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Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-

1 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:46:34 qVKg300U0



 あなたのことを、耳にしてはおりました。
 しかし今、この目であなたを仰ぎ見ます。
 それゆえ、わたしは■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■ます。



                                        『ヨブ記』四十二章5〜6節







 まとめwiki:ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/1.html


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2 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:47:19 qVKg300U0







 ――『スノーフィールド』。

 それはアメリカ大陸西部、ラスベガスよりやや北に位置する、四方をそれぞれ異なる性質の大自然に囲まれた新興都市。
 自然と科学の調和された、未来を見据えた希望の徴とも、土着の恵みの狭間に自らを置いた、調律者気取りの傲慢の顕れとも、評価する口によって様々な言葉の飛び出す、そういった曖昧なバランスの上に成り立つ街だった。

 ただ、冷戦を終えた約二十年前、どうやら当時の市長は自治体の長として、少なくとも本人の認識としては前者に属する思想を持っていたのだという。
 グローバリゼーションが声高に主張され、実際に社会に働きかける力として広がりを見せるようになったその時代。新たに生まれた、地球の未来を見据えたこの都市こそをそのモデルにするべきだという訴えを起点に、積極的な移民の受け入れや、ホームステイを行うファミリーへの支援、更に手軽に異なる種類の大自然を楽しめる観光地化など、この地が様々な人種の坩堝として発展するように政策が推められた。
 それらによる弊害は多々抱えながらも、十年もすれば実績は重なり、また新たな人材の獲得による新興都市の発展への貢献は、確かな物となり始めていた。
 そんな政策の安定が増した時期に、そうした背景を受けて移民は更に増加し――単純な割合で見れば、今のスノーフィールドはニューヨークに勝るとも劣らぬ多種多様な人種を抱えた、特色豊かな独立市と化していた。

 そして、スノーフィールドの中央区からやや北西に外れた、二階建ての建売住宅に暮らす双子の姉妹もまた。ちょうどその時期に両親がドイツから移住したために、この街の一員となった少女達だった。



 ……微かな不穏が漂い始めた、“このスノーフィールド”で確認できる記録と、極一部を除いた大多数の記憶に拠れば、だが。













「「おやすみなさーい!」」

 夜。家の中に居るお互い以外の全員に就寝の挨拶を告げた双子の少女が、自分達の部屋へと戻って行った。
 彼女達は双子にしても、本当に鏡写しのように瓜二つの姉妹だった。姉の方が、同じ銀を溶かしたような髪にも褪せた紅を滲ませたような色合いを帯び、また綺麗に日焼けしたように肌が褐色である以外は、完全に同一と言っても良いほどに似通った容姿をしていた。
 ……とはいえ、同じ環境で育った双子が全く同一の存在なのかというと、そうでもなく。

「面白かったねー、『マジカル☆ブシドームサシ』!」

 映像ソフトの新作が手に入ったジャパニメーションに夢中な妹は、入浴を挟んでなお興奮冷めやらぬ様子で姉に力説する。
 対する姉は、同じ顔に呆れたような表情を浮かべ、肩を竦めていた。

「もう十一歳なのに夢中になっちゃって……相変わらず子供っぽいわねー」
「な……なによ大人ぶっちゃってー! それに、大人のリズお姉ちゃんだって熱心に見てたんだから!」
「ふーん……じゃあイリヤは、住み込みのメイドなのに家事もしないでゴロゴロしているリズが立派な大人だと思うの?」
「うっ、それは……」

 等と。歳相応か、それよりやや幼い傾向のある妹と、おませな姉は、話題のリズ達に就寝を告げてからも二人、かしましく歓談する。
 朝に目を覚ましての挨拶から、夜の眠りにつくまでの一日中。こうして時に張り合い、また時には支え合う、それが二人の『日常』だった。

「ところでイリヤ」

 そんな風に毎晩、ベッドの上で繰り広げられる姉妹の他愛ないお喋りの中で。姉である少女が改まって、妹の名前を呼んだ。
 思わず意識した妹に対し、姉は投げやり半分な様子で、しかし緋色の瞳にだけは真剣な光を灯して、その口を開いた。

「あなた、本当にわたしがお姉ちゃんってことで良いの?」
「えっ……?」

 そんな姉の問いかけに、妹はきょとんとするしかなかった。


3 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:47:51 qVKg300U0

 こんな姉で良いか、ではなく。自らが姉ということで構わないのか、という問題提起の意味が、妹にとってはあまりにも意図不明だったからだ。
 同じ日に生まれた双子とはいえ、それを今更疑問視する意味がさっぱりわからなかった妹は、真剣に考えた結果単純に姉が言い間違えたものと考えて……その真剣な勢いのまま、返答していた。

「うーん……クロはエッチだし意地悪だけど、それでも、わたしのお姉ちゃんなのは変わらないよ」

 いつも、悪戯ばかりして、宿題を写させろと言って来て、(小学生としては、だが)性的に奔放が過ぎて、挙句そんな横暴に我慢できなくなった自分と喧嘩して。
 日々目にする姉の素行は、とてもではないが、心から尊敬できる立派なレディのものではないと思う。
 ……けれど。それでも。

「いつも、最後はわたしを助けてくれた、優しいお姉ちゃんだもん」

 確信を込めて言ってから、気恥ずかしさを自覚して、妹は赤面した。

「あ……あわわわ! だ、ダメ! やっぱり今のなし! ノーカン……っ!」
「――そう。やっぱり今のあなたは、こんなに近くにいても、隣には居ないのね」

 いつもなら、必死に取り繕おうとする妹を全力でからかうはずの姉が。
 寂寥を滲ませて妹に零したのは、そんな謎めいた言い回しだった。

「これじゃ約束、守れないじゃない……バカ」
「え、なに? どういうこと?」

 唐突にバカ呼ばわりされるも、その時の妹には怒りよりも姉の様子への戸惑いが強かった。
 対する姉は、そんな妹の心配に取り合うことなく、小さく首を振った。

「なんでもない。それより、おやすみのチュー!」
「わー!?」

 油断したところに襲いかかられ、押し倒された妹は姉に唇を奪われた。
 キス魔であり、熟練の技巧者でもある姉の舌技により、登り詰めた妹は疑問を抱えたまま、今度は虚脱状態にも似た深い眠りへと落ちて行き……






 ……そうして、己の半身の意識が一度、完全に途切れたのを見届けて。

「――行ってくるわね、イリヤ」

 そんな言葉を残した双子の姉――とされている少女の姿は、扉にも窓にも手をかけることなく、忽然と部屋の中から消えていた。
 その別れの挨拶が、眠りの中にある妹――とされている同じ容姿をした少女には、決して認識されることのないまま。













 深夜。
 双子の妹と共に朝を迎えるはずの寝室を抜け出した少女は、どうしたわけか、スノーフィールドが誇る摩天楼の頂点に居た。
 その華奢な身に纏うのは、部屋を去る直前に着ていたパジャマではなく。腰と胸部にそれぞれ食い込むほどタイトな漆黒のプロテクターを身につけ、赤い外套を纏いながらも褐色の肌を大胆に露出させた奇抜な服装に変わっていた。
 深夜に女子小学生が一人で立ち入れるはずがない場所に、妙に様になっているものの、とても一般人とは思えない格好で現れた彼女――クロエ・フォン・アインツベルンは、静かに眼下の街並みを見下ろしていた。


4 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:48:56 qVKg300U0

 クロという愛称を持つ少女は、そのまま一歩踏み出す。三歩も進めば、そこには足場となる固形物が何もない。
 即座に重力に掴まれ、落下を始めた彼女はしかし、自殺を図ったわけではなかった。
 一段低い、次のビルの屋上へとクロは落下する。確実に五体が砕ける勢いまで加速しながら、彼女は無音での着地に成功する。
 更にあろうことか、彼女はそのまま大きく、遠くへ跳躍していた。
 行き交う大勢がまだ、街に漂い始めた不穏を自分には関わりのないことと気にも留めない街の明かり――地上に現れた偽りの星宙のような輝きと、夜空に輝く真なる星々との狭間を、彼女は流れるように翔けていく。

 高層ビルの屋上から踏み出せば、次は隣のビルの屋上へと跳躍し、着地する。女児童どころか、およそ常識の範囲内に生きる人間には成し得ない行為を繰り返し、クロはスノーフィールド狭しと駆け巡る。

 移動の最中。不意に口から漏れるのは、目下、この街における最重要事項――クロにとっても、避けては通れぬ案件の名称だった。

「聖杯戦争、か……」

 口を開いて再確認したそれは、彼女にとっては今更な話でもあった。

 聖杯戦争。それは名の通り万能の願望機、聖杯を求める戦争を模した魔術儀式。
 ここでいう聖杯とは、救世主が十二人の弟子との最後の晩餐で用いたとされる、神の子の血を受けた杯にその名を由来しているが、必ずしも真実の聖遺物である必要はないとされる。
 問われるのは、術者の求める成果を得られるか否か――即ち、願望機としての真贋のみ。

 そして此度の焦点となる物体も、確かに願望機たるチカラを秘めしもの――正しく聖杯と呼ぶべき代物だった。
 それは正体不明の何者が創造し設置した、地球をその誕生から観察し続け、地球上のあらゆる現象、遍く生命、全ての歴史、そして魂さえも記録してきた神の自動書記。
 常に地球の傍らに在り続け、途方も無い観測を続けて来た天体。

 その名を、ムーンセル・オートマトン――即ち、月そのものである。

 地球の全てを記録するタイプ・ムーンであるこの聖杯は、その存在意義を遂行すべく、人間の魂をより正確に記録するために一つの実験を行っているという。
 それが、森羅万象を観測し得る自らの機能――一度主観が介在すれば、望むままの未来を導くことができるその禁断の箱の使用権を報酬に、無作為に招集した人々を競い合わせる擬似戦争。

 つまり、聖杯戦争。

 しかも、かつてどこかの地上で行われた同名の魔術儀式を、この月の聖杯が人間の本質を探るのに適していると判断したのか。
 それに倣い、参加者となったムーンセルのマスター候補達は、並行世界すら見通す月が保存する、人類史に刻まれた英霊の記録を基に再現し提供された使い魔(サーヴァント)を従え、刃を以っての争奪戦を演じさせられるのだという。無論、ムーンセルの目的に合わせてのアレンジは多々加えられているとのことだが。



 ……そんな、月の眼が観戦するための舞台に上げられた役者の一人が、クロだったのだ。

 気づけば巻き込まれていたこの戦いは、寸前まで身を置いていた並行世界で行われている聖杯戦争ではなく。彼女(クロ)の出生そのものの、本来の目的であったそれに酷似している。
 既に潰えたはずの。あの時、己の半身が救ってくれたことで解き放たれたはずの、クロ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)の聖杯戦争(Fate)に。

 そこでふと立ち止まったのは、外から働きかけた何かがあったわけではなく。自己の内側で垂れ流していた思考がたまたま引っかかっただけの、気紛れな小休止によるものだった。
 街に淀む気配に気づくこともなければ、その本来の記憶を取り戻すこともない故に。抜け出した部屋に残してきた、家族という『役割』を与えられた者の穏やかな寝顔をクロは思い返していた。

「……ほんっとう、今更なのよね」

 仮令、それを目的に造られたのだとしても。
 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(クロ)の居場所は、もうとっくに、そんなところではなくなっている。
 クロの願う居場所は――生きていたい日常は、天の杯にはないのだ。
 ましてや、こんな月の眼のことなど知ったことではない。

(ま、利用してアゲル分ならいいかもだけど――)

 あらゆる未来を識るというこの月の聖杯を使えば、友の地球(セカイ)が抱えた問題を解決することもできるかもしれない。
 そう考えるとにわかに欲望を駆り立てられるが、そもそも現状把握も充分ではない時点で結論を急いではならないと、クロは思考を切り替える。
 自らの一挙手一投足の末、『家族』がどうなってしまうのかもまだ、わからないのだから。


5 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:49:24 qVKg300U0

「……はぁ、面倒」

 己がこんな状況に在る、というだけで精神が消耗する。友を想い、どんなに微かでも弱音を吐く、という行為そのものを自戒してはいるのだが、誰にも見られていない状況でまで気を張り詰めてはいられなかった。
 あるいは誰とも関わっていないからこその、消耗なのかもしれない。
 何しろまだ、クロは仲間となり得る相手どころか明確な敵とも――自身以外の聖杯戦争参加者、その一切と接触できていないのだから。

 ムーンセルは、あらゆる可能性を考慮するため、いつかの時点で大なり小なり分岐した――地球の魔術では干渉できないほどに遠い数多の並行世界にまで――多くの場合は、クロが手にしたものと同様『白紙のトランプ』という形で現れる招待券を配布した。
 それを手にし、かつ適正を認められた者たちは、まずムーンセルが再現したこの偽りのスノーフィールドで記憶を改竄され、予選期間をNPCとして偽りの暮らしを送らされる。
 その、自らの置かれた世界が偽りであることに気づけた者から本来の記憶を取り戻し、加えてムーンセルと聖杯戦争に関する最低限の知識、そしてサーヴァントが与えられるという。

 更に、今は明かされていないもう一つの条件が満たされることで、最後の一人となるまで殺し合い、ムーンセルの中枢部『熾天の檻』へのアクセスキーとなる『小聖杯』を奪い合う、地上の聖杯戦争を再現した本戦が開始されるとのことだが、予選が始まってまだほんの数日。

 おそらく、特殊な存在である己が記憶を取り戻したのは、この街に招かれた人々の中でも一際早期に分類されるのだろう。
 故にまだ、そもそも。聖杯を巡り、競い合うべき相手そのものが、ほとんど現出していないのかもしれない。

 ――それでも、皆無ではあるまい。

 少しずつ、しかし確実に。この数日で偽りの街を覆う雰囲気が変化していることを、クロは薄々ながらに察知していた。
 偽られた日常の中で、少なくとも与えられた記憶にあるそれと比すると、噂好きの人々の間で口にされる異変が増え始めた。

 曰く、何処かの路地裏に。あるいはいずれかのビルの屋上に、青白い燐光を帯びた“幽霊”が現れるとか。
 ここ最近頻発する、ガス爆発によるとされる家屋等の倒壊の前後でも、それらの影がちらついていたとか。
 直接の面識こそない相手ではあるが、急に姿を見なくなった、音信不通になった知人という話題すら、幾度か耳に挟むようになった。

 動き始めている。変貌し始めている。偽りの街が、真実の戦場へと。

 その影響は、少しずつ、自分達にも近づいて来ている。

 そんな確信があった故に、クロは先手を取るべくこうして夜に一人、街を流離い僅かな手掛かりを探すことを決意したのだ。

 まずはこの数日間で怪我人が出た、家屋や備品の破損する事故があった、あるいは人間そのものの行方が消えた……そんな噂が複数件流れて来た工業地帯を、クロは目指していた。
 もっとも、そこに巣食っているらしいマフィア……の、役割を与えられた者達の、与えられた通りの日常の結果かもしれないが。無責任な目撃情報の中では、例のガス爆発によって実際に家屋の崩壊などの報道もされている以上、比較的確度が高いと言えることだろう。

「そもそも」

 ……一度栓が抜けた感情は、普段自戒を強く心がけていても、落ち着くまでは溢れ出てしまうものらしい。
 気がつけば、次の不満がその口から吐かれていた。

「いつになったら召喚されるのかしら。わたしのサーヴァント」

 されたらされたで、自らの体質を考えれば維持が死活問題となることは違いないが……聖杯戦争を勝ち抜くための剣にして盾たる絶対の力、サーヴァントが手元にないというのはあまりにも心許ない。
 いわんや、ゲームにおける最大の切札として配られる彼らは物言わぬ自動兵器などではなく、ムーンセルにより再現されたものとはいえ確固とした人格を持った個人なのだ。
 絶対命令権たる令呪があるにしても、それはあくまで三画のみ。緊急時を除いて活用できない以上、協力関係を築き上げるために意思を疎通する必要がある。基本的に、そのための時間は多いに越したことはないだろう。


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6 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:50:59 qVKg300U0

 だというのに、確かに記憶を取り戻し、予選の第一段階を突破したはずの自分に宛てがわれるサーヴァントは、未だ姿形も見えはしない。
 サーヴァントとの関係構築と同様に、諜報の重要性も理解していたために。とうとう痺れを切らして、単身行動を開始することになってしまったではないか……



「――もうされていますよ、クロエ・フォン・アインツベルン」



 ……そんな、誰に向けたわけでもない愚痴に、そう答える声があった。

「……へぇ。そうなの」

 寸前まで無人だった。
 高層ビルの屋上の、一つしかない出入口にも気配はなかった。
 なのに忽然と現れ、しかもサーヴァントの意味を知っている回答者――ただのNPCではあり得ない。

「あなたが“そう”、ってわけじゃないみたいだけど。どうしてそんなことを知っているの? シスターさん」
「それは、私が今回の聖杯戦争の監督役として機能しているAIだからですね」

 果たしてクロの振り返った先に居たのは、一人の年若い尼僧だった。
 
「ああ、私のことはシエルとお呼びください」

 青みがかった短めの髪の下、シエルと名乗ったシスターは、人好きのするような笑顔で名乗りを上げた。

「聖杯戦争の監督役……カレンや言峰っていう神父みたいな立場ってこと?」
「はい。もっともその二人と違って、私の元となった人物は部外者止まりで、監督役経験者という記録はありませんが」
「詳しいのね」

 シエルの返答に、クロはつい正直な感想を漏らした。
 だがそれも仕方のないことだった。独り言のつもりで口にした名前はそれぞれ、異なる世界で執り行われた聖杯戦争の監督役の名前だったのだから。

「聖杯戦争に関しては、数多の並行世界も含めてムーンセルは観測を行っていますから。その上で、今回の監督役は弓のシエルが務めるべきと結論し、私が用意されたわけですね」

 同時、シエルの並べた言葉で、クロは一つの見識を得る。
 目の前にいる女はどこからどう見ても本物の人間だが、地上を行き交う市民たるNPCとは違い、生身の肉体を持たないムーンセルの用意したAIのようなものであるのだと。

「……それで、あなたは何をしにここへ? 監督役のありがたいお話なんて、まだ他に何か言うこと残ってるの?」

 此度の聖杯戦争に関する基礎知識は、既にムーンセルから直接授けられている。
 奪い合うべき『小聖杯』についても、今はその詳細は不明でも、本戦開始後に通達されるという情報が既に脳裏に刻まれている。
 となれば、かつて美遊の兄に言峰綺礼が行ったような説明責任など、シエルにはあるはずが……

「今回の目的はデバッグですね」
「デバッグ?」
「はい。実は、ムーンセルそのものの更新を経た今回からの聖杯戦争には、二つの改革のテーマがありまして。
 一つは量子記録固定帯……人理定礎で枝別れし、剪定後に独立した遠い並行世界からもサンプルを収集するようにしたこと。そしてもう一つは、より地上の聖杯戦争に近い様式で再現を行う、というものです。
 一対一のトーナメントではなくバトルロワイアル形式を採用し、また地上では敗者復活も多々見受けられたことから一度マスター権を失った者もムーンセルから直接の消去は行わず、加えて神秘の秘匿という魔術社会における遵守事項までロールプレイして頂く、というのもそれらの一環です。
 なので、従来は何らかの問題があればムーンセルが直接処理していた案件も、今回からは情報そのものの書き換えではなく、極力現地に用意された人員で対応するという過程まで再現することになっています」

 クロの疑問に、シエルは連々と回答する。

「つまり何らかの不具合があれば、聖杯戦争を管理運営する監督役を模したNPCが対処することになるわけです」
「そう、大変なのね」
「ええ。ムーンセルの目的上、私にサーヴァントが与えられるわけでもありませんからね。全て自分の足です。酷い職場に捕まってしまいました」

 AIと名乗っておきながら、実に人間らしく感情を込めて喋るシエルの姿に、油断するとこれが本当に作り物なのだろうかという疑念が浮かび上がる。
 周辺の自然を含め、街一つを再現するムーンセルのシミュレートの精巧さに、クロは一先ず素直に感心することにした。


7 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:51:36 qVKg300U0

「参加者が出揃えば、予備の令呪等を報酬に協力を要請することもできるのですが、今はまだ記憶を取り戻した方も少ないですし……何より、この問題は現時点だと、監督役が解決しなければならない案件ですから」
「……ふーん?」

 苦笑するシエルの様子を眺めながら、クロは少しだけ意識を張り詰め直した。
 彼女の物言いに、きな臭い物を感じたからだ。

「実を言うと、過去に行われていたトライアルならここまで大事にはならなかったのですが……魂をより正確に記録するため、在り方に影響を与えるその器、参加者の肉体(組成)ごと情報化しSE.RA.PHに招くように更新した、今回に限っての瑕疵(バグ)ですね」
「……で、何なの。そのバグって」
「貴方の身に起きていることです。クロエ・フォン・アインツベルン」

 シエルの言葉は予想の範疇であったが、事実として突きつけられたことにほんの少しだけ動揺する己を自覚する分、クロの返事は遅れてしまった。

「――そう。じゃあ、前言撤回。何が起きているのか、監督さんに説明して貰っても良いのかしら」
「構いませんよ」
 シエルは即答し、早速詳細を述べ始める。
「今回の聖杯戦争では、本来記憶を取り戻したマスターにはその者が利用した『白紙のトランプ』が再び提供されます。そしてそれを核として、サーヴァントが召喚されるのです」

 しかし、クロがスノーフィールドに着いた途端に記憶を取り戻しても、『白紙のトランプ』が手元に帰って来るということはなかった。
 何故なら。

「ですが、あなたについては既に、『夢幻召喚(インストール)』という形でそのカードのサーヴァントと契約している状態にあるとムーンセルには判断されています。
 契約だけならともかく、通常ならそれによってサーヴァントが現界しているとはまずムーンセルには認められません。しかし、あなたの場合は、それがあなた自身の存在と等号で結ばれてしまいました」
「わたし自身の現界が、そのままサーヴァントの現界としても認識されているわけね」

 自身の言葉を引き取ったクロに頷き、シエルは説明を続ける。

「そのため、お預かりした記憶は即返還されることとなりましたが、一方でムーンセルは今のあなたに新しいサーヴァントを提供することができないんです。
 これはセラフにおいて、契約によって現界しているサーヴァントはマスターのIDと紐付けされていることが理由になります。
 このような問題が発生したのは、今回のシステムの変更がまだ地上の模倣として推移段階にあるためですが……ともかく。擬似的にサーヴァントの肉体で現界していながら、明確に別個の人格を持つマスターでもあるあなたが『白紙のトランプ』を正式に受領するには、一時的にでもそのサーヴァントカードとの契約を解除する必要がありますが」
「そうね。わたしはこの契約の解除なんてできないわ」

 クロは不可能を認め、首肯する。現界の核となっている弓兵の夢幻召喚が解除されれば、クロという人格は依代となる器を失い、消失してしまうだろう。

「ええ。それはこちらも理解しています。しかしあなたの組成情報を丸々再現する都合上、その核となるカードだけを『白紙のトランプ』に書き換えることは今のムーンセルにもできませんでした……残念ながら」

 心底から惜しむようなシエルの口ぶりに、クロは先程覚えた不安が大きくなるのを感じて、身構えながら更に問う。

「そんなに問題なの? 『白紙のトランプ』を核としないサーヴァントが居るのって」

 クロが自身のサーヴァントを召喚できず、この身一つで戦わなければならない、というのは、確かに多大なディスアドバンテージではある。
 しかし、その不公平を是正できなかったことに運営側がそこまで気に病むほどの理由はない……ように思うのだ。故に、この違和感は無視できない。
 果たしてシエルは、勿体振ることもなく口を開いた。

「ええ。何しろそのサーヴァントが誤認されたまま頭数に入ってしまうと、ムーンセルの召喚に不備が生じてしまって、約束の数が揃いませんから」
「……ああ、なるほど。そういうことね」

 クロ――本来のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンには、極小規模ながら願望機としての機能が備わっている。
 自身の魔力が及ぶ範囲において、過程を省略し、望んだ結果のみを直接獲得することのできるチカラ。

 それは魔術の行使のみならず、極限られた範囲において、望んだ『答え』を得る能力としても機能する。
 例えば今の会話で効果範囲に舞い込んだ、聖杯戦争運営に当たってムーンセルとその使者がこうも固執する、『白紙のトランプ』という魔術礼装にどのような効果があるのか、といった疑問への解答も――


8 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:52:33 qVKg300U0

「……つまりわたしは、あなた達にとって要らない小聖杯っていうことなのね」
「要らない、というよりも、在ってはならない……というべきでしょうか」

 御しきれぬ怒りと、平坦な憐れみと。
 それらの言葉が交わされた時には、既に二人の姿はそこにはなく。
 代わって鋼の激突を産声に、極小の星屑が夜空に瞬いていた。

 ……尋常ならざる速度の、人間離れした跳躍。それを行った両者の、火花散る交錯は一瞬にも満たず。
 投影魔術で造り出した黒白の夫婦剣――宝具の贋作を手に、幾分背の低い近隣の雑居ビル屋上に落ちるように逃れたクロに対し、両手の指間に複数のショートソード……『黒鍵』の柄を握り込んだシエルは、元のビルの屋上に悠々着地してから、なおも言葉を投げかけ続けた。

「システム上の不備のようなものですが、残念ながら改善策は一つしかありませんでした。
 イレギュラーですらなく、聖杯戦争の進行にとって明確な障害(バグ)であるあなたを消去する、という方法しか」
「――っ、勝手に拐っておいて、よくも厚かましく言えるわね!」
「ええ。そのようにロールプレイされたものでしかありませんが、私個人の気持ちとしては申し訳なくも感じます。
 本来なら独立した人格(魂)であれば、その状態を問わずサンプリングしようとしたムーンセルの手違いであって、あなたに非はありませんから」

 口論と共に、屋上から屋上への移動を続ける両者の刃もまた激しく交わる。
 時には地に水平な足場のみならず、垂直な壁や柱も踏み台に、各々華奢な爪先だけで亀裂すら刻みながら。
 空中を撞球のように飛び交い弾き合う、まるで人間の領分を越えた攻防が、街行く人々の誰も気づかぬままにその頭上で繰り広げられて行く。

 存分に貯蓄があるとはいえ、互いに両手の剣を一撃ごとに砕き使い捨て取り替えるほどの、凄まじい応酬の最中。優勢であるのは、獲物を追うシエルの方だった。
 驚くべきことに、英霊の力の一端を身に宿したクロよりも、追跡者は数段上手の実力者であった。おそらくはあの封印指定執行者と同等か、それ以上か。
 斬り合いつつ、興奮混じりに何とか叫び返すのがやっとのクロに対し。平然とその斬撃に対処するシエルは息一つ乱すこともないまま、先程と変わらぬ調子で口を開く。

「ですが、あなたが居る限りこの月の聖杯戦争は始まらない。いくらムーンセルが干渉を避ける方針とはいえ、その異常事態が度を過ぎて続けばセラフごと全てが消去されるでしょう。
 そして外部から来た者がムーンセルから生還する術は、聖杯を獲得するまで生き延びることだけです。
 ――月の招待に応じてしまった時点で、貴方の運命は決まっていました」

 通告。同時、剣戟の中殆どラグもなく、至近距離で放たれた強力な魔術に不意を衝かれたクロは受け身も取れないまま、背後のビル壁まで吹き飛ばされ、叩きつけられる。
 感電、次いで背部を強打した勢いで、クロの肺から酸素が絞り出された。
 その身が只人ではなくとも人体を模している以上、呼吸を阻害されては魔力の循環に支障を来たす。
 そうして生まれた隙を逃すことなく、シエルの投擲した黒鍵の群れは灼熱と共に四肢を貫き、クロの肉体を磔刑の如く縫い止めた。



 ……運営用のNPCが目の前に現れたのは、自身に関わる問題があるからだとは予想できていた。
 そこでまず対話が行われた以上は、せいぜい交渉で解決する程度の案件だと思っていたのに――

 ――語り聞かせていたのは、希望を断つため。
 そして、覚悟と共にその運命を受け入れさせ、せめて安らかに眠らせるため。



「何が、運命よ……っ!」

 涸れた悲鳴に蓋をして、吐き捨てると同時にクロは極小の願望機としてのチカラの一端、空間転移を行使する。
 人智を超えたその御業は拘束より解き放たれ、全くの同時にシエルの背後を取る起死回生の一手と相成った。
 しかし、逃亡ではなく更なる抗戦を選ぶには、既に負傷の度合いが重過ぎた。憑依経験により、手足の延長のように馴染んでいた夫婦剣も満足に振りきれないほどに。
 そんな不完全な一撃は、月の代行者には当然の如く防がれた。


9 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:53:31 qVKg300U0

「今更……何を……っ!」

 それでも、武器を我武者羅に振り続ける。力任せでも、迫り来る死を遠ざけようと。
 ――そう、既にクロは、ただ握った刃を闇雲に振り回すしかできなかった。
 どんなに願えども、活路となる『答え』は、クロのチカラでは見つけられなかったから。
 
「自身に一切の非がないとしても」

 その示す意味を否定せんと、限界を越えた刃が遂に敵の身体を捉えても。
 滑る感触と共にその胸を裂いてやったのに、尼僧は声が濁ることもまるでなく――あろうことか、その場で元の状態に復元してみせる。
 致命傷を負ったはずのシエルは傷一つない肉体を取り戻すと、未だ四肢から出血するクロに容赦なく襲いかかって来る。

「どんなに受け入れ難くとも」

 ああ、これでは『答え』も見えぬはずだと……腑に落ちる納得と同時、肌を這い上がってくる絶望の奇妙な共存の中へと、クロの心は浸される。
 なにせ逃げ場のない、いつか諸共押し潰される閉鎖空間にあって。殺すことのできぬ追手がただ只管、己を殺しに来るのだから。
 こんな、何の縁もないような場所で。ただ偶然、見つけたカードを拾っただけで――

「――運命(てん)より幸福を受け取った者は、等しく不幸も受け取らなければならないのですよ」

 生存を否定する理不尽に立ち尽くすクロに。尼僧の形を為した彼女の死は、そんなことを言い聞かせた。

 ――あたたかい家族に恵まれた。笑い合える友達ができた。
 短い間だけとはいえ、何の変哲もない普通の暮らしを送ることができた。

 影に葬られていたこの魂が、誰でもない一人の女の子として、そんな幸せに囲まれて生きられた。
 仮令、何を代償に請われるとしても。何物にも代え難い、そんな光を与えてくれたというのなら……確かにきっと、感謝するべきなのだろう。



 だけど。

                  ――――まだ、負けられない戦いの最中にあって。

 それでも。

                  ――――いつか、叶えてみたい夢があって。

 我儘でも。

         「だから、クロ。わたしの隣にいて。
            もう離ればなれになるのは……ヤだよ」

                  ――――今、悲しませたくない人がいる。




 ――――――こんなの、納得できるわけがない。



「っ、あ、あぁあああああああああああ――――ッ!!」

 喉を震わせ絶叫し、既に折れた心を無理やり鼓舞して。クロエ・フォン・アインツベルンは、立ち塞がる結末に挑みかかった。


10 : プロローグ ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:54:17 qVKg300U0




 ……そして、未来(まえ)を見据えたまま、千年を生きた純潔の角に貫かれる間際。



(わたしがいなくても、しっかりしなさいよ。ウジウジイリヤ)



 少女は最早、再会叶わぬ家族のせめてもの無事を祈ると同時――ただ、ここで潰える己の運命を恨み、果てた。













 最期の瞬間、己を運命を。それを定めた大いなる何かへの行き場のない恨みを抱えたまま、憐れな少女は爆ぜ飛んだ。
 その身を編んでいた魔力が解かれた後に、ただ一枚の紙切れだけを名残として。

「……ふう」

 シエルは吐息一つ零し、凶器を片付けた後。そのカードが、夜風にさらわれてしまう前に拾い上げる。

「誉めてあげましょう。貴方は、中々に強敵でした」

 カードに描画された弓兵へと、語りかけるように囁いた後。それを懐に閉まったシエルは、人工の光が煌めくスノーフィールドを睥睨する。
 かつて聖杯に至るために、聖杯戦争を解析しようとした人間達が作り上げた実験場の模造品を。
 今は他ならぬ聖杯が、数多の並行世界で幾度と無く繰り広げられた聖杯戦争の要素を掻き集めた闘争で以って、人間の魂を解析すべく創造した箱庭を。
 原典(モデル)と同様に、観測を目的に幾つもの思惑が混ざり合って形成された、この狭間の街を。

「――さて。障害は取り除かれました」

 微かな感傷に浸っていたような顔つきが、切り替わる。
 屈託ない少女のようなそれではなく、私情を挟まず、月(てん)よりのオーダーを代行する装置の表情に。

「どうぞ始めてください。貴方がたの聖杯戦争を」

 そしてこの夜、この犠牲を皮切りとして。
 月が見下ろす偽りの街で、人間と英霊達の饗宴が幕を開けることとなった。


11 : ルール説明 ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:56:02 qVKg300U0



【企画概要】
・当企画はTYPE-MOON原作の『Fate』シリーズの設定をモチーフとした、版権キャラによる聖杯戦争を行うリレー小説企画です。
・参加者は作品世界を越えて現れた『白紙のトランプ』に導かれて、『ムーンセル・オートマトン@Fate/EXTRA』の電脳空間内に再現された偽りの『スノーフィールド@Fate/strange Fake』を舞台に、後述のルールに則った聖杯戦争を行います。
・参戦する主従は15組でスタートする予定です。この15組は後述の登場話募集期間後、>>1が独断で参戦主従を決定する予定です。
・現状一クラス二騎程度を想定していますが、通常クラスの他にもエクストラクラスのサーヴァントの投下も受け付けております。



【基本ルール】

※形式:15組のマスターとサーヴァントによる、スノーフィールドで再現された聖杯戦争
※勝利条件:ムーンセルの中枢『熾天の檻』へのアクセス権、つまりは聖杯の使用権を最初に獲得するサーヴァントとそのマスターになること

 なお、『熾天の檻』にアクセスする方法は『Fate/EXTRA』本編と異なり、殺し合いを勝ち残るのみならず当聖杯戦争における『小聖杯』を必要数確保する必要があります。
『小聖杯』に関する詳細については、参加者決定時に併せて公開する形式とさせて貰います。あしからずご了承ください。


 1.再現された聖杯戦争について

・ここでいう聖杯戦争はムーンセル・オートマトンが記録に値する人間の魂を選出するために執り行う儀式のことを指します。目的を果たすのに最も優れた観察様式として、地上で行われていた『聖杯戦争』という形式が選ばれた結果、地上のそれを再現しているという設定です。
・今回の主なモデルとして選ばれたのは、『Fate/strange Fake』本編で描かれた『偽りの聖杯戦争』となります。ただし、当企画においては真偽の別はなく、実際に召喚されるサーヴァントの数も更に二騎増加しています。
・聖杯獲得条件の全貌は前述の通り、現時点では公開されておりません。運営用NPCは詳細を把握していますが、予選期間中は参加者に公開する権限を与えられていません。
・地上における聖杯戦争の再現率を向上させるため、当聖杯戦争では神秘の秘匿(行為の再現)が重要視されており、市民用NPCとは別に地上における状況を再現するための運営用NPCが用意されています。
 監督役を筆頭とする運営用NPCは『Fate/EXTRA』本編におけるNPCに近い役割で、聖杯戦争の円滑な運営や神秘の秘匿のために参加者の補助を行いますが、放置することで神秘の漏洩が不可避となった場合には該当する主従を地上の監督役に可能なレベルで再現された能力と権限で処罰します。
 そのため、仮に市民全員の魂食いやスノーフィールドの消滅を齎しても神秘の秘匿さえできていれば問題となりませんし、逆に虫一匹傷つけていなくとも神秘の漏洩が不可避である事態を招けば処罰対象となり、違反した主従は討伐令を発令されるなどのペナルティを負う可能性があります。


 2.NPCについて
・NPCは大まかに分類すると、市民用NPCと運営用NPCの二種類が用意されています。
 前者はスノーフィールド市民の役割を与えられた元マスター候補、つまり本戦出場のマスター達同様、並行世界から連れて来られた生身の人間となります。そのため「魂食い」の対象とすることが可能です。
 後者はムーンセルが元来有するNPCで、聖杯戦争の管理・監督を行っている意識体のことです。本来はシステム関連の重要な管理を担っている人工知能ですが、今回は敢えて管理AIとしての機能の大部分を没収して、地上における管理者(魔術協会、聖堂教会から派遣された関係者)が持ち得るレベルの能力・権限しか与えられていません。
・市民用NPCはムーンセルによって、超常的能力の封印および与えられた役割のロールプレイから逸脱した行為を抑制する刷り込みがされています。
 また、各マスターと関わりのある並行世界上の同一人物、あるいはその当人が存在する可能性もあります。
・舞台となるのは電脳世界ですが、現実世界から招かれたマスター、及び市民用NPCは肉体ごと量子情報化されて取り込まれており、基本的には死亡しても遺体は消去されずその場に残ります。


12 : ルール説明 ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:57:10 qVKg300U0

 3.舞台、及びその場におけるマスターの立ち位置について
・『Fate/strange Fake』の舞台となったアメリカ大陸西部の架空都市スノーフィールド。当聖杯戦争においても、ムーンセルによって電脳空間に再現されたこの街を舞台としています。
・時代設定も『Fate/strange Fake』同様で、『Fate/stay night』の数年後という時代背景でスノーフィールドが再現されています。
・マスターは、基本的に最初は「スノーフィールドの市民」という役割の市民用NPCを演じています。もちろん旅行者として一時的に滞在しているだけなど、市民ではない立ち位置になる可能性もあります。
 記憶を取り戻すことで令呪が宿り、マスター権を獲得します。その後、予選終了まで主従揃って生き残ったマスターが本戦出場者となります。
・公用語は英語ですが、読み書きや日常会話に不自由しない程度の言語能力、及び時代背景等の一般常識の知識はあらかじめ各マスターに与えられています。
・スノーフィールドは都市を中心に、北には広大な渓谷、西には森、東には湖沼地帯、南には砂漠地帯が広がり異様なバランスをとっている、という大まかなイメージが原作で語られていますが、詳しくは現状不明です。
 当企画においては、原作よりも住民の中の割合として諸外国からの移住者、ホームステイ等による国際体験生活者、及び周囲の大自然を目当てとした観光客等が存在し、違法移民と合わせて原作で語られているよりも遥かに多様な人種の坩堝と化している、という独自の設定を追加しています。
 その他、書き手さんの裁量で、SSの都合に合わせて設定を修整しても構いません。
 また、地区のイメージに合わせた施設(参戦作品の原作施設含む)を追加することも許可します。


 4.『白紙のトランプ』について
・『白紙のトランプ』は当企画内におけるムーンセル・オートマトンが時空を越え接続した無数の並行世界に、無作為にばら撒いた偽りのスノーフィールドへの招待券です。場所を問わず至る所に出現している可能性があります。
・マスターがNPCとして生活している間は、それぞれの『白紙のトランプ』は没収されていますが、記憶を取り戻し令呪を宿すと同時に再び支給されます。
 この『白紙のトランプ』を核にサーヴァントが召喚されますが、それに要する時間には個体差があります。具体的には書き手さんの裁量にお任せします。


 5.その他マスターとサーヴァントについて
・召喚されたサーヴァントの設定については原作Fateシリーズの設定に則るものとします。ただし『偽りの聖杯戦争』をモデルとしたため、本来ならムーンセルに記録されても英霊の座には存在し得ないような者までサーヴァントの規格に当て嵌めて召喚される可能性があります。
・地上における聖杯戦争の再現率を向上させるため、従来のムーンセルにおける聖杯戦争とは異なり、マスターはサーヴァントが敗退しても消滅することはありません。ただしスノーフィールドから脱出できる者は原則『熾天の檻』に到達する一人だけとなります。
・同様の理由から、令呪の全消費=マスターの死亡ではありません。しかし令呪の喪失にはサーヴァントへの命令権を失う他にも一つ、あるいは幾つか不利となる要素が設けられる予定です。
・マスターが死亡した場合は、サーヴァントは消滅を免れません。しかし、消滅するまでの猶予中に他マスターと契約を交わせば、これを免れます。
 なおムーンセルにおけるサーヴァントはマスターのIDに関連付けられているため、一人のマスターが現界している複数のサーヴァントと同時に契約を持つことはシステム上不可能となります。
 但し契約を解消し、新たな主従を結成することは可能です。



【登場話候補の募集について】
 15騎が出揃った状態で日付変更を迎えるまで行われる、聖杯戦争本戦に向けた予選期間中の各主従の描写、という設定での登場話候補作を募集します。
 なお当選したサーヴァントのステータスについては、場合によっては>>1が修正をお願いすることがあります。あしからずご了承ください。


 現状ではまだ、明確な期限は設けません。
 最終締め切りは、どんなに遅くとも、三日前には通達させていただきます。
 他の版権聖杯戦争企画からの流用も、同トリップからの投下なら構いません。

 その他細かいルールや質問がある際には可能な範囲では随時対応し、最終的なルールは『小聖杯』や令呪の件と合わせて参加者決定時に決めようと思います。
 よろしくお願いいたします。


13 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:58:03 qVKg300U0
以上で、OPとルールの投下を完了しました。続いて登場話候補作を投下します。


14 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/22(火) 23:59:26 qVKg300U0



 その英霊は、ただ。その少女を助けたかった。
 ――――助けたかった、はずだった。







「……ん」

 その夜は、いつもより少しだけ眠りが浅かった。
 あるいは、意識が途絶える直前に覚えた違和感が、素早い覚醒のための引っ掛かりとして残っていたのかもしれない。

「……クロ?」

 傍らに居るはずの姉の気配が感じられないことに、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは声を発した。
 部屋は暗いまま。しかし明らかに、そこにあるべき息遣いが認識できない。
 それに気づいた時には、イリヤはシーツを払い除けて起き上がっていた。

 ――記憶が確かなら、前後不覚に陥る直前の自分は、きちんと布団に包まってなどいなかった。
 その世話を焼いてくれたのは、今、部屋から忽然と消えた姉に違いない。

 姉が、こういったところで密かに面倒を見てくれているのはいつものことで……あまり、感謝することもなくなっていたけれど。
 最後に記憶している姉の様子が妙に気になっていたイリヤは、たったこれだけのことにも胸騒ぎを覚えてしまっていた。

 足元の覚束ない暗闇の中を掻き分けて進み、照明を点灯する。詳らかになる姉妹の部屋には、果たしてイリヤ以外、動く者の姿はない。
 やはり、姉がいるのは部屋の外――トイレかもしれない。妥当といえる推論を立てながら、しかしイリヤは納得して床に戻ることができなかった。

 胸の内に残った、漠然とした不安を晴らすために、イリヤはドアノブを掴まえる。甲高い軋み声を上げた扉の向こうには、先程までの室内同様、無明の闇に支配された廊下が広がっていた。
 ……姉は、灯りも点けずにこの中を進んで行ったのだろうか?
 鎌首をもたげた疑念を否定するために、イリヤはぺたぺたと、裸足で廊下を進んで行く。

 電光を灯し、ある程度進んだが、己の足音しか聞こえて来るものはない。
 他に、誰も起きている気配はない。
 ――クロの残滓は、見受けられない。

 一つずつ、段階を踏んで認識されて行くその事実に、胸の奥を締め付けられるような恐ろしさを覚えながらも。それは杞憂であるはずだと。杞憂でなければならないと、イリヤは己に言い聞かせる。
 そうして決心と共に階段を降りる最中にも、一階からひょっこり誰かが顔を出すような雰囲気を感じられず――まるで最初から、イリヤに同じ部屋で就寝する姉などいなかったかのように。

(……最初から?)

 それとも、最初は、だろうか。
 何故かそんな単語が意識に引っかかり、イリヤは微かに思考する。

 こんなのは、初めてではない気がする。


15 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:06:23 qemPwElY0

 部屋に一人で目が覚めて、一人で部屋を出て――むしろその方が、己に馴染む状況のような気が――

“――そんなはずはない”
“だって自分の傍には、ずっと、大切な姉妹が居たのだから”

 不意に内から響いて来た声――のようなものが、イリヤの疑問を洗い流す。

“ああそうだ、一人で起きる方が、変なんだ”

 だから、自分はいるはずの者を探しているんだと。
 浮上しかけた大事な記憶(モノ)は、そうして再び、忘れ去られた空の領域へと沈没し―――――z_____

(わたしがいなくても、しっかりしなさいよ)
(ウジウジイリヤ)

「――――……っ!!!」

 前触れ無く“そこ”に戻って来たナニカによって、叩き出された。


「っ!? ぁ……ぅ?」

(……そうだ)

 突然、脳内を掻き乱されたような眩暈に見舞われながらも。その撹拌によって、表層には決して浮かび上がることのない澱と化していた記憶(ID)が巻き上がり、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという意識に遍在して行く。
 結果、歪められていた彼女の自我は本来のカタチを取り戻し。その膨張に耐え切れず、拘束具として表面に張り付いていた偽りの自己認識が弾け飛び、引き剥がされて行く。

 ああそうだ、わたしは――

「思い、出した……っ!」
「イリヤさん――っ!!」

 衝撃に順応するように、視界が徐々に鮮明さを取り戻してイリヤの唇から、何とかその一言が絞り出されたのと同時。
 大きな星飾りを戴いた、短く切り詰められた杖――本来のイリヤのよく知る『ステッキ』が、何もない虚空から飛び出して、彼女の名を叫んでいた。

「信じてましたよイリヤさん! きっと元に戻ってくださると!」
「ルビー……っ!」

 イリヤの薄い胸に飛び込むように、星型のパーツを回転させて飛び込んで来たステッキは、感極まったように言葉を連ねる。

「ムーンセルにイリヤさんの記憶とともに封印されて焦りもしましたが! なぁにこんなの、エインズワースに捕まった時と同じ! わたしとイリヤさんの縁と絆は、聖杯にも引き裂くことはできないのです!」
「……でも、わたしたち」

 興奮を表してか、パタパタと、まるで犬の尾のように柄の部分を振り回す杖――魔術礼装カレイドステッキの片割れ、マジカルルビーの叫びに最後の一押しをされ。イリヤは取り戻した記憶の整理、その全てを完了する。

「……月に捕まった、ままなんだね」

 エインズワースから回収したカードの中に、いつの間にか参加券となる『白紙のトランプ』が紛れ込んでいたことと、その時、イリヤの中に決意という名の強い『願い』があったこと。
 それが偶然にも、再現された聖杯戦争への参加条件を満たしてしまい。月の内包する仮想世界に取り込まれたという、現状認識を。


16 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:09:12 qemPwElY0

「……はい、そういうことになりますね」

 つまりこれから自分達は、最後の一人となるまで月の牢獄に囚われたまま、殺し合いを演じさせられる。
 事態の深刻さ――に、イリヤが受けた精神的ショックを慮ったのか。はたまた、深夜とはいえ他にも居住者のいる屋内であることを認識したのか。
 記憶とともに、ムーンセルより返還された魔術礼装――に宿る人工天然精霊のルビーも、いつもの調子を抑え、沈んだ声でそう応じた。

「――ですが、ある意味チャンスなのでは? イリヤさん」

 しかし応じた上で、カレイドステッキ――魔法使いの生み出した魔術礼装は、魔術師に倣った思考で、状況への見解を切り替える。

「これで私達は、美遊さんを犠牲にすることなく、美遊さん達の世界も救うための具体的な手段を見つけることが……」
「ダメだよ」

 ルビーの提案を、イリヤは首を振ることすらせず、正面を見据えたままに否定した。

「そんなのダメ。美遊の代わりに、他の誰かが犠牲になるってことなんだもん。それじゃあ、意味ないよ」
「そうですか……」

 イリヤからの強い否定に、ルビーも悄然とした様子で返事をする。

「……ですが、仕方ないですね! そんな我儘なイリヤさんだからこそ、如何なる逆境にも決して諦めないマジカルでリリカルな魔法少女、マイ・マスターに相応しいのですから!」

 しかし、何時も切り替えが早いのがルビーの性格だった。それもまた良しとするルビーの、変わらぬ協力を約束する姿勢に、イリヤも少しだけ胸の内が軽くなるのを自覚しながら苦笑する。

「我儘なんて言われても……ここにはクロもいるんだよ?」

 イリヤ自身も記憶を取り戻したことにより、先程まで違和感を覚えていたクロの様子にも合点が行った。
 同じく月に拐われていたクロは、一足先にその記憶を取り戻していたのだ。
 そして少しずつ、イリヤの記憶が戻るように、さり気なくアプローチを続けてくれていたのだろう。

「聖杯戦争で優勝しろ、なんて言われても、できるわけないじゃない」

 マスターの死の必然性は定かではなくとも、ムーンセルから提示された尋常な手段では、脱出できるのは最終勝利者となった一人だけ。
 どちらが姉かはまだ決着してはいないが、大切な家族であるクロと離れ離れになる道など、選びたいわけがない。

 ……そんなつもりで、零した言葉だったというのに。

「その……申し上げ難いのですが……」

 それを合図にして、またもいつもの鳴りを潜めたルビーが――彼女にしては本当に珍しいことに。遠慮がちに、おずおずと声を発する。

「わたしが先程返還された――つまりイリヤさんが記憶を取り戻した時点での測定結果なのですが……イリヤさんの魔力量、以前の数値に戻っているみたいなんです」

 ルビーの語る言葉の意味は、額面通りに理解できるかどうか、といったものだったが。
 愉快型極悪ステッキらしからぬ態度を目にして、かつてクロに高ランクで所持していると称されたイリヤの直感が、その裏に潜む意味に警報を鳴らす。

「つまり、クロさんが持って行ってしまう前の状態に、です……平々凡々なイリヤさんが正気を取り戻せたのも、分離していた物が再統合された際のショックによるものなんでしょうね」

 ……わからない。
 まだ、意味がわからない。

              ――――あるいは、脳が理解を拒否している。

 そしてこれは、きっと、わからない方が良いものだ。

 でも。


17 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:10:36 qemPwElY0

「どういう意味……?」

 どんなに辛くとも、未来(まえ)に進むために。目を背けることはもうしないと、そう決めた。
 故にイリヤは促した。ルビーが何を言いたいのか、その真意を。

 そして――――子供の覚悟が、如何に薄弱なものであったのかを、痛感した。

「…………つい先程、クロさんが亡くなったものと推測されます」







 ――――その時。

 強度や、量や、持続時間の程、その由来や向かう矛先はどうであれ。
 半身の喪失を知った小聖杯(イリヤ)が、純白であるその裡を――赤黒き『憎悪』で『汚染』したことは、ムーンセルの観測した確かな真実であり。



 故に。彼女の下へと馳せ参じようと何より強く呼応していた英霊は、彼自身の意に反し。

 要石となる少女の心理状態を投影し、かつてムーンセルが観測し再現した土地とも縁ある、『汚染』された姿で召喚されることとなった。







 ――ああきっと、そうなのだろうと。予感は既に在ったのに。

 覚悟していたつもりだったのに、そのせいで嘘だと目を瞑ることもできなかったせいで。
 真偽を問い質すという抵抗すら間に合わず。あっさりと、装っていた気丈さが、貫かれた。

「……そんな」

 ずるり、と。力なくイリヤは崩れ落ちた。
 文字通りこの身から別れた半身――ずっと傍に居た大切な家族の、喪失の重さに耐え切れずに。

「なんで……っ」

 イリヤ(もうひとりの自分)の影に閉じ込められていたから、当たり前に自分の人生を欲して。
 それ故に、他の誰かの都合に振り回される友のために命を懸け。
 そして彼女の居場所を奪っていたイリヤさえも、彼女の欲した日常を構成する家族だからと、大切にしてくれた。
 ――きっと彼女は、誰よりも懸命に生きていた。

「酷い、よ……っ!」

 なのに、わけもわからないまま月に連れて来られて、そして命を奪われた。
 半身たる少女の無念を想い、イリヤは堪えきれずに泣き崩れる。

 わからない。何故彼女が、そんな目に遭わなければならなかったのか。
 世界よりも、友と家族を優先したから? だとしても、誰も犠牲にしたくないと願うことが、そんなにもイケナイことだったのか。
 どうして、何の関係もない月に、殺されなければならなかったのか。
 わからない。わからない。いくら考えても、こんなの絶対におかしいと、そんな気持ちが溢れて来る。


18 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:12:17 qemPwElY0

 ――あるいは、間違いなく正当な理由があるのだとしても。
 少なくともイリヤだけは、それを納得できるはずなどない。

 だからイリヤには、ただ。クロを襲った理不尽な運命を呪うしか、できなかった。



 ……だが、たったの一撃で彼女の心の処理能力を限界にまで追い込んだそれは、既に起こってしまった出来事でしかなく。
 ならばその意志がどうであれ、イリヤは過ぎ去りし時の、感傷にばかり浸っていられなかった。

 何故なら、今、少女を取り囲む事態は未だ何一つ解決しておらず――その運命が辿りつくべき終着(こたえ)は、未来にしか存在していなかったから。



「――イリヤさん、あれ!」

 先のルビーと同じように、しかし今度は更に青白い光を伴って――虚空から、見覚えのあるカードが顕現していた。

「例のトランプですよ……! サーヴァントが召喚されます――!」

 ルビーが最後まで言い終える前に、エインズワースのサーヴァントカードともよく似た『白紙のトランプ』が発した眩い閃光が、イリヤの網膜を貫いた。
 続いて吹き抜けた烈風が居間を荒らし、イリヤの髪を乱暴に梳いていく。

「……面白い礼装を持っているようだな」

 他の皆も、起きて来てしまうのではないか――そんな不安が過ぎる前に、荒れ狂う力の奔流は、人の形を成していた。
 その喉で形成された低い声が、未だ霞の掛かったままなイリヤの視界のその先から、無造作に放たれていた。

「佳い。それならば我が憎悪、存分に燃やすことができるだろう」

 イリヤ、ではなく――ルビーに向けて、その途方も無く強大な誰かは、微かに獰猛を漏らし笑っていた。
 そして再び夜闇に包まれた室内に暗順応を果たしたイリヤが見たのは、異様な風体の男だった。

 赤黒い染料で全身の肌を塗り潰したその人物は、頭頂部に中心を置いた長布で顔面ごと、二メートル近い長身の前後を覆い隠していたのだ。

 ――奇妙なことに、二の腕だけでも自分の胴ほどの太さを持つ大柄な彼のことが、イリヤには何故か痩せ細った半病人のように感じられて仕方なかった。
 まるで、本当の彼はもっと大きく力強いと――その誇らしい事実を知っているかのような、デジャヴに包まれて。

「憎悪により、このアーチャー(アヴェンジャー)を招きしマスターよ」

 イリヤが不可解に感じた心配を他所に。怪人物(サーヴァント)が名乗ったクラス名は、二つの単語が重なって聞こえる不自然な響きだった。

「貴様の復讐を成すために、我が力を利用するがいい。私が貴様を利用するようにな」

 ――――復、讐。

 その単語は、傷つき欠けたイリヤの心の空隙に、するりと忍び込んで来た。


19 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:13:25 qemPwElY0

 ……言われてみれば、そうだ。
 聖杯戦争の最中に、クロが命を喪ったというのなら――それはきっと、誰かの手に掛かったからだ。

 理不尽な運命だけではなく、主体として……クロを殺した何者かが、居るはずなのだ。
 恨み言をぶつけるべき相手が、憎むべき相手がまだ、この街の、どこかに――――!

 ……しかし、容易く復讐心に染まりきれるほど、数多の激闘を経てきた彼女は既に幼くはなく、また、人として壊れてもいなかった。
 加えて突き放すような言葉は、復讐という麻薬を前にした彼女に対し、逆に間一髪で冷静さを取り戻させる働きを行った。

 結果――その顔立ちすら読み取れない分厚い布越しでも、自らの思考に躊躇うイリヤの様子を見咎めたのか。サーヴァントは幾らか声の調子を低くして、宣告した。

「――だが、我が復讐の障害となるのであれば、幼子であろうと容赦はしない。どんな理由であれ、妨げとなればそのか細き首、我が手に捩じ切られるものと思え」
「……っ!?」

 瞬間、イリヤの全身を構成する細胞の一つ一つ、体の芯から順に震え上がった。
 前途ある子供を見守る年長者の目ではなく、愚鈍な役立たずを切り捨てようと思案する、冷徹な大人の視線に晒されて。
 一瞬にも満たない苛立ちの間だけとはいえ。脅しではなく、そのサーヴァントから照射された本物の殺意によって、イリヤはその小さな脳髄を揺さぶられたのだ。

 ただのそれだけで意識を失ってしまいそうな恐るべき威圧を前に、イリヤは呼吸の仕方すら一瞬忘れ、パクパクと口を開閉する。
 その様が一層気に障ったのだろう。布越しに浴びせられる圧力が高まり、イリヤが悲鳴を抑えきれなくなる直前に、ルビーが動いた。

「アーチャー……それともアヴェンジャーかは知りませんが、あなたはどういうつもりですか!? わたし達のマスターであるイリヤさんを殺すなどと……!」

 ルビーとて、あの雷神の戦槌にも比肩する圧力を前に何も感じていないはずはないだろう。
 それでも、イリヤとこのサーヴァントを一対一で対峙させ続けては危険だと判断してくれたに違いない。
 先刻、このサーヴァントが利用価値があると認めた己を前面に出し、交渉材料とすることで、イリヤを庇おうと試みたのだ。

「――我が真名は、アルケイデス」

 それに対するサーヴァントの応答は、クラス名だけではない、自らの素性を明かすというものだった。
 イリヤの記憶とは結びつくことのなかった、眼前のサーヴァントの真名は――意味する物に理解の及ぶルビーにとっては、食って掛かる勢いを失くすほどの衝撃を内包していた。

「オリンポスの暴君どもを否定し、蹂躙し、穢すため――そして奴らに迎合した愚物を抹消するためだけに存在する、生きた呪いよ」

 その存在に圧倒され、沈黙するしかできないイリヤとルビーに向けて、サーヴァント――アルケイデスは語り続ける。
 己こそが一切の妥協なき憎悪であり、呪詛であり、復讐鬼であるのだと。

 そして。

「故に。復讐者たるこの私に、二度と慈悲など求めるな」

 歩み寄りの余地を否定する宣言が、そこに成された。


20 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:14:28 qemPwElY0







 偽りの街で巡り会ったのは、かつて、どこかの世界で共に在った者達。

 しかし少女は、あり得なかった道を辿った別存在。
 そして復讐者に堕ちた英雄の側面からは、英霊本体の持つ記憶すら失われていた。

 彼ら彼女らは同一人物であると同時、全くの別存在である故に。そこに再会の喜びはなく、運命を引き寄せたはずの決意さえも風化して。

 単なる恐怖と侮蔑の交錯、互いが向け合う値踏みの視線と――そして、断絶を告げる声を聞き。恐怖以外の感情で、当人も理由を知り得ぬままに少女の零した涙だけが。

 二人の果たした偽りの再会(ファーストコンタクト)にある、全てだった。






【出展】Fate/strange Fake
【CLASS】アーチャー(アヴェンジャー)
【真名】アルケイデス
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運B 宝具A++


【クラス別スキル】
復讐者:A
 名の通り、復讐者のクラススキル。
 復讐の対象となる者を前にした時、憎しみにより己の魔力を本来の値以上に増加させる。
 生来の仇敵のみならず、その復讐対象に連なる者、単に自らを負傷させる・不利な状況に追い込む等した相手に対してもわずかながらに効果を発揮する。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 サーヴァントがマスターの制御を離れ、独自の行動を取る危険性も孕む。
 ちなみにマスターを失っても、Cランクならば一日は現界可能。

対魔力:A
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 事実上、現代の魔術師の扱う魔術ではダメージを与えることができない。


【保有スキル】
歪曲・二重召喚:A
 かつての聖杯戦争において、本来呼び出したクラスが強制的に歪められ、別のクラスの特性を付与された経歴を持つサーヴァントに限り付与されるスキル。
 召喚時点で、かつての歪曲状態をある程度再現されていることを示す、ムーンセルでのみ発生する特殊スキル。
 通常の二重召喚スキルでは三騎士クラスには適用されないが、歪曲スキルとの複合であるためにその制限が取り払われ、更に保有スキルにも影響が出る。
 アーチャー(アヴェンジャー)の場合は、当時保有していたスキルの内、勇猛が精神汚染に変化している。

心眼(真):B
 修行と鍛錬に基づく戦場での洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 神から与えられた本能を捨てたために、人として積み上げた技術による発現となる心の眼。

精神汚染:EX
『この世全ての悪』に由来する、膨大な復讐の念により精神を汚染されているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
 ただし、精神汚染がされていない他者との意思疎通に支障を来たすようになる。
 歪曲・二重召喚の影響により、本来この英霊が持つ勇猛スキルが変化した物。
 このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは悪辣な手段を率先して行うようになる。

戦闘続行:A+
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦い続けることのできる、戦場で生き足掻く強さを表した能力。


21 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:16:35 qemPwElY0
【宝具】

『十二の栄光(キングス・オーダー)』
ランク:C〜A++ 種別:- レンジ:- 最大補足:-

 稀代の大英雄が成し遂げた十二の功業、その“試練を捩じ伏せた証”の数々。
『神獣の裘』や『戦神の軍帯』などの生前の伝承の中で手にした宝具を具現化させ、己の道具として使い潰す事ができる。
 但し、聖杯の理そのものをねじ伏せて使っている状態なので、魔力の消費が通常の数倍に及ぶという欠点を孕んでいる。
 また、このサーヴァントは『かつての聖杯戦争でムーンセルが観測した、その英霊の歪曲状態を再現した』ものに過ぎないため、実際にはムーンセルが観測した範囲内の宝具しか使用することができない。


『射殺す百頭(ナインライブス)』
ランク:C〜A+ 種別:不明 レンジ:臨機応変 最大補足:臨機応変

 手にした武具、あるいは徒手空拳により様々な武を行使する、言わば流派:射殺す百頭という技能そのものが宝具化したもの。
 武具の力を最大限に引き出し、対人から対軍、城攻めに至るまで状況に合わせて様々な形を見せる。 


『■■■■』
ランク:EX 種別:■■■■ レンジ:■■ 最大補足:■■■

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【weapon】
『十二の栄光』ほか


【人物背景】

 神々や数多の怪物を倒したとされ、名高きギリシャ神話体系においても頂点に君臨する世界屈指の大英雄。

 そんな彼が、かつて地上のスノーフィールドで行われた真実の聖杯戦争において、通常のアーチャークラスで召喚されるもマスターにより三画全ての令呪、及び大量の魔力結晶で「人であった頃の自己」「神から課された非道な仕打ちへの憎悪」を増幅させられたところに、聖杯の泥を注ぎ込まれて汚染された結果、歪曲してしまった姿。

 泥の汚染によって自身の人生を翻弄し続けた神々への憎悪が表面化し、結果高潔なる精神は歪み果て、外道な行為も意に介さない人物となってしまっている。
 幼名である「アルケイデス」を名乗るのも、『神の栄光』という意味の真名を激しく忌避しているため。
 憎悪のまま、彼は己を含めた神の血を引くものを蹂躙せんと行動した。



 ……それはあくまで、英霊という本体の情報から複製されたサーヴァントという分身に起きた変化であり、英霊本体にまで還元される汚染ではなかった。
 当然、通常の聖杯戦争では「アルケイデス」を名乗るサーヴァントも、少なくとも最初からその姿で召喚されることはない。

 しかし英霊召喚を行うのが地上の聖杯ではなく、その歪曲した事例をも記録したムーンセルであること。此度の聖杯戦争が、通常では召喚されないようなサーヴァントの召喚も可能としていたこと。
 マスターである少女(聖杯)が、召喚の瞬間憎悪に染まってしまっていたことと、その瞬間の『彼女の魔力』と最も馴染むクラスが弓兵(アーチャー)であったこと。
 そして、サーヴァント・アルケイデスが存在した舞台を再現した箱庭であることが重なって、本来あり得ざる形での再召喚がなされてしまった。

 召喚に即して、英霊本体が持ち得ていた彼の記憶は調整された。
 本物のスノーフィールドを駆けた体験は取り上げられ、また歪曲した彼の人格を形成する上で不要な過去も希釈された。

 それはそもそもの召喚の発端となった、英霊本体が何より強くこの地に駆けつけようと願った根底となる、冬の森の思い出も例外なく――――



 故に今の彼は、『神の栄光』の名を冠した大英雄――小さくか弱い、神の奇跡たる子供達の守護者ではなく。

 自らの憎悪のために全てを燃やし尽くす、慈悲無き復讐者に他ならない。



【サーヴァントとしての願い】
『神の栄光(ヘラクレス)』という忌み名の抹消。


22 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:18:30 qemPwElY0

【基本戦術、方針、運用法】

 全サーヴァント中でも最上位に迫る圧倒的戦闘力を誇る一方、神性を捨て去りなお極めて高い魔力、霊格、そして評価規格外の精神汚染により、令呪を用いてもその復讐心を束縛することはできないため、制御は非常に困難。
 そのため、マスターであるイリヤの意志にも構わず、あくまで己の目的に即した行動を執り続ける。
 とはいえ、現状では彼女の存在が自身の存在を保つ要であることも解しているため、必要以上の危害が及ぶような行為は控えるだろう。よって、早々に監督役から討伐令を出される、もしくは複数の主従に結託して対策されるほど人目を憚らぬ振る舞いは当面は自重するものと考えられる。
 もっとも、現在の彼はカレイドステッキによる無尽蔵の魔力供給でイリヤを評価しているが、場合によっては平然とマスターを見捨てることもあり得るかもしれない。

 基本的には機会があれば優れた弓術による狙撃や、他者の警戒を緩める子供(イリヤ)を利用しての騙し討ちなどで、効率的に他陣営の間引きを図り、単独優勝を目指して行く。
 イリヤの『夢幻召喚』については、本人の気質も含め、自衛手段としてはともかく、積極的に戦法に組み込むほどの価値をアーチャーは見出していない模様だが……?



【出展】
 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!

【マスター】
 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン


【参戦方法】
 エインズワースから美遊を取り戻した後、回収したカードに紛れていた『白紙のトランプ』に導かれ、マジカルルビー及び一部のサーヴァントカード諸共に参戦


【人物背景】
 
 穂群原学園小等部に通う小学生……だったが、カレイドステッキに見初められ、詐欺同然の強引な手口で契約させられ、魔法少女プリズマ☆イリヤとして戦う運命に巻き込まれた一般人の女の子。
 以後は、本来のカレイドステッキの契約者だった遠坂凛からの要請により、彼女達の代わりにクラスカード回収任務を行うことに。
 戦いの苛酷さに耐え切れず、一度は同じ使命を背負った美遊・エーデルフェルトに無自覚なまま全てを押し付けて逃亡してしまうが、後に改心して彼女の窮地に駆けつけ危機を救い、以後親友となる。
 その後、任務中に事故によって分離したもう一人の自分=クロエ・フォン・アインツベルンに命を狙われることになるも、最後は和解に成功。美遊という新しい友人、クロという新しい家族と共に日常を謳歌する。
 だが、八枚目のクラスカード回収任務の末、美遊が本来の出身である平行世界に連れ戻されてしまう事態が発生。巻き込まれる形で後を追ったイリヤ達は、美遊を拐ったエインズワースとの抗争に突入。
「生まれながらに完成した聖杯」である美遊の力で滅びの危機に瀕した人類を救おうとするエインズワースの目的を知り、激しく動揺することになったイリヤだが、クロ達の応援もあり、美遊も世界も両方救うという我儘(願い)を貫く決意を固めた。
 エインズワースとの二度目の決戦の後、美遊の兄である平行世界の衛宮士郎から彼らの過去を聞いたイリヤ達は、改めてエインズワースに対抗し、平行世界と美遊の共存を目指して作戦を練り直していた最中。
 更なる平行世界に存在するムーンセルにより、再現された聖杯戦争の参加者として見出され、イリヤは月に拐われることとなった。

 そして死に際、願望機(自分自身)に家族の傍に戻りたいと願ったクロの残滓と再融合したことにより、記憶を取り戻し――――


23 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:19:40 qemPwElY0


【weapon】
・マジカルルビー
 魔法使い・宝石翁ゼルレッチの制作した愉快型魔術礼装カレイドステッキとそれに宿っている人工天然精霊。愛称(自称)はルビーちゃん。
 子供の玩具にあるような「魔法少女のステッキ」そのままの外観でヘッド部分は五芒星を羽の生えたリングが飾っている。羽のモチーフは鳥。
 ある程度、形・大きさを変えることができるらしく、使用時以外は手で持つステッキ部分を消して、羽の生えた星型の丸いヘッド部分のみの姿となって、イリヤにまとわりついている。
 また、怪しげな薬品(自白剤・鎮静剤・惚れ薬等)を作ることができる。

・サーヴァントカード
 エインズワースによって作られた魔術礼装。イリヤ達は当初、彼女達の世界の魔術協会が名付けた「クラスカード」の名で呼称していた。
 高位の魔術礼装を媒介とすることで英霊の座にアクセスし、力の一端である宝具を召喚、行使できる『限定展開(インクルード)』の能力を持つ。
 だが、それは力の一端に過ぎず、本質は「自身の肉体を媒介とし、その本質を座に居る英霊と置換する」、一言で言えば「英霊になる」『夢幻召喚(インストール)』を行うアイテム。
「美遊の世界」の冬木市で開催される聖杯戦争はこのカードの所有者同士の対決によって行われる。
 現時点でイリヤが何を保有しているのかは不明だが、少なくともキャスター(メディア)のカードは既に喪失しており、また、バーサーカーのカードを保有している。



【能力・技能】

 魔導元帥製のカレイドステッキ及び回収したエインズワース製のサーヴァントカードを利用した、魔法少女(カレイドライナー)としての能力を持つ。

 カレイドステッキにより、平行世界から無尽蔵な魔力回収、またAランクの魔術障壁の他、物理保護、治癒促進、身体能力強化といった恩恵を常に受けている。但し、障壁の防御機能は内部からの攻撃には無力である。
 ただし、供給量・持続時間は無限でも、一度に引き出せる魔力はマスターの魔術回路の性能に依存する。
 クロと分離したことで低下していた魔力量についてはクロの死によって回復したが、これでようやくアルケイデスが満足な戦闘行為に要求する魔力を賄えるようになっただけであり、単独行動スキルを加味しても彼の宝具と『夢幻召喚(インストール)』を同時運用することは困難であり、またカレイドライナーとしての能力値も魔力をアルケイデスの維持に奪われる分、結局はクロとの分離後と同程度にまで落ち込んでいる。

 また機能の一つに、魔術ではなく「純粋な魔力」を放出するというものがあり、対魔力スキルを突破し得る砲弾、散弾、ブレード状に固定、といったバリエーションで行使可能。



【マスターとしての願い】
 無事に帰りたかった、けれど……?


【方針】
 未定。


24 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:20:53 qemPwElY0
以上で一作目の投下を完了します。
本日はもう一作、このまま続けて投下を行います。


25 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:21:53 qemPwElY0



 ある日の夜。
「すまない……一つ、確認させて欲しい。貴方が、俺のマスターなのか?」
 スノーフィールドの某所に累々と並ぶ無数の人影、その中心で、一つの出会いが繰り広げられていた。

 辺り一面に横たわった、昏倒した人間達――彼らの命が、聖杯を欲し、そのための力を求めた魔術師の手にかかり、喪われようとしたその瞬間。
 サーヴァントを従えた絶対強者に、立ち向かえる者などどこにもいまいと思われた窮地にあって、一迅の風の如く駆けつけた者が居た。

 歴史上の偉人、神話の英雄、人類の知性が抽出して来た概念に、人々の想念を織り込みし英霊――その再現事象であるサーヴァントに対抗できる存在など、極めて限られている。
 故に。魂の捕食者と戦える者が不在の絶望の地に出で、悪しきを阻んだこの剣士もまた、サーヴァントとして現界した存在に相違なかった。

「どうやら、そのようですね」

 輝きと共に光臨し、一刀の下に弱者を喰らう魔を切り捨てた黄金の騎士は、しかし――彼以外に、この場で唯一直立を続けている偉丈夫の首肯を受け取った直後、素顔を隠す仮面のような兜を俯けた。

「……本当にすまない、マスター」

 謝罪の言葉と共に。大勢の命を救った英雄であるはずの彼は、微かな月明かりを金色に照り返す重厚な鎧を鳴らし、悄然とその肩を落としていた。

「何を謝ることがあるのです?」

 その様に対する当然の疑問として、彼と対峙した壮年の――そのサーヴァントの召喚者(マスター)たる男は、微かに小首を傾げていた。
 問いかけに対し、サーヴァント――セイバーは、即座の答えは返さなかった。
 ただ、その腰に留めた尾錠、その箱状の部分から。現れた時と同様の眩い黄金の光を、今度は背後に放ち――板状に展開されたそれにゆっくりと、己を通過させてみせた。
 果たして、その光の去った後にあったのは――先程までの、どこか時代錯誤な威容を誇る鎧騎士ではなく。当世風の黒い上下に身を包んだ、痩せぎすの若い男の姿だった。

「俺は、本来召喚されるはずのない……絶対に勝ち残ってはならないサーヴァントなんだ」

 そして、その真意を述べる声は。彼の揮う力の強大さと裏腹に、微かな震えを孕んでいた。








 聖杯戦争。

 世界のすべて――運命さえも変えられる権利を巡る、たった一人きりを決める戦い。

“彼”は……セイバーの本体である英霊はかつて、それと類似した争いに関わった人間だった。






 人間であった頃の“彼”が身を置いていたのは、人類が万物の霊長たる座に至った謎、そして生命誕生の秘密を解き明かすための組織だった。

 二十一世紀の初頭、チベットのとある洞窟から発掘された一つの石版。そこには従来の進化論だけでは解き明かせなかった、人類の基盤が記されていた。

 確かに生物は、斯くあれと全能の神が手がけた設計図通りの創造物ではなかった。
 しかし、生命の発生は単なる偶然ではなく。「生命あれ」と奇跡を願いし者は、確かに存在していた。
 そして、人類という種を地上の覇者足らしめた要素は、単なる幸運以外にも、確かに存在していたのだ。

 そんな、人類史観を一変させるエヴィデンスは、超常の力によってカードに封印された、不死の生命として残されていた。


26 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:23:16 qemPwElY0

 如何なる手段を講じても、命を絶つことのできない怪物達。
 故にアンデッドと呼称される彼らこそは、現代の地球上で生を謳歌する生物種の起源となった生命体。
 自らを満たせ、という――神でも異星の知性体でもなく、他ならぬ地球(ガイア)自身の願いに応え発生した、原初の一たる星の胤子であった。

 母なる星に愛され、始まりであるが故に終わりを持たぬ生命種の始祖達にはもう一つ、彼らだけが担う特別な役割が課せられていた。
 それこそがバトルファイト――地上の支配権を巡る代理戦争だった。

 四つの属性(スート)、十三の位階(カテゴリー)。都合五十二の参加券の一つを授けられた種の代表として、異種族のアンデッドすべてを封印した最後の一体にのみ、地球上の全生命を自由にする権利を授ける特別な儀式。

 ……石碑によれば、一定周期で繰り返されるその生存競争における最新の勝利者こそが人類の始祖――ヒューマンアンデッドであったとされる。
 つまりは一万年前、偉大なる始祖がバトルファイトで勝ち残ったからこそ、人類は霊長の座に着くことができたのだ。

 従来の常識を完全に打ち砕くその驚愕の事実を証明するために、人々は密かに研究を続けていた。
 しかし、アンデッドという超常の存在は、人の手で管理するには荷が勝ち過ぎた。
 事故によって制御を外れ、世に解き放たれてしまった不死身の怪物達を再び封じるための戦士が、人類には必要とされた。

 そして、その戦士の一人こそが、“彼”だった。



 ……星の胤子たる不死者達との、熾烈を極める戦いの中。やがて“彼”は、未知の戦士の存在に気づいた。
 秘密裏に行われていたアンデッドの研究。その落とし子として与えられた自分達の力。
 それと似通った力を揮いアンデッドを狩る黒金の戦士は、“彼”の組織に連なる者ではなかった。

 否、むしろセイバー達の持つアンデッドを封じる力こそが、その戦士から掠め取った紛い物に過ぎない。

 その戦士こそは、母なる地球の遣わせた死神(ジョーカー)。すべての命を刈り取る星の刃。
 系統樹なき、虚無(ゼロ)の不死者(アンデッド)だった。

 星という巨大な生命が選択肢の一つとして備えた、滅びという名の機構(システム)である彼は、しかし――そのあるべき姿から外れた、異常と呼ぶべき状態に陥っていた。

 星の掃除屋として、すべての生命に対する殺戮本能だけを与えられた虐殺器官であるはずの死神は……とある無力な人間の母娘の、その傍らで生きていた。
 そこには確かに、敢えて刈り取られることで死神に内から働きかけた、ヒューマンアンデッドの思惑もあったのかもしれない。

 だが理由はさておき、結果として無慈悲な殺戮装置に過ぎなかったはずの死神はヒトの心を識り、愛を得た。

 そして、肩を並べて戦う“彼”の友となっていた。



 だが、運命は死神を宿業から手放さなかった。

 人類の手が介在したことで本来の周期から外れ、現代で再開されていたバトルファイト。その終焉の時が訪れた。

 最後に残ったアンデッドは、ジョーカーだけだった。


27 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:24:18 qemPwElY0

 彼が選ばれたその瞬間。地球は「その時」が来たと判断し、全ての生命を無に還し始めた。
 その「心」の在りようを何ら関知せず、死神に世界を滅ぼす本来の役割をただただ強制しながら。

 あの母娘を護るために。そして、“彼”の愛する人類を救うために。滅びを止めるべく、死神は“彼”に自らを封印するよう懇願する。
 不死者ゆえに自らを終わらせることもできない友の、血を吐くような叫び。
 だがかつて大切な家族を護れなかった“彼”にとって、この優しい死神もまた、その幸福を護りたいと願った相手に他ならなかった。

 友か、世界か。どちらかしか救えない命題を突きつけられた“彼”は、そのどちらをも選べなかった。

 だから“彼”は、両方を救う選択をした。
 ジョーカーに由来する死神の力。そのすべてを引き出すことで、自らを第二のジョーカーへと変生させて……

“彼”が、人間であることを捨て去った結果。アンデッドが二体存在することによりバトルファイトは再開され、滅びは一先ず中止された。
 だが、残されたアンデッドは二人のジョーカーしかいない。どちらが勝っても、地球の生命はリセットされてしまう――今度こそ、止めようもなく。
 そして、一度その時が来たと判断した星は次代のため、結果の訪れを待ち望んでいた。残されたアンデッドに決着を付けるよう、強く強く促していた。

 星という無限のバックアップ。地上に満ちた全生命の集合無意識から注ぎ込まれる、底なしの戦闘意欲。
 この世にたった二人の同属、無二の親友同士であろうと、このままでは理性を無くした二匹の獣と化し、殺し合うまで猶予はなかった。

 だから“彼”は、姿を消した。

 友を残し、仲間と別れ。ただ一人、運命と戦うために。

 そして――勝ってみせるために。







 それがセイバー――その元となる英霊が誕生するまでの経緯だった。

 アンデッドが持つのは不死なる生命。死神の鎌に刈り取られようと、星の揺り籠であるカードに封じ込まれるだけで――星そのものが滅びる終焉まで、決して死を迎えることはない。
 故に、“彼”は今も、地上に存在し続けている。異形となった肉体、不死となったその生命を、なおも人々を護るために行使し続け、星の強制する運命と戦い続けている。

 そんな彼の一側面が、仮にもサーヴァントとして現界せしめたのは……その在り方が英雄達とも縁深い、神霊種と同様であったからだ。
 不死であり生命の始祖である原初の精霊種、アンデッドは発生した時点で高位の存在であり、ムーンセルは英霊の座と相互に重なる位相のデータベースにその観測情報を保存していたのだ。

 そして、本来召喚されることのないサーヴァントを次々と召喚した聖杯戦争の舞台を模したからこそ。本来招かれるはずのない“彼”が、召喚され得る下地が用意されてしまっていた。

 しかし――――それでも“彼”は、本来召喚されるはずのない存在だった。

 何故なら、他ならぬ“彼”自身が、それを何より望んでいなかったから。

“彼”は正当な英雄ではなく、第二のジョーカーアンデッドとして英霊の座に刻まれている。故にその本質は、あらゆる生命の天敵たる死神なのだ。

 万能の力を得られたバトルファイトと同様、勝利者の願いが叶う戦いに己が加わってしまえば……やがてジョーカーの本能に支配される。
 抗い続けたとしても、自刃も叶わぬ身でもしも最後まで生き残ってしまえば……かつての友と同様、その心の在り方など関与することなく。すべての生命を刈り取るという機能が、真っ先に願いとして受理されてしまうだろう。


28 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:25:16 qemPwElY0

 下手をすれば、ムーンセルが無作為にバラ撒いた『白紙のトランプ』により接続された、並行世界の地球にまで、その被害が及んでしまう。
 そんな災厄を望むはずもなかった“彼”は、ムーンセルの行いに刺されるような痛みを覚えながらも、傍観者として耐え続けていた。



 だが結果として、“彼”はセイバーとして聖杯戦争に参加することとなってしまった。



 今自分が生きている時代を超えた座(ばしょ)から、ふと観測できてしまった俯瞰風景。従来以上に地上の聖杯戦争の再現性を上げたという今回の試みで繰り広げられていたのは、かつてセイバーが抗った悪逆そのものだった。
 ただ、ムーンセルが身勝手に判定した資格があるからと。有無を言わさず連れ去られ、記憶さえも取り上げられ利用される戦えない人々から、今度は命すら奪おうとする魔術師の行いに、“彼”は強い憤りを覚えるしかなかった。

 しかし、いくらこの胸を怒りに震わせても。座に保管された情報に過ぎず、戦場に上がることですらできない今の“彼”には、その邪智暴虐を止める術などありはしなかった。

 だが――その蛮行の前に、身を乗り出した一人の男が居た。

 ……次元を越えた境界における認識力は、その男の経歴を仔細に伝えてきた。サーヴァントと化し現界した今は、その知見も記憶のアジャストに合わせ、幾分薄れてしまったが。
 それでも、覚えていることはある。

 その男もまた、かつてヒトの意志など介在できない巨大な運命に、抗おうとした人間だった。

 徴(しるし)と共に人々に力を分け与えし赤き竜と、死者を操り冥界より浮上する邪神群の、地上の支配権を巡る争い。
 五千年周期で繰り広げられる、バトルファイトと酷似したその戦いに、多くの人々が翻弄され、数えきれないほどの犠牲が齎された。
 これ以上の悲劇を止めるために。その男もまた、“彼”と同じように人間を捨て、孤独の戦いを選ぼうとした。

 だが男は――結果として、孤独の道を歩むことはなかった。

 男の偽りに、それでも導かれた勇者達。そして神の配ったカードに狂わされたはずだった、最愛の兄。
 多くの人々の絆が、男を孤独の神ではなく、人間として運命に立ち向かわせるに至ったのだ。

 それが孤独を選んだ“彼”とは異なり、人々の持つ絆の力で運命に勝利した男の過去だった。

 ……それから、どんな因果の果てなのか。神々の課した宿業を断ち切り、代償としてその生命を終えたはずだった男は、再び肉体を伴ってムーンセルに招かれていた。

 そして、同じく偶然魂狩りに巻き込まれた人々が、ここで犠牲となる運命を良しとせず――あるいは大義のために過ちを犯した、在りし日の贖罪のために。
 単身、サーヴァントに挑もうとしていたのを――“彼”は、目撃してしまった。

 しかし、再び人間として在る今の男では、サーヴァントには敵わない。歯向かう虫として殺されるだけだ。

 ……かつて二柱の神を降霊させたその男の、マスターとしての適正はすこぶる高い。
 屈強な肉体に宿した意志は、なお纏わり付く邪神の呪いすら霞ませる気高い物だ。

 なのに、何故。彼のサーヴァントが召喚されないのか。

 他の英雄達は、どうして誰も、彼らに救いの手を差し伸べようとしないのか。

 なら“俺”はこのまま、戦えない人々が目の前で踏み潰されるのを、ただ黙って見ているしかないというのか――!


29 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:26:19 qemPwElY0

 ――どんなに願っても。ただ待っていたところで、救いのヒーローなど現れない。
 それはあの日、両親を炎の中に喪ったその時から、己は理解していたはずではなかったか。

 だから“俺”は、この手で皆を護りたいと――仮面ライダーになったのではなかったか。

 疑問と、感情と。次々と溢れてきたそれらが、かつてこの胸に宿っていた物に、再び熱を灯したその時。

“彼”は“俺”として、確かに――――



「――願って、しまっていたんだ」







「在ってはならないモノなのに。俺は……ここに居る人達を護りたいと、願ってしまった」

 罪と呼ぶには、あまりに人間らしい感情を持ってしまったことを、セイバーは懺悔する。
 だが自らの振る舞いは、生命ある者達にとって究極的な敵対行為であると、セイバー自身が誰より深く理解していたからには……慚愧の念に囚われずには、居られなかった。
 極少数のために、大多数を危険に晒す。それが誤った選択であることは、セイバーにも理解できていたのだ。

 勿論、どれだけ心が求めても、理性は最後の一線を引いていた。
 自らの意志で、それを踏み越えたわけではない。
 だが、まるでこの街に拐われて来たマスター達のように――願いを持つ瞬間を、まるで月が手ぐすね引いて待ち構えていたかのように。
 そんな想いを抱いた次の瞬間には、セイバーとしてこの街に降り立ってしまっていたのだ。

「……マスターなら、見ればわかるだろう。俺は自分の意志でこの聖杯戦争を降りることができない」

 召喚された結果、魂狩りの対象として襲われていた人々を救えたこと。
 それ自体は紛れも無く、喜ぶべきことだ。
 だが、予想できていたサーヴァントとしての己の特性を事実として再認識すれば、やはり、浮かれることなどできはしない。

「だけど俺は、絶対に聖杯を掴んではならない。最後まで生き残ってしまえば、世界を滅ぼすことになってしまうんだ」

 自主的に舞台を降りることすらできない、いつ暴発するとも知れぬ無差別破壊兵器。それがセイバーなのだ。
 だとしても。一人きりの孤独なら、まだ良かった。いずれ真っ当な英雄を見つけ出し、頃合いを見計らって討って貰えれば、それで済むことなのだから。
 だが今のセイバーには、運命共同体たるマスターが……

「成程。それは好都合です」
「――!?」

 勝手に召喚されておいて、決して勝ち残ってはならないなどと宣う――そんなサーヴァントに対する物としては、予想だにしなかった返答に、セイバーは思わず面を上げた。

「私の都合に恩人を付き合わせてしまうのはと頭を悩ませていましたが、そういう事情ならば杞憂というもの」

 淡々と述べるマスターに、セイバーの中を悪寒が駆け抜ける。
 今こそ鎮められていても、彼の魂に巣食う邪悪の気配は、座での観測で把握している。
 だが、まさか読み違えたかと慄然としたセイバーに向かって、マスターである壮年の男は諧謔的に笑ってみせた。

「何故なら私も、決して聖杯を掴んではならない者なのですから」

 そしてセイバーのマスター……レクス・ゴドウィンは、何の気負いもなく。むしろ胸のつかえが下りたとばかりに、晴れやかに告白を終えていた。


30 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:27:30 qemPwElY0





 聖杯戦争に消耗品として巻き込まれ、危うく大量虐殺の憂き目に合うところだった被害者達の保護のため、警察への通報を行った後。
 ゴドウィンとセイバーは、なおも会話を続けていた。

「赤き竜と冥界の王の戦いが、不動遊星ら当代のシグナーと、そして私達兄弟の手で終止符を打たれた後のことです。
 理由は定かではありませんが、私は再び現世に蘇っていました」

 五千年周期で行われるシグナーの戦いのことを、既にセイバーは朧気ながらに把握している様子だった。
 それも座により齎された知識なのだろうが、しかし彼はそれ以上のゴドウィンの事情を知らなかった。

「おそらくは冥界の王の、最後の足掻きだったのでしょう。私以外にも、一年半前の戦いに駆り出されたダークシグナー達が復活していました」

 しかし、その大半は呪縛より解き放たれ、再びの人生を謳歌していた者達だ。
 直接、冥界へと旅立った自身と兄を除いた彼らは、あるいは地縛神の残留思念から再現された端末に過ぎなかったのかもしれない……などと、ゴドウィンは今更に推測する。

「私はダークシグナーであると同時に、抜け殻とはいえシグナーでもある存在。故に赤き竜の加護で正気を保つことができましたが、他のダークシグナーはそうもいきませんでした」
「じゃあ、マスターは……」
「ええ。私は人間として再び生を得たわけではありません。偶然再現された過去の亡霊、動くだけの死人と言えるでしょう」

 仮初の受肉こそ果たしてはいるが、正しく生者ではない――そのことは、このサーヴァントにはきちんと断っておくべきだとゴドウィンは判断していた。
 おそらくはその方が、余計な気遣いをされずに済むからだ。

「ともかく、シグナーを葬ろうとする彼らを阻むことが、私の責務でした。そして新たな戦いに臨んでいたシグナーを巻き込むことなく、私は他のダークシグナーを全て倒すことに成功しました。
 ですが……私もまた、その魂の半分がダークシグナーである存在。我が兄がそうだったように、この身体もいずれ地縛神に占有されることは明白でした。
 故に私には、最後に残ったダークシグナーを始末する必要があった」

 しかし、自害を目論めばそれは死に近づくこと。つまりダークシグナーとして染まってしまう行為だ。
 そもそもダークシグナーとは邪神の尖兵たる神秘の存在。同じく神秘を纏ったシグナーやそれに準じる者でなければ倒せない。
 シグナーと直接対面すれば、内より響く地縛神の声に抗うことができず、下手をすれば彼らに危害を及ぼしてしまう。
 途方に暮れていたその最中に、いつの間にか手元にあった『白紙のトランプ』に導かれ、ゴドウィンはこの偽りのスノーフィールドに招かれていた。

「次元を隔絶したこの月の街には、赤き竜の干渉も限られている。写し身(カード)が私と共に召喚されてしまった地縛神の声に抗い続けることはできません。
 そんな状態で、万が一にも聖杯が我が手に収まることがあれば……どれほどの危機が訪れるかは想像するまでもありません」

 それこそ、セイバーが勝ち残った場合と同じように。世界中の生命を破滅させ、現世が冥界の一部として取り込まれるような結末を迎えてしまうことだろう。
 場合によってはムーンセルと接続してしまった数多の並行世界にまで、その猛威は及ぶかもしれない――絶対に許してはならない事態だ。

「しかし、神秘はより強い神秘に敗れる。ダークシグナーが仮にも神に由来する存在とはいえ、所詮は使い捨ての手足。シグナーでなくとも、英霊なら充分に滅ぼすことができるでしょう。
 だから、私は安心していました……もしその前にサーヴァントが召喚されるようなことになっていれば、その英霊には私などを見込んだ不運と思って貰えば良い、と」

 記憶を取り戻してからは、そのことばかりを考えていた。
 神々の身勝手に振り回される今の世界を一度破壊して、人智の及ばぬ領域で定められた破滅の未来なき新世界を創造する――兄の末路を目にしてから憑かれていた、そんな妄執にも似た過ちを贖うには程遠いが、それでもやっと、後顧の憂いを断てるのだと。
 それを喜ばしく思っていた矢先に、偶然から先程のキャスターと出くわした。

「……それでも、魂食いなどと。戦えない者を私欲のために貪ろうとする者を、未来を託すに相応しい英雄などと認めることは、できませんでした」

 それではまるで英霊ではなく、忌むべき地縛神どもと同じではないか。
 静かな怒りが裡を満たした時、気づけばただ一人記憶を取り戻していた――サーヴァントに比べれば許される力は卑小とはいえ、ただ一人神秘を纏っていたゴドウィンは、生身一つでキャスターに挑んでいた。


31 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:28:53 qemPwElY0

「確かに貴方が召喚されたことで、私は危険な我が身を滅ぼす絶好の機会を失い、更には全生命を存亡の危機に晒すババを引くことになってしまいました」

 ゴドウィンの漏らした現状の追認に、セイバーは微かに顔をしかめる。

「ですが、貴方が来てくれなければここに居る三十人は死んでいました。それは紛れも無い事実なのです」

 あの時。贖罪の意識こそあったとしても、死なねばならない、などという義務感はゴドウィンの中には残っていなかった。
 ここで己が屈すれば、戦えない人々にまで危害が及ぶ。それを許せないとする想いの方が、遥かに強かったのだ。
 それだけの決意を以ってしても、最早為す術のない絶体絶命の窮地に追い込まれたその時――ただ一人駆けつけてくれた英霊が、このセイバーだった。

「私や貴方が、決して勝ち残ってはならないのだとしても。倒されるべきそのいつかが、『今』である必要はありません」

 ゴドウィンの告げた言葉に、セイバーの表情が変わった。
 まるで暗闇の中で途方に暮れていた男が、光差す道を目の当たりにしたかのように。
 その様子に、微かに口端が緩むのを自覚しながら、ゴドウィンは言う。

「先程のキャスターとそのマスターのように。己の願いのためならば、他者に犠牲を強いることも躊躇わない者が、この街にはまだいることでしょう」

 それこそ、かつての愚かな自身のように。
 そんな忸怩たる思いは胸中だけに留め、ゴドウィンは今、口にすべき言葉を続けた。

「そしてこの街に拐われた大多数は、聖杯戦争の参加者となることはないまま、抗う力も奪われたまま巻き込まれ、時に理不尽に命を喪うことになります。それが彼らの辿ることになる運命です。
 ならば私は、その運命から彼らを救いたい。貴方には私とともに、戦えないすべての人々の代わりに戦って欲しいのです」

 自分達は、在ってはならないモノ。仮令一時為し得たことがあったとしても、その尽くをも無に帰す時限式の生きた災厄。
 だが……だからといってただ見ているだけでは、喪われてしまうものがそこにあるのなら――――この手を、伸ばしたい。
 このままでは踏み潰されてしまうちっぽけなものを、護るために。

「私達には、それができる力がある。なら我々が消えるのは、その役目を終えてからでも充分だと……そうは思いませんか、セイバー」

 その時感じる自分達の哀切を捨て去る方が楽なのだとしても、最大限、為せることを為してみたいと。
 ジレンマを前に沈黙するのではなく、ほんの少しでも、不可能を壊す叫びを上げたいと――ゴドウィンは、セイバーに胸の内を述べていた。

「……そうだな。そのとおりだ」

 そして、セイバーはそんなゴドウィンの呼びかけに頷きを返した。

「諦めることは、いつだってできる。だったらその時まで……俺達が何者だとしても、人を護ったっていいはずだ」

 先程までの、後悔と罪悪感に塗れた暗い顔から、希望と覚悟に満ちた男のそれに――セイバーの表情は、変わっていた。

「……ありがとう、マスター。こんな俺を受け入れてくれて」
「お互い様です、構いませんよ」

 命の恩人が漏らした感謝の言葉に、ゴドウィンもまた微笑みを返す。

「私こそ感謝します。まさに運命の切札(デスティニー・ドロー)の如く、危機を救ってくれた貴方に」

 そこで、ふと――そんな決闘者(デュエリスト)らしい言葉を口にしたことで、ゴドウィンは胸中の疑問に思う。
 自分達二人の邂逅は、あまりにも作為的であるようにも感じられた――ということを。

 勝ち残ることの許されない、しかし邪神の徒に転ぶ恐れのあるマスターに。勝ち残ることの許されない、しかし死神に堕ち兼ねないサーヴァントが宛てがわれる。
 ただの偶然なのか、あるいは。
 月が待ち構えていたようだった、というセイバーの言と合わせて考えれば――この出会いを導いた、何かしらの見えざる手が介在したのではあるまいかと……

 ほんの一瞬だけ、そんな不安がゴドウィンの脳裏を過ぎり、そして霧散した。


32 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:30:09 qemPwElY0

「……一先ず、話はこれで終わりですね」

 もしも、姿を見せない何者かが、遥かな高みで運命の糸を握っているのだとしても関係ない。
 自分達は、決して諦めない――運命と戦い、勝利するその時まで。
 ならば、為すべきことに何の変わりもありはしないから。

「続きは後にして、行きましょう。剣崎一真――いえ、セイバー」

 知らないという罪と、知りすぎる罠。
 そんな物に惑わされ、動けなくなる前に――悲しみを終わらせる、未来へと。



 そうして――絆を結んだこの夜、この瞬間。
 絶対に勝ち残ってはならない男達の、決して負けられない戦いがここに、幕を開けた。






【出展】仮面ライダー剣
【CLASS】セイバー
【真名】剣崎一真=ジョーカーアンデッド
【属性】中立・善
【ステータス】
筋力A 耐久A+ 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具A
(※宝具発動時のステータス)

【クラス別スキル】
対魔力:A+
 原初の時代に星の集合意識が生み出した不死生命体、生物の祖に連なる者として強大な神秘を宿しており、魔術による干渉をAランク分削減・無効化する。
 宝具である鎧を装備している間はその身に纏う神秘の飛躍的な向上から更に効力を倍加し、事実上純粋な魔術でダメージを与えることはほぼ不可能となる。

騎乗:C
 正しい調教、調整がなされたものであれば万全に乗りこなせる。


【保有スキル】

原初の一:A
 アンデッド。星の集合意志(ガイア)が神代以前の原初に一体ずつ産み落とした、各生物種の始祖たる怪物。最初の産声を上げた星の胤子たち。始まりが故に終わりを持たぬ不死存在。
 あくまでサーヴァントのために劣化しているとはいえ、その特性からセイバーの生命そのものを直接対象とした呪い・概念干渉等を一律無効化し、更にHPが0になった際、必要な魔力が供給されていれば幸運判定で復活の機会を得ることができる。
 また、自らの意志や令呪による強制・補助を以ってしても自害、及びそれに繋がる行為ができない。

 このスキルは受肉した精霊種の一部が保有するスキルで、ランクに応じて該当する存在や、その特性を示す効果内容が変化する。
 そのため、厳密には原初の生まれではなく後天的にアンデッドと化した身でありながら、統制者に正真正銘のアンデッドと認められているセイバーも、他のアンデッドと同ランクでこのスキルを保有している。

無貌の切札:B
 ワイルド。
 いかなる生物の系統樹でもないという、ジョーカーのみの特性。
 特定の種族に適用する効果を一律無効化する。
 但し準札(エキストラ・ジョーカー)であるセイバーは正規のジョーカーよりもランクが低下し、派生するはずの変化スキルを持ち得ていない。

狂化:E-
 アンデッドとして植え付けられた、抗い難い闘争本能。
 普段セイバーはこの本能を自らの意志で押さえつけているため理性を保ったままであり、滅多なことではこのスキルも機能しない。
 しかしそれは彼が常に運命と戦っていることに他ならず、何らかの要因で判定に失敗すると、理性を喪失し最終勝利者となるための殺戮を繰り返す暴走状態に陥ってしまう。
 また、聖杯戦争に参加しているサーヴァントの残数が減るほどに判定の成功率が低下してしまう。

守護騎士:A+
 怪物から人々を守護する、都市伝説の仮面騎士。
 宝具である鎧を装備している時にのみ付与されるスキル。
 他者を守る時、人を護りたいというセイバーの意志により、宝具である鎧との融合係数が向上することで、一時的に防御力を上昇させることができる。


33 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:31:33 qemPwElY0

【宝具】

『母なる星、清めし死の札(ジョーカーエンド・アポトーシス)』
ランク:- 種別:対生宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 生命の天敵として存在する抑止力の一種、ガイアの死神とも呼ぶべき異端の不死者・ジョーカーアンデッドの在り方が、宝具として再現されたもの。命を刈り取る星の刃。
 母なる地球に出生を由来した、あらゆる命に対する殺害権利を保持する怪物として、セイバーからの殺傷を阻害するあらゆる概念干渉・生物的特性を無効化することができる。
 また、対象の生物としての純粋度、完全性に応じて追加ダメージを発生させ、一定値を超えた場合に即死判定を働かせることが可能。

 通常時の効果適用範囲は個体レベルでしかないが、願望器を巡る争いにおいて最終勝利者となった時にその本来の機能を発揮。眷属の無限召喚能力を獲得して地球全土にまで殺害範囲を増大し、母なる星から全ての生命を消し去るための装置と化す。
 命を滅ぼしながら星は滅ぼさない、星の自浄作用であり自壊衝動の一つ。
 この性質のため、星側の存在であることを示す神性スキルを持つサーヴァントは、そのランクに応じて追加ダメージを削減することができる。また性質上、地球上の生物ではないもの、生物の版図を越えてしまったもの、そもそも生物でないものには効果を発揮し得ない。

 本来のランクはEXだが、本人の霊格が落ちていること、彼自身がこの在り方を拒否していること、そしてセイバーとしての側面のみの現界であるためジョーカーへの変身能力を喪失し、それに伴い前述した戦闘用宝具としての効果は全く機能していない。
 しかし完全に放棄することはできないため、無貌の切札等のスキルや緑色の血などの身体的特徴として、今もセイバーに影響を及ぼし続けている。
 何より、最終勝利者となった場合の機能は変わらず保持されている。そのためセイバーが聖杯戦争の優勝者となった場合、地球の生命全てを死滅させる災厄が発生してしまう。



『原初纏う黄金の鎧(キングフォーム)』
ランク:A 種別:結界、対人(自身)宝具 最大補足:1人

 ブレイバックルを介してセイバーがその身と融合させる黄金の鎧。便宜上の呼称こそ同じでも、本来想定されていたそれを上回った、仮面ライダーブレイドの最強形態。
 各生物の祖である、星の集合意識が作り上げた原初の精霊種・アンデッドの内13体の力を封じ込めた鎧であるため莫大な神秘を帯びており、宝具としての純粋な耐久値に加えて他の神秘への強い抵抗力を示す。
 特にそれぞれのアンデッドが司る力と似通った性質の干渉に対しては宝具ランク分の耐性として機能するため、打撃や刃物、雷を用いた攻撃などには絶大な防御力を発揮する。
 但し、セイバーのクラスとして現界した都合上、アンデッドクレストから剣に関与しない力を引き出すことは不可能となっている。

 また、変身時に発生させるオリハルコンエレメントはランク相応の結界宝具でもあり、担い手以外のあらゆるものを弾き飛ばすという特性を有し、それ自体を攻撃にも防御にも用いることができる。


 なお――本来、彼が正しい経緯で英霊と化していた場合、宝具となるのはキングフォームそのものではなく、ブレイバックルである。
 しかし第二のジョーカーとして英霊の座に記録された剣崎一真はそれに関連する力、即ちジョーカーに等しい力であり、彼を第二のジョーカーへと変化させたキングフォームの力のみ、『母なる星、清めし死の札』以外の宝具として有することを許されている。
 そのため、セイバーは本来挟むべき形態を無視して直接この宝具を発動することが可能となっているが、結果として他の形態への変身能力を喪失してしまっている。



『始祖束ねし王者の剣(キングラウザー)』
ランク:A+ 種別:対神宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人

『原初纏う黄金の鎧』と対となる、人(セイバー)の想いが星のシステムたるアンデッドの力を束ねたことで、人(開発者)の意志を介さずに生まれた黄金の大剣。
 古の巨大邪神を一刀の下に斬滅した逸話より神性を持つ相手に追加ダメージを発生させる神殺しの剣であり、その出自から鎧同様、在り方はヒトの技術の産物というよりも神造兵装に近しい宝具。

『原初纏う黄金の鎧』と融合したギルドラウズカードを読み込ませることで、その力に呼応した星の輝きを放つことができる。
 刀身から放たれる光は直線のまま拡散しないため一度に補足できる人数は限られるものの、膨大な神秘を攻撃に転用したその威力は凄絶の一言。
 特に最大解放の一撃は鎧に融合したアンデッド十三体全ての力を引き出して攻撃に転化するため、鎧の宝具ランク分威力が更に上乗せされる必殺の一撃となるが、引き換えとしてその間の鎧の防御力が低下する脆弱性を秘めている。


34 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:33:05 qemPwElY0
【weapon】

・『原初纏う黄金の鎧』
・『始祖束ねし王者の剣』
・醒剣ブレイラウザー:ブレイド専用の剣型カードリーダーだが、サーヴァントの身では『原初纏う黄金の鎧』発動時にしか現界させられず、その時にはギルドラウズカードしか持ち得ないためその機能は事実上封印されている。故に、宝具ではないサブウェポンの剣としてのみ使用可能。
・ブレイバックル:変身ベルト。スペードのカテゴリーAと合わせて、『原初纏う黄金の鎧』の装着に必要となるツール。
・ラウズカード:アンデッドを封印したカード。特殊なアンデッドであるジョーカーを元に開発されたライダーシステムを用いることでその力を引き出すことが可能となる。セイバーはスペードスートのラウズカード13枚を所有。



【人物背景】

 かつて人を捨て、永遠の孤独と引き換えに、運命との戦いに挑んだ男。

 十一歳のある日、両親を火事で喪い、大切な人を護れなかったことで心に深い傷を負った彼は、同じ哀しみを他の誰かに味わわせないために、「人を護る」ことを人生の目標とするようになった。

 そんな彼が行き着いたのは、人類基盤史研究所BOARD――脱走したアンデッドの回収役である、仮面ライダーの資格者という在り方だった。
 不死の怪物であり、人に仇なすアンデッドを無力化できるのは封印の力を持つ仮面ライダーだけ。やがて組織が壊滅しても、人を護るために彼は戦うことを止めなかった。

 そんな戦いの中、剣崎はBOARDと関係を持たない仮面ライダー・カリスに変身する相川始と出会う。
 アンデッドが正体であった彼と幾度かの激突を繰り返した後、種族の壁を超えたかけがえのない友として絆を育むようになった。

 だが、運命は二人の共存を許さなかった。
 相川始の真の正体は、どんな生物の始祖でもない特別なアンデッド――ジョーカーであり、最後に勝ち残れば世界を破滅させてしまう死神。
 そのために他のアンデッド達から集中して狙われる始を、彼と共に暮らす人間の母娘のためにも護り続けた剣崎はやがて、その素質からジョーカーにも等しい力に覚醒する。
 それ故に齎された双方の暴走も収束し、乱れていた他の仮面ライダーとの協調にも成功した剣崎であったが、遂に始を封印できないままバトルファイトを終結させてしまう。

 始まってしまった世界の滅び。最愛の友を永遠の孤独に封印するか、彼に情けをかけて世界を滅ぼすか。
 究極の二者択一を迫られた剣崎が掴んだのは、誰も失わない選択だった。

 それは、すべてのアンデッドと融合することができる己の才覚を最大限発揮して、自身が新たなアンデッドとなること。
 友と等しい存在となることで、剣崎は彼を孤独から救ったのだった。
 ……ヒトとしての生と、永遠の孤独を代償にして。



 不死であるアンデッドと化した剣崎だが、ジョーカーアンデッドという強大な神秘は発生した時点でムーンセルに記録されている。
 このサーヴァントはそこから召喚に応じた存在であり、英霊の本体と分身のサーヴァントとの関係のようなもの。
 地上では、「剣崎一真」は今も運命と戦い続けている。



【サーヴァントとしての願い】

 また、朋友達と触れ合いたい――彼にもそんなささやかな願いはあるが、ジョーカーの存在意義である「命を刈り取る」という本能はそれを許さない。
 優勝した瞬間、聖杯には生命絶滅という機能が願いとして真っ先に受理されてしまうからだ。

 それは、どこか己と似通った運命と戦った男、レクス・ゴドウィンと彼の護ろうとした無辜の人々を救いたいと思ってしまったが故に、偽りの街に喚ばれてしまった今も変わらない。
 自己犠牲を覚悟するマスターを救う術もなければ、自らが勝ち残った果てに何かを残すことさえできない。
 自主退場すら許されないまま、最初から何も為すことができぬと詰まされているサーヴァント。それがセイバー・剣崎一真の運命だ。

 ――それでも。

 聖杯に拐われた人々を救済する術が未だ見当もつかず、自らの存在が更なる災厄を齎す可能性を生むのだとしても。
 仮令、聖杯を掴んではならない呪われた身なのだとしても。自らに英霊としての資格があるのなら、誰かの願いを叶えることができるはずだと。

 戦えないすべての人々の代わりに、彼は戦う。
 その道の先に、一筋の光が差すことを信じて。


 運命に勝つ。
 それこそが、このサーヴァントの戦う意義である。


35 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:35:48 qemPwElY0
【基本戦術、方針、運用法】

『母なる星、清めし死の札』を戦闘に用いることができないため、『原初纏う黄金の鎧』の装着が大前提となるものの、干渉を限定する相手にもある程度通じ得る優れた攻撃力と、純粋な高数値と数々の耐性に裏打ちされた圧倒的な防御力を併せ持ち、真っ向勝負で安定した強さを発揮できるサーヴァント。

 しかしアンデッド十三体と同時融合したこの宝具が秘めた神秘は絶大なものとなっており、それを維持するための魔力消費もまた莫大。
 シグナーにしてダークシグナーであるゴドウィンならば本来支えきれるのだが、魔力消費が激しいとセイバーの前にゴドウィンが地縛神に乗っ取られ暴走してしまう危険性が存在するため、実際の継戦可能時間は著しく制限されることとなる。

 また面を制圧する類の攻撃手段に乏しく、短所である鈍重さもあって素早い敵に翻弄される・物量に勝る相手に消耗戦を挑まれるなどした場合はその燃費の極悪さが響いて苦戦は必至。
 逃げに徹されれば仕留め切れず取り逃がすことも多く、下手をすれば受ける魔力供給量を自重せざるを得なくなって弱体化し、意外なほどあっさり敗北してしまう可能性も少なからず存在している。

 他にもこれまた鈍足と燃費が響いてマスターの安全を確保する能力にも不安が残り、特に遠距離攻撃に徹されてはほぼ打つ手がなくなるなど、その脅威の戦闘力に反し見掛け倒しのサーヴァントともなりかねない弱味は多い。
 戦闘開始時の見かけのステータスよりも、より多くの魔力をコンスタントに供給出来るマスターのスタミナこそが勝敗を左右する重要な要素になるという、ある意味ではサーヴァントの性質を体現した脆さを抱えていると言える。

 逆に戦闘開始直後なら、正面切っての白兵戦で遅れを取ることはほぼないと考えられるため、どれだけ己の土俵に相手を引き込めるか、一戦一戦をどれだけ短期決戦に徹しきれるかが戦いを制す上での焦点となる、決戦用のサーヴァントである。

 ちなみに上述の理由から考えられる通り、セイバー自身が致命傷を受けることは稀ながら大量の使い魔を操るキャスターや遠距離攻撃に徹せられる真っ当なアーチャー全般、場合によってはアサシン等も天敵となり得る。
 これらの弱点は、本来なら『■■■』さえ入手できればかなり緩和できるものの、そもそもゴドウィンが消耗すると地縛神に乗っ取られてしまうことが最大の問題であるため、この主従にとっては魔力消費量を増やす『■■■■』に頼るのは悪手。
 そして、『母なる星、清めし死の札』の特性上、セイバー自身が最後まで勝ち残るわけにはいかないという都合も踏まえ、目的を果たすためには小聖杯の確保よりも、志を同じくする仲間を探すことが急務といえるだろう。





【出展】遊戯王5D's+遊戯王ファイブディーズタッグフォース6(?)
【マスター】レクス・ゴドウィン
【参加方法】
 WRGP期に地縛神の力によって復活、他のダークシグナーを全て倒した後、その過程で偶然入手していた『白紙のトランプ』に導かれ参戦

【人物背景】

 かつて人を越え、運命を支配する孤独な神の座を目指した男。
 十七年前、兄ルドガーと共にモーメントの開発者・不動博士の助手を務めていたが、ネオ童実野シティを襲った未曾有の大災厄ゼロ・リバースに遭遇。
 その直前に、不動博士からはシグナーの竜のカードを、またダークシグナーとなる決心をした兄からは、シグナーの証である「ドラゴンヘッド」が刻まれた彼の左腕を託され一人生き延びることになった。

 兄の最期を心に刻みながらも、当面の彼はゼロ・リバースの影響で分断されたネオ童実野シティのサテライトとシティを繋ぐダイダロスブリッジの建築により、貧富の格差で荒れる故郷が本来の姿を取り戻すことを夢見ていた。
 だが治安維持局の実働部隊セキュリティに追い詰められ、未完成のダイダロスブリッジをD・ホイールで飛翔した事で左腕を損失してしまう。
 この出来事を経た彼は伝説のD・ホイーラーとしてサテライトの語り草となるが、本人は「人が己を取り巻く運命を変えるには、人を越えねばならない」という考えを抱くようになってしまった。


36 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:37:31 qemPwElY0

 やがて、謎の組織イリアステルの助力を得、第三百六十代星護主となった彼はサテライト出身という身分を隠し、かつて自らを追い詰めた治安維持局の長官として君臨する。
 その地位を用いて当代のシグナーであるジャック・アトラス、不動遊星らと接触し、彼らにダークシグナーとの因縁とシティに迫る危機を打ち明け対抗させる。
 そしてシグナーとダークシグナーとの戦いが始まった頃、自らは単身モーメントの最深部に向かいルドガーと決闘。わざと敗北し落命することでナスカの「コンドル」の地上絵を持つダークシグナーとなり、さらにドラゴンヘッドの刻まれたルドガーの左腕を身体に繋ぎ、その身に二つの神の力を宿すようになる。
 彼の真の目的は、冥界の王の力で世界を破壊し、赤き竜の力で世界を再生させること。つまりはかつての兄のように、神々の戦いに為す術なく翻弄され傷ついていく世界の運命を、神となった自らが干渉し変えることであった。

 赤き竜の力により集まったシグナー達との最終決戦の中、あらゆる絆を否定し人は皆孤独だと説くが、戦いの果てにそれらの言葉は虚構であり実は兄と共に運命に抗おうとしているのだと、遊星に真意を見透かされ敗北。
 戦いが終わると穏やかな表情を取り戻し、直に人間として蘇るダークシグナー達の未来を遊星に託すと、兄弟の絆で運命に決着をつけるべく光の中へと旅立った。

 その一年半後、タッグフォース6の専用シナリオでは地縛神の力によってか突如として現世に復活を遂げる。
 ダークシグナーでありながら赤き竜の力を持つために唯一正気を保っており、復活した他のダークシグナーから遊星達チーム5D'sと世界を守るため、密かに激闘を繰り広げた。

 このゴドウィンもほぼ同様の経歴を持つが、タッグフォース時空とは異なり、ゲームオリジナル主人公が存在せずゴドウィンが単身、誰にも知られることなく過去の清算を果たした平行世界の出身となっている。


【weapon】

・マヤ文明デッキ
 ゴドウィンが持つデュエルモンスターズのデッキ。
 ゴドウィンがダークシグナーであるため、デュエルモンスターズカードの原典となった古代魔術を行使する礼装としての運用が可能。
 但し、ダークシグナーとしての力を行使する=地縛神の闇の力に染まる行為であるため、ダークシグナーに堕ちることを望まないゴドウィンは余程のことがない限りそのような使用をする意志はない。
 また決闘を行う場合は、ダークシグナーであるため自動的にゲームのルールに照らしつつ実際に心身を蝕む魔術儀式『闇の決闘(デュエル)』が発動してしまい、やはり地縛神に乗っ取られる危険性が高まってしまう。
 これらの事情から、ゴドウィンはカードの魔術効果を戦闘に用いることを避けようとしているため、基本的にはただの紙束か、殺傷力の低い投擲武器にしかなり得ていない。


   ・《地縛神 Wiraqocha Rasca》

 地縛神ウィコラチャラスカ。ナスカの「コンドル」の地上絵に封じられた、五千年前の地縛神の中でも最強を誇った一柱。
 現在はデュエルモンスターズカードの一枚という写し身に宿り、常にゴドウィンの精神を支配しようと干渉し続けている。

 邪悪な神霊であり、カードゲームとして召喚するにもゲーム中で設けられているコストの他にも、対戦相手以外の人間の魂が生贄として多数必要。
 つまり、召喚するだけで大規模な魂食いが行われることになるが、サーヴァント、及び令呪という神秘を纏ったマスターならばその捕食に抗うことは可能である。
 決闘中のカードとしての運用に留まらず、決闘の対戦者以外の第三者をもルールを越えて物理的・霊的に害することも可能な、一種の使い魔とも言える存在。
 
 神霊の写し身だけのことはあり、サーヴァントの神秘であってもカードの破壊は極めて困難。仮に手放しても、余程の封印を施さない限りゴドウィンの元に戻って来ることだろう。
 また、ダークシグナーであるゴドウィンの生命線でもあり、この地縛神の干渉が及ばなくなった場合ゴドウィンも闇に還ることとなる。


37 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:38:26 qemPwElY0

【キーワード】
・デュエルモンスターズ:
 古代エジプトの石版に遺された、魔物や精霊を使役する魔術儀式を原典に開発されたトレーディングカードゲーム。
 その由来のためか、現代に名も無きファラオの魂が蘇ったことに呼応して、古代エジプトの精霊達がカードを依代に現代へと舞い戻る事態が多発するようになる。
 それが呼び水となり、カードゲームの世界観が拡がるに合わせて他の神話や魔術伝承の存在達もカードを現世における写し身として復活する例が増え、表は一般社会に普及しながら、裏でも降霊魔術の一種としてその世界における最大の魔術体系としても確立した。そのため異能者が使えば人を殺傷することが可能で、場合によっては世界を破滅に導くこともできる危険な代物と化している。
 科学の発達した現代においてもこれほどの力を持った神秘の写し身として成立し得たのは、宇宙の始まり――即ち根源が、この世界では一枚のカードとして顕現していたことも一つの要因だと推測されている。

・地縛神:
 地球に生命が生まれてから、五千年周期で赤き竜(=神霊ケツァルコアトル)の勢力と地上の支配権を巡り対立する冥界の住人達。
 冥界の王を盟主とし、別次元から襲来する邪神の軍勢であり、地球を滅亡させ冥府に取り込むことを目的としている。
 現代ではシグナーのドラゴンと同様にデュエルモンスターズのカードとして存在しているが、本体はシグナーの竜によってナスカの大地に封印されたアストラル体であり、カードを媒介に人間の魂を糧として召喚される。

・赤き竜:
 地縛神の侵攻に対する地球の抑止力(カウンター・ガーディアン)を担う神霊。アステカではケツァルコアトルの名で奉じられた蛇神である。
 眷属である六柱の竜を従え、五千年ごとに素質ある人間をシグナーとして見初め、その力を貸与え地縛神を阻止していた。
 現代では地縛神らと同様、眷属であるシグナーの竜はデュエルモンスターズカードの精霊として転生しているため、優れた決闘者達をシグナーとして選んでいた。


【能力・技能】
 シグナー、及びダークシグナーとして赤き竜と地縛神の二柱の神霊から力を賜っているため、異常な負担を強いるセイバーをも使役できるだけの莫大な魔力量を誇る。
 しかし、彼が現在ダークシグナーとして地縛神に意識を奪われていないのは赤き竜の加護とゴドウィン自身の意志によるものであり、その均衡が崩れるとゴドウィンもまた地縛神に乗っ取られてしまう可能性がある。
 次元を隔絶されてしまった赤き竜と、写し身であるカードが手元に存在する地縛神とではゴドウィンへの干渉力にも差が出てしまっており、赤き竜から与えられた魔力が一定値を下回ると完全に地縛神に支配されてしまうため、実際にセイバーの戦闘を支えられる時間は限られてしまっている。

 なお上記の通り『闇の決闘』は可能だが、一度始めると地縛神に乗っ取られ易くなるため、少なくとも正気の間は行うつもりはない。
 また、自らを更に死人=ダークシグナーに近づけてしまう行為であることから、自殺を図ると地縛神に完全支配されてしまうため、実質自害ができない躯でもある。

 神秘を伴わない攻撃に耐性を持つダークシグナーだが、目立たぬよう生前の姿を取ることもできる。ゲーム中とは違い日中も活動可能。


【マスターとしての願い】
 聖杯戦争に巻き込まれた人々を、悲劇の運命から解き放つ。


【令呪】
 左腕に三つに分割可能な形で刻まれた竜頭の紋章(※不動遊星に託されたドラゴンヘッドの痣と同じデザイン)


【方針】

 セイバーと共に聖杯戦争を止める。
 自分達は決して優勝してはならない以上、他に志を同じくする者が存在することを祈り、探し出す。


38 : レクス・ゴドウィン&セイバー ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 00:39:21 qemPwElY0

以上で投下を完了します。
セイバー・剣崎一真は『第二次二次キャラ聖杯戦争』様、及び『聖杯戦争異伝・世界樹戦線』様における登場話コンペで、◆HOMU.DM5Ns氏が投下された『ありす&バーサーカー』のバーサーカーのステータスを参考にさせて頂きましたことを、ここに明記致します。

また、セイバーのステータスシート欄に記載された『■■■』及び『■■■■』という伏せられた単語についてですが、これらは当選主従と合わせて公開予定の当企画独自の要素となっております。
>>1の投下する主従には以後も同様の文言を盛り込むことで情報を小出しにし、公開までにも正体を予想できるようにしていければと思っております。
もちろん、これらの要素を踏まえているか否かが候補作の当落に結びつく、などというようなことは考えておりませんので、皆様には謎解きを余興の一つとして楽しんで頂ければ幸いです。

なお、これらはFateシリーズで登場している要素を元に設定したものであるため、中には既にお察しの方もいらっしゃるかとは思いますが、コンペ期間中の明言は作品内外ともに避けて頂ければ幸いです。


39 : ◆nb1PikerPY :2016/11/23(水) 14:04:41 BiC5h7lc0
投下します


40 : 怪物(フリークス) ◆nb1PikerPY :2016/11/23(水) 14:07:02 BiC5h7lc0
キーンコーンカーンコーン

終業のチャイムが鳴った。
僕は全く意識しないで、他愛の無い会話をクラスメートとしながら、今日行く場所に思いを馳せる。
最近事件が多い為、僕の観光も何処に行くのか迷いがちだ。
考えながら視線を動かし、今日も僕は森野夜の手首を見る。
彼女の手首には、僕に“ある衝動”を抱かせた美しい赤い線が変わらず存在していた。



1時間後、僕は公園に居た。
大質量で叩き潰された少女の死体が見つかった交差点。ここ数日晴れが続いていたのに、落雷で感電死したとしか思えない男の死体が見つかった駐車場。
それらを巡ってから最後に、バラバラになった男と、心臓を人間の手で抉り取られたと思しき女性が見つかった公園へやってきたのだ。
最近立て続けに起きている行方不明や奇怪な殺人事件。マスコミやオカルトマニアの間では議論百出しているがそんばものに対する関心は僕には無い。
血溜まりの中、女性が倒れていたという場所に足を揃えて立つ。
命の失われた場所に立ち、感触を靴底に感じる……。
目を閉じて佇んでいると、不意に話しかけられた。

【一体…なんの目的でこんな事をしているんだい】

音では無い声。空気を震わさない声。数日前、乾く音が聞こえると同時に僕の元を訪れた『彼』の声。
離れた場所で、好みの女性を物色している『彼』僕も言葉にせずに答えを返す。

【ただの趣味ですよ。まあひょっとしたら犯人と出逢えるかも知れませんが】

無表情に、声に抑揚をつけないまま言葉を返す。不機嫌なpのでは無く、これが僕の自然体だった。

【やれやれ、ワザワザ揉め事に巻き込まれたいのかい】

声の主は僕の行為に呆れている様だった。
僕は人を生き埋めにしたいという衝動に駆られて、子供を殺してしまった警官と話をしたことを思い出しながら『彼』に答えた。p

【何の為に殺人をするのか、という事を訊いてみたいんですよ】

そう言って僕は『彼』の居る方を見る。平凡な人間の顔をした漆黒の意思の持ち主を。平凡な人たちに埋没する怪物を。
✳︎✳︎を⚫️したあの夜以来、聞こえなかった、ナイフの涸渇する音が聞こえてきた。

【平穏がモットーなのに殺し合いに呼ばれるとはね。まあ聖杯とやらを手に入れるまでの我慢だ】

『彼』は植物の様に平穏な人生を望むつもりらしい。結構なことだと思う。僕なんて何を願うか未だ判らないというのに。

【そろそろ行かないかい?あの喫茶店のサンドイッチは『サンジェルマン』にも負けないものだ。雰囲気も良い】

ナンパに成功した『彼』が『彼女』を連れてやってくるのを見て、僕は観光を切り上げることにした。

【そうですね。観光も一通り終わりましたし】

あの喫茶店のマスターは、僕が知る通りの人物なら、既に三人の人間を解体している殺人者なのだが、『彼』に全く反応しないところを見るとNPCと認識しておいて良いのだろう。

【ああ…それと】

僕は『彼』の連れてきた『彼女』について訊いてみた。

「何処でナンパしてきたんですか」

「観光を楽しんでいる君を尾け回していたのを見つけてね。中々綺麗だったんで『彼女』になってもらった」

女性の左手首を手にして、事も無げにいうその在り方は、常人なら嫌悪の対象になるのだろうが、僕にとっては気が落ち着く。
僕も彼と同じ普通からは逸脱した存在で、殺人者なのだから。
『彼女』とイチャつく『彼』を見ていると、森野夜の手首を欲しいと思った時の衝動を思い出した。



曇りがちな 空の下、僕等は『彼』のお気に入りの喫茶店に向かうことにした。
僕らが去った後の公園には、僕ら以外に人間が居た痕跡など一切無かった。


41 : 怪物(フリークス) ◆nb1PikerPY :2016/11/23(水) 14:07:54 BiC5h7lc0
【クラス】
アーチャー

【真名】
吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 PART4 ダイヤモンドは砕けない

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 幸運:B 魔力:D 宝具:B

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【保有スキル】

擬態:A
周囲に自分の才能や性質を隠蔽し、平凡な人間を演じ続けた続けた、街に潜み続けた生涯。
実体化している時でもサーヴァントとして感知されなくなる。
彼の素性を知るものや、高ランクの探知スキルの持ち主でも無い限りは面と向かって話しかけられても認識出来ない。
宝具、キラークィーン使用時には効果は消滅し、キラークィーンを使用したところを見た者には永続的に効果を失う。


あざなえる縄:C+
ピンチの時程ツキ(チャンス)が巡ってくる。ただし、冷静に事態に対処し、チャンスを正確に掴まなければならない。出来なければチャンスはその手から零れ落ちる。


精神異常:D+++
他者の感情を気にしない。また、目の前で残忍な行為が行われても平然としている。
ただし、アーチャーは他者の感情を察して行動することは可能。


殺人鬼:A
殺人という行為に対して大幅に成功率を上げる。具体的には不意打ちが悟られにくくなり、逃亡が成功しやすくなる。
アーチャーは爪が異常に伸びる時期が有り、この時の殺人の体調は『絶好調』となる。
サーヴァントとして最盛期の状態で呼ばれている為に、体調はこの状態で固定される。
欠点は殺人に対する衝動が高まり過ぎて抑えられないこと。



【宝具】
キラークィーン
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ :1~5 最大補足:1人

吉良吉影の精神が具象化した人型の像(スタンド)
触れたものを爆弾に変える能力を持つ。
爆弾は『変えられたものが爆発する』タイプと『爆弾に触れたものが爆発する』二つのタイプがあり。起爆方法も『爆弾に触れると爆発する』タイプと『キラークィーンがスイッチを押して起爆する』の二通りがある。
爆弾の作動には空気が必要で、真空状態では起爆出来ない。
腹部に物体を収納できる。
本来スタンドはスタンド使い以外には認識も干渉も出来ないが、サーヴァントと化したことによりその特典は失われている。
ただし、機械の類では認識出来ない。
キラークィーンは筋力:A 耐久:C 敏捷:B 幸運:ー 魔力:B 宝具:ー
のサーヴァントに相応するパラメータを持つ。


シアーハートアタック
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ :1~99 最大補足:1人

キラークィーンの左手から射出される自動追尾型の爆弾。
熱源を探知して何処までも追尾する。
誰かを爆殺してもシアーハートアタックは消えず、次の標的に襲いかかる。
シアーハートアタックはA+の筋力で連撃を加えられてもダメージを受けないほど頑丈。
対象を殲滅すればアーチャー元に戻ってくる。
欠点は熱源探知である為に火でも使われるとそちらの方に突っ込んで行く事と、行動不能になった場合アーチャーが直接回収に赴かねばならない事。
ダメージフィードバックはアーチャーの左手のみに現れる。


奪いしもう一つの顔(ダブル・フェイス)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ :1 最大補足:自分自身

追い詰められた時に川尻浩作の顔と指紋を奪い、川尻浩作の存在を奪った逸話から得た宝具。
吉良吉影の姿から川尻浩作の姿に変わることができる。
この姿でキラークィーンを使用したところを見られても、吉良吉影の姿に戻れば擬態スキルの効果を変わらず発揮できる。逆もまた然り。


【weapon】
スタンド『キラークィーン』

【人物背景】
S市杜王町出身のサラリーマン。平凡で仕事は真面目にそつ無くこなす。
実際には非常に優れた才能の持ち主だが、『植物の様な平穏』を得る為、注目されるて平穏が乱されることを避けている。
その本質は人を殺さずにはいられない殺人鬼。18歳の時から女性ばかり48人も殺害してきた。男も含めれば優に三桁は殺害していると思われる。
長らく杜王町で平凡な人間を装い殺人を繰り返してきたが、東方仗助達にその存在が発覚し、顔を変えて逃亡するも最後は追い詰められ、死亡した。


42 : 怪物(フリークス) ◆nb1PikerPY :2016/11/23(水) 14:08:33 BiC5h7lc0
【方針】
出来るだけ闘ったりせずに確実に殺していく

【聖杯にかける願い】
復活して『植物の様に平穏』な人生を送る。


【マスター】
神山樹@GOTH

【能力・技能】
高い洞察力と、他人とはかけ離れた人間性からくる冷静さ。
自身の異質さを覆い隠せる演技力。

【weapon】
ある連続殺人事件の犯人から譲り受けたナイフ

【ロール】
高校生

【人物背景】
勉強は出来ないが周囲を明るくする雰囲気を持った。人懐っこい子犬の様と評される事もある男子高校生。
実際には人に暗黒面に強く惹かれる性質を持ち、興味本位で周囲に起こる殺人事件の犯人を突き止めるが、その目的は“好奇心を満たす為”。若しくは執着している森野夜を他人に殺させない為。
作中で事も無げに人を二人殺している。(一人は自殺幇助だが)
自身の性質を周囲に悟らせない演技力を持つが、意識して行なっているものでは無く、極自然に仮面を被っている。
一人称は『俺』と『僕』を使い分けている。

【令呪の形・位置】
左手の平に髑髏の形

【聖杯にかける願い】
無い。今の所は

【方針】
アーチャーに任せる。他のマスターに心情を聞いてみたい。


43 : 怪物(フリークス)しゃーぷ :2016/11/23(水) 14:09:27 BiC5h7lc0
投下を終了します


44 : ◆gQzkrK6H2s :2016/11/23(水) 14:24:26 BiC5h7lc0
コテを此方に変えますね


45 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/23(水) 14:28:10 Q/wIgNBU0
初投下です


46 : 月光少女 千代ちゃん ◆As6lpa2ikE :2016/11/23(水) 14:29:27 Q/wIgNBU0
佐倉千代は隣のクラスの野崎梅太郎に恋する女子高生である。
無邪気で快活な、年相応の純粋な性格をした、小さな少女である。
要領はあまり良くなく、鈍臭くて失敗することもままある乙女である。
そんな彼女が、なんで『こんなもの』を召喚してしまったのか。
それを一番疑問に思っていたのは、佐倉千代本人であった。

「あぁ! 憎っくき一寸法師よ! おまえは何処にいる! 」

マスターである千代を気にもせず、彼女によって召喚されたバーサーカーは、周囲の木々を震わせるほどの大声で叫んでいた。
後ろに引いている牛車を含めてちょっとした一軒家ぐらいの大きさを誇る体格に、頭から生えた角。目から流れる血涙。顔を覆う蝶番の仮面――バーサーカーの姿は狂戦士の名に相応しく、パニック映画に出てくるモンスターじみたものであった。
今いる場所が人気のない森林地帯でなければ、すぐさま騒ぎになっていたであろう。
バーサーカーが千代の身長の倍以上はある巨大な金棒を怒りに任せてぶんぶんと振り回す度に、辺りに突風が舞い上がる。
その風の圧力や叫びの声圧だけで、小柄な千代は吹き飛ばされそうになった。
だが、すんでの所で脚を踏ん張り、何とか耐える。
千代は、なおも狂気に満ちた叫びを続けるバーサーカーを仰ぎ見、口を開いた。

「あっ、あの! バーサーカーさん!」

鯨の鼓膜さえ破りかねないバーサーカーの叫びに比べれば蟻の呟きに等しい程に小さい声で、千代はバーサーカーに呼び掛ける。
その頼りない声は奇跡的に耳元に届いたらしく、バーサーカーは金棒を振り回すのをピタリと止め、千代を見下ろし、地の底から響くような低い声で返事をした。

「どうした、マスター」

蝶番の仮面に開いた穴から覗くバーサーカーの目はあまりにも悍ましく、千代は思わず悲鳴を上げそうになる。
だが、ここで臆して黙るわけには行かない。
「ファイトよ、千代!」と、彼女は自分自身を鼓舞し、精一杯の大声を張り上げた。

「一つ、聞きたいことがあるんです!」
「聞きたい事とな? 何だ、言ってみろ」

「意外と話が通じる人なんだなあ」と思いつつ、千代は続けて口を開いた。

「バーサーカーさんに、この聖杯戦争で叶えたい願いはあるんですか?」
「あるとも」

一切の間のない即答であった。

「あの薄汚き一寸法師をこの金棒でめっためったに殴り潰したいという願いがな」


47 : 名無しさん :2016/11/23(水) 14:30:40 Q/wIgNBU0
先ほどからの叫びからその願いは薄々予想できていたが、改めてハッキリと言われると、何とも恐ろしい願いである。
物語上の人物を殺せるかどうかはさておき(目の前にいる大鬼に比べれば、その程度の事はさて置ける)、要するに殺人の成就をバーサーカーは望んでいるのだ。
一寸法師と言えば、千代でも知っている程に有名な物語の主人公である。
そんな彼の何処を、バーサーカーは恨むのだろう。

「あいつはな――自分の出世の為に、『大切な米を姫が食った』という嘘っぱちを作り上げてまでして、姫様を陥れたのだ。その所為で、姫様はどれだけ辛い思いをしたか……!」

たしか、作中でその後姫様を襲ったのは他ならぬ鬼――つまりバーサーカー自身ではなかっただろうか……と、千代は思ったが、ここは黙っておく事にした。
バーサーカーから感じる、一寸法師への怒りは本物である。

「姫様の為にも、私はあいつを絶対に許さない! 姫様が味わった百倍の苦しみを与えてやろうぞ!!」

感極まったのか、バーサーカーは金棒を握る手に更に力をこめ、それを横薙ぎにブンと振った。
すると、その軌道の延長線上にあった、一本の大木――それが、金棒の直撃を受けていないにも関わらず、幹がくの字に折れ曲り、根元から浮いて、吹き飛んで行った。
別に、バーサーカーが念力の類を用いた訳ではない。単純に強大な力を持って金棒を振った結果、その余波に大木が負けただけだ。
吹き飛ばされた大木を受け止めた他の木々は、さながら爪楊枝のように易々と折れて行く。
最終的には、森林地帯の一角に巨人が地面を爪で抉ったかのような傷跡が出来上がった。
一連の出来事を目にした千代は、目を白黒させ、頭に付けたリボンが飛び上がりかねない程に魂消ている。
一方、ようやく落ち着いたバーサーカーは、フゥと息を吐き、金棒を握る手を緩めた。

「――ところでだ、マスター。そう言うお前の方は、如何なる願いを持っているのだ?」
「え? わっ、私!?」
「うむ。お前だって、何か願いがあったからこそ、この異国の地に呼ばれたのだろう? 違うのか?」

ふむ、真っ当な疑問だ。
そもそも、『こんなバーサーカーがどんなに恐ろしい願いを持っているのだろうか』という考えから、先に願いの有無を聞いたのは千代の方だ。それを聞き返されて、答えないわけには行かない、
千代に願いはない――と言えば嘘になる。
最初に述べた通り、彼女は恋する女子高生だ。その思いを成就させたいという願いはなくもない。
しかし。

「それを聖杯なんて言う便利アイテムで叶えるのはちょっと――」
「ちょっと?」
「ロマンが足りていないと言うか、愛がないと言うか……そんな経緯で野崎くんと付き合える事になっても、別に、嬉しくないなあって……」
「…………」

頰を掻きながら、千代はそう言った。
対して、バーサーカーは黙っている。
「何か変な事を言っちゃったかなあ?」と不安になる千代。
やがて、バーサーカーは先ほどまでの叫びが嘘かのように、小さく、低い声でポツリと呟いた。

「愛、か……」
「え?」
「いや、何でもない。気にするな」

そんな事を言われれば気になってしまうのが人の性なのだが、有無を言わせぬ鬼の態度に、千代はそれ以上の言及を行えなかった。


48 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/23(水) 14:31:41 Q/wIgNBU0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
三条の大臣の姫@月光条例

【属性】
混沌・狂

【ステータス】
筋力A+++++ 敏捷B 耐久B 魔力B 幸運A+ 宝具EX

【クラススキル】
狂化:―
このスキルは下記の保有スキル『月打』へと変化している。

【保有スキル】
鬼種の魔(偽):A
魔性を現すスキル。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出等との混合スキル。
真性の鬼である証左。
しかし、バーサーカーは真性の鬼ではなく、憎悪のあまりに鬼と化した人間なので、このスキルには(偽)が付いている。

自己暗示:B
このスキルによって、バーサーカーは自分が鬼であると振舞っており、心身共に鬼と化している。

月打(ムーンストラック):E−
狂化、あるいは精神異常の類似スキル。
このスキルを持つ者は青い月の力によって性格や思想が負の方向に歪み、超常の力を得て、周囲に蹂躙と殺戮を撒き散らすようになる。
バーサーカーは月打の影響を直接受けている訳ではないので、このスキルのランクは低い。
その為、真摯な言葉で諭されれば、正気に戻るかもしれない。

復讐者:B
一寸法師への憎悪に狂うバーサーカーは、アヴェンジャークラスへの高い適正を持つ。
ルーラーに対して与えるダメージが増加し、己に与えられるダメージは怨讐の炎の薪となる。
被弾時に魔力を増加させる。
しかし、バーサーカー自身が自分が一寸法師に抱いている本当の思いを思い出した時、このスキルは失われる。

【宝具】
『金棒』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:100 最大捕捉:100(この場合のレンジと最大捕捉は、金棒を振るった際に生じる衝撃波を含めたもの)

昔話の中で鬼がよく持っている、鈍色で巨大な金棒。
しかしその正体は月打の影響を受け、『殴りたい』という願望が強化された金棒である。
それによって姫は操られ、鬼のバーサーカーと化している。
バーサーカーが持ち前の怪力をもって振るうことで、金棒は恐るべき質量破壊兵器と化す。
どれぐらいの威力かというと、数回地面を殴るだけで、その衝撃で巻き上げられた粉塵に太陽光が遮られ、かつて恐竜が絶滅したのと同じレベルの寒冷が地球に訪れるほど。たった数撃で地球全体を文字通りのスノーフィールドにしてしまう、剣呑な怪力と言えよう。

『打手の小槌』
ランク:EX 種別:対願望宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

振るだけでどんな願いでも叶う宝物。
聖杯で再現できるレベルを超えた代物であるので、持って来ることは出来なかった。
しかしこの名残か、バーサーカーの幸運ステータスは著しく高くなっている。

【サーヴァントとしての願い】
一寸法師への復讐
(殴りてえ、殴りてえ、殴りてえなあ!)

【人物背景】
おとぎ話『一寸法師』に出てくる姫が月打を受けた金棒に取り憑かれ、一寸法師への憎悪に狂う鬼と化した姿。
血の涙を流し、牛車を引き、自らの顔を蝶番の面で隠している。
ちなみに、後ろの牛車には誰も乗っていない。流石に、中身までは連れてくることが出来なかったようだ。
一方、月打を受けて姫を操っている金棒は、『殴りたい』という欲望が異常に増幅している。

【マスター】
佐倉千代@月刊少女野崎くん

【能力・技能】
・漫画のアシスタント技能
ベタ塗りを始めとする、漫画家へのサポート技術。
聖杯戦争で役に立つわけがない。

【人物背景】
16歳。頭に付けた二つのリボンが愛らしい女子高生。
好きな男子である野崎くん(少女漫画家)に告白する際『ずっと(野崎くんの)ファンでした』と言ってしまい、彼の漫画のファンであると誤解され、アシスタントを任される事になった。
けどまぁ、合法的(?)に一緒に居られるので、悪い気はしていない様子。
物語中の役割上、ツッコミをする事が多いが、野崎くんが絡むと大ボケをかます事が多くなる。

【マスターとしての願い】
なし。恋は自分の手で叶える。


49 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/23(水) 14:32:36 Q/wIgNBU0
投下終了です。タイトルは「月光少女 佐倉ちゃん」に変えます


50 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:01:24 Yz1l/cvM0
初投下します


51 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:01:54 Yz1l/cvM0
エンポリオ・アルニーニョは母親を失った。
母を殺したのは、一人の神父だった。
エンポリオは、母親の仇を取る為に生きた。
刑務所に入り込み、幽霊を操り、幽霊の本を読みながら、彼は成長していった。
やがて、彼には多くの仲間が出来た。

分解癖のある変人。
記憶のない寡黙な男性。
明るく面倒見の良い黒人の女性。
偶然にも出会ったショートヘアの少女。
そして、星型の痣を持つ少女。

幾つもの出会いと戦いの日々が、彼らの間で繰り広げられた。
神父の刺客は、常日頃から「スタンド」と呼ばれる強力な力を手に取るように振るい、エンポリオ達を苦しめていった。
それでも、エンポリオ達が挫けることは無かった。
恐怖を己のものとし、誇り高き勇気のままに彼らは戦いを繰り広げていく。
その過程で、仲間が死んだ事もあった。
それでも諦めることはなかった。

やがて彼らはとうとう、神父に対面することが出来た。
しかし、既に神父の力は彼等を凌駕していた。
「時」を加速させるその力。
世界を再構築させるほどの時の動きに、世界が、彼等が掻き乱されていった。
しかし、これまでの熾烈な戦いを潜り抜けた機転と力と勇気で彼等は神父に立ち向かっていった。
時を静止させる者が仲間にいるとはいえ、勝算はほぼゼロに等しかった。
そして、多くの仲間が死にゆく中エンポリオは全てを託され、生き残り、只、加速される時の中を彷徨い続け―



◆  ◆  ◆


「エンポリオッ!お前はここに来てはならなかったのだッ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

逃げる、逃げる。
始まりの場所、薄汚い刑務所の中を、エンポリオはみっともなく走っていく。
追いかけるのはエンリコ・プッチ神父。
徐倫を、エルメェスを、アナスイを、ウェザーを、承太郎を殺した張本人。
しかしプッチは、その潰れた右目を晒しながらも、己のスタンド「メイド・イン・ヘブン」を容赦なくけしかけてくる。
DIOとの戦いに勝利した承太郎でさえ為す術もなかったその力にエンポリオは、只々、逃げるしか無かった。

無論、手段がないわけではない。
徐倫が遺してくれた切り札なら、既にエンポリオの帽子の中に隠されている。
プッチがウェザーから奪い取りDISCにしたそのスタンドを、エンポリオは持っている。

「ウェザー・リポート」

所持者であるエンポリオの仲間の一人である男の通称と、同じ名を持つスタンドだ。
その能力は「天候操作」。
それさえ使えれば、エンポリオに勝ちは見えるかもしれない。
だが如何に勇気があろうが、幾ら死線を潜り抜けようが、エンポリオは只の子供。
恐ろしいほどの暴力には、逃げまとうしか無かった。

しかしエンポリオは、「メイド・イン・ヘブン」の攻撃を避けようと仰け反ったその時である。
エンポリオの下には丁度、一枚の白い紙札があった。


◆  ◆  ◆


52 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:02:52 Yz1l/cvM0


「思い出した……」

自宅の本棚にある本を横になって読んでいたエンポリオは、其処までの記憶を取り戻した。
取り戻した切っ掛けは、己が読み返したその本だ。
其処には空気の物質に関する記述が有るのだが、その本をエンポリオは嘗て読んだ事があるのだ。
己のスタンド「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」で。
そもそもからすれば、エンポリオの母親は普通に生きていたのだ。
そしてエンポリオがいるのは、刑務所ではなく普通の家。
思えばこの時点で、エンポリオは既に違和感を感じていたのだ。
そして読んだ本の文章に既視感を覚え、エンポリオは今に至った。

今のエンポリオに流れるのは、「聖杯戦争」に関する記憶だ。
此処は月に偽装された演算装置「ムーンセル」に構築された世界「SE.RA.PH」。
この世界で記憶を取り戻した者は7騎の「サーヴァント」と呼ばれる使い魔を操り、殺し合い、そして戦いの果てに「聖杯」と呼ばれる願いを叶えるアイテムを手にするというのだ。
その聖杯戦争に招かれる鍵は、何やら「白紙のトランプ」だそうなのだが……
しかし、白紙のトランプと言う物はエンポリオも持ち合わせていない。
普通のトランプならスタンドで創り出せるだろうが、しかし白紙のトランプは持っていないはずだ。

(何処に有るんだろう……)

そう考え、ガバリと起き上がったエンポリオは辺りをキョロキョロと見回す。
すると、自分の真後ろに模様が書かれたカードが置かれているではないか。
エンポリオは身体の向きを変え、そのカードを拾う。
裏返してみると、そのカードの模様は―真っ白だった。
無論、このカードが己の背中に置いてあったということなど、エンポリオは知る由もないだろう。

◆  ◆  ◆

「そうだ、ぼくは徐倫に託されて、プッチから逃げようとした所で……。」

何の宛も無く、エンポリオはトランプを手に街を歩きながらも、聖杯戦争について考える。
今の所、エンポリオのサーヴァントがやって来る兆しは見られない。
実のところ、エンポリオには叶えたい願いなど無いのだ。
いや、願いなら有る。
エンリコ・プッチを倒すこと、それだけだ。
死んでいった仲間達を生き返らせようなどとは思わない。
それでは、彼等の覚悟は全て、無駄になってしまうのだから。
他者を殺めて願いを叶えるとなるのなら、尚更の話だ。

結局、エンポリオが選んだのは、誰も殺さずに生き残る道。
或いは聖杯を破壊する道だ。

(聖杯に縋って叶えたい願いなんて僕には無い……願いなら、ぼく自身の手で叶えてやる!)


そう思った時、エンポリオの持ったトランプが、光り輝いた。

「うわっ!!」

その眩い光に、エンポリオも思わず目を覆う。


◆  ◆  ◆


53 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:03:09 Yz1l/cvM0



天道総司の妹は病を患った。
病が患った原因は一つの超巨大隕石だった。
妹を治す方法は最早見つからないと分かった中、天道はある一つの噂に希望を見出す。

「時を超える力を持つ黄金のライダー」

それに目をつけた天道は、行動を起こした。
世界では、既に天道と同じ「ライダー」達の争いが勃発していた。
「秩序」を護る組織と、壊す組織。
二手に別れたライダー達は潰し合う中、天道は姿を表した。
己の力を見せつけた彼は2つの組織に内通し、己を売る。
彼の思惑通りにライダー達の潰し合いは加速を初め、ついに天道が求めた男はその姿を表した。

同時期に、天道に悲しい知らせが届いた。
妹の命が、もう長くはないのだと。
更に、ライダーを失った秩序の組織が怪物達と手を組み、世界を蹂躙しようとしたと言うことも。
最早、天道に遺された時間は無かった。
天道は妹を愛し、愛された男と手を取り合い、宇宙へと旅立つ。
そして宇宙に到着した天道達の前に現れたのは、黄金のライダー。

黄金のライダーとの戦いは歯列を極めた。
只のライダーではまともに太刀打ち出来ない程に。
だが、妹を愛した男が、天道を庇ってくれた。
彼の想いを乗せ、黄金のライダーから奪った時を超える力を、天道は遂に使った。
奪われた力の前に黄金のライダーは倒され、天道は念願の想いを届けるために全てが始まった7年前へと旅立つ。

隕石は爆発四散、天道は7年前の己に妹を託した。



◆  ◆  ◆




「お前か、この俺を喚んだマスターと言うのは。」

光が止んだ時、既にエンポリオの手にカードは無かった。
代わりにいたのは、白いコートを羽織った、一人の長身の東洋風の青年だった。
如何にも英雄とは言い難い様な出で立ちだったが、そのオーラは何処か、凄みを持っていた。
それも、エンポリオが嘗て出会った仲間達にも劣らないような。
それに、この男を見た時、何やら数値と、「Rider」という文字が浮かび上がってきたのだ。
間違いない、彼こそが、己のサーヴァントだ。

「はい、そうです。」


◆  ◆  ◆


54 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:03:41 Yz1l/cvM0

エンポリオが召喚したサーヴァントのクラスは、「ライダー」という物だった。
その名の通り、乗り物を宝具として手繰るサーヴァント。
今エンポリオは、ライダーの背中にしがみつきながら、彼が乗りこなしている真紅のバイクに乗っているのだ。
多くの車が行き交う公道の中を、極めて特殊な形状をしたライダーのバイクは走っていく。

「マスター。」

ふと、ライダーが声を掛ける。

「は、はい。」
「お前が持つ願いは何だ。」
「僕に願いなんか……有りません。」
「ほう?」
「僕は、この聖杯戦争から抜け出したい。僕は託されているんです、死んだ仲間達から、宿敵をぼくの手で倒すという使命をッ!」


―仲間、か。
ライダーのサーヴァント、天道総司は、その言葉に懐かしみと、疎遠さを同時に浮かべていた。
天道は、これまで一人でずっと戦ってきた。
だが、黄金のライダーとの戦いにおいて、共に戦った男がいた。

(加賀美、俺とお前は魚の切り身よりもずっと薄っぺらい仲だ……
だがそれでも俺達は、共にひよりの為に戦った。)

嘗て、共にひよりを救うために戦ったライダーを、天道は思い出した。
彼はひよりを愛していた。
その想いは天道と同じだった。
何より彼は、己を庇ってハイパーゼクターへと道標となってくれたのだ。
加賀美とは所詮昨日一昨日出会った敵に過ぎなかったが、守りたいものは同じだった。
行く道は同じだった、そう云うのを仲間だというのだろう。
美味い料理はほんの一口しか食べていなくとも、十分すぎる程愛おしい味であるはずだと、お婆ちゃんも言っていた。


「マスター、お前の名前は何だ?」

天道は、まだ聞いていなかった己の相棒の名を問う。
うしろにしがみついているエンポリオはそれに答え、輝かしい目で答える。

「ぼくの名前はエンポリオです。」

天道はその言葉を聞きフッと笑うと、同じく己も答え返す。

「おばあちゃんが言っていた、俺は天の道を生き、総てを司る男……」

そして天道は左ハンドルを手放し、空いた左手で天を指差す。

「天道……総司!!」

その姿は、エンポリオにはより一層輝かしく見えた。


55 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:03:57 Yz1l/cvM0





【マスター名】エンポリオ・アルニーニョ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
【性別】男

【参戦経緯】

エンリコ・プッチに変えられた世界におけるグリーンドルフィン刑務所で偶々白紙のトランプを拾った。


【Weapon】

「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」

エンポリオが持つスタンド。
既に消滅した存在、つまり物の「幽霊」を呼び出すことが出来る。
幽霊は実物と同じように使うことが可能で、例えば本は読めるし、パソコンは回線が無くてもインターネットに繋げる。
ただし食べ物は喉を通らず、腹の足しにならない。
重火器も実弾は当たらず、音による虚仮威しにしか使えない。


「ウェザー・リポートのDISC」

ウェザー・リポートと、空条徐倫を通して手に入れた彼のDISC。
「ウェザー・リポート」と呼ばれるスタンドが入っており、高度な天候操作能力を持つ。
使いこなせば発火現象、凍結現象、空気中の酸素濃度の操作、更にはカエルを降らせることも可能。
ただし、DISCを挿せるエンリコ・プッチがいない限り発動できない。
【破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - E / 成長性 - A】


【能力・技能】


・スタンド
力を具現化したかの様な特殊なパワー。
スタンドはスタンド使いにしか見えず、スタンドにしか対処できず、またスタンドが傷つけば本体も傷付く。


・専科百般
幼い頃からあらゆる本を読み続けてきたため、あらゆる事柄に詳しい。
ヘリコプターの操縦法も知っている。


【人物背景】

運命に勝たせてもらおうとした男。
加速された時間からの参戦。


【聖杯にかける願い】

エンリコ・プッチを殺す。


56 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:04:19 Yz1l/cvM0



【クラス名】ライダー
【出典】劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE
【性別】男
【真名】天道総司
【属性】混沌・善
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具B+(マスクドフォーム変身時)
       筋力C 耐久C 敏捷B++ 魔力E 幸運B 宝具B+(ライダーフォーム変身時)
       筋力A 耐久A 敏捷A++ 魔力E 幸運A 宝具B+(ハイパーフォーム変身時)



【クラス別スキル】


騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並み以上に乗りこなす。


対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージを軽減する程度。




【保有スキル】

仕切り直し:C
不利な戦闘から離脱する能力。
戦闘を水入りにすることも出来る。


心眼(真):B
修行、鍛錬によって培った洞察力。
窮地に陥った時、逆転の可能性が1%でもあるのなら、それを手繰り寄せる戦闘論理。


単独行動:A
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保つ能力。
Aランクなら、マスターが死んでも1週間は現界を保てる。


【宝具】

「装甲騎士・真紅の甲(マスクドライダー・カブト)」

ランク:C+ 種別:対人・対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

地球外生命体「ワーム」に対抗するために作られたマスクドライダーシステムの記念すべき第一号。
カブトゼクターを呼び出しベルトに装填することでシステムが起動、「カブト」へと変身する。
「ヒヒイロカネ」で鍛えられた装甲を 武器に戦う「マスクドフォーム」、
マスクドフォームの装甲を外して時空を超えた「クロックアップ」と呼ばれる高速移動を武器とする「ライダーフォーム」の2つの姿を併せ持つ。
また、別の逸話ではカブトには暴走システムが仕組まれていると言う逸話が残されているが、この世界では逸話として確認されていない。


「銀角突き刺す真紅の甲車(カブトエクステンダー)」

ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:30 最大捕捉:1

ライダーが乗りこなした高性能バイク、カブトエクステンダーを召喚する。
カブトの資格者に忠実であり、自動走行も可能である。
キャストオフによりエクステンダーモードに変形、壁を走り、巨大な角で敵を攻撃できる他、クロックアップの世界での走行も可能となる。
耐久力も高く、成層圏を突入しても尚原型を保っている。


「時空を超越する銀甲(ハイパーゼクター)」

ランク:B++ 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

ライダーが黄金のライダーから奪い取ったゼクター、ハイパーゼクターを召喚する。
これをベルトに付け、ハイパーキャストオフを発動することで「ハイパーフォーム」へと変身できる。
ハイパーフォームの戦闘力は相当なものとなり、空中飛行も容易にできる。
そして更には「ハイパークロックアップ」と呼ばれるクロックアップを超える時間制御能力を持つ。
時間を巻き戻す事すら容易な能力だが、時間逆行は令呪一角につき8時間が限度。
また、逸話として確認されていないパーフェクトゼクターの召喚は不可能。


57 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:05:18 Yz1l/cvM0

【Weapon】

「カブトゼクター」

マスクドライダーシステム「カブト」のコアを担うクワガタムシ型ロボット。
「ジョウント」と呼ばれる時空を超えた転送システムを搭載しており、
「クロックアップ」の空間を通して資格者の元にタイムロスなしで駆けつける。
そしてデバイスに装填することで資格者をライダーに変身させる。
普段は何処かを飛び回っているが、ライダーの命令には忠実。
意外と器用で、高速で麺打ちを行うことも出来る。


「ライダーベルト」

マスクドライダーシステム「カブト」を起動するためのベルト型デバイス。
腰に嵌めるだけで14歳の少年が瓦礫の下から自力で抜け出せる程度に力が増大する。
内部にはカブトのスーツの中身が圧縮されて入っており、カブトゼクターをバックルに装填してロックを解除することで装着される。


「カブトクナイガン」

カブトの装備。
当然の如くヒヒイロカネで作成されており、ジョウントで自在に召喚できる。
「ガンモード」にはストック部分に刃が付けられており、持ち替えて「アックスモード」にすることも出来る。
更に銃身部分を引き抜くことで「クナイモード」に変化させることも可能。



【人物背景】

運命に絶えず、常に味方された男。
劇場版からの参戦。


【聖杯にかける願い】

マスターを護ってやる。


58 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:05:39 Yz1l/cvM0
投下終了です。


59 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/23(水) 18:11:46 Yz1l/cvM0
すいません、エンポリオの「ウェザー・リポートのDISC」について一部修正箇所があります。
ただし、DISCを挿せるエンリコ・プッチがいない限り発動できない。
↑この部分を削除させて下さい。


60 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/23(水) 21:01:34 80dw.uuk0
投下します。


61 : 南条光&セイバー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/23(水) 21:02:20 80dw.uuk0
南条光は"ヒーロー"を愛している。

だからこそ、このような争い事は許せるものではなかった。

そしてそんな怒りに燃えている彼女のそばには男がいた。

金色の髪をし、白銀の鎧と光り輝く石を携えた騎士だった。

「マスター、君は…この会場の中で、何をしたい?」

その男は、彼女に召喚されたサーヴァント。

名を、セイバーといった。

「アタシは、戦いを止めたいと思っている。きっと…凄く辛い思いしたり、
他の人にも辛い思いをさせたりすると思うけど…それでも止めたいんだ。
それが正しいかどうかじゃなくて…アタシが叶えたい願いがそれなんだ…。
だけどアタシの力だけじゃ皆を救えない。だから、力を貸してくれ!セイバー!」

彼女は叫んだ。誰かを不幸にする聖杯を認めたくないと。
そのためにこの聖杯戦争を止めたいと、そう叫んだ。

そしてセイバーは少し微笑んだ後、彼女にこう宣言した。

「争いを止めるために聖杯を壊すこと…それが君の願いか。ならば私はその想いに応えよう!」

「私はセイバー!息づく命がある限り戦う者だ!」

彼は高らかにこう宣言した。誰かの命のために戦うと、彼女の戦いを止めたいという想いに応えると、そう答えたのだ。

そしてその言葉を聞いた彼女には、彼の背中から舞い散る白い羽根が見えていた…。


62 : 南条光&セイバー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/23(水) 21:03:00 80dw.uuk0
【クラス】セイバー

【真名】天地騎士クレイ

【出典作品】モンスター列伝 オレカバトル

【ステータス】筋力A 魔力B 耐久A 幸運C 敏捷B 宝具EX

【属性】
善/中立

【クラススキル】
対魔力:C(A)
 本来は高い対魔力を持つが、彼は"天の意思"に反逆した事で、
 大幅にランクダウンしている。

騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
 彼自身はこのスキルに関する逸話を持たないため、ランクは低いものとなっている。


【保有スキル】
神性:-
 元は天使であったが人間を愛し、それ故に
 地上を滅ぼそうとする"天の意思"に異を唱え堕天した為、現在は失っている。

守護騎士:A+
 他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
 "天の意思"に逆らってまでも人を守ろうとした彼は最大の適性を持つ。

対神:B
 「神秘はより強い神秘でなければ打ち砕けない」という法則を無効化する。
 同郷の堕天使、そしてかつて自らが導いた少女とともに"天の意思"を打ち倒した逸話によって得た能力。

殉教者の魂:A+
 精神面への干渉を無効化する精神防御。
 彼は人のために堕天し、地を這うことを選んだ存在であるがゆえに高い適性を誇る。


【宝具】
『天は見下ろすためにあるのではない(白銀のクラレント)』
  ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1

彼が人として戦い続けていくうちに身に着けた剣技が宝具となったもの。

"神性"スキルを持つ者の敏捷を1段階下げ、"無辜の怪物"スキルを持つ者に回復不能の傷を負わせる。
またAランクの"対魔力"を無効化するため事実上、物理手段によってしか防御できない。


『息づく命がある限り私は戦う!(ラスト・スタンド)』
 ランク:EX 種別:対我宝具 レンジ:1 最大補足:1

彼が人のために堕天し、そして人として生きる末に見つけた意志が宝具となったもの。

自らの傷を癒し、また宝具による攻撃でない限り致死量のダメージを受けても決して死ぬことはなくなる。
また傷を負うごとに自身の幸運を除いたステータスが最大1段階上がり、更にこの宝具を発動している間対魔力がA+となる。

しかし消費する魔力も多く、そのため令呪を1画消費する必要があるため本当に切り札として使うこととなる。


【weapon】
『無銘の剣』
彼がまだ天使として神のそばで戦い続けていた時から使っていた剣。

彼が人間になった際に神の加護は失われているが、性能事態にあまり変化はない。

『リア・ファル』
彼が堕天し、地上に降り立った際に携えていた光り輝く石。

彼がまだ天使であった際に携えていた石と、彼が地上で見つけた聖なる力が交わって生まれた石であり、
後に彼を人間にするという奇跡を引き起こした聖遺物である。


【人物背景】

「光の名のもとに命を消し去るのが天命なら…そんなもの、私は捨ててやる!たとえ翼が消えようとも大地とともにあることを選ぶ!」

穢れ切った世界を消滅させる事で浄化しようとした"天の意思"に異を唱え、地上の者達と生きる道を選び堕天した結果、人間となった元・天使にして、
人として生きることにより世界の美しさに触れ、そして人として人を守ることに終始した男である。

人を愛したがゆえに堕天した"アザゼル"や"シェムハザ"、そして彼がまだ天使だった時に導いた"ガラスの靴の少女"とともに世界の滅亡を防いだ戦士でもある。

しかしかつて天使として共に戦った同志たちを討ったことについては心を痛めており、時として彼らの名を口ずさむこともある。


【聖杯にかける願い】
彼自身に叶えたい願いはない、"この地上に生きる者として、人とともに生きる"という彼の願いは既に叶っているからである。

しかし聖杯に、人々を破滅させるような願い事をする者が現れた時にそれを打ち倒すために、
またその願いが聞き入れられてしまった際に聖杯を壊すために召喚に応じている。


63 : 南条光&セイバー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/23(水) 21:03:51 80dw.uuk0
【マスター名】南条光
【出典作品】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【weapon】
なし。

…彼女はあくまで"ヒーロー"に憧れているだけであり、特殊な力などは持ち合わせていないのである。
…しかし彼女の勇気は称賛に値するものであると信じたい。


【能力・技能】

"ヒーロー"に憧れているだけあって身体能力が高く、また特撮知識がかなりある。

【ロール】
中学生。


【人物背景】
徳島県出身の14歳アイドルであり、特撮マニア。

特撮マニアと表現した通り、趣味は特撮ごっこと特撮番組鑑賞であり、そもそもアイドルになるきっかけも
「ヒーロー番組の主題歌をゲットし自分がヒーローになる」ためである。

「正義は悪がいないと成立しない」という台詞に「みんなが正しい心を持てばそれでいい」と即答で答えるなど、
好きな物への一途さや信念を曲げないまっすぐな姿に勇気付けられる人たちも少なくない。


【聖杯にかける願い】
苦しい時もあるだろうし、泣きたくなる時もあるかもしれないが、
"ヒーロー"として誰かを泣かせることはさせたくないという想いから
この聖杯戦争を打倒したいと思っている。


64 : 南条光&セイバー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/23(水) 21:04:15 80dw.uuk0
投下終了です

ありがとうございました。


65 : ◆9KkGeT6I6s :2016/11/23(水) 21:15:25 VP/8fo5g0
投下します


66 : ◆9KkGeT6I6s :2016/11/23(水) 21:16:26 VP/8fo5g0

 チャンスはつまりチャンスであって成功ではない。目に見えて、あからさまに有利な状況も、そうなるかもしれないというだけで、そうするための行動が伴わなければただ過ぎ去ってしまうシチュエーションでしかないのだ。

 男にとって現在の状況は、まさしくあからさまな好機であった。
 幼いころから魔術師としての修練を積まされた。日頃から両親との会話は魔術の学習に絞られ、学校にも通わせてもらえなかった。
 羨ましいと思ったことは、もちろんある。外に出るたび自分たちと、ほかの家族を比べ、道を笑いあいながら歩く少年たちに思いを馳せたことはある。それでも男は魔術の勉学に努めた。

 その結果が今なら、それは最高の見返りといえよう。続けた意味はあった、逆に、続けない意義は何もなかったのだと自信をもっていえよう。男の目の前には参加資格である白紙のトランプと、手首に浮かんだ三画の刺青がある。
自分は聖杯戦争への参加が許されたのだ。
 男は今歓喜に打ち震えている。大の大人が涙さえ浮かべ、神への賛辞を述べさせている。

 聖杯戦争は魔術師にとってなににも替えがたいステイタスであり――そこで勝利することこそ魔術師最大の栄誉となる。そこへの参加は立場と、運が必要だ。男は自分の実力が運を引き寄せたのだと思う。この機会は生かさなければならない。自分のやってきたことを無駄にしないためにも、無為に返さないためにも、男は勝たなければならない。

 ――と、次の瞬間けたたましい破砕音が男の部屋をぶち破る。目に涙をためたままその向きを見た男の首が、ぶつりと切断される。血は流れない。獲物をとった勝鬨の声も上がらない。馬が嘶き、首を切り落とした白銀色の斧が男の座っていたテーブルにこすれ、いやな音を立てる。

 サーヴァント、バーサーカー。独立戦争期の赤い軍服に身を包み、今しがたの参事を起こしたこの首なしの兵士は、男のサーヴァントであった。

 バーサーカーは乗っていた黒い馬から降りると、首のない――つまり両の目なしにどう周りを感じているのか、きょろきょろと部屋を見、小さな瓦礫に半分埋もれていた白紙のトランプを拾い上げる。そのまま自分のマスター、その死体には目もくれず馬を走らせ、近くの森の中へ消えて行ってしまった。

 この首なし兵士、バーサーカーの伝説は、古く19世紀前期の作家、ワシントン・アーヴィングの短編に記述がみられる。
 彼は首のない兵士。死を連ねた黒い馬に乗り、霧のかかった森に棲み着いた彼は、迷い込んだ獲物の首を虎視眈々と狙っている。
 元は、独立戦争時、イギリス軍によって集められたへシアン(ヘッセン大公領に所属するドイツ人の傭兵のこと)だったといわれている。
 彼は悪辣である。
 彼は非道である。
 略奪や裏切り、盗賊まがいの行動を繰り返し、最後は首を刎ねられたという、彼がどういった経緯で蘇ったのかは、誰にもわからない。しかし彼が森に棲みつき、人々の首を次々と刈っていったのは事実だ。彼は今この、偽物の町、スノーフィールドにおいても、同様の凶行を、繰り返そうとしている。

 森に入り、霧が出た。
 彼はまず、森の中にいる人々を殺して回る。

 ここはスリーピー・ホロウ、彼の名もまた、スリーピー・ホロウ。首なし兵士の領域。


67 : ◆9KkGeT6I6s :2016/11/23(水) 21:18:32 VP/8fo5g0
【クラス】バーサーカー
【真名】スリーピー・ホロウ(個人としては不明)
【出典】スリーピーホロウの伝説
【マスター】不在
【性別】男
【属性】混沌・悪
【身長・体重】194㎝・166㎏(鎧・武器も込み)
【ステータス】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:A+
【クラススキル】
狂化:D
 見境なく人の首を刈り続けるにしては低いようだが、つまりバーサーカーが首を刈るのは狂気ではなく性格に問題があるということ。コミュニケーションをとることも不可能ではないが、首のない彼に筆談をお願いしても帰ってくるのは斧である。

騎乗:D
 馬以外には乗れないが、馬に関しては一流である。

【所有スキル】

怪物:A
 バーサーカーは一度死に、蘇った存在である。そのためかはわからないが、あらゆる攻撃にもバーサーカーは怯まず、その場にとどまり続けられる。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けてもしばらくは動き続け、適切な処置を行えば生き延びる。

嗜虐体質:C
 自身の攻撃性にプラスをかけるスキル。同質の加虐体質と違い、こちらは敵を攻撃することに執心するのではなく、いたぶることに重きを置いている。

神性:D
 怪物になってから付いたもの。

【宝具】

『火は灰に、灰は火に成らず(アウスブレネン・アイナー・アクスト)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
 バーサーカーは地獄から蘇った死者であり、首を刈る彼の姿は死神に例えられることがある。そのためかバーサーカーに付けられた傷は焼けたような跡を残し、サーヴァントであっても通常の方法(自然治癒や、魔術による治療)による回復を許さない。
 
『誘いの霧(スリーピー・ホロウ)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:- 最大補足:-
 バーサーカーの発祥の地であり、活動域。バーサーカーの棲みついた森は四六始終に霧がかかり、対魔力の著しく低い一般人はこの霧を見ただけで軽く森に執着してしまう。
 また、この霧はサーヴァントを現界させるに十分な魔力を有しており、そこにいるだけで魔力の回復につながる。マスターを殺したバーサーカーが現界できているのもそのため。

【wepon】
無銘:斧
 無銘ではあるが、伝承がないというだけで死神の化身であるバーサーカーの斧は最硬度の頑強さを持つ。

無銘:銃
 独立戦争期の銃。
 小銃と拳銃を一丁ずつ持っている。
 
【人物背景】
 独立戦争期にイギリスが集めたドイツ兵の一人であり、現地アメリカで悪逆の限りを尽くした男。最後は村人たちに捕まり、散々いたぶられた後に首を切り落とされ、死体は捨てられたといわれている。
 それがなんの因果か首なしの兵士として蘇り、生前のうっ憤を晴らす勢いで人を殺し始めた。
 行動が常軌を逸しているうえ、尋常ではない耐久力を持っているため、見かけはバーサーカーの王道を往っているが、実は人格がそれこそ尋常じゃないゴミというだけでそこまで狂っているわけではない、という性質の悪いサーヴァント。戦い方も馬による突撃を主体とした強引なものではあるが、理に適っており、単純な戦闘技能もある。
召喚したマスターはまず間違いなく殺されてしまうため、バーサーカーをどうしても使いたい場合は完全にスリーピー・ホロウ狙いで召喚し、間髪入れずに冷呪で縛り付けなければならない。しかしそうした場合、反ってバーサーカーの機嫌を損ねる。いつも自分を殺すための策を練られていることを忘れてはならない。
因みにこの投下で外からいきなり現れたのはまず喜んでいるさまを見てから殺そうと思ったため。


68 : ◆9KkGeT6I6s :2016/11/23(水) 21:19:51 VP/8fo5g0
投下終了します

題名は「その夢は霧に潰える」でお願いします。


69 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:10:02 Sz83zIV60
新企画建て乙です
私も投下させていただきます


70 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:11:16 Sz83zIV60

宙に浮かぶ、白いアンモナイトのような機械。
それはカプセルのようになっており、中に一人の男がいた。

「パラドックス、アポリア……逝きましたか。アンチノミー、残されたの君にこの世界での任務は託しましょう。
 申し訳ない、私はあなたたちとは異なる道を行きます」

敗れた戦友の姿を想起し、目じりに僅かに涙を浮かべながら。
デュエルモンスターズの歴史を否定しようとした友。
古代エジプトの神に比肩する勝利をもたらす白き龍、その対となる黒き竜、ユリウス・カエサルの集めた七つの宝石の力を束ねた古代龍、神秘を覆す機械の力を極めた新世代龍、5000年に一度の戦いに目覚める赤き竜の化身。
それを束ねてもなお超えられなかった名もなきファラオ、光と闇を宿す覇王、今代最強のシグナ―。
未来世界を滅ぼした機皇帝の力もシグナ―を破るには至らず。

「あげく私はアルカディアムーブメント如き小物に追いやられることになるとは」

抑止力というものでしょうかね、などと漏らしながら。
浮かんだ機械が動き出し、屋外の開けた空間に出る。
……記憶の彼方にしかなかった栄えた街を眼下に、その都市とは似ても似つかない故郷に思いをはせながら構える。
いくつかのカードを取り出し、深呼吸。
覚悟を決め、魔力回路を励起し、詠唱を開始する。

「素に回転と共鳴」

長年駆り続けたモーメントを起動する。
かつて握りつぶしたシューティング・スター・ドラゴンを一時手にする。
……思えばこれがすべての始まりだった。

「礎に虚無(アイン)と無限(アインソフ)と無限光(アイン・ソフ・オウル)。祖には時戒める神セフィロン」

絶望の果てに手にした力、究極時械神セフィロン。
歴史を変えようとする罪人のすがる、最後の神。

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠(ケテル)より出で、王国(マルクト)に至る22の旅路(パス)を秘められし知恵(ダアト)に」

新たな手札はアルカナフォースEXエクストラ-THE DARK RULER。
かつて世界を塗りつぶしかけたダークネスの力の欠片。
そしてそれは同時に生命樹を渡る旅、大アルカナ22枚の結晶。

「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ滅びゆく時を破却する」

五つの言の葉、五つのカード。
それに宿る力を束ねる。
…久方ぶりだ!

「―――――Anfang(クリアマインドォォォォォォォォ!)」

感じる。忌々しい、シンクロの力を…!
だが、これによって一つにするのだ。
シューティング・スター・ドラゴン。
究極時械神セフィロン。
アルカナフォースEXエクストラ-THE DARK RULER。
そして

「――――――告げる。
 汝の身は我が下に、我が命運(デッキ)は汝の剣(カード)に。
 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

ここで…!

「魔法カード発動!『Z-ONE』…いや、その真価を見せよ、『白紙のトランプ』よ!」

本来ならば破壊されたときに効果を発動する魔法カード。
だが、これはただのカードではない。
聖杯戦争へと至るカギ、『白紙のトランプ』に加工を施し、カードとしたものなのだ。

「その効果により、私を聖杯戦争の場へと特殊召喚!さらにサーヴァントを一体、私のもとへと特殊召喚する!」


71 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:12:07 Sz83zIV60

加速する。
『遥かなる境地(クリアマインド)』に至ったこの身が異界へと飛び始めるのを感じる。

「誓いを此処に。我は終わりの始まりと成る者、我は常世総ての調律を敷く者」

だがまだだ。
この身でただ英霊を召還するだけでは、間違いなくあの男が現れる。
この体に刻まれし英雄、不動遊星が。

「トラップカード発動、『不協和音』!私はシンクロ召喚を否定する!」

これでいい。
これで奴は現れない。
『Z-ONE』により聖杯戦争へとたどり着く。
『不協和音』により不動遊星の召喚を不可能とする。
そして、『シューティング・スター・ドラゴン』、『究極時械神セフィロン』、『アルカナフォースEXエクストラ-THE DARK RULER』。
三体のレベル10のモンスターでXYZ(おわり)へと向かうのだ……!

「10の星は今重なり、新しい夜明けへと続く道へ変わるだろう。
 英霊召喚!
 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」



そして、世界が変わる。
白一面の世界。
遥かなる境地に至った者のみがたどり着く、光速の向こう側。
そこに二つの影。
一つはZ-ONE。
もう一つは白い研究着を纏った男性のようにも、黒いカソックを着けた女性のようにも見える形を掴みがたい影。

「ほう、あなたが私のサーヴァントでしょうか?
 それともサーヴァントを召還する、『座』や『演算機』の使い……?」

問いかけるが答えは返さない。
代わりに影は魔法カード『Z-ONE』を手に取り、それを手の中で『白紙のトランプ』へと戻して渡す。
それはかつて英雄、不動遊星が初めてアクセルシンクロモンスターを手にした情景と似通っていた。

「フ、なるほど。これが私のサーヴァントというわけですか」

白いカードを受け取り、影に別れを告げる。
――そしてたどり着く。戦場へ。

そこは広大な森林の中。
滅びゆく世界では久しく見ていなかった情景に感慨を覚える。
そこで間をおかず、『白紙のトランプ』が輝く。
そして召喚されるサーヴァント。

現れたのは青みがかった頭髪に黒衣の男。
年のころは10代半ばといったところか。
左目の眼帯と帯びた長剣が特徴的だ。

「サーヴァント、ランサー。召喚に従い参上した。
 お前が俺のマスターだな?」
「はじめまして、ランサー。ええ、どうやら――」

ちらり、と疼きを憶えた左腕を確認し、そこに三画の令呪が輝いているのを確認。

「そのようです。拙いマスターですが、どうぞよろしく。
 …顔も見せぬ無礼をご容赦いただきたい」
「いや。別段――」

ランサーもまた自らの眼帯に手をやりながら答える。

「事情があるなら気にすることでもない。顔を見せない情報屋ともやり取りはあった。
 アイツに比べれば、うさん臭さはともかくうっとおしい無駄口がないだけよしだ。
 口調は砕けても構わんが…それで?」
「と、言いますと?」
「儀式を行った真っ当なマスターには愚問だったか。方針としては聖杯を手にするんだな?」
「ええ、無論」

目を閉じ、ここに至るまでの苦難を想起する。
そして聖杯への思いが心中で強まるのを感じる。


72 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:12:34 Sz83zIV60

「私の過ごした歴史では、モーメント、シンクロと呼ばれる技術が発達していました。
 しかしそれは人の手に余るものだったのか……暴走し全人類に牙を向いたのです。
 生き残ったのは私含めたった四人。それも世界中で、です」

恐らくは初めて口にするだろう、悲鳴に等しい愚痴。
仲間四人の間では互いに気遣って口にすることはまずなかった類のものだ。

「女性が一人でもいれば人類存続の希望も持てたのかもしれませんが男所帯でしてね。
 …フフ、それはジョークですが。
 四人で様々な試みを行いました。モーメントを否定し、機械を否定し、技術を否定し、滅びの未来の否定を。
 ですが、為せなかった!時の流れに負け、同胞たちも一人、また一人とこの世を去っていく。
 結論したのです。この滅びを棄却するためには時空そのものを改めなければならないと!」
「……歴史の改変。我が師の挑戦と同じか」

ランサーの目に幾ばくかの共感のようなものが浮かぶ。

「極めて困難なプランです。すでに機械人間として復活した我が友、アポリア、、パラドックスは敗れ残されたのはアンチノミーただ一人。
 私のもとにも過去の人間の妨害が介入し、成功の算段は極めて低い状況になってしまいました。
 ですから私はこの聖杯戦争に挑むのです。彼らの手で世界の救済がならぬのなら、私が聖杯によってモーメントを抹消する!」
「…自らの意思で考え、抗い、行動する。いい生き様だ。名を聞こう、マスター」

正面に向かい合うサーヴァントの問いに僅かに逡巡する。
魔術的な契約において名前というのは重要な意味を持つ。
今の自分が答えるべき名は何かというと

「Z-ONEと呼んでください……それ以前の名は、すでに意味を持たなくなって久しい。
 しかし、聞き間違いでなければあなたはランサーと?それは剣のようですが」
「ああ、これか。槍が望みか?なら出してやろう」

剣を一振りすると、瞬く間にそれは槍へと姿を変えた。

「ついでに鎌にもできるぞ」

くるりと手の内で回し、宣言通り鎌へと転じる。

「ほう、なんとも面白い。それがあなたが振るった宝具の特性ですか」
「……生前はこうではなかったのだがな。
 英霊というのは、信仰によって多少なり歪むものだ。風評被害で吸血鬼扱いされたり、信仰からあるはずのない武装や部下が増えたりな。
 これの本来の形は『楔』なのだ。それを本来の俺の宝具として型落ちして再現させている」

剣。槍。鎌。
それらを扱い、楔に所縁のある英霊……?

「白木の杭、と言えば伝わるか?不死種を封じる『螺旋の塔』、それが俺の『槍』として再現された。
 本来この塔の所有者は俺ではないオレなのだが、英霊の妙だな。お前の――」

Z-ONEの乗る機械を指さして続ける。

「その、螺旋の力に引かれたようだ。おかげで本来ならせいぜい二つしか扱えない武装の選択肢が増した。狙ったならいい判断だ」

螺旋の力。モーメント。
忌々しく思う力による影響と聞かされ顔をしかめるZ-ONEだが、それでも戦力が増すならばと不満を呑み込む。
呼吸を整え、話を続けようとするが

「それだけじゃなさそうだぜ、サ…ランサー」

みゃお、と鳴き声を上げるとともに黒い猫のようなものが新たに現れ語りだす。

「こいつはネロ。俺の宝具であり、半身のようなものだ。で、何の話だ?」

新たに宝具を開帳する。
ネロ。
バビロニアの赤き竜、その由来とされる暴君と同名のそれを、噂に聞くカードの精霊に近いものかと推察する。

「なにやらこの聖杯戦争きな臭い。その楔、大本の抑止力がお前に持っていかせたのかもしれないぜ。
 ポリドリなんか目じゃないイモータルがいるかもしれねえ」
「……まあ、理由なんかどうでもいいさ。敵がいるなら斬るだけだ」

鎌を象っていた楔を、剣へと再度転じる。
やはりこれがしっくりくるな、と呟きながら。

「…さて、前置きが長くなった。お前が名を捨てたものであるように、俺もまた過去を捨てた男だ。
 以前はサルタナという人間だったが、今の俺はヴァンパイアハンター、黒衣の剣士『サバタ』だ。
 かつての英霊の名を騙った故か、その英霊と同一の宝具まで持つにいたったペテン師さ。
 だが安心しろ。不死種もサーヴァントも、死にぞこないを狩る腕なら俺も英霊級だ。
 命を懸けて、共に奴らを狩りに行こうじゃないか。Z-ONE!」


73 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:13:19 Sz83zIV60

【クラス】
ランサー

【真名】
サバタ(サルタナ)@ボクらの太陽 Django&Sabata

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C+ 魔力A 幸運D 宝具A++

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:B+
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
またその体質から魔術も含め、あらゆる体系の呪いの類に対しては一切を無効化する。

【保有スキル】
死徒:E++
人ならざるモノ、ヴァンパイアと呼ばれる吸血種。
とある死徒との闘争に敗れ瀕死となった際にガイアの代行者、『星霊獣』ペローの力の一部を引きはがすことで吸血鬼化し復活した。
その際に獲得したスキル。
その進行は不完全であり、完全な死徒にはなっていないため低ランク。
しかしガイアの代行者の直系であり、真祖の継子に匹敵する強力な死徒である。
使い魔の使役など多くの吸血鬼が持つ能力は少ないが、かわりに太陽光や流水などの弱点も持たない。
持ちえる能力は不老の肉体、月光下での魔力回復速度の大幅な向上、高位の呪いへの耐性。
後述の宝具と一体化することでプラス補正が発生する。

星雲の航海者:B
星の生命意思、ガイアの代行者と共に惑星外の存在と戦ったものに与えられる特殊スキル。
霊長の殺戮者や吸血種など生命種を害する存在に対し有利な補正を得る。
また同ランクの騎乗も内包する。

太陽の意思:C-
勇猛に近似するスキル。
師やその仲間のようにいつも心に太陽を宿すが、愛する女性の危機に激情に囚われ、自暴自棄な戦いの果てに吸血鬼となったためランクダウンしている。
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。
また、不死殺しの武装によるダメージを向上させる効果もある。

無貌の武勲:A
異なる英雄の名を借り、数多の武勲を立てた者の持つスキル。後述の宝具を保有する一因ともなっている。
サルタナは暗黒少年サバタの名を借り、その名をより轟かせた。
さらに極めて近似した来歴、能力、在り方に一部では本人と同一視されている。
対峙した者が獲得した容姿、能力などの情報はそのままに認識のみを異なる英雄――彼の場合『暗黒少年サバタ』――に結びつけ、サルタナに結びつけるのが難しくなる、情報抹消に近似するスキル。
当然だが、サルタナ、あるいはサバタの事を知るものにこのスキルは効果を発揮しない。

【宝具】
『星の意思の欠片、暗き猫を象り(ネロ)』
ランク:A+ 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
ガイアの代行者。
現象が形になった精霊に近く、闇を司る星霊獣と呼ばれる。
バビロンの大淫婦が従える黙示録の獣、あるいは赤き竜と呼ばれる幻獣種、その一部の名を冠する。
元となった星霊獣の力の欠片であるため、本来のものよりランクダウンしている。
この宝具によってサルタナは吸血鬼と化しており、一蓮托生ともいえる関係。
平常時は黒猫の姿をしており、戦闘力は極めて低いサポート用の宝具。
サルタナの持つ武器に虚数属性の魔力を帯びさせ、威力を1ランク向上させることができる。
サルタナと合身することでスキル:吸血鬼のランクを向上させ、Cランク相当のスキル:魔力放出(虚数)を取得。
全パラメータが1ランク向上し、吸血による体力・魔力の回復が可能となる。
魔力放出(虚数)により自身の周囲に魔力を放ち、攻撃手段とすることも。
かつてはギジタイという天候操作プログラムに干渉し、日の光を遮ることも可能としたが、サーヴァントと化したことでそこまでの再現には至っていない。


74 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:14:39 Sz83zIV60

『最果てにて輝ける螺旋の塔(バベルタワー・イン・サンミゲル)』
ランク:A++ 種別:対魔宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
地上に降りた不死種イモータル、あるいは原初の一の亜種、原種の欠片を封じるための戒めの槍。
布状の人間世界を星に縫い止めている楔でもあり、同様の機能を備えた宝具は他の神話にも存在する。
本来の形は11の階層が地上に伸びる太陽の塔と暗黒の塔、地下に5つの階層を突き立てた月の塔で形成される巨大な螺旋の塔。
三つの一族の三つの力が螺旋し束ねられた強大な楔であり、月下美人と呼ばれる巫女の一族が代々保有する宝具である。
三つの塔が螺旋を描き、巨大な力を束ねることで、強大な存在を世界に繋ぎ止めるその在り方はかつてバビロンに存在した『乖離剣』や『天の鎖』に近い。
正統なる最後の保有者はマーニという月下美人で、非公式にはマーニの息子、暗黒少年サバタが不完全ながら月下美人の跡を継ぎ後に保有者となっている。

しかし正統なる月下美人マーニは最期に姉と同化し、完全なる不死種へと『先祖還り』を起こしてしまう。
さらにその後を継いだ月下美人サバタも原種の欠片そのものと化してしまう……怪物を封じる槍を持つものが、封じられるべき怪物となってしまう矛盾。
サバタの名を借りたサルタナの魂の形が極めてサバタのそれに近似していた運命。
矛盾が螺旋し、運命が流転し、『暗黒少年サバタ』に代わって『黒衣の剣士サバタ』がこの宝具の最後の所有者としてガイアに記憶された。
そのためサルタナはこの宝具を保有するが、正統なる保有者ではないため本来の力を発揮はできない。
かつて振るった武器…螺旋の塔と同じく『楔』としての力を持ち、月光仔に作り出された同一の起源をもつ『暗黒の武器(ダークマター)』として再現している。
なおネロと合身し、スキル:死徒のランクが向上している間は不死種を封じるこの宝具を用いることはできない。


『破壊の獣が牙をむく(ヴァナルガンド)』
レンジ:1〜30 最大捕捉:300人
螺旋の塔の力の一部を利用し、再現する宝具。
月面の都市、まほろばにおいて原種の欠片に突き立てられ、封じている楔でもあった剣。
多くの不死種を殺めたヴァンパイアハンター・サバタの愛刀であり、黒衣の剣士の異名のもととなった武具。
暗黒の武器(ダークマター)と呼ばれる逸品で、吸血鬼に準ずる存在以外扱うことはできない。

破壊の獣と恐れられた原種の欠片、絶対存在(エターナル)、『破壊の獣(ヴァナルガンド)』の力を宿す剣。
原種の欠片、ヴァナルガンドとはかつて『混血』の一族月光仔が月面に封じた『真祖』、『原初の一』の亜種であり、『魔』なるものの大敵であったといえる。
『混血』という魔なるものが、『破壊の獣』という魔なるものを用いて、『不死種(イモータル)』という魔なるものを滅ぼし、封じるため生み出した、神造兵器ならぬ魔造兵器。

魔獣殺し・不死殺しの概念を持つ。
さらに真名開放により、ヴァナルガンドの放った破壊光線を放つことが可能となっている。
これは座に引き上げられた英霊と同様に、宝具も全盛の力を発揮し、人の手では引き出しきれなかった本来の破壊の獣の力に近づいたこと。
そして破壊の獣と同一の存在と化していた英霊、暗黒少年サバタの名を借りてサルタナが長きにわたり闘い続け、様々な不死種から『サバタ』として恐れられたこと。
なによりサバタとサルタナの魂の形が近似していたために、英霊と化して初めて可能となった、堕ちた幻想(フォールン・ファンタズム)。

『終末の獣の咆哮(ヨルムンガンド)』
レンジ:2〜4 最大捕捉:4人
螺旋の塔の力の一部を利用し、再現する宝具。
原種の欠片を封じる螺旋の塔の地下、かつて火の国ムスペルヘイムと呼ばれた地、変異域において原種の欠片に突き立てられ封じている楔でもあった槍。
多くの不死種を殺めたヴァンパイアハンター・サバタの愛槍。
暗黒の武器(ダークマター)と呼ばれる逸品で、吸血鬼に準ずる存在以外扱うことはできない。

破壊の獣と恐れられた原種の欠片、絶対存在(エターナル)、『終末の獣(ヨルムンガンド)』の力を宿す槍。
原種の欠片、ヨルムンガンドとはかつて『混血』の一族月光仔が月面に封じた『真祖』、『原初の一』の亜種であり、『魔』なるものの大敵であったといえる。
『混血』という魔なるものが、『終末の獣』という魔なるものを用いて、『不死種(イモータル)』という魔なるものを滅ぼし、封じるため生み出した、神造兵器ならぬ魔造兵器。

魔獣殺し・不死殺しの概念を持ち、装備中は敏捷が1ランク向上する。
また魔力をジェットのように噴射することができ、それによる高速移動や刺突の加速などが可能。


75 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:15:39 Sz83zIV60
『死の国の女王の裁定(ヘル)』
レンジ:2〜10 最大捕捉:50人
螺旋の塔の力の一部を利用し、再現する宝具。
かつて二ヴルヘイムと呼ばれた地、永久凍土にある、死の国ヘルヘイムに至る洞窟グニパヘリルを閉ざす楔でもあった鎌。
多くの不死種を殺めたヴァンパイアハンター・サバタの愛鎌。
暗黒の武器(ダークマター)と呼ばれる逸品で、吸血鬼に準ずる存在以外扱うことはできない。

不死種(イモータル)の中でもクイーン・オブ・イモータルと謳われ、恐れられた月光仔にして銀河意思ダークの使い、ヘルの力を宿す鎌。
月光仔の特性、慈愛と狂気のうち狂気の面が強く顕現したヘルは『先祖還り』し、完全にイモータル化した、言うなれば堕ちた月下美人といえる。
『混血』という魔なるものが、『死の国の女王』という魔なるものを用いて、『不死種(イモータル)』という魔なるものを滅ぼし、封じるため生み出した、神造兵器ならぬ魔造兵器。

魔獣殺し・不死殺しの概念を持つ。
また魔力の噴射によって高速旋回、それに伴う攻撃が可能。
さらに真名開放により、ヘルが放った一掃攻撃を放つことが可能となっている。ただし不完全な死徒であり、暗黒物質を十分に宿さないサルタナでは即死付与はできず、強力な範囲攻撃に過ぎない。
これは座に引き上げられた英霊と同様に、宝具も全盛の力を発揮し、人の手では引き出しきれなかった本来の『死の国の女王(クイーン・オブ・イモータル)』の力に近づいたこと。
ヘルと同一化してしまった月下美人マーニもまた螺旋の塔の保有者の一人であったこと。
マーニの実子であり、彼女から力を託された存在が『サバタ』であったこと。
故に英霊と化して初めて可能となった、堕ちた幻想(フォールン・ファンタズム)。



【weapon】
・シルバースター
生前愛用した盾。
宝具には劣るがそれでもサルタナの長い戦歴を支えた逸品である。

・ブラッドサッカー
プロトタイプの棺桶スーツというボディアーマー。
サルタナには無意味だが、死徒が纏えば陽光への耐性を持つことができる。
それ抜きでも優秀な防具である。

・ナイトストーカー
闇の星霊獣ネロの加護を受けたブーツ。
月の光が強いほどに敵に与えるダメージに上昇補正がかかる。


76 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:21:17 Sz83zIV60
【人物背景】
星々の間を多種多様な文明が行き交う「星紀末世界」。
伝承の時代より人々を脅かす存在であり続けたヴァンパイアと呼ばれる死徒の一派は銀河意思より新たな力を得る。
その時代のガイアの代行者は一枚岩ではなくなっており、地上生命存続のためには死徒の家畜として生きる道も考慮し、ガイアの代行者『星霊獣』ペローは死徒に味方していた。
サルタナはその星紀末世界において高名なヴァンパイアハンターである。
伝説の戦士、太陽少年ジャンゴを封印した、破壊の王を自称する不死種ラタトスク、それに抗うギルドのエースとして活躍。
太陽銃ボマーを扱い、『擢弾兵(グレネーダー)』の異名をとる銃士として恐れられた。
しかしある時、サルタナの愛する女性、エレンがヴァンパイアにさらわれてしまう。
それを助けるために仲間の制止も振り切り単身で敵陣へと乗り込む。
多勢に無勢では勝ち目なく、あえなく敗北、致命傷を負う。
……サルタナに舞い降りた助けは二つ。
一つは所属するギルドのリーダーにして師匠トリニティ。二つ目はガイアの代行者。
エレンを攫ったヴァンパイア、デュマに味方した『星霊獣』ペローの一部を引きはがし、別の『星霊獣』ネロとして独立させ、それを通じて『世界』と契約。
抑止力のバックアップを受けて傷を癒し、命を拾うことに成功する。
しかし抑止力は不死種と生命種、いずれにも味方していたためか契約のみでは完全な英雄たり得ず、撤退を余儀なくされる。
さらに命を拾った対価として記憶の一部を失い、片目は完全に死徒と化して赤く染まり、そのうえジャンゴとリンゴ、二人の遺志を継いだ、『時駆ける戦士』トリニティも命を落としてしまう。
記憶も失ったサルタナは戻る地も自身の名も忘れて彷徨い、銀河意思により滅ぼされた異星の民、アリスと出会う。
アリスに吸血鬼殺しの武装としてヴァナルガンド、ラプラスを、在り方として伝説の吸血鬼殺し『サバタ』の名を与えられ、以後ひたすらにヴァンパイアを殺し続ける。
7年後、その仇らしき噂を聞きつけ、闘争に赴く。
仇にたどり着く過程でかつて所属したギルドの同胞や後輩、師トリニティとエレンの忘れ形見『新たなる太陽少年』ジャンゴなどと出会い、ともに『辺境伯』『子爵』『男爵』などの大物ヴァンパイアを仕留める。
記憶を失い、半ば死徒と化して年齢も16歳当時で止まったサバタにかつての仲間もなかなかそうとは気づかなかったが、ジャンゴたちと触れ合ううちに少しずつ記憶を取り戻していく。
そして『終末の獣』の名を冠する槍や、『死の国の女王』の名を冠する鎌などの暗黒の武器(ダークマター)など自身の戦力も増強。
ついには仇であるデュマにも勝利するが、そこで銀河意思のダークの使い、イモータル・ポリドリが本格的に動く。
星の生命種も不死種もすべて管理下におこうとするポリドリとの決戦、それに仲間とともに辛うじて勝利。
以後は終生、銀河意思の使い、地球外の吸血種や不死種との闘争に明け暮れた。そして没後はガイアとの契約により、ガイアの抑止力たる『救世主』となる。

人類史を否定する死徒に類する存在であるが、抑止力の後押しを受け――どころか抑止力の具現たる精霊を行使し――人類史を肯定する英霊にまで至った存在。
ライダーとして現界すれば『棺桶ロケット』と数多のガイアの獣こと星霊獣を従え、バーサーカーとして現界すれば月の星霊獣の力を強く受け、より強力な死徒となる。
本来はセイバーとしての適性が最も高く、『楔』を扱うランサーとして召喚されることはまずないのだが……
今回召喚されたのはZ-ONEとの近似性によるものが大きい。
英霊の名を借り己が名を捨てた存在であること、時をかける存在との繋がり、超常の科学、なにより滅びゆく世界を救わんとする願いが縁となった。
さらにZ-ONEの工房、アーク・クレイドルが『螺旋(モーメント)』の力を原動力に『赤き竜』を封じるある種の螺旋の塔であったことがランサーとして現れた原因と思われる。
――あるいは抑止力の顕現として、強大な不死種を封じるために『楔』と共に現れたのかもしれない。


77 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:22:58 Sz83zIV60

【サーヴァントの願い】
なし。
世界との契約により抑止力となった彼は望んで聖杯戦争に挑むことはない。
――すでに愛する女性との再会も叶ったのだから。
強いて言うならば人類の滅びを止める、英雄としての在り方が願いになるか。

【基本戦術、方針、運用法】
剣、槍、鎌、死徒化による柔軟な近接戦を得意とする。
敏捷の向上と魔力の噴出で素早い対応が可能な槍、取り回しに勝手が利く剣、攻撃範囲の広い鎌、武器を捨てての戦いとなる死徒化を使い分ける。
間合いの対応に優れ、死徒としての高い回復能力も持ち、宝具の打合いにもビームで対抗可能。
不死種退治を生業としたため、化け物や格上との闘いの経験も豊富。
それなりのスペックに加えて、スキルと宝具の特性上不死種やそれに類する相手には極めて強いサーヴァントとなる。
ただし遠距離戦への攻撃手段がヴァナルガンドの真名解放くらいしかない。
乗機や銃器の扱いの経験はあるため、何らかの形で装備を整えれば対抗できなくはないが……
生前は背中を預ける銃士の相棒がいたため、そうした相手を見つけることも考えるべき。
近距離および不死種に強く、遠距離に弱い。相性の出やすいサーヴァントと言えるだろう。

【マスター】
Z-ONE@遊戯王5D's

【参加方法】
魔法カード「Z-ONE」は白紙のトランプを加工してつくられたカードだった。

【マスターとしての願い】
モーメントとシンクロ召喚を歴史から消し去り、滅びの未来を救済する。

【令呪】
左腕。
不動遊星の保持した赤き竜の痣、ドラゴンヘッドに極めて近似する。
上顎で一画、下顎で二画、目で三画。
……よく見るとセフィロトの樹が折れ、歪んで成り立っている。

【weapon】
・モーメント・コア・フライホイール
Z-ONEのいた世界の英雄、不動遊星が駆ったD-ホイールを模したもの。
オリジナルと同様の動力源を持ち、さらに手を加えて空を飛ぶこともできるようになっている。
なおD-ホイール内には特殊なデュエルディスクが仕込まれており、それによってレッド・ポーションなどのライフゲインカードを発動し、少ない余命を繋いでいる。
文字通り彼の命綱。
移動手段であり、武装であり、生命維持装置。
一応通常のデュエルに用いることも可能。使用デッキは時戒神。


【能力・技能】
優れた科学者。
自らに英雄、不動遊星の記憶と能力の一部を転写するという疑似降霊。
死した同胞と寸分たがわぬ記憶と能力を持つ『人形』の作成。
自らと同胞を過去へと送る時間遡行。
科学技術のみで高度な魔術はおろか、第二魔法の片鱗まで実現する。

さらに不動遊星の記憶と能力の一部を受け継いだことで眠っていた魔術回路が引き起こされ、強力なウィザードとなっている。
『限界打ち破る新たなる境地(トップ・クリアマインド)』や『絆を繋ぐさらなる境地(オーバー・トップ・クリアマインド)』の発現にまでは至っていないが、『遥かなる境地(クリアマインド)』までは習得しており、発動することで瞬間的な魔力供給量を増やすことができる。
またデュエリストとしての技能もコピーしており、有史、並行世界でも上位に入る使い手である。


78 : Z-ONE&ランサー ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:23:47 Sz83zIV60

【人物背景】
『モーメント』と呼ばれるエネルギー、およびそれにより稼働する機械の暴走により人類は滅亡の危機に瀕していた。
僅かに生き残った人々も絶望し、身勝手に振る舞い世界は荒んでいく一方。
そんな世界に希望を灯そうと動いた一人の科学者がいた。
彼はかつてデュエルを通じて世界に希望を届けていた英雄、不動遊星の様々なデータを自らに移して性格・姿・人格その全てを不動遊星と化し、人々に正しい心を持ち欲望を捨てる事を説き世界を救おうとした。
実際に効果は現れ彼自身もそれに希望を抱きつつあった。
しかしモーメントの暴走はもはや取り返しのつかないところまできており、彼と共にいた人々も暴走する機械に命を絶たれてしまう。
結果、人々を助けられなかった『不動遊星(おのれ)』に絶望。
一人の科学者としての自我を捨て『不動遊星』となった男は『不動遊星』でもなくなってしまう。
その後、滅亡した未来で同じく生き残った3人の人間と出会う。
それ故か彼らはとても強い絆で結ばれており、確固たる信念のもとに4人は破滅した未来を救うべく、歴史の改変を試みた。
気が遠くなるほどの永い時間をかけ、「人類滅亡に立ち会った生き残り」として未来へ希望をもたらすべく仲間達と共に様々な研究・改変を進めていたが、研究成果はことごとく実らない。
それどころか彼自身にとっても大きな支えであった同志達にも次々と老衰で先立たれ、ついに彼は世界でただ一人の最後の人類となってしまう。
Zはアルファベットの最後、つまり人類最後、ONEは 一人。
転じて Z-ONEとは「人類最後の生き残り」という意味合いがある。
仲間達の死に伴い彼自身も底知れない絶望に支配され、希望というものを頑なに否定するようになる。
その結果「未来を救うには人類破滅の原因となったモーメントを歴史から抹殺するしかない」という苦渋の決断を下さざるを得なくなってしまった。
そして死した同胞の記憶と能力をコピーしたロボットを作り、様々な形で過去に送り歴史改変を試みる。
Z-ONE自身も過去へと向かい、モーメントを破壊に向かう。
しかし同胞たちは不動雄星の一派に破れ、自らのもとにも別の敵が現れる。
その時点で彼はスペアプランに方針を変更、ネオ童実野シティから撤退し『白紙のトランプ』を手にあらざる歴史、聖杯戦争へと臨む。

海外版の放映シナリオ、ディヴァインとアルカディアムーブメントに歴史改変を阻止された時系列をベースに、その後の予備案として聖杯戦争に参加したのがこのZ-ONEの時系列である。

【方針】
聖杯狙い。
滅びの未来の回避のため、多少の犠牲はいとわない。


79 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/23(水) 22:24:26 Sz83zIV60
投下終了です


80 : ◆9KkGeT6I6s :2016/11/23(水) 22:44:18 VP/8fo5g0
申し訳ありません

>>68
のステータスに
【サーヴァントの願い】
 完全な形で蘇りたい
 
 を追加します。忘れてました。


81 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 23:37:50 qemPwElY0
皆様、早速たくさんのご投下ありがとうございます!
たった一日でもう六作品も……! 今日は勤労感謝の日なのに一日は感謝できなかったのですが、折角の機会ですので是非感想を言わせてください!


