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Fate/Another Order -外典聖杯肉腫 ベルリン-
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近隣に暮らす人々の間の平和とは、人間にとって自然な状態ではない。
それどころか、戦争こそが自然な状態である。
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「最後の一欠片が欲しかった」
――――それは、正しく彼にとっての悲願であった。
氷の大神殿にて、金髪の女はそう呟いた。
少女とも、然して大人の女とも言い切れない齢ほどの女は、薄い白布一枚を身に纏い、無邪気とすら取れるほどの笑顔とともにそれを仰ぎ見ていた。
それの姿、形は……一言で表すならば、肉の柱だろう。子供が欲しがるには余りにも醜悪で、醜穢な、肉で形作られたグロテスクな肉の死骸。
「――――では、それがこの最後の一欠片と?」
実にくだらない、とでも言いたげにその傍らにて侍る男が吐き捨てるようにそういった。
その言葉の対象は、金髪の女が見上げる肉の塊にあったが、その視線は、興味は、その手の中でパラリパラリとページが捲られる一冊の本にしか向けられていなかった。
「つれないな、キャスター。私とキミとの仲じゃないか。少しくらいは話を聞いてくれても良いんじゃないかな?」
「ふん、何を言うか。未だにお前は生臭く薄汚い手段で手に入れた大量の令呪で私を縛り上げている、だから私は従う。ただそれだけの話だ。それに何より……」
「何より?」
「お前如きの才覚で、それが果たせるものか。私でも出来なかったのだ、貴様如きが出来るとでも思っているのか?」
「出来るさ」
嫌悪感を一切隠さないキャスターの言葉に対して、女は一言たりとその声のトーンを落とさずに彼の質問に対して、歌うようにそう肯定の言葉を返した。
「キミに出来なくて、私が出来ないとは限らない。誰がそんなことを決めた? キミは何処でそれを知った? 未来は不確定で、観測すら不完全。確定できるのは過去だけで、それすらも念入りに準備をすれば焼き尽くすことは不可能じゃない。私達はそれを一緒に眺めたじゃないか」
「貴様のペテンは聞き飽きた、耄碌したアルコール中毒者め」
「キミの毒舌も聞き飽きたよ、少しくらいは私に優しい言葉をかけてもいいと思うんだけどどうだろう?」
「黙れ。私は善人も悪人も分け隔てなく愛するが、悪意を持って事を成そうとする狂人に対して慈悲を持つことは出来ん。その忌々しい令呪さえなければ、ここで貴様を縊り殺していたところだ」
「はぁ……全く、悪意じゃないって言ってるだろう? 私は、キミのできなかったことを結果的に達成しようとしているんだから、少しくらい応援してくれたって良いじゃないか」
皮肉も、嫌悪も、悪意も、女はフラリフラリと風に揺られるかのように躱していくそれに、キャスターは眉間に指を当てながら、鎮座する肉の塊を見上げる。
「――――カルデアめ。そもそも奴らが中途半端に事を終わらせてくれたお陰で、私は割を食う事になったんだ」
「だったらキミも呼ばれればよかったじゃないか、あそこへ」
「ああ、お前さえ居なければ私も行っていただろうよ。“お前さえ”居なければ」
「何かにつけて私に責任を押し付けようとしないでくれたまえ。別に、私を放置しておいても良かったんだよ?」
「そうなればもっと最悪な事態になるだろうよ。お前のにわか知識でこれを起動すれば――――な」
――――嘗て、人理は焼却された。これはその断片だ。
最早それに世界を焼き尽くすだけの力はない。最早それが再度人理焼却を成すことはないだろう。だが、それでもそれは人理を焼却した断片だ。
であれば、世界をやり直すことにはならないだろうが――――それは、それに残留された力は、“ほんの些細な変化を世界に起こすに足る”。
「……ユグドミレニアがばら撒いた聖杯戦争のシステム。あれは良かった。ダーニックも、ベルフェバンも、聖杯大戦に尽くしていてくれたのが良い隠れ蓑になった。そこらで起こる小規模な外典に目を向けられなくなった」
「あれの殆どは願望機とは言えない失敗作だ。まさかあれをかき集めようと思うやつがいるとは思わんだろうよ。なにせ、“意味が無い”のだから」
「その通り。だが、これより私の手によって、たった今からそれは本物にすら劣らない贋作に姿を変える」
「実に、実にくだらんな」
キャスターは――――やはり、忌々しげに、そう呟いて、再度その手の中の本に視線を注ぎ直した。
そして女は、踊るように、歌うように、軽い足取りで魔人柱の下へと踏み出して。
「さぁ、聖杯戦争が始まるぞ――――ベルリンが、ベルリンがまた戦火に包まれる。懐かしい火だ、懐かしい日だ。けれども今度は――――勝つのは、私だ」
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【はじめに】
・当企画は、TYPE-MOON世界の設定を利用したオリジナルキャラクターと、史実を基としたサーヴァントの組み合わせで行う聖杯戦争企画です
・オリジナルキャラクターは、完全新規のオリジナルは勿論、『自身が作成した著作権的に問題ないもの』に限り、TRPGやPBW、自作小説等で使用していたものを流用しても構いません
・既存の原作キャラクターそのままの使用は不可ですが、既存キャラに絡めたオリジナルキャラは使用可能です
・サーヴァントの出典に関しては史実を基にして作成したオリジナルのものを使用して下さい。但し存命中の人物や倫理的に問題のある人物の使用はご遠慮ください
【コンペについて】
・採用主従は十〜十五程を予定していますが、場合によっては増えることもあるかもしれません。
・サーヴァントのクラスは通常7クラスと、現在TYPE-MOONシリーズにおいて判明しているクラス(名称のみでも可)とします。但し、ビーストクラスは使用不可とします
・締切に関しては主従の集まり方次第で設定します
【世界観について】
・当ロワは2015年のベルリンにて行われる、外典の聖杯戦争が舞台です
・ベルリンの外部は存在しているように振る舞われますが、実際には聖杯戦争開始時点で世界とは隔絶されています。これには聖杯戦争の参加者のみが気づくことが出来ます
・マスターは『外典の聖杯』によって令呪を与えられ参加権を得ます。但し、ベルリン在住である必要はありません
・サーヴァントの召喚方法はSN等で行われている通りとします。令呪その他の仕様についても同様です
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以上でOP等の投下を終了します
企画主は初めての体験なので至らぬ点もあるかと思いますが、どうか参加頂けたら……と、思っています
後程wikiも用意しますので、よろしくお願いします
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候補作を投下します
さしあたって投下の際のサンプルとしてでも見ていただければ幸いです
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ロッコ・ベルフェバンから亜種聖杯戦争の調査を持ちかけられた時、魔術師――――エデルトルート・ヴァレンティーナ・アンドレーエは、割のいい儲け話だと思った。
「木っ端魔術師が参加する聖杯戦争もどきに勝ち抜くだけで、あの狸爺から溜め込んだ宝物の一部を奪える」と。そんな風に考えていた。
エデルトルートは薔薇十字団の錬金術師の末裔、アンドレーエの中でも随一の魔術師だった。いずれは冠位も夢ではない、と謳われるほどの現代錬金術の使い手。
レースのあしらわれた白いブラウス、黒いスカートに革のコルセット。160に届く程度の身長の、実に絵に描いたような貴族然とした美少女であり。
ただ、やるからには敗北する訳にはいかない。それ故に、触媒は慎重に用意することにした。
召喚するならば、超一流を――――第四次聖杯戦争におけるアレクサンドロス大王くらいのものを。と、言うことで、苦心の末『ブケファラスの轡』というものを用意し、英霊召喚を行ったわけであるが。
「あー、そいつは俺の馬の奴だなぁ。なるほどなるほど」
「……な、な、な」
現れたのは、一人の若い男だった。
確かに、征服王の時代によく見られるような軽装鎧を纏い、そしてそれには豪奢な装飾が施された鎧に身を包んでいる。
イスカンダルは、残された記録によると小柄であったと聞く。この男自身も、筋肉質な体を持っているが然しとても大柄であるとは言い切れない程度の身長だ。
……そう、召喚された彼を見て、途中まではトップサーヴァント、征服王『イスカンダル』の召喚に成功したと思っていたのだ。それなのに、そのサーヴァントが名乗った名前は。
「改めて言うぜ。俺はサーヴァント、キャスター。真名はリュシマコス……側近護衛官リュシマコスだ。俺なんかがイスカンダル大王なんざ恐れ多い!!」
「――――なんでよ!!!!」
エデルトルートは、ヒステリック気味にそう叫んだ。
狙ったとおりにサーヴァントが来なかった……というのは、まあ、まだ良いだろう。それに関しては不満だが、それは良い。
リュシマコスという真名もまた構わない。それでもイスカンダル大王とともにあり、後にはマケドニアを治めた王にもなっている。それは、良いのだが。
「なんで、キャスターなのよぅ!!!」
両手を握り締めてブンブンと上下に振りながら、エデルトルートは分かりやすく駄々を捏ねていた。
キャスターのクラスのサーヴァントは、魔術師としての逸話を持つ英霊が該当する。それ故魔術に対して非常に造詣が深いが、反面対サーヴァント戦には基本的に向かない。
聖杯戦争で勝利を納めるには、強力な英霊を引きつつ、またキャスターの能力を活かした戦術的な思考が必須となる。
「違うのよ! なんでキャスターなのよ!? なんでライダーじゃないのよ!? なんでキャスターなのよ!! 私は雑魚魔術師の雑魚サーヴァント共を圧倒的な宝具で蹂躙してさっさと優勝を勝ち取りたいの! 面倒な事はゴメンなのよ! なのに、なんでよりにもよってキャスターなの!?」
「ええ……んなことを言われてもなぁ……いや、でもな?」
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想像していたのは、輝かしい無双による圧倒的な聖杯戦争での優勝。だと言うのに、突き付けられた現実は頭を使い緻密に計算し罠を駆使した面倒臭い戦い。
いっそのこと、此処でこのサーヴァントを自害させて何とかもう一度英霊召喚の儀を執り行ってやろうか、とすら思い始めるエデルトルートの肩に、リュシマコスは手を置いた。
「な、何よ……」
「蹂躙制覇ってのは良いもんだよな。ああ、良いもんだ。キャスターを召喚したのは確かに不幸だったかもしれねぇし、馬に乗ってこなかった俺も悪かったよ……でもな。キャスターの俺でも、こっちのほうが得意なんだ」
「は? こっちって……」
――――瞬間、一歩。キャスターは踏み込み、拳を放つ。
一撃はエデルトルートの直ぐ側へと――――ほんの僅かにでもズレていれば、彼女の頭部は吹き飛んでいたであろう至近にて空気を引き裂いた。
その速度は正しく。戦うことを得手とするサーヴァントにすら劣らない、それこそ三騎士にすら匹敵しかねないレベルの速度と威力を伴って放たれた。
エデルトルートの中に、妙な静寂が生まれた。その間は一秒か、それともそれよりも小さいものか、大きいものか――――分からなかったが。
