■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
俺得作品でバトル・ロワイアル
-
"未来"を求めて、殺し合え。
まとめ:ttps://www65.atwiki.jp/futurowa/pages/1.html
6/6【ジョジョの奇妙な冒険】◯空条承太郎/◯DIO/◯東方仗助/◯虹村億泰/◯広瀬康一/◯吉良吉影
6/6【ダンガンロンパ3】◯宗方京助/◯逆蔵十三/◯雪染ちさ/◯安藤流流歌/◯十六夜惣之助/◯忌村静子
5/5【Vivid Strike!】◯フーカ・レヴェントン/◯リンネ・ベルリネッタ/◯高町ヴィヴィオ/◯アインハルト・ストラトス/◯ミウラ・リナルディ
5/5【デュラララ!!】◯セルティ・ストゥルルソン/◯岸谷新羅/◯平和島静雄/◯折原臨也/◯粟楠茜
5/5【ドラえもん】◯野比のび太/◯ドラえもん/◯剛田武/◯骨川スネ夫/◯ギガゾンビ
4/4【ONE PIECE】◯モンキー・D・ルフィ/◯ヴィンスモーク・サンジ/◯サカズキ/◯エネル
4/4【鬼滅の刃】◯竈門炭治郎/◯竈門禰豆子/◯我妻善逸/◯累
4/4【魔法少女育成計画シリーズ】◯スノーホワイト/◯ピティ・フレデリカ/◯ポスタリィ/◯レイン・ポゥ
4/4【結城友奈は勇者である】◯結城友奈/◯東郷美森/◯犬吠崎風/◯犬吠埼樹
3/3【戯言シリーズ】◯哀川潤/◯萩原子荻/◯紫木一姫
2/2【DEATH NOTE】◯夜神月/◯L
2/2【アカメが斬る!】◯タツミ/◯エスデス
2/2【バトル・ロワイアル】◯七原秋也/◯桐山和雄
52/52
"
"
-
はじめに
当スレは個人的に好きな版権作品やキャラクターを集めて殺し合いを行わせる非リレーパロロワ企画です。
もしかしたら途中で飽きるかもしれませんが、それでも完結出来るように執筆していこうと思います。
また、モチベーション維持の為に先人様達に倣い「指名制」を採用します。
次に書いて欲しいキャラを一人まで指名していただければ、そのキャラクターを含めた話を次の話として執筆します。
指名は先着順で、また、参加者が一巡するまでの間は出来れば重複指名はご遠慮願います。
あと、たまに感想とか貰えると滅茶苦茶モチベーションが上がりますので、よかったらお願いします
ルール
・10×10エリアの会場を用いて行う殺し合い。
・参加者にはルール説明、名簿、ランダム支給品の入ったデイパック(一部例外アリ)が与えられる。
・首輪はオーソドックスな物。禁止エリアの侵入と過度な衝撃で爆発、参加者を殺害する。
・優勝者には生きて帰る権利と、どんな願いでも叶える"全知全能の力"が与えられる。
・制限時間は48時間。それをオーバーした場合、全ての参加者の首輪が起爆される。
-
城。
城が聳え立っていた。
質の良い石で組み上げられた、選ばれし者だけが踏み入ることを許される王城。
民衆達は真下の広場にかき集められ、玉座の高みから見下ろす王者を見上げることしか出来ない。
中世くらいにまで時代を遡れば日常的に見られただろう光景は、しかし見上げる民衆達の首にすべからく金属製の輪が装着されているという点で余りに異質だった。
更に言うならば、そんな屈辱的な戒めを施された彼らの中に、現状を正しく理解している者などただの一人として居ない。
彼らは、王に支配される民ではない。
それよりも数段下の、ある意味では家畜以下と言っても誤りではないような、人権のない存在である。
言うなれば、競走馬。個人の事情は度外視して、享楽のために集められた賭け馬ども。
首の輪っかは、彼らが王に逆らえる身分ではないのだということを如実に物語っていた。
「――フッフッフ! おれの箱庭にようこそ、モルモット共!!」
城の頂点。
そこから人々を見下ろす形で見るからにそれらしい、富豪めいた出で立ちの男が叫びかけた。
褐色の肌と金髪。
奇抜な形のサングラスに桃色の羽毛がこれでもかと散りばめられたジャケットを纏い、胸元は曝け出すように開いている。
その見てくれも相当に奇っ怪なものであったが、重大なのはそこではない。
「実験動物(モルモット)だと…………?」
彼の手でこの場に集められた者達の間に、少なくないざわめきが起こる。
モルモットと、男は自分達を指してそう言ったのだ。
露骨に不快感を示す者の姿が幾らか視界の端々に写ったが、彼らは意外にも誰一人食ってかかろうとはしない。
彼らは皆、直感している。
今は黙して静観せよと、天啓めいたそれを受け取っている。
「まず自己紹介といこう。おれの名は"ドンキホーテ・ドフラミンゴ"!
お前らをわざわざ呼びつけたのは他でもねェ! お前らには、ちょっとした"実験"に付き合って貰おうと思っている」
実験。
その不穏な響きに群衆はより大きくざわめき立つが、そんな中痺れを切らしたように立ち上がり、男……ドフラミンゴへと吠える一人の青年が存在した。
麦わら帽子を被った、どこか野性的な雰囲気を持った青年だった。
「ミンゴ〜ッ! お前、今度は何企んでやがんだ〜〜ッ!!」
「おっと、"麦わら"か……フッフッ、安心しろ。何もそうでけェことやろうってわけじゃねェよ。まあ、ちょっとばかり気の利いたサプライズは用意させて貰ったがな」
不気味な響きを孕んだその言葉に、怒気を全身で表現する勢いだった麦わらの青年も押し黙ってしまう。
それを満足気に見届けると、ドフラミンゴは続きを語り出した。
-
「実験といっても小難しいモンじゃねェ。お前らにやってもらうことはただ一つ!」
強調するように語気を強め、人差し指を突き立てるドフラミンゴ。
一瞬の静寂。誰かの息を呑む音が聞こえた。
一頻り勿体つけた後、彼は等しく、この場に居合わせた全ての者の敵となるに相応しい一言を事も無げにに言ってのけた。
「――――殺し合いだ! お前らには最後の一人になるまで、おれの用意した会場で殺し合いをして貰う………!!」
目が自然に見開かれる。
馬鹿な、と声が漏れた。
冗談と呼ぶには、少々度を逸しすぎている。
殺し合い。
あろうことかこのドンキホーテ・ドフラミンゴという男は、動物にやらせても悪趣味なことこの上ない趣向を、人間に行わせようとしているのだ。
「そんなこの世の終わりみてェなツラをするんじゃねェよ。言うまでもねェが、実験に参加することでお前らはあまりにもでかい"死"のリスクを負うことになる。
それはおれも承知だ……だがおれだって鬼じゃねェ。最後まで見事生き抜いてみせた奴には、相応の賞品を用意してある」
つくづく救いようのない男だと、誰かが小さく舌打ちをした。
死のリスクと釣り合うほど大きな賞品とやらが何かは知らないがこの男、それを釣り餌に殺し合いの活性化を促そうという魂胆なのだろう。
大雑把なように見えて狡猾。
その手口は、まさに悪党……外道と呼ぶに相応しい。
「お前ら、どうせ今は皆で同盟でも組んでおれを倒そうとか思ってるだろう!?
だが!! 断言してもいい。
そういう風に考えている連中は、これからおれの言う言葉を聞いた瞬間に確実に数を減らすぜ!?
いいか――おれがお前達にくれてやるものは」
口角が釣り上がる。弧を描くその様は、まるで悪魔か何かのようだった。
「あらゆる願いを叶える力! 全知全能の力だ!
フッフッフッ、どうだ? 嬉しいだろう? 見逃せねェよなァ!? そりゃそうだ、敢えてそういう連中を何人か見繕って集めてある……!
力が欲しけりゃ隣人を殺しな! どうせ生きて帰れるのは一人だけなんだ、誰も責めやしねェ! 自分が可愛いってのは、人として至極当然のことなんだからなァ!!」
全知全能の力などという単語を普段聞いたなら、妄想を拗らせた輩の戯言と誰もが一笑に臥すところだろう。
しかし、この状況は最早"普段"と片付けていいものではない。
加え、ドンキホーテ・ドフラミンゴという男の興奮した口調に嘘偽りの気配は感じられなかった。
彼は本気で言っているのだ。全知全能の座へ至る力を既に掌握していると、そう言っているのだ。
一頻り愉快そうに笑い終えると、ドフラミンゴはふう、と気の抜けた溜息を吐き出す。
「さて、それじゃあルールの説明をしてやる。耳の穴かっぽじってよく聞いとくんだな。聞き逃して困るのはてめェらなんだからよ」
-
さながらエンターテイナーでも気取ったように、ドフラミンゴはおぞましい"実験"の規定について説明を始めた。
腹立たしいが、聞き逃すわけにはいかない。
もっとも、所詮は単純な趣向の催し。
雁字搦めに行動を縛るルールがあるわけではないようで、設定された会場の外へ脱出を図らないこと。
六時間ごとの放送で指定される禁止エリアへ踏み入らないこと。
特筆すべきことは精々その程度と言ってよかった。
とはいえ、悪辣の一言に尽きる正真正銘のデスゲームを嬉々として賞賛する彼の姿は……否応なしに胸糞の悪い気持ちにさせてくれるものであったが。
「ルールの説明は以上! フッフッ……何か質問があれば答えるが、どうだ?」
「――なら一つ、聞かせてもらってもいいかしら?」
その時、にわかに会場がざわめき立った。
これまでの恐怖や怒りが交じり合った混沌としたものではなく、今度の騒ぎは概ね一つの感情のもとに起こっていたと言っていい。
それは驚愕。
絶望感が満ちていたこの場で、間違いなくそれは新たな風として機能した。
「フッフッ。お前か、勇者・三好夏凛」
一歩前へ踏み出、勇者と呼ばれた少女は果敢にドフラミンゴを睨み付ける。
彼女の仲間以外にはこのドフラミンゴしか知る由のないことだったが、夏凛はこの時、既に勇者への変身を完了させていた。
その意味は単純にして明快だ。
この少女は今この場で、ドンキホーテ・ドフラミンゴと事を構える気でいるのだ。
"実験"を主催しているのが彼である以上、元凶を倒せば悲劇は起こらない。
悲惨な流血を未然に防ぐことが出来る――それは紛れもなく勇者の役目。
「そうやって耳触りのいいことだけ言って、それで皆がアンタの思い通りになると思ったら大間違いよ。私達は……少なくともこの私は、アンタになんて絶対に従わない」
「ほう、そいつは困ったな。で? それをわざわざおれに直接宣言して、おめェ一体どうするつもりだァ?」
「決まってるでしょ」
夏凛は、構えを取った。
その姿は凛々しく、顔立ちで言えばまだ幼いにも関わらず、見ている者の心が熱くなるほどの勇猛さに満ち溢れていた。
まさに、悪の魔王に立ち向かう勇者が如き姿、振る舞い。
「――――アンタをこの場でぶっ倒して、さっさと元の世界に帰るのよ!!」
叫び、地面を蹴る。
だが、次の瞬間、夏凛の顔は驚愕に彩られた。
"
"
-
「な……っ!? 体が、動かな……!!」
「フッフッフッ……青いなァ、三好。お前、おれが実験体の反乱を想定もしないでこうやってのこのこ出てきてるとでも思ったのか?」
三好夏凛の体は、びくとも動かない。
勇者の全力で引き千切ろうとすると、逆に肌に亀裂が生まれ、血潮が滲み始めた。
糸か――その事実に夏凛が気付いたところで、しかし何かを変えられるというわけでもない。
勇敢に歩み出た勇者は、哀れ一瞬にして、魔王の張り巡らせた蜘蛛の糸に絡め取られてしまった。
「だが丁度いい。ちょうど、一人見せしめが欲しかったんだ」
その不穏な言葉に、夏凛の、そして彼女の仲間なのだろう少女達の顔色が変わる。
何かを叫んだところで、ドフラミンゴの耳には届かない。
彼は悪魔のように笑いながら指先を動かして夏凛を空中に引きずり上げ、その場所で固定した。
そして――
「お前らの首に巻かれている"首輪"。それを無理に外そうとしたり、おれの定めたルールに叛こうとしたなら……こうなる」
ボンッ。
人の命が消えるにはあまりにも軽すぎる、そんな間の抜けた音と共に、三好夏凛の首が吹き飛び、その頭が宙を舞って、ぼとりと落ちた。
スプリンクラーのように噴き出る血を愉快そうに眺めながら、ドフラミンゴは両手を大きく開く。
「こうやって死にたくなけりゃ、全力で殺し合いなァ! 力が足りなきゃ知恵を絞れ、知恵が足りなきゃ力で蹂躙しろ!!
どの道生き残りの枠は一つしかねェし、お前らが何をしようがそれを知る人間は誰も居なくなるのさ!! 存分に足掻いて、願いを勝ち取ってみろ!! フッフッフッ!!!
――――――"勝者"だけが!! "正義"だ!!!」
そうして、首輪から小さな火花が散り。
一人また一人と、実験体達の意識が暗転し、消えていく。
天夜叉の道楽、"バトル・ロワイアル"――――これより、開幕。
【三好夏凛@結城友奈は勇者である 死亡】
-
OPの投下を終了します。続いて二作ほど投下します
-
首元に静かに手をやり、そこに硬く、冷たい感覚があるのを確かめる。
次に指を首と、そこに巻き付けられた金属製のリングの隙間にそっと差し込んでみる。
……指先をねじ込むくらいは可能だが、逆に言えばそこまでだ。
これを反応させずに外すのは、専門的な技術と器具がなければまず不可能だろう。
美しい銀髪を夜風に靡かせて一人嘆息する、純白のケープを思わせる程きめ細やかな肌を持った美少女。
だが、解る者が見ればまた別の感想を抱くだろう。どちらにせよ、見る者を驚愕させるのは変わらない。
彼女は一介の少女としておくにはあまりにも可憐で、――それ以上に強かった。
小難しい理屈の介入してくる余地なく、ただ純粋に強かった。
(……首輪の解除は現状不可能。参加者の人数は五十人と二人。会場の四方は海だし、脱出を図ったとして、あの男がみすみすそれを見逃すとは思えない)
努めて沈着に、少女は自分が置かれている現状を分析する。
冷たさすら感じさせる鉄面皮とは裏腹に、しかし彼女の体は、小さく震え出していた。
少女の名前はリンネ・ベルリネッタ。
DSAA・U15ワールドランク一位の座を恣にする、連戦連勝の天才格闘家である。
その強靭な肉体と有り余る才能で幾多の敵手を打ちのめしてきた彼女は、しかし無感動な戦闘狂では決してなかった。
(……フーちゃん……)
その証拠に幼さを多分に残した顔立ちには不安の色が浮かび、噛み締められた歯は時折カタカタと音を鳴らしている。
怖い。
死という生物共通の"破滅"が隣人として付き纏っている現状で平静を保っていられるほど、リンネは超人ではない。
いや、そもそも――元々、彼女は超人でも傑物でもないのだ。
それどころか、誰よりも弱い心の持ち主なのだった。
(私、どうしたら……)
名簿に名前のあった、決別した筈の幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。
それを必死に振り払おうとしながら、リンネは無人の一室の隅で膝を抱え、顔を伏せた。
そんな自分の姿を客観的に見たリンネの頭に、濁流のように流れ込んでくる記憶がある。
まだ弱く、幼く、情けない"リンネ・ベルリネッタ"だった頃の記憶。
虐げられるがままでやり返すこともせず、弱者の立場に甘んじ続けていた自分。
自分が弱かったというそれだけの理由で、大事な人の最期の瞬間に立ち会えなかった忌まわしい記憶。
今のリンネを形作るに至った、始まりの記憶が蘇ってくる。
(……違う)
もう、あの頃のリンネはどこにもいない。
弱いせいで何かを失う、そんな情けない自分は捨て去ったのだ。
顔を上げ、唇を噛み締めて歯の鳴る音を封殺し、拳を強く握り締めて強引にリング上の自分を呼び起こす。
ワールドランク一位の、"リンネ・ベルリネッタ"を。苦い記憶と決別した強いリンネこそが、今の自分なのだから。
-
(ジルコーチは居ない。居るのはヴィヴィオ選手、アインハルト選手、ミウラ選手、……そして、フーちゃん)
何故ナカジマジムの選手ばかりがこんなに参加させられているのかは分からない。
ただ、参加者の中で面識があるのは彼女達だけだ。
自分に殺し合いをする気がない以上、彼女達とはいずれ合流する必要があるだろう。リンネはそう考えていた。
……ただし"フーちゃん"ことフーカ・レヴェントンとだけは、あまり顔を合わせたくないのだったが。
リンネはどちらかと言えば無情な戦いをするファイターだ。
しかしそれは、あくまでもリング上のみの話。
生きねばならないからと言って、無情に他人を殺せるほど人間味を捨ててはいない。
故に目指すのは首輪を解除しての脱出、ないしは主催打倒。
その為にもまず、前提条件である首輪の解除をどうにかして済ませてしまう必要がある。
今挙げた知り合いの中に、そんな高度な技術を持っていそうな人間は一人も居ない。
最悪、会場に一人も解除の技術を持った人物が居ないことすら考えられる。
尤も、それは最悪の未来だ。
そうなってしまえば、いよいよ打つ手はなくなってしまう。
(……とにかく。まずは誰か、他の参加者と合流する必要が――)
そこまでリンネが考えた、まさにその時の出来事だった。
リンネが居るのは市街地エリアの一角、やや大きめの民家の一室である。
進んで此処に入ったわけではなく、目を覚ました時からこの部屋に居た。
元の住人が存在するのかどうかも分からない家の中に、扉の開く音が響き渡ったのだ。
「……ッ!」
思わずリンネは、扉の方を向く。
耳を澄ませば彼女の鋭敏な聴力は、家の中を歩き回る足音を聞き取った。
やや暫く逡巡した後、リンネは努めて静かにその場から立ち上がり――扉を開いて、廊下に顔を出す。
誰も居ないことを確認すると細心の注意を払いながら、家の中へ踏み入ってきた何者かを発見すべく、足を進めた。
もしも殺し合いに乗っていない人物ならば、それでいい。
だがもしも殺し合いに乗っていたのなら、無力化する。
リング外での暴力は決して褒められたことではないが、状況が状況だ。
悪戯に邪な考えを持つ人物が暴れ回ることを阻止する為にも、危険因子は潰しておく必要がある。
覚悟を決めたリンネと足音の主が遭遇するのに、然程の時間は要さなかった。
廊下の向こうから歩いてくるその人物を、リンネもその向こうから視認することが出来た。
「……」
リンネは、思わず自分の目を擦った。
何しろ状況が状況だ。緊張の余り私の目はおかしくなってしまったみたいだと、本気でそう思った。
「……は?」
しかし、此方に手を振りながら駆け寄ってくる"それ"の姿は変わらない。
