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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

665星屑になる貴方を抱きしめて:2020/08/06(木) 17:27:11 ID:n3Q3fHho0

(それがまず不可解だ。初めの時もそうだったが、理屈に合わん動きだった)

 今。そして攻撃を躱された最初の時点でも。
 肉眼で捉えきれないスピードであったにもかかわらず、ワムウの鋭敏な肌には〝風ひとつ〟感じられなかった。自分の専門分野での異常だ。明らかに納得がいかない。
 単純なスピードでの行動であればどれだけ速くとも───寧ろ速ければ速いほど、大気中に発生する風の振動とは幅が高まるというものだ。肌の肉体反応がその速度に追い付けるかどうかはまた別問題としても、吹き起こった風そのものを認識出来ないというのは筋が通らない。

 全くおかしな理屈となってしまうが、あのメイドは〝その場を動かずにして動いた〟……そんな不思議な体験だった。

 気になる事柄はそれだけに終わらない。
 奴は去り際、「さっきの5秒で5回は殺せていた」などとほざいていた。
 まず間違いなく虚仮威しの台詞だが、ワムウにはその『5秒』という言葉の意味合いが掴めずにいた。
 〝さっきの〟という部分は、もちろん女を背中越しに仕留めようとした時だろう。だがワムウが腕を振り下ろす所を始点とし、気付けばナイフが刺し込まれていた場面を終点とした間隔は、5秒どころか秒にも満たなかった筈だ。

 何を以て『5秒』などとほざいたのか。
 ただのハッタリであり、数字に深い意味は無い……とも考えれるが。


(この『現象』……カーズ様が仰っていた、吸血鬼DIOとのやり取りと状況が似ている)


 話には聞いていたDIO。我が主が紅魔館にて交じった男の齎した、謎の現象。
 瞬間移動のようであったと主は話していたが……ワムウは十六夜咲夜を介し、間接的にDIOと〝酷似した異能〟を体験出来た。
 無論、DIOの謎に関しては『主の体験談』という、所詮は人伝。ワムウが体感した印象との齟齬もあるだろう。
 曖昧な主観で断定するには少なすぎる材料。『解答』を直接尋問しようにも、女は既にワムウの行動範囲外。
 何よりその謎の解明は、現在サンタナに委任されているのだ。今ここでワムウが無理に出しゃばる領域でもない。

 従ってワムウには、この場においては撤退以外の選択は残されていなかった。
 彼にとって不服なのは、この選択肢の少なさがあのメイドによって〝狭められた結果〟という点も少なからずあった。


「おれもまだまだ浅かったということだな。お前はどう思う? ……名も知らぬ戦士よ」


 己が意識の浅さに対する自戒であり、決して女への称賛ではない。
 どちらにせよ、奴の心境は焦りに焦っていた。形はどうあれ、こうして尻尾を巻いたのだから内心を推し量るまでもないと。

 ワムウは行き場のなくなった闘争心のやり場を決めかねるようにして。

 ふと。
 燻っていた眼光を、棺に眠る仏───名も知れぬ戦士へと手向けたのだった。
 何処かで見たような顔だという既視感は、そのまま虚空へと霧散した。



 事の最中に。
 偶然的、あるいは運命的にその寿命を全うし終え。
 二度とは時の刻みを再開すること叶わぬ柱時計の存在に気付けた者など、居なかった。


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