反射的に、マスターとしての権限行使うによってキャスターのステータスを閲覧した。
余りにも。そのステータスは、キャスターとして“並外れすぎている”。
「ああ、すまねえな、“魔術すらも特別得意ってわけじゃないキャスター”でさ。まあ、でも。あれだよ」
キャスターには、特別殺意はなかった。寧ろ、彼女の物言いには少しの申し訳無さすら感じているくらいだった。
だが、その声色は自信と希望に満ち溢れていた。それは幼く荒削りであった。然して、その輝きは――――今までの狼狽を、エデルトルート自身が恥じる程にあり。
「――――負ける気はねえよ。征服してやろうぜ、この街を。この聖杯戦争を」
その拳には、王へと至る片鱗が見えた。
「……は、はぁ!? キャスター風情が何言ってんのよ! キャスターのくせに! キャスターのくせに!」
「ああ!? 今格好良く決めただろうが、そこはちゃんと俺のこと認めることだろうが!! あー、なんだこのマスター、意味分かんねえ!!」
「ていうか征服って何よ征服って! 格好つけて! やっぱ大王気取りじゃないのアンタ!!」
「んなもん、聖杯をもぎ取ってイスカンダル大王を復活させた時の手土産にする為に決まってんだろ!! ちったあ考えろ!!」
「はぁ、何その願い!? やっぱバーサーカーを召喚するべきだったわ! ほんと有り得ない!」
「んだとてめえ、ぶん殴ってやろうか!?」
「ひぃっ!?」
――――かくして、未熟な魔術師と何れ王へと至る者の聖杯戦争は、夜更けと共にその刻を迎える。
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【名前】
エデルトルート・ヴァレンティーナ・アンドレーエ
【魔術】
ありきたりな現代錬金術。所持属性は『水』で、『魔術を用いて物を造る』、という基本に非常に忠実。
魔術的な生命体を製造したり、物質を変換して他のものにしたり、それ以外にも治癒魔術等の基礎的な部分を高度なレベルで行える。
ただしホムンクルスの生成に関してはムジーク、アインツベルンのそれには大きく劣る。それに関しては本人も叶わない、と認めている。
単純な組成変成等に関しては高度なもので、肉体の一部を金属に変化させることから、金属を人体に変化させて身体を修復する、ということも可能。
既存の物体から何らかの物体、存在を創り出すことに関しては非常に長けており、即席で簡単なプログラムを組み込んだ兵器を創り出すことも出来る。
そして最も得意な魔術は、"自身の身体を他の物体に置換する"こと。例えば、自身を"水"に変化させ、自在に動かすことも可能となっている。
後述の礼装によって全身を他の物体に置換しても自身の意志を保ちつづけることが可能となっている。
『薔薇十字の黄金』
薔薇十字団の開祖、クリスチャン・ローゼンクロイツからヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエへと譲り渡された、という魔術礼装。
クリスチャン・ローゼンクロイツは『黄金は作成できたが、そうすることはなかった』らしく真贋に関しては不明だが、非常に高度な魔術礼装であることは確か。
これと自身を接続させ続けることで、“魂を一時的に『薔薇十字の黄金』に固定する”という、第三魔法にすら指をかけかねない代物。
これにより、たとえ自身を"水"に変化させようとも、一定の時間であれば意思を保ち続けて思考を行うことが可能となっている。
外観は茨の絡んだ黄金の十字。これだけは組成変換を行うことが出来ず、また全身変化中に破壊されると間違いなく死亡する。
【概要】
表社会でも貴族として知られる名家、アンドレーエの人間であり現当主。
『クリスチャン・ローゼンクロイツと化学の結婚』を記したヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエの子孫であり、典型的な中世発祥の現代錬金術の使い手。
非常に才能に恵まれており、アンドレーエの中では掛け値無しの"天才"。魔術回路、魔術量共に申し分無く、錬金術師としても強力な術式を行使する。
時計塔には身をおいているが、権力闘争に全く興味をもつことが出来ず、一歩身を引いている。
アンドレーエの錬金術の最終目標は自然の神秘、宇宙の神秘を理解すること。つまるところ根源へと至ることであるが、その過程において聖杯には頼らないことを心がけている。
飽く迄独力での到達こそローゼンクロイツに至る手段であると考えており、その為聖杯戦争への参加は考えていなかった。
だが、ベルリンで起きた亜種聖杯戦争においての調査を、ローゼンクロイツ縁の品と引き換えに持ちかけられ、参加することを決意する。
【容姿】
レースのあしらわれた白のブラウス、黒のスカートの上に皮のコルセットを身に付けた典型的な貴族然とした少女。
金髪に青い瞳、白い肌で、確かな血統を感じさせつつも明るく活発なものを感じさせ、陰を感じさせない溌剌とした顔立ちをしている。
身長は160cm程で、非常に恵まれた身体つきをしている。ただし身体能力は高くなく、一般人の平均を少し下回る程度。
【目的】
今回の亜種聖杯戦争の真相を解明し、解決すること
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【クラス】
キャスター
【真名】
リュシマコス
【属性】
秩序・善
【ステータス】
筋力:B+ 耐久:B++ 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
大したものは作れない……と言うよりかは、作らない。
陣地作成:E++
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる……能力だが、非常に小規模。
自身の両拳に“結界”を形成し、物理攻撃力を上昇させる。
【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
天性の肉体:A
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。
このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。
勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
カリスマ:C-
覇者へと至る王威。同ランクのカリスマほどの性能には至らないが、その人格で人を惹きつける。
独自魔術:C
宮廷道化師アガトクレス、バラモン僧カラノスに師事したことにより会得した魔術。
とはいっても魔術師らしいことはほとんどせず、もっぱら肉体の強化ばかりに使われる。
【宝具】
『王の聖拳(アイオニオン・グローシア)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1?99 最大捕捉:1〜1000人
征服王イスカンダルの側近護衛官として、大王の身を護り、そして共に戦ったリュシマコスの武器であるその肉体、及び両の拳。
元より獅子を縊り殺すほどの力を持ちながら、王を守るために更に研鑽を重ねられており、その肉体は鋼鉄の如き強度を持ち耐久性を大幅に向上させている。
その中でも両拳は神鉄とすら見紛うまでに強固に鍛えられており、王に対する障壁の一切を打ち砕く、最早拳にすら納まらない“対軍宝具”と化している。
真名解放を行えばその拳はより強力なものとなり、拳を振るえば一撃を以て千の敵を粉砕する強烈な力の奔流を撃ち出す。
【概要】
宮廷道化師アガトクレスの子であり、マケドニア王国の将軍であり、ヘタイロイの一人であり、ディアドコイの一人であり、大王亡き後のマケドニア王。
ある時、イスカンダル大王の不興を買って耳鼻唇を削がれ見世物にされていた哲学者、カリステネスを哀れに思い毒を以て殺害。
これに激怒した大王によってライオンと共に檻の中に放り込まれるも、そのライオンを素手で殺害したことから大王を感嘆させたという逸話を持つ。
側近護衛官として、時に王を守るために負傷しつつも常にイスカンダルの傍で戦い続けたという。
大王死後の王位継承戦争、ディアドコイでは、プトレマイオス、セレウコスと手を組み白のクレイトス、アンティゴノス等を討ち取り、デメトリオスから国を奪い、最終的なマケドニア王となる。
然し、リュシマコス自身もその後の後継者問題によって晩年を不幸なものとしている。
今回の召喚においては、イスカンダルの側近護衛官として励んでいた時代の姿でキャスターのサーヴァントとして現界した。
この姿におけるリュシマコスは、『征服王を継ぐ者』としての失敗を恥じ、そして再び王の側近護衛官として戦いたいと抱いている。
その為、聖杯に賭ける願いは『征服王の召喚、及び受肉』。偉大なる王として君臨するよりも、偉大なる王の傍で夢を見ていたいと願う。
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投下を終了します
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そしてこちらは借りてきたwikiです
まだまだ未完成ですが随時追加していくのでご容赦を……
ttps://www65.atwiki.jp/anotherorder/pages/13.html
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ヴァルトハイムといえば、かつてはそれなりの地位を持っていたしそれなりの知名度も存在していた。
しかし世代を重ねるごとに回路は薄れて、同時に全盛期を気づいた者達も死に絶えていく。
今残っているのは残骸だと、カスでしかないと揶揄されるほどに落ちぶれて、当人たちもここですべて絶えるのだと諦めがついているほどだった。
そんな最中に"それ"は生まれた。
正しく突然変異、もしくは先祖返りか、桁はずれた回路と魔力量を持つ"ルカ・アルプ・ヴァルトハイム"である。
そして今なら、今ならば亜種聖杯戦争と言う、名を挙げるには絶好の舞台があるのだ。
運命と言うものが在るのならば、それを司る女神がいるのなら、間違いなく今自分たちに微笑んでいるのだと。そう確信するほどの幸運であった。
「まずは拠点を作りましょう。流石の私も、機能するには宿泊する場所ぐらいは必要です。」
さて、そんな家の希望は。その従者と共に家を追い出されていた。
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ルカ・アルプ・ヴァルトハイムの年齢は14、それはあまりにも幼く、聖杯戦争の駒としては尚更であった。
けれどルカ以外にマスターになり得る者など居ない。どうしてもルカをマスターとして勝利するしかなかった。
まずは魔術を叩き込む。常識は戦争に必要ない。だがしかし、策謀を張り巡らせる頭を持たせるにはあまりに時間が無く。
故に、必要なのは圧倒的なサーヴァント。一時代の主役となるような、神代の力を持つ英霊をと――――
――――そうして奔走し、手に入れたのが一本の剣。かの大英雄ヘラクレスが不死の獅子に振るい、へし折れたとされるものである。
触媒としてはいささか弱く、どれほどの効力があるのか、そもそも本物か、不安要素は多いにあったが落ちぶれた魔術家で手に入れられるのはこれで精一杯だったのである。
せめて、せめて中堅以上の英霊を呼び寄せられるだろうと。そんな希望をもって行われた召喚により現れたのは
「欲しいなら"とってきて"あげるけど、駄目だと言うんだろう?
