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サムライロワイアル
1
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/09(月) 23:11:02 ID:tWYCUq.A0
【サムライ8 八丸伝】〇八丸〇ナナシ〇アタ〇金剛夜叉流免許皆伝達麻〇アン〇骨河(三打)〇竜〇弁形〇静寂の千 9/9
【鬼滅の刃】 〇鬼舞辻無惨〇黒死牟〇継国縁壱〇冨岡義勇 4/4
【銀魂】 〇坂田銀時 1/1
【書き手枠】 ∞(上記の参加者が全員書かれた時点で打ち切り)
【ルール】
・見下星で行われるバトルロワイアルです。
最後の一人になるまで殺し合い、最後まで残っていた参加者が優勝者となり願いをなんでも叶える権利を手にします。
・支給品は1日分の鞄、食料品、地図、名簿、コンパス、ライト、筆記用具の基礎支給品の他に作品出典のランダム支給品が1〜3個まで支給されます。
名簿は最初は上記の14名ですが、書き手枠が埋まるたびに自動で更新されていき名前が浮かび上がってきます。
鞄はなんでも入る4次元ポケット制です。
・地図は縦に1〜8、横にA〜Hの計64マスに区切られています。施設や地形などは好きに設置してください。
・参加者には首輪が巻かれています。爆発すればどんなキャラでも死にます。
生首になっても負けを認めぬ生き恥を晒してもポップコーンのように全身が弾け飛んでも自力で首輪を外すことはできません。
・週刊少年ジャンプで連載中の【サムライ8 八丸伝】が連載終了した場合、このロワも終了となります。
・制限は自由。制限が必要かどうかは書き手の方が決めてください。
【書き手枠】
書き手が自由に参戦キャラを追加できる枠です。
>>1
が『侍』、『勇』を感じるキャラだと思えばどんなキャラでもOKです。
>>1
がそのキャラを『侍』だと思うかどうかは書き手の方が決めることにします。
枠に制限はありませんが、既存の14名のキャラが全員参戦した時点で打ち切られます。
16
:
名無しさん
:2020/03/10(火) 22:18:20 ID:8swAdd/g0
出していいとも言えるしそうでもないとも言える
お前もいずれ分かる時が来よう
17
:
名無しさん
:2020/03/10(火) 22:28:18 ID:qtzzi2d.0
連載終了で終わって散体するよう「義」を決めこんだやつは流石にいないと思ったが……
堂々宣言する姿、オレにとっては一番侍らしく見えるよ
18
:
名無しさん
:2020/03/10(火) 22:59:17 ID:q6cJCrTs0
>>13
そんな雑談したってどうせお前は書かないのに?意味ないよ
19
:
名無しさん
:2020/03/11(水) 07:50:32 ID:WwOUFz9o0
>>18
半分は当たっている 耳が痛い
20
:
名無しさん
:2020/03/12(木) 08:16:32 ID:txV.8Z/Q0
>>19
なんで書き手として貢献出来ないお前が口出ししてるんだ?
ロクな感想も言えず、何の役にも立たないお前の指図を聞いて書き手に何の利があるんだ?
煽りとかじゃなく純粋に疑問で、企画におけるお前の存在価値を教えてくれないか?
21
:
名無しさん
:2020/03/12(木) 17:24:42 ID:1plqZd4k0
>>20
(サム8が終われば)爆発して死ぬのに? 意味無いよ
22
:
名無しさん
:2020/03/12(木) 17:25:46 ID:8PVUMzHs0
まだまだ心眼が足らぬ
23
:
名無しさん
:2020/03/12(木) 18:31:58 ID:CaZgjBk60
>>20
お前は物事をあせりすぎる
24
:
名無しさん
:2020/03/12(木) 20:37:10 ID:klmXE2C60
語録でごまかしてばかりで予約もしない…勇を失ったな
25
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:21:38 ID:LwDUtd1k0
投下します
26
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:25:55 ID:LwDUtd1k0
ボンッ
爆発音が響き渡り、崩れるビルの壁。
その中から飛び出る赤い塊。
それは地上に着地するとともにバサリ、と広がり、中に包まれたモノが露わになる。
「ドワーッ、ちょ、ちょっと待ったお嬢さん!僕はこんな物騒なゲームに乗らないって!」
現れたのは男だった。赤のロングコートを身に纏い、針のように逆立ち尖った金髪。波のように曲がった縁が特徴の眼鏡をかけた優男だ、
男の名はヴァッシュ・ザ・スタンピード。かつて600億もの懸賞金を賭けられた人間台風(ヒューマノイドタイフーン)である。
崩れたビルの壁より姿を表し、地上を、ヴァッシュを見下ろす頭部が魚雷形爆弾の女。
ヴァッシュは、そんな彼女に訴えかけるように声を絞り出した。
「こんな異様な状況で焦るのはわかる。けど、だからこそ心に愛と平和、ラブアンドピースを忘れちゃいけないと思うんだ!
さぁ、お嬢さん!まずは声高々に一緒に唱えよう!ラブアンドピース!ラブアンドピー」
「ごめんね。できるだけ人殺しはしたくないけど、この顔を見られた以上はあなたを利用することもできないの」
お嬢さん―――レゼは爆弾の悪魔のとりついた魔人である。
彼女は任務であるデンジ捕獲の為に、公安のデビルハンター達と戦っていた。
その矢先にこの殺し合いに放り込まれ、頭部を元に戻す前にヴァッシュと遭遇してしまった。
別に人を殺すことに抵抗は無いし、この殺し合いで優勝すれば帰れるのなら、それが一番てっとり早いと思っている。
そのため、姿を見られた口封じも兼ねてヴァッシュと戦闘を始めたのだが...
「正体を知ったうえで互いに利用しあうのも一つの愛と平和のカタチさ。とりあえず向こうの浜辺で腰を落ち着けてロマンスに浸ろうよ!」
「爆発して死ぬのに?意味ないよ」
いくら攻撃を仕掛けても、こんな調子でのらりくらりと躱されてしまう。
だが、ふざけるほどヴァッシュに余裕があるかと問われればそれは違うと実感している。
彼は至って真面目だ。真面目にレゼの猛攻から必死に攻撃を躱し、争いなく場を収めようとしている。ただの一度も反撃に出ずに。
こちらの消耗を狙っているのか。あるいはカウンターを狙っているのか。ならばここはヴァッシュを無視して退くべきか。
しかしここで彼を逃がせば自分の情報が洩れ、連れてこられているかもしれないデビルハンター達に知られれば厄介なことになる。
(やっぱりここで殺しておくべき。多少のリスクを考慮してでも)
レゼの足に力が籠められる。
ボンッ
レゼの足元から爆発が生じ、その勢いでヴァッシュへと飛び掛かる。
その速さ、まさに爆風の如し。
さしものヴァッシュも予想外だったのか、僅かに反応が遅れ、レゼの伸ばした掌が眼前へと迫る。
もらった。レゼがそう確信した時だった。
「爆発して死ぬから意味がない、ですか」
風に乗ってそんな呟きが耳に届いた。
「私は好きですよ、爆発。あの音が響くたびに脊髄が哀しく踊り鼓膜が歓喜に振るえる。私はそれが溜まらなく好きです。嫌悪する者がいるのは理解していますが」
続けて、パンッ、と両の掌を合わせる音が鳴る。
「とどのつまりなにが言いたいかと言えば―――あなた方がどう思おうが爆死に意味があるかどうかは私が決める、ということです」
そして、閃光が二人を飲み込んだ。
27
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:26:28 ID:LwDUtd1k0
・
・
・
ハチャメチャに崩壊したビル群。
それを引き起こした張本人である白スーツの男は不満げに腕を組み眉をひそめていた。
「ずいぶん派手にやるじゃねえかよキンブリー」
豪快な笑みを浮かべた巨漢が、白スーツの男、キンブリーの肩にポンと手を置く。
「おいおい、なにを不服そうな顔してんだよ。この瓦礫の山、見事な爆発だった証じゃねえか!」
「いまいち美しくない...最初の錬金なのでもっと盛大に奏でたかったのですが」