"それ"は二本の足で歩き、人間のように二本の腕を持っていた。
だが腕の先端、人間でいう手首にあたる部分は白いゴムまりだ。
顔も鼻の部分には赤いトマトのような球状の物体が付いていて、動物のようなひげが左右対称に六本生えている。
おまけに肌の色は青い。そもそもあれを肌と呼んでいいのかすら微妙なものがあった。
頭と胴の継ぎ目の部分には、リンネの付けているものと同じ首輪が填められている辺り……参加者ではあるのだろうが。
「よかった、こんなに早く他の参加者に会えるなんて」
呆気に取られるリンネの目の前まで駆けてきた"それ"は、聞いているとどこか安心する優しい声でそう言った。
殺し合いに乗っていないのだろうかだとか、そういう諸々を考える前に、少女の口から言葉が漏れた。
「……青い、タヌキ?」
「……」
すると。目の前の仮称・青ダヌキの顔が見る見る真っ赤になっていった。
「――ぼ、ぼくはタヌキじゃな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!!!!」
言うまでもなく、それは二十二世紀の子守用猫型ロボット……ドラえもんにとって、禁句の一言だった。
-
◇◇◇
「はあ、猫型ロボット……」
最早親の顔より見たと言ってもいいテンプレートなやり取りを終えて、リンネとドラえもんは情報交換を始めていた。
リンネの住まうミッドチルダでも、こうやって自我を持った上で自立駆動するロボットくらい軽く開発できるだろう。
だからロボットという話には然程驚かなかったが、流石に猫を模したロボットだということには気付けなかった。
"猫にしては耳が……"と小さくリンネが呟くと、彼は遠い目をして"色々ありまして……"と話を濁した。
子守用ロボットにも、触れられたくない過去の一つ二つはあるらしい。
「ま、まあそれはともかく。リンネちゃんは、この人達を探したいってことでいいんだよね?」
露骨に話を反らして、ドラえもんが名簿のヴィヴィオ、アインハルト、ミウラの部分をゴムまりの手でなぞった。
「この人達、リンネちゃんの友達?」
「友達……というわけではありません。しかし、頼りになるのは確かです」
にべもなく、リンネは答えた。
嘘は言っていない。高町ヴィヴィオを始めとした三人は確かに見知った相手だが、友達と呼べる間柄では絶対にない。
超えるべき障害物と、いつか辿り着く高み。
リンネと彼女達の関係は、それ以上でも以下でもない。
「そ、そっか……ぼくの方はこの三人かな。
野比のび太くん、ジャイアンこと剛田武、骨川スネ夫、しずかちゃんはいなくて――」
少しやりにくそうな様子を滲ませながら、自分の友人の紹介に入るドラえもん。
のび太、ジャイアン、スネ夫と名簿を読み上げていったところで、名簿をなぞる手が突然止まった。
「どうかしましたか?」
「そんな、バカな……ありえない……!」
まるで幽霊でも見たような顔で、ドラえもんは"骨川スネ夫"の右隣に記された名前を凝視する。
ありえない、そこにあってはならない名前だった。
過去に恐るべき野望を企て、今は牢獄の奥底で厳重に囚われている筈の"時空犯罪者"。
「ギガゾンビ……!!」
まるで小学生が適当に考えたみたいな名前だと、リンネは思った。
しかしドラえもんの浮かべる戦慄の表情が、件の人物が只ならぬ危険人物であると理解させる。
「その方は……危険な方なんですね」
無言で、ドラえもんは頷く。
愛嬌のある見た目にはとても不似合いな、重々しい動作だった。
「詳しく話せば長くなるけど、過去の世界を拠点にして自分の支配体制を敷こうとした大犯罪者だよ。
ツチダマというロボット達を部下に持ち、ギガゾンビ自身も二十三世紀の科学技術を使いこなす強敵だった……」
二十三世紀。ドラえもんが製造された時代が二十二世紀であることは、リンネも既に聞いていた。
となるとギガゾンビの持つ技術はざっと見積もって、その百年後の技術。
人間と何ら変わらないロボットを製造できるくらいに発達した技術が、そこから更に百年進むというのである。
確かに、そう考えると恐ろしい。
優先して無力化するべき参加者であることは疑うまでもないだろう。
「……相手が誰であろうと、やることは変わりません」
リンネは静かに、己の拳を握り締める。
天賦の才能と弛まぬ努力で身に着けた、少女らしからぬ鋼の肉体。
リンネ・ベルリネッタという無力な子供が、確かな強さを手にしたことの証左だ。
-
「敵なら、倒す。そして、越える。それだけです」
ドラえもんは、驚いたような顔で息を呑んだ。
リンネの年齢を実際に聞いたわけではないが、精々まだ中学生くらいの齢だろう。
まだまだ子供と言っていい、人生経験も浅い筈の彼女。
しかし今のリンネの言葉には、物凄い気迫があった。
この会場にいるまだ見ぬ敵を、全員倒してやる。
そんな強い意志を、ドラえもんは確かに感じ取った。
「……きみは……」
けれどドラえもんは、彼女を怖いとは思わなかった。
強さに溢れる彼女のことを、頼もしいとも思わなかった。
腐っても子守用ロボットの端くれだからなのか、彼はリンネの瞳の奥にある、弱々しいものの存在に気付いたのだ。
「きみは、怖いのかい?」
「ッ」
目の前のロボットから掛けられた予想外の言葉に、リンネはあからさまな動揺を見せる。
だが、それも一瞬。すぐにリンネの顔はいつもの鉄面皮に戻り、愛想っ気のない言葉が口から出た。
「そんな事はありません。私は、恐れてなんかいない」
本当に、とドラえもんは言わなかった。
そう言ったならきっと彼女を怒らせてしまうと悟ったからだ。
リンネが強い子だということは、ドラえもんにも分かる。
強くなければ、あんな気迫は出せない。あんな言葉は出て来ない。
けれど――きっとそれは、本当のリンネではない。ドラえもんはそう思った。
“怖いなんて感情は、弱さだ。私はついさっき、それと直面した上で打ち勝った。
恐れてなんかない……たとえどんな状況だろうと、私のすべきこと、目指すものは変わらない”
"強さ"に囚われた少女と、"弱さ"の隣にずっとあり続けたロボット。
絶対に有り得なかった筈の邂逅をもって、彼女と彼のバトル・ロワイアルは始まった。
【一日目 深夜】
【G-2 市街地(民家内)】
【リンネ・ベルリネッタ@Vivid Strike!】
[状態]健康
[装備]スクーデリア@Vivid Strike!
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:生き残る。殺し合いをするつもりはない。
0.私は恐れてなんか、ない
1.殺し合いに乗った参加者は倒す。
2.とりあえずドラえもんさんと行動。場合によっては知り合いとの合流も視野。
3.フーちゃんには……会いたくない。
[備考]
※ウィンターカップ開幕直前からの参戦です。
※ドラえもんの知り合い(野比のび太、剛田武、骨川スネ夫、ギガゾンビ)のことを知りました。
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]健康
[装備]四次元ポケット@ドラえもん
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:殺し合いを止めて、みんなで元の世界に帰る。
0.リンネちゃんと行動。少し心配。
1.のび太くん達、ヴィヴィオちゃん達との合流を目指す。
2.ギガゾンビに警戒。
[備考]
※参戦時期の概念はないようなものですが、少なくとも『映画ドラえもん のび太の新日本誕生』を経験しています。
※デイパックの代わりに四次元ポケット(支給品を除いて中身は空)が与えられています。
※リンネの知り合い(高町ヴィヴィオ、アインハルト・ストラトス、ミウラ・リナルディ)のことを知りました。
フーカについては意図的にリンネが言及していないため、知りません。
-
少女の顔は――絶望と焦燥に染め上げられていた。
「そんな……夏凛、が……」
このまだ幼さを多分に残した娘が、世界を救うために異形の存在と戦う勇者であると言ったなら、一体どれだけの人間がそれを信じるだろうか。
いや、誰も信じないに違いない。
何故なら今の彼女に、勇者らしい部分はどこにもなかったから。
服が汚れることも構わず地べたにへたり込み、顔を真っ青にして歯をガチガチ鳴らしている。
その姿はどこからどう見ても、殺し合いに恐怖する哀れな少女でしかなかった。
いや――彼女は"恐怖"はしていない。
彼女はただ深く、本当に深く"絶望"しているのだ。
「ッ……う、おええぇ………ッ」
瞼を閉じれば、つい数秒前のことのようにその光景が蘇ってくる。
自分達に殺し合いをしろと言い放った浅黒い肌の男……ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
そのドフラミンゴに対し勇者らしい勇敢さで毅然と立ち向かった少女の名前は、三好夏凛といった。
勇者として申し分のない戦闘能力と気高い矜持を持っていた夏凛。
命を弄ぶ実験に否と声を張り上げた彼女の末路は、皆の知る通りである。
可憐な顔面が、首ごと宙を舞った。
千切れた断面から噴水のように赤い水が噴き出る様は、まるで趣味の悪い現代アートのようだった。
ぐしゃりと、水を吸った砂の詰まった袋を地面に叩き付けたような鈍い音と共に……地面へ打ち付けられた夏凛の首。
その光景を、少女は間近で見てしまった。
少女だけではない。彼女の妹も、友人二人も……夏凛と一緒に戦ってきた"勇者部"の全員が、それを見させられた。
口から吐瀉物を溢れさせながら、勇者にあるまじき絶望の表情を晒す少女は、"勇者部"の部長を務める身だ。
犬吠埼風。
その首にはやはり例外なく友人の命を奪ったのと同じ首輪が取り付けられており、支給品の収まったデイパックが傍らには無造作に置かれている。
「……っ、ごめん……ごめん、夏凛……ッ!!」
風は、謝罪の言葉を溢さずにはいられなかった。
予兆はあったのだ。
夏凛がドフラミンゴに啖呵を切り、蛮勇に走ろうとする予兆は。
ドフラミンゴの機嫌良さげな語りを聞いている最中から夏凛は苛立ちを隠し切れない様子だったし、そもそも彼女の性格を思えば、十分に予期の出来る展開だった。
にも関わらず……風は夏凛を止められなかった。
その結果が、これだ。
素直じゃない所はあっても、いつも勇敢でまっすぐだった勇者部の仲間は、死んだ。
勇者らしく何かを守って逝ったのならば、まだ救いようがある。
夏凛の死にはそれさえなかった。
抵抗は一蹴され、見せしめのように残虐に、あっさりと殺された。
彼女の人となりや努力をよく知っているからこそ、そんな友人の末路が痛かった。
どれほど無念だったろうと考えるだけで、胸が締め付けられる錯覚さえ覚える。
故にこそ仲間を惨殺したドフラミンゴに怒りを燃やし、風は悪魔の実験を打ち破るべく奮起する。
誰もがそう思うことだろう。
しかし今の風には、そんな勇者らしい選択を選び取る余裕すらありはしなかった。
何故か。それを解説するのなら、タイミングが悪かったから、としか言いようがない。
世界を守るために人類の敵、バーテックスと戦う存在――それが風や夏凛を始めとした勇者達である。
だが、その裏には絶望的な真実があった。勇者の切り札、『満開』に伴う代償。永久的な身体機能の喪失。
死ぬことも出来ず、勇者は生かされ続ける。
そしてそのシステムに巻き込まれ……風の妹は、夢を叶える声を失った。
自分達を騙していた、大赦。
その怒りから風は暴走を起こし、短気に走り……本来なら仲間達に止められて思い止まる所を、ドフラミンゴに拐われたのだ。
-
最初に風を阻む筈の夏凛は惨殺された。
加えて会場には、友奈、東郷、件の妹・犬吠埼樹までもが招かれている。
この状況で冷静に勇者らしい行動が出来るほど、犬吠埼風は怪物じみたメンタリティの持ち主ではなかった。
そう、彼女達は決して英雄などではない。
ただ力を与えられ、過酷な運命を背負わされただけの、中学生なのだ。
(……私が勇者部なんて作らなければ、樹や皆があんな目に遭うことはなかった)
思考が奇妙に冷えていく。
いや、冷えているのではない。
あまりにも過熱しているものだから、一周回って熱を感じなくなっているのだ。
風は今、冷静ではなかった。
皮肉にもそれは、ドフラミンゴに挑んだ時の夏凛と同じように。
(……私が勇者部なんて作らなければ、樹や皆がこんな実験に巻き込まれることも、きっとなかった)
無言の内に勇者への変身を完了させ、風は相棒の大剣をぐっと握り締める。
バーテックスを倒す為に戦っていた時でもこれほど強く握ったことはないというくらいに、強く、強く。
(――夏凛が死ぬことだってなかったんだ。だから、これは私の責任だ)
とはいえ風は、ドフラミンゴの甘言を真っ向から信じ込むほど馬鹿ではない。
あんな胡散臭い男の言い分など毛ほども信用していないから、夏凛を生き返らせるだとか、願いを叶える力を使って全てをなかったことに、とかは考えなかった。
風が考えたのは、仲間を守ること。
こんな下らない実験の為に命を落とす勇者部員がもう一人だって生まれないように、戦うことだった。
ドフラミンゴと、ではない。他の参加者と、だ。
――犬吠埼風は覚悟を決める。人を殺す覚悟をだ。
勇者部の仲間以外の参加者を積極的に排除して、危険分子を減らすことで皆を守る。
当然それは、勇者を名乗る人間のやることではない。
風のやろうとしていることはただの人殺しで、仲間を守る為、などというのは所詮言い訳だ。
理解した上で、それでも、と風は剣を握る。
彼女はもう、一人の仲間も失いたくはなかった。
その為なら誰かを殺したって良いと思うくらいには、風は追い詰められていた。
「……幻滅されちゃうだろうな」
そう声に出して、しかし違うとすぐに否定する。
勇者部の皆が仲間思いで優しい子達ばかりなのは、風もよく知っていることだ。
自分が道を踏み外したと知れば、彼女達はきっと自分を止めに走ってくるだろう。
顔面を殴られるくらいは覚悟しておいた方がいいだろうなと、風は苦笑した。
……仲間は守る。けれど会いたくはない。
そんな矛盾を抱えながら、風は足音を殺して夜闇に溶け込む。
皆を生かすという理想さえ叶えられたなら、この会場を出られずに果ててしまったって構わない――
風は、そんなことすら思っていた。
自暴自棄と言われても否定できない精神状態で、闇夜に忍ぶは堕ちた勇者。
-
そんな彼女の視界に収まった最初の獲物は、奇しくも風達"勇者"のように、どこか現実感のない装いの持ち主だった。
桜色と呼べるだろう薄い桃色のショートヘアに、花飾りがあしらわれた黒いヘアバンド。
服は学生服に近いものだが、所々の花飾りが現実感を失わせている。
子供向けの魔法少女アニメに出てきそうな子だと、風は場違いにもそんな感想を抱いた。
……こんな子を、今から殺すのか。
覚悟を決めた筈の風の心に、一抹の翳りが差す。
(――迷うな、犬吠埼風! ……お前がやらなきゃ、また仲間が死ぬかもしれないんだぞ……!!)
弱気に染まりかけた自分を必死に鼓舞して、風は音を極力漏らさないように三度深呼吸し、よし、と意味もなく頷いた。
人を殺す為に刃を振るったことなどある訳もない。
ただ、当たり前だが人はバーテックスに比べて脆弱だ。
バーテックスのような怪物とすら勝負が出来る勇者の力なら、特に苦もなく、……苦しみを与えることもなく殺せる筈。
外道を往くことを決めた風だが、彼女も出来ることなら相手を苦しませ、甚振って殺すような真似はしたくない。
一撃で、何が起きたのかすら分からないくらいの一瞬で、命を奪う。
せめてもの良心として、風は殺人の際にそう心掛けていくつもりでいた。
(……首を刎ねよう。それなら多分、一撃で終わらせてやれる)
数時間前なら考えもしなかったような思考。
戻れない所まで来てしまったなと自罰しながら風は大剣を携え――無防備な少女へと突撃する。
掛け声すらあげずに距離を詰め、振り向きかけた首筋に刃を一閃。
襲撃する前に何度も頭の中で繰り返した流れだ。
……しかし結論から言えば、風の剣が何かを捉えることはなかった。
すかっ、という空気を切る手応え。
"んな――"と、予想外の事態に風は思わず声を漏らしてしまう。
風が獲物に定めた少女は、彼女が勇者として培った経験と地力を総動員して行った奇襲攻撃を、何ら動揺した様子もなく、ステップ一つで回避してのけたのだ。
その淀みない動きは、まるで風が仕掛けてくることをあらかじめ"知っていた"かのようでさえあった。
空振った大剣を急いで引き戻し、少女の反撃に備えて構える。
だがそれも無駄に終わったことを、脚部に走る鈍い痛みと、襲ってくる浮遊感が知らせていた。
視界が大きく揺らぎ、気付いた時には、風は星々の犇めく夜空を見上げていた。
動転して一も二もなく防御に走った風の足を少女は己の細足で払い、一瞬で風のバランスを崩壊させてみせた。
そうなれば後は倒れるだけ。
仰向けに倒れた風は、何が何だか分からないといった顔で空を見上げるしかない。
精霊の防御が完全に働いていないことにすら、意識を向ける余裕がなかった。
そんな彼女の視界に、初めて標的の少女の顔が写った。
――思わず息を呑むほどに可愛らしい人相。
だからこそ、その両目が明らかに浮いていた。
彼女の瞳に宿るのは、そのファンシーとも言える装いにまるで似合わない冷たい色彩だった。
全てを見透かし、何かを悟ったような瞳。
風の背筋に冷たいものが走ったのは、当然のことと言えるだろう。
-
「あなたは――」
「う、おああああああああッ!!!」
少女が何か喋りかけたのをかき消すように咆哮して、風は大剣片手に起き上がらんとする。
されどその動作は、少女が一歩踏み込み、風の胸板を蹴りつけたことで中断された。
その華奢な体からどうやったらこんな力が出るのかと言うほどの衝撃が、風を無理矢理地面へ押し倒す。
それからも風は抵抗を試みたが、全て少女の的確な動作を前に阻止された。
(ッ……どうして!? 何で、こいつ、こんなに……!!)