僕はその為のクラスなのに。」
―――――アサシン。正面よりの戦闘はほぼ不可能、であれば策謀をめぐらせマスターを直接狙うクラス。
事実、それは亜種聖杯戦争が開始された所期は猛威を振るっていたし、クラスそのものは決して外れではない。
が
「何度も言わせないで下さい、アサシン。
人々は守るべき存在であり、それに手を下すことは許されない。
命を奪う、と言うわけでもありませんが"諜報"も同様に許されません。」
ルカが口にした"諜報"とは、アサシンが持つ気配遮断の代替スキルであり、真名の一端を担うもの。
胸元の大きく開いたドレスをまとう麗人、そのサーヴァントの真名は"リア・ド・ボーモン"。近世フランスの"諜報員"であり、通常のアサシン以上に"頭を使う"必要のある使い魔であった。
何故、大英雄の遺物からこんな近世の英霊が呼び寄せられてしまったのか。考えれば答えは見えたかもしれないが、彼等はそれすらも諦めて。
最早自暴自棄。この時点でヴァルトハイムは勝利を放棄し、二人を"捨てた"のであった。
「いきなり拠点を失うとは考えていませんでしたが、仕方ない。
彼らも守るべき人々の内であり、彼らに危害を加えるわけにはいかないのは確かです。」
ヴァルトハイムがルカに言ったのは、"此処を拠点とすれば我々に危険が及ぶ。まずは自身で拠点を作るところから始めてくれ"と。数日は生活、宿泊に困らないような金額と共に放り出した。
そんなことを言われて人を守る、という言葉は戦争と言う舞台を考えれば酷く素っ頓狂な言葉である。
それは彼が持つ特殊な至高に起因し、ルカは"扱いやすい"人格を埋め込まれているのだ。
「既に戦争は始まって、"悪しき魔術師共"は行動を開始しているのでしょう。
一刻も早く、我々は彼らを殲滅し、聖杯を守らねばなりません。」
扱いやすいそれは複雑な思考をせず、与えられた"使命"に一直線に向かう。
それは当然"聖杯"の獲得であり、その為の理屈が"魔術師というのは利己的で、どうしようもない連中である"と言う"洗脳"であった。
「―――――捨てられて、こう居られるのは羨ましいよ。」
そんな自身の主を、その中身を見据えながら小さく呟いた。"使命"に酔う主にそれは聞こえていないらしく。
少し同情を覚えるが、そんな感情はすぐさま掻き消して。
サーヴァントとして呼ばれたからには願いがある。余計な思考をせず、聖杯獲得に迷いが無い主は好都合とも言えた。
「分かっているよ。僕も"英霊"なのだから、自身の使命は理解しているさ。」
だから主が望むままの言葉を返す。結局はこの戦争っきりの他人であり、自身が道具であるのと同じく主も道具である。
せいぜい利用できればいい。それは生前より変わらぬ思考であり、事実それで数々の仕事をこなしてきたのだから。
「ありがとう。
あなたこそが"英霊"なのでしょう。願いのために悪に媚びる亡霊とは違う。」
そう言って、主が向けてくるのは全幅の信頼を浮かべた笑みであった。
ルカにとっても、英霊は道具でしかなかった。使命のための道具であり、それが良い物であったと、本人としてはそれぐらいの笑顔なのだが。
彼にとっては全てがそうだ。守るべきといった人も、その認識は大切にしなければいけない"物"でしかなく。そして自分すらも使命のための道具で。
「――― そうだね。
さあ、"使命"のためにも早く拠点を探そう。」
二人は歩く。お互い利用するべきものでしかないけれど、その距離感は近いような、遠いような。
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【名前】ルカ・アルプ・ヴァルトハイム
【性別】男性
【年齢】14歳
【魔術】
幅広くの魔術に手を出しており、そのどれもが一線級。所謂器用万能。
しかしそれが技術によるものと言うよりは、魔力量による暴力のほうが近い。
『魔弾』
複雑な術式を解さず、ルカの持つ魔力量を最大限活用する手段として与えられた魔術。
理屈としては極単純な、魔力を弾丸に加工し射出するというそれだけのもの。
しかし極限まで簡略化された術式から放たれる魔力の暴力は、対魔術師において十二分な威力を発揮する。
【容姿】
丁寧に切りそろえられた黒髪を持つ、端麗な少年。
小柄な体に真っ白な衣服を纏った、飾りの無い人形のような姿を持つ。
【概要】
落ちぶれた魔術師の家系であるヴァルトハイムに、変異染みた魔力量と魔力回路を生まれた少年。
その才能が判明した瞬間に、雄樹は人間ではなく再興の道具として使われるようになった。
まずは魔術を叩き込む。二にも魔術を叩き込む。常識は必要ない。寧ろ邪魔ですらあった。
名を挙げる舞台として亜種聖杯戦争を利用するために、必要なのは戦うための人格のみである。
殺害に違和感を感じるような、そんな常識は不要であると。
と、まあ、そんな感じに手間隙かけて"作られた"マスターであるのだが。
引き当ててしまった英霊がまさかの"アサシン"クラスの英霊であり、しかもルカには策謀が出来る頭なんてのは与えられていなかった。
ルカは余りに幼く、ヴァルトハイムは大容量の魔力バッテリーとして運用する予定だったのである。
おかげで家は今回の聖杯戦争をあきらめ、次なるルカを産む事に注力し始める。
ルカを解析する事も考慮に入れられていたが、サーヴァントの妨害を考慮し断念。
結果彼らは捨てられた。
【性格】
ヴァルトハイムにとって"扱いやすい"人格。決して折れぬ、精神汚染に近い強度の使命感を持たせ、英雄のような"理想の人間象"を押し付ける。
行動は使命の為に一直線。それ以外は無い。感情があるように振舞うのも、一見丁寧な物腰も"その方が便利だから"に過ぎない。
人は魔術師から救うべき対象としているが、決定的に人との触れ合いを欠いた事によりその理念も歪んでしまった。
謂わば壊れないように優しく扱うべき"物"としての認識で、人間と思っちゃ居ない。自己そのものに対する認識も"使命のための道具"。彼の世界に人間は居ない。
使命の内容は"悪である魔術師たちから聖杯を奪う"事。
家からは頭は使えないと見放されたが、ルカは案外に努力家であり魔術、聖杯に関する書物を読み漁っていた事から戦略の一切が使えないわけではない。
とはいってもやっぱり頭は良くない。
【目的】
聖杯の獲得そのものが目的であり、かける願いというものは存在しない。
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【クラス】
アサシン
【真名】
リア・ド・ボーモン
【属性】
秩序・悪
【ステータス】
筋力:C+ 耐久:B+ 敏捷:B+ 魔力:C+ 幸運:D 宝具:C++
【クラススキル】
気配遮断:---
諜報:A+
フランスのスパイ、リア・ド・ボーモンは確かに隠密行動も得意とするが、その逸話は寧ろ"自身の存在を存分に使う"ことにより成された物が多い。
故に気配遮断を所持しない代わりに、この固有のスキルを有する。
気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない。親しい隣人、無害な石ころ、最愛の人間などと勘違いさせる。
当然ながら攻勢に出ればこの効力は失われる。
【保有スキル】
心眼(真) :B
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
他国でスパイとして活動し続けた経験から、デオンはこのスキルを有する。
麗しの風貌:B
固有スキル。服装と相まって、性別を特定し難い美しさを(姿形ではなく)雰囲気で有している。
男性にも女性にも交渉時の判定にプラス補正。また、特定の性別を対象とした効果を無視する。
無辜の怪物:-----
生前のイメージで在り方を換えられる呪い. 姿・能力が変異する。
後述する宝具により獲得し、開放と共にランクを向上させていく。
【宝具】
【王の機密局/リア・ド・ボーモン】
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:----- 最大捕捉:1人
嘗てリアを王ですら触れぬ地位に高めた無数の機密文書が宝具化したもの。
リアが誰かの"知られたくない情報"を知ったとき、この宝具にそれが刻まれる。
そして対象が自信に対して行動を起こしたとき、文書を突きつけることで行動を"拒否"する。
例えば"銃弾が放たれた後"にこの宝具を発動したとしても、それは"銃弾を放つことも出来なかった"と言う事実に書き換わる。
本来機密文書とは消費するものではないが、宝具と化した文書は突きつけることで消滅する。
基本的には相手の情報一つにつき一撃を拒否する宝具である。
【白百合朽ちて項垂れる醜花/フルール・ド・リス】
ランク:C+++ 種別:対伝宝具 レンジ:----- 最大捕捉:-----
生前の彼女が受けた数々の罵声と風評が宝具化したもの。
開放すればその罵声の通りに彼女を変貌させると言う、半ばデメリット宝具に近い。
しかし民衆の憧れと畏怖が入り混じる失望より放たれた言葉は、彼女を"化物"そのものへと変貌させる。
その姿は彼女が受けた罵声全てを内包しており、"半身女半身男"であり、"ヘラクレスの体つき"をした"化け物"である。
少女差ながらの細身の体を持ち、片腕はそのまま自然に伸びる少女の腕でありながら、もう片方は筋肉が以上に隆起し、その長さも少女の体とは不釣合いな正しく"ヘラクレス"の腕である。
全身の血管は異常に隆起し、しかして纏うは白百合のドレス。それと未だリア・ド・ボーモンの可憐を面影として残す頭部のみが彼女を彼女たらしめる。
また、罵声の一つを"ヘラクレスと同一視された"と強引にみなすことにより、自身の得物であるサーベルにおいてのみ、本物に比べれば遥かに劣化しているものの"射殺す百頭"の模倣を可能としている。
リアはこの宝具の存在を酷く嫌っているため、滅多に使用されない。
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【概要】
リア・ド・ボーモン―――――フランス竜騎隊隊長にして"シュヴァリエ"を名に冠するデオン・ド・ボーモンがスパイとして使っていた偽名である。
人里崩壊時にオルレアンに現れたデオン・ド・ボーモンはそのシュヴァリエ、騎士としての側面強く発揮していた。それはこの彼女のスパイとしての側面、"リア・ド・ボーモン"が剥離していたためである。
シュヴァリエ・デオンと名乗るサーヴァントは容貌麗しく、性格は騎士に相応しく、愛国心にあふれていた。