「あぁ?爆殺できりゃあなんだっていいだろうが」
「私は仕事熱心なんです。より美しくより完璧に。それが私のモットーなのですよ」
イマイチ会話のかみ合わない二人だが、彼らがこうして共に行動しているのには理由がある。
錬金術師、ゾルフ・J・キンブリーは殺し合いに乗っていた。
兼ねてよりの爆弾狂であり数多の死を生み出してきた錬金術師。
そんな彼が、殺し合いに招かれればそれを『仕事』と受け取り死をまき散らすのは至極当然のこと。
そしてまた、死を生み出す自分が死に追われるのも同義。
派手に暴れまわり道半ば倒れるもよし。慎重にことを進めて可能な限り生き延び優勝を狙うもよし。
自分は仕事人としてどう動けば主催者という依頼人の期待に応えられるかを考えていた時に出会ったのが巨漢、弁形だ。
手始めに吹き飛ばそうかと錬金術を行使しようとしたその時、自分と組んで参加者を減らしていかないかと弁形は交渉を持ち掛けたのだ。
それを無視して爆撃をしかけてもよかったが、しかし、ただ無差別に殺すなら獣でもできる。
人間を呼びつけた以上、こういった駆け引きも主催者の望む殺し合いの形だろうと考え、交渉に応じることにした。
もちろん、ただで手を組むキンブリーではない。
互いに支給品を見せ合い、両方の合意があった上で交換。
そのうえでようやく同盟にこぎつけたのだった。
「チッ、まあいい。とにかくあいつらはもう死んだんだろ?たぶん支給品も吹き飛んじまってるし、さっさと次に行こうぜ」
「いえ。私は念のため確認しておきますよ。ここで見逃せばそれこそ紅蓮の錬金術師の名が泣きますので」
「お、おいおい...チッ」
自分に構わず瓦礫へと足を進めるキンブリーの後ろを、弁形は舌打ちしつつもついていく。
キョロキョロと見回しながらあいつらはもう死んでる、と弁形が促しても構わず検分を続けるキンブリー。
そんな彼にため息をつきつつ、弁形は、なら二手に別れて探すと提案すれば、やはりキンブリーはすんなり享受し、別れての検分を続ける。
28
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:26:55 ID:LwDUtd1k0
「......」
キンブリーは眼前の瓦礫の山をジッと見つめる。
「そこに隠れているのでしょう?姿を見せたらどうです」
「...バレちゃったか」
瓦礫の陰から姿を現したのは、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
ところどころに傷がつき、コートこそはところどころボロボロになっていたが、それでも未だ健在の彼がそこにいた。
「初めまして。ゾルフ・J・キンブリーと申します」
「僕はヴァッシュ。どうして僕が生きてるとわかったんだい?あの爆発なら死んでてもおかしくないのに」
「爆死には特徴がありましてね。肉の焦げる臭い。耐えきれずに上がる悲鳴。それらをほとんど感じませんでしたのでね」
「...へえ、その道のプロってわけなんだ」
「あなたもでしょう?でなければ彼女を庇ったうえであの爆発から逃れることなどできないでしょうに」
ピクリ、とヴァッシュのこめかみが動き、キンブリーは己の爆発が死者を出せなかったという確信を得る。
「...彼女は死んでしまったよ」
「先ほども言ったでしょう。あの爆発で死の臭いはなかった。唯一感じ取れたのはほんの少し焼けた臭い...ちょうど、あなたが負っている怪我ほどのね。
庇ったのでしょう?その隠している左腕を彼女の盾にして」
「......」
キンブリーに気取られぬよう隠していた腕を身体の前へと掲げる。
焼かれていた。機械仕掛けのその腕は、辛うじて繋がってはいるものの、今にも崩れ落ちそうなほどボロボロになっていた。
「やはりですか。理解しかねますね。あなたは殺し合いを止めたいと彼女に訴えかけていた。しかし彼女は聞く耳持たず、むしろ貴方を殺そうとまでしていた。
貴方と相容れることは決してない。ならばやはり彼女は生かしておくべきではない」
「...ハタくぜおっさん。そんなことあんたが決めるなよ」
「ならば理由も添えてあげましょうか。第一に、あなたは犠牲者を可能な限り少なくこの殺し合いを終えようとしている。その手段の一つとしては、我々の首輪を解除すること。
当然、その方法が分かったところで、参加者各々が首輪の解除を他人に委ねるのであれば他者間の信頼は不可欠。しかし、彼女のように殺し合いに肯定的な者に背を預けることができる者が果たしてどれだけいるでしょうか」
「......」
「第二に、この場を収めたところで被害は収まらないという点。たとえこの場で彼女が貴方の命を狙わないとしても、それがほかの参加者にも当てはまるかは別。
貴方と別れたところでまた殺戮を繰り返すかもしれない。もちろん、貴方もそれはわかっているので共に行動して見張るでしょう。しかし、その間、他の参加者はどうします?
ここから北、500メートル先に命を脅かされようとしている者がおり、しかしあの少女は南を目指す。そんな状況の時、貴方は弱者を捨て止まるかもわからない殺人者を選びますか?」
キンブリーの問いかけに、ヴァッシュは言葉を詰まらせる。
なにかを言いかけては飲み込み、絞り出すように喉から出かけてはやはり飲み込み。
その様子に、キンブリーは呆れると共に驚愕する。この男がこんなにわかりやすい問題にも本気で悩んでいることに。
まるでどちらも救うにはどうすればいいかを考えているかのような彼に。
「まさか貴方、本気で全員を救おうとしているのですか?彼女だけじゃない。いまも貴方を殺そうとしている私でさえも」
「...そうだよ」
「それは何故」
「今そこで人が死のうとしてる。僕にはそれが何よりも重いんだ」
29
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:27:20 ID:LwDUtd1k0
『ワシら神様と違うねん。万能でないだけ鬼にもならなアカン』
ヴァッシュは、かつて、盟友ニコラス・D・ウルフウッドに言われたことを思い出す。
どんな力を持っていようとも全てを救えるわけじゃない。いつか必ず選ばなければならない時がくると。
わかっている。彼やキンブリーの言うように、選択を誤らないことが最適な答えなのは。
それでも。
もしも殺す為に銃の引き金を引けば。もしも敵対する者をいらないと切り捨ててしまえば。
『レム』が守ってくれたものを失うことになる。彼女が本当に死んでしまう。
だからヴァッシュ・ザ・スタンピードは誰も殺さない。殺さない為なら泥も被るし道化も演じて見せる。
それが彼の信念、云わば『義』である。
彼の『義』を理解したキンブリーはフム、とひとりごち顎に手をやった。
「殺さない覚悟という奴ですか...いや、エドワード・エルリックのものとは少し違うか...なんにせよ、どんな形であれ信念を貫こうとする人間は好きですよ」
「本当かい?なら」
「ですが、最後に一つだけ」
キンブリーは、チラ、と腕時計に目をやる。
「私と先ほどまで同行していた者がいます。分れてあなた達を探していたのですが、そろそろ痺れを切らして戻ってくるはずです」
「その人もきみと同じ方針なのかい?」
「ええ。彼とは一応同盟という形なのですが、どうにもウマが合わなくて。恐らく、キッカケさえあれば私を切り捨てにかかるでしょうね」
「えー...なんでそんな人と手を組んじゃったのさ」
「欲しい支給品があったからですよ。向こうが同盟を組めば私の支給品と交換してやると持ち掛けてきたのでそれに乗ったまでです。...ここからが本題なのですが」
ひゅるるる、と、微かに風を切る音をヴァッシュの耳は捉える。
「わたしがあなたと会話を始めてから5分程度が経過しています。もしもこの場面を彼が見た時、彼は恐らくこう思うでしょう『キンブリーの野郎、なんで攻撃を仕掛けねえんだ。まさか俺を裏切るんじゃねえだろうな』と」
キンブリーの頭上に目をやると同時、ヴァッシュの目が見開かれる。
「もしそうなった時、彼がどんな行動に出るか...わかりますね?」
飛来するソレの正体は砲弾。キンブリーとヴァッシュ目掛けて、今まさに着弾しようとしていた。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード。開始1時間と立たずに三度目の爆撃に見舞われる。