少女は汗の一滴も流さず、風の抵抗を潰し続けている。
彼女は何か言っているようだったが、ヒートアップしている風の耳には入らない。
(こんなに……これじゃまるで、私の考えを読んでるみたいじゃないか……!!)
それでも風は諦めようとしない。
彼我の実力差を痛感させられても尚、服を砂塗れにしても尚。
どうにかしてこの状況を覆し、眼の前の少女を倒そうと躍起になっている。
……彼女の言葉には一切耳を傾けずに。
そんな様子に、暫く何か語りかけていた少女も小さく嘆息する。
そして少女はその場に屈み込むと、風の腹に足を乗せて動きを縫い止め、顔面を鷲掴みにした。
「ぐ……こ、の……離――っ」
「少し、頭を冷やして」
掴んだ頭を少しだけ前方に引いて、それから地面に骨が砕けない程度の威力で打ち付ける。
ごんという鈍い音がして――風の眼球がぐるんと上を向き。
加熱化した勇者の思考回路は、闇に閉ざされた。
◇◇◇
「話、全然聞いてくれなかったな」
小さく呟いて、勇者を一蹴した少女――もとい魔法少女"スノーホワイト"は、犬吠埼風の両手に何かを取り付けた。
石の手錠だ。石は石でも、ただの石ではない。
付属していた説明書によると、"海楼石"とかいう特別な物らしい。
"悪魔の実の能力者を無力化する"という文章の意味はスノーホワイトには分からなかったが、少し触ってみたところ、その強度は結構なものだった。
取り敢えず彼女が目を覚まし、ある程度落ち着くまではこれで拘束しておくのが安全だろう。
人目に付かない物陰へと風の体を背負って移動し、壁に凭れるように彼女を安置。
そうして、ようやくスノーホワイトは一息ついた。
スノーホワイトの魔法は"困っている人の心の声が聞こえる"というものだ。
人助けを生業とする魔法少女にはまさにもってこいの魔法で、事実人助けをしようと思うなら、これ以上の魔法はそうないとスノーホワイト自身そう思っている。
しかし彼女が魔法少女として成長していく中で、彼女の魔法も進化をし続けていった。
それも、割とえげつない方向に。
今やスノーホワイトの魔法は、戦闘中に相手の弱点が分かる、というレベルにまで達している。
反射的・無意識的な心の声も逃さず聞き届ける今の彼女の魔法を前に、奇襲攻撃などは余程の広範囲火力攻撃であるか、スノーホワイトのスペックを遥かに凌駕してでもいない限りは殆ど通用しないと言っていい。
犬吠埼風の襲撃を予見し、その抵抗を全て完璧に潰すことが出来たのは、こういった事情があってのことだ。
だが、これでも彼女の魔法は今、結構な弱体化を食らっていた。
強力すぎるとでも判断されたのか、何らかの手段で、心の声を聞き取れる範囲が大幅に縮小されているのだ。
風が奇襲を目論んでいることを、彼女に数メートル程まで間合いを詰められなければ感知できなかった。
……このことから偶然、スノーホワイトはその事実に気付くことが出来たのだが。
主催者……ドンキホーテ・ドフラミンゴは、スノーホワイトの知らない人物だった。
"魔法の国"の関係者である可能性が高いと踏んでいるが、それならわざわざ機械仕掛けの首輪なんて用意するだろうか、とも思う。
素性は不明。実験とやらを通して何がしたいのかも不明。
そういえばあの時"麦わら"とか呼ばれていた青年は、ドフラミンゴのことを知っている様子だったが――如何せん名前が分からない。
他の参加者を探しつつ、出会った参加者に"麦わら"に心当たりはないかと訊いていくべきだろう。
いずれにせよ、スノーホワイトは殺し合いに乗るつもりは毛ほどもない。
自分可愛さに他人を犠牲にするつもりもなければ、願いを叶えるなんて話を信じてやるつもりもない。
実験を破綻させ、ドフラミンゴを倒す。
その為に同じ志を持つ仲間を集めつつ、会場に巣食う危険人物達に対処していく……それがスノーホワイトの方針だった。
-
スノーホワイトは性善説を信じてはいない。
別に性悪説がお好みという訳でもないが、殺し合いに乗る参加者は少なくないと踏んでいる。
……現に今しがた短気に走った少女を撃破したが、彼女など、会場全体で見れば氷山の一角に過ぎまい。
問題は山積みだ。一つ一つ丁寧に、一つ残さず綺麗に片付けていく必要がある。
そんな思いを胸に、スノーホワイトは支給品の端末を取り出して名簿を起動、視線を這わせ始めた。
彼女はまだ、名簿を半分ほどまでしか呼んでいない。
風の心の声を感知してしまったことで、中断を余儀なくされてしまったからだ。
風の向かい側に立ち、参加者達の名前を確認していく――と、そこで、不意にスノーホワイトの顔が強張った。
居ては困る名前があった、というのがまず一つ。
具体的に言えば"ピティ・フレデリカ"が、まさにそれだった。
スノーホワイトが最初に撃破した魔法少女であり、最悪のクズと称されるどうしようもない大悪党。
彼女を野放しにしていれば、悪戯に事態は混迷化し、犠牲はどこまでも増えていくだろう。
早急に見つけなければ不味い。
だがスノーホワイトを真に驚かせたのは、そのフレデリカの後に並んでいる三つの名前だった。
「……ありえない」
ポスタリィ、そしてレイン・ポゥ。
スノーホワイトが実際に関与した訳ではなかったが、彼女達はとある事件に巻き込まれ、命を落としたと聞いている。
特に後者は、街一つを潰すレベルの争いの事実上の発端ともなった恐るべき暗殺者だ。
この名簿の記述を信じるならば――何と死んだ魔法少女達までもが、実験に参加させられているという。
スノーホワイトはありえない、と言った。
しかしそうなると、ドフラミンゴは死んだ人物の名前を無意味に載せているか、名前を騙る影武者でも混ぜ込んだということになる。
それもまた、どうにも考え難い話だ。
となればやはり、名簿の死者達は何らかの手段で蘇らされた"本物"なのか。
スノーホワイトは暫らく考えて、……結局、結論を先送りにした。
今の時点では情報が少なすぎて、とてもではないが判断不可能だ。
ドフラミンゴを知る"麦わら"に会うよりも優先して、この死人達に関する情報を集める必要があるだろう。
一分一秒として放置はしたくない。
可能な限り早急に見つけ出し、対処する必要がある。
「…………」
……その為にも、この少女――犬吠埼風には早く目覚めてもらわねば困るのだが、生憎と起きる気配は現状ない。
仕方がないのでスノーホワイトは、再び思考に没頭することにした。
「…………」
無言で端末をしまい、スノーホワイトは沈黙したまま、拘束した勇者の覚醒を待つ。
夜は、まだ長い。
夜天の照らされる気配は、まだない。
【一日目 深夜】
【I-5 路地裏】
【スノーホワイト@魔法少女育成計画】
[状態]健康
[装備]風の大剣@結城友奈は勇者である
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器有り)
[思考・行動]
基本:ドフラミンゴを倒し、実験を終わらせる
0.目の前の少女(風)が起きるまで待つ。
1.ポスタリィ、レイン・ポゥの情報を集める。
2.ピティ・フレデリカに最大限の警戒。発見次第倒す。
3."麦わら"なる人物を探す
4.早い内に自分の端末を探し、ファルと合流したい
[備考]
※『JOKERS』後からの参戦です。
※制限により、心の声を聞ける範囲が大幅に狭まっています。
※同様に制限で、魔法少女としての身体能力もある程度劣化しています。
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(中)、拘束中
[装備]海楼石の手錠@ONE PIECE
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:仲間を守る。その為に他の参加者を排除する。
0.…………
[備考]
※九話、夏凛と交戦する直前からの参戦です。
※制限により、精霊の防御機能は一切発動しません。
-
以上で一通り投下終了です。
>>18の方に、次話の指名をお願いしたいと思います
-
哀川潤
-
指名ありがとうございます。
では、投下します。
-
世の中には"絶対に敵に回してはいけない人間"が存在する。
反抗が許されない程高い地位であったり、何らかの才能であったり、コネクションであったりとその内訳は様々だ。
この平和島静雄という男は、二番目だった。
人間をやめていると称される程の頑強な肉体と、噴火を繰り返す活火山のように荒々しい気性。
ただ純粋に強く、恐ろしい。首輪を填めて飼い慣らすということが出来ない。
感情のままに気に入らない物を殴り、蹴り、ねじ伏せ続けた結果、付いた異名が"池袋の自動喧嘩人形"。
現在進行形で池袋最強の座を恣にしているその男は今――誰もが予想した通りの有様だった。
「殺す」
握り締めた電信柱が、みしりと音を立てる。
平和島静雄の、指の形にコンクリートが軋む。
どんなプロレスラーでも有り得ないような、超人的としか言い様のない腕力。
この光景だけでも、静雄が何故最強と呼ばれているかを窺い知ることが出来るだろう。
「殺す……殺す殺す殺す……」
静雄自身は、極めて善玉寄りの人格の持ち主だ。
社会的通念に悖る行いは進んではしないし、叩きのめした相手から金銭を奪うような真似もしない。
そう、だからこそ。今平和島静雄は、過去最大級にブチ切れていた。
単に誘拐されただけなら、百歩譲ってまだいい。
だがドンキホーテ・ドフラミンゴは、それを差し引いてもやり過ぎた。
平和島静雄という男の逆鱗に触れるどころか、その上でタップダンスを踊るような真似をしてしまった。
まず一つ。平和島静雄は、饒舌な喋りで他人を誑かす手合いが大嫌いである。
その点ドフラミンゴは見事にその条件を満たしていた。
願いを叶えるだ何だとわけの分からないことを言い、殺し合いが起きることを煽るやり口。
悪辣さでは幾らか劣るが、それは彼の積年の宿敵である情報屋・折原臨也を思わせた。
そしてもう一つ。あの場でドフラミンゴが行った、明らかに見せしめの意図であろう少女の惨殺。
「舐めた真似しやがってよぉ、あのフラミンゴ野郎――!!」
あんな光景を見て何も感じるものがない程、静雄は冷血な男ではない。
が、見ず知らずの少女が殺されたからといって、此処まで激昂するのは幾ら彼でも少し不自然だ。
事実普段の静雄なら、胸糞の悪さに顔を顰めるくらいはしただろうが、怒りを爆発させたかは疑わしい。
この場に呼ばれたのが自分だけならば。
もっと言えば、この場に先述した"宿敵"の情報屋が呼ばれていなければ。
彼は、此処までブチ切れてはいなかったろう。
「だが、まずはてめえだ。臨也」
平和島静雄にとって、折原臨也という男は文字通りの"宿敵"だ。"怨敵"と呼んでも間違いではない。
彼と殺し合いを演じたことは一度や二度ではなく、この世で最も静雄を怒らせたのは間違いなく折原臨也である。
「……てめえが此処に居るってことは、大方裏でこのクソ実験の運営に一枚噛んでんだろ?
まどろっこしい真似が好きだよなあ、相変わらずてめえは。だが良いぜ、お望み通り今日こそ殺してやる」
その推測は実のところ、完全に的を外している。
折原臨也は主催とは何の面識もなく、実験の発足にも一切関与していない。
言ってしまえば、臨也も臨也で静雄と同じ被害者なのだ。
しかし怒れる静雄に、そんな臨也を擁護するような考えが思い付く筈もなく。
結果として周囲の町並みに溢れる怒りをぶつけながら、折原臨也の殺害という第一目標の為に動き出す運びとなった。
-
握り潰された電信柱が電線をショートさせながら倒れる。
引き抜いた道路標識を振るえば、民家を覆う石塀が面白いくらい簡単に砕け散る。
今の静雄は、まるでパニック映画のモンスターだった。
静雄のことを知らない参加者が破壊の限りを尽くすその姿を見たなら、百パーセント超級の危険人物と認識するだろう。
そういう意味では、彼がこれから経験する"出会い"はまだ静雄にとって優しい方だったのかもしれない。
「あ?」
それが――砕いた石塀の向こうからアクセル全開で突撃してくる高級外車、という形だったとしてもだ。
外車なだけはあり、速度は日本車のそれとは比較にならない。
静雄が塀を壊したのと、彼が猛進する車に気付いたのはほぼ同時のことだ。
つまり、車の主は塀が壊される前からアクセルを全力で踏んでいたことになる。
塀が壊されなければ正面衝突で死んでいたかもしれないというのに、何の躊躇もなく。
「チッ!」
さしもの静雄も、あまりに突然の出来事で回避が間に合わない。
常人ならこの時点で最低でも意識不明は必至だが、そこは平和島静雄。
右手に持ったままだった標識をバットのように真正面から車に叩き付け、殆ど力づくでそれを止めに掛かった。
だが運転手も負けちゃいない。
そう来ることは読んでいたとばかりに、前面が崩壊した車で即座にドリフト。
ハンマーのように静雄を横殴りにして、彼を跳ね飛ばした。
「痛えだろうが、てめえッ!!」
少なめに見積もっても一・五トンは確実だろう重量の殴打。
それをほぼまともに受けたにも関わらず、静雄は骨の一本も折れちゃいなかった。
言うまでもなく、意識は極めて鮮明。先程までと何も変わっていない。
もちろん彼の戦意も同じだ。
静雄は復帰と同時に槍投げの要領で標識を運転席目掛け投擲し、既にボロボロの高級車に止めを刺す。
「逃がすか!」
車だけでなく、その運転手も天に召されるのは必至に思われた一撃。
しかし、標識が着弾するほんの一瞬前に、運転席のドアを蹴破って赤髪の女が飛び出した。
今度は彼女が放棄した車の前輪を形が変わるほど強く握り締め、持ち上げてそれも投げようとする。
が。車が静雄の手を離れるよりも速く、件の女が彼の懐に笑みを浮かべながら潜り込んでいた。
「速――」
思わず驚きを漏らしかける静雄の腹筋に、女の拳が直撃する。
重い拳だった。静雄をしてこう思わせるのだから、人間相手に打つべきそれでないのは明白である。
「……うわ、硬ったいなお前の腹筋。何で出来てんだよ」
にも関わらず、驚いたのは女の方だった。
まるで鉄や岩を殴ったような、殴った側の手が痛くなるような人間離れした頑強さ。
歴戦の猛者である彼女をしても、これほどの人間にお目にかかった回数は少ない。
「純粋な腕力だけなら"殺し名"のトップレベル……いや超してるか?
どっちにしろ市井に転がしといていい人材じゃないぞ。あのフラミンゴ野郎、あれでなかなか見る目は確かみたいだな」
「……おい」
「何だようるせえな。あたしは今考え事をしてんだ、もう十五秒くらい待ってろ暴力バーテン」
「いきなり人を轢こうとするってこたぁ、そりゃあ殺すつもりだったってことだよな?」
ミシ、と。
空気の軋むような音がした。
平和島静雄が、怒りに奥歯を噛み締める音だった。
-
「殺そうとしたってことはよぉ――逆にてめえが殺されても、文句はねぇよなあ!?」
平和島、噴火。
女相手だろうと微塵の容赦もない剛拳が女へと唸りをあげながら殺到する。
その威力を此処までの戦いで既に見ている筈の女は、しかし避けようとはしなかった。
「いいぜ、来やがれ喧嘩人形」
信じられないことに。
女は、静雄の拳を受け止めに掛かったのだ。
片手で標識を引き抜き、車でさえその気になれば投げ飛ばせる腕力。
それを知った上で尚、不敵な笑みで迎え撃つ。受け入れようと、手を開いている。
そして二人の手と手が触れ合った時、人体の部位が激突しただけとは思えないような音がした。
「……お前……」
静雄の顔に、怪訝なものが浮かぶ。
彼は自分の強さに驕りはしないし、そんなものを重要視しているわけでもない。
だが客観的な事実として、自分のスペックがどの程度のものであるかは知っている。
だからこそ、驚いた。笑みを崩さないこの赤髪女は、自分の拳を素手で、真正面から受け止めてみせたのだ。
骨が砕けた手応えもない。静雄の拳は、彼女に見事に"受け止め"られてしまった。
「お前、何者だ?」
静雄がそう問うと、よくぞ聞いてくれたとばかりに女の笑みが深まる。
一拍の間を置いて、女は堂々たる口振りで名乗りを上げた。
「哀川潤。"最強"だ」
平和島静雄は、池袋最強と呼ばれる伝説の男だ。
一方でこの女……哀川潤もまた、最強の名を恣にする生ける伝説だった。
人類最強の請負人。人は、彼女をそう呼ぶ。
「言っとくが上の名では呼ぶんじゃねえぞ。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだからな」
「何言ってんだ、てめえは俺の敵だろうが。いきなり容赦なく殺しに来た癖してよ」
「ははあ。お前、さては馬鹿だろ」
いきなり飛び出した暴言に、静雄の眉間に皺が寄る。
彼は自分を馬鹿だと常々思いながら生きているが、やはり他人にそれを嘲られるとなると話は別だ。
やっぱり気絶くらいさせとくかと、拳に力が入ってしまうのも詮無きことだった。
「あたしのスタート地点は、丁度お前がぶっ壊した塀の向こうでな。
さてどうしたもんかと思ってると、何やらガンゴンドンゴンとすげえ音が聞こえてきたわけだ」
「……」
「塀の陰からちょっと覗いてみて、流石のあたしも驚いたね。こんな無鉄砲に暴れ回る奴が居るとは……と。
そんでもって血が騒いだ。気付いた時には、あたしの足はアクセルを踏み込んでいたのさ」
それにだ、と潤は続ける。
「おたく、車で轢いたくらいじゃ死なねえだろ。本当に殺す気なら、あたしは最初から生身で突っ込んでるぜ」
「そういう問題じゃねえよ」
思わず口を突いて出た言葉とは裏腹に、静雄の中で燃え滾っていた怒りはある程度の鎮まりを見せていた。
毒気を抜かれるというか、ペースを崩されるというか。
とにかく、静雄にとってこの哀川潤という女はやりにくい相手だった。
「まあ一つ人生の先輩として忠告しとくなら、ああやって派手に我を忘れるのは控えた方がいいぜ。
普段ならいざ知らず、この状況だ。殺さんでもいいもんを握り潰しちまうかもしれない」
そう言われると、静雄としては返す言葉がない。
確かにああして暴れている姿を誰かが見たなら、自分のことを危険な相手と思うだろう。
そうして広まった悪評が、本来味方の筈の誰かを敵にしてしまう可能性は十分にある。
その末に向けられた理不尽な敵意を前に自制が効く程、平和島静雄は心の広い人間ではない。
-
「……折原臨也」
「イザヤ?」
「性根の腐り切ったノミ蟲野郎の名前だ。間違いなくドフラミンゴのクソ野郎と繋がってる」
「へえ。そいつはまた面白い」
心底からそう思っているのだろう。
潤は赤い唇を左右に引き裂いて、ニヒルに笑った。
「ならお前は、紫木一姫ってガキには注意しときな。
一姫は糸を使う。お前やあたしのような奴なら何ら問題ないだろうが、他の奴なら瞬時に輪切りだ」
輪切り。
言葉通りの意味なのか一瞬計りかねたが、とりあえずそう受け取っておくことにした。
「セルティ・ストゥルルソン、岸谷新羅、粟楠茜。こいつらはまず基本的に無害と見て大丈夫……の筈だ」
「オーライ。見かけたらお前のことを伝えておいてやるよ、バーテンくん」
「……平和島静雄だ。静雄でも平和島でも、好きに呼んでくれ」
「じゃあシズちゃんで」
「今その呼び名は止めろ。気を付けてても、反射的にブン殴りそうになる」
じゃあ静雄くんでいいやと、カラカラ笑いながら請負人は踵を返した。
何処に行くつもりなのか少しだけ気になったが、静雄は去り行く背中に声を掛ける気にはならなかった。
仮に質問したところで、"何処かだよ。何処かは何処かだ"とか、不毛な答えが返って来そうな予感があった為でもある。
やがて静雄も同じように踵を返し、彼女とは反対の方向へと歩を進めていった。
“平和島静雄、ね。世間に溶け込めるとは思えないドの付く短気に、暴力の権化みてえな馬鹿げた身体。
妙なのは――あんなのが野放しにされてたってのに、このあたしが名前も評判も聞いたことがねえってとこだな”
一方で。哀川潤は、今しがた別れた暴力装置のバーテン服に付いて考える。
彼女こそは、人類最強と謳われる百戦錬磨の請負人。
乗り越えた死線は数知れず、その手でブチ壊した野望の数も山のよう。
そんな潤をしても、平和島静雄は歴代で間違いなく上位に食い込む"超人"だった。
あんな人材が世に枷もなく解き放たれていて、自分の耳に何も情報が届いていないのはおかしい。
“ドンキホーテ・ドフラミンゴについてもそうだ。聞いたことのねえ名前だった”
鮮烈な赤髪とワインレッドのスーツ。
目立ちすぎる姿形を堂々と晒しながら、潤は道の真中を闊歩する。
“ひょっとして――世界線でも超えてるか?”
