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オリロワVR

1 新しい世界へようこそ! ◆H3bky6/SCY :2020/09/04(金) 23:34:56 ID:5/70UkZ.0


『New World』へようこそ!


はじめまして。私は皆様の新しい人生をお助けする案内用AI『シェリン』と申します。
新しい世界であなたにこうして出会えた事、非常に嬉しく思います。
どうぞこれからよろしくお願いいたしますね。

――――『New World』

それはこの遥かなる宇宙に新たに生み出された新世界。
それは様々な世界から集められた勇者が集う世界
それが『New World』

高次元干渉システム『Isaac』による次元介入により強制招集された勇者の一人、それがあなたです。
現在あなたは魂魄制御システム『Pushuke』により、ゲームシステムと魂の直接接続が完了しております。
踏みしめる大地の感触。頬を撫でる風の心地よさ。傷がつけば痛みすらあるでしょう。
生身と変わらぬように『New World』で"生"を感じることができるのです!

そこにあるのは現実と見まごうほどのリアル。
そして現実では味わえないファンタジーです。
新世界はあなたに新体験を約束する事でしょう。

あなたにはこの世界でただ一人の勇者となって貰いたいのです。
そのために他の勇者と殺しあっていただきます。
生き残るのはただ一人のバトルロワイアルです。

優勝者には『World master』の称号が与えられます。
優勝者には新世界『New World』の所有権が与えられます。
優勝者には高次元干渉システム『Isaac』及び、魂魄制御システム『Pushuke』の使用権が与えられます。

まあ! なんて豪華賞品! ぜひとも勝ち残りたいですね。

なお、イベント終了まで『New World』から離脱はできませんのでご注意ください。
また『New World』で死亡した場合、魂が消滅し元の肉体も死亡しますのどうかご注意ください。
この説明を聞き終えた時点でこれら注意事項について同意したものと見做されますのでご了承ください。

それでは早速、新たな世界に触れてみましょう。
と言いたいところですが、その前に。
幾つかご説明させていただきたいことがあります。
少々お付き合いくださいね。

>あなたにGP(ゲームポイント)が300ptが与えらました。

おめでとうございます!
GPは様々な用途に使用できるゲーム内通貨のようなものです。
ゲームを有利に勧めるために沢山集めたいですよね。

主な入手方法としては勇者の殺害です。
1名殺害するごとに30ptが得られます。
また、3名以上を殺害した勇者を殺害した場合、『強敵撃破ボーナス』として2倍の60ptが獲得できます。
チャンスがあれば積極的に狙っていきたいですね!

まずはこのGPを使用して『New World』であなたの分身となるアバターの設定を行いましょう。

>アバターの作成のチュートリアルを表示しますか?

822 知らせて芸術 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/04(木) 21:42:03 ID:W0GG9e/60
「高井ー!どこに行ったー!高井ー!」

枝島トオルは草原の上で生徒の名を叫ぶ。
診療所から出ていった彼女を追って、現在は陣野優美に出会った湿地帯の近くにまで歩いて来た。

傷のせいで走ることもできず、痛みに耐えながらであったためこの場に到着するのに時間がかかってしまった。
それでも自分にできる限りの速度を出して移動したつもりだ。
しかし、ここにたどり着いた時に高井丈美の姿は見えなかった。
それどころか人の気配も一つも感じられなかった。

(あいつ…今はどうしているんだ)

2人の姿が見えないことの理由はいくつも考えられる。

1.高井がこの辺りに着いた頃には陣野は既に別の場所に移動しており、それを探すために高井も別の所を探し始めた。
2.高井が陣野と再会後、説得に成功して2人で行動を共にした。
3.高井と陣野はこの場で再会し、陣野が高井を殺害した。
4.高井が陣野を返り討ちにしてしまった。
5.全く別の第三者による介入が起きた。

何が起こるか分からない殺し合いの舞台である以上、他にも様々な可能性が挙げられる。

(俺が〇を付けたいのは2だか、この可能性は一番低い。もしこうなっていたとしたら2人は神社の方に向かうはず。それだったら俺がここに来る途中で出会っているはずだ。それにあの子が説得に応じるとは思えない。)

都合の良いことである程、その可能性は自身でも否定的な考えの方が頭に出る。

(まだ良い可能性で最も起こりそうなのは1だ。だが、悪い出来事が起きたことも否定できない)

誰に相談できる訳でもなく、2人の行方に関して考えを巡らしても、自分が納得いく答えが見つからない。

(ここはやはり、1を信じてみるしか…)

こうなった以上、取りあえず自分に出来ることからやってみるしか他はない。

(だが…俺はどこに向かうべきだ?)

高井が別の場所に行ったと仮定しても彼女がどこに向かったか分からなければ行動のしようがない。
見当違いの方向に行ってしまえば彼女との距離がさらに離れていく事態になってしまう。
そうなった場合、この足では追い着くことはもはや不可能と言っても過言ではない。

(俺はここからどうすればいいんだ…!?)

現状だと、彼にできることはほぼ何も無いに等しいことになってしまった。
このままでは無意味な時間が過ぎていき、高井を助けることもできなくなってしまう。
教師として、人間として、白井杏子として、それは何としても避けたいところであった。

(こうなったら…!)

枝島はとある手段をとることにした。
それは彼にとっても苦肉の策であった。



美空善子と田所アイナは、怪物に変じる少女から離れ、市街地の中にまでたどり着いていた。

そんな彼女たちは街中に入ってすぐの位置で足を止めた。
なぜなら彼女たちは後方からある音を聞いたからだ。

「今の音は…」

彼女たちが聞いたのは小さな爆発音であった。
街中に入ってひと息ついている間が無ければその音を聞き逃していたかもしれないくらい小さな音だった。
その爆発音を聞いた時、2人にはある男の顔が思い浮かんだ。

「ひかりちゃん、今のはもしかして」

「うん、あの音は焔花さんの…」

彼女たちは爆発音を聞いて、その音が焔花珠夜の爆弾の音であることを確信した。
誰かを傷つけるつもりはなく、ただその爆発を見てもらいたい。
そんな彼の不器用な想いを感じる音であった。
彼女たちは焔花の爆弾の音を聞き慣れているわけではない。
だが、先ほどの爆発音は絶対に彼が作ったものであると確信できる言葉では表現できない『何か』があった。

823 知らせて芸術 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/04(木) 21:42:44 ID:W0GG9e/60
「でも、なんであっちから音が?あの辺りに誰かいるの?」

「一体誰が…それに、今の音は空から…」

爆発音はただ後方から聞こえたわけではなかった。
まるで花火のように、上の方へと打ち上げられる音も一緒に聞こえていた。

美空善子はかつて焔花が自分のライブ会場に爆弾を仕掛けた時のことを思い出した。
爆弾自体は彼女が彼を追い払ったので爆破は未遂に終わった。
後から爆弾を回収した警察に聞いた話によれば、その時の爆弾は打ち上げることで上空で爆発させる物だったらしい。
それと同じような物がこの殺し合いの場にあったということだろうか?

「ひょっとして、誰かが自分の居場所を知らせるために…?」

爆弾により空の上で光と音が出れば、意識はそちらの方へと向く。
威力は小さかったがようだが、自分達のように近い位置にいる者であればそれを知るには充分であった。

「もしかして…陣野優美が?」

可能性の1つとして先ほど出会った少女、陣野優美によって爆発が起こされたというものが思い浮かぶ。
(何故かは知らないが)彼女は自分の姉を恨んでおり、その行方を探している。
もしかしたらその姉に場所を知らせるために爆弾を使ったのかもしれない。

「でも、それはない…かな?」

しかしもしその目的で爆発物を使用するのならもっと前に使うはずとも考えられる。
それにあの音量では自分達のような位置の者じゃないと音は聞こえないだろう。
せいぜい地図で区分けされたエリア1マス分の距離までしか届かないだろう。
どこにいるのかも分からない人を探すためにあんな使い方をするとは考えにくい。
だとしたら、誰が一体どんな目的で今の爆発を起こしたのか、その理由は分からない。

「ひかりちゃん、さっきの音がした方へ行って確かめてみようよ」

「大丈夫?アイナちゃんはさっきので…」

「そのことは心配しないで。あれから時間が経っているから一応回復してるの」

美空善子が心配するのはアイナが陣野優美の心の声を聞いて気絶したことである。
テレパシー能力を持たない善子ではあるが、その時の様子からアイナが感じ取ったものは相当すさまじいものだったのだろう。
善子はこれによる精神疲労がまだ残っていると考えていた。

確かに、アイナの精神はまだ完全には回復しきっていない。
けれども、爆発音についても気になるし、何よりアイナには善子を心配させたくないという想いがあった。

「それにもし焔花さんの爆弾があるのなら、それが悪いことに使われてほしくない」

「……うん、確かに。あの人の気持ちを汚されちゃうと思ったら、嫌だよね」

焔花珠夜は文字通り命をかけて自分たちを守ってくれた。
爆発が陣野優美の仕業じゃないとしても、他の危険人物によるものとも考えられる。
もしそうなら、彼の爆弾を悪用することも考えられる。

爆弾がまだ残っているかどうかは分からない。
それでも、彼の爆弾が何かよくないことに使われると思うと嫌な気持ちが出てくる。
誰が使っているか知らないがそれは避けたいところだ。

「分かった。それじゃあ行こうか」

2人は市街地から出て、今まで来た道を戻るという選択をとることにした。

[D-4/市街地近くの草原/1日目・午前]
[美空 善子]
[パラメータ]:STR:B VIT:C AGI:C DEX:B LUK:B
[ステータス]:健康、疲労(小)
[アイテム]:不明支給品×3
[GP]:10pt
[プロセス]
基本行動方針:殺し合いには乗らず帰還する
1.爆発音が聞こえてきた方向に行く
2.危険人物がいたら撃退する
3.知り合いと合流
※『アイドルフィクサー』所持者を攻撃したことにより、アイドルの資格と『アイドル』スキルを失いました。
GPなどで取り戻せるかは不明です。

[田所 アイナ]
[パラメータ]:STR:E VIT:E AGI:C DEX:C LUK:B
[ステータス]:健康、精神疲労(中)
[アイテム]:ロングウィップ(E)、不明支給品×4
[GP]:10pt
[プロセス]
基本行動方針:お家に帰る
1.爆発音が聞こえてきた方向に行く
2.優美さん…
3.ひかりちゃんには負けない

824 知らせて芸術 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/04(木) 21:43:55 ID:W0GG9e/60


市街地近くでアイドルとテレパシー少女が聞いた爆発を起こしたのは枝島トオルであった。
彼は自分の居場所を高井丈美に知らせる目的でこの爆発を起こした。

もちろん、この爆発が彼女に届いてない可能性も考えている。
もしかしたら爆発が危険人物を呼び寄せてしまうかもしれない。
だが、それでも何もやらないより、何らかの行動をとるべきだと判断した。
爆弾はまだ残っている。
ここに危険人物が来てしまった場合はこれで撃退するしかない。
全く関係のない人物が引き寄せられた場合は協力を要請しよう。

焔花珠夜という男の名はニュースで聞いたことがある。
だからこの男がしでかした事件についてもある程度の情報は得ている。
何でもこの男にとっては爆発は芸術でありそれを見てもらうために事件を何度も起こしたらしい。
美術教師として、そんなことをのたまう狂人が作った物を使用するのには抵抗があった。
けれども、状況が状況だ。
使える物は何でも使うしかない。
本人(本人じゃない可能性もあるが)は既に死んでいるらしいから、このアイテムも遠慮なく使わせてもらう。

愛しの白井杏子がこんなものを使うとは思いたくない。
彼女の姿でこれを使うことは心の中で謝っておく。

とにかく、生徒を救うためだ。
頭のおかしい犯罪者の道具でも使ってやる。
とりあえず今は爆発で高井が引き寄せられ、来てくれるのを待とう。

「高井…頼むから来てくれ…!」


だが、その祈りはもう届くことはない。

[D-4/湿地帯近くの草原/1日目・午前]
[枝島 トオル(枝島杏子)]
[パラメータ]:STR:E VIT:D AGI:C DEX:B LUK:A
[ステータス]:両肩、両ひざに刺し傷(処置済)
[アイテム]:変声チョーカー、焔花珠夜の爆弾砲台(残り…中弾・大弾)
[GP]:15pt
[プロセス]
基本行動方針:白井杏子のエミュをしながら生徒の保護。
1.この場で高井が来るまで待つ。
2.危険人物が来た場合は撃退する。
3.その他の人間が来た場合は協力を求める。
4.誰も来なかった場合は別の場所を探す。
5.高井丈美を連れて神社で結成されるらしい対主催集団と合流する。
6.他に生徒がいれば教師として保護する。
7.陣野優美、陣野愛美もできれば救ってやりたい
8.耳が幸せ。
※果物ナイフは診療所の中に置いてきてしまいました。そのことにはまだ気づいていません。
※爆発音はC-4,5とD-4,5で聞こえた可能性があります。

【焔花珠夜の爆弾砲台】
焔花珠夜が作った爆弾を発射する砲台。
地面に設置して使用する。
威力を小・中・大で調整することが可能。
手持ち式の起爆装置についた赤いボタンを押すことで発射される。
赤いボタンは威力ごとに3つある。
使用可能なのは小・中・大それぞれ1回まで、合計3回まで。
砲台の発射角度は上下左右360度自由に調整可能。
また、製作者の強い想いによりこれによる爆発で発生した光を見たり音を聞くといったことがあると「爆弾を作ったのは焔花珠夜だ」と思わせる効果がある。

825 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/04(木) 21:44:16 ID:W0GG9e/60
投下終了です。

826 ◆H3bky6/SCY :2021/03/04(木) 23:18:17 ID:e.9pZLik0
投下乙です
焔花さんの縁がこう繋がるとは、これはひかりたちは無視できんよなぁ
花火の見える範囲にいるのはやべー奴らもいるので引き寄せる人次第では大変な事になりそう