「Nooooooooooo!!!」
「さぁ、見せてもらいましょうか。あなたの覚悟というものを」
両手を広げ笑みを浮かべるキンブリーと、絶叫するヴァッシュ。
対照的な反応を示す二人を、爆風は分け隔てなく飲み込んだ。
30
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:27:40 ID:LwDUtd1k0
・
・
・
「派手に吹き飛びやがったぜ。ざまあねえなキンブリー」
右腕に身の丈ほどの大砲を装着した弁形は、爆心地を見下ろし笑みを浮かべた。
キンブリーの予測は正しかった。
標的を見つけたというのに一向に襲いかかる気配のない彼を疑い、思い通りにならぬ駒ならばヴァッシュ諸共消し飛ばしてしまえと砲撃したのだ。
とじゃいえ、なにも感情に従い闇雲に吹き飛ばした訳ではない。
なにより、彼を砲撃へと誘導したのは、キンブリーと別れた際に新たな協力者を手に入れたからだ。
「厄介払いができたのはお前のお陰だ、レゼ」
「礼には及ばないよ。私もあの人は排除しておきたかったし」
レゼ。爆弾の悪魔。彼女が、弁形の新たな協力者である。
「...ほんと、厄介なんだよね、あの人」
弁形にも聞こえぬほどの小さな声でポツリと呟く。
キンブリーの錬金術が目前まで迫ったあの瞬間。
ヴァッシュは己の腕と引き換えにレゼを庇った。
それだけではない。
二人が爆撃に飲み込まれる寸前、彼女は見た。
ヴァッシュの取り出した黒装飾の銃。その銃から光弾染みたなにかが放たれたのを。
そして、それがキンブリーの爆撃 の大半を相殺してしまったのを。
だが、それを見たところで、ヴァッシュに助けられたところで、彼女の方針は変わらない。
あんなとんでもないものを隠していながら、そのうえでなお、レゼを撃とうとはしなかった彼を知っても。
ただ純粋に好意を抱いてくれる標的である少年がいても。
彼女は己の生き方を変えることはできない。それが、この年齢まで仕込まれ続けた宿命。
「しかしずいぶん派手に暴れちまったな。囲まれるのも面倒だ。行くぞ」
「わかった」
だから、胸に妙なしこりが残りつつも、己が使命を果たす為に最適な判断をとるだけだ。
31
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:28:02 ID:LwDUtd1k0
☆
「見事です。あなたの覚悟、確かに拝見いたしました」
「...そりゃどーも」
砲弾を視界に捉えてからのヴァッシュの行動は早かった。
逃げるでもなく、装飾銃から数発放ち砲弾に命中させる。
これで直接砲弾が着弾こそはしないものの、当然爆発が起きるため、なにもせずに立ち尽くしていたキンブリーをかばうために飛びつき、己の背中を盾にすることで爆風と破片から彼を庇ったのだ。
(言うは易く行うは難し...あの砲弾の芯を正確に捉える腕もそうだが、死をもたらすモノに対し的確に動ける判断力。彼はそれを敵を殺さずに培ってきたというのだから、実に驚異的だ)
銃で撃てば人は死ぬ。環境も立場も言い訳にせず。その当然の理に逆らい、ヴァッシュは銃を用いて不殺を遂行する。
その狂気の果てがヴァッシュという男の信念であることはもう十分に理解できた。
「あなたの信念に敬意を表します」
だからこそ。
「勝負といきましょう。私はあなたの視界に入る範囲内で参加者を殺しにかかります。あなたはいつでも私を止めてもいいしなんなら殺しても構いません。ただし私はあなたに危害は加えません。わたしが狙うのはあくまでもあなた以外です」
ヴァッシュの目が見開かれる。
「キンブリー、なにを」
「だから勝負ですよ。あなたの信念と私の信念。この異様な状況下でどちらが勝つのか。その結末を私は見届けたい」
「......!」
ヴァッシュはキンブリーの襟首をつかみ詰め寄る。
「そんなもの受けられる訳がないだろう!」
「いいのですか?あなたが私の邪魔をし続ければ少なくとも一人の殺人者を拘束できる上にあなたの理想に近づけるかもしれない。私を拘束、あるいは満身創痍にして放置するのも一つの手でしょう。そうなれば私は確実に殺されますがね」
ヴァッシュの腕が震え、脳内は困惑に包まれる。
この男が理解できない。自分の身を危険にさらしてまでも人の覚悟を試し、かと思えばそれを邪魔するかのような言葉を投げかけて。
異端―――ヴァッシュがキンブリーに抱いた感傷はソレ。彼は己の命すら楽しめる駒のひとつ程度にしか扱っていない。
対して、キンブリーは己が如何に異端かを理解している。そのうえでなお歪めることなくありのままで成熟させ、今に至っている。
だからこそ、ヴァッシュという自分とは別ベクトルの異端の相手は非常にやり応えのある相手だった。
「...キンブリー。きみに殺しを絶対にさせない」
ヴァッシュに他の選択肢はなかった。
生死を度外視している相手は、直接止めるほかないのだ。
「勝負成立、ですね」
襟首にかけられた手をそっと剥がす。
「今後ともよろしくお願いしますよ、ヴァッシュくん」
不殺の男からは笑顔が消え、殺人者の笑みは更に深くなった。
32
:
侍が帯刀する決まりなんてあってないようなものです
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:28:33 ID:LwDUtd1k0
【F-5/1日目/深夜】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】
[状態]:背中に怪我(中)、左腕損壊
[服装]:いつもの赤のコート
[装備]:ハーディス@ブラックキャット
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本行動方針:殺し合いを止める。
0:キンブリーに殺しをさせない。
1:レゼや弁形のような殺し合いに乗った者たちを止める。
[備考]
※参戦時期はトライガンマキシマム11巻以降〜レガート殺害前までの間。
【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[服装]:白のコート
[装備]:賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本行動方針:"仕事"を果たす。
0:ヴァッシュの信念と自分の信念、どちらが勝利するか見極めるためにヴァッシュの目の届く範囲で参加者を殺す。
1:弁形の後でも追いましょうか
[備考]
※参戦時期は18巻以降
【弁形@サムライ8 八丸伝】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:鯨波のアームストロング砲@るろうに剣心
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本行動方針:優勝する。
0:レゼと手を組み参加者を潰していく。
1:キンブリーは厄介そうなので手を切る。
2:骨河を見つけたら利用してやる。
[備考]
※参戦時期は骨河が裏切る前。
【レゼ@チェンソーマン】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残り、デンジを捕まえる任務の続きに取り掛かる。
0:弁形と手を組み参加者を潰していく。
1:なるべくなるべくヴァッシュとは関わり合いたくないかな
[備考]
※参戦時期はデンジを追ってデビルハンター達と戦っている最中。
33
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/15(日) 01:29:04 ID:LwDUtd1k0
投下終了です
34
:
もう……散体しろ!
◆3g7ttdMh3Q
:2020/03/16(月) 16:41:00 ID:mrAs8Iy.0
投下します。
35
:
もう……散体しろ!
◆3g7ttdMh3Q
:2020/03/16(月) 16:41:11 ID:mrAs8Iy.0
◆
8: 名無しさん :2020/03/10(火) 11:51:24 ID:q7747N.s0
何で無惨様入ってんの?
36
:
もう……散体しろ!
