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オトギルソウ
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昔々の物語が今も語り継がれるように
私の物語が語り継がれて欲しいのです
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◇
「箱庭療法って知ってるかな」
「えーーーと、アレですよね。アレ、知ってるんですよ、アタシ。詳しいですから。
でも、まぁーーーアタシが知らないって方が都合良いですよね、良いでしょう?
聞いてあげますよ、アタシ。物知りで聞き上手ですから」
「なんだこいつ」
白い、白い部屋の話です。
壁も、床も、天井も白く塗り潰され、彼女たちが一緒に寝ているダブルベッドも、
側の花瓶も、活けられた花も、机も椅子も、何もかも、チョコだってホワイトチョコ。
そんな真っ白い世界に、二人の少女がいました。
「箱庭療法って言うのは簡単に言うと、箱の中に世界を作る行為なんだ。
セラピストが箱とおもちゃを用意して、患者は用意された箱の中におもちゃを心の赴くままに並べていく。
お人形、ぬいぐるみ、ブロックに、ミニカー」
「あと、アタシ、知ってますよ、ゲーム機!ゲーム機をね、入れるんでしょう」
「何を言っているのかわからないな」
「アタシほど詳しくないんですね、可哀想に、悲しいですね」
箱庭療法を隣で横たわる少女に説明しているのは、ハル。
少年と少女の良いところだけを組み合わせたような、きっと神様が彼女の性別を選べないままにこの世に落としてしまった、誰よりも美しい失敗作。
天使のように中性的で、異性愛者が見れば異性に、同性愛者が見れば同性に見えるような少女です。
母親が雪であるかのように、父親が雲であるかのように、その目と唇以外は髪も、肌も、もしかすればその中身だって真っ白な女の子。
そして、先程から知っているような口ぶりをして何一つとして知っていないのがサクラ。
桜の花が色づくように、ほんのりとその白い頬を一生懸命に朱に染めて、誰よりも熱心に、誰よりも多くの言葉を吐く少女です。
その多くの言葉が空白で、何の意味も持ちません。
誰よりも熱心に、虚無を一生懸命に吐き出すのです。
「例えばね」
ハルはベッドから起き上がって、雪の色をした机の上に置いてあった食べかけのホワイトチョコを手に取りました。
「これがボクの世界、ボクの箱庭」
ハルはポオイと、ホワイトチョコをベッドの上に投げ捨てました。
白いベッドの上にはサクラとホワイトチョコだけがありました。
「そして、作った箱庭を医者が評論家ぶって判断するんだ……ねぇ、サクラ。君はボクの世界を見て、どう思う?」
「……可哀想ですね、わかってませんね、つまらない人生ですね、悲しいですね、憐れみます」
サクラは両の腕を大きく広げました。
「ハルが居ない世界はありえません」
「……フフ」
華奢な身体で、今にも壊れてしまいそうな身体で、ハルはサクラに跳びました。
「箱庭療法ごっこはおしまいにしよう」
「いい加減そう言う頃だと、アタシ思ってましたからね。本当に」
二人は抱き合ったまま、言いました。
「そろそろ、時間が来る。ベッドに入って、絵本を読んでもらう時間が」
「そろそろ、時間が来ますね。ベッドに入って、絵本を読む時間が」
そして、抱き合ったまま、二人はゆっくりと目を閉じました。
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◆
一体、それが始まったのかは何時のことだったのかはわからないし、覚えてもいない。
ただ、ある日夢を見た――夢の中で自分の姿は、かつて何度も読んだ御伽噺のマッチ売りの少女であり、
他には桃太郎や、シンデレラ、一寸法師に、人魚姫、とにかく――昔、絵本で読んだ御伽噺の登場キャラクターたちで溢れていた。
そして、声が聞こえた。
殺し合い、最後の一作品になれば――現実の世界でも生きつづけることが出来る。
悪い冗談――いや、悪い夢だとマッチ売りの少女は思った。
しかし、それが悪い夢でも――夢の中で、彼女の身体は自由自在に動き、その目は世界を映し出していた。
だから、マッチ売りの少女は夢の中で他の御伽噺を殺す。
夢でも嘘でも、生きつづけることが出来るというのならば、他の御伽噺を殺す。
それしか、縋るものがない。
夢を見ていないマッチ売りの少女は、ただの――普通以下の少女である。
己の死を待つだけの、既に目が見えない少女である。
夢を見る度に、殺し合いの続きが始まり、
夢を見る度に、残りの御伽噺の数が減っていく。
残りは十作品、マッチ売りの少女も――何人も御伽噺を殺してきた。
それしか、縋るものがない。嘘だとしても、ただの夢だったとしても、
それに、全部が全部偽りであったとしても――自分以下の人間を作ることは気持ちが良い。
だから、マッチ売りの少女は人を殺す。
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◇◆
夢見る少女たちが殺し合うお話です。
ルール
・非リレー作品です、文字が読めないおともだちは保護者の方に読んでもらって下さい。
・現実パートと夢パートがあります、◇が現実で◆が夢です。
・何がなんだかわからないと思いますが、適当に書いていく内にわかると思います(作者が)
・
【現実】
○ハル/○サクラ/????????????????????????????????????????????