827 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:19:09 ID:8r6uV2jI0
投下します

828 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:19:47 ID:8r6uV2jI0
三土梨緒は悔しそうに爪を噛んでいだ。

白騎士の力なら確実に殺せると踏んだが、失敗した。
小賢しい七三眼鏡に邪魔され、相手にはワープという切り札もありまんまと逃げられてしまった。

諦めと見切りが早いのは梨緒の悪い癖だ。
言いがかりをつけられ判断を早まってしまった。
学園生活も、それで何度しくじったことか。

日和った連中を利用する道を選んだ梨緒からすれば、悪評をまき散らされては立ち行かなくなる。
そうなる前に大日輪月乃を確実に見つけ出して絶対に殺さなければならない。

最大の問題はメールである。
七三眼鏡曰く10GPでメールが送れるという話だ。
正義にチクリメールを送られようものなら一瞬で終わりである。
なにせメールを出すなんて防ぎようがない。

だが、月乃には初期GPの10ptしかないはずだ。
塔の支配もせず、参加者の殺害を良しとしない奴らにGPを得る手段はない。
送れるメールは一通だけ。その一通を梨緒の悪行を伝えるためだけに使うか? いやしない。

安心を得るため、必死で否定材料を探す。
猶予はある。そう信じて梨緒は月乃を殺すために動く。

だが、どこを探せばいいのか。
走りだしたはいいが探す当てがなければ、動きようがない。

月乃が行ったワープが、どの程度の性能でどこまで跳べるものなのか。
情報がなさ過ぎて推測もたたない。
スキルか支給品かも不明である。

どうせならいっそ、沈んだ積雪エリアに跳んで海の中に沈んでいればいいのに。
もしくは地中か空中に放り出されてそのまま死んでくれれば楽だ。
まあそんな希望的観測を信じて、放置するわけにもいかないのだが。

確か、月乃たちは放送局を目的地にしていたはずだ。
そこに向かうかどうかでひと悶着あった、梨緒が責められる切っ掛けもその話だった。

ならば、月乃もそこに向かうかもしれない。
あのワープが位置まで指定できるとしたらならば、既に放送局にいる可能性すらある。

心当たりができてしまえば、そこに心が支配される。
逃げられてしまえば、梨緒は破滅だ。
立ち去る前に一刻も早く向かわなければという焦燥感に駆られる。

追い詰められたように目撃されるリスクも承知の上で梨緒は白騎士を呼び出した。
自分の痕跡を消すために痕跡を残す矛盾。だが、やらねばならない。
梨緒は幸せになりたいのだから。
その為ならなんだってやろう。

それに白騎士自体を目撃されるのは構わない。
正体不明のクリーチャーがいると知れたところで、それが梨緒と繋がらなければそれでいい。
騎士の背後で隠形の札を使っていれば身を隠せるばずだ。

白騎士の背後に登りしがみ付く。
隠形の札を使用して自らの存在が隠されたことを確認すると、白騎士を走らせた。

大森林をなぞるように草原を駆ける。
かつて狙撃手より逃げるために辿った道筋を、こんどは殺すために駆け抜ける。

風の如き馬の疾走はあっという間に中央エリアを抜け、諸島エリアにかかる橋に入った。
響く蹄の足音が石を打つ音に変わる。
軽快な音がテンポよく響き続ける。
そして再び音の種類が変わった時には、その建物が視界に入っていた。

829 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:19:57 ID:8r6uV2jI0
それは海を臨む放送局だった。
小島に佇む小洒落たロケーションは殺し合いには似つかわしくない。
こじんまりとしたその建物の前で馬の足を止めさせる。
白騎士に頼らず意を決して自ら飛び降りた、おかげで今度は無事着地できた。

白騎士を消して、梨緒は放送局の押し扉を開き玄関を潜る。
月乃がいるかもしれない、そう考え出来る限り慎重な足取りで歩を進める。
放送局に侵入した彼女を迎えたのは受付にいたシェリンだった。

『はいはい。放送局のシェリンですよ。ご利用ですかぁ?』

場違いな呑気な声に苛立つ。
こいつがべらべらしゃべるんじゃ気配をひそめた意味がない。

「ここに大日輪月乃はいる?」
『このシェリンにご案内できるのはこの施設に関する情報だけです。他参加者の情報はお答えできませぇん』

使えない。
苛立ちを隠そうともせず舌を撃つ。
ならばと思考を切り替える。

「なら質問を変えるわ。今この施設に私以外の利用者はいる?」
『いいえ。現在ここにいる勇者はあなた様だけです』

最初からそう言えと言うのだ。
ともかくここに月乃はいないようである。

既にたどり着いて立ち去った後なのか、それともまだたどり着いていないのか。
その判断がつかない。
しばらくここで待ち伏せるべきだろうか?

だが、放送局のロビーでぼーっと月乃を待っているだけでいいのだろうか?
焦燥感に駆られた状態でジッとしているというは苦痛である。
何か手を打っていないと落ち着かない。
次に取るべき手段に悩む。

そこで、梨緒は何かに気づいたように周囲を見た。
自分が今いる場所を改めて思い返す。
梨緒は一つの手段を思いついた。

放送局。
全体に声を届けるというこの施設を使って月乃の言葉を信じるなと伝えるのはどうだ?

悪評を巻き散らされる前に先手を取って相手の悪評をまき散らす。
いきなり流れる声を信じる人間も少ないだろうが、梨緒には演説スキルがある。
スキル効果を考えれば可能だろう。

「シェリン。この施設の使い方を教えて」



830 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:20:14 ID:8r6uV2jI0
『放送室はそこの通路を進んだ先ですよー』

案内に従い、受付の横にある細い通路を進んだ先。
その突き当りに放送室はあった。

何やら様々なスイッチがならんだ机の中心に一本のマイクが突き立っている。
学校の放送室もこんな感じだった、ような気がする。
まあ放送部でもないのではっきりとしたことは言えないが。

電子妖精より受けた説明によれば、なんでもエリア1マスに対して3GPが必要となるらしい。
つまり会場全体に声を伝えるには8×8×3で192pt必要となる計算だ。
沈んでしまった積雪エリアを無視するにしても、100pt以上が必要だ。

現在梨緒が持つGPで届けられる範囲は12マス。
中央エリアくらいならカバーできるが月乃がどこに跳んだのか確証がない。
悪評をまき散らすなら月乃がいる周辺でなければ意味がない。

確実に月乃を追い詰められるのならば踏ん切りもつくだろうが。
確実性のない方法に貴重なGPを使うのをもったいないと感じてしまう。

逡巡の末、やはり使えないと、そう結論付けた。
やはり引き返そうと放送質の防音扉を開く。
その時、梨緒の耳に扉が開かれる音が聞こえた。

気のせいではない。
誰かがこの放送局に来たのだ。
慌てたように手にかけた扉を閉じて放送室へと引き返す。

月乃がやってきたのか?
心臓が高鳴る。

思わず思わず放送室に戻ってしまったのは悪手だった。
月乃であろうがそうでなかろうが、放送局に来たのなら放送室(ここ)を目指すに決まっている。
ここまで通路は一つ、回避して逃げ出せる非常口もない。
放送設備以外何もないこの部屋で隠れるのは無理だ。
出会いは不可避である。

今のうちに白騎士を出しておくべきか。
そう考えて首を振る。
それは相手が月乃じゃなかった場合に面倒な事になる。
月乃を殺すのも急務だが、新たな寄生先を見繕う必要があるのだ。
出来る限り穏健派とは交流を深めキープはしておきたい。

だが、今の梨緒には月乃を排除する義務がある
それを終えるまで下手に手を組むこともできない。

面倒だ。
ああ本当に面倒だ。

831 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:20:37 ID:8r6uV2jI0
「あら。先客がいたのね。こんにちは」

そうして迷っているうちに、それは現れた。

穏やかな語り口の黒髪の女だった。
月乃ではない。
だがそれに匹敵するほどの整った目鼻立ち、ひらひらとした露出の高い服。
見たことはない。売れない地下アイドルだろうか。

「…………こんにちは」

出来るだけ距離を取るように壁際に背を預けながら、ひとまず挨拶を返しつつ出方を伺う。
少なくとも、問答無用で襲い掛かってくるような輩ではなさそうである。

「あなたもこの施設が使いたくって来たのかしら?」
「……そういう訳じゃないわ。どんなものか見に来ただけ、使うんならどうぞ」
「そうなの。まあ私も様子見に来ただけなのだけど」

そう言って微笑む。
女はちょうど入り口を塞ぐ位置に立っている。
意図的なモノか偶然かわからないが邪魔なことこの上ない。
女は興味深そうにスイッチだらけのコンソールを見つめていた。

「神のお声を世界に届けるのにちょうどいいと思ったのだけれど、GPを消費するんじゃちょっと使いづらいわね」

神とか言いだした。
宗教家だろうか。宗教なんて胡散臭いイメージしかない。
怪訝そうな顔で押し黙る梨緒に気づいたのか、女は梨緒に視線を向けた。

「名乗り遅れたわね。私はイコン教団の教祖イコンです。イコン教団、ご存じかしら?」
「……ごめんなさい初耳だわ」

どう返したものかと一瞬迷うが、正直に答える。
イコンは激昂とも落胆とも違う感情の動きを見せ、何かに納得したように一人頷く。

「知らない……そう、そうなのね」

小さな声でなにかをぶつぶつと呟く。
そして、改めて梨緒を見つめる。

「あなたは神の世界の住民という事ね」
「違うけど……」

電波なことを言いだした。
梨緒は引いたが、後方は壁だった。
この女には梨緒が神様にでも見えるのだろうか。

「よいでしょう。無知なる者に啓蒙するもまた巫女の努め。私があなたに神の教えを説きましょう」

心の底から素晴らしいものを語るように教祖は語り始めた。

「結構よ。宗教には興味ないの」
「無知は罪ではありません。知ろうとしない事こそ罪なのです。
 神の世界の住民に神お教えを説く、これもまた天啓でしょう」

こちらの話など聞いていない。
その顔は自分を正しいと疑っていない人間の顔だ。
女がカツンと足音を立てて歩を進める。

「世界は不完全で人間もまた不完全な存在です。
 生きとし生ける限り、人の生には様々な苦痛や苦悩があるでしょう。
 古来より数多の神は人に試練を与えるのみで人を救いはしなかった。
 けれど我が神は違う。全ての人間をお救いになられる。あれ程現実に人をお救いになられた神は存在しない。
 何の学もない孤児も、何の力もない老人も、何の価値もない罪人も、わけ隔てない愛で、お救いになられるのです。
 神は唯一無二の完全なる存在、我ら信徒は己が命を神に捧げることで自らも完全なる存在となれる。これほどの至福がどこにありましょう?
 我が神こそこの世界の唯一の救い。不完全な人が、完全なる存在となれる唯一の道なのです。
 貴女も我が神を信仰しその命を捧げる最上の至福を味わいたくはありませんか?」

恍惚とした表情で女は語る。
その演説に寒気がした。
女の話が理解できないからではない。
女の話が理解できたからだ。

832 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:21:21 ID:8r6uV2jI0
不完全な三土梨緒を捨てて完璧な栗村雪になる。
程度は違えど、その理想の方向性は同じだった。
だから、この女の言葉は毒の様だ。

だが違う。
決定的に違う点が一つ。

それは生と死。
梨緒は生きるために完璧になりたいのだ。
死を前提として語るこの宗教女とは違う。

「興味ないって、言ってんでしょうが!」

その誘惑を振り払うように叫ぶ。
頭が熱狂する。

この女はダメだ。
利用できない。
ならば梨緒にとって無価値な存在だ。

ならば殺す。
殺していい存在だ。

白騎士を呼び出す。
恍惚とした表情で神を語る女を引き裂いてしまえ!