突拍子もない、そう言われても仕方ないような発想。
だが、潤は有り得ない話ではないと真剣にそう思う。
“面白え。まだまだ、調べてみる価値がありそうだ”
いつでも不敵に笑いながら、人類最強の請負人は往く。
バトル・ロワイアルを、ハッピーエンドで締め括る為。
この空前絶後の大事件を、完膚なきまでに解決してやる為に。
【一日目 深夜】
【F-5 東方邸近辺】
【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]健康
[装備]いつものバーテン服
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。ドフラミンゴは殺す。
0.臨也殺す。
1.セルティ、新羅、茜の無事を確認する。
2.紫木一姫なる女には注意。
[備考]
※少なくとも臨也と対決する以前からの参戦です。
※臨也は主催と癒着していると信じています。
【哀川潤@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:ハッピーエンド以外は認めねえ。
0.今はとにかく歩き、調査する。
1.折原臨也を探し、静雄の話が正しいかを確かめる。
2.一姫の奴、絶対乗ってるだろうな……
[備考]
※『クビツリハイスクール』にて、紫木一姫と対決する前からの参戦です。
※静雄から折原臨也が主催と繋がっているとの話を聞きましたが、あまり信じていません。
※高級外車@現実 は破壊されました。
-
投下終了です。
>>25の方、次の指名をお願いします
-
乙です
犬吠埼樹を指名します。
-
指名ありがとうございます。投下します
-
犬吠埼樹が目を覚ました時、そこは通い慣れた学校、見慣れた教室の中だった。
窓越しに見える夜空は、一面墨で塗ったみたいな黒に染まっている。
涙を流してしまったせいか、両目がヒリヒリと嫌な痛みを放っていた。
「……」
もしかしたらあれは夢だったのかもしれない。
樹は一瞬、そんな都合のいいことを考えた。
しかし現実から逃げることを、首から伝わってくる金属質の冷たさが許してくれない。
勇者部の大事な仲間、三好夏凛。
少し素直じゃないところはあったが、根は優しくて仲間思いな人だった。
樹にとっても、勇者部の他の皆にとっても、かけがえのない友人だった。
「……」
だが、そんな夏凛は死んだ。
彼女の首が飛んだ瞬間のことを、今も鮮明に思い出せる。
あまりにも冗談みたいな光景で、一瞬何が起こったのか本当に分からなかった。
千切れた首の切断面から噴き上がった血が頬に触れた時、その不快な感触を経て初めて、樹は夏凛の死を認識した。
友奈は泣いていた。
樹も泣いていた。
風と東郷は茫然としていた。
「……」
どうして夏凛さんが死ななければならなかったのか。
声に出そうとしても、樹の口は何も言葉を発してくれない。
――彼女達勇者には、"満開"という切り札が存在する。
スマートフォンの満開ゲージが満たされた時発動可能になるそれは、まさしく逆境を覆す力を秘めている。
身体能力の爆発的な向上、平常時よりも遥かに強力な武装の獲得。
詰みの状況ですら跳ね除けて勇者を未来に導いてくれる満開は、まさに夢の力だ。
されど、世の中美味い話には裏があるのが常というもの。
その例に漏れず、この満開にも大きな落とし穴があった。
「……」
それが"散華"……身体機能一つの永久的な欠落だ。
失う機能は目であったり、耳であったりと使用者によって異なるが、犬吠埼樹の場合は"声"だった。
発声機能の欠落。それは少女から言葉と夢を奪い去った。
それでも樹は、自分に突き付けられた過酷な運命を呪ってはいない。
声をなくし、友をなくし。
喋ることも出来ない身体で、絶望的な殺し合いへの反抗を強要されても。
“でも――”
樹の目にはそれでも光があった。
与えられた苦難と喪失を物ともせず、明日へ進もうとする意思の光があった。
仮に声ではなく手足が不具に成り果てていたとしても、樹は決して諦めはしなかったろう。
声があるのなら、人を言葉で説得することが出来る。
今の自分は声がないが、その分歩き、戦う為の手足はきちんと備わっている。
なら――やるべきことは一つだ。
-
“止めよう――勇者として”
勇者として、この哀しみを生み続けるだけの殺し合いを止める。
きっと、死んでしまった夏凛もそれを望んでいる筈だ。
それに、他の皆もきっとそうしているだろうから。
樹は、戦うことを決めた。
恐怖心がないといえば嘘になるが、それを上回る勇気が彼女の中で燃え上がっていた。
「……」
頷きの動作は決心の現れだ。
そうと決まればこうしてはいられないと、樹は座り慣れた自分の席を立ち上がってデイパックを背負い教室の外へ出る。
夜の讃州中学は昼間からは考えられない程、不気味に静まり返っていた。
そもそも何故――ドンキホーテ・ドフラミンゴが用意した殺し合いの会場に自分の通う中学校があるのか。
そこからして大分不思議なものがあったが、支給されたマップを見た瞬間、樹は深く考えるのは辞めようと思った。
10×10の枠組みに収まってしまうような小さな島にこれだけの町が密集している時点でまずおかしいのだ。
となると会場の施設や街は、ドフラミンゴがわざわざ再現したのだろう。
具体的な手段までは流石に分からないが――相手はこんな大掛かりな事を起こせる輩だ。
きっと自分には想像も付かない何らかの手段があるんだろうと、樹はそう割り切って考えることにした。
「……」
やはり第一に考えるべきは、勇者部の皆との合流だ。
他の参加者を守るのはもちろんだが、それでも皆のことが気がかりでないといえば嘘になる。
それに、今後どう動くかを勇者同士で話し合い、共有しておきたいというのもあった。
今回の事件は、いつものように襲ってきた敵を倒せば解決という単純な話ではない。
何も考えずに立ち回るのでは恐らくダメだ。
色んなことを考えながら、一人でも多くの命を救うために頑張る。
その為にも、やはり勇者部の仲間とは早い内に合流しておきたい。
“でも、それなら……此処に居たままの方がいい、のかなあ”
考える。自分がもし、別なエリアで目覚めていたなら。
その状況でマップを見て、讃州中学の名前を見つけたなら。
……他の勇者部メンバーと落ち合えると考え、まずは此処を目指す筈だ。
ならば、このまま待っているべきなのだろうか。
そんな、見方によっては怠惰ともいえる時間の使い方をしていいものか……悩む樹の耳に、不可思議な音が飛び込んできた。
“……物音?”
無人の建物の中で音が鳴ること自体は珍しくない。
建物が軋む音であったり、何か物が自然に落ちた音であったり。
だが、聞こえたのは確実に人が居なければ鳴らない類の音だった。
がさりという布が擦れるような音。
続けて、明らかな人間の足音。
耳を澄ませばそれは一度ではなく、二度、三度と連続して聞こえてくる。
“誰か、いる……!”
他の参加者の存在。
普通はまず警戒するべき場面なのだろうが、樹の場合はそうではなかった。
勇者部の誰かだったならそれでいいし、乗っていない参加者だったとしても合流したいことに変わりはない。
乗っている参加者だったなら危険だが――それでも縮こまって震えているよりかは動いた方が何倍もマシだ。
-
意を決して樹は、物音の方へと歩を進めていく。
音は断続的に結構な音量で聞こえている為、幸い特定は容易かった。
歩くこと四十秒ほど――辿り着いたのは空き教室。
その中から、足音は聞こえていた。
盗み聞きするようで気が引けるが、念の為まずは改めて耳を澄ましてみる。
「……?」
すると樹は、怪訝な顔をした。
“この人、何してるんだろう……?”
部屋の中の足音は、ずっと同じ場所をぐるぐる回っているのだ。
道理で、絶えず音が聞こえているわけである。
不審ではあるが、そんなことをして何になるのかが今ひとつ分からない。
結局僅かな逡巡の後、一応三回のノックをした上で、樹はおずおずとドアを開けるのだった。
本当は声を掛けたいところだったのだが――生憎と樹は声を出せない。
要らない誤解を生まないためにも、開扉と同時に両手を上に挙げて戦意がないことを精一杯アピールする。
斯くして開かれたドアの向こう。
殺風景な部屋の中で、樹を睨め付ける視線がある。
足音の主、今は視線の主であるその人物は、恐ろしい殺人者ではなかった。
かと言って――恐怖に震えている哀れな一般人というわけでもない。
「―――」
竹筒の口枷で口元を塞がれた、小柄な少女だった。
その首には"実験"の参加者であることを意味する鉄の首輪。
フーフーと肩を鳴らして樹を睨み付けている姿は野良犬の類を彷彿とさせる。
“え、えーと……”
私は敵じゃないよと口で言えれば早い場面にも、満開の代償のせいで手間を強いられる。
すっかり慣れてきた筆談で意思を伝えようとも思ったが、今デイパックに手など入れようものなら飛び掛かられそうだ。
何しろ余程機嫌が悪いのか、口枷の少女は常に樹を威嚇しているのだ。
さて、どうしたものか――少し考えた末、樹が取った選択肢はごくごく単純で、ある意味安易なものであった。
「……、……! …………、……!!」
即ち、ジェスチャー。
手話の心得などない為ほとんどがむしゃらだ。
せめて敵意がないことさえ通じてくれればそれでいい。
そういう思いで手を動かす樹の思いが、果たして少女に通じたのか――
「―――」
まだ警戒の色は消えていないが、少女の様子が少しだけ落ち着く。
視線に宿る剣呑な色合いも、心なしか幾らか和らいだように見える。
そのことに安堵しつつ、樹は彼女に信用してもらえるよう、柔らかい表情を心がけながらコミュニケーションを取りに掛かるのだった。
◇
彼女とコミュニケーションを取ってみて分かったことは一つだけだ。
それが、彼女はどうやら樹と同じく"喋れない"らしいこと。
というのも、どういうわけか口枷を外そうとしないのだ。
樹が外してあげようとしたところ、頭を振って拒否された。
樹はその時なんとなく、要らない親切だと言われたような気がした。
-
三十分ほどの時間を費やして、成果らしい成果はそれだけ。
名簿を見せて名前を確認しようと思ったが、これも上手く行かなかった。
筆談が通じるかも一応は試した。しかしその結果は、推して知るべしである。
お互い声を出せない、文を通じての意思疎通も不可能。
なかなかに前途多難な滑り出しと言わざるを得なかった。
“でも……なんとなくだけど、この子のしたいことは分かる”
喋れないことについてはほとんど確実だ。
その点これは、完全な樹の憶測。フィーリングである。
“あなたは――きっと、誰かを探したいんだよね?”
