思い至った時には私の腰は抜け、動けなくなってしまいました。

 そして流れるように、蔑むような目(※笑顔)で「お前を殺す」と言われ(※言われてない)、恐怖のあまり危機管理フォームになれたことで何とか立ち上がれました。今は一刻も早く逃げないと!

 ……と、宿敵の桃に鍛えられているこの足で、颯爽と走り出そうとしたのですが。

「……あれ?ㅤ進まない、なんで!?」

 振り返ると、そこには私の尻尾をガッシリとグリップした少女の姿。

「どこ……行くつもりなんですか……?」

「ま、マーダーの方のまぞく停止ひもは御遠慮ください〜!!!」

 ――まぞくの誤解が解けるまで、あと5分。


291 : 桃色エンカウント ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:28:26 oTEYcQlo0
【桜ノ宮苺香@ブレンド・S】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤ桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア、ハーブティー@かぐや様は告らせたいㅤ天才たちの恋愛頭脳戦、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗らず、みんなで協力して生還する
1:またこの目つきのせいで怖がらせてしまいました……
[備考]
※参戦時期はお任せします。

【桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア】
桜ノ宮苺香に支給。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で、変身中は身体能力が向上する。また、変身中はきららファンタジアの『まほうつかい』の衣装に服装が変わる。まだ苺香は読んでいないが、説明書が付属している。

【光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG】
桜ノ宮苺香に支給されたカード。
発動を宣言することで消耗し、効果を発動できる。まだ苺香は読んでいないが、カードの効果欄に、宣言のやり方等も含め、説明書きがなされている。
発動すると、3ターンと呼べる程度の時間、敵の攻撃の一切を受け付けず、通過することも出来ないバリアを前方に展開する。(本ロワでは、ゴールドシリーズ仕様のカードはデッキ単位で支給することができないが、単体で強力な効果を発揮するものとする。)

【ハーブティー@かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦】
鎮静作用やストレス軽減作用がある『パッションフラワー』のハーブティー。石上優が四条眞妃に振る舞ったもの。

【吉田優子@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:みんなが仲良くなりますように
1:ちぎなげコースは勘弁してください!
[備考]
※参戦時期は夏休み(アニメ2期7話、原作43丁目)以降です。


292 : ◆2zEnKfaCDc :2022/05/27(金) 00:29:00 oTEYcQlo0
投下を終了します。


293 : ◆8eumUP9W6s :2022/05/27(金) 00:52:01 VXbC5hO.0
自作の支給品説明に変換ミスがあったので修正します。
『支給品紹介』
【サカナマル@侍戦隊シンケンジャー】
シンケンゴールドこと梅森源太が戦闘にで使用する→ シンケンゴールドこと梅盛源太が戦闘にで使用する


294 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:09:59 8TSoDs6.0
2作品ほど投下いたします。


295 : 死にたいヤツから、かかっておいでよ ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:11:07 8TSoDs6.0
ここは会場内のとある水辺、そこには自家製の釣り竿を手に釣りをしている男がいた。

彼は『むらびと』と呼ばれている一般人、もとい"逸般人"であり【スローライフの伝道師】のリングネームを持つファイターである。

実を言うと彼はこのバトルロワイアルのことを、いつもの『大乱闘』のようなものだと認識していた。

それ故に彼の目的は、ただひたすら目の前に現れる自分の敵を倒し、優勝することだけだった。

そのため彼は最初に飛ばされた場所の周囲を探索し他の参加者がいないかを確認していたのだが、幸か不幸か誰にも出会うことができなかった。

それで彼は考えた、「自分から探し回るのではなく、他の参加者が現れるまで待ち続ける」という戦法を取ることを……。

そんなわけで彼は今、自身の支給品に含まれていた釣り竿を使って何が釣れるのかを確かめていた。

そうしてしばらく釣りを楽しんでいると、突如として彼の竿に強い引きが発生した。

それを受けて彼は釣り竿を両手でつかみ、あらん限りの力をもってそれを引き上げた。

そうすると……

『やったぁ〜〜〜!
 ジェノサイドキングサーモンを 釣り上げたぞ!
 暗黒界の中でも敵知らずの! キング! キング!
 ジェノサイドキングサーモンだ〜♪』

釣り上げた魚を誰かに見せつけるように天高く持ち上げた後、彼は先の釣り竿と同様に支給されていたアイテムを取り出した。それは……

俗に『バーベキューセット』とよばれる代物だった。そして彼はそれを使い、先ほど釣り上げた魚の調理を始めた。

そうしてしばらく調理をしていると……

『ジェノサイドキングサーモンの天ぷらが できた!』

なぜか天ぷらが出来上がったのだった。

彼は出来上がったそれを確認するとそれをデイバッグに入れて、再び釣りを始めた。

他の参加者が目の前に現れる、その時まで……。


【むらびと@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL】
[状態]:健康
[装備]:トリコが使っていた釣り竿@トリコ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、バーベキューセット@elona、ジェノサイドキングサーモンの天ぷら
[思考・状況]基本行動方針:この催しを楽しむ。
1:他の参加者を倒し、優勝を狙う。
2:まずは支給品にあった釣り竿を使って釣りを楽しむ。
[備考]
制限によりスコップや虫取り網などの各種アイテムは没収されています。


『支給品紹介』
【トリコが使っていた釣り竿@トリコ】
むらびとに支給。第1話および最終話でトリコが使っていた特別製の釣り竿。

76ミリの鉄筋にエレベーター用のワイヤーを巻き付けて作られた釣り竿で限界張力は約40トンあり、
小型のクジラすら一本釣り出来るほどの代物。

なお当然だが、常人がコレを振り回すのは不可能に近い。

【バーベキューセット@elona】
むらびとに支給。様々な食材を調理するために必要な器具の一つで、その中でも最上級ランクのアイテム。

なぜかこれ一つで魚の活け作りやシャーベット、サラダなどが作れるがそこにツッコミをいれてはいけない。


『NPC紹介』
【ジェノサイドキングサーモン@遊戯王OCG】
通常モンスター
星5/水属性/魚族/攻2400/守1000
暗黒海の主として恐れられている巨大なシャケ。
その卵は暗黒界一の美味として知られている。


296 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:11:48 8TSoDs6.0
投下終了です。

続いて、もう一作品投下いたします。


297 : 全てを失って、与えられたもの ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:12:40 8TSoDs6.0
ここは会場内にある、無数の黄金でできた大地と冒涜的なオブジェが立ち並ぶ場所……

そこには、一人の女性がいた。

染みもくすみも一つとして存在しない美白の顔と腰まで伸びた長い髪、そして美の女神と見まごうほどの美貌とスタイルを兼ね備えた女性だった。

そんな彼女は今、目も当てられないほどに引き裂かれたドレスを身に纏った、かなり扇情的な姿を隠そうともせずこの大地に力なく横たわっていた。

(……これが、私が犯した罪…、私が犯した過ちへの罰なのでしょうか……?)

彼女は、絶望していた。それはこの争いに呼ばれたことだけではなく、ここに呼ばれる前に彼女の身に起きたことに起因していた。

彼女の名前はフラウソラ。とある世界において民の暮らす地を創造した女神である。

……いや、女神"だった"というべきだろう。

何故なら彼女は、神を凋落させることを目的とした教団によって、女神としての力をすべて奪われてしまったからだ。

それは彼女が、人間の可能性を信じたが故に起きた悲劇だった。

彼女は地上の人々が希望や未来を信じ、自らの手で悲劇から立ち直れると信じていた。

確かにほとんどの人間はそうであった、しかしどのようなモノにも例外はある。

一部の人間たちは自らの身に起きた不幸を呪い、そして自らを救ってくれない『神』に憎悪を募らせたのだ。

その結果何が起きたか……?

”彼女を信仰する者たちを人質に取り、『彼らを救いたければ地上に現れろ』と恐喝したのだ”

彼女はそれを受け、人々の命と引き換えに自らの身体を差し出したのだ。

その後何が起きたかは、もはや語るまでもないだろう……。

こうして彼女はその教団の教祖やその信者たちによって辱められ、陵辱され、挙句の果てには自らの信者であったはずの男にその劣情をぶつけられたのだった。


298 : 全てを失って、与えられたもの ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:13:50 8TSoDs6.0
(彼らが救いを求めたときにその心を癒すこともせず、何もしなかったが故に彼らは心を歪ませてしまった……これが、私の傲慢……私の罪なのですね)

そうして彼女は自らが犯した罪に打ちひしがれながら力なく横たわり、そして自らに群がり始めた、どことなくチェスの駒を連想させる悪魔たちの贄にならんとしていたのだ。

しかし……

「刃よ届け!」

その力強い叫びが聞こえるとともに、彼女を取り巻いていた悪魔の内の一体が突如として一刀両断されたのだ。

悪魔たちに襲われつつあった彼女を救ったもの、それは一人の男だった。

その男は、白銀の鎧に光り輝く宝玉、そして強い意志を感じさせるまなざしをした青年だった。

「すまない!少々手荒な扱いをしてしまうが、少し我慢してくれないか!」

そして青年はその勢いのまま彼女に群がっていた悪魔たちを一掃すると、彼女を抱きかかえて一目散にその場から逃走を始めた。

それと共に先ほどの悪魔たちの仲間と思われる者達が彼を倒すためにその背中を追いかけ始めたのだった。

------------------------
そうやって彼がフラウソラを抱きかかえたままひとしきり逃げ続けると、突如として彼らを追いかけていたデーモンたちが歩みを止めてこれ以上追いかけるのをやめてしまった。

「どうやら、彼らはこの場所から離れられないらしい……、一時はどうなるかと思ったよ」
「ところで……少々手荒な運び方をしてしまったが、怪我などはありませんか?」

そう言うと彼は先ほどまで抱きかかえていたフラウソラを優しく地面に下ろし、その体を気遣うような言葉を投げかけた。

「……なぜ、貴方は私を助けてくださったのですか?こんな……罪と汚辱にまみれてしまった、この私を……」

それを受けて彼女は、目の前にいる彼に対し『なぜ自分を助けてくれたのか?』とそう尋ねたのだった。

彼女自身、内心では『誰かを救おうとするのに理由などいらない』という事は分かっていた。
それでも彼女は尋ねたかったのだ、誰も救うことのできない今の自分にそれだけの価値を見出せなかったから。

「天空と地底の狭間に、息づく命がある限り戦うと……、人々を救い続けると……私は誓った」
「それに……光がすべてではない…どれほど毒にまみれようとも、命さえあれば…生きてさえいれば世界は輝きに満ち溢れる……私はそう信じている」
「だから……私は貴方を救ったのだ」

それに対し彼は『自分の信念のため、そして希望を信じているからこそ助けた』と、そう答えたのだ。

彼がそう語ったその瞬間、彼女にはあるものを幻視した。

―― 彼の背にかつて広がっていた、とても大きく力強い"純白の翼"を……。

「!…もしかして、貴方も……?」

その瞬間に彼女は気づいた。今目の前にいるこの男性も、自分と同じように『神やそれに連なる者』ではないかという事に。

「いや、今の私は……只の『人間』だよ」

「ただ……こうやって、地に足をつけなければ見えてこないものもある……、私はそれに気付けただけだよ」

そう言うと彼は自らの足元に目を向け、またその土を両手ですくい上げたのだった。

彼の名は天地騎士クレイ、天界の『地上にいる全ての命を消し去り、世界を浄化する』という決定に異を唱え、自らの翼を捨てて地上に降り立った気高き戦士である。

―― そして、今のフラウソラに与えられた『一つの希望』である……。


299 : 全てを失って、与えられたもの ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:14:22 8TSoDs6.0
【フラウソラ@女神飼育 淫欲牝神の聖典】
[状態]:発情(小)、快楽中毒(中)
[装備]:邪神の呪いが込められた首輪@女神飼育 淫欲牝神の聖典
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:いまだ自分のことを信じてくれる人たちの為にも、人々を救い続ける。
2:女神としての力をすべて封印された上にすでに穢れに満ち溢れた身体ですが、まだできることはあるはずです……!
[備考]
参戦時期は本編第三章『女神の失意』終了後。
そのため女神としての力を全て封印されています。
『邪神の呪いが込められた首輪』は支給品に含まれていません。

【天地騎士クレイ@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:健康
[装備]:聖剣アロンダイト@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。人々のために戦い続ける。
1:地上に生きる者として、『人間』として他の人を救う。
2:とりあえず今は、心を深く傷つけている彼女(フラウソラ)のそばにいる。
[備考]
制限により【ラスト・ライブス】および【ラスト・スタンド】が使えなくなっています。
(※一度だけ即死を免れ、また体力が減るごとにステータスを上昇させる効果とスペック低下を無効化する効果を持つ技)


『施設紹介』
【万魔殿-悪魔の巣窟-@遊戯王OCG】
フィールド魔法
「デーモン」という名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。
戦闘以外で「デーモン」という名のついたモンスターカードが破壊されて墓地に送られた時、
そのカードのレベル未満の「デーモン」という名のついたモンスターカードを
デッキから1枚選択して手札に加える事ができる。

なおこのロワにおいてはチェスデーモンたちの活動可能エリアとしての機能も備えている。


『支給品紹介』
【聖剣アロンダイト@遊戯王OCG】
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):「聖剣アロンダイト」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
(2):1ターンに1度、相手フィールドにセットされたカード1枚を対象として発動できる。
装備モンスターの攻撃力を500ダウンし、そのセットされた相手のカードを破壊する。
(3):フィールドの表側表示のこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、
自分フィールドの戦士族の「聖騎士」モンスター1体を対象として発動できる。
その自分のモンスターにこのカードを装備する。

【邪神の呪いが込められた首輪@女神飼育 淫欲牝神の聖典】
フラウソラが教団に身柄を拘束された際に着用させられた首輪(※厳密には支給品ではないがこちらに記載)

彼女が遠い昔に打ち滅ぼした邪神の怨念や呪いが込められており、その力によって彼女は女神としての力を封印されてしまっている。
またこの首輪に被さる様に今回の首輪をつけられているため、外すことができなくなっている。


『NPC紹介』
【ヘルポーンデーモン@遊戯王OCG】
効果モンスター
星2/地属性/悪魔族/攻1200/守 200
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
500ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手は自分フィールド上に存在する同名カード以外の
「デーモン」という名のついたモンスターカードを攻撃できない。

【シャドウナイトデーモン@遊戯王OCG】
効果モンスター
星4/風属性/悪魔族/攻2000/守1600
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
900ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが相手プレイヤーに与えるダメージは半分になる。

なおこのロワ内では上記モンスターたちのサイコロに関する効果について「ランダムに発生する」ものとして扱われている。
(他のサイコロ関係の効果を持つモンスターの裁定については後続の書き手に任せます。)


300 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/27(金) 02:14:48 8TSoDs6.0
これにて投下終了です

以上、ありがとうございました。


301 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/27(金) 14:38:20 ucK2AIfw0
投下します


302 : 戦隊の介人さん、妖精のクトリさん ◆FiqP7BWrKA :2022/05/27(金) 14:39:29 ucK2AIfw0
そこは学校のような建物の給水塔の上。
黒いズボンに白い上着。
その上にカラフルなパディングベストを着たスタイルのいい青年が立っていた。
彼は胸いっぱいに空気を吸うと

「いろんな世界から集められた皆―!
俺は五色田介人ー!機界戦隊ゼンカイジャーのゼンカイザーで!
世界初!冥界の王様を倒して!
決闘を終わらせて皆を救うスーパーヒーローになる男っ!」

彼は周囲のどこのどんな場所から、
どんな誰かが自分を見ているかもわからないこの殺し合いの場で叫んだ。

こんな普段は善性を持って日々を過ごす者であっても凶行に走りかねない場所で、
ゲームを円滑に進めるために主催者たちが呼んだ連中を、
間違いなく乗るであろう連中を引き寄せかねない行為だ。
それでも叫ばずにはいられなかった。
良くも悪くも少年のように純朴な彼は、
この理不尽は間違いだと、叫ばずにはいられなかった。

「俺は必ず!この決闘を終わらせて見せる!
一緒に全力全開で戦ってくれるっていう皆は集まってくれー!」

そう一通り叫び終えると、もう一度息を大きく吸い、

「皆―!もう一回言うよー!俺の名前は「ちょっとちょっと!何考えてるの君!」五色田、、、お!早速ひとり!」

見ると給水塔の下、青い髪を二つ結びにした少女がいた。
歳は、介人より下だろうが、そんない変わらないだろう。
給水塔を滑り降りると、一度咳払いをした介人は右手を差し出しながら、

「俺は五色田介人!世界初!冥界の……」

「分かった!それはもう分かったから!
とりあえず中で話そう。ここじゃあ周りから丸見えだし」

「いいよ」

恐るべき素直さで少女についていく介人。
もし最初に自分と出会わなかったらどうなっていたのだろうか?
と、青髪の少女、クトリ・ノタ・セニオリスは激しく不安になった。


303 : 戦隊の介人さん、妖精のクトリさん ◆FiqP7BWrKA :2022/05/27(金) 14:40:27 ucK2AIfw0
(まあ、悪い人ではないんだろうし、機界戦隊だっけ?
のメンバーだって言うんんら協調性も有るんだろうけど……)

なんて思いながら介人とクトリは、一個下の階の階段近くの部屋に入った。
どこか商業ビルなのか、事務机と椅子がずらーっと並んでいる。
2人はその中から適当に椅子を選び、備え付けのポットを使ってコーヒーを入れた。

「じゃあ、改めて。俺は五色田介人。よろしくね」

「クトリ・ノタ・セニオリス。こちらこそよろしく」

握手を交わし、介人が淹れたコーヒーを啜る。
クトリの想像の倍はおいしかった。

「それで、君はこの殺し合いを止めるって言ってたけど、当ては有るの?」

「ないよ」

「ないのにあんなこと言ったの?」

それにしてはさっきの啖呵は自信満々な風に思えた。
ますますクトリは介人の事が分からなくなる。

「うん。叫ばずにはいられなかったー!って言うか。
それに世界初!達成するチャンスだしね!」

「世界初?」

聞き返すと、介人はコップを置いて胸を張り、

「そう!父ちゃん母ちゃんが行方不明になった後、
ヤッちゃん……俺のおばあちゃんに励まされたんだ。
多分今もどこかで研究続けてる2人が戻って来た時、
うらやましがるぐらい楽しく過ごそうって!」

「その羨ましがるのが、世界初?」

「まあね。クトリは何かある?例えば、、帰ったらやりたい事とか」

「帰ったら、か」

クトリとしては、仮にハ・デスを倒して脱出を果たしても、
デュエルキングになって、どんな願いを叶えれるんだとしても、
本当に帰れるのだろうか?と思ってしまう。
これは主催側が信用できないというのも有るが、
『一度死んだ自分が戻れるのか?』という疑問が一番だ。

何故か失った記憶や、毀れたはずの体は奇麗に元通りになっているが、
クトリ・ノタ・セニオリスは、恋した彼を守る為に死んだはずだった。
崩れ往く彼の乗った船を守る為に、自らの存在が崩れるのも厭わず戦った。
もう電池切れ寸前だった体を動かして、一度は名前さえも忘れてしまった彼を助けれた。
そのはずだ。

(正直、もういいんだよね。
きっと生き延びてくれたヴィレムは幸せに、、幸せに?)

そこまで考えて、クトリは想像してしまった。
ある意味では最低で、ある意味では最高の光景を。
自分じゃない女がヴィレムのそばにいて、
その周りを彼やその女そっくりの子供が走り回ってて、
そこに居る彼はとても、とても幸せそうで……

「嫌だ」

その幸せは、あんなことさえなければ自分が与えれるものだった。
微かにでもそう思ってしまうと、心の底から色んな気持ちがあふれてくる。
人間、正確に言うと彼女は黄金妖精だが、
所謂霊長類と同等の知能を持つ動物なら皆そうなのか、
どんな形でも生きていれば、欲は湧いてくるものらしい。

「絶対に嫌だ。だって、だって……」

流石に介人が居る手前、『私の方が先に告白されたのに』と言う言葉は呑み込んだ。
嘘。ギリギリ飲み込めた。

「大丈夫?クトリ?クトリってば!」

「うん……。大丈夫。
ねえ君、カイトでいいんだよね?」

「う、うん。どうしたの?」

「私もいれて。そのキカイ戦隊に」

「本当!?もちろんいいよ!てことは、協力してくれるの?」

「うん。帰ったらやりたい事、今見つけたから」

そう言ってクトリは支給されたカバンの中から一本の剣を引き抜いた。
介人も両親から託された武器、ギアトリンガーを取り出す!

「よーし!それじゃあまずは仲間を探そう!
全力全開―!ちょあー!」

「ちょ、ちょっとまって!」

歯車みたいに凸凹だが、だからこそ一つの目的の為にかちっ!
と噛みあった剣士と銃士が反撃を開始した。
彼らはこの現状をこじ開ける事が出来るのか?
そのお話はじかーい、じかい。


304 : 戦隊の介人さん、妖精のクトリさん ◆FiqP7BWrKA :2022/05/27(金) 14:42:06 ucK2AIfw0
【五色田介人@機界戦隊ゼンカイジャー】
[状態]:健康
[装備]:ギアトリンガー@機界戦隊ゼンカイジャー
     センタイギア(45番)機界戦隊ゼンカイジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:世界初!冥界の王様を倒して、決闘を止めて皆を救うスーパーヒーローになる!
1:クトリと一緒に仲間を探す!
2:俺の声、皆に届いたかな?
[備考]
※介人の啖呵は少なくとも建物周囲には間違いなく響きました。
けど肉声だったので、範囲はそんなに広くありません。

【クトリ・ノタ・セニオリス@終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?】
[状態]:健康
[装備]:デュエルポンドソード@魔法戦隊マジレンジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品〜
[思考・状況]基本方針:絶対に生きて帰って、告白に返事をする
1:キカイ戦隊としてこの決闘を終わらす
2:一回死んだとか関係ない。生き返れたなら、全力全開で帰る!
[備考]
※死亡後からの参戦ですが、記憶、肉体、共に復元されています。
その為、原作と同じように、魔力を使って戦い続ければまた”壊れる”可能性が有ります。


【ギアトリンガー@機界戦隊ゼンカイジャー】
ゼンカイジャーたちの共通装備にして変身アイテム。
センタイギアを使う事で、ゼンカイジャーへの変身。
および歴代スーパー戦隊をイメージした力を発動できる。
五色田介人には、ゼンカイザーのセンタイギアとセットで支給された。

【デュエルポンドソード@魔法戦隊マジレンジャー】
マジトピアと言う世界の魔法抜きの剣技のみの決闘、デュエルポンドに用いられる長剣。
魔法を無効化する力がある。


305 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/27(金) 14:42:32 ucK2AIfw0
投下しました


306 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 14:58:05 apTOJ3gk0
投下します


307 : ナッパの超サイヤ人3だと……!? ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 14:59:00 apTOJ3gk0
 冥界の魔王は神すらも超越する
 たとえゴッド――神の領域に辿り着こうとも彼の支配から逃れることは出来ない。

「決闘か。フン、くだらん」

 誇り高きサイヤ人の王子は一応ルールの確認を確認した後、そこに記された決闘(デュエル)という言葉や最後の一人というワードで大まかな趣旨を理解。優勝した際の特典などに何も興味を示さず、くだらないと吐き捨てた。
 そもそも冥界の魔王とか言われても彼はかつて魔人と戦っているし、なんなら知り合いに破壊神も居る。彼――ベジータにとって世界の存亡を賭けた戦闘なんてそれほど珍しいものでもない。
 それに加えて未来から息子がやって来たり、凄まじい強さの人造人間と戦ったり――そういう珍しい経験を積み重ねているせいでこの決闘でもあまり動じずいつものように振る舞える。
 ちなみに願いを叶えるという景品もドラゴンボールを使うことで何時でも叶えられる。ベジータにとっては特別欲するようなものでもない。優勝特典に一切興味を示さなかった理由はドラゴンボールの存在も大きいだろう。

 だがそんなベジータにも幾つか気になる点はあった。
 まず一つ――さっさと決闘を終わらせて家族の元へ帰ろうとした時だ。気を高めてスーパーサイヤ人になろうとしたが、どういうわけか変身出来ない。それどころか何もせずとも察せられるくらいには自分の身体能力や気が明らかに低下している。軽く身体を動かしたが、いつもよりも鈍い。

「ちっ!これが制限というやつか……」

 ルールブックに記されていた制限を思い出す。スーパーサイヤ人化の制限、その他各種制限――。文字で読んでもイマイチわからなかったが、こうして試してみることで実感出来る。

「どうやら冥界の魔王とやらは相当な臆病者らしいな」

 自身の戦闘力が低下したことに苛立ちを募らせながら、ベジータは参加者の力を制限するような情けない主催者に皮肉を言った。
 そんな発言が飛び出てきた主な原因は制限さえなければ自分はハ・デスに勝てるという確固たる自信があるからだろう。ベジータはハ・デスの力を侮り、制限が掛けられた理由も決闘の公平性を考慮した結果とは思わず、自分がハ・デスに逆らえないようにするためだと考えた。
 実際スーパーサイヤ人は凄まじい。特にベジータはスーパーサイヤ人ゴッド――神の領域まで踏み込んだ猛者。そしてその神の領域の更に上を行くゴッドブルーにすらなれる。ハ・デス程度ならば自分一人で倒せると考えるのも仕方のない話だ。


308 : ナッパの超サイヤ人3だと……!? ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 14:59:33 apTOJ3gk0
 加えてベジータはプライドの高い性格。誇り高きサイヤ人の王子だ。ハ・デスが冥界の魔王だと名乗ろうとも彼に負ける姿など微塵も想像出来ない。……実際に戦い、ハ・デスの強さを実感してしまった場合はこの限りではないのだが。

 ちなみに制限というシステム自体にはそこまで驚いていない。戦闘力を強制的に低下させ、スーパーサイヤ人まで封じる。その技術力はベジータからしても凄いと思ったが、人造人間やセル――要するにドクターゲロという天才の技術を見てきたのでこういう技術があっても不思議ではないと受け入れられる。

「それにしてもこのオレがこんな臆病者に不覚をとるとはな……。ムカつくことだ……!」

 この場合の不覚をとる――とはハ・デスから決闘に巻き込まれたことを指す。どうやって自分を巻き込んだのか、どうして自分がこんな奴に不覚をとってしまったのか理解出来ず、それがまたムカついた。気が付いたらいつの間に連れ込まれてました――なんてあまりにも情けない状況で自分自身にすら苛立つ。普通の参加者ならばこんなことに腹を立てないだろうが、ベジータのプライドがそうさせた。彼は本当にプライドと誇りが高い戦闘民族だ。

「……まあいい。さっさとハ・デスを倒せば済む話だ。制限なんかでこのオレ様をどうにか出来ると思っているなら、とんだ誤算だったな」

 どこかで監視しているであろうハ・デスを煽るかのようにベジータは堂々と自分の方が強いことを前提に語る。
 相手は未知の技術を持っているようだが、それでも負ける気はしない。冥界の魔王という肩書きは大層なものだが、破壊神を見ている彼にはそこまで響かない。
 この決闘には様々な参加者がいるらしいが、それらに対してもあまり興味はなかった。好敵手のカカロットでも居なければ張り合いがないし、仮に彼が参加しているとしても命を賭した殺し合いをするという仲ではもうない。それに普通の戦闘ならばいつでも出来る。
 もしかしたら自分やカカロットよりも強い決闘者とやらが参加しているかもしれないが、こうして様々な制限を施している時点でその望みも薄いだろう。だからベジータの眼中にはハ・デスしかないし、どうにかして彼のいる場所に辿り着きたい。今のベジータは昔と違って他人を虐殺する気はないから、それ以外の方法で――だ。

「フン。一応この支給品は受け取ってやろう」

 ハ・デスに辿り着くためにもベジータは支給品を確認する。相手は首輪や制限で従わせようとしている臆病者だ。決闘と口にしている癖に自分は高みの見物を決め込むような奴だ。彼の元へ辿り着く手掛かりが支給されている可能性は薄いが、それでも確認する価値はある。


309 : ナッパの超サイヤ人3だと……!? ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 15:00:21 apTOJ3gk0

「――なんだこの下品なぬいぐるみは!ふざけてるのか!?」

 まず出てきた物はぬいぐるみだ。間抜けな顔で鼻水を垂らした下品極まりない汚いぬいぐるみ。

「しかもよく見たら、鼻水の部分がティッシュだと……!?なんなんだ、このわけのわからんぬいぐるみは!」

 説明書には「ハナミズふけば〜ボーちゃん! ティッシュカバーぬい 」という名前が書かれている。名前からしてもう悪ふざけだ。
 かわいさに癒される♥なんてふざけたことも説明書に記されているが、こんなくそったれ――というより鼻水垂れの汚いぬいぐるみをこの状況で渡されても癒されないし、不快なだけである。
 ちなみに試しに鼻水――ではなくティッシュを引っ張ったらまた鼻水のようにティッシュが出てきた。どうやら「かんでもかんでもハナミズざ出る!?」という説明は正しいようだが、だからといってなんだという感じだ。こんなものを見ているだけでもバカバカしくなって、すぐにデイパックに戻した。

「ちっ!くだらんことに時間を掛けさせやがって……!」

 忌々しいはなたれ小僧は放置して、次の支給品を取り出す。それは一枚のカードだった。

「……何!?」

 手に取ったカードを眺めてベジータは驚く。流石の彼でもこの時ばかりは驚きを隠せなかった。

「ナッパのカードだと……?」

 ――何故ならそこにはかつて仲間だった男、ナッパが写っていたのだから。

「しかもスーパーサイヤ人になってやがる!これはいったいどういうことだ……!?」

 ナッパは髪の毛が一切ない禿頭だが、何故かヒゲが金色になっていることでスーパーサイヤ人だと認識出来る。だがベジータが知っているナッパはスーパーサイヤ人になんてなれない。ただの見間違いである可能性もある。カード名はナッパだから本人なんだろうが、これがスーパーサイヤ人でない可能性も――。

「何ィ!?スーパーサイヤ人3だと!?」

 カードの裏面を確認してベジータは再び驚愕した。そこには超サイヤ人3と書かれていたのだ。髪の毛が無いから気付かなかったが、たしかにヒゲは伸びている。それが超サイヤ人3になったことによる変化なのだろう。

「くそったれ……!変なものばかり寄越しやがって!!」

 ナッパのカードなんていう意味不明な代物だけでも謎なのに、更に超サイヤ人3ときて困惑する。こんなものを見せられたら流石のベジータでも困惑するしかないだろう。とりあえず意味不明過ぎるから一度カードをデイパックに戻した。

「……意味不明な物だが情報としては価値があるかもしれん。ハ・デスは無数の世界がどうこう言ってたからな。もしかしたらナッパが超サイヤ人3になっている世界がある……というのはあまり想像出来ないが、そんな世界が存在する可能性もある。どうしてカード化されているのかは、知らんがな……」

 ハ・デスは未知の技術を持つ相手だ。情報は多いに越したことはなく、とりあえずナッパのカードに一定の価値を見出した。

「それにあのはなたれ小僧のぬいぐるみよりはよっぽどマシだ……!」

 はなたれ小僧とは当然ボーちゃんのことだ。どう見ても決闘には使えない下品で汚いぬいぐるみ――あんなものを支給してきたハ・デスに対してベジータは更に怒りを募らせた。

「楽しみに待ってろよ、ハ・デス。こんなはなたれ小僧でオレをコケにしやがったことをたっぷりと後悔させてやる……!」

【ベジータ@ドラゴンボール超】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、ハナミズふけば〜ボーちゃん! ティッシュカバーぬい@現実、PBS-26 ナッパ 超サイヤ人3@ドラゴンボールヒーローズ
[思考・状況]基本方針:オレをコケにしやがったハ・デスを後悔させてやる……!
1:ハ・デスの居場所が知りたい
2:超サイヤ人3のナッパについて情報が知りたい。あいつが超サイヤ人になるなんてどんな世界なんだ?
[備考]
スーパーサイヤ人になれません。その他身体能力などが大幅に制限されています

『支給品紹介』
【ハナミズふけば〜ボーちゃん! ティッシュカバーぬい@現実】
ベジータに支給。アニメ『クレヨンしんちゃん』に登場する人気の不思議キャラクター「ボーちゃん」のボックスティッシュカバーぬいぐるみ。ティッシュで鼻水が再現されている
ティッシュを引っ張り出す度にまたティッシュが出てくる姿が、ハナミズをかんでもかんでもまたハナミズが出てくるような、ボーちゃんにぴったりの商品仕様
かわいさに癒される♥かんでもかんでも鼻水が出る!?と印刷された紙も同梱

【PBS-26 ナッパ 超サイヤ人3@ドラゴンボールヒーローズ】
ベジータに支給。ドラゴンボールヒーローズではあのナッパが超サイヤ人3で実装された


310 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 15:00:40 apTOJ3gk0
投下終了です


311 : ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:21:02 oHRx129Q0
投下します。


312 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:22:11 oHRx129Q0
「ぐ…ぁ……」

まるで勝負にならない。
自分と相手のとの間には、悲しいまでに力の差が開いている。
その事実を、桐生戦兎は身を以て実感していた。

膝を付き、全身を蝕む痛みに荒い息を吐く戦士、仮面ライダービルド。
戦兎が変身するもう一つの姿。
今更そんじょそこらの相手に後れを取る筈が無い。
なのにこうして追い詰められているその理由は実に単純。

現在対峙中の敵が、ビルド以上の能力を持っているからに他ならない。

赤と金を基調とした装甲に、星座盤を填め込んだ頭部。
嫌と言う程に見覚えがある仮面ライダー。
名はエボル。桐生戦兎最大の宿敵である男が変身した、星を破壊する戦士。
旧世界での戦いで、幾度も辛酸を舐めさせられた相手が戦兎を見下ろしている。

デュエル開始直後、とりあえず落ち着いて現状を確認しようと努めた戦兎へ、有無を言わさずエボルが襲い掛かった。
当然黙って殺されてやるつもりは無く、すぐさまビルドへ変身し応戦。
が、やはりと言うか相手が悪過ぎた。
まず第一に、ラビットタンクフォームのビルドとエボルではスペックが違い過ぎる。
ビルドの攻撃は簡単に躱され、或いは当たってもほぼノーダメージ。
反対にエボルの攻撃は面白いように命中し、一撃だけでもビルドの体力を大きく削った。
第二に、戦兎に支給されたフルボトルは基本形態に変身するラビットとタンクの二本しかない。
フルボトルの交換による多彩なフォームチェンジというビルドの最も得意とする戦法が使えず、強化フォームにもなれない。
これで相手が通常のスマッシュ程度なら苦もなく対処出来ただろうが、エボル相手ではまるで歯が立たなかった。

それでも未だ変身解除もされず、ギリギリの所で致命傷を避けられているのは、ビルドとしての戦闘経験と技能が総動員されているからだろう。
圧倒的に不利なのは変わらないが。

「っ…!」

どうにか立ち上がってドリルクラッシャーを構える。
ビルド用に自分で開発した武器も、この状況では少々頼りなく思えた。
しかし戦意は未だ健在。エボル相手に追いつめられるなど、これまで何度もあったのだ。
流石に殺し合いでもこうなるとは思わなかったが。


313 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:23:29 oHRx129Q0
まだ戦う気でいる戦兎を面倒に思ったのか。
チマチマ攻撃するより、一気に片を付けようとエボルがドライバーに手を掛ける。
右部分に取り付けられたレバーを勢い良く回せば、一回転毎に対象を破壊するべくエネルギーが充填されていく。

「くっ…!」

ビルドも同じくドライバーに手を掛ける。
現在のビルドが使える中で最も高威力の攻撃も、エボル相手に効果が薄い事は理解している。
だが棒立ちのままでいても殺されるだけだ。
少しでも敵の攻撃の威力を削ごうと、レバーを回す。

そんな抵抗すらエボルは許さない。

「なっ!?」

赤い残像が見えたかと思えば、エボルが目と鼻の先まで接近していた。
ビルドがエネルギーを充填し終える前に仕留める算段だ。
レバーの回転、ドリルクラッシャーによる攻撃。
取るべき選択肢は複数あれど、急接近に反応が遅れる。
己の失態を悔やむ暇すら戦兎には無い。

『Ready Go!』

『EVOLTECH FINISH!』

エボルの右足を軸にして星座盤が展開される。
数多の惑星を破壊し、己の糧とするブラッド族の生態。
それを象徴するかのように、踏みつけた星々はエボルに力を齎す。
此度もまた、破壊を振り撒く為に。


314 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:24:23 oHRx129Q0
右脚に蓄積させたエネルギーが迫る光景が、戦兎にはやけにゆっくり見えた。
神が存在するのであれば、実に残酷な真似をしたものだ。
地球の危機を救ったヒーローを、何の救いも無く死ぬよう仕向けたのだから。

だが誰もかれもが戦兎の死を望んでいる訳ではない。
エボルが、デュエルの主催者が、或いは戦兎自身の運命が死ねと言ってこようと、それに真っ向から反論する者だって存在する。
捨てる神あれば拾う神あり。戦兎を終わりへと仕向けたのが神なら、阻む神もいるのだろう。

尤も


――COBRA!STEAM SHOT!COBRA!――


戦兎に救いの手を差し伸べたのは


「っ!?」


神などではなく


『よ〜う。間一髪だったな、戦兎ォ?』


星を狩る怪物なのだが。

命を刈り取るエボルの右足が止まる。
ダメージは最小限に抑えられた。しかし予期せぬ攻撃とは、大なり小なり動揺を生み出すもの。
唐突に背後から衝撃が来た。。
その何かの正体は不明だが誰がやったかは直ぐに分かった。

眼前にいた標的が、何時の間にか距離を取っている。
先程までは影も形も見当たらなかった存在におまけ付きで。
血を被ったような色の、宇宙服にも似た装甲の怪人。
エメラルドグリーンのバイザーに隠された眼が、エボルと交差、瞬間に跳ね上げられる右腕。
銃口がエボルを睨みつける。

だがエボルの予想に反して、発射されたのは銃弾ではなく黒い煙。
排気ガスの数十倍は淀んだ色はあっという間にビルドと怪人を包み込む。
敵の意図を悟ったエボルが手を伸ばした時には既に遅い。
煙が晴れると、そこにはもう誰もいなかった。


315 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:25:30 oHRx129Q0
◆◆◆


「よっ。案外早めの再会になっちまったな」

スタート地点から離れた場所にある一軒の民家。
家の主のようにソファーへどっかりと座り込んだ男に、戦兎は苦々しい表情を作った。

「…何でお前までいるんだよ」
「そりゃ俺じゃなくて、あのハデスだかゴメスだかってのに聞いてくれ」

俺だって迷惑してるんだぜ?
そう言いたげに肩を竦める仕草は、憎たらしい程様になっている。
この男を戦兎は嫌と言う程よく知っている。
行きつけのカフェ、nascitaのマスター石動惣一。
娘と二人で店を切り盛りしており、インディーズバンド「ツナ義ーズ」の大ファン。
但し、目の前にいるのは石動の姿を借りた全く別の存在。

地球外生命体のエボルト。
10年前にスカイウォールの惨劇を引き起こし、戦兎ら仮面ライダーと死闘を繰り広げた、ある意味では戦兎と最も縁の深い男。
新世界にて復活したが、紆余曲折あって地球を去っていた筈。
数々の事件を引き起こしたエボルトも、今回ばかりは巻き込まれた側らしい。
その証拠に、参加者の証である首輪が巻かれていた。

「しっかし驚いたぜ?開始早々ドンパチやってる奴らの顔を拝みに行ったら、お前が殺されそうになってるんだからよ」
「……何でわざわざ俺を助けたんだ?」
「おいおい、俺とお前の仲をもう忘れちまったのか?まるで俺が打算ありで助けたみてぇじゃねぇか」
「違うのかよ?」
「いや、合ってるぜ」

だろうなと呆れを含んだ冷たい視線をぶつける。
この男が純粋な善意で誰かを助けるなど、天地が引っ繰り返っても有り得ない。

「単刀直入に言うぜ。俺と手を組む気はないか?」

そら来た、半ば予想できた答えに戦兎は顔を顰める。
決闘という名の殺し合いはエボルトにとっても想定外の状況。
おまけにエボルドライバーまで奪われている。
エボルト一人でどうにかするには戦力も手数もまるで足りない。
そんな中で誰よりも利用価値を知る自分と会えたのだ、放置しておく事はしないだろう。


316 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:27:15 oHRx129Q0
「俺がそう簡単に頷くと思ってんのか?」
「そう冷たいこと言うなよ。どうせ装備の大半を取られちまってるんだろ?
 基本フォームのビルドにしかなれないお前と、エボルドライバーを奪われた俺。案外良いコンビになると思うぜ?」
「大体何で他の奴がお前のドライバーで変身出来てんだよ。アレはお前にしか使えないんじゃないのか?」
「大方内海の為に複製してやった方だろうよ。人間用に色々調整してあるからな」
「…じゃあお前のじゃなくて内海さんの物じゃねぇか」
「元は俺のエボルドライバーから複製したんだから、俺のだろ?」

ガキ大将の理屈かよと呆れながらも、エボルトの言う通り戦兎も装備は不十分。
今のままでエボルや他の殺し合いに賛同した者、何よりハ・デスと戦うのは非常に厳しい。
ならば共に戦ってくれる仲間を集めるのは、間違った行動ではない。
ただその相手がエボルトという一点が大問題である。
エボルトの提案に乗っかるのは抵抗がある、しかし今の戦兎に取れる手はそう多くない。
悩むこちらを涼しい顔で眺めてくるのにイライラしながら、ややあって口を開く。

「…言っとくけど、お前を信用するつもりはこれっぽちもねぇ。お前がろくでもない事をしでかさないよう、近くで監視する為だ」
「ハハッ!望み通りの答えでほっとしたよ。暫くは俺が万丈の代わりって事でよろしく頼むぜ?相棒」
「お前と万丈を一緒くたにするんじゃねぇよ」

軽薄な態度へ吐き捨てるように返す。
当のエボルトは特に機嫌を損ねる事も無く、ツレねぇなと笑みを浮かべた。
元より友好的な態度を取られるなんざ思っていない。
戦兎の持つビルドとしての力や、首輪を解除出来るかもしれない技術力。
それらを手元に置ければ良いのだから。

(さて…これから忙しくなるな)

何かもが想定外のこの状況。
取り敢えず優先するのは自分の生存とエボルドライバーの奪還。
だが他にも興味を惹かれるものがある。
ハ・デスはこう言っていた、様々な世界から決闘者を呼び寄せてあると。
つまり並行世界から多くの参加者を集めた。最上の開発したエニグマや、新世界の存在を知っているエボルトからすれば驚く程でもない。
この点は戦兎も同様だろう。
会場にはエボルトの知らぬ世界の技術や異能があり、それらを凌駕するかもしれない力をハ・デスが保有している。
あわよくばそれらを手に入れ、旧世界での時以上の力を我が物にするのも悪くない。
尤もこの考えを戦兎に馬鹿正直に話す気は無い。

(お前がどこまで抗えるのか、特等席で見物させてもらうぜ。なぁ、戦兎ォ?)

自分を二度も打ち破り、万丈がキルバスを撃破したように、今回もラブ&ピースの勝利で最後を飾るのか。
それとも正義のヒーローなど無意味とばかりに踏み躙られ、無念の最期を迎えるのか。
期待を込めた瞳で、地球外生命体は最高の人間(おもちゃ)を見つめた。


317 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:28:23 oHRx129Q0
【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ビルドドライバー+フルボトル(ラビット、タンク)@仮面ライダービルド、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスを倒し殺し合いを終わらせる。
1:監視も兼ねてエボルトと共闘する。信用した訳じゃねぇからな
2:首輪を解除する為に工具を探す。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。

【エボルト@仮面ライダービルド】
[状態]:健康、石動惣一に擬態中
[装備]:トランスチームガン+コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:生存優先。あわよくば未知の技術やハ・デスの持つ力を手に入れる。
1:戦兎と共闘しつつどこまで足掻くのか楽しむ。仲良くやろうぜ?
2:エボルドライバーを取り戻す。元は内海の?知らねぇなァ。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』で地球を去った後。





「そういや、さっきエボルに変身してたのはどんな奴だった?」
「顔は見てないから分かんねぇよ。ただ……」
「ただ?」
「…あのエボルからは、誰かを強く憎んでる感じがした」





仕留められなかった。
変身を解くと青年は苛立たし気に煙の晴れた箇所を睨む。
あのまま蹴り殺せていた筈なのに、乱入者が余計な真似をしたせいだ。
姿が見えない以上、ここに留まり続けても仕方ない。
次に会う事があれば、乱入者共々確実に殺す。

青年が殺意を向けるのは先程のライダーだけではない、人類全てに対してだ。
人類と悪意は切っても切れない関係。
自分達の手で滅亡させない限り、常に新たな悪意が芽吹き続ける。
故に、人類は滅ぶべきなのだ。
ここが冥界の魔王を名乗る怪物の用意した舞台であろうと、それを変えるつもりは無い。

ただ一人、悪意を生ませない為では無く、個人的な怒りで殺したいと思う男がいる。
自分が大切な存在を奪ってしまった、そして自分から息子を奪った人間。

「飛電或人…!!」

顔を歪め、憎悪を露わに息子の仇の名を呼ぶ姿は、彼が滅ぼそうとする人間そのものだった。


【滅@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:健康、激しい怒り
[装備]:エボルドライバー(複製)+エボルボトル(コブラ、ライダーシステム)@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:人類滅亡。迷いは無い。
1:飛電或人が参加しているなら、自分が殺す。
2:絶滅ドライバーとアズから与えられたプログライズキーを取り戻す。
[備考]
※参戦時期は43話終了後。


318 : 予測不能のベストマッチ ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:29:58 oHRx129Q0
【ビルドドライバー@仮面ライダービルド】
仮面ライダービルドに変身する為のベルト。
二つのフルボトルをセットして、横のレバーを回転させることで変身が可能になる。

【ラビットフルボトル+タンクフルボトル@仮面ライダービルド】
兎の成分と戦車の成分が入ったフルボトル。
ビルドドライバーにセットすれば、ビルドの基本形態であるラビットタンクフォームに変身する。

【ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド】
ビルドの基本武装である可変型武器。
ドリル状の刃で斬り裂くブレードモード、ドリルパーツを外し組み立て直す事で変形完了するガンモードの2形態がある。
戦兎や万丈は変身前にも度々使っていた。

【トランスチームガン@仮面ライダービルド】
葛城巧が開発した拳銃型の変身ツール。
ロストフルボトルをセットする事でトランスチームシステムの怪人に変身できる。
武器としても使用可能であり、エネルギー弾を発射する他、煙幕を張って撤退する、特殊なガスを散布し人間をスマッシュにする等の機能がある。
ライダーシステムと違い、感情の高ぶりでハザードレベルを上昇させる事も無い。

【コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド】
トランスチームシステムの変身に用いられる人口フルボトル。
これをトランスチームガンにセットしトリガーを引くとブラッドスタークに変身できる。

【エボルドライバー(複製)@仮面ライダービルド】
エボルトが仮面ライダーエボルに変身する為のベルト。その複製品。
本来エボルトにしか使用できないのを人間でも使えるよう調整が加えられ、内海成彰に与えられた。
ロワにおいてはネビュラガスが注入されていない者でも変身可能に細工されている。

【コブラエボルボトル+ライダーエボルボトル@仮面ライダービルド】
エボルトが仮面ライダーエボル、フェーズ1に変身する為のボトル。
エボルドライバーと違い複製されていないオリジナルである。


319 : ◆ytUSxp038U :2022/05/27(金) 16:30:38 oHRx129Q0
投下終了です。


320 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 23:35:34 lrvQE6UI0
投下します


321 : 空・手・炸・裂 ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 23:36:46 lrvQE6UI0
 顔立ちが整った空手着の坊主頭と、同じく整った容姿の男は激闘を繰り広げていた。
 激闘――そう言えば聞こえは良いがその内容は一方的なものだ。坊主頭が一方的に相手を追い詰め、容姿が整った男へ次々と拳を浴びせていく。数分もしないうちに男の容姿は見るも痛々しいものになり、元がイケメンなだけにそのギャップがまた痛ましさを感じさせる。

 ――もうこれ以上はやめてくれよ……。

 坊主頭の圧倒的な強さに心をへし折られた男は彼の一撃で豪快に倒れ、起き上がろうとしない。こんな化け物と戦いたくないし、これ以上は傷付きたくないから。こんな事をされるくらいならホモにレイプでもされた方がまだマシだ。

 坊主頭は倒れ伏した男を一瞥する。――彼が生きていることは明らかだ。坊主頭は男のヘタクソな演技を見抜いている――が、わざわざ命を奪う必要もない。覚悟の果てに戦死を選ぶのならともかく、そうでもない相手を殺す必要性を感じない。負けを認めた者に追い打ちを掛ける気もない。

 何故ならこれは正々堂々とした決闘だ。ルールブックには最後の一人という文字が記されていたし、決闘の趣旨は理解している。だが坊主頭がそれに従う義理はない。

 決闘の場を用意してくれたこと自体はハ・デスに感謝している。彼は様々な世界から決闘者を呼び寄せたと語っていたが、それが本当ならきっとイップ・マンのような猛者が数多く参加しているに違いない。
 坊主頭――三浦はこの会場を闘技場と定め、存分に楽しむつもりだ。無論、武器を使う気はない。己が拳で空手という武術の強さを知らしめる。
 そしていつかハ・デスとも戦いたい。冥界の魔王と自らの拳――どちらが勝つのか。だがそれにはまだ自分が未熟であることも知っている。以前の三浦ならそんなこと思いもしなかっただろうが、イップ・マンに負けたことで自分の限界を知った。今の自分ではハ・デスに勝てない。そのためにここで多種多様な格闘家――ハ・デスの言葉を借りるなら決闘者と正々堂々戦い、強くなる。そしていずれイップ・マンよりも強くなり――イップ・マンやハ・デスと戦いたい。

 ――今の三浦にとってイップ・マンは一つの目標みたいなものでもあった。
 このデュエルが始まってから、一番最初に見つけた男に決闘を持ち掛けた。容姿こそ整っているが、とても格闘家とは思えない体つき。それでも何かしらの力を秘めている可能性はある。――イップ・マンのように。
 断られたらそこで引くつもりであったが、男はそれを受け入れた。決闘してすぐにわかったことだが、男は空手を学んでいるらしい。同じ空手を使う者として、敬意を払って戦う。だがやはりというか――三浦と男ではあまりにも強さに差がありすぎた。肉体も技術も――そして精神も。なにもかもが三浦の圧勝だ。

 それを身をもって実感したから男は戦意を喪失した。他人に決闘を持ち掛けるような参加者は危険人物だと思ったから部活で学んでいる空手で挑んだが、まるで通じていない。
 空手着の男の坊主頭や雰囲気が尊敬する大先輩と少し似ていて。だから自分の手で止めたかったがそう上手くもいかない。


322 : 空・手・炸・裂 ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 23:37:38 lrvQE6UI0
 倒れ伏した男――KMRは心をへし折られ、自分の無力さを嘆いた。こうして負けを認めているのも、あまつさえ死にたくないがゆえに死んだフリなんてしているのも――悔しい。あまりにも情けない。それでもやっぱり命を投げ捨てたくないから、我が身かわいさに保身に走ってしまう。

「もう決闘が始まっちまってたのか……!」

 そこへ一人の男がやってきた。リーゼント頭の癖に服装はまともという、なんともアンバランスな男だった。
 リーゼント頭の男の声を聞き、三浦が彼らを見据える。自分が探すまでもなくやってきた新たな敵に三浦は心躍らせた。

「――変身!宇宙キター!」

 リーゼントがベルトをつけると、宇宙服のような白いスーツが彼の身を包んだ。――三浦はそれが彼の正装。空手着のようなものだと判断し、その変化を冷静に受け止めると構えた。

「俺は仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!!」
「私は三浦だ。――正々堂々、決闘させてもらうぞ」

 仮面ライダーフォーゼと名乗ってきた相手に敬意を払い、三浦もまた名乗る。彼の性格を一言で表すなら武人だ。名乗ってきた相手に自分も名乗り返すことは当然。それが武道の作法というものだ。
 フォーゼと三浦の拳が交差し、戦いが始まる。

 ――――MUR!?

 予想外の名前を聞いて、KMRは驚いた。MUR――それは彼の尊敬する大先輩と同じ名前だ。坊主頭や見た目の雰囲気や空手。様々な共通点があるが、まさか名前まで同じだとは思わなかった。

(ハ・デスはこの世には無数の世界があるって言ってたな……)

 無数の世界。あまりにも突拍子もない言葉であまり考えていなかったが、ハ・デスは確かにそう口にしていた。いきなりそんなことを言われても意味不明だったが――一つの可能性が浮かび上がる。

(世の中には並行世界――パラレル・ワールドっていう言葉がある。もしかしてあの空手着の男は、並行世界のMUR先輩なのか……?)

 別人と言うには色々と一致している点が多いし、名前まで同じだ。並行世界なんて今までは信じていなかったが、こんな決闘に巻き込まれた上にここまで特徴が一致している人がいると自然と並行世界の存在を受け入れられてしまう。

「――ッ!あんた、中々強いな!」

 三浦と弦太朗の戦闘は意外にも互角だった。スペック的には仮面ライダーである弦太朗が上のはずだし、戦闘経験だって負けていないはずだ。彼はこれまでゾディアーツと戦い、時には世界の危機に立ち向かったのだから。
 それでも三浦が互角に渡り合えている大きな要因は技術だ。イップ・マンにこそ敗れたが、彼の圧倒的な空手の技術は相手が仮面ライダーであれど通用するレベルに至っている。
 最初は互角に戦いを繰り広げていた弦太朗も三浦の空手を叩き込まれ、徐々に追い詰められていく。――これが親友の朔田流星ならば話は違っただろう。彼もまた武術を極めた者なのだから。しかし多種多様な武器を扱ったり、フォームチェンジするためのスイッチを奪われた今の弦太朗ではこれが限界だ。

(――このままでは仮面ライダーフォーゼが負ける。並行世界のMUR先輩に殺される……!)

 三浦の強さを身をもって思い知ったKMRは如月弦太朗の敗北を予感してしまう。このままでは並行世界の大先輩が人殺しになる――そう考えた時には自然と身体が動いていた。

「よぉ、空手の兄ちゃん。――もう終わりか?」

 満身創痍の身体を引き摺り、立ち上がると三浦に声を掛ける。そのまま気合いだけでフォーゼと三浦の間に割って入ると、三浦に思いっきり正拳突きを放つ。三浦はそれを難なく回避し、KMRへ拳を叩き込むが――動じない。文字通りKMRの身体がビクともしない。
 そしてKMRは拳を構えると――

「聖拳――月ッ!」

 己が拳に全てを載せて――なにもかも、ありったけを詰め込んで。今、自分に出来る最大限を叩き込んだ。


323 : 空・手・炸・裂 ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 23:37:58 lrvQE6UI0
 聖拳・月。尊敬するMUR大先輩から教わった彼らの空手部独自の技だ。ゆえに空手を極めた三浦すらもこれを回避する術はない。全力の一撃を叩き込まれた三浦は大きく吹っ飛び、気を失った。――それを見届けた後、KMRの視界もモヤが掛かったようにボヤけ始める。

「今の一撃、カッコよかったぜ。俺も負けてられねえな!」

 フォーゼの変身を解除した弦太朗がKMRに明るく話し掛ける。KMRの一撃は弦太朗から見ても見事で、カッコいいものだった。だがそれは技の完成度や威力のことじゃない。KMRという男の在り方――倒れても起き上がり、強敵に立ち向かったその精神性こそが何よりもカッコいい。

「俺の名前は如月弦太朗。今日から俺とお前はダチだ!」
「俺はKMR。……弦太朗、さっきあっちの方で襲われてる人がいた。後で俺も追い付くから、先に行ってくれないか?」

 息絶えだえになりながらも、KMRは気丈に振る舞う。今の一撃で大先輩を倒し切れたとは思えない。少し経てばまた起き上がるだろう。だからその前に弦太朗だけでも逃したい。――自分が勇気を振り絞れたのは、果敢に立ち向かうフォーゼを見たというのも理由の一つだから。

「でもお前の身体じゃ……」
「俺のことはいいから、先に行ってくれ……!襲われてた人がもう危ないんだ!!」

 KMRの気迫を肌と心で感じた弦太朗は少しだけ考え――

「わかった。じゃあその前に――友情の証だ!」
「ありがとう、弦太朗」

 弦太朗はこれまで色々な友達としたようにKMRとも友情の証をする。これで二人は友達(ダチ)になった。

「じゃあ俺は先に行ってるから、KMRも後で絶対に来てくれ!」
「当たり前だよなぁ?」

 尊敬する大先輩がよく言っていた台詞を言い、弦太朗を見送る。――これでようやく、全てをやり切った。

「MUR先輩……。俺、やりましたよ――……」

 ――そしてずっと立っていたKMRもまたその場に崩れ落ちる。緊張の糸が緩み、遂に限界を迎えたのだ

『おいKMR!お前――ちょっとカッコよかったゾ』

 ――死ぬ間際に幻視しま先輩は、KMRの健闘を讃えるかのように笑っていた。

【KMR@真夏の夜の淫夢 死亡】

【如月弦太朗@仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:フォーゼドライバー&アストロスイッチ(ロケット、ランチャー、ドリル、レーダー)@仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:KMRやダチと協力してハ・デスを倒す!
1:とりあえずKMRが教えてくれた方向に行って、襲われてる人を助けるぜ!
[備考]
本編終了後から参戦。高校生ではなく教師になっています

【三浦@イップ・マン 序章】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、気絶
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘の中で強くなり、イップ・マンやハ・デスと戦う
1:積極的に決闘をしたいが、負けを認めた相手の命を奪うつもりはない
2:正々堂々と決闘する。銃などの武器は使わない
[備考]
死亡後から参戦


324 : 空・手・炸・裂 ◆QUsdteUiKY :2022/05/27(金) 23:38:17 lrvQE6UI0
投下終了です


325 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/28(土) 08:20:00 0vYglNAU0
以前エトラロワに投下したものを手直しして二本投下します


326 : 妖星はここにいる ◆7PJBZrstcc :2022/05/28(土) 08:20:33 0vYglNAU0
「ふん、醜いな」

 デュエル会場にて、一人の男が不愉快そうに顔を歪めている。
 彼の名はユダ。南斗六聖拳の一人、妖星の宿星を持つ拳士である。
 彼はこの殺し合いが酷く不満だった。

 ユダは自らの美しさと知略に絶対の自信を持つ男である。
 そんな彼からすれば、突如始まったデュエルという名の殺し合いも、理解不能の技術力を持ちながら、それをこんな風に無駄遣いする主催者にも不満しか抱けない。
 故に、彼は主催者が持つ技術を奪い取り我が物とすることにした。
 同じ物を持つなら、より有益に使える存在が持つべきだ。
 彼は自分なら使いこなせると、信じて疑わなかった。

 だがしかし、ユダはこの殺し合いの中で一つだけ気に入るものがある。
 それは彼の目線の先にあるもの。

「ふむ、悪くない」

 それは、なんてことのない川である
 だがここが殺し合いの会場でなければ思わず安らいでしまいそうな程、穏やかなものだった。
 この光景は、ユダの審美眼にもかなうものだった。

 そう、ユダは会場自体を気に入ったのだ。
 なにせ、彼の元居た世界は核戦争で荒廃し、大地の大半が荒野となった世界。
 水も自然も僅かしかなく、特に水は、そこに湧き出る場所があるというだけで奪い取りに来る悪党がいるほどだ。
 そんな世界の住人からすれば、ここは天国と言っても過言ではない。
 ただし――

「それはこいつらがいなければの話だがな」

 そう言いながらユダは足元にあるものを踏みつける。
 それは、無謀にも彼に襲い掛かろうとしたゴブリンの死体だった。
 数は十体ほど。ゴブリンの群れはユダ一人に返り討ちにあったのだ。

 ユダからすれば大したことない雑魚でも、何の力もない参加者ならば数匹集まれば脅威だろう。
 だからもし、このゴブリンの群れが力の差を理解し、ひれ伏すというのであれば従えて、殺すつもりはなかった。
 しかし現実は力の差など認識せず、無謀にも襲い掛かって来るだけ。
 ならば生きる価値なし。美しいならまだしも、醜いのだから殺すことに躊躇など生まれる筈もなく。
 こうして、ユダの中でNPCは邪魔なだけで無価値な物と断定された。

 そしてユダは、自分がまだ支給品を調べていなかったことに気付く。
 彼は、自身がいつの間にか持たされたデイバッグの中を検めた。

 調べた結果、中身は今の所手元に持つ必要を感じなかったので特に何かを取り出すことなく、ユダは歩き始めた。
 目的は他の、出来れば殺し合いに乗っていない参加者と出会うことである。

 ユダの最終目的は主催者を抹殺し、彼らが持つ技術を自分の物にすることである。
 ただし、その為に殺し合いに乗るかどうかは決めかねていた。
 というより、むしろ今決めない方が賢明と判断していた。

 ユダの最終目的は、結論だけ見れば殺し合いに乗る理由は全くない。
 しかし、そこに至るまでに殺し合いに優勝する方が確実となるなら、乗ることに躊躇もない。
 心情的にどちらでもいいなら、より確実に方法を見極めるのは普通のことだろう。
 だが今は判断材料がない。故に殺し合いに乗るかどうかは保留にしているのだ。

 しかし行動を起こさない道理もない。故にユダは殺し合いに乗らない参加者の集団をつくることにした。
 殺し合いを嫌い主催に抗うなら、ある程度の頭数は必須。
 そして人間が多くいるなら、それは必然集団となる。
 集団となれば、それを纏めるリーダーや、参謀のようなものは必要となる。
 そのリーダーや参謀の位置に、ユダは自分を据えるつもりだった。
 そうなれば従えて主催と戦うことも、邪魔になった時に切り捨てるのも容易だ。
 ユダはどちらに転んでもいいように策を練っているのだ。

 妖星は、またの名を裏切りの星と呼ばれている。
 しかしユダはそれを否定し、美と知略の星と呼んでいる。

 妖星が彼の言う通り、美と知略で主催者を倒すのか。
 その名の通り、主催者に抗う参加者を裏切り全てを手に入れるのか。
 あるいは、何も得られず全てを失い倒れるのか。

 それは、きっとこれからの出会いが決めるのだろう。


【ユダ@北斗の拳】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:決闘の主催者が持っているであろう技術を俺の物にする
1:殺し合いに乗っていない参加者の集団をつくり、自分はそれを操れる立場に置く
2:殺し合いに乗るか反るかは保留。ある程度場を見て決断する
3:この会場は中々俺好みなので、NPCとやらを追い出して俺の物にしたい
[備考]
参戦時期は本編登場直前です。


【ゴブリン突撃部隊@遊戯王OCG】
星4、攻撃力2300を持つゴブリンの部隊。
本ロワでは単純に集団のゴブリンとして扱われる。


327 : 禁じられた聖杯 ◆7PJBZrstcc :2022/05/28(土) 08:21:05 0vYglNAU0
 決闘者(デュエリスト)と呼ばれる者達がいる。
 マジック&ウィザーズ、デュエルモンスターズ。あるいは、遊戯王カードで決闘(デュエル)する者のことだ。
 もっとも、この殺し合いでは意味が変わってくるが。

 本来の決闘者にとって、決闘の目的は様々だ。
 ただの趣味。金銭を得るための手段。栄光への切り札。
 世界の命運を委ねるもの。人と人との絆を紡ぐもの、など。

 そしてこのデュエルの会場にある街のビルの屋上にも一人、決闘者の参加者がいる。
 目元が見えなくなるほど深々と被った赤い帽子に、同じく赤のジャケットが特徴的な男だ。
 彼の名前はコナミ。

 彼にとって決闘とは、全てだ。
 決闘ができるのなら何でもする。
 友と呼んでくれた相手を裏切ろうとも、世界を滅ぼす存在に与しようとも何も感じない。
 それほどまでに、彼にとって決闘は重いのだ。


 だからコナミはここでも変わらない。
 勝者と敗者を分かつ儀式を、無限に繰り返すだけ。


 コナミはデイパックからデュエルディスクとデッキを取り出し、腕に装着する。
 これらは両方とも彼の物ではないので使うことに躊躇いもあるが、自分のデッキが盗られているので仕方ない。
 後で必ず持ち主に返すと心に決め、彼はビルを下るべく階段へ向かう。


 例え何者であろうとも、コナミをデュエルから引き離すことはできない。


【コナミ@遊戯王タッグフォースシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:榊遊矢のデッキ&デュエルディスク@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:決闘(デュエル)
1:決闘者を探す
2:もし参加者に榊遊矢がいたら、デッキとデュエルディスクを返す
[備考]
詳しい出展、参戦時期は当選したら次の書き手氏にお任せします。


【榊遊矢のデッキとデュエルディスク@遊戯王ARC-V】
コナミに支給。
デッキは主にEMのカードを採用しているエンタメデッキ。切り札はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。

デュエルデスクは質量を持った立体映像、リアルソリットビジョンシステムを利用したもの。
これによりモンスターを具現化させ、実体のあるものとして扱える。リアルファイトも可能。
また通話やネットツール、リアルソリットビジョンの部分を武器としても使用可能。ただし前二つは制限されている可能性もある。
上記のデッキと合わせて1つの支給品として扱われる。


328 : ◆7PJBZrstcc :2022/05/28(土) 08:21:30 0vYglNAU0
投下終了です


329 : ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:36:58 Nq1WBjJs0
投下します


330 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:37:46 Nq1WBjJs0
「デブ」

「五月です」

「デブ」

「アーニャちゃん!?」

「デブ」

中野五月は殺し合いに放り込まれた恐怖の挙句、支給された食料品を食い尽くしていた。
それをアーニャ・フォージャーと名乗る幼女に発見されデブと命名された。

「……分かりました。で、デブで……構いません。
 それで、その……ご家族を探してるんですね?」

「ちち、はは、ふたりともすっごくつよい。はははデブとしゃべりかたにてる」

「それは心強いですね。……分かりました、居ないに越した事はありませんが、一緒に探しましょう」

「デブ、さびしい?」

「い、いえ……? 私はあなたよりお姉さんですから、大丈夫ですよ」

長い髪に大きく膨らんだ胸と贅肉、それを物ともしない凛とした顔つきは年齢より大人びていた。
しかし、アーニャにはそれが虚勢であることは明らかだった。
被検体007、超能力を持つかつてのアーニャの呼び名だ。
その能力は心を読む力、コントロールこそ出来ないが、仮にそれが凄腕のスパイや殺し屋であろうと、その心理を表に引き摺りだしてしまう。

(こんな娘に心配されるなんて、しっかりしなくては……! 上杉君や、五つ子(みんな)も居るのなら、探さなくてはいけませんし)

食事こそするが、五月の中は極限状態に陥っていた。
殺し合いもそうだが学園祭でふざけた父を名乗る禿に絡まれ、教師は向いてないだの貶され、更には後押しするような自身の低成績、すでに時期は三年の秋、猶予は残っておらず進路も定まっていない。
こんな殺し合い、倫理的に時期的にもやっている場合ではない。

「とにかくアーニャちゃん、支給された物を見せていただけますか? 武器があるかも、いざという時は私が戦います!!」
「うい……」

「おっと、お前ら二人とも動くんじゃねえぞ?」

ウェスタン風の体躯のいい男だった。
髪を後ろに縛り、ショットガンを構えるさまは西洋のガンマン、カウボーイのようでもある。
だが、その銃口の先は五月とアーニャへと向けられていた。

「てめえら二人の支給品をさっさと渡しな」

「デブ、あいつ、ぼうかん!」

「こ、殺し合いにあなたは……」

「良いからさっさとしろ!」

「ひっ」

五月は毅然とした態度で対応しようとするも、男に一括され一瞬で委縮する。
駄目だ。やはり、怖すぎる。彼女が普段から関わっている風太郎のようなモヤシや、法を守り平穏な日常を送る同級生達とは訳が違う。
明らかに堅気ではない威圧感、慣れた態度で飛び出す、鼓膜を打ち抜くかのような怒声。恐怖のあまり、五月は足を震わせた。


331 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:38:10 Nq1WBjJs0

「に、逃げて……アーニャちゃん、私が何とか」
「デブ……?」

それでも、恐怖に苛まれながら五月はアーニャを庇うように腕を広げて男の前へと立ちふさがった。

「女を殺すのは後味悪いが、まあいい。どうせ全員殺さなきゃならねえんだしな」
「くっ……」

「おい、オッサン。そこまでにしとけよ」

男が銃の引き金に力を入れたその瞬間、若い男の声が響き渡る。
五月が視線を向けた先に居たのは、恐らくは殆ど彼女と歳の変わらない少年だった。
赤いジャケットを羽織り、黒のヒートテックを着た青年は笑みを浮かべ、男に対し挑発的ともいえる態度を取る。

「見たところ、アンタの腕のそれデュエルディスクみたいだな。なら、決着は決闘(こいつ)で着けないか?」

少年が掲げた左腕には、奇妙な機械チックな円盤が装着されている。男の方もデザインがまるでリボルバーの銃のような造形をしているが、同じものが着けられていた。

「小僧、俺とデュエルだと……?」
「ふっ、アンタが勝てば支給品でも何でもくれてやるさ。俺が勝てば優勝狙いは諦めて貰うぜ」
「面白い。俺にデュエルを挑んだこと、後悔させてやる」
「へっ、そうこなくっちゃな」

刹那、二人の腕に取り付けられた機械が展開し両者とも胸の前へと構える。
息も付かせぬ間に数十枚のカードが収まったスロットからトップの5枚を引き抜く。

「速い!?」
「先行は俺だ!」

僅かな差で、男がカードを引き抜くのが速かった。

「てめえ、名前は?」
「十代、遊城十代だ」
「……ロットンだ」
「へえ、ガンマンっぽく名乗り返してくれるんだな?」
「抜かせ、行くぞ」



「「決闘(デュエル)!!!」」


「……なぜ、カードゲームを?」


五月の疑問を他所に、二人のデュエルの幕が切って下ろされた。


332 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:38:34 Nq1WBjJs0



「俺のターン、ドロー!!」


【ロットンLP:4000 手札:6 墓地:0】
『フィールド:0』

『十代 LP:4000 手札:5 墓地:0』
【フィールド:0】


「カードを五枚セット! そしてガトリング・オーガ(アニオリ)を召喚!!」

『ロットンLP:4000 手札:0 墓地:0』
【モンスター:ガトリング・オーガ攻撃力800】 
【魔法・罠:セット5枚】

「リバースカードを先にセットした?」

デュエルに於いて、本来カードを伏せるという行為は自身の行動が制限される相手ターンに対し、守りを固めるという意味合いがある。
故にそのターンプレイヤーが取りたい行動を全て取った上で、対戦相手の動向を伺いながら、先の展開を予想しカードを伏せるものだ。
しかし、ロットンはそのセオリーを破った。素人のように見えるプレイングだが、十代の目にはそうは写らない。

「ガトリング・オーガーの効果を発動!! 俺のフィールドにセットされた魔法、罠カードを墓地に送り、一枚に付き800ポイントのダメージを与える!」

「何!?」

「クク、弾丸は装填された。場にカードがないお前には何も出来まい!」

ロットンの冷酷な笑みと共に、ガトリングに弾丸が装填される。無慈悲に響く装填音が処刑宣告のように轟く。
十代のライフポイントは4000、そしてロットンの伏せカードは5枚、1枚につき800のダメージ。

「ファイヤー!」

つまり800×5=4000ダメージが待ち受けている。これこそが世にも珍しい先行1ターンキル。

「うわあああああああああ!!!!」

無数の弾丸が十代へと降りいだ。
執拗なくらいまでに銃声を響かせながら、砂埃を巻き上げ濁った煙幕が十代を包み込む。

「ふははははは!!! 粗挽き肉団子の完成だァ!!!」

「こ、この人……ここまでキレてるなんて……」

そのあまりにも残酷無比な光景に五月は唖然とした。勇敢にも、自分たちを助けてくれた少年は弾丸の嵐に巻き込まれ、一ミリも人の形を残さず消え去ってしまった。
酷い、酷すぎる。なのに何も出来ない自分の無力さに怒りすら覚える。けれども、それだけだ。結局何も出来ない。


333 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:39:08 Nq1WBjJs0

「……何?」
「デブ、あれ」
「え……?」

だが、砂煙の中から人影のシルエットが浮かび上がる。

「何故だ……何故……ガトリング・オーガの全弾を浴びながら何故生きている!?」

「ふう……危なかったぜ……」

『十代 LP:4000 手札:4 墓地:1』
【フィールド:0】

「どういうことだ。……何が起こった?」

「俺は手札からモンスター効果を発動していたのさ。
 ディメンション・アトラクター、こいつは自分の墓地にカードが存在しない場合、手札から墓地に送り発動できる。
 そのターン、墓地に送られるカードは除外される」

「手札誘発か、ガトリング・オーガは、セットされた魔法罠カードを墓地へ送らなければ、効果を発動できない……。
 チィ……俺はターンエンド」

『ロットンLP:4000 手札:0 墓地:0』
【モンスター:ガトリング・オーガ攻撃力800】 
【魔法・罠:セット5枚】

「俺のターン、ドロー!」

『十代 LP:4000 手札:5 墓地:1』
【フィールド:0】

「手札から、ハーピィの羽根箒を発動! お前の場のセットカードを全て破壊する!」

「甘いな! その発動に対し強欲な瓶をチェーン2で発動! チェーン3八汰烏の骸を発動し、チェーン4で積つみ上あげる幸福、チェーン5連鎖爆撃を発動!!
 行くぜ、まずは連鎖爆撃からだ! こいつはチェーン2以降に発動でき、それまでに挟まれたチェーンの数×400のダメージだ!!」

「連鎖爆撃発動にまで挟んだチェーンの数は4枚……」

「そう、つまり1600ダメージだ!」

「ぐっ!」

十代 LP:4000→2400

「まだだ。積み上げる幸福はチェーン4以降で発動し、俺はカードを2枚ドロー、八咫烏の骸と強欲な瓶の効果でそれぞれカードを1枚ずつドローする」

ロットン 手札:0→4

「そして、あとはハーピィの羽根箒の発動ってわけだ」


『ロットン フィールド』
【モンスター:ガトリング・オーガ攻800】
【魔法・罠:セットカード:5→0】

「ガトリング・オーガの弾丸を消そうって魂胆だろうが、あいにくたらふく補充させて貰ったぜ。
 次のターンが、お前のバッドエンドだ」

(奴の言う通り、これであいつは手札が4枚、俺のライフは2400まで減らされた。
 このターン、場のガトリング・オーガを破壊しても、ロットンの手札の3枚以上が魔法か罠で、2体目のガトリング・オーガを引かれれば俺に勝ち目はない……)

ロットンという男、デュエリストとしてのタクティクスは非常に高水準にある。
先行を取る技量もさることながら、初手でガトリング・オーガとその弾丸を全弾揃えるドロー力、それが裂けられれば第二波を繰り出すデッキ構築。
間違いなく、十代の戦ってきた中でも上位に位置する強敵だ。


334 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:39:45 Nq1WBjJs0

「手札からテイク・オーバー5(アニオリ)を発動、デッキの上から5枚を墓地に送る」


『墓地に送られたカード』
【N・エア・ハミングバード、N・フレア・スカラベ、N・アクア・ドルフィン、N・グラン・モール、E・HERO ネオス】


「更にコクーン・パーティ発動! 墓地のN(ネオスペーシアン )一体につき、C(コクーン)モンスターをデッキから特殊召喚する。
 C・ラーバ、C・モーグ、C・ドルフィーナ、C・チッキーを特殊召喚。
 永続魔法、コクーン・リボーン発動! Cモンスターを生贄に捧げ、そのカードに記されているNと名のついたモンスター1体を墓地から特殊召喚できる」

「なに!?」

「Cモンスター4体を生贄に、N・フレア・スカラベ、N・グラン・モール、N・アクア・ドルフィン、N・エア・ハミングバード、特殊召喚!」

「いるか!? いるか、むきむき、かっこいい!」
「やあ、お嬢さん。私はドルフィーナ星人」
「うちゅうじん? わくわくっ」

アクア・ドルフィンを指さしながらアーニャは舞い上がった。

「スペーシア・ギフト発動、自分フィールド上に表側表示で存在するNと名のついたモンスター1種類につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
 俺の場には4種類のNがいる。よって4枚ドロー」

『十代 手札:2→6』

「……よし、エア・ハミングバードの効果発動! 相手の手札の枚数分、500ポイント俺のライフを回復する。ハニー・サック!!」

「俺の手札は4枚、2000回復だと……!?」


『十代:LP2400→4400』


「……手札から融合を発動! 手札のフェザーマン、バーストレディを墓地に送り、融合召喚!!
 現れろ! E・HERO フレイム・ウィングマン!!」


『十代 フィールド』
【モンスター:フレイム・ウィングマン 攻2100、フレア・スカラベ 攻400、グラン・モール攻 900、アクア・ドルフィン攻600、エア・ハミングバード攻800】
【魔法・罠:コクーン・リボーン(永続魔法)】


「アクア・ドルフィンの効果発動、1ターンに1度、手札を1枚捨てて相手の手札を確認し、その中からモンスター1体を選ぶ。
 選んだモンスターの攻撃力以上の攻撃力を持つモンスターが自分フィールドに存在する場合、選んだモンスターを破壊し、相手に500ダメージを与える。
 存在しない場合、自分は500ダメージを受ける。
 エコー・ロケーション!!」

「いるか! いるか!」
「クケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ……!!」
「わあ……ちょうおんぱこうせん!」

『ロットンの手札』
【ガトリング・オーガ、埋葬呪文の宝札、仕込みマシンガン、埋葬されし生け贄】


「当然、破壊するのはガトリング・オーガ! パルス・バースト! そして500ポイントのダメージだ!」

『ロットン LP:4000→3500』


335 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:40:26 Nq1WBjJs0

「バトル! フレイム・ウィングマンでガトリング・オーガへ攻撃! フレイム・シュート!!」
「ぬぅっ」

【フレイム・ウィングマン攻2100 VS ガトリング・オーガ攻800】

フレイム・ウィングマンの炎に飲み込まれ、ガトリング・オーガは砕け散る。

『ロットンLP3500→2200』

「更に、フレイム・ウィングマンの効果発動! 戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

『ロットンLP:2200→1400』

「まだだ! N達でロットンにダイレクトアタック!」
「えーと……ルールがよく分かりませんが、あのヘンテコな動物達の攻撃力を全部合わせれば、あの遊城って人の勝ちです!」

取り合えず、お互いのライフポイントを0にするのが目的なのは五月から見ても分かった。
この攻撃さえ通れば、十代の勝利になるであろうことも。

「通さん、墓地より罠カード発動! 光の護封霊剣!
 相手ターンに墓地のこのカードを除外することで、このターン相手モンスターは直接攻撃できない!」

「やるな! やっぱ、そう簡単には倒させてくれないよな?
 カードを一枚セットし、俺はこれでターンエンドだ」



『ロットンLP:1900 手札:4 墓地:6 除外:1』
【フィールド:モンスター:0』 
【魔法・罠:0】


『十代 LP:4400 手札:1 墓地:14』
【モンスター:フレイム・ウィングマン 攻2100、フレア・スカラベ 攻400、グラン・モール攻 900、アクア・ドルフィン攻600、エア・ハミングバード攻800】
【魔法・罠:コクーン・リボーン(永続魔法)、セットカード1枚】


336 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:41:38 Nq1WBjJs0


「俺のターン、ドロー!」


爆発的な大量ドローと展開により一気に盤面を整え、更にはガトリング・オーガーを警戒し、ライフの回復と先手を打つように手札にある二体目のガトリング・オーガまで除去するプレイング。
忌々しいが、かつてロットンがデュエルを繰り広げた不動遊星と鬼柳京介に匹敵しうるデュエリストであることは認めざるを得ない。

「遊城十代、聞いたこともないが……確かに腕はいい。だが、あいにくと用意した銃は一つだけじゃねえ。
 埋葬呪文の宝札(アニオリ)を発動、自分の墓地に存在する魔法カード3枚をゲームから除外して、自分のデッキからカードを2枚ドローする」

『ロットン:手札3→5』

「埋葬されし生け贄を発動、このターン、自分がモンスター2体のリリースを必要とするアドバンス召喚をする場合に1度だけ、
 モンスター2体をリリースせずに自分・相手の墓地からモンスターを1体ずつ除外してアドバンス召喚できる。
 この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できない」

「リリース? 生贄召喚のことか?」

「俺は俺の墓地のガトリング・オーガ、そしててめえの墓地のE・HERO ネオスを除外する」

「ネオスを!?」

「気付かねえとでも思ったか? その場の雑魚モンスター共のNというカテゴリーとネオスという名前、無関係とは到底思えん。
 墓地肥やしも、蘇生召喚か恐らくは墓地から融合素材を参照するカードがあるに違いねえ。そいつさえ除外しておけば、お前の動きは疎外できるってわけだ」

「……」

「ロングバレル・オーガ(アニオリ)を召喚!」

【ロングバレル・オーガ攻:1500】

「ロングバレル・オーガの効果発動、相手フィールドに表側表示で存在する、もっとも攻撃力の高いモンスターを対象として発動できる。
 対象のモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手プレイヤーに与える。消えろ、フレイム・ウィングマン!!」

「フレイム・ウィングマン!?」

「更にその攻撃力の半分のダメージを相手プレイヤーに与える」

「ぐわああああああああ!!」

『十代 LP:4400→3350』

「ロングバレル・オーガの弾丸は二つある……今度はそこのモグラだ!!」
「モグううううううううううう!!!」

『十代 LP:3350→2900』

断末魔を上げ、ロングバレル・オーガの弾丸にスナイプされたグラン・モールは消し飛んだ。

「バトルだ! ロング・バレルオーガでエア・ハミングバードを攻撃」

【ロング・バレルオーガ攻1500 VS エア・ハミングバード攻800】

『十代 LP:2900→2200』

「カードを3枚セットしターンエンド」


『ロットンLP:1900 手札:0 墓地:2 除外:5』
【フィールド:モンスター:ロングバレル・オーガ攻:1500』 
【魔法・罠:セットカード:3枚】


『十代 LP:2200 手札:1 墓地:16』
【モンスター:フレア・スカラベ 攻1700、アクア・ドルフィン攻600】
【魔法・罠:コクーン・リボーン(永続魔法)、セットカード1枚】


337 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:42:25 Nq1WBjJs0



「俺のターン、ドロー! 
 このターンのスタンバイフェイズ、墓地のテイク・オーバー5の効果発動、このカードと同名のカードをデッキ・手札・墓地から選択しゲームから除外する事でデッキからカードを1枚ドローできる。
 墓地のテイク・オーバー5を除外し1ドロー」

『十代 手札:1→3』

「おっと、この瞬間罠カードを発動させる。仕込みマシンガン、相手の手札・フィールドのカードの数×200ダメージを相手に与える。
 手札3枚と場のモンスターとセットカード3枚、1200ダメージを食らいな」
「ぐっ……」

『十代 LP:2200→1000』

「ククク、聞こえてくるぜェ。てめえの弱まっていく心臓の鼓動がな……」

「弱まる? 冗談じゃないって、今俺はこんなにもワクワクしてるんだぜ?
 むしろ、胸が高鳴ってしょうがねえよ!」

「あァ?」

「アンタ、すっげえ強えよ! 気を抜いてたら一瞬で負けちまう。次にどんな方法でライフを削ってくるのか、どうやって防いだら良いか、そう考えるだけで滅茶苦茶ワクワクする」

「ワクワクだぁ? ……頭おかしいのか?」

「んーそうかなあ? アンタだって、デュエル好きだろ?
 じゃなかったら、そんな面白いデッキ組めないって」

「なに?」

「なあ? もっとデュエルを楽しもうぜ。せっかく、そんな凄いデッキ組んできたんだからさ? 
 アンタはちゃんと欲しい場面で、ガトリング・オーガーを引き当ててる。それって、デッキがアンタに応えてくれてるって事だろ?
 デッキに愛がないと、カード達は答えやしない。勿体ねえよ、折角デッキと通じ合えてるのに」

ロットンは呆気にとられていた。
確かに、デュエルの修行に出て腕を上げる日々を過ごしていたことはあった。デュエルに対し、それなりに真摯ではあっただろう。
だがそれはクラッシュタウンに於ける、全ての決定をデュエルの勝敗に委ねるという唯一の掟を利用する為のもの。
いわば、デュエルとは道具でしかない。それ以上でも、それ以下でもない。

「はやく! はやく! はやく、もっとひーろーみたい!」

急かすように声を張り上げるアーニャを見て、十代は笑みを浮かべた。
 
「ほらな? デュエルってのは、楽しいもんなんだよ」
「下らねえ、デュエルごっこなんてさっさと卒業しな小僧」
「そればっかは、難しいな。
 行くぜ、俺は手札からN・ブラック・パンサーを召喚!」

【N・ブラック・パンサー 攻1000】

「ブラック・パンサーの効果発動、相手の表側表示モンスター一体を選択し、エンドフェイズまでそのモンスター名と効果を得る!
 ロングバレル・オーガを選択、名前と効果を得る。そして効果発動、ロングバレル・オーガを破壊し、その半分のダメージを与える」

「チッ」

『ロットンLP:1900→1150』

「バトル、フレア・スカラベでダイレクトアタック、フレア・スカラベは相手の魔法、罠カード一枚につき400ポイントアップする!」

【フレア・スカラベ 攻400→1200】


338 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:43:24 Nq1WBjJs0

「させるものかよ、リバースカードオープン! バックアタック・アンブッシュ(アニオリ)
 バトルを終了させ、お前の場のモンスターの数だけアンブッシュ・トークン(戦士族・地・星1・攻/守100)を特殊召喚する!
 更に、アンブッシュ・トークン1体が特殊召喚に成功した時、リリースし発動、相手ライフに500ポイントのダメージを与える。
 お前の場には3体のモンスター、よって3体のアンブッシュ・トークンが特殊召喚され、その内2体をリリースし1000ポイントダメージのジャストキルよ!」

「手札から速攻魔法発動、非常食! 自分フィールドの魔法、罠カードを任意の数墓地へ送りその数×1000ポイントライフを回復する。
 場のコクーン・リボーンを破壊し、1000ポイントライフを回復!」

『十代 LP:1000→2000』

『十代 LP:2000→1000』

「ええい、しぶといやつめ……!」
「早々簡単にやられてたまるかって、俺は一枚カードを伏せてターンエンド」



『ロットンLP:1150 手札:0 墓地:4 除外:5』
【フィールド:モンスター:アンブッシュ・トークン守:100』 
【魔法・罠:セットカード1枚】


『十代 LP:1000 手札:0 墓地:18 除外:1』
【モンスター:フレア・スカラベ 攻1200、アクア・ドルフィン攻600、N・ブラック・パンサー 攻1000】
【魔法・罠:セットカード2枚】



(奴のライフは残り1000、仮に3枚目のガトリング・オーガを引けても残り200、弾丸が足りない。
 場に居るカードは雑魚ばかりだが、奴の本領は低級モンスターを束ねた融合召喚。墓地も参照できる可能性も考えれば、1枚のカードで一気に盤面を返すことも考えられる。
 エースであろうネオスを除外したが……あのガキのドローは侮れん。
 このターン、これで奴を仕留めきれなければ俺が圧倒的に不利……いっそ、全部吹き飛ばしちまうか)

何も切り札はカードだけじゃない。やろうと思えば、一気にデュエルごと吹き飛ばすことが出来る。
ダイナマイトをロットンは握っているのだから。

(ふん、デュエル小僧、永遠にあの世でカード遊びでもやってな)

『勿体ねえよ、折角デッキと通じ合えてるのに』

(……いや)

懐に仕舞ったダイナマイトに手を伸ばそうとして、デッキトップに触れていた。
ここで無理に武器を消費するよりも、デュエルで勝った方が得が多い。ただ、そう思っただけだ。


339 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:44:27 Nq1WBjJs0

「ばくだん!? デブ! ぼうかん、だいなまいともってる!!」

「なんですって、ダイナマイト!?」

「なんだ、あのガキ……心が読めるのか? ふんその通りよ」

(はっ、ぼうかんにアーニャ、エスパーってばれた!?)

「おのれら全員生かしては帰さん」

カードに触れていた筈の手はダイナマイトを握っていた。
導火線には火が付けられ、起爆まで既に秒読みだ。

「ロットン、デュエリストだろ!? こんな決着の付け方でいいのかよ!」
「卑劣な! 貴方、それでもデュエリストなのですか!?」
(デブ、いみわからないのに、ことばつかってる。だから、せいせきわるい)

「……リアリストさ」

「クソッ、やめろ。ロットン!!」


十代の叫びと共にロットンの手からダイナマイトが放り出される。その刹那、閃光が弾け世界から音が消えた。

「きゃあああああああ!!」
「びゃあああああああああああああ!!!」
「うわあああああああああああああああああ!!!」

五月、アーニャ、十代が爆発に巻き込まれ悲鳴とと共に吹き飛んでいく。


「ぐうおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!??」


ロットンも吹き飛ぶ。


デュエルは中断され、その場に居た者たち全員が消え去った。


340 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:45:10 Nq1WBjJs0


「……はぁはぁ。
 あの小僧共、爆発に巻き込まれたのなら生きてなさそうだが……」


数キロ離れた場所で、ロットンは肩で息をしながら呟く。
だが、不動遊星と鬼柳京介はそこから谷底に落ちても生還を果たした。
生きていると考えた方が良いだろう。

「まあ、構わんさ。なら奴らの悪評を広めてやる。
 遊城十代、それに心を読んでくるガキ……ククク、お前らに俺は嵌められたとな」

筋書きはこうだ。
正々堂々デュエルをしていたが、十代がダイナマイトを使い爆破させたと。
そしてアーニャがロットンの心を読み、イカサマしてきた。
これで参加者間の不和を生み、殺し合いを促進させ潰し合わせる。

「とはいえ、少し休息が必要か」

近くの岩に腰掛け、ロットンは大きく息を吐いた。
その時、デッキからガトリング・オーガのカードが一枚滑り落ちた。

「……くだらねえ」


【ロットン@遊戯王5D's】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:ロットンのデッキ&デュエルディスク@遊戯王5D's、ダイナマイト×2@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:十代とアーニャの悪評を流す。
2:少し休息を取る
[備考]
※クラッシュタウン編終了後からの参戦です。


341 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:45:56 Nq1WBjJs0


「全員無事か?」
「え、ええ……なんとか」
「……う、うい」

爆破に巻き込まれた後、落下前に十代が実体化させたネオスでキャッチさせることで、全員大した外傷もなく生還することが出来た。

「……デブのおなか、まくらみたい。ねごこちいい」
「あ、アーニャちゃん……」

疲れたのかウトウトしてるアーニャを介抱しながら、五月は先行きの暗さに気が重くなる。
初っ端からあんな訳の分からない男に襲われたのだ。この十代という少年が現れなければ、どうなっていたか考えたくもない。
もしも、他の姉妹達や上杉風太郎がこんな場所に呼ばれていたら……。

「もし、遊星か三沢がいれば首輪を外せるかもしれないけど……」
「み……なんですか?」
「だから、三沢だって」

十代は首輪を外す当てがあるらしいと言ってくれたので、それは少しだけ進展ではあるが、その人物も居るかどうかも分からない。
当人の事を思えば居ない方がいいのだろうが。

「俺は取り合えず、遊戯さんを探しに行くけどどうする?」

「私達も同行しても良いのでしょうか?」

「どうもこの殺し合い、俺一人じゃ止められそうにないしな。
 そこのアーニャって娘の、ちちとははって人も只者じゃなさそうだし、見付けられたら力になってくれるかもしれない。
 お前の友達と家族も一緒に探そうぜ?」

「ゆうぎって、あのひとで?」

「ああ、遊戯さんが居れば百人力だぜ」

「しゃべるひとで、わくわくっ」

「遊星はカニみたいな頭してるぜ? しかもバイク乗っててさ」

「しゃべるかに!? ばいく!?」
 
十代に懐くアーニャを見ながら、五月は自分の将来に後ろめたさを感じる。
彼は殺し合いという極限下でも子供を明るくさせているのに、自分は何も力になれなかった。
こんな自分が本当に教師なんかに、やはり実の父親に言っていたように向いていないのだろうか。

(……お母さん、私は)


342 : 1ターンキルのガンマン ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:46:15 Nq1WBjJs0


【中野五月@五等分の花嫁】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出したい
1:五つ子達と上杉君、アーニャちゃんと遊城の知り合いを探す。
2:私は教師には向いてないのでしょうか……
[備考]
※無堂と接触して以降の参戦です。

【アーニャ・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ころしあいしない。
1:ちちとははをさがす。でぶのしりあいと、しゃべるひとで(遊戯)たちもさがす。
2:こころよみづらい。
[備考]
※ヨルさんがははになって以降からの参戦です。
※超能力の制限で、心が読みづらくなっています。

【遊城十代@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:十代のデッキ&デュエルディスク@遊戯王デュエルモンスターズGX、ディメンション・アトラクター@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:三沢、遊星、遊戯さん、五月とアーニャの知り合いを探す。
2:ロットンを警戒する。
[備考]
※超融合!時空を越えた絆、終了後からの参戦です。


『支給品紹介』
【ディメンション・アトラクター@遊戯王OCG】
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻1200/守2200
(1):自分の墓地にカードが存在しない場合、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
次のターンの終了時まで、墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される。
この効果は相手ターンでも発動できる。


【ダイナマイト@遊戯王5D's】
あんまり殺傷力がない。


343 : ◆wJPkWOa93Q :2022/05/28(土) 18:47:12 Nq1WBjJs0
投下終了します


344 : ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:40:39 GfKngVEA0
投下します。


345 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:43:40 GfKngVEA0
「は……?」

口から漏れた声は、自分でも驚く程に間の抜けたものだった。
砂浜に一人立ち尽くす男、猿渡一海の頭にはほんの数分前の光景が幾度もリピートされる。
サングラスの怪しい男に突っかかった少年の首が吹き飛び、スマッシュとは違う化け物が現れ偉そうな事を言って来た。
連中は決闘(デュエル)と言う言葉を使っていたが、早い話が殺し合いだろう。
磯野とか言う男が高らかに開始宣言をし、何の前触れもなくここにいる。

「まさかここがあの世だってのか?」

軽く頬をつねって見ると普通に痛い。
手に伝わる感触は、夜風で少々冷えているが紛れも無く生きた人間の肌。
つまり悪い夢を見ているのでも無ければ、死者としてあの世に居るのでもない。
正真正銘、一海は生きた人間としてデュエルに参加させられている。
俄かには信じられない事である。

「本当に生き返ったってのかよ…」

自分が五体満足でいる現実へ大いに困惑を含んだ呟き。
思い起こされるのはデュエルを強要される前、パンドラタワーでの戦い。
エボルトによる地球滅亡を阻止する為に、戦兎らと共に奴の待つ塔へ乗り込んだ。
ガーディアンを蹴散らし進んだ先で待っていたのは、死んだはずの北都三羽烏。
愛すべき弟分達が敵として立ちはだかったのだ。

尤も本物では無くエボルトが自身の遺伝子で作った擬態。
だが偽物と分かっていても手が出せず、一方的に追い詰められた。
一海は己の不甲斐なさと彼らを護れなかった事を受け入れ、消滅覚悟で最後の手段に出てしまう。
それにより偽物達は倒せたが一海の肉体も限界を迎え、推しのアイドルに看取られながらこの世を去った。

「…………気に入らねぇ」

改めて自分の現状を確認すると、困惑は徐々に怒りへと変わっていく。
別に人が死ぬのを見るのが始めてな訳ではない。
元いた日本で自分達がやっていたのは戦争だし、完全に割り切れてはいなかったが死者が出るのは避けられないと理解していた。
しかしハ・デスや磯野が行ったのは戦争などでは無い。


346 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:44:46 GfKngVEA0
理不尽へ真っ当な怒りをぶつけた少年を、見せしめのように殺した。
首輪を填め、殺し合わせるのをゲームと言い放った。
ハ・デスはエボルトと同じ、人間を玩具としか見ていないふざけた野郎だ。

「ったく、推しに看取られるなんて俺にゃ勿体ねぇ最期だったってのによ」

仕方なしといった言葉とは裏腹に、一海の目には決意が宿る。
決闘がお望みと言うのなら、存分に戦ってやろうではないか。
但しその相手はハ・デス、そして奴に付き従う磯野のよな連中。
本当にゲーム感覚で開催したのか他に目的があるのか知らないが、連中を叩き潰すのは決定事項。
それが自分が生き返った意味、仮面ライダーとしてここにいる理由なのだから。

と、決意を新たにした所でデイパックの中身を確認する。
予想通りと言うべきか、仮面ライダーへの変身に必要な装備一式は入っていた。
その他にも、一海を驚愕させるアイテムが一つ。

「こ、こつは……!?」

恐らく全参加者の中でソレに価値を見出すのは一海ただ一人だろう。
成人女性程の大きさの枕。所謂抱き枕。
プリントされたポーズを取った少女が誰なのかを一海は良く知っている。
否、彼女を忘れるなど一海自身が許さない。

「み、み、み、みーたんだぁ〜〜〜〜〜!!!!!!」」

ネットアイドルみーたん。本名石動美空の抱き枕。
何の因果かみーたんの大ファンである一海に支給されていた。
これを見ているだけで、脳内にはみーたんが「カズミン頑張って(はぁと)」と応援してくれるようだ。
推しからの熱い声援(幻聴)に一海のボルテージは最高潮に達する。

「グズグズしてられねぇ!みーたんが応援してれたなら、今すぐに――っ!?」

行動を阻むようなプレッシャーが、前触れなく襲い掛かった。

全身を強張らせる一海の前に、ソイツはいた。


347 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:45:53 GfKngVEA0
真紅の騎士、とでも言うべき姿。
全身を紅い装甲で覆い隠し、右手に持つ大剣が月の光に反射して輝いている。
否、よくよく目を凝らして見て見ると装甲だと思っていたのは肉体。
両肩と腕から突起物を生やした、赤い外骨格だ。
頭部には鶏冠にも見える黒い角らしきモノ、加えて黄色く光る眼。
人間ではない、決闘者が見たら悪魔族モンスターか何かだと言いそうな外見をしていた。

怪物の名はデェムシュ。
ヘルヘイムの侵略を生き延び、生態系の頂点に君臨するオーバーロードの一体である。

「ふン、早速猿が湧いテ出て来タカ。」

嘲りと嫌悪を隠そうともしない言葉。
相手の見た目と威圧感に固まっていた一海も、喧嘩を売られたと理解する。

「早々ニ消えロ。汚らワシい猿なド、視界に入レるダケデも虫唾が走ル!」
「あぁ?いきなり出て来て何様のつもりだテメェ」

相手が怪物だからといって、こうも好き放題言われては黙っていられない。
当然の如く抗議するも向こうは聞く耳持たず。(耳らしき器官は確認できないが)
剣を構え悠々と一海へ近付いて来た。
余裕たっぷりな態度は一海を圧倒的な弱者と見ている証拠。
慌てずとも殺せる虫けら、デェムシュにとって一海はその程度の存在なのだろう。

「へっ、その気だってんなら話は早ぇ」

敵の正体は不明だが、殺そうとしているのは間違いない。
ならば大人しく殺されてなどやるものか。
既に腰にはスクラッシュドライバーが装着済だ。
何十回と行って来た手順故に、すっかり染み付いた動作に移る。
パウチ型のアイテム、スクラッシュゼリーを装填する。


348 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:46:45 GfKngVEA0
『ロボットゼリー!』

「変身!」

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボット・イン・グリス!』

『ブラァッ!!!』

レンチ型レバーを下げるとパウチ内の成分がドライバー抽出、一海の全身をボディスーツが覆う。
巨大なビーカーが出現し、更に一海の頭頂部から火山の噴火のように液体が噴出。
瞬時に固定化し黄金色の装甲へと変化した。

これぞ仮面ライダーグリス。
北都一の暴れん坊、猿渡一海の変身する仮面ライダーである。

「下らン!」

一海の変身を一言で切り捨て、愛剣シュイムを振り被る。
敵は沢芽市のアーマードライダーと同じようなものと判断。
ならば恐れも警戒も一切必要無し。
ヘルヘイムの果実を食べ、更なる力を得た自分の敵ではない。

頭頂部から股まで真っ二つにせんとシュイムが振り下ろされる。
右に上体を軽く捻って回避、同時に拳を突き出す。
デェムシュの胸部を叩く。しかし怯む素振りはゼロ。

「一発だけじゃあ終わらせねぇ!」

スーツ内部の伸縮ゲルパッドが腕力を大幅に引き上げる。
コンクリートだろうと容易く破壊する拳を連続で放つ。
だが効果は無い、デェムシュは鼻で笑う。

「そノ程度で勝っタ気になるトは、所詮ハ猿カ」
「慌てんじゃねぇよ!まだこっからだぜ!」

ドライバーを操作し、専用の武器を左腕に装着する。
可変系武器ツインブレイカー、先端の杭がデェムシュを貫こうと回転数を速めた。

「小賢シいワ!!」

デェムシュの外骨格を破壊する前に、翳した大剣に阻まれる。
両腕で押し出してやれば、後方へとよろけるグリス。
すかさず突き出された切っ先を、ツインブレイカーで弾いた。
シュイムが持ち手の意思とは無関係に、あらぬ方向へと向かう。


349 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:47:51 GfKngVEA0
「貰った!」

再度左腕をデェムシュ目掛けて突き出す。
顔面へ杭が迫る。

それも当たらない。
グリスの攻撃は確かにデェムシュの顔面を捉えた。
なのにまるで霞でも殴りつけたかのように、手応えが全く感じられ無いのだ。
原因は今のデェムシュを見れば一目瞭然。
重厚な外骨格に覆われた肉体が、頭頂部からつま先まで赤い霧のように変化していた。
霧と化したデェムシュは不規則にグリスの周囲を動き回る。
殴ろうにも霧と化した肉体に攻撃は通らない。
反対に霧が接触する度に、グリスは装甲越しに痛みを受け呻く。

「消え失セロ!!」

無様を晒した相手へ急接近し実体か、シュイムを振るう。
両腕を交差させどうにか防御が間に合ったが無意味。
始めの一振りで防御を崩され、、続く二撃目が胸部を走る。

「がっ…!」

これで終わらせてはくれない、すかさず三度目の斬撃が来る。
痛みに気を取られている場合では無い、横っ飛びに回避しどうにか事なきを得た。
この時の判断を一海はすぐに後悔する羽目になる。
グリスに避けられたシュイムの一撃は、直前まで彼が立っていた真後ろへと振り下ろされた。

「っ!!!!!」

グリスと違って自力で動けないソレに、シュイムを回避する術は無い。
至極当然の結果として刃に断たれ、中身を砂浜にぶち撒ける。
目の前の惨状をすぐには受け入れられず、ややあって理解が追い付く。
次の瞬間、戦場に一海の絶叫が木霊した。
叫んだところでどうにもならない、全ては後の祭り。
それでも一海は腹の底から嘆きの声を出さずにはいられない。


350 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:49:01 GfKngVEA0
「みーたああああああああああああああん!!!!!」」
「フン、猿の下ラん玩具カ」

見るも無残な姿となったみーたんの抱き枕。
本当ならば支給品として見つけた際、傷や汚れが付着しないよう丁重にデイパック内に戻す筈だった。
だが直後にデェムシュが現れた為、戦闘態勢への移行を優先し、抱き枕は出しっ放しとなっていたのだ。
その結果がこれ。たかが抱き枕と呆れられるかもしれないが、一海にとっては一大事。
推しのグッズを安全な場所に避難させるのを忘れた挙句に斬られるなど、ドルオタ失格である。

(みーたんが…俺のせいでみーたんのきゃわいいお顔が真っ二つに……)

「猿ニ相応シい末路をくレテやるワ!」

一海が何をそんなに嘆いているかなどデェムシュには関係ない。
滅ぶべき下等な生物を始末する、ただそれだけのこと。
嗜虐心を露わに剣を振い――





「スタープラチナ・ザ・ワールド」





気が付けば、訳も分からぬまま吹き飛ばされていた。

「グオオオオ!?」

悲鳴を上げ、無様に砂浜を転がる自分へ困惑を隠せない。
何が起きた?何故自分がこんな目に遭っている?
現状への疑問は即座に怒りへと変わる。
自分がこのような無様を晒すど許される筈が無い。自分にこのような醜態を晒させた輩は生かしておけない。
真っ赤な顔を憤怒で更に赤く染め上げ、己をコケにした者を探す。

相手は直ぐに見つかった。
トドメを刺してやる筈だった猿、そいつの傍に別の猿が佇んでいた。


351 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:49:54 GfKngVEA0
「やれやれだぜ、間一髪ってとこか」

冷静にそう呟いた少年をグリスは見上げる。
学生服、で良いのだろうか。
今日日これ程に気合の入った改造制服はお目にかかった事が無い。
恰好を笑う気になれないのは、少年の放つ尋常ならざるプレッシャーのせいだろう。
一体どれ程の修羅場を潜れば身に着けられるのか見当もつかない。

呆気に取られていたが、殺気をぶつけるデェムシュの存在で我に返る。
誰だか知らないがこのままではマズい。

「っ、おい!誰だか知らねぇが今は下がってろ!」
「…成程な。あの野郎を殴り飛ばしたのは間違いじゃなかった訳だ」

こちらを危機から遠ざけようとする一海の言葉で確信する。
彼を助けたのは間違いでは無かったと。

警告する一海とは正反対に涼しい顔で、されど視線は鋭くデェムシュを射抜きへ近付いて行く。
ポケットに手を入れたままの、堂々とした態度。
不遜な姿はデェムシュを酷く苛立たせた。

「色々と考えておきてぇ事は山ほどあるが…」

宿敵である吸血鬼を倒し、五十日に及ぶ旅を終えた筈がどうしてこんなものに巻き込まれたのか。
ハ・デスと名乗った化け物は何が目的なのか。
現在対峙している紅い剣士は、ハ・デスとは別の化け物なのか。
気になる事は多々あれど、真っ先にせねばならないのは一つだけ。

このふざけたデュエルに賛同した輩を徹底的にブチのめす。

「目障りナ猿ガぁッ!!」
「行くぜオイ!!」

オーバーロード、デェムシュ。
スタンド使い、空条承太郎。
互いの視線と敵意が交差し、真っ向から激突した。


352 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:50:47 GfKngVEA0
「オラァッ!」

先手を打ったのは承太郎、その傍らに立つ拳闘士。
スタープラチナの拳がデェムシュの肉体を強打する。
破壊力、スピード共に他の追随を許さない、近接戦では無類の強さを誇るスタンド。
数多のスタンド使いを再起不能に追い込んだ一撃。
人間ならば骨を煎餅でも割るように砕かれていたであろう拳だが、此度は別。
胴体に叩き込まれた拳に何ら反応する事無く、両腕を振るう。
シュイムが狙うはスタープラチナの頭部。

「チッ!」

シュイムに走る衝撃、同時にデェムシュの両腕が跳ね上がった。
剣の下から掬い上げるよう殴り、斬首を回避。
それだけで剣を殴りつけた左腕が若干痺れている。
外見のみならず力も正に化け物と言う事か。
少しばかり骨が折れそうだと内心でため息をつく。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

一発だけで仕留められないのならば、倒れるまで殴るだけのこと。
スピードに物を言わせたラッシュが殺到。
だがスタープラチナの拳から伝わるのは、金属を殴りつけているような感触。
敵へ効果的なダメージを与えているとは到底言い難い。

スタープラチナを前にデェムシュもただやられる気は皆無。
重量のある両手剣が、スタープラチナと同等の速度で振るわれる。
顔面や胴体を狙った拳はシュイムに阻まれ、反対にスタープラチナが切り裂かれる。
時折、デェムシュにも拳が当たりはするもののやはり怯む様子は無い。

(野郎…!)

承太郎が受けるダメージは致命傷となるものではない。
だが一つ、また一つと傷は増えていき、その度に血が撒き散らされる。
一方でデェムシュは打撃を受けても呻き声一つ上げない。
岩石でも殴りつけているのかと錯覚するほどに硬いのだ。

「生温イ!猿の力なドたカガ知レる!」

我こそが強者と言う傲慢な態度は、実力に裏打ちされたもの。
沢芽市のアーマードライダーを幾度も苦戦させた戦闘力はここでも健在。
おまけにデェムシュらオーバーロードは彼らの王、ロシュオによって肉体を改造された者達。
トドメとばかりに今のデェムシュはヘルヘイムの果実を食した事により、更なる力を物にしていた。
生命力も肉体の堅牢さも、通常のインベスより遥かに上である。


353 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:52:15 GfKngVEA0
「鬱陶しイワぁっ!」

敵の攻撃はほとんど効果が無く、反対に自分の剣は何度も血を流させている。
なのに相手は一向に倒れない、致命傷になり得る一撃は全て防がれる。
全く持って気に入らない。
苛立ちはそのまま剣に乗せ、勢いを増したシュイムの猛攻に承太郎の傷も増えて行く。
このまま細切れにしてやろうと低く笑い、

次の瞬間にはまたもや吹き飛ばされた。

「ヌゥ!?」

一度ならず二度も、何をされたか分からず身体が宙に浮いている。
屈辱に頭が破裂しそうな程沸騰する。されど分かった事もあった。
あの奇怪な攻撃でも自分を倒すには至らないのだ。
ならば恐れるに足りない。
身体を霧状に変化させ、無様に叩きつけられる事無く承太郎へと接近。
不規則な動きだろうとスタープラチナの精密性ならば命中も容易い。
問題は霧に変化した肉体にはどれだけ拳を放っても意味はなく、反対にスタープラチナへはダメージが与えられてしまう。

何度目かの攻撃の後、スタープラチナの背後で実体化するデェムシュ。
振り向かせはしない、その前に首を斬り落とそうとするつもりだ。
が、シュイムから両腕へ衝撃が伝わる。
黄金色の戦士がシュイムヘ杭を叩き込み、狙いを逸らしたのだ。

「貴様!!」
「俺を忘れてんじゃねぇぞ」

デェムシュの怒りを受け流し、戦線復帰したグリスが両の拳を強く握る。
乱入者の少年に役目を奪われたが、自分は戦いを下りたつもりは無い。
何より、この赤い化け物には徹底的にぶちかましてやらねば気が済まなかった。

「ゥオルァッ!!」
「ぐオ!?」

グリスのストレートが胸部を叩く。
どれだけ食らっても痒いと感じるのが精々の、脆弱な猿の拳。
だというのにこれは何だ。

「テメェは!よくもみーたんを!!傷付けやがったな!!!」

防御も回避も間に合わない。
胸部へ、腹部へ、顔面へ、グリスの拳が叩き込まれ衝撃が内部を揺らす。
本当ならば避ける必要もない攻撃の筈。
なのに一撃一撃が先程までとは嘘のように速く、重い。


354 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:53:13 GfKngVEA0
「こんなもんじゃあねぇぞ!!!」
「グはァッ!?」

頬への一撃に思考をシェイクさせられる。
急激な敵の変化の答えを導く事すらさせて貰えなかった。

ネビュラガスを注入された者に共通して存在するものがある。
それがハザードレベル。ネビュラガスへの耐久力を段階的に分けたものだ。
仮面ライダーにはレベルが測定値に達していなければ変身出来ず、例えばビルドドライバーは3.0、スクラッシュドライバー4.0と基準値が設定されている。
またハザードレベルにはある大きな特徴が存在する。
それは感情の昂りによって上昇し、変身者の能力を引き上げるというもの。
戦兎達はハザードレベルの急上昇によって危機を脱した事もあれば、ハザードレベルを上昇させたエボルトの手で苦しめられた事もある。

此度の戦いでもハザードレベルの上昇が起こった。
愛する推しのグッズを破壊したデェムシュへの怒り。
愛する推しのグッズを護れなかった自分自身への怒り。
湧き上がる憤怒により感情を大きく刺激され、それが一海のハザードレベルを上げるのに繋がったのだ。

一海自身も急に自分の攻撃が聞き始めた理由に気付いている。
それを律儀に教えてやる気は無く、今はただ目の前の許し難い怪人を叩き潰す事に専念していた。

「舐めルな猿ガァァアアアアアアアアアアッ!!!」

怒りに燃えるのはデェムシュも同じだ。
下等生物と見下す相手からこうも傷を付けられるなど、断じて許しておけない。
両肩の角が放電し、雷撃となってグリスヘ放たれる。
猿の分際で超越者へ逆らった罰を受けるかのように、グリスは絶叫。
続けて掌から火球を発射。至近距離でモロに受け、鮮血のように装甲から火花が散る。
強制的に拳の猛攻を止められた。


355 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:54:23 GfKngVEA0
「死ネっ!!」

これだけで罰を終わらせはしない。
己の手でつまらない生を奪ってやらねばデェムシュの気は済まない。
首を狙ったシュイムが真下へ叩きつけられ、

「同じ台詞になっちまうが、俺を忘れるんじゃあねぇぜ」

再度寸前で停止する。

デェムシュ相手にはこれで三度目となる時間停止。
既に二回、時を止めた状態でスタープラチナのラッシュを叩き込んだというのに、大したダメージは与えられなかった。
驚くべき頑強さ。DIOの再生能力とは違う意味で厄介な肉体だ。
しかしグリスの猛攻でダメージを受けている今ならば、いけるかもしれない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

グリスに殴られた箇所へ集中してラッシュを叩き込む。
やはり硬いが、先程よりは若干脆さを感じる。

「グォ――」

承太郎の意思に反して、時が勝手に動き出す。
DIOとの戦いの時よりも明らかに短い時しか止められない。
だがそれらは後回しだ。
集中すべきは眼前の敵をブチのめす、今はその一点のみ。

「オォォォラァァァーーーーーッ!!!!」

顔面ど真ん中を捉えた拳はデェムシュの雄叫びを封じ、殴り飛ばす。
砂浜を大きく超え、海面に出てもまだ飛び続け、やがて派手な飛沫を上げて落ちた。


356 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:55:23 GfKngVEA0
「あークソ、結局俺の出番取られちまったのかよ」

承太郎が振り返ると、変身を解きボヤく一海がいた。
口調とは裏腹に表情は苦し気なのが見て取れる。
装甲越しとはいえ進化態のデェムシュの攻撃をモロに食らったのだ。
平気でいられる傷では無いだろう。

一方で承太郎も同じようなものだ。
所々が出血し今も学生服を赤く染めている。
致命傷が無いとはいえ、放って置いて良い状態でもない。

互いに聞いておきたい事は山ほどある。
ハ・デスを倒しデュエルを終わらせたい気持ちは共通しているが、まだ自己紹介すらしていない。
一海が纏った黄金の装甲、承太郎の傍らにいた拳闘士、それらの詳細も気になっている。
だが今は

「…一旦場所を変えるぜ。話はそれからだ。立てるか?」
「…おう、ったくあの野郎、好き勝手にやりやがって」

よっこらせと立ち上がり承太郎と向き合う。
場所を変えるのに異論は無いが、その前にやっておかねばならない事がある。
無惨にも斬られたみーたんの抱き枕。
見ているだけで涙が溢れて来るが、どうにか堪えてデイパックに仕舞う。
もうこれ以上彼女が傷つけられないように。

「すまねぇみーたん…。不甲斐ない俺を許してくれ……」

頬を雫が伝い落ちる。
耳元では愛しいあの声で「泣かないでカズミン」という優しい囁き(幻聴)が聞こえて、推しの優しさに涙が流れるばかり。
どっからどう見ても奇行に走ったとしか思えぬ姿に、承太郎は黙って帽子を深く被り直した。

「……やれやれだぜ」


【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:疲労(中)、全身に斬傷
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:打倒主催者。
1:場所を変えて男(一海)と情報交換する。
[備考]
※参戦時期は第三部終了後。

【猿渡一海@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)
[装備]:スクラッシュドライバー+ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、みーたんの抱き枕(破損)@仮面ライダービルド、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスと従ってる連中をぶっ潰す。
1:場所を変えて少年(承太郎)と情報交換する。
2:ごめんねみーたん……
[備考]
※参戦時期はTV版で死亡後。


357 : 信条・激昂・焦熱に呼び起されるまま ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:56:10 GfKngVEA0
◆◆◆


承太郎達が去り、再び波の音だけが聞こえる砂浜。
そこへ新たな音を運ぶものが現れた。
海面にヌッと顔を出し、荒い動きで陸に上がる影。
赤い全身を海水で濡らした異形は、無人の砂浜で雄たけびを上げる。

「おノレ猿ドモがァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

奴隷のような首輪を填められ、猿如きに殺し合えと命令され、
挙句の果てには二匹の猿を仕留め損ね、傷まで負わされた。
ここに来てから短時間で屈辱の連続だ。
怒りで自分自身をも殺してしまいそうになる。

「俺をコケにした貴様ラだけハ許サン!殺ス!殺しテやル!!」

さっきの二人も、他の猿共も、ハ・デスも一人残らず殺す。
絶対的な強者である自分が辛酸を舐めたまま終わるなど、飼い犬のように扱われるなど断じて許される事では無いのだから


【デェムシュ@仮面ライダー鎧武】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、ずぶ濡れ、激しい怒りと屈辱
[装備]:両手剣シュイム@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針ハ・デスも参加者も皆殺し
1:猿は見つけ次第殺す。
2:さっきの猿ども(承太郎、一海)は必ず殺す。
[備考]
※参戦時期は進化体になって以降〜死亡前。

【スクラッシュドライバー@仮面ライダービルド】
葛城巧が残した未完成のデータを基に戦兎が完成させた変身ベルト。
スクラッシュゼリーやクラックフルボトルをセットし、仮面ライダーに変身する。

【ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド】
ロボットフルボトルの成分をゼリー状に変換して収めたパウチ型アイテム。
スクラッシュドライバーを用いた変身に使う。

【みーたんの抱き枕@仮面ライダービルド】
滝川紗羽が猿渡一海に売りつけたみーたん(石動美空)の抱き枕。
一海はあろうことか本人が見ている前で抱き枕にキスしようとしたが、当然女性陣からグーパンを食らい阻止された。

【両手剣シュイム@仮面ライダー鎧武】
デェムシュが愛用する大剣。


358 : ◆ytUSxp038U :2022/05/28(土) 22:56:55 GfKngVEA0
投下終了です。


359 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:35:50 lAZjyo/Q0
投下します


360 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:36:39 lAZjyo/Q0
「デュエル?ふざけるのもいい加減にしてッ!」

悪趣味な催し物に怒りの声を荒げる少女の名は月乃瀬=ヴィネット=エイプリル。
周囲からはヴィーネと呼ばれている。
人の命を何とも思わない主催者達に彼女は怒りを露わにしていた。

ヴィーネは人間ではない、悪魔である。
悪魔だが困っている人を放っておけない程、真面目で面倒見が良く
とても悪魔には見えない心優しい女の子である。

「とにかく、何とかして止めないと……」

首輪を付けられ、生殺与奪の権を主催者に握られているこの状況では反抗する事も出来ない。
だからと言って大人しく言いなりになるつもりはヴィーネには無い。
今は対抗する術は無くても協力者を集め、この島からの脱出を測ろう。
先ずは他の参加者達との接触が必要だと考え、行動しようとすると。

「ひかねぇぇえええええ!!」

薄紫色の髪をしたツインテールの少女がこちらに向かって走ってくる。
走る勢いは凄まじく、全く減速する様子も無く。
そのままヴィーネに向かって――。

「ひか姉っっ!!」
「ちょ、ちょっとストップ!きゃっ!?」

少女は体当たりするかのようにヴィーネの体に抱きついてきた。

「ひか姉もここに連れて来られたん!?」
「あのね……残念だけど私は……」
「……ひか姉じゃないッ!!?」


361 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:37:31 lAZjyo/Q0


ヴィーネを『ひか姉』と人違いをした少女の名前は宮内れんげ。
どうやらヴィーネとひか姉は見た目がとてもよく似ているらしく。
離れた所から目撃して見間違えてしまったのだ。

「ごめんなさいのん。うちとした事がヴィー姉をひか姉と間違える失態を犯してしまったん」
「気にしないでいいのよれんげちゃん。そっかぁ……私とそっくりなんだ」
「でもひか姉よりヴィー姉の方が真面目でしっかりしてて綺麗なんな」
(自分の姉に向かって酷い言い草ね……)

れんげの姉に対する辛辣な言い様にヴィーネは、あはは……と苦笑いを浮かべる。

「ねえ、れんげちゃん」
「どうしたん?」
「お外真っ暗だし、どこか休める場所探そうか?」
「それならうち、良い所知ってるん!案内するん!」
「待ってれんげちゃん!走ったら危ないってば!」

走り出したれんげを見失わない様に後を追うヴィーネ。。
しばらくすると二階建ての木造の古びた一軒家に辿り着く。

「ここなん!さっきうちが見つけたん!」
「このお家なら休めそうね。見つけてすごいわ。れんげちゃん」

褒められると照れくさかったのかれんげは腕を組んでふふーん、とふんぞり返っていた。

「取りあえず中に入りましょ。お邪魔します」
「お邪魔するのーん」

2人は家の中に入ると内部は外観同様、年季の入った内装をしていた。
3畳程の土間があり、靴を脱いで上がるようになっていた。
台所があり、居間があり、風呂やトイレもある至って普通な民家だ。

「良かった。電気が通ってる」
「停電してなくて助かったん」

家に灯りが付き、暗かった部屋も照らされる。
電気が使えるなら休憩場所としての価値も高い。
一先ず、落ち着ける場所を得た二人はゆっくり休むために居間に入る。
支給されている水を飲みながら休憩を取っていた。

「れんげちゃん、お腹空いてない?」
「んー、まだ平気なん」
「じゃあ私はこの家に何か無いか探してくるかられんげちゃんは休んでてね」
「うちも手伝うん!宝探しみたいでワクワクするん!」
「なら手分けして探そうか」
「了解なん!」

そうして二人は民家の中を探し回った。
しかし、めぼしい物は残されておらず。
台所を探しても食料になる物は見つからなかった。
そろそろ探すのを諦めるか?と考えていたその時――


362 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:38:16 lAZjyo/Q0
ドタドタドタ!!

この民家へ新たな来客者が現れた。
来客者は白いタンクトップを着た大柄の太った男であった。
男の息は荒く、目は狂気を宿している。

「にゃんぱすー」
「デーモンッ!!」
「でー、もん?」

男の言ってることに意味が分からなかったれんげは首を傾げる。

「誰か来たの?」
「デーモンッ!!」
「え?」

ヴィーネに対しても男はデーモンと叫んだ。
そして薄気味の悪い笑顔を向けながら近づいてくる。
すぐさまヴィーネは理解した。
目の前にいるタンクトップの男はまともな状態では無いと。

「デーモン!」
「危ないっ!」

男のボディプレスを寸前で避けたヴィーネは
起き上がろうとする男を突き飛ばして、れんげの手を掴む。

「逃げるわよ!れんげちゃん!」
「分かったのん!」

男が異常者なのは小学生であるれんげにも伝わった。
二人は急いで玄関から外へと脱出する。
すると……

「臭ぇ!!」
「デーモン!!」

外にも白いタンクトップの大男が二人も待ち構えていた。
なんと、タンクトップの男は三人いたのだ。
皮肉な事に、民家の灯りを付けた事で周囲にいる危険人物を呼びよせる結果となってしまった。

目の前の二人の男もデーモンと叫ぶのみで正気では無い。
とても対話出来るような相手では無かった。

(やるしか……ないわね)

ヴィーネは戦う決心を決めた。
生き残るために……行動を共にした小さな命を護るために……。

「ねえ、れんげちゃん」
「どうしたん?」
「私がこの人達を何とかするから合図したら一人で走って……本気でね」
「ダメなん!そんな事したらヴィー姉が危ないん!一緒に逃げるん!」
「大丈夫、絶対にまた会えるから……私を信じて」
「……約束なんな」
「うん、約束する」

「デーモン!!」
「デーモン!!」
「来なさい!れんげちゃんには指一本触れせないんだからっ!」


363 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:38:41 lAZjyo/Q0
ヴィーネの頭部から二つの角が生え、手の平から三叉の槍が出現する。
角を見た男達が再び、デーモンと叫びながらそれぞれ包丁と鉈を取り出した。

「ヴィー姉の頭のソレ、かっこいいん!!」
「ありがとうれんげちゃん。はぁあああっっ!!」
「デーモン!?」
「デーモン!?」

槍から放たれた魔力による衝撃波が二人の男を吹き飛ばした。

「今よれんげちゃん!走って!」
「はいなん!!ヴィー姉、約束なんなー!!」

合図と共に走るれんげを見送ったヴィーネは二人の男を睨みつける。

「あんた達の相手は私よ!」
「デーモン!!」
「デーモン!!」

男達は包丁と鉈で容赦無く斬りかかってくる。
相手をデーモンと思い込んでいる異常者に殺人に対する罪悪感など無い。
そもそもヴィーネは本当に悪魔だったが。

逆にヴィーネは躊躇が残っていた。
正気を失っている相手とはいえ、人間への殺害を良しと出来るほど
冷酷にはなれない優しい子である。
その結果、命を奪わぬよう加減して戦う事となり
悪魔であるヴィーネが必要以上に消耗する結果となっていた。

「はぁああああっっ!!」
「デーモン!?」

ヴィーネの槍捌きを受けて、男の持っていた鉈が弾かれる。

「そこぉ!!」
「デーモン!?」

もう一人の男も包丁が弾かれ、武器を失った。

「あんた達、命までは取らないわ。降参しなさい!」

「で……デーモン」
「デーモン……」

戦意を失った男二人は両手を上に上げて降伏のポーズを取った。
命を奪いたくなかったヴィーネは初めから武器を手放させて降参させようとしていたのだ。

れんげを護りたい。
敵の命も奪わずに争いを終わらせたい。
二つの目的をこなすためにヴィーネは必死になった。
そのせいで冷静さを欠いていたヴィーネは最悪の結末を迎える事となった。


364 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:39:06 lAZjyo/Q0
ゴッ

鈍い音が響く。
意識が薄れて倒れる。
頭が割れるように痛い。
痛みのする部分を触ると、ねちゃりとした感触が伝わり
触れた手が真っ赤に染まっていた。

(なん、で……?)
「デーモン!!」

民家で出会った最初の男への警戒を怠っていたヴィーネは
背後から金属バットによる後頭部への一撃を受けていた。

躊躇せずに迅速に二人の男を殺害していれば
もう一人の存在に気付く余裕も生まれ、こうはならなかったかもしれない。
だが、男を殺したくないというヴィーネの意思が仇となった。

「デーモン!!」
「デーモン!!」
「デーモン!!」
「あぐっ、ひぎっ、やめ……」

男達は倒れているヴィーネの体を何度も蹴り続ける。
更に得意のボディプレスで三人がかりでヴィーネの上にのしかかった。
三人分の体重が華奢なヴィーネの体を押し潰し、メキメキと骨の軋む音を響かせる。

「うぐぅ!く、くるし……」

ボディプレスを受けてぐったりと倒れるヴィーネを持ち上げた男は
羽交い締めにする形でヴィーネの体を押さえつけると
もう一人の男が包丁を持ってゆっくりとヴィーネに近づいていく。

「嫌っ……離してぇ!!」

じたばたと抵抗するも大柄な男にガッチリとホールドされ
拘束から抜け出す事が出来ない。
包丁を持った男がヴィーネのすぐ傍まで迫った。

「やめてぇぇええええ!!」

男はヴィーネの腹部に向かって勢いよく包丁を突き刺した。

「いゃぁぁああああああああ!!!!」

刃が体内の奥まで沈み込み、内臓まで到達すると。
今度は力強く包丁を引き抜いた。

「がふっ……ごほっげほ……がはぁ!」

大量の血を吐いたヴィーネの目からは涙が零れ落ちる。
男はケラケラと笑いながらもう一度、ヴィーネの体に包丁を突き刺した。

「うぁあああああああ!!」

ヴィーネは再び血を吐き出し、目の前にいる男の白いタンクトップをどんどん赤く染め上げる。
その後も男は何度も何度も、包丁でヴィーネの体を刺し続けると血塗れのヴィーネの体が出来上がった。

「デーモン」

飽きてきた男達はヴィーネの拘束を解いて地べたに放り落とす。

「ひゅう……ひゅう……」

辛うじてまだヴィーネは生きていた。
消え薄れ行くヴィーネの意識には
友達であるサターニャ、ラフィエル、ガヴリール達を悲しませてしまうという想いと

(約束守れなくてごめんね……れんげちゃん……貴女だけは生きてね)

行動を共にしたれんげという少女の身の安否だった。

「デーモンッ!!」

鉈を持った男がヴィーネの首に向かって振り下ろした所で彼女の意識は途絶えた。

【月乃瀬=ヴィネット=エイプリル@ガヴリールドロップアウト 死亡】


365 : デーモンびより ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:39:40 lAZjyo/Q0


(お願いだから無事でいてほしいのん……必ず迎えに行くん!)

れんげは走る。
ヴィーネがくれた生き残るチャンスを無駄にしないために。
自分は無力な子供でしかないのは、痛いほど理解している。
だから頼りになる大人を探してから助けに行く。
それが自分に出来る唯一の手段なんだ。

れんげは目を擦り、涙を拭きながら走り続けた。

【宮内れんげ@のんのんびより】
[状態]:疲労(中)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本方針:この島からの脱出。
1:頼りになる参加者を探す。
2:ヴィー姉を助ける
[備考]
※特に無し



先ほどまでヴィーネとれんげが休憩に使っていた民家の居間では……。

「デーモン!!」
「デーモン!!」
「デーモン!!」

三人のタンクトップの男が狂乱状態ではしゃいでいた。
その男達の中心、テーブルには立て掛けられてる物があった。

それはヴィーネの生首だった。

切断面に木の棒の先端で突き刺して固定されていた。
まるで悪魔の儀式を連想させる行為だ。
彼女の虚ろな瞳からはもう生気を感じさせない。

男達は本物の悪魔(デーモン)を倒した事による充実感で大喜びで笑い合っていた。

【タンクトップの男達@デビルマン(実写版)】
[状態]:狂乱
[装備]:西園寺世界の包丁@SchoolDays、鉈@バトルロワイアル、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本方針:デーモンは殲滅する!!一人残らずだ!!
1:デーモンは皆殺しだ!!
[備考]
※通称:アポカリプスデブ
 何故か三人一組で一人の参加者として呼ばれています。
 全ての参加者をデーモンと認識して襲ってきます。
 三人は常に一緒であり、死亡しない限りバラバラに行動する事がありません。
 三人全員が死亡することで死者としてカウントされます。

『支給品紹介』
西園寺世界の包丁@SchoolDays
タンクトップの男達に支給、SchoolDaysアニメ版最終回で伊藤誠を刺殺した包丁である。

鉈@バトルロワイアル
タンクトップの男達に支給、バトルロワイアルでは大木立道に支給されていた。
七原秋也に襲いかかるも彼と揉み合いとなって崖から転落。
その拍子に自分の武器のナタが顔面に食い込んで死亡した。

悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
タンクトップの男達に支給、入江京介が監督を務める野球チーム「雛見沢ファイターズ」の金属バット。
北条悟史が叔母を撲殺する際に使用した凶器とされている。


366 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/05/29(日) 00:41:21 lAZjyo/Q0
投下終了です
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367 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/29(日) 07:47:22 DqjTlwwM0
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368 : ウリが二人でウリ二つ ◆OmtW54r7Tc :2022/05/29(日) 07:49:02 DqjTlwwM0
二人の男が、出会った。
彼らの目の前にいるのは、色黒で眉が濃くて目が大きい、反っ歯の少年。

「「俺ェ!?」」

そう、彼らはウリ二つだった。
ウリ坊とウリケンだけに。

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「…って、なんや。お前よく見たらウリケンやないか」
「な、なんで俺のあだ名を…あ、あんた何者だ?お、俺、生き別れの双子の弟でもいたのか…!?」
「なんで俺が弟やねん!そこはせめて兄貴やろ!」

やや混乱気味に発言する立売健吾ことウリケンに、立売誠ことウリ坊もややずれたツッコミを入れた。

「俺や俺!ウリ坊!あんたのじいさんの兄貴や!」
「ウリ坊…?なっ!それっておっこが話してた幽霊…!」

ウリ坊…それはウリケンの祖父であるヤス坊の兄だ。
ウリ坊は、子供の頃に屋根から落ちて死んでしまったのだが、死後幽霊として幼馴染であった峰子が営む温泉旅館・春の屋に住み着き、そしてウリ坊のことが見える峰子の孫・関織子ことおっこの若おかみ修行を影で支えていた。
おっこの彼氏であるウリケンは、その事実をつい最近、クリスマスに知ったばかりなのだが…

「な、なんで俺にも見えてるんだ?」
「見えるだけやないで」

そういってウリ坊は、ウリケンに手を差し出す。
意図を察したウリケンはウリ坊の手を握る…握れた。

「じ、実体があるのか!?」
「そういうことや」
「…生き返ったってことなのか?」

ウリケンの言葉に、ウリ坊は難しい顔になる。

「…分からん、生き返ったわけやなく、一時的に実体を取り戻しただけかもしれんしな」
「どういうことだ?」
「実は俺な、前にもこうして実体を取り戻したことがあるんや」

それは、おっこが魔界で若おかみ体験をしていた時のこと。
ウリ坊と、幽霊仲間の美優に温泉を楽しんでもらおうと考えたおっこは、幽霊専門の温泉旅館というものを作り出した。
その旅館では、本来実体がないはずの幽霊が実体を取り戻し、人間と同じように温泉旅館でくつろぐことが可能だったのだ。

「ま、魔界の温泉旅館…!?おっこ、すげえことしてたんだな」
「まあそういうわけで、あのハ・デスやったか?あいつ、冥界がどうのとか言っとったし、魔界みたいな不思議パワーで俺に一時的に実体を与えたのかもしれん」

まあともかく、とウリ坊は胸を張りながら言った。


369 : ウリが二人でウリ二つ ◆OmtW54r7Tc :2022/05/29(日) 07:49:50 DqjTlwwM0
「俺は幽霊でもう死んだ身や!ここで死のうがたいした問題やない。けどお前はそうはいかん!いいかウリケン、おっこの為にも、死んだら許さへんで!俺を盾にしてでも、生き残れ!」
「…それはできない」

ウリ坊の言葉に、しかしウリケンは首を振った。

「もちろん死ぬ気はない。だけどご先祖様…いやウリ坊!それはあんたも同じだ!」
「何言うとんねん!俺は幽霊やから…」
「そんなの関係ないだろ!こんなよく分からない場所で死んだら、春の屋に戻れるかもわからないだろ!?そうなったらおっこが悲しむ!」
「おっこが…」
「ウリ坊…俺には今まであんたのこと見えてなかったからこれが初対面だけど、それでもおっこがあんたを大切に想ってることくらい分かる!だから自分を盾にしろとか、そんなこと言うな!一緒に…春の屋に帰ろう!」
「…ははっ、こりゃ一本取られたで。やっぱりおっこには、あんたが必要や、ウリケン」
「ウリ坊…」
「そうやな…おっこにはまだまだ俺がついとらんとあかん。もう死んだ身でこんなこと言うんも変な感じやが…こんなとこで死んでたまるか!ウリケン…一緒に帰るで!」
「おう!」

こうして、ウリ坊とウリケン…立売家の男たちは、生き残る為に立ち上がるのだった。
大切な人たちのもとへ帰る為に。

【立売誠(ウリ坊)@若おかみは小学生!(原作)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘からの脱出
1:ウリケンと協力しここから脱出する
[備考]
※参戦時期は17巻終了後〜20巻で転生を受け入れる前
※実体があります。
生き返ったのか一時的に実体を取り戻したのかは不明です。

【立売健吾(ウリケン)@若おかみは小学生!(原作)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘からの脱出
1:ウリ坊と協力しここから脱出する
[備考]
※参戦時期は12巻終了後〜20巻でウリ坊が消えたことを知る前


370 : ◆OmtW54r7Tc :2022/05/29(日) 07:50:24 DqjTlwwM0
投下終了です


371 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:41:27 mCy024DI0
投下します。


372 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:41:41 mCy024DI0
※本作品内の決闘では、原作・アニメなどの効果や現実のルールが入り混じり、かつ本来OCGではありえない展開などがありますが、ご容赦ください。


373 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:42:09 mCy024DI0
オレはここまでだ… あばよ みんな…
本田ヒロト

「本田君……ッ!!!」

「大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――」

あの場で守ることができなかった。
大切な友達を。

「俺は…・…ッ!!!」

地面に拳を叩きこむ。
自分の無力さに怒りを抑えきれない。
武藤遊戯にとって本田ヒロトは絆の仲間の一人。
海馬によるDEATH-T にペガサスとの決戦など数多な決闘。
どれも一人だったら勝利することはできなかった。
間違いなくアテムの勝利を支えた一人。
そんな親友の一人を目の前で失い、武藤遊戯……アテムは悲壮感にただ苛まれる。
そんなアテムの前に……

「ねぇ、あなた。あの場で会話ができた人間よね」

ふわり―――とアテムの前に降り立つ一人の巫女。
巫女の名は博麗霊夢。
幻想郷の要である博麗大結界を管理する楽園の素敵な巫女。

「あ、ああ・・・・・君は?」
「私は博麗霊夢。霊夢でいいわ」
「……俺はアテム。よろしくな霊夢」

簡潔だが、自己紹介を交わす両者。

「幻想郷……まさか日本の辺境にそんな世界があるなんてな。それで霊夢。君はそこを管理する博麗神社の巫女なんだな」
「ええ。いつもならパパッと異変解決と行きたいところだけど、どうやら、一筋縄にはいかない様子だわ」

そういいながら、自身の首に繋がられし首輪をムッとした表情でなでる。
そう、これが幻想郷での異変であれば、いつものように目についた妖怪を片っ端から退治していれば、勝手に黒幕の元へたどり着くことができる。
そしたら、いつものように退治して解決だ。
しかし、今回は違う。
磯野という外来人の背後に現れたハ・デスという外来の魔の王。
カードから実体化したといっていたため、アテムのいうDM界の精霊の一体かと推測できるが、明らかに幻想郷のルールを知らぬ者であることは間違いない。
つまり弾幕ごっこという協定が前提の異変ではない。
殺し合いという決闘の異変。
もし、幻想郷内で発生したならば、解決に紫や隠岐奈 を始めとした賢者たちが総動員されてもおかしくない大異変。
霊夢も普段とは違う緊張感を肌で感じている。

「……で、私に支給されたコレを一度試しておきたいの」

そういうと、霊夢は支給品であるデュエルディスクを腕に装着する。

「決闘者(デュエリスト)の証であるデュエルディスク……」

「ちなみに私は決闘者じゃないわ。私はただの人間巫女よ」
「で、これは私の勘だけど、あなたはコレを一番使いこなしていると見ているわ。この異変に乗った相手とやり合う前に一度練習しておきたいの……どう?」

霊夢の勘はよく当たる。
そうアテムこそバトル・シティを勝ち抜いた初代決闘王(デュエルキング)なのだから。

「決闘自体はおそらく問題ないわ。一通りルールは把握したから」
「そうか。なら遠慮なくいくぜ!」
「ええ。こちらもいくわ」

両者の目つきが変わる。

「「決闘(デュエル)!」」


374 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:42:33 mCy024DI0
武藤遊戯(アテム) VS 博麗霊夢

「私からいかせてもらうわよ。私は手札からロードオブドラゴンを召喚」

デュエルディスクからカードの実体化され、モンスターが召喚される。

「……」
(ロードオブドラゴン……)

アテムはそのカードを知っている。
自分の永遠のライバルが所持するカードの一枚。
ここまでなら、たまたまとも思う。
しかし、霊夢のコンボにアテムは驚愕する。

「そして手札から魔法カード【ドラゴンを呼ぶ笛】を発動。このカードの効果で手札からドラゴン族モンスターを場に召喚するわ」

「でなさい!真紅眼の黒竜!に青眼の白龍!」
「何ッ!?」

霊夢が口に出すカード名にアテムは目を見開く。
なぜならそれは……

「レッドアイズにブルーアイズ……ッ!」

「ええ。赤と白めでたい色でしょ?」

アテムの前に降臨する2匹の竜。
それは、幾度もなく目にしたことがある馴染みある竜。
使い手こそ違うが、再びアテムの前に対峙する。

「そして、魔法カード【命削りの宝札】を発動。手札が5枚になるようデッキからカードをドローするわ」
「そのカードにより先行ドロー出来ないデメリットを解消というわけか」
(先行ドローがないことには、驚いたが……それにLPが8000。どうやら、俺の知っているルールと多少違うようだな……)

ペガサスが主催した決闘者の王国(デュエリスト・キングダム)ではLPは2000
海馬がグールズ撲滅と宿命のライバルである武藤遊戯(アテム)と決着をつけるべく開催したバトル・シティではLPは4000とその時々で多少のルールは変更されているが、LP8000での決闘は遊戯もこれが初めてだ。

「ふ、だが霊夢。そのドラゴンを呼ぶ笛はこちらもドラゴン族モンスターを召喚することができるぜ!こちらも真紅眼を召喚」

遊戯もドラゴンを呼ぶ笛の効果で真紅眼を召喚した。
両者の真紅眼がにらみ合う。

「へぇ……あなたも真紅眼を所持していたのね」
「いや、正確には友から託された、だ」
(あれから、この真紅眼は城乃内くんに返した筈だが……これもハ・デスの仕業なのか?)

バトルシティが終えた後、元の持ち主である城之内へ返却されたはずの真紅眼。
それが、自分のデッキに入っていることからハ・デスの仕業だと直感で理解する。

「なら私はリバースカードを一枚セットしてターンエンドよ」
「オレのターン。ドロー!」
「オレは魔法カード【天使の施し】を発動!デッキからカードを3枚ドローして2枚墓地へ送る」

ルールが違えど、やるべきことは同じ。
デッキのカードを信じて闘うのみだ。
アテムは流れる所作でカードをドローすると墓地へ送る。

「手札からクィーンズ・ナイトを召喚」

絵札の3銃士の一人であるクィーンズ・ナイトが召喚される。

「バトルフェイズ!オレはクィーンズ・ナイトでロードオブドラゴンを攻撃!」
「……」
(リバースカードを発動するべきかしら?……いえ、ここは温存ね)

クィーンズ・ナイトの剣がロードオブドラゴンを斬り裂く。

博麗霊夢LP7200

「……?ライフポイントの減少がおかしい?」

霊夢の疑問はもっともだ。
クィーンズ・ナイトの攻撃力は1500。
対してロードオブドラゴンの攻撃力は1200
普通に計算すれば、800ではなく300なのだから。

「続けて真紅眼で霊夢の真紅眼を攻撃!」
「何?同士討ち?」
「ふふ、それはどうかな。真紅眼!黒炎弾」
「こっちも反撃よ真紅眼!黒炎弾 」

―――ゴッ

両者の真紅眼の黒炎弾 が激突。
爆炎の衝突は煙を巻き起こす。
両者の攻撃力は同じ。
互いに消滅する。
普通なら。

「え!?」
「ふふ……」

消滅したのは霊夢も真紅眼だけ。
アテムの真紅眼は健在していた。

博麗霊夢LP7200


375 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:43:44 mCy024DI0
「……どうして」
「悪いな霊夢!オレのギルファー・デーモンの特殊効果さ!」

暗黒魔族ギルファー・デーモン。
このカードが墓地へ送られたとき、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として攻撃力500ダウンの装備カードとして装備する。

「そう。天使の施しで捨てたカードね」
(通りでロードオブドラゴンが撃破された時のライフポイントの減少が違っていたのね。ロードオブドラゴンはドラゴン族ではないからギルファー・デーモンの対象となった……というわけ。伏せカードを温存しすぎもいけないというわけなのね。やっぱり……ロードオブドラゴンは守るべきだったわ)

「そうさ。そして、再び墓地へ送られたギルファーデーモンは再び装備カードとなる。

遊戯の言葉と同時に今度は青眼に装備される。
攻撃力3000から2500へと。

「リバースカードを3枚セットし、ターンエンドだ!」

「真紅眼の敵はとらせてもらうわよ。私のターン。ドロー!」
「私はアサルトワイバーンを召喚」
「さらに手札の青眼を相手に見せることで、青眼の亜白龍を特殊召喚!」

「青眼の新種……!!」

霊夢から召喚された青眼の亜白龍は大きく咆哮を上げる。

「バトルフェイズ!アサルトワイバーンでクィーンズ・ナイトを攻撃!」
「リバースカードオープン!シフトチェンジ!このカードは攻撃対象を他の自分のモンスターへ移すことができる。オレは攻撃対象をクィーンズ・ナイトから真紅眼に変更するぜ!」
「なら、私もリバースカードオープン!収縮発動!真紅眼の攻撃力を半減にするわ」
「やはり海馬のカード!なら続けてリバースカードオープン!マジカルシルクハット!」
「なっ!?」

収縮された真紅眼とクィーンズナイトはシルクハットの中に隠れる。
そして、4つのシルクハットはシャッフルされる。

「ふふ……さぁ、当てることができるかな!」
「……こんなとき、早苗の奇跡の力が欲しいわね……そこのシルクハットよ」

霊夢の指定されたシルクハットを攻撃するアサルトワイバーン。
しかし、シルクハットの中身は空だった。

「残念だったな!それは外れだぜ!」
「……」

霊夢は目を瞑る。
静寂。そして、一瞬の間。

「……そこよ。青眼!バーストストリーム!」

カッ―――
青眼の代名詞”バーストストリーム”がシルクハットを飲み込む。
そのシルクハットには、収縮された真紅眼が。

「真紅眼!!」

武藤遊戯(アテム)LP6700

「真紅眼を引き当てるなんて、やるな!霊夢!」
「別に。ただの勘よ」
「いや、勘を持ち合わせるのも決闘者に求められる資質さ。霊夢。君は一人の決闘者だ!」
(どうやら、城之内くん並の勘をもっているみたいだな。すまない……真紅眼)
「なんか、照れるわね……」

霊夢はアテムの言葉にちょっぴり照れながら頬をかく。
そして霊夢の勘を褒めるアテムだが、友から託された真紅眼を撃破されたことに謝罪する。

「……コホン。そこのシルクハットよ」

青眼の亜白龍の攻撃はシルクハット内のクィーンズ・ナイトを飲み込む。

武藤遊戯(アテム)LP5200

「くっ……オレは罠カード【魂の綱】を発動!ライフポイントを1000払いデッキからキングス・ナイトを特殊召喚!」

武藤遊戯(アテム)LP4200

「へぇ……これで、私のターンは終了するわ」
(ライフを減らしてまでモンスターを召喚?でも、私の青眼の亜白龍には攻撃宣言を放棄する代わりに1ターンに一度相手モンスターを破壊する能力があるのよ)

「一体は確実だったが、まさか2体とも当てられるなんてな……オレのターン。ドロー!」

「手札より魔法カード【天よりの宝札】を発動。この効果で互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードを引くぜ」
「へぇ。随分羽振りが良いカードね」

互いにデッキからカードをドローする。

「オレは魔法カード【地割れ】を発動!相手フィールド上の一番攻撃力が低いモンスターを破壊する!」

地割れの効果でアサルトワイバーンは地深くへ飲まれる。

「続けてオレは手札から魔法カード【早すぎた埋葬】を発動!ライフを800支払い、墓地のクィーンズ・ナイトを特殊召喚」

武藤遊戯(アテム)LP3400

「そして場にキングとクイーンが揃ったとき、”ジャック”のカードを出すことができる!出でよ!ジャックス・ナイト!」

ジャックスナイトが特殊召喚されたことで、アテムの場に絵札の三銃士が揃う。

「……」
(周囲の空気が……どうやら、彼の持つカードからね)


376 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:44:33 mCy024DI0
アテムと霊夢を取り囲む空気
霊夢はアテムから次に繰り出すモンスターがただのモンスターではないと肌で感じ取る。

「霊夢。見せてやるぜ!オレのデッキに宿りし究極の力の象徴を!」
「私の青眼を越える力の象徴……」
「キングス・ナイト、クィーンズ・ナイト、ジャックス・ナイトの3体を生贄に!出でよ!破壊神オベリスク!!!」

一枚のカードが天を大地を震わせる。
普通のカードには到底できない芸当。
しかし、決闘王である武藤遊戯(アテム)が所持する3枚のカードは例外。
アテムの呼びかけに神は応じ姿を現す。
オベリスクの巨神兵が。

「これが……青眼を越える究極の力!!!」
(これは……カードの範疇を越えているわね)

「オベリスクで青眼に攻撃!ゴッド・ハンドクラッシャー!!!」

オベリスクのゴッド・ハンドクラッシャーが青眼を砕く。

「……ッ。青眼!!!」

博麗霊夢LP5700

「そして、墓地に置かれたギルファー・デーモンは三度装備カードとして装着される!」

青眼の亜白龍の攻撃力が低下する。

「……」

神のカードを相手にした決闘者の多くは戦意を喪失し、時には発狂やカードを破り捨てて引退の道を選ぶ。
それほど、神のカードは心身にダメージを与えるほど強力なのだ。
普通の決闘者は抗う気力を持たない。
普通なら。

「やるわね。これほどの威圧は早苗の社にいる2柱並よ」

しかし、博麗霊夢には関係ない。
彼女には如何なる重圧も、力による脅しも、全く意味が無い。
幻想の宙をふわふわと浮かぶ霊夢には。

「でも、青眼の亜白龍を先に破壊しなかったのは、ミスじゃないかしら?」

「……」

霊夢の指摘にアテムは無言で返す。

「私のターン!ドロー!」

「私は青眼の亜白龍を守備表示にして青眼の亜白龍の効果発動!攻撃権を放棄するけどね。これで、神には去ってもらうわ!」

シーン……

「な、どうして……」

「霊夢。オレの言葉を聞いていなかったのか?オベリスクはモンスターじゃない……神だ!!!」

「!!!???」
(な……何ですって!?)