「うぐっ!?」

唐突に、梨緒の体が弾かれるように吹き飛んだ。
何が起きたのか分からなかった。
先手を取ったはずなのに、倒れているのは梨緒の方だった。

それは神罰。
神の供え物を攻撃とする者を問答無用で罰するカウンターである。
イコンすら認識していない不意打ちだろうと、攻撃を行おうとした段階で神罰は下る。

「ッ!?」

だが、驚いたようにイコンが飛び退く。
腹部の衣服ハラリと落ちる。
露になった白い腹に一本の紅い線が走り、つぅと雫を垂らした。
あと数センチ深ければ内臓が転び出ていただろう。

その目が敵を捕らえる。
梨緒ではない、それはこの狭い一室にあまりにも不釣り合いな巨大な異形だった。

「召喚獣!? いえ、ゴーレム!?」

人馬一体の白銀の騎士。
あるいはイコンにとってはこの不可思議な施設比べれば見慣れた存在だったのかもしれない。
どちらにせよ、イコンにとってこれはマズい。

使用者の意志を介さず攻撃を行う自立型の非生物。
敵意や攻撃の意志に反応する天罰の対象外。
召喚スキルはイコンの天敵に他ならない。

833 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:22:01 ID:8r6uV2jI0
神託の巫女。
直接戦闘は担当ではないが、あの激動の時代を生き抜いたのだ、荒事に巻き込まれることには慣れている。
神の威光を介さぬ愚かな敵対者に命を狙われることも少なくなかった。

その判断は早い。
身を反転させ、背を向けて出口へと向かう。

だが、白騎士の方が早い。
容赦なく馬上より稲妻のような斬撃が放たれる。

だが、その一撃はイコンの背後の防音扉に引っかかって斬撃が僅かに遅れた。
その隙に身を低くして潜るようにして躱す。

この狭い室内で小回りが利かない巨大な白騎士は本領を発揮できない。
イコンは文字通り切り開かれた扉より抜け出てそのまま通路を駆け抜けた。

白騎士はその背を追わなかった。
馬体で狭い通路を駆け抜けるのが難しいというのもあるが、最大の理由はその背後。
痛んでいる梨緒の存在だ。

白騎士の役割は梨緒の守護。
指示がない限りは敵の殲滅よりもそちらを優先する。
彼女がダメージを追って動けない以上、白騎士がこの場を離れることはない。

「ッ…………っ」

壁に手を付きながら梨緒が立ち上がる。
傍らの白騎士を見つめ、取り逃したことを認める。
月乃に続き二人目の失態だが梨緒にそこまでの焦りはなかった。

要は、話の信憑性の問題だ。
危険人物の場合、梨緒と同じく集団に潜り込むようなスタンスでもない限り誰かに話すという機会自体がないだろう。
故に無暗に悪評をき散らされる可能性は低い。
何より、国民的アイドルの言葉ならまだしも、イカれた宗教女の言い分など誰が信じるというのか。

依然として、梨緒の優先目標は大日輪月乃だ。
梨緒は壁から離れると、念のため白騎士を侍らしながら放送局のロビーへと向かって行った。

[F-7/放送局/1日目・午前]
[三土 梨緒(ユキ)]
[パラメータ]:STR:E VIT:D AGI:C DEX:D LUK:B
[ステータス]:ダメージ(小)
[アイテム]:人間操りタブレット、隠形の札、不明支給品×1(確認済)
M1500狙撃銃+弾丸10発、歌姫のマイク、焔のブレスレット、おもしろ写真セット、万能薬×1
[GP]:36pt
[プロセス]
基本行動方針:優勝し、惨めな自分と決別する。
1.大日輪月乃を必ず殺す。
2.正義と合流して守護してもらいたい
※演説(A)を習得しました

[イコン]
[パラメータ]:STR:E VIT:B AGI:C DEX:D LUK:D
[ステータス]:腹部に軽傷
[アイテム]:青山が来ていたコート、受信機、七支刀、不明支給品×1
[GP]:0pt
[プロセス]
基本行動方針:神に尽くす
1.愛美の道を阻むものを許さない
2.何人かの参加者を贄として神に捧げる
3.陣野優美を生かしたまま神のもとに導く

834 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/11(木) 22:22:35 ID:8r6uV2jI0
投下終了です

835 名無しさん :2021/03/11(木) 22:50:42 ID:JCwV.TrY0
投下乙です
梨緒ちゃん、イコンの天敵だったけど
どっちもあくまで自衛能力なぶん本格的な殺し合いには至れなかったかー
後、確か天罰スキルは状態異常付与が常時でダメージの方が男性専用の追加効果だったような

836 神に至る病 ◆H3bky6/SCY :2021/03/12(金) 20:05:12 ID:2kS/zrgg0
>>835
ご指摘、ありがとうございます
完全に逆だと認識してました、失礼しました

・『神に至る病』の該当箇所を下記に修正します

>唐突に、梨緒の体が弾かれるように吹き飛んだ。

唐突に、梨緒の体が痺れるように固まった。

>痛んでいる梨緒の存在だ。

麻痺している梨緒の存在だ。

>壁に手を付きながら梨緒が立ち上がる。

万能薬を使用した梨緒が立ち上がる。

・三土 梨緒の状態表を下記に修正します

[三土 梨緒(ユキ)]
[パラメータ]:STR:E VIT:D AGI:C DEX:D LUK:B
[ステータス]:健康
[アイテム]:人間操りタブレット、隠形の札、不明支給品×1(確認済)
M1500狙撃銃+弾丸10発、歌姫のマイク、焔のブレスレット、おもしろ写真セット
[GP]:36pt
[プロセス]
基本行動方針:優勝し、惨めな自分と決別する。
1.大日輪月乃を必ず殺す。
2.正義と合流して守護してもらいたい
※演説(A)を習得しました

837 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:48:11 ID:MbhNGrxk0
大変遅れましたが投下します

838 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:49:10 ID:MbhNGrxk0
息を切らしながら少女二人が駆ける。
愛らしい少女らしからぬ必死の形相だが、それも当然だろう。
これは追いつかれれば死ぬアイドルと殺人鬼の命を懸けた追いかけっこなのだから。

「それで、どこに逃げてるんですか!?」
「どこって、それは…………」

由香里の問いに涼子はすぐには答えられなかった。
とりあえず場当たり的にその場を離れているだけにすぎない。
具体的な目的地がある訳ではなかった。

煙幕によって時間は稼げているが、殺人鬼がいつ追いつくとも限らない。
傷口を抑え出来る限り出血は抑えているが完全ではないだろう。
血の跡を追ってくる可能性は十分にある。

ここは小さな島である。
別の島に逃れるには橋を渡るしかないのだが、橋は遮蔽物のない数百メートルの直線である。
橋に向かう可能性は向こうも分かり切っているだろう。
よほど運がよくない限り、渡っているうちに発見される。

「なら、煙幕を使えば……」
「バカね。橋に煙幕がかかってる時点でどこに居るかはバレバレでしょう」
「あ、そっか」

唯一の出口がそうであるなら、島の外に逃げるのはリスクが高い。
かといってこの島には森や街といった物陰や障害物がほとんどなく、隠れてやり過ごすと言うのもの難しい。
逃げ出した廃村こそが一番隠れやすい場所ではあったのだが、まさか戻る訳にもいかない。

「なら、戦いましょう!」

逃げも隠れてもできないのなら、立ち向かう。それしかない。
殺人鬼との対決。由香里からすれば一度通った道だ。
恐れる必要はないと震える拳を握りしめて自身を奮い立たせる。

「……ダメよ」
「大丈夫ですって、あたしあいつと一回戦って勝ってるんですから!
 嘘じゃないです! マジです!」

信じてほしいと鼻息荒く訴えかける。
だが涼子は苦し気な表情で首を横に振る。

「……それは信じる。けどダメよ」

涼子は由香里を護るために来たのだ、危険には晒せない。
由香里を矢面に立たせるなど彼女の中ではあってはならない事だ。
こうなっては意固地な涼子は譲らない事を由香里はよく知っている。
だが、隠れる事も逃げる事も戦う事も出来ないとなると、いよいよもって手段がない。

「あっ。涼子さん、その指輪!」
「……だから、その件に関しての説明は後でするって」
「そうじゃなくって……!」

わたわたと手を振って由香里が何もない明後日の方向を指さす。
いや何もない訳じゃない。
確かにそこに広がるものがあった。

「海ですよ、海! その指輪があれば行けるんですって!」

島の間を流れる潮の流れは外側の海よりも激しい。
魚や水泳選手でもなければ何の用意もなく飛び込めば確実に溺れてしまうだろう。
だが、涼子は親友より託された指輪に触れる。

海王の指輪。
これがあれば海流の影響は受けない。
この海を超え、殺人鬼から由香里を護れる。

「……そうね。わかった。海から逃げましょう。
 けど、指輪をはめているのは私だけなんだから、私の手を絶対に離さないでね」
「はい。分かってますって」

互いに頷きあい、手をつないで駆け出す。
そのまま僅かに小高い崖の上から飛沫を上げて海へと飛び込んでいった。



839 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:50:08 ID:MbhNGrxk0
「由香里は浮かぶことだけに集中して!」
「ばぁい」

一心不乱に水を掻く。
塩水が傷口に染みるが、気にしてなどいられない。
違う島に渡れればそれで彼女たちの勝ちだ。
周囲は激しい流れなのに自分だけが影響を受けないというのは不思議な感覚だった。

泳ぎは苦手という訳ではないが特別得意という訳でもない。
海流の影響を受けないのは涼子だけだ。
流されそうになる由香里を引き留めながら泳ぐと言うのはなかなか難しい。

「っ……ぱ」
「黙ってて」

海中で何かしゃべろうとする由香里を叱りつける。
だが、涼子の言う事を聞かず、由香里は水が口に入ることも厭わず叫ぶ。

「ッ……後ろですって…………!」

その叫びに涼子は振り返る。
そこには、海面を物凄い勢いで切り裂く刃のような何かがあった。

それは背びれだ。
映画なんかの影響か、それを見て連想するものは一つ、サメ。

まさかこんなところで、人喰い鮫に襲われるなど誰が思おう。
参加者以外の生物などいないと思いこんでいた。

水面に顔を出したサメが大口を開いた。
ノコギリみたいな牙が見える。

「由香里……ッ!」

喰いつかれようとも構わない。
こんどこそ絶対に大切な仲間を守護る。
涼子は自らを盾とするように、絶対に離さないという強い決意の元繋いだ手を引き寄せる。

だが、その手が離れる。
引き寄せようとした涼子を由香里の方から突き放したのだ。

「由香…………ッ!?」

二人の身が離れ、その間を大口を開けたサメが通り過ぎる。
由香里がそうしなければ、どちらかの腕を食いちぎられていただろう。

だが、海王の指輪を持たない由香里が手を放してしまえばどうなるのか。
あっという間に由香里は海流に飲み込まれ遠くに消えて行った。

「…………あっ」

海王の指輪を装備した者は海流の影響を受けない。
逆に言えば、流れに乗って加速することもできない。
追いかけようとするが激流に飲み込まれて遠くに消えていく由香里に追いつけない。

完全に見失った。
もう手を伸ばしても届かない。

指輪があるから流れに乗れないのならいっそ指輪を外すか。
一瞬そんな破滅的な考えが浮かぶがすぐさま否定する。
それでは二次災害になるだけだ。

それに周囲には人喰いサメもいる。
海中に潜ったのか、今は見えなくなってしまったが、いつ襲われるとも分からない。
海流を無視できる指輪があったとしても海は危険だ。
いったん地上に出て海岸沿いを探索したほうがいい。

我が身がどうなろうと構わないが、由香里を助けるには涼子が無事である必要がある。
涼子は断腸の思いで海路を諦め、近場の陸地に向かった。

水を吸って重くなった服を引きずり海岸を這い上がる。
全力疾走からの水泳、トライアスロンめいた強行軍でかなりの疲労が溜まっている。
それでも切れた息を整える間もなく、すぐにでも立ち上がる。
駆けだそうとして顔を上げた涼子に影がかかる。

「――――ぃよう。待ってたぜぇ」

楽しそうな声がかかる。
愕然とした表情で顔を上げる。
そこには、殺人鬼が立っていた。



840 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:50:49 ID:MbhNGrxk0
「…………ぁ」

絶望に喉が絞まっておかしな声が出た。
まるで待ち伏せでもしていたかのような登場だった。
単なる偶然、不幸? そんなことがあるのか?
偶然にしてはいくら何でも出来すぎである。
そもそも、涼子たちを追っているのならこんな所にいるはずがない。

「なんで、って顔してるなぁ」

凶悪さを秘めた顔で男は笑う。
それは自分の優位性を疑わぬ笑顔だった。
混乱した隙を突かれ逃げる間もなく胸倉を捕まれる。

「もちろん偶然じゃぁねぇぜ。なにせ、そういうスキルを取ったんだからなぁ!!」

敗北を経て桐本四郎は学んだ。
この世界において重要なのはスキルである。
稀代の殺人鬼があんな小娘に後れを取ったのはスキルがあったからこそだ。

だから、桐本は無暗に追いかけるのではなくその場に留まりスキルを取得した。
取得したスキルの名は『狩人の嗅覚』。
獲物の逃亡位置を予測できるスキルである。
Bランクでは何となくここに来るだろうという程度のものだが、それで十分だった。

「ま、来たのがテメェの方だってのは計算外だが」

振り回すように乱暴に涼子の体を地面に叩きつける。
地面に倒れた涼子の鳩尾に容赦なく桐本の踵が振り下ろされた。

「が…………はっ……ッ!?」

稲妻のような激痛が体内を駆け巡る。
可憐を殺した男のような洗練された武力ではない。
女の腹を何の躊躇もなく全力で踏みつけられる凶暴性。
思わず身が竦むような純然たる、暴力。

「…………ぁ…………ぁ」

体も心もどうすれば人は折れるのか。
この男は人間の壊し方を理解してる。
全身が麻痺して呼吸ができず、指一本動かせない。
ただ苦悶の表情を浮かべ痙攣したように体を震わせることしかできなかった。
桐本は上機嫌な様子で動けなくなった涼子に背を向けアイテム欄から取り出したマイクを握りしめた。

『あーあー。テステス。よぅクソガキ、聞こえてるかぁ? まあ聞こえてなくてもしゃべるんだがよ』

大音量マイクにより音声がエリアに全体に響く。

『お前と逃げてた女を捕えてる、ほら喋れよ』

マイクを涼子に向けるが、激痛に息も絶え絶えな涼子はそれどころではない。
桐本は仕方なさげにため息をつくと、倒れこんでいる涼子の元へと歩み寄るとその腹を蹴り上げた。

『…うッ……ごふ……ッ!』
『聞こえたかぁ? 念のためもう一回いっとくか?』

言って、もう一度涼子の体を蹴り上げる。
苦し気な喘ぎがマイクに乗って島中に響き渡った。
桐本は涼子に向けていたマイクを戻す。

『今から1分ごとに1本。この女の指を切り落とす。
 全部の指が潰れるまで10分。あぁ、足も合わせりゃ20分か。それまでに廃村北の海岸に来い。
 それまでに来なければこの女を殺す。いいな』

言いたい事を言い終わり、演説を打ち切る様に桐本がマイクを放り投げる。
マイクはゴッと衝突音を島中に響かせ、良子の目の前へと転がった。

桐本は鼻歌交じりに動けない涼子の手を取って、まな板に乗せるように地面に固定する。
殺人鬼の手にはマイクの代わりに鉈が握られていた。

『さぁて、スタートの合図だ。派手に頼むぜ…………ッ!』

鉈を振り下ろす。
廃村を構える小島全体に絹を裂くような女の悲鳴が響き渡った。



841 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:51:41 ID:MbhNGrxk0
「ケホッ……ケホッ……!」