◆3g7ttdMh3Q
:2020/03/16(月) 16:41:33 ID:mrAs8Iy.0
◆
SSを投下する前に名簿の状況を理解する必要がある、少し長くなるぞ。
まず、書き手枠の基準から見ていこう。
・
>>1
が『侍』、『勇』を感じるキャラだと思えばどんなキャラでもOKです。
・
>>1
がそのキャラを『侍』だと思うかどうかは書き手の方が決めることにします。
である。
つまり本人が『侍』、『勇』を感じるキャラならば如何なるキャラでもセーフであり、現に
>>1
も書き手枠からゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師、レゼ@チェンソーマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガンを投下している。
彼らは非常に人気のあるキャラクターであり、
>>1
が『侍』や『勇』を感じてもおかしくはないだろう。
だが、待っていただきたい。
鬼滅の刃の読者が鬼舞辻無惨に『侍』や『勇』を感じることがあるだろうか。
癇癪で人を殺すわ、生き恥を晒すわ、散体するわ、鬼を生み出すわ、
NARUTOの財産でサムライ8をちょっと長めに連載する岸本先生ぐらいジャンプでやりたい放題のキャラクターと言っても過言ではない。
そんな彼がどうしてサムライロワイアルに参加することになったのか。
>>1
がどう思おうが、その理由はオレが決めることにするよ。
まず、鬼滅の刃における侍とは何だろうか。
鬼滅の刃の舞台は大正時代であり、作中時点でも侍という概念は廃れて久しい。
だが、鬼舞辻無惨のビジネスパートナーである黒死牟は『侍』という概念に固執している。
鬼舞辻無惨と黒死牟はビジネスパートナー、つまり同等の立場なので、
鬼舞辻無惨=黒死牟
黒死牟は侍という概念に固執している上に、サムライロワイアルの名簿にも選出されている。つまり鬼でありながらも侍ということになる。
黒死牟=侍
つまり、
鬼舞辻無惨=侍ということになる。
この時点で一つ、鬼舞辻無惨の中に侍を見たことが読者の方にもおわかりいただけただろう。
しかし、この世界に絶対はない。
それで鬼舞辻無惨=侍にはならないだろうというツッコミを受けてしまえば、
私としても半分は当たっている 耳が痛いと返さざるを得ないだろう。
しかし、お前は物事をあせりすぎる。
では如何にして
>>1
が鬼舞辻無惨に『勇』を感じたのか。
その理由について説明させていただこう。
鬼滅の刃の『侍』は黒死牟である。では鬼滅の刃における『勇』とは何か。
そう、冨岡義勇である。
彼は自身の切腹を賭けてでも、炭治郎を助ける柱の鑑であり
その姿はまさしく『勇』と言っても過言ではない。
なにより、名前に『勇』が入っている。
上記の文を読んで、
いくら冨岡義勇が柱に相応しい男であっても、お前は鬼舞辻無惨には関係ないだろう
と読者の方もおっしゃりたくなったかもしれない。
しかし、少々お待ちいただきたい。
サムライ8作中で『勇』を失ったなという言葉が示すとおり、
『勇』を失わないことこそが『侍』の資格と言えるだろう。
そして投下時点(2020/3/16)でのジャンプ本誌における鬼舞辻無惨と鬼殺隊の戦いでは、まだ冨岡義勇は死んでいない。
鬼舞辻無惨が冨岡義勇=勇を殺せていないということは、
つまり鬼舞辻無惨は『勇』を失っていないのである。
読者諸君におかれましても、鬼舞辻無惨の中に勇を見ていただいたことだろう。
つまり、サムライロワイアルに鬼舞辻無惨が参加しても全くおかしくはないのだ。
37
:
もう……散体しろ!
◆3g7ttdMh3Q
:2020/03/16(月) 16:42:42 ID:mrAs8Iy.0
◆
「もう、何も言うな」
かつて縁壱が鬼舞辻無惨と対峙した時、彼は『命を何だと思っている?』と尋ねた。
鬼舞辻無惨からの返答は無かった。
鬼舞辻無惨は散体し、縁壱が死ぬまで二度と出会うことはなかった。
縁壱の疑問に対する何よりの答えであった。
今、再び縁壱と鬼舞辻無惨はこの殺し合いの場で対峙している。
鍛え上げた身体、狂気にも似た勇気、
どちらかが無ければ人は鬼に立ち向かうことは出来ない。
それ故に――鬼舞辻無惨は縁壱の存在を確認した瞬間に逃走を開始し、
縁壱はそれよりも早く攻撃を開始していた。
縁壱が鬼舞辻無惨を逃した時、
鬼舞辻無惨の肉体は千八百の肉片となって散弾のように散らばり、
縁壱は千五百程度しか斬ることが出来ず、それ故に鬼舞辻無惨を逃すこととなった。
それに対する手段は一つである。
裂ける前に斬り殺す。
鬼舞辻無惨にとって最大の幸運は、縁壱から逃亡出来たことである。
鬼舞辻無惨にとって最大の不幸は縁壱と再会してしまったことである。
縁壱の能力は神域であるが、あくまでも人間である。
無限に伸びる腕も無ければ、分身することも出来ず、
それ故に無数の肉片となって広範囲に広がれば縁壱に仕留めきることは出来ない。
故に、縁壱はもうそれをさせない。
『警告します。あと30秒ほどでこの首輪は爆発します』
何故と言う間どころか、思考する間すらなかった。
鬼舞辻無惨は刹那の斬撃によって首輪に衝撃を与えられた。
そして来週ぐらいにサムライ8も死ぬだろう。
如何なる生命体であろうとも、首輪を爆発させられれば死ぬ。
殺し合いにおける絶対のルールであり、それは鬼舞辻無惨とて例外ではない。
(……馬鹿な!)
鬼舞辻無惨は千八百の肉片となりながら思考する。
散弾のように、縁壱から離れ――今もなお、縁壱に斬られ続けている。
だが、やはり――復活できるはずだ。
全ての肉片が斬られたわけではない――百程度残っている。
そう、首輪が無ければ。
肉片の全てが同時に熱を帯びた。
(何故、こんなところで私が死ななければならない!
このような理不尽なことが私にあっていいはずが……)
最後まで、鬼舞辻無惨という男に反省はなかった。
ただ、どこまでも理不尽な怒り――そして死に対する恐怖に包まれ、
朝に生きられぬ鬼は、夜のうちに死んだ。
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡】
縁壱に鬼舞辻無惨を殺害したことに対する喜びはない。
数え切れぬ人間が鬼舞辻無惨のために死に、
死んだ者のために何人もの人間の人生が狂った。
(……兄上がいた)
兄の人生もまた、狂ってしまった。縁壱は考える。
初めに集められた場所、その中に継国巌勝の気配があったことを縁壱は覚えている。
尊敬する兄だった。今はもう人ではない。
己が鬼舞辻無惨を逃したがために、彼を鬼にしてしまった。
鬼舞辻無惨を殺したところで、何も変わらない。
過ぎ去ってしまった時が戻ることも無ければ、死人が墓から蘇ることもない。
縁壱は駆ける。
兄である黒死牟を殺すために。鬼を殺すために。
鬼舞辻無惨を殺したところで、何も変わらない。
それでも、鬼に怯えること無く人々は暮らすことが出来る。
鬼に家族を殺された人も、鬼に対する憎悪を捨て哀しみで故人と向き合うことが出来る。
まだ、ここに鬼はいる。
成すべきことを、ただ成そう。
風の如く早く走れば、涙はいつの間にか乾いていた。
【継国縁壱@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[服装]:着物
[装備]:サイコロステーキ先輩の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
1.黒死牟を止める
38
:
もう……散体しろ!
◆3g7ttdMh3Q
:2020/03/16(月) 16:42:56 ID:mrAs8Iy.0
投下終了します
39
:
名無しさん
:2020/03/16(月) 21:44:44 ID:YMHMo32w0
猫をかぶるのはキライでね……本性を隠すのは出来ないタチだ
なので構文とかぶん投げて普通に感想することにする
どう感想するかはオレが決める
というか構文感想ばかりでは感想書きにくい人も出るだろう
投下乙!
なんでこの人、企画のレスに作品&作中で答えてるんだ……!?
書き込んだ人もびっくりだよ!
いや俺も疑問だったからなるほどな解答をもらえたのはなるほどだったけど!
後そのメタ語録よりも短い尺で死んでる無惨様生き恥ならぬ死恥なのでは?
ご無体だ……ご無体過ぎる……
でも縁壱にとって無惨は倒すべき使命であっても、彼の物語にはなれない存在だったんだろな
40
:
名無しさん
:2020/03/16(月) 23:18:40 ID:l/9M2HB60
乙です。
拙者、疑問に答えつつロワを進める姿に勇を見た
果たして縁壱はサム8が打ち切られる前に兄上と再会できるのかできないのかこれもう分かんねぇな
無惨様は呆気なさ過ぎて草
41
:
名無しさん
:2020/03/18(水) 00:15:58 ID:ddPFkLeI0
あと一話〜二話でサム8散体しそうなんですが、このロワ大丈夫なんですかね…?