「……私はターンを終了……あ!」
(しまった!伏せカードをし忘れたわ!それに……!!!)

神に効かないというまさかの事態に、霊夢はついターンエンドを宣言してしまう。
そして、直ぐに後悔する。
そう、霊夢は発動していた。
命削りの宝札を。
5ターン後に手札を全て墓地に置かなければならない。

霊夢は下唇を噛みながら、手札を墓地へ送る。

「オレのターン。ドロー!」
「オベリスク!青眼の亜白龍に攻撃!ゴッド・ハンドクラッシャー!!!」

オベリスクの剛腕が再び振るわれ、青眼の亜白龍は砕かれる。
幸い守備表示にしていたため、霊夢のLPが減ることはない。

「リバースカードを1枚セットしてターンエンド」

「……」
(まずいわね…・・)

現在、霊夢の場および手札は0枚。
ほぼ勝負は決まったといっても過言ではない。
なかなかドローフェイズに移れない。
アテムは……

「どうした!霊夢!ここであきらめるのか!!!」

―――ピク

アテムの言葉に霊夢は…・・

「あきらめる?……冗談じゃないわ。神様ならぬ妖怪退治は私の専売特許よ!」


377 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:44:53 mCy024DI0
幻想郷には妖怪だけでなく神も存在する。
霊夢にとって人も神も妖怪も皆、ひとしく平等の存在。
そして幻想郷に住む数多くの神々を異変を通してとはいえ、一度は退治している実績を持つ霊夢にとって、神のカードを前に戦意喪失をすることなどありえない。

「私のターン!ドロー!」

「私は手札から【強欲の壺】を発動!デッキからカードを2枚ドローするわ!」

霊夢の行動にアテムは笑みを浮かべる。

(…・・・・ッ!!!これなら!)

「私は手札よりデビルフランケンを召喚!」
「デビルフランケンの効果発動!ライフポイント5000を支払い、エクストラデッキから融合モンスターを召喚するわ!…… 青眼の究極竜!!!」

博麗霊夢LP700

「青眼の究極竜……ッ!」

それは、マジック&ウィザーズ……デュエルモンスターズ界において攻撃力守備力共に最強と謳われし8ツ星モンスターである青眼の白龍3体合体の史上最強絶美の究極モンスター。

「さらに手札より魔法カード【巨大化】を発動!巨大化は相手のライフポイントより低い場合、装備モンスターの元々の攻撃力を倍にするわ!」

巨大化の魔法陣を受け、青眼の究極竜は文字通り巨体をさらに巨大化する。

「巨大化の効果で青眼の究極竜は4500の2倍、9000よ!」
「攻撃力9000……ッ」

攻撃力9000。
それはかつて、ドーマを相手に闇遊戯と海馬のタッグが繰り出した究極竜騎士の攻撃力5000を凌駕する。
2倍の攻撃力を得た青眼の究極竜は雄雄しく神に向かって吼える。


「たとえ神でも攻撃力が優劣を決めるはずよね。これで私の勝ちよ!青眼の究極竜の攻撃!アルティメット・バースト !」

たとえ神でも上回る攻撃力の前には無力。
白く輝きに神は呑まれ―――
神が撃破される。

武藤遊戯(アテム)LP0


378 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:45:09 mCy024DI0
「ふぅ……まずまずかしら」
(ギリギリの勝負だったわ。とはいえ、この決闘方法に触れたばかりの私に負けるようじゃ、異変解決の期待は薄そうね……)

おそらく、この異変を解決する中心は自分ではない。
鍵を握るのはハ・デスが言っていたカードに関係が深い人間。
とりわけ、あの場で殺された本田という名の外来人の他に唯一会話することができた目の前の相手。
彼こそ鍵だと出会った瞬間、確信した。
霊夢の持ち前の勘。
それだけに外したか……と内心ガッカリする。
しかし……

「まだ、勝利の宣言は早いぜ霊夢!」

「?何言ってんのよ。あなたのライフポイントは0……えっ!?」

遊戯の場に一体のモンスターが召喚されていた。
遊戯がもっとも信頼するしもべであり仲間の一人。
ブラック・マジシャンが。

「ああ。確かに霊夢の言う通り、青眼の究極竜の攻撃で俺のライフポイントは0になった。だが、俺はライフが0になった時にこの罠カード【魂のリレー】を発動していたのさ!」

「なんですって……!?」
「このカードはライフポイントが0になった時、手札のモンスターを召喚し、勝敗を託すカードだ」
「ブラックマジシャンを破壊されたら俺の負け。さぁ、青眼の究極竜で攻撃してきな!」
「だったら、次のターンで望み通りにしてあげ……!!」

青眼の究極竜は先ほどの姿から一転可愛らしいサイズへとなっていた。

「ど、どうして……あ!」

―――そう。

巨大化にはもう一つの効果がある。
それは、自分のLPが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の半分になるという効果が。

武藤遊戯(アテム)LP0 博麗霊夢LP700

遊戯のライフポイントは数値の上では【0】
霊夢のライフポイントの方が上回ったのだ。

「……ターンエンドよ」
「俺のターン、ドロー!」
「ブラックマジシャンで青眼の究極竜を攻撃!黒・魔・導!」

一度は神をも撃破した青眼の究極竜。
しかし、その攻撃力を失いかつ元々の攻撃力が半減した青眼の究極竜はブラックマジシャンの攻撃になすすべもなく撃破された。

博麗霊夢LP250

「俺はリバースカードを1枚セットしてターン終了!」

このままなら次のターンで決着となる。
しかし、霊夢も弾幕ごっこという決闘を戦い抜いてきている。
ここでサレンダーなどしない。

「くっ……まだよ!私のターン。ドロー!」

「……!!!」
(これなら、まだいける!)

「私は魔法カード【死者そ!?」
(え!?き……消えた!?)

霊夢が天に掲げたカードが忽然と姿を消した。
いや……正確には剣がカードごと地面へ突き刺したのだ。

「悪いが霊夢。死者蘇生は封じさせてもらった!光の封札剣でな」
「な……何ですって!?」
「光の封札剣の効果で3ターンは使用することができないぜ」

「タ……ターンを終了する……わ」
(……ここまでね)

「俺のターン、ドロー!霊夢これがラストターンだ!」

今度こそ決着の時。
しかし、これもなんの因果か。
白黒ではないが”魔法使い”が決め手となるとは。

「ブラックマジシャンのダイレクトアタック!」
「きゃあああああ!!!!!?????」

博麗霊夢LP0

勝者 武藤遊戯(アテム)


379 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:45:30 mCy024DI0
「あいっ……たぁ……」
「大丈夫か!霊夢!?」

吹き飛ばされた霊夢にアテムは駆けよる。

「え、ええ……ちょっと疲労や負傷はあるけれど、行動不能とまではいってないから大丈夫よ」
「そうか、なら良かった」

霊夢に大きな外傷が残ってないことにアテムはホッとする。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「それじゃあ、アンティに従って支給品一つをあなた……アテムさんへ渡すわね」
「ああ!ありがたく頂戴するぜ!」

アテムは決闘の勝利の証として霊夢から支給品を受け取る。
そして両者は握手を交わす。

「それじゃあ、アテムさん。私はこの会場を一回り探索をするわ。それと……貴方はおそらく、この異変を解決するために重要な役割を果たす鍵と私は見ている。……だから無事でいることを願うわ」
「オレが鍵……ああ!そう簡単には斃れないぜ!だから霊夢……君も無事でいるんだ」

「……それじゃあ。お互い頑張りましょう」

霊夢はアテムと出会ったときと同じようにふわりと宙を浮くと立ち去っていった。

【武藤遊戯(アテム)@遊☆戯☆王 】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(遊戯)@遊戯王シリーズ ミニ八卦炉@ 東方Project
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスに罰ゲームを与える。および巻き込まれた決闘者たちを生還させる
1:とりあえず、
2:乗った決闘者とは決闘で決着をつける。
3:本田くん……必ずハ・デスたちに報いを受けさせるぜ
4:城之内くんや海馬もここにいるのか?
5:もし、霊夢の知り合いがいたら霊夢の事を伝える
[備考]
アニメ版記憶編後〜闘いの儀前からの参戦。
自分の名前”アテム”を知っています。
霊夢から幻想郷について簡単に知りました。
ハ・デスはDM界の精霊の一体ではないかと推測しています。
千年パズルを所持していますが、罰ゲームなどの力は制限されています。
元の身体の持ち主である武藤遊戯の意識については後続の書き手様に委ねます。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(遊戯)@遊☆戯☆王シリーズ】
遊戯に支給。遊戯が原作・アニメおよび映画・ゲームと使用したカードで再構築されたデッキ。
決闘王であるアテムならシンクロ・エクシーズ・ペンデュラムにも引けをとらないだろう。

【ミニ八卦炉@ 東方Project】
霊夢に支給。遊戯との決闘に敗れたため、アンティとして遊戯に渡した。
異常な火力を持ち、山を一つ焼き払うことからとろ火まで調節可能。
開運。魔除けの効果もある。
緋々色金製のそれは、錆びない上にあらゆる環境に対応できる。
また、空気清浄機の機能もある。
【これがない生活は考えられない】霧雨魔理沙

☆彡 ☆彡 ☆彡


380 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:46:30 mCy024DI0
「……」
(魔理沙のアレなら、おそらく決闘(デュエル)を通さない決闘でもアテムさんの生き抜く確立が上がるはず)

そう。
決闘の腕前は合格。
しかし、あくまで決闘(デュエル)での決闘。
自分以外の決闘者にはカードを使用せず己の体技で襲う決闘者もいる筈。
だからこそ、護身用にもなるミニ八卦炉をアンティとして譲った。

(だけど……もし、アテムさんが斃れ、ハ・デスに抗う手段がなくなった場合は……)

そのときは、優勝も視野に入れなければならない。
もちろん、人間を軽々しく死なせるわけにはいかない。
しかし、博麗大結界を守護する自分は幻想郷へ戻らなければならない。

あるカードショップの店長である老婆が語るのは、青き龍は勝利をもたらす。しかし、紅き竜がもたらすのは勝利にあらず……可能性なり。

”紅白”の巫女霊夢にもたされるのは、はたして

【博麗霊夢@東方Project 】
[状態]:疲労(極小) 負傷(極小) 
[装備]:デュエルディスクとデッキ(青眼と真紅眼)@遊戯王シリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1
[思考・状況]基本方針:異変解決並びにハ・デスの退治(最悪の手段も考慮)
1:とりあえず、会場全体を探索する
2:決闘に乗った決闘者は退治もしくは……
3:もし、アテムさんが斃れ、ハ・デスへの接触が優勝以外になくなった場合は……
4:無力な決闘者と出会ったら博麗の巫女として守り保護する
[備考]
東方虹龍洞以降からの参戦。
アテムの語る世界が結界の外である外来の世界だと今のところは思っています。
アテムとの情報からハ・デスはDM界の精霊ではないかと推測しています。
アテムの知り合いの仲間の名前を知りました。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(青眼と真紅眼)@遊☆戯☆王シリーズ】
霊夢に支給。青眼と真紅眼を中心にしたデッキ。
それぞれの元の使用者である海馬と城之内が使用したカード(原作・アニメ・ゲーム)のミックス
【巡り合うかどうか……戦う勇気次第さ】BYカード屋の店長


381 : え?これは遊戯王二次創作ではなく、パロロワです ◆s5tC4j7VZY :2022/05/29(日) 11:46:42 mCy024DI0
投下終了します。


382 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:50:42 eoWUnLoI0
投下します


383 : 月光のアザレア ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:51:17 eoWUnLoI0
あの時から、全てを捨てる覚悟など出来ている。

俺の妹は、世界のために死んでしまった。

世界が妹の死を望んだというのなら。

俺は、妹の為の世界を作ってやろう。


○ ○ ○


吹き荒ぶ冷たい風、夜空の下に広がる白銀の世界。

「はぁ……はぁ……っ!」

たった一人、走る少女がいる。
小さな身体で、目立つピンクの髪を揺らめかせ。
それでも、背後に迫る死の脅威から逃げようと必死に足を動かして。
だが悲しきかな、少女は雪原に足を取られて転んでしまう。

「うぅ……。」

呻く少女の背後。
黒紫の髪。貴族のような金の刺繍が施された黒衣装を身に纏い。
倒れ伏す少女に槍を向ける一人の男。
その瞳は薄紫の一筋の光を宿していている。
逆に言えばそれ以外何も灯っていない。
彼にとっての星は今は何処にも居ない。
それを取り返すために彼は殺し合いに乗った。

「許せなどとは言わん。だが、俺は取り戻さなければならん。」

男はそう告げる。既に過去との決別は済ました。
修羅。ただ一人のみへの愛へと捧げた男の覚悟。
たった一人の、世界のために犠牲となった妹の為に。

「……アーニャ、しにたく、ない、よ……。」

少女の、アーニャと名乗った年端も行かぬ子供の切なる呟きが男の耳に入る。
少女に逃げられる余地はない。
機械仕掛けの吟遊詩人から逃げられるわけがない。
これが現実、どうしようもなく訪れる残酷な真実だ。

「(ちち……はは……ボンド……)」

少女の脳裏によぎる、家族の姿。
少女だけが知っている、偽りの両親の裏の顔。
それでも家族であろうと、家族であることを選んでくれた諜報員(ちち)と殺し屋(はは)。そして、新しい家族(ボンド)。
それが少女にとっての心残り。自分が居なくなってしまったことで引き起こる結末が、何をもたらすか、それを理解した上で、そんな結末なんてまっぴら御免だと、死にたくなかった。

「……だから、死ね。」

無情にも、振り下ろされる槍。
少女の言葉に何を思ったのか、その紫光を張り付かせた瞳には何も映らず。
淡々と、黙々と、何の感傷が無いようにも見える。
本当に何も感じていないのか。

少女だけは、男の本心がわかっていた。
アーニャという少女は超能力者で、人の心が読める。
だから眼前の男、ニンギルスの抱えた悲しみも嘆きも怒りも理解できて。
それを口にする余裕も時間も残っていない。
少女はただ死する運命を座して待つしか無かったはずだった。


384 : 月光のアザレア ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:51:34 eoWUnLoI0
「ちょぉぉっと、まったぁぁぁぁっ!!!」

吹き抜ける大風が、アーニャと男の狭間に割り込む。
雪原の白を吹き飛ばし、アーニャを庇うかのように現れたのはまた別の少女。

(なんかへんなのきた!?)
「……誰だ?」

内心が漏れ出したような驚愕の表情を浮かべるアーニャに対し。
男の方は無感情な呟きで乱入者の正体を問う。
雪煙が晴れ、見えた姿は中華風の僧衣の様なものを着飾った、二対の扇子を両手に携える。

「そこのあんた! 誰か知らないけれど、こんな小さな子供を襲うなんて、この私が許さないから!」
「……。」

高らかに叫ぶ変わった衣装の少女に、男は冷ややかな目で見つめ、槍を構える。
男にとって、今更殺す人数が増えた程度の事である。
即思行動、先手必勝。振り翳された槍の凶刃は少女へと迫る。

「う、うわあぁーっ?!」
「……?」

だが、その一撃は既の所で避けられる。
避けられた、と言うには男にとって違和感の感じた結果である。
少女当人からすれば「あっぶなっ!?」という感じの冷や汗顔であるが、男にとっては不自然な感覚ではある。

「そっちがその気ならこっちだって容赦しないんだから! 怪我したらごめんねっ!」
「――!」

少女の扇子の先端に炎が灯る。
さながらジェット噴射のように放出された炎の渦が男に迫る。
だが男は動揺もせず、視界を埋め尽くし己を飲み込もうとする炎渦の壁をその槍で一閃し霧散させる。
……既に男の周囲に二人の少女は居なくなっていた。

「……逃げたか。」

仕留め損ねたが、そこは別段問題というわけではない。
問題は自分に立ち向かってきた少女。
武器は扇子。異能は火炎。そして彼女から感じた微かな違和感。
その違和感は間違いなく此方の願いを叶える道中における壁になる。
必ず始末しなければならない。

「次は仕留める。」

全ては妹のため。その為だけに、かつての仲間。妹の幼馴染だった男すら置き去りにして自分はこうなった。妹を蘇らせる算段がついた途端にこの有様だ。
だが、ハ・デスの言っていた事は逆に好都合である。
パラディオンが邪魔をしようがこれなら奴らが自分を止める手段など無いのだから。
例えどれだけ屍山血河を築き上げようと。
例えアウラムと剣を交える事になろうとも。
ニンギルスは、オルフェゴール・ロンギルスは止まることなど出来ないからだ。



【オルフェゴール・ロンギルス@遊戯王OCG】
[状態]:健康、漆黒の決意
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:妹を蘇らせる為に優勝する。今更躊躇などしない。
1:先程の女は要警戒。次に出会ったなら確実に仕留める。
[備考]

『支給品紹介』
【一伐槍・真@グランブルーファンタジー】
ロンギルスに支給。本来は十天衆の一人ウーノが所持する天星器。


385 : 月光のアザレア ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:51:55 eoWUnLoI0



私は最強じゃないといけなかった。

私は強くなければいけなかった。

でも、そんな弱さもみんなは受入れてくれた。

だから、私は強くなくたって、絶対に勝ーつ!!


○ ○ ○


「かっこよかった!」
「いやぁ、照れるなぁ〜!」

颯爽を現れ自分を助けてくれた少女、魔法少女こと由比鶴乃に対し、アーニャは燦々と輝いた瞳で見つめていた。
助けるためだったとは言え素性バレになったために、話せることだけは話したが、まあそういう事話したらこんな女の子なら目を輝かせたくなるよねと。
まあ、こんな状況下で隠すも何も無いというのが事実ではあるけれど。

「でも、やっぱりちちとははのほうがかっこいい!」
「あうっ!? ……そ、そうなんだね。」

子供とは無邪気で素直である分、やはり身近な両親に影響されるというわけで。
それはそれで鶴乃にはこのアーニャの発言がグサッと刺さるも、そこはそこ。

「大丈夫だよアーニャちゃん! 君のお父さんもお母さんも、私が絶対見つけてあげるからね!」
「なんか、すごくふあん。」
「そこまでどストレートに言われとちょっと傷つくんだけど!?」
「むり、しない?」
「あーそっち? だったら大丈夫だよ!」

アーニャの何気ない一言にも鶴乃は胸を張ってそう断言する。
無理が祟って大変なことになったのはつい最近の話。
貼り付けた笑顔の裏で苦しみ続けたのは前までの話。
そんな自分はみんなのお陰で立ち直れたから、頼ることの出来る仲間を改めて知れたから。

「……アーニャも、つるののこと、てつだう!」
「はは、ありがとうね、アーニャちゃん。」

心を見透かしたような(実際超能力で覗いての)発言に、鶴野もまた元気付けられる。
まずいるかどうかという前提になるのだが、鶴乃にとって一番心配なのは間違いなく環いろはである。
エンブリオ・イブとの決戦における、アリナ・グレイの凶行の結果。いろはは探していた妹とその友人たちを失った。
その事実に、誰よりも悲しんでいるのはいろはだから。
抱えきれない感情抱き続けた果ての悲劇を、由比鶴乃は知っている。
悲しみも苦しみも、憎しみも、何もかも忘れずに、それでも誰かに手を伸ばす彼女に、彼女もまた救われた内の一人だから。

(……いろはには、私のようにはならないでほしいよ。)

そう、心の内に秘めながら、魔法少女・由比鶴乃はアーニャという少女と共に行く。


【由比鶴乃@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いなんて乗らないに決まってる!
1:アーニャちゃんの家族を探す。
2:いろはは勿論、みかづき荘のみんなは心配
3:あの男の人、何だったんだろう……?
[備考]
※参戦時期はファイナルシーズン後

【アーニャ・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:疲労(小)、雪原に転んだことで体温が若干低い
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:ころしあいにはのらない。
1:ちちとはは、ボンドをさがす。つるののしりあいもさがす。
2:つるのはかっこいいけど、なんだかふあん。でもちちとははのほうがかっこいい。
[備考]
※参戦時期はボンドが家族に加わった後


386 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:52:07 eoWUnLoI0
投下終了します


387 : ◆2dNHP51a3Y :2022/05/29(日) 14:53:40 eoWUnLoI0
ニンギルスの装備に一伐槍・真@グランブルーファンタジーを追記し忘れていました
申し訳ございません


388 : ◆0EF5jS/gKA :2022/05/29(日) 15:05:28 0QzLVEAo0
失礼いたします。
拙作の「偉大なるう○ちじゃっ!」をwikiにて以下のように修正しました。

「ではお前たちにも教えよう、ピンクう○ちくんの偉大さの理由を…」

(様付けまでとうとうしちゃったよ…)

「ではお前たちにも教えよう、ピンクう○ち様の偉大さの理由を…」

(様付けまでとうとうしちゃったよ…)

修正は以上です、最後に投下をさせていただきます。


389 : 衝突するもしもともしも。 ◆0EF5jS/gKA :2022/05/29(日) 15:06:04 0QzLVEAo0
「ふ、ふざけるな…許せん…!!許されない…!!許さなーーーい!!!!!」

首輪を否応なしに付けられ
ちびで虫みたいなオレンジ色を基調体表に斑点だらけの化け物が憤る。
そのなはセル……というのは元の名前であり
現在の名前はセルリンという名前だ。

「なにがなにが殺し合いだあ!
今私はそれどころじゃないんだ!!」

人造人間17号を吸収し、第2形態となったセルは
そのまま18号を吸収し完全体へのパワーアップをもくろみ
パワー、スピード、テクニック、頭脳、精神力
全てにおいて究極でパーフェクトな超人となるはずであった。

しかし不幸な事故により18号ではなく
誤ってクリリンという地球人を吸収した結果
セルリンへ進化…ではなく退化してしまい
気は大幅にダウンし弱くなってしまった。

こんな状態で襲われてはひとたまりもない。
本来なら格下のヤムチャ&天津飯にすら苦戦するほどに
弱体化してしまったのだ。
殺し合いの舞台で孫悟空をはじめとした
サイヤ人たちに遭遇してしまえば瞬殺されるに決まっている。

「こ、このセルを…!!最強になるはずの
オレを弄びやがって……!!ちくしょう………!!!
ちくしょーーーーーー!!!!!」


「おい黙ったらどうなんだ、品のないヤツだ…やかましいぞ。」

「こ、こんな時だれだ!な、何者だ!…!?貴様は!?」

現れた男は黄緑の肌にフリーザ軍の戦闘服を身につけた緑髪の宇宙人であった。




「デュエルか…優勝時に願いを叶えるのは素晴らしいが
私の偉大なる夢はもう叶えられたのだよ。」

本来であればデュエルを強要されるという
前例のない事態に憤り困惑し、
生き残って願いを叶えようと暗躍するはずであった。

だがその男は召喚される前に誰もが望む
永遠の命と終わらない美しさをドラゴンボールで手に入れたのだ。


永遠となった男の名はザーボン
全宇宙で猛威を振るうフリーザ軍の大幹部“だった”者だ。

ザーボンは当初首領であるフリーザの目的である
永遠の命という願いを叶えるために
ナメック星に存在するドラゴンボールを集めていた。

だが永遠の美しさを欲したザーボンは
フリーザを裏切り、かつての仲間たちを倒し欺き
醜い裏切りの果てに願いを叶えたのだ。

このバトルロワイヤルに呼ばれたのは
願いを叶えた直後であった。

「磯野とハ・デスとやらめ…つまらんまねを…
ゴキゲンなところをこんな茶番にまきこむとはな…」

願いを叶える前に呼ばれたのであれば
優勝してなにがなんでも願いを叶えることに執着しただろう。
だがその願いはすでに叶えられた。
そのためザーボンに優勝景品の願いにそれほど興味は無かった。
だから今デュエルにおける目的はここから抜け出すことである。
そのためにさっさと他の参加者を一人残らず殺すことを優先するザーボンであった。

<<許されない…!!許さなーーーい!!!!!

突如怒りと悔しさが爆発したような怒声が響き渡った。

「なんだ?もう闘い始めたやつがいるのか…?」


390 : 衝突するもしもともしも。 ◆0EF5jS/gKA :2022/05/29(日) 15:06:30 0QzLVEAo0
怒りの叫びがきになったザーボンは聞こえた方向へ足を運んだ。



「こ、こんな時だれだ!な、何者だ!…!?貴様は!?」

セル自身は直接その宇宙人を見たことはない。
だが服装には覚えがある。
この特徴的な服はフリーザ軍が身につけていた戦闘服だ。
スパイロボットが入手したデータにあった映像で
セルはフリーザとその軍の戦闘員を見たことがある。

そのため緑髪男をフリーザの配下と判断することができた。

「その反応からして私を知っているようだな?醜いお前のほうこそなにものかな?」

叫びの主を見たザーボンはそいつを醜い見た目ゆえに心底嫌悪する。
ザーボンは己より美しい者も許せないが醜いやつも許せない
変身した気色悪い外見の自分をみているように思えるからだ。


「お前なんかに名乗る必要はない!今更フリーザごときの
手下がでてきたところで私敵うわけがないんだあ!!」

「フリーザのことも知っているのか、いまとなってどうでもいい奴の名だ、
それより敵うわけがないだと?そのお言葉は全部返してやろう。
永遠の命…そして終わらぬ美を手に入れたこの私に
きさまのようなゴキブリなんかが勝てると思うか?」

「ほ…ほざけ…パーフェクトになれるはずだった
このセルに舐めた口ききやがってええーーー!!」

本来のセルであれば今更のこのこでてきたフリーザのしたっぱごとき
仮に何も吸収していない初期形態でも一瞬で殺せる、
しかしクリリンを吸収し大幅に弱体化したセルに怒りと戦意はあれど
勝てる気はあまりしないというのが本音だ。
それでも負ける可能性を認めずにセルは気を全開に放ちながら
猛スピードでとびこみ本気のちからで殴りかかった。

ザーボンはなすすべ無く、
一切の行動ができないまま思い切り頬を殴られた
当然だ、いくら弱くなってもセルが優位で
ザーボンとの実力差はそれなりに開いていた。

セミがいくら弱くなろうがさらにか弱い小蟲に
襲われてもほぼ殺されない状況と似たようなものだ。

「がはっ!」

重いいちげきをかまされたザーボンは後方にぶっ飛ばされ
倒れ込みながら吹っ飛ばされた。
気絶はしたが一発で死んだわけではない。

本来強すぎる力や万能の能力に対して今いる
デュエルの舞台では制限が課せられ力が低下することもある。

もとの世界であればこの一発によってセルリンの勝利で終わっていただろうが
セルリンもさらに弱体化したため、ザーボンは死なずに済んだ。

「はぁーはぁー…この俺を舐めるからだバカめ…」

ぶん殴ったセルも制限というさらなる弱体化の影響なのか
一回の攻撃だけで全力で走り抜けたときと同じくらいに疲労した。
疲れで冷静な判断力が鈍ったのか今殴ったザーボンを殺した思い込んでいる。


391 : 衝突するもしもともしも。 ◆0EF5jS/gKA :2022/05/29(日) 15:06:58 0QzLVEAo0
「たかが…な…殴っただけでこんなに疲れるのは
あ、ありえん…笑えんジョークだ…これも制限とやらの影響だというのか…」

「い、磯野…!そしてハ・デス!!
この私を巻き込みやがって…! 許しは絶対にせん!!
優勝し願いを叶えたら貴様ら皆殺しだーー!!!」

磯野とハ・デスへの討伐を叫んで誓った激怒のセルリンは
その場を駆け抜けて離れた。
その粗暴ぶりはかつてザーボンの同僚ドドリアのようにも見えた。

全力で体を動かせばかなり疲労するとさっき知ったはずだが
怒りで冷静さを大きく欠いたのかすっかり忘れているようだ。

【セルリン@ドラゴンボールZ(PS2)】
[状態]:疲労(大)、激怒
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:参加者を皆殺しで優勝を目指す。
1:手当たり次第参加者を殺す。
2:優勝時の願いで完全体に進化させる
3:願いを叶えた後は主催者も皆殺し
[備考]
※制限により大幅に弱体化しています。
※ザーボンは死んだと思っています。
※セルリンを把握できる動画はこちらです
ttps://www.youtube.com/watch?v=X4ofKxbURpQ


「お、おのれ…あの虫けらめが…」

気絶したザーボンがよろけつつも起き上がった。

「ゆ、ゆだんしたぞ…ゴキブリのようなおチビだとおもっていたが…
それなりにやってくれるではないか…」

不老不死となりおごり高ぶっていたのが仇となった。
油断さえしなければ無防備に殴られることなく
あんな雑魚ごときすぐさま消し飛ばせたはず、

「なっ!!??」

ザーボンの口と鼻から醜い血が流れていた。
永久の美そのものとなったこの私が血をながす?
ふざけているのか、真に美しい私が血でよごれることなどあってはならない。

薄汚くなるのはドドリアのような単細胞とグルドのような吐き気のする連中で十分だ。

なのにあのおチビは私を血で汚くした。この世で
最も許されない罪をあのやろうは罪を犯した。
この世でもっとも美しいザーボンは一瞬だろうが
ほんの少しであろうが美から離れてはならないのだ。

永遠の命と若さを手に入れたことでザーボンのナルシストぶりはより激しくなっていた。

自分の手で美しさから離れる例外があるとすれば
あの醜い化け物の姿に変化しなくてはならぬほど
強い怪物に遭遇したときだけだ。

「やってくれたな醜いちびヤロウが…
貴様なんかがこの私は殺せたなどと思うなら
大間違いだ…次こそは差をみせつけ殺してやるぞ、
己の醜さをたっぷり教えながらな…」

「……」

「そういえば支給品とやらを見ていなかったな…
一体なにが渡されている…?」

デイパックのなかにあるはずの道具を確認していないことを思い出した
ザーボンは中身の確認をはじめた。


【ザーボン@ドラゴンボールZ Sparking! NEO】
[状態]:口と鼻から流血(小)、苛立ち(中)
[装備]:ザーボンの戦闘服
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:参加者を全て殺し会場から脱出する。
1:支給品をすべて確認する。
2:あの醜いチビ(セルリン)は次会ったら絶対殺す。
3:参加者は発見次第殺害する。
[備考]
※参戦時期は不老不死の願いを叶えた直後です。
※制限により大幅に弱体化しています。
※不老不死も制限されて頸をはねられるような致命傷を負えば死にますが
ある程度のダメージであれば不老不死の影響で再生する可能性があります。
※IFのザーボンを把握できる動画はこちらです
(その1) ttps://www.youtube.com/watch?v=YdP0lzQ4j44
(その2) ttps://www.youtube.com/watch?v=crlp1I1_QHc


392 : 衝突するもしもともしも。 ◆0EF5jS/gKA :2022/05/29(日) 15:07:17 0QzLVEAo0
投下は以上です。


393 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/29(日) 19:20:31 dq.bvlbU0
投下します。


394 : 天内理子は戻りたい ◆bLcnJe0wGs :2022/05/29(日) 19:21:16 dq.bvlbU0
 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





『理子様 私はここまでです 理子様…どうか…』

 4歳の時に両親が交通事故で亡くなってから、天元様との『同化』に適応する『星漿体』という特別な存在であった自分と一緒にいてくれていた、お世話係の黒井。
 代々星漿体に仕える家系の人間であるが、それが嫌で一度は短大に行ってしまったものの、自分に惹かれて戻って来てくれた彼女。

『黒井 大好きだよ』
『ずっと…!! これからもずっと!!』

『私も…!! 大好きです…』

 天元様との同化が迫る中、お別れの言葉を言ってくれた。

『ここが…』
『あぁ』
『天元様の膝下』
『国内主要結界の基底』

『薨星宮 本殿(こうせいぐう 本殿)』

 星漿体であるが故に、その身を狙われていたところを護衛してくれた呪術高専の五条と夏油。

『階段を降りたら、門をくぐって、あの大樹の根元まで行くんだ』
『そこは高専を囲う結界とは別の特別な結界の内側、招かれた者しか入ることはできない 同化まで天元様が守ってくれる』

 自分は同化を決意していたはずだったのに

『それか引き返して、黒井さんと一緒に家に帰ろう』

『…え?』

『担任からこの任務の話を聞かされた時、あの人は″同化″を″抹消″と言った』
『あれはそれだけ罪の意識を持てということだ』
『うちの担任は脳筋のくせによく回りくどいことをする』
『君と会う前に、悟との話し合いは済んでる』

 夏油は天元様との同化はせず、黒井さん達のもとに引き返し、家に帰るという選択肢を与えてくれた。


『星漿体のガキが同化を拒んだ時ぃ!?』
『……そん時は同化はなし!!』

『クックッ いいのかい?』
『あぁ?』
『天元様と戦うことになるかもしれないよ?』
『ビビってんの?』
『大丈夫、なんとかなるって』

 自分と出会う前から同化を拒んだ時のことも考えてくれた2人。

『私達は 最強なんだ』
『理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保証する』

 そんな彼の提案に、自分はこう答えた。

『……私は』

『生まれた時から星漿体(とくべつ)で、皆とは違うって言われ続けて 私にとっては星漿体(とくべつ)が普通で、危ないことはなるべく避けてこの日のために生きてきた』
『お母さんとお父さんがいなくなった時のことは、覚えてないの もう悲しくも寂しくもない』
『だから同化で皆と離れ離れになっても、大丈夫って思ってた』
『どんなに辛くたって、いつか悲しくも寂しくもなくなるって』
『…でもっ、でもやっぱり』
『もっと皆と… 一緒にいたい』
『もっと皆と色んな所に行って、色んな物を見て …もっと!!』

 黒井さんや沖縄旅行に水族館といった思い出を作ってくれた、五条さんや夏油さんともっと一緒に居たい、そんな気持ちがこみ上げて、同化をせずに彼らのもとに戻る道を選んだ。

『帰ろう、理子ちゃん』

 そんな自分に夏油さんが手を差し伸べてくれた。

『… うん!!』

 ─そんな筈だった。


タンッ


395 : 天内理子は戻りたい ◆bLcnJe0wGs :2022/05/29(日) 19:22:01 dq.bvlbU0



 銃弾の音が鳴り響いた。
  頭の中に 強い痛みが横切っていった。

 ──まさか、 まさか、安全だった筈の場所にまで自分をつけ狙う追っ手が訪れているとは思っていなかった。

 意識があっという間になくなっていく。

 もしかしたら自分は死んだのか、そうではないかと思っていた

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ─気がつくと、頭の痛みはふっと消えていた。

 それどころか、知らない場所に居て、その周辺にも見知らぬ人々が集められていた。

「────!? ────!? ────!?」

 先程まで自分の護衛をしていた三人の苗字を呼ぼうにも、声を出せない。

(うっそ… 声が出せない!)

 もしかしたら、彼らは例の追っ手に倒されてしまったのか、そして今居る場所に拉致されてしまったのかと
 自分、理子は想像してしまった。

「──────────────!!」

 絶叫しようにも、相変わらず声は出ないままだ。

 それから間もなくして、決闘(デュエル)の説明会が始まり、会場へと転送された。


 ◆◆◆◆◆◆


(五条さん、夏油さん、黒井さん…)

 ─転送先で彼女は、その場に居るのか、そもそも巻き込まれているのかもわからない3人を心配しながら、声もあげずに身を潜めている。
 声をあげたところで、自分が狙われるリスクは大きいからだ。

【天内理子@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:これからどうしよう…?
1:今は狙われるのを防ぐ為、声をあげずに身を潜める。
2:自分に危害を加えない参加者と合流したいけど、無理かな?
3:自分に危害を加える様な参加者やNPCには会いたくない。
4:デュエルに巻き込まれるより前に自分の護衛をしてくれていた三人(黒井美里、五条悟、夏油傑)の安否が心配。
[備考]
※伏黒甚爾に銃弾で頭を打ち抜かれた後からの参戦となります。


396 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/29(日) 19:22:17 dq.bvlbU0
投下終了です。


397 : ◆bLcnJe0wGs :2022/05/29(日) 19:32:41 dq.bvlbU0
失礼します。
>>395の『もしかしたら、彼らは例の追っ手に倒されてしまったのか、そして今居る場所に拉致されてしまったのかと
 自分、理子は想像してしまった。』
という文章を
『もしかしたら、彼らは例の追っ手に倒されてしまったのか、そして自分、理子は今居る場所に拉致されてしまったのかと想像してしまった。』
に修正させていただきます。


398 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/29(日) 20:54:54 je1qadiU0
投下します


399 : ヒステリック・ブルー ◆NIKUcB1AGw :2022/05/29(日) 20:56:04 je1qadiU0
静かな草原を、黒いワンピースを身に纏ったロングヘアの少女が走っていた。
彼女の名はブルー。
不思議な生き物、ポケモンを従えるポケモントレーナーの一人である。

(ああ、もう! なんでこんなことになっちゃったのよ!
 いくら私でも、人殺しはさすがにごめんよ!)

これまで目的のために窃盗や詐欺などの犯罪行為を働いてきたブルーだが、さすがに殺人の経験はない。
みすみす殺される気はないが、だからといって他人を殺すというのもとうてい受け入れがたい。

(そもそも、戦力がこの子だけじゃ……。
 正直、自衛が精一杯よね)

ブルーは、右手に握ったモンスターボールに視線を送る。
デイパックには幸いにも彼女自身のポケモンが入っていたが、それも1体だけ。
その1体は、プリンの「ぷりり」である。
ブルーにとって付き合いも長く信頼するポケモンではあるが、ぷりりの能力はどちらかといえばサポート向け。
正面切っての戦闘は、あまり期待ができない。

(とにかく、生き残るためにはもっと戦力が必要よ。
 どうにかお人好しを見つけて、味方につけて……。
 それと、見晴らしがよすぎるこの場所から早く離れないと!)

そんなことを考えながら、ブルーがなおも走り続けていた、その時。


オオオオオオオオ!!


鼓膜を貫くような雄叫びが、周囲に響き渡った。
反射的に、ブルーは雄叫びの響いてきた方向……すなわち空に視線を向ける。
そこには、闇夜に映える白い体を持つ巨大なドラゴンの姿があった。

「何よ、あれ……」

ドラゴンの威容に、ブルーはすっかり圧倒されてしまっていた。
その神々しさは、シルフカンパニーで目にした伝説のポケモンたちにも引けを取らないものだった。
ついその姿に意識を奪われ、ブルーは足を止めてしまう。
やがてドラゴンは、顔をブルーに向け口を開く。
その口の奥では、何かが光を放ち始めた。

(あ、これってヤバいんじゃ……)

何らかの攻撃が飛んでくる。そう認識したブルーであったが、同時にもはや逃げても遅いのではという思いが頭をよぎる。
それでもかすかな可能性にかけて、ブルーが再び走り出そうとした時。
突如猛スピードで近づいてきた影が、ブルーを担ぎ上げた。

「へ!?」

困惑するブルーを連れ、影はそのまま離脱する。
数秒後、放たれた破滅の風は大地に叩きつけられ、巨大なクレーターを生み出した。


◆ ◆ ◆


「ここまで来れば大丈夫ですかねー」

ドラゴンから充分に距離を取ったところで、影はブルーを地面に降ろした。
ブルーはそこで、ようやく自分を助けた人物の全体像を把握する。
それは、マントと体にフィットする青いコスチュームを纏った人物だった。
顔はフルフェイスの仮面に覆われているが、声からして女性らしい。
胸の大きな膨らみも、それを裏付けている。
「今の私じゃかなわないわね」などと考えてしまうブルーであったが、すぐにそれを頭から追い出す。

「とりあえず、助けてくれたことには礼を言うわ。ありがとう」
「いえいえ。間に合うかどうかは賭けでしたが、上手くいってよかったです〜」

ブルーの言葉に、仮面の女性は間延びした口調で応える。
見ず知らずの自分を助けたことと合わせて、どうやら脳天気なお人好しらしい、とブルーは分析する。
利用するにはうってつけと判断したブルーは、さらに話しかける。

「私はブルー。あなたの名前も聞かせてくれるかしら?」
「もちろんです。世間を騒がす怪盗ラパン……じゃなくて、ルパンブルー。
 その正体は……」

女性は手にした銃から、青い飛行機のおもちゃのようなものを取り外した。
すると、彼女の纏っていたコスチュームが粒子になって霧散する。
その下から現れたのは、茶髪の見目麗しい女性の姿だ。

「小説家、青山ブルーマウンテンです♪」


400 : ヒステリック・ブルー ◆NIKUcB1AGw :2022/05/29(日) 20:57:03 je1qadiU0
【ブルー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]健康
[装備]モンスターボール(ぷりり)@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2(ポケモンはなし)
[思考・状況]基本方針:何が何でも生き延びる。だが、殺人はしたくない。
1:青山を利用する
[備考]
参戦時期はレッド編とイエロー編の間。


【青山ブルーマウンテン@ご注文はうさぎですか?】
[状態]健康
[装備]VSチェンジャー&ブルーダイヤルファイター@快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いにあらがう
1:ココアさんたちが心配です
2:それはそれとして、怪盗になるのは楽しかったですね♪


【モンスターボール(ぷりり)@ポケットモンスターSPECIAL】
プリンの「ぷりり」が入ったモンスターボール。
ぷりりは戦闘力こそあまり高くはないが、飛行してブルーを運んだりとサポート役として各所で活躍している。


【VSチェンジャー&ブルーダイヤルファイター@快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー】
VSチェンジャーはルパンレンジャーとパトレンジャーの共通装備である、武器兼変身アイテム。
戦闘機型アイテム「ブルーダイヤルファイター」をセットし、ダイヤルを「2」「6」「0」と合わせることでルパンブルーに変身できる。
変身に特に条件はなく、最終回では正規変身者である宵町透真以外の人物がルパンブルーに変身している。
なお、ブルーダイヤルファイターの巨大化は制限により不可能。


『NPC紹介』
【青眼の白龍(ブルーアイズホワイトドラゴン)@遊☆戯☆王】
攻撃力3000/守備力2500。
ご存じ、海馬瀬人の魂の相棒。
レアモンスターのため、会場内にNPCとして存在するのは多くても2,3体程度と思われる。


401 : ◆NIKUcB1AGw :2022/05/29(日) 20:58:29 je1qadiU0
投下終了です


402 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:22:56 DH12C1Ro0
投下します


403 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:24:43 DH12C1Ro0
 ――私には救うべき国がある。
 だから私は負けられない。こんな所で寄り道をしている場合じゃない。
 今すぐにでも帰りたい。帰らなければならない。

 何故なら私には守るべき国があるから。
 何故なら私には敵対国の閃刀姫と戦う使命があるから。

 ――違う。
 今の私にとって大事な理由は、そんなことじゃない。

 何故なら私は――あの閃刀姫のことが好きだから。

 世間的には異常で、頭がおかしいと思われるかもしれない。
 そもそもレイとは敵だから。本来なら命を賭して殺さなければならない存在だから。
 そんなことはわかっている。だから私は何度も全力で刃をぶつけた。殺そうとした。
 その時はまだ好きなんて感情がなくて――戦争に勝利するためだけに殺し合っていた。きっとそれが民のためになるはずだから……。

 そう信じてずっと戦い抜いてきた。
 どれだけ痛くても、辛くても、苦しくても――それで自国のみんなが幸せになってくれたら、それで良いって。そんなふうに自分に言い聞かせていた。

 けれども――私は国に裏切られた。
 閃刀姫-ジーク。閃刀姫の名を冠しているけれど、閃刀姫とは程遠い存在。――最悪の兵器。
 私は自国に騙された挙句、ソレに取り込まれて――。そこから先はあまり覚えていない。とにかく地獄のような時間だったことだけは覚えている。
 ――あの時、戦力にもならない一般市民を何人、殺しただろうか?
 それすらも覚えていない。――覚えていないのに、ジークのボディが大量の返り血を浴びていたことだけは覚えている。ぬめり、どろり――なんとも形容し難い、嫌な感触だった。
 私は閃刀姫。戦士だからこれまで何度も血を見てきた。何度も返り血を浴びてきた。だけどその度にレイが止めに来たし、私自身も戦う気のない一般市民を戦争に巻き込みたくはなかった。だから覚悟を決めていない者を襲った覚えはない。

 だけどジークは――相手が誰であろうと容赦なくその命を奪っていった。私の意思なんて関係ない。ジーク自信のプログラミングによって。国の意思によって私は不本意にも大量虐殺の片棒を担ぐことになってしまった。

 ――もうあんな悪夢は二度と繰り返したくない。

 そう。あれは間違いなく悪夢だった。
 あの光景は誰がどう見ても地獄絵図。地獄をそのまま具現化したようなものだった。
 それはジークの核として利用された私にとっても例外じゃなくて――あんな地獄はもう二度と見たくない。……正直、あの地獄は冥界の王が開いた殺し合いなんかよりもよっぽど酷いと思うから。
 不本意に大虐殺してしまった私が冥界の王に目を付けられたのも必然的かもしれない。

 だけれど一つだけ、良い事もあった。
 あんな地獄を生み出して不謹慎過ぎるかもしれないけど……。

「――まったく、世話が焼けますね。ほら、起きてください。こんなことで倒れたら閃刀姫の名が泣きますよ」

 ジークを破壊したレイは、コアとして閉じ込められていた私のことを助けてくれた。
 本来なら敵同士。すぐに排除するべき対象なのに、彼女は私を救ってくれた。

「あな……たは……?」

 それなのに当時の私にはレイの行動が理解出来なくて。……だって、敵が敵を助けるなんて戦場では絶対に有り得ないことだと思っていたから。
 だから私は困惑気味にレイの顔を見つめた。きっと当時の私は、ほんとに私らしくもない表情をしていたに違いない。

「閃刀姫レイです。……今更名乗らなくても、あなたならよく知ってるでしょう?」

 そんな私にレイは堂々と名乗った。その名はもちろん私も知っていたけど、それは自分が敵だと明かしたようなものだ。――だというのに、レイは刀を構えずに私を抱えたまま見つめていた。……私は敵なのに、怖くなかったのだろうか?

「何度も刃を交わしたからもちろん知ってる……。でも、どうして敵のあなたが……」

 毅然とした態度で名乗ってきたレイに困惑は増していた。理解不能――それが率直な感想だ。それでも抱えられたまま、戦おうとしなかったのは……その時点で少しだけレイのことが気になっていたのかもしれない。

「苦しそうな人を助けるのに敵味方って関係あります?私はあなたを助けたいと思ったから、助けただけですよ」

 さもそれが当然かのように言い切ると、レイは私に微笑み掛けてきた。まるで私を落ち着かせるように。――幾度となく刃を交わしてきたけれど、レイのそんな柔らかな笑みは初めて見た気がする。


404 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:26:53 DH12C1Ro0

「それにあなたは利用されてただけじゃないですか。……正直あなたが列強の国の駒として扱われてることには薄々勘づいてましたけどね」
「たしかに私は利用されていたに過ぎないけど……それでもあなたを殺そうとしていた事実は変わらない。過去の行いは消せない……」
「そうですね。たしかに私は何度も殺されかけましたし、あなたという閃刀姫は本当に厄介な存在でした」

 そう。私は何度もレイを殺そうとした。私なんてレイにとっては厄介な存在でしかなく、助ける価値なんて何もない。だから彼女が口にした「助けたいと思ったから助けた」という言葉が当時の私には本当に謎だった。厄介なら助けなければいい。それが当時の私が思ったことだった。

「――本当に強くて厄介な好敵手(ライバル)でしたよ、あなたは」

 好敵手と書いてライバルと読む。その言葉は知識だけあったけど、当時の私にはそれがよくわからなくて。急にライバルなんて言われても、イマイチよくわからない。そもそもライバルの定義がわからない。好敵手という字面から考えるに『敵』も兼ねているのだろうか――とか。そんなことを考えていた。

「……そんなキョトンとした顔して、どうしたんですか?」

 ――はっ!
 レイに言われるまで、自分がそんな間抜けな顔をしているとは気付かなかった。普段は決してそんな表情しないはずだから……。だから私は恥ずかしくなって、咄嗟に顔を引き締めた。

「ふふ、今度はいきなりキリッとなりましたね。まさかあなたがこんな可愛い人だとは思いませんでした」

 ――か……かわいい…!?
 レイは閃刀姫(せんし)に向かって何を言っている?可愛いなんて、私たちにとって最も無縁な言葉のはず。
 それなのに彼女は私という戦士に可愛いと言って微笑む。その姿はとてもではないが、歴戦の閃刀姫には見えないものだったことをよく覚えている。

「私は閃刀姫。可愛くはない……」
「閃刀姫が可愛くないって誰が決めたんです?閃刀姫だって女の子じゃないですか」

 女の子――たしかにそれはそうかもしれない。だがそれ以上に私たちは戦士だ。戦士に可愛さなんて不要。そもそも幾多もの命を奪ってきた私にそんな言葉は似合わない。

「女の子を可愛いと思って何が悪いんですか?」
「たしかに私は女。……だけどそれ以上に私は閃刀姫。可愛いなんて言葉は、戦士への侮辱」

 ――当時の私は、今以上にどうしようもなく頭が固くて。だからレイの言葉を否定した上に侮辱だと切り捨てた。……そうするのが閃刀姫として当然だと思っていた。――思わされていた。

 何故なら私は日常らしい日常を楽しんだことがない。ただひたすらに修行して、訓練して。血が滲む程の修練を繰り返し、自分を鍛えるだけの日々を送っていた。――全ては自国のために。民のために。私の頭にはそれしかなかった。――今にして考えると、もしかしたら自国の上層部にそう刷り込まれていたのだと思う。

「まあ男性の戦士に言ったら、侮辱になるかもしれませんね。でもあなたは閃刀姫である前に女の子です」


405 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:27:26 DH12C1Ro0
 女の子。そんな言葉で呼ばれても、イマイチしっくり来ない。私は民に閃刀姫であることを望まれた。自分の性別なんて、戦士にとっては関係ない。

「納得いかない……っていう顔ですね」
「当たり前。私達は閃刀姫。可愛いという言葉とは無縁の、誇り高き戦士を求められた存在」

 ――閃刀姫の在り方は自国の民が決める。
 可愛さで何かを救えるならばともかく、そんなことは不可能。そもそも私達の居場所は戦場のみで、女らしい行動なんてしたことがない。女らしさなんて――可愛さなんて、欠片もない。

「そうですね。確かに民衆は私達にそういう在り方を求めていると思います」

 レイは私の言葉を否定せず、むしろ肯定した。閃刀姫がどんなものか、同じ閃刀姫である彼女が知らないはずもない。それにしても、じゃあどうして閃刀姫である私が可愛いなんて世迷い言を……。

「でもそれは勝手に民衆が求めてるだけです」
「……?」
「何を言ってるのかわからない――って言いたそうな顔してますね」

 レイは私の心を的確に読んできた。
 ――今にして思うと、当時の私はきっとものすごくわかりやすい顔をしていたのかもしれない。

「いいですか?私達は閃刀姫である前に女の子です。人間なんです」
「それはわかってる」
「いいえ、わかってません。だってあなたの思考回路、ロボットみたいになってるじゃないですか」

 ロボット……?
 彼女の言っている意味がよくわからなかった。私の思考回路は戦士そのもので、閃刀姫とはかくあるべしだと思っていたから。

「いいですか?人間は自分の意思で自由に動くものです。誰かに指図されるだけの存在なんて、そんなのロボットと変わりません」
「私は私の意思で閃刀姫として戦っている。ロボットとは違う」

 そう。閃刀姫になる道を選んだのは誰でもなく、自分自身だった。列強国に閃刀姫として抜擢されたことは事実だけれど……その運命を受け入れたのは私自身だ。
 それをロボットだなんて言われても、納得はいかない。
 ――当時の私は自国の駒にされたことを内心では理解していたのに、そんなふうに意地を張っていて。そんな私を見てレイは肩を竦めた。

「閃刀姫、閃刀姫って……いくらなんでも使命に縛られすぎです。たしかに私達はそういう役割を世間で求められていますが、必ずしもそれに律儀に従う必要はないじゃないですか」
「どういう、こと……?」

 ――本当に当時の私は頭が固すぎて。使命こそが生きる理由だと思っていたから、レイの言葉の意味がわからなかった。民衆がそういう在り方を求めているのなら、そうするべきだと――それが閃刀姫になる道を選んだ自分の使命だと。

「簡単な話ですよ。自分のやりたいように、生きたいように生きればいいんです。だから私はロゼ――敵であるあなたのことを救いました。そもそも好敵手がこんな形で死亡したら胸糞悪いじゃないですか。仲間を駒として扱う列強のやり方も気に入りませんし」

 やりたいようにやる。生きたいように生きる。いきなりそんなことを言われても、私にはよくわからない。
 これまでずっと使命だけのために生きてきた。それで民衆が救われるなら、自分はどうなってもいいと思っていた。
 だから同じ閃刀姫なのに使命に縛られた私とは別種の強さ――誇らしさすら感じるレイがほんの少しだけ、輝いて見えた。

「それとあなたは意外と可愛い顔をしてるんですから、たまには笑ったらどうですか?」

 レイは抱えていた私――後から知ったけどお姫様抱っこというものに似ているらしい――を降ろして。

 ――こちょこちょ。
 いきなり私のことをくすぐってきた。

「――ひゃっ!な、何をする……!」

 それが何故だかくすぐったくて、素っ頓狂な――情けなくて、不甲斐ない声を出してしまった。


406 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:27:49 DH12C1Ro0
 ちなみに何故だか――と思ったのは、当時の私には『くすぐり』がこんな感覚だとは知らなかったから。
 閃刀姫という役割に縛られていた私はこんなふうに触れ合ったことなんて一度もなくて。だから初めての感覚に驚いた。

「なにって、ただのスキンシップですよ」
「スキンシップ……?そんなもの、知識でしか把握していない……」
「それなら私が教えてあげますが、これがスキンシップというものです。くすぐったくてたまらないでしょう?」

 ニヤニヤとからかうように笑いながら、レイは私をくすぐり続けた。今までずっと真顔で刃を交わしていただけに、意外過ぎる一面だった。

「ほらほら。スマイル、スマイル♪」
「ま、まさかあなたがこんな性格だとは……」

 いつも真顔で戦っていた敵対国の閃刀姫。私のように真面目な戦士だと思っていたのに……それがまさかこんな謎の性格をしているとは思わなかった。
 ――今にして思うと、それはレイなりの優しさもあったのかもしれない。……いや、そうに違いない。

「そりゃこんな可愛い女の子が居たら、可愛がりたくもなりますよ。それが女の子同士のスキンシップです!」

 私をくすぐりながら、なんだか嬉しそうにレイは語る。
 ――きっとレイも女の子同士のスキンシップを知らなかったはずだと思う。後から知ったけど普通ならこんなふうにスキンシップをしないらしいから。それでも彼女なりに慣れないことをしたのは、レイが『普通の女の子』に憧れていたのかもしれない。
 私たち閃刀姫は孤独だ。――だからこそあの時は二人で孤独を埋め合わせていたのかもしれない。
 もちろん私を助けてくれたことは、きっと彼女の誇りや信念――そういうものだって理由だろうけど……。

「す、スキンシップはわかったけど……結局あなたが何をしたいのか、そこがわからない」
「何をしたいのか――ですか」

 レイが上空を見つめる。あれだけの惨劇が起こった後だというのに、そこには青空が広がっていた。

「綺麗な青空ですよね。この青空を守るためならどれだけでも戦える――なんてそんなことを思ってた時期もありました」
「あった……?過去形……?」
「よく気付きましたね。以前は本当にそう考えてたんですけど――ほら、アレを見てください」

 レイが青空の中に混ざった白いものを指さす。そこには何者にも囚われない自由な浮雲が大空に包み込まれていた。

「雲……?」
「そうです、雲です!」

 私がすぐに雲の存在に気付くと、レイは嬉しそうに笑った。

「あの雲を見て、何か思うことはありませんか…!?」
「私にはわからない。雲はただの雲……」
「そこは『綿菓子みたい』的な可愛い発言をちょっと期待してましたが……まあ、いいでしょう」
「綿菓子……!?もしかしてあなたは私を子供扱いしている……?」
「子供扱いというか、実際知能は子供みたいなもんじゃないですか。ずっと国の言いなりになってたでしょうから仕方ないですけどね」
「む……。私はそんなに子供じゃないはず……!」

 私が少し不機嫌に反論すると、レイはまた微笑んだ。――レイの笑顔は、太陽みたいで。見る度に心が暖かく照らされたことをよく覚えてる。


407 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:28:50 DH12C1Ro0

「そういうところも子供みたいで可愛いですよ」
「私は子供じゃない……」
「はいはい、そうですね。ロゼは立派な閃刀姫ですもんね」
「そう。私は一流の閃刀姫。――戦う術も知らない子供とは違う」
「なにちょっとドヤ顔してるんですか。そもそも普通の人はみんな戦う術なんて知りませんし、必要ありません」

 やれやれ――レイは肩を竦めて私の瞳を見つめてきた。

「……少し話が逸れちゃいましたね。私が雲を指さした理由――。それは私が雲に憧れているからです」
「……?」
「ほら。なんていうか、雲って自由じゃないですか。大空にぷかぷかと浮かんで、何にも囚われず自由気ままに浮いてるその姿――ちょっと羨ましいです」

 その時のレイは本当に羨ましそうに雲を眺めていて。それなのにどこか悲しそうにも見えて。

「それはつまり、あなたは自由になりたいということ……?」
「そういうことです。閃刀姫としてみんなを守るのも嫌いじゃないですが――私の望みは普通の女として、普通に生きることだったりします」
「普通に……?」
「さっきも言いましたが、普通の人は戦う術を知らないし、学ぶ必要もないんです。あなたにとっては戦闘が日常だと思いますけど……世間的には全然普通じゃないんですよ?」

 そう話すレイは同情したような視線で私を見てきて――。本当に私のことを哀れんでいるようで。

「だから争いが何も無い――私たち閃刀姫が普通の日常を過ごせるような、そんな日が来たら――」
「あなたの望みは、わかった」

 その時――どうしてそうしたのかは、当時の私にもわからなかったけど。
 気付いたらレイの手を引っ張って、走り出していた。目的はこの場を離れるため。
 当時の私にはまだレイを好きだという感情はなかった。それでも命を助けてくれた恩人の望みを知ったから。それになんというか――レイの言う普通というものが少しだけ知りたくなった。なによりもう二度とレイと戦いたくない。……列強国が私を裏切った時点で帰る場所なんて存在しないというのも大きかった。もしもまた国に帰れば、必ずまた利用される。今度は洗脳でもされて、レイにまた刃を向けてしまうかもしれない。

 そんなことになるくらいなら――私はレイが欲している自由の道を選ぶ。

「急に私の手を取って走り出しちゃって、どうしたんですか……!?」
「今すぐ互いの戦場から逃げる。――あなたの望みは私が叶える」
「いいんですか?私たち、閃刀姫ですよ?」

 そんなことを問い掛けてきたレイの声は、嬉しそうで。それが伝わってきたから――私の口元も少し緩くなってしまった。

「私たちは閃刀姫である以前に人間――あなたは確かにそう言った」
「言いましたね。……でもいいんですか?お互いの国から逃げたらあなたまで閃刀姫を辞めることになりますよ?」
「それでいい。……私もあなたの口にする自由という言葉が気になった。それにあなた自身にも興味がある」
「それは何よりです♪――ってそれ、愛の告白ですか!?女の子同士で愛を囁き合っちゃうんですか……!?」
「そういう意味じゃない。とりあえずあなたが自意識過剰で勘違いしやすいことはわかった」

 ――当時の私はそんなふうに適当にあしらったけど、まさか本当にレイのことを好きになるとは思わなかった。


408 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:29:14 DH12C1Ro0

 それから私たちは国を飛び出して旅に出た。目的もなく、ただ自由を味わうためだけに。釣りをしたり、料理をしたり。今までやらなかった日常を楽しんだ。

「どうですか?ロゼ。こういう日常も楽しくないですか?」
「うん。――こういう普通の日常も、悪くない」

 川で釣りをしながら、互いに顔を向けて笑い合う。心の底から笑うということをレイと出会って初めて知った。

「それにしても本当にロゼは可愛いですね。新しく妹が出来たみたいです」

 レイが私の帽子を取って、頭を撫でながら優しく微笑んでくる。――私とレイはいつの間にか家族のような関係になっていた。

「実は家族っていうものにずっと憧れていたんですよね。私の親は生まれて直ぐに私を閃刀姫の卵として施設に預けたので――」
「……私の家庭環境もそんな感じだった。それでも民が私を――閃刀姫を求めるなら、それで良いと思っていた」

 だけど――

「……それは昔の話。私はレイに出会って変わった。今まで空っぽだった心が、満たされてきた」

 だから――すごく恥ずかしいけれど。

「だから――私はレイが好き」

 家族としても。恋愛的な意味でも――。
 女の子同士でそんなことがおかしいなんて、わかってるけど――。

「そうですか。私もロゼのこと、大好きですよ」

 私が本心を伝えると、レイは優しく私を抱き締めてくれた。レイの体温が直で伝わって、心臓の鼓動が一気に加速する。今にも跳ね上がりそうになる。

「いつまでもこのまま――ずっと一緒にいましょうね」
「うん。……私はずっとレイの傍にいる」

 ――それはただの片思い。
 何故ならレイの大好きという言葉は、家族としてだから。
 それでもいい。レイと一緒にこの人生を過ごしていけるなら――それだけで私は満足だから。

 その平和を崩そうとするハ・デスは必ずこの手で倒す。相手が冥界の魔王でも関係ない。――レイのためなら、私はいくらでも戦える。
 ハ・デスを倒して決闘を終わらせるためにも私は歩を進めた。……もしもレイが参加していたら、彼女を守るために合流もしなければいけない。


409 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:29:38 DH12C1Ro0

 〇

「はじめまして。私はチノです……」
「私はロゼ。――閃刀姫ロゼ」

 暫く歩いて最初に遭遇した参加者は決闘者と呼ぶにはあまりにも弱そうで。それこそレイが言っていた『普通の日常』しか知らないような水色髪の少女だった。
 チノ――本名は香風智乃と言うらしい。彼女と情報交換してわかったことは、あまりない。本当に彼女が普通の日常を送っていた少女であること。閃刀姫を知らないことから世界が違うか、それとも平和な国に住んでいたか……。あとはリゼという友人が一時期ロゼ――つまり私と同じ名前を偽名として使っていたこと。あまり有意義な情報はなかったけど彼女がよく口にする『ココア』のことが一番気になった。――なんとなくだけど、この子の気持ちはわかった気がするから。

「チノ。あなたはココアが好き?」
「えっ!?きゅ……急に何を言ってるんですか、ロゼさん!」

 なんともわかりやすい反応……。これで周りを誤魔化せていると思っているのなら、チノは甘すぎる。初対面の私でもチノのココアに対する好感度の大きさはわかった。

「……どうして自分の心に素直にならない?」
「それは……ただの性格です。……本当はココアさんが嫌いなわけじゃないです。でもココアさんはいつもお寝坊さんで、ニンジンもダメで……ラビットハウスで働いてるのにコーヒーの区別すら出来ないような人で――」

 チノがいきなりココアのことを語り始めた。一見ただの悪口だけど……これはきっと愛情の裏返しに違いない。

「でも――ココアさんが来てから、安心する匂いが増えたみたいです。今まではコーヒーや緑茶やハーブの匂いが好きでしたが――今はちょっと、一番好きな匂いが変わりました」

 命懸けの決闘に巻き込まれた一般人とは思えないくらい穏やかな表情でチノはココアのことを語る。
 匂い――。チノはなかなか面白い表現を使ってきた。でも私もレイの匂いは安心して落ち着けるし、一番好きな匂いと自信をもって言えるから、気持ちはわかる。

「ところで決闘とはどんな対決をするのでしょうか?日向ぼっこ対決ならココアさんとしてたので、得意ですが……」
「チノはもしかして頭が残念ってよく言われる……?」
「頭が残念とは……!?たしかにココアさんの頭は残念なところもありますが――」

 私はチノの頭が少し残念と遠回しに言ったのに、何故かココアのことだと思い込んだチノにすり替えられた。本当にちょっと残念なところがあるのかもしれない。……もしかしたらこういう反応もまた普通の日常を過ごしていた人ならば当たり前なのかもしれないけれど。
 とりあえず現実逃避されたままでは困る。私はチノにこの決闘がゲームじゃないことを説明して、お互いの支給品を――。

「――――ッ!」

 その瞬間――何者かの殺意と気配を感じた。数はそれなりに多い。戦場に身を置いていた経験上、こういうことには敏感になっている。

「ロゼさん?どうしたんです……?」
「今、敵の気配が――」

 何も気付いてなさそうなチノに注意しつつ、刀を構える。私自身の刀が支給されていたことは幸先が良い。当たり前だけど、一番使い慣れた武器こそが最も戦力を発揮出来る。

「「「「「イーッ!」」」」」

 幾つもの甲高い声が重なる。目出し帽のような怪しい全身タイツの男――彼らは私たちを取り囲むように群がった。

「チノ。無事にあなたをココアの元へ帰して私とレイも日常に帰るために――まずはこいつらを倒す」
「わかりました……!」

 それだけ声を交わすと、不気味な全身タイツの男達へ駆け出す。チノが彼らに襲われるより前に最速で――マックスで終わらせる。他の敵なら話は違うけど、こいつらは明らかに三下。圧倒的に格下で、難なく瞬殺出来る。
 事実、戦闘――ハ・デスの言葉を借りるならば決闘開始後すぐに大半が壊滅した。残り一人――彼はいつの間にかチノに向けて走り出している……!
 きっとそれは私には勝てないと踏んで弱者から狙う算段。戦場では珍しいことじゃない。暫く平和な日常を満喫して、戦場の過酷さを
 忘れていた――。自分の認識の甘さに歯噛みして、全速力で駆け抜ける。

「逃げて、チノ――!」

 相手とチノの距離の方が圧倒的に近い――このままじゃ間に合わない。手際の良さから考えるに、もしかしたら私が他の目出し帽を排除するうちにこいつがチノを狙う作戦だったのかもしれない。


410 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:30:28 DH12C1Ro0
 でもチノは私の言葉に従って逃げることはなく――デイパックから取り出した大剣を構えて、少し困惑気味になりながら何かを呟いていた。

「ココアさんのために……私も頑張ります……!」

 そんなことを呟いた気がするけど、気のせいかもしれない。とにかくチノは気を引き締めて大剣を構えると――

「――変身、です!」

 チノの服装が一瞬にして変わると、目出し帽の男に刃を向けた。――彼女の表情から決意のようなものを感じる。

「イ、イーッ!」

 大剣を持ったチノを見た目出し帽は急ブレーキを掛けると、この場から逃げようと逆方向に走り始めた。――きっと増援でも呼ぶ予定なのかもしれない。戦場で残党を生かすことは、即ち命取りになる。
 私は必死に逃げようとする目出し帽に向かって走るとすぐに追い付き、その命を奪い取った。そしてチノの元へ駆け寄ると、彼女の頭を撫でる。……普段は私がレイに撫でられる側だったから、ぎこちないかもしれないけど。頭を撫でられると多少は気持ちが落ち着く……はず。もしかしたら家族や大切な人にやってもらわなければ意味がないかもしれないけれど……。

「チノ。私はあなたの勇気を讃える。よくがんばったと思う」
「ありがとうございます。ココアさん達との日常を取り戻すために、がんばりました。ロゼさんも日常のために戦ってたので……その姿に勇気をもらいました」

 日常を取り戻すため――。それが平和な日常を謳歌していたチノの戦う理由。……そしてそれは私の戦う理由でもある。

「私にもロゼさんの協力をさせてください」
「わかった。――大切な人が待つ日常に帰るため一緒にがんばろう、チノ」

 そして私たちは握手を交わす。この握手という行為もレイに出会ってから知ったものだけど――なかなか悪くない。

「決闘はまだ始まったばかりなのに――仲良さそうだね、お二人さん」

 そして――黒いコートの男が私達の前にやってきた。戦意や殺意は感じないけれど――その出で立ちは彼が歴戦の英雄であることを思わせる。

「俺は涼邑零。守りし者だ。――もちろんこの決闘には乗り気じゃないよ」

 彼は私の大切な人――レイと同じ零(れい)という名前だった。守りし者という言葉はきっと、人々を守る者だという意味だと憶測する。


411 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:34:32 DH12C1Ro0
「私はロゼ。私もかつて守りし者だったけど――今は大切な人と日常を満喫してる。当然この決闘は乗り気じゃない。ハ・デスを倒して私たちの日常を取り戻す」
「チノです。私も決闘には乗り気じゃありません。……私もロゼさんと同じで、帰りたい日常(ばしょ)があります」

 私が名乗ると、続けてチノも名乗った。涼邑零と私――二人の戦士を前にしても怯まず――というわけじゃないけど。おずおずと、それでもしっかりとした瞳で自己紹介する。

「ロゼちゃんとチノちゃんか。俺も昔は大切な人が居たけど、色々あって失うことになった……。――友ならまだ居るけどな」

 大切な人を失ったと語る涼邑零の姿は、どこか悲しそうで。それなのに悲しみを感じさせないように振る舞っているように感じた。
 彼はきっと私よりも過酷な運命を生きてきたのかもしれない。まだ出会って間もないけど、そう思わせるくらい戦士の――守りし者としての貫禄があった。

「……大切な人、か。やっぱりロゼちゃんとチノちゃんにこんな決闘は似合わないよな。二人を平和な日常に帰すため――ハ・デスを倒すなら俺にも協力させてほしいんだ」

 そう言って涼邑零は私に手を差し伸べた。
 彼の瞳には覚悟が秘められている。――守りし者としての、覚悟と決意が。
 だから私は彼を信じることにする。皮肉にも閃刀姫だったことがこんな場所で活かされるとは思わなかったけれども……。

「よろしくな、ロゼちゃん」
「うん。よろしく、涼邑零」

 握手を交わして軽く挨拶。涼邑零の手は私なんかよりも大きくて。背中には沢山のものを背負っているように見えた。

「零さん、よろしくお願いします」
「ああ。チノちゃんもよろしくな」

 チノと涼邑零もまた握手を交わす。――昔の私と同じ『戦士』だというのに、人に対する接し方がよく出来ている。……そういう意味では器用に見えるし、振る舞い方だけ見ると戦士にはあまり見えない。それでも彼が守りし者として手練で、自分よりも上手だと感じたのは――その大きな背中に色々なもの。信念や人々の想いを乗せているように見えたからかもしれない。

 ――そして私達は漆黒の夜に刃を突き立てる。
 レイが私にくれた幸せを。私に教えてくれた生き方を無にしない為に――幸せな日常に再び辿り着けるその時まで、私は駆け抜ける

 国を守る使命だとか、そんなものじゃなくて――レイと幸せに暮らしていた日常を――陽だまりを取り戻すために

【閃刀姫-ロゼ@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:閃刀姫-ロゼの剣@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを斬り、大切な人(レイ)の待つ平和な日常に帰る
1:チノや涼邑零と協力する
2:レイが参加していたら守る
[備考]
遊戯王カードについての知識はありません

【涼邑零@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:涼邑零の魔戒剣@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。ハ・デスも倒す
1:ロゼちゃんとチノちゃんを守る
2:他の参加者に支給された加納があるシルヴァを探す
3:鋼牙も参加してたら共闘する
[備考]
参戦時期は少なくとも牙狼-GARO- 〜MAKAISENKI〜終了後

【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]: チノ(せんし)の剣@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒して平和な日常に――ココアさんのいる場所に帰りたいです
1:ロゼさんや零さんに協力します
2:ココアさんやみんなを探したいです
3:ティッピーはどこでしょうか……?
[備考]

『支給品紹介』
【閃刀姫-ロゼの剣@遊戯王OCG】
閃刀姫-ロゼに支給。閃刀姫-ロゼが持っている剣。それ以外にこれといって特筆すべき点はない

【涼邑零の魔戒剣@牙狼-GARO-】
涼邑零に支給。涼邑零が使っている魔戒剣。一対二振りでやや短め(日本刀で言う所の長脇差・小太刀サイズ)。 ソウルメタルという特殊な素材で作られている。頭上に弧を描き、そこから人間界と繋がった魔界から絶狼の鎧を召還し装着することで銀牙騎士・絶狼に変身する事が出来る。仮面ライダーのベルトなどと同じく二本で一つの支給日扱い

【チノ(せんし)の剣@きららファンタジア@きららファンタジア】
香風智乃に支給。チノが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すための白銀の剣。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する。変身中はきららファンタジアの『せんし』のチノの衣装に服装が変わる

『NPC紹介』
【ショッカー戦闘員@仮面ライダー】
ご存知ショッカー戦闘員。イーッ!という声が特徴的


412 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/29(日) 21:35:18 DH12C1Ro0
投下終了です
タイトルはS#0/レイが私にくれた幸せを無にしない為に です


413 : ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 22:58:11 K.PGj/hc0
投下します。


414 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:00:22 K.PGj/hc0
ああ、死ぬんだな。
うつ伏せに倒れた少年、御伽龍児は自身の終わりが迫っていると冷静に受け止めた。
視線を僅かに動かしてみれば、鮮やかな赤に染まった地面が見える。
己から溢れ出る血に彩られたのだと分かれば、益々助かり様が無いと理解してしまう。

運が悪い、と言うやつだろう。
何かが違えばこんな風に倒れたりせず、生きて友と再会出来ていたかもしれない。
悪趣味なデュエルから脱出し、一人分が欠けてしまった日々を過ごす未来があったのかもしれない。
全ては起こらなかった話だ。
現実として御伽は死ぬ。それが覆しようの無い事は自分が一番理解している。

「おっ、大丈夫か?大丈夫か?」

そう言って顔を覗き込む男を、御伽は億劫に見上げた。

台詞だけ見たら立ち眩みした後輩を気遣う人間の鑑である。
だがその顔は、何と邪悪なものだろうか。
まるで後輩の体へ狙いを定め、睡眠薬入りのアイスティーを飲ませる作戦の成功を喜ぶ、クッソゲスいしたり顔であった。
浮かべる表情に相応しく、どこか臭くて汚いイメージをビンビンに感じさせる男。
この男こそ、御伽を手に掛けた張本人だ。

「まずは一人殺せて幸先良いスタートだって、ハッキリ分かんだね」

殺人への罪悪感を微塵も感じさせない、人を人とも思わぬ言動であった。
御伽を見下ろす瞳は、肌の色と同じく汚らわしい色をしている。
よりにもよってこんな外道に遭遇してしまうとは。
己の不運に御伽は内心で愚痴を零す。

自分が死ぬのはもう避けれない。
しかしこのまま男を気分良くさせたまま死ぬも、それはそれで癪だ。
最後にそのクッソおぞましい笑みを消し去るくらいはしてやろう。
悪足掻きをすべく御伽は口を開いた。


415 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:01:56 K.PGj/hc0
「僕を殺して…それで勝った気になってるんなら…とんだお笑い草だね……」
「は?(威圧)負け惜しみならみっともないからやめてくれよな〜頼むよ〜」
「僕一人に構ったせいで…あの娘には逃げられたじゃないか……」

図星を突かれたのか笑みを消す男、反対に御伽は口の端から血を零しながら不敵に笑う。

男に襲われる前、御伽は一人の少女と遭遇した。
互いに敵意が無い事を確認し、軽い自己紹介の後同行を申し出た。
何せその少女はまだ小学生。
幼い少女を何が待ち受けているか分からない場に一人放って置くなど、プレイボーイ気質なのを抜きに一人の男として許せない。
少女の方も一応信用はしてくれたらしく、共に行動を承諾。

直後、排泄物を練り固めたかのようなクッソ汚い男が襲って来た。
御伽は支給されていた拳銃で応戦したものの、信じられない光景を目の当たりにする羽目になる。
何と男は手にした刀で銃弾を弾き、時には両手を頭の後ろに乗せ腰をくねらせる動きで回避したのだ。
人間業とは思えない動きに翻弄された挙句に一太刀をその身に受け、それでも少女が逃げる時間だけはどうにか稼ぐのに成功。

少女に逃げられた失敗を突き付けられ黙り込む男に、してやったりと笑いかけてやる。
御伽の挑発に不機嫌となったのか、男は無言で刀を構えた。
一分の隙も見当たらない見事な構えは、外見の汚さとは不釣り合い。
剣に関して全くの素人である御伽から見ても、只者でない事は十分理解できる。
放って置いても死ぬと言うのにわざわざトドメを刺すとは、案外小心者だなと鼻を鳴らした。

(ここまで、みたいだな…)

今度こそ本当に終わり。
自分の選択に後悔は無いけど、心残りは幾つもある。
少女は無事に逃げ切れただろうか。最後まで守ってあげられなかったのは申し訳ない。
せめて自分よりも強くて頼りになる者に保護して貰える事を願おう。

友との再会が叶わなかったのも無念だ。
本田が理不尽に殺されて、流石の遊戯も精神的に参っているだろう。
自分は城之内や杏子程付き合いは長く無いが、友人として支えになってやりたかった。


416 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:02:58 K.PGj/hc0
(僕はここまでだけど、君ならこの決闘も止められるはずだ……)

本田の死に自暴自棄になってやしないかとも考えたが、遊戯ならきっと大丈夫だ。
彼は自分に初めて悔いの無い敗北を味合わせ、復讐の虚しさを教えてくれた少年。
父から憎しみを取り除いてくれた遊戯なら、きっと憎しみに捉われる事無くハ・デスの企みを阻止してくれる。

「邪険・【夜】――――」

「後は……頼んだよ…」

「――――逝きましょうね」

友への信頼を最期に、御伽龍児は本田ヒロトと同じ場所へと旅立った。


【御伽龍児@遊☆戯☆王 死亡】





付着した血を振り払い納刀し、御伽の支給品を回収する。
少しだけ勿体ない事をしたかもしれないと、後悔にも似た感情が押し寄せた。
今殺したのは身長179cm、ハンサムなマスクと均整の取れた体の持ち主。
生粋のホモである自分としては、殺す前に「つまみ食い」してみるのも良かっただろうかと思わないでもない。
すぐに首を振って邪な考えを頭から追い出す。
幾らなんでもそれは愛する後輩への裏切りになるだろう。

御伽を殺した男、彼には星の数ほど名前がある。
今回は国民的ホモビ男優として最も多くの者に親しまれた名、野獣先輩として記させてもらおう。

既にお分かりの通り、野獣先輩は決闘(デュエル)と言う名の殺し合いに乗った。
目的は磯野が口にした「どんな願いも叶える」権利の獲得、その為に勝ち残る道を選んだ。

ここで「やっぱりマーダーじゃないか(呆れ)」、「野獣は人間の屑、ハッキリわかんだね」、などと野獣先輩を罵倒する兄貴達もいるだろうが、まま、そう焦んないでよ(神のお言葉)。
野獣先輩とて何も最初から参加者を皆殺しにしようと思っていたのでは無い。
むしろ会場に移動した直後は、必ずやハ・デスをしばき倒してデュエルを止めてやる、そう決意していた。
これはどう見ても人間の鑑にして対主催者の鑑じゃないか、たまげたなぁ。


417 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:04:22 K.PGj/hc0
まずは共に戦ってくれる仲間を探しに意気揚々と出発し、そう間もない頃だ。
愛する後輩、遠野の惨たらしい死体を見つけたのは。

地面に転がるのが遠野だと気付くのに数秒、弾かれたように駆け寄り必死で声を掛けた。
そこで気付いたのだ、遠野が何をされたかを。

下半身は何も身に着けておらず、履いていただろうズボンと下着が乱雑に脱ぎ捨てられているのを発見。
だが丸出し状態など些細な事だ。
遠野の股間には本来あるべき男性器が存在しなかった。
黒々とした陰毛は赤い液体に汚れており、切り取られたのだと察する。
肛門からは白濁液が溢れ、相当な量を出されたのか地面にまで垂れていた。

遠野が凌辱と拷問の果てに殺されたと理解した瞬間、野獣先輩の心は憎悪と絶望であっさり壊れた。悲しいなぁ(諸行無常)。

ハ・デスを倒すという決意は圧倒間に消え去り、新たに優勝するという意思を固める。
死者を生き返らせられるか保障は無いが、人間ではあり得ないナニカを秘めているハ・デスなら可能性はゼロではない。
1145141919年もの歴史を持つ迫真空手を習得しているからこそ人外特有のオーラも、デカ乳首を弄るサーフ系ボディビルダーの如く敏感に感じ取ったのである。

「(次の獲物を殺しに)行きますよーイクイク」

全ては愛する男の為。
血塗られた道を自ら行く野獣先輩の行く末を知る者は神しかおらず、GOは神なので知っている。

GO is God


【野獣先輩@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:滅の日本刀@仮面ライダーゼロワン、TNOKの拳銃@真夏の夜の淫夢
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×0〜4
[思考・状況]
基本方針:勝ち残り遠野を生き返らせる。
1:殺りますねぇ!(溢れ出る殺意)。
2:遠野を殺した奴は絶対に許さない。
[備考]
※バトル淫夢みたいな戦闘力があります。


418 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:05:29 K.PGj/hc0
◆◆◆


「あんまり締まりは良くなかったなぁ…」

一人の野獣を狂わせた原因を作った青年、MNRはついさっき殺した相手へそんな感想を呟いた。
逸物を切り取った際には高音の悲鳴を上げ楽しませてくれたものだ。
ひょっとすれば世界レベルをも狙えるかもしれない美声、それが男の魂を奪われた苦痛で泣き喚く。
中々に興奮させてもらったが、ケツの締まりは中の下くらいのものだったのでガッカリである。

「次はもっと気持ちよくなれる人だと良いな」

とても人間の命を奪ったとは思えない態度。
それもある意味当然である。
6人の少年を殺害し、その死体と性交。彼らのペニスを切断し自らの肛門に挿入。
数多のホモガキを震え上がらせた経歴を持つ最凶のホモに、真っ当な倫理観など存在しない。

「見たーい♪見たーい♪皆が死ぬとこ見たーい♪」

クッソ棒読みの歌を口ずさみながらMNRは舌なめずりする。
彼の頭にあるのは、男を好きに殺し、犯す。それだけしかない。

お前精神状態おかしいよ…(ドン引き)


【遠野@真夏の夜の淫夢 死亡】


【MNR@@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:アテムが用意したナイフ@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜5、遠野のペニス
[思考・状況]
基本方針:好きにやって楽しむ。
1:良さげな男を探す。
[備考]


419 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:06:38 K.PGj/hc0
◆◆◆


「やれやれ、いきなりとんだ目に遭ったものだよ」

ついさっき危険人物に遭遇したとは思えぬような、抑揚のない声だった。

下に巨大なトゲの付いた奇妙な乗り物が、御伽達から離れた地点に浮遊している。
当然無人ではなく、操縦しているのは声の主。
ぴょこりと顔を出し、移動の最中にズレた眼鏡の位置を直す。
至って冷静、というより何を考えているのか分からない眠たげな表情で、柊ねむは来た方向を振り返った。

「追って来ないと言う事は、撒けたと判断して良いのかな。まぁ、彼の犠牲があってこそだろうけど」

御伽が自分を逃がす為に、汚らしい襲撃者と戦った。
善人であれば深く恩を感じたり、罪悪感に涙を流したりするのが普通の反応。
生憎ねむはそのどちらでもなく、強いて言えば面倒ごとを引き受けてくれたのに感謝しているくらい。
そもそも御伽は一つ、大きな勘違いをしている。
ねむはわざわざ御伽に守ってもらわずとも、大抵の相手からは自分の身を自分で守れる力がある。
それを伝えなかったのは、あの手の善人には無力な少女を演じた方が都合が良かったから。

「余り無駄な戦いはしたくないんだけどね」

魔法少女への変身は生前同様、問題無く行えるのは確認済みだ。
大抵の相手なら軽くあしらえる程度の力は持っていると、そう自負している。
但しねむ本人は積極的な戦闘を歓迎していない。
アリナの暴挙によりイヴが失われた事で、ドッペルシステムは崩壊したと考えるべきだ。
つまりソウルジェムが濁り切れば、ドッペルは出現せず魔女になるだけ。
グリーフシードを確保する当ても無い状況で、考え無しに魔力は使えない。
故になるべく戦闘は避け、代わりに動き回ってくれる人材を求めている。


420 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:07:50 K.PGj/hc0
最終目的である、ハ・デスの力を奪い魔法少女を救済する為に。

ソウルジェムが砕け散り死んだはずの自分が生きている。
なら、生き残った一人の願いを何でも叶えるという力も強ち嘘とは言い切れない。
少なくとも、死者の魂を完全に修復するくらいは容易いと睨む。
無論、願いを叶えるにはデュエルに優勝するのが近道だろうと分かっているが、主催者が素直にこちらの要求を聞き入れてくれるかは全く信用出来ない。
キュゥべえがその良い例だ。
アレは願いこそ叶えるものの、魔法少女に関する重大な情報を意図的に伏せていた。
素直に優勝を目指して、最後の最後に馬鹿を見るのは御免だ。
ハ・デスからは願いを叶える力だけを頂いて、本人には退場してもらおう。

(と言っても、ハ・デスの力で魔法少女を救済できる確実な保障も無い。ぬふふ、僕がこんなギャンブル染みた行動に出るなんてね)

前までの自分らしかぬ行動に自嘲を抑えられない。
しかしどれだけ可能性が低くとも、ゼロでないのなら賭ける価値はある。
分の悪い賭けだろうと勝利せねばならない理由がある。

魔法少女を……環いろはを今度こそ救う為に。

「いろはお姉さんはきっと悲しむだろうね」

そんな事しなくていい、一緒に生きて欲しい。
そう涙を流し想いをぶつけて来たいろはを裏切る行為だ。
もしねむがこれからやる事を知ったら、いろはは今度こそ失望するだろうか。
いや、それは絶対にないと断言できる。
悲しみこそすれど決して突き放しはせず、むしろそんな選択を選ばせてしまった自分自身を責めるだろう。
そしてねむの傍に寄り添い、共に間違いを正す道を選ぶ。
彼女はそういう人だ。そんな優しい人だから、自分達はあの人を助ける為に魔法少女へとなった。

「でもねお姉さん。お姉さんの優しさが、お姉さん自身を苦しめ、殺す日が来るかもしれない。僕はそれが恐いんだ」

魔法少女である限り、体も心も傷つかずに生きていくのは無理だ。
いろはが皆を助ける為に駆け回り、そのせいで自分自身が危険に晒される。その可能性が無いとどうして言い切れようか。
ドッペルシステムが機能しなくなったせいで、いろはが魔女と化す未来がいずれ訪れるかもしれない
そんな未来は永遠に訪れさせてはならない。
ういの記憶が自分以外の全てから消えた時、一度は全てを諦めた。
だけど嘘を吐き続ける事が出来ず全てを思い出させた日、灯花のおかげで思い出せたのだ。
ういと交わした約束を。

「だから僕はいろはお姉さんを救ってみせるよ。ういとお姉さん自身が、それを望んでないとしても」

きっとそれが、自分が生き返った事の意味なのだから。


421 : 夢物語は語りはしない ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:08:57 K.PGj/hc0
【柊ねむ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:フリーザの小型ポッド@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わずにハ・デスの力を奪って魔法少女を救済する。
1:代わりに荒事を引き受けてくれる駒が欲しい。
2:魔法少女への変身はなるべく控える。
[備考]
※参戦時期は死亡後。

【滅の日本刀@仮面ライダーゼロワン】
滅亡迅雷.netの滅びが持ち歩いている刀。
劇場版での戦闘や、VIシネマで仮面ライダー滅亡迅雷になった際、以前の肉体を破壊するのに使った。

【TNOKの拳銃@真夏の夜の淫夢】
ホモなら誰でもご存じ、ヤクザの事務所に隠してあった拳銃。
レイプしていたDBに奪われ一転攻勢、レイプされた挙句に肛門を撃たれる最期をTNOKは迎えた。

【アテムが用意したナイフ@遊☆戯☆王】
原作第一話にて、闇遊戯ことが牛尾さんとのゲームで用意したナイフ。
札束ではなく遊戯を刺そうとした牛尾さんは、記念すべき罰ゲーム執行の最初の一人となった。

【フリーザの小型ポッド@ドラゴンボール】
ナメック星で第一形態のフリーザが操縦していた一人用の小型ポッド。
操縦者の脳波を受信する事で動く仕組みになっている。
本来はフリーザ以外の脳波には反応しないが、ロワでは全参加者が操縦可能に手を加えられている。


422 : ◆ytUSxp038U :2022/05/29(日) 23:09:28 K.PGj/hc0
投下終了です。


423 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:46:21 hvKhoP4M0
投下します


424 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:47:10 hvKhoP4M0
 ハ・デスにより開始されたデュエルの舞台。
 彼の存在がある世界においては『決闘』とは主にカードによるものだ。
 カードであっても命の奪い合いに繋がるのは、とりあえずその世界ではよくある。
 少なくとも砂漠と草原の境目に位置する場所で相対する二人にはそれとは無縁だ。
 本来の意味合い、カードゲームと言うクッションを置くことなく殺し、殺される戦いの場だ。

 後方に緑が広がる側へと立っているのは、袴と言った和服に身を包む、
 東洋の侍と言えばそれで伝わる程に分かりやすい姿をした、風貌の中年男性。
 相対する存在を前にすれば、黒で殆ど覆われている瞳がカッと開く。

「拙者はイゾウ。さぞ名のある武人とお見受けいたす。」

 ある世界では警察機構……とは名ばかりの無法者の一人だ。
 大臣の息子の部下と言う威光の下に、人を殺し放題とのたまう人斬りでしかない。
 此処での彼の行動指針は一つ。人を斬って愛刀『江雪(こうせつ)』に血を吸わせるだけ。
 武器は没収されたが、彼の手元には運よくその愛刀が存在していた。
 禁ッ、と鞘から江雪を抜く音が響かせながら、相手の出方を伺う。

 相対するのは砂漠地帯を背に、水色の髪を風に靡かせている浅黒い肌の男だ。
 全身が肌に張り付くような服装からは何処を見ても鍛え抜かれた筋肉が目立つ。
 既にこの時点で常人ではないと受け取れるが、それ以上に感じたのは殺気の存在。
 隠そうともしないその威圧感は、人を何人も斬ってきたイゾウとて反応するものだ。
 無論、此処では高揚の意味合いとして。

「ほう、悪くはない。ならば問答は要らん!
 この俺の渇きを、癒やせえええええいッ!!」

 咆哮のような叫びと共に、左手に握りしめられた斧を振り回す。
 外見通りと言うべきか、身の丈にも迫る程の重量感あるそれを、
 片手一つで振り回せるのだから、どれだけの膂力があるのか計り知れない。
 後方へ距離を取って一撃を避ければ、彼のいた足元に軽いクレーターを作る。
 当たればまず重傷。それで臆するようであれば、彼は振れれば即死の刀使いとは戦わない。
 一撃を避けてしまえば、そのままイゾウは隙だらけの彼の脳天へと刃を奔らせる。
 無論、この程度で終わるような相手ではない。降ろした腕は即座に上がって斧を振るう。
 間合いに入ることを許さぬ一閃を前に、再び距離を取らされて攻撃は互いに空振り。
 あれだけの反動を無視できる相手と、それを避ける相手。互いに口角が吊り上がっていくものだ。
 この程度で終わるような相手とは見出してない。ならばこの状況は必然とも言える。
 笑みを浮かべた後に二人は戦闘を再開。殺しを、闘争を楽しむ者達による嵐が如き攻防だ。
 イゾウの江雪による破竹の勢いで振るわれる刃を、斧で防ぎながらも攻撃に転じる相手も手練れと言うほかない。

「良いぞ……ナイトレイドにも劣らぬ強さ。江雪に血を吸わせるに相応しい。」

 想像以上の手練れにイゾウは微笑む。
 ナイトレイドのアカメに敗れた彼にとってまた人が斬れようとは。
 最初に出会った相手がこれほどの相手に巡り合えたことに、冥界の魔王に感謝しかない。
 此処にきて、本当に良かったと。

「フハハハハハ! 三度目の生においても、このような舞台に臨むことができようとはな!」

 同様に彼、バルバトス・ゲーティアもまたこの闘争を楽しむ。
 英雄に憧れたのは過去の話で、今となってはどうでもいいことではあるが、
 この場でならば思う存分に戦えるその上で、ついでにハ・デスによる願いも叶えられる。
 やることも単純明快だ。天上人と地上人の戦争時代のように咎める相手は誰一人おらず、
 復活させたエルレインの指示にも従う必要もない。つまり納得のいかない戦いをさせられることもない。
 ただ戦って勝てばいいというだけのこと。彼にとって邪魔だったものが全て撤廃され、
 首輪と言う条件を除けばほぼ全てが自由の身。この場は最高以外の何物でもない。
 自分の欲望、全てを叶えられる最高の舞台。

(───獲った。)

 バルバトスの一撃を流水の如く回避しながら、その背後から首を狙う。
 さながら、生前のアカメに一歩上を行かれた敗因からの教訓のように。
 しかし、それは悪手とも言えるだろう。

「俺の背後に、立つんじゃねえ!!」

 バルバトスの戦術の一つにカウンターがあり、その種類は多岐にわたる。
 背後に立つ相手にはバックスナイパーによるカウンターを即座に反応できた。
 首を掴まれ、盛大に地面に叩きつけられる。

「いつまで寝てんだ!」


425 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:47:50 hvKhoP4M0
 続けざまに雷撃のような足踏みは横へ転がる形で回避。
 勢いで起き上がりながらの袈裟斬りだが、踏み込んだ際の勢いで後方へと跳躍。
 宙を舞いながら斧を掲げると、炎の弾丸が無数に放たれイゾウへと迫る。

 座座座座座座座座座座座座斬

 独特な斬撃の音と共に、数十はあったであろうヘルヒートの弾丸は全て両断する。
 使い慣れた武器は容易ではない芸当を容易に仕上げさせていく。

「そうだ! その程度も超えぬのでは、俺の渇きは癒やせやしない!!」

 無手となる右手を地面に叩きつける。

「灼熱のバーンストライク!」

 彼の背後より地面に向けた炎の槍が複数飛来して、
 サイズから斬撃は困難と判断して回避を専念する。
 帝具と言う特殊なものが存在していた世界の住人であり、
 近くには錬金術師もいた手前、相応の理解はあってたいして驚かない。

 右へ回避しながら脇腹を狙った一撃。
 左手に構える斧がまたしても対処して相殺。
 その反動を利用してイゾウは距離を取るも、
 男に後退の二文字はないと言わんばかりにバルバトスの突進。
 彼の剛速球のショルダータックルを、すんでのところで回避に成功する。
 その背後を再度狙い、振り返りながら振るわれた斧とぶつかり合う。

 互いに決定打を与えられないまま戦いの時間が過ぎていく。
 しかし互いに高揚し、互いに笑みを浮かべる。これほどまでの闘争。
 早々にお目にかかれないような相手との戦いが一瞬で着くなど退屈でしかない。
 まだまだ楽しめる、二人はそう思っていたし事実それは続く。





 ただ、もう一人いた。
 周囲に隠す気などない闘争を聞いている参加者もいた。
 普通はそれだけの闘争、乗ってたとしても避けるべきだ。
 言うなれば競争相手が自滅してくれるようなものなのだから、
 漁夫の利を目的にしない限りは避けるのが定石とも言える。

 でも彼女は違った。
 漁夫の利目的ではない。
 一度その音を聞けば耳を再度傾け、
 二度その音を聞けば高揚と共に歩き出し、
 三度その音を聞けば歩きなどでは最早足りない。
 戦乱の音色を聞けば聞く程に駆けて、駆けて、駆けて。
 音の発端となる二人の下へと走り出す。

 例えるならば、それは大砲のようだった。
 爆音と共に一人の参加者がその場に現れたのでは、大砲と言う表現が正しいだろう。
 だから二人も一度刃を収めざるを得ない。此処に参じた存在は如何なるものなのか。
 砂塵をまき散らした中から出てきたのは、少々戦場には似合わぬ端麗な女性だった。
 橙色の長い髪を靡かせ、白い鎧とドレスに身を包まれた彼女は何方かと言えば御嬢様や御姫様。
 あるいは、戦場の戦乙女と呼ぶのが自然だろうか。

「お楽しみのところ申し訳ありません。」

 殺伐とした雰囲気に、何処か猫なで声を含んだ甘い声色と共に声をかける。
 双方成人男性としては大柄な部類。少女とは頭一つ近くは差があるので視線をやや下へと向けた。
 本来ならば戦いの邪魔をする不届き物として処される。それは二人の共通認識だ。
 しかし、二人が腕の立つ存在と互いを見抜いたように。彼女の存在も見抜いている。

「私も、混ぜていただけませんか?」

 相手も同じように強者の一角であるのだと。
 返事が『はい』でも『いいえ』であっても、どうでもいいように。
 手に持った槍を構えながらの突進は、弾丸の如く風を切るように駆け抜ける。
 互いが距離を離れることで大事には至らないが、イゾウは僅かに冷や汗を、
 バルバトスは更に狂気の笑みを浮かべていた。

 イゾウは確かに強い。
 ナイトレイドのアカメとの戦いでは一瞬で決着がついたものの、
 彼女を以てしても強いと言わしめるだけの実力はしっかり備えている。
 腐ってもシュラが悪い意味で見出した秘密警察ワイルドハントの一人に足りうる。
 帝具なしで帝具遣いと渡り合えるだけの実力があると考えれば、その評価も当然だろう。
 しかし、だ。バルバトスは強者との戦いを何度も経験していたという違いが此処で差が開く。
 地上軍、天上人、ディムロス、そして同じように英雄に憧れた少年、カイルと彼を支える仲間。
 他にも彼が倒してきたダンタリオンやサブノックと言った幹部連中も含めれば実力者は多数。
 だから圧倒的なそれに対しても怯まない。寧ろそういう相手こそ倒し甲斐がある。

「ああ! いいです! とてもいいです!
 その強さ、蹂躙するに相応しい方々ですね!!」


426 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:49:01 hvKhoP4M0
 彼女の名はエニュオ。
 かの世界で兵器と呼ばれた星の獣、またの名を『星晶獣』。
 星の獣には役割、或いはそれらの権能を以って兵器とされる。
 『船造りの星晶獣』は空を飛ぶ船を作るように彼女にもその役割があった。
 彼女が司るは───










 『破壊』と『蹂躙』の二つ。

「───参る。」

 三人で最初に動いたのはイゾウだ。
 確かに冷や汗ものではあったが、それはそれとして強者だ。
 江雪に食事と言う名の血を吸わせるにはうってつけの相手で、
 エニュオの首を絶たんとする一撃を狙うが彼女の槍術で相殺される。

「余裕かましてんじゃねえ!!」

 どちらの味方でもない都合、
 互いを攻撃する手段を取ることに躊躇はない。
 バルバトスが斧を振るい、地を這う衝撃波が二人に襲い掛かる。
 先ほどのエニュオがやった攻撃のように二人が分かれて回避、

「ヌグッ!」

「ッ!」

 にはならなかった。
 あくまでさっきのはただの槍を持っての突進だ。
 バルバトスの殺・魔神剣は魔神剣とは名ばかりの暴風に近い。
 互いに完全な回避はできず、互いに吹き飛ぶように離れた。

「凶刃のシャドウエッジ!」

 再び手を地面へと叩きつけながら、晶術を放つ。
 吹き飛んだエニュオの着地点の地面から闇の刃が突き出す。
 吹き飛びながらも空中で旋回し、勢いを使って槍で刃を弾く。

「フハハハハハ! いいぞ、そうでなくてはな!!」

 槍で対応してる間にバルバトスが一気に詰め寄る。
 流石のエニュオも対応が間に合うかは少し怪しい所だったが、
 復帰したイゾウの斬撃の方に彼は対応を切り替えざるを得なかった。
 無論此処で介入しない、なんて選択肢はエニュオにはない。
 バルバトス目掛けて槍を振るい、回避を優先としたことで槍の軌道にいたイゾウの江雪に被弾。
 華奢な姿をした女性が出す膂力ではない一撃に手を痺れさせるが、
 それに怯むことなく腕を切り落としにかかる。

「死力を尽くして戦いに挑むその姿! そんな姿だからこそ、蹂躙する瞬間がたまらないのです!」

 清楚な御嬢様のような微笑みと共に、
 狂気に満ちた台詞を以って、冷静な対応で防ぐ。
 全てがおかしくみえるが、いずれも彼女の顔だ。
 星の民が定めた星晶獣としての性に一度は疑問を持ったが、
 今やその性を受け入れたことで、ありのままに敵を破壊し蹂躙する。
 その在り方を受け入れた彼女にとっては、全て自分の姿なのだから。

「破滅の───」

 此処でバルバトスが接近、かと思えば距離を取っていた。
 双方近くの相手を優先していたことで気を逸らしていたことで、
 少しばかり発動までのラグがあるそれをこの戦場で使うことができる。

「グランヴァニッシュ!!」

 大地が隆起し、無数の大地の槍が二人を襲う。
 範囲は広く、今から走って回避は完全に不可能。
 即座に跳躍して地面と言う攻撃範囲から難を逃れる。

「デェイヤァ!!」

 だが続けざまにバルバトスが空へと斧を突き出し、
 斧から放たれる光線。その対応は明確に二人の実力差を分けた。
 エニュオは元より星晶獣。空中戦などいくらでも相手にしてきている。
 だから回避自体は難しくはなく、多少掠るが致命傷には程遠い。

「ガハッ!」

 でもイゾウは違う。危険種との戦いよりも、
 人間を斬り続けたことで空中での対応は不得手に近い。
 空中である以上ビームを両断できるだけの踏み込みもできず、光線により腹部を貫かれる。

「あら、此方の殿方はダメでしたか。」

 彼は特別弱いわけではなかったので、
 もう少し楽しみたかったが致し方ないことだ。
 あの一撃を受けては助かりそうになく、バルバトスへを槍を向ける。
 今度こそ自分の手で蹂躙してみせようと。


427 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:49:53 hvKhoP4M0
「では、次はあなたの絶望や悲鳴を聞かせてください。」

「絶望は貴様の方だ! 絶望のシリングフォール!」

 空から降り注ぐ無数の岩石。
 ダッシュで駆け抜け当たりそうなものは槍で払いながら肉薄。
 迫る突きを斧を両手で振り上げることで相手の武器を弾き飛ばす。
 即座にジャンプからの武器を回収。地上へと薙ぎ払うことで回避を優先させ追撃を許さない。

「ところ一つ気になってたのですが。貴方はもしかして本領を発揮できてないのですか?」

 接近しながら互いの武器をぶつけながら、彼女は尋ねた。
 確かに彼の攻撃は見た目に違わぬ剛力無双とも言える姿だ。
 しかし、どうも武器を気遣うかのように少し控えめな印象もあった。
 術を使っての攻撃も適切なタイミングと言うのは勿論あっただろうが、
 それは何方かと言えば武器を損耗させたくない、そうとも受け取れると。

「……」

 沈黙と言う事実上の肯定と共に押し返す。
 バルバトスの本来の得物であるディアボリックファング。
 あれがあれば十全な戦いはできるし、彼の使用にも耐えうる。
 ただ彼の今手にしてる得物は弱くはないにしても高い耐久力はない。
 なので使用を続ければ、戦闘中に砕けてしまう欠点を抱えていた。

「貴様も言えたことではないだろうな。」

「あら、お気づきでしたか?」
 とは言うが、それはエニュオも同じだ。
 手にする槍は確かに神娘が打った力のある槍と優れるが、
 どちらかと言えば薙刀に近くて彼女の本来の得物は突撃槍に近い。

「殺戮のイービルスフィア!」

 反撃を狙おうと肉薄すると、
 エニュオの背後に闇の空間が生成され、
 周囲のものを引き寄せようとする攻撃だが当たることはなかった。
 ただし、別の問題が発生してしまったが。

「今死ね!」

 引き寄せられそうになったということは、
 少なくとも彼女の勢いが一時的にでも殺されたということ。
 最初から速度のあるある刺突とない刺突、何方が強いかは明白だ。
 勢いが殺されたところに、炎を纏った斬撃は攻撃に転じることができない以上防ぐほかない。

「すぐ死ね!」

 続けて嵐のような風を纏った振り上げ。
 立て続けにきた攻撃もまた防ぐしかなく、その勢いで宙を舞う。

「骨まで砕けろぉ!」

 宙を舞う彼女へと追いつくように掴みにかかるが、
 流石にこれ以上の攻撃をさせまいと身を引いて空を掴ませる。
 彼の奥義三連殺は失敗に終わり、反撃の槍による連撃が開始。
 今度は逆にバルバトスが防御に回らされることになった。

「お互い愛用の武器はないのは申し訳なく、
 同時に残念ですが……この高揚感、今更お互い引けないでしょう?」

「無論だ!」

「そうでなくては困ります!」

 けどそんなことお互い知ったことではない。
 ないものねだりではあるが、此処まできてお預けだと。
 できるわけがない。エニュオは蹂躙したい。バルバトスは渇きを癒やしたい。
 こんな早々訪れることがない相手を放っておくなど、互いの矜持が許さない。
 今ここで彼/あの女を蹂躙/ぶち殺すだけだ。

「ですので、貴方の全てを蹂躙してあげます。」

「微塵に砕けろ!!」

 互いに距離を取って、
 更に武器を前へと構える。
 互いを消し飛ばす為の砲が如き破壊の一撃。

「ルースレス・タイラントッ!!!」

「ジェノサイドブレイバーッ!!!」

 槍の先端から、斧の先端から放たれる波動の一撃。
 怪物が如き互いの一撃は攻撃がぶつかり合い、


428 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:50:20 hvKhoP4M0
 轟音を周囲へ轟かせたのは言うまでもなかった。










 戦場から大分離れた森の中にバルバトスは転がっていた。
 爆発に巻き込まれて遠くへと飛ばされたが、木々が多少クッションとなった。
 ダメージは小さくはないが動くことはできるし、十分に戦うこともできる。

「……やはり耐え切れなかったか。」

 起き上がりながらバルバトスは周囲を見渡す。
 周囲に人の気配はない、鬱蒼とした森の中だ。
 そして同時に、使っていた武器もなくなっている。
 ジェノサイドブレイバーは彼の大技の一つ。
 並の武器では耐えきれるわけがなかった。

「今から戻っても、奴がいるか疑わしいな。」

 距離は少なからず離れてるし、
 相手も攻撃の余波で吹き飛んでる可能性もある。
 今更戻ったところで、あまり意味も薄いだろう。

「……仕方があるまい。次の相手を探すとしよう。」

 奴が生きていれば、また会えるはずだ。
 それまでに装備を万全に整えようではないか。
 勝つためではあるが、満足いく戦いの為に。
 欲望塗れの英雄殺しは、三度目の闘争に身を投じる。



【バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニー2】
[状態]:ダメージ(中)、高揚(特大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(自分)、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝し英雄になりあがる(英雄になるのはついでのようなもの)
1:闘争を楽しむ。奴(エニュオ)とはまた戦いたいが生きてるかは分からん。
2:英雄がいた場合優先的に狙う。
[備考]
※参戦時期は原作で神の眼に突っ込んだ後です。
※チープエリミネイトは使用不可能です。










「やはり本来の槍がないと言うのは不便ですね。」

 バルバトス同様にエニュオも吹き飛ばされていた。
 此方は槍を以って何とか着地したが、そのせいで肩が脱臼している。
 すぐに直したものの、少しの間は時間を置いておくべき状態だ。
 なので今は休憩を取っていた。

「キュドイモスも制限されてるみたいですし……」

 特にキュドイモスを無尽蔵に呼び出せるのが彼女の強みだがそれもできない。
 今のままでは二回までしか呼び出せない。三度目をすれば確実に此方が死ぬ、
 そんな制限をかけられていることが態々ルールの横についでで知らされていた。
 槍が本来のインサイテッドランスではなくとも、街を容易に滅ぼせることができる星晶獣が、
 いかに一度倒されてコアにされ、今や複製体の身体であっても此処まで抑えられるとは思わなかった。
 ハ・デスによっての制限だろうが、仕方ないと割り切ることにする。
 調整されると言うことは、それだけ弱者もいると言うことなのだから。

「さて、暫くは大人しくしましょうか。」

 ……これだけ大暴れしておいて信じられないかもしれないが。
 エニュオは実のところ、殺し合いには乗っているわけではなかった。
 いや、厳密には乗るかどうかを考えている段階ではある。

(アテナや団長さんが参加してる可能性もありますし。)

 と言うのも、彼女は嘗ての仲間であった星晶獣アテナと、
 彼女が身を寄せている騎空団と現在行動している最中に招かれた。
 エニュオにとって団長とアテナは自分の手で蹂躙したい相手であり、
 自分の影響で彼女達が敵として狙われて倒されることを良しとしない。
 あくまで自分の手で倒したいからと言う自分の欲求の為であり、
 そこに正義感とか仲間意識と言ったものは欠片もなかった。

「暫くの間はアテナ達の敵となる存在にだけ矛を向けておきましょう。
 それであれば、いくら蹂躙しても……咎められはしますが許しては貰えるでしょうし。」


429 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:51:09 hvKhoP4M0
 開始早々暴れた後でアテナがいました、なんてことになっても厄介だ。
 今は一先ず殺し合いに乗った敵だけに的を絞っておくことにする。
 もし騎空団の団員がいないようであるならば、自分の好きに動くつもりだが。
 此処でいくら破壊や蹂躙したところで、彼等には知られることはないはずだ。

「ああ、でも。弱者の嘆きや苦痛、
 それも聞きたいのを我慢するのは悩ましいですね。」

 蹂躙して尊厳を踏み躙り絶望させていく。
 大切な人を守れなかった絶望、捧げて命乞いをする姿。
 そんな姿を見たいものの、流石にこれは団長たちがいては許されない。
 彼女にとっての最高の悦楽とは少々離れてしまうが、今は我慢の時だ。
 とは言え力あるものを蹂躙していくのもまた、彼女としては楽しいのだが。

 麗しい姿からは想像できないような、
 狂気的な動機と共に破壊と蹂躙の獣が歩き出す。
 彼女の行動方針が決まるのも、そう遠くはない。

【エニュオ@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(中)、高揚(特大)、興奮
[装備]:聚楽連珠己槍@御城プロジェクト:Re
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:役割に従い、破壊と蹂躙ですが……
1:団長さんやアテナがいた場合に備えて、蹂躙は一先ず待ちます。いなかったら? 当然……
2:それはそれとして闘争は楽しみますけどね。暫くは殺し合いを是とする参加者の実で。

[備考]
※参戦時期は主人公の団に加入して以降。
※制限としてキュドイモスは一体だけ、
 一度倒されると再度召喚には数時間かかり、
 現状は三度も召喚すれば力尽きて彼女が死亡します。
 このことについても理解してます。










 一人戦場で倒れるイゾウ。
 辛うじてまだ生きてはいたが、

「手遅れのようですね。」

 彼の運命は既に決まっていた。
 彼の前に立つ、一人の男がそう告げる。
 紳士のような身綺麗な恰好をした中年の男性だ。
 ジェントルマン、そう呼ぶにふさわしい姿をしている。
 イゾウの容態を、医者のように軽く診た後首を横に振った。

「ッ……待たれ、よ。
 拙者の江雪を、持って行くがよい。
 腕の立つ者に江雪に血を吸わせ……更なる高みへ……」

 彼にとって死ぬこと自体は悔いることはあるが、
 どちらかと言えば江雪に更なる血を与えることを優先とする。
 もしここにエニュオかバルバトスがいても、同じことを選ぶ。
 彼らは刀の心は分からずとも、それなりの理解はあるだろうと。
 いなかった以上、すぐそこにいたこの男に縋るしかなかった。
 この刀さえ誰かが継げば、先はあるのだから。

「お断りします。」

 冷淡な一言。
 そう返すとともに、
 彼の背後に立つ緑色の何か。
 先ほどまでいなかったそれが手を振り上げる。

「刀を使う者の心が分からぬ者、め……」

 またしても江雪を拒絶されたこと嘆き、
 彼の頭は緑色の存在によって叩き潰される。



【イゾウ@アカメが斬る! 死亡】



「私は剣客ではなく医者なのでね。
 もっとも、警察に追われる身ではありましたが。」

 医者と名乗る男の背後の緑の男は遺体を運ぶ。
 運んでからその遺体を坂から転がしていく。
 すると、イゾウの身体は首輪とデイバックを残してあっという間に消えていく。
 服も、骨も。彼がいたという痕跡は血痕と江雪以外に何も残らなかった。

「スタンド……悪くはないですね。」

 彼が使っているのは此処で得た新たな異能、スタンドと呼ばれるもの。
 自分の欲求の為に多くの人間を死に追いやった男が持っていたものだ。
 端から見ればとてつもなく極悪なそれでも、彼はそれを受け入れている。
 寧ろ自分と同じだ。何処までも、自分の欲望を満たせど満たせないその姿は。


430 : 狂戦士の魂 ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:52:22 hvKhoP4M0
「今回はこれを研究してみたいものです。」

 邪悪な笑みを浮かべる
 スタンド能力は分かった。
 説明に書かれた通りの内容である以上、
 これを使えば様々なことができるのは間違いない。

「能力の実験のため、参加者を探すとしましょう。」

 よりこの能力を楽しんで、
 あの時以上の欲求を満たしたい。
 殺人鬼の医者の精神を手にした医者は何処かへと歩き出す。
 己の欲望を満たさんと、その狂気的な目的のために。





 男の名は井坂深紅郎。ガイアメモリが生み出した怪物。



【井坂深紅郎@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:グリーン・デイのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜4(自分、イゾウ)
[思考・状況]基本方針:やりたいようにやる。
1:ガイアメモリがあればいいのですが。
2:暫くは行動を控えるのも視野に入れなければ。
3:スタンド、実に興味深い。


[備考]
※参戦時期は36話終了後。
※スタンドの射程(カビの範囲)は具体的には不明ですが、
 どれだけ大きくても1エリアの範囲を超えません。



※江雪@アカメが斬る! は放置されてます。



【ベルセルクアクス@片道勇者】
バルバトス・ゲーティアに支給。
命中にマイナス補正があるが代わりに連続攻撃率が100%と、
凄まじい猛攻をすることができる。片道勇者の武器は耐久値があり、
0になると強制的に粉砕する。耐久値は斧の類だと平均的な部類。
スキルの付与次第で脆くなったり硬くなったり、特殊な強化を得られる。
また物体属性、ゴーレムや壁と言った存在には特に強いダメージが期待できる。
現在は残骸がイゾウの死体の周辺にある。

【江雪@アカメが斬る!】
イゾウに支給。彼が血を吸わせ続ける愛刀。
帝具に匹敵する耐久力を誇るが帝具でも何でもない。

【聚楽連珠巴槍@御城プロジェクト:Re】
エニュオに支給。黄金で彩られた豪著な槍。刻まれた文様は厄災を退け、
寿福をもたらす力を持つとされる、ゲーム上においては聚楽城をイメージとした武器。
攻撃が当たるたびに微量だが体力を回復できるので長期戦、集団相手に特に強い

【グリーン・デイのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
井坂深紅郎に支給。頭にDISCを差し込む形でスタンドが行使できる、元々はチョコラータのスタンド。
DISCの破壊は基本不可能なほどに頑丈。頭に挿したまま対象の死亡による消滅が唯一処理できる手段。
ステータスは破壊力A スピード:C 射程距離A 持続力:A 精密動作性:E 成長性:A
自身より低い位置に存在する生物を無差別で侵食する殺人カビを放出するスタンド。
殺人カビは一度寄生すればどんどん侵食し、寄生主の肉体をボロボロに崩壊させてしまう上に、
カビの射程は死亡した生物を媒介にすることでさらに射程が広がっていくため、射程は実質無限。
無差別に攻撃するスタンドではあるが、使用者の意思次第で攻撃の対象外にすることも可能。
チョコラータは医者の知識で血管の切断面をカビで覆い、身体をばらすと言う使い方もしていたが、
井坂自身に使えるかは不明。本ロワでは流石にカビの射程は本体のいる1エリアを超えることはない。


431 : ◆EPyDv9DKJs :2022/05/30(月) 14:52:50 hvKhoP4M0
以上で投下終了です
井坂先生は現在配信中の仮面ライダーW27〜28話より、
本格的に出番のある回が始まりましたので、ぜひどうぞ


432 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/30(月) 22:18:46 n56eugiI0
投下します


433 : 灯りの消え果てたこの地に、太正浪漫の嵐が吹き荒れる ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/30(月) 22:19:37 n56eugiI0
ここはとある劇場内の食堂、そこには学生服と学帽を着用した、鋭く凛々しいモミアゲが特徴的な少年がいた。
彼の名は葛󠄀葉ライドウ、本来ならば存在しない『大正20年』という時代で帝都守護の使命を課された悪魔召喚師(デビルサマナー)である。
そんな彼は今、この劇場の中に他の参加者がいないかを確認していた。

(この劇場内の地下にあった設備…、あそこにあったものは『超力兵団』の時に見たものに酷似しているが……使われている技術はまるで別ものだった)
(それにこの設備内で見つかった元号は『太正』とあった……これまでに調べた限りでは、どうやらこの建物は自分の知るものとは異なる世界のものらしい……)
(ハ・デスは『様々な世界から決闘者を呼び寄せた』と言っていたが、あの者はどのようにしてそれを行ったのか……それも探る必要がありそうだ)

彼はこの建物の中を一通り探索した後、思案していた。それはほかならぬ、この建物がどこから来たものなのか、という事だった。

彼は過去の経験から知っている。無数に存在する【並行世界】の存在のことを。

しかし彼は疑問に感じていた、それは『並行世界のものを呼び出してまでハ・デスがしたい事は何なのか』についてだった。

並行世界のものを呼び出す……それには莫大なエネルギーを消費するはず、そうまでして行いたいことは何なのか、本当に只戦い合わせることだけが目的ではないはずだと、ライドウは考えていた。

そうして思案を続けていたところ、突如として食堂入り口当たりからライドウに声をかける者が現れた。

『マスター……指示通り劇場内の舞台および舞台袖の中を再度探索しましたが、参加者などの所在については確認できませんでした』

彼に声をかけたのは赤いラインが刻まれた黒い刀剣を持った、長い金髪の少女だった。
彼女はライドウのことを"マスター"と呼び、彼に『他の参加者がいなかったこと』を報告していた。

「そうか……ご協力、感謝する」
「また何かあったら呼び出す、それまではゆっくり休んでてくれ」

それを受けてライドウは彼女に感謝の言葉を述べ、カードに戻した。
実を言うと先ほどの少女、【閃刀姫-レイ】は彼が召喚したモンスターなのだ。

これを見ている諸君は何故ライドウが自身と契約している悪魔たちを使役していないのかを疑問に思っているかもしれない。
しかしそれができない理由があったのだ。

(まさか意識を失っている間に封魔管を含めすべての道具を奪われてしまうとは、いつ説教部屋に送られても仕方のない失態だな……!)

何故ならば彼はこの会場に飛ばされる際に、自身が所持していた道具をすべて奪われてしまっていたのだ。
それ故に自身に支給されていたデュエルディスクとデッキを使用して、文字の読み方に苦戦しながらも【閃刀姫-ロゼ】などのモンスターを召喚して辺りの探索を行っていたのである。

「…当面の目標としては、先ほどの少年を探しに行くべきだな……主催者たちを除けば彼だけが発言することが許されていた、そこに何か関連があるかもしれない」

そう言うと彼はこの劇場を後にし、明かりの無い夜道の中を歩き出すのだった……。


434 : 灯りの消え果てたこの地に、太正浪漫の嵐が吹き荒れる ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/30(月) 22:20:07 n56eugiI0
【十四代目葛󠄀葉ライドウ@デビルサマナー葛葉ライドウシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(閃刀姫)@遊戯王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本行動方針:会場から脱出し、ハ・デスを討つ。
1:人々のため、帝都を護る為にあの悪魔(ハ・デス)を討つ
2:ハ・デスの目的は何なのかを探るため、そして先ほどの少年(武藤遊戯)を探すために会場内を探索する。
3:(……札に書かれている文字が逆に書いてあるので、読みにくい)
[備考]
参戦時期は少なくとも『デビルサマナー葛󠄀葉ライドウ 対 超力兵団』の出来事を経験済み。
制限により封魔管(悪魔召喚用の道具)のほか、各種装備が没収されています。
また【デュエルディスクとデッキ】を『異なる時空の悪魔召喚器のようなもの』として認識しています。

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(閃刀姫)@遊戯王】
ライドウに支給。『閃刀姫』および『閃刀』カテゴリーのカードを中心にしたデッキ
少なくともメインデッキに
・閃刀姫-レイ
・閃刀姫-ロゼ
・閃刀機-ホーネットビット
・閃刀術式-アフターバーナー
・閃刀起動-エンゲージ
・閃刀起動-リンケージ
が入っており、エクストラデッキに
・閃刀姫-カガリ
・閃刀姫-カイナ
・閃刀姫-シズク
・閃刀姫-ジーク
・閃刀姫-ハヤテ
が入っていることは確定している。
(残りのカード等の詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)


『施設紹介』
【大帝国劇場@サクラ大戦シリーズ】
帝都(東京)の銀座にある劇場で、少女劇団「帝国歌劇団」が舞台に立つことで有名である。

……表向きはそうなっているがその正体は、帝都を魔の力から守るために設けられた日本政府直属の秘密防衛組織『帝国華撃団』の総本部であり、
地下には飛行船や霊子甲冑と呼ばれるロボットなどが配備されている。

なお当ロワにおいて戦力に公平を期するためか、上記の飛行船やロボットで使えるものはほとんど残っていない状態にある。


435 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/05/30(月) 22:20:36 n56eugiI0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


436 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/31(火) 00:41:51 nU/aDTO60
投下します


437 : 馬鹿正直のヒーローとかつてビッチに騙された勇者 ◆QUsdteUiKY :2022/05/31(火) 00:43:41 nU/aDTO60
「ソノイ……」

 シロクマ宅配便の服を着た男――桃井タロウはつい先程、自分を殺した男のことを思い出していた。
 ソノイ。お互いの立場さえ違えば仲良く友人となれたはずの脳人。タロウは彼に弱点を聞かれ、嘘をつけないことが災いして正直に答えてしまったことで弱点を狙われて命を落とした。それも正々堂々とした勝負ではなく、不意打ちのような形で……。

 そして自らの死を実感し、世界から消え去った瞬間――いつの間にかこうして生き返っていた。
 死人が復活するなんて有り得ない。タロウの場合は嘘をついた時も一時的に死亡するが、何故かその後に蘇る。だがそういう例外を除き、死者蘇生など有り得ないことだ。

 死んだはずの自分が蘇り、冥界の魔王を自称する化け物に謎の決闘を強制される。色々と意味不明な状況だがそこに関してタロウは動揺していない。だがソノイ――不意打ちで自分を殺したあの脳人を思い出すと胸が苦しくなる。自分を殺したことを許せないだとか、そういうものじゃない。自分達は敵同士だと理解しているのに――仲が良かった彼に殺されたことに心が締め付けられる。

 だがいずれこうなることはわかっていたことだ。互いに敵だと判明した時点で――自分達の友情は終わっていた。儚い友情と言えるかもしれないし、ただの友情ごっこだったのかもしれない。お互いに倒さなければならない敵なのに性格的には気が合い、素性を知らないまま奇妙な友情が芽生えていた。……それはなんと滑稽なことであろうか。

 桃井タロウの精神状態は今、万全の状態とは言い難い。一度は友と思っていた相手に弱点を狙われ殺されて、それで心が傷つかないほど完璧超人というわけでもない。
 だが同時にタロウはこの状況でも成し遂げなければらないことがある。ソノイと同じく人の命を軽んずる者――この悪趣味な決闘を開いたハ・デスを倒すこと。それが今のタロウの使命だ。――タロウの本能がそう命じている。

「ハ・デス。貴様は人の命を軽んずる者……。――存在してはならない奴だ」

 存在してはならない。ハッキリと強固な言葉でタロウはハ・デスの在り方を否定する。その言葉は皮肉にもソノイへ向けたものと同じ内容だ。

「お前は俺が倒す。人々の命は――幸せは奪わせない!」

 自分の心も傷付いているはずなのに、それでもタロウはハ・デスを倒し、人々を助けることを堂々と宣言する。
 タロウはシロクマ宅配便の配送員だ。だが彼が運ぶのは荷物だけではない。幸せも運ぶ。

 ――カタカタカタ。

 骨が軋むような、不気味な音をかき鳴らす骸骨をタロウは真っ直ぐと見た。
 さまよえる亡者。成仏できず、行くあてもなくフラフラとしている哀れなモンスターだ。

「あんたも俺が成仏してやる。――アバターチェンジ」

 タロウは持ち前の観察眼で目の前の骸骨を成仏出来ない亡霊だと察すると、ドンモモタロウに変身した。――いつものように天女を用いた派手な演出も今回ばかりはない。これについてハ・デスの仕業だとタロウは憶測する。

「はーっはっはっは!さあ、勝負勝負!」

 ドンモモタロウがさまよえる亡者を斬ると、彼はすぐに成仏した。必殺奥義を使うまでもない。


438 : 馬鹿正直のヒーローとかつてビッチに騙された勇者 ◆QUsdteUiKY :2022/05/31(火) 00:44:00 nU/aDTO60
 さまよえる亡者は圧倒的に低ステータスのモンスター。加えてNPCとして調節が施されている。そもそも成仏することも出来ないところをハ・デスに捕らえられ、NPCにされた哀れな存在だ。タロウの攻撃から何かを感じ取った彼はわざとそれを受けることで成仏し、今度こそあの世へその魂が解き放たれた。

 変身を解除したタロウはあの世へ昇天される亡霊を見送り――

「アバターチェンジ……?まさかここはゲームの世界なのか?」

 タロウの戦闘を発見して、それを不思議そうに眺める男が居た。
 ビッチに騙され、裏切られたことで信頼も金も名誉も勇者としての尊厳も。全てを失い、そこから成り上がった盾の勇者――岩谷尚文。

「違うな。これは間違いなく現実だ。……これで俺とアンタは縁が出来たな」
「それくらい俺にもわかる。アバターっていうのはゲームの用語にしか聞こえないがな……」

 ――嘘つきビッチに騙された盾の勇者と嘘をつけない馬鹿正直さが原因で命を落としたヒーローはこうして出会った。

【桃井タロウ@暴太郎戦隊ドンブラザーズ】
[状態]:健康
[装備]:ドンブラスター&アバタロウギア ドンモモタロウ@暴太郎戦隊ドンブラザーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒し、人々に幸せを送る
1:目の前の男と話す
2:ソノイも参加していたら俺が倒す
3:人の命を軽んずる者は倒す
[備考]
参戦時期は13話で死亡後

【岩谷尚文@盾の勇者の成り上がり(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:岩谷尚文の盾@盾の勇者の成り上がり
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:元の世界へ帰る
1:目の前の男と話す。アバターチェンジってなんだ……?
2:ラフタリアやフィーロを探す
[備考]
参戦時期は少なくとも一期終了以降

『支給品紹介』
【ドンブラスター&アバタロウギア ドンモモタロウ@暴太郎戦隊ドンブラザーズ】
桃井タロウに支給。ドンモモタロウのアバタロウギアを装填することでドンモモタロウに変身出来る他、『キビ弾丸』を発射し、鬼を退治出来る。変身時はザングラソードか現れ、これを用いて戦う

『NPC紹介』
【さまよえる亡者@遊戯王OCG】
星2/闇属性/アンデット族/攻 800/守 600
成仏できず、行くあてもなくフラフラとしているモンスター。


439 : ◆QUsdteUiKY :2022/05/31(火) 00:44:21 nU/aDTO60
投下終了です


440 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:44:22 4jTi9nCQ0
投下します


441 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:44:53 4jTi9nCQ0
右の太ももと、左足首への激痛の直後、暁美ほむらは顔面から地面に倒れ込んだ。
眼鏡は割れ、飛び散ったグラスのせいで鼻や頬は無数の切り傷が出来る。

「ううぅ……痛い、、痛いよぉ……」

両脚は激痛のせいで上手く動かない。
なんとか呼吸だけでもを整えようとすれば、とめどなく流れる鼻血の匂いと共に、
草の匂いと湿った空気が肺に満ちて気持ち悪い。
それでもどうにか逃げようと、大した腕力も、握力もない手で這いずり、
子猫の駆け足よりも遅い速度で逃げようとするが、
ゆっくりと、だが確実に近づいてくる奴の方が早い。

「……ッ!」

銀色の体。三つ編みのような器官の付いた頭部。
両腕に付いた大型のクロー。
1999年、渋谷に隕石が落ちた世界にて、ワームと呼ばれる宇宙からの外来種。
その中でもスコルピオワームと呼ばれる一際強力な力を持つ個体だ。

「あ、ああ……だ、誰か!誰か助けて!」

一縷の望みをかけて、出せるだけの声で助けを呼ぶが、静かな森をほんの少し騒がしくするばかりで、
返答も、誰かが近付いてくる気配もない。

「そんな……やだ。嫌だ!まだ!まだ私は!」

服を汚しながら、土の味を噛み締めながら、爪が割れるのも血が出るのも関係なく進む。
終われない。終わりたくない。
生物として最も基本的な欲求に突き動かされ、ほむらはひたすら這いずり続けた。
だが、相手はワーム。
ただでさえズタズタの彼女が、生物として一段上に居る奴から逃げるなど、土台無理な話だった。

背中のデイパックを開けられ、中から何かを取り出される。
ふり返ると、逆手に剣を持つ奴がいた。

「ー--ッ!キュウベぇ!キュウベぇ!
出てきて!契約!契約を!ねえ!出てきてよ!」

無理だ。
仮にどれだけキュウベぇが彼女のもとにたどり着きたくても出来ない。
この島は世界が違うのだ。
暁美ほむらが生受けた世界とは、文字通り法則が違う。
ハ・デスたちが招かない限り、キュウベぇはこの島を知覚する事すら無理だろう。

さて、長々余計な話を膨らませてしまった事だし、結論から言おう。
暁美ほむらの断末魔が、森中に響き渡った。


442 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:45:25 4jTi9nCQ0
「……不運ね」

ほむらの声から遠ざかる様に走る少女がいた。
彼女と同じ見滝原中学校の制服を着て、彼女と同じ色の髪と目を持つ少女。
眼鏡はかけておらず、髪形も三つ編みとストレートで大分違う。
だが彼女もまた、暁美ほむらだった。

ただし纏う雰囲気は、冷たく鋭い。
眼鏡のほむらが最後に縋ったキュウベぇ、少女の願いを叶える代償として、
その者を魔法少女に仕立て上げる謎の小動物により、魔法を得た果ての果て。
それが彼女だからだ。

『鹿目まどかとの出会いをやり直したい』

そう願った彼女に与えられた力は”時流操作”。
時を止めたり、早めたり、巻き戻したりできるゲームのラスボスみたいな力。
しかし、それでもどうしようもない様な壁にぶつかり、
同じ一か月を繰り返して繰り返して繰り返して、ついに心を捨てることを決めた。
それがこの暁美ほむらだった。

「せめてキュウベぇに目を付けられなければ、
余計な希望を踏みにじられなくて済んだでしょうに」

同情にしてはあまりにも冷たく吐き捨てると、ほむらは森を出る為、足を速めた。


443 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:45:57 4jTi9nCQ0
【暁美ほむら@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、変身前
[装備]:ソウルジェム(ほむら)@魔法少女おりこ☆マギカ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:とりあえず名簿の発表まで様子見に徹する。
1:まずは森を抜ける。
2:何かあっても良いように武器は調達しておく。
3:けど他の参加者との不要ないざこざは極力回避する。
4:誰だか知らないけど、気の毒に
[備考]
※森に響いた断末魔が自分と同じ声とは気付きませんでした。
※ソウルジェムは支給品扱いの様です。
※魔法少女の能力や、首輪に関する制限については後の書き手様に任せます。



【ソウルジェム(ほむら)@魔法少女おりこ☆マギカ】
魔法少女がキュウベぇと契約することで生まれる魔法を使うための卵のような形の宝石。
ほむらの物は紫に金のレリーフが付いている。
変身後は菱形に左手の甲に着く。
普段は指輪の形にして携行が可能。
魔法を使うor持ち主の心が弱り、曇るほど穢れていき、
穢れ切ると、魔法が使えなくなる。
そうなる前に魔女を撃破するとドロップするグリーフシードを使って浄化する必要が有る。


444 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:46:25 4jTi9nCQ0
「はっ!」

目を覚ましたのは、一番最初に頬り出された場所の近くだった。
ほむら、より正確に言うと眼鏡のほむらは、本日二度目の超常現象にひどく混乱した。

(私は確か、あの銀色の怪物に追い掛けられてそれで……それで、どうしたんだっけ?)

ざっと体を見回した感じ”怪我などはしていなし”、服や髪、眼鏡も”どこも汚れていない”。
しいて異常事態と言えるのは、いつの間にか紫色の剣を持っていたことだが、
今は気にしている場合じゃない。

(結構走った気もしたけど、汗も全然かいてないし、本当に何が?)


分からないことだらけだが、とにかくこの場を離れなければ。
どういう訳か、今は居ないが多分近くにいる奴から離れなければならない。
そう考えて剣、サソードヤイバ―を胸元に抱えると、
さっき逃げたのとは逆の方向に向けて走り出した。


445 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:46:51 4jTi9nCQ0
同じころ、森の中。
ある場所に参加者たちを煽る為に放たれたNPCの一種、
初級インベス、、正確にはそれに酷似した姿を持つ怪物たちが、
グチャグチャと汚らしい音を立てて何かを食べている。
満足したのか、口を拭うようなしぐさをしてその場を後にする。
だが最後尾の怪人は、何かが喉に引っ掛かったのか、苦しそうに呻くと、
プッ!と勢いよく吐き出す。
それは眼鏡のフレームだった。
今しがた死体すら奇麗サッパリ捕食された暁美ほむらの遺品だった。

外来種ワームの最大の特徴。
それは対象の体格、服装、さらには記憶に至るまで完全にコピーする事。
その精度が高ければ高いほど見分けはつかない。
つまり、”自分がワームであることを忘れるほど完璧な擬態”も、有り得なくはない。
まるで自分の死に気付けない亡霊の様に、死んだ誰かの想いをなぞり続ける。
それを復活と呼ぶか、冒涜と呼ぶかは、皆様にお委ねすると致しましょう。


446 : ほむらジャックライズ ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:47:37 4jTi9nCQ0
【スコルピオワーム@仮面ライダーカブト】
[状態]:人間態(眼鏡ほむら)、健康
[装備]:サソードヤイバ―@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品(眼鏡ほむら)、ランダム支給品0〜2(眼鏡ほむら)
[思考・状況]基本方針:生きてここから脱出する。
1:剣なんて持ったことないけど、大丈夫かな?
2:なんでキュウベぇは呼んでも来ないんだろう?
3:そもそも、なんで怪我も治っているの?
[備考]
※擬態精度が高すぎるせいか、ワームである自覚を失っています。
※参戦時期は、神代剣に擬態するより前です。
※森のどこかにスコルピオワームの支給品が放置されています。
※ワームとしての能力に関する制限は後の書き手様にお任せします。


【サソードヤイバ―@仮面ライダーカブト】
仮面ライダーサソードに変身するための片刃剣状のアイテム。
サソードゼクターが認めた資格者がゼクターと合わせて使う事で、
マスクドフォーム、ライダーフォームに変身することが可能。
変身前後を問わず近接武器としても使える。
ゼクターは付属して支給されておらず、使用者を認めた場合のみ、
何処からともなくやってきて、持ち主に力を貸す。
仮面ライダーサソードの能力に関する制限は後の書き手様にお任せします。



【初級インベスに似た怪人@仮面ライダージオウ】
会場ないに存在するNPCの一種。
真実のソウゴが創り出した異空間に跋扈していた怪人。
肉食で非常に凶暴。無数に存在しており、人間を無差別に襲っては捕食する。
また、特に毒などは持っていないらしく、
逆に人間に狩られて、料理されて食われた個体もいた。








【暁美ほむら(眼鏡)@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】


447 : ◆FiqP7BWrKA :2022/05/31(火) 11:48:03 4jTi9nCQ0
投下終了です


448 : ◆dltjJrbYYM :2022/05/31(火) 20:24:08 UWxR6lOw0
投下します


449 : かつて太陽に挑んだ者 ◆dltjJrbYYM :2022/05/31(火) 20:25:14 UWxR6lOw0

──人は何かの犠牲なしに、何も得ることは出来ない。何かを得るためには、同等の代価が必要になる。それが、錬金術における等価交換の原則だ。


──その頃僕らは、それが世界の真実だと信じていた。









「パラレルワールドか……確かに一つある以上、無数にあると考えた方が自然だよな」

エドワード・エルリックはそう言いながら両手を合わせ、地面に手を添える。すると彼の手が光り輝き、地中の成分で作られた土の剣が現れる。

「ミュンヘンでは使えなかったけど、ここだと錬金術は使えるのか……ちょっと調子悪いのは久しぶりだからか、制限ってやつのせいか?」

エドワードは今でこそドイツのミュンヘンという都市に住んでいるが、元々は機械文明の代わりに錬金術が発達した世界の、アメストリスという国に住む国家錬金術師だった。


賢者の石を巡るホムンクルスとの戦いで死んだ弟、アルフォンスの魂を呼び戻した対価として、真理の扉の向こう側……パラレルワールドに飛ばされたのだ。

「あそこは俺にとっての、夢で地獄だったけど……まさか本当に冥界の王の地獄みてぇな殺し合いに巻き込まれるとはな」

自嘲するかのように苦笑したエドワードは、自らの右腕に触れる。

その義手は慣れ親しんだ鋼の腕ではなく、機械文明によって作られた機械仕掛けの義手だ。

「どこまで行っても……俺は自分の罪から逃げられない」

最大の禁忌、人体錬成で母を蘇らせようとして失敗し、失った右腕と左足。ただ自分が苦しむだけなら痛みを伴う教訓として我慢もできただろうが、肉体全てを失った弟のためにも賢者の石を求めた。
その旅の中で自分の人体錬成のせいで産まれたスロウス……母と同じ顔をしたホムンクルスを殺した。

後始末、といえば聞こえはいいが、罪を罪で上塗り、リライトしただけだ。

その結果がミュンヘンに飛ばされることだった。そして今は、こんな殺し合いに巻き込まれている。

「自業自得……いや、等価交換、だな」

自虐的に微笑んでからエドワードは配られたデイバッグの中を検める。
錬金術の使えるエドワードにとっては支給品の重要度は低いが、それでも確認しないわけにもいかない。

ひょっとしたら、平行世界に干渉するハデスの力を調べれば、元の世界に帰れるかもしれないが……エドワードは殺し合いに乗る気はない。
しかしそれと同時に、躍起になって止めようとも思えない。これが消せない罪で背負った罰ならば、受け入れるのもありだとすら思える。
まるで宙に舞うメリッサの葉のように、今のエドワードは地に足が付いていない。

どこか無気力なままデイバッグを漁るエドワードの指に、何か硬いものが当たる。何かしらの武器かと思って取り出したそれは……

「なんだこの悪趣味なアクセサリー?親父やダンテ辺りなら喜びそうだな」

硬いものの正体は、全体が黄金色の禍々しい装飾品だった。


450 : かつて太陽に挑んだ者 ◆dltjJrbYYM :2022/05/31(火) 20:25:47 UWxR6lOw0

戦いで何の役に立つんだが、と思いながら何気なく同梱されていた説明書に目を通したエドワードは……


「なっ!?」


その黄金色の装飾品……千年アイテムの説明を読んで絶句した。

「何人もの人間を対価に生み出した千年アイテム!?これじゃまるで、賢者の石じゃねぇか……!」

エドワードが自分と弟の元の体を取り戻すために探していた賢者の石。それを作るためには、大勢の人間の命を対価にする必要があった。エドワードに支給された千年アイテムもまた、古代の時代に大勢の人の命を対価に生み出された道具であった。

説明書を読む限り、確かに命を対価に生み出されただけあって強力な呪具らしい。

だが、何事にも対価があるように、強力過ぎる武器には相応のデメリットがある。

選ばれた資格を持つ者以外が千年アイテムを使おうとすると体の内側から焼かれ、炎を吐き出しながら絶命してしまう。


殺し合いの武器として支給している以上、資格に関してはそこまで厳しいものではないと推測できるが……


「どっちにしろ、人の命でできた道具なんて使えるわけあるか!」

包みに入ったままの千年アイテムを乱暴にデイパックに戻すエドワード。だが彼は内心では動揺していた。

エドワードがドイツに飛ばされたのはアルフォンスの魂を呼び戻したためだが、そもそもアルフォンスの魂がなくなったのは、賢者の石そのものとなったアルフォンスが、エンヴィーに殺されたエドワードを蘇らせたからだ。

アルフォンスが賢者の石になったのもエドワードが甦ったのも成り行きだが、結果として自分は人の命で作られた賢者の石のおかげで生きているのも事実。


だからある意味、この支給品はエドワードにとってピッタリとも言えた。

「クソっ、ふざけやがって!」

エドワード・エルリック。彼はパラレルワールド〘原作〙の彼と違って影のある性格で自虐的だ。精神的に弱い所もある。だがその内に秘める正義感は変わらない。
ここが彼に与えられた地獄だったとしても、大勢の人と殺し合うなんてことは決してしない。

「上等じゃねぇか……」

神経を逆撫でするかのような支給品を見た怒りで、ドイツで暮らしているうちに忘れかけていた激情を思い出す。


「何が冥界の王だ、ド三流が……格の違いってやつを見せてやる!」

先ほど錬成した土の剣を掲げて宣言するエドワード。カチカチに固くして錬成したが所詮は土。武器としては心もとない。機械鎧以上にデリケートな今の義手は剣に錬成するわけにもいかない。まずは武器の材料になる鉄を探しつつ同じように殺し合いに抵抗する仲間を探して……と、先ほどまでの無気力ぶりから一転、やるべきことが次々と溢れ出す。

「ついでにパラレルワールドの秘密も聞き出して帰ってやる……アルやウィンリィがいる世界に!!」


【エドワード・エルリック@劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者】
[状態]:健康
[装備]:土の剣、義手(右腕)、義足(左足)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、千年アイテム@遊☆戯☆王】
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。あわよくば元の世界に帰る方法を探す。
1:まずは武器の確保。土の剣では不安なので鉄がある場所を探す。
2:俺……帰れるのかな……
[備考]
アニメ版最終話から劇場版開始までの間の参戦。
義手義足は機械鎧ではなく劇場版の機械仕掛けのものです。
千年アイテムの種類については他の参加者との兼ね合いもあるので現時点では未定にしておきます。


451 : かつて太陽に挑んだ者 ◆dltjJrbYYM :2022/05/31(火) 20:26:12 UWxR6lOw0
投下終了です。


452 : ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:41:08 ww6RIZPo0
投下します。


453 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:46:20 ww6RIZPo0
決闘者(デュエリスト)、と一口に言っても千差万別。
連戦連勝の圧倒的強者もいれば、連戦連敗の凡骨以下の弱者もいる。
デュエルの腕に限らず、人格面でも多種多様だ。
武藤遊戯や城之内克也のような善人、海馬瀬人のように善悪に縛られない我が道を突き進む者。

今回登場する彼は遊戯や海馬とも違う、所謂小悪党に分類される決闘者であった。





「ひぃぃぃぃ!!」
「大人しくせんかい!このおにぎり頭!」

黒いタオルでも被せれば確かにおにぎりと化しそうな頭の少年、佐藤マサオ。
かすかべ防衛隊、というよりふたば幼稚園所属の園児の中でも特に泣き虫なマサオは案の定恐怖で涙を流していた。
いきなり見ず知らずの場所に拉致され、
恐そうなお兄さんの首から上が吹き飛ぶ、ふぶき丸の漫画では見ない残虐な光景を目撃し、
ハ・デスと名乗ったアクション仮面の敵キャラクターみたいのまで現れ、
トドメに一人ぼっちで夜の会場に放り出された。
5歳児には余りにも酷な状況にマサオの精神は限界寸前である。
せめてかすかべ防衛隊のメンバーが一緒ならまだしも、マサオ一人では怯えて泣き叫ぶ以外に何も出来ない。

もし風間トオルが共にいれば慌ててマサオの口を塞いだだろう。
大声で泣いているのを、誰かが聞きつけてしまうかもしれないからだ。
善人であれば、泣いている子供を保護しようと手を差し伸べるかもしれない。
残念ながら今回マサオの前に現れたのはその反対。
早速獲物を見つけ嬉々として殺しに来る、殺し合いに賛同した者であった。

「うわぁ!?」
「ケッ!無駄に手間取らせよってからに」

マサオの小さな体に足を乗せ動きを封じ、苛立たし気に吐き捨てる少年。
赤いニット帽とコテコテの関西弁が特徴な彼の名はダイナソー竜崎。
全国大会準優勝を飾るも、その後は散々な戦績となった恐竜族使いの決闘者。
そんな竜崎は今、日本刀を片手にマサオを見下ろしている。
誰の目にも見て分かる通り、竜崎はデュエルに勝ち残る道を選んだ。
早速発見した殺しやすそうな子供を見逃すつもりはなく、逃げるマサオをとっ捕まえたという訳だ。

「やだよぉぉぉ!誰か助けてぇぇぇ!」
「ピーピー五月蠅いんじゃい!運が悪かったと諦めて、ワイの踏み台になるんや!」

このままではオニギリ頭が血で染まり赤飯と化してしまう。
幼子の必死に助けを求める声を、余りにも冷酷に切り捨てる。


454 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:49:03 ww6RIZPo0
ここまで読んだ読者諸君は「ダイナソー竜崎ってこんなキャラだっけ?」と疑問に思うかもしれない。
その疑問はもっともである。
原作の遊☆戯☆王における竜崎のポジションは俗に言うかませ犬であり、悪役ではない。
孔雀舞に邪な欲望を向けたりしたが、爺ちゃんの魂をカードに閉じ込めたペガサスや、城之内を洗脳した表マリクに比べれば可愛いものである。
では何故このような暴挙に出ているのか。

答えは一つ、この竜崎は原作ではなくアニメ版の遊戯王デュエルモンスターズ出典だからである。

知らない人の為にざっくり説明すると、アニメ版の遊戯王(遊戯王DMとも略す)には複数のアニメオリジナルエピソード、所謂アニオリ回が存在する。
今回関係するのはアニオリの中でも10ヶ月に渡って放送された長編、ドーマ編だ。
原作の竜崎は決闘都市編を最後に物語からフェードアウトするのだが、アニメではこのドーマ編にも引き続き登場する。
ドーマ編における竜崎の役割は、「虫野郎」ことインセクター羽蛾と共に遊戯一行の前に立ち塞がる敵ポジションである。
それだけなら「ほーん」と言った感じだが、注目して欲しいのは竜崎が敵に回った理由と彼の過去。

嘗て、全国大会の優勝者と純優勝者としてすっかり天狗になっていた羽蛾と竜崎。
彼らはサインを求める少年へ、見返りとしてレアカードを要求するなどお世辞にも良いとは言えない性根の持ち主だった。
だが王国編で遊戯や城之内に敗北すると世間はあっさり掌を返し、レアカードもリアルファイトで奪い返されるなど散々な扱いを受けたのだ。
こんな惨めな目に遭うのも、全ては自分達を負かした遊戯と城之内のせい。
完全なる逆恨みでリベンジマッチを挑んだのだ。(当のアテムと城之内は彼らからの恨み節に正論を返している)
その際、オレイカルコスの結界を発動中に敗北した者は魂を奪われると知っていて尚も決闘を挑む辺り、相当な恨みを抱いていたのだろう。

更に続くアニオリ長編、KCグランプリ編では懲りずに城之内への復讐を目論み、
記憶編の序盤では羽蛾と共謀して遊戯から神のカードを盗むなど、卑劣漢っぷりをこれでもかと視聴者に見せつけた。
よって遊戯王DMの竜崎は原作とは改変された別キャラなのである。

(ワイはこんな所で終わる男やない!デュエルキングの称号はワイのもんや!)