>怪物(フリークス)

サーヴァントはアニメ放送で今も旬な吉良吉影、そのクラスはアーチャー! 日常に潜む恐るべき殺人鬼、ということでアサシン的な印象が強い彼でしたが、なるほどシアーハートアタックを強力な射出兵器としてみれば弓兵としての適正も高そうですね。
アーチャークラスでも、本来の持ち味である擬態をきちんと持ち合わせている彼を、共通の嗜好やその隠し方の類似性で引き当てたのは「僕」こと神山樹。
人間の暗黒面に惹かれる彼からすれば、願いのための殺し合い、聖杯戦争はとても興味深いでしょうね。そのスタンスも踏まえ、吉良吉影は彼にとって大当たりのように見えます。
何気なく会話する二人のいる公園が、原作でも切り裂きジャックとフラットという殺人鬼と異常な少年の邂逅の場であったことに気づいた時には思わずニヤリとさせられました。
全体的に、不穏を見事に表現された作品で読み進める最中もぞわりという感覚が連続してしまいました。
◆nb1PikerPY氏改め◆gQzkrK6H2s氏、執筆お疲れ様です。ゾクゾクする作品をありがとうございました!



>月光少女 佐倉ちゃん

少女漫画アシスタントの女子高生が召喚したのは、おかしくなったおとぎばなしのお姫様。
サクシャ(アシだけど)と登場人物、それぞれの立場で物語と縁深い恋する少女が二人。なるほど「なんでこんなものを」って、これは縁召喚ガチャですわ(ルーラーがアヴェンジャーに弱いFGO脳並感)。
驚くべきは筋力A+++++! 出典元となる原作が狂ったせいとはいえ、おまえのような姫がいるかと言わんばかりの圧倒的ゴリラ力(鬼だけど)。模写の練習でもしていたのか、佐倉が街中を離れていて本当に良かったですね……
でも、もっと良かったのはきっと、恐ろしい鬼とも真摯に向き合おうとする佐倉がマスターだった三条の大臣の姫の方だと思いたい。
戦力的には大ダウンを免れないとしても、一度は越えた妄執に囚われた怪物のままではなく、読み手に元の天然姫に戻って佐倉と恋バナにでも興じて欲しいと願わせてくれるような、素敵な関係が短いやり取りの中にも感じられました。恋する乙女の行く末が楽しみです。
(ここまで言ってからバーサーカーなのに喋れるのかよ! って風化したツッコミを忘れていることに気づきました)
◆As6lpa2ikE氏、執筆お疲れ様でした。ほっこりする作品をありがとうございました!



>エンポリオ・アルニーニョ&ライダー

「ぼくの名前はエンポリオです。」「おばあちゃんが言っていた、俺は天の道を行き、総てを司る男……天道……総司!」
印象深い名乗りを持つ少年と仮面ライダー。仲間に託された命で時を遡り、今此処に。
魚の切り身よりも薄っぺらい仲など実に天道らしい言い回し、お見事です。仕切り直しの戦闘を水入りはずるいw
そのための聖杯狙いではないとはいえ、一応は仮面ライダーなのにエンポリオの宿敵を倒す、という宣言を諌めないのはサーヴァントという立場と、天道自身も子供の頃から妹を護り、宿敵を倒すという使命に生きたからなのでしょうね。
運命に勝たせて貰おうとした男と、絶えず運命が味方した男。果たして彼らは聖杯戦争でも幸運だけでいられるのか……それでも天道なら何とかしてくれる感が凄いぜ。
エンポリオも二つのスタンドを持つ優秀なマスターですし、これはかなり強力な対聖杯の陣営になりそうですね。
◆lkOcs49yLc氏、執筆お疲れ様でした。格好良い作品をありがとうございました!


82 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/23(水) 23:39:20 qemPwElY0

>南条光&セイバー

ヒーローに憧れ、だからこそ現実で誰かの支えとなれるアイドルとなった光が殺し合いを否定するのは当然ですね。
迷いのない姿勢から、「みんなが正しい心を持てばそれでいい」と即答できる彼女らしい真っ直ぐさが感じられてぐっと来ます。
そんな光が召喚したセイバーも、流石彼女のサーヴァントと言わんばかりの正統派。
生前は命を守護るために堕天を選んだクレイ、その高潔な姿はまさに英雄。貴さの象徴として失われた翼を幻視する演出が憎いです。
そして、かつて地に満ちる命の輝きを知った彼が、アイドルとして人々の心を照らす文字通りの光であるマスターと共にあるというのは実に感慨深い組み合わせですね。
◆AcG9Qy0MIQ氏、執筆お疲れ様でした。胸の熱くなる作品をありがとうございました!



>その夢は霧に潰える

バーサーカーは森に集まる習性でもあるのか(困惑)。
Fakeで言えばギルのマスターに近い感じの、でもずっと人間味を感じる魔術師殿、その夢ごといきなり呆気な死を遂げてしまって同情を禁じ得ない。
そして本来マスターを喪ったサーヴァントは消滅を免れませんが、「ただし、そこに例外は存在する」とばかりに殺戮領域を築いてしまったおっかないサーヴァント。
最近の作品の二次創作というより、本家Fateシリーズのように伝承を元にメイキングされたステータスのようなので、正体を考える楽しみがありますね。
白紙のトランプがサーヴァントの核となるのに、自分のマスターが白紙のトランプを持ったままということは核と行動体を別にできるのが(完全な復活ではないから?)この怪物の不死身の秘密……? 固有結界ではなく結界宝具なのは土地を依代にすることで延命している……? などなど、考察しがいがありそうです。
怪物の弱点の一つは正体を知られることかななどと勝手に思っておりますが、逆に正体がわからなければ英雄と言えど苦戦は必死。この不死身の怪物と他のサーヴァントの攻防は異種格闘戦的な面白さになりそうですね。
◆9KkGeT6I6s氏、執筆お疲れ様でした。わくわくする作品をありがとうございました!



>Z-ONE&ランサー

バーサーカーに限らず森に集まり過ぎでは(更なる困惑)。
まず驚いたのはアルカディアムーブメントに追いやられたZ-ONE……まさか、海外版ゴッズでの不遇をこんな形で回収するとは!
そしてキャラクターに合わせた召喚詠唱からの「私を聖杯戦争の舞台へ特殊召喚!」、更には不協和音による逆触媒ってもう、完全に発想にやられてしまいました。凄いです。
そうして召喚されたのは、Z-ONEと同じように過去の英雄の殻を被ったサーヴァント。そして世界の守護を使命とする、Z-ONE同様自身が正真正銘の英雄であるサルタナ。
互いの類似性、それによる特異性を含めたZ-ONEとサルタナの設定も型月ナイズされていて、解釈の妙が光っています。とにかく発想が素晴らしい。
◆yy7mpGr1KA 氏、執筆お疲れ様でした。凄い作品をありがとうございました!



最後に、繰り返しとなりますが皆様、ご投下本当にありがとうございました!


83 : 名無しさん :2016/11/24(木) 00:28:49 UURyWRiM0
ZONEの英霊召喚へのプロセス面白いな。カードやエクシーズ組み込みつつも理由もちゃんとしたシンクロ否定(遊星来ないように)ってのがあるし


84 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/24(木) 10:39:05 yQkctyvA0
投下します


85 : 赤い帽子の二人組 ◆7PJBZrstcc :2016/11/24(木) 10:39:45 yQkctyvA0
 とある路地裏に、赤い帽子を深く被り目元が見えない青年が居る。
 彼の名はコナミ、デュエルモンスターズというカードゲームが世界を席巻している世界から来た男だ。
 彼にとって元の世界の記憶を取り戻すことは、デュエルディスクからカードをドローする事より容易だった。
 何故ならばこの世界にデュエルは無いからだ。
 否、よく探せばあるのかもしれないが少なくとも元の世界ほど重要視されているものではないらしい。

 コナミにとってデュエルは己の全てに等しい。
 デュエルさえ出来るのならば、仲間を裏切ることになって構わない。世界がどうなろうと知ったことじゃない。
 それほどの存在であるデュエルを奪われて、コナミは怒り心頭だった。

「……」

 だが、どれほどの怒りに囚われていようと冷静さは決闘者にとって必須だ。
 これに足を囚われて窮地に陥った決闘者はいくらでもいるのだから。

 そんな事を考えながらコナミは、自分が持っている白紙のトランプを見る。
 これは元々ネオドミノシティに落ちていたカードだ。
 普段ならデュエルモンスターズのカードが落ちているにも関わらず、それ以外のカードが落ちているのは珍しいと思ったから覚えている。
 このトランプが自分をデュエルのない世界に呼び寄せるとは、これからはカードを拾う事は控えるべきだろうか。

「……!?」

 また考えに浸っていると、いきなりトランプがいきなり青白い光を放った。
 驚いたコナミは思わずトランプを捨てる。
 すると、トランプが放つ光の間から人影が見える。
 やがて光が消え、影しか見えなかった人間が明確に表れた。
 その姿はコナミにとって衝撃的だった。
 何故なら、自分と同じような赤い帽子を被った自分よりも小さな少年なのだから。

「……?」

 だから思わずコナミは問う。サーヴァントなのか、と。

「……」

 そして少年は答えた。自分はライダーのサーヴァントだと。
 そしてライダーは名乗った。真名はレッドと。

「……?」

 コナミは更に問う、サーヴァントとなり叶えたい願いは何だ?

「…………」

 ライダーは答える、より強い敵と戦うためだと。
 ライダーはある世界のとある地方でチャンピオンとなった。
 だがチャンピオンとなったことで彼には対等に戦える相手がほぼ居なくなってしまった。
 一方的な蹂躙など興味がない、満足のいく戦いがしたい。
 幸い、彼を満足させる相手がこの世から完全に消え去ったわけではない。
 否、だからこそ願うのだ。もっと強い敵を、未知なる敵をと。
 その答えが聖杯戦争、たとえこの身がデータの偽物であろうとも満足のいく戦いが出来ればそれでいい。
 だから聖杯などに興味はない、欲しいのならマスターに捧げよう。

 そこまでライダーは語り、今度は逆にコナミに問う。
 マスターの願いは何かと。

「……」

 コナミは答えた、聖杯に叶えてほしい願いなど無いと。
 だがもしあるとするならば、聖杯を破壊することだと。

 コナミはこの世界に連れてこられて生きがい、否全てを失ったと言っても過言ではない。
 だから元の世界に必ず帰る。例えどんな事をしてでもあのデュエルに満ち溢れた世界へ帰ると。
 そしてもうこんな事が起きないように聖杯を必ず破壊すると。

 そこまでコナミが語った後、ライダーは右手を差し出してきた。
 そしてコナミもその意味に気づき、同じく右手を差し出す。

 そして二人は握手をした。
 それは強い絆の証、友情の握手だった。


86 : 赤い帽子の二人組 ◆7PJBZrstcc :2016/11/24(木) 10:40:17 yQkctyvA0
【クラス】
ライダー

【真名】
レッド@ポケットモンスター 金・銀・クリスタル

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A 宝具A

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
騎乗:A++
乗り物を乗りこなす能力。
A++ランクでは竜種も含めた全ての乗り物を乗りこなすことが出来る。

対魔力:E
魔術に対する抵抗力。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
仕切り直し:E〜A
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
場に出ている『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』の力量が、相手より上回っているだけこのスキルのランクは高くなる。

攻撃無効:-(A)
『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』が場に出ている限り、ライダーに対する全ての攻撃は無効化する。

チャンピオン:A
ポケモンリーグの頂点に立った男。
このスキルがある限り、他者の使い魔を交換、あるいは譲渡してもらった場合どれほど強大であろうと無条件で操る事が出来る。

物体収納:D
折り畳み自転車だろうと、99個のアイテムだろうと、全てを背中のバッグにしまう事が出来る。
所持金は999999円まで。

【宝具】
『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』
ランク:A 種別:対?宝具 レンジ:??? 最大補足:6
ライダーの手持ちポケモンにして、共に歩んだ仲間たち。
内容はピカチュウ・エーフィ・カビゴン・フシギバナ・リザードン・カメックスの6匹。
この宝具はいかなる攻撃でも死亡することは無い。
ただし、一定以上のダメージを受けると「ひんし」となる。
そして、6匹全てが「ひんし」になるとライダーは聖杯戦争に敗北となり消滅する。
「ひんし」を回復させるためにはライダーが一休み(ベッドなどで一定時間休息を取る)しなければならない。この間、マスターは無防備となる。
また、この宝具が繰り出せる技にはわざポイント(以下PP)があり、繰り出せる回数が決まっている。
PPがなくなるとこの宝具は「わるあがき」しか出来なくなってしまう。
PPを回復させる場合もライダーは一休みしなければならない。

【weapon】
『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』

【人物背景】
カントー地方ポケモンリーグチャンピオン。
だが彼はその頂に立ったことで、満足な戦いを出来る相手が殆ど居なくなってしまった。

【サーヴァントとしての願い】
より強い相手と戦いたい。

【運用法】
かなりピーキーな性能の為、独特な運用を求められる。
連戦に向かず、適度な休息が求められるのでマスターのさじ加減が大事。
戦力自体は高いので、戦闘自体はライダー任せで問題ないだろう。


87 : 赤い帽子の二人組 ◆7PJBZrstcc :2016/11/24(木) 10:40:39 yQkctyvA0
【マスター】
コナミ@遊☆戯☆王ファイブディーズ タッグフォース6

【参戦方法】
ネオドミノシティに落ちていた白紙のトランプを偶然拾った。

【マスターとしての願い】
デュエル。
決闘者がいないのなら聖杯を破壊して、元の世界に帰る。

【weapon】
・デュエルモンスターズ
コナミの世界で最も普及しているカードゲーム、プロリーグも存在する。
またある時は、このカードゲームで世界の命運をかける事すらある。
コナミの使用デッキは一定しない。
何処に持っているのか謎なほど数多のカードを持ち、様々なデッキを使う。

・デュエルディスク
決闘者必須アイテム。
カードをこれに乗せる事で、ソリットビジョンによりカード映像を表示させる。
実は永久機関であるモーメントが内蔵されており、電力を心配する必要はない。

【能力・技能】
・決闘者
デュエルモンスターズに関してかなり高い腕前の持ち主。

・ディスティニードロー
デュエルに置いてコナミがピンチに陥ったとき、一度だけ予め決めておいたカードをドローすることができる。

・リアルファイト
悪党をデュエルディスクでボコれる。
決闘者必須能力の一つ。

【人物背景】
ただの決闘者。
彼を示すにはこの一言で十分。
強いて他の特徴を上げるなら、寝起きが悪い。

【方針】
聖杯を破壊する。


88 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/24(木) 10:41:08 yQkctyvA0
投下終了します


89 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:38:07 xnC.6C1A0
投下します


90 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:38:57 xnC.6C1A0





 むかしむかし、まだカワウソが泳ぎを知らなかったころ。
 大きなお城がありました。空の向こうのずっと上、暗闇のなかに建つお城です。
 ドグマという魔物がいるお城です。ドグマはお城に座って、空から人々を苦しめていました。
 理由はわかりません。誰も知りません。それはドグマが生まれたときから悪い魔物だからだ、という人もいました。ドグマは神さまで人間をさばいているのだ、という人もいました。でも、本当のことは誰も知りません。
 そんなドグマに、剣を向ける人がいました。
 とても勇敢な若者です。お伴のスズメを連れて、魔法使いと絵描きの人を連れて。剣を片手に突き進む、彼らは勇気ある者たちでした。
 戦士ダンキチはとても物知り。
 癒者ドクオは力持ち。
 絵描きのハンパーは魔法がとくい。
 そして若者ロフトは誰よりも勇敢。
 若者は正義の心でドグマの配下と魔物を倒しました。そしてついには、お空の向こうまで飛んでいってドグマもやっつけてしまったのです。
 みんなは喜んで、国をあげて若者を祝福しました。みんなを苦しめるドグマを倒した若者は、みんなの恩人だったのです。
 その後、若者は自分の故郷に帰ると、助けてくれた魔女の女の人と結婚し、末永く幸せに暮らしたそうな。

                                                    ―――絵本『勇者のでんせつ』




 世の教養ある人士がみな知っているように、この世界は四つの時代を経てきた。
 神代の黄金時代、古帝国時代、魔王による暗黒時代、そして聖都サンピタラを中心とした諸国列強の時代である。
 現代における平穏な王国の時代を築き上げるにあたり、その最たる立役者となった人物に関する逸話は枚挙に暇がない。
 前時代、すなわちドグマと呼称される正体不明の魔王によって支配された暗黒時代。その閉塞を打破し、ドグマを討滅した勇士、すなわちロフトについてである。
 現代においては伝説的な勇者として語られ、このフォイデルの街においても象徴的な扱いを受ける彼ではあるが、その半生は多くの謎に満ちている。
 彼はドグマ討滅以後、すなわち新暦990年より没年までの間、世界の復興に尽力したが、ある一時だけ世界の表舞台から姿を消したのである。その期間は極めて短かったものの、そこで彼が何をしたのかということについては未だに詳細が明らかとはなっていない。
 一説には、彼は自らの生まれ故郷の山村(後にフォイデルの街となる村である)に何かを隠し、生涯をかけて隠蔽したのだとも言われている。物であるのか、人であるのか。正体は掴めないが、彼ほどの人物が半生を投げ打ってでも隠さねばならないものがあるとすれば、そこに含まれる意味の重さは推察するに余りある。
 また、近隣に存在するマドルーエ(魔女の街。ドグマ討伐に際し協力し、彼の妻もその地の出身)の協力があったともされているが、詳細は不明。しかしマドルーエは暗黒時代からロフトに協力していたという経緯があ■■■■■
 (これ以上は劣化が激しく解読は不可能である)

                                                    ―――フォイデルの街に遺された資料より。





   ▼  ▼  ▼


91 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:39:46 xnC.6C1A0





 ―――新暦1000年


 その異形は、外見の醜悪さとは裏腹に、不可思議なほどに清廉な気配を保ったまま佇んでいた。
 そこは塔であった。人気はない。石造りの冷たい空間にあって、その異形は言葉もなく静かに立っていた。
 目の前には、男の姿があった。市井の只中にはない屈強な肉体と、精悍な顔つきに保障された、英雄めいた覇気を持つ男だった。
 男は、名をロフトと言った。

 ロフトは静かに、しかしその内に隠しきれない嚇怒の念を抱きながら、尋ねた。

「ラクスよ、調子はどうだ?」
「大丈夫よ、今はね」

 答える声があった。男以外に人のいない空間において、しかしその場にはあり得ぬはずの、若く理知的な女性の声。
 それは、ロフトの目の前に在る異形から発せられた声だった。

「まさか、ドグマの呪いで獣になるなんてね。
 でも、意外と清明なきもち。自然の声が聴けるのだもの」

 落ち着いた声だった。それは、己に課された運命すらも受け入れているとでも言うかのように。
 それを前に、ロフトはただ、自らの無力を噛みしめるような顔をして。

「そうか……今度、ドクオのやつを連れてくるよ。あいつの回復魔法なら、あるいは……」

 けれど、その異形を安心させるかのように。
 ロフトは、ぎこちなく笑っていた。




 ―――新暦1001年


「旅の途中に寄ってみたが、噂通りだったな……」

 男の影があった。それは、屈強なロフトとは別の、線の細い赤毛の男だった。
 噂、とは、このマドルーエの塔に魔物がいるというものだった。各地を渡り歩き旅行記を記す日々を送っていた男は、その噂を偶然耳にしたのだ。
 男の名はハンパー。かつて、ロフトと共に旅をした仲間であった。

「あはは」
「笑いごとでは……いや、すまない」

 力なく笑う異形に、ハンパーは一瞬我が事のように声を荒げかけ、しかし何かを察すると黙り込んだ。
 それを見つめる異形は、悲しそうな、あるいは切なさそうな色を瞳に浮かべるのみであった。

「あなたが、本を書いているって夫から聞いたのだけど」
「ああ。ドグマとの戦いをもとにした冒険譚だ。完成したら是非読んでほしい」
「理性が残っていればね」

 無言。
 どちらも、何も言えなかった。それが冗談では済まないことを知っていたのだ。

「あ、そうだ。獣になった女、って興味ない?」
「君を売れってのかい?」
「貴重な体験じゃない?あなたの役に立つと思うわ。
 それに最近、言葉を忘れがちだから。喋らないと」
「……」

 幾ばくか、ハンパーは押し黙り。

「……分かった。是非、取材させてくれ」


92 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:40:52 xnC.6C1A0





 ―――新暦1005年


「言葉が失われていく? だったら読み聞かせをしようじゃないか」

 ある日、ロフトは突然そんなことを言い出した。
 きっかけはラクスが漏らした言葉だった。ラクスの抱く不安を、それがなんだと言わんばかりにロフトは笑い飛ばした。

「それ、ハンパーくんの言ってた本?」
「そうだ、あいつの文章は無駄に難解だが……」

 苦笑したような響きを、ロフトは漏らして。

「まあ、読んでみるよ」

 ………。

 ……。

 …。

「ふぅ、疲れた」
「とても素敵な冒険だったのね」
「ああ。今となってはいい思い出かもな」

 語りつかれたといった風情のロフトが握るのは、かつて彼らが辿った冒険を記した本だった。
 ドグマとの戦いの日々。それは辛く険しいものだったが、代わりに多くの実りがあったのだと、その本は語っていた。
 そしてそれは、ロフトとて同じ思いであった。

「なあ、ラクスよ」
「なあに?」

 ふと、語りかける声があって。
 振り向いたラクスに、ただ柔らかく。

「お前は獣になった。だが……
 それでもお前は、俺の妻だ」

 ―――ロフトは笑っていた。





 ―――新暦1032年


「ダアレ?」
「この写真に、見覚えはあるかい?」
「アー……ロフト! ロフト!」

 年老いた男は、静かに。ただ静かに。何かを悟られまいとしながら、語りかけた。

「俺はあいつの祖父だよ。あいつは今、病気療養中でな……
 代わりに俺が、あいつの言葉を伝えに来た」

「お前は獣になった」
「……だが」
「それでもお前は……俺の妻だ」

「以上が、あいつの伝言だ」

 異形は、表情の伺えない顔のままだった。

「……ロフトニ アイタイ」
「いずれ会えるさ。どれだけ時間がかかっても、必ず」

「必ずだ」

 ―――ロフトは笑っていた。


93 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:41:16 xnC.6C1A0





 ―――新暦1040年





 ―――新暦1050年





 ―――新暦1060年




 ―――新暦……





 ………。

 ……。

 …。





「ロフト コナイ」

「コナイ」

「ロフト」

「コナイ」



 ―――獣の遠吠えが、夜の塔に木霊した。


 


   ▼  ▼  ▼


94 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:41:50 xnC.6C1A0





 21世紀というのは、当然の話ではあるがあらゆる文明が発展した時代である。
 特にこのスノーフィールドが所属するアメリカ合衆国などは、その筆頭とも言うべき国だろう。文明の発展は人々の暮らしにも大きく寄与し、物質的な豊かさを広く民衆に分配する。
 そういう意味で言えば、この時代は恵まれた時代と言い換えることもできるだろう。無論世に悲劇の種は尽きず、犯罪も日毎に起きてはいるが、少なくとも戦争をしていた時代や中世と比べればまるで天国にも思えてくる。
 そんな、人々の心にある程度の余裕が生まれ、必然「必要に迫られて」悪事に手を染めるような連中も数を減らしたがために犯罪は減少傾向になりつつある街でも、しかし凶悪犯罪というものは横行していた。
 例えば殺人。例えば誘拐。ライフルやショットガンの類であれば許可の必要もなく携帯でき、フルオートのマシンガンでさえ許可さえ取れば取得が可能なお国柄である。そういった物騒な事件には事欠かなかった。
 犯罪都市のように日常茶飯事だ、とは言わないが、今さら信じられないとでも言うように口を手で覆うようなことでもない。市井の一般人ならともかく、そうした荒事に関わる警察官であれば、ある程度は場慣れしてくる程度にはありふれたものだった。
 けれど。

(流石にこれは、なぁ……?)

 この現代においてなお、こんなものを目にするなどとは思いもよらなかったと、スノーフィールドで官憲の職に就く男であるところのアルバート・ウィルソンは心の中で述懐した。
 アルバートの目の前には、何か恍惚とした表情をしたまま倒れ死んでいる男の死体が、大の字になって横たわっているのだった。


 ここ一週間ほど、スノーフィールドではある事件が横溢していた。「児童誘拐事件」。それが、スノーフィールドの巷を騒がせる事件の一つであった。
 狙われるのは、決まって未成年の子供ばかり。そしてそのほとんどが、未就学なほどに幼い子供ばかりであるという点が、一連の事件に共通していた。
 それだけならば、よくある―――と言うのもおかしな話だが―――誘拐事件でしかなかった。しかしこの一連の事件は、ある一点においてのみ、その異常性を際立たせる事実が存在していた。
 あまりにも、数が多すぎたのだ。
 この事件が最初に発生したのは一週間前。西部郊外に住まうエイミー・ホワイト(当時5歳)が、遊びにいったまま帰ってこないというのが発端だった。当初、警察はこれを単なる誘拐事件として扱ったが、しかしすぐさまその認識が間違いであったことを知ることになった。

 その日、スノーフィールド警察署に二桁を優に越える失踪の通報が舞い込んだのだ。

 尋常ならざる数だった。その全ては同じような児童の失踪・誘拐であり、その発生件数は日を追うごとに増加の一途を辿った。
 これに応じない警察ではなく、即日大規模な捜査が開始された。そして予想外なことに、誘拐事件の犯人はその日のうちに逮捕されることになった。
 警察が捕まえたのではない。一般市民による、誘拐現場を押さえての現行犯であった。


95 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:42:17 xnC.6C1A0

 その犯人―――セドリック・ロペスという名の男は、警察署に連行されるにあたって自ら犯行を自供した。というよりも、そもそも警察官に対して隠すようなそぶりを見せなかったのだ。
 彼の言動は異常だった。「子供を捧げる」「そうすれば返ってくる」「俺は聖なる献身を果たしている」という趣旨の言葉を、彼は繰り返し話していた。いや、話すというよりは単にうわ言を漏らしているだけで、彼は目の前の警察官のことを認識してすらいない様子であったと、担当の警察官は話す。
 異常事態は更に続いた。取調室まで連行されたセドリックは、しかしその数時間後に突如として絶叫を迸らせ、大量の血反吐を吐いて倒れたのだ。すぐさま病院へと搬送したが彼は死亡、事件は被疑者死亡のまま送検されることと相成った。
 と、思われた。しかし誘拐事件は、その数を減らすことがなかったのだ。

 犯人と目されていたセドリックが死んだにも関わらず、誘拐事件は全く終息などしなかった。むしろ、その数を増やし続けさえしたのだ。
 そしてセドリックの検死では、更に異常極まる事実が発覚した。

 セドリックは、脳を破壊されていた。
 大脳がズタズタとなり、それが原因で彼は死んでいたというのだ。しかもそれはセドリックの死亡時刻よりも更にずっと前、誘拐事件が発生し始めたあたりには既に「そうなって」いたという検死結果が報告された。
 無論のこと、そんな状態では誘拐事件を起こすどころか、そもそも生きてさえいられまい。この事態をどう説明すればいいのか、検死官ですら言葉に迷うほどであった。

 そして、犯人「たち」は毎日のように捕まった。
 ある者は通りすがりの無関係な人間だった。ある者は被害児童の親類だった。ある者は警察内部から犯行に至った警察官だった。
 それら、共通点が一切ない犯人たちが、次々と浮上しては逮捕されたのだ。そして彼らは一人の例外もなく、逮捕されてから数時間後には血を吐いて死亡した。
 死因は「脳の破壊」。それだけが、年齢も性別も人種も職業もバラバラな犯人たちに共通する、ただ一つの項目だった。


「……ケリー巡査(Police)、こいつをどう思う?」
「どう思うと申しましても……これは、異常としか……」
「そう、だな。俺もそうとしか言えん」

 傍の部下に問いかけたアルバートは、困惑と恐怖に塗れた声を聞いて、自身もまた同様の答えを返すしかなかった。
 アルバートたち二人の目の前に倒れているのは、「犯人」の男だった。白昼堂々子供を攫おうとし、それを見た警邏中の二人が羽交い絞めにした瞬間、彼は血反吐をぶちまけて倒れたのだ。
 二人が真に恐怖したのは、そんな凄惨な死に様ではなく、彼の死に顔であった。彼は常軌を逸した死に方をして、しかしその顔は恍惚とした「満面の笑み」だったのだ。血に塗れた体と地面にあって、その顔だけが不気味なほどに形を保って空を見上げていたのだ。

「……クソッ」

 被害に遭った児童は、既に応援を受けた他の警察官によって保護され、その保護者と共に事情聴取に当たっている。しかし、彼らの口から有用な証言が得られるとは、二人は考えていなかった。

「一体どうなっていやがんだ、この街は……」

 吐き捨てる言葉は、荒く。
 アルバートは、まるでこの街そのものが異形と化してしまったようだと、そんな戯言にもならないことを、らしくもなく頭の中で思考したのだった。





   ▼  ▼  ▼


96 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:42:53 xnC.6C1A0





 ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変っているのを発見した。

                                                      フランツ・カフカ『変身』





   ▼  ▼  ▼





 そこは昏い場所だった。

 スノーフィールド中央区より西に数キロ、そこには屏風のように広大な森林が広がっていた。
 短い夏が近づく頃になると、瑞々しい新緑の色彩に覆い尽くされ、森の梢には野鳥の声が木霊し、色とりどりの鮮やかな花が強い風に吹かれような。そんな命溢れる森林が、その場所であった。
 しかし、ここは今拭いきれない昏さに包まれていた。
 
「ああ、いざ奉れ!」
「ウェンディゴ、私はやりました! 私はやり遂げたのです!」
「返ってくる、これで全てが返ってくるんだ!」

 森の奥深く、影となった洞窟の中。
 そこに、多くの人間が存在した。大人と、子供であった。
 大人たちは一様に恍惚とした笑みを浮かべ、何か尊いものを拝するかのように口々に賛美を謳っていた。そこには微塵の恐怖も、不安もなく。ただ幸福の感情だけが彼らの思考を支配しているようだった。
 対して子供たちは、皆一様に恐怖の表情を浮かべていた。自分たちが今からどうなるのか、大人たちが一体どうなっているのか。それを、朧気ながら認識しているかのような。そんな様子であった。
 子供たちは、その視線を洞窟の奥、更なる暗がりへと向けていた。

「GRRRRRRR……」

 その暗がりは、例えて言うなら永く発掘されずにいた地下遺跡にも似ていた。
 数百年のスパンで外気が流れ込まず、停滞して鬱屈した気配が澱んでいる。
 その停滞と鬱屈は、まさしく死というものを象徴していた。


97 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:43:21 xnC.6C1A0

 ―――そこに、"そいつ"は存在した。

 それは緑の異形だった。
 ひどく歪んだ大猿に似た巨躯
 石の天井に頭を擦りながら前進する肉体を覆う毛皮の色は、黒ずむ血に彩られた、緑。
 口蓋から見える乱杭歯の数は大小で28。
 人間の頭蓋程度なら、軽く砕ける。
 腐った吐息を吹いて、それは笑う。

 ―――怪物。正真正銘の。これは人間ではない。
 ―――ウェンディゴと呼ばれたそれは、正しく北米大陸の雪山に住まうという伝説の猿の怪物そのままであった。

 ウェンディゴの太く不格好な腕が、子供の一人を掴みあげる。
 「ヒッ……」という、声にならない悲鳴。それを聞いてか聞かずか、ウェンディゴは子供を目の高さまで持ち上げて。

「Ahaaaaaaa……」

 大きく、その口を開けた。

 掴みあげられた子供が、恐怖に目を見開く。
 生臭い吐息が顔にかかる。
 息がかかるほどに、子供の顔は近くまで寄せられて。
 ―――その乱杭歯が、勢いよく閉じられた。

「あ、あぁああ……!」

 パァンという硬質のものが弾けたような音をベースに、血と脳漿が飛び散る水音が洞窟内に反響した。
 大人たちはそれを見るや、皆一様に歓喜の声をあげた。正気の沙汰ではなかった。そして事実、彼らは全員が狂人であった。ウェンディゴの力で頭脳を破壊されているのだ。
 子供たちも、別の理由で正気ではいられなかった。気を失っている者など幸福ですらある。気絶もできなかった子供は、恐怖により発狂寸前に陥っていた。

 この情景こそが、今スノーフィールドを襲っている児童誘拐事件の全貌であった。


98 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:44:09 xnC.6C1A0

 クリッター・ウェンディゴは感化能力によって人の頭脳を破壊する。そしてその真っ新になった脳に、新たに命令を加えるのだ。
 すなわち、己の捕食対象である「人間の子供を捕えてくる」という命令を。
 ここにいる大人たちは、皆がそうしてウェンディゴの信奉者となった。その狂った視界に彼らが何を観ているのかは知れない。ある者は失ってしまった家族の名を呼んで、ある者は富や名声を口にして。ある者は定かならぬうわ言を口にして。
 それらを与えられる契約を為したのだと、口々に呟いて。
 彼らは解放されたのか、この異形に。その表情は晴れやかでさえあって。
 だが。ああ、だが。それは虚構だ。赤い涎を滴らせて唸るウェンディゴからは、食欲と殺意以外の一切を感じ取れはしない。
 感化によって洗脳された、これが末路であった。



「ロフト……」

 そんな、血に塗れた狂宴のすぐ隣で。
 "それ"はただ蹲っていた。片言の言葉を話し、けれど状況の一切を認識しないまま。
 その目線の先にあるのは、二枚の紙切れ。
 一枚は白いトランプ。この偽りのスノーフィールドに訪れるための、ムーンセル・オートマトンが散逸させたうちの一枚。
 そしてもう一枚は、写真。
 そこに映っていたのは、ただ笑顔を浮かべる二人の男女。
 彼らは―――

「……アイタイ」

 理性も知性もなくなった彼女に、残されたたった一つの思い。
 それは、ただ会いたいというものだった。それだけが、彼女に許された唯一の思考だった。

 女は、怪物だった。
 神の想念が神秘を孕み、その果てに生まれた怪物。

 女は異形だった。
 言葉と記憶を失って、人の形すら失った異形。

 けれど。
 けれど、それでも彼女は人だったのだ。今はこんなに変わり果ててしまったけれど、それでも女は人だった。

 女は今も求めている。たった一つ残された記憶。そこに映る男の影を。
 失った想いが大きすぎて、それを埋めることも目を逸らすこともできず。
 泣き叫びながら必死に手を伸ばした哀れな女。
 そんなものが、怪物でも異形でもあるはずもなかった。

 霞みゆく記憶。最早それが何であったのかも分からぬ情景の中で。
 ロフトは―――
 笑って―――


99 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:44:37 xnC.6C1A0


【クラス】
バーサーカー

【真名】
クリッター・ウェンディゴ@赫炎のインガノック

【ステータス】
筋力A+ 耐久EX(E) 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具E

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
物理無効:A+(C)
バーサーカーは弱点以外のあらゆる物理的影響を受けることはない。同ランクまでの攻撃を無効化し、ランク以上の攻撃もスキルランク分ダメージを削減する。
ウェンディゴの場合、弱点は太陽光及び炎熱。太陽の属性を持つ攻撃や火炎系の攻撃を受けた場合、ウェンディゴの耐久はEまで下降しダメージ削減を行うことができない。
また陽光下においてはスキルランクがCまで下降する。

クリッター・ボイス:C
恐慌の声。クリッターの声を聞いた者は精神が硬直し脳に死を植え付けられる。
ウェンディゴの声を聞いた者は判定を行い、失敗した場合において高い精神ダメージを受ける。同ランク以上の精神耐性で防御可能。そうでなくとも強い精神力を持った者は素で耐えうる場合がある。

精神感応:C
催眠の能力。思念により人間の頭脳を破壊し、自らの手下とする。
ウェンディゴは狂化の影響を受けてはいるが、ことこの能力に関しては多角的な使用が可能となっており、「自分の下に子供を連れてこさせる」以外にもある程度は自由に命令を聞かせられるようである。

無辜の怪物:A
過去や在り方をねじ曲げられ伝えられた怪物。能力、姿が変貌してしまう。

……。

何かをひとつ歪めただけで。
41の■■は、荒ぶるクリッターとなった。
クリッターの生み出す恐怖は、41の■■■■■■■■の感じた恐怖は、人々を苦しめ続けた。
そして人々は完全に記憶を失う。恐怖に上書きされて。
彼らが何であったのか、それを知る者は今や存在しない。

【宝具】
『死塊の黒爪』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:10
ウェンディゴの備える爪、そしてそこに纏わりつく「死の現象を発現する粘液」。
この宝具による攻撃を受けた場合、対象に判定を与え、失敗した場合には爪による物理ダメージの他に死の粘液による致死ダメージを付加する。
ただしこの宝具による即死ダメージは概念的なものではなくあくまで物理的なものであるため、攻撃自体を防がれた場合には発動しない。


100 : 愛に病んだ獣たち ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 15:45:06 xnC.6C1A0

【weapon】


【人物背景】
《無限霧》により外界と隔絶された異形都市インガノックに蔓延る、41の大型異形の一体。生物ではなく「災害」や「現象」として扱われる。
人間の子供を捕食する習性を持ち、かつて下層の20%の子供がウェンディゴによって食い殺されたとか。自分では出歩かず、洗脳によって従えた人間によって獲物を運ばせる。
かつてはウェンディゴを崇拝する生贄教団なるものまで存在したが、過去に《街路の騎士》の活躍によって壊滅している。

【サーヴァントとしての願い】
■■■■



【マスター】
ラクス@アリスの標本箱

【マスターとしての願い】
ロフトとの再会。ただし彼女は現在意識が混濁している。

【weapon】
鉤爪

【能力・技能】
野生の羆と比較しても尚剣呑な鉤爪と膂力を持つ。
また魔女という出自、及び神性の欠片との融合からか多量の魔力を有し、炎のブレスや凍結系の攻撃魔術を行使できる。

【人物背景】
魔女の血筋に連なる者が住まうマドルーエの街に暮らす女性「だったもの」。
魔女の血が薄くなってしまった当代の女性の中では屈指の強い力を持ち、基本的な魔術以外にも予知の能力を身に着けていた彼女は、ドグマを討滅する勇士たるロフトの出現を事前に予期しており、予知通りマドルーエの街を訪れたロフトに手を貸すことになる。
その後、彼らの行くべき場所を指し示し、バックアップに回った。ドグマ討滅以後はロフトに求婚され、結婚。一人の男児を成す。
しかし「ドグマの箱庭」より十年後、実は未だ存命だったドグマの手により体内にドグマの種子を埋め込まれ、その身は生きながらにして獣となる。
当初こそ元の理性と知性を保っていたが、時間を経るごとに徐々に言葉と記憶を失っていく。そしてロフトの死を契機に完全に発狂。名実共に獣と成り果ててしまった。
ドグマの箱庭から400年後の世界である「アリスの標本箱」でも存命しており、マドルーエの塔に封じられながらもマドルーエの子孫たちを食らいながらその血肉で自らの肉体を編んでいたことが発覚する。
参戦時期はドグマの箱庭終了後、ロフトと死に別れた直後。

【方針】
ウェンディゴはほぼ完全にラクスの制御下から離れているため、NPCの子供を攫って食い殺すという所業を繰り返し続けている。


101 : 名無しさん :2016/11/24(木) 15:45:27 xnC.6C1A0
投下を終了します


102 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/24(木) 22:22:11 xnC.6C1A0
拙作「愛に病んだ獣たち」で設定ミスがあったため修正いたします
>>98
×その目線の先にあるのは、二枚の紙切れ。
 一枚は白いトランプ。この偽りのスノーフィールドに訪れるための、ムーンセル・オートマトンが散逸させたうちの一枚。
 そしてもう一枚は、写真。

この一文を削除し、

○その目線の先にあるのは、一枚の紙切れ。
 それは、古ぼけ擦り切れた写真であった。

に差し替えさせていただきます。お騒がせして申し訳ありません


103 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:21:06 /OxVXY7Y0
皆さま、投下乙です。
それでは私も候補作を投下させて頂きます。


104 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:23:03 /OxVXY7Y0


     00/ヒカリを取り戻した悪魔―メフィスト―



 桃園ラブは星空を見上げていた。
 『スノーフィールド』という名前のパラレルワールドが、どんな場所なのかを彼女は知らない。手元にあったスマートフォンによると、聖杯戦争という戦いの舞台になっている世界らしいけど……実感が湧かなかった。
 だけど、今が只事ではないのは理解できる。リンクルンで蒼乃美希達と連絡しようとしたけど、何故か繋がらない。ピルンも不調を訴えているように、身体を捩っていた。

「ピルン……大丈夫だよ。あたしは、プリキュアの力で誰かを傷付けたりなんかしないから!」
「……キーッ!」

 ラブは優しく笑顔を向ける。すると、同じようにキルンも笑ってくれた。
 ラビリンスの悪巧みで不安になっている人達を、こうやって何度も励まして、フレッシュプリキュアは人々の幸せを守り続けてきたのだから。
 美希は完璧に。
 祈里は信じて。
 せつなは精一杯頑張って。
 ラブは……みんなで幸せゲットできるように、力を尽くしてきた。
 それはこの世界でも変えるつもりはない。誰もが不幸にならない為にも、聖杯戦争を止める……聖杯は願いを叶えてくれると書いてあったけど、とても信じられなかった。

「それがお前の願いか……マスター」

 決意を固めるラブ達を見守るのは、黒装束に身を包んだ大男。
 彼こそが、キャスターのクラスとして召喚されたラブのサーヴァントだった。

「えっと……あなたがあたしのサーヴァントの……キャスターさん、でしたよね」
「ああ。まさかお前のような子どもが俺の上司とはな……フッ、どうやら俺は子どもに縁があるみたいだな」
「えっ? あの、もしかしてあなたは学校の先生か保育士でもやっていたのですか……?」
「だとしたら、どうする? 俺に子守りでもして欲しいのか」
「いえ、結構です……」

 やや皮肉げに笑うキャスターの言葉に、ラブは否定する。
 彼の瞳は猛獣のように鋭く、そして全身からも重苦しい雰囲気を放っていて、一緒にいるだけで緊張感が走った。
 こんな男が子どもと触れ合う姿が全く想像できない。カオルちゃんとはまた違った意味で怪しげで、そして怖かった。もしもラブがもう少し小さかったら、絶対に泣き出してしまうかもしれない。


 そして今、そんなキャスターはラブのことをまじまじと見つめている。
 いや、正確にはこの手に持つリンクルンに視線を注いでいるようだった。

「……あの、どうかしましたか?」
「お前……光を持っているのか?」
「光?」
「お前からは光が感じられる。俺が見てきたものに比べれば、微々たる光だが……闇を振り払い、そして人を救ってきたのか」

 唐突過ぎる問いかけだけど、それは決して無視できない。
 ラブにとって全ての始まりとも呼べて、今でも決して忘れることができないトリニティのコンサートが行われた日。あの時、プリキュアの光と巡り会ったことでキュアピーチとして覚醒し、それから多くの心を救った。
 すべてを賭けてイースとぶつかり合って……本当の友達になった。トイマジンを憎しみから解放して、おもちゃ達の幸せを取り戻した。自らの過ちを悔んだ友達の為に、プリキュアとなって戦った。
 だから、キャスターの言葉は間違っていない。

「だがな、人の心は弱く、世界は闇で満ちている……だから人はそれにたやすく呑まれてしまう」
「えっ!? それは違います! だって……!」
「何故なら、俺がそうだったからだ」

 ラブの反論を無視するように、キャスターは語る。
 その表情からは、どこか後悔の想いが感じられた。まるで、親友の東せつながイースであった頃の過ちに苦悩していたように。


105 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:24:02 /OxVXY7Y0
「俺はかつて、ビーストという人間に仇なす怪物達と戦っていた。奴らは世界の闇に潜み、人間達を襲い、恐怖と絶望を餌としていた……
 そいつらを滅ぼす為に俺は力を求め、武器を手にし、戦った……戦い続けた。
 だがな、それは間違いだった」
「間違いって……何が間違いだったんですか? そのビーストって奴らから……あなたはみんなを守る為に頑張っていたんじゃ……?」
「それは違うな。
 俺の中にはビーストへの恐怖心がいつだって潜んでいた。それを振り払う為に力を求めたが、いつしかそれに溺れてしまい……闇に利用された。
 そして俺はおぞましい悪魔……メフィストとなって、人間達を苦しめた。
 力に溺れてしまった俺は、まるで全能の神にでもなったつもりなのか……人間達の希望を平気で踏み躙り、そして多くの絶望を生み続けたのさ」

 キャスターの言葉を耳にし、そして瞳を見る度に……ラブは胸が締め付けられてしまう。
 彼が何を見てきて、そして何を感じてきたのか。出会ったばかりのラブに知る術など持っている訳がない。
 だけど、少なくとも彼は優しい人間であるはずだった。始めは、みんなの為に頑張りたいと思って悪い奴と戦い、みんなの幸せを守っていた。そんな尊い決意は、プリキュアのみんなだって持っている。
 それが何かのきっかけで歪んでしまい、不幸が生まれてしまった。


 ふと、ラブは考えてしまう。
 もしも彼の隣に自分がいたら、彼のことを救うことができたのかと。キャスターと一緒にビーストと戦って、平和に暮らしている人の笑顔を見守り、間違えたことをしそうになったら……本気で止める。
 そんな可能性が過ぎってしまい、心が痛くなった。


 管理国家ラビリンスだけではない。妖精学校や夢の世界に向かって、妖精や子ども達を救う為に戦ったことだってある。
 その度に、みんなが幸せになれたとラブは信じていたけど……それは違った。不幸はどの世界でも生まれていて、たくさんの人が悲しんでいた。
 ここにいるキャスターだってどこかで苦しんでいたはずなのに、ラブはそれに気付くことができなかった。本当なら彼らが生きる世界にも赴いて、そして救わなければいけなかったのに。


 いたたまれなくなって、何を言えばいいのかわからなくなってしまう。
 あなたは悪くありません、なんて否定は意味がない。
 これから一緒に罪を償いましょう、なんて励ましを言っても、心に届くとは限らない。


 彼はせつなと同じだった。
 過去の過ちを抱え込んで、それに苦しみ、自分を愛せなくなっている。きっと、帰る場所だってないかもしれない。
 しかし、キャスターの為に何をしてあげればいいのか、ラブには思い浮かばなかった。せつなと違って出会ったばかりの男の人だから、どうすれば幸せにできるのかなんてわかる訳がない。
 それでも、彼のことを救ってあげたかった。

「キャスターさん……あの、あたし――――!」
――――グアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!

 ラブは言いかけたが、そこから先は続かない。何故なら、彼女の言葉を遮るかのような叫び声が、闇の中より発せられたからだ。
 耳をつんざく叫びは鼓膜で暴れ周り、そして周囲を容赦なく震撼させる。それはもはや声などではなく、暴風と呼ぶのが相応しかった。
 唐突すぎる咆哮にラブは跳び上がってしまい、反射的に振り向く。そうして現れた生物を前に、彼女は目を見開いた。

――――グアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!
「ナ、ナ、ナ、ナケワメーケ!?」

 ラブが見上げているのは、全長40メートルは軽く超えるであろう、不気味な生物。その外見はナケワメーケやナキサケーベはおろか、ソレワターセよりも遥かに禍々しい。
 骸骨のような頭部からは凄まじい迫力が放たれていて、蛇腹状の筋肉も異様なまでに盛り上がっている。身体の至る所には結晶のような物が飛び出ているが、美しい輝きなど放っていない。
 まるで、怪獣と呼ばれても何らおかしくなかった。


106 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:25:20 /OxVXY7Y0

――――グアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!
「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 そして現れた怪獣は、隕石のような拳をラブに向けて振り下ろしてくる。
 プリキュアに変身する暇もない。混乱した思考では、その為に必要な動きを取る余裕がなかった。

「捕まれ!」
「きゃあっ!」

 だけど、そんなラブの身体をキャスターは強く抱き寄せて、そして勢いよく走り出す。その脚力は人間とは思えないほどに凄まじく、プリキュアに匹敵するほどだ。
 派手な爆音が鳴り響き、二人の頭上に土埃が止め処なく降り注いだ。ラブはキャスターの腕の中で、先程まで立っていた場所が拳で潰されたのを見る。
 キャスターがいなければ、今頃はあの拳の下敷きになっていた。それに気付いて、ラブは命の恩人の顔を見上げるが、当の本人は怪獣を睨んでいる。まるで、憎むべき仇を見つけたように、瞳は鋭くなっていた。

「キャスターさん?」
「マスター、お前はここにいろ。奴は俺が片付ける」
「えっ? あの、待ってください!」

 キャスターはラブに見向きもせず、怪獣を目掛けて走り出す。
 どんどん離れていく背中を呼び止めようとした瞬間、男の身体から眩い光が放たれ出した。闇を払い、全てを照らす太陽のように眩く、そして暖かい。
 その輝きに思わず目を瞑ってしまう。しかし次の瞬間には、ズシンと、凄まじい振動が足元から伝わってきた。
 ゆっくりと瞼を開けると、そこには一人の巨人が降り立っていた。

「…………えっ?」

 山のように大きな背中は、背骨のような飾りが備わっていて、一見すると近寄りがたい。しかし、ラブはそれが恐ろしいとは思わなかった。
 黒と赤に彩られた背面からは、デジャビュを感じてしまう。つい先程、怪獣に立ち向かった男の背中とよく似ていた。
 
「あなたは……もしかして、キャスターさんですか!?」

 ラブは大声で問いかけたが、巨人は返答もせずにただ怪獣と睨み合っている。
 根拠はないけど、ラブは確信していた。ここに現れた巨人の正体は、あのキャスターであり、そしてたった一人で戦おうとしていることを。
 

      †


 キャスターのクラスで召喚されたダークメフィスト/溝呂木眞也は己の運命を嗤っていた。
 ビーストと戦う為の力を求めて、それに溺れてしまい、挙句の果てに影(アンノウンハンド)の操り人形となってしまった。神に迫る完全たる存在になったと驕っていたが、実際はただの道具に過ぎず、アンノウンハンドに踊らされていただけ。
 その報いなのか、サーヴァントという名の道具になって、再びメフィストとして戦うことになった。しかも従う対象が、自分よりも遥かに幼い少女。
 皮肉なものだ……そう、メフィストは自嘲する。

(俺の過ちを正せと……そういうことなのか?)

 溝呂木に残った最期の記憶。かつてあれだけ執着していた西条凪の腕の中で、人間として罪を償って生きろと告げられた。
 死んで楽になることは許されない。己がマスター・桃園ラブを守り、彼女の願いを叶える為の戦士になる……それが、贖罪なのか?


107 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:26:15 /OxVXY7Y0

――――グアアアアアアアアアアアアアアッ!
「フンッ!」

 目前より迫るのは、これまでに見たことがない新手のビースト。恐らく、敵となったマスターが使役する大型のサーヴァントだろう。
 奴は耳障りな叫び声をあげながら拳を振るうも、メフィストは跳躍することで軽々と避ける。そのまま背後に回り込んで、無防備な背中を目がけて前蹴りを叩き込んだ。
 何の抵抗もできずに、ビーストは地面に倒れ伏せる。多くの人間を絶望に追いやった力は、未だ健在らしい。
 当然ながら、たった一発で死ぬ訳がなく、起き上がったビーストは殺意で満ちた視線を向けてくる。だが、メフィストはそれに構わず、懐に潜り込んで顎を殴り付けた。
 その巨体は宙を舞った後に、遥か遠くに吹き飛ばされた。

「ハアッ!」

 だが、それで終わることなどせずに、追いうちをかけるようにメフィストクローからエネルギー弾を発射する。一秒間に連続で放たれた力は、ビーストの巨体で爆発を起こした。
 一度は消えたはずの鉤爪は、どうやら再びメフィストの力となるらしい。運命は、犯した大罪を忘れさせてはくれないのだろう。
 ウルトラマンを幾度も苦しめてきたその武装は、彼にとって罪の証とも呼べる代物だが、決して悲観などしない。この状況で一つでも多くの武装があるのは好都合で、己の力として利用させて貰うだけだ。

(孤門、姫矢……お前達も、こうしてビーストと戦っていたのか?)

 不意に、彼の脳裏にかつて戦ってきた者達の姿が浮かび上がる。
 孤門一輝。一度は操り人形として変貌させようと企んだが、それに屈することなどせずに運命と戦ってきた坊やだ。恋人である斎田リコを殺し、ファウストという魔人に変えて弄った溝呂木を憎んだが……決して殺意を見せなかった。孤門自身も、一度は溝呂木によって闇の申し子にされかかったにも、関わらずだ。
 姫矢准。ウルトラマンの光を得て、幾度もメフィストやファウストと戦った男だ。たった一人で人類の為に身を捧げ、その果てに終焉の地でメフィストを打ち破った。その背中には、数え切れないほどの命を背負っていたのだろう。
 そして千樹憐。己の意志と力だけでメフィストに変身した溝呂木に協力した青きウルトラマン。彼のことは何も知らないが、孤門や姫矢のような赤く熱い鼓動を宿らせているだろう。
 彼らは今のメフィストのように、何度もビーストと戦っていた。どれだけ傷付こうとも、無様に逃げ出そうとせずに立ち向かった。

――――グアアアアアアアアアアアアアアッ!

 メフィストクローでビーストの体表を切り裂く。
 耳障りな悲鳴をあげながら、敵は後退した。剛健な体躯を誇っているが、メフィストからすれば恐れるに足りない。
 常人なら一瞬で失神するであろう威圧感もメフィストにとっては見慣れたもので、最早そよ風に等しかった。生前、数多のビーストを使役した今となっては、たかが一匹程度で畏怖するなどあり得ない。


 もう一度。今度は体表から生えた結晶を砕くように、メフィストクローを突き刺す。そこから左腕にエネルギーを込めて、目前から暗黒の弾丸を放ち、巨体を吹き飛ばした。
 ドガガガガガガガガッ! と、クロムチェスターの光線に匹敵する程の轟音が鳴り響き、震動が全身に伝わる。視界と共に地面も揺れるが、メフィストはひたすらにエネルギー弾を放ち続けていた。
 一発命中する度に、凄まじい爆発がビーストの体表で起きる。奴は悲鳴を発しているだろうが、それは爆音によって掻き消されていた。

(マスター……お前には俺が何に見える? 人類を救う救世主か? あるいは、平穏を脅かす悪魔か?)

 ビーストが苦しむ姿に目を向けず、豆粒のように小さい己がマスターに振り向く。
 彼女は困惑したようにメフィストを見上げている。この姿を恐れているのか、それとも未だに戦いを受け入れられないのか。あるいはその両方か。
 この姿は人類を照らす光の申し子ではなく、影によって産み落とされた悪魔の成れの果て。例え影から解き放たれたとしても、人間にとってはおぞましい存在と見られるかもしれない。

――――お前は人形……ただの、道具だ!――――

 脳裏に影・アンノウンハンドの嘲りが響き渡る。
 奴は今もどこかで自分を見つめて、虎視眈々と狙っているのではないか。キャスターだけではなく、この手で守らなければならないマスターすらも。
 石堀光彦という男の仮面を被り、ナイトレイダーの隊員を装って、今も人間達を嘲笑っているはずだ。
 それこそ、闇から解き放たれた溝呂木を、サーヴァントという名の人形と見下していることすらも考えられる。


108 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:28:35 /OxVXY7Y0


 ……そんな不安が湧き上がるも、メフィストは振り払った。
 余計な思案などしてはそれが戦闘中における隙となってしまい、敗北する。こんなのは初歩の初歩だ。
 ただ、この手でビーストを屠り、マスターを守る。今はそれだけさえあれば十分だ。

(凪……お前は俺を笑うか? 蔑むか? お前は言ったな、俺は人間として生きて……償うべきだと。
 だが、こんな形で戦うことになると知って、何を思う?)

 例え贖罪を決意し、一人の少女を守ろうとしても……己が怪物であることに変わりはない。そんなメフィストを見たら、果たして西条凪は何を想うか。
 マスターとなった少女を支えるか。それとも、少女を守る為にメフィストを討ち取ろうとするか。あるいは、贖罪の手助けをするか。
 ビーストに攻撃を加える度に、疑問が湧き上がる。違う肉体を手に入れたとしても、彼女への未練が消えることはない……メフィストはそれを改めて認識するが、凪への想いはもう届かない。

――――グアアアアアアァァァァァァッ……!

 幾度にも渡るメフィストの攻撃によって、既にビーストの叫びは弱々しくなっている。
 決着を付ける時だ。メフィストは再び膨大なるエネルギーを両腕に込めて、L字を組む。ダークメフィストが誇る必殺光線……ダークレイ・シュトロームの構えだ。
 漆黒のエネルギーはビーストを目がけて突き進み、その巨体を貫く。ウルトラマンネクサスが、こうして何度もスペースビーストを打ち破ってきたように……今度はダークメフィストが、ビーストを打ち破ろうとしていた。
 オーバーレイ・シュトロームに匹敵する威力に、ただ頑丈なだけのビーストが耐えられる道理などない。辺り一帯を揺るがすほどの爆発音を轟かせながら、細胞一欠けらも残さず消滅するだけ。
 その大爆発によって、ほんの一時とはいえ周囲は光で照らされていった。



      †



 目の前で繰り広げられていた戦いは、プリキュアとして幾度も戦ってきたラブですらも立ち尽くしてしまうほどだった。
 キャスターという謎に満ちた男はただの人間ではない。プリキュアのように……いや、プリキュアよりも遥かに大きくて強そうな巨人に変身して、怪獣と戦っていた。まるでTVの特撮ヒーローのようで、思わず息を呑んでしまう。
 そんなキャスターは今、元の姿に戻ってラブの前に立っていた。

「キャスターさん、あなたは一体……?」
「見ろ。これが俺の力だ」

 己の力を誇る訳でも、勝利を喜ぶ訳でもなく……淡々と結果を告げる。その瞳は相変わらず寂しげに見えた。

「マスター……お前は言ったな。誰のことも傷付けたりしないことが、お前の願いだと」
「は、はい! みんなには笑顔でいて欲しいですし……こんな戦いに乗ってまで願いを叶えるなんて、あたしは嫌です!」
「そうか」

 ラブの想いをキャスターは肯定する。
 自分自身の幸せを、そしてみんなの幸せを潰すことなんてラブにはできない。
 聖杯を手に入れて幸せを手にしたとしても、それは自分で掴み取った幸せではない。どんなに苦しく、間違えることがあっても……自分で努力して掴まなければ、心から幸せになれなかった。


 聖杯は、ラビリンスが生み出した人工コンピューター・メビウスと同じだった。
 メビウスに管理された世界には悩みや苦しみはないけど、幸せと思いやりだってなくなってしまう。失敗し、何度でもやり直すからこそ……人は幸せになれる。
 そのチャンスを奪って、人を不幸にしてまで願いを叶えても、その先にあるのはもっと大きな不幸だけだった。


109 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:35:55 /OxVXY7Y0

「ならば、忠告をしておく」
「忠告?」
「『怪物と戦う者は気を付けろ。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ』……そんな言葉があるみたいだぜ」
「し、しんえん……? えっと、新年の挨拶ですか?」
「………………」

 間の抜けたラブの答えにキャスターは溜息を吐く。

「…………要するに、俺達はいつでも狙われている。お前がどんな願いを抱こうとも、聖杯を求めて戦う者からすれば……そんなのはただの綺麗事。
 お前は隙だらけだ。例えどれだけ大きな光を持っていようとも、甘さが命取りになるぜ」
「……やっぱり、聖杯が欲しくて戦う人って、いるのですか? 自分の為に、誰かを不幸にする人も……」
「いなかったら、最初からこんな戦いなんて起こる訳がないだろう?」

 冷徹とも取れるキャスターの言葉だが、ラブはそれを否定することができない。
 何故なら、ラビリンスが人々を不幸にしてきた光景を、ラブは何度も見てきたのだから。せつな達がまだラビリンスの幹部だった頃、ナケワメーケ達を使ってFUKOのゲージを貯めていて、それを少しでも食い止める為にフレッシュプリキュアは戦っていた。
 サウラーがナケワメーケでみんなのお母さんを消して、ノーザがソレワターセを使ってあゆみを鏡の中に閉じ込めたように…………聖杯を手に入れる為に、手段を選ばない人は必ずいる。
 キャスターはそれを伝えたかったのだろう。


 巨大なサーヴァントが倒されて、それを操るマスターがどうなったのかを知らない。
 無事でいるとは思えない。しかし、ラブには戦ってくれたキャスターを責めることはできなかった。彼が戦ってくれなければこの命を奪われていただろうし、何よりも街に生きる人達が犠牲になってしまう。
 ……けれど、この結果を『仕方がない』という一言で片付けたくなかった。




「闇はいつでも俺達を狙っている。少しでも隙を見せたら、かつての俺みたいになるぜ?」
「それって、キャスターさんのことを言っているのですか? でも、今のキャスターさんはあたしを助けてくれたじゃないですか!
 あなたは悪い人じゃ……!」
「それが甘いと言っているんだ!
 俺は確かに闇から解放されたが、奴らは俺をまた操り人形にするはずだ。いや、俺だけじゃない……マスターまでもが、道具にされるだろうな。
 そうなったら、マスターの左手に刻まれた令呪で、俺は殺されるだろう」
「えっ!?」

 キャスターの衝撃的な発言に、ラブは動揺する。
 そして彼が示した、左手の甲に描かれている紋章……令呪に目を向けた。

「確か、そいつさえあれば俺達サーヴァントにどんな命令でも与えられるらしいな?
 なら簡単だ……もし俺が用済みになっては、マスターの意志を奪った影は、そいつで俺に命令させるだろう。自害しろ、ってな……」
「そんなこと、できるわけありません! キャスターさんの自由を奪って、あなたの幸せを奪うようなことをするなんて!
 もしも影が襲ってくるのなら……あたしも影と戦います! みんなを不幸にする奴らなんて、絶対に許せませんから!
 例え、また影があなたを狙ったとしても、あたしは止めてみせます……令呪じゃなくて、あたし自身の力で!」

 令呪に願いを込めれば、どんなことでもサーヴァントは叶えてくれるらしい。だけど、それで止められたとしても、何の意味があるのか。
 かつてイースであったせつなをラビリンスから抜け出させる為に、ラブは自分の全てを賭けて戦った。彼女の悲しみと涙を止める為に、全力で想いをぶつけたからこそ、お互いにわかり合うことができた。
 だから、もしもまたキャスターが悪いことをしそうになったら、ラブの力だけで止めなければならない。魔法のランプのような力に頼らず、自分自身の想いを込めて。


110 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:37:17 /OxVXY7Y0
「お前は何も知らないから、そう言える。例えマスターがどんな戦いを乗り越えていようとも、奴らは狡猾で、そしてあらゆる手段で人間を絶望させてきた。
 俺を止める? ハッ……変わったことを言うマスターだ」
「そうかもしれません……でも、諦めたくないんです! 自分の幸せも、キャスターさんの幸せも……両方ゲットしたいから!」
「俺の幸せ?」
「キャスターさんがどんな人で、何が好きで、何が嫌いで、どうすれば笑ってくれるのか……あたしはわからないです。でも、あたしはあなたのことを知りたいと思っています!」
「俺が、お前のサーヴァントだからか?」
「違います! マスターとか、サーヴァントとか、そんなよくわからないことなんかじゃなくて……あなたにも幸せになって貰いたいから!」

 それがラブの想いだった。
 せつなの幸せをせつなと共に探したように。今度はキャスターと共に、キャスターの幸せを見つけたいと願っていた。
 聖杯に頼らず、自分自身の力で。

「…………そんなもの、考えたこともないな。誰かを絶望させ続けた俺が、今更幸せになど……」
「なれますよ! あたしも、一緒に探しますから!
 じゃあ、あたしからマスターとしての最初の命令を言います!」
「命令?」
「あたしと一緒にやり直しながら、キャスターさんの幸せを見つける! はい、これがあたしからの命令です!」

 令呪の力を借りず、何の強制力もないラブの"命令"。キャスターの贖罪を手伝いながら、キャスター自身が本当の幸せをゲットできるように頑張ることだった。
 当のキャスターは一瞬だけ呆気にとられるも……すぐに苦笑を浮かべた。

「全く、どこまでも変わったマスターだ」
「あっ! それ、どういう意味ですか?」
「言葉の通りだ。お前は甘い……甘すぎる。だが、他ならぬマスターからのご命令だ……覚えておこう」
「本当ですか!?」
「ああ。しかし、忘れるな……俺達は狙われていることを。ここは戦場で、ビーストの他にも敵が大勢いるってことをな」

 キャスターの言葉は相変わらず胸に刺さるが、それでもラブは決して挫けたりなどしない。
 こうすることで、彼との距離が少しだけでも縮まり、お互いがわかり合えるきっかけになったはず。だから、キャスターの言葉をしっかりと胸に叩きこんだ。

「わかりました。キャスターさん……一緒に、頑張りましょう! みんなの為にも、そして……あなたの為にも!」

 みんなの幸せの中には、キャスターだっていなければならない。
 それこそが、この世界でやるべきことだと桃園ラブは確信していた。


111 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:39:12 /OxVXY7Y0
【クラス】
 キャスター

【真名】
 溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス

【ステータス】
 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力A+ 幸運C 宝具B

【属性】
 混沌・善

【クラス別スキル】

 陣地作成:A+
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 かつてはダークメフィストとして幾度もダークフィールドを生み出していたが、今の彼は影から解放されているのでダークフィールドを生み出せない。
 彼が形成する空間は、メタフィールドと同等の性質を持つ。

 道具作成:-
 かつてはその手で殺した人間を操り人形にしてきたが、今の彼にその力は存在しない。
 同様にビーストの使役も不可能。

【保有スキル】

 贖罪:A
 人間として生きて、己が罪を償うと誓った彼が手に入れた光。
 これを掲げた時、彼は光を持つ悪魔へと変身することができる。

【宝具】
『影より解き放たれ、過ちを正そうと誓う悪魔(メフィスト)』
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 影の力ではなく、光によって再び姿を現した悪魔。
 ダークエボルバーを必要とせず、自らの心に取り戻したことで変身したその姿はまさにウルトラマンと呼ぶに相応しい。
 己の罪を償うという決意に答えたのか、その手に持つメフィストクローも人間を守る為の力となっている。
 闇の色を持ちながらも、そこには溝呂木眞也という男が最期に抱いた真っ直ぐな決意が込められるようになった。

『異空間(メタフィールド)』
 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 ウルトラマンが本来の力を発揮する為に作り出す空間で、ここにスペースビーストを引き摺りこむことで有利に戦える。 
 現実世界から確認することは不可能で、突入も極めて困難。突入にはハイパーストライクチェスターあるいはそれに匹敵する規模の武装が必要とされる。
 かつてはダークフィールドと呼ばれ、闇の巨人とスペースビーストを有利にさせてウルトラマンの力を奪う為の空間だったが、今の彼にその意思はない。
 光を強化させる空間となったが、展開する為には多大な力を消耗し、一定時間を過ぎると自動的に消滅してしまう。故に三分間の使用が望ましい。
 善の属性を持つサーヴァントのステータスを一ランク上昇させて、悪の属性を持つサーヴァントのステータスを一ランク減少させる。


112 : 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:40:53 /OxVXY7Y0

【Weapon】
 ダークメフィストとしての力
 メフィストクロー
 

【人物背景】
 かつてはナイトレイダーの副隊長として人類に仇なすスペースビーストと戦っていたが、次第に力に渇望して、そこを影―アンノウンハンド―に付けいられてしまった。
 アンノウンハンドによって操り人形とされ、ダークメフィストとなった彼は斎田リコを始めとした多くの人間を殺め、そして姫矢准が持つウルトラマンネクサスの光を求めた。
 その果てに彼は、終焉の地に誘き寄せたウルトラマンネクサスを処刑しようとするも、ナイトレイダーの力によって復活したウルトラマンに敗れ去る。
 それ以後、溝呂木眞也は記憶を失ってしまい、TLTに拘束される。そこで全ての記憶を取り戻し、自らの罪に苦悩するも、それに対する贖罪を決意する。
 だが、新たにアンノウンハンドの操り人形となった三沢広之/ダークメフィスト・ツヴァイの不意打ちによって傷を負ってしまうが、己の力で光を集めて再びダークメフィストに変身し、千樹憐が変身するウルトラマンネクサスと共に戦う。
 メフィストはメフィストツヴァイを抑え込み、自らもろともウルトラマンネクサスに打ち破るように懇願した。
 最期、人間としての心を取り戻した彼は、特別な想いを寄せていた西条凪の腕の中で静かに息を引き取った。
 声優の沖佳苗氏は特撮雑誌・宇宙船のコラムにて、溝呂木眞也というキャラクターについての思い入れを語ったことがある。


【サーヴァントとしての願い】
 己の罪を償い、マスターを守る。


【マスター】
 桃園ラブ@フレッシュプリキュア!

【マスターとしての願い】
 聖杯に頼らず、キャスターさんの幸せを見つけてみせる。できることなら犠牲を出したくない。

【weapon】
 リンクルン

【能力・技能】
 伝説の戦士・プリキュア……キュアピーチに変身して、大きな戦闘能力を発揮することができる。
 桃園ラブ本人は料理が得意で、ダンスのレッスンを受けているので人並み以上の体力を持っている。
 ただしリンクルンの通話機能に関しては、聖杯戦争の世界に限定。

【人物背景】
 何事にも前向きで一生懸命。自分よりも他の誰かの為に行動し、いつだってみんなの幸せを守ってきた。
 憧れのダンスチーム・トリニティのダンスコンサート会場にラビリンスの怪物・ナケワメーケが現れた時、トリニティのリーダー・知念ミユキを守りたいと願ったのをきっかけに、キュアピーチとして戦うようになった。
 それ以降、スウィーツ王国の妖精にして王子のタルトや、赤ちゃん妖精のシフォンと出会う。そして幼馴染の蒼乃美希と山吹祈里も、それぞれキュアベリーやキュアパインとして覚醒し、彼女らと共にラビリンスから幸せを守ると決意する。
 ある時、友達と信じていた東せつながラビリンスの幹部・イースであることを知った時は動揺し、戦えなくなったものの、美希の叱咤を受けて立ち上がり、彼女と気持ちをぶつけ合った。その果てにせつなはラビリンスによって強制的に寿命を終了させられるも、駆け付けたアカルンによりキュアパッションとして生まれ変わる。
 そうして自分自身の罪と戦うと決意したせつなを受け入れて、フレッシュプリキュアは結成された。
 彼女達は絆を深め合いながら人々の幸せを守る為に戦い、そしてラビリンスから全てのパラレルワールドを守り抜いた。


【方針】
 聖杯に頼らず、キャスターさんの幸せを見つけてみせる。


【把握媒体】

 ウルトラマンネクサス
 全37話の特撮作品(外伝1話、前日談となる映画が一作)
 昨年、コミカライズ版も発売された。
 短編小説はあるが、こちらは現在では入手困難。

 フレッシュプリキュア!
 全50話のアニメ作品(劇場版1作、他シリーズと共演する映画シリーズが複数)
 コミカライズ版や後日談となる小説版も発売されている。


113 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/24(木) 23:42:14 /OxVXY7Y0
以上で投下終了です。


114 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 00:14:19 WoSKh.8g0
初投下です


115 : Your wars ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 00:15:20 WoSKh.8g0
虹のように美しい尾を引きながら落ちていく二つに割れた彗星。
それを眺めながら、私は走り続ける。
止まっている暇はない。
あの片割れが隕石として落ちてくるまで、もうあまり時間がないのだから。
しかし、そんな緊急事態であるにも関わらず、私はある人物について必死に考えていた。
それが誰なのかを言い表すのは難しい。
私の思考を占める、朧げな、誰か。
輪郭の、はっきりしない、誰か。

――誰、誰。きみは誰?

まるで、目が覚めた後で、見ていた夢の登場人物を思い出そうとしているかのような。
忘れている誰かを思い出そうとしているかのような。
しかし、それでもその名前も分からない『誰か』は、大切な、忘れてはいけない人物であるかのような。
そんな感覚を、私は感じていた。

――君の、名前は?

走りながら考え事をしていたからだろうか。
足元への注意が疎かになっていた私は、アスファルトのくぼみに爪先がはまり、盛大に転んだ。
きゃ! と声をあげた時には、体全体で強かな衝撃を感じ、痛みが全身を走り回り、やがて視界が回る。
こんな時に気絶をしてしまうだなんて、なんてついていないのだろう――そんな事を考える間も無く、私の意識は途絶えた。
ただ。
意識を手放す寸前――体全体で感じた痛みの他にもう一つ、私の触覚は別の物を感知していた。
それは、倒れた拍子に私の右手が、地面に落ちていたカード状の何かに偶然触れた感覚。
無論。それが何かを知る事は、回る視界の中では不可能だった。

❇︎ ❇︎ ❇︎

目が覚めた時、私は見知らぬ屋上を見つめていた。
顔を横に倒す。見知らぬ壁があった。
と、同時に、窓から差し込んでいる日の光に壁が照らされている事を知る。
……日の光?
がばり! と上半身を起こし、そのまま立ち上がる。
室内の様子も、家具の種類から小物の配置まで全て同じく見覚えはない。
そもそも、今私が居るのは洋風の部屋だ。私がさっきまで寝ていたのも、慣れ親しんだ布団ではなく、白いベッドだった。
此処は、私の知らない部屋だ。
その事を確認しながら、私は時計を探す。
すぐに見つかった時計の針は、てっぺんを指していた。
一体、あれからどれだけの間気絶していたのだろうか、と考え、私が気絶していた間に起きたであろう事を想像し、ゾッとする。

――町は? 町のみんなは!?

血の気の引いた顔で、私は窓を開けた。
その瞬間、ぴゅう、と強い風が私を出迎える。
風に目を細めつつ、私は必死に前を見る。
しかし、外の景色を確認した瞬間、私の目は驚愕によって見開かれた。
何せ、窓の外には糸守町でなく、全く見知らぬ街の景色があったのだから。


116 : 名無しさん :2016/11/25(金) 00:16:19 WoSKh.8g0

まず最初に、入れ替わりが起きた事を疑った。
これまでの経験上、それを疑うのは当然だ。
しかし、洗面所の鏡を見る事で、その考えは捨てられた。
鏡の中に映る人物は、何処からどう見ても私そのものだった。
服装がいつのまにか寝間着に変わっている事以外に、不思議な点は見られない。
つまり、私は私のまま、この見知らぬ街にやって来たという事になる。
ついでに言うと、壁に掛けられたカレンダーを見た限り、此処の日付は私が気絶する前とは年単位で違っていた。
時間も、場所も違う街――そんな所に、やって来てしまった訳だ。

「そうや! これは夢なんよ、夢! だから、こうしてほっぺを抓れば――」

頰を抓る。痛い。すぐに手を離した。
どうやら、私が居るのは夢ではない現実らしい。

「気絶している間に全部終わって……此処は死後の世界?」

我ながら言っていてゾッとする予想を立て、顔が真っ青になった。
しかし、死後の世界にしてはどうも現実的な気がする。
それじゃあ結局、この現状はどう言う事なのか。
ソファに腰掛け、頭を抱えた。
ふと、その時。目の前の机の上に、カードが置かれている事に気が付いた。
近寄って、手に取ってみる。

「んん?」

それは、まるで、雪のように真っ白なカードだった。
スートやナンバーが印刷されていないものの、裏に印刷されている模様やサイズ的にトランプが一番近いだろう。

「なんよこれ?」

先ほどまで、机の上に白紙のトランプは無かったはずだ。他に何も置かれていない机にこんな物が置かれていれば、すぐさま気付くはずだろう。
まず間違いなく、この不思議で奇妙なトランプは、今私が置かれている不可解な現状に関わっているはず――。
謎解きをする名探偵のように顎に手を当てて物思いに耽る私。
その時、右手の甲に、まるで針に刺されたかのような鋭い痛みが走った。

「いったぁ!」

思わずそう叫んで白紙のトランプを落とし、痛みの発生源に目を向ける。
私の右手の甲には、禍々しく赤黒い色をした刺青が浮かんでいた。
最早今日だけで何度目になるか分からない、非常識で非現実的な事態にいよいよ私は混乱しそうになる。
しかし、異常事態はこれだけでは終わらなかった。
私が足元に落としたトランプから、突如眩い光が放たれたのだ。
天井、壁、床、家具――室内の全てが、光によって真っ白に塗りつぶされる。
網膜を焼かんばかりに強い光に、私は思わず目を細めた。
続いて、何処からともなく風が吹き(此処は室内なのに!)、まだ結っていない私の髪はそれに踊らされる。
この現象を見て、私は魔法系の漫画とかでよく見られる召喚シーンを思い出した。
やがて、風と光るトランプは一点に集まり、小さなボールの形を取る。
小球はその場で暫く震えると、ベッドの側に置かれていた私のスマートフォンへと向かい、その画面に飛び込んで行った。
室内に、静寂が戻る。

「……え?」

あまりにもあっけない終わりに私はそう呟いた。
小球が飛び込んだスマートフォンに近づき、手に持つ。
あんな事があったにも関わらず、何処にもおかしい所は見られない。電源は普通に着くし、動作だって正常だ。

「なんやったんやろ?」

首を捻りつつ、スマートフォンを起動したついでに何か現状を解決するヒントは無いものかと、私は情報を探す。
まずは電話帳――誰の名前も登録されていない白紙だった。
通話履歴――同じく白紙だった。
まさか、さっき真っ白なボールが入った所為なのでは……?
不安に顔を暗くする私。
するとその時、見計らったかのようなタイミングで、スマートフォンが振動した。


117 : 名無しさん :2016/11/25(金) 00:17:47 WoSKh.8g0
落としそうになるも、何とか手に収め、画面を見る。
そこには、メッセージボックスが映っており、英語で何やら書かれていた。

――英語!?

面食らったが、しかし落ち着いて見てみると、スラスラと読めた。
それはもう、日本語を読むかのように。
私ってそんなに英語力あったかなぁ、と思いつつ読み進める。メッセージボックスには『通知が来ています』という内容のメッセージが書かれている事が分かった。
何やら不審だが、折角与えられた情報をここで無視するわけにはいかない。
暫く悩んだ後、私はメッセージボックスをタップした。
すると、画面は切り変わり、『OZ』というアプリケーションが起動した。

――OZ?

見覚えもなければ聞き覚えもなく、そもそもダウンロードした覚えもないアプリケーションの名前に、私は首を傾げる。
開いてみると、それはSNSだった。
しかし、その実態は私が知っている緑のアレやら青い鳥のソレやらとは違い、何だかSF映画で見るようなSNSである。
画面内では多種多様なアバターが飛び交い、ポリゴンで出来た建物が何軒も立っていた。
所謂電脳空間、という物だろう。
うわあ――と、思わず感嘆の息を漏らす。
それ程までに、画面内に広がる風景は近未来的だった。
しかし、感動ばかりしてはいられない。
来たという通知を確かめるべく、私は表示された通知欄を開いた――が、予想に反して、それは至極どうでもいい内容の広告が来たという物だった。

「まさかこれに、町へ戻る暗号が隠されている……とか?」

そう考え、私はスマートフォンに穴が開くほどの眼力で、広告を隅から隅まで読み込む。
メッセージボックス同様に、それも英語で書かれていたが、スラスラと読む事が出来た。だが、それらしい暗号は見られない。広告は単なる広告だった。
はあ、と落胆する。

――そういえば、いつのまにこんなアプリをダウンロードしてたんやろう?

今更ながらに、そのような疑問を抱く。
通知欄を閉じると、そこには私のアバターが映っていた。
半月のようなギザ歯が特徴な、どう見ても可愛くないアバターである。
いくらダウンロードした覚えがないとは言え、私のアバターがなんでこんなに不細工なんだろうか。
どうでもいい事にテンションが更に下がりながら、私はアプリケーションを閉じた。
いっその事このまま『OZ』をアンインストールしようかと思ったが、すんでの所で思い止まる。
いくらダウンロードした覚えがなく、不気味だとは言え、曲がりなりにもSNSだ。きっと、元の場所へ戻る役に立つ時が来るだろう。
結局、私は『OZ』をアンインストールする事なくスマートフォンの電源を切り、ベッドに倒れこんだ。
横になりつつ、目覚めてから起きた出来事を整理する。

・知らない場所に居た。
・白いトランプが現れた。
・右手に刺青が浮かんだ。
・光と風と出したトランプが、ボールになってスマートフォンに飛び込んだ。
・英語が出来るようになった。
・スマートフォンに知らないアプリケーションがダウンロードされていた。

どれ一つ理解できない。
むしろ、整理した事で分かりにくさが増している気がする。
不思議の国のアリスも裸足で逃げ出すほどの不思議ぶりだ。
あまりの分からなさに、このまま枕に顔を埋め、おいおいと泣きたい気分だったが、そうも行かない。
私は意を決して、立ち上がり、服を着替える事にした。
まずは、現地調査(フィールドワーク)だ。
この場所が何処なのか、そもそも日本なのか――英語の件から察するに、その可能性は低い――を知りたい。
クローゼットの中にあった服に袖を通し、髪をいつも通りの結い方で結び、スマートフォンとその他諸々をバッグに詰めて玄関に向かい、靴を履く。
どうか、此処が死後の世界じゃありませんように――そのように祈りながら、私はドアノブを捻った。


118 : 名無しさん :2016/11/25(金) 00:18:31 WoSKh.8g0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
ラブマシーン@サマーウォーズ

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力E〜A+++ 耐久E〜A+++ 敏捷E〜A+++ 魔力E 幸運B 宝具EX

【クラススキル】
狂化:EX
バーサーカーは狂ってなどいない。
しかし、バーサーカーにプログラミングされた知識欲は、人間から見れば狂気としか言いようがない。
電脳存在であるバーサーカーと意思疎通をするのは、何らかの情報を餌として提示した交渉以外では不可能である。

【保有スキル】
陣地侵略:E〜A++++
ハッキングAIとしての侵略能力。
成長に応じて、このスキルのランクは上がって行く。

単独行動:A+
マスターによる魔力供給が途絶えても現界が可能。
作成者の手元を離れて好き勝手暴れ周り、世界を混乱に叩き落としたエピソードによって獲得したスキル。
しかし、実体化する際はマスターによる魔力のバックアップが必要となる。

【宝具】
『人工知能・愛慾機関(ラブマシーン)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

バーサーカーの存在そのもの。
かつてネットワーク上の仮想世界『OZ』で猛威を奮ったバーサーカーと、此度の聖杯戦争の舞台にも『OZ』が存在した事が噛み合った結果生まれた宝具。
『OZ』の中を自由に移動するバーサーカーはアバターたちを吸収し、彼らから情報や能力を得れば得るほど成長し、強くなっていく。
成長に応じて、肉体ステータスと陣地侵略スキルのランクは上昇する。
『OZ』に居るバーサーカーを物理攻撃や魔術攻撃を持って倒す事は不可能。
だが、プログラミング技術に著しく秀でた者であれば、神秘を持たない一般人であってもバーサーカーを打倒できる可能性は十分にある。
また、聖杯戦争の舞台がムーンセンの『電脳空間』内に再現された偽りのスノーフィールドという事もあり、スノーフィールドのエリア内に実体を持って出現する事が出来るが、その場合多大な量の魔力を消費する事になり、その上サーヴァントからの物理・魔術的攻撃でダメージを受ける事になるというデメリットが生じる。

『終結は天空より降り落ちる(ジ・エンド・オブ・サマーウォーズ)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1エリア 最大捕捉:999

かつてバーサーカーが騒動を起こし、消去された際に行った最後の悪足掻き――気象衛星『あらわし』の軌道操作の逸話が宝具に昇華されたもの。
サーヴァントとなった今では、消滅した後に発動する。
バーサーカーを消滅に追い込んだ人物が居る場所に向けて、再現された気象衛星『あらわし』を投下する。
その落下の威力は、1エリア丸々に剣呑な被害を及ぼすほど。

【背景】
陣内侘助によって開発された、知識欲を持つAI。
独特のアルゴリズムによるループを続けて成長する。
現在はマスターである宮水三葉のアカウントを乗っ取っている。

【聖杯にかける願い】
この世全ての知識。


119 : 名無しさん :2016/11/25(金) 00:19:03 WoSKh.8g0
【マスター】
宮水三葉@君の名は。

【能力・技能】
特になし。

【人物背景】
田舎に住む女子高生。家は神社をやっており、そこの巫女を務めている。
田舎の不便な生活や実家の神社、父親との不和に嫌気がさしており、東京での華やかな生活に憧れている。
そんな彼女がある日目を覚ますと、東京に住む男子高校生・立花瀧になっていた。一方、瀧は三葉の身体に。
変な夢だと思いながら一日を過ごした彼女たちであるが、周囲の反応やその後も度々生じた入れ替わりによって、現実にいる誰かと入れ替わっているのだと気づく。
その後も続いた入れ替わり生活を、スマートフォンのメモを通してのやりとりで何とかこなしていた彼らは、次第にだんだん打ち解けていった。
しかし――

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を認識していないので不明(おそらくは、町を救う事を願うだろう)


120 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 00:19:58 WoSKh.8g0
投下終了です


121 : ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:24:51 m5rvIhZc0
投下します


122 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:26:17 m5rvIhZc0
あなたがかわりに死ぬはずだったのよ。
これはそういうお話。
運命は一人、死人が欲しいの。
―――あなたは、大切な人を運命に差し出したの。

● ●










頭の中で、彼が泣く。
彼が泣くと、ぼくも悲しい。
だから。
だから、殺した。
殺して。殺して。殺して。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して―――そして、ぼくが死んだ。
おやすみ、と。
少し休もう、と。
頭の中で彼が告げる。
嫌だ。
だって、ぼくが休めば、貴方はまた泣くじゃないか。
千切れていく四肢を奮い立たせ、完全に切り落とされた足は新たに生やした『何か』で代用する。

"何も出来ないのは―――もう、嫌なんだ"

これは、誰が言った言葉だろうか。
わからない。
わからない。
わからない。
薄れていく自我が、ぼくを塗り潰す。
待ってて。
待ってて。
待ってて―――待っててね、兄さん。
寂しくないよ。
もう守られるだけのぼくじゃない。
ぼくが、兄さんを寂しくないようにしてあげる。
もう、一人にしない。
バキバキ、と。
背から這って出た肉は、ぼくを異形に変える。

「ぼくが、みんな殺してあげるからねえ」

それが、最期だった。
ひらりひらり、と。
眼球に映った白いコートが舞う。
あれは、誰だっただろうか。
もう思い出せない。
誰かに、似ている気がする。

「―――SSSレート、『ジェイル』」

左に黒の剣。
右に雷の砲。
男は無差別で、無感情に。
平等に死を与える存在として、其処にいた。

「駆逐する」

白い、死神が、立っていた。
ぷすり、と。
脳が掻き混ぜられる音が、した。
そうして。
ぼくは、死んだ。


● ●


123 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:27:35 m5rvIhZc0
「囲めッ!逃がすな!」

発砲。薬莢が飛ぶ、音がする。
軽く十を越える銃口が、一つの人影を狙う。
飛び出す銃弾は速く。視認できる速度を越え迫る。
一斉に放たれたソレは、もはや『点』ではなく『面』の暴力として空間を襲う。
しかし。
それらは、一度として標的を捉えることはない。
発砲された時には既に、銃口の先に姿はない。
害虫のように素早くビルの壁面を走り、鬼のように破壊を振り撒く。

「あた あた あた 当たらないよ」

歌うように。快楽に酔うように。
銃弾の雨の中、ビルの隙間を蹴り上げ縦横無尽に駆け巡る。

「化物が……!」

青い制服の男たち。
『警察官』と呼ばれる役職の男たちが、悪態を吐く。
彼等も、彼等なりの意思がある。
矮小な一人の存在だが、鋼のような精神で町を守ろうと警官を目指した男たちだ。
日々鍛練を欠かさず、鋼鉄のような肉体も有している。
だが。
だが、無意味。
人は―――人外には、勝てない。

「次の、攻撃に備えて」

『悪魔』が、そう呟く。
黄色と黒のマスク。
顔全体を覆うソレは、悪魔を連想させた。
そして。
突如、『悪魔』の背から、長い―――触手が、生える。
筋肉のようにしなやかで。
鋼のように、硬い。

「ッ!?総員、伏せ―――ッ!」

警察官たちの中で、一番の年長者が声を挙げる。
だが、遅い。
振るわれた触手は一瞬で二十は越えるほど存在していた男たちの、半数の首を跳ねる。
「ごげ」「が」「ぐぎ」、と。
不様な断末魔と血飛沫をあげながら、数多もの首が跳んだ。

「…くそッ!化物が、なんなんだアイツは……!」

もう一度。
その頭蓋を撃ち抜かんと、男たちが銃口を向ける。
だが。

「遅い、よォ」

『悪魔』の肩から、散弾がバラ撒かれる。
一発一発が人の腕ほどもあるその『羽』に、多くの男たちが刈り取られていく。
正に。
その姿は、鬼。
鬼退治と張り切る戦士たちを無慈悲に刈り取る、鬼の具現そのものだった。
そうして。
数分間の攻防の後―――死屍累々の、丘が出来上がった。


124 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:28:29 m5rvIhZc0
「……」

周囲に、人の影はない。
否。あると言えばあるが、生者の気配は既にない。
一人の『悪魔』を除いて―――彼を囲む人影は、全て死に絶えていた。
かぱり、と。
『悪魔』は、そのマスクを外す。
現れたのは、金と黒の髪をした、まだ幼さを残す青年。
常人と違う箇所があれば、それは。
―――赫く染まった、その人外の瞳か。
青年は、のそりのそりと身体を動かし、男たちの死体に這い寄る。
そして。
―――がぶりと、喰らいついた。

「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「兄さん―――僕、一人で生きていけるよ」

そうして。
口内を満たす芳醇な血液と、噛み応えのある筋肉。
突っ張った皮はまるで、人の食べ物で例えるならば焼きたてのトーストのようで。
大きな眼球は、口の中で溶けてなくなる生クリームようだ。
コリコリと音を立てるのは視神経だろうか。
生憎と人の構造には詳しくないため、何なのかは食べ終わってもわからなかった。

「大丈夫だよ、兄さん」
「僕が、僕が僕が僕が僕が」
「寂しくないように、してあげる」
「全員殺して、殺して、兄さんのところに連れてってあげるからねえ……」

譫言のように、羅列される言葉。
既に、彼は狂っていた。
邪魔物の命を奪うことの利便性を知り。
大切な人を誰一人守れなかった彼は、遂に、狂った。
……いや、これが『喰種』―――人喰いの生物としての、正しい在り方なのかもしれない。
兄を失った哀しみ。
帰る場所を失った絶望。
心の穴を埋めるために、彼は殺戮を選んだ。
力に溺れることを、選んだ。

「ああ、でも」
「みんな殺して、殺して殺して、それでも足りなかったらどうしよう」

幽鬼のように。
ふらふらとしながら、呟く。
ああ、それならば。
また新しく殺せばいっか―――と。
ジェイル。『檻』の名を冠する喰種―――リオは、そう結論付けた。
見当違いな、行く先には破滅しかない一本道。
狂った彼は、全てを失った彼は、その道を突き進む。

「―――全く、酔狂よな。
鬼に非ず、しかして人にも非ず。
人しか喰えぬ人外とは、何とも狂うた存在よ。
まだ鬼の吾らの方が分別がついているぞ?」

そして。
背後から、声がした。


125 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:29:17 m5rvIhZc0
ゆらり。
背骨を抜かれたかのような、軸を感じさせない動きで、ジェイルは振り返る。
其所にいたのは、赫い四肢を持つ少女。
和の装いを纏った、角を持つ炎熱の少女。
身長は、150より少し下と言ったところか。
どう見ても、人間ではない。
ぴりりと肌を刺激する威圧感。
『人ならざる者』が放つ、驚異。

「……だれ?」
「誰、とはまた可笑しなことを。汝が召喚したのであろう?
確かに聞こえたぞ。鬼を呼ぶ声が」

少女はくるりくるりと小さな身に不釣り合いなほどの大剣を掌で回し、告げる。
その口許は、愉快愉快と歪んでいた。


「『殺し尽くせ』。『この世の全ての人を喰らい尽くせ』とな。
なんという暴食。なんという狂気。

人ならざる者の狂気が従者を呼んだのだ、ならば鬼が呼ばれるのも必然であろう?」

ジェイルは、はてと頭を傾けた。
右手の甲に刻まれた、檻のような赤い痣。
いつの間にか、懐にしまわれている白紙。
―――令呪と、トランプ。
前者については何やら特別な意味を持つようだが、理解する気もない。
後者については―――そも、人の文化に触れることの少ない喰種であったジェイルは『トランプ』という概念すら知らない。
ただ。
目の前のこの少女が、己に敵意を持ってないことだけは、理解できた。

「吾のことはバーサーカーと呼べ。
真名は……まだよかろう。人の言語すら失い始めている汝に語っても仕方なかろうて」

ほれ、と。
警察車両、横転したパトカーに鎮座していた少女は近くの死体の頭を切り落としかぶりつく。

「吾はムーンセルがどうなぞ、聖杯がどうなぞ興味がない。
それが至高の盃ならば鬼のモノであろう。ただ、それだけよ。
…だが、汝は違う。何か『望み』があるのだろう?
言ってみよ」

バーサーカーと言ったか。
目の前の少女が語る。
望み。
何としても叶えたい、願い。
……自分にあるだろうか。
ジェイルは、少し悩むような仕草を見せ。

「……殺したい」

そう、呟いた。


126 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:30:13 m5rvIhZc0
「僕のね、兄さんはね、キジマって捜査官に殺されたんだ」
「耳も鼻も、切り落とされて殺されて、武器に―――クインケに加工された」
「今でも僕の頭の中で兄さんがいるんだ」
「だから、殺さないと」
「一人で生きていける、人を殺して食事も捕れるし」
「こんなにも強くなった」
「この、兄さんがいなくなった心の穴を埋めるために。兄さんが寂しくないように」
「兄さんが、何も出来なかった僕を心配しないように」
「みんな、みんな」
「みんみみみみんなみんみんみんんんんんみんな」
「僕が、殺さなくちゃ」

早口言葉のように羅列される言語。
何も出来ない自分を心配しながら死んでいった兄を、安心させる。
こんなにも強くなったと。
こんなにも、殺せるようになったと。
殺戮が、楽しいと―――ジェイルは、そう語る。

「ふむ」

その言葉を受けて。
バーサーカーは、ニヤリと笑う。

「それは、良いな」
「良かろう。汝が望むのなら、吾も全てを殺し尽くそうぞ」
「人っこ一人から草の根に至るまで」
「あらゆる生命を凌辱し、喰ろうてやろう」
「死体を積み上げ、このムーンセルを血の海で満たそう」
「彼の英霊の座まで。酒呑にまで轟く殺戮を繰り広げよう」
「良し。貴様ならば吾の名を教えても良いかもしれん」

ジェイルの言葉に、バーサーカーの殺意が煌めく。
かつて日本を襲い、京の町を恐怖に陥れたその口が。
あらゆる生命を焼き、喰らい尽くした焔が。
その、真名を語る。

「吾は―――茨木童子。かつて京を陥れた、大江山の鬼の首魁よ。
その愚かさ―――実に吾の好みよ」

炎熱が、華開く。
巨大な焔が背後で燃え盛り、鬼の威容を現す。
此所に。
檻の喰種と鬼が、殺戮を誓った。
目的は殺戮。手段も殺戮。
黒く澱んだ精神は、平和を壊し恐怖に落とし込む。
ああ、どうか。
彼等を止める、仁義の存在が在ることを、祈ろう。


127 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:31:06 m5rvIhZc0
【出展】Fate/Grand order
【CLASS】バーサーカー
【真名】茨木童子
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具C


【クラス別スキル】
狂化:B
 理性を失う代わりに能力値が上昇する。
しかし鬼故か、彼女は理性を保っている。
―――鬼のソレが、人と同じ理性かどうかはさておいて。

【保有スキル】
鬼種の魔:A
 鬼の異能および魔性を表すスキル。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出、等との混合スキル。
魔力放出の形態は「熱」にまつわる例が多い。
茨木童子の場合は「炎」。

仕切り直し:A
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。

精神汚染:EX
『この世全ての悪』に由来する、膨大な復讐の念により精神を汚染されているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
 ただし、精神汚染がされていない他者との意思疎通に支障を来たすようになる。
 歪曲・二重召喚の影響により、本来この英霊が持つ勇猛スキルが変化した物。
 このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは悪辣な手段を率先して行うようになる。

変化:A
 文字通り「変身」する。

【宝具】

『羅生門大怨起』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

姦計にて断たれ、戻りし右腕が怪異と成ったもの。
巨大な焔の右腕が、迫り、そのまま相手を焼き握り潰す。
見た目はまさにロケットパンチ。

【人物背景】

平安時代、京に現れて悪逆を尽くした鬼の一体。
大江山に棲まう酒呑童子の部下であるとされ、
源頼光と四天王による「大江山の鬼退治」の
際には四天王・渡辺綱と刃を交えたという。
羅生門の逸話では「美しき女」の姿で現れる。
その逸話及び痕跡から「反英雄」に分類される。
大江山の鬼として唯一生き残り、京の羅生門(もしくは一条房橋)にて渡辺綱へ襲い掛かるも腕を切り落とされてしまう。
腕は戦利品として一時こそ奪われるが、後に茨木はこれを取り戻し、いずこかへと姿を消す。
実際のところ―酒呑童子の部下ではなく、むしろ「大江山の鬼の首魁」として茨木童子が存在していたと思われる。
(強大な存在なれども享楽的に過ぎる酒呑は鬼の群れを自らが統率する気は一切なかった)
茨木童子こそが大江山に荘厳の御殿を建て、酒呑童子を義兄弟として愛おしみ、一騎当千の鬼の集団を統率して平安京で暴虐を振るい、人々を恐怖に陥れていた「荒ぶる鬼」であった。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
聖杯がこの世の宝であるのなら、鬼である吾のものだろうて。
マスターの殺戮に付き添う。


128 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:31:59 m5rvIhZc0
【出展】
 東京喰種JAIL

【マスター】
 ジェイル(リオ)

【参戦方法】
 わからない。わからない。
狂うた頭ではそれを理解する頭すら有らず。
そして、理解するつもりもない。

【人物背景】
「僕達の運命を狂わせたのは、たしかにジェイルだった」

穏やかかつ臆病な性格の少年で、縞模様の服を好んで着用する。
「ジェイル事件」 の容疑者としてCCGの喰種捜査官・キジマ式に兄と共に捕獲され、コクリアに収監されていた。
アオギリの樹の襲撃に乗じて脱走するも、喰種捜査官の追撃を喰らって負傷し、更にキジマに遭遇して絶体絶命、と思いきや四方に助けられ、九死に一生を得る。
芳村達に事情を話した上で、表向きはあんていくの新入店員として働く(時系列的にロマのポジションに相当する)一方、コクリアに囚われた兄を助けるためにキジマが探している凶悪な喰種「ジェイル」を追跡する。
しかし。

「僕達の運命を狂わせたのは、確かにジェイルだった。
―――僕自身、だった。」

自分自身。
それが、ジェイルの正体だった。
潜在的に非常に強力な赫子を持つ喰種である。
かつて兄と共にキジマら喰種捜査官の追跡を受けた際、駆逐されそうになった兄を助けようとして赫子を発現し、本能のままに殺戮の限りを尽くした。自身が引き起こした凶行の記憶こそ失っていたものの、その一部始終を目撃した兄は凶悪な喰種として認識されるかもしれない弟の身を案じ、彼の力を使わせないように守っていたのだった。
キジマに告げられた、残酷な真実。
追い討ちをかけるように彼は所持していたクインケを投げ捨て、新たなクインケを展開する。
それは兄の赫包から作り出されたクインケ [ロッテンフォロウ] だった。

兄はとうの昔に殺されていた。

昂ぶる怒りと悲しみのままに、暴走する赫子。
両眼の縁から広がる格子状の痣。
これが彼の呪い。彼が背負った悲劇。
死闘の末にキジマを殺害するも、彼が背負った悲劇はあまりにも大きかった。
再会したカネキに、リオは懺悔するかのように告げる。

檻の喰種・ジェイルは自分自身だった。
自分がジェイルとして死んでいれば、兄は死ななかった。
自分のせいで、兄は死んだ。
自分はずっと、檻の中でもがいていただけだった。
自嘲するリオに、カネキは静かに涙を流す。
自分の為に泣いてくれる人がいたことだけが、リオにとっての僅かな慰めだった。
そして訪れた20区の梟殲滅戦。
喫茶あんていくは瓦解し、頼りにしていた人物は死に、兄の面影を漂わせていたカネキも助けることができず、カネキも死亡する。
そして、彼は狂った。
障害を力で排除する快感。その利便性。
狂ってしまった彼は殺戮を繰り返し、その生涯で喰種捜査官100人、民間人1000人の捕食を行う。
その驚異の怒りと凶暴性から、隻眼の梟に次ぐ二番目のSSSレート喰種として認定される。
共喰いも行っていたらしく、最期は半赫者と化していたよう。
最期には、有馬貴将特等捜査官に四肢を切断され、頭部を破壊されて駆逐された。
その後より参戦。


129 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:33:13 m5rvIhZc0
【weapon】
・四種の赫子
喰種の補食器官であり、殺戮の臓器。
羽赫・甲赫・鱗赫・尾赫の四種があり、ジェイルは喰種の中でも異質の四種赫子を持っている。
そして半赫者でもあるため、本気を出せば赫子が全身の半分を包むように展開し、莫大な戦闘能力を発揮できる。

・羽赫
肩付近から噴出する。
遠距離攻撃を可能とする射撃と赫子の噴出による高速戦闘が可能だが、その反面消耗も速い。
檻のように身体の周りに展開する形になっており、防御も可能。

・甲赫
肩甲骨の辺りから発現する。
重く、硬い赫子。
右腕を覆うように顕現し、全てを切り裂く刀と化す。
しかし硬く高い防御力を持つ反面、重く動きが鈍くなる。

・鱗赫
腰から発現する。
複数の触手のようにうねり、長い。
一撃の威力が凄まじく、再生力も高い。
だがその反面、脆い。

・尾赫
尾てい骨辺りから発現。
太い尻尾のようにうねり、万能。
だが万能が故に決定力に欠ける。

・悪魔のマスク
金と黒のストライプの仮面。
人として生きる喰種が己の素性を隠して戦闘するためのアイテム。

【能力・技能】
SSSレート喰種としての高い戦闘能力。
人間の数倍〜何十倍もの力を持っており、弾丸を視認して避けることも。
弾丸すら貫けない硬い皮膚を持っている。

【マスターとしての願い】
 全員殺す。


【方針】
 みんな殺さなくちゃあ―――


130 : 貴方は次々死んでいく ◆DpgFZhamPE :2016/11/25(金) 00:35:31 m5rvIhZc0
投下終了です。
そして茨木童子のステータスですが、精神汚染を消し忘れていました。
正しくはこちらになります↓

【出展】Fate/Grand order
【CLASS】バーサーカー
【真名】茨木童子
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具C


【クラス別スキル】
狂化:B
 理性を失う代わりに能力値が上昇する。
しかし鬼故か、彼女は理性を保っている。
―――鬼のソレが、人と同じ理性かどうかはさておいて。

【保有スキル】
鬼種の魔:A
 鬼の異能および魔性を表すスキル。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出、等との混合スキル。
魔力放出の形態は「熱」にまつわる例が多い。
茨木童子の場合は「炎」。

仕切り直し:A
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。

変化:A
 文字通り「変身」する。

【宝具】

『羅生門大怨起』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

姦計にて断たれ、戻りし右腕が怪異と成ったもの。
巨大な焔の右腕が、迫り、そのまま相手を焼き握り潰す。
見た目はまさにロケットパンチ。

【人物背景】

平安時代、京に現れて悪逆を尽くした鬼の一体。
大江山に棲まう酒呑童子の部下であるとされ、
源頼光と四天王による「大江山の鬼退治」の
際には四天王・渡辺綱と刃を交えたという。
羅生門の逸話では「美しき女」の姿で現れる。
その逸話及び痕跡から「反英雄」に分類される。
大江山の鬼として唯一生き残り、京の羅生門(もしくは一条房橋)にて渡辺綱へ襲い掛かるも腕を切り落とされてしまう。
腕は戦利品として一時こそ奪われるが、後に茨木はこれを取り戻し、いずこかへと姿を消す。
実際のところ―酒呑童子の部下ではなく、むしろ「大江山の鬼の首魁」として茨木童子が存在していたと思われる。
(強大な存在なれども享楽的に過ぎる酒呑は鬼の群れを自らが統率する気は一切なかった)
茨木童子こそが大江山に荘厳の御殿を建て、酒呑童子を義兄弟として愛おしみ、一騎当千の鬼の集団を統率して平安京で暴虐を振るい、人々を恐怖に陥れていた「荒ぶる鬼」であった。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
聖杯がこの世の宝であるのなら、鬼である吾のものだろうて。
マスターの殺戮に付き添う。


131 : 名無しさん :2016/11/25(金) 04:38:59 Gp5kFZ2E0
投下します


132 : あなたが誰かを殺すとき ◆iwVqxDO6jU :2016/11/25(金) 04:41:15 Gp5kFZ2E0

 レイチェル・ガードナーは平凡な日常を過ごしていた。
 母と父、そして自分の三人家族。
 夫婦仲の良い両親と、さして問題も起こさない平凡なティーンエイジャーの少女。
 そこにはスノーフィールドの一般的な家庭が存在していた。
 そう、存在“していたのだ“。 

 何時からだろうか。
 リビングで仲良く談笑する父と母に違和感を持ったのは。
 何時からだろうか。
 普通に笑う自分に違和感を持ったのは。
 何時からだろうか。
 ここは自分の居場所じゃないと感じたのは。
 望んでいたのは、死ではなかったのか。

 決定的な亀裂。日常への拒絶。
 その日、その夜、レイチェルの手元に白いトランプが出現した。
 それはムーンセルの聖杯戦争への参加券であり、招待状であり、サーヴァントを呼ぶための呼符でもある。
 滞りなくレイチェルの従者は召喚される。
 そして呼び出されたものが真っ先に行ったのはーー殺人であった。


 薄暗いリビングは鮮血で染まっていた。濃厚な血の臭いと生臭さに不快感を感じる。
もっとも、その表情は変わらず無表情だが。

 そこには変わり果てた両親の姿があった。
 母は腹を切り裂かれ、引き抜かれた腸とその内容物が床一面に散らばっていた。 
 父は首を切り裂かれ、両目と鼻を削ぎおとされた状態でソファーに座らされていた。

 その惨状を見ても、レイチェルの顔は変わらず無表情だった。

 その視線は、まっすぐと部屋の中心に立ち尽くす小柄な人物に向いている。
 血濡れのナイフを持ち、着ている厚手のパーカーは返り血で紅く染まっている。
明らかにその人物こそがこの惨状の実行犯、もとい殺人者であることは疑いようもない。

「……だれ?」

 レイチェルの問いかけに彼は答えず、ただ、撫でるような手つきで頭のフードをスルリと取ると、自身の顔を晒した。

「……っ」

 レイチェルは息を飲んだ。
 薄暗い部屋の中、ぼんやりと光に照らされたその少年の顔は、もはや人間のものとは思えぬものであった。

「貴方が……わたしの、サーヴァント?」

 猛禽のようにするどい眼光が、レイチェルを射ぬく。
 その目はよく知っている。
 今の今まで忘れていた……ザックが、誰かを殺そうとする時の目と一緒だ。
 少年は血に濡れたナイフを隠そうともせず、「そうだよ」と答えた。


「なんで、ふたりを殺したの?」

「殺したかったから」

「……そう」

 冷たいな。と思う。
 仮にも両親が殺されたのに、レイチェルの心中には奇妙なほど、感情が沸いてこない。  
 まるで、テレビ画面のフィクションを眺めているような気分だ。
 それは彼らがNPC、だからだろうか。

「なんでそんなに顔が白いの?」

 そうーー白だ。
 少年の顔の色は白で覆われていた。無論その色は、雪のように白く美しい肌とは到底言い難いものであった。
 その人工的で、渇ききった白色はまるで、例えるならばペンキのようだった。
 その塗料を何度も塗りたくられたかのように厚ぼったい感触の肌は、一切の光を通す事無く弾き返し、ぼやりと暗闇の中で光っている。


133 : あなたが誰かを殺すとき ◆iwVqxDO6jU :2016/11/25(金) 04:42:23 Gp5kFZ2E0

「そう、白いんだ。僕、綺麗でしょ?」

 奇妙なのは確かだが、綺麗かどうかはよくわからない。 ただ、どこか彼は嬉しそうだった。
 その狂った精神が、顔を誉められたと受け取ったのかもしれない。

「なんで瞼がないの?」
  
 レイチェルはそっと少年の目を覗いた。真っ黒い輪が、目の周りをぐるりと囲んでいる。
 まるで彼の目はもう、二度と閉ざされる事は無いかのように…。

「この素晴らしい顔をずっと見るためには、こうするしか無かったんだ。
だってずっと自分の顔を見ていたいのに、瞼が邪魔なんだもん。
でも焼いてさえしまえば、もう永遠に閉じる事は無いよね。
 これならずっと自分の顔を見る事ができるんだよ」
  
 なるほど、瞼を閉じたくなくなるほど、彼は自分の顔が好きらしい。
 納得はできなかったが、理解はできた。

「なんで口が裂けてるの?」

 レイチェルの指摘する通り、彼の滴る鮮血のように真っ赤な唇は、笑顔の曲線を描いている。
 だがそれは”描かれた”というよりも、”裂かれた”といった方が正しい。
 そう、文字取り彼の唇は頬まで裂かれていたのだ。ニンマリと、笑みの形に。
 その笑みから露出する、ずらりと並んだ黄ばんだ歯と、熟れた歯肉は、意外にもすらすらと言葉を紡ぐ。

「ずっと笑顔を保っているなんて、不可能だろう? だから、こうやったらずーっと笑ってられるんじゃないかって、思ったんだよ」

 その時点で、ほぼレイチェルのなかで少年のイメージが固まった。
 彼女は臆することもなく、ぽつり、と呟いた。

「ーーあなた、変わってるわ」

 その見も蓋もない感想は、逆にアサシンにとっては愉快だったらしい。
 
「ハハハハハハ。ハハハハハハハ! ハーーーーーッ。 あぁーー君も、とっても変わってるよ。とっても……」

 彼はひとしきり笑った後、吐き出すようにしてアサシンは呼吸を整えた。 そしてレイチェルを一瞥すると、ふいに姿を消した。霊体化したのだ。
 その場にはレイチェルと、無惨な二組の死体だけが残っていた。



 ある一家がひとり娘を残して惨殺された夜。
 その日から、スノーフィールドである噂が流れるようになった。

 曰く、この街には殺人鬼がいる。

 曰く、その顔は人間とは思えないほど奇妙で、一度見たら忘れられない。

 曰く、その殺人鬼は犠牲者の枕元でこう囁くという


ーー『Go to sleep』と


134 : あなたが誰かを殺すとき ◆iwVqxDO6jU :2016/11/25(金) 04:46:22 Gp5kFZ2E0


【クラス】アサシン
【真名】ジェフ・ザ・キラー@Creepypasta
【マスター】レイチェル・ガードナー
【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具C 
【属性】混沌・悪
【クラススキル】

気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】

微睡みの殺人鬼:A 
 殺人鬼という特性上、被害者に対して常に先手を取れる。
 ただし、無条件で先手を取れるのは夜のみ。昼の場合は幸運判定が必要

精神汚染:A
 混沌・錯乱した精神状態を示す。
 精神干渉系の魔術を高確率で遮断するが、同じく『精神汚染』を所持していない人物とは意思疏通が成立しない

狂気の異相:C
 硬く真っ白い肌、裂けた口に真っ赤な唇、焦げた黒髪と回りが黒くまぶたの無い目。
 精神耐性の低い相手がバーサーカーと対峙すると、怯み、恐怖を抱く。
 精神防御で抵抗可能。
 
【宝具】

『寝れよ眠れ、永遠に(Go to sleep)』
ランクC 種別:対人宝具 レンジ:1〜2m 最大補足:1
 アサシンの犠牲者が最後に聞く台詞。
 一度発動したが最後、レンジ内の人物はアサシンによって刺殺される。
 判定に成功した場合、この宝具によるダメージはどのような部位でも即死攻撃扱いとなる。
 回避にはAランク以上の幸運か直感などのスキルが必要。

【weapon】
無銘のナイフ

【人物背景】
 Creepypastaという海外都市伝説や怖い物語の一つ「Jeff the killer」の主人公である少年殺人鬼。

 ジェフとその家族が引っ越して来た先で、弟のリウと不良に絡まれてしまう。
 一応ジェフは撃退したものの暴行罪によりジェフが捕まりそうになってたところをリウがジェフの代わりに捕まり、そのショックからジェフは落ち込んでしまう。
 弟が逮捕されたショックから立ち直れないなか、親にビリーという向かいに住んでる子の誕生日パーティーに連れていかれた。
 しかしそこに不良が乗り込んできて喧嘩になるが、漂白剤を被り最後に火を付けられ、火だるまになったまま意識を失う。
 その後ジェフは病院で意識を取り戻し、釈放されたリウを含む家族の前でジェフは包帯をはずしたが、その顔は白くなり、茶色い髪は黒く焼け焦げ、唇は深い紅色に変色していた。
 
 ジェフは鏡で自分の顔を見て一言「完璧だ!」と叫んだ。

 ジェフの精神は不良たちと喧嘩してた時からおかしくなっており、家族はまだジェフが完全に狂っている事に気づいていなかった。
  退院した日の夜、物音に気づいた母親が見たものは、洗面所で瞼を焼き、ナイフで口を裂いているジェフの姿だった。   
 ジェフは銃を取ろうとした親を殺したあと、リウの部屋に行き、彼に馬乗りになってこう言った。

「Just go to sleep」 と。
 
 原作は英文だが元となったストーリーはこんな感じ。

【サーヴァントとしての願い】
 無い。強いて言えば、殺したいから召喚に応じた。


【マスター】
レイチェル・ガードナー@殺戮の天使

【マスターとしての願い】
『本当の』お父さんとお母さんに会いたい。

【weapon】
『裁縫道具』
縫う為の道具を一通り所持している

【能力・技能】
なし

【人物背景】
 記憶をなくした少女。その過去は不明。ただ、病院でカウンセリングを受けていたような気がするし、人が殺される場面を目撃したような気もする。


135 : あなたが誰かを殺すとき ◆iwVqxDO6jU :2016/11/25(金) 04:47:42 Gp5kFZ2E0
投下終了です


136 : ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:04:09 CdpXqbNQ0
投下させていただきます。


137 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:04:52 CdpXqbNQ0

「何、故――」

 豆を炒る音を何倍か暴力的にしたような、気味が悪いほど軽い破裂音が三秒間ほど連続した。
 大理石の床に俯せに倒れ伏し、ヒューヒューと荒い息を漏らしながら悶える男を、一人の老人が見下ろしている。
 その傍らには赤いフードを纏った、中東系のそれを彷彿とさせる浅黒い肌を衣の隙間から覗かせる、冷たい雰囲気を漂わした男が立っていた。
 彼の右腕に握られている武器はキャレコM950――英霊が使う武器としては、相対的に貧弱すぎるとの評価を下さざるを得ないであろうそれ。しかしサーヴァントの武装として具現しているかの近代兵器は、今やサーヴァントですら容易に傷付けることの出来る神秘性を内包している。
 言うまでもなく、そんな代物で人間が撃たれたらどうなるかは明白だ。
 そもそもわざわざ神秘など宿さずとも、人の一人二人は数秒で鏖殺できる代物なのだから。

「……何故、……です。貴方は、私と、共に……聖杯戦争を打ち砕くと、言ってくれたでは――ありませんかッ」
「ああ、言ったとも」
「ならば……ならば、何故ッ! 何故、その貴方が私を撃つのです……!! あの日聖杯に否を唱えた貴方の瞳は、嘘を吐いているそれではなかったのに……ッ」

 弾丸の雨を浴びたことにより胸に幾つもの鉛弾が残留し、生き地獄も同然の苦痛であろうに、男は尚も対話を求める。
 男は――正義感の強い、立派な青年だった。
 時に理不尽とも言える戦いを強要する聖杯戦争を否定し、それを打ち砕こうと輝く瞳で老人に持ち掛けた。
 老人はそれに笑顔で肯き、彼らは共に聖杯戦争へ反旗を翻す……確かにその筈だった。にも関わらず、現実はこうだ。
 正義は裏切られ、英雄譚は始まることもなく銃声の前に朽ち果てる。ものの数分と保たずに、哀れな若人は天に召されるだろう。彼のサーヴァントは騙して令呪を使わせ、遠方に追いやっている。令呪の刻まれた腕は切り落とされて地面を転がっており、彼を助ける術はもう何処にもない。

「答えて下さい――天願さん……ッ!!」

 老人、天願和夫は血涙を流す勢いで吼えるかつての同盟者に、柔和な笑みを浮かべたまま応える。
 天国と地獄か、はたまた富裕層と貧困層の格差問題を題材にした風刺画のように、両者は対照的であった。

「君は実に素晴らしい若者だった。いつだとて希望を捨てず、その両目には若き正義の炎が如何なる時でも燃えていた。
 わしはそんな君と一時でも共に歩めたことを、心の底から誇りに思っておるよ。今でも、だ」
「なら……どうして……!!」
「単純な話だ。君の希望はな、あまりに眩しすぎた」

 天願の青年を評する言葉に、一切の偽りはない。
 まるで教え子を賞賛する教師が如き温かみが、確かに彼の言葉にはあった。
 ――天願和夫は"絶望"を知る人間だ。人の意志や営みなど容易く飲み込んで消し去ってしまう、"絶望"の恐ろしさを誰よりもよく知っている。
 そんな天願からしても青年は、間違いなく"希望"と呼ぶに相応しいものを秘めた熱い男だった。
 自己の利益を度外視し、多数の為に行動できる人間。一歩間違えれば狂人と呼ばれても致し方ない希望的行動を躊躇なく実行する。
 彼ならば本当に聖杯戦争をどうにかしていたかもしれないと、冗談ではなく本気でそう思わせる程に。
 彼は素晴らしい、希望だった。だがだからこそ、天願は彼を切らねばならないと思った。


138 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:05:37 CdpXqbNQ0

「わしはな、世界を救いたいのだよ」

 聖杯戦争に巻き込まれた非業の者達を、ではない。
 自分が生まれ育った故郷の世界を救うことを、彼は望んでいる。
 無論、これを青年に対して話したのはこれが初めてだ。
 これまでずっと天願は、聖杯戦争は間違っている、皆で解決に向けて動くべきだと、そう語ってきた。

「君の希望を利用し、聖杯戦争をコントロールしようと考えたのだったが……失敗だった。
 君はあまりにも眩しい希望の持ち主で、あまりに優秀過ぎた。君をこのまま生かし続ければ、本当に聖杯戦争をどうにかしてしまいかねなかった」
「俺を……利用、したと……!?」
「うむ、そうなるな。君という囮役を立てながら邪魔者を退け、勝利に向けて着々と駒を進めていく……そういう考えだったぞ、当初は。だが結果はご覧の通りだ。――君には済まないことをした、恨んでくれて構わんぞ」

 恨んでくれて構わない。天願は、そう言った。
 ――恨んで、どうなるというのだ。
 自分は此処で死ぬ。もうじき、恨むも何もなくなってしまう。
 何も成せないまま、このスノーフィールドを去る。
 そして自分が死んだことなど誰も知らずに、聖杯戦争は続いていくのだろう。
 この天願という老人は、かつて自分に見せたような笑顔で、また誰かに近付いていくのだろう。
 
「そん、な……」

 これでは、あんまりだ。 
 顔色を失血で蒼白にさせ、ゴポゴポと血泡を噴きながら、縋るように天願を見つめる瞳。
 その目に、天願和夫は覚えがあった。
 何度も見てきた――何度も戦ってきた人間の目だ。
 痛ましそうに目を伏せ、天願は死に行く命に黙祷を捧げる。

「理解したようだな。君が今抱いている感情、込み上げてくる遣る瀬無さ――それが、わしがこの世から消し去ろうと思ったものだ」

 天願は彼の死を、心の底から痛ましいと思っている。
 より正しくは、死に貧して希望を失い、暗く淀んだ瞳で血を吐く様を。
 彼が今感じているだろう、人類が普遍に持つとある感情を、心から嘆かわしく感じていた。

「それが"絶望"だ。感情に溺れて死ぬのは苦しかろう、早く逝き、楽になるといい」

 天願の袖口から飛び出した暗器の矢が青年の眉間を撃ち抜き、哀れな希望を絶命させる。
 人を殺すということに新鮮な罪悪感を覚えられる程、天願の人生は安穏としたものではなかった。
 常に彼の傍には"死"があり、"絶望"があった。
 それを排除する為に戦い、人を殺したことなど幾度もある。
 それに――今更この程度のことで感情を揺るがせているようでは、世界を救う大義など成せはすまい。

 その様子を黙して見つめていた暗殺者のサーヴァントは、天願の行動を非難するでもなく、静かに口を開く。


139 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:06:17 CdpXqbNQ0

「……甘い考えは捨てるのが身の為だと、アンタは何度言わせるつもりだ」
「君がそう言い続けるというのであれば、何度言ってくれても構わんよ。
 わしは世界を救う。あの絶望に満ちた世界を希望で満たす為ならば、わしはいかなる非道にでも手を染めるぞ」

 アサシンは、天願和夫が世界を救うと言い出すに至った経緯を知っている。
 召喚してすぐに天願はアサシンへ自分の願いを話し、それと同時に、ある昔話を聞かせたのだ。

 ――それは、ひとつの世界が滅んだ話。

 希望の学園と、そう呼ばれる教育機関があった。
 そこにはありとあらゆる才能の持ち主が結集しており、そこを卒業した生徒は必ず成功を収めると、常にメディアは学園とその生徒を持て囃し続けた。
 そんな学園にある時、一人の女が足を踏み入れた。
 女は人間だったが、その頭の中に、人間では考えられないほど膨大な、とある感情を秘めていた。

 それこそが――"絶望"。
 女は絶望を愛し、世界に絶望を広める為に行動した。
 女は天才だった。女の打つ手はその全てが的確に世界を狂わせ、遂には人間社会を壊滅させた。
 やがて女は希望を抱く者達に敗れて死んだが、それでも世界を覆う絶望の暗雲が晴れることはなかった。
 世界に未来を齎すために、絶望の汚染を逃れた者達は徒党を組み、日夜絶望の残党と戦った。
 戦いに終わりは見えず、犠牲と不和だけがどこまでも積み重なっていく。
 そんなある時だ。"未来"を目指す者達を統率する男が、一枚の白紙のトランプを手に入れた。

 男は雪の原野を名乗る街へと迷い込み、その最果てにある一つの宝を手にし、己の願望を叶える事を誓った。
 ……言うまでもなく、これは天願和夫の経験してきた過去だ。
 一人の悪意で世界が滅び、その大元が消えても尚、世界が救われることはなかった。
 望み通りの未来はいつまで経っても訪れない。――このまま緩やかに世界は自死すると、天願は危惧したのだ。

「それにだ、アサシン。甘い考え等と侮られるのは、少しばかり心外だぞ」

 天願の願いは、言うまでもなく――自身の住まう世界から絶望を根絶することだ。
 その為に彼は聖杯を手に入れると豪語し、アサシンを召喚して聖杯戦争に挑む姿勢を固めた。
 だがその一方で彼は、聖杯が手に入らなかった場合、はたまた聖杯が風評通りの願望器ではなかった場合に備えて、元の世界にある"保険"を残してもいるのだ。

「仮に聖杯が手に入らずとも、わしには自力で世界を救う策がある。流石に聖杯の力に比べれば不格好なものではあるが、な。
 ――アサシンよ、わしは本気だ。君がこれまで何を見てきたかは知らないが、わしは己の大義を必ず遂げるとも。
 絶望なき世界という理想を求め、いかなる苦境をも踏破してみせるとも。……無駄に長生きしているのだから、汚れ役の一つくらいは買わねばなるまいて」

 断言し、最後は自虐を口にしてからからと笑うマスターに、アサシンはやはり表情を変えない。
 最後には溜息を一つ溢して踵を返し、その身体を実体から霊体へと変化させた。

『マスターはアンタだ。やりたいのなら好きにすればいい。……だが、忘れるな。僕は確かにアンタのサーヴァントだが、凡百の英霊と同じではない事を』
「無論、承知しておるよ。君の眼鏡に適わなければ、聖杯は君の手によって破壊される。そうじゃな?」
『……そうなったらアンタは、自力で世界を救うのか』
「そう言っただろう。最早後戻りする気など、端から毛頭ない。老い先短い命、全てをこの大義の為に使うつもりよ」


140 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:06:45 CdpXqbNQ0

 普通のマスターがこの会話を聞いたなら、何を可笑しなことを言っているのだ、このサーヴァントは――と、そんな疑念に眉を顰めたに違いない。
 アサシンは聖杯を巡る戦いに呼ばれておきながら、最悪の場合、聖杯を自ら破壊すると豪語しているのだ。
 マスターである天願もそれを諫めるどころか、それで構わないと合意しているのだから殊更異様な光景だった。
 そう――彼らは普通ではなかった。聖杯戦争という、命も含めたありとあらゆる要素を賭けて挑む大勝負。スノーフィールドの大地の中でも一際浮いた、奇特なスタンスを双方共に貫いている、そんな主従であった。


 ――第一に。そもそもこのアサシンは、聖杯戦争に呼ばれるような存在ではない。
 彼は人類側の抑止力。人類の"人類は存続すべきだ"という集合無意識が生み出した防衛装置。
 名もない人々が生み出した、顔のない正義の代行者たる男。
 安息と救いを得ることなく人理の守護者に堕ちた彼は、本来人類史そのものを根底から破壊せんとする脅威――俗に言うところの"グランドオーダー案件"以外ではまず現界することのないサーヴァントだ。何故なら英霊の座にも、それどころか人類史の中にすら、彼という存在は刻まれていないのだから。
 スノーフィールドに願い抱きし者達を呼び寄せた、白紙のトランプ。
 ありとあらゆる世界の存在が入り交じったことにより、彼を世に遣わす人類史(オーナー)の方が、此度の事態を緊急時であると誤認した。アサシンが現界しているのは、そうした偶然の産物だ。言ってしまえばバグのような存在であり、猛烈に低い確率の偶然が彼を呼び寄せた。
 尤も――アサシンを召喚したのは聖杯を砕く正義の使者ではなく、世界の救済を祈る嗄れた老君であったが。

(聖杯戦争、か)

 本来己が呼ばれる筈のない、純然たる聖杯戦争。
 其処に走狗として招かれたアサシンは、自らを呼び出した男のサーヴァントとして行動している。
 この地に待つ聖杯が己の砕くべき代物であったなら、その時は使命を全うする。
 仮に、万が一聖杯が正しいものであったなら、サーヴァントらしく、マスターに奇跡を譲渡する。
 そういう契約で、抑止力が遣わす守護者はスノーフィールドを駆ける猟犬を演じていた。

(……だが、愚問だ。聖杯なんてものは碌なものじゃない――十中八九僕は、この地の最奥で待つ願望器に銃口を向けることになるだろうな)

 アサシンは聖杯に対して、何一つ希望的観測をしていない。
 首尾よく聖杯に辿り着けたとして、自分が其処で何を成すかは現時点でも見えていると、そう高を括っている。
 彼は――かつて"■■■■"と呼ばれた男は、かつて正義の味方を目指した虐殺者は、そのことを知っている。
 ……それに。この地に呼び出されてからというもの、どうにも、妙な悪寒が背筋を這い回って離れないのだ。
 
 それが自らの身体に宿る、聖杯の愛情が狂乱しているのだと、彼は気付かない。
 "■■■■"という存在を呪いのように愛し続けるかつての聖杯が、この地に無視できない、無視してはならない存在が居ることを彼に伝えようとしている。
 かつて人間だった頃の彼と、まだ器だった頃の彼女が、心から愛した一人の少女。
 生まれた世界は違えども、辿った経緯は違えども、確かに彼女が此処に居ると、聖杯は必死に叫んでいる。

 そのことに――アサシンのサーヴァントが気付くことは、ない。
 聖杯の声は届かない。正義の味方の末路たる紅いフードの歯車に、かつての愛は伝わらない。


141 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:07:25 CdpXqbNQ0


 ――そして。天願和夫というマスターが何を考えているのかを、アサシンは正確に把握してはいなかった。
 仮に聖杯が手に入らなくとも、世界を救う手段は既に手中に収めている。
 そう断言する彼が"どのようにして"世界を救うつもりなのかをアサシンは聞かされていないし、聞こうともしなかった。
 天願の掲げる絶望の根絶は、世界を希望の光で照らす、という形で実行される訳ではない。
 彼の言う救済が実行された世界には、文字通り絶望という概念が存在できない希望一色の世界が待っている。
 親しい人物が死のうが、どんな大きな挫折をしようが、決して絶望できない――永遠に希望だけを抱かされながら歩まされ、それを可笑しいと感じることさえない……そんな世界。全人類が希望の光に洗脳された、強引に絶望という概念を取り払った世界。
 それが、天願和夫の掲げる理想であった。

(さあ……君には上手くやってもらうぞ、アサシンよ)

 天願は、どちらでもいいと思っている。
 聖杯を手に入れて、それで世界を救えるのならば確かに最善。
 だが聖杯をアサシンが破壊すると言い出したり、風評通りの願望器でなかった場合には、一切の未練なく立場をスノーフィールドからの脱出派に切り替える準備がある。どちらに転んだとしても、生きて帰ることさえ出来れば、彼の世界は希望の光に包まれるのだ。
 聖杯によっての洗脳か、"希望のビデオ"によっての洗脳かは違えど、結果は何も変わらない。

 とある名門学園の学園長、という座に君臨し、老獪なる策を巡らせるは"未来"を望む歪んだ希望の担い手。
 世界を救う為、二度と悲劇が繰り返されぬ為――老いたる希望は盲目の世界を目指す。


【出展】Fate/Grand Order
【CLASS】アサシン
【真名】エミヤ
【属性】混沌・悪
【ステータス】
 筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具B++


【クラス別スキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【保有スキル】
魔術:B
 オーソドックスな魔術を一通り行使することが出来る。
 だが本業ではないため、戦況を劇的に変えるような大魔術は扱えない。
 それでも彼のような暗殺者にとって、小細工という第二の刃は必要不可欠なものである。


142 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:08:03 CdpXqbNQ0

聖杯の寵愛:A+
 何処かの時代の聖杯に、彼は深く愛されている。
 その愛は世界最高の呪いにも等しい。
 本スキルの存在によって、彼の幸運ランクはステータス以上に跳ね上げられている。
 特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能だが、この幸運は、他者の幸福を無慈悲に奪う。

スケープゴート:C
 非情なる戦闘論理。他人を囮や盾にしつつ立ち回ることに長ける。
 スケープゴートを用意して戦闘している間はクリティカル判定にプラス補正を受け、また攻撃行動に移らない限り、気配の遮断が解除されていても攻撃対象に選ばれ難い。
 他者の幸福を無慈悲に奪い取る"聖杯の寵愛"スキルと、彼の"やり方"は、残酷なまでに噛み合っている。

【宝具】

『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』
 ランク:B 種別:対人宝具
 生前使用していた自身の時間流を操作する能力「固有時制御(タイムアルター)」が宝具として昇華されたモノ。
 時間流の加速によって高速攻撃や移動を行い、減速によってバイオリズムを停滞させて隠行を行うのが「固有時制御」の運用方法。宝具として昇華されたこの力により、彼は対人戦において無敵とも呼べる超連続攻撃を可能とする。
 モーションはナイフを用いた超連続攻撃を繰り出した後、背後に回り込みコンテンダーで銃撃する。
 公式に詳細な資料は現状無いが、サーヴァント化したことにより、生前は存在した反動の概念がある程度薄れているか解消されているものと思われる。

『神秘轢断(ファンタズム・パニッシュメント)』
 彼という英霊の起源である「切断」と「結合」を具現化し、一つのカタチとしたもの。
 通常攻撃としても用いるが、歴とした第二宝具である。
 名称から察するに、生前使用していた礼装魔弾「起源弾」を宝具として昇華されたモノと推測される。


【weapon】
 キャレコM950やトンプソン・コンテンダーといった近代兵器に始まり、ナイフによる白兵戦も得意とする。
 生前の彼を見るに、爆弾などを始めとした破壊工作もお手の物だろう。


【人物背景】

 人類の"人類は存続すべきだ"という集合無意識が生み出した防衛装置のような存在。人類側の抑止力とも。
 名もない人々が選出した、顔のない正義の代行者たる男。

 容姿は赤いフードを纏った、浅黒い肌に白髪の男性。
 性格にはまだ青年期の名残が多分に残っているが、何処の戦場に呼ばれようと常に人智を超えた理由と目的で血を流し、最短で世界滅亡の原因を解決する為には手段を選ばない。
 故に甘ったれた、人倫の枠に囚われた者とは相容れない。
 とはいえこの彼は是も非もないと観念し、選択の余地などないという諦観的な思考の元で動いており、人間性を失ったわけではない。


143 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:08:36 CdpXqbNQ0

 ――彼は何かを切り捨てることでしか使命を果たせない、そういう星の元に生まれてしまった。
 それでも、自ら望んだ運命の果てに守護者となった。誰に強いられたわけでも、屈したわけでもなく。
 どこかで折れて砕けなかったばかりに、最後まで「正義の味方」を辞められなかったばかりに、死んだ後まで安息と救いを得ることなく、抑止力の一部へと成り果ててしまった。
 生前の名前は『衛宮切嗣』。生前は暗殺者として多数の人間を殺めた反英雄で、無論英霊などではなく、"守護者"と呼ばれる英霊もどきである。
 同名の守護者である錬鉄の英雄とは異なり、彼は英霊の座はおろか、正しい人類史にも存在しない。
 その為召喚される状況が極めて限定的で、人類史そのものを根底から破壊せんとする脅威――"グランドオーダー案件"と呼ばれる事態に際してのみ呼び出される。

 そういった理由から本来聖杯戦争には召喚されない存在だが、数多の世界線が交差することで人類史側にバグのような現象が生じ、殆ど事故のような形で今回のスノーフィールドの聖杯戦争へと招かれるに至った。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯は碌でもないものであると確信している。それを見極め、場合によっては破壊する。
 ――が、現状は天願のサーヴァントの立場に甘んじている。理由は単純に、彼は人倫の枠に囚われず、エミヤの用いるあらゆる手段を肯定出来る人物であるため。つまりは相性がいい。
 確たる意志と現実的な手段で世界の救済を求めている天願和夫でなければ、確実に主従関係は決裂していただろう。

【基本戦術、方針、運用法】

 敏捷以外のステータスは低めだが、"聖杯の寵愛"スキルによって多少思い切った行動に出ても命を繋ぐことが出来る。
 更に宝具"時のある間に薔薇を摘め"によっての高速戦闘も可能であるため、状況と戦力差さえ見誤らなければ白兵戦を得意とするサーヴァントとも十分に戦えるスペックの持ち主。とはいえ筋力も耐久も高くはないため、極力はアサシンらしく、また彼らしく、奇襲や策謀で立ち回るのが無難だろう。
 天願は魔術師ではないが人間、それも老人にしては非常に高い戦闘技術を持つ他、齢を重ねているが故の知略と話術を兼ね備えている為、交渉面・戦術面においては隙が無い。弱点としてはやはりサーヴァントのスペック差が余りにも巨大な場合、決め手に欠けてしまうことなどが挙げられる。


【出展】
 ダンガンロンパ3-The END of 希望ヶ峰学園 未来編-

【マスター】
 天願 和夫

【参戦方法】
 "絶望の残党"から回収した『白紙のトランプ』により、参戦。


144 : 『希望』 ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:08:56 CdpXqbNQ0

【人物背景】
 
 ありとあらゆる才能の持ち主を集め、育成する『希望の学園』こと希望ヶ峰学園の学園長を務めていた老人。
 一見すると気のいい好々爺だが、素体となる人物の自我を破壊して"全能の天才"を作り出す計画に加担、素体に選ばれた少年に助言をする等、時に手段を選ばない冷徹な一面の持ち主でもある。
 件の計画――"カムクラプロジェクト"は無事に成功するが、学園に生徒として侵入を果たした"超高校級の絶望"江ノ島盾子により学園が崩壊、果てには彼の住む世界そのものが江ノ島に洗脳された、或いは"絶望"させられた者達によって滅亡と言って差し支えない程破壊され、以後は絶望へ対抗する為に結成された復興組織『未来機関』の会長を務める。
 
 かつては絶望の殲滅に賛成していたが、現在は行き過ぎた殲滅を嘆き、これ以上争いのない平和な世界を目指している。
 
 ――その正体は、後に未来機関のメンバーを孤島の基地に隔離し、殺し合いを行わせる事になる"黒幕"。
 彼の目的は、"超高校級のアニメーター"が製作した"希望のビデオ"を全世界に流し、世界から絶望を根絶すること。
 こう言えば聞こえはいいが、その実情は殆ど洗脳のようなものであり、映像を見た人間は親しい人物を失っても決して絶望することが出来ず、強制的に希望だけを抱いて生きさせられる。
 殺し合いを主催することで"超高校級のアニメーター"へ強いショックを与え、彼の手で"希望のビデオ"を世界に発信させるのが目的であった。

 今回は殺し合いを決行に移すよりも以前からの参戦。
 聖杯が手に入ればそれを用いて絶望を根絶し、手に入らずとも生きて帰り、殺し合いを決行して世界を救うつもりでいる。つまりアサシンが敗れた瞬間、立場を脱出派にシフトする考え。

【weapon】
・袖箭
 所謂暗器の一種。袖の中に仕込んでおり、バネ仕掛けで相手に矢を射ることが出来る。

【能力・技能】

・体術
 拳が封じられているとはいえ、"超高校級のボクサー"の鍛え抜かれた肉体を一撃で沈める程の実力者。
 一見すると腰の曲がった老人だが、いざという時はコートの袖に仕込んだ袖箭と卓越した体術を駆使して戦う古強者。その戦闘能力は超一流のレスラーや高度な戦闘機能を持つアンドロイドと互角に戦える人物と切った張った出来るレベルであり、並の強者では太刀打ち出来ない。

【マスターとしての願い】
 聖杯を入手し、それを以って"絶望"を根絶し、世界を救う。


【方針】
 アサシンを暗躍させつつ、利用できる組に対しては積極的に同盟や交渉を持ち掛ける。
 脱出派の参加者達ともコンタクトを取り、いざという場面に備えたい。


【把握手段】
アサシン(エミヤ):原作ゲーム。セリフ集が調べれば出てくるのと、彼が登場したイベントのプレイ動画もある為、把握は比較的容易。

天願和夫: 
ダンガンロンパシリーズ第三作の登場人物だが、彼を把握する上ではアニメ作品である「ダンガンロンパ3」のみで把握可能。
未来編(全12話)のみを見ればキャラクターを把握することは可能で、絶望編(全12話だが天願の出番はそう多くない)を見ればより深く把握することが可能だが、未来編のみでも書く上で支障はない。


145 : ◆8YPze9cKXg :2016/11/25(金) 14:09:40 CdpXqbNQ0
投下終了です。


146 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 21:46:20 9PfKJjWE0
投下します。


147 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 21:47:10 9PfKJjWE0
失礼しました、誤って送信してしまいました。

ご迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ございませんでした。


148 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:01:13 9PfKJjWE0
先ほどは失礼いたしました。

改めて投下いたします。


149 : 佐久間まゆ&バーサーカー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:01:54 9PfKJjWE0
――あの人と出会った時の事は今でも鮮明に覚えている。
――あの人を喪った時の悲しみを今でも忘れる事はできない。
――あの人にまた会いたいと今でもずっと願っている。

読者モデル・佐久間まゆがアイドル・佐久間まゆへと変わった理由。
それは一人の男性との出合いだった。
『目と目が合う、瞬間、好きだと気付いた』という歌詞があったが、まゆにとってはまさしくその通りの出合いだった。
社長を説き伏せ、移籍する事になったアイドル事務所。
ようやく、想い人と一緒になれると思っていたまゆに待っていたのは、まゆと想いを同じくする、無数のライバル達だった。
だが、それは必ずしも彼女にとって悪影響を与えた訳ではなかった。
事務所にいる少女達もまゆに負けず劣らず、男性の事を想っていた。
彼女達との関係を言い表すならば、仲間であり好敵手という形容がピッタリだっただろう。
ただただ、彼に振り向いてもらえるように、時に衝突し、時に協力しながらお互いを磨き合う日々だった。
そんな日が唐突に終わりを告げた。


男性が、彼女達のプロデューサーが交通事故で亡くなった。
まゆの世界は、一瞬にして色合いを失ってしまった。
それから先の事を、まゆはあまりよくは覚えていない。
そんな中まゆは、ただただこう思っていた。
『もう1度、プロデューサーに会いたい』と
『プロデューサーを生き返らせたい』と

そんな中、ある噂を聞いた。

白紙のトランプに願いを込めると、その願いがかなうと…。


150 : 佐久間まゆ&バーサーカー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:02:20 9PfKJjWE0
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「…これが私がこの聖杯戦争に参加した理由、まゆは、亡くなったプロデューサーさんにまた会いたいんです」

「まゆにとってはプロデューサーさんこそが全てだったんです。
どこか私の知らないところで死んでしまったプロデューサーさんを、
お別れも言えなかったのに受け入れるなんて、まゆにはできないし、したくもありません」


だからこそ、確定した運命に反逆する。


「『幸せになれるか』なんてわかりません。
でもプロデューサーさんのいない世界ではまゆは幸せになれません」


自身にも言い聞かせるように、まゆは断言する。


そして彼女の過去を聞いていた、海賊帽をかぶった男は涙を流していた。

白目の部分が黒く、本来黒くあるべき瞳が深緑色をした海賊が、涙を流していた。

「…そうだよな、大切な人が死んじまったら…悲しいよな…苦しいよな…」

「お前の想いはよく分かったよ…俺も同じ思いをしたからよく分かるんだ…」

「だから…お前の力になる。お前の願いを叶えてやる。お前をまた、お前の好きな人に会わせてやる!」

彼はそう宣言した。そして彼女もまた、彼の異様な目を見ながら、彼の言葉を信じてみることにした。

…しかし彼女にはある疑問があった。それは…

「ところで、何であなたはバーサーカーなのに理性を保っているんですか?」

そう、このサーヴァントはバーサーカーとして現界しているのに理性を保っており、こうして意思疎通ができていることだった。

そして彼はその問いに対し、ある事実を伝えた。

「ああ…それは、俺にはこの姿のほかにもう一つ、化け物としての姿があってな…その姿の方に"狂化"スキルが付与されているんだ…」

「だから…俺が宝具を使用しているときは近づかないほうがいい…。あの姿になっているときは例えわが子でも殺しそうになってしまうんだ…」

彼は自分の子供でも殺しそうになったことがあると伝え、気を付けるように伝えたのだ。

「そう、でしたら重々気を付けておきますね、バーサーカーさん。」

彼女は事もなさげに彼の忠告を受け止めた。



…そして、愛するものを失った者同士の悲しき戦争が、幕を開ける…。


151 : 佐久間まゆ&バーサーカー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:03:24 9PfKJjWE0
【クラス】バーサーカー

【真名】キャプテン・アズール

【出典作品】モンスター列伝 オレカバトル

【ステータス】筋力B 魔力C  耐久B  幸運D 敏捷A 宝具EX (通常時)

筋力A+ 魔力A+ 耐久A+ 幸運D 敏捷C 宝具A (『新たなる魔海の王』発動時)

【属性】
悪/混沌(本来は中立/善)


【クラススキル】

狂化:-(B)
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

 彼の場合は後述する宝具『新たなる魔海の王』発動時にこのスキルが付与されるため、
 平時では理性を保った状態である。


【保有スキル】

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


無辜の怪物:A+
 人間をやめてまでも魔王を打ち倒したものの、その結果自らが新たな魔王となった英雄。
 本人の意思とは関係なく風評によって真相をねじ曲げられ、能力・姿が変貌している。
 ちなみに、このスキルは外せない。


嵐の航海者:C
 船と認識されるものを駆る才能。
 集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。

 しかし後述する宝具『新たなる魔海の王』の発動時には喪失してしまう。


使い魔:C
 サメやカニなどの海の生物を使い魔として使役できる。
 契約は必要無く、思念を送るだけで可能。

 このスキルは後述する宝具『新たなる魔海の王』の発動時にのみ付与される。


【宝具】

『力湧き出る熱き水(バルバドスの水 )』
  ランク:B 種別:対我宝具 レンジ:1 最大補足:1

 自分の敏捷を1段階下げる代わりに、筋力を1段階あげる宝具。

 いわゆる酒であり、彼は生前もこの酒の力を用いて自身の能力を強化していたが、
 飲みすぎて酔いつぶれてしまい、結果戦闘中に寝てしまうことも多々あったらしい。


『新たなる魔海の王(禁断の呪宝)』
  ランク:EX 種別:対我宝具 レンジ:1 最大補足:1

 彼が魔王を打ち倒すために使用し、また呪いにより彼を新たな魔王へと変貌させた、呪われた宝石。

 自らをサメの牙に鋭い鉤爪、無数のとげと鱗を持った怪物へと変貌させ、全てのランクを変化させる。

 なおこの宝具を発動している間は"嵐の航海者"を喪失し、代わりにBランクの"狂化"とCランクの"使い魔"スキルが付加される。


 …彼はこの宝具を発動する際に苦痛に満ちた叫び声をあげるが、それは自ら妻を殺害してしまった後悔の念か、
 
 それとも消えゆく記憶の断末魔なのか、誰にもわからない…。


『魔海を呑み込む絶望の渦(絶望のサルガッソ・スパイラル)』
  ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50

 宝具『新たなる魔海の王』発動中に使用できる宝具で、辺り一帯に海を模した固有結界を生成し、巨大な渦潮を発生させる宝具。

 彼が新たな魔王として海を荒らしまわっていたときに使用していた魔術であり、この力を用いて幾つもの国を滅ぼしてきた。

 純粋な魔術によるものであり、Aランクの"対魔力"によっていくつか軽減することができる。

 …しかし彼のスキルにある、"使い魔"達もその渦の中から攻撃してくることがあるため油断は禁物である。

【weapon】

『サーベル』
彼がまだ人間だったころ使っていたサーベル。


152 : 佐久間まゆ&バーサーカー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:04:00 9PfKJjWE0

【人物背景】

アズール海賊団を率いて、魔海を荒らす魔王軍とシノギを削っていた海賊船長。

…しかしその争いの中、自分の妻が"氷の魔王"の企みにより記憶と心を奪われ手下となってしまい、
彼は図らずも自分の妻を殺してしまった。

そして魔王への強い憎しみと自分の無力を呪いながら"氷の魔王"と戦うも力及ばず倒れようとした際に、
呪いを受ける覚悟で「禁断の呪宝」を使用して怪物へと変身し、"氷の魔王"を倒した。

しかし、"氷の魔王"が絶命する寸前に言い残した「貴様はいずれ記憶をすべて失い、魔王になる」という言葉通り、
徐々に彼の心は「禁断の呪宝」の邪悪な呪いに蝕まれ、魔王へと変貌してしまった。

…そして数年後、彼は成長した我が子によって討たれることとなる…。

以上が彼の半生である。

今回召喚された彼は、人間として"氷の魔王"と戦っていた海賊船長としての姿と、

魔王を打ち倒し新たな魔王と成り果てた"怪物"としての二つの姿をもって現界するという、

かなりイレギュラーなサーヴァントとなっている。

【聖杯にかける願い】
家族との再会と謝罪は既に果たした。今はただマスターの悲しみを癒したい。


【マスター名】佐久間まゆ
【出典作品】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【weapon】
なし。

…彼女は少し過激なところはあるが、常識的なところはしっかり押さえているのである。

【能力・技能】
家事一般・事務所への潜入や、人知れず他人の車にGPSを設置できる

【ロール】
ちょっと影のある現役アイドル。


【人物背景】
読者モデルだったが、プロデューサーに人目惚れし、プロデューサーの事務所に所属するまでにいたったアイドル。
ちょっと、いや、かなりのヤンデレ気質があるが、面倒見がよく気配りもしっかりできるので、プロデューサーが絡まなければ素直な子と評判。
事務所の移籍などおっとりした見た目に反してかなりの行動力をもっている。

…今回の聖杯戦争での彼女は、愛するものを突如として失い、"絶望"してしまったifの世界の彼女である。


【聖杯にかける願い】
プロデューサーにまた逢いたい。


153 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:04:26 azxomYGk0
他企画に投下した候補話の流用になりますが、投下させていただきます


154 : 佐久間まゆ&バーサーカー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:04:45 9PfKJjWE0
投下終了です

ありがとうございました。


155 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:06:01 azxomYGk0
割り込み失礼しました。改めて投下させていただきます


156 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:08:04 azxomYGk0





 よどみに浮かぶうたかたは
 かつ消えかつ結びて
 久しくとどまりたるためしなし





   ▼  ▼  ▼





 西暦2198年2月13日―――その日『天使』は運命と出会った。

 高度一万mの空の上。培養漕の透き通った壁を隔てて、少女は生まれて初めて少年と出会った。
 外の世界を何も知らなかった『天使』に、少年は様々なことを教えた。それは薄暗い培養漕と無機質な瞳を投げかける研究者以外の世界を知らなかった『天使』にとって、どれほどの救いとなっただろうか。
 『天使』は自らの運命に対し諦観していた。殺されるために生み出された自分は、ただ己の意思もなく死んでいくだけなのだと。そう諦めていた。
 けれど、差し伸べられた少年の手は、人形であったはずの『天使』に一つの意思を芽生えさせた。

 西暦2198年2月20日―――その日『天使』は一つの決断をした。
 永遠に晴れない灰色雲に覆われた天蓋の中、世界でただ一つ本当の青空を見上げることのできる、天穹の彼方の塔で。
 『天使』の少女は、自分を助けようと他のみんなを切り捨てようとする『悪魔』の少年と向かい合った。
 交わす言葉は、別れだった。
 少女は生贄だった。1000万人の明日を生き永らえさせるための、『天使』などとは名ばかりの機械部品だった。それを許さず、認めず、自分と共に生きていこうと手を伸ばす少年に、少女はただ拒絶の言葉を告げた。
 その拒絶は、生まれる前からプログラムされていた誰かの都合でもなく。
 顔も知らぬ1000万人という他人のためでもなく。
 少年と出会い、触れ合い、そして彼を愛しいと感じた。他ならぬ『天使』の少女の内から湧き出た意思の現れだった。

 それが、少女の決断だった。
 ただ言われるがままに諦めて、死の運命を受け入れるのではない。少年のために、自分が大切だと思う人々のために自ら進んでこの命を差し出そう。
 自分が死ぬのは見ず知らずの他人のためなんかじゃない。自分はただ、あの人が笑顔で日々を過ごせるというのなら、それでいい。

 だから。

「だから、私はいいです……。あの街があそこにあって、みんなが笑って生きていけるならそれでいい。だから……」

 『天使』の両腕が、少年の背にまわされた。そのまま少年の肩に頭を押し付けるように体を預ける。少年はそんな『天使』を抱きとめることもできずに、ただ茫然として。

「……だから、あなたは生きて。一日が終わって、次の一日が来て、一年経って何年も経って歳を取って、泣いて笑って悩んで苦しんで、誰のためでもない、自分のために生きて……
 そして、時々でいいから私のことを思い出して」

 あくまで穏やかな声だった。穏やかな表情だった。ただそれだけでいいのだと、他ならぬ少女自身の言葉が告げていた。
 その言葉が、その笑顔が。誰かを傷つけないようにと、優しい『天使』が必死で創り上げた偽物であることを知らないのは、『天使』の少女ただ一人であった。

 そうして二人は別れを告げて、分かたれた二つの道は交差することはなく。

 ―――少女の手に、白色のトランプが舞い降りた。
 ―――それは少女の過去を暗示するかのような、何の不純物もない白紙のトランプであった。


157 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:08:57 azxomYGk0





   ▼  ▼  ▼





 赤土色の荒野が、広大無辺に広がっている世界だった。
 周囲一面、見渡す限りずっと同じ景色が続いていた。地面には草木の萌芽の一つもなく、動物たちの気配はおろか骨の一つも存在せず。地平線の向こうから山系の彼方まで、赤く焼けた土が敷き詰められた風景が世界の果てまで続いているのだった。

「くだらぬ連中であった。片輪の土人形どもめ!」

 そんな、時間さえもが死に絶えるとさえ思えるような無謬の死世界に、その男はいた。
 憤激の感情のままに声を荒げる男だった。自らが為した千の偉業を憎み、自らの生み出した万の創物を悔やんでいるかのような激情を、男は湛えていた。
 男の声は無謬の荒野にあって、ただ一つの動あるものであった。嚇怒の絶叫は喉を引き裂かんばかりに揺れ、しかしそれは大気を揺らすことさえなく空しく宙へ溶け消えていく。ここでは、既に風すらもが死んでいるらしい。

「その欲望は果てしなく! 互いが互いを食らう!
 己が欲するところのみを求め争う人獣どもめ! 智慧と繁栄を血で濡らす理性の嘲笑者どもめ! 自身を滅ぼす悪徳がそんなにも恋しいか!」

 男は、人々を律しようとした。
 世界に原初の緑もなく、荒野には草花も芽吹かず、地上における神々の玉座たる山麗は剥き出しの肌を露わにして、青き清浄の海原すらもがその姿を見せていなかった頃。
 男が土くれを混ぜ合わせ創り上げた生命は、あまりにも不完全に過ぎた。

 不完全であるが故に、人々は愚かしく、野蛮であった。
 人間は自分たちを造り出した神を顧みることはなく、ただひたすらに殺戮と欲望の宴に明け暮れた。安息と安寧など夢物語にすら語ることはなく、我欲を満たすがためだけに人々は戦乱の世を生み出した。

 不完全であるが故に、人々は容易く生まれ、そして容易く死んでいった。
 弱きものは種の存続のために多くの子を成す。下等な虫けらのように、魚群のように。多く群れ欲望のままに相交わり、いっそおぞましいほどに繁殖を繰り返す人間は、男の目には虫のわき出る苗床にさえ見えた。

 男は怒った。己の似姿たる人間の、堕落した姿が許せなかった。
 男は憎んだ。そのことに気付いた時、男は世界に蔓延る悪意を、己が悪意で滅ぼした。
 男は嘆いた。男が最も人に理解してほしかったもの、それは慈悲や慈愛といった類であった。しかし人々はそれら理性の産物を嘲笑い、何を顧みることはなかった。

「まことに、醜い」

 そして何より、男は疲れてしまった。
 ずっと見てきた。人間が生まれ、営み、死んでいく姿を。永い時をかけて、ずっと。
 だからこそ、男は分かってしまった。自分の生み出した存在は、その生まれからして間違っていたのだと。
 自分のやったことは全て無駄だった。あらゆる試行は徒労でしかなかった。
 けれど。


158 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:09:59 azxomYGk0

「この星は呪われているのだ。もっと、もっと。よりよい星を目指そう」

 自らのあらゆる可能性を試し失敗に終わった男は、だからこそ"外"に手を伸ばした。
 この星は駄目だった。自分の生み出した命は救われなかった。しかし、自分ではできなくとも他の可能性があるとするならば。

「他にも星があるはずだ。我の同種が存在するはずだ」

 その可能性に、男は一縷の望みを託した。
 その時から、男の探求が始まった。それは砂漠に紛れた一握の砂を探すに等しい無謀であった。大海に落とした一本の針を見つけ出すに等しい苦行であった。

 それでも、男は可能性を諦めはしなかった。理由は男自身にも分からなかった。もしかすると、男は信じたかったのかもしれない。
 自分の生み出した命たちは生まれから間違っていた。けれど、それはあくまで自分の不徳であったがためで、命という存在そのものが間違っていたわけではなかったのだと。
 ただ、そう信じたかったのかもしれない。
 根源の分からぬ衝動に駆られるがままに、男は探して、探して、探して―――

「ようやく見つけた! 我の同種を!」

 歓喜に打ち震える男が叫ぶ視線の先にあったのは。
 遥か白亜の大地に立つ、男と同じ気配を持つ一人の女の姿であった。



 ………。

 ……。

 …。



「あれから何千年経ったろうか。変わり映えのしない日々だ」

「フフ。わたくし達しかいないからですよ、この悠久の日々は」

 粉雪の降りしきる、白くどこまでも続く大地で。
 茫洋とした男の声に、答えるのは女の声であった。
 美しい女だった。星の誕生以来、連綿と降り積もった白雪を人の形に押し込めたならば、石炭から生まれる金剛石のごとく、この女の顔になるかもしれない。
 女は、男へと静かに笑いかけていた。


159 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:10:30 azxomYGk0

 男と女は、永遠の存在だった。何も変わらず、変わる必要もなく、悠久の時間を過ごせる稀人であった。
 彼らは特異な存在であった。だからこそ、彼らは唯一無二であり、自分以外の同種と出会うのは、これが最初で最後であったのだ。

 彼らの語らいは幾度となく、それこそ何千年と続けられてきた。男は、女の存在に安らぎを感じていた。例え自分たち以外が存在しない世界であったとしても、それでもいいかもしれないとさえ思っていた。そしてそれは、女も同じ気持ちであった。

 けれど。

「そろそろ打ち明けてもいいでしょう」

 女の口から放たれた、その言葉は。

「■■■、わたくしをアンバロの短剣で貫いてはくれませんか?」

 千年の閉塞を打ち破る、思いもよらぬ一言だった。

「……お前を、殺せというのか?」

 男の声は呆然としていた。意味、恐らく理解できていない。
 いや、理屈は分かる。アンバロの短剣とは男や女のような存在の肉体から作り出される短剣で、男や女のような永遠の存在はその短剣でのみ傷つけられる。
 けれど、いいやだからこそ、男は何故女がそれを望むのかを理解できなかった。

「いいえ。死ぬのではない。生きるのをやめるのです。
 わたくしは胎だけの存在となる。そして、生き物たちを生き永らえさせる」
「生き物? どこにいるというのだ」

 二人のいる大地は、どこまでも、どこまでも、白く雪の降り積もった風景が続くだけの、寂寥とした地だった。
 空も、大地も、風も、水もそこにはあった。けれど、命の気配だけはどこを探そうとも見つかることはなかった。

「まさか、今から作るとでもいうのか。
 無駄なことだ。土をこねて造り出した生命は不完全だ。我は一度失敗している」

 今更言う必要もないことであった。何故なら、そんなことはこの千年で幾度となく伝えている。
 如何な男や女のような存在であろうとも、単独では不完全な生物しか造り出すことができない。土をこねる、水で清める、そうした方法では所詮片輪の人形しか生み出せない。

「分かっています。だから、創るのです。あなたと共に」
「わたくしを解体して、ね」

 その言葉は、どこまでも静謐なものだった。

「たなびく髪は、空を舞う鳥。
 白き顔は人間。
 両の腕はひらひらと泳ぐ魚」

「腹部からは虫が湧き出で。
 陰部は海の諸々の生き物に。
 両の脚は有蹄類に」

「そしてこれらの生命が地上での生を終えた時。
 わたくしの胎内で第二の生を送るのです。悠久に……」

 表情は変わらない。女の横顔はいつもと同じ嫋やかな笑みを湛えている。
 しかし、その内実には意を決したような意思の強さが秘められているのだと、男は誰に言われるでもなく悟ることができた。


160 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:11:22 azxomYGk0

「お前は下等な生き物どもの永遠を望むのか。我々が如き永遠を!」
「ええ、そうです。だからわたしを、アンバロの短剣で……」

 女の頼みは、今や嘆願にさえなって。
 男は何かを思うかのように、静かに一つ息を吐き。

「フン。言っても聞かぬのがお前の性格」
「よかろう。我の肋骨も四肢も胴体もくれてやる」
「顔の皮もくれてやる」

 水をぶちまけるかような音が、白い大地に響き渡った。

 ………。

 ……。

 …。





「グーリエ。お前の犠牲は尊い」
「我々が共に作った生命だ。今度こそ―――」
「今度こそ、生き物たちが正しい道を歩めるよう、信じるよ」





   ▼  ▼  ▼





 文明華やかなりし二十一世紀。鉄と排煙に包まれた鉛色の時代はとうに過ぎ、高度な経済成長の後押しを受けた社会はより良き未来を目指して物質的な富を人々へ供給し続けている。スノーフィールドも例に漏れず近代化と開発を繰り返し、今や一地方都市としては中々の発展を遂げていた。

 そんな中央区某所、所属するミドルスクールを去り、少女が帰宅したのは17時を過ぎた頃だったか。
 道を歩く少女は、端的に言えばかなり目立った外見をしていた。金糸を梳いたような金色の長髪に、エメラルド色の双眸。白磁の肌は薄茶の制服の生地に映え、整った顔立ちはまるで良くできた人形のような美しさとあどけらしさを湛えていた。

 道行く少女が辿りついたのは、大きな邸宅だった。庭付きの一軒家はアメリカの宅地住宅に相応しく洒落ており、手入れもよく行き届いていた。家人の趣味か、あるいは人を雇っているのか。どちらにせよ、裕福な家庭であるのは間違いない。
 夕陽が差し込む玄関を、少女は慣れた様子で開けた。蝶番の軋んだ音が小さく鳴る。

「ただいま帰りました、おばあさま」
「ああ、お帰り、フィア」

 帰宅を告げる少女に、答えたのは老いを感じさせるしわがれた女の声。
 その声の持ち主は、窓際の安楽椅子に腰かけていた。しわがれた声と「おばあさま」という呼び名に相応しい、壮年を通り越した老女の姿がそこにあった。白髪混じりの頭はそれだけ年を感じさせ、落ち着いた雰囲気は人生経験の重みを表しているかのようだった。


161 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:12:27 azxomYGk0

「どうだったねフィア、学校は楽しいかい」
「ええ。皆さんとても良くしてくださいますし、私も色々なことを経験できてとても充実しています。本当にありがとうございます、おばあさま」
「そんな畏まるのはおよしよ。おまえの世話を見るのは当然だし、何より好きでやってるんだからね」

 老女の言葉に嘘はなかった。「心」を読めば、それが内心の思考と全く同じ言葉であるのだとすぐに分かる。
 かつてはその本心を知ることを恐れ実行に移せなかったことを、しかしこの場においてフィアと呼ばれた少女は躊躇なく実行した。何故ならば、この老女はフィアの知る「本物」ではない故に。

「この街におまえが来て、そろそろ一月といったところか。どうだい、友達はできたかい?」
「……えっと、どうなんでしょう?」
「おやおや、そんな弱気でどうするんだい。これじゃあ男を捕まえてくるのも当分先になりそうで、私は今から不安だよ」
「もう、おばあさまったら」

 靴を綺麗に脱ぎ揃え、フィアと老女は他愛もない会話に興じていた。内容には少々下世話なものも含まれていたが、それも併せてフィアにとっては楽しく、そして幸せなものだった。
 フィアにとって、この老女との会話は現状、世界で唯一安らげる時間だった。それは、この見知らぬ世界における偽物の彼女であっても変わることはない。

「それではおばあさま、一度お部屋に戻らせてもらいますね」
「おや、ついつい引きとめてしまったか。悪いことをしたねフィア、もうお行き」
「はい」

 数分の会話の後、フィアはいそいそと部屋を出て突き当りの階段を昇った。フィアの自室は二階にある。階段を昇って正面の部屋、そこがフィアに割り振られた自室だ。
 「フィアの部屋」と可愛く装飾されたプレートが掛かった扉を開き、中へ入る。小奇麗に整えられた、やや殺風景な室内がフィアを出迎えた。

 フィアは鞄を机に置き、いそいそと制服から着替えて壁のハンガーに吊るした。一連の作業が終われば、訪れるのは空虚な沈黙。
 静かにベッドに腰掛け、息をひとつ。そうしてフィアは、振り絞るように呟いた。

「……おばあさま」

 その呟きは。
 残酷な、無慈悲な運命に対する。
 やり場のない憤りにも似た、声だった。



 フィアはこの時代の人間ではなかった。
 21世紀どころか、次の世紀の更に終わりの頃。彼女はおよそ200年後の未来に生きた者だった。
 何故自分がこの時代に存在するのか、それはフィア自身もよく分かっていなかった。誰も立ち入らなくなって久しい軌道エレベーター、その一角にひっそりと落ちていた白紙のトランプを拾った瞬間から、元の世界における彼女の記憶は途切れている。
 I-ブレインの記憶領域に書きこまれた情報でしか知らないはずの、200年前の情景はあまりにリアルだった。生活水準や生活環境も自分の元いた場所とはまるで違う。行き交う人々は魔法士なんて存在はおろか、情報制御理論の片鱗すら知りはしない。
 そして何より、この空だ。
 見上げた空には、あり得るはずのない青が一面に広がっていた。燦々と輝く太陽、突き抜けるような青空、風に流れる白い雲に、夕陽の赤さや星の瞬き。それらはフィアのいた未来では決して見ることのできない代物で、故に彼女がタイムスリップしてしまったと考えるのは当然の帰結と言えた。
 けれど、単なるタイムスリップだとすると不可解な事象もあった。それが、先ほどフィアと会話していた老女―――七瀬静江の存在だった。
 彼女もまた、フィアと同じ時代の人間だった。孤独に俯いていたフィアの拠り所となり、その心を支えてくれた恩人。そんな彼女が、何故かこうして「21世紀のアメリカに籍を置く日系人」として存在している。
 最初、フィアは彼女もまた自分と同じ境遇にあると考えた。そしてその考えのもとに、フィアは自身の有する「同調能力」によって静江の記憶野を詳細に読み取った。
 結論から言うと、この時代に生きているという静江の言葉に嘘はなかった。静江の数十年分の記憶は間違いなくこの時代を生きたものであり、200年後の未来のものではなかった。次にフィアは、静江に何らかの記憶処理が施されているのではないかと考えたが、これも違った。脳内を隅から隅まで探査しても、それらしい痕跡は一切見受けられなかった。
 それだけならば、まだ疑いようもあったかもしれない。しかしこの世界に組み込まれたのは静江だけではなく、フィアもだった。フィアにはスノーフィールド中央区のミドルスクールに通う学生という身分が何故か与えられていて、静江は血のつながらない後見人という立場にあった。
 この時点で、フィアは自分の記憶こそが間違っているのではないかと錯乱寸前にまで至った。もしかしたら夢なのでは? という儚い現実逃避は長く保たなかった。脳内に表示される現在状態が、ここは現実であるとはっきり告げていたのだから。


162 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:13:30 azxomYGk0

 元々いた世界、2198年の未来において、フィアはとある少年と最後の再会を果たしていた。放置された一室の天蓋、そこに植えられた人工の花畑。そこで待っていた少年へ、今生最期の別れを告げたのだ。
 その別れは、本来のものとは違う意味で訪れたらしい。死すべきだった自分は、しかしこうして異世界へと転移させられてしまったのだから。
 もしかしたら、自分はとっくにロボトミー処置を受けてマザーコアとなり、意識とか魂とか、ともかくそういうものだけが天国やあの世に行ってしまったのかとも考えたが、どうやら違うらしい。
 現状に戸惑うフィアの前に現れた「サーヴァント」が、それを教えてくれた。
 彼の言葉を聞くことによって、フィアはようやく自分の置かれた状況というものを把握することができたのだ。

「さて、十分な時間が過ぎたが、お前さんの意思は変わらんかな」

 静江に勝るとも劣らないほど老いた声が部屋に響いた。ベッドに腰掛け俯いていたフィアは、その方向へ顔を向ける。
 老人がそこにいた。仕立てのいいスーツを纏い、白く口髭を蓄えた様は微塵の汚らしさもなく気品として成り立っている。深い皺は年輪の如く、彼の持つ知性を感じさせるようだった。

「はい。最初に言った方針は変わりません。
 私は元の場所に帰ります。そして、マザーコアとしての役目を果たします」

 そう語ったフィアの声は、自分でも分かるほどに震えていた。
 それは暗に込められた嘆きでもあって、嗚咽でもあった。けれど、フィアはそれを声以外に出すことはない。
 フィアは、静かに笑っていた。不安を感じさせないように。

 この老人こそが、フィアに与えられた、この世界で唯一の道標であり、力でもあるサーヴァントだった。その好々爺な風貌に違わず、彼は時折フィアとの対話を望み、幾度か言葉を交わす間柄となっていた。
 既に彼には話してある。フィアの来歴も、身の上も、定められたその末路も。

「お前さんが望むなら、わしが従うのも吝かではない。
 しかし、聞かせてはくれんかな。何故そうまでして、お前さんは自分の命を捨てようとするのか」

 老人の言葉は静謐なものだった。憤りも悲嘆も、そこにはなかった。

「簡単なことです」

 対するフィアも、ただ静かに微笑むだけだった。

「私には大切な人たちがいます。こんな私でも、守りたいって思える人ができた……それだけのことなんです」

 彼女が元いた世界―――2198年の地球は生物根絶の瀬戸際に立たされていた。北極と南極に一つずつ設置された大気制御衛星が謎の暴走事故を起こし、干ばつ対策用の遮光性気体を撒き散らし、世界が終わらない冬に閉ざされたのは今から12年前のことだった。
 永久凍土に覆われ死に絶えた世界。日光を遮る暗黒雲により地上からは一切の光が失われ、世界の平均気温は零下40℃を下回った。如何に寒冷に強い植物であろうとも陽の光なしでは生きてはいけず、それはエネルギー供給の90%以上を太陽光発電へと移行し始めていた人類も同じことだった。
 当時の世界情勢は、それは酷いものだったと聞く。人類は僅かに残された地熱・風力発電プラントの利権を争い、次第に戦争状態へと移っていった。そして引き起こされたのは第三次世界大戦。人類は僅かな資源を湯水のように消費し、勝者が生まれるはずもない不毛な戦いへと身を投じていった。
 文字通り世界全土を巻き込んだ戦争は、2年に渡って行われた。核融合炉の暴走によってアフリカ大陸は地図からその姿を消し、失われた人命は198億人にものぼった。最終的に人類に残されたのは、たった7つのシティと2億人足らずの世界人口。血で血を洗う戦いの果てに、人類が得たものは何もなかった。
 それでも、滅びに向かうしかないはずの人類は、仮初の希望を無理やりに造り出した。

 陸生生物が悉く絶滅するほどの過酷な環境下で、碌な資源もなく疲弊した人類がそれでも生き残れたのは、何故か。
 その理由は、マザーシステムという機構にこそ存在した。それは「とあるもの」を核とした第二種永久機関であり、人類に残された最後の希望とも呼ぶべき代物だった。
 大戦前は「人道的な」理由から使用を断念されたこの機構に、しかし大戦を経て疲弊した人類は我先にと縋りついた。そのための犠牲を「必要なことだ」としたり顔で受け入れて。

 マザーシステムの核は、マザーコアと呼称された。
 それは、魔法士と呼ばれる特殊な人間の、脳髄だった。


163 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:14:46 azxomYGk0

「それが、お前さんの死ぬ理由か」
「いいえ、死ぬんじゃありません。生きるのを止めるだけです。私の脳はシティとその周辺の街を生かし続けるでしょう。
 だから、私はいいです。あの街があそこにあって、みんなが笑って生きていけるなら、私はそれでいい」

 つまるところ、少女は生贄にも等しい存在だった。
 マザーコア特化型魔法士『天使』。ただ殺されるためだけに生み出され、予定通りに死ぬ行くだけの儚い命。
 けれど、それでも救いはあった。
 本来、彼女は殺されるだけだった。誰かの都合で生み出され、誰かの都合で死んでいくだけの消耗品。そこに彼女の意思は介在せず、運命に流されるだけのはずだった。
 そんな、人間未満の人形でしかない彼女は、しかし最期に守りたいと思える人々に出会うことができた。
 だから、これは悲劇などではないのだ。誰かに無理やり死を押し付けられるのではなく、彼女は自分の意思でその道を選んだのだから。人間未満の人形が、それでも大切の人々を助けることができたなら、それは祝福とさえ呼べるだろう。

「聖杯を使う、という選択は取らないのかね」
「……使えません」

 使わないのではなく、使えないと、少女は言った。

「私は世界が好きです。人間が好きです。誰にも泣いて欲しくないし、みんなに幸せになってほしいです。だから、誰かの願いを踏み躙るようなことは、できません」

 少女は、フィアは笑顔のままだった。その裏に潜む感情を、彼女は見せることがない。
 あくまで穏やかな声だった。穏やかな表情だった。優しい少女が、人を傷つけないために作り上げた笑い面。
 自分自身でも気付いていない、ボロボロの仮面だった。

「……昔、お前さんとよく似た女と会ったことがあるよ」

 ぽつり、と。
 サーヴァントの老人は語った。それは昔を懐かしむような、失ってしまった何かを思い返すような声で。

「そやつはグーリエと言ってな、傍にいるだけでなんとも心安らぐ女だった。そやつもまた、皆が安らぐ世界を夢見ておったよ」
「その、グーリエって女の人は……」
「死んだよ。お前さんと同じような道を選んで、我が身を犠牲にして死に絶えた」

 それは遠き星のおとぎ話。かつて永遠を生きて、しかし他我の永遠性をこそ尊んだ一柱の女神の物語。
 彼は語って聞かせた。グーリエと呼ばれた女の話を。自らの生ではなく生き物たちの未来を望み、それ故に彼が刻まなければならなかった過去を。
 フィアは黙ってそれを聞いた。いや、あるいは自らの境遇と重ねたのかもしれない。
 何故ならグーリエという女の選択は、フィアの選ぼうとしているそれと限りなく近く、同時に限りなく違ったものであったから。

「あなたは、グーリエという人の選択を間違っていたと思いますか?」
「……いいや。彼女は何も間違ってなどいなかった。彼女の創り上げた世界は歓びに満ちていた。間違っていたのは、わしのほうだったよ」
「それなら」

 そこで、フィアは笑った。
 それはとても眩しく、あまりにも尊いものだったけど。
 心からの笑みではなく、それはやはり、仮面の笑みだった。


164 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:16:31 azxomYGk0

「それなら、私も同じです。みんなに、あの人に、生きてほしいと願う私の心は。
 決して、間違ってなどいないのですから」

 けれど。
 例えそれが悲しみに満ち溢れていようとも、百劫の罪に引き裂かれんとする少女の嘆きであろうとも。
 想う心は本物であった。誰かに今を生きて欲しいと、願う光は偽りなどではなかった。

「……お前さんの決意は尊い。だからわしも信じよう。お前さんの救う命たちが、今度こそ正しい道を進めることを」

 故にこそ彼は、呪われた永遠の放浪者は願う。
 いずれこの少女の悲しみが、シューニャの階梯へと至り「かなしみ」に昇華されることを。

 遠き空の果てであろうとも、星海の芥粒の一つであろうとも。
 人はこうして悲しみを胸に抱き、いつかシューニャの空へと至る。
 できるとも、この少女ならば。
 こんなにも自分を責め、こんなにも人の死に心を狂わせる彼女ならば。

 生の終わりを垣間見て、その想いが成就することがあれば。
 犠牲でも逃避でもない第三の選択肢を選び取ることも、また。

 だからこそ、彼は告げるのだ。
 肯定するでも否定するでもなく、ただ少女の未来を見据えて。
 いずれ訪れるかも分からぬ、果て無きものを見つめて。

「生きよ、一切のかなしみと共に。お前さんの旅路の終着点が歓びで満ちることを、わしは祈っている」

 例え定められた終わりが迫ろうとも、ただ、今を生きるのだと。
 そう、アハシュエロスは告げたのだった。


165 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:17:51 azxomYGk0


【クラス】
クリエイター

【真名】
アハシュエロス@シューニャの空箱

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運E 宝具A+++

筋力A+ 耐久A+ 敏捷B 魔力EX 幸運E 宝具EX(宝具発動時)

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
創造:-
かつてクリエイターは星における地上の一切を創造し、人類種を作りだし、その歴史の趨勢を三度に渡って観測した。
しかし彼は一度は人類の文明圏を破壊し、二度目も同じ道を歩みかけ、三度目は真に独力で創造することもなく、現在では神格・クリエイターとしての権能はほぼ失われている。
なお、クリエイターは文字通り人理の破壊者であるため「デストロイヤー」のクラス適性を内包する。このクラスで呼ばれた場合、状態が神格で固定となり、属性が反転する。すなわち召喚は不可能。

【保有スキル】
魔術:A+(A+++)
万物を創造した者として、多種多様な魔術を扱うことができる。原初の混沌の内に光を生み出すことも、一瞬にして巨大な城や天を覆うほどの巨剣を作り上げることも、大地を逆巻き割れさせることも彼には容易い。
宝具発動時においては()内のランクに修正される。

神性:-
既に彼は神であることを捨て去っている。人の似姿であるアハシュエロスは元より、神であった■■■でさえも、かつてとある情景を目にした瞬間に神であることを「止めて」しまった。
本来は神霊にして星の最強種であるクリエイターをサーヴァントとして召喚することは不可能なのだが、このスキルの消失に伴い、霊格と存在規模を極限まで低下させ「似姿」たる人の殻を被ることにより辛うじてサーヴァントとして現界するに至った。

プルシャの悟り:B
無人称の盲目な意思、シューニャへ至る階梯を観ずる者が纏う守り。
対粛清防御とも類似したスキルであり、物理攻撃・概念攻撃・次元攻撃を無条件で一定値削減する。また、精神干渉であるなら100%シャットアウト。

【宝具】
『"いつか"が彼らを分かつまで(アンバロ)』
ランク:A+++ 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
簡素な造りの古ぼけた短剣。
この宝具の正体は、半神の娘の遺骸より作り出された星作り/星殺しの剣。神が星の為、そして星に生きる遍く全ての存在のために創造した、自身を含めた神格を殺傷するに最も相応しい性能を誇る剣という、矛盾した神造兵装。
ランクに見合った相当量の神秘を内包するだけに留まらず、神性スキルを持つ者やそれに類する存在に対し特効の効果を発揮する。この宝具を所持した者は無条件でEXランクの神殺しスキルを取得し、該当サーヴァントにおいて防御に関わるあらゆるスキルや宝具による体質・耐性・加護・補正を無視して切り裂く。
また、クリエイターはこの宝具を任意で他者に譲り渡すこともできる。そしてこの宝具はクリエイターの死後も残り続ける。
かつてクリエイターが愛した者を切り裂くために使われ、そしてクリエイターが愛した者より生み出された、彼の愛憎の変遷を象徴する宝具。

『反存在・星殺しの嘲笑者(アンチビーイング・アースキャンサー)』
ランク:EX 種別:奉神宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
反人間、反存在、人類の嘲笑者にして神殺しの神格。アハシュエロスのかつての姿を限定的に顕現させるのがこの宝具である。
真名解放に際してクリエイターの姿は皮を剥された巨大な顔面へと変貌し、ステータス及びスキルランクの修正を受ける。
この宝具の本質は、星殺しにして神殺しの神格に近づくと同時に生前の逸話を色濃く反映するものであるため、天もしくは星の属性を持つサーヴァントに対し極めて有利な補正を得るが、三度人類種に敗れた逸話により人の属性を持つサーヴァントに対しては逆に極めて不利な補正を取得する。
クリエイターは進んでこの宝具を使うことはない。何故ならこれは、彼にとって最大の過ちを犯してしまった時の姿であり、そして愛する者を二度に渡って失ってしまった喪失の象徴であるからだ。


166 : 勿忘草 ◆GO82qGZUNE :2016/11/25(金) 22:18:19 azxomYGk0

【weapon】
バロスの杖

【人物背景】
「この人が一体誰であるのか。この人は一体何をしたのか。
 私にはもう体がないから、彼に会うことはできないけど。でも語るとするなら一つだけ。
 それはいにしえのうた。遠き空の向こうからやってきた神さまのお話。
 その昔、この星に神さまがいた。人を生み出し自然を愛した神さま。
 だけどその神さまは殺され、彼女の子宮が死後の世界になったんだって」

「この星の原祖神はある者に殺された。そのある者は人々を虐げた。
 何百年何千年も人々は絶望に打ちひしがれた。
 やがて世界は諦念に包まれ悪徳が支配した」

「神殺しのある者は遠く遠く空の果てからやってきた。
 かつてはどこかの神さまだった。だけど……
 その星の人々は神さまを顧みず、殺戮と欲望の宴に明け暮れ……
 怒った神さまは星を滅ぼした。
 悪意を悪意で滅ぼした時、深淵は深淵に呑まれたの。
 荒れ果てたふるさとを捨てた神さまはこの星に目をつけ、人々を苦しめ続けたの」

「怒れる神殺しの神はこの星の勇士に倒された。
 彼は原祖神の胎内で永劫の罰を受けている。
 原祖神の名はグーリエ。かつてこの星の命を生み出した偉大な母神。
 神殺しの神の名はドグマ。遠い遠い星を治めた唯一神。
 これでいにしえのうたはおしまい」



彼の者は"かなしみ"に生きた。
彼の者は自らの行いに無自覚的であった。愛憎の果てに自らの肋骨を、手足を、胴体を、顔の皮を彼の者は捧げた。
彼の者は己の内に矛盾を見た。ソフィアとフィリアを作り出し、二律背反が癒される日を願い、神と人のかすがいをこの世に生み落した。
彼の者は変容を目指した。すなわち彼の者は人間を目指した。娘は死んだのだ。彼の者は死すべきものになりたかったのか。自らを打ち破った人間、その不可解を理解するために。
真実を知った者は去らねばならない。娘は死んだ、そして神も死ぬ。

「お前と共に再生したこの星は、歓びに満ちていた」
「総てが失われる今、初めて知った……娘よ、我はお前を愛していた」

【サーヴァントとしての願い】
最早この身に願いは無い。
ただ、叶うのならば。
娘は安らかに逝けたのか、それだけが知りたかった。





【マスター】
フィア@ウィザーズ・ブレイン

【マスターとしての願い】
元の世界へ帰り、マザーコアとしてこの身を捧げる。

【weapon】
なし

【能力・技能】
魔法士:
大脳に生体コンピュータ「I-ブレイン」を持ち、物理法則を改変して戦う生体兵器。マザーコア特化型の天使である彼女は戦闘能力に乏しい。

同調能力:
自身を中心とした一定の半径内に情報的な支配領域を広げ、領域に触れた対象の全存在情報を取り込み、情報の側から支配する。人を取り込んだならばその動きの一切を封じ、物質を取り込んだならば原子配列の変換を初めとした自由度の高い操作が可能。
ただし支配領域は球形上かつ触れる者全てを無差別に取り込むため、遠隔の対象を選別して取り込むことには向かない。また、領域内の情報量があまりに多くなると自動的に発動がキャンセルされる。取り込み限界は常人やNPCならば20人程度。空間や無生物ならば無尽蔵。
魔力によって構成されるサーヴァントに対しては上手く働かず、同調して取り込むことはできない。

【人物背景】
全てが崩れ去った未来において、生に縋る人類が生み出した希望のための生贄。ただ殺されるためだけに生み出された『天使』の少女。
原作一巻、軌道エレベーター内で錬と再会した直後より参戦。

【方針】
帰りたい。誰かを傷つけることは、したくない。


167 : 名無しさん :2016/11/25(金) 22:18:48 azxomYGk0
投下を終了します


168 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/25(金) 22:58:22 9PfKJjWE0
>>155

いえ、こちらこそ投下終了宣言を出すのが遅れてしまい、
誠に申し訳ございませんでした。


169 : ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:31:19 6tIR3a3U0
投下します


170 : 真紅&セイバー ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:32:21 6tIR3a3U0

アメリカ西部に位置する都市、スノーフィールド。
その中心部から離れた西部の森林地帯にささやかな屋敷が立っている。
その屋敷の主人は偏屈者であり、人と関わるよりも様々な国から骨董品を集める事こそを至上の喜びとする収集狂(コレクター)の類であった。
朝は紅茶を、夜は酒類を嗜み、貴重品に囲まれて暮らし、
さらに金の無駄だと使用人も雇わず、収集の為に何か月も家を空ける、言ってしまえば不用心極まる社会不適合者としてそのNPCは設定されていた。
その設定の通りに、かの屋敷は今現在無人である。
それでも今まで空き巣の類が近寄る事が無かったのを鑑みると、屋敷の主人の考えはあながち的外れではなかったのかもしれない。

「あのな、マスター。言っておくがオレは沸点がそこまで高い方じゃない」

そんな無人であるはずの屋敷、その二階のバルコニーで向かい合って座る二人の少女。
無論、空き巣や強盗などの下賤な輩ではない。

「お茶を淹れるのも騎士の嗜みでしょう?セイバー」

「百万歩譲ってそうだとしても、オレがいれなくても良いだろうがよ……」

通常の椅子にクッションを乗せて座り、優雅にティーカップを傾けるゴシックドレスの少女。
それに不満を漏らすのは腹部を晒したチューブトップの上から赤のレザージャケットを羽織り、ホットパンツ姿の少女。
金髪に赤を基調とした服装等、容姿は似通っているが雰囲気はお嬢様と不良少女と言うこれ以上なく不揃いな二人である。

「仕方ないでしょう、ここにはあなたと私の二人だけしかいないのだから
まったく、偶然nのフィールドで真っ新なトランプを見つけたと思ったら、こんな所に連れてこられて、せめてのりが居ればもっと美味しいお茶を……」

「んなもんは小間使い一人用意せずに異国に行くこの屋敷の主人に言え」

そう言いながら、セイバーと呼ばれた少女は三白眼で自身のマスターを見る。
まさかこんなマスターを宛がわれるとは予想だにしていなかった。
叛逆の騎士たる自分が、人間ですらない人形に呼ばれるなど。
究極の少女(アリス)を目指す少女人形。誇り高き薔薇乙女(ローゼンメイデン)第五ドール・真紅。
それが己のマスターの名であるとセイバーは彼女から聞いていた。

「貴方だって、この屋敷のお金を勝手に使って食べてるでしょう
それは私も食べてるから良いとして、その上にウィスキーやワインだって好き勝手に飲んでるじゃないの
だったら主のお茶くらい用意しても良いとは思わない?」

セイバーは真紅の返答に難しい顔をする。
サーヴァントには本来魔力供給が十分になされていれば食事や睡眠は必要ない。
そして存在自体が怪奇現象もとい神秘の塊の様な存在である真紅は十分な魔力をセイバーに提供していた。
にもかかわらず、セイバーは好奇心から勝手に屋敷の主人のお金を使ってデリバリーを頼んで飲み食いしていた。
しかし、だからといってマスターのお茶くみする必要はないはずだ。

「美味しい淹れ方を教えてあげるから、そう怒らないで欲しいわね
お茶をうまく淹れられる王様が居たっていいと思うのだわ」

「…考えといてやる、それよりもだ」


171 : 真紅&セイバー ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:33:27 6tIR3a3U0

アメリカ西部に位置する都市、スノーフィールド。
その中心部から離れた西部の森林地帯にささやかな屋敷が立っている。
その屋敷の主人は偏屈者であり、人と関わるよりも様々な国から骨董品を集める事こそを至上の喜びとする収集狂(コレクター)の類であった。
朝は紅茶を、夜は酒類を嗜み、貴重品に囲まれて暮らし、
さらに金の無駄だと使用人も雇わず、収集の為に何か月も家を空ける、言ってしまえば不用心極まる社会不適合者としてそのNPCは設定されていた。
その設定の通りに、かの屋敷は今現在無人である。
それでも今まで空き巣の類が近寄る事が無かったのを鑑みると、屋敷の主人の考えはあながち的外れではなかったのかもしれない。

「あのな、マスター。言っておくがオレは沸点がそこまで高い方じゃない」

そんな無人であるはずの屋敷、その二階のバルコニーで向かい合って座る二人の少女。
無論、空き巣や強盗などの下賤な輩ではない。

「お茶を淹れるのも騎士の嗜みでしょう?セイバー」

「百万歩譲ってそうだとしても、オレがいれなくても良いだろうがよ……」

通常の椅子にクッションを乗せて座り、優雅にティーカップを傾けるゴシックドレスの少女。
それに不満を漏らすのは腹部を晒したチューブトップの上から赤のレザージャケットを羽織り、ホットパンツ姿の少女。
金髪に赤を基調とした服装等、容姿は似通っているが雰囲気はお嬢様と不良少女と言うこれ以上なく不揃いな二人である。

「仕方ないでしょう、ここにはあなたと私の二人だけしかいないのだから
まったく、偶然nのフィールドで真っ新なトランプを見つけたと思ったら、こんな所に連れてこられて、せめてのりが居ればもっと美味しいお茶を……」

「んなもんは小間使い一人用意せずに異国に行くこの屋敷の主人に言え」

そう言いながら、セイバーと呼ばれた少女は三白眼で自身のマスターを見る。
まさかこんなマスターを宛がわれるとは予想だにしていなかった。
叛逆の騎士たる自分が、人間ですらない人形に呼ばれるなど。
究極の少女(アリス)を目指す少女人形。誇り高き薔薇乙女(ローゼンメイデン)第五ドール・真紅。
それが己のマスターの名であるとセイバーは彼女から聞いていた。

「貴方だって、この屋敷のお金を勝手に使って食べてるでしょう
それは私も食べてるから良いとして、その上にウィスキーやワインだって好き勝手に飲んでるじゃないの
だったら主のお茶くらい用意しても良いとは思わない?」

セイバーは真紅の返答に難しい顔をする。
サーヴァントには本来魔力供給が十分になされていれば食事や睡眠は必要ない。
そして存在自体が怪奇現象もとい神秘の塊の様な存在である真紅は十分な魔力をセイバーに提供していた。
にもかかわらず、セイバーは好奇心から勝手に屋敷の主人のお金を使ってデリバリーを頼んで飲み食いしていた。
しかし、だからといってマスターのお茶くみする必要はないはずだ。

「美味しい淹れ方を教えてあげるから、そう怒らないで欲しいわね
お茶をうまく淹れられる王様が居たっていいと思うのだわ」

「…考えといてやる、それよりもだ」


172 : 真紅&セイバー ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:34:01 6tIR3a3U0

食い下がる真紅にそっけなくそう言って頭を掻いた後、セイバーは本題に移る。
どうでもいい紅茶の事よりも余程重大な事だ。

「マスター。お前はオレと会ったとき究極の少女(アリス)とやらになることが
聖杯にかける願いって事でいいのか?」

その言葉に微妙な顔をする真紅。
どういう事だと問うと、静かに彼女は口を開いた。

「一点の穢れも無い少女をお父様は欲した、それに私たち姉妹は答えられなかった
お父様は私達を決して認めて下さらず、ただ悲しんだ
だから私は、ドールズはお父様に愛されるために、アリスになるためにローザミスティカを奪い合う事を選んだ」

「父上、ね」

「一番上の性悪な姉が言っていたわね。私達は絶望するために生まれてきたのかもしれない、と」

自嘲気味に言う真紅の小さな顔は、儚げだった。
その後も彼女は語る、自分が行ってきたアリス・ゲームの概要を。
七人の姉妹が揃い生まれた時から課せられた残酷な戦いを。
そしてひとしきり語り終わると、でも、と真紅は言う。

「私は必ず私なりのやり方で、アリス・ゲームは終わらせて見せる」

「………そうか」

力強い眼光で真紅はそう締めくくった。
今まで黙って話を聞いていたセイバーは短く答えた後に天井を仰ぎ、少し考え返答する。

「よし、オレのマスターの願いとしては及第点をくれてやる。
狙う相手もお前の望む通り、サーヴァントに絞ろう。精々任せておけ」

先ほどまでの研ぎ澄まされたナイフの様な雰囲気とは打って変わった様な譲歩だった。
気にはなったが、真紅は敢えて問わなかった。
モードレッド。騎士王にただ一人叛逆した円卓の騎士。
きっと『お父様』の下りが彼女の琴線に触れる何かがあったのだろう。

「ありがとう。セイバー…いいえモードレッド。あなたも、現れた時に言っていた願いを叶えられるといいわね」

「無論だ。オレは聖杯を獲り、必ず選定の剣に挑戦する」

どこまでも自信満々に言い切るサーヴァントに真紅は笑みをこぼす。
そして、笑みを浮かべたまま椅子からぴょんと飛び降りるとセイバーの手を取った。

「それじゃあまずマスターとして紅茶の淹れ方を教えるから来なさい」

「まだ言ってんのかよ」

真紅の頭上でセイバーはくさしていたが、先ほどまでとは違い呆れ半分で承諾していた。
何だかんだ手を引かれキッチンへと向かっているのがその証左と言えるだろう。
手を引きながら、真紅は考える。

(仮に聖杯戦争に勝ちぬいて聖杯に願ったとして、アリスゲームは終わるのかしら)

セイバーの手前聖杯に願うことそのものを否定するのは憚られたが、聖杯で願いを叶えたとしてそれで水銀燈は納得するのだろうか。するわけがない。
欠落するのは、ジャンクになるのは前ほど怖くは無い、それよりも己のやり方を貫き通せない方が、神聖なアリスゲームが穢れる方が今の彼女には怖かった。
しかし、それでも姉妹全員そろってアリスゲームを終わらせられるかもしれないと言う選択肢は余りにも真紅にとって甘美な誘惑だった。
故に僅かに迷う。迷いながらも見極めなければならない、この聖杯戦争そのものを。
僅かな迷いさえ振り切れられるように。

(どう転ぼうと…絶対に帰るから、待っていて、ジュン)


闘うのは怖くは無い。
だって彼女たちにとって、生きる事とは闘う事だから。


173 : 真紅&セイバー ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:34:59 6tIR3a3U0

?