咳込みながら水を吐く。
トラブルに巻き込まれても生き残るトラブルメーカーの面目躍如か。
完全に海流に飲み込まれた由香里だったが、幸運にも島の海岸に流れついていた。

「うぅ……喉がイガイガする」

それなりに海水を飲み込んでしまった。
ここにきてこんなのばかりだ、全く水難に縁がある。

口元を拭って立ち上がる。
気分が悪いが、ゆっくり休んでる場合でもない。

逸れてしまった涼子との合流を目指さなくては。
とりあえず流されてきた方向を戻ればそのうち会えるとは思うが、追ってきている殺人鬼もいるのだから気を付けなければならない。

『あーあー。テステス。よぅ聞こえてるかぁ?』

だが、どこからともなく、絶望を告げる声が聞こえてきた。
一瞬自らを追う殺人鬼に追いつかれたのかと思ったが、首振って周囲を見渡すが姿はない。
聞こえているのは声だけだ。
恐らく由香里から奪った大音量マイクによるものだろう。

そうしてどこからかの声が地獄のようなゲームの説明を始め、始まりが告げられる。

『さぁて、スタートの合図だ。派手に頼むぜ…………ッ!』
『いやああああああああああああああああああッッッッッ!!!』

慣れ親しんだ人の聞いたこともない壮絶な悲鳴。
そのあまりの恐ろしいさに思わず足が竦んだ。

『ぅ……く…………由……香里、来ないでぇえ……ッ!! 来ちゃダメェ…………!!』

絶叫の合間に涼子の叫びが聞こえる。
それはどこまでも由香里の事を案じる声だった。
聞いたことのない涼子の声だったが、いつも通りの、涼子の言葉だ。

「行かなくちゃ…………」

それで由香里の心が決まった。
来るなと言われた。
それでも。だからこそ行かなくては。

HSFの問題児。
みんなの言う事を聞かず何回叱られた事か。
今更怒られる回数が一回増えたところで、知ったことではない。

思いのままにやりたいように。
それこそ三条由香里の生き方だ。

大丈夫だ。
一度勝った相手である。
武器は奪われてしまったが、それでも勝てるに決まっている。

足を止めようとするいくつもの不安を振り払ってHSFの秘密兵器は走りだした。



842 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:52:04 ID:MbhNGrxk0
「……はぁ……はぁ」

廃村の北、指定された場所に息を切らして由香里は辿り着いた。
1分ごとに響き渡る絶叫を振り払って地獄のような道中を無我夢中で走ってきた。

「よぅ。ビビッて逃げちまうかと思ったぜ」

ゆっくりと、殺人鬼が振り返り、頬ついた返り血を拭う。
その足元には、涙と涎を流しながら見たこともない表情で白目をむいた涼子がビクビクと痙攣していた。

「よかったなぁ、まだ片手が潰れただけだ」

言って力なくだらりと垂れ下がった涼子の右手を掴み、由香里へと見せつけるように掲げた。
血だらけの右手からは全ての指が切り落とされていた。
当然のように手当などしていないのだろう、プラプラと振るわれる傷口からは大量の血が垂れ流され続けている。

指先は神経が集中しており、麻酔もなしにそれを切り落とされる苦痛は正しく拷問である。
繰り返される激痛によって意識を失い激痛で意識を覚ます。
それを繰り返す地獄の責め苦を受けた涼子の精神は崩壊寸前にまで追い詰められていた。

「あたしは来たぞ! 今すぐ涼子さんから離れろ、このクソ野郎! こんなことして何が楽しいってのよ!?」

感情のまま動く直情型の由香里が尊敬する涼子にここまでされて黙っていられるはずもない。
その罵倒を受けて桐本は掴んでいた右腕を放り捨てる様に離して、愉しげな笑みを浮かべる。

「楽しいね。誰かを傷つけるのは最高に楽しい」

その言葉に一瞬で頭は沸騰した。
由香里は誰かを笑わせるために日々努力を重ねるアイドルである。
誰かを傷つけて笑っていられる、こんな人間がいることが信じられない。

「あんたなんてぇえ!!」
「ハハッ! こいよクソガキ!」

激情まま由香里が殴りかかる。
殺人鬼は報復の時間だと、嬉々として受けて立つ。
アイドルと殺人鬼が二度目の衝突を開始する。



843 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:53:03 ID:MbhNGrxk0
桐本は右手に大鉈を、左手に金属バットを握りしめた二刀流。
長柄ではあるがいつも扱うナイフの二刀流に近しいスタイルだった。

それに対して、由香里が両手に構えたのはトンファーである。
構えたトンファーで振り下ろされる大鉈を弾き、金属バットを受け止める。

「くぅ…………ッ」

だが勢いに圧され、体が弾かれる。
明らかな力負けだ。
それはつまり筋力で劣っているという事である。

成人した男と年端も行かぬ少女なのだから当然の結果のように見えるが、この世界においては勝手が違う。
むしろ前回は強引なスペックによる力推しで由香里が勝利を収めたくらいだ。
その結果と今は真逆の展開を辿っていた。

そう、由香里は桐本に一度勝利している。
下剋上スキルは格上に対して発動するスキルだ。
その発動条件は由香里の主観的な認識に依存する。

一度勝った相手だという意識が、その発動条件の邪魔となっていた。
全く効果が発揮していない訳ではないが、前回のような劇的な効果はないだろう。
加えて、あの時は利江のスキルによる応援効果があったが、涼子が気絶している今の状態ではその応援効果も期待できない。

「なんだよ、なんだよなんだよなんだよ! 期待外れだなぁオイッ!!」

由香里とは逆に敗北し辛酸を舐めさせられた桐本に油断はなかった。
前のように小娘如きと侮りはしない。
雪辱を晴らすべく本気の猛攻を繰り広げる。

女子供でも全く容赦しない殺人鬼の本気である。
今は辛うじて防いでいるが、それだけだ。
反撃に転じれなければ、一方的な嬲り殺しとなるだけである。

だが反撃に転ずるには武器が悪い。
単純に振り回せばいい長柄の武器と違い、トンファーはあまりにも素人には扱いづらい。
防御には使いやすいかもしれないが、攻撃に打って出るには難しすぎる。

こうしてみると前回の勝利がどれほど綱渡りの薄氷の勝利だったのかがわかる。
同じ対戦カードでありながら、あらゆる状況が前回とは違う。
この状態でアイドルが殺人鬼に勝てるはずがなかった。

「オラぁッッッ!!」

鉄バットによる殴打。
トンファーを盾に両腕で受けるも、ついに由香里の体勢が崩れた
そこに容赦なく振り下ろされる大鉈が頭部を直撃した。

「ッ…………ぁあッ!!」

頭部が裂け血が噴き出る。
あわや脳天を唐竹の如く割る一撃だったが、幸運にも大鉈は涼子の指を切り落とした際にべったりと付いた血と脂によって切れ味が落ちていた。
それが寸前で絶命を避けた。

とはいえ、鉄の鈍器で頭部を殴られたダメージは大きく一瞬意識が混濁する。
ふらついた由香里を桐本が蹴飛ばした。
なすすべなく少女は倒れた。
それを見て桐本は心底失望したと、ため息をこぼす。

「つまんねぇなぁ。つまんねぇよお前。
 せっかくテメェを為に意気込んで来たってのによぉ!!
 これじゃあ猛りがおさまんねぇよなぁ、どうしてくれんだあぁんッ!?」

理不尽な怒りとと共に、倒れた由香里の顔のすぐ横にバッドの先端を振り下ろした。
叩きつけられた海岸の小石が撥ねて頬を打った。

「ひっ」

暴力を突き付けられ思わず身がすくむ。
それは最初の出会いの焼き直しのようだった。

844 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:53:38 ID:MbhNGrxk0
「テメェにゃ責任を取って貰わねぇとなぁ。
 バトって満足させられねぇなら、別の体の使い方で楽しませてもらおうか」

そう言って、男は下卑た笑みを浮かべる。
由香里とて、それの示す意味が分からぬほど幼くはない。
むしろ多感な時期だからこそ生理的嫌悪が強かった。

「……い、嫌っ」
「そうかよ。まあ俺もガキは好みじゃねぇ。そうだな、あそこで転がってる女を犯っちまうか?」

言って、バッドの先を突き付ける。
その先には倒れ込んでいる涼子がいた。

「さぁ選ばせてやるよ。俺に犯られるのはどっちだぁ? 俺はどっちでもいいんだがけどなぁッ!!」

この場で主導権を握っているのは桐本だ。
何をどうするにも誰に意見を伺う必要もない。
その状況で、あえて選択を突き付ける。

「あたしを……やるんなら、あたしをやりなさいよ!」

半ば自棄のように由香里が叫んだ。
その返答に、桐本は不愉快そうに表情を歪める。

「『やりなさい』? 立場が分かってねぇようだなぁ?」

桐本は由香里に背を向けると、その魔の手を涼子へと向けようとした。
由香里が焦りと絶望で表情を歪めた。

「ま、待って。…………お、お願いします。あたしに……して下さい」
「あぁ? 分かんねぇよ、何をどうしてほしいって?」

悔し気に唇をかみしめる。
全身を震わせ、消え入りそうな声を絞り出す。

「あ、あたしを犯してください。お願いします……」

王子様とのキスを夢見るような穢れを知らぬ少女が、己を汚す懇願の言葉を吐かされる。
その余りの恥辱に、悔しくて涙が零れた。

「ククッ。ハァッハハハハハッ!」

満足そうに桐本が嗤う。
自分に屈辱を味合わせた小娘が無様にへつらう姿が愉快だった。

「そこまで言われちゃ仕方ねぇな!」

魔手が伸び、由香里の衣服が乱暴に破り捨てられた。
夢と希望を届けるアイドル衣装が黒い欲望に散っていく。
胸元の衣服が下着ごと剥ぎ取られ乳房が露わになった。

「はっ。ガキにしてはいいもんもってんじゃねぇか」

握りつぶすように乳房を掴まれる。
快楽などない、あるのは苦痛と嫌悪だけだ。

「痛ぃ……!」
「うるせぇな、黙ってろ」

男が嗤いながら片腕で顔面丸ごとつかむようにして口を塞ぐ。
呼吸ができない。相手の事など情動をぶつける道具としか考えていない。

「…………ぅ…………ぁっ」

思わず由香里は口内に入った指を噛んだ。

「何してんだよゴラッ!」

口内から手を引き抜き、そのまま固めた拳が振り下ろされた。
顔面に叩き込まれ前歯が折れる。
一度や二度ではない、何度も何度も顔面を殴られた。

845 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:54:12 ID:MbhNGrxk0
可愛らしい容姿が自慢だった。
可愛らしさが誇りだった。
周囲からも蝶と花よとおだてられ、キラキラとしたアイドルになれるとそう思っていた。

今やその顔は醜く腫れ上がり、見る影もない。
前歯は全て失われ、顎骨や頬骨が折れているのか顔の形も歪んでいた。

「……くうっ。ぅわぁぁぁ……ッl」

ついに由香里は声を上げて泣き出した。
それを見て桐本は愉悦に浸る。

暴力は相手を屈服させる手段である。
痛みと恐怖で人は折れる。
桐本はその瞬間を見るのが好きだ。
絶望に歪める顔を見るのは、性行為なんかよりも最高だ。

「……………………もんか」
「あぁ?」

啜り泣きの合間。
大量の涙と血の混じった鼻水を流しながら折れた歯を食いしばって呟く。

「……負けるもん、か、あたしは……」

桐本が唖然と言葉を失う。
今更何を言うのか。

「んだそりゃ!? とっくに負けてんだろうがテメェはよォ!!」

見るも絶えない顔で涙を流して、これが敗北でなくて何なのか。
桐本の恫喝など聞こえていないのか、由香里は続ける。

「あたしは……あたしたちは、あんたなんかに負けない…………ッ!」

泣いたって終わりじゃない。
傷ついたって立ち上がれる。
汚されようとも、折れない。
だって。

「あたしは、アイドルなんだから…………!」

その誇りさえ折れなければ、何度だって。
すぐに挫けてすぐに立ち上がる。
それが三条由香里というアイドルだ。

「…………ふ」

折れたはずだ、絶望したはずだ。
思い通りに行かない。

「ふっざけんなッ!!!」

癇癪を起したように桐本が衝動的に鉈を手に取り振り下ろした。

「ぅぐ!?」

振り下ろした鉈の石突が乳房の間に深々と突き刺さった。
肋骨をパキリと裂いて、その下の臓器へと至る。

口から塊ような血を吐いて、由香里の瞳孔が大きく開く。
ビクンビクンと二度痙攣して、粒子となってその体が消えていった。

「チッ」

桐本が舌を打つ。
思ず衝動的に殺してしまった。
通常の殺しとは違う事を、失念していた。
死体が残っているのならその死体を犯して辱めることもできたのだが。

気分が晴れない。
鬱憤はたまったままだった。

[三条 由香里 GAME OVER]



846 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:54:31 ID:MbhNGrxk0
「――――あたしは、アイドルなんだから…………!」

声が聞こえた。
その声に呆けていた涼子の意識が僅かに揺らいだ。

意識が僅かに覚醒する。
それに伴い右手の激痛が再燃した。
五指が喪失した事実は夢ではないことを告げていた。

「由…………香、里」

倒れ込んだまま視線を這わせる。
その先で、由香里の上に男が覆いかぶさっていた。
最悪の予感に全身が総毛立つ。
止めなければと、痛む体を動かそうとしたところで、男が由香里に向かって鉈を振り下ろした。