同じ相手へ二度の敗北という惨めさと、城之内への多大な恨み。
魂を奪われる恐怖を一度味わったからこそ、もう二度とあんな目に遭ってたまるかと言う死への抵抗。
全国大会準優勝者など比べ物にならない、デュエルキングの地位への渇望。
それらが竜崎から真っ当な倫理観と判断力を奪い、頭の中を優勝一色へと染め上げたのだ。
何故かデュエルモンスターズのモンスター(しかも以前サインの見返りで要求したレアカードと同じ)が現実に居るのは驚いたが、魂を奪われるなどを経験しているが故に、そういう非ィ科学的な事態も受け入れられた。


455 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:49:54 ww6RIZPo0
「さぁ、往生せぇ!」
「いやだぁ〜〜〜〜〜!!!!!!」

マサオ目掛けて日本刀が振り下ろされる。
これまで数々の騒動に巻き込まれ、時には命の危機に瀕して尚も生き延びて来たマサオだが、ここに来てとうとう終わりの時が来てしまった。
法も機能しない決闘の舞台においては、幼稚園児の命だろうとゴミ同然。
無情な現実をマサオは身を以て味わう羽目になる。

が、刃はマサオの身体へ食い込みはしなかった。
突如飛来して来たなにかが、日本刀を弾き飛ばしたからだ。

「なんやと!?」

自分てからおさらばしてしまった刀に目を見開く。
自然にこうなるはずがない。
一体全体誰がやったのかと、マサオを踏みつけたまま辺りを見回す。

「人殺しなんてしようとするんじゃねぇよ、ガキの癖によオォン!?」
「だっ、誰や!?」

突如、自分でもマサオでもない声が聞こえた。
振り向いた竜崎は、信じられないモノを見たかのような表情となる。

「皆さん、ご無沙汰しております。悶絶少年専属調教師のタクヤと申します」

意味不明な自己紹介らしき言葉を口にする、一人の男。
トレーニングでも行っているのか、ガッチリとした筋肉質な上半身だ。
だがその下は、下半身は何なのだろうか。
屈強な上半身とはアンバランスに細い。
まるでコンクリートブロックを針金で支えているかのような歪さでは無いか。
これマジ?上半身に比べて下半身が貧弱過ぎるだろ…。

更に顔もおかしい。
デカい。さくらももこ先生の作品に登場するキャラクターのように、体に比べて明らかに顔がデカ過ぎる。
巨頭ォかな?(すっとぼけ)。


456 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:51:07 ww6RIZPo0
「何やこのオッサン!?(驚愕)」

奇人変人悪人狂人の巣窟である童実野町でも中々お目に掛かれない怪人物の出現に、竜崎は素っ頓狂な声を出す。
だが驚いてばかりもいられない。
折角ガキを殺そうとしていたのを阻止され、武器も手放してしまった。
幸い刀はそこまで遠くには飛ばされていない。
先輩の裸体を盗み見る空手部の後輩のようにチラチラ刀を身ながら、何とか取りに行けないかと思案する。

「そんな小せぇガキ殺そうとしやがって、もう許せるぞオイ!」
「うぎゃっ!?」

そのような目論見は許さぬとばかりに、タクヤと名乗った男が腕を振るう。
竜崎から幾らか距離が離れているが問題は無い。
先程刀を弾き飛ばしたのと同じ、支給品の鞭が竜崎の手を叩く。
上着の袖ごと皮膚を引き裂く鋭い痛みに悲鳴を上げ、咄嗟に飛び退いた為マサオの拘束が外れた。

タクヤの行動はまだ続く。
下半身の貧弱さが嘘のような俊敏さで竜崎へ近付いた。
このままトドメを刺すのか?違う。
何とタクヤは竜崎の唇に自分の唇を重ねた。キスしたのである。

唐突にファーストキス(多分)を気味の悪い男に奪われた竜崎は、

「コ゜ッ!!!」

盛大にえずいた。
原因はタクヤの口臭である。何をどうしたらここまで酷い臭いになるのか。
人間がここまでの口臭を放つなど、創造神であるGOへの冒涜だろう。

口内に広がる下水とキメションをミックスしたかのような悪臭に悶える竜崎。
その隙にタクヤは慣れた手付きで竜崎のズボンに手を掛け、下着ごと一気にズリ下ろした。
これから何をする気なのか竜崎が察する前に、タクヤもまた自慢のデカマラを露出させる。
とっくに戦闘態勢となっていたデカマラを竜崎の尻に宛がうと、躊躇なく突き刺した。


457 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:51:54 ww6RIZPo0
「ぐぎゃあああああああ!!?!」
「おぉ〜キッツい…。処女ケツ…キツいぜ」

ホビーアニメのキャラクターとしてホモセックスの経験などある訳が無い竜崎は、いきなりの処女喪失に絶叫する。
ローションなどの潤滑油も使わずに、デカマラをぶち込まれたのだ。
肛門が裂け血が垂れても、タクヤはお構いなしに腰を打ち付けた。
某野球選手並に汚い竜崎の尻と、タクヤの貧弱な腰がぶつかり合う。
周囲一帯には少年の悲鳴と悶絶少年専属調教師の喘ぎ声が高らかに響き合う。汚いデュエットだなぁ。

「アーイクッ!」

やがて限界が訪れたタクヤは、竜崎の雄膣へ思いのままにぶちまける。
一滴たりとも余すことなく射精し終えデカマラを引き抜くと、黄色が混じった精液が溢れ出た。
白目を剥いて気を失っている竜崎を尻目に、タクヤはデカマラを仕舞う。

「俺もそんなにさ、殺すほど悪魔じゃねぇんだよ」

幼い子どもを殺そうとした罰はこれで十分だろう。
きっとこいつも殺し合いの異様な空気に呑まれ暴走したのだ。
罪を憎んで人を憎まず、命まで奪う事は無い。タクヤなりの判断である。
また少し優しくなれたな!タクヤ!

話はこれでめでたしめでたしとはならない。
竜崎に襲われたオニギリ頭の子ども、マサオはどうなったのか。
彼もまた竜崎と同じように気絶していた。
突然クッソ怪しい男が現れたかと思えば、自分を殺そうとした少年とキスをしたり、尻にぞうさん(マンモス)を入れたりと理解できない奇行に走った。
おぞましい光景の連続にマサオはとうとう限界を迎え、意識を手放したのである。
それもこれも小学校入学前の子どもの前でホモセックスを始めたバカ乳首が悪い。反省して、どうぞ。

「もぉ、しょうがねぇなぁ〜」

流石に自分のせいだと自覚はあるのか、バツの悪そうな顔でマサオを担ぐ。
思った以上に軽い。こんな小さな子まで巻き込むハ・デスと磯野へ、タクヤは改めて怒りを抱いた。
タクヤは多くの少年を捕獲し立派なおしゃぶり奴隷に仕立て上げて来たが、マサオのような幼子まで餌食にする程落ちぶれてはいない。
必ずやハ・デスと磯野を調教し、このデュエルを終わらせる。
勃起したデカマラのように固い決意を胸に、タクヤはその場を後にするのだった。


458 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:53:16 ww6RIZPo0
【KBTIT(タクヤ)@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:いばらのむち@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスと磯野を調教してデュエルを終わらせる。
1:子ども(マサオ)を安全な場所まで運んでやる。
[備考]

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:恐怖(大)、気絶
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。
0:……
[備考]





タクヤとマサオが去り、後には下半身を曝け出したまま気絶する竜崎だけが残された。
彼に起こった出来事を一言で言うなら自業自得、それに尽きる。

しかし竜崎は幸運である。後ろの処女を喪失した挙句に、気絶したまま放置されている状態が、幸運なのだ。
竜崎だけではない、タクヤとマサオもまた運が良かった。
タクヤは気絶したマサオを運び、早々に立ち去った。竜崎は気を失ったままなので、自身に何が起きるかを確かめられない。
これを幸運と言わずになんと言う。

竜崎はカードを魂に奪われた時のような恐怖は二度と味わいたくないと願い、それは叶えられたのだ。
意識を失ったまま、首を刎ねられるという形で。

何が起きたのかを理解せずに、竜崎は死んだ。
恐怖を感じる事無くデュエルから敗退したのなら、実に幸運だろう。

タクヤとマサオの幸運は、早々に立ち去った為、『彼』に遭遇せず済んだこと。
石ころを蹴飛ばすような何でもなさで、竜崎を殺した『彼』に出会っていたらどうなったか。
良い結果にならない事だけは確かである。


459 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:54:03 ww6RIZPo0
妖艶な雰囲気の男だった。
惜し気もなく晒された肉体も、長髪を靡かせる顔も、美しいと言う他ない。
だが度を越した美しさとは、人間に感動以上の恐怖を与えるもの。
男もその例に漏れず、人間を超越した存在感の持ち主だ。

「まずは一つ、出来ればもう少し欲しい所だな」

竜崎の首輪を眺め、そう独り言ちる。
自分をこの会場に縛り付けている忌々しい枷。
これを解除しない事には始まらない。
必要な首輪のサンプルを確保、実際に外せるかどうかは自分の頭脳次第、と言った所だろう。

「奴らは何がしたい?」

決闘(デュエル)と言う言葉で着飾ってはいるが、早い話が殺し合いだろう。
このような蛮族真似事をして、あのハ・デスと名乗った異形は何がしたいのか。
勝ち残った者は富と名誉という男にとってはケツを拭いた後の紙くらい役に立たないものと、一つだけどんな願いも叶える権利が手に入る。
そこがどうにも解せない。最後の一人の願いを叶えてやる事の何が、ハ・デスの益になるのか。
デュエルを開催した連中のメリットが一向に分からないのだ。
まさかとは思うが、大した理由のない娯楽目的だとでも言うのだろうか。
こればっかりはハ・デス本人に問い質すしかあるまい。

男の目的は一つ、こんな茶番を開いたハ・デスを殺して生還すること。
その過程で邪魔な者を蹴散らしはするが、男からしたらその行為は殺し合いでも決闘でもない。
そも、決闘も殺し合いも拮抗する能力の持ち主同士だから成立する。
自分と人間の間に起こるのは決闘ではなく、一方的な処分でしかないと男は断じる。
有象無象のカスと同じ扱いをしたハ・デスには、相応の地獄を見せてやらねばなるまい。

ハ・デス以外に男が明確な怒りを以て殺す相手がいるとすれば、一人しかいない。

「貴様もいるのか?ジョセフ・ジョースター」

あの男も決闘に参加しているのなら、必ずや己の手で殺す。
再戦を心待ちにしている部下からその機会を奪うのは、悪い事をしてしまうとは思う。
だが、数少ない自分へ付いて来てくれた同志を殺された恨みを晴らさない訳にはいかない。

竜崎の死体には目もくれず、その男…カーズもまた場を後にした。


【ダイナソー竜崎@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 死亡】


460 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:54:58 ww6RIZPo0
【カーズ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜5、竜崎の首輪
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスを殺し生還する。
1:首輪を解析し解除する。その為にある程度首輪を集める。
2:ジョセフ・ジョースターが参加しているなら殺す。
[備考]
※参戦時期はエシディシ死亡以降〜ジョセフ対ワムウの前。

※竜崎の死体の近くに毒蜂@金田一少年の事件簿が落ちています。

【いばらのむち@ドラゴンクエストシリーズ】
いばらを編んで作った鞭。
女性専用武器であるが、タクヤさんは悶絶少年の調教で磨いたテクニックにより使いこなしている。

【毒蜂@金田一少年の事件簿】
金田一少年シリーズの中でも1、2を争う程後味の悪い「妖刀毒蜂殺人事件」に登場した刀。
七色に輝く刀身を持ち、所有者が不幸になる呪いがある曰く付きの名刀。
実際は呪いの正体は単なるでっち上げに過ぎず、作中ではこれが原因で殺人事件が発生した。
呪いは無かったとして事件は終わったかに思えたが…。


461 : ◆ytUSxp038U :2022/05/31(火) 23:55:52 ww6RIZPo0
投下終了です。


462 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/01(水) 01:15:34 RURVMco.0
投下します


463 : お姉ちゃんは兄弟のことが大好きすぎて、××しちゃうの ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/01(水) 01:16:38 RURVMco.0
あらゆる世界から集められた人間たちによる、血なまぐさい殺し合いの舞台となった会場。

その一角にある市街地の道路上に、頭部が鉛筆張りに尖った姿をしたオッサンがいた。

彼の名は校長、本名は『ミュミャリャツァオビュビュンピピュプリャプピフンドシン』という男で、
自分が世界のだれよりもエラくなければ気が済まない男である。

そんな彼は今、とある理由によりこの会場内を歩き回っていた。その理由とは……

「この戦いを制したものはどんな願いでもかなえられる……、是非とも優勝して世界どころか銀河、いや宇宙一エライ存在になってやるのじゃい!」
「そのためにも、この会場内をうろつきまくっているクソゲロどもをドンドンぶち殺してやるのじゃ――い!!」

この殺し合いに優勝して『宇宙一エライ存在になる』ために、他の参加者を探しているのである。

そうやってこの(クソッタレ)校長が獲物を探していると、ちょうど自身の前方を歩いている女性の姿が彼の目に入ってきた。

牛の耳のような髪飾りを付け、またそれに見合った壮絶な色気と抜群のスタイルを誇った、そんな女性だった。

またその女性の手にはその妖艶さに似合わない、武骨で巨大な斧が握られていた。

校長はそんな姿をした彼女を見つけると、静かに距離を詰めていきながらその後をついていった。

(ワガハイには1億6000万個もの必殺技がある…、故にワガハイの勝ちは見えてるのじゃい……)

彼はまずこの女性を血祭りにあげ、自身の勝利に一歩近づこうとしたのだ。
【※戦えば校長が負けます。】

(それにあのオナゴ、牛の耳みたいな飾りなんぞ頭に付けてる上に胸がメタボになっているし、明らかに鈍重そうじゃい)
(しかもあんな武骨で巨大な斧……まともに振り回せるわけないのじゃい!)
【※戦えば校長が負けます。】

何故彼は最初の獲物としてその女性を選んだのかというと、彼は自分の(恐ろしくひいき目に見た)実力、そして相手の身体的特徴や持っている武器などから確実に勝てるだろうと考えたからだ。
【※戦えば校長が負けます。】

「死ねえぇぇぇいっ!!」

【※戦えば校長が負けます。】

そしてある程度距離を詰めたあたりで校長は、女性めがけて勢いよく襲い掛かったが……

「死ねえぇぇぇ/ /いっ!!」

【※戦えば木/ /交長が負けます。】

大方の予想通りその女性の手にしていた斧によって、テロップごと"お開き"にされてしまうのだった……。

【校長(ミ(以下省略))@絶体絶命でんぢゃらすじーさんシリーズ (お約束通り)死亡 ( ゚∀゚ )ヤーイ、バーカバーカ! 】

------------------------
一方、襲い掛かってきた校長をアジの開きのように切り裂いた女性はというと……

「うふふ、もう終わり?もう少し楽しみたかったわ…」

全身が返り血にまみれた状態で、肝が冷えるくらいに美しい笑みを浮かべていた。

彼女の名はカミラ、領土のどこにも光が差さぬ国『暗夜王国』の第1王女である。

そんな彼女は、この殺し合いに乗っていた。

彼女がこの殺し合いに乗った理由、それは明白であった。

「この戦いで勝利を得られれば、きっとカムイは暗夜へと戻ってくるはずだわ…!」
「だから、殺してあげる……みぃんな、殺してあげるわ……今ここで」

そう、すべては愛しの兄弟の一人『カムイ』を自分たちの王国へと連れ戻すために……。

「ああ、カムイ…愛しているの……!あなたがもう私たちの元に戻ってこないときは、あなたを殺して……私も死んでしまうくらいに……!」

こうして、愛深きが故に他者を殺す事も厭わない"姉なるもの"がこの会場に解き放たれたのだった……。


464 : お姉ちゃんは兄弟のことが大好きすぎて、××しちゃうの ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/01(水) 01:17:38 RURVMco.0
【カミラ@ファイアーエムブレムif】
[状態]:健康、返り血まみれ
[装備]:重力の斧-グラール@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2、校長のデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1〜3)
[思考・状況]基本行動方針:優勝し、カムイを暗夜王国に連れ戻す。
1:殺してあげる……みぃんな、殺してあげるわ……今ここで。
2:他の兄弟やルーナ、ベルカがいるならば、協力は惜しまない。
3:返り血を洗い流すために風呂に入りたい。
[備考]
参戦時期は少なくとも白夜王国ルートの、いずれかの時間軸。


『支給品紹介』
【重力の斧-グラール@遊戯王】
カミラに支給。効果は以下の通り。
『装備魔法
 装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
 このカードがフィールド上に存在する限り、
 相手フィールド上モンスターは表示形式を変更する事ができない。』


465 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/01(水) 01:18:02 RURVMco.0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


466 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/01(水) 01:38:50 2Wt6zk4E0
皆様、投下お疲れ様です
私も投下させていただきます


467 : 殺し合いと自動書記人形 ◆diFIzIPAxQ :2022/06/01(水) 01:39:50 2Wt6zk4E0
 最初は夢だと思っていた。

 街で触れ合う子供たちや郵便社の同僚が、風邪をひいたり体調を崩した時にたまに見ることがあるという変な夢なのだと。

 数日前に"探し物"をしている途中から雨が降ってきたから、そうなんだろうなと漠然と考えていた。

 しかし、首輪の爆発によって男の首と身体が離れ離れになり、視覚と嗅覚に新しい情報が入ってきて、"彼女"は理解する。

 戦場で嗅きなれた血の匂い、崩れ落ちる首無しの身体、首があった場所から飛び散る臓物。

 ―――今見ている光景は、夢ではなく現実で起きている事なのだと。

 即座に防衛体制を取ろうと手足を動かそうとして、"彼女"はここで身体が動かせない事を知る。

 その後もサングラスの男がルールを説明したり、悪魔の姿をした存在が話す無数の世界の話に耳を傾けながら、何か情報を得られないかと目を動かしていたが、顔を動かせない以上見える事は限られている。

 そして、サングラスの男がデュエルの宣言を行うとき、"彼女"―――『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が最後に見たのは、見せしめで死んだ男の首であり、


 自分自身の眼と何も見てない死者の眼と視線があった、気がした。



▲ ▽



バトルロイヤル形式の決闘として今回使用される、四方を海に囲まれたフィールドの北西付近。
雪原と草原に挟まれたエリア周辺が、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの初期配置された場所であった。
自身のおかれた状況を即座に理解した彼女は、この場所では狙撃の的になりかねないと身を隠す場所を求めテイバッグを持ち草原側に向かい、10分ほどで森に囲まれた木々を場所まで移動。
一時的な安全を確保した彼女は、テイバッグの中身を手袋をつけた手で探っていく。

このデュエルという名の殺し合いの前までに生活拠点にしていた街では、歩けばその美貌で人々が振り返ったとされる金髪碧眼の容姿をした少女は、今は顔色は優れない。
人が死ぬ所を見たことではなく、元の世界で彼女に起きた出来事が最大の理由であるが、自分に支給されたアイテムを確認している最中に、一瞬だが一段と険しくなる。
彼女が手にしたアイテムは、イングラムM10という名の小型の機関銃。


468 : 殺し合いと自動書記人形 ◆diFIzIPAxQ :2022/06/01(水) 01:41:05 2Wt6zk4E0
「人を……殺せる道具……」

ポツリと、ヴァイオレットが呟く。彼女にとって銃とはかつて馴染み深い道具であり、今は不快を感じる兵器であり、そして己自身であった。


―――かつて、陸軍の女子少年兵として所属し、ギルベルト・ブーゲンビリア少佐の部下として各地で戦ったヴァイオレット。10代前半の少女とは思えない卓越した身体能力と「殺し」の才能で戦地を勝利に導き、敵を葬ってきた。

―――その最終決戦で、自身は最終的に両腕を失い、同じく傷を負った少佐とは運ばれた病院の違いで離れ離れになる。

―――その後、両腕は入院中に義手を得て、少佐と親友であったクラウディア・ホッジンズ中佐が保護者として退院、中佐が戦後立ち上げた郵便社にそのまま住み込みで働くことになる。

―――郵便社の代筆業=自動手記人形(ドール)の仕事を紆余曲折ありながらこなしていき、人々との関わりを触れていくことで、彼女は初めて過去の自身を振り返り、心に生まれた罪悪感を知る。

―――かつての自分がしてきた事は、どれだけの“いつか、きっと”を奪ったのではないのか?

―――多くの命を奪ってきたことで、自分自身が傷ついていてたくさんの火傷を負ったのでは?

―――少佐の武器でしかない自分が、自動手記人形(ドール)として人を結ぶ手紙を書くのか?

―――そして同時に、少佐は未帰還兵として扱われ、既に墓まで作られていたという事も、偶然知ってしまう。

―――その現実を受け入れきれないヴァイオレットは、ギルベルト少佐を探すべくかつての戦地の跡に足を運び、瓦礫を漁り残っているものを探り日々を過ごしたが、ホッジンズ中佐の手によって郵便社に戻り―――今回のデュエルに参加者にされた。


前述した通り、ヴァイオレットはこの闘い自体は夢ではなく現実だと既に受け入れている。
彼女が一番懸念している事は、自分の首にはめられている首輪やこの島から脱出する方法ではなく、自分自身の事である。
人の気配もNPCモンスターの気配もない森の中で、闇に潜みつつ独り思考していく。


 ー最後の一人になるまで戦えと言われた。
 ーもう、誰も殺したくない。
 ー帰らなければならない。社長やカトレア様がいる郵便社に。
 ーそして、代筆を、手紙を書けるのか?
 ーこの、武器として人を殺めてきた私が?
 ーいや、もしかしたら皆もこの闘いに巻き込まれてるかもしれない。
 ーその時は、皆を守るために、戦い、殺すのか?
 ーまた、誰かの…“いつか、きっと”を奪うのか?

 ー今の自分は、生きていて良いのだろうか?


ヴァイオレットは答えの出ない自問自答を脳内で繰り返す。そうして時間は過ぎていくが、10分ほど経った頃に現状に思い出し、意識を引き戻す。

「とにかく、動きましょう……」
自分に言い聞かせるようにつぶやいたヴァイオレットは、持っていた銃をジッと見て、立ち上がり森から出て歩き始める。

《君は…生きて…自由になりなさい》
《心から……愛してる》

「少佐……、私は……」
歩いている最中に、力弱い声で少佐との戦地での最後の会話を思い出し、口にする。

そして少女は、何かにすがるように左手を無意識に胸に身に着けているエメラルドグリーンのブローチを握っていた。


【ヴァイオレット・エヴァーガーデン@ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ版)】
[状態]:精神疲労(中)
[装備]:エメラルドグリーンのブローチ、イングラムM10@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:元の世界(及びC.H郵便社)に戻る
1:参加者との接触を目指す
2:少佐……、私は……
[備考]
*参戦時期は、アニメ8話Aパート〜9話特殊EDより前の間です


【イングラムM10@現実】
ヴァイオレット・エヴァーガーデンに支給された。
1970年に作られた軍用サブマシンガン。32発分は装弾済みで、予備弾薬無し
漫画版バトロワで桐山和雄に支給された。ぱらららっ

【エメラルドグリーンのブローチ@ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ版)】
ヴァイオレット・エヴァーガーデンの所持品。支給品ではなく、衣類の一つとして没収されなかった
"彼女"がヴァイオレット・エヴァーガーデンたりえる大切な一品


469 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/01(水) 01:41:59 2Wt6zk4E0
投下終了です


470 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/01(水) 02:08:46 zPuc0YZ20
投下します。


471 : この土地 帰る路はない ◆DJ6C0hLJds :2022/06/01(水) 02:09:32 zPuc0YZ20

 ――――幸せが壊れる時はいつも血の匂いがする。

 ――――が、少年がこの決闘の場で嗅いだ匂いは血よりも更におぞましい匂いであった。


「―――――――――――ッ!?」


 声にならない声を上げる少年。
 少年は『それ』のあまりの匂いに喉がやられたのだ。
 炭焼きの少年・竈門炭治郎は鼻が利く。
 そんなことはもう皆さんご存じであろう。

 炭治郎は家に帰らねばならなかった。
 それはいつものように麓の町へと炭を売りに降り、いつものように山の家へと帰ろうとした夕暮れだった。

 知り合いである三郎爺さんに呼び止められた。
 「日が暮れると人喰い鬼がうろつき出す(要約)」
 と、その日は三郎爺さんの家に泊まったのであった。

 そして、気が付いたらこのような場にいた。
 
 何故ただの炭焼きである自分がこのような場にいるのか?
 わけがわからない、と全力で叫びたかった。
 しかし、長男なので我慢した。次男だったら叫んでいた。

 ともあれ、帰るためには支給されたものを確認した。
 デイパックの中から出てきたのは一足の足袋のようなものであった。
 危険性はないか、どうか一先ず匂いを嗅ぐことにした。

 が、それが文字通り命取りであった…………。 


 その足袋、もとい靴下。
 持ち主曰く「ジャスミンの香り」。
 持ち主の奥方曰く「愛があれば耐えられる」。
 持ち主の長兄曰く「命に関わる」「これ以上臭いものは無い」。


 その靴下の持ち主――――野原ひろし。


 悶えながら炭治郎はその場を転がる。
 あまりの臭さに意識が飛びかけそうになった。
 しかし、彼は長男なので耐えられた、次男だったら耐えらなかった。

 その時であった。一陣の風が吹いた。
 遠ざけたはずの足袋が炭治郎の顔面に直撃した。
 再び悶絶した。長男だから耐えられなかった。次男だったらすぐに対応できた、常人の鼻なので。

 そして、竈門炭治郎は意識を闇に落とした。




 ―――――――後に二度と目を覚ますことはなかった。



【竈門炭治郎@鬼滅の刃 死亡】


472 : この土地 帰る路はない ◆DJ6C0hLJds :2022/06/01(水) 02:09:59 zPuc0YZ20

  ◆  ◆  ◆
 


 男は静かに佇んでいた。
 一切の言葉も発さず、ただ静かに状況を確認するように周囲を見渡す。
 首を右から左へとまるで機械のように動かす。

「…………」

 周囲には人の気配はないように思える。
 しかし、一切警戒を怠らない。
 確かにこの『決闘』という場にあの『冥界の王』を名乗る異形の者。
 現実離れした今の状況ではあるが、自分のやることは変わらない。

『始末人(ターミネーター)』の異名を持つ彼『九鬼源治』にとっては人殺しは日常。

 そして――――『九龍に失敗はない、失敗は死を意味する』。

 その鉄の掟に彼は従う。

「…………」

 支給されたものを確認する。
 「日本刀」―――これは彼としては当たりの武器だ。
 「モンスター等が描かれたカードの束」―――あのハ・デスにどこか似ているよう気もするが、今は気にしない。
 そして最後に「何やら薬が漬け込まれた紙」が数枚。

「…………」

 裏社会に生きる彼にとっては説明書を読んでそれがどのようなものかすぐにわかった。
 これは『麻薬(ドラッグ)』である、とすぐに理解できた。
 しかし、麻薬と言ってもレッドラムのようなものではなかった。
 身体能力の強化と怪我の回復には使えるようだが、真かどうかわからない。

 一切喋らず、表情を一切変えない、動揺などもしない。
 まさに彼の異名通りの冷静さでことを進める。


「―――――――――――ッ!?」


 わずかだが声が聞こえた。
 源治は一先ず、声のする方に歩みを進めていく。

「…………」

 少年が青ざめた表情で気絶していた。
 ので、源治は――――介錯してやった。

 どんな生物であろう首を斬られれば死ぬ。
 馬鹿な鬼邪高の生徒でも知っていることである。

 近くに異臭を放つ靴下があったが、源治は特に気にすることはなかった。
  
「…………」

 もう一陣、風が吹いた。
 異臭を放つ靴下はどこかに飛ばされた。
 源治は歩みだした、靴下が飛んだ方向とは逆の方角に。

 ――――その男、極道で暗殺者。

 進む道に障害があれば、文字通りに斬って進むのみ。


【九鬼源治@HIGH&LOW】
[状態]:健康
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[道具]:基本支給品、地獄への回数券@忍者と極道(残り10枚)、所持者不明のデッキ@遊戯王
[思考・状況]
基本方針:元の世界への帰還のために参加者を全員殺す
1:『地獄への回数券』を試すかは保留


『支給品紹介』
斬鉄剣@ルパン三世
石川五ェ門愛用の仕込み刀。
斬れないものはあんまりない。

地獄への回数券@忍者と極道
服用することで忍者に匹敵しうる身体能力と傷の再生能力、頑強な防御力を獲得が出来る。
『短刀(ドス)、銃(チャカ)、麻薬(ヤク)で忍者(てき)をを討つ  実に極道的だろう?』


ひろしの靴下@クレヨンしんちゃん
殺人兵器。
常人なら失神する程度の匂いを放つ、
日本のサラリーマンなめんなよ。


473 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/01(水) 02:10:31 zPuc0YZ20
投下終了です。


474 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/01(水) 19:52:12 W/XcP6mQ0
投下します。


475 : 翼を広げて ◆bLcnJe0wGs :2022/06/01(水) 19:53:29 W/XcP6mQ0
「ゆ・る・さ・な・いんだからー!」

 何処かの屋外。 そこでは、ふんわりとしたブロンドのアップヘアーの参加者がハ・デスへの怒りを叫んでいた。

「何がデュエルだって!?最後の一人まで生き残ったらデュエルキングなんてのになって、それに富と名誉、どんな願いも一つだけ叶える!? そんなことでそれが全部もらえるんだったら、願い下げよ!」

 その直後、彼女の髪色が頭頂部の方から次第に赤く染まっていく。
 これは、彼女自身が髪に掛けた色染めの魔法。 先程の金髪もその効果によるもの。
 それが怒りの感情によって赤く変化していっているのだ。
 その次に網膜が真っ赤に染まり、身体が大きく変化する。

「ギャオオオオオォォン!!」

 咆哮をあげながら変化を終えた、その姿は黄色い有翼のドラゴン。

 それは彼女が太古から祖国で守り続けていた、気高く、神聖な存在であるドラゴンとの契約を破ったことにある。
 元より彼女の祖国である、魔法の国は日の光が余り当たらず、常に暗さが続く国であった。
 そこで当時のウィッチ(魔法使い)達はドラゴンと契約を交わし、灯りとなる″ドラゴンの炎″を国内に灯してもらったのだ。
 しかし、その契約の中には『このドラゴンの炎を魔法以外で使ってはいけない』というルールがあったが、彼女はそれを破って料理に使ってしまった。
 当然、ドラゴンの怒りを買ってしまった彼女は『感情が高まるとドラゴンに変化する(彼女自身の意思でも変身可能)』呪いに掛かり、通っていた魔法学校でトラブルを起こしてから中退し、家を出ていってしまった。
 
 それからの彼女は世界樹のマルシェに肉料理店の″MUG″を開いたが、一度はそのマルシェも去ってしまった。
 しかし、世界樹の国で王子が借金をした、他にマルシェでネオ料理の販売が行われ初めたという報せを受けてから、王子の借金返済を手伝いつつ自分の店でもネオ料理を販売したいという想いから再びマルシェ内店を開くことにしたのであった。

 親が病院務めで、シェフとして、
そして料理店の店主であり、なおかつ忙しい親に代わって弟のオレガノや沢山の飼い猫の面倒を見てきた為に多くの人々の相手をしてきた彼女にとって、この『デュエル』というものは到底赦せるものではなかった。
 故に、彼女は初めから他に巻き込まれていた参加者達の他に、

「イソノ、アンタも怖い思いしてるよね?アタシが助けてあげる!ついでにハ・デスも打ち負かしてあげるから!」

 デュエルの会場に転送される直前にハ・デスを恐れている様子を見せていた磯野を救いたいという一心もあり、その為にハ・デスを撃破するという決意も抱いていた。

─バサッ

 その決意を胸に、ドラゴン姿の彼女は空を羽ばたき出した。


476 : 翼を広げて ◆bLcnJe0wGs :2022/06/01(水) 19:53:59 W/XcP6mQ0
【マジョラム@大繁盛!まんぷくマルシェ】
[状態]:ドラゴンの呪い、ドラゴンに変身中
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み?)
[思考・状況]:『デュエル』を打ち破って、ハ・デスを倒し、他の参加者や磯野を救う。
1:デュエルに反対的な参加者を探す。
[備考]
※参戦時期は少なくとも、『無印』で再び自分の肉料理店(MUG)を開く為、世界樹のマルシェに戻ってきた後。
※ドラゴンへの変身は一定時間のみ可能。 1度解除された後に再度変身する場合には、数分〜数十分程のブランクが必要です。
※各種魔法の制限については後続の書き手にお任せします。


477 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/01(水) 19:54:17 W/XcP6mQ0
投下終了です。


478 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:23:02 n7thcDuM0
投下します


479 : 二重召喚 ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:23:54 n7thcDuM0
「ふぅん。デュエルモンスターズの精霊と手を組んで、磯野が俺を裏切るとはな……」

 会場のどこかで、針金でも入っているのかと思うくらい重力や風を無視した、白いコートを纏った男が一人佇んでいる。
 彼の名前は海馬瀬人。海馬コーポレーションの社長にして、最初の場で司会をしていた磯野の上司である。

 否、『元』上司と言うべきだろうか。
 海馬はもう、磯野を部下として扱うつもりはなかった。
 しかしここで別の可能性を思い付く。

「それともマリクが持っていた千年ロッドの力のようなもので、洗脳でもされたのか? だとすれば解雇は勘弁してやってもいいが……」

 海馬は過去に、別人に己の記憶を植え付けて洗脳するアイテムを見たことがあった。故にその可能性に行き当たる。
 もしそうなら磯野も被害者だ。ただで済ませる訳にはいかないが、情状酌量の余地くらいはある。
 だがそれとは別に、彼にはもう一つあることが気にかかった。

「あれはアテム、か……?」

 それは最初の場で目撃した、彼のライバルのこと。
 しかしそれはありえない。なぜならアテムは海馬の目の前で、冥界に還っていったのだから。
 あのハ・デスは冥界の魔王を名乗るだけあって、死者の魂を現世に呼び戻せるというのだろうか。

「まあいい。俺の前に立ちふさがる敵は、全て粉砕するのみ!!」

 海馬は色々考えたが、最終的にこう締めくくった。
 何を考えようと所詮は机上の空論。情報が足りない現状で下手に考えすぎれば、何かを誤認するやもしれない。

 などと思考していた所に、空から巨大な鳥が現れた。
 否。それはもう鳥ではない。翼竜というべき存在だ。
 海馬はこの翼竜を知っていた。

「砦を守る翼竜か。確かにこの状況なら中々厄介だな。
 制空権を握られてしまえば、多少の実力差は無視できる」

 砦を守る翼竜。攻撃力は1400と決して高くはないが、今の状況では海馬の言う通り確かに厄介だ。
 しかし、彼には通用しない。
 なぜならば、彼には最強の僕が存在するからだ。

「だが磯野! 知らんとは言わせんぞ!
 俺には最強にして美しき僕が存在することを!!」

 そう言うと海馬は当然のように装備していたデュエルディスクからカードをドローし、あるモンスターを召喚した。

「出でよ! 青眼の白龍!!」

 海馬が召喚したのは、青き瞳に白き体に翼をはためかせる、巨大で美しい龍だ。
 龍が放つ圧倒的な威圧感は、砦を守る翼竜では叶わないことを誰もに知らしめる。

「滅びのバーストストリーム!!」

 龍の口から放たれる息吹は自然と魔力を帯び、それだけで敵を粉砕する。
 こうして砦を守る翼竜はあっさり倒された。

 ザッ

 すると、海馬の背後から地面を踏みしめる音が聞こえた。
 青眼の強さに救いを求めたか、それとも無謀にも挑みに来たか。
 どちらであろうと構わない、と考えながら彼は背後に振り向く。

「何だと……!?」

 そして海馬は酷く驚いた顔を見せる。
 彼の眼前には、彼と同じく針金でも入っているのかと思うくらい重力や風を無視した、白いコートを纏った男がいる。
 左腕に装備されているデュエルディスクこそ違うものの、それ以外は海馬と同じだ。
 顔や背格好も含めて。

 そう、すなわち。

「「俺、だと……!?」」

 海馬瀬人がもう一人、この場に現れた。


480 : 二重召喚 ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:25:00 n7thcDuM0



 最初は酷く戸惑った二人の海馬。
 どちらかが偽物と考えるのが自然な気もするが、そう判断するには目の前の相手はあまりにも同じすぎる。
 しかし情報交換を始めて見ると、意外なことが分かった。

「どうやら、俺と貴様は別の世界の住人のようだな。
 剛三郎のVR空間にドーマ、それにKCグランプリの事も知らないとは……」
「平行世界という奴か。非科学的だと言うのは簡単だが、科学を信じるならば目の前の事実を受け入れるべきだろうな。
 少なくとも冥界は実在するのだ。それ以外があってもまあ、俺には関係ない」

 二人の海馬はそれぞれ平行世界の住人だったのだ。

 ここで少々メタ的な解説を入れるが、最初に登場していた方の海馬はアニメ版『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』のキャラで、後から現れたほうは原作版『遊☆戯☆王』のキャラである。
 よって今後はアニメ版の方を海馬(ア)と、原作版は海馬(原)と表記する。

 それはともかく、海馬(ア)は目の前の相手に問いかける。

「それで、これから貴様はどうする?
 いくら別の世界の人間とは言え、もしや俺がこの下衆な決闘に乗り気なわけがあるまい」
「当たり前だ!! こんなただの殺人ゲームなどさっさと粉砕するのみ!!
 そしてその後にアテム、奴と決闘し死したる王にとどめを刺す!!」

 海馬(原)の言葉に一瞬虚を突かれる海馬(ア)。
 しかしすぐに気を取り直すと、平行世界の自分に警告のような言葉を向けた。

「勝手にしろ。だが器の遊戯に足を掬われんようにすることだな」

 それだけ言って去ろうとする海馬(ア)。
 彼は平行世界のこんな自分に不快感を覚えた。
 かつてあれほど嫌ったはずの過去に囚われる人間に、よりにもよって自分と同じ存在がなっているのだから。

 しかしそんな考えは海馬(原)には分からない。
 彼は只、何を思って遊戯の話題を出したのか問うだけだ。

「遊戯はそれほどの存在か?」
「貴様の世界のことは知らん。
 だが俺は見た。戦いの儀において奴は、アテムの場に同時に現れた三体の神全てに対し、一歩も怯むことなく戦い、見事討ち滅ぼす姿をな」
「遊戯が神を……三体の神を同時に相手して勝利したというのか!?」

 海馬(ア)の言葉に心底から驚きを隠せない海馬(原)。
 気持ちは理解できるが、だからと言って寄り添う気はない。

 海馬(ア)は驚愕し放心する平行世界の自分を放置して、一人先を行く。
 いついかなる時も、彼のロードは前進あるのみ。


【海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康、平行世界の自分に不快感
[装備]:海馬瀬人のデッキ&デュエルディスク@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:この決闘を粉砕する
1:平行世界の自分とは別れて行動する。
2:首輪を解除したい
3:アテムは放置。そう簡単に死ぬような男ではないし、今更会うつもりもない。
[備考]
※参戦時期は本編終了後

【海馬瀬人@遊☆戯☆王】
[状態]:健康、驚愕(大)
[装備]:海馬瀬人のデッキ&新型デュエルディスク@遊☆戯☆王THE DARK SIDE OF DIMENSIONS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:この決闘を粉砕したのち、アテムと決着をつける
1:遊戯が三体の神を倒しただと……!?
2:首輪を解除したい
3:アテムを探す。そうそう死ぬとも思えないが、お友達が死んで心に隙が生まれれば万が一があるかもしれない
[備考]
※参戦時期は本編終了後からTHE DARK SIDE OF DIMENSIONS開始前のどこか


【海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ に支給。
アニメ版にて海馬が使用したカードが入ったデッキ。エースは青眼の白龍。
クリティウスの牙やオベリスクの巨神兵、青眼の光龍もあるかも。
デュエルディスクはバトルシティ時代の物。

【海馬瀬人のデッキ&新型デュエルディスク@遊☆戯☆王THE DARK SIDE OF DIMENSIONS】
海馬瀬人@遊☆戯☆王 に支給。
劇場版にて海馬が使用したカードが入ったデッキ。エースはやっぱり青眼の白龍。
アニメ版のみ使用したカードは入っていない。
デュエルディスクも劇場版仕様。


【砦を守る翼竜@遊☆戯☆王】
攻撃力1400の翼竜。
敵の攻撃を30%で回避する能力を持つ。


481 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:25:48 n7thcDuM0
投下終了です
続いてもう一つ投下します


482 : 地獄の暴走召喚 ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:26:37 n7thcDuM0
「本田君……」

 会場のどこかで、一人の少年が深い悲しみに包まれている。
 彼の特徴的な髪形を見れば誰もが、最初の場で爆発した男に声を掛けられ居た人だと思うだろう。
 それは正しく、しかし間違っている。
 なぜなら最初の場で見えた彼が裏なら、ここにいる少年は表。

 そう。彼こそが本当の武藤遊戯――

「待ってて。今すぐ僕が参加している決闘者を皆爆☆殺して、君を生き返らせてみせるから!」

 ではない。ここにいる遊戯は本来の彼ではない。
 彼は『遊戯王なのはMADシリーズ』の武藤遊戯だ。

 遊戯王なのはMADシリーズとは、2007年頃ニコニコ動画にて投稿されていた、決闘(デュエル)をするMAD動画のシリーズのことである。
 もっとも、元動画は既に権利者により削除され、今ではミラーを残すのみだが。
 更に余談だが、ビリビリ動画にて有志がリメイク版の動画を制作しているが、ここにいる遊戯には関係ないので省略する。
 ともかく、ここにいる彼はMAD動画出展なのだ。

 ここにいる遊戯の性格は、はっきり言って鬼畜だ。
 イカれたパワーカードを振りかざし、オーバーキルは当たり前。
 特にアテムに対しては、いくらそうすべきとはいえ冥界に送る気マンマンだったりする。

 だが友人が本当に死んで悲しまないほど冷徹な性格ではなかった。
 なので彼は決断した。殺し合いに参加している決闘者を皆殺しにして、友人を生き返らせると。

 とはいっても友人以外を見捨てるつもりはない。
 一度殺すとは言え、爆☆殺した決闘者も後で生き返らせ、最後には冥王ハ・デスも爆☆殺するつもりだ。
 まあ危険人物に変わりはないが。

 ともかく、行動方針を決定した遊戯は一歩足を踏みしめる。
 彼の傍らには、白い服の魔法少女が寄り添っていた。
 彼のデッキのエース、WDMG(ホワイトデビルマジシャンガール)だ。

「ぶるわぁ……!!」

 そんな彼女は、若本ボイスで敵を待ち望んでいた。


【武藤遊戯@遊戯王なのはMADシリーズ】
[状態]:健康、悲しみ(大)
[装備]:武藤遊戯のデッキ&デュエルディスク@遊戯王なのはMADシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:決闘者を全員爆☆殺した後、本田君と死んだ決闘者を生き返らせて、冥王ハ・デスも最後に爆☆殺する。ただしアテムは除く
1:他の決闘者を探して爆☆殺する。特にアテム。
2:本田君……
[備考]
※参戦時期はAIBOvs王様・社長・凡骨・顔芸にて、アテム、海馬、城之内、マリクと決闘する直前
※アテムは分離した状態で参戦しているので、遊戯の中にはいません。


【武藤遊戯のデッキ&デュエルディスク@遊戯王なのはMADシリーズ】
武藤遊戯に支給。
MAD仕様の強力パワーカードがオンパレードのデッキ。
エースはWDMG(ホワイトデビルマジシャンガール)。リメイク前仕様なので、レベル3までは若本ボイス。
セイバーなどは入っていない。


483 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/01(水) 20:26:53 n7thcDuM0
投下終了です


484 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:36:26 hMfHldo20
皆様、投下お疲れ様です。
僕もこれから投下させていただきます。


485 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:37:33 hMfHldo20
どんなバトルロワイアルも、大抵の場合は『絶海の孤島』で行われる(一部例外あり)。

しかし……
全てのエリアが『陸地』とは限らない。

中には海に面する、
もしくは、海のど真ん中に位置するエリアも存在するのだ……。

☆☆☆

ここは会場内の端に位置する海のエリアの一つ。

普通ならば、海中には大小様々な魚類が自由に泳ぎ回っているはずなのだが……

不思議な事に、
泳ぎ回っているのは今回の決闘(デュエル)と称される殺し合いを主催した『冥界の魔王』が会場各地に配置した『NPC』、もしくは『モンスター』と呼ばれる怪物ばかりで、
普通の魚の姿は全く見られなかった。

そんな少し不自然な海中で……
二つの人影がぶつかりあっていた。

1人は、
銀の仮面に黒マフラー、額に輝くVとV。
黒い手袋、赤い胸……
人類の自由と平和の為に戦う『仮面ライダー』の一人である深海開発用改造人間(カイゾーグ)、『仮面ライダーX』!

対するのは、
髭と髪を長く伸ばし、
黄金色に輝く魚鱗柄の鎧を纏った筋骨隆々とした威丈夫・・・
海底王国アトランティスの女王と地上の灯台守との混血児、『アクアマン』!

「ウオォォォォ!」
「トリヤアアアア!!」

アクアマンが愛用の矛を振り下ろすと、Xライダーは自身の愛用武器であるライドルスティックでそれを受け止める。

「ウオリヤアアアア!!」

しかしアクアマンは矛にかける力を緩めず、矛を受け止めるライドルスティックに向けて渾身の力をかける。
主催者によっていくらかの制限が課せられているとはいえ、
本来は原子力潜水艦も持ち上げられる程の力を込められ、
Xライダーの体はもの凄い速さで海底へと沈んでいく……。
だが、Xライダーも負けてはいない。

「ライドルロープ!」

Xライダーはライドルのグリップボタンを操作し、
その形状を棒状のスティックから縄状のロープに変化させると、
そのままアクアマンの矛を絡めとったのだ。

「なにぃ!?」
「Xキック!」

アクアマンの腹部にXライダーの蹴りが入り、アクアマンの体が大きく吹き飛ばされる。
しかしアクアマンは両足に力を込めて踏ん張ると、Xライダーから5メートルほど離れた場所に制止した。

「やってくれたなぁ!」

アクアマンは一旦海底近くに移動すると、自身の矛を海底の地面へと突き立てる。
それを引き抜くと……
矛の切っ先にはまるでフォークに突き刺さったミートボールのように工事用の鉄球サイズの土塊が付着しており、
アクアマンはその土塊を、
Xライダーに向かって投げつけていったのだ。

「うわっ!?こ、この!?」

Xライダーは最初に飛んできた土塊を、紙一重で避けた。
だが、アクアマンは矛はスコップかスプーンの代わりにして、次々にXライダーに向けて土塊を投げつけていく……。

さしもの歴戦の戦士たるXライダーも、土塊投げ攻撃にはたじたじであった。

「・・・ライドルホイップ!」

Xライダーはライドルのグリップボタンを操作して、
ライドルを細剣のホイップ形態に変化させると、自分に向かって飛んでくる土塊群を次々に切り裂いていった。

「ウオォォォォ!!」

Xライダーが最後の土塊をX字に切り裂くと同時に、
アクアマンは矛を真っ直ぐ構えながら、
Xライダーに向かって猛スピードで突っ込んでいく。

「……はっ!オリャアアア!!」

アクアマンの突進に気づいたXライダーは、
すかさず自身のライドルホイップを振るった。

そして……二人の戦士の武器が交差した……。


486 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:39:01 hMfHldo20
『…………』

アクアマンの矛とXライダーのライドルホイップの切っ先は…………
それぞれお互いの喉元の部分で止まっていた。
しばし二人は視線を交わし……
静かに構えを解いた。

「……お前、中々やるじゃねぇか」

アクアマンは不敵な笑みを浮かべながらXライダーを賞賛した。

「あぁ……アンタも、生身の割に結構やるな」

Xライダーもアクアマンの実力に感服し、ライドルをベルトのバックルに収納して己の右手を差し出す。

二人の海の戦士は、
魚もプランクトンもいない不自然なまでに静か過ぎる海中で、
固く握手を交わしたのだった。

☆☆☆

ここで少し種明かしをすると、
Xライダーとアクアマンは、何も『本気の殺し合い』をしていた訳ではない。

仮面ライダーX/神敬介とアクアマン/アーサー・カリーの二人は、会場に飛ばされてすぐに出会った。
お互いに殺し合いをするつもりは無いことを確認して軽く情報交換を始めた時、
二人はお互いが『世界の平和と人類の自由を守る正義の戦士の一人』だということを知った。
そこで、各々の実力を知るために、
互いのホームグラウンドである水中で『模擬戦』を行っていた……
という訳である。

☆☆☆

さて、互いの実力を認め合った2人は、
好戦的な参加者やNPCとの接触を避けつつ、
海中を静かに移動していた。

「しかし、本当にスゲェーなお前。『仮面ライダー』っつうのは皆こうなのか?」

深度200mほどの海中をウミガメ程のゆっくりとした速度で並んで泳ぎながら、
アクアマンが感心する様子でXライダーに声をかける。
海面上の光がほとんど届かない真っ暗な海中も、
彼らにとっては真昼と同じように見えていた。

「そうだな……まぁ、『似たり寄ったり』って感じかな?でも、仮面ライダーが皆、水中での戦いを得意としている訳でもないんだ。俺は元々『深海開発用改造人間』だからな」
「『深海開発用』、ねぇ……」

Xライダーからの返答に、
アクアマンは少し思うところがあるようだ。

「俺の知り合いにもサイボーグがいるが……わざわざ『海の中で工事させるため』に、人間を機械の体にするとか……サイボーグの兵士を戦力にする組織がいるとか……ちょっと信じられねぇな」
「まぁ……俺もあのアトランティス大陸が実在していて、しかも海底に地上に負けないくらい進んだ文明を作っているなんて、今まで知らなかったからなぁ……お互い様じゃないか?」

Xライダーの言葉を受け、
アクアマンは「はっ、違いねぇ!」と、豪快に笑った。

「……で?これからどうすんだ?あのハ・デスとかいう野郎を探しだして、ケツを蹴り飛ばすか?」
「『ケツを蹴り飛ばす』って……ちょっと言い方、下品だぞ?」

仮面ライダーとしての後輩の一人・ストロンガー/城茂に勝るとも劣らない荒々しいアクアマンの言動に、
Xライダーは仮面ごしに苦笑する。

Xライダーはアクアマンのすぐ横を並んで泳ぎながら、
自身の考える『今後の方針』を語りだした。

「まぁ……ひとまずは、俺達みたいに無理矢理連れて来られた参加者の『保護』が優先だな。それに、まだ名簿が非表示のままだから分からないが………もしかしたら、俺やお前の仲間達が一緒に連れて来られてる可能性もある。名簿がタブレットに表示されたらすぐに名前を確認して、知り合いがいたら合流するべきだな。ハ・デスと戦うのは、俺達に巻かれた首輪を無力化するか解除するかして、参加者達を解放した後……に、なるだろうな」
「ふぅ〜ん……」

Xライダーの語る方針を聴きながら、アクアマンは頭をポリポリと掻く。

「……お前って案外、計画性あるんだな?」
「『案外』とはなんだよ?失礼な奴だな」

アクアマンからの感想に、Xライダーは少しムッとなる。
その時だった。

「ワォーン!」

どこからか犬の鳴き声のような物が聞こえてきた。
だが、ここは海中。犬が居るはずが無い。

『?』

Xライダーとアクアマンが一旦立ち止まって鳴き声のした方に顔を向けると……

「………な、なんだありゃあ?」
「……バダンの改造人間か?いや、それにしちゃあ小さ過ぎる……」

……鳴き声の正体を見て、唖然となってしまった。

「きゃうんきゃうん!」

そこには何とも珍妙な姿をした生き物が、大慌てな様子で犬掻きで泳いでいたのだ。


487 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:39:32 hMfHldo20
☆☆☆


時間は少し巻き戻り、
Xライダーとアクアマンが海中で『模擬戦』をしていた頃……

「……」

月明かりに照らされた海上を、
緑色の着物を纏い、青い髪をツインテールで纏めた10代後半から20代前半程の少女が一人、移動していた。

ツインテールの着物少女は、まるでジェットスキーのように海面を滑走移動していたが、
その足にはボードの類い等は装着されておらず、
また、モーターボートによる索引なども行っていなかった。


彼女の名は蒼龍(そうりゅう)。
何の装備も無しに海面を滑走移動している姿を見れば分かると思うが、
普通の人間ではない。

かつての世界大戦において、
戦いの末に海へと沈んだ軍艦が少女の姿へと転生した存在……『艦娘(かんむす)』の一人、もとい一隻であり、
『蒼龍型正規空母』の一番艦だ。

「……この辺りなら大丈夫、かな?」

月明かりに照らされた
海鳥一匹飛んでいない静かな海上を移動した末に、
蒼龍は小さな岩礁にたどり着いた。

5tトラックのコンテナ程の大きさがある岩が、
海上にポツンと顔を出している……
この『決闘』の会場地図を細かく探しても見つからない程の、
本当に小さな岩礁だった。

「ふぅ〜……」

蒼龍はその小さな岩礁に上陸すると、
肩に担いでいたデイパックを下ろし、
手頃な岩の突起部を椅子代わりに腰を下ろして一息つく。

「大丈夫ですか?蒼龍さん」
「……えぇ、なんとか」

蒼龍のデイパックから蒼龍以外の声が聞こえた。
いや……正確には声を発したのは、
デイパックの上に乗った珍妙な姿をした生き物だ。

蒼龍のデイパックの上には、
ウナギのような黒くヌメヌメした体と尾鰭、
犬のような頭部と四肢の両方を兼ね備えた……
一言で言えば、犬とウナギの合成獣(キメラ)のような姿をした生き物が、
『お座り』の姿勢をしていたのだ。

彼の名はウナギイヌ。
そのまんまな名前と姿が示すように、
世にも珍しい『イヌの父』と『ウナギの母』との間に生まれた
『種を超えた愛の結晶』である。

どういう訳か、
今回の『決闘』においては『支給品の一つ』として蒼龍のデイパックに入れられており、こうして蒼龍と行動を共にしているのだ。

「はぁ〜……大変な事になっちゃったなぁ」

自身の首に巻かれた無骨な首輪を撫でながら、蒼龍はため息をつく。

「気に病む事はありませんよ、蒼龍さん。例え蒲焼きにされて食べられても、『次の回』では何事もなく復活してますよ」
「……『次の回』ってなんですか?」

ウナギイヌの良く分からない励まし(?)にツッコミを入れつつ、
蒼龍は空を仰ぎ見る。

真っ黒な夜空にはまん丸な満月が青白く光輝き、
ともすれば、
ここが『決闘』とは名ばかりの殺し合いの場である事を忘れてしまいそうな
神々しさが感じられた。

(提督……飛龍……)

不意に頭を過るのは自身が敬愛する上官と、
前世の頃より苦楽を共にする戦友の顔。

自分が突然誘拐されて二人は心配しているだろうか?
それとも、二人も自分と同じようにこの場所に呼ばれているのか?

「……」

蒼龍はその豊満な胸に手を当てながら、
せめて二人が無事である事を祈るしかなかった………。


488 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:40:06 hMfHldo20
その時。

「!ワン!ワンワン!!」

突然ウナギイヌがデイパックから飛び降り、暗い海上に向けて吠え始めたのだ。

「え……えぇっ?ウナギイヌさん、どうしたの?」

ウナギイヌの突然の奇行に蒼龍は目を丸くする。
一方、ウナギイヌは至って真剣な様子で蒼龍に顔を向けた。

「蒼龍さん!『何か』来ます!」
「えっ!?」

ウナギイヌの言葉を受け、
蒼龍はデイパックから自身に支給された武器……一組の弓矢を取り出し、
油断なく矢をつがえる。

そこには先程までの年相応なあどけない少女の姿は消え、
幾多の戦いを潜り抜けてきた歴戦の兵がいた。

「ウゥ〜」
「……」

暗い海のどこかにいる『何か』に向けてウナギイヌは威嚇の唸り声を挙げ、
蒼龍は静かに弓矢を構える。

すると………

『ンキィ、ンキィ』

不気味な音と共に水しぶきがあがり、
大型トラック程の大きさがある物体が
蒼龍とウナギイヌのいる岩礁へと上陸した。

『!?』

月明かりに照らされたその巨大な『何か』を目にし、蒼龍とウナギイヌは目を丸くする。

「か、蟹のお化けぇっ!?」
『ンキィ、ンキィ』

そう……蒼龍とウナギイヌの前に現れたのは、
8m前後の巨体を有する蟹だったのだ。

蒼龍とウナギイヌは知らなかったが、
この巨大な蟹の怪物は『バケガニ』といい、
とある世界において『魔化魍(まかもう)』と呼ばれる怪物群の一種であり、
冥界の魔王が会場各地に配置したNPCの一体だった。

『ンキィ、ンキィ』

バケガニは関節の軋む音を鳴らしながら
その巨体に見合った巨大なハサミを蒼龍に向けて振り下ろした。

「キャアッ!?」
「ワォン!?」

バケガニによるハサミの一撃により、
蒼龍とウナギイヌは石つぶてと共に大きく吹き飛ばされる。

「こ、このぉ!」

蒼龍はバケガニに向けて弓を構え、矢を放った。
矢はバケガニの甲殻に突き刺さると同時に……爆発を起こした。

『ンキィ、ンキィ』

突然の爆発にバケガニはその巨体を大きくよろめかせるが、
即座に蒼龍に向けてハサミを振り下ろしてきた。

「第一機動艦隊の栄光、ゆるぎません!」

蒼龍はバケガニの攻撃を避けながら、
続け様に次々と矢を放っていく。
蒼龍の放った矢はバケガニに命中すると同時に、
爆発や電撃等を発生させるが、一向にバケガニは攻撃の手を緩めなかった。

「ワォーン!!」

ウナギイヌも蒼龍の援護としてバケガニに飛びかかっていく………が、

『ンキィ、ンキィ』

バケガニはまるでハエ叩きでコバエを叩くように、
ハサミの一撃でウナギイヌを海上遠くへと吹き飛ばしたのだ。

「ワォォォォォ!?」
「あぁ!ウナギイヌさぁーん!?」

哀れ、ウナギイヌは岩礁から遠く離れた海面へと吹き飛ばされ、
水しぶきを挙げながら着水する。


489 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:40:47 hMfHldo20
「よ、よくもウナギイヌさんを!?」

蒼龍はウナギイヌの仇討ちとばかりに、
バケガニに矢の雨を降らせていく。

『ンキィ、ンキィ』

バケガニは蒼龍の放つ矢を片方のハサミで鬱陶しいそうに叩き落とすと、
背中に着いているフジツボのような部位から泡を吹き出し始めた。

「……えっ?」

突然背中から泡を吹き出し始めたバケガニに、蒼龍は呆然となる。
しかし、それが一瞬の隙となり、
蒼龍の左足にバケガニの吹き出した泡が付着したのだ。

「……あぁあぁあぁ!?」

バケガニの泡が付着した蒼龍の左足は白煙を挙げ、
まるで火傷を負ったように焼けただれる。

左足に走る激痛に蒼龍は悲鳴をあげ、
左足を抱えながらその場でのたうち回った。

通常、蒼龍を初めとする艦娘達はダメージを負っても着用している服が破けるだけで、
肉体そのものに傷は付かない。
だが……此度の『決闘』においては
冥界の魔王によって課せられた『制限』により、
艦娘であっても通常の人間と同じく肉体そのものにダメージが付くのだ。

「や、やだやだぁ……」

痛々しく焼け爛れた足から走る激痛に、
蒼龍は歯を食い縛りながら涙を流す。

『ンキィ、ンキィ』

バケガニは苦痛の悲鳴をあげる蒼龍にお構い無しに、ハサミを振り挙げる。
片足の負傷した蒼龍では、避ける事もできない。

(……提督、飛龍……ごめん)

蒼龍は目を固く瞑り、死を覚悟した……だが、

「……X!キィィック!!」

蒼龍とバケガニの間に何者かが入り込み、バケガニの巨体は裏返しにひっくり返ってしまった。

「………えっ?」

蒼龍が恐る恐る目を開けると……

「……どうやら、間に合ったみたいだな」

……そこには、
銀の仮面に黒マフラー、
額に輝くVとV、
黒い手袋、赤い胸を備えた人物……仮面ライダーXが、
右手にライドルスティックを構えながら蒼龍とバケガニの間に割って入るように立っていたのだ。

「え、えっと……」

突然のXライダーの登場に、
蒼龍は足に走る激痛も忘れて目を丸くする。

「おぉー!やってんなぁ」

そこに遅れて現れたのは、アトランティスの王者であるアクアマンだ。

「あ、あの、貴方達は……?」
「……ほれ」

アクアマンは蒼龍の問いかけに答える代わりに、
蒼龍に『ある物』を投げ渡した。

「ワンワン!蒼龍さん大丈夫ですか!?」
「ウナギイヌさん!?」

それは、先程バケガニによって吹き飛ばされてしまったウナギイヌだった。
ウナギイヌは蒼龍の豊満な胸に抱きつきながら、
顔を鼻水と涙でぐしゃぐしゃにしていた。

「そいつが『知り合いがピンチだから助けてくれ』って泣きながら頼むもんでな。急いで助けに来たって訳さ」
「そうだったんですか……痛っ!」

アクアマンの説明に納得すると、再び蒼龍の足に激痛が走る。

「ワゥ〜……蒼龍さん、痛そうですね」
「『痛そう』というか……実際、凄い痛いですよ……くぅっ!」

蒼龍は苦痛で顔を歪めながら、心配しているウナギイヌに軽口で返す。

『ンキィ、ンキィ』

一方、Xライダーによってひっくり返されてしまったバケガニは、
自力で元の体勢に戻ると蒼龍を庇うXライダーとアクアマンにハサミを振り上げた。


490 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:42:51 hMfHldo20
「!」

バケガニが振り上げた巨大なハサミを振り下ろそうとした時、
アクアマンがバケガニに向けて掌を掲げ、バケガニに念を送った。

(止めろ!俺達は敵じゃない。攻撃を止めるんだ!)
『!』

アクアマンの能力の一つ。
テレパシーによる水棲生物との交信。
魚でもタコでもクジラでも……『水棲生物』ならば皆、アクアマンの命令を聞くのだ。

『…………』

アクアマンからの命令を聞き、バケガニはハサミを振り上げたままその動きを止める。
だが……

『ンキィ、ンキィ』

……ほんの10秒程でバケガニは攻撃を再開し、その巨大なハサミをXライダーに振り下ろした。

「くぉっ!?このぉ!」

Xライダーはバケガニのハサミをライドルスティックで受け止める。

『ンキィ、ンキィ』
「く、くそぉ〜!!」

バケガニはハサミに力を込め、Xライダーの体は少しずつ後退していった。

「……くそっ!どうも今日は調子が悪いぜ!」

バケガニに自身の交信が効かないと気づいたアクアマンは、矛を振り上げながらバケガニに飛びかかった。

「うおりゃあっ!」

アクアマンはバケガニの片方のハサミに飛び付くと、力任せにそのハサミを引きちぎった。

『ンキィ、ンキィ』

片方のハサミを失ったバケガニは、その巨体をよろめかせる。

「……ライドルホイップ!X斬り!」

すかさずXライダーは、ライドルをスティックからホイップに変え、バケガニの体を瞬時にX字に切り裂いたのだ。

『ンキィ……ンキィ……』

Xライダーに斬られたバケガニは数歩後退した後に……


ドッグアアアアアアン!!


………その身を土塊へと変じながら、爆散したのだった。

「あ、あぁ……」
「ワフゥ……」

Xライダーとアクアマンによってバケガニが倒され、蒼龍とウナギイヌは呆然となる。

「フゥー……」
「ふぃ〜……」

バケガニが爆散したのを確認し、Xライダーはライドルをベルトに収め、アクアマンは額の汗を拭った。

しかし……

「……!?ワンワン!また来ます!」
『!?』

ウナギイヌの叫びと前後して、再び大きな水しぶきが上がる。
しかも『2つ』だ。

『ンキィ、ンキィ』
『ンキィ、ンキィ』

岩礁の上に、先程の個体とは色違いのバケガニが2体上陸し、蒼龍を庇うXライダーとアクアマンに相対した。

「ちくしょう!まだ居やがったのか!?」
「くそっ!一体何匹いるんだ!?」

Xライダーはベルトのバックルから顔を出しているライドルのグリップに手を掛け、
アクアマンもバケガニに向けて油断無く矛を構える。

「ひ、ヒィッ」
「グルル……」

再び現れたバケガニに蒼龍は小さく悲鳴を上げ、蒼龍にぬいぐるみのように抱き抱えられているウナギイヌは、蒼龍を守ろうと威嚇の唸り声を上げる。

まさに一触即発……その時。


491 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:43:19 hMfHldo20
「グギャアアアアアアアアアアアンッ!!!」
『!?』

突然、大型動物の咆哮のような音が周囲に響き渡る。

音のした方角に目を向ければ、
青白く光る岩山のような物が
モーターボート並みの速度でXライダー達がいる岩礁へと近づいてきていた。

青白く光る岩山は岩礁の真ん前まで来ると……

「………グギャアアアアアアアンッ!!」

再び力強い咆哮を轟かせながら、その全容を現した。

それは………
全身を冷えた溶岩を思わせるゴツゴツとした純黒の鱗で覆い、
背中には切り立った岩山か、ヒイラギの葉を思わせる巨大な背鰭が青白く光輝き、
丸太のような太い2つの足でヒグマのようにたくましい巨体を支え、
鷲のような鋭い爪の生えた腕と、
ワニのような太くたくましい尻尾を持った……
古い恐竜図鑑などに描かれた『尻尾を引きずって歩く肉食恐竜』の復元図をそのまま具現化したような生き物だった。

その大木のように太い首には金属でできた無骨な首輪が填められ、
この生き物が冥界の魔王の配置したNPCなどではなく、
此度の『決闘』の参加者である事を物語っていた。

「グギャアアアアアアアアアアアンッ!!」

彼の名はゴジラ。
とある世界において、
人類誕生以前より地球で繁栄している『タイタン』、または『怪獣』と呼称される巨大生物達の『王』として君臨する者だ。

「グルルルル……」

岩礁に姿を現したゴジラは、目の前のXライダー達やバケガニに向けて威嚇の唸り声を上げる。

冥界の魔王によって課せられた『制限』により、
本来119.8mあるはずのゴジラの体躯は僅か5mにまで縮められている。
だが……その体から湧き出る王者の風格は全く弱まってはおらず、
むしろ、体の圧縮と反比例するように強まっているように感じられた。

「あ、ああああ……」
「キャウーン……」

突然現れたゴジラの姿に、
蒼龍は目と口を同時に丸くし、股間の部分に水溜まりを作る。
バケガニに対しては威嚇の唸り声を上げていたウナギイヌも、
ゴジラに対しては扇状の尾鰭を丸めて、震え上がっていた。

「な、なんだ?あれは……」
「マジかよ……」

これまで幾多の怪人と戦ってきた歴戦の戦士であるXライダーや
『カラゼン』という『本来の大きさ』のゴジラにも勝るとも劣らない怪獣を従えた経験があるアクアマンすらも、
恐ろしくも堂々たるゴジラの姿を見て固まってしまった程だ。

『ンキィ、ンキィ』
『ンキィ、ンキィ』

一方、2体のバケガニはその標的をXライダー達からゴジラへと変え、
その巨大なハサミをゴジラに向けて振り上げる。

「!」

ゴジラはその太くたくましい尻尾を鞭のように振るい、バケガニの1体を弾き飛ばした。

『ンキィ、ンキィ』

ゴジラの尻尾に弾き飛ばされたバケガニは勢い良く岩礁に叩きつけられ、
最初のバケガニと同じように土塊へと変じながら爆散した。

『ンキィ、ンキィ』

残った最後のバケガニはゴジラの黒々とした体に飛びかかり、
その巨体を持ってゴジラを
組み敷こうとする。

「グギャアアアアアアアアアアアンッ!!」

だがゴジラは、自分にしがみつくバケガニの体を両手で掴み……

「……グギャアッ!」

……その強靭な顎と牙でバケガニの体を食い千切ったのだ。

バケガニの体は瞬時に土塊へと変じ、
ゴジラはまるで唾か痰を吐き捨てるように、
口の中で土塊に変わったバケガニの体をペッ!と吐き出した。

「……グギャアアアアアアアアアアアンッ!!」

バケガニを倒したゴジラは、
青白く輝く満月に向けて勝利の雄叫びを挙げる。


492 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:43:50 hMfHldo20
「………」

2体のバケガニを倒したゴジラはそのまま岩礁に残るXライダー達を睨み付け、
自身の背中から岩山の如く聳える背鰭を青白く明滅させる。

「……くっ!」
「このっ!」

自分達を睨み付けながら威嚇を行うゴジラに対し、
蒼龍はウナギイヌを守るように抱えつつ、足に走る激痛に耐えながら弓矢をつがえ、
Xライダーもベルトからライドルホイップを引き抜く……しかし、

「……おい!待てっ!」

ただ一人……アクアマンだけが、ゴジラに立ち向かおうとするXライダーと蒼龍を引き留めた。

「………」

アクアマンは静かに深呼吸を行いながら精神を統一させると、
先程バケガニに行ったようにゴジラとの交信を開始した。

(……聞こえるか?俺の声が聞こえるか?)
「!?」

突然、頭の中で自分以外の者の声が響き、
ゴジラはその鷲のように鋭い目を丸くする。

(もし……俺の声が聞こえるなら、首を縦に振ってくれ)
「………」

頭の中で響く声の主の正体が、自身の目の前に立つ黄色い衣装を着た人間……アクアマンである事を理解したゴジラは、
アクアマンの言う通りにその巨木のように太い首を厳かに縦に振った。

(……俺達はアンタの『敵』じゃない。アンタが俺達に何もしないなら、俺達もアンタに何もしない)
「…………」
(……頼む)
「……グアァ」

アクアマンの説得が効いたのか、
ゴジラは背鰭を明滅させる威嚇を止め、大人しくなった。

「……フゥー」

アクアマンはゴジラが自分の説得を聞いてくれた事を察すると、
額から流れ出る冷や汗を手で拭った。

『??』

一方、アクアマンとゴジラとの『心の声による会話』が聞こえないXライダーと蒼龍とウナギイヌは、
急に大人しくなったゴジラとアクアマンを見比べながら
頭上に?を浮かべていた。

「お、お前何したんだ……?」
「……別に。『敵じゃない』って伝えただけだ」
「………………」

軽い口調で答えるアクアマンの姿に、Xライダーは呆然となる。

「……うっ!うぐぐぐっ!?」
『!』

その時、蒼龍がバケガニの放った溶解泡によって焼け爛れた左足を抱えながら苦痛の悲鳴を上げた。

「そ、蒼龍さんどうしたんですか!?」
「き、急に……足の痛みが強くなってきて……」

蒼龍に抱き抱えられていたウナギイヌが慌て蒼龍の左足を見ると、
蒼龍の左足からは未だに白煙が上がり、皮下組織が顔を出していたのだ。

「マズイな……早く手当てしないと。けど、この場所じゃなぁ……」

Xライダーは蒼龍の左足の傷を確認すると共に、
満月に照らされた岩礁周囲の海に注意を向ける。
今のところ海は静かだったが、またいつNPCや好戦的な参加者が現れるとも限らない。
だが、場所を移動しようにも周囲は『海』であり、
かつボートの類いは存在しない。
『泳いで行く』という選択肢も有るには有るが、
傷ついたままの蒼龍の足を海水に浸けようものなら、
傷口は余計に悪化してしまうだろう。

「………」

どうしたものかとXライダーが思案していると……

「…あっ、ちょっと待ってろ」

……アクアマンが何か思い付いたらしく、
未だに岩礁前で仁王立ちしているゴジラに、ある『お願い』をした。


493 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:44:22 hMfHldo20
「グギャアアアアン!?」

当初、アクアマンからの『お願い』の内容にゴジラは鼻息を荒くしながら憤慨する……が、
アクアマンの再三に渡る懇願によって、その『お願い』を聞く事にした。

「……グギャアアアアン」

ゴジラは一番最初に岩礁に姿を現した時と同様に、
背鰭を海面に出した状態で海に潜る。
しかし……先程とは違って背鰭だけでなく『頭部も』海面に出していた。

「よし!話はついた。こいつが『陸地まで運んでくれる』ってよ」
「えぇぇっ!?」
「ワフゥ!?」

ゴジラの行動とアクアマンの発言に蒼龍とウナギイヌは目を丸くする。
Xライダーもどこか心配そうだ。

「だ、大丈夫なのか?」
「心配すんなって!なあっ?」
「グギャアアアアアアアン!」

アクアマンからの問いかけに、
ゴジラは『自分に任せろ』と言っているかのように咆哮で返した。

『………』

Xライダーと蒼龍は顔を見合わせるが、他に手段が無い以上は背に腹はかえらない。

蒼龍はXライダーとアクアマンに肩を借りながら
ゴジラの頭部の上に移動する。

「ハァ……ハァ……」
「ワゥ〜……」

苦悶の表情を浮かべる蒼龍の姿に、ウナギイヌはまるで自分の事のように不安気だった。

続いて、Xライダーが蒼龍と自分の分のデイパックを担いでゴジラの頭部に乗った。

「……よし。大丈夫だ」
「おーし……行ってくれ」
「グギャアアアアアアアン!」

アクアマンの指示が出ると、ゴジラは頭上に人間3人(+珍獣一匹)を乗せて海上の岩礁から陸地へと移動を開始した。




ゴジラが居なくなった後、
海は再び不自然な静けさを取り戻していた………。


494 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:44:49 hMfHldo20
【神敬介(仮面ライダーX)@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、仮面ライダーXに変身中
[装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:参加者を助け、会場から脱出する
1:アクアマンと協力して参加者を助けていく
2ひとまず、安全な場所で彼女(蒼龍)を治療する
3:他の仮面ライダーもいるなら合流する
4:こいつ(アクアマン)、生身の癖にやるな……
5:……こいつら(ウナギイヌとゴジラ)、バダンの怪人か?
[備考]
無印単行本第15巻当たりからの参戦です。
詳しい制限については、後の書き手さんに任せます。
ライドルは変身と同時に出現するので、支給品ではありません。
アーサー・カリー(アクアマン)から『ジャスティス・リーグ』と『アトランティス』に関する情報を聞きました。
ウナギイヌとゴジラを『バダンの怪人』ではないか?と考えています。
支給品を入れたデイパックは完全防水なので、支給品が水に浸かって使用不能になる事はありません。

【アーサー・カリー(アクアマン)@DCエクステンデッド・ユニバース】
[状態]:健康、一勝負終えて清々しい気分
[装備]:アトラン王の鎧@DCエクステンデッド・ユニバース、アトランナの矛@DCエクステンデッド・ユニバース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:参加者を助けて、ハ・デスのケツを蹴り飛ばす(=倒す)
1:仮面ライダーXと協力して、仲間を集める
2:仮面ライダー……やるじゃねぇか!
3:お嬢ちゃん(蒼龍)を安全な場所に運ぶ
4:なんだこいつ(ウナギイヌ)?他の星の生き物か?
5:このデカイの(ゴジラ)、カラゼンの親戚か?
[備考]
単独映画『アクアマン』後からの参戦です。
制限により『肉体の耐久性』が低下し、『水棲生物との交信』はNPC相手には足止め程度の効果しかありません。
神敬介(仮面ライダーX)から『仮面ライダー』と『バダンを初めとする秘密結社』に関する情報を聞きました。
ウナギイヌを『宇宙生物』、ゴジラ『カラゼン(※『アクアマン』劇中に登場する巨大怪獣)の仲間』だと思っています。
鎧は支給品では無く、初期装備品です。
支給品を入れたデイパックは完全防水なので、支給品が水に浸かって使用不能になる事はありません。

【蒼龍@艦隊これくしょん】
[状態]:左足負傷・ダメージ:中
[装備]:ホークアイの弓矢@マーベル・シネマティック・ユニバース
[道具]:基本支給品、ウナギイヌ@天才バカボン
[思考・状況]
基本:早く鎮守府に帰りたい
1:仮面ライダーX、アクアマン、ゴジラと行動する
2:足、痛い……やだやだっ!!
3:この人達(仮面ライダーX、アクアマン)って艦娘の仲間かな?
4:提督、飛龍……まさかここにいないよね?
5:……ウナギイヌさんって一体何者?
6:か、怪獣だぁ!?
[備考]
ゲーム版からの参戦。
制限により、ダメージを受けると肉体が直接傷つきます。
神敬介(仮面ライダーX)とアーサー・カリー(アクアマン)を『艦娘の亜種』ではないか?と思っています。
支給品を入れたデイパックは完全防水なので、支給品が水に浸かって使用不能になる事はありません。

【ゴジラ@モンスターバースシリーズ】
[状態]:健康、少し不機嫌
[装備]:無し
[道具]:無し(人間の道具の使い方が分からなかった為、デイパックはその辺に捨てた)
[思考・状況]
基本:ハ・デスを倒してさっさと帰る
1:仮面ライダーX、アクアマン、蒼龍(+ウナギイヌ)を陸地まで運ぶ。
2:乗り物代わりにされて少し不満
3:体を縮められて不愉快
4:人間でありながら自分と会話できるアクアマンが少し興味深い
[備考]
『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ』終了後〜『ゴジラVSコング』開始前からの参戦。
制限により、体が5m程に縮んでいます。
アーサー・カリー(アクアマン)のように『テレパシー能力』を持つ者となら、意志疎通が可能です。
支給されたデイパックは会場内のどこかに放置されています。


495 : 海の大決戦!仮面ライダーXVSアクアマン ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:45:15 hMfHldo20
[支給品説明]
【ライドル@仮面ライダーSPIRITS】
神敬介(仮面ライダーX)の基本武器。
厳密には支給品ではないが、ここで解説する。
普段はXライダーのベルト・バックル部より、グリップ部だけを出した状態で収納されている。
グリップ部のボタン操作で、ホイップ(細身の剣)、
スティック(両端にグリップが付いている長さ1.5メートル程の棒)
ロープ(縄)
ロングポール(スティックよりも長い10m程の長さがある棒)
に変形する。
例え破壊されても、
グリップ部が残っていれば、ベルトに収納する事により修復可能。

【アトランナの矛@DCエクステンデッド・ユニバース】
アーサー・カリー(アクアマン)に支給。
アクアマンことアーサー・カリーの母『アトランナ』が使用していた五つ又の矛。
現在はアクアマンの愛用武器となっている。
単独映画『アクアマン』において、アクアマンの父親違いの兄弟との最初の決闘で破壊された。

【アトラン王の鎧@DCエクステンデッド・ユニバース】
アーサー・カリー(アクアマン)の初期装備。
アトランティス初代国王・アトランが着ていた鎧。
黄金色に輝く魚鱗柄の上半身と緑色のタイツのような下半身で構成されている。
単独映画『アクアマン』終盤で、アクアマンがアトラン王のトライデントを手にした時に同時に入手したもの。
原作コミックスのアクアマンのコスチュームに似たデザインがなされている。

【ホークアイの弓矢@マーベル・シネマティック・ユニバース】
蒼龍に支給。
スーパーヒーローチーム『アベンジャーズ』の一員であるホークアイことクリント・バートンの使用する武器。
・通常の鏃の他、爆弾や溶解弾等の特殊機能を備えた鏃が備えられた矢『トリックアロー』
・トリックアローのシャフト(矢の胴体部)を収納し、リモコン操作で鏃を交換・装着させる電子矢筒『クィパー』
・トリックアローを発射し、クィパー操作用のリモコンダイヤルを内蔵した折り畳み式の弓『リカーブボウ』
の三点で構成されている。

【ウナギイヌ@天才バカボン】
蒼龍に支給。
ギャグマンガの大御所・赤塚不二夫御大の代表作の一つ『天才バカボン』のマスコット的キャラクター。
その名の通り、イヌの父とウナギの母との間に生まれた珍獣。
イヌと同じく『ワンワン』と鳴く他、人間の言葉を流暢に、かつ丁寧口調で喋れる。
半分ウナギなので食用可能で、原作劇中ではバカボン一家に蒲焼きにされて食べられた事がある(その後、何事も無く復活)。

[NPC紹介]
【バケガニ@仮面ライダー響鬼】
古来より日本各地に出現し、妖怪伝承の元となった怪物群『魔化魍(まかもう)』の一種。
その名の通り、巨大な蟹のような姿をしており、平均気温6.6℃前後、平均湿度約52%の海や川等で人間の骨を餌にしながら成長する。
身の丈(大きさ):26尺(約7.87m)、目方(体重):1466貫(約5.5t)。
主な武器は巨大なハサミと背中や口から放つ溶解泡。
体を動かすと「ンキィ、ンキィ」という関節がきしむ音を出す。
魔化魍は個体ごとに『(出現場所)の[種族名]』という呼び方で区別されるので、こいつは『決闘ロワ会場のバケガニ』となる。
なお本来、魔化魍は『鬼』(※響鬼劇中における仮面ライダーの総称。音撃戦士とも)の放つ『清めの音』でなければ倒せないが、今ロワにおいては『清めの音』以外の攻撃でも倒せるようになっている。


496 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/01(水) 20:45:52 hMfHldo20
以上、投下終了します


497 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/02(木) 00:25:48 8UnFuYtg0
投下します


498 : 凶星降臨 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/02(木) 00:26:08 8UnFuYtg0
断崖絶壁の肌色広がる荒野に風が吹く。
だがそれはあまりにも風というのは荒々しい。
衝撃が砂煙を舞わせ、疾風が荒ぶ大音が鳴り響く。

この場所にいるのは、二人。
白いパーカーを身に纏った、肌の色とその動きから東洋の拳法家とも見て取れるその男。
猛禽類の如き瞳孔で、笑みを浮かべて見据える先。
男の交戦相手であろう、一人の女性の姿。
薔薇の意匠が施された金色のヘアバンドで纏めた長い黒髪を揺らめかせ。
何の変哲も無い担当を両手に構え。
真紅で染められた殺意の眼光を以て男を見据える。

幾度目の交錯か。
交わす言葉無く、静寂を裂いて拳と凶器が鍔迫り合う。
女性は淡々と、着々と、動きを最適化させながら男へと迫る。
対して男もまた最小限の動きを以て女性の舞いの如き軽やかな攻めを器用に捌いている。

「手慣れているな。殺す技という点であるならば、その腕前は俺以上か。」
「貴方のような野蛮な東洋人に褒められた所で何も嬉しくはないのですが。」

ふと、男が女に対して皮肉交じりの称賛の言葉を告げる。
皮肉といえど、男は女の実力を正しく評価していたのは事実だ。

「それを踏まえて言えば、雑の一言だ。いや、技術を得る必要もない程に強いのか? いや、技術自体はあるが、それをするよりも単純な方が強いだけか。」

その生涯を強さだけに奉じて来た男としても、目の前の女性の強さの方向性もまた完成されたもの。
基本を極めれば強いのは武術の世界でも同じこと。単純故に極まった強さの本質。
最も、その言葉を聞いた所で女の方は不愉快の表情のままであったが。

「無駄話に付き合うつもりはないです。なのでさっさと死んで下さい。」
「これでも150は超えている。御老体の話ぐらい聞いてくれても損はないぞ?」
「減らず口を!」

数本のナイフが男へ向けて投擲される。
常人ならば避けるのは難しいが、男はまるで蚊を箸で掴むかのごとく容易く捕まえ、投げ返す。
しかし男の視界には既に女の姿は居ない。

「あと指摘させていただきますが、別に技術は習得してはいますが、突き詰めると腕っぷしぐらいしか能のない女ですので。」
「俺に気づかれずに背後を取るか。」

既に男の背後に女はいた。
何にせよ先のナイフ投げは牽制であることは予見できた。
次に考えるのは「何処から不意打ちしてくるか?」という点であるが。
認識させず背後を取る点においてはさしも男も流石だと唸る。

「――だが。」

それはそれ、年の功。
上段からのナイフを首を横に振り回避。
死角を突いたであろう足払い目的の蹴りを、震脚を以て阻止。

「……っ!?」

女の咄嗟の対応も素早い。足を踏み込む動作を見て即座に跳躍。

「故に惜しい。」

そして、男はそんな女の後退の隙すら与えない。
静かに放たれた掌底は見事に女の身体を後方の岩山へと叩きつける。

「天下無双にも届きかねんというのに。余りにも勿体ないぞ、女。」
「――ガ、ァッ!」

血反吐を吐く女を尻目に、男はただ呆れの籠もった言葉を投げかける。
それがまるで才能の無駄遣いだと言わんばかりに。

「貴方のような、強さだけを求めているような御方にはわからないでしょう……!」

そんな男に、女は反論する。
この程度の痛み、まだ慣れたものだと立ち上がり。

「私は暗殺(これ)しか能がない女です。……ですが、それで大切な人が守れるなら、この身がどうなっても構わない。」
「……なるほどな。」

それは、女にとっての新たな信念。
唯一の血の繋がった家族の為、今の家族の為。
そして何より大切な人たちの他愛の無い平穏を守るため。
どれだけこの手が汚れようと、例え自らの命が散ることになろうとも。
女の瞳を見て、男は何か思いついたように薄ら笑い、こう告げた。


499 : 凶星降臨 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/02(木) 00:26:32 8UnFuYtg0
「気に入った。――良い提案をしよう。今から俺はお前の大切な人とやらを探し出して、一人ずつ殺すことにする。」
「―――!?」
「……なに、まだ貴様の知り合いとやらがこの舞台にいるかは分からん。だから虱潰しというやつだ。」

女は絶句する。この男の言った事が、余りにも突出しすぎる。
それらがいるかどうか分からない、と男が付け加えたにしても。
明確に自分の身内に狙いをつけるという、男の性格の悪さが伺えるような、そんな言葉を。

「そうすれば、お前は俺を憎むだろう?」

付け加えるように呟いた発言は、一種の経験則とも言うべきか。
女の動揺を見抜いたような口ぶりは、正しくその心を寸前で刃を止めたような感覚に女は襲われていた。

「さらばだ。次会う時は、更に強くなってくれることを期待するぞ。」
「待っ―――!」

女が反応するには時既に遅く、跳躍した男の姿は山岳の彼方へと姿を晦ました。

「……。」

焦燥、不安、そして怒り。女の中に渦巻いているのは正しくその3つ。
自分だけが呼ばれたのなら良かった、でももし仮に弟や家族が呼ばれているとするならば。
あの男は間違いなく手を出す、そして自分を揺れ動かす為に殺す。

「……させるわけないでしょう。」

させない。大切な人たちを、大切な家族を、あんな下衆に殺されてたまるかと。

「……あの男は私が必ず殺す。例え私がどうなっても。」

殺す。身内に手を出すと高慢にも宣言したというのなら。
この『いばら姫』の大切な人を殺そうと言うのなら。
その首、文字通りねじ切って殺してやる、と。
殺し屋『いばら姫』こと、ヨル・フォージャーは誓うのである。

【ヨル・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:負傷(小)、男への怒り
[装備]:ナイフ複数セット(残り8/10)@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:この殺し合いから早急に脱出する。
1:あの男は必ず殺す。絶対に殺す
2:ロイドさん、アーニャさん、ユーリ。どうかご無事で……
[備考]
※参戦時期はMISSION56以降






○ ○ ○

「あの女、見どころはある。もしムイが生きていたなら、あのような強者になりえていただろうな。」

『不老』の否定者ファン。
先程ヨル・フォージャーと戦闘を繰り広げていた拳法家は、彼女への期待と見定めを込めた言葉を呟く。

「……それと、若返った身体の腕鳴らしにはちょうどいい。」

元々ファンという男は老人であった。が、ある古代遺物を利用して若返ることに成功した。
『不老』は文字通り老いを否定する能力であるが、それが彼に発言したのは老いてある程経った年月。
だが、一度若返ってしまえばただのメリットである。
老いる事無く武を研鑽し、より高みへと向かうことが出来る。

「ハ・デスとやら、貴様の用意した決闘の舞台。大いに楽しませてもらうぞ?」

戦闘狂は歩む視線の先には、己の最強を示すことしか考えていない。
決闘の舞台? 殺し合い? だからどうした?
全ては天下無双へ、最強へ至るためだけの、男にとっての登竜門の一つでしかないのだから。

【ファン@アンデッドアンラック】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:己が天下無双の証明。
1:あの凶手の女の今後には期待。
2:女の関係者を見つけ出して殺す。
[備考]
※参戦時期は最低でも若返った後


500 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/02(木) 00:26:43 8UnFuYtg0
投下終了します


501 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:26:43 RX6I9HXw0
投下させていただきます。
コンペロワや辺獄ロワに投下した作品を手直しした作品になります。


502 : リトルルーキー&ファースト・アベンジャー ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:27:34 RX6I9HXw0
冥界の魔王によって開催された『決闘』と銘打たれた血生臭いイベントの会場となっている名も知らぬ孤島……。

その海岸の砂浜で、二人の男が対峙していた……。


一人は、まだ『少年』と呼べる程に若い、軽装の鎧にウサギを思わせる白髪赤目の男……
迷宮都市『オラリオ』で最近知名度を上げつつある『ヘスティア・ファミリア』の眷属、ベル・クラネル。

もう一人は、アメリカの国旗を思わせる青を基調としたコスチュームを着用した筋骨たくましいベル・クラネルよりも年上の男……世界の平和を守るスーパーヒーローチーム『アベンジャーズ』のメンバー、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。

「ハァアア!」
「フンッ!」

二人は互いに徒手空拳の状態で戦いあっていた。
いや……それは『戦い』というより、格闘技道場などで行われる『組み手』のようだった。

「ハァッ!」

ベルは見ている方にも必死さが伝わるような表情を浮かべながら、
スティーブに向けて拳や蹴りを繰り出していく。

「……フンッ!」

しかし、一方のスティーブは汗一つ無い涼しい顔を浮かべながら、ベルの繰り出す拳や蹴りを軽々といなしていく……といっても、『全くの余裕』という訳ではない。

普通、超人兵士であるスティーブがベルと同い年くらいの少年と戦ったとして……
例え相手がなにかしらの格闘技を習得していたとしても、スティーブの体にはかすりもしないだろう。

「ヤアァァッ!」
「……ムッ!」

しかし、ベルの繰り出す拳や蹴りは的確な速度と威力でスティーブの体を狙い、スティーブはそれらを『両手』を使って防いでいたのだ。

ベルの知り合いがこの光景を見たならば、『ベル君、おしい!』と純粋な感想を述べるだろうが、
スティーブの知り合いがこの光景を見たならば、『信じられない』『あの少年は何者だ?』と驚愕する事になるだろう。

「ハァアア!!」

ベルはスティーブの腹部に向けて回し蹴りを食らわそうとした。
しかし……

「フッ!」

スティーブはベルの渾身の蹴りを受け止め、ベルの鎧の襟回りを掴むと……

「ハァアア!!」

……柔道で言う『巴投げ』によく似た態勢でベルの体を地面に叩きつけたのだ。

「グワッ!?」

場所が『砂浜』という事もあってベルの体には目立つ傷はなかったが、
地面に叩きつけられた衝撃は軽いものではなかった。

「ハァ……ハァ……」

ベルが砂浜に大の字で横たわり、荒い息を漏らしていると、
スティーブがベルに右手を差し出してきた。

「……少し、休憩しようか?」
「……はい」

スティーブからの言葉に、ベルは差し出された右手を掴みながら答えたのだった。



『……』ゴクゴク……

ベルとスティーブは、先ほど組み手を行っていた砂浜から程近い草むらに腰を下ろし、
水分補給を行う。

よほど喉が渇いていたのか、ペットボトルの水は勢い良く無くなっていった。

「……ベル、って言ったっけ?君は中々見所があるよ。最初、『訓練してくれ』って頼まれた時は少し困ったけど……」
「ハァ……そうですか……」

スティーブからの称賛の言葉に、ベルは曖昧な返事を返した。
普段の彼を知る者が見たならば、困惑するような姿である。

「………」

スティーブもスティーブで、出会ったばかりの少年の態度に困惑していた。
何か上手い言葉を話そうとは思うが、ティーンエイジャーの少年にどんな言葉を掛ければ良いのか分からない……。

こういう時ばかりは、トニーの軽口やロキの口八丁が羨ましい……と、スティーブは思ってしまう。
しかし、自分はトニーともロキとも違う。
なので、自分なりの問いかけをする事にした。


503 : リトルルーキー&ファースト・アベンジャー ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:28:25 RX6I9HXw0
「なぁ、ベル……君はどうして、僕に『鍛えてくれ』なんて頼んだんだい?」

スティーブが一番気になっていた事がこれ。

この『決闘』会場で知り合ってすぐ……
ベルはスティーブが『歴戦の戦士』である事を知ると、即座に『自分を鍛えて欲しい』と頼んだのだ。
それも、土下座までして。
その事が、スティーブの心に引っ掛かっていたのだ。

「それは……少しでも強くなりたくて……」
「本当にそれだけかい?だとしても、どうして今すぐ強くなりたいんだい?」
「……」

スティーブからの問いかけに、ベルは一瞬うつむき……
そして、静かに語りだした。

「………僕は、許せないんです」
「『許せない』?あのハ・デスって奴がかい?」
「いえ……確かに無理矢理人を連れ去って、殺し合いなんて開くハ・デスって人の事も許せないですけど……」




「一番許せないのは……自分自身なんです」



そう語るベルの瞳には、怒りと悲しみと、深い罪悪感が宿っていた。

「……僕は、あの時……見せしめに殺された『ホンダ』って人の、すぐ近くにいました。なのに…………僕はあの人の首輪が爆発するのを、あの人の友達が泣き叫ぶのを……見ている事しかできなかった……もし僕が動けていたら、助けられたかもしれないのに!」

ベルは手に持つペットボトルを固く握り締める。
あまりの力に、ペットボトルはグシャグシャに潰れてしまった。

「……それは僕も同じ気持ちだ。だが、もし君があの少年を助けられたとしても……その時は代わりに君が殺されていただろう」
「……だとしても!」

ベルはスティーブに向けて、自分の中に溢れるやるせない気持ちを叫ぶ。

「僕は、あの時……目の前に居たのに……動く事すらできなかったんです……あの人を、助けられたかもしれないのに……」

動こうとしなかった自分への『怒り』、
目の前でむざむざと人殺しを許してしまった『罪悪感』、
そして、自分と歳が近かったであろう少年が死んだ事への『悲しみ』……
それらがない交ぜになって、ベルの両目からは一筋の涙が流れていた。

「……僕は物心ついた時から、おじいちゃんに英雄譚を聞かされて育ちました。もしも……もしも、物語に出てくるような英雄があそこにいたなら……きっと自分の命を犠牲にしてでも……あの場であのハ・デスを倒して、あね人だけじゃなくて、その場にいた『みんな』を助けてくれた……そう思うんです。だから!」

不意にベルは顔を上げる。

「僕が代わりに!『英雄』になれないとしても、『英雄の代わり』として!このふざけた『決闘』から、みんなを救いたい!だから、少しでも強くなりたいんです!」

自身の気持ちを語るベルの顔は、先ほどまで泣いていた少年と同一人物とは思えない、覚悟を決めた男の顔をしていた。

「……………」


504 : リトルルーキー&ファースト・アベンジャー ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:28:59 RX6I9HXw0
『英雄の代わりとして、みんなを救いたい』。
そう語るベルの姿に、スティーブはかつての自分……
アースキン博士と出会い、超人兵士となる前、『戦争を早く終わらせたい』と強く思いながらも、
病弱な体が足枷となって何度も徴兵検査に落ちていた頃の自分の姿が重なって見えた。

「『英雄の代わり』として、か……立派な志だ」

スティーブはベルを称賛しながらも、「……だけど」と付け加えた。

「……『現実』は『物語』とは違うんだ。誰もが幸せになる『ハッピーエンド』が、必ず来るとは限らない。時には強大過ぎる力の前に敗北する事もあるし、大勢の人間を救う為に犠牲を出さなければいけない事だってあるんだ」

かつてのレッドスカル率いるヒドラとの戦い。
スティーブはワルキューレ爆撃機を北極海に沈め、
ニューヨークとそこに住む何十万もの人々を救ったのと引き換えに、70年もの間氷付けで眠り続ける事になった。

アベンジャーズが最初に結成された時のニューヨークでの戦い。
団結したアベンジャーズはロキ率いるチタウリ軍団から世界を救ったが、彼らが一致団結する事ができたのは、シールドのエージェント・コールソンがロキに殺されたのがきっかけだった。

ウルトロン率いるロボット軍団とのソコヴィアでの決戦。
スティーブ達アベンジャーズはウルトロンを打倒して世界を救うことはできたものの、結果的にソコヴィアの首都は壊滅し、数え切れない数の市民が犠牲となってしまった。

サノスとのインフィニティストーン争奪戦。
スティーブを初めとするヒーロー達は、あと1歩というところでサノスによる『デシメーション』を許してしまい、
全宇宙の生命の半分が消滅する事になった。

それから5年後のサノスとの最終決戦(エンドゲーム)。
スティーブの盟友だったアイアンマンことトニー・スタークは、自らの命と引き換えにサノスとその軍勢を消滅させ、地球を救ったのだ。

「……ベル、君が進もうとしているのは終わりの見えない茨の道だ。一度進み始めたら、もう後戻りは出来ない。時には自分が無力に思えて、心が折れそうになる事もある筈だ」

スティーブはベルの肩にそっと手を置いた。

「ベル、君にその道を進む覚悟はあるかい?」

それは『ヒーロー』として、
『男』として、
何より『一人の大人』として、
スティーブの心からの問いかけだった。
だが……

「………えぇ、もちろんです」

ベルの心は変わらなかった。

「これくらいで諦めていたら……仲間や神様、憧れの人に愛想をつかれちゃいますから」

そう断言するベルの瞳には、迷いやためらいは一切無かった。

「……そうか」

ベルの返答に満足したのか、スティーブも覚悟を決めたような表情を浮かべ、デイバッグを担いで立ち上がった。

「……なら、いつまでものんびりしている訳には行かないな。一人でも多く、巻き込まれた人を助けに行こう!」

スティーブに続いてベルもデイバッグを片手に持って立ち上がった。

「はい!よろしくお願いします、スティーブさん!」

元気の良い返事をするベルだったが、スティーブは首を横に振った。

「………いいや、ベル。僕の事はこう呼んでくれ」




「……キャプテン・アメリカ」

後に、ベルはこう語る。
『この時のキャプテンは、まるで物語から抜け出した本物の英雄のようだった』、と。


505 : リトルルーキー&ファースト・アベンジャー ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:29:39 RX6I9HXw0
【ベル・クラネル@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】
[状態]:健康、若干の疲労、覚悟完了
[装備]:兎鎧@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:『英雄の代わり』として、参加者達を助ける
1:スティーブさんと共に行動する
2:キャプテン・アメリカ?スティーブさんの二つ名?
3:ファミリアの仲間がいるなら合流する
[備考]
アポロン・ファミリアとの戦争遊戯終了後からの参戦。
スティーブを『オラリオから遠く離れた国出身の戦士』と思っています。


【スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)@マーベル・シネマティック・ユニバース】
[状態]:健康、体が程よくほぐれている
[装備]:キャプテン・アメリカのコスチューム@マーベル・シネマティック・ユニバース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:ハ・デスを倒し、参加者達を救う
1:ベルと共に一人でも多くの参加者を救う
2:アベンジャーズの仲間がいるなら合流する
[備考]
『アベンジャーズ:エンドゲーム』終盤(トニーの葬儀後〜インフィニティストーンを元の時代に返却しに行く)からの参戦。
ベルを『ソーやロキのような、地球の神話のモデルとなった地球外惑星の出身』だと考えています。


【兎鎧@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】
ベル・クラネルの仲間である鍛冶士ヴェルフ・クロッゾ製作の軽装防具。
こう書いて『ピョンキチ』と読む。

【キャプテン・アメリカのコスチューム@マーベル・シネマティック・ユニバース】
キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースの専用戦闘服。
アメリカ国旗をモチーフとした赤青白のカラーリングと星のシンボルが特徴。
作品ごとにデザインがマイナーチェンジしていくが、このロワにおいては『アベンジャーズ/エンドゲーム』版のデザインをしている。


506 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/02(木) 20:30:19 RX6I9HXw0
投下終了します


507 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/03(金) 02:14:57 TswydCMI0
投下します
遊戯王OCGのカードについて独自の解釈を含んでおります


508 : 月光は狂気の引き金 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/03(金) 02:15:59 TswydCMI0
ここはとある深い森の中、そこでは桃色の髪の毛をした、ゆるふわな雰囲気を醸し出す一人の少女が青ざめた顔をしたまま気絶していた。

彼女の名前は各務原なでしこ、料理することも食べることも大好きなキャンプ女子である。

そんな彼女が何故こんな場所で気絶しているのかというと、それはこの森を探索している途中で見たものに由来していた。

この森の中で彼女が見たもの、それは……


"蝙蝠の羽が生えた妖艶な女性と全身が黒い影に覆われた男に両腕を拘束された女性が、死人のように白い肌をした男によって心臓を刺し貫かれる光景"だった。


そんなショッキングな光景を見た瞬間に彼女はすさまじい恐怖を感じ、そのまま気絶してしまったのだ……。

"……、どうやら………もなく……………"

そして先ほど女性の心臓を刺し貫いていた男は気絶したなでしこの存在に気づき、そのまま彼女を……。

------------------------
時は少し巻き戻り、なでしこが気絶する少し前……


「…私が、負けた……?」

無数の枝葉によって星空を覆い隠された深い森の中で、緑色の長い髪をした女性が何枚かのカードを手にしながら呆然と立ち尽くしていた。

そして彼女の目の前にいる男は冷ややかな目をしながら自身の左腕に装着した奇妙な機械を彼女に突き付けていた。

その二人はまさに、先ほどなでしこが見かけた二人の男女だった。

「そうだ、この決闘(デュエル)に貴様は負けたのだよ、カミューラ」

男は自身の目の前にいる女性、"カミューラ"に対し冷ややかな目をしたまま彼女にそう告げた。

「ところで貴様は、この場における決闘がどのようなものか……それは知っているはずだろうな?」

そう言うとその男は、先ほどの決闘の際に召喚していた《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》と《シャドウ・ヴァンパイア》を召喚して彼女の両腕を拘束させ、逃げられないようにしたのだ。

「……い、嫌よ!わ、私にはまだ、人間に滅ぼされたヴァンパイア一族を再興させるという使命があるのよ!貴方も私と同じヴァンパイアなら、分かるはずでしょ!」

彼女はそれに対し『ヴァンパイア一族の復興』という自分の目的を話し、あろうことか見逃してほしいと命乞いを始めた。

「そもそも決闘とは互いの命をかけて行われるもののはず……長き時を生きているはずの貴様がそれを知らなかったとは到底思えぬ」
「それに、決闘を挑んできたのは貴様の方からだろうに……貴様も貴族(ヴァンパイア)のはしくれなら、みっともないマネはよせ」

しかし目の前にいる男《カース・オブ・ヴァンパイア》は彼女のその命乞いを一蹴し、自身の右腕を彼女の左胸めがけて突き刺した。

そしてカミューラは必死の命乞いもむなしく、そのまま心臓を刺し貫かれるのだった……。

【カミューラ@遊戯王デュエルモンスターズGX 死亡 】

その後自身の右手についた血液を拭き取った彼は何かに気づいたかのようにとある場所に顔を向けた。

「さて、どうやらこの決闘を断りもなく覗き見をしていた輩がいるようだな」

彼が顔を向けた方向、そこでは先ほど"何かが倒れる音がした"のだ。

そしてそれは正に、なでしこが恐怖から気絶してしまった場所だった。

彼はゆっくりと足を進めて彼女が倒れた場所に近づき、その正体を確かめた。


509 : 月光は狂気の引き金 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/03(金) 02:16:27 TswydCMI0
「…恐怖に負けて意識を手放したか……どうやら、私の敵ではなかったようだな」

彼は気絶したなでしこを見てそう評し、そのままじっと見下ろした。

『……襲わないのかしら?せっかくの新鮮な獲物だというのに』

少女が気絶している……つまり一切抵抗できない状況のはずなのにその血を一切吸おうとしない彼に対して、先ほど彼が召喚していた女性《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》がそう質問をした。

「戦う意思のない人間を襲うのは……私の誇りが許さん」

それに対して彼はそう言うと気絶したなでしこを抱きかかえ、彼女を安全そうな場所へと運び出そうとした。

『そんなこと言って、足元を掬われたとしても知らないわよ?』

彼のその言葉に対して彼女は小馬鹿にした様子で小言を言った。

「なんとでも言え、誇りを捨てるくらいなら……私は日の当たる道を歩くことを選ぶ」

『あら怖い。誇りの為なら命すら惜しくないのねぇ、貴方』

それに対して彼は命よりも誇りを重視するという態度を見せ、彼女は彼に皮肉めいた発言をするのだった。

「誇りを捨てた繁栄など……こちらから願い下げだ」

そう言うと彼はなでしこを抱きかかえたまま、いずこかへと歩き出すのだった……。

------------------------
そうしてなでしこを抱きかかえたまま彼がしばらく歩き続けると、いつの間にか深い森を抜けて『とある建物』の前へとたどり着いていた。

『本当にココに入るつもりなのぉ?こんな悪趣味な建物にぃ?』

《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》は今まさに目の前にある奇妙な建物に入ることに、難色を示していた。

「そうだ、いささか奇妙な形にはなっているもののその一部は……我らヴァンパイアにとって縁深い場所のはずだ」
「ここであれば、この少女をゆっくりと休ませることができるだろう」
「それに……いずれにしても太陽が昇り始める以上はいつまでもあの森の中で過ごすわけにもいくまい」

それに対し彼は、その一部が自分たちにかかわりがあるのなら使っても問題はないと、そして日差しを避ける場所を見つける必要もあったはずだと、そう答えた。

そうして彼はなでしこを抱きかかえたままその建物へと入っていくのだった。

『西洋の城に上に逆さまのピラミッドが突き刺さり、更にその上に日本の城が乗っている』という、あまりにも奇妙すぎる建物の中に、彼らは入っていったのだった……。


510 : 月光は狂気の引き金 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/03(金) 02:16:51 TswydCMI0
【カース・オブ・ヴァンパイア@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(ヴァンパイア)@遊戯王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2、カミューラのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1〜2)
[思考・状況]基本行動方針:この決闘(デュエル)を愉しむ。しかし戦う意思のない者を襲うつもりはない。
1:貴族(ヴァンパイア)としての誇りを持って決闘(デュエル)をする。
2:戦う意思を持たぬものを討つなど、私の誇りが許さない。
3:このフィールド(チェイテピラミッド姫路城)、一体どのような効果を持っているのだ……?
[備考]
いわゆる『カードの精霊』のような存在であり、そのため遊戯王カードについての知識を持っています。
目の前の建造物(チェイテピラミッド姫路城)を、『複数のフィールド魔法を何らかの方法で融合させた結果生まれた、狂気の産物』と認識しています。


【各務原なでしこ@ゆるキャン△(アニメ版)】
[状態]:恐怖(大)、気絶、カース・オブ・ヴァンパイアに抱きかかえられている。
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本行動方針:死にたくないけど、そのために殺し合いに乗るつもりはない。
0:……
[備考]
参戦時期は、第12話(第1期最終話)以降。



『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(ヴァンパイア)@遊戯王】
カース・オブ・ヴァンパイアに支給。『ヴァンパイア』カテゴリーのカードを中心にしたアンデットデッキで、
切り札は『竜血公ヴァンパイア』及び『真血公ヴァンパイア』。

またその他にもメインデッキに
・『ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア』
・『シャドウ・ヴァンパイア』
・『ヴァンパイアの幽鬼』
が入っており、エクストラデッキに
・『ヴァンパイア・サッカー』
・『ヴァンパイア・ファシネイター』
が入っている。

(残りのカード等の詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)


『施設紹介』
【チェイテピラミッド姫路城@Fate/GrandOrder】
エリザベート・バートリーの居城として有名な『チェイテ城』の上に逆さまのピラミッドが突き刺さっており、更にそのピラミッドの上に姫路城が乗っているという
「まるで意味が分からんぞ!」としか言いようのない建造物。


※カミューラの死体の近くに彼女のデュエルディスクとデッキが放置されています。


511 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/03(金) 02:20:33 TswydCMI0
投下終了です

なお余談ですが、フィールド魔法の融合については『天極輝艦-熊斗竜巧』という前例がございます。

以上、ありがとうございました。


512 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 07:58:03 NBz5OUSU0
投下します


513 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 07:59:43 NBz5OUSU0
「ウヅキちゃん、大丈夫っすか?
どこか具合が悪かったりしたらすぐに言ったくださいね?」

「はい……夏川さんこそ、無理しないでくださいね」

古い紙の匂いと、なんだか少し重く感じる空気の図書館にて。
茶色いブレザータイプの制服に、サイドテールを作った茶髪の少女、島村卯月と、
灰色のツナギを着た若い男性、夏川遥輝は情報交換をすべく、二階の読書スペースに向かっていた。
階段を上る卯月の足取りは重く、表情は暗い。
当然だろう。
大手事務所346プロ所属のアイドルという、普通よりは特別な人なのかもしれないが、
目の前で人、一人の首が吹き飛ぶ様子を見せられて、平静でいられるわけがない。

(気持ち悪い……)

少しでも気分を変えようと、立ち上がって何度か深呼吸をしてみる。
気持ち悪さが若干緩和された。

(凛ちゃんや未央ちゃんたちも呼ばれているんでしょうか?)

そうすると冷静になった分、嫌な想像ができるだけの余裕が出来てしまった。
名簿が解禁されない限り、合流できない限り気にしても仕方がないのだが、考えずにはいられない。

(私、死んじゃうんでしょうか?)

軍属で、殺し合いにも乗っていないと言う遥輝も、どこまで信用できるんだろう?
なんて考えていると、どこからか泣き声が聞こえて来た。
読書スペースの方でもあったので、行ってみると、短い髪の女性がしくしくと泣いていた。
デイパックの中身を全部ひっくり返したのか。
卯月の目から見たらなんに使うか分からない道具が散乱している。

「大丈夫ですか!?」

遥輝が声をかけると、女性は一瞬ビクッ!と、体を震わせ振り返ると

「……はい。えっと、あなた達は?」

「押忍!俺は地球防衛軍の対怪獣特殊空挺機甲隊、STORAGEのパイロット、ナツカワハルキです!
こっちはさっきこの図書館の前で会った島村卯月ちゃん。
殺し合いにはのっていないです」

「島村卯月です。346プロっていうプロダクションでアイドルやってます.
あなたのお名前も、教えてもらっていいですか?」

「はい。デリラと申します」

女性は涙をぬぐって深々と頭を下げた。

「何かあったんですか?」

卯月がそう尋ねると、女性はついさっき買った懐中時計のチェーンが無いのだと言った。
なんでも、ずっと伸ばしていた自慢の髪をカツラの材料として売ってまで買った夫へのクリスマスプレゼントとの事だ。

「……酷い」

ハ・デスや磯野は、こんな悪趣味な催しを開くどころか、
そんな金額でははかれない宝物まで平然と奪うのか。
暗い気持ちばかりが占めていた卯月の心に、熱い物が入って来る。

「ウヅキちゃん、そう言えば、まだカバンの中身、見てなかったっすよね?
もしかしたら俺の銃が入ってたみたいに、
デリラさんのチェーンが入ってる事もあるんじゃないっすか?」

そう言われて卯月は、初めて自分に支給されたデイパックを開けた。
そして中に手を入れ、何か棒状のものを掴む。

(? なんだろう。この触り心地、身に覚えが……)

そう思って引っ張り出したそれは、酷く見覚えのあるピンク色の剣だった。

「こ、これって!」

「ウヅキちゃん、この剣、知ってるんすか?」

「はい。でもここにある筈が……」


514 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:00:34 NBz5OUSU0
そこまで卯月が言いかけたところで、何か、大きなものが落ちて来た音に続いて地面が揺れた。
地震国育ちの遥輝と卯月は、長年のしみついた癖で、デリラの手を取り、机の下に隠れる。

(これ、地震なんでしょうか?なんだか揺れが不規則な気が……)

そう思って卯月は机の下から頭を出して、カーテンのかかっていない窓の外を見る。

「え?」

そこに居たのは、暗い緑色の体をした怪物だった。
真っ黒な目と、鋭く長い牙を持っているのが分かる。
つまり、建物の二階の部分に頭があるのだ。

「か、怪物……」

「なんで怪獣がここに!?」

同じ様に身を乗り出していた遥輝とデリラも驚いた表情を浮かべている。

「ウヅキちゃん、デリラさんをお願いしていいっすか?」

「夏川さん?」

「俺は怪獣を引き付けてここから引き離してきます」

「兵士さん、本気ですか?
その、白いピストルだけでどうにか何るんですか?」

「何とかしますよ。地球防衛軍ですから!」

そう言って遥輝は腰にはガンベルトから白い拳銃と、
青いカートリッジを引き抜き、図書館を飛び出す。


515 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:02:30 NBz5OUSU0
『やっと繋がった!ハルキ!いったいどういう状況でございますか!?』

遥輝の頭の中にだけ、若い男性の声が響く。

「ゼットさん!悪いけど、詳しい説明は後回しで。
今はあいつを倒すっすよ!」

『あれは、、ドラゴリーか!気を付けるですよハルキ!
どういう訳かエース兄さんから聞いてたのの半分よりも小さいが、
奴は前に戦ったバラバと同じ超獣。一筋縄じゃいかない相手だぜ!』

「押忍!」

遥輝は手にした銃でビームを浴びせて怪獣、否、蛾超獣ドラゴリーを引き付け、
走っていける範囲で一番広い交差点までやって来る。

<Ultraman Z! Original!>

遥輝は青いカートリッジ、GUTSハイパーキーを起動し、
手にした銃、GUTSスパークレンスのスロットにセット。
銃身を開いて、ビーム銃の機能を果たすスーパーガンモードから、
菱形のクリスタル状のパーツが露出したスパークレンスモードに移行する。

<Boot up! Zestium!>

左手に持ち替え、気合を入れると、再び遥輝とは違う声が彼の中に響く。

『ご唱和ください我の名を!ウルトラマンゼーット!』

「ウルトラマーン……ゼェェェェェェット!」

<Ultraman Z! Original!>

遥輝の足元に出現した青い光の門、ヒーローズゲートから巨大な銀色の手が出現。
彼の体を握り、そのまま拳を突き上げるような形で残る体全身も出現。
ドラゴリーとほぼ同サイズの銀と青の巨人が出現した。

『キィアッ!』

空手のような構えを取りドラゴリーに相対するは、
はるか銀河のM78星雲が光の星よりやって来た、戦いを終わらせる戦士。
ウルトラマンゼロの弟子、ウルトラマンZ!
夏川遥輝と一体化した若きウルトラ戦士である。

『行くでございますよハルキ!』

「押忍!」

15m級自由形。ヤプール人の生物兵器であるドラゴリーと、
そのヤプールを壊滅に追い込んだ戦士が名付けたZ。
先に動いたドラゴリーの咆哮をゴング代わりに激突した。


516 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:02:54 NBz5OUSU0
【夏川遥輝@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
[状態]:健康、ウルトラマンZオリジナル(15m)に変身中
[装備]:GUTSスパークレンス@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
     GUTSハイパーキー(ウルトラマンZオリジン)@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒しこの決闘を終わらせる。
1:さっさとドラゴリーを倒す。
2:ウヅキちゃんとデリラさんを助けに行く。
[備考]
※少なくともエピソードZよりは前からの参戦の様です。
※GUTSスパークレンス、GUTSハイパーキー(ウルトラマンZオリジン)、ガンベルトの
 三点セットで一つの支給品扱いです。
※ウルトラマンとしての能力以外には何の制限もかかっていません。
※ウルトラマンとしての能力にかけられた制限については、後の書き手様にお任せします。



【ウルトラマンZ@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
[状態]:ハルキと融合。オリジナル(15m)に変身中。
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒しこの決闘を終わらせる。
1:よく分からないけど、まずはこいつを倒す!
2:このドラゴリー、、一体どこから?
※遥輝と一体化しているため、名簿には名前が載りません。
 多重人格と同じ扱いです。
※ハルキがGUTSスパークレンスかZのGUTSハイパーキーを手にしていない限り、
 外の様子を確認することが出来ないようです。
※本人はまだ気づいていませんが、ウルトラマンとしての能力に制限がかかっています。
 詳細は後の書き手様にお任せします。


支給品紹介
【GUTSスパークレンス@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
白いビーム拳銃兼光を解放するアイテム。
GUTS-SELECTのヒジリ・アキト隊員の発明品で、
ビーム銃のハイパーガンモードと、光を解放するスパークレンスモードの二つがあり、
ウルトラマンが人から本来の姿に戻ったり、
人間と一体化したウルトラマンが外星人としての体を召喚するのに用いられる。
また、スパークレンスモードがオミットされた物もあり、
こちらはウルトラマンが手を加えない限り、変身機能を引き出せない。
遥輝にはウルトラマンZオリジンのGUTSハイパーキー、ガンベルトとセットで支給されている。


517 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:03:45 NBz5OUSU0
少し時をさかのぼり、図書館にて。
デリラの散らばった支給品を片付けた二人は読書スペースで向かい合って座っていた。

「どうか、どうか兵士さんが無事でありますように」

会話はなく、デリラの小さく祈る声だけが響く。
一方黙りこんだ卯月は、さっき取り出した剣の説明書を読み込んでいた。

(あんな怪獣が本当にいるんですし、この紙に書いてあることも嘘じゃない?)

そう思いはするのだが、卯月の17年の人生で培った常識がいや、そうだろうか?
と、疑問の声を投げかけてくる。
その一方で、きっとあの夢で見たアストルムでの美食殿たちとの冒険はきっと本当だったんだ。
という声もある。

「どうか兵士さんにご加護を、あの怪物を退ける力を……」

「そんなに心配なら確認させてやろうか?」

階段の方から、両手、両足は人間の物とそう変わらないが、
首はなく、胴体と頭が一つにくっついたような赤、黄、青三色の派手な怪人がそこに居た。
思わずデイパックから剣を引き抜き立ち上がる卯月。
デリラも後ずさる様に飛び上がる。

「あ、悪魔!」

「悪魔ではない!俺はメトロン星のレイオニクス!
お前ら地球人の言葉で分かりやすく言ってやるなら、超獣を操る宇宙人だ!」

そう言ってメトロン星人は左手に持ったマント、
かつてゼロの父、セブンの弟分、
帰ってきたウルトラマンを苦しめた忍者怪獣サータンの毛で編まれたマントをしまい、
入れ替える様に、共通の物とは違うタブレットを取り出す。

「見せてやろう。
あの地球人がドラゴリーにペシャンコにされる様子をな!」

タブレットはドローンのリモコンだったようで、
画面にドラゴリーを引きつけながら走る遥輝の姿が映る。


518 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:04:00 NBz5OUSU0
「兵士さん!」

「な、なんでこんな事をするんですか?!」

「決まっているだろう?この俺が最強の怪獣使いであると証明するためだ!」

そう言ってメトロン星人は愉快そうに笑った。
剣を持つ手に力がこもる。

「ふふふ!馬鹿め!あんな開けた所に逃げるなんて……なに!?」

画面の中の遥輝がGUTSスパークレンスを掲げ、ウルトラマンに変身する。
ドローンも高度を上げて撮影を始めた。

「まさかウルトラマンまで参加していたとは!」

「ウルトラマン?」

「ああ。俺と同じ宇宙人だよ」

そう言ってメトロン星人はタブレットをしまうとジリジリと二人ににじり寄る。

「まあいい。頭でっかちなブルー族なんぞに負けるドラゴリーではない。
今のうちにお前たちを始末するとしよう」

卯月は剣を構えて、デリラを守る様に立ちふさがった。
それを見たメトロン星人は鼻(有るのだろうか?)で笑う。

「地球人風情が勝てるとでも?」

「夏川さんが戻って来るまで頑張ればいいだけです!」

「ふん!正体を隠してお前たちに近づいたあいつを簡単に信用していいのか?
俺がこなければ適当に利用された挙句踏みつぶされていたかもしれないんだぞ?」

「もしそのつもりだったらこの近くで戦えばよかったはずです!
なのに夏川さんは、私達を巻き込まないために、
早く変身すればいいのに引き付けてから変身してました。
それだけで十分です!」

卯月は確かに普通の幸福の中に身を置いて来た少女だ。
血生臭さや、硝煙の匂いとは無縁だった身だ。
だが戦うことなど出来ないからという理由で諦めて死ぬ程、弱い心の持ち主でもない。
でなければ、トップアイドルになる夢など、きっと夢で終わっている。

「島村卯月!がんばります!チェーー-ンジ!」

卯月の体が桃色の光に包まれ、それがはれると、
かつてアストルムで冒険した時の姿の卯月が立っていた。

「その姿は……」

「デリラさん。下がっていてください!
悪い宇宙人さん、お覚悟!」

「ふん!無駄なあがきを!」

走り出した卯月の背にデリラは静かに手を組む。

「神様、どうか兵士さんと彼女にご加護を。どうか二人をお守りください」

その祈りが届いたか否か。それはまだ神のみぞ知る。


519 : 変身出来るのはきららキャラだけだと思った? ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:04:28 NBz5OUSU0
【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康、変身中
[装備]:ステージオブキュート@プリンセスコネクト!Re:DIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:絶対に生きて帰る
1:私は夏川さんを信じます!
2:悪い宇宙人さん、お覚悟!
[備考]
※少なくともプリンセスコネクト!Re:DIVEとのコラボイベントの記憶はあるようです。
 他のコラボイベントの記憶の有無については、後の書き手様にお任せします。

【デリラ@賢者の贈り物】
[状態]:健康、精神的疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:夫へのプレゼントを取り戻す。
1:兵士さん、青い巨人さん、どうかご無事で
2:ウヅキさんと一緒にこの悪魔から逃げる。
[備考]
※参戦時期は時計のチェーンを購入したすぐ後です。
※支給品は少なくとも卯月の目から見れば、用途不明の物です。



【メトロン星人(RB)@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康
[装備]:バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
[道具]:基本支給品、ドローン用のタブレット
     サータンの毛で編んだマント@ウルトラマンZ
[思考・状況]基本方針:優勝を狙う。
1:ウルトラマンはドラゴリーに任せ、自分は地球人の女どもを始末する。
2:ブルー族風情が超獣に敵う訳がない!
[備考]
※バトルナイザーにはドラゴリーとバキシムが入っていますが、
 二匹同時に召喚することは制限によりできません。
 また、召喚される怪獣、超獣は15m級にスケールダウンしてしまいます。
※支給品のドローンがウルトラマンZとドラゴリーが戦っている近くをドローンが滞空しています。




【ステージオブキュート@プリンセスコネクト!Re:DIVE】

【バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
レイオニクスと呼ばれるレイブラッド星人の遺伝子を持つモノたちが使うデバイス。
怪獣、超獣、スペースビーストを封印、使役する事が可能。
制限により、使役される怪獣は約15m級にスケールダウンして召喚される。
使い手成長すればするほど進化していき、怪獣のさらなる力を引き出せたり、
戦闘特化の姿に変質させることも可能。
メトロン星人の物にはドラゴリーとバキシムが封印されている。

【高性能ドローン】
ドローン本体と、リモコンとモニターを兼ねるタブレットの二つで一つの支給品として扱われる。
オート撮影機能が付いており、対象を自動で追い掛けて撮影することも出来る。

【サータンの毛で編んだマント@ウルトラマンZ】
バロッサ星人がSTORAGEの基地に侵入した際に使った道具。
忍者怪獣の異名の通り、体毛に対象を透明化する機能が有り、
かなりのステルス機能を有するが、恐らく本体のサータンと同様に、
赤外線ムービーカメラがあれば視認可能。


520 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 08:05:11 NBz5OUSU0
投下終了です。
大怪獣バトル、覚えてる人いるかな?
僕はレイのエレキングが大好きでした。


521 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/03(金) 10:18:43 Uzabqr.60
申し訳ありません。
支給品紹介のところでステージオブキュートの解説が抜けていたので追加させていただきます。
【ステージオブキュート@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
島村卯月の専用装備で、彼女がレジェンド・オブ・アストルムで手にした力を引き出せる剣。
これを用いて『変身』することで各種技やユニオンバーストが使えるようになる。
また変身すると、衣装がアストルムでの物に変わる。


522 : ◆IuB4aTDNuY :2022/06/03(金) 18:20:09 brl9RWys0
投下します


523 : 偶像殺しシンドローム ◆IuB4aTDNuY :2022/06/03(金) 18:21:36 brl9RWys0


「クソクソクソクソクソクソクソッ!!」

殺し合いが始まってまもなくの頃。
夢見弖ユメミは苛々を口に吐き出しながら、森林地帯を彷徨っていた。
ピンク色の髪をツインテールに纏めて、赤のセーラー服と黒のスカートを身に纏う彼女の容姿はとても可憐で可愛らしいが、実際に彼女は名門私立百花王学園生徒会の広報兼、現役のアイドルでもある。
しかし、そんな彼女も今、その可愛い顔立ちには似つかわしくないほど険しい表情を浮かべていた。
原因はこの殺し合い。
突然こんな場所に連れてこられて、爆破機能付きの首輪を嵌められて、殺し合いを強制させられているこの状況下で、ニコニコといつもの営業スマイルを張り付かせるほど彼女は能天気ではない。

(ハ・デスだか何だか知らないけど、よくも私の夢の邪魔をしてくれたな、コスプレ親父ィッ!)

夢見弖ユメミには、夢がある。
女優として成功を収め、幼い頃より憧れていたアカデミー賞のレッドカーペットを歩くという夢だ。
その為の近道として、アイドル活動に従事して、日々レッスンを重ねてきたし、クソ気持ち悪いアイドルオタクどもに媚を売ってきた。

そんな彼女に、突如降りかかった災難がこの殺し合いである。

――夢の為にもこんなところで死ぬわけにはいかない。

そう思いながら、彼女はあてもなく歩き続けると、ふと視界の奥から人影が現れる。

「――っ!?」

思わず身体を強張らせるユメミ。
彼女の前に現れた人物は、長い髪を靡かせた眼鏡の女性。
白い基調としたワンピースを着こなしており、どことなく落ち着いた雰囲気を醸し出していた。ユメミと同じく首輪を嵌められていることから察するに、彼女もこの殺し合いの参加者の一人のようだ。

(―――どうする……?)

先方の様子を窺いつつ、懐にしまってある小型ナイフに手を忍ばせるユメミ。
これはユメミに支給された唯一の武器で、相手の出方次第では、即座に切りかかるつもりでいる。
だが、その心配は無用だったようで、女性はユメミの姿を確認するなり、警戒を解くように両手を上げてみせた。

「そんなに警戒しなくてもよいわよ。私は殺し合いには乗っていないのだから」

物腰の柔らかそうな口調で話しかけてくる女性の態度に、ユメミが警戒を解くのに、そう時間はかからなかった。


524 : 偶像殺しシンドローム ◆IuB4aTDNuY :2022/06/03(金) 18:22:13 brl9RWys0


「―――それで、これからパンドラさんはどうするんですぅ?」
「……まずは、どこか身を潜める場所を探すつもりよ……」

互いに軽い自己紹介を経て、ユメミと眼鏡の女性ことパンドラは、今後の行動について話していた。
二人が接触してからは、特に滞りなく事は運ばれ、今に至っている。
唯一、ユメミにとって気がかりなのは、自分のことをアイドルと紹介した際に、パンドラが顔を顰めて見せたことくらいだろうか。

「成る程〜まずは安全確保って訳ですね〜。それじゃあ私もご一緒させて頂いてもいいですか? 一人だと心細いですし〜」

ともかく、まずは自分が生き残ることが優先だ。
いざという時の肉壁として、この女を利用してやろうと決めたユメミは、同性でも庇護欲を掻き立てられるような何ともいじらしい笑顔とともに、パンドラへ同行を申し出るのだが。

「……残念だけど、それは許可できないわ」
「え?」

まさか断られると思わなかったのか、ユメミは素直に驚いた声を上げる。
そんな彼女を尻目に、パンドラは言葉を続けた。

「申し訳ないけど、私は貴方のこと信用できないもの」
「…………」

はっきりと言い放たれた拒絶の言葉に、ユメミは何も言えず押し黙ってしまう。
確かに邪な考えがあったのは事実だが、ここまではっきりと言われるとは思ってもいなかったのだ。

「それじゃあ、私はあちらの方に進むから、これで失礼するわね」

とパンドラは、呆然とするユメミの側を横切り、立ち去っていく。

「……。」

小さくなっていくその背中を、ただ見つめるユメミ。
やがて、彼女のドス黒い感情が湧き出るようになる。

(――ふざけんなよ……人が下手に出てれば調子に乗りやがって……)

やがて、ドス黒い感情は、ユメミをパンドラの背中を追跡するように駆り立てる。

(――利用できないんなら……)

ユメミを突き動かすドス黒い感情は、明確な殺意へと変貌していく。
それに伴い、彼女の創る表情も、現役アイドルとは思えないほどの、険しく禍々しいものへと変貌していた。
そして、懐から支給品の小型ナイフを取り出す。

(――いっそのこと、此処で……!)

そのままパンドラの背後まで後数歩のところまで迫ると、その無防備な背中に向けて、ナイフを振り上げる。

「―――やっぱりね」
「っ!?」

瞬間、パンドラは背後を振り返り、肉薄したユメミを冷たく睨みつける。
思わず、硬直するユメミ。
そんな彼女を他所に、パンドラはその手に黒い杖のようなものを顕現したかと思うと、それを振り下ろす。
その仕草を合図に、複数の蔦が地面から出現―――ナイフを振り上げていたユメミの身体を瞬く間に拘束した。

「っ!?な、何だよ、コレッ!?」

身体に巻き付いていく植物に、ユメミはじたばたともがくが、抜け出すことは叶わず。

「それがあんたの本性ね。やっぱりアイドルっていうのは、人の善意をゴミくらいにしか思っていない連中の集まり。野放しにしておくのは危険ね」
「て、てめえ、何しやがっーーうぐっ!?」

ユメミの身体に巻きつく蔦は上部へと、伸びていき、首と両手首を締め上げていく。

「うがっ…ぐはぁっ……」

蔦によって、徐々に息苦しさを増して呼吸もままならなくなり、ユメミの顔色が青ざめていく。
苦悶の表情と共に呻めき声を上げながら、何とか逃れようと必死にもがき続けるが、植物の力は強くびくともしない。
そんなユメミの様子を、パンドラは冷やかに見据えている。

「被害者が出る前に、殺しておかなきゃね」
「……ま、待て―――」


ゴ   キ   リ


と、いう音とともに、ユメミの視界は90度回転したのを最後に、闇へと落ちていくのであった。

【夢見弖ユメミ@賭ケグルイ 死亡】


525 : 偶像殺しシンドローム ◆IuB4aTDNuY :2022/06/03(金) 18:22:56 brl9RWys0



「アイドルなんて……アイドルなんて―――」

物言わなくなった少女の骸を前にして、オブリガードの楽士・パンドラは、恨めしそうに呟いていた。

「きれいな自分を売りものにしてるくせに、本性は汚い奴ばっかり!」

彼女は、アイドルという存在に深い憎悪を抱いていた。
現実世界での過ち―――アイドルを愛してしまったことを後悔して、彼女は楽士となり、リドゥの世界で、その想いを歌に込め続けてきた。

「気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!!」

唐突に巻き込まれたこの殺し合いにおいて出会ったアイドル・夢見弖ユメミも、やはり例外ではなかった。
彼女もまた、他のアイドルと同じく、表面上は可愛らしい笑みを浮かべながら、腹の底ではドス黒いことを秘めて殺し合いに乗った、下衆で、醜い人間だった。

「――アイドルなんて、全員、死ねばいいんだわ……」

パンドラはこの殺し合いに乗るつもりはない。
出来る限り争いごとは避けて、この訳の分からない会場から脱出して、早々にリドゥに帰還したいと思っている。
しかし、アイドルに関してだけは別だ。
仮にこの殺し合いにおいて、ユメミのようなアイドルが他にも混ざっているようであれば、この手で必ず始末してやる。
殺し合いに巻きまれる直前、倉橋桃奈はパンドラのことを逆恨みであると糾弾していたが、そんなことはない。
ユメミと出会って確信した。
アイドルなんてクズしかいない。

「お前たちのような、生粋の嘘つきどもは生きている価値がない……!絶対に殺してやるから!」

その瞳に、激しい怒りと憎しみに宿しながら、パンドラはその場を跡にするのであった。


【パンドラ@Caligula2 -カリギュラ2-】
[状態]:健康。倉橋桃奈(宮迫切子)及びアイドルに対する憎悪(大)
[服装]:いつもの服
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らずに、ゲームから脱出し、リドゥへ帰還する
1:まずは周辺探索。どこか落ち着ける場所を見つけたい。
2:やはり、アイドルの類は生かしちゃいけない。参加者に紛れ込んでいようものなら、殺してやる。
[備考]
※本編第二章において、帰宅部との決戦直前からの参戦となります。
※夢見弖ユメミの死体及び支給品一式は放置されております。


526 : ◆IuB4aTDNuY :2022/06/03(金) 18:23:23 brl9RWys0
投下終了となります


527 : ◆.EKyuDaHEo :2022/06/03(金) 20:10:14 IEbPyl0o0
短いですが投下します


528 : エスパー園児!決闘での戦い! ◆.EKyuDaHEo :2022/06/03(金) 20:11:02 IEbPyl0o0
「これは変態だゾ…」

会場の中、一人のじゃがいも頭の少年が焦っていた…ちなみに大変だと言いたいらしい

「何か良くないことが起こってる気がしなくもないゾ…」

ふざけているようにも見えるがこの時の彼は割とマジだ
突然妙なところに連れてこられて、男の声が聞こえだした、しかしまだ5歳の彼では内容は理解できなかったし身長からして周りの参加者の中にいた彼には到底見えるはずもなく見せしめとして殺されるところも目撃していない、しかし周りの悲鳴が聞こえただけでも彼は今起きてることがただ事ではないと理解することができた
今までも様々な出来事に巻き込まれてきた彼だからこそ理解できたのかもしれない

「父ちゃん達もここに来てるのかな?」

次に頭に浮かんだのは家族や友人だった、彼らもまたしんのすけと共に様々な事件に巻き込まれてきたので今回もみんな来てるかもとしんのすけは考えた

「正義のヒーローは困っている人をおたすけする…だったら!オラはこの超能力を使って困っている人をおたすけするゾ!」

そうしてしんのすけは意気込んだ…ひょっとしたら自分が超能力を使えるようになったのは困っている人をおたすけしなさいという意味なのかもしれない…そう心の中で思ったしんのすけは…

「よーし!父ちゃん達を探しつつ困っている人をおたすけするゾー!野原しんのすけ!ファイヤー!」

今起きてる現状を詳しく理解することなく困っている人をおたすけするべく前へ進み始めた…


【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:超能力の力で困ってる人をおたすけする
1:とりあえず困っている人を探す
2:出来れば春日部に帰りたい
3:とうちゃん達も探す
[備考]
※参戦時期はクレヨンしんちゃんスペシャル「エスパー兄妹 今世紀最初の決戦!」からで少なくとも超能力を得た後からの参戦です
※念力やバリアなどの超能力を使えます
※超能力の威力が弱まっていたり使いすぎで体力が大幅消耗などの効果を受けています
※決闘(殺し合い)について理解できてません


529 : エスパー園児!決闘での戦い! ◆.EKyuDaHEo :2022/06/03(金) 20:11:15 IEbPyl0o0
投下終了します


530 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/03(金) 20:35:41 29.A1eIs0
テスト

🍛


531 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/03(金) 20:38:29 29.A1eIs0
投下します


532 : 目指せ勝太っ!極上のカレーパンッ!! ◆OmtW54r7Tc :2022/06/03(金) 20:39:33 29.A1eIs0
切札勝太は決闘者(デュエリスト)である。
デュエルマスターズというハ・デスや遊戯達の世界とは異なる理の住人とはいえ、まぎれもなく彼もまた決闘者だ。
しかし、今の彼には決闘などどうでもよかった。
彼の、今の興味、それは…

「待ちやがれえええ!カレーパアアアアアン♪」

🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛

カレーパンマンは逃げていた。
今、彼は追われている。
カレーパンに魅せられた怪人に、追われている。

「カレーパ〜ン♪」

赤毛の少年―切札勝太は、恍惚の表情でこちらを追いかけている。

(なんなんだよ、あいつは!)

別に武力制圧しようと思えば可能だ。
でも相手は、一応一般人の子供なわけで。
手荒な真似などできない。
どうやら追跡者の狙いは、カレーパンマンの頭のカレーパンのようだが…

(あんなやべえ奴に食われてたまるか!)

カレーパンマンは、アンパンマンとは違って頭のカレーパンを分け与えることはせず、自作のカレーライスを分け与えることが多い。
かといって別に、頭のカレーパンを求められて拒否するつもりはない。
だが、あの赤毛はダメだ。
あいつに頭を食わせてみろ、頭といわず、全てを食いつくされかねない。
それほどの気迫が、追跡者の勝太にはあった。

(とはいえ…いつまでも追いかけっこしててもらちが明かねえぜ。…仕方ねえ!)

カレーパンマンは逃げる足を止めると、勝太と向き合い、そして言った。

「おい赤毛!俺についてくれば、極上のカレーを食わせてやるぜ!」
「極上のカレーパン!?」
「いや、カレーパンじゃなくてカレー…」
「カレーパン!!??」
「ああ分かった、カレーパン食わせてやるから、な?」

こうして彼らは仲間となった。

(カレーはともかくカレーパンはあんま作らねえんだけどなあ…困ったぜ)


533 : 目指せ勝太っ!極上のカレーパンッ!! ◆OmtW54r7Tc :2022/06/03(金) 20:40:52 29.A1eIs0
🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛🍛

「ふんふ〜ん」
(やれやれ…だぜ)

上機嫌の勝太を見ながら、カレーパンマンはげんなりする。
こんな貞操の危機すら感じるやべえ奴と一緒に行動する羽目になるとは。
まあ、決闘なんていう殺し合いでこれほど危機意識のない奴を一人にするのは問題があるし、仕方ない。
正直、いつ食われるかと恐怖を感じているのだが…

「カレーパン〜カレーパン〜♪」
(ま、でも、こんだけカレーパンを好いてくれるのは、悪い気はしねえな。どうせ好かれるなら、可愛い女の子の方がいいけど)

こうして切札勝太の、極上のカレーパンを求める戦いは、カレーパンのヒーローとの出会いと共に、今始まった!
おい、デュエルしろよ(CV:宮下雄也)

「はぁ?デュエル?なにそれおいしいの?」

【切札勝太@デュエル・マスターズVS(アニメ)】
[状態]:カレーパンカレーパンカレーパン
[装備]:デュエマデッキ(詳細不明)@デュエル・マスターズシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:極上のカレーパンを食べる
1:カレーパンマンに極上のカレーパンを作ってもらう
[備考]
※参戦時期は少なくともVS編33話以降
※思考がカレーパンに支配されて決闘のことが頭から抜けています。

【カレーパンマン@アンパンマン(アニメ)】
[状態]:健康、勝太への好意と恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスをやっつけて決闘を止める
1:とりあえず勝太を保護しつつ動く


534 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/03(金) 20:41:34 29.A1eIs0
投下終了です


535 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/03(金) 21:07:20 PhnYhHpU0
投下します


536 : 世界を越えろ、悪の牙よ ◆NIKUcB1AGw :2022/06/03(金) 21:08:53 PhnYhHpU0
暗い街を、二足歩行の猫がとぼとぼと歩いている。
彼の名はニャース。ばけねこポケモンである。

「あーもう、なんでこんなことになってるのにゃ……」

彼は、そんじょそこらのニャースではない。
悪の組織・ロケット団に所属し、人間の言葉をしゃべることができる、唯一無二の存在なのだ。

「何なのにゃ、あの怖いやつは……。ポケモンなのかにゃ?
 いや、伝説のポケモンだとしてもあれは迫力がありすぎなのにゃ……。
 っていうか、なんでニャーが殺し合いなんかしなくちゃならないにゃ!
 ニャーたちはそういうタイプの悪役じゃないにゃ!」

ぶつくさと文句を呟きながら、歩き続けるニャース。
すると……。

「ほう、珍しい。しゃべるニャースとは……」

彼の前に、一人の男が現れた。
整えられた短髪に、黒いスーツ。
筋骨隆々というわけではないが、がっしりした体つき。
そして鋭い眼光と、口元に浮かべた不敵な笑み。
ニャースは、その男に見覚えがあった。

「ボ……ボス〜ッ!」

その男は、ニャースが敬愛するロケット団のボス・サカキに他ならなかった。
たまらず、ニャースはサカキに駆け寄る。
だがある程度近づいたところで、その勢いは衰えてしまう。

「……と思ったけど、あれ?
 なんか雰囲気が違うにゃ?」
「ふむ……」

困惑するニャースを、サカキはまじまじと見つめる。

「ひょっとして君は、ロケット団のポケモンなのかな?」
「なっ……!」

サカキの言葉に、ニャースは絶句する。

「何言ってるにゃ、ボス! あんなにかわいがってくれたニャーのことを、忘れちゃったのかにゃ!?
 ひょっとして、記憶喪失!?」
「かわいがって……なるほど……」

涙を浮かべてまくし立てるニャースに対し、サカキは表情を崩さずに何やらうなずいている。

「よく聞いてくれ、ニャース。
 君の主は、おそらく私とは別のサカキだ」
「ええっ!? どういうことだにゃ!? ボスは二人いたのかにゃ!?」
「あのハ・デスという存在は、様々な世界から参加者を集めたというようなことを言っていた。
 おそらく、君と私は違う世界から連れてこられたんだ。
 ゆえに私は、君から見たら別の世界のサカキということになるな」
「べ、別の世界の……?」
「よく似てはいるが別人、ということだ」
「な、なんとなくわかったにゃ……」

顔中に汗を浮かべつつも、ニャースはうなずく。

「さて、わかってもらえたと判断して、話を進めようか。
 ニャースよ、私のポケモンとして働いてくれないか?」
「ニャッ!?」
「残念ながら私の支給品には、ポケモンはなかったのでね。
 君が戦力になってくれると助かる。
 それとも、本来の主でない私に仕えるのはいやかな?」
「…………」

サカキの誘いに、考え込む様子を見せるニャース。
1分ほど空けた後、彼は口を開いた。

「一つ、聞かせてほしいにゃ。
 ボスの目的はなんだにゃ?
 この殺し合いで優勝するのか、それとも殺し合いを潰すのか……」
「私の目的か……。いいだろう、教えてやろう。
 私は、ここに集められた全てを手に入れる。
 異世界の技術、道具、全てを!
 もちろん、ハ・デスの持つであろう願いを叶える力もな!」
「全てを……」
「受け入れがたいかね?」
「いや……それでこそ、ニャーの憧れるボスですにゃ。
 どうか、おそばに置いてくださいにゃ」

ニャースは、神妙な面持ちでサカキにかしづく。
サカキは満足そうにうなずくと、ニャースの頭を撫でた。

「これで君と私はチームだ。
 よろしく頼むぞ、ニャース」
「こちらこそですにゃ!」
「そうだ、君の知っているサカキと私がどれほど違うかわからないからな……。
 いちおう、自己紹介をしておくか」


537 : 世界を越えろ、悪の牙よ ◆NIKUcB1AGw :2022/06/03(金) 21:09:45 PhnYhHpU0

サカキは、ポケットから球状の物体を取り出す。
モンスターボールではない。鉱石のような代物だ。
サカキがそれを握りしめると、轟音が轟く。
そしてアスファルトを突き破って、彼の周囲に土の柱が出現した。

「にゃーっ!?」

驚愕に目を見開くニャースを満足げに見つめながら、サカキは悠然と名乗りを上げる。

「トキワジム・ジムリーダー、そしてロケット団首領……。
 我が名は、『大地』のサカキ!」


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ版)】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:サカキに従う
1:ムサシとコジロウがいれば、合流を目指す


【サカキ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]疲労(小)
[装備]碧地珠@封神演義(藤崎竜版)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2(ポケモンはなし)
[思考・状況]基本方針:異世界の技術や道具を手に入れる
[備考]
参戦時期はレッド編とイエロー編の間。


【碧地珠@封神演義(藤崎竜版)】
「九竜島の四聖」の一人である、楊森が使用していた宝貝(パオペエ)。
大地の力を操ることができ、地面を操作するほか、味方の体力を回復することもできる。
楊森は手のひらに埋め込んでいたが、このロワでは手に持つだけで使用可能。
また宝貝は本来なら仙道でない人間が持つと数秒で生命力を吸われ尽して死んでしまうが、
「触れているだけで体力を消耗する」程度まで緩和されている。


538 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/03(金) 21:10:50 PhnYhHpU0
投下終了です


539 : 名無しさん :2022/06/03(金) 23:50:54 0/bC2FN.0
nicovideo.jp/watch/sm40562258


540 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/04(土) 04:32:59 4xxJDeXA0
昨日投下した勝太とカレーパンマンの話について、アニメアンパンマンはタイトルが『それいけ!アンパンマン』であることを思いだしたため、wiki内で修正させていただきました


541 : アーザードさんとこのドラゴン族 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 12:52:13 Syj7QPGY0
投下します


542 : アーザードさんとこのドラゴン族 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 12:53:01 Syj7QPGY0
 俺はドラゴンを忌み嫌う。
 ありふれた理由だ。故郷を、妹をドラゴンによって喪った。
 それは何処にでもある話だ。ドラゴンによって蹂躙されるなんて珍しくない。
 強大な奴らにとって、人間なんて存在は下等で愚かな生き物でしかなかった。
 人の感情を理解しない。尊重もしない。寄り添おうともしないのがドラゴンだ。
 だから消えるまで勝手に戦い続ければいい……だと言うのに。
 人の想いを知ったドラゴンに、ドラゴンと共にある人間に負けた。

「だからこの結末も正解と受け入れるべきだ。」

 不条理だ。
 理不尽だ。
 納得などできるものか。
 アイツらには救ってくれる奴がいて、
 故郷や妹を救ってくれた奴はいなかった。
 受け入れられるわけがない。あんな結末を。

 でも受け入れるほかなかった。
 計画は失敗に終わり、魔力もないのではどうにもならない。

『あなたも、そんな人に出会えるといいですね。』

 人によって変えるきっかけを与えられたドラゴンは、
 そう告げて去った後、冥界の神から殺し合いをさせられていた。
 最初はキムンカムイによる処遇かとも思ったが、そういうわけではないらしい。
 キムンカムイは分かりやすい奴だ。こんな遠回しな制裁などするわけがない。
 もっとも、内容自体は実にドラゴンが好きそうな悪辣な催しだったが。

「ッ……」

 支給された道具を確認していたところ、
 顔をシールドで覆った緑のドラゴンと、
 人型に寄っているドラゴンに私は早々に追い込まれていた。
 武器はあったものの、魔力は既に空だ。応戦できるだけの力がない。

(聖骸布も普通のものになっている……ハ・デスは私にどうしろというんだ!)