運命の螺旋を回すための螺子は今ここに刺され、二人の少女は出会いを果たした。
さて、後は―――――





巻きますか?巻きませんか?


174 : 真紅&セイバー ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:51:02 6tIR3a3U0
【クラス】
セイバー

【真名】
モードレッド

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

魔力放出:A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
いわば魔力によるジェット噴射。
絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。

戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

カリスマ:C-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
モードレッドのカリスマは国家運営をできる程のレベルではないが、体制に反抗する際にその真価を発揮する。

【宝具】
『燦然と輝く王剣(クラレント)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アーサー王の武器庫に保管されていた、「如何なる銀より眩い」と称えられる白銀の剣。
王の威光を増幅する機能、具体的には身体ステータスの1ランク上昇やカリスマ付与などの効果を持っている。
しかし、モードレッドはこの剣を叛乱を起こした際に強奪した為に、王として認められているわけではない。
その為にランクは本来のBからCへと低下し、各種ボーナスも機能をしていない。

『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:800人
「燦然と輝く王剣」の全力を解放した形態。
この剣は王ではないモードレッドが手にしても本来の機能を発揮しないが、その増幅機能そのものは生きている。
これを利用し、彼女の父への憎悪を魔力という形で剣に叩き込み、増幅させて赤雷として撃ち放つのがこの宝具である。
真名解放時には剣を構えた彼女を中心にした一帯が血に染まり、白銀の剣も邪剣へと変貌する。

『不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:1人
モードレッドの顔を隠している兜。
真名及び宝具や固有スキルといった重要な情報を隠蔽する効果があり、マスターであっても兜をかぶっている間は見ることができない。
また、戦闘終了後も使用していた能力・手にした剣の意匠を敵が想起するのを阻害する効果を持っている。
ただし、ステータスやクラス別スキルといった汎用的な情報までは隠せない他、この宝具の使用中は我が麗しき父への叛逆を使用できない。
この兜は鎧とセットの状態で『脱いだ』時に初めてステータス情報が開示される。
その為、鎧を外して現世の衣類を身につけていても、武器を手にしていなければ兜がなくても隠蔽効果が継続する。
単純な防御性能も高く、物理的な攻撃に対する強度はもちろん、魔術や毒などに対しても一定の防御を発揮できる。

【weapon】
燦然と輝く王剣を用いた、実戦的な剣術。

【サーヴァントとしての願い】
選定の剣に挑戦する。

【人物背景】
円卓の騎士の一人にして、父であるアーサー王に反旗を翻した「叛逆の騎士」。

【マスター】
真紅@ローゼンメイデン(漫画版)

【マスターとしての願い】
アリスゲームを終わらせる……?

【weapon】
『薔薇の尾(ローズテイル)』
硬質化させた大量の薔薇を発射する。

『杖』

【能力・技能】
前述の薔薇の力だけではなく、パンチも強い。

【人物背景】
家を空けがちな資産家が収集したアンティークというロールで連れてこられた。
漫画版第一期より参戦。

【方針】
聖杯狙いを装いつつ、この聖杯戦争の真意を見極める。


175 : ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/25(金) 23:52:45 6tIR3a3U0
投下終了です、ブラウザの調子が悪く、連投と投下の遅延申し訳ありませんでした


176 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 23:54:31 WoSKh.8g0
11月も末なので初投下です


177 : Ace HUMAN ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 23:55:48 WoSKh.8g0
開発されて久しいスノーフィールドの街にはあらゆる地方、地域、国からの移民が多い。
街を歩けば多種多様な肌の人間が行き交っており、さながら人種のバーゲンセールであるかのようだ。
その事実はスノーフィールドの発展と寛容さを何よりも雄弁に物語っている。
しかし、だ。
そこにあるのは、良い点ばかりではない。
何せ、人が沢山集まるという事は、その分、悪い人間も集まるという事である。
中には悪いでは済まない極悪人が紛れ込んでいる事さえあるのだ。
その中でも代表的と言えるのは、やはりマフィアであろう。
彼らには黒い噂が絶えず、街の不安要素として常に存在し続けている。
そんな彼らを疎ましく思うスノーフィールド住人は決して少なくはない。
だが、ただの平凡な一市民である彼らに、マフィアへ文句を言える度胸はないのだ。
その事をこれ幸いとばかりに、私腹を肥やすべく、本日もマフィア社会の裏で活動しているのである――。
さて。
郊外近くに位置する、とある事務所。
ここはマフィアの活動拠点の一つであり、主に武器庫としての役割を担っていた。
銃や爆弾と物騒な物をたんまり仕舞い込んだ建物の玄関の両脇には、二人の男が立っている。金髪の男と、彼よりも幾分年の若い男。二人共マフィアの構成員であり、見張りを任されているのだろう。
彼らが暇そうな様子で、本日何本目かの煙草に火を付けた時、一人の男性が事務所前を訪れた。
ハンチング帽を頭に被ってバッグを背負い、ニコニコとした笑顔の特徴的な中年である。
見た所、これからピクニックにでも出かけるかのような出で立ちであり、マフィアの事務所に用があるとは思えない。
二人の見張りの内、金髪の方が前に出て、帽子の男に問うた。

「おい、オッさん。此処に何の用だ?」
「いやぁ、別に大した用じゃないんだけどね」

マフィアの男の凄んだ問い掛けに対し、帽子の男は困ったようにして後頭部を掻きつつ、「ははは」と笑って台詞の間を置いた。
そのおっとりとした雰囲気に、見張りの二人は「やっぱり来る所を間違えてるんじゃねぇのか?」と考える。
しかし、次に彼が放った台詞は予想外の答えであった。

「此処には武器があるんだろう? それを全部譲ってくれないかな?」
「はぁ?」

見張りの二人は揃って呆れたような声を出した。
だが、次の瞬間には彼らの顔は激高に赤く染まり、眉間に皺が寄った。
先程よりも一段低い声で、二人は帽子の男に語り掛ける。

「おいおい、巫山戯るなよオッさん。どうしてオレたちが見ず知らずのお前に武器を渡さなきゃいけないんだ」
「そもそも、何処でその情報を知りやがった。場合によっちゃあ、生きて返さねえぞ?」

一般人ならば聞くだけで失禁しかねない程に凄味のある脅し。
しかし、それを真正面から受けても、帽子の男は相変わらず困ったような表情をするばかりであった。
顎に手をやり、暫く黙した後、

「しょうがないなあ……」

と、言いつつ、帽子の男は背中に背負っていたバッグを下ろし、ジッパーを開いた。


178 : Ace HUMAN ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 23:57:51 WoSKh.8g0
銃声と共に、帽子の男の眉間を弾丸が貫いた。
金髪の男が懐から銃を素早く抜いて、発砲したのだ。
着弾の衝撃により、帽子の男は仰向けに倒れる。間違いなく即死だ。
ハンチング帽は彼の頭から離れ、風に乗り、遠くの方まで飛んで行った。

「おっ、おい!? 何も此処で撃ち殺さなくても……」

後ろに居た若い方の見張りが、慌てた様子で叫んだ。
いくら、此処が郊外の近くとは言え、付近には人が居る。警察でも呼ばれたら、面倒だ。
慌てる彼に対し、銃殺を終えたばかりの男は、冷や汗を掻きつつ、しかし落ち着いた口調で話す。

「馬ァ鹿。よく見てみろ」

金髪の男は未だ煙が棚引く銃口で、帽子の男、もとい中年の男の死体――バッグに半ば突っ込まれた手を指した。
あっ! と若い男は驚きの声を上げる。
バッグの中に入っていたのは、軍用ナイフであった。サイズこそ包丁程度の大きさであるものの、その鋭さからは危険性しか感じられないナイフである。

「まさか……こいつ、コレで――」
「オレたちを襲う……いや。殺すつもりだったんだろうな」

煙草を投げ捨てつつ、金髪の男は中年の男の死体に近づく。

「刃物一つで、銃火器をたんまり持ったマフィアに喧嘩を売ろうしたとは、随分クレージーな野郎だぜ。――おい、運ぶぞ」

そう言って、金髪の男は若い男に向かって、招き寄せるようなジェスチャーを取った。
先程も言った通り、現在彼らの居る場所が郊外とは言え、いつ『銃声が聞こえた』という通報を受けた警察がやって来るか分からない。ならば、さっさと死体を処理しておくべきだ。
呼ばれた男は中年の男の死体に近づいた。

「何処に運ぶんだ?」
「どうせ此処は森に近いんだ。そこに埋める事にしよう」

そんな会話をしつつ、金髪の男は中年の男の上半身を、若い男は男性の下半身を抱えるようとした。
と、その時。
あり得ないことが起きた。

「えっ」

中年の男の上半身を持ち上げようとした男の喉が、貫かれた。
何によって?――軍用ナイフによって。
誰の手によって?――死んだはずの中年男性によって。
喉仏に走った激痛に、思わず身を身を引く金髪の男。
若い男も、ワンテンポ遅れて事態の異常性に気付き、同じく身を引いた。
彼らの手から離れた中年の男の身体は地面に落ち、強かな着地音を響かせた。

「痛いなあ」

声がした。他ならぬ、中年の男の声だ。
先程死んだはずの彼は、背中を摩りつつ起き上がる。
――馬鹿な。確実に頭を撃ち抜いたはずなんだぞ?
クエスチョンマークが、金髪の男の脳内を巡る。
喉から血をダラダラを流しながら顔を蒼白に染める彼を見て、中年の男は死ぬ前と同じ様な笑みを浮かべながら「あちゃー」と呟いた後、

「不意打ち失敗かあ。私もまだまだ甘いねぇ」

と言った。
ビキリ――と、金髪の男の血管が、怒りによって音を立てる。

「ゲホッ! てめぇ、ぶっ殺す!」

喉から湧いた血を吐き捨てた後、銃を構え、先程と同じくトリガーを引く。
今度は一発では終わらせない。弾が切れるまで撃ち続けた。
だが――それでも中年の男は死ななかった。
頭に、胸に、腹に、身体の何処を撃っても、死ぬどころか怯みすらしない。
彼は弾丸を受けながら、金髪の男に近づき、ナイフを横薙ぎに振るった。
先程の不意打ちとは違い、力を込めた一閃――金髪の男の首は、胴体から離れた。
力を失った男の手から、銃が落ち、それに覆い被さるようにして身体が倒れる。


179 : Ace HUMAN ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 23:58:50 WoSKh.8g0
彼の死体に中年の男は近づき、死体の下敷きになった銃を引っ張り出した。

「全弾使っちゃってるねぇ……勿体無い。予備の弾は……」

そう言って、中年の男は死体のスーツのポケットを漁る。
そんな彼の喉元を、鉛色の物体が走り抜けた――にも関わらず、平然と振り返る。
そこには、熱湯を浴びせられたかのように顔を真っ赤にしたもう一人の見張りが居た。

「よくも……よくも、俺の仲間を殺りやがったな!」

そう叫んで、彼は改めて引き金を引く。

「あー、待って待って。待つんだ。それ以上撃つのはやめなさい。弾が無駄になっちゃうから」

両の手の平を立てて、制止のポーズを取る中年の男。
だが、既に半狂乱状態に陥って居た見張りは、意味不明な叫びと共に、銃弾を何度も撃ち放った。
それでも、まだ、中年の男は死なない。
弾丸の雨を浴びながらずんずんと突き進み、先程と同じように首を斬り落とした。

「あー、もう、言ったじゃないか」

最早確認するまでもなく、若い男の銃の中身が空である事を知る中年の男は、取り敢えずそれを拾って、金髪の男の銃と一緒にポケットへと仕舞い込んだ。

「どうやら予備の弾は持ってないようだね。まあ、彼らは見張りで本来撃つ機会はそんなにないから、必要ないんだろうけど」

そうボヤきつつ、中年の男は項垂れる。

「なんだ今の銃声は!?」「襲撃か!?」

事務所の中の騒ぎ声が、中年の男の耳元に届いた。
あれだけ何発も銃声が鳴ったのだ、気付かれない訳がない。
事務所の中からマフィアたちが、大挙をなしてやって来るのも時間の問題だろう。

「なにやら大ごとになってきたですね」

その時、中年の男と二つの死体しかない空間に影が降りた。
それは、学者帽を被り、白衣を肩にかけた、可愛らしい少女であった。
マフィアの事務所前は勿論、死体の転がるこの場所に、全くもって似合わない少女である。

「何なら、私が手伝いますです?」
「いや、いいよ。ここは私がやる」

少女からの提案に、中年の男は実に楽しそうな笑顔を浮かべながら返事をした。
どうやら、これからマフィアと交える一戦が楽しみらしい。
彼の返答に、学者帽の少女は不思議そうな顔をする。


180 : Ace HUMAN ◆As6lpa2ikE :2016/11/25(金) 23:59:45 WoSKh.8g0
「ここまで来て今更という感じがするですけど……何でマスターはマフィアから武器を奪おうと思ったんです?」

中年の男に向けて少女は問い、続けて補足の言葉を継ぎ足した。

「いや、これは別に、『武器なんか奪わなくても、私がマスターの武器になるです!』とかいう奉仕精神から来た疑問ではなくてですね。あくまで効率の問題です。
私だったら銃よりもよっぽど強い火力を素手で出せますし、そもそも、武器なんてその気になれば私の『魔法』でいくらでも作り出せるんですよ。この前、見せたですよね?」
「確かに、そうだねぇ」

中年の男は、少女の言う『魔法』を思い出す。
あれさえ使えば、わざわざマフィアに襲撃を仕掛けずとも、彼は銃や爆弾、どころか最新鋭の化学兵器さえ手に入れられるだろう。
しかし――、

「けど、アレは、君の『魔法』から作られた、『魔法少女』用の『魔法』の武器だろう?
その威力はそれこそ『魔法』のように高いんだろうけど、その分反動も大きいはずだ。
私みたいな『亜人』だと、『魔法』の銃を一発撃つだけで、肩が脱臼しかねない。
人間が作った人間用の武器が、私には丁度良いんだよ。だから、私は彼ら(マフィア)から武器を奪うのさ」
「……成る程、そういう理由ですか」

少女は腕を組み、納得したような表情をした。
中年の男の台詞はそれでは終わらず、「それに」と続く。

「今から彼ら(マフィア)と交える一戦は、私にとって、この世界でのSTAGE1だからね。誰の手も借りずに、自分一人でクリアしたくなるのは仕方のない事だろう? 私は戦う事が好きなんだ」
「そういう物ですかねー……」

かつて仕事仲間とチームプレイをしていた少女はこの答えには納得せず、かと言って否定もしないまま、そのように相槌を打った。

「今は戦えなくてフラストレーションが溜まっているかもしれなくて申し訳ないけど、あともうちょっとだけ我慢してね。
多分、サーヴァントと戦う事になったら、流石に君を頼ると思うから」

返答をそのように〆た中年の男は改めてナイフを構え、事務所に向かって行く。
だが、数歩進んだ時。何かを思い出した様子で、少女の方を再度振り向いた。

「そうだった、そうだった。アサシンちゃん、君に頼みたい事が一つあるんだけど良いかい?」
「私に出来る事ならなんなりと」
「帽子を作ってくれるかな?」
「帽子ぃ?」

マフィアとの衝突前の緊迫したシチュエーションで何を頼まれるのかと思っていた少女は、予想外の答えに対し、普段の理知的な態度から大幅に外れたリアクションを取ってしまった。

「さっき撃たれた拍子に何処かに飛んで行っちゃったみたいでねえ。……作れるかい?」
「そりゃまあ、出来ますですけど」

少女はそう言って、その辺に落ちていた――森の方から転がって来たのであろう――枯れ枝を何本か拾い、それらを碁盤の目のように交差させた。

「格子を帽子に」

少女がそう呟くと同時に、格子状に組み合わさっていた枯れ枝は、ハンチング帽へと変化していた。
これこそが少女の『魔法』の効果である。

「何度見ても便利な『魔法』だね」

感心したかのようにそう言いつつ、中年の男は少女から帽子を受け取って、それを頭に被せた。

「よし」

気合のスイッチが入ったようである。
今度こそ彼は迷いない足取りで、事務所の中からぞろぞろと湧いて出て来ているマフィアたちの方へと向かって行く。
一瞬、多勢に無勢な彼の身を案じた少女であったが、「不死身の人間にそんな心配はするだけ無駄ですね」と自分自身を鼻で笑った。
外に出て来たマフィアたちを皆殺しにし、そのまま事務所へと入って行った中年の男が、武器が詰め込まれた鞄を両脇に抱えて帰って来たのは、これから数分後の事であった。


181 : Ace HUMAN ◆As6lpa2ikE :2016/11/26(土) 00:00:26 M9srQU2s0
【クラス】
アサシン

【真名】
物知りみっちゃん@魔法少女育成計画ACES

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力B 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具D

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。
しかし、攻撃時に気配遮断のランクは下がる。

【保有スキル】
魔法少女:A
魔法少女である。ランクが高いほど高水準の魔法少女となる。
魔法少女は人間離れした戦闘能力と視覚聴覚を得、排泄や食事などの新陳代謝行為を一切行わなくて良くなる。
また、疲労の蓄積する速度が人間よりも遥かに遅く、長期の不眠不休にも耐えられるスタミナと常人離れしたメンタルを持つ。
更に、固有の魔法を一つ使える。
アサシンの場合それは宝具となる。
そしてアサシンは魔法少女の状態で呼び出されているため、このスキルの発動は阻害できない。

心眼(真):B
プロフェッショナルの魔法少女として数多の修羅場をくぐったことで得た洞察力。
窮地において、戦況から活路を見出す戦闘論理。

【宝具】
『手にした物を別の物に変えられるよ』
ランク:E〜A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

手にした物の名称を一文字だけ別の文字に入れ替え、違う物に変換できる魔法。
対象物を手に持った状態で「〜を〜に」と唱えることで発動する。
これによって新たに生み出された物は、物体それぞれに応じたランクの宝具並みの神秘を有する。
呼称は限定されておらず、連続しても仕様できる為、本人の知識と発想、機転次第で臨機応変に武器や道具を作り出せる魔法である。

【weapon】
なし。
「無手の兇手」である彼女は、何も持たずに戦場に出向き、何も持たずに戦場から帰る。

【人物背景】
学者風のビジュアルをした魔法少女。
しかし、その見た目に反し、実際はバリバリの戦闘員である。
魔法の国の人事部門に属しており、ある魔法少女の元で、表に出せないような後ろ暗い仕事を担当している。
理知的な常識人であり、決して極悪人というわけでなく、けれども善人というわけではない。与えられた仕事をキッチリこなし、起きた出来事をキッチリ報告する真のプロフェッショナルである。

【マスター】
サミュエル・T・オーウェン(佐藤)@亜人

【weapon】
多数の銃火器、刃物類

【能力・技能】
・近接戦、銃撃戦における卓越した戦闘センス。
SATを相手に、彼は殆ど一人で勝利を収めた。

・亜人
何があっても絶対に死なない。
例え身体を細切れの挽肉にされようとも、それから瞬時に復活できる。
唯一の弱点は麻酔銃であり、これを打たれると行動不能に陥る――が、佐藤は麻酔銃を打たれた瞬間に自殺(リセット)する事でこの弱点をほぼ克服している。
また、一部の亜人はIBMという一般人には不可視の黒い幽霊(ジョジョのスタンドのようなもの)を出す事が出来、当然彼はその一部の亜人に該当する。

【人物背景】
ハンチング帽が特徴の中年男性。
ニコニコとした親しみやすい表情が印象的だが、その実中身は凶悪にして狂暴。
他者に対する共感能力が決定的に欠如しており、他人を傷つける事に一切の抵抗がない。
アメリカ海兵隊でベトナム戦争を経験した後、その最中に起こした不祥事で軍を除名。
その後、日本において実験動物として扱われていた亜人を救い、亜人から人間への革命と称してテロ行為を行うようになる。
しかし、それは建前のような物であり、実際の所、彼は人が死に、自分も身の危険に晒される状況を楽しんでいる部分が大きい。
言うならば、佐藤は単なる戦闘狂なのである。

【マスターとしての願い】
戦いを楽しむ。


182 : 名無しさん :2016/11/26(土) 00:00:55 M9srQU2s0
投下終了です


183 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:00:38 Gtv43JLA0
投下をします


184 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:01:30 Gtv43JLA0



静かな夜だった。
空には月と星。地には天と対称するように眩く灯る人口の煌めき。
アメリカ、スノーフィールド。ここは地球の未来における都市の形を理想とした街。
とはいえそこに住む人々までもが未来を見て過ごしているわけではない。
大半の者は今を生きるのに懸命で、それは時代が進んでもそう大きく変化もしないだろう。
今日もまた仕事を終えて家に帰っている時刻に、その少女もまたひとり路地を歩いていた。

一言に言ってしまえば、宝石のような少女だった。
傍を通り過ぎたら振り返って二度見したくなる美貌。
思春期の愛らしさを理性という光で彩った、完璧な仕草。
生まれて持った天性の輝きを放つ原石を、時間をかけて丹念に研磨させて黄金の比率を保った最高純度の紅玉(ルビー)。
日本人だが一部北欧の血が混ざってる顔立ちは、外様のはずのスノーフィールドでも異物感を与えない。
何より、慣れぬ異国への萎縮が一切見られない少女自身の堂々たる振る舞いに街も諸手を挙げて受け入れていた。
遠坂凛

しかし夜更けにうら若い少女一人が道で歩いているのは、些か無防備に見える不安な場面でもある。
日夜犯罪の報道がなだれ込んでくる銃社会のアメリカだが、治安という市民移住に重要な案件にスノーフィールドは力を入れている。
人通りが多い地域の警備は万全を期しており街の平穏は守られているとはいえ、防犯を心がけるのに越したことはない。
当の本人も足取りは普段通りに見えて僅かに遅く力みがあり、危機意識が働いているとわかる。
……尤もそれは。一般的な子女が抱く危機意識とはまったく違う意味合いが込められていたが。


「……はあ。懐かしみたくもないのに、しっくりきちゃうものなのね。この空気って。
 ヘンに張り詰めてるっていうか」

ため息を吐いた遠坂凛は、この空気を知っていた。
人世の裏に潜む魔術師である少女にとって、あまりに馴染んだ雰囲気。
魔力の充満とはまた違う、街の空気そのものが入れ替わったとしか思えない違和感がある。

「人生に二度体験する羽目になんてね。セイバーと同じかあ。
 そういや、綺礼もそうだったっけ」

聖杯戦争。
奇跡の願望器を求めて七人のマスターとサーヴァントが殺し合う魔術儀式。
マスターとは魔術師。神秘を修め真理を目指す魔を統べる術を操る者。
サーヴァントとは英霊。過去から未来の人類史に功績を残した偉人を現在に呼び起こす超人的な使い魔。

その知識を、凛はこの舞台に招かれる以前から、ずっと前から知っていた。
何故ならばといえば、他ならぬ彼女の家系こそがその儀式を成立させた立役者。
魔術師、遠坂という『冬木の聖杯戦争』御三家の一であるからである。
数十年周期を経て都合四度行われてきた大儀式に、彼女もまた若き当主として五度目の戦いに身を投じた。
聖杯を勝ち取りこそしなかったものの、聖杯戦争の生還者として彼女は戦い抜いたのだ。


185 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:02:25 Gtv43JLA0


「けど一体なんなのよこれ……冬木とは別の聖杯戦争?誰に断ってこんなこと仕出かしてるのよ。
 しかも十五組のマスターってなによ、ていうか電脳空間ってなんなのよ……!ああまずい大声出しそうだった」

しかしその知識は、『彼女の知る聖杯戦争』のものであって、この地で行われようとする聖杯戦争とは違った形態だった。
だから余計に混乱する。正統な魔術師である凛にとって、今の状況はあり得ないと言う他なかったのだ。

「……無様ね、凛。そうじゃないでしょ」

今すぐ大声を出して抗議したい感情を頭の中で抑えるうちに、気付けばここでの自分の家に着いていた。
それなりに豪邸だが西洋式である元いた遠坂邸とは趣の違う、知らないはずの家。
日本の建築風だが完全な和風の屋敷というわけでもない。異民の受け入れに寛容なスノーフィールドとはいえ、建築の文化そのものが違っているのはかなり珍しい。
自分の家ではないここの違和感が、思えば最も強かった。
ホームシックを憶えるわけでもない。ただやっぱり凛にとっての帰る場所とは遠坂の家……よりも先に浮かんだ場所だった。

参加状も拒否権もなしに強制連行された事、頭に勝手に記憶を書きこまれた事、
電脳という神秘も魔術もない空間が舞台とかいう事への諸々の主に怒りの感情は一端、ひとまずは置いといて。
かつて聖杯戦争の名を冠する儀式に、まさに当事者として関わった自分が再び呼び込まれた意味をまず考える。

経験がある自分を意図して選んだというならまだ楽だ。問答無用でぶっ飛ばせばいい。
手袋を投げたのはあっちなのだから、こっちには受け取って拳を振り上げる権利がある。

ただ無作為に選んだとしたら、それはもう最低だ。
仮にも聖杯戦争なのだ。宝くじを引くような感覚でランダムに参加者を引っ張る真似をする輩なんて全魔術師への冒涜、宣戦布告に等しい。

「……あ、いやいたんだっけ、たまたま引いたくじで一等賞当てたヤツ」

思い浮かべた顔。
呆れるほど未熟で強い、放っておけない少年を脳裏に起こす。
それだけで、不思議とスッとして揺らぎが消えた。

「ちょっとだけ待って、士郎。一発ぶん殴ってすぐ帰るから」

そうだ。ここで自分が消えているって事は、あいつの隣にいない訳だ。
隣に立って支えると言いながら自分が先にいなくなるなんて、最も忌避すべき事態だ。
歪で、愚かで、けど尊い、ある少年の誓い。
その目指す道がどれほど傷だらけになると分かったからこそ、傍にいると決めたのではなかったのか。

朝焼けの空で微笑んだ彼。
叶わぬ理想に心が磨り減って、それでもいいと笑うしかなかった背中。
自分を失ったあいつか、いつか自分を好きになれるようにと。

だったら、こんなところで躓いてなんかいられない。
この聖杯戦争がなんであろうと関係ない。必ず生き残り、帰ってみせる。

「まあ結局やることは変わりない、と」

聖杯戦争が願いの潰し合いであるのは知っている。
マスターもサーヴァントも譲れぬ願いがあり、ひとつしかない奇跡の席を賭けて戦う。
聖杯がろくでもないモノであると身に染みて理解してる。
ここの聖杯がそれとは違うとしても、それでもまだ疑念の方が強い。
その理屈を他人に押し付けるほど傲慢にはなれない。 それでも自分は遠坂凛なのだから、やっぱりこうするしかないのだろう。


186 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:02:51 Gtv43JLA0

「そうと決まったら、とにかくサーヴァントの召喚……か」


……正直に告白してしまうと、その時、少しだけ期待はしていた。


聖遺物なんて用意してるわけがない。召喚のために準備だって何一つ整えられてもいない。
だいたい前の戦争で召喚用、戦闘用にストックしていた宝石はあらかた消費してしまってるので用意のしようがないのだけど。

つまりは、だ。
何の保護も仕掛けもないまま、ただ遠坂凛(しょうかんしゃ)のみを縁とした簡素な召喚にするしかなく。
自分と縁のあるサーヴァントなんて一人しか思いつかないのが自然というもので。
そう思った瞬間、本当に屈辱的この上なかった現象を、悪くないなと考えてしまったのは、否定できなかった。

「まさか、ね。そう都合よくあてがってくれるわけないか」

声に隠しきれない嬉しさが乗っているのが自覚できる。
肩透かししないように努めて否定するが、どうしても期待してしまっている。
とりあえず調子のピークを間違えて失敗(うっかり)して天上から落とす羽目にならないように考えながら、家の扉を開けた。


「……?」

開けた途端、暖かい香りが鼻孔をくすぐる。
記憶にある限り、この家には凛一人しか住んでいない。
家に招く友人もいないではないかもしれないが、家主より先に上がらせる仲がいたとは思えない。
なのに居間に通じる通路には明かりが灯り、香りはその先から漂ってきている。
カタカタと小刻みな金属音は、きっと鍋が煮たって蓋が震えている音なのだろう。

―――そういや、白紙のトランプって……どうしたっけ?

この聖杯戦争で召喚されるサーヴァントの核となる触媒。
マスターが記憶を取り戻した時点で手に戻ると知らされたものを、どこに所持していたか。

そう気づいた瞬間、急ぎ足で駆け出した。
今の今まで感じなかった、家の明かりや魔力パスの繋がりも放って居間に飛び込んだ。
中にいる相手に、この中途半端な感情をぶつけたい理不尽さを抱えて。



「やっと帰ったか。女の子が夜に独り歩きとは感心しないな」

聞いただけで、相当な自信家だと分かる声だった。
それだけで声の主がどんな人物なのか理解できるだけの、強烈な我を嫌が応にも感じさせた。


187 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:03:25 Gtv43JLA0


台所から出てきたのは、癖の強い黒髪の青年だ。
端正で力強い表情だが格好は現代で見られる普通のもの。
だが既に英霊との邂逅を幾度も果たしている凛には分かる。
膨大な魔力の濃さだとか、そういった要素を抜きにして、こいつはただの人間とは違う、英雄だと確信させるだけの圧倒的な雰囲気を持っている。
持っているのだが……その両手で掴んでいるのが熱を持った土鍋というのが所帯じみた感想を持たざるを得ない。
とにかく声と合わせて、唯我独尊という言葉がこれ以上なく似合う男だ。
……思い出したくもない、金色の影が脳裏を掠めた。

「だが丁度いい。夕食も今できたところだ。早速食べるといい。美味いぞ」

そう言って、土鍋をテーブルの空いていた鍋敷きに載せる。
蓋を開ければたちまち湯気が沸き出して、中にある白い肌の君が湯船に漬かる姿を現す。
即ち、湯豆腐である。
昆布だしをベースにタレはゆずポン酢、薬味のみとシンプル。
それ故に作り手の腕如何でどこまでも進化する無限の可能性を秘めた料理。
これを出すということは己の腕に自信を持っているということである。

「いやちょっと待ちなさい。なんなの、あんた?」

料理に目が行って最初の疑問が頭から抜けてしまうわけもなく、凛は我が物顔で居座っている男へと向き直る。
それを聞いた男は、心底残念そうに顔を顰めた。

「なんだ。俺の名を知らんのか?世間に疎いにも程があるぞ、それでも俺のマスターか?
 ……まずいな、あまりの不憫さに涙が出てきたぞ」
「そういうことじゃないわよ!召喚も契約もすっぽかしてひとん家でご飯作ってるあんたの精神構造を聞いてんの!
 だいたいあんたの名前なんか知るわけな、―――?」

ズレた反応を返すサーヴァントに烈火の如く食いかかる凛だが、当の本人はどこ吹く風と返している。
それどころか何か同情した目で見てやがりすらいた。
『もっかい令呪使ってやりましょうか!』と我を忘れて握り拳を上げようとして―――頭に浮かんだ謎の文字に告げる言葉が失せた。

「あれ……?なんで私、あなたの名前、知ってるの?」

この男とは間違いなく初対面だ。
それなのに凛は男の名前を"既に知っていた"。 銘打たれた名が何を意味するかまでを、正確に。
偽の記憶を刷り込まれたように、ここの聖杯戦争の形式かと思ったがそうではない。
冷静になった頭で、改めて目の前のサーヴァントを見やった。

視線を受け止めたサーヴァントは、おもむろに緩く伸ばした右手の人差し指を頭上へと掲げる。
指先がちょうど天上の照明と重なって、まるで指そのもに光が灯っているように見える。

太陽の夜明け。
その男を介してるというだけで、ただの照明は神秘的な幻想という光景を凛に錯覚させた。


「……そう。俺の名は、天の道を往き、総てを司る男―――」


天に突き上げた光の中心で真名が名乗られる。
己が世界の真理、この世の正義そのものだと確信する絶対の自信を込めた声で。







「――――――天道、総司」




   ◆


188 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:03:56 Gtv43JLA0




「……なんで私のサーヴァントってこう、みんな無駄に家事が万能なのかしら」

振る舞われた料理を食べ終えて、ごちそうさまの次に凛がこぼしたのはそんな言葉だった。

「それは、つまり俺以外のサーヴァントとも契約していたということか?
 この聖杯戦争以前の、また別の聖杯戦争の生還者というわけか。詳しく聞かせてもらおうか」

自負するだけあって、ライダーのサーヴァント―――天道の料理は非常に美味であった。
一人は例外として、自分や士郎、桜でも分が悪いと危惧してしまうぐらいに。
まさかそれが自分との縁ではないだろうか。そういう意味でも危惧した凛だった。

「……ええ、そうよ。色々話し合うことはあるけど、まずそのあたりの話もしなきゃね。
 ていうか、最初にその話しようと思ったのにそっちが無理やり黙らせたんでしょ」
「おばあちゃんは言っていた……。食事の時は天使が降りてくる、そういう神聖な時間だ。
 食事時に物騒な話はするものじゃない」

凛が聖杯戦争絡みの話題を始めようとしても、この台詞と共に話を続けるのを禁じられてしまう始末。
これで料理が美味しくなかったら、ひたすら無言で豆腐を食べる時間を過ごす羽目になるところだった。

そのごく短い合流でもよく理解できたのが、この天道という男がひたすら自分本位の性格ということだ。
こちらの事情などお構いなし、己の都合を優先させる。そのくせまったく悪びれない。
凛もまた自我が強い方であり、当然気に食わない。なのでここでペースを掴むため本題を切り出した。

「じゃあ改めるけど、さっきも言った通り、私は一度聖杯戦争を経験してる。
 率直にいって、その聖杯は碌な物じゃなかった」

魔術師の家系としてサーヴァントを召喚し冬木の聖杯戦争に臨んだ事。
そこで知った聖杯の真実。マスターとサーヴァントがこぞって求めていた願望気が、人類を殺し尽くす呪いの塊でしかなかった事。
凛が知る聖杯戦争の概要と共に、かいつまんでそのあらましを説明した。

「だから、この聖杯戦争もまるきり信用はしてないわ。
 冬木のとじゃつくりが違うだろうから何とも言えないけど、胡散臭いのは変わりないし」

前提を伝える。
遠坂凛がこの舞台で動く上で最低限の方針を。
サーヴァントとして呼ばれる英霊は聖杯に願う理由がある。だからこそ使い魔に身をやつしてさえ人間に服従する。
聖杯の破壊を視野に入れるマスターに対して、目の前の英霊はどうするのか。
場合によれば、このサーヴァントとの契約を断たれかねない道。

「戦いがあるなら当然勝つ為に動くし、やるからには徹底的にやるけど、最終的に願いを叶える気はないわ。元々そんなもの、持ってないし。  
 少なくとも、これを作って無差別に人を集めるような奴は一発殴らなきゃ気が済まないわ。
 それできちっと元の場所に帰る。それでおしまいよ」

見た事もない誰かの為に、なんて正義感を振りかざすつもりはない。
凛とて魔術師であり、一般社会の人にとっては異端の類だ。人の道理を語れる立場にはいない。
目的は極めてシンプルだ。売られた喧嘩は買う。無論、勝つ。そして生きて帰る。
なにひとつ取りこぼさない事が凛にとっての勝利だ。


189 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:04:26 Gtv43JLA0



「なるほどな」

凛の話した内容にも反応薄く、机に手をついて天道は瞳を凝らした。

「つまり、元の世界に恋人や家族でも待たせているのか?」
「んにゃ!?」

まったく予想してなかった返しに、喉からなんか変な声が出た。

「な、なななに言ってんのよ!恋人とか、あいつとはそんなんじゃ……………………なくもない、とは言える、けど。
 ていうか!それは今関係ないでしょー!?」

ひとしきり喚き散らして、墓穴を掘った、と自覚した瞬間、顔から火が出るほど赤くなる。
取り乱した凛を見て天道はからかうでもなく、真剣な面持ちのままで続ける。

「おばあちゃんは言っていた……。人は人を愛すると弱くなる。けど、恥ずかしがる事は無い。
 それは本当の弱さじゃないから。弱さを知ってる人間だけが本当に強くなれるんだ」

傲岸不遜を地で行く台詞。
受け売りを前置きにして語る言葉はしかし、何よりも本人の底から出た言葉にも聞こえた。
自分がその強さを知っているが故なのだとでも言うように。

「弱さを受け入れてお前はお前の道を突き進む。それこそが何よりも大きなお前の強さだ。
 まあ、及第点だな」
「……それって、要するに私をマスターとして認めるってこと?」
「いつ俺がお前をマスターにしないと言った?
 俺を呼び出せるほどのマスターだ。世界を汚し、人を害する下衆な願いを持った愚か者の筈がない。
 他人に縋る願いなどない以上召喚されることはないと思っていたが……やはり俺が望みさえすれば運命は俺に味方するようだな」

凛を評価してるのか、自画自賛しているのか。
どちらが正解なのか分からなくなる。
どうやら天道もまた聖杯に託す願いはなく、凛の意に反する気もないらしい。

「そして喜ぶがいい。俺が来た以上、この聖杯戦争は俺達の勝利で確定だ。世界で一番強いのは俺だからな。
 お前の望みは、必ず現実のものになる」

そしてなんとも大それた宣言をした。
驚くべきことに、その言葉は本気だった。
本当に、この空の下で自分が最強なのだと疑っていない。
その姿勢を不思議と妄言だと感じさせない。それもまたこの英霊の強さの根源か。

「うわ、そこまで自分中心なんだあんた」
「おばあちゃんは言っていた。世界は自分を中心に回ってる。そう思った方が楽しいってな」
「ああ、それは納得。……けどあなた、本当に強いの?」

ほんの少し値踏みするような目線に、不機嫌そうになるライダー。
意外と子供っぽいところもあるらしい。

「……そうか。まずは直接俺の強さを見せつけるしかないようだな。
 その時こそ自分と契約した者が何者なのかを思い知るといい、マスター」
「ええ。期待してるわよ」

挑戦的な笑みに、柔らかい微笑で返す。
それが、二人の契約の本当の始まり。
願いの為ではなく、勝利の為に。しかし紛れもない誰かの為に戦いを始める。
閉じられていた箱庭の中で、新たなる運命の扉が今、開こうとしていた。


190 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:05:28 Gtv43JLA0



【クラス】
ライダー

【真名】
天道総司/カブト@仮面ライダーカブト

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運A 宝具A+
【マスクドフォーム時のパラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷D 魔力D 
【ライダーフォーム時のパラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力D 

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
 幻想種への騎乗の逸話がないライダーだが、下記スキルと「時の流れに乗る」という特例によりランクアップしている。

【保有スキル】
天の道:EX
 天の道を往き、総てを司る男。
 世の中で覚えておかなければならないただ一つの名前。
 ライダーを認識した相手は「天道総司」の真名を即座に認識する事になる。
 他のサーヴァントやマスターにすら効果は発揮されるが、「仮面ライダー」としての能力は明かされず、
 スキルや宝具などの詳細は明かされない。そのため変身時はこの効果が適用されない時がある。
  
心眼(真):B+
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
 後の先を取るカウンターを得意としており、相手の攻撃後の行動の成功率が上昇する。

仕切り直し:B
 戦場から離脱する能力。
 不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
 戦いが水入りになりがちな仮面ライダーには必須のスキル。 

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝具】
『日緋色に輝けし天の道(ネクストレベル・カブト)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 光を支配せし太陽の神。マスクドライダーシステム第一号。
 使用者を全身装甲の戦士、カブトへと変身させる。
 カブトムシ型自律変身ツール「カブトゼクター」を腰に巻いたライダーベルトに装着するまでのプロセスそのものが宝具として成立している。
 天道の戦闘はこの宝具を使用してのものが前提となる。
 厚い装甲を纏った「マスクドフォーム」と、装甲を排除(キャストオフ)し軽快な動きができる「ライダーフォーム」に形態を変えることができる。
 ライダーフォーム時には対人奥義「ライダーキック」と「クロックアップ」が解禁される。

『瞬迅の超速戦輪(フルフォース・エクステンダー)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:50人
 カブト専用の特殊強化バイク。カブトのクロックアップにも対応しており天道の意思で自動走行が可能。
 この宝具にもキャストオフ機能が搭載されており、巨大な角が生え戦闘的となるエクスモードに変形する。
 空中飛行も可能で、大気圏の離脱にも耐えられる。

『時翔ける運命の超進化(ロード・オブ・ザ・スピード)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 スキル天の道により、その世界における天道総司の知名度を上げることで時空を歪ませる。
 カブトの強化ツール「ハイパーゼクター」を召喚させ、強化形態「ハイパーカブト」への変身が可能となる。
 さらにスキルの効果が高まれば最終兵器「パーフェクトゼクター」も追加され、これによりカブトの能力の全てが解禁される。
 聖杯戦争の場で天道総司の名が知れ渡ってない限り、どれだけ魔力があってもこの宝具は発動できない。

【weapon】
『カブトクナイガン』
ガンモード、アックスモード、クナイモードの三形態を取る武器。

『パーフェクトゼクター』
剣型のソードモード、銃型のガンモードの二形態を取る武器。
ザビー、ドレイク、サソードの各ライダーのゼクターを呼び出し、その能力を行使する。
全てのゼクターを結集させることで対軍奥義「マキシマムハイパーサイクロン」(ソードモード)、対城奥義「マキシマムハイパータイフーン」(ガンモード)
が発動される。


191 : 遠坂凛&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:05:44 Gtv43JLA0


【SKILL】
『ライダーキック』
対人奥義。最大補足1〜5人。
「仮面ライダー」と呼ばれる戦士が備える必殺の蹴り。
使用者によって千差万別の手段で仮面ライダーはこの技を習得している。
一号の仮面ライダーの原初の逸話から、「改造人間」「異界の魔獣」等の異形相手に高い特攻能力を持つ。
天道が得意とするのはカウンター気味に放たれる回し蹴り。
ハイパーカブトに変身中は威力が跳ね上がる『ハイパーキック』へと進化する。

『クロックアップ』
時間流を操る超高速行動システム。
使用者は近くで戦おうとも他者に気付かれない別世界にいるに等しい。
時間の流れに干渉しているため、加速で攻撃の威力が上がるわけではない。
人間ではまず視認不能だが超常の存在たるサーヴァントであれば補足することは可能。
高い戦闘力と機転、空間や時間に干渉する能力を持つ者がいれば対抗が可能となる。
……規模と範囲こそ驚異的だが、時間遡行に比べれば時間の加減速はまだ魔術の領域にある技術である。

『ハイパークロックアップ』
ハイパーカブトに変身して使用可能。
クロックアップすら止まって見えるほどの超々加速能力。未来・過去・異空間への跳躍すら可能。
……即ち魔法の領域そのものであり、時間の改竄による世界の枝分けは第二魔法、平行世界の運営に分類される。
しかし過度な世界の改変は修正すべきバグとされ、自己の消滅に繋がる危険がある。
これは使い手である天道は魔法の真の使い手ではなく、時間改竄の干渉を受けない存在(特異点)ではないからである。

【人物背景】
宇宙から隕石と共に飛来し人間に擬態する怪物「ワーム」と戦うマスクドライダシステム一号、カブトの資格者。
傲岸不遜で唯我独尊、自分が世界で一番偉いと本気で思っている。(曰く、そう思った方が楽しい)
「おばあちゃんが言っていた」に始まる格言を持ち、尊敬に値すると認めた者は素直に評価し敬うがそうでない者には常に上から目線で接する。
万事(特に料理)に優れ何事も独力でこなせてしまうため、他者に中々秘密を打ち明けようとしないのが難点。
冷淡であるが冷酷ではない。「俺が正義」と称するだけあって使命感は強く時には体を張って他者を助けたりする。

旧姓は日下部。父母がワームに殺され祖母の家に預けられ天道性となる。
両親に擬態しされた際、ワームは母が既に身ごもっていた妹・ひよりも揃って擬態していた。
後のワームの隕石が墜落した現場で両親に再会、復讐の機会を得るが生まれていた妹の声で踏み止まる。
その時からたとえ怪物であっても妹を護るべくワームと戦う事を決意。以後七年の歳月を特訓に費やした。
義理も含めた二人の妹が最大の戦う意義だが、同時に最大の弱点でもある。

【サーヴァントとしての願い】
自分が最強である事は分かり切ってるし他者に縋るような願いもないが、それはそれとして呼ばれた以上勝つのは当然の事である。
当面は凛に自分の強さを見せつける事が目的。


【マスター】
遠坂凛@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
聖杯が胡散臭いのは痛感してるのでまともに乗る気はない。
ただ売られた喧嘩は買わねば気が済まない。やるからには勝つ。聖杯は碌でもないものなら破壊する。

【weapon】
ストックした宝石の大半、魔術刻印の一部は先の戦いで喪失している。
だがそれに代わる経験は失ったものと釣り合わないほど得難いものであった。

【能力・技能】
遠坂家当主に相応しい魔力資質。全ての属性の魔術を扱える天才。五大元素使い(アベレージ・ワン)。
宝石に魔力を込め即座に大魔術を使用できる宝石魔術の使い手。
有り余る素質故多くのジャンルに手を出せてしまう上媒介が媒介なため金食い虫なのが難点。
これとは別に、指に魔力を込め放つ北欧の魔術「ガンド」を習得している。通常では体調不良に留まる効果が魔力の濃さで物理的な破壊力を持つに至っている。
兄弟子に護身術として八極拳を仕込まれてるため、近接戦闘もこなせる。

【人物背景】
聖杯戦争を開始した御三家の一角、遠坂家の六代当主。
学生生活では才色兼備の優等生で通ってるが、その本質は某へっぽこに曰く、「あかいあくま」。親しい間柄には見破られている。
「あらゆることをそつなくこなし、そして一番大事な場面でうっかり失敗する」という先祖代々の悪癖がある。
家訓として常に余裕を以て優雅たれ、魔術師として冷酷たれと心がけてるが人間的な甘さが多分に多い。
しかしその甘さは一人の男を救い、一人の英霊の時空をも超えた縁となった。
実は妹がいるが、魔術的な多々のしがらみによって幼少期に引き離されている。頻繁に顔を合わせられる関係だが僅かな蟠りが残っている。
なお、とても機械音痴。

凛ルート終了後、高校卒業を控えた時期から参戦。


192 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/11/26(土) 02:07:31 Gtv43JLA0
これで投下を終了します


193 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:40:11 yONscUWI0
投下します。


194 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:40:38 yONscUWI0
とある古びた豪邸の部屋に一人、青い髪の老人がいた。
名はフリット・アスノ、ガンダムを、AGEシステムを作り、「救世主」になろうとした男だ。
今フリットが住んでいる建物は生憎、元の世界にいた頃の物ではない。
そして忘れもしない、彼が七歳の頃に起きた悲劇の時に最後に見た、あのアスノ家の豪邸なのだ。

フリットは、聖杯戦争に招かれる切っ掛けとなった白紙のトランプを、只見つめていた。
こんな不可解な世界に巻き込まれたのなら、そう想うのも分かる話では有る。
だが、フリットがこれを手にした切っ掛けは、あまりにも意外すぎる所だった。

(まさか、あんな物が切っ掛けになろうとはな……)

無理もない、これが入っていたのは、自室の引き出しにあった一枚のトランプセットだった。
それは孫のキオに何時しか誕生日に渡すはずの物だったが、いつの間にかそんな機会は無くなっていたのだった。
その代わりに渡したのは、モビルスーツのシミュレーションゲームだった。
彼に戦い方を教え、ヴェイガンとの戦いを「魔王イゼルカントと言うボスを倒すために闘うゲームだ」と言うことを叩き込んだ不甲斐なさを最も感じているのが、他ならぬフリットだ。
こんなトランプというカード遊びをゲームだと教え込んだ方が、よっぽど普通だと言うのに。

(だが……それでは、死んでいった者達の意味は……)

そう、フリットには、もうそんな生易しい道に戻ることは許されていないのだ。
フリットは多くの仲間を、この手で取りこぼしていった。
この屋敷が燃える時、フリットはまず母を喪った。
続いて、自分をその力で助けてくれたユリン・ルシェルも。
フリットが長い歳月を掛けて作ったガンダムを賭けて戦った、ウルフ・エニアクルも。
自分がガンダムのパイロットとして認められなかった頃に、一番自分のことを認めてくれたグルーデック・エイノアも。
皆々、ヴェイガンの手で滅ぼされていった。
フリットが、ガンダムがあまりにも未熟である故に。


195 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:40:57 yONscUWI0
(私は…彼等の未練を、晴らさなければならない……)

その為にも、ヴェイガンはどんな手段を使ってでも、必ず潰さなければならない。
これ以上、母やユリンの様な犠牲者を増やさないためにも。
復讐者だと罵られる覚悟ならとうに出来ている。
それで世界が平和になるというのなら、後でどんな罰でも受けよう。

その為にも、聖杯は必ず手に入れる。
聖杯戦争、万能の願望機「聖杯」を掛けて争い合う儀式。
これはフリットにとってはある意味で「チャンス」でもあった。
何しろ、がむしゃらにヴェイガンと闘うよりも少ない犠牲で、己の悲願を達成できるのだから。
まさか、元の世界において連邦の月面基地「ルナベース」としても使われている月の裏側が舞台だとは思わなかったが。
無論、犠牲が出ないわけではない。
だが、だからと言って立ち止まるわけには行かないのだ。
今此処で立ち止まっては、死んでいった仲間達の命は、無駄になってしまうのだから。

聖杯が本当に願いを叶えるとなるのなら、その力は必然的にアセムが教えてくれた「EXA-DB」を凌駕するだろう。
いや、戦う力以上に、世界を変えることすら可能ともされている。
これなら、この世からヴェイガンと言う存在その物を消し去ることも可能なはずだ。
もしそれが可能となるのなら、母が焼け死ぬことも、ユリンやウルフが嬲り殺されることも無くなる。

それで地球に、完全なる平和を齎す事すら可能となるはずだ。
母が託してくれた「ガンダム」すら無くとも。
もしフリットが聖杯を手に入れることで、アセムやキオにも、辛い想いをさせずに済ませられる。
それが出来るのだというのなら……

(戦おう、聖杯を手に入れてやろう……ヴェイガンをこの世界から、完全に根絶やしにしてやるために!!)

フリットがその目を熱く煌めかせ、白紙のトランプを持つ手の力を強くした瞬間である。
「白紙のトランプ」が、不意にフリットの手を弾き、手元から離れたのだ。
そしてトランプは空中を舞い、部屋の照明の真下で静止した。

「うっ!」

弾かれた手を片方の手で包みながらも、フリットはその様を凝視する。

「……ようやく始まったか。」

聖杯戦争と言う儀式は、「マスター」と呼ばれる参加者が、「サーヴァント」と呼ばれる使い魔を召喚するチーム形式で行われるという。
そしてそのサーヴァントが喚ばれる媒介となるのが、この「白紙のトランプ」なのだ。
本来、マスターが記憶を取り戻せば、トランプがサーヴァントとして喚ばれるというのだが、今回は中々遅い方だった。
因みにフリットが記憶を取り戻した切っ掛けは、自分が住んでいるこの屋敷その物だった。
56年も実物を見ることが叶わなかったその家。
そして、幼い日に見た「ガンダム」の絵。
そして息子のアセムはエンジニアになり、キオは学生としての生活を謳歌しているという。
この世界において有るものは全て、フリットが喪った物と、手に入れようとした物ばかりだった。
そしてそれらが全て、フリットの闘志をより滾らせているのは、言うまでもなかろう。


196 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:41:21 yONscUWI0

トランプの持つ白い輝きが、より一層増していく。
その光は、一瞬で部屋を覆い尽くした。

「ぬぉっ!?」

その輝きに、フリットも思わず目を覆う。
辺りを覆い尽くした程の眩い光は暫くして、規模が弱まっていく。
そしてその光は直ぐにどす黒い「闇」へと色を変えていく。
辺りを漆黒に覆い尽くさんとするその闇は、まるでフリットが渡ってきた復讐の道を具現化した様にも思えた。

闇が収まり、フリットが目を開けるようになった時に見たのは、闇のオーラから見える人のような「何か」だった。
黒紫と、黒銀の二色のラインを持った見た目を持ち、目を甲冑で覆った、極めて醜悪にして独特な風貌の持ち主であった。
しかしサーヴァントは喋る様な動きを見せず、只、フリットを見つめ、佇んでいるままだった。

(これが……私のサーヴァントか……)

フリットの眼に、そのサーヴァントのステータスが浮かび上がる。
聖杯戦争に関しては素人であるフリットからしてみても、そのパラメータの高さは驚くべき物だった。
殆どのパラメータがAランク相当、しかも+補正がふんだんに付けられている。
しかも、このようなパラメータを持ちながらも、彼はクラススキルによって魔力を自立的に生成しているのだ。
間違いない、このサーヴァントは当たりだ。

(クラスは……バーサーカーに、『アヴェンジャー』だと!?)

視覚できるステータスに浮かび上がる2つのクラス名に、フリットは更に驚きを見せる。
「狂戦士」に、イレギュラーなクラス「復讐者」。

(アヴェンジャー…Avenger……「復讐者」か、私に相応しいクラスだな……)

フリットは心の中でそう自嘲した後、既に掌に宿る、3つの八角形が並んだ様な形をした令呪を見せつけ、バーサーカーに声を掛ける。

「行くぞバーサーカー、私に従え、私の願いを叶えてくれ。」

それに答え、バーサーカーも雄叫びを挙げる。


「■■■■■!!」

フリットはそれを見て、ウンと頷く。


(これが、私にとっての最後の戦いとなるだろう……)

勝てば戦いは終わり、負ければフリットの人生は其処で尽きる。
もう後戻りは出来ない。
今すぐ出来ることを、ヒーローとなるべき近道を作るだけだ。
その為に立ちはだかる闇など超えてみせる。
悲しみなんか無い世界を作ることを、諦めるわけには行かない。
フリット・アスノは、憎悪の光戦士を率い、聖杯戦争に乗ることを決めた。


197 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:43:17 yONscUWI0

【クラス名】バーサーカー
【出典】ウルトラマンメビウス
【性別】男
【真名】ハンターナイトツルギ
【属性】秩序・狂
【パラメータ】筋力A+ 耐久A+ 敏捷A++ 魔力B 幸運E 宝具A(宝具使用済み)


【クラス別スキル】


狂化:C
魔力、幸運を除く全てのパラメータを増強させる。
その代わりに言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。


復讐者:A
アーブギアに、自身に宿った怨念の魂。
攻撃を受ければ受けるほど、魔力は回復していく。


自己回復(魔力):D
アーブギアから漲る憎しみの力。
その魔力は持続的に生成されていく。


【保有スキル】


二重召喚:B
ダブルクラス。
2つのクラスの特性を持つ稀な英雄。
ツルギはバーサーカー、アヴェンジャーの何れかのクラスでなければ喚べない。
そして、怨念が練固まったアーブギアを纏えば、彼は復讐者でしかいられない。
故に、バーサーカーはアヴェンジャーの特性を常に併せ持って現界する。


魔力放出(闇):A
ウルトラマンはプラズマスパークを原動力として戦う。
自身の魔力を「プラズマスパークエネルギー」に変換して戦う。
本来なら「魔力放出(光)」のはずなのだが、後述の宝具の影響でスキルが変質しており、闇を魔力として纏うようになる。
ナイトブレスに魔力を送り込む他、必殺ビーム「ナイトシュート」を放つ事が出来る。
本来なら魔力残量が残り少なくなるとカラータイマーが鳴るはずだが、後述の宝具により無効化されている。


同化:-
彼はとある男性と融合した逸話を持ち、宝具を使うことでマスターに憑依することが出来る。
だが、バーサーカーのクラスで喚ばれたために失っている。


無窮の武練(偽):B
宇宙有数の剣豪とも渡り合ったその剣は、例え憎しみに支配されようと衰えることは決して無い。
アーブギアの影響で心技体が一体化させられることにより、大抵の状況においてはその武の腕を十全に発揮できる様になる。
ツルギとして召喚されることで付与されるスキル。


精神汚染:C
アーブギアから発生する憎しみの心。
精神干渉系の魔術を中確率で無効化する。
狂化で意味が無くなっている。


198 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:43:58 yONscUWI0
【宝具】

「光を知りし蒼騎士の腕剣(ナイトブレス)」

ランク:A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜100

バーサーカーがウルトラマンキングから賜ったブレスレット。
プラズマスパークを原動力とし、先端から光の刃「ナイトビームブレード」を発生させることが可能である。
本来なら「同化」スキルで融合したマスターを変身させる能力もあるのだが、狂化スキルが原因で使用が出来なくなっている。
その為ナイトビームブレードを使った装備としての効果しか発揮できない。
だが、その威力は申し分ない。



「滅ぼせと叫ぶ怨念の鎧(アーブギア)」

ランク:B 種別:対憎宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

全てが輝かしかった惑星、アーブ。
それは侵略者ボガールによって荒廃させられてしまう。
そんなアーブに生きとし生ける知的生命体の怨念が練固まって誕生した、怨みの鎧。
バーサーカーがバーサーカーたる所以で、この宝具の解除は例え令呪を使おうとも絶対にできない。
また、この鎧は一度破損した逸話を持つが、ツルギとして喚ばれた影響で幾ら壊そうが直ぐに再生してしまう。
耐久と魔力を1ランク上昇させ、同時に「精神汚染」「無窮の武練(偽)」が付与される。
また、バーサーカーが別のクラスで喚ばれていればこの宝具の性質も変わっていたともされている。


【Weapon】

「ナイトブレス」


【人物背景】

M78星雲に住む観測員ウルトラマンヒカリが、愛する惑星アーブを滅ぼされた憎しみによって暴走した姿。
彼は憎しみに囚われ暴れ狂ったが、最終的には正義の心を取り戻したと伝えられている。
だが彼はバーサーカーのクラスで喚ばれた為、再び憎しみに囚われていた頃の姿で召喚されてしまう。

【聖杯にかける願い】

?????



【基本戦術・方針・運用法】

バーサーカーは強大なパラメータを誇るが、消費魔力はその分非常に高い。
魔術の素養が無い上に老いてるフリットのマスター適性は低いが、クラススキルで魔力消費はある程度賄える。
しかし狂化されても尚劣化していない剣の腕に関しては宇宙で名を馳せた程であるため、ナイトビームブレードを使った戦闘が一番好ましいだろう。
一応フリットは地球連邦軍元司令としてある程度ではあるが軍略スキルを持つので、同盟を組むのが良いかと思われる。
その頑固な性格から同盟を拒む可能性が高いが、状況次第では仲間となってくれる事もある。
本来なら全長数十メートル程の大きさを誇っていたはずだが、背が高くなれば消費する魔力も高くなる。


199 : フリット・アスノ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:45:13 yONscUWI0

【マスター名】フリット・アスノ
【出典】機動戦士ガンダムAGE(第四部)
【性別】男

【参戦経緯】

キオ・アスノに渡し損ねたトランプ一式の中に、白紙のトランプが入っていた。


【能力・技能】

・Xラウンダー
人間の脳の普段使われていない部分「X領域」を最大限使いこなせる者。
優れた直感能力を持ち、テレパシーも出来る。


・工学技術
アスノ家としての優れた技術力。
少年時代は天才と呼ばれ、子供でありながらガンダムを作り上げた。


・指揮力
地球連邦軍元司令官だった頃の名残。
実際怒鳴り散らしながらも何やかんやでディーヴァの司令をきっちりとこなしてはいた。



【人物背景】

高名なモビルスーツ鍛冶一門「アスノ家」の末裔。
7歳の時、UE(アンノウン・エネミー)の襲撃で母親を喪う。
その時UEへの復讐を誓い、遺されたAGEデバイスのデータを基に7年の歳月をかけてガンダムを創り上げる。
強引にガンダムに乗り込んだ彼はモビルスーツ操縦に関しては素人でありながら初めてUEを倒す快挙を果たし、救世主として持て囃される。
しかし、彼を待っていたのは修羅の道だった。
心を通わせた少女は一人の遊び心に殺められ、愛機を取り合ったライバルもまたその一人に殺され、世話になった上司は暗殺される。
息子を、孫をガンダムに乗せる中彼は、徐々に憎しみにかられる殲滅主義者と化してしまう。
その為嘗てはUEと呼ばれたヴェイガンを倒さなければならないと先走っている節が有り、
ディーヴァのメンバーを振り回したりと少年時代の頑固さが戻っているようにも見える。
しかし自身が復讐心に突き動かされていることは自覚しており、孫のキオに対しては陽気な好々爺としての姿も見せたりする。
ガンダムAGE-FXの初陣の直前からの参戦。


【聖杯にかける願い】

聖杯を持ち帰り、ヴェイガンの侵略を無かったことにする。


【方針】

参戦派。


200 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 06:45:33 yONscUWI0
投下を終了します。


201 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:23:05 LrGrMf2U0
他企画に投下した候補話のリファインとなりますが、投下させていただきます


202 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:24:16 LrGrMf2U0





 この物語は「エンドロール」。流れる文字の背後に、細切れに表示されるだけの過去の追憶。
 全てはもう終わってしまって、取り返しがつくことなど何もない。





   ▼  ▼  ▼

 人の駆ける荒い息遣いが闇夜に溶ける。
 靴底がタイルを踏みしめる硬質の音が乱れに乱れて鳴り響く。

「うわ……あ……うあ……」

 声の主は男だった。男は声にならない声を途切れ途切れに上げながら、まるで這うように何かから逃げ出していた。最早悲鳴を上げる気力と体力すらなく、その足元は覚束ない。
 見れば、男は腕から夥しい量の血を流していた。切り裂かれた傷は耐えがたい激痛を発しているだろうことが容易に想像できる。しかし、男にはそんなことを気にしていられる余裕などなかった。
 止まれば死ぬ。
 一瞬でも足を止めてしまったら、待ち受けるのは更に悲惨な末路だけなのだ。

(嫌だ)

 背後より迫る恐怖、その圧に限界を越えた足はそれでも止まることが許されない。
 追いつかれれば死ぬしかない。
 きっと自分は殺されてしまう。抵抗の余地などない。

(死にたくない)

 だから走る。激痛も苦痛も置き去って、酷使して血反吐を吐くほどに損耗した肺をそれでもと稼働させて。
 人一人いない夜の街路を、等間隔に並んだ灯りが照らす夜道を。
 惨めに、無様に、一心不乱に逃げ出していた。


 ―――男の正体を言ってしまえば、彼は聖杯戦争に招かれたマスターだった。
 既に没落した魔術師の家系に連なる彼は、しかし枯渇したはずの魔術回路を生まれつき保持しており、魔術の修練こそしてこなかったもののある程度の魔力を備えるに至っていた。
 少なくとも、こうして令呪の恩恵を与えられる程度には、彼の魔術回路は優秀だったと言えるだろう。
 引き当てたサーヴァントはセイバー。その英霊を目の前にして、彼は天啓を得た気持ちでこの聖杯戦争へと臨んでいた。最優のサーヴァントを引いた自分に敵はないと、あるいは舞い上がっていたのかもしれない。
 そして今夜、彼にとっては初陣となる日に出会った敵は、単独行動中と思しきキャスターだった。当然彼は好機と見てセイバーをけし掛けた。相性の好悪は瞭然であり、故に自分たちが負けるはずもないと高を括って。
 果たして、その目論見は成功に終わった。ある程度抵抗はされたものの、セイバーは見事そのキャスターの首を刎ねて勝利をおさめた。戦闘と勝利が生み出す高揚に体が火照ったことを、彼は今でも鮮烈に思い出せる。
 自分は勝った。勝ったはずだ、なのに……


203 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:25:04 LrGrMf2U0

(どういうことだ、あれは!?)

 勝利の栄光から急転直下、"それ"は現れた。
 斬首され死したはずのキャスターの体が持ち上がり、何故かその状態で攻撃を仕掛けてきたのだ。
 セイバーもすぐに応戦したが、どれだけ切り刻もうと構わず攻撃を繰り返してくるキャスターに、徐々に損耗を強いられた。
 そして壮絶な削り合いの末に、セイバーは遂に……

(くそッ、あんなの聞いてねえぞ! あんな反則アリなのかよ!)

 朦朧とする意識の中で、それでも抑えきれない悪態を内心で吐き捨てる。
 あれは反則だ。死んでも生き返るサーヴァントなど聞いたことがない。
 首を刎ねようと、心臓を潰そうと、全身を微塵切りにしても、あのキャスターは何事もなかったかのように立ち上がってきたのだ。
 そんな得体の知れないサーヴァントに、今自分は追われている。サーヴァントを失った自分を確実に殺すために。

(どこだ、どこから来る!?)

 走りながら必死に首を振って辺りを見回す。
 右―――何もいない。
 左―――誰もいない。
 上―――広がるのは星の無い漆黒ばかり。
 背後――とてもじゃないが振りかえられない。

 闇の中に立つ影のような街灯の間を、必死の形相で、転がるように走る。
 どこへ逃げるかなど考える余裕はなかった。ただ転がった先へ、目が向いた先へ、どこまでも広がる冷たい夜闇の中を、ひたすらに逃げ回り続けた。
 そして、何度目かの曲がり角を一切減速することなく曲がり―――

「ごぶっ……!」

 体の真ん中を、鋭い衝撃が貫いた。次いで襲いくるのは灼熱の感覚。
 ごぽり、と声にならないままに熱いものがこみ上げてくる。男は正確に認識することができなかったが、それは男自身の吐血だった。
 全身から力が抜ける。四肢は萎え、力は入らず、空転する呼吸だけが空しく宙へ消えていった。
 何故だか痛みは感じなかった。ただ重たい疲労感と鈍色の視界が頭を埋め尽くした。
 何が起こったのか、分からない。自分は一体どうなったのか。
 暗闇に閉ざされていく視界を、それでもと男は持ち上げる。
 そこに映ったのは、ただ一面の漆黒。
 その闇色から浮き出るように佇む、擦り切れた外套の影。
 そして外套の中から覗く、白色の仮面。

「お、前は……」

 最期、男の視界に映し出されたのは、こちらへと伸ばされるキャスターの手のひら。
 顔面を鷲掴みにされた感触と共に、男の意識は今度こそ二度と浮上しない深みへと沈んでいった。


204 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:25:56 LrGrMf2U0
   ▼  ▼  ▼

 子供の自分にとってはやけに広く感じる部屋。お風呂場前の脱衣所。
 殺風景な内装とフローリング、適当に丸められた洗濯物がだらしなく放り込まれた段ボール箱。
 最近よく止まるようになった古い洗濯機。ママがそのことに機嫌を悪くして怒鳴っていたのが耳に新しい。
 壁際には背丈の低い戸棚が一つ。引き出しはたくさんあるけど、パパとママは整頓には無頓着だから使っているのはボクしかいない。
 あとは風呂場に続くサッシと、立てつけの悪い窓。それが、この家における僕の世界の全てだった。

 今日も大きな声が聞こえる。
 耳に煩い音や声は人を苛つかせる。いつも聞こえてくるのはパパの怒鳴り声か、ママの媚びた声。あとは、知らない男の人の声くらい。
 今聞こえたのは、硬いものがぶつかってガラスが割れた音だ。多分また、パパが酒ビンを投げたかしたのだろう。ママのヒステリックな叫びも聞こえる。あとで片づけなくておかないと。
 正直言って気が滅入る。かつての自分は、よくこんな環境に耐えていたものだ。いや、耐えられなかったからこんなことになったのか。どちらでも構わないけれど。

 戸棚の引き出しの一番奥に隠してあった日記帳を取り出す。僕は自分の部屋がないから、ここが僕の秘密の隠し場所だった。
 分厚い日記帳、触ってると安心する。ここにはボクが犯してしまった間違いがたくさん書いてあるけど、それでもボクにとっては唯一の「僕のもの」だ。
 今日あったことを書き連ねる。どうでもいいこと、ちょっと興味をそそられたもの、いつものルーチンワーク。書くことはいくらでもあった。何もない日々だから、少しでも記憶に残ったものがあればそれを書けばいい。
 さらさらとペンを走らせる音だけが部屋に響く。いつの間にか隣の部屋の喧騒は静まっていた。多分寝入ったのだろう。それくらいしかやることのない男だ、パパは。
 日記帳に書きこむこと暫し、満足したボクは日記帳を閉じて元の場所に戻し、ペンを筆箱の中にしまった。途端にやることのなくなったボクは、湿気と生乾きの臭いが染みついた陰気な部屋の中を、ぐるぐるとまわり始めた。
 今日という日もそろそろ終わる。無意味な日常が、無価値なボクの蛇足な日々が、また一つ消費される。


205 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:27:11 LrGrMf2U0
 コンコン。
 ふと、窓ガラスを叩く音が聞こえた。
 控えめなそれは周囲を気遣った音であり、この家から消えて久しい人らしい思いが入ったものだった。家主の低劣さに似合ったボロな平屋の、それも一階の窓だから叩ける者はそれこそ大勢いるだろう。もしかしたら泥棒かもしれない。けれど、そうではないことを僕は知っていた。
 目を向けてみれば、そこにいたのはやっぱり僕の知ってる姿だった。擦り切れた黒い装束みたいなものを着込んだ人。顔には仮面が付けられて、表情どころか男か女かさえ分からない。

 「魔法使いだ」と言った初対面の時のボクに、その人は否定も肯定もしなかった。少し話して、その身から漂う血とすえた臭いに「じゃあ人殺しだ」と言った僕に、その人は黙って頷いた。
 その人は自分のことをキャスターだと名乗った。「やっぱり魔法使いじゃないか」と言ったら、どちらも同じだと返された。
 なるほど、とその時僕は納得したことを覚えている。人殺しにはやはり、人殺しがお似合いなのだ。

 僕は窓ガラスをノックしたまま黙って佇んでいるその人に近づいて、窓を開けてあげた。その人は霊体化という、いわば幽霊みたく壁をすり抜けることもできたはずだけど、僕のいる部屋に入ってくる時はいつもノックをしてくれる。気遣い、というものなんだろうか。よく分からない。
 その人はやっぱり黙ったまま、土足で部屋に上がりこんできた。そしてそのまま、隅のほうに座り込む。

「……どうだったの」
『サーヴァントを一騎仕留めた』

 抑揚もなく、その人は言った。男の声と女の声が入り混じったような、不思議な声だった。その人の性別が分からない理由の一つだ。

『しかし少なくない傷を負った。敵陣営を生贄に捧げたことで大凡回復はしたが、この状態での戦闘には不安が残る』
「……そっか」

 ついさっき、胸のあたりに鈍い痛みのようなものが走ったことを思い出した。今まで経験したことが無かったから分からなかったけど、あれが魔力の消費というものなのだろうか。内臓から血を絞り出されるような感覚。あまり好きにはなれそうにない。

「そういえば……その生贄ってマスターやサーヴァント以外にも使えるんだったよね」

 無言の首肯。その人―――キャスターは首を縦に振ることで僕の疑問に答えた。


206 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:28:06 LrGrMf2U0
「じゃあ、ちょうどいいのがそこにいるよ」

 そう言って隣の部屋を指差す。両親の寝室だ。キャスターは、困ったように振り返った。

『お前は、自身の知る誰かの殺害を厭んでいたはずだ』
「僕が殺したくないのは……償わなきゃいけないのは、僕が原因で死んだ人たちだけだよ。あいつらは自業自得」

 だから死のうが死ぬまいがどうでもいい。わざわざ再殺してやる義理なんてないけど、殺さない理由だってありはしない。
 酒と暴力と性欲しかない父親と、男に抱かれることしか頭にない母親。あいつらはどうしようもない屑だ。僕と同じように。
 キャスターがこちらを見る。本当にいいのか、という最終確認だ。僕は黙って頷いた。

 キャスターの姿が消えてなくなる。霊体化だ。こうなるとキャスターは誰の目にも見えなくなるし、壁だってすり抜けられる。
 窓を閉め、施錠もちゃんとして、ボクは明日の学校の準備を整える。昔は嫌いだったけど今度はちゃんと通ってみたいと思う。隣からくぐもった困惑の声と怒号が聞こえてきた。宿題はちゃんとやったかな、最後の確認をする。
 そういえば、明日は日直の当番だった。少し早めに出て行かなくてはならないだろう。何かが蒸発するような音と甲高い悲鳴が耳に突き刺さる。そうと決まればそろそろ寝なくては。

「おやすみなさい、みんな」

 誰ともなしに呟いた声は、もうどこにもいないみんなに向けて。僕なんかがいたせいで死んでしまったみんなに向けて。
 頭の中に思い描く。みんなと一緒にいた時間は、僕の人生で一番楽しかった。
 今夜はみんなの夢が見たいな。そう思いながら、意識を深く沈めていく。例え都合いいものだとしても、夢は幸せなものが見たかった。





   ▼  ▼  ▼


207 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:29:10 LrGrMf2U0
 学校における彼は、目立たない大人しい子というイメージをこれ以上なく表したかのような少年だった。
 自己主張は少なく、表情も抑揚も乏しい。周りに敵を作っているわけではないが親しい友人も特にいない。
 教室の隅っこに漂う空気のような生徒、それが彼だった。

「いい子だよ」

 彼を知る大人は大抵こう答える。聞き分けがよく大人しい子、手間のかからない都合のいい子。

「嫌な子だよ」

 彼を知る子供は大抵こう答える。何を考えているかよく分からない。不気味だし根暗だし、仲のいい子なんて誰もいない。だから嫌な子。

 結局のところはどちらも同じだった。大人も子供も、遠巻きにして見るだけで彼と接しようとはしなかった。いい子も嫌な子も、単なる無関心の現れに過ぎなかった。


 その日、クラスで作文の宿題が出された。テーマは「将来の夢」。
 ありふれた宿題だった。生徒たちは面倒臭がったり、嫌な顔をしながらも、思い思いの文を書き連ねていった。
 次の日集められた作文は十人十色の内容で、長かったり短かったり、巧みだったり適当だったり。それでも子供らしい感受性に溢れた夢が詰め込まれたものばかり。
 けれどその中に、周りから浮いた作文用紙が一枚あった。
 将来の夢というテーマとはまるでそぐわない、悲観的で突き放したかのような文章。その文頭には、ぽつりと一文だけが書かれていた。

『人間みたいなことが、してみたい』

 その言葉の意味を理解できた者は。
 少なくとも、それを見た者の中には存在しなかった。


208 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:29:41 LrGrMf2U0
【クラス】
キャスター

【真名】
無銘@ソウルサクリファイス

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具A+

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として自分に有利な陣形を作り上げる。

道具作成:A
供物魔術に必要な道具を作り上げる。

【保有スキル】
供物魔術:A
供物を捧げることにより発動する魔術。効果の内容は供物により千差万別となる。
この魔術は使用に魔力を要さないが、使用の度に供物が破損していく。
キャスターが扱う魔術は、供物・生贄・禁術のいずれにおいても「何かを犠牲にする」ことをトリガーとして発動する。

生贄:A
戦闘不能に陥った対象を文字通り"生贄"とする術。
生贄に捧げられた対象の魂はキャスターの右腕に取り込まれ、肉体は完全に消滅する。
単純な魂喰いとしても非常に効率のいい代物であるが、その他にも取り込んだ魂の量と質に比例してキャスターのステータスに上昇補正を与える効果がある。
また、一定以上の魔力を持つ人物にこのスキルを使用した場合、"生贄魔術"を使用することが可能となる。
生贄魔術は非常に強力であるが、それを使用した場合は魔力回復やステータス上昇補正は得られない。
生贄魔術は以下の三通りであり、対象の属性によって発現する魔術が決まる。
グングニル:生贄対象の全身の骨格を肥大化させ、周囲一帯に骨の槍を降り注がせる。追加の効果はないが、その分威力は他の生贄魔術より強大。属性・混沌。
エンジェル:生贄対象の魂を昇華させ、周囲一帯に光の槍を降り注がせる。また、その際にキャスターの傍にいる人物を無差別に回復する。属性・秩序。
ユグドラシル:生贄対象の下腹部から茨化した骨が突き破り、巨大な樹のようになる範囲攻撃。その際周囲の人物の魔力を無差別に回復する。属性・中立。

心眼:C
霊的な透視、看破能力。
心眼(真)や心眼(偽)とは異なるスキル。

精神汚染:E
取り込んだ魂により自我が侵食されている。生贄により魂を取り込む度、このスキルのランクは上昇していく。上昇量は対象の持つ魔力量に比例して大きくなる。
ランクEにおいては精神干渉のシャットアウトが出来ない代わりに意思疎通にも支障はないが、ランクが上昇していくにつれて右腕が異形と化していき殺戮衝動が強まり意思の疎通が困難になっていく。
またこのスキルランクが上限に達した時、キャスターは全ての自我を失い"魔物"と化すだろう。

不死の呪い:EX
不死存在の血を取り込んでいるためキャスターは不死の存在となっている。
どれだけ肉体を破壊されようと魔力を消費して元通りに再生可能。肉体の再生にかかる魔力の消費は通常と比べて遥かに軽くなるが、霊核を砕かれた際の再生には多量の魔力消費が必要となる。
また、後述の宝具によって失われた部位は再生しない。


209 : エンドロールは止まらない:re ◆GO82qGZUNE :2016/11/26(土) 16:30:03 LrGrMf2U0
【宝具】
『禁術・贄喰らいの魔装(ソウルサクリファイス)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜666
自身の肉体の一部を供物にすることにより発動する大魔術。肉体のみならず該当部位における魂ごと捧げられるため、この宝具によって失われた肉体部位は二度と元に戻ることはない。
禁術は以下の通り。
サラマンダー:全身の皮膚が焼け落ちることで発動。周囲一帯を業火で焼き払う。
グレイプニル:右腕の骨と神経で編まれた鎖で対象を捕縛する。捕縛された相手は一切の身動き及び魔術・スキル・宝具の発動ができない。対象の魔としての性質が強ければ強いほどこの魔術の効果は上昇する。
ゴルゴン:片目を抉り取ることにより発動。石化魔術弾を連射するゴルゴンの瞳を無数に召喚する。
ベルセルク:脳を肥大化させ発動。強力な念動波により周囲を無差別に破壊する。使用後に脳は元の大きさに戻るが、代わりに思考能力が制限される。
エクスカリバー:背骨を引き抜き、地面に突き刺すことで地中から生える巨大な剣として具現し、対象を自動で追尾して切り裂く。
ヴァルカン:自分の心臓を錬成体として機能させ、魔力で構成された剣を無尽蔵に取り出す。その剣はA+ランクの対人宝具として機能する。
ルシファー:自身の足の骨格を肥大化・変形させることにより巨大な翼に変異させる。一時的に敏捷に+++補正を与え異形の翼による物理攻撃を可能とする。

【weapon】
右腕の呪血
右腕から流した血を刃もしくは弾丸にしての攻撃。当然ながら攻撃の度にキャスターは傷ついていくが、不死の呪いにより再生可能。

【人物背景】
主人公であるアーサー・カムランがその記憶を追体験することになる「ある魔法使い」。
魔物と化した人間の殺害要請を引き受ける魔術組織アヴァロンに属していた魔術師。キャスターのいた世界における魔法使いとは「人殺し」の代名詞でもあった。
かつてパートナーであったニミュエという女性を生贄にしてしまった過去を持つ。
予知能力を持つ魔術師「マーリン」によって、将来世界を滅ぼす怪物になると断言され、その未来を防ぐためにマーリンと二人で「聖杯」探求の旅をしていた。
結果的に彼/彼女は怪物と成り果てる運命を乗り越えることに成功するのだが……
真名が無銘となっているのは■■■■によって世界が滅ぼされ彼/彼女の名を知る者がいなくなってしまったため。同様の理由で姿さえも失っており、今回の聖杯戦争においては襤褸布を纏い仮面で顔を覆い隠し男女双方の声が重なって聞こえるという性別不明の状態となっている。
性格は理知的で意外と洞察力が高い。また、血なまぐさい世界に身を置くにしては少々お人好しのきらいがある。

【サーヴァントとしての願い】
■■■■を完全に殺す/救う。



【マスター】
ラッセル@END ROLL

【マスターとしての願い】
自分という存在を無かったことにして、自分が引き起こしてしまった全ての悲劇を消し去る。

【weapon】
分厚い日記帳:
自分の部屋すら与えられなかった彼の、唯一と言っていい「自分のもの」。持っていると安心する……らしい。
中には今まで犯してきた様々なことが書かれている。

【能力・技能】
身体的にも頭脳的にも年相応の少年。
元来、彼は何の異常性も特別性も持たないただの少年でしかないはずだった。

【人物背景】
ゴミ屑のような両親からネグレクトと虐待を受け、幼少期より性的倒錯環境で育てられた(というか放置された)少年。
愛情を知らず、人らしい情を知らず、いつの間にか彼からは共感性が欠如してしまい、罪悪感というものを持たない後天性の精神異常者へと変貌した。
そして自覚的、あるいは無自覚的な行いの果てに彼は自らの両親を惨殺する。全てに疲れ果てた彼は、自らが犯した犯行の全てを記した日記帳を手に警察へと足を運び……
これが原作開始前におけるラッセルという少年の全てである。その後、彼は政府機関により新薬ハッピードリームの被験体となるが、彼の見た夢を理解している者は彼一人しか存在しない。
参戦時期はトゥルーエンド1「END ROLL」後より。

【方針】
聖杯狙い。
そこに躊躇いを覚えることも、罪悪感を感じることも、最早自分には許されてなどいない。


210 : 名無しさん :2016/11/26(土) 16:30:22 LrGrMf2U0
投下を終了します


211 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 17:59:21 yONscUWI0
投下します。


212 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 17:59:48 yONscUWI0






今あなたが不運な状態にあるなら、それはあなたがそうなるように仕向けた結果です。
逆に、今あなたが幸運に恵まれているなら、それもあなたがそうなるように仕向けた結果です。

―ジョセフ・マーフィーより


◆  ◆  ◆





「しかし、聖杯戦争、か……。」

自邸の応接間で、相手のいないチェス盤を一人で弄っている、黒い長髪の男がいた。
名はギルバート・デュランダル、嘗てはプラントと呼ばれる惑星を率いていた男だった。
しかし嘗てはザフトを率いた彼も、今では只の学者だ。
それでもコーディネイターであったお陰か、遺伝子工学としての実績は有るようだが。

あの時、確かにデュランダルは死んだはずだった。
愛するタリアと、友と同じ顔を持ったレイと一緒に。
しかしどういう訳かデュランダルは此処に生きており、代わりにレイとタリアは消えた―
タリアとはロール上での付き合いを持っているのだが、そのタリアは偽物だ。
生憎、デュランダルの知る彼女はいない。

(しかし、私はどうすれば良いのだろう……)

デュランダルが思い浮かべたのは、己に銃を向けた少年だった。
その少年は万能に愛されていた。
本当の意味でデュランダルの親友とは真逆の道を生きており、彼を撃ったのもその少年であった。
だがそれでも、彼は只の人として生きようとしていた。
そして叫んだ、誰もが皆、明日を望んでいるのだと。

己に銃弾を向けたのは、自分の理想を信じ続けてきたはずのレイだった。
彼もまた、自らの計画に異を唱え、明日を望んでいるのだと、その時デュランダルは悟った。
人の生き方を選ばなくても。
人の運命を手繰らなくても。

人は、幸せに生きていけるのだと。

キラ・ヤマトと言う少年は、確かにそう言ったのだ。


『マスター、話がある。』

不意に、デュランダルの脳内に声が響き渡る。
己のサーヴァント、キャスターからだ。
キャスターは、デュランダル邸の地下室を陣地とし、作業をしていたのだが、恐らくそれが終わったのだろう。

『分かった、直ぐに向かう。』


◆  ◆  ◆


213 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:00:19 yONscUWI0

地下室に繋がるエレベーターを伝って、デュランダルは地下室に到着した。
エレベーターを降りて見渡せば、其処らにはデュランダルの知る所では無い道具が彼方此方に散乱してある。
デュランダルの知る所では、その空間は使いみちが見つからぬ故に放置されていたのだが、今ではキャスターの陣地となっているため、この様に道具が大量に置いてあるのだ。

「来たか、マスター。」

部屋の真ん中に立っているのは、黒い鉢巻を頭に巻きつけ、漆黒の鎧を纏った、一人の青年だった。
彼こそがキャスター、デュランダルが聖杯戦争において招き寄せたサーヴァントである。

「どうしたのかね、キャスター、何か見せたいものでも?」
「そうだ、早速試しに作った"号竜人"が完成したのでな、実用する前に貴様にも一度見せてやりたいと思った所だ。」

デュランダルの穏やかな態度に対し、キャスターは何処か素っ気ない態度で答える。

「"ゴウリュウジン"……君が言っていた、"ゴウリュウ"の事かね?」
「そうだ、その号竜を貴様にも見せてやる。」

―号竜。
キャスターの発明した兵器だと、デュランダルは聞いている。
話に聞けば、「呪術」と呼ばれる特殊な術式を使い、デュランダルのいた世界でも存在し得ぬだろう素材を以って組み立てる兵器だそうだ。
キャスターの本領は、この「号竜」を組み立て手繰ることが武器なのだというのだが、デュランダルもそれは気になることでは有る。

「分かった、見せてくれ、君の作った"ゴウリュウ"なるものを。」
「良いだろう。」


キャスターはデュランダルの合図に答え彼に背を向け、その化物の様な形をした左掌に魔力を込める。
赤い球の様なエネルギー体がキャスターの掌に集まり、キャスターはそれを壁に目掛けて発射する。
発射された赤い球弾は壁にぶつかったかと思えば、壁に空間の穴の様な物を開ける。
その中から表れたのは、人、しかし、その姿格好はあまりにも異様すぎる。
その異様さには、デュランダルも思わず眼を見開いた。

両胸には呪詛のような物が書かれた半紙がぶら下げられ、顔には鏡のようなプレートが嵌められている。
まるで、個が、いや、人間性そのものが捨て去られた様な姿をしている。
これは人ではない、兵器だということを、デュランダルは雰囲気でそう感じさせられた。
嘗てシン・アスカが捕えたエクステンデッドにしても、彼処まで人間らしさは失われなかったろうに。

「これが、"ゴウリュウ"……なのかね?」

驚きを隠せないデュランダルに、キャスターが振り向き口を開く。

「そうだ、特にこの号竜人は、材料が少なく使い勝手も良くてな、俺も使い魔としては重宝していたよ。
機動力と隠密力はは高いが、火力は些か他の号竜には劣っていてな。
戦闘力の高い号竜については後々作る予定に有る。」
「少なくとも、戦力の心配をする必要は無い様だな。
しかし、キャスター。」
「何だ?」

デュランダルは、眉をぐっと潜めて俯く。

「私にも嘗ては、どうしても叶えたい願いがあった。
だが今では、それを叶えようとする気になれないのだよ。」

もし、嘗てのデュランダルが来ていたら、きっと「デスティニー・プラン」の実現を望むであろう。
人間が、運命という荒波に押し流されることもない世界。
ルークなら左右にのみ動き、ビショップなら斜めにのみ動き、ポーンは只前にのみ進み続ける。
子供が産めずにタリアと別れてしまった自分と同じ悲しみを知る人間がいない世界の到来を、キャスターは待ち望み続けていた。
勿論、それが悪だという考えも分かる。
だが、このままで本当に良いのかと思えず、今更後戻りすることすら、自分には出来はしなかった。
だから計画を実行することにしか進む道は無かった、そう思っていた。


214 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:00:37 yONscUWI0

それを否定したのが、キラ・ヤマトだった。
更にレイもそれに準じ、己の理想を否定した。
デュランダルは、そうやってレイと同じ顔を持ち、同じ境遇に生きた人間を知っている。

―ラウ・ル・クルーゼ。
デュランダルの親友だった彼は、只の人としては生まれることが出来なかった人間だった。
コーディネイターを生むためのクローンとして生み出され、失敗作となった彼は、人としての生を歩むことを許されなかった。
憎悪に狂ったクルーゼは連合とザフトを争わせ、キラ・ヤマトとの戦いの末に果てた。

レイもまた、こうして生み出されたクローンだ。
クルーゼの憎悪を受け継ぎ、クルーゼとして生きようとした彼だったが、彼はその考えを改めた。
只の人としての生を歩むことを、レイ・ザ・バレルと言う一人の人間として生きたいという想いを。
一発の銃弾に込めて、デュランダルを撃ったのだ。
これで良かったのだと、今なら言えるだろう。

「だが、生きてみようという願いなら有る。
例え生き方が歪められようとも、希望はあると。
嘗てそう言った少年の言葉を、私は信じてみたい。」

デュランダルが選んだのは、生存の道。
或いは脱出派、願いを叶えず、見定めた方針によっては聖杯を壊すことも考えている。
成るべく人を蹴落とす様な真似はしたくない、それでも「生きてみせる」。
聖杯を掠め取る気はない。
只、もう一度信じてみたいだけなのだ。
運命を決めつける事が無くても、人は人として生きていけるのか。
もしかしたら、自分は再びデスティニー・プランに手を伸ばそうとするのかもしれない。
だが、あのラウ・ル・クルーゼと同じく運命に弄ばれたはずのレイが否定したことは事実だ。
運命が決められることが無い人生を、もう一度歩んでみたい。
それこそが、今のギルバート・デュランダルが願うことだ。



◆  ◆  ◆


215 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:00:56 yONscUWI0


―光あるところに 、漆黒の闇ありき。
魔界と呼ばれる異界からは、陰我を通して常に「ホラー」と呼ばれる化物が他者を喰らっていた。。

―古の時代より、人類は闇を恐れた。
それに抗う術を持つ者こそ、「魔戒法師」と呼ばれる存在であった。

―しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、 人類は希望の光を得たのだ。
されどその魔戒法師の時代も終わりを告げ、世は「黄金騎士」を象徴とする「魔戒騎士」の時代へと移り変わった。


キャスターもまた、魔戒騎士の家に生まれ、それを誇りとして生き続けてきた男だった。
彼には才能があった、優しさもあった。
しかし、彼は卑怯だった、臆病だった。
故に騎士の名は渡されなかった。

キャスターは騎士を憎み、法師の世を取り戻そうとした。
だが、弟も、恋人も、己の理想を認めようとはしなかった。
彼は憎しみのままに彼等を捨てた。
どうして従わないのだ、どうして分からないのだと。
こうして法師が憎むべき存在へとその身を落としたキャスターだが、それでも道を止めることはなかった。
全ての魔戒騎士に、呪いの刻印を打ち付け、苦しませ、全ての騎士を消そうと企んだ。
伝説のホラーの骸と、それを素材とした最高傑作の力によって。

だがキャスターの野望は、儚くも破れ去ってしまう。
破ったのは、全ての騎士と、全ての法師達であった。

こうして己も、嘗ての友に破れ、嘗ての弟に、その筆を託した。


キャスターもまた、マスターと同様に願いを持たなかった。
魔戒法師と魔戒騎士が共存し、己の憎悪は友に否定された。
最早無念は無い。

もし無念があるとしたのなら、それは己が生きたいと思った生き方を貫けなかった事だ。
嘗て、己は護りし者として生きることが出来なかった。
だからせめて、この第二の生においてはもう一度、あの頃の自分が目指した護りし者に、もう一度、なってみたい。
それこそが、キャスターのサーヴァント、布道シグマの願うことだ。


216 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:01:14 yONscUWI0



【クラス名】キャスター
【出典】牙狼-GARO-〜MAKAISENKI〜
【性別】男
【真名】布道シグマ
【属性】中立・悪
【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力A+ 幸運D 宝具A++


【クラス別スキル】

陣地作成:B
自らに有利な陣地を創りだす能力。
法術の行使に適した空間を創りだす他、外界からの接触を阻む結界を創り出せる。


道具作成:B+
魔力を帯びた器具を創りだす能力。
生前「号竜」を創りだした逸話から、号竜の作成に長けている。
しかしキャスターが作成するのは理念こそ同じではあるが布道レオの発明品とは別物であり、「号竜人」「リグル」「鉄騎」等多種多様なバリエーションを持っている。
また、号竜の作成に必要不可欠なソウルメタルの錬成もホラーの骸無しに可能となった。



【保有スキル】

法術:A
魔戒法師が使用する魔術基盤で、呪術系統の1つ。
「魔導筆」と呼ばれる礼装を媒介にして行使する。
彼は神童と呼ばれた布道レオすら上回る法術の才能を持っていた。


ギャノンの骸:EX
キャスターが入手した伝説のホラーの骸。
宝具の核ともなる重要な存在で、キャスターの仮面と腕を作り出し力を与えている。
生前は彼の強い憎悪に反応して暴走した為、相当に危険な代物とも言える。


戦闘続行:B
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。


217 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:01:46 yONscUWI0


【宝具】


「術師の世を開く抑止の竜(イデア)」

ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1000 最大捕捉:10000


キャスターが魔戒騎士に対する怨念を以って設計した「最強の号竜」。
ギャノンの骸を核とした、「全てのホラーを消し去る存在」。
キャスターが乗っている球体状のコアに、四つの柱が手足に変形し合体することで完成、巨大な竜の姿へと形を変える。
ただし、これを発動するには一からの作成が必要となり、動力源に一人の生贄と膨大な魔力を要する。
その上乗っているものの邪念に反応したギャノンが暴走しイデアが乗っ取られる危険性もある。
しかしその戦闘力は申し分なく、一撃が核兵器に匹敵する威力となり、更にキャスターが作成した無数の号竜を使い魔として操ることが出来る。


「破滅の刻印」

ランク:C 種別:呪術宝具 レンジ:2 最大捕捉:1

キャスターが魔戒騎士達に埋め込んだ呪い。
これを胸に埋め込まれたサーヴァントは、宝具を使う度に刻印に魔力を吸い取られる。
解放型は使う度に追加でダメージを喰らい、常時発動型は常に魔力を奪われることとなる。
解呪はキャスターにしか出来ない為、これを埋め込まれたサーヴァントは魔力に悩まされることとなる。


218 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:02:16 yONscUWI0


【Weapon】


「魔導筆」
キャスターが愛用した筆。
霊獣の毛皮を筆毛にした、魔戒法師の礼装。
魔戒剣の様に筆毛を刃に変化させることも出来る。


「ギャノンの腕」
ギャノンの骸を基に創りだした義手。
破滅の刻印の埋め込みやホラーの力を行使するときなどに使用する。


「号竜人」
人型の号竜。
他の人間に姿を偽装することも出来る。


「リグル」
人と化物、双方の顔を持つ巨大な号竜。
壁にカモフラージュして潜ませることが出来る。


「鉄騎」
リグル同様、壁にカモフラージュして隠すことが出来る号竜。
だがこの号竜はキャスター自ら乗り込んで操縦する。




【人物背景】

「閃光騎士」の称号を受け継ぐ家系の長男。
法術、剣術、何れにおいても並外れた才能を併せ持っていたが、「守りし者」としての心が無かったと判断され称号の継承権を失う。
それに憤り家を飛び出すが、父が死んでから「魔戒法師がホラーを倒す時代に戻そう」という思想を掲げ実家に戻り、弟のレオを誘う。
兄弟で考えた「号竜」の最高傑作「イデア」の完成の為にレオ、恋人のミオと共に日々頑張っていたが、しかしその手段を選ばないやり方に二人に疑問を抱かれる。
それに絶望し、激怒したシグマは逆上してミオを殺した後、完全に闇に堕ちてしまう。
それから全ての魔戒騎士に生命を蝕む「破滅の刻印」を宿した後、遂にイデアを完成させる。
だがイデアは暴走し計画は失敗、イデアが全ての魔戒騎士と法師に倒された後、往生際悪く黄金騎士に一対一の決闘を申し込み、儚くも敗れ去る。

目的のためなら手段を選ばない傾向から「守りし者」に相応しくない人物であることに間違いはない。
だが、根は誇り高く仲間思いな人物である事もまた確かな事実である。


【聖杯にかける願い】

友や弟ともう一度やり直したいという思いもあるが、それ程執着しているわけでもない。
只、嘗て夢見た「守りし者」として生きてみたいという気持ちもある。


219 : ギルバート・デュランダル&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:02:42 yONscUWI0


【マスター名】ギルバート・デュランダル
【出典】機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【性別】男




【能力・技能】


・コーディネイター
遺伝子組み換えによって誕生した天才児。
人並み以上のポテンシャルを持つ。


・カリスマ
ザフト議長としての優れたカリスマ性。


・遺伝子工学
嘗ては遺伝子工学の権威として名を誇っており、デスティニー・プランにもこの技術力が応用されている。



【人物背景】

コーディネイターの惑星「プラント」を統治するザフトの議長。
その温厚な人柄から、彼を慕う者は多い。
しかし目的のためには手段を選ばない傾向があり、己の邪魔をする人間は例えザフトの人間であろうとも排除するスタンスを取っている。
その目的とは「デスティニー・プラン」、全人類を遺伝子操作によって生ませ運命づけられた才能とそれに見合った人生を与えるという計画であった。
子供が作れなかった事で恋人と別れたことと、世界に絶望した親友の死が積み重なって作り上げた計画であったが、結局は失敗、友の顔を持った子に撃たれ倒れる。
メサイアが爆発した直前からの参戦。


【聖杯にかける願い】

元の世界に帰る資格も無ければ、あの夢を叶える気も無い。
だが運命に抗ってみたいという思いもある、その為にも死ぬわけには行かない。


220 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/26(土) 18:03:02 yONscUWI0
投下を終了します。


221 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/26(土) 18:24:21 M9srQU2s0
四度目の初投下です


222 : Girl in dream ◆As6lpa2ikE :2016/11/26(土) 18:25:31 M9srQU2s0
ずっと、誰かを守る為に戦っていた。
もう、二度と、あんな思いをしたくなかったから。
もう、二度と、誰かが沈む姿を見たくなかったから。
戦って。戦って。戦って。
必死に戦って、必死に守った。
しかし、それでも、失う物はあった。
沈んで行く仲間たちは、少なからず居た。
当然だ。
戦争において、何一つ失わずに済むなんて事はあり得ない――そんな事は、とっくの昔から分かっていた筈だ。
そんな風に自分を言い聞かせながら、私は再び戦場へ赴く――散って行った仲間たちの分まで戦う為に。

戦いが始まってから、どれだけ経っただろうか。
やがて、しばらくすると、戦況は此方側の不利に傾いた。
これまで騙し騙し戦い抜いていた分、ガタが来たのだろう。
寧ろ、よくそれまで持ってきた方だと思う。
一度不利に陥ってからと言うもの、それからの展開はあっという間だった。
みるみるうちに後退して行く防衛線。
人気の無くなって行く鎮守府。
尽きて行く資材。
対して、相手の兵力の底は未だ不明。無尽蔵。
遂に、防衛線が限界まで下がった果てに、私たちの鎮守府は""奴ら""に囲まれて集中砲火を受け――そして、全滅した。
皆、死んだのだ。
爆撃した""奴ら""が何処かへ去り、誰の声もせず、瓦礫の崩れる音と炎が轟々と燃える音以外はしない鎮守府跡に私以外の生命は感じられなかった。
悲鳴一つ、聞こえやしない。
崩れた壁の下敷きになっても、私がこうして辛うじて生きているのは、いつも通りの幸運による物だろう。だが、今となってはこの幸運が憎たらしい。
敗北しておきながら薄汚く生き残っている自分が、まるで生命力だけは一丁前の蜚蠊であるように思えて、恥ずかしかった。
恥ずかしさと悔しさに、涙が流れる。
あれだけの決意をしておきながら、結局大切な物を何一つ守れなかった自分の事が許せなかった。

――私にもっと力があれば、こんな結末は無かったんじゃないだろうか?

今更しても遅い後悔が、脳内を埋め尽くす――壁の下敷きになって、身体の至る所から血が流れ、指先一つまともに動かせない状態で私に出来る事と言えば、後悔ぐらいであった。
だが、その無意味な行為にもようやく終わりが訪れようとしていた。
血を流しすぎたのか、それとも瓦礫の圧力で重要な器官が破損したのか――視界が歪み、段々と薄れて行く。
あまりにもゆっくりとやって来る死。
逆らおうとしても無駄である事が分かる、絶対的な死。

「嫌だ! 死にたくない!」

咄嗟にそんな台詞を吐いた自分に、私自身が驚き、そして呆れた。
先程己の蜚蠊並の生命力を恥じたのは何処のどいつだ。
ここまで来て、私は生きようとしているのか。ここで一人生き残った所で、どうしようと言うのだ。
死を恐れる感情的な私と、そんな私を冷めた目で見つめる私――二人の私が此処に居た。
冷めた私の考える通りだ。例え、ここから奇跡的に生き残った所で、私に出来る事など何もない。
まさか、一人で""奴ら""に復讐でもするのか? 不可能だ。鎮守府の皆と共に戦っても勝てなかった相手に、私一人で勝てるわけがない。
現実を理解し、私は唇を噛んで項垂れた。
視界は既にマトモに機能して居なかった。
彼方此方で燃え上がる炎の朱色が、ぼんやりと認識出来る程度である。
突如、白い小さな光が空中に浮かび上がった。
誰か生存者が居て、灯を照らして居るのだろうか。
そんな事を考えて居ると、ついに視界は黒く染まり、私は意識を手放した。


223 : 名無しさん :2016/11/26(土) 18:26:05 M9srQU2s0
❇︎

聖杯戦争――と言うらしい。
目を覚ました私の元に現れたサーヴァント――バーサーカーは、私が巻き込まれた新たな戦いについて、そう説明した。

再び意識を取り戻した時、私が居たのは崩壊した鎮守府でなく、遠く離れた異国の街であった。
身体に目を落とす、血が流れて居る所か、傷一つついていない。
見事な健康体である。
どんな願いでも叶えると言う、聖杯の疑わしい説明は、私の身に実際に起きたこの奇跡を持って信じるに値するだろう。
瀕死の私をここまで修復した聖杯ならば、きっと崩壊した鎮守府や、死んだ皆だって元通りに戻せるに違いない――そんな期待が、私の頭を掠める。

「HMKZ」

未だ奇跡を実感して居る私に向けて、バーサーカーは私の名前を呼び掛けた。
黒くてやや筋肉質な彼の身体は、男性の野性味に溢れた物である。野獣という形容がしたくなるぐらいだ。

「どうしましたか?」
「夜中、腹減んないすか?」

バーサーカーが口にしたのは、食事の提案であった。
窓の外を見る。まだ太陽が昇っていた。
今の時刻が夜中であるとは言いづらい。
だが、まあ、それくらいなら些細な言い間違いだろう。
ちょうど、私もお腹が空いていたのだ。
此処は、食事を取りつつ彼と話し合う事にしよう。


224 : 名無しさん :2016/11/26(土) 18:26:48 M9srQU2s0
❇︎

自慢ではないが、私は料理が結構得意だ。
なので、簡単な食事程度なら、半時間程度で作る事が出来る。
机の上に並べられた料理を目にし、バーサーカーは「やりますねぇ!」と称賛の声を上げた。
机を挟んで私たちは向かい合って座る。バーサーカーは麺類が好きらしく、それの器を真っ先に手に取り、中身を口に運んでいた。

「バーサーカーさん」

同じく食事を摂りつつ、私はバーサーカーに呼び掛ける。

「私は、この戦いを勝ち抜き、聖杯を手に入れたい――失った物を取り戻したいんです」

それは私の切なる思い――やり直しの願い。
かの悪しき深海棲艦を打ち滅ぼし、仲間たちを取り戻す――それぐらい聖杯ならば出来るだろう。

「ですから、どうか私に協力してくれませんか?」

機嫌が良さそうに食事を咀嚼するバーサーカーに対し、私は真摯な目で見つめた。
見た目は限りなく人間に近いとは言え、彼はサーヴァント――人を超えた英霊だ。協力してもらって損はない。
まさか、私の元に召喚されておいて「協力出来ない」なんて事は言わないであろうが、やはりこうしてはっきりと返事を聞かなくては安心出来ない。
私の言葉を受け、バーサーカーは食事を止める。
暫く、黙した後、彼は口を開いた。

「まずウチさぁ、聖杯あんだけど……」
「? はい?」
「取ってかない?」


それは、肯定でもなければ否定でもなく、提案であった。
質問に質問を返された形になる。
いや、待てよ。これは解釈次第によっては、肯定とも受け取れるのでは無いだろうか。

「……つまり、私に協力してくれると」
「ウン」

首肯した。どうやら、私の予想は当たっていたらしい。
ほっと、胸を撫で下ろし、「ありがとうございます」と感謝の言葉を告げる。
と、その時、また新たな疑問が私の頭に浮かんだ。

「もう一つお聞きしても良いですか?」
「ドゾー」
「バーサーカーさんには、何か聖杯に託す願いはあるんですか?」

これは、これから一緒に過ごす事になる相手が、どんな望みを抱いているのか、という単純な好奇心だ。
もし、彼もまた願望をもっているのなら、手伝ってあげたいし、何か悪しき野望を持っているならば、マスターとしてそれを阻止しなくてはならない。

「そうですねぇ……」

下を向き、熟考するバーサーカー。そこまで悩む程、数えきれないまでの願いがあるのだろうか。
数秒後、答えを決めたのか、バーサーカーは再び私の方に顔を向けた。

「やっぱり僕は王道を征く……ソープ系、ですか」
「ソープ?」

泡? 何故今ここでシャンプーの話題が出るのだろうか? 訳がわからない。
いや、これまでもバーサーカーの台詞で訳が分からないものは多々あったが、今回のそれは特に意味不明な物だ。
そこまで考えて、私は今更ながらに思いだす。
彼はバーサーカーであり、狂った存在なのだと。
そんな人物をサーヴァントとして従えて、今後聖杯戦争を勝ち抜いていけるのであろうか――私は、胸に溜まった不安な気持ちを流し落とすようにして、スープを一気に飲み干した。


225 : 名無しさん :2016/11/26(土) 18:27:32 M9srQU2s0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
無銘(野獣先輩)@真夏の夜の淫夢

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力C 耐久A 敏捷B+ 魔力E 幸運E 宝具EX

【クラススキル】
狂化:EX
一見、バーサーカーは理性を持って普通の言葉を話し、コミュニケーションが取れるように見える。
しかし、彼の話す言葉の一部は、我々にとって意味不明で理解不能な物ばかりであり、肝心な部分でコミュニケーションが取れない可能性が高い。

【保有スキル】
真夏の夜の淫夢:EX
ホモビデオとかいうクッソ汚いジャンルであるにも関わらず、某動画サイトを中心に爆発的に普及し、本編動画が幾度の削除を食らっても再投稿され続けた――という、『真夏の夜の淫夢』というジャンルの繁栄性と不死性が顕現したスキル。
極めて高ランクの戦闘続行、仕切り直しを内包する。
これにより、バーサーカーはかの神話の大英雄にも匹敵――あるいはそれをも超えるほどの不死性を有している。
バーサーカーは最早『真夏の夜の淫夢』というジャンルの代表とも言える存在になっており、超越性を表すEXランクでこのスキルを獲得した。

真名秘匿:EX
およそ1145141919810364364人にクッソ汚い醜態を見られたにも関わらず、今日まで彼の居場所や真名が発覚していない事により生まれたスキル。
どれだけ高ランクの真名看破スキルを用いようとも、バーサーカーの真名を知る事は不可能である。

無↑辜↓の怪物:EX
生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた者が持つスキル。
バーサーカーの場合、それは呪いを超えた言い掛かりに近いレベルのこじつけであり、何回かのホモビ出演をした彼は、たったそれだけで世界を救ったり、人を殺したり、女の子になったり、凶悪犯罪の犯人に仕立て上げられたり――と、ありとあらゆる逸話が付け足されていった。
このスキルによって在り方が変わり、能力を付加された彼は最早生前の原型ないやん(笑) 状態になっている。
つまる所、バーサーカーは『24歳のホモビ男優の学生』ではなく『野獣先輩』という、大衆が彼に勝手に抱いたイメージが集まった存在と化したのだ。

常変の貌:EX
同じビデオの中であるにも関わらず、シーン毎に顔が全く別の物になっていた、というエピソードに由来するスキル。
これにより、敵との戦闘終了後、相手がバーサーカーの顔を覚えるのは不可能となっており、再戦時に相手がバーサーカーをかつて戦ったサーヴァントであると認識する事は出来ない。

カリスマ:E−−−(A+++)
群衆の心を掴む、天性の才能。
通常時は最低ランクの効果しか持たないが、相手がバーサーカーの出演しているホモビデオの熱烈なファン――所謂淫夢厨――である場合、このスキルのランクは括弧内まで上昇する。


226 : 名無しさん :2016/11/26(土) 18:28:02 M9srQU2s0
【宝具】
『届け、そして見よ。我が到達するは歓びの境地(野獣の咆哮)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:バーサーカーの声が届く範囲 最大捕捉:左に同じ

オーガニズムが最高潮に達した際に放たれる、甲高いイキ声。
あまりにも特徴的なその咆哮は、範囲内の知的生命体全員の注意を引く。自らにターゲットを集中させる効果があると言えよう。
また、この声を聞いた際、Cランク以上の精神耐性スキルを持っていない者は、バーサーカーのイキ様に目を奪われ、1ターンの間行動が不能になる。だが、イッたばかりのバーサーカーも当然行動する事が出来ないので、この隙に不意打ちを狙うは不可能。

『未だ遠き絶頂。銀色青年の喘ぎは響く(サイクロップス先輩)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 種別:-

生前バーサーカーが演じてみせた役の内の一つ――サイクロップス先輩へと変身する宝具。
変身によって耐久のランクはA++まで上昇する。
しかし、その代わりにバーサーカーの言語能力はますます下がり、意味不明な英語や『アーイキソ』という喘ぎ声を放つだけになる。
また、変身時に上記の宝具は使用不能となる。

『失せる境界線。彼は私に、私は彼に(野獣先輩新説シリーズ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 種別:-

何者でもないが故に、何者にでもなれる、というバーサーカーの無限の可能性が顕現した宝具。
女の子、著名人、フィクションキャラクター、犯罪者、天体、偉人、宇宙人、概念――どんな存在であろうとも、ほんの少しの共通点が見出されるだけで、バーサーカーはそれらになる事が出来る。
この宝具を用いれば、相手のサーヴァントに変身する事も可能であり、それ故、バーサーカーの戦闘において、ステータス差による敗北という懸念は存在し得ない。
しかし、バーサーカーが認識した事のない未知の存在への変身は不可能となっている。

【weapon】
なし。
バーサーカーとして召喚された事で、本来有しているはずの武具の殆どを置いて来てしまった。

【人物背景】
ネットでお馴染みのホモビ男優。
無↑辜↓の怪物スキルとバーサーカーで呼ばれた事が合わさった結果、彼は野獣先輩という存在がビデオ内で放った台詞や取った行動をトレースするようになっており、痛い淫夢厨のような存在となっている。
その為、彼には自我と呼べる様なものがなく、いつだって『野獣先輩が言うであろう事』を喋り、『野獣先輩がするであろう』行為をするだけ。
ネットのおもちゃにされた結果、クッソ哀れな狂人と化してしまった、悲しいサーヴァントであると言えよう。

【サーッ! ヴァントとしての願い】
地球ありますねぇ! ダイナモ感覚!


227 : 名無しさん :2016/11/26(土) 18:28:48 M9srQU2s0
【マスター】
浜風@艦隊これくしょん

【weapon】
なし。艦装の無い浜風は、ただの女の子である。
強いていうなら、その愛くるしい容姿こそが、現時点で彼女が持つ唯一の武器であろう。

【人物背景】
片メカクレ巨乳。
ボブヘアー巨乳。
駆逐艦のくせに巨乳。
真面目な話をすると、かの武蔵や金剛、信濃の轟沈に遭遇するも、自分は生き延びたという豪運を持つ、生存能力の高い艦娘である。
性格は真面目で努力家、そして仲間思い。めちゃめちゃいい子。
それに、元が戦艦ということもあり、軍人気質な一面もある。
また、ゲーム内でのイベントやボイスから、料理上手であることも類推されている。嫁に欲しい艦娘である。
戦争なんかに参加せず、幸せな家庭を築いて欲しいものだ。

深海棲艦との戦いに敗北し、鎮守府が壊滅した世界線からの参戦。

【マスターとしての願い】
深海棲艦の全滅。鎮守府の仲間たちを蘇らせたい。


228 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/26(土) 18:29:22 M9srQU2s0
投下終了です。すみませんでした


229 : 墓場より ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/26(土) 19:20:53 Bghb27Fs0
投下します


230 : 墓場より ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/26(土) 19:21:35 Bghb27Fs0
「ああ…うん。確か私は遠足の土産の買い物に付き合っていたら………しかし今度はアメリカか」

我ながら忙しいものだと思う。しかし地球に来てからというものロクな目に遇っていないぞ。
やはりこの姿になったのが原因か。もうこうなったら元の姿に戻してくれと聖杯に願おうか?それも良いかもしれないな。
それにしても英雄(ヒーロー)か、私が戦う相手としては相応しい。そうは思えど不満はある。

「ジャミラ辺りを連れて来れば良いだろうに……」

元の姿に戻してもらう。この願いで知り合いの事を思い出し、私はしみじみと呟く。アイツなら全力で聖杯とやらの為に暴れるだろう。

「それにしても、私のサーヴァントとやらは何処だ?」

私1人でもおさおさ引けは取らんが、やはり戦力は多い方が良い。

「私だ」

「ぬおっ!?」

後ろからいきなり話しかけられて私はびっくりして飛び上がった。
小言の一つも言ってやろうと思って振り返って─────私の動きは静止した。

「お…お前は!?」

私のサーヴァントとやらは私の良く知る存在だった。“あの男”を全国のちびっ子がドン引きするやり方で倒し、この私も空気読まなかったとはいえ倒してのけたその実力は本物だ。

「ゼットン!?」

バーサーカーかアーチャー辺りと思ったら、クラスはアサシンか…。まあウルトラマンに対する刺客みたいなものだしな。
それにしても私は兎も角、何で此奴がここに居る?怪獣墓場は英霊の座とは別物だろう?

一応の理由としてはムーンセルによる観測はウルトラマンの戦った地球までにしか及んでおらず、JK怪獣がまったりして居る怪獣墓場は観測されていなかった。
だが、メフィラス達が遠足で地球に来た時に、ムーンセルはJK怪獣達を観測、そこからメフィラス達の足跡を辿り、怪獣墓場を観測したのだった。
後は単純な話で、怪獣版の英霊の座といえる怪獣墓場を観測したことで、JK怪獣を召喚出来る様になり、メフィラスが『白紙のトランプ』に触れたことで、JK怪獣との『縁』が発生。JKゼットンがサーヴァントとして現界したのだった。

「なんだか判らないが、まあ良いさ。お前しか頼れないしな。宜しく頼む」

ピポポポポポポポポポポ………ゼットーーーン

無言のまま電子音と鳴き声を返すゼットン。やっぱコイツ苦手だ、何考えてるか判らないし。
それでも此奴しか頼れる奴はいないんだよなあ
私は盛大に溜息をついた。


231 : 墓場より ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/26(土) 19:23:22 Bghb27Fs0
【クラス】
アサシン

【真名】
ゼットン@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POPComiccode

【ステータス】
筋力:D(A+++) 耐久:D(A+++ 敏捷: D(A+++) 幸運:D 魔力:C 宝具:A++

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

【保有スキル】

怪獣:D(A++)
神秘に依らずして自然の理を超えた超常存在として生まれたものに備わるスキル
怪力、頑健、天性の魔、恐慌の声を併せ持つ複合スキル。


対英雄:D(A++)
ウルトラマンを完封してのけた逸話から得たスキル。英雄(ヒーロー)と対峙した時に大幅な補正を得る。


女子高生化:B
何の因果か女子高生位の年恰好になっている。ステータスやスキルががランクに応じて下がっている。




【宝具】
最後の怪獣(宇宙恐竜ゼットン)
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

真名解放することで、宇宙恐竜ゼットンとしての本来の力により近づく宝具。本来の大きさになることや、本来の身体能力は発揮出来ないが、ステータスと女子高生化以外のスキルが括弧内のものに修正される。
但し燃費は最悪で、Aランクの狂化を得たサーヴァント並みになる

【weapon】
強力な身体能力。胸の結晶体から放つ火球。瞬間移動。エネルギー吸収及び増幅しての放出。障壁展開。物質透過etc……。

【人物背景】
初代ウルトラマン最後の対戦相手、宇宙恐竜ゼットンが死んで怪獣墓場送りになって女子高生化したもの。
基本無口で、喋ったとしても辿々しい。
メフィラスに『空気読まない』とか言われているが、「よそう、我々宇宙人同士が……」なんて台詞宇宙恐竜に言っても意味が無いと思う


【方針】
メフィラス任せ

【聖杯にかける願い】
?????


232 : 墓場より ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/26(土) 19:23:44 Bghb27Fs0
【マスター】
メフィラス星人@ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POPComiccode

【能力・技能】
グリップビーム:
家屋サイズはあるメトロン星人の円盤を一発で撃墜出来る。
元のサイズになることもできたが、何故かこの地では出来なくなっている。

瞬間移動:数キロ単位を移動可能。

身体能力:
元がウルトラマンと引き分けになる位なんで結構強い。

魔力の様なものも一応は持っている。

【weapon】
自分の身体とグリップビーム

【ロール】
ニート

【人物背景】
ウルトラマンと戦った初代メフィラス星人。引き分けて帰ったはずなのに何故か怪獣墓場でJK化。
嫁はエレキング。二代目の話をされるとキレる。ラッキョウが嫌い。
本来は知的な筈なのだが何故か二代目並みにコミカルな言動をする。


【令呪の形・位置】
左掌にラッキョウが三つ

【聖杯にかける願い】
無い

【方針】
情報を集めてからゼットンの能力で不意打ちして行く。

【参戦経緯】
2巻の遠足でお土産を物色していたら『白紙のトランプ』に触れた

【運用】





【把握媒体】
キャラクターはウルトラ怪獣擬人化計画feat.POPComiccode 単行本一巻だけで把握可能。参戦時期は二巻まで読めば把握可能


233 : 墓場より ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/26(土) 19:24:14 Bghb27Fs0
投下を終了します


234 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:24:57 nJ5EBaMc0
投下します。


235 : 手折られたスズラン ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:25:40 nJ5EBaMc0

…どうして、こんなことに…

ここはある森の中、いや、厳密には森とは言えないかもしれない。

なぜならば、そこには生きているものなどほとんどいなかった。ありとあらゆる木々が枯れ果て、朽ち果てているからだ。

そしてそこには、無数の亡者とそれに囲まれている骸骨と少女がいた。

「どうした、マスターよ?これだけの戦力を集めたのだぞ、もっと喜べ」

骸骨がそういった、この骸骨こそこの聖杯戦争で呼ばれたサーヴァント。

クラスを、キャスターといった。

「何故って…このゾンビたち、貴方が無理やりゾンビにした人たちじゃないですか…何でこんなことをしたんですか…」

そしてそんな彼を召喚した少女、白菊ほたるは大粒の涙を流しながら答えた。

「お前は実におかしなことにこだわるな。こいつらはもともとお前に何の縁もない人間だろう?なぜ悲しむのか、理解できんな」

彼は意に介した様子もなくこう答えた。なぜ赤の他人のために涙を流すんだと、そう答えた。

そして彼女は、そんな彼の心ない言葉に対して反論した。

「だって、私はこんなこと望んでいません!誰かを不幸にしてまで幸せになりたいと思っていません!」

彼女がそういうと、キャスターは突然彼女の首を掴み、こう言った。

「…強がるなよ小娘。お前の心は不安と恐怖と妬みに満ち溢れているではないか」


「お前は、自分のせいで周りの人が不幸になるかもしれないと思っているだろう?」


「お前は、そのせいで自分を助けてくれた人に見捨てられるのが怖いのだろう?」


「お前は、なぜ自分ばかり不幸なのか、何でほかの人は幸せなのかと妬んでいるだろう?」


「そうだろう?だから私は、そんな醜い心をしたお前の"幸せになりたい"という願いを叶えてやろうとしているのだ」


「そう、文字通り、手段を選ばずにな」

そういうと彼は、ほたるの首から手を放して彼女を嘲笑った。

そして彼女は、彼の言った"自分の本当の願い"について何も反論することができず、ただうずくまってしまった…。

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

その姿はまるで、心ない人に何度も踏みしだかれた花のようだった…。


236 : 手折られたスズラン ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:26:49 nJ5EBaMc0
【クラス】キャスター

【真名】邪帝トカイ

【出典作品】モンスター列伝 オレカバトル

【ステータス】筋力D 魔力A+ 耐久A 幸運C 敏捷D 宝具EX

【属性】
悪/混沌

【クラススキル】

陣地作成:A
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 彼は自らの能力により大地を腐らせることで“工房”を上回る“神殿”の形成が可能。


道具作成:B
 魔力を帯びた器具を作成できる。

 彼は自らが栽培したブドウと菌を用いて、強大な魔力を授ける"貴腐ワイン"を作成できる。


【保有スキル】

呪術:A+
 大地を枯らし、水を濁らせ、生あるもの全てを腐食させる強力な呪術の使い手。

 
吸収:A
 周囲の魔力や生命力を強制的に吸い上げ、自らに還元する。
 霊格や魔術次第で対抗可能。

 またこのとき吸収した生命力をもとに新たなアンデッドを生み出すこともできる。

異形:A
 全身が白骨化した、一目でアンデッドを生み出している根源だと分かる姿。

 彼の身体を形成する骨を砕くか、魔術的な方法を用いて分解するかしないと
 すぐに復活してしまう。

 …しかし"神性"スキルを持つサーヴァントを相手にする場合、たとえかすり傷でも致命傷となってしまう弱点がある。
 
地形適応:A+
 特定の地形に対する適応力。
 墓地などの死者が眠る場所である場合、幸運以外のパラメーターを1ランクアップさせる。


237 : 手折られたスズラン ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:27:10 nJ5EBaMc0
【宝具】

『呪われし者どもよ、恨みを晴らせ(死霊を呼ぶ声)』
  ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50

 彼が自分の軍団を増やす手段の一つであり、彼の操る呪術の1つ。

 墓地など土の中に眠る死者たちに偽りの命を吹き込み、ゾンビとして使役する。

 また彼が生成したゾンビたちは一般的なイメージ同様、彼らの被害にあった人も

 ゾンビに変貌することとなるため、気が付いた時には手遅れとなっていることも多々ある。

 …なおゾンビたちは魔力がなくなると体を維持できなくなるが、キャスターは彼らに対し基本的に魔力供給を行わないため
 大体3時間以内に誰も襲うことができなければそのゾンビは自壊することとなる。

『灰色のカビ(ボトリティス・シネレア)』
  ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大補足:10
 
 彼が自分の軍団を増やす手段の一つであり、彼の呪術の代名詞ともいえる宝具。

 人間や動物などの"生きている者"を強制的にゾンビに作り変えてしまうカビを周囲に発生させる。

 基本的にサーヴァントには効き目はないが、周囲にいる人間は別であり、
 
 もし善良なサーヴァントであればカビの対応に追われることとなる。


『高貴なる腐敗(ネメシロトハダーシュ)』
  ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:100

 彼が自分の軍団を増やすおもな手段であり、前述した2つの宝具の特性を持つ。

 生者をゾンビに作り変えてしまうカビを媒介するゾンビを大量発生させ、辺りに拡散していく宝具。

 この宝具で生成したゾンビはカビの影響で身体能力が異常に強化されており、また
 たとえこのゾンビを倒したとしてもカビが拡散して新たなゾンビを生み出すこととなり、
 悪夢の倍々ゲームが始まることとなる。


『土に宿りし怨み深き亡者共よ、生ける屍となり蘇るのだ(トカイエッセンシア)』
  ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1

 彼の呪術の真骨頂であり、他の宝具とは一線を画したある存在を呼び出す呪術。

 今回の聖杯戦争で脱落したほかのサーヴァントを、人格を消滅させDランクの"単独行動"を付与した状態で召喚する宝具。

 しかしこの方法で呼び出されたサーヴァントは宝具を全て失っており、またキャスター自身誰が召喚されるか
 分からず、魔力供給も行えないため最大でも半日しか現界できない問題がある。

 さらに言うと消費する魔力が膨大であり、発動する場合マスターは最低でも令呪を1画消費する必要がある。

【weapon】

『杖』

彼が左手に持つ、紫色の布が無数に巻きついた杖。


【人物背景】

 地上に孤毒を撒き散らし、死者の帝国を築かんとする腐敗の暴君であり、
 "光に導かれたガラスの靴の少女"と"青き眼を持つ聖なる白龍"によって討たれた魔王である。

 また言葉の一つ一つが相手の本質や、目を逸らし続けている真実を的確に突いてくるものであるため、
 相手はおのずと自分の心を腐らせてしまう事となり、彼と戦った"少女"も例外ではなかった。


【聖杯にかける願い】

受肉し、世界のすべてを腐らせ、そこに再び死者の帝国を築く。


238 : 手折られたスズラン ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:28:00 nJ5EBaMc0
【マスター名】白菊ほたる
【出典作品】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【weapon】
 なし。

【能力・技能】
 何故か自分と周りの人間が皆不幸に見舞われてしまう。

【ロール】
他の人よりちょっぴり不幸な女の子。

【人物背景】
所属するプロダクションが次々と倒産していくという不幸な事態に見舞われている薄幸アイドル。

13歳にして「疫病神」と呼ばれ続けていたせいか「私がいると…みんな不幸に…」と気弱になっており
「謝ってばかりで…すみません」という台詞に象徴されるように、些細なことでも気にして落ち込んでしまう。

一方でトップアイドルになる夢は諦めておらず、いつか幸せになるという強い意志を秘めている。
また笑顔に対して強い関心を持っており、「笑顔」というワードを発言する機会が多い。

しかし今回の聖杯戦争ではキャスターに"自分のせいで、自分が今所属しているプロダクションが倒産してしまうかもしれない不安"と

"そのせいでプロデューサーに見捨てられてしまう恐怖"、"なぜ自分ばかり不幸なのかという妬み"が心の奥にあると嘲笑され、

その心と笑顔が曇り始めている。


【聖杯にかける願い】
"幸せになりたい"

…でも…これが、私の望んでいたこと…?


239 : 手折られたスズラン ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/26(土) 20:28:24 nJ5EBaMc0
投下終了です

ありがとうございました。


240 : 志村ダンゾウ&アーチャー ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:01:11 03vaYEuk0
投下します


241 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:02:35 03vaYEuk0


ある男がいた。
その男は、師が、友が命を引き換えにしてまで守った「里」を、どんな犠牲を払ってでも守ると誓った。
その男の人生を一言で表すなら、まさしく「闇」であった。
師の最後の言葉に従い、師が統治していた里の「光」を友が、「闇」を自分が背負う事となった。
師の判断は、正しかったのであろう。あの時命に代えて仲間を逃がそうと志願した友は、里の英雄となり優秀な弟子を育て、そして最後はあの時と同じように命と引き換えに里を守り死んでいった。
自らの使命は、里の「光」を支える「影」となる事だった。
......里の「影」である為には、「光」以上の力が必要だった。
友の弟子であり、闇に落ち修羅となった悪魔に魂を売った。
師が生前危惧していた一族も、彼の危惧通り里に仇名す危険分子となったため滅ぼし、一族が持っていた「力」を奪い取った。
全て、里が平和であり続ける為の止むなき犠牲だ。そしてそれを背負うのは、「影」である自分だけでいい。
全て「影」である自らがやった事だからこそ、「光」は「光」であることが出来た。
「光」であった友の死後、自らの行為を、「闇」を背負っていたが故に「光」を受け継ぐはずの後継者は何も知らず、里は”間違った方向”へと進んでいた。いよいよ、自分が出るしかなくなったのだ。



そして、己の命を引き換えにして里を守ろうとした男の行く末は......完全なる「闇」であった。





光があれば、闇があり
光が当たれば、必ず「影」が出来る。
それがこの世の真理だ。
この世は地続きであり、誰かが幸福になれば、必ず誰かがその分のカスを掴まされる。
幸福と不幸は、神の視点で見ればプラスマイナスゼロ。
ある男がいた。
男は父親が命を懸けて守った家族と国に対する「誇り」と「愛国心」を継ぎ、やがてその国の頂点まで上り詰めた。
男は「幸福」を望んだ。
自らの国を信じて戦った父親の死を無駄にする訳にはいかなかったのだ。
だが、現実は甘くない。自らの国を襲う危機は山ほどある。何かを決断するたびに何かが犠牲になった。
誰もが幸せな世界など、ある訳がない。ならばどうするか?
簡単だ。誰かにそのカスを掴ませばいい。
自分の国ではない「どこかの誰か」に、不幸を擦り付ければいい。
これは誰かが決める事なのか?
違う。一番最初に「ナプキン」を取った者が決めている。
誰かが最初に「ナプキン」を取れば、後の者もそれに従わざるを得ない。それがこの世の「基本」であり「ルール」だ。それが男の持論であった。
誰かがやらねばならない。男はそう決意し、どんな犠牲を払ってでも「幸福」を手にすることを決意した。
戦いには多くの血が流れた。全ては「幸福」に繋がる「力」を手にする為の犠牲のはずだった。
そして、男は...........戦いに敗れ、自らの命をその国に殉じた。男は最後まで、自分の国の繁栄を願っていた。


242 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:04:55 03vaYEuk0



まず.....志村ダンゾウが目にしたのは、「光」であった。
自らの手で閉じ、二度と見るはずのない、光―――

「ここ、は..........」

「気づいたか」
仰向けに倒れているダンゾウを見下ろすようにして、男が立っていた。
男は金色の髪に、奇抜なカールを巻き......慎重な目つきでダンゾウを見下ろしていた。
「立てるか?まだ無理はしない方がいいと思うが.............」
「どこだ、ここは............ワシは何故、生きている............」
「あぁ.....確かに、ひどい有様だったよ。身体がボロボロで、既に死にかけていたからな..........”間に合わなければ”、君は死に、私は消滅していたな」
「な、に.....何の、事だ......貴様、何者だ.......?」
身体の激痛に耐え、無理して立ち上がろうとするも.....やはり体力が著しく消耗しており、倒れてしまう。
「おっと、無理をしない方がいいな.............
 私の名は、ファニー・ヴァレンタイン.....君のサーヴァントだ、志村ダンゾウ.....」
「ファニー....?だから貴様、ここは何処なのだと聞いておるのだ。
 まさか貴様、二代目の穢土転生の術を使いワシを........!」
「まぁ、落ち着くんだ。生憎私はエドテンセイなんて物は知らないし、第一、君を蘇らせたのは私ではない。.......もっとも、「基本世界」の君は蘇った直後に死んでしまったがね..........」
「だから何を言っておる........「基本世界」がどうのだと.........それなら、ここにいるワシは何だというのだ!?」
「ここにいるのは「志村ダンゾウ」だ」
ヴァレンタインが、傍に置かれているテーブルまで歩く。奇妙な事に、彼の歩く床には、立てるはずの足音が無かった。
「それ自体には、何の変りもない」
男は、物音を立てずにテーブルまで歩き終えると......コーヒーカップを手にした。
「そして正確に言えば、私が連れてきた"無事だった世界の"「志村ダンゾウ」だ」
男は、何も注がれていないコーヒーカップを飲むような仕草で持ち、口まで運ぼうとする........ここで、奇妙な事が起こった。
「コーヒーカップの中から、コーヒーカップが出現した」のだ。出現したカップは重力に従って、ポロリと落ち、割れる。.......が、聞こえてくるはずの甲高い音は聞こえなかった。
「"Dirty Deeds Done Dirt Cheep"......これが、私の"能力"だ」
男は床の割れたコーヒーカップを踏みつけ、ダンゾウに迫る。踏みつけたはずのコーヒーカップは、奇妙な事に床から消えていた。
「(.......来るか........クソ、体がまだ.......動けぬ)」
迫ってくるヴァレンタインを前に、何とか立て直そうとチャクラを練るダンゾウ。
「そして、この"聖杯戦争"........勝つのは我々でなければならない」
ダンゾウの右目にチャクラが集まるのと、ヴァレンタインの手がダンゾウの額に触れるのが、ほぼ同じ瞬間であった。






「成程.......”聖杯戦争”.....か。
 .どうも貴様もワシも、死んで尚妙な事に巻き込まれるものだな」
「あぁ......敵は十四組。主従のサーヴァントを、倒さねばならない。私はこれを、「試練」であり、「超えるべき壁」と心得ている。」
「.................」
「「試練」には必ず「戦い」があり、流される血がある.......「試練」は「供え物」だ.......「強敵」であるほどよい」
「成程.....だが、”主従”というのはどういう事だ?」
必ずしも協力できるわけはないではないか――――”お前のようにな”」

「......各マスターには、”令呪”が与えられている.......それを使えば、命令をサーヴァントに与えられる.......」

「.........ふむ.......なら貴様、なぜそれをワシに黙っていた?」
「............................」

「..........................私には、「愛国心」がある............国の為に、そして、間違ってもその力を自分の為にしか使わない”お前のような”ゲス野郎に与えない為に...........聖杯は、渡すことは出来ない.................」
「....................」

「...............「愛国心」か、よく言った物だ...........だが、貴様の好きにさせる事は......できんな」
「........................................」
「貴様の「能力」.........ワシの為に、使わせてもらうぞ」


243 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:06:28 03vaYEuk0

始め、あの男は「君を傷つけるつもりはない」と宣言し、今置かれている状況、即ち「聖杯戦争」についての説明を始めた。
しかし、ダンゾウはそれを良しとするはずはなく........この男の得体のしれない能力を危険と判断し、写輪眼を使いヴァレンタイン支配下に置いた上で改めて「聖杯戦争」について聞き出すことにしたのだ。
案の定、ヴァレンタインはサーヴァントの絶対命令権である「令呪」の存在を隠していた。
そして、その事を隠している....という事は、自分に逆らう意思があるという事。案の定、ヴァレンタインは自身を裏切る気でいた。
既にヴァレンタインには、徹底的な幻術と「舌禍根絶の印」、そして「自業呪縛の印」を掛けておいた。これで、暫くは逆らう気は起きないだろう。
「(しかし.........万華鏡写輪眼......未だ戻らぬか。忌々しい.......)」
本来、能力が分からぬ以上用心すべきと踏んで、ダンゾウはヴァレンタインに「別天神」を使用するつもりだった。
しかし、結果として発動できたのは写輪眼のみ。
まさかこんな形で再び生き返るとは思っていなかった為.....自分の死後、その絶対的な幻術を利用されぬ為右目を潰したのが、仇となってしまったようだ。
「(そして、来奴の能力........まるで、"イザナギ"のような能力だな)」
イザナギ。それは、自分の不利な現実を夢に置き換える究極の幻術。
代償として写輪眼の目の光を失うが、その効果は絶大なものがあった........生前は失明のデメリットの為、奥の手として使う他なかったのでその術の原理について知る事は出来なかったが.....
幻術に掛けたヴァレンタインの説明を聞いて納得した。成程、似ているというよりは「原理」は同じらしい。
イザナギは、目の光を代償として、”自身を並行世界へとリンクさせる”術だった、という事だ。

「(.............「愛国心」か)」
幻術に掛かり、うずくまるヴァレンタインを尻目に椅子に座りながら、ダンゾウは考える。
思えば、自分もこの男も、里や国に執着した末の末路だった。
里の為に進んで犠牲になる......「自己犠牲」の姿勢は、やはりあの時自らが囮になる事を言い出せなかった自分への戒めとして深く己の心に突き刺さっていたのであろう。
当然、部下にもそれを強いた.......里を陰から支える「根」として、深く、暗く、統率されている必要があった。根が崩れれば、その先にある「里」という大樹は枯れてしまう。
しかし、部下であるイタチはその「情」に勝てなかった。弟を残し、そして死に際に全てを喋ったのであろう........結果としてその弟......サスケは、さらに復讐に駆られる修羅となり、己を殺めるまでに至った。
生前に施した裏四象封印で死んでなければ.......間違いなく、ペインの襲来により消耗した木の葉の更なる脅威となるだろう。それだけは何としても、防がねばならない。
その為にも、この聖杯戦争は必ず勝たねばならぬ戦だ。聖杯を利用し、あのサスケを超える力を......さらには裏でほくそ笑んでいたあのマダラを超える力を......身に付けなければなるまい。

「一筋縄では行きそうもない、が.......いずれ勝つのは、このワシよ」
呟きながら、テーブルに置かれたパイプを吸う。
自身に埋め込んだ柱間細胞の恩恵により、体調は幾分安定していた。これなら少し休めばすぐにでも出陣できるだろう。
解いた包帯から覗く右目には......生前の、鋭い眼光が赤く、細く光っていた。


244 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:07:42 03vaYEuk0



「.....『あっち側』に」
「「連れて来る」こともできるし、送り込む事もできる。
 ....だが、「D4C」を持つわたし自身は.....まるで、『磁石』のように引き離される」
D4Cが、ドアを反対側に閉める。扉の外側にいたヴァレンタインは、身体が三次元と二次元の間で縮小される。ヴァレンタインは自身をそのまま「並行世界」へ移動させようとするが.....
「『一方通行』だ」
どじゃあぁぁぁ〜〜〜ん、とおどけた調子で、ヴァレンタインは扉の外側から出現する。
「(これが、私のD4Cに課せられた「制限」、と言う奴か.....隣の次元に隠れ続けたり、隣の次元で「本体」の私が倒されて私の「魂」が向こうへ『行ったきり』になるのを防ぐための処置だろう)」
涼しげな顔で、ヴァレンタインは考察する。.....外側の扉から出てきた彼の視界には、奥の部屋で"並行世界"のヴァレンタインが、何らかの能力の攻撃を受けて、虚ろな顔をしているのが見えた。
「(......やはり、こうなったか。
  こいつを別の世界から連れてくる時に、念のため”わたし”を連れて来ておいて正解だったようだな。
  恐らくあの、ダンゾウとかいう男.....見た所、「幻覚」のスタンド能力らしき物を使って向こうのわたしを操っているらしい。
  能力のトリガーは.....恐らく、男の「右目が赤く光る事」と、「その目を直視する事」......用心しなければ......)」

ヴァレンタインは、ダンゾウに令呪の事まで教えるつもりは無かった。しかし、どうもあの男の「右目」を目にした途端、表情が変わり、何故か「わたし」はペラペラと喋り出したのだ。
そして、終いには私の国、能力から目的の事まで――――あきらかに異常だった。
予め"わたし"を連れて来て良かったと喜ぶべきか、本心まで暴露されたため失策だったと嘆くべきか。

だが........手札は、既に用意してある。
「この世界」の「志村ダンゾウの遺体」。頃合いが来れば、それでこいつを始末する。残念な事に右目は潰れており、ダンゾウの能力を解明することは出来なさそうだが.........
幸い、あそこの「ヴァレンタイン」が、まんまと幻術に引っかかってくれたお陰で、令呪を使う挙動も無いようだ。暫くはダンゾウの術にハマったフリをして泳がせておくのが無難だろう。
その間に、私はもう一つの"懸念事項"を調べてみるとしよう.....。

ヴァレンタインは、生前「聖人の遺体」を巡って争い、その争いの中で命を落とした。
「聖人の遺体」――――所有者に味方し、その所有者に「奇跡」と「幸福」をもたらす象徴。
あの遺体は、「一人分」でこの世界が味方する「力」を持っていた。
魂というものには、多かれ少なかれ「力」がある。
その力の多価が、どういった基準によって決まるかは知らないが、その「力」が多いものが「英雄」とされ、死後、その魂は「英霊の座」という場所に引き寄せられるらしい。
なら、あの「聖人の遺体」はどうだ?「魂」が去った「残り香」で、あの絶大な力だ。果たしてその「魂」の力となると、英霊として昇華されれば、この世の全てを書き換えられる程の事象―――「能力」を、持つのではないか?
ならば、それと同等、またはそれ以上の「魂」を味方に付ける事が出来れば.................方法は模索しかできないが、試してみる価値は、十分にある。そう彼は判断する。

いずれにせよ、油断はできない―――あの時と同じだ。「一手」を見誤れば確実に敗北する。
しかし、諦める事はできない。生前は、余裕が無かった為仕方なく並行世界のディエゴを連れて来て遺体を託す事にしたが.......やはり、それでもまだ「マシ」な程度で、安心などできるはずもない。
いずれ聖杯を獲り、受肉して復活した後、「聖なる遺体」を味方につけるであろうディエゴかジョニィと戦うためにも.......それ以上の「力」を、手に入れる必要がある。
「勝つのは―――この、ヴァレンタインだ」
翻し、町へ赴く。
町は早くも、戦いが始まろうとしていた―――――


245 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:13:31 03vaYEuk0
【真名】ファニー・ヴァレンタイン

【出典作品】Steel Ball Run

【ステータス】筋力E 魔力E 耐久E 幸運C 敏捷B 宝具EX

【属性】
悪/秩序

【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の魔術を無効化する。
 大魔術や儀式呪法などを防ぐことはできない。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給が無くなったとしても現界していられる能力。
 ランクBは二日程度活動可能。


【保有スキル】
神性:C
生前、「聖人の遺体」を味方につけ、
己のスタンドを自分に向けられた「害悪」をこの世のどこかに飛ばす「D4Cラヴトレイン」に昇華させている。
「遺体」の所有者の中で誰よりも遺体の力を最大限に発揮した「才能」と遺体の「残り香」がスキルとして現れた物。



才覚:A
アメリカ合衆国大統領まで登り詰めた手腕と民衆の揺るぎない『信頼』、そのカリスマ性がスキルとして昇華されたもの。
信頼を得やすく、説得や交渉において自分が有利に働く補正を持つ。
また、この聖杯戦争においてはマスターに与えられた立ち位置が高くなり、行動の制限が少々有利になる補正が付いた。


【宝具】
『Dirty Deeds Done Dirt Cheep(いともたやすく行われるえげつない行為)』
筋力C 魔力B 耐久C 幸運B 敏捷B
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~3(スタンドビジョン) 最大捕捉:―
物体を二つの「面」で挟み込む事により、3次元の物質を2次元に変換し、その物体を平行世界へと送り込むことのできるスタンド。
「基本世界」の人物や物体を挟んで「連れて行く」事と、並行世界の人物、物体を検索し「連れてくる」事が出来る
「並行世界」、及び「基本世界」においては、「同じもの」はヴァレンタインを除いて絶対に二つ以上存在することは出来ず、一定の距離内を超えた所で磁石の様にお互いが引き寄せあい、激突。消滅してしまう。
ただし、ムーンセルという電子空間の特性上、スタンドビジョンを持つ『本体』は隣の世界へ行くことは出来ない。しかし、隣の世界へ行く『前』のプロセス、「本体」を二次元へ変換する事は可能
(あくまで「並行世界の移動」が制限されているだけで、物質の隙間の二次元に「隠れたり」挟んだ物体のどちらかに「移動する」事は可能)
また、生前「聖人の遺体」を味方につけ、自らのスタンド能力を自分に向けられた「害悪」を弾き飛ばす「D4Cラブトレイン」に昇華させた事がある。
ヴァレンタインはこの聖杯戦争において、「聖人の遺体」と同等、もしくはそれ以上の「力」を持つ「サーヴァントの魂」、「宝具」、そして「聖杯」の何れかを「味方」につける事で
再び「ラブトレイン」がこの地においても再現できるのではないか、と推察している。


【weapon】

【人物背景】
第23代アメリカ合衆国大統領。
幼少の頃に戦争に行った父親の親友から父親が命を懸けて守った国の誇り「愛国心」を最も美しい「得」だと思い、絶対の価値観とするようになる。
大統領に就任し、「スティール・ボール・ラン」レースを陰で操り、「聖なる遺体」を巡る戦いに自らの身を投じる事になる。
一度は遺体に選ばれ、絶対的な「力」を手に入れる事が出来たが、最終的にジョニィ・ジョースターに敗北。
死後を並行世界のディエゴ・ブランドーに託し、死亡する。


246 : 『殉ずる者たち』 ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:14:38 03vaYEuk0
【出展】
NARUTO

【マスター】
志村ダンゾウ 


【参戦方法】
死後に発動した『裏四象封印』発動中に『白紙のトランプ』が出現、死後の肉体とともに封印される。
結果、ムーンセルにおいて一部再生され、参戦することとなる

【人物背景】
木ノ葉隠れの里で暗部養成部門「根」の創設者かつリーダーを務める男。
暗部の忍に対し強い影響力を持っており、里の中でも「忍の闇」の代名詞的な存在で汚れ役として活動していた。
ペイン襲撃後、六代目火影を強制的に襲名し、その後の五影会談で「別天神」を使い、自分を忍連合の総裁になるよう操っていた。
結果計画は失敗に終わり、仮面の男とサスケの襲撃を受け交戦、
追い詰められ、自らの死期を悟り「裏四象封印術」を発動、死亡した。

【weapon】
・写輪眼(万華鏡写輪眼)
かつてうちはシスイから奪い取った右眼の写輪眼。
ただし、死後自ら潰したものを復元(再現)したため、不完全な形で再生されており、「万華鏡写輪眼」及び、それに準ずる「別天神」は使用不能となっている。
また、ダンゾウは右腕に10個の写輪眼を埋め込んでおり、そちらは再生こそされているものの生前、全てに「イザナギ」を発動したため現在は使用不可能。

・柱間細胞
右腕に初代火影、千手柱間の細胞を移植させた物。
ムーンセルではチャクラを魔力に還元して使用できる為、魔力の回復、供給率が極めて高い。
また、木遁として右腕を変異させ大樹を出すことが出来るが、大量のチャクラを消費してしまう。


【能力・技能】
・忍術
風遁の使い手であり、生前に使用した基本忍術の殆どは使用可能。
ただし、ムーンセルという空間の特性上「口寄せの術」は使用できない。 
・イザナギ
失明を対価として、右眼の写輪眼を用いて使用する究極幻術。
眼の光を失う代わりに、制限時間の間は、術者に死を含めた不利な展開を夢にして攻撃など有利な展開を現実に書き換えることができる。
ダンゾウの場合、「一分間の間、不利な事象を夢に変えられる(なかったことにできる)」。

・別天神
右眼の写輪眼の元の持ち主である、うちはシスイの万華鏡写輪眼の瞳術。
対象者を幻術に掛けられたと自覚することなく操ることが出来、かかった方はそれが自分の意志だと錯覚して動く。
「イザナギ」同様、その効果は幻術に留まらずこの世の事象を書き換えてしまう程強力な物だが、万華鏡写輪眼が不完全な形で再現されてしまっている為現時点での使用は不可能。



【マスターとしての願い】
里の為、そして自らの野望の為にどんな手段を使ってでも聖杯を獲る


247 : ◆XksB4AwhxU :2016/11/26(土) 23:15:07 03vaYEuk0
投下を終了します


248 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:10:43 Ihi8k2VA0
新聖杯スレ立て乙です。私も投下させていただきます。


249 : ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:10:44 FOG/J.pM0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


250 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:12:14 Ihi8k2VA0
すみません、タイミングが偶然被ったので ◆NIKUcB1AGwさんに先を譲ります


251 : ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:16:37 FOG/J.pM0
ではお言葉に甘えまして、先に投下させていただきます


252 : シルヴェスター・アシモフ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:18:05 FOG/J.pM0
住宅街にあるごく平凡な家の一室に、男はいた。
筋肉に覆われた2メートル近い巨体に、たっぷりとあごひげを蓄えた厳つい顔。
まさに、絵に描いたような偉丈夫であった。

「聖杯戦争ねえ……。火星に行ってワクチン作るのと、どっちが成功確率高いかねえ」

ウォッカを豪快にあおりながら、男は呟く。
男の名は、シルヴェスター・アシモフ。
27世紀の世界で「軍神」と讃えられた、元軍人である。

彼の世界では、治療不可能な謎のウイルスが猛威を振るっていた。
そのため、ウイルスの発生源と思われる火星に赴きワクチンとなり得る物質を採取する計画が起ち上げられた。
だが、この計画には大きな問題があった。
火星はかつてテラフォーミング計画で送り込まれ、その地で異常進化を遂げたゴキブリたちの王国と化していたのだ。
人類を軽く凌駕する身体能力を手に入れたゴキブリに対抗するため、
計画の参加者には他の生物の能力を使えるようになるMO(モザイク・オーガン手術)が施された。
そして幹部として、特に秀でた実力と指揮能力を持つ6人の男女が選ばれた。
アシモフも、その一人だった。

(まさか計画を、途中で放り出すことになるとはな……。
 今頃U-NASAはパニックになってるかもしれねえが、不可抗力なんで大目に見てもらいたいねえ。
 どっちみちこの戦いを勝ち抜かなきゃ、帰らせてはくれねえみてえだ。
 だったら、やってやろうじゃねえか。聖杯とやらを手に入れて、その力でウイルスを根絶する!)

アシモフは、早々に聖杯戦争に乗ることを決意していた。
まったく考えていない方法であったが、聖杯を手に入れることができればおそらくウイルスの根絶はかなう。
ならば、狙わない道理はない。
むろん聖杯戦争を戦えば、罪のない人間を傷つけることになることもあるだろう。
だが、それも覚悟の上だ。
もともとアシモフは、他国を犠牲にしてでも母国であるロシアにワクチンを持ち帰ろうと決意していたのだから。

アシモフがそこまで強く決意を固めているのには、理由があった。
彼の愛する娘が、ウイルスに感染していたのだ。


253 : シルヴェスター・アシモフ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:19:47 FOG/J.pM0


◇ ◇ ◇


「来たか……」

アシモフの前で、テーブルの上に置かれていた白紙のトランプが輝きを放ち出す。
やがてそこから、人の姿をしたものが現れた。
テーブルが吹き飛んだのも気にせず、アシモフは出現したサーヴァントを凝視する。

「セイバーのサーヴァント、召喚に応じ参上した。お前がマスターだな?」

そう言い放ったのは、一見して平凡な一般人にしか見えない中年男だった。
その体格はアシモフと比べるべくもないほど細く、とても強そうには見えない。

「ああ、そうだ。よろしく頼むぜ」

しかし、アシモフは上機嫌だった。
目の前のサーヴァントは、たしかに肉体的には強さを感じない。
だがその目には、尋常ならざる意思の力が宿っていた。
この男は強い。アシモフはそう確信していた。

「マスター、貴様の望みはなんだ」
「家族を救う。そのために聖杯がいる」

セイバーの問いかけに、アシモフは躊躇なく答える。
それを聞いたセイバーは、わずかに顔の筋肉を動かす。

「奇遇だな。私の願いも、家族を助けることだ」
「そうかい、そりゃ仲良くやれそうだな」
「そうだな。お前には、真名を伝えておこう。
 私は葵連。またの名を……」

セイバーは、奇妙な物体を手にする。
それは骨のような意匠を施された、異様な形の錠前であった。

「仮面ライダーフィフティーン。15の過去と、15の未来を葬る宿命を持った戦士だ」


254 : シルヴェスター・アシモフ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:20:56 FOG/J.pM0

【クラス】セイバー
【真名】葵連
【出典】平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
【性別】男
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:D 耐久:E 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:A
    (変身時)筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。
乗り物を戦闘に用いた逸話のないセイバーは本来ならEランクだが、
「仮面ライダー」の名が持つ言霊により1ランク上昇している。

【保有スキル】
親の愛:A
闇に染まれども決して折れない、息子への思い。
精神攻撃に対して強い耐性をもたらす。

戦闘員召喚:D
戦闘員の怨霊を一時的に実体化させ、使い魔として使役できる。
召喚できるのは一度に2体まで。
種類は「ショッカー戦闘員」「デストロン戦闘員」「チャップ」「コンバットロイド」の4種からランダムで選ばれる。


【宝具】
『亡者より賜いし漆黒の鎧(フィフティーンロックシード)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
漆黒の鎧を纏う仮面ライダー、フィフティーンへの変身アイテム。
変身することにより、ステータスが大幅に上昇する。

『未来築く十五の力(平成ライダーロックシード)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
仮面ライダークウガから、仮面ライダー鎧武までの15人のライダーの力を宿すアイテム。
発動することにより、それぞれのライダーの能力を使用できる鎧を身に纏う。
ただし今回は、実際に使用した逸話が残されている「ディケイド」「フォーゼ」「ウィザード」「鎧武」の力しか使用できない。

【weapon】
「戦極ドライバー」
仮面ライダー鎧武と同型の変身ベルト。
これに宝具をセットすることで、その力を発動する。

「黄泉丸」
骨を模した形状の剣。
変身前でも呼び出すことが可能。

【人物背景】
バダンに所属する、悪の仮面ライダー。
その正体は幼くして死んだ息子を蘇らせるために悪魔に魂を売った、一人の父親である。
バダンに加入する前は単なる一般人だったと思われるが、百戦錬磨の仮面ライダーたちと互角以上に渡り合うほどの実力を持っている。
その強さの元はひとえに、息子への愛から生じる執念であろう。

【サーヴァントとしての願い】
息子が死ぬ運命を改変する。

【基本戦術、方針、運用法】
基本的に接近戦専用。
機動力もあまりないので、遠距離攻撃を得意とする相手には分が悪い。
しかし逆に言えば、接近戦にさえ持ち込めばこれといった弱点はないということでもある。


255 : シルヴェスター・アシモフ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:21:40 FOG/J.pM0

【マスター】シルヴェスター・アシモフ
【出典】テラフォーマーズ
【性別】男
【令呪】正方形と二つのハサミで構成される、蟹を模した文様

【マスターとしての願い】
AEウイルスの根絶

【ロール】
隠居生活を送る退役軍人。

【weapon】
「葉巻型変身薬」
人為変態をするために必要な薬。
あまり多くは持ち込めていない。
スノーフィールドのベースとなった時代の科学力では作れないため、補充はまず不可能。

「カフカス・スヴィエート」
アシモフの専用武器として作られた、圧縮栄養入りの変身薬。
人為変態時、四肢が欠損した場合に高速で再生できる。
アシモフ以外の人間でも使用可能だが、その場合は再生した四肢が短時間で自壊してしまう。

【能力・技能】
「剛力」
人為変態しなくとも、人間より頑健な肉体を持つテラフォーマーを素手で撲殺できるほどの腕力を持つ。

「柔道」
7段の達人。投げ技で痛めつけ、絞め技でとどめを刺す。

「MO手術」
変身薬を使用することでタスマニアン・キング・クラブの能力を使用することができる。
特筆すべきは甲羅による防御力で、至近距離からマシンガンの連射を受けても無傷。
バズーカ砲の直撃で、ようやく痛みを感じるレベルである。
さらに持ち前の怪力がより強化され、四肢の自切能力および再生能力なども備わる。

【人物背景】
北欧の小国で「軍神」と讃えられた元軍人。
政権の崩壊をきっかけに引退するが、娘がAEウイルスに感染したことにより仇敵だったロシアに帰化し、アネックス計画に参加。
第3班(ロシア・北欧班)の班長となる。
部下にも気さくに接する陽気な性格だが、敵対した相手に対しては容赦なく攻撃を加える非情さも持ち合わせている。
今回は火星に向かう前より参戦させられている。

【方針】
聖杯狙い。


256 : ◆NIKUcB1AGw :2016/11/27(日) 00:22:20 FOG/J.pM0
投下終了です
次の方、どうぞ


257 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:23:13 Ihi8k2VA0
投下お疲れ様です。私も投下します。


258 : ジンロウがジンロウ ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:23:48 Ihi8k2VA0
アメリカ大陸西部にある都市・スノーフィールドで話題となっているのは『人狼』の存在だった。
神秘が遠のいたこの時代では些か遅れた都市伝説。
しかし、人々は「人狼を見た」「恐ろしい怪物が」「この世の終わりだ」と噂し合う。
ニュースキャスターは「我々は人狼の生贄なんだ」と悲観的な感想を口にし。
号外では「人狼現る!?」など不安を煽るような煽りを大きく記述する始末。
不可思議な事に、スノーフィールドは世紀末の最中。あるいは巨大隕石の衝突を目前に、絶望しきったかのような雰囲気を漂わせていた。


『人狼』の被害は止まる事を知らない。



●   ●   ●


259 : ジンロウがジンロウ ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:24:16 Ihi8k2VA0
随分とイカれた野郎だ。
俺は、そいつを殺した後で思った。

気付いた時、俺はゴミ捨て場でゴミ袋の山に埋もれていた。こうすれば寒さが凌げるし、多少温かい。
けど、俺はこんな場所に居た記憶はなく、理由を考えても、考える事が嫌いだったので止めた。
ゴミ袋をかき分けて、風を全身に浴びれば尋常ではない寒気が襲いかかる。
夜は凍死があっても不自然じゃない寒さだ。
ズボンに上手い具合に入っていたのは――ナイフ。
これで殺人を犯したのを思い出す。

そういえば長い事、人を殺していなかったと記憶を蘇らせれば、苛立ちが込みあげた。
誰でも良いから殺したい。
その中でも、幸せそうな奴を殺したかった。

しばらく周辺を徘徊し続けていると、一人の男と出くわす。
何も書かれていない真っ白な紙を手に、何故か上機嫌な様子だった。
『聖杯戦争』『サーヴァント』聞いた事ない単語をブツブツ呟きながらも、自分一人で盛り上がっている。
じっと俺が眺めていたのを男が視界に捉えて、ギョッと気味悪そうな顔色に変化させた。
当然だ。
俺の容姿はボロボロの包帯を全身に巻きつけたミイラ男。
例え、俺が餓鬼だったとしても見て見ぬフリで無視したくなるだろう。

「なんだお前っ、あっちにいけ!」

野良犬を追い払う仕草をする男。
俺としては、俺に恐怖する男の反応に高揚感を覚えたのだ。
以前、血で汚されたせいで白銀が輝きを劣化したナイフを握りしめ、男に見せびらかせば相手は小さな悲鳴を漏らす。
体を硬直している男へナイフを刺す。
何度も何度も心臓らしき部分だけを狙って、肉体に刃を滑り込ませば、やがて男は生命を停止した。

死体となった男には関心は一つも湧かない。
人形ごっこのように、死体をいたぶろうとは考えた事が無かった。
男が手にしていた真っ白な紙には血の色が染み込んでいる。
だけど、文字や記号ですら無い白さだ。こんなものに喜んでいたなんて、相当頭がどうかしていると俺が感じた時。
紙は突然消えた。
俺が周囲を見回してみるが、紙はどこにもない。


代わりに、犬が一匹いた。


結構な体格で、その気になれば俺を背負って走り抜けそうなほどだ。
澄んだ瞳で俺を眺めて来るのは、何故だろう。俺は餌なんか持っていない。
狼だったら、死体を喰ってもおかしくないけども、町中で狼なんて現れるのだろうか。
そもそも、犬と狼の区別だって分からなかった。

俺は死んだ男とは違って、その犬を追い払わなかった。最初は何もないと判断したのだ。
男の返り血の匂いにつられて犬が俺についてくる。
接近されると、びっくりするほど犬の体が大きく感じた。
何だかイラついて蹴ってみたが、ビクリともしないどころか感覚が無い。
ナイフで切ってみたが、確かに傷つけたつもりでも血の一滴すら流れなかった。

俺は最初、犬はお化けだと思った。
恐る恐る触ってみれば、ちゃんとゴワゴワと固い毛並みを実感できたので、実体はあるらしい。
犬を眺めていると変な記号が浮かびあがった。俺は文字が読めないけど、何故か『人狼』という読み方だと理解できた。
それと『聖杯戦争』に関する情報。色々ゴチャゴチャ面倒くさい余計なものばかり頭の中で浮かぶ。
どうでも良かった。
あまり深く考えると、折角人を殺したのに再び苛立ちが生じてしまう。俺は犬と一緒に街へ向かった。


260 : ジンロウがジンロウ ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:24:42 Ihi8k2VA0
それからというもの。
犬は未だに俺から離れないが、悪くはなかった。
俺と犬を見た奴らは「人狼だ!」と叫んで喚く様子をしているのが面白かった。
俺にビビってるのか。犬にビビってるのか。多分、両方だ。

犬はよく『人狼』と呼ばれるから、人間に化けられるかと観察してみるが全然そんな事が無い。少しつまらない。
ただ、犬は鼻がよく効いて、ゴミの中から直ぐに食べられそうな物を見つけてくれる。
俺と犬は一緒になって捨てられた食べ物を貪っていた。


結局、俺が街に来ても往くアテはない。
帰る家だって、俺には何もなかった。犬にやる餌すらない。
最終的に辿り着いたのは、浮浪者の溜まり場だった。
ボロボロの俺と犬を見かねた悪臭漂わせる浮浪者の一人が、ダンボールで小さな家を作ってくれた。
犬も一緒に入ったら非常に窮屈だが、お陰で寒くはない。
聖杯戦争や人狼のことはサッパリ分からないが、この日、俺は久しぶりに熟睡できた。

深い眠りに就く間際。
さっき、俺にダンボールをくれた浮浪者が仲間と話しているのが僅かに聞こえた。


「なぁ。さっき包帯まみれの子供と恐ろしい人狼が来てな………あれ?」



○   ○   ○



アメリカ大陸西部にある都市・スノーフィールドで話題となっているのは『人狼』。
目撃情報は多彩で、どれもこれも同じ姿で確認されていない。
「ああじゃない」「こうでもない」と目撃者は色々と表現を加えようと必死だが、未だに全貌が明らかではなかった。
ただ。
凶暴で残酷な人狼という事実だけが残されていた。
警察や猟師、興味本位の人間を含めて人狼を捕獲しよう、討伐しよう。なんて声が絶えない。



しかし、未だ『人狼』による死傷者は発見されていなかった。


261 : ジンロウがジンロウ ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:25:15 Ihi8k2VA0
【クラス】アサシン
【真名】人狼(SCP-488-JP)@SCP Foundation
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:C


【クラススキル】
気配遮断:C
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。


【保有スキル】
怪力:E
一時的に筋力を増幅させる。
アサシンの情報改変の逸話でどうにか会得した為、発動には幸運判定に成功しなければならない。

情報抹消:B
 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から
 アサシンの能力・真名・外見特徴などの情報が消失する。


【宝具】
『我、我らこそが人狼なり』
ランク:C 種別:対情報宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
 アサシンの所有する情報改変能力。アサシン自身に関する文書・音声・肉声の情報を改変する。
 改変は一部もしくは追加形式のみであり、客観性に欠けた『凶暴で残酷な人狼』である事を示すだけ。
 アサシンは人狼ではないし、強靭な能力は備わっていない。
 だが、アサシンの真の実体を伝えるのは困難を極めるだろう。


【人物?背景】
改変能力を持ったオオカミの一種。
並のオオカミよりも活動能力が劣っている為、能力を駆使して生存を図っていた。
故に、願いは以下の通りとなる。


【サーヴァントとしての願い】
種族の繁栄


【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいてme_te_de_ko氏が創作されたSCP-488-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://ja.scp-wiki.net/scp-488-jp






【マスター】
アイザック・フォスター@殺戮の天使

【人物背景】
母親が連れてきた男によって生々しい火傷を負い。悪質な孤児院へ放りこまれる。
孤児院を経営していた夫婦を殺害。
その後、盲目の老人と僅かな期間だけ暮らした。
老人が死んだ後。凶器を持って再び街へ獲物を探しに彷徨う。
参加時期は小説版の過去編ラストから。殺人鬼へと名を上げる前の子供時代の彼。


【weapon】
ナイフ
 割と長持ちする


【能力・技能】
生存能力が結構強い
何日も飲まず食わずでも生きているレベル
考える事は苦手で、文字は読めない。


【マスターとしての願い】
なし。聖杯戦争についてもよく分かっていない。


262 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/27(日) 00:25:46 Ihi8k2VA0
投下終了します。


263 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:44:35 HZOXSxHw0
投下します


264 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:45:10 HZOXSxHw0

◇ ◇ ◇




人間とこの世界は、〈神の悪夢〉によって常に脅かされている。
神は実在する。全ての人間の意識の遥か奥、集合無意識の海の深みに、神は存在している。
この概念上『神』と呼ばれるものの最も近い絶対存在は、人間の意識の遥か奥そこで有史以来眠り続けている。
眠っているから人間には無関心で、それゆえ無慈悲で公平だ。
ある時、神は夢を見た。
神は全知なので、この世に存在するありとあらゆる恐怖を一度に夢に見てしまった。
そして神は全能なので、眠りの邪魔になる、この人間の小さな意識では見ることすらできないほどの巨大な悪夢を切り離して捨ててしまった。
捨てられた悪夢は集合無意識の海の底から泡となって、いくつもの小さな泡に分かれながら、上へ上へと浮かび上がっていった。
上へ―――人間の、意識へ向かって。
人間の意識へと浮かび上がった〈悪夢の泡〉は、その『全知』と称される普遍性ゆえに人の意識に溶けだして、個人の抱える恐怖と混じり合う。
そしてその〈悪夢の泡〉が人の意識より大きかった時、悪夢は器をあふれて現実へと漏れ出すのだ。
かくして神の悪夢と混じり合った人の悪夢は、現実のものとなる。
〈神の悪夢〉である〈童話〉に似た形で、恐怖は現実のものとなる。



◇ ◇ ◇


265 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:45:48 HZOXSxHw0

駅前の大通りから少し外れた通りにある小さな古い小道に、その建物は建っていた。
古い写真館のようなものを改装したらしい、レトロな雰囲気漂う白く塗られた木造の建物に、対照的な黒いセーラー服を着た少女が入っていく。

≪神狩屋――古物・骨董・西洋アンティーク≫
そんな厳つい文字の刻まれた看板と、その内容に相応しい古めかしい商品が並んだ店内をずんずんと少女は進んでいく。
少女趣味とはどう考えても言えない品揃えだが、少女は勝手知ったる雰囲気でカウンターの奥へと声をかける。

「神狩屋さん、いないの?」

神狩屋、店の名にもなっている店主の通り名を呼びかけるが、返事がない。
呼びつけておいて何なのだ、と不機嫌になるが、すぐに疑問が湧いてくる。
店の手伝いもしている少女、田上颯姫も姿を見せないというのは妙だ。
来客を忘れて、あるいは不意の対応で揃って席を外しているということも想定するが、それも考えにくいとカウンターのさらに奥の戸のむこう、居住スペースの書斎となっている空間に視線を向ける。
そこには心を病んでしまった一人の少女がいる。
夏木夢見子という、〈神の悪夢〉に心を壊され、今もなお〈悪夢〉に晒され続けている少女が。
その子の世話のために誰か一人は必ず残るはずで、誰もいなくなるというのはあり得ないのだが……

『ねえ、雪乃』

少女以外に人の気配のない店内に、少女の者でない声が響く。
一人しかいない空間、そのたった一人にしか聞こえない〈悪夢〉の声が。

神の泡による異常現象、それを曰く〈泡禍(バブル・ぺリル)〉と呼ぶ。
全ての怪奇現象は神の悪夢の欠片であり、この恐怖に満ちた現象は容易く人の命と正気を喰らうが、ごくまれに存在する〈泡禍〉より生還した人間には、巨大なトラウマと共に〈悪夢の泡〉の欠片が心の奥に残ることがある。
〈断章(フラグメント)〉と呼ばれるその悪夢の欠片は、心の中から紐解くことで自ら経験した悪夢的現象の片鱗を現実世界に喚び出すことができる。
少女…時槻雪乃もそんな〈断章保持者(ホルダー)〉の一人だ。
泡禍を引き起こした実姉、時槻風乃を己の〈悪夢〉として雪乃だけに認識できる亡霊として宿している。
雪乃に狂った言葉を囁き続け、〈悪夢〉の到来を知らせてくる、両親を惨殺した、雪乃にとっての悪夢の伝道者。
そんな姉が声をかけてくるなど、碌なことであるはずがない。



『――――索引が開くわ』



ぞく、と空気が変質した。
〈悪夢〉そのものである風乃の影響もあるかもしれない。
だがそれ以上の〈悪夢〉の気配が部屋の奥から洩れ出でている。
夏木夢見子の持つ〈断章〉、彼女を今も苛み続ける〈悪夢〉、〈グランギニョルの索引ひき〉の気配が。
それは〈悪夢〉の訪れを知らせる〈悪夢〉、対象となった者に避けることのできない恐怖の訪れを予言する〈断章〉。
ただしいつ〈悪夢〉が巻き起こるかはわからない。
予言をしたその次の瞬間に、〈悪夢〉が夢見子を殺す可能性も存在するのだ。
あるいは、すでにこの店の住人が巻き込まれている可能性も。

〈悪夢〉の気配を感じて雪乃はすぐに駆け出した。
カウンター奥の戸のさらに奥、夢見子のいるはずの書庫の扉を開け放ち、臨戦態勢で飛び込む。
そこにいるのは10歳にならないであろう少女。
床に広がるほどの長い黒髪をさげ、大きなウサギのぬいぐるみを抱えて絵本に見入る、いつもと変わらぬ夏木夢見子の姿があった。
その様子にほんの少しだけ、雪乃は安堵した。

突如ばたん!と大きな音を立てて、書庫の本棚から本が落ちた。
まるで雪乃の心の動きを戒めるように、〈悪夢〉は進行していた。
緑色の表紙をした分厚い本が、あまりにも不自然に落下する。
そして、そのページが風もないのにめくれ始める。



ぱらり
ぱらり
ぱらり
ぱららららららららららら



徐々に速度を増して、音を立ててページが流れていく。
触れる者もなく、ページが次々に捲られていく異常な光景。



ばん!