暇さえあれば周囲をキョロキョロと見回して、心なしか外に出たそうにも見える。
樹にはその姿が、誰かを探し、合流したがっている風に見えた。
“だったら……”
中学校に留まっているのが安牌だというのは、樹にも分かる。
しかしこのままいつまでも彼女を引き止めておくのは、恐らく無理だろう。
終いには自分を無視して外に出ようとしてもおかしくない、樹はそう思う。
かと言って一人で外に出してしまうには、彼女はあまりにも危うかった。
喋れない、意思の疎通もままならない。
"乗った"参加者に襲われてしまえば、その身体はきっと容易く血に染まってしまう。
それなら、樹が――"勇者"が取るべき行動は一つだ。
「……、………、…………!」
またも身振り手振りで、樹は自分の意思を彼女に伝える。
一緒に行こう。
一緒に、あなたの大切な人を探そう。
通じているのかは皆目分からないが、そこは諦めずに根気よく手を動かすだけだ。
「――?」
当初は首を傾げていた、少女だったが。
「――。」
やがて何かを察したのか、座り込んでいた床からすっくと立ち上がる。
樹はその時、確かに自分の思いが通じた手応えを感じた。
そのことが何とも言えず嬉しくて、樹の顔が微笑みに彩られる。
そして樹は、少女にそっと己の手を差し出した。
同時に強く、決意する。
勇者として、まずはこの子を守ろう。
この子を、きっと探している誰かに合わせてあげよう。
“勇者なら、そうしなきゃだよね。こういう時だからこそ”
されど――犬吠埼樹はまだ知らない。
無力だと思っている目の前の少女が、実は人食いの怪物……"鬼"と呼ばれる化生であることを。
何も知らないまま、声を失った勇者は狂気の実験場を往く。
その行き着く果てに待つのは、勇者らしい栄光か。
それとも――冷たい絶望か。
それはまだ、誰にも分からない。
【一日目 深夜】
【H-7 讃州中学三階】
【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である】
[状態]健康、発生機能が"散華"
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器はなし)
[思考・行動]
基本:勇者として、一人でも多くの人を助ける。
0.女の子(禰豆子)を探し人に会わせる
1.勇者部の皆と合流
2.用が済んだら学校に戻って皆を待ちたい
[備考]
※声を失って以降からの参戦です。
※禰豆子の名前を知りません。
【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]竹の口枷
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:…………
1:…………(樹にはまだ微警戒)
[備考]
※VS蜘蛛家族編、累と対峙する前からの参戦です
※鬼としての不死性が劣化しています。
-
投下終了です。
>>32の方、次の指名をお願いします
-
投下乙です
にぼっしー見せしめは勇者部にダメージでかいよなぁ…
逆蔵十三を指定します
-
指名ありがとうございます。投下します
-
目が覚めた時、背中に冷たく硬い感触があった。
見てみれば、それは墓石だった。
書いてある名前に覚えはない。
何処の誰かは知らないが、死んだ後にこんな催しの小道具に使われるとは災難なことだ。
“……にしても、どうなってやがる”
自分の傷一つない腹筋を服越しに撫で、逆蔵十三は苛立ちを隠し切れない様子で舌打つ。
それも詮無きことだろう。
何せ逆蔵にとって今の状況は、何もかもが理解不能であった。
未来機関の殺し合いはどうなったのか。
自分は腹を貫かれ瀕死の重傷を負っていた筈だが、こうして軽く触ってみた分には痛みは愚か、傷跡すら見当たらない。
「あのクソ野郎に治されたってことか」
考えられる可能性はそれだけだ。
だが、それでも非現実的な話であることは変わらない。
どんな最先端の医療技術を用いても、あの深手をこんなにあっさり治すなど普通に考えれば不可能だ。
しかし事実、逆蔵の身体にあった筈の致命傷は完全に消えている。
ほぼ気合だけで生き永らえている状態だったにも関わらず、だ。
「……余計な真似しやがって」
吐き捨てる。
本当に、余計なことをしてくれたものだ。
何もかもが腹立たしい。
何より――口ではそう言いつつ、内心では延命されたことに安堵している自分がいること。
“未練がましい男だな、俺も……”
全てを懸けて尽くすと決めた相手に見捨てられ、それでもまだ其奴の役に立ちたいと考えている。
ドフラミンゴの"実験"というイレギュラーな状況で、彼を助けられることに喜びを感じている。
女々しい。情けない。見苦しい。
自罰の言葉は山程思い付くし、いっそ死んだ方がとも思う。
“良いさ……アイツが居るってんなら、俺がやることは一つだ”
それに、確かめたいこともある。
あの"セレモニー"の時、逆蔵は群衆の中に未来機関の同胞――宗方京助の姿を見出した。
宗方が居るなら自分は、今まで通り彼を支える為に全力を尽くすだけだ。
見捨てられても、切り捨てられても、それだけは変わらない。
問題は、彼の他に誰が居るのかということ。
断っておくと逆蔵は、別に他の未来機関支部長が招かれていたとしても、一切合流などは考えていない。
端的に言って、信用出来ないからだ。
あの殺し合いは中断されてしまったが、彼らから襲撃者の嫌疑が晴れたわけではない。
そうでなくとも、気に入らない面子ばかりだ。
逆蔵は、少なくとも"今のところは"殺し合いに乗るつもりはなかった。
それでも、宗方以外の支部長と協力して主催打破に向け動きたいとは微塵も思わない。
その理由は、先程述べた通りである。
――気に入らない。
かつて"超高校級の絶望"を打倒した苗木誠やその仲間達であれば、確かに反主催勢力の基盤となることも可能だろう。
支部長の座にまで上り詰めた才能溢れる男にはあるまじき、非合理的で感情的な考え。
逆蔵自身、下らない私怨、逆恨みだとは分かっている。
だからと言って、こればかりは如何ともし難いところだった。
-
「……は?」
名簿を開き、目を通し。
宗方と自分の名前を確認し、次の名前を見たところで視線が釘付けになる。
右側に並ぶ安藤、十六夜、忌村の名前など、最早目にすら入っていなかった。
「雪染……!?」
雪染ちさ。
その名前がそこにあることは有り得ない。
何故なら彼女は、あの殺し合いで一番最初に殺害された被害者である。
致命傷とはいえまだ生命活動自体は続いていた自分とは訳が違う。
「わけが分からねえぞ、どういうことだよ一体。
アイツが本当は生きてたってのか? だったらあの死体は替え玉――いや、そんなことは有り得ねえ!」
雪染とも、付き合いは長いのだ。
服装と髪型を似せた程度の替え玉ならば、あの切羽詰まった状況でも確実に看破出来た筈。
百歩譲って自分の目が腐っていたとしても、彼女と親密だった宗方に分からない筈はない。
断言出来る。あの時、襲撃者に殺害された雪染ちさの死体は、間違いなく本物の雪染のものだった。
なら、この会場に居るという"雪染ちさ"は一体何者なのか。
“何であれ、注意するに越したことはねえか”
死者が蘇った等という荒唐無稽な話は、可能性の内にすら含めない。
第一逆蔵は、ドフラミンゴが語った全知全能の力とやらについても全く信用していないのだ。
殺し合いに乗って首尾よく優勝したとして、おめでとうでは死ねと、呆気なく首を飛ばされるのが関の山だろう。
あの手の輩は、所詮そんなものだ。
となるとこの会場に居るらしい"雪染ちさ"は、それこそ替え玉と考えるべきだろう。
信用に値する相手では断じてない。
実際に会ってみたいという思いがないといえば嘘になるが、現状はこれ以上考えても無駄だと、逆蔵は判断した。
「で……安藤に十六夜、忌村か」
残る三名の見知った名前を前に、思わず口から嘆息が溢れる。
安藤流流歌と十六夜惣之助はそもそも論外。
流流歌は躊躇なく他人を殺せる性格の持ち主だし、十六夜は彼女の恋人だ。
仮に殺し合いに乗っていなかったとしても、二人は――特に流流歌の方は人格が厄介過ぎる。
もっと言えば、あの女は腐っているのだ。
忌村静子については、まだ信用出来る。
薬剤師としての才覚も、その人格も。
流流歌と十六夜に比べれば、何倍もマシである。
それでも、逆蔵は狙って合流しようとする必要はないと考えた。
忌村だけではない。宗方についても、そうだ。
宗方に自分は一度見捨てられている。
腹を貫かれ、殺されかけた。今更どんな顔をして彼に会えばいいのか、逆蔵には分からない。
“だが……アイツの敵は、俺の敵だ”
だから、見えないところから宗方を助ける。
彼は間違いなく殺し合いに背き、主催を討つ方向で物を考えている筈だ。
ならば自分は、それを邪魔する障害物の除去に努める。
宗方京助の敵を――殺す。
-
あの殺し合いの時と同じだ。
彼がそれを望まなくとも、期待せずとも。
自分はまた、宗方の為の暴力装置となろう。
「……行くか」
背を墓石から離し、立ち上がる。
まずは取り敢えず島を適当に一周でもしてみるかと、そう思った瞬間のことだった。
「――おーい、そこのあんた!!」
声がした。
まだ少年期の面影の残る、中学生かそこらの声だった。
「……あ?」
「おっと、そうおっかない目で見ないでくれよ。俺は殺し合いなんてする気はないんだ」
軽薄そうなガキというのが、逆蔵の彼に対する第一印象だ。
両手を挙げて笑みを浮かべている様はなかなかどうして癪に障る。
だが、胆は座っているようだった。
この状況だというのに、彼からは一切の物怖じした様子を感じない。
ただの能天気な馬鹿かとも思ったが、どうやらそれも違うようだ。
その根拠は彼の目――そこには逆蔵が忌む"ある男"のような、特大の死線を潜った者特有の光があった。
「俺の名前は七原秋也。重ねて言うが、殺し合いには乗っちゃいない。あんたはどうだ?」
「ハッ。何だって見ず知らずのてめえにンなことを教えなくちゃならねえんだよ」
「おいおい、コミュニケーションくらいしてくれよ」
少年――七原秋也は逆蔵の返答に参ったな、という顔をする。
逆蔵にしてみれば、彼が何者かなど極めてどうでもいいし、興味もなかった。
殺し合いに乗っていないのならば、今のところは自分が排除すべき相手ではない。
ならばそれは、干渉する必要もない相手であるということだ。
「仕方ない、じゃあ一方的に喋らせてもらうぜ。
あんた長話とか嫌いそうだからさ、いきなり核心に入るけど――」
粗雑にあしらっても尚しつこく喋る七原に、逆蔵はいっそ拳の一発でも打ち込んでやろうかと思う。
そうすれば恨みは買うだろうが、静かにはなるだろう。
時間の節約と精神衛生の為だ、悪く思うんじゃねえぞ――そう思って拳を握り締めた時、七原が無視できないことを口にした。
「――俺はこの殺し合い……"プログラム"を、一度経験してる」
「……何?」
プログラム。耳慣れない単語だったが、それについては一旦置く。
重要なのは目の前の七原という少年が一度、今回のような殺し合いを経験しているということ。
「ただ取締役はあんな派手な男じゃなかったし、全知全能の力なんて素敵な賞品もありゃしなかったけどな。
あんたも知ってるだろ、国がやってる"プログラム"。正真正銘、俺がやらされたのはそれだった。
今回の"実験"と細かいところ以外はほとんど同じ。ドフラミンゴは間違いなく、"実験"をやるにあたって"プログラム"を参考にしてる筈だ」
「待て。お前、何を言ってる?」
「何って、だからドフラミンゴは"プログラム"を――」
「その前だ。国が、こんなことをやってるだと?」
「……おいおい、もしかして"プログラム"を知らないのか?」
-
驚いた様子を見せる七原に、驚きたいのはこっちだと心の中で毒づく逆蔵。
そもそもからして、今の発言は意味が分からなかった。
国が殺し合いを主催するなど、バカも休み休み言えという話だ。
"超高校級の絶望"の台頭によって世界中の秩序は一度破壊され、今も復興に向かっているとはいえまだまだどこもかしこも発展途上。
"絶望"が国家運営の真似事でもしていた可能性はあるが、彼の様子を見るにそういうわけではないらしい。
となるとあの絶望的事件の前にまで遡ることになるが、そっちはもっと有り得ない。
何しろ秩序が保たれているのだから、殺し合いの主催などそもそも口に出した時点でとんでもない非難を浴び、社会的に失墜してお終いだ。
「そんな下らねえ戯言をほざいて、俺が騙されるとでも思ったかよ」
「……オーケイ、オーケイ。なら悪いけど、もうちょっとだけ付き合ってくれ。情報の共有がしたい」
「必要ねえ。少なくとも俺はな」
「だったら時間の無駄と思った時点で、ぶん殴るなり投げ飛ばすなりして構わないさ。
頼むよ。今のあんたの答えは――俺としてもちょっと予想外だったんだ」
逆蔵は、すぐに七原を殴りはしなかった。
彼自身、七原の話が気にならないといえば嘘になるからだ。
あまりにも馬鹿げた、戯言としか思えない話。
にも関わらず、それを語る七原に嘘を言っている様子は全くなかった。
……もしやはり聞く必要のない話だったなら、その時は彼の言う通り殴り付けてやればいい。
そんな思いで、逆蔵は七原の求める"情報交換"に応じることにした。
七原にとって、逆蔵の語った内容は荒唐無稽に過ぎるものだった。
一人の女子高生が扇動の末に世界を滅ぼしたなんて話、フィクションの中でもそう見ない。
逆蔵にとっても、七原の語った内容は荒唐無稽に過ぎるものだった。
国ぐるみの殺し合いなど序の口だ。大東亜共和国等という国自体、逆蔵の知る歴史には存在しない。
お互いが、お互いの話の内容を前提からして理解出来ない。
そんなシュールですらある状況が、夜の墓地で繰り広げられていた。
「……こりゃお手上げだな。どうなってるんだかさっぱり分からない」
さしもの七原も、これには肩を竦めるしかない。
自分の知る常識が、相手には全く通じないのだ。
逆蔵もまた、苛立たしげな顔をしている。
彼が七原と同じ心境であるのは誰の目から見ても明白だった。
「これじゃあまるで――住んでる世界が違うみたいだぜ」
「……あ?」
「よくあるだろ、パラレル・ワールドってやつさ。
俺も馬鹿げた話だと思うけど……流石に此処まで話が噛み合わないと不自然だ」
パラレル・ワールド。
逆蔵とて、そのくらいは知っている。
俗に並行世界理論と呼ばれる考え方だ。
確かにそれに当て嵌めたなら、この状況を説明出来るだろう。
「……下らねえ」
だが、そんなことは有り得ない。
逆蔵はいよいよ興味を失って、その場で踵を返しかけた。
「何だ、もう行っちまうのかい?」
「誰かとつるむ気はねえ。付いて来るなら、痛い目を見て貰うぜ」
「やれやれ……そりゃ残念だ。じゃあ最後に一つだけ、お節介を焼かせてくれ」
七原は出来れば逆蔵と同行したいと考えていたが、こうまで頑なに拒否されては仕方がない。
しかし、彼に絶対に伝えておかねばならないことが一つあった。
もう二度と、不要な犠牲を出さない為に。
――"奴"の手に掛かって命を落とす人間が、出ないように。
-
「桐山和雄」
神童と呼ばれた、七原の同級生。
そして――
「前の"プログラム"で、多分一番多く殺した奴だ。名簿にそいつの名前があった」
「……さっき言ってることと話が違うじゃねえか。
生き残ったのはお前と、中川とかいう女だけって言ってたろうが」
「そう、それが分からない」
七原の歯切れが悪くなる。
その"桐山和雄"の名前がそこにあることの意味が分からない、そんな声色だった。
「桐山は確かに死んだ――あいつは人間離れした奴だったけど、流石にあれで生きてたら人間じゃない」
だから、もしかしたら偽物って可能性もある。
少し言い悩んだ末、七原はそう付け足した。
逆蔵の足が止まる。彼にとってもそれは、他人事ではなかった。
雪染ちさ。死んだ筈の同期。何故か名簿に名前の記されている、死人。
「でも、偽物だったとしても……一応は気を付けておいてくれ。
オールバックのイケメンだ。前はイングラムって銃を使ってた」
「そうかよ。頭の片隅には留めといてやる」
逆蔵はぶっきらぼうにそう言い残し、また歩き始めた。
今度は、その足取りは止まらない。
敵の排除という目的のみを胸に、歩んでいく。
“桐山和雄……か”
雪染と同じ、既に死んでいる筈の人間。
だが殺し合いに乗るような危険人物であるならば、逆蔵にしてみれば本物だろうが偽物だろうが同じことだった。
宗方の障害になるのなら、誰であろうと殺す。幾らでも、潰す。
七原秋也は逆蔵十三に桐山に気を付けるよう促したが、彼は逆蔵の心境を見抜くことは出来なかった。
今の彼は、ある種自暴自棄の境地に近い。
そんな男に危険人物の名を教えたのなら、どうなるかは自明だ。
“見捨てられちまっても、アイツには生きてて欲しい。
その為になら、どれだけだってブッ殺してやるさ。――ああ、どれだけでもな”
危険な決意を瞳に宿して、"元・超高校級のボクサー"は夜の闇に消えていった。
「にしても大丈夫かね、あの人」
一人残された七原は、そう呟いた。
同行者の確保が急務と考える七原にしてみれば、あの場で逆蔵に着いて行く選択肢も十分にアリだった。
しかしそうしていたなら、躊躇なく彼は自分を殴り飛ばしただろう。
そう長い人生を生きているわけではないが、あの男からはそういう粗暴さを感じた。
どこか危うげな――辛うじて道を保っているような粗暴さを。
「……"超高校級の絶望"か。悪い冗談だぜ、全く」
彼から聞いた話を反芻して、七原は苦笑する。
正直、全てを信じたわけではない。
というより、信じられるような内容ではなかった。
なのに彼には全く嘘を言っている様子が見られなかったのが、困り物だった。
「ま、深くあれこれ考えるのは後回しだ。
まずは誰か、一緒に動いてくれる奴を探さないとなっ」
七原秋也――過去、"プログラム"を破壊して脱出した大東亜の反逆者。
その立ち位置は、この"実験"においても何ら変わらない。
狙うのは主催者、ドンキホーテ・ドフラミンゴへの痛烈な"ダンクシュート"。――それだけだ。
【一日目 深夜】
【A-5 墓地】
【逆蔵十三@ダンガンロンパ3】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器あり)
[思考・行動]
基本:宗方を勝利させる
0.宗方の障害になる人物の抹殺。
1.桐山和雄は遭遇次第可能ならば殺害。
2.雪染や桐山のような"死んでいる筈の人間"には強い警戒。
3.誰かと徒党を組むつもりはない。
[備考]
※宗方に刺された直後からの参戦です。
※七原秋也から【バトル・ロワイアル】の世界観について聞きました。
【七原秋也@バトル・ロワイアル】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器あり)
[思考・行動]
基本:ドフラミンゴに強烈なダンクシュートを決める。
1:取り敢えずは仲間を探す。
2:桐山には最大限の注意。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※逆蔵十三から【ダンガンロンパ3(未来編)】の世界観について聞きました。
-
投下終了です。
>>40の方、次の指名をお願いします
-
投下乙です
ホモボクサーさんは危険対主催か。元々誤解されやすいけどどうなるんだろう…
七原は飄々としてるが安定してるな
空条承太郎を指定します
-
逆蔵はいつも通り
それはそうと、タイトルが秀逸ですね…
ダンロンは「ルールに守られたバトルロワイアル」みたいな所もあるので、
そう考えてみれば七原も『希望』なのかなぁ、と思わせて戴きました。
指名は吉良吉影でお願い致します。
-
投下します
-
「はあ」
嘆息する少女は、夜の闇の中でも一際目を引く身なりをしていた。
一言で言うなら、華美が過ぎて目に悪い。
左右で縛って垂らした髪にはグラデーションが掛かっており、何より目を引くのは七色に輝く頭上の光輪だろう。
更にその背中には、頭上のそれを一回り大きくしたものが煌めいている。
「誰だか知らないけど、面倒なことしてくれるなあ」
頭をボリボリ掻いて、心底うんざりしたような口振りで言う少女の名前は、レイン・ポゥといった。
もちろん、本名ではない。
"レイン・ポゥ"は彼女――三香織という人間の、魔法少女としての名前だ。
だが名簿には香織ではなく、レイン・ポゥの方で記載されている。
これはつまり、主催者……ドフラミンゴは彼女の魔法少女としての一面のみに注目している、というなのか。
尤も、レイン・ポゥとしてはどちらでも構わなかったし、主催側の事情などには興味もなかった。
“五十人ちょっとか……正攻法だとしんどいな”
彼女は狡猾な女だ。
息を吐くように嘘をつき、笑いながら誰かを陥れる。
悪名高い妖精と手を組んで、まだ中学生の身でありながら暗殺者として数々の魔法少女を殺害してきた。
その彼女にとって、今更人を殺めることに躊躇などある筈がない。
むしろ問題なのは、殺さなければならない人数だった。
レイン・ポゥを除いて五十一人。
他の参加者同士で勝手に殺し合って減る分を除いても、正攻法で優勝を狙うとなると少々面倒である。
「ま、それならそれで巧くやるだけなんだけどね」
誰かの影に隠れ、無力を演じ、頃合を見て一網打尽。
覚えのあるやり口だ。今でもきっと、問題なくこなせる。
「てか、トコの奴はどうしてんだろ。
もしかしてあいつだけあの街に取り残されたままとか? だったら流石にご愁傷様だけど」
レイン・ポゥは此処に連れてこられる前、とある大きな"仕事"に従事していた。
平然としているように見える彼女だが、内心では結構な焦りと不安を抱いている。
自分が殺されるかもしれないからではない。
そんなことは、そもそも考えていない。
彼女が案じているのは、ドフラミンゴのせいで途中でほっぽり出す羽目になった一件についてだ。
“後々、絶対面倒なことになるよな……”
面倒で済めばいいが、こうなるといよいよ真剣に身の安全が危ぶまれてくる。
レイン・ポゥですらこれほど憂鬱なのだから、彼女の相棒であるトコなどはキレ散らかしているに違いない。
「考えても仕方ないか」
最悪、ドフラミンゴを嵌めてスケープゴートとして使うのも視野。
その為にもまずは、殺し合いを制するという前提条件を満たさなくてはならない。
ただでさえ異常事態なのだから、目の前の問題を一つ一つ確実に片付けていく姿勢こそが肝要だ。
ネガティブな思考を脳内から消し去って、いざ暗躍せんと一歩を踏み出した、まさにその時だった。
――静寂を切り裂いて、響き渡る破裂音。
それが耳に入った瞬間、レイン・ポゥは素早く魔法を行使。
彼女の武器であり、盾でもある"魔法の虹"をコンマ零秒、一瞬以下の時間で出現させて迫ってくる"モノ"を防御する。
-
「命知らずなことで」
虹に呆気なく弾かれ、傷一つ付けられずに地面を転がったそれは、人間社会で製造された鉛弾だ。
こんなもので、魔法少女(じぶん)を殺そうとするとは。
馬鹿な奴も居たものだと、レイン・ポゥは嘲りの表情を浮かべた。
今は幸い誰も見ていない。此処は一つ、手堅くスコアを稼がせて貰うとしよう。
レイン・ポゥの傍らから音も温度もなく、"橋"ではなく"刃"としての虹が夜闇に潜む襲撃者へと伸びていった。
人間と魔法少女が殺し合うと聞いたなら、大抵の魔法少女は鼻で笑うことだろう。
前提からして、勝負になる筈がないからだ。
簡単に時速三桁の速度を出し、素手でも人間の頭くらいは簡単に握り潰せる。
そんないわばリミッターの外れた存在と、制限だらけの人間とでは、赤子と大人が相撲を取るようなものだ。
他ならぬレイン・ポゥ自身、そう思っていた。
早ければ、一瞬。相手が最大までうまく立ち回ってきたとしても、三十秒は掛からない。
そう思いながら、闇に潜む襲撃者と戦っていた――の、だったが。
“こいつ――”
既に、戦闘開始から二分以上が経過している。
にも関わらず、レイン・ポゥの虹は未だに襲撃者を捉えられずにいた。
位置は分かっている。姿も既に見ている。
……だというのに、当たらない。
魔法の虹は殺しの道具として極めて優れており、その有用性は誰もが認めるところだ。
音もなく、温度もなく、殺気もなく出現する刃を向けられて、初見で対処するのは魔法少女でも難しい。
「うっざいなあ!」
それを、襲撃者――オールバックの少年は、山林特有の木や岩といった遮蔽物を活用して悉く回避していた。
隠れた遮蔽物が虹に切り裂かれると、お返しとばかりにマズルフラッシュが瞬いて、鉛の弾丸が虹の少女に殺到する。
劣勢だとは、思わない。綱渡りを強いられているのはあくまであちらの方で、自分は狩る側だ。
その認識は崩れていないが――これほど時間が掛かっている以上、手こずらされているのは確かだった。
そしてレイン・ポゥは、戦っていて気付いたことがある。
“おかしいな……やけに身体の動きが悪い”
体調が悪いわけではない。
そも、魔法少女は人間の病気やアルコールによる酔いなどとは無縁の生き物だ。
だが今、レイン・ポゥの動きは確かに悪くなっていた。
人間並みといえば言い過ぎだが、魔法少女としてのスペックから見れば最低クラスといってもいい。
万全だったなら、こんな奴もう三度は殺してるのに――やり場のない怒りと疑問に、レイン・ポゥは苛立ちを隠せない。
思考は必然、人に隙を作り出す。
それを見逃さぬとばかりに、銃弾が彼女の頭目掛けて放たれた。
「ちっ!」
その場から飛び退いて回避しつつ、虹の橋を走らせる。
立派な木々をバターのように切り裂きながら、山林の景観を獰猛な破壊痕で彩っていく。
無論、単純に正面から撃ち続けているわけではない。
レイン・ポゥはプロだ。各方面で人間の何倍も優れている魔法少女を殺し続けてきた、歴戦の暗殺者だ。
攻撃に緩急を付けて相手の感覚を狂わせに掛かったり、遮蔽物を逆に此方も利用して攻めてみたり。
-
恐るべきは、それでも未だに殺されていない、オールバックの襲撃者である。
年頃はレイン・ポゥの見立てでは、高校生――もしかしたら中学生かもしれない。
どちらにせよ、見た目から想像される年齢では有り得ない程熟達しているのは間違いなかった。
“――そろそろだな……”
とはいえ、レイン・ポゥも苦戦するばかりではない。
彼女は放つ殺し手の悉くを躱されながらも、着実に"詰め"の状況へといけ好かない襲撃者を追い込んでいた。
恐らく、当の彼は自分が追い詰められ始めていることにすら気付いていないだろう。
レイン・ポゥは、心中で底意地悪くほくそ笑む。
今に至るまで戦闘が長引いている理由は、当然自分の攻撃が当たっていないからだ。
少なくとも手応えは、これまで一度も感じていない。恐らくは、掠ってすらいまい。
では何故、こうまで悉く躱されているのか?