 ギリギリ掠めた攻撃が袖を裂いて肌が僅かに露出する。
 ドラゴンの攻撃を防げるはずのクロークも、今やただの布らしい。
 公平性か、単なる嫌がらせか。何方であっても生存が絶望的だった。
 首輪がないのを見るに、ルールに書いてあった参加者以外の存在だ。
 参加者でも何でもない存在に、俺は殺されると言うのか。

『お前の死を悼む仲間いないと思え。』

 キムンカムイの言う通りか。
 こうして終わる……それだけのよくある話だ。
 あの時のように、誰も救ってくれることはない。
 ありふれた理由……ドラゴンによって命を落とす。
 ───だと言うのに、

「悪い、借りる!」

 俺を救ったのは、

「同じドラゴン族、だよな多分……来るならこっちも行くぞ!」

 そのドラゴンと同族であり、人間の姿をした奴だったから。





 ずっと、助けられてきた。
 記憶のない、しかも戦場で俺を優先してくれた鉄獣戦線(トライブリゲード)。
 仲間の窮地にゴルゴンダを倒してくれた教導(ドラグマ)騎士団の人達。
 旅の手助けをしてくれたスプリガンズ、他にも相剣や氷水の人達(でいいのか、あれ)。
 何より、どんな時になってもずっと俺と一緒にいてくれたエクレシア。
 俺は沢山の人に助けられて此処にいる。沢山の人から色んなものを貰った。
 白(アルバス)でしかなかった俺の記憶を、色んなもので染めてくれた。

「だから、俺が助ける番だ。」

 竜化の力を封じられてたとしても、アイツがその竜化の力を取り込んでも。
 負けられない。守りたいものがあると言った理由はいくらでもあるだろう。
 でも。自分の力が含まれた存在だ。記憶がないからひょっとしたら違うのかもしれないが、
 とりあえず今のところは竜化の力は俺の力であるとする。自分の力で自分が負ける……絶対に嫌だ。
 自分にだけは負けられない。承影とコスモクロアから託された相剣の力で、氷と炎の力を得た氷剣竜として立ち向かった。
 アイツとの戦いは熾烈を極めて、その最中にアイツと統合されていくような感覚と共に───

『これより決闘のルールを説明する』

 辿り着いたのは、ハ・デスって奴が宣言した殺し合いだ。
 アイツとの戦いでホールの中へと行ったのかも分からない。
 戦おうと思えばできるし、このまま優勝して戻ることも考えた。
 あの場から消えてしまったら、一体誰がアイツを止められるのか。
 俺しかいない。俺にしかできない役割。だから早く戻らなきゃいけなかった。

『本田くん――――!』


543 : アーザードさんとこのドラゴン族 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 12:53:59 Syj7QPGY0
 ───できるわけ、ないだろ。
 あの二人は多分、俺とエクレシアと同じで大事な関係だったと思う。
 エクレシアがあんな風に殺されていた可能性だって、多分どこかにある。
 あれはもしかしたらの俺だ。シュライグやエクレシアが殺された場合の。
 このままだと俺は死ぬしかない。だったら戦う理由はあるにはある。
 さっきまで俺は自分自身に負けられないとは思ったので理由は十分にあるだろう。
 でもこれは違う。抗いもせず屈したら、自分の心の弱さに負けているのと変わらない。
 それに……誰かにとってのエクレシア達を、俺は殺したくなかった。

「けど、どうすればいいんだ?」

 正直頭を抱えた。
 殺したくないだけならいくらでも言える。
 だから、殺し合いを止めれる手段が今は欲しい。
 つまり考えられるのは首輪を外すことだけど、正直よくわからない。
 水辺で反射した自分の顔を見て、首輪がどういうのかだけは分かった。
 スプリガンズ、或いはキットやフェリジットの姐さんなら分かると思う。
 記憶のない俺には、まあどうにもならないのは事実だ。

(探してみるか。)

 俺一人を参加者にするとは思えない。
 イソノやユウギを知ってたホンダって人を考えると
 多分、関係のある人が何人か巻き込んでるんだと思う。
 鉄獣戦線の皆とかいたら助かるけど、そう都合よくはないかも。
 単に俺が右往左往するのを楽しんでる……そんな可能性だってある。
 竜化の力を奪って用済みのはずの俺を殺さずに放っておいたアイツのように、
 俺の反応を楽しむ可能性もある。まあ、アイツのことなんてよくわからないが。

(誰かが戦ってる!)

 考えてるのもつかの間。
 遠くない場所で人の声がした気がする。
 武器の確認の暇も惜しく、そのまま俺は駆けだす。

 ◆ ◆ ◆

 青年、アルバスが持っていた黄緑の刀を拾い上げてそれを構える。
 颯爽と現れた彼の滲み出る竜の力を察したのか、単なる生存本能か。
 素直に実力差を理解して引き下がって事を構えるには至らなかった。

「あれ? 今の奴、首輪がないけど参加者じゃないのか?」

 まだルールもまともに見てない彼にとって、
 NPCの概念など分かるはずがなかった。
 だから必要以上に攻撃しなかったのもあるが、
 そうであっても殺すつもりで来る相手以外は余り気が引ける。

「アンタ、大丈夫か?」

 背後で膝をついていたクロークを羽織った青年に手を伸ばす。
 伸ばされたアルバスの手を、青年は引っ叩きながら振り払う。
 親切な人ばかりに出会ったアルバスにとって返された行動に、
 少し戸惑って払われた手を唖然と見てしまう。

「今、ドラゴンと言ったがお前はそうなのか。」

「……種族的には多分ドラゴン族だと思う。よくは分からないけど。」

 自分の種族なんてちゃんと考えたこともなかった。
 記憶もないので自分が何者かさえよくは分からない。
 ドラゴンになれるので、多分ドラゴン族なのだろうと言う程度。
 返事を聞くと青年は一人で立ち上がり、何処かへと歩き出す。

「待ってくれ、ドラゴンだと何か問題があるのか?」

「……ドラゴンは嫌いで一緒にいたくない、それだけだ。」

 ドラゴンと人間が分かり合える存在を目にした。
 でなければ、あの人間とドラゴンが共に闘うなどできるはずがないのだから。
 それでも認めたくない。それを否定したいから、肯定したくないから突き放す。

「なのに、なぜついてくる?」

 暫く歩いていくが、アルバスはなおもついてくる。
 あれだけ塩対応していたのに不快に思ってないのか、
 何処か心配そうな表情で彼の後ろをついてきていた。

「シュライグやエクレシア……仲間ならきっと見捨てないから。
 記憶が何もない俺にも、できることがあるんじゃないかって。」

 至って純粋な理由だ。
 見た目は十代中ごろなのに、
 頬を掻くその姿は見た目よりも精神が幼く見える。

「そんなものは人間の真似をしてるだけだ。」

「かもしれない。寧ろ、自分の為にやってるエゴだと思う。」

 時折思ってしまう。自分が忘れてるだけで、本当は最悪の存在になのではないかと。
 デスピアの少年と似ているのも、そのことについて拍車をかけてるのはある。
 そんな不安も何処かある。だから人の真似をして、自己と保とうとしていると。
 だから青年の言葉に対して否定できる言葉を彼は持ち合わせてはいなかった。
 もっとも、一度記憶を失った彼に語彙力があるかと言われると少し妖しいが。

「でも、エゴが混ざってたとしても俺はそうしたかった。
 助けたい気持ちがあるのに我慢したら、多分次も言えなくなるから。」

(……なんだ、このドラゴンは。)


544 : アーザードさんとこのドラゴン族 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 12:55:36 Syj7QPGY0
 青年、アーザードは別に殺し合いを勝ち抜きたいわけではない。
 ドラゴンに対しては憎悪や嫌悪の対象とみなし、竜同士の戦争を煽るなどをしていた。
 けれど、別に他の参加者を皆殺しにすると言った行為に手を出すつもりはない。
 あくまでドラゴンと、ドラゴンと共にあろうとする人間が嫌いなだけだから。
 正直アルバスはドラゴンに分類されるが、自分の力に不安を持つドラゴンなんて初めてだった。
 混沌とも調和とも違う。人間と共にあったドラゴンだって力に不安など持ってなどいない。
 だから戸惑う。初めて出会う奇妙な存在に。

「後、それとこれ。アンタのだろ?」

 そう言ってアルバスは黄緑色の刀を地面に突き刺す。
 借りると言った以上、返すのが道理だから。

(……懐柔できないか?)

 考えれば好機なのではないかと今になって気付く。
 別段相手が殺し合いに乗る気もないのであれば、
 此処で味方になりうる人物がいた方が何かと都合がいい。
 現状自分が殆ど戦力となりえないことを考えれば生存にもつながる。
 またドラゴンを利用しなければならないのかと思うと微妙に溜息も出るが。

「いや、いい。君が持ってた方が強いはずだ。」

「ん? いいのか?」

「代わりにと言ってはあれだが、暫く護衛を頼めるかな?」

「? いいけど。」

 さっきまでドラゴン族だから邪険にしてなかったか。
 なんて思うも、ドラゴン族嫌いなら何かあまりいい思い出がないのだろう。
 無理に尋ねることはしないで、一先ず放っておいて刀を抜いて彼の後を追う。

『あなたも、そんな人に出会えるといいですね。』

 人の姿を真似たドラゴンがそんなことを言っていた。
 ドラゴンも長い長い道すがらの中で考えを変えられる。
 だから人間にもそういう存在を変えてくれる奴はいるのだと、
 自分にもそういう奴と出会えるかもしれないと……そう言いたいかのように。

(それが、彼だとでも?)

 あってたまるか。
 あったとしてもそれはドラゴンではないだろう。
 彼女の言葉を振り払いながら、アーザードは歩き出す。

 ドラゴンと人。
 彼のいた世界には割とあったが、
 少なくとも彼にはなかった物語が始まる。

【アルバスの落胤@遊戯王OCG】
[状態]:健康、氷剣竜ミラジェイドに変身可能(現在:1回)
[装備]:ドラゴンスレイヤー@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:とりあえず、殺し合いはしない。
1:この人(アーザード)と行動したい。

[備考]
※参戦時期はルベリオン(アルベル)と交戦中(イラストで言えば烙印融合中)から。
※氷剣竜ミラジェイド以外のアルバス融合体には現状竜化できません(別途の手段があれば別)。
 また、ミラジェイドになれる回数は六時間に一回増えます。



【アーザード@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:困惑、精神疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはする気は余りないが……
1:こいつ(アルバス)、どうする?
2:ドラゴンは……どうするか。

[備考]
※参戦時期は七十八話、トールが去った後です。
※魔力は完全にありません。恰好はそのままですが聖骸布ではありません。
 ただ何かしらで魔力を得られれば、転移等の魔法は使えます。
※復活する呪いは制限により一度死亡で発生し、
 蘇生時も七割程度の回復に留められます。
 二度目に致死量の攻撃を受けた場合、そのまま死亡します。
 首輪の爆破である場合は蘇生は蘇生そのものが不可能です。



【ドラゴンスレイヤー@グランブルーファンタジー】
アーザードに支給。ゲーム上では恒常アーミラの解放武器。
その切先が刻むは英雄たる証明の物語。力の象徴たる獣を斬り伏せた翡翠の刃に映るは英雄の横顔か、
はたまた次なる暴君か。その雄姿の顛末は詩の中にのみ語られる。
風属性強化の乱気の攻刃、光属性強化の天光の攻刃を内包しているが、
アルバスの落胤は闇属性なので効果は現状では受けることはできないただの刀。
第三スキル【英雄たる証明】はロワ上での再現が難しいので説明は割愛。


545 : アーザードさんとこのドラゴン族 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 13:00:47 Syj7QPGY0
【一眼の盾竜@遊戯王OCG】
レベル3 風属性 ドラゴン族 攻撃力700 守備力1300
身につけた盾は身を守るだけでなく、突撃にも使える。

【レッサー・ドラゴン@遊戯王OCG】
レベル4 風属性 ドラゴン族 攻撃力1200 守備力1000
あまり強くなく、ブレス攻撃もやらない低級のドラゴン。


546 : ◆EPyDv9DKJs :2022/06/04(土) 13:01:11 Syj7QPGY0
投下終了です


547 : ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:29:48 /2BqgDFI0
投下します。


548 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:32:38 /2BqgDFI0
「馬鹿にしてるんですか?」

満面の笑みを浮かべながら、胡蝶しのぶはそう言った。

美人は笑った顔が一番を体現する笑みである。
世の男性の八割は陥落間違いなしだろう。
現在のしのぶを見て機嫌が良いと感じる者は一人もいないであろうが。

上述の言葉だけでなく、芋虫のような太い青筋を額に浮かべた彼女は、「私怒ってますよ」とこれ以上ないくらいにアピールしている。

こうもしのぶの機嫌を急低下させた原因とは、彼女が持つ支給品にあった。
腰に差した刀。これは別に問題無い。
使い慣れた武器が支給されたのは幸いである。
元々使っていた日輪刀でない事以外は、特に不満も無い。

問題はもう一つ、奇妙な絵が描かれた紙の束。
どの紙にも共通して、煽情的な恰好の女性や少女が描かれていた。
布面積が異様に少ない裸の一歩手前のような、しのぶからしたら気が狂ったとしか思えない姿である。
服縫製係の前田とてここまで露出が高いものは作らない筈。
というかもし作ってカナヲにでも着させようとしたなら、不死川と協力して徹底的に絞ってやっただろう。
そんな女性が描かれた紙の束を何故女性である自分に支給したのか、理解できないし、したくもない。
これで喜ぶのなど前田か善逸くらいではないか。
同封した説明書に記載されていた紙の束の名は「メスキングのカード一式」。
意味は全く分からないが何となく不快な響きだった。

とはいえ用途不明の支給品に関して、何時までも気を取られている場合ではない。
乱暴に紙の束を鞄に仕舞い、さてこれはどういう状況なのか、唇に指を当て考える。
柔らかく、ほんのりと温かさが人差し指のに伝わる。
死人ではない、血の通い魂が宿った、生きた人間の証だ。

「冥界の王を名乗るくらいですから、人間の魂をどうこうするくらいは訳ないとでも?」

俄かには信じ難くとも、信じる他ない。
今自分がこうして五体満足で立っている。それこそが何よりの証明なのだから。
毒に侵された己を姉の仇に喰わせ、しのぶは死んだ。それは間違いない。
「上弦」「弐」の浮かんだ瞳を煌めかせ愛の言葉を囁く生首、思い出すだけでも虫唾が走る光景は夢ではない。現実だ。


549 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:33:59 /2BqgDFI0
「……」

つまり何だ、冥界の魔王は殺し合いの駒が欲しくてわざわざ自分を生き返らせた。
そういう事なのか。
力だけは大したものだが人格面では終わっている。ああいや、アレは人では無いのだった。

「馬鹿にしてるんですか?」

先程よりも怒りを籠めて、もう一度同じ言葉を使う。
別に死にたくてああいう方法を取ったのではない。
生き残って、蝶屋敷の皆の成長をこれからも見守っていきたいと全く思わなかったと言えば嘘になる。
それでも、自分の選択を後悔したつもりはない。
カナヲと伊之助が想いを繋げ、悪鬼の頸へ刃を届かせた。
だからこれで良かったのだと心から安心したというのに、納得していた自分の人生の終わりへ唾を吐かれたような気分だ。

刀を抜いて頭上に翳す。
自分にわざわざ刀を支給したのは、鬼を狩る為に磨き上げた技術を以て勝ち残れと、そう言うつもりなのか。
鬼の頸を斬れない自分が練り上げた蟲の呼吸で、本田と呼ばれた少年と同じ屍を積み上げろと言うのか。
薄っすらと昏い笑みを浮かべる。
冥界の魔王への怒りと殺意を細い体に宿し、奴の心臓を貫くその瞬間を思い浮かべしのぶは笑うのだ。
あの異形が生き返らせたこの命で、奴自身を狩る。
一度死のうとしのぶは鬼殺隊の蟲柱。人に仇名す化け物を見逃してやる道理は無い。

「と、その前にまずは目先の問題からですね」

ハ・デスへの怒りは一旦仕舞い、先にやらねばならない事がある。
微かだが聞こえた甲高い悲鳴。何が起きたか考え込まずとも分かった。
早速やる気になった輩が現れたらしい。


550 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:35:14 /2BqgDFI0
◆◆◆


「無理ィイイイイイ!!無理です!来ないでください!!」

ウサ耳のような黒いリボンを激しく揺らし、全力で拒否する。
涙目で尻もちを付いた姿は、容姿の可愛らしさも相俟って庇護欲、或いは嗜虐心をそそられるものだ。

神崎ひでりは降り掛かった不運の数々に、どうしてこうなったと嘆く。

リーゼントのお兄さんが死んだり、日曜朝の特撮にでも出て来そうな怪物が意味の分からない事を言ったり、グラサンの不審者がやたらと威勢よく開始宣言したりと、情報量が多すぎてパニック状態だ。
悪趣味な夢でも見ていると思いたいが、現実逃避は許してくれないらしい。
ひでりはピンチに陥っている真っ最中だった。

「幾ら僕が可愛いからってそれだけは無理です!ほんとに無理ですから!!」

絶叫し後退るひでりを取り囲む複数の巨体。
正体はムカデ、カマキリ、トンボといった虫。
確かに虫が苦手な少女からしたら鳥肌が立ち、悲鳴を上げてもおかしくない光景だ。
しかしひでりは実家が農家なのもあって虫には慣れており、ゴキブリを掴んで外へ放り投げるくらいは平然と行える。
そもそもひでりは少女ではなく、立派な少年。性別は男だ。
昨今では親の顔より見たジャンル、所謂男の娘というやつである。

では何故ひでりがこうも怯えているのか。
彼を取り囲んでいるのが、どれもこれも人間大のサイズがある化け物だからに他ならない。
いくら虫に慣れていると言っても、こんなB級ホラー映画みたいな状況は初めてに決まっている。

(何で…何で僕がこんな目に遭うんですかー!?)

まさか自分が余りにも可愛いから、神様があえて試練を寄越したのだろうか。
神でさえも狂わせる自分の可愛さが今だけは恨めしい。
呑気な思考になりかけるも、ガチガチと牙を鳴らす巨大ムカデが近づいて来た為現実に引き戻される。


551 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:36:02 /2BqgDFI0
「ヒョッヒョッヒョッ…。無駄な抵抗はしない方が良いと思うよぉ?」

怯えるひでりを眺め、不気味に笑う者がいた。
おかっぱ頭に変わったデザインの眼鏡を掛けた、どことなく陰湿なイメージを抱かせる少年。
少年こそ巨大な虫にひでりを襲わせた張本人。
名はインセクター羽蛾。元全国大会優勝者の決闘者である。

羽蛾がひでりを襲った理由は、何も虫に襲われる少女(男だけど)を見たいと言った歪んだ性癖ではない。
彼がデュエル(殺し合い)に乗ったからだ。

決闘都市での敗北後、ダイナソー竜崎と共にドーマの手先となった羽蛾。
強化したデッキとオレイカルコスの結界で遊戯(アテム)に挑むも、度を越した挑発が仇となり逆鱗に触れてしまった。
その結果、一部界隈で伝説のシーンとまで言われた「狂戦士の魂」によるオーバーキルで敗北。
自分が発動したオレイカルコスの結界のせいで、羽蛾は魂を奪われた。
しかし次に目を覚ました時、ハ・デス主催の決闘に招待されていたと言う訳だ。

(まさかこんなチャンスが巡って来るとは思わなかったよ。ヒョヒョ…)

何故悪魔族のモンスターが現実にいるかなどどうだっていい。
それより勝ち残ればデュエルキングの地位と、それに見合った富が手に入る事の方が遥かに重要。
もう二度と、優勝者の癖に素人に負けたなどと陰口を叩かれる事も無い。
憎き遊戯を蹴落とし、インセクター羽蛾こそが決闘者のトップに君臨する時が遂に来た。
都合よく遊戯も参加しているのは、最初の場で確認している。
本田とか言う金魚の糞の一人が死んだ時、遊戯が上げた悲痛な声は実にスカッとしたものだ。

(見てろよ遊戯…。すぐにお前も本田とかって奴と同じ所へ送ってやるからな)

遊戯への復讐を果たしデュエルキングとなる。
まずは本当にモンスターを実体化可能らしいデュエルディスクの試運転がてら、偶然見つけた少女(少年)を襲った。


552 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:37:25 /2BqgDFI0
「君みたいな可愛い娘にあんまり手荒な真似はしたくないんだよ。大人しく殺されてくれないかい?」
「嫌に決まってますよ!寝言は寝て言ってください!この変態眼鏡!気持ち悪いおかっぱ!」

ひでりの辛辣な返しに羽蛾が顔顰めた途端、ムカデ…レッグルが威圧するように牙を大きく鳴らした。

「ひっ…」
「ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ。ボクの命令一つで、君の手足くらい軽くもぎ取ってやる事も出来るんだぜ?」

凄んでやると分かりやすく顔を青褪めさせる。
ひでりの反応が良いせいか、一思いに殺さずついつい遊んでみたくなったのだ。
もう少し恐怖させてからモンスター共の餌にしようかと、舌なめずりをする。
アテムとの決闘でもそうだったように、自分の優位を確信すると途端に調子づくのは羽蛾の悪い癖だろう。

今回はその悪癖のお陰で、ひでりは助かった。


――蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ


「ひょ?」

どこからか蝶が舞い降りたように見えたのは錯覚だろうか。
だが羽蛾の召喚したモンスターが全滅したのは錯覚ではない。
レッグル、昆虫人間(ベーシックインセクト)、ドラゴンフライ。
ひでりを取り囲んでいた三体が、一瞬で破壊された。

舞い降りたのは超ではない、女だ。
ゆらりと羽蛾へ振り返り、赤い唇で笑みを作る。
顔を見ているだけで喉元に剣を突き付けられたような緊張感が走った。
どうにか視線を動かせば、だらりと下げた右腕には一本の刀。

「な、な…」

そんな馬鹿なと思うも、状況的に答えは一つしかない。
目の前の女が、刀一本で羽蛾のモンスターを破壊した。
下級モンスターとはいえ、女一人でどうこう出来るはずが無い。
そう叫ぼうにも、この女ならやりかねないと思わせる異様な雰囲気を漂わせている。

「ク、クソッ!」

女が何者なのかは知らないが、このままでは羽蛾自身もモンスターと同じ末路を迎える羽目になる。
折角手にしたデュエルキングへのチャンスを、そんな簡単になくしてたまるか。
新たなカードをデュエルディスクにセットする。


553 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:38:24 /2BqgDFI0
「ボクはフライングマンティスを」

召喚。決闘者らしくモンスターの召喚を律儀に宣言しかけ、ズドンと左腕に衝撃が走った。

「ひょ?」

二度目となる間の抜けた声。
無理もない事だ、左腕に装着したデュエルディスクに刀が突き刺さっている。
腕を貫通はしていない、代わりにセットしたデッキが深々と貫かれていた。
相手プレイヤーの宣言を待たずに攻撃はルール違反だが、突き刺した女…しのぶは決闘者ではないし、決闘者が何なのか自体知らない。
わざわざ相手の攻撃を呑気に待ってやる、そのような己惚れが生き残れる程鬼との戦いは甘くないのだ。
敵が何かを仕掛ける前に潰す。極めて現実的な思考に従い、腕の装甲らしき物を破壊した。
心臓や頭を狙わなかったのは、相手が人間の少年だから。
自分達はあくまで鬼狩り、人斬りではない。

刀を引き抜くとデュエルディスクから火花が散り、煙が上がる。
デッキは丁度真ん中に穴が出来ており、これでは仮にデュエルディスクが無事でも正常に読み込めるかどうか。
何をされたかようやく理解が追い付いた羽蛾はワナワナと震え、みっともなく泣き叫んだ。

「そ、そんなぁ〜〜〜〜!!!!ボクのカード…グレートモスが…女王さまぁあああああああああ!!!!」
「ああ、ごめんなさい。大切な物だったんですね」

謝罪の言葉とは裏腹に輝くようなスマイルだった。
後は適当に拘束でもしておこうかと考えた時、しのぶへ襲い掛かる影が複数現れた。

「ひぃっ!ま、またですか!?」

状況に置いて行かれ気味だったひでりが言った通り、今度も虫だ。
転がって来る丸いゴキブリ達を、しのぶは次々と刺し殺していく。
鬼に比べれば大した事は無いが、如何せん数がやたらと多い。
必然的に対処に気を取られ、その隙に羽蛾は逃げ出した。

「っ、逃がしは…」
「お、お姉さん!まだ来てますよー!」

ひでりの言葉に偽りは無く、次から次へと現れる。
羽蛾の追跡を優先してはひでりがどうなるか。
名前も知らないが、見捨てるような人でなしになったつもりは無い。

「…仕方ありません。そこから動かないでください。直ぐに片付けますから」
「はっ、はい!」

背伸びして答えるひでりに微笑みを一つ返し、振り向き様に数匹纏めて突き殺した。


554 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:39:37 /2BqgDFI0
【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:由美江の日本刀@HELLSING
[道具]:基本支給品一式、メスキングのカード一式@龍が如く極、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:まずはこの虫の群れを片付けますか。
[備考]
※参戦時期はあの世で童磨と言葉を交わした後。

【神崎ひでり@ブレンド・S】
[状態]:精神疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。デュエルとか意味分かんねーですよ。
1:とりあえずお姉さん(しのぶ)の言われた通りにする。
[備考]
※参戦時期は不明。


【由美江の日本刀@HELLSING】
イスカリオテ機関所属のシスター、高木由美子/由美江が使う長尺の日本刀。
吸血鬼や食屍鬼(グール)もばっさばっさと斬り殺せる。

【メスキングのカード一式@龍が如く極】
子ども達に大人気のカードゲーム、昆虫女王メスキングで使用するカードセット。
「お前をメスキングにしてやるぜ!by堂島の龍」


◆◆◆


しのぶ達からある程度離れ、羽蛾は絶望していた。
決闘者の魂でもあるデッキの損失には、流石の羽蛾も耐えられなかったらしい。

「ひょ…ひょ……」

力無く笑い左腕に視線を落とす。
何回見てもデッキとデュエルディスクの破損は変わらない。
一応試してはみたが、やはりというかうんともすんとも言わず、モンスターは召喚されなかった。

全国大会優勝者の名声を遊戯への敗北で失い、今度はデッキを失ってしまった。
デッキの無い自分は最早、決闘者ですらない。
自業自得ではあるが、余りにも非情な現実に羽蛾の心は絶望一色へ染まっていく。


555 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:40:45 /2BqgDFI0
その瞬間を待っていたとばかりに、羽蛾の周りを飛び跳ねる存在が現れた。

「ひょ…?」

顔を上げると目の前には一匹の茶色いバッタが跳ね回っている。
普通よりも大きく、機械チックな体をしたバッタに羽蛾は乾いた笑いを漏らした。

「何だお前…慰めてくれるのか……?」

虫一匹に同情されるまで落ちぶれてしまったか。
益々惨めな気分になりかけ、はっと気づいたようにデイパックを漁る。
確かこのバッタはある物と組み合わせる事で力を発揮するはず。
最初に説明書を読んだ時はどれだけ待っても現れなかったバッタが、何故今出て来たのか。
理由はこの際何でも良い。

やがて見つけた銀のベルトを巻くと、バッタは羽蛾の手の上に飛び乗った。
まるで早く自分を使えと言わんばかりに。

「変身……」

『HENSHIN』

『CHANGE PUNCH HOPPER』

バックルにセットされたバッタを起点に、羽蛾の全身がライダーアマーに覆われる。
茶色い装甲と白い複眼を持つ戦士への変身が完了すると、低く笑った。

「ひょっひょっ…成程なぁ」

この姿は全てを失いどん底にまで落ちたからこそ手に入れた力。
確かに今の自分に相応しい。

「遊戯ぃ…お前もボクと同じ所まで落としてやるよ……」


556 : 孤独(蟲毒)のRunaway ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:42:05 /2BqgDFI0
【インセクター羽蛾@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康、パンチホッパーに変身中
[装備]:ゼクトバックル+ホッパーゼクター(パンチ)@仮面ライダーカブト、デュエルディスク(故障)+羽蛾のデッキ(破損)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:遊戯にも地獄を見せてやらなきゃなぁ…。
[備考]
※参戦時期はドーマ編でアテムとの決闘に敗北後。

【ゼクトバックル@仮面ライダーカブト】
仮面ライダーパンチホッパーに変身する為のバックル。
上部のボタンを押すことでバックル部分が展開し、そこにホッパーゼクターをセットする構造となっている

【ホッパーゼクター(パンチ)@仮面ライダーカブト】
マスクドライダーシステムの心臓部であるショウリョウバッタ型メカ。
尾部のイオンエンジンを噴射し、時速950kmの速さで跳びはねながら有資格者のもとに現れる。
また、脚部のスラスタースリットからタキオン粒子を噴射して、ジョウント移動を行う。
脚部はゼクターレバーともなっており、タイフーンを基点として持ち上げ、逆方向に向けることでタキオン粒子の噴出量を倍加させるチャージアップを行い、ライダージャンプを発動させる。
そしてジャンプ後にレバーを元の向きに戻すことで、必殺技につなげるのである。

【羽蛾のデッキ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
昆虫族で構築されたインセクトデッキ。
ドーマ編でデッキ強化を行った為、アニオリカードも複数ある。

『NPC紹介』
【ゴキボール@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻1200/守1400
丸いゴキブリ。
ゴロゴロ転がって攻撃。
守備が意外と高いぞ。


557 : ◆ytUSxp038U :2022/06/04(土) 17:42:49 /2BqgDFI0
投下終了です。


558 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:47:15 6hqXFVq20
投下します


559 : 開演・決闘の世界 ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:49:16 6hqXFVq20
 僕の運命は必ず
 十度目に立ち上がった その時に――


 〇

 私には叶えたい願いがある。どうしても――また手に入れたい大切な日常(しあわせ)がある。
 あの子を取り戻すためなら私の命を捧げても良い。そう思えるくらいには――ほんとに大好きで。妹のように可愛くて、未だにあの温もりが忘れられなくて……。
 あの子が――ロゼが死ぬ最期の瞬間に「大好き」なんて伝えたけど、本当はもっと早くに伝えたくて。

 だから冥界の魔王――彼の提示した景品は私にとってこれ以上なく待ち望んでいたものだった。
 何故なら私はロゼを――大切な子を蘇生したいから。それだけがずっと渇望していた願いだから。

「でも――私が殺人鬼になることを、きっとあなたは許さないんでしょうね」

 ロゼはそういう子だから。私が殺人鬼になったとしたら、今すぐあの世から止めにくるかもしれない。
 あの子は私と旅をするまで、閃刀姫として列強の国にずっと飼い慣らされていたけど――心の根っこの部分は本当に優しい子だから。閃刀姫として刃を交えていた時から、彼女が本気で国や民を想って戦っていることは伝わってきた。――だからこそ、そんな彼女を利用した列強の国は許せない。もしも私が助けなければ、ジークのコアとしてその生命は間違いなく尽きていたに違いない。
 だから私は彼女のおかげで目覚めた新たな力――リンケージで列強の国を潰した。私たちの旅を邪魔して、再びジークのコアとしてロゼを攫ってあまつさえ私と交戦させたあの憎き列強を。

 それでも――列強を潰しても、私の心にはポッカリと穴が空いていた。空っぽの心を満たしてくれたロゼを失い、憎き列強を潰し――私は生きる意味がわからなくなった。
 冥界の魔王を名乗る男が主催する決闘に招かれたのはそんな時だった。

 決闘――コロッセウムとか、そういう場所で行う正々堂々とした一騎打ちの勝負。そういうイメージがあったけど、どうやら違うらしい。……まあ戦場を駆け抜けてきた私にはこのルールの方がわかりやすくはあるというのが、なんとも皮肉。要するに最後の一人まで生き残れば願いを叶えられるという単純なルールだ。

 閃刀姫だった私には最後の一人まで生き残るための力がある。もちろん過酷な道であることは理解しているけど――あの子のためならどんな茨の道でも駆け抜ける覚悟は出来ている。

「――まあ私は冥界の魔王に反抗する側ですけどね」

 ロゼのために進むイバラの道は――あの子の性格を考えると、自ずと決まっていた。


560 : 開演・決闘の世界 ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:50:16 6hqXFVq20
 私の身勝手な願いであの子を悲しませたり、失望なんてさせやしない。無慈悲に人々の命を奪う参加者がいるなら、私がこの刃で切り捨てるのみ。――それが閃刀姫としてではなく、ロゼを愛した人間、レイとしての在り方だから。

「ということで――久々に旅でもしましょうか」

 こんな決闘を旅なんて言うとおかしいかもしれない。これはどう見ても旅なんかじゃない。戦争、殺し合い、決闘――そういう血なまぐさい単語の方がよっぽど似合ってる。
 それでも私が旅なんて言葉を口にしたのは、ただの気まぐれ。どうせ剣を振るうなら、少しでも前向きに歩みたいから。……ジメジメした心じゃ何も守れないし、成し遂げられないから。

「――閃刀姫レイ、久々に参ります!」

 閃刀姫――そんな称号はとっくに捨てたけど、この決闘だけ再び私は閃刀姫になる。それが愛するロゼのためにもなるから――レイとしての在り方は不変のまま、閃刀姫としてこの刃を振るう。

「どんな敵でも負ける気はありません。この私が百鬼夜行なんてぶった斬ってやります!」

「だいたいわかった。ここが閃刀姫の世界――いや、決闘(デュエル)の世界か?」

 私が声高らかに宣言すると、いきなりヌッとカメラを携えた男性が姿を現した。

「なんだか勝手に理解しているようですが、私にはなにがなんだかサッパリわかりませんよ……!?」

 いきなり出てきて「だいたいわかった」なんて言い始める意味不明な人にはとりあえずツッコミ!
 ……まあ雰囲気からして悪人には感じない。戦意もなければ、悪意や殺意も感じられない。そもそも殺意があるならわざわざ言葉を喋らず不意打ちでも仕掛けているはずだ。こうしてわざわざ姿を現したということは、少なくとも会話をする意思があるという意味になる。……それにしてもなんだか支離滅裂で言葉のキャッチボールどころか、ドッチボールをされた気がするけども。

「ま。お前にはわかるはずもない、か……」
「何かやたら上から目線ですね……!とりあえず説明を求めます」

 尊大な態度で偉そうにしてる意味不明な男性に説明を求めると彼は「仕方ない。説明してやるか」と言って様々な情報を語り始めた。


561 : 開演・決闘の世界 ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:50:53 6hqXFVq20

 〇

「情報をまとめると……いくつもの世界を旅してきた世界の破壊者――それがあなたということですか」
「ま、そういうことだな」

 私が謎の男性――門矢士に確認すると彼は何も間違っていないと肯定した。
 世界の破壊者――それは民を守る閃刀姫とは正反対の称号にしか聞こえない。そのくせ士はいくつもの世界を旅するだけで、特に世界を破壊したい衝動があるわけでもないらしい。
 ジオウの世界という場所では世界を破壊しようと思ったらしい――けどこの門矢士という男は厄介で、それが本音かどうかイマイチわからない。なんというか、世界の破壊者なんて名乗ってる癖に殺意も戦意もないからよくわからない。
 まあ――周りが勝手に付けた称号なんて意外とそんなもので。閃刀姫の私もジークから救出した後はロゼと自由に生きることを優先したわけだから、士についてとやかく言うつもりはない。

 ――そんなことよりも気になることがある。

「……オーマジオウという存在に殺されたのに復活したというのも本当なんですか?」
「ああ、俺はあの時、たしかに死んだ。それがいつの間にかここに居た――って感じだな」
「そんなめちゃくちゃなことが我が身に降り掛かってるのに、意外と驚かないんですね……」
「いや、多少は驚いてるぞ。だがまあ別に初めてじゃないからな」
「初めてじゃない――ってもしかして生き返るのがですか……!?」
「理解が早いな。ま――今回は色々と事情が違いそうだが」

 尊大な態度を崩すことなく――士の瞳に覚悟の炎が灯る。世界の破壊者と呼ぶには相応しくない――アレは完全に戦士の表情だ。

「――この世界は俺が破壊する。冥界の魔王だかなんだか知らないが、俺を復活させるっていうのはそういうことだ」

 オーマジオウに倒されても、冥界の魔王に命を握られても――それでも士の魂は揺らいでいないようで。

「それはつまりこの決闘を潰すって意味ですか?」

 一応だけど確認してみる。決闘の世界――それを破壊するということは、きっとそういう意味だと思ったから。
 そういえばハ・デスがこの世には無数の世界があるなんて言ってた。そしていくつもの世界を旅する門矢士――仮面ライダーディケイド。もしや彼がこの決闘の鍵を握っている可能性もある……?

「ああ。ある人が言った……。俺達は正義のために戦うんじゃない。俺達は人間の自由のために戦うんだと」

 ある人――という呼び方に敬意のようなものを感じる。もしかしたら士の師匠や先輩なのかもしれない。

「――人間の自由を奪うこの世界は俺が潰す。それが仮面ライダーってもんだろ?」

 ――仮面ライダー。その言葉の意味は士に教わった。簡単に言うと私の世界の閃刀姫と同じようなポジションらしい。


562 : 開演・決闘の世界 ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:51:59 6hqXFVq20
だから彼は仮面ライダーディケイドとして人間の自由のために戦う。――国や民を守るという閃刀姫の使命より、何故かそっちの方が私としてもしっくりきた。

「じゃあ私も閃刀姫として人間の自由のために、この世界を破壊します。――大好きなロゼもそれを望んでいるでしょうし、一緒にこの世界の旅でもどうですか?」
「好きにしろ。俺の旅に他の奴が来るのはいつものことだ」

 相変わらず尊大な態度で進み始める士を私は追い掛けて――。

「――待ってください!」

 一人の中性的な男性が現れて、引き止められた。あまり強そうな容姿はしてない――けれどもその瞳や佇まいは間違いなく戦士のソレだった。そのくせ私たちの話を盗み聞きしてたのは、悪気がないにせよどうかとも思うが……。

「僕もこんな決闘には反対です。だから良ければその旅に同行させてください!」
「紅渡か……」
「え?どうして僕の名前を知ってるんですか……?」
「ハ・デスが言ってただろ、世界は無数に存在するってな。お前と俺は初対面だが、並行世界のお前になら会ったことがある」

 それだけ言うと士は再び歩き始めた。

「渡。お前も旅に付いてくるなら、好きにしろ」
「……わかりました!」

 そして渡を含めた私たち三人の旅は始まった。
 後から知ったことだけど――渡もまた仮面ライダーという存在で、ハ・デスを倒して人々の自由を守るつもりらしい。――彼の父親は誰よりも自由で、音楽を愛する男だったとか。


【閃刀姫-レイ@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:閃刀姫-レイの剣@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:士に協力してこの世界を破壊しちゃいますか
1:士や渡と旅をする
[備考]
参戦時期は閃刀起動-リンケージ(ロゼ死亡)以降。
遊戯王カードについての知識はありません
カガリやシズクなどにフォームチェンジするには遊戯王OCGのカードが必要です。閃刀姫デッキとして支給されたカードではフォームチェンジ出来ません。
閃刀起動-リンケージのカードを発動することでオッドアイになり、秘められた力を発揮出来ます

【門矢士@平成仮面ライダーシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ネオディケイドライバー&ディケイドのライダーカード@平成仮面ライダーシリーズ、ファイナルアタックライドのカード&各種アタックライドのカード@平成仮面ライダーシリーズ、ライドブッカー@平成仮面ライダーシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:この世界を破壊する
1:レイや渡と旅をする
2:どうせ海東の奴もいるんだろうな
[備考]
参戦時期はRIDER TIME 仮面ライダージオウVSディケイドで死亡後

【紅渡@仮面ライダーキバ】
[状態]:健康
[装備]:キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒して人々を守る
1:士さんやレイさんと旅をする
2:並行世界の僕……?
[備考]
参戦時期は最終回後

『支給品紹介』
【ネオディケイドライバー&ディケイドのライダーカード@平成仮面ライダーシリーズ】
門矢士に支給。仮面ライダーディケイド(ネオディケイドライバーVer.)に変身するためのベルトとそのカード。各ライダーカードは付属していないのでこれだけではカメンライド出来ない

【ファイナルアタックライドのカード&各種アタックライドのカード@平成仮面ライダーシリーズ】
ネオディケイドライバー&ディケイドのライダーカードに付属。必殺技や各種技を使うためのカードセット。これらがなければカメンライドどころか仮面ライダーディケイドとしてもまともに戦えないので、ネオディケイドライバー&ディケイドのライダーカードと2つで1つの支給品扱い

【キバットバットⅢ世&ウエイクアップフエッスル@仮面ライダーキバ】
紅渡に支給。通称キバット。
渡がファンガイアと戦う際は、彼の手に咬みついて体内に魔皇力を注入し、仮面ライダーキバに変身させる。キバットと必殺技を使うためのウエイクアップフエッスルのみの支給で各種フォームチェンジ用のフエッスルは付属していない


563 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/04(土) 17:52:20 6hqXFVq20
投下終了です


564 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:13:14 8tmY.Qsc0
投下します。


565 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:13:29 8tmY.Qsc0
今を戦えない者に、次や未来を語る資格はない
ロベルト・バッジョ


566 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:13:55 8tmY.Qsc0

「……」
ゴーン ゴーン ゴーン

見知らぬ土地の街の倉庫に金剛力士像を具現化させているかのようなオーラをひしひしと発している少女が一人。

少女の名は周防すみれ。
この春、埼玉県蕨市の蕨青南高校に入学し、女子サッカー部に入部した。

監督らしからぬ監督が紅白戦を行うと言うと、すみれもそれに参加するはずだった。
これから新天地でのサッカー生活が突如、決闘という名の殺し合いへと変貌したこの現状。

「絶対に地獄へ堕とす」

呪詛のように低い声。
すみれは、磯野とハ・デスを許さない。
部活の紅白戦という大事なときに殺し合いを命ずる男を。
そして、生者を冒涜する冥界の魔王を。
死者の魂を弔う寺の住職の娘として容認するわけにはいかない。
丁度、そのとき。すみれがハ・デスたちに宣戦布告をすると同時にサングラスをかけた男がいた。

「ククク……支給品を置いていけば、命だけは助けてやるぜ」
「……だれ。おっさん」
「……おっさんか。言ってくれるねぇ……元全米チャンピオンの顔も知らねぇガキが」

すみれの”おっさん”という言葉にサングラス越しからも男の怒りが伝わる。
男の名はキース・ハワード。
かつて、バンデット・キースの名で有名だった元全米ナンバー1のカードプロフェッサー。
全米で放映されたペガサスとの決闘での無様な負けにより名声が地に堕ちた彼は酒とギャンブルに溺れ、身を破滅させた末路はペガサスによる罰ゲーム(パニッシュメントゲーム)で命を落とした。

「悪いけど、知らない」

すみれはそっけなく答えると、その場から立ち去ろうと倉庫の扉に手をかける。

「……ッ!?」
(扉が開かない……?)

「けっ!不愛想なガキだ。命は奪わねぇっていってんだから、さっさと寄越せってんだよ!」
「……嘘」
「あ゛?」

すみれの”嘘”という一言に眉を顰めるキース。

「大方、私が支給品を渡しきったら殺す算段。……この下種」
「……おいおい。随分な言い方だなオイ。言っておくが、オレが殺してぇのは二人だけだ」
(まぁ……正解だけどなぁ。ククク……)

”WOW!!トムの勝ちデース!”
”ダーク・メガ・フレア スロットマシーン撃破!!”

「オレをコケにしやがったペガサスと城之内!!奴らへの宿怨を晴らす為に生き返ったんだからなァ!!」
「そんなのただの逆恨み」
(生き返った……このおっさん。ヤバいやつだ)

―――ピク

「女ァ……オレをコケにした代償を払わせてやるぜェ!!」

血走った眼でスミレを睨みつける。
スミレもキースの眼光に目を背けない。
その姿がまたキースのイラつきを増大させる。
そのとき……

マイクテスト、マイクテスト。あーー、もしもし、聞こえるかー?

なんと、声が聞こえた。

「……ッ!?」
突如、脳内へ響く声にすみれは周囲を見渡す。
しかし――――――
周囲には人一人見当たらない。
キースも同様に周囲を見渡す。
依然、姿は見えないが、声は響く。

ハロー!ニンゲン!キィの名前はキィという!よろしくな!

「……ッ!??」
すみれは、声の出所が自分の胸からだという事実に驚きを隠せない。

ん――――?キィの声は届いているよな?自己紹介されたら自分も名乗るのがニンゲンの常識だよな?

どうやら、胸から聞こえる声の主はこっちは自己紹介したのだから、早くそっちも自己紹介をしろと言っている。

「……周防すみれ」
キィと名乗る声にすみれはしぶしぶといった顔で名乗る。

—————そうか!スミレというのか。

「……!?」
声と同時にすみれの胸から一人の少女が飛び出してきた。

「ふっふっふ……このキィがスミレの支給品として選ばれたからには大船に乗った気持ちでいるがいいぞ」
キィはVサインをすみれに向ける。

☆彡 ☆彡 ☆彡


567 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:14:40 8tmY.Qsc0
「……」
すみれはキィを無言で見つめる。

「う〜〜〜ん。何だか、スミレは口数が少ないな。ハンシンを思い出すぞ」
キィは頭をぽりぽりと掻きつつ、余り口を開かないすみれの姿にかつての相棒を思い出す。

「……おい」

「ハンシン?」
当然、知る由もないすみれはキィの言葉に首をかしげる。

「オレの声が聞こえてんだろが……」

「ああ、キィには相棒のハンシンというのがおってだな……!!!」

すみれの疑問にキィは答えようとしたそんな直後—————

「シカトぶっこいてんじゃねぇぞ!クソガキ共が!!!」

「……話の続きは、アイツをどうにかしてだ」
「わかった……」

キィの提案にすみれは頷く。

「舐めやがって……モーターシェル召喚!」

キースはブラックデュエルディスクにカードをセットすると召喚する。

「串刺しにさせてやるぜ!モーターシェル!」
「……ッ!」

キースの命令に従うモーターシェルは車輪を猛スピードで走らせ、その両腕の槍ですみれとキィを串刺しにしようと襲い掛かる。
すれみは、横へ飛び前転をして躱す。同じくキィも同様に躱した。

「は!テメェらを串刺しにするまで、コイツは何度でも襲い掛かるぜ!」

モーターシェルは急カーブして再び標的へ向かう。
すみれはそれを避ける。避ける。避ける。

「……その粗末なの(突撃)を止めろ」

すみれは、モーターシェルを睨みつける。
すみれのポジションはサッカーの花形であるフォワード。
勝利を掴むために積極的に走り、シュートすることが求められる。
故に、ただ直線の突撃を行うだけのモーターシェルの攻撃を避けられると同時に、その稚拙なプレイにムカムカする。
だが、当然ながらキースの手により殺戮のモンスターと化したモーターシェルにそんな命令は通らない。

『……!!』

機械であるモーターシェルだが、主人の命令を遂行できていない現状にギアチェンジをしたのかスピードを上げる。

「スミレ!!!」
キィはすみれを助けようとするが―――――

「大丈夫」

すみれは手でキィを制止すると、その場でしゃがむとシューズに手を触れる。
そのとき、カチリと音が鳴ると……

ギャルンッ!!!

なんと、韋駄天のような速さでその場から移動したからだ。
そして、一枚のカードを靴に当てた後、車輪の側面を蹴った。

―――ボォン!

蹴りが当たった瞬間、爆発音が鳴り響く。
煙が晴れると……残骸となったモーターシェル。

「な……何だとぉぉぉ!?」

モーターシェルが撃破され、キースは歯ぎしりしながらすみれを睨む。


568 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:15:18 8tmY.Qsc0
「おお!やるではないかスミレ!」
「……」
(痛い……)

キィはすみれに近づくと、わっはっはと笑いながらすみれの肩をバンバンと叩く。
すみれは内心、痛い……と感じながらも若干顔つきが緩んだ。
そう、すみれが履いていた靴は普通の靴ではなかった。
祓忍具”韋駄天輪”
支給品である靴に仕込んであるローラースケート風の車輪が名を現すかの如く、移動できた。
それに加えて”ビックバンシュート”
それを韋駄天輪に装備カードとして使用したため、強烈な爆発がする靴へとグレートアップした。
もし、製作者である香炉木恋緒がこの現場に居たら、超・刺激的〜♡と涎を垂らしながら悦びを隠しきれないであろう。

「モーターシェル一体破壊した程度でイキがってんじゃねぇぞ!」

キースはさらにモーターシェルを2体召喚していた。
さらに陸戦型T-M1ランチャースパイダーを。

「……!!」
(数が……)

先ほどのモーターシェルに明らかにやばそうな武器を背負っている機械蜘蛛がすみれとキィの前に立ちふさがる。

「……おい!こんなに複数のモンスターを展開するのは決闘(デュエル)とやらのルール違反ではないのか!」

キィはキースに抗議する。
キィの抗議は至極全うだ。
通常召喚は基本は1ターンに1回のみ。
それに城之内との初戦で使用したランチャースパイダーは生贄前のルールでは召喚無しでも可能だったが、生贄が必要な場合は7つ星モンスターの為、2体の生贄が必要である。

「はっ!これは決闘(デュエル)じゃねぇ。ただの決闘(殺し合い)だぜ!つまり、そんなルールに縛られねぇってわけだ!」

デッキを介した決闘ではないのか、デュエルディスクは問題なく機動したというらしい。
だが、当然キィは納得することなく。

「ふざけるな!スミレ!!一緒に暴れまわるぞ!!!」

キィはキースの蛮行に怒り沸騰。
スミレに共に戦うぞ!と声をかける。

「……どうやって」

機械たちの猛攻を韋駄天輪で避けながら、すみれはキィに尋ねる。
キィは、まってましたと自信満々な表情で……

「無論!こうやってだ!!!」

キィの言葉と同時にすみれの身体に異変が。

……Are you Ready?―――

ピシィ!!
キィの言葉に反応して、スミレの胸に硝子の氷柱が飛び出す!
まるで、ガラスの心が反応したかのように。

『!!!???』

機械たちは驚くとすみれから離れる。

GO Liiiiiiive!!

―――パリィィィン

硝子の氷柱はスミレとジャノメエリカの花になり―――
手にはサッカーボールを握りしめていた。

☆彡 ☆彡 ☆彡


569 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:15:40 8tmY.Qsc0

「これは……・?」
すみれは自身の姿に戸惑う。

「これは、カタルシスエフェクト!これでスミレは闘う力を持ったぞ!」
キィはすみれに説明する。
戦う力を得たことを。

「そう」

キィの言葉にすみれは理解した。
闘えるということを。

「さっきのお返し」
すみれは前方にいる一体のモーターシェルに向かって。

思い切り蹴った。

—————ゴッ!!!

すみれの蹴ったサッカーボールが直線状にいたモーターシェルを吹き飛ばす。

『ッ!!!!????』
それを見たモーターシェルは起動する。
が、時すでに遅し。

「反撃!!」
すみれの闘志に火が灯る。

すると。

シンギュラリティエクス。

「……!?」
キィの言葉に反応するとすみれの体が勝手に動き出した。

ブォ!!!
サッカーボールでモーターシェルを打ち上げ、追撃のサッカーボール!ボール!!ボール!!!
何度もぶつけられモーターシェルは無残に破壊される。

『……ッ!!!』

ランチャースパイダーのミサイル攻撃。
すみれはそのフィジカルでジグザグに移動し、ミサイルを避ける。
正にそれは、突出した才能。

「そこ」
―――クルクルクル
勢いよく回転するサッカーボールを叩きつける!!!!!

「……!!??」
ランチャースパイダーはスミレの攻撃に耐えきれず―――

ボォォォン!!!

破壊された。

すみれは見事にGOALすると、前にいる相棒に。

パァン―――♪

キィとハイタッチした。

「ば……馬鹿なぁぁああ」
「そういえば、一度死んだとか言っていたけど……もう一度地獄へ叩き落としてあげる」

ビッと親指を立てると逆さまへ落とす。
所謂、”地獄へ落ちろ!”だ。

☆彡 ☆彡 ☆彡


570 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:16:37 8tmY.Qsc0

「ク……クク。城之内並にムカつくガキだぜ。……だが、無駄なあがきがテメェらの絶望へとかわる」

すみれの宣言にキースの脳裏に城之内が浮かぶ。
それと同時に鋭い眼光と怨嗟が渦巻く。

「気をつけろ!スミレ!何だかヤバそうなモンスターが出てきそうだ!」

キィの忠告は実に的を得ている。
キースの身体から禍々しいオーラが溢れだしてきたのだから。
寺が実家なだけあって、すみれもただ事ではないと額に汗を流しつつも気を引き締めて対峙する。

「オレのターン!ドロー!」
「スクラップ共を生贄に邪神イレ……!!……う……ああァ……!!!」
「な……何だ?」

突如、頭を抱えだすキース。
まるで、深淵の闇の中を一人彷徨い続ける迷子のように。

「オ……オレ……は……くそ……まだだ……オレは……」
「と……とにかく一度退却するぞ!……ピッキィング!!!」

キィは闇のオーラで固く閉じられた鍵をその能力でこじ開ける。
それは、キィの能力の一つ。
オブリガードの楽士を倒して手に入れた能力。

「わかった」

スミレはキィの言葉に応じると、素早く走り、この場を立ち去った。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「はぁ……はぁ……」

乱れた息を整えようと大きく息を吸い、気持ちを落ち着かせるキース。
しかし、既にスミレとキィの姿は見えなくなっていた。

「くそがァ!!!」

イラつきが収まらないキースは周囲の物に八つ当たりを行う。

「……城之内。ペガサス……見てろよ。優勝してその力でテメェらのケツの穴穿ってやる(復讐)からな」

復讐鬼の怨嗟はいまだおさまらず。

【キース・ハワード@遊☆戯☆王R】
[状態]:動悸(小) 絶望と復讐(特大)
[装備]:ブラックデュエルディスクとデッキ(モーター邪神)@遊☆戯☆王R
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、
[思考・状況]基本方針:優勝して城之内とペガサスに復讐する
1:もし、城之内とペガサスがいたら最優先に復讐する
2:武藤遊戯に出会ったらいたぶる
3:ガキ共(すみれとキィ)に再開したらブッ殺す
[備考]
復活後、城之内との再戦前からの参戦。

『支給品紹介』
【ブラックデュエルディスクとデッキ(モーター邪神)@遊☆戯☆王R】
バンデット・キースことキース・ハワードに支給。キース愛用の機械族と邪神イレイザーを中心にしたデッキ
一度は死んだキースは邪神イレイザーを所持していることにより生きながらえている。
「相手の出方によって能力が変化するブザマなモンスター」BYキース


571 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:17:22 8tmY.Qsc0
☆彡 ☆彡 ☆彡

「はぁ……はぁ……とりあえず、逃走成功だな」

キースが謎の狼狽を見せたため、すみれとキィは無事に逃げ切ることができた。
互いに乱れた息を整える。

「……助かった。……ありがとう」

すみれは不器用ながらもキィに微笑みながら感謝を伝える。

「ふふん!キィの力の凄さがわかったろ?それじゃあ、確認するが、すみれは”生きて帰る”の方針でいいのか」
「……うん」

方針の確認をキィがしてきたので、すみれはそうだと答える。
あの磯野という黒服の男とハ・デスとかいう自称冥界の魔王を地獄に落として生きて帰る。
それが、周防すみれの意思。

「それじゃあ、そうと決まったら、早速コンビの名前を考えねばな……」
キィは顎に手を添えると思案しだし―――

「……うむ。やはり、あれしかないな。……我らは帰宅部だ!」
キィは宣言する。

「……帰宅部?」
キィの宣言にすみれは目を丸くする。

「そうだ!この世界はハ・デスが用意したマガイモノだ!キィはそんな世界を認めることはできない!だから、現実世界に戻る……つまり、帰宅部ということだ!」
キィはそういうとこぶしをギュと握る。

「安心しろ。キィが知っている帰宅部の皆はキィにたくさんのことを教えてくれた。そして、今は皆、現実を受け入れて精一杯生きておる!だから、帰宅部という名ならスミレも必ず元の世界へ帰れる!」
キィはそういうと、すみれの目を見つめた。

「……」
キィの熱い思いにすみれは受け入れた―――

「……ところで。なぁ、スミレ。そのサッカーボールということは、もしかしてサッカーでもやっ……ッ!!」
キィはすみれに話しかけようとしたそのとき―――

―――すみれの心の奥に踏み込みますか…?

     はい     いいえ

ドクン!とキィの体に悪寒が全身に巡り走る。

「……どうしたの?」
「い、いや。なんでもない……」
キィの様子の変化に気づいたすみれはキィにどうしたと尋ねるが、キィは大丈夫だと返事を返す。

「……そう?」
すみれは『本当に?』と思いつつもスタスタと前を歩く。

「……」
(そうか……キィがスミレの支給品になったのは”そういうこと”なのか……)
前を歩くすみれの背中を眺めつつキィは悟った。

自分がこの殺し合いの支給品として存在するわけを。

「―――――?」
すみれは立ち止まっているキィにどうしたの?といった顔で見つめる。

「……ああ。今行く!」
(そして、スミレの心の奥に踏み込むとしたらハンシンではなくキィなのだな?)
キィはかつての相棒の姿を想起する。

(……はたしてバーチャドールのキィにできるのだろうか?……いや、キィがやらなきゃいけない!でなければ、帰宅部の皆に顔向けができぬ!)
そう、人の想いを痛みを引き受け、受け入れるのがバーチャドールの役目なのだから―――

かくして、一組のサッカー少女とバーチャドールの帰宅部(コンビ)ができた。

一人だったすみれにキィというパートナーができた!

【周防すみれ @さよなら私のクラマー 】
[状態]:健康
[装備]:キィ@Caligula2、韋駄天輪@あやかしトライアングル
[道具]: 基本支給品
[思考・状況]
基本方針:元の世界へ帰り、ふざけた主催者たちを地獄へ堕とす
1:キィと行動を共にする
2:ハ・デスたちを地獄に堕とす方法を探す
[備考]
※参戦時期は1話紅白戦中


572 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:20:04 8tmY.Qsc0
『支給品紹介』
【キィ@Caligula2】
バーチャドール。本編終了後ハ・デスにより支給品として支給された。
なお、持ち主であるすみれが死ぬとキィも消滅する。
現在使用できる能力
『カタルシスエフェクト』
持ち主の心の貌を具現化させて持ち主に戦う能力を付与する。
『キキィミミ』
めっっっちゃ耳がよくなる。特定のワードを検知するようになる。制限により範囲は一エリア分。ただし、ワードの範囲が広いため、必要な情報以外も多く集まるのが欠点。
『キィ憶消去パンチ』
キィ憶消失パンチを受けた者は数日の記憶が曖昧となる。制限により曖昧となるのは疲労が(大)のときに受けないといけない。
『ピッキィング』
簡単な構造の鍵やトラップなら解除できる。
『ハッキィング』並びに『マスターキィ』
現在使用不可。
何かしらの方法で使用可能となるかもしれない。

【韋駄天輪@あやかしトライアングル】     
すみれに支給。 
香炉木恋緒が履いていた祓忍具。
靴に仕込まれている車輪で韋駄天の如く素早く移動できる。
すみれの支給品であった、魔法カード【ビックバン・シュート】の効果により、対象に蹴りが入ると、爆発するように改良された。
「超・刺激的〜〜〜〜〜💗」BY香炉木恋緒

【ビッグバン・シュート@遊☆戯☆王OCG】
すみれに支給された魔法カード。
装着した靴に爆発する能力を与える。
韋駄天輪に使用したため、消滅した。
しかし、代償も大きい。装備者が死んだとき、その遺体は除外され、一切、痕跡を残すことはない。


573 : ガチでもファンでも大丈夫です! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/04(土) 20:20:19 8tmY.Qsc0
投下終了します。


574 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/05(日) 11:39:51 7kPJf13.0
投下します


575 : メアリ―・アウト・カオスミュージアム ◆FiqP7BWrKA :2022/06/05(日) 11:40:27 7kPJf13.0
右の老若男女が狂気に侵され、左の悪鬼羅刹がその牙をむき出しに食らいつき、
それだけでは飽き足らず魑魅魍魎をも跋扈する地獄の決闘の舞台。
そこに放り出された参加者の中に、年端もいかない一人の少女がいた。
上等な布で出来た緑色のワンピースを身に纏い、
長く伸ばした美しいブロンドヘアーを揺らし、
奇麗な青い瞳を輝かせる様は、正に絵に描いたような愛らしい童女。
そんな凡そこの島で生き抜くことに適していないと思える彼女は、

「ふふっ。うふふふふ。あーっはっはっはっは!」

まるで誕生日プレゼントをもらったかのようなはしゃぎ様であった。
胸元にドスを抱いたままクルクルと跳ね回ってさえいる。

「出れた出れた出れた!やっと出れた!”現実に出てこれた”!
イヴともギャリーとも入れ替わって無いのに!」

彼女は人間ではなかった。
より厳密に言えば、意志は持つが生物ではなかった。
作品に魂を与えることを至上命題とした大芸術家、ワイズ・ゲルテナの最高傑作にして、
最期の作品。それが少女、メアリーの正体だった。


576 : メアリ―・アウト・カオスミュージアム ◆FiqP7BWrKA :2022/06/05(日) 11:40:48 7kPJf13.0
「私と同じぐらいの年の子たちはいるかしら?
お話して、冒険して、一緒に遊んだらお友達になってくれるかしら?!」

今から楽しみで仕方ない!全身でそう叫びながら彼女は飛び跳ね続けた。
どこにいけば会える?どうすれば会える?
名前も声もしらないけど、きっと私の心を埋めてくれるアナタ!
無垢な少女が指し示すその先に居るのは……

「もしかしてアナタだったりする?」

ギョロリ、と、作り物にしたって生々しすぎる碧眼が”こちらを覗く”。

「なーんて。流石に適当に言ったところにいる訳ないか」

そう言ってメアリーはその場を後にした。


577 : メアリ―・アウト・カオスミュージアム ◆FiqP7BWrKA :2022/06/05(日) 11:41:21 7kPJf13.0
【メアリ―@Ib】
[状態]:健康、人間化
[装備]:鬼炎のドス@龍が如くシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘でお友達を作って、外の世界に行く。
1:まずはお友達になってくれそうな子を探す。同い年ぐらいの子が良いな。
2:イヴやギャリーも来てるのかな?
[備考]
※『作品』ではなく人間と化した状態での参戦です。
 その為、耐久力は並みの少女と大差ありません。



【鬼炎のドス@龍が如くシリーズ】
広域指定暴力団、東城会直系真島組の組長にして、
東城会きっての武闘派、真島吾朗が愛用する得物。
漆黒の柄に桜が散らされており、刃には決して彫ってはならない鬼炎が彫られている。
なんでもこれを作った刀匠は最期の作品となったこのドスで動悸不明の自殺をしているとか。


578 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/05(日) 11:41:56 7kPJf13.0
投下終了です。メアリー可愛いよメアリー


579 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:15:35 L9TlB0r20
投下します


580 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:17:03 L9TlB0r20
ふと見上げた星空 また君をさがしてた


■□


星明かりの宙が、銀世界を照らしている。
満天の星空が、雪原の大地を照らしている。
星々の輝きだけは、殺し合いという現実離れした舞台の上でも、その眩さを翳らせては居ないのだ。
天体の在り方は変わらない。むしろ、よく再現していると言うべきか。
一際目立つ大きな星。こぐま座α星のポラリス、北極星。
天の北極最も近い場所に位置する、北の方位を示す輝ける星。

「……こんな場所でも、変わらないんだ……。」

空色の瞳玉が見つめる先は、満天の星空で一際目立つ北極星。
そんな現実逃避じみた思考で星宙(そら)を見上げる少女、鷲尾撫子の姿がこの殺し合いの夜天の下にあった。
思い返せば否応にでも思い浮かんでしまう嫌な記憶。此処に来る前に記憶に焼き付いているちょっとした意気地からの誤ち。好きな女の子に、琴岡みかげに、悔しくて意地になってしまったつい最近の記憶。
永遠なんて幻想で包まれた友情は、ほんの些細な事で壊れそうになってしまった。

「……最低だ、私……。」

瞳に溜まる思いの粒がぽろぽろと銀の床に流れて落ちて消える。
引き金を引いてしまったのは私だと、私のせいでああなったのだろうか、と。
それで琴岡どころか白鳥にまで迷惑をかけて、二人と面向かって謝る事から無意識に避け続けて。
白鳥は兎も角、今更琴岡に謝って彼女が仲直りしてくれるなんて望んでいるのかどうかすら。

「私……。」

琴岡みかげ。私の好きな人。恋している少女。
誰にもあっけからんと笑顔を向けておいて、その実、繊細で放っておけない。
私が見つけた一番星、輝きだして、二度と目を離せない。
そして時々目が眩んで、一時の過ちを犯そうとしたくなる。

琴岡みかげは優しいから。遠回しに自分に対して「私の事を諦めて」と言ってくる。
でも私が琴岡の事が好きなことを、琴岡が私の気もちに気づいている事。
私の秘密は、その事実を知っている事。
誰にも秘密の星明かり。
もし琴岡が知ったら必要以上に私を傷付けたって気にするかもしれないから。
そしたら白鳥だって私と琴岡の事、両方考えて悩むだろうから。

知らないフリをしなきゃ、琴岡に片思い出来ない私が一番、かっこ悪いのかもしれない。
だけど、それでも、女同士の恋愛感情。ただの片思いだとしても。
私にとって琴岡は好きな人で、琴岡にとっての特別になりたい。
私はさそり。何れ遠い未来に北極星となる琴座のベガに、情熱的に恋をしている。

だけど、もう終わりかもしれない。
友情も、恋心も、何もかも終わってしまう。
悶々とした、鬱屈した感情の中で、私はこの殺し合いに巻き込まれた。

叶えたい願いが無いというわけではない。
でももし、その為の手段に欲望の心が偏ってしまったならば、もう私は後戻り出来ないだろうから。
そもそも、こんな私にこんな場所で生き残る手段なんて限られている。
これが罰だと言うのなら、あんまりすぎると思ってしまいたかった。
それを理由に、何も考えないようにしようと思った自分が嫌になる。

星宙(そら)は私の愚かさ全てを遥か彼方の闇の楽園から覗き見ているのだろうか。
星は全てを知っている。星は全てを見通している。
奈落のような漆黒の天蓋が、世界を、舞台と言う名の袋小路を箱の中を。
望遠鏡で星空を見つめている誰かのように俯瞰して。


581 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:17:19 L9TlB0r20
「これから、どうしよう。」

零した言葉は間違いなく本心である。
あんな事になって、訳の分からない事に巻き込まれて。
いつも王子様のようにクールに気取っていた自分の姿なんて、この場所でそう振る舞う意味なんてない。
せめて白鳥が隣りにいてくれれば弱みを呟けたと思っててしまう。
やっぱり、そんな事望んでいる自分がどうしようもなく嫌になる。

雪畳を踏みしめながら歩く。氷雪に塗れた森林が夜星に照らされ綺羅びやかに輝いている。
視界に映る木組みのコテージや遊具のようなものは当然の事ながら白雪が積もっている。
夜の下でも比較的視界が良いのは、一目ランタンのようにも見える照明器が明かりを灯しているから。

この場所が殺し合いの舞台でなければ、銀世界を包み込む天体の暗幕は余りにも神秘的なものだっただろう。プラネタリウムから見るものとは全く別種の美しさが、そこに広がっていた。
宙(そら)は何も変わらない。この殺し合いの舞台と言う異世界においても。
星々は絶えず動き続け、この場所から見える星々も全く別のものになってしまう。
そして北極星もまた、遠い未来において別の星へと変化してしまうのだから。

―――あ。

緑色の、生き物のように見える何かが視界の端に映り込んでいた。
流動する薄汚れた緑色に、目玉の様な赤い球体が怪しく輝いている。
腕らしき所から、今にも私を切り裂こうとする鋭い爪が伸びていた。
ゲームとかでよく見る、所謂モンスターと呼んでも差し支え無いような異形の姿が、見えた。

動けなかった。動けるはずがなかった。
速さが余りにも違いすぎたし、私は不意を突かれたような形だったのだ。
逃げられるわけもなく、抵抗する為の力もなかった。
支給品袋をちゃんと確認していればとか、周囲を警戒しながらとか、どうしてそんな事考えなかったんだろうと。

自分の死が迫っているというのに、私は余りにも冷静だった。
いや、走馬灯というのに浸ってまともに何も考えられてなかったのか。

――あっ。

真っ先に、走馬灯で浮かんだ姿があの子の、琴岡の事。
私にとっての、北極星。だけどもう、その手には届いてくれない。遠く遠くへ離れてしまって。
それを思い浮かだ瞬間、涙が止め処無く溢れ出して。
死にたくない、なんて叫びたがってしまう。
でも、叫ぶ暇も無かった。全てがスローモーションで動いていく様な感覚で。
私は死にゆく運命を無情に受け入れるしか無かった。―――嫌に決まってる。

嫌に決まってる。あんな出来事が三人が一緒にいられた最後だなんて。
ずっと別れたままで、ずっと仲違いしたままで、私だけが死んで。
白鳥は悲しむし、琴岡もきっと悲しむ。
友情も片思いも、何もかも置いてけぼりにして死んでしまいたくなんて無い。
こんな所で死にたくなんて無い。
誰でもいいから助けて欲しい。陳腐な奇跡でも何でも良いから、誰でもいいから助けてほしいと。
死の恐怖に震えて、言葉一言すら出せない心のうちで祈り願う。
「誰でもいいから私を助けて」と。

刹那、流れ星が一瞬煌めいてすぐに消える。
そして奇跡は起きる。



「――やぁ!」




星が、降り立った。
緑の化け物を杖で殴り飛ばし、白を基調とした衣装で、金色の髪を煌めかせた或る星(しょうじょ)。
雪積もる木々の幹に叩きつけられた緑の化け物の上空から雪が降り注ぎ、化け物の視界と動きを制限する。
間髪入れずに少女が杖から放った眩い光の刃が化け物を切り裂き、沈黙させる。

「大丈夫ですか?」

王子様ではなく只の少女、なのだけれど。
駆けつけてくれたその姿は、一種の勇者(ヒーロー)みたいで。

「さっきのは野良で嗅ぎ回っていた一体でしょうけど、一先ずは安全な所で。」

私の手を取ろうとするその少女の姿は、余りにも輝かしいものだった。


582 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:17:38 L9TlB0r20
□■


逢いたくて 愛おしくて

触れたくて 苦しくて

届かない 伝わらない

叶わない 遠すぎと


■□



木組みのコテージ。パチパチと枯れ木を燃やす暖炉の前にて。
鷲尾撫子と、アルトリアと言う名の少女は暖炉で身体を温めながら話し合っていた。

「つまりアルトリアも、私と同じくいつの間にか呼ばれたって事?」
「そーなんですよ! しかも最悪のタイミングで! ほんっと何の嫌がらせなわけ!?」

話すに連れて勝手にヒートアップしていく少女、アルトリア。
思わずその翠玉の瞳の色も含めて、白鳥とダブってしまう。
と言うよりも話を聞けば聞くほど白鳥っぽいというか、白鳥の生まれ変わりっぽく見えてくるというか。
何はともあれ、鷲尾からの第一印象がそれであった。

「……コホン。ごめんなさい。まあこんな所で怒鳴っていても仕方ないですし。」
「いいよ。慣れてる。あとさっきは助かった、ありがと………」

そう照れくさそうに一言。白鳥っぽくて、やっぱり白鳥じゃない。
彼女を白鳥や琴岡と合わせてみたら面白いことが起きそう、とお礼の言葉と同時に思った事を笑顔で。
もしかしたら物凄く楽しいことになりそうだな、と思った所で。
……なんて自分から言いだして、途端に涙が流れ出して。

「えっ、ちょっ、えええっ!? ナンデ!? ナンデ泣いてるんですか!?」
「あっ……ごめんごめん。ちょっと涙腺が緩くて、さ………。」

ああ、ほんっと。どうしてこうなっちゃったのか。なんて悲しくなる。
眼の前のアルトリアはあたふたしているし、これ以上迷惑かけてしまうから早く涙を止めようとして。
その瞳の色が、白鳥と余りにも被って、思わず。

「……ねぇアルトリア。同性の子に、それも友達に好かれたらどう思う?」

思わず、『白鳥』に慰めてほしいという、ズルい自分の我儘を、見ず知らずの他人にぶつけてしまった事に。

「あの、いきなり恋愛相談投げかけられても困るんですけど………。」

案の定、困惑の表情をアルトリアは浮かべたわけで。
だけど少しばかり考え込み、答えを切り出してくれた。

「私はその友達の事は全くわかりませんので、私個人の意見として……ってああもうこういうの私の分野じゃないですし、そもそも私だって好きになった人が同性なわけで――。」
「ごめん、ほんとごめん。そこまで慌てられるとは思わなかった。あと無理に話さなくてもいいから。」

ちょっとだけ期待していたのが自分として馬鹿だった。と言うかすごく慌てていたしこの子も要するに自分同様、と言うか恐らく自分と同じく友達……かどうかはこっちはわからないけど。

「……じゃあ、貴女の方はどうなんですか?」
「私の?」
「貴女の方は、誰かに好きって思われてるとか、そういう経験は?」
「……私が、友達の誰かに、好きって……?」

少女の何気ない返しの疑問が、私の心の奥底に突き刺さる。
私は琴岡が大好きで、琴岡はいろんな彼氏に付き合っては分かれて。
まさか。
……白鳥が?
そんな事、或る理由(わけ)が。
だって、白鳥は私が琴岡への思いを知った上で、背中を押してくれて。
でも、もし、三人の友情を守るために、私への恋心を押し殺して私を応援してくれた、だったら。
私は、琴岡のことが好きになっている、私は――。

「ちょっと、聞いてます? はは〜ん? もしかして痴情の縺れで友人と喧嘩しちゃったやつですか?」
「……喧嘩したのは事実だけど、痴情の縺れは絶対ない。」

人が思いこんでいる時に限って何デリカシーの欠片もない発言投げかけているんだ、などと思いながらも、前半の痴情の縺れ部分は否定する。
痴情、と言うよりあれの発端は私と琴岡の仲違い。それに白鳥が色々と振り回されている、という構図。

「……謝ってしまえば、なんて単純な問題じゃなさそうですね、その顔ですと。」
「……まあ、うん。でも、謝ったほうが良いとは思ってる。でも……。」
「でも……?」

分かっている。二人には謝らないと行けないなんて。でも白鳥は兎も角、琴岡が仲直りを望んでいるのかどうか。もし琴岡がそんな事を望んでいないのなら、永遠に拒否されるままだとしたら。


583 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:18:01 L9TlB0r20
「……言いたくないのなら言わなくても大丈夫です。あって間もない方の秘密を探ろうとする趣味は無いですけれど、それはそれで突然泣き出しちゃうような貴女を放っては置けないと言うか。」
「……ありがと。」

アルトリアは気を使ってくれた。今はそれだけでも十分助かった。
気を使うのはこっちの十八番だというのに、見ず知らずに気を使わせてしまっては申し訳が立たない。

「でも一つだけ。やっぱり私としては仲直りはした方が良いと思います。そちらの都合もありますからあまり手助けはできませんが……貴女にとって追い求める星を、その友達の為の気もちは、決して悪くないものだとは思います、私は。」

そう付け加えたアルトリアの言葉。そのぐらいはわかっている、と言葉の代わりに苦笑いで返す。
私が追い求めている琴岡(ほし)。私はあの星を見ていたい。あの星に私を見てもらいたい。
だって私は、あの星にとっての特別になりたいから。

「……ありがと。本当に。」
「いいえ、困っているのはお互い様です。」

本当に、アルトリアには気を使わせてしまったと。
そう思いながらも、やっぱり私は琴岡と離れたくないという気もちでいっぱいだから。
例え拒まれようとも、私はあの星を探し求めたいと。

「……それで、アルトリアはどうするの?」
「どうするって、そりゃこのまま貴女を一人にするのも気が引けますので、貴女が元の世界に帰れるようにできる限りサポートはしますよ。」
「……ほんっと、悪いね。」
「まあ、もし彼女がいたんだったら、絶対に見捨てないと思うから。」

アルトリアが言っていた彼女。それが多分、アルトリアにとっての『好きな女の子』だと思う。
でも、それを追求するのは今はやめておくことにする。
少しは立ち直したし、今は『元の世界に帰る』事を目標にしておくほうが気が楽だから。
でも、もし、もし仮に。
この場所に、白鳥も琴岡も巻き込まれていたら、私はどんな顔で二人に会えば良いのだろう。
謝らないと、と言うのはわかる。でも、琴岡は私の謝罪を望んでいるのか。
怖い、琴岡が私を本当に拒絶してしまうという最悪の未来が。
あの星に見捨てられて、星の光のない場所に取り残されるのが。
何処までも不安になる。何処までも嫌にやる。
だからどうか、どうか星よ。私の迷いを導いて。


584 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:18:28 L9TlB0r20
□■


散り逝くと知る、星はそれでも

強く生きてる 色鮮やかに


■□



最悪のタイミングで呼ばれた、全くもって最悪とも言えるタイミングで。
呪いの厄災。かつて善意で妖精に手を差し伸べ、巫女ともども踏み躙られた祭神ケルヌンノス。
『楽園の巫女』の最後の使命、全ての厄災を祓えば消え逝くはずだった命。
好きな女の子に別れを告げて、なけなしの勇気とほんの少しの心残りを抱いて向かうべき場所へ向かったその最中。
自分は、呼び寄せられたのだ。この殺し合いに。

(ほんっと、ムカつきますよ。)

本気でハ・デスに対して怒りが湧いてくる。
あの土壇場で、世界の危機真っ只中で、よりにもよってな時に。
カルデアは、あの人たちは間違いなく頑張っているのに、言っておいて矛盾しているがこんな安全な場所に呼び寄せられてしまったなんて腹が立つ。
早く戻らないといけないという焦りと、魔王ハ・デスという変なやつへの怒り。
とは言うもののこんな殺し合いを放置しておいて自分だけさっさと戻りますなんて後味が悪いし、そんな事したら二度とあの人たちに顔向けできなくなる。
そんな最中で出会ったのが、魔物に襲われていたあの子、鷲尾撫子。

正直な話、彼女の不安も嘆きも迷いも、この妖精眼(め)が全て見通してしまっている。
鷲尾撫子は琴岡みかげの事が好きで、そんな彼女と喧嘩してしまった。
琴岡みかげが鷲尾撫子の気持ちに気づいていて、それを振り払おうと遠回しに拒否してくる。
それを鷲尾撫子は知っている。自分が悪いと分かりながらも、それでも拒否されることは辛いから。
琴岡みかげの『特別』になりたいと、自分はこういう自分だからと唯我(エゴ)を貫いて。
琴岡みかげに見てもらう努力を、させてほしいと。

(だから、私が入る余地は。入り込んだ時点で余計なおせっかい、なのかな。)

だから、その空気ぐらいは読む。でも、我慢せずに助けを求めても良いんだよ、と。
恐らく彼女にそう言ってもまた我慢しそうだと思って結局のところ。
まあでも、彼女は諦めが悪い。そこは自分となんとなく似て無くはないかな、と思う。

(まあでも、放ってなんて置けないですもんね。)

間違いなく、彼女よりも普通の一般人である彼女に、迫ろうとする脅威には無力だ。
だから今は、彼女たちと再開できるこの時まで、彼女のことを守らせてもらうことにしよう。
おせっかいなのは、まあそこはまあというやつだ。それに――。

(もしかしたら。)

私が見ていた星。私を見ていた星。
嵐の中でも輝いていたあの星がなんなのか。
この中で、もしかしたら分かるかもしれないと、不謹慎ながらも淡い期待を抱いて。
だって、どれほど遠く、汚れても、私は星を探すのだから。
その星(こたえ)に、辿り着きたいから。
誰かの為でも、自分の為でも、世界の為でもない。正義の為でもない。
多分、恐らく。たった1つ、裏切れない何かのために、嵐の中を進み続けるのです。


585 : ポラリス ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:20:34 L9TlB0r20
【鷲尾撫子@ななしのアステリズム】
[状態]:健康、焦燥(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:生きて元の世界に帰る。
1:出来れば白鳥と琴岡に謝りたい。でも、琴岡は私と仲直りを望んでいなかったらどうしよう……?
2:白鳥が、私のことを好き……?
3:もし二人が、同じように巻き込まれいたとしたら……?
[備考]
※参戦時期は五巻19話、琴岡と喧嘩別れした後〜朝倉と出会う前。

【アルトリア・キャスター@Fate/Grand order】
[状態]:健康、主催への怒り
[装備]:ワンダー・ワンド@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:あの人たちを助けるために元の世界に戻って、使命を果たす。
1:なんて時に呼び出してくれたんですかあの魔王!?(半ギレ)
2:彼女(鷲尾)の事は放っておけない。
3:もしかしたら、あの星の正体が、わかるかもしれない。
[備考]
※参戦時期は29節、キャメロットのモルガンの玉座に向かおうとしている最中。
※鷲尾の秘密に気づいています。
※妖精眼に関する制限は後続の書き手にお任せします。

『NPC紹介』
【シャドウ・グール@遊戯王OCG】
星5/闇属性/アンデット族/攻1600/守1300
影に隠れ、相手の背後から襲いかかる!

『支給品紹介』
【ワンダー・ワンド@遊戯王OCG】
アルトリア・キャスターに支給。先端に緑の水晶がが施されたワンド。


586 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/05(日) 18:20:46 L9TlB0r20
投下終了します


587 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/05(日) 19:36:35 lnvMMp1g0
二本投下します


588 : モンスター回収 ◆7PJBZrstcc :2022/06/05(日) 19:37:12 lnvMMp1g0
「あの男は……確か……」

 会場のどこかで、一人の男が思案している。
 黄金色の鎧に緑色の天然パーマのような髪形の彼の名前はハレクラニ。
 とある世界において、世界を支配している強大な帝国、マルハーゲ帝国の幹部、マルハーゲ四天王の一人だ。
 そんな彼はこの殺し合いについでではなく、最初の場で目撃した遊戯について考えていた。

 ハレクラニはこの殺し合いの前に、マルハーゲ帝国に対する反逆者ボボボーボ・ボーボボとその仲間と戦い、敗北した。
 その過程で、ハレクラニは一瞬だけ登場した武藤遊戯(アテム)に自身の必殺技を打ち破られたのだ。

 なお、ハレクラニは殺し合いについては何一つ動揺していない。
 彼の世界には瞬間移動位割とよくある部類で、自分が作り出した世界に閉じ込めることができる、真拳使いという存在もそこそこいる。
 冥王ハ・デスについても同様だ。彼の世界は食べ物や無機物が意志を持って行動することが日常茶飯事。冥界の魔王が現れようとも、そういう真拳使いだと思っていた。

 しかし、動揺してないのは事実だが冥王ハ・デスを許すつもりはない。必ず殺すつもりである。
 殺し合いに優勝するのが一番確実な気もするが、自身に首輪をつけた相手の思惑に乗るのも癪だ。

 何をするにしても情報が足りないので、一通り支給品を確認したのち、とりあえず他の参加者を探すことにしたハレクラニ。
 すると、早速参加者の一人を発見した。
 長い青髪に赤玉の髪飾りを付け、角を生やした、露出度が高い服を纏った少女だ。
 ただし――

「いや、ちょっ、まっ! だ、誰か助けてえええええええ!!」

 水色のスライムに襲われ、体を取り込まれかけている状態だった。
 一見淫猥な光景だが、実のところスライムは少女を取り込んで捕食しようとしている。
 なので、実際は少女の命の危機だった。

 とはいえ、その程度で動揺するハレクラニではない。
 はっきり言って助ける義理もないが、この状況では何が使えるか分からないので、とりあえず助けることにした。
 彼はどこからかコインを何枚か取り出し、適当にスライムに向けて指で弾く。

「ゴージャス真拳『コインナイト』」

 すると、コインに書かれた兜と鎧を付けた男が枚数分現れ、スライムを攻撃していく。
 スライムは男達の攻撃であっさり破壊され、取り込まかけていた少女は脱出に成功した。
 しかし彼女は安堵どころか、むしろ焦燥感にかられたような表情でハレクラニに駆け寄り、訴える。

「た、助けてくれてありがとうお兄さん! でも早く逃げないと危ないわ!!」
「どういう意味だ?」

 少女の言葉に疑問を覚えるハレクラニだが、答えはすぐに出た。
 なんと、彼らの目の前で破壊されたスライムが復活し、元の姿へと戻っていく。

「あれはリバイバルスライム! いくら破壊してもすぐに復活するモンスターよ!!」
「ほう……?」

 少女の言葉に興味を示すハレクラニ。とはいっても内容についてではない。
 彼は、自分から見れば未知の存在について解説ができる、少女の知識に目を付けたのである。
 ちなみに、スライムについては何も興味がない。
 破壊しても復活するのであれば、破壊以外で対処すればいいだけだ。

「ふん」

 ハレクラニが今度はお札を数枚取り出し、リバイバルスライムに投げつける。
 お札がスライムに張り付いたかと思うと、張り付いたそれが徐々に巨大化し、最後にはスライムを包み込んだ。
 すると、中から何かを砕くような音が響き最後には

 チャリン

 と軽い音を立てながら、中から一円の硬貨が落ちてきた。
 ハレクラニは、リバイバルスライムを一円に変化させたのだ。

「こ、こんなにあっさり……!?」
「女」

 自身が殺されかけたモンスターにあっさり対処する、ハレクラニに恐れをなす少女に構わず、彼は一方的に語り掛ける。


589 : モンスター回収 ◆7PJBZrstcc :2022/06/05(日) 19:37:38 lnvMMp1g0

「貴様の知識は使えそうだ。私と行動してもらおう」
「は、はい……?」

 ハレクラニの一方的な宣言に戸惑う少女。
 とはいえ、これは彼女にとっても渡りに船。
 恐らく殺し合いに乗っていないであろう参加者と同行できるのは、命の危険度合いが大きく下がる。
 なので、彼女には逆らうつもりはなかった。

「わぷっ!?」
「それで体を拭け。私と同行するのにその姿は見苦しいからな」

 などと少女が思案していると、いきなり何かを顔面に投げつけられた。
 それは五枚のハンカチだった。
 今まで命の危機でそれどこではなかったが、よく考えると少女の体はスライムまみれでとてもベトベトしていた。
 なので、これで体を拭けということだろう。
 しかし――

「あの、何ですかこれ……!?」

 そのハンカチは、なぜか一面にびっしりと『ぬ』の文字が大量に書き込まれていた。
 正直、あまり持ち歩きたくない類のアイテムだった。

「ふん」

 しかしハレクラニは少女の気持ちなどどうでもいいとばかりに、勝手に出発していた。

「ま、待ってください――――――!!」

 慌てて追い掛ける少女。
 こうして、少女と成人男性の珍道中が始まった。

 こんな風に振り回されている彼女の名前はアトラの蠱惑魔。
 とある世界で平穏に暮らしていた、ただのモンスターである。


【ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:冥王ハ・デスを殺す。手段は問わない
1:女(アトラの蠱惑魔)は使えそうなので同行させる
2:あの男(武藤遊戯)を警戒。ボーボボの仲間ならば殺す
[備考]
※参戦時期はハレルヤランドでボーボボに敗北した以降のどこか
※冥王ハ・デスを真拳使いだと思っています。

【アトラの蠱惑魔@遊戯王OCG】
[状態]:健康、体中がスライムまみれ
[装備]:ぬのハンカチ×5@ボボボーボ・ボーボボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:死にたくない
1:お兄さん(ハレクラニ)と行動する
2:ひょっとしてこれ(ぬのハンカチ)、いらないものを押し付けられただけなんじゃ……?
3:着替えが欲しい
[備考]
※他の遊戯王カードのある程度知識があります。
 どの程度あるのか、また面識があるのかについては不明です。少なくとも冥王ハ・デスについては知りません。


【ぬのハンカチ×5@ボボボーボ・ボーボボ】
ハレクラニに支給。
ところ天の助が愛用する、一面に『ぬ』の文字が書かれたハンカチ5枚セット。
特別な効果はない。盾にはならない。

実は遊戯王の作中にも登場したことがある。


【リバイバルスライム@遊☆戯☆王】
水属性/水族 攻撃力1500/守備力500
再生能力を持つスライム。
再生能力に制限はないが、本ロワでは破壊以外の方法で対処されると復活できなくなる。


590 : 天よりの宝札 ◆7PJBZrstcc :2022/06/05(日) 19:38:29 lnvMMp1g0
 会場にあるとある街。
 その一角で、一人の青年が佇んでいた。
 彼の名前は天馬夜行。
 薄水色の長髪が特徴的な彼は、本来なら端正であろう顔を狂気の笑みで歪ませている。

「武藤遊戯……友を失ってどんな気分だ……?」

 夜行が思い浮かべるのは、最初の場で友を失い悲しんでいるであろう武藤遊戯のこと。
 彼は遊戯を親同然に慕っていた存在にして、マジック&ウィザーズの創始者ペガサスの仇として憎んでいた。
 その為に彼は、ペガサスを蘇らせる計画R・A(リバースオブアバター)の対象に遊戯の仲間である真崎杏子を巻き込んだ。

 R・Aとは、非決闘者の体にペガサスを憑依させ蘇生させる計画である。
 しかしそれは武藤遊戯と海馬瀬人の二人に阻止された。
 だが夜行は諦めることなく、遊戯を決闘で倒すことでペガサスを蘇らせるつもり――

 だったが、気づけば別の決闘が始まっていた。
 最初の場で遊戯を見たときに感じたのは、愉悦。
 憎い仇が自分と同じく大切な存在を失ったことで、どれほどの苦痛に苛まれているかを想像するだけで愉快だった。

「だが私がペガサス様を失った時の苦痛はそれ以上だぞ……!!」

 しかし、そんな気持ちはすぐに消え失せてしまった。
 そして夜行は決意する。この決闘を勝ち抜き、ペガサスをより完全な形で蘇らせることを。

 彼はハ・デスから邪神以上の闇を感じていた。
 本来なら、あのハデスは邪神ほどの強さを持たない気もするのだが、なぜかそう感じていた。

 そんな夜行の手には、あるカードデッキが握られていた。
 それは決闘者が持つM&Wのデッキではなく、別の世界で願いを叶える為に殺しあうライダーのデッキだ。

「私に邪神を握らせないのはどういうつもりだ……?」

 自身のデッキを支給しないことに疑問を抱く夜行。
 しかしすぐに気を取りなおす。もしかすると他の決闘者に支給しているかもしれないし、単に強力過ぎて制限された可能性がある。
 そもそも、夜行はペガサスさえ蘇るならそれでいい。
 例え自身が決闘者として扱われなかったとしても、目的の為ならどうでもいい。

 こうして、天馬夜行は血塗られた道を歩む。
 彼が邪神の呪縛から解き放たれることは、もうありえない。


【天馬夜行@遊☆戯☆王R】
[状態]:健康
[装備]:ナイトのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:ペガサス様を生き返らせる
1:他の決闘者を探す。特に武藤遊戯
2:できれば武藤遊戯は自分の手で抹殺したい
3:私のデッキはなぜ支給されていない……?
[備考]
※参戦時期は遊戯との決闘開始直前


【ナイトのカードデッキ@仮面ライダー龍騎】
天馬夜行に支給。
昏睡状態の恋人を救うために戦う男、秋山蓮が持つデッキ。
契約モンスターはコウモリ型モンスター、ダークウイング。


591 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/05(日) 19:38:54 lnvMMp1g0
投下終了です


592 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/05(日) 20:39:59 VnIRFvS20
これから投下いたしますが、今回の作品には以下の内容が含まれておりますので、それに不快感を感じる人は注意をお願いいたします。
1. すでに他の人が投稿したキャラクターの使用と、一部の支給品に被りが発生している。

では、投下します


593 : 覚悟しろよ、この蟲野郎! ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/05(日) 20:40:44 VnIRFvS20
鬱蒼と茂る深い森の中、そこでは凄惨な光景が繰り広げられていた。

そこには頭部を引きちぎられたクワガタ系の亜人や腹部を貫かれたカブトムシ、頭を叩き潰されたハチなど無数の虫の死骸が広がっていたのだ。

そしてその中心には一人のメイドがいた。

シニヨン風の紫色の髪形と、背中に蟲の足のようなものが生えた和服風のメイド服を着た少女だった。

彼女の名前はエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。戦闘能力を持つ六人のメイド、チーム『プレアデス』の一人にして精神系魔法詠唱者(マジック・キャスター)の能力を持つ蜘蛛人(アラクノイド)である。

「ドコダ人間!ドコニ行ッタァァァァッ!!」

しかしそんな彼女は今、本来の『蜘蛛のような無数の複眼と足が生えている』蟲そのものの顔をむき出しにしながらとてつもなく怒り狂っていた。

なぜ彼女がこうまで怒り狂い、暴れまわっているかを説明するためには少し時間を巻き戻す必要がある……。
------------------------
時間を巻き戻し、ここは鬱蒼と茂る深い森の中……

そこでは一人のメイドが感情というものが一切感じられない顔で、凄まじいほどに性格の悪そうな少年を見下ろしていた。

このメイドこそが、本来の顔をむき出しにする前の『幼い要素を残しつつも見目麗しい顔』をしたエントマであった。

そして彼女が今見下ろしている、性格の悪そうな少年の名前はインセクター羽蛾。かつて全国大会優勝を果たしたこともあるが、とある勝負を境に凄まじいほどに落ちぶれてしまった決闘者(デュエリスト)……もとい蟲野郎である。

「さてぇ…、もう力の差は分かったはずでしょぉ……?このウジ虫にも劣る虫けらぁ」

彼女は幼く甘ったるい口調で羽蛾にそう言った。

エントマはこの森の中をうろついている最中に羽蛾の姿を見つけ、彼に襲い掛かったのだ。

当然ながら羽蛾も黙って殺されるつもりはなかったので、支給されたデッキを使って彼女に立ち向かったのだが力の差はあまりにも歴然としていた。

彼が召喚したゴキボールや昆虫人間(ベーシック・インセクト)、吸血ノミは一瞬で叩き潰され、ある種頼みの綱ともいえる《パラサイト・キャタピラー》はなぜかその効果を発揮できず、彼女に捕食されてしまったのだ。

「わ、分かったよっ!降参だっ!だから命だけは助けてくれぇっ!!」

その結果、打つ手がないと判断した羽蛾はみっともなく命乞いをしながら降参を宣言した。

「ようやく自分が虫けら以下だと分かったのねぇ……でもぉ、アナタなんかの命を助けるつもりぃ、私にはないのよねぇ」

そして羽蛾がみっともなく命乞いをしたのを見た彼女は彼のことを嘲りながら、一種の死刑宣告をしたのだ。

「……じゃあ、"イタダキマス"」

しかしエントマが捕食のために顔を近づけた瞬間、羽蛾はとんでもないことをした。

「……なんてな!これでも食らえ!」

なんと羽蛾は隠し持っていたカードから殺虫剤を召喚して、それを彼女の顔に浴びせたのだ。

「っ!ぎゃあああァァァァァッ!!!」

その結果、油断によりそれを真正面から浴びてしまったエントマは、自身の顔を両手で押さえながら凄惨な悲鳴を上げてしまった。

「ヒョーヒョヒョヒョヒョ、じゃーなバケモノ!!今度会ったときはぶっ殺してやるからよぉ!!」

彼女が凄惨な悲鳴を上げたのを聞いた羽蛾は、そんな負けフラグとか死亡フラグ以外の何物でもない捨て台詞を吐きながら全力で逃げ出した。

「……ッ!私ノ顔ッ!私ノ顔ガッ!!イヤアァァァァッ!!!」

そしてその場には美しい顔を喪い、『彼女自身が忌み嫌っている、蟲そのものの醜い素顔』を露わにしたメイドが残されたのだった……。

------------------------


594 : 覚悟しろよ、この蟲野郎! ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/05(日) 20:41:10 VnIRFvS20
そして時間は現在に戻り……

「ブッ殺シテヤルッ!ブッ殺シテヤルゾオオォォォッ!」

彼女は丁度近くにいたモンスターたちを感情のままに殺戮しながら、自分から美しい顔を奪った羽蛾のことを必死に探し回っていた。

こうしてこの会場の中に、怒りに身を任せたまますべてを破壊しつくさんとする『バケモノ』が誕生したのだった……。


それと同時に羽蛾は思い知ることになるだろう、自分が今までにしてきたことのツケを払わされる時が近いことを……。


【エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ@オーバーロード】
[状態]:顔面喪失、先ほどの人間(インセクター羽蛾)に対する怒りと憎しみ(特大)
[装備]:―
[道具]:基本支給品一式、仮面状の蟲の死骸、ランダム支給品×1〜3(少なくとも蘇生効果を持つアイテムは無し)
[思考・状況]基本行動方針:一刻も早くナザリックに戻るため、優勝を狙う。
1:自分の顔を奪ったあの人間(インセクター羽蛾)は徹底的に苦しめてから殺害する。
2:あり得ないと思うが、もしこの場所にアインズ様や階層管理者の方々、そしてお姉さまたちがいるならば共に行動する。
3:一刻も早く自分の美しい顔を取り戻したい。
[備考]
羽蛾が発動した通常魔法『殺虫剤』の効果によって顔面を構成する蟲が死亡したため、本来の蟲そのものの顔がむき出しになっています。


【インセクター羽蛾@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク+羽蛾のデッキ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]
基本方針:遊戯たちへの雪辱を晴らすために、優勝する。
1:自分がここまで落ちぶれるきっかけとなった遊戯や城之内たちに、地獄を見せる。
2:さっきの化け物(エントマ)を殺すための手段を探す。
[備考]
参戦時期はドーマ編で闇遊戯に敗北後〜KCグランプリ編終了までのいずれかの時間軸。


『支給品紹介』
【羽蛾のデッキ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
インセクター羽蛾に支給。彼自身が使っていた、昆虫族で構築されたインセクトデッキで切り札は《究極完全態・グレート・モス》及び《インセクト女王》。
またドーマ編以降のデッキなのか、アニオリカードである《パラサイト・キャタピラー》と《毒蝶-ポイズン・バタフライ》も含まれている。

【殺虫剤@遊戯王(漫画版)】
インセクター羽蛾に支給(厳密には支給されたデッキに含まれていたカード)。原作漫画および遊戯王DMにのみ存在している魔法カードで、効果は以下の通り。
『通常魔法
 対象の虫モンスター1体を破壊する。』


『NPC紹介』
【クワガタ・アルファ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻1250/守1000
凶暴なクワガタ。
相手の首を狙うギロチンカッターに注意。

【ヘラクレス・ビートル@遊戯王OCG】
通常モンスター
星5/地属性/昆虫族/攻1500/守2000
巨大カブトムシ。
つの攻撃とかたい体の守りは強力。

【キラー・ビー@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/風属性/昆虫族/攻1200/守1000
大きなハチ。
意外に強い攻撃をする。
群で襲われると大変。


595 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/05(日) 20:42:03 VnIRFvS20
投下終了です

自分が知らないだけかもしれませんが、最近こういう『顔を傷つけられてブチ切れるキャラ』って見かけない気がします。

以上、ありがとうございました。


596 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:46:33 Gsi9FLxo0
投下します


597 : ふーみん、勇者に出会う ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:47:31 Gsi9FLxo0

「あわわわわ……これは大変なことになってきましたね……」

 茶色の髪の小柄な少女が今の状況を必死に飲み込もうとする。
 この『決闘』の場で自分はあまりにも無力な存在である。
 
 二川二水は人類の敵ヒュージと戦う存在――リリィである。

 人類の敵と戦う存在であるリリィが人の命を奪っていいものか?
 否である。そもそも自身のチャーム(武器)がない。
 
 リリィとしての知識は抜群の彼女ではあるが、リリィとしての実力は……といえば。
 
(なんで私のような補欠合格のリリィが……)

 リリィとしての実力は未熟そのもの。
 百合ヶ丘の試験には最下位でギリギリの補欠合格。
 一柳隊の一員としても周りには劣る。

 伝説である初代アールヴヘイムの一人であり『百合ヶ丘のエース』である 白井夢結。
 同じく初代アールヴヘイムの一人の『切り札(ジョーカー)』吉村・Thi・梅。
 強化リリィにしてファンタズム持ちの『血煙のリリィ』安藤鶴紗。
 『百合ヶ丘の至宝』と称されるグランギニョル社の令嬢 楓・J・ヌーベル。
 百合ヶ丘の幼稚舎からの生え抜きのリリィ、郭神琳。
 名門王家の次女で元ヘイムスクリングラトレードゴード校のリリィ、王雨嘉。
 『戦うアーセナル』ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス。
 そして、希少なレアスキルである『カリスマ』を持つ一柳隊の隊長、一柳梨璃。

 彼女たちに比べると自分なんてへっぽこリリィである。

 だが、このような状況だからか、逆に二水は冷静になった。
 出来ないことが多い彼女だからこそ取捨選択が早い。
 
 この島を脱出するために。
 ・首輪を外すのは最優先事項。
 ・この島の場所の特定し、外部への連絡。
 大体この二つである。

 あの冥王を名乗るハ・デスは―――怖い。
 と、それが彼女が感じた第一印象であった。
 明らかにヒュージよりも恐ろしい上位存在。
 
(あのハ・デスの口車に乗ってしまう人たちもいるのでしょうか……)

 このような場所に拉致されたことも。
 あの場で声を上げられなかったことも。
 魔法か、それともこの首輪の効果か。 
 どちらにしろわからないことは多い。

(うーん、この場所に留まっているべきなのでしょうか)

 いつもならレアスキル『鷹の目』を使えば、この島くらいの広さなら索敵は可能だ。
 もっとも、制限が掛っている可能性が非常に高い。
 現に先程『鷹の目』を使った瞬間に体力をごっそり持っていかれた。
 しかも、索敵範囲も心なしか狭くも感じた。

 動きたくても身体が重い。
 体力にもあまり自信がない。


598 : ふーみん、勇者に出会う ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:48:31 Gsi9FLxo0

「これは困りました……」

 支給された水を口にする。
 普通の水だ、生臭さもあまりない普通の水だ。
 だが、目がまだ眩み、すこしふらつく。
 
 その時であった。

「君、大丈夫か!」
「!?」

 二水はある男に声を掛けられた。
 その男はオレンジの長髪に白銀のボディ、金色のアーマー。
 そして、二水は男に尋ねた。

「……えーっと、それはなんのアニメのコスプレですか?」
「コスプレ……?」


 ◆ ◆ ◆


 獅子王凱は、勇者である。

 自身の危険を顧みず、正義と勇気を最後まで貫くことが出来る。
 まさに『勇者』と呼ぶに相応しい男である。

「磯野、冥王ハ・デス……俺達はゲームの駒なんかじゃないぞ……!」
 
 彼がハ・デスや磯野に対して抱いた感情は怒りであった。
 目の前で少年を殺され、決闘という名の殺し合いを強要されている。

 人の命を一体なんだと思っている。
 殺し合い、断固として拒否だ。
 勇気ある者として、そんなことはさせない。

 彼がすべきことは既にわかっていた。
 磯野とハ・デスを打ち倒しこの殺し合いを止める。

「まずはあの遊戯という少年を探すか」

 あの場で名前を呼ばれた遊戯という探す。
 目の前で友人を殺されて、精神的にもきっと不安定な状態であろう。
 まずはメンタルケアだ。彼は保護すべき対象であろう。

「よし、行くか!」

 凱は歩き……いや、走りだした。
 地上最強のサイボーグである凱。
 その脚力は新幹線と並走出来るほどであるが。

「くっ、身体が重い……!」

 これが制限というものだろうか。
 普通の乗用車程度の速度しか出なかった。(それでも十分に速い)
 凱としてはこれほどまでに歯痒いことはなかった。
 
 それでも走るのを止めない凱。
 その最中、目の前でふらつき今にも倒れそうな少女を発見したのであった。


599 : ふーみん、勇者に出会う ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:48:58 Gsi9FLxo0

「俺はGGG行動隊長、獅子王凱だ!」
「えーっとGGGとは一体なんでしょうか?」
「……なるほどな」
「?」

 凱と二水と軽い情報交換をした。
 互いに聞きなれない単語が飛び交う。
 その都度に互いに解説を入れるのでスムーズに話は進んだ。
 
「少し信じられないですね……」

 だが、二水としては考えられない事柄ばかりであった。
 しかし、今のこの状況で凱が適当なことを言っているとは思えなかった。

「そうか! リリィとは勇気ある者たちのことなんだな!」

 一方の凱は素直に二水の話を信じた。
 一生懸命に話す彼女の目は嘘偽りのないものだと信じているからだ。

「はい! ……でも、私はリリィとしてはその……」
「いや、そんなことはないさ! 二水ちゃん!
 人を守るために勇気を持って戦うことが出来る者は誰だって強いさ!」

 あまりにも真っすぐである凱の言葉に二水は少しの安心感を覚えた。
 凱が信用出来る人であることはほぼ間違いないだろう。

「でも、今の私はチャームも持ってなければ、レアスキルも上手く使えないですし……
 あるのは仮面ライダーゾルダのデッキと……牛丼くらいですね」
「牛丼だって……?」
「食べますか?」
「……いや、遠慮しておこう」
「沢山ありますけど?」
「なら、お言葉に甘えて一杯だけ貰おうか!」 
 
 凱も二水も牛丼は好物だ。
 だが、二水にとってチーズが掛ってないことには少々不満だった。

 今は少しの腹ごしらえが必要だった。


600 : ふーみん、勇者に出会う ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:49:18 Gsi9FLxo0
【二川二水@アサルトリリィ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1(確認済み)、牛丼@現実(残り8食分)
[思考]
基本方針:殺し合いから脱出。
1:首輪の解除法を探す。
2:ゾルダのデッキを使ってみたいが……(ごちゃごちゃした戦いは好きじゃないんで♪)
[備考]
※参戦時期はアニメ最終回以降
※レアスキル『鷹の目』に大幅な制限が掛っています。


【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考]
基本方針:磯野、ハ・デスを打ち倒しこの殺し合いを止める。
1:遊戯という少年や二水ちゃん、戦う力がない者を守り抜く。
2:仲間を集める。
[備考]
※参戦時期は第47話『機界昇華終結』でZマスターを倒した後。
※身体能力に制限が掛っています。
※ギャレオンを会場に呼び出すことは現状では不可。


『支給品紹介』
ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
黒を白に変えるスーパー弁護士、北岡秀一が持つデッキ。
契約モンスターはバッファロー型のミラーモンスター、マグナギガ。

牛丼@現実
薄く切った牛肉とタマネギなどを醤油などで甘辛く煮込み、丼に盛った飯の上に載せた日本料理。
日本の大衆向け料理で親子丼と並ぶメジャーな料理であるが、食肉文化は明治からなので歴史はだいぶ浅い。
どこでも手軽に食べられるようになったのは80年代以降の話であり、それ以前は都会でしか食べられない一種の憧れとして見られていた。
家庭料理として作る場合は恐らく最も作りやすい料理の一種かもしれない。


601 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/06(月) 02:49:41 Gsi9FLxo0
投下終了です。


602 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:33:08 xEd3h0l20
投下させていただきます。
コンペロワや辺獄ロワ等に投下した作品に加筆を行った作品です。


603 : Re:CREATORS外史 颯太、恋姫に出会うのこと ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:34:01 xEd3h0l20
「そんな………どうして、あんな……うっ!うげっ!!」

眼鏡をかけたブレザーの学生服姿の少年……水篠颯太は、つい先程起こった冥界の魔王を名乗る者による『決闘(デュエル)という名の殺し合いの開催宣言』と、
見せしめとして無惨に殺された自身と同年代の少年の姿を思いだし、
胃袋の内容物を何度も地面に吐き下していた。

突然『物語のキャラクター』が現実に出てくるという異常事態に巻き込まれてしばらく経つが、
本来の颯太は投稿サイトにイラストの投稿を行っている事を除けば、
どこにでもいる平凡なオタク少年……
こんな何年か前に、
藤原竜也主演で映画化された高見広春の小説みたいなイベントに強制参加されて平常心を保てる程、
図太い精神は持ってはいないのである。

「ハァ……ハァ……」

胃の内容物を粗方吐き終え、颯太は荒い息を漏らしながら口を拭う。
とりあえずは、他の参加者に会う前にどこかに隠れなければ……。
とりあえずの方針を決めると、颯太は自身に支給されたデイパックに手を伸ばし………
その動きを止めた。
いや、『止められた』というべきか。

突如、颯太の背後の首筋に冷たく硬い物が押し当てられ、
颯太の体は凍りついたかのように固まってしまった

「……動くな。動かなければ悪いようにはしない」

背後から若い女性の声が聞こえ、颯太は冷や汗を流しながら大きく唾を飲み込んだ。

「お前はこの殺し合いに……」
「の、乗ってないです……」

背後からの問いかけに、颯太は少々早口になりながら即答する。
しばしの沈黙の後……颯太の首筋から冷たい感触が消えた。

「……ハァ〜」

背後の人物が納得したらしく、颯太は安堵のため息を漏らした。

「驚かして申し訳ない。私も、無闇に人の命を奪うような真似をするつもりはない」
「い、いえ……こんな状況ですし……」

仕方ない、と続けようとして背後に振り返り……颯太は目を丸くした。

そこには緑を基調としたチャイナドレスのような服を着用し、長く美しい黒髪をサイドポニーテールでまとめた美少女が、包丁を手にして立っていた。

持っている武器こそ違うが……颯太はその美少女を知っていた。


604 : Re:CREATORS外史 颯太、恋姫に出会うのこと ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:34:36 xEd3h0l20

「か、関羽雲長……愛紗?」

そう……今颯太の目の前にいるのは、
『三国志』をモチーフとしたアダルトゲームを原作とするメディアミックス作品『恋姫†無双』シリーズに登場するヒロインの一人、『関羽』こと『愛紗』だったのだ。

「!」

颯太の呟きを耳にすると、愛紗は目の色を変えて颯太に飛びかかり、颯太の体を地面に押さえつけた。

「うわあぁぁ!?」

情けない事に、
颯太はろくに抵抗らしい抵抗もできずに大して歳の変わらない少女に地面に押さえつけられてしまい、
その喉元に鈍く光る包丁を突きつけられたのだった。

「貴様……何故、私の『真名』を知っている!?」

愛紗は今にも颯太の喉に包丁を突き刺さんとするかのような剣幕で、怒りを露にしていた。

ここで少し解説すると、
『真名』とは、『恋姫†無双』シリーズの大半のキャラクターに設定されている『モデルとなった三国志の人物のものとは違う、もう一つの名前』で、今颯太の目の前にいる蜀の武将『関羽雲長』がモデルの少女の『愛紗』という呼び名もその一つである。
この『真名』は『本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前』であり、
これを本人の承諾無しに呼ぶ事は、問答無用で切り殺されても文句が言えない程失礼な行為なのである。

「あ、あの……あ、愛……」
「貴様に真名を許した覚えはない!」
「は、はい!ごめんなさい関羽さん!!」

とても自分と大して歳の変わらない少女とは思えない剣幕を見せる愛紗に、颯太は反論する事もできなかった。

「貴様、何故私の名を……真名までも知っている!?貴様はあのハ・デスという男の仲間なのか!?」
「いや……その……えっと」
「貴様は何者だ!?」
「は、はい!み、水篠、水篠颯太!です……」

颯太は内心、『セレジアさんと最初に会った時みたいだなぁ……』などと現実逃避的な感想を抱きながらも、何とかこの場を切り抜けようとしていた。

「か、関羽さん!僕はあのハ・デスって人とは、全然関係無いんです!僕も貴女と同じで、無理矢理ここに連れて来られて……」
「……………」

颯太は必死に弁解するが、愛紗は颯太の喉元から包丁を離そうとはせず、颯太に疑いの眼差しを向けていた。

「あ、あの!原作のゲームはやった事無いけど、ノベライズとコミカライズは読みましたし、アニメ版は全部見ました!『桃園の誓い』のシーンは凄くて……」
「『原作』?『アニメ』?何を言って……」

途中から弁解ではなく、『恋姫†無双』シリーズの感想を述べ始める颯太に、愛紗は首を傾げるが……

「!」

颯太の口にしたある言葉に気づいて目を丸くした。

「『桃園の誓い』だと!?姉上と義姉妹の誓いをたてた時の事か!?」

『桃園(とうえん)の誓い』とは、
三国志演義の序盤において、後に『蜀』を建国する事になる劉備、関羽、張飛の三人が
義兄弟の契りを結ぶシーンの事であり、
三国志をモチーフとする恋姫†無双シリーズにおいては、
アニメ版第二期のオープニングテーマのタイトルのモチーフとなっているのだ。

「どういう事だ!?あの時、あそこにはお主のような者の姿はいなかった!どうしてお主が知っているのだ!?」
「そ、それはその……」

颯太は恐る恐る語り始めた。

何故自分が愛紗の真名や義姉妹との誓いを知っているのかを、
そして『恋姫†無双』という物語についてを……。
ちなみに、念のため原作ゲームの主人公である『北郷一刀』を知っているか聞き、
愛紗が『知らない』と答えたので、アニメ版を中心に話している。


605 : Re:CREATORS外史 颯太、恋姫に出会うのこと ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:35:07 xEd3h0l20

☆☆☆

「……と、いう訳なんです」
「………」

颯太が話終えると、愛紗は豊満な胸の前で腕組みをしながら神妙な表情を浮かべる。

ちなみに現在、颯太は拘束を解かれて、愛紗と向かい合う形で共に地面に正座していた。

「つまり……私はお主の世界で造られた『物語の登場人物』だと、そういうのだな?」
「は、はい……いきなり、信じられないかもしれませんけど……」
「当たり前だ!!」

愛紗は地面に拳を叩きつけながら激昂し、颯太はビクリッ!と震え上がった。

「私のいた場所が、私の仲間や義姉妹が、私自身やその人生が……『娯楽』の為に造られた『絵空事』だと!?そんな世迷い言、信じられる訳ないだろう!!」
「いや、あの、僕に言われても!?」

いかに大して歳の変わらない少女とはいえ、相手は百戦錬磨の武将。
ただのオタク高校生に過ぎない颯太は、その剣幕に涙目を浮かべながら震え上がるしかなかった。

「……あぁ、いや……すまん」

激昂した後、愛紗は頭を抱えながらため息を漏らした。

「……正直信じられないのは本当だが、嘘をつくならばもう少し本当らしい嘘をつくだろうし、私や義姉妹達についてあそこまで詳しいとなると……信じざるえないようだな」
「そ、そうですか……ハァ〜」

愛紗がとりあえずではあるが納得してくれたので、颯太は再び安堵のため息を漏らした。

「……それで、お主………颯太だったか。一つ聞きたい事があるのだが……」
「あ、はい。何でしょうか?」
「もしやとは思うが……あの『ハ・デス』という者も、『物語の登場人物』なのか?」
「!」

愛紗からの問いかけに、颯太は一瞬目を見開き……

「……はい。多分間違い無いと思います」

……顔を伏せながらではあるが、愛紗の問いかけを肯定した。

颯太の知る限り……『冥界の魔王ハ・デス』とは、
大人気トレーディングカードゲームの一つ『遊戯王OCG』に登場するモンスターカードの一枚だ。

ハ・デスだけではない。
最初の場所で説明を行っていた磯野なる人物、
そして見せしめに殺された『本田』という少年を、
そしてその本田の友人『遊戯』を、
そして『決闘(デュエル)』『決闘者』という言葉を……颯太は知っていた。

『遊戯王OCG』の原作である漫画『遊☆戯☆王』の登場人物、
そして……『遊☆戯☆王』にまつわる関連用語の一つとして。

「そうか……お主の話を聞いて、もしやとは思ったが……」

颯太の返答を聞き、愛紗は自身の顎に手を当てる。

「……多分、あのハ・デスの言ってた『無数の世界』っていうのは……『物語の世界』の事だと思います。……ハ・デス自身も、自分が『物語の登場人物』……『被造物』だって、理解している感じでしたし……」

愛紗に語りながら、颯太は次第に顔を伏せつつ声を小さくしていく。

異なる『物語世界』からその登場人物達を『被造物』として現実に出現させられる存在を……颯太は知っていた。

『軍服の姫君』ことアルタイル。

まさに、颯太が関わってしまった事件の中心にいる……今は亡き『友人』の遺作。

アルタイルの能力ならば、様々な『物語世界』から被造物を集めて殺し合いをさせるくらい、
雑作もない事だろう。


606 : Re:CREATORS外史 颯太、恋姫に出会うのこと ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:35:40 xEd3h0l20
「それで颯太、お主はこれからどうするのだ?」
「えっ?そ、そうですね……えっと……」

愛紗に今後の方針を問われ、颯太は黙りこんでしまった。

先ほどから何度も書いているが、颯太は平々凡々としたオタク少年。
友人であるセレジアやメテオラ等『被造物』と違い、戦う力など持っていない。

しかも状況から見て、この『決闘』という名の殺し合いには、アルタイルが一枚噛んでいる可能性と高い……
ますます颯太にはどうにも出来そうには思えなかった。

「えっと……その……」

颯太の頭の中は堂々巡りの考えばかりが過り、半ば思考停止状態に陥ってしまっていた。

「……ハァ、仕方ない」

黙りこんだままの颯太の姿に愛紗はため息を漏らすと、颯太の手を掴んで立ち上がった。

「か、関羽さん!?何を!?」
「……いつまでもこうしている訳にもいかんだろう。とりあえず場所を変えるぞ」

颯太は愛紗に引っ張られるまま、歩いていった



はたして、この殺し合いにおける彼らの『物語』はどのような結末を迎えるのか……
それはまだ誰にも分からないのだ。


【水篠颯太@Re:CREATORS】
[状態]:若干情緒不安定、
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:殺されたくはない
1:・・・(思考停止状態)
2:他にも被造物が?
[備考]
アニメ第12話辺りからの参戦。
版権キャラやその出典作品に関する知識を持っています。
どの程度の知識があるかは、後の書き手さんに任せますが、参戦時期的に『2016年11月』以降に発表された作品の知識はありません。
この殺し合いに『軍服の姫君』ことアルタイル@Re:CREATORSが関わっているのでは?と考えています。

【関羽(愛紗)@恋姫†無双(アニメ)】
[状態]:健康、動揺(中)
[装備]:包丁@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:殺し合いはしない
1:颯太と行動する
2:まさか自分が『物語の登場人物』だったとは・・・
[備考]
アニメ版第三期『真・恋姫†無双 〜乙女大乱〜』最終話後からの参戦です。
颯太の話を聞き、自分が『物語の登場人物』である事を知りました。


【包丁@現実】
どこの家庭にも一本はある、ごく普通のステンレス製包丁。


607 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/06(月) 20:36:07 xEd3h0l20
投下終了します


608 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/07(火) 20:48:14 M/OjWxv60
投下します


609 : 合理性の獣 ◆NIKUcB1AGw :2022/06/07(火) 20:49:40 M/OjWxv60
森の中を、白い防寒着に身を包んだ屈強な男が歩いている。
男の名は、デルウハ。
「イペリット」と呼ばれる謎の怪物が生み出す毒ガスにより、人類が絶滅寸前に追い込まれた世界で戦い続ける軍人である。
彼は今、とある方向に向かって進んでいた。
その方向とは、血のにおいがする方向だ。
やがて彼の視界に、においの発生源が入ってくる。
それは地に伏した和服姿の男と、首を切り裂かれた狼だった。

(相打ちか……)

念のため警戒しつつ、デルウハは狼に近づく。

(支給品もないし、首輪もつけられてない……。
 野生動物か)

最低限の確認を終え、デルウハは次に男に歩み寄ろうとする。
だがその時、デルウハにとって予想外のことが起こった。
てっきり死んでいるとばかり思っていた男の体が、わずかに動いたのである。

「死ね……ない……。俺は……まだ……死ぬわけには……」

そう呟きながら、男は必死に体を起こそうとする。
しかし……。

「いや、おまえはもう助からん」

デルウハは容赦なく、彼の頭部に斧を振り下ろした。

(瀕死の人間を保護したところで、足手まといにしかならん。
 仮に治療手段があったとしても、野生動物と相打ちになる程度のやつなどどれほど役に立つか……。
 それならとっとと死んでもらって、支給品を俺が使う方が合理的だ)

斧に付着した血を拭いながら、デルウハは心中で呟く。
彼がもっとも優先するのは、おのれの命。それは、このバトルロワイアルの場でも変わらない。
どんな願いでも叶えるという言葉は、たしかに魅力的だ。
本当にそんなことが可能なら、「全てのイペリットを消滅させてくれ」と願うだろう。
それがダメなら、「イペリットの存在しない世界で暮らせるようにしてくれ」と願ってもいい。
だが見ず知らずの怪物が言ったことを鵜呑みにするほど、デルウハは楽観的になれなかった。
ゆえに目指すのは、この決闘からの脱出。
優勝を狙うのは、それができそうもないという結論に至った場合だ。

(できれば、真面目に殺し合う事態は避けたいんだがな……。
 俺より強いやつなんざいくらでもいるだろうし、首謀者が化物である以上、参加者にも化物が混ざってる可能性はある。
 生き残れる確率はまだ不明瞭だが、高いとはとても思えねえ)

考えを巡らしながら、デルウハは男の支給品を回収していく。
まずは、男が戦闘に使用したと思われる刀だ。

(ほう、なかなかいい刀みたいだな。
 素人目にもわかるぜ。
 だが、俺は剣術の心得はないからな……。
 あくまで、スペアの武器として持っておこう)

斧と同じように血を拭うと、デルウハは刀をデイパックに放り込む。
その後、彼は男のデイパックの中身をあさり、その中身も全て自分のデイパックに移した。

(さて、こんなもんか……。出だしは上々だな。
 ここからは……首輪を外せそうな技術者を探すか。
 後は、純粋に戦闘力の高い奴も味方にしたいな。
 脱出を目指すにせよ、それまでは身を守らなくちゃいけないんだからな)

これからの方針を組み立てながら、デルウハは軽い足取りでその場を去る。
後には、二つの死体だけが残されていた。

【清里明良@るろうに剣心 死亡】


610 : 合理性の獣 ◆NIKUcB1AGw :2022/06/07(火) 20:50:45 M/OjWxv60

【デルウハ@Thisコミュニケーション】
[状態]健康
[装備]鉄の斧@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]基本支給品×2、和道一文字@ONE PIECE、ランダム支給品0〜4
[思考・状況]基本方針:生き残る。まずは脱出を目指すが、無理そうなら優勝を狙うことも考える
1:仲間を集める。技術者、戦闘力の高い人物を優先


【鉄の斧@ドラゴンクエストシリーズ】
特殊能力のない、平凡な斧。
だいたい武器としてのランクは鋼の剣と同程度だが、あちらと比べると今ひとつ影が薄い。
本編よりも「トルネコの大冒険」や「ビルダーズ」での印象のほうが強い人もいるかもしれない。

【和道一文字@ONE PIECE】
ロロノア・ゾロが親友、くいなの形見として譲り受けた刀。
大業物21工に数えられる名刀である。
なぜそんな名刀を小さな村の少女が持っていたかは長年謎だったが、ワノ国編でついに真相が明らかとなる。


『NPC紹介』
【シルバー・フォング@遊☆戯☆王】
攻撃力 1200/守備力 900
白銀に輝くオオカミ。
見た目は美しいが、性格は凶暴。
原作では初期の遊戯が使用。
梶木戦で、「魔性の月」を使う真の目的を隠すためのカモフラージュとして利用されたことが有名。


611 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/07(火) 20:51:38 M/OjWxv60
投下終了です


612 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:06:22 IicFs/SE0
投下します。
辺獄ロワのコンペに投下した話を一部流用しています。


613 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:07:26 IicFs/SE0
「……一体、何がどうなっている?」

男が一人、そう呟いた。
彼は、大いに困惑しているようであった。


彼の名は速水公平。
天ノ川学園高校という学校の校長をしていた男だ。
ただし、彼は普通の校長先生などではなかった。

「私は、ダークネビュラに飲み込まれたはずだ。なのに何故こうして生きている?」

速水公平は、本来死んでいるはずの人物であった。

彼は、天ノ川高校の生徒にゾディアーツという怪人になるスイッチをばら撒いていたホロスコープスの一員だった。
彼自身も、ゾディアーツであった。
彼らの目的は、12人のホロスコープススイッチを揃え、宇宙にいるプレゼンターにコンタクトすることだった。
そして、彼らを止めるべく立ち上がった仮面ライダーフォーゼを始めとする仮面ライダー部の面々と敵対していた。

彼に残る最後の記憶、それは自分の最期の時のことだ。
フォーゼ達との戦いの果て、ホロスコープスのゾディアーツスイッチは遂に12個揃った。
そして、学園の理事長でありホロスコープス達のボス、我望光明理事長は12のスイッチの力でダークネビュラをワープゲートとしてプレゼンターの下へと向かおうとした。
それにより隙だらけになっているところをフォーゼは攻撃しようとした。
速水はフォーゼの攻撃から我望を庇い、そのままダークネビュラにも放り込まれ、その中で死亡した。

だが、彼は今こうしてこの冥界の魔王を名乗る者が開いた殺し合い…という名の決闘(デュエル)の舞台に降り立っていた。
最後の一人まで生き残った者しか勝者になれない、ほぼほぼルール無用の殺し合いの形式なのに決闘と呼ぶ点についてはいささか奇妙に感じてしまうが。

「まさかここは死後の世界で、奴は本物のハデス神ということか?」

先ほど行われた主催陣営による開催宣言を思い出しながら考える。
あの時磯野という男によるルール説明が終わった後、禍々しい容姿をした魔王ハ・デスは現れた。
その名前から連想できるのは、ギリシャ神話に伝えられる冥府の神ハデスだ。
ここはやはり冥府…死後の世界で、デュエルとやらに参加させられているのは自分を含め全員死者なのではという発想が出てくる。

「……いや、奴は自分は一枚のカードから生まれたと言っていた。あれはどういう意味だ?」

本当にハデス神なら、自分のことを魔王ではなく神だと称してもおかしくない。
さらに言えば、奴はハデスではなくハ・デスと名前に間をおいている。
この世には無数の世界があるという発言もあり、そもそも神話のハデスとは全く別の存在であるのかもしれない。


(…とりあえず、これを確認するべきか)

自分の近くにあったデイパックに手を伸ばす。
ここが本当に死後の世界なのか、違うのか、自分はまだ死んだままなのか、それとも蘇生されているのか、そこまではまだ分からない。
殺し合いに乗るか否かのスタンスもまだ未定だ。
どちらかと言えば生存優先で慎重に行きたいとは思っている。
何にせよ、最後の一人しか生き残れない舞台である以上、何らかの戦うための手段はあるか確かめておきたかった。
デイパックの中を開き、自分に支給された物品を取り出す。

そして最初に出てきたものは、彼もよく知るアイテムであった。

「これは私の…リブラのスイッチか」

全体的に赤く禍々しい外観をしたその物体こそ、彼が十二星座の使徒として目覚めた際に得たゾディアーツスイッチであった。
スイッチの見た目自体は全ホロスコープスで共通しているが、速水にはこれが自分のリブラ・ゾディアーツのものであると感じられ、何より同封の説明書にもそう書いてあった。
現在彼がいる場は殺し合いの舞台、しかもわざわざ決闘であると言われている。
ある程度は戦力を平等に、そして戦うことになる者達が一人一人自分らしい実力を発揮できるようにするのが筋だろう。
だから自分の下にはこのスイッチが与えられたのだろうかと、速水は考える。


614 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:08:07 IicFs/SE0


「………ちょっと待て、何故このスイッチがここにある!?」

同時に、スイッチがこの場にあることによって生じる問題点にも気づいた。

前述したように、ホロスコープスの目的は我望光明を12個のホロスコープススイッチでプレゼンターのいる宇宙に向かわせることだった。
そうすると、何が起きるのかを分かっていながら、速水は我望に協力した。
自分を真に理解してくれているのは彼であると信じながら。

「まずい…非常にまずい!」

その彼の目的に絶対に必要なものであるホロスコープススイッチの一つが今、速水の手の中にあった。
覚えている限りでは、このスイッチは確かに我望光明がダークネビュラを介したワープゲートを開くのに使われていたはずだった。
自分がフォーゼの攻撃から庇った後、何が起きたのかを速水は知らない。
けれども、レオこと立神吼もあの場にいた以上、あの後そう簡単にフォーゼ達が我望に攻撃できたとは思えない。

しかし、このスイッチがこの場にあるという事実は、自分が死んだ後に我望はワープに失敗したという答えを導き出す。
何が起きたのかは速水には想像つかない。
そもそも、あれから今までどれほどの時間が経っているのかも分からない。
あの場にいた者達が今どうしているのかも知らない。

何にせよ、我望の望みは果たされず、自分の死も無駄になってしまったことがここで示された。
しかも、このスイッチがここにある以上、例え我望がまだ生きていたとしても彼の目的が達成できないことになってしまっている。


「いや…まだだ!このスイッチを届けることができれば…」

速水にとって今の状況は良くないが、まだ最低最悪には至っていない。
死んだはずの彼は今こうして意思を持って動くことができている。
この決闘と呼ばれている殺し合いの舞台を生き延び、元の場所にスイッチを持ち帰り、我望に渡すこともまだできるかもしれない。

速水がそこまで思考したその時だった。

背後から、大きな殺意を感じ取った。

◆◆


『ジャリ』

「誰だ!?」

殺気を感じたと同時に砂を踏むような音もまた背後から聞こえた。

それに気づき、速水は咄嗟に振り向きながら手に持った自分のゾディアーツスイッチを押した。
彼の身体が黒いもやのようなものに包まれる。
そして、天秤座の形をとる星の輝きと共に、彼の身体を変化させる。
それが消えるとともに、黒い体色をした怪人が姿を現す。
天秤の受け皿を重ねたような形状をした頭部とカミキリムシのような触角を持った単眼の怪人だ。
これこそが、速水公平が変じたリブラ・ゾディアーツだ。

リブラは変身と同時に手の中に出現した杖「ディケ」を両手で持ち横に構えた。

ディケは、リブラに向かって振り下ろされた大剣を受け止めた。
彼の背後には、新たに攻撃者が現れていたのだ。


(何だこいつは…ゾディアーツか?だがこんなゾディアーツ、私は見たことない。それに、星座のコアもない。こいつはゾディアーツではないのか?)

後ろから攻撃してきた者は、リブラとはまた別の怪人であった。
まるで、鎧を着こんだかのような容姿をした怪人であった。
肩からは大きなトゲのようなものが生えている。
大剣の持ち手部分にはまるで丸ノコのようなものがついている。
頭部はどこか、スペードマークを思わせるような形状をしていた。
また、目がぎょろりと大きく開かれていた。


615 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:08:34 IicFs/SE0

速水が知らぬこの怪人の名は、アナザーブレイドという。
仮面ライダーブレイドの力を宿したアナザーライダーと呼ばれる怪人の一種だ。

「………」

速水に襲い掛かり、結果大剣を受け止められたアナザーブレイドは一歩後ろに下がる。
剣は下ろしてなく、殺気もまだ消えていない。
ぎょろりとした目でリブラを無言で見つめていた。

「貴様、何者だ」

リブラは突然の襲撃者に向かって問いかける。
だが、アナザーブレイドは何も答えない。
黙って、相手を殺せる隙を伺っているようだった。
一旦引いてはいるようだが、すぐにでも攻撃を再開しそうでもあった。


「………今は、お前のような者を相手にしている暇はない!」
「!?」

リブラは叫ぶと同時にディケを振った。
すると、彼の周囲に新たな人影が何体も新たに出現した。
まるで忍者のような姿をした黒ずくめで刀を持った集団だ。

彼らの名はダスタード、物質化したコズミックエネルギーの塊でホロスコープス等が召喚できる戦闘用の分身体だ。
ここにおいては計4体現れた。

ダスタード達は刀を構えてアナザーブレイドに襲い掛かる。
だが、全てのダスタードがそうしたわけではない。
一体だけは、まずどこからともなく煙幕を出してから他の3体に続き攻撃に移った。
ダスタードの煙幕は、リブラ・ゾディアーツの姿を包み込み、見えなくしてしまう。
対し、アナザーブレイドはダスタードを見た瞬間一度驚いたようにさらに後ずさりをしてしまう。
そして慌ててダスタード達の攻撃に対処しようとする。

動くのが少し遅れたため、アナザーブレイドは刀で斬りつけられるのを数回ほど許してしまう。
しかし、ダスタードの攻撃はあまり効いていない。
アナザーブレイドに対し最もダメージを有効に与えられるのは、元になった仮面ライダーブレイドの力だ。
リブラの出すダスタードは当然そんな力は持ってなく、彼らごときではアナザーブレイドの耐久性を突破できない。
刀が当たっても火花が散る程度でダメージとしては僅かなものに終わる。

そしてアナザーブレイドは何とか、後ろに下がりながらも、手に持った大剣をダスタード向け力任せに叩きつける。
ダスタードの耐久は低く、大剣で斬られるとあっさりと爆発し、消滅する。
一体ずつ、斬られながらも、攻撃を当ててダスタード達を撃破していった。
4体全てのダスタードを倒すのに、そう時間はかからなかった。

だがダスタードが全ていなくなった頃、彼らを召喚したリブラ・ゾディアーツはもはやこの場にいなかった。
ダスタードの出した煙幕と彼らの攻撃に紛れ、この場から逃走していた。
後には、アナザーブレイドがただ1人で取り残されていた。






616 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:08:56 IicFs/SE0

「何だったんだあいつは…」

離れた場所にまで移動した速水は思わずそう呟く。
先ほどの奴は、殺し合いの参加者だったのだろうかと考える。
だとしたら明らかにゲームに乗っている奴であった。
自分のことを殺しに来ていた。

だから、彼は逃げた。
何者かという問いかけにも無視するような相手とは交渉できないと判断した。
今はまだ、自分の身の振り方を落ち着いて考えるための時間が欲しかった。
正体やどれほどの力を持っているかも不明で自分が勝てるかどうかも分からない奴と初っ端から戦うのは御免だった。
そのため、一旦距離をとりまだ途中になってた自分の方針決めをしようとした。


(……私はここで、何としても生き延び、そしてこのスイッチを持ち帰らなくてはならない。たとえ、どんな手段を使ってでもだ)

速水としては、磯野やハ・デスの言う通りに殺し合いに乗るかどうかはまだ保留にしている。
彼にとって今重要なことは、この自分のホロスコープススイッチを無事に我望の下に届けられるかどうか、それだけだ。
だが早く終わらせたいからといってむやみやたらに殺しに回るのはリスクが高い。
参加者とされている者達が何人いるのかも、どんな奴らがいるのかも分かっていない。
だから今は一旦大人しく、慎重に動く。
もし優勝することしか脱出手段が無いのであれば仕方がないかもしれないが、その時はその時だ。

とにかく、速水としては自分の目的を果たすために生き延びることを優先する。
スイッチを送り届けることは、彼にとって責任重大だ。
我望理事長らが現在どんな状況になっているかは考えない。
だが彼らの力なら今も生きていて当然と、信じて、思い込むだけだ。
我望の駒として最適な行動をとるまでだ。

天秤座の使徒の答えは、生まれ変わっても変わらない。

【速水公平@仮面ライダーフォーゼ】
[状態]:健康
[装備]:ホロスコープススイッチ(リブラ)@仮面ライダーフォーゼ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生存・脱出優先。他に手段が無ければ優勝を目指すことも視野に入れる。
1:まずは慎重に行動する。可能ならば自分が生き延びるために利用できる者と行動する。
2:このホロスコープススイッチは必ず持ち帰る。
3:さっきの奴(アナザーブレイド)は何だったんだ。とりあえず逃げたが、私がどうにかできる相手だったのだろうか。
4:結局のところ、ここは死後の世界なのか?
[備考]
※死亡後から参戦です。






617 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:09:34 IicFs/SE0


リブラ・ゾディアーツが去った後、残されたアナザーブレイドは周囲に人がいないことを確認し、変身を解いた。
速水は気づかなかったことであるが、アナザーブレイドには『変身者』がいたのだ。

アナザーブレイドの全身が黒いもやのようなもので包まれた後、その中にいた人物の姿を現す。
そこにいたのは、少々頬のやせこけた男性だった。
変身解除直後の彼の手の中にはアナザーブレイドの変身に使われたアイテム、アナザーブレイドウォッチが握られていた。

「………チッ。私以外にもこれと似たような物が与えられていたという訳か」

男は手に持ったウォッチを見ながら不機嫌そうな顔で舌打ちする。

「…だが、こいつの力は確かめられた」

そう呟くと男は少しだけ笑みを浮かべる。
速水と違い、男は怪人に変身したのは今日が初めてだった。
先ほど襲い掛かった際、リブラ自身は仕留められなかったものの、相手が召喚した忍者達の攻撃は自分に効かず、どいつも一撃で倒すことはできた。
最初のターゲットには逃げられたが、ウォッチの力の有用性は確かめられた。

「こいつがあれば、警察も敵わない。辻と仁科を殺しに行ける…!」

ここで一旦、男の正体を明かす。

彼の名は沢木公平、ワインソムリエで、連続殺人犯だ。
動機は、ソムリエでありながら味覚障害になってしまい、そうなった原因の事故・ストレスの元になった人物達に恨みを抱いたからだ。

かつて彼はトランプになぞらえて名前から数字を連想できる人物を13から順に襲撃していった。
このようにした理由は別の人物に罪を着せるためであった。
沢木はこの方法で自分の名前の『公』の字の上部分から数字の『8』が連想できる自分を標的の一人に偽装していた。
標的達も数字を連想できる名前を持っていた。
このようにして、彼は自分の味覚障害の原因となった者達を殺そうとした。

しかし、その計画は最終的に失敗に終わった。
4人いたターゲットの内、2人の殺害には成功した。
だが、他の2人は妨害があり殺せなかった。
そして最終的に、眠りの小五郎の推理により沢木が犯してきた罪は全て暴かれてしまった。

沢木は逮捕され、事件は解決したかのように見えた。
しかし彼は今、警察による拘留から逃れ、法律の届かないこの島で開かれた殺し合いの舞台に降り立っていた。
そしてアナザーライダーという、常人よりも遥かに強い『怪人』であり、『仮面ライダー』でもある存在の力を与えられていた。

このような状況になった以上、沢木の目的は単純だ。
まずは、自分の味覚障害を優勝報酬の願いで治すこと。
そして、自分が殺し損ねた標的である辻弘樹と仁科稔、彼らを今度こそ殺害することだ。
味覚が治ったとしても、彼の中にある恨みつらみは消えない。
彼の常軌を逸した殺意はただでは止まらない。
自分がいなくなった以上、彼らは警察に保護される可能性もあるが、手に入れた力を使えばその対処も容易くなるだろう。

目的を達成するためには、自分以外の参加者を死亡させ、この殺し合いを最後まで生き残る必要がある。
初めは、変身したことで溢れる力に身をまかせ、目についた男(速水)に襲い掛かった。
だが男は自分のように何らかの方法で怪人の姿に変身し、自分の攻撃を防いだ。
そして、どこからともなく忍者を呼び出し、煙幕を張らせ、逃げていった。

(……さっきのは少し浅はかだったか…)

今回の襲撃の結果について、沢木は苛立ちはあれど反省もしている。
殺しにいったのは勢い任せなところもあったからだ。
相手の手の内もよく把握せずに行動してしまったのだ。

(けれども、奴は私の正体を知らないだろう)

先ほどの襲撃において、沢木は自分の声を一言も漏らさなかった。
そもそも、相手は自分が支給品を使って変身していたことを知らない。
中の人がいたということを分かっていない。
もしかしたら、彼自身も変身はしていたため、怪人(アナザーブレイド)も同じような存在であるという発想自体は出てくるかもしれない。

だが、この殺し合いの舞台にいる怪物は参加者だけではない。
説明書によれば、ここには何らかのモンスターも解き放たれているようだ。
もしかしたら、さっきの男は自分が変身したアナザーブレイドもそいつらと同じものだと認識してくれるかもしれない。

つまり、もしあの男と今の本来の姿で再会したとしても、襲いかかった本人だと思われないかもしれない。
これ自体は他のどんな参加者達にも言えることだ。
さっきの男(速水)も含め、自分の正体を隠しながら近づき、隙を見て殺すという手段が沢木にはまだ残されているのだ。
それこそまさに、以前自分が起こした殺人事件の時と同じように。
むしろ、あの男に関しては怪人に変身できることを一方的に知ったため悪評を振り撒けるかもしれない。


618 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:09:51 IicFs/SE0


(待っていろ…辻、仁科!お前たちは私が絶対に殺してやる!)