目当ての項にたどり着いたか、乱暴に表紙を叩きつけるようにしてページが止まる。
後にはしん、と不気味なほどに無音な空間が広がっていた。

『どんな悪夢かしら?』

風乃の囁きにつられて、というわけではないが落ちてきた本と、その捲られたページを確かめる。
本のタイトルは不思議の国のアリス。
開かれたページには、ハートの女王とトランプの兵隊の挿絵が描かれていた。
…………ふと、様々なスートと数字が刻まれているトランプの兵隊、その一人に何も描かれていないのに気づく。
落丁なのか、印刷ミスか、一人だけ〈白紙のトランプ〉の兵隊がいるのが妙に気にかかり

時槻雪乃の記憶は、そこからしばらく飛ぶことになる。


266 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:46:56 HZOXSxHw0

幾ばくかの空白を終えて雪乃が自分を取り戻したのは、やはり悪夢の中であった。
スノーフィールドという見知らぬ地で、かつて過ごしていた記憶のある家屋の食卓を囲んでいた。
席についているのは父と母……姉に惨殺された二人-トラウマ-が目の前にあるということに吐き気を催す。

「どうしたの?顔色が悪いわよ」
『おはよう、雪乃。起きた?それともまだおねむかしら?寝ても覚めても悪夢なんて、あなたも大変ね』

悪夢からの囁きに、憎悪と恐怖に脳裏を焼かれながらも雪乃は異常事態を認識する。
すでに〈泡禍〉は進行しているのだ、と。


ぱらり


と小さく音が聞こえた。
視線をそちらにやると、見覚えある緑色の表紙の分厚い本が開いていた。
以前と同じページ、〈白紙のトランプ〉の兵隊が描かれた挿絵が目に入る。
そして、そのページに白い指がかかっているのも。
死人のように白い四本の指が、開いたページから這い出るようにして、ページをめくったのも。

「逃げなさい!」
「いいからどこか寝室にでも引っ込んでて!」

鬼気迫る表情の雪乃と現状に気圧されたか、二人は雪乃の指示通りに避難する。



ずるり



と指が伸びた。
腕が現れ、肩が現れ、体が現れ……
〈白紙のトランプの兵隊〉が、本から現世へ住まいを移した。
続いて、もう一枚。
二枚目の〈白紙のトランプの兵隊〉も現界する。

その異様な光景に雪乃は恐怖以上に敵意を覚える。
悪夢の顕現に釣られて汲み上げられるままに己が〈断章〉を振るおうとする。。
武装となるカッターナイフも、戦支度であるゴシックロリータのドレスもない、不安定極まりない状況で。
だが

「痛っ…」

右手首の内側に痛みが走り、雪の結晶のような聖痕が浮かび上がる。
そしてその痛みに断章が引き出され、左手に巻いた包帯から煙が上がる。
そして引き出された断章が、トラウマとは別の形でどこかに流れていくような感覚を覚え、そのせいで炎を引き起こせずに終わってしまう。

聖痕が刻まれるとともに、〈白紙のトランプの兵隊〉は少しづつ姿を変えていく。
白い色合いはそのままに、一つは大きく、一つは小さく。
やがて二つは胸に穴の開いた、長身の男性と小柄な少女の形になる。
そしてすぐに、男の方は霧散するように姿を消した。

「……っ、こ、の……!」

未だ鈍痛の残る左手首を抑えながらも、雪乃ははっきりと心に敵意を浮かべる。
その憎悪の炎で、突如現れた何かを焼き払わんとするが

『場所を改めて、話をしよう。ここじゃあ二人を巻き込んじまう』

穏やかな声が脳裏に響いた。
〈悪夢〉である姉の声とも違うその響きに少しだけ落ち着き……突如頭の中に刻まれた知識に気付く。
〈聖杯戦争〉という覚えのない知識に。


267 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:48:13 HZOXSxHw0

「早くいこーぜ。部屋を掃除するくらいなら待ってもいいけど?」

そう言いながら少女はリビングから二階へ向かっていく。
目を離したすきに雪乃の両親に危害を加えないか心配に……なりかけるが、〈悪夢〉の登場人物の行く末など心配してどうするとその愚考を振り払う。

『そうだな。二階ならあの二人にも影響は及ばないだろう』

また雪乃の頭の中に男の声がした。

「ここでいいでしょう。心配しなくてももう無闇に暴れたりはしないわ」
『巻き込んじまうって言ったのはあんたの力にじゃない。俺の力に巻き込まないために、離れてくれと言っているんだ。
 どうやらあんた……いや、あんたたちは大丈夫のようだが』

男の声は雪乃だけでなく、風乃にまで言及する。
一人の例外を除いて、雪乃にしか認識できない筈の悪夢を認識する者の到来に風乃の声が熱を帯びる。

『あら、私のことも見えているの?雪乃とアリス以外に気付いてくれる人がいるなんて。
 ……一方的なんて寂しいわ。あなたももう一度姿を見せてちょうだいよ』
『ここではあの二人を巻き込んじまう。これ以上実体化した俺の近くにいると死にかねん』

ここで話し続けても埒が開かないだろうし、ましてやこだわる意味もないと皆揃って二階へと向かう。
雪乃の居室に入ったところで、部屋の片隅に先ほど少しの間だけ姿を見せた、トランプの兵隊だった男が像を結ぶ。
どことなく虚ろな雰囲気の白い服装で、開いた胸元から体の真ん中に大きな穴が開いているのが見える。
自分の体がそこにあるのを確かめるような仕草を見せた後、探るような視線を雪乃たちに向けて、ぽつりと声を漏らす。

「そうか……俺は、いや俺たちは、弱くなったんだな」

サーヴァントとなったことによる弱体化。
その事実を自嘲気に、しかし嬉しそうに受け入れる。

「何だか納得しているところ悪いけれど、色々と聞きたいことがあるわ」
「ん、ああ。俺に答えられることならね」
「〈聖杯戦争〉とは何か、そしてあなたとその子が何か」

予想通りの問いに面倒くさそうな顔をするが、一つ一つ答える。
アーチャーのサーヴァント、コヨーテ・スターク/リリネット・ジンジャーバックという存在である事。
聖杯戦争のルール、サーヴァントによる殺し合いと万能の願望器のこと、己が能力など。

『〈聖杯戦争〉、円卓の騎士の真似事が今回の〈泡禍〉の物語かしら?アリスの意見も聞いてみたいところね』
「ところであんたはマスターの何なんだ?破面の一種かと思ったぞ」
「その人は私の姉で、私の〈断章〉の一部。本当は私にしか認識できないはずなんだけど、あなたも人の悪夢を共有するとかそういう〈断章〉を持ってるの?」

白野蒼衣という風乃を認識できる〈断章保持者〉という前例がなければ、聖杯戦争の知識がなぜか植えつけられてなければ、風乃への対応に平静ではいられなかっただろう。
それでもこの男の能力に疑念を持ち、さらに問う。

「断章ってのは何なんだ?それがあんたの能力か?」

質問に対する答えは、補足説明の要求。
互いの常識の差異が理解を滞らせる。
風乃の発言も交えて〈泡禍〉について、〈断章〉について話す。

「私たちはこの聖杯戦争も泡禍だと考えているわ。英雄譚を集めた物語という形で、殺し合いという悪夢を引き起こす、とびっきり最悪のね」
「マスター達の経験と能力を疑うつもりはないが……些か飛躍しすぎじゃあないか?俺の力や、聖杯戦争そのものが泡禍だってのはよ」
「泡禍以外の異常現象が存在するとしても、聖杯戦争という〈物語〉の形をとっている以上、私はこれを泡禍と判断するわ。
 人を異常な形で巻き込み、死傷に至るなら私にとっての敵と何も変わらないのだから……あなたはどうなの?私の敵になるなら」

殺すわよ。
左手の傷に力を籠め、そう凄む。
雪乃の纏う空気がまた剣呑になったところで

「なんだお前!あたしたちとやろうって――」
「よせ」

珍しく沈黙を守っていたリリネットが喧嘩腰に合流してくるが、それをスタークがめんどくさそうにあしらうと姿を消した。


268 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:49:02 HZOXSxHw0

「やかましい奴だが、悪い奴じゃないんだ。気を悪くしないでくれ……
 さて、つまりあんたはこの聖杯戦争を否定するってことでいいんだな?」
「……受け入れられない、かしら?」
「いや、いいさ」

この場で殺しあうことも想定していた雪乃に、この呆気ない返答は予想外だった。
願いを求める殺し合い……それの真偽はどうあれ、主流に逆らう意向であることは間違いないだろうに、それを受け入れる。
寛大と言えるスタークの答えに、雪乃が抱いたのは疑念だった。

「……俺の願いは殆どもう、叶ってるんだ。あとはマスターと信頼関係が築ければ完璧なくらいだ」
「随分と都合のいい物言いに聞こえるけど」
『あら、そうでもないと私は思うわよ』

従順な姿勢を崩さないスタークに雪乃は疑惑の目を強めるが、対称的に風乃は愛おしいものを見るような目を向ける。

『彼はね、一匹狼なのよ。知ってる?本当は狼は群れで過ごす生き物なんだって。
 普通は群れを乗っ取るか、一匹狼同士寄り添うことで群れを形成するものだけれど、彼はそれができなかったの。
 あまりに強大になってしまったがゆえに共に過ごせるものはいなかった。当然よね、人と巨人が共に過ごせば些細なことで人は踏みつぶされてしまうでしょう。
 私とあなたは知らず知らずのうちに野獣に寄り添う乙女になっていたのよ、雪乃』

時槻風乃は生前も人の内面を見通す少女だった。
スタークの語った能力とこれまでの振る舞いから、内に抱えた孤独を、その願いを見抜き、そして肯定する。
きっと、彼の周りにいた人はみな、先ほど倒れた雪乃の両親のように崩れ去っていったのだろう。
その孤独に耐え兼ね、彼は彼女を生み出したのだろう。

『絆という字はもとは家畜を繋ぐための縄の事、束縛やしがらみを意味するの。
 それでも人は弱いから人と絆を結ぼうとする。たとえそれが絞首台の縄でも。
 とても強いのに、こんなにも弱々しいなんて可愛らしいじゃない』

くすくすと笑いながらスタークを援護する。
ここまでは、風乃としては本当に心底から親愛を込めての言葉だった

『でもあなたの力が本当に〈泡禍〉によるものではない保証はないんじゃない?
 泡禍はあなたの恐怖を具現する。孤独を恐れたあなたに孤独が訪れたのは泡禍によるものではないとなぜ言えるの?
 あなたの〈断章〉が例えば周囲の人物を認識し、それを死に至らしめることであなたを孤独にするものであるとしたら、私を認識できるのにも納得いくわ。
 雪乃の〈断章〉で無効化できているののは事実なのだし』

今度は悪戯心、程度の悪意を籠めた発言。
しかしさすがは〈神の悪夢〉の欠片か、トラウマに触れるその話しぶりにはスタークに仲間意識などない雪乃も顔をしかめた。


269 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:49:46 HZOXSxHw0

「……あんたの姉さん、いい性格してるな」

リリネットが分身であることは告げても、それを生み出した動機まで教えてはいなかった。
にも関わらず、無差別に振りまく霊圧(チカラ)からその意図を察し………あげくはある種マスターに向ける依存までも見抜かれた。
かつて傅いた男のことも否応なしに想起させられ、その観察眼と毒舌に皮肉交じりの称賛を贈る。
その評価を笑って受け止め、風乃は今度は雪乃へも些細な悪意を込めて言葉を紡いだ。

『〈断章効果〉が聞かない人間は三種類。〈断章保持者〉に〈潜有者(インキュベーター)〉に〈異端(ヒアティ)〉。
 下にいる雪乃の両親のようなナニカは、聖杯戦争に則っていうならよく似た別の誰かさん。私たちの認識でいうなら〈泡禍〉により生み出された化生、〈異端〉だわ。先日焼いた赤ずきんの狼のようにね。
 もしあなたの能力が〈断章〉で、かつこの聖杯戦争が〈泡禍〉なら彼らにあなたが触れても倒れることはない……試してみたら?』

能力と現状の確認、という一点だけ見ればその一手は効率的だ。
生じ得る犠牲の可能性を考慮しなければ、だが。

「……おい、いいのか?」
「…………あなたがいいなら、いいわ。やって」

偽りとは言え彼らは雪乃の、そして風乃の両親だ。それを危険にさらすような真似をするのか、という問い。
答えに悩むが、偽りに過ぎない両親への心配など無意味と切って捨て、むしろそんなくだらないことで〈断章〉を晒すのかという彼女なりの心配を返す。
僅かに煩悶したのちにスタークが首を縦に振った。
それを受け雪乃も戦支度を整える。
かつての雪乃の部屋にはなかったものだが、風乃の持ち物として用意されたのか、今の雪乃にあわせたのか黒いゴシックロリータと赤いカッターナイフが用意されていた。
愛用―とは言いたくない代物だが―の武装に極めて似通ったそれを身に着け、両親のようなナニカが〈異端〉であり、スタークの力に反応して襲い掛かってきても構わないよう戦闘態勢になる。
着替え終わると部屋の外で待たせたスタークと合流し、階下に降りて再び偽りの両親と邂逅する。

幸か不幸か、戦闘になることはなかった。
スタークが近付き少しすると、両親ともに意識を失ったから。
スタークはそれを見て悲しげな顔をするとすぐに霊体化し、今度はこちらからリリネットを召喚、両親をベッドに運ばせる。
雪乃の細腕では両親を運ぶことは難しく、スタークが実体化してては命を削ることになりかねないから。

「……あなたが〈断章保持者〉であるなら、聖杯戦争は〈泡禍〉ではない。逆に聖杯戦争が〈泡禍〉ならばあなたは〈断章〉ではない異能の保持者。
 少なくともそれは認めなければいけないみたい、ね」
『ああ、そうらしいな。それでそれが分かって何か心情に変化は?』
「ないわ。聖杯戦争が〈泡禍〉であってもそうでなくとも、これの原因を断つ。その方針を改めるつもりはない。
 あなたも、私の力で形になっている姉さんのようなものだと考えれば、〈断章〉みたいなものだと思える。戦力としては多少は当てになりそうだしね」

雪乃の宿す断章もまた、本来は悪夢の欠片だ。
仮にスタークが悪夢の結晶だったとして、今更気に掛けることも、ましてやそんなこだわりを見せる余裕もない。
ぎらつく戦意に身を任せ、少女は戦場へと身を投じる決意を固める。


270 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:50:09 HZOXSxHw0

『出立かしら、雪乃?』

そこへ風乃が声をかける。
ゴシックロリータのままだが、当然だ。これが雪乃の戦闘着で、きっと死装束なのだから。
学園の制服を着て日常にかまけるつもりなどない。
一刻も早くこの事態を解決する。

『この家とあの二人はそのままにしておくの?こんな愚かしい藁の家の存在を許すの?
 こんな、聖杯なんてものに作られた偽りであっても日常を受け入れたら、あなたを動かしている憎悪、痛み、血、その全てを否定することになる。
 ……焼いてしまいましょう?このあり得ない歪な異物を灰に帰してしまいましょう?』

風乃が日常的に囁く、破滅への導き。
だがこの場に置いては〈泡禍〉を殺せ、という騎士としての責務でもあった。
いつもなら一蹴するが、これを一蹴はできず、彼女も騎士として答えた。

「神狩屋さんにも葬儀屋さんにも連絡がつかない以上、隠蔽ができない……今はまだ、早い」

家庭の夫婦の死、それが報じられては活動に支障をきたす。
田上颯姫の援護なしに大事は起こせない。
神狩屋がない以上、ここを拠点にする必要もあるだろう。

『あら、そう。つまり、〈食害〉や〈アンデルセンの棺〉が用意できるなら彼らを殺すのね?』

悪戯心などではない、明確な悪意に満ちた問い。
しかし〈泡禍〉を、怪奇現象を憎む以上、死者である両親がいるなどという異常事態は許せないのが〈雪の女王〉だ。
だから

「殺すわ」

カッターを強く握り、そう答える。

『それなら彼らとの連絡手段も模索しなきゃね。可愛いアリスとも話はしたいし』

愉快気に笑みをこぼし、妹に両親の殺害を教唆する姉の亡霊。
そして狂々と自論を語り続ける。

『でもそれが意味のある行動だといいわね?眠って起きたら、ここにいた。
 忘れちゃだめよ、あなたは〈不思議の国のアリス〉のグランギニョルに巻き込まれると予言されたの。
 いいえ、蒼衣-アリス-と夢見子-ウサギ-が出会ったあの時から、少女-あなた-は眠って悪夢-ゆめ-を見ていたのかもしれないわね……そして今も。
 ここが少女-アリス-の見る夢なら、あなたは〈チャシャ猫〉のように巻き込まれただけかも。ここが夢なら、もしかするとアリスの姉が起こしてくれなきゃ、悪夢から覚めることはないのかも。
 ……それともこれは〈美女と野獣〉かしら?もしかすると〈雪の女王〉かもしれないわね?
 神狩屋-マッドハッタ―-もいない今、あなたを導くのは誰かしら?スターク-トゥイードルダム-はどう思う?』

「うるさいわ。いい加減黙ってて」


どうでもいい。
これがどんな〈童話〉を象った〈泡禍〉でもどうでもいいのだ。
それが〈泡禍〉であるならなんだろうと滅ぼすと3年も前に決めた。
自分だって。両親だって。蒼衣(アリス)だって。
それが泡禍の根源なら、殺すだけ。


271 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:50:46 HZOXSxHw0

【クラス】
アーチャー

【真名】
コヨーテ・スターク@BLEACH

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
単独行動:EX
宝具により規格外にまでなっている、最早呪いじみた《孤独》の運命。
マスター無しでも現界、全力戦闘が可能。
しかし当然無尽蔵ではなく、宝具の乱発などすれば一人孤独に消えていくことになる。

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。

保有スキル】
十刃:A+
虚(ホロウ)が仮面を剥ぎ、死神の力を手にした種族、破面(アランカル)。その中でも指折りの戦闘力を持つ者に与えられる称号。
第一の数字を与えられ、また特に死神に近い特徴を持つ彼は最上位で保持する。
虚の技能である虚閃(セロ)という光線、死神の斬魄刀と能力解放を模した帰刃(レスレクシオン)
他に破面の技能である響転(ソニード)という高速移動や虚弾(バラ)という高速光弾、探査回路(ペスキス)という感知能力、身体特徴である鋼皮(イエロ)という強靭な外皮
さらに十刃のみが扱う王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)に黒虚閃(セロ・オスキュラス)など多彩な能力を保持する霊的存在である。

神性を持つ相手に追加ダメージ判定を行う。相手の神性が高ければ高いほど成功の可能性は上がる。
また魂を喰らう種族であるため『魂喰い』による恩恵が通常のサーヴァントより大きい。


直感:D
戦闘時、つねに自身にとって有利な展開を“感じ取る”能力。
攻撃や敵の能力をある程度は予見することができる。

魂魄改造:―(A)
自身の霊体、魂を改造する能力。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
これにより彼は自らの魂を引き裂き分かち合い、スタークでもありリリネットである弾頭を呼び出せる。
またかつて自らの魂を斬魄刀ではなくもう一人の自分として形成したこともある。
帰刃状態でのみ行使可能なスキル。

道具作成:E
魔力を帯びた道具を作成する技能。
霊子で構成された武器を発現させる。
様々な武器を発現可能で、劇中では剣を発現させ使用している。


272 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:51:26 HZOXSxHw0

【宝具】
『一人(プリメーラ・エスパーダ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜8 最大捕捉:上限なし
十刃(エスパーダ)には個々に司る死の形があり彼のそれは《孤独》である。
実体化している限り、現界に消費した魔力量に応じて自身の周囲に無意識に霊圧を放ち、一定以下の実力者はその霊圧にすら魂を削られる。
レンジ内で長時間存在した場合、4つ以上Cランク未満のパラメータを持つ、または3つ以上Dランク未満のパラメータがあるもので意識混濁、4つ以上Dランク未満のパラメータがあるもので意識消失、しばらくすると死亡する。
大多数のマスターやNPCは堪えるのが難しいが、サーヴァント化により大幅に弱体化しており即座に離脱すれば影響は少ない。
また対魔力やそれに準ずる呪術、魔力、霊障などへの耐性、頑健や天性の肉体などの防御スキルがあれば容易く無効化も出来るようになっている。
この宝具は現界に消費する以上の魔力は要求しないが、自身のマスターにも効果を及ぼし、令呪を以てしても停止・破棄できない。
またいかなるクラスで召喚されようと単独行動のスキルをEXランクで保持させる。


『二人(リリネット・ジンジャーバック)』
ランク:EX 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
スタークが破面化した際、通常は肉体と刀に分ける虚の力を1体の虚が2つの肉体に分けた半身の様な存在。
彼女が存在する限りスタークは一人じゃない。
分身であるリリネットと一体化することで後述の宝具は解放される。

ステータスは筋力:E 耐久:C 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 相当。刀身が湾曲した形の刀を武器とし、折れた角のような部分から取り出す。一応虚閃も撃てる。
本来スタークの一部であるため『一人(プリメーラ・エスパーダ)』による影響を受けない。
そして彼女も《孤独》の運命を背負っており、EXランクの単独行動スキルを持つ。
ある意味で魂の物質化という第三魔法に近付く偉業であるためEXランクとなっているが、戦闘などに役立つかといえば否。
猫の手よりはまし程度だろう。
一応宝具化に伴い霊体化というか、送還可能になっているが、勝手に出てくることもある。
基本的に余計を消耗を控える為に、用もなく出てくると引っ込められる可能性が高いが。

虚は死者の魂が心をなくしたものであり、大虚(メノスグランデ)はその集合体、破面はその進化系である。
そうした成り立ちの者が魂を引き裂き、固有の人格を成しているのは愛染惣右介の産み出したホワイトという虚に、ひいては二枚屋王悦の作り出した斬魄刀に近似する。
ただ力の核を刀の形状にした他の破面とは違い、もう一人の自分として《具象化》しているスタークはより《死神》に近い存在と言える。


『二人で一人の群狼(ロス・ロボス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:10人
帰刃(レスレクシオン)状態であり、解号は「蹴散らせ」。
分身であるリリネットと一体化することで解放される。
解放するとオオカミの毛皮のようなコートをまとったカウボーイを思わせる姿に変わり、左目部分にポインターの様な仮面の名残が形成される。
リリネットは2丁拳銃に変化しており、会話も可能。
解放前に受けていたダメージの一切が超速再生し、敏捷と幸運を除くステータスが1ランク上昇する。
自分の魂を引き裂き分かち合う能力で狼の弾頭を召喚し、2丁拳銃からの虚閃と狼の弾頭を操って戦う。狼の弾頭は攻撃を受けると分裂する上、標的に喰らい付くことで大爆発を起こす。
魂を引き裂き過ぎると『二人(リリネット・ジンジャーバック)』を失うことになるが、十分な『魂喰い』か魔力供給があればそのリスクを減らせる。


【weapon】
・『浅打・偽』
四角形の四つの角に牙がついている鍔がある刀。
応宝具には劣るが、それなりの神秘は宿す。
大多数の破面と異なり彼は己の力の核を先述の宝具としているため、この刀の戦力は他の破面や死神に比すと劣るところがある。


273 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:51:49 HZOXSxHw0

【人物背景】
あるものが命を落とし、霊となった。
霊として長く在るうちに心をなくし虚(ホロウ)となった。
なくした心を求めて虚を喰らい、最下級大虚(ギリアン)となった。
ギリアンと化しても、さらに成長して中級大虚(アジューカス)となっても共食いを続け、圧倒的な力を持つ最上級大虚(ヴァストローデ)となった。
当然周りに誰もいなかった。
一人に耐えかねて仲間を作るが、自身の力に耐えかねてそこにいるだけで魂が削られ皆死んでいった。
一人に耐えかねて魂を分かち、二人になった。
二人以外にも仲間が欲しかった。
力に耐えられるような強い仲間が欲しかった。
そんなことを気にせずにいられる弱いやつが羨ましかった。
…………力を見込まれて強い男たちの仲間になった。
仲間が、そのなかでもそれなりの地位の男が倒れた。
弔い合戦なんて経験なかったし、柄じゃないけど、普通ならやるもんだろうと思ってた。
けれど、仲間だと思っていたやつもそいつの部下もそれに何の感情も表さなかった。
仲間じゃなかったのかもしれない。
また、二人になった。
戦いの中、ついに一人になった。
そして誰もいなくなった。

【サーヴァントの願い】
弱くなりたい……叶った。
またリリネットに会いたい……叶った。
あとは、仲間が欲しい。
命を懸けて守りあえるような、敵を討ちたいと互いに思い合えるような本当の仲間が。

【基本戦術、方針、運用法】
型月アーチャーに相応しく、近距離から遠距離まで柔軟に対応する。
剣を用いた近接戦闘に優れ、宝具を真名解放すれば二丁拳銃からすさまじい速度で虚閃を乱射し、敵を近づかせない。
スターク自身には呪わしい孤独の運命も高ランクの単独行動としてあらわされる聖杯戦争ではマスターへの負担を減らす大きなメリットとなり、戦力燃費共に優れたサーヴァント。
地雷となるのは宝具『一人(プリメーラ・エスパーダ)』の存在である。
並の存在では彼と対峙することすら命を削る。
敵に対して機能するうちはいいが、無差別に効果を発揮するこの宝具は大多数のマスター、ごく一部のサーヴァント、ほぼすべてのNPCに対して致命的な存在となる。
対聖杯のスタンスであるにもかかわらず、同行者を得ることは難しく、NPCの虐殺と取られれば監督役に目をつけられる可能性もある。
マスターの暴走の危険性も含め、取扱注意な主従であろう。


274 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:52:10 HZOXSxHw0

【マスター】
時槻雪乃@断章のグリム

【マスターとしての願い】
泡禍への復讐……だがそれは聖杯なんて訳の分からないものに託すものではない。
ましてや彼女は聖杯戦争も泡禍であると考えている。

【weapon】
・カッターナイフ

何の変哲もないカッターナイフ。
殺傷能力はあるので一応武器としても扱えなくはないだろうが、主に後述のトラウマ、ひいては断章を起動するための条件付けに用いる。
作中で名言はされていないが、トラウマを想起しやすいよう姉が実際に使っていた、またはそれと同じデザインのカッターであると思われる。
他の刃物や別形のカッターでは駄目な可能性が高い。

・ゴシックロリータ

何の変哲もないゴシックロリータの衣装
別に防刃加工とか魔術的な守りなどはない。
後述のトラウマ、ひいては断章を制御するための一助であり、これを身に纏うことで断章を引き出しやすくする。
逆にこれを纏わないことにより日常において断章が暴走するのを防ぐ役割もある。
リボンだけを身に付けることで日常と戦場を兼ねたような精神状態に身を置くこともある。

【能力・技能】
・断章『雪の女王』

かつて起きた〈泡禍〉により宿した神の悪意の泡の欠片。
『私の痛みよ、世界を焼け』と、断章詩を唱え自身の手首に刃を走らせることで炎を放つ、痛みを代価に火炎を発生させる能力。
ただし、その苦痛に集中していなければ、現出させた炎を維持できない。一度発生させていれば『焼け』の一言のみでさらに炎を発生させることができる。

詳しく言うなら『トラウマをフラッシュバックさせることでその原因もフラッシュバックさせる』能力、のような現象。
彼女の場合、実姉、時槻風乃の焼身自殺がトラウマとなっているため実姉のことを思い出すことで焼身自殺の状況を再現=発火現象を引き起こす。
また風乃の存在そのものもトラウマとなっているため彼女の幽霊のようなものが常に彼女のそばにいる。
より断章を引き出すことで風乃は実体を伴う現象にまでなり、それに伴いより鮮明に焼身自殺が再現される=より正確に強力な炎を放てる。

彼女の姉はゴシックロリータを常に纏い、リストカットの常習犯で、最期に「私の痛みよ、世界を焼け……」と呟いて家に火を放ち、父母と共に死亡した。
そのトラウマを想起する事象で身を固めることで断章を放つ。
引き起こす現象は極めて強力だが、発動にはトラウマをフラッシュバックさせる、リストカット、風乃による炎の行使にはさらに深くトラウマと向き合い今までのリストカットの傷全てが開くなどの条件が必要。
精神肉体両面でのダメージは激しく、トラウマに心を壊せば自信を含めた全てを焼き尽くす「焼身自殺」の再現となる。

なお風乃の幽霊は、生前の人格を再現しているのに加え、同種の〈泡禍〉を感知し、魔力も多少なら感知できる。

断章とは「無意識に住まう神の悪意の欠片」であり、つまり雪乃はアラヤの悪意とそれに伴う魔力を受け取っている。
例えるなら「この世全ての悪」の泥ではなく泡を宿している。
膨大な魔力を持つが、もしこの泡が弾けて器(雪乃)の外にあふれたならそれは〈泡禍〉という悲劇を招くだろう。
恐らく彼女のそれは、巨大な火災。

そしてすでに「神の悪意の欠片」を宿しているため彼女の意識の容量はすでにほぼ一杯であり、他の要素が入り込む余地が少ない。
そのため断章保持者は断章、ひいては神秘を伴う異能に耐性を持つ。
記憶を奪う断章に触れても不快感ですみ、、侵入を禁じ認識を阻害する断章の効果も受けず、針の山や鳩の爪によるダメージもそれが〈泡禍〉に由来するものならば少なく済む。
特に霊的、精神的異能に対しては強力な耐性となり、スタークの『一人(プリメーラ・エスパーダ)』のよる影響を受けていない。
……だがあくまで耐性にすぎず万能ではない。
人魚に変えられてしまう断章も少量なら傷の治癒でとどめることができるが、過剰に与えられれば異形になってしまう。
『一人(プリメーラ・エスパーダ)』は無力化が容易な宝具だが、他のサーヴァントによる異能などへの抵抗はほぼできないだろう。
そして逆もまたしかり、神秘の塊であるサーヴァントへの断章によるダメージは少ない。

纏めると「魔力タンク」「そこそこの異能耐性」
「魔力探知してくれる姉の亡霊(一部の能力者しか認識できない)がいる」
「詩を唱えリストカットをすることで周囲を焼き尽くす(サーヴァントにはあまり効かない)」
「詩を唱え、リストカットの古傷を全て開くことで姉の亡霊を受肉させ、さらに強力かつ正確に周囲を焼き尽くす(同上)」
「ただしめっちゃメンタル削るし、制御失敗すると『この世全ての悪』的な代物の欠片が暴走してヤバイ」


275 : 童話迷宮 ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:52:41 HZOXSxHw0

【人物背景】
道を歩くだけで人目を引くほどの整った白皙の美貌と長い黒髪を結んだゴシック調のリボンが特徴の美少女。
その外見は常に不機嫌そうに見え、冷たい瞳と手首の傷を隠す包帯が他人を寄せつけず、また彼女自身も他人と必要以上に触れ合う事を忌み嫌っている。
また、両親の惨殺死体と自宅が炎上する様を目の当たりにした事で、肉類が一切食べられないため、栄養補給の手段は専らサプリメントに頼っている(生前は精神安定剤と睡眠薬漬けだった風乃の劣化行為の側面も兼ねている)。

姉の時槻風乃に浮かび上がった〈泡禍〉で家族を全て失い、〈騎士〉となった。
多くの〈泡禍〉――時折〈童話〉にまで発展した――を焼き払い、〈雪の女王〉としての畏怖を集める。
そしておよそ三年〈騎士〉を続け、赤ずきんの〈泡禍〉を焼き尽くした傷も癒えてきたころの参戦。

周囲の大人達が心配するほど〈泡禍〉に対して激しい憎悪を持っており、それと同時に「普通の日常」に生きる事を放棄している。
好戦的な性格と無表情故にあまり動じない印象を受けるが、<断章>で人らしいものを殺した日の夜は風乃の<泡禍>を思い出して涙を流すことがよくあるらしい。
そもそも攻撃的な性格は<泡禍>との戦いのための行動の賜物のようで、余裕がないときなどには無意識のうちに元来の性格に由来する情に厚い行動をとることもある。
一応必要と判断すれば情報収集のためのコミュニケートはとるし、情報操作などのバックアップの必要性は分かっている。
現場での同僚無しでやっていた時代もあり、敵に容赦はないが、誰彼問わず敵対しようとなどはしない、作中指折りの常識人である。
……比較対象が〈泡禍〉に触れて精神的に病んでいる面のある人ばかりなのはあるが。

【令呪】
右手首内側、雪の結晶状。
一画使うごとに六つの角が二つ消える。

【方針】
対聖杯。
神狩屋たちと連絡を取る術を模索しつつ、この聖杯戦争の元凶となった者を殺し、止めるべく動く。
……それがたとえ自分や知り合いであっても。


276 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/27(日) 01:54:07 HZOXSxHw0
投下終了です。
本作は 少女性、少女製、少女聖杯戦争 に候補話として投下したものを一部改めたものです。


277 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:25:43 ridfYRnE0
投下します


278 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:26:56 ridfYRnE0

 スノーフィールド、夜のハイスクール……生徒もすべて下校し、いるのは巡回の警備員ぐらいかという場所。
 だが、この学び舎に――この学び舎にある、ボクシング部の部室に、二人の男がいた。
 一人は、青年である。
 ハンチング帽をかぶり、皮のジャケットを着て、赤いスカーフを巻いた、少し古臭いファッションの男。
 いかにも昭和の刑事とか、記者とか、探偵とか、そういった雰囲気を醸し出している。
 その表情はあきれ顔。
 視線の先にいるのは、高校生ぐらいの少年であった。
 少年の方は、タンクトップを着てボクシンググローブをはめた、こちらもいかにもなボクシング少年。
 その表情は、情けなくも涙を流し歯を食いしばっている。
 二人の男は夜の学校で、明かりもつけずに佇んでいた。

「うぅ、チクショウ……!!」
「オイオイ、泣くなって坊主。男だろ?」

 坊主、と呼ばれた少年がふらふらとサンドバッグの方へと歩き、寄りかかる。
 彼の名は拳三四郎――――変身セット『仮面ボクサー』を装着し、世界征服ジムの野望を阻止した、英雄である。
 英雄である。
 ヘビー級世界王者おも打ち倒した、ボクシング界の救世主なのだが……

「これが……」
「これが?」
「これが泣かずにおられようかッ!?」

 ……彼は情けなく泣きわめき、青年の方を睨んだ。

「うおおおおおっ! おっ、俺は違うだろ……! そういうの……聖杯戦争とか!!!」

 叫び、サンドバッグに拳を叩きこむ。
 バシ、バシと小気味良い音が部屋に響き、それをかき消す音量で三四郎は叫んだ。

「確かに俺は願ったよ!!! もう戦いたくないって!!! だってもう十分じゃないか!!!
 マーク・パイソンだぞ! ヘビー級世界王者のマーク・パイソンと戦って、三回ぐらい死にかけたんだぞ俺はッ!?
 三回だぞ三回!! もういいだろ!! 勝ったんだから!!!
 そもそも俺、フェザー級だし! 世界征服ジムも階級揃えてくれよ!! 試合組みにくいだろ! ミニフライ級とかさぁ!!」

 打つべし、打つべし。
 パンチの回転はグングン速くなり、呼応するように三四郎の叫びも熱を帯びていく。
 否、逆である。
 三四郎の叫び、怒り、嘆きに呼応して、パンチの回転が速くなっているのだ。

「なのになんでまた挑戦状とか出してくるかなぁ!?
 エディも久美子ちゃんもノリノリだし!!
 俺は久美子ちゃんとジーパンはいてショッピングに行ったりしたいだけなんだよ!!!!
 わかってないんだよみんな!!! 痛いんだよ!! ボクシングは!!」

 叫びの内容は恐ろしく情けないもので、しかも泣きながら叫んでいるものだから本当に情けない。
 これでは、青年のあきれ顔も仕方のないことだろう。
 それでも三四郎はひたすらにサンドバッグを打つ。
 彼は生まれついてのボクサー。
 怒りと嘆きの熱を放出する術は、これしか知らないのだ。

「だから願いを叶えてくれる聖杯戦争とかいうのは、そりゃあ一見よさそうに見える……見えるが……!」

 ひと際強い一撃が、サンドバッグに叩き込まれる。
 衝撃はジャリンと鎖を揺らし、三四郎は倒れ込むように、あるいは縋りつくように再びサンドバッグによりかかり……


279 : 紅い拳の ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:28:37 ridfYRnE0


「――――殺し合いなら意味ないじゃんッ!!!」


 それは、魂の叫びであった。
 ものすごく情けないが、理不尽に対する心からの憤りであった。
 そう、彼が巻き込まれたのは聖杯戦争――――ただひとつの至天の玉座を目指し、参加者同士で殺しあう戦争。
 願いを叶えられるのは、この偽りの世界から脱出できるのは、勝者ただ一人だけという電子の蠱毒。

「戦わないために殺し合いするって、おかしくないか?
 なんかその……順序とか……そういうの!
 本末転倒だろ……! どう考えても……! うぅっ……」

 そのまま泣き崩れる三四郎に、青年は深くため息一つ。
 それから、やっぱりあきれ顔で声をかけた。

「けどよ、坊主。
 中々いいパンチ持ってるじゃねぇか。それでヘビー級王者倒したんだろ?
 そんなにぎゃあぎゃあ喚かなくても……」
「俺はボクサーだぞッ!?
 サーヴァントって……宮本武蔵とか沖田総司とか……そういうすごく強い奴らなんだろう!?
 ボクシングなど所詮はルールに守られた安全なスポーツ……!
 だが向こうは殺し合いのプロ!
 マ、マスターにも殺し屋とかいるかもしれないし! 戦ったら間違いなく……死ぬ!」
「うへ、なっさけねぇの……」

 やれやれとぼやきながら、青年はサンドバッグの前まで歩いた。
 そのまま腰を落とし、拳を腰だめに構え……

「まぁ、別にお前に戦えとは言わないよ。
 戦うのは俺らサーヴァントの仕事。お前は殺されないように逃げ回ってりゃそれでいい」
「えっ、本当に!?」
「本当だぜ? なんせ……」

 スパァン、と鋭い音が一つ。
 ジャリン、と擦れる音が一つ。
 ドパァン、と鈍い音が一つ。

「――俺らとお前らじゃ、このぐらい差がある」

 それは、青年の拳を受けたサンドバッグが破け爆ぜ、中に詰まった砂を吐き出す音だった。
 およそ人間の膂力ではありえない。
 真実、青年は人間ではない。
 それは彼が過去に偉業を成し遂げた英雄、サーヴァントであるということでもあるし……


「俺は、改造人間だからな」


 ――――彼が機械の血肉を持つ、改造人間だという意味でもあった。


280 : 紅い拳の ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:30:31 ridfYRnE0

「そ、そうか……じゃ、じゃあ俺は、戦わなくてもいいんだな!?」
「だからそう言ってるだろ?
 そもそも人間がサーヴァントと戦うなんざ無理無理無理のカタツムリ。
 他のマスターに襲われた時とかに、最低限自衛できてりゃ文句は言わないよ」
「おお……ライダー、実は話がわかる奴だったんだな……!」
「『実は』ってなんだ、『実は』って」

 救いの神を見たような顔をする三四郎に、ライダーと呼ばれた青年は苦笑した。
 戦わなくてもいいとわかった瞬間これである。
 気持ちはわかるが、気持ちに正直というかなんというか。

「でもその代わり、戦争はこっちの好きにやらせてもらうぜ」
「えっ……というと、どんな……」
「どんなって言っても……死ぬ前と変わらねぇよ。
 後輩は『正義の戦士』だなんて嘯いてたけどな。
 俺は戦えない連中の代わりに……人の自由って奴のために戦うのさ。
 俺の戦う理由はいつだって正義のためよ」

 なんてこと無いように告げられたライダーの言葉。
 その言葉を聞いて……三四郎は、胸に何か引っかかるものを感じた。

「それはつまり……みんなのために悪い奴と戦う、みたいな……」
「おう、それそれ」
「い、いやでも、この世界って、電脳世界なんだろ?
 俺たちみたいな参加者以外はみんな人工知能とかいう奴で……
 じゃあ別に助ける必要もないんじゃないか!?」

 三四郎は必死だった。
 それは泣きわめく自分の情けなさを取り繕おうとする必死さだった。
 ライダーの高潔さを認めてしまえば、ひょっとして自分はものすごく情けない奴なのでは? という事実を認めざるを得ないためだ。
 いや、間違いなく事実として情けないのだが、本人としてはそれを認めるわけにはいかないのである。

「坊主、お前……ほんとに情けねぇなぁ……」
「うっ!!」

 そしてトドメを刺された。
 いっそ思い切り怒られれば発奮できたのだが、しみじみと言われたせいで精神的なダメージが大きい。

「人工知能だろうがなんだろうが、助けてって叫ぶ声が嘘だと思うかよ?」
「ううっ!!?」
「心配しなくても、お前を見捨てたりはしねーよ。ただ、まぁ……」

 大きくため息をついてから、ライダーは三四郎を見おろした。
 三四郎はその顔を見ることができず、膝を折り地面に手をついていた。
 なんだか無性につらかった。

「男だろ、お前。
 もうちょっと気合入れとかねぇと、大事な時に後悔することになるぜ」
「う、うぉぉぉ……ッ!」

 この時、三四郎の胸中では無数の思いがグルグルと渦を巻いていた。
 いや、そりゃ俺だって困ってる人がいたら助けたいと思う! とか。
 でも死にたくないし、仕方ないだろう!? とか。
 チ、チキショウッ! 俺はいつだってそうだ! 俺はいつでも情けなく全てをあきらめてしまう……!! とか。
 俺はくずだッ! で、でも、ライダーが戦ってくれるらしいし、俺は別にいいんじゃないか? とか。
 そういった、自分の中の男の意地と情けない部分がせめぎあっていた。
 ライダーはまた、あきれ顔でそれを見ていたが……

「おい、誰かいるのか? ここは立ち入り禁止だぞ!」

 部室の外から、男性の声が聞こえてきた。巡回の警備員だろう。

「ヤベッ。おい坊主、ズラかるぜ!」
「え、お、おう!」

 ライダーに手を引かれ、窓から二人は逃亡する。
 後姿は見られたかもしれないが、まぁ問題のない範囲だろう。
 サンドバッグを一つダメにしてしまったのは、少し申し訳なくも思うが……

「……で、坊主。まだ燻ってるなら、ひとっぱしり行くか?」
「…………よし、行くかッ!」


  ◆   ◇   ◆


281 : 紅い拳の ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:31:46 ridfYRnE0



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
「……威勢だけは十分なんだけどなぁ」

 ……夜の闇を切り裂くバイクが二台。
 全てを吐き出すような叫びを上げながらバイクで爆走する三四郎を後ろから見守りつつ、ライダーはぼやいた。
 ちなみにこの後三四郎が「まぁいっか」と妙な開き直りを見せることを、この時のライダーはまだ知らない。
 愛車をぼんやりと走らせながら、ライダーは想いを馳せた。
 かつて共に戦った、改造人間でもなんでもない親友に想いを馳せた。

「魂だけでも、か……」

 この少年は、決して悪い人間ではないと思う。
 ただ少し……勇気が足りないだけなのだ、と。
 自分はこの少年に、勇気を示すことができるだろうか?
 血塗れた悪魔でしかない自分に、それができるのだろうか?

「……それでもやらなきゃならないんだよな。滝、本郷……」

 スノーフィールドの風は強く、冷たい。
 だがその冷たい風が心地よかった。
 真っ赤に燃える自分の中の悪魔を、鎮めてくれるような気がした。



「――――なぁに、やれるさ。俺は仮面ライダー2号、一文字隼人だからな!」



 ライダーは愛車・新サイクロン号のエンジンを轟かせ、三四郎を抜き去った。


282 : 紅い拳の ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:33:48 ridfYRnE0

【CLASS】ライダー

【真名】一文字隼人@仮面ライダー(SPIRITS準拠)

【属性】中立・善

【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具C

【クラススキル】
騎乗:A
 騎乗の才能。
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
怪力:C
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
 「変身」中はスキルのランクがアップする。

勇猛:A+
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

戦闘続行:C
 不屈の闘志。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

【宝具】
『変身台風(タイフーン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 ライダーの「変身」に必要なベルト。
 腰に巻くことで、風力を利用してエネルギーをエネルギーを生み出し、バッタの能力を持つ異形の怪人に変身する。
 変身中、ライダーの筋力、耐久、敏捷のステータスをワンランクずつアップ。
 さらに広角視野や暗視能力、超聴覚などの特殊能力を備える。
 同型の怪人の中でも特に腕力に優れた、「仮面ライダー2号」と呼ばれるライダーの戦闘形態。

『打ち砕く旋風(サイクロンアタック)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:2〜60 最大捕捉:20人
 宝具『旋風は自由のために(サイクロン)』による突撃走法。
 フロントカウルを微細に振動させながらの超速体当たり。
 振動によって破壊力が向上している以外はただの体当たりでしかないが、
 MAXスピード600キロから放たれるそれは大抵のものを破壊する。

【weapon】
『旋風は自由のために(サイクロン)』
 ライダーの愛車。
 最高時速500キロ、ブースターを使えば600キロにも及ぶスーパーバイク。
 高速走行時にカウルからウィングを展開し、これを利用した滑空すら可能。
 正式名称は「新サイクロン号」となる。

【人物背景】
 悪の秘密結社ショッカーによって改造された、ロンドン生まれのカメラマン。
 外交官だった父の職業柄海外を飛び回ることが多く、六ヵ国語に精通する。
 さらには柔道六段、空手五段の達人であり、その身体能力を見込まれてショッカーに改造されてしまった。
 こうして改造人間となってしまった一文字だが、どうにか脳改造手術前に救出される。
 彼を助けたのは本郷猛――先んじてショッカーに改造され、同じく脳改造前に脱出して悪と戦い続ける「仮面ライダー」だった。
 ショッカーを追ってヨーロッパへと向かう本郷に代わり、一文字は「仮面ライダー2号」として日本で戦うことを決意。
 そうしてショッカー、ゲルショッカー、デストロンなどの悪の組織と戦い続けた。
 彼は改造人間仮面ライダー2号。
 人間の自由のために戦う戦士である。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯はいらない。人間の自由のために戦う。


283 : 紅い拳の ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:35:35 ridfYRnE0

【マスター】
 拳三四郎@仮面ボクサー

【能力・技能】
 持ち前のボクシングの技術に加え、特殊な仮面とグローブによる特殊能力を保有する。

 ・透視能力のあるX線アイ。
 ・100メートル四方の音を聞くことのできる、ボクサー・イヤー。
 ・敵が、どこに逃げのびようとも居場所を察知することができる額のセンサー(ピンチになると、色が変わる)。

 〇ボクサーパンチ
  内側に物を張り付けることができる特殊グローブを利用した必殺パンチ。
  右手のグローブに左手のグローブの掌を貼り付け、右のストレートと共に左手をパンチと垂直に引く。
  するとコマの要領で強力なコークスクリュー・パンチが放てる……という技。

 〇n年パンチ(消費する寿命によって名称が変わる。五年パンチ、三十年パンチなど)
  ある科学者によってマスクに追加された能力。
  エネルギー・マウスピースをひと噛みするごとに1年分の寿命がパンチ力へと変換される。
  すなわち寿命を犠牲にして放つ必殺の一撃……なのだが、実は真っ赤なウソ。
  寿命云々は、才能はあるが意志薄弱な三四郎に全力を出させるための演出に過ぎない。
  三四郎は既にこの嘘を知っているため、現在は(たぶん)使えない技。
  一応、現在は改造によって「他人の寿命を消費できるようにした」と開発者は言っているが……
  ……間違いなく嘘なので、やはり現在は(たぶん)使えない技。
  ただし、要するに全力のパンチでしかないため、『その気』になった三四郎ならば同等の一撃を放てるはずである。

【weapon】
『変身セット』
 ヘッドギア型のマスクと粘着グローブ、エネルギー・マウスピースからなる変身セット。
 これを装備することで、三四郎は「仮面ボクサー」へと変身する。
 グローブは内側が粘着性なので、バイクにも乗れる。
 ヘッドギア型マスクも、乗車用ヘルメットとして警察庁の許可が取ってある。

『バイク』
 何の変哲もないごく普通のバイク。
 仮面ボクサーの主な移動手段である。

【ロール】
 ボクシング部主将の高校生。

【人物背景】
 私立鈴具高等学校ボクシング部主将を務めるボクシング少年。
 父は日本プロボクシングコミッショナー……なのだが、
 世界制覇を目論む「世界征服ジム」に父は拉致・洗脳され、彼らが擁する「怪人ボクサー」を認可してしまう。
 三四郎はなんとか父を正気に戻すも、世界征服ジムの刺客クモボクサーによって父が殺害されてしまい、
 唯一手元に残った「仮面ボクサー」の変身セットを装着して父の無念を晴らす決意をする。
 そうして続くカマキリボクサー、コブラボクサー、ブロンドボクサー、食虫植物ボクサーを撃破。
 最後に現れた最強の敵、ゴッドボクサー(正体はヘビー級王者マーク・パイソン。ちなみに三四郎はフェザー級)。
 敗北、死闘、敗北、決意、そして死闘とドラマの果てに、ゴッドボクサーを三十年パンチで打ち倒し、全ての変身セットを回収した。
 熱血漢だが非常に意志薄弱。
 ヘタレでビビりだが口先だけは男らしい。反面とても調子に乗りやすく、勢いだけで生きているような男。
 とにかく非常に諦めが早く、中々実力を発揮できないが、その潜在能力はヘビー級王者をも一撃で打ち倒すほどである。
 今回は原作最終回直後から参戦。
 全ての変身セットを回収した後も戦いの運命から抜け出せない、悲しい男である。

【令呪の形・位置】
 右手の甲にヘッドギアのような仮面の形。

【聖杯にかける願い】
 戦いから逃れたい。
 少なくとももう死ぬような戦いとかしたくない。

【方針】
 死にたくない。戦いたくない。
 ……が、良くも悪くもその場の勢いに流されやすいため、この方針は容易に転換し得る。


284 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/27(日) 05:35:57 ridfYRnE0
以上、投下を終了します。


285 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/27(日) 18:13:22 h0tcg4k20
最後の初投下です。


286 : よつぎサーヴァント ◆As6lpa2ikE :2016/11/27(日) 18:15:05 h0tcg4k20
.




戦争に、出会いの話は""つきもの""だ。




.


287 : 名無しさん :2016/11/27(日) 18:16:19 h0tcg4k20
001

白紙のトランプから放たれた眩い光が、室内を余す所なく白に染める。
同時に流れ出た突風は、部屋の中に置かれてあった調度品を何個か吹き飛ばし、耳障りな破壊音を立てた。
いったいそれはどれぐらいの間続いただろうか――ほんの一瞬、あるいは数秒、もしくは数分間続いたかもしれない。
見る者の時間感覚を奪うほどに、現実離れした幻想的な光景を、僕の召喚者(マスター)である魔術師のお姉ちゃんは驚きと期待に満ちた目で見つめていた。
光と突風が一箇所に集まり、人の形を取り始めると、彼女の蒼色の瞳は期待にますます輝く――それはもう、白紙のトランプが放つ光に勝る程にピカピカと。
しかし次の瞬間。
形作られた人型が、小さい子供の物である事に気が付くと、魔術師のお姉ちゃんの顔に――真っ白な光に照らされているにも関わらず――不安の影がさし始めた。
そんな彼女のリアクションを置いてけぼりに、光と風は益々集まり、凝縮し、固体化して行く。
そして、最終的に光と風はこの僕――斧乃木余接を生み出した。
現界を終えた僕は、軽やかに着地する。
床へと足を付けたと同時に、スカートがふわりと浮かんだ。
一部始終を見終えた魔術師のお姉ちゃんは、あり得ない物を見てしまったような顔をしている――いや、これまで起きた現象も十分あり得ない物なんだけれども、彼女は現象の結果にそのような感想を抱いているようだ。
つまり、召喚されたサーヴァントが僕だった事に、魔術師のお姉ちゃんは驚いているのである。
ふむ。
まあ、無理もない。
百戦錬磨の豪傑たる英雄が呼ばれるであろうサーヴァント召喚で、僕のような小さな女の子が出てきたのだ。
ライオンを呼ぼうとしたらチワワがやって来たような物であり、肩透かしを食らって驚き呆れるのは仕方のない事である。
――しかし、だ。
見た目が少女だからって、舐めてもらっちゃあ困る。
これでも僕は、怪異退治の専門家の式神として、いくつもの戦いを経験して来たのだ。
潜り抜けてきた修羅場の数は、そんじょそこらの英霊に匹敵するだろう。
サーヴァントとして呼ばれるに足る実力を自分は持っているという自負が、僕にはあるのだ。
なので、そのような心配顔をされるのは誠に心外なのである。
けれども、その事を声高に主張するような大人気ない行動を、僕はしない。
むしろ、そんな風に必死に主張すれば、僕の姿はますます子供っぽく見え、説得力が薄れてしまう。
だから、これから僕が取るべき行動は、ただ一つ――自己紹介だ。
なんべく簡潔で、なるべく分かりやすく、そしてなるべく威厳に満ちた自己紹介。
それをすれば、魔術師のお姉ちゃんは僕に向けてるイメージを改めるだろう。
ああ、自分は何て愚かな思い込みをしていたのだろうか――そんな風に己を恥じるに違いない。
その時になって、彼女が僕に向かって土下座をし、謝ってきたら……。
まあ、僕は大人だからね。
ハーゲンダッツ五個で許してあげるさ。
召喚されてから僅か数秒の間にそのように考え、僕は方針を定める。
頭の中には既に、完璧な自己紹介が構築されていた。
なあに、下手に趣向を凝らす事はない。
いつも通りのプロフェッショナルらしい自己紹介をしていれば、それだけで魔術師のお姉ちゃんは僕がプロフェッショナルだと理解してくれるだろう。
完璧なイメージを持ちつつ、僕は片手を使って目の横でV字を作り、首を僅かに傾けた。
そして、始める――普段通りの、自己紹介を。

「いえーい。ドールのサーヴァント、斧乃木余接。召喚に応じて参上したよ。これからよろしくね、魔術師のお姉ちゃん。ぴーすぴーす」

僕はキメ顔でそう言った。
あ。しまった、間違えた。


288 : 名無しさん :2016/11/27(日) 18:17:12 h0tcg4k20
002

「はぁ〜」

吐いた息の長さに忠実に書けば、『〜』だけで十レスは埋まるであろう程に長い溜息をつき、魔術師のお姉ちゃん――遠坂凛はソファに座って項垂れた。

「召喚されたのが最優のクラス・セイバーではなかった事。これは、まあ、仕方ないわ。
どころか、三騎士でも無く、その代わりに聞いた事もないエクストラクラスがやって来た事。これも、まあ、良しとしましょう。
けどね……それが自己紹介の初っ端から面倒な匂いしかしない少女だったってのは、どういう事よ」
「まあまあ。そう落ち込まないでよ。魔術師のお姉ちゃん。人は誰だって失敗する物さ。正確に言えば、僕は人じゃなくて人形だけど」
「……それは失敗した本人が言う台詞じゃないでしょうが」

遠坂凛は、ジト目で僕を睨め付ける。

「そもそも、出会い頭の印象なんて些細な物だろう? 出番の度にキャラがブレる僕なんて、尚更そうさ」

先程、その印象をどうにか良くしようとしていたのが他ならぬ僕自身であった事を、すっかり忘れた僕だった。
失敗は無かった事にするに限る。
今は別方面からのアプローチをするべきだ。

「マスターの駒になるサーヴァントにとって、最も重要なのは性格じゃない、性能だ。どれだけ強いかって事に、目を向けるべきだと思うんだよ」
「……ふぅん?」

そこでようやく、遠坂凛は僕に対して、感心したような目つきを向けた。

「随分自信有り気じゃない」
「そりゃあね。僕は強いぜ。相当強い」

そう言って、僕は握った拳を目の前にかざした。

「僕の能力――宝具の名は、『無限の剣製 (アンリミテッド・ブレイドワークス)』」
「アンリミテッド・ブレイドワークス? セイバーでも無いのに剣を使うの?」
「あ。違う違う。言い間違えたよ。僕の宝具の名前は『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』だ」

まさか、先程の失敗を取り戻さんと焦っているなんて事は無いだろうけど――僕はそのような言い間違いをしてしまい、すぐさま訂正を行なった。

「この宝具によって、僕は身体の一部を瞬間的に巨大化させる事が出来るんだ。どうだ、凄いだろう?」

僕の顔面の筋肉が動ければ本当にキメ顔を取っていたぐらいには自信満々に、僕は自分の宝具の説明を終えた。
それを受け、遠坂凛はしばらく考え込んだ後、

「身体の一部の巨大化、ね……。
言葉だけじゃ何だか凄くないように聞こえるけど……まあ、あんだけ自信満々に言って置いて、ショボかったなんて事は流石にないでしょう。そうでないと困るわ」

と、何やら色々と失礼な事を呟いた。
ともあれ、僕に対する印象が良くなったのは喜ばしい。
安心感に、僕は胸を撫で下ろす。
マスターとサーヴァント――使う者と仕える者の関係はなるべく良好である方が良いに決まっている。
その後、僕と遠坂凛は、聖杯戦争に対する互いのスタンスや今後の方針について語り合った。
僕が発言する二回に一回ぐらいの頻度で、彼女が奇妙そうな顔をしていたのは、後になっても謎である。


289 : 名無しさん :2016/11/27(日) 18:18:21 h0tcg4k20
【クラス】
ドール

【真名】
斧乃木余接@物語シリーズ

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具D

【クラススキル】
人形:A
ニンギョウがニンギョウ。
高ランクの自己改造、戦闘続行を内包したスキル。
既に死んだ少女から生み出した人形の式神であるドールには生命力という概念がなく、それ故に五体をバラバラにされても生存が可能になっている。
バラバラになった部品は、切断面を合わせれば結合し、数分程度で修復可能。
また、身体の部品が欠損したとしても、粘土をこねて作ったそれらしい部品をくっつければ、それで十分補える。
しかし、死体から作られた人形である為火に弱く、火炎系のスキル/宝具に対しては不利に動かざるを得ないであろう。

変容:B
能力値を一定の総合値から状況に応じて振り分け直す、怪異人形ゆえの特殊スキル。
ランクが高い程総合値が高いが、AからA+に上昇させる際には、二ランク分必要となる。

【保有スキル】
単独行動:B
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
ドールのフリーダムな性格が顕現したスキルである。

怪異ハンター:A(A+)
怪異に対する専門家。
相手のサーヴァントの出自が怪異に関するものであれば、ほんの少しの情報を知るだけで真名の看破に至る事が可能。
数多の怪異を退治して来た逸話から、怪異に属する者に対し、有利に行動する事が出来る。
また、ドールと彼女の本来の主は不死身の怪異専門のハンターであった為、不死身に関するスキルや宝具を持つ相手に、このスキルのランクはカッコ内まで上昇する。

神性:E
ドールは怪異『憑藻神』をベースとした式神であり、また彼女は神社に奉られている本物の神との交流も深い為、低ランクながらこのスキルを有している。

【宝具】
『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:10

身体の一部を瞬間的に肥大化させ、相手にぶつけるという非常にシンプルな宝具。
変容スキルによって上昇させた筋力を合わせれば、剣呑な火力を生み出すであろう。
また、脚部を肥大化させた反動で空中移動する『離脱版』という応用法もある。

【人物背景】
見た目は童女な、憑藻神の怪異。
奇抜な髪色と服装をしているが、それに対して表情は一貫して無表情である。
人形である故か周囲の影響を受けやすく、登場するたびにキャラクターがコロコロと変わる。
とは言え、彼女の根本的なキャラクターは尋常ではなくエキセントリックな物となっているので、周りに居る者が彼女に翻弄される事もしばしば。いえ〜い。ぴーすぴーす。


290 : 名無しさん :2016/11/27(日) 18:18:58 h0tcg4k20
【マスター】
遠坂凛@Fate/stay night

【weapon】
・ガンド
初等呪術。
本来物理的破壊力を持たないはずなのだが、高い魔力密度によって、拳銃並みの威力になっている。

・宝石魔術
宝石の中で魔力を流転させ、本来保存できないはずの魔力をストックしておき、それを解放する事によって、破壊や治癒へと用いる事が出来る。

また、五属性を過不足なく使いこなす事も可能。
遠坂凛は魔術の天才である。

【人物背景】
六代続く魔術師の家系、遠坂の現当主。
『常に優雅たれ』という家訓に則り、学園ではエリートとして振舞っている。
その為、プライドが山のように高い。
参戦時期はアーチャーを召喚する前から。

【マスターとしての願い】
聖杯の獲得


291 : ◆As6lpa2ikE :2016/11/27(日) 18:19:25 h0tcg4k20
投下終了です


292 : ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:49:06 ZT1HXIgU0
投下させていただきます


293 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:50:21 ZT1HXIgU0

「おい、ルシウス。どうしたんだ、その痣は」

中背だが逞しい体つきの男、マルクスは友人であるルシウス・モデストゥスの手の甲を指差した。
ルシウス・モデストゥス。
兵士や闘奴ほどではないが逞しい身体つき。
鋭利な目に挟まれた眉は神経質に狭まっており、常に不機嫌そうに口をすぼめている。
整った顔立ちだが気難しさを隠そうともしない姿から女性を遠ざける。

そんな『浴場(テルマエ)技師』のルシウスの手の甲には、大樹を連想させる薄い痣があった。

「分からぬ、気づけばついていた。
 日が経てば消えるだろう」

ルシウスの言葉は真実でも有り、偽りでもあった。
気づけば痣が存在していたのは事実だ。
しかし、何時か消えるだろうという考えは偽りだった。
この痣は不可思議な痣だ。
実のところ、家へと帰ればこの痣は霞がかったような薄いものへと変わる。
しかし、ある場所へと近づけばその痣は強烈に色を付ける。
ある場所とは、すなわちテルマエ。
テルマエに近づけばこの痣ははっきりと形作られるのだ。

(バイアエに一大テルマエ施設を手掛ける私への、神々の何かの思し召しか……?)

テルマエ技師ルシウスは今、時の皇帝ハドリアヌス帝より一つの事業を任されていた。
既に病床について先を悟りつつあるハドリアヌス帝の最期を穏やかなものにするための事業。
すなわち、テルマエによる心の安寧。
バイアエを、一つの街そのものをテルマエへと変え、心穏やかなローマの象徴とする。
そのために心血を注ぐ日々が続く。
しかし、答えの見えぬ製作に苦戦していた。
如何にすれば、尊敬するハドリアヌス帝が満足できる都市を、テルマエを作ることが出来るか。

「……テルマエに入るか」

答えが出ぬ日々。
ならば、テルマエのことはテルマエで考えるに限る。
何か、ヒントを得られるかもしれない。
手元の痣が色濃くなる様を見ながら、近場の公衆浴場へと向かう。
脱衣所にて服を脱ぎ、湯へと浸かる前に身体を洗い、ゆっくりと風呂に入る。
そして、身じろぎもせず、ただ力を抜き、もたらされる快感に身を委ねるのみ。
母の懐のような安心感に浸かる、それがテルマエ。
この瞬間だけは、あらゆる悩みから離れることが出来る。

「……ふぅ」

心地よさに息を吐く。
この一時こそがルシウスの生きる意味であり、ルシウスにとってのローマの在り方だった。
ルシウスの生きる時代は、『最も人類が幸福であった時代』とも称されている。
そんなローマの在り様は、テルマエのように穏やかであることがルシウスの理想だった。


294 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:51:02 ZT1HXIgU0

「むっ……?」

そんな中、浴槽の床に一枚のカードが張り付いていることを認識した。
ルシウスは目を細めながら、その一枚のカードへと手を伸ばす。
そして、カードに触れた瞬間。


「なっ、うぼおぉぁあ!?」


ルシウスはまるで吸い込まれるように溺れた。
脚がつくどころの話ではない、腰掛けても顔に届かないような風呂の中で。
ルシウスは溺れた。
理解できぬまま、まるで渦に巻き込まれるように身体が水に浸しながら上下左右へと翻弄される。
それがどれほど続いただろうか。
一分か五分か、あるいは十秒にも満たなかったかもしれない。


「ぷはぁ!!!」


はぁ、はぁ、と肩で息をしながら懸命に肺へと空気を送り込む。
不可思議な出来事。
浴槽で溺れ、在りえぬ時間、巨大な力に翻弄される。
だが、初めてではない。
もはや、確信めいてルシウスはこの期の自体を想像した。

(ふっ、だが、わかるぞ。
 これは同じだ。今まで何度となく繰り返したものと同じだ)

ポチャリ、と。
背後から水滴が落ちる音がした。
ここはテルマエ、背後で誰かが湯に浸かっているのだ。

(背後に人が居る。
 ふふ、ならば、そこには平たい顔族が――――)

平たい顔族。
ルシウスが不可思議な現象に苦しめられた先に存在する世界で暮らす人々。
彫りの深い顔立ちであるローマ人とは違ったのっぺりとした顔立ちの民族。
誰も彼もが穏やかな性根。
児戯のような戦力しか持たない人々。
しかし、その技術力は恐ろしいものがある。
神々の操る雷を我が物とし、ローマとは比べ物にならない快適な生活を送る恐るべき集団。
そして、何よりもテルマエにかける情熱が素晴らしい。
敗北を認めるようで決して口には出さないが、ルシウスが尊敬する集団。
その平たい顔族が、いつものように湯に浸かっているはずだ。
ルシウスはゆっくりと振り返り。


295 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:52:30 ZT1HXIgU0


(――――ひ、平たくない!?)


驚愕した。
そこには日に焼けた肌と金色の髪をした、逞しい身体つきの男が、驚愕に碧眼を染めたままこちらを眺めていたからだ。
平たい顔族の特徴である黒髪黒目、彫りの浅い顔立ち、やや貧相な身体つきからは程遠い姿だ。

「お〜い、なんか大きな音がしたが大丈夫か〜い」

再び、背後から間延びした顔が響く。
ルシウスが振り向くと。

(平たい顔族!)

彫りの浅い顔立ちをした、恐らく店員と思える老人が不思議そうな目でこちらを眺めていた。

(店主は平たい顔族! だが、客の多くは平たくない顔!
 しかし、ローマ人とは異なる顔つきだ……な、なにが起こっている……!?)

今までとは微妙に異なる自体に、ルシウスは混乱した。
ルシウスは腰にタオルのみを巻いた姿で外へと飛び出す。
外へと出ると、雨が降っている。
それにも構わず、周囲を眺めた。
ローマではない、ここもまた雷の力を使ったと思われる道具によって街が照らされている。
だが、街の雰囲気が平たい顔族の街とも異なる――――ような気がする。

「おーい、お兄さん!
 雨が降ってるのに、風邪を引いちまうよぉ!」

ルシウスが混乱の最中に居ると、心配そうな声が響いた。
傘を持った、ルシウスの言葉を借りるならば、平たい顔族の老人が追ってくる。
ルシウスは瞬時に振り返り、傘を持った老人の肩を掴み詰め寄った。

『ここは何処だ!』
「はぁ? ……あのねぇ、日本語とは言わないけど、せめて英語使ってよ!」
『私はハドリアヌス帝に仕えているルシウス・モデストゥスというテルマエ技師だ!
 ここはローマから近いのか!?遠いのか!?
 平たい顔族の領地なのか!?
 それだけでも良いのか教えてくれ!』
「とにかくさ、服を着て中に入りなよ。
 せっかく風呂に入ったってのに、台無しじゃないか」

そう言うと、傘を押し付けて平たい顔族の老人が家屋へと戻っていく。
雨がルシウスの裸体を打つ。
ルシウスは今まで以上に輝く右手の痣と、握りしめた白紙のトランプを眺める。
わからないことばかりだ。
テルマエの未来も見えなければ、今の状況もわからない。
なんなら傘の使い方もわからない。
なんだこれは、短槍か。
所詮は戦争に長けない平たい顔族、この程度の武器が相手ならば素手でも制圧できる。
そんな見当違いのことまで考え始める始末。
ルシウスは、思わず毒づいた。


296 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:53:57 ZT1HXIgU0

『くっ、言葉が通じん……やはりここはローマではないのか』

その時だった。
ピカリ、と。
ガゴン、と。
巨大な光量と音量がルシウスの五感を襲う。
稲妻だ。
ルシウスは思わずうずくまった。
同時に、ローマの男である自身が偉大なるユーピテルの祝福である稲妻に慄くなど、とカッと羞恥に顔を染め、立ち上がる。
しかし、そんな羞恥もすぐに驚愕に吹き飛んだ。


「いいや、ここはローマだ。
 お前の知るローマとは異なるが、ここもまたローマなのだ」


ルシウスは、驚きとともに振り向いた。
そこには、一人の巨人が居た。
稲光とともに、巨人が現れたのだ。
ルシウスはその巨人を見上げた。
頑健な肉体を誇るローマ人の中でも、巨躯のルシウスが大きく見上げるほどの巨人。
ルシウスは見上げた視線から、その巨人は恐らく三メートルはあるものと感じた。
だが、それは誤りだ。
ルシウスが目の前の存在を巨人と感じたのは、自身が跪いていたからだ。
立ち上がったはずの自分が、もう一度膝をついている。
自身の身体すらままならぬ状況で、マジマジと巨人の顔を見る。
胸から湧き上がる畏敬の念。
自身の裡から湧き出る敬意に、理解できぬ無礼な想いを抱く。
ハドリアヌス帝をも超えるやもしれぬ敬意。
ふと、有りえぬ想いが脳裏をよぎる。
いや、しかし、それは有りえぬ。
だが、この胸から溢れ出るとすれば、それは。
自身が出会った中でも最も偉大なハドリアヌス帝をも凌ぐ威光。
この方は、もしや、神なのではないのか。
ローマの異郷で出会う、神なのでは。


「お前の応えに求め、参上した。
 我は旧き神と一体化した、新たなる神」


ゾクリ、と。
ルシウスの背中が粟立った。


「私<<ローマ>>が、ローマだ」
「おお……おお……!」


突拍子もない言葉。
常であれば理解も出来ず、その余りの無礼な言葉に怒りで頭が支配されるほどの言葉。
だが、今は不思議と理解できた。
それこそ、目の前の存在の威光が事実であることを何よりも証明している。
偉大なるローマの偉大なる建国者。
人の身のまま神へと列席した、最も新しい神。
ローマ臣民として忠義を捧げる偉大なる神祖。


297 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:55:41 ZT1HXIgU0


「い、偉大なる……神祖ロムルス……!」


真名を名乗ろうとはせずとも、その存在そのものが何よりも真名を告げている。
深紅の神祖。
建国王ロムルス。
言葉が出ない。
無礼であることを自覚しつつも、恥ずべき行いだと理解しつつも。
ただ、ただ、感嘆の声しか出なかった。

「はうぁ……!」
「我が愛しきローマの民よ。我が愛し子の一人、ルシウスよ」
「な、なぜ私の名を!?」
「私<<ローマ>>がローマで在るゆえに、私<<ローマ>>の中にはローマの全てを在る」
「おお……!」

理屈にもなっていない言葉にも、ただただ感嘆の声が出る。
父のような逞しい肉体と、母のような穏やかな言葉。
まるで、テルマエのように全てを委ねたくなる姿。
ルシウスは、無礼とも気づかずに声を張り上げた。

「建国の祖たるロムルスよ!
 どうか、どうか私をお導きください!」

謙遜もない、恥ずべき言動。
しかし、これを夢か幻かと疑っている部分のあるルシウスにはそんなことを考える余裕もなかった。
雨が降り注ぐ中、すがるように言葉を繰り出す。

「どうか、私に新たなるテルマエの姿をお導きください!
 私一人では、何も為すことが出来ませぬ!
 私は私の力だけで何かを成し遂げたことなど何一つとして有りませぬ!
 全ては……全ては平たい顔族の文化を、盗み取っただけのもの!
 その文化を我が功績と偽る、ローマ人に相応しくない、情けない男なのです!」

自らの恥部を曝け出す羞恥に堪えながらも、神祖へと懺悔する。
偉大なるローマを前に、己を偽ることは出来ない。

「ルシウスよ、自らを卑下するものではない」

しかし、ランサーはルシウスを弾劾することも侮蔑することもなかった。
ただ、柔らかくルシウスを包みこむのみだ。
その穏やかな対応が、逆にルシウスの心を痛めさせる。

「ルシウス、例え、お前がもたらした物がお前のものでなくとも、お前がローマのために尽力したことは事実だ。
 『マグナ・ウォルイッセ・マグヌム』。
 ローマが偉大であるのは、偉大なことを欲する想いがあるからこそ。
 人々がお前を讃えたのは、お前が目指した理想のローマを、ローマの民として尊いと感じたからだ。
 例え、別の者が同じ物を生み出しても、お前の理想に劣るものならば誰も讃えはしない」
「偉大なこと……す、すなわち、ハドリアヌス様が命じられたテルマエ都市……!」
「そうだ、浴場による理想郷。
 我が愛し子ハドリアヌスがお前だからこそと命じ、お前が求めたローマの姿」

そして、雨雲に隠されている太陽が降りてきたような暖かさで。


「それがお前のローマだ」


跪くルシウスを包み込んだ。
しかし、それでもルシウスは納得ができなかった。
不遜にも、建国王が導き出した答えに意義を申し立てる。


298 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:56:54 ZT1HXIgU0

「ならばこそ、お教えください!
 偉大なる神祖ロムルス!
 私が求めるローマの姿は、どのようにすれば形作れるのですか!」
「二度言おう、ルシウスよ。
 浴場による理想郷……『テルマエ・ユートピア』。
 それこそがお前の求めるお前のローマだ。
 私<<ローマ>>はローマであるがゆえに、お前のローマを知っている。
 だが、そのローマはお前からでなければならない。
 お前だけが生み出せるローマであるがゆえに、お前が見つけねば、それはお前の求めるローマではない」

突き放すような言葉で、優しく包み込む。
ローマそのものであるランサーが提案するテルマエならば、あらゆるローマの民が納得するものが出来るだろう。
だが、それはランサーの望むべくものではない。
ルシウスによって新たに生み出された『テルマエ<<ローマ>>』こそが、偉大なるローマの一部に相応しいと考えるからだ。
ルシウスは、幾度となく食い下がった。

「それが分からぬのです、神祖ロムルス!
 何もわからない、私では頭打ちなのです!
 ハドリアヌス帝の最期の想いにも、偉大なる神祖の期待にも応えらない!
 私が世界から貶されることよりも、貴方がたの想いを裏切ることが恐ろしいのです!」

ルシウスの下がることのない目に、ランサーは目を伏した。
そして、包み込んでいた腕を解き、背後にあった樹槍を手に取った。

「……良いだろう、ルシウス」
「おお……感謝します、神祖よ!」
「私からは答えはやれぬ。
 しかし、私<<ローマ>>のローマを見せよう。
 そこから、お前がお前のローマを見つめるのだ」

そして、ゆっくりと樹槍を横薙ぎに振るう。
春の大地のような瑞々しい唇が動く。


「『すべては我が愛に通ずる<<モレス・ネチェサーリエ>>』」


その言葉とともに、大地から壁が生えた。
ドーム型に展開された壁は、ルシウスとランサーだけの世界だけを作り上げる。
世界から隔絶されたように、雨すらも二人の空間から消しさったのだ。

「これなる壁は私<<ローマ>>を覗き見、飛び越える者を隔絶する」

ルシウスは理解した。
この壁こそが、建国神話にて名高き隔絶の壁。
神祖ロムルスの弟、レムスが飛び越えた災いの壁。
生まれながらの超人であるロムルスが唯一嘆き悲しんだ逸話から生じる、世界から空間を隔離する宝具。
ローマの中のローマとなったこの空間にて、ロムルスは樹槍を高く掲げた。
大きく口を開く。


299 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:57:51 ZT1HXIgU0


「見よ、新たなる神の在リ様を!
 当世とは離れた地にてローマを見た男よ!
 槍を通じて那由多に偏在する、多様なローマを視るが良い!」


先程までの穏やかな口調からは遠い。
戦士としての雄々しい叫び。
ランサーが叫ぶ。
樹槍が脈打つ。
まるで雨後の大河のように、樹槍の表面化に言語化できぬ巨大なエネルギーが暴れまわっているのだ。
そのエネルギーの正体。
実態の持たぬ其れを、人々は。


「おお! おお!」


『ローマ』と呼ぶ。


「――――『すべては我が槍に通じる<<マグナ・ウォルイッセ・マグヌム>>』!!!!!!!」


瞬間。
ロムルスが手にしていた樹槍が、雄々しく、瑞々しく、成長する。
単なる樹ではない。
それは『ローマそのもの』である大樹へと姿を変えていく。
その姿を見て、ルシウスは、口を開く。
呼応するように、ロムルスも大きく叫んだ。
奇しくも、二人の言葉が重なった


「「ローマ!!!!」」


過去。
現在。
未来。
全てのローマが怒涛の勢いでルシウスの眼前にて展開される。
瑞々しい枝葉の一本一本が、ローマの輝きを秘めている。
樹槍が作り出す一本の巨木は、ローマそのものだ。
圧倒されていた。
自身が所属するローマという国が偉大であるという自負はあった。
だが、ルシウスのそれは表面上のものでしか無かったと、今ならば理解できる。
目の前のこの巨木の偉大さこそが、ローマの偉大さ。
その眩さに目を奪われ、直後に、ルシウスは倒れた。





300 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:58:23 ZT1HXIgU0

「結局、全く分からぬままだ」

翌日、浴場の清掃をしながらルシウスは呟いた。
この世に過去現在未来、全てのローマを顕現させるという偉業を行ってみせたランサーの姿は、既にない。
裡なるローマを見せることで、ルシウスにローマを導いてみせた。
だが、それでもルシウスは自らのローマを見出すことは出来なかった。

「しかし、なぜ私がこのテルマエの清掃などを……!」

そう言いながらも、モップを動かしていく。

「おーい、お兄さん!そろそろ湯を張るよぉ!」
「ああ、わかった店主!」

そして、先日は言葉の通じなかった老人と、一晩経てばなぜか言葉が通じている。
タイムスリップ途中の転移ということもあり、多少の不具合が起こっている。
ルシウスはラテン語しか理解できなくなっていた。
それが、先日での食い違いの原因だ。
ならば、なぜルシウスは今、目の前の老人と会話が出来ているのか。
それこそがランサーが神祖たる所以。
規格外のランクを誇る皇帝特権と、愛しき我が子へと加護を授ける七つの丘。
二つのスキルを使い、ランサーはルシウスと世界の間に作り上げられた言語の壁というものを乗り越えてみせたのだ。
これは恐ろしいことだ。
ランサーはこの二つのスキルを噛み合わせることで、限界こそあるがマスターへとサーヴァントが持つスキルを付与することが出来る。
それは気配遮断の技能であったり、騎乗の技能であったりする。

「この看板は複数の言語を用いて書き込まれている。
 ……なるほど、ここは多様な人種が存在しているのか」

言語を通じるようにしたことをランサーから知らされても、さすがは神祖と敬意を深めるだけだった。
それがどれほど凄いことかも気づくことなく、ルシウスはこのテルマエで働くこととなった。
日銭は必要だ。
聖杯戦争の真実についても曖昧な理解のまま。
自らの願いのまま、異郷の地にて日々を過ごすこととなった。


301 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:59:00 ZT1HXIgU0

【クラス】
ランサー

【真名】
ロムルス@Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:A 魔力:C 幸運:B 宝具:EX

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。
一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
皇帝特権:EX
本来所持していないスキルを短期間獲得できるというもの。
神祖は万能なり。
該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る。
Aランク以上の皇帝特権は、肉体面での負荷(神性など)すら獲得が可能。
本スキルを有するにあたり、ロムルスは本来有していた高ランクの神性スキルを自ら封印している。

天性の肉体:C
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。
このスキルの所有者は、一時的に筋力のパラメーターをランクアップさせることが出来る。
さらに、鍛えなくても筋骨隆々の体躯を保つ上、どれだけカロリーを摂取しても体型が変わらない。

七つの丘:A
自らが「我が子」と認めた者たちに加護を与える。
ロムルスは、このスキルと皇帝特権スキルによって、自身以外の存在にもスキルを付与することが出来る。

【宝具】
『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:900人
マグナ・ウォルイッセ・マグヌム。
国造りの槍。
母シルヴィアの処女受胎により、ロムルスを産み落とす以前に見た夢に登場する、ローマの象徴である大樹と結びつけて伝えられる。
ローマ建国の折、ロムルスはこの槍をパラティウムに突き立てたという。
宝具としては樹木操作の能力を有している。
真名解放の際には槍が大樹として拡大・変容し「帝都ローマの過去・現在・未来の姿」を造成。
怒涛の奔流によって対象を押し流す。
質量兵器ローマ。


『すべては我が愛に通ずる(モレス・ネチェサーリエ)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:100人
モレス・ネチェサーリエ。
愛する弟レムスを自らの手で誅した逸話を具現化した、血濡れた愛の城壁。
空間を分断する城壁を出現させることで壁の内側を守る、結界宝具。
城壁の出現は地面から瞬時に湧き上がるため、出現位置の調整次第ではギロチンのように対象を切断することも可能。


302 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 21:59:46 ZT1HXIgU0

【weapon】
樹槍である『すべては我が槍に通じる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』。
樹木操作の力も持つ。

【人物背景】
ザ・ローマ。
古代ローマ建国神話に登場する国造りの英雄。
七つの丘にローマの都を打ち立て、栄光の大帝国ローマの礎を築いた建国王にして神祖。
生きながら神の席に祀られたモノ。
軍神マルスと美しき姫シルウィアとの間に生まれ、神の獣たる狼を友に育ったという。

母シルウィアを虐げ、祖父ヌミトルを陥れたアルバ・ロンガ王アムリウスとの戦いに勝利した。
後、アルバを統治することなく、イタリア半島に都市国家ローマを建設した。
共にアルバ戦争を戦った弟ロムスを建国の折の諍いで手にかけるという悲劇を乗り越えた。
後、たちまちのうちに地中海周辺国家を併合し、ローマ帝国の礎を築いた。

生まれながらに超人であるため、余裕と落ち着きがある。
その人間性は世界に君臨するローマそのもの。
ネロやカエサル、カリギュラのように縁のある皇帝系英霊たちを「我が子」と呼び、愛する。

カプラ沼のほとりの野で突如として発生した嵐と雷の後、彼は「消失」した。
その最期は死ではなく、古き神の名クイリヌスと言う神となって、生きながら神の席に祀られたのだ。
ローマ帝国の建国神話に名を連ねる偉大なる建国王。


【サーヴァントとしての願い】
ルシウスの望みはローマを育たせる。
故に、ルシウスの求める答えの一助となる。



【マスター】
ルシウス・モデストゥス@テルマエ・ロマエ

【参加方法】
テルマエに入浴していた際、溺れるように謎の穴に吸い込まれ、スノーフィールドの地へと迷い込む。

【マスターとしての願い】
理想のテルマエをつくる。

【weapon】
なし

【能力・技能】
テルマエ技師として、建築家としての技能を誇る。
また、兵役をこなしているために剣術・槍術・弓術・馬術に秀でている。

【人物背景】
浴場を専門とするローマの建築技師で、アテネで最新の建築技術を習得している。
愛国心あふれる頑固な職人気質で、自身の職務とローマ人であることに誇りを持っている。
だが、職務に熱中しすぎて周囲が見えなくなるなど、ワーカホリック気味な所がある。
そのため妻リウィアとの衝突も多く、作中で三下り半を突き付けられ離婚、いっそう職務に没頭するようになった。

また有事には兵士としてローマ帝国軍に応召していた。
そのため、タイムスリップ先の現代日本人から「ギリシア彫刻みたい」と形容された無駄なく引き締まった肉体を持つ。

様々な浴室の建築に頭を悩ませるたびに、風呂場もしくは水に関する場所(生簀・海・泉等)から現代日本の多種多様な風呂や浴場へとタイムスリップしてしまう。

【方針】
理想のテルマエへの道を見つけ出す。


303 : ルシウス・モデストゥス&ランサー ◆7WJp/yel/Y :2016/11/27(日) 22:00:08 ZT1HXIgU0
投下終了です


304 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:48:04 jW6/3/ak0
投下します。


305 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:49:43 jW6/3/ak0



「コヨミちゃん。ちょっとだけお買い物していかない?」

 空を染めていた暖色が、夜の闇にじわじわと溶かされ始めていく中での一言だった。
 ライダーを名乗る彼女の唐突な提案は、コヨミ達が取っていた行動の中断を意味していた。
 そんなことをしている場合じゃないわ、と否定するのは簡単なはずであった。それなのに口にしなかったのは、コヨミ自身の心が少なからず疲弊していたためだったのかもしれない。
 或いは、もしもコヨミの隣にいたのが彼であったならば同じことを言ってくれていたのだろうと、最早無意味な期待が脳裏を掠めてしまったためだろうか。






306 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:50:49 jW6/3/ak0


 コヨミは、人間ではない。
 笛木奏という一人の男の妄執のために幕を開けた生贄の儀式、サバト。数十人の人間の生命を犠牲にするのと引き換えに、既に亡き笛木奏の一人娘である笛木暦が現世に蘇生するはずであった。
 しかし、サバトは体制の不完全さ故に失敗。その結果として残されたのは、運良く生き残った操真晴人という青年が得た魔法使いの力。そして笛木暦と同じ形の肉体に、どれほど近かろうと決して笛木暦そのものではない別の人格を宿したコヨミという生命であった。
 身体の核となる『賢者の石』に魔力を供給し続けない限りいずれ肉体の機能を停止させるコヨミの生命活動は、コヨミの目に映る“普通の”人間とは全く別物だ。そもそも、コヨミ自体が死者の肉体を魔力で動かしている人形のようなものなのだ。
 そんな、生命活動と呼ぶのも本来ならばおかしな話であるコヨミの在り方がいつまでも続くわけも無く、この肉体は既に限界を迎えつつあった。
 笛木奏は、それを頑なに認めない。
 今度こそ万全の体制でサバトを開けば良い話だ。それさえ叶えば、コヨミは笛木暦として甦るのだ。
 その思考に囚われた笛木奏は、数え上げるのも億劫になるほどの人々を絶望と死の中へと叩き込もうとした。そして笛木奏に抗う者達の手が僅かでも及ばなければ、あの時、一千万を超える人間が犠牲となってしまっていた。
 そのいずれもが、今の笛木奏にとっては些末なことだったのだろう。理知的に言葉を連ねる彼は、その内面をとっくに狂わせていた。笛木暦を喪った絶望と、コヨミという最後の拠り所しか笛木奏には残されていなかったのだ。

 もう、やめて。

 人を絶望に崩れ落ちさせることがいかに惨いか、彼は晴人の隣で何度となく目にしてきた。そして理解しているから、よりにもよってコヨミを原因として何千何万もの絶望を生み出そうとするなど、決して受け入れられない。
 叶うならもっと生きたかった、彼等と共に時間を過ごしたかったと願う想いに嘘は無い。
 でも、幾つもの悲嘆と悔恨で積み上げた自分一人のためだけの希望と引き換えなら、そんなものは要らない。

 だから、もういい。

 このまま静かに眠り、コヨミのために誰を絶望させることも無くなれば十分だ。
 せめて、そのために一つだけ願うのが許されるならば。
 最後までコヨミの希望であろうとしてくれた彼が、最期に側にいてくれたら。きっとそれだけでコヨミは満たされたまま逝ける気がした。
 だから、最大の機会を逸して尚目的に固執する笛木奏を説得して止められないかと思い、その一方でふと目にした白いカードに目が留まり、自分でも意識しないままにそのカードを手に取り、

 気付けば、この箱庭の世界、聖杯戦争という蠱毒に等しい儀式のための場に幽閉されていた。

「よかったー、ラーメンの麺もちゃんと売ってる。パスタばっかり並んでるからちょっと不安になっちゃったけど、これであと野菜と……チャーシューも多分あるわよね。何ポンドにしよう」

 訪れたスーパーマーケットの食品売り場の一角でしゃがみこみ、袋入りの麺を手に取り見比べる彼女が、聖杯戦争におけるコヨミの従者として召喚されたサーヴァントであった。
 何も彼女は自らのペースでコヨミを身勝手に連れ回しているわけではない。むしろ、つい先刻までコヨミの意向通りに動いてくれていた。


307 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:51:58 jW6/3/ak0

 コヨミの体内に宿る『賢者の石』を託せる相手を、探してほしい。

 聖杯戦争それ自体を、正しいとか間違っているとか口出しする立場でないとは思う。しかし聖杯の獲得に伴う痛みを、コヨミ自身のために誰かに押し付けるのは嫌だった。
 だからこそ今度こそ未来を諦めたコヨミの、一つだけの心残りが『賢者の石』の処遇であった。
 本当ならば、晴人に渡したかった。しかしこの地に晴人が招かれたという確証も無く、恐らくそうでない可能性の方が高いと察したコヨミの下した、妥協と諦念も含んだ決断。
 コヨミが生命を終えた後、残される『賢者の石』を晴人へ手渡せる方法を持つ者を。それがむりならせめて、せめて、『賢者の石』を笛木奏のように悪用することを疑う必要の無い者を。
 その願いを聞き届けてくれたから、ライダーは日中から日暮れ時に至るまでコヨミと共に街を飛び回ってくれた。コヨミ以外のマスターを探すため、そして万が一コヨミを狙うマスターと遭遇した時にコヨミを守るために。
 尤も、今のところは完全な空振りであり、次は街のどこへと向かえばよいだろうか。
 ……と考えていたはずが、どういうわけか、今はこうして食料の買い出しに至っているのであった。

「ライダー」
「何? コヨミちゃん」
「私、ご飯を食べる必要無いのよ。あなたもね。魔力を貰えばそれでいいの」
「……あー、言ってたわね。大丈夫、分かってる」
「だったら、こんなの買うだけ無駄じゃないの?」

 人形のコヨミ。サーヴァントのライダー。二人共に、食事を摂る必要が無い。
 ライダーに関して言えば摂取自体は可能だとしても、不可欠というわけではない。それでも食事を取るとしたら、ただの趣味以上のものではない。
 今のコヨミ達には達成する意味の無い目的であるのに、こうしてライダーはコヨミを付き合わせている

「コヨミちゃん。ただ栄養を摂るだけだったら、別に料理なんてしなくてもいいわよ。でも食べ物の味を楽しんで、テーブルに座ってお喋りを愉しむ。そういうことも、ご飯を食べる時には大事じゃない? 栄養と同じくらい、ね」
「……だから、それは精々あなたが楽しめるだけじゃ」
「ううん。これからあたし達が出会う人達のためなの。あたし達の願いを叶えてもらうんだから、お礼とおもてなしをしなくちゃね」
「それで、料理?」
「言ってなかったっけ? あたしって生きてた頃はラーメン屋もやってたの。元々料理は好きだし、特にラーメンなら誰にも負けないって自信あるんだから」

 そう言って、ライダーは買い物籠を片手に立ちあがった。どの麺を買うかは決めたようだ。

「ちゃんとその人のことを理解するために、こうやって準備してるのよ」
「その誰かにいつ会えるか、まだ分からないじゃない」
「いつか必ず会う。でしょ? だったら、今のうちにね」
「……私よりポジティブね。あなた」
「希望を捨てちゃったらお終いだもの。一日中思い詰めてるより、ほんのちょっとくらいこうやって気を抜いた方が楽じゃない?」

 どうやらただの奔放ではなく、彼女なりにコヨミを気遣っての選択であったようだ。
 未来を憂える今のコヨミの心境に対して、まずは気分転換。そしてコヨミ達の目的がいずれ達成されるのだという前提で物事を進めて、安心感覚を持たせる。
 ……コヨミ一人では間違いなく思い付けなかった発想だった。
 もしも彼女がコヨミの心身を案じてくれていなければ、未来の展望が全く見えない状況の中でコヨミは塞ぎ込んでしまっていた、だろうか。身体の完全な魔力切れを待つまでも無く。
 そう考えると、「コヨミを絶望させない」という発想に基づいてのライダーとの時間を無意味と言うわけにもいかない。
 たとえ、気休め程度であっても。希望を忘れまいとする人が側にいるだけで、いくらか安堵出来た気がした。

「コヨミちゃん。あたしはあとネギとか卵も買ったら買い物終わりだけど、他に見たいところある? ……って、お金はコヨミちゃんが出すんだから、あんまり贅沢も……」
「いい。疲れてるから、一回休みたい」
「そっか」

 日本と比べても、米国のスーパーマーケットは規模が段違いに大きい。正直なことろ、店内を歩き回るだけでも今のコヨミには少しばかりの苦労が伴っていた。
 もしもコヨミの身体が今より活発に動けるものであったならば、観光気分で見て回るくらいは出来ただろうか。
 それもやはり、もう意味の無い仮定であるけれど。






308 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:53:32 jW6/3/ak0



 きょろきょろと周囲を見回し、人目に触れる心配の無いことを確認する。
 今から二人で行うことは何としても他人に見られるわけにいかず、そのためにわざわざ二人だけで物陰に身を潜めているのだ。
 ライダーのサーヴァントである彼女が、自らの力を発揮するために必要な行為をこれから行うのだ。

「コヨミちゃん。またお願いね」
「…………うん」

 少しだけ屈み、ライダーの目線がコヨミと同じ高さとなる。
 普段コヨミの意識しているパーソナルスペースよりもぐっと近くに寄ったライダーの容貌が映る。
 大人びた顔立ちは、今の彼女がコヨミの肉体より上の外見年齢で召喚されたことを訴える。コヨミへの熱を帯びた視線は、同性であっても一瞬目を逸らしたくなるもので。
 栗色にも橙色にも見える髪を掻き上げ、ライダーは左耳を露出させる。染みの無い頬と同じ白さを見せつける耳朶に、紅色が輝いていた。
 すっと、コヨミはライダーへと顔を寄せる。吐息のリズムが聞こえる距離よりも、さらに距離を詰めていく。
 そして。
 唇を、そっと接触させた。
 次の瞬間、ライダーの姿は朱く、紅く、変わっていく。

「――マテリアライズ」

 コヨミが接吻した、ライダーの左耳に装着された紅玉(ルビー)のピアス。それは、彼女の携えた宝具の片割れだ。
 ライダーのマスターとなった者が認証の証として唇を触れさせることで、ライダーは自らの真の力を発揮するための衣を身に纏う。
 神秘を宿した宝石を介して、ライダーは“変身”する。
 灼ける炎熱のような眩い光と共に、彼女の衣装は暖色のスーツへと変わっていた。

「じゃ、しっかり掴まっててね。袋も持たなきゃ駄目だし」
「袋くらい私が持つわ」
「……いいの?」
「少しくらい、私にも仕事させて」

 そう言って買い物袋を抱えたコヨミの身体を、ライダーが抱え上げる。
 ふわ、とライダーはそのままアスファルトから両足を離し。ひゅん、と速度を付けて飛び立った。重力任せに落下するようなこともなく、二人は夜空の中を滑空する。赤いマフラーがばたばたと風に靡くのが聞こえた。
 横抱きにされるこの体勢はまるでラブロマンス映画のワンシーンのようにも思えて。それを言えば、女性が他者に口付けをすること自体がロマンチックな状況だと気付く。
 同性相手に、まるで恋人同士のような振る舞い。
 一人の少女として、相手にするとしたら他の誰かが良かったと思わないわけではない。

「……やっぱり、こういうのって男の子にされたいかな」
「別にいいわ」

 しかし、そもそもコヨミにとっての「誰か」に該当するのは何者か。
 こういう場合は、やはり晴人が最適解になるのだろうか。
 結局、コヨミから晴人へと向ける感情は家族愛と恋愛のどちらに近しいものだったのだろうか。
 分からない。
 二人で寄り添うのがあまりにも当たり前になり過ぎて、普遍的な言葉で改めて定義する必要性を感じなくなっていたから。
 もしもこの疑問を晴人にぶつけたら、何と答えてくれたのだろうか。
 とりとめもなく空想に耽りながら、コヨミは眼前のライダーの姿をぼんやりと眺めていた。


309 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:54:07 jW6/3/ak0

「…………本当はね、あたしもコヨミちゃんにはもっと生きてほしいなって思ってる」

 その視線に気付いたのか気付いていないのか。ふと、ライダーがぽつりと零す。

「こんな風に抱き締められる誰かと、これからを生きてほしかった。それが本音。もしも望まれたら、あたしは迷わず戦える。守るだけじゃない、奪う側の人間にだって、なれるわよ」
「……あなた」
「仕える人のために尽くす従者。それがオトメ、それがあたし。その自覚くらい、あるわ。サーヴァントである以前にオトメとして、他人に優先順位を付ける覚悟も出来てる」
「でも、私はそんなこと命じたくない」
「知ってる。自分のために誰かを絶望させたくない、でしょ……生きたいって思うのは誰だって当たり前なのに、コヨミちゃんは何一つ悪くないのに。なんで、なんで」

 ライダーと目を合わせるのが何となく辛くなって、視線を落とす。
 脚を持つ手に力が込められるのが見えて、感じられた。

「でも、コヨミちゃんが自分で考えて、自分の意思で決めたことだもん。か弱い女の子が、それでも必死になって。だったら、もう口出ししない」
「……」
「出来ること……コヨミちゃんの最後の願いを叶えるって決めた。命じられたからじゃなく、あたしの意思で」
「……ねえ。なんで、急にそんな話をしたの?」
「寂しそうに見えたから、かな」

 抱き止めてくれて。心情を想ってくれて。そして励ましてくれる。
 ただ力を的に振るうだけでない触れ合い方は、人の救い方として何度となく見届けて来たものだった。
 本当なら、同じ方法でコヨミの接してくれるのは彼のはずであった。それなのに彼とは最早永遠に引き離されて。
 このまま何も出来ず、一人で朽ち果てることになっていたのだろう。もしも、ライダーと出会えていなければ。
 人の救う力を持たないコヨミの運命は、ライダーとの邂逅で少しずつ変わっていく。

「コヨミちゃんの希望を受け継いでくれる誰かに会えるまで、あたしがコヨミちゃんの……最後の希望になる。だから、寂しい思いをしてほしくないなって。そう思ったら、なんか口が勝手に動いちゃった」

 あはは、とライダーは笑った。
 穏やかで、でも射抜く視線は揺るぎなく真摯に見えた。
 彼に救われた多くの者達も、きっと、こうして思わず息を漏らしてしまったのだろう。

「ライダー……ありがとう」
「舞衣」
「え?」
「あたしの名前。舞衣、鴇羽舞衣。やっぱり、二人でいる時くらいは名前で呼んでほしいかな」
「うん……ありがとう、舞衣」
「ん」

 いつの間にか、この街におけるコヨミの自宅が眼下に見つけられる場所まで来ていた。
 身寄りのいない独り身の少女という役割に相応しい、待つ者など誰もいないコヨミの家。
 星の光に照らされた町並みを眺めながら、風を肌に感じた。

「……寒いわよね。早く家に入ろ」
「大丈夫よ」

 背中に回したライダーの手に、そっと触れる。
 手袋越しにその細やかな指を、宿した熱を感じ取れたような気がした。

「だって、今も十分暖かいわ」


310 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:55:28 jW6/3/ak0



【クラス】
ライダー

【真名】
鴇羽舞衣@舞-乙HiME

【パラメーター】
筋力A 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具A(『炎綬の紅玉』解放時)

【属性】
中立・善

【クラススキル】
・対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

・騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
生前目にしたことのある乗り物であれば乗りこなすことが出来るが、未知の乗り物には発揮されない。

【保有スキル】
・乙HiME:A
古の科学技術による戦闘能力、およびその能力の使い手。通称オトメ。
正式名称は乙式高次物質化能力(乙Type Highly-advanced Materialising Equipment)。
マイスターオトメの中でも、真祖を守護する五柱の候補者と謳われていたライダーのスキルランクは極めて高い。
体内に宿した大量のナノマシンを活性化させることで得られる高次物質化エネルギーを使い、オトメ専用のローブや武装を纏う。
ナノマシンは非戦闘時でも利用者の体力向上や、負傷・疾病に対する早期治癒といった効果を発揮する。
またナノマシン自体が魔力炉として機能しているため、活動に伴うマスターへの魔力負担が(能力を過度に酷使しない限りは)著しく軽い。
事実上、高ランクの単独行動スキルにも近しい効果を兼ねている。

オトメは世界唯一のオトメ養成機関「ガルデローベ」での鍛錬を経た後、自らの認めた主人に仕えることを責務とする。
即ち、契約者である主人の側に立ち、その者を守る時にこそオトメは自らの本領を発揮すると言える。
ライダーは「マスターとの距離が近い」ほど、戦闘に際して有利な補正を得られる。

・魔力放出(炎):B
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
ライダーの場合、魔力を炎に変換するスキルとして扱う。発生量を調節可能のため、実際の燃費は特に悪いわけでもない。
発生させる炎を攻守の手段とする他、自身の格闘での攻撃力を向上させることも出来る。
さらには、他者に対して同様の効果を付与することも可能。

・気配遮断:D
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
空間の狭間に位置する未開の地「黒い谷」に迷い込んで消息不明となった経歴から、低ランクのスキルとして得た。
宝具非解放時のライダーはサーヴァントとしての気配を高確率で察知されない。


311 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:57:34 jW6/3/ak0

【宝具】
・『炎綬の紅玉(クリスタルエナジー・フレイムルビー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:2人
オトメの体内に埋め込まれたナノマシンの制御を行うマイスターGEM。
ライダー自身が左耳に付けているピアス型と、契約者用の指輪型の一セット。それぞれに紅色の宝石が埋め込まれている。
指輪を付けたマスターが「認証」をすることでナノマシンの活性化が開始、戦闘形態への変身(マテリアライズ)が可能となる。
言い換えれば、この宝具はライダーの意思だけでは解放することが出来ない。
認証の行為として契約者がライダーのピアスに口付けをすることで初めて解放される。
オトメと契約者はGEMを通じて痛覚を共有している。一方の受けたダメージはもう一方にそのまま伝わり、致命傷による死も例外ではない。

契約者用の指輪は、ライダーが召喚された瞬間にマスターであるコヨミの肉体に吸収された。
生前の鴇羽舞衣が持っていた炎綬の紅玉の片方が、猫神ミコトに飲み込まれたまま出てこなかったという逸話の影響と思われる。この状態でも認証は可能。
そしてオトメとマスターの主従関係は唯一無二。一度関係を築いた二人は、その縁を解かない限り生涯を添い遂げる運命にある。
故に、最早この聖杯戦争においてコヨミ以外がライダーの契約者となることは絶対に有り得ない。

なお、元々『賢者の石』を宿すコヨミの体内で契約者用の指輪が現在どのような状態となっているのか、現時点では観測する方法が無い。

・『神竜・火之迦具土(カグツチ)』
ランク:A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:- 最大補足:1体
白い巨体を持つ竜。「チャイルド」や「結界破りの竜」と呼ばれていた。
ライダーの意思によって召喚されるが、必要な魔力量の大きさ故に実質的に令呪の消費が必須。
主な攻撃手段は口から吐く火炎弾であり、その威力はライダーの魔力放出スキルによる攻撃力をも上回る。
ライダーの持つ騎乗スキルのランクでは扱えないはずの亜竜であり、乗るにしても振り回されながらの無理矢理な形にならざるを得ない。
尤も、ライダーは自力で飛行可能であるのに加えてカグツチも自律的に行動するため、そもそも騎乗する必要性自体が無いのだが。

カグツチが持つのは、巨竜の姿で生前の鴇羽舞衣と交戦した逸話、宿された力を失い小型の獣の姿となって以後に生前の彼女の下で暮らした逸話のみ。
巨竜の姿で生前の鴇羽舞衣と共闘したという逸話を持たず、鴇羽舞衣もまたカグツチを完璧に乗りこなしたという逸話を持たない。
本来ならば彼女は『ライダー』のクラス適性が決して高いと言えないはずなのだが、それにも関わらずカグツチは騎乗可能な宝具として顕現する。
それは既存の逸話を都合良く統合した結果か、若しくは更に別の要因があるためか。
真実を理解することはライダー自身にも叶わない。

ただ、事実だけを言うとすれば。
カグツチは『鴇羽舞衣』と共に戦う竜(チャイルド)である。
そして、竜を従える彼女は、コヨミのために戦う『ライダー』である。


312 : 風と星に抱かれて… ◆T9Gw6qZZpg :2016/11/27(日) 22:58:03 jW6/3/ak0

【weapon】
マテリアライズによって纏うローブと宝輪。
宝輪から発生させる炎を主な攻撃手段とする。

【人物背景】
マイスターオトメの一人。ジパング将軍家嫡男の鴇羽巧海頭忠頼を実の弟に持つ。
将来への迷いの答えを出すため旅に出るが、黒い谷と呼ばれる未開の地に迷い込み、猫神ミコトに捕まり出られなくなる。
その後は黒い谷での生活に馴染んでおり、黒い谷が現世に復帰した後でもそこでの生活を続けていた。
昔は自らの感情に振り回されて苦い経験をしたらしく、それを経たからか包容力のある性格となっている。

【サーヴァントとしての願い】
コヨミちゃんを守りたい。
最期まで、希望を持ったままでいてほしい。

【備考】
鴇羽舞衣が登場するのは『舞-乙HiME』TV本編の第23話以降、およびOVA版『舞-乙HiME Zwei』。
はっきり言って出番はかなり少ないので、上記を視聴するだけでも把握は可能である。
戦闘シーンはOVA版に多少ある程度。動画サイト等でアクションゲーム版も参照するのが望ましいかもしれない。
なお、シリーズ前作『舞-HiME』に登場する鴇羽舞衣はあくまでよく似た別人であるとされる。
しかしキャラ造形のベースになっているため、理解度を深めるためなら視聴する意味はあるかもしれない。



【マスター】
コヨミ@仮面ライダーウィザード

【マスターとしての願い】
静かに命を終わらせたい。

【weapon】
『賢者の石』と呼ばれる魔法石を体内に宿している。
コヨミの活動のエネルギー源であり、定期的に魔力を供給しないとコヨミの肉体は活動を停止し、やがて崩壊する。
しかし既に肉体の限界が近づきつつある現在のコヨミでは、魔力を供給したところでその効果は薄い。
ライダーへと供給する必要のある魔力量は極めて小さく、しかしその分コヨミ自身の肉体の維持にも魔力を要する状態である。

この魔法石に大量の魔力を注ぎ込むことで、死者蘇生のような奇跡にも等しい魔法を実現出来るとされる。
尤も必要とされる対価は未知数であり、一千万を超える人間の生命を犠牲にして一人を生き返らせる可能性があるという程度。

【能力・技能】
人間の振りをしたファントムの正体を見抜く能力を持つ。
もしかしたらサーヴァント相手にも何らかの効果があるかもしれない。

【人物背景】
サバトと呼ばれる生贄の儀式の生き残りとなった少女。
その正体は、サバトの黒幕である笛木奏の実娘の亡骸に別個の意識を宿した「人形」。
ファントムとの戦いの中で笛木が多数の犠牲を出してでもコヨミ(の肉体と娘の意識)を完全に蘇生させようとしていることを知った。
そのことを嫌い、既に死者である自分は今度こそ命を終わらせるべきであると決める。
サバト失敗後に笛木に再び連れ去られた後〜晴人と再会する前のどこかの時間軸からの参戦。

【方針】
誰かを犠牲にせずに眠れるならそれで良い。聖杯へ何かを願う気も無い。
自分が死んだ後に『賢者の石』を晴人に手渡せる人、または『賢者の石』を悪用しないと信じられる人に出会いたい。


313 : 名無しさん :2016/11/27(日) 22:58:44 jW6/3/ak0
投下終了します。


314 : ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:20:30 KfD3UOWM0
投下します。


315 : ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:22:56 KfD3UOWM0







─────失くしたのは、何?










316 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:24:45 KfD3UOWM0

スノーフィールドの一角にある住宅街。
大きな都市からは少し離れているが、不便と言うには十分に恵まれすぎているだろう環境が整っている。
「住み良い」という言葉がよく似合うその一角に、その物件はあった。
階段昇降の為の簡易リフト、低めの位置に設置された諸々の家具、極力段差が少なくなり、かつなるべく広めになるような廊下を設ける設計、等の細やかなバリアフリーが行き届いたその家は、如何にもどこか不自由のある人間の為に建てられたのだろうと推測出来るもの。
丁寧なものだ、と感心する。
元々は「海外へのホームステイ」の一環であり、それに足が不自由で車椅子を使用している彼女という人間が割り当てられた、という設定である以上、それを不自然にしない為の配慮である─────とすれば、納得も出来るが。

「あら、美森」

そんな事を考えていると、奥のリビングから一人の女性──────今は自分の母親代わりである人が、何やら夕飯の準備をしていたらしくお玉を持って現れた。
ホームステイの母親役だが、実際の母親であるかのようにフレンドリーに接してくれる為に、此方からも気兼ねなく接することが出来る存在。
父親も、厳格でこそあるものの優しい事には変わらない。夫婦が揃った時の「気の置けないおしどり夫婦」といった雰囲気は決して居心地の悪いものではなかった。
唯一いただけないところは朝食を洋食にしている事だったが、そこはそれ、彼女がここに住んでからの時間で二人ともとっくに和食派へと鞍替えさせていた。

「夕飯はもうちょっとかかるから、部屋で待っててね」
「うん、わかった」

そんな言葉を最後に、彼女はすぐ近くにある自室に入る。
車椅子でも動きやすいよう、自由に動けるスペースを広めに確保した部屋。
荷物を置き、身の回りの物を軽く整理したあと、ため息をひとつ。
─────今日は、帰ってくるのが随分と遅れてしまった。
日が既に沈み、もうじき夕飯という時間帯。
ここまで遅くなることは、ホームステイであり、かつ人に迷惑をかけることを良しとしない彼女としては珍しいと言えるだろう。
それでは、何故そうなってしまったのかと言えば─────



部屋の中心で、彼女は呟くようにその名を呼んだ。

「…シールダー」
「はいっとな」

その声に虚空から返答が返り、かと思えば、彼女の隣の空間から徐にもう一人の影が姿を現わす。
深紅の衣装に身を包んだその少女が、彼女のサーヴァント。
盾を持ち、守護する者としてのクラスを抱く、嘗て人類を護った英霊。
─────彼女が、東郷美森が聖杯戦争のマスターであるという証拠の、その一つだった。

きっかけは、本当に些細なことだった。
部屋の整理をしている時に見つけた、見慣れぬ手帳。
最初は取り違えかと思ったが、それにしては奇妙な点が一つあった。
何か持ち主のヒントは無いかと中を見れば、そこには何かが書かれていた形跡はあるものの、全てが消されて残っていない。
何事かと調査を始めた彼女だったが─────とある事実に辿り着くまでに、そう時間がかかることはなかった。
筆跡が、明らかに己のものである、と。
やがて、それが確かあると気付き─────東郷の心臓が、大きく高鳴った。
もしかしたら、それは。
事故で失われた、自分の二年前の記憶に関連するものなのかもしれないと。
しかし、それで冷静な判断力を一旦失ってしまったからこそ─────彼女の指は、次のページに挟んであった白いトランプに触れてしまった。
それが、「あの世界」での東郷美森の最後の記憶。


317 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:26:19 KfD3UOWM0

「…私、怖かったの」

そして、それが復活したのはこのスノーフィールドにおける学校での生活。
気を遣われつつも何かが違うと思い続けた学校生活の、その一コマ。
友達を助けた、という、ただそれだけがきっかけだった。
ただそれだけの事は、しかし、「人の為になることを勇んでやる」勇者部としての彼女の記憶の引っ掛かりになるには十分過ぎて。
ともあれ、彼女は漸く思い出した。
勇者部という、彼女の居場所のことを。
先輩がいて、後輩がいて、親友がいる、そんな幸せが存在する場所のことを。

「こうして、私の記憶が、簡単に消されてしまったこと。
友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんのことを、忘れさせられてしまったことが」

そして、同時に。
一時でも、完全に記憶から消去されてしまったことに、彼女は恐怖した。
あれだけ楽しかった日々を、掛け替えのないオーロラのように彩られた日々を、理不尽に奪われてしまった事が、怖くて怖くて仕方がなかった。
東郷美森は、そういう少女だ。
普通の少女と同じように笑い、悲しみ、そしてその中でも己の中に手に入れた物を無くすことに関してはとりわけ怖がるという、そこだけ見れば何とも普遍的な少女だ。

「…人を殺してまで叶えたい願いなんて、私にはない。
だけど、大切な友達が待っているのに、こんなところで死にたくない」

けれど。
東郷美森は、ただの少女というだけで終わることはない。
彼女の意志は、恐怖で絶えかけようと、そこで潰えるのではなく。
失いたくないという恐怖があるからこそ、それを護る為に何処までも強くなる、そういう意志だ。

「私は、ここから帰る。普通の日常に、どうにかして帰りたい
勇者部の皆が、待ってるから」

単純ながら、そんな折れぬ意志が篭った言葉。
未だ蕾なれど、確かな決意の華となる片鱗が、そこに僅かに覗いていた。

「そうかい」

それに答えるのは、何処か安心したような声。
いつのまにか此方を振り向いていた英霊の少女は、東郷が出した答えを肯定するように口の端を上げた。
けれど、それとは対称的に、東郷の表情は申し訳無さそうなものに変わっていく。

「…ごめんなさい。私には何も出来ないのに。
貴女に頼ることしか出来なくて、貴女の願いの為に戦う事も出来ないのに」

英霊とて、願いがある。
生前成し得なかった、或いは思い残しとして残っていた、そんな聖杯にかける願いがあるからこそ、英霊はサーヴァントとして聖杯戦争に呼び出される。そういう基本原則が存在する、という知識は、彼女も与えられていた。
だが、それを聞いたシールダーはそんなことかと笑い飛ばす。

「謝る必要なんて無いよ。アタシも、元々そんなに叶えたい願いなんて無いんだ。
そりゃ勿論、何も未練が無いわけじゃないけど──────」

そこで。
一瞬、シールダーは東郷をチラリと見る。
その視線に篭る複雑な感情を、東郷が解することは出来なかったけれど。
何故だか、そこに込められた想いを、気付かなければならないと、そうも思えたよう気がした。

「─────あの」
「─────何も、心配はいらないよ」

けれど、それを問うより先に、シールダーの言葉が、声が、それを遮った。
その声は、まさしく心強い声。
勇敢で、気丈で、聴く者を安心させる声。
そんな声音で、安心しろ、何も心配することはないとシールダーは言う。


「マスター─────いや、美森。そう呼ばせてもらっていいかな」

ふと、シールダーがそんなことを言い出した。
きっと、彼女なりの歩み寄るひとつの方法なのだろう。
そう解釈した東郷は、それに了承の返事を返そうとして。


318 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:27:47 KfD3UOWM0

「…出来れば」

けれど、そういう事なら、と。
東郷には、一つ条件をつけたかった。
酷く個人的な感情だが、名前を呼ばれるのなら、そっちの方が良いというほんの小さなワガママ。

「私の事は、名字で読んでもらっても良いかな?」

その、言葉で。
シールダーが僅かに静止したことに、東郷は気付きはしなかった。
それは致し方無いことだ。
彼女にとって、その思い出はまさに恋にも等しい、大切なものなのだから。
どんなことになろうときっと忘れない、色褪せない、そんな思い出を、彼女は語ろうとしたのだから。

「私の大切な友達が、褒めてくれた名字なの」

だから。
その瞬間。
シールダーの顔が、歪んで。
恨むようでも、憎むようでもなく─────ただ、悲しみを溢れさせたその表情を見て、初めて東郷は「言ってはいけないこと」を言ってしまっていたのだと気付いた。
然れど、その表情の意味は、彼女には分からず。
そして、次の瞬間には、既にシールダーの表情は元の明るいそれへと戻っていた。

「…分かった。
じゃあ、改めて、だ」

その声は、一瞬前の悲痛な表情が嘘のように明るい。
先の数秒の陰りは錯覚だったのではないかとさえ思えるような変化に、東郷が声を掛ける暇もないまま。
シールダーは、まるで心を許した親友にするように、笑いかけた。

「アタシは、どんな事があろうとあんたを絶対に守る。
だから、安心してな?東郷サン」



「それじゃ、アタシは軽く周囲を警戒しとくよ。もしなんかあったら呼んでね、超特急で戻ってくるから」

話の後。
そう言って、彼女は家の屋上へと飛び上がっていった。
そんなシールダーの背中を見守りながら、東郷はほう、と息を吐く。
彼女の一言、苗字で呼んでくれ、と頼んだ時の彼女の顔が、やけに印象に残っていた。
何か気に障るような事を口にしてしまっていたのだろうか、と思い、改めて自分の発言を思い返す。

─────あの英霊にも、友達がいたのかな。

結果、出てきたのはそんな結論。
有り得る話だ。なんせ、少なくとも外見だけなら己より年下だ。垣間見せる相応の無邪気さは、まさしく年齢の通りの精神性とも見る事が出来る。

そうなると、寧ろ。
それだけ幼いながら、英霊として戦わなければならなかった理由とは、何だったのか─────それが、気になってしまう。
彼女のような幼い少女までも戦いに駆り立てたそれに、東郷は想いを馳せる。
盾の英霊、と彼女は言った。ならば、守りたかったものがあったのだろうか。彼女は、それを守る事が出来たのだろうか。

けれど、──────そう。
今の己のように、あのような少女に守らせるだけというのは、違うだろう。
人を助ける勇者部の一員として、そう思う。

東郷美森は、優しい少女だ。
サーヴァントとは言えども、自分よりも幼い少女である彼女を戦わせることに関して、罪悪感を感じずにはいられない程度には。


(─────やっぱり、私にも出来ること。何かあるはず)


だから。
だから、東郷美森は願う。
何より、己が元の世界に帰り、友達と再び笑い合いたいから。
そして、それまでの自らの相棒─────シールダーを、ほんの僅かでも支えられるように、戦うだけの力が欲しい、と。




…彼女は、未だ知らない。
その身体に刻まれた記憶も、戦闘によって呼び起こされる恐怖も。
そして何より、彼女のスマートフォンの中に眠る─────戦う為の、「力」の存在さえも。


319 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:29:00 KfD3UOWM0






「そうかい」

寒空の下。
シールダーは、一人呟く。
周囲の見回りと言ったのは、嘘ではないが、真実全てではない。
屋根に上り、警戒を怠らずに周囲の夜闇を見渡しながら、彼女はちょこんと座り込む。
冷え込みつつある夜、吐いた息が白く残り消えていく様をぼうっと見ながら、彼女は独り言を続けた。

「いやー、ホント。酷い話もあったもんだよなあ」

酷い話。
彼女がそう思うのは、無論ひとつの価値観としては当然のことだ。
巻き込まれただけで、己の命を懸けた戦いに挑まざるを得なくされたのだから。
これが、自分のように世界を守る為に単純に向かってくる戦えばいいのだとすればまだ良いが、幼いながらに没した彼女でも「戦争」という呼称からは一切の生易しさを感じない。
騙し合いだとか策謀だとか、どちらかといえばそんな言葉を思わせる、そんな響きだ。きっと、目の前の敵にただ単純にぶつかればいい、という話になることはないのだろう。
それに、願いが叶うという景品にしたって、前提として「人を殺さなければならない」以上は、よっぽどのものが無ければ躊躇うだろう。

─────けれど。
シールダーが残酷だと言ったのは、決してそれだけが理由ではない。
彼女が漏らしたその言葉に込められた、自嘲にも近い想いが、それを端的に表していた。
己のマスターの環境ではない、ひどく個人的なこと。
この催しを残酷だと評した、その理由。



「─────アタシが逢いたかったのは、『須美』なのにサ」





シールダー『三ノ輪銀』が逢いたかった少女の、よりにもよって変わり果てたその姿を呼び寄せる、なんて。
悪趣味というか、性格が悪いというか─────とにかく、己をここに送り込んだムーンセルとやらに対して怒りに似た感情が湧き上がる。
それを怒りだと彼女が断じないのは、偏にそれを上回る感情が大きすぎて、そこまで感情が追いつかないから、だが。

「…なあ、須美」

ぽつり、ぽつり。
幼き英霊は、空を見上げて一人呟く。

「こっちは一目見て分かったのにさ。須美ったら、ずっとポカーンとしちゃって」

最初に目覚め、己の目の前に彼女の姿を見たとき、シールダーが抱いた感情は様々だったけれど。
最も強く感じた、己の親友をここに招いた者への怒りと共に─────再び巡り会えたという喜びが無かったとは、言い切れない。
そんな親友が己を見たときの、不安そうな声。
須美、と呼んだ己に、深い困惑と共に漏らした言葉。

『…だ、れ?』

それだけなら、冗談だろ、で済ませたかもしれないけれど。
目の前の、言ってしまえば堅物である彼女がそんな事を冗談でも口にするなんて、何より自分が良く知っていて。
何があったのかは知らないが、それでも『自分を覚えていない』という事実こそが、銀にとっては重すぎる事実だった。
暫く接している内に、その事実が如何なるものかは理解した─────きっと戦いで起こった事故か何かで記憶を失ったのだと。名前が変わっている理由など不可解な点はあれど、大まかに言えばそういうことなのだろう。
しかし、それは決して思い出が失われた悲しみに納得を齎すものではなく。
或いは再会を喜んだ報いか、或いはその喜びすら弄ばんとしていたのか、と、慟哭せずにはいられなくて。


320 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:30:14 KfD3UOWM0



「覚えていてほしく、なっちゃうじゃん」



─────そして。
その慟哭は、同時に、彼女に悪魔の囁きを齎した。

三ノ輪銀とて、少女だ。
四国を護った英霊として殉じた身であれど、そもそもその命を散らせたその時に、彼女は未だ世の道理を大して理解しようもない程度には幼かった。
勿論それは、彼女が完全にものの解らぬ阿保であるという事ではない。
だが、護る為に命を懸けて戦った親友から忘れられていたという事実に対してすぐに気を持ち直す事を求めるには、彼女の年齢はあまりに残酷だと言わざるを得ない。

だから。
自分が死んだ後の鷲尾須美に、何があったのかは知らないけれど。
もしもその過程で失った記憶を、奇跡という手段を以て覆せるのであれば。
─────己の戦いの結果によっては、彼女の記憶を取り戻せるのかもしれないとしたら、と。
そんな事を、考えずにはいられなかった。

「…英霊、もとい勇者失格なのかね、アタシは」

自嘲の笑みが、冷えた空気の中で破れたように広がる。
それは、或いは彼女の純粋さの証明、勇者としての規範を胸に抱いていることを表す言葉。
友の為に戦った彼女だからこそ、完全に己の為に戦うこととなる道を選ぶことは、忌避こそせずとも迷うには充分なことではあった

「でも、まあ─────どっちにしろ、やる事は同じか」

─────ならば、と。
迷ってこそいるけれど、それはそれとして。
一つ伸びをして、顔を上げる。
そうだ、変わらない。
誰かが、いや、「彼女」が危機に瀕している。
そして、それを護ることが出来るのは己のみ。
つまり今この状況が、そういうことであるのなら。
三ノ輪銀として出来ることは、何一つ迷う事もなく、何一つ変わる事も無い。
むしろ、それに対する決意はより固くなったと言っても過言では無いだろう。


「何度でも─────いや、『今度こそ』、本当の意味で守ってみせる」


空を睨む。
今度は、絶対に護る。
ただ護るだけじゃない。今の須美が、東郷美森が持つ記憶。それを失わなければならなくなる悲劇なんてものが、絶対に襲い来ることの無いようにする。
もし何らかの悲劇が起きてしまうというのなら、その総ては自分が引き受けよう。
大丈夫だ。友達を護る為ならば、自分がどれだけの力を発揮できるかは、自分が一番よく分かっている。
そして、もし中身が少し違ったって、須美が須美である事に、友達であることに変わりは無い。無いのだ。

だから─────

「だって、アタシ達は─────」


321 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:31:28 KfD3UOWM0



ダチコーだから。



そう、言おうとして。



頭を過ぎったのは、己を見た「東郷美森」の。



(…私、怖かったの)
寂しそうな顔。



(勇者部の皆が、待ってるから)
嬉しそうな顔。



(私の事は、名字で読んでもらってもいいかな?)
─────友を想う、顔。



─────結局、吐いた息だけが。
華の眠る雪の大地で、銀(しろがね)の色に輝いて、消えた。


322 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:32:54 KfD3UOWM0
【クラス】
シールダー

【真名】
三ノ輪銀@鷲尾須美は勇者である

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:─
騎乗の才能。クラススキルとして付与こそされているが、事実上機能していない。

【保有スキル】
勇者:A
神樹に選ばれた者としての力、そして選ばれた者として戦った彼女の生き様そのものを表しているスキル。
同ランクの勇猛スキルを持つほか、Cランクの神性スキルを内包する。

戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

情熱の華:B
彼女が戦闘する際に信条とし、友の勇者にも受け継がれていた「根性」「気合い」といった概念が、彼女の力のモチーフの華と合わさってスキルに昇華されたもの。
戦闘時、窮地に陥った場合、それが窮地であればある程大きくステータスに補正がかかる。

トラブル体質:B
不運に巻き込まれる体質。言うまでもなくデメリットスキルである。
彼女の場合、無視することは出来る程度の、然程大きくないトラブルが多く襲ってくる。勿論素通りすることは出来るが、シールダーの性格上それを良しとして通り過ぎる可能性は限りなく低い。

【宝具】
『紅蓮の華、尚も朱に染め上げて』
ランク:B 種別:対友宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:3

仲間達が危機に陥った際に、他の二人を逃し、彼女一人で戦いその命と引き換えに敵を退けたことに由来する宝具。
己以外の仲間を強制的に戦闘から離脱させ、かつ同戦闘に於いて「確実に敵を退却させる」。退却させられた敵は、この宝具によって逃がされた相手に対し一定期間接触することは出来ない。この期間は最大で一日、最低でも四半日は効果が続くが、その度合いは本人の持つ対魔力スキルによるほか、神性スキル、天地人でいう天属性や星に所以する力、「蠍」「射手」「蟹」の要素を持つ敵には最大限に効果を発揮する。
尚、「味方、敵共に総数が3である」「劣勢である」という二つの条件を満たさなければ発動は不可。また、この条件における総数とはサーヴァントだけでなく戦闘に参加しているもの全て─────双方のマスターや己自身、操られた一般人も含む─────である。
己そのものを盾とし護るべき者を護った逸話の具現であり、これを所以として彼女はシールダーとして現界した。

【weapon】
両手に握った二挺の斧。神樹の力で生み出された物であることから相応の強度と神秘を誇る。
彼女の身を覆うくらいの大きさであることから、重ね合わせ盾として用いる事も可能。

【サーヴァントとしての願い】
須美を護れれば、それで良い─────?

【人物背景】
小学六年生にして、四国を護る勇者としての神命を授かった少女。
同じく神命を授かった二人の少女と友情を育み、そして─────最期はその友を護る為に命を散らした、間違う事無き英雄。
この聖杯戦争に於いても、同じように友を護る事を願ったが─────その願いが齎した思いも寄らぬ真実の開示に、僅かにだが揺らぎつつもある。

【運用】
戦闘続行スキル・情熱の華スキルと素のステータスを見て分かる通り、白兵戦でしぶとく生き延びることにかけては相当に優秀。勇者スキルでの勇猛により精神的な搦め手も効果が薄い・攻撃力に補正がかかるのも相まって、攻める事にもそれなりに秀でている。
しかし、敏捷の低さから、素の筋力で押し負けがちな白兵戦に特化した相手に対して単騎で真っ向から勝負するには少々心許なく、正面から戦い辛いアサシンやアーチャーなどもやり辛い敵となる。
宝具の条件も合わせて考えると、仲間を見つけた上で戦闘においては盾役を務める事が最適な運用方法だろう。
…なお、マスターが思わぬ存在であったこと、シールダー自体が幼いと言っても過言ではないことから、僅かに精神面で揺らぎがあることも留意しておく必要がある。尤も、シールダー自身が極力その揺らぎを隠しているのだが。


323 : ロストフレンド ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:33:53 KfD3UOWM0
【マスター】
東郷美森@結城友奈は勇者である

【参戦経緯】
部屋の整理をしている最中、二年ほど前のものと思しき手帳と同時にトランプを発見。

【マスターとしての願い】
元の世界に、勇者部の元に帰る。

【weapon】
平時は無し。後述する『勇者』に変身した場合、それと同時に以下の武器を装備する。なお、これらは自由に生成・消去することが可能である。
・精霊「青坊主」の加護を受けたスナイパーライフル。これのみ「シロガネ」という名を持つが、当人はそれを知らない。
・精霊「刑部狸」の加護を受けた短銃。
・精霊「不知火」の加護を受けた拳銃。

【能力・技能】
『神樹の勇者』
神樹という、彼女の世界を守護する神の集合体の力を身に纏い、変身した姿。上記の武器を出現させることが出来るほか、耐久力なども含めた身体能力が大幅に向上する(足が動くようになる訳ではない)。
また、変身した状態で「勇気を示すような行動をする」ことによって胸元の朝顔の模様に色がつく。これがある程度溜まることで「満開」という勇者の切り札を発動、高位のサーヴァントにも十分に匹敵し得る戦闘力を一時的に発揮出来る。だが、これを発動した後、「散華」と呼ばれる機能によって身体機能の何れかが失われる。

…なお、彼女は未だ勇者として覚醒はしていない。その為に変身する為のアプリもロックされており、現在は任意での変身は不可能だし、そもそもその存在自体を本人が理解していない。
戦うという強い意志があればロックは解除され変身できるようになるので、もしも戦闘に参加した際に己も戦う事を決意すれば、或いは─────

【人物背景】
讃州中学校に通う二年生。勇者部という、「人の為になることを勇んでやる」部活に所属し、親友や先輩、後輩と共に日々人助けに勤しんでいる少女。
二年前の記憶を無くしているが、本人は事故に遭ったせいだと説明されている。
過去の戦いも未来の戦いも、何も知らない時点において、彼女はこの聖杯戦争に巻き込まれることとなった。

【備考】
※上記のように、樹が勇者部に所属してからバーテックスの襲撃が起こるまでの何処かの時間から呼び出されました。その為、現時点では勇者の力については存在そのものを知りません。


324 : ◆deFECPYDAg :2016/11/28(月) 00:34:21 KfD3UOWM0
以上で投下を終了します。


325 : ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:34:39 Nuo9bsLc0
投下します


326 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:35:33 Nuo9bsLc0




 人の世の終わりまで永久に繰り返されるその問いに。

 我等は唯一無二の絶対なる回答を探求する。

「彼らは、この世界で生きるに値するのか」

「この世界は、彼らが生きるに値するのか」





   ▼  ▼  ▼


327 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:36:28 Nuo9bsLc0





 雨が降り注ぐ。

 時刻は既に夕刻を通り越し、濃くなりつつある闇は夜の帳を黒く染め上げている。
 街にはただ雨だけが降り注いでいた。間断なく響く雨音は規則正しく、ざあざあと反響を繰り返す。
 雨は止まない。夜色の空から叩き付ける、水の姿をした石つぶて。
 道を行き交う人々は皆一様に傘を差し、雨天のことなど気にも留めない。
 そして黒の雑踏の中、一際目立つ白にも、また。


「……」


 ―――白の服を纏った少女。

 その少女は濡れていなかった。
 降りしきる雨の中、髪も服も、どこにも雫はない。

 ふわふわと歩いて、熱の籠らない瞳で街を見渡す。
 小さく小さく首を傾げる。何かを思っているのだと、赫い瞳が告げる。
 問いに応えてくれる人など、どこにもいないのだけれど。
 ただ歩く。雑踏など目に入らず、触れることもなく。少女は歩き続ける。

 ここは都市。夜を知らぬ雑踏街。文明の火が灯った石造りの森。
 賑やかな大通りではなく。路地の、ひっそりとした場所。
 まともな子供なら、まず近寄らない夜の裏路地。
 喧騒とも光とも無縁なその場所に、少女はいた。白の服を着崩して、白の輪郭を纏って。
 髪も、肌も、服も何もかもが白く。街という世界に小さく空いた空白のように。

 たったひとりで。
 ふわふわ歩いて、立ち尽くして。

「……」

 ただ、人々を見つめるだけ。
 ただ、世界を見つめるだけ。

 彼女の瞳は―――
 見つめるだけで―――

「観察しているのかな。きみは、その赫い瞳で」
「うん、見ているの」

 掛けられた声にその子は頷いて。
 声の主であるところの、路地の影に答えた。

 小鳥や子猫のような小さな生き物が鳴くような、か細い声で。震えるように。
 それは雨の音に紛れて、余人であるなら微かにしか聞こえてこないものであったが。
 それでも、路地の影は頓着しない。


328 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:36:58 Nuo9bsLc0

「あなたはだれ? 黒い影のひと、どこかの紳士のひと」
「どちらも正解だ、狭間の子よ。私は正しく私の影であり、そして紳士でもある。ジェントル、とでも呼んでくれたまえ」

 異邦紳士を名乗る影は愉快気に言った。あるいは、慮るようにか。
 紳士は少女が言うように黒い姿をしていた。一目で異国のものと分かる服装は頭の先から爪の先まで黒く、万色の帽子と手に持つステッキが彼を紳士然とさせていた。
 そして彼もまた少女と同様に、その髪と肌と衣服の一切を雨に濡らしてはいなかった。ひとりでに避けるように、あるいはすり抜けるかのように、一滴の雫も伝ってはいない。

「ジェントル……うん、なんだか物珍しく感じちゃうな。知り合いに物凄い変態が何人もいたから。あなたみたいな人を見るのは久しぶり」
「おや。そうすると、きみは私のことが気に入らないかな?」
「ううん、全然。変態さんは変態さんで面白い人たちだったけど、あなたのこともわたしは嫌いじゃないよ。
 ……あ、念のために言っておくけど、ほとんどの人はまともだったよ? 変態さんは本当に数えるくらいしか知らないからね?」

 あたふたと慌てるように手と首を振って答える少女に、男はただ苦笑の響きを以て返答とした。
 白と黒の対比した二つの影が、面映しそうに顔を見合わせた。

「……実はね。わたし、なんでここにいるか分からないんだ」

 ふと、少女が言った。
 明るい雰囲気ではない。喉の奥から絞り出したような声。けれど不思議と暗さもなかった。

「わたしはもう終わったはずだったの。勇士のみんなと戦って、それで目の前が真っ暗になって」
「気が付いたらここにいたと」
「そう。せっかく晴れ晴れ、旅立てると思ったんだけどね」

 思い出すのは最後の情景か。脳裏に最も新しく刻まれた記憶の断片か。
 名前と同じく毒のような顔をした勇者、彼が振るった剣を受けて宙へと沈んだ自分の姿。
 あの時確かに、自分は終わったはずなのだ。神としての性と人としての性の狭間に引き裂かれそうになり、かつて交わした友誼との軋轢に苦しみ、その果てに己が使命を果たさんと足掻き。
 父の意思を継ぎ、母の血肉を食らい、師の愛を胸に抱いて。
 そして、果てた。

 瞼の裏に焼き付いた光景は、遥か彼方まで広がる漆黒の星海と、自分を見下ろす四人の勇士たちと。
 その最中を舞い降りる、一枚の白いカードだった。


329 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:37:23 Nuo9bsLc0

「でもね、こうして生きてることを、わたしは嫌だな、なんて思わないよ。
 むしろ嬉しいの。わたしは最後に、またみんなと一緒に色んなことをやりたいなって思いながら瞼を閉じたから。
 こうして生きてることが、またみんなと共に在れることが、今は素直に嬉しい」

 それでこんなところに連れ出されちゃったんだから本末転倒なんだけどね、と困ったように笑う少女に、男は「ふむ」と思案するかのように言葉を投げかけた。

「ならば、きみの願いは叶っていると」

 その問いは酷く穏やかなものではあったが。
 同時に、これ以上なく真剣味を帯びた言葉でもあった。

「死に至る病に至る生を得て、自らの拠るべき場所を取り戻して。
 ならばきみの望むべく総ては形を成したのだと、そういうことかい?」
「ううん」

 きっぱりと否定する。
 少女はふざけるように、あるいははしゃぐように、手を伸ばしてくるりとその場で一つ回った。
 暗く澱んだ裏路地に、一輪の花が咲いた。思わずそう形容したくなる衝動に駆られるほどに、その情景は美しかった。

「わたしの願いは、もっといっぱいあるの。
 わたしはお父様の星に行ってみたいし、みんながいる星にも遊びに行きたい。
 みんなとずっと一緒にいたいって気持ちがあるし、それと同時にわたしの知らない景色を知っていきたいって気持ちもある。
 わたし、こう見えても欲深なんだから」

 そう言って、満面に笑う彼女の顔は。
 どうしようもなく、輝きに満ちていたから。

「それに何より、ね……」
「何より?」
「ううん、これは秘密。なんだか気恥ずかしいし」
「おっと、これは手厳しい。しかし乙女の秘密を詮索したとあっては、私がリザにどやされてしまうか」

 男は笑う。それは少女の笑みに合わせたように。はにかみが、雨粒の降りしきる路地へと伝わっていく。
 ひとしきり笑い合って、やがて声が収束していった頃。ふと、少女は何かを尋ねたいような顔をして。


330 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:37:45 Nuo9bsLc0

「ねえ、ジェントル。紳士のあなた。あなたは何を願っているの?
 ジェントル、サーヴァントのあなた。サーヴァントは叶えたい願いがあるから喚ばれるのだと、私はそう聞いているけれど」

 そんなことを、何気ない所作で問いかけた。
 おや、とでも言いたげな様子で、男は大仰に驚いてみせる。いや、これはむしろ感心だろうか。
 ともかく彼はそんな風に、表情を動かしてみせて。

「そうか、いやそうだね。確かにきみの言う通りだ。サーヴァントとは総じてそうした存在であるし、そうでなくてはならない。
 それに私はきみの願いを聞いてしまった。ならば言って聞かせるのも吝かではないが……」
「面倒くさい前置きはいいから」
「やはりきみは手厳しいな」

 男は、僅かに首を傾げて―――


「―――――……」


 ―――気配が変わった。存在感が変わった。その違和感の源泉は、目の前の男。
 彼は決して少女を威圧したわけでも、また無意識の憤怒なり憎悪なりが表層に現れたわけでもない。
 しかしそれでも、目に見えるほどの域で彼の気配はその性質を異としていた。

 男は瞼を細める。
 それは、遥かな過去を見据える瞳か。

 透き通った色の瞳で、彼は、今や漆黒に染まった空を見つめる。
 彼は、夜色の帳に包まれた天を見上げて。

 僅かに唇開いて。
 誰にでもなく呟いていた。


「私は知りたいのだ。人は、私が抱いてしまった命題を否定できるのか、その価値を証明できるのか。
 地に火を放ち、空を灰色に染めてなお、その存在が許されるほどのモノであるのかを」


 ―――ああ、それは。

 その言葉は、ただ無機に満ちて。
 その言葉は、ただ無感に満ちて。

 空しく宙へと溶け消えた。一体どれほどの時間を、その探求に費やしたのか。
 神の如き業を振るい、しかし自らが神ではないと知るこの男が。
 一体何を求めているのか、少女はおのずと察することができて。

「つまり、あなたは」

 この、万能なる男は―――


331 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:38:14 Nuo9bsLc0

「【人類はこの世界で生きるに値するか】。ただそれだけを知りたいと、そう言うのね」

 少女の言葉に。
 男は、ただ笑って答えた。

「その通りだとも、遥か遠き異星の少女よ。人類を滅さんとして、しかしその内に希望を見出した狭間の半神よ。
 私はただ人々を見つめ、彼らの願いを叶えるだろう。そしてその果てに、我が命題は回答を得る」

 彼は願わない。
 彼は望まない。
 ただ、祈りにも似た渇望があるだけだ。

 あらゆる知識を炎にくべて。
 あらゆる存在を炎にくべて。
 自らを、昂ぶらせ燃焼させ続けるのみ。

 彼の願いがあるとすれば。
 彼の望みがあるとすれば。
 それは、全ての答えが出揃った時に。
 その答えこそが、彼の望んだ結末なれば。

「……なら、さっき言わなかった私の願い。その一つを、あなたに教えてあげる」

 だからこそ。
 少女が返すべき言葉など決まりきっていた。
 何故なら彼女は狭間の者だったから。
 神として滅びを願い、人として生を願い。
 その狭間で苦しみ、しかし一つの救いを得て。
 星を尊ぶ神として。
 絆を尊ぶ人として。
 狭間ではなく、そのどちらをも擁してあるがままに進んでいく者であるために。

「わたしの願い、それは人と共存していくこと。
 だからわたしは、かつて滅びてしまったお父様の星を蘇らせたいと願う。そしてそこに生まれる命たちと、共に生きていきたいの」

 それは、その願いは。
 人の無価値を悟ってしまった男に対する、これ以上ない反証の願望で。
 だからこそ、それは彼女が言わなければならないことであった。


332 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:38:38 Nuo9bsLc0

「わたしは……ううん、わたしたちは人の生きる世界を創るわ。
 そして問いたいの。わたしたちが創った世界は、彼らが生きるに値するものなのかって」

 それは、彼女が望んだ終の棲家。
 遥か異星に希う、始原と終末の形。
 星は永遠を運ぶ旅人なればこそ、名も無き旅人として在りたかった彼女が望む、それは理想の在り方で。


「―――なるほど。これは私では手が出せない願いというわけだ」


 張りつめた空気を振り払うかのように、彼は一度だけ手を打ち合わせ。
 最初の時と同じように、彼は朗らかな笑みをその顔に浮かべたのだった。

「私には望まれればそれを成せる万能があるが、しかしきみの願いは他者の手によって叶えられるべきものではないらしい。私は元より、聖杯でさえもその助力になりはしないだろう。
 ここで私が介入しては、それは単に無粋というものだ」
「……聖杯さえも?」
「無論、私の勝手な推察に過ぎないがね。全てを決めるのは、当然きみの役目なわけだが」

 言って、彼は微かに目を細め。

「ともかく。私はきみの願いを聞き届けた。ならば、きみが至るべき願いの果ては、やはりきみ自身の手によって為されるべきだろう」

 彼の言葉は土砂降りの雨の中では酷くか細いものであったが、すんなりと少女の耳に入ってきた。

「今の私はサーヴァントだ。仕え奉じる者だ。きみを願いの果てへと至らせることはできないが、しかしきみを覆う囲いを取り払うことはできる。
 きみは存分に私という万能を使いたまえ。私はその一切に応えるとしよう」
「……いいの?」
「良いとも。既に言ったが私はサーヴァント、マスターの命に背くことはない」

 事実であった。彼は、嘘を吐くことがない。そして吐く必要もなかった。
 何故ならば、彼にとってもこの少女の元に喚び出されたことは本望であったのだから。

 本来であるならば、彼はサーヴァントなどというものに身を窶すことなどあり得ない存在であった。
 けれど、他ならぬこの少女の存在こそが、彼を此処まで導いた。
 かつて人類を鏖殺せんとした少女の、しかし人類との共存を選択した少女の願いに応じて。
 かつて人類に絶望し、しかし人類の可能性を信じた男は喚び出されたのだ。

「……なら、お願い。わたしのサーヴァント、わたしの盟友。
 わたしを、ここから、連れ出して」

 故に、彼は少女を通じて人々を見つめるだろう。
 嘆きの果てに消えぬ願いが。
 悲嘆の果てに潰えぬ望みが。
 その手に確かに在ったのだと、そう確信するために。

「―――賜った」

 そして、男は手を差し伸べる。
 その右手を、何か眩しいものへと掲げるように。
 ただ、少女へと―――

「そしてここに告げよう。我が真名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。此度はライダーのクラスで顕現せし万能の王である。
 私は見つめ、そして導こう。きみの物語を、きみたちの物語を。
 そしてその行き着く果てを、我が命題への到達階梯とせん」

 ―――人を望んだ小さな神と、人を見定める神ならざる男。
 ―――共に人の輝きを望む二人の縁は、今ここに結ばれた。


333 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:39:05 Nuo9bsLc0

【クラス】
ライダー

【真名】
レオナルド・ダ・ヴィンチ@白光のヴァルーシア-What a beautiful hopes-

【ステータス】
筋力D 耐久A 敏捷B 魔力A++ 幸運A++ 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:A+
数億の日々を生きたライダーの神秘は極まっており、極一部の例外を除けばあらゆる魔力干渉をシャットアウトする。

騎乗:A++
竜種を含めたあらゆる騎乗物を乗りこなせる。

【保有スキル】
無窮の叡知:EX
この世のあらゆる知識から算出される正体看破能力。
赤色秘本と緑色秘本の双方を目にし、三世の書を保有するライダーはおよそあらゆる物事を知っていると言っても過言ではない。

精神耐性:A++
精神ダメージへの耐性。

現象数式:A+
数式により世界を捻じ曲げる、チクタクマンの権能を模した異形の技術。
彼の数式は文字通りの万能であるが、サーヴァントとして現界するにあたり万能なれども万全とは言い難い状態にある。

《万能王》:EX
ウォーモ・ウニヴェルサーレ。
その身は人に望まれたが故に万能となり、およそありとあらゆる物事を成し遂げることができる。しかしサーヴァントとして現界した都合上、彼の万能も正しく万能に成り得ていないのが現状である。
「原初の一」などの一部例外を除くあらゆるスキルを極めて高いランクで習得可能。

【宝具】
『三世の書』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が終焉までに辿るすべての歴史が記されているという、伝説でのみ存在が伝えられている書。別名は史実の書であり、そのオリジナル。
碩学協会こと《結社》はこの書のラテン語版写本を有しており、解読を進めることで、歴史の裏で暗躍する術をここから学び取ったと言われている。
ただし、現在この宝具が有する意味と意義の大半は失われており、ランクも大幅に低下している。

『善なる左手』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
過去再生者にして無限増殖者。
無限の力にして無限の変容。ライダー自身、あるいは後述の宝具による「左手」で接触することにより、対象の「耐えられない現在」を無限に増殖させることで肉体と精神を変容させる。
およそ耐えられる知的生命体は存在せず、同ランク以上の菩提樹の悟りに匹敵する強固な精神防壁でも持たない限りは確実に死に至る。仮に回避したとして、この左手は周囲の空間ごと増殖するため完全な回避は難しい。


334 : 愛のフーガ ◆GO82qGZUNE :2016/11/28(月) 00:39:22 Nuo9bsLc0

『巨いなりしは偽なる神威(《巨神》)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1
体長100フィートを超す鋼鉄の人型。物語を終わらせる裁定者にして機械仕掛けの神。
漆黒を湛えた鋼鉄の体表には青色に淡く輝く鱗粉の如き光がまとわりついている。頭部らしき部分で輝く“眼”の色は血の真紅。
万能なる者が数億の日々の果てに生み出した例外存在であり、顕現のプロセスが明確化したものでも確固とした技術体系によって形作られるものでもない。
意思なきあらゆる力を、鋼鉄を、鉛を、火を、暴風を、精神を、時間牢獄でさえこの異形の《巨神》は砕く。
ただ歩くだけで進行上の空間が消失し、白光の如き無色しか残らない。
世界から完全に独立している故に世界に対し多大な影響を与え、世界に遍く存在する総ての干渉を受け付けないが、世界そのものに対して敵対できないという性質を持つ。
なおこの《巨神》はあくまで神体ではなく偽神であるため、真実の《巨神》たるルリム・シャイコースの足元にも及ばないとか。

この宝具は現マスターが保有する規格外の魔力を以てすら発動が困難なほどの存在規模を有しており、令呪の補助があったとしても完全な顕現はほぼ不可能となっている。
しかし、マスターであるアリスに架せられた枷が外れた時には、あるいは―――

【weapon】
なし。

【人物背景】
物語の外に立つ者。
自らを万能であると嘯き、それに恥じない無限の知識と強靭なる精神を以て人類を観察し続ける何者か。
彼は人類を裁定し、その存在意義を探求し続ける。
その名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。十碩学第六位《万能王》。しかしその名さえ真の名ではなく、七番目の名前。

【サーヴァントとしての願い】
自らが抱いてしまった命題を否定する。彼が抱いた命題とは以下の通りである。
『空を灰色に染め地に火を放つ人類に価値はない』

【方針】
アリスという存在を通して人類を推し量る。



【マスター】
アリス@アリスの標本箱

【マスターとしての願い】
人類との共存の可能性を探す/?????

【能力・技能】
半神である彼女は不老長命かつ、本来ならば星を脱するほどの力を持つ。
しかし今回の聖杯戦争においてはその力の大半を封じられ、少なくともサーヴァントに伍するほどの戦闘力は持たない。

【人物背景】
人を憎み、世界を憎み、星を滅ぼさんとした神の末裔。
旅を愛し、人を愛し、世界を愛し、ただ父親に愛されたかっただけの一人の少女。
タルタロスに堕ちる直前より参戦。

【方針】
脱出狙いだが、生き返った命を以てこの世界を見て回りたいとも考えている。
自分の願いのために聖杯を使うかどうかは、実はまだ決めかねている。


335 : 名無しさん :2016/11/28(月) 00:39:58 Nuo9bsLc0
投下を終了します。今回の投下は以前フリー投下スレに投下したものを手直ししたものになります


336 : ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:42:15 sRuB5MCk0
投下します


337 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:43:00 sRuB5MCk0

スノーフィールド。

様々な国家や民族の移民にも職の門戸を開いている新興都市。
教育機関では多くの国から留学生を受け入れ、研究機関では各分野の第一人者を世界中から引き入れ、人と経済を回して発展の礎を築いてきた。
そして今も様々な形で人材、知識、技術の交流は行われている。
例えば警察機構。
あらゆる国の人や宗教を引き入れるということは、それに伴う問題も引き起こされるということであり。
必然というべきか、対策となるノウハウも発達していた。

その一機関で、国際テロリズム対策分野について一人の日本人女性警官が学んでいた。
彼女の名前は夏目実加。
ハイティーンの少女のような容貌と体格だが、これで日本ではキャリアとして入庁したエリート警察官である。
スノーフィールドに着任してからも、少しばかり可愛がられることはあったが、その仕事ぶりで同僚からの評価も改められている。
それでもやはり可愛がられはするのだが。
現在彼女は一人で証拠品の整理に当たっていた。
同僚と二人がかりでやるはずの仕事だったのだが、ふと思い立ち一人でやらせてもらっている。

そのうちの一つをもう何分間も見つめている。
何の変哲もない写真、白いアルビノのクワガタムシが映ったもの。
それが何のためのものなのかももはや忘れて、じっ……と。
白い……カード……クワガタ……

「…………そうだ」

体の何ヵ所かで熱が発生するのを覚える。
頭部が熱とともに軋み、失われていった記憶が帰ってくる。そして新たな知識もどこからともなく現れる。
左手の甲に熱と共に赤黒い文字が刻まれる。
腹部に熱を覚え、ベルトのようなものが浮かび上がってくる。
そのベルトの中央に嵌められた石から『白紙のトランプ』が飛び出した。

「遺跡に、あったアークルと……『切り札』……?」

一見ただの白い古ぼけた紙切れにしか見えないそれは、裏面に記号のような文字がメモのように書かれていた。
かつて極東に栄えた民族、リントの言葉で切り札と。

その白紙のトランプもまた光り輝き……一人の男へと姿を変えた。
堂々たる振る舞い、そして見る人にどことなく安心感を与える雰囲気を持つ男だった。

「あなたが、私のサーヴァントなんですか?」

実加の問いに男は深くうなずいて肯定する。
その男の発する深く静かな空気に、頼るように、甘えるように実加は言葉を紡いでいた。
聖杯戦争という状況下でどうするか、どうしたいか。
実加の願いと言葉に、男は朗らかな笑みを浮かべて右手を真っすぐに突き出し、親指を上に向けて立てて見せる。

「これは古代ローマにおいて満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草だ」
「……ええ、よく知っています。昔教えてもらってから、一度たりとも忘れたことはありません」

サムズアップ。
男のその仕草に、実加はゆっくりと頷いて返す。

「それが似合う人間になれ、君ならきっとなれるって言ってもらいましたから」

かつて向けられた柔らかい笑顔を思い出して。
目前の頼れる笑顔をじっと見つめて。
彼女も自身にできる精一杯の笑顔を浮かべる。


338 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:43:21 sRuB5MCk0

「正直言って、少し怖いです。でも私以外にも意図せず巻き込まれてしまった人がいるかもしれない。
 この世界で平和に過ごしている人たちだっている。放っておけるわけないじゃないですか」

ぎゅ、と今は戻ってしまったアマダムのあるはずの腹部で強く手を握る。
そのために、この力を手に入れたのだ。
また未確認生命体が現れても、人々を守れる力を。
空になった棺……蘇ったであろう新たな未確認生命体。
それに対抗するための戦士クウガの力の源……アークル。
自分と一つになったそれは確かに力をもたらし、その身を白いクウガへと変えて見せた。
これなら、戦える。
そう決意した矢先になぜかアークルと共に安置されていた『白紙のトランプ』のせいで、身を置く場所は変わってしまった。
それでも、そこに守るべき人がいることは変わらない。
……笑顔を侵す、怪物がいることも、きっと変わらないだろう。
だからこそ自分なりにきちんと聖杯戦争に関わると決意する。

「一条さんみたいに、五代さんみたいに。皆をこの手で守りたい。笑顔にしたい。だって私……」

ぐっ、と頬に力を込めて、精一杯の笑顔が歪まないようにして。




「クウガだから」




サムズアップ。
満足するため、納得するためにその仕草を実加も行う。
男は慈しむような眼でそれを見つめ返す。

「ありがとうございます。あなたがいてくれるだけで、気持ちがとっても落ち着くんです」

右の拳を掲げたまま、一息ついて。
ふと、あまりにも根本的なことに気付く。

「あの、今更で申し訳ないんですけれど。よろしければお名前を教えていただけませんか?」

その問いにも男は深くうなずき。
実加のサムズアップに、自らも親指を立てた右の拳を当てて答えた。





「私(ローマ)は、ローマである」


339 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:43:56 sRuB5MCk0

【クラス】
ランサー

【真名】
ロムルス@Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
皇帝特権:EX
本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事で短期間だけ獲得できる。
該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐にわたる。
ランクがA以上のため、肉体面での負荷(神性など)すら獲得する。
元祖2000の技を持つ男である。
本スキルを有するにあたりロムルスは本来所有していた高ランクの神性スキルを自ら封印している。

天性の肉体:C
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。
さらに、鍛えなくても筋肉ムキムキな上、どれだけカロリーを摂取しても体型が変わらない。

七つの丘:A
自らが「我が子」と認めたものに加護を与える。


【宝具】
『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:900人
国造りの槍。母シルウィアが処女懐胎によりロムルスを生み落とす以前に見た夢に登場する、ローマそのものを象徴する大樹と結び付けられて伝えられる。ローマ建国の折、ロムルスはこの槍をパラティウムに突き立てたという。
宝具としては樹木操作の能力を有しており、真名解放の際には槍が大樹として拡大・変容し「帝都ローマの過去・現在・未来の姿」を造成、怒涛の奔流によって対象を押し流す。質量兵器ローマ。

『すべては我が愛に通ずる(モレス・ネチェサーリエ)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:100人
愛する弟レムスを自らの手で誅した逸話を具現化した、血塗られた愛の城壁。
空間を分断させる城壁を出現させることで壁の内側を守る、結界宝具。
城壁の出現は地面から瞬時に湧き上がるため、出現位置の調整次第ではギロチンのように対象を切断することも可能。

【weapon】
『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』

【人物背景】
古代ローマ建国神話に登場する国造りの英雄。七つの丘にローマの都を打ち立て、栄光の大帝国ローマの礎を築いた建国王にして神祖。生きながら神の席に祀られたモノ。
軍神マルスと美しき姫シルウィアとの間に生まれ、神の獣たる狼を友に育った。
母シルウィアを虐げ、祖父ヌミトルを陥れたアルバ・ロンガ王アムリウスとの戦いに勝利した後、アルバを統治することなく、イタリア半島に都市国家ローマを建設した。
この際に共にアルバ戦争を戦った弟ロムスを建国の折の諍いで手にかけるという悲劇を乗り越えた後、たちまちのうちに地中海周辺国家を併合し、ローマ帝国の礎を築いた。
偉大なる健国王、その最期は死ではなく消失だった。
カプラ沼のほとりの野で突如として発生した嵐と雷の後、古き神の名クイリヌスと言う神となって、生きながら神の席に祀られたのだ。

【サーヴァントの願い】
なし。
聖杯(ローマ)もまた我が子として迎えよう。
ローマの文化を受け継ぐ実加もまたローマである。



340 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:47:15 sRuB5MCk0

【マスター】
夏目実加@仮面ライダークウガ

【参加方法】
リントの遺跡においてアークルと共に『白紙のトランプ』を発掘した。

【令呪】
左手の甲。
リントの文字で『クウガ』。
ただし遺跡に刻まれたものより少しだけ角は短く描かれている。

【マスターとしての願い】
亡くなった父や、長く姿を見せない恩人五代雄介などまた会いたい人はいる。
しかし今の優先事項は警察官として人々を守ること。

【weapon】
・ニューナンブM60
警察支給の銃。
原作小説中ではコルトパイソンを用いるシーンがあるが、おそらく神経断裂弾という特殊な弾を用いるために特別に用意したものであり、平時は別の支給品を用いている可能性が高い(弾の規格やコストなどの都合上)。
ニューナンブM60は日本の警察で支給されることが多い銃なので、普通用いるならこれではないかと考える。
アメリカだと自動式拳銃が支給されることが多いらしいが、州によっては申請すれば自前でも構わないらしく、使い慣れたものを携行するはずである(申請すれば他の銃を支給してもらうこともできるかもしれないが)。

・アマダム
長野県にて山岳パトロール中に発見した遺跡にて入手したもう一人のクウガ、その遺産。
腹部に埋め込まれた霊石で、全身に神経節を張り巡らせて身体能力や代謝を強化している。
戦意を示すことで変身ベルト『プロトタイプ・アークル』として表出し、戦士クウガへと変身する。
五代雄介のそれとの外観の違いは角が短いくらいだが、心の闇が暴走しやすい=凄まじき戦士、究極の闇へと転じてしまう危険が大きいという欠点がある。

【能力・技能】
優秀な警察官であり、格闘や射撃に通じる。
原作小説中ではグロンギ相手に防御されはしたが、銃撃を成功させている。

上述したアマダムにより、プロトタイプ・クウガに変身する。
原作小説中では白いクウガ(グローイングフォーム)が殆どだったが、作中敵から半人前呼ばわりされていることに加え、すべての色(フォーム)の上位互換である凄まじき戦士(アルティメットフォーム・ブラックアイズ)へ変身していたことを考えると他の色への変身もできる可能性が高い。
なおアマダムから伸びた神経節は魔術回路に近い働きをし、さらにクウガの変身に用いるエネルギーも魔力供給としている。
それにより並の魔術師など目ではない量の魔力供給をしており、また下手に変身するよりもロムルスに全て供給した方が往々にして強力である。
ただし神性を失い、霊格を落としてなおトップサーヴァントの一角であるロムルスの宝具解放となると容易くは賄えない。
『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』 の真名解放をした場合、五代雄介が緑のクウガ(ペガサスフォーム)の変身が解けた時のようにエネルギーを使い切り、約二時間クウガへの変身と宝具の真名解放はできなくなる。
逆に言うなら『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』 ほどの強大な宝具を二時間に一度は撃てるだけの魔力量と回復力を持つ。


341 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:47:40 sRuB5MCk0

【人物背景】
現代にグロンギを蘇らせてしまった考古学者、夏目幸吉の娘。
その蘇らせてしまったグロンギの長、ダグバによって父親を殺されたためにグロンギを強く憎むことになる。
一時は父の仇であるダグバの調査を警察が二の次にしていたことから人間不信にまでなるが、戦士クウガこと五代雄介に勇気づけられ立ち直る。
その後は五代たちの力になるため父の跡を継ぐような形で遺跡の発掘チームに加わり、グロンギ討伐の力となった。
現代のリントの戦士こと一条薫とも親交を深めており、人間不信に陥った際に一条が警察を代表して実加に言葉をかけたことがある。
実加が上京してある事件に巻き込まれたときには一条の本当の一面にも触れることになった。
(以上、特撮仮面ライダークウガ、以下その後の時系列を描いた小説)
二人の戦士に憧れたためか、大学卒業後は警察官となる。
警視庁で二年、その後自ら希望して長野県警へと移る。
配属されたのは山岳パトロールを担当する警備課であり、ある夜九郎ヶ岳遺跡付近に大雨が降った真夜中に山岳パトロールを行うことになる。
父、夏目幸吉の遺した手記によりグロンギの残党の可能性を警戒していた彼女は遺跡の調査を独自に行う。
新たな遺跡を発見し、そこから生き残ったグロンギ族の痕跡と、プロトタイプ・アークル、そして白紙のトランプを発見する。
新たな未確認生命体の復活を確信した実加はアークルを身に着け、戦う覚悟を決める。その瞬間白紙のトランプによってスノーフィールドに導かれた。

白紙のトランプを手にしなかったら本来の歴史ではザルボ、ライオといった強力なグロンギと戦うことになる。
その過程で一条からクウガとして戦う意味を教えられ、悩みながら少しづつ成長していくことになる。
その前からの参戦であるため、警察としてはともかく仮面ライダーとしては未熟な時期と言える。

【基本戦術、方針、運用法】
高いステータスと神秘、EXランクの皇帝特権とそれを味方にも付与する術を持つトップサーヴァントであるロムルスをアマダムによる潤沢な魔力供給で使いこなす強力な主従。
気配遮断に限らず、単独行動、千里眼、気配察知など強力なスキルを行使すれば優位に立ち続けるだろう。
『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)』 の乱発は令呪でも用いなければできないだろうが、規模的に多用することはないと考えられ大きな欠点にはなりにくい。
欠点は主従揃っての秘められた狂戦士気質。
凄まじき戦士に目覚めやすい夏目実加。
ひとたび狂乱すれば弟を殺したように、戦闘となると手が付けられず、バーサーカー適正のあるとされるロムルス。
宝具の規模もあって監督役も含めて周囲に敵をつくりすぎないよう心掛けた方がいいだろう。
せめて実加は確実にブレーキになれるようクウガへの変身は控えた方がいいかもしれない。

【方針】
対聖杯。
自分たちのように巻き込まれた人を守る。
この世界で過ごす人たちの平穏を守る。


342 : 2000の技を持つ男たち ◆yy7mpGr1KA :2016/11/28(月) 00:48:06 sRuB5MCk0
投下終了です


343 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:00:06 IRXeVfiE0
投下します


344 : 勲は全て我に在り ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:05:38 IRXeVfiE0

 ――――そこは、地獄だったのだろう。

 繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し。
 何度も何度も何度も何度も、同じことを繰り返す。

 海から、あるいは工廠から現れた、自分と同じ顔と魂を持つ無邪気な少女に、自分は何ができたのだろう。

 最初はまだいい。
 深海棲艦相手に戦って、経験を積んで、強くなって。
 それで、改造を受けて……そこから先が、問題なのだ。
 装備を解体され、近代化改修の糧とされた?
 それならまだ、幸せだ。
 なにせ、命があるのだから。
 軍艦としての誇りを汚されようと、十分に幸せと断言できる。
 無限に酷使され、無限に使い捨てられていくことに比べ、それがどれだけ幸福なことだろう?

 迫りくる数多の深海棲艦。
 それは、地上を侵す海の怨霊。
 軍艦の魂をその身に宿す我々艦娘でしか抗しえぬ相手。
 ならば、戦うのは自分たちの仕事だ。
 それはいい。
 その果てに死ぬことも、仕方のないことだといえる。

 だが――――だが。
 無為に使い潰されることが、幸せだと言えるだろうか?

 ありていに言えば、自分たちの司令官はクズだった。
 艦娘を感情を持たない兵器と断じ、機械的に使い潰していく。
 出撃、出撃、出撃、出撃。
 一切の人格を考慮せず、一切の苦痛を考慮せず、一切の被害を考慮せず、ただ、ひたすらに。

 あの時――あの、強大な深海凄艦が現れた時。
 強力な回復能力によって鎮守府を苦しめたあの難敵。
 その回復能力を阻むためには、断続的な攻撃が有効だと判明し……

 ――――――――ああ、もしも。
 もしもその時に下された命令が“疲弊を無視した連続出撃”であったのなら、どれだけ幸福だったのだろう。
 恐ろしく辛かっただろう。
 死ぬ者もいただろう。
 けれど、そうであったら良かったのだ。
 まともに訓練も受けていない少女たちが、死ぬためだけに戦地に送り込まれることに比べれば。
 まるで自分たちの記憶に刻まれた“あの戦争”の、末期のそれのように。
 命を燃料にして無謀な出撃を強要されて死んでいったあの子たちに、自分は何ができたのだろう。

 繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し。
 何度も何度も何度も何度も、同じことを繰り返す。

 自分と同じ顔、同じ魂を持つ少女たちが、現れては消えていく。
 軍艦とはいえ幼い少女たちが、泣いたり笑ったりする少女たちが、戦火の中に消えていく。
 それは勝利のために必要なことだったのかもしれない。
 それでもなお、数多の命が、魂が消費されていくあの空間は。

 ああ―――――――――なんて、地獄。

 その絶望に、その絶望に抗おうという切なる願いに、この“白いトランプ”は呼応したのだろう。
 如何なる願いをも叶える願望器。
 戦いの果てに、それと掴むことができたのならば……いや、私は、勝ち取らなければならない。

 名高き長良型軽巡洋艦二番艦、五十鈴の名にかけて。
 かつてその背に乗せた、数多の英雄の名にかけて。

 私は聖杯を勝ち取り、あの地獄を打破せねばならない――――――――――



  ◆  ◇  ◆


345 : 勲は全て我に在り ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:06:37 IRXeVfiE0



「おいガキ。茶ァまだか。遅ェぞ」
「……だから、私にはガキじゃなくて五十鈴って名前があるんだけど」
「ガキはガキだ。生言ってんじゃねぇ」

 五十鈴は、ダン、とテーブルの上に叩きつけるようにお茶を置いた。
 彼女と相対するのは、明るい金髪を刈りあげた軍服の男。
 逞しい体に、袖なしのキャプテンコートを羽織り、顎を覆う鉄のマスクの隙間から煙草をくわえた大男。
 男はつまらなさそうに湯呑を手に取り、口を付け……

「――――ブフッ、苦ェ! おいガキ、なんのつもりだテメェ!」

 盛大に噴き出した。
 五十鈴が出したのはいわゆる日本茶であり……初見の者にとっては、噴き出すのもやむない独特の苦さと渋みだ。
 それを見た五十鈴は、ここぞとばかりに得意げな顔をした。

「あら、お口に合わなかったかしら?
 見た目のわりに舌の方はオコサマなのね」
「なんだと……!?」

 五十鈴としては意趣返しのつもりなのだろうが、男はそれに憤慨し、湯呑を地面に投げ捨てて勢いよく立ち上がった。
 湯呑が砕ける音。男はそのままのしのしと五十鈴に詰め寄り――右手を五十鈴に突き付ける。

「っ!」
「調子に乗るなよ、ガキ……俺を誰だと思ってやがる」

 ――――その右手は、斧だった。
 右手の代わりに、巨大な斧が腕に埋め込まれていた。
 それこそは、彼の二つ名となった武勇の象徴。

「俺は海軍大佐、“斧手のモーガン”様だぞ……ッ!!」

 彼の名は斧手のモーガン。
 東の海(イーストブルー)にて暴政を敷いた、叩き上げの士官。
 全てを腕っぷしで勝ち取ってきた、権力に憑りつかれた男。

「な、なによ。あなた、私を殺したらどうなるのか、わかってるの?」

 気丈に返す五十鈴になおのこと気を悪くしたのか、モーガンは左手で五十鈴の胸倉を掴み、締め上げた。
 剛腕で五十鈴の身体が持ち上げられ、足がじたばたと宙を蹴る。

「魔力供給の話か? くだらねェ!
 そんなもんは、街のカス共から巻き上げればいいだけのことよ!」
「なっ、この……!」
「いいか! 世の中称号が全てだ! 海軍大佐である俺に逆らう奴は一人として生かしておかねェ!」

 そのまま、斧手が振り上げられる。
 いかに艦娘とて、その一撃を喰らえば死は免れないだろう。
 無念か、憤怒か、五十鈴は声を絞り上げた。

「ふざけないで……! なら私は長良型軽巡洋艦二番艦、五十鈴よ!」
「あァ?」
「私の歴代艦長には、後に海軍中将になった山口多聞提督も、元帥海軍大将になった山本五十六提督だっていたわ!
 たかが海軍大佐がなんだって言うのよ!
 あなたなんか井の中の蛙、お山の大将ってとこね!
 精々無駄死にしなさい! あなたなんかに、聖杯が取れるはずないんだから!」


346 : 勲は全て我に在り ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:07:26 IRXeVfiE0

「………………」

 一気にまくし立てる五十鈴を、モーガンは静かに睨み。

「……フン」
「きゃっ!」

 鼻を鳴らし、無造作に投げ捨てた。
 モーガンは尻餅をつく五十鈴を一顧だにせず、緩慢な動作で椅子に戻っていく。
 助かったのか。
 五十鈴は半ば呆然とその背中を見つめ……被りを振った。
 ――――この男のクラスはバーサーカー。
 その行動は、いちいち気まぐれでしかないのだろう。

「おい」

 モーガンが、振り向かぬままに声をかけた。

「……なによ」

 警戒し、睨みつけながら、五十鈴は返答する。

「……言っておくが、次はねェ。
 俺は海軍大佐、斧手のモーガンだ。
 お前より偉い俺はお前より優れているし、お前よりも絶対的に正しい。
 俺はテメェがマスターだとは認めねぇ」

 それは警告であり、宣言であった。
 自分はお前の指示に従うつもりは無いし、むしろお前が自分に従えという、そういう命令。

「だが……テメェの指揮取ってたヤツがみんな偉くなったってことなら、その幸運を利用してやる。
 俺は海軍大佐斧手のモーガン――聖杯を腕っぷしで勝ち取り、世界を支配する男だからな」

 それだけ告げて、モーガンは椅子に座った。
 紫煙をくゆらせ、振り向きもしない。
 どうしようもないその暴君ぶりに、五十鈴は内心で歯噛みしつつ、決意した。
 利用するのはこちらの方だ。
 私はお前を利用して、聖杯を勝ち取り、艦娘が戦わなくてもいい世界を作る。

「――いいわ、提督。そういうことなら、あなたに従ってあげる」
「フン……茶と湯呑、片付けとけよ」

 ――――私は、あの地獄を打ち砕くのだ。
 なんとしてでも。
 絶対に。
 必ず。


347 : 勲は全て我に在り ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:08:37 IRXeVfiE0

【CLASS】バーサーカー

【真名】モーガン@ONE PIECE

【属性】混沌・悪

【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷D 魔力E 幸運A+ 宝具D

【クラススキル】
狂化:D
 理性と引き換えに、筋力と耐久のステータスをランクアップさせる。
 バーサーカーは理性を失っていない……が、野心と支配欲に呑み込まれている。
 そのため言語能力は残っているが、行動に理性のブレーキが効きづらい。

【保有スキル】
戦闘続行:E
 瀕死の重傷でも戦意が衰えず、生き延びやすい。

仕切り直し:B
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。

カリスマ:C
 支配階級としての威圧を示す。
 自らの宝具の影響下にある者に対しては、効果がワンランクアップする。

【宝具】
『斧手の支配立像(キャプテン・ザ・アックスハンド)』
ランク:D 種別:結界宝具 レンジ:1〜40 最大補足:500人
 バーサーカーが生前作らせた巨大なバーサーカーの石像。
 野心と幸運と腕っぷしによって海軍大佐まで登りつめたバーサーカーの権力の象徴。
 設置することで、レンジ内にいる者を権力によって支配する絶対権力領域。
 支配下においた者からの魔力・物品の強制徴収、恐怖による強制命令、配下の召喚など、その効果は多岐に渡る。
 なお、この宝具はサーヴァント及びサーヴァントとラインで繋がったマスターには効果が薄い。
 これはサーヴァント自体が持つ存在強度が高く、支配下に置くのが困難であるためである。
 それでも精神異常耐性スキルを所有するか、バーサーカーより高い地位の人物でない場合、「威圧」のバッドステータスを受けるが。
 なお、バーサーカーの地位は感覚的には地方領主程度のものである。

【weapon】
『斧手』
 バーサーカーの二つ名にもなった右腕。
 肘から先に埋め込まれた巨大な斧。
 岩や鉄でも問題なく両断するだけの切れ味を誇る。

『海兵隊』
 宝具によって召喚される海兵隊。
 数はせいぜい数十人程度であり、雑兵に過ぎないが、恐怖によって支配しているため極めて忠実。
 バーサーカーに死ねと言われれば、震えながら頭を撃ち抜いて死ぬだろう。

【人物背景】
 東の海、海軍第153支部の大佐であり、同支部の最高権力者。
 支部本拠地シェルズタウンを恐怖によって支配した暴君。通称は斧手のモーガン。
 自分の意に従わない者は例え女子供や部下であっても容赦なく処刑し、貢物を強要した。
 元々は野心を持ちつつも誇り高い海兵だったが、賞金首の海賊「百計のクロ」に敗れ、
 催眠術によって「百計のクロを捕まえた」と思い込まされたまま偽の身代わりを連れて凱旋。
 その功績と腕っぷしを認められて少佐となり、出世の道をひた走ったという。
 しかし、ある日ドラ息子ヘルメッポに楯突いた「海賊狩りのゾロ」を捕らえることとなり、
 そこに現れた海賊「麦わらのルフィ」と敵対する羽目になり……敗北し、暴君の座から引きずり降ろされた。
 元部下によって捕らえられたモーガンは死刑判決を下され、本部に送検される運びとなったが、
 土壇場で中将ガープを切り付け、息子ヘルメッポを人質にして逃亡。
 ヘルメッポは途中で開放されたものの、モーガン自身はそのまま海上を逃げ延び……その後の消息は、不明である。

【サーヴァントとしての願い】
 腕っぷしで聖杯を勝ち取り、全てを支配する。


348 : 勲は全て我に在り ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:09:35 IRXeVfiE0

【マスター】
 五十鈴@艦隊これくしょん

【能力・技能】
 艦娘として、艤装に依存した戦闘能力を保有する。
 艤装を身に着けている間は水上移動が可能。

【weapon】
『12.7cm連装高角砲』
 五十鈴の主武装。ただし分類は副砲。
 対空高角砲であり、空中の敵に対して高い効果を発揮する。

『21号対空電探』
 五十鈴に搭載された電探。
 いわゆるレーダーであり、これにより五十鈴は高い索敵能力を保有する。

『61cm四連装(酸素)魚雷』
 五十鈴に搭載された魚雷。
 現状の五十鈴にとって最高火力となる強力な武器ではあるが、原則水上でなければ使えない。

【ロール】
 女学生。

【人物背景】
 長良型軽巡洋艦の二番艦。
 海軍史に輝く数多の名士をその背に乗せた、浮かぶ海軍殿堂……の、魂と記憶をその身に宿した少女。
 自信に溢れ、軍艦らしい好戦性を持つ、艦娘の一人。

 ……なのだが、彼女はひとつ忌むべき宿業を背負っている。
 改造が容易であること、改造時に優秀な装備を持っていること、近代化改修の餌として優秀なこと……
 …………この辺りの事情が重なり、ゲーム『艦隊これくしょん』では、
 「レベルを12まで上げて改造した五十鈴から装備を剥ぎ、近代化改修に使う」というテクニックが存在した。
 俗に「十二鈴牧場」と呼ばれるテクニックであり、人によっては忌み嫌うこともあるプレイである。

 この五十鈴は、その「十二鈴牧場」や「捨て艦」などが横行する、いわゆる「ブラック鎮守府」からの参戦。
 艦娘を感情を持たない兵器として扱う鎮守府の出身であり、他の艦娘共々酷使されていた。
 彼女は「最初の五十鈴」。自分と同じ顔・同じ魂を持つ少女が使い捨てられていく地獄から抜け出すため、聖杯を求める。

【令呪の形・位置】
 右手の甲に錨とカモメの意匠で三画。

【聖杯にかける願い】
 全ての艦娘が戦わなくてもいい世界。

【方針】
 聖杯を勝ち取る。
 ……できれば、犠牲を抑えて。


【基本戦術、方針、運用法】
 バーサーカー、マスター共に戦闘力に優れた主従。
 ただしバーサーカーには大技が無く、マスターも得意な戦場が限られる上、突出して強いというわけでは無い。
 戦争の勝利には宝具『斧手の支配立像(キャプテン・ザ・アックスハンド)』による地盤固めが不可欠となるだろう。
 魔力徴収や海兵隊の召喚が行える、そこそこに便利な宝具だが、問題は神秘の隠匿。
 恐怖によって支配された市民は神秘について他所に漏らすことは無いが、効果範囲によっては神秘の漏洩に繋がる危険性がある。
 一応、魔力・物品の徴収は「なんとなく体がだるい」「なぜか急に疲れた」「いつの間にか物がない」などの形になるため、
 穏当に地力を蓄えるだけなら問題は少ない。
 とはいえ、石像自体が巨大なので目立ってしまうのだが……立て直しが得意なのは幸いか。
 主従の関係も良好とは言えず、総じて「どこに陣取るか」にかかっている陣営。


349 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/11/28(月) 13:10:27 IRXeVfiE0
投下を終了します


350 : ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:55:22 XaOeBn9k0
投下します


351 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:56:26 XaOeBn9k0


受け継がれる意思。
時代のうねり人の夢。
これら止めることの出来ない物だ。
人々が自由の答えを求める限り、それらは決してとどまることは無い。





352 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:57:09 XaOeBn9k0


「マフィアの仕事も随分と堂に入ってるじゃないか、案外ソッチの方が向いてるんじゃないかい
マスター…いや海賊艦隊提督、首領・クリーク殿?」


大理石で出来た豪奢なビルの一室に、本人の性格を表す快活な女の声が響く。

「おいおい、よしてくれよライダー。今はマフィアをやっちゃあいるが、俺の本分はあくまで海賊だぜ…」

違いない、とライダーと呼ばれた赤毛の海賊衣装の女はテーブルの上で笑った。
その顔に走る縦一文字の傷が印象的な女だった。
傷といっても女の魅力を損ねる事はなく、むしろその野性的な雰囲気を引き立たせる手伝いをしている様に見る者は思うだろう。
対するは女と机越しに座る、巨漢の青がかった髪の男。首領・クリーク。
短髪を白い包帯でまとめており、その眼は明らかにカタギのそれではない。
彼に睨まれれば、肝っ玉の細いものなら失神してしまうかもしれない。

「船をボロボロにされ、餓死寸前の状況から漸く部下達に飯を喰わせ、レストランを襲おうとした矢先にこんなことになるとは思っていなかったが、今思えば渡りに船って奴だったな」

愚かな渦巻き眉毛を欺き腹を満たした後、東の海では名の知れた海賊・赫足ゼフの航海日誌と船を奪おうと準備をしていたその時だった。
略奪した物と思われるトランプを、クリークはガレオン船の甲板上に見つけた。
もっともそれは白紙であり、何時もなら尻を拭く紙にもならないと捨て置いた所だが、
何故かそのトランプは彼の興味を強烈に引き寄せた。
邪魔な部下を蹴倒し、手を伸ばそうとした丁度その時、一陣の風が吹きトランプを連れ去ろうとする。
そうはさせるかと一足で駆け、届いた。そう思った時―――クリークの姿は甲板から失せ、ここに居たのだ。
五千の構成員を束ね、スノーサイドを牛耳るマフィアの首領(ドン)として。
海賊でないのが不服ではあったが、海賊事業にも手を出しているらしく、全く海と無関係なロールでないことに彼は密かに安堵した。
ちなみにその時のトランプは今も、女に姿形を変えたとはいえ目の前に在る。


353 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:58:20 XaOeBn9k0

「ツイてたぜ、もう少し連れてこられるのが早けりゃ部下達は死んでたかもしれねェ」

「フフ、聖杯ぶんどって凱旋しても讃える部下たちがいないんじゃ締まらないものね」

「あぁまったく。しかし腹さえ満たせばギンがみなを纏めレストランを落とし、俺の帰りを待っているはずだ
ゼフの存在が気にかかるが、あのレストラン一つならギンとパールで問題あるまい」

大きな肩を広げ自分の部下の能力を誇るクリークに、ライダーは益々興味が湧いてきたと言った様相で言葉を紡ぐ。
彼女は、ハッキリ言って目の前の小悪党が嫌いではなかった。むしろ好きな部類に入る男とクリークを評価していた。

「そうかい、そりゃ良かったさね。でもアタシとしちゃアンタがさっき言ってたひとつなぎの大秘宝(ワンピース)って話のほうが興味をそそるねぇ」

テーブルから身を乗り出し、瞳を輝かせて迫るライダーを焦るな焦るなとクリークはなだめる。
彼もまた、目の前の赤毛の女海賊にワンピースの事を語るのはまんざらでもなかった。寧ろ何回でも話してやろう、そう思う程に彼女は魅力的だった。
クリークの説明はぶっきらぼうだったが、ライダーは英雄譚を聞く童子の様に熱心に清聴していた。
もとより、伝え聞かせが完璧な海賊はそうはいまい、寝台で絵本を読む母親や吟遊詩人とは違うのだ。
それでも海賊なら聞き入らずにはいられない、それほどまでに一つなぎの大秘宝(ワンピース)の逸話は、そう、ロマンに溢れていた。


「成程ね、クリーク。それじゃあアンタは聖杯にそのワンピースを願うのかい?」

存分に極上のお宝話を楽しんだ後に、ライダーは問う。
その眼は相変わらず爛々と輝いていたが、先ほどとは方向性が違う。ここからは商談の時間だ。
場合によっては、腰のピストルを抜くこともあるかもしれない。
雰囲気の変化を敏感に感じ取った男は肩をすくめ、そんなワケはねェさ、と事もなげに答える。


354 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:59:20 XaOeBn9k0

「偉大なる首領・クリークはワケの分からねェ場所で聖杯を手にし、願いを叶えてひとつなぎの大秘法を手に入れましたとさ、めでたしめでたし。じゃページが余って歴史書を書く連中が大変だろう?」

ライダーはほう、と息を漏らしもう一度クリークに問いなおす。
それじゃあアンタは何を願うんだい?と。
彼の答えは簡潔だった。

「どんな悪路、悪天候、異常現象にも耐える最強の艦隊と偉大なる航路の情報全てさ
それを手に入れるためなら女子供であろうと殺すし、だまし討ちに留まらずどんな卑怯な真似だってするぜ」

ライダーは思わず噴き出した。もっとも、それはクリークを卑下するものではない。
ここまで聞けば最早疑いようは無い。後は聞かずとも分かる。
この男は一度惨敗しているにも関わらず、もう一度大海原に漕ぎ出そうとしているのだ。
大海の荒波に打ちのめされ井戸に叩き戻されながらも、ここで終わってたまるかともがく蛙のように。
そのためなら外道な事も躊躇なくできるであろうこいつは、きっと骨の髄まで海賊だ。
何とまぁ、一体どれだけ身の丈を超える大風呂敷を広げてくれるのだろう。
ならばこちらも大風呂敷を広げてやるしかないではないか!

「そうさねぇ…じゃあアタシは仕事の報酬にそのひとつなぎの大秘宝を願うとしよう
アンタより一足先に本当にそんなモンがあるかどうか、確かめておいてやるよ」

そう宣言するライダーの瞳は朗々と語っていた。
―――――奪いに来い。
暗にそう言っているのを察したクリークはたまらず一緒に笑い出す。

「クク……じゃあこの戦争が終わって次あうときは海賊の高みってワケか」

「ああ、アタシはロハで仕事はしない主義でね。
ここではアンタの副官だが、その時は一切合財奪い合おうじゃないか、楽しみにしてるよ」

「あぁ、楽しみだ―――お前ごと奪いに行ってやるよ」

大胆な略奪宣言にそりゃいいとライダーは膝を打ち高らかに快哉を上げる。
その様を満足げに拝みながらクリークはテーブルの下からあるものを取り出す。
これが敵ならば数多くの銃口だっただろうが、この時は違った。
出された物、それはライダー/フランシス・ドレイクの大好物。
一本百万はくだらないであろう特上酒。
その見事な一品をクリークは豪快に注ぐ。

「それじゃあ―――」

「ああ」

「「聖杯と、ひとつなぎの大秘宝に乾杯」」


355 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 20:59:56 XaOeBn9k0



【クラス】

ライダー

【真名】

フランシス・ドレイク@Fate/EXTRA、Fate/Grand Order

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運EX 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
嵐の航海者:A+
船と認識されるものを駆る才能。集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。

黄金律:B
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。大富豪でもやっていける金ピカぶりだが、散財のし過ぎには注意が必要。

星の開拓者:EX
人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。


356 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 21:00:13 XaOeBn9k0

【宝具】

『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:20〜40 最大補足:前方展開20船
スペイン無敵艦隊を打ち破った「火船」の逸話と、ヨーロッパの伝承である「嵐の夜(ワイルドハント)」の逸話。
ライダーの生前の愛船である「黄金の鹿号(ゴールデンハインド)」を中心に、生前指揮していた無数の船団を亡霊として召喚・展開。
圧倒的火力の一斉砲撃で敵を殲滅する。ライダーの奥の手にして日常とも言える宝具。
マスターの所持金(貨幣、貴金類)によって威力が増減すると言う一風変わった特性を持つ。

『黄金の鹿号(ゴールデンハインド)』
ライダーが上記宝具を展開した時に乗っている船だが、この船自体が黄金鹿と嵐の夜とは別個の宝具。
イングランド王国のガレオン船でありドレイクが私掠船として用いたことで有名。 全長37メートル弱、船首と船尾に4門ずつの砲を持つ他に、両側舷にも14の砲を搭載。
彼女が『騎兵』たる所以であり水上でなくても船体を地面に隠しながらの移動などもできる。
ただしクリークからの魔力供給がとぼしいため、砲弾の補充が十分にできていない。

【weapon】

二挺拳銃: フリントロック式のものでありながら連射が可能。

カルバリン砲: 空間から自由に出し入れさせる事が出来る、ゴールデンハインドの砲塔。

【人物背景】

真名はイギリスの大海賊、フランシス・ドレイク。
フランシス・ドレイクは世界一周を生きたままなし得た人類最初の偉人である(一人目のマゼランは途中で死去。クルーが航海を引き継いで成し遂げた。他にも達成者はいるが船長としてはドレイクが初である)。
愛船『黄金の鹿号(ゴールデンハインド)』を駆る海賊。冒険家にして私掠船船長、そして艦隊司令官。
世界一周を成し遂げ、その収益でイギリスが大航海時代の覇者となる道を開いた人物。

【サーヴァントとしての願い】

ひとつなぎの大秘宝ゲット!


357 : ROMANCE DAWN ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 21:00:31 XaOeBn9k0

【マスター】

首領・クリーク@ONE PIECE

【マスターとしての願い】

どんな航海にも耐えうる最強の艦隊と情報、それを以て偉大なる航路にもう一度挑戦する。

【weapon】

大戦槍 :物体にあたると爆発する、重量1トンを超える大槍。

MH5:一息吸えば全身の自由を奪う猛毒ガス弾。小さな村なら一発で壊滅せしめる。
対抗手段は「吸わないこと」のただ1つしかない。

ウーツ鋼の鎧:その身を包む超硬度の鎧。
随所に様々な隠し武器が収納されており、多彩な攻撃やトリッキーな反撃を可能とする。
ダイヤモンドの拳、剣山マント、ニードルマシンガン、炸裂手裏剣、鉄球、火炎放射器、捕縛用の網等。

【人物背景】
クリーク海賊艦隊提督。通称「首領・クリーク」。
勝つためなら手段を選ばない性格で、東の海で最強とも称された。
しかし50隻の艦隊と5000人の部下を束ねて挑んだ偉大なる航路にて、早々に敗北。
わずか100人ほどの部下と餓死寸前になりつつ逃げ帰ることになった。
そして再起を賭けてだまし討ちを仕掛けたレストラン船バラティエでの戦いで、居合わせたルフィに敗北。
その後の行方・生死は不明となっている。

【令呪の形・位置】
右手の甲に海賊旗と同じマーク。

【方針】
聖杯狙い。卑怯もラッキョウも大好物だぜ!


358 : ◆wFkyuCOTbQ :2016/11/28(月) 21:01:19 XaOeBn9k0
投下終了です


359 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 21:30:35 zlB3EtAs0

皆様、変わらずたくさんのご投下ありがとうございます!
随分遅くなってしまいましたが、順に感想を述べさせて頂ければ幸いです!



> 赤い帽子の二人組

「おい、会話しろよ」
思わずそう言いたくなるような無口系バトルマニアが出会ってしまった……!
決闘さえできれば他の全てはどうでも良いという危険なキャラ付け、そんな解釈が原作に沿うと自然にできてしまいかねない要注意人物コナミくん。聖杯の利用も躊躇わないかと思いきや、そうか君は既に楽園に居たのか……
決闘至上主義の世界から自分を切り離した聖杯を憎む意志にはブレがなさそうですが、決闘者見つけたらそれはそれとして襲いかかりそうで行動が読み難そうですね。
そんなコナミくんのサーヴァントは負けず劣らず、どころか自分が主人公じゃなくても喋らない男レッド。最近アローラにも現れた、完全にグリーンの財布で飯を食ってそうな成長後の姿ではなく、無言で後輩主人公に襲いかかるぐらい戦いに飢えていた少年期でのサーヴァント化ですね。世代の自分にとっては馴染み深い姿です。
傍から見ると危険人物感の高いコンビ、しかし彼らにはもう一つお互いを呼び寄せるもの――それは絆こそを力とする若者であるということを象徴するようなシェイクハンドは実に良い演出ですね。
◆7PJBZrstcc氏、執筆お疲れ様です。思い出の蘇るような作品をありがとうございました!



> 愛に病んだ獣たち

最早バーサーカー=森に生息するいきもの、の図式が生まれつつあるような偽りのスノーフィールド。しかも徐々に厄度が上がっている気が……
記録を読み解くことから語られる、とある勇者とその妻を見舞った悲劇の物語。夫がやがて老いゆくように、妻は徐々に獣と化し、世界に置いて行かれてしまった。
物悲しくなる冒頭から一変、サスペンスを加速して飛び越えたホラーの開幕。NPCである刑事の生々しい感想が一層不快感と、ラクスの顛末からの不安を煽られ、そして更に背筋の凍るような怪物の登場と、いくつも心に突き刺さる物を見せつけてくる今のラクスの姿に繋がるという。お見事な構成と文章です。
個人的に印象に残ったのは作中で使われた「聖なる献身」という単語。桜井光繋がりの小ネタとしてくすりとするはずの要素ですが、我らが大英雄のそれと違ってなんと悍ましいことか……
圧倒的筆力で背景の切なさを描かれたラクスと違い、純然たる化物のようなウェンディゴですが、出自を考えると結局こいつ自身はあれでも、確かに愛に病んだ獣とも言えるのですよね。考えさせられてしまいました。
◆GO82qGZUNE氏、執筆お疲れ様です。感情を揺さぶる作品をありがとうございました!



> 桃園ラブ&キャスター(溝呂木眞也)

帰ってきたウルトラマンメフィスト(違
当時の視聴者を土曜朝から憂鬱に沈めたウルトラマンネクサス前半、その大ボスでありながら後半には闇の中から光の側に舞い戻った溝呂木さんじゃないですか! お疲れ様です!(クレナイガイ風)
皮肉ってるみたいな言い方になってしまいましたが、一度は闇に堕ちた人がその闇を抱いて光になぁるって話は個人的に大好物なので溝呂木さんも例に漏れず。ラブ兄貴の想像する保育士とかしてそうな溝呂木さんは大怪獣バトルを参考に。
とはいえ、そう簡単に割り切れるはずもなく。明らかに心に影を残した彼を見て、その時自分が傍に居れば、他の世界の不幸にまで気づくことができればと思うのがマスターことラブ兄貴。
見方を変えれば傲慢にも近いラブの考えですが、そうではなく彼女はただ自然にそのような善性に満ちた人間、つい先日FGOに実装された天草四郎時貞の幕間で言及されたような、生まれついての聖人に近いのでしょうね。だからこそ彼女はプリキュアであり、光であり、人に戻れた溝呂木のマスターとなったのでしょう。
(小さいけど推定)プラズマレッ■キングと巨大戦を始めたことにはこれ流石に討伐令出ちゃうんじゃないかな……と心配にさせられましたが、もしそうなっても、彼女が傍に居ればきっと大丈夫……そう思わせてくれる暖かさがありました。
◆k7RtnnRnf2氏、執筆お疲れ様でした。燃えて癒される、あったかい作品をありがとうございました!


360 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 21:32:29 zlB3EtAs0

>Your wars

速報、遂に森以外にバーサーカーが!
ということで来年辺りに金ローで仲良く放送されていそうな映画コンビからヒロイン&ラスボスの登場です。
夏の映画、というだけでなく、宇宙からの落下物、そしてラブマシーンの生みの親である侘助がこんなモー娘。的ネーミングを与える由来となるほど渇望していた感情を題材とするストーリーなど続けて見たくなる映画ですよね。
映画はさておき、彗星落下を防ぐために奔走していたら、聖杯戦争に紛れ込んでしまっていた三葉。何やら聖杯戦争の知識も手に入れられなかった様子の上、サーヴァントが人間と意思疎通しない。大ピンチ。
見る分には巻き込まれ系参加者とはこういうものだとばかりに言語・場所・時間等々あらゆる齟齬に戸惑いつつも頑張って対処しようとする様は実に楽しいのですが、このままでは自ずと限界がありますね。危険人物の食い物にされてしまいそう。
しかし三葉の状況が追い詰められているほどに、あの成長速度を知っているだけに、完全に厄キャラであるはずのラブマシーンがある意味では頼もしい。
とはいえこいつが一番三葉を食い物にしているようなもので、命綱たるマスターの護衛程度はしてくれたとしても所詮はその場凌ぎにしかならない以上、三葉には助けてくれる誰かが必要なわけで……滝くーん! 早く来てくれー!!
◆As6lpa2ikE氏、執筆お疲れ様でした。ハラハラする作品をありがとうございました!



>貴方は次々死んでいく

救いのない無慈悲な運命を開幕から押し付けてくる冒頭。続くのはそれに押し潰されてしまった少年の慟哭染みた内面と、なお容赦ない世界と、故に自らが理不尽と化してしまったかつて少年であった怪物。
そして人外によって繰り広げられる虐殺の様相。矛盾した言い方ですが、もう理解できない狂気に堕ちているということがわかり易いほどに表現されている文章、凄いです。
しかし鬼のような虐殺を繰り広げたのはサーヴァントではなく、マスター。本物の鬼の登場でそんな意外な結末を明らかにする構成もお見事。
ということでジェイル&茨木童子。かつて人でありながら人喰いの化物になってしまった少年少女が異邦の街にて邂逅する、惨劇の幕開けですね。
作中でこれでもか、と最早救えない存在であることを示されたジェイルことリオはもちろん、なんだかんだ母の言いつけを守って鬼として振る舞っているっぽい、お菓子で餌付けできそうなチョロいポンコツイメージの強い茨木ちゃんも結局は鬼。異種族である人間とわかり合うことなど望むべくもありません。
サーヴァントまでこんな調子である以上、彼らに許される結末は化物として討たれるか、人間を殺し尽くすかの二択だけ。ハッピーエンドはあり得ないということに、彼らの犯した罪と理解し合えないことを理解しながらも、一抹の同情を禁じ得なかったのは自分だけでしょうか。
◆DpgFZhamPE氏、執筆お疲れ様でした。残酷ながらも素晴らしい作品をありがとうございました!



>あなたが誰かを殺すとき

一目で分かる異常な少年少女から一転。サーヴァントはともかく、今度のマスターは一見普通の女の子。
しかし例え偽りの両親、始まりは赤の他人、何日も寝食を共にした家族を殺され、その亡骸を目にして平静でいられるのは、やはり普通の感性ではありませんね。
原作でも見られる異質さを持つレイチェル。そんな彼女がスノーフィールドに喚んでしまった両親の死は、アメリカ都市伝説の殺人鬼少年ジェフ・ザ・キラー!
相変わらず殺人鬼と縁深いレイチェル。この先、出会う人々がジェフに殺され続けても表情が変わることはないのでしょうか……
サイコホラーとはこういうものだという不気味さと恐ろしさを醸し出して描かれた今作を読むとそのように確信させられてしまいそうですが、果たして。
単純な戦闘力でいえば、化物ではなく一殺人鬼アサシンであるジェフはほとんどのサーヴァントに遅れを取るでしょうが、一見敵を油断させるレイチェルの異質さと合わせれば恐ろしい脅威になりそうです。
◆iwVqxDO6jU氏、執筆お疲れ様です。背筋のゾクゾクするような作品をありがとうございました!


361 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 21:33:43 zlB3EtAs0

>『希望』

連続するアサシン候補話。いきなりの裏切りはなるほどまさに暗殺といった風情の展開。
さて裏切りの主体、すなわち今回の主役は世界を救うこと、を第一の目的に据えた二人の男。そのためならば一切の手段を問わず、汚れ役にも身を落とす覚悟を持った強豪ですね。
一人は最早聖杯戦争企画でもおなじみの衛宮切嗣。今回は珍しく、サーヴァント・アサシンエミヤとしての参戦ですね。
少なくともクロの家族としてイリヤを含むアインツベルン一家が存在するスノーフィールド、彼を寵愛する聖杯も激しく反応していますが、対面を果たしたとしてどうなってしまうのか。
もう一人は天願和夫。同盟者はおろか、場合によってはアサシンさえも切り捨てるつもりのこのマスター、聖杯抜きでも願望成就の準備があるという強かさです。
立ち回りの上手い彼だとかなり計画通りに事を運べそうですね。他のマスターは彼の話術、そして主従それぞれが用意するだろう謀略にに注意する必要がありそうです。
◆8YPze9cKXg氏、執筆お疲れ様です。行末の気になる作品をありがとうございました!




他にも投下して頂いた作品はたくさんございますが、大変申し訳ございませんか次の機会にまた感想の続きを述べさせて頂ければと思います。
感想さえ遅れ気味になって誠に不甲斐ない次第でございますが、順次お伝えさせて頂ければと思いますので、よろしくお付き合い願います。

繰り返しとなりますが皆様、ご投下本当にありがとうございました!


362 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 21:36:05 zlB3EtAs0

それと最後に。不肖ながらも企画主として、少々気になる点がございまして……

>>149-152で投下されました、『佐久間まゆ&バーサーカー』について、大変失礼ながら、◆AcG9Qy0MIQ氏にお伺いしたいことがあるのです。

『夢現聖杯儀典:re』様に、◆SWbhV464vU氏が投稿された登場話候補作である『佐久間まゆ&ランサー』(ttps://www63.atwiki.jp/letsrebirth/sp/pages/99.html)と、氏に投下して頂いた当SSにいくつか、同一キャラクターを描写した上での類似点とするにも、あまりに一致する文章及び表現が多々見受けられました。IFストーリーからの参戦という背景のストーリーまで一致しているとなると、どうにも偶然とは考え難いです。
そこで質問なのですが、トリップは異なりますが、◆AcG9Qy0MIQ氏はもしや、◆SWbhV464vU氏と同一人物で、以前の作品を手直しの上で投下されたのでしょうか?
もしそうであれば、敢えてトリップを変更する事情のあったところ野暮な真似をしてしまい、大変申し訳ございません。

しかし、◆SWbhV464vU氏は三点リーダを「……」で、一方で◆AcG9Qy0MIQ氏は「…」単体で使用されており、また一致する文章以外では◆AcG9Qy0MIQ氏は常に一文ずつ改行されているなど、同一人物と見るにはやや文章の癖に差異が大きいかと思われます。
もしも私の懸念が的中し、お二人が別人であるのなら、『佐久間まゆ&バーサーカー』の執筆に当たり◆AcG9Qy0MIQ氏は何の断りもなく他作者様の文章を盗用したということになります。
これは◆SWbhV464vU氏、及びに『夢現聖杯儀典:re』様に対して甚だしく礼を欠いた行為であり、私には真実を追求する責任があるかと思います。

そこで◆AcG9Qy0MIQ氏には、どのような背景で『佐久間まゆ&バーサーカー』を当企画に投下されたのか、ご回答をお願いしてもよろしいでしょうか。


363 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/11/28(月) 22:02:12 noZGw42I0
>> 362

はい、確かに私は、恥ずかしながら盗用をしてしまいました。

今回、◆SWbhV464vU様の作品の中にあった佐久間まゆがマスターの作品に

対して「このようなアプローチがあったか!」と感じ、自らの作品に一部引用してしまったというのが現状です。

かなり恥知らずで、礼儀を欠いた行動をしてしまったと深く反省しております。

たとえ影響を受けたとしても、もっとやり方があったと思っております。

申し訳ありませんでした。

余談ですが、それ以外の作品についてはそのような行為は一切行っておりません。

長々と失礼しました。

大変、申し訳ございませんでした。


364 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 22:32:36 zlB3EtAs0
>>362

ご回答ありがとうございます。
あまり当たって欲しくない予想でしたが、そうでしたか……とても残念です。
感銘を受けた作品のように書きたい、というお気持ちは幾らか理解できます。
しかし、そのために無断で流用し、事実上の盗作を行うというのは他書き手氏の努力を何より愚弄する、最も許されない行為の一つとなります。
他の書き手諸氏の信頼を預かる企画主の立場としては、一度たりとも許してはならない行為であると考えております。
貴重なお時間を割いた上で当企画に貢献しようとしてくれたことには感謝いたしますが、氏がこれまでに投下された候補作については全作品破棄とさせて頂きます。
その上で、したらば管理人氏にホストの開示とアクセス禁止を要求させて頂きます。これまでありがとうございました。



追記:まとめwikiの編集権限をメンバー限定に変更させて頂いたことをここに報告いたします。ご不便をおかけいたしますが、皆様のご理解をお願い申し上げます。


365 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:03:44 zlB3EtAs0

◆AcG9Qy0MIQ氏の『南条光&セイバー』、『佐久間まゆ&バーサーカー』、『手折られたスズラン』をまとめwikiから削除したことをここに報告いたします。
現時点では収録済みの候補作のナンバリングは敢えて動かしていませんが、後ほど未収録作品があると誤解されても困りますので時間のある際に改めて編集させて頂きます。

そんな状態で申し訳ありませんが、企画開始早々から間隔が空いてしまったので私も一作、以前他の聖杯企画様で投下させて頂いた作品の流用ですけど投下いたしますね。


366 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:04:38 zlB3EtAs0






 ――この未来は間違えている。

 収益がまるで合っていない。消費と繁栄の均衡が崩れ、成長期のままで止まってしまっている。
 停滞した精神。袋小路の世界。今まで支払っていたものに相応しい未来に辿り着かぬまま静かに終わり、腐敗して行く。

 今描かれたこんな世界が、完成(終わり)に足る美しい紋様(アートグラフ)と言えるのか?