42
:
名無しさん
:2020/03/18(水) 09:05:51 ID:9kQNOHrw0
この時期に始めた以上、イッチ的にはすでに最終回の素案でもあるんじゃね?
43
:
名無しさん
:2020/03/18(水) 17:09:53 ID:xMyAm5Uc0
サムライ8が無事打ちきりになったわけだが。
44
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/03/18(水) 21:54:11 ID:F/xL0TfQ0
投下します。
45
:
つーかこれが限界
◆Il3y9e1bmo
:2020/03/18(水) 21:57:47 ID:F/xL0TfQ0
ススキが揺れる野原に二人の男が対峙していた。
ひとりは黒いスーツに身を包んだ大柄な男だ。歌舞伎役者のような隈取を顔に入れ、隻眼なのか右目を閉じている。
真っ黒な杖に寄りかかったその姿は、見ようによっては映画から出てきた座頭市に見えなくもない。
もうひとりはもう一方とは対照的に着流しを羽織った細身な男。無精髭を生やし、髷を結っている。
こちらは刀を腰からだらしなくぶら下げ、気だるげに顎を撫でていた。
◆
「あよよいよい! あァ〜、自己紹介はァ〜! 必要かいっ!?」
大柄な男が大げさな身振り手振りでこれまた大きな声を張り上げる。
「……これから殺し合いを始めるオレたちにそんなモンが必要たァ、とても思えねェが」
髷を結った方の男が腰にぶらりと下げた刀を鳴らす。
「まァ、自己紹介は一応しとくか。オレの名は――」
「あァ! "ノブナガ=ハザマ"でござァ〜い!!」
細身の男が名乗ろうとした言葉を隈取の大男が大声で遮った。
「!? テメェ、なぜオレの名を……!」
あっけにとられたのは名乗ろうとした名を相手に当てられてしまった細身の男――ノブナガであった。
「ンめ、め、め、名簿に載ってごぜぇ〜〜ます!」
「……ッ!」
「あよよいよい! これはもちろん"カマかけ"よォ〜! あ、お前さんのォ〜! 顔が"ノブナガ"っぽいのでェ〜〜! とりあえず言ってみやしたァ!!」
「…………ッッ!!」
やっと手玉に取られたと気づいたノブナガの顔がみるみる内に赤らむ。
「テメェ……!」
「あ、オイラの名前は"クマドリ"! よよいっ! 以後お見知り置きを、あ、よろしくおねがいしやす〜〜〜〜っ!」
「テメェ、オレのことをおちょくってんだろ……!」
ノブナガは青筋を立てて、居合のポーズを取った。
みるみる内に彼の周囲の空気が張り詰めていく。
念による必殺の超感覚居合"円"を発動したのだ。
「近づいたら斬るぜ……!」
「あ、ちか、ちか、"近づけば斬る"ゥ〜〜! なるほどォ〜〜! ならば――」
クマドリが脚を振り上げた。
(フン、足技で一気に距離を詰めようってか。無駄だぜ)
ノブナガは心の中でほくそ笑んだ。
(いかにお前が高速で近づこうとも、この"円"の中に入り込めば即座に形と動きを感知し斬る!!)
「――"嵐脚"」
しかし、脚を振りかぶったクマドリの次の行動は、そのまま近づいてくると考えていたノブナガの思いもよらないものだった。
クマドリは移動せず、その場で脚を振り下ろしたのだ。
「なにッ!」
ややあってクマドリの脚から不可視の斬撃が発生し、ノブナガを襲う。
もちろんふざけた調子のクマドリに作戦などなく、無策で突っ込んでくると読んでいたノブナガは対応できない。
横っ飛びで躱すのが精一杯だ。
「よよいっ! あ、スキありィ〜〜! "剃"!!」
クマドリの姿が視界から消える。
「クソッ! どこに行きやがった!!」
「――からのォォォ〜〜〜〜! 『生命帰還』"髪縛り"ィィィ!!」
生命帰還。
別名「バイオフィードバック」とも呼ばれるこの体技は、海に千年。山に千年。風を吸い露を飲んで、仙人暮らしの修業を越えてようやく体得することができるものである。
極めれば通常は随意に動かすことのできない髪や内臓の働きを自由に操ることができる力を、諜報機関「CP9」の諜報員クマドリは物心ついたときからの過酷な修行で身につけていた。
そして、自身の長い髪の毛を操るクマドリの必殺技"髪縛り"に絡め取られたものは、絞め殺されるかはたまた鉄の杖で貫かれるか――。
どちらにしても死を待つばかりだという。
もちろんそれは、盗みと殺しを生業とする伝説の盗賊集団「幻影旅団」のノブナガ=ハザマも例外ではなく――。
「クソッ! 操作系の念能力者か!! ほどきやがれ!!」
「あ、許しておくれよ天国のおっかさん! おいらァ、また殺っちまうよォ〜〜〜〜!」
クマドリは人差し指と親指で「マル」を作り、その間に杖を通した。
「"指銃"『Q』!!」
そして、ビリヤードキューのように構えられたそれは、銃弾の勢いで撃ち出され、ノブナガの身体に直撃した。
46
:
つーかこれが限界
◆Il3y9e1bmo
:2020/03/18(水) 21:58:44 ID:F/xL0TfQ0
◆
「ああよよいっ!! あ、なにゆえ、なにゆえェ――」
鉄の杖に身体を貫かれたはずのノブナガは――。
「――死なぬ!?」
「フン、馬鹿が」
――生きていた。
「おいらのォ〜〜〜〜! "指銃"は銃の威力を持って! あ、おりおりおり――」
「逆に言やァ、『銃程度』の威力しかねェんだろ。あんなモーションバレバレの技、予めどのあたりに攻撃がくると分かってりゃあ『堅』で防げる」
「『ケン』たぁ〜〜〜〜! なんだ!? よよいっ!!」
「そして、お前。いま一瞬ビビって縛りを緩めたな?」
「な、な、なァにィ〜〜〜〜!?」
ノブナガが刀を鞘に収める。
「言っただろ。近づけば"斬る"ってな」
枯れたススキの生い茂る野原が、鮮血で染まった。
【クマドリ@ONE PIECE 死亡確認】
【ノブナガ=ハザマ@HUNTER×HUNTER】
[状態]:疲労(中)、胸部に打撲(中)
[服装]:着物
[装備]:日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本行動方針:殺し合いに乗る。
0:疲れたので休みたい。
47
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/03/18(水) 21:58:59 ID:F/xL0TfQ0
投下を終了します。
48
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/03/23(月) 18:48:06 ID:aJxgHQgA0
投下乙です
>>34
>>1
の代わりに読み手の疑問に答え解説する姿、オレにとっては一番侍らしく見えるよ
無惨様の参戦理由について誰もが納得できる解説の直後に散体させられる無惨様...勇を失ったな
本編で心苦しい気持ちで生涯を閉じた縁壱が少しでも報われたら、と思いましたがそれで済ませられないのが縁壱という侍。
鬼滅原作でも無惨様と再会したらこうなるとしか考えられない縁壱の規格外さをこれでもかと見せつけられました
>>45
ノブナガVSクマドリという異色のバトル。実力が拮抗しており、ひとつの判断ミスで戦況が覆る流れとても好きです。
短くも丁寧に纏められたこの話、オレ、このSSのファンです!
ワンピースのクマドリといえば歌舞伎ですが、曲芸のカバジ共々ワの国出身ではないかという説が流れているとか流れていないとか...もしそうだったら面白いですよね。
ジャンプ本誌の『サムライ8 八丸伝』の連載が終了したためこのロワも終了となります。
ですが、もしもなにか書きたいものがある人は構わず予約して頂いても大丈夫です。最終回はその都度調整します。
もしも予約が入った場合はその投下が終わるまでは最終回を投下しません。
それでは最終回用として全員を予約します。二週間以内には書けると思います
49
:
名無しさん
:2020/03/23(月) 22:26:01 ID:OsSggEeA0
追悼
違う日に生まれ同じ日に死んだ
サムライ8 八犬伝
鬼舞辻無惨氏
サムライロワイアル
様方のご冥福をお祈りします
アーメン かしこ
50
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:06:29 ID:FNUibDEw0
投下します
51
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:06:51 ID:FNUibDEw0
―――終わりの刻は訪れる。
52
:
パロロワの姿か?これが...