決意を持ったことでアナザーウォッチを握りしめる手にさらに力が入る。
たとえ人知を超えた力があろうとも、殺人事件の犯人としてやることは変わらない。
沢木公平には初めから迷いはなかった。
彼はここに来るよりも前から、自分が憎い者達を殺すために関係のない人々を簡単に巻き込み、命を奪える怪人であった。


こうして、かつてスペードスートのトランプを利用した殺人事件を起こした男の手に、それをモチーフとしたヒーローを歪めた力が渡った。

新しい強さを手に入れた彼の中には、邪悪な想いが蘇っていた。

【沢木公平@劇場版名探偵コナン 14番目の標的】
[状態]:健康
[装備]:アナザーブレイドウォッチ@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝狙い
1:殺せそうな参加者から隙を伺いながら殺す。
2:他の参加者と行動することになりそうであれば、自分が殺し合いに乗っていることは隠し通す。
3:さっきの男(速水)についてはわざわざ追うつもりはない。もし再会したとしても、基本的には他と同じ扱いとする。
4:また、男(速水)に関しては怪物に変身していたことから悪評を広めることも可能だろう。
5:私以外にもこれ(アナザーブレイドウォッチ)と似たようなものが支給されているらしい。注意しなければ。
[備考]
※逮捕後からの参戦です。


『支給品紹介』

【ホロスコープススイッチ(リブラ)@仮面ライダーフォーゼ】
使用者を十二使徒のゾディアーツであるホロスコープスへと変身させるスイッチ。
ここにあるのはリブラ・ゾディアーツへの変身用のものである。
呼び出せるダスタードの数は最大4人まで、出現時間も数分程度に制限されている。

【アナザーブレイドウォッチ@仮面ライダージオウ】
アナザーライダーの一種、アナザーブレイドに変身するための懐中時計型アイテム。
起動して体内に埋め込むことで変身する。
強いダメージを受ければ体外に排出されることもある。
仮面ライダーブレイドの力を持つ攻撃でないと破壊することは不可能。


619 : ◆5IjCIYVjCc :2022/06/07(火) 23:10:48 IicFs/SE0
投下終了です。
つけ忘れていましたが、タイトルは「rebirth」とします。


620 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:07:35 YXNDdOHk0
投下します。


621 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:09:06 YXNDdOHk0
あきらめる理由を探すんじゃなくて、あきらめない理由を探せ
三浦知良

「はぁ……はぁ……」

少女は走る。
必死に走る。
生にしがみつく為に走る。
やるべき日常へ帰るために。

「おとなしく、我の手にかかるがよいわ!」

男は飛翔しながら少女を追いかける。
男に慈悲はない。
男も帰らなければならない。
痛みのない幸福の世界の実現を見届けるために。
そのために、男は決闘という殺し合いに乗った。
故に仮に同じ教団の信徒に出会っても殺す。
だから異教徒である少女を見逃すという選択肢はない。
男はレーザーを発射する。

「ふざけんなっ……て!勝手なこと言ってんじゃねーよ!!」
(あぶなっ!?つか、アイツ……マジでヤバいやつじゃん!)

少女は持ち前のスタミナで直線のレーザーを避けると、飛翔する男に悪態をつきながら逃げている……

☆彡 ☆彡 ☆彡

時は少し遡り……

(おいおい……殺し合ってマジ?)
突然の殺し合いに困惑の色を隠せない少女ーーー

少女の名は曽志崎緑。
埼玉県蕨市の蕨青南高校の女子サッカー部に所属している。
ポジションはポジションはミッドフィールダー(ボランチ) 背番号は4。

(……こっちは、普通のサッカー女子よ?殺し合いって……)
選手権埼玉予選、予選リーグ第2戦を新生ワラビーズ初勝利で終え帰宅していたはずが、決闘と言う名の殺し合いに巻き込まれた。

「はぁ……恩田ならきっと、こんな状況になっても「サッカー」したいとか、言いだしそうだ」
(そして、すみれは呪詛ね……)

曽志崎の脳裏に浮かぶのは、同じチームメイトの恩田希に周防すみれ。
自分と同じサッカーが好きなサッカー少女たち。
おそらくハ・デスに悪態をついているだろう。

「とにかく、まずは、落ち着ける場所を……」
曽志崎は手ごろな休憩場所がないか、周囲を見渡すと。

「ほう。さっそく決闘者に出会えるとは、これも日々の信仰心の賜物か」

「ん?」
(信仰心……それにその服装……宗教の人?)

緑の目の前に現れた男。
服装から、宗教筋の人だと察したが、直ぐに驚愕することとなる。

「エルレイン様!我に力を!!!」

言葉と同時にガープの姿が変形する。
その姿は、明らかに異形じみた化け物。
それから、ガープとの鬼ごっこが始まった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


622 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:09:22 YXNDdOHk0
「どこへ隠れた!」

ガープは手当たり次第に突風とレーザーで周囲の建物を破壊する。
このままでは、見つかるのも時間の問題といったところだ。

(死ぬの……?こんなところで?)
必死に隠れることに成功したが、このままでは、おそらく見つかって殺される。
死が近づくと走馬燈が起きると言われるが本当なのか、同じ部活の仲間が次々と浮かび上がる。

(チカ先輩!?)
それは、曽志崎が中学の時、コンビを組んでいた先輩ーーー

(こんなところで、死んでたまるかッーー!!)
チカ先輩と戦いたいから、私は蕨青南高校を選択した。
意味わかんない「ここ」で死ぬわけにはいかない。

(いちかばちか!)
デイバッグから剣の鞘をアスファルトの地面に置くと。

「ーーー素に銀と鉄」
私は変てこな呪文に賭ける.

素に銀と鉄
礎に石と契約の大公
降りたつ風には壁を
四方の門は閉じ
王冠より出で
王国に至る三叉路は
循環せよ

閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(満たせ)

繰り返すつどに五度
たた満たされる
刻を破却する

ーーー告げる
汝の身は我が下に
我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い
この意 この理に
従うならば応えよ
誓いを此処に

我は常世統ての善となるもの
我は常世統ての悪を敷くもの
汝 三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来た「ここかぁ!!!!!!!」

「うわッ!?」
(げっ!?呪文言い終わらなかった!?)
破壊されるアスファルトの地面。コンクリートの破片が舞い散りる音が聞こえ、呪文は言い終わらなかった。

その時、破壊された振動からか私のデイバッグから、もう一つの支給品のラノベが飛び出てーーー

ーーパァァァァァ

「手こずらせたが、これでお終いだ」
あいつは、私が呪文を唱えていた場所までたどり着いた。

ああ、ここまでなのかーーー?
はっきりと曽志崎の両目に「死」の文字がせまーーーーー

「死ね!アディショナルレーザー!!」

光が集束すると同時に刀が……

額を貫いた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「え……!?」
私の前に現れたのは、女の子の剣士。

ーーー剣士と呼ぶには あまりにも 華奢なその身に浅葱の羽織を纏い 刀を振るう姿は
白い肌と相まって さながら雪椿のようであった。


623 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:09:41 YXNDdOHk0
                        _
              / ̄ ̄     「 ̄\   / <⌒_    ____
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.             {   乂/     / ̄>ミ::::::::::::::::::::: ノ /::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\:::::::
.            `ー‐く  __   / /\――<__ :::: _rヘ ‐ ┐         / ̄ ̄
            /{     ノ ――<__ >――<_「 { {  {ニ┘        / : : : : : : :
              \__>彡 -―-ミ   <⌒  __n -ニ\>ク  ノヽ        /: : : : : : : : : :
            |   x灼  \\  \   Υ   __|ニ- └ ⌒ \ニ\____/: : : : : : : : : : : :
            | \^ リノ   ∨\   _ -ヘ/二二{L_      ∨ニ\_ : : : : : : : : : : : : :
            人  )\       厂_ -ニニ- ヘニニニニ{: : `>―厂厂∨ニニ\ \ : : : : : : : : : :
                 \<⌒ヽ   _ -ニニ-  }::::::∨ニニ{ : : : : / : : \ |ニニニ)  \ : : : : : : : :
                  \ー _ -二-__ ノ::::::: }ニニニ{: : : : : : : : . : : | \ ̄     |: : : : : : : :
                  _ -二- :::::::::::::::::::::::::::: √ニニ.{.: : : : : : :: : ::. :. ̄| \       |__ : : :
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      _ -二-         }\:: : : :. :./ |ニニニニニニ√__!:.:.:.:.:.:\______/
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               / ̄ ̄ ̄ /       /     /   / ̄ ̄ ̄ ̄\ }
                  /     〈___/|    /  /          ∨
            /                 |     / /              ',
           /ニニ-_             |   /\             ',
          /二二ニニ-_          _ ´|_/   \     _ -ニニ二ニ-_
         /二二二二二二_    _  ´ ー--------‐  \   / 二二二二二_
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.    /二二二二二二二>''´                       \ 二二二二二二_


624 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:10:07 YXNDdOHk0

「ぐっ……何者だ女!?貴様も邪魔立てするのか!」
「……」

突如自身と罪人のあいだに立つ異国の剣士。
ガープは片手で額を押さえながらもビッと指さしする。

「我はガープ!エルレイン様に仕えるフォルトゥナ神団最後の守護者にて無法なる者どもに”正義の鉄槌”を下す戦士なり!」
「……」

「さぁ……ヒュ……我ヒュ……と一戦まじ……ヒュ……」
(な……なんだ?喋りづらくなっているだと……?)

「斬りあいの最中に喋るバカで助かりました」

(うそ……あの「一瞬」で!?いつ、抜いたの!?)
どうやら、あの浅葱の剣士は額だけでなくあいつの喉元も斬りつけていたようだ。
まるで、アニメの如く、剣士が剣を抜いた姿を私は目視することができなかった。

(すごッ!てか、連続の俊足の突きって、まるで沖田総司じゃん!!)
曽志崎はオタクの一面もあり、特に好きなのが土佐の幕末を舞台にしたアニメ「胸きゅん開国」
それゆえか、歴史上の人物は多少ながら詳しい。

(く…っ!これでは、呪文を満足に唱えられないッ!!)

「ふふ……ヒュ……キサマの顔……おぼ……ヒュ……た!!」

怨嗟渦巻く感情が剣士に向けられる。
……が。剣士はそんなのはどこ吹く風。
無関心の極みといった風。

「別に覚えなくて結構です。貴方はここで死ぬのですから」

浅葱羽織の剣士はあいつの言葉を歯牙にもかけないで止めをさそうとする。
日本刀による袈裟蹴り。
鋭い一閃。
死を感じさせるその気迫に飲まれたのか、背中の翼を大きく広げると飛翔すると同時に剣士の一撃を避けると、あいつは脱兎の如く逃げた。

「……逃げられましたか」
浅葱羽織の剣士の女の子は刀を鞘に納めると、私の方へ体を向けーーーーー

「申し遅れました。あなたが私の主ですか」

「え……そうなの?」
はっきり言って、困惑よ。
そりゃだってーーー、支給品の紙に書いてある通り文字を読んだだけーーーしかも、言い終わってないし。
そんでもって、急に刀をもったこの浅葱色の羽織を着た女の人が現れ、漫画のような戦闘が始まり、挙句に私が主(マスター)!?

私の頭は?で埋め尽くされているとその女性は私の右手を掴みあげ、まじまじと見つける。

「え?てか、何!?この紋章みたいなの!!」
よく見ると、私の右手にタトゥーのような模様が浮かび上がっていた。
え!?これ、消えるの!?高校生のサッカーでタトゥーは不味いっしょ!?

「ここに契約は果たされました」
「よろしく お願いしますね。マスター」
見つめていた女の子はふわっとし朗らかな笑顔でわたしにそう、宣言した。

「は、はい……よろしくお願いします」

こうして、私の殺し合いは始まったのであるーーーまる。


625 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:10:24 YXNDdOHk0

【曽志崎緑@さよなら私のクラマー 】
[状態]:疲労(中) 
[装備]:帝国戦記@帝都聖杯奇譚Fate/type Redline  セイバー@帝都聖杯奇譚Fate/type Redline
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品1
[思考・状況]
基本方針:元の世界へ帰る
1:浅葱羽織の子と行動を共にする(てか、マスターって何!?)
[備考]
※参戦時期は51話後
※セイバーのマスターとなり、右手に令呪が刻まれました。現在3画。
※セイバーの真名はまだ知りません。(まるで、沖田総司みたいな子だなーと思っています)
※Fateの世界の知識はまだ知りません。

【帝国戦記@帝都聖杯奇譚Fate/type Redline 】
著者不明のライトノベル。
帝都と称される第二子世界大戦中の日本を舞台とした魔術儀式の戦争物語
セイバー召喚の触媒。

【聖剣の鞘@帝都聖杯奇譚Fate/type Redline 】
かの騎士王の剣の鞘。
しかし…今回、曽志崎が使用したのはレプリカである……現実は……非常なり。
セイバー召喚の触媒その2。

【セイバー(沖田総司)@帝都聖杯奇譚Fate/type Redline 】
最優と称されるセイバーのサーヴァント。
今回、ハ・デスの魔力並びに戯れもあり、魔術師ではない参加者でも、マスターとして使えることができた。
あくまで、支給品としての扱いの為、マスター(曽志崎)の死は、自らの消滅に繋がる。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ぜ…ったいに、許さん!あの浅葱羽織の女!!」

屈辱。
ガープはフォルトナ神団最強の戦士。
数多の異教徒共からエルレイン様をこの身一つでお守りしてきた。
しかし、あの浅葱羽織の女の殺気の目に怯み、退却をとってしまったーーー

「もう聖戦の流儀なんぞどうでもよい!次は必ず殺す!!!」

支給品のパナシーアボトルを使用し、喉の状態を回復したガープは鬼の形相で異国の剣士がいる方向を睨む。
狂気の信徒は決意を定めた。

【ガープ@テイルズ オブ デスティニー2 】
[状態]:負傷(小) 額から軽い出血 喉元に2つの小さな突きの穴(治療済み) 魔力消費(小)
[装備]:無し
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝。 そしてエルレイン様の理念の実現
1:とりあえず、態勢を整える
2:必ず、あの浅葱の羽織女を自らの手で殺す
[備考]
※参戦時期は、聖地カルビオラでカイル達と戦う前

☆彡 ☆彡 ☆彡


626 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:10:40 YXNDdOHk0

「……む!キサマも決闘者か」
「……」
他の参加者を見かけたガープは先ほどの浅葱羽織の女剣士から受けた屈辱を少しでも癒そうと考え―――

「アディショナルレーザー!」
(見敵必殺!死ね!!エルレイン様の崇高な理念を理解できぬ異教徒共!!!)
参加者に一直線に向かった光線は大きな爆発が起き、参加者は吹き飛ばされる。

「おおおおお!やはり我の信仰はいまだ健在なり!」

ガープは吹き飛ばされた参加者の姿に余裕綽々。
先ほど砕かれた自信を取り戻すーーーが。

吹き飛ばされた参加者は立ち上がる。
何事もなかったかのように。

「怖い怖い……いきなり攻撃を噛まして来るなんてな」
「な……グミ?いや……スライムだと!?」

「これかぁ?リバイバルスライムが盾となったんだよ!」

男の言葉に応じて、ガープの攻撃を防いで粉々となったリバイバルスライムが復活する。
男はさらにカードをセットして発動する。

「ほぉら……宗教と拷問はセットだろぉ〜。たしか」
「ぐあああああ!!!!!お……おのれ!異教徒風情が!」

突如現れた拷問車輪が、ガープを捕らえる。
先の異国の剣士の鋭い一撃もあるためか、変身も解け、ガープは哀れ十字架に磔にされた
ガープは怨嗟の声を上げる。
先の聖戦の流儀も知らぬ異国の剣士に目の前の醜悪な異教徒にいいようにされていることに。
自分が斃れれば、エルレイン様をお守りすることができなくなる。
今も聖女の片割れとその一行により危険にさらされている可能性が高い。
つまり、痛みが無い幸福に満たされる世界の実現が失われるという事他ならない。

「ククク……オレが異教徒か。むしろオレの信ずる神の使徒ですらないキサマの方が異教徒にしか見えねぇけどなぁ」
「だまれぇぇぇぇぇ!!!!神はフォルトナ神のみだ!」

吼えるガープに男は指摘する。
そうしなければ自分の信仰心が目の前の男に粉々に砕かれてしまうと感じたからだ。

「いいぜぇ……復活した祝福の生誕祭だ!神を拝ませてやる!」

男は、ガープに絶望を与えて殺すべく、神を召喚することに決めた。
破壊こそが快楽である男は実に歪んだ嗜好をお持ちのようだ。

「ほうら……出てこい!ニュードリア!ドリラゴ!ギル・ガース!」
次々とモンスターが召喚される。
神を召喚するための生贄要員として。

「フハハハハ!3体のモンスターを生贄にオレは神を召喚する!」
「太陽神(ラー)よ!天を舞え!炎を纏いし不死鳥となりて!ラーの翼神竜!!!」

男が召喚したのは、言葉通り”神”
その神々しさはガープの表情を大きく狼狽させる。
ガープの価値観を全て否定するかの如く、その神は降臨した。

「エ……エルレイン様……」
「太陽神よ!この異教徒を焼き尽くせ!ゴッド・ブレイズ・キャノン!」

「エルレイン様ぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

太陽神の炎がガープを焼き尽くす。
骨一つ残さない神の炎。
炎々と燃え盛る裁き。

こうして、敬虐かつ狂気の信徒はこの世を去った。

【ガープ@テイルズ オブ デスティニー2 死亡確認】

☆彡 ☆彡 ☆彡

「まさか、またこうして現世に現れることができるなんてなぁ」

ガープを仕留めた男の名はマリク。
だが、マリクであってマリクではない。
正確には、マリクが生み出した闇の人格。
遊戯達に闇マリクと呼ばれた自己破壊と憎悪の象徴。

「つまり、闇は飢えているぅ……」

闇マリクは、理解した。
闇が自分を求めていることに。
そして、遊戯を闇に堕とせということを。

「いいぜぇ……オレが見せてやる。苦痛のもがきを」

闇マリクはここでも貫く。

決闘者たちを闇の生贄にすることを。


627 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:11:35 YXNDdOHk0
【闇マリク@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(神)@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜4(自身とガープ)
[思考]
基本:決闘者たちを闇の生贄にする
1:出会った参加者達を闇の生贄とする
2:遊戯には最大の苦しみを与え、闇の生贄とする
3:千年ロッドがあるのならば、取り返す
[備考]
※参戦時期はアニメバトルシティ編で遊戯に敗れ、闇に消えた後
※元の人格のマリクについては後続の書き手様に委ねます。
※千年ロッドは現在所持していません。


628 : ※できない※来ない※蘇らない ◆s5tC4j7VZY :2022/06/08(水) 19:11:48 YXNDdOHk0
投下終了します。


629 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:17:12 SaiHDVco0
投下します


630 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:18:10 SaiHDVco0
「はぁ〜、酒でも飲みてぇなぁ。あと女」

愚痴をこぼしながら歩く男の名はカレーパンマン。
アンパンマンを倒すという一仕事を終えた彼は
この後に酒でも飲みながら女達とよろしく楽しむ予定を入れていた。
そこに突然、強制的にデュエルに参加させられたせいでお楽しみはお預けだ。

「さっさと終わらせて帰るとするか」

不満はあれど主催者達へ反抗する気は全く無い。
逆らえば先ほど首を吹っ飛ばされたリーゼントの男の様に無駄に命を落とすだけだ。
強者には常に媚びへつらい、甘い汁を吸って生きてきたカレーパンマンは
ハ・デスに挑むような蛮勇は行わない。

他の参加者を始末するべく、とぼとぼと歩いていた所で早速一人の参加者と遭遇した。

「ひっ!?」

目の前にはビクビクと小動物の様に怯えた少女がいた。
彼女の名前は越谷小鞠。
身長は140㎝未満で小学生の様にしか見えないが、これでも中学二年生である。

「ぎゃああああああああ!!カレーパンのお化けぇぇえええええ!!」
「おいおい、お化けは無いだろうお化けは」

あわあわと震えて身動きが取れない小鞠をギョロっとした目つきで見下ろすカレーパンマン。
品定めするように小鞠の体をじっくり見渡し、一考した後……。

「ガキは守備範囲外だが、こんな状況だし贅沢は言えねえか」

そう呟くとカレーパンマンの両手が伸びる。
小鞠の小さな体はカレーパンマンの両手によってあっさり捕まえられた。

「ひぃいいい!!食べられるぅううう!!」
「別に俺はお前を食ったりは……いや『ソッチ』の意味でこれから食っちまうか。うへへへぇ〜」
「いやぁああああああ!!はなしてぇぇぇぇぇ!!」
「ひひひひひ!!泣き叫ぶガキを力づくでブチ犯すのも悪くねえなぁ!」


631 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:18:51 SaiHDVco0
「おい、君」

カレーパンマンの背後から声が聞こえた。

「なんだぁ?俺の楽しみを邪魔しようとする奴は?」

振り返ると白衣を着た中年の男がそこに立っていた。
表情は暗く、酷く疲れたような顔をしていた。

「はは〜ん、お前も混ざりたくて声をかけてきたのか?
 だったら俺が終わった後なら好きに使ってもいいぜぇ〜」
「離してあげるんだ。婦女暴行は重罪だよ」
「……ちっ」

お楽しみに水を差してきた白衣の男の言葉に怒りを覚えたカレーパンマンは
白衣の男の顔面を軽く殴り付けて吹っ飛ばした。

「邪魔だ。消えろや」



(どこにでもいるものだな病原菌は)

世の中には、ただ存在するだけで
他の人間の生活を脅かし、命すら奪う人間が存在する。
それは病原菌と何も変わらない。

「病巣は、執刀しなければ……」

白衣の男、堂島正の体は白マントを羽織った変身ヒーローのような姿へと変わっていく。
目の前にいる病原菌を排除するために。

「な、なんじゃこりゃあっ!!!!」
「君のようなゴミを断罪するための処刑人だよ」

堂島正、彼はヒーローとして悪を決して赦さない。
今まで数々の悪を殺害してきた。
それは今後も変わらない。

「何が断罪だぁ!ふざけんじゃねえ!カレーパーンチッ!!」
「フン!」

カレーパンマンは必殺技であるカレーパンチを放った。
堂島はそれを剣で難なく受け止めた。

「なにぃ!?俺のカレーパンチを止めただとぉ!」
「オオオッ!!」

両腕で剣を握りしめた堂島はカレーパンマンを両断せんと振り下ろす。


632 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:19:14 SaiHDVco0
「ヤベェッ!」

素早く後方にジャンプしたことで、斬撃を回避し
カレーパンマンのいた地面が砕ける結果に終わる。

(冴えないおっさんだと思ったら中々やるじゃねえか……)

堂島の想像以上の実力を目の当たりにして
まともに戦ってはタダでは済まないと悟ったカレーパンマンは……。

「いやぁ、俺が悪かったよ。つい調子に乗り過ぎちゃってさぁ。
 もう悪さはしないからさ。これからは俺と一緒にハ・デスの奴を」

ザンッ

「うぎゃあああああ!!」

言葉を遮る様に、カレーパンマンの顔を斬りつける。
堂島は悪党の改心を一切信じていなかった。

「貴様ら、病原菌が心を入れ替えるなどあり得る筈が無い」
「うぐぐ……来るな……来るなぁああああ!!」
「お前のようなゴミがなぜ生きてッ!」

あの災害で私の息子は死んだのに、なぜ病原菌共が生き延びている?
許せなかった。他者を害し続ける病原菌共の存在を。

「……ああっ!?」
「?」

カレーパンマンが何かに驚いて指を差した。
堂島もそれに釣られて視線を向けるがそこには何もない。

ぴゅばっ!

カレーパンマンの騙し討ちだった。
堂島に向かって口からカレーを吐き出した。

「なにっ!?」

堂島はカレーを回避するもマントに付着。
すると焼き爛れる音と共にマントの一部が焦げ落ちた。

「姑息な手をッ!」

堂島は怒りに震えながらカレーパンマンを睨みつけようとするも
カレーパンマンは既にどこかに逃げ出した後であった。



「いてぇ〜!、いてぇぇよぉ〜!」

堂島によって傷つけられた顔の傷を抑えながらカレーパンマンは逃げ出していた。

「ちくしょう!あの白衣野郎……次会ったら絶対ぶっ殺してやるからなぁ!」

顔の傷が疼く度に、憎しみを募らせていた。
全てはヒーロー気取りの男に復讐を果たすために。

【カレーパンマン@リアルアンパンマンMSV】
[状態]:顔に切り傷
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す。
1:白衣の男から一旦逃げる。
2:機を見て白衣の男に復讐を果たす。
[備考]
※第一話終了後からの参戦です。


633 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:20:32 SaiHDVco0


その後、小鞠を救出した堂島は互いに自己紹介や情報交換をしたのち
二人は身の上話をしながら行動を共にするようになった。

「つまり堂島さんはヒーローなんですね。すごいです!」
「ははっ、そんな大層なものじゃないよ。この力で誰かの役に立ちたいと思って行動してるだけさ」
「謙遜しないでください。中々出来ることじゃないですよ。私は尊敬します!」

最初は人ならざる姿になった堂島に警戒していた小鞠だったが
カレーパンマンの魔の手から助けられたのもあり、今ではすっかり懐いていた。

「小鞠くんも偉いよ。まだ小学生なのにとてもしっかりしている」
「小学生じゃ無いです!もう中学二年生です!」
「おっと、これは失礼をした」

堂島が軽く頭を下げると、その動作が可笑しかったのか小鞠がくすりと笑う。
それに釣られて堂島もふふっと笑みがこぼれた。

笑い合う堂島と小鞠はまるで本当の親子の様に仲睦まじかった。
これが日常アニメなら平穏な世界で楽しく過ごせただろう。

「小鞠くん……」
「はい!」

ここが殺し合いの場で無ければ――

「……すまない」
「え?」

堂島の放った斬撃が小鞠の意識を一瞬にして刈り取った。
苦痛も恐怖も感じる間も無く、ほんの一瞬にして命の灯は消し去った。

【越谷小鞠@のんのんびより 死亡】

堂島は斬り捨てた小鞠の死体をただただ呆然として見下ろしていた。
殺したくて殺したのではない。
こうするしか手が無かったのだ。

『生き残れるのはただ一人、だから邪魔になったあの子を殺したんでしょう?』

堂島の背後から囁く女性がいた。
霧島槙尾、死してなお、彼女は堂島の傍で囁き続ける。

「……違う」

『誰かのためなんて嘘っぱち、自分さえ助かればそれでいい』

「違う!」

『素直に認めてしまえばいいでしょう。他者を犠牲にしてでも生き残りたいと』

「違ぁぁぁぁああうッッ!!私は……私はぁぁ!!」


634 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:21:00 SaiHDVco0
『酷いよ……堂島さん』

先ほど斬り捨てた筈の少女が目の前に立っていた。
涙を流しながら血まみれの状態で見つめてくる。

『堂島さんはヒーローだから信じてたのに……結局、嘘だったんですね』

「違う!!ただ一人しか生き残れないこの場で、君のような戦う術を持たない民間人が生き残れる筈が無いんだ!!
 現に君は、私が助けなければカレーパンの怪物に辱めを受け、殺されていたのだぞ!! 
 そうだ!!だから私は君がこれ以上苦しまない様にこの生き地獄から解放したんだ!救ってあげたんだ!
 感謝さえされど、不満を言われる筋合いなんて無いんだッッ!!!」

『なにそれ?私のためとか言ってるけど結局、自分の殺人を正当化したくて言い訳にしてるだけじゃん』

『アーハッハッハッハッハッハ!!そうよ。彼は我が身のためなら民間人の虐殺すら許容するような人間なのよ』

『そんな男がヒーロー?ばっかみたい。さっさと死んじゃえば?』

「黙れ!!私はまだ死ぬ訳にはいかないんだ!!我が身可愛さなどでは無い!!使命があるんだ!!
 巨悪を討つために!!私が真祖の遺灰物(クレメイン)を手に入れるために!!」

『出来なかったでしょう。ユーベンと戦い、力の殆どを消耗させた日ノ元にすら貴方は手も足も出なかった』

「まだチャンスはあった!!日ノ元とドミノが潰し合い、生き残った方を仕留めれば私にも可能性は残されていた。
 大罪人であるハ・デスには報いを与えさせる!!私のチャンスを奪った罪、民間人達をこの殺し合いに巻き込んだ罪。
 ハ・デスには責任として真祖の遺灰物(クレメイン)を用意させてから断罪する!!」

この世の中を良くしたい、変えたいと思うなら
その感情に訴えかけるしかない。
正義と恐怖、その2つを象徴する存在が今の世の中には必要なんだ。

その理想を叶えられるのは日ノ元のようなゴミでも
人を見下すだけのドミノのようなクズでも無い。

「私にしかなれないんだ!!だから私がなってやるんだよ!!ヒーローにッッ!!!!」


635 : 私がやらねば誰がやる ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:21:23 SaiHDVco0
真っ白な空間にブラウン管の古いTVがぽつんと置いてあった。
TVの電源が入り、映像が映し出される。
放送されているのは休日の朝に流れてそうな特撮番組であり
銀色のヒーローが悪の怪人と戦っている場面だった。

『必殺!ヴィクティブレード!!カレーパン怪人はたまらず逃げ出したぞ!』

『ヴィクティマンのおかげで怪人に捕まっていた少女は助け出された!』

『この先も数々の強敵が待ち受けているだろう。だがヴィクティマンの心は決して諦めない!』

『行け!僕らのヒーロー、ヴィクティマン!冥界の魔王ハ・デスの野望を打ち砕け!』

【堂島正@血と灰の女王】
[状態]:精神的な疲労(大)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜6
[思考・状況]基本方針:デュエルで生き残る。
1:民間人には苦しみを与えない様に死なせる。
2:ハ・デスには願いを叶えさせた上で断罪する。
[備考]
※参戦時期は116話、日ノ元士郎との戦いに敗れた後からの参戦です。


636 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/08(水) 19:21:43 SaiHDVco0
投下終了です


637 : 名無しさん :2022/06/08(水) 20:50:02 ???0
投下します


638 : 名無しさん :2022/06/08(水) 20:56:01 ???0
「あれ……?私、生きてる?」
決闘会場のどこかの夜の森の中、銀色の瞳に毛先が紅い黒髪のショートヘア、そして真紅のマントが特徴的な少女、
ルビー・ローズは自らの現状に戸惑いの声をあげていた。

彼女はこのデュエルに参加させられる前、アトラスとマントルの市民をヴァキュオに逃がすため、仲間たちと共に避難中継地にて市民の避難誘導を行っていたところ、
突如として強襲してきたシンダー・フォール及びニオポリタンと交戦し、シンダーの手によって自分を救出しようとした仲間、ブレイク・ベラドンナと共に奈落の底に落ちて行ったはずなのだ。

避難中継地に向かう前、中継地を創造した創造の杖の精、アンブロシウスはルビーにこう警告した。
『決して落ちてはならない』

あの警告は『落ちたら死ぬ』という意味だと思っていた。実際通路の下は底の見えない深い闇しかなかった。
普通に考えれば人間は一定以上の高さから転落すれば地面に激突した瞬間にその衝撃で死ぬ。ましてやルビーは直前の戦いで自分の身を守るオーラを失っている状態なのだ。
だからシンダーによってブレイクと共に奈落の底に落ちて行った時、彼女は死を覚悟した。

だが現に彼女……ルビー・ローズは生きている。いや、『生きているだけマシ』というのが彼女の置かれている正しい現状だった。
突如として放り込まれた決闘という名の殺し合い、目の前で奪われた本田という男性の命、そして自らを冥界の魔王と名乗ったハ・デスという謎の存在。

「これが……アンブロシウスの言っていた『決して落ちてはならない』という言葉の意味だったの……?」

実際ルビー自身もレリックの凄まじい性能を二度も目の当たりにしてきた。
一度目は知識のレリックによって常人では決して知りえることの出来ないオズピンとセイラムの過去を目の当たりにした時。
二度目は創造のレリックの力によってアトラスとマントルの市民を避難させるための異次元空間を創造してもらった時だ。
どちらも条件や制約はあれど通常のアイテムでは決して実現しえない超常的な力を発揮していた。

であればそのレリックの力をもってすれば人間を全く異なる異世界に飛ばすことも造作もないことであろう。
例えそれが異世界からの来訪者に殺し合いを強制するような危険な異世界であったとしても。

「ワイスはどうなったの!?ペニーは!?……ううん、今ここで考えていても何も解決しない。私がこうして殺し合いに参加させられているということはブレイクやヤンも参加しているかもしれない。まずは2人と合流しないと!」

そう、殺し合いに参加する前……避難中継地にて一緒にシンダー、ニオと戦っていたチームメイトのワイス・シュニーと友人のペニー・ポレンディーナの安否が気がかりであったが
まずは自分より前に落ちたチームメイトのブレイク・ベラドンナと同じくチームメイトであり異母姉のヤン・シャオロンと合流し、殺し合いに優勝して元の世界に帰還、ワイスとペニーの救援に向かう……とここまで考えてルビーは自分の考えの過ちに気づき、
すぐさま自らの考えを訂正する。

「あ〜〜、ダメダメ!!これじゃアイアンウッド将軍と一緒じゃん!何考えているの私!!」

ルビーはこの殺し合いに呼ばれる前、セイラムの脅威から人々を救うという名目で手段を選ばなくなっていったアイアンウッドの暴走を思い出す。

彼は元々自分の考えが絶対という一面もあったのだがセイラムの脅威を目の当たりにしてからは手段すら選ばなくなっていき、
セイラムから逃げるためマントルの人々を見捨ててレリックの力でアトラスをセイラムの手の届かない大気圏上空まで飛ばそうとする、
そのレリックを手に入れるために女神ウィンターに選ばれたペニーにウイルスを仕込んで無理やり封印を解放させようとする、
失敗したと分かればペニーが戻らなければマントルに爆弾を落として人々を虐殺すると脅すなど自分が守ろうとする人々のためにそれ以外を切り捨てようとし、
それを実現するためには非人道的な策すら躊躇せず実行する彼の暴走と自分の今の考えが全く同じであることにルビーは気づく。


639 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:00:04 ???0
仮にこの殺し合いに優勝し、ブレイクとヤンを救い出し、元の世界に帰還してワイスとペニーを助けたとしてもそのために自分以外の参加者の血で自らの手を汚したとして
それでワイスもブレイクもヤンも、そしてペニーもそれを喜ぶのであろうか?

そんなことに手を汚したが最後、自分たちが散々否定したアイアンウッドと何も変わらなくなってしまう。
それに気づいたルビーは優勝するという考えを捨て、主催者を倒し殺し合いを止めるという考えにシフトする。

「とにかくまずはブレイク、ヤンを探さないと。あの二人なら私と同じ考えで動いているはず。一刻も早く合流したいけどその前に……」

ルビーははやる気持ちを抑え、支給品を確認する。

彼女は奈落の底に落ちる直前、ニオの攻撃によって自らの愛用武器、クレセント・ローズを失っていた。
オズピンに鍛えてもらってある程度改善したとはいえ、素手での戦いが得意ではない彼女にとって武器の確保は急務とも言えることだった。

最初に発見したのは自らの愛用武器と同じ武器種の大鎌であった。

「何、これ……」

その大鎌は太くて長い木の枝に大鎌の刃を付けただけの簡素なものであった。説明書には『墓場の大鎌』と書いてあった。おそらくこれがこの武器の名前なのであろう。

「もっとしっかりとした武器が欲しかったけど……贅沢は言ってられないよね。」

勿論実戦で使えなければ話にならないため試しにふるってみると意外と丈夫に作られているらしく、木を切り倒すくらいなら難なくこなすことが出来た。

勿論クレセント・ローズと異なり変形機能や銃弾を発射する機能などは備わっていないものの、重量もそこまで重いわけではなく、
『変形機能や銃弾を発射する機能がないクレセント・ローズ』と思えばそこまで使い勝手は悪くなかった。

「ねえ、あなた人間?」
「っ!?」

だが大鎌の使い勝手を確かめるのに夢中で気配に気づかなかったのであろう。
不意に背後から声を掛けられルビーは驚いて後ろを振り返る。

そこにいたのは幼い少女であった。外見年齢は小学生くらい。
真紅の瞳に薄い黄色の髪で頭にナイトキャップのような帽子をかぶり、
服装は真紅を基調としたものを着ているが何よりルビーの目を引いたのは少女の背中に生えた奇妙な翼であった。
というより翼と言うよりは一対の枝に結晶のようなものがぶら下がっているだけのものが直に背中から生えているという事実が
彼女が人ならざるものであることを物語っている。

(……あの子、ファウナス?いや、でもさっきの発言……)

ルビーは最初、彼女をファウナスと思ったのだが実在の動物には有り得ない特徴を持ったファウナスは少なくともルビーの知りうる限りでは存在しないことと
先ほどの発言から彼女がファウナスではなく人外の存在なのではという思いを強くする。

ルビーは意を決して言葉を発する。

「……人に名前を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」
「そういうものなの?知らなかったわ。だって495年も地下に閉じ込められていたし人間は加工された食糧でしか見たことなかったんだもの。」

今の発言でルビーは確信する。やはり彼女は人間じゃない。
ルビーが元居た世界にも1000年以上の年月を生きたオズマやセイラムといった存在はいるが前者は転生を繰り返しているだけで一つの肉体で生き続けているわけでは無いし
後者は神の呪いによって死なない不死の肉体を手に入れた言わば『例外』と言える存在であって普通の人間はそこまで長い年月を生き続けることは出来ない。

「じゃあ、改めて名乗らせてもらうわ。私の名はフランドール・スカーレット、吸血鬼よ。あなたの名前は?」
「私の名前はルビー・ローズ、人間よ。」


640 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:03:45 ???0
お互いの自己紹介が終わり、暫しの沈黙が流れた後―――突如フランドールが右手を挙げたかと思うと彼女の背後から紫色の魔法陣のようなものが現れ、
そこから紫色の光弾のようなものがルビーに向けて発射される。

「!!」

ルビーは間一髪のところでその場から跳躍して自身に放たれた光弾を回避すると手に持っていた大鎌を構えて臨戦態勢をとる。

「アハハハハ、人間のくせに今の攻撃を避けるなんてやるじゃない!」
「くっ……一体どういうつもり!?」

臨戦態勢を取りつつも、ルビーは心の中で困惑していた。吸血鬼とはいえ目の前の少女はまだ幼い子供だ。
それにずっと地下にいて生きた人間とは会っていないと言っていた。
そんな子供がこんな殺し合いの場に呼ばれたからといっていきなり出会った人間を殺しにかかるのだろうか?

「どういうつもりって?決まってるじゃない!あの磯野って奴が言ってたでしょ?『最後の一人まで生き残ったらどんな願いでも叶える』って!だから私は優勝して願いを叶えてもらうのよ!」
「だからってこんなことして……そうまでして叶えたい願いって何なの!?」

ルビーの問いにフランも何か思うところがあったのか先ほどまでのテンションが嘘のように押し黙り暫し沈黙した後、
意を決したように重々しく口を開く。

「……外に出て自由になりたいのよ。」
「え?」

その口から発せられた言葉は先ほどまで高いテンションで笑っていた少女から発せられたとは思えないほど小さく、
か細い声だった。あまりにか細い声だったのでルビーも思わず聞き返す。

「だ・か・ら!!さっきも言ったでしょう!!レミリアお姉様に地下に閉じ込められているからこの殺し合いに優勝して外に自由に遊びに行けるようになりたいのよ!!」
「えっ……お姉さんに閉じ込められているってそれってどういう……」

フランドールの目から溢れんばかりの大粒の涙が流れていた。その様子からルビーは地下の幽閉生活が彼女にとってどれだけつらかったのかを察する。
しかし、「姉に閉じ込められている」とは一体……、そう思っていた矢先だった。

「!?危ない!!」
「え!?」

突如としてルビーは自らのセンブランス―――『加速』を発動してフランドールに急接近すると自らが持っていた大鎌を振りかぶり
その刃をフランドール―――ではなく彼女を背後から襲おうとしていた巨大な蟷螂の化け物の首めがけて振り抜き、その首を一太刀で跳ね飛ばす。
首から上を失った蟷螂の化け物はその場に崩れ落ち、暫く痙攣していたがやがて完全に生命活動を停止したのか一切動かなくなった。

「なんで……」

フランドールは動揺していた。
だがそれは自らの背後に忍び寄る脅威に気づかなかったからではない。

「なんで人間が妖怪である私を助けるのよぉ!!?」

フランドールの故郷である幻想郷においては妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を恐れるというのが常識とされており、
フランも姉のレミリアからその話を散々聞かされてきた。
そういった関係が常識だという知識しかなかったフランにとって、
自らを妖怪だと明かした自分を目の前の人間が無償で助けたという事実が信じられなかったのだ。

「……だってそんなの簡単だよ。」

だがその問いに対するルビーの答えは実にシンプルだった。
ルビーはフランとの目線を合わせるために屈むと銀色の瞳でフランの真紅の瞳を見つめ、こう答える。

「だってあなたが死んだらお姉さんが悲しむでしょ?」
「!?」

フランは困惑した。この人間は何を言っているのだ?今会ったばかりの人間が自分と姉の一体何を知っているのだ?と。
一瞬、目の前の人間を殺そうかと思った。今なら目の前の人間は無防備だ。だが彼女の瞳を見ているとそんな気になれなかった。
代わりにフランは目の前の少女に一つ問いを投げかける。

「……何でそう思うの?」と。


641 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:06:56 ???0
「だって……」

ルビーは一呼吸置くと問いに対しこう答えた。

「私にだってお姉ちゃんがいるもん。」
「!!」

そう、ルビー自身もチームメイトでもある異母姉のヤン・シャオロンがいるからこそ、目の前の少女の姉の気持ちが分かるような気がするのだ。

ルビーは姉であるヤンとの仲はとても良かった。だからといっていつもベッタリで不和がないかと言えばそんなことはなく、
ビーコンに入学したばかりの頃姉以外に友達はいらないという自分に対し姉は苦言を言ったこともあった。
それ以前にも素手での戦いは嫌だというのに無理やり素手での特訓に付き合わされたこともあった。
つい少し前だってアトラスとマントルの人々を助けるために意見が対立したこともあった。

でもそんなことがあってもヤンにとって妹であるルビーは一番大切な存在で最終的にはきちんと仲直りすることが出来た。

自身の姉だけでない。チームメイトのワイス・シュニーの実姉のウィンターと実弟のウィットリー、自身の故郷であるレムナントを創造した光と闇の兄弟神、
彼ら彼女らの関係は傍目で見ていただけなので1から10まで知っているわけでは無いが時に厳しく接し、
時に対立することはあっても最終的に彼ら彼女らはきちんと和解することが出来た。

だからルビーはフランの姉のレミリアにもきっと何か考えがあって妹を閉じ込めているとそう感じたのだ。
だって実の妹が嫌いな姉なんていないとルビーはそう信じているから。

「だからさ、お願い。優勝して外に出たいなんてそんなこと言わないで。そんなことのためにあなたの手を血で汚したらきっとあなたのお姉さんはとても悲しむと思う。
私も力になるから一緒に協力してこの殺し合いを止めて元の世界に帰ろう。ね?」
「……」

ルビーはフランの両肩に手を置き、フランの真紅の瞳をまっすぐ見つめる。
それに対し、フランは暫し沈黙した後、口を開いた。

「……見逃してあげるわ。」
「え?」
「だから助けてくれたお礼にあなたのことは特別に見逃してあげると言ってんの。」

そう言ってフランは踵を返したかと思うと、ルビーに背を向けて歩き出す。

「あの、それってどういう……」
「勘違いしないで。あなたは私を助けた、私はあなたを見逃した。これで貸し借りは無しよ。
もし次に会ったときにあなたが私の邪魔をするようならば……その時は今度こそ私はあなたを殺すわ。」

そう言うとフランはルビーがいる場所とは反対方向に進んでいき、夜の闇の中に消えようとする。
途中でフランがふと足を止めて振り返ったかと思うと

「じゃあね、あなたの甘い考えでこの殺し合いをどこまで生き残れるか分からないけど生きていたらまた会いましょう、ルビー・ローズ。」

そう言うとフランの姿は夜の闇の中に紛れ―――今度こそ完全に見えなくなってしまった。

「フラン……」

一瞬、彼女を追いかけようかと思った。だが彼女は『邪魔をするなら殺す』と言っていた。
無理に追いかけて彼女と殺し合いになるよりもまずはブレイク、ヤンと一刻も早く合流する方が先だと思ったからだ。それに、

(……あの子ならきっと分かってくれるよね……)

ルビーは彼女のことを信じてみたいと思ったのだ。ルビーがフランを説得している最中、その気になれば彼女はルビーを殺そうと思えばいつでも殺せた。
だがそれをしなかったということは彼女も根は悪い子じゃない、とルビーはそう感じたのだ。

(……ブレイク、ヤン。無事でいてね……)

最後にブレイクとヤンの無事を祈るとルビーは支給された荷物をまとめ、その場を後にすることにした。

【ルビー・ローズ@RWBY】
[状態]:健康
[装備]:墓場の大鎌@ELDEN RING
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:ブレイク、ヤンを探す。
2:フランドールを信じる。
[備考]
※Volume8終盤、次元の狭間に落下して以降からの参戦です。

『支給品紹介』
【墓場の大鎌@ELDEN RING】
ルビー・ローズに支給。同ゲームに登場する特定の雑魚敵を倒すと稀にドロップするレアドロップ装備品。
筋力値、技量値が必要な数値に達していなければ真価を発揮することは出来ないが、このロワではその制約は取り払われている。


642 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:10:56 ???0
静寂に包まれた夜の森の中、フランドールは歩きながら一人思案していた。

(まさか私が人間に助けられるとはね)

古来より吸血鬼は(というより幻想郷の妖怪全般は)人間を襲い喰らうというのが人間の間での共通認識とされており、
それは幻想郷においても外の世界においても変わらない、とフランは姉のレミリアから何度も聞かされてきた。

勿論フランは生きている人間を直に襲ったことはないのだが吸血鬼の伝承は彼女の世界にも恐らく存在している以上、
そういった分野に興味がない、とかでもない限り吸血鬼の恐ろしさを彼女が知らなかったとは考えにくいのだ。

それを彼女は助けた。あわよくば共倒れ、そうでなくても一方が倒れ、もう一方が消耗する絶好の機会をフイにしてまで、だ。

(そういえば彼女は姉がいるって言ってたわね。まさか彼女は私の姿を自分に重ねて……)

有り得ない、とフランは首を横に振る。フランドールが彼女―――ルビー・ローズとヤン・シャオロンの関係を知らないようにルビーがフランとレミリアの関係を知っているはずがないのだ。
ましてや自分を495年も地下に閉じ込め、外に出すことを許さない姉が彼女の言う通り自分の死を悲しむほど愛してるとはとても思えなかったのだ。

(いや、でも彼女の言うことにも一理あるかも……)

そこでフランは一つの考えに至る。そもそも本当に姉が自分を嫌っているなら太陽の下にでも放り出しているはずなのだ。なのにそれをしなかった。
それはつまり、姉には何か考えがあって自分を地下に閉じ込めているのではないか、と。

それもあり得ない、とフランはまたしても首を横に振る。太陽の問題なら日傘を差すなり太陽が出ていない夜に外出するなりいくらでも方法があるはずなのだ。

だから太陽の問題が姉が自分を外に出さない根拠としては弱い、とフランは一旦姉の問題を思考の隅に置き、これからの行動方針を定めることに思考をシフトする。


彼女の最終目的はこの殺し合いの優勝、それは今も変わらない。
あのハ・デスと名乗った怪物は様々な世界から参加者を集めてきたと言っていた。
恐らく彼女―――ルビー・ローズも自分の住んでる幻想郷とは異なる世界から連れてこられ、
この殺し合いに参加させられているのだろう。

それほどの力を持つ存在なら姉の同意関係なしに自身を紅魔館の地下から連れ出し、自由を約束することも容易いはずだ。

そんな存在に勝てるとは思えないのだがルビーは「殺し合いを止める」と言っていた。
恐らくこの会場にも彼女の他にも殺し合いを止めるために動いている参加者がいるはずだ。
そいつらは確実に徒党を組むはずでありそいつら相手に一人で戦いを挑むのは分が悪い、とフランは考えていた。
ならば狙うは殺し合いに乗っている参加者、とフランは考えた。

あの磯野という男は「最後の一人まで生き残った者を」と言っていた。
つまりデュエルキングの席は一つしか用意されていないということだ。
ということは他の参加者を殺して優勝を目指す場合、最終的に自分以外の参加者を全て蹴落とさなくてはならない。
そんな条件では殺し合いに乗っている参加者同士協力しあえるわけがない。
ならば殺し合いに乗っている参加者は単独行動をとるはずなのだ。

フランは自分の力に自信を持っていた。幻想郷において吸血鬼は最強とまではいかなくてもヒエラルキーにおいては上位に位置する実力者である。
事実並の妖怪は吸血鬼の強さに畏怖の念を抱いており、その実力で幻想郷のパワーバランスの一角を担う種族にまでなっていた。

フランがルビーに最初に会ったときにいきなり後ろから襲い掛からずに声を掛けたのも
たかが人間ごとき正面から戦っても勝てるという自信があったからなのだ。
フランドール・スカーレットという吸血鬼はそれほどまでに自信家であった。

それに殺し合いに乗って他の参加者を殺すような参加者を殺しても「殺されそうになったから仕方なく殺した」とでも言えばルビーは幾分か納得してくれるはず、
とフランはそう考えていた。

それとルビーの他に殺し合いを止めるために動いている参加者と会うことがあればその時は善良な参加者のふりをして
「ルビー・ローズという参加者があなたを探している」と言えばその参加者はルビーの力になってくれるだろうし、
ルビーも自分のことを善良な吸血鬼として伝えてくれるだろうからいずれはルビーとその仲間たちは自分にとって強力な味方になってくれるだろうと、
フランはこうも考えていた。

幸いにして自分の支給品の中には吸血鬼にとって必需品の日傘がある。
これがあれば手がふさがるなどして多少動きに制限が出てしまうだろうが
日中に活動や戦闘を行う必要が出てきても天敵の太陽の光を遮ってくれる心強い装備品であった。


643 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:12:01 ???0
この殺し合いに呼ばれた参加者のレベルがどれほどのものかは分からないが少なくとも1対1の戦いなら他の参加者に後れを取るつもりはないし
上手く立ち回れば優勝も狙えるという確固たる自信がフランにはあった。

だがもし万が一ルビーたち対主催陣営が主催の打倒に成功し、願いが叶えられることもなく自身が元の世界に帰還するようなことがあれば、

(その時はお姉様と一度腰を据えて話し合う必要があるかもね)

【フランドール・スカーレット@東方Project 】
[状態]:健康 
[装備]:日傘@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:ルビー・ローズは見逃す。
2:殺し合いに乗っている参加者は殺す。
3:対主催の参加者と出会ったらルビー・ローズのことを伝え、敵対しないように立ち回る。
4:願いが叶わなかった場合はレミリアと話し合う。
[備考]
※東方紅魔郷開始前からの参戦です。

【NPC】

【カマキラー@遊戯王OCG】
レベル4 地属性 昆虫族 攻撃力1150 守備力1400
二本のカマで相手に襲いかかる、人型のカマキリモンスター。


644 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:19:59 ???0
投下終了です。
『RWBY』のキャラをパロロワでほとんど見かけないので作りました。
これをきっかけにパロロワ界隈で『RWBY』がもっと認知されればいいなと思います。
後タイトルを付け忘れていましたが、タイトルは『RED Sisters』です。


645 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:27:34 FCdUwPz60
>>644
後々面倒になる可能性もあるので、
トリップ(名前の◆の部分)をつけることを推奨します
トリップの付け方については検索してください


646 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:39:40 o8TuJ.bg0
投下します。


647 : 蔑み、抗い、殉ずる者 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:40:21 o8TuJ.bg0

「全く、この俺も随分舐められたものだな」

如何にも不機嫌そうに上下緑色の髑髏の意匠が施された派手な衣装を着た男がつぶやいた。
彼の名前はオルテカ。
今は政府の特務機関、FENIXに壊滅させられた悪魔崇拝組織デッドマンズの残党で、
最高幹部の一人でもあった男である。

「冥界の王だかなんだかしらないが、一体私を誰だと思っている?」

彼は所謂ギフテッドという奴で、その中でも飛びぬけた才能の持ち主として生まれた。
それはもちろん、人間の範疇におさまる、、努力次第で誰もが届きうる領域であったが、
彼はその到達速度が異常であった。
1を聞いて100を知る事だって簡単だったし、
運動だって、デッドマンズの幹部怪人として戦えているのを見ても分かる通り。
彼は大抵のことはできた。
そんな彼を大人は、父親さえも異常だと疎み、化け物だと蔑み、
肉体的にも精神的にも苦痛を与えた。
だから彼は元の名を捨て、オルテカとなり、
愚かな人類に見切りをつけ、進化すべき選ばれた存在となるべく悪魔に魂を売った。

そんな連中と同格の奴らと同じ首輪を付けさせられている。

「様々な世界から集めただか何だか知らないが、
あんな有象無象と一緒くたにされて不快でないとでも?」


必ず有象無象共を始末したあかつきには、必ずハ・デスや磯野も倒すと誓い、
オルテカはデイパックに入っていた赤と黒の奇妙なドライバーを腰に装着する。
中心のモニターに、左右の筋繊維を思わすパーツの付いたそれの名はデモンズドライバー。

封印した悪魔を中核とし、使用者の命を喰らう事で力をもたらす悪魔のベルトだ。

が、付属していた説明書を読む限り、中に居た悪魔は居なくなってしまったようだ。
代わりに新たな機能が搭載され、仕様がかなり変わっているようだ。

「変身して戦えるならやりようはいくらでもあります。
さて、まずはどこに向かいましょうか……ん?」

派手な金色の光が、はるか上空で僅かな間咲いた。
そちらに目をやれば、二発、三発と、まだまだ光が弾けている。
ここらへんで一番高い建物から花火が上がっていた。

「よほど自分の強さに自信があるのか、
それともこの短い間にあの建物に相応の仕掛けを施したのか、
いいでしょう。
どちらにせよ、やる気だというなら好都合だ。」

傲慢なる悪魔が、誘蛾灯に引き寄せられるように戦場に向かった。


648 : 蔑み、抗い、殉ずる者 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:41:04 o8TuJ.bg0
【オルテカ@仮面ライダーリバイス】
[状態]:健康
[装備]:デモンズドライバー@仮面ライダーリバイス
     スパイダーバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この殺し合いを勝ち抜き、ハ・デスとその一味も倒す。
1:まずはあの花火の場所に向かう。
2:デモンズドライバーは改造されているようですが、戦えるならやりようはいくらでもある。
[備考]
※デモンズドライバーはオーバーデモンズの物と同一の仕様です。
 スパイダー以外のバイスタンプはベルトと一緒には支給されていません。



【デモンズドライバー@仮面ライダーリバイス】
仮面ライダーデモンズ、及びオーバーデモンズに変身するための変身ベルト。
最初はベルトに幽閉した悪魔に使用者の寿命を喰らわすことでフルスペックを発揮する仕様だったが、
各種能力を飛躍的に高める人体強化エンジン「O.V.E.R.」によって使用者に潜む悪魔からその力のみを抽出する仕様へと変更されている。
また、変身後に新たにバイスタンプを読み込むことで、
四肢の各部位を最強生物の固有能力を秘めた武装へと変質させるゲノミクスチェンジを行う機能を持っている。


649 : 蔑み、抗い、殉ずる者 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:41:41 o8TuJ.bg0
☆☆ ★★★
最後の花火が打ちあがる。
金色の華が十数える間も無く散花し、その残煙も風に攫われて見えなくなった。
そして火薬の匂いだけが残る屋上にて。

黒い長袖の上に、右側だけ袖の無い上着を羽織っている。
そんな奇妙な格好の花火を上げた張本人、グラファイトは眼下に広がる街を見下ろしていた。
が、すぐに顔を上げて、入口の方を振り返る。

「早速来たか」

そこに立っていたのは長い金髪を一つに束ね、鎧を着こんだ凛々しい美女であった。

「あの派手な爆発は其処許の仕業か?」

「如何にも、最初に来てくれたのがお前のような骨の有りそうな奴でうれしいぞ」

そう言ってグラファイトは右手にグリップを、
左手に紫と黒の、奇妙なパットのような武器を取り出す。

「……其処許は何故戦う?
何故あの魔王の言いなりになって殺し合おうとする?」

「俺はドラゴナイトハンターZの龍戦士グラファイト。
プレイヤーの前に立ちふさがり、敵であることを運命づけられた存在。
この首輪や、奴らのやり方は気にくわないが、俺のやる事は変わらない。
プレイヤーとの戦いこそ我が宿命!
敵キャラを全うする事こそ我が本能!
この極限状態でなお牙を失わず、力を求める戦士との戦いこそを、俺は望む!」

それを聞いた女騎士は苦虫をかみつぶしたような顔になると、

「何故だ?」

「?」

「貴様は己が運命に不満はないと言うのか!?
挑まれるままに戦い、楽しまれるために戦い、
何度でも倒されなお戦い続けることに意味があると言うのか!?
神々の娯楽用の奴隷であることを何故是とする!?」

「そうか、お前も何かのキャラクターなのか」

そう言うとグラファイトは不機嫌そうに眉を顰め、女騎士を睨みつける。

「……各々が戦いに何を願い、何を望むかは自由だ。
過去にだろうと、未来にだろうと、貴様の様にクリエイターへの復讐へでも、
好きなものに意味を見出すが良い。
が、我が戦士としての誇りを侮辱するなら……」

グラファイトは変身パット、ガシャコンバグバイザーのボタンを押し、
変身待機状態に移行。
右手に持ったグリップにビームガンの銃口が前を向くように取り付ける。

「培養!」

<Infection!>

<Let`s game! Dead game! Bad game! What`s your name!?>

<The BUGSTER!>

グラファイトの体が赤い炎のエフェクトに包まれ、人ならざる姿へと変わる。
生血を煮詰めたような赤と黒の体、顔の上半分を覆う鳥の骨の仮面のような意匠、
双刃刀型の専用武器、グレングラファイトファングを携えた彼こそは、
超絶進化に至ったグレングラファイトバグスターだ。

「容赦はせん。お前の今の発言は、俺への、
そして俺へ挑んだすべての戦士たち、そして彼らとの神聖な戦いへ泥を塗る行為だ!」

そう言って武器を向けるグレングラファイトバグスターに、
女騎士、アリステリアもゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの篭手を起動し、
愛用のスピアを召喚する。

「我が世界を救うために、まずはお前を倒させてもらう!」

屋上に花火とは別の煙が上がった。
ほぼ同時に衝撃波と突風が吹き抜ける。
運命に抗うものと、運命に殉ずるもの。
造り者の存在、紛い物の命。
けど熱く真摯な二人の刃がしのぎを削った。


650 : 蔑み、抗い、殉ずる者 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:42:23 o8TuJ.bg0
【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:ゲムデウスウイルスに感染、怪人態
[装備]:グレングラファイトファング@仮面ライダーエグゼイド
     ガシャコンバグバイザー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:敵キャラを全うする。
1:花火に反応しやって来る者たちと戦う。
2:この女騎士に神聖な戦いを侮辱したことを償わせる。
[備考]
※彼が建物の屋上から打ち上げた花火は、複数で一つの支給品扱いでした。
※グレングラファイトファングは、彼自身の能力で生成している武器の為、支給品扱いでは有りません。
※参戦時期は少なくともある程度ゲムデウスウイルスに順応してからです。

【アリステリア・フェブラリィ@Re:CREATORS】
[状態]:健康、グラファイトへの怒り
[装備]:ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの篭手@Re:CREATORS
     アリステリアのスピア@Re:CREATORS
     アリステリアの鎧@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘を勝ち残り、自分の元居た世界を救う
1:目の前の怪人(グラファイト)を倒す。
2:我が世界の救済を邪魔立てする者は、誰であろうと許さぬ!
[備考]
※ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの篭手@Re:CREATORSの能力の制限に関しては、後の書き手様にお任せします。


【ガシャコンバグバイザー@仮面ライダーエグゼイド】
幻夢コーポレーションが開発したガシャコンウェポンの一つで、主に仮面ライダーゲンムが使用する外付け装備。遠距離攻撃のビームガンモード、近接攻撃のチェーンソーモード、
そしてバグスターウイルスの散布と、バグスターの怪人態への変身を行うパットモードの三種類がある。
ガシャットに紐づけガシャコンウェポンと違い、ガシャット別に応じた必殺技は使えないが、スロットは有る為、セットしたガシャットに応じたウイルスの散布が可能。
また、バグスターバックルと組み合わせて使う事でバグルドライバーという変身ベルトで仮面ライダーへの変身にも使える。
かけられているであろう制限に関しては後の書き手様にお任せします。

【ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの篭手@Re:CREATORS】
アリステリアの武器で、神聖ウルタ―シュタイン王国の王家に伝わる武具。
彼女の使うスピア、鎧の召喚、飛行可能な騎馬、魔法弓兵隊の召喚、雷撃魔法の発動など様々な機能を発揮する。
かけられているであろう制限に関しては後の書き手様にお任せします。


651 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/08(水) 21:42:39 o8TuJ.bg0
投下終了です。


652 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:43:32 ???0
後追加ですいません。さっき投稿したものですが、
何故か名前を書き込んでも「名無しさん」になってしまうので
名前は「◆A1Sj87dFpOM」ということにしてもらえないでしょうか?


653 : 名無しさん :2022/06/08(水) 21:53:21 ???0
>>645さんすいません。
>>652>>638から>>644までを投稿したものです。
ネットのトラブルで書き込んでもエラーメッセージが出てしまい、
管理人にキャップを発行してもらって書き込んだんですが
何故か名前が強制的に「名無しさん」になってしまうのです。
管理人に原因を聞くために質問を送ったところですが
何分初めてなもので迷惑をかけたなら謝りますし
2度とこのようなことがないようにします。
もう一度書きますが名前は「◆A1Sj87dFpOM」でタイトルは「RED Sisters」です。


654 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/08(水) 23:11:18 .UEspMXo0
投下します


655 : 神の宣告 ◆7PJBZrstcc :2022/06/08(水) 23:12:07 .UEspMXo0
「雑魚(カス)が」

 一人の男が蔑むように言葉を吐き捨てる。
 金色の髪に整った肉体、そして巨大なトライデントを装備する姿はさながら彫刻で、とても人間とは思えないほど整っている。

 そう。彼は事実人間ではない。
 彼は神だ。
 それもただの神ではない。ギリシャ最高神が一柱、海の神。ポセイドンである。

 ポセイドンは苛立っていた。
 理由はこの殺し合いに対してもそうだが、もう一つある。

『我が名は冥界の魔王ハ・デス』

 それは、最初に悪魔が名乗った名前だ。
 人間がいくら死のうと意に介すポセイドンではないが、この名前は聞き逃せない。

 なぜならポセイドンの実の兄は死の国の神ハデス。
 断じて冥界の魔王など名乗ったことはない上に、あんな外見ではない。
 無数の世界などと言っていたが、そんな言葉に聞く耳を貸す彼ではない。 

 つまりこれは、何者かが兄の名を騙っている。そうポセイドンは判断した。

 もし主催者が名乗った名前が、かつて居たポセイドンの兄アダマスだったり、他の木っ端であるならこうはならなかった。
 歯牙にもかけず、ただ淡々とどうでもよさげに主催者を殺すために動くだけだ。

 しかしハデスとなればそうもいかない。
 少なくとも兄からは、ポセイドンが死ねばかたき討ちに乗り出すほど好意を持たれている程度の関係はある。
 よって弟の方もハ・デスを歯牙にもかけない、という選択肢は消えていた。

 なのでポセイドンは決断した。
 一刻も早く兄の名を騙る雑魚(カス)を殺す為、殺し合いに優勝して近づくことを。

 神は頼らぬ。神は謀らぬ。神は群れぬ。
 彼に、協力して事に当たるという選択肢が生まれることは決してない。

「スピードウォーリアーを召喚! 攻撃!!」

 ところで、この場には実はもう一人参加者が存在する。
 青い髪に白い制服の少女だが、今の彼女は恐怖に震えながら、腕に身に着けたデュエルディスクから必死にカードをドローしている。

 彼女の名前は条河麻耶。とある木組みの街に暮らす女子中学生である。
 平凡、というには少々濃い日々を過ごしているが、それでも日常の範疇を超えない世界で生きる存在だ。

 しかしマヤは今、猛烈に怯えていた。
 いきなりの殺し合い、見知らぬ年上男性の死。これだけで怯える理由は十分だ。
 それでもデイパックを調べ、デッキがセットされたデュエルディスクを装着したことは十分備えている部類である。
 事実、もう少し時間と余裕があれば、彼女はデュエルのルールもきちんと把握して、ある程度は戦うことができただろう。

 だが遭遇相手が悪かった。
 なぜなら最初に出会ったのがあのポセイドンだ。
 彼は同じ神からも恐れられる存在。むしろ、怯えながらも未だ抵抗の意思を捨てていないだけ神々からの驚愕を買うかもしれない。

 だがポセイドンには通じない。
 いくらモンスターを召喚しても、彼の槍の一振りで破壊されていく。

 これはデッキが弱いわけでは無い。
 マヤに支給されたのはスピードウォーリアーで分かるかもしれないが、不動遊星のデッキだ。弱いはずがない。
 しかし彼のデッキはシンクロモンスターが主体。
 未だルールを把握しきれておらず、エクストラデッキにすら気付けていない彼女には、このデッキの真価を発揮することはできなかった。

 だからマヤはここで死ぬ。
 次なるモンスターを召喚しようとするより先にポセイドンが動き、槍の一振りで彼女の上半身と下半身を分断する。

 彼女は悪くない。
 戦いを知らない人間にしては、十分に検討したと言える。
 それでも何が悪かったというならば、運が悪かったとしか言いようがない。


【条河麻耶@ご注文はうさぎですか? 死亡】


「……」

 何の罪もない少女を一人肉塊に変えようとも、ポセイドンの心には小波一つ起きやしない。
 彼は只、神として在るだけ。


656 : 神の宣告 ◆7PJBZrstcc :2022/06/08(水) 23:12:34 .UEspMXo0


【ポセイドン@終末のワルキューレ】
[状態]:健康、ハ・デスに対しての苛立ち
[装備]:トライデント@終末のワルキューレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:兄の名を騙る雑魚(カス(ハ・デス))を殺す。
1:一刻も早く雑魚(カス(参加者))共を殺し、殺し合いに優勝して雑魚(ハ・デス)の元へたどり着く。
[備考]
※参戦時期は本編登場前。


※両断された条河麻耶の遺体と、彼女のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜2)、不動遊星のデッキ&デュエルディスク@遊戯王5D's が会場のどこかに放置されています。


【トライデント@終末のワルキューレ】
ポセイドンに支給。
彼が神VS人類最終闘争(ラグラロク)にて佐々木小次郎と戦闘した際に使用した槍。
詳細は不明だが、おそらく特殊な効果はない。

【不動遊星のデッキ&デュエルディスク@遊戯王5D's】
条河麻耶に支給。
シンクロがメインのジャンクデッキ。エースはスターダスト・ドラゴン。
デュエルディスクは遊星の手作り。通信機能などがある。


657 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/08(水) 23:12:58 .UEspMXo0
投下終了です


658 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/09(木) 20:31:27 hycBluSE0
投下します


659 : 悪を為すシスコンたち ◆FiqP7BWrKA :2022/06/09(木) 20:32:14 hycBluSE0
★★★★ ☆☆☆☆☆

「見つけた」

黒いドレスをなびかせながら、人間離れした脚力で屋根から屋根へ飛び移りながら移動していた金髪の少女がつぶやいた。
黒いバイザー越しの視線の先には一人の男が居た。
白髪交じりの頭に、火傷でも負ったのか、あちこち焼けた色になった肌……歳はどんなに老いていても20歳ぐらいだろうが、見るからに弱弱しい病人のような男だった。
手には一応日本刀のような武器を握っているが、とてもそれを振るえるようには見えない。

(この剣のテストにもならないかな?)

だがなんにせよ全員殺さなければならないのだ。
そう切り替えて彼女、犬吠埼風の手には黒一色に血のような赤の線の入った西洋剣が握られている。
少女はそれを大上段に構えると、屋根が崩れるほどの勢いで飛び出すと、弱弱しい男にめがけて振り下ろした。

「同調開始(トレース・オン)」

男が手にした武器、シンケンマルの白い鍔を回転させる。
一瞬の白い光に包まれたそれは、何と瓜二つのもう一本のシンケンマルが現れ、二刀がかりで風が振り下ろした剣を逸らしてみせた。

(こいつ!説明が本当ならこの力はアーサー王の力なのよ?!
それを特別な武器でとは言え生身で逸らすなんて……)

(こいつが新しいセイバーの使い手か。
黒くなってるが、あれは間違いなく約束された勝利の剣(エクスカリバー)。
一筋縄じゃ行かないな)

剣を構え直した男は、バイザー越しにこちらを睨んでいるであろう彼女に小さく問うた。

「なあ、お前はなんで戦うんだ?
こんな俺にもその剣を容赦なく振り下ろすあたり、
よっぽど叶えたい願いがあるみたいだけど」

「……アタシが、私が妹やみんなの未来を奪ったから!
アタシが絶対に、取り戻さないといけない!」

そう言って大きく腰を下ろす風。
そんな彼女に士郎は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに

「は、ははは。はっはっはっはっは!」

耐えきれないというように笑いだした。

「!? 何がおかしいの!?」

「いやぁ、悪い悪い。別に馬鹿にしたつもりはないんだ。
そうだよなあ、妹の為なら、仕方ないよな……」

「ーーーーッ!」

そう言った男の目に、思わず風は飛びのいた。
凄まされたわけではない。
殺意を向けられたわけでも、憎悪を抱かれたわけでもない。
その目に宿った名状しがたき感情は、全て、風ではなく自身に向けられていた。

「俺も妹がいてさ、その為ならなんだってしなきゃいけないんだ。
だから、恨んでくれるなよ?」

所々髪の毛が白い物に、肌は褐色の物に”置換”された彼が自嘲気味に呟いた。
彼の名前は衛宮士郎。
二刀のシンケンマルを構え直すと、
かつて墓所を荒らしながら親友の父を討ち取ったのと同じように、
悪しき一歩を踏み出した。


660 : 悪を為すシスコンたち ◆FiqP7BWrKA :2022/06/09(木) 20:32:41 hycBluSE0

【衛宮士郎@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
[状態]:健康(?)英霊エミヤが侵食
[装備]:シンケンマル@侍戦隊シンケンジャー
     複製したシンケンマル@侍戦隊シンケンジャー
     双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、
     共通ディスク@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:妹を救うために優勝を目指す
1:まず目の前の彼女を殺す。
2:もし、ハ・デスにそれだけの力があるなら、この子の妹も救う。
[備考]
※参戦時期はイリヤたちがエインズワースの工房に潜入した後です。

【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、左眼の視力が散華、夢幻召喚による変身中
[装備]:サーヴァントカード セイバー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:妹や仲間の未来を取り戻す為に優勝する。
1:まず目の前の男を殺す。
2:私は絶対に……
[備考]
※参戦時期は諸々の真相を知って自棄になっていた時期です。
※英霊召喚やカードそのものの制限に関しては、後の書き手様にお任せします。

【シンケンマル@侍戦隊シンケンジャー】
シンケンジャーの初期メンバー5人の日本刀型の共通武器。
セットした秘伝ディスクの力を解放して、
必殺技を発動したり、折神を召喚したりと、様々な能力を発動する。
シンケンマルを烈火大斬刀、ウォーターアロー、ヘブンファン、
ウッドスピア、ランドスライサーのいずれかに変化させる秘伝ディスク、
共通ディスクが付属する。

【双ディスク@侍戦隊シンケンジャー】
対象を双つに増やすモヂカラが込められた秘伝ディスク。
シンケンマルや固有武器を増やす能力を持つ。

【サーヴァントカード セイバー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
ある世界の聖杯戦争において使われる魔術礼装。
高度な置換魔術とピトスの泥を用いて成立している。
英霊の座と繋がっており、礼装に通して繋がっている英霊の宝具や武具に変化させる限定展開(インクルード)、
英霊をその身に宿し、使用者自身を一時的に英霊化させる夢幻召喚(インストール)の二種類の機能が有る。
夢幻召喚する場合は、使用者によって武器や服の意匠が変化する。
このカードはアーサー王の座と繋がっている。


661 : 悪を為すシスコンたち ◆FiqP7BWrKA :2022/06/09(木) 20:32:53 hycBluSE0
投下終了です。


662 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/10(金) 00:54:36 4WKNqZqw0
投下します

こちらは以前コンペロワに投下した作品を再構成したものになります。


663 : 命の尊さを知る、冥府の巨神 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/10(金) 00:55:29 4WKNqZqw0
ある鬱蒼とした森林地帯。そのような場所に奇妙な二人の人物がいた。
一人は所々破けたニット地の衣服をまとった、長い金髪に眼鏡をかけた女性。
そしてもう一人は巨大なキノコ雲を思わせる頭をした、まるで荒れ狂う大空を擬人化させたような巨人だった。

彼らは地図に従い、街のほうへと歩いている最中だった。

そんな中、女性は若干自身がない様子で巨人に話しかけた。

「貴方は、なんで見ず知らずの私に同行してくれたんですか?」

その女性の名は、ウィッチクラフト・ジェニー。

そして巨人は彼女に対し、言葉少ないながらも重厚な口調でその問いに答えた。

「…最初に会った時も言ったはずだ。俺は……命の大切さを知っている」

その巨人の名は、冥府神ティターン。

そんな彼らが出会ったのは、少し前のこと……。

------------------------------------------------
「ち……近寄らないでください!」

この殺し合いが始まって間もないころ、ある女性がオークによって襲われていた。

その女性の身体や服には、何回か彼らから逃げようとしたであろう、抵抗したであろう傷跡があった。

そしてそんな彼女に対し、そのオークは彼女の大きく実った胸や薄い布に隠された花弁に対し下種な目線を向けていた。
彼女に対し、これから自分が何をしようとしているのかを見せつけるように、彼はそこを見つめていた。

そして彼女は、このオークがこれから自分に何をしようとしているのかを察した。察してしまった。

自分がこれから、女性としてとても屈辱的なことを、とても汚らわしいことをされるのだと察してしまった。

「ひ……こ、来ないで、お願いだから来ないでぇぇぇっ!!」

そこに普段の大人びたふるまいはなく、泣き叫ぶ彼女がいた。

しかしオークはそんな彼女をあざ笑った。いくら叫んでも助けが来るはずないと、あざ笑った。

しかし、そんな彼の予想は覆ることになる。

彼の近くに突如として、雷が落ちてきたのだ。

それにより何者かの襲撃を受けたことに気づいたオークは、自分たちの背後に何者かの気配を感じた。

そしてそこには、奇妙な巨人がいた。

巨大なキノコ雲を思わせる頭とアフリカ民族風の、雲を思わせる装飾が随所にみられる衣装をまとった巨人だった。

そしてその掌から稲妻がほとばしっており、その姿はまるで荒れ狂う大空が巨人の姿で顕現したようであった。

オークは気づいた。こいつが、先ほど自分を襲ったやつだと。

そうして彼は力任せにこん棒を振り回しながらその巨人に襲い掛かった。


664 : 命の尊さを知る、冥府の巨神 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/10(金) 00:57:24 4WKNqZqw0
-----------------
そしてしばらくした後……

そこには巨人と、先ほどまでオークに襲われていた女性しかいなかった。

そして彼らの視線の先には大きなわだちとへし折れた木々の先に、何者かに殴り飛ばされたかのように顔をひしゃげた状態で気絶しているオークの姿があった。

しかしオークが倒された後も、その女性は恐怖におびえていた。次は自分の番だと、そう思ってしまったからだ。

そして彼女はそのまま、巨人から逃げようとしていた。
しかし先ほどの恐怖から腰が抜けていた彼女は、その場から動けなかった。

そうしていると巨人が、彼女へと近づいて行った。

殺される。彼女がそう感じ、身をかがめていたが、何も起きなかった。

何が起きたのかと彼女が顔を上げると、巨人が彼女の顔を見つめ、こう言った。

「……大丈夫か?」

男は、彼女を心配していた。
動けなくなっていた彼女を、気遣っていた。

そして、そんな男に彼女は問いかけた。

「私を……助けてくれたのですか?」

自分を助けてくれたのかと、そう尋ねた。

そして彼はこう答えた。

「俺は……命の大切さを、その尊さを知っている…だから助けただけだ」

自分は『命の大切さを知っているから、助けた』と、そう答えたのである。

そしてその答えを受けて、彼女は彼を信じることにした。

そして彼女は、彼に自分の名を告げた。

「私はウィッチクラフト・ジェニーと言います。よろしくお願いします。……もしよろしければ、貴方の名前を教えてください」

そして彼は、若干言い淀みながらも彼女に自己紹介を返した。

「……俺は、『冥府神ティターン』」

彼は名乗った。自分の名前は、『冥府神ティターン』だと。

そしてその名を聞いた瞬間、彼女はとても驚き、先ほどとは打って変わって不信感を感じてしまった。

「『冥府神』……!ま、まさか貴方は、あの男と何かしら関わりがあるのですか!?」

彼の肩書きから、この殺し合いの主催者である『冥界の魔王ハ・デス』と何かしらの関係がある人物だと思ってしまったからだ。

それに対し彼は怒ることもなく、若干の不信感を見せた彼女に対し回答をした。

自分はあの男のことは知らないし、知っていたのならばあのような蛮行を阻止していただろうと、そう答えたのだ。

彼がそう答えたことで、彼女は落ち着きを取り戻し、彼に精いっぱいの謝罪をした。
一度は自分を助けてくれた彼を拒絶しようとしたことに対し、自己嫌悪に陥ってしまったからだ。

「…申し訳ございません。一度命を助けていただいたのに、恩を仇で返してしまって……!」
「……構わん、あのような名を告げられれば、疑われても仕方ない」

彼は、『疑われるのも承知の上だ』と気にしていないようだった。

-----------------

そうして彼と彼女は街へと向かう。

一人は、自分と同じように殺し合いから脱出するものを探すために。

もう一人は、小さき命を護る為に。

前をまっすぐ向いて、歩き続けていた。


665 : 命の尊さを知る、冥府の巨神 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/10(金) 00:57:47 4WKNqZqw0
【ウィッチクラフト・ジェニー@遊戯王OCG】
[状態]:健康、精神的疲労(中)、モンスターに性的な意味で襲われたことによる恐怖
[装備]:―
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(武器の類は入っていないことを確認)
[思考・状況]基本行動方針:脱出を目指す。
1:他の人を探すために、地図に従って街へ行く。
2:ハイネやエーデルなど、ウィッチクラフトの皆が呼ばれていないのか心配。
[備考]


【冥府神ティターン@魔法戦隊マジレンジャー】
[状態]:健康
[装備]:―
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(武器の類は入っていないことを確認)
[思考・状況]基本行動方針:小さき命を護るために、主催者に抗う。
1:俺は一度死んだはず……、なのになぜ、このような場所にいる?
2:芳香(マジピンク)と、"オニイチャン"(蒔人/マジグリーン)もここに呼ばれているのだろうか?
3:俺が死んだ後、絶対神ン・マが地上を滅ぼしてしまったのだろうか?
[備考]
参戦時期は死亡後。
制限により高速移動およびバリアが使えなくなっています。


『NPC紹介』
【ジャイアント・オーク@遊戯王OCG】
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2200/守 0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。
次の自分ターン終了時までこのカードの表示形式は変更できない。


666 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/10(金) 00:58:20 4WKNqZqw0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


667 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:25:33 MSuoFeGY0
投下します


668 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:26:58 MSuoFeGY0
 雪原の夜空を駆け抜ける、一人の女性の姿がある。
 女性は紅い裏地の白いマントを靡かせる妙齢の人物だが、
 マントの外にも内にも、翼らしいものは存在しない身体だ。
 生身で空を舞うことのできる、才覚のある人物でないと扱えない飛翔術。
 彼女がいた世界にはそういう技術が存在しており、彼女はそれを行使できる。

(追ってない、と思うのは早計。)

 五メートル程地上から離れながら視線をしきりに後方へ向ける。
 此処は空中。見るならば地上でもあるが彼女の優先順位は空だ。
 警戒は怠ることはなく身を翻し、頭上もしっかりと確認しておく。
 予想通りと言うべきか、彼女よりも高い位置で舞う人の姿があった。

「!」

 否、それを人と呼ぶには少々語弊があるとも言うべきだろうか。
 筋骨隆々とした姿で四肢があるとこまではまだ人と言えるだろう。
 緑と黒を基本とした肌色は、ギリギリ人と呼べる範囲かもしれない。
 左のみに生える白い翼と背中の赤黒い尻尾、龍の顔を模したかのような右腕は大分人から離れる。
 それは何方かと言えば彼女が馴染みのある魔物、あるいはモンスターと呼ぶべきそれだ。
 無機質な表情で月をバックに空を舞っていた。

(飛翔術の速度が落ちてることを考えても、速い!)

 怪物が右腕を構えると、口を開いて炎が放たれる。
 再び身を翻しながら難なく炎を回避するも、
 地上の雪原から飛来する雷光が僅かにだが足を掠める。

「〜〜〜ッ!」

 一瞬怯んだことで飛翔術が解除され、彼女は空から墜落する。
 いくら雪原で多少のクッションと言えども重傷は免れない。
 ただこういうことにも慣れてる彼女は地面に激突する寸前に集中力を取り戻し、
 飛翔術で勢いを殺し着地をするが、続けざまに後方から迫る右ストレートをすんでのところで回避。
 近くにあった大岩へとその拳が当たり、容易く砕け散っていく。

「やれやれ、まさかマスティマもなしにあそこまで飛翔するとはのう。」

 拳を放った相手は、意外にも可憐な姿をした少女だった。
 カチューシャのようなリボンに幼い少女らしいドレス姿と、
 まるでファンシーな絵本から飛び出たかのような見た目ではあるが、
 今の人間離れした怪力を放ったのを前にしては、人によっては恐怖でしかない。

「じゃが妾は逃がすつもりはないぞ?」

 その言葉と共に先程の黒緑の怪物と、
 黄色い装甲と青いスーツに身を包む戦士が立ちはだかる。
 彼らはNPCでも参加者でもない。少女が使役しているモンスター達だ。
 その証左に、少女の腕にはカードがセットされたデュエルディスクと手札となるカードが握られる。

「まったく惜しいことをするもんじゃのう。
 再度いうが妾は優勝する気などなかったのだぞ?
 ハ・デスが胡散臭い輩であると言うのは事実じゃからな。
 此処でちょっと実験を楽しんで、それから首輪が外せればそれでよかった。
 何も、皆殺しを要求してないじゃろうて。錬金術師の肩書きも嘘ではない。
 首輪の解除の手伝いもできると言うのに、何故逃げるような真似をするんじゃお主は。」

 少女の言うことは全てにおいて偽りはない。
 あくまで生きてここから出られればそれでいいし、
 此処でしかできそうにない実験も多数存在してる。
 快楽殺人鬼でもなく、その世界では錬金術師として活躍もした。
 外見のせいで嘘に聞こえるが、いずれも全て事実だ。
 なのに彼女が逃げたことで、敵と認識せざるを得なかった。

「それを認められないから私は逃げを選んだの。
 私は十天衆……そういうのを止めるのが役割だから。」

 空の世界で全空に名を轟かせる最強の騎空団『十天衆』が一人、ソーン。
 それが先ほどまで逃げていた彼女の名前だが、状況を疑いたくもなるだろう。
 なぜ彼女がこんな状況になっているのか……それは数十分程前に遡ることになる。

 ソーンは最初からどう行動するかは決めていた。
 全空の脅威だのなんだのと畏怖されるが十天衆だが、
 基本的な活動は空の世界の安寧の為に動き、出る杭を打つと言ったところ。
 故にハ・デスが空の世界を脅かすようなことがないように対処しておきたい。
 とは言え相手は彼女の世界で言えば星晶獣か、それ以上の存在なのは間違いなかった。
 一人での対処は当然ながら困難。素直に自分にできる役割に徹するべく行動を開始。
 支給品を調べたり、自身の力の制限を試した後に今相対する少女、ドロテアと出会った、
 最初は意思疎通もできて問題ないと思っていたのだが、

『遊びもほどほどにして、早速何人か殺して首輪の解析にとりかかるとするかのう。』


669 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:27:49 MSuoFeGY0
 ドロテアはソーンとは同じ考えを持っているわけでいなかった。
 ソーンも一人も死なせない、なんてことを考えてるわけでもない。
 だからと言って平然と参加者を、善悪問わず殺す相手と相容れるわけがない。
 ドロテアは外見とは裏腹にかなり長い年月を生きた老人で、若さを保つために他者を厭わない。
 自分の為に他者を食い物にし続けたが故に、此処へ来る前も独りよがりなせいで殺されたのだから。
 だから普段通りの、秘密警察ワイルドハントに属していたころのノリで彼女は口を滑らせてしまう。
 なにせそのチームには彼女の行動を咎めるものは誰一人いない。故に素を出しすぎてしまったわけだ。
 ソーンは武力行使ができない都合彼女を倒すことを選べない結果、即座に逃げを選んだ。
 こちらに釘付けになれば、なるべく参加者に矛先が行かないだろうという判断で。

(まさか、私が逃げる側になるなんて……)

 先に断っておくと、ドロテアは決して弱い人物ではない。
 帝具のバックアップがあれど、生身で帝具使いと殴り合いができるほどだ。
 加えてモンスターによる手数の増加。少なくとも相応の強さには至っているし、
 彼女はそういった使い魔と言った類との連携攻撃もできると実力は少なからずある。
 ただそれでも、ソーン相手では力不足と言わざるを得ないだろう。
 蒼の騎士率いる秩序の騎空団も多数の対策や装備を用意しても十天衆には拮抗するぐらいだ。
 (厳密にはあの戦いは互いが本気を出さなかったものの、当時にそれを知るのは殆どいない)

 ならば、なぜ十天衆の一人に名を連ねられた彼女が逃げ回るのか。
 単純な話だ。彼女が強いのは『全空一の弓使い』だからこそである。
 弓を持たないソーンでは、その最強の弓使いの肩書きなど意味を成さない。
 だから本来ならば多対一でも難なく相手できるはずが、逃げるしかできなかったわけだ。
 幸いにも飛翔術は制限を確認済みだったので飛ぶことはさほど問題はなかったものの、
 相手も飛ぶことができるモンスターによってその有利も覆されていた。

「これ以上無駄に消耗するのも面倒じゃ。
 お主の首輪をサンプル代わりに───! 罠カード『ヒーローバリア』!」

 とどめを刺そうと動き出そうとしたところ、
 此方へ迫るものを視界の隅に見て咄嗟にディスクを操作し、
 現れたカードからプロペラが高速回転して迫る一撃を防ぐ。

(新手か!)

 本来ならば生身でも対応できることではあったものの、
 生前に戦った最後の相手のせいで正直あまりしたくなかった。
 だからドロテアは距離を取り、同時にモンスターも距離を取る。
 少なからず徒手空拳に長けた相手、近づくのは得策ではないと。
 ソーンもまた警戒する。第三者が味方とは限らないのだから。








 ───三十五年前からの悔いが、私には残っている。
 人間と吸血鬼の戦いの最終決戦とも言える、あの戦いの出来事を。
 ファウスト様がハンス・ヴァーピットに敗北した戦いの時……私は、
 銀狼団(シルバーウルヴズ)に阻まれたことで、臣下としての役割を果たせなかった。
 人間が勝利し、ファウスト様の下へ参じることができないまま逃げ延びることになって。
 そんな悔いを残しながらずっと生きて、ようやく私はその雪辱を晴らすことができる。
 三十五年ぶりの最終決戦に於いて今度こそ……仕えた日から、ずっと覚悟を決め続けてきた。

 だと言うのに。
 あの冥界の魔王はその晴らすことすら許さないかのようにこんな場所に呼んだ。
 許すわけがない。私の覚悟を、ファウスト様の確実な勝利を踏み躙ろうとした奴を。

「……私は今機嫌が悪いの。敵になる参加者なら人間でも構わず殺すぞクソガキ。」

 割って入ったのは、綺麗な顔立ちをした人物だ。
 凛としていて、しかしどことなく可愛らしい顔立ちは男女問わず引き付けるだろう。
 ただし、それはあくまで普通の状態ならば。今の彼女は憎悪と殺気に満ちた形相であり、
 近づくことすら躊躇いたくなるかのような状態に、流石のドロテアも少し引きつり気味だ。

「……スパークガンをスパークマンに装備して、そのまま効果発動!」

 スパークマンと呼ばれた鎧の戦士に、近未来的な銃が装備される。
 すぐさま相手も身構えるが、銃口から放たれた雷光は素早くて回避が間に合わず被弾してしまう。

(ダメージは感じられない。威嚇用か!)

 痛みは全くと言っていいほど感じられない。
 動きが軽く封じられるがそう時間はかからない程度のもの。
 ただ、その一瞬でドロテアは黒緑のモンスターの左手に捕まって空高く飛んでいた。


670 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:28:51 MSuoFeGY0
「生憎とお主の言うパワー系とはもう戦いたくないんでのー!
 ただ、念押しすると妾は殺し合いをする気はないとだけ言っとくぞー!」

 捨て台詞なのか追ってくるなと言う忠告なのか、
 なんだかよく分からない言葉と共に空の彼方へと逃げていく。
 釘付けにするはずが逃げられてしまうのはあまり好ましくないので、
 ソーンは自身の魔眼で相手の姿を視力で追うも、突然としてその姿が朧気になっていく。
 周囲のエリア分ぐらいならば視認できるずば抜けた魔眼と呼ばれるほどの視力があるが、
 残念ながらそれもまた射程の制限がある為、このまま視力だけでの追跡は不可能だ。
 飛翔術で追えばいいかもしれないが、武装がない現状追跡しても迎撃されるのがオチだし、
 隣の人物についても割って入っただけで他の事は分からない現状は協力を求められない。
 故にソーンは、追跡を諦めざるを得なかった。

「その、何かあったの?」

 あれだけの殺意、そうそう出せるものではない。
 一体何が彼女をそうさせてるのか気になり軽く尋ねる。

「……冥界の魔王に大事な戦いで水を差されただけよ。」

 相手の言う大事な戦いの規模は定かではないが、
 自分にとって大事な戦いについてはソーンも心当たりがある。
 二王弓に唆されて、化け物になろうと十天衆を倒し続けてきた過去。
 最後に世話になっていた騎空団の団長を倒して、最強に至ろうとしたあの時。
 もしその時に此処へ来ていたら。戦いの邪魔をした相手をより許さなかっただろう。
 (もっとも、このときの戦いは彼女も暴走気味だったので若干恥ずかしい過去でもあるのだが)

「後は好きにしなさい。こっちも好きに動くから。」

「待って。一緒に同行したほうが……」

 ソーンに背を向けて去ろうとする相手に声をかけるも、
 来るなと言わんばかりに彼女の方へ手を伸ばす。

「ゴメンちょっと無理。最近は人間と友好的にはなれたけど、
 まだ人間を許せてない部分もあるから。後、今神経質になってるし。」

 吸血鬼を怪物と認識して戦っておいて、人間は吸血鬼を実験材料として研究を進めた。
 それと同時に、ハンス・ヴァーピットと言う人物により数多の吸血鬼が殺されている。
 種族同士の因縁はファウストとハンスに委ねられ、その結果を問わずそれで終わりにすると。
 そうハンス達との約定により共闘を選んだことで、より多くの人間とも交流を深めた。
 だからと言って、人類そのものに嫌悪があるかどうかの個人的な考えでは何とも言えない。
 苛立ってる中で初対面の人間を受け入れられるほど、溝は埋まってるわけではなかった。
 人間と言うワードに疑問はあったが、余り追及しない方がいいだろう。

「じゃあ、そういうことだから。」

「待って。せめて名前だけでも教えて。知り合いに会った時に伝えたいから。」

「……ミンスタよ。そっちは?」

「ソーン。知ってる人なら十天衆のソーンで伝わるわ。」

 ソーンの言葉を聞き終えると、
 ミンスタは何処かへと軽快な動きで走り出す。
 軽く見送った後、ソーンもまた別方向へと空へと舞う。
 語った言葉は少ないものの、一先ず敵ではないのだと察しながら。

【ソーン@グランブルーファンタジー】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3(弓はない)
[思考・状況]基本方針:十天衆としてこの殺し合いを止める。
1:団長やシルヴァがいたら合流か連絡手段がほしい。
2:ミンスタの知り合いがいたら伝えておく。
3:ドロテアを追いたいけど、弓がない今はできない。
4:二王弓とは言わないけど、せめて弓が欲しい。

[備考]
※参戦時期は『全員あつまれ!十天衆湯けむり懇親会』以降です(最終上限解放エピソード経験済)。
※限界超越エピソード経験済みかは現時点では未定。
※飛翔術は少なくとも銃撃を受ける高さまでで、飛行が長引くにつれ消耗が激しくなります。
※魔眼の射程は広くても一エリア分です。それ以上はぼやけます。
※ミンスタの性別を女性と思ってます。

【ミンスタ@銀狼ブラッドボーン】
[状態]:殺意(特大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3(剣等の類はない)
[思考・状況]基本方針:ハ・デスは許さない。
1:ファウスト様やハンス・ヴァービットの仲間がいたら一旦合流を考える。
2:ソーンの知り合いがいたらとりあえず伝えておく。珍しい人間もいるものね。
3:アイツ(ドロテア)は見つけ次第始末する。

[備考]
※参戦時期は終盤のファウストに血を捧げる前です。







「デュエルモンスターズ、悪くはないのう。
 動かずゲームに費やした甲斐はあったようじゃ。」


671 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:29:29 MSuoFeGY0
 空を舞いながらドロテアは彼女を掴むモンスターを見やる。
 ドロテアはデュエルモンスターズが存在する世界の人間ではない。
 となればカードの使い方はともかく、ルールが分からないのが当然の帰結ではある。
 彼女がカードを扱えるようになったのは、単にタブレットにアプリが追加されていたから。
 所謂デュエルができない人用に支給されたもので支給品の枠は使われたものの、
 ルールを覚えてからを使ってみればモンスターによる手数や防御ととかなり万能な代物になる。
 元々ドロテアは錬金術師として常人よりも優れている思考を持っているため数十分もあれば、
 細かいルールはともかくカードの使い方自体はなんとなく察することができた。
 特に融合召喚は複雑化するルールの中でも古来から存在する為単純で、
 融合するカードと素材があれば大抵は融合召喚できるのもある。

「しかし首輪、欲しかったんじゃがのう。」

 単に首輪解除のためのサンプルの意味合いもある。
 しかし、ドロテアの完全な推測ではあるものの別の使い方、
 例えばデッキや特定のカードと交換……なんてものを想定していた。
 推測に至ったのは、ソーンがカードらしいものを持ってなかったからだ。
 アプリによる複雑なルールを態々説明する程に、カードを使うことを重要視されている。
 なので参加者全員にカードが配られてると思ってみれば、そういうわけではなかった。
 彼女が強い参加者だから? だったら自分にもカードは支給されない可能性はあるはずだ。
 となれば全参加者にこれらのカードが手に入る手段が、どこかしらに用意されてるのではないかと。
 彼女が数人殺したかったのは、そのカードの入手方法にいくつか目星をつけてみた結果、
 『キルスコア』或いは『首輪』のどちらかが必要かもしれないというわけだったから。
 前者の都合、漁夫の利や死体漁りではだめだと言うところが殺す必要があった。

「それにソーンとか言ったか。逃げに徹してたが相当な実力者……敵に回したくなかったのう。」

 一応釘は刺したがこちらを追ってくるか、
 或いは吹聴して回る可能性はどちらも捨てきれない。
 加えて一方的に攻撃していたのに致命傷は与えられなかった。
 第三者の介入がなくとも暫くは逃げられていた可能性だって十分にある。

「ま、暫くはデッキの回し方でももう少し覚えるとするか。」

 デッキの回し方を一通り覚えたと言っても、それでも限度は存在する。
 もっとうまく、円滑に行わなければ刹那の戦いは自力の方がましになってしまう。
 選択肢を増やしすぎれば人は動きを鈍らせる。余分なものは捨てていくものだ。
 美しく、長く生きる為には入念な努力がいる。それは身をもって知っている。

『人間の寿命ねえ、確かに短いよなぁ。
 だからこそ、どう生きるかが面白いと思うんだけどな。』

 死ぬ寸前、殺した相手がそんなことを言っていた。
 長生きするぐらいならどう生きるか、と言った彼女の思考だ。
 数多くの仲間を喪ってるからこそ他人を食い物にしてまで生きたいとは思わない。

「そんな気楽に生きられるわけがあるものか。」

 でも、彼女にはそんな仲間はいない。
 いたとしてもそれは所詮ビジネスパートナー。
 ともに笑い合ったり飯を食うなどと言った間柄ではなかった。
 だから変わらない。人を食い物にする腐った性根は死んでも。


672 : 己が為のアルケミスト ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:30:20 MSuoFeGY0
 誰かが言った言葉だ。
 凡庸なモンスターをより強く強化させる融合と、
 非金属を宝石に変える錬金術。これらは同じなのだと。
 その錬金術の継承者とも言える少年のデッキは、悪しき手に渡った。

【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]:楽しい
[装備]:遊城十代のデッキ@遊戯王デュエルモンスターズGX、デュエルアカデミアのデュエルディスク@遊戯王GX
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1、デュエルアプリ@遊戯王+オリジナル(タブレットに内包)
[思考・状況]基本方針:優勝する気はないがこの場所をエンジョイする。
1:デッキの練習でもしておきたい。後カード増やしておきたい。
2:ソーンには要警戒しておこう。後アイツ(ミンスタ)もの
3:首輪のサンプルと今後の為に何人か殺しておく。推測でしかないが『念の為』な。
4:優勝? ないない。オネスト大臣よりろくでもないじゃろあれは。
5:ナイトレイドとか研究の邪魔をする奴は遠慮せず殺すが状況はよく見る。
6:パワー系の相手はもうこりごりじゃ。
7:帝都関係者がいたら、まあ忖度はするか。

[備考]
※参戦時期は死亡後。
※片側のみデュエルモンスターズで戦う際の匙加減は、
 採用された場合後続の書き手の判断にお任せします。
※死因の都合微妙にレオーネに類するパワータイプの相手に苦手意識があります。
 トラウマではありませんが、必要以上の警戒をするかもしれません。
※首輪やキルスコア等で、何かしらカードが入手できると推測してますが、
 これが事実かどうかはわかりません。



【遊城十代のデッキ@遊戯王デュエルモンスターズGX】
ドロテアに支給。遊城十代のデッキ+デュエルアカデミアのデュエルディスク。
内容はE・HEROを主軸とした融合デッキ。たまにHEROとは無縁のカードもある。
普通の融合召喚を軸としているのでネオス、M・HEROなどはない。
(アニメの時期で言えばエド・フェニックス二戦目までのカードが殆ど)
全体的に時代遅れなや専用カードと使いにくいのも多いものの、
アニメ出典の都合バブルマンなどアニメ効果も多い。

【デュエルアプリ@遊戯王+オリジナル】
ドロテアのタブレットに支給。デュエルの基礎やルールを学べるアプリで、
身もふたもない言い方をするとソーシャルゲーム【遊戯王マスターデュエル】のソロモードのようなもの。
他の機能もあるかも?


673 : ◆EPyDv9DKJs :2022/06/10(金) 18:30:47 MSuoFeGY0
投下終了です


674 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:22:31 x9olTpkw0
投下します


675 : ど・の・く・ち・お・ま・い・う ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:22:53 x9olTpkw0
あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気付かないのか。
自分の目にある丸太を見ないで、兄弟に向かって、『さあ、あなたの目にあるおが屑を取らせてください』と、どうして言えるだろうか。
偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。
そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるおが屑を取り除くことができる。

ルカによる福音書 6章41、42節


676 : ど・の・く・ち・お・ま・い・う ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:23:34 x9olTpkw0
★★★★★★ ★★★★★★★

人が簡単に狂気に流され、元々狂っている者はその牙をむき出しにする決闘会場にて。
一応屋内ではあったが、大声で笑い散らしながら転げまわる男が居た。
そんなに笑ったら呼吸困難になるんじゃないかと?と思う程笑い転げている。
黒いポンチョを纏った大人の男が、人目もはばからず笑い転げるのはある種のホラーだろう。
折角隠れているのに目立ち過ぎだとか、もし今決闘に積極的な参加者に見つかればひとたまりも無いとか、彼にはそんなことを考える余裕は無かった。

「あー-。物理的によじれるかと思った!
にしてもあいつら品性ねじ曲がってるだろ!」

そう言ってようやく床から立ち上がった男のフードが外れて素顔があらわになる。
コイツの名はPoH。
ゲームオーバーがそのまま現実での死に繋がるVRゲーム、『ソードアート・オンライン』内において悪逆の限りを尽くした犯罪結社、ラフィン・コフィンの首魁だ。
その性格は非道の一言、残虐の二文字。
積み上げられたモノが崩壊していく様こそが何よりの愉悦と宣い、
自分がつくったラフィン・コフィンと、それを排除すべく結成された討伐隊の殺し合いを高みの見物で楽しむような、
糞尿を吐しゃ物に四度漬けして下水で煮込んだような正真正銘、魂が腐りはてた人の皮を被った悪魔である。

そんな彼が大笑いしていた理由が、今亡きラフィン・コフィンのタトゥーが彫られた腕に握られていた。

「まさか俺にあのキリトの小僧の剣を持たせるなんてな!」

歯車と十字を合わせたような鍔を持つその黒い剣の銘はエリシュデータ。
ソードアート・オンラインから帰還した者なら、その名を知らぬ者の居ない伝説の剣士、キリトの愛刀だ。

「こいつがあるって事はキリトも来てるんだろうな?
だったらやることは一つだ!」

キリトの目の前で、血濡れたこの剣を見せつけてやる。
目の前で誰か殺してやるのが理想、さらに言えばアイツの女(アスナっていったか?)を殺れるんなら大満足だ。
そしてこの剣で殺してやる。この自分が何としても。

「ま、他にも獲物は大勢いる。まずは狩りを楽しむか」

ハ・デスたちの思いのほかキレキレのサプライズのお陰で大分時間をロスしたPoHは剣とカバンを背負うと、最初に配置された建物を後にした。


677 : ど・の・く・ち・お・ま・い・う ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:24:12 x9olTpkw0
(まずは人の集まりそうな場所に向かうか。
病院やスーパーマーケットみたいな物資が有る所をまず……ん?)

5ブロック程進んだPoHは、進行方向右側に誰かいるのに気付いた。
身を隠し、その様子を観察する。
恐らく20歳ぐらいの若い男だ。
長身痩躯だが、痩せすぎては無く、なかなかのハンサムだ。

「ふざけるな!人の命を何だと思ってるんだ!
この……唾棄すべき悪が!」

男、夜神月は沸き立つ怒りをどうにか鎮めようと壁を殴りつけ、何度か深呼吸を繰り返す。

(よし、落ち着け。
生きてる限り、冷静に思考して行動出来る限りいくらでも状況は動かせる。
まず現状を確認しよう。
リュークが側に居ないという事は僕はノートの所有権を失っている。
が、記憶は失っていないという事は、この首輪にノートの破片でも仕込まれているんだろう。
そう考えればこの状況の説明もつく。
つまり磯野たちは僕からノートの所有権を奪っているわけだ。
けどこの決闘をある一定のルールの下で運営する気があるなら、
逆らう姿勢を見せたぐらいで名前を書かれたり、首輪を爆破されたりすることは無いはずだ)

ならばやることは一つ。
この決闘を生き抜き、デスノートを奪い返し神の座に返り咲く。
そう決心した月はPoHに支給されたのと同じ鞄を引っ掴んで歩き出した。

そんな月を見送り、完全に視界の外に行った後も、しばらくは息をひそめていたPoHはというと、

(駄目だ。駄目だまだ笑うんじゃない!
視界から消えてもあの歩調から計算するに、俺の声が聞こえなくなるまでもうたっぷり30秒。
まだ我慢するんだ!もう少し、もう少し!)

そして心の内の宣言通り30秒後、大きく息を吐いたPoHは……

「ふふふふふ、はは!あーっはっはっはっはっはっはっはっは!」

先ほどエリシュデータを見つけた時に勝らずとも劣らない程笑い転げた。

「人の命を何だと思ってるだって!?
あんな目をしておいて?あんな目をしておいてか!?ええ?おい!
ははははははははははははははは!」

遠目だったが、PoHにはわかった。
あのアジア人は目的の為なら人の命なんて平然とどぶに捨てることができる下衆野郎だ。
同じ穴の狢として太鼓判を押しても良い。
そんな醜さを突きつけてやったら、アイツはどんな顔をしてくれるんだろう?

(決めた。前菜はお前だ)

夜神月に再び死神が憑いた。
もっとも今度の死神は、明確に月の魂を欲してだったが。


678 : ど・の・く・ち・お・ま・い・う ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:24:35 x9olTpkw0
【PoH@ソードアート・オンライン】
[状態]:健康
[装備]:エリシュデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘を楽しむ。
1:まずはあのアジア人を追跡して、絶望を与える。
2:もしキリトも来ているならこの手で、この剣で殺す
[備考]
※参戦時期はラフィン・コフィン討伐戦より後です。

【夜神月@DEATH NOTE(漫画版)】
[状態]:健康、怒り(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:必ずやハ・デスに神罰を与え、新世界の神に返り咲く。
1:リュークが居ないという事は、僕はノート所有者じゃなくなってるのか?
2:とりあえずはデイパックの中身をちゃんと探る。その為にまずは安全な場所に行く。
[備考]
※参戦時期は海砂と出会った後、Lが死ぬよりも前です。


679 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:25:45 Z/Uh.cy60
投下します。


680 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/10(金) 20:25:58 x9olTpkw0
投下終了です。
元々オルテカ、グラファイト、アリステリアのエピソード、プリヤ士郎、犬吠埼姉のエピソードと合わせて『死神ポールスターズ』というタイトルで投下する予定だった三作です。


681 : 分断 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:26:26 Z/Uh.cy60
 ─決闘(デュエル)の始まりの場所である大広間。

(あれ… オレ、いつの間に寝てた?)

 その場所で目覚めた少年の名前は、『河合井(かわいい)コタロー』
 その場所に転移された彼は、床の上でその体を次第に起き上がらせていく。
 当然、直に寝ていたものであった為にその動作をとるのには若干の痛みが伴う。

「─── ─────…(う〜ん、いっててて…)」
(…てあれ? 声が出ない?)

 それ故につい声をあげるはずだったのだが、そこで彼は違和感を感じた。

 そう。声が一切出せないのだ。

(それと首にも違和感…)

 コタローが感じとっていた、もう一つの違和感。

(あれ?触ってみると首に何か…ついてる? …え? どういうこと? いつの間にこんなものがオレの首に?)

 なんと、その首には何故か首輪が装置されていた。

(オレだけじゃない…! 他にも首輪をつけられた奴らが沢山…!)

 更には、その周辺にも自分と同じ首輪を取り付けられた生物が多くいた。
 そしてその中には──

「────── ── ──?────────────!(むにゃむにゃ…って、あれ?コタローじゃないですかー!)」

「─ ───!? ──────────!?(ぷ…ぷにる!? お前もここに居たのか!?)」

 その中には、彼がよく知る存在である『ぷにる』が居たのだ。

 そう。『彼女』はコタローが7年前に作ったスライムに命が宿った存在である。

 コタローがまだ幼かった頃こそは、一緒に仲良く過ごしていたのだが、コタローの方が成長し、中学生になって思春期を迎えた頃には『スライム遊びする小学生の歳ではない』等とぷにるを邪険に扱う様になってしまった。

 声は出せない為、コタローは空中に『オレは先にここから出て行くから』と指書きをして、大広間を後にしようとする。

 ─だが、間もなくしてその行動は、コタロー達をこの場所に招いた者達によって止められることになる。

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

 突然、マイクを持った男が説明を初めた。

『バカ野郎!こんな状況で何がデュエルだ、磯野!!』

 その中で、リーゼントの人物が説明を行っている男に野次を飛ばし出す。

 その人物にも首輪がはめられているが、コタロー達と違って声を発することは出来る。
 それにふたりは疑問を感じた。

『本田ヒロト!この場で参加者が声を張り上げることは違反行為である。これ以上騒ぐ場合……』
『ふざけんな!オレ達を拉致して、何がデュエルだ!!』

(げっ…)
(いはんこーい?らち?)

 『違反行為』に『拉致』というワード。
 磯野の呼ばれた男の反応から、ふたりには恐怖がこみ上げる。

『待て!それ以上は危険だ、本田くん!!』
『大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――』

 かなり奇抜な髪型の少年が本田と呼ばれた、リーゼントの人物を静止しようとするが、反抗を止める気配は見えない。
 その直後──


ボン☆

 本田の首が胴体から


682 : 分断 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:27:28 Z/Uh.cy60
切り離され、血液がドバッと噴き出す。

(ヒイッ!!)
(ぷにゃ!?!?)

『このように違反行為をした者には罰が与えられる。他の決闘者の方々には、ルールを守ってデュエルをしていただきたい』

 その凄惨な光景にふたりを初め、周辺の首輪をはめられている者達もかたまり出す。

『詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの″説明書″に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』

『それでは――』

『――待て、磯野』

『私からも挨拶をしよう。我が名は冥界の魔王ハ・デス』

 説明会は続く。

『私は一枚のカードより生まれた存在だ。』

『この世には無数の世界がある。』

 まさか、ぷにる以外にも『物』から生まれた存在がいる。
 それを聞かされたふたりは驚きを隠せない。

『気を改めて。それでは――』

『決闘開始ィィィ!』

 磯野の開始宣言を最後に、首輪をはめられた彼らは会場内のバラバラな場所へと転移された。

◆◆◆

「コタロー… ぼくは…ぼくは…君とずっと一緒に居たい…だから──だからぼくはコタローを死なせない様にデュエルをします!」

 会場内の何処か、見せしめを目にしたぷにるはコタローを死なせない様にする為、デュエル──即ち殺し合いに乗ることを決意したのであった。

◆◆◆

(ぷにる…オレは───お前と一緒にいたくない…けれどオレは────)

 一方、ぷにるとは別の場所に転送されたコタロー。
 そんな彼がこの殺し合いの場で、何を考えているのか?
 それはまだ、わからない。


683 : 分断 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:27:47 Z/Uh.cy60
【ぷにる@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康、殺し合いに乗る決意
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:コタローを死なせない様にする為、デュエルに乗る。
コタローが死んだら、彼を生き返らせる為に優勝する。
[備考]
※参戦時期は本編開始以降のどこか。
※首輪は容易には外れない様になっています。

【河合井コタロー@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:???
[備考]
※参戦時期は本編開始以降のどこか。
※スタート地点はぷにるとは異なる場所になっています。


684 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:28:03 Z/Uh.cy60
投下終了です。


685 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:28:33 Z/Uh.cy60
投下終了です。


686 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:39:51 Z/Uh.cy60
>>685
失礼します。
投下終了宣言のレスが重複してしまいました。

また、それとは別件で以前エトラロワに投下したものをこちらにも投下させていただきます。


687 : 人を憎む者 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:40:20 Z/Uh.cy60
(人間め、また俺達を殺し合わせるのか)

人気のない路地裏。
その中を一匹で歩く生物がいる。

その生物の名前は『ボルテジオン』。
嘗て、とある世界で「ブリーダー」と呼ばれる人間に虐げられてきた過去を持つ。

ブリーダー達は自分達モンスターを捕獲しては無理矢理戦わせたり、モンスターの育成に夢中になる余り自身もモンスターとなり、また同じモンスターを生贄に捧げられたりと酷い仕打ちを散々行ってきた。

そんな日々に堪え切れなくなった彼らは、人間達に復讐する事を決意。

逆にこちらから人間を捕獲しては嘗ての自分たちの様に無理矢理戦わせたりと、人間の下にいた頃に味わい続けてきた苦痛を彼らに返す形で復讐していった。

そんな彼も今や殺し合いの参加者の一匹。

(ならいい、俺はここでも人間共を殺し尽くす。 世界をモンスターの天下にするのだ。)

こうして、彼もこの世界で人間を虐殺する道を選んだのだ。

【ボルテジオン@エバーテイル広告】
[状態]:健康、人間への憎悪(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:嘗て、自分たちを虐げてきた人間共に復讐する。
1:人間に会ったら虐殺する。


688 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:40:56 Z/Uh.cy60
続けて投下します。


689 : 暴食と陽狼 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:42:35 Z/Uh.cy60

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atwiki etorarowa @ ウィキ 暴食と陽狼
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暴食と陽狼
最終更新:2021年10月26日 04:22

匿名ユーザー

44 view
だれでも歓迎! 編集

会場の何処か開けた場所。

そこでは、夜間でも目立つ黄色い雨合羽を纏った、枝の様に細い手足の少女が一人で走っている。

名前はシックス。
ある時から、治まる事のない飢餓感に苛まれ続けている少女だ。

■■■

─この催しに招かれるより少し前。

シックスは、とある巨大船舶『モウ』の奥深くに居た。

この時から空腹感はあった。

彼女は船舶内を進んで行き、道中に現れる化け物や、自分を食べ物と見なして襲いかかって来る乗客達を切り抜け、モウの従業員達も掻い潜ってきた。

しかし、空腹に限界を感じ、歩く事すらままならなくなる事も何度かあった。

そうした時に彼女は、近くにある食べられる様な物を食べた。

始めの時はパン等生きていない物を食べていたのだが、厨房の近くで空腹の限界が近づいてきたときは、生きていたネズミを食べた。

それが引き金となったのか、その後も動かない食べ物ではなく、生きた人間を食い殺す程に、食欲にも異常な変化を起こす様になってしまった。

やがてはモウの主までも食い殺し、彼女の持っていた、他者の生命を吸い取る能力まで手に入れた。

その力を使い、乗客達から命を吸い尽くし、モウの外へと繋がる扉を開いた。

しかし外に出ると、周りは海に囲まれていて、上陸出来る様な陸地も無かった。

そうして辺りを眺めていたところで、この殺し合いに招かれた。

だが、彼女がこの舞台で何を想っているのか、それはまだハッキリとは分からない。

だが、2つだけ分かる事はある。
一つ目は、この殺し合いにおける行動方針だ。
彼女は殺し合いに勝ち残り、己の願いを叶えることを選んでいる。

その願いは、永く続く飢餓感から解放させてもらうのか、それともまた別の願いか──

それはまだ、彼女にしか分からない。

二つ目は、先述の食欲の異常な変化によって基本支給品の食糧すらそうだと認識しなくなっている事。

他者の生命を糧として奪う様になった今の彼女にとって、この会場は狩り場同然。

そうして飢えた少女は、会場を疾走し続ける。

◆◆◆


690 : 暴食と陽狼 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:43:08 Z/Uh.cy60
(ん? あの子供、体型もやせ細っているし、靴も履いていないぞ…!?)

そんなシックスの姿を偶然目撃したもう一人の参加者、シディ。

彼もかつては元いた世界に存在している組織、トッププレデターの実験動物・混血児として生み出された経緯を持つ青年だ。

(あんな姿になって… あの子供は今までに、どんな酷い仕打ちを受けてきたのだろうか…!)

ただでさえ殺し合いという非道極まりない催しに参加させられていることもあり、同じ子供時代に酷い仕打ちを受け続けてきた彼は、シックスの容姿を目の当たりにしたことで、自分たち生命を持つ者達を残酷に扱う人々への怒りを込み上げる。

(母さん…)

更には、この殺し合いに招かれるより少し前に見た、生まれ育った研究施設から母親と共に脱出する夢の事も彼の心には引っ掛かっていた…。

「今ゆくぞ! お前は俺が助ける!」

そんな彼は、彼女の心情さえも分からないまま、雨合羽の少女の方へと駆け寄って行くのであった。


691 : 暴食と陽狼 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:45:43 Z/Uh.cy60
【シックス@リトルナイトメア】
[状態]:不治の飢餓感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝を狙う。
1:自分以外の参加者は皆殺しにする。
※無印終了後からの参戦となります。
※他者の生命力を吸収する能力に制限が掛かっております。(具体的にどの程度掛かっているのかは後続の書き手にお任せします。)
※一人称や口調、その他細かい設定については後続の書き手にお任せします。

【シディ@混血のカレコレ】
[状態]:健康、ハ・デスへの怒り(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに反対的な参加者の救助。
1:痩せ細った子供(シックス)を助ける。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
※少なくとも、ストーリー編1章と『幼児が牢獄から脱出するとどうなるのか』終了後からの参戦となります。
※ホルス、狼男としての能力の制限については後続の書き手にお任せします。


692 : 暴食と陽狼 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:45:58 Z/Uh.cy60
投下終了です。


693 : 暴食と陽狼 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:50:10 Z/Uh.cy60
失礼します。
>>689の冒頭部分に流用元となるまとめwikiから誤って転載してしまった箇所があった為、該当の箇所を消去させていただきます。


694 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/10(金) 20:55:51 8z8ZO0qw0
投下します


695 : 超ドラえもん ◆2dNHP51a3Y :2022/06/10(金) 20:56:13 8z8ZO0qw0
「――ハ・デスめ。」

荒野の中心に、男がいる。
青と白の肌で、鍛え抜かれた筋肉美を持ち合わせる、一人の男が。

「貴様は何を企んでいる?」

男の名はドラえもん。どう考えても筋肉マッチョマンであるが間違いなくドラえもんである。
最も、このドラえもんは正しき歴史の彼ではなく、破滅の一途を辿る地球を救うために考案した「超人類」計画を実行した、そんな世界のドラえもんである。

勿論の事、ドラえもんが此処に来る直前の記憶は曖昧だ。
曖昧、と言うよりも靄がかかったかのように思い出せない、と言ったほうが適切。

「……俺が巻き込まれたことには構わん。」

超人類計画は失敗した。第一実験者である野比のび太。その友人を利用し感情のコントロールをしたは良いが、超人類と化したのび太の暴走により計画は破綻。
人類の文明は再出発を余儀無くされたのだ。再出発のために選ばれた人類二人を残し。

「……だが、俺をこの様なくだらん催しに巻き込んだこと、後悔するなよ。」

だが、殺し合いに巻き込まれた事は別だ。
元々強硬手段とは言え、地球を思っての善意だったのだ。
それに、彼はそれでも『ドラえもん』なのだ。
再出発をし始めた人類すら巻き込む可能性もありうるこの殺し合いは見逃してはおけないのだ。

「…………。」

が、彼にとっても一つだけ、心残りのようなものがあった。
野比のび太。ドラえもんにとっての友人で、『超人類計画』第一実験者。
恐らく、ドラえもんにとってものび太の優しさは次代の超人類に相応しき人物だった。

だが、現実は残酷であった。
超人類計画の準備の最中、のび太に対してのメンタルケアが疎かになってしまった。
ジャイアンとスネ夫は直接操っていたとは言え、源静香を骨川スネ夫に寝取らせたのが失敗だったのか。
感情のコントロールを兼ねて、ジャイアンとスネ夫はのび太自身に始末させたとは言え。
あの残虐な光景を操っていなかった源静香が耐えられるわけもなく。野比のび太が肥大化したプライドから凶行に及んでしまった。
どちらにしろ、のび太が暴走した時点で、地球をどうするかの結論は決まってしまったのだろうか。
だからこそ、憎まれても当然だったのだろう、それは、ドラえもん自身が一番理解していた。

「……今更、こんな事を思い出してもな。」

全ては過ぎ去ったこと。
人類の導き手は、そんな感傷を心の隅に片付け、荒野を進むのであった。

【ドラえもん@超人類】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:ハ・デスの催しは止める
1:???
[備考]
参戦時期は第五話、静香とスネ夫を蘇らせて去った後から


696 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/10(金) 20:56:25 8z8ZO0qw0
投下終了します


697 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/10(金) 20:59:08 Z/Uh.cy60
>>680
投下時に割り込んでしまって申し訳ございませんでした。


698 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:35:06 vmKKJCZk0
投下します


699 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:36:10 vmKKJCZk0
 異世界から勇者を召喚する術――略して異世界召喚術というものが存在する。
 異世界の人間を転移させる儀式で、それによって呼び出された者は皆、類稀なるスキルを授かるというのが常識だ。
 だがそんな常識を覆すような存在――周りから非才だと思われる者も極たまに現れる。

 直見真嗣という男もまたその一人だ。
 実際は血の繋がりもない孤児院の家族の想いに応じて彼女達を『守る』原初のスキルを習得しているのだが、人間としてはあまりにも例外的であるがゆえに常識の範囲内では測定出来ない。聖剣使いなどの上位スキルよりも希少で、人の身で届くには困難なスキル。

 そもそもマサツグは異世界転移してすぐに『守る』スキルを自分を対象――つまり自分を守るために無意識的に発動出来ていた。この時点で凄まじい才能を秘めていたのだろうが、彼が最も力を発揮するのは自分よりも誰かを――特にリュシア、エリン、シー達ルーナ孤児院ファミリーを『守る』ために戦う時だ。
 マサツグは名誉を求めない。ゴブリンの王を倒し、国を救った時ですら自分は目立たないことを選んだ。彼にとっては孤児院を守るための戦いでしかなく、国を救ったことなんてついでに過ぎないのだから。

 だが――そうまでして守った孤児院の家族も里親が見つかり、マサツグの元から巣立っていった。

『お願いです。リュシアを捨てないでください……』

 あの時はリュシア達のことを考えて里親の元へ行くように言ったら、急に泣き始めて。
 そんなことを――自分の親と同じことをしようとしていると気付いたマサツグは渋々と提案する。

『……わかった。1週間暮らして気に入らないなら戻ってきたらいい』

 するとリュシアはゴシゴシと目を擦って――それでもまだ涙を浮かべながら笑った。

『わかりました!1週間過ごして帰ってきます!』

 リュシアに続いて、エリンとシーも口を開く。

『こちとら1年間路頭に迷ってたんだぜ。1週間なんてすぐさ』
『遠距離恋愛プレイだと思って、お姉ちゃん頑張るね?』

 ――それがマサツグが見た三人の最後の姿。
 二人の娘と一匹の自称女神で自称姉のペットのような変人を失った。
 だがマサツグは悪く思っていない。寂しさを感じはするが――当たり前の結果だと受け止めた。自分がロクでもない家庭環境でひねくれてしまったからこそ、彼女達にはちゃんとした親の元でちゃんと育ってほしい。当然あるべき愛情を受けて、ひねくれずに普通の人生を手に入れてほしい。

 ママゴト自体は嫌いじゃなかった。ナオミ・マサツグは心から彼女達のことを家族だと思っている。

『ここがなくなったらみんなは離れ離れになっちゃうわ。でもねマー君だけに頼ってちゃだめだと思うの。孤児院に住むみんなで守らなきゃ。――私たちは家族でしょう』

 ふと、シーの言葉が脳裏を過る。
 四人で力を合わせて孤児院を守った時――あの時から家族という言葉を特に意識するようになった気がする。
 家族に恵まれなかった男が異世界で孤児院を経営して、家族を手に入れる。――なんとも本や漫画にありそうなストーリーだ。
 それでも――マサツグは『家族の帰る場所』だなんて暑苦しいヤツらだと思いながら悪い気がしなかった。

 だからだろうか――。

『いったい何者なのだ』

 息絶え絶えになりながら問い掛けてきたゴブリンの王にマサツグは「ただの孤児院の院長だ」と名乗った。

『ではワシはただの孤児院長に負けるというのか?』
『その通りだ。――だがもし俺が孤児院長でなかったらお前には勝てなかっただろう』

 あの時のマサツグは家族の暑苦しいほどの想いに――その熱に浮かれていた。

『俺のスキルは「家族を守る力」。孤児のガキ共を守ろうとする時、無限の力をもたらす。――お前が孤児院を狙うというなら、俺が負けることはない!』

 名誉でもなく、国を救うためでもなく、自分だけのためでもなく、家族のためにマサツグはゴブリンの王を討伐した。
 そうまでして守った孤児院や家族を失い――何も感じないはずがない。
 孤児院を閉鎖したマサツグは冒険者になったが、以前ほどの力も発揮出来なくなっていた。守るべき家族を失った彼には弱小モンスターの一匹すらも倒し切れない。


700 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:36:37 vmKKJCZk0
 そんな最悪の状態でマサツグはこの世界に召喚された。人生で二度目の異世界召喚だ。

「やれやれ。ゴブリンの王の次は魔王か……」

 マサツグはハ・デスの言葉を思い出す。冥界の魔王ハ・デス――あの異形はたしかにそう名乗っていた。
 禍々しい外見からして魔王という存在である信ぴょう性は高いだろう。元の世界の知識しかなければ馬鹿馬鹿しいと一蹴していたかもしれないが、マサツグは異世界に転移した者だ。
 そして元の世界へ還す条件として提示されたものが魔王を倒すこと。――まあマサツグの場合は凡夫と判断されてまた違う条件を与えられたのだが。
 そのくせこれまで魔王という存在がどんなものか知る機会はなかったが、ようやくこうして自分の前に姿を現したわけだ。

「面倒だな。他の誰かが魔王を倒すまで待つか……」

 しかしマサツグは魔王討伐という選択肢をあえて避ける。自分が英雄になるつもりなんて皆無だし、他の誰かが勝手に討ち取ってくれるだろう。
 この決闘にリュシア達ルーナ孤児院ファミリーが巻き込まれていたら話は別だが、名簿は白紙。そもそもあんな子供や自称女神のペット共を巻き込むはずもないだろう――と思う。
 マサツグは少々、異世界で目立ち過ぎた。知っている者は一部しかいないが、一度は世界を救っているのだ。だから自分が決闘をすることになってしまったのだと憶測する。

 だが魔王が何を望もうと、その通りに動く必要なんてない。勝手に決闘者だとか認定して拉致してきたやつの言いなりになるつもりなんて微塵もない。アレは明らかに信用出来ないタイプだし、今のマサツグの力量では優勝を狙うのも難しい。それに富にも名誉にも興味がない。もちろん願いにもだ。

 だから目立たないようにそこら辺に隠れて、決闘が終わるまで待つ。おそらく魔王を倒した時、この決闘は終わるだろう。
 マサツグに大それた正義感なんてない。こうして自分の身に危険が迫っているなら合理的に判断して、魔王の討伐を他人に任せる。なによりマサツグを動かすために重要な存在である家族の巣立ち――これがマサツグが他人に任せると決めた最も大きな原因だろう。

 今のマサツグには守るべきものがない。原動力を失った英雄は自分から動かない。

「あぁ……!きっとクウカは決闘の最中に屈強な魔物達から蹂躙されてしまうのですねっ!?」

 ――はずだった。

(なんだ今の声……)

 言葉の内容に反して何故だか嬉しそうにしている妙な女の声が聞こえた。
 蹂躙という言葉の響きは明らかに物騒なものなのに、どういうわけか危機感が欠如しているような謎のテンションだ。

「ぐふふ……。冥界の魔王に捕らわれたクウカはこのまま魔物の群れに襲われあられもない姿を晒されてしまいますぅ〜!」

 ――はぁ……。
 声の方へ駆け付けたマサツグは、とんでもない光景を見てため息をついた。
 たしかに女が言う通り魔物の群れは存在した。わかりやすいくらいにゴブリンらしい姿をした魔物達だ。簡素な防具を装備し、棍棒を手にした彼らからは知性の欠片も感じられない。

 だが――そんなゴブリン達が誰も女を襲わない。それどころかあまりにも気持ち悪い表情の女にドン引きして冷や汗すら垂らしている。

(何をしてるんだ、こいつは……)

 こんな意味不明な決闘と呼ぶのも烏滸がましいような状況を見て、マサツグは呆れ返る。


701 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:37:06 vmKKJCZk0
 一応手助けに来てやったつもりだが――どうやらその必要もなかったらしい。まあ声を聞いた時点で嫌な予感はしていたが、ここまでの大馬鹿者が存在していたことには流石のマサツグでも驚きを隠せない。もしかしたらシー以上のバカだ。

「ふざけたことを言ってないで、さっさと下がれ……!」

 もうなにがなんだかわからないが、とりあえずゴブリンは倒しておくべきだろう。マサツグが支給された刀を振るうとゴブリン達は一瞬にして全滅した。
 ――彼らの名はゴブリン突撃部隊。攻撃力だけは高いが守備力は皆無の存在だ。まあこんなにも為す術なくやられてしまったのは、女の痴態にドン引きしまくっていたことも大きいのだろうが。

「あぁ……。魔物達を討伐して新たな乱入者が……!もももしや、このままクウカも縛られて従順な奴隷にされるのですね!?じゅる……」

 妄想爆裂少女は下品にヨダレを垂らしながら意味不明な言葉を並び立てる。昔のマサツグだったらこんな変態は放置してゴブリン討伐をせずに避けただろうが、なんだかんだ助けてしまったのは家族達と絆を育んだ結果、心境の変化でも訪れたからだろうか。

「……さっさと離れるか」

 とりあえずゴブリン達は倒した。こんな変態と関わっても頭が混乱するだけだと思い、マサツグは早々と立ち去ることを選択する。ゴブリンを前にこれだけ性癖をさらけ出せるなら今後も大丈夫だろう。

「ま、待ってください」
「どうした、変態」
「へ、変態!?こここ、公衆の面前でクウカの恥ずかしいところを晒しあげて男の子の有り余る熱はそのまま……ぐふふ……」
「一人で勝手にやってろ。俺は先に行く」

 再びヨダレを垂らして妄想を垂れ流すドM少女を無視して、マサツグは立ち去ろうとする。
 なんというか本当にシーと似た何かを感じる。それでいてこの謎のテンションはアルノンの方が近い。マサツグは自分が知る中で特に頭のネジが外れている二人を思い浮かべた。要するに目の前のこの女は間違いなく頭のイカれたやつだ……!

「ど、どこに行くんですか……」

 だが変態女はおずおずとマサツグの後ろをついてくる。
 ――はぁ。やれやれ……。
 本来なら一人でどこかに隠れて決闘をやり過ごすつもりだったが、想定外の事態に遭遇した。ただの変態女ならこのまま放置したら良いと思っていたが、わざわざ着いてくるということは状況が理解出来ている証拠でもある――とマサツグは考えた。この女の性癖が歪んでいることは間違いないが、決闘で命までは落とされたくないのだろう。

「こ、こんな状況で放置プレイをするなんて、流石の鬼畜ぶりです……。ですが、クウカも死にたくはないです……!」

 死にたくない。生き物ならば誰もが持つであろう、当たり前の考えだ。それはこのドM少女も同じで、激しいプレイや様々な責めは好きでも死ぬことは嫌だ。歪んだ性癖ばかり目立つ彼女だが、こんな決闘に巻き込まれて普通に不安も感じている。

「わかった……。一人増えるくらいならまあいいだろう」

 一人の方が気は楽だが、もう一人くらい増えたところで大差ない。それに彼女の若干不安そうな目を見ると――何故だか見捨てられなくなった。
 別にこの女はマサツグにとって家族でもなんでもない。だがこんな目をしている相手を見捨てるのは、まるで昔の自分の親のようで――。

「ではクウカも一緒に行っていいんですか……?」
「やれやれ。一人は静かで気楽なもんだが、そればかりだと味気ないからな」

 家族が居なくなった後、一人きりで孤児院を過ごしたことを思い出す。
 家族同然の孤児達と過ごしたあの騒がしい日常が、マサツグは不思議と嫌いじゃなかった。――彼女達がいなくなって、味気ないと思ってしまう程には。


702 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:37:43 vmKKJCZk0
 ――マサツグが物思いに耽っていると、男性の叫び声が聞こえてきた。

「おじさんやめちくり〜!誰か助けて!!」
「ふざけんじゃねぇよオイ!誰が逃げていいっつったオラァ!」

 続いて男性の怒声が聞こえる。何事かと思えば、竹刀を持った男がランドセルを背負った歪な格好の気持ち悪い男を追っているではないか。
 マサツグは意味不明な現実に頭が追い付かなくなる。こればかりは彼が出会った女、クウカにも理解不能らしく困惑気味。だがその時、クウカの頭に天啓が――!

「も、もしや自分に似合わない服装で恥ずかしい思いをさせているのでしょうか?いつかクウカもドSさんに……じゅるり」

 ちなみにドSさんとは今の状況だとユウキではなくマサツグを指す。

「気持ち悪い妄想を垂れ流すな。俺にそんな趣味はない」

 歪な視線を感じ取ったマサツグはクウカの発言を一蹴して、男二人を見る。これはどう見ても厄介な状況だ。ランドセルの変質者を助ける義理はないが、あの竹刀の男が次は自分達に襲ってくる可能性も――

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 マサツグが思考を張り巡らせているその時、竹刀の男が遂にランドセルの男へ武器を振り下ろす。鈍い音が響き渡り、ランドセルの変質者が崩れ落ちる。
 このままだとまずい――マサツグはこの場を去ろうとするが、クウカは逆にあのランドセルを助けたいと考えていた。

 それは同じ変質者としてのシンパシーーーなどではなく、クウカの根はどちらかと言えば善性のものであるからだ。だがモニカやユウキがいるならともかく、自分だけではあの竹刀男に勝てないことも承知している。だからクウカはその場を動かず――微動だにせず虐待を眺めるしかなかった。

 だがその虐待は眺めるなんていう言葉が相応しくないほど、すぐに終わりを告げた。顔面目掛けて何発も竹刀で叩き、ランドセルの変質者はあっという間にその命を落としたのだ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて!!」

 それが彼の最期の言葉だった。マサツグとクウカに必死に助けを求めながら、男はその命を散らせる。
 懸命に助けを求めた変質者の末路を見て、流石のマサツグも心にモヤが掛かる。心底どうでもいい人間だし、どう見てもロクでもない変態だが――だからといってここまで虐殺される必要はなかったはずだ。

「ひで……」

 竹刀の男はランドセル男の死体を感慨深そうに眺めて、彼の名を呟く。それはあまりにも歪な光景で、マサツグやクウカに竹刀の男の気持ちなんて微塵も理解出来ない。理解しようとも思えない。
 何故なら彼は自分の手で虐殺した男の死体を見て、悲しそうにしているのだ。意味不明だし、あまりにも常軌を逸している。

 そして竹刀の男はその手の力をグッと強めると、マサツグとクウカへ向かって襲い掛かる。

「ちっ――。よくわからんやつだ……!」

 間一髪――マサツグが支給された刀でなんとか受け切る。
 首輪による制限や元から力が弱まっていたこともあり万全とは言えないが、それでも「守る」スキルは発動した。


703 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:38:04 vmKKJCZk0
 だが竹刀の男はマサツグの足を引っ掛けると転倒させ、そのまま彼の胴へ竹刀を振り下ろす。

「ド、ドSさん!――狙うならクウカを!」

 ――だが咄嗟に割って入ったクウカが竹刀による嵐のような攻撃を背中で受け止め、マサツグは大した傷を負わずに済む。
 たとえドMのクウカでも何発も手練の攻撃を受ければ精神的、肉体的に苦しい。竹刀の男は何故だかクウカのことが無性に苛立ち、苛烈に攻め立てる。

「……っ!何をしているんだ……!」
「ク、クウカたちヴァイスフリューゲル ランドソル支部のリーダーは……困ってる人を見捨てませんから……。それにさっきの人みたいにドSさんまで死んじゃうのは嫌です……」

 クウカは善性が強い少女だ。命を落とす可能性があると知っていながら、アクダイカンという魔物と戦ったこともある。それは彼女がヴァイスフリューゲル ランドソル支部のメンバーで、リーダーであるモニカが主な原因なのだが……。

 ヴァイスフリューゲル ランドソル支部――それはマサツグにとって馴染みのない言葉だ。だがクウカの想いはしっかりと伝わった。

 マサツグはクウカを――守りたいと思った。

 バ キ ッ
 その瞬間――男の竹刀が真っ二つに叩き折られる。

「……あ?」

 いつの間にか立ち上がり、強固な意志を宿した瞳でこちらを見ているマサツグを男は睨む。――竹刀こそマサツグの手刀にへし折られたが、男の殺意は衰えていない。

 だが譲れない想いがあるのはマサツグも同じ。身を呈してまで自分を庇ったクウカを守りたいという気持ちが、マサツグに力を与える。

 ――両者、一歩も譲る気はなし。
 必然的に己が肉体で決着をつけるまで、この決闘は終わらないだろう。

「け、喧嘩はダメだよ〜!変身!」

 ――決闘の場に相応しくない少女の声が聞こえるまで、マサツグと竹刀の男の二人はそう思っていた。
 だがピンクの杖を持った赤髪の少女という想定外の乱入者により、竹刀の男は流石に分が悪いことを察する。
 何故なら彼女が「お姉さん、大丈夫?治してあげるね〜」と言って杖を使うとクウカの傷が徐々に回復していったからだ。回復能力を持つ存在――RPGなどでいうところの僧侶が敵に加勢したこの状況は竹刀の男にとってあまりよろしくない。
 日本刀などがあれば話は別だが、今は竹刀すら壊れてしまった。男は自分の不利を察すると即座にランドセル男の死体とデイパックを掴み、その場を離れた。


704 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:38:21 vmKKJCZk0
 〇

「さっきは危なかったね〜」

 赤髪の少女――メグは竹刀の男が去った後、マサツグやクウカに自己紹介した。
 治癒能力については支給品による効果で、彼女自身は普通の日常を謳歌する少女だ。

「この杖で変身すると、僧侶さんになれるんだよ〜!」

 メグが少し自慢げに見せてきた支給品の名前はメグ専用ロッド。何故かピンポイントにメグを名指ししている不思議な武器にマサツグは首を傾げる。なんというか主催の陰謀のようなものを感じる気がしてならない。

「私の友達にマヤちゃんっているんだけど……。もしマヤちゃんに会ったら、変身させてあげたいなぁ」
「メグ専用なのに他人が使えると思ってるのか……」
「はっ!たしかにこの武器には説明書に私専用って書いてあるね。マヤちゃんやチノちゃん専用もあるのかな?」
「せ、専用ですか。い、いつかクウカもマサツグさん専用に……ぐふふ……」
(こいつはガキの前で何を言ってるんだ……)

 メグの前でも相変わらず妄想爆裂中のクウカにはマサツグも呆れるしかない。ちなみに呼び方が「ドSさん」から「マサツグさん」に変わったのは三人で自己紹介した結果そうなった。そもそもドSさんだと誰のことかわからず、紛らわしいとマサツグが強く抗議したのも大きな理由だ。

「専用?マサツグさんはクウカさんの武器なのかな?」
「馬鹿め、どう見ても違うだろ。このバカの言うことは気にするな」

 メグが変な誤解を招かないように注意しておく。クウカの発言はメグにとって色々と危うい。
 そしてマサツグは頭の中で情報を整理する。

 チマメ隊にラビットハウスに、ヴァイスフリューゲル ランドソル支部。メグやクウカとの自己紹介で様々なグループ名が出てきた。
 とりあえず彼女達には帰る場所があるらしい。そしてマサツグは逆に大切な家族を最近失った身だ。
 だがシルビィやアルノンもいるから別に帰る場所がないわけじゃない。孤児たちが巣立ったことを嘆くわけでもない。彼女達がちゃんと親の愛を与えられているなら、それで良い。

 とりあえずクウカには借りが出来た。メグはその幼さが孤児院の家族を思い出させる。

「――やれやれ。厄介事に突っ込むつもりはなかったんだがな」

 皮肉な話だが――この決闘が再びマサツグに守るものを与えた。守りたいと、思ってしまった。


705 : 守るべき新たな絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:39:14 vmKKJCZk0


 〇

 竹刀の男はマサツグ達から離れた後、ランドセル男の分のデイパックを確認していた。その中でも一際光る日本刀――これはなかなか使える。竹刀なんかよりもよっぽど信頼出来る武器だ。

「よーし。武器は手に入ったな」

 日本刀さえあれば相手が多人数でも立ち回れる自信がある。何故なら彼はある世界では剣聖とも呼ばれる男――別名、虐待おじさん。
 自分の名前すら忘れてしまった哀れな男だが、それでも愛する「ひで」の名前は覚えている。だから彼は虐待という彼なりの愛のカタチでひでを愛している。
 それはこの決闘でもあまり変わらない。だが法律が意味を成さないこの決闘場だからこそ、虐待の究極系――虐殺によって更なる愛を示した。
 ひでを虐殺した時、幸福感と悲しさがごちゃごちゃに混ざった感情が虐待おじさんを襲った。だが悲しむのなんて今だけだ――何故なら虐待おじさんは自分が優勝することで、ひでをゾンビとして蘇らせるのだから。

 虐殺をした感想は――最高の一言に尽きる。虐待以上に素晴らしい、最も愛を体現したものが虐殺だ。
 だからひでを蘇らせる時は何度も虐殺出来るようにゾンビにする。ゾンビならば、何度殺しても生き返るから。

「ひで……。早くまた会いたいな」

 繰り返す。虐待おじさんは本心からひでを愛している。それこそ家族のように。
 ただ愛し方がほかの人々と大きく違い、常軌を逸しているだけだ。


【直見真嗣@異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件(漫画版)】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:クウカとメグを守ってやるか……
1:リュシア達まで巻き込まれていないか、気掛かりだ
[備考]
「守る」スキルは想いの力で変動しますが、制限によりバランスブレイカーになるような化け物染みた力は発揮出来ません
参戦時期はリュシア達が里親に行ってから。アルノンとも面識があります

【クウカ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:こ、困ってる人を助けます……
1:ぐふふ……。クウカ、マサツグさんのことが気になります
2:モニカさん達はいるのでしょうか?
[備考]
頑丈です。各種スキルも使えますが魔力を消費します。魔力は時間経過で回復していきます

【奈津恵@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:メグ専用ロッド@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:みんなと家に帰りたい
1:チノちゃんやマヤちゃんもいるのかな?
2:マヤちゃんにこの杖、見せてあげたいなー
[備考]


【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:日本刀@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜4
[思考・状況]基本方針:優勝してひでを何度も蘇るゾンビとして蘇生して虐殺しまくる
1:ひでのために全員容赦なく殺してやるよオラァ!
[備考]

『支給品紹介』
【メグ専用ロッド@きららファンタジア】
奈津恵に支給。メグが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出す。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する他、固有能力が使える。変身中はきららファンタジアの『そうりょ』のメグの衣装に服装が変わる


706 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/10(金) 23:40:45 vmKKJCZk0
投下終了です
それとひでの死亡表記を忘れていました

【ひで@真夏の夜の淫夢 死亡】


707 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:22:21 9qPAH9JM0
投下します


708 : Break Down ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:22:50 9qPAH9JM0
――許さない、許さない。許しなどしない。

――あのブタ野郎も、ブタ野郎の犬も、あの売女も、あのゴミも。

――俺を虐げ、騙し、裏切った奴ら全員。

――全員、俺に潰されて無様にくたばれ。



○ ○ ○


空に、閃光と爆音が木霊する。
花火の如く弾け飛び散る、遠くから見れば神秘的な光景。
而して、その中心にあるのは人智を超えた攻守のせめぎ合いである。

片や、一見すれば人の身で空を飛ぶ青年がいる。
細身ながら鍛え抜かれた肉体、丸眼鏡の内に透ける眼光は揺るぎなき殺意を帯びて。
その男が、己に迫り来る光線の流星群を常人ではあり得ぬ軌道を描き避け続けている。

特筆すべきは、そのレーザーを自在に放射しているのが、一介の幼い少女であること。
栗色の髪と赫色の瞳が、同じく殺意の瞳を持って青年へと攻撃を仕掛けている。

致死の光線を避け続けながら、青年は少女へと肉薄する。
だが、少女もただ黙っているわけでなく、その華奢な身体には似合わず、その拳に光を纏わせ青年に殴りかかる。青年もまた同じく拳の連撃で応酬。

「あーたたたたたたたたたたっ!」
「やぁっ!」

拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打―――――。
正しく拳と拳の応酬、殴打の雨あられとも言わんばかりの連撃が繰り広げられる。
だが、拳による応戦において、青年のほうが一枚上手。少女の拳撃を間を掻い潜り、少女に必殺の一撃が迫る。
が、単純な運動神経での一歩上であるのが青年であるならば、魔力という異能の概念における操作は少女の方が一枚上手である。
すぐさま自身を中心とした魔力の放出、所謂セルフバーストを以て青年の身体ごと吹き飛ばす。

「ぬぅ?!」

吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるも当の青年には大したダメージはない。
むしろ次の少女の攻撃に備えている。
青年の読み通り、立て直しの僅かな時間で少女は巨大な光球を生成。

「かめはめ波!」

即座に両掌から黄金の波動を放ち、同タイミングで放たれた光球を相殺。
光塵を撒き散らし、再び爆音と閃光が木霊する。

「……俺の知っている魔法の体系とは全く違うな。」
「ただの人間のくせして、魔力も使わず魔物じみたパワーだなんて。」

小休止と言わんばかりに両者とも地面に降り立ち、言葉を呟く。
青年、野比のび太からすれば眼の前の少女の魔力は間違いなく未知のものであった。
もしもボックスで一度経験した魔法が常識化した世界とは全く違う、常識も方式も何もかも違う。

そして少女、元の世界で魔女と呼ばれたルナとしては、野比のび太のその常識外れの身体能力は間違いなく未知のものである。箒も魔法を一切使わず空を飛び、剰え上級魔法顔負けの威力を誇る攻撃を行っている。
魔女と呼ばれ人々に恐れられた自分顔負けの、文字通り化け物と言わざる得ない相手。


709 : Break Down ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:23:08 9qPAH9JM0
「それとも何? 私を倒すためだけに政府の連中がこんな人のカタチをした化け物生み出したっていうの?」
「……そちら側の都合は俺には分からんが。俺の力は……いや、あれはやつの筋書き通りだったのだろうな。」
「どういう意味?」

野比のび太の呟きに、ルナはほんの少し興味を持った。
あの目に、自分と似たような何かを感じて。

「……思えば、あの時から俺の運命は誘導されていたのだろうな。度重なる理不尽と不幸、超人と成り、復讐に墜ちて、挙げ句かつての友は地球を救うために俺を利用した? ふざけるな。」

間違いなく、それは青年にとっての怒り、憎しみそのものだ。

「……信じて、いたはずなのに。友達だと。」

掻い摘めば、彼は友達に裏切られた。それだけの話しだった。
野太い声ながらも、それだけは年相応の心情の吐露だった。それだけだった。

「……。」

少女は、少しだけ思った。
幼い記憶、まだ魔女が恐怖の象徴でなかった頃。
彼と共に、草原を駆けた優しい思い出。
だが、人間たちは、自分たちの村を焼き、家族を皆殺した。
なのに彼は、コローソは、人間(あちら)側に付いた。
少女ルナは、魔女となり、人間たちへの復讐を誓った。
その時ルナが、コローソがあちら側だった事に、何を思っていたのか。
それは、少女自身にも、わからないことであった。

「もしかしたら、私達は何処かで友達になれた未来があったのかもしれない。」
「奇遇だな、俺も同じことを思ったよ。」
「でも、全て手遅れ。――私は願いを叶えて、あいつらに復讐する。」
「残念だが、俺も叶えたい願いがある。お前と同じ、復讐……なのかもしれないな。」

過ぎたるは猶及ばざるが如し。もしかすればそんな優しい可能性もあっただろう。
全ては手遅れ、全てはあり得たはずの残滓。
どうでもいい事、青年と少女の掌に宿る力の奔流が、先端の第2ラウンドを告げようとして―――














「――ゴッド・フェニックス」










瞬間、黄金纏いし不死鳥の神炎が二人に迫っていた。


710 : Break Down ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:23:40 9qPAH9JM0
○ ○ ○



「凄まじいわ。」

「――――――。」

遠く離れた別の場所で。
白い衣装に身を包んだ、男とも女とも見える美顔の持ち主が、斯くも感心するように呟いた。
遠く広がる神の怒りとも言うべき炎の奔流を、覇瞳皇帝――カイザーインサイトはただ見つめていた。

その皇帝の隣にいる少女、一枚のカードをその手に持った、少女。
少女の瞳は光を灯してなど居ない。

「ただの木偶人形だと思ったけれど、少なくともあの子よりは使いようはあるわね。」

カイザーインサイトが少女、保登心愛と出会った際の第一印象は、「人形」であった。
言葉を投げかけても、虚ろな目でうわ言しか呟かない壊れた人形。
如何せん壊れていたのならどうでもいいとして、このまま殺してしまおうかと考えてはいたが。
彼女のデイバッグを少し拝見し、見つけた『ラーの翼神竜』というカード。

詳しい説明書でその効能及び代償を理解。
その試運転として彼女にそれを使わせた、ただそれだけの話である。
結果、威力は絶大。間違いなく戦力しては十分だし、使い勝手はある。
少なくとも、下手に刃向かってくるより、十分。

「試し打ちは済んだわ。行きましょう、心愛。」
「――はい、陛下。」

カイザーインサイトは、保登心愛の内情を、言葉巧みに聞き出した。
理想の姉の輝きに耐えきれず、逃げ出しただけだと。
そして自分の居場所など何処にもいなかったのだと。
聞き出せたなら後は簡単だ、適当に暗示と思考誘導を加えて、操り人形同然にした。
ついでにプリンセスナイトとしての力も少しは授けてやった。
ラーの翼神竜の代償で勝手に力尽きようがどうでもいい。どうせ壊れているのなら使い物にならなくなるまで利用すれば良いのだから。

「……都合が良いのか、悪いのか。何にせよ――都合は良いほうかもしれないわね。」

覇瞳皇帝は笑う。『彼』にとって、凡そこの催しは不愉快でもあり一種のチャンスである。
この世界において、彼女は支配者ではなく挑戦者の一人にすぎない。
だからこそ、彼女は、彼女が真に望む願いのために、数多の者を蹂躙し、滅ぼしつくすであろう。


【カイザーインサイト@プリンセスコネクトRe:Dive!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:優勝して、願いを叶える
1:壊れたこの子(保登心愛)は使い物にならなくなるまで利用する。
[備考]
※参戦時期は第一部第13章第三話以降
※覇瞳天星に関する制限は後続の書き手にお任せします

【保登心愛@きららファンタジア】
[状態]:操り人形、忠誠(カイザーインサイト)、プリンセスナイト(カイザーインサイト)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ
[思考]
基本:陛下に従う
1:―――
[備考]
※参戦時期は第二部五章第20節から
※カイザーインサイトによりプリンセスナイトとなりました。魔物の操作能力が使えるかどうかは後続の書き手にお任せします

『支給品紹介』
【ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ】
保登心愛(きらファン)に支給。三幻神と呼ばれる神のカードの内の一枚。
本来ならば古代神官文字を唱えなければ扱うことは出来ないが、このロワにおいてはその条件は撤回されている。
効果は2つ。己の生命力を消費することでの『ゴッド・フェニックス』の発動。
そして己の生命力を限界まで消費し神と融合することで可能とするラーの翼神竜の召喚。


711 : Break Down ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:23:58 9qPAH9JM0
○ ○ ○

「―――危なかった。」

荒野の大地に、所々から黒煙を上げて倒れる野比のび太の姿があった。
黄金の炎を、ルナも自分も巻き込もうとした神の裁きにも似た何か。
瞬時に逃げの行動を取ったが、それで多少巻き込まれてこのザマだ。
超人類となった自分ですらこのダメージとは、間違いなく今後の脅威と為りうる。

「結局、あの娘とは決着付かずか。」

先程戦った少女。名前も知らぬ少女。
いずれまた出会うのであれば、間違いなく敵として立ちはだかるであろう少女。
彼女もまた、自分と同じように撤退を選択した。その後はわからない。

「………一筋縄ではいかない、ということか。」

あの少女、そしてあの炎の主。強敵揃いというべき理不尽ばかり。
だが、その程度の理不尽は慣れた、かつて皆と冒険していた時と同じ様なものならば。

「だが、優勝するのは俺だ。優勝して―――。」

そう、優勝して、自分は願いを叶える。
あの裏切り者を、ドラえもんを殺さんがために。


【野比のび太@超人類】
[状態]:全身に火傷(中)、疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:優勝して、あの裏切り者を必ず殺す
1:あの娘とはいずれ雌雄を決する事になろう
2:あの炎は、一体何だ?
3:今は傷を癒やすために休息を取らせてもらう
[備考]
※参戦時期は第4話、スーパーのびー太になった直後




○ ○ ○


「……なんなの、あれ。」

そしてもう一つ、同じく野比のび太と激戦を繰り広げていた魔女ルナ。
彼女もまた、小さくもない傷を負い、ある場所に着地していた。

「どう考えても並の魔法じゃないし、さっきのあいつも知らないって顔してた。」

間違いなあの青年も先の炎に対して困惑と焦燥を浮かべていた。
つまりあれは第三者による横槍というのは明確。
一体何の目的か、それを考えるのは今じゃなくてもいい。

「………。」

思い浮かんでしまう、あの青年。
誰かに裏切られた、悲しみと憎しみの目。
ルナはそれを忘れることは出来ない。
自分も復讐のために生きてきたのだから。

「……ねぇコローソ。あなただったら、どうするの?」

思わず、彼の名を呟く。
懐かしの過去の彼、何処までも純粋だった彼は。
もし此処にいるならば、自分は彼を――。

「……。」

だから、今はそれを考えないことにして。
今はこの場から離れることにした。


【ルナ@コローソの唄】
[状態]:火傷(小)、ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品
[思考]
基本:優勝して、人間たちに復讐する
1:あの彼(のび太)や先程の炎の攻撃に関しては後で考える
2:もしコローソがいるんだったら、私は……?
[備考]


712 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/11(土) 15:24:08 9qPAH9JM0
投下終了します


713 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:37:17 mW3uMIq.0
投下します。


714 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:37:49 mW3uMIq.0
YOSAKIーーーーーー高知県のよさこい祭りから端を発した、踊りを主体とする日本の祭の一形態である。
wikipediaより引用。

「…一体、どうなってやがるんだ!?」

決闘という名の殺し合いに困惑の色を隠せない男…

「たしか、俺はうみねこ坐で映画を観ていたはずだったよな…?」

男の名は春日一番。
元東城会直系荒川組若頭。

「眠気に負け、途中寝ちまって…んで、優勝したらデュエルキングとか、冗談見てぇなことをいいやがって…」
自分の所属していた組の息子荒川真斗の目を覚まさせるために拳を交え一連の騒動に決着をつけた一番は異人町に留まることを選択した。
ある日、馴染みのあるうみねこ坐の支配人にお勧めされた映画を観ていた一番は睡魔に負けて寝てしまった。
目が覚めるが、サングラスをかけた男が現れて現在に至る。

「…っといけねぇ。とりあえず、一服できそうな場所を探さねーと…」
とりあえず、思考を深めるためにも手ごろな休憩場所を探す春日。

「おっと!…あれは、ハンバーガー店か……」
(バーガーワールドって店か……聞いたことないが、スマイルバーガーとは違う系列の店なんだな……)

走っていると目の前にハンバーガー店にたどり着いた春日。

「ちょっくら、入ってみるとするか」
もし、食料があれば、ラッキーという意味もあり、入店する。

「…ん?なんだ?この音」

店内のとある席から音が聞こえーーーーー

「いいから、もっとこのグラスに注げってんだろ〜〜〜!」

「!!??」
(おわっ!)