 迷うことなどない。答えは否だ。

 だが、それならば――今日までに捧げられた犠牲は、何だったのか。
 明日を昨日に変えるための、礎となった先人達。彼らの想いに相応しい世界を築けなければ、人類はただの殺戮者だ。

 故に私は叫ぶ。世界に、人類に、ただ一言。「止まるな」と。
 しかし、そんな言葉だけでは届かない。何も変えられない。見せかけの安息という泥濘(ぬかるみ)に身を委ねた者達は、それだけでは決して足を動かそうとしない。

 だから私は聖杯に願う。彼らが自らの強靭な意志で歩み出すために、必要なものを。

 停滞を破るための――人類全てを巻き込んだ、大戦争を。






◆◆◆◆



 ……我こそは魔王ザミエルである。



 我こそは聖バルバラにして聖フーベルトである。






 人の作りし億千万の鉄血鉄火、その全てを纏いしこの世最後の戦神である。






 ……そして世界の変革に取り残され、既に役目を終えた旧時代の遺物である。

 魔眼の王の行く末を見届け、彼と共にこの世を去るのを待つのみの、ただそこにあるだけの人格である。

 

 何故か。それは我が身を望んだニンゲンという種に、もうこれ以上必要とされなくなったからだ。
 人が住む時代は移ろい変わった。世の中が戦争で決められていた時代から、暴力に頼らず、暴力に屈しない時代へ――その、過渡期へと。

 きっと人はこの先も、何度も何度も間違えて、何度も何度もニンゲン同士で争うだろう。傷つけ合い殺し合うだろう。戦争が起き、戦争が終わり、新たな戦争が始まるだろう。

 それでも時計の針は戻らない。特別な何かが世界を動かし、強大な暴力が世界を揺るがす構図は崩れ去り、何の変哲もない大勢の意思が世界を決める。そんなもっと先の時代へと、人の世は既に向かっている。
 これ以上暴力に頼る方向に進んで待つのは闘争ではなく、人の勇気も知性も介在できない、忌むべき作業としての殺戮だけだと直感したから。
 単なる殺戮者で終わらないための教訓として、礎として、進むべき道を決定づけるのに十分なだけの戦争を、既にニンゲンは体験して来たのだから。
 だから袋小路を抜け出して、人という種は次のステップに進むことを選ぶのだ。
 全ては、戦争(あたし)があったから――

 納得はした。だからあたしは英雄に鎮められ、今に至った。
 大好きなニンゲンを信じて、何もせず、ただ見守り黙って消えて行くだけの、神格すら手放した亡霊に。



 ――――それでも。

 この身を編んだヒトの想いを、この本分を尽くせる場所が、まだあるというのなら。

 ニンゲンが次のステップに進むために、まだ戦争が必要だというのなら。あたし達の知らない遠い世界で、あるべき積み重ねが足りずに、今も渇望されている場所が残っているのなら。
 そこに馳せ参じるのは、きっと――――英雄(ニンゲン)に対する、裏切りではない。

 ならばあたしは……その呼び声に、応えよう。

 止まった時計の針を、動かすために。


367 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:07:04 zlB3EtAs0

◆◆◆◆



 一発の銃声。それを引き鉄に紛糾する悲鳴と怒号。跳ねる血飛沫、香る硝煙。

 此方と彼方、敵と味方の二陣営に別れた人間同士が繰り広げる、銃撃戦。

 それは、数多の移民を受け入れる“この”スノーフィールドが抱える暗部。
 行き場を無くした者達がこの箱庭の街にも馴染めず、吹き溜まり形成された黒社会。
 その住人が組織した一団と警察組織が銃撃戦を繰り広げることも、決してあり得ないことではなくなってしまった。

 ただ――その夜の事件は少々、特異だった。

 あまりにも決着が早く、一方で動員された人数に対し、あまりにも犠牲者が多かったのである。
 それも第三者を巻き込むことなく、激突した組織の構成員と警察官からのみ死者が出た。



 そして、何より特筆すべき奇妙なことは――――死亡者と消費された弾薬の総数が、ピタリと合致していたことであっただろう。



◆◆◆◆



「……あれが、君の加護か」
 夜街を歩いていた最中、そんな銃撃戦が偶然視界に収まるところで始まって、すぐに終わったのを目撃した白衣の男は、傍らの欧州系の女に語りかけた。
「撃てば当たる殲滅戦。随分と過激な聖地だ」
「そうね。狙いやすくて、当たりやすい。それって銃を撃つ者からしたら、悪いことが起き難くなっていると言えるんじゃないかしら」
「成程。外れ易くなる、よりは幸せだろうな。納得したよ。だが……」
 答える自身の心臓が、躍動することもなかった事実を踏まえて、男は眼鏡越しに鉛色の髪をした女を見る。
 鉄十字のペンダントと、頭の上には古めかしいフリッツヘルム。いかついパンツァージャケットに似合わない痩身を包んだ若い女は、誰のモノとも知れない血のニオイと誰のモノとも知れない肉のニオイが充満し、その隙間を硝煙が掻い潜って昇る酸鼻な空間を見て、無邪気な少女のように笑っていた。
 そんな彼女の姿に、あるいはすれ違いの不安を覚えながら、男は問う。

「――これが、君の見たいものだったのか? ガンナー」
「少しだけね、トワイス」
 互いに相手の名を呼びながら、男と女、聖杯戦争に臨むマスターとサーヴァントは、目の前で起こった命の攻防の感想を交わす。

「仕事や義務だからなんて、作業感覚を理由に引かれた引き鉄じゃなかったわ。最初の一人は自由に生きたいから、戦おうとして撃った。次の一人は死にたくないから撃った。生きるために撃って、撃たれて死んで、生きるためだけに生きようとして撃った。最後はみんながみんな、生きようとしてもがいていた。銃に命を預けて、一発の弾丸に奇跡を願った。
 あれがあたしの見たかったもの。死の瞬間に見える命のきらめき。本当の魂の輝きよ」
 陶然とした表情で、情熱のままにガンナーは語る。
 しかし、それもすぐに下火となった。代わって募った不満を隠す様子もなく、ガンナーは続ける。
「……だけど、早回ししちゃったから。それだけで、すぐに終わってしまったわ。本当はもっと見たかった。もっともっと見たかった。あたしもあなたとおんなじよ、トワイス」
 それからニコリと笑みを浮かべて、ガンナーはトワイスの名を呼んだ。

「あんな小さな争いじゃ物足りないんでしょう? 顔に書いてあるわ」
「そうだね……きっと、そうなんだろう」
 ああ、あんなものでは駄目だ。
 たったあれだけでは、きっとガンナーのチカラなど関わらずとも、成果が出る前に終わってしまう。むしろガンナーが言うような必死さ、死を前にしたきらめきすら、そこには生まれなかったことだろう。
 そんな思考を巡らせるトワイスを見て、ガンナーは朗らかに笑う。

「うん、そう。あたしも殲滅するためのものではない、生存するための戦争が好き。人が生きるために生きる闘争が好き。その知性と勇気を振り絞って、前へと進む熱が大好き」
「そして、その熱で鋼へと鍛えられて行く、脆弱な人間の可能性に魅入られている……か」
「そう! そうよ、その通り」
 上機嫌に笑っていたガンナーは、これ以上近づくと警察の生き残りに目を付けられる、という位置でピタリと立ち止まり。
「……だから正直、この聖杯は気に入らないわ」
 搾り出すように嫌悪を吐き捨てたガンナーは、豊かだった表情を引き締めて、鉄のような冷たい凄みをその美貌に醸し出していた。


368 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:09:00 zlB3EtAs0

「あなたがかつて見つけたみたいに、生きているってことはそれだけで奇跡のように素敵なことよ。でも、それはただ命があるだけで特別なわけじゃない。命なんてものはもっと一般的で、普遍的なものなの。奇跡なんて言えないぐらい、みんな簡単に死ぬものなの。価値も意義も、そんな重さに関係なくあっさり崩れるものなのよ。
 そんなニンゲンの魂を輝かせるのは勇気と知性で、それは命そのものではなくて、生きている自分というパーソナリティにこそあるのよ」
「……それを奪われた命と魂の、残された本能だけの輝きなんかじゃ、君には不服だったということか」
「そうね。確かに本能は大切だけれど、やっぱり勿体無いわ。ニンゲンの命を、本当の人生じゃなくて嘘の物語だけで終わらせるのなんて」

 まるで人命を軽視するような物言いで、しかし同時、確かに人間を讃歌したガンナーは、そこで表情を険しくした。
 命の育んだ価値を奪い、代わりに縦割りの殻を被せる聖杯は、どうも彼女のお気に召さないらしい。

「それでも、必要なんだ」

 だから、釘を刺す意味を込めて、トワイスは強く宣言していた。

「……仮令、この私の手にできないモノだとしても」

 抑揚のない呟きと共に、トワイスは自らの掌を見やる。

 ――この身は、かつて実在した“トワイス・ピースマン”という人物を模したNPCが、生前(オリジナル)の記憶を取り戻してマスターとなったイレギュラーなモノ。

 自意識に目覚めてからの自分は、ムーンセルで行われていた生存トライアルに自らをマスターとして参戦し、聖杯へと至ることを目的に活動した。
 この再現された聖杯戦争に迷い込んだのも、その過程で偶然、時空の歪みに巻き込まれたためだ。

 しかしムーンセルの最終目的は、人間の魂の観測結果を記録(タイプ)すること。
 そして人間の魂そのものではなく、網霊(サイバーゴースト)の亜種であるトワイスは、ムーンセルにとって単なる不正なデータに過ぎない。
 もしも、熾天の檻に届いたとしても。トワイスが中枢に触れようとすれば、その正体に気づいたムーンセルにより仮初の魂はたちまち解体されてしまう。

 優勝したところで。偽りの存在でしかないトワイスは、聖杯の使用権を得ることができないのだ。

 それでも、トワイスは既に自らの為すべきことを見極めていた。

「これが、最後のチャンスだというのなら。私は、あるべき未来を導かねばならない」

 この偽りの街で新たに契約したサーヴァント、ガンナーには、最高ランクの千里眼スキルが備わっていた。
 透視や読心を越え、他者の背負う因果まで見抜くその神の視座は、トワイスにとって重要な事実を見抜いていた。

 口伝されたそれは、従来と異なり、この時間軸のSE.RA.PHでは死したトワイスはNPCとして再生されないということ。

 故にトワイスにはもう、失敗は許されない。
 この戦いで、願いを託せる者を見出すか。それが叶わなければ、いずれ期待に沿う勝者が到来するのを待ち受けるために、熾天の檻まで登り詰めるか。

 どちらが到達点となるかはわからないが、それまでに万が一にも自らのサーヴァントの手綱を握り損ねるなど、以ての外だ。

 とはいえ、トワイスも自分達主従が道を違える心配などはしていない。
 何故ならこのサーヴァントが語ったのは、かつて“トワイス・ピースマン”が死の際に見出した答えそのものだったからだ。

 それでも、意思は伝える必要があった。この願望の切実さを、それに応えてやって来た戦女神に再び提示して、足並みだけは常に揃えておく必要が。
 聖杯戦争においてはどんな油断が命取りになるのか、わからないからだ。

 ガンナーはそんな己のマスターに、ニコリと微笑んだ。

「わかっているわ。必ずあなたの祈りに応えられる人間に、この聖杯を掴ませる。だってあたし、元は戦争の神さまなんだもの。一肌脱がないわけにはいかないわ」

 彼女の真名はマックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ。
 トワイスが生きたのとは異なる世界で生まれた、銃の精霊。
 そして二度の世界大戦を経て、戦神の域へと至ったもの。


369 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:10:18 zlB3EtAs0

 世界の裏側に身を潜めた神々よりも遥かに若く、しかしそれでも時代の推移に追いつけずに信仰を失い、堕ちたカミ。
 最終的には自らの神格をとある一人の英雄に与えたことでその身を貶め、サーヴァントとしての規格に当てはまるようになった今も、彼女はかつて自らに架した責任を手放さない。
 生まれ落ちた世界では役割を終えたことを認めた今も、人類に戦争が必要なのなら――こうして他の世界にまでやって来て、やがて人類に自らが必要なくなるその時まで、尽力しようとしてくれている気高きカミ。
 それがトワイスのサーヴァント、ガンナー。

「ただ、“この”スノーフィールドは折角良い感じに銃社会だから本当に勿体無いなって。確かに国家と比べたら不足も良いところだけど、戦争っていうのはそういう大きな集団でやるものなのよ。一人一人の人間がお互いの人生を懸けて、必死になって行うものなの。NPCじゃそのチップが取られちゃってるし……参加するのがどんなに強い英霊と魔術師の集まりでも、たったの数十人でドンパチするんじゃ、陰惨さも卑劣さも、容赦のなさも物足りないわ」
「……それは君がこれまで、当事者ではなかったからだろう」
 このサーヴァントとの相性はすこぶる良い。そのように理解しながらも、ただ一点のズレを埋めるために、トワイスは言葉を贈る。

「君は銃の精霊として、戦争の神として、誰かに肩入れすることはして来なかった。人間を愛し、戦争を愛する君は、戦場の誰もに等しく加護を与えた。それが君の役割だった。
 だが今回は違う。君は英霊の座から来たサーヴァントとして私と契約した。祈りを捧げる誰も彼もに平等であらねばならない神でも精霊でもなく、自らの願いのために戦う一人の兵士として聖杯戦争に加わった」

 そこで一息。区切りを入れたトワイスは、神霊として欠落した結果ガンナーとして現界し得たマックルイェーガーへと、祝福の言葉を用意する。

「初めて、最初から当事者として関わるこの小さな戦争はきっと……戦神(きみ)に、かつてない成長を齎すはずだ」

 少しだけ、ぽかんとした表情。
 ガンナーは、マックルイェーガーは考えたこともなかったのだろう。戦争がヒトに与える熱を愛し続けていた彼女は、それを見守り育むのが役割で、それを自らに任じ律儀に守り続けて来た彼女には、己が兵士として関わるという発想自体がなかったに違いない。戦の神が人の子の争いで、どちらかの陣営に肩入れして自ら人の子を撃ち殺して回るなど、不公平が過ぎてあってはならないことだったのだから。
 しかし、堕ちた今の彼女は英霊であり、その役割はサーヴァントである。
 自ら人の子を撃ち殺して回るだけの理由と権利を持った、一人の兵士なのだ。

「……そして、これで終わりではない。これは始まりなんだ。私が願い、君が叶えようと応えてくれた、人類全てのための大戦争の。
 到底満足できないこれはその引き金となる、最初の闘争、小さな紛争だとでも思ってくれれば良い。
 君の愛する確かな自我を持った者達との、この小さくとも本物の戦争のことを」

「うーん……」
 トワイスの訴えを受けて、ガンナーは暫しの間逡巡したが。やがて、頷く。
「……そうね、トワイス。本物のあたしは神さまで、人間が用意した鉄火場に飛び込むのは許されても、自分が火種になるようなことはできなかった。争いのきっかけになる引き鉄に指をかけるのは、銃の神として許されることじゃなかったわ。
 だけど、ここにいるあたしは英霊の座から召喚されたサーヴァント。一種の特例とも言うべきアバター。みんなに加護を与えるのではなくて、己の望む結末を勝ち取りに来た参加者……自分で引き金を引いて良い、一人の兵士。こんな形で戦争に関わったのは、確かに初めてね」

 そこでガンナーは、意地の悪い猫が浮かべるような、稚気の中に獰猛さを潜めた笑顔になった。

「なら、このあたしもたっぷりと堪能させて貰おうかしら。勇敢な兵士たちがいつも見ていたもの、感じていた気持ち。絶望と恐怖、屈辱と悲しみを。それを乗り越えた先にある、達成感と高揚感、爽快感と優越感を、この戦場(スノーフィールド)で」
 そんな彼女の様子に、トワイスも微笑み返した。
「ああ、それで良い。その神格を欠落したからこそここにいる君が、再び人類に加護を与える神の座に至るまで……君自身が、戦争の中で成長する機会に恵まれた運命を、私は尊ぶ」

 語らいはそれで終わった。成すべきことが明白となり、それ以上言葉を交わす必要がなくなったからだ。


370 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:12:22 zlB3EtAs0



 ――さあ、まずはこの街から始めよう。

 人間が人間として、勇気と知性を持って更なる飛躍を遂げるために。



 ……今こそ、戦争を。



 一心不乱の、大戦争を。





【出典】
 レイセン

【CLASS】
 ガンナー

【真名】
 マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ

【属性】
 中立・善

【ステータス】
 筋力B 耐久D 敏捷C+ 魔力A 幸運B 宝具E

【クラススキル】
対英雄:C-
 ガンナー本人を除く、その戦闘に参加しているサーヴァントの筋力、耐久、敏捷をそれぞれ1ランクダウンさせる。

単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。Bランクならば二日間は現界可能。
 但し宝具を使用する場合など、多大な魔力を必要とする行為にはマスターの存在が必要不可欠となる。
 また、霊格に致命的な損傷を受けても短期間ならば生存できる。

【保有スキル】
神性:C -
 神霊適正。元は神の座に至った精霊だったが、時代の推移によって神格を落とし、更に魔眼王との契約によって大幅なランクダウンを招いている。
 但し、彼女は星の触覚たる自然現象の擬神化ではなく、「銃」という人造物の概念に向けられた人間の想念から発生した新時代の精霊であり、ランクに関わらず星(ガイア)ではなく霊長(アラヤ)に属している。
 そのため、霊長としての属性を持つ相手と間では他の神性同様に働くが、星としての属性そのものは有していない。

神権冥利(銃):EX
 銃という概念に人類が捧げてきたあらゆる努力の結晶。同概念の擬神化存在として受け取ったその恩恵を扱うことができる、神の特権を示すスキル。
 射撃やクイックドロウ等、銃の扱いに関連するスキルの全てを、A+ランク以上の習熟度で内包する複合スキルとして機能する。
 さらに後述の宝具により他者に加護を与えている間に限り、該当するスキル保有者の想いに応える形で、そのスキルをランクアップさせることができる。
 特定個人に対してなら、新たなスキルを素養と信仰に応じ、最高Aランク相当で即習得させることすら可能。

千里眼:A+
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 透視、読心すらも可能とし、更に捕捉範囲内に存在する他の銃の所有者の視界をも、全て己の物として並列に捉え、挙句は相手が背負う因果すら一目で見通すことのできる、神たる者の視座。

勇猛:A
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

戦闘続行:A+
 決定的な致命傷を受けることがない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 元が戦神であったガンナーの場合は単独行動と合わせて、魔力か戦意が枯渇しない限り、胸を貫かれても問題なく戦い続けることが可能。


371 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:13:37 zlB3EtAs0

【宝具】

『億千万の鉄血鉄火(インフィニティ・ガンパレード)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:99 最大捕捉:1000人

 銃と戦の神であるガンナーの権能が宝具化したもの。
 
 空を埋め尽くしてなお余りあるほどの人の作りしあらゆる銃砲を眷属として従え、レンジ内のあらゆる空間へ瞬時に召喚し使役する。
 これら眷属である銃火器は神秘を帯びてサーヴァントを殺傷せしめ、またガンナーの意志一つで同時にそれぞれが標的を狙い射手が不在でも発砲することができる。
 但し発動の燃費は良いが召喚には当然魔力を消費するため、大規模な展開は多用できない。
 また神霊の権能由来のために神秘としてのランクは極めて高いが、弾丸一つ一つの実際の威力は銃火器の種類に依存するため非常にばらつきが大きく、更に強力な眷属ほど召喚や維持にかかる魔力量が大きくなり、希少な銃火器ほど一度に多くを呼び出し難くなるなどの制約は存在する。

 これらに加えて、権能として銃砲による攻撃の幸運判定に有利な補正を与える場の形成効果も兼ね備える。更に意識することで、特定個人により強い加護を与えることも可能。
 更に、あくまで火薬のみで実体弾を飛ばす、弾頭が電子機能を持たない代物に限られるが、新しく手に取った銃火器類も眷属として宝具に取り込むことができる。また、逆にガンナーの眷属としての神秘を保持したまま、これらの内の一部の支配権を他者に譲渡することも可能。

 なお、銃とはあくまで人が一個の命を撃つためのものであり、どんな破壊力と捕捉範囲を誇ろうとも、ガンナーの眷属として召喚される以上は対人宝具に分類される。
 


【weapon】
『億千万の鉄血鉄火』

【サーヴァントとしての願い】
 また、人が生きるために生きられる素敵な戦争を見たい。そのために必要とされているのなら、戦の神として一肌脱ぐ。

【人物背景】

 銃と戦争の女神。本名は長いので、親しい者からはマックルと呼ばれる。
 銃の精霊として生まれ、世界大戦を経て戦神へと至った存在だったが、時代の推移によって信仰を失い、様々な先進技術を研究する“組織”に精霊工学の被検体として捕らわれる。
“組織”が促す科学技術の進歩により、やがて戦場は殺戮という行為に取って代わられ、生き死にだけの戦争に成り下がってしまう未来を予見したマックルは、戦神として愛する戦争を守るために“組織”の打倒を狙い、協力するフリをして力を蓄えようとするも失敗。その過程で出会った二代目聖魔王にして魔眼王・川村英雄(ヒデオ)に“組織”との戦いを託すために、東京で起こった“組織”の関わるテロの現場を聖地とし、事件を大幅に加速させる。そして事態の収束のために現れた彼に討たれることで彼を表舞台でも英雄とし、“組織”に対抗できる存在に仕立て上げようとするが、自らが伝えた人間の勇気と知性について逆に説き伏せられ、自らは役割を終えたのだと悟って消滅しようとする。
 しかし神でも精霊でもなく、ただ友人として消えないで欲しいというヒデオの頼みに心動かされ、彼と契約。役目を終えた自分を世界の存続させる最低限の信仰をヒデオから貰う代わりに、ヒデオへ自身に残されていた神格を譲渡して、二代目聖魔王の円卓を囲む精霊の一人となった。

 本来は英霊の範疇には収まらない存在であったが、他者へ神格を譲渡したことで神性を貶めサーヴァントとしての召喚が可能となっており、自分達の世界と違って人間が前に進むための戦争が足りていない世界に必要な戦争を授けるため、トワイスの下へと召喚された。


【クラス補足:ガンナー】
『砲兵』のクラス。 弓兵(アーチャー)から派生したエクストラクラス。飛び道具の中でも、銃火器の操作に特化した能力を持つ近代以降の英霊が該当する。
 クラススキルとしては、三騎士から外れたために対魔力を喪失し、代わって銃という「闘争を作業に変え、英雄という概念を戦場から駆逐する要因の原点となったもの」である武器を扱うという性質から対英雄を獲得し、また単独行動も引き続き保持している。
 著名な該当者としては『白い死神』シモ・ヘイヘ、『ホワイト・フェザー』カルロス・ハスコック、『ビリー・ザ・キッド』ことウィリアム・ヘンリー・マッカーティ・ジュニアらの名が挙げられる。


372 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:16:32 zlB3EtAs0
【基本戦術、方針、運用法】

 砲兵だけあって、距離を取って遠距離砲撃を加えるのが定石となる。種類の豊富な銃火器と最高ランクの千里眼もあって遠距離戦は得意中の得意であり、多くのサーヴァントを相手に優位を期待できる。
 また優秀なスキルの助けもあって近接戦闘でも充分な実力を備えており、単独行動と戦闘続行の重ね合わせによるしぶとさと、トワイスが回復のコードキャストを得意としていることの相乗効果で場所や距離を選ばず強気に戦うことが可能。
 しかし場所を選ばず戦えるとしても、宝具となる銃砲の一つ一つはあくまで通常の近代兵器が神秘を帯びただけの代物のため、通用しない相手にはとことん通じない恐れがある。

 とはいえ単独行動のスキルを持つことから『■■■■』も戦闘での同時運用をし易いため、難敵は避けて予め弱点を補えるような『■■■』を入手すると言った手法で対処は充分に可能。基本的な性能が高いため、相性が悪い相手と出会してもそこまで戦い抜くことが充分に可能だろう。
 また宝具の効果でストックしている大量の銃火器の一部を自由に他者へ譲渡することができるため、マスターにサーヴァントへの殺傷力を持つ武器を与え、しかも加護を与えることも可能。
 流石にトワイス個人で扱えるレベルの銃火器で倒せるようなサーヴァントはまず居ないが、それでも牽制の一つを持てることは万全な攻勢に繋がる利点として数えられるだろう。

 元々ガンナーのメインウェポンが銃であることから神秘の秘匿を図り易いという利点が存在するため、他のサーヴァントより人目を気にせず攻めに行ける強みもあり、更に最高ランクの千里眼もあって先手を取り易いため、本来は『■■■』の早期確保も兼ねて積極的に攻める方が好ましいと言えるだろう。
 但しトワイスが聖杯を掴むことができず、代わりに聖杯を託すに足る人物を見出すという必要がある都合から、実際は先手必勝よりも他者の観察に重点を置くこととなり、最適な戦術からは外れてしまうことだろう。



【出典】
 Fate/EXTRA

【マスター】
 トワイス・H・ピースマン

【マスターとしての願い】
 全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させる

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 医師としての優れた技能を持つ。
 そのためか回復に優れたコードキャストを有する。

【人物背景】
 実在した「トワイス・ピースマン」という人物を模したムーンセルのNPCが、生前の記憶(正確に言えばデータのオリジナルの記憶)を取り戻したイレギュラーな存在。

 彼の元となった「トワイス・ピースマン」は、かつてアムネジアシンドロームという病気の治療法を発見するなど、数々の功績を残した偉人。戦争があれば常に戦火の中に身を投じ、人命救助に尽力した戦争を憎む人物というのが表向きの評価だが、実際の彼は戦争を見るたび憎悪や焦りに襲われ心臓が活発的に躍動する“病気”に苛まれ、正義感でも義務感でもなくその痛みを和らげる為に戦地へ赴いていた。

 自身の戦争に対する常軌を逸した殺意に疑問を抱き続けるが、バイオテロに巻き込まれ死を迎える間際、彼は自分が70年代に起きた民族紛争の戦争孤児であったことを思い出し、疑問への解答として戦争の中で必死に生きようともがく命の強靭さを垣間見たことで「戦争」とそれが生む成果を否定しきれなかったことに思い至る。

 NPCとして自我と記憶を取り戻した彼は、停滞した今の世界に絶望する。戦争は欠落を齎すが、だからこそ欠落以上の成果を齎すし、齎さなければならない。然るに今の停滞した世界はどうか? それまでに積み重ねた欠落に見合うほどの成果を得られていないではないか。
 そして欠落を埋めるほどの成果を得られないならば、さらなる欠落をもってさらなる成果を生み出さなければならない。そんな偏執的な思考の下、彼は聖杯の力で全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させ、現在の世界の停滞を打破しようと、当時ムーンセルで行われていた生存トライアルに挑んでいた。
 霊子ハッカーの適正はあるものの、その実力は最弱クラス。 しかし死んでもまた再構成されるというNPCの特性を利用して、幾度となく聖杯戦争を戦い抜き、百を優に超える戦いを繰り返す。その過程の中で徐々に実力も磨かれていった。
 そして幾度もの繰り返しの中、偶発的にアリーナで白紙のトランプのデータを取得。それはやがて、トワイスを偽りのスノーフィールドの聖杯戦争へと誘うこととなる。


【方針】

 ガンナーに当事者としての戦争を体験させるためにも、他の参加者を発見し、戦う。
 その過程で、自らの掴むことの出来ない聖杯を勝ち取り、代わって全人類に戦争(成長)を齎してくれる後継者を見出す。
 もしも今回期待に沿う者が見つからなかった時には、自らが熾天の檻に座すことで、後継者となる次代の勝者の到来を待つ。


373 : ◆aptFsfXzZw :2016/11/28(月) 23:20:36 zlB3EtAs0
以上で投下を完了します。
『Gotham Chalice』様に登場話候補として投下させて頂いた『トワイス・H・ピースマン&ガンナー』の再投下となっております。


それと、もう二作品だけですが、ご投下頂いた作品の感想をば。

>勿忘草

天使と悪魔、そして創造神達の離別物語――当企画初の純粋なエクストラクラスの候補話は、いきなりの大スケールで展開が始まりました。
そんな背景からの、どこにでもありそうなのどかな日常の風景の落差は、ほんの少しの安らぎと、しかしそれも偽りでしかないという逆説的な悲壮感の高まりを与えてくれますね。
大勢のため、ただ一人の生贄になろうとするフィアと、彼女にかつての伴侶に等しい女性の姿を重ねるアハシュエロス。天使と称される少女が神を従えるという矛盾は、しかしこの二人こそ主従なのだという説得力を与えてくれます。
愛故の覚悟を決めたフィア(天使)の行末に、アハシュエロス(神)の祈りが通じますようにと、見ている側も祈らずにはいられません。
そしてお互い、見た目以上に年齢差がありますが、主従というだけでなく孫と祖父にも重ねて見られるような関係性も見えますね。今はアハシュエロス側からの一方通行でしょうが、彼もまた、フィアを心から案じてくれる人なのだということは充分伝わってくれていると信じたいです。
◆GO82qGZUNE氏、執筆お疲れ様です。悲壮ながらも一抹の希望を感じられる、素晴らしい作品をありがとうございました!



>真紅&セイバー

沢城さん声の父よ認知せよな娘コンビ。外見も適度に共通する要素と、サイズ差も含めてしっかり差別化もあって並ぶと実に映えそうです。
しかしNPCロール・アンティークって前代未聞なのでは……w 良い意味で度肝を抜かれました。
FGOだとチョロい人の印象が強いモーさんですが、そこでも言及されApocryphaで描かれたように、本来の彼女はとても扱い難い人格のサーヴァント。
それにしても男でも女でもなく、騎士と任じた関係を築ける真紅はその点でも相性の良さそうなマスターですね。人間ではなく、造られた命同士であるということもモーさんの軟化に一役買っているのかもしれません。
サーヴァント狙いに絞る、という真紅も、それを承諾するモーさんも、二人の間に通じる気高さというか、根はいい子な感じがしてとても良いですね。
◆wFkyuCOTbQ氏、執筆お疲れ様でした。愛と誇りと面倒臭さとで素敵な女の子たちの魅力が存分に発揮された作品をありがとうございました!



最後にもう一度、◆GO82qGZUNE氏並びに◆wFkyuCOTbQ氏、そして他の皆様方も、ご投下ありがとうございました!


374 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:48:13 i22QKv/A0
投下します


375 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:48:25 i22QKv/A0
 もう、何も見えなかった。もう、何も感じられなかった。
子供の頃から過ごして来て、張りぼての威光と権力を誇った企業によって開発されて来た、馴染みのある街並みも。
俺の邪魔をし続け、時には共に戦う事もあり、そして、互いのどちらかが死ぬ事でしか決着の付けられない死闘を演じていた男の顔も。今の俺には、見えずにいた。

 最初の方は、痛みがあった。だがそれすらも最早遠かった。自分の身体から、絶対に消え失せてはならない力が、消え失せて行くのを俺は感じていた。
命が、砂を掴み、指と指の間から零れ落ちるように俺の身体から抜け落ちて行くのをハッキリと感じ取っていた。もう、死ぬのだろう。それだけは事実だった

 薄紙を通して見るような靄が、消えたり現れたりを繰り返し、明滅していた。
俺の事を抱きかかえるその男は、両の瞳から零れ落ちる涙を堪えていなかった。堪える真似すらしていなかった。感情の赴くままに泣く事を己に許し、許されるままに肩を震わせていた。

「何故泣く?」

 オーバーロードは滅んだ、己の研究こそが全てと豪語する愚かな男も俺の手で始末し、そして、この俺自身も死ぬ。
果実、未来、そして『舞』。その全てが、俺を殺した目の前の男は得られると言うのに。子供みたいに、こいつは泣き続けていた。

「泣いていいんだ……!!」

 奴は答えた。次の言葉を紡ぐのに、いくばくかの時間が必要だった。

「それが俺の弱さだとしても……拒まない!! 俺は、泣きながら進む!!」

 その言葉の意味を理解するのに、今の俺には時間が掛かった。考える事が億劫になる程に、今の俺は限界の状態だった。
だが、間に合った。何とか、奴の言葉を理解する事が出来た。次の言葉が最期の言葉になるだろう。怨み言を言うのは、性に合わない。本当の勝利者には、賛辞を以って送り出してやりたかった。

「お前は……本当に、……強い」

 力の入らない手で拳を作り、奴の胸を叩いてやった。
最期の最期で、この男の強さを、俺は解ったような気がした。感情的で、泣きやすく、甘くて、正義感と言う物に振り回され、そして事あるごとに裏切られて。
それでも、この男が挫折し、決意を違えた事など一つとしてなかった。この瞬間まで己を信じ、世界の現実を知りつつも前を見続け、時に強い風が吹いて来ても歩き続けて。
理想とした世界は、殆ど同じだった。目指す為に歩んだ道だけが、決定的に俺達は違った。だがこの男も俺も、理想の世界に向かって歩む為の力は、同じだった。
その理想が正しいと信じ、理想が曇り掛けても折れ掛けても、それでもそれに向かって歩き続ける力。其処だけは、俺もこいつも同じだった。

 ならば、俺が負けるのも有り得る話だった、と言う事なのだろう。
視界の端が、夕闇が空を覆って行くように黒く暗くなって行く。視界の闇が、全てを覆い尽くす前に奴何か言葉を送れて良かったと、俺は素直に思う事にした。
葛葉紘汰……俺の目指さなかった、目指す事のなかった理想を選び、それを掴んだ男の姿は、俺の思考と視界の黒に塗りつぶされ、見えず、感じられなくなった。

 ――『駆紋戒斗』の一生は、かくの如くに終わりを告げた。


376 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:48:41 i22QKv/A0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「もうおまえたちの正義ごっこにつきあうのはごめんだ……」

 ボクは、それが本心で言ってるのか、それとも苦し紛れに口にした言葉なのか、解らなかった。
計画の為、計画の要であり、そして最大の障害にもなり得る者達の本質を見極める為、彼らに混じって行動を共にする、と言う間諜をしていた間は、
ボクにとっては四千年ぶりの、心の底から温かく楽しいと思えた時間だった。姉さまの望んだ世界の為、憎悪してもし足りない人間への復讐の為に動き続けた四千年の時間。
ボクの一生で考えれば、彼らと過ごした時間は、瞬きにも満たない短い時間だった。だけど、楽しかった。四千年ぶりにやって見せる真心からの正義の真似事は、
鉄より硬く鋼よりも堅牢だと信じていたボクの決意を揺るがす程の力があった。

 ……それでもボクは、ボクの道を歩んだ。
自分の選ぶ道こそが正しくて、自分の選ぶ道こそが理想であると信じていたから。連中の正義ごっこよりも正しいと、本心から思っていた。
ボクの命、ボクの意思、この二つが今まさに消えかかっていると言う今わの際においてもなお、彼らと過ごしたあの短い時間が無為で無駄だったのかと、今でもボクは悩んでいる。

「さっさと輝石を、壊せ。でないと、デリス・カーラーンは離れていく」

 ボクの剣の師匠である男の息子……ボクにとどめを刺した、シルヴァラントの神子の幼馴染だと言う剣士が、驚いた様な反応をした。

「早くしろ!! ボクも、ボクでなくなる……」

 この葛藤から、解放されたい。
自分が歩んだ歴史の全て、自分の信じた理想の根幹、それらと彼らを比較しようとする度に、ボクの全てが否定され、崩れて行くような錯覚に陥って行く。
それは、刺されるより、斬られるより、殴られるよりも痛くて苦しいものだった。それに悩まされるぐらいなら、ボクは消え去る事を選ぶ。

 彼らの正義ごっこに付き合っていく中で……いや。
ボクの一生で初めて出来たとも言うべき、他愛のない事を話しあえ、冗談を言い合え、同じ悩みと苦しみを共有出来た友達が、止めを刺すように促した。
ジーニアス、と言う名をしたハーフエルフの少年がそう言ったのだ。その名に違わず賢い奴だった。殺さないで、と言わなかったのだから。
やはり、ボクの友達に相応しい奴だったらしい。彼はボクの事を、よく解っていた。

 わかった、と言ったのは、神子の幼馴染。ボクの方へとゆっくりと歩を進めて行く。誰も彼もが、彼を止める事はなかった。ボクに下す結末を、待っているようだった。
それを見て、ボクは笑みを零した。もう、こんな微笑みの仕方、出来ないと思っていた。浮かべようにも、忘れていたからだ。
久しぶりの感覚だった。彼らが生まれるよりもずっと昔……英雄などと持て囃されていた時代に浮かべていた笑みを浮かべたのは、いつ以来の事だったろう。
これが、最期の言葉になるだろう。歩み寄って来る敵対者であり……友達でもあった少年、ロイド・アーヴィングに向かって、ボクは口を開いた。

「さよならだ、ボクの影。……ボクが選ばなかった道の、最果てに存在する者」

 きっと、彼らはボクの苦悩や味わった苦い過去、挫折を全部理解しているのだろう。
ハーフエルフと言う種に生れ落ち、それ故に味わった苦しみも、人の身でありながら彼らは共有出来ているのだろう。
理解していてなお、ボクの選んだ道が許せなかったからこそ、ボク達はこうして戦い合い、その果てにボクは消滅しようとしている。

「ボクはボクの世界が欲しかった。だからボクは後悔しない。ボクは何度でもこの選択をする」

 だがボクは、自分の選択が間違っているとも思ってないし、その選択を勝ち取る為に歩んで来た道筋に対する後悔などもしていない。
ボクは、ボクの思うがままに邪悪を貫き通し、ボクの思うがままの正義を主張し続けた。
十回、百回、千回死んで、その都度生まれ変わっても。ボクは、自分の歩もうとしていた未来が間違いであったなどと、絶対に思わない。

「この選択を、し続ける!!」

 それを聞いた瞬間、ロイドは、その手に握る透き通った青い剣身の剣を、中空に浮かぶ輝石に振り落とした。
かん高い音を立てて、クルシスの輝石は砕け散り、その粒子が、彼の回りを衛星のように旋回し続ける。

「ここに……、俺たちの世界に、いてもよかったのに……。バカ野郎……」

 ロイドにとって、ボクは、彼の人生のありとあらゆる所に渡って間接的に苦しめて来た元凶だと言うのに、それでも、彼はボクの事を赦すつもりだったらしい。 
全く、バカはどっちなのだか。最後の最後まで、呆れるくらいお人好しな奴だと、消滅を続けながらも、ボクはそう思った。

 ――『ミトス・ユグドラシル』の一生は、かくの如くに終わりを告げた。


377 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:48:56 i22QKv/A0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ユグドラシル……か」

 その名を、目の前に存在する少年……いや、サーヴァントに告げられた時、戒斗は、釈然としない表情を隠しすらしなかった。

「不満があるのか? ボクのその真名は、嘘じゃない」

 そう口にする少年……セイバーのサーヴァント、ミトス・ユグドラシルに戒斗は鋭い目線を向けた。
中性的、女性的な容姿……その言葉はきっと、彼の為に在るのだろう。そう思わずにはいられない程に、女よりも女らしい外見をした少年だった。
白を基調としたゆったりとした服装を身に纏う、胸も薄く、手足もほっそりとした子供の身体つきだ。女物の服を纏えば、同年代の少女とすら見間違えられるだろう。
声を発したその時に、初めて少年だと解るのだが、その声とて、まだ声変わりすら始っていないのではないのかと言う程、幼い。裏声を使えば、女性その物の声が上がるだろう。

「違う。それを疑っているんじゃない。『ユグドラシル』と言う名前の縁からは、こんな世界にまで飛ばされたとて、逃れられんのかと思っただけだ」

「意味が解らないな」

 戒斗の言っている事が理解出来ないらしい。その事に対して不服そうな顔を、ミトスは浮かべた。
その容姿。何処となく、戒斗が求めた高司舞が、始まりの女になった時のようだと、戒斗は思う。
何れにしても、男らしい風貌と体格の戒斗とは、何から何まで正反対の少年だった。
纏っている赤と黒を基調としたコートの下に隠れる優れた肉体。幾つもの苦境を己の力のみで乗り越えた事を雄弁に物語るその鋭い瞳。ミトスのそれとは全く違う物であった。

 ……だが、戒斗は理解していた。自分がセイバーとして呼び出したこのサーヴァントの瞳と胸中で燃え上がる、恐ろしいまでの意思の燃焼。
それが見えぬ戒斗ではない。ユグドラシル……北欧の神話に語られる宇宙樹であり、戒斗の人生を底にまで叩き落とした企業と同じ名を持つこの少年が。
小突けば骨が折れるような弱弱しいその見た目からは想像も出来ない程の強い意力と決意を持ち、それを有するだけの絶対的な強さを誇る超人(オーバーロード)である事を。
戒斗は、同じ魔人(オーバーロード)として理解しているのだ。無論ミトスとて、自身のマスターであると言うこの男が、ただの人間じゃない事を理解しているのだろうが。

 コートの裏地のポケットから、戒斗はあるものを取り出した。
プラスチックのケースに入ったそれは、四種のスートが十三枚、ワイルドカードであるジョーカーが二枚、合計五四枚から成るトランプであった。
数に不足はない。ただ、『元居た世界で、いつの間にかこの五四枚に一枚、余計なものが混じっていた』らしい。
それこそが、麻雀に於ける三元牌の白のような、スートも何も書かれていない白紙のトランプ。
元いた世界でビートライダーズに興じていた時代に持っていたカードの中に、それが混じっていたと言うのだ。
戦闘において大した邪魔にもならないだろうと思い、持ち続けていたのが幸いしたのか、災いしたのか。兎に角、あのトランプを持っていたせいで、戒斗はこんな世界に飛ばされる羽目になったのである。

 アメリカ合衆国、スノーフィールド。 
知らぬ名だった。元より、主要国の有名な場所は兎も角、細々とした地理など戒斗は知る必要もなかった。
目の前のセイバーに訊ねたとて、このスノーフィールドと言う街が現実世界のアメリカにもあった所なのかなど、解りっこないだろう。
眼前に広がる雄大な、溶岩をその中に内在させているのではと思う程に真っ赤な岩崖が連なる大渓谷を見下ろしながら、面倒な事をする、と戒斗は考えた。


378 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:49:12 i22QKv/A0
「聖杯、か」

 その知識は、戒斗の脳にも刻み込まれている。
彼がNPCとして過ごしていた時間は、一時間にも満たぬ程短い時間だった。
強すぎる違和感は一分経つ毎に指数関数的に強まって行き、最大の閾値を振り切ったその瞬間、戒斗は全てを思い出していた。
そしてその時には、ミトスと名乗るそのサーヴァントは姿を現し、それに付随して此処で何をするべきなのかの知識も彼は知る運びとなった。
荒唐無稽な話だとは戒斗は思わなかった。自分もつい先程まで、葛葉紘汰と似たような物を争っていたのだ。スムーズに、現状を受け入れられた。

「貴様は欲しいか、セイバー?」

「当然だ。ボクの理想……夢を叶えるのに、必要な物だとボクは思っている」

「弱いな」

 殺意が、旋風のようにミトスを中心に荒れ狂った。
ただ、敵意を込めて戒斗を睨んだだけ。たったそれだけの取るに足らない動作で、小動物や小虫は愚か、人間ですら気絶させられる程の殺意を放出出来ると言うのは、並大抵の事ではなかった。

「聞き捨てならないな、人間。何を以って、ボクを弱いと言うんだ? ボクの理想や夢を小さいと笑うのなら、マスターであろうともボクは容赦はしない」

「夢と理想を叶えるが為に、己に力を授ける物を得ようとする。それを見下げ果てた訳ではない、況して理想を踏み躙ったと言う訳でもない」

「ならば、何だ」

「己の力で理想を叶えるのではなく、理想を叶えて『くれる』ものに願いを託そうとする、その性根が俺には気に喰わん」

 戒斗もまた、戦極ドライバーやゲネシスドライバーなどの力を借りて、己の夢や理想の為に動いていた。
だがそれらの力は、所有者に力を与えてくれはすれど、過程も何も吹き飛ばしてそれらを成就させてくれる便利なアイテムでは断じてなかった。
彼が求めていた、禁断の果実にしてもそれは同じ。あれは所有者に力を与えてはくれるが、其処から先の理想や夢を叶えるのは己自身に掛かっている、と言う物だった。
それを承知で、戒斗も紘汰も果実を求めていたのだ。力を得た後で、どう動き、どう導き、どう創るのか。それこそが、戒斗は重要なのだと頑なに信じていた。
歩むべき道とその距離をゼロにして、いきなり夢を叶えさせてくれる。そんな物、価値などあるとも思えないし、存在を信じてすらいない。
あるかどうかも解らない紛い物に夢を託そうとしているミトスの姿を見て、戒斗は、これが俺の魂に引き寄せられたサーヴァントなのかとある種の落胆すら覚えていた。

「理想を掴む為に、何でもする。泥を啜り、人を殺し、誓いを裏切る。それは、強さじゃないと言いたいのか?」

「唾棄すべき道は何にでもある。逆に問う。貴様にはそれがない程、浅ましいのか?」

「浅ましい獣になる程、ボクは聖杯が欲しいんだよ」

 そう口にするミトスの顔と声音は、決然たるものがあった。
意思の強さと、武の強さが最高レベルのそれにまで達しているこの男をこうまで言わせるなど、過去に何があったのだろうか。
……それはきっと、ミトスの尖った両耳にあるのだろうと、戒斗は踏んでいた。目の前のサーヴァントが、霊体に近しい代物である事を抜きにして、真実本当の人間でない事を、戒斗は理解している。それが、彼を歪ませた原因なのであろう。

「マスター。お前は、聖杯戦争に勝ち残れる自信がない程の腰抜けなのか?」

 逆に、ミトスの方が問うて来た。
安い挑発。そうと解っていても、戒斗はこう答えざるを得ない。これを曲げる事は、戒斗と言う男の根幹を曲げると言う事に等しいのだから。

「俺は嘗て、挑まれた勝負に背を向けた事は一つとしてない」

 勝負とあらば、戒斗は本気を出す。
ダンスだろうが、サッカーだろうが、アーマードライダーになっての血で血を洗う死闘だろうが。戒斗は未だ嘗て、勝負・戦争と名の付くものから、逃げた事はない。

「聖杯には興味がない。だが、聖杯戦争……これに勝ち残らんが為に俺を狙い、聖杯を欲しいが為に俺に攻撃を仕掛けてくる者について、俺は容赦はしない」

「違うだろう? お前は本当は、心の底ではこの聖杯戦争、負けたくはないと思っているんだろう? 勝ちたいんだろう?」

「お前の目は節穴か? 俺がみすみす、自分でサレンダーを選ぶ男に見えるのか?」

 戒斗には、ドロップアウトもサレンダーもない。
選ばれたのであれば、勝つだけだ。結局それは、ミトスの目的の達成の為の懸け橋になる事に等しい行為だろう。
この金髪の少年の決意を折る事など、戒斗には出来ない。ならば、この哀れでみじめなケダモノを操り、聖杯戦争を勝ち残るしかないのである。


379 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:49:34 i22QKv/A0
「おい、セイバー」

「何だ?」

「曲りなりにも俺の駒になるんだ。それに相応しい運命を持って居なければ、俺は許さんぞ」

「お前如きの駒になった覚えはないんだがな。運命を見せるなんて、それは兎も角どうやってやるんだ?」

「好きな物を一枚獲れ」

 其処で戒斗は、今まで握っていた、トランプを収めるプラスチックケースをスナック菓子でも砕くように握力で破壊。
破片ごと、それを空中に放り投げた。桜が舞い散る様にトランプが空中を乱舞、引力に従いカードが落ちて行く。
それを、戒斗が、ミトスが。腕を蛇の如くに動かして、一枚のカードを指に挟み、その後、互いに取ったカードを確認する。

「この絵柄は?」

 言ってミトスが、道化師が笛を楽しそうに吹いている絵柄のカードを戒斗に見せた。ジョーカーだ。

「ジョーカーだ。最弱のカードにもなれるし、最強のカードにもなれる。ルール次第だが、万能性と強さの象徴である」

「ボクの先行きを示すようなカードじゃないか。それで、君の運命はどうなってるんだい? 駆紋戒斗」

 その言葉に呼応し、戒斗は、人差し指と中指に挟んだカードを、ミトスに見せた。
彼が手に取っていたカードにもまた――道化師が、愉快そうに笛を吹いている絵がプリントされていた。

「俺の足手まといにはなるなよ、セイバー」

「ボクの足手まといになるなよ、駆紋戒斗」

 二人は互いに、示し合わせたように同じタイミングでそう言った。その顔には、不敵そうな笑みが刻み込まれている。
聖杯戦争の本開催から幾日か前、スノーフィールド郊外の大渓谷で行われた、二人の超越者(オーバーロード)のやり取りが、これであった。


380 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:49:48 i22QKv/A0
【クラス】

セイバー

【真名】

ミトス・ユグドラシル@テイルズオブシンフォニア

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷A 魔力A+ 幸運E 宝具EX

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。事実上、魔術ではセイバーに傷をつけられない。
終わる事の知れぬ大戦を停戦に導いた英雄であり、四千年以上もの時を生きて積み重ねた神秘による、セイバーの対魔力のランクは最高クラスである。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
神獣や幻獣とも心を通わせ巧みに乗り回せるだけでなく、近現代の乗り物についての扱いも、セイバーは長けている。

【保有スキル】

鋼鉄の決意:EX
鋼に例えられる、セイバーの不撓不屈の精神。停戦など到底不可能であった古の時代の大戦を、泥水を啜ってでも終わらせてやると言う覚悟を以って終わらせた事実と、
ある目的の為に四千年もの間生き長らえ続け、想いや意思を曲げさせる事なく、摩耗させる事なく生き抜いてきたセイバーのスキルランクは規格外のそれを誇る。
本来ならば同ランクの精神耐性を約束するスキルだが、セイバーはこれに加えてその強固な精神性を己の攻撃にも反映する事が出来、
筋力・魔力が関わる攻撃の威力に大幅な補正を掛けられる他、決意が最大限に高まった時、相手の宝具やスキルによる無敵を突破し、ダメージを与える事が出来る。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、 その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
厳しい剣の修行と、一歩間違えれば死に至るであろう程の死線を幾つも潜り抜けて来た事で、セイバーの心眼は高レベルのそれにまで高められている。

魔術:A+
ハーフエルフと言う出自により、魔術や法術、回復術等を扱えるだけでなく、極めてその技量が高い。空間転移などの高位の技術ですら可能としている。
本来は上記のものに加えて、召喚術と言う、世界の属性や元素、分子すらをも従える高位の精霊達を召喚させる術をも使用出来たのだが、現在は彼らに離反され使用は不可能。

カリスマ:A-
大軍団を指揮する天性の才能。ランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。
但し、己の本性を知っているか、セイバーと同等の霊格を持つサーヴァントに対しては、そのカリスマ性は大きく落ちる。


381 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:50:07 i22QKv/A0
【宝具】

『拍動する天使への階段(ハイエクスフィア)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
またの名を、クルシスの輝石。セイバーにとってのもう一つの霊核とも言うべき宝具であり、彼の今の強さを約束している宝具。
装備者の身体能力や各種知覚能力、そして魔術の腕前等を格段に向上させるだけでなく、自身を『天使』と言う名前の無機生命体に変化させる性質を秘めた宝具。
この宝具は常時発動されている状態だが、此処から更に、セイバーは背中に光で構成されたような翼を展開させ、これを利用したBランク相当の飛行スキルを発揮させたり、
経年劣化しないと言う無機生命体としての性質と己の力を用いて、肉体年齢を操作させる事が出来、ミトスと言う少年の姿から、二十代前半程の年齢をした、
『ユグドラシル』と言う名前の長身の美青年に姿を変貌させる事も可能。変身は可逆的で、いつでも可能。
これを無力化させられた場合、セイバーの全ステータスはワンランクダウンし、破壊された場合は霊格の瑕疵の大小問わずセイバーは消滅する。
セイバーの強さの根幹ともなっている宝具にも拘らず、無力化させられた時のデメリットが少ないのは、彼の強さがこの宝具が齎す各種能力の上昇だけではない、自前の物による物が大きい。

『天地乖離す開闢の時(エターナルソード)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000以上
世界の全ての属性や元素を統べる、精霊達の王・オリジンの手によりて創造された、時と空間を操る時空の剣。
オリジンと契約するか、ハーフエルフでなければ振う事は愚か触れる事すら出来ぬ剣であり、事実上今回の聖杯戦争でこれを振う事が出来るのはセイバーのみ。
時と空間を操る事から、この宝具の持ち主は時間に関わるあらゆる不利な現象を無効化させる他、ランク相当の空間の切断現象を発生、
Aランク相当の千里眼を一時的に発揮させる、別次元に隠匿されたサーヴァントや物質を強制的に引きずり出すなどその能力は多岐に渡る。
この宝具のランクのEXは、A+++よりも更に上と言う意味のEXである為、事実上この宝具の剣身或いは発生させた空間切断は、防御不能。
最大出力で宝具を解放する事で、嘗て一つであった世界を、異なる次元を隔てた二つの世界に切り裂き分離させたと言う逸話通りの力を発揮、極大威力の斬撃を見舞う事が可能。
本来ならば時間渡航や時間転移と言う、魔法にも等しい奇跡をも可能とする宝具であるが、聖杯戦争の制限からそれらの能力は使用不可。
またこの宝具は、セイバーが振っていたと言う逸話こそあれど、その真の所有権は彼を打ち倒した『ロイド』と言う英霊にあると言う事実から、この宝具を握っている間は平時以上に魔力を消費すると言うデメリットが発生してしまっている。

彼の英雄王の持つエヌマ・エリシュと同等或いはそれ以上の出力を持つ、本当の意味で“世界を切り裂いた”剣である。

【weapon】

無銘・細剣:
エターナルソードは魔力の消費がある為、平時はこの剣を扱う事にしている。特別な逸話はないが、セイバーの技量と合わさる事で、凄まじい凶器と化す。


382 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:50:31 i22QKv/A0
【人物背景】

嘗てのカーラーン大戦と言われた古代の戦争を終結させた英雄。
ヘイムダール出身のハーフエルフであったが、カーラーン大戦が始まると、
その出生から忌むべき者とされ姉マーテルと共に追放処分を受けた(この世界ではハーフエルフの差別が根強い)。
マナを産み出す大いなる樹である、大樹カーラーンとそのマナの所有権を巡って、シルヴァラント王朝とテセアラ王国の間で行われた大戦。それがカーラーン大戦である。
これを停戦させるべく、テセアラの騎士団長だったクラトスとシルヴァラントの騎士ユアンを仲間に加え奔走。
村に帰る為に姉マーテル、クラトス、ユアンの三人の仲間と共にカーラーン大戦を終結させた。
その後は大戦により大樹カーラーンが朽ち果てようとしている時に地上に残ったマナである種子、「大いなる実り」と、
マナで構成された大彗星、デリス・カーラーンの接近と、それによって齎される発芽まで守ることを使命とした。
大いなる実りから滲み出る僅かなマナだけで世界を存続させる為、オリジンに与えられたエターナルソードを用い世界を二つに分断。
百年周期で近づく彗星デリス・カーラーンが再び地球に近づく百年後を待つために四英雄は天使化した。
だが彗星の接近時、我欲に囚われた二つの大国の指導者達がマナ独占の為に大軍を率いて争いを始めるも、姉の犠牲により、辛くも大いなる実りを守る事が出来た。
しかし姉マーテルを失った事でミトスは激怒、その場にいた人間を消滅させ、大いなる実りと姉マーテルの精神を融合、『天の機関』クルシスを立ち上げ、『シンフォニア』の世界を創り上げる。

 その後はクルシスの指導者ユグドラシルとして二つの世界を影から支配しながら、下部組織であるディザイアンを率いてエクスフィアを生成。
無機生命体による千年王国の樹立を目指す。その一方で姉の代わりの肉体としての神子を求めるようになり、四千年間に渡り姉の器となる少女を『世界再生の旅』、
と言う名目で旅立たせるようコントロールした。物語開始の時、つまりヒロインであるコレットの代になり、姉の精神を神子に移す事にようやく成功する。
が、姉マーテルから拒絶を受け発狂したミトスはデリス・カーラーンに大いなる実りごと地上を去ろうとする。そして、ロイド達との最終決戦に、彼は破れた、

 彼の在り方は、嘗ての仲間であり同じ戦いを経験したクラトスやユアン達からすらも許容出来た物ではなく、本心では二人はミトスの事を良く思っていなかった。
のみならず、同じハーフエルフやエルフ達からすらも腫物扱いされている事もあったらしく、たった一つの出来事が原因で大きく狂い、狂ったまま未来を歩んだミトスはまさに、堕ちた英雄と呼ばれるに相応しい物であった。

【サーヴァントとしての願い】

姉・マーテルを蘇らせ、自分達の事を差別しない世界で共に過ごすか、その世界を創造する。全生命を無機生命体にする、と言う願いについては考えていない。




【マスター】

駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】

特にはない。ただ、負ける事は許されないと思っているので最後まで勝ち残る。

【weapon】
戦極ドライバー:
アーマードライダー・バロンに変身するために必要なベルト。イニシャライズ機能があり戒斗以外の人間には使用出来ない。
以下のロックシードを使い、変身する事が可能

『バナナアームズ』
バナナロックシードを使用して変身するバナナの鎧を装備した基本形態。鎧の色は黄色と銀。眼の色は黄色。
兜の両脇にはバナナを模した角が備わる。専用アームズウェポン・バナスピアーを使用する、重装甲とパワーを活かした白兵戦を得意とする。

『マンゴーアームズ』
マンゴーロックシードを使用して変身するマンゴーの鎧を装備した派生形態。鎧の色は赤と山吹色。眼の色は山吹色。
背中にマンゴーの皮を模したマントを装備し、兜の両脇には果肉を模した角が備わる。
バナナアームズ以上にパワーや防御力が強化され、専用アームズウェポン・マンゴパニッシャーを使用する近接格闘戦を得意とする。


383 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:50:51 i22QKv/A0
【能力・技能】

ロード・バロン:
戒斗がオーバーロードインベスへと進化を遂げた怪人態。上記のアーマードライダーとは別に、この形態にも変身が可能。
仮面ライダー時の姿と、普段から愛用していた赤と黒のコートを混ぜたような意匠で、フェムシンムらとよく似た姿を持つ。
人間態と姿を切り替える事も可能だが、インベスの支配や植物の操作などオーバーロードの例にもれずヘルヘイムを操ることが可能。
が、此度の聖杯戦争はヘルヘイムと何の接点もない所での戦闘である為、インベスの召喚も出来なければ、ヘルヘイムの植物を操る事も不可能。
白兵戦においては両手剣『グロンバリャム』を振るう他、肉体の液状化や結界を貼って攻撃を防ぐなど戦法も多彩。
その実力は一部の例外を除けば事実上最強のアーマードライダーと言うべきデュークを圧倒し、極アームズを纏った紘汰に対しても決して遅れを取らない戦闘力を発揮する。

戒斗はこの形態に変身出来る為か、他のマスターとは一線を画した量の魔力を内包しているが、この形態に変身して戦うとなれば話は別。
元の世界では自由に変身する事も出来たが、この世界では常時変身していると魔力の消費が発生。
戦極ドライバーを用いたアーマードライダーの変身では魔力を消費する事がない為、使い分けが求められる。

【人物背景】

嘗て世界的大企業、ユグドラシルに両親が営業していた町工場を買収され、潰されたと言う苦い過去を持った青年。
その時の悔しさをバネに、後述する両親の件から社会に強い反骨心を抱き始め、『弱者が一方的に虐げられる世界』として既存の社会の否定。ひいてはその破壊と新世界の創造を目指すようになる。

無愛想で威圧的な性格の持ち主で、どんな苦境であっても屈する事のない強靭な精神力を持つ。
自らの中にある『強さ』と『弱さ』という哲学に従って行動し、『強者』と認めたものであればたとえ自分と考えを違えるものであっても強く評価して力を貸し、
逆に『弱者』であるなら強い嫌悪感を露わにして接する。この強弱は社会的権力を度外視したもので、『優しさ』や『屈しないこと』を『強さ』。
『偽り』や『卑怯』を『弱さ』としており、また優しさと同居できない力に対しても怒りを示す。

ライバルである葛葉紘汰との最後の決戦、46話の終了後の世界から参戦。

【方針】

敵は叩くが、当分は様子見。


384 : ◆zzpohGTsas :2016/11/29(火) 01:51:17 i22QKv/A0
投下を終了します。タイトルは、『黄金の果実、栄光の大樹』です


385 : ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:39:08 3ootOkPg0
皆さま投下乙です。
私もとりあえず一作投下させて頂こうと思います。


386 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:40:48 3ootOkPg0



 それは、今日より一週間前の事……。



 事の主人公は、帝愛グループの幹部・利根川幸雄っ……!!



 彼の所属する帝愛グループは……

 巨大ビルが林立する大都会・東京の中……

 その一つをまるまる保有しているほどの大会社っ…………!


 あまり大きな声では言えないが……

 いわゆる、ブラック中のブラック……

 金融コンツェルンっ………………!


 多重債務者に違法な暴利で貸付を行い……貪り食い……

 骨の髄まで味わって……ゴミのように捨てるっ……!

 とどのつまり……それだけで大きくなった悪徳企業…………!

 それが……帝愛グループっ……!


 彼もまた、その世界の常識の中で……

 クズたちを人と思わぬハイエナとなっていたがっ……!

 彼もまた努力と才能で上り詰め……この座に就いたっ……!

 数千、数万人に一人の優秀な人材っ……! それが利根川っ……!





 そして、その日、利根川の身にその出来事が降りかかったのは……


 本社ビルの最上階…………!


 会長・兵頭和尊の部屋っ…………!!





 利根川は、その時……そこで、会長の前にっ……!

 立っていたっ……!

 圧倒的棒立ち……!

 数十人の黒服たちが集まる中……利根川と兵頭が向き合う……緊張……!

 利根川はただ、何もできず……

 まるで……カカシのように動かず……指示を待つ……!


387 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:41:15 3ootOkPg0


(今日は一体何の用なんだ……!?
 立ったまま話が始まらず……十分っ……!
 まるで木偶の坊っ……! カカシっ……!)


 本来……ただ指示を待つだけの木偶の坊やカカシなど、利根川が最も忌み嫌うものっ……!

 しかし……

 どうする事も出来ないっ……!

 機嫌が悪そうな……今日の兵頭会長の前では…………!

 何も触れないのが……ベターっ…………!


(突然の呼び出し……! それ自体は、いつもの事……想定内……!
 会長には土日だろうが祝日だろうが……お構いなし…………!)


 そう、こうした呼び出し自体はいつもの事……

 利根川に休みはない……会長にはいつも不意に呼び出され……

 駆り出されるっ……!

 そのうえ、大概は……些末な用事……

 はっきり言って、どうでもいい用事ばかり…………

 数十日に一度の利根川の休暇を潰す……会長の暇つぶし………!


 だが、今日この時は……

 そんな愚痴を言いたくなるどうでもいい用事の時とは……

 根本的な何かが……

 違うっ……!




 ざわ……

   ざわ……




 利根川は薄々気づいていた……

 二人を囲む黒服たちの、サングラスの裏にあるのは…………



(なんだこの……)





 ――――いたたまれぬ表情っ…………!





 そう……

 これは、心ある人間たちによる……同情の視線っ…………!

 何の助けもしない……助けるどころか、加害者になる筈の兵頭側の男たちまでも……

 揃いも揃って……同情っ…………!

 誰でも気づくような……圧倒的空気の悪さっ…………!


(何かをした覚えがまるでないが……
 だからこそ恐ろしいっ…………!)


 しかも利根川に……心当たり……なしっ…………!

 ここ数日の会長の機嫌……全て良しっ…………!

 目立ったしくじりも……していないっ……!

 少なくとも良い報せではないのは確かっ……!!

 恐怖のカウントダウンっ…………!


388 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:42:22 3ootOkPg0


「利根川よ」


 兵頭……ここに来て、突如口を開く…………!


 一同に緊張が走るっ…………!


 そして…………!


 告げるっ……!!



「お前、明日から帝愛スノーフィールド支部に転勤じゃ」



 転勤っ……!

 帝愛スノーフィールド支部への……転勤っ……!


「なっ…………!?」


 しかも明日っ……!

 急すぎる転勤っ……! 圧倒的準備不足っ……!

 そして何よりこれは……!



 ――――とどのつまり……左遷っ……!



 戦力外通告っ…………!

 突然の転勤っ……それは、遠まわしな戦力外通告っ……!

 しかし、やはり利根川に……心当たり…………なしっ!

 故障もなしっ……不祥事もなしっ……業績を下げたわけでもなしっ…………!



「まっ……待ってください……会長っ……!!」



 にも関わらず…………

 エースが突然の…………二軍、三軍落ちっ……………!


389 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:42:50 3ootOkPg0



(スノーフィールド……どこだっ! それはっ……!
 だいたい、そんな支部があったのかっ…………!)



 聞いた事もない土地っ…………!

 これがパリやニューヨークならともかく……

 明らかな海外の地方都市……!


 まだ何も始まっていない……

 いや……これから始まる事すらないような……



 田舎っ……!

 仕事など……してもしなくても変わらないっ……圧倒的ド田舎っ……!

 明らかにこれは……海外での出店ミスの尻ぬぐいっ……!



 幹部の待遇からは想像もできない格落ちっ……!



 圧倒的理不尽っ…………!!

 利根川、長年の苦労と努力がすべて…………





 泡っ…………!





 水の泡っ…………………………!








390 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:43:14 3ootOkPg0





 一週間後…………!(つまり今日)



 ざわ……

   ざわ……



「ククク……」


 一週間……それはトネガワにとって充分すぎる時間……!

 抜け殻のクズでいられるのは……


 初日だけっ……!

 流石に一日……たった一日は……

 利根川も魂を失ったっ…………!!


 しかし……

 あとの日々は再び返り咲く為に使う……

 貴重な一日っ……!

 一日一日をきちんとこなす事で…………

 成果をあげるっ…………!

 そして再びっ……日本に戻る…………!!

 一日の使い方こそ……人生の勝敗を分かつものっ…………!

 利根川の一日は……勝者の使い方っ…………!!


「覚えたぞ……遂に全員っ……!! 間違いなくっ……!!」


 新天地における部下の名前も何とか覚えたっ……!

 ほとんどは日本人だが……中には外国人(※黒髪)もいるっ……!

 中には、名前は長すぎる為、全部完璧には覚えられない者もいたが……

 それも……「ほぼ」……覚えたっ……!

 ファーストネームさえ呼べれば充分っ……!

 愛称は……サエモンっ……! マックっ……! ニックっ……! ミックっ……!

 これは……利根川の中では……「覚えた」にカウントっ……!

 サイモン・“ジローサブロー”・サエモンサブローJr.などの複雑な名前もあったがっ……!

 こちらは完璧っ……!!



 そして……彼をはじめっ……

 全部で十二名っ……!

 実質的にそれが……帝愛スノーフィールド支部の全社員っ……!


「苦戦はしたが……はじめの一週間はまずっ……現地の部下との交流……!
 いくらアメリカが仕事を家庭に持ち込まない傾向があるといっても……多くは日本人っ……!」


 中には現地で生まれた社員もいるがっ……

 彼らも日本人社員に憧れて……宴会やパーティーを楽しむ陽気な性格っ……!

 ワークとライフを……直結させながらっ……どちらも楽しんでいるっ……!

 圧倒的ワークライフバランスっ…………!!


391 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:43:41 3ootOkPg0



 そして、彼らの趣味はっ……!

 アメフト……!

 バスケ……!

 野球……!


(クククッ……)


 流石アメリカっ……!!

 趣味の種類も多種多様っ……! 個性派揃いっ…………!


 僅かに被っている趣味と言えば……

 アメフトをするのが好きな奴と……アメフトを見るのが好きな奴……

 バスケをするのが好きな奴と……バスケを見るのが好きな奴……

 野球をするのが好きな奴と……野球を見るのが好きな奴……


 それが各二人ずつ……似てるようだが……それも性格は陽気な奴と実直な奴に分かれている……!!

 それで充分っ……!! 日本よりは個性的っ……!!

 そのうえっ…………!


(一見紛らわしいが……しかしっ……!
 実際のところ……するのが好きな奴と見るのが好きな奴の違いは……どうでもいいっ……!!)


 そうっ……!!

 するのが好きな奴も、見るのが好きな奴も……

 趣味の話題ならば……



 ――――食らいつくっ…………!!



 とりあえず選手の名前を出せば……どちらもっ……!

 水を得た魚のように……話に入るっ……!

 そして……好みの話題で打ち解けられるっ……!

 これで社員とのコミュニケーションは完璧っ……趣味の話題で盛り上がる事が可能っ…………!


 完璧っ……!!

 海外の黒服も……一週間で完璧に掌握っ……!!



 利根川っ…………圧倒的暗記っ…………!!






392 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:44:04 3ootOkPg0




 しかし……!!

 その日の夜…………!


「あ……ああっ……!」


 利根川は唐突に思い出すっ…………!

 ようやく左遷を受け入れ……新しい生活になれてきた今になって…………!

 この生活のおかしさへの……



 ――――圧倒的気付きっ…………!!



(何という事だっ……!)


 利根川も……これには頭を抱えるっ……!


「ワシの記憶にあるもの……すべては偽り……。
 左遷など……ただの夢っ…………!
 夢想の為に……一週間の無断欠勤っ…………! 穴埋め……不能っ……!!」


 利根川……全ての事実を知る…………!!

 左遷など偽り……

 利根川の脳を……超科学的な作用で操り……そう思い込ませただけ……

 とどのつまりっ……!!





 全てが……Fake(フェイク)っ…………!!!!!





 今日までの一週間……

 全てがFake…………!

 巻き返しの効かない……妄想に捉われた無駄な時間っ…………!!

 いずれにせよ、解雇は確実っ…………!

 地位は剥奪確実っ…………!

 それで済めばいいもののっ…………

 最悪の場合があるっ…………!!

 利根川の頭に浮かぶ嫌な想像っ……! 最悪の想定っ……!

 何をされるか知れたものではないっ……!!

 会長の怒りにふれては……何をされるかっ…………!!





 しかし、その時っ……!!



 ――――利根川の部屋に電流走るっ…………!!


393 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:45:13 3ootOkPg0





「――――貴様が私のマスターか」



 耳元で……聞いた事のない声っ……!

 利根川の傍からっ……!! かすれ切った老人の声っ…………!!

 一瞬、会長の声を疑うが……

 違うっ……!

 聞きなれた声ではないっ…………!

 もっとおぞましい声っ………………!!


 ならば誰だっ……!

 就寝間際の利根川のビジネスホテルに……忍び込んだ老人……!




 ざわ……

   ざわ……




「だ、誰だっ……貴様はっ……!
 何故、ワシの部屋にいるっ…………!!」


 利根川は見たっ……!

 そこにいるのは…………


「あっ……ああっ…………!」


 不気味な老人っ…………!!

 白いスーツの上に黒いマントを被った……薄毛の老人っ……!!

 その姿……まるで……



 ――――悪魔っ…………! 死神っ…………!



「クッ……!」


 利根川……ここで幻覚を疑うっ…………!

 信じられなくなるっ……

 自らの目がっ…………!

 目もっ……! 耳もっ……! 目と耳の両方が信じられないっ…………!!


「我が名は『キャスター』――又の名を、『死神博士』!」


 名乗るっ……死神がっ……死神をっ……!!

 この妖しい老人……死神のような老人……自ら……死神の名を名乗っているっ…………!!

 明らかな不法侵入者っ……!!

 しかし……あまりの事に利根川も動けずっ……!!

 死神の名に……異様な説得力を感じるっ……!!


394 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:46:34 3ootOkPg0


「……聞くが良い、マスター。聖杯戦争の全てを……」


 そして……利根川は……

 突如寝台の前に現れたこの老人により……一方的に聞かされるっ…………!

 誰も聞いていないのにっ……



 聖杯戦争のルール説明っ……!!



 ――――開始っ…………!!







 そこで語られたのは……非現実的な話っ……!


 これまで主催してきたような…………

 クズどものデスゲームっ…………!!


 権力さえも意味のない……神の気まぐれっ…………!!

 それが聖杯戦争っ……!!

 彼の前に現れたのは……そのうち…………

 魔術師のサーヴァント……



 ――――キャスター…………!



 その他……同じような名前のやつらが……無数に存在する事実っ……!

 そしてそいつらと戦えという絵空事っ……!


(セイバー……アーチャー……キャスター……バーサーカー……あと三つ……!
 確かあと三つクラスがあったと話していたが……!)


 利根川、既に七つのクラスのうち、三つ……わからなくなりつつあるっ……!

 しかも……真名……マスター……宝具っ……サーヴァントっ……

 続けて明かされる複雑な設定っ……!


 ついていけないっ…………!

 世代的に……利根川も……



 ――――横文字は苦手っ…………!



 確かにここ数日、何故か……そう……おそらく……聖杯のお陰で……英語を普通に喋ってはいたが……

 もはや……中年の横文字の苦手意識は……深層レベル…………!

 心の底にまで根を張った……巨木っ……!

 横文字への……本質的嫌悪と拒絶……!

 既に全身を絡めとった根は……用語の理解に必要以上の時間をかけさせるっ……!

 たとえ英語の基礎が喋れるようになっても……改めて用語を出されると意味不明っ…………!!

 そのうえ、この男の言っている事が……そもそも意味不明っ……!

 興味もわかないっ……!!

 いくら利根川でもっ……聖杯戦争の話は…………

 結局のところ、半分も……わからないっ……!!

 メモなしにはっ…………!!


395 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:47:20 3ootOkPg0


「――というわけだ、マスターよ」


 だが……気づけば利根川……全て聞き終えていたっ……!

 平日の深夜に……

 不法侵入した老人の妄言をフルで聞いていたっ…………!

 内容は頭に入ってこなかったが……終わるまで付き合ってしまったっ……!

 死神博士を自称する男のっ……変な妄言っ…………!



 はっきり言って、ここまで聞いた限りで見ると……

 この死神博士は……!



 とどのつまり、認知症のおじいちゃんっ………………!!



 しかし……話半分に聞いていたはずの利根川も……ここで気づく……!

 またも活かされる、利根川の気付き……!


(クッ……だが……)


 そう……

 記憶の話……スノーフィールドの異常性……令呪とトランプ……!

 実に辻褄が合っているっ…………!

 そのせいで、一概にこの男が妄言を言っているとも言えず……



 信じるべきか……信じないべきか……微妙なラインっ…………!

 グレーゾーンっ……!!



「だ、だいたいは飲み込めた……。
 だが…………! くだらんっ……!」



 試すっ……! 警察に通報するよりは先にっ……!!

 この男と向き合い……試すっ!


 死神博士という男の正常性っ…………!

 どれだけ会話が通じる相手か……理路整然とした会話が望める相手なのかっ……!!

 これはある種の賭け……

 変質者ならば即座に通報っ…………!!


 利根川の認識としてはこれは……変質者寄りだが…………

 全く信じられないわけでもない……

 つまり……試すしかないっ…………!!

 試してから……下すしかないっ…………!!

 聖杯戦争への決断っ…………!!


396 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:47:45 3ootOkPg0


「お前の言う事は……まるで……。
 絵空事っ……魔法っ……奇人の妄想っ…………!!
 認知症のじじいっ…………!! ただのホームレスの不法侵入者めがっ…………!!」


 挑発っ……!

 利根川の口から出たのは、目の前の老人への挑発っ…………!!

 いくら利根川といっても……この老人よりは年下っ……!

 そこでこんな口をきけば……間違いなく怒るっ…………!

 利根川でも……相手によっては怒るっ…………!!


 だが……

 そうしてすぐに怒る相手ほど……話は全く通じないっ…………!

 常識人は……こういう時…………冷静っ…………! まともな大人ならっ…………!!

 客観的に自分を見て……自分のおかしさに気づくはずっ……!

 そうでないなら……ただの老害っ……!

 怒った瞬間……容赦なく通報っ!!


「――フン。現実を見ようともしないか、つまらん男だ。無礼な口だけは達者と来ている」


 しかしキャスター……!

 意外にもこれをスルー……!

 挑発に乗らず……!!

 だが、利根川……更に試すっ…………!


「つまらん男だとっ……!? フン……! 
 それで結構だが、そう思うのなら……言葉だけでなく、提示をしろっ……!
 証拠っ……!! 論よりも……証拠をっ……!」

「……ならば訊こう。
 現実に、貴様はスノーフィールドの地に導かれ、元の記憶を改竄されていた。それから、異国の文化に馴染み、異国の言葉を喋り、平然と暮らしていた筈だ。
 気付いているはずだろう。それならば、今更非現実を認めるのは遅いくらいではないか?」


 ダメージっ……!

 利根川の胸にズサリと刺さる一言っ……!

 一応は正論っ……!

 利根川は自身の記憶の回復などを……他人に話した覚えもないっ……!

 相手がそれを知っている事が……何よりの非現実っ……!!

 しかし、まだ信じるわけにはいかず……!!


 更に進行っ…………!!

 試すっ……! 試すっ……! 試すっ……!


397 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:48:06 3ootOkPg0


「確かにワシの記憶は、さっきまで別の事実を受け入れていたっ……! まるで洗脳でもされたかのように信じ込んでっ……!
 今は自分の地位が役割に過ぎない事も薄々気づいているっ……!
 しかし、それだけではまだ何とも言えない……グレーゾーンだっ……!」

「ならば、その令呪だ。その令呪こそ、我らが神秘の証……この私を唯一制御できる魔術となっている。
 直接腕に埋め込まれた紋章……それを以前に彫り込んだ記憶はあるのか? マスターよ」


 正論っ…………!

 非現実であるが……それより前の非現実を説明付ける正論っ…………!

 証拠は利根川の左手の甲っ……! そこに刻まれた『令呪』という名の模様っ……!

 明らかにそれは何かをかたどった刺青であり……利根川の記憶の覚醒と共に現れたサインっ……!

 それが手に浮かんだのは……僅か数分前っ……!

 それを彫り込むのは物理的に不可能っ…………! インポッシブル…………!


(蛇めっ……!)


 そして……その模様……まさしく蛇っ…………!!

 十匹の蛇が蠢いている奇妙な絵……!

 というか……言い換えるなら……

 まあ、イカの絵っ…………! とも言える……


 ともかくそれは……

 明らかに左手の甲に刻み込まれている……

 消せないタトゥー……!


 利根川も……ここで……

 明日からの社員への誤魔化しの手段を考えたくなるっ……! タトゥーをどう誤魔化すかっ……! 部下にからかわれないかっ……!


 しかし……今はその話は保留っ……!!

 キャスターに応対っ……! そちらに専念っ……!


「オーケー……! 確かにその通りだっ……!
 その事実は……認めようっ……! 目を……背けていても仕方ないっ…………!!
 ワシの身にとって奇妙な事は多いっ……!!」


 しかし……ここまで言っておきながら……


「だが、それと聖杯戦争とは関係がないっ……!!」


 まだ責めるっ……最後の責めっ……!

 試すっ……! 利根川はまだ……キャスターを試すっ…………!


398 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:48:34 3ootOkPg0


「まだ認められない……ワシの異変と、貴様の妄言との……因果関係っ!
 それを証明する事は……インポッシブル……!! 不可能なはずだっ……!!」

「そうか。ならば――止むをえまい」



 ざわ……

   ざわ……



 瞬間っ……!

 異様な緊張っ……!!

 謎の静寂っ……!!

 心なしか……闇も深まるっ……!!


「見せてやろう。――――この死神博士の真の姿……」


 そしてっ…………!!


「あっ……ああっ……! ああああああっ…………!!」


 そこで利根川は見るっ……!



 ――――怪物っ……!!



 圧倒的っ……!! 圧倒的怪物っ…………!!

 それは死神博士のもう一つの姿っ…………!!

 醜悪な怪物っ…………死神博士の姿が一瞬にして変わるっ…………!!

 白い不気味な怪物へとっ…………!!

 この年にして……寝られないほどの恐怖っ……!!


「……信じたか? マスター」


 キャスター……ここで怪物の姿のまま詰め寄り……語りかけるっ……!!

 イカの怪物……イカデビルっ…………!!

 利根川……ここで後ずさるっ……!!


「“信じたな?” マスター」


 信じられないとしても、これが現実っ……!!

 これがリアルっ……!!

 利根川は確かに目にしたっ……!

 人間が怪物に「変身」する瞬間っ……!! 確かにその目でっ……!!


「し、信じたっ……!! 確かに信じたっ……!! だが……っ!」

「だが?」

「信じてきたリアルと、少し食い違うっ……!
 新しいリアル……すぐには受け入れられないっ…………!!」

「まだ信じないと言うのか」

「無論信じる……だが慣れないっ……!!
 たとえ魔術があるとして……怪物がいるとして……!
 そんなものはワシの数十年の人生に一日たりとも関わっていないからっ……!」

「ほう」

「もっと……魔術に近い事が目の前で起きた後や、兆候があったならばともかく……
 ワシは突如として知らされたっ……!
 刻むだろっ! 普通っ……! もっと……段階をっ……! 進化や発展をするならっ……!!」

「つまり、受け入れられるまでの時間が欲しいという事か。
 ……フン、それもまた良し。弱い者はいつまでも閉じこもればいい。
 貴様が生きてさえいれば、我々は勝手に勝利し、聖杯を得る。
 まあ、貴様も、聖杯に託す願いでも考えておくが良い」


399 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:49:07 3ootOkPg0


 キャスター……ここで変身解除っ……!

 またも老人の姿に戻るっ……もはや驚きはなしっ……!

 既に見ているっ……利根川は、非現実を……

 そして受け入れているっ……!



 それよりも……

 利根川が気になったのは……

 キャスターの言葉っ……!



 弱い者っ……!!



 その言葉は……不意に利根川を奮起させるっ…………!


(クッ……このワシが言われっぱなしとは……)


 弱者扱いっ……! 関係的には……キャスターが下、利根川が上のはずっ……!

 にも関わらず、キャスター……いくらなんでも……

 横柄っ……!!

 このままでは……ナメられるっ……!

 いや……ナメられているっ……!!

 そのうえ、まごうことなき正論っ…………!! このままではただ少量の魔力を持つだけのタンクっ……!

 役立たずっ……!


(まずいっ……いくら化け物とはいえ……これではまるでっ……!
 クズどもと同じ扱いっ……! 閉じこもる弱者……非生産者っ……! つまりは……ひきこもりっ……!!)


 利根川っ……ここで語調を変えるっ…………!!

 そう……媚びないスタイルにっ…………!!

 あくまでも対等っ……公正っ……フェアっ…………!! そんな関係に持って行こうとするっ…………!!

 共に戦う仲間と見て……はっきりと告げるっ…………!!


「おい、キャスターと言ったなっ……!
 貴重な機会だが……ワシに欲しいものなどないっ……!」

「……何?」


 ここで利根川っ……!

 したり顔っ……!


400 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:49:32 3ootOkPg0


「ワシからすれば……何かを欲するのはつまりっ……持たざるものっ…………!!
 たとえば、一千万円の富を得る為に……命を賭けなければならない連中と、積み重ねてきたこのワシとでは……
 天と地ほどの差があるっ……! 立場にっ……!!」

「……つまり、聖杯の願いなど要らぬという事か」

「無論っ……! 一時的にだけ命を張って……近道で何かを得ようなどという発想っ……!
 それそのものが愚の骨頂っ…………!! いらんっ……! 聖杯などっ……!
 むしろ、そんなものっ……クズの証っ…………!」

「なるほど。欲しいものは自分の手で得たいと言う訳か」


 キャスター……ここで些かの静止っ……!

 苛立っているっ……! 何かの目的を持つ者として……明らかにっ……!

 そして……利根川……ここまで言ったところでっ…………!


「だが――いずれにせよっ……我々は運命共同体っ……!
 目的は違えど、必ず手を組まなければならない仲間だ……!」


 すかさず……



 ――――友情をアピールっ…………!



 言ってみるなら聖杯戦争も……

 二人三脚っ……!

 いがみ合い……息を合わせる事を放棄した瞬間っ……! 出し抜かれるっ……!

 他の組の奴らにっ……!! そして、後に待つのはクラスメイトからの顰蹙っ……!

 たとえペアの相手が遅くとも連帯責任っ……!! ペースと息を合せなかったお互いの責任っ…………!

 まずは取り入る事から始めるっ…………!!

 友情がないとしても……偽りの友情を築き合うくらい……

 容易っ…………!!



 ――――そしてっ……!!



「だからまず、キャスター……お前は……」


401 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:49:57 3ootOkPg0



 えっ……!


 えっ…………!




 小さな声での復唱っ……! 

 利根川が一人で繰り返す……「えっ」という言葉の連続っ……!!

 そしてその言葉……それはっ……

 よく聞いてみるとっ…………!





 ――――言えっ…………!





 そう、利根川の言葉……それは……「言え」という要求っ……!


「名前を言えっ……!」

「何っ……?」


 そう……利根川が求めたのは……


「ワシは利根川幸雄だっ……!
 まずは……名前を教えろっ…………! 自己紹介だっ……!」


 自己紹介っ……!!


「名前だと?」

「たとえサーヴァントといえども……わきまえろ……TPO……!!
 命を託す相手の名前くらいっ……! きっちり知っておくっ……!!」

「……フン。呼ぶのに不便か。だが、さっき名乗った通りだ。
 私の事は、キャスター……あるいは、死神博士とでも呼べ」

「いや……そうじゃない……!
 お前の本当の名前っ……!
 キャスターだの……死神博士だのではなくっ……!!
 真名っ…………!!
 母親や父親から授かった……お前の本当の名前っ…………!!」


 利根川……これだけは譲らないっ……!!

 いくらキャスターに協力の意思がなくとも……

 運命共同体……! 命を預けるサーヴァント……!

 こいつが死んだら……利根川も死ぬっ……!!

 その名前を記号や役職しか知らないのは……不安だけが付きまとう……!!

 これにキャスターも……答えるっ!

 渋々ながら……口を開くっ…………!!


402 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:50:37 3ootOkPg0





「――――イワン・タワノビッチだ。二度と言わんぞ」





 ここに来てまさかのロシア人名っ……!!

 北欧からのトラップ……

 何とかビッチっ…………!!


「イワン・タワノビッチ……!」


 だが、利根川……これをギリギリ覚えるっ……!

 辛うじて耐えるっ……!

 危うかったが……刻み込んだっ……!!

 イワン・タワノビッチという名前をっ……!!

 一発でっ……!!


「そうだ……それから……もう一つだけ……!
 マスターとしてお前に用があるっ……!」

「なんだ?」


 利根川……ここで手帳を構えるっ……!!

 パジャマ姿で……寝ようとしていた状態ながらっ……

 こんな時でも……ビジネスマンっ…………!!


403 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:51:11 3ootOkPg0


「すまないが……ルールをもう一度言ってくれっ……!」


 手帳を持った利根川……ここで……まさかの……



 ――――仕切り直しっ……!!



 もう一度、さっき死神博士から聞いた話を聞くっ……!

 手帳とペンを構えてっ……!

 深夜にもう一度っ……寝る前に複雑な用語っ……!

 聞き逃しそうになった時には、その都度聞き直し……



 悪魔的に正確なメモっ……!

 すべて把握するっ…………!!

 基礎的な用語とルールっ……死神博士が知っている限りっ……!!


(危なかったな……!)


 ここで利根川知るっ……!

 根本的なルール……何もかもがっ…………!!

 半分ほどしかわかっていなかった事っ……!

 聞くは一時の恥……しかし……もし聞かなければ……



 命は無いっ………………!



 あのまま話を続けていれば……これでは始まる前から破綻っ……! 敗北っ……!

 銃の使い方も知らない……丸裸の兵士が戦場に立っているも同然っ…………!!

 危うかったっ……!!


404 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:51:30 3ootOkPg0





 ――――利根川、九死に一生っ…………!





【CLASS】

キャスター

【真名】

死神博士(イワン・タワノビッチ)@仮面ライダー

【パラメーター】

通常
 筋力E+ 耐久E+ 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具A

宝具発動
 筋力A 耐久B 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具A

【属性】

混沌・悪 

【クラススキル】

陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 死神博士は、『工房』の代わりに、地下・洞窟・空きビル等に『アジト』を作り出す事が出来る。
 これによって、魔力と科学を駆使した道具は勿論の事、『改造人間』までも作り出す。

道具作成:A
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 死神博士は、魔力と科学力を併せ持ち、道具だけでなく、『改造人間』を作り上げる。

【保有スキル】

秘密結社:B
 実質的には、アサシンのクラスが持っている「気配遮断」のスキルと同様。
 秘密結社の一員としての性質により、完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
 ただし宝具を用いた交戦中は、その例外にあたる。

外科手術:D
 マスター及び自己の治療が可能。

改造人間:B
 自身の肉体を科学と魔術により再構成し、人知を超えた怪物へと変化するスキル。
 このスキルによって神秘性が少し失われているが、キャスターはその分を他のスキルで補填している。

神出鬼没:B
 幻影の如くあらゆる場所に現れる性質。
 作戦に必要な場所には即座に現れる事が出来る瞬間移動能力を持つ。
 ただし、当初の想定外の場合(発見された基地から逃げる場合など)は、このスキルが正常に作用しない場合がある。


405 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:52:33 3ootOkPg0

【宝具】

『世界征服を企む悪の秘密結社(ショッカー)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1〜全世界 最大捕捉:1〜全人類

 彼が大幹部として多くを従える大軍団、秘密結社ショッカーという組織力そのもの。
 そして、この宝具はキャスターが召喚されてから、キャスターの消滅の瞬間まで常時発動している。
 キャスターが場に存在する限り、聖杯戦争のフィールドには常人の数倍の戦闘力を持つ『戦闘員』たちが蟻の群れのように湧いている。
 この戦闘員たちは、『偵察を行う者』、『陣地を守る者』、『キャスターに代わり他のサーヴァントとの戦闘を行う者』、『キャスターに代わり道具作成を行う者』など数々の班に分かれ、キャスターの命令を最優先した上で、キャスターに利を成す行動を考えながら自立する。
 いわば、この戦闘員たちこそが使い魔に近い存在となっている(ちなみに、戦闘員を出現させる「作成」には少量の魔力を要するものの、以降は彼らが「科学兵器」として自立していく為、彼らが活動する事でキャスターやマスターの魔力消費が起こる事はない)。
 また、戦闘員は意識的に『改造人間』たる素質を持つNPCやマスターを識別した後、誘拐・拉致した上で、『アジト』内で改造し、戦闘員よりも強力な戦闘力や特殊能力を持つ『改造人間』『怪人』に変える事が出来る。こうして改造されたNPCやマスターは、作成の最終工程で洗脳を受け、キャスターの宝具の影響下で忠実な僕となっていく。
 この改造人間たちも戦闘員同様、作成には魔力負担がかかるものの、一度改造を終えた後は改造人間たちが科学製品として動く為、以降の魔力消費は(強化などを行う場合を除いて)なくなる。
 ただし、これは短期で作った改造人間ほど実力に乏しく、サーヴァントと互角程度に渡り合える改造人間を作るには、最低一日以上の時間をかける必要があるだろう(並行して何体もの改造人間を作成する事自体は可能である)。
 これらの効果により、NPCを巻き込んで、徐々に大軍団を築き上げ、聖杯戦争の場に悪の秘密結社ショッカーを再現するのが、キャスターの絶対の宝具である。

『流星降らす白貌の悪魔(イカデビル)』
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:自身のみ 最大捕捉:-

 キャスターが持つ改造人間としての在り様。
 この宝具を開放し、イカデビルへと変身した時、死神博士は上記のパラメーターを上昇させ、直接戦闘でサーヴァントと渡り合えるだけの力を一時的に得る事が可能。
 イカデビルはイカの能力を持つ改造人間であり、頭部の隕石誘導装置で隕石を自由に操って地表へ落下させる能力を有している。その為、「流星怪人」の異名を持っている。
 また、宿敵の得意技であるキックを封じて返す「キック殺し」も得意としており、それ故にライダーキックが効かないなど、キック技を得意とする相手にはほぼ無敵でいられる可能性も高い。
 他にも、触手を鞭のように用い、口からは墨を吐くなどの攻撃が出来る強力な改造人間である。
 ただし、頭部の隕石誘導装置が弱点となっており、過去の死もこの弱点を看破された事にが死因となっている。

【weapon】

『無銘・鞭(改造)』
 たびたび使っている鞭。1000ボルトの電流を放つ。

『無銘・鎌(改造)』
 たびたび使っている大きな鎌。

【人物背景】

 悪の秘密結社ショッカーの大幹部の一人であり、マッドサイエンティスト。
 当初はスイス支部にて活動していたが、後に日本支部の二代目大幹部としてショッカーを指揮した。
 彼は卓越した科学力を持つ博士であり、同時にオカルトの魔術(催眠術・西洋占星術など)にも精通している、まさに現代の魔術師と呼べる男であった。
 また、自らの身体を改造済であり、その真の姿は烏賊を模した改造人間・イカデビルという名を持つ。
 しばらくショッカー日本支部を地獄大使と交代で指揮していたが、最後は仮面ライダー本郷猛を前にイカデビルとして敗れ死亡。

 尚、本編では特に明かされていないが、本名は「イワン・タワノビッチ」であり、日本人の父とロシア人の母を持つハーフ。
 幼少時から訪れる場所には必ずと言っていいほど死人が出たため、「死神」の異名が付いた。
 更に、学生時代には「ギャラクシーにおける死に方と変身」という論文で博士号を取得したため、「死神博士」の通称を持つこととなった。
 彼の当初の目的は「病弱な妹・ナターシャの延命」、その死後においては「ナターシャの蘇生」にあった。
 その愛情がショッカー幹部としての狂気の引き金となっているらしい……。


406 : 利根川幸雄&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:52:53 3ootOkPg0

【サーヴァントとしての願い】

 不明。
 ただし、おそらく、願いはある。

【基本戦術、方針、運用法】

 キャスターは、現在までに百人規模の戦闘員と、これらを従わせる数名の改造人間を作り出している。
 これらの戦闘員、改造人間は英霊としての気配は持たないので、上手に使えば他のサーヴァントを探し、攻撃する偵察要員として使う事が出来る。
 一応、秘密結社である為、神秘性の秘匿は得意であり、本人を戦わせて魔力を悪戯に消費するよりは、作成時に魔力を消費した後は自律行動し続ける『改造人間』をひたすら作り続けた方が賢明。
 また、マスターを改造する事自体もできなくはないので、キャスターと意見が対立してきた場合は、改造手術をされてしまう可能性も否めない。
 マスターはそれに気を付けるべし。



【マスター】

利根川幸雄@中間管理録トネガワ

【マスターとしての願い】

 帰還する事。
 ただし、相手によっては犠牲にしても良し。
 また、サーヴァントや協力者との摩擦が起きない距離感も保ちながら聖杯戦争を生還したい。

【weapon】

 特になし

【能力・技能】

 圧倒的優秀。圧倒的成功者。頭も良く回り、大企業である帝愛グループの幹部になれるほどの器。
 Eカードなどのギャンブルも得意で、本編ではカイジと直接Eカードで対戦しているほか、過去にも重要な勝負に勝ってきた経緯がある。
 ボーリングのスコアは192点。ムーンウォークなどが出来る。超大盛なカツ丼を平らげた事も。
 あと、神戸牛や年代モノのワインなどを部下に奮発しているなど、財力においてはほぼ不自由なし。

【人物背景】

 帝愛グループの幹部で、ナンバーツー。
 出典のスピンオフ版では、中間管理職としての悲哀がフィーチャーされており、会長である兵頭の機嫌を伺ったり、ライバルの黒崎との出世争いをしていたり、部下の面倒を見たりと苦労人でもある。
 そんな感じで、本編『賭博黙示録カイジ』における冷徹な帝愛役員としての顔に比べると、かなり温和で部下想いな側面を見せている。
 彼の場合は、元々の才能にも恵まれ、努力など耐え忍んで出世・躍進したという経緯もあり、プライドは高い。ただし、部下には優しく、時に冗談を言う姿も見せる。
 また、そんな高いプライドがゆえ、多重債務者や無職などを「クズ」を見下しており、人間扱いしていない為、本編やスピンオフでも帝愛のダークなゲームを主催する立場にある。
 尤も、元部下であった海老谷という男がマルチ商法から足を洗った時には安堵しているなど、身内であればクズにも優しいところはある模様。
 自然な笑顔ができない。

【方針】

 聖杯などいらん。短期間で富を得ようという発想自体がもはや弱者。
 既に欲する必要がないほど「持っている」人間の利根川に、聖杯に託す願いなどなし。

 つまるところ……脱出したいっ……!
 早く協力者を探してっ……こんなところからっ…………!

【備考】

 ロールは帝愛スノーフィールド支部長。

 支部にいる部下は全部で十二名。いずれもほぼオリキャラなNPC。
 サイモン・“ジローサブロー”・サエモンサブローJr.、ニック、マック、ミックなど。そのほかは全員日本人。
 陽気な性格と実直な性格がそれぞれ六人おり、その六人はいずれもアメフト、バスケ、野球をするか見るかが好きな人間の六種類のタイプに分かれている。
 十二人それぞれ個性が分かれている超個性派な社員たちである。


407 : ◆CKro7V0jEc :2016/11/29(火) 02:53:10 3ootOkPg0
投下終了です。


408 : ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:00:43 c5M78su.0
投下します。


409 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:04:35 c5M78su.0
「助けて」「助けて」「助けて」

そんな声ばかりが、聞こえていたと思う。
この子だけでもいいから連れていって。
一杯でいいから水をくれ。
足が痛いんだ、この瓦礫を退けてくれ。
悲痛な叫びを聞けば聞くほど、喉に熱した鉛のような何かが貯まる。
少年にとっての、原初の地獄。

"―――うん。初めに言っておくとね、僕は魔法使いなんだ"

そして。
唯一生き延びた少年は、正義の味方に救われた。
最初は、何一つ受け入れられてなかったと思う。
毎日毎日、幽霊のように『家があった』場所まで足を運ぶ。
家のドアがあった場所で、扉を開く真似をし。
灰と瓦礫の上で、かつてあったものを見るように『ただいま』と言う。
…その少年の心は、現実をすぐ受け入れられるほど強くなかったんだ。
そうして何度も何度も焼け落ちた既に無い扉を開け、家の跡地で『ただいま』と言い、何もない現実と直面する。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。
現実を咀嚼し、受け入れる。
一人だけ生き残った。
一人だけ、生き残ってしまった。
―――ああ、だったら。
この生命は、既に俺一人のものじゃない。
死んでいった人たちのためにも、この悲劇を二度と起こさない。
そう決意したのは、何時だっただろうか。
そうでもしなければ、自我を保っていられなかったのだろう。
一人生き残った責任と罪悪感からの、贖罪。
…恐らく、少年はこの時に壊れてしまったのだろう。
自分のためでなく、他の人のために生きると誓った時点で、彼は普通の人間ではなくなった。
壊れた人間―――出来損ないの破綻者。
人間、誰だって自分が一番大切だ。
当たり前のことを問うつもりはない。
少年はこの時点で―――人間としての、一番の根底の部分が欠落していた。
例えるならば、人間になろうとしているロボットのようなものか。
決定的に根底から間違えた『何か』は、誰かから与えられた借り物の理想を胸に成長した。

「爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。
まかせろって、爺さんの夢は―――」

そして訪れた、月下の誓い。
月下の呪い。
少年の歪みを決定的なものとした、運命の日。
多くの人間を助ける、正義の味方になる。
そんな独善染みた勘違いを持ったまま、少年は成長する。
成長する。
成長する。

―――分岐点。
ここが、量子記録固定帯。枝分かれしたイフ(if)の世界の一枝。
少年は、運命の夜を迎えない。
『聖杯戦争関係者』のサンプルとして、ムーンセルの貴重な情報源として、彼は導かれた。
その先は異国の地、日本より遠く離れたスノーフィールド。
さあ。
聖杯戦争を始めよう―――。


○ ○


410 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:05:42 c5M78su.0
「…ああ、そうだった。今日は土蔵の片付けをするんだった。
いけないな、最近忘れ物が激しい。爺さんじゃあるまいし、ボケるにはまだ早いぞ」

赤銅色の紙を揺らし、ポリポリと頭を掻く。
時刻はもう22時。
普段なら既に布団に潜っている時間だ。
うーむ、と頭を傾げ。
たった今食べ終えた晩御飯の食器を重ね、流し台へと持っていく。
小さな身体には少し荷が重いか、ふらふらと揺らぐが食器を落とすような真似はしない。
物は大切に扱わなければいけない。
ご飯は無駄にしてはいけない。
此、人としての常識也。

「寝る前少しだけなら、いいか。
別に徹夜する訳じゃなし、明日もどうせ暇なんだ。
ちょちょっと片付けよう」

とてとてとてとて。
草履を引っ掛け、和の趣を強く醸し出す家から駆け出す。
少し離れた場所に、その土蔵はある。

「うう、やっぱり冷えるな。
夜の寒さは伊達じゃない、っと」

ガラリ、と土蔵の扉を開けると、酷く散らかった空間が目に入る。
壊れたストーブから鉄パイプまで。
『とりあえず使えなくなったけどまだ使えそうだから詰め込んどきましたぜ』とでも言うような混雑具合。

「…爺さん、片付けぐらいやっとけっての」

小さな身体で、大きな荷物を担ぎ上げる。
まずは、要らないものと要るものの分別だ。
話はそれから。
がちゃがちゃ。
どさどさ。がらがら。
ごりごり。がらがら。
どんどんがらがらどんがらがっしゃん―――そのような雑音が響くこと約数時間。
何ということでしょう。
物置小屋同然だった土蔵が、何とも広々とした空間に生まれ変わったじゃありませんか。

「うん、こんなところかな。
…結構時間かかったけど。今何時だ。
…うわ、もう2時じゃないか!通りで寒いと思った、このままじゃ風邪引くぞ」

ひゅるる、とドアの隙間から入ってきた夜風に身体をぶるると震わせる。
締め切っていた土蔵の扉を開ける。
辺りは真っ暗だ。
こう見ると、アメリカンな町並みを残すこのスノーフィールドにおいて我が家は少し日本らしすぎると思う。
風景に馴染んでいないようにも思える。
まあいいか、と少年は疲労が溜まった肺に空気を流し込み、体内の熱を外に吐く。
ふと、空を見上げた。
満天の星空と―――煌々と輝く、月。
満月だった。

―――異様な、迫力を感じる。
月から目を離せない。
離してはいけない気がする。
離してはいけない気がする。
離しては―――手離してはいけない、記憶があった気がする。


411 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:06:40 c5M78su.0
少年―――『衛宮士郎』が『衛宮士郎』である限り、忘れてはいけないソレ。
何か、命より大切なこと。
多くの命を救う。正義の味方になる。
その呪いの―――願いの、権化。

『―――ああ、安心した』

誰も彼もを救おうとして。
誰も彼も救えなかった、男の願い。
最期はただの子供の言葉に救われて、看取られて、消えていった男の言葉。
ああ、忘れてなるものか。
記憶が消えていても。
記憶が奪われていたとしても。
その誓いは―――今も、この胸に。

「ッ…?」

突如堰を切ったように流れ出した記憶の奔流を、足を踏ん張りグッと堪える。
倒れない。
少しフラフラとするが、それだけだ。

「何が―――」

その先の言葉は、紡がれることはなかった。
背後から、眩い…正に、太陽が背後にあるのではないかと錯覚するほどの光が爆ぜたのだ。
発信源は土蔵の中心。
熱くはない。
怪我もない。
ただ、驚いて尻餅をついてしまった。

―――ふわふわと、土蔵の中のものが宙を舞う。
せっかく片付けたのになぁ、なんて場違いな感想を抱いている内に。
中心に現れた人型のそれは、士郎に問う。

「サーヴァント、アーチャー。此度の聖杯戦争にて現界したわ」
「此より貴方の命運はわたしと共にある。わたしの弓は貴方と共にある」
「問うわ」

それは。
まるで、久しぶりにあった旧友に言葉を投げ掛けるように。
しかして思いやりと厳しさが同居している、そんな声。
勿論士郎に聞き覚えはない。
ない―――のだが。
何処か、他人ではない気もする。

「貴方が、わたしのマスターね?」

長い髪をたなびかせ。
金の少女―――アーチャーは、そう問うた。

○ ○


412 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:08:04 c5M78su.0
この少年は―――酷く、歪だ。
アーチャーがマスターであるこの少年…衛宮士郎に見出だしたのは、ソレだ。
子供故か、それとも魔術師に遠く及ばない存在だからか―――召喚の魔力消費により、気を失うように眠っている。
比較的露出が多い格好のアーチャーにこれでも着るといいと赤面しながら差し出した士郎に『あら?子供の癖に恥ずかしがってんの〜?うりうり、そんなに見たいならもっと崇めなさい』とからかい過ぎたのもあるかもしれない。
布団の中で行儀良く収まっているその姿は、アーチャーにとってとても幼く、弱く、小さい―――人間が小動物を見るソレに似ていた。

『聖杯戦争が何だか知らないし、俺が知ったことじゃないけど』
『誰かが犠牲になるのは、避けなきゃいけない』
『俺が止める』

聖杯戦争の概要を一般人にも分かりやすくかいつまんで説明した結果、帰って来たのはこのような言葉だった。
アーチャーは本来、神霊級の存在だ。
故に『人を見る目』というのはある程度持っているつもりである。
恐らく。
本当に目の前で誰かが死の危機に瀕していたら―――この少年は、その身を盾にしてでも乗り出しかねない危うさがある。
もう少し歳を重ねていたならば、その強迫観念からか人を守るための努力を積み、ある程度の危険も乗り越えられただろう。
しかし。
現実、この少年―――衛宮士郎は、まだ幼い。

「…はあ、子供ならもうちょっと子供らしくしてろっての」

寝ている頬をつんつんと指先で突く。
アーチャーは、我儘だ。
欲しいものは手にいれなきゃ気が済まないし。
嫌いなものは視界にも入れたくない。
聖杯なんてものにも興味はないし、大抵の欲しいものは得ている。
…得られなかったものもあるが、それはそれとして置いといて。
本来ならば、こんな聖杯戦争なぞに呼ばれる筋合いも必要もないのだ。
誰が頼んでも召喚されるつもりはないし、道理もなかった。
しかし。

「…なぁーんか、放っておけないのよね。
よく足掻き、よく藻掻く。
それだけで見ていて面白いからいいんだけど…それとは、別に」

この身体の影響かしら、とアーチャーは首を傾げる。
何故か。
この少年を、このまま見捨てるのは何か背中がむず痒かったのだ。
放っておけない。見ていられない。
そんな気分が、彼女の胸中を占めた。
…まあ、一時の気紛れかもしれないが。
酷く歪な、この少年。
詰まるところ、この少年は自分のことが嫌いなのだ。
自分の価値を認められず。
誰かの為に生命を消費することを選ぶ。
アーチャーから見ても、それはとても腹が立つ。
人間とは、無様に己のことを考えて足掻き神を崇めて生きていれば良いのだ。
身に余る願いを抱き、神以外の誰かの為に己を磨り減らそうなど、傲慢にも程がある。
…ああ、そうだ。人間は、自分のために生きているものだ。
それを根本的に勘違いしている少年に、アーチャーは腹を立てているのだ。

「…わかった。これは心の贅肉ね。本来こんなこと、するべきじゃないししたくもないんだけど。
いいわ。これはただの気紛れ。
貴方が少しだけ自分を好きになれるように―――真人間になれるように、手伝ったげる。
感謝しなさいよ。こんなこと、滅多にないんだから」

アーチャーは、眠っている士郎の顔を横目に眺めながら。
そう、小さく呟いた。


413 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:10:18 c5M78su.0
【出展】Fate/Grand order
【CLASS】アーチャー
【真名】イシュタル
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力B 耐久B 俊敏B 魔力EX 幸運A 宝具A++

【クラス別スキル】
単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 事実上、現代の魔術師の扱う魔術ではダメージを与えることができない。

女神の神核:B
自身に与ダメージ力プラスを付与。弱体耐性をアップ。

【保有スキル】
美の顕現:EX→B
美の女神としての恐るべきカリスマ性。
他者を惹き付ける力。憑依しているだけの状態ながら、既に人の域を超えている。
本来は強力な誘惑を主体とした複合スキル(ゲージ吸収、呪い、スキル封印)となるはずが、憑依された人間の強い意向によって相手への束縛効果が外されて、実質的にはカリスマ単体のスキルになっている。
(本来ならEXランクだが、Bに下がっている)

輝ける王冠:A
 ゲーム内効果ではランダムに自身に効果を発動(NPを増やす・無敵付与・無敵貫通付与)

戦闘続行:A+
 名称通り戦闘を続行する為の能力。往生際が悪い。
 このレベルともなると決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負った状態でも戦闘の続行を可能とする。

魔力放出(宝石):A+
ありあまる魔力を武器に付加させ攻撃力を増す。
本来、イシュタルの神気は自由自在でほとんど万能なのだが、憑依体の影響か、なぜか宝石にしか魔力を蓄積することができなくなっている。
強力な魔力放出スキルではあるが、宝石に込めてから放つ、という工程が必要なため、使いどころがやや難しい。

【宝具】

『山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)』
ランク:A++ 種別:対山宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

シュメル神話においてイシュタルが行った最も「破壊的で」「残忍な」行為―――神々の王でさえ恐れ、敬った霊峰エビフ山を"ただ気にくわないから"と蹂躙し、死滅させた逸話を宝具にしたもの。
メソポタミア神話曰く、イシュタルはエビフ山に分け入り、一歩ごとにその神威を増し、最後には山脈の頂を鷲づかみにし、その地脈の心臓部に槍を突き刺し、エビフ山を崩壊させたという。
この逸話を元に、宝具使用の際は金星にワープ、管理者権限で金星の概念を手中に収め、概念惑星としてマアンナの弾倉に詰めて放つ、
という神をも恐れぬ行為をやってのける。またの名をジュベル・ハムリン・ブレイカー。
とてつもない魔力消費のため、使用するなら令呪一画は必須か。

【人物背景】

疑似サーヴァント。
メソポタミア神話における美と豊穣、そして戦の女神。神々にもっとも甘やかされた。もとい、愛された女神とも言われる。
この姿はイシュタル女神としてのものではなく、彼女に波長の近い人間を依り代にした擬似サーヴァント状態。
女神らしく人間を見守るのが役割と語るが、「さあて、人間は生き延びるのかしら、それとも滅亡するのかしら?」とニマニマ笑いながら見守る、という意味。まさに金星の(赤い)悪魔。
シュメル神名ではイナンナといい、名としてはこちらの方が古い。イシュタルはアッカド神名。
金星の女神であり、人に繫栄をもたらす豊穣の女神であり、戦いと破壊を司る女神でもあり、『天の牡牛』という恐るべき神獣をウルク市へ送り込んだ、とにかく傍迷惑な女神。
愛が多かったのも有名で、人間であれ神々であれ、気に入った相手は全力でモーションをかけたという。
一方、自分の意に染まらない者には悪魔の如き残忍さを見せたとも。
神獣を地上にもたらした理由も、ウルクの英雄王ギルガメッシュが自分の誘惑に応えなかったから、と言われる。
巨大な弓であり飛行船である『天舟マアンナ』を主武装とする。
マアンナはメソポタミア世界を駆ける
神の舟であり、地球と金星を結ぶ星間転移門(ゲート)でもあるが、疑似サーヴァントであるため、基本、ワープ機能は封じられている。
イシュタルは槍も扱うが、今回はアーチャーに徹している。メソポタミアの神と言いながら、イメージは金星から地球を攻めに飛来したインベーダーのそれである。ピピュン。
マスターについては、何か、自分でもわからないような感情を抱いている。

【サーヴァントとしての願い】
この少年を、何か放っておけないので更正させる。


414 : encounter ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:11:49 c5M78su.0
【出展】
 Fate/stay night

【マスター】
 衛宮士郎

【参戦方法】
 どうやら衛宮切嗣の遺品にトランプが混じっていたらしい。本人未自覚。

【人物背景】
衛宮士郎。12歳。
冬木大災害の生存者で、天涯孤独となった彼は、自分を救ってくれた男・衛宮切嗣の養子となる。
五年後、切嗣は病のために死去。彼は、切嗣が最後に呟いた「正義の味方になりたかったんだ」という言葉から、その志を継ぐことを決意。
切嗣の影響で、全てを分け隔てなく救う「正義の味方」になることを本気で志している。
それはもともと切嗣が諦めた理想であり、その遺志を継ぐという考えと、「十年前の大災害で唯一生き残ってしまった」自分は人の為に生きねばならない、という強迫観念に似た義務感のため培われた理想である。
衛宮切嗣が死亡して少し経った後より参戦。

【weapon】
なし

【能力・技能】
魔術回路は27本で、代続きしていない魔術師としてはの多め。
しかし閉じているため、何とかして開くことが出来ればマスターとしても頼りになるか。

【マスターとしての願い】
 争いを止める。正義の味方になる。

【方針】
聖杯戦争を終わらせる。


415 : ◆DpgFZhamPE :2016/11/29(火) 20:39:07 c5M78su.0
イシュタルのステータスに誤りがありました。
正確にはこちらです

【出展】Fate/Grand order
【CLASS】アーチャー
【真名】イシュタル
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力B 耐久B 俊敏B 魔力EX 幸運A 宝具A++

【クラス別スキル】
単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 事実上、現代の魔術師の扱う魔術ではダメージを与えることができない。

女神の神核:B
自身に与ダメージ力プラスを付与。弱体耐性をアップ。

【保有スキル】
美の顕現:EX→B
美の女神としての恐るべきカリスマ性。
他者を惹き付ける力。憑依しているだけの状態ながら、既に人の域を超えている。
本来は強力な誘惑を主体とした複合スキル(ゲージ吸収、呪い、スキル封印)となるはずが、憑依された人間の強い意向によって相手への束縛効果が外されて、実質的にはカリスマ単体のスキルになっている。
(本来ならEXランクだが、Bに下がっている)

輝ける王冠:A
 ゲーム内効果ではランダムに自身に効果を発動(NPを増やす・無敵付与・無敵貫通付与)

魔力放出(宝石):A+
ありあまる魔力を武器に付加させ攻撃力を増す。
本来、イシュタルの神気は自由自在でほとんど万能なのだが、憑依体の影響か、なぜか宝石にしか魔力を蓄積することができなくなっている。
強力な魔力放出スキルではあるが、宝石に込めてから放つ、という工程が必要なため、使いどころがやや難しい。

【宝具】

『山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)』
ランク:A++ 種別:対山宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

シュメル神話においてイシュタルが行った最も「破壊的で」「残忍な」行為―――神々の王でさえ恐れ、敬った霊峰エビフ山を"ただ気にくわないから"と蹂躙し、死滅させた逸話を宝具にしたもの。
メソポタミア神話曰く、イシュタルはエビフ山に分け入り、一歩ごとにその神威を増し、最後には山脈の頂を鷲づかみにし、その地脈の心臓部に槍を突き刺し、エビフ山を崩壊させたという。
この逸話を元に、宝具使用の際は金星にワープ、管理者権限で金星の概念を手中に収め、概念惑星としてマアンナの弾倉に詰めて放つ、
という神をも恐れぬ行為をやってのける。またの名をジュベル・ハムリン・ブレイカー。
とてつもない魔力消費のため、使用するなら令呪一画は必須か。

【人物背景】

メソポタミア神話における美と豊穣、そして戦の女神。神々にもっとも甘やかされた。もとい、愛された女神とも言われる。
この姿はイシュタル女神としてのものではなく、彼女に波長の近い人間を依り代にした擬似サーヴァント状態。
女神らしく人間を見守るのが役割と語るが、「さあて、人間は生き延びるのかしら、それとも滅亡するのかしら?」とニマニマ笑いながら見守る、という意味。まさに金星の(赤い)悪魔。
シュメル神名ではイナンナといい、名としてはこちらの方が古い。イシュタルはアッカド神名。
金星の女神であり、人に繫栄をもたらす豊穣の女神であり、戦いと破壊を司る女神でもあり、『天の牡牛』という恐るべき神獣をウルク市へ送り込んだ、とにかく傍迷惑な女神。
愛が多かったのも有名で、人間であれ神々であれ、気に入った相手は全力でモーションをかけたという。
一方、自分の意に染まらない者には悪魔の如き残忍さを見せたとも。
神獣を地上にもたらした理由も、ウルクの英雄王ギルガメッシュが自分の誘惑に応えなかったから、と言われる。
巨大な弓であり飛行船である『天舟マアンナ』を主武装とする。
マアンナはメソポタミア世界を駆ける
神の舟であり、地球と金星を結ぶ星間転移門(ゲート)でもあるが、疑似サーヴァントであるため、基本、ワープ機能は封じられている。
イシュタルは槍も扱うが、今回はアーチャーに徹している。メソポタミアの神と言いながら、イメージは金星から地球を攻めに飛来したインベーダーのそれである。ピピュン。

【サーヴァントとしての願い】
この少年を、何か放っておけないので更正させる。


416 : ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:40:37 Vxbi6mqE0
投下します。


417 : 遊城十代&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:42:24 Vxbi6mqE0
「じゃあな、遊星! ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
「ええ、十代さん、またどこかで会いましょう」

 パラドックスとの死闘を終え、十代は遊星の赤き竜の力で現代へと帰還を果たした。
 最初に十代と出会った場所、つまりこの時代において十代がパラドックスと決闘した場所だが、今は破壊の跡も崩壊した建物も綺麗に治っていた。
 十代と別れの言葉を交わした遊星は、そのままD➗ホイールに乗って彼の時代へと帰っていく。
 それを見送る十代の表情は晴れ晴れとしたもので、明るい未来を信じる者の顔だった。

『遊星くんの様な若者がいるなら、未来も安心だにゃ』
「ああ、あれだけ精霊と通じ合える奴がいるんだ、未来は明るいぜ!」
『ボクらの旅も無駄じゃないってことさ』

 大徳寺とユベルが十代の背後に現れ、未来のデュエリストやパラドックスの行動理念に思いを馳せた。
 パラドックスが歴史を修正せずとも、精霊と人間と繋ぐ力で少しづつ世界を良い方向へ変えていく。
 それが今の十代に出来ることであり、十代にしかできないことでもあるのだ。

「ニャ〜オ」
「ん? どうした、ファラオ?」

 十代の足元に、大徳寺の愛猫であるファラオが擦り寄って来た。
 自由気ままで物事に動じない、良く言えばマイペースな猫で、大徳寺が成仏せずにいるのもこの猫が魂を飲み込んでしまったからである。
 そんなファラオが、加えていた一枚のカードを十代の足元に置いた。
 “白紙のカード”、それは遊星から聞き及んでいた『スターダスト・ドラゴン』を封印されたカードであり、デュエル中に相手からカードの精霊を奪ってしまうという反則じみた物である。

「これって、もしかしてパラドックスの……!? どこから拾ってきたんだよ?」

 
 この場所はパラドックスが訪れた場所でもあるため、どこに落ちていても不思議ではない。
 十代は疑問に思いつつもカードを拾い、観察し始めた。
 表こそ綺麗に真っ白だが、裏は一般的なデュエルモンスターズカードだ。
 とても精霊を奪うほどの強力な力があるとは思えず、遊星から聞いた通りに白紙のカードをデュエルの時と同様に翳してみた。
 すると――

「うわ、まぶしっ!」
『十代!』

 ――カードが突然光を放ち、光の中からカードの群が十代達を包み込んだ。
 十代達がカードにまみれ、姿が見えなくなったかと思うと、やがてカードは一枚に収縮しどこかへ消えてしまう。
 全てが終わった後には十代達の姿は無く、静寂だけが場を支配していた。


*  *  *  *  *


418 : 遊城十代&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:43:00 Vxbi6mqE0

『……代……十………十代! 起きろ十代!』
「う、うぅん……はっ!?」

 ユベルの声によって十代が目を覚ますと、そこは全く見知らぬ場所だった。
 カードに包まれる前まではヨーロッパに居た十代だったが、目の前には一転してアメリカの雰囲気に支配された都市が広がっている。
 古くからの伝統を感じさせる町並みではなく、退廃的とも言えるような騒がしい景色はラスベガスを彷彿とさせた。

「ここは……アメリカかどっかに来ちまったのか?」

 十代は転移したことにはあまり驚いてはいなかった。
 というもの、十代はすでに何度か次元を超えた経験があり、木星近くの星に比べたら、人が多く生活しているこの場所はまだ不安はない。

『確かにアメリカに似てはいるが、どうやらここは地球ではないみたいだよ』
「ほんとか、ユベル!?」
『ああ、そのうえ十二次元宇宙とも違う世界のようだ。こんな場所ボクは知らないからね』

 ユベルの言葉に、十代は驚愕を露わにする。
 ユベルの十代やユベルの知る十二次元宇宙と、ダークネスの裏十二次元宇宙が世界の全てだと思っていたのに、ここにきて新たな世界があったというのだ。
 裏十二次元宇宙はダークネスとともに消滅したし、ユベルは十二次元宇宙を全て把握し、破壊まで企てた存在だ、まさか知らないということはないだろう。
 その事実を聞いて、十代の身体は震えた。

『ふふっ、そんなに震えて、不安かい十代?』
「まさか! 新たな世界に来れるなんて、最ッ高にワクワクするぜ!」

 遊戯とのデュエルで純粋な心を取り戻した十代に恐れるものは無い。
 新たな冒険に思いを馳せ、期待に胸を踊らせていた。

「しっかし、どこからどう見てもアメリカだよな〜、全部英語だし」
『言葉の訛りから考えると、西武の方っぽいにゃ』
「大徳寺先生、そんなことまでわかんのかよ!?」
『これでも一応錬金術師だからにゃ〜』

 それ関係あんのかよ、と十代は呆れながらも、周囲の声に耳を傾ける。
 やっぱり聞こえてくるのは英語、しかし意味もしっかりと理解できた。

「って、あれ? 英語なのにはっきりわかる……なんでだ?」

 十代も旅を続け、現にさっきまでいたのもヨーロッパだったが、母国語のように自然に頭に入ってくる事など初めての経験だ。

『ああ、そういえばこっちの世界に来た時、キミに記憶操作みたいな物が掛かって来たな』
「ええっ!? 大丈夫なのかよ?」
『ボクがしっかりと守ったから問題ないさ。キミが目覚めてからはここの常識や“聖杯戦争”だかの知識が来てね、害は無さそうだから通したんだ』

 “聖杯戦争”、その言葉をユベルが発した時、十代は自分が言葉の詳細を知っている事に初めて気がついた。
 聖杯戦争やサーヴァント、そして自分がマスターであること、そういった知識がまるで初めから知っていたかのように思い出せるのだ。
 それだけではなく、この場所がムーンセル・オートマトンの電脳空間内に作られた場所だともわかり、ワクワクが少し減ってしまったが。


419 : 遊城十代&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:43:40 Vxbi6mqE0

「いてて……なんだこれ? これが令呪か?」

 十代の左手の甲が熱く痛み、三角の令呪が浮き出る。
 痣のような赤い模様は、どことなく遊星の腕にあった龍型の痣を想起させた。

『さっきから私には何のことだかさっぱりだにゃ』
「う〜ん、俺もまだ良く分かってないし、先生には後で説明するよ」

 十代と繋がっているユベルとは違い、精霊である大徳寺や猫のファラオにはムーンセルからの知識提供は無い。
 十代が目覚めてまだ数分の出来事だけに、当事者の十代だってまだ状況の把握は難しいようだ。
 
 十代の手の甲に令呪が完全に浮き出ると同時に、どこからかカードが舞い降りてくる。
 物理法則を無視してゆっくりと十代の前に現れたそれを、十代は苦もなくキャッチした。

「これ、さっきの白紙のカードか?」

 転移前と変わらず真っ白なそのカードは、十代が手に取ると同時に神秘が消え、物理法則に従うようになった。

「あ、裏にもう1枚あるぜ」

 十代の手に馴染んだカードの感触は、後ろに隠れたカードの存在も知らせてくれる。
 後ろから現れたカードは一般的なデュエルモンスターズの形式をとった物だが、十代は見たことがないカードだ。
 カードには『S・BERSERKER 亡国の覇王』という名称と、碧銀の髪を持つ青年と騎馬部隊が描かれている。
 色は儀式モンスターと同様の青い色をしているが、儀式に必要な魔法カードや効果などの説明は無く、絵の説明が書かれているだけであった。

 明らかに説明が不十分であり、十代はデュエルに使用する物ではないとすぐに理解できた。

 ――ふと、そこで十代に影が差し、十代はカードから顔を上げた。
 そこには、明らかにカードの人物と同じ青年が立っており、十代を静かに見下ろしていた。
 “サーヴァント”というものは聖杯から与えられた知識で知っている。
 どうやらその青年は“バーサーカー”、つまり狂化している英霊で、その面持ちからは深い後悔と執念が感じられる。

「お前が、俺のサーヴァントなのか?」
「………………」

 バーサーカーは十代の問いかけに答えることはなく、ただただその場に立ち尽くしている。
 そのオッドアイの瞳は狂化しているからか元からなのか、その者が覇王だと言うことを物語っていた。
 十代はその姿に否応なく過去の自分を思い出してしまう。
 十代は多くのデュエリストに助けられ、今の自分がある事を理解している。
 マスターとして繋がりができた今、彼の心を救うのは自分の使命かもしれない、と決意する。

「バーサーカー、お前のワクワクは、俺が取り戻してやるぜ!」
「………………」

 十代の熱い思いを伝えられても、バーサーカーには反応する術がない。
 しかし、十代にはバーサーカーの瞳が、少し揺れたような気がした。

「よーしっ! そうと決まれば早速行動するのみ!」
『これからどうするかはもう決めたのか?』
「ああ! きっと楽しいデュエルを見れば、バーサーカーだってワクワクするはずだ! この街で片っ端からデュエルしまくってやるぜ!」

 この世界にデュエリスト、それどころかデュエルモンスターズ自体あるのかは定かではないが、十代は猛烈にデュエル魂を燃やしていた。
 今までだって精霊たちが自分の気持ちに答えてくれたように、サーヴァントだって答えてくれるはずだと信じて。


420 : 遊城十代&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:44:54 Vxbi6mqE0

【出展】魔法少女リリカルなのはViVid

【CLASS】バーサーカー

【真名】クラウス・G・S・イングヴァルト

【属性】中立・狂

【ステータス】
筋力A+ 耐久C+ 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具A


【クラス別スキル】
狂化:B
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 彼の思考は「守ること」と「強くなること」以外が薄れている。

【保有スキル】
カイザーアーツ:A+++
 『覇王流』の武術をどれだけ極めたかを表す。
 覇王流の始祖であるキャスターは、原点にして頂点である。

守護の執念:A
 守る対象(初期はマスター、オリヴィエのみ)が死が免れない選択、及び自己犠牲を行おうとした時、対象を攻撃してでも死から遠ざける。
 守る対象が自身よりも戦闘能力が高い場合、一時的に対象の戦闘能力を上回る。

覇王:A
 生前は覇王として君臨した者。
 国王としてのカリスマや、戦闘続行、軍略等の戦争に長けた能力を保持する。

【宝具】
『終焉遠き戦場の王(オーバーロード・フォン・シュトゥラ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:500人
 古代ベルカ戦争で”覇王”と呼ばれるまでの偉業を成し遂げた英雄譚の具現。
 バーサーカーの中ではまだ古代ベルカ戦争はまだ終わっておらず、同じく戦争半ばに倒れたシュトゥラ王国の死者を出現させる。
 その中には覇王の相棒である”ライゼ”を筆頭に、シュトゥラ王国では優秀な兵士とされていた雪原豹も現れる。

【weapon】
武装形態:古代ベルカの魔法によるバリアジャケット。

イングヴァルトの大剣:綺羅びやかな装飾が施された大剣。覇王流の本領は徒手空拳なのであまり使用しない。

【人物背景】
 覇王と呼ばれるまでの力を持った英雄であり、古代ベルカに存在した「シュトゥラ王国」の国王。
 元は優しく、まっすぐで情熱溢れる好青年だったが、敬愛する『聖王オリヴィエ』が戦争終結の為に命を落としてから変わってしまった。
 まだ彼が王子であった頃、『聖王のゆりかご』という最終兵器で戦争終結を図った当時の王国は生体コアにオリヴィエを選び、オリヴィエもそれを承諾してしまう。
 オリヴィエを力づくで止めようとした彼は、まだオリヴィエよりも弱く、彼女に負けて『聖王のゆりかご』の発動を止めることができなかった。
 しかし、それでも戦争は終わらず、オリヴィエを止められなかった後悔から「守るための強さ」を求めて死に物狂いで戦場を駆け巡り、覇王と呼ばれるようになった。
 結局彼も戦争が集結する前にその生を終え、今でも戦争が終わったことを知らないままでいる。

【サーヴァントとしての願い】
 オリヴィエを守る。

【基本戦術、方針、運用法】
 意思の疎通が取れず、「守ること」が念頭にあるため守護対象から遠く離れることはない。
 そのカリスマや軍略も狂化した彼では意味をなさず、宝具使用時のシュトゥラ軍にのみ発揮される。
 守護対象が増えると、力づくでも自分の守れる範囲に置こうとする為、注意が必要。
 令呪や命令だけでなく、彼の価値観でも守る対象は増えるため、青セイバー等のオリヴィエとよく似た人物とは同盟を組まない限り敵と団体行動を取ることになりかねない。


421 : 遊城十代&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:45:27 Vxbi6mqE0

【出展】
 遊戯王GX
 
【マスター】
 遊城十代(withユベル)

【参戦方法】
 パラドックスが持っていた「白紙のカード」をファラオがどこからか拾ってきた、それは『白紙のトランプ』が変化した物である。


【人物背景】
 極めて陽気で前向きな性格の持ち主で、純粋にデュエルを楽しむ事のできる生粋のデュエリスト。
 かつてデュエル・アカデミアに在籍していた時に様々な事件に遭遇し、挫折と復活を繰り返す。
 その過程で十二次元宇宙の様々な異世界を体験しており、ネオスペーシアン等多くの仲間を得た。
 幼い頃からカードに宿る精霊の姿を見ることができ、それは前世が「破滅の光から宇宙を守るため覇王の力を持つ救世主」として生まれた王子だったからである。
 そのせいで一度、心の闇の飲まれ「覇王」として異世界に君臨したが、仲間とのデュエルによって闇を打ち消すことができた。
 また、後述するユベルと死闘の末魂を超融合し、共に破滅の光と戦うことを誓う。
 世界の真実・もう一つの世界、そして世界の闇である『ダークネス』と決闘し、虚無の世界と共に討ち果たした。
 その後、アカデミアを卒業し、武藤遊戯との本当の卒業デュエルも終えた十代は、精霊と人間を繋ぐ道を探す旅に出た。
 
 一年後、過去にタイムスリップして武藤遊戯・不動遊星とともに、過去の破壊による時空の修正を目論むパラドックスを討ち果たし、元の世界に帰還を果たした。

 ユベル
 前世で従者にして親友だったユベルという存在は、王子を”守護”する力を得るために醜い竜の姿に自ら改造され、現世においてもカードの精霊として十代のもとに現れた。
 異常なまでの十代への愛と執着を持ち、そして十代に否定された事で十二次元宇宙の破壊を目論む。
 しかし、十代とのデュエルで十代と魂の超融合を果たし、その思いは報われた。

【weapon】
 デュエルディスク:十代がいつも使用しているアカデミーデュエルディスク。なくしても創造出来る。

 デッキ:E・HEROのカードを中心とした融合デッキ。こちらも創造できる。

【能力・技能】
 カードに宿る精霊を見ることができ、ユベルと超融合したことでカードの実体化も出来るようになった。
 ユベルとは魂で繋がっているためいつでもそばにユベルがおり、それによって催眠術などの精神操作が一切効かなくなった。
 また、覇王としての力も完全にコントロールすることが出来る。 

【マスターとしての願い】
 聖杯に願うことはない。バーサーカーの心も、元の次元への帰還も自力で果たすつもり。

【令呪】
 左手の甲に覇王の両目とユベルの第三の目にような令呪がある。
 正確には丸2つと、その上に千年パズルの様な目玉が縦に描かれている。

【方針】
 元の次元への帰還方法を探りながら、バーサーカーとの理解を深める。


422 : ◆yaJDyrluOY :2016/11/29(火) 22:45:46 Vxbi6mqE0
投下終了です。


423 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:51:52 LYBwAOsQ0
投下します。


424 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:52:38 LYBwAOsQ0
「アツくねえ漢は死んでよ――――し!!」

高層ビルに囲まれたコンクリートジャングルに爆弾のような怒声が響き渡る。
炎のように逆立った髪、筋骨隆々の肉体に羽織られた学ラン。
召喚された漢、爆熱番長もといバーサーカーは第一声にその言葉を放った。

「俺は爆熱番長!!貴様のサーヴァントとして戦う漢だ!!」

弱点を隠す必要など無しとでもいうようかのように真名を叫ぶ爆熱番長。
そんな彼を呼び出したマスター、松岡修造は、降りかかる熱気にも堪えず涼しげな笑みを浮かべていた。

「いいねえ、熱いよ〜熱い熱い。俺はそういう奴、大好きだ!」

彼、修造はこれまでの経緯を振り返る。
タオルと間違えて側にあった白いトランプで汗を拭ってしまった彼は、気が付けばここに連れてこられ、記憶を失ってからもテレビや修造チャレンジを通じてテニスの普及に尽力していた。以上。
そう。彼という男はここに連れてこられてもなんら変わらず熱い男だった。


「俺は問う!!果たして貴様に俺のマスターたる資格があるかどうかを!!」

爆熱番長は、修造へ指差し声を荒げる。

「俺の支配する国にアツくねえ弱者など必要なし!!俺の目的は聖杯を手にし、全日本国民の中からアツき魂を持ったエリートのみを選別することだ!!」
「選別?」
「貴様の願いはなんだ!!如何な願いであろうと迷わず爆進するならそれでよし!!そうでないなら俺がこの手で」
「言い訳してるんじゃないですか?」

爆熱番長の怒声を遮る修造の声。
その声は、爆熱番長のものと比べれば静かで小さい。だが、確かに彼の声は周囲に染み渡っていた。

「...なんだと?」
「熱い国を目指すって言ったよな。でも、そんなことできない、無理だって諦めてるんじゃないですか?」

静かに、しかし力強く問いかける修造に、爆熱番長も思わず耳を傾ける。


425 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:53:47 LYBwAOsQ0

「アツくない奴はいらないって言ったよな」
「当然だ!!世間では無気力で心の弱い後ろ向きなクズ共が蔓延っている!!奴らが巣食う限り国の崩壊は火を見るより明らか!!そんなクズ共など排除するのが国n」
「んなわけねぇだろぉええええええ!!!!」

突然の叫び。
先程までずっと叫んでいた爆熱番長ですら肌が泡立つほどの超怒号だ。

「お前なに諦めてんだよ!!なんとなくで終わってんじゃねえよ!!」
「俺が諦めてるだと!!?ふざけるな、俺は熱き魂を持つエリートだ!!諦めなどという言葉は知らん!!」
「ちゃんと、伝えろよ!!!」
「ぬぐお...!!?」

大気を震わす修造の怒号。
気圧されかける爆熱番長に構わず、修造はペンを持ちホワイトボードに文字を描きなぐる。

「これ、なんて読むかわかるか?」
「...『Failure』」
「そう。フェイルアー。『Failure』っていうのは、失敗ってことですよ」

『失敗』。
熱さとは無縁な後ろ向きな文字に爆熱番長の眉がピクリと動く。
しかし、修造は意にも介さず続ける。

「アツくない奴を応援する時に、あぁ〜、失敗したらどうしよう〜とか。失敗を怖がってんじゃねーのか?失敗やだとか思ってんじゃねーのか!?」
「なに!?」

修造の言葉は、爆熱番長の琴線に触れるもの。
失敗を恐れ目を背ける。爆熱番長の嫌う無気力なクズ共と同じだというのだから当然である。
だが、爆熱番長の声からは先程の熱さは弱まっていた。


「言っても無駄だって、みんなを熱くするのを諦めてんじゃねーのか!?」
「お、オレは...!!」

止めろ。言うな。
そんな想いを表すかのように、爆熱番長の声に動揺が生じる。

「熱くない奴を見つけたら殺すのがアツさか?違うだろ!!」

だが、修造は言い放つ。
爆熱番長の気持ちは痛いほどわかる。
けれど、伝えたい言葉があるから。
熱き魂を追い求める者として、理解してほしいから。
最大の熱意をもってこの言葉を贈る。




「熱くなれなくて退屈してる奴がいたら、熱くするのが俺たちだろ!!!!」


426 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:54:54 LYBwAOsQ0


「う、うおおおおおおおおお――――――!!!」

修造の魂の叫びに、爆熱番長は全身を震わせる。
彼には、先程まではただの人間にしか見えなかったマスターが、いまは仁王像のように巨大な姿に見えていた。

(ば、バカな...俺が圧されているだと...!?)

修造の叫びに応えるかのように、爆熱番長のこれまでの記憶がリフレインされる。


『熱くねえ男は死んでよ――――し!!』

その決まり文句のもと、熱くないと判断した奴らを制裁してきた。
世間が無気力な者で溢れれば、その国は確実に崩壊する。それは真実だ。だが...

(俺は...目を逸らしていたのか?)

その実、爆熱番長は拒絶されることから逃げていたのかもしれない。

わかっていた。あの自分が生きた現代社会、異端なのは自分であったことは。
もしも熱さを訴え爆進するのが己一人だけであれば、いずれは周囲に訴えることを止め、ただ一人熱くいればいいと思っていたかもしれない。
だが、熱き魂を持った者は他にもいた。
東京23区計画、その実験体である「番長」の称号を与えられた者たち。そして、自らを慕い舎弟としてついてきてくれた者たち。
彼らも自分の知る限りでは崇高な目的のため日々おのれを磨き爆進する熱き者たちだった。

そんな彼らの存在を知ったからだろうか。

爆熱番長は、周囲に熱き魂の大切さを訴えるのを止め、熱き国を作るために、熱き魂を持った者を選別するようになった。
理由など云うまでもない。
熱くするより排除した方が楽だから。世の中を熱さを持った者たちだけにしてしまえば、己の熱さを否定されなくて済むから。

だが、そんな妥協した熱さが真の熱さと云えるのか。―――――否。
それはニセモノだ。己の初志を貫徹できなかった見せかけの熱さだ。

(最早...俺に価値は、ない)

ガクリ、と爆熱番長は膝をつく。
己の熱さの矛盾に気が付いた彼は、もう一人では熱くなれない。
爆熱番長の魂の火は、此処にて消えた。


「...世間はさぁ、冷てぇよな」

修造は、爆熱番長の肩に手を置き静かに語る。

「みんな君の思いが...感じてくれねぇんだよ。どんなに頑張ってもさ、『なんでわかってくれねぇんだよ!』って思う時あるのよね。
俺だってそうよ。熱く気持ちを伝えようと思ったってさぁ、『お前熱すぎる』って言われるんだから」
「マスター...」
「でも大丈夫!わかってくれる人はいる!!」

爆熱番長が顔を上げれば、その瞳に映るのは力強い笑みを向ける修造。

そうだ。熱き魂の火が消えたのならまた灯せばいいだけのこと。

彼の微笑みを見た時、爆熱番長は悟った。

「そう!俺についてこい!!」

この漢には完敗だ、と。

気が付けば、爆熱番長の両頬には一筋の涙が走っていた。


427 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:55:38 LYBwAOsQ0


「う、うおおおおおおおおお――――――!!!」

修造の魂の叫びに、爆熱番長は全身を震わせる。
彼には、先程まではただの人間にしか見えなかったマスターが、いまは仁王像のように巨大な姿に見えていた。

(ば、バカな...俺が圧されているだと...!?)

修造の叫びに応えるかのように、爆熱番長のこれまでの記憶がリフレインされる。


『熱くねえ男は死んでよ――――し!!』

その決まり文句のもと、熱くないと判断した奴らを制裁してきた。
世間が無気力な者で溢れれば、その国は確実に崩壊する。それは真実だ。だが...

(俺は...目を逸らしていたのか?)

その実、爆熱番長は拒絶されることから逃げていたのかもしれない。

わかっていた。あの自分が生きた現代社会、異端なのは自分であったことは。
もしも熱さを訴え爆進するのが己一人だけであれば、いずれは周囲に訴えることを止め、ただ一人熱くいればいいと思っていたかもしれない。
だが、熱き魂を持った者は他にもいた。
東京23区計画、その実験体である「番長」の称号を与えられた者たち。そして、自らを慕い舎弟としてついてきてくれた者たち。
彼らも自分の知る限りでは崇高な目的のため日々おのれを磨き爆進する熱き者たちだった。

そんな彼らの存在を知ったからだろうか。

爆熱番長は、周囲に熱き魂の大切さを訴えるのを止め、熱き国を作るために、熱き魂を持った者を選別するようになった。
理由など云うまでもない。
熱くするより排除した方が楽だから。世の中を熱さを持った者たちだけにしてしまえば、己の熱さを否定されなくて済むから。

だが、そんな妥協した熱さが真の熱さと云えるのか。―――――否。
それはニセモノだ。己の初志を貫徹できなかった見せかけの熱さだ。

(最早...俺に価値は、ない)

ガクリ、と爆熱番長は膝をつく。
己の熱さの矛盾に気が付いた彼は、もう一人では熱くなれない。
爆熱番長の魂の火は、此処にて消えた。


「...世間はさぁ、冷てぇよな」

修造は、爆熱番長の肩に手を置き静かに語る。

「みんな君の思いが...感じてくれねぇんだよ。どんなに頑張ってもさ、『なんでわかってくれねぇんだよ!』って思う時あるのよね。
俺だってそうよ。熱く気持ちを伝えようと思ったってさぁ、『お前熱すぎる』って言われるんだから」
「マスター...」
「でも大丈夫!わかってくれる人はいる!!」

爆熱番長が顔を上げれば、その瞳に映るのは力強い笑みを向ける修造。

そうだ。熱き魂の火が消えたのならまた灯せばいいだけのこと。

彼の微笑みを見た時、爆熱番長は悟った。

「そう!俺についてこい!!」

この漢には完敗だ、と。

気が付けば、爆熱番長の両頬には一筋の涙が走っていた。


428 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:57:22 LYBwAOsQ0
>>427 連投ミスすいません

「そういえば、サーヴァントとか聖杯とか言ってたけどなんだよそれ」
「う、うむ」

爆熱番長は聖杯戦争のルールを大まかに説明した。
それに対し、うんうんと眼を瞑り、頷きながら耳を傾けている修造。
やがて、特に迷う素振りを見せずに修造は口を開いた。

「俺は聖杯なんていらないよ。自分の夢は自分で掴みたいから」
「...そうか」

爆熱番長は、やはりこの男には敵わないと思った。
自らは熱さを謳いながら強大な力に頼るつもりでいたのに対して、この男は自らの力で道を切り開こうとしているのだから。

そして、同時に思う。

「...俺もお前の夢に付き合おう。いや、付き合わせてくれ!!」
「おっ?」
「俺はお前に真の熱さを見た!!お前の熱き魂に惚れ込んだのだ!!」

この熱き漢を失いたくない。己の命を賭けるに値する漢だと。
この聖杯戦争はただの競技ではない。文字通り、血で血を洗う死闘である。
おそらく他のマスターやサーヴァントの中にはこちらの熱さに耳を傾けない者もいるだろう。
決して譲れぬものを抱いて死にモノ狂いで殺しにくる者もいるだろう。
そういった奴らからの盾となり時には矛となるのが己の役目だ。

己の信じた熱さに殉じる遺恨、一切なし!

「いいヤツだねぇ〜。仲間がいて、自分がいる! 互いに競い合って高め合っていく、それが切磋琢磨!今から俺達は切磋琢磨し合う友達だ!!よろしく!」
「!!友、か...フッ、熱い響きだ。悪くない」

熱き漢達は固い、固い握手を結ぶ。


ひゅうっ、と風がなびき二人の髪を揺らす。

「あー...ちょっと冷えてきたかなー...寒い寒い...」
「...そうだな。だが、寒いというから寒いのだ」

にやりと笑みを交わし合う漢たち。

「そう。言葉っていうのは大事なんだよ。寒いって言えば寒いだろ。熱いって言えば熱くなる。だから俺たちは誰よりも熱くなるんだよ!!いくぞォ!!」
「応ッ!!」

漢達は頷き合い、深く息を吸う。
そして。

「もっと!!」

この聖杯戦争に携わる者達へ激励を飛ばすように。

「もっと!!」

この聖杯戦争を司る者達へ反逆の狼煙をあげるように。




「「熱くなれよおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォ――――――――――――――!!!!!!!!」」


漢達の叫びは、空高く響き渡った。


429 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:58:12 LYBwAOsQ0


【クラス】バーサーカー

【真名】爆熱番長

【出典作品】金剛番長

【ステータス】筋力A 魔力E 耐久A+ 幸運E 敏捷C- 宝具C

【属性】秩序:狂


【クラススキル】

狂化:E
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
だが、俺の求める熱さとは己の意思によるもの!意思なき強化など眼中にないわ!


【保有スキル】

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。



【宝具】
『熱き漢の熱き叫び(ココデアキラメルノハアツクネエ!!)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:5〜50 最大補足:声の届く限り。

熱き漢の熱き叫び。これを聴いた者は一定時間、爆熱番長のように己の目標へと向かって爆進するようになる。身体能力の向上などは特にないし、効果が切れた後のデメリットも特にない。
また、参加者やNPC全ての者に通用するが個人差があり、感情の起伏が少ない者・冷めきった者には効果が薄い。
マスターである修造が魔力を供給する・熱き魂を叫ぶことで効果は増していく。


【weapon】
・己の拳
火薬仕込みの手甲で殴りつける。その威力は強烈。

『重・爆・撃』:火薬による爆発と拳の連打。2つの衝撃を叩き込む!!

『焼・夷・爆・撃』:空気中に散布した火薬を発火させ炎の渦を生み出す!!

『垂・直・爆・撃』:炎を纏った両拳を相手の頭上に打ち降ろす!!



・身体能力

高圧電流やミサイルすらものともしない頑強な肉体を持つ。また、ミサイルを棒っ切れのように振り回せる程の怪力を誇っている。



【人物背景】
『アツくねえ漢は死んでよし!』。

「番長」たちによる日本征服計画・東京23区計画の「番長」の1人。江東区担当。
なによりも「熱さ」を重んじ、「熱さ」を追い求め、「熱く」生きる漢(おとこ)。
後退することをよしとせず、己の目標に向かいたゆまぬ努力とみなぎる闘志を持って、前向きに前進ならぬ爆進のみが「熱さ」だと信じている。


【方針】
修造と共に戦う。


【聖杯にかける願い】
聖杯なんぞに頼らん!俺はこのマスターと共に熱さを極めるのみ!


【把握用資料:金剛番長 単行本3巻〜5巻】


430 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/29(火) 23:58:59 LYBwAOsQ0

【マスター名】松岡修造
【出典作品】現実
【性別】男

【weapon】
・テニス
ラケットは人を傷付ける道具ではない。これはテニスのためにのみ使う。


【人物背景】
日本人男子として62年振りにグランドスラムベスト8に進出した元テニスプレイヤー。
現在、ウィンブルドン選手権では日本人男子最後のベスト8進出者となっている。また、ウィンブルドン選手権での通算7勝は2015年に錦織圭に抜かれるまで日本人最多の記録であった。
現役引退後はジュニア選手の指導やテニス大会の運営、日本テニス協会の理事を務めるなど引き続きテニスに携わりつつ、スポーツキャスター、タレント、日本オリンピック委員会スポーツ環境専門委員、ミズノスポーツ振興財団顧問などとしても活動している。



【能力・技能】


・熱い心。
-10°の海でしじみが採れる程の熱き心を持っている。彼の熱き心から発された言葉を効いた者は心を揺さぶられずにはいられないだろう。

・培ってきたテニスの技術
ただし半月板を損傷しているため全盛期の動きをするのは難しい可能性がある。


・四字熟語・英単語の知識
意外と博識


【方針】
聖杯よりも己の手で夢を掴む熱さを布教する。


【聖杯にかける願い】
聖杯なんて必要ない。俺たちの手で色んな奴を熱くできればそれでいい。


【把握用資料:松岡修造でぐぐればたくさんある】


431 : HEATS ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/30(水) 00:00:00 hDuCDYc60
投下終了です


432 : ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:06:27 i7VOkflE0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


433 : 菅部阿久乃&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:07:03 i7VOkflE0
本日は日曜日。時刻は7時25分。
けたたましく目覚まし時計が鳴り、部屋の主が目を覚ます。

「ラージレンジャー!」

そう叫んで目覚ましを止めたのは、豊満な肉体をパジャマで包んだ若い女性。
彼女は素早く枕元にあった眼鏡をかけると、テレビのリモコンを手に取る。
しかし電源ボタンに指をかけたところで、その動きは停止した。

「……って、アメリカでラージレンジャーやってるわけないじゃない。
 体に染みついた習慣って怖いわねえ」

リモコンから手を離すと、あくびを一つ。
その時彼女は、違和感に気づいた。

「私……なんでアメリカにいるんだっけ?」

こうして、彼女は記憶を取り戻した。


434 : 菅部阿久乃&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:07:51 i7VOkflE0


◆ ◆ ◆


菅部阿久乃は「悪の教員組織・シィド」の幹部である!
彼女に力を与えたイビルマは、人間の「信じない力」をエネルギー源とする魔女である!
阿久乃はおのれの悪の美学を貫くため、今日もヒーロージャーと戦うのだ!


「……とまあ、私の本来の生活はこんな感じね」
「へえ〜。マスターも面白そうな人生送ってたのねえ」

数十分後。阿久乃はリビングで、自らの元に召喚されたサーヴァントとお互いの身の上を語り合っていた。
なお最初はサーヴァントに敬語を使っていた阿久乃だったが、「もっとフランクにいきましょう」と言われたのでため口になっている。

さて、彼女のサーヴァントはどんな人物かといえば、一言で表現すれば「怪人」だった。
トゲだらけのハート型をした頭部に張り付く、仮面のような顔。
体のあちこちにもハート型のアクセサリーがつけられ、それ以外の部分は派手な原色で彩られている。
元デーボス軍幹部・キャンデリラ。それが阿久乃の元にランサーとして召喚されたサーヴァントの正体であった。

「それでぇ〜。マスターはこの聖杯戦争でどうしたいのかしら?
 叶えたい願い、ある?」
「そうねえ。子供の頃からの夢は、もう悪の幹部になった時点で叶っちゃってるのよねえ。
 他にあったかなあ、願い……。あ、そうだ」
「なになに? 面白い願い、思いついた?」
「こういうのはどうかしら? 直接聖杯を狙うんじゃなくて、他の参加者を邪魔しまくるの。
 悪の怪人としてね」
「変わったこと思いつくわねえ、マスター。でも、ちょっと面白いかも。
 昔の血がうずいちゃうわ〜」

思わぬ案を出してきた阿久乃に対し、キャンデリラはくねくねと体をよじる。

「あー、でも……。あんまりひどいことはしない方向で。良心が痛むから」
「そこはおまかせよ〜。私は、人を喜ばせるのが本職だもの」

彼女の言葉に、偽りはない。
キャンデリラは「喜びの戦騎」。人間の喜びの感情から、エネルギーを集めるのが使命だったのだ。

「オッケー。頼りにしてるわよ、ランサー」
「ええ、楽しく悪いことしましょ♪」

マスターとのファーストインプレッションは、上々の結果。
たまらず、キャンデリラはいつもの決め台詞を口にする。

「キープスマイリングよ〜ん♪」


435 : 菅部阿久乃&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:09:14 i7VOkflE0
【クラス】ランサー
【真名】キャンデリラ
【出典】獣電戦隊キョウリュウジャー
【性別】女
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
封印と復活を繰り返していたとはいえ、はるか古代より生き続けたランサーの肉体には相応の神秘が宿っている。

【保有スキル】
仕切り直し:C
戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。
状況が不利になると撤退するのは、悪の幹部のお約束。

変化:E
文字通り「変身」する。
ランサーは人間の美女の姿に変身できる。

魅惑の美声:C(B)
人を惹き付ける天性の美声。魅了系スキル。
異性に対して魅了の魔術的効果として働くが、対魔力スキルで回避可能。
対魔力を持っていなくても、抵抗する意思を持っていればある程度は軽減できる。
「変化」のスキルを使用中は、ランクが上昇する。

【宝具】
『喜びの戦騎(キープ・スマイリング)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:50人
生前のランサーの行動が、宝具となったもの。
ランサーの行動によって「喜び」の感情を抱いた人間から、魔力を吸収することができる。
生前は主であるデーボスにその魔力を捧げていたが、サーヴァントである現状ではマスターがその魔力を受け取ることになる。
回りくどい方法であるものの、魂食いのように管理側や他の参加者に危険視されることなく魔力を収拾できるのは侮れないメリットである。

『楽しみの密偵(ラッキューロ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
直属の部下であり、デーボス軍離脱後も行動を共にした密偵・ラッキューロを使い魔として召喚する。
とはいえラッキューロは戦闘力も他の能力も低いため、あまり役に立たない。
人ならざるサーヴァントを巨大化させることができる「スクスクジョイロ」が唯一の切り札だが、魔力消費が非常に大きく気軽には使えない。


【weapon】
「キャハハルバート」
鎌の部分が巨大なハート型になったハルバート。
ランサーのクラスで召喚されてはいるものの、鎌としての使用がメイン。

【人物背景】
地球生物の絶滅を目論むデーボス軍の幹部。
人間の「喜び」からエネルギーを奪い、デーボスに献上するのが使命。
その性質から他の幹部たちに比べ残虐性が低く、キョウリュウジャーとの戦いの終盤においてデーボス軍を追われてしまう。
その後は先に追放されていたラッキューロと共に、キョウリュウジャーと共闘。
デーボス軍の壊滅後は、人類との共存の道を探りながら生きていく道を選ぶ。
後にトリンから「賢神」の地位を継承し、未来のキョウリュウジャーの司令官となった。
しかし今回はマスターの影響を受け、デーボス軍時代の人格で現界している。

【サーヴァントとしての願い】
マスターをキープスマイリングよーん♪

【基本戦術、方針、運用法】
ステータスはさほど高くなく、宝具も戦闘向きではない。
正面からの戦闘は避け、「仕切り直し」や「魅惑の美声」を活かしてのらりくらりと戦っていくのが望ましいだろう。


436 : 菅部阿久乃&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:10:21 i7VOkflE0

【マスター】菅部阿久乃(すがべ・あくの)
【出典】ホームメイドヒーローズ
【性別】女
【令呪】胸元に重なった三つのハート

【ロール】
研修でアメリカに来ている中学教師

【マスターとしての願い】
悪の怪人として暗躍する

【weapon】
「魔法のヘッドドレス」
イビルマの伝手で「帽子の魔女」に作ってもらったヘッドドレス。
アイマスクのように目元まで下ろして「悪身顕現(アークフォーム)」とコールすることにより「レーラリン」へと変身できる。
「平常運転(キャンセレーション)」のコールで変身は解ける。
レーラリンとしての能力は、後述。

【能力・技能】
「変身能力」
前述のヘッドドレスを使用することにより、怪人「レーラリン」へ変身する。
レーラリンの外見はゴスロリ風のコスチュームを着用した、単眼の女性。
変身中は身体能力が大幅に向上し、衝撃を無効化する能力により軽自動車にはねられた程度ではダメージを受けない。

「怪光線(レーラリン・スパーク)」
手から放つ、電撃状のビーム。
人を傷つけるのを好まない阿久乃の性格から、威力は抑えめ。
また、特に狙いをつけなければ自動的に人間を避けて地面で爆発する。
変身前でも使用可能だが、わずかでも他人に攻撃的感情を抱いただけで発動してしまうため
セーフティーとしてポーズと「阿久乃ビーム!」のコールがなければ撃てないように設定されている。

【人物背景】
市立曽新第一中学校の数学教師。
24歳。スリーサイズは91/62/86。
真面目だが不測の事態に弱く、テンパりやすいのが欠点。
幼い頃から筋金入りの特撮マニアで、父と共に「悪の組織の幹部」になることを夢見ていた。
その夢に目をつけたイビルマに勧誘され、「シィド」を起ち上げることになる。
悪にこだわりを持ちつつも根は親子揃って善良であり、物理的に人を傷つけるような悪事は行えない。

【方針】
お邪魔虫


437 : ◆NIKUcB1AGw :2016/11/30(水) 01:11:06 i7VOkflE0
投下終了です


438 : ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:04:26 FFFMD.Cs0
投下します。


439 : リュータ&アヴェンジャー ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:05:19 FFFMD.Cs0
    
    
      



正義はこの大地にはなく
在るのは絶望渦巻く血と涙で塗り固められた残骸のみである。
私たちの救いは、楽園は、何処にあるのだろう。
世界から争い事がなくなり、平和に幸せに生きていける未来。
そんな夢を、いつまでも願い続けたい。

レメディウス・レヴィ・ラズエル

日記の遺稿より

皇歴四九六年













 リュータ・サリンジャーが記憶を取り戻すのに、そう長くは時間はかからなかった。
聖杯戦争。知ったことも聞いたことのない催しではあるが、この程度では、自分の怨嗟を消し去ることなんてできやしない。
どれだけの絶望が降りかかろうとも。どれだけの戦いを経ても。どれだけの絆を紡ごうとも。
絶やしてはならない炎がある。忘れてはならないモノがある。
リュータの運命を決定づけた出来事。正義による虐殺。
自分を育ててくれたファミリーは悪党だった。因果応報の末路をいつ迎えてもおかしくない人間しかいない、報いの果てが其処にある。

「俺にとっては大切な家族だった。何よりも。誰よりも」

 どんな悪行を重ねていようとも、ファミリーの人達はリュータにとっては大切な存在だった。
殺されて当然の屑だろうが関係ない。彼らがリュータへと親切にしてくれた事実は揺らがないし、塗り替えられない。

「許せるはずがない。どんな大義があろうとも、俺の家族を殺した事実は絶対に消えない」

 大事なのは、許せるか、許せないか、だ。大義など、知った事か。
高尚な理想を持つのは大いに結構だが、その礎に自分達がなるのはまっぴら御免である。
その死に、その虐殺に意味があったとしても、リュータは認めない。


440 : リュータ&アヴェンジャー ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:05:41 FFFMD.Cs0
       
「アーチェスだけは絶対に殺してみせる。ただし、その仇は此処にはいないときたら、笑っちまうぜ。神様俺のこと嫌い過ぎだろ?」

 例え、その仇が自分の想像を超えた傑物であろうとも。
アーチェスの抱いた理想が世界を救うものであろうとも。
リュータはその理想ごと彼の全てを踏み躙ると決めたのだ。
法は彼を縛らない。天や神は救いなんてものを与えてくれない。
ならば、自分がやるしかない。自分の手で復讐を遂げる意外に道はなかった。
殺して、壊して、跡形もなく消し去らないと気が済まない。
アーチェス・アルザンテというクソッタレは必ず殺す。
どんな汚い手を使ってでも、家族の仇を討つ。
その為に、乗り込んだ戦いが聖魔杯であり、自分はその戦いの真っ最中だったはずだ。

――そして、アイテム探しのダンジョンで見つけた白紙のトランプ。

 それが、この異なる戦争への入り口だったのだろう。
気づけば自分は記憶を奪われ、よくもわからない街へと飛ばされていた。
今の自分に起きている出来事は夢か現か、それさえも確かではないというのに。
幸いなことに装備は仮住まいのゲストハウスに一式残っていたので、安心である。

「まあ、そうなってくるとよ……この戦いで勝ち上がるしかねぇ。優勝しなきゃ帰れねえって言うんならやるしかねぇよな」

 残された道は聖杯戦争で優勝して、元の世界に帰るものだけである。
生き残るが為に。勝ち上がって、憎き仇をこの手で殺す為に。
そうすることでしかこの内々に眠る怨嗟は晴らすことができないのだから。

「なぁ、アヴェンジャー。俺にお誂え向きのサーヴァントさんよ」

 そして、それは引き当てたサーヴァント――アヴェンジャーも同じである。
何せ、名前からして復讐ときているのだ。まるで、自分が引き当てることが運命であったかのように。
相対する男は黙したまま、リュータを見つめ続けている。
両の眼は遮光眼鏡に隠され見えないが、リュータにはわかる。
アレは、自分を見定めている。復讐という言葉の中身を、吟味しているのだ。
砂色の髪、細さを極めた顔つき。健康的な肌の色とはとても思えない土塊のような顔つき。
刻まれた傷は縦横に広く付けられている。


441 : リュータ&アヴェンジャー ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:06:12 FFFMD.Cs0
      
「俺には、死ねない理由がある。他の奴等にとってはンな理由はくだらねぇの一言で済ませられるかもしれねぇ。
 けどよ、俺はただこの理由の為だけに生きてきた。強くなろうって誓って、ずっと走り続けてきた」

 一目でわかる。彼もまた、自分と同じく奪われた者なのだ、と。
理不尽に奪われ、泣き喚き、そしてその果てに一つの決意を固めた復讐者。
自分の辿る可能性とも言える存在が今、此処にいる。

「誰が何を言おうとも俺自身の手でアーチェスを殺す。俺の復讐は俺だけのものだ、誰にも邪魔はさせねぇ」

 改めて、自分にも、サーヴァントである彼にも誓う。
この復讐こそが生きる理由であることを。
世界を台無しにしてでも成し遂げたい願いなのだと。

「…………その末路が、何も生み出さないとしても」

 ぼそり、と言葉が返ってくる。
捻れ、歪み、本来の声から掛け離れた、この世全てに裏切られたかのような悲痛さが混じった声。
たった一言。それだけで、リュータの全身には怖気がはしる。
人はここまで、“終わってしまう”のか。
何も振り返らず、何も認めず、何も許せず。
ただひたすらに理想の極地にまで歩くその様は、殉教者のようで。

「それでも、右手を伸ばすか」

 彼は問いかけているのだろう。ここから先は後戻りができない一本道である、と。
これ以外に道はない、賢しげに回り道など許されない修羅へとなる覚悟。
アヴェンジャーは、まだ戻れるのだと言外に伝えているのかもしれない。

「決まっているさ。いや、決まっていた、最初から、あの日、あの時ッ!
 ファミリーが殺された時から、俺の運命は全部示されていたッ! 復讐以外の道は、考えられない!!!!」

 それでも、リュータは復讐を選んだ。
この選んだ道が間違いではないと信じている。
自分だけは、その選択肢を後悔しないと胸に刻んでいる。

「………………いいだろう。その言葉、嘘偽りがないものと受け取った。この時より、私はおまえのサーヴァントだ」

 伸ばした右手は取られ、彼らの願いは一つの意志となる。
復讐という大きなうねりとなって、聖杯戦争を荒らしていくだろう。

「アヴェンジャー――ズオ・ルーがこの聖杯戦争を塗り替える」

 我欲で、浅ましく。それでいて、決して捨てきれない綺麗な思いが一欠片。
二人の復讐者は前へと進むしかない。
それは、断ち切れない運命の輪であり。世界は、いつだってこんなはずではということばかりなのだ。
そんな理屈を認められず、足掻き続けた馬鹿な人間達が――復讐者と呼ばれるのだろう。


442 : リュータ&アヴェンジャー ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:06:40 FFFMD.Cs0



【クラス】
 アヴェンジャー
【真名】
 ズオ・ルー(レメディウス・レヴィ・ラズエル)@されど罪人は竜と踊る
【ステータス】
 筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:E 宝具:B
【属性】
 混沌・悪
【クラススキル】
 復讐者:A
 あらゆる調停者(ルーラー)の天敵であり、痛みこそがその怒りの薪となる。
 被攻撃時に魔力を増加させる。

 忘却補正:B
 復讐者は英雄にあらず、忌まわしきものとして埋もれていく存在である。
 正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する。
 彼の存在は正しく伝えられることなく、戦火の焔へと埋もれていった。

 自己回復(魔力):A
 この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
 これにより、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。

【保有スキル】
 鋼鉄の決意:EX
 絶望に絶望を重ねても尚、理想を保ち続けた強靭な精神力。
 ランクに応じて精神的な攻撃を跳ね除ける効果を持つ。

 咒式:A
 魔法とも言える超科学。もしくは科学による魔法。
 才能と知識が必要な技術を彼は苦もなく操ることができる。

 軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
一流の策謀家をして本当の天才と称される彼の繰り出す一手は神算鬼謀である。
 ただし、その策謀は論理と正しさだけに頼り切りであり、不可解な物事には弱い。
 
 道具作成:B
 レメディウスは生前の経験から魔杖剣――魔力を帯びた器具を作成できる。

【宝具】
「内なるナリシア」
 ランク:B  種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 咒式を戦闘や破壊作業等で使用するために必要な武器。
 そして、最愛の少女の名前を冠にした忘れ得ぬ罪の象徴。

【weapon】
内なるナリシアを媒介に繰り出す咒式。

【人物背景】
 全てを奪われた男。最後に残った理想すら護れなかった哀れな男。
 もしも、もしもの話――彼がアヴェンジャーではなく、キャスターとして呼ばれていたら、きっと救いはあっただろう。

【聖杯にかける願い】
 復讐を。理不尽に抵抗を。



【マスター】
リュータ・サリンジャー@戦闘城塞マスラヲ

【マスターとしての願い】
復讐を。どんな道理があろうとも、報いを受けさせる。

【能力・技能】
卓越した身体能力、数々の経験、そして不屈の精神力。
手持ちの銃火器、日本刀、ナイフを難なく操る戦闘力も高い。

【人物背景】
家族を奪われた男。そして、その怨嗟から解き放たれるはずだった男。

【方針】
生き残る。


443 : ◆GTQfDOtfTI :2016/11/30(水) 20:06:53 FFFMD.Cs0
投下終了です。


444 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:25:37 FM1Q271A0
皆様投下乙です。
そして◆aptFsfXzZw 氏、素敵な感想をありがとうございました。
もう一作、投下させて頂きます。


445 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:26:42 FM1Q271A0


     00/夢という名のチカラ


 その少女は、花のように強く・優しく・美しく……夢に向かってひたむきに進んでいた。
 大切な夢を笑われたこともあった。夢を否定されて、絶望したこともあった。
 だけど、それでも少女は夢を諦められなかった。プリンセスのような素敵な人になって、みんなを笑顔にすること…………
 誰に何と言われようとも、その想いは決して捨てることができなかった。


 その青年は、誰にも負けない強い勇気と夢を忘れない純粋な心を持ち……夢に向かって真っ直ぐに走っていた。
 夢を追いかけるあまりに周囲を危険に晒して、時に守りたかった命を奪ってしまったこともある。それでも彼は諦めず、全ての命を守ろうと力を尽くした。
 全ては、幼き頃に出会った勇者のおかげ。憧れのウルトラマンがいたからこそ、彼はどんな困難も乗り越えられた。
 信じれば、夢は必ずかなう。その想いは敵であったカオスヘッダーにも届いて、そして共に生きる道を見つけた。
 


 そんな二人がこの世界で巡り合ったのも、またFate(運命)なのかもしれない。



     01/共に生きるというユメ


「うわぁ……!」

 春野はるかは見上げていた。
 彼女の前には、山のような巨大な生物が凛然と佇んでいる。全長は50メートルを遥かに超えて、あのゼツボーグやメツボーグ達よりもずっと大きい。
 例え遠くにいても、この巨体ならば簡単に見つけられるはず。まさしく、怪獣と呼ぶに相応しい存在感を放っていた。


 それでも、この怪獣が怖いとは思えない。
 穏やかな瞳でこちらを見下ろしていて、優しい印象を醸し出している。身体が大きすぎるだけで、普通の動物と何も変わらなかった。
 キュウウウ、と鳴き声をあげる。その声に、凶暴な雰囲気は微塵も感じられない。


 友好巨鳥リドリアス。
 鶏冠は太陽のように赤く染まっている一方で、身体は空のように青い。モーリス・メーテルリンクの童話に出てくる幸せの青い鳥や、望月ゆめ先生が描いた花のプリンセスのとりさんみたいだった。
 実際、こんなにも優しそうなリドリアスが誰かを傷付けるとは思えない。壮大で、そして穏和なその姿を見ていると、晴れ晴れとした気持ちになる。


446 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:28:03 FM1Q271A0

「大きいパフ〜……!」
「大きいロマー!」

 そしてリドリアスに目を輝かせているのは、はるかだけではない。はるかと一緒にいるロイヤルフェアリー達も同じだった。
 ピンク色の毛並みが整った小犬のようなパフと、可愛らしい蝶ネクタイがトレードマークな紫色のインコのアロマ。フェアリー達もまた、はるかの足元でリドリアスを見上げている。
 特にアロマは同じ鳥であるリドリアスに憧れを抱いているのか、異様なまでに目がキラキラとしていた。

「キュウウウウウ!」

 そんなアロマに答えるように、リドリアスはしゃがんでくれる。
 当然、身体があまりにも大きすぎるので、完全に視線を合わせることはできないけど、アロマとパフは喜んでくれた。

「パフ〜!」
「ロマー!」
「キュウウウウ!」

 笑顔ではしゃぐパフとアロマに、リドリアスは優しく答えてくれる。
 リドリアスの言葉はわからないけど、彼らのことを友達だと思ってくれていそうだった。

「楽しそうだね、パフもアロマも」

 微笑ましい光景を前に、優しげな声が聞こえてくる。
 地球のような青さを誇る衣服を纏った茶髪の青年。彼こそが、アーチャーのクラスとして召喚されたサーヴァント……真名は、春野ムサシ。
 一見すると、カナタのような優しいお兄さんに思える。しかし彼は神秘的な雰囲気を放っていて、そしてもう一つの姿があった。
 プリンセスプリキュアのように、人々の夢と秩序を守る慈愛の戦士・ウルトラマンコスモスだった。

「リドリアスも喜んでいるよ! 君達と友達になれてよかったって」
「本当ですか! パフとアロマだって、リドリアスに会えてとても喜んでいますよ!」
「それはよかった!」

 はるかとムサシは互いに笑顔を向ける。
 リドリアスとは、ムサシにとって小さい頃からの親友らしい。サーヴァントとして召喚された際に、彼もまたこの世界に現れたとムサシは言っていた。
 サーヴァントであるムサシの友であるリドリアスも、はるかに協力してくれるようだ。心強いと思う反面、どこか申し訳なさも感じてしまう。
 その理由は、

「どうかしたのかい、マスター?」

 はるかの胸中を察したかのように、ムサシが問いかけてくる。

「えっ?」
「顔が暗くなっているよ……やっぱり、不安なんだね。聖杯戦争のことが」
「……はい。叶えたい夢の為に、誰かを絶望させる……そんなことで夢を叶えても、誰も幸せになんてなれません」

 花のプリンセスのように、素敵な人になりたい。それこそが春野はるかの夢であり、それを叶える為に今まで色んな事にチャレンジして、これからも続けるつもりだ。
 だけど、その為に他の誰かを傷付けようなんて考えたことがないし、それはプリンセスのやることではない。



 誰かの夢が、他の誰かの夢を犠牲にすることは確かにある。
 いなくなったカナタ王子の手がかりを見つける為に、プリンセスコンテストに出場したことがあった。一番にはなれなかったけど、天ノ川きららがレッスンをしてくれたおかげで、特別賞を貰えた。
 とても嬉しかったけど、選ばれなかった人達は落ち込んでいたかもしれない。悲しいけれど、夢が夢を台無しにするというのは……そういうことだろう。
 だけど、聖杯戦争を認められるかどうかは、全く別の話だ。


447 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:28:43 FM1Q271A0

「それに、こんなことで夢を叶えるなんて私は嫌です! 私が叶えたい夢は、私自身の力で辿り着かないと意味がありません!
 自分以外の力で叶う夢なんて……私が夢見たプリンセスじゃありませんから!」
「プリンセス……それが君の夢なのかい?」
「はい! 私は小さい頃、花のプリンセスっていう童話を読んで、そこで素敵なプリンセスと出会いました。
 絵本に出てきたプリンセスは、とてもキラキラ輝いていて……本当に素敵だったんです! 強く・優しく・美しく…………まるで、綺麗なお花みたいでした!
 私は、そんなプリンセスみたいな素敵な人になりたいんです!」

 幼い頃に出会った花のプリンセスの姿が、はるかの脳裏に過ぎる。
 花のプリンセスはいつも素敵な笑顔を浮かべていて、みんなから愛されていた。けれど、そんなプリンセスにやきもちを焼いたとりさんが、プリンセスに嘘をついて、恐ろしいまじょが住む森に連れて行ってしまう。
 プリンセスはまじょに捕まってしまったけど、決して恐れたりせず、それどころか誰のことも責めたりしなかった。
 その想いは花を咲かせて、とりさんは目を覚ました。そうして反省したとりさんはプリンセスを助けに行った。

「ひどいことをしてごめんなさい」と、何度もとりさんは謝った。
「たすけてくれてありがとう。とりさんもわらって」と、プリンセスは笑顔で許してくれた。

 遠い日から何度も見たプリンセスはとてもキラキラしていて、彼女のようになりたいと思うようになる。
 その夢はとても非現実的で、何度も馬鹿にされたし、何度も否定された。だけど、誰に何と言われようとも……小さい頃に見た夢を裏切ることはできない。
 この夢を応援してくれたみんなだってそう。みなみも、きららも、トワも、ゆいも、カナタも…………これまでに出会ってきた、全ての人から貰った想いを無碍にするなんて、できるわけがなかった。

「プリンセスのような、素敵な人になりたい…………とっても素敵な夢じゃないか!」

 そして今だって、ここにいるムサシもそうだ。
 この夢を笑ったりなどせず、むしろ真っ直ぐに応援してくれている。そこには、溢れんばかりの暖かい夢が感じられた。

「僕も……君みたいに夢を持っていた。宇宙飛行士になって、ウルトラマンに会いたいって言う夢を。そして、怪獣達と共存したいという夢も、抱くようになった。
 その夢を叶える為に、いっぱい努力をしてきた……辛いことは何度もあったし、時には守りたかった怪獣を救えなかったこともある。
 だけど、絶対に諦めなかったからこそ……ウルトラマンコスモスは僕に答えてくれたんだ!」
「ウルトラマンコスモス……」
「僕に力を貸してくれた勇者の名前だ。彼がいたからこそ、僕はどんな困難も乗り越えることができたからね……コスモスが僕を信じて力を貸してくれたように、僕もマスターの力になりたい。
 マスターの夢を支えるつもりでいるさ」

 その瞳は青空のように穏やかで、どこまでも優しい。はるかの夢を応援して、時には様々な助言をしてくれた人達のようで、心が温かくなってしまう。
 はるかが今まで出会ってきた人達は、みんな夢に向かって真っすぐに努力をしてきた。
 その結果、他の誰かを追い抜いてしまうことはあったとしても、わざと相手を傷付けてまで夢を実現させようとした人はいない。だからこそ、夢を叶えられなかった人も、夢を叶えた人を応援してくれている。
 きららだって、ミュージカルショーに参加できなくなった時はあったけど、他のモデル達を貶そうとしたことはなかった。
 パフとアロマに、こうして出会ったムサシやリドリアスだって同じ。

「ありがとうございます」

 だからはるかは、この胸に宿る想いを告げる。
 はるか自身が成し遂げたいことを……そして、ムサシに対する気持ちを。

「私の夢は……今までも、そしてこれからも変わることはありません。その為にも、この戦いを……止める方法を考えたいと考えています」
「そうか……でも、それは決して簡単なことじゃない。君の夢を否定する人や、聖杯を求めて他の誰かを犠牲にする人だっている。
 それに、聖杯を求めて戦う人達にだって、何か理由があるはずだよ。例えば、大切な人を助ける為に聖杯を手に入れたい……みたいな、ね。
 君は、そんな人の夢を邪魔することになるかもしれないよ。それでもいいのかい?」

 ムサシの言いたいことはよくわかる。
 あらゆる願いを叶えてくれる聖杯。その力さえあれば、どんな願いでも叶えられるらしい。例えば、不治の病に苦しむ誰かを救うことや、友達みんなで幸せになることも不可能ではないだろう。
 自らの意志で覚悟を決めて、この戦いに身を投じる人だっているはずだ。それを絶対悪とは言い切れないし、むしろその邪魔をするはるかこそが間違っているかもしれない。


448 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:30:23 FM1Q271A0

「ムサシさんの言うことはわかります。その人達は、みんなが叶えたい願いを持っていて、聖杯を求めていることも。
 だけど、やっぱりこんなことで夢を叶えるのは違うと思いますし……助けられた人も悲しみます! 何よりも、誰かの為になりたいっていう夢を潰すなんて、私はしたくありません!」

 だけど、それで救われた側が笑えるのか。
 自分の為に、他の誰かが何人も傷付いたと知ったら、笑顔になれる訳がない。そうやって夢が叶ったとしても、本当の意味で幸せになれるかどうかわからない。
 何よりも、そんな尊い夢を持っている人達を、プリンセスプリキュアが傷付けてはいけなかった。

「それと、私が嫌だと思っていることはもう一つあるんです……私の夢を応援してくれているムサシさんが、戦いに巻き込まれていることです」
「どうしてだい? 僕は君のサーヴァントだよ」
「ムサシさんは、自分の意志で私のサーヴァントになったんですか?」

 そしてはるかは、最も気がかりなことを尋ねる。

「あなたが私の力になってくれることはとても嬉しいです。でも、それはムサシさんが自分で考えて、自分で決めたことなんでしょうか。
 ムサシさんが、私のサーヴァントになりたいと本当に思っているのなら、何も言わないです。でも、ムサシさんはサーヴァントになりたいと思って、ここにいるんですか?
 そうじゃないなら……私はムサシさんの力はいりません。あなたを操り人形なんかに……したくありませんから」

 ゆっくりと、それでいて強く気持ちを込めて感情を吐露する。
 この手には令呪と呼ばれる紋章が刻まれていて、これは彼との繋がりを意味している。願いを込めて頼みごとをすると、どんな無理難題でも聞いてくれるようだ。
 だけど、相手の意志を奪って言うことを聞かせるなんて絶対に嫌だ。それは、ディスダークが人の夢を絶望の檻に閉じ込めて、ゼツボーグを生み出すのと何も変わらなかった。

「僕が僕自身の意志でここにいる……それを聞かれたら、違うと答える。君が言うように、なりたいと思ってサーヴァントになった訳じゃない」
「だったら……!」
「でも、僕が君を守りたいと思っているのは本当だ。君だけじゃない。パフとアロマ、それにリドリアスもそうだ。
 みんな、僕の大切な友達だからね! だから僕は君の力になると決めた……だって君は君自身の力で、生きようとしてるじゃないか」

 ムサシの答えもまた、強い意志が感じられた。
 嘘やおべっかなんかじゃない。正真正銘の本心であり、彼自身が真っ直ぐな想いではるかと共にいることがわかる。その眼差しだって、とても温かかった。


「だから、よろしく頼むよ……マスター」

 その言葉と共にムサシは手を差し出してくる。彼が握手をしようとしているのだと、はるかは理解する。
 彼の右手を取ろうとしたけど、その直前に腕を止めた。

「マスター?」
「あの、ムサシさん……マスターって言うの、やめてくれませんか? 今のムサシさんは、確かにサーヴァントかもしれませんけど……それは勝手に決められたことですよね。
 私だって、いつの間にかマスターになっただけです……だから、名前で呼んで欲しいんです! 私の名前を」
「そっか……わかったよ。じゃあ、よろしく頼むね、はるか!」
「こちらこそ、よろしくお願いします! ムサシさん!」

 花のような満開の笑顔を浮かべながら、はるかはムサシと固く握手をする。
 共に見ている素敵な夢を守る為に。
 共に生きる尊い命を守る為に。
 パフとアロマ、そしてリドリアスは二人の誓いを見守っていた。


 強く。優しく。美しく。二人は互いに手を取り合った。
 忘れもしないあの日。あのお花畑でカナタ王子と巡り会って、夢の大切さを教えて貰った時のように…………


449 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:31:19 FM1Q271A0
【クラス】
 アーチャー

【真名】
 春野ムサシ@ウルトラマンコスモス

【ステータス】
 基本
 筋力E 耐久D+ 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具E

 ルナモード
 筋力C+ 耐久B+ 敏捷A 魔力A+ 幸運A+ 宝具A+

 コロナモード
 筋力A 耐久A+ 敏捷A+ 魔力A+ 幸運A+ 宝具A+

 エクリプスモード
 筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力EX 幸運A+ 宝具A+

 ミラクルナモード
 筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力EX 幸運A+ 宝具A+

 スペースコロナモード
 筋力A+ 耐久A 敏捷A 魔力EX 幸運A+ 宝具A+

 フューチャーモード
 筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力EX 幸運EX 宝具EX

【属性】
 秩序・善

【クラス別スキル】

 対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力

 騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ただし、心を通わせた怪獣ならば共に歩むことができる。

【保有スキル】

 真の勇者:A
 全ての命を守りたいというムサシの愛から生まれた奇跡。
 信じれば夢は叶う。その信念を胸に抱き、幼き頃より夢に向かって走り続けたムサシだからこそ持てるスキル。
 夢を忘れない限り、どんな奇跡だろうと彼は起こし続けてきた。
 生きとし生きる全ての命、全ての心と互いにぶつかりあい、そして理解をし合った。


450 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:32:04 FM1Q271A0

【宝具】
『遥か昔より心を通わせた友好巨鳥(リドリアス)』
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 春野ムサシの親友である友好的な怪獣・リドリアス。
 身長は48メートルで、体重は5万8千トン。
 穏やかな性格で、ムサシの持つ輝石から鳴り響く音が大好き。
 ムサシが危機に陥ることがあれば、どんな相手だろうと立ち向かう勇気を持つ。
 マッハ2のスピードで空を飛び、口からは光線を放つこともできる。


『優しさ、強さ、勇気を持つ慈愛の戦士(ウルトラマンコスモス)』
 ランク:A+ 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人(自分自身)
 友の名を呼びかけながらコスモプラックを天に掲げることで、神秘の輝きを放ち、春野ムサシはウルトラマンコスモスの力を授けられる。
 月の優しさを持つルナモード。
 太陽の強さを誇るコロナモード。
 太陽と月が重なる<金環日食>の溢れるフレアーのごとき、神秘の巨人。強さと優しさを兼ね備えたエクリプスモード。
 宇宙の力と合わさったコロナモードであるスペースコロナモード。
 カオスヘッダーを救いたいという願いがコスモスと合体し、誕生した黄金の輝きを放つ真の勇者。ミラクルナモード。
 時に拳を、時に花を。平和を乱す者達だけでなく、自らの心とも戦い、ムサシとコスモスは命を守り抜いた。


『最強にして、未来に繋ぐ奇跡(フューチャーモード)』
 ランク:EX 種別:対宇宙宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人(自分自身)
 ウルトラマンコスモスを。そして春野ムサシを信じた者達の想いから誕生した"未来を信じる"希望の巨人。 
 優しさ、強さ、勇気、そして希望が一つとなった"フューチャーエナジー"を宿したその姿は、まさしく最強と呼ぶに相応しい奇跡。
 奇跡の光線・コスモストライクに打ち抜けない闇は存在しない。


【Weapon】
 コスモプラック
 幼い頃にウルトラマンコスモスから授けられた輝石より生まれた、宇宙の力を込められた神秘のアイテム。


451 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:32:29 FM1Q271A0


【人物背景】
 特撮作品『ウルトラマンコスモス』の主人公。キャストは杉浦太陽。
 幼い頃、実父の五十畑浩康を事故で亡くしてしまい、彼の遺志を継いで宇宙飛行士を夢見るようになった。
 ある日、地球を狙うバルタン星人との戦いで傷付いて倒れたウルトラマンコスモスと出会い、彼と心を通わせる。そしてコスモスから輝石を与えられた。
 コスモスとの出会い、そして地球の為に戦ったコスモスの姿を見て、夢を捨てないこと……そして真の勇者になってみせるとムサシは誓う。


 そうして大人になったムサシは、地球防衛組織SRCのトレジャーベースにて怪獣保護と共に過ごしていた。だがある時、カオスヘッダーが襲来し、ムサシの友であるリドリアスに憑依した。
 ムサシはどうにかしてリドリアスを元に戻そうとするも、カオス化したリドリアスに想いは届かない。絶体絶命と思われたムサシの元にウルトラマンコスモスが駆け付け、救われる。
 そうして二人は一心同体となり、怪獣達を守る為に戦うようになった。


 怪獣保護という理想の前には数多の壁が立ちはだかっており、ムサシ自身の熱さと合わさって、周りと衝突することも度々あった。
 そしてある時、カオスヘッダーの脅威に焦りを抱いて力を求めすぎてしまい、それをきっかけに毒ガス怪獣エリガルの命を奪ってしまったこともある。
 数多の困難にぶつかり、その度に彼は苦悩する。しかし彼は知恵と勇気を振り絞って、衝突した相手とも分かり合うようになり、そして最後にはカオスヘッダーをも救済した。


 そうしてコスモスとムサシは別れの時が訪れる。
 しかし数年後、地球の平穏はサンドロスによって脅かされてしまい、ムサシとコスモスは再び心を一つにして戦った。
 そんな彼の想いに答えるかの如く、ギャシー星の伝説に伝わる光り輝く神・ウルトラマンジャスティスが姿を現し、コスモスと共にサンドロスを打ち破った。


 地球は2000年後の未来に有害な星となる……そう予言した宇宙予言司 デラシオンによって、地球はリセットの運命に齎されようとしていた。
 "宇宙正義"の理念を掲げたウルトラマンジャスティスの猛攻にコスモスは敗れ、倒れてしまう。だが、コスモスを…………そしてムサシを信じた仲間達の想いによって奇跡が起きて、コスモスは復活した。
 地球の子どもを見て、人類の希望を信じたジャスティスと共にコスモスは"宇宙正義"が率いるグローカー達と戦う。
 2大戦士の心は一つとなり、宇宙伝説の奇跡……ウルトラマンレジェンドが誕生した。無限大のパワーで"宇宙正義"が持つ惑星破壊兵器ギガエンドラを倒し、地球滅亡の危機を救った。


 その後もムサシはコスモスと共にフューチャーアースの地球に向かい、ウルトラマンゼロやウルトラマンダイナと共にバット星人が操るハイパーゼットンに立ち向かう。
 地球を救った後はウルトラ10勇士の一人として、ウルトラマンギンガやウルトラマンビクトリーと力を合わせて超時空魔神エタルガーとも戦った。
 また、ZAPスペーシーが活躍する宇宙では、彼と瓜二つな『ムサシ』という名前の青年もいる。



【サーヴァントとしての願い】
 マスター/はるかと共に、夢を守る。


【基本戦術、方針、運用法】
 はるかはムサシを戦わせることに対して否定的なので、サーヴァントとしてムサシを戦わせることはあまりない。
 しかし、もしもはるかが危機に陥ることがあれば、ムサシは彼女の元に駆けつけるだろう。またリドリアスも同様。
 リドリアスに関しては極端にサイズの離れた相手と戦闘をさせてはいけない。その場合は、コスモス単体でミクロ化してキュアフローラと共に戦う必要がある。


 だが、最大の欠点はマスターである春野はるかが魔力を持たないこと。
 キュアフローラに変身している際は夢の力によってある程度は代用できるが、本来は魔術回路など持っていない。
 故にはるかのままでムサシがコスモスの力をフルに使ってしまえば、はるかに多大な負担がかかってしまう。特にエクリプス・ミラクルナ・スペースコロナ・フューチャーは消耗が激しい。
 通常はルナ及びコロナモードで戦うのが望ましいだろう。(それでも、魔力消費は避けられないが)


 パフとアロマに関しては、はるかと共に聖杯戦争へと放り込まれてしまった。
 人間の姿にはなれるものの、基本的に戦闘能力はゼロ。ただしここぞと言う時の連携で輝くだろう。


452 : 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:34:33 FM1Q271A0

【マスター】
 春野はるか@Go! プリンセスプリキュア

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を止める。
 聖杯に願いを持っている人とは、出来る限り話し合いたい。

【weapon】
 プリンセスパフューム
 ドレスアップキー

【Friend】
 パフ
 アロマ

【能力・技能】
 基本的に頑張り屋さんなので、どんな難しいことだろうと持ち前のガッツで挑戦している。
 勉強、園芸、裁縫、料理、バレエ、テニス、演劇……興味を持ったあらゆる分野に関する努力を重ねて、一つずつマスターした。
 また実家は和菓子屋さん。幼い頃には両親と共にプリンを作ったこともある。その影響で料理も可能。
 そして結構な大食いでもある。

 プリンセスパフュームとドレスアップキーを使用することで、キュアフローラに変身することが可能。
 咲き誇る花のプリンセスであるキュアフローラは夢を力の源としていて、夢の光で人々の夢を守り続けた。
 一度、カナタより夢を否定されたことで絶望し、変身することができなくなってしまう。だが彼女はこれまで出会ってきた人達との絆を糧に夢を取り戻し、再び立ち上がった。



【人物背景】
 アニメ作品『Go! プリンセスプリキュア』の主人公。CVは嶋村侑。
 口癖は「ステキすぎる!」か「○○満開!(主に幸せ満開!)」
 幼い頃に『はなのプリンセス』という童話を読み、きらきらしたプリンセスに憧れて、プリンセスのような素敵な人になりたいと夢見るようになった。
 その夢を笑われるも、両親とカナタ王子からの励ましによって、憧れを抱き続けることができた。
 憧れに向かってノーブル学園に入学し、そこでたくさんの人と出会い、あらゆる努力を重ねてきた。
 入学日、七瀬ゆいが絶望の檻に閉じ込められて、奪われそうになった彼女の夢を守りたいと願ったのをきっかけに、キュアフローラとなって覚醒する。
 キュアマーメイド・キュアトゥインクル・キュアスカーレットと共に、ディスダークの手から多くの夢を守り抜いた。
 多くの困難にぶつかり、時に絶望するも、最後は夢と絶望の両方を受け入れて、宿敵ディスダークとも共に生きる道を選んだ。
 漫画版ではディスダークとの戦いを終えた後、隣にいて欲しいというカナタ王子の告白に対し、その時までにもっと素敵な女性になってみせるとはるかは誓う。そうして、ホープキングダムに帰っていくカナタとトワの姿を、はるか達は見届けた。



【方針】
 ムサシさんと一緒に聖杯戦争を止めて、みんなの夢を守る。


【把握媒体】
 春野ムサシ
 特撮作品『ウルトラマンコスモス』
 TVシリーズ全65話
 劇場版3作
 『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』
 『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』
 『ウルトラマンコスモス VS ウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』
 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(ただしこちらに登場するムサシはパラレルワールドの別人)
 映画『ウルトラマンサーガ』
 映画『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』

 春野はるか
 アニメ作品『Go! プリンセスプリキュア』
 TVシリーズ全50話
 コミカライズ版2冊
 劇場版1作
 『映画 Go! プリンセスプリキュア Go! Go!! 豪華3本立て!!!』
 オールスターズ及びドリームスターズ(このシリーズは本編との繋がりは曖昧なので、パラレル的として扱われている?)
 プリキュアまんがえほん(ただしあまり把握の必要はなく、やや入手も困難)
 3DSゲーム『Go! プリンセスプリキュア シュガー王国と6人のプリンセス!』


453 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/11/30(水) 22:35:25 FM1Q271A0
以上で投下終了です


454 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/30(水) 23:35:49 Bj01rpUs0
皆さま投下乙です。私も投下させていただきます。


455 : 狂気のエメラルド煮込み ◆3SNKkWKBjc :2016/11/30(水) 23:36:52 Bj01rpUs0
スノーフィールドにいくつか点在する教育施設、その一つに所属するある女性教師は途方に暮れていた。
何かの因果か、彼女も『白紙のトランプ』に導かれて聖杯戦争に巻き込まれた一人。
だけど、彼女は『白紙のトランプ』が原因で見知らぬ場所で、いつの間にか授業を請け負っていたなんて異常事態に巻き込まれたなど。
予想だにしてしなかった。
きっと彼女は『白紙のトランプ』に触れた事すら記憶にないくらい。
おっちょこちょいで、そそっかしい性格なのは自覚していたから、どうにか元居た場所へ帰ろうと試みた。

……が、成果なし。
彼女のサーヴァント曰く「アンドロイドの夢に溺死したのだな。ご主人は金槌だったらしい」とのこと。
割と納得していた。
別世界なのは頭で分かっているが、空は不自然で下劣な青に染められているし、木々の緑は悪質な汚染で侵食されている。
パキメリ爬の抽瘴画みたいな場所だ。
彼女の知る世界とは、異世界。だから元の世界へ戻れない。

だがしかし。
親切にも自分を臨時教員として雇ってくれている学校に、有難味を感じていたし。
サーヴァントも、自分が働いている最中。家事、料理、掃除etcetcをこなしてくれていた。
だったら、聖杯戦争にも積極的でなくては……
彼女はそのような回想を脳裏で浮かべつつ、帰路についた。



「ただいま帰りました、バーサーカーさん」

授業を終えた女性教師・ホンナイキが質素なアパートの扉を開ければ、派手な赤色の着物を纏った半人半獣の女性が出迎えた。

「うむ、御苦労であったぞご主人。残念だが布団は既に広げ、風呂もぐつぐつ煮詰めてある。
 本日のメニューは『ハリー・ポッターと賢者の石〜マンダリンオレンジソース添え〜』
 『天文学とエントロピー法則のサラダ』『夏目漱石・作 こころ鍋』だ」

「バーサーカーさん。お食事まで作って下さったんですね!」

「腹が八分目ならなんとやらだ。英気を養うがいい」

疲労の色があったホンナの表情も、明るく変化する。
何も半人半獣のバーサーカーは、嫌みでビニール封を破かれたばかりの新品ピカピカの本で、おどろおどろしい料理を製作したのではない。
これはこれで立派な『ごちそう』なのだ。
ホンナは、満足に『本料理』を平らげてしまった。
人類としては異常であっても、人類とは逸脱したホンナにとっては常識なのだ。
食事を終えたホンナは改めて話す。


456 : 狂気のエメラルド煮込み ◆3SNKkWKBjc :2016/11/30(水) 23:37:16 Bj01rpUs0

「何から何まで面倒みて下さって、本当にありがとうございます。バーサーカーさん」

「我々の関係は金を稼ぐものと家を守るもの……つまり夫婦なのだな」

「はい! ですから、私もバーサーカーさんに協力させて下さい! えっと、聖杯でしたっけ。一緒に頑張って手に入れましょう!!」

「噂に聞くゴールデン猫缶で祝おうとは粋なご主人だ。マゼンタインクで乾杯したいものだな」

「あぁ、いいですね! えっと、具体的に私はどうすればいいのでしょうか? 窓突きとかトイレ弔意でも何でもします」

支離滅裂だが成立している不可思議な会話を繰り広げていた双方。
良心からの姿勢で目を輝かせるホンナに対し、バーサーカーの方が「うむむ」と唸った。

「申し訳ないがご主人。鼻には鼻を、良薬には良薬を、だ」

「え……私、そんなには頼りないのでしょうか………」

「雨の日に黒猫を見たときに抱く4番目の感情にならないで欲しい」

「どちらかと言えば、深夜の遊歩道で狸と遭遇した瞬間に生じる5番目の感情ですね……」

「これはご主人に限った話ではないのだ」

「あっ、そうだったんですね」

彼らは彼らで納得した様子。
解説すると、サーヴァントはサーヴァントでしか対抗できない。
ならばマスターはただの飾り物扱いなのか? 否、そういう訳じゃないのだ。
それに、ホンナ以外のマスターだってサーヴァントに成す術はない。だから安心しろ――という会話である。
ホンナは冷静にバーサーカーへ問う。

「でも……私、このまま働き続けていいんでしょうか。いえ、働きたくない訳じゃないですよ?
 校長先生も親切に私を雇って下さって……私、学校で精一杯働いてから聖杯戦争に励みたいです」

「なら、ご主人は『すてきなせんせい大作戦』の総指揮となるのだ」

「成程……情報収集ですね。わかりました、やってみます!」

教師の立場を利用すれば、教員・生徒からサーヴァントに纏わる情報が入手できるかも……しれない。
何もしないよりかは全然マシだろう。

「時にご主人。願いはあるのか?」

突然改まって。
狂った文法表現は演技で、実は正気じゃないかと疑わしい態度でバーサーカーが問う。
ホンナも、戸惑いながら答えた。

「聖杯のこと……ですよね。はい。私にシュルバツな願いはありません。
 それに、聖杯は所謂ベベドロ原理を利用した潤琴製に近いものと私は判断しております。
 だったら尚更、私個人のジャカナポルタみたいな真似はしないですよ」

翻訳すると。
ホンナ自身に突出した願いはない。
聖杯は奇跡の聖遺物なのだから、ホンナの私利私欲の為だけに使うのは恐れ多い。といった内容だ。

しかし。
確固たる願いを持たないというのは、聖杯の固執する意思すらないのだ。
聖杯戦争は、ある意味。気力の問題も関わる。
バーサーカーは改めて言う。

「ご主人がこの先生き残るのは―――まずは、健康的な生活習慣を死守することから始まるのだ!」

つまり、ホンナが生き残るには『生きる意思』が必要不可欠なのだ。
ホンナはちょっとばかし親切にして貰ったら、お礼をしなくちゃ申し訳なさで一杯になる善良な性格である。
故に、卑劣な主従が彼女を良いように利用するのを目論むのを想像可能だった。

バーサーカーは、ぶっちゃけ個人的な願いはない。
ただ、主人兼マスターであるホンナを死なせない為、彼女は奔走するだろう。
一つ欠点があるとすれば………


ホンナも、バーサーカーも人間の概念でいう『正気』から外れた存在である事だ。


457 : 狂気のエメラルド煮込み ◆3SNKkWKBjc :2016/11/30(水) 23:37:46 Bj01rpUs0
【クラス】バーサーカー
【真名】タマモキャット@Fate/Grand Order
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:E 敏捷:A 魔力:A 幸運:B 宝具:D

【クラススキル】
狂化:C
 全パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
 はじめから理性が薄めのタマモキャットなので狂化とは言いがたいが、まあ似たような状態なので誰も気にしない。
 たまに含蓄のある言葉を呟いてまわりを驚かせる。


【保有スキル】
怪力:B
 魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

呪術:E
 ダキニ天法。
 過去に懲りたのか、そういった術を使いたがらない。

変化:B
 借体成形とも。玉藻の前と同一視される中国の千年狐狸精の使用した法。
 殷周革命(『封神演義』)期の妲己に憑依・変身した術。
 過去のトラウマから自粛していたものだが、タマモキャットに自粛・自重・自制の文字はない。
 あるのはただ自爆だけである。


【宝具】
『燦々日光午睡宮酒池肉林(さんさんにっこう ひるやすみしゅちにくりん)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大補足:30人
 酒池肉林は「林に虎を放し飼いさせ、そこに人間を放って楽しむ」拷問遊戯だが、現代ではその意味合いは変化している。
 タマモキャットが野生の力が爆発することで巨大な猫っぽい姿に変化して敵に攻撃。
 その後は寝っ転がってゴロゴロしてしまう。その間、傷が癒えたりする。


【人物背景】
タマモナインのひとり。
玉藻の前が千年鍛錬によって神格を上げた後、もとの一尾に戻る際に切り離した八つの尾。
それがそれぞれに神格を得て分け御魂として英霊化したもの。
玉藻の前が持つ(わりと)純真な部分の結晶。


【サーヴァントとしての願い】
ご主人の為に頑張るワン!