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:07:30 ID:FNUibDEw0
☆
―――猫招き
それは突然だった。
殺し合いに招かれた者たちは再びセレモニーの空間へと呼び出された。
「ぁぁぁぁあああよよよい!ノブナガさんヨォ、オイラァの指銃を防ぐたァ...オヤオヤオヤァ!?」
「かっ...ハァッ...!」
脱落したはずの者たちもまた肉体が蘇生され呼び出されていた。
「目が覚めたようだな」
セレモニーと同じように、空間の中に炎が浮かび上がり巨人―――不動明王が姿を現す。
だが、違いはひとつあった。
「あ、あれ?師匠?なんでそこに」
ハンナを甚振り爆殺した浪人侍の姿は見えず、代わりに背の低い二足歩行の猫侍が不動明王の傍に立っていた。
少年、八丸の疑問に答えるかのように猫侍、達麻は口を開いた。
「あの侍は散体させておいた。奴は、痛みを感じず、姫無しに自傷すら容易く治す...精神さえ備わっていれば完全な不死身に近い侍だ。拙者、不動明王様の施した侍における『バグ』と認識したが故に散体させた」
「いや、それはいいけど...師匠、なんで不動明王の付き人みたいに?」
「不動明王『様』だ。拙者がこちらについている理由。その説明する前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ」
ジジジ、と電子音と共にモニターが表示される。
「かつてこの宇宙は完璧な均衡(バランス)を保っていた。なにもなく、ただ重さ0の数多の粒子があるだけだった。
不動明王様は身体の一部である『h粒子』をバラ撒き、その強いエネルギーを以てして重さ0の粒子の移動を邪魔し均衡を崩し粒子に重さを与えた。
重さを持った粒子が集まり物質が生まれ物質が集まり星が生まれ星が集まり銀河が生まれた。生命と意識と情報と共になってな」
「え!?じゃあこの銀河もこのオレも不動明王様が作ったってこと!?」
「直接ではないがそうなる。不動明王様は仰った。この世のどこにも完璧なものなどない。どんなものも崩れ歪んでいる。崩れや歪みから重さや引力が生まれあらゆるものを結び付けている。
それこそが"美しい"。本来あるべき姿であり、拙者を含むこのバトルロワイアルに関わった者たちもそのあらゆるものの一つだ。
それが不動明王様の造り名付けたプログラムであり『美』の概念。つまりは古き『武家書法度』にもある『侘び寂び』ということだ。
拙者は不動明王様のその概念に感銘を受けここに立っている。拙者の役目はバトルロワイアルが停滞せぬよう円滑に進めることだったのだ」
「じゃ、じゃあさ!なんで師匠たちは殺し合いなんかを開いたの!?アンも俺と殺し合うことなんか出来ねェよ!」
「お前は物事を焦りすぎる...その答えはいまに示される」
53
:
パロロワの姿か?これが...
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:07:56 ID:FNUibDEw0
―――ズズズッ
「うわっ!?なんだこれ!?」
「......!?」
「これは...散体...いや...!?」
「三打!?竜!?千さん!?」
突如、八丸の背後にいた三人の男の身体から粒子のようなものが漏れ始め、次第に原型を失っていく。
いや、彼らだけではない。
八丸も。姫も。侍たちも。始まりの剣士も。呼吸の剣士も。鬼も。鬼の始祖も。白き夜叉も。紅蓮の錬金術師も。人間台風も。盗賊も。特別諜報員も。爆弾の悪魔も。
皆、個人差はあれど身体から粒子が洩れ、身体を失い始めていた。
「始まったな...この宇宙ももうすぐ終わってしまう」
「なんなんだよ師匠!?俺たちはどうなるんだよ!?」
『終焉の時がきたのだ』
不動明王が口を開いた。
『私のh粒子は無限ではあるが永久ではない。故にいずれは終焉を迎える運命にあったのだ』
「つまり...どういうこと?」
『どう見えるかだ。まだまだ心眼が足りぬ』
「武神よ!」
中々真相へたどり着けない八丸に代わり、アタがズイと身を乗り出し代わりに問う。
「武神、師匠!不躾ながら私が導き出した答えを聞いていただきたい...このままでは拉致があかない」
「...言ってみろ」
「あなた方は終焉が訪れると仰った...それが意味するは、宇宙の寿命。そして、これは恐らく我ら鳥枢沙魔流の願った形でもない...
即ち、どの流派の思惑も達せぬ共倒れ...それこそがあなた方の仰る終焉。あなた方はそれを止める為に我らを招いた...違いますか?」
「半分は当たってる。よかったな...で、それが何の役に立つ!」
「...しかしわからないことがある。宇宙の崩壊を食い止める為になぜ殺し合いなど開いた?なぜ...」
アタの歯がギリ、と力強く噛み締められた。
「―――なぜ、ハンナを再び辱めた!!」
アタの怒声が響き渡る。
54
:
パロロワの姿か?これが...
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:08:34 ID:FNUibDEw0
そもそも。
かつては金剛夜叉流の一門であったアタが達麻に離反したのは己の姉の女侍、ハンナが理由であった。
ハンナは不出来な弟―――アタを守る"義"を決め込んでいた。他者から見れば、それは侍らしい立派な志だろう。
だがそれが仇となった。
敵の侍に捕らえられたハンナは、義を失わない限り死なないという点を突かれ、何十年にも渡り試し切りの素体にされ続けていた。
死にたくても死ねない生き地獄。やがて彼女は「義」も「勇」も忘れてしまう程に消耗しきり、ようやく散体することができた。
アタは呪った。なぜ、彼女のような正しき者がここまで苦しまねばならん。なぜ彼女を開放するために己が自決することすら許されない。
なぜ、ハンナを試し切りの素体にするような侍が胸をはって大手をふれる!
侍のシステムに怒りと疑念を抱いたアタは、不動明王率いる金剛夜叉流を見限った。
その代わりに、宇宙をあるべき姿に戻すというカーラ率いる鳥枢沙魔流に入門したのだ。
アタの離反のキッカケになったハンナが、この殺し合いの見せしめとして再び生を与えられ、再び試し切りの素体にされ殺された。
その事実は、アタの怒りを誘発するには十分すぎるものだった。
「選別だ」
「選別...!?」
「この殺し合いの参加者たちは皆、本来の世界の個体の情報を模した情報集積体の一部...平たく言えば、精巧なコピーだ。ここに本体はおらん。
不動明王様が『勇』を見出した者の世界に、あるいは個人に『h粒子』をバラ撒きこの宇宙の粒子も活性化させる。その資格があるのはより強い個体なのだ。
拙者たちはその参加者を選別するためにこのバトルロワイアルを開いた」
「それにハンナがなんの関係が...!」
「それも選別のうちだ。散体とは本来は死ではない。本来は自性輪身として完成し、情報の塊...つまり不動明王様と同じ位の存在になるということ。
拙者はハンナならば二度目の散体を乗り越え不動明王様に並び、殺し合いなど開かずに済むと読んでいた。が、しかし結果はこれだ。
ハンナは乗り越えられなかった。いくら勇猛とはいえ所詮は他者に「義」を委ねる半端者...言い換えれば己ではなにも決められん、弱者の卑怯者ということだ」
「なっ...!?師匠...あなたはなにを仰っている!?」
「お前もだアタ。姉...復讐・侍...そんなものはこの宇宙の変化の一部にしかすぎん。一時の私欲に振り回されるな。己の決め込む『義』はお前自身のものであることを自覚しろ。
だからお前たちは散体を乗り越えられんのだ」
「侮辱するのも...大概にしてくださいよ...!!」
アタの目が血走り、腰の刀にかけられた手がブルブルと震えだす。
『アタよ』
不動明王が口を開く。
『どう見えるかだ。お前の姉の死は、お前という一個体の私欲の糧か、あるいはこの宇宙の為の必要な犠牲か。お前が決めるのだアタ』
「......」
アタは俯き、強張っていた筋肉から力を抜き、ふぅ、と小さく息を吐いた。
55
:
パロロワの姿か?これが...