「…………あっ」

幾度も見た光の粒子が散る。
その光に涼子の虚ろだった眼が見開かれる。

「ぅうぁあああああああああああああああああああああああああああああああっッッッ!!」

喉から血が出るような獣の咆哮。
その瞬間、完全に理性など吹き飛んだ。

左手にナイフを握って駆け出す。
痛みなど知らない。
自分がどうなるかすら頭にない。

殺意が感情を支配する。
目の前の男を殺す。
涼子に頭はもう、それしか考えられなかった。

「あん?」

だが、少女の決死の想いなど、殺人鬼は容易く打ち払う。
あっさりと刺突を避けると、すれ違いざまにバッドで背を打った。

「うぁあ…………ぁあああッ!!」

涼子は血の混じった反吐を吐きながら倒れ、それでも止まらず。
急き込みながら這いずるようにして血まみれの手で落としたナイフを掴む。

「ふぅ……ふぅ……ッ!」
「うざってぇ」

鼻息荒く自らをにらみつけるその視線を、面倒くさそうに吐き捨てる。
発狂しただけの怪我人など桐本からすれば物の数ではない。

獰猛な獣のような殺意を向けられれば、あるいは怯む者もいるのだろうが。
桐本にとって狂気など、気持ちよく吹くそよ風と変わらない。
涼子の殺意など、ただの小娘のヒステリーだ。
まるで脅威を感じない。

「いいぜ、殺してやるよ。たっぷり楽しんでからなぁ」

舌なめずりをして嗤う。
あの小娘では下げきれなかった留飲をここで下げさせてもらうとしよう。

とはいえ、相手を侮り由香里との初戦では煮え湯を飲まされた。
その反省を込め油断はしない。

桐本四郎という殺人鬼は、この場でアイテムを学び、スキルを学び、死体が消えることも学んだ。
この世界における楽しみ方を学んだ。
その経験と知識を使って全力をもって、目の前の女で愉しんでやろう。

「犯して、解体して、殺してやるよ」

だが、憎悪に染まっていたはずの涼子の動きが止まっていた。
理性を失った女が今すぐにも襲ってくるかと思っていた桐本は不思議に思うが、その原因が分からなかった。

何が起きているのか。
殺意の塊が止まる、それほどの異常が起きていた。
それを無視してはならないと殺人鬼の本能が告げる。

正体が自らの背後にあることに気づき桐本がとっさにその視線を辿って振り返る。

「なっ…………」

桐本ですら声を失う。
そこには、開かれた大口にずらりと並ぶノコギリ状の鋭い牙があった。

耳まで裂けたような大きな口が殺人鬼を一息で飲み込んだ。

847 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:54:53 ID:MbhNGrxk0


VRシャーク。

それはVRゲーム『New World』に侵入したウイルスデータである。
参加者たちとは、入り口から違うこの世界におけるただ一人、いや一匹の例外。
不法侵入者でありながら、ある意味で唯一の正しい存在である。
全参加者の中で唯一、魂を持たない完全なるデータなのだから。

魂を起点としない改竄(チート)により進化や成長を自己で促しながら、電子の海を行く。



848 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:55:41 ID:MbhNGrxk0
ミサイルみたいな流線型の体。
刃のような背びれと、翼のような横びれ。
顔面の横にあるむき出しの鰓孔。
不気味な丸い瞳が輝き、白い口元から鋭いノコギリのような牙が覗く。
どれをとっても紛れもないサメである。

だが、その胴体の端々には異形のような、小さな人間の手足が付いていた。
見るだけで理性が削れるような、どうしようもなく不気味な深き怪物。
それはサメではなくサメのような何かだった。

海中より現れたその怪物は海岸に立っていた殺人鬼の上半身を丸ごと飲み込んだ。
バキ、ボキと何が砕ける音がサメの口内から響く。
破片のような何かがサメの口端から零れ落ちていった。
こうなっては助かるまい。

「……っぶねぇなゴラァ!!」

だが、怒声と共に桐本が口内からぬるりと脱出する。
強靭な顎で噛み砕かれたのは宝箱だった。
桐本は咄嗟に宝箱を出現させ、口内に僅かな猶予を作ってその隙に抜け出したのだ。

だが、それでも無傷と言う訳ではなかった。
脱出するときに引っかけたのだろう、ノコギリ刃に鑢掛けられたように、全身が血で塗れていた。

「っんのッ!! 喰われるだけ魚類が! 何ぃ人間様に噛みついてんだぁあん!?」

鼻っ柱を金属バットで打ち抜く。
サメの鼻から血がシャワーのように噴き出した。

上がった顎を踏み抜くように前蹴りで蹴りだす。
そしてバットのグリップを両手で握り、大きく振りかぶって全力でスイング。
バッドは胴の真芯を捉え、サメの打球みたいに吹き飛んで海に還っていった。

「ハッ! 人間様に勝てるわけねぇだぅろが、魚類如きがよぉお!」

自らの流す血とも返り血とも分からぬ赤で全身を染め上げた凄惨な笑顔の殺人鬼が吠える。
高笑いを浮かべる、その背後に衝撃があった。

「あ?」

見ればその腰元には、ナイフが突き刺さっていた。
そして暗い瞳と憎悪の表情でナイフを握る女の姿があった。
サメの登場に完全に気を取られていた桐本と、ただ桐本を殺す事だけを考えていた涼子の違い。

「このアマぁ……ッ!」

すぐさま振り返り、女の顔面を裏拳で殴りつける。
華奢な女は鼻血を流して倒れ込む。

「チッ」

舌を打ち、傷を確認する。
刺さったと言っても傷は浅い。
内蔵には届いてはいない。
この程度なら大した支障はないだろう。

「ッ!?」

だが一瞬、意識がふらついた。
何が起きたのかはすぐに理解した。
状態異常を確認するまでもなく、自身が持つスキル効果だから分かる。
これは毒だ。

幾度も指を落としながら一度も毒状態にならなかったことからわかっていたことだが。
毒判定に使われるパラメータが涼子は桐本を上回っている。
スキルと装備による違いはあれど毒使いとしてなら涼子の方が上だった。

毒による一瞬のふらつき。
それはすぐにでも立て直せる程度のものだ。
だが、決死の覚悟を持つ相手を目前にしている状況ではそれは致命的な隙である。

「うわああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

なりふり構わぬ捨て身の突撃。
流石に足元の覚束ない状態では避けられない。

もつれ込むように倒れたその上を涼子が取った。
跨った体勢で振り上げたその手には、鈍い光を返す刃が。

849 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:55:51 ID:MbhNGrxk0
「こ、のッ」

反射的に桐本は制止する様に手を振り上げる。
だが、涼子は構わず刃を振り下ろした。

「……死ね、死ね、死ねッ、死ねぇッ、死ねぇえッ!! 死んでしまえぇええええッ!」

刺す。
刺す。
刺す刺す刺す。

指のない右手を左手に添えて力いっぱい振り下ろす。
振り下ろすたび激痛が奔るが、そんな事は知ったことではなかった。
この男を殺すためなら痛みすら厭わない。

手に、腕に、腹に、胸に、頬に、額に、喉に、耳に、目に、肩に、鼻に、口に、頭に。
一心不乱に刃を振り下ろし続けた。

それは事故のような最初の殺人とは違う。
明確な殺意をもって相手を殺す、初めての殺人行為だ。
それしか死ぬ機械のように、その行為を繰り返す。

そうして、何十回目かの繰り返しの後、振り下ろしたナイフが地面を刺した。
この世界の法則に従い桐本の体が光の粒子となって消えていったのだ。
そうでなければ、彼女はいつまでも繰り返していただろう。

振り上げた憎悪が行き場を失う。
湧き上がる感情はない。
復讐を遂げたところで達成感もなかった。

残ったのは何もない。
燃えるような憎悪すらも消えた。
この世界では死体すらも残らない。
ただあるのは喪失だけだった。

感情が壊れてしまったのだろうか。
もはや涙も流れなかった。

このまま手にしたナイフを自分の喉に突き刺して、死んでしまいたかった。
けれど、それはできない。

ここには、まだソーニャがいる。
彼女を置いて死ぬこともできない。

本当に何もなければ、苦しむこともなかったのに。
ただ一つ残った希望。
希望が彼女を地獄へと引き留めていた。

[桐本 四郎 GAME OVER]

[G-6/廃村北の海岸/1日目・午前]
[鈴原 涼子]
[パラメータ]:STR:E VIT:E AGI:B DEX:B LUK:A
[ステータス]:精神衰弱、背中にダメージ、腹部にダメージ、鼻骨骨折、右手五指欠損、右腕に切り傷、出血(小)
[アイテム]:ポイズンエッジ、海王の指輪(E)、煙幕玉×3、不明支給品×5
[GP]:18pt→48pt(勇者殺害により+30pt)
[プロセス]
基本行動方針:???
※第一回定期メールをまだ確認していません。
※可憐から魔王カルザ・カルマと会ったことを聞きました。
※桐本のアイテムが周囲に散らばっています

[G-6/海/1日目・午前]
[VRシャーク(ヴィラス・ハーク)]
[パラメータ]:STR:C→B VIT:D→C AGI:C→B DEX:D→C LUK:E
[ステータス]:サメ、頭部にダメージ、腹部にダメージ
[アイテム]:不明支給品×3
[GP]:250pt
[プロセス]
基本行動方針:???
1.食べたい
※水の塔の支配権を得たことにより水属性を得て本来の力を僅かに取り戻しました
※魚としての自覚を得て本来の力を僅かに取り戻しました

850 サメ×アイドル×殺人鬼 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:56:06 ID:MbhNGrxk0
投下終了です

851 ◆H3bky6/SCY :2021/03/23(火) 22:57:57 ID:MbhNGrxk0
【告知】
最近(主に私の)予約超過が目立つため予約期間を延長します
予約期間は1週間+延長2日となります
よろしくお願いします

852 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:00:37 ID:L.B2nzhE0
投下します

853 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:01:22 ID:L.B2nzhE0
少年と幼女が荒野を行く。
温泉ですっかりのぼせてしまったロレちゃんは酔っ払いのような足取りを楽しんでいるようだった。
それを導く様にして正義はその手をつないで歩く。

「転ばないようね」
「うむ。フワフワとして中々に愉快である。これに飴という味の愉悦も加わればクク。神の身は味わえぬ愉悦よな」

言いながら口に飴を放り込み口内で転がす。
表情は変わらないが実に楽しそうであった。

その様子は正義の目には少し変わっているだけの年相応の少女に見える。
神様であった頃は、こうして湯冷まし歩くこともなかったのだろう。
それはどこか寂しいことのように思える。

「ロレちゃん、楽しいかい?」

何気なくそんな問いをしていた。
無機質な幼女の黒い目が正義を見つめる。

「そうさな。愉快である。これもまた人としての肉を得たが故だろう」
「どういうことだい?」
「神は完全にして完璧である。故に感情など無く愉悦もない。あるのはただ完全と言う機能のみある。
 だが、我は肉をもって人としての視座を得た。人の余分を得たのだ。それ故の愉悦であろうな」

完全でなくなったが故に楽しさを得た。
それは余分であると彼女は言う。

「それは……いい事なのかな?」
「良いも悪いもなかろう。ただの些事である。本体より別れた我の終末などどうなろうと何の影響も持たぬ」

幼女はあくまで大局的な視座で語る。
正義はそうかと相槌を打つと。

「なら、君は好きに生きていいという事なんだね」
「ふむ?」

正義は対極の局所的な価値観を述べた。
幼女は不思議そうに首をかしげる。

「そうなのか?」
「そうさ」

迷いなく断言する。
幼女は正義から視線を外して前を向いて。

「なるほど。お前が言うのならそうなのだろう」

そう言って歩き始めた。
いつの間にか足元のふらつきは納まり、しっかりとした足取りである。
目的地である炎の塔が近づいていた。



854 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:02:19 ID:L.B2nzhE0
「……宇宙開闢以来の苦難である」

延々と続く塔の階段で幼女は息を切らしていた。
初期設定を忘れた彼女のパラメータは全てが最低ランクである。
幼女の歩幅で階段を登り続けるのは体力的にすごくしんどい。

「この我にこれほどの苦難を与えようとは……人とは業深い……」

肩で息をしながら愚痴をこぼす。
それでも足を止めないのは、真面目なのか融通が利かないのか。
単に目的を止めると言う選択肢を知らないのかもしれない。

「ロレちゃん」

先を進んでいた正義がその様子を見かねて、下段に回り込んでその場に屈んで背を向ける。
しかし、ロレちゃんはそれを無視して階段を登る。

「……待ってくれロレちゃん。そこで無視されると少し悲しい」

呼ばれてようやく足を止め振り返った。
屈みこむ正義を怪訝そうな目で見つめる。

「どうした。マサヨシよ。遊んでいるのなら置いていくが?」
「違うよ。疲れているようだから僕の背に乗っていかないかと思ってね」
「ふむ。そういうのもあるのか」

感心したように呟くと幼女は階段の上から正義の背に飛び乗った。
変な体制になったロレちゃんを整え、正義が立ち上がる。

「ほぅ。労をせず天へと至れる。これが人の叡智か」
「いや、まあ……そうだね」

やってることはただのおんぶなのだが、甚く感動している様子なので水を差すのも野暮だろう。
それに、あながち的外れではない。

「人間は助け合いさ。それは確かに叡智とも言えるね」
「ふむ?」

ロレちゃんを背負って長い階段を登る。
まったく掴まる気のないロレちゃんを落とさないよう気を付けながら慎重に足を進めてゆく。
そうして、ようやくこの塔の終着点、頂上フロアへとたどり着く。

855 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:02:43 ID:L.B2nzhE0
「――――――――」

そこには腕組をしながら起立する無骨な男がいた。
正義はそれを視界に捉えながら、慎重に負ぶっていたロレちゃんを降ろす。
彫刻のように静かに佇んでいた男がゆっくりと目を開いた。