?????????????????????????????????????????????????????????????
?????????????????????????????????????????????????????????????
【御伽噺】
○白雪姫/○シンデレラ/○かぐや姫/○赤ずきん/○ヘンゼルとグレーテル
○眠り姫/○マッチ売りの少女/○青い鳥/○人魚姫/○赤い靴
週一ぐらいで投下したいです
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月光条例っぽい
期待
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きたい
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◇
「なんで、人を殺したん?」
極普通の女子高生であるザクロには、人殺しの意図がわからない。
故に、本当にただの好奇心で――彼女は連続殺人鬼の住居を突き止め、そして尋ねた。
この質問をするために。
「白いワンピースじゃなくて、本当は赤いワンピースが欲しかったのです」
そう言って、シズカはくるりと回った。
ふわりとスカートが揺れる。
茶褐色のワンピース、染めきれなかった白が斑に存在する歪な服をシズカは着ていた。
剥き出しの内蔵を纏っている様な、あるいは人間に成り損ねた人形のような有様ではあったが、
彼女はただ、静かに微笑んでいる。
美しく――整った顔、整いすぎた顔。
人は恐怖も度が過ぎると、もはや笑うしかないのだという。
では、美が度を過ぎるとどうなる。
彼女の美しく微笑む顔を見て、微笑みかけることができる人間はいない。
幽霊は理性で解釈することができる。だが、実際に存在する圧倒的な美に対し、人は如何にすればいい。
人間の有様ではない美を見て――人はただ、恐怖を覚えるのだ。
あってはならぬ美しさ、このような人間は存在してはならない。
だが、どうすることもできない。
その顔に泥でもぶつけてやれば、いや――ナイフで切り裂いてやれば、その美を汚すことが出来るのではないか。
否、誰もそれをすることはできない。
真っ先に、それを行おうとした彼女の母親は――生まれたばかりの赤子のかんばせを見た母親は。
衝動的に、彼女の顔を壊そうとして――振りかざしたナイフを自分の心の臓に突き立てた。
ただ、破壊するには――その美はあまりにも罪深すぎた。
だが、恐怖を取り除くためには――その原因を破壊しなければならない。
だから、彼女の母親は自分の命を破壊した。
「お祖母様は……私の誕生日プレゼントに、白いワンピースを買ってくださったの。
でも、私……白色よりも、赤色のほうが好きでしたわ。だから、ワンピースを赤色に塗ろうと思ったのよ。
だって、私……自分が指を切ったときに、その流れる血が……赤い、赤い、何よりも赤いことを覚えていたから。
けど、指を切ればとても痛いことも、そして私のワンピースを塗るには指を切るぐらいの血では、とても足りないことも。だから……血を貰いました」
「でも」と彼女は、軽く自分の頭を小突いて、続けた。
「血が乾いたら、色が変わるだなんて……私って本当にお馬鹿さん」
なんて愚かなのだろう。
ザクロはそう思わざるを得なかった。
白いワンピースを赤く塗るために、人の血を使うために――人を殺すとは。
きっと彼女は赤い絵の具という存在を知らないのだ。
人を殺す苦労や時間を考えれば、ちょろっとバイトして赤い絵の具を買ったほうが圧倒的に手っ取り早い。
あまりにも愚かなシズカを、ザクロは心の底から侮蔑した。
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◆
夢の世界は、訪れるたびにその姿を変えていた。
あるときはアリスが訪れた不思議の国、またあるときは海の底に沈む竜宮城、またあるときは--本当になんでもない、ただの田舎町。
住民は殺し合いを行う御伽話以外には存在しない。
夢は――殺し合うためだけの世界だった。
眠る時間によって、寝ている時間の長さによって異なるのだろう。
他の御伽話に出会うこともあれば、出会わないこともあった。
出会ったならば、なるべく殺すようにしていた。
シンデレラの姿をした少女は――ある特殊な能力を持っている。
自身の持っている時計が十二時を指すまで――己の身体能力を、それこそ異常というべき状態にまで、強化することが出来る。
紙を千切るように、御伽話を引きちぎり。
ボールを蹴るように、御伽話は吹き飛ばす。
なんて面白いのだろう。
なんて楽しいのだろう。
つまるところ、自分たちは歪んだ御伽話のパロディの役割を持たされているのだ。
ならば、それを最後まで演じてやろう。
いつか他の御伽噺に――自分が持つような能力で殺されたとしても。
「所詮、夢は夢……12時で覚めてしまうのだから」
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