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:09:12 ID:FNUibDEw0
「...俺の答えはひとつ」
瞬間。
アタの脚に、腕に、破裂すると思わせるほどに青筋が浮かび上がり、爆発したかのように駆け出し、不動明王へと飛び掛かった。
「俺の恨みを、ハンナの苦しみを私欲と呼ぶのならそれで構わん!!俺はあいつの無念を晴らす為にここまできた!ハンナを苦しめたのは貴様らだ。貴様らこそがハンナの敵だ!!」
瞬きする間もなく縮まっていく不動明王とアタの距離。
(―――ここできたか!!)
達麻は焦りと共にアタを食い止めようとするも、目算で間に合わないと計算結果をたたき出す。
達麻の剣が届くころには、アタは不動明王へと剣を突き立てているだろう。
焦る達麻とは裏腹に不動明王はピクリとも動かない。
(殺った!!)
アタは勝利を確信した。
『時間切れだ』
瞬間、アタの全身から粒子が溢れ、あっという間に刀を残して消え去った。
「無暗に力を使い寿命を縮めたな。奴め、イチ早く散体しおった...ロッカーキューブの形すら保てんとは、こうなってはテロメア値(ATち)も意味を為さん...いよいよ終いだ」
ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ
達麻以外の参加者たちの身体が瞬く間に散体し始める。
「ぐああああああ!!」
「悲観するな。模造品なる拙者たちが消えたところで本来のお前たちが消えることはない...多少の影響はあるかもしれんがな」
達麻は散体していく者たちから目を逸らし、一人残った者へと視線を注ぐ。
「やはり残るのはお前だったか...八丸」
「し、師匠」
「お前には次の不動明王様が生まれるまでの繋ぎになってもらう...悪く思うな」
参加者たちが姿かたちさえ消えていく中、八丸だけは身体が箱状に変形するだけに留まる。
そして―――バトルロワイアルは終結した。
【アタ@サムライ8 八丸伝 散体】
【アン@サムライ8 八丸伝 散体】
【骨河@サムライ8 八丸伝 散体】
【竜@サムライ8 八丸伝 散体】
【静寂の千@サムライ8 八丸伝 散体】
【ナナシ@サムライ8 八丸伝 散体】
【弁形@サムライ8 八丸伝 散体】
【継国縁壱@鬼滅の刃 散体】
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 散体】
【冨岡義勇@鬼滅の刃 散体】
【黒死牟@鬼滅の刃 散体】
【坂田銀時@銀魂 散体】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン 散体】
【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 散体】
【レゼ@チェンソーマン 散体】
【クマドリ@ONE PIECE 散体】
【ノブナガ=ハザマ@HUNTER×HUNTER 散体】
【八丸@サムライ8 八丸伝 疑似不動明王化】
【金剛夜叉流免許皆伝達麻@サムライ8 八丸伝 生存】
【サムライロワイアル 終幕】
56
:
坂田銀時を出せたらいいなぁって
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:10:38 ID:FNUibDEw0
・
・
・
「つー夢を見たんだよ」
「いやなげーよ。どんだけ前振りが長いんですか。しかもあんた一切出てないじゃないですか」
「銀ちゃんお釈迦様に会ったアルか?ちゃんとふしだらな関係にもつれこんで賠償金請求してきアルか」
「お釈迦様じゃなくて不動明王ね。それに仏様をなんだと思ってるの」
「神様なんてどいつもこいつも下半身にだらしないせいで事件起こしてきたふしだらな奴らだってマミーから聞いたネ」
「神楽ちゃんのお母さん神様に恨みでもあるの?...でもほんとに不思議ですね、そんな夢を見るなんて。不動明王ってどんな人だったんですか?」
「ロクな奴じゃねーよ。なに聞いてもフワフワはぐらかして肝心なこと答えねーし。かと思えば一方的に説教し始めるし。ああいうおっさんになったら駄目だと俺は思うね。侍だったらこう、バシッ、と決めるとこは決めねーと」
「銀ちゃん、そういえば私、先月の給料まだ貰ってないネ」
「...その説明をする前にいまの銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ」
「速攻ではぐらかしたよこの人。数秒前に言ったことすらフワフワにしたよ」
☆
銀時は頭をガシガシと掻きながら、便所の前に立つ。
「あーチクショウ、なんなんだよあの夢...長谷川さんでも誘って飲んで忘れるか...でも金ねーしなぁ」
夢から覚めてからというもの、銀時の脳内では謎の言葉が常に反芻されていた。
『その説明をする前にいまの銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ』
『お前は物事を焦りすぎる』
『もう...散体しろ!』
『勇を失ったな...』
『半分は当たっている。耳が痛い』
『実はこっそり〜をしちゃいました!』
『お前がどう思っているかどうかは俺が決めることにするよ』
『よかったな...で、それが何の役に立つ!』
『コソコソなにをやってる!』
『どう見えるかだ。まだまだ心眼が足りぬ』
『そうとも言えるしそうでもないとも言える』
『直接ではないが...そうなるな』
『爆発して死ぬのに?意味ないよ』
そんな定型化した言葉...いわゆる『語録』が絶えず流れ続けていたのだ。
流石の銀時もこれには参り、とりあえず用を足したら病院でも行くかと考えていた。
チャックを開け、己の鍵を露わにする。
ガチャッ
ナニかが、開いた音がした。
57
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:13:35 ID:FNUibDEw0
・
・
・
散体とは死ではない。
想いを。記憶を。予感を。『義』を肉体から離し、上層次元に移行させる一つのステージである。
・
・
・
58
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:14:08 ID:FNUibDEw0
「これは...?」
アタは思わず己の両手を目の前に掲げ、キョロキョロと辺りを見回す。
自分は不動明王に飛び掛かった瞬間、散体したはず...なのに、なぜ五体満足でここ、バトルロワイアルの会場、見下星に立っている。
「アタ!!」
己を呼ぶ名に、アタは振り返る。
駆けてくるのは、アンとナナシ。
彼らに恨みはないとはいえ、敵は敵。
アタが威嚇の意を込めて剣を構えるが、ナナシがアンとの間に割って入り静止させる。
「待ってくれ、僕らはあなたと戦いたい訳じゃない!」
「なに?」
「な、ナナシくん」
アンがナナシを手で制し、ずい、と前へと進み出る。
そしてアンは頭を下げた。
「お、お願いします。八丸くんを助ける力になってください」
アタの眉根がピクリと動く。
「なにを...言っている?」
「わ...私たちは八丸くんを助けたい...そ...その為には...あ、アナタの力が必要なんです」
「その為に力を貸してくれだと...正気か?俺は奴の父を殺した...」
「わ...わかってます。あなたは八丸くんのお父さんの仇。き...きっと八丸くんは怒るかも...。でも...ハンナって人のことで怒ってたあなたなら...信頼できると思って...」
「......」
アタはアンを見下ろしながら想いを馳せる。
この少女は、自分を八丸の怨敵だと理解しながらも、己の感情を抑え、姫の身でありながら侍らしく頭を下げている。
よほどの『勇』が無いとできないことだ。
59
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:14:33 ID:FNUibDEw0
(いい勇を見せてくれる...!)