「面白い。魔王は来ずとも別の魚が釣れたか」

刃のような鋭い瞳が正義を捉える。
正義も目をそらさず、真っすぐにその目を見つめ返した。

「大和家の嫡男、大和正義だな」
「ええ。貴方は酉糸琲汰殿とお見受けするが、相違ないか?」

男、酉糸琲汰は然りと頷く。
互いに武に身を置き名を知られた者同士、直接的な面識はなくとも名は知れていた。

「大和家の次代は現当主を上回る才覚と聞く、試してみたものだな」
「身に余る評価はありがたく。されどまだ未熟の身なれば」

それを謙遜ととらえたのか琲汰はくっと笑う。

「よかろう。大和正義。立ち合いが望みだ。その実力、確かめさせてもらおう」

全身から湯気のように燃えるような闘気を発しながら男が構えた。

「私にはあなたと仕合う理由がない」
「ここに来たという事は当の支配が目的なのだろう? 目的を果たしたくば我を倒すしかないぞ」

言って自らの背後のオーブを親指で指さす。
その様はさながらオーブを守護る番人のようであった。

「確かに、我々は炎の塔の支配権が目当てだ。されど此方としては現時点で支配権を持つ貴方の協力が得られればそれでも構わないのですが」

正義としてはできうる限り無用な争いは避けたい。
排汰の協力を得られればこれ以上はないのだが。

「クドい! 武人に言葉は要らぬ。拳をもって語れぃ!」

ダンと地面を踏みしめ琲汰は頑として引かなかった。
正義とて平時であれば武道家として応じるのも吝かではない。
だが、今はそれよりも優先すべき目的がある。

ロレちゃんの守護と事態の解決。
その目的にこの塔の支配は必須ではない。
今の段階ではあくまで正義の推察の一つとして必要かもしれないというだけである。

必要性とリスクは見合うものなのか。
戦うか、諦めてここは引くか。
逡巡する正義。
だが、その観察眼が違和感を捉えた。

ハッとして振り返る。
いつの間にそこにいたのか。
それは気配もなく現れた。

最上階フロアの入り口には黒衣の男がいた。
少なくとも階段を上ってくる足音はしなかった。
互いに気を取られていたとはいえ、この二人がここまで気づかぬなどただモノではない。

「貴様は……」

その顔に見覚えがあった排汰が反応した。
共に龍退治に挑んだ男である。

「ドーモ。ワタシ、シャいいマス」

シャと名乗った男はニコやかに名乗りを上げるが、その笑顔に絆され油断などしない
排汰はこの男の凶暴性を知っているし、正義の観察眼にも男の笑みは今にも食らいつかんとする獣の笑みに映っていた。
恐らく正義と排汰が仕合えば、すぐさま横から喰らいつかれるだろう。

「オヤ、どうしまシタ? 戦ウのでショウ、ワタシを気ニせず続けるイイですヨ」

シャを警戒したように動きを止めた二人を挑発するように促す。
正義の正面には立ち合いを挑む琲汰に、背後からの不確定要素である第三勢力の登場。
こうなっては逃げるのも難しい、もはや衝突は避けられまいと正義は腹を決める。

856 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:03:02 ID:L.B2nzhE0
「いいでしょう。だがその前に場所を変えましょう。3人で戦うにはここは少し手狭だ」

ここで戦えばロレちゃんを巻き込む恐れがある。
正義としてはそれだけは避けたい。

「構わん。では塔を降りて下で闘ろう」

琲汰からすれば幼女の安全などどうなろうとかまわない。
だが、だからと言ってわざわざ脅かそうとも思わない。

単純に弱者に興味がないのだ。
琲汰が心配するのは正義のメンタル面。
後顧の憂いをなくして全力を出せるというのならそれに応じるのも吝かではない。

移動を始めようとする二人。
そこに喉を鳴らすような笑い声が響く。

「武道家は、トロケそうなホド甘イですネェ」

それは武道家を嘲笑う暗殺者の声だった。
戦いの仕切り直し? 場所を変える?
敵を前にして、なんという甘い考えなのか。

「トックに始まってるヨ」

風を切る音。
傍らに佇む無防備な幼女の頸椎に魔手が伸びる。
だが、その手が届くと寸前で、割り込んだ正義がその手を掴んだ。

「貴様、真っ先に子供を狙うのか……ッ?」

握り潰すような力で腕を捻り上げながら、怒気を籠めた瞳でシャを睨む。
シャはそれに怯むでもなく飄々とした態度で答える。

「当然ネ。ココにいるノだから殺すヨ、大人も子供もナいネ、平等ヨ」

殺し屋シャは誰よりも平等だ。
男も女も大人も子供も全てを殺す。

シャは腕を捕まれながらも、構わず蹴りを放った。
狙いは幼女。と見せかけ蹴りの軌道が変わる。
正義と幼女、二者択一を迫る変則二段蹴り。

正義もそれは読んでいた。
だが読んでいてもロレちゃんへの攻撃は防がずにはいられない。
結果、自身の防御が疎かになり蹴りが頭部を霞める。

「…………くっ」
「正義ノ味方は大変ネ」

浅い、が体勢は崩れた。
そこシャが追撃を見舞う
だが、追撃に走ろうとしたその足が止まる。
同時にシャは横合いから放たれた蹴りを受け止めた。
琲汰の横槍である。

「こちらが先約だ」
「オイオイ。龍狩りノ時は混ぜテやったロ? 横槍はお互い様ネ」
「ぐぬぅ……」

そう言われては琲汰は返す言葉もない。
あの時先約を無視して乱入したのは琲汰の方だ。
そんな排汰を龍狩りに加えて貰った恩すらある。
だが、しかし。

「それはそれ、これはこれ!!」

なんという我侭。
己が我侭を押し通すことしか考えていない身勝手の極み。
これには暗殺者も呆れるしかない。

シャと琲汰が睨み合う。
その隙に正義はロレちゃんを抱えて階段へと駆け出した。

「あ、待て! 逃げるな、ぷッ?」

その動きに気を取られた排汰の顔面が強かに打たれる。
シャの裏拳が人中にめり込んだ。
そのまま足元を払われ、琲汰は重心を崩しその場に転がされる。

シャは倒れた排汰に目もくれず、正義の逃げた階段へと駆けた。
全く減速することなく壁を蹴り階段を下りる正義の背を追う。

857 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:03:36 ID:L.B2nzhE0
「くっ…………!」

速い。
正義は階段を下りながら背に迫る気配を感じる。

このままではすぐに追いつかれると直感した正義は足を止め半身に構えた。
小柄な幼女とはいえ人一人を抱えたまま、振り切れるほど甘い相手ではない。
片腕はロレちゃんを脇に抱えているため塞がっている、使えるのは左腕だけだ。

暗殺者が階段を数段飛ばしで飛ぶように迫る。
それを前に息を吐き意識を集中、敵の動きを『観察』した。

暗殺者は狭い階段通路の壁を三角跳びの要領で撥ね、相手の逆を突く動きを見せた。
そこから放たれる鋭い跳び蹴り。
蹴りだした足が別の生き物のように撥ね予測不可能な軌道を辿る。

回避不能な必中必殺。
だが、その一撃を正義は片腕で打ち払った。
観えている。
『観察眼』を前にフェイントの類は通用しない。

正義が反撃に転じる。
攻撃を捌いた勢いのまま一歩踏み出し槍のように鋭い前蹴りを突き出す、
だが、その蹴りはしかし、あっさりと躱され背後の壁へとめり込んだ。

「ドコ狙っテ……ル!?」

軽口を叩こうとしたシャがその場を飛び退いた。
そこに蹴りの衝撃で剥離した天井が落ちてきたのだ。
明鏡止水の冷静さと観察眼で正義はあの一瞬で敵の動きのみならず、周囲を脆い個所を見抜いていた。

天井の落下にシャが怯んでいる隙に正義が身を翻して再び階段を下り始める。
だが、このくらいでは時間稼ぎにしかならないだろう。
一刻も早くこの階段を降り切って外に出なければならない。
そこまで行けば、いくらかやりようはある。

急ぎ階段を駆け出す正義。
だが、その眼前で唐突に外側の壁が破裂するようにぶち抜かれた。
大量の瓦礫と共に現れたのは筋骨隆々の男。
最上階に取り残されたはずの排汰である。
排汰は階段で追うのではなく、塔の外へ飛び降り外側から壁をぶち抜いて先回りしてきたのだ。

「逃がさんッ」

先ほどはシャを足止め正義を援護する形となったが、排汰は正義の味方ではない。
ただ自分が戦いたいがためだけの男である。
獲物を横取りされるなどされたくないし、正義にこのまま逃亡を許すのも嫌だ。
故に、後方より迫るシャよりも先に倒す。
排汰の思考はその一点。

階上からはシャが迫り、階下は排汰によって塞がれた。
ロレちゃんを抱えた状態では満足には戦えない。
絶体絶命の状況の中で正義の下した結論は。

「ゴメンよ」

そう謝罪の言葉を口にして、正義は脇に抱えていたロレちゃんを琲汰の開けた穴から外へと放り投げた。

「なっ…………!?」

余りの蛮行に排汰ですら呆気にとられた。
その一瞬。その隙をついて正義も駆け出す。
飛んで行ったロレちゃんを追うように、自らも炎の塔から飛び降りた。

既に塔の中頃、高さは10メートルほど。
それでもまともに落ちれば落下死は免れない高さである。

正義はあえて壁際を落下し、途中何度か意図的に壁を擦って落下速度を軽減。
そして地面に衝突する直前に体を丸め、落下の衝撃を五点に分散させるように回転することで無傷の着地を成功させる。
そこで正義は止まらず、自身の無事を確かめる間もなく立ち上がるとすぐさま駆け出した。
高めに放り投げたロレちゃんの落下地点まで先回りすると、落下してきたロレちゃんを危なげなくキャッチする。

「無事かい?」
「うむ。ヒュンとした」

風圧で頭がボサボサになったロレちゃんを優しく地面に降ろす。

858 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:03:51 ID:L.B2nzhE0
「待ていッ!」

正義を追って排汰も飛び出す。
だが勢い余って壁際を離れすぎた、これでは壁伝いの減速はできそうにない。
憐れ排汰はこのまま投身自殺に一直線である。

「墳ッ」

排汰が廻る。
足をプロペラのように回転させ空中で旋風を巻き起こす。
そのまま回転を続けながら落下し、最後に大きく砂埃を舞わせながら両足で着地した。

それはどういう物理法則か、はたまた力業か。
ともかく排汰も五体満足のまま10メートルを超える自由落下をクリアした。

「逃がさん…………ッ!」

絶対の意志を籠めた拳を固く握り締め、正義を睨みつけた。
ようやく出会えた好敵である。
このまま逃がしてなるものか。

「オヤ、お二人で見つメ合っテ、待っテテくれたのカ?」

そこに僅かに遅れてシャが到着する。
シャはバカには付き合わずそのまま普通に階段を下り切り、出入り口から出てきた。

炎の塔のお膝元。
障害物のない荒野にて、一定の距離を置いて三人が睨み合う。
前哨戦は終わり、ここからが本番である。

「ロレちゃん。離れていて」
「うむ」

この相手に背を向けて逃げるのも難しいだろう。
二人を視線で牽制しながら、安全な場所までロレちゃんを下がらせる。

「――――マサヨシ」
「どうしたんだい?」

正義は少し驚いた。
彼女から話しかける事自体が珍しい。
何事かと思い、僅かに背後へと注意を裂く。
たが、

「? 何であろうな、貴様に声をかけねばならぬ気がしたのだが」

言った本人が心底不思議そうに首を傾げていた。
産まれた人としての感情に戸惑っているようにも見える。
正義は内心でそれを嬉しく思いながら。

「そうかい。なら、こういう時は「頑張れ」と言って送り出して欲しい」

ふむ、と無表情のまま幼女は納得を示す。

「では、頑張るがよいマサヨシよ」
「ああ。全力を尽くすよ」

立ち去っていく幼女を背に正義は気合を入れて前羽に構えた。
排汰も炎のような闘気を滾らせ拳を構える。
それを見てシャは二ィと口端を歪め呟く。

「――――鏖ね」



859 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:04:38 ID:L.B2nzhE0
三つ巴において陥りやすい状況は三通りある。
一つは誰かに襲い掛かった瞬間を狙われる危険性を恐れて誰も動かなくなる膠着状態。
一つは強い相手を落とすべく戦力的に劣る二人が協力する展開。
そしてもう一つは、最も弱い者が狙われ真っ先に落とされる展開である。

真っ先に狙われるのは弱者。
ではこの三人の中で最も弱いのは誰か?