【マスター】ホンナイキ(SCP-022-JP)@SCP Foundation

【人物背景】
ガガフチ大学大学院卒業の教師。
普通に見れば若い女性に見えなくないが、実は頭部が書籍で構成されている。
普段は『メイク』で化粧して頭部を普通の人間女性にしている。
性格はこちらで言う『善良な』部類に属する。親切にされれば、お礼がしたいと積極的に働く。
書籍が主食。


【能力・技能】
彼女は人類にとって意味不明な授業をするが、授業を受けた生徒・授業を目にした人々に不信感は生じない。
授業を終えて、生徒はしっかりと知識を身につけるのだが、後に異常性を発生させてしまう。
無論、サーヴァントにこれらの影響は与えられない。

【役割】
スノーフィールドにある、某学校の臨時教員です。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいてshinjimao氏が創作されたSCP-022-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://ja.scp-wiki.net/scp-022-jp


【マスターとしての願い】
本来の出勤場所に戻りたい


458 : ◆3SNKkWKBjc :2016/11/30(水) 23:38:15 Bj01rpUs0
投下終了します


459 : ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:07:42 kflF2epc0
皆さま投下お疲れ様です。
投下いたします。


460 : ガーディアンズ ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:10:34 kflF2epc0

「じゃあ、行ってくるよ」

コートを羽織り、玄関まで見送りに来てくれた彼女、羽二重菜々に微笑みかける。
昼とはいえ日本と比べれば治安の悪い外国、おまけに近頃は不穏なニュースも多い。そんな中を女一人で出かけようとしている事に対して、微かに不安げな表情を見せる彼女。
必要な事とはいえその不穏なニュースのために彼女に嘘をついて出歩くことになり、結果としてあの愛くるしい笑顔を曇らせてしまっている事に対する罪悪感で、チクリと胸が痛んだ。
後ろめたさを払拭するように笑顔を浮かべ、「そんなに心配そうな顔をしないで欲しい」という言葉をかけながら彼女の頬に右腕を伸ばす。
頬を撫でる指先や掌から伝わる柔らかで暖かな感触。
あの時、宙を舞う自分の右腕を見て、もう得ることの出来ないと思っていた感覚を私はまた味わえている。
今の状況は、ここに来るまでの過程も含めて最悪の一言と言えるけれど、こうやってまた彼女と触れあえる事だけは深く感謝していた。
困ったように、彼女が微笑みを返してくれる。ああ、やっぱり菜々は笑っていてくれた方がいい。

例え私の目の前にいる彼女が、私の知る本来の彼女ではないと理解していても、私はそう思わずにはいられなかった。

家を出ると同時に自分の身体に魔力を回す。
黒い髪が明るい茶髪に。
来ていた衣服はコートとロングブーツに。
スノーフィールドに吹く風に合わせて、トレードマークのマフラーがたなびく。
ヴェス・ウィンタープリズン。
私、亜柊雫の魔法少女としての姿。
魔法少女というのは基本的に目立つ姿をしているが、私の衣装はそこまで浮世離れしているものではない。それこそこの姿で街を歩いても怪しまれない程度には。
それは聖杯戦争のマスターである亜柊雫という存在を隠すには丁度良いと言えた。
魔法少女の姿になれるというのに魔法の端末が機能していないのは不思議な話だけど、生き残るための力はあるに越したことはない以上、儲けものだと思う事にしている。

「待たせたね、ランサー」

人目につきづらいビルの屋上、私の声にあわせて1つの影が実体化した。
緑を基調とした服に右腕を覆うガントレット。
茶色の顎髭と眠たそうな目が特徴的な男だ。
この聖杯戦争での私のパートナー、ランサーのサーヴァント、真名をヘクトール。
トロイの木馬の語源であるトロイヤ戦争で活躍した英雄、らしい。あまりそういった話には詳しくはないのでよくは知らないが。

聖杯戦争。
あの廃寺でスイムスイムとその仲間に襲われ命を落とす寸前の私が、咄嗟に触れた白紙のトランプによって連れてこられた新たな殺し合いの場。
切り飛ばされた記憶と感覚が鮮明に残る右腕が存在する違和感を切欠に全てを思い出してしまった私は否応なく参加させられる事になってしまった。
それからはランサーを伴って他の参加者が起こしているであろう事件を追って調査をしているというのが現在の状況だ。


461 : ガーディアンズ ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:11:37 kflF2epc0

「なーに、性分上、待つのは苦にならない方でね。しかし相変わらずいらん苦労をするねえ、ウチのマスターは」

苦笑混じりのランサーに対して、無言で肩を竦める事で応える。
聖杯戦争に臨むにあたって、1つの問題が生じた。それはランサーが活動するために供給する魔力についてだ。
聖杯とやらから送られた知識で、サーヴァントが実体化し活動するための魔力はマスターから賄われるという事は把握していたが、まさか魔法少女に変身していなければ満足に魔力も供給できないとは思ってもいなかった。
確かに亜柊雫の時は魔法が使えないため理屈としては合っている。だが理解しろと言われたら話は別だろう。
結果として、私はヴェス・ウィンタープリズンに変身しなければ、ランサーを現界させるのがやっとといった状態だ。
ランサーに戦闘まで行わせるのであればどうしてもウィンタープリズンに変身する必要がある、がそうすると元の世界とは違い魔法少女の事なんて微塵も知らないこちらの菜々からは離れなければならない。
余計な混乱を招くだろうし、もし、ウィンタープリズンが彼女と一緒にいるのが他のマスターに知られたら、敵は間違いなく彼女にも矛先を向けるだろう。
彼女と離れ、不安にさせてしまう事には酷く心が痛むが、それでも私の戦いに彼女を巻き込むなんて事があってはならない。
ランサーが"いらぬ苦労"と言ったのはこの事である。
彼女が巻き込まれることを防ぐのなら、もっとも確実な手段は彼女から距離を置くことだ、聖杯戦争の期間が長期化することは希な以上、適当な理由をつけて手頃なホテルでも拠点にすればいいとはランサーの言だったが、私はそれを拒んだ。
彼女の元を長期間離れたくないという個人的願望がなかったかと問われればその通りではあるが、それ以上に、もし私が離れている間に彼女に何かあったらと思うと、とてもではないが承服は出来なかった。
私の望みが元の世界に戻り、私の世界の菜々を守り抜く事だとしても、それがこの世界の菜々を無視していい理由にはならないのは当然の話だ。

「あのお嬢ちゃんは、マスターが元いた世界のお嬢ちゃんじゃあないってのに、ご熱心だことで」
「私にとって菜々は菜々さ。そこに元いた世界もこの世界も関係ないよ。ランサー」

ランサーから聞き知っている。
この世界で私達の知人の姿を象っている住人達は厳密に言えば私達の知る知人本人ではないと。
だが、それがなんだと言うのだろうか。
私と共にいてくれて、私に微笑みかけてくれる。それだけで彼女を守る理由としては十分過ぎるくらいである。
あの菜々が元の世界の菜々ではないとしても、私にとっては彼女が菜々である以上は何があっても彼女と彼女の笑顔を守る事は優先すべき事の1つなのだ。

「いやはや、まったくもって難儀なマスターだよ、お前さんは」

私の体質、私の意向、その双方を見ての『難儀』という言葉。
彼に苦労をかけているという自覚もあるし、申し訳なさも多少なりとも覚えてはいるが、だからと言って変えるつもりも更々ない。運が悪かったと諦めて貰うしかないだろう。

「そんな難儀なマスターにわざわざ付き合ってくれている事には感謝しているさ」
「そりゃあオジサンはサーヴァントだからね、呼ばれたからには仕事はキッチリやりますよっと」
「ありがたい話だよ」

軽飄な笑みを浮かべるランサー。
実際問題として、私のスタンスは組んでいるサーヴァントからしたらやきもきするところは多々あるだろう。
それでも文句こそ言え付き合ってくれるという点では、私は恐らく当りと呼べる類のサーヴァントを引けたのだなと思う。

彼と最初に会った時、私はここに至る顛末からこの戦いにおける方針、そして聖杯に託す望みまで隠すところなく彼に伝えた。
菜々はまだ魔法少女達の争いに身を置かれている。スノーホワイトやトップスピード、リップルであれば信はおけるがカラミティ・メアリやスイムスイム一派といった危険人物、そして何よりもクラムベリーという一番危険な女が残っている。私が倒れた今、彼女は格好の獲物と認識されてしまうだろう。
私は一刻も早くあそこに帰らなくてはならない。
今度こそ、命に替えてでも最後まで彼女を守り通さなくてはいけないのだとランサーに伝えた。


462 : ガーディアンズ ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:13:33 kflF2epc0

「まあ、マスターの望みってのは理解した。それでお前さんはその望みの為に他のマスターを殺す意思ってのはあるのかい?」

ランサーの問いに私は頷く。
そもそも、人ならば既に一人、あの場でピーキーエンジェルズの片割れを殺している。
今さら何人殺したところで変わらない、などと人非人の様な事を言うつもりはないけれど、大切な人を守る為ならば例え相手が誰であろうと殺す意思はとうに固めていた。
何があっても彼女の笑顔を守りたい。その想いは今でもずっとこの胸に宿っている。その為に血を被ることを厭うつもりなど私にはない。

「覚悟が決まってるっていうんなら、及第点かね。OKだマスター、オジサンは今からお前さんの槍になってやる。誰かを守る為の戦いだっていうんなら、振るわれる甲斐もあるってもんだ」

だけどよ、とランサーは続けた。

「"命に替えてでも"なんて言葉は滅多に使うもんじゃねえぞ。マスターが守る為に戦うっていうんなら、まずは自分が生き延びる事を考えな。例え守りきれたって、お前さんが死んだらそこから先は誰がそいつを守ってやれるんだ? 守りたい奴が無事で、お前さんが生き延びて、それで初めて"守り抜いた"って言えるんだ。そいつは肝に命じておきな」

珍しく、そう、今思い返しても珍しく、ランサーが真面目な顔と口調で私にそんな言葉を投げ掛けてきた。
やけに実感と説得力のこもった言葉。
その時の私は漠然と、彼もきっと大切な何かを守る為に戦った英雄なんだろうと思った。
ランサーの言う事はもっともだ。
私は命に替えてあの廃寺で菜々を守った。だが、命に替えてしまった事で菜々を守れる人間はいなくなってしまったのだ。
"どうか、どうか無事でいてくれ"という願いは、私が生きている事でようやく果たせるのだというのに、私は私の願いを自分で踏みにじっていた。

ランサーはすぐにいつもの調子を取り戻し「ま、年寄りの小言みたいなもんさ、気に障ったんなら忘れてくれても構わんぜ?」と言っていたが、偉大な先達の言葉は私の生前(と形容しておく)の教訓として、深く心に刻んだ。
そう、今度こそ私は菜々を守り抜かなければならない。
どんな英雄達にも、どんな魔法少女にも殺されてなどやるものか。
生きて帰る。シンプルでいてとても難しい課題だろう。
だが、それがどうした。

そんなもの、愛の前では些細な問題だ。


463 : ガーディアンズ ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:14:43 kflF2epc0

【クラス名】
ランサー

【真名】
ヘクトール@Fate/Grand Order

【属性】
秩序/中庸

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:B 宝具:B

【クラススキル】
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
軍略:C+
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直観力。自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合にわずかだが有利な補正が与えられる。
ヘクトールは特に守戦において、高い戦術力ボーナスを獲得する。

仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。
不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

友誼の証明:C
敵対サーヴァントが精神汚染スキルを所持していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。
聖杯戦争においては一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。

【宝具】
『不毀の極剣(ドゥリンダナ・スパーダ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ドゥリンダナ、とは「デュランダル」のイタリア語読み。
即ち、ヘクトールはローランが所有する宝具「不毀の極星」の元々の所有者である。
柄にあった聖遺物は存在しないため、大ダメージを与えるだけの宝具となっている。

『不毀の極槍(ドゥリンダナ・ピルム)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:50人
ヘクトールが使用していた投げ槍(ピルム)は、あらゆる物を貫くと言われていた。
それは彼が時として剣の柄を伸ばして槍として投擲していたからに他ならない。剣と槍を同時に使用することはできないが、彼は常に剣と槍二つの宝具を所有している。
この槍を防ぐには「ロー・アイアス」に匹敵する防御宝具を準備しなければならない。
また、厳密に言うとどちらも真名は「ドゥリンダナ」であり、後半(スパーダおよびピルム)は省略しても、宝具として起動可能

【Weapon】
ドゥリンダナ
ランサーとして召喚されたので、柄を伸ばし槍として使用している。

【人物背景】
やる気なさげな態度を見せ、軽口を吐くいわゆる「有能な怠け者」タイプの将軍。
態度は穏やかというよりややふざけている様に見えるが、その分析眼は鋭い。
マスターの命令が誤っていると判断した場合、口では了解したように言うが平然と逆らう。
「最終的に上手くいっていれば問題ないでしょ」と終始お気楽なノリ。
ただし、これは絶望的な籠城戦となったトロイア戦争を勝ち抜くために鍛え上げた才覚であり。心底から遊び人、あるいはいい加減な人間という訳ではない。
将軍だけでなく政治家としての側面も併せ持ち、本気という感情を極力表に出す事を避ける傾向にあるが、本気に見えない調子であってもその内面では彼はいつでも本気である。

……なお、今回はマスターの動機に生前の事で思うところがあったのか、彼女の方針には極力沿う形で行動する模様。

【サーヴァントしての願い】
マスターの願いを叶えてやる。マスターを死なせない。


464 : ガーディアンズ ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:15:55 kflF2epc0
【マスター】
ヴェス・ウィンタープリズン(亜柊雫)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
生きて帰り、羽二重奈々を守り抜く。

【能力・技能】
魔法少女への変身。
ヴェス・ウィンタープリズンに変身することで身体能力を大幅に向上させる事ができる。
また、魔力量も増大し、サーヴァントが全力で戦闘するに足る魔力を供給できるようになる。

「何もないところに壁を作り出せるよ」
ヴェス・ウィンタープリズンの魔法。
高さ2メートル、幅1メートル、厚さ30センチの壁を視認可能な速度で任意の地面や床から生やす事ができる。
奇襲から咄嗟の防御、相手の退路の遮断や追撃など様々な用途で使用可能。

【役割】
スノーフィールドにある大学の学生。

【人物背景】
中性的な見た目の美女。性別を問わず人気があり男女それぞれとの恋愛経験あり。大学生。
一目惚れした女性である羽二重奈々に誘われて始めたソーシャルゲーム「魔法少女育成計画」によって彼女同様に魔法少女となった。
羽二重奈々とは恋愛関係にあり同棲もしている。クールな見た目に反して本人は神経質で短気、また恋愛に関しては積極的で情熱的。
魔法少女達による生き残りをかけたゲームに巻き込まれ、策略に嵌められ致命傷を負い、力尽きた時期からの参戦。

【方針】
聖杯を手に入れる為に行動する。こちらの世界の奈々が聖杯戦争に巻き込まれない様に気を配る。


465 : ◆cjEEG5KiDY :2016/12/01(木) 00:17:12 kflF2epc0
以上で投下を終了します。


466 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:07:03 uVxMlY0U0
これより投下をします


467 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:07:38 uVxMlY0U0


想定するのは、人の足元に届くかどうか程の小さなサイズ。
一体一体は微力でふわふわと浮くだけだが、群れをなすと厄介になる。少ない消費で、できるだけ速攻で撃破する必要がある。
長筒を両手で支えて狙いを定める。スコープを介さずに視力だけで速やかに補足。
研ぎ澄ました感覚と、使い慣れた経験に委ねて照準を補正。
妨害の要素は発見されず。必中確実。


引き金を絞る。
―――銃撃音が鳴る。


跳ね上がる火打ち石が当り金に激突し、こめられた火薬の炸裂音。
射出された弾丸は生じたエネルギーに押し出されて空気中を真っ直ぐに加速。
過たず射線上の標的の中心部に届き、木の素材を微塵に砕いた。


スノーフィールドにあっても銃という道具は慣れ親しまれた道具だ。
アメリカでは、一般市民の住宅に当たり前のように拳銃どころかショットガンまで政府の許可がなくとも所持できる。
しかし街の離れで今使用されたそれは、そんな銃社会でもあまりお目にかかれない種類のものだろう。

前装式のマスケット銃、である。
十六世紀から十九世紀にかけて扱われてきた、二十一世紀の現代にあっては既に時代遅れの品だ。
銃弾を発射できる以上銃に含まれるが、美術館や骨董屋に置かれていた方がずっと自然に違いない。

そしてまた、それを撃った人物もまた目を疑わずにはいられない姿だ。
金の巻き髪。しかし顔立ちはアメリカとは異なる日系の年若い女性。
まだ成人も過ぎていない、少女と言っていい年頃。
着込んだ服装もまた現代においては珍妙に映る。
黄を基調にしたスカートにブラウス。コルセットで締め上げられた腰が、年齢に見合わぬ豊満な胸部をより強調して見せている。
頭に被ったベレー帽には花を思わせる意向をした見事な琥珀色の宝石が飾られ一際目を引く。
夜の郊外でマスケット銃を放つ御伽噺じみた格好の少女。『どこのジャパニーズ・アニメのヒロインだ?』と目撃した者は疑問を抱かずにいられないだろう。
一から十までが不可思議の塊は、紛れもなく全てが現実だった。


銃口から煙が登るマスケット銃が手を放れる。
マスケット銃は一発を撃ち終えて、再度使用するには改めて弾を先に込める必要がある。
打ち捨てられたマスケットが地に接触する、その一秒の時間に―――少女の手に握られた"二挺目の"マスケットが火を吹いた。

弾丸は二つめの的に見事命中。その確認をするや否や三度出現するマスケット。
周りに置かれてあったわけもなく、長身の銃は身に隠せるような大きさではない。
にもかかわらず、少女は何もない場所から魔法のように次々と銃を取り出しては放って、使い捨てていく。

立て続けに鳴り響く銃声は、九発目になって止まった。
用意した全ての標的はひとつの漏らしもなく撃ち抜かれていた。
発砲による反動も、命中性も高いとはいえない旧式の銃であるのも感じさせない。
華奢な見た目とは相反した、長年の訓練と経験の賜物といえる狙い澄ました銃撃。


「お見事」


後ろからそれを観察していた人物から、称賛の声が届けられる。
穏やかな、広大な森に根を下ろした堅固なる大樹を連想させる気配。
賢人という言葉が当てはまる、清冽なる空気を醸し出す古めかしい服装の青年だった。


468 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:09:03 uVxMlY0U0


「研鑽が正しく積まれている。何よりも方向性が定まっている。漠然としてではなく一貫した目的意識を以て修練をしていた証です。その若さで大したものだ」
「高名な英霊にお褒めの言葉を貰うなんて光栄ね」

英霊という魂が具現した存在である、弓を象徴とした戦士。
彼らを引き連れ奇跡の願望器を争奪するこの聖杯戦争を共に駆け抜ける無二のパートナー。

自身の使い魔に振り返って聖杯戦争のマスター―――巴マミは、
傍らに侍る自身のサーヴァントに、少し気恥ずかしそうにそう答えた。


「それも数多の英雄を育て上げた、英雄達の師に言われるなんて。これも魔法少女冥利に尽きる、というやつかしら?」
「そう謙遜するものではありません。生前の過去がどうあれ今の私は貴女のサーヴァント、ただの弓兵(アーチャー)でしかありません」

主と従者というよりは師弟のような形で、二人の関係は成り立っている。
そうなった原因は主にマミの方の接し方にあった。
自分のサーヴァントであるという事以上に、マミはアーチャーに全幅の信頼を置いていた。
彼の人格。そしてその真名から知れる履歴を知れば、大きな尊敬の念を与えるに足るものだと知っているからだ。

「それに英雄に育てた、というのも過言ですよ。私の指導がなくとも、彼らは各々が当たり前に立派な英雄として熟達していたでしょう。
 無論、その一助に私が関われたというのは、私の誇りであり喜びではありますが―――」
「私からすれば、それが十分に凄いことよ。誰かを育てて、正しく導くのって、とても大変なのは知ってるから」

彼の名をケイローン。
神々が地上に足を降ろしていた古代より伝わるギリシャ神話に伝わる英雄だ。
正統な人間の生まれではない幻想種。半人半馬のケンタウロス族であり、天の空に浮かぶ射手座(サジタリウス)の由来。
クロノス神と女神ピリュラーとの間に生まれた、獰猛性が常のケンタウロスにあって例外的に智慧を持つ賢人である。

ケイローンを語る上で最も外せないのは、彼が未来の英雄を指導した人物である事だろう。
トロイア戦争において並ぶものなき勇名を馳せた俊足のアキレウス、医術の神にまで崇められしアスクレピオス、アルゴー船に数多の英雄を引き入れ冒険に出た王イアソン。
そしてギリシャ最高最大の英雄、神の栄光の名を頂いたヘラクレス。
彼が育てた者はいずれも劣らぬ英雄に成長し、その武錬を神話内に轟かせた。
教え導いた逸話が讃えられた事で昇華された男。それがケイローンという英霊の象徴なのだ。
それだけで、マミにとってケイローンは憧れの存在として見るに十分な相手だったのだ。

「そうか、マスターにも教え子がいたのでしたね」
「ええ。三人ほど。といっても二人共まだ魔法少女候補だけどね」

鮮やかに身を包む衣装が、輪郭をほつれさせ光となって分解されていく。
剥がれ粒子は光となって流れ、入れ替わるようにマミの服が現代に合わせた装いへと変わる。
光はマミの掌の中へ集まって、淡く輝く宝玉に結晶化した。
契約により生み出される、魔法少女へと変身する宝玉ソウルジェム。
それを持つ者こそが魔法少女。ひとつの奇跡を対価に戦う力を得た者。
この世の呪い、闇を齎す絶望の化身である魔女を討つ希望の使者。

マミは先輩として過去に、気兼ねなく付き合える仲間を得られた時があった。
同じ理想を共有できる魔法少女との出会いは、マミにとって誇りであり、至福だった。
しかし夢は長く続かなかった。断絶はあっさりと訪れた。
家族の惨劇の傷が彼女を変え、互いに噛み合っていた歯車が狂っていき、結果袂を分かつ事になってしまった。

「あなたと比べたら私なんてぜんぜんよ。未熟で、弱虫で、臆病なだめな子」
「そのようには思えませんが」
「ううん。だって最初の一人には愛想をつかされちゃったのよ?一人も卒業させられてないんだから、とても師匠なんて誇れないわ」

師への憧れにほころんでいた表情が、憂い顔へと変わっていく。


469 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:10:11 uVxMlY0U0


「あの時、あの子を―――佐倉さんをちゃんと引き止めなくちゃいけなかったのに、それができなかった。
 私が弱かったせいで、ううん、本当の気持ちに向き合わなかったせいで」

どうすることが正解だったのか。
今よりももっと強くて。もっと頼れて、品が良くて誰にも優しい。
魔法少女の肩書きにふさわしい、理想の先輩として振る舞っていたならば、あの結末にもならなかったのか。

手にあるソウルジェムに手を這わせる。
握る指には僅かに力みが入っている。包み上げた希望の象徴をともすれば潰すかのような仕草にも見えた。

「今もそう。もっと頑張って、ふたりにもしっかりしたところを見せて……そんなことばかり考えてばかりで、自分に嘘をついてる」

マミは魔法少女として、人々を守るという正義の為、多くの魔女と戦ってきた。
誰にも打ち明けられない秘密を抱え、孤独に生きてきた。
魔女は魔法少女でない人間には姿が見えず、その被害は原因不明の事故あるいは自殺と見なされ処理される。
危険から遠ざけるには親交に一線を引いておかなくてはらなない。

知り合った魔法少女の多くは、私欲を考えて戦っていた。
否定する事はできない。魔法少女になったということは願いがあったということ。
選択に時間がなく、必要に迫られでもしない限り、大抵は自分の為の願いを叶えるだろうし、そうするべきだとも思う。
自分の考えを理解してもらえなくとも、気にはならなかった。
無辜の人を魔女から守る、魔法少女が背負う使命。それは誰かが担う必要があるものだ。
人助けは間違いなく意義あることだし、誰かの命を繋ぎ止められる度に自分も救われる気がした。


それがせめてもの罪滅ぼしだと受け入れた。
やっている行いが正しいのだと信じ続けた。
理想と正義を掲げて戦えば自分は満足できるのだと―――そう思い込んできた。


「私、本当はずっと寂しかった。嫌われるのが怖かった。
 秘密を隠さず打ち明けられて、一緒に笑ったりお喋りしたりお茶をしたりする、ただの友達が欲しかっただけなの」


マミが"白紙のトランプ"を見つけたのは、ある魔女の結界の中。
人が集まり心が交差する闇に潜む魔女のテリトリーへ、被害が生まれる前に早急に退治するべく侵入した時だ。
仲間の二人を連れたっての途中に、なんでもないように落ちていた。
拾う意味などどこにもなかった。結界の内部にいるのを考えれば敵の罠の可能性もあり、平時らしからぬ軽率さだった。
それでもマミはその、描かれるのを待ち望んでいるかのような白紙の絵札へと手を伸ばした。

その結果、マミは何処とも知れない異邦の地にいる。
刷り込まれた知識が教えるのは、一度きりの奇跡を奪い合う殺し合い。
魔法の使者―――キュゥべえが齎した契約の力を大規模に、そして悪辣に捻じ曲げた代物。

そしてそれを知ったマミに去来した感情は、彼女自身が困惑してしまうほどに慮外の性質のものだった。

戦争を強要される憤り。
命を落とすかもしれない恐怖。
過酷な運命に囚われた絶望。
そのどれでもなく最初に浮かんだのは…………希望、だった。


「聖杯戦争なんて殺し合いは止めるべきなのに。みんなを守る正義の、正しい魔法少女でいなくちゃいけないのに。
 私……一瞬だけ、迷っちゃった。取り戻したいって考えちゃった」


引き裂かれた家族の輪。
二度と戻らないあの当たり前の幸せの暖かさを、再び手に入れられる。

決して許されない魍魎の欲望に、たとえ仮定でも想像した自分に恐怖した。
人の倫理。魔法少女の挟持。持ち合わせたあらゆる理由を総動員してその思いを糾弾して、奥底に封じ込めた。
だがマミの思考を蕩かすあまりにも甘美な響きは、まだ脳に痺れのように残っている。


やり直しはきかない、叶えられる奇跡は一つだけ。
そう弁えていたからこそ受け入れられていた。
だがもしも、たった一つの願い事をやりなおせるとしたら……?


470 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:10:36 uVxMlY0U0



「あ……」

教会の下で祈る、告解にも似た言葉が止まる。

「……ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったのに……」

懊悩を吐き出して落ち着きを取り戻したマミは、己の浅はかさに恥じ入るしかなかった。
羞恥と自己嫌悪が胸を締め付ける。顔を伏せ、アーチャーをまともに見る事もできない。

「本当に、ごめんなさい。
 弱音ばっかり聞かせて、みっともないよね、こんなマスターじゃ」

そもそもマミが教えられたケイローンの望みもまた、家族との縁を取り戻す事なのだ。
苦悶のあまりに手放した不死性。死す為に捨てた神性という、父と母との繋がりの証を取り戻したい。
形は違えど二人に共通していた、死によって失なわれた肉親。
それをマミが浅ましいと否定して、間接的に彼の願いをも侮辱してしまった。


深く悔恨するマスターのそんな姿を、アーチャーは否定せずに受け入れた。

「そんなことはありませんよ。貴女が零した声は貴女の背負う責任の重さの顕れ。それを笑うとなど私には出来ません。
 むしろ不遜と思われてしまうかもしれませんが……それを自ら打ち明けてくれたのが嬉しく思います」

答えに顔を上げるマミ。目の前には変わらぬ穏やかさ。
澄み渡った空気の中、森林の中心にそびえる大樹に寄り添ってる安心感。


召喚され参上した時から、アーチャーは少女の闇を垣間見ていた。
魔法少女と魔女というシステム。
自身では気づいていないだろう、ソウルジェムの真の性質。
神々の智慧を授かった目を以てしても、届かない断崖の底に潜む絶望の影。
マミを取り巻く運命は深く捻じれ絡まっている。だからこそ軽々に口にするのは憚られた。

マスターは決して心の弱い人ではない。
恐れを知り、それによって失われる命の価値の大きさを知るが為に自らを奮い立たせられる精神力を持つ。
けれど、どこかに無理が生じている。そしてそれを無視して使命に没頭できるだけの強さも両立している。
軋みはいつか罅割れに及び、そこを切欠に傷と変じる。
そこに決定的な楔が打たれれば、マミを構成する心身の全てが崩壊してしまうだろう。そんな危うさを神授の知慧は推測したのだ。

「私はサーヴァントですので既に死者―――過去に完結した存在です。
 全盛期での召喚ですので力は極まっていますが、それ故に……生前のケイローン以上の事は為せません。
 マスターは私とは違う。この世界の今を生きている、幾らでも成長する可能性を持った生命です。
 全てを私に倣う必要はありません。貴女には貴女だけが選べる道がある。そしてそれは私にも不可能な領域に繋がっているでしょう」

真摯に、柔らかにアーチャーは言葉を伝える。
聖杯戦争の勝利ではなく彼女の未来を案じて、英霊は寄る辺を示した。
サーヴァントとしては少し逸しすぎてるかもしれない。しかし仮初の稀人は巡り会えた彼女に手を貸す事を決めていた。

己が何もかも導こうなどというのは傲慢だ。
全ての面で上回っていようとも、為す者が違えば結果も変わるだろう。
過去に生きた英雄も今の時代の人々も、その点は揺らがず普遍のまま、人の世界は続いている。
ならば彼女にも越えられる。未熟なままでも、力が及ばずとも、蕾が刈り取られず花開く希望が、きっとある。


471 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:10:47 uVxMlY0U0




「……どうして、そこまでしてくれるの?あなたの願いを叶えてあげられるようなマスターじゃないのに」
「教師ですからね。迷う者を教え導く事が務めの役です。それに私自身の性にも合っている。
 過去の遺産が正しく使われてこそ、我々英霊の本懐ですから」

当たり前にそう口にする。

「付け加えて言うなら、私の願いも我欲に濡れた浅ましいもの。本分を捨ててまで求められるほどに、誇らしい望みではありませんので」
「……ありがとう、アーチャー」

沈んでいたマミの表情にも幾らかの余裕が生まれる。

自分の悩みを誰かに伝えるなんて、思えば初めてだった。
迷惑をかけてられないと固く明かさなかった本心を、アーチャーの前では抵抗なく口を開いてしまった。

同じ魔法少女以外には聞かせられない悩み。
多くの後輩の魔法少女に囲まれて指導する立場。
そんな環境で現れたケイローンは、マミにとって両親以来の初めて頼れる"大人"だった。


「後輩たちが待ってるんだもの。かっこ悪いところすら見せないまま、いなくなってちゃいられないわよね」

悩みが晴れたわけではない。そんなあっさりと解決できる程根が浅い問題ではない。
聖杯戦争が始まるこれから先、また弱さが顔を覗かせてくる時もあるだろう。

けれどひとつ、確かに信じられる事実がある。
今の自分は、もう独りじゃない。
帰る場所で待ってくれている人がいる。隣に立ってくれる人がいる。
結局それさえ満たせていれば、自分は前を進んでいられる。今はそう信じていられる。
だからもう―――



「答えはまだ見つからないけど……それでも私は、魔法少女だから。
 皆を守って戦ってきた、今までの自分が……全部嘘だったわけじゃないって思うから。  
 アーチャー。こんな私でも――― 一緒に戦ってくれる?」
「無論です。我が弓は最早貴女の銃。
 夜天に浮かぶ無限の星々の如く、我が命運は常に貴女と共に在りましょう」



何も怖くない。怖くはない。


472 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:11:07 uVxMlY0U0




【出典】Fate/Apocrypha
【CLASS】アーチャー
【真名】ケイローン
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合は、
 マスターのバックアップが必要。

【固有スキル】
千里眼:B+
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 心眼(真)との兼ね合いによっては限定的な未来視も可能とする。

心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
 その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

神性:C
 大地の神と妖精との間に生まれた存在であるが、死ぬ直前にその身を
 人間へと貶めているため、大幅にランクダウンしている。

神授の智慧:A+
 ギリシャ神話の神から与えられた賢者としての様々な智慧。
 英雄独自のものを除く、ほぼ全てのスキルにB〜Aランクの習熟度を発揮できる。
 また、マスターの同意があれば他サーヴァントにスキルを授けることも可能。
 ベースはギリシャなので、別の場所や文化で発達したスキル(中国拳法など)は該当しない。

【宝具】
『天蠍一射(アンタレス・スナイプ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:5〜99 最大捕捉:1人
 射手座となったケイローンが常に天の蠍を狙っているエピソードの具現化。
 星を穿つという、弓兵が到達できる究極の一撃。
 射つことを決定した時点で発射することが可能で、狙いは既に定まり、魔力の使用も真名開放も必要としない。
 弓からではなく、星から放たれる流星の一撃。 
 死亡した際も、一ターン後に自動発動する。
 宝具使用後、次の夜まで使用不可となる。

【weapon】
弓矢。
最古の総合格闘技パンクラチオンも習得している。

【人物背景】
ギリシャ神話に登場する半人馬ケンタウロス族で例外的に温厚な男。英雄を育てし英雄。
ヘラクレス、アキレウス、カストル、イアソン、アスクレピオス……数多の英雄を一から育て上げた大賢者。
高潔な人格者で誰にでも礼儀正しく接する面倒見のいい青年。
根っからの教師肌で悩める人にはそれぞれに応じた的確な助言を与える。
クロノス神と女神ピリュラーとの間に生まれた完全なる神霊だが、生前受けた毒矢のあまりの苦痛に不死性=神性を捨てることで死に至った。
その最期から英霊として召喚される資格を得ている。
下半身が馬のそれであるケンタウロス族の特徴を隠すため、一部ステータスの減少を代償に二足の人型の姿で限界している。

【サーヴァントとしての願い】
死の際に返した不死性、神性の返還。
それを抜きにしてもマスターの力となる。


473 : 巴マミ&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 07:11:20 uVxMlY0U0





【出典】魔法少女まどか☆マギカ

【マスター】 巴マミ

【人物背景】
キュゥべえと契約した黄の魔法少女。
面倒見よくおしとやか。私欲を持ち出さず他人の為にのみ魔女と戦う模範的な魔法少女。
しかし素は年相応の少女であり、独りで戦う寂しさ、仲間を求める渇望を抱えている。

交通事故で死の間際にあったところでキュゥべえと出会い、「命を繋ぐ」契約により生き長らえる。
同じく犠牲になった家族を救うという選択を考える余地もなく契約した事には一抹の後悔があり、
その葛藤が正義を掲げ戦わなければならない束縛となっている。

【weapon】
マスケット銃
リボン

【能力・技能】
魔法少女として優れた身体能力を備え、戦闘経験も豊富。
戦闘では無数のマスケット銃を生成して使い捨てていくスタイル。
契約による固有能力はリボンの生成であり、拘束、切断と多岐に渡って使用する。
魂はソウルジェムという宝石に収められてるため、魔力さえあればどんな損傷でも回復可能。
ジェム内の濁りが溜まり心が絶望に至った時、その魂は魔女と化す。
戦いで自分を鼓舞する為、技にはいちいち名前をつける主義。ティロ・フィナーレ!


【マスターとしての願い】
取り戻したい繋がりがあった。けれど、今は魔法少女として誰かを守る為に戦いたい。


474 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/12/01(木) 20:10:22 uVxMlY0U0
一昼過ぎてますが、投下終了です。申し訳ありませんでした


475 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:12:46 XvOe2Gag0
投下します。


476 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:13:18 XvOe2Gag0
 赤い、紅い月夜だった。
 見上げた空に輝く満月が、真紅に染め上げられている。周囲を取り巻く空間そのものが、赤黒い闇に覆われている。息が詰まるような圧迫感の中、セイバーはそれでも構えた剣の緊張を解きはしない。背後に控える己がマスターに危害を加えんとする敵に、殺意の眼差しを向ける。
 赤黒い闇の中、薄い紅色のドレスを身に纏った少女が、自らの屋敷の屋根に腰掛けた姿勢のまま、くすりと微笑んだ。歳の頃は十歳かそこらの幼女のように見えるが、少女が放つ威圧感が、その認識を改めさせる。闇の中でも爛々と輝く少女の瞳が、自身が人間でないことを物語っている。
 敵は、吸血鬼だ。人の血肉を啜り、自らの糧とし、時には人を眷属へと作り変える悪鬼である。
 気高き誇りを胸に吸血鬼退治に乗り出したセイバーが、携えた剣の切っ先を吸血鬼の少女へと向けた。

「お前は、これまで何人の血を吸ってきた」
「あなたは、今まで食べてきたパンの枚数を覚えているの?」

 少女の返答には、淀みがなかった。その返答ひとつで、戦うには十分過ぎる理由が整った。
 セイバーが眦を決する。剣を構え直し、今まさに吸血鬼の少女目掛けて跳ぼうとした時だった。ぎぃ、と鉄が軋む音を響かせながら、真紅の屋敷の門が開いた。中から現れたのは、茶色の髪を片側に寄せた、年若い青年だった。毒々しい印象を与える黒と赤の装束に身を包み、全身に鎖を巻き付けている。肩からかけた真紅のマントをたなびかせながら、ブーツの音を甲高く響かせて、男が数歩前へ歩み出る。男の足跡が、石の床に黒く焦げ付いたように残り、そこから炎を吹き上げていた。
 瞬時に察する。今現れた男こそが、吸血鬼のサーヴァントだ。聖杯戦争を戦う上で、避けては通れぬ敵だ。
 有無を言わさず先手を取ろうと、セイバーは大地を蹴った。
 同時に、現れた男がフン、と鼻で笑う。掲げた左の掌の中に、赤黒い魔力の輝きが迸っていた。刹那のうちに肉薄したセイバーの剣を、敵のサーヴァントが魔力漲る左手で受け止める。セイバーの刃は、魔力に阻まれて男の掌にまでは届いていなかった。
 危険を察知したセイバーが、大きく飛び退く。同時に、男の左手の魔力が弾けて、光の奔流が放たれる。上手く回避したセイバーに、吸血鬼の少女がささやかな拍手を送った。


477 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:14:17 XvOe2Gag0
 
「あっはっは、上手く避けたね、でも次はどうかな」

 頭上からかけられた少女の玲瓏な声に呼応するように、どこからか黒と赤の蝙蝠が姿を表した。まともな蝙蝠ではない、金の瞳を妖しく輝かせた、異形の蝙蝠だ。

「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」
「ありがたく思え、絶滅タイムだ」

 少女の声に続くように、サーヴァントの周囲を羽ばたいた蝙蝠が、低い声でセイバーを嘲る。男が、蝙蝠をその手の中に収めた。次いで、蝙蝠の牙が、サーヴァントの手を噛んだ。敵セイバーの腕から、毛細血管状の影が伸びる。瞬く間に毛細血管は顔にまで広がり、男の腰にベルトを形成した。

「変身」

 男の体がエメラルドグリーンの輝きに覆われ、そしてその形を作り変える。全身を赤と黒の鎧に包み、蝙蝠の翼を思わせる緑の複眼で、敵はセイバーを見据える。
 その場の全員を頭上を覆うように、空には巨大な蝙蝠の形を模した紋章が浮かんでいた。敵が右手を軽く掲げる。足元に、頭上に現れたものと同じ形をした、翠色に輝く紋章が現れた。
 直感的に危険を察知したセイバーは、もう一度敵と距離を取ろうとしたが、もう遅い。

「俺からは誰も逃げられん」

 鎧の男が、掲げた右腕を真っ直ぐにセイバーへと伸ばした。
 足元の紋章が、地面を泳ぐようにセイバーへと放たれ、その退路を立つように地面から迫り上がり、壁となる。紋章型の壁が、セイバーの体を捉え、磔にする。もはや逃れることは不可能だった。翠の紋章から放たれた赤黒い魔力が、セイバーの体を苛む。

「セイバー!」
「おいおい、不利になったからって騒ぐなよ。お前は私を殺すために此処に来たんだろう。だったら、こうなる覚悟もあった筈だ」

 マスターの狼狽の声を、吸血鬼が遮った。
 鎧の男が、突き出した右腕を大きく引いた。セイバーを磔にしていた紋章が、その体を大きく弾き飛ばした。勢い良く鎧の男の方向へと飛ばされたセイバー、男は、その鎧に包まれた拳で殴った。セイバーが吐血する。拳に投げ飛ばされるように弾き飛ばされたセイバーを、再び紋章の壁が捉える。放たれた魔力が、セイバーの体を焼く。もう一度、男が右腕を引いた。魔力の壁に囚われていたセイバーが、再びその体を男へ向けて射出する。男の拳が、セイバーを殴りつける。
 あとはその繰り返しだった。セイバーが戦う気力を失うまで、紋章に囚われ、弾き飛ばされ、殴られる。それを、ただひたすらに繰り返す。
 やがてセイバーは嗚咽すら漏らさなくなった。敵の男が、掌に赤黒い闇を集約させる。闇は形を成して、一振りの剣を形作った。黄金の柄に、白銀に煌めく宝石で出来た刃。見る者の目を奪う美しさを秘めていながら、同時に、目を背けたくなる禍々しさを内包している。
 闇を纏ったその剣を、セイバーに向ける。紋章に囚われたままのセイバーを全方位を取り巻くように、敵が持つものと同質の剣が宙に生成される。剣は加速度的に複製されて、その数が十本、二十本、三十本と増加する。これからなにが起こるのかを、セイバーは察した。おそらく、その場の全員が、察した。

「絶滅せよ」

 底冷えするような冷淡な死刑宣告に次いで、生成された無数の剣が、一斉にセイバーへと急迫し、その体を貫いた。胴体も、四肢も、頭も。余すところなく、剣は斬り裂き、穿つ。セイバーが意識を失っても、攻撃の勢いは緩むことなく、生成されたすべての剣がその身を斬り裂くまで、射出は続いた。


478 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:14:47 XvOe2Gag0
 


 スノーフィールドの外れ、森の湖の畔に設えられた偽りの紅魔館の一室で、レミリアは玉座に深く腰掛けたまま、一仕事を終えたセイバーに向き直った。頭上のステンドグラスから差し込む紅い月光が、薄暗い室内に佇むセイバーをほのかな紅色に彩っている。
 闇のキバの鎧を脱ぎ去ったセイバーは、見かけにはただの奇抜な格好をした若い男にしか見えないが、この男がいかに優秀かをレミリアは知っている。闇のキバを纏った戦いにおいては、常勝にして無敗。ただの一度たりとも敗北の経験を知らぬ、無敵の王。それが、レミリアに与えられたサーヴァントだ。

「お疲れ様、セイバー。まあ、大した敵じゃあなかったね」
「ああ。あの程度の力でこの俺を倒す気でいたとは、まったく片腹が痛い」

 結局、レミリアは敵のマスターを殺さなかった。敵のセイバーを完膚なきまでに叩き潰したのは、それが闘争を以てレミリア陣営に勝負を仕掛けてきた挑戦者だったからだ。戦意を喪失した敵を縊り殺す趣味は、レミリアにはない。尤も、セイバーは敵のマスターの生命力(ライフエナジー)を吸い尽くして殺すつもりでいたようだが、この紅魔館を居城とする限り、厳密にはその必要すらない。
 そもそもの話、この紅魔館で戦闘を行う時点で、圧倒的にレミリアが有利になるように、条件は整えられている。紅魔館には、屋敷全体を覆う簡易な魂喰いの布陣が敷かれているのだ。夜間に限って、この紅魔館で働く従者から魔力を吸い上げ、セイバーに供給するようにできている。ゆえに、紅魔館から見上げた月は、紅く見えるのだ。

「だが、本当に良かったのか、敵のマスターを逃して。絶滅させねば、また新たな仲間を引き連れてくるかも知れんぞ」

 キバットバットⅡ世が、レミリアの周囲を羽ばたきながら苦言を呈する。

「いいや、ありゃもうダメだね。全然ダメ。そういう骨のある手合いじゃあないよ。完全に戦意を折ってやったもの」
「仮にもう一度立ち向かって来るとして、俺はそれでも一向に構わんがなァ。その時は、再びこの俺の暴力を思い知らせてやる」


479 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:15:25 XvOe2Gag0
 
 嘲りを多分に含んだ薄ら笑いとともに、セイバーが嘯いた。
 レミリアの隣に用意された玉座の前に立ったセイバーが、腰からさげた自らの宝具――魔皇剣ザンバットソードを足元に突き立てて、自らもまた玉座に深く腰掛ける。
 今や、このスノーフィールドにおける紅魔館の王は、ふたりでひとりだった。
 五百年の時を生きた幻想の吸血鬼と、歴代最強と謳われたファンガイア・キング。小手先の策に頼らず、正面から敵を叩き潰す、暴力の権化。

「いい、セイバー。私の目的は、聖杯を獲ること。我が覇道を阻むものは叩いて潰す。歯向かうものは暴力で以て支配する。それだけが我が陣営における唯一の法よ」
「誰にものを言っている。このような遊戯、俺にとっては所詮無聊の慰め。だが、遊戯とはいえ、戦争の名を冠するからには、頂点を獲るまで。ただの一度の敗走もなく、我が陣営に聖杯を齎してやる。それが貴様のサーヴァントだ、レミリア・スカーレット」
「はは、魔族の私からすれば、聖者の杯になんぞ興味はないけれど、こうして聖杯戦争に呼び出された以上は、誇り高き血族の長として、頂点を獲らなくっちゃあ気がすまないってわけ。その点は私もお前と同じ考えよ、セイバー」

 レミリアには、スカーレット家、紅魔館の当主としての誇りがあった。誰にも負けず、誰にも見下されない完璧なる血族の頂点であるという、誇りがあった。それを、あろうことか、レミリアはこのスノーフィールドに来てからというもの、長らく失念していた。
 自分は、スノーフィールドの外れの屋敷の、金持ちのお嬢様である、と。なんの疑いもなくそう思い込まされて、取るに足らない従者を従えて、なんの変哲もない暮らしに満足していたのである。それが、レミリアには、許せなかった。

 ――このレミリア様を捕まえて、あろうことか記憶をいじくって、戦争に参加させるなんて、いったい何様のつもり。そっちがその気なら、とことん乗ってやろうじゃないか。思惑通り、この戦争に乗って、あらゆる敵を叩き潰し、そして幻想郷に帰ってやる。

 それがレミリアの動機だった。
 負ける気はしない。なにしろ、レミリアは幻想郷において最強にして最速の吸血鬼なのだ。力では鬼に負けるし、速度では天狗に負ける。そもそもレミリアは博麗の巫女にも、綿月姉妹にも敗北しているが、それでもレミリアの中では、自身こそが幻想郷において最強、最速なのだ。その誇りを弄ばれたことによる怒りは大きい。

「誰が支配者か、この聖杯戦争に参加するすべてのマスターに刻み込んでやる」

 今隣にいるセイバーこそは、この聖杯を統べる最強のサーヴァントだ。
 他の有象無象がどんなサーヴァントを引き当てたのかは知らないが、自分のサーヴァントこそが最強で、セイバーと組んだレミリアに敗北はあり得ないと、そう信じて疑わない。いかな敵が現れようと、鋭く研いだ闇の牙で刺し穿つのみ。
 誇り高きふたりの吸血鬼による聖杯戦争は、幕を開けたばかりである。


480 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:16:15 XvOe2Gag0
 

【出展】仮面ライダーキバ
【CLASS】セイバー
【真名】暁が眠る、素晴らしき物語の果て
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力A+ 幸運E 宝具A
(※宝具発動時のステータス)

【クラス別スキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
 宝具解放中ならば、事実上、現代の魔術師による魔術では傷をつけることは不可能。

騎乗:A++
 かつてドラン族最強の個体『グレートワイバーン』を捕獲し、生きた居城『キャッスルドラン』として改造・支配下に置いた逸話を持つセイバーは、本来騎乗スキルでは乗りこなせない筈の竜種を例外的に乗りこなすことができる。

【保有スキル】
神秘殺し:A
 敵対するあらゆる魔族を討ち滅ぼし、ファンガイアをこの世に現存する魔族の頂点へと昇華させた。
 魔族・魔性といった性質を持つ敵と戦闘する場合、ステータスに補正を得られる。

純血の支配者:EX
 歴代最高にして最強のキングと謳われたセイバーが持つ天性の資質。
 魔剣ザンバットの呪いをも跳ね返した王の資質は、威圧・混乱・幻惑といったあらゆる精神干渉を無効化する。
 また、種族を率いて繁栄させてきた功績と実績から、軍団を指揮する際にこのスキルの真価が発揮される。事実上「カリスマ」スキルの側面を同時に持つスキルだが、ただし、指揮能力としては「カリスマ:B」相当である。

吸命牙:A
 数々の人間を死に至らしめてきたファンガイア固有の能力。
 他者の生命力を吸収し、自らの体力・魔力を回復するが、対象が対魔力を持つ場合、そのランクに応じて効果は落ちる。
 また、セイバーが行うあらゆる「魂喰い」の効率をアップさせる効果を持つ。スキルランクに応じてその効率は上がる。

魔皇の紋章:A
 左手の甲に刻まれしファンガイア・キングの紋章。それそのものがセイバーが膨大な魔皇力を保持していることの証明でもあり、セイバーは魔力を魔皇力として運用する。
『紅き月夜を穿つ闇の牙』解放時は、鎧の力によってより自由度の高い魔皇力のコントロールがなされ、空中に魔皇力で出来た巨大なキバの紋章を形作り、そのまま攻撃・拘束に転用することも可能となる。
 対魔力を持つ者ならば、キバの紋章による拘束力をある程度削減することは可能。同ランク以上の対魔力ならば判定次第で抜け出すことも可能だが、逆に言うと、同ランク以下の対魔力では、展開された紋章から完全に抜け出すことはまず不可能。


481 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:16:51 XvOe2Gag0
 
【宝具】
『紅き月夜を穿つ闇の牙(ダークキバ・エクスターミネイション)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人

 敵対するあらゆる魔族を「殲滅」するため開発された、ファンガイア族が誇る最強の鎧。通称『闇のキバ』。
 ファンガイアの頂点に君臨する『キング』のみが装着を許されており、鎧そのものが「装着者の資質に呼応し、その能力を無制限に高める」という性質を持っている。歴代最強のキングと謳われたセイバーがこれを用いることで、実際にウルフェン族・マーマン族・フランケン族、そして、かつてファンガイア族を除いて最強と畏れられたレジェンドルガ族は、揃ってほぼ絶滅という状態にまで追い込まれている。
 本来の『闇のキバ』の耐久性は「核爆発の中心にあってなお無傷」である『黄金のキバ』の三倍を誇ると謳われているが、宝具として再現された『闇のキバ』もまたその逸話に恥じぬ絶大な耐久性を誇っており、
 また、鎧そのものが限定的な「空想具現化」の性質を有しており、全身から魔皇力を放出することで、自身の力を最大限発揮できる環境に世界の状態を変化させることが可能。……ただし、真祖ほど万能というわけではなく、自由自在に能力に融通を利かせられるわけではない。
 具体的には、戦闘中、鎧から沸き出した真紅の闇が周囲の空間を、そして空に浮かぶ月を紅く染め上げることで、空間内で戦うセイバーの攻撃の威力を底上げする、というものである。

『生命食らう絶滅の魔皇剣(ジ・エンド・オブ・ザンバット)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人

 ファンガイア・キングのために造られた、この世に存在する最も強力な剣を用いた宝具。剣自体の正式名称は『魔皇剣ザンバットソード』。
 その刀身は、巨大な魔皇石の結晶から削りとって造られたという逸話を持っており、剣自体がライフエナジーを持つものに対して過剰に反応し、それを「喰いにいく」性質を持つ。宝具として解放した際は、斬り裂いた相手の生命力・魔力を吸収し、放たれる技の威力を向上させる。
 宝具『紅き月夜を穿つ闇の牙』による「空想具現化」発動時ならば、この剣と同等の神秘を持った剣を無限に複製し、敵に向けて一斉に射出することが可能。
 また、剣が持ち主を選ぶため、この宝具のランクを越える資格(セイバーの場合「純血の支配者:EX」)を持つ者にしか扱えず、資格を持たぬ者が扱った場合、対象にこの宝具と同ランクの「狂化」を付与し、見境なく暴走させる。


482 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:17:26 XvOe2Gag0
 

【weapon】
『キバットバットⅡ世』
 セイバーの体内を循環する魔皇力を活性化させ、その身に『闇のキバ』を纏わせる黒き蝙蝠型モンスター。体内に『闇のキバ』を内包している。
 今回召喚されたセイバーは、あくまでファンガイアの王として、一族の繁栄のため、あらゆる敵を討ち滅ぼして来た一騎当千の英雄時代。所謂全盛期である。よって、キバット自身もセイバーとともに戦場を駆け抜けた時代から召喚されており、現時点のセイバーを裏切ることはない。
 ただし、自身がのちにセイバーを裏切ったことは、知識としては理解している。
 今回は純粋なセイバークラスとしての召喚のため、魔剣ザンバットを用いないウェイクアップ1〜3の攻撃は全て発動不可となっている。

【SKILL】
『魔皇力』
 体内に循環する膨大な魔皇力を攻撃に転用し、それを「魔皇の紋章」が刻まれた左手から放出する。赤き魔皇力の奔流は、対峙するあらゆる魔族を焼き尽くし、数えきれないほどの同族を処刑してきた。

『絶滅・ザンバット斬』
 宝具解放時、限定的な「空想具現化」によって能力の底上げが適用されている間のみ、空間内にザンバットソードの複製を無限に複製する。キバの紋章で身動きを封じた対象へ向けて、精製した膨大な数の剣を一斉に射出し、最後は魔皇力を充填させたザンバットソードを縦一閃、紋章ごと対象を断ち斬る大技。


483 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:19:15 XvOe2Gag0
 

【人物背景】

 かつて歴代最強にして最高のキングとして畏れられた、ファンガイア族の英雄。
 闇のキバを身に纏っての戦闘は常勝無敗で、敵対するあらゆる魔族を討ち滅ぼすだけでなく、劇中においても無敗。ただの誰一人としてファンガイア最強を誇るキングが変身したダークキバを攻略したものはいない。

 しかし、ある時突然、最強にして完璧であったキングの伝説に陰りがさした。
 クイーンである真夜が、人間である紅音也に恋をしたのである。そこからはじまるキングの転落は、まさしく破竹の勢いであった。
 真夜が自分を裏切ったからといって、その真夜を傷付けることは、自分がこの裏切り者を愛していたことの証明になってしまう。ゆえにキングは、この世で最も強いと謳われた魔剣ザンバットソードを自らの居城の壁に突き刺して封印し、それをもって自分自身への戒めとした。こうしてキングは、まず、己の剣を失った。

 真夜と紅音也が愛し合う仲になったことを知ってなお、キングは真夜を殺さなかった。その代わりに「死よりも思い刑罰」として、真夜からファンガイア・クイーンとしての力を奪い取り「亡霊のように生きてゆけ」と命じる。
 また、裏切り者である真夜との間に出来た息子・太牙にも裏切り者の血が流れているとして、キングは真夜に「次に紅音也と会ったら太牙を殺す」と告げる。だが、その真夜への仕打ちがまずかった。真夜との間に友情を感じていたキバットバットⅡ世はこれを「気に入らない」とし、闇のキバをその身に内包したキバットバットⅡ世はキングを裏切った。こうしてキングは、己の鎧を失った。

 嫁を失い、剣を失い、鎧を失い、それでもなおキングの不幸は止まらない。
 未来からやってきた紅音也と真夜との間にできた息子・紅渡の変身する黄金のキバまで敵に回し、ついにキングは闇のキバと黄金のキバのふたりを同時に敵に回してしまうこととなったのだ。それでも互角以上の戦いを繰り広げるあたりはファンガイア最強の面目躍如といったところだが、ついには敗北、最後には自らの実の息子・登太牙を道連れに逝こうとしたところ、キングの資格を受け継いだ赤子の太牙に、放った魔皇力を跳ね返され、死亡。
 なにもかも失い、最後は自分の嫁を奪い取った男と、その憎き男と元・嫁との間にできた子供に致命傷を負わされ、実の息子にトドメを刺されるという恐ろしいまでの不幸っぷりである。
 なお、二十二年後において理性を失い復活を遂げるが、上記の腹違いの息子・紅渡(黄金のキバ)と、実の息子・登太牙(闇のキバ)に団結され、二人がかりで殺されている。不幸まっしぐらである。

 しかし、嫁を寝取られるに至るまでは、紛れも無く最強にして最高の英雄であった。
 敵対するあらゆる魔族を討ち滅ぼし、支配下におき、かつて最強の名を恣にしていたレジェンドルガ族のロード、仮面ライダーアークを封印したのもほかならぬキングである。
 ファンガイア族の今日の繁栄は間違いなくキング率いる軍団の活躍によるものであり、ビショップをはじめとし、キングを英雄視するものは多い。
 ファンガイア最強のキングと、ファンガイアの資質を無制限に上昇させる闇のキバとの相性も素晴らしく、上記の通り劇中では無敗。闇のキバと互角と謳われた黄金のキバの必殺キック、エンペラームーンブレイクをほぼ無防備の状態で受けても無傷であった。
 ザンバットはなくとも、闇のキバさえ奪われなければ、キングに敗北はなかったのである。

 今回は、紅音也らと関わるよりも前の、まさしく英雄時代からの参戦。
 魔皇剣を片手にセイバーとして召喚されている都合上、闇のキバの魔皇力を解き放って発動するウェイクアップ1〜3は解放不可となっている。


484 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:19:43 XvOe2Gag0
 
【サーヴァントとしての願い】
 紅音也と関わる前の英雄キングとしての現界のため、特になし。
 ただし、誇り高きファンガイア・キングとして敗北は許されない。
 戦うからには勝利を。敵対するあらゆる勢力を絶滅させ、聖杯を獲る。

【基本戦術、方針、運用法】
 小手先の策に頼らず、『紅き月夜を穿つ闇の牙』による殲滅戦による純粋で圧倒的な暴力で真価を発揮する。そもそも、攻防ともに圧倒的なスペックを誇っているため、小手先の策など不要。
 ただし、高スペックゆえに魔力消費は絶大。レミリア自身が魔族の中でもトップクラスの存在であるため、魔力の捻出は不可能ではないが、それでもダークキバが魔力消費を気にせずフルスペックで戦闘を行えば、いかな吸血鬼とはいえ、体内の魔力はすぐに底を突くだろう。
 そこで重宝するのが、セイバーが持つ魂喰いに関連するスキルである。吸血鬼らしく、セイバー自身が吸命牙で他者から生命力・魔力を吸収することが可能な上、宝具『生命食らう絶滅の魔皇剣』そのものが吸命牙と同様の性質を持っている。セイバーがこの宝具を用いた場合、吸命牙によって吸収効率はランク分アップされるため、実質戦闘中は相手から奪い取った魔力を糧にすることになる。
 また、『紅き月夜を穿つ闇の牙』による「空想具現化」は、発動のために多大な魔力を消耗するが、ひとたび発動すれば、ダークキバの周囲を真紅の闇で覆い尽くし、空間内にいる他者の魔力を自動的に吸収し、尚且つ自らの性能を底上げするという性質を持っている。
 レミリア自身が施した、紅魔館における魂喰いもそうだが、吸血鬼コンビらしく、魔力を他者から吸収して戦闘を行うことが、この主従の肝である。
 そういった性質上、純粋に聖杯戦争の妥当を目指すものとは相性が悪く、尚且つ我の強いコンビの性格から考えても、同じく聖杯戦争に乗った者とも相容れないことは明白である。ただし、レミリア自身は根っからの悪ではない。プライドが高く、負けず嫌いなだけである。そのため、認めた者が相手ならば、場合によっては協力出来る可能性もある。

 また、セイバー自身は、のちにたどった不幸の連続のため、幸運の値が絶望的に低い。が、レミリア自身の持つ「運命を操る程度の能力」に影響され、ある程度は不幸を覆すことができる……のかもしれない。


485 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:20:18 XvOe2Gag0
 
 
【出展】東方Project
【マスター】レミリア・スカーレット
【参加方法】
 咲夜がどこからか手に入れてきた、魔力を秘めた白紙のトランプ。
 それは、天邪鬼異変によって小槌の魔力を与えられたトランプであった。物珍しさにそれを保管しておいたレミリアだが、よもやそのトランプによって、自身が聖杯戦争に巻き込まれることになるなどとは思いもよらなかった。

【人物背景】
 かつて幻想郷を妖気を帯びた紅い霧で包んだ、紅霧異変の首謀者。誇り高き紅魔館の当主にして、吸血鬼である。
 異変を起こした理由は、幻想郷全体を紅い霧で覆ってしまえば、日光が遮られ、昼間でも騒げるようになるんじゃないか、とのことである。
 吸血鬼としては少食で、一度に人間から多量の血を吸えない。また、吸いきれない血をこぼして服を真っ赤に汚してしまうことから「スカーレットデビル(紅い悪魔)」の異名を持つ。

 本人はワラキア公国君主、ヴラド・ツェペシュの末裔を名乗っており、自らのスペルカードにも彼の名を冠するものがあるが、別にヴラド・ツェペシュの末裔ではない。血縁関係もない。
 その本質は尊大かつ我が儘で、非常に飽きっぽいという見た目通り少し幼い思考。常日頃から退屈しており、気紛れで突拍子も無いこと(ロケットを造って月に行きたい、など)を思いついては周りを振り回している。

 また、運命を操る程度の能力を持っているとのことだが、それが有用性を見せたことはないため、どのような能力であるかはイマイチ不明。
 文花帖によれば"周りにいると数奇な運命を辿るようになり、一声掛けられただけで、そこを境に生活が大きく変化することもある"と言い、珍しいものに出会う率が高くなるらしい。

【能力・技能】
 レミリア自身はすっかり幻想郷に迎合し、今や実質的に霊夢らの愉快な仲間と化してしまってはいるものの、種族・吸血鬼としての力は絶大で、数多くの新顔が頭角を現し続けている昨今においても、未だに幻想郷のパワーバランスの一角を担っている。
 その本質は、目にも留まらぬスピード、岩をも砕くパワー、思い通りに悪魔を使役できる莫大な魔力といった反則的な身体能力にあらわれており、小手先のテクニックを無視する戦法を好む。
 また、防御面においても優秀で、自らの身体を霧や蝙蝠に変えることも可能。頭以外が吹き飛ぶ怪我を負っても、一晩で元通りになる。

 ただしその反則的な身体能力に比例して弱点も多い。
 日光に弱い、流れ水を渡れない、にんにくを嫌う、鰯の頭なんて持っての他、と散々だが、十字架には強い。
 というか彼女は、なんでそんなもんにやられなきゃいけないのか常々疑問に思っている。

【マスターとしての願い】
 勝利して、支配する。それだけが満足感よ!
(やるからには勝つ。聖杯も獲る。その上で、幻想郷に帰る。)

【令呪】
 左手の甲に、キングのものと同じ王の紋章。
 上段の王冠で一画。翼の描かれた中段で二画。一番下の薔薇で三画。

【方針】
 小手先のテクニックなど無視。
 力でもって捩じ伏せ、聖杯を獲る。


486 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 05:21:15 XvOe2Gag0
投下完了です。


487 : レミリア・スカーレット&セイバー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 06:08:35 XvOe2Gag0
すみません、>>481の宝具説明に抜けがあったので、以下のものと差し替えをお願いします。
話のタイトルもつけ忘れていたので、今更ですが表記しておきます。
お手数おかけして申し訳ありません。

【宝具】
『紅き月夜を穿つ闇の牙(ダークキバ・エクスターミネイション)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人

 敵対するあらゆる魔族を「殲滅」するため開発された、ファンガイア族が誇る最強の鎧。通称『闇のキバ』。
 ファンガイアの頂点に君臨する『キング』のみが装着を許されており、鎧そのものが「装着者の資質に呼応し、その能力を無制限に高める」という性質を持っている。歴代最強のキングと謳われたセイバーがこれを用いることで、実際にウルフェン族・マーマン族・フランケン族、そして、かつてファンガイア族を除いて最強と畏れられたレジェンドルガ族は、揃ってほぼ絶滅という状態にまで追い込まれている。
 本来の『闇のキバ』の耐久性は「核爆発の中心にあってなお無傷」である『黄金のキバ』の三倍を誇ると謳われているが、宝具として再現された『闇のキバ』もまたその逸話に恥じぬ絶大な耐久性を誇る。宝具ランク以下の魔術では、まず傷をつけることすら不可能だろう。
 また、鎧そのものが限定的な「空想具現化」の性質を有しており、全身から魔皇力を放出することで、自身の力を最大限発揮できる環境に世界の状態を変化させることが可能。……ただし、真祖ほど万能というわけではなく、自由自在に能力に融通を利かせられるわけではない。
 具体的には、戦闘中、鎧から沸き出した真紅の闇が周囲の空間を、そして空に浮かぶ月を紅く染め上げることで、空間内で戦うセイバーの攻撃の威力を底上げする、というものである。


488 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:06:33 XvOe2Gag0
連続になりますが、投下します。


489 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:07:21 XvOe2Gag0
 いつからか、気付いた時にはフランドール・スカーレットは施設に預けられていた。いったいなぜ、どうして自分が親の顔も知らず、他の子供たちと一緒くたに施設に預けられているのかは、わからない。記憶を辿ってみても、ある程度遡ったところで、ぼんやりとした膜に覆われたように、思い出がかすみ始める。
 思い出そうとしても思い出せないというのは、実際には奇妙なことである筈なのに、フランはそれが奇妙だとも思わなかった。もしかしたら、自分には過去というものは存在しないのかもしれない。だが、仮にそうだとしても、それはそれで構わないとフランは思っていた。大切なのは、今だ。今が楽しければ、それでいいではないか。過去がなんであろうと、この先がどうなろうと、今を楽しめるのならば、それ以上に望むものなどなにもない。
 自分自身がそういう刹那的な性質を持った人間であることを、フランは理解していた。
 ならば、ほかの子供たちと同じように、一瞬の楽しさに身を委ねていれば、楽しい生活を送れるのではないか、と考えたこともあった。
 だけれども、結局、なにをしたところで、ほかの子供たちと同じように物事を楽しむことは、フランにはついぞできなかった。

 そもそもの話、フランには友達がいない。それが大きな問題だった。
 友達とおもちゃで遊ぼうとしたら、どういうわけかフランが持った時点でおもちゃは壊れるし、道具を使わない遊びに興じようとしても、どういうわけかフランと遊んだ子供はどこかしら怪我をする。
 フランが望むと望まないとにかかわらず、フランの周囲のものは勝手に壊れていく。人も、物も、友情も、なにもかも容易く壊れていく。
 そのうちフランの周りには、誰も寄り付かなくなった。

 ――私は、ずっと、ここにいるのに。

 ずっと、ずっと、ここにいるのに、誰も彼も、フランをいないものとして扱おうとする。
 いつからかフランは、人とかかわることをやめた。それが正確にいつからだったかは思い出せない。ともかくフランは、誰ともかかわりたくなかった。もう、なにも壊したくなかった。
 朝起きて、ほかの子供たちと一緒に朝食を摂ったら、フランは自室に篭ったきり、自らの意思では部屋を出なくなった。外に出て、なにかをしようという気力が沸かなかった。
 たまに無理をして人とかかわろうとしたら、同年代の子供たちから、自分の持ち物を隠されたり、逆にフランのものが壊されたり、なにがしかの嫌がらせを受けるようになった。だからフランも、ますます部屋にこもるようになった。

 ――私の魔法は、ものを壊す魔法。
 ――誰かに優しくする魔法なんて持ってない。
 ――だから、私は、ひとりぼっち。

 誰も、フランを外に連れ出そうとはしなかった。
 まるでフランが外に出ないことが当たり前のことで、みながそれを認めているように、誰ひとりとしてフランを遊びに誘う者もいない。フランは本当の意味で、ひとりぼっちになった。
 誰ともかかわらず、やがて外に出ることもなくなった。不思議と、ずっと昔からそうしてきたことのように、フランにはその選択がしっくり来るように感じられた。
 あとは、昼になれば昼食を摂って、夜になれば夕食を摂る。そして、眠る。ただそれだけの毎日を繰り返すだけだった。それ以外をする気力がない。なにしろ、少しでも変わったことをしようとしたら、施設の子供たちの目の色が変わる。みなが揃って、フランを奇異の目で見るのだ。


490 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:07:52 XvOe2Gag0
 
 ――お願い、やめて。そんな目で私を見ないで。

 フランはいよいよ、食事にもあまり顔を出さなくなった。そうしていると、勝手に誰かがフランの部屋まで食事を持ってきてくれる。
 ただ自室に閉じこもって、自分ひとりの世界に篭っていればいい。それが最も自分の性質に合っているのだと、散々除け者にされて、ようやく気付いた。
 そこまで自分の性質に気付いて、フランはようやく、自分の中にどうしようもない破壊衝動が眠っていることをも認めるようになった。なぜか壊れてしまうのではなく、フランがそう心のどこかで願うから、壊れてしまうのではないか。
 それならそれでいい。
 いっそすべて壊してしまえるならば、その方が幾分世界は面白いのではないか。自分を除け者にする世界そのものを破壊することができるなら、きっと清々するに違いない。いつからかフランの頭の中の片隅には、そういう考えがこびり付くようになっていた。

 ――だって、どうせ壊れたって、またコンティニューすれば済む話でしょ?

 施設の大人から与えられたぬいぐるみは、もう既にいくつ壊してしまったか、自分自身でも覚えてはいない。どんなに可愛らしく、フランの好みの琴線に触れるぬいぐるみを与えられたとしても、飽きたら、腕とか、脚とか、頭とか、どこかしらが引きちぎられて、欠損してしまう。いつだって、まともに可愛がるのは最初だけだ。そうして飽きた頃に、フランを可哀想だと宣う大人たちが、次のぬいぐるみを持ってきてくれる。コンティニューされるたびに、フランはぬいぐるみを壊した。
 自室に篭ったまま、フランは日に日に、己の内側から沸き起こる破壊衝動の捌け口を探すようになった。もうぬいぐるみ程度では足りない。布と綿の塊を壊し続ける行為には、飽きた。
 日に日に壊し方のエスカレートしてゆくフランを見兼ねて、大人たちの間で、医者でも呼んだ方がいいのではないか、或いは、いっそ追い出してしまった方がいいのではないか、そういう声が上がりはじめたことも、フランは知っている。子供たちが噂しているのを聞いた。
 もう、誰もフランに声をかけてくれるものはいなくなった。
 そうしてフランは誰にも気を遣う必要がなくなった。

 ――私の魔法は、誰も寄せ付けない。
 ――だから、私が、最強なんだ!

 最初からこうしていればよかった。
 最初から人とかかわろうなんて思わなければよかった。
 ひとりぼっちの世界で、なにかに当たるように壊すだけの毎日でいい。もう何百年も長いこと、フランはそうやって生きてきたはずだ。

「え?」

 フランはようやく、違和感に気付いた。
 人としては絶望的な状況である筈なのに、フランは、今この状況に懐かしさすら覚えている。施設の子供たちとダラダラ生活していた頃には得られなかった現実感が、このひとりぼっちの世界にはある。
 ふと不意に気付いた違和感が、フランの中で急速に肥大化する。
 こんなはずではない。
 もっと、楽しいことがあったのではないか。
 だが、そもそも、楽しいこととはなんだろう。
 屋敷の中に引きこもる以外に、フランの日常を彩る出来事など、あっただろうか。

「屋敷?」

 そこまで思い至るようになって、ようやく、フランは己の置かれている状況の異常さに思い至った。そもそもの話、思い返してみれば、ここでの生活は色々と腑に落ちない点が多すぎる。過去に思いを巡らそうとしても、思い出せないことが多過ぎる。それは、異常なことだ。いくら五百年近い時を生きてきた吸血鬼だからといって、流石に健忘がひどすぎる。


491 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:08:21 XvOe2Gag0
 
「五百年?」

 決定的だった。
 ただ流されるままにこの施設で生きてきたフランが、はじめて能動的になにかを気にかけた。

 ある日の晩、消灯時間を過ぎたころ、フランは静かにベッドから抜け出した。
 己が机の引き出しの中に入っていたトランプの束を手に取る。みんなで一緒に遊ぶために、フランが用意して、机に入れておいたものだと思うが、いったいこれをどこで手に入れたのか、いつ引き出しに入れたのかは判然としない。これは、おかしなことだ。
 言い知れぬ焦燥と、ひとかけらの好奇心に突き動かされるように、フランは一枚一枚、トランプをめくっていく。
 半透明の膜で覆われて判然としなかった過去の記憶が、朧気に蘇ってゆく。
 トランプ。そうだ、フランは屋敷の中で、偶然見付けた奇妙な白紙のトランプを手に取って。

 ――ねえ、お姉さま、これなに。
 ――ああ、フラン。それは小槌の魔力が残ったトランプで…………

「お姉さま……っ、お姉さま!? そうよ、アイツがッ!」
 朧気な会話の記憶が、瞬間的にフランの脳裏をよぎった。
 記憶の中で、お姉さま、と呼んでいた女の言葉の途中で、ノイズがかかったように記憶が不鮮明になった。フランの記憶に対して、誰かに、なんらかの仕掛けが施されている。
 疑念はいよいよ確信へと変わった。

「っツ……」

 こめかみを抑えて、肘を机につく。微かな頭痛に次いで、フランの記憶を覆っていた薄い膜に切れ間でもできたように、そこから断片的な記憶が溢れ出してくる。
 次に思い出したのは、フランと交流を持っていたはずの、何人かの面影だ。

 どこまでも瀟洒で、完璧な銀髪のメイド。
 図書館にこもりっきりの、紫髪の魔法使い。
 紅色の髪に、悪魔の翼を生やした使用人。
 いつも門前に立っている、中華風の門番。

 水色の髪に、薄い紅色のドレスを纏ったお姉さま。

 ぼんやりとしていた記憶が走馬灯のように駆け抜け、次第に朧気だった記憶が、フランの中で確かな輪郭を帯び始める。夢などではない。
 自分には確かに、こんなクソみたいな施設の家畜みたいなガキともとは違う、本物の家族がいたはずだ。
 そこまで思い出したところで、フランの持っていたトランプが、輝きを放った。思わず手放したトランプには、柄が描かれていなかった。白紙のトランプだ。
 白紙のトランプが放った輝きにフランの視界は突き刺すような白に覆い尽くされ、たまらず目を背ける。閉ざされた瞼の上からでも感じる強い輝きと、咲き乱れた烈風から顔を背けたまま、椅子を蹴倒して、数歩後退る。
 気付いた時には、フランを襲った光の奔流はすっかり鳴りを潜めていた。おそるおそる瞳を開けた時、フランの視界に真っ先に入ってきたのは、少女と見紛うばかりに整った顔立ちをした、ひとりの歳若い青年だった。
 男が、頬を緩める。尻もちをついたままのフランに手を差し伸べる。
 
「僕を呼んだのは、君?」
「はあ? 別に、呼んでないけど。あんただれ」

 一瞬の狼狽。フランは男の手は取らず、警戒の眼差しを向け、誰何する。


492 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:08:59 XvOe2Gag0
 
「僕の名前は紅渡。バーサーカーのクラスのサーヴァント」
「バーサーカーのクラスの……サーヴァント?」
「うん。だから、僕を呼んだ君は、僕のマスターってことになる」
「あ、ああ……だんだん、思い出してきたわ」

 月の聖杯戦争。その概要が、徐々にフランの中に蘇る。
 どうして自分がここにいるのか。これからなにをしなければならないのか。
 必要な記憶から先に呼び起こされて、フランは早くも現状を理解しつつあった。

「マスター、君の名前は?」
「私は、フランドール・スカーレット。吸血鬼で……悪魔の、妹」

 思い出した自らの身の上を、未だぼんやりとした思考のまま付け足すように告げる。
 バーサーカーは、微かに瞠目した。名前よりも、吸血鬼である、という事実に驚いた様子だった。しかし、それも一瞬で、バーサーカーはすぐに納得したように頷き、微笑んだ。

「そっか。フランドールちゃん、それとも、マスター、って、呼んだほうがいい?」
「ううん、長いから、フランでいいよ。それに、マスターはなんだかよそよそしいわ」
「わかった。それじゃあ、これからよろしく、フランちゃん……で、いいのかな」
「ああ、いいね。私のことをそう呼ぶやつは今のところ他にいないから、なんだか新鮮だわ」

 思い返すが、幻想郷にはフランをちゃん付けで呼んでくるやつはいなかったはずだ。いやそもそも知り合いがまず少なかったはずだ。なにしろフランは紅魔館に引き篭もっていたのだから。徐々にあらゆる記憶が取り戻されてゆく。
 記憶を完全に取り戻すころには、フランの腰からは、歪にひねくれた木の枝のような形をした翼が生えていた。枝からは、七色の宝石がぶらさげられている。寸前までなかった筈のものだけれども、今のフランには、この翼があってはじめて、自分が自分であるのだという実感が得られるのだと、そう思えてならなかった。
 そもそもフランは、人間ではない。今までどういうわけかこの施設の中で自分自身を人間だと思い込んでいたが、違う。フランは、バケモノだ。人に畏れられ、無条件に忌み嫌われる怪物だ。
 それを思えば、施設の連中の態度にも納得だった。ご丁寧に、そういう余計な部分だけ現実に忠実に再現してくれていたらしい。

「ねえ。それって、吸血鬼の羽根?」
「そうよ。歪で滑稽な、壊れた吸血鬼の翼」
「そんな……、僕は、綺麗だと思うけど」
「それ、煽ってんの」
「えっ」

 バーサーカーは、きょとんと、目を丸くしたまま押し黙った。
 こんな醜い翼を美しいなどと、果たして初対面の人間が本心で言うものだろうか。そう思うと同時に、沸き起こった苛立ちは、どうしようもない破壊衝動へと変換されてゆく。そうだ、なにかを壊さずにはいられない、それが自分という存在であった筈だ。
 ぐ、と拳を握り締める。それだけで、バーサーカーの背後に設置されていた机が、その形をひしゃげさせて、内側へ向かって圧縮されてゆく。内側へ、内側へと圧縮され、瞬く間に原型すらも留めぬ不格好なオブジェと化した机が、ぱぁん、と音を立てて破裂した。後には、僅かな木片が残されているものの、机だったものの大部分は跡形も無く消し飛んでいた。
 それを見届けたところで、徐々に現実感が追い付いてくる。失っていた半身を取り戻したように、フランは喜悦の笑みを浮かべた。

「あはっ、そうそう、これよこれ。これが足りなかったの。いたいけな処女の女の子みたいに、純情ぶってぬいぐるみを壊すだけってんじゃあ物足りないわね。やっぱり私は、こうやってなにかを破壊しないとスッキリしないわ」

 今の今まで、こんなこじんまりとした施設で、いったいなにをくだらないままごとに興じていたのか。そういう考えが頭をよぎるが、一瞬遅れて、それはそれで、紅魔館に引き篭もっていた頃とさして変わらぬ生活を送っていたことに気付いて、ひとまず溜飲は下がった。
 急速に記憶を取り戻し、笑ったり、怒ったような顔をしたり、やけに表情の安定しないフランを心配したのだろう、バーサーカーがフランに一歩歩み寄った。


493 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:09:47 XvOe2Gag0
 
「フランちゃん、大丈夫? 記憶は全部、思い出せた?」
「んー、なんとなくね。これが聖杯戦争で、ぜぇんぶ壊して勝ち残れって、そういうお遊戯(ゲーム)だってことは」
「フランちゃんは、最後のひとりになるまで勝ち残ることが望みなの?」
「はあ? 当たり前でしょ。でなきゃ負けて死ねっていうの? そんなの嫌よ、ごめんなさい。でもね、安心して。壊すのは慣れっこだから。なにもかも、ぜぇんぶ壊し尽くして、蹂躙してあげるわ。壊すことなら、間違わないから。自信があるわ」

 歌うようなフランの言葉を聞いて、バーサーカーが、どこか寂しそうに目を伏せた。
 フランは、とびきり愉しそうに笑っていた。それは、この施設に預けられてからというもの、ついぞ見せたことのなかった、心からの笑みだった。



 スノーフィールド郊外の夜の静けさのなか、フランは歌う。夜の民家の屋根の上に登ったフランは、その縁に腰掛けて、放り投げた脚をぶらぶらと遊ばせながら、楽しげな歌を口ずさむ。
 一瞬、黄金の翼竜が空を舞うのが見えた。翼竜の翼に斬り裂かれ、身体を細切れにされたサーヴァントの霊基が、断末魔の叫びすら上げる間もなく、このスノーフィールドから消滅してゆくのを、フランは確認した。口ずさんでいた歌が佳境に差し掛かり、フランは心地よさそうに頭を緩く左右に揺らして、可憐な歌声を紡ぐ。
 誰の目にも留まるよりも早く、翼竜がフランの元へと舞い戻った。フランの隣で、翼竜は人の形へとその姿を変える。黄金の鎧に、真紅の装甲。鮮血のような複眼には、微かに虹色のステンドグラスが浮かんでいるように見える。紅色のマントを翻して、最前まで翼竜だった黄金の鎧が、フランにかしずく頃には、フランの歌も終わりを告げていた。

「おかえり。そして誰もいなくなった?」

 問いに答える代わりに、黄金の鎧が瞬時に消失して、その姿を紅渡としての人間の姿へと変える。別にはじめから回答など期待していなかったフランは、フランス人形さながらに整った顔立ちで、にこりと微笑んだ。
 フランの左腕の令呪は、既に一角が消え失せていた。フランは、バーサーカーに命じたのだ。フランが命令したなら、有無を言わさずに黄金のキバを纏い、敵を殲滅するために戦え、と。
 元よりバーサーカーの宝具は、発動と同時に自我を失い暴走する宝具であった。それゆえ、バーサーカーはのっぴきならない自体に陥らない限り、変身を躊躇うきらいがあった。フランにとっては、それはどうしようもなくつまらないことだった。
 好き放題にものを壊せる力があるならば、それを思うままにふるってしまえばいい。自分と同じように、壊し、嫌われるだけのバケモノになってしまえばいい。
 フランの思惑通り、バーサーカーはフランの意思に逆らえず、フランが望めば有無を言わさずに戦場に駆り出される黄金のバケモノと化した。だけれども、それでも、フランの胸中は晴れなかった。
 黄金のキバの鎧を解除した紅渡は、一瞬困惑したように周囲を見渡して、それからすぐに、自分の置かれた状況を理解し、その表情を陰らせた。


494 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:10:23 XvOe2Gag0
 
「僕は、また……誰かを、この手で」

 にぃ、と。フランの口元が三日月状に歪んだ。

「ええそう。私のバーサーカーが、またまた敵を壊したのね。やっぱり私のバーサーカーは最強だわ。もう何組目だっけかなぁ、うふふ、弱っちいのが相手じゃ、そろそろ飽きてきちゃったわね。だって、相手にもならないんだもの、ねえ?」

 バーサーカーは、なにを言うでもなく、悲しげな瞳でフランを見るだけだった。
 最前まで喜色満面だったフランの表情が、途端に棘のある苛立ち顔へと変わった。

「なに、その目は。私、そういう目で見られるの好きじゃないんだけど」
「確かに、バーサーカーとして呼ばれた僕には、君の代わりに戦う以外にできることなんてないのかもしれない……でもっ、本当に、君はこんなことを望んでるの? こんな寂しいこと」
「あーぁあ、つまんなぁい! せっかく上機嫌でお歌を口ずさんでいたのに、気分が悪くなっちゃったわ。おうち帰ろっかな」

 フランが背中の歪な形をした翼を羽ばたかせて、宙に浮かんだ。どうしてこんな形の翼で空を飛べるのかは、フラン自身にもわかっていない。
 空に浮いたまま屋根から離れ、バーサーカーに背を向ける。こいつを置き去りにしたまま飛び去って、仮住まいのあのクソみたいな施設に帰ろうかとも思ったが、その前に。ふと気になったことを、訪ねてみたいという気持ちが鎌首をもたげた。

「ねえ、あんた。私の羽根が綺麗だって、前に言ったよね」
「え、うん……宝石みたいで綺麗だな、って思って」
「あんたさあ、羽根っていうのがどういうものか、知ってるの」

 バーサーカーは、憮然とした面持ちで反論した。

「それくらい、知ってるよ。確かにフランちゃんの翼は普通とはちょっと違うけど、それでも僕は綺麗だと思ったから」
「はあ、変なの。こんなに歪で、醜い形をしているのに」

 フランは首だけを回して、バーサーカーに一瞥をくれた。

「それとも、あんたも私と同じ、醜いバケモノだからそう思うのかな。いい人ぶってるけど、狂ったあんたの宝具見てると、とても人間とは思えないもの、ねえ?」

 悪戯っぽく笑って、フランは言葉のナイフを投げ付ける。バーサーカーが、衝撃に打たれたような顔をして、固まった。一瞬遅れて、悲しそうに瞳を伏せる。
 どうしようもない苛立ちが心の中から沸き起こってきた。なにも言い返さないバーサーカーに対してもそうだが、それ以上に、自分自身に対してだ。フランの言葉は、いつだって鋭く尖っていて、誰かの心に突き刺さる。

 言ってから、後悔する。

 そのたび、所詮、なにかを壊すことしかできない魔法少女なのだと痛感する。
 少しやさしくされたくらいで、人と関わろうとした自分が間違いだった。目頭がほのかに熱くなってきたところで、フランは再びバーサーカーに背を向けて、飛び立った。


495 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:11:10 XvOe2Gag0
 


 フランよりも半刻ほど遅れて、バーサーカーはフランの部屋へと辿り着いた。
 開けっ放しになっていた窓から侵入して、ベッドで眠っているフランに視線を落とす。窓に背中を向けて、肩まで布団に潜って、丸まって眠っている。
 バーサーカーは、フランを起こさぬよう、物音を立てぬよう気遣いながら部屋の壁に背を寄り添わせ、ゆっくりと腰を下ろした。
 最前言われた言葉は、今もバーサーカーの心に残っている。だけれども、バーサーカー以上に、それを言ったフランのほうがつらいことを、バーサーカーは理解していた。
 この少女は、自分と同じだ。自分の殻に閉じ籠もって、外の世界に飛び出すことを極端に恐れている。どうしようもなくなった時、なにをしていいかわからずに、さらに自分の中に閉じ籠もって、心に鍵をかける。かつての自分を見ているようで、バーサーカーは、フランを放っておくことができなかった。

 バーサーカーは、静かに瞼を落とした。サーヴァントになった以上、睡眠はもはや必要はないのだが、生前の名残でバーサーカーは時たまフランとともに眠る。
 そうしていると、夢を見るのだ。暗い地下室に閉じこめられた少女の夢を。本当は、誰かと話したい。誰かにそばに居てほしい。だけど、少女はありとあらゆるものを破壊してしまう。気持ちが昂ると、すぐにものに当たり散らして、見境なしに壊してしまう。
 だから、少女は、他者とかかわることをやめた。地下室に篭もるようになった。
 誰かとかかわればそれだけで、気持ちがいらいらむずむずするから、というのも多分にあるが、本当に恐ろしいのは、その先に待ち受ける終幕だ。本当に大切なものは、ひとたび壊れてしまえば二度とコンティニューできないことを、少女は知っている。だから、壊したくない。
 壊したくないのに、気持ちを抑えきれず、瞬間的にでも壊したい、と願ってしまう自分が、押し寄せる激情の波に逆らう術を持たない自分自身が、なにより恐ろしい。
 最近は、博麗の巫女や、白黒の魔法使いの影響で、少しずつ、少しずつ心を開き始めたようだが、それでもフランは、まだ外の世界に出ることを、こころのどこかで恐れている。

 今するべきは、少しずつ外に向き始めた彼女の心を、正しく導いてやることだ。
 かつて不器用だった紅渡を導いてくれた多くの人びとに渡は今も感謝している。父に、兄に、友に、師匠に、多くの仲間たちに。その恩を、今度は渡が誰かに返す時がきた。
 バーサーカーは、いかにフランに冷たくあしらわれようとも、彼女とかかわることをやめようとはしない。生半可な気持ちでは、閉ざされた心の内側まで、他人の声は届かない。渡が変われたのは、命を燃やし尽くして大切なことを伝えてくれた父や、自らの地位すら危ぶまれる状況で、それでも渡のために尽力してくれた師匠らのように、本当に心から渡を思ってくれる人たちがいたからだ。
 その絆は、終わらないメロディのように、今も渡の心の中で響き続けている。この魂の絆を、渡は自分の代で終わらせたくはない。きっとこれから、沢山の友達を作って、沢山の苦難を乗り越えていくであろうフランの心にも、このメロディを伝えたい。
 それが、バーサーカーとして召喚された男の、心からの願いだった。

「おやすみ、フランちゃん」

 届くかどうかすら分からない微かな声で、バーサーカーは呟いた。

「おやすみ、バーサーカー」

 背を向けたまま、フランがぽつりと言葉を返した。
 瞠目する。フランはそれ以上、なにも言わなかった。静かな寝息だけが聞こえてくる。
 なんとなく温かい気持ちになって、くすりと微笑んだバーサーカーは、再び静かに瞳を閉じた。


496 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:11:34 XvOe2Gag0
 
 
【出展】仮面ライダーキバ
【CLASS】バーサーカー
【真名】紅渡
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷C 魔力A 幸運B- 宝具A+
(※宝具、及び狂化発動時のステータス)

【クラス別スキル】
狂化:B
 理性の大半を失うことで、ステータスに補正を得られる。
 宝具を発動し、黄金のキバを身に纏うと同時に、理性は失わる。
 ただし、失った理性以上に「大切な者の心の音楽守りたい」という感情が上回るため、狂化状態の中でなお、敵の殲滅よりもマスターの保護を優先する。

【保有スキル】
神秘殺し:B+
 ファンガイアやレジェンドルガといった魔族を葬ってきた逸話により得られたスキル。
 魔族・魔性といった性質を持つ敵を戦闘する場合、ステータスに補正が得られる。

皇帝特権:A+
 自らが新たなるキングであると主張し、一時的とはいえ玉座についた逸話からなる。
 本人が主張することで、本来持ち得ないスキル(カリスマ、軍略、等)を擬似的に獲得できる。

混血種:EX
 禁忌とされたファンガイアと人間のハーフで、伝説で語り継がれてきた存在。
 宝具『舞い上がれ、禁忌を越えた絆の翼』発動時にその真価を発揮し、全ステータスをワンランクアップさせる。

【宝具】
『光輝放つ真紅の皇帝(スーパーノヴァ・エンペラー)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 本来ならばファンガイア王族のために造られた鎧、通称『黄金のキバ』。
 かつてレジェンドルガ族を滅ぼす際に、味方をも巻き込み多大な犠牲を出した『闇のキバ』の反省点を活かし、安全性を考慮して造られた鎧であり、通常時はその能力を封印されている。が、今回は予め封印を解除した状態で宝具として固定されており、マスターの命令で宝具を発動した時点で、自らの意思に関係なく戦う狂戦士として『黄金のキバ』を身に纏ってしまう。
 装着者の生命力(ライフエナジー)を吸い上げ力に変換することで、その能力を引き上げるという性質上、資格のない者がこの鎧を纏えばそのまま死に繋がると言われている。
 耐久面においては「核爆発の中心地にいても無傷」と謳われる通り、抜群の耐久性を誇る鎧だが、装着者の精神状態に左右される。よって、精神的に同様したり、相手に気圧される状況であれば耐久力は低下する。核爆発の中心地にいても無傷とは、あくまで最大防御力である。
 また、鎧そのものが限定的な「空想具現化」の性質を有しており、全身から魔皇力を放出することで、自身の力を最大限発揮できる環境に世界の状態を変化させることが可能。……ただし、真祖ほど万能というわけではなく、自由自在に能力に融通を利かせられるわけではない。
 具体的には、戦闘中、昼間であろうとも、自身の周囲の空間を擬似的に夜に塗り替える、というものである。


497 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:12:06 XvOe2Gag0
 
『生命喰らう幻想の魔皇剣(ウェイクアップ・ファイナル・ザンバット)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:1〜50 最大補足:1人
 本来はファンガイア・キングのために造られた、この世に存在する最も強力な剣を用いた宝具。剣自体の正式名称は『魔皇剣ザンバットソード』。
 その刀身は、巨大な魔皇石の結晶から削りとって造られたという逸話を持っており、剣自体がライフエナジーを持つものに対して過剰に反応し、それを「喰いにいく」性質を持つ。だが、バーサーカーの持つザンバットソードには、幻影怪物ザンバットバットが取り付いており、ザンバットバット自身が剣の性質を暴走の可能性とともに抑え込んでいるため、元来のザンバットソードほど「魂喰い」には特化していない。
 代わりに、ザンバットバットで刀身を研ぐたび、斬れ味の回復と、魔皇力の充填、及び制御が可能となっている。ウェイクアップフエッスルを吹くことで、魔皇力を最大まで刀身にチャージし、その状態で剣を研ぐことで、紅く輝く刃による一刀両断を発動することができる。
 また、剣が持ち主を選ぶため、この宝具のランクを越える資格を持つ者にしか扱えず、資格を持たぬ者が扱った場合、対象にこの宝具と同ランクの「狂化」を付与し、見境なく暴走させる。バーサーカーの場合は「皇帝特権:A+」によってこの剣を制御するが、今回は元より狂化しているため、あまり影響はない。

『舞い上がれ、禁忌を越えた絆の翼(リレイション・ウィル・ネバーエンド)』
ランク:A+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 バーサーカーの最終宝具にして、その能力の真価を発揮する巨大な蝙蝠(翼竜)形態。通称『エンペラーバット』、または『飛翔態』。
 膨大な魔力を持っているものの、その制御が不安定で、いつ暴走してもおかしくない「混血種」のみが変身可能とされる禁忌の形態。バーサーカーの場合は、本来ならばファンガイアの王にもなれるほどであろう膨大な魔力を、体内で暴走させてこの形態に変身する。
 高速で空を跳び、巨大な翼はあらゆるものを斬り裂く刃となる。口から放たれる極太の熱光線は、ファンガイアを一瞬で粉砕するほどの威力を誇る。
 また、キャッスルドランと合体することで巨大なエンペラーキバへと変身し、仮面ライダーアークを月まで蹴り飛ばした必殺技も逸話としては確認されているが、今回はキャッスルドランの召喚自体が不可能であるため、上記の合体能力は発動不可能。

 人を想う絆の力によって発現した宝具である。
 狂化状態において最も手の付けられない暴走状態に陥りやすいのはこの形態であるが、同時に、最も他人との絆を意識し、自我を発露させやすい性質を持つのもこの形態である。
 バーサーカーは、狂化を施されてなお、守るためにこの宝具の力を発揮する。

【weapon】
『キバットバットⅢ世』
 バーサーカーの体内を循環する魔皇力を活性化させ、その身に『黄金のキバ』を纏わせる蝙蝠型モンスター。体内に『黄金のキバ』を内包している。
 今回はバーサーカーとしての召喚のため、宝具の発動と同時にキバットも出現するが、変身後はバーサーカーとともに狂化スキルの適用対象となって、理性を失う。
 なお、今回は純粋に黄金のキバとしての逸話のみを対象として現界したバーサーカーであるため、キャッスルドラン・ブロンブースター・マシンキバーなどの各種サポートは受けられない。キバ・ガルル・バッシャー、ドッガなどの各形態の解放も不可能。

『タツロット』
 キバを本来の姿であるエンペラーフォームへとファイナルウェイクアップさせる小竜。
 今回はバーサーカーとしての召喚のため、宝具の発動と同時にタツロットも出現するが、変身後はバーサーカーとともに狂化スキルの適用対象となって、理性を失う。
 また、ほかのアームズモンスターの能力を必須とする、ガルル・バッシャー・ドッガなどのモンスターフィーバーはすべて解放不可。


498 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:13:10 XvOe2Gag0
 
【SKILL】
『エンペラームーンブレイク』
 ウェイクアップフエッスルを吹くことで発動できる、エンペラーキバの必殺キック。
 脚から魔皇力で生成された死神のデスサイズを思わせる翼が出現し、絶大な威力を誇るキックと同時に、翼による攻撃を同時に叩き込む。翼が何度も敵を穿つパターンや、翼だけが肥大化し、巨大な鎌となって相手を斬り裂くパターンなど、状況によって使い分けが可能。

『ファイナルザンバット斬』
 ザンバットソードに魔皇力充填し、紅く光り輝く刃で敵を斬り裂く必殺技。
 状況に応じて、紅い魔皇力を斬撃のエネルギー状にして発射するなど、自由度が高い。ザンバットバットで剣を研磨し、紅く光り輝かせた刃から技を放つ、というプロセスを必要とする技は、すべてこの技である。

『ブラッディストライク』
 飛翔態に変身した状態で、キバが口から放つ極大の魔皇力光線。
 その威力は絶大で、ククルカンなどの大型の召喚獣をも一撃で粉砕するほどの威力を誇る。

【人物背景】
 ファンガイアのクイーンである真夜と、人間の男である紅音也との間に生まれた、禁忌とされる人妖のハーフ。

 誰にも心をひらかず、自らの部屋に閉じ籠もっては、外界とは一切のかかわりを断って生きてきた。渡は、自分自身を「この世アレルギー」だと思い込んでいたのだ。
 渡が屋敷の外へ出るのは、ファンガイアが誰かを傷付けようとしている時のみ。ファンガイアによって、無辜なる誰かの命が奪われようとする時、父が遺したヴァイオリン・ブラッディローズがけたたましくその弦を響かせるのだ。
 父の魂に導かれるまま、渡はわけもわからず、ただ自分の使命としてファンガイアと戦い続けてきた。その過程で、渡は数多くの仲間たちと出会い、何度もぶつかり合い、何度も自身の中の壁に閉じこもり、それでもそのたび成長を遂げて、自分自身と向き合えるようになっていった。

 そして渡は、恋をした。
 相手は、当代のファンガイア・クイーン、深央である。
 しかし、自分は王族のみが扱えるキバの鎧を身に纏い、同族を屠り歩くファンガイアの裏切り者。一方で、自らの恋敵、クイーンの婚約者にして当代のキング・登太牙が、渡にとって、幼き日の唯一の親友で、唯一、血を分けた兄であったことが発覚する。
 ファンガイアの裏切り人のため戦う渡と、ファンガイアのキングにして、愛すべき兄、太牙。そして、ファンガイアの裏切り者を処刑する使命を負ったクイーン、深央。

 泥沼の三角関係のなか、変化は突然だった。
 ついに決戦を余儀なくされた渡と太牙の激突のさなか、深央が間に割って入ったのである。渡のエンペラームーンブレイクが、深央の身体を砕く。愛する者を、渡はこの手で、殺してしまったのだ。

 絶望した渡は、キャッスルドランの力で過去へ戻り、父である紅音也と、母である真夜が出会わぬように画策する。ふたりが出会わなければ、自分が生まれることはない。未来が変われば、深央が死ぬことはなくなる。自分なんて消えてなくなればいいと、心の底から渡はそう願い、過去へ戻った。
 だが、どんな方法を用いても、紅音也の愛情を原動力とするパワーを押し曲げることはできなかった。紆余曲折あって、自身が親子の関係であると悟った音也から、人は前に進むものだ、と諭される。悲しみを乗り越え、前へ進んだ時、彼女はそこにいる。
 たとえ自分が死ぬ未来であったとしても、「渡に生きてほしい」と願う深央の心を知った時、渡はもう一度、生きる決意を胸にいだいた。


499 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:13:33 XvOe2Gag0
 
 そして、最強にして最悪のファンガイア、過去のキングとの決戦へ。
 自らの命を燃やし尽くす覚悟で、紅音也は闇のキバへと変身する。自分の死すら厭わずに、真夜を、渡を、愛するものを守るために必死に戦う音也の姿を見て、命を受け取る、という意味を真に理解した渡は、強敵キングを撃破し、現代へと戻る。

 最後の決戦の相手は、当代のファンガイア・キング、登太牙である。
 しかし既に渡には、太牙と殺し合う気はなかった。太牙がビショップに命を狙われていることを知った渡は、太牙を守るため、ファンガイア・キングの名を名乗り、ビショップの標的を自分へと向けさせる。
 深央を殺した本当の下手人がビショップであったことも発覚し、再び心を通い合わせた太牙とともに、蘇った最強のキング・バットファンガイアとの決戦へ挑む。
 これを撃破した渡は、太牙とともに、ついに長年実現出来なかったファンガイアと人間の共存への道を歩みだしたのだ。

 当初は一歩を踏み出す勇気が足りず、うじうじとひとり悩んでいた渡だが、数多くの仲間たちと出会い、変わっていった。
 仮面ライダーキバのテーマは、受け継がれる絆。父から受け取った命を、渡は次の誰かにリレーするために戦う。

 また、ファンガイアと人間の混血児であるため、能力の制御が難しく、絶えず暴走の危険性を孕んでいるのも、エンペラーキバの特徴である。王族の血を引いているだけに、膨大な魔力を持った渡は、常に暴走と隣合わせというリスクを課せられた形態をも駆使して戦ってきた。実際、幾度か暴走している。
 今回の召喚では、その特性を全面に引き出されている。

【サーヴァントとしての願い】
 フランの心に、この心に流れる音楽を伝える。
 自分とよく似た彼女を放ってはおけない。守りたい。
 きっと彼女はそれを拒むだろうが、それでも。

【基本戦術、方針、運用法】
 基本的には『光輝放つ真紅の皇帝』による暴走状態での、純粋な力による蹂躙で戦う。フラン自身が快楽優先であるため、小手先の策や、戦略・戦術といったものは存在しない。
 膨大な魔力消費がネックになるのだろうが、フラン自身が反則的な身体能力を持った吸血鬼であるため、魔力の捻出自体は苦ではない。が、魂喰いを行うほどの知恵もなく、後先考えず感情に任せて戦うスタイルのため、魔力の枯渇は十分に予想される。
 戦闘においては、戦略・戦術を上手く組み立てて、フランを誘導できる他のマスターが必要不可欠と思われるが、フランの性格上、誰かと組むこと自体が困難。バーサーカーが代わりに立って交渉する必要があるが、しかしバーサーカーはバーサーカーであまり口は達者ではない。
 戦闘能力は絶大だが、あまりにも行き当たりばったりすぎるスタンスが致命的なのがこの吸血鬼コンビの特徴である。


500 : フランドール・スカーレット&バーサーカー ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:13:56 XvOe2Gag0
 
 
【出展】東方Project
【マスター】フランドール・スカーレット
【参加方法】
 姉、レミリアの自室で見付けた白紙のトランプ。
 それは、天邪鬼異変によって小槌の魔力を与えられたトランプであった。なにも知らぬフランは、なにも知らぬまま聖杯戦争に巻き込まれた。

【人物背景】
 明るい金髪をサイドテールに結わえた、七色の宝石持つ翼の吸血鬼。

 紅魔館の主にして吸血鬼であるレミリア・スカーレットの妹で、495年ほど生きている。
 そもそもフランドール本人が少々気が触れており、情緒不安定なため、その危険過ぎる能力を懸念して、長らく閉じ込められていたのである。実に、人生のほぼすべてを地下室で過ごしている。
 基本的にあまり正面切って怒ったりはしないらしいが、それ以前に常にどこかおかしいので、他人にはよくわからない。

 だが、姉が起こした異変の影響で、霊夢や魔理沙たちと関わりを持ったことで、現在は少し外の世界にも興味はあるようである。が、未だに紅魔館の外へ出たことはない。少なくとも地下室生活からは脱却したようである。

【能力・技能】
『ありとあらゆるものを破壊する能力』
 その名の通り、対象が物ならば問答無用で破壊できる能力である。
 原理としては、全ての者には「目」という最も緊張している部分があり、そこに力を加えるとあっけなく破壊できる、というものであるが、フランドールはその「目」を自分の掌の中に移動させることができ、拳を握りしめることで「目」を通して対象を破壊することができる。その力を以て隕石を破壊したこともある。

 また、種族・吸血鬼としての力も絶大で、数多くの新顔が頭角を現し続けている昨今においても、未だに幻想郷のパワーバランスの一角を担っている。
 その本質は、目にも留まらぬスピード、岩をも砕くパワー、思い通りに悪魔を使役できる莫大な魔力といった反則的な身体能力にあらわれており、純粋なパワーならば姉・レミリアをも凌ぐ。

【マスターとしての願い】
 遊ぶ。聖杯戦争だろうがなんだろうが、楽しむだけである。

【令呪】
 左手の甲に、キバの紋章と同じものが刻まれている。
 上段の王冠で一画。右の翼で二画。左の翼で三画。
 すでに上段の王冠は消費されており、残り二確である。

【方針】
 暴れまわる。
 それで楽しめるなら一番。


501 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/02(金) 19:14:36 XvOe2Gag0
投下終了です。


502 : ◆4IAcK93k6k :2016/12/02(金) 19:16:26 xD5swEpM0
投下させて頂きます。


503 : ディオ・ブランドー&キャスター ◆4IAcK93k6k :2016/12/02(金) 19:19:04 xD5swEpM0
「令呪を持って命ずる……自害しろ、ランサー」
「マスター!?ぐっ!うぅっ……!がはっ!」
令呪の持つ絶対命令権に逆らうことは出来ず、ランサーは命じられるままに自慢の愛槍を己の胸に突き刺して絶命した。
そのランサーのマスターを操り死刑宣告を下させた張本人、キャスターは一部始終を見届けるとシワだらけの見た目に反した子供っぽい口調でランサーのマスターに声をかける。
「へっへっへ。これでまた目的に一歩近づいたよ、よくやってくれたね。さぁて、それじゃあお前ももうご用済みだよ」
「えっ?……うっ、く、くごごご……っ!」
キャスターが念を送ると、ランサーのマスターの体は急激に膨らんでいきボンッと音を立てて木っ端微塵に吹き飛んだ。
「ボンッ……だって。いつ聞いても良い音だよね。お前もそう思うよね、マスター?」
嫌らしい笑顔を浮かべたキャスターは、後ろに控えさせていた自身のマスターの方へとクルリと向き直る。
「……はい、キャスター様」
うやうやしく頭を下げたマスターを見て、キャスターは満足そうに更に口元をニィっと歪ませる。
「次はお前にもやらせてあげるからね。さぁて、それじゃあ次の獲物を探しに行くよ」
しかし、そう言って歩き始めたキャスターの後ろ姿を見るマスターは、パートナーの視線が自分から外れるやいなや、その表情を激しい怒りに歪ませる。
(おのれぇ……このディオの体を怪しげな術で操り、あまつさえこんな小汚いジジイに平伏させるとは……!だが、俺がいつまでもこんなものに操られていていいはずはない。必ずやこの術を打ち破りヤツをぶち殺してやる!クク、聖杯が俺の手に入るまで存分に働いてくれた後でな……!)
「おい、なにしてるんだよ!グズグズしてないで行くぞノロマ!ボクは早く聖杯が欲しいんだからさ!」
後からついてくる気配のないことに気づいたキャスターが振り返りながら叫ぶ。
「……はい、キャスター様」
頷くディオの顔からは、まるで先程までの怒りは嘘だったかのようにスッと消えていた。


504 : ディオ・ブランドー&キャスター ◆4IAcK93k6k :2016/12/02(金) 19:20:22 xD5swEpM0
【出展】ドラゴンボール
【CLASS】キャスター
【真名】バビディ
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具B
【クラス別スキル】
陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 “宇宙船”の形成が可能。

道具作成:B
 魔力を帯びた器具を作成できる。

【保有スキル】
魔術:A+
バリヤーやテレパシーなど数多くの魔術を扱える。簡単な魔法だと呪文を唱えなくても術を出すことが可能。

自己保存:B
 生命力が高く、自身はまるで戦闘しない代わりにマスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。

【宝具】
『操りの魔術』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
邪悪な心を持つ者の心の隙間に入り込み、自分の配下とする。同時にその者の潜在能力を限界以上に引き出す。術にかかった人間は額や胸などに自身と同じ、湾曲した「M」のマークが浮かび上がる。
術にかかっている状態でも本人の強靭な精神力や高い自意識があればある程度逆らうことが可能。

【weapon】
『エネルギー吸引器』
先端を相手に突き刺すことにより、エネルギーが吸引・注入できる。これを武器に、相手の体力を奪い、放出することにより攻撃にも使用できる。

【人物背景】
魔人ブウを作った魔導師ビビディの子供。
父の作った魔人ブウを復活させて宇宙征服をしようと、地球へやって来た。
性格は残忍で執念深く感情的になりやすい。また非常に思慮浅く、まだまだ利用価値のあったスポポビッチとヤムーを処刑してしまったり、魔人ブウへの態度などで命を縮めてしまっている。
ベジータと魔人ブウの戦いに乱入した孫悟天とトランクス、そして自身に重傷を負わせたピッコロに対して復讐しようとするが、その傲慢な態度が魔人ブウを苛立たせ、孫悟空を逃がした際に怒鳴った事が引き金となり、怒りを爆発させた魔人ブウにあっさりと殺された。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を手に入れて魔人ブウその他に復讐する。

【方針】
聖杯を勝ち取るため他の参加者を潰していく。


【マスター】
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険ファントムブラッド

【マスターとしての願い】
世界一の金持ちになる。誰にも負けない男になる。

【能力・技能】
高い知性とカリスマ性の持ち主。
当時まだ未発達だったボクシングのスウェーなどの技術を独学で使いこなす。
ナイフや石仮面を暗器として常に持ち歩いている。
身体能力はバビディの洗脳魔術によって限界以上に引き出されている。

【人物背景】
イギリスの貧民街に生まれ、ジョースター家の養子となった後はジョースター家の乗っ取りを企む。
後もう少しというところでジョナサン・ジョースターに企てが露見し酒を飲まずにはいられなかったところで聖杯戦争に参戦する。

【方針】
バビディの洗脳におとなしく従う振りをしつつ、聖杯の独り占めを目論む。


505 : ◆4IAcK93k6k :2016/12/02(金) 19:21:22 xD5swEpM0
投下完了しました。


506 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:04:28 Wprz4wSU0
投下します


507 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:05:22 Wprz4wSU0
夜の森で行われた戦闘は熾烈だったが実に呆気なく終わった。
壮年のランサーと、そのマスターの少女の前に現れた敵影は一人、双剣を引っ提げ、喉に白い布を巻いたたセイバーのみ。
無言で襲い来るセイバーの剛烈な剣戟を何とかいなし、隙をついて宝具で斃した。
何故かセイバーは最後まで宝具を使おうとせず、消える間際自分達に何かを訴える様な眼をしていたのが気になるが、それはそれ。今は勝利を喜ぶべき時だろう。
セイバーはマスターの方へ向き直り─────咄嗟に少女を抱えて飛んだ。
同時、マスターのいた処を音を超える速度で奔った木槍が聳える大樹に突き立つ。
槍に引き裂かれた空気が悲鳴を上げ、大樹が激しく震動した。

「やれやれ、手間書けさせんなよ……コイツはハズレなんだろ」

少年の様な、少女の様な、鈴を転がす様な声。声に相応しく中性的な線の細い容姿に合わぬ、凶々しい殺気を周囲に撒き散らすその様はまさに狂犬。

「闘わないことには判りませぬ」

此方は漢と判る美声。声に含まれたものだけでも歴戦の大戦士と判別できる声。
然し、その身に纏った気配は純然たる虚無。お前達になど一欠片の関心も無いとその存在全てが告げている。

ランサーは疲弊した上に手の内まで知られた己では到底勝てぬと瞬時に悟った。

「マスター!!令呪を!今の俺ではどうしようもない!!!」

ランサーのマスターは只の一般人だったが、それなりに聡明で、何度か場数も踏んでいる。意図を察し、即座に令呪を離脱の為に用いる─────筈だった。

「─────え?」

惚けた声で返されランサーは一瞬我を失った。

「マスター!?何をやっ」

ランサーの隙を逃がさず一気に距離を零にする敵サーヴァント。その右手に握った紅槍の切っ先を真っ直ぐ喉に向けて。

─────ランサーか!!

相手が同じ槍兵ならば手筋はある程度読める。ランサーは繰り出される紅槍の切っ先を睨み付け─────切っ先が静止したままなのに気付く。
敵は右手に持った紅槍を殊更見せ付けてランサーの視線を誘い、その後紅槍を手放して、紅槍に釘付けになっているランサーの内懐に入り、
切っ先を握り込み左腕で隠していた黄槍を、左手に掴んでランサーの喉を貫こうとしていた。

─────!?

咄嗟に身を仰け反らせて致命の傷を躱し─────然し躱しきれずに喉を抉られた。

「其れで良いんだよ。お前の槍で付けられた傷は治らないんだから」

離れて見ている敵のマスターの声にランサーは戦慄する。傷自体も痛手だが、喉を抉られて声が出せなくなっている。此れでは宝具の真名開放が出来ない。
自分達の置かれた状況を把握して、令呪を使おうとした己がマスターが、敵サーヴァントに微笑まれただけで惚と立ち尽くすのをランサーは絶望とともに見つめた。


一時間後─────。

「で、どうだった?今日闘った奴等は?」

陵辱の後も生々しいランサーのマスターだった少女の死体と、子供と言って良い年齢の少年─────双剣を使うセイバーのマスター─────の死体を、
深く掘った穴にぞんざいに放り込んで埋めているランサーに、彼のマスターが話し掛けた。

「特に何も」

ランサーの返答は短い。今日闘った二人。喉を潰した上でマスターを痛めつけて令呪を使わせ、他のサーヴァントの実力を図る為の当て馬にしたセイバーにも、
当て馬により手の内を暴かれ、不意を付かれて宝具を封じられ、傍らでマスターが凌辱される事を止めることも出来ないまま、全身を穿たれて死んだランサーにも、
彼は何の感慨も持ってはいなかった。それ等を指示した己がマスターにさえも。

「だから言ったろう?一目で分かるって。闘う必要なんて無いんだよ。己の為の敵なんてのはさ、もう見た瞬間に理解できるもんなのさ」

「半信半疑でしたが、今宵漸く理解できました。感謝します」

ランサーの声に、今宵漸くの感情が篭った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


508 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:06:01 Wprz4wSU0
─────数日前。


「貴様らは……そんなにも……
そんなにも勝ちたいか!? そうまでして聖杯が欲しいか!? この俺が……たったひとつ懐いた祈りさえ、 踏みにじって……貴様らはッ、何一つ恥じることもないのか!?
赦さん……断じて貴様らを赦さんッ! 名利に憑かれ、騎士の誇りを貶めた亡者ども……その夢を我が血で穢すがいい! 聖杯に呪いあれ! その願望に災いあれ! いつか地獄の釜に落ちながら、この─────の怒りを思い出せ!」

消え去る前に怨嗟を叫び、その場に居た全員に呪詛を残して。英雄は徐々に
消滅していった。
只々無念だった。忠義は届かず、誇りは踏み躙られ、騎士道は穢され、最後に残った敵手との純粋な闘争の刹那も奸計の一つだった。
只々無念だった。生前に砕かれたものは再度砕かれ、得た筈の好敵手は己を腹中で嘲笑っていた。
只々無念だった。


ああ、けれども─────あの騎士王との闘争は心が躍った。己の力と技の全てを賭けて戦うことができた。願わくば、またあの様な時を得たい。
あの様な奸物とではなく、何の因果も応酬も奸計も利害もなく、只々良き敵と死力を尽くして戦いたい。
そう、消えゆく最後に思った時─────宙を舞う白いものが風に吹かれて、彼に触れた。


509 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:06:42 Wprz4wSU0
人骨踏みしめ怨念喰らい
這いずり進み血を啜る
悩ましきかな我が武道


全てを賭して宿縁の相手と鎬を削りました。実は仕組まれていました茶番でした。
こんな巫山戯た話が有ったらどうする?

─────結論。仕組んだ奴をブッ殺す。


「お前はそう思わなかったのか」

呆れた様な、それでいて何処か面白そうな口調で聞いたのは、白いワイシャツと黒い長ズボンを身に纏い、ワイシャツの上から女物の朱い小袖を羽織った白い肌の男。
格好に相応しく肌は白く、容貌は中性的で、声は鈴を転がす様。
以前の彼ならば言葉を交わすも汚らわしいと思ったろうが、今の彼は何の感慨を抱くこともなく淡々と答えた。

「もう…疲れました。それに、あの様な奸計を用いる浅ましき者共…いずれにせよ共食いの果てに死に絶えましょう」

「そっか」

彼の新たな主の反応は只それだけ、彼の答えに肯定の念も否定の意も込めはせず、只応えただけ。その無関心さは今の彼には心落ち着くものだった。

「で、お前は何も考えずに殺し合いが出来る相手を探してこんな処に来たと?俺を巻き込んで?」

主の声に怒りが篭る。彼は困ったことになったと思った。主は元々『白紙のトランプ』に触れていない。触れたのは己であり、主はまずサーヴァントが先に在り、その後でマスターが用意されるという変則的な形で此処にいるのだ。
怒りを抱くのは理解できる。当然だと思う。
だが、ここで死ぬのは死に切れない。奇跡に縋って踏み躙られ、無念の中で得た機会を失いたくない。
主が女ならこの黒子に物を言わせるのだが─────そこまで考えて彼は笑った。
己がこの黒子を積極的に使うことを考える。そんな事を考える日が来るなど思ってもいなかったから。

「然り」

短く、極短く彼は応える。もし主が己を自害させようというのなら、この双槍を以って主を殺す。その決意を全身にひっそりと、気づかれぬ様に張り巡らす。

「その為なら何だってやるか?」

「必要と有れば」

彼の主が興味深げに彼を見る。

「主を斬り、友に憎まれ、己を愛した女を死地に蹴り込んでも悔いは無いか」

「その様なもの既に無き身なれば、悔いなど生まれる筈がございません」

「生死も勝敗もどうでも良いか?」

「此の身に有るは只一つ。好敵手との死力を尽くした一戦を望む想いのみ。左様なものは狗の餌にでもすれば宜しい」

どうだかなあ。呟いて彼の主は天井を見上げる。

「まあ…お前に何が有ったのかは知らないけど。不幸な奴だよな、お前」

「は……」

驚いて主を見つめる。穢らわしいと、厭わしいと、そう言われると思っていたのに、不幸?

「だってそうだろう?それだけの思いを抱きながら、その思いをブツける相手がいない。これは立派に不幸なことだと思うぜ」

感慨深げに言う主に彼はふと閃いた事を口にする。

「マスター…貴方には」

「ああ、居るぞ」

主に始めて熱が宿る。それまで灰の様に熱を感じさせなかったものが、熱せられた石の様に熱を感じさせる。


510 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:09:26 Wprz4wSU0
「俺はそいつと闘う、闘わなきゃならねえ」

短く強く断言する。

「運命だの宿縁だのそんなシロモノに踊らされてなんかいねえ。己(オレ)が己(オレである以上。彼奴が彼奴である以上。己(オレ)達はどうあろうと闘う。俺たちの意志で」

その間に入り込むものは、鬼であろうと仏であろうと過去の英雄だろうが聖杯だろうが斬り散らす。
言外にそう言ってのけた己の主を彼は呆然と見上げた。

「だけど今はお前に付き合ってやる。他人とは思えないしな……それに、己(オレ)の剣は未だ出来ていない」

─────こんなんじゃ、彼奴の剣を破れない。

あの魔剣─────。戦機。力。速さ。剣理。術技。
そういった闘いに勝利する為に必要な要素を一切排し、只々敵を斬り殺す為の機構。
あの魔剣に対する為の剣は未だ無い。あの魔剣を破る為の剣は未だ無い。
これでは彼奴とは闘えぬ。

「幸い、此処では闘う相手に困らないし、伝説にもなった英雄様の業(ワザ)も見れそうだしな。剣の工夫のついでにお前の相手探しに付き合ってやるよ」

「かたじけない」

彼は恭しく頭を垂れる。生前から待ち望んだ己の思いを正しく汲み取ってくれる主に胸が熱くなった。

「けどな─────」

主の言葉が更に続く。

「己(オレ)は絶対に生きて彼奴の前に立たなきゃならねえ。だから、いざとなったらお前を見捨てる。それでも良いか?」

「私もそのつもりです」

忠義が己に何を齎した?騎士道?誰よりも忠実であらねばならぬ者が誰よりも卑劣に踏み躙った。
最早その様なモノを後生大事に崇め奉るのは既に止めた。今は只、己の想いに従うのみ。
いまの彼はアルスターの英雄、フィアナ騎士団の一、ディルムッド・オディナであってディルムッド・オディナでは無い。
いまの彼は、嘗て奉じた全てに最早価値を見出せぬ、只々己の為の敵との間に己の為の闘争を望む戦鬼。

「私も必要とあれば貴方を見捨てます」

主は唇の端を釣り上げて笑った。

「じゃあ、サッサとゴミを払いに行くか」


英雄と剣鬼。本来ならば剣鬼は犬と唾棄したであろう。英雄は穢らわしいと断じたであろう。
決して交わらぬ二つの道は、此処に交わり血花を咲かす。


511 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:10:04 Wprz4wSU0
【クラス】
ランサー

【真名】
ディルムッド・オディナ@Fate/Zero

【ステータス】
筋力: B 耐久: C 敏捷:A+ 幸運: E 魔力:D 宝具:B

【属性】

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


【保有スキル】

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


愛の黒子:C
魔力を帯びた黒子による異性への誘惑。対魔力スキルで回避可能。


騎士の武略:B
力において及ばずとも、戦いの流れを把握し、相手のミスを誘発させる戦闘法。
自己強化ではなく相手の判定ミスを誘うスキル。一瞬の勝機に賭ける冷静な観察力。
ランク以下の心眼(真)を無効化し、宗和の心得を2ランク下げる。
また、カウンターが成功しやすくなる。

【宝具】
破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大捕捉:1人

由来:ディルムッドが養父であるドルイドのアンガスより贈られた紅槍ゲイ・ジャルグ。
紅の長槍。刃が触れた対象の魔力的効果を打ち消す。基本的には、魔術的防御を無効化させるための能力を持った宝具。
セイバーの鎧のように魔力で編まれた防具や、魔術やあるいはバーサーカーの宝具「騎士は徒手にて死せず」のような魔術的な強化・能力付加を受けた武具からその魔力的効果を奪い、物理的な防御力のみの状態にする。
打ち消される魔力の対象は防具に限った話ではないが、「刃の触れた部分だけ」「刃の触れている間だけ」効果を発揮するため、防御的な使い方には向かない。また、過去に交わされた契約や呪い、既に完了した魔術の効果を覆すことはできない(魔術は無効化できるが、その魔術が残した結果までは無効化できない)。
「宝具殺しの宝具」と呼ばれる槍だが、この破魔の効果単独で宝具の初期化はできない。あくまで「刃の触れている間だけ」効果を打ち消す。作中、セイバーと切り結んでも「風王結界」はその瞬間だけ僅かにほどけるのみであるし、キャスターの「螺湮城教本」を傷つけて海魔の大群を消し去った時も、表紙を切り裂かれた宝具は時間を置かず再生している。
魔術を使わないものにはただの槍だが、サーヴァント同士の戦いに魔術的なものを使わないことはまずなく、派手さはないが実に有用な宝具。


必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜3 最大捕捉:1人

由来:ディルムッドが妖精王マナマーン・マック・リールより贈られた黄槍ゲイ・ボウ。
黄の短槍。治癒不能の傷を負わせる。通常のディスペルは不可能で、この槍で付けられた傷は槍を破壊するか、ディルムッドが死なない限り癒えることがない。
いかなる治癒や再生でも回復できない仕組みは、この槍が与えるダメージは最大HPの上限そのものを削減するため。それ故に回復や再生をしても「傷を負った状態が全快状態」であるため、それ以上治らない。
短期決戦であるとただの槍だが、同一の相手と長期に渡って複数回戦うことを前提に考えると、じわじわと、しかし確実に効いてくるボディブローのようなもので、対象がサーヴァントでなければ、時間経過による出血死などのより致命的な効果が期待できる。
「破魔の紅薔薇」同様、派手さには欠けるが、非常に使い勝手のいい宝具。なお、使い手である彼はこの槍で傷つくことはない。


512 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:11:19 Wprz4wSU0
【weapon】
破魔の紅薔薇と必滅の黄薔薇と愛の黒子

【人物背景】
敬意と友誼を抱いた騎士王と、槍を捧げた主に裏切られて自害させられた英雄。
その心には奉じた騎士道は既に無く、彼を動かすものは嘗ての英雄の残滓である。
今の彼は己の為の敵と己の為の闘争を望む戦鬼である。
要するに本編でフルボッコされた後のディルムッド

【方針】
己の為の敵を見定め死力を尽くして闘う。それ以外の障害は手段を選ばず排除。

【聖杯にかける願い】
この聖杯戦争で己の為の敵と出逢えなければ、別の異なる聖杯戦争へと参戦する。



【マスター】
武田赤音@刃鳴る散らす
22歳 身長161cm 体重54kg(シナリオライター設定)

【能力・技能】
兵法綾瀬刈流中伝印可
指(サシ)の構えと呼ばれる剣を肩に担ぐ構えから繰り出される振り下ろしは、
脱力を旨とする刈流の術理により神速の斬撃と、剣尖に全体重を乗せることを可能とする。赤音の斬撃とは神速で54kgの物体が激突するに等しい。
体格に恵まれぬ赤音が作中屈指の剛剣を振るえるのはこの為。
他に先天的な性質として『即応能力』を持つ。
予想外の事態に対し、思考とや感情と肉体の行動を脳で完全に切り離し、 肉体の反射神経のみで最適の行動を最速で為す異才である。
「考える前に行動する」「己が無のまま勝利する」を地でいく異才。
結果として剣聖まがいの行動ができるが、単にその結果が似るだけであって、
その攻撃的にすぎる性状故に、剣聖の無念無想の境地に達する事は未来永劫にない。

その即応能力と鍛練から、後に“我流魔剣”【鍔眼返し】に開眼するが、現在は未だ開眼してはいない。

【weapon】
かぜ:
銘・藤原一輪光秋。二尺三寸三分の日本刀。軽捷さを宗としている為に堅牢さという点では心許ない。

【ロール】
地元の金持ちのヒモ

【人物背景】
宿敵である伊烏義阿との決着を望むだけの剣鬼。
人間性の全てが蒸発し、嘗ての残滓だけで動く身となっても、剣への想いだけは変らず残っている。
恐ろしく口が悪く、本人は普通に話している。真面目に謝っているつもりなのに喧嘩を売っている様にしか聞こえない。
念願かなった後は負ければ死ぬだけ、勝てばやることやったんで死ぬだけと割り切っている。
戦場における女の取り扱いは“戦利品”というものであって、どう扱おうが己の自由と割り切っている。

【令呪の形・位置】
右手の甲にツバメの形

【聖杯にかける願い】
無い。杯なんぞに頼らずとも己は伊烏義阿と闘うのだから

【方針】
当面は己の剣を作るランサーの相手を探す。外れは殺す。
女がいれば戦利品として好きに扱う

【参戦時期】
一輪から“かぜ”を受け取った直後。

【運用】
基本的にはマスター狙い。必滅の黄薔薇を用い、一撃離脱を繰り返して敵を削っていく。この時には宝具を使用出来なくさせる為に出来るだけ喉を潰しにいく。
愛の黒子を利用する事で、女性がマスターの陣営を利用しやすいのでこれを最大限利用する。
マスターは魔力を持たないので魔力を得る手段を早期に見つけると後々楽だろう。


513 : 惨剣槍鬼 ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 21:11:49 Wprz4wSU0
投下を終了します


514 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:04:27 Wprz4wSU0
本日二つ目投下します


515 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:04:51 Wprz4wSU0
外から滑り込んだ刃に腹を割かれ臓腑を引き出され鮮血を撒き散らし少女は死んだ。



闇に閉ざされた空間。それでいて千キロ先まで見通せる空間。前後上下左右の区別が一切無い、確かに足を着き、身体を支え、前方を確と見据えられる空間に少女はいた。

「おお、フレデリカよ!死んでしまうとは情けない!」

後ろ─────と言っても感覚的なものだが─────からした声に反応し振り向くと、女の姿が見えた。
始めて見る女だった。
漆黒の髪と、大きく前が開いて頭程も有る白い柔肉を覗かせた黒いスーツの美女。何故か身ていると慄然とする白い美貌。
眼鏡の奥の赤い瞳が興味深げに、嘲笑うように、愉悦を浮かべて、少女に向けられていた。

「誰よ」

短く発した声は空気震わせる事無く、確かに空気を震わせて声となった。

「ボクはね、魔法使いなんだ」

表情を変えぬまま答えた女に少女は冷たい視線を向ける。

「魔法使い?だったら私を助けてくれるとでも言うの?私を殺して皆を殺した奴等をどうにかしてくれるの?」

女の笑みが深くなる。見る者を惹きつける、不安にさせる、そんな笑み。

「いや無理だね、其れは出来ない相談だ。ルール違反だからね」

そう言って口に手を当てて笑う女に少女は殺意を込めた視線をぶつける。

「だったら何をしに─────」 「君の力にはなれないが機会を与えることは出来る」

「機会?」

「話を聞く気になったかね」

そうして女は語り出す。少女が�拙む機会について、少女が赴く戦場について、少女が戦う魔戦のルールについて。
その声は闇を震わせる事無く、しかし少女の耳朶に確と届いた。




内から突き出た手に腹を割かれ臓腑が飛び散り血が噴き出し出てくる忌み子の肉体により四散した肉片となって少女は死んだ。


「これで何度目だったかな」

暗い暗い牢獄に繋がれた少女。全身に拘束具を着けられ、鼻から上を黒革で覆われ、猿轡を噛まされた少女を前に、艶やかな笑顔を浮かべる女が一人。

「……………」

少女が放つのは真性の殺意。自由の身であれば女を殺さずには置かない、それほどの殺意。

「ははは、そんなに怒らないでおくれよ。今日は君にラッキーチャンスを用意したんだ」

そう言ってリアクションを待つが、拘束されて猿轡を噛まされた少女に出来るリアクションなど無いことに気付いてワザとらしく咳払いする。

「……ゴホン。ラッキーチャンスというのは他でも無い。なんでも願いが叶う優勝トロフィの争奪戦さ」

豊かな胸を見せつける様に反らし、女が高らかに語り出す。

「君の得意な殺し合い!賞品は万能の願望機!!断る手は無いと思うが?まあ…色々とハンデを付けさせて貰うがね。何しろ君が全力を出すと他の参加者(プレーヤー)が可哀想だからね。
二人一組で行うものだが、パートナーは既に用意してある。君と似た境遇の娘だから、きっと仲良くなれると思うよ」

赤い瞳を妖しく輝かせ、女が少女の覆われた瞳を見る。


「さて…どうする」


516 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:05:25 Wprz4wSU0
「聖杯戦争」

忌々しげに、呪いを込めて、老婆の様な口調で少女は呟く。
結局、あの忌まわしい六月から脱することは叶わなかった。
裂かれて撒かれて殺される何時ものループ。
然し、違う点が二つ有る。
一つは、あの時のループでは確かに犯人の顔を記憶に刻み込んだ─────筈なのに、顔は愚か、体型も声も思い出せない。

二つ目は、戻った先が雛見沢では無く別の場所だったこと。
最初は驚愕した。次に此れはチャンスだと思った。
しかし─────。

羽入が居ない。

初めての経験だった。いつもそばに居た羽入が居ない。
これは非常に恐ろしかった。なにしろ死んだ場合どうなるのか?またやり直せるのか?

解らない。答えはそれこそ死ななければ解るまい。だがそれは出来ない。あの六月を越える好機なのだ。負けるつもりなど毛頭ない。

真相などどうでも良い。犯人が何を考え、何を思って惨劇を為したのかもどうでも良い。
そう、どうだって良いのだ。聖杯を使って惨たらしい末路を迎えさせてやるのだから。何を考えているかなどどうでも良い。
凄まじい憎悪。百年にも渡る繰り返しで蓄積された疲弊を忘れさせる程の憎悪に駆られて少女は猛る。

─────必ず、絶対に殺してやる。

この力が有れば、犯人に仲間がどれだけ居ようとも恐れることはないだろう。
右腕に顕現した“ソレ”、此処に来る前に出逢った“魔法使い”を名乗る女が、己に与えたカードを見ながら少女は嗤う。
仲間達には決して見せられないと思っても、なお嗤うことを止められない。

あの時女はこう言ったのだ。「君の力にはなれないが力となるものを与えることは出来る」

その言葉を小女は受け入れ、殺し合いをする為に此の地に来たのだ。

この好機は必ずモノにする。
障害となるものは全て撃ち倒す。
どうせ自分勝手な欲望に駆られた者達だ。死んだところで自業自得。
自分が掴もうとするのは理不尽に奪われる未来。惨劇で砕けて散って行く仲間達の心と命。雛見沢そのもの。
背負っているものが違うのだ。

「私は勝つ。勝って未来へと進む」

そう呟く少女の顔は、まるで百年を経た魔女のようだった。


517 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:07:25 Wprz4wSU0
「聖杯戦争」

忌々しげに、呪いを込めて、老婆の様な口調で少女は呟く。
結局、あの忌まわしい六月から脱することは叶わなかった。
裂かれて撒かれて殺される何時ものループ。
然し、違う点が二つ有る。
一つは、あの時のループでは確かに犯人の顔を記憶に刻み込んだ─────筈なのに、顔は愚か、体型も声も思い出せない。

二つ目は、戻った先が雛見沢では無く別の場所だったこと。
此れはチャンスだ。奴等から雛見沢を救い、復讐する好機だと。
しかし─────。

羽入が居ない。

初めての経験だった。いつもそばに居た羽入が居ない。
これは非常に恐ろしかった。なにしろ死んだ場合どうなるのか?またやり直せるのか?

解らない。答えはそれこそ死ななければ解るまい。だがそれは出来ない。あの六月を越える好機なのだ。負けるつもりなど毛頭ない。

真相などどうでも良い。犯人が何を考え、何を思って惨劇を為したのかもどうでも良い。
そう、どうだって良いのだ。聖杯を使って惨たらしい末路を迎えさせてやるのだから。何を考えているかなどどうでも良い。
凄まじい憎悪。百年にも渡る繰り返しで蓄積された疲弊を忘れさせる程の憎悪に駆られて少女は猛る。

─────必ず、絶対に殺してやる。

この力が有れば、犯人に仲間がどれだけ居ようとも恐れることはないだろう。
右腕に顕現した“ソレ”、此処に来る前に出逢った“魔法使い”を名乗る女が、己に与えたカードを見ながら少女は嗤う。
仲間達には決して見せられないと思っても、なお嗤うことを止められない。

あの時女はこう言ったのだ。「君の力にはなれないが力となるものを与えることは出来る」

その言葉を小女は受け入れ、殺し合いをする為に此の地に来たのだ。

この好機は必ずモノにする。
障害となるものは全て撃ち倒す。
どうせ自分勝手な欲望に駆られた者達だ。死んだところで自業自得。
自分が掴もうとするのは理不尽に奪われる未来。惨劇で砕けて散って行く仲間達の心と命。雛見沢そのもの。
背負っているものが違うのだ。

「私は勝つ。勝って未来へと進む」

そう呟く少女の顔は、まるで百年を経た魔女のようだった。


518 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:07:55 Wprz4wSU0
【クラス】
キャスター

【真名】
ネロ@機神咆哮デモンベイン

【ステータス】
筋力:E 耐久:D 敏捷:B 幸運:E- 魔力:EX 宝具:EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
陣地作成スキル:ー
宝具が陣地を兼ねている為にこの効果は失われている。

道具作成スキル:C
魔力を帯びた器具を作成できる。


【保有スキル】

魔人:A+++
キャスターは邪神の計画の重要な要素を担う魔人であり、最初から人を超越した存在として生まれてきた。その肉体は人の姿をしていながら人の範疇に収まらない。
極めて高ランクの魔術・魔力放出・再生・自己回復(魔力)スキルを併せ持ち、併せて破格の魔力量を有する。


外道の智慧:B
人を超え、世界の外側に身を置き、外道の知識を行使するが故に得た深淵の知恵。英雄が独自に所有するものを除いたほぼ全ての魔術に関するスキルを、Cランクの習熟度で発揮可能。また、マスターに限りスキルを授けることが出来る。


人理侵食:B
外道の知識を持ち、異形の神々の力を振るう魔人の特性。人の手に為るモノを拒絶する。
神秘が低い。若しくは神性や魔性に依らぬ武具・道具・宝具の効果及び神性や魔性を持たぬ、あるいは神秘が低いサーヴァントの攻撃や防御の効果を半減させる。


邪神の束縛:EX
強壮無比な外なる神の呪い。決して狂うことも自殺することもキャスターには許されない。
如何なる精神干渉も効果を発揮せず、自身の力で死ぬこともでき無い。
然し例外はどこにだって在る。キャスターはマスターが令呪を用いて自害を命じた場合は自害して死ぬ。
殺されると生まれた時点までループする、という呪縛もあったが聖杯戦争ではこの呪いは効果を発揮しない。戦死すれば元居た牢獄に戻るだけなのだから。


519 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:08:25 Wprz4wSU0
【宝具】

暴君の二挺魔銃(クトゥグア・イタクァ)
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大補足:一人

炎神の加護を受けた赤と黒の50口径自動拳銃・クトゥグアと、風の神の加護を受けた白銀の44口径リボルヴァー・イタクァの二挺の魔銃。
装薬に霊的存在を物質化させる『イブン・ガズイの粉』が使われている為、霊体化しているサーヴァントにもダメージを与えることが出来る。
クトゥグアの弾丸は当たると爆発し、イタクァの弾丸は敵を追尾する。
弾薬は魔力でいくらでも生成可能。
強壮なる神々の力を得ている為、破格の神秘を有し、宝具としてのランクは高いが、威力は現実の銃器相応である。


無名祭祀書(ネームレス・カルツ)
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

フォン・ユンツトが記した古代の伝承や神々やその祭事等について記された書物。
魔術の駆動式でもある為、これを用いることで最高ランクの高速神言と同じ効果を得ることが出来る。
膨大な魔力を有する魔力炉としても使用可能。


強壮なる名無き鬼�槎神(ネームレス・ワン)
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~100 最大補足:1000人

全長300mにも及ぶ巨大な鬼�槎神(デウス・マキナ)。聖杯戦争では邪神に設定された制限により10mサイズにしかならない。
魔力を持って作り出す巨大な刃や、砲撃、弾幕で敵を蹂躙する。
が、真に恐るべきはその奥義。世界を構成する情報から任意の情報を“消去”することによる“存在消去”。
サーヴァントに対して使用した場合、対魔力により魔力消費の度合いが変化する。
自身の傷を無かった事にする事で如何なる損傷からも回復可能
選択した対象を有無を言わさず消去する恐ろしい絶技だが聖杯戦争では制限が設けられており、抹消する対象に直接相手に手に当たる部分で触れる必要が有る。
無名祭祀書(ネームレス・カルツ)に記された術式の一部であり、この魔導書が失われれば使用不能となる。



【weapon】
クトゥグア・イタクァ

【人物背景】
邪神の計画の要として作り出された存在。無限とも言えるループを記憶している。
大抵のループでは息子に殺されて死ぬ。
息子に対しては極大の殺意を抱いていて、ループから解放された後ワザワザ殺しに現れた事がある。
外見上は小学生高学年くらいの少女。
実質死んでいない為に霊体化が出来ない。
邪神の申し出に乗りサーヴァントとして参戦した。

【方針】
皆殺し

【聖杯にかける願い】
無限螺旋からの解放は聖杯などでは果たせるものでは無いので、息子である◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️を受肉させ、自らの手で殺害する。



【マスター】
古手梨花@ひぐらしのなく頃に

【能力・技能】
重い鋤を持って奉納舞を舞い切る程度の体力。
百年程ループを繰り返しているので精神的には老成しているが、それを感じさせない演技力

【weapon】
無い

【ロール】
小学生

【人物背景】
昭和58年6月に起こる雛見沢村を襲う災厄の中心人物。
彼女は6月に必ず死ぬ。大抵は割かれて撒かれて死ぬ。
そして彼女が死ぬと雛見沢村は滅ぶ。


【令呪の形・位置】
腹に666の数字

【聖杯にかける願い】
雛見沢を救う。犯人惨すぎる程に惨い死を

【方針】
皆殺し

【参戦時期】
皆殺し編の後から参戦。邪神により鷹野に関する記憶を奪われ、その代わり自身の運命と犯人に対する憎悪が齎された。


【備考】
◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️:
この聖杯戦争に二人を送り込んだ存在。聖杯戦争に干渉する意図は全く無い。
その目的は不明。ひょっとしたら永劫の刻をかけて準備し、永劫の刻をかけて遂行される巨大な計画の一端かも知れないし。単に面白そうというだけかもしれない。
その真意は到底測ることなどできない。


520 : 臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ! ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/02(金) 22:08:54 Wprz4wSU0
投下を終了します


521 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:39:19 iTaAhmL.0

皆様、変わらずたくさんのご投下ありがとうございます!
大変お待たせしてしまっているのに今回は少なくて恐縮ですが、感想の続きをお伝えさせて頂ければと思います!



>遠坂凛&ライダー

なんと綺麗な文章なのでしょう(惚れ惚れ)。
情緒溢れる文章で彩られた作品に登場したのは、Fate元祖ヒロインが一人遠坂凛。そしてタイトルバレがなければ、余裕で諏訪部ボイスのあの抑揚で台詞を脳内再生できそうなトラップを挟んでの登場な天道総司。世話焼き家事万能のみならず、我様までその唯我独尊ぶりで連想させるライダーです。アーチャーではありません。今度はセイバー狙いじゃなかったのにまた外れたねウッカ凛。
それにしても天の道:EX……なんて面白いスキルなんだ。あまりにも天道を象徴するスキルによる効果で凛を己のペースに巻き込む天道は実に彼らしい。
「おばあちゃんが言っていた……」も飛び出し、終始ペースを握りながらも凛も彼女らしさが存分に描かれ、だからこそあの天道がマスターを認める展開もすんなり受け入れられます。お見事です。
願いだけを掻い摘んで見るとチンピラみたいですが、その裏に秘めた本当の強さを持つ兄と姉の天才コンビが運命のゲートを飛び越えて行くのが楽しみです。
◆HOMU.DM5Ns氏、執筆お疲れ様です。凛のサーヴァント達の料理のように味わい深い作品をありがとうございました!

(PS. 世界線が異なるという事実を反映し忘れていたので、拙作『レクス・ゴドウィン&セイバー』の宝具欄の説明を少しだけ修正させて貰いましたことをこの機会に報告いたします)



>フリット・アスノ&バーサーカー

復讐に取り憑かれた男たち。
失われたはずの、全ての始まりである我が家で記憶を取り戻したヴェイガン殲滅爺こと老フリットのサーヴァントは、同じくボガール絶対殺すマンと化したハンターナイト・ツルギ!
愛した平和を、遠い星から来た敵に奪われ何もできなかった悲しみが彼らを変えた。元々の優しい姿を知っているだけにこちらも哀しくなってしまいそうですね。
「悲しみなんかない世界」は、涙の流れない世界ではなく、「どんな涙も必ず渇く」末の「僕らが叶える未来」であるという答えに、彼らはこの街でも至れるのでしょうか。
仇敵やそれに連なる者を排斥するだけの、そのために手段を選ばない虐殺者ではなく、未来にたどり着いた本当の救世主(ヒーロー)に彼らが戻ってくれることを祈るばかりです。
lkOcs49yLc氏、執筆お疲れ様でした。悲しみを乗り越えて欲しいと二人を応援したくなる作品をありがとうございます!



>エンドロールは止まらない:re

なにこれ怖い(素)。
明らかにホラー的異常感で始まる被害者の目線。しかしもっと恐ろしいのは続いて登場する少年の方だった。
ところどころに見える虚無が、傷を負って帰還したサーヴァントへの言葉で一気に黒い穴として広がるような構成が凄いけど怖い。
確かに酷い両親としか言いようがないですが、自分のせいで死んだ人に償うために彼らや、他の参加者を殺すことに一切の躊躇がないところが幼さゆえの狂気とソシオパスぶりが全開で本当に怖い。
それでもところどころに垣間見える、人間らしくありたかった、という願いがラッセルに対して恐怖心以外の感情を呼び覚まさせずにはいられない。
恐怖に限らず、感情というものには鮮度があるのなら、アクセントがそれを呼び覚ます上で大切なのだと再確認できました。流石です。
◆GO82qGZUNE氏、執筆お疲れ様でした。狂気の滲むおどろおどろしくも、何かを訴えかけてくるような作品をありがとうございました!



すいません、感想が滞っておりますが、順番通りということで今回はこちらのお三方に!
大変お待たせしてしまっておりますが、続きはまたの機会までお待ち頂ければと思います。
そんな状況で申し訳ありませんが、自分も一作投下させて頂きます!


522 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:42:33 iTaAhmL.0



 ――それは、唐突な発言だった。

「我が同意なき暴力の行使、その一切を令呪によって禁止する」

 再現された箱庭、偽りのスノーフィールド。
 そこに招かれたマスターと、記憶を取り戻した彼に月が宛がう形で召喚されたサーヴァント・アサシン。
 状況確認程度の、そう長くはない会話を交わした直後のマスターの行為に、アサシンも困惑するより他になかった。

「……何を考えている?」

 令呪によるサーヴァントへの禁則事項の押し付け。一個の意志を持つ英霊に対するそれは、基本的に関係性の破綻を招く悪手だ。
 しかし、ただマスターを対象にすることを禁ずるのではなく、一切の暴力――すなわち戦闘力の行使を禁止する、とした意図は容易には読み取れない。
 努めて平静に真意を問うアサシンに対して、マスターである眉目秀麗な少年は気楽な様子で笑っていた。

「いえ、記憶を取り戻してからずっと考えていたのですが……余にはこの選択肢しかないかなぁ、って」
「……」
「あ、誤解しないで欲しいのですが、余は別に逃げ腰なわけではないですよ?」

 やや険しいにしても、無表情を装っているつもりだったが。それでも軽蔑の色が染み出したのを見咎められたのだろう。
 ……倫理や命惜しさに争いを降りるにしても、およそ最も愚かと言える選択を前にしたのだから、アサシンの心証が冷ややかなものとなるのも当然だ。
 だが、その反応も織り込み済みと言わんばかりの、あまりに軽い、しかし逃げではないというマスターの反応に。アサシンもほんの少しだけ、彼の言葉の続きに興味を惹かれた。

「――僕は聖杯を手にして帰るつもりです。僕の世界の人類存続のために」

 その変化を見透かしたかのように、少年の纏う雰囲気が変わった。
 そして畳み掛けるような宣言と、彼の背負った物の重みを仄めかされたことで、アサシンは彼の話に更なる関心を抱いていた。

「ただし、先程確認したように……やはり僕は、魔力を持ち合わせていません」

 それが令呪使用に踏み切った発端かと、アサシンは静かに得心する。
 確かに、彼が魔力を持たないことを知った瞬間から……召喚された以上は一人の忍として応じる心積もりだったアサシンにも、微かな侮りが心中に生まれていたことは否定できない。
 それが大きくなり、独断専行を招く前に、まず令呪で持って制御する。妨害されぬよう、令呪という文言を最後に回す用心も忘れずに。
 そこに至る論理、及び結論そのものの是非はまだ保留として、即断即決の思考の速さは評価に値するかもしれないと、アサシンは天秤に載せることとした。

「魔術も魔法も使えないし、他の特殊能力も何もない。剣や銃も上手く扱えない。こんなマスターが不慣れな戦いにいきなり臨んで、都合良く勝てると思いますか?」

 なるほど、言われてみればもっともな問題提起だ。
 しかし。

「最初から諦めるよりは、よほど目があると思うがな」

 勝ち目が薄いから降りる、という選択を執ることは、この戦いにおいてはほぼ不可能と言って良い。
 不承知の身としても、一度ムーンセルの招待に応じてしまえば、帰還できるのは最終勝利者となったただ一人――敵前逃亡は許されないのだ。
 どれだけ極小の可能性であろうと、賭けている以上は、挑みすらしない無よりは大きい。

 そんな当然の返答に、しかし聖杯獲得の意欲を見せていた少年は小さな苦笑を漏らしていた。

「諦めてはいませんよ。これでも己の責任は理解しているつもりです。いざとなれば僕個人の感情なんか無視して、他のマスターを皆殺しにする義務があることも。だから暴力(それ)も、完全には放棄していないでしょう?」

 告げる彼の瞳、爛々と輝くそれは、確かに腑抜けの見せる光ではなかった。


523 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:46:33 iTaAhmL.0

「ただ僕は、この戦いを自分の得意分野で――話し合いで勝ち抜く方が目があると、そう判断したに過ぎません」







 ……そんな出会いから、既に半日が経過していた。

 アサシンのマスター――マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルトは、たちまちは、NPCの頃に与えられた役割に順じていた。
 その間にアサシンは、彼の指示通りに他主従の情報収集に当たっていた。

 今も、心からマヒロに従っているわけではない。
 だが少なくとも、令呪の効力が切れるまで――アサシンには現状、他の選択肢がなかった。

 マスターの同意を伴わない暴力の行使、その一切の禁止。
 限定的な条件を付けられた令呪の縛りは、魔力を持たないマヒロの命でも充分な強制力を発揮した。

 ……厳密に言えば、彼は純粋な人間ではないらしく。
 厄介なことに。今こそ一切の魔力を持ち合わせずとも、その身に宿る回路は超一級の代物だった。
 そこに根付いた令呪もまた、魔力を持たないとはいえ超一流のマスターが行使したに等しい効力を発揮しており。曖昧ではない明確な条件を設けられている以上、対魔力を備えないアサシンでは数日で跳ね除けられる拘束ではないという、退っ引きならない理由があった。

 こんな状態でも、他ならぬマヒロを暗殺しようと思えば、アサシンには幾らか手はある。
 だが、その他のマスター、言わんやサーヴァントを屠ることは、少なくとも令呪の効力が働く間は不可能と言っていい状態だ。
 ただでさえ、マスターとサーヴァントが一対一の契約しか結べないこのSE.RA.PHにおいて、野良となったサーヴァントが再契約を結ぶことは困難というのに――マヒロとの契約が解消されたとしても、アサシンに纏わりついた令呪の縛りは残り続ける。
 令呪を最低一画消費しなければ殺傷力を取り戻せない、しかも既に主の寝首を掻いた曰くつきの暗殺者など、誰が今ある契約を捨ててまで召し抱えようとするだろうか?

 せめて戦いが進み、サーヴァントを喪ったマスターを捕捉できるようになるまでは、アサシンはマヒロとの契約を反故にする旨みがない――それ故に今は、確実に益となる諜報活動に従事しているのだ。



 とはいえ、果たして。そもそも自分が、本当にそのような道を進んで選ぶかと問われれば、アサシンも確信は持てていない。

 特別、叶えたい願いがあるわけではない。
 その気になれば黄泉より帰還する術も準備できたが、既に己の為すべきことは全て果たした身の上だ。現世のことは後に続く者達が自由にしてくれればそれで良い。
 また、実力や覚悟のない者に無理強いすることをアサシンは好まない。かつて親世代の強要したそれで、多くの弟たちを喪ったからだ。
 故に、マスターが好戦的であろうと、平和主義者であろうと、アサシンはその意を尊重して闘う意志はあった。

 だが、逆を言えばそんなアサシンでも、無意味に終わることは容認できないということだ。
 そして、マヒロが道連れを請うているのは、普通に考えればそんな結末しかない選択だ。

 だから今も、アサシンとて心からマヒロに従っているわけではない。
 だが、それでも。考慮すべき可能性の一つとしてではなく、彼との契約破棄を主目的には、既にアサシンも置いていなかった。






 ……あの後、アサシンは彼に、言葉だけで全てを解決できるのかと問いかけた。

 否定のつもりで投げかけた言葉に対し。彼はすぐに、暴力だけで全てを解決できるのかと尋ね返してきた。


524 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:48:24 iTaAhmL.0

 曰く、確かに暴力はわかり易い。しかも目に見えて効果的だ。
 だが、それだけにはっきりと優劣が出る。早い話が、その上を行く暴力に出遭えばそれまででしかない。
 そして自分達の持ち得る戦力は、どうしてもその上限が小さな物で終わってしまうのだと。

「僕は今でこそ戦力的な価値は皆無でも、実はヒトではない存在の血を引いています。ムーンセルの目的は人間の魂の観測とのことですが、僕が喚ばれたということは対象を純粋なホモサピエンスに拘るわけでもないのでしょう。
 なら同じように、一先ずは人間に数えられているだけの類の者がマスターとして含まれている可能性は考慮すべきだ。その中に、僕が知るような不死に近い者が存在する可能性も」

 そう述べるマヒロの表情は真剣というよりも、ただ淡々と事実を並べているだけの様子だった。

「確かにあなたはアサシンのクラスで召喚されたサーヴァントだ。仮に戦力が乏しい場合でも、他のサーヴァントとの交戦を極力避けて勝ち進むこともできるかもしれない。たとえ相手が不死身だろうと、マスター相手に遅れを取る心配も不要かもしれない。
 でも暗殺といえど、実力行使が伴う以上はどうしても、僕という無に等しいパワーソースの制約を受けてしまう。そんな状況では相性の悪い敵を仕損じることも出て来て、僕という急所を狙われかねません」

 超常の存在であるサーヴァントは、その力を揮うのみならず、この世に存在することさえもマスターに依存する。
 魔力の供給源としてだけではなく、現世に留まる依代としてマスターを必要とするのは、最高ランクの単独行動スキルを持つアサシンといえど例外ではない。
 そして攻められる側に回った暗殺者ほど脆いものはないこともまた、事実だ。

「とはいえ、僕がこのザマでは頭ではわかっていても焦りが生じるでしょう。本来は敵同士をぶつけ合わせ、消耗させたところを狙うべきなのに、僕の力不足であなたも存在するだけで消耗してしまうんですから。
 そんな状態で置いていてはどうしても思考は短期決戦に偏って、やがては粗が出て、なおさら勝機を失ってしまう」

 そこでアサシンはふと、値踏のために尋ねることとした。
 己が積極的に行いたいわけではないが、検討していて然るべき選択肢を。

「勝ちに貪欲であるつもりなら、魂喰いで魔力を補う手は考えなかったのか?」
「あなたの人格や手腕に関係なく、この舞台でその選択はありえません。確実に足がつきますから」

 返事は即答だった。

「ムーンセルの再現したこの時代のこの街は、戸籍管理も治安も高水準に発展しています。人が消えれば確実に痕跡が残ってしまう。普段なら深入りされず忘れられる程度の痕跡だとしても、事情を知り、特殊な力を持つ者達が情報収集に必死となっている聖杯戦争の最中に楽観はできません。魔力の確保も満足にできない鴨がいるって、仕留め損ねた相手以外にも喧伝するようなものですよ。極力気づかれないような条件の相手を選別し、少数を対象に敢行するとしても割に合いませんし、同じ手間をかけて網を貼っている敵の動きも予想されます。だったらそのリソースを他に回す方が効果的でしょう」

 補足としてマヒロが述べたのは、一般的な魂喰いのリスクと費用対効果についての問題だった。
 アサシンもその認識には概ね同意するが、ただ一つ、異なっているのは魂喰いの効率についてだった。

 数百人を犠牲にしても、半人前の魔術師の魔力供給に届くかどうか――というのが通常の魂喰いであり、故に大半の魔術師は合理的に放棄する選択肢ではあるが、それは魂喰いの対象が一般人となる聖杯戦争での話。
 超常の徒に抵抗する一切のチカラをなくしながら街を行く人々。その全てが本来マスター適正を持った人物であるこのムーンセルの聖杯戦争では、NPC一人当たりから得られる魔力量も文字通り桁違いなのだ。
 決して、費用対効果が小さいということはない。

 とはいえ、それはサーヴァントの中でも、気配感知スキルを持つアサシンだからこそ早々に看破できたことだ。
 また、従来以上に効率的だからこそ魂喰いへの関心を高める主従が後々増加する危険性も、従来の聖杯戦争以上に考えられる。結果複数の陣営から目を向けられては、魔力の貯蓄ができたとしてもこのクラスでは荷が重い。

 故にこの時点で一般論を説くマヒロを、この一点で以って責める意味はないと考えたアサシンは、この場での反応を後ほど事実を告げる決意に留めた。
 ……アサシンにしても、進んで無関係な民草を犠牲にしたいわけなどないのだから。

「――とまぁこのように、纏めてみても、主に僕のせいで我が陣営は弱小です。正面からはもちろん、暗殺という絡め手でも、実力行使では明白な詰みが数多く存在します」

 アサシンの内面も知らず、そのように告げるマヒロは、どこか嬉々としているようにも見えた。


525 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:49:20 iTaAhmL.0

「そんなわかり易い暴力に対して、話し合いはわかり難い。でも、だからこそ可能性があると僕は思うです」
「可能性か」
「ええ。暴力の根源は何かというと、それを揮う者の意志です。なら、その意志をどうにかすればいい。
 そして、真の意味で心を挫けるのは暴力ではなく、その崩れる人格を構成する言葉、それを認識する理性だけですよ」

 故に戦争は、政治によって左右されるのだと、十代の少年が言ってのけた。
 だから自分は、故郷における戦乱を、言葉だけで防いで来れたのだと。

「ならば何故、儂に令呪を使った? そこまで言葉を信仰するなら、貴様はまず、言葉だけで儂に全てを納得させるべきだったのではないか?」

 そんなアサシンの問いかけに、マヒロは笑って答えてみせた。

「だってあなた、何もなしにこんな話を真面目に聞いてくれましたか?」

 アサシンの経歴を調べ上げた後でなら、マヒロも言葉だけで従えられる可能性はあったと豪語する。
 だが、自身が魔力を持たないマスターであると判明した時点で――事実その傾向があったように、サーヴァントに軽んじられ制御を外れる危険性こそを重視した。
 しかし召喚早々では、時間も手札も不足していた故に。要であると理解している令呪を消費してでも、自分達が話し合うしかない状況を作ることにこそ苦心したのだと。
 サーヴァントの意志に反した令呪の行使、そこから生じる危険性への自衛と、他主従との交渉までの暴走を抑える制御、その両面の保険足り得る条件を速やかに構築しながら。

 話し合いに持ち込むためなら、手段を選ばない――それが自身のやり方であると、端的にマヒロは示したのだ。

「ここまでしなくとも、これまでの僕には交渉の手札があった。ミスマルカの王子、帝国中原領政務官、聖魔杯の管理者……そういった立場や権力、個人的な人脈で、情報を集め場を整えることができた。
 でも今の僕にはそれがない。あなただけだ、アサシン。聖杯戦争においては極論、あなたのマスターという立場しかない。聖杯戦争に関して動かせる駒が、今の僕にはあなたしかいない。
 これからの戦いを勝ち抜く時間を手札を揃えるために、そのどちらもがない状況でも、アサシン。運命共同体となるあなたを迅速に、かつ確実に制御する必要があった。そのためなら手段は選びませんよ」

 アサシンをして、わずかに舌を巻く思いだった。
 マヒロは本気で、言葉だけで勝ち抜いてみせると、その意志が口先だけではないことを示してみせた。そのために必要なものも、今置かれた状況から正しく逆算し揃えていた。
 そして、言葉しかない状況に持ち込むという――真の意味での言葉の使い方も、この少年はよく弁えている。
 奇抜さばかりに目を奪われるところだが、その発言はよくよく考え抜かれている。反論しようにも、誤認の隙すら他で埋められるほど、確かに筋が通っているのだ。

 あくまで今のところ――根本的なことを除いては。

「……だが仮に、そうして話し合いに持ち込んだとしても、だ」

 故に、その根本にアサシンは切り込んだ。

「仮に儂が相手の情報を集め、貴様に提供したとしよう。それだけ有利な条件を整えられたとして……貴様は本当に、全て口先だけで何とかできるつもりなのか?」

 そう。結局のところ、その根拠。

「言葉も暴力も、不確実という点では同じだと貴様は述べた。それでも暴力には明確な勝利の形がある。だが言葉はどうだ?」

 確かに彼は、話し合いに人並み以上の自負があるのだろう。
 しかし得意だからと言って、そもそもそれが勝利に繋がる長所であるという理由。それが示されていなかった。

「何を勝ちの目として、貴様は言葉を選んだ。どんな形で口先だけで全てに勝利するというつもりだ。その根拠を示してみろ」
「……全て、は無理かもしれません。特にサーヴァントは」

 そこでマヒロは初めて言い淀んだ様子を見せたが、それすらも引きであったかのように二の句を継いだ。

「けど、マスターさえ抑えれば、結果的にサーヴァントも御せる。そして彼らの大部分に対しては、共通した勝算があります」


526 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:50:29 iTaAhmL.0

 確信を込めた宣言に、アサシンも幾らか興味を惹かれた。

「それは何だ?」

 ――しかし、それについて具体的な言及がされる前に、邪魔が入った。
 邪魔とは敵襲ではなく、マヒロの家人のロールを与えられたNPCの接近だ。

「マヒロ様っ、出発のお時間でっす! ラヒル様もお待ちされていますよっ」

 鬱陶しいほど賑やかな執事を介した、この偽りのスノーフィールドの市長である、彼の父からの呼び出しだった。
 その来訪を受けたマヒロから、どうせ話せば長くなる、明日また時間を用意するから、今日は一旦待って欲しい……と言われては、正体の秘匿を考えるとアサシンも強く引き止めることはできず。時間潰しにと情報収集の指示を与えられていたのだった。



 ……だが、聖杯戦争のそもそも傾向として、日中は雌伏の期間であるためか。結局アサシンはこの間、これといった釣果を得ることができずにいた。
 夜を迎え、他のサーヴァントが本格的に活動を開始すれば探知も容易くはなるだろう。しかしサーヴァントが出揃ってすらいない現状では、霊脈の流れなどから目ぼしい箇所を当たるほかには、せいぜいが街に流れる噂を拾い歩く程度。
 後に戦いが有利となるよう、仕掛け(マーキング)を施した以外には大した成果は得られていないままだが、待ち合わせの時間が近いことを悟ったアサシンは主の家へと帰投することにした。







「……武装集団に殺害された方々を追悼し、蛮行を糾弾する集会や行進が取り組まれました」

 スノーフィールドにおけるマヒロの自宅、その居間を霊体化したアサシンが通りがかると、テレビニュースでちょうどそのような文言が読み上げられていた。
 海を挟んだ別の地域で問題となっている、武装組織による被害と、それに対し噴出する怒りの声に関する報道だった。
 どうやら、その組織の構成員とは同胞に当たる者達までもが、他民族と一丸になって批難するほどの残虐行為が行われていたらしい。

 この報道も、所詮はムーンセルの用意した偽りに過ぎない。スノーフィールド以外の土地の存在しないこのSE.RA.PHにおいて、新たに死者となった異国の民など実際には一人も存在しないことだろう。
 だが、それでも。その伝達だけでも再現されたこれもまた、いつか、どこかの世界で現実として起きていた出来事に変わりはない。
 最早、生きるためという切実な願いですらなく。正義を謳いながら、たかが信条や肌の色の違いで殺し合う人間の性(サガ)。
 言葉と理性の無力さを示すようなそれを尻目に、アサシンは約束の場所へと足を運んだ。

「お待ちしていました、アサシン――いえ、木ノ葉隠れの二代目火影、千手扉間様」

 そして至った彼の部屋にて。肩書までは伝えていなかった己の真名を口にするマヒロに、実体化したアサシンは予想が的中したのかと確認を投げる。

「……儂の情報は、ネットとやらで検索できたのか」
「はい。どうやら異世界の英雄譚の一部は、諸外国の創作物という形で把握できるようになっているみたいですね。流石に聖杯戦争そのものは引っかかりませんでしたけど」

 マヒロの補足に、なるほど己の情報のみならず、この偽りのスノーフィールドという戦場に与えられた舞台設定を探っていたのかとアサシンは得心する。
 何しろ神秘の秘匿という一点が、監督役よりペナルティを課されるか否かの最大の焦点となる。サーヴァント同様、異なる時代、異なる世界から招かれたマスターであっても、この二十一世紀前半のスノーフィールド市民としての知識を、聖杯戦争の知識と合わせて知り得た状態で召喚されるというが……所詮はどちらも、経験のないままに植え付けられたもの。果たして聖杯戦争の知識のどこまでが、世俗の認識に内包されているのかは曖昧だろう。
 どこからが神秘の秘匿を脅かすのか――即ち、どこまでなら一般人でも知り得るのか。
 その境界を正しく認識しておいて損はない、というのが二人の共通見解であった。

「そうか。だが今の儂はアサシンのクラスだ。穢土転生に期待しているのならアテが外れているぞ」
「いえ、それは別に要りませんので……」

 態度を改めてきた様子から、何かしらを期待しているのだろう――そう推測し、最も知名度が高い自身の禁術について言及したところ、マヒロは些か、普通に引いたように目を瞬かせた。
 が、それも数瞬。マヒロはすぐに表情を引き締め直した。


527 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:51:57 iTaAhmL.0

「……昨日言ったとおりですよ。僕は伝説の大魔術やら神剣などより、まず、情報が欲しい。それを集められる能力を持ったサーヴァントが必要でした。その点でアサシン以上の適材は居ないでしょう」

 戦における情報の重要性は、敢えて語るまでもない。時にはそれだけで決着することもあるのだから。

「ましてやあなたです、二代目火影様。単なる英雄や将とは違う。諜報を得意とする忍者であり、隠れ里の長として乱世の政治にも携わった傑物です」

 これ以上の逸材はない、とばかりにマヒロはアサシンを絶賛してきた。どこまで本心かはわかったものではないが。

「何より遂に、黙して忍んでいる本物の忍者が余の配下に付きました……どんなにこの日を夢見てきたか!」

 ……案外、全部本心かもしれない。
 そういえば召喚直後もこんな反応だったな、などと間の抜けた様を思い返しながら、アサシンは嘆息と共に先を促した。

「……それで。昨日の続きを聞かせて貰えるか」

 吐き終えた頃には、既に感情はその時点の物を再現し終えていた。

「貴様の見出した、話し合いにおける勝算とやらを」

 できるはずがない、という当然の疑問。それを踏まえた彼の自信に対する興味。
 マヒロの思惑を知り、此度の戦の身の振りを決める分水嶺に臨む心境を。

「得意分野だと言ったが、それだけで勝てるとは思っていまい。その程度の楽観主義で勝てるほど、政治という戦場も甘くはない。本当に勝てると思っているのなら、その根拠を見せてみろ」
「勝算は……」

 問われたマヒロは、一度目を伏せ、勿体振ったその後。悠然と、両手を広げてみせた。

「この、再現された聖杯戦争という状況そのものです」
「……何?」

 その返答は予想外だった。
 閉鎖空間において最後の一組まで殺し合い、優勝者のみが願望成就と生還の権利を獲得する。
 現実の戦争以上に、話し合いや、政治的駆け引きが無意味となる諸要素を与えた聖杯戦争の状況が、話し合いにおける勝ちの目になるのだと?

「貴様のロールは市長の息子だったな。ただでさえ偽りの、しかもその程度の肩書が何か役に立つというのか?」
「いやいやまさか」

 マヒロもとんでもないとばかりに手を振り否定するが、アサシンにも容易には内容を伺えない発言だった。
 ……いや待て。マヒロとアサシンで、明確に違う視点が得られるとすれば、それは。

「僕や他のマスター達は、マスター権を獲得するまではスノーフィールドの一般市民として行動するNPCと化していました」

 アサシンの思考が及んだのを見計らったかのようなタイミングで、マヒロは口を開いた。

「その間に与えられた偽りの記憶や役割――二十一世紀のスノーフィールド市民としての常識、文化的背景、倫理観は、引き続き記憶として残っています」

 そう――マヒロ達にあって、アサシンにないもの。それは市民でもあるマスターとして与えられた、知識の差だ。

「つまりマスターとして活動する全員に、相互理解のための共通基盤が与えられている。過去に本で読んだ知識程度の認識だとしても、確かに戦争の世紀と呼ばれた二十世紀を経た教訓を共有しているのです」


528 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:53:00 iTaAhmL.0

 そうして続けたマヒロの物言いに、アサシンは眉を顰めた。

「まさか、道徳心があるから勝てるというのか?」
「はい」

 マヒロの真顔を認めたアサシンは、思わず目を伏せ、首を振った。

「……馬鹿馬鹿しい」
「そうでしょうか? それはあなたがまだ、自らの時代、その思考形式に囚われているからではありませんか?」

 アサシンは苦味を増した嘆息とともに、つい先刻見聞した事実を以って指摘した。

「先程、居間でニュースを見たぞ。ムーンセルの再現したこの時代でも、変わらず人間は傷つけ合っている……愚かなことだが、それが現に世界で起こっていることだ」
「その点は僕も心から同意します。でも、その報道で伝えられていたことは、それだけではなかったでしょう?」

 切って捨てようとするアサシンに対し、マヒロは焦りもせずに言葉を繋げて来る。

「昨日あんな別れ方をした後ならなおさら、バイアスが掛かるのはわかりますよ。でも一つのことだけを見て早計し、他を見ないのではただの誤認です。他の事柄もきちんと、現実に起きていることとして目を背けず向き合わないと」
「……何が言いたい?」

 アサシンの問いかけに、マヒロはさらに自論を展開する。

「争いは敵となる者が居るから発生する。平和を掴み取るためには敵の全てを亡き者とするしかない。そのためならば幼子にも武器を持たせ、戦場で死なせる……あなた達の変えようとした、あなたの父君のような行いをする者は確かに、この時代にも存在します。しかしそのような者達は、この時代では世界中から非人道的であると痛烈に批判されています。世界中からです」

 ……言われてみれば、確かに。件の報道も、ただ武装組織の脅威を伝えるだけではなく、それを許さぬとする、国境や人種、宗教を越えた人々の団結についても述べていた。
 それが完全な一枚岩と思えるほどに夢見がちではなかったが、確かに、およそ直接の被害と無縁の者達までもが、揃って声を上げていたことにもまた、思考が及ぶ。

「それは、多少の揺り戻しはあるとしても……利己的で理不尽な暴力はただ嫌な、自分達が関わりたくないことで終わるのではなく、許されないことなのだと。徹底的な倫理が既に、総体として育っているからです」

 滔々と語る彼の表情は、単に見通しの甘い楽天家の顔ではなかった。
 むしろ齢不相応の、ある種の威厳すら覗かせて、少年は真摯に訴え続けた。

「ムーンセルがモデルとしたこの街は、あなたの時代から地続きの世界にあったものではありません。ですが、その社会を営むのが同じ人間である以上、文明の度合いに応じた基本法則にも差はないはずです。
 だから、若者たちを守ろうとしたあなたと同じように。より多くの未来のためにと命を燃やした人物がかつて、この世界にも現れた。そして次代にバトンを渡し続けた」

 マヒロの言葉により、アサシンの記憶にも蘇る。
 己にとっては所詮、ムーンセルにより与えられた仮初の知識、遠い異世界の出来事に過ぎないとしても。
 事実としてそれぞれの人類史に燦然と輝いてみせる、数多の英雄偉人の、そして名もなき人々の奮闘の記録が。

「あなたたちは諦めなかった。そんなあなたたちのおかげで積み重ねられた祈りの末に、別々の土地で産まれ、異なる世界観で生きたはずの人々の心は、同じ方向に収斂した。
 それこそが憎しみを抑え、耐え忍び、そして次代の者により良い世界を繋ぐためにこそ生きる意志……あなたがたの言う“火の意志”が普及した時代こそが、ムーンセルの再現した今この時なのです」

 仮令、未だ人類は不完全で野蛮な愚か者だとしても。
 変えたいと願ったあの日、あの時からは、少しだけ。あの頃子供だった者達が望んだ通りの方向に、進むことができている。
 ……そしてそれを願ったのは、決して独りではなかったのだと。


529 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:53:54 iTaAhmL.0

「この街は結局、参加者にとっては何の因縁もない偽りの箱庭です。でも、だからこそ余計な過去に囚われる必要もなく。あなたがた先人の用意してくれた、人間同士で話し合う余地がまだ、この聖杯戦争にはあるのだと――僕はそう思うのです」

 はるか未来から招かれた少年が、戦乱の時代を生きた英霊に向けて、そんな事実を誇らしげに説いていた。
 その眺めに。戦乱を見て荒み、忍として凍てつかせた胸の奥が微かに震えるのを、アサシンは確かに自覚する。

「……だが、それでもだ」

 しかし。アサシンは彼のサーヴァントであるが故に、言って聞かせなければならなかった。

「仮に、誰もがいつか辿り着く可能性があるとしても。結局はこの時代の人間性など、貴様にとってさえ別世界の価値観、偽りの倫理に過ぎないはずだ」

 なのに、誰もがそれを第一に掲げるなど、あり得ない。
 諫言するアサシンに対し、マヒロはこれまで見せた中で最も年頃に見合った――素直な微笑を浮かべていた。

「それでも、魅力的ではないでしょうか」
「……魅力的、だと?」
「はい。そんな世界が実在し得る。その可能性が頭の片隅にある、今はたったそれだけで良い」

 尋ね返したアサシンに、マヒロは我が意を得たりとほくそ笑んだ。

「聖杯戦争に臨む者の最終目的は、聖杯の獲得です。より正確に言えば敵を殺し尽くすことではなく、その結果得られる願望成就の権利でしかない」

 さらりと、ムーンセルの課した聖杯戦争のテーマを否定するようなことをマヒロが口にしたが、それ自体には特に驚きはなかった。
 いざという時、という発言も含め。ここまでの彼の態度を見ていれば、その方が自然だろうとアサシンにも予想できていたからだ。

「なら、僕らが共有する倫理は、その事実を突く穴になる。敵を殺し尽くさずとも、願いを叶える道があるなら、と……そんな考えに至るための足がかりとなる認識を、全てのマスターが有している」

 確かに、マヒロの語る世界に魅力を感じるかどうかと問われれば、アサシンにはこの滾りを否定する術がない。
 きっとそれは、あの狂気の男さえ含んだ――ヒトという種族が共通して夢見た、理想郷たる未来に繋がる眺めなのだから。

「そんな、等しく平和を尊ぶ同胞たちを、これ以上すれ違いの悲劇には導かない。彼らの願いに折り合いをつけ、共存させ、最大多数が幸福となる結末を掴み取る――それが僕の、王族の戦いです」

 そして、そんな未来を導くのは、確かにそう――王や長、様々な呼称で示される、人々の指導者たる者の役割だ。
 己の責任を踏まえたかのように、マヒロは高々と宣言していた。

「もちろん、倫理だ道徳だと唱えるだけではほとんど解決はしないでしょう。ですが、なまじ客観的な知識として与えられた人間性を拒否する強い動機があるのなら、それこそがその人物の根幹です。
 崩すべき要を曝け出させた後は、その根幹と道徳心の対立を解消してやれば良い。それで少なくとも、一時休戦には持ち込める。それを重ねることで状況を整えられる。
 最後の一組しか生還できないルールを変える手段の追究にも、並行して協力者を募り易くなる」
「……だからといって、全てを説得できるとはおまえも思ってはいないだろう。中には闘争そのものを願う者とているはずだ」
「殺人中毒の変態まで行けば知りませんが……戦いたいだけなら、好きにさせれば良い。最終的に足並みを揃えさせるだけなら、殺しさえさせなければ、後でいくらでも言い包められます」

 なおも問いかけるアサシンに、マヒロは苦笑を挟みながらも回答する。

「そもそも別に。誰も彼もに、ありのままの僕の主張を認めて貰う必要はありません。協調して貰えない時は騙せばいい」

 そしてあっさりと。理想を説いた少年は、同じ口で詐術を弄すると告白した。
 潔癖なだけではないらしい、アサシンの好むようなその手法を。


530 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:54:42 iTaAhmL.0

「僕とは異なる暴力主義者だとしても、彼らなりの利益を追い求めているのなら、まやかしでもそれを提示すれば交渉は可能です。
 そして最初は嘘でも、最終的に願いを叶えてやれば文句は出ない――例え相手が、全人類でも」

 ――おそらく、だが。最後の例えは、単なるハッタリではないのだろうとアサシンは直観した。
 昨日の発言からの連想と、確信させるだけの何かを、彼が隠そうとしていなかったから。

 故に、その迫力に釣られるようにして、アサシンは思わず問いかけていた。

「……本当にできるのか? 願いに思考まで染められた者達の抱いた闘志を、言葉だけで曲げることが。おまえは」
「それは個々の相手がわかってから考えるしかないことです。どこまでが味方にできて、どこまでが騙すしかない相手なのか。その比率次第では詰みもするでしょう。
 でも、出たとこ勝負になるのは暴力に頼ったところで同じですし――否定的だったあなたの考えを、可否を問う形に変えた程度になら多分、他のマスターにも働きかけることはできるはずです」

 マヒロが述べていたのは単なる全体論、包括的な方針で終わるものではなく、何より己に向けた説得として調整されたものであることは、アサシンもとうに理解していた。
 幼き日の千手兄弟が夢見た忍の隠れ里を、アカデミーを、同盟という名の平和条約を、やがて長として形作って行ったことと、重ねて見るように促しているのだろうと。
 ……火の意志や父である仏間に直接言及されれば、勘づくのも当然の話だが。

 人の可能性、未来を信じるという、理想論。
 そしてそのためには、手段を選ばないというリアリズム。
 それは確かにアサシンの、千手扉間の好むところのビジョンだ。

(確かに、兄者とマダラのできなかったことを……あの若者達(ナルトとサスケ)は、成し遂げたのだったな)

 マヒロの言葉から連想するように、アサシンは座から授けられた知識を紐解く。

 それは子孫である二人の英雄が、初代火影とうちは一族最強の男の因習を越えたという意味であり。
 彼らを育てた、かつてアサシン達が心血を注いで築いた里が、世界が、それだけの進歩を遂げられたことの証左であった。

 ならばマヒロの言うように。未来に生きる彼が唱える、耐え忍ぶ人間の進歩。その断片だけでも全てのマスターに分け与えられているのなら、それに賭けてみても可能性があるのではないか――

 そんな考えが、アサシンの中にも確かに、芽生えようとしていた。

「でも、それを現実にするのは僕一人では無理だ。個々の相手に合わせようにも、その情報を集める手足が足りない。マンパワーを埋められる技術もない。それを覆せるのはあなただけだ、アサシン」

 そこを衝いたようなタイミングで、さらにマヒロは畳み掛ける。

「仮に、どうしようもない危険人物が存在して、その者が勝ち残った結果、あなたの里に危険が及ぶと判断された時には。その頃には令呪の縛りも解けているでしょうし、僕に義理立てする必要はありません。僕は、うちはマダラと大筒木カグヤを倒した後、後進に任せ潔く昇天されたあなたに、今更現世への未練もないものと勝手に思って話を進めていますから。その前提が崩れるような時には、僕も受け入れます」

 こちらの問うたその手口の詳細を、アサシン好みに仕立て述べていたマヒロは、その上で取引を持ちかけて来た。

「そして、もしも僕の思惑通り事が進んでも、最後にムーンセルの課したルールを撤回できなかった時には……油断しきっている他の主従をどうするのかも、あなたにお任せします」

 どの道僕にはどうにもできませんから、と述べるマヒロにはしかし、自嘲の色は存在していなかった。まるで確信しているかのように。

「ただ、他に何も不都合がないのであれば。あなたの見た夢の続きを、僕に賭けて貰えませんか?」
「……良いだろう」

 そこまで見透かされていては、強く反対する理由もない。
 何より、個々の相手に合わせた説得の実例というものを、こうして示されてしまったなら。

「既に令呪も切られた後だ。ここから武に訴えるより、貴様の口先に賭けた方が、この戦争を勝ち残る上では分があると――認めてやろう。
 そして勝つために、このアサシン――千手扉間は、今は貴様を主君と仰ぎ、仕えてやる」
「光栄です。伝説の忍、二代目火影様」


531 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:55:25 iTaAhmL.0

 ここで真に、契約は交わされた。
 これより先の未来を担う、異邦の若き火の意志と。彼という若葉を守る影の、共闘の誓いが。







「――しかし解せぬな、マヒロよ」

 そうして、一つの駆け引きが終わった後。
 立場を変え、視点を変えたことで、話しておきたいことをアサシンは見つけていた。

「最初の令呪、役割(ロール)の関係で一度会話が中断となり、儂のことを調べてから改めて席を設けることも考慮していたのだろうが……それでも、悪手に近い」

 あの時点では、マヒロの考えをまるで読み取れていなかったが故に、アサシンとしても判断に苦慮していたことだったが……一から十まで説明された今でも、否、今だからこそ、思う。

「無論、意味はある。今のように、儂の協力を取り付ける道筋は事実としてあったわけだからな。だが、貴様ならばもっと上手くやれただろう」

 相手の性質もわからぬ間の令呪の行使は、結局は反発を招き、説得を危うくさせる恐れがあったことに変わりない。

 確かにそれで、マヒロにとっての勝ち筋を自ら潰す愚はほぼ完全に絶つことができた。だがこれだけ弁が立つのなら、令呪を用いずとも、そのリスクは近似値にまで落とし込めたはずだ。
 対して仮に武力行使を縛ったところで、本気で抵抗されれば。あるいは敵を呼び込まれれば、それでマヒロは詰んでしまっていた。
 勝ちを追求する姿勢は良い。だが他に穴がない分リスクの管理、その優先順位の設定にどうも疑問が残るのだ。

 そんなアサシンの問いかけに、マヒロは薄く微笑んだ。

「買ってくれますね」
「そうでもなければ、付き合う気など起きはしない」

 からかうような物言いに嘆息を返した後、一転、やや深く息を吸い。アサシンは、微かに眉を寄せた。

「何故不要に命を賭けるような真似をした?」
「不要、というほどではありませんよ」

 問いかけに対し、マヒロは相変わらず淡く微笑んだまま、改めてアサシンに向き直った。

「ムーンセルは人間の観察を目的としている。だからマスターが造反されて即終了、などとならないよう、ある程度人格的に相性の良いサーヴァントが宛てがわれると考えました。なら僕が余ではなく、僕らしく振る舞って即座に詰むようなサーヴァントが召喚される可能性はさほど高くない、とも」

 それらしい根拠を並べながらも、マヒロはそこで言葉を区切る。

「仮にダメなら、どうせそこまででしたよ」
「それを言っているのだ」

 指摘の後、アサシンは肩を落とした。

「……貴様のそれは、聖杯戦争に勝つためではないだろう」

 そうして、核心に踏み込むこととした。

「先程の貴様の考えが勝ちを放棄したものではなく、むしろ分があるものだということは認めてやる。
 だが貴様自身は、ただ重度に暴力を嫌悪しているだけだ。違うか?」

 そこを見誤れば、いずれ致命的になり兼ねない彼の根幹に。


532 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:56:33 iTaAhmL.0

「――お見事。正解ですよ、アサシン」

 問い詰めるアサシンに対して、マヒロは悪びれる様子もなく答えた。
 ただ、その雰囲気が切り替わったのを、アサシンも既に感じ取れるようになっていた。

「白状すると、僕はそれはもう暴力が嫌いです。傷つけ合うだけなら犬猫にもできる。なのにそれを喜々として誇るような人未満の馬鹿にも、そんな奴らにケダモノの真似事をさせられるだけの空っぽな人形にも、僕はなりたくない。いっそ、死んだほうがマシなぐらいに」

 彼は笑った。
 まるで、同意を求めるかのような気軽さで。

「だってそうでしょう? 明らかに自分より劣るような馬鹿に、意思決定も、生殺与奪も握られて、餌を奪い合うが如きケダモノの真似事をさせられる……それは理性ある者にとって、この上なく屈辱的で、侮辱的で、想像するだけで耐え難いことだ――あなたにも、ご経験があるのでは?」
「……だが、ただ不平不満を漏らすだけではその獣や人形にも劣るぞ」

 幼き日に、そして成人してからも遭遇した理不尽を思い返し、一瞬だけ押し黙ったアサシンだったが、それでも返答は口を出ていた。

「現状が間違っていると理解していても、そこで諦めては何も変わらない。強制された理不尽だろうと、その中で選択し最善を尽くすことも、貴様の言う理性ある者だけができることではないのか」
「ええ、そうです。だから命を懸けるんです。死んだほうがマシなことになるぐらいなら、死の瞬間まで、生きている自分の意志で抗うと決めた。運命などというものに迎合し流される空っぽの人形ではなく、理性を持った人間として生きるのだと。
 暴力に頼るのがどんなにわかり易く確実で、甘美なのだとしても。ムーンセルが人間を観測するというのなら、僕は理性ある者として、自身と人間をそんなケダモノの一種に貶めたくないのです」

 先程の説得に比べれば、物静かなはずのマヒロの声には、しかし。その裏に潜む、痛々しい叫びすら覗いているように見えた。
 彼にそうさせたもの。あるいはそれは、ケダモノと蔑まれ、忌避され、迫害されながらも英雄となるまで戦い抜いた、人柱力の少年の中にも――

「だから暴力に頼るなら。暴力に負けるというのなら、その時点で死んだも同じだとおまえは言いたいのか?」
「はい」

 マダラを追い詰めたあの時、友でも弟でもなく、己の腹を切ろうとした兄、柱間のように。
 マヒロもまた、運に命を賭けるのではなく、信じるものに命を懸けている――

「理性だけが、僕が家族から貰った人間であることの全てです。だったら、それを放棄することは僕の生きてきた全てを否定することになる」

 なるほどと、アサシンはそこで得心した。
 
「だから貴様が勝手に死なないよう、そんな事態に陥る道こそを潰すよう注意しておけと儂に言いたいわけか……ならばいい」

 落ち着いたアサシンの反応に、マヒロは目をぱちくりと瞬かせた。
 それから初めて、居心地が悪そうな様子でこちらの顔色を窺って来た。

「……いいんですか?」
「ああ。貴様はある意味儂が知る中で一番の馬鹿だが、真っ当な意味では兄者たちほど馬鹿ではないからな」

 ならばそのお喋りにも意味はある。
 先刻以上に鬼気迫った語り口は、出任せではないだろう。仮に駄目なら、というのも本心だったと見てまず間違いない。
 だが、はぐらかすことなくその優先順位を前面に押し出してきたのは、アサシンが彼に従うこと、つまりは共闘を認めた後からだ。
 その時点で既にマヒロは、アサシンにとっても死ねば面倒ではなく、基本的に死なれてはならない相手となっている――彼の命自体に、アサシンにとっての価値が生まれているのだ。

 つまりその喪失の危機を秤に載せることで、こちらを思惑通りに誘導できるカードになっており、マヒロはそれをちらつかせるために自分語りなどしていたということだ。


533 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:57:54 iTaAhmL.0

「貴様と儂では立場が違う。求める利益、そのための優先順位が異なるのは道理だ。命より優先したいものがあり、命を惜しまない素振りが本心だとしても、それさえ交渉のカードとして勘定できているのなら問題はない」

 いくら勝ちを求めていても、玉砕覚悟の死にたがりでは先はない。それでは託す意味がない。
 だが己の命をも駒として捉え使い所を惜しまない思考は、一人の忍であるアサシンからすれば至極馴染み深い心構えであった。
 同時に為政者でもあった立場からすれば、実際には与えることなく得るだけのためにカードを見せる、そのために演技をするという彼の振る舞いも理解できる。

「価値がわかっているのなら、おまえはこの先無駄に取られるような真似はしないだろう。本当に賭けざるを得ない時が来たとしても、その死線を越える意志が確かにあるのなら、これからは儂が助ければよいのだからな」
「……まぁ、そのとおりですけど……いや助かりますけど、なんだか味方にいると面白みのなさそうな方ですね、あなた」

 愚痴のような物を漏らすマヒロの様子から、そも理解が及ぶかどうかを試されていたのだろう、ということも透けて見えた。
 この先も、一目では無鉄砲にしか見えない真似を繰り返す。しかしそれは彼の確たる思考の末なのだと察し、合わせた行動が取れるのか。そしてさらに死線に踏み込んだ時、見誤らずに曲げられるのか、伝承ではなく直に確認したかったのだろう。
 言うなればこちらの利用価値を無遠慮に値踏みされたわけだが、アサシンとしてもその程度は頭を働かせて貰っていた方が安心できるために、腹を立てるようなこともなかった。

「乗り気でなかった儂を引き込んだのは貴様だぞ」
「ええはい、まぁそうなんですけども」
「……しかし、だ。儂が貴様に分があると見たのは、あくまでも他のマスターとのやり合いに過ぎないことは、肝に銘じておけ」

 そうして安心した上で、アサシンは更に先を見据えた言葉を口にした。
 いずれ訪れる死線を、今から曲げておくために。

「王族、人類の代表だという貴様にはその責任のために、個人であることを捨ててでも、決断しなければならない時が来るかもしれぬとな」

 そこでマヒロは少しだけ、寂しげに表情を変えた。

「……あなたの兄上のように?」
「そうだ」

 よく調べてある。確実にアサシンを説き伏せるために、彼も全力を尽くしたのだろうと理解できる。
 故に、その努力が報われぬ痛みを思いながらも、アサシンは今から最後の盤面と向き合っておくことを促した。

「聖杯が望んでいるのは、あくまで貴様の嫌う戦争なのだからな」
「違いますね。観測機の至上命題は人間の魂を解析することだ。聖杯戦争などはそのための手段、舞台装置でしかない」

 そこに勝算はない――暗に告げるアサシンに、なおもマヒロは言い返して来る。

「単なる殺し合いが見たいだけなら、こんなところに僕らを招くまでもない。あらゆる生物の中で人間だけを特別視する必要がない。
 小聖杯の収集、などという殺傷力を競う以外の要素がわざわざ用意されているのなら、ムーンセルも単なる暴力にとどまらないナニカを期待しているはずです」

 ただの根性論ではない返答は、むしろ現状を誰より直視しているからこそ諦めず、様々な方面から自身の勝ち筋を見つけようとしている証なのだろう。
 だが、それではまだ、今の状況を否定するには足りない希望的観測に過ぎない。


534 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 00:58:40 iTaAhmL.0

 厳しく見守るアサシンの前で、果たしてマヒロは言葉を続けた。

「……仮に小聖杯の正体が、僕の考える最悪に当てはまるとしても。そのものではなくとも、要求される数を揃えることならできる。
 その後はただ暴力的な行為だけに結果が収束するような、実験形態の不備を訴えれば良い」
「おまえの考える最悪に当てはまり、その不備が恣意的なものである場合はどうする?」

 それが何なのか、この場では敢えては聞かなかった。
 少なくともマヒロの厭うものであること、それさえ分かれば大凡の目星が着いたからだ。

「そんなことがあれば……それを導いた意志こそが」

 そこで彼は、また笑った。
 愛想笑いでも、壊れたようなそれでもなく――挑戦的な喜悦の滲んだ、蛇の笑顔で。

「――僕の、“敵”です」

 告げるこの少年の在り様は、アサシン――千手扉間の目から見ても、酷く矛盾して見えた。

 ……よく笑う少年であったが、違ったのだ。最後に見せたその笑顔だけは。
 
 兄や七代目のような、真っ直ぐに理想を語る破顔ではない。己のような、勝機を前にして浮かべる笑みでもない。あるいは死に場所を見つけた老兵の顔ですら。
 彼の目から覗いた爛々とした覇気は、ただ清純な理想に燃えているだけではあり得ない。
 それは未来の希望を写しているのではなく、今この瞬間にこそ充足している狂気に他ならないからだ。

 これは、その言葉どおりに――ただ純粋に、“敵”が存在することを喜ぶ獣の目。
 そんな目をした男をかつて見たことがある故に、扉間はそれを理解できていた。

 平和を望みながら、一方で闘争がなければ充足できない人格破綻者。
 親しき者への情を持ち、心の底から人々を救いたいと願いながら、あるいは人類の理性を信じながら、その実、他者の心というものにまるで関心がない。

 ――味方ではつまらない、などというマヒロのそれと記憶から手繰ると同時。平和を望んだアサシンの兄を友と呼びながら、その初代火影との闘争こそを至上の悦楽としていた男を思い出す。

 マヒロの抱える矛盾はまるで、そう――かつて世界を滅亡寸前にまで追い込んだ、うちはマダラのそれなのだ。

(――だが、それでもだ)

 マヒロと、マダラと。彼らを分かつものがあるとすれば、それは。
 そんな己の本性に絶望し、ヒトそのものを見限ってしまったのがマダラならば――マヒロは己の歪みを認識した上で歯牙にもかけず、歴史の積み重ねによる倫理の発達という人間の理性を信じている、という一点だろう。
 だが彼が歪みに翻弄されていないという状況が、この先も保証されるとは限らない。
 この少年が火の意志の後継者ではなく、新たなマダラに転ぶようなことがあれば――縁もゆかりもない、既に現世より退場した亡霊であろうとも、大事となる前にその命を断つ役目を担う責任はあるだろう。

 彼を導くにしても、手折るにしても。その実行にも、その見極めにも、おそらく己ほどの適任者はそうは居るまい。だから願いもないはずのこの身が、そんな相性だけを縁に召喚されたのだろうと、扉間は静かに得心しながらも。
 気負うわけではなく、自然とそんな思考を導きながらも。

(……あの時兄者は、こんな心境であったのか――?)