「...お前たちとなれ合うつもりはない。だが、向かう先が同じであるのなら邪魔はしない」
「あ...ありがとうございます...!」
「...しかし奴らのもとへ行くとして、手段はなにかあるのか?」
「それは...う〜ん」
「ご心配なく。その為の手段なら私が持っています」
ひとつの声がアンの思考に割って入る。
振り向けば、そこに立っていたのは白スーツの男だ。
「誰だ!?」
「お初にお目にかかります。私はゾルフ・J・キンブリー。錬金術師です」
「錬金術師...侍ではないのか?」
「ええ。本来なら消え去っていた筈なのですが...どうやら私たち模造品(コピー)は、あの不動明王への敵意を強く持っていた者、あるいはあの直後に本体が敵意を抱いた者は、復活することが出来る身体を与えられていたようです」
「その言いようからすると」
「ええ。お察しの通りです」
ザッ。
キンブリーの言葉を合図にしたかのように、一様に地面を踏みしめる音が重なる。
そこに並ぶは物憂げな表情の美男子、隣には似た顔立ちの六つ目の侍、銀髪の天然パーマの男、歌舞伎役者のごとく見栄を切り続ける大男の四人だった。
「お前たちは...!?」
「ああぁ〜オイラァ、腐っても世界の和平を保つ諜報員ん〜〜!!こぉこで引いたらぁ〜天国のおっかさんに泣かれちまうのよぉ〜〜!!」
「私の主が...頭の中に響く声を止めよとお怒りだ...故に...それを止める為に...私が蘇るのも...必然...」
「......」
「なんでもいいからよぉ、早くあのクソうどんとクソ猫ぶち殺しに行こうぜ。絶対許さねえ...アイツラ引きずりだして股の鍵を八つ裂きにしてやる。必ず...必ず元の身体に戻ってやる...!」
「みんな...!」
アンの顔が思わず綻ぶ。
集まった者は皆、顔も知らない者たちだ。一人、目が血走りやけに荒れている男は言っている意味がよくわからない。
だが、理由はどうであれ共に不動明王に立ち向かってくれる者たちだ。
その頼もしさは彼女を安心させるのに足る事実だった。
60
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:15:00 ID:FNUibDEw0
「これで私を含めて8人...末広がりで縁起がいいですね」
「御託はいい。奴らのもとへどう向かえばいい」
「恐らくあの空間はこの世界のものではなく、広く言えば概念的なものでしょう。物理的に行く方法はない。ならば、それに見合った手段を行使すればいい」
キンブリーは懐から賢者の石を取り出した。
「賢者の石といいます。早い話が、錬金術をより効率的に、強力に扱えるようになる代物です。私の錬金術でこの面子を人体錬成し『向こう側の世界』に送り込みます」
「そんなことが出来るのか?」
「ええ。本来ならば錬成したところですぐに元の世界に戻されてしまいますが、幸い、私たちは情報集積体という電子の存在。強い意志さえ保ち続ければ、『向こう側の世界』にも存在を保てるでしょう」
俄かには信じがたい話だ。
しかし、他の手段があるかと問われれば、思いつける者はおらず。制限時間がどれほどあるかもわからない。
「や...やります...!」
アンの答えに異を唱える者はいなかった。
「では始めるとしましょうか。準備しますので少々お待ちを」
キンブリーが錬成の陣を地面に描く間に、各々は簡潔な交流にかかる。
「よよいっ!旦那様よォ〜、オイラァあんたと同じく獅子吼雷落として候ォ〜〜〜!!よよよいよいっ!!」
「てめえに股の獣を改造された気持ちが分かるかよ!俺の獅子はマッドサイエンティストに寄生されて使いモノにならねえんだよ!」
矛先のズレている会話。
「縁壱...いま...私が死んだところで...本来の世界にはなんら影響を及ぼさぬ...奴らを殺すのが互いの利...奴らを討ち取った後に...決着を所望する...」
「兄上...」
「違う...私は鬼の黒死牟...あのお方に仕える侍...お前の兄はもういない...故に...お前が気を遣る必要は...ない...」
兼ねてよりの因縁。
「あ...あの...あなたの名前の漢字って...」
「ん?僕の名前は七つの志って書いて七志。ボクの街では名前のない子は皆この名前に憧れているんだ」
「!...そ...それ...私の兄さんと同じ...!」
「そうなの?わあ、いろいろとお話聞きたいなぁ」
同郷ゆえの関心。
そして。
「キンブリーと言ったか。なぜおまえは奴らに敵対する?侍ではないのだろう?」
「ええ、まあ。あのまま散体してもよかったのですがね。ただ、いただけないのですよ。不完全を美徳としながら己の滅びを認めず反する者は処罰する...
結局、彼らの求めるものも己の美しいと思う『美』の永久保存。つまりは『完全』です。実にいただけない...彼らは美しくない」
「呆れた奴だ。貴様も美学で奴らを排そうとしている...それは私欲だ」
「あなたもそうでしょう?いや、私たちだけではない。ここに残った者も残らなかった者も。突き詰めれば、行動の原理は私欲にしかすぎません。要は、己の欲へ如何に向き合うか、ですよ」
「...違いない」
私欲。
61
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:15:21 ID:FNUibDEw0
キンブリーの錬成陣が書き終わる。
「さあ、準備は整いました。この錬成陣の中に足を踏み入れてください」
キンブリーの指示通り、陣の中に入る七人。
「それでは...おや?」
いざ錬成をしようと手を合わせようとしたキンブリーの動きが止まる。
「お嬢さん。あなたも錬金術師で?」
「い...いえ...私は祈ってるんです...私は八丸くんの姫だから...少しでも深く繋がりたいから...」
「祈り...なるほど」
アンの祈りの姿とエドワード・エルリックの錬金する際の姿は非常に似ている。
錬金をする際に手を合わせるのは、天に祈るための所作なのかもしれない、となんとなく思った。
自分には無縁の話だが。
「では改めて...いきますよ」
キンブリーの両手が陣に触れると同時に発光する。
錬成が始まったのだ。
(兄上...私は...)
(縁壱と決着を着ける機会が訪れようとは...行幸なり...)
(おっかさんよぉ〜どうかぁ、どうかぁ、お祈りくだせぇ〜)
(八丸くんを守るのは僕の『義』。待ってて八丸くん...!)
(ハンナ...お前の仇は必ず...!)
(俺の鍵...お前の仇は必ず...!)
この場に集った者たちの私欲はひとまとまりではない。
皆が皆、不動明王を倒した先のことにしか願いを抱いていない。
62
:
お前もいずれわかる時がこよう
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:16:44 ID:FNUibDEw0
★
『―――それでいい』
概念の世界より、地上を見ていた不動明王は笑みを零す。
『"美"の概念は一つではない。私を倒そうとする私欲もまた"美"。数多の"美"が存在するからこそこの世は色とりどりに彩られ無限の可能性を生み出せる』
目指す場所がひとつで纏まってしまえばあらゆる可能性は消え失せ進化がなくなる。
ひとつの物事に対してどのような視点で見るか。それを忘れぬからこそ、発展が、改良が、進化が生まれる。
この世界にとどまらなかった者とてそうだ。
皆、不動明王などよりも重んずるべきものがあるがゆえに留まらず、己の義を果たしにいった。
残ったものも残らなかったものも非難されるべき存在ではない。
彼らこそが無限の可能性を生み出す箱なのだから。
『達麻よ...猫を被って本性を隠す必要はない。師はいずれ弟子に超えられるのが常だが、それをどう見るかはお前次第だ』
「...!」
『この宇宙のことはいまは考えるな。悔いのないよう戦え』
「...ありがたきお言葉」
達麻の猫侍の姿から人間体へと変わる。
これこそが彼の真の姿であり本来の実力を発揮できる姿だ。
「不動明王様。八丸をお願いします」
箱と化した八丸を不動明王に私、達麻は剣に手をかける。
現世で八人の姿が消えると同時、達麻たちのいる世界にも歪が生まれる。
「さあきな小僧共―――お前たちの"勇"を俺に見せつけろ!」
凶悪な笑みを携え、達麻が剣を抜く。
ズ ズ
空間が歪み現れる八人。
その先頭に、アンは立つ。
八丸の姫―――否、愛する者を救うひとりのサムライとして。
彼女は、高らかに宣戦した。
「いざっ!!」
【サムライロワイアル 完】
63
:
◆BJuB7ha/rA
:2020/04/04(土) 00:20:36 ID:FNUibDEw0
サムライロワイアルエンディング、投下終了です
ご愛読ありがとうございました!
>>1
の次回作にご期待ください!!
1か月以内にエピローグ思いついたら書きます。
このロワが打ちきりかどうかもエピローグが必要かどうかも俺が決めることにすんだからよ...
64
:
名無しさん
:2020/04/04(土) 00:30:49 ID:GyjwexYA0
完結乙です
65
:
名無しさん
:2020/04/04(土) 00:40:15 ID:VegnVxmw0
>>64
どのロワがだ?
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