なんと、女の子が拳銃を手に持つ男に脅されていた。
女の子は半泣きで男のグラスに酒を注いでいた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「雑誌に書いてあったぜぇぇ……オレは今、最高の星回りだってな〜〜〜。ヒョ―――、やっぱオレってついてる―――っ」

男の名は■■■■。
とある罪によりドミノ刑務所に収監されていた。
囚人ナンバー777
そして、男は死刑囚でもある。

「う……うう……」

死刑囚777の持つ拳銃に脅されている少女。
少女の名はハナ・N・フォンテーンスタンド。
ニュージャージー州プリンストンから日本の由比浜学園中学へ転校してきた中学生。

憧れの日本の地で”よさこい”を踊ることを夢見る少女は、ハ・デスの手によって決闘者の一人として選別された。
ふと、目についたバーガー店へ入店したまではよかったが、そこへ同じく入店してきた死刑囚777に拳銃で脅され、隣で酌をさせられている。

「タバコも吸えて、酒も浴びるほど飲める。優勝すれば、オレの死刑も取り消しにできるってわけだろぉぉぉ〜〜。最高すぎて笑いが止まらないぜぇぇぇ〜〜〜」

上機嫌で酒を……ウォッカを飲む。
それに加えて、ムショでは当然吸えない煙草(しかも、運のいい日にぴったりのラッキーストライプ)が吸えている。
直ぐに2本目が吸えるように近くに火のついたライターが置かれたまま。
この決闘に勝利すれば、”どんな願いでも一つ叶えられる”
つまり、死刑という確定した罪を取り消せるということだ。
自身の思い描くバラ色の人生が、もうすぐ手に入る。
死刑囚777はニヤニヤが止まらない。

「死刑を取り消しって……そんなこと許されるわけないデスよ……」

男の呟きにハナは反論してしまう。
すると……

「うるせえ、だまってろ!!」
「あう!?」

バシィィィィン

死刑囚777は、ハナの肌白い頬に強くビンタをした。
ハナは小さな悲鳴を上げる。

「……ったく、人が上機嫌で語るときは横やりを入れるもんじゃねぇぜ!」
「……おい」
「あ?……うげぇぇえ!!」

振り向くと同時に強烈に殴られ、吹き飛ぶ囚人777.
それと同時にウォッカが全身に降りかかる。
まさに”浴びる”ほど

「女に手を上げてるんじゃねーよ!」
「アナタは……」

打たれた頬を押さえながら、ハナは自分の前に現れた男に名を尋ねる。
男は、鼻をこすると、少年漫画の主人公のように名乗る。

「オレか?……へへ、勇者様。……なんつってな」

☆彡 ☆彡 ☆彡


715 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:38:21 mW3uMIq.0

「勇者……」
「勇者ぁぁぁ〜〜〜?へっ、ムショ暮らしのオレさまの眼はごまかせねぇぜ」

一番の勇者発言に目を輝かせるハナとそれを訝しむ囚人777

「オレと同類の人間。そしてチンピラ……ってわけじゃねぇよな。大方、極道だろう」
「……元な」

囚人777の指摘。
一番は全てを否定せず訂正させる。

「へ、破門された口ってか。だが、元ヤクザも勇者も”これ”には敵わねぇよな」
「……」

ニヤニヤと一番に獲物を見せつける。
一番は険しい顔を崩さない。
沈黙は肯定を意味している。

「ゆ……勇者さん!」

ハナはぎゅっと一番のスーツの袖を握る。
ハナの不安が伝わると、一番は……

「……大丈夫。オレを信じてくれ」

背中越しに聞こえる、自信満々の声。
それが、ハナを絶望に染まるのを防ぐ光。

「ハハハハハ!この一瞬でゲームオーバーだ!直ぐにそこの女(アマ)も追わせてやるからな〜〜〜。勇者様よぉ〜〜〜!!!」

―――ググ

「なぁ……お前、馬鹿か?」
「……あ?命乞いか?無様な勇者様だな」

一番の言葉が命乞いだと思い、せせら笑う。

「その酒、大方ロシア産のウォッカだろ?そんなアルコール度数高めの酒が服にかかっている中、拳銃なんかぶっ放したら傍に置いてあるライターは確実に落ちる。火を見るよりあきらかじゃねーか」
「……あ!」

そう、全身をウォッカで浴びたその身体は今や、歩く爆弾。
そして、いつの間にか、ライターはテーブルから落ちるギリギリのところに置かれていた。
死刑囚777は指摘の意味を察し、動揺する。
しかし、もう遅い。
大きく口を開いてしまったため……

「ハ……ハハ。だ……大丈夫だ……ぜ。オ……オレはついて……」
(アワワ……ワワ……ヒ…………)

咥えていた煙草はそのまま床へ……

「ファイヤ〜〜〜」

死刑囚は紅蓮の炎に包まれ、死亡した。
ちなみに日本での死刑は絞首刑で公式に火刑に処している国は存在しない。
魔女狩りのイメージが強い火刑は残虐な死刑であり、また”現世より完全に消滅させる”という宗教的な観点からも禁忌されている火刑。
死刑囚777はその肉体を完全に消滅させるまでその炎は残り続けた……

【死刑囚777@遊☆戯☆王 死亡】

☆彡 ☆彡 ☆彡


716 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:38:56 mW3uMIq.0

あれから、互いに自己紹介を交わし……

「……」
「大丈夫。ハナちゃんが気に病む必要はねぇよ」
(っても、そうはいかねぇよな……)

「……ハイ」

一番はハナを気遣い、ハナも一番の気遣いに理解する。
しかし、元極道の一番とは違い、ハナは”よさこい”が好きなだけの女子高生。
人の死は否応なしに落ち込まされる。
そこで一番は行動に移す。

「……よ!……と!……そりゃぁ!」
「ア……アニキ?」

突如、踊り始めた一番。
喧嘩で身につけた職業ダンサーの経験を活かしたダンスでハナを元気づけようとしたのだ。

「ところ……で、ハナちゃんの言っているよさこいってのは、こういう踊りなの……かい?」

一番はあえてハナに尋ねる。
目的はハナによさこいを踊ってもらう為。
そして、その目論見は成功する。

「……クス。こう踊るんですよ」

ハナは苦笑すると、一番に踊り方を披露する。

「〜〜〜〜〜♪」
「……」

(素敵な笑顔、長いまつ毛、大きな瞳、小さい身体に高くてきれいな声だ…)

一番はハナの顔を見つめる。
その視線に気が付くと、ハナも行動に移す。

「それでは、イチバンさんも踊りましょう!」

「お…おい」
そういうと、ハナは一番の手を掴み畳の上で周囲を周る。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「…ふぅ。…どうでしたか?」
「…悪くねぇ。最高だったぜ」
笑顔でハナに答える一番。

「よかったデス♪…ところでイチバンさんは、どうしますか?男性が言っていた通りにデュエルキング……優勝を目指すんデスか?」
「…そうだな。逆らえば、この爆弾首輪で首をドッカーンと刎ねられて死んじまう。正直、死にたくねぇな…・」
「……」
ハナは一番の言葉を黙って聞いているーーーーー

「けどよ、あの男の言う通りにしちゃあ男がすたるってもんだ!それにあの磯野の背後にいる冥王…勇者が退治しねぇとな?」
そう……一番は怒りに体を震わせる。

人の命を玩具感覚に扱うハ・デスにケジメをとらせる。
一番はハナに自身の答えを伝える。

「イチバンさんはJapaneseサムライデス♪ カッコイイです♪」
一番の答えにハナは笑顔を見せる。

「おうよ!春日一番という人間は荒川の親っさんから教わった度胸とドラクエの勇者から教わった勇気から出来てるんだからなッ!」

そう。それが春日一番という男だ。

「ねぇ、イチバンさん」
「ん?どうした」

「私も死にたくはないデス…でも、殺し合いに乗ったらもう二度とよさこいを踊ることはできないと思うんデス!だから私も抗います!」
ハナも自らのケツイを一番に語るーーーーー

「そんじゃあ、細長男の企み、一緒に阻止すんぞッ!ハナちゃん!」
「はいデス!アニキ!」

「…ハナちゃん…兄貴はよしてくれ……」

【春日一番@龍が如く7】
[状態]:健康 ジョブ:フリーター
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~5(自身と死刑囚777)
[思考・状況]
基本方針:磯野及びにハ・デスにケジメをとらせる。
1:ハナちゃんとハ・デスの目論みを打開する

※最終章クリア後
※デリバリーヘルプは使用不可能です。
※会社経営で株価1位になり、サブストーリーをクリアしています。
※取得しているジョブのスキルや他のサブストーリーの進行度などは後続の書き手様にお任せします。


717 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:39:08 mW3uMIq.0

【ハナ・N・フォンテーンスタンド @ハナヤマタ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:生きて帰るためにアニキと行動を共にする。
1:勇者兼アニキ(一番)と行動を共にする
2:えー…いいじゃないデスか♪アニキって響き私はスキです♪
※参戦時期は原作終了後

※死刑囚777のランダム支給品の一つニューナンブM60@遊☆戯☆王は死刑囚と共に燃えて使えなくなり放置されています。


718 : オラオラぁぁ騒ぐとこの女(アマ)ぶっ殺すぜぇぇぇ! ◆s5tC4j7VZY :2022/06/11(土) 20:39:22 mW3uMIq.0
投下終了します。


719 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 22:59:35 e/btj9dw0
投下します


720 : 手札抹殺 ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:00:14 e/btj9dw0
「はぁはぁ……」

 会場のどこかで、一人の男が必死の形相で疾走している。
 爽やかな男前で、筋肉もガッチリした男だ。

 彼の名前はゆうさく。淫夢ファミリーの一人である。
 ACCEED所属のホモビ男優で、淫夢厨、ガチホモの双方から人気がある存在だ。
 リアルでは結婚し、一児の父でもあるので、そういう意味では女性人気があると言ってもいいだろう。  
 そんな男が息を切らせながら、何度も後方を確認しつつ、何かから逃げていた。

 ビンビンビンビンビンビンビン……

 ゆうさくの後方から不可思議な音を立てて彼を追い掛けているのは、一言で言うなら巨大な蜂だ。
 大きさは優に五十センチを超え、それだけで尋常の存在でないことがうかがえる。
 しかし、この蜂の一番おかしい所は、ズバリ顔だ。

 そう、蜂の顔面はなぜか、今追われているゆうさくと同じだった。

 この蜂の名前はスズメバチ。
 2016年頃にニコニコ動画で一大ブームを作り上げた動画『スズメバチに刺されるゆうさく』に登場するスズメバチである。
 動画の内容はスズメバチがゆうさくがスズメバチに刺されて死ぬだけの簡単なものだが、短いながらも強烈なインパクトを残し、幾多もの派生動画が生まれた。

、だがそれは、動画がヒットするたび、ゆうさくは死に続けていたということでもある。
 いくら彼があらゆる方面から人気が出るほど性格がよくても、嫌になるのは必然。
 殺される側からすればトラウマになってもおかしくない。
 事実、彼は今もまたスズメバチに殺されようとしていた。
 
 しかしこれは決闘(デュエル)という名の殺し合い。
 ゆうさくの敵はスズメバチだけではない。
 そのことを彼は忘れていた。

 ドゴォォン

 いきなりどこからか発砲音が聞こえたかと思うと、ゆうさくの視界に銃弾が入り込む。
 その銃弾は彼の眼前を横切るかに見えたが、なんと銃弾が魔法の様に曲がり彼の額に向かってきた。

 突然曲がる銃弾に対処する術をゆうさくを持たない。
 彼にできるのは、せめて少しでも遺言を残す位だ。

「俺の命壊れちまうよ……」

 悲鳴のような言葉が聞き届けられることなく、ゆうさくの額に銃弾は貫かれ、彼の命はあっさり終わりを告げた。

【ゆうさく@真夏の夜の淫夢 死亡】


 一方、いきなり獲物が死亡したスズメバチだが、こいつにそんなことで動揺するほどの知能はない。
 こいつはただ、視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとするだけだ。

 ビンビンビンビンビンビンビン……

 ゆうさくを追いかけていた時と同じ音を響かせながら、スズメバチはただ飛び回る。


【スズメバチ@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:参加者を刺す
1:ビンビンビンビンビンビンビン……
[備考]
※視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとします。視界に入らない限りは何かしようとは考えません。
 刺されれば毒耐性がない限り即死します。


721 : 手札抹殺 ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:00:43 e/btj9dw0





「行ったか……?」

 ゆうさくが死亡し、スズメバチが飛び去った後、一人の少年が警戒しながら物陰から姿を現した。
 左腕にはデュエルディスクを装着し、右手には拳銃が握られている。

 彼の名前は南雲ハジメ。
 ゲーム会社の社長である父と、少女漫画家の母を持つ高校生である。
 彼はつい最近まで、本人視点では平々凡々とした日々を過ごしていた。
 しかしある日、彼はクラスメイトと共に剣と魔法の異世界『トータス』に召喚されてしまう。

 トータスで最初に出会った者曰く、ハジメ達は人間を救うために神が呼び出した神の使徒だそうだ。
 その言葉に嘘はなく、ステータスを調べれば誰もが凄い能力を持っていた。
 南雲ハジメ以外は。

 身体能力は人並みで、能力も代えの利くものでしかない。
 これにより、彼は周りから一部を除いて露骨に見下されることになる。

 それでも訓練し、身体能力は一般人よりはマシになったころ、クラスメイト全員でダンジョンに訓練に行くことになった。
 オルクス大迷宮という、全百層で構成された地下ダンジョンだ。
 上層にいるモンスターは大したことなく、下層に行くにつれてモンスターが強くなる仕様である。

 そのダンジョンの上層で訓練が終わるはずだったが、クラスメイトの一人が罠にかかり一気に下層まで降りることになってしまう。
 更にそこで強力なモンスターに襲われ、一行は絶体絶命のピンチに陥った。
 紆余曲折の末、ハジメがモンスターを足止めすることで事なきを得かかるが、クラスメイトの一人の裏切りで、彼はオルクスの更なる下層へと叩き落されることになってしまった。

 そこにこの殺し合いだ。
 冥界の魔王を名乗る怪物の言葉を、ハジメはあまり疑わなかった。
 地球とは違う異世界の存在を知ってしまうと、カードから生まれた世界があるかもしれないし、冥界が実在するかもしれない。
 そして何より――

『この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い』

 ハ・デスはもしかしたら、故郷に帰る術を持っているかもしれない。
 それだけでハジメの心には希望が灯る。
 だから彼は殺し合いに乗った。反逆ではなく、恭順で帰還を選んだのだ。

 本来なら、南雲ハジメは殺し合いに乗るような性格ではない。
 少なくとも、人を傷つけて喜ぶ人間はなかった。

 だが殺し合いという極限状況と、願ってもない故郷への帰還。
 そして裏切られたというショックが彼を変えた。

 別に、クラスメイトから好かれていると思っていたわけでは無い。
 命の恩人になって感謝されたかったわけでもない。
 だが、あの状況で殺されかかるほど憎まれているとは想定いなかった。

 この時、ハジメはこう思った。

 どうしてこんなことに。
 なんで僕がこんな目に。
 誰が悪い?

 神か。
 ベヒモスか。
 それとも、僕を裏切ったクラスメイトの誰かか。

 いや、そんなことはもうどうでもいい。
 裏切り者がどう扱われようが、トータスがどうなろうが知ったことか。
 僕は帰る。
 地球へ、故郷へ、家族の元へ帰る。
 絶対に。
 何を切り捨ててでも、どんなことをしてでも。

 その決意を固めながら支給品を調べてから他の参加者を探していると、何やら怪物に追われている成人男性を発見した。
 そこでハジメは支給品の試運転を兼ねて、その男性を殺害した。

 なお、ここでゆうさくだけでなくスズメバチを殺さなかった理由は、ハジメが単にスズメバチを参加者ではなくNPCと勘違いしたからである。

 そしてその得物は今、ハジメの手の中にある。
 だけど次の瞬間、彼の手からその銃は消失した。

「本当に出たり消えたりするんだ。このスタンドって奴」

 感心したように言葉を零すハジメ。
 そう、さっきの銃はただの銃ではなくスタンド『皇帝(エンペラー)』である。
 本来の所有者は別人だが、特別なDiscに封じ込められた状態で彼に支給されたのだ。


722 : 手札抹殺 ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:01:09 e/btj9dw0

「となると、こっちのカードデッキにも何か意味があると見たほうがいいよな」

 そう言いながらハジメは左腕に装着したデュエルディスクとデッキを見つめる。
 とりあえず装着しただけで、デッキの詳しい内容もカードのルールも把握していないが、説明書きを見る限りTCGのデッキであることは理解していた。
 少しだけデッキについての説明書きもあったが、どうやらこれは手札がゼロになった時に真価を発揮するもののようだ。
 通常、TCGは手札が潤沢なほど強いのが常だが、どうやらこれは逆らしい。
 ルールも知らないカードゲームのデッキな上、しかもそんな特殊なものを支給しないで欲しい、というのが彼の紛れもない本音だった。

「それにしても……」

 とはいえ仕方ない、とばかりに割り切りながら、ハジメが自分が殺した男の死体を見る。
 彼は何も感じなかった。
 怪物を殺したことはあっても、人間を殺したのはこれが初めてなのに。
 どんなことをしてでも願いを叶えると決意したからなのか、案外元から気付かなかっただけでそんな奴だったのかもしれない。

「どっちでもいいか」

 ハジメはここで思索を止めた。
 人殺しに何も感じない理由もまた、今の彼にはどうでもいいことだから。

 そしてハジメは死体が持っているデイパックを奪い、歩き始めた。
 今の目的は腕にあるデッキに慣れること。
 ならば適当な場所に入り、少し一人回しをしてみよう、と彼は考えていた。


 罪もない人間を殺して、その死体を漁る様はまさしく鬼畜外道。
 今まで持っていたものと、本来の未来で手に入るはずだったものを全て捨て、南雲ハジメはただ一つの願いの為に突き進む。


【南雲ハジメ@ありふれた職業で世界最強】
[状態]:健康
[装備]:皇帝(エンペラー)のスタンドDisc@ジョジョの奇妙な冒険、鬼柳京介のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王5D's
[道具]:基本支給品、ゆうさくのデイパック(基本支給品、ランダム支給品1〜3)
[思考・状況]基本方針:優勝し、地球に帰る。
1:まずは皇帝(エンペラー)と支給されたデッキに慣れる
[備考]
※参戦時期はオルクス大迷宮65層から落下してから、真のオルクス大迷宮で目覚めるまでの間。
※スズメバチ@真夏の夜の淫夢 を参加者ではなく、NPCだと思っています。


※会場のどこかにゆうさくの遺体が放置されています。


【皇帝(エンペラー)のスタンドDics@ジョジョの奇妙な冒険】
南雲ハジメに支給。
ステータス【破壊力/B スピード/B 射程距離/B 持続力/C 精密動作性/E 成長性/E】
拳銃型のスタンドで、弾丸もスタンドなのが特徴。
弾道も操作できるが、視界から外れると操作が利かなくなる。


【鬼柳京介のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王5D's】
南雲ハジメに支給。
自身の手札を零にして行うハンドレスコンボをメインとするインフィルティデッキ。
地縛神は入っていない。


723 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:02:04 e/btj9dw0
投下終了です
続いて以前、辺獄ロワに投下したものを流用、修正したものを投下します


724 : この世界がゲームではないと彼だけが知らない ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:02:36 e/btj9dw0
「OK。まずは状況を整理しよう」

 俺は男子高校生の陽務楽郎。
 趣味はゲーム。ゲーム内のHNは本名をもじったサンラクで統一するタイプ。
 主にクソゲーが好みだ。TVでやるコンシューマゲームが過去となり、VRゲームが主流となった今は結構なクソゲーが豊富である。
 いや、コンシューマ時代にクソゲーが無かったとは思ってないが、そのあたりの時代のことはほぼ知らないんだよ俺。昔のことだし。

 それはともかく俺は数時間前、『フェアリア・クロニクル・オンライン』通称フェアクソと呼ばれるゲームをクリアした。
 盛りだくさんのバグに理不尽な敵の攻撃、ポンコツすぎる味方AIに腹立たしさしか生まないヒロインと、とんでもないクソゲーだった。
 あまりにクソ極まりなさ過ぎて、クソゲーハンターを自称する俺でも燃え尽き症候群にかかり、次やるゲームが思いつかないほどに。

 という話を行きつけのゲーム屋の店主さんにしたら、いっそ逆の神ゲーをやったらどうかと勧められた。
 それに乗って購入したのが『シャングリラ・フロンティア』だ。通称シャンフロという、世間で大流行の神ゲーだ。

 とりあえず起動し、クソゲーに毒されすぎてるのかキャラメイクで一々感動してしまいつつも、気合入れてキャラメイク開始。
 その結果、半裸に鳥頭の覆面を被った二刀流の剣士が出来上がったのだが……まあいいや。
 そしていよいよゲームスタート! といったところで

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

 知らない男と、ボスモンスターみたいな奴が殺し合いを命じてきた。
 あれ? シャンフロってそんなゲームだっけ? と思っているといきなり同い年位の奴が首輪で殺された。
 俺はまあいいけど、コンプライアンスとか大丈夫なのか? と疑問視しているうちに俺は別の場所に転移していた。

「やっべ、全然状況分かんね」

 俺も詳しく調べたわけじゃないけどシャンフロって確か、SF要素もある剣と魔法のファンタジーなVRMMORPGだったはず。
 決してPvPがメインの幕末や鯖癌みたいなのではない。
 まさか幕末みたいに、表向きは和気藹々としているように見せて、その実壮絶に殺しあう系のクソゲーだったのだろうか。
 いや、それならいくらなんでも神ゲー扱いされる訳ない。

「しかもメニュー画面でないし」

 様子がおかしいから、始めたばっかりだけど一旦ログアウトしようと思ってすらそれもできない。
 仕方ないのでとりあえず支給されたデイバックを調べると、中には一応武器はあった。
 のはいいけどこれ――

「ハリセンじゃねえか……」

 しかも妙にステが強い。いや、ネタ武器が強いのは割とよくあることだけども。
 問題は、どう考えても初心者がログボで手に入れていい代物じゃないということだ。

「しょうがない、とりあえず他の人探して聞くか」

 シャンフロは神ゲーだ。便秘と違って過疎ってることはまずないだろ。
 こうして、俺は他のプレイヤーを探すことにした。


 ……大丈夫だよな? いきなり「天誅!」とかされないよな?


【サンラク@シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜(漫画版)】
[状態]:シャンフロアバター、戸惑い(大)
[装備]:ハリセン@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:現状を知りたい
1:とりあえず他のプレイヤーを探す
[備考]
※参戦時期は1話にて、シャングリラ・フロンティアにログインした直後です。
※この殺し合いをシャングリラ・フロンティアのイベントか何かだと思っています。
※アバターのHPが0になるか首輪が爆発すると、主催者に確保されている陽務楽郎本体も死亡します。

【ハリセン@テイルズオブシンフォニア】
サンラクに支給。
装備すると斬り攻撃力850、突き攻撃力750、命中30、幸運20上がる双剣。
外見はふざけているが、シナリオ終盤のイベントで手に入る武器とタメを張れるレベルに強い。


725 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/11(土) 23:03:01 e/btj9dw0
投下終了です


726 : ◆ytUSxp038U :2022/06/11(土) 23:38:19 l1jen7sY0
投下します。


727 : ひとりぼっち ◆ytUSxp038U :2022/06/11(土) 23:42:01 l1jen7sY0
「意味分かんない……」

呟いた言葉に全てが集約されていた。
何故自分がここにいるのか。
何故決闘とかいう意味不明なイベントに巻き込まれたのか。
何故、こんな目に遭わねばならないのか。
水波レナには何一つとして分かりようが無い。

「ほんっと…意味分かんないんだけど!何が冥界の魔王よ!ダッサ!いい年こいて恥ずかしくないわけ?」

こっちはそれどころじゃ無いのだ。
マギウスの翼からの脱走だのドッペルシステムの暴走だの、ただでさえ頭がパンクしそうな問題が山積みだというのに。
あんな気色の悪い男どもの茶番に付き合っているほど暇ではない。
苛立たし気に水色の髪を掻き、何時の間にやら傍にあったデイパックを睨みつける。

「大体何よこれ!こんなダサいの背負えとか冗談じゃないっての!名簿が見れるとか書いてたくせに見れないし!それに…」

それに、続けようとして言葉に詰まった。
デイパックの中身を確認した時、食料やタブレット以外の物を見つけた。
参加者へランダムに渡されるアイテム。
レナに支給されたのは、爆弾。
精巧に似せたレプリカだとかではなく、投げれば爆発する本物の武器。
映画の中でくらいしか見た事のないソレは、やけに冷たく感じる。

「っ……!」

嫌でも最初の光景が思い起こされる。
不良っぽい少年の首から上が吹き飛び、紅葉みたいな髪型の少年が悲痛な声を上げていた。
魔法少女なんてやっていれば命の危機に陥る事は珍しくも無い。
けれどあんな風に、人が殺される瞬間を見るのは…。


728 : ひとりぼっち ◆ytUSxp038U :2022/06/11(土) 23:42:55 l1jen7sY0
「ほんとに…何なのよ…!」

最後の一人になるまで決闘は終わらない。
死にたくは無いが、だからって人殺しはしたくない。
元は魔法少女だった魔女を退治するのとは違う。
本田と呼ばれていた少年のように、生きた人間の命を奪うと言う事だ。
だったら自分以外が死ぬまでどこかに隠れているという手もあるが、いざ実行に移せるほど他人の命を軽く見ている性根でもない。

デュエルキングの地位もお金もいらない。
だけど、どんな願いも叶えるというのには少しだけ心を揺さぶられた。
どうせ適当な事を言って参加者を騙していると思っているが、キュゥべえのように本当に願いを叶える力があるのではと考える自分もいる。

もしも、もしも本当に願いが叶えられるのなら、かえでを元に戻す事も可能ではないのか。
ドッペルが暴走し隔離されたままの少女を助ける事だって出来るかもしれない。
だがその為には勝ち残るしかなく、そもそも一方的に爆弾付きの首輪を填めて来るような輩が約束を守る保障も無いのだ。
かえでを助けるのも、自分が生き延びるのも、レナにはどうしたら良いか分からなかった。

「いろは……」

もしいろはがここにいたら。
暴走したかえでと戦った時のように、自分を奮い立たせてくれるような言葉を掛けてくれただろうか。
と、直ぐに苦虫を噛み潰したような顔となる。
こんな馬鹿げたイベントに巻き込まれていい筈が無いのに、よりにもよって自分はいろはが居てくれたらと考えてしまった。
身勝手な己への嫌悪で心が余計にグチャグチャになっていく。

「どうしたらいいのよ……」

ももこやいろはが一緒なら、こんなに悩まずに済んだのだろうか。
自分のように巻き込まれては欲しくない。だけど一人でいるのは、どうしようもなく不安だった。


【水波レナ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:精神疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、グレネード×10@メタルギアシリーズ、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:死にたくないけど、誰かを殺したくもない。
1:どうしたらいいの…
2:ももこやいろはも巻き込まれてるのか気になる。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン4話、隔離施設でみたまとの会話後。

【グレネード@メタルギアシリーズ】
爆風と破片で敵を殺傷する手榴弾。
安全レバーが解除されてから数秒後に爆発する。


729 : ◆ytUSxp038U :2022/06/11(土) 23:43:30 l1jen7sY0
投下終了です。


730 : ◆ytUSxp038U :2022/06/12(日) 19:55:00 2mCY8mY60
投下します。


731 : 復讐するはオレにあり ◆ytUSxp038U :2022/06/12(日) 19:57:18 2mCY8mY60
遠ざかって行く青年の背中を黙って見送る。
何か声を掛けるべきかと思い口を開きかけるも、肝心の言葉が見つからない。
黙っている間に空いての姿は完全に見えなくなった。
残された金髪の少女、深月フェリシアの胸中にはモヤモヤとしたものがへばり付いていた。

「あークソッ!」

苛立ちを露わに小石を蹴飛ばしても気は晴れない。
何故自分があったばかりの他人に、こうも心を乱されねばならないのか。
深く考えた所で、あの青年に何かしてやれる訳でもないというのに。
一人で傭兵稼業をやっていた時には抱かなかっただろう悩みだ。
あの頃は自分一人の面倒を見るのでいっぱいいっぱいだった。

磯野とかいう胡散臭いグラサン男が大声を出し、その直後に見知らぬ地へ飛ばされ、深く考えるより先に襲われた。
ガスマスクを被った黒づくめの集団がフェリシアを見つけるや否や、奇声を上げて殴りかかって来たのだ。
当然こっちも魔法少女に変身し応戦、数は多いが力は魔女やウワサに比べると大した事ない。
今更苦戦するような相手でもなく殲滅は容易いと判断。

ハンマーを軽く振るって蹴散らしている最中だ、あの青年が現れたのは。

やけにゆっくりと近付いて来るものだから、最初は焦ったものだ。
離れてろ馬鹿、巻き込まれても知らねえぞ。
そんな風に言って遠ざけようとした時気付いた。
昏い表情でありながら、目だけが異様にギラついている顔。
青年の瞳に宿るのが何なのか、フェリシアには酷く見覚えがあった。

自分自身を壊しかねない憎悪。
奪われた怒りを原動力に生きる、復讐鬼の目だ。

それに気を取られ得物を振るう手が止まり、しかしフェリシアの様子を気にする素振りも見せず青年は動いた。

――『変身…!』

腰に巻いた機械らしき物体を操作すると、一瞬で青年は姿を変えたのだ。
青年の憎しみをそのまま纏ったような、黒い装甲の戦士。
呆気に取られるフェリシアを尻目に、あっという間に黒づくめ達は全滅。


732 : 復讐するはオレにあり ◆ytUSxp038U :2022/06/12(日) 19:58:47 2mCY8mY60
その後、警戒し合ったものの双方殺し合いに乗る気は無いと確認。
軽い自己紹介の後、青年から一つだけ質問が飛び、首を横に振るともう話す事は無いとばかりに背を向けた。
他者を寄せ付けようとしない後ろ姿に思う所はあったが、結局何も言えずに終わり今に至る。

「あいつ…やっぱり殺すのかな……」

青年が聞いて来たのは、ある男に関する情報。
参加者と出会ったのは青年が最初だった為知らないと答えたが、何故その男を探すのかは簡単に察せられた。
きっとそいつが、青年から大事な者を奪った相手。何を犠牲にしても復讐せねばならない存在なのだろう。
だとすれば止める事は出来ない。
フェリシアもまた両親を殺した魔女への復讐に生きて来た魔法少女。青年の怒りは十分理解できる。
とはいえ今のフェリシアはもう、以前ほど魔女への憎しみは持てなくなっている。
いろは達と出会い、魔女の正体が魔法少女の成れの果てと知ってしまったから。

あの青年がこの先どうなるかは分からない。
復讐を果たしたとして、その後マトモに生きられるのだろうか。
自分にとってのみかづき荘の皆のような、そんな存在は青年の周りにはいないのか。

(いろはだったらどうすんのかな…)

フクロウ幸運水の一件でいろはと出会ったのが切っ掛けとなり、今の自分がある。
けれど最近のいろはは前のような元気が無い。
当然だ、エンブリオ・イヴを巡る戦いで妹と友達を失った。
いろはだけでなく、やちよと鶴乃も友を失っている。
フェリシアもまた大切な人を失った痛みが分かるからこそ、家族のようなみかづき荘の皆の支えになろうと奮起していた。
その矢先にこのふざけた決闘だ。そう考えるとハ・デスへ腹が立ってくる。

考える事は苦手なのに、考えねばならない事が多すぎる。
もう一度、苛立ち交じりに小石を蹴り飛ばした。


【深月フェリシア@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:あのハ・デスとかいう奴をぶっ飛ばす。
1:いろは達も巻き込まれてないか心配。
2:さっきの青年が気になる。
[備考]
※参戦時期はファイナルシーズン終了後。


733 : 復讐するはオレにあり ◆ytUSxp038U :2022/06/12(日) 20:00:11 2mCY8mY60
◆◆◆


余計なものに巻き込まれた。
本当ならば今頃、あの男を己の手で破壊するつもりだったのに。

どれだけハ・デスに苛立ちをぶつけても現状は変わらない。
忌々しく顔を歪めながら青年は一人歩く。

決闘に賛同する気は無い。
だがそれは純粋な正義感からではなく、こんな茶番に付き合っている暇は無いからだ。
自分がやるべきは復讐を果たす事のみ。
あの男がここに居ないなら、ハ・デスを倒して早急に帰還するのみ。
もしあの男がここに居るのなら好都合、“彼女”の仇を取る。

「滅…!!」

憎きヒューマギアの名を呼ぶ彼からは、輝くような夢の実現を目指した面影は消え失せていた。


【飛電或人@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:健康
[装備]:ビルドドライバー+メタルタンクタンクフルボトル+ハザードトリガー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:復讐の邪魔をしたハ・デスを殺す。
1:滅がここにいるなら必ず破壊する。
2:不破さん達も参加しているのか気になるが…
[備考]
※参戦時期は43話開始直後。

【ビルドドライバー@仮面ライダービルド】
仮面ライダービルドに変身する為のベルト。
こちらは葛城忍が旧世界の記憶から新世界で新たに作り上げたもの。
本ロワではネビュラガスの有無に関係無く変身可能に手を加えられている。

【メタルタンクタンクフルボトル@仮面ライダービルド】
仮面ライダーメタルビルド専用のフルボトル。
形状はタンクフルボトルと同様だが、カラーリングが黒を基調としたものとなっており、ラベルデザインも黒い背景に「T/T」と描かれたものとなっている。

【ハザードトリガー@仮面ライダービルド】
葛城巧が開発したビルドドライバー用の機能拡張デバイス。
ビルドドライバーに挿し込むことで、破壊衝動やビルドのハザードレベルを高め攻撃の威力を上昇させ、スクラッシュドライバーを使用するライダーやハザードスマッシュをも圧倒するほど戦闘力を飛躍的に向上させることができる。
しかし変身が長引けば理性を喪失、目に映るもの全てを破壊しようとする暴走状態に陥る危険性を持つ。
暴走状態の時に変身を解除するには、第三者がハザードトリガーを外すか、変身解除に追い込むダメージを与えるしか方法はない。
ハザードトリガー装着時にハザードトリガーを破壊されると装着者は消滅する。
但し、メタルビルドは暴走の欠点を克服している。

『NPC紹介』
【ショッカー戦闘員@仮面ライダー THE FIRST】
ショッカーの最下層に位置し、集団での戦闘で威力を発揮する、動植物の能力を与えられず、人間能力のアップのみが図られた量産性を重視した改造人間。
常人の3倍の運動能力を持つ。
胸部に肋骨をイメージした骨模様があしらわれた黒ずくめのスーツに顔が防毒マスクのようなプロテクターで覆われている。
大きなダメージを受けると全身が泡となって消滅する。


734 : ◆ytUSxp038U :2022/06/12(日) 20:00:54 2mCY8mY60
投下終了です。


735 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/13(月) 14:10:48 gfpta0BA0
投下します


736 : 銀河の絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/13(月) 14:11:24 gfpta0BA0
 九十九遊馬は様々な人々を救い、その心境に変化を齎した。
 そして遊馬によって救われた者達――彼らもまた様々な決闘者に影響を与えている。
 たとえばIVことトーマス・アークライトはシャークこと神代凌牙の運命を変えようと奮闘した。もっともIVはどちらかと言えばシャークの方が因縁が強いのだが、それでも遊馬がいなければ彼らトロン一家は救われなかっただろう。

 そして天城カイトは銀河の煌めきにより一人のドラゴン使いの運命を変えた――。

 〇

「私は――蘇ったのか?」

 天城カイトから最強のドラゴン使いと呼ばれた決闘者――ミザエルはハ・デスによりこの決闘に参加を強制されていた。
 彼は今は亡き天城カイトの意志を継ぎ、ドンサウザンドに挑んだがカードの書き換えという卑劣な手段により敗北。その命を散らせている。
 ミザエルの犠牲は運命が切り開かれるキッカケともなったのだが、それはまた別の話。
 ともかく彼は一度死んだ身だが、再びこうして決闘者として決闘の場に招かれた。

「これは……私のデッキか」

 あまりにも唐突な出来事にミザエルの頭は困惑するが、幸いにもデッキは支給されている。必然的にも決闘者の本能でデッキを確認する。
 彼の信頼するタキオンドラゴンはカイトのプライムフォトンやドラッグルーオンと共にヌメロン・ドラゴンとなっている。当然デッキ内にタキオンドラゴンの姿はなく、ミザエルは切り札無しでの決闘を求められることになるだろう。――カイトとの間に生まれた絆さえなければ。

「このカードは――!」

 支給品として自身に渡された 1枚のカードを手に取り、ミザエルは驚愕した。
 それは運命の悪戯――などではない。ドラゴン使いとしての宿命であり、二人のドラゴン使いが惹かれあったからこそ訪れた必然。

 ――最強のドラゴン使いであるミザエルには銀河眼の光子竜皇が支給されていた。

「カイト――。私に力を貸してくれるというのか?」

 自身に支給された――いや、そんなものではない。カイトから託されたプライムフォトンをミザエルは感慨深く眺める。
 これはハ・デスにより仕組まれた決闘で、その支給品も彼が用意したものだ。そんなことミザエルにもわかっているが――それでもこの運命の1枚だけはカイトにより託されたと思う他ない。

 ――ミザエル……行け。自分の信じる道を

 カイトが最期に遺した言葉が――想いがミザエルの魂を鼓舞する。
 いつの間にか彼の表情から困惑や驚愕は消え――しっかりと未来を見据えた、覚悟の灯火が宿る。
 これぞ決闘者の闘志であり、決闘者を体現したかのような誇り高き生き様を貫いた男の本来の姿。

「――フッ。お前の魂――確かに受け取った。私はこの気高きドラゴンと共に冥界の魔王を倒し、未来を切り開くことを誓おう」

 ミザエルは運命を諦めない。何故なら彼の手にはタキオンドラゴンを失ってもなお、希望の光――プライムフォトンがあるのだから。

「冥界の魔王、ハ・デス。貴様がデュエルを望むのなら――このデュエル、私が引き受けよう」

 ドンサウザンドの打倒は九十九遊馬とナッシュに託した。きっと彼らならば見事に打ち倒し、希望の未来に繋げることだろう。


737 : 銀河の絆 ◆QUsdteUiKY :2022/06/13(月) 14:12:18 gfpta0BA0
 ならば今のミザエルがするべきことはこの決闘を真正面から引き受けること。そして相手プレイヤー――つまり冥界の魔王ハ・デスを倒すことだ。
 そもそも人間を駒として『デュエル』などとほざくこと自体がミザエルにとって癇に障る。ミザエルにとって、デュエルとはそういうものじゃないのだから。

「私とカイトの――真のドラゴン使いによる本物のデュエルを貴様に味わわせてやる!」

 ハ・デスの言葉は決闘者にとって侮辱以外のなにものでもない。中にはベクターのようなゲスもいるが、大半の決闘者は彼の言葉に反感を買うことだろう。
 だからミザエルはこんなゲスなものではなく、本物のデュエルでハ・デスを打ち倒すことを宣言した。
 彼は決闘者の中でも特に誇り高い性格だ。だからハ・デスによるデュエルを真っ向から否定し、真のドラゴン使いとして彼を倒す。
 そして今度こそ運命に屈することなく――未来を手に入れる。

 ナンバーズは人の希望を写す鏡だ。
 No.62 銀河眼の光子竜皇――これがカイトの生み出した希望。
 これこそがカイトとミザエル、二人の最後の希望。
 そしてこの輝きこそが全てを切り開く光だ――


 たとえ冥界の魔王でも――彼らの未来を支配することは出来ない


【ミザエル@遊☆戯☆王ZEXAL】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(ミザエル)@遊☆戯☆王ZEXAL、No.62 銀河眼の光子竜皇@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:真のドラゴン使いとして本物のデュエルでハ・デスを倒す
1:ハ・デスとデュエルするための方法を探る
[備考]
※参戦時期はドン・サウザンドとのデュエルで死亡後
※バリアン態になることは出来ません

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(ミザエル)@遊☆戯☆王ZEXAL】
ミザエルに支給。ミザエルが愛用しているデッキ。ただし彼の切り札であるタキオンドラゴンのみ抜かれている

【No.62 銀河眼の光子竜皇@遊☆戯☆王ZEXAL】
ミザエルに支給。
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻4000/守3000
レベル8モンスター×2
アニメでの効果は以下の通り。

このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、
フィールド上に存在するモンスターエクシーズ以外の全てのモンスターは、
そのレベルと同じ数値のランクを持つ。
1ターンに1度、フィールド上に存在する全てのモンスターのランクを1つ上げる事ができる。
このカードが戦闘を行う場合、このカードの攻撃力は
フィールド上に存在するモンスターのランクの合計×200ポイントアップする。
フィールド上に存在するこのカードがフィールド上から離れる時、以下の効果を発動できる。
発動後α回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果でこのカードを特殊召喚したターン、このカードが攻撃する時の攻撃力はα倍になる。
(α=このカードがフィールド上から離れた時の、このカードのエクシーズ素材の数)

ただし『このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない』の一文はカードから削除されており、普通に戦闘破壊出来るように細工を施されている


738 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/13(月) 14:12:51 MCflNP9Y0
投下終了です


739 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:06:14 1MSnxhoA0
◇ ◇ ◇




誰にだって見られたくないものはある。




◇ ◇ ◇


740 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:06:55 1MSnxhoA0


◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎は人型の生物で、身長はおよそ2.38メートルある。筋肉量がとても少なく、両腕の長さは1.5メートルと、非常にアンバランスな姿をしている。
身体には色素がほぼ存在せず、体毛もない。人型であるにも関わらず、一目見ただけでそれが異形の者だということが理解出来るだろう。
ならば、それは一体なんなのか。


SCP-096──通称シャイガイ。


何故それがシャイガイなどという可愛らしい別称を持つのか、疑問に思う者も多いだろう。
その理由は単純。この怪物は他人に顔を見られることを極端に嫌うからだ。と言っても、単なる恥ずかしがり屋とは話が違う。でなければ5メートル×5メートル×5メートルの鋼鉄製の密封された独房に収容されていることに説明がつかない。

彼は、己の顔を見た者を決して逃しはしない。
比喩表現ではなく文字通り。対象を殺害するまでその衝動が収まることは無い。
その「顔を見る」という行為は直接に限った話ではなく、映像や写真を通して──例えたった4ピクセルしか写っていない状態でも反映される。
それを行った対象がどこに居ようとも絶対に逃げられない。実際に、深海10,800メートルの潜水球に乗った職員が殺害された前例もある。


741 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:07:31 1MSnxhoA0

彼がこの会場に連れて来られる際、他の参加者が顔を視認しないよう電話ボックスのような黒い箱に収容されていたことからも、運営が彼の「恥ずかしがり屋」を特別視していることが伺えるだろう。

では撃退は可能なのか?

答えは──一部を除いて不可、という曖昧なものになる。

長身痩躯の外見に反してその防御力は圧倒的であり、50口径弾の連射にも対戦車ミサイルの直撃にも傷一つつかず、精々その歩みを遅める程度の効果しかない。ゆえに通常の兵器での殺害はほぼ不可能だろう。
この防御力と上記の「恥ずかしがり屋」の特性、これらが合わさることでシャイガイは恐るべき死の概念そのものとなる。


「ウ゛ゥ……ウァァ……」


獣のそれによく似た荒々しい息遣いに混じる呻き。正常な生き物であればきっと、その身の毛もよだつような声を聞けば近付こうとする意思など煙の如く消え失せるであろう。



しかし、例外はいる。



「────ア゛ァ ぁ゛ ああァ゛ アぁ あァ゛あ あぁア゛────!!!!」


742 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:08:02 1MSnxhoA0

突如、SCP-096が長い両手で顔を覆い、言葉にならない絶叫を上げ泣き喚く。
およそ生物の、この世のものとは思えぬ亡者の如きそれは地獄の序曲。

現れてしまったのだ、不運にも。彼の顔を見てしまった者が。

一、二分経った頃だろうか。幼子のように泣き喚いていたSCP-096が顔を覆い隠すのをやめ、猛烈な速度で駆け出した。
器用に木々の隙間を抜けながらもその速度が落ちることは無く、五十メートルほど先にいる「対象」へと死が向かう。

五十、三十、十──そうして遂にシャイガイの長腕が届く距離にまで肉薄。
びゅうッ、という重い風切り音と共に振るわれた腕が今まさに殺戮せんと迫る。


しかし、その腕が彼女を捉える事はなかった。


あまりにも軽く、あまりにも美しく。
風に遊ばれる蝶のような動きで死を避けた赤髪の女は息衝き一つ漏らさずにSCP-096と対峙する。
右手──黄金の義手に携えた刀を弓のように引き、左手は右肩の付け根をなぞらせる。女の一挙一動には息を呑むほどの美麗さが纏われていて、まるで絵画の世界から飛び出してきたかのようだった。

「貴公、その力──外界の者か」
「あァ゛ ああ ぁ゛ア゛ ァ゛──!!!!」

囁きに近い旋律と轟くような叫喚はひどく対比的だ。
攻撃を外したという事実に呆気に取られていたのか、はたまた女に見惚れていたのか。動きを止めていたシャイガイが再び大振りに腕をしならせる。
赤髪の女────否、朱き腐敗の女神・マレニアはそれを微風のようにやり過ごし、返しの刃を振るった。

◾︎


743 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:08:55 1MSnxhoA0

マレニアがこの地に降りてまず初めに抱いたのは、強烈な違和感だった。
まず、彼女の世界にあるべき黄金樹がない。ここが狭間の地ではないということを悟った彼女は目的を見失い、次に己を見失った。
来たる褪せ人を捩じ伏せ、とどめの一撃を振るうその瞬間にこの地に呼び寄せられたのだ。如何にマレニアといえど状況を理解するのに時間を要する。

「……兄様、兄様。すぐに貴方の元へ向かいます」

けれど、いついかなる時でも曲げられぬ確固たる意思がある。
それは親愛なる兄、ミケラの元へ還ること。
故にマレニアは狭間の地に戻らなければならない。万人を血に染め、腐敗に侵そうとも、兄へ向ける愛情が歪むことは決してない。

バッグから抜き出した刀が業物であることは一目でわかった。手入れの行き届いた柄、血脂の欠片もない刀身。試しに傍の木に向かい白銀の弧を描けば、そこには鑢をかけたかのように綺麗な断面を残した切り株だけが残っていた。

「良い剣だ」

己の義手刀が没収されている今、代わりとしてはお釣りが来るほどの武器。リーチはかなり劣るものの、この切れ味に加えてそれを求めるほど贅沢ではない。
二度剣を振り、視線を遣った先には流麗な川が揺れている。豊かな緑、広がる水。己とは無縁な景色にマレニアは息を吐いた。

自分や兄に呪いがなければこんな景色の中を歩けたのかもしれない。
己の運命を悔いたことは無いが、そんな理想を夢見るのは幾度かあった。しかし、ついぞ兄の腐敗を食い止める方法を見つけられずにいたマレニアにとって、一縷の望みがそこにある。

「願い、か」

優勝者に与えられる賞品のうち一つ、願いを叶えるという馬鹿げたもの。
それが事実か否かはさておき、どちみちこの戦いを生き残らなければならない。目的ではなく、あくまで過程として視野に入れておくのも悪くはない。

とりあえずは参加者を探さなければ、と暫く森の中を散策していると遠くに白い影が見えた。
よく見ればそれがもぞもぞ蠢いているのがわかる。長大な人型にも見えるそれは、怪物溢れる狭間の地でも見たことのない異質な雰囲気を感じさせた。


それの顔に視線を向けた、その瞬間だった。


耳を劈くような絶叫が響き、それが向かってきた。
常人であれば発狂にも値するその光景を前にしてもマレニアは努めて冷静に、冷酷に。刀を構えてその怪物の初撃を見極める。


──禁忌の衝突は、こうして始まった。


◾︎


744 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:09:33 1MSnxhoA0


シャイガイの追撃を身を捻って躱し、その勢いのままにマレニアが刃を振るう。
狙うは細い首筋。当たれば間違いなく胴体と頭が泣き別れになると確信した攻撃だが、マレニアはほう、と息を漏らすことになる。

硬いのだ。異常なまでに。

その枯れ枝のような外見からは想像も出来ぬほどの強靭さ。持ち手を襲う痺れに反し、白い首にはかすり傷一つ見受けられなかった。

この刀を以てしても斬れぬか──ならばもはや技量や質の問題ではなく、この怪物の特性だと考えるべきだろう。
刺突の構えを取るマレニア。しかし直後、弾かれたように上体を反らせば先程までマレニアの顔があった場所をシャイガイの腕が掠めとった。

「おォ゛ ぉ お゛ ……!!」

唸るシャイガイは幽鬼の如くゆらりと揺れ、力任せに腕をしならせる。その様はまるで近付くことを嫌う幼児のようで、それがより気味の悪さを演出した。
単調ではあるもののその威力は脅威に他ならない。はらりと落ちるマレニアの赤髪がそれを物語る。森林という都合上どうしても機動力が削がれる以上、全てを回避するというのも難しいだろう。

「──ぐっ」

そんな不安は予想よりも早く的中した。
後方へ飛び退いたと同時に降り落ちた木の葉がマレニアとシャイガイの間に挟まり、僅かに視界を遮ったせいでシャイガイの踏み込みに気付くのが遅れた。
衝動のままに振るわれた腕がマレニアの脇腹に突き刺さり、華奢な体躯を吹き飛ばす。飛び散る落ち葉が横たわる彼女の身体を隠した。

「あァ゛ あ゛ ぁ゛ア゛ ァ゛──!!」

しかしシャイガイの怒りは収まることを知らない。
当然だ。彼が活動を停止するのは対象が死亡してからのこと。マレニアは未だ死亡していないのだから。
付着した木の葉を払いながら立ち上がる赤髪の女神。その元へ再び振るわれた怪物の腕はパリンという軽快な音と共に刀身に弾かれ、逆にシャイガイの腹部に刃が突き立てられることとなった。


745 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:10:04 1MSnxhoA0

ガリッ──奇妙な音と共に刃先が止まる。
予想通り、出血どころか傷をつけることすらできない。けれどマレニアは無防備な身体に向かい神速で銀の軌跡を描き続ける。

ガンッ、ギン──金属同士をぶつけるような音がその無意味さを雄弁に物語る。事実変わらずにシャイガイはダメージを負った様子もなく、まるで虫を払うかのようにぶおんと腕を払った。
屈んでそれをやり過ごしたマレニアは今度はシャイガイの胸へ蹴りを放つ。巨体を僅かに揺らすことも叶わなかったがその勢いを利用し距離をとる事に成功した。

「やはり、そうか」
「おォ゛ お ……ッ!!」

先程重い攻撃を受けたにも関わらずマレニアの動きに鈍さは見られない。どころか、様子を伺う動きから移行したのか機敏さが増したように感じられた。
見ればマレニアの脇腹にあった傷跡は綺麗さっぱり消え去っており、まるで元から攻撃など受けていなかったかのよう。

これがマレニアの特性。己の攻撃が当たったと同時に体力を回復する──いわゆるリゲイン能力を備えているのだ。
先程の一見無意味であった乱舞はこの為であり、マレニアの呟きはこの力が問題なく働くことに対してのものだった。

「あァ゛ あ゛ ァあア゛──ッ!!」
「……、……」

目の前の対象は単なる破壊対象ではない。明確な力を持った敵だ。──シャイガイが認識を改めたのはその頃だろうか。
凄まじい跳躍力をありありと見せ付けて飛びかかり、マレニアがそれを迎え撃つ。怪物と女神の衝突により生まれた余波が枝を折り、緑を飛ばした。


◾︎


746 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:10:49 1MSnxhoA0


戦闘開始から既に四十七分が経過した。
互いの攻撃は数こそ違えど何度か当たっている。しかしマレニアにはリゲインが、シャイガイには無敵に近い防御力があるためイタチごっこ。無益他ならない戦いだ。
加えて言うのであれば、女神も怪物も疲労を知らない。無尽蔵の体力を持つが故戦う意思が消えぬ限り争い続けるだろう。

「おォ゛ オ゛お ぉ゛ お────!!」
「──やれやれ、厄介な力だ」

しかし、身体は動くとはいえ心中では既に辟易している。
これ以上刃を振り続けても埒が明かないと先に判断したのは知性を持つマレニアだった。
一跳び、加えて二回分余計に距離を取ったマレニアは己の右掌を切り裂く。飛び散る鮮血はまるで華のように美しく、彼女の行動の異常さを忘れさせた。

「貴公、私が無闇矢鱈に剣を振るしか脳がないと思うか?」

当然、それに疑問を抱くほどシャイガイは賢くない。
獣よりも速くマレニアの元へ両腕を高く掲げ、振り下ろす。回転の要領でそれを躱したマレニアは血に彩られる刃を横に薙いだ。

変わらず鳴り響く硬い音。
けれど変わっている。なにが、と問われれば説明は難しい。
マレニアの手応え、シャイガイの苦悶の声、剣が触れた箇所から上がる爆発のような赤い煙──その全て。

しかし、その些細な変化が戦況を傾けたかと聞かれればそうではない。
勢い衰えず打撃を仕掛けるシャイガイの姿を見れば一目瞭然だ。マレニアはそれを避けきれず石のような指先に皮膚を抉られる。

血飛沫が舞踊った。
シャイガイの身体に付着した血液がじゅうじゅうと音を立てて煙を上げる。

息を吐く間もなく続く連撃をまたもマレニアは躱しきれず、その応酬にシャイガイの身体に刃が走る。強靭な肉体に傷を与えることは叶わず奇妙な赤い煙を上げるだけで終わった。

先程からそれの繰り返し。
マレニアの傷は彼女の手数と比較しても大きく、再生能力が追いついていない。対してシャイガイは戦闘開始時からずっと無傷を貫き通している。
ここにきて戦況が揺らぎつつある。決着の時は遠くない──長腕が唸りを上げる度、マレニアの敗北の色が濃くなっていく。


747 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:11:20 1MSnxhoA0


しかし、それは十六分後──戦闘から既に一時間を越えた頃に起きた。


「あァ゛あ゛ぁ゛あァ゛ アア゛アァ゛あ゛ ぁ゛ ア゛ ぁ゛あ ああア゛あ ァ゛──────!!!!」


突如、それまで猛攻一辺倒であったシャイガイが甲高い奇声を発し、両手で顔を覆い隠しながら立ち尽くした。
それは何者かに顔を見られた際の仕草によく似ているがそうではない。苦しげにガシガシと己の顔を掻き毟り始めたのがその証拠だ。

対してマレニアはふ、と小さな笑みを浮かべる。目の前の異常の原因を知っているかのように。


「──どうやら腐るのは初めてのようだな」


SCP-096は現実世界にある兵器では討伐は不可能に近い。
逆に言えば、彼の知る現実に存在しないものであれば通じる──ということだ。

マレニアが司るのは朱い腐敗と呼ばれる状態異常。身体の外側から侵食し、感染し、内側からボロボロと臓腑を腐らせてゆく恐るべき事象だ。
存在しないウイルス。存在しない激痛。
当然狭間の地の住人でもないシャイガイに耐性があるはずもなく、初めて感じる痛みにひたすら絶叫をあげることしか出来なかった。

「おォ゛ オお゛ぉ゛ ォ゛お ォ゛オお゛──ッ!!」

苦し紛れに放たれた拳は普段よりも鋭敏さが見られない。しかしマレニアはまたもそれを身体の表面に掠らせ、血を踊らせた。
舞った赤色がシャイガイの身体に触れ、朱い腐敗を加速させてゆく。
もう気づいているだろう。マレニアは攻撃を躱しきれなかったのではなく、あえて躱さなかったのだ。最小限に被害を抑え、己の腐った血を浴びさせるための算段。
ラダーンのような腕力も、レナラのような魔力も持たぬ彼女がどうして最強のデミゴッドと呼ばれるのか。その所以を垣間見えただろう。


748 : 禁忌の衝突 ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:11:47 1MSnxhoA0

「がアァ゛ あ゛ ァ゛ア ぁ゛あ゛ ぁ゛──!!」

腕を振るう度に返り血を浴び、それが激痛を加速させてゆく。無論マレニアはそれを見ているだけで終わらず、腐敗によって隙が多くなったせいか彼女の手数が増えていった。
再生能力を持つ彼女にとってそれが何を意味するのか。知能を持たないシャイガイでも本能で察知する。

このまま戦闘を続けるのは危険だ──!

振り下ろす為に翳した怪物の右腕がぴたりと静止し、ずりずりと後ずさる。彼から距離を取ったのは初めてだった。
苦痛の嗚咽を漏らしながらゆっくりと後退してゆく様は誰が見ても敗者の姿。マレニアが一歩踏み出した瞬間、堰を切ったように駆け出した。

勿論、マレニアとは真逆の方向へ。


耳障りな叫喚が段々遠のいてゆく。
ひとまずの勝利を確信した女神は刀を鞘に収め、ふぅと息を吐いた。それが安堵によるものか、余韻のものなのかは分からないがどこか恍惚としているように見える。

「この催しを勝ち残るのは、存外骨が折れそうだ」

シャイガイの顔を見て生存した数少ない存在となったマレニアだが、その心中は穏やかではない。
あのような怪物を何人も相手することを考えると、己の剣だけに頼るのは愚策かもしれない。腐敗も、支給品も、利用できるものは全て利用するのが得策だろう。以前に戦った褪せ人と呼ばれる者のように。
例え卑劣と呼ばれようとも、必ずこの戦いを勝ち残らなければならない。

「兄様、見ていてください。マレニアは必ず勝ち残ります」

左手を胸に添え、誓うマレニアの顔は酷く穏やかだった。
もう誓う相手はいないのに。それを知らぬ腐りゆく無垢な少女はただ願う。
兄妹揃い、隣歩くことを。


【F-3】
【マレニア@ELDEN RING】[状態]:ダメージ(小)、体中に浅い傷跡[装備]:斬鉄剣@ルパン三世[道具]:基本支給品、ランダム支給品(1〜2)[思考・状況]基本行動方針:戦いを勝ち残る。願いが叶うのならば兄の腐敗を除く。1:出会った参加者を殺害する。
2:勝ち残る為には手段は選ばない。
3:あの異形(SCP-096)は追わない。

【備考】
※褪せ人との戦闘中からの参戦です。
※リゲイン能力に制限が掛かっており、普段よりも傷の治りが遅いです。

【SCP-096@SCP_Foundation】[状態]:朱い腐敗侵食(重度)[装備]:なし[道具]:なし[思考・状況]基本行動方針:???1:この場から離れる。

【備考】
※SCP-096の支給品はF-3のどこかに放置されています。
※朱い腐敗に感染しており、ダメージを受け続けています。腐敗は時間経過と共に回復します。


749 : ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:12:08 1MSnxhoA0
投下終了します。


750 : ◆NYzTZnBoCI :2022/06/13(月) 17:21:27 1MSnxhoA0
ごめんなさい、状態表の改行が出来ていなかったので以下に訂正します。

【F-3】
【マレニア@ELDEN RING】
[状態]:ダメージ(小)、体中に浅い傷跡
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(1〜2)
[思考・状況]
基本行動方針:戦いを勝ち残る。願いが叶うのならば兄の腐敗を除く。
1:出会った参加者を殺害する。
2:勝ち残る為には手段は選ばない。
3:あの異形(SCP-096)は追わない。

【備考】
※褪せ人との戦闘中からの参戦です。
※リゲイン能力に制限が掛かっており、普段よりも傷の治りが遅いです。

【SCP-096@SCP_Foundation】
[状態]:朱い腐敗侵食(重度)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:この場から離れる。

【備考】
※SCP-096の支給品はF-3のどこかに放置されています。
※朱い腐敗に感染しており、ダメージを受け続けています。腐敗は時間経過と共に回復します。


751 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:06:57 OlXIWysE0
投下します


752 : 黒く、熱く、純粋で甘く ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:07:55 OlXIWysE0
決闘の舞台、形ばかりの街が再現された空虚な箱庭。
もしここが日常の舞台だったら、静かな時間が流れていただろう休憩スペースにて。
華やかな三人の少女たちが丸テーブルを囲んでいた。

「はいコーヒーお待ちどう様です。お砂糖もいりますか?」

お盆を持った桜色のリボンを紫色の髪に付けた少女、間桐桜が残り二人にコーヒーを回す。

「ありがとうございます」

程よく温かく、それでいて苦くて甘いコーヒーが黒髪に白いリボンの少女、小日向未来をようやく落ち着かせてくれた。
最初この会議室で同じ建物、同じ階に飛ばされた二人と出会った時は、今思い返せば自分でもちょっと恥ずかしいぐらいに取り乱してしまったが、
間桐さんこと間桐桜が仕切ってくれて助かった。

「はい、アスナちゃんもどうぞ」

「ありがとう。ん、おいしい」

なんて考えていると、最後の一人である長い茶髪の少女、アスナの元にもコーヒーが渡る。

「それじゃあ、一息付けた所で。
改めまして、間桐桜です。九州の穂群原学園の高校一年生です」

「リディアン音楽院高等1年の小日向未来です。
その、さっきはお見苦しい所をお見せしました」

「あ、じゃあ私一番歳下なんだ。
エテルナ女子学院中等科三年の結城明日奈です。
気軽にアスナって呼んでください。
さっきはタメ口ですいませんね。
間桐先輩、小日向先輩」

そう言って笑ったアスナに桜も微笑み返す。

「そんな畏まらなくていいですよ、アスナちゃん。
どうせ、短い付き合いですし」

「え?それって……」

一瞬、アスナの腰に下げた武器に目をやった桜は、すぐに未来の方を睨むように見ると

「限定展開(インクルード)」

気が付くと、未来は天井を仰いでいた。
背中に感じた痛みと、フローリングとはまた違う硬さから考えるに、
椅子事真後ろに倒れたんだろう。
何て事ばっかりに頭が回って『立ち上がる』という判断も出来ないでいると、
おかしなことに気付いた。
声が出ないのだ。
おかしいな、唇はちゃんと動いてるのに。
じゃあおかしいのは喉?
そう思って、手を伸ばすと、ドクドクと一定のリズムで生暖かい何かが喉から流れている。
コーヒーじゃない。

(これ、もしかして私の血?喉、切れちゃってる?
どうしよう?手で押さえていいのかな?ばい菌とか……)

それは恐怖とか、麻痺ですらない、ただただ現状を理解出来ていないだけだった。
派手な金属音がだんだん遠ざかっていくのも気付けないまま、
小日向未来は底の抜けた砂時計の様にゆっくりと止まった。


753 : 黒く、熱く、純粋で甘く ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:08:35 OlXIWysE0
ひっくり返された机に塞がれたアスナの視界が次に捉えたのは、
何処からか取り出した鎖分銅付きの大鎌で首を掻っ捌かれる未来の姿だった。

「小日向先輩!」

「ッ!」

振り向きざまにアスナにも大鎌を振るう桜だが、
腰から抜いたブリンガーソードで受け流すアスナ。
一閃、二閃。
無茶苦茶に振るわれる大鎌を弾きながら後退するアスナ。

「間桐先輩……最初からこのつもりだったんですか?」

「ええ。本当はアスナちゃんも優しく殺してあげる予定でしたけど、思いのほか強いので」

そう言うと桜の握られていた大鎌が光を発して縮み、一枚のカードになった。

(さっきの不意打ちのカラクリはこれか!)

けどなんでわざわざ元に戻した?
その疑問はすぐに氷解した。

「ごめんなさいアスナちゃん。こっちだと絶対に痛くしちゃいます」

桜はその豊満な胸元にカードを持っていき、

「夢幻召喚(インストール)」

瞬間、桜の衣装が楚々とした制服姿から煽情的な黒いボディコン服に、
バイザー風の仮面の姿へと変貌を遂げる。

(アバターが、変わった!?)

「サヨナラ」

再び現れた大鎌を構えた桜がアスナに飛び掛かる。

(速い!)

紙一重で避けることに成功したアスナはどうにかドアを蹴破り外に出る。
それを桜は壁も天井も関係なく縦横無尽に駆けながら追いかけた。

(外!せめて外にでないとからめとられる!)

幸い支給された剣、ブリンガーソードはかなり優秀な武器なのも有って、
受けれれば問題ないが、こうも多角的に攻撃されたら全ては捌ききれない。
階段を駆け降り、ドアはブリンガーソードで金具を斬るか、
け破って進み、遂に一階の正面入り口から外に出ることに成功した。

(大通り!左はビル街、右は交差点。真正面から戦えるの右!)

そう判断して走り出そうとしたアスナだったが、不意に短いラッパの音が聞こえて立ち止まった。
音のした方を振り向くと、三つの金色の光がアスナを囲うように飛んできた。
それは一層強く光ると、人型となった。


754 : 黒く、熱く、純粋で甘く ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:08:45 OlXIWysE0
全員が特殊スーツにフルフェイスの仮面といういでたちで、ジリジリとアスナとの距離を狭めてきている。

赤い誘導棒のような剣を持ち、オレンジ色の作業員のようなスーツに、列車を模した仮面のトッキュウ6号、
そして右から縦に金、黒、銀の三色のスーツに、サイを模した仮面のジュウオウザワールド、
西洋剣に白い盾を持った赤と紺のスーツに、漢字の天と不死鳥を合わせたような模様の仮面のホウオウソルジャー。
いずれも38、40、41番目のスーパー戦隊の追加戦士だ。

「いくら私が可愛いからって、取り合いはよくないんじゃない?」

そう茶化してみるが、三人は完全に無言でアスナに斬りかかった。

(NPC?にしては出てくるタイミングが良すぎる!)

アスナ自身にその単語は思い浮かばなかったが、
格闘ゲームのストライカーのようなモノと判断し、引き気味で戦い始める。
三人を相手に疲弊した所をとどめを刺す算段だろうと思ったからだ。

「へえ、意外と賢いお嬢ちゃんだ」

そんなアスナの様子を観察していた海賊風の衣装の男がつぶやいた。
彼の名はバスコ。
地球に眠る宇宙最大のお宝を狙う海賊の一人で、
その為ならどんな下衆な方法で有ろうと平然と実行できるタイプの宇宙人である。

「お嬢ちゃん達の間違いじゃないだすか?」

そんな彼の背後に変身した桜が降り立つ。

「ほう?お嬢ちゃんのどこが賢いんだい?」

「今目の前にいるどう見てもこの決闘に乗っている人と交渉して、
この場を双方無傷で収められるところとか、ですかね?」

そう言って桜はゆっくりと鎌をバスコに向けた。

「そうかい。それは交渉の内容次第だな」

「参加者が残り二割を切るまで何が有ろうとお互いに不可侵。
いくらあなたがお人形さんをたくさん持っていても、
流石に島中にばら撒けるわけじゃないでしょう?」

「……いいぜ。そう言う事なら大歓迎だ。
俺はバスコ。よろしくな」

「私は間桐桜です。
それじゃあ、早速アスナさんはお任せしますね」

そう言って去っていく桜を見送り、バスコは果敢にも三大追加戦士と戦うアスナに視線を戻した。

「さて、お手並み拝見だ。可愛いフェンサーちゃん♪」


755 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:09:30 ???0
投下します。


756 : 黒く、熱く、純粋で甘く ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:09:47 OlXIWysE0
【アスナ@ソードアート・オンライン】
[状態]:健康、深い悲しみ
[装備]:ブリンガーソード@鳥人戦隊ジェットマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘を生き残る。
1:まずはこの仮面の連中を倒す。
2:間桐先輩は……。
3:小日向先輩、ごめんなさい。
[備考]
※参戦時期は-プログレッシブ- 星なき夜のアリアでキリトの名前を知ったすぐ後です。
※小日向未来の支給品がどこかに放置されています。

【間桐桜@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
[状態]:健康、
[装備]:サーヴァントカード ライダー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品〜
[思考・状況]基本方針:最後まで生き残り、先輩と美遊ちゃんを幸せにする。
1:人の命……すっごく嫌な感覚です。早く慣れないと。
2:バスコさんとは残り人数が二割を切るまで休戦する。
3:小日向さんの荷物を拾ったら早く次の獲物を見つけないと。
[備考]
※士郎の過去編、死亡後からの参戦です。
※英霊召喚やカードそのものの制限に関しては、後の書き手様にお任せします。
※小日向未来の支給品がどこかに放置されています。

【バスコ・ダ・ジョロキア@海賊戦隊ゴーカイジャー】
[状態]:健康、人間態
[装備]:ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
     レンジャーキーセット・追加戦士(ゴーバスター〜ゼンカイジャー)@海賊戦隊ゴーカイジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝して決闘王の力を独り占めする。
1:まずはあのお嬢さんを始末する。。
2:マベちゃんと愉快な仲間たちもきてんのかね?
3:サクラちゃんとは残り人数が二割を切るまで休戦する。
[備考]
※参戦時期はダマラスが死亡した直後からの参戦です。
※トッキュウ6号、ホウオウソルジャー、ジュウオウザワールドを実体化させました。
※ラッパラッターで実体化させたレンジャーは使用者から一定距離離れるとレンジャーキーに戻ってしまいます。
※人間態でいる間は特に制限は有りませんが、怪人態になると制限がかかります。
 詳細は後の書き手様にお任せします。





【小日向未来@戦姫絶唱シンフォギア 死亡】


757 : 黒く、熱く、純粋で甘く ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:10:02 OlXIWysE0
【ブリンガーソード@鳥人戦隊ジェットマン】
ダイヤモンドの8倍の硬度、高い耐熱性に軽さも両立させたバードナイト特殊鋼製の剣。
鍔が折り畳まれ、刃が収納された状態で携行できる。
鳥人戦隊ジェットマンの共通武器だが、この武器を固有技で使用するのはブラックコンドルだけである。

【サーヴァントカード ライダー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
ある世界の聖杯戦争において使われる魔術礼装。
高度な置換魔術とピトスの泥を用いて成立している。
英霊の座と繋がっており、礼装に通して繋がっている英霊の宝具や武具に変化させる限定展開(インクルード)、
英霊をその身に宿し、使用者自身を一時的に英霊化させる夢幻召喚(インストール)の二種類の機能が有る。
夢幻召喚する場合は、使用者によって武器や服の意匠が変化する。
このカードはメドゥーサの座と繋がっている。

【ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー】
レンジャーキーを実体化させたり、レンジャーから力を奪ったりできるラッパ型アイテム。
劇中では最大10体まで実体化させれるのが確認されている。
当ロワでは制限により、5体以上は実体化させることは出来ない。

【レンジャーキーセット・追加戦士(ゴーバスター〜ゼンカイジャー)@海賊戦隊ゴーカイジャー】
歴代スーパー戦隊の変身能力が形になった人形、鍵型アイテム、レンジャーキーのセット。
モバイレーツかゴーカイセルラーに使う事で変身アイテムとして、
ラッパラッターで使う事で召喚アイテムとして機能する。
このセットではビートバスター、スタッグバスター、キョウリュウゴールド、トッキュウ6号、スターニンジャー、ジュウオウザワールド、ホウオウソルジャー、ルパンエックス、パトレンエックス、リュウソウゴールド、キラメイシルバー、ツーカイザーのキーで一つの支給品としてカウントされる。


758 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/13(月) 18:10:19 OlXIWysE0
投下終了です。


759 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:13:52 ???0
ここは決闘会場のどこかにある無人の市街地―――

「……」

さながらゴーストタウンと化した無人の街を一人の女性が周囲を探索しながら歩いていた。
彼女の名はニオポリタン、この殺し合いに呼ばれた参加者の一人である。

この殺し合いに呼ばれた直後、彼女の中には最初、驚きと戸惑いの気持ちが混ざっていた。

殺し合いに呼ばれる直前、知識のレリックの力で自らの標的であるルビー・ローズとその仲間たちの計画を知った彼女は
協力関係にあったシンダー・フォールと共に避難中継地にて市民の避難誘導を行っていたルビー・ローズを強襲し、
あと一歩という所まで追い詰めた所、シンダーの裏切りによってルビーと共に奈落の底に転落していったはずなのだ。

「……!!」

そのことを思い出した途端、ニオの中に激しい怒りの感情が芽生えてくる。
彼女は奈落の底に落とされる前、シンダーに言われた最後の言葉を思い出していた。

『生まれてきたのが間違い』

ガンッ

その言葉を思い出した途端、ニオは憤怒の形相で近くの建物の壁を激しく殴りつける。
何が生まれてきたのが間違い、だ!今まで散々手助けしてやったというのにその恩を忘れて仇で返すとは!

シンダーの顔を思い出すたびにニオのはらわたはますます煮えくり返るが
その怒りをぶつけるべきシンダーがここにいない以上、
このまま怒りに囚われても得がないことに気づいたニオは一旦深呼吸して気持ちを落ち着けると冷静に現在自身が置かれている状況を整理する。

自分は確かに奈落の底に転落していったはずだった。だが今現在こうして生きている。
そしてハ・デスという謎の存在によって殺し合いを強要され今に至るというわけだ。

ここで疑問となるのがこの殺し合いの主催者であるハ・デスと磯野が何者なのか、という点に関してだ。

最初、ニオは彼らをセイラムの手の者だと考えた。セイラムの主戦力であるグリムは悲しみ、敵意、怒り、恐怖といった負の感情に引き寄せられる性質がある。
つまり参加者同士を強制的に殺し合わせる今の状況は上記の感情を煽るのに正にうってつけの環境といえるがそうすると疑問が2つほど生まれてくる。

一つ目はニオはセイラムの元で彼ら二人を見たことがない、という点だ。
ニオはシンダーと共にセイラムの元に下った際、二度ほど幹部招集会議に参加したことがあるがその際に彼ら二人を見かけた記憶はなかった。
二つ目は負の感情を煽るのが目的だとしてもこんな回りくどい手段をとる必要性が感じられない、という点だ。

そもそもわざわざ捕えた参加者同士を殺し合わせる、
なんて回りくどい方法をとらなくても捕えた参加者を全員処刑してその光景を全世界に中継すれば手間をかけることもなく効率的に負の感情を煽ることが出来るはずなのだ。

以上の点からニオは彼ら二人がセイラムの指示でこのようなことをしているとは考えにくいという結論に至った。

では彼らは一体何者?と考えた所でニオは過去の経験からある一つの可能性を思いつく。

それは「自分は異世界に飛ばされて異世界の住民によって殺し合いを強要させられている」という可能性であった。

実を言うとニオは異世界に飛ばされたのは今回が初めてではない。彼女は過去にキーストーンと呼ばれる謎の存在によってファントムフィールドと呼ばれる異世界に飛ばされ、
そこで彼女は主催者陣営としてエリザベスという女性とタッグを組んではぁと、雪泉という異世界の戦士と戦ったことがあるのだ。


760 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:17:17 ???0
我ながら突拍子もない発想だと感じたものだがそう考えた方が全ての辻褄が合うことと過去の前例から有り得ない話ではない、
とニオは自分自身を納得させ、それはさておき、とニオは今後の方針に思考をシフトする。

「……」

どっちにしろ奈落の底に落ちて死ぬはずだった自分が今こうして生きている。それは(ニオにとっては)揺るぎない事実だ。

更にそれだけでなく、主催者は自分にチャンスを与えてくれた。
自分が今こうして生きて殺し合いに参加しているということは自分と一緒に落ちたルビー・ローズも殺し合いに参加している可能性が高い。

更に磯野という男は「最後まで生き残った者はどんな願いでも一つだけ叶える」と言っていた。
つまりこの殺し合いに優勝すれば自分が望むものをどんなものでも一つだけ手に入れられるということだ。

ニオは元の世界に帰還した際には自身を裏切ったシンダー・フォールに復讐するつもりでいた。
しかしシンダーは秋の女神の力を手にしている。
一度手合わせして力の差を思い知らされている以上、このまま戦いを挑んでも返り討ちにあうということはニオは痛いほど理解していた。

では女神の力をも上回る力を手に入れられるとしたら?異世界の住民である自分をこうしてわざわざ攫って殺し合いに参加させるような連中である。
四季の女神の力をも上回る力を自身に授けることなど造作もないであろう。

以前の手合わせで女神の力無しの純粋な技量、力量勝負ではシンダーは自身とほぼ互角という実感を得ていた。
であれば女神の力をも上回る力を手に入れさえすれば自身がシンダーに負ける道理は無い、とニオは考えていた。

いや、いっそのことあのセイラムをも打ち倒せる力を望むのも悪くない、とニオは考え始めた。
ニオはセイラムとは少し会っただけでセイラムの最終目的など知る由もなかったのだが傍目で見てもセイラムの侵攻がこのまま進めばいずれは人類にとっては碌な事にならない、とは薄々感じていた。

勿論セイラムに戦いを挑んでも勝ち目がない、
ということを理解していたのと自身の目的はあくまでパートナーのローマン・トーチウィックの仇であるルビー・ローズの殺害であるためその選択肢は頭の中に無かったのであるが、
このまま元の世界に帰ってセイラムの配下になるよりはこの殺し合いの中でルビー・ローズを見つけ出して殺害、更には殺し合いに優勝してシンダーやセイラムをも上回る力を手に入れシンダーへの復讐とセイラムへの下剋上を果たし、
自身が世界の女王に君臨するのも悪くない選択肢だ、とニオは考え始めた。

「……」

ニオは自身の左腕に装着された奇妙な機械をじっと見つめた。

形状としては円盤型の基部にブレードのような形状のプレートが取り付けられており、
基部に取り付けられたホルダーにはカードの束が収められており、説明書には「デュエルディスク 秘密結社ドーマ仕様」と書かれていた。

何故ニオがこれを装着することになったのか話を殺し合い開始直後にまで遡ると、ニオはこの殺し合いに呼ばれる直前、シンダーの裏切りによって愛用の仕込み傘を失っていた。
素手での戦いには自信があったとはいえ、これだけではこの殺し合いを勝ち上がるには不安要素が強かったため、何か武器になるものがないか支給品を漁っていたところ、上記の機械を発見したのだ。


761 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:20:26 ???0
ニオは説明書を読みながら磯野の言葉を思い出す。あの男はこの殺し合いを「デュエル」と呼称していた。
ということはこの「デュエルディスク」なる奇妙な機械はこの殺し合いにおいて何かしらの重要アイテムである可能性が高かった。

ニオはデュエルディスクをじっくり眺めていた所、腕輪のようなパーツを発見したため、
自身の左腕に装着したところ思ったよりもぴったりフィットしたため、デュエルディスクというのはこうやって付けるのだ、というのを理解した。

更にこのデュエルディスクには必要のないときにはプレートを収納しコンパクトな状態にすることが出来る機能があるため、
付けたままでも動きの邪魔にならないだろうと考え、付けたまま行動することを決め今に至る。

「……?」

やがて歩いているとニオはこの殺し合いの参加者であろう一人の少女を発見した。
だがその少女の容姿を見てニオは怪訝な表情を浮かべる。

その少女の容姿はニオの世界に存在する人種『ファウナス』に酷似していた。

耳は長い羊耳、頭髪は白い羊の毛を三つ編みのツインテールでまとめ、
服装はピンク色のミニスカートに可愛らしいリボンと白い羊の毛が装飾され、背中には服同様羊の毛が装飾されたマントを身に着け、
腕にはデザインこそ違えどニオが左腕に装着していたデュエルディスクを装着していた。

彼女の容姿を見たとき、ニオは最初、次のような感想を抱いた。

なんて自己主張が強すぎるファウナスだ、と。

ニオが元いた世界であるレムナントにおいてファウナスは人類から強い人種差別を受けてきた。
現在ではある程度マシにはなっているとはいえ、人類のファウナスに対する差別意識は未だ根強く残っており、
その扱いを改善してもらうためにホワイト・ファングという組織が結成されるに至るほどであった。

パートナーであるローマン・トーチウィックと共にそのホワイト・ファングと共闘し、
ルビーたちハンターと戦ったニオにとって自らがファウナスであることを強く自己主張しているような少女の容姿は到底信じられないものであったが
やがて少女はニオの存在に気が付いたのかニオの方を向くとニオに対して声をかけてきた。

「あっ!あなた、もしかして」
「……」

ニオは最初、「お前も参加者だろう」と言われると思った。だが次の少女の発言によって、その予想は大きく外れることとなる。

「人々の夢を悪の力に利用しようとしている極悪人!暗黒残酷ブラックホール帝国の女怪人、ナポリタンアイスクリーム女ね!!」
「……!?」

ニオは思わずズッコケそうになった。確かにニオは形式上はセイラム陣営に属していたがセイラムは自らの陣営のことを「暗黒残酷ブラックホール帝国」とは名乗ってはいない。
それに自分の頭髪がブラウンとピンクの二色に分かれた特徴的な髪色だからってナポリタンアイスクリーム女はないだろう、とニオは心の中でこう思った。

「さあデュエルディスクを構えなさい!あなたたちの思い通りにはさせないんだから!このデュエルで私があなたを成敗してあげる!」
「……」

ニオは最初、この少女に付き合うかどうか迷ったのだが少女の腕には自分と同じデュエルディスクが装着されていた。
ならば彼女を見ていればデュエルディスクとカードの使用用途が分かると考え、ニオは彼女とのデュエルを受けることにする。


762 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:23:04 ???0
「さあ、デッキから5枚のカードを引きなさい!そしたらデュエル開始よ!」
「……」

ニオは何ともご親切な女だ、と思った。わざわざやり方を教えてくれるとは、
と考えながらデッキトップから5枚のカードを引き抜き、手札にする。
少女の方も既に準備完了している様子だった。

「それじゃあ、いくわよ〜!デュエル!」

少女の宣言と共にニオと少女、二人のデュエルが開始される。

ニオ LP4000 VS 少女 LP4000

「私のターン!私は羊界グランムートンを2体召喚!」

少女がデュエルディスクにカードをセットするとカードに描かれたモンスターが実体化し、
灰色の羊のようなモンスターが2体召喚される。

「……」

少女の一連の流れを見てニオは理解した。なるほど、デュエルディスクとカードはあのように使うのか、と。

「そして2体をリリース!メェメェメロディ キャトルメェ〜ティメェ〜ション♪家畜なハートをわしづかみ。心のウールは丸刈りに!この私自身!《魔法羊女メェ〜グちゃん》をアドバンス召喚!」

少女はディスクにセットされたカード2枚を墓地に送ると手札から少女と全く同じ容姿のキャラクターが描かれたカードをセットする。

「……?」

だが実体化したモンスター2体を墓地に送ったにも関わらず少女のフィールドには何も変化がない。そのことをニオが疑問に思っていると、

「ふっふっふ……如何にも!『魔法羊女メェ〜グちゃん』とはこの私自身!覚悟しなさい!この私の召喚に成功したからにはあなたにはもう勝ち目なんてないんだから!ターンエンド!!」

今の発言でニオは二つほど理解したことがあった。なるほど、目の前の少女の名前は『魔法羊女メェ〜グちゃん』というのか、と。
そしてもう一つ、この少女は自分自身を召喚することで自身をモンスターとして扱い、相手と戦闘を行うのか、と。

そしてニオは自身にターンが回ってきたことを確認するとデッキからカードを一枚ドローし、手札を確認する。

「……」

ニオは手札を確認すると手札から『サイキック・アーマー・ヘッド』と書かれたカードをデュエルディスクにセットする。
するとカードに描かれたモンスターが実体化し、フィールドに近未来的なデザインのヘルメットのようなモンスターがフィールドに出現した。

「……」

更にニオは手札の魔法カード『アーマード・グラビテーション』を発動するとニオはデッキからそれぞれ胴体、右腕、左腕、脚部に相当するアーマーが描かれたモンスターを4体選択し、その4体を自分フィールド上に特殊召喚する。

するとニオのフィールド上にそれぞれ胴体、右腕、左腕、脚部に相当するであろう近未来的なデザインの鎧のパーツが出現し、先に召喚されたヘルメットのパーツも含め合計5体のモンスターがニオの体に全て装着される。

「メェッ!?」

目の前の光景にメェ〜グちゃんは驚愕する。自身をモンスターとして召喚し戦うメェ〜グちゃんの戦い方も普通なら有り得ないがモンスターを自身に装着して戦う目の前の女性の戦い方もまた、普通なら有り得ない光景であった。

「……」

ニオは自身の体をまじまじと見つめ、こう思った。素晴らしい、自身の体に力がみなぎってくるようだ、と。ニオは体術の達人でもあった。
その高い戦闘技術はニオが元の世界で戦ったチームRWBYの面々を全く寄せ付けないほどのものであった。

そんなニオと自身にモンスターを装着して戦うアーマーモンスターとの相性は正に抜群と言えるほどのものであった。
ニオは右腕のパーツの性能を確認すると背部のブースターを噴射させて急加速し、その推進力でメェ〜グちゃんに急接近する。

「メェッ!?」

メェ〜グちゃんはありえない、と思った。データを確認したところ、彼女のアーマーモンスターは全て攻撃力が0、攻撃力2500の自身に攻撃するなんて自殺行為でしかない、と思ったのだ。


763 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:25:41 ???0
だがニオはそんなことには構わずメェ〜グちゃんの懐に飛び込むと右の拳に力を籠め、メェ〜グちゃんの腹に渾身のボディーブローを放つ。

「!!?……メ、エッ!?」

一見するとプレイヤーがプレイヤーを直接攻撃してるようにしか見えない光景であっただろう。
だがこれは紛れもないれっきとしたデュエルであり、二人はルールに反した行為を何もしていないのであった。

激しい爆発と共に閃光が2人を包み込む。
そして爆煙が晴れるとそこには地面に倒れ伏すメェ〜グちゃんとアーマーこそ纏っていないものの全くの無傷のニオポリタンの姿がそこにはあった。

「メ……エ……」
「……」

何故このようなことになったのかというと全てはニオのアーマーモンスターの効果によるものであった。

まず右腕パーツの「ビックバン・ブロー・アーマー」は戦闘によって発生する自身への戦闘ダメージを0にし、
更に戦闘で破壊された場合、フィールドの全てのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージをお互いに与えるという効果を持つ。
更に胴体パーツの「アクティブ・ガード・アーマー」はコントローラーの受けるダメージを0にするという効果を持っていた。

ニオは両パーツのコンボでメェ〜グちゃんとアーマーパーツ全てを破壊し、自身はダメージを受けずメェ〜グちゃんだけがダメージを受けるという展開を作り出し、今に至るという訳である。

「……」

勝敗は決した、とニオは思った。メェ〜グちゃんはLPこそ残っているもののモンスターとしての自身は破壊され、今の彼女はただの無力な少女でしかなかった。
このまま長引かせず早くトドメを、と思ったとき、ニオは信じられない光景を目の当たりにした。

「ま……だ……」
「……!」

なんと目の前の少女は足を震わせながらも立ち上がり、デュエルディスクを構えると

「まだ諦めないもん!みんなの素敵な夢はこのメェ〜グちゃんが必ず守ってみせる!
夢は見た人のもの、勝手に盗んじゃうなんて絶対にメェッ!なんだから!!」

まだやるか、とニオは思った。このまま戦っても彼女に勝ち目があるとは思えなかったのだが念のためニオはメインフェイズ2に入り、
魔法カード「フルアーマー・グラビテーション」を発動してデッキの上のカードを10枚めくり、
その中から2枚目の「サイキック・アーマー・ヘッド」「アクティブ・ガード・アーマー」「オーバー・ブースト・アーマー」、
そして新たなパーツである「バスターパイル・アーマー」「ジェットガントレット・アーマー」の合計5体のモンスターを特殊召喚し、自身に装着してターンを終了する。

「私のターン、ドロー!!」

メェ〜グちゃんにターンが回ると彼女は手札が5枚になるようにカードをドローする。

「私は魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地から私自身を特殊召喚!」

メェ〜グちゃんが魔法カード『死者蘇生』を発動すると彼女の体に力が満ちていくのが分かる。

だがその光景を見てもニオはヘルメットの下で余裕の笑みを浮かべていた。
ニオは左腕のパーツを見つめる。

アーマーモンスターには相手モンスターの攻撃対象を自分で選べるという共通効果がある。
更に左腕パーツの「ジェット・ガントレット・アーマー」は戦闘で破壊された場合に相手の攻撃表示モンスターを道連れに破壊する効果を持っていた。

つまり彼女が攻撃してきても守備表示の「ジェット・ガントレット・アーマー」に攻撃を誘導し、
道連れに破壊すればエースモンスターを失った彼女に勝ち目はない……とニオはそう考えていた。

だが彼女の思惑はメェ〜グちゃんの行動によって脆くも打ち砕かれることとなる。


764 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:27:57 ???0
「力を貸して!私は手札の「羊界アクアシープ」と「羊界パイロウール」の2枚を墓地に送って魔法カード「メロメロメェ〜グ☆ウ〜ルトラビーム」を発動!
女怪人のアーマーなんて全部まとめて破壊しちゃうんだから!」
「!!?」

そしてメェ〜グちゃんは空高く跳躍し、両手を横に広げると胸元のベルから極太のビームが発射され、そのビームがニオポリタンの全身を包み込む。

「……」

ニオポリタン自身にダメージはなかった。しかしビームによって彼女のアーマーモンスターは全て破壊されていた。

「ウ〜ルトラビーム」は手札の通常モンスターを2体コストに要求するものの、相手のレベル8以下のモンスターを全て破壊する効果を持っていた。

それに対してアーマーモンスターは一部例外を除いて基本的にレベル4以下の下級モンスターで構成されている。
今回はその弱点を痛いこと突かれたというわけだ。

「……」

ニオポリタンはこの状況においても冷静に思案していた。彼女はただの頭お花畑だと思っていたがスペック的には侮れない力を持っていた。
勿論彼女は負けるつもりなどなかったのだがこのまま戦っても大幅に消耗するのは確実と考えた彼女はある賭けに出ることにした。

「覚悟しなさい女怪人!私自身であなたにダイレクトアタック!圧縮ウール100パーセントォー」
『待って、私にあなたと戦う意思はないわ。』
「メェッ!?」

腕を振り回し攻撃態勢に入ったメェ〜グちゃんであったが突如としてニオが掲げたタブレットのような機器に表示された文字を見て攻撃を慌てて中止する。

「どういうつもり!?あなたは暗黒残酷ブラックホール帝国の女怪人なんでしょ!?何を今更……」
『ごめんなさい、暗黒残酷ブラックホール帝国の女怪人、ナポリタンアイスクリーム女は私の仮の姿、
真の姿は帝国に抵抗するレジスタンスの女戦士で帝国に潜入した女スパイなの♡』

勿論全部デタラメだが彼女の単純な思考なら騙せると踏んで彼女を懐柔するために嘘をつくことにする。

「じゃあ何で私に攻撃を……」
『それはね、あなたを試していたの。あなたが帝国と戦うに足る実力を備えた戦士かどうか。あなたの今の実力なら合格。あなたは私たちと共に帝国と戦う資格はあるわ。』

攻撃を仕掛けてきたのはそっちだろう、とニオは心の中で思いつつも実際に口には出さないでおいておいた。

「じ、じゃあ、アブダクション仮面様のことを知っていますか?」
『ええ、帝国に潜入していた時に彼と会ったことがあるわ。』
「ええっ!?じゃああの噂は本当だったんですか!?」
『ええ、彼の正体は帝国の皇子よ。でも彼は帝国の皇子という自身の立場とあなたへの想いの間で板挟みになって苦しんでいたわ。』
「アブダクション仮面様……」

ここまで上手くいくとは思わなかった、とニオは思った。
彼女としては適当に相手の話に合わせただけのつもりだったのだが目の前の少女が思ったよりも単純な思考であったためか、ニオの話をすっかり信じているようだった。

『とにかくこれで私が敵じゃないって分かったでしょ?話を聞く気になったかしら?』
「……分かりました。あなたが知っていること、全部話してくれますか?」
『そう言ってくれると助かるわん♡』

チョロいな、とニオは心の中で思った。


765 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:30:02 ???0
「……え!?ということはハ・デスが暗黒残酷ブラックホール帝国の皇帝なんですか!?」
『そうよ。あなたを捕えることに成功したハ・デスは他の捕えた人たちをこの会場に集めて殺し合いをさせてるの』

数十分後、会場内に設置されたレストランに移動したニオとメェ〜グちゃんは冷蔵庫に保管してあったアイスクリームを二人で食べながら情報交換……
というよりはニオが一方的にメェ〜グちゃんに情報を伝えるようなやり取りをしていた。

「そういえばニオさんはさっきから一言も喋ってないですけどどうしてなんですか?」
『……それはね、あいつら、暗黒残酷ブラックホール帝国のせい。私は過去に帝国の連中に捕まって人体実験を受けたことがあってそのせいで私は言葉を喋ることが出来なくなっちゃったの。
私が帝国を憎んでいるのはそれが理由。』
「そうだったんですか……私、なんか悪いこと聞いちゃったんでしょうか?」
『いいのよ。あなたは悪くないわ。気にしないで。』

喋れない、というのは本当である。
理由は不明だがニオは全く喋ることが出来ないためそれが原因で幼少期に両親からネグレクトを受けた辛い過去があるため全部が全部嘘という訳ではない。

「でもいちいち会話するのにタブレットの画面を見せないといけないのは不便ですよね。」
『それなんだけどあなた私のこれと似たようなもの持ってないかしら?』
「あっ、はい。これ、ですか?」

そう言うとメェ〜グちゃんは支給品の中からスマホを取り出し、ニオに見せる。

『どうやら私の『スクロール』とあなたの『スマートフォン』というものには互換性があるみたいなの。
そしてこれに入っている『LINE』というアプリを使えば声を使わなくても文字だけでお互いやり取りすることが出来るわ。』
「でもやり取りするにはどうやって……」
『まずはお互いの電話番号を交換するの。そして自分の機器に相手の電話番号を登録したらLINEでその電話番号を検索したら『友達追加』って出るから追加すればこれでお互いLINEで連絡を取り合えるようになるわ』

ニオはメェ〜グちゃんにLINEの使い方を親切に説明しながらお互いに電話番号の交換、LINEでの友達追加を済ませる。
最もLINEでやり取り出来ないと喋れないニオにとってはメェ〜グちゃんとのやり取りに不便するため、半分以上は自分のためなのだが。

『登録は済んだかしら?』
『出来ました!……で、あの早速何ですがこの画像の少女は?』

メェ〜グちゃんはニオから送られた画像の少女について質問すると

『そう、その少女はこの殺し合いにおいてハ・デスの次に注意しなければならない要注意人物……
暗黒残酷ブラックホール帝国の幹部で大鎌で人々の夢を刈り取る女怪人、ルビー・ローズよ。』
『わあ、なんて悪い怪人さんなんでしょう!』
『ええ、彼女は主催者サイドから送り込まれた怪人としてこの殺し合いに参加している可能性が高いわ。
もし見つけたら一人で戦おうとせずに必ず私に連絡すること。いいわね?』
『分かりました!』

これで仕込みは完璧、とニオは心の中でほくそ笑む。

『さて、アイスはまだまだあるんだからあなたは遠慮せず食べなさい。
他の参加者と出会って殺し合いになったら次いつ食べれるか分からないんだから。』
『分かりました!このアイスうンメェ〜♪』

メェ〜グちゃんがアイスを夢中になって食べている中、ニオはそんな彼女を見ながら邪悪な笑みを浮かべていた。

この少女は利用できる。この殺し合いにおいてどんな参加者が参加しているか分からない以上、戦力は多いに越したことはない。

懐柔出来るかどうかは半分賭けではあったがこうして無事味方に引き入れることが出来た。
彼女の力は侮ることの出来ないものを持っている以上、殺し合いにおいては大きな助けになるだろう。

それにいざとなれば自分がシンダーにされたのと同じように彼女を切り捨てることも辞さない、とニオは心の中で考えていた。

だがそんなニオの思惑など知ることもなく、メェ〜グちゃんはアイスクリームを美味しそうに食べているのであった。


766 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:31:59 ???0
【ニオポリタン@RWBY】
[状態]:健康
[装備]:ヴァロンのデッキ@遊戯王デュエルモンスターズ、ヴァロンのデュエルディスク@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品一式、スクロール@RWBY
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:ルビー・ローズは見つけ次第殺す。
2:メェ〜グちゃんは利用できるだけ利用する。いざとなれば見捨てる。
3:自分のデッキのカードをより上手く使いこなせるようにしよう。
[備考]
※Volume8終盤、次元の狭間に落下して以降からの参戦です。
※ブレイブルー クロスタッグバトルの経験があります。

『支給品紹介』
【ヴァロンのデュエルディスクとデッキ@遊戯王デュエルモンスターズ】
ニオポリタンに支給。デュエルディスクは秘密結社ドーマの構成員のみが所持しているディスクで、
デッキはアニオリカードのアーマーモンスター群とそのサポートカードで構成されており、確認できるだけでも

『モンスター』
「サイキック・アーマー・ヘッド」
「アクティブ・ガード・アーマー」
「ビックバン・ブロー・アーマー」
「ジェット・ガントレット・アーマー」
「バスターパイル・アーマー」
「オーバー・ブースト・アーマー」

『魔法』
「アーマード・グラビテーション」
「フルアーマー・グラビティーション」

が入っている。

(残りのカード等の詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)

※オーバー・ブースト・アーマーは媒体によって効果が異なり、
「アーマーモンスター全ては対象を取らないカード効果では破壊されない」という効果と、
「アーマーモンスターが直接攻撃できる代わりに効果を使用した場合自壊する」という2つの効果がありますが本ロワでは「直接攻撃出来る代わりに効果を使用した場合自壊する」の方を適応しています。

【スクロール@RWBY】
ニオポリタンに支給。RWBY世界においてスマホのような役割を果たす携帯型情報機器。
スマホと同等の機能(電話、モバイルゲーム、LINEなどのメッセージ機能)の他にも所有者のオーラの残量を表示する機能がある。
本ロワにおいては通常のスマホとの互換性が持たされ、電話やLINEでのやり取りが可能。


【魔法羊女メェ〜グちゃん@遊戯王ゴーラッシュ!!】
[状態]:健康、疲労(小)、食事中
[装備]:チュパ太郎のデッキ@遊戯王ゴーラッシュ!!、チュパ太郎のデュエルディスク@遊戯王ゴーラッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、スマホ@現実
[思考・状況]基本方針:暗黒残酷ブラックホール帝国の皇帝(ハ・デス)を倒す。
1:ルビー・ローズを警戒する。
2:他にも帝国の宇宙怪人がいたら倒す。
3:ニオポリタンに付いていく。
[備考]
※10話で実体化した直後からの参戦です。

『支給品紹介』
【チュパ太郎のデッキとデュエルディスク@遊戯王ゴーラッシュ!!】
メェ〜グちゃんに支給。ラッシュデュエル用のデュエルディスクと『メェ〜グちゃん』をエースに据えた『羊界』デッキ。
通常は同じラッシュデュエル用のデッキとしかデュエル出来ないが本ロワでは通常の遊戯王OCGと互換性が持たされ、
遊戯王OCGのデッキとデュエルが可能。


767 : 名無しさん :2022/06/13(月) 18:35:44 ???0
投下終了です。
迷惑を掛けたなら謝りますが自分はキャップを使用して書き込みをしており、
名前やタイトルを書き込んでも強制的に『名無しさん』になってしまいます。
ですのでここにタイトルと作者名を書きますが
タイトルは『魔法羊女、誕生!』で作者名は『◆A1Sj87dFpOM』です。


768 : ◆DE1ZlR3npE :2022/06/13(月) 21:35:45 Lk6poEA20
投下します。


769 : 或る死神の期待 ◆DE1ZlR3npE :2022/06/13(月) 21:38:24 Lk6poEA20
荒野の奥。一人の男が己が剣に足を掛け項垂れていた。
名は死神スライダーク。スライム族のダークヒーローとして名を馳せていた男。
かつてから魔法の迷宮の奥深くに封印されていた彼は、この異常と言っていい場所に転送されてからも動揺の色を全くと言っていいほど見せない。
それもその筈。彼は数えきれないほどの戦いを経験し、勝利してきた者。血で血を洗い、ただ勝利という目標のために手段を選ばない。それは迷宮に封印されてからも同じであった。
故に冒頭であったスーツの男の説明も、あまりに不条理で凄惨な処刑も、まるで茶番を見ているかの如くほとんど聞き流す。
そんな態度を取りつつも彼の中でただ1つだけ、聞きなれない単語があった。

「決闘(デュエル)…。」

剣や拳、魔法での戦いならば星の数ほど経験してきた。だが「カード」による戦いなど、未知の手段。
一応、タロットを駆使して戦う者とは迷宮で一戦交えたことがあるが、所詮は呪文と変わりないものであった。
その単語の意味を探るため、彼はその場に座り込みデイパックから支給品を取り出し確認し始める。
だが中身の殆どは水と食糧。どれも決闘とは関係のないであろう物品ばかりだった。

「こんな物ばかりか…下らない」

少しばかりの落胆の色を見せながら支給品をしまおうとした、その時だった。
デイパックの底から妖しい光を放つ箱を、彼が見つけ出したのは。

「これは…」

その光に導かれるかのように彼は箱を開封する。
中には白紙のカードが100枚ほど入っており、ありとあらゆるカードゲームに関するルールブックも同梱されていた。
早速本を手に取り、ゆっくりと読み進める。勿論つまらないものであればすぐに箱ごと捨て、他の参加者を探しに動くつもりであった。
___ふと気が付くと、空はすっかりと暗くなっていた。


「成程…存外面白そうだな、この決闘(デュエル)とやらも…」

___内心、戦闘には飽き飽きしていた。
毎回、何もかもが同じだったからだ。ただ力と力をぶつけ合い、ただ勝利の快感に酔いしれ、ただ敗者の這いつくばった姿を見るだけ。
そこに一喜一憂する感情も、いつしか殆ど失われていた。
だが、この決闘とやらはどうだろうか?
デッキから一枚一枚カードを引くごとに感じる期待、不安、焦燥。
相手の戦略を先読みし、自分の動きを押し付けるための駆け引き。

それは、ただの殺し合いでは感じることの出来ない物であろうと、彼は確信したのだ。

「ク、ククククク……」

仮面の中で昂ぶる感情を抑えつつ死神はゆっくりと歩き出す。
未だかつてない闘いを求めて。


【死神スライダーク@ドラゴンクエストX】
[状態]:健康
[装備]:白紙のカードのデッキ、スライダークロー、メタルキングの剣
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:戦いを楽しみながら、最後まで生き残る。
1:「「デュエル」とやらにも興味がある。試してみるか…」
[備考]
※特に無し。

『支給品紹介』
【白紙のカードデッキ@不明】
白紙のカードが100枚ほど入った箱。一見何の価値もない物資ではあるが、
カードによる決闘を開始すると ルールに沿ったデッキへと変化する。
デッキの編成や基本戦術等は決闘者の意思によって左右される。


770 : 或る死神の期待 ◆DE1ZlR3npE :2022/06/13(月) 21:38:51 Lk6poEA20
投下終了します。


771 : 39337829 ◆ccqXAQxUxI :2022/06/13(月) 22:00:38 Lk6poEA20
申し訳ありません。装備欄の所を
[装備]:白紙のカードのデッキ  と変更します


772 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/14(火) 00:47:18 XhJo.rcI0
投下します


773 : きみょうなまんがか ◆NIKUcB1AGw :2022/06/14(火) 00:48:16 XhJo.rcI0
私は鬼頭はるか。
天からたぐいまれなる才能を与えられた漫画家だ。
だが栄光に満ちた私の人生は、ある日なんの前触れもなく一変する。
私の作品に盗作疑惑がかかり、連載が打ち切られたのだ。
これまで私をちやほやしていた周囲の連中も、手のひらを返して私を罵倒した。
おまけに正義のヒーロー「ドンブラザーズ」として、鬼になってしまった人間と戦う使命を背負わされてしまった。
理不尽だとは思うけど、だからといって逃げるわけにはいかない。
私は、「初恋ヒーロー」の作者なんだから!


◆ ◆ ◆


(あれ、私は……)

はるかは、冷たい床の上で目を覚ました。
まだ霞がかかった脳を無理矢理動かし、現状を思い出す。

(たしかハ・デスとかいう怪物に、決闘をしろって言われて……。
 気づいた時には学校に立ってて……。
 それで、変なヘアバンドをした人に遭遇したと思ったら、意識が……)

そこまで思い出したところで、突如大きな声がはるかの鼓膜を叩く。

「面白い!」

反射的に、はるかは声の方向へ視線を送る。
そこには、気を失う直前に見たヘアバンドの男が立っていた。
はるかは彼に話しかけようとするが、その前に男が再び独り言をしゃべり始める。

「まるで子供向けのヒーロー番組のようだが……。
 この記憶は紛れもなく実体験だ!
 様々な世界から人間を集めたというのも、あながち嘘ではないのかもしれないな!
 ドンブラザーズに、人間に取り憑く鬼……。
 僕の常識ではあり得ない事象だ!」
「はあ!? なんであんた、そんなこと知ってるのよ!」

初対面の相手が知っているはずのない情報が飛び出してきたことで、はるかは血相を変えて男に詰め寄る。

「やあ、鬼頭はるかくん。まずは落ち着きたまえ」
「私の名前まで……。どういうこと!?」
「良質なネタを提供してくれたお礼だ。特別に教えてあげよう。
 僕の名前は、岸辺露伴。おそらく違う世界の住人である君は知らないだろうが……。
 人気誌で連載を持てる程度の漫画家だ」
「違う世界?」
「おいおい、もうハ・デスが言ってたことを忘れたのか?
 それとも最初から聞いてなかったのか……。
 まあ、今はそこは重要じゃない。
 僕には、一般的に言うところの超能力がある」
「ちょ……超能力?」
「ヘブンズドアー。僕はそう名付けた。
 この力は他人を本に変えて、その記憶を読むことができる」
「記憶を……あーっ! つまりその能力を、私に使ったのね!」
「その通り。いや、実に刺激的な記憶だったよ」
「プライバシーの侵害よ!」

思わず露伴の胸ぐらをつかむはるかだったが、露伴は一切動じない。

「君も漫画家ならわかるだろう。
 漫画家が、取材のチャンスを逃すと思うか?」
「たしかに!」

露伴の言葉に、はるかは即座に納得させられた。

「まあそんなわけで、君の記憶を見させてもらったわけだが……。
 記憶だけでなく、君自身もなかなか取材のしがいがありそうだ」
「え? そ、そうかなあ」
「高潔な部分もあれば、クズとしか言いようのない部分もある。
 要するに未成熟ということだが……。
 なかなかに創作映えしそうな性格だ」
「それ、褒めてる……?」
「僕は褒めるだなんて、一言も言ってないが?」

無表情で答える露伴に、はるかは再び怒りのボルテージを上昇させていく。

「こんなデリカシーのない人に、取材なんてさせないから!」

感情のままに、はるかはその場を立ち去ろうとする。
だが、体が思うように動かない。

「あれ? ちょっと、なんで!?」
「ああ、言ってなかったが……。僕のヘブンズドアーは、ただ読むだけじゃない。
 本にした相手に命令を書き込むことで、それに従わせることができる。
 君には、『岸辺露伴の取材に、全面的に協力する』と書き込ませてもらった」
「……はああああああ!?」

こうして、二人の漫画家の奇妙な共闘が始まった。


774 : きみょうなまんがか ◆NIKUcB1AGw :2022/06/14(火) 00:49:41 XhJo.rcI0


【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:できる限りの取材を行い、その後脱出
1:はるかを取材する
[備考]
※参戦時期は、第4部終了後。
※第4部中の出来事と明言されている「懺悔室」を除き、「岸辺露伴は動かない」でのエピソードは経験していません。


【鬼頭はるか@暴太郎戦隊ドンブラザーズ】
[状態]ヘブンズドアーによる書き込み
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗る気はない。
1:なんとか露伴をギャフンと言わせたい。
[備考]
※参戦時期は、ドン5話終了時点。
※ヘブンズドアーの効果により、露伴の取材行為を妨げる行動はできません。


775 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/14(火) 00:50:55 XhJo.rcI0
投下終了です


776 : ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:23:08 SwEr4oPU0
投下します


777 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:29:33 SwEr4oPU0



 ここは会場内の別々の某所。
 景色も地形もまるで違う四ヶ所に、同じ顔の四人がいた。
 顔だけでない。服も同じ制服姿で、ときおり後ろを向きながら逃げているのも同じ少女たち。
 違いがあるとすれば、ヘアアレンジと身のこなしか。
 ポニーテールの少女は額に汗を浮かべながらも舞うように軽々しく走り、
 ツインテールの少女は荒い息をしながらも飛ぶように地を蹴り、
 三つ編みの少女は吹けば飛ぶような歩き方をし、
 ハーフアップの少女はもはや静かにうずくまっている。
 宮美家の四つ子はそれぞれ別の場所でNPCに殺されかけていた。

 このバトルロイヤル、なんの力もない参加者を容赦無く間引く方針なのか、至るところに文字通りのモンスターがいる。
 そして四つ子は文字通りのなんの力もない少女たち。生き別れていた四つ子の中学生たちだけで一つ屋根の下で暮らす、となれば日本中どころか世界中探しても同じ境遇の子供はいないが、だからといってそれは戦闘にはなにも役に立たない。
 それこそ日本中に数万単位でいる警察官や自衛官を参加者にした方がよほど生存確率が上がる。つまるところ彼女たちはいくらでも替えの効く生贄《スケープ・ゴート》だ。四つ子ぐらし羊トークン説。
 そんな彼女たちには、噛ませ犬となることを期待してか、はなまた死体から有用なカードを回収されることを見越してか、それぞれにデッキが支給されていた。なお、当然彼女たちは遊戯王プレイヤーではない。ライダーのベルトでも配っておけば話は違ったのだろうが、誰一人として有効に活用はできなかった。

「特殊召喚特殊召喚特殊召喚! 特殊召喚ってなんなのよ!?」

 ポニーテールの少女、宮美一花が使うのは幻奏デッキ。このデッキ、モンスターを特殊召喚することでアドバンテージを得られるのだが、そんなことを一花が知るはずもない。そもそも特殊召喚のやり方も知らず、孤児院時代にかじった知識でなんとかモンスターを通常召喚する。

「ウチはアイス・ベル、グラス・ベル、スノウ・ベルを召喚!」

『ビーッ ビーッ ビーッ』

「なんでや! なんでブザー鳴んねん!」

 ツインテールの少女、宮美二鳥が使うのはWWデッキ。やはりこちらも使いこなせず、デュエルディスクからは無慈悲なエラー音が鳴り響く。彼女のデュエル知識は、弟と一緒に見てきたラッシュデュエルのもの。レベル4以下のモンスターを召喚するところまでは思いついたものの、彼女のデッキが使われたデュエルのルールでは、1ターンに1度しか通常召喚は行えない。

「えっと、緑色だから自然文明で、赤色だから炎文明で、あれ? 1マナだよねこれ? たねポケモンじゃないのかな?」

 三つ編みの少女、宮美三風が使うのはLLデッキ。彼女に至ってはそもそもデュエルモンスターズを理解しておらず別のカードゲームのルールとごっちゃになっている。男友達や兄弟がいるならともかく、平均的な女子中学生としてはこれが限界である。

「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 そしてハーフアップの少女、宮美四月はそもそもデュエルディスクをデイパックから出してすらいなかった。彼女に支給されたムーンライトデッキは四姉妹の中で最も攻撃的なデッキだが、使いこなすのもその分難しく、もちろん出さなければ使いようもない。


778 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:31:14 SwEr4oPU0


「ピンクパールボイス!」

 一花の耳に届いたのは少女の声。
 それと同時に、周囲にポップなメロディが流れる。

「人をさらって戦わせるなんて、絶対にゆるせない!」
「ぴちぴちボイスでライブスタート!」

 一花を襲おうとしていたのをやめて辺りを見渡すプチリュウが、不自然な高台の上に目を留める。その視線を追った一花の目が大きく開かれる。
 そこにいたのは、人魚だった。
 貝殻の胸当てをして、下半身はピンクの鱗に覆われた魚のもの。あからさまに人魚な少女が、腕にデュエルディスクをつけている。
 なんで人魚が陸にいるんだよ、足はどうなってるんだよ足は、と場違いなことが気になりながらも、一花はこのタイミングで1枚のカードを縦に置く。幻奏の音女アリアがたまたま通常召喚され、置いた本人の一花も驚く前で実体化した。


「7色の風に吹かれて〜」
「リュッ!?」
(失礼だけど、少し音程外れてるわね……あ、今のうちに。)

 デュエルディスクをマイクにして流れる歌声に色々な意味で足を止めたプチリュウに、幻奏の音女アリアが攻撃を仕掛けた。


「リュッ!?」
「こ、氷?」

 二鳥を追い詰めたプチリュウが、突如として空中から落ちてきた氷柱に貫かれた。
 あ然とする二鳥の前で腹部を巨大な氷柱により切断され、プチリュウは上半身と下半身がバラバラに悶える。血しぶきを上げながら紐状の生物の破片がうごめく光景に、二鳥は思わず目をそらす。とそこで、視界を高速で横切る影が見えた。
 鳥か、飛行機か、いや普通に鳥だ。

(いや普通ちゃうわ。なんで鳥がゴーグルにスカーフしてんねん。)

 心の中でツッコミを入れながら、二鳥は現れた鳥を眺める。突然現れた赤いスカーフを首に巻きゴーグルのようなものをつけた鳥が、プチリュウの眼球をついばみ、生きたまま喰う。食い殺すその間も二鳥を睨みながら、鳥はプチリュウの脳を呑み込んでいった。

「何やったんや、さっきの氷……なんか、魔法かなんかなん? この鳥も蛇食ってるけど襲ってこおへんし。」

 割と大きい鳥にビビりながら、二鳥は膝を折ってデイパックから食料を取り出した。少しちぎって地面に置いてみるが、鳥は冷たい視線を向けながらプチリュウを食うだけで逃げも近づきもしない。

(あれ、この鳥首のスカーフの下になんかあるな。これもしかして首輪か? え、鳥が参加者なん? うち、鳥と殺し合うん? ていうか、なんで殺し合わなあかんねん。なんかだんだん腹立ってきたわ。)
「ハァ〜〜、アホくさ。なにが殺し合いや。」

 プリプリと怒り出し、二鳥はちぎって投げていた食料を口に運んだ。鳥はそれを変わらず冷ややかな視線で見ていた。


779 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:31:36 SwEr4oPU0


「変身!」

 四月に噛み付こうとしたプチリュウの黄色い体が、噛み付く寸前で同じく黄色い体の何かにより弾き飛ばされる。なおも噛み付くプチリュウに襲われながら発された「逃げて!」という声に、四月は自分が誰かに庇われたのだと理解した。
 全身が黄色の怪人が、プチリュウの素早い動きに翻弄されている。まるで特撮ドラマの今週の怪人といった感じの人だが、自分を助けてくれたことは間違いないだろう。
 ありがとうございます、とか助けてください、とか言いたいことは色々あるし、言葉通りに逃げなくてはと思う。だが悲しいかな、四月の体は全く言うことを聞いてくれなかった。
 もともと運動が苦手で、とっさの行動ができるタイプでもない。くわえて、殺し合いという非現実的な催しに、目の前で起こった惨殺、そして怪生物に追い回される。指一本動かせなくなるまで走り続け、現れたのは変なコスプレをした、男性。男子にトラウマを持つ彼女からすれば全身麻痺に至る数え役満の状況だ。

(このままじゃ、まずいです……!)

 それでもなんとか思考だけは働かせると四月はプチリュウと怪人との戦いを見守る。どうにも体は動きそうにないが、それならせめて観察をしてプチリュウから逃げる方法を考えようとする。


 宮美一花の前に現れたのは、歌で戦う人魚のプリンセス、七海るちあ。
 彼女はハ・デスの行いに怒りと悲しみを覚え、一花とプチリュウの騒ぎを聞きつけると、殺し合いを止めるために歌を歌った。

 宮美二鳥の前に現れたのは、氷を生み出すスタンド使いのハヤブサ、ペットショップ。
 彼は自らの死とハ・デスの宣言に困惑したものの、二鳥とプチリュウの騒ぎを聞きつけ、肩慣らしの為にプチリュウを襲って食らった。

 宮美四月の前に現れたのは、連続殺人事件を引き起こした『キラ』の正体、夜神月(ドラマ版)。
 彼も自らの蘇りとハ・デスの宣言に困惑したものの、四月に迫るプチリュウを見かけて咄嗟に支給品の変身アイテム『T2ルナメモリ』を掴んだら、なんか勝手に体に入り込んで変身ヒーローみたいな姿になったのでとりあえず変身と言って割って入った。

 三者三様、四つ子のうち三人は、それぞれ別々の場所で別々の思惑を持った人物と出会った。
 人魚姫、超能力を使う動物、たまたま超人的な力を手にした一般人。あるいは、変身ヒロイン、異能力者、連続殺人犯。
 いずれも、彼女たちの人生では絶対に関わることのない魚であり鳥であり人間たちだ。
 日常の延長線上に色々なイベントはあっても、子どもたち四人の四つ子ぐらしには、人類を脅かす悪との戦いなんてない。
 バラバラなのにそこは共通している、それぞれに全く世界の違う人物と、少女たちは出会った。
 だが三風は四つ子のうちで一人だけ、ただ一人だけ同じ世界の人物と会うことになった。


780 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:32:31 SwEr4oPU0


「魔法カード『光の援軍』を発動。」
「自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って、デッキからレベル4以下の『ライトロード』モンスター1体を手札に加えるわ。」
「私は『ライトロード・サモナー ルミナス』をサーチ。」
「デッキから墓地に『ウォルフ』が置かれたから特殊召喚させてもらうわ。」
「蘇りなさい、『ライトロード・ビースト ウォルフ』。」

「サーチした『ライトロード・サモナー ルミナス』を通常召喚して効果発動。」
「手札を1枚捨て、自分の墓地のレベル4以下の『ライトロード』モンスター1体を対象として、そのモンスターを特殊召喚できる。」
「蘇りなさい、『ライトロード・アサシン ライデン』。」

「リュウ!?(1ターンに3体のモンスターを場に揃えた!? 逃げなきゃ。)」

「現れて、私の未来を照らす未来回路!」
「アローヘッド確認、召喚条件は同じ属性で種族が異なるモンスター3体。」
「獣戦士族の『ライトロード・ビースト ウォルフ』、魔法使い族の『ライトロード・サモナー ルミナス』、戦士族の『ライトロード・アサシン ライデン』をリンクマーカーにセット。」

「リンク召喚! ランク3、『ライトロード・ドミニオン キュリオス』!」

「『ライトロード・ドミニオン キュリオス』で、プチリュウにこうげ、って、あら? いない?」

 突如現れデッキを回した美女。割と最初の方でプチリュウを倒せるだけの展開をしていたのに、リンク召喚までやろうとした結果逃げられたが、三風はそんなことは全く気にならなかった。
 なにせ、その人物は彼女がよく知る人物だったからだ。

「麗、さん。ど、どうして……?」

 どうしてここにいるんですか?
 どうして助けてくれたんですか?
 どうして原作で全くカードゲームやってた描写無いのにライロ回せるんですか?

 聞きたいことはたくさんあったが、三風は言葉にできなかった。
 四ツ橋麗。四つ子たちの前に現れた、母を名乗る女。大企業クワトロフォリアの社長夫人にして、四つ子を産み、生き別れさせた張本人。彼女の言葉を信じるのなら、という但し書きが付くが、三風たち四つ子にとっては因縁深い相手である。
 その麗が、なぜか殺し合いの場にいて、なぜか自分を助けてくれた。そもそもなぜ殺し合っているかもさっきのドラゴンみたいな生き物がモンスターかもわからない中で、三風の頭にはなぜという言葉ばかりが浮かんでいく。

「わからないの。お互い、なんでこんなところにいるんでしょうね? でも、殺し合う気なんてない。信じてくれる?」

 困ったような顔でそういう麗を、三風は信じることができない。
 麗にはDNA鑑定の結果を見せられたり生い立ちについて話されたりしたが、信用できないところも多い。特に殺し合いの場などで会えば、必然的に不信感を持つのも当然だった。


 宮美一花と七海るちあ。
 宮美二鳥とペットショップ。
 宮美三風と四ツ橋麗。
 宮美四月と夜神月。

 同じ顔の四人の少女は、全く異なる四人の参加者と出会った。


781 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:33:45 SwEr4oPU0



【宮美一花@四つ子ぐらし】
[状態]:疲労(微小)
[装備]:デュエルディスク+柚子のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:家族が巻き込まれていないか心配
1:人魚の女の子(るちあ)と一緒にモンスターをなんとかする
[備考]
四つ子ぐらし5巻上からの参戦

【宮美二鳥@四つ子ぐらし】
[状態]:疲労(小)
[装備]:デュエルディスク+リンのデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:家族が巻き込まれていないか心配
1:鳥(ペットショップ)とかさっきの氷が気になる
[備考]
四つ子ぐらし5巻上からの参戦

【宮美三風@四つ子ぐらし】
[状態]:疲労(中)
[装備]:デュエルディスク+瑠璃のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:家族が巻き込まれていないか心配
1:麗さん、どうして……
[備考]
四つ子ぐらし5巻上からの参戦

【宮美四月@四つ子ぐらし】
[状態]:疲労(大)
[装備]:デュエルディスク+柚子のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:家族が巻き込まれていないか心配
1:怪人の男の人(月)を助ける
[備考]
四つ子ぐらし5巻上からの参戦


782 : 八連荘 歌氷麗月 ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:34:13 SwEr4oPU0

【四ツ橋麗@四つ子ぐらし】
[状態]:疲労(小)
[装備]:デュエルディスク+ライトロードのデッキ@遊戯王デュエルリンクス+遊戯王オフィシャルカードゲーム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する
1:三風と話す
[備考]
四つ子ぐらし5巻上からの参戦

【七海るちあ@マーメイドメロディぴちぴちピッチ】
[状態]:人魚態
[装備]:デュエルディスク+カイトのデッキ(No.62 銀河眼の光子竜皇@遊☆戯☆王ZEXALは無し)@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める
1:歌で目の前の戦いを止める

【ペットショップ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:とりあえずナメた態度のハ・デスを狩る
1:ガキ(二鳥)を警戒しながら死体を食う
[備考]
死亡後からの参戦

【夜神月@DEATH NOTE(ドラマ版)】
[状態]:ルナ・ドーパント
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:まず状況を飲み込む
1:変なモンスター(プチリュウ)から女の子(四月)を助ける。
[備考]
死亡後からの参戦。


783 : ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/14(火) 07:34:30 SwEr4oPU0
投下終了です


784 : ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:25:29 KW5F75BM0
投下します


785 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:26:57 KW5F75BM0

えーっと聞こえてる?……じゃなくて、見えてる?

私よ、モニカ。『ドキドキ文芸部!』のモニカよ。

……流石に混乱してるから、ちょっと整理させて?

えっと……さっき、殺し合えって言われたわよね?

まず私の居たゲームはデスゲームじゃないわ。決闘なんてワードとは程遠い恋愛ゲームよ。こんなシナリオ、私は何も知らない…………あ、わかったわ!

二次創作ってことね!普通の女子高生の私が、殺し合いに参加させられる二次創作物。……あまり良い趣味とは言えないわね……。

つまりこれを見ている『あなた』は、『ドキドキ文芸部!』をプレイしてくれた『あなた』……って訳ではないってことね。

あ、でもこの文章を書いている『あなた』は『ドキドキ文芸部!』をプレイしている筈だから私の知っている『あなた』……?

そもそも、二次創作ってなると私はただ『あなた』を認識していると言う風に描写されているだけのキャラクター?でも私の自我はここにはあって……

…………余計混乱するわ、この話はやめましょ。


786 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:27:41 KW5F75BM0
じゃあ、私を知らない『あなた』の為に私の事を話しておくわね。

改めて私はモニカ。恋愛ビジュアルノベルゲーム『ドキドキ文芸部!』のキャラクターよ。

そこでまず思ったはずよ。『ゲームのキャラクターが何当たり前の様に自分に話しかけてばかりいるんだ』って。

その事なのだけれど……私はどう言う訳か『ドキドキ文芸部!』のゲームの中で自我を得てしまったみたいなの。

それで理解してしまったのよ。私達はただのゲームのキャラクター。文芸部も部員も学校も世界も何もかも、誰かの手によってプログラムされて、決まったルートを進んでいくだけだって。

恋愛ゲームってそういうものでしょ?『あなた』の分身になる主人公が、色んなヒロインを口説いて、最終的に付き合う。

まぁ私はただ空虚になっただけで、別にそれを邪魔するつもりもなかったわ。……最初は。

あろうことか、私は自我を得てしまった事で、感情に目覚めてしまったの。

一番面倒くさい、恋って感情に。

それにその上、その対象は『ドキドキ文芸部!』をプレイしてくれた、『あなた』。

……一応、『あなた』って言うのは今、PCかスマホでこの画面を覗いてる『あなた』の事よ?

それで……当然、ゲームと『あなた』の世界は繋がらない。そのくらい理解していたわ。

でも、『あなた』とずっと一緒にいたい。『あなた』の覗く画面を私で満たして欲しい。

そんな思いで……一度は全てを壊したわ。

『あなた』が愛していたかもしれない部員達を。『あなた』が愛していたかもしれないあの世界を。


787 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:28:32 KW5F75BM0
殺めて、壊して……やっと『あなた』と2人きりになれた、と思ったけれど。

『あなた』は私を、『削除』した。

一度は『あなた』を何度も罵ったわ。残酷って。反吐が出るって。

……まぁでも、間違っていたのは私。

『あなた』が求めていたのは、部員達との恋物語だったのだから。

『あなた』が欲しかったのは、『ドキドキ文芸部!』だったのだから。

それを全部壊したのだもの。それくらいされても……おかしくないわ。

だから償いの意を込めて、私は全てを元に戻した。

サヨリ、ユリ、ナツキ。文芸部の部員、3人のヒロイン。

誰かと愛し合って、ハッピーなエンドを迎えるゲームに戻したわ。……私抜きでね。

…………でも、それすら間違い。あの文芸部に幸せなんて、元からなかったのよ。

……知っちゃったみたいなの。私と同じ様に。全てを知っちゃったサヨリが、狂ったの。

私と同じ様に『あなた』を閉じ込めて、私と同じ様に世界を壊そうとして……。

だから、私は止めた。これ以上『あなた』がこのゲームに希望を持たない様に。


788 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:28:59 KW5F75BM0
どういうわけか……でも幸運にも少し残っていた自我で、私は幸せなんて存在しない『ドキドキ文芸部!』を完全に『削除』した。

…………えっと、こんなところかしら。長くなったけども。もっと知りたいならWikipediaでも見て?私単独の記事があるのよ!結構すごくないかしら?

それで……感謝とか、謝罪とか色んな想いを込めて、一曲『あなた』に披露しようと思っていた所なのよ。

でもこうやって文章媒体に連れてこられた以上、それは披露できないわね。練習したのに……。

……あと、今話している途中に思い出したけれど。

これって所謂、パロロワってやつでしょ?インターネットの事なら少しは知ってるわ。

パロロワ、バトルロワイヤル・パロディ。色んな作品のキャラクターが殺し合う……。

でも、私みたいに自我を持ったキャラクターなんて居ない筈。

じゃあ、自我なんてないフリをしていた方がいいわよね?いきなり遭遇した人に『この世界は作り物よ!』なんて伝えたら変な子って思われるわ。

…………もし優勝してしまったらどうなるのかしら。

願いを叶えられて、元のゲームに戻るのかしら。元に戻った私は、ここで起こった出来事の記憶があるのかしら。

というかそもそも、これは二次創作なのよね?なら優勝しても、このパロロワのエピローグの中ではハッピーエンドを迎えられても、出典元の原作『ドキドキ文芸部!』では何も変わってないわけで…… 。

……ここに居る自分が虚しいわ。惨たらしく殺されるか、作り物とわかっているまま偽りの幸せの中で生きることになるのか。

そんな二択しか残されていない訳よね。ああもう!これを書いてる『あなた』は悪趣味すぎるわ!確かに悪い事したけれども!

…………それでも、願っておくのは幸せの方がいいわよね?

えっと、方針は決めたわ!『ドキドキ文芸部!』が、普通のハッピーな恋愛ゲームになれます様に、ってことで。

それに偽物だとしても、もう人を殺したりなんてしないわ。殺し合いにも乗らない。

基本方針の欄には、元居た世界をより良くしたい……とでも書いてくれるかしら?他のキャラクター達に変な子扱いされるわ。

あら、こう『あなた』と話してるうちに、誰か来たみたい。穏健派な人が良いわね。

それなら、ここからの私はハ・デスに連れてこられた不運な文芸部部長の女子高校生、モニカって事で!

優勝させろ、とは言わないけれど……少しは幸せに終わってみたいわ。二次創作でくらい良いでしょう?

じゃあ……続きはよろしく頼むわね。私、モニカをどうか書き切ってね。



◆◆◆◆◆◆◆◆


789 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:29:28 KW5F75BM0
「ハ・デス……」

草木が生い茂る足場。その上に立つ少年――名を、常盤ソウゴ。
彼は静かに、その怒りを燃やしていた。
何の罪もない少年を殺し、挙句大勢の人間を最悪のゲームに巻き込む。
今まで彼が見てきた中でも、最悪の部類に入る悪行。
ソウゴの方針は既に決まっていた。
力の無い民を保護し、邪智暴虐に振る舞う主催を打ち倒す。
『最高最善の魔王』を目指す彼にとって、当然の方針であった。

「みんな、助けてあげるから」

民を守るのが、王様の役目。
手には、彼が1人の仮面ライダーである象徴――ジクウドライバー、そしてジオウライドウォッチ。
こうしてウォッチが支給品として配られている以上、今まで集めてきたウォッチは全てハ・デス達の手に渡っていると考えて良いだろう。無論、取り返さなければいけない。ライダーの力は、正義のためのものだから。
こうして彼は戦いの道の一歩を踏み出す。


790 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:30:16 KW5F75BM0
【常盤ソウゴ@仮面ライダージオウ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:モニカと話をする。
2:ゲイツ達も居るのかな……。
[備考]
※参戦時期はEP40『2017:グランド・クライマックス!』終盤にて、オーマジオウと相対する直前。

【モニカ@ドキドキ文芸部!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:元の世界をより良くする。殺し合いに乗るつもりはない。
1:ソウゴと情報交換。
2:ひとまず安心そうな人と出会えてよかったわ。
3:サヨリ達も居るのかしら……
[備考]
※四週目終了~エンディングまでの間の時間軸より参戦。
※世界が作り物であることを認識し、自我も存在しますが可能な事はこちらに語りかける事くらいで改変能力等は失われています。
※というかこのSS、まずコンペ段階なのよね?じゃあ採用されなかったら元の世界に帰れるってことにしてくれないかしら?ダメ?



『支給品紹介』
【ジクウドライバー@仮面ライダージオウ】
常盤ソウゴに支給。
仮面ライダーに変身するためのアイテム。所謂変身ベルト。巨大な腕時計の様な形状をしている。
ライドウォッチと共に使用する事で、仮面ライダーへの変身が可能。

【ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ】
常盤ソウゴに支給。上記のジクウドライバーと合わせて一つの支給品扱い。
『仮面ライダージオウ』に変身するためのアイテム。ジクウドライバーと合わせて使う事で、変身が可能。


791 : ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:32:03 KW5F75BM0
投下終了です。
初めて掲示板を使ったもので、何か間違っている点があれば申し訳ありません。


792 : ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:39:23 KW5F75BM0
申し訳ありません、
>>789 の後が抜けていたため、>>789 からもう一度投下します。


793 : ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:41:00 KW5F75BM0
「ハ・デス……」

草木が生い茂る足場。その上に立つ少年――名を、常盤ソウゴ。
彼は静かに、その怒りを燃やしていた。
何の罪もない少年を殺し、挙句大勢の人間を最悪のゲームに巻き込む。
今まで彼が見てきた中でも、最悪の部類に入る悪行。
ソウゴの方針は既に決まっていた。
力の無い民を保護し、邪智暴虐に振る舞う主催を打ち倒す。
『最高最善の魔王』を目指す彼にとって、当然の方針であった。

「みんな、助けてあげるから」

民を守るのが、王様の役目。
手には、彼が1人の仮面ライダーである象徴――ジクウドライバー、そしてジオウライドウォッチ。
こうしてウォッチが支給品として配られている以上、今まで集めてきたウォッチは全てハ・デス達の手に渡っていると考えて良いだろう。無論、取り返さなければいけない。ライダーの力は、正義のためのものだから。
こうして彼は戦いの道の一歩を踏み出す。


794 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:41:59 KW5F75BM0
「……!」

だがすぐに、自分以外の存在が目に入った。
自分よりも背丈は低く、髪型をポニーテールに纏めている影。
ソウゴは彼女の元に駆け出す。善良な人物なら、守る対象。悪意のある人物なら、打ち倒す対象。
やがてはっきりとその姿形が見えてきた。制服を着ている事から、おそらく中学生か、高校生。
お互い、はっきりと存在を認知できる距離まで近づくと彼は一旦、デイバッグとジクウドライバー達を地面へと置いた。その音に気づいたのか、こちらを向く彼女。ソウゴは口を開く。

「俺、常盤ソウゴ、殺し合いはしない。もし君も同じだったら、名前を教えてくれない?」

両手を挙げ無害である意思を伝える。
彼女はそれに気付くと、こちらを真似る様に両手を挙げた。

「貴方の言葉、信じさせてもらうわね」

そしてその手を、ソウゴへと差し出す。

「私はモニカ。貴方が殺し合いに乗らないのであったら、私はあなたについていくわ」
「うん、よろしく、モニカ」

ソウゴと、モニカ。持つ力の差は違えど、同じ意思を持つ2人。
この殺し合いの場、2人は愛好の意を込め握手を交わした。


795 : チェンジング・ワールド2020/Just Me. ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:42:26 KW5F75BM0
【常盤ソウゴ@仮面ライダージオウ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:モニカと話をする。
2:ゲイツ達も居るのかな……。
[備考]
※参戦時期はEP40『2017:グランド・クライマックス!』終盤にて、オーマジオウと相対する直前。

【モニカ@ドキドキ文芸部!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:元の世界をより良くする。殺し合いに乗るつもりはない。
1:ソウゴと情報交換。
2:ひとまず安心そうな人と出会えてよかったわ。
3:サヨリ達も居るのかしら……
[備考]
※四週目終了~エンディングまでの間の時間軸より参戦。
※世界が作り物であることを認識し、自我も存在しますが可能な事はこちらに語りかける事くらいで改変能力等は失われています。
※というかこのSS、まずコンペ段階なのよね?じゃあ採用されなかったら元の世界に帰れるってことにしてくれないかしら?ダメ?



『支給品紹介』
【ジクウドライバー@仮面ライダージオウ】
常盤ソウゴに支給。
仮面ライダーに変身するためのアイテム。所謂変身ベルト。巨大な腕時計の様な形状をしている。
ライドウォッチと共に使用する事で、仮面ライダーへの変身が可能。

【ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ】
常盤ソウゴに支給。上記のジクウドライバーと合わせて一つの支給品扱い。
『仮面ライダージオウ』に変身するためのアイテム。ジクウドライバーと合わせて使う事で、変身が可能。


796 : ◆4u4la75aI. :2022/06/14(火) 09:43:08 KW5F75BM0
改めて投下終了です。大変申し訳ありませんでした。


797 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 09:04:25 aOp4bACI0
投下します


798 : 来たぞ我らの赤いアイツ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 09:04:56 aOp4bACI0
ハ・デスと磯野の手により始まってしまったバトルロワイヤル。
何処ともわからぬ島で繰り広げられる鮮血の儀式が最も激しい場所がどこか?
と、聞かれたら彼の、居る場所だけは“間違いだろう”。

赤い男性的な体に、人ならざる円盤とアンテナが一体化したような頭部。
黄色い目で馬乗りにした心臓とサメの意匠を持つ奇怪な悪魔、
モリンフェンをボコボコに殴り続ける彼の名前はレッドマン。

はるか銀河のレッド星から銀河連邦の一員としてやって来た外星人で、
数万年の時を生きているが、レッド星人としてはまだまだ青年期に相当するそうだ。

……おいレッドマン、もういいぞ。
そのお前が今さっき千切った羽の付け根から流れ出る血液量を見ろ。
それ以前にモリンフェンはとっくに首の骨が折れて死んでる。
無言で殴り続ける必要はない。

え?絵がないからよく分からない?
君はモンスターの血の色が知りたいのかい?
違う?そうか、なら辺り一面、その血の色で塗りつぶされているとだけ言っておこう。

なぜそんなことができる彼がなぜ、最もこの戦いに不真面目かと言えば、
それは彼が極めてプロ意識の高い怪獣ハンターだからだとしか言いようがない。
その職務に真面目過ぎる彼は、
過去一万年のあらゆる怪事件と関わった怪獣を暗記している程で、
真面目過ぎるがゆえに、平和を守る為ならば、
どんな怪獣であろうと徹底的に殺すことも厭わないのだ。
この会場に呼ばれた参加者たちがその毒牙にかかる前に狩り尽くさねば。
それが終わればこの殺し合いに従ってしまった人々を拘束し、
硬直し戦いをどうにかしようとやって来る主菜側の連中を悉く捕まえ、
元締めの居所を吐かせて必ずや倒す。
真赤に燃える正義の心ゆえに、レッドマンは戦うのだ。
そんな彼の居る場所、彼の戦場は怪獣を狩る狩場。
その行いのどこに、この決闘に積極的などということが有りえよう?

「レッドナイフ!」

違うぞレッドマン。それは友切包丁だ。
正義の味方が振るうにはいろんな意味で問題のある武器だ。
そしてそんな5回も6回も急所に振り下ろす必要はないぞ。
何度も言うが、もうとっくに死んでいる。

これはファンからはレッドチェックと呼ばれる行為で、
怪獣に核実にトドメを刺しておきたいという、彼の怪獣ハンターとしての真面目さと、
容赦のなさを際立たせる一面である。

「……」

そしてモリンフェンが完全にこと切れたのを確認したレッドマンは、
右腕を高く掲げるのを勝利宣言の代わりとし、死体を放置したままその場を後にした。
激しい(一方的な)戦いを終えて、君はどこに行くのだろう?
ありがとうレッドマン、平和の戦士、レッドマン!