然して"リア・ド・ボーモン"はデオンと同じく容姿こそ端麗であったが、性格は他人を省みず、国への愛などあるのかどうか。
まさに騎士とは真逆の性質を持つ。謂わば彼女は"シュヴァリエ・デオン"が捨てた醜い部分ともいえるだろう。
本来リア・ド・ボーモン単体ではサーヴァントになりうる程の存在ではない。リア・ド・ボーモンを補強するのは彼女の生前に流された"罵声"である。
一時は麗しき女騎士として、そしてあげた武勲も"ロンドン最強の騎士をドレスを着たまま打ち破る"など華々しいものであった。
しかして晩年の姿は"ドレスを着たヘラクレス"と揶揄される程に醜く、果てには"半身女半身男の化け物"とまで呼ばれてしまう。
煌びやかな武勲、逸話に対してその姿は英雄と呼ぶには余りにも。そしてその人格すらも英雄と呼ぶにはかけ離れていて。
失望より生み出された化物、それがリア・ド・ボーモンを構成している。
顔つきとこそ"シュヴァリエ・デオン"と同一の筈なのだが、どこか蟲惑的な雰囲気を纏っている"女性"。
死後解剖されたリアの体には乳房が存在し、またスパイとして活動していた頃は本当に女性であるとされていたことから女性の体を持つ。
纏うドレスは胸元が大きく開いた軽装のもの。いかにもそういうことに特化している。
【性格】
自身の容貌と、そして有能さに絶対の自信を持つ女性。
事実任務は必ず遂行し、間違いなく有能では在ったのだが、周囲の人間は利用するべきものとして友人の一人もいなかった。
また自身が数多くの機密文書を持っていることを盾に、贅沢三昧の生活を送っていたとも残っている。いってしまえば"性格が悪い"。
しかし根源にはデオン・ド・ボーモンと同じものが存在している。
彼女が国を愛していたのは確かである。そうでもなければ、敵国にスパイとして送り込まれ、上司が逃亡しても仕事を果たすなんてことはきっと出来ない。
たとえ国に裏切られたとしても、その滅びを間近に見ていたとしても、愛していたのは確かなのだ。
彼女の死は罵声を浴びせられながら、愛する国も財も何もかもを失ってからだった。
嘗て褒章として賜った物すらも売り払って、何もなくなって、そして死んだ。
故に彼女が願うのは"やり直し"。今一度、麗しきまま生涯を終えたいと。
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投下終了します
慣れないオリキャラ創作でしたが何卒……
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広く散らかったベルリン郊外の安アパートの一室に二人の男がいた。片方は栗色の髪、少年のような顔に緊張を張り付け、片方はそんな弟を――弟と同じ、髪、瞳の色をした大男が見下ろしている。
ジョンソン・カーターとメイガン・カーターはアメリカ人の魔術つかいであった。正確に言えば、ジョンソンは“元”魔術つかいであるが、彼らは歴史も権威も薄っぺらいながら、確実に魔術師の一かであるところの、カーター家の息子であった。
「触媒は兄さんに一任したけれど…アサシンってことは山の翁を呼ぶのかい?」
「ああん?」とジョンソン。「クソイスラエルの力なんて誰が借りるかよ。安心しろ。もっと大物だ」
「暗殺者で、大物ね…」メイガンが言った。そして兄が取り出したスプレーを見、怪訝な顔をする。「それは?」
「スプレーだ。昔のな…中にシアン化合物が入ってる。あり大抵に言うと毒だな」
「もしかしてそれが…」
「そう、触媒だ」
「毒か…」
メイガンは考える。魔術から離れて久しい兄であるが、選んだ触媒自体は悪くないように感じた。毒物は昔から大英雄の暗殺に使われてきたものだったからだ。毒物そのものを触媒にするのであれば、それ専門の英霊が出てくるだろう。
ジョンソンとメイガンはアパートの床に魔法陣のはいったカーペットを転がし、正しい位置に魔力の込められた石を置いた。メイガンが手で合図するとジョンソンは一歩下がり、儀式を見守る。その視線を感じながらメイガンは頭の中で詠唱の始めを唱えた。
「告げる――汝こそ我が力、我こそ汝が道筋
汝の力をここに、汝の魂をここに
我が身を預けよう 我が魂を預けよう
この理に従うのなら 現れよ
我が願望の地に
魔法陣に置かれた石が光をともした。メイガンは目を見開き、何度も詠唱を繰り返した。彼にとってこの状況が限りなく望ましいものであったかはわからない。だがそれでも彼は臨んだ。
「現れろッ!」
メイガンはジョンソンを向いた。ジョンソンはじっとメイガンを見つめている。何も言わないまま、すべての選択をメイガンにあわせている。
「我が願望の地に!」
光はどんどん強くなり、部屋全体が真っ白に染まっていく。兄の姿が掻き消え、自分の手も見えなくなる。
魔術的な光だ。眼は痛くない。
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「サーヴァント。アサシンだ」
メイガンは唖然とした。
白が晴れたとき、魔法陣の上に男が立っていた。
その男は大柄で、身長が2m近くあった。分厚いコートの上からでも体ががっちりとしていることがわかった。顔は、ロシア人のようだが、同時にアメリカ人特有の退廃を持っているように見えた。眼は奇妙な光をたたえ、何も感じさせず、その見た目が持つ要素のわりに、男は目立って見えなかった。
そして、いや、メイガンが唖然としたのは、当然ながらそんな理由ではない。
メイガスは男に見覚えがあった。
「リチャード・カックリンスキー…」
「イェア!マジでマジのカックリンスキーだぜ」いつの間にか横に来ていたジョンソンが快哉をあげた。
リチャード・カックリンスキー。ニュージャージー生まれの巨漢。ニューヨークでかつて猛威を振るったガンビーノ・ファミリーの殺し屋だ。
「なんで…」メイガスが震え声で言った。「なんでこんなやつ!」
「おいおい本人の前だぞ」
「わかってるのか聖杯戦争だぞ!死ぬかもしれないんだ!それをこんな…こんな…僕たちとまったく変わらないような…クソ!」
メイガンはリチャード・カックリンスキー…アサシンを見上げた。アサシンはメイガンの言動を少しも気にしないようだった。今もジョンソンに馴れ馴れしく絡まれているが、身じろぎもせず立ち、メイガンを見ている。その目がなにもかもを拒否しているように見えたメイガンはさっと目をそらした。
「落ち着いて聞けよ…これには深い事情があるんだ…」ジョンソンが言った。「俺たちは今、どの魔術協会にも属してない…強い貢献人はいない、言わば孤立無援の状態だ…考えても見ろ、そんな状態で触媒を探すのは苦労したんだ」
ジョンソンは続ける。
「それに俺だってバカじゃねえ。聖杯戦争にあたってちゃんと考えたさ。で、いくつか候補を絞り、触媒を探す方法を探した。するとあることがわかったんだ」
「…なんだよ」
「俺たちはクソみたいな立場だってことだよ。さっきも言ったが、もう一度言うぞ。俺はクソチビの頃に魔術を止めたし、お前は時計塔から追い出された身だ。家は頼れないし頼りにならない。コネもない。俺は最善を尽くしたんだぜ?」
「でも…」メイガンが言う。「なんか、あっただろ。博物館に侵入するとか」
「バーカ、んなことしたら真名が一発でバレるだろうが」
ジョンソンは肩をすくめた。
「結局のとこ、俺たちには有名どころのサーヴァントなんて召喚できない。だから大人しくマスター狙いで行くことにした。それで手に入った触媒から、こいつを選んだんだ」ジョンソンは真面目な顔をして言った。
メイガンはアサシンを改めてもう一度観察して、そして、深く息を吐いた。
「兄さんが苦労したことは分かったよ…でもさ、確か兄さん、二日三日前にマイケル・シャノンの映画見てたでしょう」
「それが?」
「カックリンスキーの映画だったよね」
メイガンが言い、ジョンソンが笑い飛ばした。
「だからどうした。俺はグラディエーターも見たよ。でもあの皇帝を呼び出そうとは思わなかった」
メイガンは頭に手を当てた。
▼
…さて。
ここまで来て、この二人についてどう思っただろう。適当な兄?苦労人の弟?
残念ながら少し違う。
ジョンソン・カーターはフルネームでジョンソン・ベイリー・カーターと言い、最後の階級は二等軍曹だ。米海兵隊で小隊を率いたこともあるし、いくつかの作戦をこなしたことも、命のやり取りをしたこともあった。
対してメイガン・ギレン・カーターは時計塔の“落ちこぼれ”だった。彼は知らなかったが、彼の入学にはそれなり“以上”の金がかかっていた。真面目ではあったが、魔術の才能はない。追い出されたというのも正しくはなく、正しくは自分を追い出したのだ。
だが兄は弟のために道化を演じた。メイガンはそれに気づいていたが、それに乗った。
こじれている。徹底的にこじれている。
▼
アサシンがこの二人を見て、家族を思い出すことはなかった。
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【名前】ジョンソン&メイガン・カーター
【魔術】
ジョンソンは知識のみ。メイガンは【火】の属性で、知識のみであれば時計塔の生徒の中でも上位に入る。治癒、強化等、初歩的な魔術であればあくまでも平均の範囲内で、安定して使うことができるが、複雑な魔術はほぼ再現不可能。時計塔の魔術師からは素人にそこそこの毛が生えている、程度の認識。
【技能】
ジョンソンは元軍人で、一般人が相手であればまず負けることはない。銃の扱いにも長け、爆弾にも詳しい。さすがにサーヴァントを相手にできるほどではないが、メイガンの強化を受ければ、中堅下位程度のサーヴァントであれば、2分ほどもつ。
【容姿】
ジョンソンは薄汚れたモスグリーンの厚いジャケットを着た大男。
メイガンは小ぎれいな服装をしているが、よく見るとやすっぽく、童顔。
【性格】
ジョンソンは適当なように見えて思慮深く、行動に余念がない。弟の性格や考えには気づいており、悩んでもいて、今回の参加にはそうした思いもあった。
メイガンは考えているように見えてあまり考えていない。深く悩んでいるようで浅いところで自己嫌悪するだけであり、自分の立場に強いコンプレックスを抱えている。魔術を捨てた兄を見下していた時期があり、現在もその片鱗は見られる。そしてその自覚をしているためにさらに自己嫌悪に陥っている。が、それについてもあまり考えないようにしているため、表に出すことはない。
【概要】
分家も分家、歴史も権威もない弱小一家の生まれ。