 できることなら前者であって欲しいと、アサシンは願わずにはいられなかった。


535 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 01:00:12 iTaAhmL.0

【出展】NARUTO
【CLASS】アサシン
【真名】千手扉間
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具-
【クラススキル】
気配遮断:A+
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく低下する。

【保有スキル】
忍術(忍宗):A+
 宝具の域にまでは昇華され得なかったが、歴史に名を刻んだ偉大な忍として研鑽し続けてきた類希なる武芸。六道仙人を祖とする術の習熟度。
 水遁に代表される東洋魔術的な狭義の忍術発動には、詠唱ではなく一定の印を結ぶ必要がある。但しアサシンは印等の前準備を不要とする忍術も開発・習得している。

単独行動:A+
 忍としての基礎能力の一つ。マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスター不在でも行動できるようになるが、多大な魔力を必要とする行為にはマスターの存在が必要不可欠となる。
 マスターがサーヴァントに満足な魔力供給が行えなくなった場合などに重宝するスキル。
 また、霊核に致命的な損傷を受けても短期間ならば生存できる。

気配感知:B-
 気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
 見知った相手ならば細胞レベルでの感知・識別が可能となるが、精度を上げるほど他者からも察知され易くなる。

道具作成:C+
 忍具の作成が可能。
 クナイや手裏剣と言った一般的な代物のみならず、互乗起爆札、飛雷神の術のマーキング等の高等忍術のための忍具も容易に量産可能。


【宝具】
 なし。これは彼が出生に由来する特別な才を持たず、伝説に謳われる武器も持たず、忍であれば鍛錬次第で誰でも習得できる類の忍術を徹底的に研鑽することで歴史に名を残した忍であり、宝具足り得る象徴となるような独自の伝説を持ち合わせていないためである。
 唯一、彼が開発した後に他の使用者が存在する術の中でも『口寄せ・穢土転生』 のみ、開発者として名が知られ宝具たり得たが、キャスターではなくアサシンとしての召喚であるため他の禁術の大半諸共現在は使用できない。


【Weapon】
 忍具一式


【人物背景】

 木ノ葉隠れの里の二代目火影であり、初代火影千手柱間の弟である伝説の忍。

 世に忍の隠れ里などなく、忍が一族同士で殺し合っていた戦国時代に生を受け、泥沼の消耗戦で兄弟のほとんどを喪う。
 強硬な父の姿勢を非合理的であるとし、これ以上の犠牲を疎んでいたが非現実的な強弁もせず、世を変えられる時を淡々と待ちながら戦っていた。

 やがて父や弟の全員が戦死したうちは一族との戦も、成人した兄柱間の活躍により同盟の成立を果たし、史上初の忍の隠れ里である木ノ葉の里誕生に立ち会う。
 戦乱期に続いて兄の補佐役を務め、後に勃発した第一次忍界大戦では「口寄せ・穢土転生の術」「多重影分身の術」など後に自ら禁術とした数々の術を開発して運用、他国にその名を恐怖と共に知らしめた。
 特に穢土転生は生きた人間を生贄にするという非人道的な発動条件、術そのものの凶悪さにより後世においても悪用されたことなどから、直々に禁術指定を行っていながらなおも非難されることが多い。

 兄のライバルであったうちはマダラが里を抜け、あまつさえ襲撃したこともあってか、柱間の死後には二代目火影に就任。兄の意思を受け継ぎ忍者学校(アカデミー)の設立や木ノ葉警務部隊の設立など里の基盤を作り上げた。
 しかし第二次忍界大戦での雲隠れの里との和平の際に雲隠れの金角銀角兄弟のクーデターを受け、若い部下達を逃がすために自らが囮となり死亡した。


536 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 01:01:53 iTaAhmL.0

 後世、木ノ葉崩しの際に大蛇丸の穢土転生によって復活するが、弟子である三代目の屍鬼封尽によって封印された。その後第四次忍界大戦の際に大蛇丸によって再度復活させられ、他の火影と共にうちはマダラとの決戦に挑む。

 兄である柱間と同じく世界の平和と安定を求めて行動していた人間だが、理想主義者の柱間とは違ってリアリストであり、里の脅威になりかねないうちは一族を隔離するなど卑劣な非情な行動も多々見られる。
 ただし、これは警察組織の独占という優遇措置を与えた上でのことであり、うちはは政治の中枢から遠ざけられながらもエリート一族として里の羨望を集めていた。うちは一族の行いを考えれば彼らに厳しい目を向けるのは当然であり、その上でなお扉間は彼らを里の中で活かす道を模索し、一定の成果を上げたといえる。また、うちはカガミのように一族であっても信頼し重用していた者はおり、彼らを警戒しながらも一律に差別的な扱いはしていない。

 肉親を喪っても感情に囚われない極めて合理的かつ冷徹な考えの持ち主であり、一方で柱間の理想に理解を示すだけの情もあり、単に冷酷なだけではなく多くのために最善を考えて判断を下せる人物であったと言えるだろう。
 敵から見れば卑劣なほどに容赦ない一方、味方としてはこの上ないほど頼れる人物として、里の内外では評価が大きく異なっていたとされている。



【サーヴァントとしての願い】

 既に己を過去の人物であると弁えているため、英霊千手扉間としては特に無し。
 サーヴァント・アサシンとしては、今後の世界のためにマスターであるマヒロを導くか殺すかを見極めるが、できれば前者であって欲しい。


【基本戦術、方針、運用法】

 忍らしく諜報戦に優れた性能を持つサーヴァント。
 生前に比べると魔力で現界しなければならないため諸々と劣化し、現時点では同時には二体出すのが限界であるものの、影分身の術によって単身で優れた間諜組織として働くことが可能。忍術による変装や、気配感知のスキルと組み合わせることで脅威的な情報収集能力を誇り、更に飛雷神の術で奇襲・戦線離脱も容易なため、仮に本気でマスター暗殺に専念すれば充分優勝を狙い得るポテンシャルを秘める。

 一方、サーヴァントとの直接戦闘に関して言えば、生前は効率的な対人戦闘を極めて来た反面、宝具の喪失も相まって火力不足がやや目立つ。
 とはいえ、そもそもが令呪による縛りとマスターの方針から、彼の役目は如何に直接戦闘を避けられるかに細心の注意を払いつつ、情報収集することが主となるだろう。

 ちなみにマヒロは超一級の回路はあってもエルクレセルの一件より生涯魔力が枯渇しており、アサシンが単独行動スキルの許す限りでやり繰りしている状態のため、能力的に小聖杯の回収には向いていても『■■■■』をこの主従だけで戦力として運用するのは不可能である。






【出展】ミスマルカ興国物語
【マスター】マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト
【参加方法】
 原作最終巻における人類会議後、資料に紛れ込んでいた『白紙のトランプ』によりムーンセルに召喚される。


537 : マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト&アサシン ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 01:02:47 iTaAhmL.0

【人物背景】
 現代の文明が滅びた後、これまで表に出ていなかった魔に属する者達の助力もあって人類が文明を再興した数百年後。
 かつて大陸の中原一帯を纏め上げたミスマルカ王朝の末裔にして魔導学の天才ラヒル・アルンスト・エーデンファルトは、野心から同国の伝承する神器の性質を元にした生体兵器の開発を目論んだ。
 彼の策略の末、二つの同盟国を含む三つの王家に、かつて世界を制した聖魔王を再現するための子らが産み落とされる。
 その中でも、最も膨大な魔力の獲得に成功したのがラヒルの子、ミスマルカ王国の第一王子マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルトであった。

 しかし幼き日、マヒロはその同盟国の一つであるエルクレセルの王女パリスティエル姫と遊びに出た折に魔物と遭遇し、その魔力の行使を余儀なくされる。
 見事に魔物を退けたが、強大過ぎる力を幼きマヒロは制御できず、パリスティエルにまで傷を負わせた上に、エルクレセルの国土を焼き払い崩壊に追い込んでしまう。
 既に妻を亡くしていたラヒルは、この一件で親友であるエルクレセル王リュミエルまで喪い、また暴走の結果魔力を枯渇したマヒロも己が所業への罪悪感に囚われるようになる。

「お前など、魔力を蓄えるだけの人形でよかった」――失意の父に罵倒され、一度は幽閉されるに至ったマヒロは言われたとおりの人形のようにして、ただ生きるだけの日々を過ごす。
 ただ、乳母である侍従長エーデルワイスが持ち込む本、それを読み学ぶことだけを楽しみに。

 更に月日は流れ、かつてエルクレセルを併呑したグランマーセナル帝国による侵略戦争が大陸を震撼させるようになった頃。
 帝国三番姫によるミスマルカへの侵攻を、ラヒルより国を預けられていたマヒロはかつて喪った暴力に頼ることなく、言葉とハッタリだけで退ける。
 そして素性を隠したパリスティエル姫こと、近衛騎士のパリエルを護衛として伴い、一切の暴力に頼ることなく大陸を平定させるため、世界を律する者の証・聖魔杯を復活させる旅に出るようになった。

 奇想天外な行動をするトラブルメーカーだが、ミスマルカが帝国に滅ぼされる以前も放蕩振りが目立つ割に民衆からの人気は高かった。
 しかしその姿は半ば道化を演じているだけであり、本性は奇抜な発想、大胆な行動力、巧みな話術などを併せ持つミスマルカの若き「蛇」。
 主な一人称は「余」であるが、「蛇」の時は「僕」。偽名は「マヒマヒ」をよく使う。

 上記のエルクレセルの一件以降、暴力を拒絶し、また生まれながらの宿命、能力といったものに身を任せることを嫌うようになった。
 その延長として、試練も困難も、等しく逃れられぬことであるのなら、せめて自分で選んだ形で命を懸けたいと考えている。
 また同様の理由から、英雄や勇者という人種のことも快く思っていない。ただし、自由の騎士は例外とのこと。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 上記のとおり、本来は国一つ滅ぼして余りあるほどの魔力を蓄えた生体兵器となるはずだったが、エルクレセルの一件で自前の魔力は完全に枯渇してしまっている。
 そのため、回路こそ超一級ながら一切の魔力を持たないマスターであり、せいぜい令呪による縛りが強い程度で、その効果は補助にも使えない役立たずである。
 剣も弓も銃も上手く扱えず、道具の補助があっても魔術もロクに扱えないが、オートバイの運転技術は高水準にあり、また工作員相手に通用するレベルのスリの腕前を持つ。

【マスターとしての願い】
暴力に頼ることなく、聖杯を手に入れる。

【令呪】
 舌部に発現した、双剣に絡んだ二頭の蛇と王冠(ミスマルカ王家の家紋を模したもの)

【方針】
 アサシンの収集した情報を元に、他の陣営を言葉で以って説得、あるいは騙すことで暴力による戦いを止めた上で、小聖杯を擬似的にでも収集し、聖杯を手に入れる。


538 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 01:03:46 iTaAhmL.0
以上で投下完了です。


539 : ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:18:45 OKZBDfG20
投下します


540 : ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:21:39 OKZBDfG20



たとえ世界が滅ぶとしても、成し遂げたい願いがあった。

否。その願いのためなら世界が滅びようと構わない。

否、否。願いを叶えるためには、世界の滅びが不可欠なのである。



彼女の――彼の願いは、世界の終末を見届けた上で、殺されることだった。


世界に滅びをもたらした悪魔に。


あの恐ろしい、しかし孤独な幾千万の刃の王に。


殺されることが、望みだったのだから。


541 : エレンディラ&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:22:05 OKZBDfG20


――……エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル。それが私の名前。はっきりと思い出した。



 夜明けの街に、一人立ち尽くす美女。
 金髪を背まで伸ばし、細い体を薄手のストールに包んだ姿は、どこか儚げな空気さえ漂わせていた。
 手には大ぶりのトランクケース。女性の細腕にはやや大きすぎるきらいのあるそれを、片手で造作なく保持している。
 細めた視線はやや前方、今にも消え逝かんとする男と女に向けられていた。

「終わりましたよ、マスター」

 エレンディラの傍らに、新たな人影が現れた。
 全身を雪のような白に統一したコーディネート。ただ一点、拳を包む手袋だけが黒い。
 エレンディラとは対象的に、衣服の上からでも鍛え上げた筋肉の造形がはっきりと分かる。戦う者の肉体だ。
 長身のエレンディラをしてなお見上げるほどの体躯。感情の読めない瞳、無骨な口髭が野性的な印象を抱かせる。
 彼こそがエレンディラの召喚したサーヴァント、アサシンであった。

「ご苦労様、アサシン。鮮やかなものね」

 見えなかったけど、とは言わなかった。それを口にするのは彼女自身のプライドが許さなかったからだ。
 エレンディラとて、砂の星「ノーマンズランド」にて殺戮を撒き散らした殺戮異能集団「GUNG-HO-GUNS」の一員である。
 戦闘こそ本分であるし、主であるミリオンズ・ナイヴズ以外の存在に負けると思ったことはない。
 その彼女をして。今のアサシンの戦闘は、何一つ理解することがかなわなかった。
 なにせ、アサシンが姿を現し敵のマスターとサーヴァントが身構えた次の瞬間――彼らは絶命し、地に倒れ伏したのだから。

――これが、サーヴァント。冗談じゃないわね……ナイヴズ様と同等か、それ以上ってワケ?

 鉄面皮で以って、エレンディラは動揺を押し殺す。だが果たしてアサシンから隠せ通せたものか。
 もちろん、純粋な力で言うならナイヴズだって似たような芸当は出来るだろう。
 無から有を生み出すプラントの変異体、異次元より力を抽出・加工し自在に振るうナイヴズや彼の兄弟なら、一瞬で敵を鏖殺することは間違いなく可能だ。
 だが、それを知覚させないということはない。
 事後であれ事前であれ、彼らが力を発する兆候はエレンディラにも読み取れるし(防げるかとはまた別の話だが)、破壊の余波は痕跡となって現世に残る。
 しかし今のアサシンにはそれがない。まさしく始まりと終わりが同時に来た。
 一瞬たりともエレンディラが気を抜いたということはない。にも関わらず、この戦闘がどういう


542 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:22:55 OKZBDfG20


――……エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル。それが私の名前。はっきりと思い出した。



 夜明けの街に、一人立ち尽くす美女。
 金髪を背まで伸ばし、細い体を薄手のストールに包んだ姿は、どこか儚げな空気さえ漂わせていた。
 手には大ぶりのトランクケース。女性の細腕にはやや大きすぎるきらいのあるそれを、片手で造作なく保持している。
 細めた視線はやや前方、今にも消え逝かんとする男と女に向けられていた。

「終わりましたよ、マスター」

 エレンディラの傍らに、新たな人影が現れた。
 全身を雪のような白に統一したコーディネート。ただ一点、拳を包む手袋だけが黒い。
 エレンディラとは対象的に、衣服の上からでも鍛え上げた筋肉の造形がはっきりと分かる。戦う者の肉体だ。
 長身のエレンディラをしてなお見上げるほどの体躯。感情の読めない瞳、無骨な口髭が野性的な印象を抱かせる。
 彼こそがエレンディラの召喚したサーヴァント、アサシンであった。

「ご苦労様、アサシン。鮮やかなものね」

 見えなかったけど、とは言わなかった。それを口にするのは彼女自身のプライドが許さなかったからだ。
 エレンディラとて、砂の星「ノーマンズランド」にて殺戮を撒き散らした殺戮異能集団「GUNG-HO-GUNS」の一員である。
 戦闘こそ本分であるし、主であるミリオンズ・ナイヴズ以外の存在に負けると思ったことはない。
 その彼女をして。今のアサシンの戦闘は、何一つ理解することがかなわなかった。
 なにせ、アサシンが姿を現し敵のマスターとサーヴァントが身構えた次の瞬間――彼らは絶命し、地に倒れ伏したのだから。

――これが、サーヴァント。冗談じゃないわね……ナイヴズ様と同等か、それ以上ってワケ?

 鉄面皮で以って、エレンディラは動揺を押し殺す。だが果たしてアサシンから隠せ通せたものか。
 もちろん、純粋な力で言うならナイヴズだって似たような芸当は出来るだろう。
 無から有を生み出すプラントの変異体、異次元より力を抽出・加工し自在に振るうナイヴズや彼の兄弟なら、一瞬で敵を鏖殺することは間違いなく可能だ。
 だが、それを知覚させないということはない。
 事後であれ事前であれ、彼らが力を発する兆候はエレンディラにも読み取れるし(防げるかとはまた別の話だが)、破壊の余波は痕跡となって現世に残る。
 しかし今のアサシンにはそれがない。まさしく始まりと終わりが同時に来た。
 一瞬たりともエレンディラが気を抜いたということはない。にも関わらず、この戦闘がどういう経過を辿ったか、本当に何一つわからないのだ。


543 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:23:14 OKZBDfG20

――参ったわね。これはもう、認めるしかないのかしら。

 トランクと逆の手には何もない。だがつい数分前には、白紙のトランプが握られていた。
 都心の一等地でコスメショップを経営するオーナー兼、敏腕ビューティアドバイザーのエレンディラ。
 彼女にはある噂があった。一見すると非の打ち所のない美女だが、本当の性別は田んぼの下に力があるそれであり、指摘した者は二度と人前に出られない顔になる、と。
 実際エレンディラも軽い気持ちで突っついてきた常連に手酷い報復を加え、ぷりぷりと怒りながら帰途につき……そこで襲われた。
 壮年の男性と、学生らしき少女。少女の方は見覚えがあった。何日か前に店に来た顔だ。
 彼女はよくわからないことを言った。キャスターの薬品を店から流通させるだの、市内を裏から支配するだの。
 そして少女が男に命じ、エレンディラの眼を覗き込み、意識が遠くなった瞬間……空の手にあのトランプが現れていた。
 怒涛のように流れ込んできた記憶。偽りの生活。真実の過去。
 意識が鮮明になる。怒りが満ちる。そしてエレンディラは叫んだのだった。



――こいつらをブッ散らせ!



 そして、トランプが輝いた次の瞬間、現れた。このアサシンのサーヴァントと名乗る強面の男が。
 優雅にエレンディラに一礼すると、少女たちに向き直り、懐から取り出した青い薔薇を放った。
 少女らがその薔薇を警戒して僅かに後退した瞬間、アサシンは右腕の時計らしきものを操作し……終わった。
 気がついた時には決着は着いていた。今はもう、この場に生きている者はエレンディラとアサシンだけ。
 アサシンは冷たくこちらを見下ろしている。次の指示を待っているのか、それともエレンディラを値踏みしているのか。
 何を言おうか迷ったエレンディラだが、そのとき自身の化粧が汗によって乱れていたのに気づく。
 息を吐く。何をするか決まったからだ。

「とりあえずシャワーを浴びたいわね。化粧も直さなくちゃ」
「おや、随分と呑気なものですね。そんな悠長な状況ではないことくらい理解していると思っていましたが」
「状況? ただの殺し合いでしょ。みっともない顔で人前に出るのは私のプライドが許さないのよ」

 そう……これはただの殺し合いだ。エレンディラにとって、別に非日常でも何でもない。
 殺し、殺され、殺す。それがエレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの日常。思い出したらなんてことはない。
 アサシンの力には面食らったものの、それだけだ。自分より強大な存在と付き合うことなど初めてではない。
 だから、怖れない。脅威には思うし、戦えば負けるだろうともわかっている。それでも、頭を垂れることはしない。
 エレンディラの主はミリオンズ・ナイヴズただ一人であるからだ。


544 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:24:51 OKZBDfG20

「それとも、ご不満かしら? 血と汗に塗れてドブネズミのように這い回るのをお求め?」
「いやいや、まさか。美に理解のあるマスターであるなら私は大歓迎ですよ。ええ、あなたのように強く美しい者こそ、私を従える資格がある」

 白装束の男は唇を三日月に歪め、再び腰を折る。
 どこか胡散臭い印象は拭えないが、それがアサシンなりの忠義の証だということらしい。

「私の真名は黒崎一誠。またの名を仮面ライダーコーカサス……以後、お見知り置きを」
「イッセー、ね。あのおっ死んだサムライと似たような名前だこと。まあいいわ、よろしくお願いするわねアサシン。
 ……私にはどうしても成したい願いがある。あんな終わりなんて、絶対に認めることは出来ない」

 エレンディラにある最後の記憶は、敗北の瞬間だった。
 遥か格下と見ていた裏切り者の小僧ども、リヴィオとラズロにとどめを刺された、屈辱の記憶。
 だが本当に悔やむべきはこれではない。何より、誓約を違えてしまった。
 ナイヴズが世界を滅ぼし、その様を見届けた後に殺されるという、あの誓いを。


エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの終末は、ミリオンズ・ナイヴズによって与えられるものでなければならない。


 エレンディラは死など恐れない。恐れるのは、無為に死ぬこと。意味のない死。
 ナイヴズではない誰かによってもたらされる死など、決して受け入れるわけにはいかないのだ。

「ふむ、構いませんよ。何でも好きに願われるがよろしい。私も私で、この薔薇にかけて証明しなければならない。
 天の道などではない、この私こそが唯一無二の最強であるということを」

 アサシンが、少女の遺体から青い薔薇を拾い上げる。
 少女の血で紅く染まった青い薔薇。美しくも棘がある、死出の先触れ。
 エレンディラはその薔薇……血に濡れた薔薇の美しさに、目を奪われていた。

「天に梯子を掛け、この手に掴んで引きずり落とす。今度こそ成し遂げてみせましょう」

 そして、アサシンとともに明けゆく空の向こうへと手を伸ばす。
 掌からすり抜けた夢を、もう一度追い求めるために。


545 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:26:15 OKZBDfG20

【クラス】
 アサシン
【真名】
 黒崎一誠@劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE
【属性】
【ステータス】
 筋力B+ 耐久B 敏捷A+ 魔力D 幸運C 宝具B
【属性】
 秩序・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:EX(C)
 通常時は「Cランク」相当の隠蔽能力しか発揮しない。このスキルが真価を発揮するのは後述の宝具を開放したとき。

【固有スキル】
勇猛:A
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
無窮の武練:A
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
武の祝福:A
 天賦の才を弛まぬ鍛錬によって磨き上げ、武道における一つの極致へと到達した者。
 極限まで精密化・最適化された動作は敵の意識の間隙を突き、耐久値を無視した一撃を与える。
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

【宝具】
『黄金なりし不毀の甲殻(スペリオル・コーカサス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 地球外生命体「ワーム」に対抗するために作られた「マスクドライダーシステム」の一つ。
 カブティックゼクターを呼び出しベルトに装填することでシステムが起動、「仮面ライダーコーカサス」へと変身する。
 従来のマスクドライダーと違い重装甲形態「マスクドフォーム」はオミットされている。
 右肩にブレード兼用のショルダーアーマーを装備するほか、携帯する武装はない。
 しかし基礎スペックは全マスクドライダーシステム中最高であり、黒崎自身の卓越した格闘技術によって無手ながら恐るべき力を発揮する。
 変身中は以下の機能を使用可能となる。
  「クロックアップ」 カブティックゼクターが生成したタキオン粒子を制御し、違う時間流に突入することで擬似的に高速移動する。
  「ライダービート」 カブティックゼクターが生成したタキオン粒子をまとい、一時的に腕力を強化する。
  「ライダーキック」 ハイパーゼクターが生成した膨大なエネルギー「マキシマムライダーパワー」を脚部に集中し放つ超強化キック。


546 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:27:13 OKZBDfG20

『手向けよう、葬送の青き薔薇を(クロノス・ローズ・ブルー・アワー)』
ランク:B++ 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
 『黄金のライダーと戦う者は、戦う前にすでに敗北している』 という逸話から昇華した宝具。
 ハイパーゼクターを召喚し、マスクドライダーシステムを更に強化する。
 この宝具を開放した瞬間、アサシンはあらゆる存在の知覚から離脱する。これは生身の認識に留まらず、機械・使い魔の監視も同様。
 気配遮断スキルは「A+++ランク」にまで上昇し、攻撃態勢に入ってもランクが低下しない。
 任意の敵一体に攻撃を仕掛け、その攻撃が終了するまで効果は持続する。ただし、同じ相手に効果が発動するのは一戦闘につき一度のみ。
 本来ハイパーゼクターは時空間を自由に駆け巡るほどの力を所有者に与えるが、黒崎がその力を使いこなしたという逸話はない。
 そのためできるのはせいぜい短時間の超・超加速、あるいは他者が使う時間制御の無効化、といった程度に限られる。
 また、後にハイパーゼクターの使い手となるカブトと違い、コーカサスはこの宝具を使用してもフォームに変化は起こらない。
 仮面ライダーコーカサスは元々このハイパーゼクターとのマッチングを重視して設計されたシステムであり、通常形態が既に最もハイパーゼクターに適した状態であるため。

【weapon】
 なし。徒手空拳で戦う。
【人物背景】
 ワームの侵攻を受け滅びの危機に瀕する世界において、対ワーム組織 『ZECT』 に所属する男。
 通常の指揮系統の外、ZECT総帥からの直接指示によって動き、組織にとって害となる者を秘密裏に抹殺する殺し屋の役割を担う。
 常に青い薔薇を持ち歩き、始末するターゲットにその薔薇を手向ける。その姿を見た者は誰もいないが、犠牲者の傍にある青い薔薇が彼の伝説を立証する確かな根拠となる。
 最も強く、最も美しいもののために戦う……という信条を持つが、これが指すのは自分自身のこと。
 つまりは自分こそが最強であり、自分さえ存在するのなら世界などどうでもいい、という歪んだエゴの持ち主である。
 天の道を往き総てを司る……つまりは己と世界を合一させあらゆる存在を守護せん、とする天道総司とは対極の思想であり、当然のように激突した。
 最終局面において、人類側の最高戦力と呼べる天道総司=カブト、加賀美新=ガタックの二人を同時に相手取るも、苦もなく圧倒する。
 ガタックを瀕死に追い込むも、カブトが一瞬の隙を突いて力の源であるハイパーゼクターを強奪。
 コーカサスと同等の存在であるハイパーカブトへと変身し、「最強のライダー」の称号は天道総司へと奪い取られた。
 そして新たな力に目覚めたカブトの猛攻により破れ、宇宙に散った。
【サーヴァントとしての願い】
 己こそが最も強く、最も美しい存在であると証明する。


547 : エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン ◆WZmE.HBPA6 :2016/12/03(土) 09:27:32 OKZBDfG20

【マスター】
 エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル@トライガン・マキシマム

【マスターとしての願い】
 ナイヴズがもたらす終末を見届け、彼に殺されること。

【weapon】
 トランクケース型の弾数無限巨大ネイルガン

【能力・技能】
 特別な異能はない。
 極めて高い肉体的スペック、敵の内奥まで見透かす観察眼、戦闘経験からなる対応力、と純粋に人間の持てる性能を極限まで突き詰めた、ただの最強の真人間。

【人物背景】
 ミリオンズ=ナイヴズ率いる殺人集団「GUNG-HO-GUNS」GUNG-HO-GUNSのNo.13(ロストナンバー)。
 容姿はたおやかな美女そのものだが、性別は男性。オカマ。ただしそれを指摘すると本気で殺しに来る。
 人体改造、異能など人間の範疇を超えた極まった殺し屋集団の中にあって、ただ一人の真人間。
 だがその身体能力・戦闘センスは桁外れであり、さしたる理由などなく単純に強い。
 戦闘経験も豊富であり、心の弱い者には殺気を放つだけで無数の釘が津波のように襲い来るビジョンを見せることすら可能。
 トランクケースに偽装したネイルガンを使う。ネイル、といっても釘のその大きさは1メートルを優に越え、鉄板すら一撃で貫通する威力を誇る。
 人類殲滅を目論むナイヴズの腹心の部下として動く。最終的にナイブズはエレンディラをも殺すつもりだが、それを理解し心待ちにしている。
 しかしその願いが叶う前に、リヴィオ・ザ・ダブルファング&ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスの二人(一人)と戦い、敗北した。

 表側のロールはコスメショップの経営者兼、凄腕のビューティアドバイザー。


548 : 名無しさん :2016/12/03(土) 09:28:20 OKZBDfG20

投下終了です。51は誤って書き込んだもので、52から続きます。
なお、ステータス作成にあたり
◆lkOcs49yLc氏のライダー(天道総司)、◆HOMU.DM5Ns氏のライダー(天道総司/カブト)を参考にさせていただきました。
事後承諾ですみませんが、この場にてお礼申し上げます。ありがとうございました。


549 : 名無しさん :2016/12/03(土) 10:46:11 stYDPUOQ0
質問なのですが、スノーフィールドの季節は何時を想定されているのでしょうか


550 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/03(土) 11:00:45 iTaAhmL.0
>>549

すいません、ご指摘されるまで明記し忘れておりました;
季節には特にこだわりがなかったので、企画開始とおよそ同時期、冬の初めほどを想定しております。
皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。


551 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/03(土) 14:46:15 dlJMnhSs0
皆さま投下お疲れ様です。投下します。


552 : シスターナナ&セイバー ◆3SNKkWKBjc :2016/12/03(土) 14:47:01 dlJMnhSs0

「このような事……間違っていると思うんです」

唐突に修道女が語り始めた。

「私の居た国、その時代は少なくとも平和で……いえ、残念ですが殺人や窃盗、悪が淘汰された世界とは断言できませんが、
 それでも平和な世界でした。そして、私は人の世を平和する為、選ばれた『魔法少女』の一人です」

深刻と哀しげな表情で『魔法少女』が言う。
とはいえ。
彼女は悪い敵みたいな存在を暴力で倒したり、必殺技を発動したり、そういう魔法少女じゃない。
災害に見舞われた人々を救出したり、落し物を探してあげたり……
地味ながら、誰でもできそうな救い。だけど、誰もしようとしない救いを行う存在。
彼女の言う『魔法少女』とは、そんな些細な救世主。

故に、彼女は『聖杯戦争』に巻き込まれた事に困惑し、悲しんでいた。
何でも願いの叶う聖杯は確かに魅力的だが、戦争で解決しようなど間違っている。
サーヴァントのみを倒す方針を抱えても、実際困難な話だ。

そして――彼女は決心をした。
『聖杯戦争』を止める事を。
このような争いの果てに真の願いなど叶えられないのだから。

しかし、多くの不安はある。
どうやって止めるか?
彼女自身も分からないし、正直自分一人じゃ無謀だ。
誰か同盟・協力してくれるマスターかサーヴァントがいればきっと。そういう存在がいるかは分からない。

でも、自分のように偶然『白紙のトランプ』を手にしてしまったマスターだっているはずだ。
彼女は理想を掲げた。
そして思う。ここにはいない恋人の事。きっと『彼女』は心配してくれるに違いない。
元の世界へ戻らなくては―――
一方で彼女は彼女の理想として『聖杯戦争』の中止を願っている。

あるいは……彼女の内に秘めた願いを叶える為に……

「ならばマスター。シスターナナ。私はフランス王家とキミとを守る白百合の騎士であり続ける事を誓おう」

可憐で優雅な動作で膝をついたサーヴァント・セイバーが答えた。
セイバーは善良な彼女の意思を理解し、そしてフランス王家の誇りを胸に忠誠を示す。
絵本の世界で目にするような美貌の騎士に、魔法少女・シスターナナが感動の息を漏らした。

「ありがとうございます、セイバー。シュヴァリエ・デオン。尊い犠牲が出さぬよう共に頑張りましょう」

シスターナナにとってもセイバーは素晴らしい騎士だった。
皮肉にも、シスターナナの理想郷でもあった。


優しく、清らかな王子様に守られたい。
優しく、清らかなヒロインとして、王子様を庇って死にたい……


そんな歪んだ願いを秘めたシスターナナは、あくまで『聖杯戦争』を止めるべく奔走するだろう。


553 : シスターナナ&セイバー ◆3SNKkWKBjc :2016/12/03(土) 14:52:04 dlJMnhSs0
申し訳ございません。
ステータス等を投下したいのですが、不正な文字の原因が分からず、一先ずここで投下終了とさせていただきます。


554 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/03(土) 21:29:45 dlJMnhSs0
大分遅れましたが先ほどステータス等を投下できなかった「シスターナナ&セイバー」ですが
wikiの方でステータス等を編集しました。
手間をかけてしまい申し訳ございませんでした。


555 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:13:45 1ymCrnU.0

――街はひそやかに、君を隠してた。
――たどり着いた場所、思い出す、あの記憶。


#  #  #


アイスクリーム売りの車の前で、双子の姉妹に出会った。
こんな季節によくやっているなぁと思ったけれど、その『よくやっているなぁ』という感嘆はそのまま『そう言えばこういうのを食べるのも久しぶりだなぁ』という欲求に直結してしまい、
そして同じことを思った人は他にもいたようで、アイスがペイントされた車の前にはそれなりの列ができていた。
その二人組の子どもは、彼女よりも列の少し前方に、二人で一人分のようにくっついて並んでいた。
肌の色と髪の色が違うこと以外はそっくり瓜二つの外見だったから、すぐに双子の姉妹だと分かった。
その時は、『あ、双子か』と発見したきりで終わってしまったけれど、それがはっきりと『あの子達は……』という注目に変わった事件は、彼女たちがアイスクリームを買い終えたその直後に起こった。

褐色の肌をした方の少女が、不覚にも財布をカバンへとしまおうとしてアイスを傾けてしまい、コーンに乗っかっていたその塊をべしゃりと落としたのだ。
よほどらしくないドジだったのか、もう一人の少女が目を丸くしていた。
しばらく気まずい沈黙が姉妹の間に落ちていたが、やがてもう一人の方が、一口食べられていた己のアイスを差し出し、二人で代わる代わる食べようという風なことを言って慰める。
アイスを落とした方は、しばらく気まずそうに無事な方のアイスと片割れの姉妹を見据えていたけれど――やがて、意を決したように食らいついた。
なぜかアイスの方ではなく、一口を食べたばかりの、もう一人の口元へと。
え、何だ、最近の小学生は進んでいるのか、そういう問題か、と困惑が双子を見守っていた幾人かを襲った。しかし、双子にとっての深刻な問題は、その直後に起こった。
突然の接吻と口元へのアイス嘗めとりに驚いて、その姉妹は無事だったはずのアイスを手元から落としたのだ。
べしゃり、とアイスの塊がふたたび路面に吸われた。
姉妹の顔が、同時にさっと青ざめた。
衝撃が双子を襲った。せっかく並んで買ったアイスが、二つとも失われてしまった。
褐色の肌をした方の少女が、責任逃れの言葉を考えようとするかのように目を逸らした。
雪のように白い肌をした少女は、表情を凍らせたまま、ぷるぷると震えていた。
ああ、これは喧嘩になるなと思った。
なんせ、もう一度並んでアイスを買いなおすには、パーラーの前の列はだいぶ長くなってしまっている。
「お、お姉ちゃんのせいだ」というようなことを、接吻された方が言った。

ああ、こちらの方が妹なのか、という納得が、見守っていた彼女に宿った。
お姉ちゃんと呼ばれた方の少女は、小さな声で、何かをぼそぼそと呟いていた。
ごめん、と言ったように見えた。
だから。


556 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:16:17 1ymCrnU.0
「――ほら、これをあげるから、二人で食べなさい」

気付けば、二段アイスをもう一つ、余分に買って双子に差し出していた。

見知らぬ第三者からおごりを受けたことに申し訳なさと気まずさで遠慮する双子へと、適当な理由づけを並べ立てて『いいから貰っておくものだ』と納得させる。

――妹と仲良くね。

最後に、『お姉ちゃん』の方へとそんなおせっかいじみた台詞を口にして離れた。
後悔はしなかった。でも、何だか変なことをしたなと思う。
お姉ちゃんなんだから優しく、とかそんな小うるさい説教をするタチでもないのに。
そっくりな姉妹である彼女達を見ていると、なぜかそんな言葉が口から出ていた。

――私にも、妹がいたらなぁ。

なんてことない、むしろ一人っ子ならば誰もが一度は思ったかもしれない独り言だった。
それなのに。



『お姉さま』



感情の籠らない声に、記憶の底から呼びかけられた。
ぞわり、と背筋を寒気が駆け上がる。
感情は籠っていない――にも関わらず、それまですっかり『忘れていた』『意識にのぼらせることもしなかった』彼女を責めたてているように聞こえた。

『そこの双子。姉妹ゲンカはよくねーぞ』

そうだ、確かにそう叱られた覚えがある。
誰からだ。いつのことだ。どういう状況だった。
なぜ、一人娘だった自分に『双子の妹と喧嘩をした記憶』があり、しかも今までそのことを忘れていた――?

――ゴスッ、と聞き覚えのある打撃音がした。

その音に鼓膜を叩かれて、彼女はばっと斜め後ろの方向を向く。
公園、というほどの広さでもない。アイス売りが停まっていた一画はタイル敷きの広場になっており、他にも露店売りの車が何台か停まっていた。
その中の一つ。ホットドッグやらのジャンクフードを売っている車の、売り場の前だった。
どこにでもある、しかしこの国では珍しい、少し小さめで軽そうな自動販売機が一台。
この国では、自動販売機が屋外に設置されていることはまず有り得ない。おそらく持ち運びの効く、ジャンクフード売りの私物なのだろう。
ずらりと、鮮やかな原色に色づいたスポーツドリンクやジュースの群れが並んでいる。
売り場から顔を突き出した店員と、自販機の前に並んでいるがっしりとした体格の若者が、ねちっこそうな訛りのついたアメリカ英語で口論を始めている。
どうやら、若者の方が先ほどの鈍い音を出したらしい。


557 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:17:44 1ymCrnU.0

――おいおい、ウチの自販機を蹴っ飛ばすとはどういう了見だよ。その中には売上金が入ってるんだぜ?
――蹴りたくもなるさ。俺の20ドル札をこいつが飲みこんじまった。
――20ドル札ゥ!? 1ドルや5ドル札ならまだしも20ドル札かぁ? 今どきカードじゃなくて現金で持ってる奴いたのかよ。そりゃあ自販機だってバグるだろ。ちょっと待ってろ。

そんなくだらない、実にくだらない会話。

だけど。

そういう時は、どうしてたんだっけ。

――『あの街』の自動販売機にお金を盗まれた時には、『ツンツン頭の少年』がそう言った時は、どうしたんだっけ

記憶への違和感は、はっきりとした、既視感へと変わった。



――そうだ。あの時は、『アイツ』の見てる前で、自動販売機の前に手をかざして、『能力』を



繋がった。



          ――――キイィィィィィィン――――



その刹那、不可思議な電波を受信したかのような衝撃が、彼女の五感すみずみを刺激した。

景色は、何も変わらない。
しかし、確かに見えている世界は変わった。
彼女の見ている、『自分だけの現実』が変わった。

そうだった。
私には『能力』がある。そのことを、やっと思い出した。
この街に来てからも、子犬や仔猫のような小動物にはなぜか避けられる。その理由をやっと思い出した。
なぜ忘れていたのか、その原因さえも頭から『知識』として呼び出されてきた。



          ――――キイィィィィィィン――――



そして、今感じている『この感覚』が、『彼女自身の持っている能力と、ごく近似した力を持っている何かが、すごく近くにいる時』のものだと知っている。
呼び覚まされた記憶がどっと奔流となって頭を埋める中、少女の身体は走り出していた。
どこか。人の来ないどこかへと。
たった今感じられている感覚の正体を、一人きりになれる場所で確かめるために。

『妹』と名乗る彼女と初めて出会った、あの時と同じだった。
同じなのは、『単に同じ能力を持っているだけではない、血縁だろうとクローンだろうと、彼女と『繋がれる』だけの素養を持った者がいる』という勘が働いている事。
違っているのは、まるで『どこか近くにいる』というよりも、『すぐ隣で彼女を見張っている』ように感じられること。


558 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:18:56 1ymCrnU.0
ハァハァと息を荒げながら、『妹』と名乗った少女達を今まで忘れていた罪悪感に囚われながら、彼女は急いて、走って、一人になった。
そして、すれ違うのも精いっぱいという広さの裏路地に滑り込んだ時、
待ちかねていたようにそれは出現した。

白紙のカードが、どこからかひらひらと眼前に舞い降りて。
それと呼応するように、少女の指先からは、バチリバチリと火花が爆ぜる。
まるで、呼ばれようとしている『繋がっている者』に、彼女自身の能力もまた自然と呼応しているかのように。
そして、感じる。この街で新たに刻まれた、『魔術回路』とか呼称されている、常識からは外れた得体のしれない『力』のうねり。

路地裏に青白い稲妻が爆裂する。
その刹那、昼なお薄暗い世界を何も見えないほどの光で染めた。
晴天の霹靂としか見えないそれは、彼女の資質と、サーヴァントの性質、双方が繋がって生まれる、電気を駆動源とする人形の産声だった。

「これは――!!」

そして、産声が耳に届くのと同時に、彼女の頭には『記憶』が雪崩れ込む。
彼女の記憶ではなく、召喚された『そいつ』の持つ記憶。

“失敗だ、失敗だ、失敗だ、失敗だ、失敗だ!”

現界のための魔力が『魔術回路』を通して繋がり、そして『そいつ』の思考を流れる脳内電流が『電気回路』として『電撃使い』たる彼女の感覚に引っかかった。
二重のつながりによって生まれる、夢を介さない記憶の共有が行われる。

“何てこった。こいつは、ろくでもない木偶人形だ!”

召喚された彼女が背負っている過去を、理解してしまう。
かつて、とある多才能力を使う科学者と交戦し、接触して、その人物の記憶をのぞいてしまった時のように。
感情と、光景が、『失敗作』と呼ばれた人造人間の思い出が、数秒にも満たぬ間に走馬灯として把握される。

“お前は怪物だ! 狂った怪物だ!!”

そう呼ばれた異形として、路地裏へと姿を現したのは。
稲光が途切れた時に、そこに屹立していたのは。
彼女が、己の従者なのだと理解した存在は。

やや大柄ではあるものの、華奢で可憐そうな少女の後ろ姿だった。

彼女は察した。
その正体は、彼女だって知っている有名な小説に出てくる、人が造った『あの』怪物を指しているのだと。
だから、察してしまったからこそ、尋ねた。
それが醜い巨人ではなく、花嫁衣裳を思わせる装束の少女だったことが、あまりにも意外すぎて。

「――あんた、何者?」


559 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:20:42 1ymCrnU.0

その少女はゆっくりと、ゆっくりとこちらを振り向いた。

「ウゥ?」

言葉にもならぬうめき声を吐いて。
目元を鮮やかな桃色の前髪で隠し、避雷針のような角飾りを頭部に生やして。
小首をかしげて、振り向いた。
長い前髪の下から『妹達』を思わせる、虚ろで茫洋とした瞳で見すえて。
あなたが私のマスターか、と問うように。
まずは自分から名乗りなさい、と言い返すように。

だから彼女は、つい名乗った。


「私は、御坂美琴よ」


 #  #  #


『学園都市』の超能力者は、魔術が使えない。
能力開発によって脳の構造が変質してしまっているが故に、魔術の行使をすることが要らぬ負担となり最悪死に至ることもあるためだ。
だがしかし、通常の聖杯戦争であればどうか知らないが、此度のスノーフィールドの聖杯戦争において、それは何ら問題とはなりえなかった。
何故なら、この舞台に存在するすべてのマスターは、電脳空間の中でデータに置き換えられた上で、生を受けて魔術回路を供与されているから。
現実世界から招かれたマスター、及び市民用NPCは肉体ごと量子情報化されて取り込まれている。
つまり、ある程度ならマスターの脳内情報処理に融通をきかせられる――超能力者にも、魔術回路を備え、令呪を宿すことができるというわけだ。
とはいえ、『事実上そうなっており、またその知識を刷り込まれている』ことと、『それを受け入れることができる』かどうかは、まったく別の問題だ。

「まぁ、現実世界にいるのと大差ない本格的なVRゲームの実用化もそう遠くないっていうし。
 眉唾モノだけど、『自分の見たい夢をみて、夢の中で勉強したり冒険する』っていう機械も開発されてるって噂も聞いたことあるし。
 そういう『夢』の中で『自分は死んだ』と認識しちゃったら、現実の世界で死ぬっていう話も。
『そういう話があり得なくもない』って言うのは信じるとしましょうか」

ベッドの上に倒れこむようにして寝ころんだまま、己を納得させるように独り言を続ける。
外国からの留学生のために用意された寄宿舎では、1人部屋の割にそこそこ広さのある居住空間を宛がわれてる。
そう、1人部屋だった。
何があったのか聞き出そうと過剰なスキンシップを試みてくるルームメイトなど、この街には存在しない――ことにされている。
彼女の知る限りではこの世界の悪趣味な催しに巻き込まれていない、という事実を意味するのは、好ましい事ではあるのだが。

「確かに、これだけのことができるなら、『実験を進めてる連中』なんかよりもずっと強い権力も財力も能力も、命令権も持ってるでしょうよ。
 でも、その力を願いを叶えるために使ってくれるか、そこが信用できなかったら意味ないわ」

御坂美琴は、かなりの頑固者であり、ガチガチの科学脳である。
たとえば『この世界に呼ばれなかった別の未来』では、厚紙での通信魔術を目撃しても『変わった形の携帯電話』だと解釈したり。
幾度となく魔術師を称する一派と接触したり交戦したりしても、オカルトの存在を否定し続け、どうにか既存の科学知識に当てはめて考えようとするぐらいには、『非科学的なもの』には懐疑的だ。
さらに言えば、彼女はつい最近『筋ジストロフィーの患者を助けるために有意義な研究ができるよ』ということで自らのDNAマップを提供したはずだったのに、コロリと騙されていた、という自覚をしたばかりだった。
『今いるこの街では、魔術使いとやらを名乗る能力者たちの戦争が行われている』『そのゲームに優勝すれば、ありとあらゆる願いを叶えられるルールになっている』ところまでは受容できても、
『運営側には、本当に願いを叶えてくれる誠意があるのか』という部分にまで、あっさりと信頼を置くことはできない。


560 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:21:34 1ymCrnU.0
だけど、それなのに、それでも。

「これを逃したら……あの子たちを助ける方法なんて、無い」

さっきまで忘れていた己のことが憎くて仕方がない。
あの『実験』を食い止めるために、御坂美琴が打ってきたありとあらゆる行動は、全てが焼け石に水以下の、なんの歯止めにもならない空回りだった。
これからまた、一万人の少女が殺されるのだと分かっていて、すでに一万人を殺した罪のある御坂美琴が。
この戦争にいる十数人かそこらを蹴落とすか蹴落とさないかで、迷う権利など存在するはずもない。

いや、そんな焦りを抜きにしても。
勝ちぬかなければ、この戦争から帰れない。
この戦争から帰れなければ、彼女達が死んでいくのを見殺すことになる。
『『『『『お姉様、なぜ見捨てたのですか』』』』』という『彼女達』の怨嗟の問いかけが、地の底から聞こえてくるような気がした。

「―――――――ッ」

枕を握りしめ、爪を立て、ぎりぎりと皺が残りそうなほどに締め上げる。
この夢みたいな世界から脱出して、彼女達を救うために『学園都市』に戻る方法が、『この殺し合いに参加して、優勝する』以外に方法が無いのならば――。

「――ゥゥ?」

ベッドの傍らには、彼女のサーヴァントが座りこんでいた。
気遣うように、首をかしげて、低い声で問いかけるような音を発していた。

「……なんでもないわ。決意を新たにしてただけ」

サーヴァント――フランケンシュタインの創り出した人造人間。
その顔を、この時はまだ、正視することができなかった。
彼女もまた、人間の傲慢と野心とによって生み出されて、『思っていたのと違うものができてしまった』と理不尽になじられて、身勝手に放り出された被害者だから。

だがしかし、彼女の願いは、『己と同じ存在の伴侶を得ること』だった。
産み出した父親にそう懇願している光景をこの目で垣間見たから、それは知っている。
それはまるで、『家族を与えてくれさえすれば、この世に勝手に産み出したことも、失敗作だとなじったことも、全て不問にしよう』ということじゃないか。
それが眩しくて、あまりに優しすぎて、受け入れがたかった。
貴女は、恨んでもいいはずだ。憎んでもいいはずだ。
『なぜ生み出したのですか、なぜ見捨てたのですか』と、復讐するのが当然のはずだ。
それではまるで。
もし、ただの家族として、『私の妹達だ』と認めさえすれば、彼女達も自分のことを憎まないというのか。
そんなこと、あるはずがない。
妹達呼ばわりして家族のように接するなんて、許されていいはずがない。

だから。せめて、そんな私にできることは。

「もし、アタシが、自分の願いを叶えるために殺し合いをしてたら、『アンタ達』はどうする?
――って、考えるまでもないか」

アンタ達、と呼び掛けた人々の助けは、もうアテにできなかった。

『許されない』という幻想(おもいこみ)を殺してくれたはずの幻想殺し(ヒーロー)は、彼女の傍にいない。
『街』に害をなすようなことをすれば、すぐさま駆けつけて止めてくれたはずの風紀委員(ジャッジメント)も、この街には見当たらない。

そこにいるのは、たった1人のsister’s noise(同胞の呻き)。


561 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:22:48 1ymCrnU.0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
フランケンシュタイン@Fate/Apocrypha

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運B 宝具C

【クラススキル】
狂化:D
筋力と耐久のパラメータをアップさせるが、言語機能が単純になり、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。

【保有スキル】
虚ろなる生者の嘆き:D
狂化時に高まる、いつ果てるともしれない甲高い絶叫。敵味方を問わず思考力を奪い、抵抗力のない者は恐慌をきたして呼吸不能となる。

ガルバニズム:B
生体電流と魔力の自在な転換、および蓄積が可能。魔風、魔光など実体のない攻撃を瞬時に電気へ変換し、周囲に放電することで無効化する。また蓄電の量に応じて肉体が強化され、ダメージ修復も迅速に行われるようになる。

【宝具】
『乙女の貞節(ブライダルチェスト)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
樹の枝状の放電流を纏う戦槌(メイス)。
周囲の滞留魔力を吸収して己のものとする、魔力消費が尋常じゃないバーサーカーのマスターに優しい宝具。
自分や周囲から漏れる魔力を効率よく回収し蓄積するため、周囲に余剰の魔力が豊富に発生し続ける戦闘時は「ガルバニズム」と合わせて疑似的に"第二種永久機関"の動作をする。
先端の球体は彼女の心臓そのものであり、戦闘時以外も肌身離さず所持している。

『磔刑の雷樹』 
ランク:D〜B種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:30人
「乙女の貞節」を地面に突き立て、放電を行う対軍宝具。聳え立つ大樹のシルエットで降り注ぎ、拡散し敵を追尾する。
敵が単体かつ近距離であれば「乙女の貞節」がなくとも発動可能。
全リミッターを解除して、最大出力で使用した場合、使用者は生命活動を完全に停止する。
リミッターを解除しないで使用した場合、威力は落ちるが彼女の生命活動が停止する事は無い。
この雷撃はただの雷ではなく彼女の意志が介在する力であり、令呪の補助を受けて使用した場合、標的が同じく令呪の効果で空間転移を行っても回避できないほどの速度と精密さで中心点に引き込む。
また使用時、低い確率で第二のフランケンシュタインの怪物を生む可能性がある。


562 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:23:35 1ymCrnU.0

【weapon】
戦槌『乙女の貞節』

【人物背景】
フランケンシュタイン。ヴィクターによって創造された人工生命体。
アダムと対を為すイヴとして作られたが、喜怒哀楽の感情表現が上手く働かず、失敗作と断じられた。
感情の制御、繋がりが上手くいかず、野犬を躊躇いなく惨殺し、臓物を贈り物として差し出す凶暴性に、ヴィクターは怯えて逃亡した。
だが、置き去りにされたフランケンシュタインの知性や情緒は世界に触れる内に磨かれていき、遂には見捨てたヴィクターに対して怒りを覚えるようになった。
北極まで執拗に追跡した彼女に、ヴィクターは疲れ果てたと自ら死を選ぶ。
彼女がつがいを求めるのは、本能的欲求ではなく論理的――つまり、真っ当な人間としての在り方を求めるが故である。
唸り声しかあげられないが、バーサーカーでありながら極めて高い思考能力を持っている。
ちなみに『Fate/GrandOrder』では「しゃべることは一応可能だが、非常に疲れるためよほどのことでなければしゃべらない」 という設定になっている。

【サーヴァントとしての願い】
まっとうな人間らしく伴侶を得ること

【出展】
とある科学の超電磁砲

【マスター】
御坂美琴

【人物背景】
八月二十一日、漫画版『とある科学の超電磁砲』34話の時点から参戦。
「絶対能力進化実験」に関わる全ての施設を破壊し、自分のクローンが殺される計画を阻止できた――と思いきや。
およそ183の研究施設に引き継ぎが行われ実験は滞りなく続けられていたことを知る。捨て身の思いで決行しようとした最後の手段である『樹形図の設計者』のハッキングという手段も、それ自体が既に大破されていたという事実を知ってしまい費える。
絶望しながらも『いつか実験が止まる時が来るとすれば』という妄念に憑りつかれた彼女は、最終的に『一方通行と戦い、一手で殺される』という自殺的な手段に訴えようとするのだが、それを思いつくよりも少し前の時点で『白いトランプカード』に巡り合う。
 なお、生粋の科学脳から聖杯戦争という『魔術儀式』についてはどうにも胡散臭いオカルトという印象を持っているが、『この世界が電脳世界(バーチャル空間)であり、そういう設定で運営される実験ならば、まだ信じられなくもない』ということで妥協した模様。


563 : 雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ) ◆7fqukHNUPM :2016/12/04(日) 00:24:34 1ymCrnU.0
【能力・技能】
代名詞的な技でもある『超電磁砲』はもちろん、 砂鉄の剣や落雷、雷撃の槍などの攻撃技を持つ。
これらの派手な技の数々に隠れがちだが、 彼女の真の強さは電磁波を自由自在に操る能力を活かして、 複数の用途で多角的に敵を叩く手数の多さにある。
本人も多角的な用途こそが自身の能力の真骨頂と心得ており、 取るべき手段は『超電磁砲』一つだけに決して拘らない。
そのため非常に戦略性の高い戦闘が可能であり、 圧倒的に不利な状況でも、作戦や地の利を生かして敵を翻弄し活路を見出していく。
能力を活かした高度なハッキング技術も持っており、 絶対能力進化実験を巡る破壊工作ではこれによって実験施設の7割を一晩で再起不能の状態に持ち込んだ。
身体能力も高く、 特にスタミナに関しては女子中学生という枠を外して考えても驚異的なレベル。なお格闘技術も高い。
なお、あまりに大幅な能力使用をすると、スタミナ切れをおこして行動不能になってしまう。通称「電池切れ」状態。

【マスターとしての願い】
『妹達』を救う。「絶対能力進化実験」の即時停止。

【方針】
『聖杯』については懐疑的だが、一刻も早く帰還するためにも聖杯戦争に勝利する。




投下終了です


564 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:32:37 VfxC38Tc0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


565 : うちはサスケ&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:33:23 VfxC38Tc0


前途ある若者をたぶらかすもの、それを「蛇」と呼ぶ。


◆ ◆ ◆


きっかけは、下校途中にクラスメイトと交わした何気ない会話だった。

「前から思ってたんだけどさあ、サスケって名前、クールだよな!」
「そうか?」
「そうだって! やっぱり、ニッポンの忍者からつけられたのか?」

「忍者」。
その単語を聞いたとたん、彼の頭に鋭い痛みが走った。
頬を汗が滑り落ち、かすかに苦悶の声が漏れる。

「おい、サスケ……? サスケェ!
 どうした! 俺、なんかまずいこと言ったか?」
「いや、そうじゃない……。
 急に頭が痛くなってきただけだ。心配しなくていい」

内心の動揺を可能な限り隠し、彼は心配する友人にそう返した。


566 : うちはサスケ&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:34:04 VfxC38Tc0


◆ ◆ ◆

何とか家にたどり着いたサスケは、気分が悪いので少し休むと母親に告げて自室に籠もった。
すぐさまベッドに倒れ込み、サスケは混乱する頭を整理する。

(いったいどうなってるんだ……。聖杯戦争だと?
 それにこの、見たことのない町並みはいったい……。
 しかも、なぜ母さんが生きてるんだ!
 俺は幻術にでもかけられているのか……?)

『幻などではないぞ、少年よ』

突如、サスケの脳内に直接声が響く。
思わず体を起こしたサスケは、そのままベッドを降りて勉強机に向かう。
そして机の引き出しを開けると、その中に入っていた白紙のトランプを取り出した。
これが全ての答えにつながる。サスケはそう感じていた。

「来いよ……」

静かに呟くと、サスケはトランプを放り投げる。
放物線を描いて床に落ちるかと思われたトランプは、空中で停止した。
そして光と共に、人の姿へ変化していく。

「な……!」

サスケは絶句していた。
目の前に現れた男の顔は皮も肉も剥がれ落ち、骨がむき出しになっていたのだ。
体に視線を移せば、やはり各所が傷だらけだ。
これまでの人生で異様な姿の忍者も幾度か目撃してきたサスケであったが、ここまでおぞましい姿は見たことがなかった。

「おっと、子供にこの姿は刺激が強すぎたかな……?」
「……まあな。さすがにそんな状態で生きてるやつは、初めて見た。
 いや、サーヴァントってのはもう死んでるんだったか?」

明らかにこちらをバカにしたサーヴァントの口調に眉をしかめつつも、サスケは精一杯強がってみせる。

「くくく、それだけ口をきければ上等か……。
 とりあえず、自己紹介をしておこう。
 我が名は地獄大使……。いや、この姿では再生地獄大使と名乗るべきか。
 この度はバーサーカーとして召喚された」
「バーサーカー……?」

地獄大使と名乗ったサーヴァントの言葉に、偽りはない。
サスケの目に映るステータスにも、クラスはバーサーカーとある。
だが与えられた情報の中にあるバーサーカーの特徴と、眼前のサーヴァントの振る舞いは明らかに齟齬があった。


567 : うちはサスケ&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:34:43 VfxC38Tc0

「バーサーカーっていうのは、戦闘力の上昇と引き替えに理性を失ってるんじゃないのか?
 あんたは見た目こそいかれてるが、とても理性を失ってるようには見えないぜ」
「ふふ……俺は少々特殊なバーサーカーでな……。
 宝具を解放したときのみ、バーサーカーの特性が発揮されるのだ」
「そうか」

サスケの反応は素っ気ない。さほど興味を惹かれなかったようだ。

「さて、俺は名乗ったぞ、少年。
 次はお前の名前を聞かせてもらおうか」
「いいだろう。俺の名はうちはサスケだ。
 木ノ葉隠れの里で、忍者をしている。ここではただの学生ということになっているようだがな」
「ほほう、忍者か。ただの子供でなくて安心したぞ」

地獄大使は髑髏の顔で、ニヤリと笑う。
その様子は怖気の走るものであったが、すでに慣れたのかサスケは動じない。

「無力な子供では、おまえを守りながら戦わなければならんからな。
 どれほどやれるかは知らんが、戦う術を持っているのなら自分の身は自分で守ってもらおうか」
「待て。勝手に話を進めるな。
 俺はまだ、聖杯戦争に参加するとは言っていないぞ」
「ほう? まさか、乗らぬつもりかね?
 ただ座して、殺されるのを待つとでも?」

いやみたらしい口調で、地獄大使は言う。

「ただおとなしく殺されるつもりなんてない。
 だが、積極的に動く気になんてそう簡単にはならないさ。
 どんな願いでも叶えられるだと? そんな都合のいい話、鵜呑みにできるか」
「いや、そうでもないだろう。
 お前は内心では、聖杯戦争に乗る覚悟を決めかけている。
 望みがあるのだろう? 何を犠牲にしても叶えたい願いがあるのだろう?
 真偽が怪しくとも、聖杯は狙う価値がある。そう考えているはずだ」
「ぐ……」

言葉に詰まるサスケ。
たしかに彼には、叶えたい願いがあった。
一族を皆殺しにした実の兄・うちはイタチを自分の手で殺す。
それが彼の抱く野望であった。
だが、イタチはあまりに強い。
サスケも急速に成長しているが、兄を追い越せたとはとても思えない。
もしも聖杯の力で、おのれを強化することができれば……。

(しかし、それでいいのか……?
 他人を犠牲にしてまで復讐を成し遂げるのは、許されることか……?)

相手が忍者ならば、サスケも容赦はしない。
だが聖杯戦争のマスターは、様々な人間が選ばれているという。
中には、戦う術を持たない一般人もいるだろう。
戦場に立つ覚悟のない者を踏みにじってまで目的を果たすのは、木ノ葉の忍として恥ずべき行為ではないのか?
師の教えが、仲間との絆が、サスケに一歩踏み出すことをためらわせる。

「何をためらうことがある。
 どのみち、負ければ生きては帰れぬのだ。
 死ねば、願いは永遠に叶わなくなるのだぞ。
 願いを叶えるチャンスが目の前にあるというのに、それでもいいのか?」

地獄大使は揺さぶる。サスケに一歩を踏み出させようとする。
むろん、サスケのことを思っての行動などではない。
その方が、彼にとって都合がいいからだ。


蛇は、少年の心をむしばみ続けていた。


568 : うちはサスケ&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:35:23 VfxC38Tc0

【クラス】バーサーカー
【真名】再生地獄大使
【出典】仮面ライダーSPIRITS
【性別】男
【属性】秩序・悪

【パラメーター】筋力:C 耐久:E 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:C
    (変身時)筋力:A 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
狂化:―(B)
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる。
彼の場合、宝具発動時にのみこのスキルが機能する。

【保有スキル】
神性:E
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
アマテラスの頭蓋骨を媒介に蘇生されたという逸話から、わずかながら神性を持っている。

戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
本体が死してなお、切断された腕だけが動き続けたという逸話から高ランクになっている。

不屈の意志:B
あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意思。
肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。ただし、幻影のように他者を誘導させるような攻撃には耐性を保たない。


【宝具】
『俺こそが最後のショッカー(ガラガランダ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
ガラガラヘビの怪人、「ガラガランダ」へと変身する。
変身中は「狂化」が発動し、荒れ狂う野獣と化す。

【weapon】
電磁鞭

【人物背景】
ショッカー日本支部の三代目にして、最後の大幹部。
本名はダモン。いとこのガモンと共に東南アジアで独立戦争に加わり、ガモンを犠牲にして独立を成し遂げる。
その後ショッカー首領から接触を受け、改造手術を施されショッカーに加入した。
仮面ライダー1号に敗れ戦死するが、バダンが活動を開始した際にバダン幹部・暗闇大使となったガモンによって蘇生される。
しかしその肉体はガモンの私怨により、ゾンビじみた不完全な蘇生をされていた。
決して全盛期とは言えぬ状態だが、バーサーカーとしての適性の高さからこの状態で召喚されたものと思われる。

【サーヴァントとしての願い】
ショッカーの再興

【基本戦術、方針、運用法】
通常状態では狂化スキルが発動していないこともあり、戦闘力はさほど高くない。
しかし宝具を発動すると戦闘力上昇と引き替えに、特徴の一つである狡猾さが失われるというデメリットもある。
マスターには、状況を見極めた的確な判断が求められるだろう。


569 : うちはサスケ&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:36:26 VfxC38Tc0

【マスター】うちはサスケ
【出典】NARUTO
【令呪】三つ巴の紋様

【マスターとしての願い】
イタチを殺せるだけの力を手に入れる……?

【参戦理由】
任務で敵のアジトを偵察中、偶然落ちていた白紙のトランプに触れてしまった

【ロール】
小学生(警察官の息子)

【weapon】
手裏剣などの忍具一式

【能力・技能】
○忍術
体内で練り上げた「チャクラ」と呼ばれるエネルギーにより、様々な現象を起こす術。
サスケは基本的な忍術に加え火遁の術を数種、そして雷遁を用いた必殺の突き「千鳥」を修得している。

○写輪眼
特定の一族だけが使える「血継限界」という分類に属する術。
うちは一族だけが発現させることのできる、特殊な瞳。
成長させれば様々な効果を持つが、現時点のサスケではまだ他者の技のコピー程度しかできない。

○呪印
邪悪なる忍者・大蛇丸に施された刻印。
サスケの感情が高ぶると彼の体に広がり、一時的に彼の戦闘力を強化する。
しかしその代償として、チャクラの消耗が非常に激しくなる。

【人物背景】
木ノ葉隠れの里の下忍。
名門・うちは一族の出身だったが、幼い頃に実の兄であるイタチがサスケ以外の一族を全て殺害。
イタチはそのまま里を抜けたため、うちは一族最後の一人となってしまう。
それ以来兄を殺すことを心に誓い、そのための強さを求め続けてきた。

今回は木ノ葉崩し終結から、イタチの襲撃の間からの参加。

【方針】
まだ迷っている。


570 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/04(日) 00:37:21 VfxC38Tc0
投下終了です


571 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:30:40 k/4SjGqE0

お疲れ様です。
改めて皆様、たくさんのご投下ありがとうございます。
また一部のみとなってしまいますが、感想を順次述べさせて頂ければと思います。



>ギルバート・デュランダル&キャスター

チェスを片手に思案を巡らせるのは、種運命のCV.シャアことデュランダル議長。しかし今回彼が想いを馳せているのは、デスティニープランのことではなかった。
デュランダル議長といえば黒幕、というイメージが強いので、死後(の直前)参戦で改心している状態の彼を見られたのはとても新鮮な気がします。
妄執から解き放たれた彼のサーヴァントは、同じく生前に囚われていた妄執から解き放たれた布道シグマ。
事実上のラスボスであった彼らの心変わりは、主人公たちの戦いが確かに意味を残せるものだったのだと再確認できるようでとても心地よいものですね。
死を迎えたことで生まれ変わる機会を得た二人が、かつてと違う道を見つけられるのか、今度こそ理想とした生き方を貫けるのか。とても先が気になります。
◆lkOcs49yLc氏、執筆お疲れ様でした。先を見守りたくなる、あたたかい気持ちになれる作品をありがとうございました!



>Girl in dream

――それは間違いなく、悲惨で悲壮な戦争の記憶だった。
少女はその中で抗い、大切なものをたくさんを喪って、そして自ら命の幕を降ろす間際、運命の悪戯で奇跡を奪い合う新たな闘争に呼び寄せられ――と、すごくシリアスな導入だと思ったのに、なんだこれは・・・。たまげたなあ。
ということで野獣先輩オッスオッス! 聖杯コンペの風物詩というか名物というかで、必ず候補話が来ると確信していましたぜ。
無↑辜↓の怪物と狂化の影響で淫夢厨的言動を繰り返すだけのクッソ哀れな狂人でありながら、こじつけに近い共通点で何者にでも変身できるというチート鯖。
なのにチート過ぎる! というよりもその作り込みに感心してしまうクオリティなのはお見事。野獣先輩への愛を感じますね。
MADレベルの切り貼り発言しかできない野獣先輩ですが、(相手がステシで執拗に巨乳を強調される美少女だからか)浜風を気遣う様子を見るに、この先ただの一発ネタでは終わらず男を見せる可能性が微粒子レベルで存在している……?
◆As6lpa2ikE氏、執筆お疲れ様でした。なんか芸術的な作品をありがとうございました!



>墓場より

アニメも好調なウルトラ怪獣擬人化計画。今回はその複数の世界観の内の一つ、POPから主人公とライバル(?)がコンビで参戦!
メフィラス星人がゼットンをけしかけてくると考えれば凄い脅威なはずなのに、まぁPOP版だしな……となってしまうメフィラス星人への一種の信頼感。
ジャミラへの気遣いにも現れているように、今は肉体に引きづられているのか善良な少女寄りの性格になっていて、これといった願いもない。ゼットンも根が悪い子じゃないので一安心。
逆を言えば、言動に小物臭さがありながらウルトラマンと引き分けた星人のカリスマである初代メフィラスその人でありながら、当時の判断力が単なる持ちネタに堕ちたポンコツ娘いなってしまっているということ。ゼットンともどもハイスペックながら、今のメフィラスに聖杯戦争の判断が一任されるとなることを考えると今度は安心できないかも……頑張ってメフィラスさん!
それにしても。ゼットンのクラスが「ウルトラマンへの刺客」であることをフィーチャーしてのアサシンという発想はなかなかに唸らされます。怪獣墓場にいるはずの彼女たちが何故召喚されるのか、の説明も抑えられていてさくさく読めますね。
◆v1W2ZBJUFE氏、執筆お疲れ様でした。ああ、こいつら今は怪獣娘化しているんだなって感じてほっこりできる作品をありがとうございました!


572 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:31:08 k/4SjGqE0

>『殉ずる者たち』

なんだ、何が起こっている。
それは幻術VSいとも容易く行われるえげつない行為。>>1程度の理解力では一読して把握しきれる自信のない複雑な能力合戦です。主従同士で何してるんだあんたらいったい。
ということで、志村ダンゾウとファニー・ヴァレンタイン、愛国心を謳いながら、お互いを含む何も知らない相手を平気で利用し犠牲にする、吐き気を催す邪悪な頭目二人、一応のチーム結成!
死に際、ヒルゼンに追いつけたかと問いかけたダンゾウですが、この調子を見るにまっっったく追いつけてなさそうですね。
卑劣様が三代目のどんな心を評価したのか、何を伝えたのか。二代目も三代目も、歴代の火影は身を以って示し続けたというのに、部下に犠牲を強要することとなったダンゾウは学び損ねてしまったのですよね。
そんなダンゾウを危険視するのは当然ながら、完全に同じ穴の狢な大統領。共食いの果てに滅びそうですがハイスペックのマスターとえげつない宝具を持つアーチャーとで、それまでに他の主従にとっては多大な悪影響が心配されますね。
◆XksB4AwhxU氏、執筆お疲れ様でした。邪悪への憤りを掻き立てられるような、負の面を見事に描写された作品をありがとうございました!



>シルヴェスター・アシモフ&セイバー

この世で最も強いものは子を思う母の愛なら、この世で最も危険なのは家族を守ろうとする父の愛。軍人でありながら母国を捨て、さらに他国を犠牲にしてでも家族を救わんとするアシモフの修羅の覚悟はまさにそれ。
先程の吐き気を催す邪悪チームとの受け取り方の違いは、本来のアシモフが間違いなく良き軍人であり、善き父であることを我々が知っているからでしょうね。そんな善人が、それでもと覚悟を決めてしまった時が最も恐ろしい。
それを体現するかのように召喚されたアシモフのサーヴァントは、元々は一般人でありながら最強仮面ライダー候補の一角にある仮面ライダーフィフティーン、葵連。
息子を蘇生するために悪に堕ち、歴代ライダーを蹴散らし、世界すら滅亡させようとした男。アシモフに引きずられたのか、呪縛から解き放たれる以前の状態での参戦です。
愛深き故に最凶と化した親父達の姿は、渋さよりも恐ろしさよりも哀愁を感じさせます。果たして彼らはその道を突き進むしかないのでしょうか。
◆NIKUcB1AGw氏、執筆お疲れ様でした。愛と正義について考えさせられる、深い作品をありがとうございました!



>ジンロウがジンロウ

最近、聖杯戦争でもメジャーになりつつあるSCPの中でも、個人的に一番お気に入りなワンワンが来てくれました。
時を前後して結成される、他の狼より弱いSCP-488-JPと、普通の人よりもしぶとく狂暴な殺人鬼ザックの凸凹コンビ。
聖杯戦争のことすら理解できず、住む家も食べるものもない苦しい貧困に晒されているはずなのに、一緒にゴミを漁ったり窮屈でも一緒に寝る仲になった少年ザックとSCP-488-JPの交流がどこか微笑ましい。
しかしその様を伝えようとした、彼らを拾った浮浪者の発した言葉は「恐ろしい人狼が来た」でした。
彼こそがスノーフィールドで噂される恐るべき怪物の意外な正体。神秘の秘匿にバリバリ抵触してそうですが、無力でありながら討伐令にさえも対抗できそうでとても行末が楽しみなコンビですね。
◆3SNKkWKBjc氏、執筆お疲れ様でした。SCP-488-JPの面白い性質を見事に活かした作品をありがとうございます!


573 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:31:30 k/4SjGqE0

>童話迷宮

人狼の次にスノーフィールドに訪れたサーヴァントもまた、狼。ただし今度は見せかけではなく本物の強者。第一十刃、コヨーテ・スターク。
NPCの両親を気遣うスタークの人の良さが風乃の言うように微笑ましく、だからこそ「弱くなったんだな」という言葉が、まるで我がことのように嬉しく感じられます。
そんなスターク、そしてリリネットを喚んだのは時槻雪乃と、そして姉の風乃。二つの魂が一組となっている者同士という縁はなるほど納得です。
お互いの能力の仕組みから、まず異常な状況を自分達にとって既知のものか否かを疑って掛かり、互いの能力特性で以って確かめるまでの手口もスマート。雪乃達の〈断章保持者〉としての経験と腕前を感じさせます。
厄過ぎる宝具や、願いがほぼ叶っているスターク側に対して雪乃側は思い詰めている等地雷要素もありますが、覚悟充分であることもあってかなり強力な対聖杯チームになりそうですね。
◆yy7mpGr1KA氏、執筆お疲れ様でした。幻想新綺譚と型月設定を見事に融合させた作品をありがとうございました!



>紅い拳の

か、かっこいいタル……! 読み終わった第一印象がそれでした。やっぱり一文字隼人は、仮面ライダー2号はかっこいい!
覚悟のない者に無理強いをせず、しかして見放て終わることなく。守る相手を選好みもせず、ただ人々の自由のために報酬もなく闘うストイックさ。渋みを帯びた格好良さが見事に描写されています。
そんな彼を喚んだのは、まるで正反対の意志薄弱男の拳三四郎。とはいえ、いくらオマージュ元とはいえ文字通りの英雄である一文字と比べては可哀想ですし、そもそもこんな状況にいきなり放り込まれたら普通の人間は誰だって彼のように反応するでしょう。得意のボクシングですら改造人間、しいてはサーヴァントとの差は明白に示されているわけですし。
しかし、それでも彼もまた、世界を背負って戦い、強敵を打ち破ってきた男。悪い奴ではなく、ただ勇気が足りないだけだという一文字の見込みが正しいのは、三四郎側の心理描写で我々にも充分に理解できています。
仮面ライダー(原典)と仮面ボクサー(派生)の、二人の男のどちらもが、その胸の奥底に熱い魂を持つからには。一文字に勇気を示され、格好良い男の意地を示してくれる時が来ると信頼できます。
◆uL1TgWrWZ.氏、執筆お疲れ様でした。男の子の魂が刺激されるような作品をありがとうございました!




繰り返しとなりますが皆様、本当にご投下ありがとうございました!
未だ感想をお送りできていない方々にも、追って感想を述べたいと思っておりますのでもうしばしお待ち頂ければ幸いです。
それでは私も候補作を投下させて頂きます!


574 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:33:47 k/4SjGqE0



   大昔の話よ。
   ウルムンは悪い王様に支配されていた。民は苦しみ、怨嗟の声は地に満ちた。人々は神に祈ったが、答えはなかった。

   悪王に夫と子供と両親を殺された一人の女がいた。女は絶望のあまり、荒涼としたデリラ山に登って死のうとした。
   死と静寂の山を七日七晩歩いた。それでも死ねず、嘆きの声は山を渡り、谷に谺した。女が我に返ると、そこには古き砂礫の竜、ズオ・ルーがいた。

   女はズオ・ルーに助けを求めた。『竜よ私たちを助けたまえ、我らは悪王に虐げられ死を待つのみです』と。
   だが、竜は答えた。『我は人喰いの罰でこの山に封じられ、長い眠りで力を失い、力にはなれない』と……。

   女は言った。『ならば私を喰らえ、この血と肉を竜の力として、悪王を倒したまえ』と。そして女はズオ・ルーの口に飛び込んだ。

   血と肉の供物により力を取り戻した人喰い竜は、封印より放たれた。ズオ・ルーは山を越え、砂漠を越えて飛び、宮殿に舞い降りた。竜は泣き叫ぶ悪王を喰い殺し、その手先たちもすべて喰らった。
   血の海となった宮殿から尖塔に登り、ズオ・ルーは人々に告げた。『血と肉を捧げよ、さすれば我は何度でも現れ、ウルムンの敵を喰らうであろう』と哀しい声で吠えた。
   竜は灰となった。そして竜の灰は空の彼方へと消えていった。再び血と肉が捧げられるまで、竜は眠っているの。今でも、ね……



        ナリシア「ズオ・ルー伝説」 皇暦四九六年






   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○
 




 ――――夢を見る。

 欲望渦巻く世界の変革を願った、一人の青年の生涯を。






 ――”俺”は、世界中を旅していた。

 困っている人を、少しでも助けたかった。争いも悲しみもない、平和で幸福な世界が欲しかったからだ。
 今までのように、俺ならそれができると信じて疑わなかった。

 …………だけどそれは、大きな間違いだった。

 一族の庇護から飛び出した現実の世界という広大な盤面に対して、俺には本当に小さなことしかできなかった。
 この世界を変えたいという大きな欲望を抱えていても、それを成し遂げるための力が足りていなかった。



 ――善意のつもりの施しは、俺の想った人々に届くことなく、彼らの血を吸う死の商人達が潤うために費やされていた。
 そのせいで更なる苦しみに晒された人達がいると知って、俺は居ても立ってもいられず駆けつけた。
 彼らを救うために。そして、過った世界の在り方を正さなければという、言い知れぬ焦燥のままに。



 突然の来訪者となった俺を、人々は警戒していた。
 どうして彼らを救いたいのか――なぜ、よりによって”彼ら”なのか。俺に、言えるはずがなかったから。
 平和ボケした金持ちの道楽だと思われていたのだろう。それでも、一緒に暮らして、共に汗を流し、時には遊んだりするうちに、いつしか笑顔を見る機会が増えた。
 ……そのきっかけになってくれたのは、きっと、誰より早く心を開いてくれたあの少女なのだと俺は思う。


575 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:34:37 k/4SjGqE0

 内戦で疲れ果てていた彼らは、それでも日々を懸命に生きていた。いつかきっと、争いが終わって幸福に生きられる日が来るという希望を共有していたからだ。
 誰も無意味に殺されたり、飢えて死ぬこともない平和な世界――俺の軽率な行いが、遠退けてしまった未来(あした)。
 間違った世界に盗まれたそれを、一日も早く彼女達に返してあげたくて、俺は奔走し続けた。



 なのに世界は、それを動かす人々の欲望は、取り返しの付かないほどに呪われていた。

 そして俺は、そんな世界(欲望)に対して、どうしようもなく無力だった。



 失われた希望を皆で育んでいた日々は、呆気なく破られた。
 前触れのない攻撃を受け、今朝挨拶をしたばかりだった村人が身体に穴を空けていなくなった。
 ……おそらくは、俺の寄付した金で買われた兵器によって。

 爆風と轟音に煽られた俺には、喪われることへの恐怖を我が身以上に覚えたものがあった。運次第で次の瞬間には切り離されてしまうかもしれない世界の中を、俺は必死に駆け回った。

 ――ようやく少女(ルウ)の小さな姿を見つけて、目立った怪我がないことを認めた時、俺は心から安堵していたと思う。
 だけど引切り無しに爆音や銃声の響く中、ルウはまだ恐怖の最中に囚われ、身動きできずにいた。
 そんな恐ろしい世界から助けて欲しいと、彼女は俺に手を伸ばし。俺はすぐ傍に行くよと頷いて――不意の暴力に、無様に転がされた。
 情けない俺の姿に、ルウが一層悲鳴を上げたその時。俺も悲鳴を上げてしまった。

 自分の身に迫った脅威にではなく――彼女の背後から迫る、空を飛ぶ爆弾を目の当たりにして。

 立ち上がる暇もなかった。ただ、届くはずのない手を伸ばすことしかできなかった。

 届くはずのないその手は、当然のように何も掴めなかった。

 視界を奪う爆発が晴れたその後には、俺と最初に打ち解けてくれたあの少女は、痕跡すら残さず消え失せていた。

 ――彼女は、殺されたのだ。
 ただの流れ弾で、何の意味もなく。
 あるべき未来を手にする前に、その生涯に終わりを迎えた。

 無力な俺には、ただ、声の限りに絶叫するしかできなかった。
 その声すらも、闘争の中に掻き消されながら。






 ……その後のことは、詳しくは覚えていない。
 俺の居た村を占拠した勢力に捕らえられ、生き残った人々と共に身代金を請求するための人質となった。
 だが、貧しい村のために動けるほど、国にも余力は残っていなかった。武装勢力もそれを踏まえて、見せしめとして俺達を用意していたのだ。
 俺は、何とか生き残った人達と一緒に脱出する方法を模索していたのだと思う――その頭の片隅に、俺に何かができるはずがないなんて、遅すぎる諦念を多分に抱えながら。
 それでも生き残った以上は何かをなさねばならないと、そんな強迫観念だけで動いていたのだろう。


576 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:35:17 k/4SjGqE0



 ――――なのに。
 それなのに。



 ……俺だけが、解放された。

 今の今まで支援の一つもくれなかった実家が、身代金を用意したからだった。
 あの時の、残された人々の浮かべた表情を、俺は今でも覚えている。忘れられるはずがない。
 ……彼らがその後辿った、運命も。

 そして、事実は捻じ曲げられた。

 結局は道楽の範疇で、家の庇護下という小さな世界から一歩も踏み出せていなかった俺は、帰国と同時、思いもよらぬ――悍ましい美談の主人公となった。

 ――偶然巻き込まれた内戦から、命懸けで村を救った政治家一族の御曹司という、センセーショナルな報道によって。

 偶然……違う。あの内戦は、俺のせいで起きたんだ。
 命を懸けて村を救った? 親の金で命を救われ、村を置いて来たこの俺が?
 ルウの未来を奪ったまま、壊してしまったこの俺が……?



 ……その一件以来、俺は実家を離れ、祖父の姓を使って一人で生きるようになった。
 少しのお金と明日のパンツさえあれば良い、なんて程度のその日暮らしを続けながら、各地を放浪し困っている人を見つけては首を突っ込んだ。
 多くの人を不幸にした俺は、その分も困っている人を助けなくてはならないと思ったからだ。
 政治家として大成すれば、もっと効率は良かったかもしれない。だけどそのためには、あの村のような犠牲を統計上の単なる数字と見て、利用しなければならない時がきっと来る――そんなことには、耐えられなかった。

 今度は、この手の届く範囲で。
 俺の願いが、渦巻く欲望に翻弄されてしまうことのないように。

 そして、その手がどこまでも届くように。
 今度こそルウを救えるように――世界の理不尽に敗けないだけの力がないのなら、そのために捨てられるものは全部捨ててでも。
 そんな想いで、俺は必死ながら、どこか乾いた日々を過ごしていた。

 ……そして、あの日。



「――――メダルを三枚ここに嵌めろ。力が手に入る」



 俺は、アンクに出会った。


577 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:36:24 k/4SjGqE0






   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○
 





 そこで、彼の意識は覚醒した。
 久しく体験していなかった、”夢”という生理現象。彼には不要なはずの、記憶の整理に伴うこの状態を招いた要因が何であるのか――学ぶことなく記憶に刻まれた知識から、自然と正解は導き出せた。

「今のが貴様の過去というわけだな。バーサーカー」
「……多分、そうですね。レメディウス博士」
 傍らに立つ東洋人風の青年――バーサーカーは、どこか気まずそうに返事をした。
「貴様も私を見ている、というわけか」
 対し、レメディウスと呼ばれた男は、錆びた声で現状を認識する。

「どこまで見たのかは知らぬが、レメディウス・レヴィ・ラズエルは既に死んだ。今の私は砂礫の人喰い竜、ズオ・ルーに過ぎない」

 告げた覚えのない名前を、今日になってバーサーカーが口にしたのは因果線(ライン)を通した共鳴夢の影響なのだろう。
 それを理解した上で、半身を起こしたレメディウスはその名を改めよと己がサーヴァントに告げる。
「此度の舞台で与えられた役割も、な」

 故国に過度な干渉を行う大国(アメリカ)への警告を行うため、その事前準備としてこのスノーフィールドに潜伏中の武装組織『曙光の鉄槌』の党首、通称「砂礫の人喰い竜」ズオ・ルー。
『白紙のトランプ』により誘われる以前と、ほぼ同一の肩書と立ち位置を以って聖杯戦争に挑むマスターの一人――それが今のレメディウス・レヴィ・ラズエルの置かれた状況だった。

「ならば何一つ、私の為すことに変わりはない。ウルムンの民のため、戦い続けるだけだ」

 縦横に傷跡を走らせた顔に遮光眼鏡を掛けて、その翡翠の瞳を隠しながら――レメディウスは静かに狂気を口にする。
 浅慮と無知ではなく、知性故に選択した破壊と闘争の意志を。

 そう――聖杯戦争に参加する以前から、レメディウスは戦っていた。
 破壊だけを残された手段として、人民を虐げる独裁者と、貧しき国々を搾取する大国と。
 そしてそんな歪みを許した、人類(世界)の在り方そのものと。



 ……本来のレメディウスは、そんな革命のために命を賭す人間ではなかった。

 巨大咒式工業であるラズエル財団の未来を担う天才として生を受け、それ故の束縛に不平を漏らす程度の、典型的な富める者だった。
 視察に赴いたウルムンという国で武装組織に誘拐された後でも、まさか自分が死ぬはずがないなどと――その国に、自らが開発した兵器群が売られていたとしても、道具に善悪などなく、使い手次第であるなどと、どこか他人事にしか認識できていなかった。

 だが、それは誤りだった。

 平和のための抑止力にと想いを込めた、人間が持つ個人の可能性を広げるものであるはずの咒式。
 それが人間を虐げるために使われている現実を見て、レメディウスはようやく己が欺瞞を理解できた。
 設計者であるレメディウスがどんな想いを込めようと、武器は武器でしかなく。そして、砂漠の人々の血を吸ってラズエル財団を潤すための商品でしかなかった。

 言語と意味に呪われた世界では、そんな、明らかな不正義が罷り通っている。
 だが、呪文で魔法が起こらないように。胸の内で祈るだけでは、口先だけで愛と平和を唱えるだけでは、何も変わらない。
 変革という奇跡は、勝ち取った者だけが手にできる報酬なのだから。

 ……ならば。

「聖杯を掴む。願望器の持つ絶対の力で救国を、救世を成し遂げる」

 無間に続く、人の世の業を絶つためにこそ、レメディウスはその奇跡を行使する。


578 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:37:43 k/4SjGqE0

「……そのために、他のマスターを殺すんですか?」

 そんな主人の渇望に、狂戦士のクラスで召喚されたサーヴァントは悲しみを滲ませた声で、咎めるような問いを投げた。

「無論。必要とあればいくらでも殺してみせる」
「それは……ナリシアさんのためですか?」
「そうだ。そして、全ての人類のためでもある」

 核心を衝こうとするバーサーカーの言葉にも、レメディウスは揺らがなかった。

 ナリシア。
 家名も何もない、ただのナリシア。
 砂漠の国に生きた、心優しく素朴な少女。

 そしてレメディウスをズオ・ルーとして生き永らえさせるため、その身を捧げた供物の名。

「争いもなく、誰もが平和で幸福な世界。ナリシアの祈る、人類共通の悲願を実現することだけが、私の全てに他ならない」

 思い出してなどいない。忘れたことなど、一刹那すらありはしない。
 彼女だけではない。予選のためのムーンセルの干渉を唯一の例外として、完全記憶能力を持つレメディウスはこれまでに体験した全ての出来事を、一ビットルすら漏らすことなく記憶し続けている。
 故に彼には過去はなく、全てが現在と等価値で、全く同時に存在している。

 それは、自らをチェルス将棋の大陸王者に導いた一手を指した瞬間の高揚感や、昨夜の死地において紙一重でバーサーカーの召喚が間に合った安堵のみならず。
 ゼムンの背信に過ぎった悪寒も、ドムルが息を引き取る際の絶望も、ハタムに浴びせられる呪いの言葉も、ナジクとナバロを贄とした手触りも、ナリシアを嚥下する悍ましい喉の感触も。

 忘却という恩寵を失くした人中の竜は、全ての痛みを克明に抱えた記憶の焔に焼かれ続けている。
 その灼熱に苛まれる限り、人喰い竜の歩みが緩まることはあり得ないのだ。

 交わした約束を果たすその時まで――否、その末に、楽園へ辿り着いた後さえも。

「そのために、聖杯戦争で優勝しようと? 争いのない平和な世界のために、今ここで殺し合いを選択するんですか?」
「賢しげに理想を唱えるだけの愚か者には、何もできないし何も変えられない。そのような者は、存在していないに等しい」

 矛盾を追求しようとするバーサーカーの詰問も、それ自体はレメディウスを小動もさせはしない。
 だが、値踏みにしては執拗に過ぎる疑問には、微かな苛立ちが蓄積されていた。
 故にだろう。次に舌に載せた言葉には、恣意的に選んだ狂気ではなく、純粋な憎悪が滲んでいた。

「そして覚悟なき偽善など、害悪にしかなりえない」

 その感情のまま、夢により与えられた、己とバーサーカーの縁となったであろう体験を、レメディウスは突き返す。

「他ならぬ貴様もよく知っているだろう、バーサーカー……いや、仮面ライダーオーズ。無力な偽善が招いた犠牲を知り、その欲望を貫き通す力と覚悟で再起した英雄よ」


579 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:38:25 k/4SjGqE0

 前後し並列した過去の出来事の中で、レメディウスは”アンク”と出会った後のバーサーカーの生前もある程度把握できていた。

 絶大な力を秘めた欲望の結晶(メダル)の力を操る戦士、仮面ライダーオーズとして戦う日々を。
 時には大禍つ式(アイオーン)や長命竜(アルター)すら越える怪物達を薙ぎ倒し、人々を救うというかつて果たせなかった欲望を満たし続けた男の過去を。

 ――そのオーズが集めた力の中でも、此度の召喚で唯一持ち込めたという紫の宝具(メダル)が、一際危険な代物であるということも。



「……俺が変わったのは、オーズの力のせいじゃないですよ」

 その過去を知っているからこそ、同じ感情を抱いた砂礫の人喰い竜に授けられた”力”であると目していた英霊は、しかしレメディウスの予想に反する答えを返した。

「……何?」
「確かに俺は力が欲しかった。どこまでも届く、どんな人でも救えるだけの力が欲しかった。オーズの力は、確かにそんな俺の欲を叶えてくれました。
 だけど、違ったんです。結局あんな腕じゃ……一番近くに居たあいつの手だって、最後は掴むことができなかった」

 その時のことを思い出しているのか。何もない掌の中に残された、何かの欠片を見るように視線を下げていたバーサーカーは、その拳を握り締めてレメディウスと対峙する。

「力に頼るのは簡単です。でも力だけに頼ったところで、必ず限界があります。どんなにあっても足りることはない――強すぎれば、守りたいものまで壊してしまうのに。
 ……そんなものじゃ、俺の欲望は満たせなかった」

 沈痛な面持ちで吐き出されたそれは、これまでに出会った他の誰かしたのなら。所詮は空虚な理念、単なる言葉の羅列としか認識できなかったことだろう。

「――私の戦いは愚かであると?」

 しかしレメディウスにとって、今回だけは違った。その言葉を口にしたのが、他ならぬバーサーカーであったからだ。

「そうは言いたくありません。あなたの気持ちもわかりますから。
 だけど、その手段は間違っています。絶対に」
「……では、代案を示せ」

 譲ることなく向かい合うバーサーカーに、遮光眼鏡を外したレメディウスは、その緑の鬼火となった視線に載せて、絶対零度の言葉を投げた。

「他に、どのような方法ならウルムンの民を救える? 体制に逆らい、内臓を引き出されて殺される男を、何十人もの兵士に陵辱される女を、飢えと病で死んでいく子供を、そしてルウとナリシアを、どんな方法が、言葉が救う?」

 かつて、青年達の認識はあまりに狭く幼かった。
 それまでは想像すらしなかったあの地獄は、何ら特別なものではなく――世の中にありふれた、何の生産性もない出来事に過ぎなかった。

 誰もが幸福を望んでいるというのに。貧困が、無知が、憎悪が欲望が齎す地獄が、人の世には偏在していたのだ。
 そしてその死によって齎される再分配で、富める自分達だけは安穏と生きていた。

 そんな世界は間違っている。
 ならば、正さなければならない。

 ――――――――だが。

「……頼む。もしそれを知るなら教えてくれ、異邦の英霊よ。何がおまえを満たし、変えたのかを。人々を救う方法を、誰も傷つけないで済む方法を! ルウとナリシアを救うその術を!」


580 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:39:31 k/4SjGqE0

 レメディウスが吐いたのは、世界の歪みを憎悪する砂礫の人喰い竜の詰問ではなかった。
 それは理不尽を前に立ち尽くすしかない、己の無力さに耐えられない少年の漏らした静かな慟哭だった。

 あるいは痛ましさのあまりに、直視に耐えないかもしれない、弱々しい絶叫だった。

「……ありますよ」

 しかしバーサーカーは、レメディウスと同じ地獄を見て、正しく絶望し、なお生まれる希望のために戦った欲望の王は。
 同じ祈りのために戦い抜き、生涯を駆け抜けた英霊は、レメディウスの痛みから逃げなかった。

 自らの見出した答えを告げるために、彼は、英雄は、レメディウスの下にやって来てくれたのだから。

「皆で、手を繋ぐんです。一人一人、お互いを助け合えるように……いつか、世界中の皆で」

 そして真摯に示された答えは、余りにも単純だった。

「……何?」
「どんなに大きな力を手に入れても、どんなに凄い天才でも。一人の手が届く範囲なんて、広い世界のほんの片隅にしかならないんです。
 だから……一人で何とかしようとした俺の手は、あの子に届かなかった。あなたの手も、ナリシアさんには届かなかった」

 自分達を踏み潰したこの世界(地獄)を振り返るバーサーカーの顔に、微かに悲痛な影が射す。
 それを晴らしたのは、彼の手に入れた絶大な力ではなく――その口から吐き出された、生涯を通して得た答えだった。

「それでも、皆で手を繋ぎ合えば――それは、どんな遠くにも届く、無限を越えた俺達の腕になるんです」

 そんなありふれた、誰でも考えつくような綺麗事を。
 世界を救いたいという己の欲望のために、地獄を経てなお全力で生き抜いたはずの、神にも到る力を得た英雄であるはずの彼は、大真面目に語ってみせた。
 それが、己の見出した貴き解であるのだと、心底からの確信を以って。

「……繋いでいると思う手を、突き放される時にはどうするつもりだ?」
「その時は……まだ、手を繋いでいる人達と一緒に頑張ります。もう一度、その人とも手を繋ぐことができるように」
「貴様はそれで、世界を変えることはできたのか?」
「俺が生きてる間にってことなら……多分、少しだけ」

 しかし、確かに変えられたのだと。

 そしてその変革は……彼の手を繋いだ誰かの空いた手が掴んだ次の誰か、そのまた次の誰かへと受け継がれ、これからも続いて行くのだと。
 バーサーカーは、暗に告げた。






   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○
 





「あなたが受けた裏切りは、俺の体験したものよりずっと酷いと思います。でも、だからって絶望に身を任せて欲しくないんです」

 今も彼を苛む記憶の痛みを思いながらも、バーサーカーはレメディウスに耐えて欲しいという望みを伝える。

「……あなたは確かに世界が変わることを望んでいた。けれどそれは、人間の可能性を信じていたからのはずです――力でその芽を摘む前に、もう少しだけ、信じてみて貰えませんか」

 人は、世界は変わっていく。欲望がある限り、何かが生まれ、変わっていく。
 時に行き過ぎた欲望に振り回されることがあるとしても、いつか人類は成長しその幼年期を終えるのだと、バーサーカーは信じている。

 何故なら、誰もがより良い明日を望み、欲しているのだから。
 世界(地獄)を楽園へ変革するという奇跡は、いつの日にか人類が正当に獲得する報酬であるのだと、信じていた。


581 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:40:19 k/4SjGqE0

 だから、たった一人でそれを与えてみせるというかつての己の、そしてレメディウスの理想は、恵まれているが故の傲慢さに起因する安易な救世主願望に過ぎない。
 誰も取り零したくないという気持ちは本物でも。たった一人によって救われるような世界とは即ち、そのたった一人の物でしかないディストピアなのだから。
 旅先で出会った人々がその地域によってまるで異なる人生観を抱えていたように、一人一人の見ている世界は違うものだ。
 それをたった一人が急いて救済する、などと言っても。仮令聖杯の奇跡を以ってしても、必ず歪みが生まれてしまう。
 ならば、都合の良い誰か一人が全てを背負うのではなく、一人一人、皆で変えていくしかない……だから、焦らないことが肝要なのだ。

 その、一人一人が変わるための、最初の一歩となる祈りを抱えた青年にそれを伝えるために――そして、その時まで支えるために。
 バーサーカーは、ここまで来た。

「今すぐじゃなくても構いません。だけどその時までは、俺が、あなたの手を掴んでいますから」

 かつて、アンクがこの手を掴んでくれたように。
 今度は自分が、レメディウスの手を掴む。

 そんな決意の視線を前に、レメディウスは感情を殺したままに吐息を一つ、砂漠の夜風のように零していた。

「……貴様は、恵まれているのだろうな」
「そう思います。勿体無いくらい、たくさんの仲間に助けて貰いましたから」

 レメディウスが、記憶の檻に囚われた人中の竜が恵まれていると指したのはおそらく、それだけではないのだろうとバーサーカーも理解していた。
 だとしても。オーズの力も、無慈悲な忘却の救済も彼には与えられることがないのだとしても、それだけは彼にも掴めるはずだと信じていたから、頷くことができた。
 レメディウスもその首肯を認め、一言一言、噛み締めるようにゆっくりと口を開いた。

「貴様の望む方法でウルムンに、世界に平和を呼べれば良いのだろう。かつてのレメディウスも、そのような美しい理論で成り立つ世界に憧れている」

 完全な記憶力のために、逆説的に過去を失くした男は奇妙な文法で、バーサーカーの訴えに理解を示した。

「だが、それは所詮傲慢な夢想に過ぎない。あるいはいつかの未来に訪れる救済の奇跡だとしても、今この現実の前にはどこまでも無力だ。
 それでは今すぐに、全てを救うことなどできはしない」

 しかしそれは、何の意味もない言葉のやり取り、会話の中での一定の譲歩に過ぎなかった。

「愚挙だとしても構わぬ。可能性が低かろうが、今苦しむ者すら救えるのであれば、私は悪鬼羅刹の道を選択する」

 何故なら、レメディウスとバーサーカーは別の人間で……二人の見ている世界は、同一の物ではなかったからだ。
 死者(バーサーカー)は、未来を信じていた。そして生者(レメディウス)は、今と過去に囚われていた。

「……本気なんですか」

 バーサーカーは微かに声を震わせながら、己がマスターを詰問する。

「本気でウルムンの人のためなら、聖杯戦争に巻き込まれた人は死んでもいいって言うんですか!?」
「召喚に応じた以上は、貴様にも協力して貰うぞバーサーカー。貴様が望む世界の実現のために、この争いで流れる血をこの世最後の犠牲としてみせろ」


582 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:41:00 k/4SjGqE0

 それで会話は終わりだとばかりに背を向けたレメディウスに、バーサーカーは待ったをかけた。

「……あなたはかつて、ズオ・ルーのお伽話を哀しい物語だと言いました」

 垣間見たレメディウスの記憶。愛する少女に教えて貰った伝説に、そんなものに縋るしかなかった彼女達の境遇にレメディウスが覚えた感情から目を背けるなと、バーサーカーは訴える。

「哀しむ人たちが、本当には救われていない。それをなぞることが、本当にナリシアさんとの約束を果たすことになるんですか!?」
「黙れ」
 だが――それが人中の竜の、逆鱗に触れてしまった。

「ナリシアの遺志も含めて私自身の意思。それを選び取った私の意志が私を動かす。それは最早私にも、誰にも止められない」

 錆びた声を前に、いいや止めてみせる、と微かに構えたバーサーカーに対して、見せつけるようにレメディウスはその掌を返した。

「覚悟の足りぬ貴様にもだ、バーサーカー」

 誇示された令呪。
 それを見咎めた瞬間。その時点で造反していれば、続く文言は阻止できたかもしれない。

 しかし、バーサーカーは――火野映司は、血に塗れた杯で私欲を満たすためではなく、レメディウスを救うためにここに来た。
 ――彼を殺すことなど、できるはずがなかった。

 その躊躇が、以後の彼の運命を決めた。



「令呪を以って我が傀儡に命ずる。私に使われる力として、何もかもを忘れ、狂い続けていろ」



 砂礫の人喰い竜が呪いの息吹として放ったその言葉は……あるいは、嫉妬と羨望、そして慈悲であったのかもしれない。
 だが、それを確かめる時間など与えられることもなく、火野映司の意識は令呪の補助で働きを増した狂化スキルにより塗り潰された。

 ただ、誰かが自分達を止めてくれることを。そして記憶の焔に苛まれるレメディウスの魂に、一抹の救いが訪れることを、最後の瞬間まで祈りながら。



 斯くして――全ての欲望を否定する紫の氷竜は、今、砂礫の人喰い竜が盟に加わった。






   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○
 





 狂化スキルの影響で強制発動した宝具によって、バーサーカーは異形への”変身”を果たした。
 その状態を維持するために要求される咒力は決して少なくはなかったが、超級の咒式士たるレメディウスには差し支えのない程度に過ぎなかった。
 とはいえ、悪目立ちが過ぎるのも事実。故に彼は、最早外れることの無い仮面に素顔を隠した己のサーヴァントを霊体化させ、生者の視界から消失させた。

「……言われるまでもない」
  
 そうしてひとりきりになった部屋の中で、レメディウスは独白する。

「いつか私は破滅する。徹底的に、壊滅的に、己自身にすら裏切られて」

 人の相互理解のための言語が、意味が、その始まりから呪われていたのだとしても。
 聖杯という奇跡があれば、あるいは人類は諦めていた楽園に辿り着けるかもしれない。


583 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:42:48 k/4SjGqE0

 だが、レメディウスだけは、そこに立つことはできないだろう。
 僅か足りとも損なうことのできない過去が、彼の魂を捕らえて離さないのだから。

 そんなレメディウスの見ている景色が、砂漠の街角でナリシアの望んだ世界とも、火野映司が変えた世界とも異なっている可能性など、とうの昔に理解している。 
 だとしても、あの出会いの日から、全ては決まっていたのだろうから。
 そして血と肉の誓約が、この身を生かし続けているのならば。

「それでも、それでも私は、僕は……この選択を、し続ける」

 嗄れた声が漏らしたのは、泣き笑いのような決意の再認だった。






【出展】仮面ライダーOOO
【CLASS】バーサーカー
【真名】火野映司
【属性】混沌・狂
【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷B+ 魔力C 幸運D 宝具B
(※宝具発動時、狂化補正込みのステータス)

【クラス別スキル】
狂化:E+++
 理性の代償として能力を強化する。体内の紫のコアメダルに由来するスキル。
 通常時は恩恵を受けない代わりに正常な思考力を保てるが、ダメージを負うか命の危機を認識するたびに幸運判定を行い、失敗すると暴走する。
 現在は令呪の効力によって、常時暴走している状態に固定されているため、実質スキルとしてはBランクに相当する状態にある。そのため理性の大半を奪われ、全ステータスが向上している。

【保有スキル】
擬似生命・欲望結晶:B-
 グリード。地球上の生命の持つ欲望を結晶化したメダルを核とする擬似生命体。
 バーサーカーの場合、特定のクラスでのみ発現するスキル。
 純粋な生命としての性質が薄れ、逆説的に生物的な死の概念への耐性を獲得している。

魔力放出(氷):A
 宝具『凍てつく古の暴君』発動時に付与されるスキル。
 冷気が魔力として肉体に宿る。生身で触れれば即座に凍結してしまうほどの凄まじい冷気で、自らの周辺を氷河期のように変えてしまう。
 また翼で起こした突風や、口から放つ息吹にも同様の効果を付与できる。なお、凍結させる対象はある程度指向性を持たせて選択することが可能。

心眼(偽):B-
 宝具『凍てつく古の暴君』発動時にのみ獲得する、動物的な直感・第六感による危険回避。
 本能的な働きのスキルであるため、狂化中にも有効に機能している。
 プテラシールドの気流感知能力と合わせ、視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

道具作成:E-
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 サーヴァント化したことで獲得したスキルで、マスターの魔力と欲望を結晶化したセルメダルと呼ばれるアイテムを作り出すことができる。
 生前には幾つかの理由から持ち得ない能力だったが、狂化中でも戦闘で必要になった際には本能的に行使可能。


584 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:43:24 k/4SjGqE0

【宝具】

『凍てつく古の暴君(プトティラコンボ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 最大補足:1人

 絶滅動物と幻想種の欲望を結晶化させた、無の属性を司る紫のコアメダルによって変身した形態。仮面ライダーオーズが誇る多彩な形態の中でも、無敵のコンボと称される力。
 発動することでバーサーカーはサーヴァントとしてのパラメーターを与えられ、幾つかのスキルが付与されるが、狂化の幸運判定に失敗し易くなる補正が掛かる。また狂化判定の失敗時にはバーサーカー自身の意思を無視して自動的に発動する。
 力の源の都合上、この宝具発動中のバーサーカーは竜種寄りの幻想種としての属性を付与されており、変身後はその身体能力とスキル、更に伸縮自在の角や尾を凶器とした獣のような攻撃を交えた、狂戦士にしても人間離れした形の戦闘を行う。
 また感情の根源である欲望を否定する力を持つため、この宝具を発動したバーサーカーはランク以下の概念的な加護を判定次第で無効化するという、適用範囲こそ異なれど一部の”死徒”とも似通った特性を有している。


『今は無き欲亡の顎(メダガブリュー)』
ランク:B+ 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人

 古の暴君竜の頭部を思わせる、戦斧と大砲を模した二つの形態を有した手持ち武器としての宝具。
 紫のコアメダル由来の武装だが、他のメダルで変身した際にも使用可能であるため、独立した宝具として登録されている。本体同様、欲望を否定する性質を持つ。
 また目にした他者に本能的な畏れを与える力を持ち、幸運判定に成功すると筋力と敏捷、魔力を1ランク低下させる”重圧”を与えることができる。
 この効果は味方となる者にも作用してしまうが、精神干渉に対抗するスキルで無効化が可能。また一度失敗した相手に対しては二度と判定が行われない。
 更に、セルメダルを”喰らう”ことで行えるスキャニングチャージと呼ばれる擬似的な真名解放を両形態に有し、それを介することで真の破壊力を発揮することが可能。
 スキャニングチャージによる攻撃は、消費したセルメダルに応じ破壊力を上昇させる特性を持っており、特に《グランド・オブ・レイジ》はランクを越え理論上無限に威力を向上させることができる。その際どれだけの負荷に晒されても、強靭な自己修復能力を持つために武器としての性能は変わることなく維持される。


【weapon】

・オーズドライバー&オースキャナー:仮面ライダーオーズの変身に用いるアイテム。本来ならこのベルトも独立した宝具足り得るが、バーサーカーとして召喚された際は変身できる姿はプトティラコンボのみであることから、今回は『凍てつく古の暴君』の一部という形で現界している。プトティラコンボへの変身、及びスキャニングチャージの一種《ブラスティングフリーザ》の発動の際に用いられる。
・紫のコアメダル:時の錬金術士達によって生み出された、絶滅動物と幻想種の欲望を結晶化させた魔術礼装。オーズドライバー同様、『凍てつく古の暴君』の一部として現界している。
 欲望の結晶という半概念的な物質であるため本来破壊することはできず、その特性を活かして宝具を発動していないバーサーカーの身を守る盾として自律的に動くことが可能。
・セルメダル:道具作成で作り出すことのできるオーメダルの一種。コアメダルとは違い、単純な強度以外に損壊への耐性を持たない消耗品。生前実際に行ったことこそないものの、グリードとしてヤミーという使い魔を生み出すこともできる。しかしバーサーカーとしての召喚であるため再現されていない。


【人物背景】

 右腕だけの怪人アンクのコアメダルを拾った事を契機に、彼から託されたオーズの力で仮面ライダーとして、世界の存亡と人の欲望を巡るグリードとの戦いに身を投じた青年。

 元は裕福な政治家一族の出身で、世界中の子供達を救うことや世界を変えることを目標とし、多額の寄付や援助を目的とした紛争地帯への旅を行っていた。
 ところがその寄付を内戦の資金に利用されて情勢が悪化し、結果として訪れた紛争地帯の村で心を通わせた少女を目の前で死なせてしまうことになる。
 この時現地の人々とともに武装勢力の人質にされたが、政治家である家族の根回しによりただ一人釈放され、さらにこの一件を「戦地を救った勇敢な政治家の息子」という美談に仕立て上げられてしまった。

 己の夢を他者の欲望に振り回された挙句、世界という現実への無力感、無思慮な善意で多くの人を犠牲にした自分だけが無事に生還してしまった罪悪感に打ちのめされた彼は、この事件を契機に自分自身の欲望や己の命に対する執着を失ってしまう。


585 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:44:37 k/4SjGqE0

 かつて世界を望んだ程の大器でありながら、中身の枯れてしまった欲望の空白は、より多くの欲望を受け止めるための器として彼をオーズの最適格者とするも、やがて復活した紫のコアメダルの付け入る隙となってしまい、暴走する危険性とグリード化による人間性の喪失という二つの危険を孕んだ爆弾の様な状態となってしまう。
 紫のメダルを制御するために「自分の欲を取り戻す」ことを提案された映司は、「どこまでも届く、誰をも助けることのできる腕」が、自分が人を助けるためにそれに見合う「力」が欲しかったこと、そしてそれを既にアンクが叶えてくれていたことに気づく。
 続く激闘の末アンクと、アンクの意識が宿った割れたタカ・コア以外の全てのメダル、即ち手にしていた力の全てを失ったが、自分が欲していた本当の力は「どこまでも届く、誰をも助けることのできる腕」=「自分と他者を繋ぎ紡がれていき、そして広がっていく手」つまりは絆であると悟り、自らの欲望を取り戻す。そしてもう一度夢を叶えるため、そしていつか割れたタカ・コアを復元してアンクと再会する術を探すために、再び世界を巡る旅に出た。

 その後の彼は、未来から時空を越えて飛来したコアメダルを巡る騒動の中でオーズの力を取り戻し、事態解決のために中心的な活躍を見せ、また紛争地で戦いを止める人達と交流し、彼らの声を届かせるために一人の死者も出さず全兵器を破壊することで内戦を強制的に終結させたり、多くの仮面ライダーの力が必要となる戦いに幾度と無く駆けつけたりと、少しでも優しい世界を実現するために最期まで戦い続けたと言われている。



【サーヴァントとしての願い】
 火野映司の欲望は果てしなく、きっと満たされることはない。もしも聖杯を使う機会を得られれば、彼は世界から悲劇を消すように願うことだろう。
 しかし、そのために犠牲を払う必要があるのなら、彼は聖杯を否定する。それは彼の願いに真っ向から対立するものなのだから。
 故に、レメディウス・レヴィ・ラズエルのサーヴァントとして火野映司が召喚されたのは、欲望のままその手に聖杯を掴むためではない。
 かつての己と重なる、しかしより理不尽な悲劇に見舞われたレメディウスに、手を差し伸べること。それがこのサーヴァントが、彼の下に馳せ参じた理由だった。
 その言葉が聞き届けられず、令呪によって理性を奪われた純然たる殺戮兵器へと変貌させられてしまった今も、狂気の澱に眠る彼の想いは変わらない。
 これ以上、この優しい青年が苦しむことがないように、手を差し伸べる誰かが現れてくれること。そのただ一つだけを願い続けている。
 それを成せるのが己ではないと理解した今は、これ以上彼が罪過に苦しむことがないように――自分達を止めてくれる誰かが、一刻も早く現れるのを。彼はただ、待ち続けている。



【基本戦術、方針、運用法】
 本来はバーサーカーながら、平常時は狂化を抑えて十分な思考力を保った戦士としての活躍も期待できるサーヴァントだった。
 しかし令呪により、常にその狂化を全開にしているために人格はほぼ消滅。マスターの忠実な尖兵と化し戦力を安定させた代わりに独自の判断力を喪失し、また座から得た知識を活用できなくなった。

 常に狂化と自己強化の宝具、そしてそれによって付与されるスキルを全開としているためスペックは安定しており、要求される膨大な魔力量もレメディウスの咒力(魔力)なら十分に賄えている。
 結果、攻防どちらにも適用できる魔力放出(氷)と心眼(偽)に加え、呪いや毒、病等への抵抗や宝具に概念防御への耐性、判定次第で他者のステータスを低下させる”重圧”まで併せ持つなど、多くの能力が高水準で纏まっており、狂化で得た高ステータスを存分に活かすことが可能となっている。ただし竜種寄りの幻想種としての属性を付与されているため、竜殺しや対幻想種の属性を持つ相手は天敵となり得る。
 また狂戦士故に繊細な立ち回りを要求することは難しく、座の知識を活用できず駆け引きにおいて不利になっているなど、場合によってはあっさりと不覚を取る可能性も捨てきれず、マスターには慎重な運用が求められている。

 幸い、レメディウスにとってはサーヴァントという勝利の鍵ではあっても、必勝を期待する切札は別の形で存在しているため、自然とそのような運用になることだろう。


586 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:45:14 k/4SjGqE0

『■■■』を入手すれば低下したレメディウスの自衛能力の改善されるのは当然だが、中でも籠城戦略を補強できること、レメディウスや禍つ式達がある程度対魔術防御を用意できること、そして『■■■■』とバーサーカーの戦力維持の兼ね合いを図れる公算の高さと、レメディウスが切札として確保している禁断の咒式兵器・〈六道厄忌魂疫狂宴(アヴァ・ドーン)〉発動の妨害阻止と制御をより確実なものとできる可能性から、積極的に狙う標的としてはキャスターのサーヴァントを狙うのが望ましいと言えるだろう。



【出展】
 されど罪人は竜と踊る Dances with the Dragons

【マスター】
 レメディウス・レヴィ・ラズエル

【参戦方法】
 武器商人パルムウェイとの交渉後、時計塔にエリダナの咒式士が踏み込むまでの間に、偶然入手した『白紙のトランプ』により、自らの術式で支配する禍つ式諸共に参戦

【人物背景】
 巨大咒式企業であるラズエル社の御曹司である青年。天才咒式研究員として世界にその名を知られていたが、ある時、仕事で訪れたウルムン共和国で反政府組織『曙光の戦線』に誘拐される。
 ウルムン共和国は独裁者ドーチェッタにより圧政を敷かれており、搾取や虐殺が人々を苦しめていた。そのため『曙光の戦線』などの反政府組織による内乱が続発。そしてウルムン共和国政府にはラズエル社が武器を売っていたために、レメディウスは人質として囚われることになったのだ。
 しかし、構成員の少女であるナリシアとの交流を始め、様々な出来事を経てレメディウスは『曙光の戦線』と親しくなり、また、人々のためにと自らが設計した咒式具が虐殺に用いられているウルムン共和国の現状を知る。
 やがてナリシアを守るため、そしてウルムンの現状を何とかするために、彼も『曙光の戦線』の一員として戦うようになる。

 特に戦闘訓練は受けていなかったが、いつか大陸最高峰に連なると言われていた攻性咒式士としての才能、更には趣味だったチェルス将棋から転じた指揮官としての優れた能力を開花させ、民衆の希望となって行ったレメディウス。
 しかし、ある時、故国から送り込まれた工作員であった『曙光の戦線』の党首によってナリシアや一部の仲間と共に、ドーチェッタへと売られることとなる。
 そしてレメディウスは拷問を受け、ナリシアを目の前で陵辱された挙句、その人々を助けたいという理想が折れるところを見たいというドーチェッタの悪意でまともに水も食べ物もないデリラ山に仲間と共に放り出される。
 全員で生き延びようとするものの、追い詰められた末の仲間割れによって殺し合いが発生し、約二ヶ月後にはレメディウスとナリシアだけが残されることに。
 飢えと渇きと疲労と負傷、そして絶望によって動けず、死を待つだけとなった二人だったが、ウルムンを救い得る天才であり、想い人であるレメディウスを生かすために、ナリシアは愛の告白と自らを食べて生き残って欲しいという願いを言い残し自決してしまう。

 これらの悲劇を目の当たりにし、元々の優しさと「一度記憶したものは二度と忘れることが出来ない」という天才的な性質が、彼にウルムンの伝説にある、女を喰らい独裁者を滅ぼした救国の人喰い竜「ズオ・ルー」を名乗らせ、その超人的な咒力と知識によって最悪の怪物である〈禍つ式〉の召還、更には大量虐殺咒式の使用も辞さない烈しい革命家へと変えてしまうことになる。

 全てはナリシアのような悲劇が、二度と繰り返されない世界のために。



【weapon】
・魔杖剣〈内なるナリシア〉
  素朴な中に繊細な美しさを秘めた、長い刀身をしている鈍色の魔杖剣。最愛の少女の名を冠した、天才咒式博士レメディウスの最高傑作。咒式弾倉の形状は不明。
  この魔杖剣自体が強力な咒式干渉能力を有しており、レメディウス自身の能力と合わせることで千歳級の長命竜(アルター)や形式番号五〇〇前後の大禍つ式(アイオーン)と同等の強力な咒式干渉結界の展開が可能。
  咒力と魔力を互換と見做す場合には事実上、対魔術防御結界を恒常的に展開できる魔術礼装と化しており、全開のバーサーカーを使役しながらでもレメディウス自身に神秘を纏わない、もしくは生物と接触していない物質を量子分解し、更にBランクの対魔力を持つ結界を発生・随伴させる優れた防御力を与えている。
  更にレメディウスならば数法系を始めとする高位咒式を多重展開することも可能だったが、こちらの機能は現在、禍つ式の制御式の書き換えで咒弾を使い果たしているために使用不可となっている。


587 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:47:14 k/4SjGqE0

・咒式
  量子世界の基本単位である、作用量子(プランク)定数hを操作し、森羅万象を生み出す力、咒力。これを操り、組成式を書き出し、人工的にプランク密度を作り出して基本物理定数を変異させることで特定の事象を引き起こす術を咒式と呼ぶ。
  咒式によって生み出される現象は全て実在する化学現象であり、科学化された魔法とも、魔法の域に達した科学とも称される。ムーンセルには、独自の体系で発展した魔術として分類されている。
  人間がこの力を扱う場合は、レメディウス級の高位咒式士でも魔杖剣などの咒式具と呼ばれる専用の器具による補助と、触媒となる消耗品の咒弾が必要不可欠となるが、禍つ式を初めとする〈異貌のものども〉は、一部の特異体質者と同様に、咒式具なしでの咒式の発動を可能とする。


  ・超定理系第七階位咒式弾頭〈六道厄忌魂疫狂宴(アヴァ・ドーン)〉
    レメディウスの咒式研究を元に開発されたジェルネ条約違反の準戦略級咒式弾頭。
    結界内に次元の穴を開き、疫病を司る〈疫鬼〉と呼ばれる禍つ式を大量に顕現させ、効果範囲内のあらゆる生物を死滅させることを目的に開発された最悪の大量虐殺兵器。
    結界内の全てが次元の穴となっているため、少なくともその内部においてはあらゆる遮蔽物を無為化し、取り込まれた生物を確実に死に至らしめる。
    更に発動が続く間は疫鬼は現界し続け、結界外にまでその殺戮範囲を膨張し続ける災厄と化す。

    疫鬼よりも遥かに強大な神秘の塊であるサーヴァントには結界内であろうとその殺傷力も通用しないが、生きた人間であるマスターがその作用を受ければまず死を免れない。
    更に、次元の穴を開いている間に組成式に術者が張り付き干渉することで、接続した位相空間から疫鬼以外の禍つ式、レメディウスですら召喚困難な伯爵級以上の大禍つ式を呼び込むことも可能と目されている。

    作中では直径六百メルトル(=メートル)を効果範囲として起動されたが、発動前に弾頭の計算式を調整すれば、最低でもその十倍にまで次元の穴を拡大することができる。
    レメディウスや五〇〇番前後級の大禍つ式でも数十人の咒式士という生贄と、専用の咒式弾頭があって初めて発動可能となる超咒式だが、エリダナでの暗躍の結果、既に一発分はその条件が満たされている。
    しかし発動前に弾頭を破壊されたり、展開した結界の全てを攻撃範囲に含む大規模攻撃に晒される等の妨害や、場合によっては次元の穴が開いてから禍つ式が召喚されるまでに結界の組成式をキャスターのサーヴァントに書き換えられる恐れすらあるため、その発動は慎重に慎重を期す必要がある。
    一方、サーヴァントに通用しないことから『■■■』できるマスターが多くなればその分有効性が低下するため、早期に炸裂させることが望ましい面もあり、運用の悩ましい切札となっている。


588 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:49:23 k/4SjGqE0

・禍つ式(まがつしき)
  アルコーン。咒力を持った生命体・異貌のものどもの内、太古より悪魔や魔神と呼ばれた存在の総称。他の異貌のものどもと違い本来三次元の存在ではなく、熱的崩壊に瀕する高次元宇宙から奇跡的な確率で干渉して来る情報生命体。真性悪魔。
  一部の数法系咒式士は彼らを使い魔として呼び出すことができ、特にレメディウス程の超高位咒式士ともなれば複数の大禍つ式すら召喚可能。
  術者の咒式で予めある程度の行動を制限でき、一度召喚すれば外部から咒力(魔力)や物質を取り込むことで単独行動が可能ではあるが、本質的に人間とは根本の異なる認識しか持てないため、相互理解や忠誠心を望むことはできない。

  彼の魔術礼装の一部として、既に召喚し支配下にあった個体群が共にムーンセルに召喚されており、存在そのものが異次元に存在する咒式であるためサーヴァントの神秘にも対抗し、攻撃が有効となっている。
  しかし、記憶を取り戻してからバーサーカー召喚までの間に襲撃してきた敵サーヴァントによって、大禍つ式である〈戦の紡ぎ手〉ヤナン・ガランを含む複数体が撃破されてしまっている。
  装備が万全ならば新たな大禍つ式の召喚も可能だったが、〈六道厄忌魂疫狂宴(アヴァ・ドーン)〉の以外の咒弾を使い果たしている現状では、その最終兵器を例外とするとアムプーラの力を借りても形式番号のない名無しの下級禍つ式を少しずつ揃えて行くのが限界となるだろう。
  但し、〈六道厄忌魂疫狂宴(アヴァ・ドーン)〉の炸裂による次元の穴を固定した瞬間だけは例外で、伯爵級以上の大禍つ式すら複数追加召喚できる可能性があり、そのためこの最悪の咒式の発動が咒式弾頭の効果による敵マスターの一掃と一大戦力の拡充を兼ねた戦略の要となっている。

  現状、アムプーラ以外の下級禍つ式は大半が非力なアサシンのサーヴァントとの正面戦闘でも鎧袖一触されかねないが、個体によっては強力な干渉結界を持つためキャスタークラスのサーヴァントには幾らか消耗を強いる見込みもあり、また同様の理由から下手な魔術師では太刀打ちできない怪物でもある。


  ・〈墓の上に這う者〉秩序の第四九八式アムプーラ
   レメディウスがナジクを生贄に召喚した毒蛇が化身した、子爵級の大禍つ式(アイオーン)。これまでにレメディウスが召喚した中でも最強の禍つ式。
   左右の半身にそれぞれ石化と猛毒の中位咒式を宿し、超人的な体術と数法量子系第七階位〈軀位相換転送移(ゴアープ)〉による瞬間転移と瞬間再生の能力を持つ。
   但し、咒力を魔力の互換と見た場合、神秘の高いサーヴァントには中位咒式では効きが悪い上に対魔力で更に削減されるため効果が薄く、不死性以外の身体能力や体術も平均的なサーヴァントには劣る程度のため、単騎で敵サーヴァントを撃破することは困難。
   しかし、十数メルトル(メートル)程度の距離なら瞬間転移が可能であり、また脳と心臓を同時に潰されなければ容易に瞬間再生できるため、ある程度の防戦ならば望めなくもない独立戦力となっている。
   また余程の例外を除くと敵マスターの暗殺にも有効な駒とはなるが、長距離の転移はできないため、多くの場合目視され得る状況から仕掛けることとなる。そのためサーヴァントの妨害のみならず、『■■■■』を許している場合には敵マスターからの反撃にも考慮する必要があると言える。


589 : レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:50:14 k/4SjGqE0

【能力・技能】
 到達者と言われる高位咒式士達を遥かに越え、千年を生きた長命竜や大禍つ式ら高位の〈異貌のものども〉と同等の、人間離れした演算能力と咒力を持つ。
〈異貌のものども〉である竜は幻想種である竜には及ばないが、それでも咒力を魔力の互換と見た場合、超一流とされる魔術師を越える魔力量を誇ることは疑う余地もない。
 そのためレメディウスは高ランクの防御結界を恒常的に随伴するという芸当を熟しながら、バーサーカーの最高スペックを維持して軽々と使役することができている。
 更に本来ならば確率を操作する数法系咒式の大陸有数の使い手として攻撃性能にも優れていたが、既に手持ちの咒弾を使い果たしてしまったため、現在レメディウス本人は〈内なるナリシア〉の干渉結界と〈六道厄忌魂疫狂宴(アヴァ・ドーン)〉以外の一切の咒式を使うことができなくなっている。
 結果、〈内なるナリシア〉の干渉結界と数法系咒式士として強化された脳の処理速度以外は常人程度の身体能力であり、個人レベルでの戦闘力は総合的には並の魔術師の範疇に収まっている。
 そのため、主な戦力は当面バーサーカーと手元に残った禍つ式、及びそれらが召喚する更に下級の禍つ式ら使い魔に依存することとなる。
 また先述の絶対記憶能力を有しており、チェスに似た競技であるチェルス将棋の大陸一の指し手。反政府組織を纏め上げた指揮官としての能力にも秀でている。


【マスターとしての願い】
 ウルムンの救国。そして世界を変革し、二度と悲劇を起こさせない


【方針】
 聖杯を掴む。そのために手段を選ぶつもりはない。


590 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/04(日) 01:51:07 k/4SjGqE0
以上で投下を完了します。


591 : ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:51:44 FdVXypkc0
投下します


592 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:52:38 FdVXypkc0





 伸ばしかけた腕を、閃光が貫く。
 飛び散った血と肉片が、視界を赤く染める。
 痛みに歯を食いしばり、堪えきれずに膝をつく。
 声の限り叫んでも、祈りは届かない。
 奇跡は起きない。
 神様なんてどこにもいない。
 目の前には、立ちふさがる黒衣の騎士と、無力なだけの自分の腕と。
 悲しそうな、あの子の笑顔。





 西暦2198年2月13日――その日、少年は『天使』と出会った。
 便利屋の少年の許に舞い込んだ、正体不明のサンプルデータ奪取の依頼。忍び込んだ輸送戦艦の中で、たどり着いた小さな部屋。
 天使の少女は、突然の侵入者を不思議そうに見つめていた。
 綺麗な女の子だった。儚げで、幼くて、当たり前の世界を何も知らなくて。でも、芯に強い心を持った、そんな綺麗な女の子。

 ―――この子に笑顔でいてほしい。

 少年がそう思うようになるまで、さして時間はかからなかった。
 6日が過ぎた頃、二人に転機が訪れた。"むこう"に行ったらもう会えないと語る少女に、少年は一つの約束をした。

「必ず会いに行くから」

 本当ですか? と尋ねる少女に、少年は勿論だと胸を張った。自分は嘘なんてつかないと、そう力を込めて言った。

「はい、待ってます」

 少年の言葉に、少女は一瞬寂しげな表情を浮かべて。けど暗い表情はすぐ笑顔に取ってかわった。少女も、それに向かい合う少年も、共に笑い合った。

 彼女の笑顔がどれほど重いものだったのか。
 その時、少年は何も分かってはいなかった。

 二人を断ち切るかのように、紅蓮の刃がその姿を露わにした。


593 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:54:08 FdVXypkc0



 罠だと気付いた時には、全てが手遅れだった。
 少女と一緒に軌道エレベーターの秘密の場所に行った少年を待ち構えていたのは、長大な騎士剣を構えた黒衣の騎士だった。軍の対魔法士部隊一個師団に匹敵する戦力を前に、少年は為す術もなくその身を刃に貫かれた。
 後で分かったことだが、自分たちの行動はこの時点で既に軍に察知されていたらしい。少女の頭に埋め込まれた観測装置、それを通して"彼"は自分たちがどこにいるのかを特定していた。
 剣閃と爆轟が蒼穹を埋め尽くし、飛び交う金属と窒素結晶が戦場を地獄に変えた。少年は必死に戦ったが、戦力の差は絶望的だった。剣戟の嵐に追い立てられ、腹部を騎士剣で縫い付けられ、少年は軌道エレベーターの壁面に磔となった。
 込みあげる鉄の味に、白く霞んだ視界の先。泣きそうな顔でこちらを見る少女の姿。
 無意識に伸ばしかけた右腕を、閃光が貫いた。
 少女は目を見開いて何かを叫んだ。無我夢中で力を振り絞り、けれど右手は少しも動くことはなく。
 I-ブレインの戦闘予測が、絶望そのものでしかない数値を吐き出して。

 次に目が覚めた時、少年は自分が負けたのだということを悟った。
 この時になって、少年はようやく全てを知った。ロックが外された研究データ。それを読むことで、少年は事の真相を知ることができた。
 少女の運命、彼女の笑顔の意味。マザーコアが一体何であるのか。
 それを理解した瞬間、少年は駆けだした。開いた傷口から血が滲み、足がもつれ、体中が悲鳴をあげるのにも構わず、少年は走り続けた。
 視界に映るものすべてが、少年を糾弾した。どうして負けたのか、どうして何も知ろうとしなかったのか。どうして彼女の苦しみに気付いてやれなかったのか。
 ありふれた他愛もない日々の情景一つ一つが少女のことを思い出させ、思い出はナイフとなって少年の心を抉った。

 再会した少女は、やはり笑顔のままだった。
 あと一日の命だと、彼女は言った。明日の朝には"実験"が開始されるのだと、少女は告げた。

 逃げよう。そう言って手を伸ばす少年に、少女は悲しそうな笑顔のまま、首を横に振った。
 何故と問いかける少年に、少女は一つの真実を告げた。自分が死ぬことでしか救われない命の中に、少年と、少年の大事な人々もいるのだということを、少女は語った。

 ―――だから、もういいです。

 悲しそうな顔で、少女は笑った。少年は何も言えなかった。
 ただ。
 少女が必死に創り上げた、人を傷つけないための偽りの笑顔が。
 どうしようもなく悲しくて、それを前にした自分が、あまりにも無力に過ぎて。
 最早、何の言葉も出なかった。



 伸ばしかけた腕を、無情な現実が打ち砕く。
 砕け散った理想と愛情が、視界を絶望に染める。
 無力に唇を戦慄かせ、崩れるように膝をつく。
 声の限り叫んでも、祈りは届かない。
 奇跡は起きない。
 神様なんてどこにもいない。
 目の前には、誰もいなくなった花畑と、白み始めた明星の空と。
 ―――白に染まった、一枚のトランプ。





   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○


594 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:55:26 FdVXypkc0





「くだらねえ」

 開口一番、放たれたのは否定と侮蔑の言葉だった。
 特定の誰かに向けたものではない。それは己を取り巻く状況そのもの、すなわち聖杯戦争という枠組みへ向けての言葉であった。

「聖杯戦争……願いを叶える椅子取りゲームってのは分からなくもないが、この俺がサーヴァントだと?
 ふざけやがって、とことん馬鹿にしてやがる」

 声の主は男だった。金髪をサイドに流した独特な髪型をした、見るからに柄の悪そうな青年だ。一見粗暴に見える所作は滲み出る力と自負の現れであり、野性的な覇気に満ちた鋭い眼光は比喩ではなく鷹のようである。しかし同時に、獣の如き生命力溢れる気配とは裏腹に、金属めいた無機的な冷たさをも感じさせる。男は、相反する二つの性質を併せ持つ人物であった。

「……誰かに従うってことが、そんなに気に入らない?」
「当然だ。俺の体は俺だけのものだし、俺の意思も俺だけのものだ」

 少年―――天樹錬の言葉に、男は殺意すら入り混じった不満の視線を向けた。
 不遜、かつ傲慢。その男を一目見て抱く印象は、おおまかにその二つだろう。実際、錬はこのサーヴァントにあるまじき尊大さを隠しもしないこの男に、そういった印象を抱くに至っている。
 だが同時に、錬は理解していた。アサシンと呼ばれる針金のように細い体躯をしたこの男が、物理法則すら超越し自在とする自分ですら及びもつかない超常的な存在であるのだということを。

「そして何より、俺は"王"だ。人間なんて愚かな生物が俺を操ろうなんて我慢できるか」

 男の持つ異常性と特異性。それは、男が持つ常軌を逸する域の"欲望"が何よりも雄弁に証明していた。
 その瞳に映る意思の燃焼、胸中に抱いた渇望の深度が純粋に凄まじい。一個の生物とはこれほどの情念を宿せるのかというある種の畏怖が、錬の脳髄を貫いた。

「聖杯、あらゆる願いを叶える万能の願望器。お前はそれが欲しくてここまで来たのか?」
「……うん。僕は聖杯が欲しい。願いを叶えるために、必要だと思ってる」
「はッ、人間らしい答えだな。どこまでも愚かしく、欲深い」

 せせら笑う声は止まらない。大上段から睥睨するその言葉は錬への嘲りであったが、どこか自嘲のような響きが感じられると、錬は思った。

「そうだね。僕は愚かで欲深くて、きっとどうしようもない悪党だ。けど、それでも欲しいものがあるんだよ」

 その言葉を聞いて、男は何かを感じたように表情を動かした。そしてここでようやく、男は腰かけていた上段の段差から飛び降り、錬と同じ目線の地に立った。
 錬の声には決然とした響きがあった。それまでは男に半ば気圧されてさえいた彼が、しかしその事について言及した途端、男でさえ無視できないほどの意思の強さが垣間見えたのだ。
 だから男は興味を持った。単なる強欲なら見飽きているが、こういった手合いには少しばかり思うところがあったから。


595 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:56:22 FdVXypkc0

「アサシンは聖杯が欲しくないの? サーヴァントは、願いがあるから呼び出されるって聞いてるんだけど」
「欲しいに決まってるだろ。俺を誰だと思ってやがる? 俺はグリード、欲望の化身だ。生きる場所の何を呑み、何を食らおうと足りやしない。
 だが」

 そこで、男から発せられる気配の圧が跳ね上がった。殺意と魔力が嵐のように吹き荒れた。
 敵意を込めて睨みつけた。ただそれだけで大気が震え、周囲は圧力に軋んで音を立てている。錬は無意識に息を呑んだ。

「それとこれとは話が別だ。さっきも言ったが俺は誇り高き王、お前に従ってやる義理なんざない。
 だから聞かせろ。お前が聖杯に望むものが、なんなのか」

 その答え如何によってはその命無いと思え。
 言外に発せられる声なき声を錬は聞いた。後ろに下がりそうになる足を抑え、意を決したように口を開く。

「僕は、世界が欲しい」
「……ほう」

 男から放たれる圧が弱まった。どうやらその答えに、何か感じ入るところがあったらしい。

「大きく出たな。まるであの忌まわしい『王』のようだ。それで、お前は何のために世界が欲しい?
 金銭欲か、食欲か。嫉妬、支配欲、出世欲、名誉欲……どれも人間が追い求めてきたものだ。様々な欲望のために人は容易に裏切り、欺き、殺し合う。
 言え、お前の欲望の形を」

 語られる言葉の数々は、男の人生哲学であり、そしてその生涯において絶え間なく目にし続けてきた人の姿そのものでもあった。
 男を前に、錬の抱える"欲"が曝け出されて。
 それは―――

「……僕は、あの子に……フィアに、命をあげたい」
「はあ?」

 拍子抜けしたと言わんばかりの男に、錬はつらつらと言葉を重ねた。
 それは少年が生まれた世界の話。魔法士の死によってのみ生き永らえることを許され、故に次の生贄にフィアという少女が選ばれた世界。
 あの日、あの時。朝焼けの空が天を覆う中空の花畑で、少女と交わした最後の言葉を。
 自分はそれでいいと笑う仮面の裏で、死にたくないと泣き叫んだ少女の心を。
 錬は、男に話した。


596 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:58:04 FdVXypkc0

「あの子は……フィアは、自分のことを実験動物だって言ってた。人間じゃない……命じゃない人形だって」

 記憶に残る最後の姿。語る少女の幻影は笑っていた。
 本当は泣きたかったのに。心の奥底では泣いていたのに。それを見せまいと必死に覆い隠した彼女の顔。
 悲しいくらい、歪な笑顔だった。

「僕は、それが許せなかった。あの子は人形なんかじゃない、生きてたっていい人間なんだって教えてあげたかった」

 フィアが死ななければならない理由は、馬鹿な自分にも分かった。
 マザーコア。魔法士の死によってかろうじて生き永らえるシティと人類。
 子供たちの犠牲なしには成り立たない、あの世界。
 シティに住む者たちが憎いと、思ったわけではない。
 あの子が助かるなら人類全てが滅んでいいと願ったわけでもない。

 ―――ただ。
 世界の全てが、あの子に死ねと言うのなら。
 誰か一人くらい、そんな必要はないと言う者がいなければ、不公平だと思った。

「だから僕は世界が欲しい。フィアが当たり前に笑って暮らしていけるような、そんな暖かな世界を」

 理由はきっと、ただそれだけ。
 世界を変えるなんて大業に値する大義名分なんてない。この胸にあるのは、くすぐったいような気恥ずかしさと、締め付けられるような切なさと、泣きたくなるような暖かさだけ。

 ああ、結局のところ。僕はフィアが好きなんだ。
 あの子を助ける理由に、それ以上は必要ないだろう。

「……はッ」

 その言葉を前に、男はただ鼻で笑った。

「何を言うかと思えば……よりにもよって自分以外のためか」
「悪い? これだけはいくらアサシンでも文句は言わせないよ」
「言わねえよ」

 予想外の返答だった。錬は思わず、耳を疑ってしまう。
 男は、相も変わらぬ憮然とした口調で言う。

「お前が何を願おうが、結局のところはどうでもいい。俺は俺の欲しいものを手に入れる、そのことに変わりはないからな。だが」

 そこで、男は真っ直ぐ錬と視線を合わせ。
 何の混じり気もない、本心からの言葉を口にした。

「いいだろう。気に食わないがお前のサーヴァントとして振る舞ってやる。お前と組んだこと、俺に後悔させるなよ、レン」
「……それ、喜んでいい台詞なのかな」
「当たり前だ。言っておくが、俺と組んだ以上お前に負けは許されないからな。よく覚えておけ」
「やっぱりそれ、喜んでいいのか分からないんだけど」

 答える錬の声には苦笑の響きが混じっていた。そこには先ほどまでの重苦しく、互いが互いの首元を狙うかのような殺伐とした気配は含まれていなかった。
 よろしく、と手を差し出す錬に、男は変わらず憮然とした表情で鼻を鳴らすのだった。





   ○○○   ○○○    ○○○   ○○○   ○○○   ○○○


597 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 01:59:15 FdVXypkc0





「―――エージ! 目ぇ覚ませ、死ぬぞ!」
「アンク……?」

 それは過去。彼の記憶。彼方の記憶。
 静かだった。全てが終わった空の上、真っ逆さまに落ちる二人は、どこまでも静謐のままだった。

「ああ、いいよ。もう無理だ。お前こそ……」
「フン」

 そんな、らしくもなく諦めたような口を利く彼に、異形の彼は何を思ったのか。
 侮蔑か、呆れか。それとも―――

「俺はいい。欲しかったもんは手に入った」

 それとも、あるいはそれは、心の底からの―――

「それって命だろ? 死んだら……」
「そうだ。お前たちといる間に、ただのメダルの塊が死ぬところまで来た」

 その言葉は、満たされることのない欲望に支配された被造物とは思えないほどに、穏やかで。

「こんな面白い……満足できることがあるか」

 この上なく、満ち足りたものだった。

「お前を選んだことは、俺にとって得だった。間違いなくな」

 それを最後に、二人の距離は離れて行った。それはまるで別れのように、ゆっくりと二人の間は開き。

「おい……どこ行くんだよ!」

 誰よりも優しく、誰よりも大きな"欲"を持った彼は、それを厭うように右手を伸ばした。
 ただ一心に、前へと。何処までも届く腕を望んだ彼の右手は、異形の彼に向かって。

 ―――果たしてその手は届いたのか。
 ―――彼らは何かを掴み取れたのか。

 それは分からない。けれど、けれど。
 確かなことが、一つだけ。

「……お前が掴む腕は、もう俺じゃないってことだ」

 その声は。異形の彼が遺した最期の言葉は。
 メダルの塊などでは断じてない。"人"のように命に満ちたものだった。


598 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 02:00:01 FdVXypkc0

【クラス】
アサシン

【真名】
アンク@仮面ライダーオーズ

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
疑似生命・欲望結晶:A
グリードと呼称される、錬金術によって欲望の渦から作り出された疑似生命体。
セルメダルと呼ばれる欲望の結晶を人間に挿入することでヤミーを生み出す「使い魔作成」、人間への擬態を可能とする「変化」、五感が正常に働かない「感覚喪失」、欲望に支配された精神性故の「精神異常」などデメリットスキルを含む複数のスキルを内包する。
また、純粋な生命としての性質が薄れ、逆説的に生物的な死の概念への耐性を獲得している。

魔力放出(炎):B
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
アサシンの場合、鳥類のコアメダルが放つ魔力が炎となって宿る。

生の渇望者:-
命無き者であるアサシンは、故にこそ命を追い求める。
我欲を優先するグリードの性質を保持したままグリードにあるまじき願いを持つアサシンの精神性を現し、本来ならば反骨の相に匹敵する従属拒否のスキルとして列記されるはずだった。しかし現状このスキルはあくまでアサシンの願いを指し示すだけに留まり、反骨の相のような叛意を一切示していない。
その真意は何であるのか。それは誰にも分からないし、当のアサシンも自らの真意を言葉にする気は微塵もない。
しかし、このスキルとは全く関わりのない話を一つ、敢えて語るとするならば。
マスターである天樹錬はアサシンの前で、「生きたいと願う少女に当たり前の命をあげたい」と願った。

【宝具】
『欲核結晶・炎鳥(タジャドル・コアメダル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
とある王が人工の生命を作り出す事を目的として創り出した生物の力を凝縮したメダルにして、それを中核として成り立つアサシンという存在そのもの。
錬金術師たちの手により欲望の渦から生み出されたコアメダルはその根源により強い欲望を身に宿し、生命の系統樹に縛られない超常的な力を誇る。
アサシンのコアメダルは鳥類を司っており、三対九枚から成るメダルはアサシンが世界に遍く存在する鳥の王たる証であると同時に、カバラ神秘主義に語られる生命の樹の真理「000(無限光)」を象徴している。
ただし、生命の系統樹そのものが持つ力と人類種の持つ欲望という意思の力が凝縮されたこの宝具を完全に再現することは難しく、普段は力がセーブされた状態……セルメンという形態に落ち着いている。この宝具の真価が発揮されるのは後述する宝具を解放した時となるだろう。

『煌翼たれ、天穹翔ける赫禽皇(アンク)』
ランク:A+ 種別:対欲宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
コアメダルが持つ力の集大成。アンクというグリードの完全復活であり、その再現こそがこの宝具である。
地球生命を完全に逸脱し、三対九枚から成るコアメダルの並行励起により極小規模の000、すなわち人造のアイン・ソフ・オウルを地上に顕現させる。
発動と共にステータス、並びに各種スキルランクの修正を受ける。爆発的な戦力向上が見込める宝具だが、同時に魔力の消費が著しく上昇する諸刃の手段でもある。

【weapon】
セルメン及び完全復活時には素手や翼による格闘、魔性を含んだ風、放出する炎などで攻撃する。

【人物背景】
かつて大空を舞う天空の覇者でありながら、人の創り上げた欲望の化身として現界した鳥の王。
命ならぬ身で命を望み、その果てに己が欲望を満たし消えた"生命無き者"。
人に近づき命を得ようとした、誰よりも真摯に生きたいと願った者。

【サーヴァントとしての願い】
世界を確かに感じられる命が欲しい。
だがその願いは、生前確かに"叶えられた"。


599 : 炎の記憶 ◆87GyKNhZiA :2016/12/04(日) 02:00:37 FdVXypkc0

【マスター】
天樹錬@ウィザーズ・ブレイン

【マスターとしての願い】
天使の少女が普通に生きていける世界が欲しい

【weapon】
サバイバルナイフ:銀の不安定同素体・ミスリルで構成されたナイフ。

【能力・技能】
魔法士:
大脳に生体コンピュータ「I-ブレイン」を持ち、物理法則を改変して戦う生体兵器。ナノ単位の思考速度と演算能力を持つ。

無限成長能力:
本来は書き換え不可能なI-ブレインの基礎領域を書き換えることにより、劣化コピーではあるが他の魔法士能力を模倣することが可能となる。

【人物背景】
情報制御理論と呼ばれる新時代の理論を提唱した三人の科学者の一人、天樹健三によって作り出された先天性魔法士「悪魔使い」の少年。外見や精神年齢は14歳だが、実年齢は9歳である。
その出自によりモスクワ軍を始めとした政府機関からその身柄を狙われており、幼少期においては義兄姉である天樹真昼・天樹月夜と共に世界中を逃げ回りながら暮らしていた。
現在は兄や姉と共に戸籍・登録情報を完全に抹消した上でシティ神戸付近の街に定住しており、自身もまた凄腕の便利屋として名を馳せている。が、腕前や潜在能力はともかく詰めが甘く精神的に未熟なところが目立つ。
性格は至って素朴、かつお人よし。見知らぬ大勢より見知った個人を大切に思っている節がある。
兄と姉が苦労を重ね、シティ外に住まわざるを得ないのは自分のせいだと考えており、ある時シティへの永住権三人分を報酬にした正体不明のサンプル奪取依頼を受ける。
潜入した戦艦の中で謎の少女・フィアと出会い、当初はビジネスライクとして彼女に付き合っていたが、時間を経るにつれて彼女に惹かれ、最終的にはシティとマザーコア、そしてフィアの真実を知り、彼女を死なせないためにシティへと敵わぬ戦いを挑むことを選ぶ。
参戦時期は一巻、軌道エレベーター内でフィアと再会した直後。

【方針】
聖杯を獲る。


600 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:02:45 FdVXypkc0
投下を終了します
また、今回の投下にあたり◆aptFsfXzZw氏の「 レメディウス・レヴィ・ラズエル&バーサーカー 」、◆T9Gw6qZZpg氏の「櫂トシキ&バーサーカー」のステータスシートを参考にさせていただきました。
この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました


601 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:18:35 1AD821RE0
投下します。
邪神聖杯黙示録 - Call of Fate - に投下した拙作「少佐&アーチャー」を転用したものです。


602 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:20:08 1AD821RE0
投下します。
邪神聖杯黙示録 - Call of Fate - に投下した拙作「少佐&アーチャー」を転用したものです。


603 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:20:51 1AD821RE0

「トバルカイン・アレハンブラの遺品かと思ったのだがね」

 スノーフィールドでただ一人。『少佐』は白紙のトランプを弄りながら酒を飲む。
 よく考えればそれが自分の手元にあるのが不自然だと気付くべきだった。いや、それとも気付かされないようにされていたと勘繰るべきだろうか。
 下品なストリップバーで琥珀色の瓶からグラスへ酒を注ぎ、一口呑み、そして投げ捨てる。

「お客様いかがなさいました?」

 ガラスのコップが割れた音を聞きつけて慣れた感じで対応する店員に男は言った。

「君は戦争が好きか?」
「は?」
「私は戦争が好きだ。とても、べらぼうに、大好きだ」



   *   *   *



「ハ、ハハハ、アッハハハハハハハッ」

 耽美と狂喜をもってこの世に顕現しようとする魂。
 その属性は混沌。その性質は悪虐。
 暴虐を以て英霊となった故に、呼び出されれば殺劇と破壊をもたらす反英雄。
 噎せ返るほどのアルコールと硝煙と血と臓物の匂いこそがその証左。

「あたしを召喚する奴がいるだって?
 いいぜ。ノッてやるよ」

 血と暴力を求めるならば応えてやろう。望み通りの展開にしてやるよ。
 ああ、勘違いするなよマスター。お前も最後に殺す。あたしを見下すな。


   *   *   *


 次の瞬間、男の席にあったテーブルの上に美脚が載り、そのまま埋まるように蹴り砕かれる。
 宙に浮いた酒瓶を取ってグビグビ呑み始める。
 この手の荒事に手慣れている店員も流石に数秒間石になった。突然見知らぬ美少女が現れて店の備品の破壊し、下品に酒を飲む。
 それでもその少女は美しかった。このストリップバーにいる誰よりも。

「得物はあるか?」
「これでも良いかね?」

 男から少女へ渡されるのはワルサーと呼ばれるドイツの拳銃。それを少女が手に取った瞬間、店員の意識は暗転した。



 数分後、店には血の海が広がっていた。被害者達は何が起きたか知覚すらできなかっただろう。
 元々アンダーグラウンドな風俗店だったため防音処理は完璧であり、故に表には銃声など聞こえようもない。

 いや、仮に聞こえたとして止められる者などいるだろうか。それほどまでに呼び出された英霊は凄まじい。
 細く、瑞々しく、美しい身体に秘められた暴力の密度は桁違いだった。
 男が指揮していた「最後の大隊」幹部クラスかそれ以上。

「見事なお手並みだ。魔法少女(フロイライン)」

 理由もなしに無辜の民を鏖殺させて掛け値なしの賞賛を贈る少佐。
 戦争の火種を生み出すために呼び出されたサーヴァントの正体は『カラミティ・メアリ』。
 ある時空において虐殺をおこなった魔法少女。
 その少女から溢れ出るマスターへの殺意は実に素晴らしいと少佐はさらに賞賛した。

「おい、デブ。あんたがあたしをよんだマスターか」
「そうだよ。私が、君の、マス────」

 言い終わる前に少佐の耳を弾丸が掠めた。
 無論、撃ったのは自分のサーヴァントだ。

「あんたは最後に殺してやる」

 嘲笑を浮かべるサーヴァント。
 それを微笑を浮かべてマスターは迎えた。

「勿論だとも。殺したり殺されたり、死んだり死なせたりしよう」

 それこそが戦争だ。
 それゆえの闘争だ。
 目についた物は片端から壊し、目についた者は片端から殺そう。
 このスノーフィールドは次の聖杯大戦争の、次の次の聖杯大々戦争の火種と成り果てるのだ。
 
 そして、その先に、私が打ち倒すべき宿敵がいると信じて。


604 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:21:45 1AD821RE0
【サーヴァント】
【クラス】キャスター
【真名】カラミティ・メアリ
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
 陣地作成:C
 キャスターのクラススキル。
 魔術師の『工房』を形成できる。
 カラミティ・メアリの場合は工房ではなく『縄張り』である。縄張り内部では自分のステータスにボーナスが加わる。

 道具作成:-
 宝具『持ってる武器をパワーアップできるよ』によってこのスキルは失われている。

【保有スキル】
 魔法少女:C
 新米の魔法少女。素の素質が高いため年齢を超越できるCランク。
 BBAって言った奴は前にでろ。
 
 貧者の見識:B
 相手の本性・本質を見抜くスキル。言葉による偽装を見透かす。
 アーチャーはチャットのログからでも相手の属性を見透かす。
 大英雄『カルナ』の例にもあるように図星を突かれることは人の怒りを買いやすい。
 故にこのスキルがある限り彼女の最終宝具から逃れることは困難となる。

 反骨の相:A++
 自らは王の器ではなく、されど主君を抱かぬ気性。
 同ランクまでのカリスマを無効化する。
 あたしを見下すな。それが全てである。
 
 加虐体質:A
 戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。
 攻めれば攻めるほど強くなる一方で理性、防御力、逃走率が下がる。
 カラミティ・メアリの場合は理性の低下は発生しない。

【宝具】
『四次元袋』
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 生物・無生物関係なく手で掴めるものを制限なく仕舞いこめる。
 仕舞われた生物は任意に出ることができる。


『持ってる武器をパワーアップできるよ』
 ランク:B 種別:対物宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 アーチャーが武器と認識しているものの機能を強化できる宝具。
 強化された武器はC〜Bランクの宝具になり、例えアーチャーが消滅しようと強化が解除されず、そのまま第三者が使用することも可能。

『中宿上道大虐殺・血は細波を求めている』(ジェノサイダル・ブラッドメアリィ)
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:∞(相手が来るから射程の概念がない) 最大捕捉:一人
 魔法少女『リップル』と『トップスピード』への憎悪と憤怒で編まれた最終宝具。
 カラミティ・メアリの最終決戦の場となったホテルプリーステス屋上を『再現』する固有結界。
 発動時に対象とアーチャー以外は固有結界から排斥される。

 発動するためには魔力の他に次の手順を踏む必要がある。
 1.アーチャーが対象を憎悪・激怒すること。
 2.アーチャーに憎悪・激怒された対象がアーチャーを憎悪・激怒すること。
 3.相手が自分の真名を知っていること。

 これらの条件に嵌った場合、アーチャーの『誘い』に相手が『合意』したものとして、
 アーチャーと相手に手裏剣模様の自己強制証紋(ギアス・スクロール)が刻まれる。
 自己強制証紋が刻まれたものは『カラミティ・メアリに逆上した魔法少女』の役割として以下の制約を押し付けられる。

 ・逃げ出せない。
   固有結界内でカラミティ・メアリを仕留めるという観念に陥り、固有結界の維持に必要な魔力は相手側が負担する。
   自己強制証紋を刻まれた相手とアーチャーの宝具・スキルではこの結界は破れないし、抜け出せない。
   令呪もまた同様であり、これらを固有結界攻略のために使用した場合、その魔力が結界の維持に使用されるだけである。
 ・逆上する。
   特殊なスキルでもない限り思考や技巧が鈍る。
   また、精神汚染や狂化スキルで発動できなくなるスキルが封印される

 当時の状況の再現としてアーチャーの武装は全て改修・補充される。
 また、アーチャーは固有結界内で任意のブービートラップを作り出せる。
 罠も武装同様のランクの宝具である。

 この宝具は善人、偽善者、自惚れ屋、自信家、美学がある者が特に嵌まりやすく、
 彼らこそアーチャーが真っ先に殺そうとする『調子に乗った者』なのだ。

【weapon】
初期装備なし。無いなら補給すればいい。

【人物背景】
 かつて森の音楽家という魔法少女によって開かれた魔法少女適性試験の受験生。
 しかし、魔法少女適性試験とは新米魔法少女達の熾烈な殺し合いであり、
 精神・能力が共に暴力的だったカラミティ・メアリは積極的に力を奮った。
 最後は大勢の一般人を虐殺した後、魔法少女リップルと魔法少女トップスピードによって討たれた。
 リップル曰く「捕まえて食らう者」「クズな悪党」。

【サーヴァントとしての願い】
 過去に戻ってリップルとトップスピードを殺す。クラムベリーも殺す。


605 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/12/04(日) 02:22:31 1AD821RE0


【マスター】
 少佐@HELLSING

【マスターとしての願い】
 勝ったら英霊(バケモノ)数億騎による聖杯大戦争がしたい。

【weapon】
ルガーP08
ワルサーP38

【能力・技能】
 個人の戦闘能力は皆無に等しい。
 たとえ銃火器を武装しようが至近距離で外す腕前。
 しかし大隊を指揮する指揮官の能力、死の間際であろうと外法による延命を拒む鉄の精神力は人間の枠を超えている。
 重度の戦争中毒者であり、Cランクの精神異常スキルを持つため、誹謗中傷や狂気で揺らぐ精神は持たない。

【人物背景】
 『闘争の本質』と『人間』 に拘ったドイツ第三帝国軍人。
 役職は「ドイツ第三帝国 吸血鬼化装甲擲弾兵戦闘団『最後の大隊』大隊指揮官」
 健常な精神を持つ者から見れば破綻者、狂人の類でしかなく、本人もソレを認めている。
 眼鏡をかけてデブで射撃が下手でなのに戦争を50年も待ち続けた男。
 全身機械化してまで地獄のような戦争に望んだ男。
 全身機械化してまで人間である事をを望んだ男。
 故にここで、この場所で、この聖杯戦争で、彼の人間賛歌と戦争惨禍は止まらない。

【方針】
「軍備を調達しよう。警察とマフィアのどちらから取るべきかな?」
「そうだねぇ、マフィアならアメリカ産の銃が手に入るか」


606 : 名無しさん :2016/12/04(日) 02:23:08 1AD821RE0
投下終了します


607 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:11:47 rknnpHdM0
投下します


608 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:12:24 rknnpHdM0
ここ、スノーフィールドで執り行われる聖杯戦争におけるサーヴァントは白紙のトランプを核にして生まれる。冷呪が現れ、記憶と一通りの情報を手に入れる。それはどの参加者にも例外はない。遠坂凛の冷呪が手に現れたのは、中心街の大きなホテルに泊まって三日目のこと。サイドテーブルに白いトランプが現れ、彼女は戦争への参加を知った。
 今朝がた、シャワーから着替えると、トランプは一冊の本に変わり、ベッドに腰かけたレトロな制服の少女が、細い指で本の装丁を撫でていた。
 弱弱しい――遠坂凛が初めに抱いたイメージはそれだった。肩まで伸びた髪に艶はなく、制服もどこかくたびれている。なによりこの世の何もかもを捨て去ったような覇気のない目が英霊らしからぬ、少女霊かなにかを思い起こさせられる。
 遠坂凛は、驚きを顔にしなかった。あるいは心の中は尽きない疑問に埋め尽くされていたが、内に押しとどめ、髪を拭いたタオルを洗面所に投げた。
「あなた、クラスは?」
「…キャスターです」
 凛は舌を打ちそうになった。
「そう…その服装、昭和か少し前のものよね。江戸時代ってことはないでしょうけど」
「はい。昭和がいつまで続いたかは知りませんが…8年までは数えました」
 昭和八年…1933年に死んだ女性?凛は首を傾げた。英霊になりそうな歴史の人物は大半覚えたつもりだが、該当する人物は思い当たらなかった。サーヴァントは全盛期の姿で現れるという。その姿が学生姿。
 英霊の大半は過去の人物であるとされている。過去、彼らは何かを成し遂げ、彼らの成し遂げた功績が人々によって語り継がれ、語り継がれた功績が幻想を作り出す。その幻想こそが英霊だ。
 ならばこの少女は一体、なにをしたのだろうか。
「真名…教えてくれる?」
「はぁ…それは、わたしとしては、構うことではありませんけれど」
「なに?」
「申し訳ありません…真名、そう意味があるものかはわかりませんが、云う前に、一つ謝っておかなければならないことがあるのです」
キャスターは一言一言を、嘆息するように述べる。


609 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:13:45 rknnpHdM0
「貴女が聖杯戦争に勝つことは――万に一つもないでしょう…十万ならばまた、わかりませんけれど」
「はぁ?」怒りのあまり声が裏返った。「なんでアンタにそんなこと言われ…いや」凛は髪に手をかきいれた。「なんで、アンタに、そんなこと、わかんのよ。だいたい十万ならわからないってなによ!」
「貴女が悪いわけではありません」キャスターは凛の剣幕にも、あくまで落ち着いた調子を崩さなかった。「わたしが、弱すぎるのです」
 キャスターはサイドテーブルに置かれた本を手に取った。装丁は白く、表紙にはキャスターを同じ顔をしながら、似ても似つかない笑顔を湛えた少女が映っている。付けられた題名は『薔薇は生きてる』。
「わたしは山川彌千枝と云います。わたしに出来ることは、端的に云ってしまえば、なにもありません」

 最悪の想定が、当たってしまったというべきか。
 遠坂凛はこの聖杯戦争において自分が召喚したサーヴァントを知らなかった。ここにいる――ということは、予選は通過したということになる。しかし、どのように勝利したのかは全く分からない。初めからわからないようにされているのか、予選でなにかがあって、自分が忘れているのか、どちらにしても、そこが不安の種だった。
 予選を通過できたということは優秀なサーヴァントなのだ――などと思えるほど、凛は楽観的ではなかった。こればかりは祈るしかない。なにが来ても落ち着いていよう…そう腹は括ったつもりではあったが。
 
 山川彌千枝、という名前に凛は覚えがなかった。しかし当人が名前に意味などないといって理由は、そのあとイヤというほど思い知らされた。

 まず、宝具を含めたパラメータ全てがD以下。筋力、耐久、敏捷はまだしも魔力までDなのはどういうことなのか。
さらに彼女はキャスターにあるまじきことに、工房をつくることができない。これは致命的だ。単純なパラメータだけならまだサーヴァントの性能の半分といったところ、残り半分で補うこともできる。しかし、クラス特有の、それもキャスタークラスの花形ともいえる工房がないというのは、これは痛い。
極めつけはサーヴァントとしての不備だ。キャスターはどういうわけか宝具を使うことはできないのだという。サーヴァントとして終わっている。変な笑いが出たぐらいだった。


610 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:14:09 rknnpHdM0
 凛はもうずっと頭を抱えたまま、机に突っ伏している。
 その手に浮かんだ冷呪は、一画へっている。凛はすべて聞き終えてから、真実を話すようキャスターに『命令』し、キャスターはすべて同じように答えた。
 凛は用心深いが、分からず屋でもなければ疑心暗鬼なわけでもない。真実のみを話すよう、キャスターに伝えた。あれが真実であるならば、キャスターの真名など確かにほとんど意味を持たない。
「前にも、こうした催しに呼ばれたことがありました」
 キャスターは滔々と云った。
「若い魔術師でした。才能もあったのでしょう、わたしを呼び出したときの彼は、小躍りをするほど喜びました。
 ――数日たって、彼は死にました。名誉ある戦士ではありません。全ての期待に裏切られ、全ての期待を裏切った。世界と自分の両方に絶望した末の、自殺でした」
「私は…自殺なんてしないわ」
 凛は突っ伏したままそう云った。それは自分に対する宣言のようでもあったが、凛自身は自らの声の弱弱しさに驚いていた。
 キャスターはなにも云わなかった。
 遠坂凛は若い身でありながら、レジスタンスの一人であり、一流の霊子ハッカーだ。
才能に胡坐をかいた愚か者ではない。才能を努力でもって磨く、あくなき向上心を持つ。
 味方にすればこれ以上頼もしい者はいないとされ、逆に敵に回せば二度と逆らう気を起こせないほど完膚なきまでに叩き潰す。恐ろしくも優秀な少女である。
 そんな彼女が、現実逃避などしようか、それ以外ない真実から目を背けることができるだろうか。
 凛は受け止めすぎるがゆえに、悩んでいる。
「貴女のとるべき行動は、一つしかないと思いますけれど」

 ムーンセルによるサーヴァントの選抜は、マスターとの相性によって行われる。この聖杯戦争においても、そこに例外はない。
 遠坂凛は決して認めないだろうが、キャスターと彼女には、いくつもの共通点があった。


611 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:14:38 rknnpHdM0
 山川彌千枝。
 彼女は言うなれば英霊の仇花だ。ドイツ語の教授である父と、女流歌人の母。その末娘として生まれた彼女は芸術的感覚に富み、将来を期待された才女だった。才能に胡坐をかく愚か者ではない。彼女は自身の才能を認め、なおその先を求める、約束された英霊というべき人物だった。
 だが山川彌千枝の人生は、仇花に終わった。彼女は結核を患い、数年の闘病ののち、何を成し遂げるでもなく、人生に幕を下ろした。

 キャスターは凛を一目見た時から気に入っていた。虚飾ではない、実力に裏打ちされた自信のある目つき。キャスターにとって凛はもう一人の自分だったのかもしれない。
 なればこそ、自分ではいけないのだ。
 キャスターにはいっていなことがいくつかあった。宝具、固有スキル、あらゆる可能性について。しかしそれは彼女がサーヴァントとして使えなければ名前に意味がないように、万が一にも勝ちにつながらないのであれば、意味のあるものではない。
 キャスターは自分がサーヴァントである限り絶対に勝つことはできないと感じている。
 勝利。こと聖杯戦争において、それ以上に重要なものなどない。

 遠坂凛は、悩んでいたが、そう長い時間ではなかった。突っ伏した時間のほとんどは戦略に割かれていた。凛はキャスターのことを知らなかったが、キャスターもまた、凛のことをよくわかっていなかったのだ。
 凛はサーヴァントの鞍替えなど少しも考えていなかった。
 サーヴァントが使い物にならなければ、自分が頑張ればいいのだ。凛は負けず嫌いだった。それ以前に縛りプレイの好きな、バトルジャンキーだったのである。


612 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:16:01 rknnpHdM0
【クラス】キャスター
【真名】山川彌千枝(薔薇は生きてる)
【性別】女性
【マスター】遠坂凛
【出典】薔薇は生きてる
【属性】秩序・中庸
【身長・体重】156㎝41㎏
【ステータス】
筋力:E 耐久:E(Ex) 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:D
【クラススキル】

【所有スキル】

分霊:Ex
 キャスターは山川彌千枝として召喚されているが、当人に英霊としての適性がなかったために逸話として残された彼女の日記『薔薇は生きてる』が本体として機能している。よってキャスター当人に対するあらゆる攻撃は無意味と化しており『薔薇は生きてる』が消滅しない限り、あるいは魔力供給が追い付かなくなりでもしない限り、キャスターは現界し続けることができる。

単独行動:A+
 キャスターは魔力消費が極端に少なく、宝具に込められた魔力のみで理論上は1年以上現界できる。

病弱(偽):A
 若くして病死したキャスターに対し、のちの人々が押し付けたイメージ。無辜の怪物のようなもの。キャスターはサーヴァントでありながら人間と同じように病気にかかり、体重などにも変化が出る。これのせいでただでさえ低い霊格がさらに落ちている。

【宝具】

『薔薇はいきてる』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1(∞)
 キャスターの日記であり、本体。彼女の生前の生活を記録したこの日記を最後まで読んだ場合、その人物は結核にかかる。呪いに該当するため、サーヴァントであっても結核の症状を見せるようになる。対魔力で無効化、軽減可能。
 因みに、彼女が自分の宝具について云っていたことは嘘ではない。キャスターが山川彌千枝であるならば、宝具は『薔薇は生きてる』だが、キャスターは本体そのものが宝具として扱われている。よって宝具は受動的なものであり、『使う』という形容はおかしい。キャスターは一切嘘を言っていないのである。

【人物背景】
 大正6年生まれ。ドイツ語教授の父と女流歌人の母を持つ、九人兄妹の末っ子。父母の影響もあってか教養に富み、将来を期待された才女であったが、16歳で結核により夭逝、生前の日記や手紙を纏めたものが雑誌「火の鳥」で連載され、日本中の少女たちの間で流行、長い間語り継がれる。これを単行本化したものが『薔薇は生きてる』であった。
 上記の通り、夭逝してしまったため本人には英霊としての霊格はないが長い間人々に愛されてきた日記『薔薇は生きてる』によって人格だけ引っ張り出されてしまった。よって属性は『人』ではなく『地』。ナーサリー・ライムと基が似通っているが、規模が段違い。一冊の本がサーヴァント化してしまったのはそれが終生を描いた日記だったからだろう。
 物腰は柔らかいが隠しても滲み出る弱弱しさから、見るものは惨めさを見出す。キャスターはそういった機微のほとんどを察しているが、あまり気にしていない。達観しているといえばしているが、周りからすると変な方向に開き直っているようにしか見えないという。


613 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:21:01 rknnpHdM0
【マスター】遠坂凛
【性別】女性
【出典】fate/extra
【能力・技能】
 霊子ハッカーとしての技能、経験。
【人物背景】
 エクストラ凛。時系列は参加前ぐらい。
 Stay nightの凛とほぼ同じ見た目だが同じ人物ではない。一番違っているのは経歴で、stay nightの凛は遠坂家の当主だが、こちらは父、遠坂時臣の不義の子である。幼いころから腕を磨き続け、今では世界でも指折りの実力を持った霊子ハッカーとなった。
 西欧財閥に対するレジスタンスの一人であり、若干サバイバル能力も高く、恋愛経験はない。Cccではポンコツ扱いだったが、優秀である。


614 : ◆9KkGeT6I6s :2016/12/04(日) 03:21:22 rknnpHdM0
投下終了します


615 : 名無しさん :2016/12/04(日) 03:40:20 rknnpHdM0
申し訳ありません
キャスターの願いは「なし」
マスターの願いは「聖杯を手にいれる」
でお願いします


616 : ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:40:59 PKtQrdps0
投下します


617 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:41:53 PKtQrdps0

―――――夢。夢を見ている。
本来なら見るはずのない、泡沫の夢を。

―――……じゃ…い。
―――今、誰かを殺めたら、それはもう、魔法少女じゃない…ただの人殺しだよ。

夢の中の彼女は、正しい魔法少女だった。
その姿は少し辛くて哀しくて儚くて…とても優しい。

…。
……。
…………。

『こんにちは。ラ・ピュセル』

視界の端で道化師が踊っている。

『目覚める時間だ』


618 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:42:29 PKtQrdps0



(……ん)

新興都市スノーフィールド。その西部の森林地帯。
初冬の肌寒さを感じる風を浴びて、ラ・ピュセルは目を醒ました。

(夢…?いや、夢じゃ、なかったのか)

寝起きとは言え、我ながら支離滅裂な思考だと思う。
しかし奇妙だった。
そもそも魔法少女にとって睡眠は、往時であれば必要性の薄い物だ。
この寒空の下で、それも人なら凍死する可能性もある深夜にうたた寝など普通に考えればあり得ない。
でも、いっそ全てが本当に夢であれば、どんなに良かっただろう。
魔法騎士ラ・ピュセル。本名を岸辺颯太。彼は既に死んだはずの人間だった。

手の中の端末を操り、マジカルキャンディーの量を確認する。
その画面を閉じた後に映る白紙のトランプ。
やはり変化はない。あの夜に見た数と。

「じゃあやっぱり、全部ホントの事で、僕はあの日の夜……」

確か、『誰か』とあの日別れた後。
森の音楽家クラムベリーと決闘をして。
そして――――
迫ってくるトラック。動かない自分の体。
届かない所に放り出された魔法の端末。
その画面に浮かんでいた白紙のトランプ。
あれは何だろう、そう思った瞬間の事だった。
衝撃。文字通り潰される。原型すら留めない。
足も、手も、内臓も、轢かれるのではない、踏みにじられ潰されていく。
ぐちゃぐちゃと、ごりごりと、けれどまだ意識はあって。
何も見えない、聞こえない、けれど感覚は消えておらず。
最後に脳漿が轢き潰されていく感覚を存分に味合わされ。
そして、気が付いたらここにいた。

「ッ!?」

その瞬間を思い出し、思わず肩を掻き抱く。
間違いない。あんな苦しみが夢であって堪るものか。

「でも、だったら僕は何でこんな所にいるんだ……」

呟いて、端末に映る白紙のトランプを見る。
何故か?そんな事頭の中ではとうに分かっている。
今の彼は、プロサッカー選手を目指し、家族を残して一人留学してきた中学生・岸辺颯太ではなく、
死んだはずの魔法騎士ラ・ピュセルとして彼はアメリカ・スノーフィールドの大地に立っているのだから。
聖杯戦争。
願いを叶えると言う天の杯を奪いあう苛烈な殺し合い。
何の事は無い、殺し合いに脱落したと思ったら、また新しい殺し合いに放り込まれたのだ。
思考の中でそれは分かっても、感情がそれを理解するのを拒否していた。


619 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:43:13 PKtQrdps0

「何で、こんなことになったんだろう……」

僕はただ、僕の理想の、正しい魔法少女になりたかっただけなのに。
実際に魔法少女として選ばれるまでは、そんな事考えたことも無かったし正直困った。なった後、それはもう色々と興奮した。
後で興奮しないように精神修行する位には。後遺症でしばらく女の子の顔を見ると自動的に母親の顔に変換された。
そして、その少しあとに、あのゲームが始まって。
前のゲームも怖かった。怖かったけれど、欺きあい、殺しあうと言う事の本質を最後になって漸く知った。
でも、今回は違う。最初から全て知っている。知ってしまっている。
相手を斬る感触も。死ぬ痛苦も。
轢かれた瞬間の感触を再び思い出し、ぶるぶると肩が振動するのを感じる。

震えているのか、僕は。

魔法少女以前に男が怯えて震えるなどあってはならない。そう思っても震えは止まらない。
もし、この街に魔法少女がいたらこうはならなかったかもしれない。
脱出できるよう、頭を突き合わせて相談できたかもしれない。
現実は違う。この街に魔法少女はいない…いないはずだ。
それでも、それでも『あの子』がいてくれたら―――自分は震えずに再び剣を握れただろう。
と、そこで考える。

「……『あの子』って、誰だ?」

コンビを組んでいたはずの、あの子の名前が、出てこない。

「……僕は、どうして、何の為に死んだ?」

声が震える。
『死』のショックか、その魔法少女の名前が思い出せない。消えていく。
まるで何かに『奪い去られた様に』、すっぽりと。

「誰だ?誰だ、誰だ………」

守ると誓った。忘れたくない、忘れたくなかった、忘れてはいけないはずのあの白い魔法少女の記憶が、零れ落ちていく。

「そんなのって、あるかよ…!」

頭を抱え髪を掻きむしり、どんなに必死で思い出そうとしてもその記憶は死という無限の霧の向こう側で。
茫然と、膝をついた。
これから、どうなるのだろう。
自分は、生き残れるのだろうか。
サーヴァントもまだ出ていない、一人ぼっちだ。そんな状況で。
そうだ、何故サーヴァントは出てこない?

彼の中の混乱が、疑問へと変わった、その時だった。


620 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:43:45 PKtQrdps0

う、わあああああ!!!!!

ラ・ピュセルの思考を塗りつぶすように、深夜の森に野太い悲鳴が轟いた。
これには彼も驚愕し、顔をバッと上げて声の方角に感覚を尖らす。
魔法少女の強化された視界の向こうに、地元民と思しき老人が走っているのが見えた。
否、逃げているのだ。何かから。野生動物か何かか?
意識を老人の背後に集中。その上で目を凝らす。

(………………!!)


結論を言ってしまえば、動物などではなかった。


「――――■■■■■■■■!!!!」


―――それは恐怖。
それは、サーヴァント。
マスター候補としての権能により見えるパラメーター、暴風の様な存在感、理性を失いし狂戦士(バーサーカー)。
どくんと、心臓が跳ね上がり、精神が硬直するのを感じた。
何故こんな所にマスター連れずに、それとも、あれが自分のサーヴァントなのか?
いや違う。直感であったけれど、違うと確信できた。
そして確信できたことがもう一つ。あのサーヴァントは老人を殺そうとしている。
マスターを失ったのか、それとも違う場所にいるのか、ただあの老人の魂を喰らおうとしているのは確かだ。

「助け、ないと」

それは魔法少女としての義務感か、それとも颯太自身の良心故か。
蚊の鳴くような声で呟く。
でも、どうやって?

やめろ
              まだ僕にサーヴァントはいない。

逃げろ。

              あの人はNPCだ。

作りものだ。
               
               見捨てたって、誰も咎めない。

ぐるぐると、永遠にも思える時間の中で、ラ・ピュセルの頭の中で声が反芻される。
それと共にまた、あの声が響いた。

『こんにちは、ラ・ピュセル』

―――全てを嘲笑う、道化師の声。

『諦める時だ』

たった一つを諦めて、そして逃げる。
人間なら気付かれて追いつかれるかもしれないけれど、魔法少女の脚力は人間のそれではない、
その上まだ此方には気付かれていないし距離もある、逃げ切れるはずだ。きっと逃げ切れる。
それだけでラ・ピュセルは命を拾える。
なら、それでいいじゃないか。
見れば、老人は巨木の幹の洞に隠れたようだった。
理性が無いのが災いしてか、バーサーカーは未だ老人を発見できていない。
時間の問題ではあるだろうが、ラ・ピュセルにとってはバーサーカーの気がひきつけられている今がチャンスだ。
鼓動の音がうるさい程になっている。掌には汗がにじんでいた。胸の奥が火照る様に熱い。
くると、身を翻す。
あと一歩踏み出せば、それで終わりだ。

嗚呼、視界の端で―――道化師が踊っている。

「もう一回死にたくなんか…無いんだ」

その言葉は誰に向けられたものなのか。
きっと彼自身も分からない。
そして、ラ・ピュセルは、岸辺颯太は、これから響くであろう悲鳴に怯え、耳を塞ごうとする。
それと全く同じ瞬間。


621 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:44:17 PKtQrdps0



―――この街に魔法少女なんてもういない!



……ッ!
何でだ、何でなんだ。
何で今思い出すんだ。
名前も思い出せないのに、何で夢の中の事はハッキリ覚えているんだ。
今君の事を思い出してしまったら、僕は――――



翻した体を、戻す。
感覚が麻痺しているのか、恐怖の涙は流れない。
そう思いながら、背中に背負っていた剣を抜いた。
何となくと言わずとも分かる、これはきっと緩慢な自殺だ、死に直す旅路だ。
でも此処で諦めてしまったら、きっと僕は、奪われてしまったあの子を思い出すことはもうない。
それに、NPCだとしても、見捨てて逃げてしまったらもう自分は魔法少女じゃない。
それはとてもラ・ピュセルにとって嫌な事だった。
どの道、此処を惨めに凌いでも待っているのは殺し合いだ。
怖いのも痛いのも嫌だ。でもそれ以上にまたこんな事を考える、音楽家の様な者に踊らされるのはもっと嫌な事だ。
ならここで、正しい魔法少女として、NPCを守るために戦ってやろう。
せめてもの意趣返しにして、お前たちの仕掛けた死の輪(リング)になど組み込まれてやらないと言う意思表示。
勝てないであろうことなど、分かっている。
闘うだけだ。



カチカチ、カチカチと頭の中で時計の針の様な音が聞こえる。
そう、勝てないのは百も承知だ。
けれど、せめて一分。
いや、二分。

「――――――!!!」

剣を強く強く握り、声にならない雄叫びを上げて、ラ・ピュセルは疾走を開始した。





622 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:44:39 PKtQrdps0



夢の中の美しい君、素敵な君、歪んだ現実と気高く戦う君。
正しい魔法少女である、僕が忘れてしまった誰か。
叶うのなら僕も、正しい魔法少女として、君の隣にいたかった。






623 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:44:59 PKtQrdps0


月だ。
月を仰いでいる。
理由は単純、自分が吹き飛ばされ、仰向きに転がっているからだ。
背後に巨木の乱立した森でなければ、市街地まで吹き飛ばされて即死だっただろう。
何分経ったのか、それともまだ数秒の事なのかは分からない。
結果を言ってしまえば、戦いにすらなっていなかった。
幾ら剣を叩きつけても、あのバーサーカーは耐久値が高いのか、ビニールのバットで叩かれているような様子を見せるだけだった。
そして、ラ・ピュセルの方は一撃貰っただけで為すすべなくこうして地を舐め、空を仰いでいる。
ぬる、と額を掌で拭うと赤く染まった。
自分が死んだ夜の再現のように。

(角は…ああ、そう言えば折れてたっけ)

額だけでなく、全身血に塗れている。
それでも何とか手足が繋がってしるのは魔法少女としての耐久力故か。
もっとも、もう限界だ。立ち上がるための手足はあっても、立ち上がる気力は無い。
何とか、首と視線だけを全力で動かし、あの老人がいた方を見る。
老人は、既にいなかった。
逃げおおせたのか、それともバーサーカーに喰らわれた後なのかは分からない。
今のラ・ピュセルにそれを知る術はない。

(まぁ、十分、だよな……)

ごほ、と赤黒い血の塊を吐く。
やりきった、僕は僕自身の理想の魔法少女として戦い抜いたと、その感慨だけが今の彼の胸を占めていた。
後は迫りつつある死神に身を任せればいい。
何だか短い間でどっと疲れた。
今度こそ、眠ろうと瞼を―――――、


624 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:45:27 PKtQrdps0

「ほんとうにきみはそうしたいの」

頭の中で声がする。
道化師の声ではない。
夢の中のあの子の声でもない。

「どうするの」

どうしようもない。

「どうしたいの」

もう十分だ。

「きみは、どうしたいの、ラ・ピュセル」

僕は、
僕は……、

――――次は、選ばなかったことを後悔するんじゃない。後悔する前に自分で選ぶ。


カッと目を見開く。
視界の端に道化師の姿は無く、代わりに転がる魔法の端末があった。
端末は零時丁度を示していた。

「僕は、魔法少女だ……!僕は、誰かを殺さない!!」

ラ・ピュセルが愛した画面の向こうの魔法少女達に、諦めの良い者はいなかった。
夢の中のあの子もきっと生きている限りは手を伸ばし続けるだろう。
だから、だから僕も、せめてこの鼓動が止まるまでは。
立ち上がる。
その際、数千倍に圧縮された時間の中、駆けてくるバーサーカーの姿を捉えた。
構わない。ただラ・ピュセルは、颯太は眼前の剣に手を伸ばす。
当然届かない、その手にあるのは想いだけだ。けれどそれがどうした。魔法少女は想いが全てなのだから。

だから彼は、ただ”右手を伸ばす”。


625 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:45:44 PKtQrdps0

「………!!」

そして、気付いた。
鋼の腕に。
ラ・ピュセルの背後に、何かがいる。何かが居て、鋼の手を伸ばしている。
指関節が、擦れて、音を、鳴らしている。
それはリュートの弦をかき鳴らすように、金属音を生み出す。

これは―――


なんだ―――


その疑問に鋼の人影は応えない。
ただ、ラ・ピュセルの想いに応えるように。
鋼の手をただ前へ、前へ……!!


―――そして鋼の腕が――――

―――空間を裂く――――


その鋼の腕に相対するは狂戦士、サーヴァント。人では何もできない存在。
魔法少女であってもそれは同じ、彼女たちは人の延長線上でしかない。

「――――■■■■■■■■!!」


だが、だが――――鋼の彼は人ではない。
決着は、一瞬だった。

炎を纏う刃の右手。
それは、怪物を焼き尽くす炎の右手。
鋼の人影の胸から導き出されたそれは、一瞬で狂戦士を融かし、消し去った。





626 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:46:31 PKtQrdps0


燃える炎の中、向かい合う。その名の如く、中世に火刑に処された聖女の様に。
その相手は鋼の鎧を纏った誰か。人に美しいものを齎すと言われる者。
【LANCSER】と頭上に浮かんだ、ポルシオンという名の鋼の奇械。

「そうか……君が、僕のサーヴァントなんだね」

人影は応えない。
ただ、ラ・ピュセルを見下ろしている。彼が、なぜそうするのか知りたいと言うかのように。
ラ・ピュセル/颯太も、答えを必要としていなかった。
…結局、二つの人影は、火が消え、空が白んでくるまで見つめあっていた。
ずっと、ずっと。





627 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:47:30 PKtQrdps0



喝采は無い。
喝采は無い。
彼は敗残者、彼は犠牲者(きえていくはずだったもの)、彼は愚者。
それが真実である。

されど――――少年は確かにその日、運命に出会った。




【出典】赫炎のインガノック-what a beautiful people‐
【CLASS】ランサー
【真名】ポルシオン
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力:A 耐久:B 敏捷:A+ 魔力:A 幸運EX 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。事実上、現代の魔術師の扱う魔術ではダメージを与えるこ

【保有スキル】
奇械:A
誕生の時を迎えられなかった可能性の具現にして、人々に美しい物を見せ万色に変化する鋼の人影。
彼らは可能性そのものであり、それ故にあらゆる精神・物理攻撃を無効化し、遍く存在を打倒し得る。
しかし、彼らは宿主無しには現界を果たせず、宿主であるマスターとの緒を絶たれるか、宿主が""手を伸ばすことを諦めてしまった時""本聖杯戦争におけるランサーは現界を維持できず消滅する。

形なき寓話:A
ランサーは非顕現時、サーヴァントとしての気配、魔力を発さない。
また顕現時に限り自身のマスターにAランク相当の透化、対魔力、見切りのスキルを付与する。

精神負荷:C+
バッドスキル。奇械は宿主に精神負荷を強い、やがては死に至らせる。
彼専用のエクストラクラスではなく、ランサーとして召喚された事によりワンランクアップしてしまっている。
その負荷は道化師と言う形で再現されるが、あくまで再現であり、異形都市にいる根源存在と同一ではない。

心の声:D
ランサーは非顕現時にマスターを含めた対象者数人の心の声を見る(聞く)ことができる。
ただし、一度に得られる情報はそう多くはなく、マスターとの共有もできる可能性は低い。

千里眼:A++(C)
視力の良さ。正体看破、弱点看破、動体視力の向上、見切りに重きを置いている。
正し、現在の宿主は現象数式を修めておらず、全てランサーのリソースで行われるため弱点看破は失敗する可能性がある。

【宝具】
『最後に残った御伽噺(right hand from behind)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:31
――御伽噺を忘れた都市に残されたただひとつの希望(ラスト・ファンタズム)。
「熱死を司る切り裂く炎の右手」と圧死を司る「打ち砕く王の右手」の召喚、それを以て相対者を粉砕する。発動時にはランサーの敏捷値にさらに++補正がかかる。
維持・攻撃にかかる魔力はランサー自身が負担するため実質的な魔力消費は顕現時にかかるもののみとなっているが、顕現時の魔力消費は大きく燃費はあまりよく無い。

『悪なる右手』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ポルシオンを顕現させている状態でのみ発動可能。ポルシオンの形態を変容させステータスに上昇補正をかけ、変容した右手で薙ぎ払うことで対象の《現在》を奪い去る。
マスターに関しては聖杯戦争中における全ての記憶と変化が奪われ、全てが聖杯戦争前の状態にまで戻される。聖杯戦争参加前に死亡していたマスターは消滅するか死体に戻る。
サーヴァントに関してはあらゆるスキル・宝具を無効化したうえでその霊核そのものを取り込み消滅させる。
発動時には宿主であるマスター自身の右手も変容する。《奇械》ポルシオンと同様に刃の手となる
現在この宝具は全く機能せず、また命の危険があるほど莫大な魔力消費をマスターに強いるため使用する際には令呪のブーストが必要。

【weapon】
上記の宝具。

【聖杯にかける願い】
マスターの行く末を見届ける。

【人物背景】
《復活》の後に現れた鋼鉄の鎧に身を包んだ、影の如き異形たち。人に《美しいもの》をもたらすと噂される奇械。


628 : ■■少年育成計画 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:48:03 PKtQrdps0

【マスター】
ラ・ピュセル (岸辺颯太)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
死のショックで忘れてしまったあの子を思い出したい。

【能力・技能】
魔法少女への変身。
魔法騎士ラ・ピュセルに変身することで身体能力を大幅に向上させる事ができる。
また、魔力量も増大し、サーヴァントが全力で戦闘するに足る魔力を供給できるようになる。

「剣の大きさを自由に変えられるよ」
彼の固有魔法。持っている剣と鞘をその時々で最適な幅、厚み、長さに変える事が出来る。
ただし、自在とは言っても自分で持つことが不可能なサイズにすることは出来ない。
剣は非常に頑丈にできており、傷をつける事さえ困難。

【役割】
サッカー留学生。一人暮らし。

【人物背景】
数少ない「変身前が男」の魔法少女で、姫河小雪(スノーホワイト)の幼馴染の中学2年生。
小雪とは中学校が別だが、小学生時代は魔法少女好きの同士として良き友人だった。
学校ではサッカーに打ち込む一方、周囲の人間には内緒にしながら魔法少女作品の鑑賞も続けている。
マジカルキャンディー争奪戦が始まってからはスノーホワイトを守る騎士として奮戦するが、森の音楽家クラムべリーとの戦いで敗北。志半ばで斃れた。

【方針】
魔法少女として手を差し伸べ続ける。


629 : ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:48:19 PKtQrdps0
投下終了です


630 : ◆5/xkzIw9lE :2016/12/04(日) 11:58:47 gNZoV/PU0
なおステータスシート作成において、夢現聖杯:reにおける八神はやて&ギーの候補話を参考にさせて頂きました


631 : ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:45:44 2wQWv.CE0
お借りいたします


632 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:48:29 2wQWv.CE0
 豪雨が降り注いでいた。
 無限に続くかと思われる巨大な積層都市の最下層に、雨が振り続けていた。
 容赦なく叩きつけるような雨粒に晒されながら、彼は宿敵と対峙する。
 世界全てを支配せんとする男は、もはやかつての涼し気な表情を失っていた。
 激高し、怒鳴り、叫び、感情も顕に怒りをぶつけ、彼に対して拳を叩きつける。
 何故か。
 彼が立ち上がるからだ。
 幾度殴られ、蹴られ、投げつけられ、叩きつけられても、彼が立ち上がるからだ。
 彼は笑った。笑って、ゆっくりとクレーターの底から立ち上がった。
 その姿を見て、男が目を剥く。信じがたいものを見るような表情。

「なぜだ? なぜやめない? なぜ立ち上がり戦い続けようとする?
 命を捨ててまで守りたいものがあるのか? それが何か分かっているのか?
 自由か、真実か、平和か、それとも愛か? それはただの幻想だよ。
 愚かな人間の知性が意味も目的もなく存在するのを正当化するための幻だ。
 この世界と同じ虚構なのだ。つまらん愛とやらを作り出せるのは人間だけだが……。
 そろそろ分かっているはずだ。君は負ける。戦う意味はない。
 なぜだ? なぜそこまで続ける!?」

 彼は言った。

「選択したからだ」

 男が吠え、飛びかかってくる。彼は身構え、真っ向からそれを迎え撃った。


01010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101


633 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:49:34 2wQWv.CE0

「さあ、出てこいミスター・アンダーソン! 遊びは終わりだ!」

 ――まったく、夢見が悪いと思ったらこれだ!

 アンダーソンはオフィスでデスクの下に潜り込みながら、苛立たしげに舌打ちをした。

 妙な夢を見た。救世主伝説とブルース・リーとヒーローコミックをごちゃまぜにした夢だ。
 そして目覚ましを止めたら遅刻寸前。慌てて飛び出したけど結局遅刻。
 上司に怒鳴り散らされ、今度遅刻したら首にすると脅され、席につけば仕事の山。

 ――そしてお次はテロリストの襲撃ときたもんだ!