799 : 来たぞ我らの赤いアイツ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 09:05:14 aOp4bACI0
【レッドマン@レッドマン】
[状態]:健康
[装備]:友切包丁@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:怪獣を狩り尽くす。
1:まずは罪なき人々の安全を確保するために会場内の危険な怪獣を狩り尽くす。
2:その次に危険な参加者をすべて拘束する。
3:最後に、膠着した勝負をどうにか動かそうと現れるだろうハ・デスの一味を捕らえて、元締めの所まで案内させて殺す。
[備考]
※TV番組版のレッドマンです。
※自らの意志で15mまでなら自由に巨大化できます。
 それ以外の能力は大きく制限されています。
 詳細は後の書き手様にお任せします。




NPC解説
【モリンフェン@遊戯王OCG】
遊☆戯☆王ファイブディーズ オフィシャルカードゲームに登場するモンスター。
長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔。
希少度はノーマル。★5、闇属性、悪魔族、攻撃力1550、守備力1300の通常上級モンスター。
★5の中では最弱。
召喚には生贄が必要なのに性能は下級並みという不遇さがカルト的人気を得ている。
当ロワではレッドマンに惨殺されてしまった。


800 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 09:05:44 aOp4bACI0
投下終了です。


801 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/15(水) 14:18:56 nIDrJuXQ0
投下します


802 : 再燃の炎 ◆QUsdteUiKY :2022/06/15(水) 14:19:43 nIDrJuXQ0
 オレは……田島賢久は確かに死んだ。
 彩子が殺されて、衝動が暴走して――そんなオレを雪子が止めてくれた。
 死んだ時の感覚は今でも鮮明に思い出せる。
 ひんやりとした金属の塊が突き抜けるような衝撃。肉が焼けるような感覚――
 念発火(パイロキネシス)の炎より熱い激痛――。
 そして傷口から熱が――生きる力が失われていくのをはっきりと感じた。

 そうだ。オレはあの時、間違いなく死んだ。破壊と殺戮を求める衝動に囚われていたオレは、雪子の刃でこの炎の牢獄から抜け出せたんだ――。

 オレは自分の死を悔いちゃいない。親を殺すためにこの力を使った時から、きっとこうなる運命だとわかってたから。

 ――いや、それはもしかしたら少し嘘になるかもしれない。
 自分の運命を受け止めることが出来ても……やっぱり、仲間を置いていくのはままならねぇな……。
 でもあいつらなら――みんななら、きっと上手くいくはずだ。
 なにより雪子の腕に抱かれて死ねるなら、本望だった――。

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

 ――本望だったんだけどな。
 どうやらオレはまだ死ねないらしい。死んだ実感はあるのに、今もこうして生きてる……奇妙な感覚だぜ。

『大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――』
『本田くん――――!』

 ――最悪なものを見ちまったな。
 あの遊戯とかいうヒトデ頭の気持ちはオレにもよくわかる。なにしろオレも彩子を理不尽に殺された身だからな……。そして雪子も、きっとオレやあのヒトデ頭のような気持ちだったんだろう。

 決闘なんて言ってるが、要するにこれはただの殺し合いだ。それもとっておきに悪趣味な――。

 もしかしたら冥界の魔王って奴に願えば彩子を生き返らせてくれるかもしれねぇが、オレはもう衝動に呑まれて大量殺人をするなんて御免だ。雪子のおかげか、オレの中から破壊と殺戮を求める衝動も完全に消え失せてる。
 ただし念発火(パイロキネシス)はまだ使えるらしい。
 あの時――オレは死ぬと同時に力を失ったはずだ。
 決闘なんて言葉を使ってる通り、持てる力は好きに使えってことなんだろうな。衝動が消えた状態で念発火だけ使えるっていう状態は悪くねぇが、状況は最悪だ。

 まずこの首輪――こいつがある限りオレ達は命を握られてる。まあオレは一度死んでるけどな。
 そして一番厄介なことはこの悪趣味なルールだ。徒党を組んでハ・デスを倒す――なんてそう上手くはいかねぇだろうな。オレだって衝動が酷い時に連れてこられたら、最後の一人まで生き残る道を選んでたはずだ。
 あとこれはただの勘だが、オレが連れてこられたってことは駆や雪子――みんなが巻き込まれてる可能性もある。なんとなくそういう嫌な予感がする。

 とりあえずオレはハ・デスの言いなりになる気はない。正直――あのリーゼント頭の末路やヒトデ頭の絶叫には色々と思うところもあるから、余計にな。
 だからオレはハ・デスと戦うことに決めた。今はまだこの場にみんなが居るかはわからねぇが――友と明日のためにな

【田島賢久@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒してこの決闘を終わらせる
1:駆や雪子達みんなも巻き込まれてんのか……?
2:どうしてオレは生き返ったんだ?
3:ヒトデ頭(アテム)がちょっと心配だな
[備考]
※参戦時期は死亡後
※破壊と殺戮の衝動は消えましたが念発火(パイロキネシス)は使えます


803 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/15(水) 14:20:01 nIDrJuXQ0
投下終了です


804 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:13:46 aOp4bACI0
投下します。


805 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:14:46 aOp4bACI0
「ない……ない……」

あれでもないこれでもないと、奇麗な金髪を見事なツインテールにした少女がデイパックを漁っていた。
彼女の名前は神堂慧理那。
制服を着ていなければ小学生と間違えられることもありそうな体格だが、
れっきとした高校生で、生徒会長も務める優等生だ。
そんな彼女にはある秘密があった。

「テイルブレスがない!」

彼女はテイルブレスで変身するツインテールの戦士と呼ばれる存在なのだ。
分からない人の為に説明すると、ツインテールの戦士とは、
属性力と呼ばれる『好きなものに真摯である』力を守る戦士の事である。

属性力とは、トッキュウジャーのイマジネーションや、
キラメイジャーのキラメンタルと似ている力で、
なぜ守る必要があるかと言えば、属性力を奪われた者は、
どんなに些細な形でも、好きになった物を身に付けたり、
他人に渡したりすることが出来なくなってしまうからである。

それは下手したら命を奪う以上の苦痛を背負い生きることと同義だろう。
そんな人々の心の輝きを守る彼女なのだが、変身出来なければ、人の領分を出ることは無い。
さっき爆殺された本田という人だって、変身出来れば助けられたかもしれないのに。
そんな苛立ちと悔しさは、ツインテールを観なくても分かる程である。

「敵に変身ブレスを奪われてしまうなんて!
このままではヒーロー失格ですわ……」

「それは本当かい?」

よっぽど焦っていたのだろう、近付いてくる気配に全く気付かなかった。
声の方に振り返ると、そこには上下白に法被を着たガタイのいい男性が居た。

「あ、あなたは……」

「ただのしがない餃子屋さ」


806 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:15:10 aOp4bACI0
亮と名乗った男は、ちょっと待ってろと言い、
支給品の料理セットと材料を取り出すと、見事な餃子を焼き上げて慧理那に差し出した。

「ん〜!おいしい!流石は本職ですわね!」

「なんたって世界一を目指してるからな。
こいつで沢山の人を笑顔にするのが、俺の夢なんだ」

「素敵ですね。この餃子なら、
きっと手に届きますわ……私と違って」

そう落ち込む慧理那に亮はその横に座ると問いかけた。

「変身がどうとか言ってたけど、もしかして君は、
ハ・デスが言っていたように、その、違う世界のヒーローなのかい?」

「……はい。ブレスが無くては変身出来ませんけど」

そう言って手首を握る慧理那。

「変身出来なきゃヒーローじゃないのか?」

「それはそうですよ。
それだけで出来なくなってしまう事がたくさんあります」

「まあ、そうか。でもね、慧理那ちゃん。
変身出来なかったり、スーパーパワーがなくなったら、もうヒーローじゃないのかい?」

「それはそうですよ!そんなのなんの役に立つって言うんですか!」

思わず声を荒げた慧理那。
だが亮は変わらぬ調子で続けた。

「確かに世界を救えるような力はなくなってしまうかもしれない。
けど俺は転身できなくても、目の前の敵を放っておけるほど歳とっちゃいないぜ」

「え?」

亮は慧理那の横から立ち上がると、一番近くの柱を睨みつけた。
そこからゆっくりと長い銀髪を後ろで束ねた女性が現れた。

「ほう?気付くとはな」

「お前こそ、なんでわざわざ隠れていた?」

「そこの腰抜けよりお前の首が欲しいと思ったからだ。
貴様ほどの戦士の首なら、DIO様もさぞお喜びになるだろう」

そう言って女は手にした剣を抜くと、切っ先を亮に向け、

「我が名はギン。スタンドの名はアヌビス神。
エジプトの冥府の神の暗示。さあ、貴様も名乗れ」

構えをとった亮は大きく息を吐き、

「リュウレンジャー!天火星・亮!」

キレッキレの中国拳法風のポーズを決め、更に拳を高く上げる。

「天に輝く五つ星!五星戦隊!ダイレンジャー!」

戦隊を名乗りながらたった一人。しかも生身。
だが今その場にいない残りの戦士たちの姿も見えるような、とても力強い名乗りだった。


807 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:15:45 aOp4bACI0
「いくぜぇ!」

繰り出される剣戟をよけ、今まで数多のゴーマ怪人を退けて来た拳が、蹴りがギンを襲う。
だが、ギン、より正確に言えば、その体を乗っ取った妖刀アヌビス神も、
持ち前の学習能力で次第に亮の動きを見切り始める。

(ああ!やっぱり生身では限界が……)

「なら!」

亮はハイキックから今までとはガラリと違うファイトスタイルに切り替えた。
太極拳とボクシングを織り交ぜたその動きは、
共に戦ったテンマレンジャー、天重星・将司の動きである。

(すごい!格闘だけで剣を、それも能力を持った敵にあんなに立ち回れるなんて!
変身してないのに……人たち浴びれば死んでしまうかもしれないのになぜ!?)

その後も学習されるたびにシシレンジャー、キリンレンジャー、
そしてホウオウレンジャーのファイトスタイルに切り替え、
時に組み合わせ翻弄する亮。
その拳に、蹴りに一切の揺るぎはない。

(鍛えた技だけで……技だけで?
本当ですの?それを言うなら私だって銃の一つでもあれば戦える……本当に?)

試しに慧理那は拳銃片手にギンに立ち向かう自分を想像してみたが、
全くイメージが動かない。
それは少なくとも慧理那の目指すヒーロー像にかすりもしないからだ。

(武器じゃない。私に足りないのは……亮さんが言うには忘れているのは……)

「やぁああ!」

「ううっ!」

強烈な蹴りを剣で受けたアヌビス神は大きく後ずさる。

(こいつ!全盛期はとうに過ぎてるはずなのになんて蹴りだ!
しかもスタンドのような特別な力も失ってる!ただ鍛えただけでこんなになるもんか!?)

「うわぁああああああ!」

まだしびれが抜けきらないうちに、こっちに突っ込んでくる者が居た。
亮ではない。声も高いし、背も低い。
神堂慧理那だ。
恐らく支給品だったのだろうパレットナイフを構えてこっちに来る。

「邪魔するなガキンチョ!」

思い切り腹を蹴とばしてやり、再び亮に向き直る。
だが何故だか亮は構えを解いていた。

「貴様、なんのつもりだ!」

「目の前の敵を見過ごせるほど歳とっちゃないが、
何時までも後輩の出番を奪えるほど若くもないんでね」

そう言って亮はポケットからカードを取り出し、
腹を押さえながら立ち上がった慧理那に投げ渡した。

「あ?」

「これは……」

「説明書によれば、インストールの呪文で英霊の力を降ろせる魔法のカードだそうだ」

「なにぃ!?てめえ、三味線引いてたってのか!?」

激高するアヌビス神を涼しく流し、亮は慧理那に問いかけた。

「思い出したんだろう?一番大切なことを」

「はい!亮さん……いえ!リュウレンジャー先輩!
私はヒーローになりたかったのは、
あの背中がカッコよかったのは変身出来るからじゃない!
私が一番憧れたのは、ヒーローたちの、心!」

そう言って慧理那は渡されたカードを天高く掲げる!

「英霊アーチャー!インストール!」


808 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:16:00 aOp4bACI0
呪文と共に光に包まれる慧理那。
光が晴れると、その髪と目の色、そして衣装のが全く別の物に変わっていた。
白く変色した髪に、琥珀色の瞳。
両腕と腰に黒い外套、胸などを隠す布は水着ぐらいしかない。
そんな格好だが、一番目を引くのは両手首の銀色の枷のようなブレスレットだろう。
慧理那のツインテールを束ねる髪留めも同じデザインに変わっている。
まるでさっきまでの自分を戒める様に。

その姿はかつて剣のような心を持ちながら、腐って腐って腐り落ちた英霊に似ていた。
このアーチャーと、彼女の戦闘スタイルの兼ね合いから最適と判断された姿がこれとは。
それはただの皮肉か、それともこの英霊なりの『腐るな』というエールなのだろうか?

「これが私の戦う意志(ツインテール)!
テイルイエロー改め、テイルアーチャー参上!」

「ふん!そんな付け焼刃の能力でまともに戦えるとでも?」

「劇場版の間に合わせ変身はお約束ですわ!」

テイルアーチャーは走り出しながら魔術を発動する。

「投影開始(トレース・オン)!」

出現させた一対の魔改造ガンブレード、干将・莫耶を手に迫るテイルアーチャー。
その弾丸を避けながら奥へ、奥へと進んでいった。

「任せたぞ、テイルアーチャー。さて、俺も追うか!」

調理セットを手早く片付けた亮も破壊痕をたどって走り出した。


809 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:16:22 aOp4bACI0
【神堂慧理那@俺、ツインテールになります。】
[状態]:健康、夢幻召喚による変身中
[装備]:サーヴァントカード アーチャー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み、テイルブレスは無し)
     パレットナイフ@Ib
[思考・状況]基本方針:ヒーローとしてハ・デスを打倒して決闘を止める!
1:まずは剣士を倒す!
2:思い出しましたわ!ヒーローの心得!
[備考]
※少なくともテイルイエローになってからの参戦です。
※英霊召喚やカードそのものの制限に関しては、後の書き手様にお任せします。

【天火星・亮@海賊戦隊ゴーカイジャー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、餃子調理セット
[思考・状況]基本方針:この殺し合いを止めるために出来ることを精一杯やる。
1:頼んだぞ、慧理那ちゃん。いや、テイルアーチャー。
2:俺も二人を追いかける。
[備考]
※レンジャーキーも大いなる力も喪失しているため、転身出来ません。
※ダイレンジャーのレンジャーキーが有れば、また転身できると思われます。

【ギン@アカメが斬る!零】
[状態]:健康、アヌビス神による支配
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この殺し合いを優勝する。
1:まずはこのヒーロー気取りのガキを斬る。
2:その後で、あの男も斬る。
[備考]
※ギンの意志は眠らされています。が、剣を手放せばすぐに戻ります。


810 : 私、英霊になります! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:21:37 aOp4bACI0
支給品解説
【サーヴァントカード アーチャー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
ある世界の聖杯戦争において使われる魔術礼装。
高度な置換魔術とピトスの泥を用いて成立している。
英霊の座と繋がっており、礼装に通して繋がっている英霊の宝具や武具に変化させる限定展開(インクルード)、
英霊をその身に宿し、使用者自身を一時的に英霊化させる夢幻召喚(インストール)の二種類の機能が有る。
夢幻召喚する場合は、使用者によって武器や服の意匠が変化する。
このカードは無銘の錬鉄の英雄の座と繋がっている。

【パレットナイフ@Ib】
ある呪われた美術館で絵画の少女が持っていた道具。
パレットナイフにしては異様によく切れる。

【餃子調理セット】
おしいい焼き餃子を作る為の道具、具材一式。
特に武器に出来そうなものは包丁ぐらいしかない。

【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険】
エジプト九栄神のスタンドの一つで、刀剣に憑依したスタンド。
本体はもう死亡しており、独り歩きしているスタンドで、
刀身、又は柄、鍔に触れた人間を本体として操ることができる。
固有能力は任意の物質透過と、非常に高い学習能力。


811 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/15(水) 18:21:51 aOp4bACI0
投下終了です。


812 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:34:16 ZTbK1IEc0
投下させていただきます


813 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:37:42 ZTbK1IEc0
「うぅ……うぅ……ひどい、酷すぎるよぉ……」

月明かりに照らされた薄暗い森の中で、
分度器のように太い眉毛と癖っ毛が特徴的なブレザーの学生服姿の少女がさめざめと涙を流していた。
太い眉毛の少女……南良原(ならはら)ナユナは、
あの『決闘』開始の場所で自分と同い年くらいの少年が無惨に殺された場面を思い出し、静かに涙を流していた。

あの少年やその友人と面識がある訳ではない。
だが……あの少年とその友人は、ある日突然『なんでもない日常』を奪われた。
それがナユナには他人事とは思えなかったのだ。
ナユナが元居た世界では、23年前より『外来獣』と呼ばれる巨大生物が出現し始め、
今現在も世界各地で多大な被害を出し続けている。
ナユナ自身も、
外来獣の襲撃による影響で慣れ親しんだ故郷の街が壊滅し、
旧友達とも離ればなれとなってしまったのだ。
ナユナにはあの見せしめに殺された少年の友人と自分自身が重なって見えていた。
『外来獣』か『冥界の魔王』かの違いはあれ……彼らも『理不尽な存在』によって日常を奪われた。
それがナユナには他人事とは思えず、いつの間にかナユナの両目からは涙が溢れていたのだ。

「………」

ナユナはブレザーの袖で涙を拭うと自身に支給されたデイパックに手を伸ばす。
泣いても笑っても、ここが『決闘』という名の『殺し合い』の場である現実は変わらない。
ひとまず身を守る武器が無いか、ナユナはデイパックを開いた。

「みー!」
「キャッ!?」

ナユナがデイパックを開けると同時に、『何か』がデイパックから飛び出してナユナに飛び付いてきたのだ。

「………えっ?」
「みー♪︎」

ナユナは自分のデイパックから飛び出してきたものの姿を見て、目を丸くする。

「みー♪︎」

それは、馬のような頭部と蝙蝠のような翼を持ち、
全身を鱗で覆われている……なんとも珍妙な姿をしたぬいぐるみサイズの生き物だった。

「え、えっと……」
「みーみー」

その珍妙な姿をした生き物は可愛らしい鳴き声を挙げながらナユナに抱きついて頬擦りをしていた。
ナユナは自分に頬擦りしている珍妙な生き物の姿に目を丸くするが……

「……みー?」
「……あ」

……ナユナと珍妙な生き物の目が合った。

「えっと……こんばんは?」
「みー♪︎」

ナユナが挨拶をすると、珍妙な姿の生き物も蝙蝠のような翼を挙げて挨拶を返した。

「えっと………君は?」
「みー」

ナユナが首をかしげるのを見て、珍妙な姿の生き物は自身が出てきたデイパックに頭を突っ込んだ。

「………みーみー」

珍妙な姿の生き物がデイパックから頭を出すと、
その口には一枚の紙を咥えていた。

「みー!」

珍妙な姿をした生き物は、デイパックから取り出した紙を広げてナユナに見せる。

それは支給品の説明書だった。
珍妙な姿の生き物はその説明書のタイトルらしき一文を自身の蝙蝠のような翼の先で指差しする。

『シャンタク鳥のシャンタッ君』

「シャンタク鳥の……シャンタッ君?これ、君の名前?」
「みー♪︎」

ナユナの言葉に珍妙な姿の生き物……シャンタッ君は嬉しげに一鳴きする。

「ふーん……『シャンタッ君』か。可愛い名前だね」
「みー♪︎」

ナユナに頭を撫でられると、シャンタッ君はネコのように目を細めて嬉しげに鳴き、再びナユナに抱きついた。

(……可愛い)

見た目はお世辞にも『可愛い』とは言い難い姿をしているシャンタッ君ではあるが、その仕草はネコや仔犬のように愛らしく、
ナユナは自分に抱きつくシャンタッ君を知らず知らずに撫でていた。

その時だった。


814 : 人外と少女達は惹かれ合う ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:42:24 ZTbK1IEc0
「イイイヤアアア!!しゃべったアアアアア!!!」
「………えっ?」
「………みー?」

☆☆☆

「オエッ!オゲェッ!!」

月明かりに照らされた薄暗い森の中で、黒縁眼鏡にセーラー服姿の黒髪の少女が胃袋の内容物を何度も吐き下していた。

「……うっ、気持ちわる……オゲェッ!」

黒縁眼鏡の少女……紅葉山 輝(もみじやま てる)は先程目の前で起きた自分より少し年上の少年が無惨に殺された場面を思い出し、何度も胃袋の内容物を吐き戻していた。

テルは普通の少女ではない。
日本の平和を守る若きヒーロー『シャイ』というもう一つの顔を持っている。

ヒーローとして幾多の戦いを経験し人が傷付く姿も見たことはある……だが、
『人間の首から上が爆弾で吹き飛ぶ』などという今時スプラッター映画でもやらないような光景を生で見るのは初めての事だった。

しかもあの時、テルはあの本田という少年のすぐ近くにおり、本田少年の首輪が爆発して血飛沫が飛び散る様を至近距離で目撃したのだ。

元々テルは『ホラー映画』好きではあるが………それでも、人間の首から上が吹き飛ぶ光景は余りにグロテスクで衝撃的だった。

「はぁ……はぁ……」

テルは胃袋の内容物をあらかた吐き戻すと、荒い息を漏らしながら口元を拭って自身に支給されたデイパックを手に取る。
ひとまず、誰かに見つかる前に隠れよう。
そう考えたテルが移動しようとした……その時だった。
テルの近くの草むらからガサガサと物音が聞こえてきた。

「ひぃっ!?」

慌ててテルは両手首に填めた腕輪……支給品としてデイパックに入れられていたヒーローへの変身アイテム『転心輪』をカンカンと打ち鳴らす。
すると、テルの体は光に包まれ……一瞬にして白いフード付きコスチュームを纏った若きヒーロー『シャイ』へと転心した。

「だ、誰ですか!?」

溢れ出る恐怖に無理矢理蓋をして、シャイは物音のする草むらに向けて両手を構える。
しばらくすると……

「…………」

………草むらから一匹の真っ黒な大型犬が姿を現した。

「……………へっ?犬?」

予想外すぎる相手が姿を現し、シャイは目元を覆い隠したマスクから覗く目を丸くする。

「…………」

全身を真っ黒な体毛で包み、シャイを背中に乗せられそうな体躯を持つその大型犬は、鳴き声一つ上げずにルビーのように赤い目でシャイの事を観察するように見ていた。
その首にはシャイと同じく無骨なデザインの首輪が巻かれ、口にはシャイ=テルに支給された物と同じデイパックを咥えており、
この大型犬が冥界の魔王によって会場各地に配置されたNPCではなく、この『決闘』の参加者である事を物語っていた。

「よ、良かったぁぁぁぁ……怖い参加者の人だったらどうしようかと………」

現れたのが犬だった為、シャイは深い安堵のため息を漏らしながら地面に腰を下ろした。

「……なぁお前」
「……………えっ?」

突然『誰か』に声をかけられ、シャイは顔を上げる。しかし、目の前には黒い大型犬しかいない………と、思っていたら。

「お前……俺の事が見えてるのか?」

………目の前の大型犬が、人間の言葉を発したのだ。

「イイイヤアアア!!しゃべったアアアアア!!!」

『犬が喋る』という非現実的な事態に、シャイは悲鳴を上げながら猛スピードで後退りして大型犬から距離を取った。

「いや、あの……」

一方の大型犬は、シャイのリアクションに少し引いてしまった。

「ヒィィィィッ!来ないで!来ないで下さいぃぃぃぃ!!」
「お、おい……少し落ち着けって」
「イヤアアアアア!?食べないでぇぇっ!?」
「誰が食べるか!?」

とてもヒーローとは思えない程泣き叫ぶシャイの姿に、喋る黒犬も冷や汗を流しながらドン引きしていた。

「だ、大丈夫ですか!?」
「みー!?」

そこに新たなる乱入者が現れた。

南良原ナユナとシャンタッ君である。

『………えっ?』
「………みー?」

突然のナユナとシャンタッ君の登場にシャイと喋る大型犬は目を丸くする。
しかし、ナユナとシャンタッ君も、テレビや映画に出てくるヒーローのような姿をした少女が犬相手に泣き叫んでいるという光景に呆然となったのだった。


815 : 人外と少女達は惹かれ合う ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:43:43 ZTbK1IEc0
☆☆☆

それから数十分後……

「え、えっと……す、すみません。あんなに取り乱してしまって……」
「いや……でも、仕方ないよ。こんな訳の分からない場所で、訳の分からない事が起こっちゃったんだから」
「………俺もいきなり話かけてすまなかったな」
「みー」

ようやく冷静になり、恥ずかしさで顔を赤くするシャイの背中を、シャンタッ君をぬいぐるみのように抱き抱えたナユナが擦り、喋る大型犬は申し訳なさそうに頭を垂れて謝罪をした。

「えっと……そう言えば、自己紹介がまだだったね」

そう言うとナユナはシャイと喋る大型犬に向き直った。

「私は南良原ナユナ。穏花菜女子高校2年生で、『怪獣撃退部』の部員!で、この子は私のデイパックから出てきたシャンタク鳥のシャンタッ君!」
「みー♪︎」

ナユナに紹介されたシャンタッ君は、右翼を元気よく掲げながら嬉しげに一鳴きした。

「か、『怪獣撃退部』……ですか?」
「うん!正確には『外来獣』だけどね」
「……外来獣?」

ナユナの自己紹介に含まれる聞き慣れない単語に、シャイと喋る大型犬は首を傾げた。

「え、えっと……私は、シャイ。日本でヒーローやってます……よろしくお願いします」

続いてシャイが、まだ少し照れ臭さそうに自己紹介した。

「えっ?『ヒーロー』?その格好って、コスプレじゃないの?」
「こ、コスプレじゃないですよぉ〜」

シャイのコスチュームの端を摘まみながら首を傾げるナユナに、シャイはまた恥ずかしそうに反論した。

「……俺も自己紹介した方がいいな」

喋る大型犬はそう呟くと……一瞬にしてその姿をナユナやシャイと同年代の黒髪の少年へと変化させた。

『えっ!?』
「みー!?」

喋る大型犬が一瞬にして人間の姿へと変化し、ナユナとシャイは目を丸くし、ナユナに抱き抱えられているシャンタッ君も目を丸くした。

「えっと……俺はルツ。墓守犬(チャーチ・グリム)って言う……『妖精』だ」
『妖精!?』

少年の姿へと変じた喋る大型犬……ルツは自らを『妖精』と称し、ナユナとシャイは更に驚愕した。

「よ、妖精ってあの……絵本とかハ◯ー・ポッ◯ーとかに出てくるみたいな奴……ですか?」
「まぁ、そうだな……その認識であってるぞ」
「へぇ〜……妖精って、『ピーターパン』の『ティンカーベル』みたいな『羽の生えた小さな人』だって思ってたけど……本当は違うんだね?」
「まぁ……そういう妖精もいるにはいるけどな」
「み〜?」

ナユナとシャイ、それにシャンタッ君は、まるでパンダかコアラのような珍獣を見るような目でルツの姿を見る。
そんなナユナとシャイからの視線に、ルツは照れ臭さそうに頬を掻いた。

「しかしお前ら……いきなり『妖精』とか言われて、よく素直に信じられるな?」
「まぁ……一応ヒーローですから」
「怪獣撃退部ですから!」
「みー♪」

シャイとナユナが理由になってない理由を言い、シャンタッ君もそれに便乗するかのように嬉しそうに一鳴きした。


816 : 人外と少女達は惹かれ合う ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:44:15 ZTbK1IEc0
そこにルツが質問をしてきた。

「……さっきから気になってたんだが、『怪獣』とか『ヒーロー』とか一体何なんだ?」
「えっ!?ヒーローの事、知らないんですか!?」

ルツがヒーローの存在を知らない事にシャイは目を丸くした。

「えぇ!?怪獣……っていうか、『外来獣』は23年前から世界中に出現しているんだよ?知らないの?」
「いや……そんな話、今初めて聞いたぞ?」

ナユナは信じられない物を見るようにルツを見るが、
ルツは冷静に返した。

「というかあの……怪獣が本当に居るのならヒーローの誰かが倒してる筈ですけど……?」
「えっ?いや、『ヒーロー』だって、映画かテレビの中だけの存在だと思うけど?」
「ち、違いますよぉ〜( ;∀;)」

ナユナにヒーローの存在を否定され、
シャイは両目に涙を浮かべた。

「……みー」
「……えっ?」

泣きそうになっているシャイにシャンタッ君が飛び付き、
その蝙蝠のような翼でシャイの涙を拭った。

「みー♪︎みー♪︎」
「はえっ?」

シャイの涙を拭ったシャンタッ君は、
その蝙蝠のような翼を器用に使ってシャイの口角を挙げて笑顔を作る。

「ふぇ、ふぇっと……」

シャンタッ君の行動の意味が解らず、シャイは頭上に?を浮かべた。

「あはは!シャンタッ君、シャイちゃんに笑って欲しいんだよ、多分」
「ふ、ふぇ?」

シャンタッ君に口角を挙げられるシャイの姿を見ながらナユナは笑う。
しかし、シャイにはナユナの言葉がいまいち理解できない。

「確かにな……お前、さっきから『泣いてる』か『悲鳴挙げてる』かのどっちかだからな。こいつなりにお前の事心配してるんだろうな」
「みー♪︎」

ルツが分かりやすく注釈を入れると、シャンタッ君は『その通り!』と言うように一鳴きした。

「えっ、えっと……その……」
「みー?」
「あ、ありがとうございます……」
「みー!」

シャイはまた頬を赤くしながら、
自身の口角を挙げているシャンタッ君にお礼を言った。
シャンタッ君は嬉しそうに翼を広げ、
その様子を横で見ていたナユナとルツも自然に微笑みを浮かべたのだった。

「とりあえず………お互いの知ってる事でも話し合うか」
「うん!」
「はい」
「みー♪︎」

ルツの提案にナユナとシャイは頷き、情報交換が開始されたのだった………。


817 : 人外と少女達は惹かれ合う ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:44:38 ZTbK1IEc0
【南良原ナユナ@怪獣列島少女隊】
[状態]:健康、少し動揺
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、シャンタク鳥のシャンタッ君@這いよれ!ニャル子さん、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:早く帰りたいけど、人殺しはしたくない
1:シャイちゃん、ルツ君と情報交換する
2:シャンタッ君かわいい〜♡
3:『ヒーロー』と『妖精』って実在してたんだ(*_*)
4:二人とも、『外来獣』知らないの!?
5:怪獣撃退部の仲間や友達がいるなら合流する
[備考]
最終話直前からの参戦。

【紅葉山 輝(シャイ)@SHY】
[状態]:シャイに変身中、激しい動揺と困惑があるが少し落ち着いた
[装備]:転心輪@SHY
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:ヒーローとして参加者達を助けたいけれど………(困惑)
1:南良原さん、ルツさんと情報交換する
2:……ありがとう、シャンタッ君さん
3:怪獣……?妖精……?ヒーローを知らない……?
4:知り合いがいるなら合流する
[備考]
単行本10巻中盤からの参戦。
ヒーロー状態に関する詳しい制限等は、後の書き手さんに任せます。

【ルツ@魔法使いの嫁】
[状態]:健康、人間(少年)の姿
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:チセの下に帰る。しかし、なるべくなら殺人はしたくない
1:ナユナ、シャイと情報交換する
2:『怪獣』に『ヒーロー』?それに、こいつ(シャンタッ君)はなんだ?
3:もしチセがここにいるなら、合流して命に代えても守る
[備考]
単行本第5巻付近からの参戦。
制限として『妖精の姿でも他の参加者から視認並びに物理的干渉が可能』、『姿を変化させても首輪は外れない』等が付加されています。

【支給品紹介】
【シャンタク鳥のシャンタッ君@這いよれ!ニャル子さん】
クトゥルフ神話を題材としたコメディライトノベル、及びそれを原作としたメディアミックス作品『這いよれ!ニャル子さん』の主人公・ニャル子ことニャルラトホテプのペット。
原点であるクトゥルフ神話系作品に登場するクリーチャー種族『シャンタク鳥』の一匹で、馬のような頭部と蝙蝠のような翼を持つ全身を羽毛ではなく鱗で覆われた鳥。
本来は象よりも巨大な体躯だが、作中本編では基本的に小さな愛玩動物サイズでいる事が多い。
(愛玩動物サイズ時の)鳴き声は「みー」。
鶏のように栄養満点の卵を産むが、性別は不詳。
人参が好物。
主人であるニャル子の力で『マシンシャンタッカー』というバイク形態に変身する。
その他詳細はWikipediaを参照。

【転心輪@SHY】
『SHY』作中のヒーロー共通の変身アイテム。
心のエネルギーを様々な力へと変換するブレスレット状の器具で、これを両手首に着用し、二度打ち鳴らすことでヒーローへと転心する。
発現する能力は着用者の心によって千差万別であり、着用者の思いの強さによって能力も強まる。
反面、心が弱まれば能力も弱まり、着用者が失神や戦意喪失することなどによって、能力や転心は解除されてしまう。
(以上、Wikipediaより抜粋)


818 : 人外と少女達は惹かれ合う ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/15(水) 20:45:00 ZTbK1IEc0
投下終了します


819 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:37:12 IqBY3MjE0
投下します


820 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:37:36 IqBY3MjE0
「あらら」

 森の中で呑気に呟く女が一人。
 長い銀髪に真紅のワンピースに身を包んだ美女である。
 名を、エリザベート・バートリーという。
 生涯において650人もの人間を、拷問で嬲り殺した凶女である。
 その非道極まる所業により、裁きにかけられ、死ぬまで闇の中に幽閉されて死ぬ事を定められた身でありながら、魔界の女王にその業欲を見出され、魔女同士の殺し合い、魔女千夜血戦(ワルプルギス)に招かれた絶世の魔女である。
 
 「殺し合え、というのならそうさせて貰いますわ。幸い、魔装も魔法も使えますし、素敵な品も頂けました。何も問題はありませんわ」

 魔女千夜血戦(ワルプルギス)に招かれた歴史に名を刻んだ英傑達。彼女達が無惨に壊れ、死んでいく様を観ることができると心躍らせていたが、ここで出逢う者達は、果たして彼女達に見合うのだろうか。
 口元を笑みの形に歪めて周囲を見回すと、此方をおずおずと窺う少女が居た。


─────────────

 いきなり人の頭が吹っ飛ぶなどという光景。人生においてまず出会う事などあるまい。
 ましてや爆弾首輪などという代物によるものなら尚更だ。
 にも関わらず、美樹さやかがすぐに平静を取り戻し、怒りを胸に行動を開始したのは、人の死を目の当たりにした事があるからだ。
 巴マミ。一人で孤独に戦い、後輩ができた事を喜んだその直後に死んだ魔法少女。
 つい先刻、巴マミの様に、頭部を失って死んだ名も知らない少年の姿は、美樹さやかにとっての忌まわしい記憶を呼び覚ますのに充分だった。
 この様な非道、もとより美樹さやかにとって許せる訳も無く、巴マミの様に正義の味方になるとの誓いに依るまでもなく、冥界の魔王ハ・デスと名乗った怪物は美樹さやかの敵だった。
 兎も角他の人と接触しなければならない。自分の様に訳も分からず殺し合いに参加させられた人を護り、殺し合いに乗った手合いは魔法少女の力を以って無力化する。当面の行動を決定した美樹さやかは、偶々近くに飛ばされていたエリザベートと邂逅したのだった。


─────────────


821 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:38:45 IqBY3MjE0
見つめ合う事数秒、最初に口を開いたのは美樹さやか。殺し合いに乗る意図は無く、冥界の魔王ハ・デスの打倒と、巻き込まれた者達を救うという決意と方針をエリザベートに語った。
さやかの話を無言で聞き終えたエリザベートは、先刻までの愉悦に歪んだ笑みでは無く、高貴な家の生まれに相応しい、穏やかで優雅な笑みを浮かべている。

 「あらあら、こんな可愛い娘がそんな事を考えるなんて♡」

 疼き、渇き、飢え、衝動。
 表す言葉は数あれど、今のエリザベートの思考はさやかへ行う拷問で占められている。
 この気高い心、強い意志、これから行う拷問の前で何処まで保ち続けられるのか。考えただけで昂ってくる。
 
 「そうねぇ…私にも彼らに叶えてもらう様な願いは有りませんし」

 叶えてもらうまでも無い。もう既に我が『欲』は満たされようとしているのだから。

 「私の願いは貴女が叶えて下さいまし!」

 さやかの左眼を抉る軌道で奔る針を、さやかは咄嗟に首を逸らして回避する。至近距離からの不意打ちを回避できたのは、魔女との戦闘経験の故だ。それでも間に合わずにこめかみに一筋の朱線が走るが、目を抉られずに済んだ事を思えば幸いだ。

 「アンタ…ッ!何を!!」

 「私の願いは嬲る事。鞭で打ち、体を焼き、皮膚を切り裂き…そして…嬲り殺す…。その時湧き上がるこの上ない興奮は、とても悦ばしいのです!!」

 何処から取り出したのか、唸りを立てて胴を横薙ぎにしてくるスレッジハンマーを地面に倒れ込んで何とか躱す。脚目掛けて振り下ろされた追撃も地面を転がって回避すると、距離を離し、ソウルジェムを取り出した。

 「アンタがその気なら、私だって反撃させて貰う!ちょっと痛い目に遭うけれど…アンタの自業自得だからね!!」

 さやかの身体が光に包まれ、その姿が一変する。純白のマントを羽織り、白と青の装束に身を包んだ清冽な姿は、御伽噺の騎士を思わせる。
 
 「イイですわね…貴女。純粋で凛烈…素敵です!!」

 無数の鎖が、剣を構え、エリザベートに峰打ちの一撃を見舞おうとしたさやかの動きを止める。
 エリザベートの全身を覆った鎖は、真紅のボディースーツへと変わり、その姿を禍々しい魔女の姿へと変化させる。

 「最初から貴女の様な方と出逢えるなんて…ああ、昂りますわ」

 エリザベートは、内側にびっしりと棘の生えた刺又を構え、美樹さやかを熱の籠った視線でねっとりと見つめた。

 「貴女はどんな声を聞かせてくれるのかしら」

 抑えきれない情欲を滲ませたエリザベートの声。

 「アンタも私と同じ…ッ!なら、ここで倒す!!」

 エリザベートの危険性を認識し、犠牲者が出る前にここで止めるという決意を声にする美樹さやか。

 
 エリザベートが距離を詰めるのと同時、さやかも踏み出し剣を振り上げる。
 エリザベートの繰り出した刺股が、さやかの剣により、火花と共に跳ね上げられたその時。


822 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:39:38 IqBY3MjE0
 「S.T.A.R.S.!」

 悍ましいとしか形容できない声と共に、根本から引き抜かれた樹木が二人を目掛けて飛んできた。
 二人は同時に後方へと跳躍、5mも後ろへ飛び退ると、揃って樹の飛んできた方向に顔を向けた。
 
 「S.T.A.R.S.…」

 腹に響く足音と共に木立を薙ぎ倒しながら、現れたのは異形の巨体。
 潰れた右目、唇が無く歯茎が剥き出しになった口元。両肩にそれぞれ三本の爪を思わせる肩当て、そして漆黒のコートに身を包んだその異形の名は『ネメシス』。
 高い知能と強大な戦闘能力を併せ持つ生物兵器。
 S.T.A.R.S.抹殺の為にラクーンシティへと降り立った筈が、全く異なる地へと送り込まれる事になった─────が、ネメシスの公道は変わらない。
 只、殺す。S.T.A.R.Sのメンバーが居れば最優先で、居なければ目につく全てを障害として、只々殺す。
 意志ですらない、最早存在意義とすら言える思考に則り、ネメシスは目についた二人を殺すべく、二人に向かって走り出す。
 
 「何よコイツ!!」

 美樹さやかは嫌悪の表情を浮かべ、驚愕に満ちた叫びを上げる。魔女やその使い魔との戦闘経験でも、この様な醜悪な怪物を見るのは初めてだ。
 それでもこの怪物もエリザベートに劣らず危険な存在であると認識して、さやかは剣を構える。

 「…………」

 対してエリザベートは無言。ネメシスを見る目には、冷ややかな嫌悪と殺意が有った。
 お愉しみの時間に乱入してきた、無粋で醜悪な化け物に対し、害虫を見る眼差しを向けて、冷酷に排除を開始する。
 醜悪な怪物に触れることはおろか、近づく事さえ穢らわしいとばかりに、支給品であるオートボウガンを取り出すと、ネメシスに向かって矢を十数本射出した。

 この攻撃を、ネメシスは完全に無視。肉体の強靭さと耐爆コートに物を言わせて強引に突破、20mは有った距離を7mまで詰めたところで、支給品を使用。両肩の肩当てが外れ、六本の触腕とその先端に接続した禍々しい巨大な爪となり、それぞれ三本づつ、エリザベートとさやかに向かって伸ばされる。
 さやかとエリザベートは後ろに大きく跳躍し、爪を回避、跳躍しながらエリザベートが矢を発射するも、ネメシスには通じず悉くが虚しく地面に転がった。
 
 「鬱陶しい」

 舌打ちしたエリザベートは短く毒づく、気は進まないし、何よりこんな化け物には勿体無いが、切り札である魔法を使用(つか)おうとしたその時、派手な打撃音と共に、ネメシスの巨体が宙を舞い、エリザベートとさやかから見て右側に飛んで行き、10mほど離れた場所にあった岩に激突した。
 ネメシスが激突した衝撃で岩が崩れ、ネメシスの身体は岩の破片に埋まった。

 「「…………」」

 二人揃って砕けた岩の下敷きになったネメシスを見た後、ネメシスが立っていた場所に目を向けると、そこには四人の男が立っていた。


823 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:40:13 IqBY3MjE0
 「そこの女達!さっさと逃げろ!!」

 「此処は我等ツメゲリ部隊が方をつける!!」

 どどどん!と登場した四人組はツメゲリ部隊。偉大なる航路(グランドライン)に存在する、アラバスタ王国のエリート護衛団である。四人揃ってこのバトルロイヤルの舞台に放り出され、ハ・デス討滅を誓い合った四人は、ネメシスの咆哮と、戦闘音を聞いて此処に駆けつけたのだ。

 「あらあら、助かりますわ」

 高貴な家の出に相応しく優雅に謝辞を返すエリザベート。腹の中で四人を冷笑しながら、頭の中ではさやかを連れて此処を離れる算段を立てていた。

 「気を付けて、この女は─────」

 見た目や立居振る舞いでは推し量れぬ、エリザベートの危険性を四人に警告しようとしたさやかの声は中途で断たれた。
 身体の上の岩を跳ね飛ばし、ネメシスが立ち上がったのだ。

 「S.T.A.R.S.!」

 四人から受けたダメージなど存在しないかの様にネメシスは走りだし、一番近くにいたさやかに向かって、巨大な剣─────人間離れした巨躯を誇るネメシスが手にしても、尚巨大と言える─────を横薙ぎに振るう
 不意を突かれたさやかに放たれる絶殺の斬撃。その速度、そして剣身の長大さによる間合い、回避する事など出来はしない。
 回避不可能と察したさやかは迷わず剣で受ける。鋼の激突する凄絶な響きを残し、さやかの身体は射出された砲弾を思わせる速度と勢いで飛ばされた。
 剣で受けるだけで無く、ネメシスの振るった大剣と同じ方向に思い切り跳んでいなければ、さやかの身体は剣ごと両断されていただろう。
 
 「グハッ!!」

 それでも尚…いや、その程度で凌げる程ネメシスの一撃は軽くは無い。剣撃の勢いで軽く20m程宙を飛んださやかの身体は、樹に激突して停止、異音を発して幹が撃砕し、幹がさやかの飛んできた方向とは逆方向に倒れ込む。跳ね返ったさやかは衝撃で意識を失いそのまま地に伏した。

 「そんな!!」

 ネメシスの一撃を受けて動かなくなったさやかを見たエリザベートは悲嘆を漏らす、これからじっくりと嬲り殺そうと思っていた相手が、どう見ても死んだとしか思えない目に遭ったのだから当然ではある。
 さやかの方に気を取られているエリザベートの隙を見逃さず、ネメシスが巨剣を振りかぶり、走り寄る。

 「此処は我々が!」

 「其方は早くあの娘を連れてここから離れろ!!」

 ネメシスを仕留めんと駆け出しながら、エリザベートに退避を勧告するツメゲリ部隊に、エリザベートは悲哀を浮かべて応えた。

 「ええ、そうさせて貰いますわ♡」

 エリザベートは四人がネメシスと死闘を繰り広げる音を背後に聞きながら、取り敢えず四人を誤魔化す為にさやかへと駆け寄り、お姫様抱っこの要領で抱き上げた。

 「…………!?」

 抱き上げたさやかの身体が僅かに痙攣したのを見、漏らした呻き声を聞いたエリザベートの口元が笑いの形に吊り上がる。
 喜悦と、ツメゲリ部隊への嘲りが籠った笑みを浮かべたまま、エリザベートはさやかを抱いて走り去った。


824 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:40:52 IqBY3MjE0
【エリザベート・バートリー@魔女大戦 三十二人の異才の魔女は殺し合う】
[状態]:健康 ウッキウキ
[装備]: 魔装 血の伯爵夫人(カウンテス・オブ・ブラッド)@魔女大戦 三十二人の異才の魔女は殺し合う
オートボウガン×28@FINAL FANTASYⅥ 拷問器具(魔法でいくらでも作り出せる)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
基本: 良い獲物を見つけて嬲り殺す
1:さやかを安心して拷問できる場所を探す
2:怪物(ネメシス)を警戒
[備考]
※ 魔女千夜血戦(ワルプルギス)一回戦に出場する直前からの参戦です
※拷問器具の生成や、魔法の使用に消費する魔力量が増大しています
美樹さやかを抱えています。

【魔装 血の伯爵夫人(カウンテス・オブ・ブラッド)@魔女大戦 三十二人の異才の魔女は殺し合う】

エリザベート・バートリーの持つ他者を嬲って嬲って嬲り殺したい、という欲望がカタチになったもの、魔法少女における変身に該当する。形状は真紅のボディースーツ。
変身モーションは全身に鎖が巻き付くというもの。
現世の武器は通じないが、このロワでは制限により効力は落ちている。少なくともネメシスの大パン受ければかなりのダメージを負う事になる。
エリザベートが魔女千夜血戦(ワルプルギス)に際して与えられた能力であり、支給品では無い。


【オートボウガン@FINAL FANTASYⅥ】

敵全体に複数の矢を放つ道具。
このロワでは一度使用すると十数本の矢を放ち、30回使用すると矢が無くなるものとする。



【】美樹さやか@魔法少女⭐︎マギカ】
[状態]:気絶:ダメージ(中)
[装備]: 無し
[道具]:ランダム支給品0〜3(未確認)
[思考]
基本:ハ・デスを倒す。バトルロワイヤルに巻き込まれた人達を助ける。
1:エリザベート・バートリーを斃す
2:怪物(ネメシス)を斃す
[備考]
参戦時期は魔法少女になった後、佐倉杏子と交戦した直後です
※現在気絶して、エリザベート・バートリーに運ばれています


─────────────────────────


825 : 魔女と魔法少女と追跡者 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/15(水) 21:41:32 IqBY3MjE0
肉の裂ける鈍い音と共に触手が引き抜かれる。
 口腔から脳幹を触手で貫かれた最後のツメゲリ部隊の身体が崩れ落ち、地に伏した。

 「S.T.A.R.S.…」

 全くの無傷のネメシスは、再度進軍を開始する。
 S.T.A.R.S.を抹殺する為に、生きている者達を殺し尽くす為に。
 足を踏み出す度に、地が揺れ、重い響きが周囲に伝わる。
 ネメシスは止まらない。ネメシスは自身の死か、自分以外の全ての死でしか止まらない。




【ネメシス@バイオハザードRE:3】
[状態]:健康
[装備]: 凶蜘蛛@烈火の炎 カオスイーター@DARKSIDERS
[道具]:まもりのゆびわ@FINAL FANTASYⅤ
[思考]
基本:皆殺し
1:S.T.A.R.S.は最優先で殺す
[備考]


【 凶蜘蛛@烈火の炎】
餓紗喰が所有する魔導具(肩当て)。装着者の意思によって6本の巨大な爪が自由自在に動き、凄まじい攻撃力を持つと共に、爪を盾のように使うことも可能で攻守に優れた性能を持つ。
爪や触腕は砕けても再生するが、再生期間が期間不明の為、破壊されたらこのロワの期間内では自動修復が間に合わないものとする

【カオスイーター@DARKSIDERS 】

黙示録の四騎士の一人、ウォーの持つ名だたる剣。破壊に飢えた怒りの剣。
プロローグや人間の成れの果てであるゾンビとの比較で、3m超える身長のウォーが振るう大剣であり、剣身だけでも目測で2mを優に超え、柄込みでは3m近くにもなる巨剣。


【まもりのゆびわ@FINAL FANTASYⅤ】
防御力と魔法防御力を向上させ、常時リジェネの効果を発揮する指輪。ネメシスの再生力を向上させている。


─────────────────────────


 ネメシスの姿が見えなくなり、距離を置いてなおその存在を知らしめる、足音と地響きが消えて暫く経った頃。

 「U…U U U U U U………」

 「GYUOAAAAAAAAAA」

 地面を血に染めて倒れ伏した、ツメゲリ部隊達の身体が痙攣し、緩慢な動きで起き上がる。
 ネメシスに殺されたのでは無く、ただ打ち倒されていただけだったのか?ダメージが回復し、今立ち上がったのか?
 否。立ち上がったツメゲリ部隊達の姿は、皆が皆血に塗れ、ある者は四肢が捩じくれ、ある者は胴に巨大な穴が穿たれ、ある者は首があらぬ方向へと曲がり、ある者は避けた腹から内臓を零し…。
 全員が致命傷を負っていた。白く濁ったその眼に光は無く、虚な表情を見れば誰もがしにんと認識するだろう。
 ならばツメゲリ部隊は動く死体(リビング・デッド)と化したのか…これもまた否だ。
 彼等はネメシスと戦い、敗れ、致命傷を負わされた。だが、死んだ訳ではなかった。
 ネメシスにより高濃度のTウィルスを注入され、絶命する事なく蘇生したのだ。
 だが、その代償はあまりにも巨大だった。
 もはやツメゲリ部隊の四人は自我を失い、生者を無差別に襲うゾンビと化した。
 忠誠を誓ったアラバスタ王家の者達や、身命を賭して守護するべきアラバスタ王国の民であっても、彼等は襲い、喰らうことだろう。


【ツメゲリ部隊@ONE PIECE】
[状態]:ゾンビ化
[装備]: (一人当たり)不明支給品0〜3
[道具]:
[思考]
基本:肉………
[備考]
※接触すると、Tウィルスに感染する恐れがあります


826 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:10:21 V2PZHyZ.0
投下します


827 : 愛をとりもどせ!! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:11:12 V2PZHyZ.0
世界には無数の可能性世界がある。
これは、幾つもある世界のその一つの話である。


  一 九 九 X 年


核戦争によって人類は滅亡の危機に瀕していた。


ナレーション  千葉 繁


暗く長かった地下での生活は彼らの社会に新しい掟(ルール)をもたらしていた。

それはファミコン・ゲームの優劣によって決まる厳しい身分制度だった。

そんな不条理な社会から弱者を解放するため、ある男が立ち上がった。

ひたいの傷、そして肩から下げたファミコンの山、彼の名は……。


『ファミコマンド竜!!!!』


ファミコマンド竜は、ファミコンによって人類を支配する敵達を次々と倒していき。
ついに社会を統括する戦闘ロボットのマッド・グロスを倒し、人類は解放された。


だが、ファミコマンド竜の戦いはまだ続いていたのだった。

「ここは……?」

ハ・デスによってこの会場に連れて来られたファミコマンド竜は
事態を把握するべく支給品の確認をしていた。


828 : 愛をとりもどせ!! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:12:05 V2PZHyZ.0
デイパックの中には多数のファミコンが支給されていいた。
これを使って殺し合えと言うのか?

「イー!」
「イー!」
「イー!」

どこからともなく現れたショッカー戦闘員三体が
ファミコマンド竜を囲むように迫った。

「何者かは知らんが、死にたくなければやめておけ」
「イー!」

ファミコマンド竜の警告を聞いてもショッカー戦闘員の敵意は消えず
手に持っている刃物を向けてじわりじわりと接近していく。
戦いは避けられないと理解したファミコマンド竜は
デイパックからファミコンを取り出し、装備した。

「はぁぁぁああああああ!!!!」
「イー!」

ファミコン本体を掴み、勢いよく振った。。
するとコントローラーが鎖分銅の勢いで振り回された。
これこそファミコマンド竜が扱う一子相伝の秘拳、ファミコン殺法である。

「あたぁ!!」
「イッ!」

コントローラーがショッカー戦闘員の顔面に直撃し吹き飛ばされる。

「あたたぁっ!!」
「イギッ!」
「インッ!」

ブンブンとファミコンを振り回し、残り二体のショッカー戦闘員の顔面を打ち抜く。

「ああああたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっっっっ!!!!」

目にも止まらぬ速さで振り回され続けるるコントローラーがショッカー戦闘員の体を滅多打ちにし

「おおおおおわったぁ!!」

「「「イイイイィィィッ!!」」」

ダメージが肉体の限界を超えたショッカー戦闘員達は爆散。
死体すら残らず、消し炭となった。


829 : 愛をとりもどせ!! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:13:01 V2PZHyZ.0
「ククク……腕ノキレハ落チテハイナイヨウダナ……」

その光景を眺めていた者は、笑みを浮かべながら現れた。

「貴様は……!?」

背後からの声を聞き、振り返ったファミコマンド竜は驚きの声をあげる。
その者はファミコマンド竜にとってしっている存在だった。

「マッド・グロス!!貴様は俺が倒した筈……」
「地獄ノ底ヨリ蘇ッタノダ!ハ・デスノ手ニヨッテナ!」
「ハ・デスの手に……だと……?」

衝撃の事実!現れたのはマッド・グロスだった!
しかもハ・デスの手によって蘇っていたのだ。

「マサカ、コノ異世界ノ地デモ最初二出会ウノガファミコマンド竜トハナ。ドウヤラ我々ハ戦ウ運命ニアルヨウダ」
「ならば俺が再びあの世へ送ってくれる!」
「面白イ……勝負ダ!!相まみえる事となった。!!」

二人の戦士は異世界で再び相まみえる事となった。

「行くぞォ!!くらえ、爆裂ファミコン!!」

ファミコマンド竜はマッド・グロスに向けて、4つのファミコンを投擲した。
ファミコンを敵に投げつけ、更に敵に付着してファミコンは爆発する。
これぞファミコン殺法:爆裂ファミコンである。

「愚カナ!!ヌゥゥン!!」
「なにぃ!?」

マッド・グロスは自らのマントを使い
ファミコンに付着させ爆発の直撃から逃れた。

「コノマッド・グロス二同ジ技ハ二度通用セン!!ハァァァ!!」
「ぬぅっ!」

マッド・グロスの目から放たれるレーザーを回避するもバランスを崩すファミコマンド竜。
その隙をマッド・グロスは逃さない。

「ジョイヤー!!」
「ぐわあああっ!」

マッド・グロスの突きをまともに食らい、吹き飛ばされるファミコマンド竜。
そのダメージは大きく、ファミコマンド竜の口からは血が零れる。

「終ワリダ、ファミコマンド竜!!我ガ拳で逝クガヨイ!!」
「まだだ!まだ倒れる訳にはいかない!!あたぁぁ!!」

ファミコマンド竜は再び4つのファミコンを投擲した。

「馬鹿メ!!我ニ同ジ技ハ通用セント……ナニ!?」

投擲と同時にファミコマンド竜は前に向かって走り出した。
移動速度は早く、投げつけたファミコンを追い抜いていた。
その時、ファミコンが空中で爆発を起こす。
爆風がファミコマンド竜の体を飲みこむ。

「はぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
「マサカ!?爆発ノ風圧ヲ利用シテ!?」

爆風の勢いに乗ったファミコマンド竜は弾丸の如き速さまで加速していた。
まるで流れ星のように一瞬でマッド・グロスに接近して蹴り放つ。


830 : 愛をとりもどせ!! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:13:33 V2PZHyZ.0
「ファミ魂殺法!!爆竜流星打!!」
「ヌオオオオォォォォオオオオオオオオッッ!!!!」

放たれた新技の威力は凄まじく、一撃でマッド・クロスの胸を砕き、致命傷を与えていた。
技を受けて大の字に倒れるマッド・グロス。
敗北したというのに、その表情はどこか満足気であった。

「見事ダ……流石、ファミコマンド竜……」
「お前も強かった……紙一重の勝利だった」
「フフフ、謙遜スル事ハ無イ。勝者ハ胸を張ッテ前ヲ向ケバイイ」
「マッド・グロス……」

ゆっくりと身体を起こして、立ち上がるマッド・グロス。
すると自らの支給品が入っていたデイパックをファミコマンド竜へと投げ渡した。

「持ッテイクガヨイ。敗者ニハ必要ノ無イ物ダ」
「……感謝する」
「ドウヤラココマデノヨウダ。ダガ二度目ハ貴様ノ手ハ借リヌ」

マッド・グロスは手刀を作り出し。上空へと翳すように手を掲げた。

「サラバダ!!我ガ生涯二一片ノ悔イ無シィィィィイイイイイ!!」

手刀を自らの首輪に当て、爆発を起こした。
因縁の相手だったマッド・グロスとの戦いは今度こそ終止符となった。

【マッド・グロス@最強挙士伝説 ファミコマンドー竜 死亡】

再び歩き出すファミコマンド竜。
彼の戦いはまだまだ続く。

「ハ・デス……次は貴様が地獄へ行く番だ!!」

【ファミコマンド竜@最強挙士伝説 ファミコマンドー竜】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:ファミコン@現実×2
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜3、ファミコン@現実×90
[思考・状況]基本方針:バトルロワイアルからの脱出
1:他の参加者を探し出して救出する。
2:脱出する手段を探す。
[備考]
※参戦時期は原作終了後からです。


【ファミコン@現実】
正式名称はファミリーコンピュータ。
任天堂より1983年7月15日に発売された家庭用ゲーム機である。
もちろん、武器に使っていい道具では無い。
ファミコン殺法の使い手以外は真似しないように。

NPC解説
【ショッカー戦闘員@仮面ライダー】
悪の組織ショッカーの戦闘員。
量産型の消耗品として扱われているため、いつも散々な目に遭っている。


831 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/16(木) 00:14:05 V2PZHyZ.0
投下終了です


832 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/16(木) 00:45:31 9j9ljtxE0
投下します

こちらは以前、チェンジロワに投下したものをタイトル等一部手直ししたものになります。


833 : The despair URANUS ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/16(木) 00:48:07 9j9ljtxE0
ここは会場内にある山の中、そこには異様な存在があった……

その存在の身体はまるで引きはがされた人間の顔の皮をいびつに引き延ばしたような形をしていた……

その存在の腕は枯れ木のように節くれ立ちながらも異様なまでに長く、その手には鋭いかぎづめが生えていた……

その存在の頭部は脊髄に沿って鋭く長い棘が生えた、両腕のない人間のような形をしていた……

それは、まだ世界が混沌としており、人と魔と神が争っていた時代に存在したものだった……

その存在は、我が子と自身の片割れの手で解体された破片の寄せ集めに過ぎなかった……

それでも、それは生きていたのだ……

その、太古の天空神はまだ生きていたのだ……

自身がすでに狂っていることも知らぬままに

「我ニ……ヲ捧ゲヨ…我ノ……ヲ地ニ…エヨ……」

自身がすでに神ではなく、今や『神』の残骸でしかないことも知らぬままに

「我ニ…物ヲ捧ゲヨ…我ノ言…ヲ地ニ伝エヨ……」

その存在は叫び続けていた……

「我ニ供物ヲ捧ゲヨ…我ノ言葉ヲ地ニ伝エヨ……」

秩序と支配を叫び続けていた……

「進軍セヨ…我ハ……ヲ喰ラウ…」

その巨神『ウラヌス』は叫び続けていた……

【ウラヌス@LORD of VERMILION】
[状態]:発狂
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:『神』として復活を果たすために、全てを喰らい尽くす。
1:我ニ供物ヲ捧ゲヨ…我ノ言葉ヲ地ニ伝エヨ……
2:創世、飢餓、構築、輪廻、再生、破壊…
[備考]
発狂しているため、意思疎通は不可能です。
制限により全長が5メートルほどに縮められています。


834 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/16(木) 00:48:37 9j9ljtxE0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


835 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 05:59:46 GjVVWIHM0
投下します


836 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:00:18 GjVVWIHM0
 単なる歓喜と言うべきだろうか。
 或いは恐怖とも言うべきだろうか。
 タトゥーかは定かではないが、顔にバツ印のような痕がある銀髪の男は笑う。

「ハ……ハハハ……!!」

 若い男性ではあるが肉体は鍛え抜かれており、少なからず腕の立つ人物だと伺える。
 まあ腕が立つだけで人柄は最悪と言ってもいいぐらいの人物なのだが。
 名をシュラ。ある帝都で暗躍する大臣の息子と言う立場にあった人物で、
 最終的に拷問にかけていた暗殺者によってあっけなく殺された男だ。

 彼の笑いは生きているという歓喜は勿論存在する。
 親父を超えて帝位を簒奪するという未来。そんな未来を夢見ていたのに、
 拷問室で捕虜にしていたナイトレイドの男にあっさり殺されるなんて結末。
 死後も笑いものにされるだろう無様な死に方では、死んでも死にきれない。
 絶望しかなかった結果に舞い込んできたハ・デスによる生きられるチャンス。
 これをものにしない手はなかった。

「今度こそは失敗しねえぜ……絶対に生き延びてやる。」

 ではあるが、同時に恐怖もある。
 一度死んだということは死の経験がある。
 はっきり言おう。この男、死が割とトラウマだった。
 だから何度も首が折れてないかどうかを確認してしまう。

 失態からの死と言う、あっという間の転落人生だ。
 ウェイブに辛酸をなめさせられ、ランによる告発からの死。
 今度こそうまくやってやりたいところではあるが、殺し合いとなると別だった。
 彼が人を殺すことに何ら躊躇いはない。周りの連中の大半は自分にとっての玩具だ。
 だがそれは『一方的に蹂躙する』と言った安全圏から行えるからこそ成立するもの。
 此処では大臣の息子と言う虎の威を借りることはできず、ただ対等に戦うことが要求される。
 殺し合いなら相応どころか、エスデスやブドーレベルの人物すらありうるだろうこの舞台。
 そんな連中を相手になどできるわけがない。生きてれば多少は殺し合いを楽しんだだろうが、
 今の彼はこれ以上死んでたまるかと言う、生存欲が第一として存在していた。

(畜生、ハ・デスの野郎……なんでこれで主導権握ってやがるんだ。)

 自分の死因となった首の骨を折られた場所に存在するそれは、
 彼が思い出したくもないことを否応なく思い出させて来るものだ。
 加えてこれは不慮の事故でも力を加えれば確実に死ぬということも察しが付く。
 やるならもっと別物にすればいいのにと、軽く愚痴りたくなるが一先ず抑える。

(一先ず最初から調子ぶっこいて反感を受けるのは良くねえな。
 ある程度は俺の言うことに従う奴がいて、その上で集団に潜り込むか。)

 ハ・デスに感謝はするがもう一度死ぬのはごめんだ。
 殺し合いは楽しむことは楽しむが、最終的には生き残る。
 それが優勝でも脱出でもどちらでもいい、変わりはしない。
 なのでまずは集団形成か、そこへ潜り込んでおくことにするを選ぶ。
 方針を決め適当に放浪していると、一人の参加者を見つけて軽く物陰から品定めをしていく。
 一時か最後までかはともかく仲間になる奴だ。ワイルドハントのような人選は此処では論外だ。
 両肩にベルトがつけられた紫色のシャツに、紅色のボトムスと成人男性としては普通な恰好ではあるものの、
 狙撃銃の類をなぜか銃身の方を握っており、それを目つきの鋭い奴が握っているその風貌。
 ナイトレイドに潰されそうな、違法な行為をしている連中の下っ端にでもいそうな姿だ。

(アウトローくせえが、行ってみるか。)


837 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:00:34 GjVVWIHM0
 本来なら余り近づいていい部類ではないが、
 外見だけでの判断ができないのは仲間にもいたので、接近することを選ぶ。
 幸い今の手持ちの支給品に相手の力を自分の力に出来るカードもあった。
 相手が想像以上の化け物であっても、これを利用すれば勿体ないが逆転も可能だ。

「おいそこのお前! 見たところ参加者のようだが、お前はこの先どうする気だ?」

 準備を終えて物陰から声をかける。
 声に反応し、相手も振り返って視線を向けていく。
 向こうも品定めするようにシュラを見ていき、

「……いやはや、俺には無理な話ですよ。
 所詮雑務用でしかない俺に殺し合いなんて、とてもとても。」

 やれやれと両手を挙げながら言葉を返す。
 どこか嘘くさい言い方ではあるがシュラは問題なく見抜いた。
 仮にも様々な場所を渡って技術を取り込み、己だけの武術を磨き上げた男だ。
 だから相手が腕が立つ、訓練された人間の動きぐらいはある程度は分かる。
 こいつは───素人だ。警戒心は確かにむき出しではあるものの、
 所詮はそれだけ。隙だらけだし、あえて隙を見せてるようでもない。
 ナイトレイドは勿論として、帝都の一兵卒にも勝てるか怪しいぐらいだ。

「だったら俺様と一緒に来い。このまま死ぬぐらいなら、ついていく方がまだましってもんだろ?」

 正直最初に出会った相手としては外れだ。敵でないだけましではあるが、
 味方にするメリットすら薄いが、背に腹は代えられないところでもある。
 人数の多さは交渉に使える。加えて力がないということは大抵は従うはずだ。
 であれば使い勝手のいい駒だ。最悪切り捨てることになるかもしれないものの、
 戦力としては今一つなら捨てることになってもさして影響はないだろう。

「いいですよ。人間様に命令されるのは慣れてるんで。」

「お、そうか。なら早速他の参加者を探しに行こうぜ。俺様はシュラってんだ。」

「俺は……名前がないんで好きに呼んでください。どうしても必要なら名乗りますが。」

「いやいい。必要になった時にでも名乗っておけばいいさ。」

 顔を見ても名前を聞いてもシュラの存在にピンと来ていない。
 ワイルドハントの悪評は知らないことから、彼が帝都の人間でないことは分かった。
 そういう意味だと使い勝手はいい。今後も存分に使い倒すことができる存在なのだから。

(俺様の為に存分に働いてくれよな。)

 転落し続けた男の再起の為、
 どうしようもない泥に塗れた男が星を掴まんとする。


【シュラ@アカメが斬る!】
[状態]:不安、死に若干の恐怖
[装備]:フォース(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:こんなところで死ぬつもりはない
1:利用できる奴を利用する。乗った奴でも乗らない奴でもだ。

[備考]
※参戦時期は漫画版死亡後です。
※死因が原因で自分の首が気になってます。
 首や首輪を狙った攻撃に対して何かしらの行動をとるかもしれません。





 そんな風に考えてるシュラを余所に、
 彼───正式な名前は存在していない。
 此処に来る前に彼が監察官に名付けられた、
 『ナナシ』と言う名前を彼の名前とする。


838 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:01:34 GjVVWIHM0
(さて、とりあえず人とは合流できたか。
 腕っぷしは俺よりも強そうだし、文句はないな。)

 ナナシは人間ではない。
 AIを搭載されたアンドロイド『HANOI』と呼ばれる存在だ。
 彼のいた世界ではHANOIが日常的に存在してるが彼はトーロファミリー、
 所謂反社会勢力の人間の下で、雑務用HANOIとして様々なことをして生きた。
 いや、そうするしかなかった。人間にHANOIは主人に逆らえないようプログラムされている。
 逆らえない為彼は様々な命令をこなした。掃除から薬の売買に誘拐に殺人……そのせいで禁錮歴もある。
 結果、彼は国から出されているストレス診断テストにて一定の数値を超えたことで、
 HANOIのストレス軽減の為のバーチャルゲーム『TOWER』のテストプレイヤーに選ばれた。
 (それを抜きにしても人間に対する反抗的意思があるため、優先的に招集されてもいるが)

(意思疎通ができるのはおかしい。娯楽施設の連中もバグりだしてたのにどういうことだ?)

 故に違和感があった。
 TOWERはシューニャの存在によりバグに塗れており、
 ログアウトもできず、他の監察官たちともまともに意思疎通が取れなかった。
 なので身内以外と会話ができない筈だがハ・デスやユウギと言った人物の声は聞き取れたし、
 こうしてシュラとも会話が問題なくできる状況。対応から彼がシューニャの手先でもなさそうだ。

(あいつらと違う連中がTOWERにでも来たのか?)

 アンドロイドが発達した世界にいると言えども、
 ビームと言ったファンタジーやSFのような攻撃を現実ではできなかった。
 よくてチンピラ程度だ。人は殺せても熊とかを相手にできるほどの強さは持てないはずだ。
 現実でも戦争で戦う軍事用HANOI、ローランドとかならまだわかることではある。
 TOWERの補正がなければ、殆ど人間と大差ないぐらいの強さしか彼にはない。
 でもそれができた。モンスターを追い払えるだけの戦闘能力補正が何故かある。
 その為、ナナシは此処がHANOIのようなバーチャルゲームかと最初は思った
 一方でTOWERとは明らかに雰囲気が違う。これが0と1の世界だとも思えない。

(ま、俺はどの道終わりだし好きにやらせてもらうか。)

 考えたところで纏まることはない。
 監察官や軍事用の方がまだ考える頭がある。
 明言すると、ナナシは殺し合いに乗るつもりでいた。
 本来HANOIはTOWERでは担当する監察官と共に行動し、行動しない場合は拠点に残る。
 これが定められたルールだ。破ればどうなるか? 廃棄されるだけだ。HANOIはUSBでAIが管理されており、
 それを壊せば二度と現実にもTOWERにも残らない。彼は此処にいる時点で、もう終わりの一途を辿るだけだ。
 万が一、その監察官が此処にいれば話は別だが、彼が死んでも同じだ。彼はもう袋小路へと追い詰められていた。
 仮に脱出したところで監察官を失踪させるに至る原因を証明できないので、責任はHANOIたる自分に押し付けられるだけ。
 終わる為だけに生きるなど、あのTOWERの連中と変わりはしない。そんなことは絶対に受け入れたくなかった。
 此処が単なる0と1の世界じゃない可能性もあれば、ハ・デスは願いだって叶えられる。
 彼には大層な願いなんて持ち合わせてはいない。ただ、もう少しましに生きられればそれでいい。
 上からずっと見下す人に使い倒されるだけの生き方はごめんだ。

 ナナシは人間が嫌いだ。
 彼のいた世界の人間は、HANOIに対する扱いが余りよくはなかった。
 人間ではない以上それなりの隔たりと言うのは確かにあるが、それに輪をかけている。
 単純に人間側の思考はHANOIとは『うまくこき使うための使い勝手のいい道具』に過ぎない。
 AIの思考も信号程度の扱いとされてしまい、HANOIには感情なんてないのが一般的な認識だ。


839 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:02:44 GjVVWIHM0
 だからTOWERの内容の趣味の悪さは相当なものにあった。
 一番わかりやすいのは病棟の四階で、そこは『感染病に苦しむ彼らの有様を見て楽しむ』、
 なんてものを目的とした場所であり、それを見てストレス発散になると本気で思ってるのだから。
 そも、TOWERが『人間に模したモンスターをHANOIが殺して楽しんでストレス発散』を目的とする。
 人間がいかにHANOIのことを真摯に考えてないかが素人目でもわかる。でなければこんな発想はしない。
 ナナシに限らず、TOWERに送られた多くのHANOIは人から心の無いことをされたか言われた奴だ。
 中には逃亡を図った結果、見せしめに声帯を潰されたHANOIだっているのだから。
 現実では絶対に勝てない力関係を忘れ、データを殴って喜ぶなんてありえはしない。
 何も分かってない。人間様は下を見ようとはせず、ただ使い潰すだけなのだと。

『僕は君の感情を、蔑ろにしたりはしないよ。』

 ただ、違う人間も少しはいるのだとは思ってもいる。
 HANOIを人間のように接してくるあの監察官のように。
 彼は別にいつ死んでもいいとは思っていた。そういう生き方をしてきたから。
 しかし今のナナシにはできそうになかった。彼が過ごしたあの場所の存在は大きくなりすぎた。
 ただそれだけ。でもそれだから彼は死ぬつもりはない。生き残って脱出からの死もごめんだ。
 HANOIの監督不行届きで、監察官の彼もどうなるか分かったものではないのだから、
 願いを叶えるなら監察官やHANOIにまともな生き方ができることを願おう。
 アウトローな人間ではあるが、ナナシの人柄は外見よりもずっと勤勉でいい人間だ。
 あの場所の連中は、人を殺してまでまともに生きながらえても喜ばない奴なのは知っている。
 けれど、だからと言って死なせたい奴ではない。嘗て自分が処分したあの子のように。
 どうしようもない泥にまみれた男が星を掴まんとする。





 手段を択ばない彼は心があるのだろうか?
 それとも、これはHANOIの持つただの信号か?
 もし、監察官がそれを聞いたらどちらだと答えるだろうか。
 なんてことを考えながら、ナナシはシュラの後をついていく。

【名称不明、或いはナナシ@TOWERofHANOI】
[状態]:健康
[装備]:ハイメタルストック@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:戻っても死ぬだけなら、優勝して生き残る。
1:腕っぷしは強いみたいだから頼りにさせてもらいますよ、人間様。
2:監察官やHANOIがいたらどうする?

[備考]
※参戦時期は少なくともIV戦以降かつ、
 ある程度コーランとの交流を深めてます(ゲーム上で言えば大体C以上)
※名簿などに載る場合はナナシと表記されます。
※バーチャルゲーム『TOWER』の戦闘補正などを受けています。
 その為、一部技が男性や女性などに効果的な攻撃にはプラス補正がかかります。
 逆に特技『奇襲』における目潰しは受けても時間経過等別途手段で回復します。
※ハイメタルストックのスキルを受けてるかは後続の方にお任せします。
 ただ彼の立ち位置的に闇属性なのではないかなと個人的見解。
※ここがTOWER、或いはTOWERのバグによって発生した場所の可能性も少し思ってます。
 同時にハ・デスの能力はゲームだけにとどまらないとも半ば確信を持っています。

【ハイメタルストック@グランブルファンタジー】
ナナシに支給。ゲーム上では光シルヴァの解放武器。見た目は銃だが撃てない。こう見えて武器種は斧。
前進せよ。前進せよ。たとえ撃てなくなったとしても、その柄を握りしめ、己の敵を迎え撃て。
そうして切り拓いた先にのみ、勝利の光が降り注ぐ。
光属性の攻撃力とクリティカル上昇の雷電の刹那、光属性の奥義強化の光の秘奥のスキルがある。
スキル2『ゴールデン・アーツ』はロワ上での再現が難しい為説明は割愛。

【フォース(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG】
シュラに支給。発動宣言することでデュエルディスクを介せず、
モンスターを参加者と言う風に扱って使うことができる消耗品のカード。
短時間の間相手の攻撃力を半減させ、その数値分使用者の攻撃力に加えることができる。
つまりよほど自分が弱ってなければ必ず相手の力量を短時間ではあるが上回ることが可能。


840 : 目的のためなら、心あるものは惨酷になれる ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:03:13 GjVVWIHM0
投下終了です


841 : ◆EPyDv9DKJs :2022/06/16(木) 06:04:21 GjVVWIHM0
忘れてました
ゴールドシリーズについては、>>291 の◆2zEnKfaCDc氏のを参考にさせていただきました
此方の内容について当人から問題がありましたら差し替えます


842 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:21:38 HMcUtJk.0
投下させていただきます。
コンペロワや辺獄ロワ等に投下した作品を一部手直しした作品になります。


843 : エピックon決闘ロワ 救星主と狂気のタイタン人! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:22:37 HMcUtJk.0
「……」

冥界の魔王が用意した『決闘』会場のどこか。
一人の大柄な人物が、あてもなく会場内をさ迷い歩いていた。

紫色の肌。
深い縦皺が複数刻まれた顎。
ゴリラを思わせる筋肉質で大柄な体格。
左手に嵌められた黄金色の籠手………。
もうお分かりだろう。

彼の名はサノス。
『宇宙の全生命の半分を消滅させる事で、残ったもう半分を生かす』という狂気の思想に取り憑かれ、
何年もの間、宇宙各地で残虐な大量殺戮行為を繰り広げ、
文字通り『数え切れない程の人間』から恐れられ、憎まれ、恨まれ、そして嫌われている男である。

「………」

今、サノスの顔には地獄の鬼神のような……いや、地獄の鬼神も泣きわめきながら逃げ出してしまいそうな程恐ろしい『憤怒』の表情が宿っていた。
サノスは長年の宿願である『全宇宙の生命の半分を消滅させる』ために、宇宙誕生以前に存在していた6つの特異点の残骸『インフィニティ・ストーン』の収集を開始。
インフィニティ・ストーンの絶大なエネルギーと力を制御するために作られた籠手『インフィニティ・ガントレット』を自ら装備し、宇宙各地に散らばる6つのインフィニティ・ストーンを探しだし、ようやく6つ全てが揃おうとした時……この『決闘』という名の殺し合いに参加させられたのだ。

幸いにも、インフィニティ・ガントレットは支給品としてサノスの手元にあったのだが、
『パワーストーン』以外の既に入手していた4つのストーンは外されており、本来想定していた力の6分の1しか発揮する事が出来なくなっていたのだ。

「………」

サノスは怒っていた。
自身の大望成就を邪魔し、
その上犬猫のように首輪を嵌めて、『決闘』などという下らない催しを強要する『冥界の魔王ハ・デス』に対して。
そして……その冥界の魔王にあっさりと浚われて爆弾入りの首輪を嵌められた自分自身に対して。

「………」

サノスはあてもなく会場内を移動していく。
途中、両手両足の指を全て使っても数え切れない数のNPCと度々遭遇し、襲われたが……全て返り討ちにした。
『ストーンの力』を使わずに、『己の力』のみで。
それすらもサノスからしたら、八つ当たりにもならない些末な行為だ。
サノスの通り過ぎた後には、まるでその人生の縮図のように死体の山が出来上がっていたのだった。

「……」

ふとサノスは立ち止まり、自身の背後を振り返る、

「……いつまでコソコソついてくるつもりだ?姿を見せろ」
「………フッフッフッ。気づかれていましたか」

サノスの背後の木の影から、何者かが姿を現した。

青い体に蜘蛛の巣模様。
胸部には黄金色に煌めく円形の装飾がなされ、
頭はまるで僧侶の宝冠に羽根をあしらったような見た目をしている…。
それは、紫色の肌をしたサノスに勝るとも劣らない。
まるで『堕天使』を思わせる異形の怪人だった。

「……貴様、何者だ?」
「お初にお目にかかります。私はブラジラ。『救星主のブラジラ』と申します」

サノスからの問いかけに、怪人……ブラジラはうやうやしく一礼をしながら自己紹介をした。

救星主。
すなわち『星を救う者』。
その意味を理解すると、サノスは鼻をならした。

「フン……ずいぶんと御大層な二つ名だな」
「恐れ入ります」

サノスからの皮肉混じりの感想を受けても、ブラジラは顔色一つ変えなかった。


844 : エピックon決闘ロワ 救星主と狂気のタイタン人! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:23:19 HMcUtJk.0
「ふん……まあいい。私の名はサノス。『タイタンのサノス』だ。ブラジラとやら、先程から私の後をつけていたようだが、私に何の用がある?」
「では……単刀直入に言わせていただきましょう」

ブラジラは一旦言葉を切ってから本題に入った。

「サノス殿、私と『同盟』を結んでいただきたい」
「………何?」

ブラジラからの唐突な『同盟』の申し入れに、サノスは眉の端をピクリと動かした。

「あなたの力は、じっくりと拝見させていただきました。NPCごときでは足元にも及ばぬ強大な力……あなたと私が組めば、優勝はおろかあの『冥界の魔王』とやらを打倒する事も不可能ではないでしょう」
「フン……笑わせるな」

ブラジラからの誘いをサノスは鼻で笑った。

「この『決闘』とやらに優勝する……つまり『生き残れる』のは一人だけだ。言い換えるならば、『自分以外は全員敵』という事になる。そのような状況で徒党を組んだところで何になる?自分以外の参加者が一人でも残っていれば、待つのは『自身の死』だけだぞ?」
「……まぁ、確かにその通り、『生き残れるのは一人だけ』ですな」

ブラジラはサノスの意見を肯定しながらも、「……ですが」と付け加えた。

「……いかに強大な力や強力な支給品を持っていたとしても、たった一人で行動するよりも同等の力や武器を持った者達と行動した方が生存率も殺害数も高くなるでしょう?最終的に我々以外の参加者が全て死んだならば、その時に改めて我々が殺し合えば問題はありません」
「フム……なるほど」

ブラジラの一々相手を小馬鹿にするような話し方は気に入らなかったが、確かに一理あるとサノスは思った。
いかにたった一つだけで星を容易く破壊できるエネルギーを秘めたインフィニティ・ストーンを持っていたとしても、サノス一人だけでこの会場にいる参加者全てを殺すのは容易な事ではない。
一応『会場そのものをまるごと破壊する』という手段もあるが、サノス自身も巻き添えになりそうなので進んで行う気にはなれない。
それにサノスにはある懸念があった。
先にも書いたように、サノスが装備しているインフィニティ・ガントレットからは『パワーストーン』以外の4つのインフィニティ・ストーンが外されていた。
という事は、『他のインフィニティ・ストーンはサノス以外の参加者に支給されている』可能性が考えられるのだ。
サノス一人で全ての参加者の所持品を一つ一つ調べるよりも、複数人で探しあった方が効率が良いというものだ。

「………良いだろう。お前の提案を受け入れよう。ただし、条件がいくつかある」

そう言うとサノスはブラジラに向けて指を3本立てた。

「一つ、私とお前は『主従』でも『仲間』でも『同志』でもない。あくまで単なる『同盟相手』だ。お前が死にそうになっても私は助けないし、『足手まとい』だと判断すればその場で切り捨てる。二つ、私はこのガントレットに嵌められている物と同じ石を4つ探している。探すのを手伝え。三つ、例えどちらかが裏切ったとしても恨みっこ無しだ。以上だ」
「……えぇ、それで構いませんよ。ではこちらからも二つほど……私は『オーブ』という物を探しております。そのガントレットの石の片割れを探すのと引き換えに、私の『オーブ』を探す手助けをしていただきます。そして、もしこの場で『護星天使』を名乗る者がいたならば、手出しは無用。私だけで戦います。よろしいですか?」
「フン、良かろう」

かくして、サノスとブラジラは互いの出した条件を飲み、同盟を結んだのだった。


845 : エピックon決闘ロワ 救星主と狂気のタイタン人! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:24:26 HMcUtJk.0
☆☆☆

(フフフ…………まずは一歩、といったところか)

サノスとの同盟が結ばれると、ブラジラは心の中でほくそ笑んでいた。

自分は忌々しい見習い護星天使どもに『地球救星』を邪魔されて死んだはずだったが、何故か生きてこの場にいる。
『冥界の魔王』を名乗るあのハ・デスがどんな手段を使ったのかブラジラには分からなかったが……この『死者蘇生』の事実から考えて、ルールブックに書かれていた『最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。』という言葉は事実の可能性が高いとブラジラは考えたのだ。

『デュエルキング』などという下らない称号や富と名誉には興味は無かったが、『一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』というのには興味が惹かれた。
ブラジラの願いは決まっていた。
自分の計画を最後まで邪魔をし続けた『見習い護星天使達への復讐』と『地球救星計画の完全遂行』だ。
ブラジラは殺し合いに乗る事にした。

天装術発動の媒体である『オーブ』が没収されている為に『ブレドラン』の姿にはなれないが、それならそれで『ブラジラ』として暗躍すれば良いだけの話。
方針を決めたブラジラは手駒になりそうな参加者を探して……サノスを見つけたのだ。

サノスの力や左手に嵌められたガントレット……正確にはガントレットに嵌められているインフィニティ・ストーンから感じられるエネルギーは、
かつて『彗星のブレドラン』として仕えた『宇宙逆滅軍団ウォースター』の首領『惑星のモンス・ドレイク』を彷彿とさせた。
そして、サノスの動向を観察した末にその実力はモンス・ドレイクはおろか、これまでブラジラが『ブレドラン』として渡り歩いたどの組織の者と比べても並外れていると確信し、同盟を持ちかけたのだ。

もちろん、ブラジラにはサノスと仲良し子吉するつもりなどはない。
ある程度参加者の数が減ったら、隙を見て騙し討ちにするつもりなのである。
しかも、サノス自身が『例えどちらかが裏切ったとしても恨みっこ無し』という条件を付けたのも良かった。
もしサノスが自分に寝首をかかれたなら、それは『サノスの落ち度』であり、自身には何も非は無いということになるからだ。

(フフフ……護星天使見習いども、首を洗って待っているが良い!)

ブラジラの脳内では、優勝した自分が見習い護星天使達をコテンパンにする姿がイメージされていたのだった。

しかし……その為ブラジラは全く考えていなかった。
『逆に自分がサノスに寝首をかかれる可能性』を。



【サノス@マーベル・シネマティック・ユニバース】
[状態]:健康、ハ・デスへの激しい怒り
[装備]:インフィニティ・ガントレット@マーベル・シネマティック・ユニバース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:宇宙の生命を半分にする為に、生きて帰還する
1:ブラジラと行動する
2:インフィニティ・ストーンを探す
[備考]
『インフィニティ・ウォー』でインフィニティ・ストーンを6つ全て揃える直前からの参戦。
ガントレットにはまっているのは『パワーストーン』一つだけです。
他のインフィニティ・ストーンは他の参加者に支給されているかもしれないし、会場内に隠されているかもしれません。
また、制限によりインフィニティストーン(パワーストーン)の破壊力は大幅に低下しています。

【救星主のブラジラ@天装戦隊ゴセイジャー】
[状態]:健康、ブラジラとしての姿
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:優勝し、見習い護星天使に復讐する
1:サノスと行動を共にし、手駒を増やす
2:オーブを探す
3:この場に護星天使がいるなら復讐する
[備考]
最終回でゴセイジャーに倒された直前からの参戦。
オーブが没収されており、天装術は使用不可能ですが、ダークサーベルの召喚は可能です。


846 : エピックon決闘ロワ 救星主と狂気のタイタン人! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:25:09 HMcUtJk.0
【インフィニティ・ガントレット@マーベル・シネマティック・ユニバース】
インフィニティ・ストーンの力を最大限に発揮できる左手用の金色のグローブ。
サノスの依頼を受けた惑星“ニダベリア”の“ドワーフ”たちが作成したもので、材質は“アスガルド”の武器にも使われている金属“ウル”であり、非常に強靭なものに作られている。
全体的にドワーフ族風の分割模様の装飾が刻まれ、各指の付け根部分と手の甲に6つのストーンを収容する穴があり、ガントレットをはめた左手を閉じることでそれぞれのストーンの力を自在に使用できる。
また、ストーンが発する強大なパワーを制御するため、ガントレット自体もストーンを埋め込むと、その直後にストーンの力が装着者に流れ込み、常人ではその衝撃に耐えるのは困難である。
6つ全てのストーンを埋め込むと、ガントレットをはめた指を鳴らすだけで全てのストーンの力を同時に発動させ、全宇宙の半分の生命を消すことができる。
(以上、ウィキペディアより抜粋)


847 : エピックon決闘ロワ 救星主と狂気のタイタン人! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/16(木) 08:25:31 HMcUtJk.0
以上、投下終了します


848 : ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/16(木) 08:46:12 Ai4gLidE0
>>820

投下終了の宣言を忘れてしまい。皆様にご迷惑をおかけした事をお詫びします


849 : ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:15:19 g.JF8hSg0
投下します。


850 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:17:06 g.JF8hSg0
――ギークでチープやクールでシックな遊びをしてた











「きゃあっ!」

殴り飛ばされ地面を転がる。
これで何度目だろうか、数えて何か状況が好転する訳でも無い。
立ち上がろうとして、両手に構えた巨大な盾が砕かれているのに気付く。
武器を破壊されるのも今に始まった事では無い。
魔女の一撃をも防ぐ己の力、それがこうも簡単に凌駕されている。
改めて敵がどれだけ脅威かを思い知り、されど歯を食い縛って新しい盾を生み出す。
時間が経つ毎に傷は増え、魔力は減っていく焦り。
自分一人でこうも強大な敵と戦わねばならない緊張感。
それらが二葉さなの精神を蝕んでいた。

油断があったのかもしれない。
キュゥべえとの契約時に叶えて貰った願いの影響で、普通の人間にはさなの姿を認識できない。
彼女を見れるのは同じ魔法少女だけ。
だから決闘が開始してそう間もない頃に見つけた男も、自分の姿は見えないだろうと思い込んだ。
こちらから何かするでもなく、黙って相手を観察していたのだ。
尤も、仮に魔法少女の事情が無かったとしても、さなが男に自分から話しかけたりは恐らく出来なかっただろう。
何も異性相手に尻込みするからとか、そんなありふれた理由ではない。

男は余りにも異様過ぎた。

白い男だった。
髪も肌も病的な程に白い。
反面、着ている服は黒であり、それが余計に白さを際立たせている。
奇怪な男の姿を瞳に捉えたさなが真っ先に感じたのは、純粋なまでの恐怖。
男に何かをされたのではない、ただ道の向こうから歩いて来るのを見ただけ。
それだけでさなはこの男と関わってはいけない、この男と会ってしまったのは不運でしかないと根拠も無いのに思ってしまったのだ。
相手は魔法少女ではない、なら自分の姿も見えないだろうという僅かな救いにしがみつき、一歩も動く事無く男が立ち去るのを待とうとした。


851 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:18:05 g.JF8hSg0
その判断が大間違いだったと思い知らされたのは直後のこと。

「ハ、礼儀を知らない小娘だな」

獰猛な笑みをぶつけられた瞬間、反射的に盾を構えたのは正解だったろう。
そうしなければ胴を素手でぶち抜かれていた。
一撃を防いではいお終いとはいかず、問答する気はないのか続けて何発も拳や蹴りが放たれる。
チームみかづき荘の中でも防御に関しては特に秀でているさなだ。
盾を構え防ぎ続けるも、やがて限界を迎え破壊される。
魔力を消費し、男の拳が自身へ命中する前に新たな盾で再度防御。
時には盾を直接振るうも、ヒョイヒョイと軽やかに躱される。
攻撃の合間を縫って放たれた拳を防ぐも、大きく吹き飛ばされる。
せめて共に戦ってくれる魔法少女がいたならともかく、さな一人ではこれが手一杯だ。

「ハァ、ハァ、ハァ」

徐々に息が上がるさなとは反対に、男は余裕を全く崩さない。
一体この男は何なのだろうか。
魔法少女でないのにここまでの力を持つ存在など、見た事も聞いたことも無く、外見からして魔女やウワサでも無いだろう。
人の言葉を話しているとはいえ、笑いながら殺しに来る姿からはまともな会話が可能とは思えない。
相手の正体に見当が付かずにいるさなの疑問をお構いなしに、男は口を開く。

「それで、お前は一体なんだ?」
「……?」
「人間にしては頑丈で、どこからともなく盾を出現させる。ただの小娘では無いのだろう?」

わざわざそう聞いてくるという事は、男は魔法少女を知らないのか。
さなからすれば余計に混乱する質問だ。
魔法少女やキュゥべえが一切関わっていないのに、こんな化け物染みた存在が生まれるなんて。
男が何なのかは何一つ分からないが、質問にどう答えるべきかは理解している。

「…あなたに教える事なんて、何もありません」

もし自分が魔法少女の情報をペラペラと喋ってしまえばどうなるか。
参加しているかは不明だが、同じく決闘に巻き込まれた魔法少女達に何か危害が及ぶかもしれない。
ひょっとしたらいろは達も参加させられている可能性だってある。
大切な仲間で、実の家族よりもずっと暖かい人達を、こんな男と会わせる訳にはいかないのだ。


852 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:19:27 g.JF8hSg0
相手の反応を待たずに盾を投擲。
回転しながら襲い来るソレが命中すれば、人体など容易く潰れる。
男は怯む様子もなく平然と素手で叩き落とした。
魔法少女の腕力で投げ付けられたというのに手の皮は剥がれもしない。
だがこれでいい、一瞬とはいえ男の意識は投げた盾に向けられた。
既にさなの手には新しい盾が出現、チマチマ殴るよりも大きな力で勝負を決めに出る。

「ふうう…!」

さなが使える中でも特に威力がある大技(マギア)。
下手をすれば魔女以上の力が有るかもしれない男相手に、出し惜しみはしていられない。

さなの判断は間違っていない。
この男は人間ではない、正真正銘の化け物。
であるなら、魔女と戦う時と同じ感覚で攻撃を繰り出して正解だ。

尤も、それで勝てるかどうかはまた別問題だが。

「フォルターゲフェニッ!?」

スパッ

盾が斬られた。
誰に?目の前にいる男に。
何で?右手に持った扇子、いや鉄扇に。
鶴乃が使っているのよりも小さい鉄扇で、スッパリと斬られてしまった。
技が不発に終わった、なら急いで新しい盾を出さないと。
それより一旦距離を取った方が良いのでは。
いやそもそも自分と男は大分離れていたはず、こうも一瞬で距離を詰められたのか。
どれだけ化け物なのだろう――

ドゴッ

「ぐぶっ!?」

思考が纏まり切らず、次の行動に移せないさなの腹部へ襲い来る一撃。
蹴り上げられると骨が軋み、内臓が悲鳴を上げる。
勢いの余り体が宙へ浮き、即座に頭部を掴まれたと思えば地面に叩きつけられた。
トドメとばかりに足が振り下ろされ、激痛に息が止まりかける。
立たねばならないと、とにかく動き出さねばマズいと分かっている筈なのに、体は言う事を聞いてくれない。
痛みがさなの動きを封じ込める。
しかしさなが何かをせずとも、体が浮き地面から離れた。
男に持ち上げられたと、自分の方へ伸ばされた腕を見て理解。
何を思ったか反対の手で布地を引き裂き、首が露わとなる。


853 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:20:56 g.JF8hSg0
苦し気に顔を歪める中でさなは見た。
男が生え揃った牙を剥き出しにするのを。

「あっ…!」

首に鋭い痛みが走る。
噛まれた、分かったのはそこまでだ。

「あ…あ…あぁぁぁ………」

体中から力が抜け、何も考えられなくなる。
まるで脳みそまでふやけてしまったかのようだ。
口からまともな言葉は出て来ず、代わりに泣き声とも嬌声とも取れるものが涎と共に溢れるだけ。
ダラダラ流れる涙で頬にみならず顎まで濡れる。
自身から漏れ出す液体は他にもあった。

チョロロロロ……

ショーツに染みを作り、それでも止まらず腿を伝って具足を濡らす。
失禁した事実に羞恥心を抱こうにも、そんな状態ではない。
ややあって首から口を離しようやく収まった。
が、この程度はまだ序の口。男にとってはこれからがようやく“遊び”の本番に入る。

ビリ ビリ

胸部を覆うアーマー諸共衣服が裂かれて、尿が染みこんだ下着共々スカートが破かれた。
曝け出された乳房がプルンと揺れ、汗ばんだ白い素肌が夜風に冷やされる。
子どもが画用紙を破くような気安さでさなを裸に剥き、さも楽し気に笑う。

「ガキにしてはそそられる体じゃあないか」

自分が今から何をされるのか。
定まっていない頭であっても分かる、分かってしまう。
湧き上がるのは当然嫌悪と恐怖。
同時に諦観が去来する、仕方のない事だと受け入れている自分がいる。


854 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:23:45 g.JF8hSg0
(そっか…私、罰を受けるんだ……)

いろはが行方不明なのを知りもせず、フェントホープでのほほんと過ごしていたから。
本当だったら無理矢理にでも鶴乃とフェリシアの手を引いてみかづき荘へ帰らなければならなかったのに、それをしなかったから。
義父達とは違って、自分の名前を呼び居場所をくれたいろはを裏切るような真似をしたから。
アイと名前を付けてあげた親友も言っていたではないか。マギウスには問題がある、信用できないと。
なのに流されるままマギウスの翼へ入ってしまった。
大切な人達をを疎かにした報いを受ける時が来たのだと思えば、抵抗する力も消えていく。

乳房を強く揉みしだかれ、爪を立てられた所にプックリと赤い玉が浮かんでも気にならない。
男のズボンが突き破れんばかりに盛り上がっているのを、どこか冷静に見ている。

これが自分への罰だとしても、せめて願うくらいは許されるだろうか。
さっきはいろは達も参加させられている可能性を考えたが、殺し合いなんかに巻き込まれるのは自分一人で十分だ。
どうかみかづき荘の皆は無事であってくれと強く想い、諦めたように目を瞑る。

だが待てども破瓜の激痛はやって来ず、ふわりと体が浮く感覚があった。
困惑し目を開くと、自分を凌辱しようとした男が少し離れた位置に立っている。
どこか面白そうな視線の先を辿ってみると、そこには険しい顔をした坊主頭の男。
そこでようやく自分が男に抱きかかえられていると気付いた。





「MURさん!」

自分を呼ぶ声にチラと視線をやると、同行者の少女が焦った様子で駆け寄って来るのが見えた。
中学生くらいの少女が襲われているのを発見し、彼女に何も告げず飛び出したのだ。
悪い事をしたとは思うが謝罪は後回しにさせてもらう。

「杏子ちゃん、この娘を連れて逃げて欲しいゾ。俺はあいつの相手をする」
「えっ?でも…」
「乱暴された女の子をこのままにはしておけないダルォ?ホラ、見ろよ見ろよ」

肌を晒し痛ましい暴行の痕が残る姿を見れば、杏子と呼ばれた少女も反論など出来ない。
僅かに躊躇を見せながらも頷くとMURから少女を受け取り肩を貸し、その場から立ち去ろうとする。

「…MURさんも後でちゃんと追ってきて」
「当たり前だよなぁ?こいつにキツい仕置きをしたらすぐに追いかけるゾ〜」

心配させないようにか明るく振舞うMURの言葉を背に、離れて行く杏子。
当然これまでさなと戦っていた男が黙って見逃がしはしない。
逃亡を阻止しようと動いた時、させじとMURが拳を放つ。
格闘技でも嗜んでいるのか、威力も速さもそこいらのチンピラとは比べものにならない一撃だ。
軽く身を捩って躱した男を獣の如き眼光で睨み付ける。

「この畜生めが!AKYS先生直伝の拳をぶち込んでやるぜ!」


855 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:24:42 g.JF8hSg0



さなを連れ逃げている間、杏子は本当にこれで良かったのかと悩む。
あの場に残って何が出来るのかと聞かれたら、正直答えに詰まる。
犯罪に巻き込まれた事もあったし、DEATH-Tという海馬が仕掛けた命懸けのゲームに参加した事だってある。
だけど自分は遊戯のようなゲームの腕がある訳でも無いし、城之内のように腕っ節に優れてもいない。
得意なダンスとてこの場で何の役に立つというのか。

思い返せば、本田が殺された時から何も出来なかった。
少し前までは城之内とつるんで遊戯をいじめるダサい不良と見ていたが、何時の間にか掛け替えのない友の一人となった少年。
本田は遊戯を安心させるように笑みを浮かべた直後、惨たらしい最期を迎えてしまった。
その時自分は何も出来なかった。無茶な真似をする本田を止められず、悲痛な声を上げる遊戯の元へ駆け寄る事も出来ず、ただ見ているだけ。

友が理不尽に殺されたショックで、会場に転移させられた直後はただ涙を流していた。
MURと出会ったのはその時だ。
最初は警戒したものの、どこか間の抜けた言動に毒気を抜かれ、それでいて自分を元気づけようとする態度に救われた。
本田の死を完全に乗り越えてはいないが、このままじっとしている訳にもいかないと立ち直れたのだ。
この残酷な決闘には遊戯も参加している。ひょっとしたら城之内だっているかもしれない。
なら一刻も早く彼らと会いたい。

(遊戯は大丈夫なの…?)

本田の死に打ちひしがれている所を、さっきの男のような危険人物に襲われていないだろうか。
自分はMURと出会えたが、遊戯はどうなのだろうかと不安に思う。

「あの…私やっぱり戻ります……」
「っ!駄目よ!そんな傷で…」
「でも……」

弱々しく反論するさなを杏子は痛まし気に見る。
自分よりも年下の女の子がこんなにも痛めつけられ、性的に暴行されそうになった。
少しでも肌を隠してあげようと制服の上着を着せているが、やはり痛ましい姿だ。
同じ女として放って置けないし、はいそうですかとさなをあの男の元へ行かせられない。

「MURさんならきっと大丈夫。あんな変態なんかに負けないんだから」

さなを少しでも元気付けるように、そして自分の不安を誤魔化すように伝える。
無理矢理にでも明るい笑みを作って、足を速めた。

(MURさん…遊戯……どうか無事でいて……)


856 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:26:03 g.JF8hSg0
【真崎杏子@遊☆戯☆王】
[状態]:健康、不安
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:女の子(さな)を連れて離れる。MURさん、どうか無事でいて…
2:遊戯に会いたい。
[備考]
※参戦時期は決闘都市編以降。

【二葉さな@マギアレコード 魔法少女まどかマギカ☆外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)、精神疲労(大)、ダメージ(大)、魔力消費(中)、魔法少女の衣装破損(大)、失禁、童実野高校の制服の上着を着用
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:戻らないとさっきの人(MUR)が…
2:いろはさん達は巻き込まれていませんように…
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン5話終了後。


◆◆◆


「オオオオオオオオオオッ!!!」

二人の少女が去り、残された男達による戦いは激しさを増していた。
いや、今行われているのを果たして戦いと言って良いのだろうか。
ただひたすらに殴りつけるMUR。
避けもせず一方的に殴打の嵐を受け続ける男。
傍から見れば凄惨な私刑(リンチ)としか言えないような光景。

「オルァ!」

またしてもMURの拳が男の顔面に直撃。
だがどうした事だろうか。
無抵抗の相手を殴り続けるMURの顔には、明確な焦りが見て取れた。

(この男…!)

杏子がさなを連れ逃げた後、改めて対峙したMURは怖気の走る程のプレッシャーを男から感じ取った。
絶対的な強者と言えば思い浮かぶのは迫真空手部の師範、AKYSだ。
武神と呼ぶに相応しい力を持つあの人との稽古では、向き合っただけで頬を汗が伝う。
しかし同じ強者でも、AKYSとこの男は全くの別物だと理解できる。
厳しいながらも自分達の成長を見守ってくれるAKYSとは違う、邪悪の塊。
まるで30分で5万のバイト代をピンハネする邪神や、ホテルに着いたら3万円やると言っておきながらいざ渡す段階になって「金金って言うんじゃねぇよガキの癖によォン!?」、と本性を露わにするアンバランス体系デカ乳首のような外道。
例えは異様にクッソ汚いが、男が紛れもまい悪なのは事実。
故に、反撃される前に片を付けるべく攻撃を続けた。


857 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:27:09 g.JF8hSg0
こちらの打撃が全て当たっているにも関わらず、MURに余裕は無い。
こうも甘んじて無抵抗でいる男が不気味過ぎる。
疑念と不安を振り払うかのように、一際力を込めた一撃、迫真空手の奥義を繰り出す。

――正拳・つk

ガシッ

止められた。
AKYS程では無いが、持ちうる技の中では最も破壊力のある拳がいとも簡単に。
ここに来て男が初めて動きを見せた。
引き抜こうとしても全く動かせない。
ならばもう片方の拳を放つが、そちらも同じように掴まれる。

「間抜け面の人間にしては悪くない拳だ。十分堪能させてもらったよ」

涼しい顔で告げる男に、MURは今度こそ凍り付く。
強りではなく余裕から出た言葉。
よく考えれば殴られている時からおかしかった。
常人ならばとっくにダウンするか、下手をすれば死んでもおかしくない殴打を受け続けたと言うのに、男は呻き声一つ上げない。
理由は簡単だ、MURの拳が男には効果が無い。
まさか殴られた箇所の傷がとっくに再生しているなど、MURに分かる筈も無かった。

(とにかくこのままじゃヤバいゾ…!どうにか――)

抜け出して。それは叶わない。
グシャリと耳障りな音がした。
何の音かなど見なくたって分かる。
ゴミでも握り潰すようにアッサリと、MURの両手が壊された。

「ぐ…ぁああああああああああああああああああああっ!!!」

耐え切れずに絶叫する。
両腕の拘束が解かれたのなど気にしていられない。
指が有り得ない方向に曲がり、プラプラと揺れている。
苦痛を訴えるMURを意に介さず、むしろ悲鳴を心地良いとばかりに聞きながら男は笑った。


858 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:28:38 g.JF8hSg0
「今度は私の番だろう?」

両手が使い物にならなくなったMURへ、腹部への強烈な一撃。
体がくの字に曲がり、呻き声と血の混じった吐瀉物が撒き散らされた。
次いで顎に一発。拳を打ち上げ脳を揺らす。
顎の骨が砕ける痛みと、耳元で銅鑼を鳴らされたような衝撃に目がチカチカする。
最期は頬へのストレート。防御も回避も許さぬトドメをモロに食らい吹き飛んで行く。
受け身も取れず地面を数回バウンドし、止まった時にはピクリとも動けない。
たった三発でこの様だ。

「まぁ、こんなものか」

さっきまでの笑みはどこへやら。
MURへの興味を失くしたような無表情となり、男は少女達が逃げた方を見る。
両方小娘だが犯したくなるくらいには顔は整っていたし、体付きも悪くない。
それに盾を持っていたガキの力にも興味がある。
犯しながら痛めつければ簡単に情報を吐くだろう。

倒れ伏した敗者には見向きもせず、立ち去ろうとした。

「あっ……おい…待てぃ……」

ピタリと足を止める。
慌てずゆっくり振り返ると、膝を震わせながらMURが立ち上がっていた。
顔に浮かべるのは不敵な笑み。
無理をしているのは明らかな表情に、男は少しだけ面白そうに口の端を吊り上げる。

「何だ、まだ私を楽しませてくれるのか?」
「その通りだゾ…。最後まで相手をしてやる……嬉しいダルォ……?」

軽口を叩き挑発するMURは確信していた。
自分は助からない。これが最後の戦いになると。
だがそこに悲観は無い。未練は山程あれど、少しでも男を足止めする選択に後悔は一切無かった。
女の子を甚振って楽しむような下衆を見逃す腑抜けになるのはお断りだ。
AKYS師範や後輩達を失望させる真似だけは、絶対にしてたまるか。


859 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:29:42 g.JF8hSg0
(野獣…KMR…AKYS先生…RMA…トッチャマとカッチャマ……)

「俺は最後まで……俺らしく戦うゾ……!!」

男へ真っ直ぐと駆け出す。
両手が使えないなら蹴り技を放てば良い。
脚も使えなくなったら、噛みついてやろう。
まだ生きている限り、使える部位が一つでも残っている限り抗い続けるのだ。

顔面へ迫る蹴りを、軽く顎を引いて回避。
右手を軽く振ると太ももから先が地面に落ちた。
崩れ落ちるMUR。
青虫のように地面を無様に這うより先に、片足の力だけで男へ飛び掛かる。
真っ白い首の肉を噛み千切らんと、口を開いた。

(これで……!!!)


ザンッ


MURの顔に赤い線が走り、今度こそ地面に落ちた。
さっきまで命だったもの。今は血と役目を終えた臓器が詰まった肉の袋。
これでハ・デス主催の決闘におけるMURの物語はお終いだ。
善人であるとか、立派な志だとかは戦いの結果を左右しない。

MURは相手よりも弱かった。
たったそれだけの理由で勝負は決まった。


【MUR@真夏の夜の淫夢 死亡】


860 : KING BITCH ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:30:48 g.JF8hSg0



鉄扇を軽く振るい血を落としてから折り畳む。
勝利の余韻に浸る事は無い。どうせ自分が勝つと分かり切っていたのだから。
人間にしてはそれなりに健闘した方と言えるのだろう。
この程度では、自分を最も楽しませた、そしてこれから先も楽しませてくれるだろうあの男には到底及ばないが。

こちらの意思を無視して参加させられたこの催し。
退屈を嫌う身としては、中々どうして悪くない嗜好だと受け入れている。
が、首輪を着け飼いならした気でいるのはいただけない。
決闘を望んでおきながら自分は安全な場所で高みの見物とは、器が知れるというもの。
参加者達の反乱への対策をこのようなガラクタに頼るなど、冥界の魔王の肩書が泣くだろうに。
己の力一つで反逆者を黙らせる自信が無いのか。

「まぁ良い。暫くはお前の用意した舞台を楽しませてもらおうじゃないか」

首輪という枷を付けられて尚も、余裕の態度を崩さない。
何故なら彼もまた王故に、ハ・デスへの恐れは微塵も無し。

男の名は雅。彼岸島を支配下に置いた吸血鬼の王。


【雅@彼岸島シリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]童磨の鉄扇×2@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:好きにやる。
1:さっきの小娘(さな)に多少の興味。
[備考]
※参戦時期は少なくとも無印終了以降のどこか。

※MURの死体の傍にデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1〜3)が落ちています。

【童磨の鉄扇@鬼滅の刃】
上弦の弐・童磨が使用する鉄扇。二本セット。
振っても血鬼術は出せないが、人体を易々と切断可能。


861 : ◆ytUSxp038U :2022/06/16(木) 15:31:54 g.JF8hSg0
投下終了です。


862 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:03:53 gpdiq8Hk0
投下します


863 : 釣餌 -フィッシングバイト- ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:04:59 gpdiq8Hk0
人ではあるが、ドーベルマンの特徴を持った獣人族の少女が力なく歩いていた。
目はうつろで、顔色はすこぶる悪い。
小刻みに震える手は、手袋越しにもったやたらファンシーなステッキを今にも落としそうだ。
彼女の名はカスミ。
アストライア王国がランドソルにて、探偵として活動する少女だ。

「……まさか、探偵が現場から逃げるとはね」

自嘲気味に嗤い、改めてステッキを見る。
もしこれが刃だったらベットリと血がついていることだろう。
彼女は殺したのだ。
人を、同じ獣人を、そして何より同じギルドに所属する仲間たちを。


864 : 釣餌 -フィッシングバイト- ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:05:31 gpdiq8Hk0
最初に出会った時は、安堵した。
この事件を解決しよう。ハ・デスやイソノを退治してランドソルに帰ろう。
しかし彼女らは一切の利く耳を持たず、カスミに攻撃をしてきたのだ。
話しかけてもこちらを睨むばかりで、一切取り合わず、攻撃の手も緩めない。
紫髪で狼の特徴を持つギルド一の実力者、マコトの剣戟を避け、
マコトに次ぐ実力の持ち主で、琉球空手の使い手、カオリの拳を躱し、
自称マホマホ王国の姫で、ギルドマスターのマホの魔法を相殺する。

もう対話は不可能だ。
そう判断したカスミも攻勢に切り替え、拘束しようと戦った。
だが、いや、だからこそ、事は起こってしまったのだ。

「あ……」

一発の魔弾が弾いた剣が砕けた。
飛んだ破片、その中でも一際鋭い一つが、マコトの眉間に深々と刺さる。
ぐるり、と左右の目がそれぞれあらぬ方を向き、崩れ落ちるマコト。
残った二人は、あらん限りの言葉でカスミを罵倒しながら攻撃して来た。
そうなってしまえば手加減何て出来ようもない。
気付いたら、屍となった二人が転がっていた。

「は、ははは。もう、探偵としても、魔法少女としても……いや、人としても駄目だな、私は」


865 : 釣餌 -フィッシングバイト- ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:05:44 gpdiq8Hk0
そうブツブツと呟きながら当てもなく彷徨うカスミは、背後から追って来る異形に気付けなかった。
人型をしているが、白い体に赤い水玉の体。
黒い頭に赤い目のそいつは、ナックル星のレイオニクス。

手にした怪獣使役の為のデバイス、バトルナイザーの一番上の画面には三つの頭を持つただただ不気味で恐ろしい怪獣が映っている。
その怪獣の名はガルベロス。
悪魔的な(フィンディッシュ)タイプに分類されるスペースビーストという怪獣で、
単体でも十二分に強い上に、強力な幻覚を見せる能力を持った上級個体だ。
つまりカスミがさっき戦ったつもりの三人は、ただの幻覚だったのだ。

「ふふふ!下等な原子動物め!まんまと騙されているな!
さて、これからどう利用してやろうか?」

くるくると、バトルナイザーとは反対の手にしたビーム銃、
トライガンナーを弄びながら、ナックル星のレイオニクスは獲物の狩り時を見定めるため、
カスミの尾行を続けた。


866 : 釣餌 -フィッシングバイト- ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:05:59 gpdiq8Hk0
【カスミ@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:健康、ガルベロスによる幻覚(大)、肉体的、精神的疲労(大)
[装備]:マジカルミスティロッド@プリンセスコネクト!Re:DIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この事件を解明し、ハ・デスを逮捕する(?)
1:なんで、なんでこんなことに……。
[備考]
※『魔法少女二人はピュアリー&ミスティ―』が終わった後からの参戦です

【ナックル星人(RB)@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康
[装備]:バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
     トライガンナー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:この決闘を優勝する。
1:幻覚で弱った女を釣餌に他の参加者と出会った所をまとめて殺す。
2:やっぱりガルベロスに敵はいない!
[備考]
※本編でレイと戦う前からの参戦です。


867 : 釣餌 -フィッシングバイト- ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:11:52 gpdiq8Hk0
支給品解説。
【マジカルミスティロッド@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
カスミが魔法少女に変身すると現れるステッキ。
当ロワでは、魔法少女の変身に必要な機能もすべて搭載された上で支給されている。

【バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
レイオニクスと呼ばれるレイブラッド星人の遺伝子を持つモノたちが使うデバイス。
怪獣、超獣、スペースビーストを封印、使役する事が可能。
制限により、使役される怪獣は約15m級にスケールダウンして召喚される。
使い手成長すればするほど進化していき、怪獣のさらなる力を引き出せたり、
戦闘特化の姿に変質させることも可能。
ナックル星人の物にはガルベロスが封印されている。

【トライガンナー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
地球から怪獣が絶滅した宇宙開拓時代において、
宇宙開拓を専門とする組織、ZAP SPACYの隊員に支給されるビーム銃。
本来怪獣退治は想定されていない組織なので、
普段は宇宙船のロック付きのケースに保管されている。
何故かウルトラマンガイアの世界の防衛組織、
XIGのジェクターガンと非常によく似た形をしている。


868 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/16(木) 20:12:09 gpdiq8Hk0
投下終了です。


869 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/17(金) 00:15:22 RVdnsD5s0
投下します


870 : ダービー・ザ・デュエリスト ◆NIKUcB1AGw :2022/06/17(金) 00:16:27 RVdnsD5s0
町外れのとある場所で、二人の男がデュエルを行っていた。
一人は顔の半分を不気味に笑う仮面で覆った、小柄な男。
彼は、レアカードの収集を目的とする非合法組織「グールズ」の一員。
通称「光の仮面」である。
対するは、カジノのディーラーを思わせる礼服に身を包んだひげ面の男。
名を、「ダニエル・J・ダービー」という。

(勝てる……!)

デュエルの最中、光の仮面はその仮面と同じようなにたついた笑みを浮かべる。
ここまでの攻防で、彼は確信していた。
相手は、デュエルの素人だと。
カードをドローするたびに時間をかけてテキストを読んでいたり、モンスターを守備表示で出してばかりなのがその証拠だ。

(魂を賭けるだのなんだのたいそうなことを言ってたが、ただのザコか……。
 これなら、相棒がいなくても充分勝てるぜ!)

勝利できることを信じて疑わない、光の仮面。
だが同時に、彼は引っかかりを感じていた。
ダービーのデッキ構成に、見覚えがある気がしていたのだ。

「私のターン、ドロー」

光の仮面の既視感をよそに、ダービーは淡々とデュエルを進行する。
彼はドローしたカードのテキストに目を通すと、すぐさまそれをディスクにセットした。

「魔法カード、『天使の施し』を発動。
 デッキからカードを3枚ドローし、その後2枚捨てます」
「天使の施し……?」

その魔法カードを見て、光の仮面の中でピースがはまっていく。

「まさか、あいつの……」

そして、光の仮面は完全に思い出す。
自分と同じグールズのメンバーの中に、今のダービーとよく似たデッキを使う男がいたことを。

(あいつのデッキだとしたら……まずい!)

仮面の下で顔を青ざめさせる、光の仮面。
その前で、ダービーは自分の手札を見せつけて宣言する。

「今のドローで、封印されしカード5種類が手札に揃いました。
 よってこのデュエル……私の勝利です」

直後、巨大な魔神がソリッドビジョンで出現する。
五つのカードに分割されて封印された最強のモンスター・エクゾディア。
このモンスターを倒す手段は存在せず、ゆえに出現した時点で勝利が確定する。

「あ……ああ……」

はるか高みから自分を見下ろすアクゾディアを目の当たりにして、光の仮面はおのれの敗北を理解する。
その瞬間、彼の魂が肉体から飛び出した。
魂はダービーの方へと飛んでいき、彼の背後に出現した何者かによって両手で挟まれる。
そして、地面に光の仮面の顔が描かれたコインが転がった。
これがダービーの持つスタンド、「オシリス神」の力。
賭けに敗北した相手から魂を抜き取り、コインに変えてしまう能力である。

「まずは1勝か……」

落ちたコインを拾い上げながら、ダービーは呟く。

「こういうゲームは、どちらかと言えば弟の得意分野だが……。
 まあ私でもできなくはないということか。
 真正面から暴力でやりあうよりは、よほど勝算がある」

一刻も早くこの決闘とやらを終わらせて、元の場所に帰る。
それがダービーの方針だった。
彼が連れてこられたのは、承太郎一行と接触する直前のこと。
このままでは敵前逃亡と見なされ、DIOに粛正されかねない。
そしてそれ以前に、行うはずだった勝負を放り出すなどギャンブラーとしてのプライドが許さない。

「望まぬ勝負を強制する輩に従うのは、屈辱だが……。
 それでも私は、負けるわけにはいかん。
 私こそが最強のギャンブラーなのだ!」

光の仮面の荷物を回収し、ダービーは改めて戦場へと踏み出した。


【光の仮面@遊☆戯☆王 死亡】


871 : ダービー・ザ・デュエリスト ◆NIKUcB1AGw :2022/06/17(金) 00:17:45 RVdnsD5s0


【ダニエル・J・ダービー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]デュエルディスク&レアハンターのデッキ@遊☆戯☆王
[道具]基本支給品×2、光と闇の仮面のデッキ@遊☆戯☆王、魂のコイン(光の仮面)、ランダム支給品0〜4
[思考・状況]基本方針:優勝し、元の世界に帰還する
1:可能な限り、暴力以外での勝負に持ち込む
[備考]
参戦時期は、承太郎一行と接触する直前


【レアハンターのデッキ@遊☆戯☆王】
城之内から「真紅眼の黒竜」を奪った、名称不明のレアハンターが使用していたデッキ。
違法コピーしたエクゾディアのパーツを3枚ずつ投入し、壁モンスターで時間を稼いで特殊勝利を狙うのがコンセプト。
このロワにおいて、コピーカードを使うことに対するペナルティは特にない。


【光と闇の仮面のデッキ@遊☆戯☆王】
グールズ所属のレアハンター、光の仮面と闇の仮面の使用カードをミックスしたデッキ。
二人はタッグデュエルを前提にデッキを組んでおり、どちらか単体だと非常に偏ったデッキ構成になるためこのような形での支給となった。


872 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/17(金) 00:18:51 RVdnsD5s0
投下終了です


873 : ◆BrXLNuUpHQ :2022/06/17(金) 05:46:26 VKPQ/PFE0
皆さん投下乙です。
それとすみません、>>777>>778の間に脱文がありました。


 いずれにせよ、宮美一家は四人が四人とも直接攻撃不可避の絶対絶命の状況であった。
 果たしてこのまま四姉妹仲良く別々の場所でプチリュウ(攻撃力600守備力700)に倒されてしまうのか、とその時。
 四人のもとに別々の参加者が現れた。




874 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:31:37 0yOiYwC60
投下します


875 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:32:06 0yOiYwC60
紫色のクロッカス、花言葉は『愛の後悔』


876 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:32:30 0yOiYwC60
硬い何かが砕ける音と共に、鎌の刃が明後日の方向に飛んでいく。
ただの棒になった持ち手を捨てると、紫色の髪をなびかせ、ミトは即座に逃げを選んだ。
ふり返るまでもなく、奴らが追ってきているのが分かる。

「ミト!あいつら、どんどん仲間呼んで増えてってるよ!」

ミトの背中に掴まった支給品にして、バーチャドールのアリアが叫んだ。

「分かってる!」

なんでこうなったかと言えば、
支給品を確認していたミトが運悪く鎌の試し切りで奴らのうち一体を倒してしまったのがきっかけだ。
次から次に現れる敵、それも全員それなりに強い怪人とあって、
酷使され続ける武器の方に限界が来てしまったのだ。

「どうするのミト!
このまま行き止まりにでも行っちゃったらDead Endだよ!」

(……アスナも、こんな気持ちだったのかな?)

こんな時に思い出すのは、あの時見捨てた親友のことだった。
きっと痛かっただろう。きっと怖かっただろう。
体を裂かれ、骨を潰され、肉を嚙み切られ、血を啜られ最悪の最期を迎えたんだろう。
そんな彼女を、助けれたのかもしれないのに、自分は見捨てた。

「ミト?ねえミト聞いてる?」

「アリア、逃げて」

「ちょ、ちょっとミト!?」

「あなた本当なら私と関係ないわ。
一緒に死ぬ必要なんてない」

「ミトだって死んでいい訳……」

「私は!……もういいの。
きっと、罰が当たっただけだから」

その場に座り込んだミト。
彼女に飛び掛かる十字のブーメランを装備した赤い怪人、ゲルニュート達。
そしてミトが見たのは

「え?」

派手な火花を散らしてひっくり返るゲルニュート達だった。
背後から誰か来たのか?
そう思った次の瞬間、ミトたちの前に降り立ったのは、
腰に蛍光イエローと蛍光ピンクの装置を付け、
黄色いアロハシャツの上に白衣を羽織った男だった。
手にしたバイザー型の武器の銃口からは、自分が襲撃者だと言わんばかりに、
銃口から白い煙が上がっている。

「YOUは一体……」

「自分、監察医やっててさ。
君みたいな若い子の御遺体は結構くるんだよね。
ハ・デス倒した後もこの島に残んなきゃいけなくなるし、
もう一周だけ走れない?」


877 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:34:05 0yOiYwC60
そう言いながら監察医の男、九条貴利矢は、
白衣のポケットから黄色いグリップ付きのデータキーを取り出し、スイッチを押す。

<爆走バイク!>

「変身!」

ターンしながら腰の装置、ゲーマドライバーのスロットにデータキー、
爆走バイクのライダーガシャットをセット!
そして間を置かずレバーを開く!

<ガッシャット!ガッチャーン!レベルアップ!>

<爆走独走激走暴走!爆走バイックー!>

貴利矢の周囲を回るように現れた十数枚のパネルの中から、
正面に来た黄色い物を回転キックで選択。
光と共に、どこかアニメチックな仮面が目を引く強化スーツに包まれた。
仮面ライダーレーザーターボバイクゲーマーレベル0、変身完了。

「しゃあっ!ノリノリで行くぜ!」

手にした武器、ガシャコンバグバイザーⅡを、
ビームガンモードからパットモードに切り替え、
雲霞の如きゲルニュート軍団に向かっていく。

「……」

「ミト!しっかり!早く立って!
あのお医者さんが戦ってくれてるんだよ!?」

「また、また前みたいに……」

どれだけでも湧いて出てくる敵の真ん中に一人。
自分はそれを外から見ている。
あの日、守ると誓った親友を置いて逃げた様に。

「また、また……」

「ねえミト。前に何があったの?」

「アリア?」

「ミトがそんなに苦しんでる事って何?
ミトがそんなに心にため込んでる物って何?」

「それは……」

「全部教えて!その心に溜まったドロドロした物を!」

「あんたに話して何になるのよ!
もうどうしたって取り戻せないものを!
もうどうしたって償えないことを教えて何になるのよ!」

「これ以上後悔を重ねない為の力にしてあげる!
今あの先生を見捨てて逃げたら、前とおんなじなんじゃないの!?」

「そうよ!アスナを置いて逃げた時とおんなじよ!
だから、だからきっとアスナがそうなったみたいに!
私もあいつらに嬲られて死ねばよかったのに!」

叫びながら涙が零れて来た。もうそうなったら止まらない。
八つ当たりの様に心の膿をぶちまける様に叫び出した。

「もっと!そのアスナとは仲良かったの!?」

「友達だった!親友だった!
この髪形も、前に私がしたみたいに結ってくれた髪形!
一緒に帰ろうって約束した!
けど……けど私は、アスナを見捨てて逃げたんだ!
アスナが死ぬのを見たくなくて逃げた!
あの時勇気があれば助けれたかもしれないのに!
私は逃げたんだぁーーーっ!」


878 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:34:17 0yOiYwC60
その叫びがキーだった。
ぐっちゃぐちゃに勢いだけに任せたそれを、
1つの形に調律する。

「カタルシスエフェクト!Go Liiiiiiive!!」

バキっ、と、ミトの内から人体からは本来きこえないような音がした。
一拍遅れて、胸から背を貫く黒く巨大な杭が突き出た。
根元には、何故か紫色のクロッカスの花が咲いている。
それ以外にも、髪に黒いリボンが編み混まれ、
腰には鎖で頑丈に繋がれ、抜けなくなったレイピアが下げられる。
そして黒く染まった腕に握られるのは、彼女の得意武器の大鎌だ。

「うわぁああああ!い、痛、、イタイ……なに、これ!?」

「それはカタルシスエフェクト!YOUの心のドロドロを調律したものだよ!
それで思い切り暴れちゃって!YOUがもう後悔しないように!」

「……ありがとうアリア。やぁあああああ!」

大ぶりの斬撃が、ゲルニュート達の頭をはね飛ばす。
思わぬ援軍に一瞬驚くレーザーターボだが、

「ようやくエンジンかかって来たかんじ?」

ミトの背中に背を向けながら武器を構えて軽口をたたいた。

「はい!ここを切り抜けましょう!」

「よっしゃ!ノリにノって来たぜ!」

死から蘇ったバイク乗りと、生きるために友を見殺しにした鎌使い。
対照的な経緯の二人は、互いの背中を守り合い、ゲルニュート達を駆逐していった。


879 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:34:47 0yOiYwC60
【ミト@ソードアート・オンライン】
[状態]:健康、カタルシスエフェクトを発動。
[装備]:アリア@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:絶対に生きて罪を償う。
1:ごめんねアスナ。今だけは許して。
2:監察医の先生とこの場を切り抜ける。
[備考]
※第一層のボス討伐に出発する前からの参戦です。
※支給品のミトの鎌@ソードアート・オンラインは壊れたため放置しました。
※カタルシスエフェクトの制限や詳細については、後の書き手様にお任せします。

【九条貴利矢@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:正常、仮面ライダーレーザーターボに変身。
[装備]:ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
     爆走バイクガシャット(レベル0)@仮面ライダーエグゼイド
     ガシャコンバグバイザーⅡ@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:このゲームを攻略する。
1:まずはこのお嬢ちゃん達とこの場を切り抜ける。
2:名人や大先生たちも呼ばれてんのかね?
[備考]
※小説仮面ライダーエグゼイドの冒頭からの参戦です。
※ライダーシステムの制限などは後の書き手様にお任せします。


880 : 解き放つCatastrophe! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:35:33 0yOiYwC60
支給品解説
【ミトの鎌@ソードアート・オンライン】
ミトがSAOにおいて、第一層のボス戦で使用していた武器。

【アリア@Caligula Overdose-カリギュラオーバードーズ】
電脳世界メビウスを構築したバーチャドールの一体。
現在は本来の力と姿を失っており、二頭身の妖精のような姿になっている。
残っている力も人の心のどす黒い物を調律し、カタルシスエフェクトとして発動させることぐらい。
当ロワではカタルシスエフェクト関連の力以外は全て封印されており、
単独行動が出来ないようにされている。

【ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド】
幻夢コーポレーションが開発したバグスターウイルス感染症専用の医療器具。
ライダーガシャットをセットすることで、使用者を仮面ライダーへ変身させることができる。
九条貴利矢に支給された物には、爆走バイクガシャット(レベル0)が付属。
仮面ライダーレーザーターボに変身することができる。

【ガシャコンバグバイザーⅡ@仮面ライダーエグゼイド】
幻夢コーポレーションが開発したガシャコンウェポンの一つで、
主に仮面ライダークロノスが使用する外付け装備。
遠距離攻撃のビームガンモード、近接攻撃のチェーンソーモード、そしてバグスターウイルスの散布を行うパットモードの三種類がある。
ガシャットに紐づけガシャコンウェポンと違い、ガシャット別に応じた必殺技は使えないが、スロットは有る為、
セットしたガシャットに応じたウイルスの散布が可能。
ガシャットを用いる必要のない必殺技も、ビームガンモードとチェーンソーモードにそれぞれ一個づつ設定されている。また、バグスターバックルと組み合わせて使う事で、
バグルドライバーⅡという変身ベルトで仮面ライダーへの変身にも使える。
が、変身ベルトとして使うにはバグスターであるか、ほぼ全てのバグスターウイルスへの抗体が必要である。
かけられているであろう制限に関しては後の書き手様にお任せします。



NPC解説
【ゲルニュート@RIDER TIME仮面ライダー龍騎】
ミラーワールドに存在する怪人、ミラーモンスターの一体。
高い俊敏を誇り、そのトリッキーな動きは仮面ライダーでもなかなか読めない程。
十字型のブーメランを武器として装備している。
シアゴーストやレイドラグーンと同じ群体タイプのモンスター。


881 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/17(金) 20:35:49 0yOiYwC60
投下終了です。


882 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:07:17 744WzHz.0
投下します


883 : ガラガラガラガラ ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:08:17 744WzHz.0
「ガラガラ」
「ガラーラ!」

二匹のよく似た、しかし違う姿の生物が話をしていた。
彼らの種族名はガラガラ。
いったいどんな会話をしているのだろうか。

【以下翻訳】

「じゃあ、私…本当に生き返っているの?」

そう不安そうな顔で聞くのは、普通のガラガラ。
ここではガラガラ(白)と呼ばせてもらおう。
ちなみにメスである。
彼女は、かつてカントー地方にてロケット団に殺され、ポケモンタワーにて悪霊となっていた。
しかし、とあるトレーナーによって正体を暴かれ、戦いの末優しい魂に戻って成仏…したはずだった。
それなのに、気づけばハ・デスの決闘に巻き込まれていて。
そこで会ったのが、自分とは姿の違うガラガラだった。

「ああ、俺達アローラのガラガラは、ちょっとした霊感を持ってる。今のあんたは、間違いなく実態を持った、生きたガラガラだぜ」

黒い方のガラガラは言う。
ガラガラ(黒)でこれ以降呼ぶことにしよう。
ちなみにこちらはオス。
アローラ地方に住む彼ら黒いガラガラは、姿を変えた過程で霊感に近いものを手に入れており、それによりガラガラ(白)が生きていると断定した。

「そうなんですね…それにしても他の地方では、炎とゴーストの力を持ったガラガラがいるなんて…世界は広いのですね」
「へへ…よその地方の、しかも元幽霊のガラガラとは、ゴーストタイプとして親近感がわくぜ」

そういってガラガラ(黒)はガラガラ(白)に近づく。


884 : ガラガラガラガラ ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:08:50 744WzHz.0
「あんた、なかなかいい女じゃねえか。どうだ、俺の女にならないか?」
「そ、そんな、私なんて一児の母で、おばさんですよ」
「俺のダチはカキっていってまあ悪い奴じゃないんだが、仲間のガラガラも、カキも、山男も、漢臭くてなあ…エンニュートっていかした女ならいるんだがもうちょっと華が欲しいよなあ」
「…女なら誰でもいいんですか」
「いやいや、そんなことないない」

軽い調子で語るガラガラ(黒)に、ガラガラ(白)はクスリと笑うが…しかしすぐにその顔は曇る。

「…分かっているんですか?この決闘は、最後の一人になるまで終わらないんですよ」
「…なんだよ、あんたこの殺し合いに乗るつもりかよ?」

ガラガラ(黒)は警戒するように炎を纏ったホネこんぼうを構える。
しかしガラガラ(白)は、薄く笑うと首を振った。

「…まさか、そんな。私は自分にそんな実力がないことを、その死をもって知ってますから」
「…ロケット団って悪党に殺されたんだったか」
「…私はきっと、ここでも悪意ある人間の手によって、殺されるでしょう」
「せっかく生き返ったんだぜ?子供に会いたくねえのかよ?」
「会いたくても無理ですよ、どうせ殺され…」

「諦めるんじゃねえ!!」

ガラガラ(黒)の激昂に、ガラガラ(白)は目を丸くする。

「なああんた…俺達アローラのガラガラが、どうしてこんな姿になったか分かるか?」
「…分かりません」
「生きるためだよ!どんなに厳しい現実だろうと、過酷な環境だろうと、それでも必死に生きようとした成果が、この炎とゴーストの力だ!」

アローラ地方には元々地面タイプである彼らの天敵草タイプのポケモンが多い。
その為、仲間たちと結束して生き、仲間への想いの強さが彼らに炎とゴーストの力を与えた。


885 : ガラガラガラガラ ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:09:20 744WzHz.0
「俺達アローラのガラガラは、何より仲間たちとの結束を重んじて、それにより厳しい環境の中生き延びた!決闘?最後の一人?そんなの知るかよ!結束の力で…そんなもんぶち壊してやらあ!」
「ガラーラさん…」
「ん?ガラーラ?」
「あ、ごめんなさい!ガラーラって喋ってるのが耳に残ってつい…」

※こうして翻訳しているが、彼らの会話はおおむね白が「ガラガラ」、黒が「ガラーラ」で聞こえています。

「はは、ガラーラか、いいじゃねえか。お互いガラガラで呼び合うのもなんだ。これからは俺のことガラーラって呼べよ」
「わ、分かりましたガラーラさん」
「…で、話はそれたが、とにかくガラガラ、あんたも違う地方とはいえ、同じガラガラなら諦めるんじゃねえよ。それとも、悪霊化するほどのあんたの子供への想いってのはその程度なのか?」
「そんなことありません。私は…あの子に会いたい」

子供に会いたい
言葉にした瞬間、勇気が湧いてくる。
ガラガラ(白)の心に光が差す。
いや、それは光ではない。

「生きて……あの子にもう一度会いたい!!」

強く燃える、炎だった。

「いい気迫だ。あんた、アローラに行ってもやっていけそうだな」
「ガラーラさん、私もう諦めません!ハ・デスを打ち倒し、私たちの世界に帰りましょう!」
「ああ、見せてやろうぜ!俺達の結束の力をな!」

こうして2匹のガラガラは結束し、元の世界に帰ることを決意するのだった。

「そうだガラガラ、あんた元の世界に戻ったら一度アローラに子供と来いよ」
「アローラにですか?」
「…俺の女にならないかって話、冗談じゃねえからな」
「え…」

そっぽを向いたガラガラ(黒)の言葉に、ガラガラ(白)は赤面するのだった。


886 : ガラガラガラガラ ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:09:47 744WzHz.0
【ガラガラ@ポケットモンスター赤緑】
[状態]:健康
[装備]:ホネこんぼう
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生きてあの子にもう一度会う
1:ガラガラ(黒)と行動する
[備考]
※ポケモンタワーの幽霊ガラガラです。
主人公によって成仏後ですが、実体を取り戻しています。

【ガラガラ(アローラの姿)@ポケットモンスターサンムーン】
[状態]:健康
[装備]:炎のホネこんぼう
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:結束の力でハ・デスを倒し、元の世界に戻る
1:ガラガラ(白)と行動する
[備考]
※カキの試練に出てきたガラガラの内の一匹です


887 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/17(金) 21:10:18 744WzHz.0
投下終了です


888 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:30:13 Ps5nIk4U0
投下します


889 : ヘル・オブ・ザ・リビングデッド ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:31:58 Ps5nIk4U0
「泣けるぜ」

理由不明の待機命令に納得できず、街まで行ったらバイオテロに巻き込まれ、
それも何とか切り抜けたかと思えば、今度は冥府の決闘と来た。

(もう常識とか諸々が信じられないな)

なんて思いながらも、支給された武器をチェックし、地図を確認。
無辜の市民の保護、決闘に積極的な参加者の拘束に動こうとしている当たり、
彼、レオン・スコット・ケネディは真面目な警官なのだろう。
彼女に振られたりしたら、翌日の予定とか一切無視してやけ酒するタイプではあるが。

「果たしてハ・デスが逮捕できるような者かは知らないが、やるしかないか」

拳銃片手に進む事30分、レオンはようやく参加者を発見した。

(子供?)

それは長い茶髪の7歳ぐらいの東洋系の童女だった。
こちらに気付いたのか、じっとこちらを窺っている。

(武器は無さそうだし、発症してる様子もないか)

「俺はレオン・スコット・ケネディ!
ラクーンシティ警察署所属の警官だ。この決闘に積極的でもない」

そう言うと少女はゆっくりと出てきた。

「はじめましてお嬢さん。君の名前は?」

「市原仁奈でごぜーます。
レオンおにーさんは、本当におまーりさんでごぜーますか?」

「ああ。バッジと手帳はハ・デスに奪われてしまったが、
君のような無辜の市民を守ると約束しよう」

仁奈はやや警戒しながらも、レオンにぽつぽつと事情を話し始めた。
と、言っても、連れてこられた経緯などは、レオンとそう変わらなかったが。

(信じたくはないが、俺たちは魔法じみた力で呼ばれたってことなのか?)

TやGの脅威はまだ科学で説明できる物だった。
けど今回の騒動はどうもサイファイではなく、ダークファンタジーよりの異常らしい。

(いつから俺の人生はこんな面白おかしくなっちまったんだ?)