三人の男が縦横無尽に動き回ていた。
それは半端な実力者では巻き込まれただけで吹き飛ばされるような嵐である。

最も機敏に動きまわているのはシャだった。
圧倒的な機動性を生かし、少しでも隙を見せればすぐさま喰らいつく狡猾な蛇の様な動きである。

最も攻撃的な動きをしているのは排汰である。
敵の仕掛けを待たず、自ら先の先を取る攻撃的な仕掛けを見せていた。

正義に向けて排汰の腕が振るわれる。
見舞われる五月雨のような散打を防ぎながら、正義は半歩踏み込み強かに腕を払う。
拳を握り反撃に転じようとした瞬間、背後よりの蹴りを察知しその場に屈み込む。
シャの蹴りが頭上を過ぎ去る。回避と共に放った足払いは跳躍により回避された。

そして最も狙われているのは正義だった。
正義が後の先を狙うスタイルであると言うのもあるだろう。
シャと排汰は隙を見せれば牽制程度に打ち合う事はあるが狙いは正義に集中していた。

シャは現在二つの塔の支配権を得ている。
それがどれ程の影響を持つのか不明だが、GPによる強化も行っており確実な強者である。

排汰の得た支配権は一つだが、この決戦の地を支配する支配者である。
後押しの様なものがあってもおかしくはない。

対する正義はアンプルを使用しSTR、AGI、DEXを強化しているが、それでようやく追いついている状態だ。
正義も一流の使い手ではあるが、相手もまた一流である。
二対一で勝てる程、甘い相手ではない。

だが、格上二人に狙われたこの状況においても正義は冷静だった。
観察眼を駆使し、状況を読みながら、明鏡止水の精神で動じることなく防御に徹する。

とは言え、このままではじり貧なのは確かだ。
この平原では先ほどのような地形を利用した紛れはない。
単純に強いものが勝つ。

あるとするならば一対一ではなく三つ巴と言う状況だが、狙われている正義にとっていい方向に転ぶとは考えづらい。
つまり、この状況を動かすとしたら、それ以外の要因でなければならない。

「マサヨシ――――」

それは後方で戦況を見守っていたロレちゃんの声だった。
追い詰められている正義を見かねたのか、それとも別の理由か戦場に近づいてきる。

それは正義にとって望まぬ展開だが、その懸念をよそにロレちゃんが何かを放り投げた。
幼女の筋力ではまったく正義の下には届かなかったが、役目は追えたとばかりにとてとてと踵を返していった。
それが何であるかを見た正義が駆ける。そして放り投げられたそれを手に取った。

琲汰は知っていた。
故に、それを追わず、すぐさま飛び退いた。

シャは知らなかった。
故に、それを追い、反応が遅れた。

その手には日本刀。
流れるような動作で鯉口が切られ、振り返り様、刀身が鞘より引き抜かれる。

抜刀から紫電一閃。
雷光の如き刃が振り抜かれる。

数多の武を収めた若き天才。
その武功の中で最も名を知られているのが剣である。

大和正義は剣士である。

その事実を、日本の武術界隈に詳しい排汰は知り、海外の殺し屋であるシャは知らなかった。
それが命運を分け、シャの右腕から手首の先が落ちた。

860 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:05:21 ID:L.B2nzhE0
切り落とされた腕を押さえシャが跳ねるように距離を取る。
腕を切り落とされたシャはタリスマンの紐を口にくわえて器用に傷口を縛り上げ止血を完了した。
そうして傷口を見つめ怒るでもなく落胆したように肩を落とす。

「イイ腕ヨ。けどガッカリネ。何故首ヲ狙わなかったカ?」

トントンと無くなった右腕で自らの首を叩く。
あの一瞬なら首を落とせただろう。
殺せるチャンスに殺さないなど、シャからすれば理解しがたい。

「殺す覚悟モない孩子にワタシ倒せないヨ」

シャも正義の剣の腕を知った
痛手であったが、先の様な不意打ち染みた奇襲はもう通用しない。
勝機を不意にした愚か者だ。

「それは違う。殺す覚悟など、とうの昔にできている」

大和に生まれたものが最初に教えられる覚悟とは殺す覚悟である。
御国の守護者として滅私奉公。最初に自らを殺すのだ。
だからこそ。

「殺す覚悟をしたうえで、殺さない覚悟をしている」

どうしようもない悪ならば斬る。
その覚悟もできているが、だからと言って簡単に命を諦めるような真似はしない。
取るとするならば最後の手段だ。

その覚悟を示すように正義が正眼に構える。
その立ち姿に一部の隙もない。

糸の張ったような一瞬の静寂。
その糸を断ち切るように待ち構える正義に向かってシャと排汰が駆けた。

迎え撃つ正義。
それだけならば先ほどと変わらぬ構図である。

だが振るわれる刃は、流水のように流麗であり雷光のように鋭かった。
足を止めさせるような払い。
シャは踏み止まり、その間合いから逃れる様に刃を避ける。

迂闊に踏み込めない
剣道三倍段とはよく言ったもの。
素人が刃物を持ったところで物の数ではないが、達人級の相手ともなると次元が違ってくる。

素手における対刃物において最も困難な点は攻撃を受けられないという所だ。
刃物による斬撃は同じく武器で受けるか防具を着込むことでしか防げない。
受けて踏み込むことも叶わなければ、長物による単純なリーチの差を覆せない。

だが、その常識を無視して踏み込んでゆく男が一人。
孤高のストリートファイターである排汰だ。

自ら間合いに飛び込んできた敵に対して、正義は容赦なく刀を振るった。
ここで躊躇う程、正義は甘くはない。
急所こそ外しているものの、手足の一本は落とす覚悟の一撃だった。

この刃に排汰の拳が衝突した。
弾かれる刃、だがすぐさま返す刃で切り返す。
再び剣が舞い、檻のような斬撃が嵐のように攻めたてる。
だが、排汰はその全てを拳一つで打ち落とした。

刃と拳の打ち合いと言うあり得ぬ攻防。
それを実現しているのはブロッキングという技術である。
攻撃の瞬間に合わせて防御を行うことによりダメージを無効化する絶技。

一つしくじれば先ほどのシャの二の舞となり手が落ちる。
それを日本刀を相手にやってのけるのだから、その技量もさることながら、実行する度胸もまた常軌を逸していた。

861 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:05:50 ID:L.B2nzhE0
ブロッキングを繰り返しながら、じりじりと踏み込む。
刃より拳の間合いへ。
たまらず詰められた間合いを離すべく正義の足が僅かに引いた。

その刹那を見逃さず、排汰が大きく距離を詰めた。
それを迎え撃つべく正義が刃を振るう。
正しく狙いはその瞬間。

「ちぇりゃああ――――!!」

裂帛の叫びと共に繰り出されたそれは、素手による最も有名な対刃物の技。
すなわち白刃取りである。
軌道が読めれば十分に実現可能だ。

「くっ」

正義が刀を振るおうとするが、完全に固定され押すことも引くこともできない。
排汰が動く。狙うは武器破壊である。
折られる。直観的にそれを察した正義は、排汰の動きに合わせてあえて手から力を抜いた。

「な…………ッ?」

抵抗がなくなり、刀にかけた力が一瞬行き場を失いバランスを崩す。
その瞬間を見逃さず再び刀を握る力を籠めて手首を返すと、白刃取りを振り払い武器破壊を免れる。
再び距離を取ろうとする正義、だがその鳩尾に衝撃が走った。

「ワタシも忘レちゃイヤデスヨ」

いつの間に懐に入り込んだのか。
シャの肘が鳩尾に突き刺さっていた。
刃の矢面に立つ役を排汰に丸投げし、自身は一撃を叩き込む隙を虎視眈々と狙っていた。

「ぐっ…………がっ……!」

正義がその場に崩れ落ちる。
膝をついた正義を蹴り飛ばし、その勢いで背後の排汰へと振り返った。
一瞬で間合いを詰めたシャの左腕が排汰の腹部へと添えられる。
正義への一撃を目の当たりにしていた排汰はその一撃が浸透勁によるものであると見抜いた。

浸透勁。
それは不可思議な力などではない。
地面を踏みこむ抗力を自らを通して敵の体内に叩き込む、力の伝え方を点ではなく波として伝える中国武術の合理である。
様々な武術と相対してきた排汰は対応など心得ている。
始動となる足を注視しその瞬間を見逃さなければ、

「ガハ……………………ッ!?」

だが、起こりなどなかった。
何の前触れもなく爆発するような衝撃が腹部に沈殿する。
たった一撃で排汰が膝をつく。ただの一撃ではない。
まるで体内に直接、氷のように重い何かが叩き込まれたような異常な一撃だった。

「君ラ二人とも遊びガ足りないネ。もっとイロイロ遊びヲ知らナイと」

勁が不可思議な力ではなく武の合理であるという常識は現実世界での話だ。
勁とは、この世界においては正しく不可思議な力である。
アニメやゲームの知識があれば、あるいはその発想もあったのかもしれないが。

地に伏す二人、立っているのはシャだけである。
シャにとっては当たり前に訪れた当然の勝利だ。
それなりに楽しめただけの単なる娯楽でしかない。
倒れた二人のとどめを刺すべく動こうとしたシャの前に、腹部を抑えた正義が立ち上がる。

「オヤ、なかなかタフだネ。イヤ、回復アイテムかな?」

その言葉の通りである。
回復薬により体内のダメージを回復させた。
すぐさまそれを見抜くのもまた、ゲーム知識によるものか。

「ナラ、決勝戦と行こうカ」

シャが構え正義がそれに応じる。
三つ巴は終わり。
弱者の脱落を経て、最強を決める決戦が始まった。



862 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:06:02 ID:L.B2nzhE0
「……………………ま……て」

激戦を繰り広げる様を排汰は地を舐めながら見ていた。
悔しさを滲ませ地面を掻くと、五指の形に削れた。

自分を置いて戦いを続ける二人。
取り残される。置いて行かれる。
嫌だ、嫌だ。こんな結果は認められない。

排汰は武に全てを捧げてきた。
誰よりも、何よりも。

力が及ばなかっただけならいい。
それは捧げる全てが足りなかっただけの話。
それで敗れるのは仕方がない。

だが、武に全てを捧げてきたからこそ負けるなどと言う話は認められない。
遊びがないから負けたなどそんな話はあってはならない。
アイテムがないから負けたなどそんな話はあってはならない。
排汰が余分なものとして切り捨てたものが必要だったなどと今更、今更認められるモノか!!

素手はシャにとってはより楽しむための遊びである。
素手は正義にとっては目的のため取りうる手段の一つだ。
琲汰は違う。
素手は己の強さを突き詰めることこそが目的である。
己が五体。己の身を磨き上げる事こそに意味があるのだ。

誰よりも、何よりも、武に全てを捧げてきた。
だから誰よりも、何よりも排汰は。

「――――強ぃいはずだぁあああああああああ!!」

叫びと共に勢いよく立ち上がった。
体内の氷を溶かすように魂を燃え上がらせる。

その叫びに呼応するように、大地が震えた。
同時に爆発するような轟音がエリア全体に響いた。

見れば、中央の火山が天にも届くような火を噴出していた。
エリア説明にも合った火山の噴火だ、だがこれは大きすぎる。

巨大な火山弾が雨のようにエリア全体に降り注ぐ。
それを見て。正義はシャとの攻防の手を止め、敵に背を向けるリスクを呑んで踵を返した。

広範囲の大災害、恐るべき灰と即死の雨。
その脅威からロレちゃんを守護るべく駆け出したのだ。

シャもその背を追わなかった。
流石のシャからしてもこの事態はそれどころではない。
この瞬間だけは、全員が戦闘ではなく、この天変地異に対応を要求されていた。

シャが自らに降り注いだ、火山弾を蹴りで打ち払う。
その砕けた火山弾の向こう。
排汰が降り注ぐ火山弾など見えぬような足取りで踏み込んで来た。

この瞬間だけは、全員がこの天変地異に対応を要求される。
そう、ただ一人、この地の支配者を除いて。

支配者の持つ特権の一つ。
エリアによる地形効果の悪影響を受けない。
この火山弾もその一つ。

突進からの肘打ちが暗殺者の鳩尾に直撃する。
僅かに下がった頭に向けて放たれるアッパーカット。
だが、シャは体勢を崩しながらもこれに反応し、掌で受け止めるように防いだ。

奇襲は失敗。
格闘家は世界を味方につけてもこの暗殺者を上回れないのか。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!」

否。否である。
運命を打ち破るように雄たけびを上げる。
昇り龍のように逆腕が跳ね上がった。
片腕を失ったシャには文字通りそれを防ぐ手がない。

「――――――滅」

格闘家の剛拳が暗殺者の胴の中心を打ち抜く。
衝撃が突き抜け、肋を粉砕しながら敵を天へと打ち上げる。

流星のように降り注ぐ火山弾。
その一つに交じって、シャの体が乾いた大地に落ちた。



863 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:06:14 ID:L.B2nzhE0
正義は駆ける。
それこそ矢よりも早く。
自身に迫る火山弾に構っている暇などなかった。
いくつもの被弾を受けながら、遠方で佇む幼女の下へと駆けつける。

死の雨の中でも幼女はいつものように立ち尽くしていた。
世の些事など気にかけぬ超越者然とした態度で。

だが、それでも今の彼女はただの幼女なのだ。
そんな彼女を正義が守護らなければ誰が守護ると言うのか。

「ロレちゃ――――――」

名を読んで手を伸ばす。
幼女も、応じるように手を伸ばした。
伸ばした手が届く。
それよりも早く。

巨大な火山弾が幼女の体を直撃した。



864 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:06:27 ID:L.B2nzhE0
必殺の一撃が決まった。
格闘人生の集大成ともいえる生涯会心の手応えだった。
昏倒どころか、絶命してもおかしくはないだろう。
排汰は倒れるシャを見つめる。

「…………クッ」

だが、倒れた男から声がした。
それはあるいはダメージに喘ぐ声のようでもある。
しかし、ゆらりと幽鬼の様に男が立ち上がる。

「ク、クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ」

口から大量の血を吐きながら、それに構わず殺し屋が笑う。
その足元、男を中心に砂嵐と吹雪が入り混じった嵐が吹き荒れる。
火山が排汰の猛りに呼応したように、男も何かを呼び立てていた。

「很危?、很危?。如果我不用勁保?我就死定了(危ない危ない。勁で護らなければ死んでいたよ)」

狂気に躍りながら、この世全てを嗤うように男は口元を歪めた。
余りにも悪魔じみた光景に排汰の中で純粋な疑問が湧く。
あれは本当に人間か?