才能もたかが知れており、本来なら聖杯戦争などに関わるわけもないが、メイガンが自主退学をした帰りに聖杯戦争について偶然聞きつけ、なんとなしに兄と話したところ、兄がその気になってしまう。引きずられる形ではあるが、メイガン自身も聖杯戦争への参加を望んでいないわけではない。
【目的】
優勝。ただしその目的は必ずしも達成すべきものではない。
【クラス】アサシン
【真名】リチャード・カックリンスキー
【性別】男性
【身長・体重】196㎝ 88㎏
【属性】中立・悪
【ステータス】
筋力:Ⅾ 耐久:Ⅾ 敏捷:Ⅽ 魔力:Ⅾ 幸運:Ⅾ 宝具:E
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
自己保存:Ⅾ
自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。このランクであれば幸運と状況によって左右されるが、概ね安全にその場から離脱できる。
専科百般:Ⅽ-
殺人、運搬、死体処理に必要な知識を揃えている。また、新たな知識を揃えることに対し、大きなボーナスを得る。
コールド・センス:Ex
アサシンの精神性を表すスキル。アサシンはあらゆる状況、状態であっても十全に動くことができる。また、ランクB以下の精神攻撃、カリスマ、魅了をシャットアウトする。
【宝具】
『氷の処刑人』
ランク:Ⅾ 種別:対人宝具 射程:- 最大補足:1
死体を凍らせ、死体の死亡時間を不明瞭にするアサシンの手口が宝具化したもの。
アサシンが殺した対象は即座に室温と同じ温度となり“死体からカックリンスキーに辿り着くことができない“という呪いがかかる。
『The iceman』
ランク:- 種別:対人奥義 射程:- 最大補足:-
アサシンの生涯そのものを宝具としたもの。アサシンは魔術やスキルによる感知はなされず、目視、もしくは接触によってのみ存在を把握できる。この宝具の発動中、アサシンのパラメータは一般人並みに落ちる。対象がアサシンの真名を知っていた場合、この宝具は無効化される。
【人物背景】
1936〜2006年。アメリカ/ニュージャージー州生まれ。60年代前半から86年にかけてガンビーノ・ファミリーの下で殺し屋として働く。犠牲者は最低100人、推定では250に上るという。2006年、獄中で病死。
ペーター・キュルテンに代表される、時折現れる家族を持った殺人鬼タイプの人物。彼もまた家族を深く愛し、投獄された際に殺し屋として働いたことを恥じてはいないが、家族には謝りたいという旨の発言を残している。だいぶおかしい。
今回の聖杯戦争では【家族】がなくなったことでより凶悪な存在になっている。聖杯戦争は彼にとって仕事に過ぎず、マスターになんらかの感情は抱いていない。
自己保存のスキルを持っているが、戦えないわけではない。事実、アサシンはストリート・ギャング程度であれば6対1でも勝つ戦闘能力を持っている。しかし本人に戦う気はない。
【サーヴァントとしての願い】
自分の犯罪がバレないようにする。
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投下終了します
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投下させていただきます。
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人生はジョークだ。
◆
ベルリン中心部を流れるシュプレー川の中州には、博物館が密集している区域が存在している。
博物館島とも呼ばれるその区域の中心部にあるのが、ギリシャ、ローマ、中近東のヘレニズム美術品、イスラム美術品などを展示している、ペルガモン博物館である。
コの字型の建物になっている本館は外見からギリシャ神殿を模したものになっており、中には「ゼウスの大神殿」「イシュタール門」などの巨大な建造物を始めとしたさまざまな古美術品が展示され、連日多くの観光客が訪れ賑わいを見せている。
以上の文章で、ペルガモン博物館の説明として「表向きの分は」足りるだろう。
だが、ベルリン大聖堂にも近しいこの場所を「裏向きに」――すなわち魔術的に説明するならば、もう少し文章を付け足しておかなければならない。
例えばいまここに、観光客の列に紛れるようにして、ペルガモン博物館内をすたすたと歩く一人の男がいる。
黒いトレンチコートに、これまた黒い帽子を目深にかぶっている。絢爛な周りの空気に馴染めていない、不健康な肥満体の男だ。
アジア系だろうか、肌は病的に白い。
脂ぎった髪は肩まで伸びて非常に不衛生、落ちくぼんだ鼻と濁った眼、酒気を帯びたいやな臭気を発する口は、あたりに不快感さえ与えるだろう。
警備員にとがめられてもおかしくはないようなその姿――だが、なぜか博物館内に等間隔で巡回する警備員も、すれちがう観光客たちも、彼を呼び止めようとも、どころか見とめようともしなかった。
男もまた、それらに興味などないといった調子で速足で歩く。
豪華絢爛たるイシュタール門の展示さえ一切見上げずに、関係者用の細い通路へと消えていく。
そのまま「スタッフルーム」と書かれた扉を開けるかと思いきや、扉には入らずに、突き当りの壁へと進んでいった。
「おい、おれだ」
壁に向かって話しかける。反応はない。
「おい。……はァ――。いちいち面倒だな、相変わらず」
酒臭いため息を吐くと、コートに入れっぱなしの両手を外に出す。黒い革手袋を付けていた。
それも外すと、ごつごつとした手には、迷路のような模様が青白く隆起していた。
「<雁木(ガンギ)>」
その手を壁に触れさせ、男が短い言葉を唱えると、カチリと鍵が鍵穴に嵌まる感覚があった。
魔術回路を利用した認証。専用の詠唱により特定の位置を励起させた魔術回路を「鍵」とし、それを壁が読み取って照合したのだ。
あるはずのない扉が開き、地下へと続く石造りの階段が現れる。
現代風に改築された博物館とは全く異なる通路となったその階段を、煩わしそうに男は下りていった。
しばらくすると現れた木製の扉を、今度は思い切り蹴飛ばして開く。
目の前に広がったのは、意外にも、ベルリンの夜の街にいけば幾らでも見つかるような、こじんまりとしたバーであった。
バーカウンターの奥から、白髪の老人――バーのマスターだろうか――が現れて、男を認めると柔和な笑みを見せた。
「やあいらっしゃい、ミスタージョーク。……今日はまだシラフかね?」
「あァ? ふざけんなよクロッカス。てめーが呼んだんだから鍵くらい開けとけや。
シラフだよ。飛行機では缶チューハイしか呑めてねえからな。つまり、お前をいつでもぶん殴れるってことになる」
「相変わらず血気盛んなようでなによりだよ」
「早くしろ。こちとら協会に追われてる身なんでな」
「そうだったね。では、本題に入ろうか」
クロッカスと呼ばれたその老人は、「本題」のワードと共にその笑みを冷ややかな……悪人めいた笑みへと変えた。
「ああ。取引を始めようぜ」
もちろん、こんな方法で入るこの場所が、ただのバーであろうはずもない。
バー「クロッカス」は、在野の魔術師、あるいは外野の魔術師の中でも知る人ぞ知る、裏の商店。
いわゆる聖遺物を含む、表には出せないような魔術品の取引所である。
黒いトレンチコートの男――ミスタージョークがここへ足を運んだのは他でもない、
この商店の贔屓客である彼が集めているものを、店が入手したという連絡があったからだ。
「本当なんだな? 『あれ』を手に入れたって話は」
「もちろんだとも」
老人は棚から、厳重に布で包まれた箱のような物体を取り出し、バーカウンターに置いた。
しゅるりと紐を解き、布を広げる。中に入っていたのは、桐の箱だった。それを今度はバーの扉と似た方法で、魔術的に解錠する。
蓋を開けて取り出されたのは……一本の、ワイン瓶だった。
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「これが……バッカスの葡萄酒」
「去年、バールベックから聖堂教会が発掘したらしい。それがベルリンの教会支部に回って、こちらで管理されることになったとか。
現物は樽に納められていたそうだよ。瓶に詰め替えたのは、保存性のためだろうね。ま、仔細までは私は知らないよ」
「教会ってこたぁ、第八の管理品かよ? それを掠めたって? 何年たっても手癖の悪さは変わらねえな」
「この場に店を構えてる関係上、ベルリン大聖堂とはコネがあってね。
ちょっとした物々交換で平和的に譲り受けたのさ。まったく掠めたとは人聞きの悪い。君じゃあないんだから」
「ハッ、同じようなもんだろ。で、いくらだ?」
金額を問うミスタージョークの前に、指が一本立てられた。
「君の国の通貨で1億」
「安いな」
「それと、1つ大きなお願い事だね」
「あ?」
「――聖杯戦争という単語は、知っているかね?」
老人の顔が、妙ににこやかな笑顔に戻っていた。
ミスタージョークは察することができた。この老人がこういう顔をするのは、初めてのことだったから。
ああ、こりゃあ、十中八九、厄介事が裏に隠れているな。と。
しかしだからといって、目の前の美酒から逃げるわけには、いかなかったのだ。
◆
魔術師・長谷川譲句は、魔術協会に追われている魔術犯罪者である。
罪状は魔術を使用した金銭や物品の強盗。加えて、聖遺物など魔術品の強盗、計26点も含む。
ちなみにそのすべてが、酒のために行われたものだ。
譲句は自らの命よりも、名誉よりも、そして魔術師としての誇りよりも、酒が大好きな男だったのだ。
ただ希少な酒を集めているだけなのに、この世界はそれを許してくれないらしい、とは彼がよく漏らす言い訳である。
そういうわけで、ベルリン某所のホテルに戻った譲句はさっそく桐の箱から取り出したワイン瓶を傾け、
グラスにとぷとぷと注ぐと、乾杯の姿勢を取った。
「まずは一杯」
「いいね」
二つのグラスが合わさってカランと音を鳴らし、次いで、ごくごくと飲む音が部屋に響いた。
何年物かも計り知れない聖遺物のワインは、この世のどこに行っても味わえないような極上の味がした。
「く……っそ美味ぇ……」
「ははは、そりゃあ、僕の作ったワインだからね。美味くて当然に決まっているよ」
「おれも今までいろいろと味わってきたが、こいつぁ至高だな……これが飲めたなら、あのクソ爺の妄言を聞いてもお釣りがくるぜ……」
「聖杯戦争、やるのかい?」
「やるよ、やるやるやってやるよ。つーかやるしかねぇんだな。
適当にやって敗退して逃げられりゃそれが一番だが、あの野郎、優勝しないとおれの身柄を魔術協会に引き渡すと脅して来やがった」
「そいつは物騒だ」