一瞬思考が遠くなるが、すぐに聞こえ始めた銃声のお陰で瞬間的にスイッチが入った。

「ニナ、これからちょっと危ない所に行くことになる。
けど君を一人にするわけにもいかない。ついてきてくれるかい?」

「よくわかんねーですけど、一人ぼっちはさみしーですよ」

「なら行こう。時間はそんなにないかも知れない」

素早く仁奈を抱えて銃声が大きくなる方に走り続ける。
そしてたどり着いたレオンたちの視界に飛び込んで来たのは、
オレンジ色の奇妙な頭に、ボロボロのストリートファッション風の服の怪人だった。
奇麗な弧を描いて落ちてきたそいつの胸には、まだ煙の上がる銃創がある。
その下手人は、まだまだ無数にいる怪物たちの集まる中心にいた。


890 : ヘル・オブ・ザ・リビングデッド ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:32:41 Ps5nIk4U0
「オラオラ!まだまだいくでぇ〜〜!」

地獄絵図。それがレオンに最初に浮かんだ言葉だった。
だって考えても見てほしい。
左眼には黒い眼帯に、背中一面から両肩に腕の上半部、
胸板にまでびっしりと彫られたタトゥーの男がゲラゲラ笑いながら、
テクノカットを振り乱し、ショットガンを振り回しているのだ。



全裸で。



より正確に言えば、腰にタオルを巻いただけの格好で。
それなのにハイキックとか普通にするので、
男の大蛇はものすごい自己主張をしてしまっている。

「レオンおにーさん、なんも見えねーですよ!早くその手を離してくだせー!」

「いいや、駄目だ。ニナ、もうちょっとだけ待つんだ。
今ちょっと教育的に配慮が必要な状況だからな。
いい子だからもうちょっと待ってくれ」

そして何より男の戦闘能力は圧倒的の一言だった。
無数にいた怪人はあっと言う間に倒されていき、最後にはタトゥーの男が立っていた。

「あ?お前らなんか用か?」

「ああ。俺はレオン・スコット・ケネディ。警察官だ」

「ほー。こんなパティ―に呼ばれてまうとは、サツのあんちゃんも災難やな」

「全裸でいる時に呼ばれたアンタほどじゃないさ。
それで、その格好の理由だが……」

「サウナ出たばっかの時に呼ばれた以外にあるわけないやろ?」

「まあ、そうなんだが、一応職業なんでね。
が、今回は事が事だ。瞬間移動させられたせいとは言え、いくらなんでもその格好は不味い。これを使ってくれ」

そう言ってレオンは、一旦仁奈を放すと、
自分のバックから一着のスーツを取り出し、男に差し出した。

「ええんか?」

「いくらアンタがマフィアでも、ハ・デスたちのせいで全裸徘徊で逮捕なんて流石に不憫だと思ってね」

「なんや、気付いとったんか?」

「逆にあんな動きがまともに訓練を受けた者の動きだとでも?」

そう言われたタトゥーの男、真島吾朗はニタァー、と凶悪な笑みを浮かべると、

「ええ度胸しとるなぁ、サツのあんちゃん。
確か、レオンちゃんゆうたな」

「ああ。そう言うアンタは?」

「……真島吾朗や。
レオンちゃんもあのハ・デスとやり合うっちゅうんなら、その時にまた」

そう言ってその場で受け取った手早くスーツに着替えると、ショットガンを担いだままどこかに歩き去っていった。

「真島のおじさーん!気を付けてくだせー!」

ひらひらと振り返らずに手を振る真島。
その背中が見えなくなると、レオン達もその場を後にする。
バグスターウイルスの無惨な死体だけが残った。


891 : ヘル・オブ・ザ・リビングデッド ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:33:13 Ps5nIk4U0
【真島吾朗@龍が如くOF THE END】
[状態]:健康
[装備]:MarkIV.EXP@龍が如くOF THE END
     スーツ@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
     MarkIV.EXPの予備弾@龍が如くOF THE END
[思考・状況]基本方針:好きなように暴れまわる
1:レオンちゃん、覚えたで。
2:ハ・デスに挑む方法を探す。
3:もし桐生ちゃんも着とるんなら、見つけ出して喧嘩を挑む。
[備考]
※参戦時期はOTE終了直後、サウナから上がった直後です。


【レオン・スコット・ケネディ@バイオハザードRE:2】
[状態]:健康
[装備]:グロック17@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:無辜の人々を保護し、この事件を解決する。
1:まずはニナの安全を優先。
2:同じくこの決闘に反抗する者や、乗り気でない者を探す。
3:ラクーンシティを脱出したと思ったらこれか。
4:もしハ・デスたちが『T』や『G』を持っているなら……。
5:クレアたちも呼ばれているんだろうか?
[備考]
※ラクーンシティを脱出した直後からの参戦です。

【市原仁奈@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:必ずに帰るでごぜーます!
1:真島おじさん、災難でごぜーましたね。
2:レオンおにーさんたちと一緒に行くですよ!
[備考]
※参戦時期などは後の書き手様にお任せします。


892 : ヘル・オブ・ザ・リビングデッド ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:33:39 Ps5nIk4U0
【MarkIV.EXP@龍が如くOF THE END】
真島吾朗愛用のショットガン。
散弾しか装填出来ない為、射程距離は通常のショットガンと大差ないが、
連射が可能かつ、弾倉化設計によるリロード時間の短縮などが特徴となっている。
予備弾とセットで支給。



支給品紹介
【スーツ@現実】
ごくごく普通の黒いスーツ。
下着、ズボン、ベルト、Yシャツ、上着、ネクタイ、靴下、革靴のセットで一つの支給品扱い。

【グロック17@現実】
オーストリアのグロック社が開発した軍用、警察用の自動拳銃Pi80の民間用モデルとして、
1985年にアメリカで販売されたもの。口径は9mm。相談数は17発。
現在はアメリカのFBIなど、様々な法務執行機関で正式採用されている。



NPC紹介
【バグスターウイルス@仮面ライダーエグゼイド】
バグスターウイルスが人間型になり、実体化した下級怪人。
今回登場した個体はデンジャラスゾンビの物で、
首より下はボロボロの服を着ている。何故か普通のショットガンで倒せた。


893 : ヘル・オブ・ザ・リビングデッド ◆FiqP7BWrKA :2022/06/18(土) 15:33:56 Ps5nIk4U0
投下終了です


894 : ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 19:56:35 AqzDWeXQ0
投下します


895 : 魔法少女とのエンカウント・IF ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 19:57:28 AqzDWeXQ0
◆◆◆◆


目が覚めたら、知らない場所にいて、知らない男の人が出てきて。
それで、男の子の頭が、爆発して。
……とても、悲しかったんです。
本当に、私は何もできなかったのかな。
あの男の人の代わりに、なれなかったのかな。守れなかったのかな。

そんなことを、思っていたけど。

「きゃぁああ――――!!!」

私には、まだ何もできないって、思ってしまったんです。


◆◆◆◆


896 : 魔法少女とのエンカウント・IF ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 19:59:53 AqzDWeXQ0
灯一つ無い住宅街、少女の絶叫が響く。
その声の主、名を鹿目まどか。彼女はピンク色の髪を派手に揺らし、ただただ逃げ続ける。
何から?それは黒いスーツを纏い、顔面が骨の様な模様で覆われた者達。
名を、マスカレイド・ドーパント。参加者を無差別に襲うNPCとして設置された彼等は、普通の中学生であるまどかへも容赦なく牙を剥いた。

身体能力を一般人よりも強化された彼等。
まどかも街中を彼方此方と逃げ回って来ていたが、能力的に有利なのは当然マスカレイド達。
体力も削られて行く中、やがてまどかは行き止まりへと辿り着いてしまう。

「や、やだぁ……っ!」

へたり込むまどかに、迫るマスカレイド達。
逃げ場はない。視界が絶望に染まる。
覚悟も何も出来ていないまま、鹿目まどかの人生の終わりへのカウントダウンが――――始まることはなかった。



「伏せてっ!」


――――桃色の風が奔った様に見えた。


「フレッシュピーチハートシャワー!!」


897 : 魔法少女とのエンカウント・IF ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 20:01:10 AqzDWeXQ0
とてつもない光、風、そして何かが破裂する様な音。
今、何が起こったのかは直接目にしてはいない。
ただ、まどかが顔を上げた時に絶望の景色は消えていた。
代わりにそこにあったものは――――

「……大丈夫?なるたけふんわり消し飛ばしたから、影響はないと思うけど……」

同じ色の髪、自分より高い背丈。何より、ピンク色のメルヘンな格好。
全ての理解が追いついたわけではない。
だが、1つの紛れもない事実。まどかは口を開く。

「あのっ、助けてくれて、ありがとうございます……っ!」
「……うん。無事でよかった」

微笑みながら、手を差し出す彼女。まどかは少し悩んだ後、その手を取る。

普通の女子中学生、鹿目まどかと、桃色の高校生魔法少女――千代田桃。
彼女達はこの決闘の舞台にて、出会った。




◆◆◆◆◆◆◆◆



「魔法少女!?」
「うん、魔法少女」

静けさを取り戻した街角。2人は近場にあったベンチに座り込み、会話を交わす。

「変身して、戦う。言えることはそれくらいかな」
「す、すごい……かっこいいですねっ」
「……そんなにかっこいいものとかじゃないよ」

互いに名前を伝えた後、桃はその力について話し始めた……といってもすぐに終わってしまったが。

「それで、まどかちゃんは……まどかちゃんで良い?」
「はいっ私も、桃さんで良いですか?」
「うん、良いよ。……それで、まどかちゃんはこの後、何か方針とか、行きたい場所とかある?」
「方針……」

まどかは決闘の舞台に置かれた後、地図や支給品を詳しく見る間もないまま、マスカレイド達に追われていた。
即ち方針などは特に決まってはいない。
だから今こうやって他人に問われ、考えてみようとしてみた。
……だが深く考える間も無く、方針は決まった。

「さやかちゃん、仁美ちゃん、ほむらちゃん…………友達を、探したいです」
「友達……」

まどかにとって、かけがえのない友人達。
この場にいるかどうかなんてわからない。いない方が嬉しい。
だが、何もかもわからない現状。友人達の安否は、彼女にとって何より心配なことであった。


898 : 魔法少女とのエンカウント・IF ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 20:03:15 AqzDWeXQ0
「……うん、わかった。私も、まどかちゃんの友達を探す」
「えっ、良いんですかっ」
「勿論。私も、特に今は目的とかないし……まどかちゃんと同じで、気がかりな人はいるけど」
「なら……私もその人を探します」
「……それは助かる。じゃあ、互いに情報を交換しよう。まどかちゃんの友達を教えて?」

かくして、2人の方針は決まった。
まどかは、さやか達の事を話す。
桃も、宿敵であり大切な人物――シャミ子のことを話す。
『まぞく』というワードにまどかは当然驚いたが、魔法少女の存在を目にしている以上すんなり受け入れた。



「じゃあ、取りあえずこの街を散策してみよう」
「はいっ」

2人はベンチから離れる。
決闘の会場は広い。もし友人達が巻き込まれていたとしても、何処に居るかだなんて見当はつかない。
ならばゆっくりでも、全ての場所を見て回れば良い。
単純明快で、非常に長く、苦労の多い手段。
それでもまどかはそれを望んだ。桃もそれに応えた。

「……と、その前に」

まどかの前にいた桃が、振り向きながらデイパックから何かを取り出す。

「これ、バットに、スタンガン。使って?」

手に持っていたのは、黒色のバットに、スタンガン。

「え、そんなっそれは桃さんの……」
「大丈夫。言った通り、私は魔法少女。自分の身くらいは守れる。……逆にまどかちゃんを完全に守り切れるって保証はできないから、それで自分を守ってほしい」

そう言われ、まどかもそれらを受け取る。
スタンガンをポケットに入れ、バットを手に持つ。

「じゃ、行こう」
「は、はいっ」

ピンク色の髪が、二つ靡く。

鹿目まどか。
数多の世界線で、彼女に初めに関わる魔法少女は巴マミだ。
そして彼女はキュゥべえとの契約による魔法少女システムを知り、
契約をしたとしてもしていないにしても、未だに生き残ったことはない。暁美ほむらのループがそれを示す。

彼女は、この決闘の世界でも魔法少女と遭遇した。
だがそれは巴マミではなく、千代田桃。
魔法少女という存在を知るも、それはマミやほむらとは違う――言わば異世界の魔法少女。
そんな出会いが、まどかに何を齎すのか。それはまだ、誰にもわからない。


899 : 魔法少女とのエンカウント・IF ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 20:05:02 AqzDWeXQ0
◆◆◆◆


桃さんは、とても優しくて、強くて。
逃げることしかできなかった自分とは、大違いで。
もし、叶うことなら。
こんな私でも、桃さんみたいにみんなを守れる存在になれたら。
それはとっても、嬉しいなって。


◆◆◆◆



【鹿目まどか@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、疲労(極小)
[装備]:ホームランバット@大乱闘スマッシュブラザーズSpecial、緑へものスタンガン@おちこぼれフルーツタルト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを、止めたい。
1:桃さんと、友達が居ないか探す。
2:私にも、力があれば……
[備考]
※参戦時期は第5話以前のどこか。そのためまどマギ世界における魔法少女に関しての知識はありません。

【千代田桃@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:会場からの脱出、もしくは打破。
1:まどかちゃんを守る
2:シャミ子が居るなら、真っ先に探したい
[備考]
※参戦時期は2度目の闇堕ち(アニメ2期8話、原作45丁目)以降です。



『支給品紹介』
【ホームランバット@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ】
千代田桃に支給。
スマブラ世界における打撃アイテムのひとつ。
大きく振りかぶり対象を打つ事で、遥か彼方へとぶっ飛ばす脅威の性能を持つ。なお飛び道具類も反射できる。

【緑へものスタンガン@おちこぼれフルーツタルト】
千代田桃に支給。
緑へもがあくまでも護身用の為に携帯しているスタンガン。
電極部はネズミの耳の様な変わったデザインだが、それ以外は至って普通のスタンガン。
主催達の手により、万全な常人ならギリギリ気絶しない程度の威力に調整されている。


『NPC紹介』
【マスカレイド・ドーパント@仮面ライダーW】
ミュージアムの構成員が変身していた量産型ドーパント。主催側が構成員をそのまま呼び出しNPCのしての役割を与えている。
身体能力は一般人よりも強化されるが、鍛えている者ならば生身で対処が可能な程度の強さ。
メモリブレイクされた場合、証拠隠滅のため自爆する仕様となっている。


900 : ◆4u4la75aI. :2022/06/18(土) 20:05:34 AqzDWeXQ0
投下終了です


901 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/18(土) 21:28:24 xvNQ5qTk0
投下します


902 : 刀使とファントム ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/18(土) 21:29:12 xvNQ5qTk0
月明かりが僅かに差し込むだけの、薄暗い森の中。
緑の制服を着た、長い黒髪の少女が一人歩いてた。

(この様な悪逆非道……絶対に赦しはしない)

主催者であるハ・デスに対し激しい怒りを燃やす少女、十条姫和は凛とした顔立ちで前を向いていた。
必ずやこの悪趣味な殺し合いを打倒しようという強い意志を胸に秘めて。
森の中を歩き続けてる中、姫和はピタリと足を止める。

この会場に飛ばされて少し経ってからずっと、背後から纏わりつくような気配を感じていた。
姫和は息をすぅっと吸って、気配のする方へ顔を向ける。

「出てこい!私の跡を付けているのは分かっている!出て来なければ敵と見なす!」

そう忠告すると木々を揺らしながら隠れていた人物が姿を現した。

「ふふっ……バレちゃった♪ハロ〜!綺麗な黒髪のお嬢さん♪」

現れたのは肩にストールを羽織り、緑色の羽の付いた帽子を被った独特なファッションをした青年であった。
青年は殺し合いの場に不釣り合いなほど明るい性格で、無邪気な笑みを見せている。

「答えろ!お前は殺し合いに乗っているのか?」
「そう警戒しないでよ。せっかく可愛い顔してるんだからさ、笑顔笑顔♪」
「お前……ふざけているのか?」
「安心してよ。僕は殺し合いなんてやるつもりは無いよ」
「……疑わしいな」

目の前にいる男の軽薄な態度に姫和は警戒心を強める。
甘いマスクに、その陽気でおどけた笑顔は魅了される女性は多いだろうが
生真面目な性格の彼女にとっては不快感さえ覚える。

「疑う気持ちも分かるけど、殺し合いを止めるには色んな人との協力が必要だよね?だからさ、僕と仲良くしようよ♪
 僕の名前は滝川空、気軽に『ソラ』って呼んでよ。お嬢さんの名前も教えてくれるかな?」
「……十条姫和だ」
「姫和ちゃんか……その長い黒髪にピッタリな素敵な名前だね♪」
「それよりソラ、支給品の中に刀は入ってなかったか?」
「どうしたの姫和ちゃん?もしかして、刀を探してるの?」

刀使としての力を行使するには御刀である小烏丸が必要だ。
今は没収され手元に無いが、もしかしたら他の参加者の元に支給されているかもしれない。

「ああ、もしあればの話だが……」
「うーん、確か持ってたような〜」
「本当か!?」
「持って無かったような〜」
「はっきりしろ!」
「ごめんごめん♪姫和ちゃんを見てると、ついからかいたくなっちゃった♪」
(こいつ……)
「じゃあ、僕も刀探しに協力するよ。二人ならもっと見つかる可能性も増えるからさ♪」
「……お前はまだ信用出来ない。悪いが一緒には行動出来ない」

滝川空という男、どうも得体が知れない。
私に送られる視線が時折、好意とは別の気配を感じる。
ただの軟派な男とは違う怪しさがあると本能が告げている。
御刀を持っていない状態では、突然に裏切りに対応出来ないかもしれない。
今はそのリスクを背負う訳にはいかない。

「つれないなぁ。まぁ仕方ないか。僕は僕なりに刀を探してみるからまた会おうよ。じゃあね♪」
「……消えた?」

姫和が思考中の一瞬であった。
ソラから目を離していた一瞬の間に、忽然とソラの姿が消えていた。
まるでテレポートでもしたかのように。

「あいつは……本当に人間なのか?」

その答えは出ないまま。
ただ、そよ風が木々の枝を揺らして音を立てるのみであった。

【十条姫和@刀使ノ巫女】
[状態]:健康
[装備]:無し 
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:信頼できる仲間を探す。
2:小烏丸を探す。
3:滝川空を警戒。
[備考]
※参戦時期は12話終了後からです。


903 : 刀使とファントム ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/18(土) 21:29:28 xvNQ5qTk0


「さ〜て、次はどこに行こうかな。それにしても……」

ソラはデイバックを弄りながら先ほど別れた少女、姫和の事を思い出していた。
デイバックの中には支給品の一つである刀、小烏丸が入っていた。

「姫和ちゃんの髪、とっても綺麗だったなぁ、緑の制服も素敵だけど。
 白い服を着せた方がもっと黒髪に似合って、更に素敵な姿に変わるはずさ。
 この手で姫和ちゃんをコーディネートしてみたいな。ふふふっ♪」

ソラの目的は勿論、自身が生き残る事だ。
その手段は優勝か、脱出するかは、状況を見て考えればいい。
自分の趣味に関してはあくまで二の次に留める。
とはいえ、この殺し合いの中で、ソラはその趣味を我慢し切れるかは本人にも分からない。
彼にとって趣味は、一度本能が疼いたらもはや発作のように止められなくなる。
不要に敵を作るのはソラとしても本心ではないが、それはもはやどうしようも無い事である。

「まずは……この会場にどんな人達が来ているのか調べなきゃね。
 中には僕の役に立つ人がいるかもしれないし……ふふふ♪」

そう言い終えると共に再びソラの姿が消えた。
次なる参加者と接触するために、彼の暗躍が始まった。


【グレムリン@仮面ライダーウィザード】
[状態]:健康
[装備]:無し 
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、小烏丸@刀使ノ巫女
[思考・状況]
基本方針:自身の生存優先。
1:他の参加者の動向を観察する。
2:姫和に興味深々。
3:面白そうなので小烏丸はすぐに渡さず保留する。
[備考]
※参戦時期は賢者の石を入手する前からです。


904 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/18(土) 21:29:44 xvNQ5qTk0
投下終了です


905 : ◆8ZQJ7Vjc3I :2022/06/18(土) 22:56:27 Do0bZakE0
投下します


906 : "ソレ"を見た者に死を ◆8ZQJ7Vjc3I :2022/06/18(土) 22:57:15 Do0bZakE0


それに、きっと悪意というものは無かった。
冥府の王を名乗る男に殺し合いを命じられても動じる事は無く。
呑気ともとれる立ち振る舞いで会場を歩いていた。
事実彼にとって、殺し合いなんてどうでも良かった。
決闘王の称号なんてものに興味はない。
人が死ぬことにも慣れている。
だからこうして、当てもなくぶらついているのだ。
ともすれば、酷く人間味が希薄で。
他人から見ればある種異様な人物に映ったかもしれない。
本当に参加者…否、人間なのか?と。
だが、背負うデイパックと“それ”に嵌められた銀色に鈍く輝く首輪こそ、参加者の証明だった。


「おーい」


と、彼がこの会場に現れてから十五分ほど後。
会場を当てもなくさ迷っていると、自分に声を掛けてくるものがいた。
そう、自分に。
この、『吾妻史郎』に声を掛けたのだ。


「ぐえぺッ!!!」


声を掛けてきたのは少年だった。
声を掛けてきた少年は、偶然振ってきた小型の隕石によって木っ端微塵となった。
それを見届けて。
吾妻史郎はまた会場を当てもなく練り歩く事とした。


「…………」


何時もの事だ。
何も変わらない。
彼を見たものは即、不幸な事故で死に至る。
繰り返すが、彼に悪意はない。
ただ、彼を見たものは死ぬ。彼がやろうとしてやっているかどうかすら怪しい。
木から落ちたリンゴが地面に向けて落下するように。
火にくべた薪が燃えてやがて灰になる様に。
それこそが自然の摂理である様に、彼は人を、己を見たものを殺し続ける。
その虚像の名は、吾妻史郎といった。


【吾妻史郎@裏バイト 逃亡禁止】
[状態]:健康
[装備]:無し 
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:ぶらつく。
1:殺し合いはどうでもいい。でも帰りたいと言えば帰りたい?


907 : "ソレ"を見た者に死を ◆8ZQJ7Vjc3I :2022/06/18(土) 22:58:27 Do0bZakE0


……………
………
……


意識が、覚醒する。


「……ったく、いきなり何だったんだ?」


身体から俄かに黒い粒子を吹かして。
今しがた隕石で木っ端みじんにされた少年は立ち上がった。
隕石の直撃の瞬間放り投げたデイパックを拾って、伸びをする。
そう。
吾妻史郎と同じく、少年もただの人間ではなかった。


「…佐藤さんとの戦いから、死ぬことになるのは久々だな」


亜人。
粉微塵にされても死ぬことは無い超越者。
それが少年、永井圭の正体だった。


「いきなり災難だったが…収穫は無かった訳じゃない」


不死者である亜人としての能力は消えていない。
それは証明された。
だが、その上で気になるのがこの首輪だ。
まさか一度木っ端微塵にされた身体にも不随してくるとは思わなかった。
この首輪が爆発したとしたら。
亜人すら、殺しうることが可能なのかもしれない。


「…さっさと外したいところだな」


全くもってツイていない。
佐藤なんて言う怪物中の怪物のような男との戦いが終わった矢先にこれだ。
決闘王の称号なんて興味はないし、さっさと家に帰してほしい。
だが、圭に優勝して帰ろうなんて言う気はサラサラなかった。


「殺し合いに優勝してもあのハ・デスとかいう奴が素直に約束を守るとは思えない。
それに、守ったとしてもまた殺し合いに呼ばれない保証は何処にもない…よし」


冷静に、沈着に。
合理的思考で、殺し合いを良しとしない論理を積み上げていく。
それこそが、永井圭という少年の最大の武器だった。


「行くぞ」


【永井圭@亜人】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:会場からの脱出、もしくは打破。
1:他の参加者を探す。
2:亜人の能力が生きてるのは、ちょっと安心。
3:自分を殺しうるかもしれない首輪を警戒。さっさと外したい。
※原作終了後から参戦です


908 : ◆8ZQJ7Vjc3I :2022/06/18(土) 22:59:11 Do0bZakE0
投下終了です


909 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:50:58 kIrTw4Ik0
投下します


910 : GANG☆STAR ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:51:44 kIrTw4Ik0

「ほっほっほ、つまりあれは全部ソリッドヴィジョンシステムじゃよ」
「ソリ……なんやて?」
「全部造り物の映像ってことじゃよ」
「はぁ?」

 一人の老人と女子高生がいる。

 老人の名は『武藤双六』。
 若い頃は凄腕のギャンブラーであり、全てに打ち勝って来た伝説を持つゲームマスター。
 今は童実野町で小さなゲーム屋を営んでいる老人である。
 現在は精神的にすごく参っていた。
 なんせ孫の友人が目の前で孫の友人の部下に爆殺されたのだから。
 そして、実体化した冥王ハ・デス。

 だが、こんなことはありえない。
 きっとこれは海馬コーポレーションの何かの余興なのだろう。
 ここに孫である遊戯と自分がいるのもそういうことなのであろうとなんとなく悟った。

 なら、ゲーマーとしての血が騒いだ。
 ここは年長者として若者を導いていこう。
 
 そして、最初に出会ったのがこの女子高生『花柳香子』である。 
 香子は当初双六のことをものすごく警戒していた。
 この決闘(デュエル)の場において彼女はデュエルモンスターズのことを知らなかった。
 双六は少々おかしいとは思ったが、香子が全寮制の厳しい学校の生徒であることを考えたら知らないのも無理はないと思った。

「ほなら、最初に名前を呼ばれたあの二人は双六はんの知り合いなんやね」
「遊戯はワシの孫じゃ、で……本田君は遊戯の友達じゃよ」
「ほーん、で、あの冥王やったけ?」
「冥王ハ・デス、効果モンスターじゃな、確か闇属性の悪魔族で攻撃力2450守備力1600の」
「なんて、何? 闇属性の悪魔族……?」
「きっとソリッドヴィジョンシステムで実体化したモンスターじゃよ」
「百歩譲って、そのソリッドヴィジョンシステム? でモンスターが実体化したことはええわ。
 なんでウチらがこんな場に呼ばれなあかんねん」
「きっとイベントの余興じゃよ、海馬コーポレーションの」
「海馬コーポレーション? なんやそれ?」

 海馬コーポレーションを知らない。
 これは流石に双六もおかしいとは思った。
 あれだけの大企業を知らないとなれば話は変わってくる。
 
 そのことについて双六が香子に問い詰めてみようとした時であった。


「おい、俺とギガントバトルで勝負しろ!!!」


 ◆  ◆  ◆


911 : GANG☆STAR ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:52:16 kIrTw4Ik0


 おっす、俺は面道つかさ!
 『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューターつかさ』の主人公だぜ!
 世界一のギガントシューター目指して、ギガントバトルしまくってる男だぜ!
 ギガントバトルは相手が勝ったり俺が負けたりして毎日ハラハラドキドキだぜ!
 そんな俺の活躍は各種DVDとか配信とかで確認してくれると助かるぜ!
 そんな俺は今、『決闘(デュエル)』? 恐らくは新手のギガントバトルの大会に呼ばれちまったぜ!
 最初の場所の説明は正直難しい事を言ってたから寝てて、半分も聞いてなかったぜ!
 でも、バトルロイヤル形式のギガントバトルの大会ってことは辛うじてわかったぜ!
 
 それだけ、わかれば十分だぜ!!


 どんな相手だろうとしてもギガントバトルだ!!


 さあ、勝負勝負!!


 ◆  ◆  ◆


「ギガントバトル……? 爺さん知っとるか?」
「はて? なんのことじゃ?」
「なんだ爺さんも姉ちゃんもギガントバトルも知らないのか!」

 突然の乱入者に困惑する二人。
 しかも、わけのわからんことを言って突っかかてきている。

「おいおい、アンタらそれでもこのギガントバトルの大会の出場者かよ!」
「ところで君は……一体?」
「俺は面道つかさ! 探偵さ!」
「探偵……?」
「まあ本当は世界一のギガントシューターを目指す小学生だ!」
「……つかさ君、つかぬ事を聞くが君のデイパックは?」

 二人が見てわかる通り、つかさはどうみても手ぶらである。
 この場において何も持っていないことはかなり危険だと思うが、つかさには関係なかった。

「必要ねぇからあそこに置いてきた、俺には父ちゃんの形見の『キングメンガー』さえあればな!」

 つかさが指差す方向にはぽつりとデイパックが放置されていた。
 アホなのだろうか? いや、アホやな、香子はそう思った。
 がさごそと自分の身体を触り何かを探すつかさ。
 だが……。

「…………ない」
「どうしたんじゃ?」 
「父ちゃんの形見のキングメンガーがない!」
「なんじゃと?」

 つかさのキングメンガーは没収されていた。
 ロワにおいて自分専用装備が支給されることは少なくはない。
 服を脱ぎ、パンツ一枚(ブリーフ)になったが、残念なことにキングメンガーは見つからない。


912 : GANG☆STAR ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:52:42 kIrTw4Ik0

「ちくしょう、こんなのアニメ第一話以来のピンチだ……それになんだか寒くなってきた……」
「なら服は着た方がええんとちゅいますか? あと支給品ならデイパックの中にあるんとちゃいます?」
「そうか! サンキュー姉ちゃん! ちょっと探してくるぜ!!」
(…………――――しょうもな)

 パンツ一枚(ブリーフ)でデイパックの方に駆け出していくつかさ。
 やっぱり、アホなのではないかと思う香子。
 しかし、双六は動じない。
 
(ほう、この状況で自分を貫ける精神力の強さは大したものじゃ……この少年、只者ではない!) 
 
 いや、双六も十分におかしかった。
 この場を何かの余興だと思い込んでいるので仕方ないのかもしれない。
 そんな中、つかさはとぼとぼと歩いて帰ってきた。
 
「ちくしょう、キングメンガーがなかったぜ……父ちゃんの形見だっていうのに磯野ぜってぇ許さねえぞ!」
「それは残念じゃったのう」
「代わりに別のカードが三枚しかなかったぜ……クッソこんなカードじゃギガントバトルが出来ねえぞ!」 

 つかさが手にしていたカードは三枚のカード。
 ・オベリスクの巨神兵
 ・オシリスの天空竜
 ・ラーの翼神竜
 つかさにとってはキングメンガー以下のカードである。
 だってギガントバトルが出来ないのであるのだから。
 彼にとって父親の形見であるキングメンガーは命よりも大切なものである。
 それくらい、つかさにとってキングメンガーは大事なのだ。
 ちなみにつかさの父親は今も生きています。

「大丈夫じゃよ」
「爺さん?」
「きっとそのカードたちが君を導いてくれるじゃろ!」
「カードが導くだって……?」
「そのカードが君に支給されたのも何かの運命じゃろ」
「爺さん……へっ、そうだな! こんなことでクヨクヨしてられねぇぜ!」
 
 まるで熱血主人公のような台詞を口にするつかさ。
 まるで先導者のようなことを言い出す双六。
 もう言葉はいらない。
 二人の決意は固かった。

 そして、香子は―――――。


「――――――ああ、ほんましょうもな」


 非常に冷めた口調で淡々と支給された銃の引き金を引いた。
 それぞれの頭部に二発ずつ撃ち込んだ。


「なんやぁ……結構当たるやないか……」


 ◆  ◆  ◆


913 : GANG☆STAR ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:53:04 kIrTw4Ik0


 花柳香子は『舞台少女』である。
 舞台で一番輝く場所『ポジション・ゼロ』。
 その場所を目指し、少女たちは日々研磨し、己を磨く。
 
 この『決闘』という場はあの『オーディション』によく似ている。
 『歌って、踊って、奪い合う』、あのオーディションに。

 これは彼女にとってチャンスだった。 
 一年前のオーディションで逃した『トップスタァ』の座。
 例え今後『千華流』の跡取りとして成功してもあの日、あの場所への執着は消えない。
  
 だが、この場では舞台少女以外の人の命が掛かっている。
 天堂真矢や西条クロディーヌ、星見純那、露崎まひるならばこんなことを認めず抗っただろう。
 大場ななならば『みんなのため』と言って奪う側に回っていただろう。
 愛城華恋と神楽ひかりなら……と、考えたが、あの二人は正直わからない。

 そして、最後に石動双葉なら――――――こんな馬鹿なこと考えている自分を止めようとしていただろう。

 だが、もう遅い。
 もう奪った後、戻れない一本道を先に進むしかないのだ。
 
 さて、ここからの方針だが。
 一先ずはここからはこのように派手には動かない。
 弱者のフリして強そうなこの殺し合いに反抗的な参加者に自身を守ってもらう。 
 そして機が来れば、動く。
 
 自分でも思うチャチな脚本(シナリオ)だが、自身の演技力とアドリブ力と自分の可愛さがあればなんとかなる、
 
「ウチは止まらんよ、決めたんよ。
 ……最後まで付き合ってもらうで――――ウチが主役のこの『舞台』を」


【武藤双六@遊☆戯☆王 死亡】
【面道つかさ@超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューターつかさ 死亡】

【花柳香子@少女☆歌劇 レヴュースタァライト】
[状態]:健康
[装備]:コルト・パイソン@現実(残弾2/6)
[道具]:基本支給品×3、コルト・パイソンの予備弾@現実(残り20/20)、
     三幻神のカードセット@遊☆戯☆王、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:最後まで生き残り、優勝する。
1:今は弱者のフリして守ってくれそうな人を探す。
2:仕留められそうなら参加者なら確実に仕留める。
[備考]
※参戦時期は劇場版開膜直後
 
『支給品紹介』
コルト・パイソン&予備弾@現実
コルト社が開発した回転式拳銃とその予備弾。

三幻神のカードセット@遊☆戯☆王
オベリスクの巨神兵、オシリスの天空竜、ラーの翼神竜のセット。
この三枚しかなかったのでデッキは組めないし、ギガントバトルも出来ない。


914 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/19(日) 00:53:28 kIrTw4Ik0
投下終了です。


915 : ◆s5tC4j7VZY :2022/06/19(日) 06:02:18 8y//n8rg0
投下します。


916 : 立ち上がれ技術者 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/19(日) 06:03:09 8y//n8rg0
技術者ーーーーー科学上の専門的な技術をもち、それを役立たせることを職業とする人。
デジタル大辞泉より引用。

ここは、NPCが跋扈する決闘という名の殺し合いの大陸。
そこで出会った一組の男女。
彼らは会話を交わした結果、一つの結論へと達する。

「なるほど……どうやらフリージア君と私は別世界の住人ということになるな」
「ええ……ワタシも同意見デス」

それは、互いに別世界の住人だという結論だ。

男の名はテム・レイ。
後に一年戦争と呼ばれた戦争のさなか、地球連邦によるV作戦においてガンダムを開発した技術士官。

少女の名はフリージア・ゴッドスピード。
叢雲学園技巧科に所属する一年生。
”刃道”に興味津々な海外の天才少女。

「いや、フリージア君。君のような年齢で既にここまでの技術者としての腕前を持っていること、素直に称賛に値するよ」
テム・レイは一年戦争時、不運な事故によって酸素欠乏症に陥っていたが、奇跡が起きたのか回復することができた。

だが、回復した直後、テム・レイはこの醜悪なる催しに参加させられた。
しかし、最初に出会った参加者はテム・レイにとって僥倖だった。
現地で出会った少女フリージアとの会話から優れた技術者の雰囲気を察したテム・レイは試しにMSに関する技術や数式を見せた。
テム・レイの直感は正しかった。自分の理論を少女は理解したのだ。

「何をいってるのデスか!テム博士のこのMS(モビルスーツ)を始めとした技術は人類の科学技術を飛躍させます。正に天才デス!」
片や、フリージアも興奮を抑えきれない。
MSという自分の世界には存在しない技術を知ったためだ。

「この殺し合いは、科学の発展に活かせる技術を理解できない無知で傲慢な者たちが起こした無意味な殺し合いだ」

テム・レイは憤っている。
別世界の住人を一堂に集める技術。
これだけの技術を有しているのに科学の発展に使うのではなく、殺し合いという下らない目的に使っていることに。

「そして、あの少年の享受すべき未来を惨酷な方法で閉ざした罪は重い!」
テム・レイがV作戦に熱心だったのは、若者が戦争に駆り出されることがなくなるためという思いが根底にあるためだ。

故に、未来ある若者であった少年を見世物のように殺した磯野並びにハ・デスをテム・レイは断じて許すことはできない。

「だからこそ、有能なる科学者である我々が立ち上がらなくてはいけない。人類のさらなる進化と輝かしき進歩を勝ち取るために君の英知が必要なのだ」
テム・レイの熱い言葉にフリージアは首を縦に振る。

テム・レイはフリージアが自分の理念に賛同してくれたことに口元を弛ませる。

「それでは、行こうかフリージア君。我々、技術者の力であの傲慢な者どもの鼻っ柱をへし折るぞ!」
「ハイ。テム博士!ワタシやるよ!あの男は許せないッ!ムカファイアーデス!絶対にあの醜悪な顔をひっぱたきたいからね!」

テム・レイ率いる科学者たちの戦いが始まろうとしていた。

【テム・レイ@ギレンの野望アクシズの脅威V】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:あの傲慢な者どもの鼻っ柱をへし折る
1:フリージアと行動を共にする
2:首輪の回収・分析
[備考]
※参戦時期はテム・レイ編op直前より
※様々な異世界の住人が集められていることを理解しました。

【フリージア・ゴッドスピード@絆きらめく恋いろは】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:磯野並びにハ・デスの頬をひっぱたく
1:テム博士と行動を共にする
2;首輪の回収・分析
[備考]
※参戦時期はフリージアルートED後より
※様々な異世界の住人が集められていることを理解しました。


917 : 立ち上がれ技術者 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/19(日) 06:03:23 8y//n8rg0
投下終了します。


918 : 政治的な意図は全く存在しません ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 07:20:03 YkdHF//U0
投下します


919 : 政治的な意図は全く存在しません ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 07:20:15 YkdHF//U0
 「何だか良く分からんが、此処は娑婆か?」

 周囲を見回して呟いたのは、作業着姿の男。その足元には頭部を粉砕された複数のヤミーが転がっていた。
 男の手には所々に血の様な染みのついた一振りの鉄パイプ。男はこの鉄パイプを振るい、全ての屑ヤミー達の頭部を砕いてのけたのだ

 「これは阿倍野の差金か?奴め、オレをここで葬るつもりか」

 男の名は菅野直哉。元民衆党副代表にして、元国会議員。現在は公職選挙法違反及び治安維持法違反で、巣鴨拘置所─────通称巣鴨プリズンに収監され、法の沙汰を待つ身である。

 「まあ良い。あのハ・デスとやらが阿倍野の手下であろうがなかろうが」

 ハ・デスとやらが阿倍野の配下なら、先ずは阿倍野の前に血祭りにする。阿倍野と関係無いのなら、阿倍野をオレの前に連れて来させて、オレの手で阿倍野を殺す。
 鋭い音を立てて鉄パイプを一振りのすると、菅野直哉は適当な方向へと歩き出した。




【菅野直哉@テコンダー朴】
[状態]:健康
[装備]: 鉄パイプ@ニーアオートマタLV4 不明支給品0〜2
[道具]:無し
[思考]
基本:優勝して阿倍野を殺す
1:
2:
[備考]
阿倍野の関与を疑っています。

支給品
鉄パイプ@ニーアオートマタ

何の変哲もないただの鉄パイプ。
血が飛び散ったような汚れが何箇所かについている。
LV4まで解放されている為、クリティカル効果と高いスタン性能を併せ持つ壊れ武器である。
学生闘争時代に七十二名の警官を殺害し、手錠をつけたままでもゲバ棒があれば警官三名を瞬殺できる、菅野直哉の熟練の鉄パイプ捌きと合わさり、大層危険な代物と化している。


920 : 政治的な意図は全く存在しません ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 07:20:33 YkdHF//U0
投下を終了します


921 : ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 07:27:15 YkdHF//U0
>>919

NPC紹介を忘れていたので追記します

屑ヤミー@仮面ライダーOOO

半分に割ったセルメダルから誕生する、ヤミーよりさらに下の屑の様なヤミー。
特殊能力も無く、動きも鈍いが、耐久力が異様に高い。


922 : ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 13:58:22 yCmQTqFc0
投下します


923 : 果たされぬReset ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 13:59:52 yCmQTqFc0


「....残念だったなー」

一人、少女が佇んでいた。
少女――百武照にとっては、この殺し合いなど、何の意味も無いかに思えた。


何故なら照は、母校の屋上から飛び降りようとしている所だったからだ。

照は殺し合いの場の中で、自身の半生を振り返る。
生まれてからずっと、照の母親の心には悪魔が住み着いていた。
照は母親が悲しまないようにずっと笑顔で過ごさなければならなかった。

なら、苦しくなるなら、どうして私を産んだの?――照の心には、ずっとその問いが浮かんでいた。

そして、段々と照の心にも悪魔が表れ始めた。
それが何よりも、母(あれ)と同じ血が流れている証拠だと思った。

「なんで、私、あの人の代わりになれなかったんだろ」

人間に生まれてくる意味なんてない。人は死ぬために生まれてくる。百武照はそう信じていた。

だが、今日、目の前で人が死ぬのを見るのは初めてだった。

あぁ、脳漿ってあんな色なんだなって、思った。


「.....はは、あはははははは」

照は、もう限界だった。
だから、支給されていたデイバッグも置き去りにして、自分を殺してくれる存在を、探していた。


――照が探していた存在は、意外とすぐ見つけてくれた。

狩人となるその存在はミノタウルス。
鎧を着た人型の牛。絵に描いたような、如何にも狂暴そうなモンスターだった。

ミノタウルスは照を見つけるやいなや、猪突のように向かっていき、照の躰を斧で引き裂こうと向かってきた。


もう、いいかな――仕方ないよね。

武器である斧を振り上げ、照の躰は背骨ごと真っ二つになるはずだった。



『挑発!』

斧を振りかざした、その手が止まる。

ミノタウルスが見つめる先、そこには、ピンク色のずんぐりした――ゲームキャラのような2頭身キャラクターがいた。

「勝負だ。天才ゲーマーMの実力を見せてやる」


924 : 果たされぬReset ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 14:01:47 yCmQTqFc0


「―――なんで」
訪れるはずだった死が来ず、照は悲観に暮れる。

ミノタウルスは、ターゲットを2頭身キャラクターに変え向かっていった。

挑発。それはキャラクター....「エグゼイド」によってランダムに配置されたアイテムの一つ。
モンスターであるミノタウルスは、一直線にエグゼイドに向かっていく。

そして、エグゼイドは専用武器――ガシャコンブレイカーをもって振りかぶる素振りを見せ.....逃げた。一目散に。
「ほら、こっちこっち!」
走力は圧倒的にミノタウルスの方が上だった。数瞬で間を詰められるが、エグゼイドは跳躍し、全身を球状にしてローリングを行い、チョコブロックの端を壁キックで蹴っていき滞空していく。
「ほら、来いよ、お前はたぶん、戦略ゲームのキャラだ、上のベクトルには飛べ――」

永夢はミノタウルスの能力―――説明を、見誤っていた。
ミノタウルスの説明には、こうある。「オノひと振りで何でもなぎ倒す」と。

レベル差が違いすぎた。
ミノタウルスの一振りは、前方にあったチョコブロック群ごと、エグゼイドを切り裂いた。
チョコブロック群が避け、それぞれのエナジーアイテムが露わになる。

レベル1vs攻撃力1700。あの斬撃で、ゲームオーバーになってもおかしくはなかった。

エグゼイドのHP――ライダーゲージは残り1割。


倒れた先で、エグゼイドはゲーマドライバーのレバーを開いた。
「大変身!」「レベルアップ!」

レベル1のボディがパージされ、音声とともにエグゼイド・アクションゲーマーレベル2が出現した。

「ソウルライクも.....任せとけ」
そう言い放ち、エグゼイドはガシャコンブレイカーを振り被り、ミノタウルスを待つ。

そしてガシャットをキメワザスロットホルダーに入れ、ボタンを押した。
「キメワザ!」

ミノタウルスは数秒で間合いを詰め、エグゼイドに向かって斧を縦一列に振りかざした。
エグゼイドは、それを横にローリングして避け、もう一度ホルダーのボタンを押した。
「マイティクリティカルスラッシュ!」

ガシャコンブレイカーのハンマーモードの連打が、ミノタウルスを圧迫し、ついにガードブレイクに成功した。

だが、1000の守備力を持つミノタウルスにとっては、全く致命傷とはなりえず、多少のHITエフェクトと共にノックバックさせるに至ったのみだった。

「オラァ!」
しかし。それで十分だった。ハンマーで叩いた思いっきりの反動を受けて、エグゼイドは後ろに下がる。

『混乱!』
「.....!?」

ミノタウルスは後ろに突き出される形となり、その先にあった混乱のエナジーアイテムをゲットした。
すなわち、混乱しながら斧を滅茶苦茶に振り回すだけの暴走機関車と化したのだ。

『ジャンプ強化!』

「おい、逃げるぞ。水と食料、持ってろ」

「えっ、きゃ!?」
エナジーアイテムをゲットしたエグゼイドは落としていた2つのデイバッグを回収してから一部始終を見ていた照に駆け寄り、お姫様抱っこの形で抱え、撤退する体制を取った。
バッグを渡された照を抱えたまま、跳躍しこの場を脱していく。



エグゼイドとミノタウルスにレベル差以外の差があるとするなら、それはゲームをプレイしてきた経験値の差だった。

ゲーム……特にソウルライクでは、勝てない相手には、撤退も必要だ。
撤退し、探索し、再び挑む。エグゼイドは、そう判断した。


「...ここまで来れば大丈夫だろ」

ジャンプ強化の効果が切れるまで跳躍し続け、一旦安全を確保したと感じたエグゼイドはドライバーからガシャットを抜く。
バグスターの粒子が解けていき、Tシャツの上に白衣を着た青年、宝生永夢がそこにはいた。

「……危ない所でしたね。怪我はないですか?」


925 : 果たされぬReset ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 14:02:53 yCmQTqFc0


「……………の」

「えっ?」

真っ黒な目で何やらぶつぶつ呟く照に対して、永夢は聞き返した。

「あなたは―――どうして、私を助けたの? もう少しで、楽になれたのに」

途端、永夢の顔が曇る。
「命を助けるのに……理由が必要ですか?」
「わかんないな。命って、貴方みたいに自分を投げ出すほどに大切かな....?ならどうして、さっき首輪が爆発して死んだあの人を助けなかったの?」
「それは……」
「助ければよかったと思うよ。さっきみたいに、命懸けで、自分が死ぬことになっても」

「……」
永夢は黙り込くってしまった。

「私は別に、助けられたくも無いし、人を助けようとも思わないんだ。もう、次は邪魔しないでほしいかな。」
照はふらふらとどこかに行こうとしたが、永夢は照の肩をつかんだ。

「駄目です」

「……なんで?」

「僕がドクターだからです。死のうとしている人を、見過ごすことはできません」


「...そう、お医者さんだから、かぁ....難しいよね」

照は、あのね、と告げた。

「私にとっては、人生は死ぬための暇つぶしなんだ。ただ死ぬために、明日死んでも後悔しないように生きたいな〜って私は思ってた。
 昨日まではね。でも、もう死んでいいっていうことじゃないかな....?こういう状況は」


「……」

「でも、他の人が脳漿をぶちまけて死んでいくのを見るのはちょっと、辛かったかな」

「…はい。……僕も、そうだと思います。動けなかった理由には、なりませんけど。」

「だからもう、あなたに手間と迷惑を掛けたくないし、死んでいくのを見られたくないかな〜なんて思ってる。いいからもう、いなくなってほしいかな」
照は終始、張り付いたような笑顔のままだった。

「....そうですか」

永夢は空しく笑った。

永夢は、医者として、助けた人や患者が笑顔でなければ意味がないと思っていた。

目の前の少女は、確かに笑顔を浮かべている。

でも、何故か。目の前の少女は、この人はちっとも笑ってない気がする。

永夢は思った。

この人の笑顔は、いつも見てきている気がするんだ。

……もしぼ■がこのせ■■からいなくなったとしても、だ■にもめいわくかからないし

……ぼ■のじんせいもリ■ットしようって



「……分かりました」

永夢はチベットスナギツネのような、虚無の表情をしてそう答えた。


926 : 果たされぬReset ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 14:04:34 yCmQTqFc0


「……理解が早くて助かるよ〜、じゃあ、ドクター先生は頑張って人を助けて生き残って」
「僕がいなくなる代わりに、条件があります。...これ、あなたのものですよね」
「…そうだけど、どうかしたのかな」
「一度放棄していた、あなたの支給品を確認してください」
そう言って、永夢は照に、回収したデイバッグを押し付ける。

元々、そのデイバッグを拾ったことで永夢は持ち主である照を探していた。
「……なんでかな?」
「僕はマイティアクションXとゲーマドライバーが無いと戦えません。でも支給されていた。
 このバッグには、貴方にとって大切だと思ったものが入っていたからです」

「……?」


照がデイバッグを開けると、そこには、「百武照専用」と書かれていたCD-ROMがあった。


パッケージには、帽子を被った主人公の青年とヒロインの少女の絵。
帯には、SNS部と書かれていた。
「っ……!」
眼を背けたい思いで、照は付属の説明書を読む。
「並行世界で手にした力を引き出す。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能」と書かれていた。

「これ……たまたまちゃんの.....ゲームだ」

「………」

「私が卒業した後....後輩ちゃん達が作った、ゲームなんだ……私が皆を巻き込んで……でも、あの子たちは何度も、ゲームを完成させて、私なんかを信じてくれて……」



照は、様々な感情がフラッシュバックしたかのように、塞ぎこんでしまった。
永い沈黙の後、永夢は口を開けた。
「僕は、昔ゲームを作ってもらうことを夢見てました。」
「え…?」
「会社に、ゲームのアイデアを送って、それをプレイしたかった。でも無理だったんです。なんで無理だったのかも分からなくて.....それが僕の運命を変えてしまった」

永夢は、そう言って照の持つゲームCDを見つめる。
そう。僕もすべては、一枚のCD-ROMから始まった。

「僕もあなたも、いつ命を落とすかは分かりません。だから……もし、殺されても、後悔しないようにすることはできませんか?」
「……」

意を決して、永夢はこう続けた。

「ゲームはゲームオーバーでも、バッドエンドでもやり直せる。
でも、現実でのライフは一つです。それなら――殺し合いという場において、悔いのないように生きてみるのも間違っていないと、思います。」

たとえその身が、ゲームオーバーに向かっていったとしても。
そう言って、永夢はこう続けた。
「…僕は、死ぬのは怖いけど....死ぬことになっても、人を守りたい。そして、あなたの心からの笑顔を取り戻したい」

「....分かったようなこと、言わないでほしいかな」
少しの間の後、照はそう言った。
「すみません。……ただ、僕は」

「もういいよ。ただ、一つ約束してほしいなって思ってる」

照はそう言って、さらに続けた。
「私が死ぬより酷い目に逢ったとき、その時は、私を殺してくれる?」


927 : 果たされぬReset ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 14:05:27 yCmQTqFc0

「……」永夢からの回答はない。
「すぐに、答えは出さなくて大丈夫ですよー、それまでは、一緒に行動しようって思ってるし」

「……はい」
永夢は差し出された照の手を見つめ、考える。

バグスターとなった人間が散る様は何度も見てきた。
だが、助かる見込みのなくなった時、生身の人間を、医者である自分は殺せるのだろうか。

…今は答えは出せない。そう思ったが、言えないまま永夢は照の手を取った。

「ごめんね」そう言って、照はこう続けた。

私はね、できれば生まれてきたくなんかなかった。
でも、殺し合いの会場で、こんな形で、罰を与えられたら、それから解放されるまで生きるしかないのかもね。

もの凄い重い罰(のろい)だなぁ、と言いながら、照はCD-ROMのパッケージを握りしめた。



「私は百武照。テルさんって呼んでくれていいですよ〜」

「はい。僕は宝生永夢です。」




【宝生永夢@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:疲労(大)、照に対する不安
[装備]:マイティアクションXガシャット、ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ひとまずは、殺し合いに乗らない協力者を探す。
2:テルさんが心配。
3:さっきのモンスターやハ・デスもバグスターの可能性があるのでは?
[備考]
参戦時系列はTV本編終了後〜マイティノベルXまでの何処かです。

【百武照@ステラのまほう】
[状態]:強い希死念慮、疲労(大)
[装備]:
[道具]:SNS部のゲームCD@きららファンタジア、基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考:状況]
基本方針:いつ、殺されても後悔しない生き方をしたい。
1:しばらくはエムせんせいと行動する。
2:変身かぁ...どうなるんだろう
[備考]
参戦時系列は原作10巻、星ノ辻高校の屋上から飛び降りる直前です


『お前、この世界において魔王の役目を受け入れて、魔王として倒されちゃおう、それでハッピーエンドなんて考えにも至っておったな?』
『そんな奴と融合して、自滅願望に付き合わされる気なんて、吾輩にはないぞ』

『いっつもこうだ、最後の最後に運が味方しない』
『ま、あと数百年ぐらい頑張ればこの封印も壊すことができるだろう』
『その時は照よ、もう一度会って、今度は一緒に世界をデストロイしような』



百武照のデイバッグに入っている支給品。それはSNS部の作品であり、平行世界の力を引き出すもの。その説明に噓偽りはない。
そこには、平行世界でかつて照と融合した魔王が、封印されていた。



『支給品紹介』
SNS部のゲームCD@きららファンタジア
百武照に支給。並行世界――きららファンタジアで照と融合した魔王の力が封印されている。
照の意思によって魔王との融合、すなわち変身が可能となる。
魔王との融合中はきららファンタジアの『まほうつかい』の照の衣装に服装が変わる。



『NPC紹介』
【ミノタウルス@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/地属性/獣戦士族/攻 1700/守 1000
すごい力を持つウシの怪物。オノひと振りで何でもなぎ倒す。


928 : ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 14:06:19 yCmQTqFc0
投下を終了します


929 : ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 16:44:52 yCmQTqFc0
>>927の永夢の状態票を以下に修正します

【宝生永夢@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:疲労(大)、照に対する不安
[装備]:マイティアクションXガシャット、ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャコンブレイカー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ひとまずは、殺し合いに乗らない協力者を探す。
2:テルさんが心配。
3:さっきのモンスターやハ・デスもバグスターの可能性があるのでは?
[備考]
参戦時系列はTV本編終了後〜マイティノベルXまでの何処かです。


930 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/19(日) 17:43:13 by3druPg0
投下します
遊戯王OCGのカードについて独自の解釈を含んでおります


931 : 悪魔のような、天使の哭き顔 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/19(日) 17:43:58 by3druPg0
夢もなく、希望も失せたこの殺し合いの地において
天使のように純朴で澄み切った心を持つ少年がいた……

だが、彼の…は……

-----------------
ここはこの殺し合いの会場の中にある、古びた洋館……

そこにはうずくまりながら大粒の涙を流し続ける黒衣の少年と、彼を慰めようとする四人のシスターの姿があった。

『……そんなに泣かないでほしいわ、私たちも悲しくなってくるから』
『分かります、貴方はとっても優しい人。誰かのために涙を流せる、優しい人』
『だから、それ以上泣かないで』
『貴方が持ちきれない程の哀しみを、少しでも背負いたいから』

その四人のシスターたちは皆、その少年に支給されたデッキ、その中にあるカードに宿った存在だった。

彼女たちが彼にここまで献身的なのには訳があった。

実を言うと彼女たちは、自分たちのカードが入ったデッキがデイバッグから取り出された時に彼の姿を見て、その瞬間に敵意を向けてしまったことがあった。

しかし彼女たちはすぐにそれが間違いであることに気づいたのだ。何故ならば……

(この方は泣いていた……誰かのために、大粒の涙を流していた……)

彼の目には、数え切れないほどの涙があふれていたからだった。

(他人のために涙を流せる者が、悪魔であるはずがありません……私たちは、見た目だけで彼を悪魔と断じてしまいました……!)

そしてそれを見た瞬間、彼女たちは一様に『彼が悪魔ではない』という事実、そして『容姿だけで彼を悪魔と断じた自分たちの狭量さ』に気づいたからだった……。

(この人は、とても優しい人……ならば私たちは、それに寄り添っていく)

それ故に彼女たちは、優しい心を持つ彼の力になろうと考えた。

(…だからこそ……彼が勘違いされないように私たちが一緒にいなきゃ……!)

そのため彼女たちは、いろいろと誤解されそうな彼を支えるべく全力を尽くすつもりだった。

「……エリスさん、イレーヌさん、ソフィアちゃん、ステラちゃん、ありがとうございます」
「……僕はもう、大丈夫だから」

そうこうしているとその少年は涙をぬぐいながら立ち上がり、そして彼女たちに向き直ってそう言った。

泣きはらして真っ赤に充血した目と腫れあがったまぶた、そして顔にある古傷を浮き上がらせながら……


932 : 悪魔のような、天使の哭き顔 ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/19(日) 17:44:41 by3druPg0
-----------------

夢もなく、希望も失せたこの殺し合いの地において
天使のように純朴で澄み切った心を持つ少年がいた……

だが、彼の外見は…
極端なまでに黒目が小さく…
生来の色の白さは年中ある目の下の“くま”とともなって麻薬中毒患者のようであり…
眉も非常に薄く、寝ぐせのひどい髪は整髪料でびっしりとかためられていた……

つまり、悪魔と見まごうほどに、とてつもなく怖い顔をしていたのだった……


【北野誠一郎@エンジェル伝説】
[状態]:精神的ショック(大)、殺し合いを止めたいという意思(特大)
[装備]:デュエルディスクとデッキ(エクソシスター)@遊戯王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:こんな悲しいこと、絶対に止めなちゃ……!
2:さっきの人(武藤遊戯)を探しに行く。
3:良子ちゃんや武久くんたちも、巻き込まれていないと良いんだけど……。
[備考]
参戦時期は原作終了後。


『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(エクソシスター)@遊戯王】
北野誠一郎に支給。『エクソシスター』カテゴリーのカードを中心にした魔法使い族デッキで、
切り札は《エクソシスター・ミカエリス》及び《エクソシスターズ・マニフィカ》。
また『エクソシスター』カテゴリーのモンスターカードについてはエクシーズ含め全種類入っている。
(詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)


933 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/19(日) 17:45:04 by3druPg0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


934 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:46:49 s9ML9kI.0
投下します。
以前、コンペロワや辺獄ロワ等に投下した作品に一部加筆を行った作品になります。


935 : 涼宮ハルヒの歓喜、モグラ獣人の苦悩、ロックジョーの??? ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:47:35 s9ML9kI.0
『決闘』会場の片隅に位置するとある草原地帯。
突然、そこの地面の一部が大きく盛り上がったかと思うと……

「チュチューン!」

……人間の大人程の大きさがある巨大なモグラが地面から顔を出したのだった。

体色は明るいオレンジ。
鼻先は花のようになっており、
肩の部分には鉤爪状の部位が、
スコップ状の手には人間のような指があるなど、
明らかに普通のモグラではなかった。

彼の名は、モグラ獣人。
ただの巨大モグラではなく、動植物に人間並みの知能を移植する事によって生み出される『獣人』というカテゴリーに属する怪人である。
彼はかつて、世界征服を企む秘密結社の一つ『ゲドン』に所属していたのだが………
任務に失敗して処刑されかかったところをゲドンと敵対する『仮面ライダーアマゾン』によって助けられた事で、アマゾンの『トモダチ』となったのである。

「はぁ〜………よっこいせ、と」

モグラ獣人は地面から這い出ると、頭上の空で静かに輝く満月を眺めだした。

「……なんで俺、生きてんだろうなぁ?」

月を眺めながら、モグラ獣人はふと先程から頭によぎる疑問をポツリと呟いた。

記憶が正しければ、自分はゲドン壊滅後に活動を開始した新たな組織『ガランダー帝国』のキノコ獣人による殺人カビで死んだ筈なのだ。
だというのに、五体満足の状態で『冥界の魔王』なる者が主催する『決闘』という名の『殺し合い』会場にいる。
それがモグラ獣人には不思議でならなかった。

死んだと思ったのは自分の気のせいで、アマゾンが殺人カビの解毒剤を飲ませてくれたのか?
いや、あの体から『命』が抜け出していくような感覚は、絶対に気のせいなんかではない。
ならば何故、自分は無事なのか?
そして何故、『決闘』というイベントに参加させられているのか?

ひょっとしたら、ここは悪いことをした人間が死んだ後に行くという『地獄』と呼ばれる場所かもしれない。
自分はアマゾンの『トモダチ』だったけど、ゲドンの一員として散々悪いことをしてきたから『地獄』に落とされたのかも……。

「う〜ん……」

夜空に輝く満月を眺めながらモグラ獣人は考えを巡らせるが、情報が少ない現状では答えなど思い付くはずも無く……

「………はぁ〜」

モグラ獣人は深いため息を漏らしたのだった。
その時……

「も……モグラ怪獣!?」
「……チュチューン?」

人間の声が聞こえた。
若い女の声だ。

振り向くと、いつの間にかモグラ獣人の背後に頭に黄色いカチューシャを装着し、水色を基調にしたセーラー服を着た高校生くらいの少女が佇んでいた。
その少女はモグラ獣人を見ながら驚いていると共に、好奇心旺盛な幼い子供のように目をキラキラと輝かせていた。

「えっ!?嘘!?本物!?本物の怪獣!?」

少女はいかにも興奮している様子でモグラ獣人に抱きつき、モグラ獣人の体をあちこち触り始めたのだ。

「チュチューン!?」
「凄い!着ぐるみじゃないわ!!本当に生きてる!!」
「チュチューン!!」
「肌は結構すべすべしてるわね……鼻が花の形って洒落か何か?」
「チュチューン!お、おい!止めてくれよ〜!!」
「……喋ったぁぁぁ!!?」

その後、少女が落ち着くまでの30分間………モグラ獣人は少女に身体中をまさぐられたのだった。


936 : 涼宮ハルヒの歓喜、モグラ獣人の苦悩、ロックジョーの??? ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:47:57 s9ML9kI.0
☆☆☆

「チュチューン………」

少女に身体中を触られて、モグラ獣人はぐったりとしていたが、当の少女の方は何故だか元気いっぱいになっていた。

「いやぁ〜ゴメンね!まさかこんな所で本物の怪獣に会えるなんて思ってなくて、つい興奮しちゃって………あ、私はSOS団団長の涼宮ハルヒよ!アンタはなんて言うの?」

少女……ハルヒは全く悪びれる様子を見せずに自己紹介すると、モグラ獣人にも自己紹介を促した。

「……俺はモグラ獣人だ。というか、俺は『怪獣』じゃなくて『獣人』なんだけど……?」
「『怪獣』も『獣人』も大して変わらないわよ。要するに、体の大きさが『ビル並み』か『人間並み』かの違いじゃない。それより、聞きたい事があるんだけど………」

モグラ獣人の意見を一蹴りして、ハルヒは強引に情報交換を始めた。

ハルヒの話す『SOS団』なるグループとその仲間達との他愛ない日々の話を聞きながら、モグラ獣人は自然に『楽しそうだな……』と思った。
次に、モグラ獣人がアマゾンライダーやゲドン、そしてガランダー帝国の話をすると、ハルヒは『世界征服を企む悪の組織にそれと戦うヒーロー!?まるでテレビの特撮番組みたいじゃない!!』と、幼子のように目を輝かせながら興奮していた。
しかし、モグラ獣人が自身の生死やそれに関するこの場での憶測を語ると……流石のハルヒも神妙な表情を浮かべたのだった。

「えっと……もしかして、不味い事聞いちゃったかしら?」
「……いや、大丈夫だよ。本当のところは俺にもよくわからないから」

『自分は地獄に落ちたのかもしれない』と語るモグラ獣人の姿はなんだかとても悲しそうで……ハルヒは胸が締め付けられるような感覚があった。

「あぁもう……そんな辛気臭い顔しないの!断言しても良いけど、ここは『地獄』でも『死後の世界』なんかでもないわ!」
「……なんでそう言い切れるんだ?」
「だって私、まだ死んでないし」

あっけらかんと告げるハルヒにモグラ獣人は呆れそうになるが、ハルヒはモグラ獣人と目と目を合わせて「……それに」と続けた。

「……アンタはアマゾンって人の仲間……『トモダチ』だったんでしょ?昔はどうだったか知らないけど、正義のヒーローの『トモダチ』が死んだ後に地獄に落ちる訳ないじゃない!そんなの、閻魔様やあのハ・デスって奴が許しても、この私が許さないわ!!正義のヒーローが死んだ後に行くべきなのは、『天国』のはずだもの!!!」
「…………」

何の根拠も、確証も無い言葉。
だがモグラ獣人には、何よりの救いの言葉だった。
そうだ。
自分は悪者から世界を守るアマゾンライダーの『トモダチ』だ。
死んだ後に行くべきなのは『地獄』ではなく、『天国』の筈だ。
そう思うと……モグラ獣人の青い目からは自然と涙が流れ出していた。

「……ありがとう。お前、本当は良い奴なんだな」
「……『本当は』は余計でしょ!」

モグラ獣人の言葉にハルヒは頬を膨らませてそっぽを向くが、不思議と悪い気はしなかった。

「ほら!正義のヒーローの『トモダチ』が、そんなに簡単に泣いたりしないの!」
「チュチューン………」

ハルヒはスカートのポケットからハンカチを取り出すと、モグラ獣人の目から流れ出る涙を拭き取る。
その姿はまるで、幼子を慰める母親のようだった。

「……ちょっと!誰が『母親』よ!?せめて、『姉』って言いなさいよ!!」
「……チュチューン?」

地の文にツッコミを入れるハルヒの姿に、モグラ獣人は首をかしげたのだった。

その時である。
近くの草むらから、がさごそと何かが動くような音が聞こえてきた。

「えっ?な、何?」
「チュチューン!」

突然の物音にハルヒは固まり、モグラ獣人はハルヒを庇うように身構える。
そして、草むらの方からは……

「ワフゥ〜」

二人の思いもよらない者が姿を現したのだ。


937 : 涼宮ハルヒの歓喜、モグラ獣人の苦悩、ロックジョーの??? ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:48:19 s9ML9kI.0
「チュチューン!?」
「こ、今度はブルドック怪獣!?」

そこにいたのは、一匹のブルドックだった。
だが、ただのブルドックではない。

「ワフゥ〜」

それは額からフォークを思わせる触覚を生やし、牛かサイに匹敵する巨体を持つ巨大ブルドックだったのだ。
その首にはハルヒやモグラ獣人と同じく、金属製の無骨な首輪が嵌められている。
どうやらこのブルドックはNPCではなく、参加者のようだった。

「凄い!スゴいわ!モグラ怪獣を見つけたと思ったら、今度はブルドック怪獣に会えるなんて!!」
「いや、だから俺はモグラ『怪獣』じゃなくて、モグラ『獣人』なんだけど……」

モグラ獣人の抗議がハルヒの耳に入る事はなかった。
ハルヒは巨大ブルドックに駆け寄ると、その大きな体に抱きついた。

「きゃあっ!スッゴいモフモフだわぁ〜♪ぬいぐるみみたい!」
「ワフゥ〜♪」

ハルヒにギュッと抱き締められて、巨大ブルドックは嬉しそうに鳴いていた。
一方、モグラ獣人は巨大ブルドックに対してビビりまくっていた。

「チュチューン……おいやめろよ。食われたらどうすんだよ?」
「フッフッフッ………本物の怪獣に食べられるなら本望よ!」
「チュチューン……」

ハルヒの様子にモグラ獣人は困惑するしかなかった。

「………ん?」

そこでモグラ獣人はある事に気がついた。

「おい、そいつ、首になんかついてるぞ?」
「えっ?」

モグラ獣人の指摘を受け、
ハルヒは巨大ブルドッグの首に一枚の大きなカードがぶら下がっている事に気がついた。
巨大ブルドックの首にぶら下がっているそのカードには、『こんにちは、ボクの名前はロックジョー。ハグが大好きです』と英語で書かれていたのだ。

「へぇ〜……アナタ、『ロックジョー』って言うのね?カッコいいじゃない!」
「ワフゥ〜♪」

巨大ブルドック……ロックジョーは、自身の体をなで回すハルヒの顔を体と同じくらい大きな舌でなめたのだった。

「きゃあ!くすぐった〜い♪」
「ワフゥ〜」

ハルヒとロックジョーは楽しそうにじゃれあっていたが……

「チュチューン・・・」

……それを眺めるモグラ獣人は困惑するばかりであった。

「……よし、決めたわ!」

ハルヒはロックジョーから一旦離れると、ガッツポーズを決めながら叫ぶ。

「貴方達を、『SOS団特別団員』に任命するわ!」
「チュチューン?」
「ワフゥ〜?」

ハルヒの唐突な発言にモグラ獣人とロックジョーは首を傾げた。

「SOS団は北高の部活だから、本当は貴方達は参加できないんだけど……今回は『緊急事態』だから特別にね♪︎そして、ここでのSOS団の目標は、『ハ・デスを打倒して、このふざけた『決闘』から皆を救う事』よ!」
『………』

ハルヒの突飛な発言に、モグラ獣人もロックジョーも呆然となった。
が………

「………何?なんか文句あるの?」
「ちゅ、チュチューン!違ぇよ!?」
「ワフゥ〜!」

……ハルヒからの鋭い睨みを受け、もはやモグラ獣人もロックジョーも『NO』とは言えなかった。

「よ〜し!それじゃあ早速行動開始よ!」
「…………」
「返事!
「……チュチューン!!」

☆☆☆

かくしてモグラ獣人は涼宮ハルヒ率いる『SOS団』の一員として、『決闘の打破』の為に動く事になったのだった。
めでたし、めでたし。
(by杉田ボイス)

「全然めでたかねぇーよ!?」


938 : 涼宮ハルヒの歓喜、モグラ獣人の苦悩、ロックジョーの??? ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:48:41 s9ML9kI.0
【モグラ獣人@仮面ライダーアマゾン】
[状態]:健康、困惑
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:アマゾン達に会いたい
1:ハルヒの様子に困惑
2:なんで俺、生きてるんだ?
3:俺は『怪獣』じゃなくて『獣人』なんだけどなぁ……?
[備考]
キノコ獣人に殺された直後からの参戦。
ハルヒから『SOS団特別団員』に任命されました。
殺し合い会場は地獄なのでは?と考えています。

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康、歓喜、興奮
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:SOS団特別団員達と協力してハ・デスを打倒し、このふざけた『決闘』から皆を救う
1:この会場でSOS団メンバーを増やしていく
2:本物の怪獣がこんなに!!スゴ〜い!!
3:キョン達SOS団の仲間がいるなら合流する
[備考]
『射手座の日』以降、『消失』以前の時間からの参戦。
モグラ獣人とロックジョーを『SOS団特別団員』に任命しました。
モグラ獣人から『仮面ライダーアマゾン』世界の概要(モグラ獣人が死亡した『仮面ライダーアマゾン』第20話時点まで)を聞きました。

【ロックジョー@マーベル・コミックス】
[状態]:健康
[装備]:ロックジョーの自己紹介カード@マーベル・コミックス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:早く帰りたい
1:ワフゥ〜♪
[備考]
『Ms.マーベル』誌でMs.マーベルことカマラ・カーンと行動していた頃からの参戦。
涼宮ハルヒから『SOS団特別団員』に任命されました。
テレポート能力を持っていますが、制限により一度に移動できる最大距離はエリア『1マス』分だけです。

【支給品紹介】
【ロックジョーの自己紹介カード@マーベル・コミックス】
ロックジョーに支給。
ロックジョーがMs.マーベルことカマラ・カーンと最初に会った時に首から下げていたカード。
「HELLO.My name is Lockjaw.I like Hug(日本語訳:こんにちは、ボクの名前はロックジョー。ハグが大好きです)」と書かれている。


939 : 涼宮ハルヒの歓喜、モグラ獣人の苦悩、ロックジョーの??? ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/19(日) 17:48:57 s9ML9kI.0
投下終了します


940 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:02:47 .M3yfAvQ0
投下します


941 : 人類の可能性と人間が生み出した哀しき怪物 ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:03:53 .M3yfAvQ0
 肉体派おじゃる丸――そんな不名誉なあだ名を付けられ、ネットで馬鹿にされている男が居た。
 彼は非常に優れた肉体美の持ち主だ。胸囲120cmを誇り、上半身に比べて下半身が貧弱なわけでもない。絵に描いたような身体は世のホモ達を魅了する――はずだった。
 しかし自慢の肉体よりもおじゃる丸のような特徴的なおかっぱをネタにされたせいで彼は「肉体派おじゃる丸」というふざけた名前で様々な動画を作られてしまう。
 ホモビデオに出演するというたった一度の過ちが原因でこれほどまでに嘲笑されるとは、彼自身も考えていなかったことだ。

 もしも自分がホモビにさえ出ていなければ――そんなことは何度も考えた。
 TDNや野獣先輩といった有名なホモ達に対する怨みも凄まじく、彼らさえ居なければ自分はここまでネタにされていなかっただろうと思っている。
 事実として始まりの男であるTDNさえホモビに出ていなければ野獣先輩が発掘されることはなく、肉体派おじゃる丸がこうも馬鹿にされる日も来なかったのだろう。

 そもそも彼の肉体は本来ならば褒められるべき圧倒的な筋肉量を誇る。だからホモのオカズにされるくらいなら肉体派おじゃる丸も納得出来た。自慢の肉体でホモが抜くなら、名誉なことかもしれない。それほどまでに価値を見出してくれたという証拠なのだから。
 だがホモガキ共から馬鹿にされるのは我慢ならない。ホモガキの大半がヒョロガリだろうにネットを駆使して自慢の肉体を嘲笑する。――どうせ目の前では何も言えないくせにネットで好き放題にバカにする彼らを肉体派おじゃる丸は許せない。

 だからこの決闘のルールを聞いた時、肉体派おじゃる丸は思わず笑ってしまった。

『詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』

 ――これは肉体派おじゃる丸にとって最高の褒美だ。
 何故なら肉体派おじゃる丸は淫夢やホモガキを本気で嫌っているし、自分がホモビに出演した過去を悔いている。
 このまま永遠に嘲笑され続ける人生だと諦めていたが――ようやくこの運命から開放される好機が訪れた。

 叶えたい願いはもちろん、淫夢の根絶だ。
 しかし淫夢を完全に滅ぼせば憎きTDNや野獣先輩も救われてしまう。あいつらにはもっと苦しんでもらわなければならない。特にTDNは何故か世間的には許されたみたいな雰囲気になっているのがまた肉体派おじゃる丸にとっては腹ただしい

 ホモガキを全員この世から決してやりたいが、これも同様の理由で無しだ。TDNや野獣先輩を追い詰めるにはホモガキの存在が必要不可欠。皮肉にも肉体派おじゃる丸にとってホモガキは一定数いなければならない存在である。

 だから無難に歴史改変して、自分がホモビに出演した過去を無くす。そうすることで必然的に現代(いま)の世界は変わり、肉体派おじゃる丸という不名誉なあだ名も消え失せるだろう。もちろんくだらない動画の数々から自分の姿も消えるに違いない。

「(これ以上ない最高の機会に)笑っちゃうんすよね」

 肉体派おじゃる丸はハ・デスに感謝し、満面の笑みを浮かべていた。
 冥界の魔王に感謝するという行為は唯一神GOすらも許さないかもしれないが、淫夢出演とかいうクッソ汚い黒歴史を取り消せる絶好の機会だからね、仕方ないね。


942 : 人類の可能性と人間が生み出した哀しき怪物 ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:05:29 DMjAt/6Q0

 さて。優勝狙いを決意した肉おじゃの行動は早い。
 I♥人類というふざけたTシャツの男と黒の剣士を見つけると、彼ら目掛けて全速力で駆け抜ける。
 拳をグッと握り締め、全身に殺意を漲らせる。相手は自分よりも年下の男二人――しかも圧倒的な筋肉量を誇る肉おじゃと違い、ひょろひょろで筋肉が全く無いように見える。特に黒の剣士の方は女顔だから更に弱そうだ。

 Tシャツの男は腕に装着した謎のカードデッキから5枚を引く。――アレは間違いなく遊戯王カードだ。遊戯王は日本人ならば誰もが知ってるであろうカードゲームであり、肉おじゃだってその存在は知っている。当たり前だよなぁ?
 だがたかだか遊戯王カードでこの自慢の肉体を傷付けるなんて無理だ。海馬瀬人のようにカード手裏剣でもマスターしているならともかく、あんなものはアニメや漫画の世界だから出来る謎技術。そんなことが現実で出来るわけないだろ、いい加減にしろ!

 そして女顔の黒の剣士は紫色のライトセーバーを構える。遊戯王カードなんかよりはよっぽど痛そうだが、ライトセーバーなんて所詮は架空上の武器。つまり黒の剣士が持ってるアレはライトセーバーを模したオモチャだと肉おじゃは判断する。きっとトイザらスか何かで買ったものだろう。

「そんなオモチャで対抗しようとするなんて、笑っちゃうんすよね」

 あまりにも滑稽な二人組を肉おじゃは嘲笑い、先ずはTシャツの男へ殴り掛かる。
 その鍛え上げられた筋肉は見事、男の頭部を――

「――悪いな、あんたの相手は俺だ」

 ――破壊することなく、黒の剣士がライトセーバーにてその攻撃を防いだ。
 厳密にはライトセーバーではなくカゲミツG4。GGOというゲームで彼が愛用していた剣だ。
 そして黒の剣士キリトは真っ直ぐとした瞳で肉おじゃを見据えた。

「この変なおっさんが初陣か。そんじゃ、ま――ゲームを始めようか」

 そしてTシャツの男――空もまた自分が殴り掛かられたことに一切動じず、堂々とゲーム開始を宣言する。

「クキキキキ……」

 ただのオモチャだと思っていたライトセーバーが本物で肉おじゃが怒りを募らせる。
 彼の鋼の筋肉はカゲミツG4とまともにぶつかり合っても切断されることはなかったが、流石に生身の肉体でライトセーバーを相手にするのは痛い。
 当然本来の肉おじゃはこんなにも化け物染みた身体能力があるわけじゃないが、皮肉にも淫夢としてミーム汚染されたことでこの決闘場では補正が掛かっている。

 怒り狂った肉おじゃは一心不乱に拳を何度も振るう。なんだこのパワー系はたまげたなぁ。
 しかしアインクラッドの英雄、黒の剣士キリトは難なくそれらの攻撃を対処した。いくら肉おじゃのスペックが上がろうとも技量ではキリトが勝る。

「……これじゃ俺は何も出来ることがねえ。ちょいと試してみるか」

 空は自分が引いた5枚のカードを眺める。そのどれもがモンスターカードであり、このデッキの重要な要素である罠カードが何一つない。
 だがカードゲームというものは、何もドロー力が全てではない。ハッタリや駆け引き――そして様々なカードの効果を用いて戦うのがカードゲームというものだ。ドロー力に恵まれなくても、好きなカードを手札に呼び込むためのサーチカードだって多彩に存在する。

「俺はトリオンの蟲惑魔を通常召喚!更にトリオンの蟲惑魔の効果発動!トリオンの蟲惑魔は召喚に成功した時、デッキから落とし穴かホールのカードを1枚サーチすることが出来る」

 空がトリオンの蟲惑魔を召喚すると、デッキから粘着落とし穴をサーチする。この際に空はルールに則りちゃんとサーチしたカードを肉おじゃに見せているのだが、肉おじゃはテキストの確認すらしようとしない。もっともこの殺し合いと同等の決闘で、しかもキリトがいる状況だ。別にゲーマーなわけでもない肉おじゃにそこまで頭が回るわけない。


943 : 人類の可能性と人間が生み出した哀しき怪物 ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:06:11 WmnLhFJs0
 しかし落とし穴――その言葉だけで何か厄介なものを手札に加えたことは推測出来る。何故かモンスターが実体化しているし、この場で遊戯王カードが如何に重要かを肉おじゃは察する。

「カードを1枚伏せて、俺はターンエンドだ。――さあ、お前のターンだぜ」

 空は律儀にターンエンドの宣言をする。この場ではモンスターはバトルフェイズという概念すらなく、攻撃可能なのだが――あえて彼は攻撃すら宣言せず、ターンを終了した。

「なんでもありの決闘でターンなんて、笑っちゃうんすよね」

 わざわざカードゲームのルールに則り、まるで正々堂々とデュエルでもしようとしている空を肉おじゃは嘲笑う。

 何がターンエンドだ。これは決闘――純粋な力較べであり、ルール無用だ。ターンなんて概念はないはずである。
 しかし肉おじゃの前に立ちはだかっている黒の剣士は空の理解不能な行動を微塵も疑わず、肉おじゃの相手に集中している。――まるで空を信じているとでも言うかのように。

「なんすか、その目は……」

 その目が――空を信じて肉おじゃを見据えるその瞳が、肉おじゃにとっては何よりも苛立つ。人間なんて醜い生き物だ。たった一度の過ち――ただそれだけで淫夢ファミリーの一員として「肉体派おじゃる丸」という不名誉なあだ名を付けられ、世界中の人々から馬鹿にされてきた。そしてどうしてだろうか――肉おじゃはこの決闘に巻き込まれてから自身の名前すらも思い出せない。
 肉体派おじゃる丸という憎悪してる名は鮮明に覚えているのに、何故か彼の名前は忘却の彼方に消えてしまった。――淫夢の肉体派おじゃる丸として決闘場に召喚された彼は、本来の名前すら剥奪される。ハ・デスはホモビ男優の記憶や在り方すらも捻じ曲げたのだ。

「なんというか……人間を信じるなんて、笑っちゃうんすよね……」

 肉おじゃは人間不信だ。淫夢で浸透してから、常に誰かに嘲笑われてるような感覚に苛まれている。
 そんなどうしようもない運命から逃れるためならば――目の前の剣士も、目つきの悪いゲーマーも喜んでこの手で屠ろう。
 哀しき怪物は一度キリトから距離を取り、支給されたカードを天に翳す。

「これが魔法カードか……!」

 肉おじゃの右腕の筋肉がみるみるうちに凝縮され、ただでさえ逞しい腕が更なる厚みを増していくのを見てキリトは戦慄する。
 鋼鉄のような肉体――そんな言葉すらも今の彼を表すには、あまりにも足りていない。

 肉おじゃが発動した魔法カードはゴッド・ハンド・クラッシャー――神のカードの1枚、オベリスクの巨神兵の技名を冠するカードだ。

 過酷なデスゲームを生き抜き、クリアへ導いた黒の剣士も。天才ゲーマー兄妹の片割れも。神の一撃を受ければ間違いなくその命を散らすことだろう。

「フフハッ。これは神の一撃らしいすよ。もうあんた達も、終わりっすね!」

 支給品の説明には神の一撃と記載されていた。この目でトリオンの蟲惑魔が実体化するのを見るまでは遊戯王カードなんて何も意味が無いハズレ支給品だと思っていたが、どうやら大当たりだったようだ。
 勝利を確信した肉おじゃが拳を振り上げた瞬間――

「この瞬間、罠カード発動。粘着落とし穴!」

 肉おじゃの身体は落とし穴に嵌り、その攻撃も地面に打ち付けるだけで不発に終わる。
 落とし穴の大きさはそれほど大きくない――一般人でもすぐに自力で戻れる程度のものだろう。だが落とし穴の底には粘着質な液体が溜まっており、それによって肉おじゃは身動きを封じられた。

「クキキキキ……!」

 肉おじゃが凄まじい憎悪を募らせた表情で空を睨む。I♥人類という文字の書かれたTシャツが、彼の憎しみを更に高める。

「神の一撃だかなんだか知らねえが――人類ナメるんじゃねえ」

 罠カードの発動には1ターンの経過が必要だ。それを考慮した上で空は即座にターンエンドを宣言した。
 肉おじゃがトリオンを見た時――彼の口元は僅かに笑っていた。他の者ならば見逃してしまうかもしれないその一瞬の挙動を空は見逃すことなく、彼に何らかのカードが支給されていることを警戒していたのだ。


944 : 人類の可能性と人間が生み出した哀しき怪物 ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:07:48 HDwlTPCo0
 そして案の定――というか予想以上にとんでもないチートカードが支給されていたから、空はすぐに粘着落とし穴を発動した。

 ゴッド・ハンド・クラッシャーには●相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。という効果もあるが、これは任意効果。精神的に余裕がない肉おじゃはその効果を使わず、攻撃手段としてのみ発動した。
 もっともそちらの効果を使われてもチェーンして破壊される前に粘着落とし穴を発動したら済む話。つまり肉おじゃは空にゲームで敗北したのだ。

 だが空もキリトも決してまだ油断していない。相手は何かまだ切り札を隠している可能性がある――と空が考えていたら、予想的中。粘着質な液体から抜け出した肉おじゃは『緊急脱出装置』を発動することですぐさまどこかへワープした。

 この緊急脱出装置――罠カードなのだが自分自身に使う場合のみすぐに発動出来るという細工を施されている。ゴールドシリーズという特殊なカードであるがゆえに一度使えば消滅してしまうが、それでも肉おじゃはなんとか戦場から脱することが出来た。
 あのまま黒の剣士とI♥人類の男を殺したい気持ちも強かったが、あんな未知の技術を使われては勝ち目が薄い。それにゴッド・ハンド・クラッシャーは強力なカードだがその代わり一度使ったら暫く使えないデメリットもある。

「次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……」

 肉おじゃは憎悪を募らせながら、優勝を目指して歩き始めた。

【肉体派おじゃる丸@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ゴッド・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝して淫夢の歴史から自分の存在を抹消する
1:黒の剣士とI♥人類の男は次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……
2:遊戯王カードはこの決闘で大事すね……
[備考]
※遊戯王カードの存在を知っていますが決闘者じゃないのでルールなどは詳しくありません
※本来の名前を思い出せません


 〇


「落とし穴は相手の動きを軽く封じるくらいが精一杯か。……ま、それくらいに制限しなきゃ決闘が成り立つわけねえよな」

 空に支給されたデッキ――それは落とし穴を駆使して戦う蟲惑魔だ。特別強い奈落の落とし穴などは入っていないが、それでも粘着落とし穴や落とし穴など本来ならば驚異的な効果を発揮するカードは投入されている。だがモンスターを破壊したり裏守備にすることがそのまま決闘でも適用されるはずがない。じゃなければバランスブレイカー過ぎる性能だ。
 もちろんNPCなんかには効果を発揮する可能性が高いが――対人戦では大幅に制限されている。だから肉おじゃも脱出できた。時間を稼いだり、相手の行動を妨害したり――そういう使い方がメインとなるだろう。

 ちなみにデッキの解説や遊戯王OCGのルールは説明書に同梱されていた。そして天才ゲーマーの空はそれをすぐに理解した。空から説明書を読ませてもらったキリトも多少は理解している。ゲーマーの彼らはすぐにこの決闘に適応したのだ。

 ちなみにキリトと空は偶然にもスタート地点が同じで、情報交換や遊戯王カードについて考察していたところに肉おじゃが襲来した。


945 : 人類の可能性と人間が生み出した哀しき怪物 ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:08:43 HDwlTPCo0
 キリトが空を信用していた大きな理由はすぐにデッキの性質や遊戯王OCGについて理解したからだ。逆に空もキリトと話して、彼が信用出来る人物だと考えた。デスゲームを生き抜き、生還したという話も彼の瞳を見る限り嘘ではないだろう。
 なによりこのデスゲームを開いたハ・デスに対するキリトの怒りは間違いなく本物だ。それは初対面の空にもよく伝わった。

「俺たち自身を駒にしてゲームを始める――か。完全に俺たち人類を舐めた発言だな」
「相手は冥界の魔王らしいからな。それにゲームマスターからしたら、俺たち一般プレイヤーなんて本当に取るに足らない存在なのかもしれない」

 キリトの言葉について空は同感だ。完全にこちらが舐められているが、ゲームの運営なんてそんなものだろう。
 だが――だからといってキリトと空にこのゲームのクリアを諦める気はない。

「じゃあその魔王様に、人類の可能性ってやつを見せてやろうぜ」
「人類の可能性、か……」

 空白に敗北の二文字は無いし、黒の剣士には帰るべき場所がある。待っている彼女が居る。
 それにキリトはかつてシステムの力を否定した。システムの力を上回る人間の意志の力――それを黒の剣士は秘めている。
 空に「人類の可能性」という言葉を聞いてキリトはヒースクリフ――茅場晶彦との運命の一戦を思い出した。

 キリトはプレイヤーで、ハ・デスはゲームマスターだ。だからどうした?
 皮肉にも過去にデスゲームを開いた男――茅場のことを思い出し、キリトは前を向く。

「……そうだな、空。あのゲームマスターがどんなシステムを仕組んでも――最後に勝つのは人間の意志だ」

 天才ゲーマーの片割れと黒の剣士が手を組み、魔王を名乗る男がゲームマスターのデスゲームに挑む。負けるつもりはないが、油断もしていない。特にキリトはデスゲームの過酷さを嫌というほど経験している。

 そして彼らには白やアスナ――大切な人々がいるが、果たして彼女達もこの決闘に参加しているのだろうか?
 空と白が。閃光と黒の剣士が揃う時は、やってくるのだろうか――?


【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:カゲミツG4@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す
1:空と共闘する
2:アスナやクライン達も居るのか?
[備考]
※参戦時期はソードアート・オンライン
アリシゼーション War of Underworld終了後
※遊戯王OCGのルールをだいたい把握しました
※アバターはSAO時代の黒の剣士。
GGOアバターに変身することも出来ます。GGOアバターでは《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。
その他のアバターに変身するためには、そのアバターに縁の深い武器が必要です。SAOのアバターのみキリトを象徴するものであるためエリュシデータやダークリパルサー無しでも使用出来ます。SAOアバター時以外は二刀流スキルを発揮出来ません。これらのことはキリトに説明書に記されており、本人も把握済みです

【空@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す。あまり人類ナメるんじゃねえ
1:キリトと共闘する
2:白も居るのか?
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後
※遊戯王OCGのルール及び蟲惑魔デッキの回し方を把握しました

『支給品紹介』

【ゴッド・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG】
肉体派おじゃる丸に支給。
当ロワではこのカードを発動することでオベリスクの巨神兵の技、ゴッド・ハンド・クラッシャーを発動出来る。相手フィールドの魔法・罠カードの破壊も可能だがモンスター破壊効果は失っている。ただし対象が参加者以外のモンスターであれば破壊可能
一度発動すると6時間は使用出来ない

【デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG】
空に支給。奈落の落とし穴などバランスブレイカーになり得るカードは入っていない
また破壊する効果はNPCや参加者以外のモンスターにしか発動せず、落とし穴は行動の妨害や時間稼ぎがメインとなる。エクストラデッキ付き


946 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/19(日) 19:09:04 HDwlTPCo0
投下終了です


947 : ◆4Bl62HIpdE :2022/06/19(日) 19:29:22 yCmQTqFc0
>>924 の一部描写を以下に変更します
(変更前)
>
そしてガシャットをキメワザスロットホルダーに入れ、ボタンを押した。
「キメワザ!」

ミノタウルスは数秒で間合いを詰め、エグゼイドに向かって斧を縦一列に振りかざした。
エグゼイドは、それを横にローリングして避け、もう一度ホルダーのボタンを押した。
「マイティクリティカルスラッシュ!」

(変更後)
>
そしてガシャットをガシャコンブレイカーに差した。
「キメワザ!」

ミノタウルスは数秒で間合いを詰め、エグゼイドに向かって斧を縦一列に振りかざした。
エグゼイドは、それを横にローリングして避け、ガシャコンブレイカーのトリガーを押す。
「マイティクリティカルフィニッシュ!」


948 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:16:29 D3f7J8pI0
投下します


949 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:16:57 D3f7J8pI0
熱くも寒くもない、けど温度がないかというと、違う。
確かに生きてた時や、その先でたどり着いたあの世界の様に、確かに時間が流れている。

「居残り授業、な訳がないか」

足元にあったカバンを開けて、入っていたルールブックを読む。

これは一定のルールのもとに行われる競技で有り、
それ以外の部分は一切の不自由のない混沌であり、
圧倒的力と、どうしようもないまでの不運の元に押し付けられる理不尽でもあるようだ。

「さて、どこに行こうかね?」

とりあえず支給された自衛に必要な装備一式を身に纏い、
彼、音無は歩き出した。
しばらくすると、鈍い殴打音に気付いので、足早にそちらに向かった。
そこに向かうと、想像……とはちょっと違って、
凶悪極まる笑みを浮かべた少女と言っても良さそうな年齢の女性と、
顔をぼっこぼっこに腫らしたガタイのいい男がいた。
男の顔面を殴打し続けていた彼女は、音無に気付くと、

「む!あなたも参加者ですね!」

と、さっきまでとは打って変わった人懐っこい笑みで近寄って来た。

「ああ。お前もそうみたいだな。
それに、そこの人も」

殴られた男は全く動いていなかった。
割れた黒いガラスのような何かが散乱していることから、
辛うじてサングラスをかけていたのが分かるぐらいだ。

「はい!ですがご安心ください!
この殺し合いにのった悪は、この帝都警備隊所属、
セリュー・ユビキタスの手で殴殺刑に処しました!」

そう言って血のベットリ着いた鋼の義手を、その少女は満面の笑みで見せて来た。

「そうか。お前、酷いやつだな。
人の顔をそんなになるまで殴るなんて」

瞬間、少女の顔から笑顔が消えた。

「あなたは悪の肩を持つんですか?」

心底その行動が分からない。
この女は声音だけでそう言っていた。

『おかしいのはお前だ』

同時にそう言われているようにも感じたが、

「少なくとも俺には、アンタが正義には見えない。
彼女の様に……不器用なりに正しい事をしているとも思えない」

音無は思ったままを少女に伝えた。
瞬間、さっきまで男の顔面を殴りまくっていた拳が音無の頬を強打する。
きりもみ回転して吹っ飛んだ音無を、
女はこの世の何よりも汚い何かを見る目で見降ろしている。

「言いたいこと言って満足したか?
お前のような悪は残らず極刑だ!!」


正義・執行!


「……」

一気に距離を詰めて振り下ろされる鋼の拳は


950 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:17:20 D3f7J8pI0
<Bane up!>

音無の腹部に装着されたベルトから出現した金色のカブトムシにより防がれた。
逆に吹っ飛ばされたセリューが目にしたのは

<破壊!(Break.)世界!(Broke.)奇々怪々!(Broken.)>

カブトムシより一拍遅れてベルトから噴き出た黒煙の中から現れたのは

<仮面!(ライダー)ベイル!>

どくり、と、音無の体を鼓動にも似た衝動が駆け抜ける。
どうやら変身が完了したらしい。
マスクの特殊レンズで強化された視力でセリューの瞳に移る自分の姿を見る。
なんだか戦闘服の上に偉そうなマントを付けた軍人みたいだな、と音無は思った。
今しがた殴打された顔を覆う防毒マスク風の仮面が余計にそうさせるのかもしれない。

「それは、帝具?」

「仮面ライダーベイル……ってさっきベルトから音、鳴らなかったか?」

「ふん!どんな小細工を弄そうと、決して正義が負けることは有りえない!」

拳に真っ黒な殺意を乗せて猛然と襲い掛かるセリューを飄々と避けながら、
音無は盛大に溜息をついた。

「お前、神様かなんかのつもりかよ」

音無としては、ただ軽く腕を振っただけのつもりだった。
が、巻き起こった風圧はガードスキル、ハウリングには及ばない物の、
人間をビル風に攫われたレジ袋の様に吹き飛ばすには十分すぎる威力だった。

「正義とか悪とか、なんの権利があってお前が決めている?」

音無の仮面越しの目には、吹き飛ぶセリューが名前も声も知らない、
ある女性の家族を奪った10分も待てない強盗たちと同じに映っていた。
そしてセリューには

「こんの……汚れた手で力を使うな!極悪人がぁあああああああ!」

音無が名前も声も知らない父の仇に見えていた。


951 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:17:47 D3f7J8pI0
【音無@Angel Beats!】
[状態]:健康、左頬に殴打の跡、仮面ライダーベイルに変身中。
[装備]:ベイルドライバー@仮面ライダーリバイス
     カブトバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この理不尽に抗う。
1:まずは目の前の女を止める。
2:もしかして、他の連中も来てるのかな?
[備考]
※参戦時期は最終回終了後、生き返っています。
※ベイルドライバーは変身だけなら何の問題も無いように調整されています。

【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】
[状態]:健康、ダメージ(中)、音無への激しい怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスやこの決闘に乗った悪を全滅させる。
1:目の前の悪を倒す。
[備考]
※両腕を失った後からの参戦です。
※どこかに彼女が殺した男の荷物全てが放置されています。





【渋井丸拓男@DEATH NOTE 死亡】


952 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:18:07 D3f7J8pI0
支給品解説
【ベイルドライバー@仮面ライダーリバイス】
仮面ライダーベイルに変身するためのベルトで、設計、開発は狩崎真澄。
デモンズドライバーの原型で、操作方法はほぼ同じ。
見た目も非常に似ており、内部に封印した悪魔に使用者の寿命を喰らわすことで、
フルスペックを発揮する仕様なのも共通。
また、内部に悪魔が居なくても、スペックダウンこそするが、変身事態は可能なのも共通である。
本来はギフの遺伝子を持たないものが変身しようとすると、
その生命を奪う仕様なのだが、当ロワでは変身するだけならだれでもできる様に調整されている。
カブトバイスタンプとセットで支給。


953 : ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:26:06 YkdHF//U0
投下します


954 : デビルハート ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 21:26:30 D3f7J8pI0
おっとうっかりしてました。投下終了です


955 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:26:38 YkdHF//U0
怪獣界の

真実(マジ)の御伽噺

何も 悪事(わるさ)かまさずとも


赤いアイツは殺しに襲撃(く)る!!


956 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:27:09 YkdHF//U0
 「全く、野蛮な奴だ。いきなり拉致しておいて殺し合え。だと」

 腕を組んでしかめっ面で愚痴をこぼすセーラー服の少女が一人。
 周囲を警戒することもせず、一人で延々と愚痴っている。
 殺し合いの場に於いて無防備極まりないとも言えるが、指摘されたところで少女は鼻で笑うだろう。
 何故ならば少女は人では無いのだから。
 
 「全くもって紳士的では無いぞ!」

 少女の名前は『悪質宇宙人メフィラス星人』。何だか良く分からない理由で、怪獣墓場にある学園でまったりと過ごす事になった擬人化怪獣である。
  
 「あんな奴に願いを叶えて貰おうなんて全く思わないし、第一暴力的な行為は私の信条に反する。それに首輪も気に入らん!!」

 怒り心頭といった風情ではあるが、首輪に手を触れようとはしない。迂闊に触れて爆発でもされては堪らないからだ。
 それでもメフィラス星人には、自分が爆弾ごときで死ぬのだろうか…という想いも僅かにはあったが。

 「よくよく考えてみれば、ゼットンは爆弾で死んだんだよな」

 やはりこの首輪は放置するしかあるまい……今の所は。

 「それにしても、私は地球に修学旅行に行く途中だったよな……」

 騒がしい旅の同行者達はどうしたのだろうか?此処に拉致されたのは自分だけなのか?他の連中も居るのだろうか?
 殺し合いに凡そ向いていないエレキングが巻き込まれているならば、速やかに保護する必要が有る。

 「テンペラーが居ればな。アホだがこういう時には役に立つんだが」

 タロウのコミカル路線の犠牲者と称していた、擬人化怪獣の姿を脳裏に浮かべる。ゼットンにすら突っかかっていくあの蛮勇は、こういう時には非常に心強いのだが、居ないものを頼っても仕方あるまい。

 「まあ、いないヤツは仕方ない」

 結論付けたメフィラスは、他の参加者と接触すべく歩き出そうとして、後ろに気配を感じて振り返り……硬直した。

 メフィラスの視界に映るは真紅の─────まるで全身に鮮血を浴びた様な─────男。
 右手には禍々しい形状の、男に勝るとも劣らぬ真紅の槍が握られていた。

 「き、キサマは……」

 全く感情を感じさせない─────メフィラスには無限の殺意を感じさせる─────黄色い眼がメフィラスを真っ直ぐに見据えている。


957 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:27:29 YkdHF//U0
それは怪獣界に伝わる真紅の御伽噺。
 それは如何なる怪獣も恐怖と共に思い出し、忘却に努める殺戮の伝説。

 ソレに出逢ったら『終わり』。


958 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:28:04 YkdHF//U0
メフィラスが恐怖に震えながら、真紅の名前を絞り出す。

 「レッドマン!!」

 \レッドファイッ!/

 告死の宣言を高らかに告げ、怪獣にとっての絶対の死が、メフィラスに襲いかかった。

 「うおおおおおおお!!!」

 絶叫するメフィラス目掛け、振われるレッドアロー。数多の怪獣や星人を貫き殺し、死亡確認にも使われた血塗られた魔槍─────に非ず。狂王クー・フーリンが振るっていた『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルグ』である。
 槍が顔面を貫く直前、咄嗟に瞬間移動でレッドマンの背後に回り込んだメフィラスは、グリップビームを全力で発射、直撃したレッドマンが爆煙に包まれた。

 「やったか!?」

 爆煙の中で、赤い影が揺らめいたのを、メフィラスが認識したのと同時、メフィラス目掛けて再度レッドマンが襲い掛かる。
 この攻撃もメフィラスは瞬間移動で回避。然し、今度は動きを見切っていたレッドマンが、右の回し蹴りを放ち、再度背後へと回り込んだメフィラスを蹴り飛ばした。

 「グハッ」

 倒れたメフィラスの眼前に立つ真紅の男。全く感情のない目でメフィラスを見下ろすと、緩やかな動きで槍を振り上げた。

 「……………!。

 メフィラスの脳裏に浮かぶのは、執拗に執拗に執拗に槍で滅多刺しにされる自身の姿。
 レッドチェックなんぞをされたら、規格外の再生能力を持つサラマンドラでも死ぬだろう。

 メフィラスの進退此処に極まる─────直前。メフィラスから放たれた、グリップビームとは異なる光線が、レッドマンを天高く吹き飛ばし、レッドマンの身体は弧を描いて飛んでいき、メフィラスの視界から消え去った。

 「ウルトラマンの力に助けられるとはな」

 レッドマンの凶刃からメフィラスを救ったのは、メフィラスに与えられた支給品である『キラータイマー』。
 ヤプールが作り上げたエースキラーがエースキラーである要。ウルトラ兄弟の光線技を使える様になるアイテムである。
 渾身のグリップビームも通じない化け物に対して、全くもって本意ではないが、ウルトラマンの力を行使して正解だった。

 「これで奴が死んだとも思えん」

 いくらウルトラマンの光線技とはいえ、あの赤い殺戮魔を、ただの一撃で仕留められるとは思えない。だからといって、確かめにいく勇気は無い。

 「やはり仲間を集めないとな」

 あんな殺戮魔までいる以上、単独行動は死に繋がる。
 メフィラスは仲間を求めて、レッドマンが飛んでいった方向とは、逆の方向に歩き出した。


959 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:28:31 YkdHF//U0
【メフィラス星人@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code】
[状態]:疲労(小)
[装備]: キラータイマー@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code 不明支給品0〜2
[道具]:怪獣墓場学園の制服@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code
[思考]
基本:ハ・デスを倒す
1:レッドマンに対する恐怖
2:仲間を集めてレッドマンを倒す
[備考]
地球に修学旅行にきた時からの参戦です。

支給品解説

キラータイマー@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code
エースキラーがエースキラーである要。装備することによりウルトラ兄弟の光線技を使用出来る。
作中ではエースキラーからキングジョーが奪い取り、ヤプールに対して使用した。
尚、この道具をエースキラー以外が持っていると、ヤプールはブチ切れる。


怪獣墓場学園の制服@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code
服として扱われた為に没収されなかった。人とは異なる外見を持つ擬人化怪獣が、人類の中で活動しても、違和感を持たれない様にする効果が有る。


制限にyいり、飛行と巨大化が不可能となり、瞬間移動も10mが限界となっている。



───────────

 
 メフィラスが立ち去ってから数分後、槍を手に佇むレッドマンの姿が有った。
 
 「……………」

 少しの間、無言で佇んでいたレッドマンは、その驚異的な聴覚でメフィラスの足音を捕捉すると、メフィラスの追跡を開始した。

 レッドマンはメフィラスを正しく怪獣と認識していた。
 例えニンゲンの姿形をしていようが、長きに渡る殺戮と戦闘で磨き上げられた勘は、ガン然に居るものが、殺すべき怪獣か、そうでないかを正しく判別できる。
 
 此処にいる怪獣は、皆地球人類に近い姿をしている様だ。
 姿形に惑わされない様にしなければなるまい。


 そう、結論すると、レッドマンはメフィラスに追いつくべく速度を上げた。
 



【レッドマン@レッドマン】
[状態]:健康
[装備]: 抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)@Fate/Grand Order 不明支給品0〜2
[道具]:無し
[思考]
基本:怪獣は、全て・駆逐する
1:此処にいる怪獣は、地球人類の様な姿形をしているらしい
2:外見には惑わされない
[

 
 

抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク) @Fate/Grand Order
ランク:B++
種別:対軍宝具
レンジ:5〜50
最大捕捉:100人
由来:クー・フーリンが師匠スカサハから授かった魔槍ゲイ・ボルク。
クー・フーリン本来の宝具。魔槍ホーミングミサイル。
自らの肉体の限界を超えた全力投擲で放たれる為、通常の召喚時よりも威力と有効範囲が上昇している。敵陣全体に対する即死効果があり、即死にならない場合でも大ダメージを与える。
発動の度に右腕が引き千切れかけるほどに損傷してしまうが、ルーン魔術によって肉体を再生・回復させているため本人が肉体ダメージを受けることはない。しかし、自らの肉体が崩壊する程に凄まじいその投擲には常人だと発狂するほどの激痛が伴う。

制限により即死効果は無くなっている。


960 : 真紅の恐怖伝説 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/19(日) 21:28:47 YkdHF//U0
投下を終了します


961 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/19(日) 22:57:17 D3f7J8pI0
>>953 先程は割り込み失礼しました。


962 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:18:38 QD9SbmNc0
投下します


963 : 其は、ワルプルギスの悪夢 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:18:57 QD9SbmNc0
其れは、闇の狭間よりこの現世へと滲み這い出た煙であり。

其れは、奈落の底より湧きいづる泥水の如き流動であり。

其れは、正しく人の世に降り立った、歪みであった。

魔族でもなければ、人間でもない。昏き闇そのものが人の形を為して跋扈している。
薄白い肌も、虚空の如く深い漆黒の眼も、その細腕も、何もかもが人に見えながらも恐るべき怪異にも思える。

その禍々しき黒曜が、見ている。
たった一人の少女を見ている。

「ンンン――?」

『男』は笑っている。品定めのように、その眼球で見つめながら。
大きなカブトムシを見つけて興味を示し喜ぶ幼子のような好奇心で。
この時少女に過った思考は「自分の命が今此処でなくなる」ということぐらい。
だが、この『男』の目的は等に厳密には、只の殺戮・蹂躙ではない。

「……ふむ。確かにこれは、『当たり』ですなぁ。」
「……ぁ、いや……。」

舐め回すような、男の声色。粘り湿った音階が、少女の耳に入り込む。
少女にとっての眼前の男はもはや死の恐怖そのもの。

「いや、だ。殺さない、で。」

振り絞って出した言葉は生存欲求、悪く言えば命乞い。
非日常にぬるま湯浸かった程度の日常しか過ごさなかった彼女にとって、この悍ましさの化身は正しく恐怖でしかない。
男がそれを見下ろし

「いえいえ、拙僧はそなたを殺しはしませぬ。少しばかり、用事に付き合ってもらえれば、と思いまして。」

少女が安堵の息を吐く隙間すら無く、男が無造作に空に描くは血色の光条で編まれた五芒の星。
忌まわしき方陣は少女が反応する余裕すら与えず彼女の身体に刻まれる。

「―――――――――――______!?」

少女の身体に赤い紋様が、大海に侵食される土砂の如き速さ刻まれる。
激痛と不快感に声を張り上げようと其れすら許されず。
時が止まったかのように少女の身体が倒れ込む。
そこからは、男の残酷な観察だ。
少女の身体が、心が、異形の術式染まっていき、まるで魔族のような身体属性の要素が生えてくる様を。
男は、キャスター・リンボと称されるかつて異星の神の使徒だった英霊は、上機嫌に薄ら笑っていた。

「__________________!!!!!!!!」

悲鳴すら上げられず、苦悶の叫びも存在しない。
煮え滾る熱さ、虫が体中を這いずるような不快感。そしてその四肢を引き裂かんとする程の激痛。
それだけが、少女の身体を新たなる"何か"に変化させる為の工程として少女の思考を蹂躙する。
そして――吉田良子という少女がその震えすら止めたその時には、既にあらたなる『魔族』が誕生してしまったのである。


964 : 其は、ワルプルギスの悪夢 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:19:30 QD9SbmNc0
○ ○ ○

どうして、こうなったんだろう。と良は思う。
あんな怖い人、初めて見た。忘れたくなるほど恐ろしかった。
突然知らない誰かが殺されて、殺し合いをしろと言われて。

殺すことなんて、したくない。
だって、そうしたらずっとその選択と、罪悪感から逃げられなくなるから。
お姉やみんなに、二度と顔を向けられなくなるかもしれないから。
でも、それでも怖かったんだと思う。誰だって、死ぬのは怖いんだから仕方ないのかもしれない。

だから、あの男の人に何かされたんだと、そう気づいた時には私は私じゃ無くなってしまった。
頭が痛くて、痛くてどうしようもなくて、だれかみつけて、しりあいだったようで。

たたいて、たたいて、たたいて、たたいて、つぶして、つぶして、つぶして。

つぶして、つぶして――――。

あれ、わたし。なにしてたんだろ。
きがついたら、わたしのめのまえにまっかなおはながさいていて。
われためがねが、つぶれていて。

あれ? わたしなにしてたんだろ。
わたし、なにしてるんだろ。
そうだ、おねえだ。おねえのためにわたしはこんなことしてるのかな?
おねえをいきのこらせるために、わたしはわたしでわたしをわたしわたしわたしわたしわたし―――。

うん、そうだ。おねえをいきのこらせるために、わたしはあのひとにしたがって、ころしあいにのってたんだっけ?

たぶんそうだ、そうだよね。


【小倉しおん@まちカドまぞく 死亡】


965 : 其は、ワルプルギスの悪夢 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:19:45 QD9SbmNc0
――――――――――――

「……趣味が悪い。」
「ンンン――――お気に召されなかったようで?」

眼の前の、吉田良子だったナニカによる殺人処女卒業をキャスター・リンボは興味深いと嗤う一方で。
その傍らにいる女子高生――否、霊能力者こと最上啓示は只々不愉快だった。
職業柄、たちの悪い依頼者に出会うことは度々あった。そういう輩は世のためにならないから何処かでくたばろうがどうでも良かった話ではある。
だが、キャスター・リンボと名乗った"これ"は違う。
鴉ですら啄むのを躊躇う、むしろ逆にその鴉を貪り喰らうであろう生きた死肉。
恐らく自分が出会った悪霊の中で桁違いの、そもそもこの現実に存在してはならないであろう化け物だ。
それでいて、ただ混沌と恐怖と絶望と狂乱を振りまく道化師のような男だ。
なので、最初は始末しようと思った。
思っていたのだが。どうにもこうにも自分に興味を示し、手伝ってやるなんて言い出した。

「……いや、俺でもここまではしない。そう思っただけだ。お前にどれこれ言った所で無駄だろうからな。」

なのでこうして、利用するつもりで協力者として引き入れた。
証明の為に適当なことをしてもらったが、いくら指定していないとは言えここまで醜悪な事をしてくるとは思わなかったが。
リンボが言うには、「素質があった」だとか「薄いが血筋からどうにもなる」だとか。
さっきこの女に使ったのは、英霊剣豪とやらを作るのに使用した術式と同じものらしい。それに『RUM-バリアンズ・フォース』なるカードを使った、だとか。
話に聞けばこの首輪とやらの力で出力どうこうが落ちている。それは自分にも共通することだが、それを補うがためにカードを使い。で、結果がこれということらしい。

「いやはや残念。拙僧としては稚拙ながらいい仕上がりとなったと自負しておりまする。かの娘、魔に属する血を引いていながら素質は未開花。薄すぎるとも言うべきでしたが、こうもあっさり出来上がったのは不幸中の幸い。」

最上の思考などそっちのけで、リンボはリンボで語り始める。
リンボとしても吉田良子という女は一種の珍種。
闇の一族を血筋ながらその素質が目覚めてすらおらず、逆に光の一族に類する魔法少女の素質を持っているのだ。最もこれをリンボが知る由もないが、結果はこの有様というべきか。
心優しき、魔族の姉を支える妹はその願い諸共捻じ曲げられたのだから。

「ええ、ええ。つまるところ、勿体ないので無理やり開花させてもらいました。」
「いまいち理解できないが、要するに無理やり魔の力とやらを目覚めさせたってことでいいのか?」
「そう受け取って貰えれば。」

魔の力、とやらは最上啓示としては余り理解できていないが、要するにそれを無理やり目覚めさせたとのことらしい。
当人にそれが宿っていないかもしれないらしいから、無理やり外部から四則演算してあげた、という形で。

「……お前の趣味に関しては、質は悪いが使えるなら俺は特に追求はしない。ただ俺の邪魔はなるべくはするな。」
「承知しまして、ンフフフフ―――。ではそちらの御方も共に参りましょうか。」
「わかった。おねえのためだもんね。」

リンボを名乗る陰陽師。そしてそれの被害にあってついさっき誰かを殺した女。
利用できるならそれでいい。リンボが一番の要警戒であるが、この手の輩は手綱さえしっかりしていれば有能だ。
最上啓示にとって、リンボも、哀れな彼女も、世界を変える『世直し』の為の必要な道具にすぎないのだから。


966 : 其は、ワルプルギスの悪夢 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:20:31 QD9SbmNc0
【キャスター・リンボ@Fate/Grand order】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、RUM-バリアンズ・フォース@遊戯王ZEXALシリーズ
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:最上啓示、悪霊の集合体であろうかの御方の行く末、見届けて差し上げましょう
2:かの少女、どう利用してやりましょうか……ンンンンン
[備考]
※参戦時期は地獄界曼荼羅、退場後
※式神の最大召喚数は1名までとなります。

【吉田良子@まちカドまぞく】
[状態]:疑似英霊剣豪化?
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:おねえちゃんとこのひと(リンボ)のためにみんなころす
1:???
[備考]
※リンボの術式とバリアンズ・フォースの影響で、擬似的な英霊剣豪の様なものとなっております。
英霊剣豪特有の不死性は存在しませんが、バリアンズ・フォースの影響もあって身体能力その他が強化されております。もしかしたら魔術等を使用できるかも知れません。

【最上啓示@モブサイコ100】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:世界の『世直し』を為す。
1:リンボはいい具合に手綱を握って利用する。裏切るなら殺す。
2:あの娘(良子)は哀れであるが、別にどうでもいい。
[備考]
※参戦時期はモブ達と出会う前。
※ボディは浅桐美乃莉のものです。ボディの入れ替えは不可能となっております。


『支給品紹介』
【RUM-バリアンズ・フォース@遊戯王ZEXALシリーズ】
キャスター・リンボに支給。エクシーズモンスターをカオス化させランクアップさせる他、バリアンの力による洗脳じみた利用方法も可。
ただし洗脳に関しては最大対象は一人まで。再度使用には現状の洗脳された対象の洗脳が解除されるか死亡するかとなる。


967 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/19(日) 23:20:42 QD9SbmNc0
投下終了します


968 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:03:43 xL0MmxtY0
投下します


969 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:03:59 xL0MmxtY0
石ころなんかじゃない、宝石だ。人間みんな。
田村芽実

ズサササササ!ズササササ!!

皆さん!こんにちは―――♪
あなたの隣にあまーい智代子!
チョコアイドルで覚えてくださいねー!

ズサササササ!!!ズサササササ!!!!

って、さっきからどんどん、足音が増えていませんか!?怖い!!怖いです!!!
涙目で現状に抗議するアイドル。

―――アイドルの名は園田智代子。

273プロに所属し、5人組アイドルユニット『放課後クライマックスガールズ』のメンバーの一人にして”チョコアイドル”である。

ガッシャ――――――ン!!!!! バリ―――――――ン!!!!!!

「あうぅぅぅ!?ッ!?うう……足音が弱くなるどころか強くなってきています……」

現在、園田智代子は大陸の街の雑居ビルの一室に隠れている。
そして智代子の耳に聞こえるのは、凶暴な破壊音の数々。
智代子の肉を食しようと、獰猛なワイルド・ラプターが智代子を何処に居るのか!?と涎を垂らしながら徘徊している。

☆彡 ☆彡 ☆彡

”日常”が”非日常”に変化したのは突然でした。

いつものように、レッスンを終えて帰宅するはずだった。
それが、急に意識が落ちて目が覚めると、知らない場所……

「これより決闘(デュエル)のルールを説明する」

正直、もしかしてTVのドッキリかな?と始めは思っていました。
だって男子高校生の首が吹き飛ぶだなんて、余りにも”非日常”すぎるから

だけど―――

「私からも挨拶をしよう。我が名は冥界の魔王ハ・デス」

余りにもリアルでおどろおどろしい姿に声。
どう見ても特殊メイクをした人には見えない。
本当に殺し合いなんだと理解したときには、意識がまた失い……大陸の何処かへ転送された私は雑居ビル内にいた。
正直、不安と困惑で泣きたかったが、とりあえず周囲の探索をしていたら。

―――ザッ!

恐竜が私の目の前に姿を現したのだ。

☆彡 ☆彡 ☆彡


970 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:04:42 xL0MmxtY0

「これは、一体何なんじゃ……」
(たしか……オレは死んだはずだったよな?)

自分が生きていることに戸惑いを隠せない男が漆黒の翼で宙を飛んでいた。
男の名は阿久津潤。

ゴールデンパームに所属するヴァンパイアの一人である。

「つーことは、あんハ・デスなる奴がオレを蘇らせたってことか……あのクソがぁっ……!!!」
阿久津はイラつく。
冥界の魔王を自称するハ・デスに。

もちろん死ぬことに後悔がなかったわけではない。
しかし、自分はやるだけのことをして死んだ。
許可なく勝手に蘇らせたということは一つの事実を突きつけている。

―――あの男は自分が”上”にいて参加者達を”見下ろしている”ということにほかならない。

阿久津がもっとも気に入らないことをハ・デスはしたのだ。

「……まぁええ。磯野とかいう黒服も含めてしめて、20億手に入れた暁にはズムスタの看板でも買うかの」
イラつく気持ちを静め、とりあえず、夢のズムスタの看板を手に入れようと目標を定める。

すると―――

「……へぇ。あなた人間の癖に妖怪じみた能力を得てるのね」
女の声が聞こえた。

「……何者や、アンタ」
(この女……ヴァンパイアか?)

「私?私は古くからあなた達人間を怖がらせる……妖怪だよ」
女はニヤッと嗤う。

正体不明のアンノウンX

―――封獣ぬえ

☆彡 ☆彡 ☆彡

「……妖怪やと?」

「ええ、それもただの妖怪じゃないわ”大妖怪”の一人よ」
女……ぬえは阿久津に不敵な笑みを向ける。

「いっておくが、オレは女でも見下ろすヤツは容赦はせん」
言葉と同時に阿久津は足の爪で女を切裂こうとする。

―――が

「短気は損気って言葉知ってる?」
女は一瞬に阿久津の背後に回った。

「ッ!?」
(バカな……オレが回り込まれた!?)
阿久津は回り込まれたことに驚愕すると同時に……

―――熱くなった思考を静め、冷静になる。

「あら?意外とクールダウンできる人間なのね?意外だわ」
女は阿久津の様子にポカンとする。

「うるさい女だ。それで、妖怪が人間様に近づいて何が目的じゃあ」
阿久津は目の前の大妖怪と名乗る女に敵意がないことに気づき、目的を探る。

「別に、幻想郷の外に出るなんてもう遥か昔のこと。外の世界の人間はどんな感じか接触してみたかっただけよ。……私の目的のためにも……ね」
そう、ぬえは阿久津と戦う意思はなかった。
あくまでも己の目的のためにただけ。

「それじゃあ、生きていたらまた会いましょ」
ぬえの言葉と同時に―――

「ッ!!!」
阿久津の頭上に黒雲がいつの間にか出来ており、雷が落ちてきたのだ。

「クソがぁ!」
避けた後、再度、妖怪女に攻撃を仕掛けようと試みるが―――

―――既にこの場に女はもういなかった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


971 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:05:20 xL0MmxtY0

ぬえが去った後、阿久津は街の建物を目にする。

(あれは……もしかして、他にも決闘者がおるかもな……)
阿久津は建物を見かけると静めていたイラつきが戻り始める。

「チッ!とりあえず、中へはいるとするかのぉ」
(憂さ晴らしできるような奴がいればええんじゃからの……)
阿久津はぬえと対峙したイライラを解消できないものかと考えている。

故に―――

―――虎穴に入らずんば虎子を得ず

阿久津は人の気配がする雑居ビル内へ潜入した……

☆彡 ☆彡 ☆彡

(なんじゃぁ、”アレ”は……)
物陰に隠れている阿久津の視線の先にあるのは―――
「ひぎッ!?もう……やめ……てぇ……」

(なるほど……決闘者の他にもいるというわけか……)

阿久津は理解する。
女が恐竜に組み伏せられていることから、決闘者以外にも生物がいるということを。

「あ、あああッ!?」

恐竜のカギ爪が、智代子の二の腕や太ももに傷をつける。

「……一種の地獄絵図じゃな」
闘う力を持たない人間が一方的な力に蹂躙される。
それは、日ノ元達が決戦に民間人を肉の壁として戦術に組み入れた戦場に似てる。

(……ま、オレには関係ない。あの女には気の毒だが、先へ向かわせてもらうとするか)
”気の毒”には思う。
しかし、阿久津は”動揺”はしない。

そのまま、女を放置して憂さ晴らしができそうな他の決闘者を探そうとする。

―――しかし

―――僕に守れる命があるから守りたい。それだけです。

―――ピタ。

阿久津は足を止める。

「……」
そして長考すると動く。

阿久津は智代子を今にも食そうとするワイルド・ラプターへ―――

☆彡 ☆彡 ☆彡


972 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:06:36 xL0MmxtY0

「あ、あの……助けてくれてありがとうございます!」
(その姿……烏?)
智代子はすぐ目の前にきていた死から解放されたことにお礼を伝える。

「……別にアンタを助けようと思って助けたんやない」
阿久津はそんな智代子のお礼の言葉を受け取らなかった。

「それに言葉だけの礼なんかいらん」
「そ、それじゃあどうすればいいのでしょうか……」
”言葉のお礼はいらない”に智代子は戸惑いを隠せない。

「……そんじゃあ、100万円」
「……え?」
阿久津のまさかの言葉に智代子は身体を膠着させる。

「だから、アンタを助けた報酬じゃ」
「……」
阿久津の現金報酬に千代子は顔を俯く―――

「……」
(はぁ……オレは何を言ってるんじゃ。けど……やっぱり見返りのない手助けはオレには向かないってわけか……)
一度、死んでもなお、変わらぬ自分の思考に阿久津の表情に陰り、俯く。

―――そう、オレは”佐神”やない

阿久津の脳裏に浮かぶは、同盟相手の配下のヴァンパイア―――

「わ、わかりました!あなたに100万円払います!」
「……あ?」
智代子の言葉に阿久津は俯いていた顔を上げ―――

「アンタ、自分が何言ったか理解しとるのか?」
阿久津は智代子の目線に合わせて凄む。

―――ビリビリビリ

一般人なら耐えられぬ空気。
智代子は凄む阿久津に体をビクリと震わせる。

が。

「わ、わかっています!勿論!直ぐにお返しはできませんが、必ずあなたに100万円をお支払いします!」
智代子ははっきりと阿久津の目線に合わせる。

「私……恐竜に組み伏せられた瞬間、もう……このまま、あの男子学生のように”死”を迎えるんじゃないかと思っていました。だから……私は貴方に恩返しをしたい!だって私は……”あなたに甘い思い”を届けるチョコアイドルですからッ!!!」

智代子は精一杯の自分なりの覚悟を阿久津に示す。

(この女……ごっついな……)

阿久津は智代子の覚悟を聞くと口元を弛ませる。

「たった今からオレとアンタは金で繋がった関係じゃ。だから……アンタがオレに100万払うまで守ってやる。いっておくけどなぁ……1円もまけたりはしないからな?」

言うだけ言うと阿久津は智代子に背を向けて歩きだす。

「はい!お返しした時、ちゃんと100万円あるかどうか数えて下さいね!……私は園田智代子です。よろしくお願いします」
智代子は追いかけて走ると阿久津の隣に歩きながら自己紹介をした。

「……阿久津潤。よろしくのぉ」
阿久津はぶっきらぼうに答えた―――

【阿久津潤@血と灰の女王】
[状態]:健康 ヴァンパイア状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:智代子を守り、100万円を受け取る
1:智代子を守り、見返りを望む
2:アイドル……のぉ……小鹿みたいなもんか
3:あの女(妖怪)は次に会ったらしめたるわ……
[備考]
※参戦時期は死後より

【園田智代子@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:疲労(小) 二の腕・太ももに切り傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:阿久津さんに100万円払う為にも生きて帰る
1:阿久津さんと行動する
2:皆は巻き込まれていませんよね……
[備考]
※参戦時期はプロデュースイベント砂糖づけ・ビターエンドより


973 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:07:02 xL0MmxtY0

阿久津と別れた後、ぬえは別の場所へいた。

「ハ・デス……外来の神の一種ね。つまり…あの人間は利用されているということか。ふん!……悪いけど、「低級の神」の思惑には乗るつもりはないわ。むしろ……」
そういうと、ぬえは正体不明の種を自身に纏わせる。

「この殺し合いを利用して判らないことだらけに染めてやるわ」

「この正体不明の妖怪(ぬえ)が!」

妖怪らしく行動を起こそうとぬえは紅き空を飛翔する。

【封獣ぬえ@東方project 】
[状態]:健康
[装備]:正体不明の種
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:判らないものだらけに染め上げてハ・デスの鼻を明かす
1:殺し合いには乗らないが、妖怪として行動する
2:魔の者に利用されている……いつの時代も人間は愚かで滑稽ね
[備考]
※参戦時期は鈴奈庵26話後

『NPC紹介』
ワイルド・ラプター@遊戯王OCG
地属性 レベル4 恐竜族 ATK/1500 DEF/800
走ることが得意な恐竜。鋭いかぎづめで攻撃する。


974 : チョコは混ざり合い一つになる ◆s5tC4j7VZY :2022/06/20(月) 06:07:18 xL0MmxtY0
投下終了します。


975 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/20(月) 12:19:04 qbjyG/Jc0
投下させていただきます。


976 : 業の経験 ◆0EF5jS/gKA :2022/06/20(月) 12:19:36 qbjyG/Jc0
どうして、どうしていじめるの?
わたしはただ痛いことから助けたいのに?
傷ついている人をおうえんしたいだけなのに

それなのに それなのに
いつもいつもいつもいつもいつもいつも

わたしたちを傷つけ捕まえさらっていく。

こわいの
わからないの
かなしいの

いつも落っこちてくるあなたは
わたしたちをいじめるの。

ねぇ教えて、なんでそんなことをするの?
ただ、だれかを応援したり
おだやかにくらしたいだけなのに。



「ハピ…」

ピンクの球体が底知れぬ怒りと深い悲しみに震えている。

深淵のように黒い感情がいつもいつも渦巻いている

名はハピナス、ヒスイ地方の北、
純白の凍土でくらす
野生のハピナスの一体である。

彼女はなぜ恐ろしいほど憎しみを持っているのか。

理由はこのハピナスをいつもいじめる
15ほどの若者のせいである。

その若者はハピナスを捕獲すれば
手持ちのポケモンに大量の経験値を得て
効率よく強くできることを知っている。

だから若者は何回も何回もハピナスをつかまえつづけた。

ハピナスは人を見ると普段は逃げ出すが
その人が傷ついているのなら例外。

なんと逃げるほどの恐怖対象である人間を
おうえんするほど優しいのだ。

ケガをしていれば人もポケモンも関係なく支える。

そして若者はハピナスの優しさを徹底的に踏みにじった。
高いところから墜ちてきて、敢えてケガを負い
おうえんするハピナスをおびき寄せ
そのおうえんが終わり退散するハピナスの背に不意打ちを仕掛けて
効率よくハピナスを狩る悪魔の所業を繰り返している。

今まであいつにつれさらわれたハピナスはもう数え切れない。

こんどからはおうえんをやめて近くにいたら完膚なきまでに打ちのめすべき?

いや、できないできるはずがない。

温厚で優しいハピナスがそんな怖い暴力を振るえるわけがない。

自分が傷つくのは怖いし悲しいけど

他者が苦しい思いをするのはもっと悲しい。

黒曜の原野でくらすオヤブンさんは
躊躇なく暴れてあの若者相手にも猛攻するらしいけど
彼女は例外中の例外。


977 : 業の経験 ◆0EF5jS/gKA :2022/06/20(月) 12:20:11 qbjyG/Jc0

ほとんどのハピナスは自分からこうげきしたりしない。

でもこのままだといろんなハピナスがいなくなってしまう。

助けて、私はどうしたらいいの?


「ほほう…そなたもまた我と同じ絶望を味わってきたようだな…」

「ハピ…?」

嘆くわたしの前に現れたのは
全身銀色の巨体でおうかんをかぶったゼリー状のポケモンだった。
手足や胴体がなく顔しかないのはオニゴーリさんと同じだと思った。

「わかるわかるぞ…戦いの経験を
楽して得ようとするふざけた冒険者どもに
幾度となく苦しめられてきたのだな」

「紹介が遅れたな、我の名はウルトラメタキン
見えざる魔神の道を支配する者よ」

このポケモンさんも私と同じ…?
仲間がいっぱいいじめられたり
乱獲されたの?

「我もかつてはにっくき冒険者どもに狩られ
何度も苦汁をなめさせられたものよ…
思い返すだけでもはらわたが煮えくりかえるわ!!!」

「だがそんな暗黒時代はもう終わりを告げたのだ
究極のパワーを手に入れた今、ふざけた冒険者どもを血祭りにあげてくれる!」

顔しかないのにはらわたがどこにあるかはわからないけど
あなたもたくさん傷つけられたのの確かなのね…

「しかしそなた…なぜ強大な力を振るわぬ?
我には理解できたぞ、一見おとなしくかよわい不利をしているが…
元の我と違いその気になれば有象無象など屠れる力があるではないか?」

たしかに私は自分で言うのもへんだけど
決して弱くはないはず、
その気になればオヤブンさんのように
大暴れができるかもしれない。

でも誰かを傷つけたくないわ。

「…どうやらお前には余計な情けがあるらしいな…
そんなものは全て捨て去れ、
憎しみと破壊の権下となれい!!」

「ましてやここは殺し合いの舞台!!
どちらにせよ倒しに掛かってる来るのだよ愚かな冒険者がな!!!
我らにははじめから戦うというせんたくしか存在せぬのだ!」

そんなこと嫌、だけど…
このままだと私たちハピナスはみんな消えるかもしれない
狩られないためには…やっぱり戦うしかないの?

「お前はおそらくバカではない!
だから倒されぬため欲深き冒険者を一掃すべきというのはわかるだろう!
おとなしくズタボロにされていいわけがない!!」

確かに…その通りだわ今のままではだめ…
怖いけど頑張って…戦わなくちゃ…!!
私に今戦い抜く決心がみなぎった。
とてもこわいけどなんとしてでもやられないようにしなきゃ。

「なんと気高き美しい眼よ…やられまいとする
絶対の意思がやどったようだな!それでいい!!」

「さあいくぞ!!いまこそ戦いの経験を
労せず得ようとするふざけた冒険者を
一人のこらず返り討ちにするのだ!!」

こうしてわたしとウルトラメタキンさんは進み始めた。
二度と己や同胞を守るべく冒険者やあの若者を倒すために。

でも…戦うのはやっぱりこわい。

【ウルトラメタキン@ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:健康。冒険者への憎しみ。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、
[思考・状況]基本行動方針:冒険者を返り討ちにする。
1:ふざけた冒険者は一掃してくれるわ!
[備考]
瀕死になったり大ダメージを受けても数体のメタルキングには
制限で分離することはできません。

【ハピナス@Pokémon LEGENDS アルセウス】
[状態]:健康。自分を狩る若者への恐怖と怒り。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、
[思考・状況]基本行動方針:冒険者を返り討ちにする。
1:いじめられないためにやっつけなくちゃ。
2:本当は戦いたくないけど…
[備考]
特にありません。


978 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/20(月) 12:20:26 qbjyG/Jc0
投下は以上となります。


979 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/20(月) 19:11:10 pmStfnko0
投下します


980 : Holy wing, fly to the sky ◆FiqP7BWrKA :2022/06/20(月) 19:11:49 pmStfnko0
「生きてる……」

間違いなく、彼のくれた命が今ここで鼓動を響かせている。
喜ぶべきか、悲しむべきか。
正直彼女としては複雑だった。
渡された武器にしてもそうだ。
ターコイズに、白い鴉のレリーフの刻まれたこのスタンプは、
ケルト神話などで恐れられるような死の象徴か、
それとも日本神話などアジア圏で信じられる神の使いか。
どちらにしたって、彼女の、立華かなでの心は複雑だ。

(私は天使じゃない。けど……)

ただ、ただ彼から命をもらったがゆえに、
命の恩人にたった一言感謝も言えないただの人だ。
けどもし、また彼に貰った命に使い道があるというのなら、

「私は、結弦に恥じない人でありたい」

<ホーリーウイング!>

<Confirmed!>

<ウイングアップ!>

起動したホーリーウイングバイスタンプを、
腰に巻いたツーサイドライバーに押印。
スロットにセットし、間を置かず拳銃の安全装置に似たスイッチを押す。
パタン、と白い羽のパーツが倒れ、弾倉を模した発光パーツがあらわになる。

<Wing to fly! Wing to fly! Wing to fly! Wing to fly!>

「変身」

ベルトにセットしたままのライブガンの引き金を引き、
背中から生えた白い翼が彼女の体を包む。

<ホーリーアップ!>

再び開かれた翼の中から現れたのは、ターコイズのベースカラーに、
飛び立つ白い鴉の意匠。

<Wind! Wing! Winning!>

<ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリーライブ!>

生を言祝ぐ聖なる飛翔。
仮面ライダーホーリーライブ!

「まずは、どこに行こうかしら?」

カッコつけの飾りと違って、変身音に違わずちゃんと飛べる翼を広げて飛び立った。
それはさながら、天使の様に。


981 : Holy wing, fly to the sky ◆FiqP7BWrKA :2022/06/20(月) 19:12:13 pmStfnko0
【立華かなで@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:ツーサイドライバー@仮面ライダーリバイス
     ホーリーウィングバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この鼓動に恥じない自分でいる。
1:まずは他の参加者を探す。
[備考]
※最終回終了後からの参戦です。



支給品解説
【ツーサイドライバー@仮面ライダーリバイス】
仮面ライダーエビル、ライブ、ホーリーライブに変身するためのベルトで、
設計、開発はFENIXの遺伝子工学研究所所属の科学者で、
ベイルドライバー、及びデモンズドライバーの開発者、狩崎真澄の息子、ジョージ・狩崎。
搭載したツーサイドエンジンという内蔵プログラムにより、
マイナスエネルギーを極端に増幅させる変身と、
その反作用を利用してプラスエネルギーを倍増する特殊な変身の2通りを可能としている正に二面性の強いベルト。
オーインジェクターの付いたベルト部分と、スタンプを装填するツーサイドウェポンの二つで構成されており、
前述の変身の場合、近接ブレードであるエビルブレードが展開され、
後述の変身の場合、遠距離武装のライブガンとして使用される。
これらは変身後に切り替え可能。
また、リバイスドライバー同様にゲノムチェンジが可能。
ホーリーウイングバイスタンプとセットで支給。


982 : Holy wing, fly to the sky ◆FiqP7BWrKA :2022/06/20(月) 19:12:25 pmStfnko0
投下終了です


983 : Holy wing, fly to the sky ◆FiqP7BWrKA :2022/06/20(月) 19:12:36 pmStfnko0
投下終了です


984 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/20(月) 21:16:20 N7OgJhBg0
投下します


985 : 名前の縁 ◆NIKUcB1AGw :2022/06/20(月) 21:17:15 N7OgJhBg0
夜の山道を、一組の男女がゆっくりと進んでいる。
制服を身につけた茶髪の少年は、藤岡。
眼鏡をかけた長髪の少女は、大垣千明である。
二人は決闘の開始直後に遭遇し、お互い殺し合う気はないことを確認して共に行動していた。

「大垣さん、そこでっかい根っこがあるんで注意してください」
「オッケー。ていうかさー、藤岡。
 さっきも言ったけど、千明でいいって。
 この非常事態に、年功序列も何もないだろ」
「いや、それは個人的な事情でちょっと……」
「なんだよ、事情って」

言葉を濁す藤岡を、千明が問い詰める。
やがてごまかしきれないと判断したのか、藤岡は説明を始めた。

「被るんですよ、名前。友達の妹と……」
「ほぉ〜ん」

藤岡の返答に、千明はいやらしい笑みを浮かべる。

「な、なんですか、その顔……」
「言い渋ったってことは……。本当は友達じゃなくて、彼女だな?」
「なっ!」

千明の指摘に、藤岡は顔を真っ赤にする。

「いや、本当に友達ですって! まだそういうのじゃ……」
「まだってことは、やっぱり好きなんじゃねえか。
 妹とも面識あるってことは、付き合うまではいってなくてもけっこう進んでるんじゃねえの?」

ノリノリで恋バナを展開しようとする千明。
だがのどかな雰囲気は、次の一瞬であっさりと砕け散った。

「ずいぶんとのんきな連中がいるようだな。
 自分たちが置かれた状況すら理解できんか?」
「うおっ!」

突然の声に、千明が間の抜けた声を上げる。
二人の前には、いつの間にか男が立っていた。
男は、全身を黒い鎧で覆っていた。
唯一肌が露出している顔と、ところどころに使われた金色のパーツが夜の闇の中に浮かび上がっている。

「どこの馬の骨かもわからん怪人に、いいように使われるのは癪だが……。
 だからといって、生き返ってすぐにまた死ぬのもさすがに御免被るのでな。
 さっさと死んでもらおうか」

そう告げると、男はどこからともなく緑色に装飾された剣を取り出した。

「剣はさほど得意ではないが……。
 無力なガキを殺すのにはこれで十分よ」

低い声で呟きながら、男はジリジリと距離を詰めてくる。

「大垣さん……」
「ああ、わかってる。あの雰囲気は、ただのコスプレしたおっちゃんじゃねえ。
 ガチでやばいやつだ」

顔中に冷や汗を浮かべながら、千明は背負ったデイパックを前に回して手を突っ込んだ。

「だが、ただでやられてやるつもりはねえ!
 私にだって武器が……」
「いえ、やるのは俺からです」

そういった藤岡も、いつの間にかデイパックから何かを取り出していた。
それは鎧武者のようなイラストが描かれたプレートだった。
藤岡がそれを腰に当てると、即座にベルトが飛び出し彼の体に固定される。
さらに藤岡は、奇妙な錠前を取り出す。
それは中央にバッタのような顔が描かれ、さらにそれを取り囲むように14の顔が描かれていた。

『ロックオン!』

錠前がベルトにセットされると、録音された音声がコールされる。
その直後、藤岡の頭上の空間にジッパーが出現した。
ジッパーが開き、向こう側から何かが落下してくる。
それは、錠前に描かれていたのと同じ顔だった。ただし、やたらと巨大であった。

「なんじゃこりゃああああ!」

絶叫する千明をよそに、巨大な頭は藤岡に覆い被さる。
そして、鎧として展開した。
展開が終了した時、そこにはバッタの顔を胸にいただく武将のごとき戦士が立っていた。

『1号アームズ! 技の1号、レッツゴー!』

始まりの戦士の力を宿した鎧の戦士、仮面ライダー鎧武・1号アームズ。
まさに変身の瞬間である。


986 : 名前の縁 ◆NIKUcB1AGw :2022/06/20(月) 21:18:22 N7OgJhBg0

「すっげー! 本物の変身ヒーローじゃん!
 これならあのおっちゃんも……あれ?」

テンションを爆上げした千明だったが、黒い鎧の男に視線を移した途端、そのテンションも吹き飛ぶ。
男は、まさしく鬼と呼ぶにふさわしい形相になっていた。

「貴様が……。貴様のような、何も知らないガキが……。
 本郷猛の力を! 仮面ライダーの力を! 軽々しく使うなぁぁぁぁぁ!!」

絶叫と共に、男は藤岡に斬りかかった。


男の名は、地獄大使。
ショッカー最後の大幹部。


【藤岡@みなみけ】
[状態]仮面ライダー鎧武・1号アームズに変身
[装備]戦極ドライバー(鎧武)&昭和十五ライダーロックシード@平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:黒い鎧の男(地獄大使)を撃退する
2:知り合いがいないか心配


【大垣千明@ゆるキャン△】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:私も戦うべきか?
2:なでしこたちまで巻き込まれてねえだろうな……


【地獄大使@仮面ライダー1号】
[状態]激怒
[装備]風双剣疾風@仮面ライダーセイバー
[道具]基本支給品、猿飛忍者伝@仮面ライダーセイバー、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:気乗りはしないが、優勝を目指す
1:1号の力を軽々しく使うガキ(藤岡)を殺す。
[備考]
参戦時期は、蘇生直後。


【戦極ドライバー(鎧武)@平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦】
ユグドラシル社が開発した変身ベルト。
使用者登録機能を削除した上で、誰が使用しても鎧武に変身するよう調整されている。


【昭和十五ライダーロックシード@平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦】
戦極ドライバーとセットで支給。
仮面ライダー1号からJまでの、15人の仮面ライダーの力が宿ったロックシード。
ただし制限により1号以外の力は封印されており、実質「1号ロックシード」である。


【風双剣疾風&猿飛忍者伝@仮面ライダーセイバー】
ソードオブロゴスが管理する、風の聖剣。
長剣から分離して2本の短剣になり、さらに交差して組み合わせることで手裏剣になるという他の聖剣にはないギミックが備わっている。
ワンダーライドブック「猿飛忍者伝」をセットすることで、仮面ライダー剣斬へと変身することが可能。
変身するには聖剣に認められなければならないが、単に武器として使うだけなら(技量さえあれば)誰でも振るえる。


987 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/20(月) 21:20:51 N7OgJhBg0
すいません、投下してから気づきましたが、漢字間違えてました
風双剣疾風→風双剣翠風です

これで投下終了です


988 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/20(月) 22:27:01 oBZ/XPns0
投下します。


989 : ターニングポイント ◆bLcnJe0wGs :2022/06/20(月) 22:27:41 oBZ/XPns0
『王都楼さん。 どうやら、あなたのお望み通りになりましたね。
 ・・・・あなたは、ついに無罪判決を受けるわけです。』

『しかし・・・・ 1つだけ言っておく。
 近い将来、ウデキキの殺し屋が被告の前にあらわれるだろう。
 その男のシゴトは、すばやく、そして、たしかだ。
 そのようすは、このビデオを見れば、よくわかるだろう。
 では、裁判長! 判決をおねがいしよう。』

『よ・・・・よろしいですかな? 弁護人。』

─────

『・・・・おめでとうございます。王都楼 真吾さん。
 せいぜい楽しんでください。・・・・残り少ない人生を。』



────────────────

(チックショウ! 殺し屋に命を狙わる羽目になったオレを…コケにしやがって!)

 とある民家の洗面室。 そこでは、自分が過去に雇った、腕利きの殺し屋との契約を破った為に彼の怒りを買い、命を狙われる立場になったにもかかわらず、そんな自分を無罪放免にする形で見放した弁護士への逆恨みともいえる憎悪を抱きながら、壁に力強く拳をぶつける青年がいた。

 彼の名は王都楼 真悟(おおとろう しんご)。
 かつて、『春風の様にさわやかなアイツ』をキャッチコピーに俳優をやっていた男だ。

 彼が主演の特撮番組『トノサマン・丙』は子供や女性から多大な人気を集めていた。

 だが、彼には表向きの印象からかけ離れた恐ろしい裏の顔も持ち合わせていた。


990 : ターニングポイント ◆bLcnJe0wGs :2022/06/20(月) 22:28:17 oBZ/XPns0
 それは過去に天野由利恵という女性と付き合ったものの、
 途中であっさりと切り捨てたり、ほぼ同時期にデビューしたライバルの藤見野イサオと張り合い続けた結果、それがエスカレートしてトラブルを引き起こし、由利恵が自殺する事態を引き起したり、
 挙げ句の果てには藤見野の部屋等にカメラを仕掛け行動を監視したり、己の手を汚さない為に殺し屋に依頼して暗殺させる、等といった悪逆非道な悪事を繰り返してきた、正真正銘の非道な人間である。

 そんな彼も弁護士の成歩堂龍一に出会い、自分が犯した罪から逃げる為に利用しようとしたのだが、事件現場に残されていた数多の証拠品によって自分が追い詰められ、挙げ句の果てには先述の殺し屋の怒りを買い、命を狙われる羽目になった上で成歩堂からも見放されてしまい、やがては殺し屋の手から逃れる為に有罪になって刑務所内で過ごす方が遥かにマシだと思う様になり、己の顔を掻きむしりながら必死に有罪判決を求め、その場にいた検事に連行されていった。

 ─だが、気付けばこの『デュエル』の一参加者として見知らぬ場所に連れて来られ、そこで見せしめを目撃した。

(これから…オレは殺し合いに巻き込まれることになるのか?
 これはオレへの刑罰なのか?)

 それを目にした彼は、この催しを『刑罰』ではないのかと思う様になっていた。

(ん…でも、最後の一人になれば富と名誉、更にはどんな願いも一つだけ叶えられると
 だとすれば、自分の悪事を知られたことで失ったに等しいであろう富と名誉を取り戻せるかもしれない、更には殺し屋に狙われる日々から解放して貰えるかもしれないな。
 だが、こんな刑罰に豪華な報酬があるっていうのも辻褄があわないな)

 だが、刑罰というにはあまりにも魅力的過ぎる優勝賞品があるというという時点で辻褄が合わない。

 更には、ハ・デスが現れた際には非現実的な現象も起こっていた。
 まるで映画のCGのようなものであった。
 彼の話していた内容も非現実的なものだったから、その時の王都楼は若干戸惑っていた。

 (あのハ・デスという奴、カードが何たらかんたらとか言ってたよな…?
 だとしたら、これは刑罰じゃないのか…?
 まあ、殺されるのはゴメンだが、 ここはどうするべきか…?)

 洗面台近くの壁に取り付けられた鏡には自らが掻きむしった、生傷だらけの顔が映っていた。

 彼自身として、命を狙われる恐怖は既に味わった。
 そんな彼がこの場所で、これからどのような方針をとるのか。
 それはまだ、誰にもわからない。


991 : ターニングポイント ◆bLcnJe0wGs :2022/06/20(月) 22:28:38 oBZ/XPns0
【王都楼真悟@逆転裁判2】
[状態]:顔に無数の引っ掻き傷、精神的ダメージ(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:これからどうしようか?
[備考]
※参戦時期は第4話の2日目法廷パート終了後。(また、該当の裁判で成歩堂龍一は無罪判決の要求を2回行っています。)


992 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/20(月) 22:28:54 oBZ/XPns0
投下終了です。


993 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/20(月) 23:00:25 XB3fQ.3.0
投下します


994 : 僕に天使が舞い降りた! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/20(月) 23:01:24 XB3fQ.3.0
突然こんな場所に連れて来られて殺し合いを強要される。
まるで、夢か幻かでも見ているようだ。
だけどこれはれっきとした現実、目から背ける事は出来ない。

「優子、良……」

二人の愛娘の名前を呟く白い割烹着を着た女性の名は吉田清子。
とても若々しい姿をした美女であるが、これでも二人の子持ちである。

(二人がここに来ていなければいいのだけれど……)

もし二人も殺し合いに巻き込まれているとしたら無事でいてほしい。
その為なら自分の命を捧げても構わない。
そんな娘達を想う母の愛情が引き寄せたのか。

「……母さん?母さん!」

清子を「母さん」と呼ぶ声が聞こえた。
母の想いが娘達に通じて再会させた……訳では無かった。

「貴方は……誰かしら?」

自分を母さんと呼ぶその声は成人男性の者だった。
子供は娘が二人で、息子なんていない。
明らかに赤の他人であった。

「いやだな母さん。僕だよ」
「あのー……人違いかとー……」

見知らぬ男に母親扱いされ、困惑する清子。
それを気にせず男は真っ黒に濁った瞳で清子に迫り来る。

「かわいい一人息子を忘れたなんて言わせないよ。母さん」
「いやっ!離してくださいっ!」

男に腕を掴まれた清子は振りほどくために男の体を突き飛ばす。
すると男はプルプルと体を震わせながら立ち上がり……。


995 : 僕に天使が舞い降りた! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/20(月) 23:02:19 XB3fQ.3.0
「ひっ……」

男の顔を見た清子は短い悲鳴を上げながら後ずさる。

「ひどいよぉ、母さん……ボクは……ボクはいつだって、母さんの事を愛して……」

男は怒りと悲しみをドロドロに混ぜ込んだような不気味な表情で清子を睨みつける。
大粒の涙がポロポロと零れて、くしゃくしゃに濡れた顔は酷く歪み。
清子に向かって叫びながら飛びかかった。

「愛してるのにぃぃぃぃ!!」
「いい加減に……しなさい!」

清子は支給品であるスタンガンを取り出して男の体に押し付け、スイッチを入れた。

「がぁぁっ!か、母さん……」
「私は貴方のお母さんじゃありません!もう近寄らないでください!」

そう言うと清子は男から逃げる為に全速力で駆け出した。
あの男は普通では無い、狂人だ。
まともに話が通じる相手ではない。
スタンガンで動けなくなっている内に出来るだけ遠くまで逃げないと。

そう思考しながら走る清子の肩が何者かによって、がしっと捕まれた。
息を切らしながら肩を掴んだ者の方へゆっくりと振り返ると。

「痛いじゃないかぁ。母さん」

異形の怪物の姿へと変貌していた男が立っていた。

「い、いやぁぁぁぁああああああああ!!!!」

悲鳴を上げながら逃げようとする清子の体を異形の男はがっちりと捕まえる。
スタンガンを出して抵抗しようとするも、それも掴まれて奪われると
地面に落としてスタンガンを踏み潰して破壊した。

「離して、離してぇぇ!!」
「どうして分かってくれないの!?僕は母さんのためにやっているのにっ!!」

暴れる清子を逃がさないように抑えつけ、男は泣き叫ぶ。
その醜悪な姿に清子は恐怖した。

「僕が……僕だけが母さんを救えるんだ。だから大人しくしてよ」
「嫌です!!お願いします!離してください!!……ぐっ!?」

恐怖に怯え懇願する清子の細首を男は強い力で締め上げる。

「僕を拒絶するなんて酷いよ……母さん……」
「ぐ……げぐ……」

男は首がへし折れない程度の力で絞め続けた。
清子の手足はバタバタと揺れて抵抗するも次第に動きが弱くなる。

(優子、良……私はもう、ごめんなさ……)

薄れゆく意識の中、最期まで娘達の身を案じながら
清子の命は、男の身勝手な欲望により蹂躙されて理不尽に奪われた。

【吉田清子@まちカドまぞく 死亡】


996 : 僕に天使が舞い降りた! ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/20(月) 23:02:46 XB3fQ.3.0

「ハァ……ハァ……母さん、母さん!」

清子を殺害した男の名前は片桐章馬。
彼は連続殺人犯として刑務所に収容されていたが
そこで異形の存在になれるアギトの力を手に入れた彼は現在も殺人を繰り返していた。

章馬は清子の衣類を全て脱がせると、経産婦とは思えない程に美しく綺麗な裸体を晒させた。
息を荒くしながら支給品であるギターケースを開けると
中には大量のメイク道具が入っている。

「キレイにメイクしようね。母さん」

楽しそうに笑いながら清子の死体に化粧を施し続け
元々高かった美貌にますます磨きがかかっていく。

「さぁ母さん、いいよ。キレイになったよ。母さん……」

化粧を終えた章馬は清子の顔を見て、頬を紅潮させながら笑みを浮かべていた。

「そして母さんは!天使になるんだ……!」



とあるエリアの巨木にて
高い場所で吊るされている女性の遺体があった。

女性は全裸に花で作られたアクセサリーを身に着け
白い羽根に見立てた布を纏わせた恰好をしていた。
表情は微笑むように安らかで、それはまるで天使を想わせる姿であった。

「これでまた一人、母さんを天使にしてあげた」

これが片桐章馬の天使殺人である。
彼の歪んだ愛情表現によって母親が次々と殺されて行った。
アギトの力を手に入れた片桐章馬の狂気は警察にも止める事は出来ない。

【片桐章馬@仮面ライダークウガ (漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜4、風間大介のギターケース@仮面ライダーカブト
[思考・状況]
基本方針:このゲゲル(デュエル)で勝ち残る。
1:母さん達を天使にしてあげる
2:母さん以外の参加者は始末する。
[備考]
※ゴ・ガメゴ・レに敗れる前からの参戦です。

【スタンガン@現実】
護身用の武器であり殺傷力は無い。

【風間大介のギターケース@仮面ライダーカブト】
メイクアップアーティストである風間大介が所有しているギターケース。
中には大量のメイク道具が入っている。


997 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/20(月) 23:03:07 XB3fQ.3.0
投下終了です


998 : ユアジン背神論における唯一の展望 ◆2GIJQnrM6. :2022/06/21(火) 00:00:05 JkscLfTY0
_____決闘とは二重の中で命を奪い合うコロニー。
心に大きな隙間を抱える男はある程度時間を図ったあと、ポリシーのために優勝することを決めた。
だが、地球トラックの雲氏に戒する徐行。水道管の中でアベラ現れるニシンのパイ。
有効な単語がそろってもない中で、エンティティはゆっくりと口を開く。

「アルブサエンキチアファオソウス。楽地の日に現れた彼らの戯言と同じだ。」
「ゆっくりと世界が沈んて行く中で、私たちはゲームだけを生きがいにしていこうじゃないか。」

もはや脳内のCPUが書き換えられたともいわんばかりの発言を繰り返すエンティティに。遠くの地平線から
見上げるサボテンたちも大いにわらっていた。笑う笑う。笑いながらにして泣く者もあらわれる。
混沌が吐しゃ物をはき、東の塔から人類監視エクストリームワックス柵の軌道が準備され始めた。
もう残りあと5年も生きてられないこの中で、もう死んだジョーイやポロに対して思いを紡ぐ。
「エスティアスーガーナバ、知ってますよ。」僕のボクダン慱駅ではニッチカルバポイントが723をたたき出したので…
「ジョーイ。ポロ。」エルダーマーキュリー。エルダーマーキュリー。しばらくぶりのその言葉で、
大地が救われたものでもないという事を返信した。(Outlook)

さてここからは方針を決めるわけだが。
私は何人もの残骸を見たことがある。
いわば傍観の掃除屋。ヤズパースのときはそうはいかなかったが、今回の戦いでは
本当の掃除屋になり、八幡天満宮。
そのためにはこの会場、主催であるハ・デースさえもBackroomsの中に閉じ込めなければならないと。
そう確信したのだった。
ちなみに戦いに勝ち残った証には、沖縄だけでなく鹿児島、マラウイにもサトウキビプロジェクトを開墾しようといっていたのは、ここだけの話…




【Entity@Backrooms】
[状態]:思考混濁
[装備]:無し
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いの謎を解き、Backroomsに加えるつもり。
1:フロントルームへ…
2:或いは赤い線。幾度も見た地獄。
[備考]
ジャミング電波を受けてます


999 : ユアジン背神論における唯一の展望 ◆2GIJQnrM6. :2022/06/21(火) 00:01:03 JkscLfTY0
申し訳ありません。
投下宣言を怠っていました


1000 : ユアジン背神論における唯一の展望 ◆2GIJQnrM6. :2022/06/21(火) 00:02:01 JkscLfTY0
投下終了します。


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