その理由は――
“遮蔽物。盾の存在”
……相手は、山という地形の有用性を最大限に活かしている。
木であったり岩であったり、時には足場の悪さを逆手に取ったり。
逆に言えばそのアドバンテージが失われた瞬間、趨勢は一気に此方に傾く筈。
常に攻勢を保っているレイン・ポゥは今、相手が攻撃を避けるのを利用して、彼を"ある場所"へと誘導していた。
彼女ほどの暗殺者ともなれば、攻撃に宿る危険性を微塵も落とさず、それでいてその攻撃に別な意図を含ませることすら朝飯前であった。
では、レイン・ポゥは憎きオールバックのガンマンを何処へ追い込みたいのか?
決まっている。遮蔽物が、"既に"消え失せている場所だ。
“人間相手にこんなやり方させられること自体、気に食わないっちゃ気に食わないんだけどね――”
ある程度戦闘が長引いた段階で、彼女は"保険"を用意していた。
攻撃の範囲を敢えて無意味に広げ、木と岩を徹底的に破壊した、更地の空間を即席で作り出したのだ。
作成が終わった以上、後はそこまで敵を追い込んでやればいい。
隠れる場所がなくて絶望した時には、もう終わりだ。
必殺の虹は今度こそ、その身体をズタズタに切り裂いて絶命させることだろう。
“ま、調子に乗ってられるのも今の内だ”
虹で十何度目かの発砲を弾き、虹の向こうでレイン・ポゥは一人笑う。
……弾が切れたのか、そこからはめっきり銃撃もなくなった。
相手は今や武器もなく、ただ逃げるだけ。
――そして"襲撃者"から"獲物"へとクラスチェンジした少年は、遂に"墓場"へと追い込まれた。
飛び込んだ先には一本の木もない。
瞬時に嵌められたことを察知して、慌てて速度を上げたところで、もう何もかも手遅れだ。
「ま、頑張った方だよ」
小さく呟いて、レイン・ポゥは口元を歪める。
「じゃあね、お馬鹿なガンマン気取り」
決め台詞めいたことを口にするのは慢心の証だ。
もう勝ったものと思っていなければ、そんな台詞は出て来ない。
この時レイン・ポゥは、完全に自らの勝利を確信していた。
相手には武器もなく、地の利もない。
自分には虹という素晴らしい武器があり、衰えているとはいえ魔法少女である以上、体力でも圧倒的に勝っている。
何をどうすれば負けるのか分からない――真実彼女はそう思っていたが、しかしそれは詮無きことだろう。
"魔法の国"に関連する以外の非現実事項を全く知らないレイン・ポゥでは、その可能性を思い描けなかったのだ。
-
「っ!?」
即ち、相手もまた"異能者"であるという可能性を。
その時レイン・ポゥが見たのは、くるりとダンサーめいた軽やかさで身体を翻した少年の姿だった。
それに怪訝なものを感じた次の瞬間、レイン・ポゥは感じ慣れた殺気を彼から察知。
突如前に突き出した右手の掌から、何やら赤いものが見えた所で、彼女は漸く相手が"ただの人間"ではないと理解した。
「な――」
炎だ。
人間一人程度ならば、軽く炭に出来てしまう程の苛烈な炎。
それが突如として少年の手から激流のように噴き出し、後は最後の一手を詰めるだけだった筈のレイン・ポゥを襲った。
しかしそこは、数多の魔法少女を屠ってきた恐るべき魔法の虹。
炎が自身に接触するよりも先に虹を自分の前方へ貼り、すんでのところで炎をどうにか防ぐことに成功する。
“こいつ……何者!?”
少なくとも魔法少女ではない。では"魔法使い"かとも思ったが、そういう風にも見えなかった。
そして敵が"少し頭が良い、ただの人間"でないことが割れた以上、此処からは逆に"狩られる"危険が浮上してくる。
恐らく彼は、途中でレイン・ポゥの狙いに気付いたのだろう。
その上で、それを逆手に取ろうと考え、実行したのだ。
勝利を確信した敵手を、不意の隠し玉で瞬殺する。
レイン・ポゥ自身も何度か使ったことのある手だからこそ、余計に腹立たしいものがあった。
苛立ちに歯噛みしながら、虹の橋を散弾銃もかくやの勢いで連射する。
それを少年は、炎をブースター代わりにして真横に大きく飛ぶことで回避した。
勿論レイン・ポゥも、そのくらいは織り込み済みで事前にそちらへ向けても虹を配置してある。
だが今度の虹は、遮蔽物も異能も用いず、素の身のこなしだけで躱されてしまった。
流石に目を見張るレイン・ポゥとは裏腹に、貼り付けたような仏頂面の少年。
その口元が、動いた。何を言っているのかは聞き取れなかったが、少なくともレイン・ポゥにはこう見えた。
"もう覚えた"と。
さしものレイン・ポゥも思わず怖気を感じた次の瞬間、爆裂、と言ってもいいような勢いで炎が膨れ上がった。
対処しなければ呑み込まれる――必然レイン・ポゥは、虹を防御用に展開することを強いられてしまう。
少年の能力の最も恐るべき点は、炎を操るというシンプル故に強力な性質だった。
威力が高いことは言わずもがな、攻撃範囲も決して狭くない。
このように、点ではなく面で炎を放たれてしまえば、レイン・ポゥは高確率で虹の防壁を貼らねばならなくなる。
――時には、視界すらも犠牲にして。
“あ、やば――”
レイン・ポゥが虹を消した時、少年の姿は元あった場所から消えていた。
何が起きたのかを瞬時に悟る彼女の懐に、真横から表情のない殺人者が飛び込んでくる。
思考が空白に染まりかけるのをどうにか防ぎつつ、最善手は防御だと判断するレイン・ポゥ。
この間合いで炎を放たれたなら、回避は最早不可能だ。
となると、ほとんどノーモーションから防御を展開できる彼女の魔法が活きてくる。
それで上手く防いで、返しで近距離を良いことに数に任せた全力の殺し手を叩き込む。
刹那の内にそう思考して行動したレイン・ポゥだったが――結論から言えば、これが彼女の敗北を決定付けた。
予想した通りに、再び炸裂する炎。
読み通りだ。
熱波が止むのと同時に虹を消し、さあ此方の番だと思った――その瞬間。
「ご――!?」
魔法少女の腹部に、鋭く重い掌底が打ち込まれた。
銃から炎への切り替えに翻弄された彼女を嘲るように、少年は此処で"第三の武器"の封を解いたのだ。
三番目の武器は、彼自身。
かつて彼が、とある武術に秀でたクラスメイトから"見取った"拳。
それは魔法少女ですら反応しきれない程の絶速で間合いを詰め、虹の暗殺者の腹を打ち抜いた。
“くそ、何でも有りかよ、こいつ……ッ”
無念と胃液が逆流する感覚に顔を歪めながら、魔法少女はノーバウンドで跳ね飛ばされ、遠くの樹木へと叩き付けられ……とうとう、その意識を手放した。
-
「……」
口から胃液と血を流して気をやった"虹使い"の姿は、いつの間にかごくごく普通の少女のそれに変わっていた。
気絶したことにより、魔法少女の変身が解けたのだ。
レイン・ポゥから、三香織へ。
こうなってしまえば、天下無双の魔法少女もただのか弱い子供に等しい。
それでも"炎使い"……桐山和雄は、不用意に彼女に近付こうとはしなかった。
彼女の頭脳は、実際に戦ってみてよく分かった。
純粋に頭が良いのも確かだが、それ以上に彼女は狡賢い。
今の彼女は完全に気絶しているのだったが、魔法少女についての知識を持たない桐山にしてみれば、警戒は尤もだ。
不用意に近付いて、笑いながら虹で貫かれる……なんて可能性も絶無ではないのだから。
ではどうするか? 簡単である。触れずに、遠くから殺せばいいのだ。
「……」
――これから年下の少女を殺すとは思えない落ち着き払った表情で、桐山は右手を前へと突き出した。
桐山和雄に支給された品物の中で、武器と呼べる物は自動拳銃が一丁のみだった。
もう一つはどう見ても武器ではなく、戦いには応用できなそうな品。
そして残された最後の一つは、しばしば天才と呼ばれる彼をしても理解の追い付かない代物であった。
曰く――"悪魔の実"。食べた物にカナヅチになる呪いを与える代わりに、異能の力を授ける果実。
桐山に支給されたのは、その中でも攻性に極めて優れた"メラメラの実"。
彼は知らないことだが、悪魔の実が実際に存在する世界では、これを食べた男は大海賊として世界に名を馳せるまでに至った。
説明を読み、その概要を理解した桐山は……特に躊躇うこともなく、それを口にした。
味は最悪の一言に尽きたものの、対価として得られた力はご覧の通りだ。
此処に来る前の"プログラム"で使っていたイングラム銃など、悪魔の実の能力に比べれば型遅れもいいところだ。
まして、能力を手にした人間は怪物――神の子と称する者さえあったという、正真正銘の規格外である。
レイン・ポゥとは別の意味で、桐山和雄には人を殺すことへの躊躇がない。
一度殺し合いに乗ると決めた彼は、真実殺戮マシーンと呼ぶべき脅威に他ならなかった。
少女を焼き払う為、その掌に炎が渦を巻く。
最後まで無感動な顔のまま、いざ虹の魔法少女"だった"中学生を消し炭にせんとして……
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』」
声が響いた。
男の声だ。
桐山の声ではない。
それに反応する間もなく桐山の身体は無数の打撃に弾かれて、先程レイン・ポゥがそうなったように、ノーバウンドで彼方の方へと吹き飛ばされた。
普通なら、意識を飛ばされて然るべきダメージ。
しかし生憎と、桐山は普通ではない。
自身が先程まで居た、つまり今は自分を襲った何某かが居る筈の場所へと、波のような業火を放つ。
そして――炎が晴れた時、そこには誰の姿もなかった。死体も、炭も、三香織の姿もない。
「……」
逃げられたか。
桐山は苦渋を顔に出すでもなく、立ち上がって淡々と埃を払い、鼻と口から垂れた血を服の袖で拭って歩き出した。
悪魔の実の力を手にしても、彼は何も変わらない。
殺すと決めたなら、最後まで殺し続けるだけだ。
男も、女も、子供も、老人も。
それが殺し合いの参加者であるならば、桐山は全てを等しく塵のように殺すだろう。
【一日目 深夜】
【G-7 裏山】
【桐山和雄@バトル・ロワイアル】
[状態]全身にダメージ(中)、疲労(小)
[装備]H&K HK4@現実
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1(確認済、武器ではない)
[思考・行動]
基本:皆殺し。
0.参加者を殺す。
1."能力者"には注意。
[備考]
※杉村殺害後からの参戦です。
※メラメラの実を食べました。炎を操れる代わりに、今後一切泳ぐことが出来ません。
また、自然系としての性質(攻撃透過など)は制限で消えています。
-
◇
「やれやれ……アヴドゥルの奴を思い出す能力だな」
口から血を流して気絶している少女を背負いながら、夜の山を進む男の名を、空条承太郎といった。
最早達成されるのが確定的だった桐山によるレイン・ポゥの殺害に、彼は自身のスタンド能力を用いて介入。
桐山を殴り飛ばして一時的に無力化し、その傍らで素早く彼女を助けることに成功したのだった。
承太郎のスタンド能力は、"時を止める"能力だ。
無比のパワーとスピードを以って繰り出される事実上回避不能の拳は、これまで数多の敵を打ち砕いてきた。
あの場で再起不能までぶちのめしても承太郎としては一向に構わなかったが、そうしなかったのには理由がある。
承太郎はレイン・ポゥと桐山の戦闘は最後の方を少し見ただけだが、桐山の能力はそれでも恐るべきものと分かった。
単純故に目立った弱点のない力。
桐山自身の醸す異様な雰囲気も相俟って、承太郎は、彼を倒すには気絶した少女を抱えながらでは不可能だと判断した。
となれば、後は逃げるだけだ。追ってきたなら、その時はその時でまた考えればいい。
「にしても、こいつの目が覚めたら聞かなくちゃあいけねえな……」
承太郎が見た限りでは虹の少女もまた、炎使いの少年を完全に殺すつもりで攻撃していた。
助けたはいいが、今自分が背負っている少女が殺し合いに乗っている可能性も十分にあるのだ。
目覚め次第、その辺を根掘り葉掘り聞かせて貰う必要があるだろう。
そしてそれが済んだなら、また速やかに動き始めなければならない。
承太郎には、悠長なことをしていられない理由があった。
“DIO……”
名簿に刻まれていたかつて滅ぼした宿敵の名を見付けた時、承太郎は愕然として名簿を取り落とした。
有り得ない。DIOは確かに不死に限りなく近い存在だったが、確かに自分の手で討ち倒し、灰と帰してやった筈だ。
誰よりもそのことをはっきり認識しているのに、承太郎は主催のハッタリだとか、そういう風には考えられなかった。
首筋の星のアザが伝えてくる。奴は、確かにこの会場に居るのだと。
「もし本当にてめーなら……首を洗って待ってるんだな。
今度こそこのおれが、てめーを二度と蘇らねえよう、徹底的にブチのめしてやるからよ」
とはいえ、問題はDIOのみではない。
吉良吉影――杜王町に潜む恐るべき殺人鬼の名も、名簿には記されていた。
此方についても対処し、打ち倒しておく必要がある。
山積みの問題に辟易しながらも、力強く、星の白金を宿す男は地面を踏み締めるのだった。
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]時間停止使用による疲労(極小)
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器あり)
[思考・行動]
基本:殺し合いを止める。
0.虹使い(レイン・ポゥ)を連れて安全な場所に逃れる。その後、彼女から話を聞く。
1.DIOを倒す。
2.仗助達とも出来れば合流しておきたい。
3.DIO打倒が最優先だが、吉良吉影についても見つけ次第撃破する。
[備考]
※第四部、吉良吉影との一度目の戦闘直後からの参戦です。
※制限で、時間停止を行った場合の疲労が増加しています。
【レイン・ポゥ@魔法少女育成計画シリーズ】
[状態]疲労(小)、腹部にダメージ(中)、気絶、変身解除
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:優勝する。その為に素性を隠しつつ巧く立ち回る。
0:………。
1:トコは結局居るの? 居ないの?
2:たっちゃん(ポスタリィ)と進んで合流する気はないが、もし合流出来たなら利用する。
[備考]
※少なくとも中学校組が魔法少女に変身して以降からの参戦です。
※制限で、魔法少女としての身体能力がある程度劣化しています。
-
投下終了です。
>>50の方、次の指名をお願いします
-
投下乙です
桐山まさかの能力者化とは恐ろしい…
レイン・ポゥは承り相手にどう立ち回るのか
サカズキを指名「します
-
指名ありがとうございます。投下します
-
「いや、いやいや……」
笑顔を浮かべて、ないない、と手を顔の前で何度も左右に振る。
これまで、思わず絶叫してしまうくらい理不尽な状況には何度も直面してきた。
誇張抜きで死ぬと思ったことだって一度や二度じゃない。
それでも――幾ら何でもこんなことはない。現実離れにも程がある。
「殺し合い? 願いが叶う? 反抗したら首輪がドカン?