「本当だぜ。牢に入れられちゃあ酒も飲めねえ。アホかって話だよ。でもまあ、勝算はあらあな」
譲句はテーブルの向こうに座る「少年」を頼もしそうに見つめながら笑った。
ブドウやリボンで彩った松かさの杖を持つ、牧歌的な服装ながら美しい顔立ちのこの少年こそ、彼が召喚せしめたサーヴァント・キャスターである。
一見すればなんの戦闘能力もない、ハズレサーヴァントのように見える彼だが、譲句は彼のことをよく知っていた。
酒を呑む魔術師として、知っていなければならないほどにポピュラーで。
それ故に、あまりに埒外の存在。
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「ひっく。ひひ、勝算はあるぜ。ダメもとで召喚してみたら、こんな大物が引っ掛かったんだから」
「だって面白すぎるんだもん? いくら聖遺物の酒を貰ったからって、それをそのまま触媒にしちゃうなんてさ。出てきたくもなるって」
「本当かァ? それだけとは思えないがな」
「丁度よかったっていうのもあるよ。ホラ、僕って放蕩系男子だからさ。座にずーっといるのって、つまんないんだよ」
「遊びたくなったってか?」
「そう。ジョーク。君の名前と同じだよ。
僕もたまには、この世界にジョークを言いたくなったのさ。それが出てきた理由だね。だから君と同様、聖杯にかける願いってのは無いかな」
「ひひひ。なら、まかり間違っておれらが勝ったら、あのクソ爺の夢が叶っちまうわけか。面白ぇ!」
譲句がこの「バッカスの葡萄酒」を譲り受けるに当たって受けた条件は二つであった。
一つは、現金一億円の支払。
そしてもうひとつは、闇商人クロッカスの代理人として近々ベルリンにて行われる亜種聖杯戦争に参加、優勝すること。
ではそのクロッカスの願いはというと――。
「本当に出来るのかねぇ? ナチスドイツの復興だなんて」
「さあ? でも面白いよね。あんなものに願わないと叶わないような願いを、あんな年になるまで抱えていたって時点でさ」
「だなァ。おれは、あいつはもうちょっと合理的で真面目なやつかと思ってたんだが」
「狂ってる人は好きだよ、僕は。だってそれが生きてるってことだからね」
ははは。ひひひ。二人は老人の妄執に似た願いを、酒のテンションで笑い飛ばす。
「さあ、じゃあまあ、前祝いに遊ぼうか。オールナイトで飲みってやつだ。女が欲しいよね?」
「欲しいな。ボンキュッボンの美女がいい。無垢な少女を快楽に堕とすのも好きだが、いまはパーッとヤりてぇ気分だ」
「うん。用意しよう」
キャスターが杖をコトンと鳴らすと、ホテルの扉が開いて、女の従業員が入ってきた。
ボンキュッボンの美女だった。目にはハートマークが浮かんでおり、顔は酒に酔ったかのように上気しており、舌を出して発情していた。
扉を閉めると、譲句のところに歩いてゆきながら上着を脱ぎ、シャツを脱ぎ、そしてブラジャーを外した。
するりと譲句のそばにしなだれかかって、頬にキスをした。
そこまでがあまりにスムーズな動きすぎて、ようやく譲句は忘れていた瞬きをした。
「もう三人くらいはいるかな? 囲まれたいよね、せっかくなら」
「お前すげぇな……」
「ははは、このくらいは魔術ですらないよ」
爽やかに語るキャスターの瞳にまったくの罪悪感を見つけられないことが、譲句は少し怖くなった。
まったく、人生はジョークだと改めて思う。
おれのような外れ者が読んだしもべが、これほどにジョークのような存在なのだから。
だが――だからこそ、面白い。
「……ひひひ。三人で足りるかよ? お前のぶんもいるだろ。十人連れてこい十人」
「ははは! ジョーク、面白いね! やっぱり君のところに来てよかったよ!」
こうしてベルリンの夜が更けていく中、「酒の余興」で聖杯戦争に参加する一人と一柱は、酒池肉林を楽しむのだった。
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【名前】長谷川譲句
【性別】男性
【年齢】31歳
【魔術】
酒を操って色々する魔術を使う。呪文詠唱は<大吟醸>など、日本酒の名前に短くまとめている。
アルコール分を魔力に変換するのが得意。
【容姿】
黒いトレンチコートに、黒い帽子。肥満体のアジア人で肌は病的に白い。
脂ぎった髪は肩まで伸びて非常に不衛生、落ちくぼんだ鼻と濁った眼、
酒気を帯びたいやな臭気を発する口は、あたりに不快感さえ与えるだろう。
【概要】
「人生はジョークだ」を信条に、酒を求めて世界を回る魔術犯罪者。
魔術協会にはマークされているが、目的がはっきりしているただの小悪党であるため、捕縛の優先度は低い。
長谷川の苗字は偽名で名乗ってるだけで、日本の有名な魔術一家の外れ者であるという調査結果が上がっている。
「バッカスの葡萄酒」入手の折、取引の結果、聖杯戦争に参加することとなり、葡萄酒そのものを媒介にした儀式でキャスターを呼び出した。
【性格】
お酒に目がない。お金にも目がない。自分さえ楽しければそれでいい。
小悪党。刹那主義。危ない橋は基本的には渡らないが、勝算と楽しめる余裕があれば、渡るのもやぶさかではない。
もちろん小悪党らしく、上手くいかなくなったら思いっきり取り乱すところまでセットである。魔術が使えるだけの汚いおっさん。
ひひひ、とゲップを耐えるかのように笑う。
【目的】
取引通り「ナチスドイツの復活」を願うつもりである。今のところは。
【備考】
キャラクターのモチーフは拙作「四字熟語バトルロワイヤル」ttps://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/3158.html 8話・17話・21話に登場する「酒々落々」というキャラです。
設定上のつながりはないので把握の必要はないですが参考までに。
【クラス】キャスター
【真名】デュオニソス
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:A 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
道具作成:A
葡萄酒、葡萄のツルなどを無限生成できる。
陣地作成:A
酒気を帯びた空間を作り出してあらゆるものを酔い狂わせることができる。対魔力があればほろ酔いで済む。
神性:A
実質主神ゼウスの子どもなので神性は最高ランク。
【保有スキル】
精神汚染:A
精神を酔わせて精神攻撃耐性を減らす。また、神の子なので精神攻撃への耐性を持つ。
果実の酒気:A
魅了+防御力ダウン。
魔術:B
動植物を酔わせて使役したり、人を狂わせて操ったり、気に入らない奴を動物に変えてしまったりする。対魔力が少しでもあれば防げる。
【宝具】
『豊穣と解放の杖(テュルソス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1〜100人
デュオニソスやその信奉者が手にしていた、ブドウとリボンと松かさの杖。生命、豊穣、再生の象徴である。
と同時に、気にいらない存在を狂気に陥れながら旅をつづけたデュオニソスの逸話の象徴でもある。
効果範囲内のサーヴァントに狂化スキル(効果を受けた時間によりランクは変化)を付与し、一定時間の間クラスを強制的にバーサーカーに変更する効果を持つ。
ちなみに巨人を倒した逸話もあるので、普通にこれを使って殴ってるだけでも強い。
【概要】
酒の神バッカスともいう。
乳母が別の女の嫉妬により天の雷で焼かれてしまったので、主神の膝から生まれた系男子。
自身も嫉妬で狂わされたりしたものの、酒の味に目覚めてからは酒って最高だなと世界に葡萄酒を広める旅に出る。
色々な妨害に逢ったが、だいたい敵は狂わせて事なきを得た。
美女と動物を侍らせて珍道中を楽しみつつ信者を増やした結果、最終的に冥界から乳母を引っ張り上げるなどし、神になったという。
神状態で聖杯に呼ばれるのはムリ目だったので、姿は少年状態。それに伴って能力も通常のサーヴァント程度には落ちている。
ははは、と全てをバカにしたかのように笑う。
キャスターとして召喚されたが、座にずっといるのがつまらないので現界して遊びに来たという認識で、聖杯にかける願いはない。
人間が欲望に素直になるのを見るのが大好き。欲望に素直なジョークのことはそこそこ気に入っている。
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投下終了です。よろしくお願いします。
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>>26
失礼、サーヴァント属性が前の人のコピペのままでした。「混沌・善」に変更でお願いします。
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一主従、投下します。
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ドイツという国は、比較的に銃規制の強い国の1つである。
制度の上では護身用の銃の所持が認められているが、そのための審査は極めて厳格。
ライセンスの所持者は全国でも100人を超えるかどうか、といったところ。
射撃競技や狩猟用であればもう少し緩いが、それでも何かと五月蝿いことには変わりはない。
それでも、銃を使った犯罪やテロは起きる。
つまりそれは、非合法な市場と非合法な所持者が居るということ。
そして、それを支える闇のマーケットが存在するということでもある。
――かつての東ベルリンに当たる市街の、とある一画、一般には知られていない深く広い地下室。
かつての秘密警察の隠し拠点の1つだったと言われるその空間に、遠雷のような音が響いた。
「……なるほど、悪くないね」
「そりゃそうですよぉ、この私が『加護』を与えた弾丸ですもの」
旧ソ連製の狙撃銃を下ろし、耳当てを外して呟いたのは、一見少年のようにも見える小柄な少女。
ジーンズにTシャツというラフな格好ながら、見る者を震え上がらせる鋭い眼光の持ち主だ。
その少女に応えて豊かな胸を張ってみせたのは、ゆるやかな白のワンピースに身を包んだ、こちらも小柄な娘。
先ほどまで連続していた轟音もなんのその、耳栓の類もせずに、おっとりと穏やかに微笑んでいる。
裏社会の闇は、1枚きりの浅いものではない。
ここは魔術師たちの世界ともまた異質な、地に足をつけた犯罪者たちの棲む世界。
非合法ガンショップの、完全防音の極秘の射撃訓練場であった。
そこを悠々と貸し切りにした少女は、狙撃銃を置くと、違うシューティングレンジに移って拳銃を手にする。