否。あれは人を超えた魔人である。
魔人は血で濡れた髪をかき上げ糸のような目を見開くと、排汰に向けて指をさした。

「很有趣。我无聊了、所有的弱者。?是?得一?(面白い、弱者ばかりで飽き飽きしていた所だ。お前は殺すに値する)」

弾丸のような殺意が向けられる。
その弾丸に射抜かれた排汰が息を呑んだ。

龍を見た時は血が沸いた。
宿敵たる我道との戦いはいつだって肉が躍った。
正義の剣技に向かっていった時だって恐れなどなかった。

だというのに足が竦む。
強敵を前にして恐れを感じる事など、生まれて初めての経験である。

「…………ハハッ」

思わず笑みがこぼれる。

排汰にとって闘争に置いて行かれることこそが恐怖であり、闘争その物を恐れたことなど一度たりともなかった。
心にあったのは常に挑むことへの沸き立つような炎。
だが、それこそが排汰にとっての壁だった。

恐れぬが故に戦いに勇気など必要がなかった。
恐れるが故にそれに挑む機会を得た。

恐れても踏み込むその一歩。
ここを踏み抜いた先に、求めるものがある。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
「クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!」

排汰は笑う。
シャも笑う。
火山弾の残り香のような炎が降り注ぐ空の下、砂と雪の吹き荒れる嵐の中で二人の魔人が笑いながら殺し合いを始めた。



865 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:06:44 ID:L.B2nzhE0
「――――愚かな」

幼女は無感情な瞳で傷だらけで倒れる正義を見下ろしていた。

「己が命より他者を優先するなど生命として破綻している」

砲弾よりも巨大な火山弾の直撃を受け、幼女の伸ばした手は千切れ、内臓は破裂し、絶命は免れない致命傷を負った。
だが、死の一歩手前を彷徨う幼女に、正義は自らも火山弾の雨に晒され傷ついているにもかかわらず虎の子である秘薬を躊躇うことなく使用した。

「まったく、最後まで人とは理解し難い」

生きて種をつなぐ事こそが命の意味だ。
つがいでも子孫でもない他者を優先するなど理解し難い。

「……いや、最後扱いはやめてくれないかな、まだ生きてるよ」

正義が刀を杖代わりにして立ち上がる。
いくらか火山弾の直撃を受けたものの致命傷になるほどのものではない。
とは言え、無事とも言い難いのだが。

「だとしても同じ事だろう。お前ではもうあれに勝てぬ」

淡々と、どこまでも冷静に邪神は事実のみを告げる。
邪神の指す先で拳を交わし合う魔人たちは、人を捨てもはや別の領域に達していた。
どちらが残ったとして、この傷で挑むのは命を捨てに行くようなモノだろう。

「だとしても、君が逃げられるくらいの時間は稼いで見せるさ、だからどうか君一人でも逃げてくれ」

あの戦いがどれほど続くかはわからないが、この傷では逃げることも難しいだろう。
勝ち残るのが格闘家ならばロレちゃんに手を出すこともなかもしれないが、暗殺者ならば確実に殺すだろう。
それを防ぐためには正義が戦うしかない。
だが、進もうとする正義を引き留める様に、後ろ手を捕まれる。

「行かせてくれロレちゃん……いや、待て、君は何を……」

掴まれた手はコネクトされていた。
そこからロレちゃんの持つGP280ptから手数料を引かれた252ptが正義へと移譲される。
これほど大量のGPを持っていたことも驚きだが、それ以前になぜこんなことをするのか。
戸惑う正義にロレちゃんは言う。

「言ったのはお前ではないかマサヨシ、好きに生きろと。だから好きにしている」

正義の足元から光が上がる。
ポイントだけではない、ロレちゃんの手によって正義に何かが実行された。

あの時受け渡された刀もそうだ。
GPも支給品も正義はあえて彼女の所有物を確認はしなかった。
確認すれば正義にとって役立つモノを持っていたかもしれないが、それは正義の都合だ。
彼女のアイテムもGPも彼女のモノなのだから彼女が必要だと思ったのならその時に明かさせばいいと、そう思っていた。

だから、ロレちゃんが何を持って何をしたかなんて正義には正確にはわからない。
それでも気づくものはあった。

「待て、それは違う。それは役目が違う。君を守るのは俺の役目だったはずだ」
「そうだな。確かに貴様はそう言った。我も許可した、
 だが、人間は助け合い、なのだろう?」

識らぬものなどない全知全能の超越者は塵芥が如き存在の一粒に為り果てた。
飴の味を知り、温泉の熱さを知り、知識でしか識らなかった人間を知った。
その事実を楽しげに受け止め幼女は笑った。

不敵で不遜で幼女らしからぬ笑みだったけれど。
それでも確かに。

「ではな。マサヨシ。人としての生、なかなかに愉快であった」
「ダメだ。ロレちゃん、逃げるなら君が……!」

伸ばす手も声も届かず。
正義の体が空に向かって消えていった。



866 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:07:05 ID:L.B2nzhE0
魔人と魔人の衝突は、人智を超えた領域に足を踏み込み始めていた。

「ハァ――――――ッ!!」

燃えるような闘気が炎となり放つ拳に炎が纏う。
撃てば敵を砕いて燃やす剛なる炎拳。

「シッ――――――ッ!!」

振るわれる炎拳を氷の気を込めた腕で払う。
荒野に激しく拳がぶつかり合う音が響く。
その度に炎焔が散り、氷雪と砂塵が舞う。

全てが必殺。全てが致死。
互いに即死の嵐を打ち合い、防ぎ払い躱し続ける。

永遠に終わらぬような至上の輪舞曲。
だが、それを終わらせるべく、シャが仕掛けた。

氷雪の息を吐き、踏み込みに砂塵を舞わせる。
多数の細かなフェイントを織り交ぜ、最終的に振るわれたのは失われた右だった。
排汰も僅かに虚を突かれたが、すぐさま対応しこれを防ぐ。
だが、いつの間にか止血を解いていたのか、受け止めた腕の断面から血飛沫が飛び排汰の顔面へと降りかかった。

だがこの程度、今の排汰にとって目つぶしにもならない。
多少の血糊が目に入ったところで、強く意思をを持てば目を閉じず視界は保てる。
来ると分かっている目つぶしなど怖くもない。

しかし、排汰はその意思に反して目を閉じた。
それは血の氷礫だった。
凍った刃が眼球を傷つける。
こうなれば意思一つで耐えられるものではない。

「くっ」

視界が奪われた。
だが一片の光もない夜闇の中で戦ったことなど一度や二度ではない。
視覚などなくともどうとでもなる。

だが、敵も達人。
辿るのは至難の業である。

だが不可能ではない。
あるとするならば攻撃の一瞬。
その瞬間に肉を切らせて骨を断つ。

一片の光もない闇の中に刹那にも満たぬ一瞬を待つ。
恐るべき緊張感に身が震える。
恐ろしい。だからこそ、歓喜する。

一方的な虐殺でも、健全な競い合いでもない。
現代日本では決して味わえぬ、殺し合いという至高の美酒。
これこそが排汰が求めていた物だ。
その一瞬を超えた先に、最強がある。

867 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:07:18 ID:L.B2nzhE0
極限の集中。
敵の攻撃が皮膚の産毛に触れた。

瞬間、排汰は動いた。
人体限界反応速度を超える超反応。
攻撃の方向に必殺の炎拳を叩きこむ。

だが、その拳は何も捕えなかった。
狙いを外したのでも避けらたのでもない。
まるで最初から何もなかったよう。

「我逆?(逆だよ)」

声は逆からあった。
それが遠当てによる囮だと気づいた時にはすでに遅い。
放たれた抜き手が肋骨を縫って心臓を握る。

「ぐ、るぅうううッッ」
「ッ!?」

噛み締めた口端から血と泡を吐きながら排汰が暴れた。
心臓を握られながら放たれたその拳がシャの顎を打つ。

剛拳の直撃を受け、シャの体が吹き飛ぶ。
受け身を取ろうとするが、顎に入った打撃が脳を揺らし無様にも地面を転がった。
シャは2秒で目眩を整え、跳ねるようにすぐさま立ち上がる。

2秒は実戦において致命の隙。
追撃を想定して構える。
だが、シャは拳を打った後の型で固まる排汰を見つめ、クルリと踵を返した。

「哈哈。直到最后都是一个有趣的家?(ハハ。最期まで面白い男だったな)」

仁王立ちする排汰の目と鼻からつぅと赤い血が流れた。
既に絶命している。
心臓を握りつぶされた時点で排汰は死んでいた。
その体が、光となって消えて行く。

果たして、最後の一撃が放たれたのは絶命する前か、後だったのか。
それはシャにもわからなかった。



868 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:08:05 ID:L.B2nzhE0
「オヤ? 少年はドウしましたカ?」

幼女の前に血濡れの暗殺者が現れる。

「マサヨシは飛ばした、もうここにはおらぬ」
「ソウですか。ソレは残念」

僅かに肩をすくめて暗殺者は幼女に向かって歩を進めた。
幼女は動かず、二人の距離が詰まる。

「デハ、アナタ殺しますネ」

当然のことのように言う。
この男に見逃すなどと言う慈悲は存在しない。
戦士だろうと幼女だろうと誰であろうと殺す。
それがシャという殺し屋だ。

幼女は無表情のまま。
恐れ知らずのストリートファイターにすら恐れを抱かさせた魔人を前に、幼女は眉一つ動かさず正面からその顔を見つめる。
酷く退屈そうに自らを殺す暗殺者を見据え、指を差して言う。

「おまえはつまらん」

告げられた神の言葉に、男は愉しそうに嗤う。

「ソウ? ワタシは愉シイ」

どこまでも身勝手な、悪魔のような笑顔だった。



869 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:09:40 ID:L.B2nzhE0
『おめでとうございます! 勇者を5名殺害したため、あなたが【豪傑】として認定されました!
 【豪傑】認定された勇者には特典があります。特典を選択して下さい』

自身の血を拭いながら身を整えていたシャの前に電子妖精が現れる。
そう言えばそんなのもあったなと、二度目の選択肢を見つめた。

前回ゲームヒントは一杯食わされた、全体に共有されるとなるとシャだけの旨味はない。
そうなると武器を必要としないシャはGP1択になるのだが。

「専用装備、と言うノはドノようなモノか指定できるのカ?」
『はい。ご要望があるなら、ある程度の範囲であれば』
「ナラ。コノ右腕の代わりニなるモノを寄越すヨ」

そう言って切り落とされた先のない右腕を振るう。

『承りました。申請します少々お待ちください。
 …………………………完了しました。
 アイテムボックスに送られましたので、ご確認ください』

言われてシャがアイテム欄を確認するとそこには『暗殺者の義手』というアイテムが追加されていた。
装備すると専用装備と言うだけはあって傷口を塞ぐようにぴったりと合った。
指を動かす、違和感は殆どない。
これならば戦闘に支障は殆どないだろう。

アイテムを確認し終えたシャは続いてメンバーを確認する。
確か、あの少年はマサヨシと呼ばれていた。
その名を見つける。

「ヤマトマサヨシ」

クツクツと暗殺者は笑う。
この右腕の借りを返す。
また楽しみが増えた。

『次は7名以上の殺害で最終称号【支配者(ボス)】を獲得できます。ゴールを目指して頑張ってください』

[酉糸 琲汰 GAME OVER]
[ンァヴァラ・ブガフィロレロレ・エキュクェールドィ GAME OVER]

[C-1/炎の塔前荒野/1日目・昼]
[シャ]
[パラメータ]:STR:B VIT:C AGI:B DEX:B LUK:C
[ステータス]:右手喪失、胸骨骨折(【気功(A)】による治癒中)
[称号]:【豪傑】
[アイテム]:暗殺者の義手(E)、申請券、不明支給品×5
[GP]:260pt→320pt(勇者殺害により+30pt×2)
[プロセス]
基本行動方針:ゲームを楽しむ
1.ヤマトマサヨシに右腕の借りを返す
※所有者を殺害し「炎の塔」の所有権を獲得しました。

【暗殺者の義手】
シャ専用装備。素手と変わらぬ性能を持つ高性能義手。
表面の皮膚スキンは柔らかだが骨子部分は鉄よりも固く、半端な盾よりも頑丈である。
装備時に隠密(B)、冷静(B)のスキル効果を得る。

[?-?/???/1日目・昼]
[大和 正義]
[パラメータ]:STR:C→B(アンプルによる一時強化) VIT:C AGI:B→A(アンプルによる一時強化) DEX:B→A(アンプルによる一時強化) LUK:E
[ステータス]:全身にダメージ(大)
[アイテム]:アンプルセット(VITUP×1、LUKUP×1、ALLUP×1)、薬セット(万能薬×1)、万能スーツ(E)、無銘(E)
火炎放射器(燃料75%)、飴
[GP]:11pt→263pt(ロレちゃんより譲渡+252pt)
[プロセス]
基本行動方針:正義を貫く
1.ロレちゃん……
2.脱出に向けた情報収集(ゲーム、ファンタジーについて詳しい人間に話を聞きたい)、志を同じくする人間とのとの合流
3.何らかの目途が立ったら秀才たちとの合流

【無銘】
刃渡り2尺4寸の直刃。銘はなく無銘。
分かっているのは古刀ではなく現代の刀鍛冶によって打たれたモノである事だけである。
しかし切れ味と頑丈さは名だたる名刀にも引けを取らない。

【エスケープアローン】
対象1名をランダムな位置に転移する消耗アイテム。
転移先の距離の制限はなく、また転移先は地中や海中や空中などは除かれ最低限の地形的安全は保証される。
自身、又はコネクトした対象のみに使用可能。

870 炎の塔 〜 人在らざる者 〜 ◆H3bky6/SCY :2021/04/03(土) 22:10:37 ID:L.B2nzhE0
投下終了です
中国語パートが文字化けしてますが、wikiでは直るんじゃないかなぁ

871 名無しさん :2021/04/04(日) 00:57:03 ID:xjrtGWhU0
投下乙です。
冒頭からは先が読めない展開に拳vs拳vs拳の戦闘。一投下内での緩急も効いてて良いですね。


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