いやいやいやいや……今日び売れない怪談家でもこんな質の悪いこと考えないでしょ……」
我ながら想像力が豊かだなあと、我妻善逸は苦笑して自分の頭をコツンと叩いた。
幾ら何でもこれはない。こんなことは、夢に決まっている。
「大体あのドフラミンゴとかいうおっさんどう見ても鬼じゃなかったし、それが夢だって証拠だよ。
あー心配して損した。夢ならこの鬱陶しい首輪も力ずくで外して問題ないよね、あはははっ」
笑いながら善逸はガンガンと首輪を引っ張る。
すると甲高い音が鳴り響いて、人間のそれとは思えない無機質な声が流れ出した。
『首輪に過度の衝撃を感知しました。それ以上刺激を加えた場合、ルールに基づき首輪を起爆します』
「ア゛―――ッ待って待って!! 嘘です冗談ですやめで下さいぃぃぃ!!!!」
お世辞にも綺麗とは言えない高音の悲鳴を上げながら打って変わってのたうち回る善逸。
彼は見ての通りドの付く臆病者だが、しかし腐っても対鬼の精鋭、鬼殺隊の隊員だ。
少なくとも、目の前の現実を理解することも出来ない馬鹿ではない。
……とはいえ、それを受け入れられるかどうかはやはり別なのだったが。
「ホントどういうことだよ俺何か悪いことした!?
してないよねいやそりゃ少しはしたこともあったかもしれないけど此処までされるようなことは絶対にしてない!!」
早口で捲し立てても、状況が好転するわけではない。無駄に疲れるだけだ。
それは善逸も分かっているが、それでもやはり我慢できるものではなかった。
「大体願いを叶えるってなんだよこんなことしでかす奴がそんな親切してくれるわけないじゃん!
ああああああもう嘘臭い不思議神通力とか要らないですから早く俺を帰して下さいお願いしますお願いします」
殺し合いなんてする気はない。
かと言って乗った参加者と戦うのも怖い。
そもそもこの状況自体が、既に耐えられないくらい。
纏めて言うと、帰りたい。
それが今の善逸の思考の全てだった。
「うわ炭治郎も呼ばれてるのか……いや俺が呼ばれててあいつが呼ばれてなかったら怒るけど。
ていうかむしろ何で伊之助のバカは呼ばれてないんだよ、あいつ後で絶対一発殴るからな……」
善逸の知り合いで同じようにこの殺し合いに巻き込まれているのは、二人だった。
一人は竈門炭治郎。時偶腹が立つことはあるが、まあ、殺し合いにはまず乗らないだろう男だ。
もう一人はその妹、竈門禰豆子。善逸的には炭治郎よりも、彼女のことが心配だ。何故か。可愛いからである。
「でもとりあえず炭治郎と会いたいな……俺こんな状況でずっと一人だったら半日で白髪になる自信あるよ」
幸い、使い慣れた自分の日輪刀は手元にある。
もし参加者に鬼が混じっていても、一応自衛くらいは出来そうだ。
もちろんそれは最悪の場合の話であって、善逸はそんな事態が起きないことを心の底から祈っている。
ひとまず、炭治郎ないしは禰豆子を探す。
何とか当面の方針を決め、歩き出そうとした――その時だった。
-
「そこの、ちと止まれェ」
「ヒィッ!?」
重い声が掛かった。
善逸はいきなり背に冷水を垂らされた野鼠のように飛び退いて、声のした方を見る。
そして、震えも悲鳴も忘れて息を呑んだ。
視線の先に佇む男が持つ余りの存在感に、時が止まった錯覚すら覚えた。
鬼気――
我妻善逸が、その男から感じたのはそれだった。
白い帽子を被り、外套に身を包んだ初老の偉丈夫。
その体格は、最早人間の規格を超えている。
少なくとも、身長は二メートル半を優に超しているだろう。
強面の人相は、しかし彼が放つ底知れない気迫の前では気にもならない。
この世のどんな人間が見ても、きっと一目で解る。
この人は今、激怒しているのだと。
「安心せェ。ドフラミンゴ如きの道楽に乗る程わしは腐っちゃおらん。ただちぃとばかり、お前に訊きたいことがあるだけじゃ」
その物言いは、あのドフラミンゴを知っているかのよう。
だが善逸には、とてもじゃないがそれを訊くことなど出来なかった。
下手なことを口にしたら死ぬと、本能的な直感があったからだ。
「"麦わら"……モンキー・D・ルフィ、ヴィンスモーク・サンジ」
覚えはあるかと問う巨漢に、善逸はぶんぶんと勢いよく何度も首を横に振るしかなかった。
もちろん嘘ではない。嘘をつく理由もなかったが、下手な嘘を言おうものなら一発でバレると善逸は確信していた。
答えを訊くと、真偽を確かめるように上方から男は彼の両眼を見下ろし――軈て瞑目し、口を開く。
「そうか――手間ァ取らせて悪かったのォ」
謝意を示す男の表情は、微塵も晴れていない。
明らかな"怒"の色彩を貼り付けた、巌のような顔貌。
正直な話、下手な鬼の百倍は怖い。善逸は、そう思った。
「此奴らは"海賊"じゃ。自由だ何だと謳いながら奪い、殺し、弱者を嘲り笑う……そんな、生きる価値もない"悪"よ」
「か……海賊?」
大正時代の人間である善逸にはイマイチピンと来ない。
だが、私欲の為に他人から奪い、自由に殺す……そんな連中が少なくとも"善"ではないことくらいは善逸にも分かる。
それでは、鬼と何ら変わらないだろう。
理解したくもないし、一生涯お近付きになりたくないもんだと思う。
「……尤も、屑は奴らだけじゃあなし。
天夜叉風情の口車に乗って己の生の為だけに暴れ回る連中も、揃って其奴らと同じゴミじゃ」
善逸はテンパる余り、愛想笑いを浮かべながら金魚のように口をぱくつかせていたが、彼の主張は大いに共感出来た。
あんな胡散臭さが服を着たような男の言うことを信じた馬鹿のせいで人生終了なんて、本当に堪ったものではない。
「お前に戦う"力"があるんなら、そういうゴミ共を駆逐することじゃ」
「はい?」
「人間、正しくなけりゃあ生きる価値なし。ドフラミンゴの傀儡に堕ちた軟弱者なんぞ、息を吸うことも認めん」
善逸は、浮かべていた愛想笑いをあからさまに引き攣らせる。
そして、彼は思うのだった。失禁しそうなくらいの恐怖の中、心の中で膝から崩れ落ちながら。
“そ――そういう系かぁ……”
-
ほんの一瞬、見た目はアレだけどいい人だな! 良かった良かった!とか思った自分を思い切り殴ってやりたい。
確かに志自体は正しいのだろうし、殺し合いに乗っていないのも確かなのだろう。
しかし思想が幾ら何でも極端過ぎる。要はこの男、殺し合いに乗った人間を片っ端から殺し尽くそうとしているのだ。
ふん縛っておくなり何なりやり方はあるだろうに、対話の余地すら無しに皆殺しにするつもりでいるのだ。
どう考えても、ヤバい奴である。善逸は己の不運を呪うと共に、一刻も早くこの過激思想の擬人化から逃れたいと思った。
「今わしが言ったことを肝に銘じて生きることじゃ。
そうでなければ――悪辣な夜叉小僧の仕組んだこの殺し合い、生き抜くことは出来んぞ」
善逸のそんな願いが天に通じたのかもしれない。
巨人のようなその男は善逸から視線を外すと、彼の隣を通り過ぎ、闇の中へと向かっていった。
――だがその足が、突然止まる。早く行って欲しい一心で後ろ姿を見送っていた善逸の心臓も止まりそうになった。
「もしも、お前が"悪"に堕ちるつもり言うんなら、そん時は覚悟しておけェ」
首から上だけが、振り返る。
ギロリ、と善逸を睥睨する瞳は、人間のものとはとても思えなかった。
「そん時は――わしが、お前を裁くけェの」
善逸は走った。
脱兎の如く、走った。
ギャアアアアアと、盛大な悲鳴を上げながらの大爆走だった。
誰かに見つかるかもとか、そんなことを考えている余裕さえなかった。
そして、胸に誓う。
たとえこの先どんなことがあって、どんな怖い思いをしようと。
"実験"に乗ることだけは、絶対にやめよう。あのおっさんとはもう二度と会いたくない。
【一日目 深夜】
【E-7 海周辺】
【我妻善逸@鬼滅の刃】
[状態]恐怖(超極大)
[装備]善逸の日輪刀@鬼滅の刃
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:帰りたい(切実)
0.この場から離れる。早急に。でないと死ぬ。
1.炭治郎と禰豆子ちゃんを探す。
2.殺し合いとかふざけんなよほんとお前やっていいことと悪いことがあるだろせめて俺を呼ぶなよなんで俺を呼んだんだよお前聞いてんのかお前
[備考]
※少なくとも、蜘蛛鬼戦前からの参戦です。
-
◇
叫びを上げながら走り去っていった少年を、海軍大将――サカズキは追いはしない。
サカズキは、悪を裁き善を護る正義の海兵としての仕事を既に何十年と続けている身だ。
その人物が善玉かどうか、悪に堕ちる可能性があるかどうかは、少し言葉を交わすだけでもある程度分かるのだ。
その点先の少年――我妻善逸は、サカズキの目から見ても危険には見えなかった。
臆病者ではあるのだろうが、だからと言って他人を踏み台にして生き残ろうとするタイプではない。
最後に忠告はしたものの、それが無くとも、彼は反主催を貫いていただろうとサカズキは思う。
「"天夜叉"ァ……これだけのことをわしの目の前でしでかしたんじゃ、死ぬ覚悟は出来ちょるんじゃろうなァ」
善逸の第一印象は、正しい。
サカズキは今、かつてないほどに激昂している。
海軍の中でも最も苛烈な正義を掲げる彼の目の前で、あのドフラミンゴは殺し合えと宣った。
そして今己は、そんな度し難い邪悪に首輪を填められ、奴の遊戯の駒にされている。
海兵として生きてきて、色々なことを経験した。
怒りに腸が煮えくり返り、咆哮したことも数え切れない程ある。
それでも――これほどの屈辱を味わった試しはなかった。
ドフラミンゴはサカズキに、最悪の形で喧嘩を売ってきたのだ。
「"やり過ぎ"じゃ……お前は一線を超えた。
七武海じゃろうが最早関係無し。このわしを侮ったことが、お前の破滅する理由よ」
無論、サカズキが倒すべき敵はドフラミンゴ一人ではない。
彼の口車に乗って殺し合いを始めた者達も、彼の"正義"を執行する対象だ。
悪を許さない燃え盛る正義の前に、一切の免罪符は存在しない。
更に、これはサカズキとしては非常に癪だったが――彼にとって都合のいいこともあった。
「運が無かったのォ、"麦わら"」
麦わらのルフィと、その船員(クルー)である黒足のサンジ。
どちらも、高額な懸賞金の掛けられた賞金首だ。
たとえ反主催の立場を掲げていたとしても、サカズキが彼らの存在を許すかと言えば、それは断じて否。
海賊であるという時点で、サカズキは彼らを決して許容しない。
「兄の次は弟じゃ。"火拳"を殺した時のように、お前の腹にもわしのマグマを見舞っちゃる」
ポートガス・D・エース。通称"火拳のエース"と呼ばれていた大海賊は、"麦わら"ことモンキー・D・ルフィの兄である。
しかしながら、もう彼はこの世の何処にもいない。サカズキがその手で処刑したからだ。
小癪にも生き延びた火拳の弟、次代の脅威をこの場で処断出来るとなれば、まさしく僥倖。
――ドフラミンゴを仕留めるまでの手慰みとしては丁度いい。
彼はマグマを操る能力者。灼熱で悪を焼き尽くす、"赤犬"。
信じた正義を微塵も疑うことなく、猛犬は進む。
【サカズキ@ONE PIECE】
[状態]健康、憤怒
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:"正義"を執行する
0."麦わらのルフィ""黒足のサンジ"を探しながら、殺し合いに乗った参加者を屠る。
[備考]
※マリンフォード頂上戦争終了直後からの参戦です。
※制限により、自然系の特性(攻撃透過など)は失われています。
-
投下終了です。
>>57の方、次の指名をお願いします
-
乙です。
うん、そうなるよねw
二人の温度差が見ていて楽しかったです。
ポスタリィを指名します。
-
指名ありがとうございます。投下は恐らく土曜日くらいになると思います
また、予約期限(?)を決めていなかったので、とりあえずは延長一週間までで指名から一週間を期限にしようと思います
-
>>58
延長過ぎたら予約破棄して、新しい指名を待つってことですか?
-
まあ破棄することとか暫くないと思うので、その時が来たらその辺は考えます。そもそも非リレーですし。
投下します
-
悪い夢みたいだ――荒れ果てた校舎の一室で、膝を抱えて蹲る少年・野比のび太は一人そう呟いた。
のび太は何処からどう見ても普通の小学生だが、彼の辿ってきた経歴を聞いたなら、誰もが目を見張って驚くだろう。
彼はこれまで、未来の世界から来た猫型ロボットや自分の学友達と共に、何度も何度も大きな冒険をしてきた。
だから、多少の突飛な事態には慣れている。
しかし、今回のことは流石に"多少"の枠を逸していた。
「人を……人を、あんなに簡単に……」
殺すなんて、と続けてのび太は膝の間に顔を埋める。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ。そう名乗った男は、まだ中学生くらいだろう少女を笑いながら惨殺した。
首が飛ぶ瞬間も、死体に泣き縋る人達の姿も、のび太はついさっきのことのようにはっきり覚えている。
言うまでもなく、人が殺される瞬間を見たのは初めてだ。
「うう、助けてよぉドラえもん……」
のび太は誰かを殺す気など全くない。
だからと言って、もちろん死にたいわけではない。
となると生き延びる方法はドフラミンゴを倒して実験を止めるだけだが、それを邪魔するのが今も首を戒めている鋼鉄のリングだ。
もしもこれを無視したり、破壊したりしようとすれば……最初の彼女のようになる。
機械を弄ることに慣れた人間なら望みはあるのかもしれないが、少なくとものび太にはそんな芸当は不可能である。
そこで彼の脳裏に真っ先に浮かんだ"希望"こそが、彼にとって家族同然の存在である未来のロボット――ドラえもんだった。
“機械を改造する道具なら、確か幾つかあった筈……”
二十二世紀の技術力は、二十一世紀のそれとは比べ物にならない。
空を飛ぶ、自由に何処にでも移動する、物体のサイズ変更、時間跳躍、並行世界への移動。
のび太らしい言い回しに直すなら、"何でもあり"だ。
そんな未来の道具を数え切れないほど持つドラえもんならば、こんな首輪程度、きっとどうにかしてしまうだろう。
――ドラえもんの四次元ポケットが万全な状態であれば、だが。
「でもなあ……」
のび太も流石に学習している。
いつもこういう時に限って、彼の道具は故障したり修理に出していたりするのだ。
それに何より、自分達を集めたドフラミンゴがひみつ道具の有用性を把握していないとは思えない。
そう考えると……多分、ドラえもんの道具は没収されているだろう。のび太は、そう考えていた。
こうなると、八方塞がりだ。先の見えない夜闇の中を、闇雲に歩いて行くようなもの。
今まで色々な冒険をしてきたが、今回ばかりは駄目かもしれない。
弱気に駆られ、闇の中で縮こまるのび太だったが――
“ジャイアン達も居るんだよな――みんな、大丈夫かな……”
巻き込まれたのはドラえもんだけではない。
剛田武、骨川スネ夫。
のび太の大切な友人達も、この恐るべき殺し合いに参加させられている。
何より質が悪いのが、自分達に間違いなく恨みを持っているだろう人間までもが呼ばれていることだ。
ギガゾンビ。二十三世紀の時空犯罪者。自分達の活躍が原因で、牢獄にぶち込まれた男。
“ギガゾンビの奴が、まさか憎っくき僕らに何もしてこないとは思えない。
それ以前にあいつのことだ。きっと、ドフラミンゴが言ってた"力"を欲しがって……”
殺し合いに、乗ってくる。
のび太の背筋にぶわりと、冷たいものが走った。
-
「ダメだ――こんなことしちゃいられない!」
野比のび太は臆病な少年だ。
しかし、腰抜けではない。
いざという時に震える足を無理矢理動かしてでも、誰かの為に戦える熱い魂を秘めている。
そんな彼だから、友達が危機に晒されていることを察した途端、彼らを助けねばという使命感が恐怖に勝利した。
デイパックを急いで背負い、震えを押し殺して立ち上がる。
“とにかく誰か、一緒に行動してくれる人を探そう――”
それはともかく、この不気味な学校からは早く抜け出したい。
何年も使っていないみたいに床には埃が積もっていて、窓ガラスなどは所々割れている。
……はっきり言うと、何か出そうでのび太としては気が気でないのだ。
殺意を持った他人もそうだが、幽霊を恐れることも忘れない辺りが実に彼らしい。
急ぎ足で教室の出口まで駆けていき、勢いよくドアを開け放つ。すると――
廊下に、誰かが立っていた。
帽子を被った、暗い顔をした女の子だった。
お化け屋敷顔負けの不気味な廃校を早く出たいと願う、のび太。
その前に突然現れた、少女。
となれば、どうなるか。
「ぎゃあああああああああああ!! お、おおおおおおお、お化け――――――っ!!!!」
……当然、こうなる。
◇
酒己達子は混乱していた。
次から次へとわけの分からないことが起こり過ぎて思考が追い付かない。
変な妖精が現れて自分を魔法少女にした。
悪い魔法少女をやっつける為に戦わされることになった。
この時点で、もう達子のキャパシティはいっぱいいっぱいだった。
だというのに、いつの間にか見慣れた街から景色が変わっていた。
高笑いを上げながら現れた派手な身なりの巨漢――殺し合いをしろと、そう言われて。
反抗した少女が、見せしめのように殺された。
整理の付かない内にまた意識がなくなって、目が覚めたら知らない学校に居て。
“なにが、どうなってるの……”
彼女の今の心境は、その一言に集約される。
端的に言って、理解が追い付かない。
結局あのトコとかいう妖精は何だったのか。
そもそもドフラミンゴはトコの関係者か何かなのか。
それとも、トコが言うところの"悪い魔法少女"関係なのか。
どちらにせよ、達子にしてみればとばっちりもいいところだ。
「レイン・ポゥ……香織ちゃんもいるんだ」
おかしいのが、トコの一件に関与していた人物が自分を除けばレイン・ポゥ……友人の三香織しかいないことである。
キャプテン・グレース、ファニートリック、繰々姫、ウェディン、テプセケメイ。
彼女達五人の名前は、少なくとも配布された名簿には載っていなかった。
-
何か意図があるのか、それともただの偶然か。
達子は、そんな事情に興味はなかった。
彼女の頭にあるのはただ一つ――香織と一緒に、早く元の日常に帰りたいということだけである。
達子は殺し合いに乗る気はなかったが、他の参加者までそうだとは限らない。
人間のままで居るよりは、変身しておいた方が格段に安全だろう。
魔法少女の精神力に頼って気分を少しでも楽にしたいという思いもあって、達子は素早く魔法少女・ポスタリィに変身した。