「ペネロピちゃんは、狙撃銃と拳銃、どっちが好きなの?」
「……あのさ、せめて『マスター』と呼んでくれないか、『聖女様』。
まあ、ボクに武器を選り好みする余裕はないよ。その時に使えるモノを使うだけさ」
ペネロピと呼ばれたボーイッシュな少女は、嘆息すると耳当てを付け直し、やおら拳銃を乱射した。
少女の瞳が、瞬時、金色の光を放ち……
先ほどよりも近くに置かれたターゲットに、立て続けに命中する。
人型のシルエットの頭と胸に全ての弾丸が集中。どちらもほとんどワンホール状態である。
「すごぉい。上手いのねぇ」
「……半分以上、反則を使ってるようなものだからね」
聖女と呼ばれた娘の歓声に、ペネロピはふっと自嘲気味の笑みを浮かべる。
同時に、ペネロピの目から金色の光が消える。
獣性魔術――かつて人狼と同一視された一族の、獣の力を我が物とする魔術。
ペネロピの目に宿り、人間離れした視力を与えていた金色の光は、まさにその発現であった。
「しかし、『アーチャー』のお蔭で銃弾の調達については考えなくて済むようになったけれど。
この店の品ぞろえは、むしろ良過ぎるな。何を選ぶか迷ってしまう」
「愛用の銃とかないの?」
「ボクは『仕事』の度に現地で調達する主義でね。
移動が格段にラクになるし、足もつきにくくなる。
まあ、そのたびに試射と調整が必要にはなるんだが」
「あ、なら、デザートイーグル使おうよ、デザートイーグル! 強いって聞いたよ!」
「……好きなの? そういうバカ威力の銃が?」
「私の『弾薬庫』でもめったに出番ないんだもん〜。威力すんごいって言うしさー、気になるじゃない?」
オモチャのことでも語るように銃の話をする白ワンピースの『聖女様』に、ペネロピは溜息をつく。
まあしかし、デザートイーグルというのも悪くない選択肢かもしれない。
普段であれば、そんな威力一辺倒の拳銃を選ぶ彼女ではないが……
今回の『仕事』。
『標的』となる魔術師だけではなく、『サーヴァント』も相手にせねばならないかもしれないのだ。
いくら『聖女』の『加護』を受けた弾丸があると言っても、威力はあればあるに越したことはない。
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ペネロピ・グリードファングは、北米の魔術師の一族の、傍流の家に所属する少女である。
彼女たちの一族の源流は2つ。
1つは、魔女狩りに追われて欧州を離れた、人狼伝説を背負う古い魔術師の一族。
1つは、北米の荒野に根付いていた、狼を祖霊(トーテム)と仰ぐ呪術師の一族。
基盤となる土地を離れて衰退する一族と、白人に迫害され衰退の途にあった一族は、奇跡的に出会い。
紆余曲折の末――互いの力を合わせ、統合された一族として再出発を図ることとなった。
血を混ぜ合わせ、知恵を混ぜ合わせ、魔術刻印を混ぜ合わせ。
歴史浅い北米には珍しい、魔術を伝える一族として改めて根付くこととなった。
狼とは群れるもの。
本家を中心にそれなりの規模を形成していた狼の一族の裾野に、ペネロピは生まれた。
分家に生まれたにしては高い才能を持っていた彼女だったが……しかし。
彼女の才能は、著しく偏っていた。
鋼をも裂く牙も爪も生やすことができない。
銃弾さえも弾く毛皮も生えてこない。
恐慌を引き起こす咆哮も放てない。
辛うじて身体機能の全面的強化はできるものの、消耗が激しく長時間の使用は不可能。
そんな彼女が長けていたのは……感覚の強化と、気配の隠蔽、の2点だった。
嗅覚、聴覚、視覚、第六感。暗視能力の確保まで。
彼女の感覚はそこだけは獣のように、一瞬で強化され。
獲物を狙う肉食獣が、警戒心の強い草食動物の間近に迫ってなお気づかれないように。
殺気も気配も全て消し去り、何時間でも何十時間でも伏せ続けることができる。
一族の得意とする分野の多くを持ち合わせず、異なる方向に獣としての能力を発揮した少女。
『牙なき狼』と呼ばれた彼女は、やがてその限界を超えられないと知ると、異なる技術を伸ばす決断をした。
銃の扱い。
裏社会との付き合い。
探偵術にも似た、下調べの心得。
そして、人を殺す技術。
ありていに言って。
彼女は、一族のために働く、殺し屋となった。
ただの殺し屋ではない。
事実上の、対・魔術師専門の暗殺者である。
感知系の魔術さえも欺く強力な隠身の魔術で隠れ潜み――
超遠距離から超視力と超感覚で標的を捉え、神秘も何もない銃弾で力任せに正確無比に狙撃する。
あるいは、至近距離の暗闇の中から、手数任せの小銃の乱射で蜂の巣にする。
それは猜疑心の強い魔術師が相手でも、十分に有効な暗殺方法だった。
一族の裏切者を始末したのを皮切りに、実績は次々と積まれてゆき。
やがて本家の命令で、本家と付き合いのある、他の魔術師からの依頼も受けるようになり。
ペネロピは淡々と任務を遂行し続けた。
本家に忠実な一匹の従者として、屍の山を築いていった。
そして、今回。
新たな『標的』たる魔術師を追って、足を踏み入れたベルリンにて――
彼女は思いもかけず、聖杯戦争のマスターとなった。
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聖バルバラ。
それは正教会(オーソドックス)系のキリスト教で信仰を集める聖人の1人である。
時は3世紀、ニコメディア――今の名で言えば、トルコのイズミットに相当する土地。
その地の裕福な家庭に生まれた彼女は、やがて美しく成長すると、多数の求婚者に求められるようになった。
危惧した父は、彼女を求婚者たちから遠ざけるために、塔を建築。
彼女は事実上、その塔に幽閉されて過ごすこととなった。
彼女が当時禁止されていたキリスト教の信仰に目覚めた経緯は明らかではない。
一説には身の回りの世話をする侍女が隠れ信徒で、そこから学んだのだという。
ともあれ彼女は、ある日、塔に浴室が増築されることになった時に、職人にある設計変更を依頼した。
2つの窓を持つはずだった浴室に作られた、3つの窓――それは三位一体の教えを表現する、信仰の表明だった。
その仕様の意図を知った父は、禁じられた宗教に走った娘に激昂。娘を剣で殺そうとする。
しかし間一髪のところで、、岩が2つに割れると彼女を包み込み、運び去ってしまったという。
バルバラの身に起こった、これが第一の奇跡である。
束の間の自由を得た彼女は、しかし、彼女を見つけた羊飼いの密告によって捕らえられ、連れ戻されることとなる。
その際、密告した羊飼いの羊たちは、すべてイナゴに転じて逃げ去ってしまったという。
捕らわれの身となった彼女は火で焼かれるなどの拷問を受けたが、その傷は翌日には綺麗に全て治ってしまい。
裸身を晒す彼女のために、白い薄布が現れて彼女の身体を隠したとも言われる。
とうとう業を煮やした父の手によって彼女は斬首されるが、その直後、その父を落雷が打ち、焼き尽くしたという。
……徹頭徹尾、救いのない不幸な少女と、ハンパな救いに留めるハンパな神の奇跡の話である。
しかし死後、彼女は聖女としての信仰を受けることとなった。
人々が彼女に期待したのは、死と危険を避ける奇跡。
病や事故から人々を守る十四救難聖人の1人とされ、彼女が担当するのは急死と発熱。
その一方で鉱山や火薬庫などの危険な場所には彼女の像が祀られるようになり。
一部の国では弾薬庫のことを『サンタ・バルバラ』と呼ぶまでになった。
――その信仰こそが、彼女を『アーチャー』の英霊として、召喚するに足る存在に引き上げる。
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「しかし、『銃弾』が媒体ねぇ……。
儀式もなしにマスターに選ばれてしまうあたりも、運が良いんだか悪いんだか」
「いやぁ案外難しいのよぉ。コレってペネロピちゃんみたいな魔術師とは無縁の道具だから」
「ボクは魔術師ではないよ。しがない『魔術使い』さ。
『根源』がどうとかいう難しい話は、『本家』の偉い人らにお任せだよ」
試射した銃器を片付けながら、ペネロピは肩をすくめる。
『根源』を求めるなどという理想からは遥か遠く、ただ『本家』がその理想を遂行するのを助ける影。
それが彼女の自己規定である。
そんな少女に、聖人らしからぬ呑気な口調のアーチャーは不思議そうに首を傾げて。
「じゃあ、ペネロピちゃんは聖杯に何を願うの?」
「何って……いや、別に聖杯とか目的に来たわけじゃないんだけども。
とりあえず普段通り、『標的』をさくっと殺して『本拠地』に帰還したいかな。
今回の『任務』は予算も期限もかなり余裕があるけど、早く終わればそれだけ休んでられるし。
ああでも、この聖杯戦争ってひょっとして途中辞退はできない感じなのかな、優勝しちゃうしかないのかな」
「えぇ〜、つまんな〜い……。ペネロピちゃん、真面目過ぎるよぉ……」
童女のように頬を膨らませるバルバラ。
そんな彼女には、聖杯戦争のサーヴァントらしい張り詰めた気配はまるで見られない。
それも当然である、彼女の能力で使い物になるのは、『加護』を与えた銃弾を無限に出せるという一芸のみ。
あとは使いどころの分からない極大の耐久力と再生能力、それに死に際の報復の一撃。
どれも強くはあるが、なんとも噛み合わない能力であり……はっきり言ってハズレに近いサーヴァントである。
「とりあえずキミの『弾薬庫』の弾丸ならサーヴァントにも通用するんだろう?
状況から見て今回の『標的』もマスターになってるだろうけど、まあ、それなら何とかなりそうだ。
キミは弾丸を用意してくれるだけでいいよ。あとは好きに遊んでて」
「…………」
「それはそうと、バルバラ、キミの『聖杯への願い』って何だい?」
バルバラの沈黙に何かを感じ取ったか、ペネロピは逆に問い返す。
分かりやすくパッと顔を輝かせたバルバラは、ぎゅっと拳を握って。
「んとね! いろんなとこを見て回りたい!」
「いろんなところ?」
「私さー、生きてた時にはさー、せっかく塔から逃げ出したと思ったのに、すぐに捕まっちゃってさー。
綺麗な山だなー、とかぼんやり見てたら追っ手に取り囲まれちゃってたりして、えへへ〜」
てへへ、と威厳もなく笑う聖女。
「だから、どうせなら、いろんなトコ見て見たいのよね! 実際にこの目で!」
いやあんま強い願いって訳でもないのよ? 私、こ―見えてもルーラー適性もあるくらい欲のない子だし!」
「とてもそうは見えない」
「だから、ちょっとでいいのよ、ほんのちょっと余計に長く現界して、旅とかしてみたいの!
あ、そうだ、ペネロピちゃん、お仕事早く終わったらヒマになるんだよね?!
ちゃっちゃと殺しまくってお休み貰って、どうせなら私と一緒に、のんびり世界一周とかしてみない!?」
満面の笑みで物騒なことを言い放つ、仮にも聖人の列に加えられたこともある少女の誘いに。
自由意志での旅行など想像したこともなかった、忠犬のような少女は。
「…………考えておく」
ほんの少し頬を赤らめて、軽く頷いて見せたのだった。
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【名前】ペネロピ・グリードファング
【性別】女性
【年齢】18歳
【魔術】
秘法によって自らの内側から獣性を引き出し、魔力によって疑似的に人狼のような能力を得る獣性魔術。
属性は『地』、起源は『狩猟』、モチーフとなる獣のイメージは『狼』。
彼女の場合、その特性は『感覚の強化』と『隠密性の向上』の二点に絞られている。
鋼を切り裂く牙や爪は生えてこないし、銃弾を弾く毛皮も生えず、魔力ある咆哮も放てない。
身体機能の全面強化は辛うじて可能だが、消耗が激しく長時間は持たず、逃走時などの最後の切り札となっている。
しかし感覚強化と隠密性については十分に一流で、超人的な嗅覚と視覚、聴覚、暗視能力、第六感を獲得できる。
隠密性についても、獲物を狙う肉食獣が殺気も気配も感じさずに伏せ続けるように、極めて高レベル。
魔法的・非魔法的感知のいずれに対しても高い欺瞞効果を発揮できる。
何らかの攻撃に転じた瞬間、この隠蔽は解除される。そのため一撃必殺を狙うのが彼女の基本スタイルとなる。
特性の偏った獣性魔術以外の魔術は、ほとんど心得がない。
ただし暗殺者としての仕事と情報収集の過程で、他の系統の魔術についても広い知見を所持するようになった。
自分で他の魔術を実行することはできないが、ある程度の傾向と対策を考えることができる。
【概要】
知名度の割に使い手の少ない獣性魔術、その使い手の一族、の分家に属する少女。
魔女狩りを逃れて欧州から北米に逃れた魔術師の一族は、基盤となる土地を離れたために衰退の危機に瀕した。
そこで出会ったのが、こちらも衰退の途上にあった、狼を祖霊(トーテム)とする現地人の一族。
紆余曲折の末に統合に活路を見出した両者は、狼に身を転じる獣性魔術を極めた一族として生まれ変わった。
アメリカでは珍しい魔術師の一族として、広く様々な魔術師の家々との交流を持っている。
分家の身に生まれた彼女は、分家にしては高い能力を持って生まれたものの、偏った才能の持ち主だった。
2つの得意分野については十分に一流クラスながら、一族の強みとする近接戦闘能力をほぼ持たない歪な狼。
『牙なき狼』と呼ばれた彼女は、やがて銃器の扱い等を身に着けて、本家のために汚れ仕事をするようになる。
一言で言えば、彼女は対・魔術師専門の暗殺者となった。
標的を待って何時間でも何十時間でも伏せ続けられる彼女は、優秀な暗殺者となり。
やがて本家の命令で、本家の付き合いのある他の魔術師からも依頼を受けるようになった。
そして彼女は、新たなる標的を追ってベルリンを訪れたところで――聖杯戦争に巻き込まれた。
計算してのことではなかったが、銃弾を媒体に召喚されたサーヴァントと共に任務を遂行するつもりである。
【容姿】
黒髪のベリーショートの少女。
ネイティブアメリカンと白人の血の混じった一族で、混血により一見しただけでは出自が分かりにくい容姿。
アジア系に間違えられることも多い。
小柄で年齢よりも若く見られることも多く、下手すると性別すらも間違えられる。
喜怒哀楽や表情に乏しい少女で、淡々と忠実に本家のために任務を果たす。
普段はジーンズにTシャツというラフな恰好を好むが、目的に合わせて適切な服に着替えることを厭わない
(ホテルの屋上から狙撃するためにホテル従業員の服を着てホテルに潜入する、など)。
何にせよ狙撃銃は大きな荷物となり、やや場違いな感もあるゴルフバッグを携帯していることが多い。
また感覚強化時に金色に輝く瞳を隠すために、大きめの無骨なサングラスを用意している
(強化中はサングラス越しでも視覚への影響はほとんど受けない)。
武器は狙撃銃を好んで使うが、その場に応じて必要なものを調達する主義でもある。
今回、闇の銃器店とのコネクションを得て、活動資金も十分にあることから、自由に選択できる状況にある。
(今回ドグラノフ狙撃銃を使っていましたが、実際にどんな銃を手にするかは後続の書き手にお任せします)
【性格】
魔術師の本家に従順な従者。
暗殺者という汚れ仕事に対しても疑念を一切持たず、本家の命じるままに動く。
感情の起伏が乏しく、表情はほとんど変化せず、人を殺しても動揺はない。
かといって過剰に人見知りなどをするわけでもなく、情報収集などもそつなくこなす。
必要とあらば、正体を偽っての潜入などもやってのける。
本家からは『牙なき狼』と呼ばれており、彼女自身、密かに強い劣等感を抱えている。
その劣等感は銃器などの扱いの習熟の原動力となり、彼女の歪んだプライドともなっている。
なお基本の一人称は『ボク』で男口調だが、TPOに合わせて言葉遣いを変える柔軟性も持ち合わせている。
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【目的】
いつも通り、標的を殺し、帰還する。
(標的となる魔術師は今回の聖杯戦争の選出マスターの1人です。具体的には後続の書き手にお任せします)
聖杯にかける願いは、考えたこともない。バルバラの誘いに付き合ってもいい?
【クラス】アーチャー
【真名】バルバラ
【性別】女性
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力:E 耐久:A+ 敏捷:D 魔力:B 幸運:C 宝具:A+
【クラススキル】
対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならばマスターを失っても一日間現界可能。
また彼女が後述の宝具から取り出した銃弾類も、魔力供給なしに長時間現界し続けることができる。
【保有スキル】
信仰の加護:B
一つの宗教に殉じた者のみが持つスキル。
加護とはいっても最高存在からの恩恵ではなく、自己の信心から生まれる精神・肉体の絶対性。
事実上の弱体耐性と防御力の向上効果。彼女の類まれなる打たれ強さを支える要素の1つ。
聖人:A+
聖人として認定された者であることを表す。
複数の選択肢から召喚時に1つを選ぶ能力だが、聖バルバラの場合は自動的に『HP自動回復』が選択される。
その回復力は再生能力を持つサーヴァントの中でも相当な高レベル。
事実上、細かい傷の積み重ねではどうあっても聖バルバラを倒すことはできず、一撃必殺の威力が必須となる。
【宝具】
『この世全ての弾薬庫(サンタ・バルバラ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
聖バルバラの名そのものを冠する宝具。
真名を唱えることで彼女の背後に彼女を象徴する『塔』あるいはその一部(扉)が出現する。
『塔』の扉の向こうは概念的な弾薬庫となっており、かつて実在したありとあらゆる銃弾・爆発物を取り出せる。
命じれば必要なモノが必要な分だけ、勝手に飛び出して来て必要な所に着地する。
その数には限りが無い上、取り出されたモノは神秘の力を帯び、対サーヴァント戦闘でも十分な殺傷力を持つ。
この弾薬庫そのものと同じCランクの宝具として扱う。
サーヴァントとしての制限上、取り出せるものは個人が携行可能な火器のものに限定。
さらに彼女が守護するのは『弾薬庫』であって『武器庫』ではないことから、銃などの発射装置は対象外である。
(出した弾薬を使いたければ、実際に規格が合って撃てる銃を用意しなければならない)
それでも、あらゆる銃弾を無尽蔵に取り出せる上に神秘を帯びさせる破格の宝具である。
なお、彼女の弾薬庫には手榴弾の類も入っている(発射装置を要するRPGなどはそのままでは使えないが)。
弾薬庫から呼び出す際、ついでにピンを抜いて転がすくらいの操作は可能である。
彼女自身がアーチャーとして前線に立つ場合、むしろこちらが主力の武器となるだろう。
『白の薄布(スノー・ドレス)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人(自身)
拷問され牢にあった聖バルバラの裸身を覆ったという、神から与えられた純白の薄布。
雪のことと解釈されることもある。
彼女は常に白い衣をまとっており、これは様々なものに対する守護の力を備えている。
毒・病・呪い・火炎や炎熱・即死をもたらす特殊効果、に対する抵抗判定にボーナスを得て、ダメージを軽減する。
なお余談だが、サーヴァントとしての彼女は、逆説的にこれ以外の衣類を一切身に着けることができない。
薄くて白い服、という範疇であれば形状の変更も自由に可能。
『応罰の天雷(ファーザーパニッシャー)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
聖バルバラの伝説の最期を飾る天からの雷。
サーヴァントとして聖杯戦争を勝ち抜く上では全く意味のない報復の一撃。
バルバラの霊基崩壊(つまり死)をトリガーに自動発動する超威力の電撃攻撃。
バルバラに死に至る傷を負わせた者に対して発動し、それがどこに居ようとも回避不能な電撃が降り注ぐ。
純粋に耐える他に術はなく、並大抵の英霊なら対策も耐性もなしに受ければまず消滅するほどの威力。
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【概要】
主に正教会(オーソドックス)系のキリスト教で信仰されている聖人の1人。
元はキリスト教が禁教とされていた3世紀のニコメディア、裕福な家庭に生まれた美少女。
求婚者から守ろうとした少女の父は、彼女のために塔を建て、少女は塔に幽閉されて暮らすことになる。
幽閉生活の中でキリスト教の信仰に目覚めた彼女は、ある時、浴室の増築の際に設計変更を依頼。
出来上がった浴室は3つの窓を持っており、これは三位一体を意味する信仰の表明であった。
娘が禁教に染まったことを知った父は激昂し娘を殺そうとするが、岩が2つに裂けて彼女を運び去る奇跡が起きる。
しかし自由を得たのも束の間、彼女を発見した羊飼いの密告により、彼女は連れ戻され捕らわれる。
邪教信仰の咎で拷問を受けるが、再び奇跡が起きて傷は全て治ってしまうようになり、裸身は白い布に隠された。
とうとう最期は父親が剣で彼女の首を撥ねるが、その父は雷に打たれて死んだという。
聖人に列せられた彼女は、やがて十四救難聖人の1人に数えられるようになる。
発熱と急死を防ぐ聖人であり、また、鉱山などの危険な場所で働く人々の守護聖人とされた。
特に弾薬庫には聖女バルバラの像が置かれるようになり、弾薬庫そのものが『サンタ・バルバラ』と呼ばれるほど。
広く民間の信仰を集めたが、カトリック教会では実在が確認できないとして、後に聖人の列から外されている。
サーヴァントとしては、アーチャー、キャスター、ルーラーの各適性を持っている。
アーチャーとして召喚された場合、弾薬庫の守護者としての性質が前面に出されるが、極めて能力バランスが悪い。
一応はアーチャーでありながら、彼女単独ではほとんど攻撃力を持たない。
弾薬庫から直出しの手榴弾を転がすのが精一杯。
ただしマスターが銃を扱えるのであれば事情が全く変わってくる。
その場合、「マスターを戦わせるサーヴァント」としては極めて強力な攻撃力の付与を実現する。
……といっても、実質攻撃力一辺倒であり、これまた使い勝手の限られる強化となっている。
もう一つの彼女の強みは、極端な打たれ強さと再生能力、さらに即死耐性である。
いかなる傷を与えても治ったとの伝承通り、高い再生能力を持つ。
搦め手で倒そうにも、『信仰の加護』と『白の薄布』の二重の防護に阻まれる。
特に因果を逆転させて死をもたらす、などといった本来抵抗困難な系統の攻撃に対しては強い耐性を持つ。
(なんといっても、彼女は『急死』を防ぐ守護聖人なのだ!)
彼女を倒そうと思ったら、通常攻撃で、なおかつ致命傷(クリティカル)という攻撃を放つ必要がある……
かつて彼女の首を撥ねた父のように。
……ただ、ここまでひたすら耐久性を上げて、では何をするのかと言われると…………やる仕事がほぼ無い。
身を挺してマスターを庇う盾となるには便利な能力だが、それは多分アーチャーの仕事ではない。
なお嫌がらせじみた最後の宝具は、その上でなお自身を打ち倒した相手の道連れを狙えるが……。
何にせよ狙って使うものではないだろう。
一見するとおっとりとしたお姉さんタイプの美少女。長い茶色の髪を持つ。背は低いが胸はデカい。
【性格】
一見するとのんびり屋で呑気で、時に鈍感にも見える少女。
しかし彼女の本質はわがまま。
穏やかな口調と態度のまま、他者を踏みつけてでも構わず我が道を進む性格。世間の常識など知ったことか。
史実でも、身内に邪教の信者が出れば破滅必至な立場にあった父に構うことなく、己の信仰を貫いた。
必要とあらば彼女は、無辜の人々を虐殺してでも微笑を浮かべたまま進み続けるだろう。
そんな彼女の心残りは、生前、せっかく塔から逃げ出したのに大して世間を見て回れなかったこと。
純粋な好奇心から、この世界のあちこちを自分の目で見てみたいと願っている。
聖杯への願いも、座に戻る前に色々見て回りたい、である。
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以上、投下終了です。
繰り返しますが、ペネロピの狙う『標的』の選択は、後続の書き手(もしくは企画主)にお任せします。
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本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
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