「はあ……」
変身することで、狙い通り少し気は楽になった。
しかしそれでも、憂鬱な気分は変わらない。
「どうしようかな……」
香織と合流したいのは言わずもがなだが、地図に記された会場の大きさは結構なものだ。
この広い島の中から目当ての人物を探し出すのは簡単ではないだろう。
そのことが、ポスタリィの憂鬱に余計拍車を掛けていた。
魔法少女に変身しているとはいえ、こんな状況の中で無暗に出歩くのは気が進まないが――そんなことを言っていては、いつまでも香織に会えないままだ。
とにかく一刻も早く、ポスタリィは親友の少女に会いたかった。
その為なら多少の怖い思いはしても仕方ないと思うくらいに、虹の魔法少女を求めていた。
なるべく物音を立てないようにしながら、荒れ果てた学校の中を進むこと数分。
とある教室の前に差し掛かった、その時だった。
バン! と勢いよく開け放たれる扉。
突然の出来事に、ポスタリィの心臓が飛び出そうなくらいに跳ね上がる。
だが驚いたのは、何もポスタリィに限った話ではない。
扉を開け、教室の中から飛び出してきた少年が、丸い目をこれでもかとばかりに見開いて、絶叫した。
「ぎゃあああああああああああ!! お、おおおおおおお、お化け――――――っ!!!!」
◇
「……成程。そういうことだったのか」
ごめんなさい、と平身低頭なのび太。
私の方こそ……と控えめに謝意を受け止めつつも、ばつが悪そうにしているポスタリィ。
そんな二人から事情を聞いたサラリーマン風の成人男性――吉良吉影は、呆れたように嘆息した。
地図上では希望ヶ峰学園、と記されているこの廃校の中を探索していた吉良もまた、突然轟いた絶叫に驚かされた。
どうするか迷った末、足音を極力殺しながら近付いていき……後は殆ど成り行きで今に至る。
「わたしが"乗っている"参加者ではなかったからいいものの……軽率に大声を出すのは控えるべきだよ、のび太君。
人間って生き物は、所詮善人より悪人の方が多いんだ。不用意な言動は、君の命を縮めることになる」
「うう……」
吉良達は既に自己紹介を終え、互いの名前を把握していた。
野比のび太と、ポスタリィ。
いきなりしょうもない騒ぎを巻き起こしてくれた緊張感のなさに苛立ちを覚えない訳はなかったが、余り心証を悪くする立ち回りは後々自分の首を絞める。
特に元凶であるのび太には出来るならこの場からさっさと消えてほしいとすら思っている吉良だったが、そこはぐっと堪えた。
“だが、切り時は早い方が良いだろうな。
わたしはこんな場所で死ぬつもりなど毛頭ない。まして、低能なガキのお守りに殉ずるなんてまっぴらだ”
吉良吉影という男は、見た目通りの平凡なサラリーマンである。少なくとも、表向きは。
規則正しい健康的な生活と、健全で最小限度の人付き合い。
成功し過ぎて恨みを買うことはせず、かといって失敗し過ぎて愚鈍の誹りを受けることもない。
-
周囲からの評価は決して悪くないが、これといって目立った特徴のない、影の薄い男。
“本当に腹立たしいことだが、わたしの心の平穏を脅かす奴が最近よく現れる。
……その中でも、貴様は"最悪"だ。貴様こそ間違いなく最低最悪のゴミクズ野郎だよ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ”
二人に背を向け、吉良は一人強く己の爪を噛む。
波風の立たない平穏な人生を何よりも愛する彼にとって、今の状況は耐え難いものがあった。
自分の本性を他人に、しかも同じ"スタンド能力"を持つ能力者に知られるという窮地を脱した矢先に、これだ。
新しい顔と身分で今度こそ平穏に暮らそうと思っていたのに、あのドフラミンゴはそれを嘲笑い、土足で踏み躙ってくれた。
殺してやりたいと――吉良は思う。
ただ消し飛ばすだけでは飽き足らない、全身を寸刻みにして、ガソリンをぶっ掛けた上で焼き払ってやりたい。
それほどまでに、吉良はドフラミンゴを憎悪していた。
やっとの思いで取り戻した平穏を台無しにしてくれた下衆外道に、身が焼けるような怒りを覚えていた。
“とはいえ、極論生き残れればそれでいい……このクソッタレな実験を壊す結末でも、わたしが実験の勝者となる結末でも、どちらでも構わない。
わたしの杜王町に帰ることが出来るのならば、贅沢は言わないさ”
しかし吉良は、怒りで我を忘れるような真似はしない。
あくまで目指すのは生存と帰還……その過程は何でも構わないというのが、彼の考えだった。
殺し合いに背くにしろ、反主催派に潜り込みつつ何処かで掌を返すにしろ、生きてこの会場を出られるのなら文句はない。
“問題は仗助や承太郎の存在……川尻の名を使えばいきなりバレはしないだろうが、名簿に載ってすらいない名を名乗る時点で疑われるのは避けられないだろうな。
のび太達は特に苦もなく騙せたからいいが……その辺りも追々、考えていく必要があるか”
そして出来ることなら、"吉良吉影"の本性を知っている杜王町のスタンド使い達は早い内に消し去っておきたい。
自分と関わりのないところであっさり死んでくれていれば一番良いのだが、忌まわしいことに彼らは揃って腕が立つ。
いつかは、顔を合わせる時も来るだろう。その時自分は、失敗なく立ち回って彼らを欺かねばならない。
考えるだけでも胸がキリキリする。つくづくこの殺し合いは、吉良を苦しめるストレス案件で満ちていた。
“それにしても――”
吉良はその視線を、手近な二人の片方、ポスタリィへと向ける。
顔も其処らのアイドルが裸足で逃げ出すくらいに可憐だが、吉良が注目したのはその"手"だった。
美しい。白くてシミの一つもない、絹で仕上げたみたいな手。
あれが欲しいと、吉良は心の底からそう思う。
この激しいストレスを少しでも癒すために、あの可愛らしい手を"恋人"にしたい。
彼女の手を手に入れられたなら、このドロ付いた気分も少しはスッキリする気がする。
“ポスタリィさんか……フフ、悪くない……いや、"良い"ぞ。彼女の手は、とてもいいッ!!”
――吉良吉影という男は、見た目通りの平凡なサラリーマンである。
――少なくとも、表向きは。
杜王町の殺人鬼――"キラークイーン"のスタンド使いは、郵便屋の魔法少女を標的に定めた。
【一日目 深夜】
【I-8 希望ヶ峰学園】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康、ストレス(大)
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済、武器あり)
[思考・行動]
基本:生存最優先。
0.反主催派の中に潜り込み、無害な一般人を装う。
1.のび太、ポスタリィと行動。だが機を見て切り捨てる。
2.取り敢えずは『川尻浩作』を名乗って行動する。
3.ポスタリィの"手"が欲しい。
4.仗助を始めとした杜王町のスタンド使い達は全員排除する。
[備考]
※『川尻浩作』としての生活を始めた直後からの参戦です。
【ポスタリィ@魔法少女育成計画シリーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:帰りたい。
0.川尻さん、のび太君と行動。
1.香織ちゃん(レイン・ポゥ)に会いたい。
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:ドフラミンゴを倒して、皆で元の世界に帰る
0.川尻さん、ポスタリィさんと行動。
1.ドラえもんやジャイアン達と合流したい。
2.川尻さんをこれ以上怒らせないようにしないと……。
-
投下終了です。
>>66の方、次の指名をお願いします。
-
やっぱり吉良は吉良だったか…
もう「彼女」候補を見付けてしまうとは流石と言うかなんと言うか
ポスタリィの未来に幸あれ…?
ここはキラ繋がりで夜神月を指名します。
-
感想、指名ありがとうございます。
投下します
-
「……どういうことだ、これは」
誰が見ても廃墟と認めるだろう街並みの真ん中で、夜神月は呟いた。
彼は、天才だ。おまけに肝も人並み以上に据わっている。
一歩間違えれば自分の人生が終わるような綱渡りを平然とした顔で続けてきた月は、最早滅多なことでは驚かない。
だが、これは――そんな彼の脳細胞をしても理解不能な事態であった。
「殺し合い? 実験? 願いを叶える? ……はは、ホラー映画にしては少し出来が悪いんじゃないか?」
そうは言うが、月も本当は分かっている。
これは映画の撮影や、テレビのドッキリ企画などでは断じてない。
あの時見せしめに殺された少女は間違いなく死んでいたし、何かの催しにしては手が込みすぎている。
おまけに、首に填められたこの首輪。
……軽く手でなぞり、衝撃を与えない程度に指で弄ってみただけでも、造りの精巧さがよく解った。
繋ぎ目は僅かにしか存在せず、内部のセンサーを作動させずに解除するのはまず不可能だ。
時折不穏な電子音も聞こえる。
十中八九、主催側に月の位置情報を伝えているのだろう。
「やる気になれば、いつでも殺せるってことか」
反抗した少女を殺してみせたように。
主催者――ドンキホーテ・ドフラミンゴは、簡単に参加者の命を奪い取ることが出来る。
それはこうしている今であっても例外ではない。
ドフラミンゴが気まぐれを起こしただけで、この実験場に押し込まれた哀れな参加者達は呆気なく全滅する。
冗談のような状況だった。
夢ならば早く覚めて欲しいと、月は切に願う。
何故なら自分に、こんな下らない道楽に付き合っている暇はないからだ。
重ねて言うが、夜神月は天才である。
頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに性格も社交的でどんな相手とでも対等に付き合うことが出来る。
完璧超人という言葉がこれほど似合う人間も、そうは居ないだろう。
だが彼は、完璧過ぎた。
完璧な天才であるが故に、その価値観は歪んでいった。
そしてそんな彼の下に、ある時"力"が舞い込んだ。
デスノート。
名前を書くだけで他人を殺傷できる、死神の商売道具が。
ノートを手にした彼は、山のような数の人間を抹殺した。
犯罪者のいない理想の世界――"新世界"を創造する為に、ノートによる粛清を重ねてきた。
自分にすら匹敵する天才が現れたことで幾度となく窮地に陥りながらも、その全てを躱し、今日までやり過ごしている。
「……幸いなのは、Lの奴も居ることだな」
ただでさえ件の天才には目を付けられている。
そんな状況で自分が突然姿を消したなら、仮に実験を生き抜いたとしてもとんでもない痛手だ。
弥海砂や魅上照のような協力者は居るものの、あの二人に奴を出し抜けるとは思えない。
その点、宿敵……探偵『L』もこの場に呼ばれているのは不幸中の幸いだった。
-
“突然のことには参ったし、首輪をどうにかする手段も全く思い付いちゃいない。だが……”
問題は山積みだ。
いかに月が明晰な頭脳を持っていても、それだけではどうにもならないことがこの場所では多すぎる。
じっくりと腰を据えて、丁寧に一つずつ片付けていく必要があるだろう。
“……これは千載一遇の好機だ。僕はこの実験の中で――Lを殺す”
しかしそれとは別に、月には成すべきことがあった。
それが、月の偉業を邪魔立てする唯一の障害であるLの排除だ。
Lは手強い。持ち前の頭脳もさることながら後ろ盾も巨大、おまけに彼の本名は未だに突き止められていない。
デスノートで人を殺すには、その人物と顔と名前を知っていることが必要不可欠だ。
このことから月はこれまで、Lという目障り極まりない強敵を抹殺できずにいた。
だがそんな問題も、この状況ならば関係ない。
面倒な手順を踏んでLの本名を突き止めなくても、殺し合いというルールの中で奴を抹殺できる。
無論、直接手を下すわけではない。
それでは、月が背負うリスクが大きすぎるからだ。
月の立場はあくまでも"反主催"。
下手に手を汚して他の参加者から不信を買うことは避けたいし、Lを殺すとなれば、彼をどうにかして罠に嵌め破滅させる……という方向になるだろう。
とはいえ、Lが知略に長ける強敵であることに変わりはない。
彼をどのようにして陥れ、破滅へと追い込むか。
そこは月の腕の見せ所だ。
“Lを蹴落とし、手駒を揃えて実験を打破する。決して簡単なことじゃないが……僕ならやれる”
キラとして活動し始めてから、元々自信のあった演技力には更に磨きがかかった。
同じ反主催派の参加者を纏め上げつつ、傍らでLを殺すために暗躍する。
余人にはまず不可能な芸当だろうが、月には自分ならば可能だという確信があった。
“むしろ、現状最大の懸念は……”
月は険しい顔をしながら、手元の名簿に目をやる。
オーソドックスな名前から人名とは思えないものまで、そこにある名前は様々だ。
名簿を上から順に見ていくと、かなり下の方に、月とLの名前が並んで記載されているのが分かる。
“そう、これだ。この名簿……恐らくこれは、繋がりの深い人物を意図的に固めて記述している”
このことは、すぐに解った。
洋名だけ固まっている列もあれば、和名だけが固まっている列もある。
そして『スノーホワイト』や『ピティ・フレデリカ』のように、何らかのコードネームと思しき名前だけが並んでいる列。
この名簿は何故か一列に記されている名前の数がバラバラで、月とLの列を始めとした幾つかの列に至ってはたった二人分の名前で一列を使用している有様だった。
“……名簿で同じ列に記載されている人物達の間には、何らかの関係性があると考えるのが自然か”
だがこう考えると、一つ分からないことがある。
それは――何故Lと自分の二人だけなのか、ということだ。
“確かに僕はLにマークされているし、僕とLの二人が対策本部の中でも一際異質な存在だ、というのは分かる。
……だが、本当にそれだけなのか? 本当にそれだけの理由で、ドフラミンゴは僕達二人"だけ"を選んだのか”
対策本部という繋がりならば、代表である月の父・総一郎が呼ばれていないのは妙だ。
キラ容疑という繋がりならば、以前に月と一緒に監禁されていた、弥海砂も呼ばれていなければおかしい。
なのに選ばれたのは夜神月とLの二人。
月にとってLは最大の敵であり、Lにとっても月――『キラ』は最大の敵である。
“僕をどうやって拉致したのかは知らないが……ドフラミンゴは、ノートの存在を知っているんじゃないのか?”
-
月は苦虫を噛み潰したような顔で、ぎり、と奥歯を軋ませた。
“だとすれば――奴は”
どのようにして知ったのか、その手段までは分からない。
だが自分とLのみを選出したことが、どうしても頭の中に引っ掛かっている。
ドンキホーテ・ドフラミンゴはデスノートの存在を……いや。
“奴は……僕がキラであることを知っている……?”
一連の"キラ事件"の真相を既に知っているのではないか。
あくまでも、これは仮説でしかない。
しかし外部には秘匿されている筈の対策本部の内情を、ドフラミンゴはどういう訳か知っている。これはほぼ確実だ。
そう考えれば、十分その可能性はある。
“もしそうなら、ドフラミンゴが僕のノートを握っている可能性もあるか……くそっ、面倒な事になった!”
月がドフラミンゴの立場で、キラ事件の真相を知っていたなら、確実にノートを自分の手元に置く。
首輪以外にも、主催は参加者の命を奪う手段を持っているかもしれない。
仮説とはいえ、さしもの月も冷静さを欠きそうになる程、それは恐ろしい展開だった。
どうする――どうやってこのアクシデントを解決する。
月は廃墟の壁に背を凭れさせ、暫し黙考に耽った。
……彼が再び顔を上げたのは、それから五分ほど経過した頃だ。
“……考えても仕方がない。今はまず、やるべきことをやろう”
物事を楽観視するのは好きではないが、全て自分の杞憂かもしれないのだ。
要らない不安に足を止めるよりは、目の前の殺し合いという難題をどうにかする為に努力する方が何倍も賢明である。
月は、殺し合いには乗らない。
他の反主催派と合流し、実験を抜け出る準備をする。
そしていずれはLを嵌め、間接的に抹殺する。
“その為にも最優先で合流すべきは、やはりLだ。奴と合流できないことには、陥れるも何もあったものじゃない。
それに……奴の頭脳はこの場できっと活きる。時が来るまでは、最大限利用させてもらうとしよう”
夜神月にとってLは宿敵であり排除すべき障害だが、月も彼の優秀さについては認めていた。
生まれて初めて出会った、自分と対等に戦える天才。
その頭脳を信頼しているからこそ、月は彼を利用しようと目論む。
その頭脳を信頼しているからこそ、月は彼を排除しなければならないと息巻く。
――夜神月は未だ知らない。
今彼のデスノートを握っているのは、ドンキホーテ・ドフラミンゴではないこと。
死神のノートはこの会場の中にあり、彼と同じ実験の参加者の手に握られていること。
多少劣化こそしているものの、名前を書けば他者を殺せる、その絶対性は揺らいでいないこと。
彼は未だ、何も知らない。
だが後に夜神月は、それを知ることになる。
その時彼は、どんな顔をするのだろうか。
決まっている――悪魔(メシア)のように嗤いながら、ノートにペンを走らせるのだ。
【一日目 深夜】
【F-10 市街地】
【夜神月@DEATH NOTE】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:実験からの脱出。
0.反主催派の参加者を集め、実験を抜け出す為の準備をする。
1.Lと合流し、利用する。頃合を見て彼を陥れ、間接的に殺害する。
2.ドフラミンゴに一抹の懸念。可能ならば始末したい。
[備考]
※少なくとも監禁終了後からの参戦です
※名簿の規則性について考察しました。列ごとに縁の深い人物が固められている、と考えています。
-
投下終了です。
>>72の方、次の指名をお願いします。
-
折原臨也
-
投下乙です。
反主催でありながら一方でL暗殺に頭を働かせる月が実にらしかったです。
高圧的でない分、サカヅキ以上に他の反主催と協力できそうで期待が持てます。
デスノートが誰に支給されるかも楽しみです。
-
投下乙
デスノートの制限はキツめにしといた方がよいかもですな
-
遅れます 水曜日までには投下します
-
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
"
"
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■