「ねえ、マスター? もういっそ皆殺しにしちゃいましょうよ。そのほうが早いわ

「む……。確かにそうだな。隠匿さえすれば、魂喰いも許される。よし、やれ!」

「何を言ってるんだ、あいつは……」

 頭でもおかしくなったのか?
 ファンタジー小説にでも出てきそうなローブを纏った男は、頭の痛くなるような事を叫んでいる。
 その隣に扇情的な衣装を纏った女を伴っているあたり、ここはコミコン会場かと疑いたくもなる。
 だが、これは現実だ。
 男がわめきながら手を振れば稲妻が飛んで同僚が消し炭になり、女の槍は同僚の首を跳ね飛ばしている。
 隠れている自分に気づいている様子は無いが、時間の問題だろう。

 これが現実――現実? 本当に?

 アンダーソンは目を瞬かせた。白い兎を見たような気がした。
 男の放った稲妻で吹き飛んだ机から、舞い上がった書類が雪のように降り注いでくる。
 その中に、白いトランプが一枚だけ混ざっていた。
 ひらりひらりと、左右に揺れながら、アンダーソンの前でトランプが踊る。

 ―――― "Follow the white rabbit."

 そう呟いたのは無意識のうちだったのかもしれない。
 あるいは潜在的な、何かがそれを促したのかもしれない。
 アンダーソンは恐る恐る、その紙切れへと手をのばし―――― 

(((三秒後、頭を低くして走って、奥の部屋へ!)))

 ――――その瞬間脳裏に響いた声に従って、弾けるように駆け出した。

(((奥の部屋。入って、窓の外。ゴンドラに飛び移って!)))

 逃げ惑う人の隙間。崩れてきた荷物の影。死角から死角。
 滑り込むような動きはアンダーソン自身でも驚くほどに俊敏だ。
 もちろんその速度に驚いたわけではない。
 コツを覚えていたことに驚いたのだ。

「君はどうするんだ?」

 サーヴァント。聖杯戦争。英霊。ムーンセル。
 次々と流れ込んでくる0と1の感覚は、彼にとって極めて懐かしいものだった。
 主観時間だとさほどの時間は経っていないが、客観時間ではどれほどの経過があったのか。
 アンダーソンはオフィスの窓をあけると、雪風の中に身を乗り出した。
 吹きすさぶ風の冷たさに目を閉じ、反射的な動作に思わず笑って、平然と外に身を晒す。
 すぐそばには窓拭き用のゴンドラが揺れている。
 間に足場は無い。落ちれば死ぬ。遥か下のコンクリートに叩きつけられて。

(((そりゃあ、私はサーヴァントだもの。サーヴァントの相手をする。でしょう?)))

「なら、僕はマスターの方だな」

(((そーゆーこと)))

 鈴のような声音が脳裏に響いて、ぶつりと途絶える。

「……今度の兎の穴も、けっこう深そうだよ」

 もう会うことのない懐かしい友にそう呟いて、アンダーソンは笑った。
 笑い、そして以前は跳べなかった空間へと彼は身を躍らせた。


01010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101


634 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:49:52 2wQWv.CE0

 メタ・コーテックのスノーホワイト支社に務めるアンダーソンはマスターだ。

 幸運にも早期に記憶を取り戻したその魔術師が、ウェブを流れる情報を手に入れたのは偶然だった。
 聖杯戦争の初動をどうするかというのは難しい問題である。
 動けば痕跡が残る、痕跡が残れば他の参加者に気づかれる。
 十五騎が揃った状態で時間となれば本戦が始まるののだから、予選中は潜伏すれば良い。

 だが、もしも相手がまだ未覚醒の状態だったら?

 それは悪魔のような囁きだった。いや、事実そうだったのかもしれない。
 彼の召喚した槍兵の魔女は、褥を共にしたあとで艶っぽく告げてきたのだ。

 もしも私が滅んでしまった時、もう一枚トランプがあれば、力になれるでしょう?

 魔術師は迷わず飛びついた。
 彼は槍の魔女の肉体に溺れていた。
 魔女が魂食いを望んでいるだけと気づいていても、拒もうとは思えなかった。
 自らの欲望のまま無辜の人々を惨殺することを選んだ時点で、彼と彼女に救いは無い。
 故に――――……。

「残念でしたっ!」

 ――ここに森羅の守護者が立ちはだかる。

 真紅の外套を翻した少女が、白黒一対の剣をもって、魔女の槍を切り払う。
 澄んだ金属音を伴って穂先が弾かれ、今まさに殺されんとしていたプログラマーの命を救う。
 這いつくばるようにして隠れているデスクには、妻子の写真。プログラマーは父親だった。
 父親としての役割を与えられたAIだった。

「なッ!? サーヴァントだと……ッ!?」

 魔術師は唾を飛ばして怒鳴り散らし、目を剥いた。
 悠然と目の前に佇む少女は、明らかに他の人間――AIやNPCどもとは情報量が違う。
 間違いない。英霊――サーヴァント、アンダーソンの呼び出したものだ。

「ふうん、正道の英霊かしら。ご苦労なこと……」

 槍の魔女は、転げるように逃げ出したプログラマーを横目で追いながら、気怠げに息を吐く。

「所詮は自我も魂もないAIや、何者かもわかっていないNPCでしょう? 守るだけ無駄な努力よね」

「……救われない人」

 真紅の弓兵は蔑むようにため息を吐いた。
 するりと踊るようにステップを踏み、口元には大胆不敵な微笑が浮かぶ。

「良いわ、掛かってきなさい。――正義の味方ってのを教えてあげる」

「抜かせ、小娘ッ!!」

 激突。
 今までの戯れではなく、槍の魔女の本気の攻勢。
 紫電の如き突きを、少女は残像すら残らぬ速さでことごとく迎え撃ち、弾き飛ばす。

「……ッ!」

 彼は援護しようと呪印を結びかけるが、高速の攻防に介入の余地はない。
 魔術師はとっさに視線を彷徨わせて、奥の扉が僅かに開いている事に気がついた。
 思わず飛びつく。ドアを開く。吹き込んでくる雪の冷たさに目を閉じた。窓が開いている。

 ――上か!

 窓の外にゴンドラが見え、それで彼の次の行動は決まった。

「ランサー、その娘を仕留め……いや、捕えろ! 使い道はいくらでもある!」

「はい、マスター。仰せのままに……。四肢を貫いて、磔にしてあげる」

「うわ。お断りなんだけどなぁ」

 緊張感無く顔をしかめる少女に、緊張感はあまりない。
 駆け出した魔術師を背にした魔女は、その表情に唇を噛んだ。身の程を知るべきだ。
 彼女は素早く口訣を結び、槍の秘めたる名を解き明かす。
 毒棘を持つその槍は、触れれば肉を腐らせ、骨を溶かし、血を沸かす必滅の武具。
 一切の躊躇なく繰り出されたそれを見て、すっと少女は目を細めた。

「刻印弓(フェイルノート)、第二展開!」

 音もなく、まるで翼を広げるように少女の右腕から弓が弦を伸ばす。
 そして、虹色の光が世界に満ちて――――……。


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635 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:50:17 2wQWv.CE0

「もはや逃れられないぞ、ミスター・アンダーソン!!」

 ビルの屋上に、その男はいた。
 魔術師はぜいぜいと息を荒げながら、苛立たしげに男を睨みつける。
 ゴンドラに飛び移り、そこからさらに上を目指すのは、相応の労力が必要だった。
 だが、いつの間にやら黒いコートを着込んでいたアンダーソンは、平然と立っている。

 ――まるで、魔術師を待ち構えるかのように。

「無駄な足掻きをするな!
 勝ち目は無い――どうやらサーヴァントを召喚したらしいが、あの小娘も俺のランサーには勝てん!
 お前もそうだ! 魔術師でもないお前が、今こうして俺と対峙した時点で負けは決まっている!
 諦めろ! お前が戦う意味は無い!」

「いや」

 男は、平然と言った。

「僕はもう、選択した」

「抜かせッ!!」

 魔術師は感情に任せて呪印を切り、魔力を迸らせた。
 魔力は雷槌の形を結び、迸る紫電が周囲の大気を沸騰させる。
 ムーンセルによって参加者として選ばれ、自我を取り戻すだけの才を見せた魔術師である。
 その魔術の技量は、並大抵のものではない。
 彼は自らが生み出した雷を槍の如く振りかぶる。如何なる者とて、この一撃は防げまい。
 音の四百四十倍。一億ボルトの電圧。一ギガジュールのエネルギーの塊。
 まさしく神也!

「死ねぇッ!!」

 だから魔術師はその結果を確信していた。
 男は黒焦げになり、全身の筋肉を炭化させ、神経を燃やし、痙攣しながら死ぬのだと。
 故に、この結果はありえないものだった。



 稲妻が

       空中で


             止まっている。



 魔術師は目を瞬かせた。何だこれは? 何が起きている?
 このアンダーソンという男は、魔術師などではなかった筈だ。
 だが、しかし、これはなんだ。
 なぜ自分が渾身の力で放った魔術が、突き出された掌の前で停止しているのだ?
 これは本当に現実なのか? 現実――――……現実?

「一つ、僕が教わったことを教えてやろう」

 不意に静かな声が響いて、魔術師ははっと顔をあげた。
 そこにはアンダーソンが立っていた。
 掌を突き出し、ぼろぼろの背広姿のまま、けれど雪よりも透明な表情で。

 ――――なんだ、この男は?

 先程まで、こんな雰囲気は纏っていなかったはずだ。
 目の前に立っている男は、まるで巨大な壁のようだった。
 それが自分へと覆いかぶさってくる。そんな錯覚に、口の中が乾く。

「"スプーンなんて無い"」

 それが魔術師が聞いた最後の言葉だった。
 アンダーソンが僅かに力を込めると、稲妻が光の速度で手元に戻り、魔術師を貫いたからだ。
 強烈な放電の情報量は容易く魔術師の意識を0と1に分解した。苦痛は無かったろう。
 彼は黒焦げになり、全身の筋肉を炭化させ、神経を燃やし、痙攣しながら崩れ落ちた
 つまり、死んだのだ。


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636 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:51:30 2wQWv.CE0
 戦いは終わった。
 ぶすぶすと煙を上げる炭素の塊に背を向けて、彼は屋上の断崖絶壁に佇む。
 見下ろしたスノーフィールドの街は荒涼としていて、雪が容赦なく彼に降り注ぐ。

「つまり、これも"代償"のうちってわけか?」

 かつて彼は一つの契約を交わした。
 人の世界を救うため、機械の世界を救うという約束だ。
 機械じかけの神はそれに同意し――彼の献身を代償として、二つの世界は救われた。
 だがしかし、この機械じかけの月にまだ危機があるというのであれば。

 ――それを救うのが、僕の使命というわけか。

 アンダーソン、いや、もはやネオと呼ばれるべき男は皮肉げに口元を緩めた。
 救世主は休む暇も無いらしい。大工の息子も三日で蘇らせられた。

 ――だが、まあ、かつてと比べれば随分と楽だ。

 既に選択は為された。
 この偽りの都市――そう、ここに都市などない――に集った人達は、自らの意思で立っている。
 だが未だに選択する事にさえ気が付かず、今さっきのように惨殺されていく人々もいる。
 それがPC候補であれ、純然たるAIであれ、そこに何の違いもないことをネオは知っていた。
 あのマシンシティへ向かう途中の地下鉄駅で出会った、ある家族がそれを教えてくれた。
 AIとて「愛」を覚えるのだ。「運命」はそこにある。
 重要なのは言葉ではない。言葉が意味する関係性――つまり、「そこにいる意味」だ。
 ならばムーンセルがネオを招いた理由は明白だった。

 ――トリニティ、君がいたら何と言うだろう?

 喪われた恋人の怜悧で容赦のない口調を思い返すと、僅かな寂しさが雪風に混ざった。
 まるでエージェントみたいね、だろうか。実際、似たようなものだ。
 ネオは目を閉じ、ムーンセルの中を流れる0と1、プログラムの奔流に身を浸した。
 と――……。

「おまたせっ。大丈夫だったみたいね?」

 まるでデートに遅れたことを気にもしない少女のような声。
 ネオは目を開き、ゆっくりと振り返った。
 真紅の外套を纏った弓兵の少女――彼女が銀髪をなびかせて、猫めいた微笑を浮かべている。

「今回はお互いガーディアンって事で呼ばれたみたいだけど……良い?」

「大丈夫だ。……といっても、立場としては参加者らしいが」

 ネオは笑った。
 察するに、この少女も英霊として――ムーンセルの守護者として顕現させられたのだろう。
 英霊というのは人類種が存亡の危機に陥った時、それを救うために現れるのだという。
 だとすれば自分のいた世界に彼女のような存在が現れなかったのは……。

 ――つまりあのマシンに支配された世界は、人類が滅ばない世界だったというわけか。

 なるほど、それは確かに事実で、ネオの笑いはその皮肉な事実に起因した。

「自分の意思で選択をした以上、参加者はその結果を受け入れなければならないと僕は思う」

 ネオが静かにそう言うと、少女は「ふぅん」と面白がるように相槌を打つ。

「だが選択する事もできない人々や、無関係のAIたちが……犠牲にされるのは、おかしい」

「そうね。 うん……悪くない答えだと思う」

 にこりとアーチャーは微笑んだ。
 英霊の年齢など考えるだけ無駄だろうが、見たところ16か、17か。
 ティーンエイジのアイドルかなにかとして、グラビアを飾っても良さそうな容貌だ。


637 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:51:45 2wQWv.CE0
 そんな彼女が戦いに身を投じていることに、ネオは僅かな疑問と好奇心を抱いた。
 もともと好奇心は強い――でなくば、兎の穴には飛び込まない――方だ。素直にそれをぶつける。

「サーヴァントはムーンセルに願いがあるんだろう?」

「んー?」

 アーチャーは問われた言葉に不思議そうに首を傾げ「大したことじゃないの」と手を振った。

「私は……そうね。ちょっと、見てみたい世界線があるだけ」

 ある人が救われている世界線を見たいのよ。アーチャーはそう言った。
 ネオは頷いた。よくわかる話だった。自分もトリニティが救われた世界線を見てみたい。
 ムーンセルに願う報酬があるとすれば、それだけだ。それで十分だ。
 しかしネオは深く納得したと同時に、再び疑問が浮かぶのを覚えた。
 それはかつて、幾度となく己自身に問うた事でもあった。答えのでない問題だ。
 選択したから、という結論に至るまで――長い、長い、時間と戦いが必要だった問いかけ。

「しかし、なぜ僕なんだ?」

 問われた少女――銀髪に赤い外套の弓兵は、一瞬きょとんと目を見開いた。
 その赤い目が宙を彷徨い、わずかに朱に染まった頬を、形の良い指先がごまかすように掻く。

「それは……」

 くるりとアーチャーは顔を隠すように背を向けた。
 三つ編みにされた銀髪が大きく弧を描いて空中に踊る。
 その軌跡がまだ宙にある内に、彼女はステップを踏んで、舞うように振り返った。
 顔に浮かぶ表情は――気恥ずかしさに満ちた、けれど楽しげな微笑。
 
「あなたのコートとその声が、エミヤキリツグに似ていたからよ!」

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638 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:53:13 2wQWv.CE0
【出展】SWORD DANCERS(比村乳業)
【CLASS】アーチャー
【真名】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではアーチャーに傷をつけられない。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
心眼(偽):C
 第六感による危険回避。

千里眼:C
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

魔術:B
 錬成魔術を中心に、オーソドックスな魔術を高いレベルで行使できる。
 魔術師としての技量は低いが、理論をすっ飛ばして「結果」のみを現出可能。
 髪の毛を媒介に使い魔を作り出す事ができる他、強烈なガンドを発射する。

投影魔術:C+++
 ある無銘の英霊の心象風景=固有結界より零れ落ちたもの。
 そこは「剣を形成する要素」で満たされ、目視した刀剣が登録、複製、貯蔵されている。
 貯蔵可能なものは武具に限定されるが、ランク低下と引き換えに宝具の投影も可能。

【宝具】
『刻印弓(フェイルノート)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-99 最大補足:10人
 右腕に刺青として刻まれた魔術刻印。
 解放することで手首に赤い光弓を展開、実体を持たない「弓を打つ」概念となる。
 投影した剣を瞬間的に装着、狙った場所に確実に着弾させる事ができる。
 ただし弓自体に追尾効果などはないため、極めて正確な射撃以上のものではない。
 アーチャーに弓の才能は無く、この宝具によって弓兵のクラスを得ている。

『夢幻凍結(ファントムキャンセラー)』
ランク:A 種別:対抑止宝具 レンジ:1-99 最大補足:1
 フェイルノートの第二段階。抑止の守護者へのカウンターとしての宝具。
 対象が宝具を解放しようとした際、瞬時に情報を解析し、同じ宝具を投影、発射する。
 これによって如何なる規模の宝具であろうと相殺、無効化する事ができる。
 ただし打ち消せるのは武器としての形状を持つ、アーチャーが投影可能な宝具に限られる。

『我が魂と絆の剣(ローレライ)』
ランク:EX 種別:第三魔法 レンジ:1 最大補足:1
 ある無銘の英霊が、ただ一度だけ自身の意思で錬鉄した剣。
 アーチャーの霊核であり、厳密にはこの剣こそがアーチャーの本体。
 赤い外套を纏った少女の姿は、いわばこの剣に憑依している幽霊に過ぎない。
 アーチャーが投影を扱えるのは、剣を通して無銘の英霊の心象風景と繋がっているため。
 この剣が破壊されない限り、アーチャーは消滅することがない。
 また単独行動スキルの期限が来て魔力が尽きても、彼女は剣の姿で存在を維持できる。

【weapon】
『干将・莫耶』
 アーチャーが好んで振るう陰陽一対の夫婦剣。ランクC-の宝具。
 装備しているだけで対魔術・対物理防御が上昇する、一種の巫術礼装。
 また互いに引き合う性質を持つため、投擲や奇襲に応用する事もできる。
 本来はさほどの刀身ではないのだが、アーチャーは長剣サイズに延長して投影している。

『シュトルヒリッター(コウノトリの騎士)』
 術式『天使の詩(エルゲンリート)』を用いて髪の毛を媒介に錬成した使い魔。
 小型ながら魔力の生成すら可能な自立浮遊砲。「小さな魔術師」とすら称される。
 光弾を撃つ銃身兼剣と、それを固定した浮遊する本体の2パーツで構成されている。
 射出する普通の光弾をツェーレ(涙)、剣部分を光弾として放つものをデーゲン(剣)と呼ぶ。


639 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:53:37 2wQWv.CE0
【人物背景】
 銀髪を三つ編みにし、赤色の外套を纏った弓兵の少女。
 抑止の守護者が非道な行いを以って世界を救わんとした際に顕現する、森羅の守護者。
 犠牲を減らし、人を守り、助け、誰も殺さずに世界を救おうとする「正義の味方」。

 明るく元気、破天荒でおてんば、周囲を引っ掻き回す年相応の少女らしい性格をしている。
 軽薄な振る舞いに反し身体能力は極めて高く、かのアーサー王とも互角に打ち合ったという。
 またクーフーリン、ギルガメッシュ、ヘラクレスなど大英霊との面識もあるらしい。
 可愛い女の子を好み、天然ではないけれどドジっ子属性があるとのこと。

 16歳の春、一番大切な人と二人っきりで旅に出た少女。
 一年後に生涯を終えた彼女の魂と亡骸が、剣として鍛えられた存在。

【サーヴァントとしての願い】
 無銘の英霊を抑止から解放する。
 無辜のNPCたちを守る。

【基本戦術、方針、運用法】
 アーチャーは純然たる「正義の味方」として行動します。
 彼女の目的は無銘の英霊を抑止から解放することですが、同時に無辜のNPCを守ることです。
 つまり積極的であれ消極的であれ、NPCに犠牲を出す行動は取りません。
 戦闘においては――Fate原作本編のアーチャーさながらの戦術を取ります。
 近距離では双剣を用いた白兵戦、刻印弓を用いた投影剣連射、狙撃、宝具の投影。
 固有結界を展開できない彼女の切り札は『夢幻凍結』です。
 相手の宝具を無効化し、即座に連撃を叩き込むのが必勝パターンでしょう。


640 : 兎の穴 ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:53:50 2wQWv.CE0
【マスター】
 ネオ(トーマス・A・アンダーソン)

【出展】
 MATRIX 三部作

【参戦方法】
 スミスとの最終決戦後、分解されたデータをデウス・エクス・マキナが回収。
 ムーンセルとの間の何らかの情報交換においてデータが引き渡され、再構築された。

【人物背景】
 人類がマトリックスという巨大な仮想世界で捕らわれている時代に現れた"救世主"。
 あらゆるプログラムに干渉することのできるアノマリー(異常情報体)。
 元は単なるプログラマーだったが、救世主として目覚め、マトリックスとの戦いに挑んだ。
 その中で、宿敵であるマトリックス側エージェント・スミスが暴走を開始してしまう。
 彼もまたアノマリーと化し、マトリックスを全て自分のプログラムで支配しようとしていた。
 人類とマシン双方が滅亡の危機に晒され、ネオはマトリックスと和平を結ぶ事に成功。
 そして人類の解放と引き換えにスミスと戦い、自らの犠牲を以ってスミスを消滅させた。

【能力・技能】
・アノマリー(異常情報体)
 あらゆるプログラムに干渉し、自らの望むままに書き換える能力。
 電脳空間内においては限定的な「全能」として発揮される。強力なコードキャスト。
 身体能力の超人化、傷の治療、事象の変換、物質の想像エトセトラ。
 ただし能力行使には集中が必要となるために、消耗も激しい。
"そこにスプーンなんて無い”。

【マスターとしての願い】
 無辜のNPCたちを守る。

【方針】
 ネオはムーンセルによって構築されたガーディアンです。
 オープニングで発生したバグを疑問視したムーンセルが、ネオを呼び出しました。
 彼は超人的な身体能力と限定的な「全能」を駆使し、NPC達を守るために戦います。
 彼は人とマシン、二つの存在の"救世主"であることを選択したのですから。


641 : ◆yYcNedCd82 :2016/12/04(日) 12:54:04 2wQWv.CE0
以上です
ありがとうございました


642 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:07:15 tU1rsksU0
投下します。


643 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:07:37 tU1rsksU0
人気のないビル街に、今日も戦いの狼煙が上がる。
其処にいたのは、一人の青年と、一人の武装した剣士。
一人は剣を、一人は銃を構える。
互いに距離を置き、二人は間合いを取る。

「さてと、お手並み拝見といこうか、セイバー。」

そういったのは、銃を持った方の青年だった。
青年に与えられたクラスは「アーチャー」。
そう、弓を操るクラスだ。
そしてその銃が彼にとっての「弓」だ。
アーチャーはその銃に、一枚のカードを差し込む。
そして銃をリロードするような感覚で、銃身を引っ張る。

『KAMENRIDE』

銃から、合図のように電子音声が鳴り響く。
セイバーは、そのプロセスをじっと見守る。
アーチャーは上空に狙いを定め、叫ぶ。

「変身!」
『DIEND』

銃口から放たれたのは、銃弾―ではなく、紋章。
そして彼の周りには複数の幻影が出現する。
バラバラな色を持った幻影は滅茶苦茶にアーチャーの周りを移動していくが、やがては全て彼にくっつく。
アーチャーはそれと同時に変わった黒い姿に変わり、頭上にある紋章が数枚の札に変わる。
札はアーチャーの頭に順番こに突き刺さり、アーチャーの色が徐々に青色へと変わっていく。
これこそがアーチャーの「宝具」なのだ。

「ほう、面白い!」

そう言ったセイバーは、アーチャー目掛けて剣を振りかざす。
だがアーチャーは直ぐにジャンプして避け、上空で回転しながらもセイバーの頭上に銃撃を放つ。
放たれた銃弾は全てセイバーに当たり、セイバーは地面を仰け反る。

「ぐはっ!」

だが、セイバーは怖じけずに直ぐに立ち上がる。
こんな所で怖気づいていたのなら、彼は英霊になぞなっていない。

だがしかし、アーチャーは既に二枚のカードを手に取っていた。


644 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:08:22 tU1rsksU0

「随分と立ち上がるのが早いね、まぁそういうのは、嫌いじゃない。」

軽い口調でそう言ったアーチャーは、まず片方のカードを銃身のスロットに差し込む。

「武士には騎士だ。」

そして銃身をまた引っ張る。
変身時とほぼ同じ動作だ。

『KAMENRIDE―KNIGHT!』

電子音声が鳴り響く。
更にもう一枚差し込む。

『KAMENRIDE―SASWORD!』

二枚のカードを吸い取った銃を、アーチャーはセイバーに向ける。

「来い!」

セイバーは剣を構え、攻撃に対処せんとする。

「今に来るさ、来たまえ、僕のナイト達。」

そう言って、アーチャーは引き金を引く。
発射された銃弾は複数の影となり、人の形へと変わる。

「フン!」
「ハッ!」

出現したのは、二人の甲冑男だった。
片方は蝙蝠を象った黒い騎士で、黒い西洋式のスピアーを手に取っている。
もう片方はサソリを象った戦士で、毒々しく細い剣を手に取っている。
彼等こそが、アーチャーの使い魔なのだ。

「いってらっしゃーい。」

アーチャーの合図に答え二人の使い魔は走り出し、セイバー目掛けて得物を振り翳す。

「チィッ!」

しかしセイバーも譲る気配はない。
剣を、槍を、生涯を掛けて培ったその武技でいなし、軽々と二人をあしらう。
そしてそれを遠くで見つめているアーチャーは、また一枚のカードを取り出す。
カードをまた銃に差し込み、構える。


645 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:08:50 tU1rsksU0

「それじゃぁね。」
『ATTACKRIDE INVISIBLE』

その音声とともに、アーチャーは姿をフッと消した。

「ッ!逃げるのか!」

剣と槍を同時に押さえ込みながらも、セイバーは使い魔に戦いを任せ逃げたアーチャーに怒りを向ける。
しかしアーチャーの気配は既に感じられなかった。
だが、

「どうした、そんなものか。」
「オレは剣においても頂点に立つ男だ!」

二人の使い魔は力を緩めてくれない。
このままでは時間の無駄だ。

「クソッ!」

戦いをメチャクチャにされたことを悔しがりながらも、セイバーは霊体化する。
セイバーが霊体化したのに答え、二人の剣士も消滅した。






◆  ◆  ◆




「にしてもほんま、面倒な事になりよったな」

アパートの一室に、箒のような髪型をした細い体型の青年が、退屈そうな表情で寝そべっていた。
男の名は沢下条張。
嘗ては十本刀が一人「刀狩りの張」と言う異名を持っていた男だったが、今では只の密偵だ。
そして今では、米国の諜報員と言うロールを頂いている。

(あめりか……わいには縁のない国やなぁ、そもそも異国に渡ったことすら初めてやっちゅうのに)


646 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:09:32 tU1rsksU0
あめりか。
文明開化の兆しが見えてきた張からしても、それは大変聞き慣れた国の名である。
黒船を連れ、鎖国を解いた西洋の大国。
張はこの様な国には来たことすら無いし、来るつもりもなかったが、まさかこの様な形で来ることになるとは思いもよらなかった。
見たところ、この米国とやらは確かに優れた国家だ。
軍事力、財力、ありとあらゆる面で日本を凌駕している。
今にしてみれば、日本が頭を下げたのも、ある意味では正解だったのかもしれない。

(悪かなかへんがなぁ、あめりかとやらも、さて、あの方が見たらさぞ何ということやら)

ふと、嘗て己が頭を下げた志々雄真実の顔が思い浮かぶ。
日本を喰らい尽くそうと、あのような暴虐を尽くした彼だが、もし彼が国盗りに成功したのなら、恐らく近いうちにこの「あめりか」にもその刃を向けてくるに決まっている。
征服欲が服…もとい包帯を巻いて歩いているような人間だ。
況してや、日本が幕末の世を迎えた切っ掛けの一つともなった黒船を送った国。
日本にその強大さを思い知らせ、屈服させた大国。
そうともなれば、志々雄は日本をとった暁にはこの国に攻め込んでくるのは、まず確実な事になるだろう。
勝てるかどうかは、また別の話だが。
しかし、米国に来てしまった以上に張が驚く事は山程ある。

(しっかし、よもや150年後の未来に来てしもうことになるなんて、有りえへん話やなぁ、ほんま。
前代未聞や、まぁ所謂「たいむすりっぷ」みたいなモンやろか)

成る程、たしかに150年後ともなれば、此処まで米国が大国になるのは驚くべきことだ。
それに何より、此処には張のいた時代ではあり得なかったような代物が山のようにある。

「てれび」という、絵が動く箱や「携帯電話」という、電話局を介せずとも連絡が取れる小型電話。
何れにしても、張からしてみればまるで魔法のような代物だ。
実際張もロール上で使ってはいるが、どれもこれも使うのには一苦労だ。
刀を振るってきた自分には、からくりなど性に合わない。
志々雄にくっついていた「百識の方治」が見たらさぞ何というのだろうか。

(ま、あのオッサンなら確実に馴染みそうではあるんやけどな、こーひーやら軍艦やらにも馴染んとったみたいやし。
しっかし、こんな奇天烈な話もあるんやなぁ……)

張は、一度己がこの聖杯戦争という催しに乗せられた切っ掛けを想起してみる。
始まりは、志々雄真実が大型甲鉄艦を入手したルートを探していたときのことだった。
その時に偶然、一枚の札を手に取ったのだが、これがまずかった。

(あん時にこれ取んなかったらなぁ……望む願いなぞあらへんし、ますます面倒な事になってきてしもうた……
さて、あの札は何処で何をやらかしとることやろな)


647 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:09:54 tU1rsksU0
張は夜空を見上げながら、自分が召喚したサーヴァントの事を考える。
とその時。

「戻ってきたよ、マスター。」

不意に、幽霊のように一人の変わった形の青色の人型が実体化する。
その身体には、線という線があちこちについていた、
手にも足にも肩パッドにも頭の装飾品にも、おまけに右手に取っている拳銃にまで、線のような装飾が付けられている。
線が付けられていないのは、精々が左手に取ってある日本刀ぐらいのものであろうか。
この様な異様な風貌をした男が、張の喚んだサーヴァント、アーチャーである。

「サーヴァントを複数確認したよ。クラスはセイバー。最近召喚されたマスターらしいけどね、情報が手に入り次第殺しておくつもりだよ。」
「乗り気やなぁ、あんさん、そんなに欲しいんか?聖杯とやら。」

床から上半身を起こした張は、驚いたような表情でアーチャーの報告に答える。
生憎だが、張が求めるのは飽くまでも「刀」だ。
聖杯なぞ求めても何の意味もない。
強いて言うのなら、明治の世に現存する全ての刀の情報が欲しい、と言うぐらいなのだが。

「ワイは聖杯なんぞに興味なぞあらへん、それぐらいあんさんにくれたるわ。
んで、あんさんは何で聖杯を求めるん?」
「時代遅れの人に言うのも気が進まないんだけどね、まあ教えてあげるよ。僕にも願いなんてない。
強いて言うのなら、只聖杯という、このSE.RA.PHのお宝が欲しいだけなんだよ。」
「聖杯をお宝に……それで、どうするつもりなんや。」
「やだね、君には関係のないことだ、余計に人に突っかかると、嫌われるよ。」

その言葉に張はカチンと来る。

「な、何やとぉ!!」
「当たり前のことを言っただけだよ、箒頭君。」

随分と煽りが上手な性格だ。
もし斎藤一と出会ったら、どんな毒舌合戦が来るのやらと思うぐらいに彼の発言には毒がある。

「にしても、君が聖杯を求めないというのには都合がいい。
もし僕が聖杯を手にした暁には、君を元の世界に戻しておいてあげるから、感謝してくれたまえ。」
「恩着せがましい言い草やなぁ、ほんま。」

アーチャーの人を食った様な態度に、張は溜息をつく。

(随分と疲れるわ、此奴の相手するちゅうのは……全く、誰に似とるんやろうか……)

張は僅かに感づいてはいた。
アーチャーの性根が、己に似ていることを。
極上の得物を見つければ取んでいき、標的は誰にも渡さない。
輝ける力の全てを手にしようという、その野望を彼方まで掛けていくその欲望は、この二人を良く締め付けていた。

二人の足は止まることを、知らない。


648 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:10:28 tU1rsksU0
【クラス名】アーチャー
【出典】仮面ライダーディケイド他
【性別】男
【真名】海東大樹
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力C 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運C 宝具B(ディエンド変身時)

【クラス別スキル】

単独行動:A
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保つ能力。
Aランクなら、マスターが死んでも1週間は現界していられる。


対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージを多少軽減する。


【保有スキル】


仕切り直し:A
戦闘から離脱する能力。
また、不利な戦闘を初期状態に戻せる。


騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並み以上に乗りこなせる。


泥棒:A
宝物を集めるために盗みを働く男。
「破壊工作」「コレクター」の複合スキル。


気配遮断:A+
自らの気配を遮断する能力。
ただし、戦闘中は解除される。


649 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:10:48 tU1rsksU0


【宝具】


「宝物狙う札使いの線銃(ディエンドライバー)」

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

大ショッカーが開発した、拳銃型次元転換開放装置。
これにライダーカードを装填することで、アーチャーは「仮面ライダーディエンド」へと変身する。
ディエンドに変身することでアーチャーはまともに戦うことが可能となる。
更には、高速移動、透明化、そしてカメンライドカードによる仮面ライダーのエネルギー体の召喚を得意とする。
召喚された仮面ライダーはアーチャーの思うがままに動くが、ライダーは魔力の塊であるため、そう何体も召喚できない。


「劇場の8人映す蒼の端末(ケータッチ)」

ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:9

アーチャーが生前、時間警察から横流ししてもらった携帯電話端末。
「ネガの世界」に存在する同物の色違いではあるが、基本スペックは同じ。
これをバックルに装填することでアーチャーは「コンプリートフォーム」へと変身する。
ただし、彼が操るのは「G4」「リュウガ」「オーガ」「グレイブ」「歌舞鬼」「コーカサス」「アーク」「スカル」の8人である。
必殺技は8人の必殺技を同時にぶつける「アタックライド・ゲキジョウバン」。


【Weapon】

「ディエンドライバー」


【人物背景】

「お宝」を探し求める、仮面ライダーディエンドに変身する青年。
幾つにも存在する並行世界における「お宝」を汚い手段を使ってでも入手しようとしており、その度に士一行と対立している。
門矢士の事を知っており、ついでに彼の苦手な食べ物まで知っている。
その背景には、兄、純一をフォーティーンに洗脳された後悔があったらしく、その空虚さを埋めるために宝探しをしていたという。

飄々としていて掴み所がない性格。
当初はその過去故に人との繋がりを軽蔑していたが、純一との戦いを経て考えを改める。
士一行とも仲間意識が強くなっていったが、一方で黄金の拳銃を手に入れようとしてデンライナーの乗客や時間警察と対立していたりと根は相変わらずな模様。
此度の聖杯戦争においては、マスターの影響で其処の側面が強くなっている。


【聖杯にかける願い】

聖杯をくれっ☆


650 : 沢下条張&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:11:08 tU1rsksU0

【マスター名】沢下条張
【出典】るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
【性別】男


【参戦経緯】

志々雄関連の調査をしていた所で一枚のトランプを拾った。


【Weapon】

「連刃刀」

新井赤空製殺人奇剣。
普段は二振りの刀だが、合体させることで2つの刃がついた刀となり、連続で同じ傷を付けることで縫合を不可能にさせ傷を壊死させると言った物。


「薄刃乃太刀」

新井赤空製殺人奇剣。
鞭のようにしならせられる長い長い刀。
普段は腰に巻きつけている、危ない危ない。


他にも刀は持ってきているはずだが、彼が持ってこられたのはこの二振りのみ。

【能力・技能】


・剣術
十本刀の中でも中の上程の実力者。


・密偵
斎藤一の下で密偵を行っていた。
作中では神谷薫の死体が偽物であることを見つけていた。


【人物背景】

志々雄一派の精鋭「十本刀」において「刀狩の張」と言う二つ名を持つ男。
亡き刀匠、新井赤空の殺人奇剣を求めて刀を狩っている。
逆刃刀・真打を狙い緋村剣心に戦いを挑むが敗れ去り、獄に繋がれる。
その後は斎藤一の下で密偵を行っている。

関西弁で喋るひょうきんな性格。
子供に好かれやすい。

【聖杯にかける願い】

とっとと帰りたい。


651 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:11:27 tU1rsksU0
投下を終了します。


652 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/04(日) 14:40:51 tU1rsksU0
すいません、ステータス表の修正お願いします。


「作中では神谷薫の死体が偽物であることを見つけていた。」

の部分ですが、
「作中では外印の所業などを突き止めていた」でお願いします。


653 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/04(日) 23:02:39 WZfcm6Ho0
皆さま投下乙です。私も投下します。


654 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/04(日) 23:03:21 WZfcm6Ho0
違和感を抱くのに時間は必要なかった。
アメリカ大陸西部のスノーフィールドは『彼女』にとっては異国の土地であったのに、何故か生活に溶け込んでいた。
英語も、日本語のようにスラスラ読み書きできるし、生活のあれこれにも困った事がなく。
彼女は日本から留学して来た高校生。という設定だった。

自分は留学しようとした覚えはない。
第一、自分が留学している最中、家はどうなっていることやら………
家には父親と居候中の小学生の二人のみ。
酒癖が悪い父が、一体どうして家事をこなせるだろう。
居候中の小学生――彼の名前は江戸川コナンというが、彼は子供ながらしっかりした部分もあり、
かと思えば父親の仕事である事件に首を突っ込んだり……とにかく、放っておけない場面が多くあった。

つまり、その二人を何事もなく置いてきた自分自身がありえない。
彼女――毛利蘭は確信を抱いたのだ。
自分は誘拐でもされたのか? いや、そんな覚えはない。
最後の記憶に残っているのは『白紙のトランプ』だ。

蘭の父親は、そこそこ有名になった探偵・毛利小五郎。
事務所兼自宅には様々な依頼人が訪れたり、依頼が文書で届いたりする。
奇妙な封筒が一つ、郵便受けに入ってて、中身を開けたら何も書かれていない『白紙のトランプ』だった。
不信に思って誰かに相談しようと考えた途中なのだ。
蘭が強制的にスノーフィールドへ転送されてしまったのは。

(でも、私……あのトランプは持ってない)

記憶が正しければ、真っ白な『トランプ』自体が珍しい。
だけど、ここへ来てから蘭の視界に『トランプ』は―――……
否。
考えている場合ではない。
蘭はホームスティ先の一軒家へ戻ると、見知らぬ夫婦が出迎えてくれる。
娘息子が旅立って、物寂しいからホームスティを始めたと話を聞いていたのは蘭の知識に残っていた。

蘭の慌てた様子に妻が「どうしたの?」と心配してくれる。
咄嗟にいつも通り、明るく振舞って「ちょっと家族と電話がしたいんです」と頼んだ蘭。
嬉しい知らせでもあるのだろうと、察してくれた妻が電話の場所まで蘭を案内してくれた。

(こ、こういう場合……国際電話になるのよね? えっと、確か……)

こんな無駄知識。新一が教えてくれた気がすると、幼馴染を脳裏に浮かべた蘭はハッとした。

(そうだ! 新一!!)

彼に関しては、そもそも蘭が日本にいない事すら把握していない筈。
意味不明な状況から脱する為にも、頼りになる彼を。

どうして忘れていたんだろう?

あまりに異常な事に蘭の動作は停止してしまった。
自身の手の甲に痛みと、それからポケットに不自然な違和感を覚えた。
手の甲には悪趣味な刺青が浮かびあがり、ポケットには――驚いた事にあの『白紙のトランプ』が入っている。

「え!? どういうこと……!!?」

光り輝く『白紙のトランプ』に戸惑う蘭は、仕方なく用意された自分の部屋へ駆けこんだ。
あまりに異常過ぎる。
思えばあの夫婦にトランプを見せるべきだったのでは? と後悔したが、思い返せば、しなくて正解であった。

『白紙のトランプ』が蘭の手から離れ。一人の少女の姿となって、形取った。
幻想的な赤髪と、現代ではあまりに浮世離れした弓を背負った。
その英霊は儚げに告げた。


「私は……サーヴァント、アーチャーです。
 偉大なるコサラの王『ラーマ』として召喚されました。真名は『シータ』になります」



○   ○   ○


655 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/04(日) 23:03:48 WZfcm6Ho0
「えっと……ラーマさん、じゃなくってシータさん?」

「ここでは『アーチャー』と呼んで下さい。マスター」

穏やかな物腰で語るアーチャーを前に、蘭は混乱と同時に申し訳なさを抱いた。
聖杯戦争の知識を得て、自分の身に何が起きているか理解すると同時に。
戦争、あるいはマスターを死が必要となる状況を受け入れ難かった。
探偵の父や幼馴染、弁護士の母の元へ人殺しになってまで帰りたくは断じてない。
無理で無謀な話だった。
だけどこれが、本来『白紙のトランプ』が手に渡る相手だった父や、居候のコナンの手に渡らなくて安心した気持ちもある。
気不味そうに蘭はアーチャーに尋ねた。

「アーチャーさんは、願い事。あるんですか?」

「……ラーマ様に会いたいのです」

「ラーマ……えっと、アーチャーさんが『ラーマ』さんとして召喚されたって言ってた。あの?」

「はい。私たち夫婦は呪いによって、英霊の身となってなお、引き裂かれています」

「!」

「私か『彼』。どちらかが『ラーマ』として召喚され、同時に召喚されることも決してありません」

だからこそ。
聖杯の力を求めている。聖杯で呪いが解かれれば、アーチャーは……シータはラーマと再会できる機会に恵まれる。
深刻な願いに蘭はますます動揺してしまう。
何故かと言えば、蘭も

「私も……分かる気がします」

英霊のソレとは比較してはならないだろうが。蘭も同じであったのだ。
幼馴染の新一……工藤新一とは、遊園地でのデート以来、満足に再会し続けられない状況ばかり。
電話で会話したり、思わぬ形で再会するなど。
接触の機会が多々あったにも関わらず。新一とは離れ離れよりかは、新一そのものが希釈されそうな。
表現し難い不安が、蘭の中に渦巻いている事もあった。

こんなもの。二度と再会が叶わないアーチャーと比較しては大分劣るだろう。
だが、似通っている境遇だからこそ、アーチャーの願いを深く共感できる蘭は非常に申し訳ない。
彼女は深く頭を下げた。

「ごめんなさい! アーチャーさん。貴方の願い、とっても大切だって分かります。
 でも、私は……人を殺す事なんて出来ません。殺人を犯して、新一や……皆のところに帰るなんて私には無理なんです」

多くの殺人事件を目の当たりにした蘭だからこそ、殺人の罪が如何に重いか承知していた。
殺人を犯せば、きっと蘭自身が罪の意識に耐えられるか定かじゃない。
同じだから分かる。
そう語る蘭の様子を伺い、アーチャーは静かに答えた。

「聖杯戦争から逃れるのは非常に難しいことです。避けられぬ運命のようなもの……」

「分かっています。でも――」

「……せめて。せめて、マスターだけは大切な方の元へ、御戻りになられるよう。私は最善を尽くそうと思います」

「えっ」

「大丈夫です。私の力は『ラーマ』様の力。ラーマ様を世界で一番強い御方です。私達がマスターの力になります」

「本当に……いいんですか?」

「このままでは、マスターも私と同じ運命になります。マスター、ご自分を信じて下さい。
 如何なる噂をされても、無実と純潔を訴える意思をお持ち下さい。どうか、お願いします」


蘭が突き進もうとするのは茨の道だとアーチャーが十分理解していた。
彼女だって百も承知。
アーチャーの言葉に対し、強い眼差しで頷いたのであった。


656 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/04(日) 23:04:13 WZfcm6Ho0
【クラス】アーチャー
【真名】シータ(ラーマ)@Fate/Grand Order
【属性】秩序・善

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:B 宝具:A


【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
 事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクは、マスターを失ってからでも1日は現界可能。


【保有スキル】
離別の呪い:A
 ラーマがバーリの妻に掛けられた呪い。
 これにより、シータはラーマの持つ一部のスキルや宝具を共有している。

武の祝福:A
 天性の武の素質。
 武器を用いた攻撃は通常サーヴァントのそれを上回る。
 弓矢による攻撃が全てB〜Aランクの熟練度を発揮させられる。

心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

千里眼:C
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。


【宝具】
『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』
ランク:A+ 種別:対魔宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1人
 魔王ラーヴァナを倒すために、ラーマが生まれたときから身につけていた『不滅の刃』。
 魔性の存在を相手に絶大な威力を誇る弓に番えて射つ矢。『離別の呪い』によってシータが使用可能な宝具。


【weapon】
弓矢


【人物背景】
古代インドの民族叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公であるラーマの妻。
魔王によって攫われ、夫に救出されたが、民衆に疑いの目を向けられ追放。
シーターが大地に自分が貞節であると訴えると、大地が割れ現れた大地の女神と共に姿を消した。

ラーマとシータは英霊枠を共有している為、同じ聖杯戦争でラーマとシータが同時に召喚されることはなく、
どちらかが『ラーマ』として召喚される制約が設けられている。
ラーマは宝具を改造してまでセイバーとしての召喚を望むが、シータはアーチャーの『ラーマ』として召喚される。


【サーヴァントとしての願い】
ラーマとの再会
だが、マスターを元の世界に帰してあげたい




【マスター】
毛利蘭@名探偵コナン

【マスターとしての願い】
生きて帰りたいし、誰も殺したくはない。
でも、シータには同情している。


【能力・技能】
関東大会優勝経験のある空手の腕前。
ナイフを折ったり、銃弾をよけたり出来る程度の身体能力。


【人物背景】
帝丹高校に通う高校生。
父は探偵。母は弁護士。だが母は別居中なので彼女が家事全般をこなしている。
基本的には優しい性格。所謂お人よしな部分がある。
一方で怪しい人物には攻撃的だったり、危険を顧みず無鉄砲になることも。
幼馴染の工藤新一と会えない日々が続いている。


657 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/04(日) 23:05:14 WZfcm6Ho0
投下終了します。タイトルは普通に「毛利蘭&アーチャー」でお願いします。


658 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:09:47 /p3M.f0s0
投下します?


659 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:10:36 /p3M.f0s0
何故か疑問で送ってしまいました
投下します


660 : 世界で一番 ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:11:20 /p3M.f0s0
火花が散る。
鉄と鋼が擦れ合い、戦の境界線を生む。
片や銀の甲冑に身を纏いし騎士。
その手に輝く銀の宝剣は、風を斬り敵を斬り栄光を輝かせる。
さぞ生前は数多くの武勲を勝ち取ったのだろう。
その神秘は光輝き、見た者を魅了する。
降り下ろされる刃は雷が如く。
返す刃は焔が如く。
彼の宝剣の前では、あらゆるモノが存在を赦されない。
だが。
だが。

「―――滾る」

だが、しかし。
その輝かしい宝剣は―――何の特別製も無い、ただの武人の槍に弾かれる。

「滾る」
「滾る。滾る。実に滾るッ!!」

撓る槍は神速の如く。
その一撃は、必殺を体現する。

「いやはや、滾る滾る!
年老い死に絶え何を悟った気になっておったのやら―――武とは生き死にの境界を巡ってこそ。
儂も、所詮は檮杌の如く死に絶えるまで覇を競う化生であったか!
良い、良い。全く以て良い!」
「決闘中に、何をべらべらと……!」

宝剣の勢いが、倍増する。
武人の槍が神速ならば。
その宝剣は土石流が如く、強大な質量と筋力を以て降り下ろされる。
しかし。
しかし、至らず。
武人の首を苅るには覇気が足りず。
技が足りず。身体が足りず。
何もかもが足りていない。

「遅い遅い。良いのか。
其処まで遅く振るうなら―――その宝剣、我が槍で叩き折って終いにするが」

騎士が感じたのは―――殺気。
この一瞬。
時間にしてみればほんの一秒にすら満たぬ間。
何かを思うには、余りにも短い間。
しかし。
剣士は―――己の死を、視た。

「我が槍に『二の打ち要らず』。
必殺必倒、此の槍に一切の矛盾無しと知れ」

回避を。
―――もう遅い。
防御を。
―――否、そのような軽い業ではない。
迎撃を。
―――これだ。
剣士は一切の防御を捨て、己が甲冑に全ての魔力を籠める。
武人の一撃を、受け反らし迎撃を叩き込む。
この状況における最大の一手。最高の一手。
―――だが、しかし。
それは、この武人を相手にする場合、最悪の一手と化す。


661 : 世界で一番 ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:12:04 /p3M.f0s0
「獲っ―――!!」

獲った。
剣士は、そう確信した。
己が甲冑を信頼していた。
あの様なただの槍に貫かれるほど柔くはないと。
それが、一番の悪手。
一撃必倒。
无二打。
『牽制ですら相対する者を絶命させた』と謳われる、二度を必要としない刺突。
迎撃は叶わない。
『この一撃を受けた後』。
そう判断したことが、最大の過ち。
七孔噴血。
素手ですら一撃で相手を絶命させた、その神槍の撃。
剣士は己の敗北を理解することも無く。
心の臓を貫かれ―――消えた。




○ ○




貌に付いた剣士の血が、粒子となって消えて行く。
勝った。勝った。勝った。
この身体を槍と成し、武を競い合い、一撃必倒の名の元にその全てを折り尽くした。
ああ。
これは―――なんて、滾る。

「……フゥー」

吐く息と共に、感嘆が漏れる。
此度も、良い戦であった。
最高の死合いとは程遠いが、それでも胸中を占めたのは、満足だった。

「……終わったか?」

物陰から、少年が姿を現す。
クールな雰囲気を纏わせつつ、何処か軽薄で。
だが、『芯』を感じさせる少年だった。

「……」
「おーい、ランサー……だっけか?」
「―――嗚呼、済まぬ。感慨に耽っておった」

くるりと振り返った武人…ランサーのその姿からは、既に身に纏った覇気はを控えている。
その変貌に少年は驚いたが、如何な武人と言えど、常時戦に興じている訳ではない。
出逢う度に殺しては生きていくのすら難しかろう―――とは、ランサー談だったか。

「さて。主の名は……『クリーン』だったか」
「『グリーン』だよグリーン。それじゃ綺麗になるだけだ」
「おっと済まんな。グリーン……グリーン、良し覚えたぞ」

うむうむと頭を振るランサーに、グリーンはふう、と溜め息を吐く。
実のところ、グリーンは聖杯戦争については何も知識を有していない。
いつも通り彼の世界でポケットモンスター―――縮めて"ポケモン"―――と共にバトルに興じ、絆を育み、ポケモン図鑑の完成へと一歩一歩進んでいた。
……はずだった。
彼の世界では、誰が落としたものかは知らないが道具が落ちていることが稀にある。
ポケモンが盗んで落としたのだろうとか、誰かが要らぬと棄てたのかは知らないが。


662 : 世界で一番 ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:12:41 /p3M.f0s0
兎も角、誰の仕業とはわからないが落ちているのだ。
そして。
いつもと同じように道具らしきものを拾ったのだ。
―――白紙のトランプ。
ジャグラーやギャンブラー、火吹き野郎が落としたのかとも思ったが、白紙というのはどうも違和感がある。
そうこうしている内に―――気づけば、此所にいた。
見たこともない街。
相棒のポケモンすら、手持ちにはいない。
こんな状態では街の外にも出られない。
こんな危険な状況でよく記憶を失っていたとはいえのうのうと生きていたものだと自嘲する。
そうして。
とりあえず元の場所に帰るためにモンスターボールでも買って鳥ポケモンでも捕まえなければ、と歩き出した後に出会ったのが、ランサーだった。
直ぐに襲ってきた剣士と戦闘を開始してしまったが、色々な事を話した。
取り敢えずはお互いを知ることだろうと。
自分は祖父の目的であるポケモン図鑑の完成のため冒険していたこと。
ポケモンリーグという強さの頂点に立ったこともあること。
……そして、すぐに負けて幼なじみに座を奪われたこと。
そして、ジムリーダーにもなったこと。
その全てを、ランサーは静かに聞いていた。

「ふむ。言うならば軍師のようなものか。
そして最強の座に立ったが、負けたと」
「まあ、そうなるな。……そう省略されると何か、こうモヤモヤするけどな」
「その主を倒した"レッド"とやらは、今どうしている?」
「さあな。無口なヤツだからな。どっかで武者修行でもしてんじゃねーの?」

再度ふむ、と顎に手を置くランサー。
その所作は戦闘時の苛烈さとは裏腹に、礼儀を感じさせるものだった。

「さてグリーン。いや、マスターよ。
主に一つ問うておきたいことがあるが」
「? なんだよ」

直後。
ランサーの眼光が、グリーンを見据える。

「―――日和っているな、マスター」
「ひよ……っ!?」

放たれた言葉に、強く反発する。
誰が日和っているのかと。
毎日自分はジムリーダーとして腕を磨き、強くなっていると。
努力を怠っていないことを、強く主張した。
サーヴァントだか英霊だか知らないが。
ポッと出の人間に知ったような顔で分析されたことが、彼の腹を立てた。

「では聞くが。マスターはレッドのやらに座を奪われた後。
その座を奪い返そうと躍起になったことはあるか?」
「…それは…」
「無かろう。勝負に負け、後続を育てる位置に着く。
それも間違ったことではない。
しかし―――惜しいものよ。最強の座を一度は手にしておきながら、勝の心の高鳴りを知っておきながら安寧に浸るとは」

図星、だった。
何時からか―――自分はレッドを己と競うライバルとして見ずに。
何処か、共に生きる仲間として見てはいなかったか。
負け、越えることを止めてはいなかったか。


663 : 世界で一番 ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:13:45 /p3M.f0s0
「…じゃあ、どうしろってんだよ」
「決まっておろう」

即断だった。
ランサーは、グリーンを見据え、当然のように、告げた。

「儂を使え」
「……はぁ!?」
「"強くなりたい"と言われれば他所を当たれと言うがな。
主がマスターとして選ばれたのも何かの縁。軍師と言うならば、この儂を使って聖杯戦争を勝ち抜いて見せよ。
呵々、そう案ずるな。儂も儂でこの戦争を楽しむまでよ。
主はその中で経験を積めばよい」

一言で言えば、呆然、だった。
この男は何を宣っているのかと。
要するに。
この男は、自分を使ってポケモンバトルをしろと言っているのだ。
思考がブッ飛んでいる。
常人には理解できない極みだ。
だが。
だがそれは―――何とも、胸が高鳴った。
それは、トレーナーとしての性か。
仲間と共に戦いを勝ち抜き、成長する喜びか。
それとも、戦士としての生き甲斐か。
何にせよ、その提案は、グリーンの心を高鳴らせた。

「…ああ、良いぜ」

「見せてやるよ」

「この俺様が!」

「世界で一番!」

「強いってことをな!」

ああ、見せてやろう。
この槍兵に、自分を侮ったことを後悔させてやろう。
自分を認めさせ、己以上の軍師だと見せつけてやろう。
……少し、変わってはいるが。
彼らなりの、サーヴァントバトルが幕を開けた。


664 : 世界で一番 :2016/12/05(月) 02:15:04 /p3M.f0s0
【出展】Fate/Grand order
【CLASS】ランサー
【真名】李書文
【属性】中立・悪
【ステータス】
筋力B 耐久C 俊敏A 魔力E 幸運E 宝具―――

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
中国武術(六合大槍):A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれだけ極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
+++ともなれば達人の中の達人。
ランサーとして召喚されているが、槍術含めて八極拳を極めている。

圏境:B
気を使い、周囲の状況を感知し、また、自らの存在を消失させる技法。 極めたものは天地と合一し、その姿を自然に透けこませる事すら可能となる。
アサシン時よりワンランクダウンしている。

絶招:B
無敵貫通及び己の性能アップ。
絶招とは、中国武術における必殺の意――すなわち“一撃必殺の奥義”を意味する。神槍として絶招を解き放った時、李書文の前に凡そ貫けないものは無くなる。


【宝具】

『神槍无二打』
ランク:― 種別:対人宝具 レンジ:2〜5 最大補足:1

しんそうにのうちいらず。
『燕返し』または『无二打』同様に宝具として昇華されるまでに極まった術技。
八極拳の秘門、奥義の一つであり、李氏八極のオリジナルではないが生前の彼が生涯を通じて頼りとした必殺の套路。
无二打はあくまで対人において相手の心臓を停止させるための一撃だが、こちらは物理ダメージに特化した攻撃である。
流れるような連続攻撃で、初撃の動作が虎が山を掻きむしるように見えるためについた技であり、その一撃一撃が“李書文という武人を出力先にした大地からのエネルギー”である。人間はおろか壁や扉、はては堅固な道場の門すら容易く粉砕する。
効果は上記のアサシン召喚時の『无二打』と同じだが、槍を持つ分レンジが幅広い。精密動作性も素手とさして変わらないと推測される。

【人物背景】
ランサーとして召喚された、肉体が全盛期の李書文。
近代の生まれでありながら、数々の伝説を刻んだ中国の伝説的武術家。
八極拳の使い手としてももちろん名高いが、槍技の精妙さは「神槍」として讃えられたほどの腕前。
清朝末期、滄州に生まれた李書文は八極拳を習い始めるとたちまち頭角を表し、拳法史史上でも最強と謳われるまで上り詰めた。
千の技を学ぶより一の技を徹底的に磨き上げることで、文字通りの一撃必殺を体現した。
一度契約すれば仁義は通す。
人の理を知り情も有りながら戦に生き、生死を楽しむ戦士。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを軍師として、この聖杯戦争を楽しむ。


665 : 世界で一番 ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:16:09 /p3M.f0s0
【出展】
 ポケットモンスター 金・銀(ハートゴールド・ソウルシルバー)

【マスター】
 グリーン

【参戦方法】
 落ちていた道具を拾ったら白紙のトランプだった。何故こんなものが落ちているのかとも思ったが、技マシンが落ちている世界観なので特に気にはしていない模様。

【人物背景】
14歳の少年。
完全に自立している。
オーキド博士の孫で、ナナミという姉がいる。
主人公のレッドは幼なじみでありライバルでもある。
主人公と同様にマサラタウンを旅立ち、RGBP・FRLGの作中7度に渡って彼・彼女の前に立ちはだかる。
最後はポケモンリーグチャンピオンとして主人公とラストバトルを繰り広げる。
一人称は「オレ」。
自信家で、主人公と出くわすと嫌味や自慢話をたびたび切り出してくる。かなりエラそうな言い方をする。
だがポケモンバトルの結果は(負けた言い訳を探したりもするが)しっかりと認めるため、根っからの“嫌な奴”ではない模様。
その大口に見合った実力を備える手ごわい相手でもあり、特に物語ではいきなり画面外から現れてバトルに突入する初見殺しな一面もある。
現在はサカキに代わり、トキワジムの新しいジムリーダーに就任している。

【weapon】
・なし
ポケモンはどうやらついてこれなかった模様。

【能力・技能】
一度はチャンピオンとして輝いたトレーナー、ジムリーダーとしてのズバ抜けた指揮能力と状況判断能力。
相手を見る判断能力や習性・特性を見抜く観察眼も高い。

【マスターとしての願い】
 特になし。
ランサーにこのサーヴァントバトルで己の強さを認めさせる。

【方針】
ランサーにこのサーヴァントバトルで己の強さを認めさせる。


666 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 02:16:43 /p3M.f0s0
投下終了です


667 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:38:02 muNpVXmA0
投下します


668 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:39:47 muNpVXmA0
一軒の家と重なる様に見える空間の揺らぎ、マスターとサーヴァントにしか認識出来ぬそれは、誰がどう見ても聖杯戦争に関係するものだろう。
全体が陽炎の様な揺らめきに包まれた家に四つの人影が入るのを見ていたのは夜空の星々と月のみ。
そして、出ていくところは月も星も、彼等の後に天に座した太陽でさえも見ることは出来なかった。



─────翌朝。


「昨日襲撃を受けました」

「それで」

襲撃を受けた事を目が覚めるまで告げなかった己がサーヴァントを、暁美ほむらは冷然と見やった。
世界中で読まれた児童文学の映画版の主人公に、よく似た顔を視界に収める。

「魔力に変えて蓄えてあります」

そう。と素っ気なく返事をする。陣地に改造されたこの家を見て。大方キャスターと侮って殴り込んできた三騎士に該当するサーヴァントだろうと辺りをつけて、じきに忘れた。
それだけだ。顔形も知らぬ相手に抱くものなどそれだけしか無い。そんな事よりも─────。

「どこにでも居るものね」

呟いた言葉にサーヴァントが怪訝そうな顔をするが相手にしない。

昨夜見た夢。サーヴァントとの繋がりが見せるサーヴァントの生前の記憶。
ほむらのサーヴァントはある一柱の女神を愛し、女神を人とする為に多くの人間を犠牲とし、
彼の行いを礎に遥か遠くへと行ってしまった女神を諦めること無く時を超え、神とまでなった挙句、女神に完全に手が届かなくなった男。
激情のまま全てを破壊しようとして遂に討たれた男。

サーヴァントが己との絆や縁で呼ばれるのなら、これほど自分に相応しい男は居ないだろう。
自身のサーヴァントの精神性は、ほむらにも受け入れ難い。だがその想いと行動は受け入れられる。
ほむらも同じ思いを抱くのだから。
女神となったまどかに、幸福な人としての生を望むから。
その為になら神の摂理にだって抗ってみせる。まどかの敵になることも、まどかを傷つけることも厭わない。
貴く聖なる神にも等しい存在を、冒し蝕み貶める悪魔にだってなってやろう。
己の決意をとうに実践してのけたこのサーヴァントの様に。
その為にも先ずはこの殺し合いを制する。

希望よりも熱く、絶望よりも深い思いに身を委ね、暁美ほむらはこの偽りの世界で二十八の願いを踏み砕く。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

自室として誂えた空間でサーヴァント─────ランサーは思索に耽る。
愚神から奪った力で創り上げた異界は、宝具の効能で維持に魔力は必要無い。
地脈から得た膨大な魔力を陣地の維持に回すこと無く、作成と維持にに膨大な魔力を必要とする強大な魔物を作成できるのは実に素晴らしい。
昨夜の襲撃者達は、空間すらランサーの制御化に置かれている異界内部で分断され、再現無く現れる魔物達に蹂躙された。
こうまで上手くいったのは、マスターがロール上の都合で一軒家を持っていたからだ。集合住宅に住んでいれば神秘の秘匿という制約に抵触する事を防ぐ為、相当な不便を強いられただろう。
少なくとも、夜な夜な拠点からマスターとサーヴァントにしか知覚出来ぬ揺らぎを噴き上げて敵を誘う、等といった手段は使えなかった。
まあ、それも昨夜で終わりだが。
襲ってきた愚物共はサーヴァントは魔力に、マスターは令呪の魔力を身に宿した強力な魔物と変えた。此れで拠点の守りと魔力の蓄えは万全。後は使い魔を放って情報を集め、他の者達が潰しあって疲弊した処を殲滅すれば良い。
先ずは賢者の石を作成し、より“負けにくい”状況を用意する。賢者の石が有れば例え神といえども我が身に手を出すことは簡単には出来ぬ。

─────全てが順調。我が女神と再び合間見える日も近い。 そう、重要なのは、私が貴女を愛しているということ、ただそれだけばのだから

死してなお翳らぬ狂熱に駆られ、ランサーは聖杯に手を伸ばす


669 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:40:21 muNpVXmA0
【クラス】
ランサー

【真名】
レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイルシリーズ

【ステータス】
筋力: B 耐久:A 敏捷:C 幸運: D 魔力:EX 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではランサーに傷をつけられない。

【保有スキル】

創造:A
神の権能としての創造。サーヴァントとしての枠に嵌められ大幅に制限されているが、陣地作成。道具作成。使いの魔作成及び使役を最高ランクで行える複合スキル。
ランサーが主神オーディンより奪った力。


神殺し:EX
戦女神シルメリアから力を奪い。主神オーディンを殺害してその力を奪い。新世界の創造神となったレナス・ヴァルキュリアを捕らえたことに依るスキル。
神性持ちや神より力を得たサーヴァントに対し攻防の判定に大幅に有利な補正を得る。
また神性持ちのサーヴァントに対し、そのランクに応じてステータスを下げる。
Aランクの神性ともなれば全ステータスを2ランク下げる。
神から得た力や神造宝具の類いはランサーに対しその効果を著しく削減する


魔術:A++
凡そ全ての魔道の業に精通し、自在に行使できる。オーディンより奪った力によりその威力は向上している。
ランサーは中でも屍霊術を得手とし、高レベルの不死者を作成し操ることができる。


錬金術:A++
賢者の石の作成を目的とした魔導体系。ランサーは賢者の石を作成し、一部を読み解き、賢者の石を用いてラグナロクを乗り越えた。


女神への愛:A++++++
戦女神レナス・ヴァルキュリアに奉じる唯一つの想い。
女神への想いを成就する為ならどんなことですら平然とやってのける。
その精神性の故にありとあらゆる精神干渉を無効化する。


神性:D
オーディンと戦女神シルメリアから力を奪い取ったことで獲得した。
尤も偽新と呼ぶべきものであり、誰からも神と認められなかった為にこのランク。


670 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:40:59 muNpVXmA0
【宝具】

捕らえ封じる結晶獄
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ :1~20 最大補足:1人

魔力弾を放ち、当たった対象を結晶体に閉じ込め拘束する。
対魔力を始めとする防御スキルを無視して効果を発揮する。
創造神レナス・ヴァルキュリアや主神オーディンや四宝に匹敵する魂を持つ不死王ブラムスですら拘束される絶技。
欠点は弾速が異常に遅く、まともに撃つと当たらないこと。
破格の効果を持つ宝具だが魔力消費はそれほどでも無い。


最果てに輝く黄金槍(グングニル)
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ :1~99 最大補足:1000人

世界を維持し、崩壊を防ぐ“四宝”の一つ。この効能によりランサーの作ったものは全て維持するのに魔力を必要としない。
固有結界に対する世界の修正力をすら支え、固有結界を一つの独立した異界とする事も可能。
本来ならば新しい世界を創造し、古い世界を塗り潰すこともできるが、サーヴァントの宝具となったことによる劣化により其処まではできなくなっている。
魔力を強力な黄金の閃光として放つことや、魔術の底上げをすることが可能。



Should Deny The Divine Destiny of The Destinies.(運命の女神の与えたもうた宿命を拒絶すべし)
ランク: EX 種別:対神宝具 レンジ:40 最大補足:1人

悪神ロキが世界を焼き滅ぼした際に唯一人生き残り。レナス・ヴァルキュリアが再生した新世界で唯一人レナス・ヴァルキュリアの影響下にない人間となり、
時を遡り戦女神シルメリアと主神オーディンの力を奪い、時を超えてランサーを討ちにやってきたレナスを捕らえた変態の生涯が宝具と化したもの
常時発動効果として、神の権能やそれに類するものを一切無効化する。
真名解放を行うと、範囲内の神性持ちを拘束し、その力を奪い尽くす。
この宝具により力を奪い尽くしたサーヴァントからは、魔力のみならずスキルや宝具を我が物として扱うことが可能。


【weapon】
最果てに輝く黄金槍

【人物背景】
魔術、錬金術、屍霊術を始めとする諸学を極めた天才。ある時偶然見かけたレナス・ヴァルキュリアに心を奪われ、女神を人として我がものにしようと画策した。
師を殺してその慟哭を呼び林としてレナスを誘き寄せたこともあった。
結局彼が行った行為を元に、レナス・ヴァルキュリアは成長する神として新生し、ラグナロク後の世界を再生し、遥か遠くへと隔たってしまった。
時を超えて過去に遡り、神の力を得てレナス・ヴァルキュリアを捕らえようとした。この時に主神を葬り去った。
努力の甲斐あって一時的にレナス・ヴァルキュリアを手中に収めるも、結局女神は永遠に手の届かぬ処へと行ってしまった。
逆上して全てを破壊しようとしたが返り討ちに遭って死んだ。
通常はキャスターとして召喚されるが、マスターが本来辿る運命によりこのクラスで召喚された。


【方針】
実質的にキャスタークラスなので、罠構築してガン待ちする戦法でいく。
実際戦っても簡単に負けることは無いだろうが、ランサーの戦闘技能はかなり低いので注意が必要。
移送方陣を用いれば撤退が容易なので、かなり負けにくい。


【聖杯にかける願い】
復活。そしてレナス・ヴァルキュリアを今度こそ我が手に。


671 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:41:20 muNpVXmA0
【マスター】
暁美ほむら@魔法少女まどか⭐︎マギカ

【能力・技能】
黒翼:
対象を侵食する翼。

記憶操作魔法:
対人限定でその場凌ぎが良いところ。

火器の扱いに長け、爆薬を手製で作り、車の運転をこなす。繰り返されたループにより豊富な戦闘経験と鍛え上げた身体を持つ。

【weapon】
黒い弓矢

【ロール】
一軒家に一人で住む女子中学生

【人物背景】
まどかを救う為に無限螺旋を駆け抜け、遂には己の願いこそがまどかを最悪の魔女とすると知って自殺しようとした魔法少女。
まどかが女神になり、世界を改変したことで救われ─────また新たな業を背負った。
将来まどかの願いを踏み躙ることになるが、其処にあるのはまどかの幸福を願う心であり、この点に於いてランサーとは大きく異なっている。


【令呪の形・位置】
交差する槍と矢

【聖杯にかける願い】
まどかに人としての生を

【方針】
手段を選ばず聖杯を獲る

【参戦時期】
TV版終了後

【運用】
基本ランサー任せ、主従共にガン待ち戦法に向いている性格の為に、ランサーの能力を有効に活用できる。
最大の難点は両者の性格や思いの相違点から仲間割れの可能性が大きい事。


672 : 愛のままに我が儘に私は貴女ですら傷つける ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/05(月) 07:41:55 muNpVXmA0
投下を終了します


673 : ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:10:36 RRyal6560
投下します


674 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:12:14 RRyal6560

深夜の街。
平時は人々の営みにより照らされる道々も闇に染まる。
彼方に見える摩天楼とぽつぽつと道を照らす街頭、僅かに見える月だけが僅かな明かり。
そこに光が一筋差し込んだ。
一台のタクシーが寂しい道を駆ける。
そろそろ切り上げようかと考える運転手だったが、視界の端に映った景色に最後の一仕事と気合を一息。
道を歩む一人の男がこちらに向かって手を上げたので、車を停止させ、ドアを開けて迎え入れる。

「あのひときわ大きなホテルまで頼む」
「はい」

目的地を短く告げて深々と座り込む乗客。
夜も深く、眠ってしまうかと思いきや窓から外をぼんやりと眺めているようだ。

「お客さん、この街には仕事で?それともやっぱりギャンブル?」
「……Sightseeing, と答えれば満足かな?」
「こんな夜中じゃあ外を見たって見るものなんかありませんよ。それに――」

一度も日に当たったことのないような、透き通りそうな白い肌に金色の髪が月明かりに輝く。
どこぞの舞踏会にでもそのまま紛れ込めそうな、古めかしいローブと礼服が気品を漂わせる。

「あまり旅慣れたようには見えませんしね。こんな時間まで出歩いてるってのも……ああ、ひょってして女ですか?
 もしそうだとしたら、いい店を知ってますよ?そんなに着飾らないでもいい、ドレスコードの煩くないところをね」
「結構だ。間に合っている。この時間まで起きているのは体質のようなものだ」
「時差ボケですか?」
「時差ボケ……時差ボケか」

くく、と何がおかしかったか笑いを漏らす。
興に乗ったのか客の方から語り始めた。

「この街には探し物に来たのだよ。ある噂を聞いてね」
「噂ですか」
「ご存知かな?願いをかなえてくれる、白紙のトランプの噂を」

まっすぐと運転手の方に向かい、探るような視線をその背に刺す。

「生憎とそういう流行には疎いもので」

運転手は流れるような返答をした。
しかしミラー越しに見えるその調子を念入りに、表情の隅々まで観察する客の熱意に少したじろぐ。

「……知らないか。なら君は私と杯を争うものではないらしい。では最近この街で騒がれている怪物の噂は?」
「いやあ、それも知りませんね」
「そうか。おっと、ちょっと停めてもらいたい」

車窓から前を眺めると一人の通行人が目に付く。
夜の帳が下りた中でも目立つ赤いコートを纏った女性が小さく手を振っていた。

「連れ合いだ、乗せてくれ」
「はいはい」

後部座席の扉を開いて迎え入れる。
女はというと一言も発せず、物音ひとつ立てず、滑り込むように席に着いた。
それを確認して発進。
ミラー越しに映る女の姿は、派手な赤いコートを着て、顔の下半分を覆うような大きなマスクをつけている。
荷物も受け取ろうかと考えるが、そろって手ぶら。
これではチップはあまり期待できないかな、金を持ってそうな客だが惜しい、女は間に合っているとは答えたが、商売女という感じではないから元々の連れだろうか。
などという考えを運転手はぼんやり巡らせていた。


675 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:13:15 RRyal6560

「さて、どこまで話したか。そう、街にいる怪物の話だ」
「え?ああ、そうでしたね」

あくびを噛み殺しながら今度も流れるように反射的な答えを乗客に返す。
ちらりと時計を見ると深夜の3時をまわっていた。

「2〜300年ほど前の極東が起源。
 動物霊に憑かれ、呪われ醜くなってしまった女。あるいは愛憎の果てに鬼になった女が発祥だそうだ」
「そりゃ由緒正しい。USA以上の歴史ある化け物ですか」
「今の形になったのはここ数十年ほど。ある三姉妹が交通事故にあい、顔に大きな傷を負った。
 その治療、整形手術を行ったが失敗し、末の妹の手術だけ失敗し彼女の口は耳まで裂けた。
 その怒りと憎しみで暴れ狂う、『口裂け女』。そんな噂の怪物が跋扈している……」
「へえ。まるでアメリカンコミックのヴィランみたいな生まれ方してますね」

ハンドルを切る。
対向車一つない道を曲がるとそこは4番ストリート。
もうすぐ目的のホテルに着く。

「手術が終わったときに女は担当医に問うた。私は元の綺麗な顔に戻れたか、と。
 医者は真摯に答えた。手術に失敗し、醜い顔になってしまった、と。
 女は怒り、暴れ、手術室にあったメスでその医者を惨殺した」

途端、車内の空気が冷たくなった。
得体のしれない何かが混ざりこんでしまったような、異様な空気で満たされていく怖気が運転手の背筋を冷たくする。

「その女は正気を失い、自らの顔を醜いと評したものを次々と人に害なす怪物…まさしく殺人鬼になってしまった。
 返り血の目立たないよう赤いコートを着て、裂けた口が露わにならないよう、大きなマスクで顔を覆って」

ミラーに後部座席の女の姿が映る。
赤いコートと、大きなマスクが目に付く。
ふと、女の目に冷たい笑みのようなものが浮かんだ。

「その女は何ゆえか分からないが三のつく場所に、三のつく時間に現れることが多いそうだ。
 事故にあった場所の地名だとか、手術室が三番だったとかいろいろ言われているが」

この女を拾ったのは4番ストリートに入る前の、3番ストリート。
現在時刻は3時7分。乗ってきたのは3、4分前だったように思える。
運転手の冷え切った背筋にいやな汗が流れた。

「私は先日まで極東のある街にいた。三咲町といってね。
 ジャパニーズは分かるか?三というのはジャパニーズで3を意味する文字だ。
 私は……私たちはそこから来た」

物語の語り部のように、芝居がかった口調で朗々と。
女の成り立ちを、自らの旅路の一端を語る。
男の口元は大きく歪み、まるで口が裂けているかのよう。

「……そ、そうですか。あ、もう着きますよお客さん!」

悲鳴になる前に声を絞り出し、降車を促す。
ホテル前に猛スピードで駆け込み、入り口前に急ブレーキで停めるが、さすがにこの時間ではホテルマンも見当たらず、それを咎める者もない。
もうチップなどどうでもいいから何事もなく離れてくれ。
そう心中で強く願う。

「ご苦労……フム、おやおや、彼女から君に聴きたいことがあるようだ」


676 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:13:42 RRyal6560

カチカチと歯の根が合わず、それでも後ろを振り向くと女と目が合う。
ゆっくりと、マスクの下からくぐもった声が聞こえた。



「私、綺麗?」



マスクで顔が覆われ、美醜の区別などつきはしない。
長い髪と、コート越しの細い肩からは女らしさが感じられ、そして響いた声はどことなく惹かれるところのある女の声だった。
まるで川の向こう岸や暗闇の先から響くような、浮世離れした艶っぽく不気味な声。

「は、はは。面白いジョークだ……」

助けを求めるような視線を男のほうに向ける。
反応といえばけんもほろろ、なしのつぶてだ。
何と言っていたか、走馬灯のように必死に想起する。
噂の女は醜いと自分のことを言うものを惨殺する……

「美人ですよ!ミス・ユニバースも夢じゃない!」

必死になって答える。
どこか冷静な自分が、そんな噂を本気にして、あげく目の前の人物に重ねているのをバカにしている。
それでも、目の前の男女の放つ異様な気配が、背筋を走る嫌な予感がこの判断は正しいと告げている気がしてならなかった。

答えを耳にした男が口元をさらに歪め、女は両の手をマスクにかける。
………………ゆっくりと、マスクが外されていく。




「これでも?」




女の口は耳まで裂けていた。
普通ならこんなカタチをしていてはあんなに明確な声なんて出せないんじゃないか、と冷静な自分が疑問を覚えている。
恐怖に晒された表層の自分はそれどころじゃない。
特殊メイクだ、イタズラだなんて考えが浮かんだ気がするがそんなのはどうでもよかった。
むしろそうであってほしかった。
だが女が掴みかかり、目と鼻の距離まで顔を近づけてみて確信する。

コイツハヒトジャナイ

「ッーーー!」

悲鳴を上げようとした。
悲鳴を上げるはずだった。
だが、女の腕が首元を抑え声が出せなかった。
右腕が喉元を抑え、指を伸ばして口が開けさせれた。

「女は医者に対して問うた質問を、自分と同じく手術を受けていた二人の姉にもしたそうだ。私は綺麗か、と」

恐怖に染まった脳に男の声が染み通るように響いてきた。

「妹を不憫に思った二人の姉は、綺麗だと答えた。すると妹はこれでも綺麗か、と声を荒げた。
 手術に成功した姉への恨み、妬み、憎しみ、怒り……そんな念の籠もった声だったのだろう」

語る男の口調はとても愉しそうだ。

「この顔が美しいというなら、お前たちも同じ顔にしてやる…………そんな意図があるのかは知らないが。
 妹はすさまじい怪力を発揮し、素手で二人の姉の口を耳まで裂いた。悍ましき喜劇!麗しき悲劇!
 ……女の顔を美しいと称したものは、口を耳まで裂かれて惨殺されるそうだ」

なんだそれは。
どう答えようと殺されるのか。

「無慈悲。対抗神話なくしては抗う術なき伝説の具現。全くもって理不尽甚だしい。
 しかしこの世もこの夜も、所詮は仮初の舞台。主催が望んだシナリオならば然様に踊るもまた一つの粋というもの」



男ガ嗤フ。



男の顔も目は血走り、口は耳まで裂けて、二人目の異形。
もう一人現れた怪物、その恐怖の重ね塗りにすでに運転手の思考は麻痺している。


677 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:14:35 RRyal6560

しょきり、と刃と刃がこすれる音が耳に届いた。
女の左手に、どこから取り出したのか大振りの裁ち鋏が握られていた。
すう、とゆっくり鋏を握る手が動く。
その刃がこじ開けられた口に当てられる。
震える歯に鋏が触れるたびカチカチと音を鳴らす。
口の中に無機質な鉄の匂いと味が広がる。

暴れる。
それを女は何でもないように抑えてくる。
悲鳴の一つも出ない。
涙がにじむ。
怖い。

異様な怪物の面容を視界に収め。
迫りくる刃の味と匂いを押し付けられ。
悍ましい怪力を肌に感じ。
最後に。

しょきん

と刃が合わさる鋭い音。そして

ぶつ

と肉に刃が食い込む鈍い音。
口に入れられた鋏が頬の肉を切り裂いた。
薄い皮膚と柔らかい肉を押し刈られる一瞬の感覚。
刹那の空白。
それだけおいて、耳元まで大きく切り裂かれ、まるでイビツな笑いを浮かべたような顔に、頬のあった箇所に空白感と激痛が叩きつけられる。

「が…!!ぎゃ……あああああああああああああああああ!!」

大きな叫びが肺の中の空気全てを絞り出した。
空っぽになっても、いまだに続く痛苦に酸素がなくなっているのに叫び続ける感覚。
息を吸う。
すると分かる。
自らの口が耳まで裂けているのだと、この激痛はそのために起きているのだと脳髄に叩き込まれる。
声を上げるたびに口元が震え、息を吸うたびに喉が焼け、その全てが切り裂かれた頬の神経を刺激する。

「ぁああ……!あ、ぁぁあ……?」

ゆっくりと、またゆっくりと鋏が引き戻されていく。
そして、今度はすぐに。
反対の頬に刃が押し当てられる感覚。
拒絶の悲鳴を上げる間もなく


しょきん


ぶちっ


血と脂に濡れて鈍くなった刃がもう一度肉を裂く音が、肉と骨から伝わってきた。
左右共に頬を切り裂かれ、完全に口が耳に届いた怪物の風貌がそこにある。
その整形手術に伴う耐え難い苦痛のに魂を呑まれ、男の意識は闇に消えた。


678 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:15:00 RRyal6560

「キ…キキキキキ!」

車から降りていた異形の男が口から笑いをこぼす。

「魂魄ノ華、爛ト枯レ」

女を押しのけるようにして手を伸ばし、傷口に触れる。

「杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ、例外無ク全テニ配給」

流れる赤い血を掬い、嘗めとる。

「嗚呼、是即無価値ニ候」

傷口からあふれる血がいかに甘露か、舐りつくすように味わう。
異様な量の血が流れ出て……少しして、それが止まる。
傷口を掬う指も動きを止め、味わう舌は語る舌へと動きを変える。

「妹に口を裂かれた二人の姉は、それでも妹と同じく生きていた。
 ゴルゴンの三姉妹はメドゥーサのみが怪物となったというが、こちらは違う。
 姉二人もまた、妹に起きた悲劇の被害者となり……妹と同じ怪物になった。
 死徒に噛まれたものがまた死徒となるように、怪物に口を裂かれたものも怪物となるのだ。お前も、な」

運転席に伏していた肉塊に生気が戻り、立ち上がる。
運転手だった男の面影などどこにもない。
口は、耳まで裂けていた。
流れた血で、服は朱く染まっていた。
髪は伸び。
背丈は縮み。
男は、『女』になっていた。

「私、綺麗?」

運転手の口を裂いた怪物と同じような声で同じような問いを投げる、かつて運転手であった怪物。

「まあまあだ。メイクの出来は上々、私の舞台のヒロインとしては些か役者不足のきらいはあるが、あとは真名を覆う仮面を纏えばマスカレードの準備は万全だ」

脚本家(マスター)の演技指導(アドバイス)に素直に応じる女。
どこからともなく大きな白いマスクを取り出し、その裂けた口を覆い隠す。
それで満足したのか、運転席について怪物はハンドルを握る。

「粗筋(プロット)はできた!配役(キャスト)も揃う!姫(ヒロイン)はお前だ、ライダー!
 入場券(トランプ)は配られ、後は観客(オーディエンス)を待つのみ!ヒロイン御自ら広報に汗を流してくれたまえよ」

乗客であった男と女の降車を確かめ、怪物はアクセルを踏みこむ。
怪物の駆るタクシーが夜の闇に消えていく。
二体の異形はそれを見送り、ホテルへ。
女はすぐに溶けるように姿を消し、男は堂々と闊歩する。
ロビーを抜け、エレベーターに乗り込み、最上階の一室へ。
そこは街を一望する神殿(シュライン)。

「人の身では届かぬか。人ならざる身でも叶わぬか」

窓から見える街並みを眼下に、はるかに望む月へと手を伸ばす。
伸ばした手が空中でもがくように蠢き、何かをつかみ取ったような仕草を見せる。
そして腕を指揮者のように一振り。

「カット!!!」

体から流れ出る魔力量がほんの少し増える感覚。
口裂け女が知名度を増していく実感。

「奇妙な都市に送り込んでくれたものだ、姫君。
 黒の吸血姫には入場券を賜り、白の吸血姫には器を賜った。
 その果てに至るがこの祭典か。神の子の悪戯か、カインの子の悪戯か!まったく、姫君も人が悪い」

アトラスの蔵で小耳にはさんだ儀式・英霊召喚に東洋の蠱毒を取り入れた願望器形成の儀式か。
あるいは聖堂教会が血眼になるであろう真の聖杯の奪い合いか。はたまた……

「いずれでも構わぬ。朱い月の血を以てしても叶わぬなら、なすべきは一つ」

それは宣誓。叶わぬと言われた夢にそれでも手を伸ばすという堂々たるもの。
これは開幕。脚本家(ズェピア)自ら演じる筋書き無し(アドリブ)の殺戮(ドラマ)。

「我、神の子の血で以て救世へと至らん」

今度こそ、破滅の未来を棄却するために。


679 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:16:06 RRyal6560

【クラス】
ライダー

【真名】
口裂け女(オロチ)@地獄先生ぬ〜べ〜

【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B+ 魔力D 幸運D 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
騎乗:B+
都市伝説と言う存在、彼女をはじめとする噂に乗るライダーは騎乗スキルを持ちえないものが多い。
しかし口裂け女には乗り物を扱う逸話があるため騎乗スキルを持つ。
野獣ランクまでなら乗りこなし、都市伝説に類する存在であるならば魔獣クラスであっても乗りこなす可能性がある。
―口裂け女は赤いスポーツカーに乗って現れる―
―口裂け女は人面犬を駆る―

対魔力:E
近現代の存在であり神秘が少ないことに加え、呪われたと言う逸話があるため魔なるものに対する耐性は極めて低い。
クラススキルにより最低限得た程度。無力化はできず、ダメージを僅かに軽減する。
―口裂け女の容姿は犬神憑きによるものである―

【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
―口裂け女は素手で人の口を耳まで裂く―

飛翔:EX
空中を飛ぶ能力。赤い傘が必要と言う逸話もあるが、別になくても飛べる。
さらにその神出鬼没な在り方により、空間を“飛ぶ”ことを可能とし、後述の宝具によりスキル:加虐体質を向けるものが3のつく時間に3のつく場所にいることを認識できている場合、そこへ転移することを可能とする。
―口裂け女は空を飛ぶ―
―口裂け女は3のつく場所によく現れる―
―口裂け女は3のつく時間によく現れる―
―口裂け女の悪口を言った者を口裂け女は殺しに現れる―

都市伝説:A
噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。
最強の都市伝説の一角である口裂け女は最高ランクで保持する。
聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『口裂け女』を知るものがいる限りステータスが向上し、その知名度によっては新たな技能を獲得することもあり得る。
噂は一人歩きするものであるため同ランクの単独行動を内包する。
このランクが上がればあがる程、固有の人格より現象に近づく。Aランクともなれば伝承にあるような言葉程度しか発せず、僅かに基となった存在の残留思念が残る程度である。
口裂け女は「私綺麗?」、「これでも?」くらいしか意味ある言葉は発さない。
残りは悪の大妖怪オロチの極大の悪意・殺意のみの災害に近い存在となっており、老若男女も時刻も場所も選ばずにひたすら殺戮を振りまく。


680 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:16:53 RRyal6560

【宝具】
『承認欲求〜白雪姫の母は鏡に問う〜(ワタシキレイ?)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:上限なし
噂に乗らなければ存在できない、誰かに問わねば在り方が曖昧な口裂け女という都市伝説において最も象徴的な逸話。
「私、綺麗?」という問いに対して明確な答えを返したものと戦闘を行う場合、Cランク相当のスキル:加虐体質を獲得し、追撃時に攻撃判定を3度追加できる。
また問いかけに加えて、口裂け女の異様な素顔を目にしたものは"威圧"のバッドステータスを受け、敏捷が1ランク低下、さらに精神防御判定を行い、失敗したものは戦意喪失の追加効果を受ける。
精神防御で抵抗可能。
なおある意味当然のことだがこの宝具を発動した場合、それを視認したものはまず確実に『口裂け女』という真名を看破する。

『信ずる者は巣食われる〜口の裂けた赤ずきんの老婆は狼〜(マッド・トリニテ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人
恐れ、噂するものが存在する限り膨らみ続ける都市伝説という存在に口裂け女の逸話が合わさり、昇華した宝具。
口裂け女が口を耳まで裂いた者もまた口裂け女となる。
ステータスや宝具など全て同一の口裂け女そのものである。同時に存在できるのは3体まで。
―口裂け女に口を裂かれた者も口裂け女になる―
―口裂け女は三人姉妹である―

『末妹不成功譚〜この灰かぶりは小鳥に出会わない〜(ポマード、ポマード、ポマード)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
三にまつわる口裂け女の噂と、三と言う数字の神秘性、末子成功譚の逆を行く逸話が宝具と化したもの。
シンデレラ、三枚のお札、三匹の子豚など3つ目、もしくは第三子が成功するというのは世界中で散見されるモチーフである。
しかし口裂け女は三女であるにもかかわらず、交通事故や手術の失敗など要因は違えど一人だけ口が裂ける結果となったと噂される。
またポマードやハゲ、べっこう飴などと三度唱えると逃げ出すという噂もあり、三位一体をはじめとする聖なる数字3は口裂け女にとっては失敗をもたらす数である。
『口裂け女』に対する全てのスキル・宝具を三度目に無効化できる。
なお四度目、五度目には通常の効果を発揮し六度目に再び無効化できる。

また「ポマード」など前述の文言を唱えた場合幸運判定を行い、失敗した場合1ターン恐慌状態になる。
ただし加虐体質のスキルを獲得している場合判定の成功率は上昇し、この効果も三度目には無効化される。

『転身鬼女蛇王三昧〜狂える茶会でアリスは目覚めない〜(ORoTi)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
悪の究極妖怪、オロチであることそのもの。
本来は周囲の妖怪を取り込んで己が一部に変換、より強力な妖怪へと進化していく宝具。
しかしズェビアの固有結界『タタリ』が噂によって最恐の存在に姿を変えるものであること、かつて再誕したのが霊気によってさまざまな妖怪を再現できる機械を利用したものと近似しておりその影響を受ける。
加えてそもそも悪の究極妖怪、オロチをムーンセルが完全には再現できないため宝具が変質。
『噂にある最強の妖怪』へと姿を変える宝具となってしまった。
それにより今は『口裂け女』になっているため、それ以上の効果の発揮は今のところ見込めない。
ワラキアの夜は明けた、しかしもしかすると妖怪をとり込むこの宝具なら……?


681 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:18:38 RRyal6560

【weapon】
・刃物
口裂け女は様々な刃物を使うと噂される。ナイフ、鋏、メス、鎌、斧から日本刀まで。
スキル:都市伝説によりその噂は像を結び、魔力消費により様々な刃物を生成可能となっている。
ただし刃物の扱いに長けているという噂はなく、その怪力でもって振るうのみである。
なお同様に赤いコート、赤いスポーツカー、大きなマスクなどの噂に関わる小道具も魔力消費により生成可能。

【人物背景】
学会を追放された科学者、百鬼久作の手により復活した大妖怪。
その復活をぬ〜べ〜およびその生徒が阻もうとしたために百鬼は口裂け女やはたもんばなど多くの妖怪を産み出し、障害とした後にその妖怪をオロチ復活の糧とした。
復活には成功したのだが、善の究極妖怪ケサランパサランに敗北、消滅した。
その大妖怪が、伝説上の存在であるため噂に乗るライダーとして再現された……のだが変質した宝具の効果により本来とは異なる姿となる。
『噂に聞く最強の妖怪』、その器としてかつて取り込んだ都市伝説上の妖怪『口裂け女』の姿をとっており、その逸話の大半を再現している。

口裂け女は1980年ごろ日本で流行した都市伝説。後には韓国にも伝わっている。
子供が媒介の中心だったゆえか次々と逸話が盛られ物理的な強さは相当なものと噂される。
古くは江戸時代、美濃国の農民一揆の後に処罰された農民の怨念が形を結んだ鬼を起源とする。
その伝説に吉原の遊女が男に弄ばれた愛憎により転じた、口の耳まで裂けた鬼女が同化し妖怪『口裂け女』の起源となったという。
ターボババアのように速く、ひきこさんのように力強く、赤マントのように神出鬼没で、猿夢のように不滅で、くだんのように理不尽で、人面犬のように異形な都市伝説。
くねくねが最狂ならば口裂け女こそ最強の都市伝説ではなかろうか。
さながら吸血鬼のように、強みと同じく多くの弱みを持つ都市伝説、その具現。

八岐大蛇(オロチ)の子とも言われる酒呑童子。
それもまた愛憎の果てに鬼に転じた化生という逸話があり、彼女との近似性も口裂け女の姿となった理由の一つだろうか。

【サーヴァントの願い】
再誕

【基本戦術、方針、運用法】
サーヴァントとしての戦力は高くない。
化け物退治の玄人である英雄に対して、化け物である口裂け女/オロチは相性が悪いためである。
むしろ人類史を否定する側の死徒、その最上位であるズェピアの方がサーヴァント相手には闘えるレベル。
高ランクの単独行動、宝具による増加、威圧、限定的ながら絶対防御、といった強みを活かした雑兵さながらの消耗戦で真価を発揮するだろう。
ただし何らかの形でタタリの起動ができれば、間違いなく最恐の存在となる。

【マスター】
ズェピア・エルトナム・オベローン@MELTY BLOOD(漫画)

【参加方法】
かつて黒の吸血姫との契約において、術式に白紙のトランプを用いた……気がしている。
あるいはタタリという噂を具現する固有結界が、白紙のトランプという噂とそれに伴うサーヴァントを像にしたか。

【令呪】
赤い丸二つと、三日月が歪んだ笑顔の様に並んでいる。
それぞれの記号で一画。
本編におけるタタリのデスマスクと同じ形。

【マスターとしての願い】
今度こそ第■法に至り人類滅亡の未来を回避する


682 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:20:56 RRyal6560

【weapon】
・エーテライト
第五架空元素という存在を編んで作られたナノ単位のモノフィラメントを所持。
医療用に開発された擬似神経でもあり生物に接触すると神経とリンクして擬似神経となる。
他人の脳に接続すれば、対象の思考や精神を読み取り、行動の制御(活動停止、リミッター解除)など可能。
肉体や神経の縫合、ワイヤートラップ的な設置他、用途は多岐に渡る。
戦闘では鞭のように使用する、相手の思考を読み行動を縛る、悪性情報の実体化など。

【能力・技能】
死徒二十七祖第十三位、『ワラキアの夜』。
かつて『黒の吸血姫』との契約ほか様々な保険により『タタリ』という一つの現象にまでなったのだが、『白の吸血姫』の手により一個の死徒に再び堕ちた。
そのため後述する固有結界は現在駆動できないが、それでも二十七祖の一角にして元アトラシアとして卓越した戦闘技能を誇る。
錬金術師としてのエーテライトの扱いや並行・高速思考、吸血鬼としての爪や怪力を武器とする。

『固有結界・タタリ』
周囲の人間の心のカタチをカタチにする固有結界。
ある周期で出現する現象であり、特定コミュニティ内の人間(それに匹敵する知能を持つ者を含む)の噂・不安を煽って増大、集束させ、その内容を元に、不安や恐れのイメージを具現化、自身に転写して顕現し、噂通りの能力を持つ吸血鬼「タタリ」として具現化する。出現したタタリはその一定地域内を殲滅する。
簡単に言えば、噂やら都市伝説を広め、イメージされた通りの姿・能力に変身することができるという能力。
記憶も含めて本物と寸分違わぬ偽物を作り出すことも可能で、存在しないはずの者、既に死んだ者になることも可能。
具現化される噂や都市伝説に制限はなく、場合によっては「願い」めいたものもその対象となりうる。しかし、「具現化」=「吸血鬼タタリの(嗜好・知識を取り戻した上での)復活」であるため、具現化された話がどんなものでも「発生源の住人を皆殺しにする」ものに変えられてしまう。
タタリである死徒ズェピアは既にこの世に存在せず、「タタリ」も一晩しか持たないが、出現したタタリを退けようとも、起動式の条件さえ満たせば再び出現できるため、永遠に存在し続ける。
この固有結界を保持した名残として、恐怖の具現・都市伝説である口裂け女を彼は自在に操ることができる。

アルクェイドによって死徒ズェピアへと戻されたため現在この固有結界は駆動できない。
だが何らかの形で再び『現象』になることができれば……?

【人物背景】
MELTY BLOODのヒロイン、シオン・エルトナム・アトラシアの三代前の祖先(曾祖父)に当たる人物で、五百年前のアトラス院で院長を務めた天才錬金術師。
未来を求めるという過程で初代アトラシアが辿り着いた「人類滅亡」に、彼もまた辿り着いてしまう。それに抗おうと数多の策を講じて実行に移そうとするも、その悉くが失敗に終わる。
覆す方法を模索し続けるもその度に「より明確な滅亡」という計算結果を見せつけられ、最後には発狂してしまった。
死徒となって自身の存在を強化したズェピアは滅亡回避のために第六法を目指すも敗北、肉体は消滅し、構築していた霊子が霧散する。
しかし、それ以前に完成させた「タタリの駆動式」と「霊子の航海図」、アルトルージュ・ブリュンスタッドと交わした「契約」他多数の保険により、意識も記憶もへったくれもない霊子たちを留めて漂流させることに成功、自身を現象へと変える。現在の彼は「特定の時間・地域に固有結界タタリを展開する現象(人々の噂や不安を元にそれを様々な形で具現化する)」であり、タタリとして虐殺を行ないつつ、より強大な存在である真祖の肉体を得て再び第六法に挑もうとしていた。
「ワラキアの夜」という通り名の由来となった15世紀のワラキアを皮切りに、幾度か顕現。一度前は3年前のイタリア。自分を滅ぼしにきたリーズバイフェ・ストリンドヴァリとシオンを返り討ちに仕留めた。シオンから吸血し、彼女を半死徒に変えている。
そして日本三咲町へと舞台を移し、遠野志貴、シオンと交戦。様々な条件が重なり敗北、消滅を迎えようとした瞬間に参戦。

ゲーム出展とすると剪定事象が混在するため、漫画版のシナリオを仮に編纂事象としズェピアの出展とする。

【方針】
聖杯狙い。
『口裂け女』の噂を広め、『口裂け女』を産み出し、勝利で幕を閉じる。
『タタリ』とやることは変わらない。


683 : ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA :2016/12/05(月) 16:22:39 RRyal6560
投下終了です。
本作は 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 に投下した候補話をもとに改訂したものです。


684 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/05(月) 19:05:52 l/pSbubI0
拙作において書文(ランサー)の宝具の詳細を間違えていたので、wikiにて修正しました。


685 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:56:30 eMDBHPd60
投下します。


686 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:57:00 eMDBHPd60
夜、街の路地裏。
其処を一人の男が走る。
紙製のバッグを右手に取り、只々走り続ける。
男は何の罪もない、ごく普通の人だった。
普通に仕事を得て、普通に妻子を得て、普通に、入った宗教の教えを守っている……
ついこないだ入った宗教は、それこそ三大宗教の様に有名ではないが、今の所は悪くない。
しかし、今、この時彼は、普通とは思えないような状況に、直面しているのであった。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

男は走る。
ただ一目散に走る。
みっともなく、息をからしながらも、何かから逃げるように走る。
まるで、何者かから逃げるかのように。

その何者かが、男よりも10メートル程離れた位置にいながらも、ゆったりと、ゆったりと、落ち着いた動作で、男の通った所を歩いて行く。
男の後を追うそれの姿は、影こそ人であれど、全く持って異形という言葉が最も似合う様な風貌であった。
全身が紫に染まり、頭には獰猛なティラノザウルス、胸には今にも角を突きささんとするトリケラトプス、肩パッドにはプテラノドンの様な頭が付いていた。
今は暗闇でこそあれど、まるで古代の恐竜を擬人化したかのようなその恐ろしさは、凶暴さは、ふと後ろを振り向けば直ぐに目を開くほどに分かる。

ふと、その恐竜男が手を開き、視界にいる逃げまとう男に重ねだす。
するとどうだろう。
男の足に、氷が出現したのだ。
その氷は男の靴の周りを覆い、男と靴を完全に密着させた。

「ハァ、ハァ、ハァ……あ、な、何だ!?足が……!?あああああああ!!」
「追いかけっこはもうおしまいです。」
「ハッ!」

足が凍てつくことによる痛みすら感じさせる冷たさに苦しむ中、男の後ろから声が聞こえた。
ふと後ろを振り返れば、其処にいるのはやはり、先程の恐竜男。

「あ、ああああ、あああああああああああ!!」

男の顔が恐怖に染まる。
其処に迫るのは、本物の化物。
子供の頃に見に行ったお化け屋敷の見世物とは全くの別物。
紛れもない、本でしか見たことのない、化物だったのだ。

「や、やめてください……お願いします……。」

その姿に、男は恐れ慄く。
足を動かそうにも、地面と足をくっつけた氷はあまりにも硬く、剥がすことができなかった。
今でも尚己を蝕みつつあるその痛みのような冷たさを忘れるほどに、男は怯える。
しかし、恐竜男はそんなことなど意に介さないように、男に一歩、また一歩と、人形のようにゆったりとしたリズムで近づいてくる。


687 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:57:44 eMDBHPd60

「助けて欲しければ、貴方のその人形をお見せ下さい。」
「へ?」

男はその言葉を聞き、恐る恐る右手に取った紙のバッグを見つめる。
この中にあるのは、自分の子供への誕生日プレゼントだった。
子供とはあまり話したことはないが、大変聡明な性格で、自分にとっては大変誇らしい存在だった。
誕生日に与えられるのは精々がケーキで、その上単身赴任であるために渡せなかったのだが、今年ようやく、家に帰られる機会が見つけられたのだ。
あまり息子の好みなど分かるはずもなく買ったこれだが、もしこれで、自分の命が助かるのなら―

「早く渡しなさい。」
「あ…ああ!」

プレゼントなどあとで買ってやればいい。
今は自分の命が最優先だ。
そう考え、男は凍えた手でバッグの中から即座にラッピングされた人形を取り出す。
男の子と女の子のようなデザインの、人形のようなミトン。
男は震える両手でそれを手に取る。
その時である。

「成る程、子供に会いたい、それが貴方の欲望ですか。」

氷のような冷たい口調で、恐竜男は男の心を見透かす。
その言葉に、男の怯えがより一層、強くなる。
しかしそれを意に介さない恐竜男が掌を開きチャリンと取り出したのは、一枚の銀貨。

「見せてもらいますよ、その欲望。」

「×」の字が刻まれたメダルを、男は軽く投げつける。
その瞬間、人形の入った袋に自販機の様なスロットが出現し、そのメダルを取り込んだ。

「え、ええ!!」

男の顔に浮かぶ恐怖が、より一層深まっていく。
だが、その瞬間、男の視界がボヤける。

(ダ、ダメだ……もう限界だ……足……が……)

男を蝕んでいるその冷たさが、彼の体力までも凍てつかせてきているのだ。
最早男の身体は限界に近づいてきている。
いや、もう限界になっているのだ。
固定されている足を除く全身がふらついてきていく。

「う……。」

男の体が75度程傾く。
最早身体を立たせていられるほど、男の体力は持たなかった。
恐らく身体が固定されていなければ地面を這いつくばっていただろう。
そして目を徐々に閉じていく男が最期に垣間見たのは、恐竜男と対面している、もう一体の、何かだった。



◆  ◆  ◆


688 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:58:06 eMDBHPd60
―アメリカ、スノーフィールド。
白い洋風の建物が、当然の如く並び立つその地に、一件の東洋の武家屋敷が立っていた。
そしてその建物は、日本の新興宗教団体「御目方教」の物だった。
日本で信仰を伸ばしていったその宗教が寄り付いたのは、よりにもよってこの地。
しかし、未来を見据えると言うその教えは、米国によりつく日本文化への深い興味も相俟って、この国では徐々に、信仰を伸ばしてきているという。

その屋敷に有る、木製の座敷牢の中に、机に座りながら何かを考えている、着物を着た少女が入っていた。
赤い着物を着て、髪をリボンで束ねた少女の姿は、儚げでありながらも美しく見える。
少女は、名を「春日野椿」と言った。
「千里眼」を有す巫女と呼ばれた彼女は、両親の勧めで今米国に来ている。
しかしそれを思い出す時に椿が思い浮かべるは、寂しさではなく憎悪。
別段、両親を恨んでいるわけではない。
事実、椿の両親は非常に心優しい人物であった。
いつも自分のことを可愛がり、優しくしてくれた父と母は、彼女にとっては何よりの宝物でもあった。
この宗教が広まったのは、二人の人徳故でも有るとすら、椿は思っていた。

憎むとすれば、そんな「ロール」を与えたこの「ムーンセル」だ。

(何で、どうして……合わせてくれないのよ……!)

生きてるはずの両親に会えないことを悔しがり、椿は唇を噛みしめる。
そう、椿がいる世界は幻想だ。
「SE.RA.PH」とかという世界が生み出した、儚く虚しい幻想だ。
偶然にも来てしまったこの世界に有るのは、椿達の世界を模倣した偽りのもの。
事実、御目方教は米国で布教など行ってもいないし、椿の両親は既に交通事故で亡くなっている。
しかしこの世界では、「生きている」とされていた。
なのに、会うことは許されなかった。
両親がいるのは日本。
だが椿がいるのはアメリカ。
されど、日本という記述など只の形に過ぎなかった。
幾ら椿が会おうとしても、日本などに行けるはずもなかった。
せめて顔でも拝みたいと。
あの時のように、また笑い合いたいと、そう思っていたのに。
椿が会うことは許されなかった。

(聖杯を、聖杯を取ることでしか会えない……そうなのね……)

椿に更なる怒りを覚えさせた幻想世界「SE.RA.PH」。
其処で行われる催しは、「聖杯戦争」と言う物だった。
「マスター」と言う通称で呼ばれる参加者が、「サーヴァント」と呼ばれる使い魔を以ってして殺し合う戦い。
そして勝者には、如何なる願いも叶えてくれる「聖杯」と呼ばれる物が与えられるのだという。
そして椿は、この様な催しに大変よく似た物を知っている。

―サバイバルゲーム。
数々の事象が記される「未来日記」を手にした12人の日記所有者が、未来日記と己の全てを駆使して殺し合う争い。
その勝者に与えられるのは、「神」の座。
参加者こそ多けれど、他者を蹴落として力を手に入れると言うルールに関しては、大変良く似ていた。

(まあ、神だろうと聖杯だろうと、私の望むことは変わらないけどね……)

椿が望むこととは、世界の破滅。
己の全てを奪い、犯したこの世界に対する憎悪だ。
あの日、椿の両親は死んだ。
それから始まったのは、地獄のような日々。
己の周りを這うは、人のような何か。
彼等は悍ましい表情を見せつけ、服を剥がし、舐めて、縛って―
痛みと恥だけが、只々椿を苦しめ続けた。
そして、何時の間にか自分を唯一支えてくれていた母の手毬までもが、消えてしまった。
まるで、自分を見捨ててしまったかのように。
両親以外に何もなかった自分を、唯一支えてくれてきた、母との思い出の最後の一欠片までもが。
椿の元から、消し去られてしまったのであった。


689 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:58:35 eMDBHPd60

今の自分には、もう何も残されていなかった。
有るのは、自分から全てを奪い尽くしたこの世界への憎悪のみ。
それだけが、視界すらボヤけていく椿を動かす、ただ一つの思いだった。

故に椿は破滅を望む。
何もかも、全て壊してやるために。
あの時ムルムルから未来日記を受け取ったのも、世界を潰す力を手にするためだった。
もし聖杯でもそれが可能だとしたのなら、まずはそれを手に入れていくまでだ。
変わったのは所詮は過程。
椿のやることなど、変わりはしないのだ。


「只今戻りました、我がマスター。」

不意に、椿の目の前の格子の奥に光の粒子が現れる。
あちこちから出現したそれは徐々に収束していき、一つの人型を形作る。
現れたのは、眼鏡を掛けたスーツ姿の中年の男性。
彼こそがキャスター。
この「聖杯戦争」において、椿が召喚したサーヴァント。
サバイバルゲームにおける「未来日記」の様な存在である。

「お帰りなさい、キャスター。」

信者にいつも見せている、儚げな笑顔を浮かべて、椿はぼんやりとボヤけて見えるキャスターを見つめる。

「昨夜、また一体ヤミーを生みました、貴方になら分かるかと思われますが。」

キャスターは椿に向かって、淡々と自分のやったことを報告しだす。
椿からしてみて、キャスターという男は少し、異質さの様な物が感じられた。
彼はこの通り冷たい雰囲気なのだが、何処か変わっているように見られる。
これまで椿を犯し続けてきた連中とは、まるで真逆の表情を常に浮かべている。
欲といえる欲が、無いように見えるのであった。
しかしそんな疑念をさっさと隠した椿は、キャスターの報告に返事をする。

「ええ、分かっているわ、またやったのね、この宗教の人間を。」

椿はそう言い、机に置いてある巻物を更に広げる。
其処に記されているのは、これまで起こった数々の出来事。

これこそが千里眼日記。
春日野椿が、神が起こしたサバイバルゲームにおいて武器とした未来日記。
その能力とは、椿が仕切る御目方教の人間の状況を記していくことだった。
嘗て椿が、信者の行動を常日頃記してきていた巻物が日記となった物だが、お陰で彼女の情報網はかなりの物となっている。

そして今、其処に書かれているのは、全て同じような物だった。

「化物に遭遇した」
「大切な物を渡した」

どれもこれも、同じような報告ばかり。
化物にあったと言う報告ばかりが、椿の千里眼日記を埋め尽くしていた。

「ええ、貴方のその日記のお陰で、欲望の種らしき物が見つかって良かったですよ。」
「それで、どれくらいの力だと思う?」
「お世辞にも良いとは言い難いですがねぇ……やはり、人と関わったばかりの触媒では強力なヤミーは出現しないようです。」

キャスターの能力とは、「ヤミー」と呼ばれる化物を生み出し、手駒として操ると言う物だった。
そして今は、その「ヤミー」と呼ばれる存在に魔力を吸わせる「魂喰い」を行わせている所であった。

「それで、魔力はどれくらい集まっている所?」
「順調ではありますが、まだまだ魔力は足りないですね。私の宝具を起動するには、より多くの魔力が必要となるでしょう。」
「その宝具を使えば、私の願いは叶うのね?」

椿は、ボヤけているその目を開かせてそう問う。
キャスターはそれに頷く。


690 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:58:57 eMDBHPd60

「ええ、その通りです。もしあの宝具が喚べれば、世界は『完成』を迎えます。」

―完成?
それが一体どういう意味なのかは、椿には分からなかった。
そもそも、あの宝具が如何なるものなのかすら、聞いてもいないのだが。

「キャスター、どういうことなの?完成するって。」
「そのままの意味ですよ、美しいものは美しい内に終わらせる、それが世界の完成への道筋です。」
「何故、それが完成だと言えるの?」
「……私の姉の言葉ですよ、もう、死んでしまいましたがね。」

キャスターは、何処か懐かしむような口調でそう言う。
そしてそれに、椿は答える。

「そう……でも私には思えないわ、この世界が美しい、だなんて。」
「ならば、尚更消し去ってやるまでです。」
「え?」
「私の姉も醜く変わり果ててしまいました、故に消えたのです。マスターの世界も同じことでしょう、美しさがサビ果てた存在に、価値などありません。」

相変わらず淡々とした口調でキャスターはそう言っているがしかし、その口調はやや強くなっているような気がした。
しかし、椿はそれを聞いて、何処かホッとした様な気持ちになり、フフフ、と口を抑えて笑った。

「……そうね、私を不幸にした世界は、本当に醜かった。だからこそ消し去るべき。有難うキャスター、少し、楽になったわ。」
「私の思想を理解してくださるマスターがいるとは、私も幸運な物です……さて、これから如何になさるおつもりで?
私はこれからヤミーを集めに向かいますので、日記の情報を教えていただければ幸いかと。」
「ええ、分かったわ。」

椿はそれに答え、千里眼日記に目を通す。

世界を壊そうと望む、二人の人間がいた。
一人は己を不幸にした世界を憎んだ。
一人は世界を醜くすることを望まなかった。
自分を自分たらしめる思い出すらかなぐり捨て、二人はこの世界を帳消しにするため、願望機に手を伸ばす。


691 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 20:59:22 eMDBHPd60


【クラス名】キャスター
【出典】仮面ライダーオーズ/OOO
【性別】男
【真名】真木清人
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運C 宝具EX


【クラス別スキル】


陣地作成:D+
自らに有利な陣地を作り出す能力。
ラボを創り出せる他、宝具を己の陣地とすることも出来る。


道具作成:C
魔力を帯びた器具を作り出す能力。
彼は鴻上ファウンテーションに所属する優秀な科学者であり、メカづくりが得意である。
カンドロイド、ライドベンダー、バースドライバー等のメダルシステムの作成を得意とする。


【保有スキル】

精神汚染:B
精神が壊れている。
彼の心は深いトラウマによって抉られており、人形を手放したりすると発狂する。
精神干渉系の魔術をほぼ高確率で無効化する。
また、スキル「疑似生命・欲望結晶」の悪影響で欲が薄れているが、元々彼に欲など無いので意味がない。


疑似生命・欲望結晶:A
グリードと呼称される、錬金術によって欲望の渦から作り出された疑似生命体。
セルメダルと呼ばれる欲望の結晶を人間に挿入することでヤミーを生み出す「使い魔作成」、
人間への擬態を可能とする「変化」、五感が正常に働かない「感覚喪失」などデメリットスキルを含む複数のスキルを内包する。
また、純粋な生命としての性質が薄れ、逆説的に生物的な死の概念への耐性を獲得している。


魔力放出(氷):A
自らの魔力を氷として周囲に放出する能力。
対象を凍結させることに長ける。


692 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 21:02:53 eMDBHPd60
【宝具】


「欲核結晶・氷竜(プトティラ・コアメダル)」

ランク:B 種別:対欲宝具 レンジ:― 最大捕捉:1

動物の絵が彫られたメダルで、キャスターの本体であり核。
800年前、とある小国の王が国内の錬金術の粋を集めて生み出した欲望の力。
キャスターは「プテラ」「トリケラ」「ティラノ」の3種のメダルを持ち、合計で10枚所持しており、現状で投入しているのは5枚。
それぞれが各モチーフの動物の力を内包しており、キャスターに力を与える魔力炉として機能している。
これを9枚全て引きぬかれた瞬間、キャスターは「疑似生命・欲望結晶」「魔力放出(氷)」の2つのスキルを失う。
因みにコアメダルは人体に埋め込むことも可能だが、その場合は入れた枚数にもよるが少しずつグリード化が進んでいってしまう。
現にキャスターはこのコアメダルを投入して己をグリード化している。
尚、生前は他の色のメダルを投入して完全体となっているが、逸話の影響からか彼が持ってきたメダルは全て紫になっている。



「欲望を凍てつかせる破滅の紫竜(ギル)」

ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

キャスターが9枚のメダルを全て投入した姿。
謂わば「完全体」で、この姿のときにはベルトが金色に光る。
キャスターが「真名開放」した姿。
この姿のときにはパラメータが向上し、パラメータに補正が掛かる。





「万物を欲し飲み干す欲望の器(ヴェッセル・オブ・グリード)」

ランク:EX 種別:対欲宝具 レンジ:1000 最大捕捉:10000

キャスターが生前、グリードに大量のコアメダルを投入して誕生させた存在。
「メダルの器」とも呼ばれた存在、これを召喚する宝具。
膨大な力を持ち、万物をセルメダルに変化させ、大量の屑ヤミーを生みだす能力も持つ。
更に、この宝具が有る限りキャスターが死ぬことは決して無い。
どんな攻撃を喰らおうが、即座にこの宝具によって再生させられてしまう。
倒すには、この宝具を破壊する他無い。
発動には膨大な魔力を有するが、一度発動すれば万物を魔力に変換させる永久機関と化してしまうため、魔力切れを狙う事はできない。


693 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 21:03:30 eMDBHPd60

【人物背景】

鴻上ファウンテーションに所属する天才科学者。
類稀なる頭脳の持ち主で、ライドベンダー、カンドロイド、メダジャリバー、バースシステム等のメダルシステムを生み出している。
しかしその目的は、「世界を破滅させることで完成へと導くこと」。
彼がその考えを持ち始めたのは、自分の姉に虐待された過去に有る。
それまで自分に優しかったはずの姉に虐待された理由を理解することが出来なかった彼は、衝動的に姉を焼殺してしまう。
それがきっかけとなり「美しいものは美しい内に壊す」と言う破滅的願望を持ち始める。
世界を壊そうとした彼は、鴻上ファウンテーションが所持するミュージアムに唯一残った9枚の「紫のコアメダル」を身体に投入する。
そして彼は鴻上ファウンテーションを去り、グリード集団にくっつく。
優れた参謀として活躍した彼は、メダルの器を探し求め、やがて見つけたのが不遇な目によく会うウヴァ。
彼を暴走させ、「メダルの器」と化させた真木は、後一歩と言う所で世界の破滅に近づいたのだが―



【聖杯にかける願い】

世界を完成させる。


【方針】

当分はヤミーに魂喰いを行わせ「万物を欲し飲み干す欲望の器」の発動に必要な魔力を確保する。


【備考】

宝具を発動するための魔力を確保するため、ヤミーに魂喰いを行わせています。


694 : 未来と欲望と思い出の欠片 ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 21:03:53 eMDBHPd60

【マスター名】春日野椿
【出典】未来日記
【性別】女

【参戦経緯】

信者を経由して入手した「白紙のトランプ」を手に取った。


【Weapon】


「千里眼日記」

椿が所有する「未来日記」。
巻物を端末としており、御目方教の信者に関する情報が記される。
このロールにおいても椿は御目方教を率いているため、日記の効果は健在。
ただしこの日記が破壊されれば椿は消滅する。




【能力・技能】

・弱視
彼女は目が弱い。


【人物背景】

宗教団体「御目方教」の巫女。
弱視であり、あまり物をよく見ることが出来ない。
少なくともムルムルをムルムルと認識できなかったりする程度にはボヤける。
御目方教を牛耳らんとする者の陰謀により両親を失い、新教徒の入信の代償として日々陵辱を受け続けていた。
その時に母親の形見であるまりを失くした事から光を見失い、世界を憎むようになる。
そしてある時ムルムルにより、未来日記と日記所有者による神の力を賭けたバトルロワイヤルへの参加権を貰う。
神になって世界を滅ぼそうとする彼女は日記と信者を利用して勝ちにゆこうとする。
今回は、少なくとも天野雪輝と対面するよりも前からの参戦。


【聖杯にかける願い】

世界を滅ぼす。


695 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 21:08:06 eMDBHPd60
投下を終了します。
尚、ステータス作成において
◆aptFsfXzZw氏の「バーサーカー(火野映司)」、
◆87GyKNhZiA氏の「アサシン(アンク)」を参考にさせていただきました。
この場に御礼を申し上げます、ありがとうございました。


696 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/06(火) 21:14:47 eMDBHPd60
それとすいません、Wiki収録の際に
精神汚染:B
精神が壊れている。
彼の心は深いトラウマによって抉られており、人形を手放したりすると発狂する。
精神干渉系の魔術をほぼ高確率で無効化する。
また、スキル「疑似生命・欲望結晶」の悪影響で欲が薄れているが、元々彼に欲など無いので意味がない。

の[人形を手放したりすると発狂する。]の部分を削除しておいて頂けると嬉しいです。


697 : 名無しさん :2016/12/07(水) 00:53:22 z4J5jSVY0
質問なのですがこの聖杯戦争ではサーヴァントを失ったマスターを教会が保護するルールはありますか?


698 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:28:07 ouenPiyo0
投下します。


699 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:28:42 ouenPiyo0
 ジョルノ・ジョバァーナは、石段に腰を下ろし、感嘆の息を吐いた。視界に広がる世界は、すでに見慣れた世界ではない。生まれ育ったイタリアでも、ましてやスノーフィールドでもない。
 ここは、見渡すかぎりの財宝の海だった。この世に現存する古今東西の伝説上に語られる宝具の原点がそこかしこに転がっている。剣に槍、斧に弓、食器から飛行船まで、この蔵に存在する宝の中に、ただのひとつとして贋作は存在しない。すべてが正真正銘の、宝の山だった。その宝と宝の間を埋めるように、大小様々な金塊がうず高く積み上げられている。
 或いは、この世に現存する宝と黄金をありったけ集めれば、この景色を再現することはできるのかもしれない。だが、ひとりの人間の力で、それを実現することは、決定的に不可能だ。どれほどの富豪が一生を費やそうと、これだけの財宝を集めきれるわけがない。
 ジョルノは、この荘厳なる光景が自分の心象の内にあるものでないことを、理解している。目の前に漠然と存在する誰かの夢を、ジョルノは物語を外から眺める語り部のような心持ちで眺めていた。
 この財宝の果てもどこかにあるのだろうが、それを人ひとりの尺度で認識することは、最早不可能だ。あまりにも莫大。あまりにも壮大。規格外の宝を前に、しかしジョルノは自分でも驚くほどに凪いだ気持ちでいた。

 ジョルノ・ジョバァーナには、夢がある。
 眼前に広がる見渡すかぎりの黄金と比べればちっぽけだが、それでも尊い夢がある。
 散っていった仲間たちに誓った夢は、いかな無限の財宝を積まれようとも、その光輝に眩まされることはない。ジョルノの夢もまた、黄金のように光り輝いているのだから。


700 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:29:04 ouenPiyo0
 



 規則的に体を揺さぶる車の振動によって、ジョルノは現実へと引き戻された。
 短い時間だが、夢を見ていた気がする。小さくかぶりを振って、靄の掛かったような思考を覚醒させると、窓の外にはイタリアとは似ても似つかない景色が広がっていた。近代的なビルの立ち並ぶアメリカ、スノーフィールドの街並みだ。車の中で、移動中にまどろんでいたらしい。

「お目覚めですか、GIOGIO(ジョジョ)」

 運転手がミラー越しに視線を向ける。ジョルノが支配する組織、パッショーネの構成員だ。ジョルノの送迎を買って出てくれている。
 ええ、と短く返したジョルノは、どこか現実感の伴わない意識のまま、窓の外に視線を投げた。このスノーフィールドが現実世界でないことを、既にジョルノは知っている。この空間が、聖杯戦争のために用意された擬似空間であることも、既に思い出している。
 その上で、ジョルノはこの擬似空間で自らに与えられた役割をまっとうすることにした。
 ジョルノに与えられた役割は、アメリカに本部を置くスピードワゴン財団との協定交渉のため、財団に指定されたスノーフィールドまで足を運ぶ、といったものだ。流石に世界を牛耳るスピードワゴン財団に対して、重要な交渉を、幹部や部下に任せっきりにするわけにもいかない。相応の相手との交渉のため、ボスであるジョルノが出張るのは、理由としては不自然ではない。
 交渉の結果自体は上々だった。スピードワゴン財団としても、イタリアを広く支配するパッショーネと裏で繋がりを持っていたい、という思いがあったのだろう。それはパッショーネとしても同じだ。今後は両組織の間に協力関係が結ばれることになった。
 スピードワゴン財団には、表立って動く「悪」が現れた時、それを察知し正面から叩き潰すために動くスタンド使いの協力者がいる、と聞いたことがある。たしか、空条なんとかいう名前だったか。
 表立って動く「邪悪」を駆逐する「正義の十字軍」がいるとするなら、彼らが動けない、裏の世界で暗躍する「邪悪」を潰すのが、ジョルノらのパッショーネだ。少なくとも、ジョルノは自らの組織の役割をそう捉えている。
 もっとも、この場においてそれに意味があるかどうかは、些か疑問だが。


 ジョルノが宿泊するホテルは、高層ビルの最上階に位置するスイートルームであった。望んだわけではない。部下に部屋を予約するように命令したら、取ってきた部屋がスイートルームだったのだ。
 ジョルノは、帰り着いた自室のガラス張りの窓から、スノーフィールドの街を見下ろす。開発の進んだ都市部と、それを取り巻く広大な自然。それらを上手く調和させたこの都市は、成程聖杯戦争を行う上では最適な条件が揃っているのだろう。今この街に、自身が聖杯戦争に招かれたマスターであることを自覚している人物は、どれほどいるのだろう。
 ジョルノがその事実に気付いたのは、些細な違和感が原因だった。
 果たして、ジョルノはいったいなぜ、ボスとしてこの国へ入国するに至ったのか。組織のボスという類まれなる環境に身をおきながら、ボスになるまでの経緯が思い出せなかった。なにか、忘れてはいけないことを忘れている、と。直感的にそう思った。
 そう感じてからは早かった。組織のボスとして、ジョルノにはやるべきことが、夢がある。悪を制するギャングスターとなって、麻薬や汚職で汚れきった街を浄化するという、散っていった仲間に誓った夢がある。
 そこまで思い出した時、脳裏に蘇ったのは、かつてジョルノが所属した組織のチームリーダー――ブローノ・ブチャラティの姿だった。
 かつてのボス、ディアボロとの最後の戦いで、空へ昇っていったブチャラティの魂の気高さを、ジョルノは思い出した。連鎖するように、ここに至るまでのあらゆる記憶が蘇る。ジョルノには、この聖杯戦争で成し遂げねばならぬ目的があった筈だ。
 それを思い出した時、ジョルノに呼び寄せられた英雄の王は、ようやくその姿を表した。



 アーチャーは、今まさにジョルノの部屋のソファに深く腰掛けている。
 黄金の鎧を脱ぎ捨て、髪を下ろしたアーチャーは、一件ただの小奇麗な金持ちの若者、といった風情をしているが、その所作から滲み出る高貴さと気高さが、彼が英霊であることを示していた。これほどまでにスイートルームが似合う男もそうはいない、とジョルノは思った。
 アーチャーは自らの蔵から取り出した黄金の盃に、同じく蔵から取り出した酒を少量注ぎ、呷る。それを嚥下してから、鮮やかな真紅の瞳でジョルノを見た。燃えるようなその虹彩の色に反して、視線はずいぶんと冷ややかだった。
 ジョルノはアーチャーに向き直った。


701 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:29:32 ouenPiyo0
 
「なんです、アーチャー」

 問いに答える素振りはない。鼻で笑って、酒をもう一口呷るだけだった。

「ずいぶんと……あなた……余裕そうですね」
「当然だ。我(オレ)がなにを焦る必要がある。そも、この聖杯戦争は貴様の戦争であろう。我は無聊の慰めに、貴様の足掻きを眺めるだけよ」

 アーチャーの言った通り、既に両者の間で話はついている。
 ジョルノは聖杯を獲るために戦う。しかし、アーチャーはそもそも聖杯に興味がない。さらにいえば、アーチャーはジョルノの部下として戦うのではなく、正確にいえばジョルノがアーチャーという存在に縋り付く側であるのだという。
 そこまで傲岸不遜に己を貫くアーチャーがそれでもジョルノに付き合うのは、先の言の通り、無聊の慰め――要は暇潰しだ。

「貴様は、聖杯に託す願いはないと言ったな」
「ええ。しかし聖杯は獲ります……絶対に」
「ハ、願いを持たぬ男が、なにを拠り所に戦うというのか」
「言ったはずです。このジョルノ・ジョバァーナには夢がある。そして、夢とは……自らの力で叶えるものだ」

 ギャングによって腐り切った街を、ギャングスターのジョルノが救う。
 麻薬を売買する者を徹底的に始末して、この世に存在する麻薬を根絶する。
 汚職にまみれた役員を、そして私腹を肥やすことしか考えない公務員を排除する。
 聖杯に願えばそれらを達成することも容易いのだろう。だけれども、そのために聖杯戦争に参加した者を殺して頂点を掴み取るというやり方は、結果だけを追い求めた以前のボスとなんの違いもない。ジョルノは、そういうやり方を求めない。

「矛盾だな。貴様はこの戦争を気に入らぬと断じたのであろう」
「ええ」
「だが、結局戦争には乗るという。凡百の魔術師どもとなにが違うというのか」
「聖杯は獲る。しかし、マスターは殺さない。サーヴァントだけを『始末』する」
「ほう? ならば重ねて問おう。他者を殺めることを躊躇せぬ外道がマスターならば」
「そういう人間を『始末』するのが、僕の仕事です」

 一切の淀みも衒いもなく、ジョルノは即答した。
 マスターは殺さず、サーヴァントだけを始末する。しかし、殺し合いに積極的な外道には容赦をしない。それがジョルノの理論だ。
 深く息をついたアーチャーは、もう一度あの冷ややかな視線をジョルノに送った。

「で? 聖杯を獲らんとする貴様の目的は」
「二度とこんな戦争を起こさせない。そして……聖杯が願いを叶える願望機というなら……この戦争で散った人間たちにも救済を」

 諦念混じりに笑みを浮かべて、アーチャーは再び金の盃を取った。

「これだ。よもや、不遜にもこの我を喚んだ魔術師が、どれほどの猛者かと思えば。蓋を開けてみれば救世主気取りの道化ときた。これでは興醒めもいいところだ。最早此度の聖杯戦争の愉しみなど、貴様の奮戦ぶりを眺めて嗤うほかあるまい」

 なんと言われようともジョルノの意思は揺らがない。今更他者になにか言われたくらいで、考えを改める程度の覚悟であるなら、そもそもジョルノは組織のボスになどなってはいない。
 聖杯に願う望みがあるとするなら、この聖杯戦争によって人生を捻じ曲げられた無辜なる人々を救済すること、のみ。他に願うことなどなに一つとしてない。
 ギャングによって汚された街は己の力で変える。自らの力で、良い方向へ進むようにと願いながら、真実へ向かって歩いて行くことに意味があるのだ。結果だけを追い求めた上っ面の言動は、いつか必ず滅びるということを、ジョルノは誰よりも理解している。


702 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:32:50 ouenPiyo0
 
「だがな、雑種。貴様のような人間を眺めるのは存外に愉しい。人の身に余る救世の大望を背負い込み、苦しみ、足掻く、その葛藤……慰みモノとしては上等よ」

 返す言葉もなく、ジョルノは視線のみで応えた。

「フン。精々、己の限界に挑み、奮戦することだ。案ぜずとも、貴様の足掻く様は我が見届けてやる。道化とはいえ、仮にも貴様は我がマスターゆえな」
「そうですか……ありがとうございます」

 微塵も表情を動かさず、頭を垂れることもなく告げられた礼が気に入らなかったのだろう。アーチャーは呆れた様子で眉をひそめた。

「なんと慇懃無礼な返事か。つくづく礼儀を知らぬ男よ」
「ええ……すみません、アーチャー」

 今度は軽く頭を下げた。

「フン、まあよい。慰みモノが早々に壊れることほどつまらぬこともない。事によれば、我が力を下肢してやってもよいのだぞ、雑種」
「力を……貸してくれるのですか」
「たわけ、付け上がるな。道化なりにも見込みはある、それだけだ」

 杯に盛られた酒をすべて飲み干したアーチャーは、すっくと立ち上がり、再び嘲りを含んだ笑みを見せた。

「ゆえに、早々に見捨てることもせぬ。貴様が我を飽きさせぬ限りに於いてはな」

 それだけを言い残すと、アーチャーまるで大気に解けるようにその姿を消した。霊体化だ。こうして魔力消費を抑えながら、気が向いた時だけ姿を見せるのが、ジョルノのサーヴァントだった。
 アーチャーの言葉を鵜呑みにするなら、対サーヴァント戦において、ジョルノはアーチャーの戦力をあまり期待はできない。が、まったく戦力にならないわけでもないらしい。すべてはアーチャーの気まぐれ次第だった。
 それでも、ジョルノは立ち止まりはしない。

 ――おまえの気高き『覚悟』と……
 ――黄金のような『夢』に賭けよう、ジョルノ・ジョバァーナ。

 はじめてブチャラティと出会った時にかけられた言葉を、ジョルノは忘れない。
 ジョルノ・ジョバァーナには夢がある。黄金のような、気高き夢がある。たとえ一歩ずつでも、真実に向かって歩んでいく、『誠』の行動は絶対に滅びはしない。仲間たちが教えてくれたことだ。
 決して揺らがぬ黄金の精神を胸に、ジョルノは黄金のアーチャーとともに、聖杯戦争へと参戦する。


703 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:33:12 ouenPiyo0
 

【出展】Fate/Grand Order
【CLASS】アーチャー
【真名】ギルガメッシュ
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。もはややりたい放題。

神性:B
 最大の神霊適正を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。

【保有スキル】
カリスマ:A+
 大軍団を指揮・統率する才能。
 ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。

黄金率:A
 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。

バビロンの蔵:EX
 ギルガメッシュは財宝のコレクターでもある。
 地上のものはすべて集めた、とは彼の口癖だが、それは比喩でもなんでもない。
 彼は彼の時代において発生した、あらゆる技術を集め、納め、これを封印した。

【宝具】
『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
 エヌマ・エリシュ。
 乖離剣エアによる空間切断。
 圧縮され鬩ぎ合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対するすべてを粉砕する。
 対粛正アーマークラスか、同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない攻撃数値。
 乖離剣エアは剣のカテゴリではあるが、その在り方は杖に近い。三つの石版はそれぞれ天・地・冥界を表し、これらがそれぞれ別方向に回転することで世界の在り方を示している。この三つすべてを合わせて宇宙を表しているとも。アルトリアのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ「世界を斬り裂いた剣」である。

『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足-
 黄金の都に繋がる鍵剣。
 空間をつなげ、宝物庫にある道具を自由に取り出せるようになる。
 所有者の財があればある程強力な宝具になるのは言うまでもない。

【人物背景】
 言わずと知れた英雄王である。

【サーヴァントとしての願い】
 とくになし。

【基本戦術、方針、運用法】
 ギルガメッシュは気が向いた時、または気まぐれでジョルノを助けることはあるのだろうが、ジョルノがギルガメッシュに助けを求めることは(よほどのっぴきならない状況でない限りは)おそらくない。
 しかし、もしもジョルノがギルガメッシュに助けを乞うのであれば、ギルガメッシュは助けてやるつもりである。一応当分は見殺しにする気はない。


704 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:33:28 ouenPiyo0
 

【出展】ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風
【マスター】ジョルノ・ジョバァーナ
【参加方法】
 部下が手に入れた白紙のトランプを偶然手に取った。

【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険 第5部主人公。
 父親は邪悪の化身DIOだが、その肉体はジョナサン・ジョースターであったため、ジョルノにはDIOのカリスマ性と、ジョナサンの誇り高き黄金の魂の両方が受け継がれている。
 ギャングによって腐り切った街を救うため、ディアボロを頂点とする組織・パッショーネに入団し、組織を内部から変えるため、ブチャラティらとともにボス・ディアボロを打倒するために戦った。
 現在は自らがパッショーネのボスとなり、街の浄化のために日夜戦っている模様。

【能力・技能】
『ゴールド・エクスペリエンス』
 破壊力 - C / スピード - A / 射程距離 - E(2m) / 持続力 - D / 精密動作性 - C / 成長性 - A
 テントウムシがモチーフの接近パワー型。触れた物体に生命力を注ぎ込み、無機物から動物や植物といった生物を生み出す能力を持つ。
 既に生きている生命を殴るなどして、更に生命力を注いだ場合、過剰になった生命力が暴走を始め、対象は動作やものの見え方が非常にゆっくりとなる。もしこの状態で攻撃を受けると、ゆっくりとダメージを受けて行き必要以上の痛みを感じることになる。

【マスターとしての願い】
 聖杯を獲る。叶える願いは、此度の聖杯戦争による犠牲者の救済。
 その後は、二度と聖杯戦争が起こらないようにする。

【令呪】
 左手の甲に三角。


705 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/07(水) 05:35:01 ouenPiyo0
投下終了です。
なお、拙作、フランドール・スカーレット&バーサーカーの文章を少し修正させていただきました。
大筋はなにも変わっていませんが、ここで報告しておきます。


706 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/07(水) 16:31:54 Ku3VLXyM0
拙作の「ギルバート・デュランダル&キャスター」と「沢下条張&アーチャー」において誤植があったので修正しました。


707 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/07(水) 21:16:18 vYe/CFKY0
皆様、ご投下ありがとうございます!
感想をお待ちの方も大勢いらっしゃるとは思いますが申し訳ございません、今回は>>697氏への回答のために取り急ぎ書き込みさせて頂きます。

ということで>>697氏、回答お待たせいたしました。
ルールでの明記を失念していて大変申し訳ありませんでしたが、当企画ではマスターを教会が保護するルールはありません。
代わりに、というわけではありませんが、現在伏せさせて頂いている部分で、サーヴァントを失ったマスターにも挽回の可能性があるルールを考えておりますので、どうかご了承頂ければ幸いです。


708 : ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:05:41 0BANrm1w0
投下します


709 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:07:35 0BANrm1w0
 嘶きが聞こえる。
 蹄の音が響く。
 混沌渦巻く暗黒の時代を、煌々と輝く切っ先を携え、駆け抜ける騎士の姿がある。
 行く手を遮るは無数の黒。天地を埋め尽くす邪の色。
 ひょう、と闇夜に凍てついた風が、背中を撫でるような声が鳴る。
 ぎぃ、と地獄の釜の戸を、こじ開けたかのような咆吼が響く。
 阿鼻叫喚の轟く世界に、たったひとつ煌めくものは、地上に降り立った太陽の光か。

『――俺たちが守るのは、一つの命じゃない』

 雄々――ッ、と光の騎士が吼えた。
 無明の宇宙を眩しく拓き、無限の灼熱で果てなく照らした、日輪の波動が星を揺らした。
 金の軍馬が跳躍する。装甲の調べを奏でながら、馬上の騎士は剣を掲げる。
 それは黄金の騎士だった。
 比喩でも誇張ですらもなく、頭頂から爪先に至るまで、騎士の纏った甲冑全てが、天の光輝で満たされていた。

『その先にある、何百何千という命なんだ』

 豪腕が吠える。豪剣が唸る。
 さながら光の剣速か――眩いアークを描く軌跡は、波濤となって爆裂し、魔性の群れを真っ向から砕く。
 騎士が叫びを上げるたび、剣が光を放つたびに、闇の郎党は悲鳴を上げて、四方八方へ散らばっていった。
 それでも、暗雲に果てはない。一つ一つと切り裂いていっても、再び悪意は湧き上がり、次なる魔物を呼び寄せてしまう。
 魔獣の糧とは人の邪念だ。陰なる我欲こそ誘蛾の炎だ。
 暗く燃え上がる灯火の列が、人の世から果てて消え失せぬ限り、恐怖(ホラー)の歴史に終わりは見えない。

『永遠に紡がれる人の想い』

 だとしても、人が心に抱くものは、絶望の闇一つきりではない。
 相反する白き希望の光が、人々を照らし続ける限り、必ず立ち上がる者たちがいる。
 たとえ悪意が無尽であっても、それらを狩るべき黄金の剣も、絶えず無限に受け継がれ続ける。
 同じ金色を放つ息吹が、次々と闇の只中に芽生えた。
 太陽を纏いし黄金の騎士が、それぞれの時代に姿を現し、人々を守るべく戦い続けた。
 光が象る雄大な翼で、縦横無尽に戦場を駆ける、天下御免の騎士がいる。
 獰猛なる獣に車を引かせ、炎の剣で敵を切り裂く、疾風迅雷の騎士がいる。
 猛る魔性を光に転じ、絢爛なる輝きを太刀と握る、天衣無縫の騎士がいる。
 声なき叫びを嵐と束ね、見上げんばかりの巨体を成す、快刀乱麻の騎士がいる。
 暗雲を引き裂き陽光を目指す、昇龍のごとき威容を誇る、古今無双の騎士がいる。

『その強さが、俺の力の源』

 真紅の双眸が燃え盛り光った。
 聖なる炎が輝きへ変わった。
 無限の戦場の中心で、最初に現れた黄金騎士が、叫びと共に光輝を放った。
 天にそびえ立つ剣の名は。
 羽ばたき煌めく身に宿る名は。
 悲しみに呑まれた人の心を、輝きへと繋ぐ光の名前は。

『そして、それこそが――』

 その名が天地を揺るがした時、世界は金の一色に染まり――そこで、彼女の夢は終わった。


710 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:08:09 0BANrm1w0


 数え切れない戦いがあった。
 数え切れないほどの傷を負った。
 それら全てを戦い抜いた、目の前のセイバーのサーヴァントは、きっと強い英霊だったのだろう。
 マスター――リンネ・ベルリネッタは、かりそめの住居の自室に立って、己が使い魔の姿を見定めていた。

(きっと、彼は)

 英霊の姿を見据えて、思う。
 炎のごとき赤髪と、燃える真紅の瞳を持った、若い剣騎士の生涯を思う。
 きっと目指すべき真の強者は、彼のようなものを言うのだ。
 魔力パスを通して見る、彼の姿を描いた夢は、常に戦いの中にあった。
 魔導師でも古代の騎士ですらもない、人外の悪魔を相手取る、黄金色の騎士の戦い。
 それは常に苛烈を極め、時には傍目に見るリンネにも、絶体絶命の窮地であると、察することができるものすらもあった。

(そういう戦いを、やり抜いてきたんだ)

 そうした果てしない戦乱の中で、セイバーは命を保ち続けた。
 何度傷つき血反吐を吐いても、その都度必死に立ち上がり、勝利をその手に掴んできた。
 そういう戦いに耐えられる、強い心の持ち主なのだ――きっと、リンネが思う限りは。

「強さが羨ましい、とお前は言ったな」

 低い、男の声が響く。
 みなぎる膂力でぎらついた、赤い眼光がリンネを睨む。
 抑えた声音だ。敵意はない。それでもセイバーの発する声に、凄みを感じずにはいられない。

「私にも、力が必要だから。貴方のように戦える……勝つことができるだけの力が」

 リンネ・ベルリネッタは力を欲する。
 それもただの強さではない。誰にも負けない最強の力だ。
 弱く幼い頃の彼女は、貧しい孤児院の生活から、抜け出すことができなかった。
 自ら外の世界へと踏み出し、両足で立つことがかなわなかった。
 だからこそ、何者かからの救いの手を、待ち望むことしかできなかったのだ。

「それが聖杯にかける、お前の願いか」

 サーヴァントの問いかけに、頷く。
 リンネが置かれたこの場所は、故郷のミッドチルダではない。
 聖杯戦争――と呼ばれる、謎めいた儀式のために用意された、スノーフィールドという名の箱庭なのだそうだ。
 為すべきは、魔導師のバトルロイヤル。使い魔サーヴァントを使役し、殺し合わせる代理戦争。
 そして戦いに勝利した者は、あらゆる願いを叶えられる、願望器・聖杯が与えられる。
 リンネ・ベルリネッタが求める、絶対的な強さですらも、容易く実現するであろう、特級の奇跡の称号だった。


711 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:08:54 0BANrm1w0
「だったらお前に問わせてもらう」

 瞬間、ひゅん――と風が鳴った。
 その風の音は知っている。素早く鋭く身を切る音を、リンネは何度も聞かされている。
 しかしその感触は知らない。喉元をなぞる刃の冷たさは、競技では味わうはずもないものだった。

「お前は何のために力を求める。聖杯に願って掴んだ力で、お前は何をするつもりだ」

 真紅の鞘から抜き放たれた、英霊セイバーの長剣。
 ぎらぎらと光る細身の刃が、リンネの顎を持ち上げるように、まっすぐに突きつけられているのだ。
 返答次第ではただではすまない。
 己が意にそぐわないものであるならば、一刀のもとにその首を落とす。
 人を害する邪念であるなら、今すぐに諸共に殺してやる――生前、人を守り続けた英雄は、そう宣告していたのだった。
 一瞬前までと変わって、剣先と双眸からほとばしるものは、可視化すらされんばかりの殺意だ。
 いいやあるいはその殺気こそが、彼の手に刃の形を成して、こうして突き立てられているのか――そんな錯覚すら覚えた。

「何かを奪いたいわけではありません。必要なのは、大切なものを、誰にも奪わせないための力」

 それでもリンネは引き下がらない。
 たとえスポーツでは向けられることのない、本物の殺意と凶器があっても、それは尻込みする理由にはならない。
 暖かい家族に迎えられ、裕福に暮らせる環境があれば、それだけで幸せになれると思っていた。
 しかし、リンネはそこでも間違った。
 悪意は社会の裏だけでなく、表側にも存在したのだ。
 たとえ無自覚なものであっても、邪気をはねのけることをしなかったから、最悪の結末を迎えてしまった。
 大切に育ててくれた者を、大恩ある者を無慈悲にも裏切り、最期の別れに立ち会えなかったのだ。
 力を振るう勇気がなかったから、祖父の心を踏みにじった。
 力だけなら持っていたのに、祖父の死に目にも会えなかった。
 全てリンネ・ベルリネッタが、弱かったが故に背負った罪なのだ。

「それは競技の世界では、身につけられない強さなのか」

 セイバーは問う。それでいいのかと。
 不誠実に手に入れた力に、後ろめたさはないのかと。

「強くなれるなら何でもいい。元よりどうやって手に入れるかに、こだわるつもりはありません」

 リンネは応える。それでいいのだと。
 コーチにも恩義は感じているが、元より打ち込んでいる格闘技を、好きだと思ったことは一度もない。
 であれば、その程度の義理のために、好機を無碍にするのは下策だ。

「それはお前自身の命と、秤にかけるほどの願いなのか」

 重ねてセイバーが問う。それでいいのかと。
 命懸けの聖杯戦争に、わざわざ挑戦してまでも、得なければならない力なのかと。
 スポーツの世界とはまるで違う、殺す気の人間との戦い――負ければ本当に死ぬ戦いに、本当に値打ちはあるのかと。

「……覚悟の上です。きっと弱いままの命に、生きている意味なんてないから」

 重ねてリンネが応える。それでも、構わないのだと。
 確かに殺されることは怖い。それは壊されることよりも、きっと何百倍も恐ろしいだろう。
 しかしそれでも、挑まねばならぬと、突き動かす使命感の方が勝った。
 命が大事と逃げ出したとしても、それは望む生き様ではない。奪われ続ける弱者のままで、この先を生きていくのなら、そんな生涯は糞食らえだ。
 そうまでして可愛がるほどに、我が身に価値などないのだから。
 誰もが守らねばならないと、そう思っている自分自身こそ、他ならぬリンネ・ベルリネッタの、最も嫌悪する弱さなのだから。
 生き恥を晒す資格も、救われる資格もないからこそ、それほどに彼女は強さを求めた。
 永遠に喪われた永別を、もう一度やり直したいなどとは、きっと、死んでも願えなかった。


712 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:09:45 0BANrm1w0
「……知ったような口聞きやがって」

 舌打ちが、耳に聞こえた気がした。
 ぼそぼそとぼやいたセイバーは、それきり殺意を霧散させると、白銀の刃を引っ込めた。
 ほんの少し、息をつく。赤鞘に納刀するサーヴァントの姿に、命拾いしたという事実を確かめる。
 そうして、覚悟を決めながらも、結局命を拾ったことに、安堵している己自身を、またもリンネは恥じたのだった。

「お眼鏡にかなった、ということでしょうか」
「斬るほどの意味はないってだけだ。それでも、死なれたらさすがに寝覚めが悪い」

 だから仕事は最低限果たす。
 マスター・リンネのサーヴァントとして、身柄くらいは守ってやると、セイバーはそう約束した。

「どうも」

 ひとまずはそれで構わない。一礼し、協力に感謝する。
 並大抵の相手には、負けるなどとは思っていない。されどそれはあくまでも、人が相手だった場合の話だ。
 魔導師の理すら遥かに超えた、超越存在であるサーヴァントには、競技者ごときが敵うはずもない。
 であれば、セイバーの助力が要る。
 この憮然とした表情を浮かべる、赤髪の剣騎士の力が不可欠になるのだ。

「だがな。お前がもしもその道を、どこかで踏み外したと思ったら、俺はお前を許さない」

 故にこそ、裏切れないと思った。
 手段を選ぶ気などなかったが、それでもこの英霊にだけは、歯向かうべきでないと判断した。
 主従が逆転しているようだが、そんなことになどこだわれない。
 たとえ令呪の命令権を行使し、三度縛り付けたとしても、恐らくこの男は必ず、四度目の叛逆を試みるだろう。
 それでは勝利など夢のまた夢だ。だからこそ、受け入れるしかなかったのだ。

「魔戒騎士がホラーでなく、人に刃を向けること……その重さをよく理解しておけ」

 この炎の剣騎士の言葉を。
 魔性の力をその身に宿し、破邪の鎧を纏って戦う、魔戒の騎士たる男の意志を。
 金色の人狼。闇を狩る刃。
 伝説の狼を象った、黄金一色の甲冑に、血と誇りを通わせる英雄。
 セイバーのサーヴァント――レオン・ルイス。
 それが数百年の時の壁と、幾星霜の次元を超えて、この地に再臨した勇者の名であり。
 因果で結ばれ巡り会った、リンネ・ベルリネッタが対峙すべき、宿命に授けられた称号であった。
 そしてレオンの霊基には、もう一つの名前が刻まれている。
 過去を生きた人間ではなく、戦場を駆け抜け戦い続けた、英雄の称号はまた別にある。
 最強の守護者の証たる名前。宝具そのものの名前を、自らの呼び名としてきた英雄の証。

(それこそが――)


713 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:10:18 0BANrm1w0
















『それこそが、黄金騎士――――――ガロ!!』














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714 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:10:57 0BANrm1w0
【出展】牙狼〈GARO〉 DIVINE FLAME
【CLASS】セイバー
【真名】レオン・ルイス
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力D 耐久E 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A(生身)

筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力A 幸運C(宝具『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』発動時)
筋力A 耐久A 敏捷A++ 魔力A+ 幸運B(宝具『双烈融身(ディバイン・フレイム)』発動時)
筋力??? 耐久??? 敏捷??? 魔力??? 幸運???(宝具『■■■■(ディバイン・ブレイド)』発動時)

【クラス別スキル】
対魔力:E(B)
 魔術に対する守り。レオン自身のランクは低く、多少ダメージを軽減することしかできない。
 ただし宝具『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』には、ランクB相当の対魔力術式が施されており、
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化することができる。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
魂の聖火:A
 金色の牙は受け継ぐ血の宿命。
 力と技と志を、脈々と受け継いできた魔戒騎士の、その在り方がスキル化したものである。
 レオンが倒された時、肉体に魔力が残っていれば、それを自らの魔戒剣へ込め、マスターへ返却・譲渡することができる。
 サーヴァントの神秘性を宿した魔力は、たとえ行使者が人間であっても、サーヴァントにすら傷を負わせることができるだろう。

魔性殺し:B(A→EX)
 悪魔や怪物など、魔物に類するものに追加ダメージを与える。
 後述する宝具『双烈融身(ディバイン・フレイム)』発動時には、スキルランクがAランクに上昇。その効果は与ダメージ2倍化にまで到達する。
 更に、ある条件を達成した際には、スキルランクがEXランクにまで上昇。近距離に存在する魔物の能力値を、自動的にダウンさせる追加効果を獲得する。

魔力放出(炎):-(B)
 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 レオンの場合は、宝具『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』に宿された、魔界の炎・魔導火という形で放出することができる。
 ただし生身の状態では、このスキルを使用することはできない。


715 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:12:23 0BANrm1w0
【宝具】
『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
 ――陰我あるところホラー現れ、人を喰らう。だが、古よりホラーを狩る者達がいた。鎧を纏うその男達を、魔戒騎士という。
 魔界より姿を現す異形・ホラーから人を守るため、魔界の力で鍛え上げた、魔戒騎士と呼ばれる者たちのための甲冑である。
 レオンが身に纏う黄金騎士・ガロの鎧は、それらの中でも最高位のもの。
 太陽のごとき黄金の鎧は、退魔の炎を自在に操り、あらゆる敵を焼滅させるという。
 対魔力・魔力放出(炎)の力を有しており、宝具発動時には、これらのスキルがレオンに付与される。

『双烈融身(ディバイン・フレイム)』
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
 ガロの鎧がもう一つ、白銀の鎧と合わさることで、力を更に高めた姿。
 その身から吹き出す魔導火は、炎の翼を形成し、自在に天空を舞うと伝えられている。魔性殺しの力は更に強化され、スキルランクがAランクに上昇する。

 ……ただし宝具二つ分の魔力を、常時発動し続けることになるため、マスターにかかる負担は倍増することになる。
 この姿を成すもう一つの鎧――『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』は、本来ならば別の騎士が、その身に纏っていたはずのもの。
 そのため、レオンと同時に該当するサーヴァントが、同じ聖杯戦争に召喚されていた場合、
 そのサーヴァントの発動許可および、宝具の譲渡が認められなければ、必然この姿にもなれなくなってしまう。

『■■■■(ディバイン・ブレイド)』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
 詳細不明。使用不可能。
 レオン・ルイスとガロの鎧に、存在した記憶のみが刻み込まれている、黄金騎士・ガロの最後の姿。
 この姿に関しては不明な点も多いが、受け継がれてきた歴代ガロの魂が、一つの時代、一つの場所に、力となって結集したものと言われている。
 万が一発動に成功した場合、魔性殺しスキルはEXランクまで上昇。
 あらゆる陰我を消滅に至らせ、邪悪な力を触れずして奪う、天の煌めきを具現化するまでに至る。

 ……しかしこのことこそが、サーヴァントとしてのレオン・ルイスが、この力を発揮できない原因となっている。
 聖杯とリンクしたレオンは、英霊の座に記録された黄金騎士の人数分だけ、その力を増していくのだが、
 サーヴァントの霊基数十個分を内包した甲冑は、もはや宝具の域にすらとどまるものではなく、サーヴァントの能力限界すらも、易易と突破してしまうのである。
 一応、令呪を使用することによって、強引に発動することもできるのだが、
 その場合の霊基の総量は大幅に低下し、なおかつレオン自身も宝具の力に堪えきれず、数十分と経たず自己崩壊・死亡へと至ってしまう。

 この力を己がものとして、十全に発揮するための条件は二つ。
 一つは、英霊の座についた黄金騎士全てが、納得し力を授けるに足るだけの、正しい目的のために発動すること。
 もう一つは、あるべき権能全てを発揮し、人理そのものを守るため戦う、究極の英霊召喚の形――■■■■セイバーとして降臨していることである。


716 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:13:59 0BANrm1w0
【weapon】
・魔戒剣
 ソウルメタルと呼ばれる金属で鍛え上げられた、魔戒騎士のための長剣。
 精神力を張り巡らせることで、取り回しを可能とする性質を有している。
 このため、自覚的・直感的を問わず、使い方を把握できていない者には、持ち上げることすら叶わない。
 魂の聖火スキルによって、この剣を受け継いだマスターならば、残留魔力のサポートによって、扱うことが可能となる。

・魔導馬・ゴウテン
 馬の姿をした魔界の獣。優れた魔戒騎士に、戦場での足として与えられている。
 レオンは鎧装着時にのみ乗り回していたが、実際には生身でも呼び出すことは可能。
 悪路どころか水上すらも踏破することができ、空中以外ならだいたいの場所で活躍できる。

【人物背景】
中世ヨーロッパの時代を生き、黄金騎士として刃を振るった、ヴァリアンテ王国根付きの魔戒騎士。
今回はこのプロフィールに当てはまる、全盛期の姿で現界しているが、
この年齢に至るまでには、過酷に過ぎるほどの試練に直面しており、最も壮絶な生涯を辿った黄金騎士の一人として数えられている。

ややぶっきらぼうなところもあるが、内に秘めた正義感・使命感は本物。
マスターが正しい人間であるならば、小言を言ったりぼやくことはあっても、決して見捨てることはせず、力になってくれるだろう。

なお、上述した逸話に由来し、幸運のランクがドン引くほど低いものになってしまっている。
本来ならば、ガロの鎧による補正込みで、ようやくランクCに到達するというのは、他の騎士ではまず有り得ないことである。

【サーヴァントとしての願い】
挙げればキリがないだろうが、それらを願うことはしない。マスターのために行動する。

【基本戦術、方針、運用法】
飛び道具としても使える魔導火は、魔力放出スキルによって支えられているもの。
このため近接戦闘がメインになるのだが、魔導馬の存在もあるため、多少の長距離攻撃にも対応することはできる。
常に宝具を用いていなければ、まともに戦えないサーヴァントであるため、燃費はよろしくないのだが、
そこさえクリアすることができれば、十分に優秀な戦果を上げてくれることだろう。
最終宝具の発動は、聖杯戦争脱落にすら直結するため、ほとんどフレーバーテキストのようなものなのだが……


717 : 決死 -Vivid Strike- ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:15:10 0BANrm1w0
【出展】ViVid Strike!
【マスター】リンネ・ベルリネッタ

【参戦方法】
 ウィンターカップ開催直前。自宅の荷物の中に、白紙のカードがあった

【人物背景】
 地球とは異なる異世界・ミッドチルダの、大手ファッションメーカーの社長令嬢。13歳。
 自身は華やかな舞台ではなく、荒々しい格闘技の世界において、トップランカーの称号を勝ち取った女傑である。

 実は両親との間に血縁関係はなく、元は孤児院から拾われてきた養子であった。
 元々は現在のような修羅としてでなく、平穏な人生を送ろうとしていたが、
 ある時人生を一変させる悲劇が起き、盲目に力を求めるようになってしまったという。

 分をわきまえない弱者が嫌い。自分の大切なものを奪おうとするから。
 人に弱さを見せるのが嫌い。奪われないという安堵を保てなくなるから。
 そして彼女は何よりも、それらを恐れ震えている、弱くて罪深い自分自身が、世界で一番嫌いなのだった。

【weapon】
・スクーデリア
 魔術の行使をサポートする、競技用ストレージデバイス。普段はアクセサリーの形状を取っている。
 セットアップ時には防護服・バリアジャケットと一体化。武器としてでなく、サポーターとしての機能に専念している。

【能力・技能】
・魔導師
 体内のエネルギー結晶体・リンカーコアの魔力を行使し、奇跡を具現化する魔術師の称号。
 リンネの住む世界においては、魔法も魔術も区別なく、この呼び名で表現されている。
 格闘競技者であるリンネは、身体強化のために使うのがほとんどだが、
 魔法攻撃が解禁されるルールにおいては、遠距離砲撃などもこなすことができる。

・魔法格闘術
 魔法による身体強化を前提とした格闘技。スタイルはトータルファイティングを基礎とする。
 距離を詰めての投げ技や、拳による直接打撃が得意。
 特筆すべきはその筋力であり、魔力のブーストを受けた拳は、堅牢なガードの上からであっても、確実に標的を葬り去ることができる。
 唯一敗北を喫した、持久戦を想定した訓練も施されているため、ガードやタフネスも盤石。

・強化変身
 肉体を大人のものへと成長させ、筋力とリーチを補強する魔法。
 リンネはデバイスのセットアップと同時に、6つほど年上の姿へと成長する。

【マスターとしての願い】
 誰にも何も奪われない強さ、自分を納得させるだけの強さが欲しい。悲劇そのものを無かったことにする資格は、きっと自分の手にはない

【方針】
 最低限、レオンの機嫌は損ねない。マスターは殺害までには追い込まず、あくまでもサーヴァントの撃破を優先する。


718 : ◆Vj6e1anjAc :2016/12/08(木) 03:15:50 0BANrm1w0
投下は以上です


719 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:38:23 OgMbFTrU0
投下します。


720 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:38:40 OgMbFTrU0
スノーフィールドのホテル、クリスタル・ヒル。
此処ら一の高級ホテルの名を欲しいがままににしているこのホテルに、ある珍しいゲストが現れた。
そのゲストが現れるのは、クリスタル・ヒルにある、とあるステージだった。

其処のステージは、何処か真っ黒な印象を受ける。
しかし上にあるのは豪華なシャンデリア。
観客席には、テーブル掛けを敷かれた丸いテーブルが沢山置かれており、椅子には沢山の人々が座っている。
皆皆、ワクワクとした表情を浮かべ、ゲストの到来を待ち望んでいるのだ。

そしてスポットライトが朱く光り、ステージに現れた一人の少女に当てる。
少女の姿は、まるで人形のように見えた。
金魚のような露出度の高い衣装。
それによって曝け出された、きれいな白い肌。
ルビーのように輝く赤い瞳。
幻想的な輝きを見せる銀髪。
とても人としては珍しく、美しい容姿に、多くの観客が釘付けになる。

少女がマイクを取り、バックステージのプロジェクターが光る。
ステージに投影されたのは、線のような幻想的な映像。
彼女の曲を流している、PVの映像だ。
そしてそれをバックに、少女は歌い始める。

その歌は英語では無く、日本語であった。
何せ、彼女は日本のアーティストだ。
そうともなれば、歌詞も自国の言語となるのは必然だろう。
しかし、少女の華やかな歌声は、儚げな伴奏と併せて、言語を超えた神秘性を流していた。
既に、この場にいる殆どの人間が、その歌声に、その美しさに魅入られている。

ステージにいる全ての人々を魅了する、神秘的な歌姫の名は「エゴイスト」。
世界中で注目を浴びている、ネットアイドルなのである。


◆  ◆  ◆



コンサートが終わり、エゴイスト―楪いのりは、自室にホッと座り込んだ。
いのりが与えられた個室は、最上階に有るロイヤルスイート。
この通り、辺り一面がガラスで仕切られており、辺り一面の街が、見渡せるように作られている。
しかしいのりは、この街にいるべき人間ではない。
聖杯戦争のマスターとして、此処に呼ばれた存在なのである。

―やっぱり、あの時拾ったカードが……

いのりがこの世界に来た切っ掛けは、やはり、一枚のカードだった。
あの時、涯が行方を晦まして一週間が立った頃。
いのりが、集達と一緒に天王洲高校へと避難していた時のことだった。

偶然にも拾った、一枚のカード。
それを見て、集や涯のことをふと考えていた瞬間に、意識が途切れてしまった。
結果、いのりはムーンセルに飛ばされ、記憶を取り戻し、今に至る。

―これが、アメリカ。

いのりが渡米したのは、しかし初めてのことだった。
無論存在自体は把握している。
そもそも、いのりがいた世界において蔓延していた病原体「アポカリプスウイルス」の症状を抑えるワクチンを作れるのが、唯一アメリカだったからだ。
実際に、アメリカの人間と涯が電話越しに話しているのを聞いている。
間接的では有るが、いのりにとってアメリカとはそこまで縁が無い訳ではないのかもしれない。

いのりが与えられたロールとは、「アメリカでライブを行っているネットアイドル」と言った物だった。
しかし、いのりがこの様な形で歌を歌うのは、比較的懐かしい気がしなくもない。
これまでは、涯が指揮する「葬儀社」の宣伝として歌ってきていた。
だが歌をネットで流す余裕は、気がつけば無くなり、そして今では、涯は姿を消し葬儀社は影も形もなくなっていた。
そして1週間程学校で燻っていたとなれば、歌う機会など長いこと無かった事だった。
いのりがこのような金持ちの部屋で寝ていられるのも、恐らくはエゴイストの人気のお陰なのであろう。

不意に、いのりの頭を何かが劈く。

―キィィィィィン、キィィィィィン―

まるでノイズのような何かだった。
しかしいのりは、その元を知っていた。

「いるの、アヴェンジャー。」

その言葉に反応し、いのりの部屋を覆うガラスの世界が一変する。
ガラスの世界に現れたのは、一人の影。
まるで竜のような甲冑を全身に身に纏ったそれは、何も言わず、只ガラスの世界を彷徨く。
天井を、右側の壁を、左側の壁を、そして床を。
まるでいのりを錯乱でもさせるかのように、影は透明の壁の中を廻る。
彼こそが「アヴェンジャー」。
いのりが召喚したサーヴァントである。


721 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:39:04 OgMbFTrU0

「どうしたの。」

無表情に、されど訝しげな眼差しで、眼の前の壁に突っ立っているアヴェンジャーにいのりは問いかける。

「ドラグブラッカーに餌を食わせた……十人ほどな。」
「餌…また食べたの、人を。」

人を殺す。
そんな真似事を、いのりは散々やらされてきた。
銃を撃てば、人は死ぬ。
人が死ねば、任務は成功する。
任務は成功すれば、涯は自分を認めてくれる。
只それだけのために、只そのために、いのりは人を殺し続けてきた。
だが彼は、涯とは何処か違っている。
人を殺すことが、楽しいかのように感じられる。
嘗て葬儀社にいた研二やツグミも、此処までは笑みは浮かべていなかった。
いのりからしてみても、本当に、本当に、このアヴェンジャーは変わっている。

「何を言っているんだ、モンスターが食えば、俺の力は強くなる。そして俺の力が高まれば、聖杯への道は近づく。
そうすれば―集や涯を救えるかもしれないんだぞ?」

掌をぱっと開き、見透かすような口調でアヴェンジャーはいのりの問いに答える。
しかし、いのりは淡々とした口調で答える。

「アヴェンジャー、もうやめて。」
「何を言っているんだ?」
「やめて、そんなこと、集が望むはずない。」

いのりが知る桜満集は、優しい人間だ。
人の心を分かち合い、過ちを認めてくれる。
所謂「オヒトヨシ」と言う言葉を体現したかのような人間、それが桜満集だ。
そしてそんな人間が、数多くの血で塗れた宝を、果たして受け止めてくれるのだろうか。

―否だ。
涯のやり方を認められなかった優しい集に、そんなこと出来るはずもない。
自分は、集の為に全てを捧げると決めた。
例え誰かが彼のことを嘘つきだと呼んでも。
心のない言葉で傷つけようとしても。
世界が彼のことを信じようとしなくても。
自分だけは、集の味方でいようと。
そう、決めたのだから。

「……馬鹿めが。」

アヴェンジャーはそう吐き捨て、姿を消した。
鏡の部屋は、再び静まり返った。



◆  ◆  ◆


722 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:40:14 OgMbFTrU0


全ては、自分の影と対面した時から始まった。

―俺を受け入れろ―

影がある時、己の身体を飲み込んでしまったときなのだろうか。
その時から、もう一人の自分との戦いが始まった。

もう一人の自分は、闘うことに飢えていた。
最強のライダーを目指していた。
故に、影はライダーと出会う度に、己を飲み込まんとしてきた。
特に―そうだ、あの連続殺人犯と出会ったときには、良く乗っ取られた物だった。
何せ彼等は本当にに気が合う、自分からしてみても、周りから見ても、そう思えた。

変身しようとする度に、あの黒いデッキを強引に翳されて変身してしまうなど、これまで何回あったのだろう。
今となっては数える気にもならないが、日に日にその回数が多くなっていくのが、自分でも自然とわかってきていた。

―お前、本当に城戸か?―
―ねえ、貴方本当に私達の知る真司君よね?―

一番最初に出会ったライダーとは、同じ部屋で寝泊まりをしていた仲だったが、最近良く睨まれるようになった。
いや、最初に会った頃の時点で、良く枕を投げつけられたりしたものだったが。
最近ではそんなことも比較的少なくなってきた方なのだが、しかし、その目つきはおかしかった。
まるで、彼が敵の戦士と対面する時とほぼ変わらない様な目だった。
自分にデッキを返してくれた少女とも最近は仲良くなった方なのだが、やはりあの戦士と同様、自分に対する目が可笑しくなって来ていた。

まるで、自分が自分でなくなっていく気がしてきた。
朝、歯を磨きに鏡を覗けば、其処で対面するのは必ず彼。
デッキを翳せば、彼とは必ず心で争い合う。
気がつけば、最早自分は彼を抑えきれなくなってきていた。
そして最後に黒いデッキをベルトに装填した時には、自分の意識は完全に遠のいた。

――――――


漸く、影の自分から逃れようとした時、待っていたのは恐ろしい光景だった。
自分が眼にした場所は、最後に変身した場所などではなく、とある古びた屋敷。
其処には鏡が無数に散らばっており、あの時受け取ったカードの力でパワーアップした自分を黒く染めた姿が、其処に写っていた。
辺りに散らばっているのは、ミラーモンスターの残骸。
どれもこれも、これまで自分が倒してきたモンスターだった。
中には、他のライダーと契約していたモンスターたちまでもが。
それらの遺骸を、赤い竜と黒い龍が、ムシャムシャと貪り食っている。

バイザーを持っていない方の右手に、何かぬるっとした感触が感じられる。
恐る恐る、眼を向けてみる。
其処にあったのは、一個の生首。
されど、その顔は己がよく知っている顔だった。

『結衣……ちゃん……!?』

そうだ。
自分の内なる影は、彼女を殺したのだった。
己が眠っている間に彼が、何をやったかまでは知らないが、間違いなく、彼のやったことだった。

『嘘……だろ……。』

右手の力が抜け、彼女の首が、床にドサリと落ちる。
それと同時に、自分もまたドサリとヘタレ込む。
この時、最早己は、自分のやったことから眼を背けたくなった。
背けるべきではないことは分かっているし、背けたくもない。
なのに……どうしても……

『うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

自分のやったことだというのが、認められない。
その現実から背けたくなる気持が、絶えず絶えず、声となって放出されていく。
仮面を被ったまま自分は頭を抱え、そのまま叫び続けるが―

『成る程、お前が、最後に残ったライダーか、リュウガ。』

不意に、後ろから声が響き渡る。
その言葉に反応し、叫ぶのをやめる。
後ろを振り返れば、其処にいるのは、黄金のライダー。
何時しか、ライダー同士の戦いで目撃したことの有る、金色の羽男。

『俺が……最後の……。』
『そうだ、貴様は先程ナイトを串刺しにした、最後のライダーは、お前だ。』
『お、俺が……蓮を……?』

嘘だ。
結衣ばかりでなく、蓮までも?
何で、何でこんな事に?

『俺が……結衣ちゃんを……蓮を……!?』


723 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:40:41 OgMbFTrU0

最早、己はどうすれば良いのか、分からなかった。
それまで必死に身体の主導権を握り返そうとしたのに、気がつけばそんな余力も無くなり―

(そうだ……俺を受け入れろ……さあ、彼奴を倒せば、全てが無に帰る!願いは叶うんだぞ!)

動く術さえ失った己の身体を、影は勝手に動かしていく。
左手に残った剣を手に取り、金色の羽に向かい斬りかかる。
影が金色の羽に剣を振りかざした瞬間―金色は消えた。

ふと振り返れば、やはり金色は後ろにいた。
しかし金色は、既に杖にカードを入れている。

『少し修正が必要だな。』
『TIME VENT』

それが、城戸真司の見た、最後の光景であった。



◆  ◆  ◆


「ハァ、ハァ、ハァ、クソッ……。」

夜の路地裏。
辺り一面は静まり返り、其処に有るのは暗闇のみ。
しかし、その中でサーヴァント同士の戦いが繰り広げられていた。

セイバーとアヴェンジャーの戦いは、今はアヴェンジャーが有利になっている。
黒龍の使い魔を手繰り、恐るべき戦闘力を誇るアヴェンジャー。
その力の前にセイバーは為す術もなくねじ伏せられ、今こうして、倒されるのを待っている。

一方で、勝利が後一歩という所まで近づいているアヴェンジャーは、既にベルトからカードを取り出している。
其処に刻まれている文字は「FINAL VENT」。
ライダーの必殺技となるカード、これを使えば、今こうして動くのが難しくなっているセイバー等、一撃で倒せるはずだ。
アヴェンジャーの周りを回っている黒龍…ドラグブラッカーは、今にでも喰らいついてきそうなほどに歯軋りをする。

しかし、異変は起きた。

「うっ…!あああ、ああああああ!!やめろ、また俺の邪魔をするつもりなのか!?」

不意に、アヴェンジャーが錯乱を始めた。
その姿に、セイバーは驚く。
まるで自分という殻から抜け出す何かを抑えるかのように。
漆黒の鎧戦士は悶ている。
同時に近くの窓ガラスから、不意に何かが抜け出てくる。
抜け出てきたのは、アヴェンジャーの操っている龍の同種、しかし色は赤。
鏡から抜け出てきた紅き龍…ドラグレッダーは、ドラグブラッカーに巻き付き、取り押さえようとする。
ドラグレッダーに巻かれたドラグブラッカーは藻掻こうとするが、一向に抜け出せない。

(何なんだこれは……しかし、これはチャンスだ)

最早、今のセイバーに闘う余力は残されていない。
命あっての物種だ、此処は退却しよう。
そう考え、セイバーは霊体化し、この場から離脱する。

一方のアヴェンジャーは苦悶する中で、一枚のデッキを取り出す。
そしてバックルに有るデッキを取り外し、もう片方のデッキを装填する。

「やめろぉぉぉぉぉ!!」

その叫びとともに、アヴェンジャーの周りに鏡像のごときエネルギー体が出現。
それらはアヴェンジャーを覆い、アヴェンジャーは漆黒の騎士から真紅の騎士へと姿を変える。
それと同時にドラグレッダーはドラグブラッカーを螺旋状に巻きつけ、鏡へとダイブし姿を消す。

「ハァ、ハァ、ハァ……。」

真紅の騎士―城戸真司は、漸く自我を取り戻した事への安堵から息を切らす。
残った自我でデッキを剥がし、自身のデッキを装填する。
ある時直感的に行った行為だったが、今ではこうして役に立ってはいる。
自分の体を取り戻したことを確認した真司はミラーワールドの外へと出る。
外へと出た瞬間に、ライダーの変身は解除され、真司は人間としての姿を取り戻す。


「ふざけるなよ……。」

一言呟き、真司は近くにある壁に寄っかかる。
己の内なる影は、闘うことを望んでいる。
だから人を殺した、だから人を殺めた。
しかし、真司はそんな事を望んじゃいない。

「何でいつも、皆願いなんかの為に殺し合わなければならないんだよ……。」

聖杯戦争の記憶は、サーヴァントたる真司には既に刻み込まれてある。
マスターとサーヴァントが、願いを叶えるために殺し合う。
―まるでライダーバトルと同じじゃないか。
そう、願いを賭けたバトルロワイヤルと言う物を、既に真司は経験している。
痛いほどに、辛いほどに、苦しいほどに、自我さえ砕けてしまいそうな程に。
だから、真司は現界したのだ。
戦いを、止めるために。


724 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:41:00 OgMbFTrU0

「そろそろ、帰るか、マスターの元に。」

真司のマスターの名は、分かっちゃいない。
だが、何となく家と顔だけは覚えている。
以前から何度も内なる影に抗って肉体の主導権を取り戻せば、何時しかそんなことも分かってくる。
それよりも、まずはマスターを守らなければならない。
その為に己は現界を果たしたのだから。
そう考え、壁に寄っかかっていた手を離し、全身のバランスを整え歩き出した、その時だった。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

不意に、悲痛な叫び声が響き渡ってくる。
モンスターに遭遇する際、真司が何度も聞いた声だった。
それを聞いた瞬間、真司は考えるより身体が先に動いていた。
声が聴こえる方向に向かって、足を動かす。

後ろにある曲がり角に、真司は入り込む。
ミラーワールドのノイズが聞こえない以上、何処にいるのかは分かりづらいが、それでもやるしかない。
サーヴァントの気配も無いが、それでも放っておく訳には行かない。
そう考えながらも、真司は人気のない路地裏を走る。

建物が並び立つ真っ直ぐな道を走る。
ふと、建物と建物との間に隙間が出来ている。
恐らくは曲がり角なのだろう。
そう考え、真司は其処で立ち止まる。
しかし、其処で眼にしたのは、真司には信じられない様な光景だった。

一歩近づいてみると、一人の人間の影が何となく見えてくる。
二歩近づいてみると、それが後ろ姿だと言うことが分かる。
三歩近づいてみると、髪が長い事から、女だという事が分かる。
そして四歩近づいてみれば―

「あら?」
「やべ……って……え?」

自分の気配に気づき、振り向いた女は、真司の知っている顔だった。

「マス……ター?」

彼女は紛れもなく、アヴェンジャーのサーヴァント、城戸真司のマスターであった。
しかし、その雰囲気が何時もと違うという事は、真司にも分かってはいた。

「あら、どうしたの?アヴェンジャー、何時と違って、可愛らしい顔をしているわねぇ。まるで集そっくり、フフフ。」
「どう言う事なんだよ……一体……。」

確かに、顔は同じだ。
しかし表情は別人だ。
真司の知る所では、マスターは何時も無表情だった。
だが今では、笑っている。
嘗て出会った霧島美穂にも劣らぬ、その艶やかな笑顔で。


楪いのりは知らない。
自分の人格が、やがて役目を終えようとしていることを。
楪いのりは知らない。
自分のサーヴァントが、本当は心優しい性格であることを。


イヴの再生を求めて生まれた、もう一人の自分。
鏡の少女との触れ合いで生まれた、鏡の中の幻。

一人のハイドはジキルを憎み、もう一人のジキルはハイドを怖れた。
二組のジキルとハイドの物語は、此処から始まる。


725 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:41:23 OgMbFTrU0





【クラス名】アヴェンジャー
【出典】劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL
【性別】男
【真名】城戸真司
【属性】混沌・悪/中立・善
【パラメータ】筋力B+ 耐久B+ 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A+(リュウガ変身時)


【クラス別スキル】

復讐者:B
秩序無き英雄。
攻撃を受ける度に魔力を回復させる。

忘却補正:A
忘れ去られた鏡の中の幻。
正規の英雄に対して与えるダメージを加算させる。


自己回復(魔力):B
英雄の写し鏡たる彼は、鏡から目を背けるまで存在し続ける。
これがあれば、魔力の少ないマスターでも現界を維持できる。


【固有スキル】


勇猛:-(B+)
威圧、混乱、幻惑などの精神攻撃を跳ね除ける。
また、格闘ダメージを増強させる効果もある。
リュウガ変身時には発動できなくなる。


戦闘続行:C
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。


騎乗:A++
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並みに乗りこなすが、彼は竜種を迎えているため、これ程のスキルとなっている。


表裏一体:-
彼等は二人で一つ。
龍騎とリュウガの人格が同居している。
バーサーカーのクラスで呼ばれた今では、有利な支配権を持つはリュウガである。
しかし、本当の真司の意志は未だ飲み込まれておらず、しぶとく抵抗している。
その影響で、龍騎のデッキからはカードが取り出せず、アサシンはドラグレッダーやサバイブが操れない。


鏡界存在:B(-)
鏡の世界、ミラーワールドの存在。
鏡の中で行動する。
基本的に外の世界には約10分しか出られない。
ただし、龍騎に飲み込まれた場合は発動が出来なくなり、代わりにミラーワールドに入り込める時間が10分に制限される。


726 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:41:47 OgMbFTrU0


【宝具】

「黒き鏡像の龍騎士/紅き爆炎の龍騎士(ミラーライダー)」

ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1

ミラーモンスターと契約して戦う「仮面ライダー」の力。
13人のライダーを殺し合わせる「ライダーバトル」の参加証。
一つの命を形作るために生み出された13の生け贄の印。
アヴェンジャーが発動する際には「黒き鏡像の龍騎士」となり、リュウガのカードデッキを使って変身することが可能となる。
ただし、稀に城戸真司の意識が戻った時には、龍騎のデッキを強制的に装填することで龍騎に変身、「紅き爆炎の龍騎士」に真名が変わる。
アドベントカードを使った戦闘が得意で、鏡の世界「ミラーワールド」へと入り込める。
また、龍騎のデッキにはもう一つの宝具と、強力なサバイブカードが入っているのだが、真司が押さえ込んでいるために使えない。


「赤龍の幻は黒き邪龍(ドラグブラッカー)」

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:100人

鏡の中から現れる黒竜。
リュウガが契約したミラーモンスターだが、「分身」という可能性もある。
契約のカードをブラックドラグバイザーに装填することで召喚する。
また、「FINAL VENT」のカードを装填することで、合体技「ドラゴンライダーキック」が使用できる。
また、これはアヴェンジャーの力の源でもあり、このドラグブラッカーが消えればアヴェンジャーの力は激減する。


「豪炎を吐き天を駆ける無双龍(ドラグレッダー)」

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:100人

龍騎が契約したミラーモンスター。
朱い蛟龍の様な姿をした竜で、火を吐いて攻撃する。
戦闘力はミラーモンスターの中でも指折りで、■■■■が早い内に絵にしたモンスターでも有る。
ドラグブラッカーと同様に龍騎の力の源であり、ドラグレッダーがやられれば龍騎のデッキは使い物にならなくなる。
サバイブカードを使えば「ドラグランザー」へと姿を変え、更なる戦闘力を手にするだろう。



【人物背景】

城戸真司はある日、鏡の世界へと迷いこんでしまう。
仮面ライダーとなった真司は、ライダーバトルへと巻き込まれる中で、闘うことをただ拒み続けた。
しかし真司の前に現れたのは、鏡写しの姿を持つもう一人の己。
「リュウガ」と名乗った彼により、真司の肉体は融合されてしまう。
本物になろうとしたリュウガは、何時しか真司を飲み込んでいく。
真司はそれでも藻掻き続けるが、リュウガの肉体への支配力は何時しか己を凌駕していき―
城戸真司は、同じ屋根の下で暮らしたもの達を、惨殺した。

―お絵かきの時間は、まだまだこれから。

【聖杯にかける願い】

最強のライダーとなる/戦いを止める。


727 : 楪いのり&アヴェンジャー ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:42:18 OgMbFTrU0



【マスター名】楪いのり
【出典】ギルティクラウン
【性別】女


【能力・技能】


・戦闘技術
其処らの文化系男子なんて軽々いなせるほどの身体能力。
銃だって楽々扱える。


・歌唱力
ネットで有名になっているほどの歌の巧さ。


・二重人格
彼女には桜満真名の意識が同居している。
ウイルスにその意志を蝕まれた彼女は、何時殺人を犯すか、知れたものではない。
因みに真名は何気にずる賢い性格で、銃が暴発するように細工を仕掛けトリトンに大怪我を負わせたりしている。



【人物背景】


大人気ネットアイドル「EGOIST」として有名になっている。
しかしその裏ではテロリスト集団「葬儀社」のメンバーとして動いている。
リーダーの恙神涯に懐いており、彼に受け入れてもらうために戦うことを決めていた。
しかし桜満集と言う少年との出会いで、彼女の運命は変わっていく。
集がいのりを想う内に、いのりは何時しか集に惹かれていく。
そして彼女は最期まで集に寄り添うことを決意するが―

テレビ本編12話(小説版2巻)よりも後からの参戦。

無口で無表情だが、根は純粋無垢。


【聖杯にかける願い】

集に会いたい。


【方針】

脱出優先/参戦派


728 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 03:42:42 OgMbFTrU0
投下を終了します。


729 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/08(木) 04:06:28 OgMbFTrU0
すいません、スキル「表裏一体」を此方に変更して下さい。
表裏一体:-
彼等は二人で一つ。
龍騎とリュウガの人格が同居している。
アヴェンジャーのクラスで呼ばれた今では、有利な支配権を持つはリュウガである。
しかし、本当の真司の意志は未だ飲み込まれておらず、しぶとく抵抗している。
その影響で、龍騎のデッキからはカードが取り出せず、アヴェンジャーはドラグレッダーやサバイブが操れない。


730 : 森の音楽家クラムベリー&バーサーカー ◆iwVqxDO6jU :2016/12/08(木) 20:45:34 nya7K1FA0
投下します


731 : 戦く狂戦士 ◆iwVqxDO6jU :2016/12/08(木) 20:47:36 nya7K1FA0

 
 森の音楽家クラムベリーは強者を求めている。 

「はぁ……期待外れですね」

 偽ることのない落胆した言葉。それが、聖杯戦争における初戦闘においてクラムベリーの感じた感想だった。  
 敵はアサシン陣営。マスターは名家の魔術師であり、サーヴァントもマスター殺しに長けたクラス。  
 通常なら真っ向から勝負を仕掛けるのは愚策と言っていい主従だ。
 ただ強者を求めるクラムベリーの思考は異なる。
 避けるべき戦闘を自ら彼ら引き起こし、そして勝利した。
 
 魔術師と聞いて期待していたが、残念ながら実力はそう強くはなかった。魔術を扱うとはいっても所詮人間。
 魔法少女の中でも生粋の武闘派であるクラムベリーが求めるレベルには達していなかった。
 魔術とやらも確かに興味深かったが、彼女の魔法『音を自由自在に操ることができるよ』の方が応用力に長けている。
 つまるところ、この魔術師は運がなかったのだ。

「そちらはどうでしたか? バーサーカー」

 クラムベリーの問いかけに応じ、ぬっ、と巨大な影が暗がりから姿を表す。
 住民族風の衣装と、鋭利な四つ又の大槍を軽々と片手で操る大男。
 3つのレンズ状の覗き穴が付いた異形の仮面が、じっとクラムベリーを見つめていた。
 狂戦士……バーサーカー。クラムベリーの僕にして、彼女と同じ戦闘狂でもある。  
 バーサーカーは首をかしげると、ポツリと仮面の下で口を開いた。

「アサシン、少しだけ楽しめた。でも脆かった。残念」

 マスターと同じく、バーサーカーも不完全燃焼な様子だ。もっとも、狂化の恩恵もあるとはいえ、基礎ステータスが高い彼と真っ正面から殺し合える相手など、それこそ三騎士のクラスくらいだろう。

「貴方もですか……。お互い、苦労しますね」

 クラムベリーはバーサーカーが嫌いではなかった。むしろ、どちらかと言えば好ましい部類にはいる。
 自身と同じく戦いを求める姿勢は非常に好感を持てるし、何より強い。
 他にそそられる主従が居ないのであれば、彼と殺し合うのも一興と考えるほどに。
 召喚した直後に試しにと戦ってみたが、バーサーカーは尋常じゃない耐久と剛力により、百戦錬磨のクラムベリーにしても侮れない実力を示した。

「大丈夫。まだ獲物、沢山居る。遊べない。ない」 

 それはバーサーカーにも言えることで、彼もまた好戦的なマスターを認めている。
 生身で自身と打ち合える相手など、そう多くは居ない。まして女なら尚更である。
 人間ではなく魔法少女とやららしいが、それを差し引いても文句なく実力者だ。
 殺しという名の狩りを楽しむために召喚に応じた身としては、当分は他の主従で我慢するにしても、一通り遊び終わったら、最後には是非とも遊びではなく全力で狩りたい相手だ。

「えぇ、折角の聖杯"戦争"なのですから、早く強者と出会いたいものです」

 マスターとしては異例なことだが、クラムベリーは聖杯自体にはあまり興味はない。
 参加資格である白紙のトランプにしたって、てっきり相棒の使い魔が試験のために用意した魔法の道具かと勘違いし手にしたにすぎない。
 ただ、クラムベリーはまだ見ぬサーヴァントやそのマスターとの戦闘を目的としていた。
 ある意味、"強者と殺し合いたい"というのが彼女の願いかもしれない。

「狩り、楽しい。お前、面白い」

「誉め言葉として受け取っておきましょう」

 魔法少女は闘争を、狂戦士は殺戮を。
 性別、能力、境遇、外見、それぞれ全く異なる両者の利害は、最悪なことに一致していた。


732 : 戦く狂戦士 ◆iwVqxDO6jU :2016/12/08(木) 20:50:03 nya7K1FA0

【CLASS】バーサーカー
【真名】門都@烈火の炎
【マスター】森の音楽家クラムベリー
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具B+

【クラススキル】

狂化:D
 狂戦士のクラススキル。
 筋力と耐久をランクアップさせるが、言語能力が単純化し、
 複雑な思考ができなくなる……のだが、元より理性が薄いため、あまり変わっていない。

【固有スキル】

加虐体質:A
 戦闘において、自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
 プラススキルのように思われがちだが、これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、
 普段の冷静さを失ってしまう。
 攻めれば攻めるほど強くなるが、反面、防御力が低下してしまう。

心眼(偽):C
 直感・第六感による危険感知

戦闘続行:A+
 名称通り戦闘を続行するための能力。
 ランクA+なら、霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
 「往生際の悪さ」とも称される

【宝具】
『無名と開講』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:20 最大捕捉:10
 生前に使っていた魔道具。核だけの魔道具「無名」と大型の手甲状の魔道具「門構」のふたつでひとつの宝具。
 それぞれ単体では意味がないが、両方合わせると力を発揮する。
 門構に無名をはめ込むことにより、「門構えの漢字」に象徴される意味、現象を発生させる(闇→周囲が暗闇に、聞→感知能力の強化、開・閉→門を出現させて相手を閉じ込める、閃→光を発生させるなど)バーサーカーらしからぬトリッキーな宝具。

【weapon】
鋭利な四つ又の大槍

【人物背景】
 暗殺集団「裏麗」の首領「死四天」の一人にして、裏麗最強とされる人物。
 先住民族風の衣装と鋭利な四つ又の大槍を軽々と片手で操る大男。
 性格は残忍でクレイジー。
 殺人を「狩り」と称し、殺人を楽しむだけに戦う戦闘狂。

【サーヴァントとしての願い】
殺す。楽しい。ヒャヒャハハハハハ!!


【出展】魔法少女育成計画
【マスター】森の音楽家クラムベリー
【人物背景】
 人間としての生活を捨て、森の中で世捨て人のような生活をしている魔法少女。
 ファンタジー作品のエルフのような外見をしており、基本的に変身後は十代の少女の姿となる魔法少女としては珍しく、外見年齢は20歳ぐらいと高い。
 全身に薔薇を纏っており、彼女と出会ったことのある魔法少女の中には薔薇を見るだけで彼女を連想する者もいるほど。
 また、物語途中で判明するが、線の細い印象に反して身体能力は魔法少女基準でも恐ろしく高い。
 性格は一見物静かでマイペース。
 滅多に動揺することがなく、自分の精神の高揚を恋心に喩えるなど独特の感性の持ち主である。
 過去のとある事件により精神のタガが外れており、己の充足を何よりも優先し他者に斟酌しないタイプ。
 魔法少女育成計画シリーズにおいては一貫して重要なポジションにいる魔法少女であり、本人が直接登場しない話でも間接的に言及されることが少なくない。

【能力・技能】

『魔法少女』
 魔法の国から与えられた力。魔法少女『森の音楽家クラムベリー』に変身できる。
 魔法少女時は身体能力や五感や精神が強化され、容姿や服装も固有のものに変化する。
 通常の毒物は効かず、食事や睡眠も必要としない。 通常は気絶などで意識を失えば変身状態は解除されるが、彼女は人間としての顔を捨てているため、常時変身状態が維持される。

『音を自由自在に操ることができるよ』
 音を自在に変化させられる魔法を操る。
 音を任意の方向から発生する、音を声のように変調する、音量を爆音にして衝撃波として放つことが出来る。
 また、この魔法の影響によって森の音楽家クラムベリーの聴力は非常に強化されている。

【マスターとしての願い】
 聖杯への興味は無いが、強い参加者と戦いたい。


733 : 戦く狂戦士 ◆iwVqxDO6jU :2016/12/08(木) 20:58:54 nya7K1FA0
投下終了です


734 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/09(金) 15:46:16 /8wUZ9Eo0
皆さま投下乙です。私も投下させていただきます。


735 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/09(金) 15:46:50 /8wUZ9Eo0
聖杯戦争。サーヴァント。マスター。
通常ルールでは七騎のサーヴァントとクラスで行われる戦争兼魔術師による儀式の一つ。
不運、不幸、不遇な事に僕は魔術師でもない、かと言って実は魔法の才や優れた魔力を持ち合わせていたオチもない。
ごくごく一般人の癖して聖杯戦争に巻き込まれてしまったらしい。
オカルト知識が皆無である僕でさえ、さぞ重要な戦争もとい儀式なのだと理解できるのに。
どういう訳か『白紙のトランプ』を通じてマスター候補を選出したと言う。
だったら尚更。
トランプを通じて魔力や人柄を感知する機能が備わっているべきなのではないだろうか?
ところが、一体全体経緯が全く不明にも関わらず、トランプに触れてしまった僕は聖杯戦争のマスターとなり。
あげくにはサーヴァントを召喚してしまった訳である。


この僕―――隠館厄介は単純に説明してしまうと冤罪体質者だ。


幼い頃から、あらぬ疑い・事件の犯人として、何故か真っ先に疑われ、晒し上げられ、社会人となっても不祥事の責任でクビにされ
いや、それはまだいい。(正直よくはない)社員の大半が消息不明となり、会社そのものが消滅。あげく重要参考人として事情聴取。
公安警察が僕を常にマーク……監視下に置いている噂まで聞く。ここまでくると申し訳なさを感じてしまう。
僕は特殊能力で冤罪体質を作っている訳じゃないし。
最早十万回以上疑いをかけられ続けているからには、そういう星の元で生まれてしまったと割り切っていた。
どうしようもないのだ。諦めるしかなかった。

だけど。

聖杯戦争とやらは、非常に不味い。
何もかもが不味い。
言うならば、他のマスターやサーヴァントが起こした事件が絶対僕のせいにされるし。
誰か知らない主従が脱落されれば、それもきっと僕のせいに……

悪循環が凄まじい。
しかし、聖杯戦争は待ってくれない。
僕に出来る最低限のことは、ただ黙って生き残るぐらいしかないだろう。
何を弁解したところで、ここには僕の無実を晴らしてくれる探偵なんて存在しないのだから。

なるべく穏便に暮らそうとしても、それすら困難なのに。
一体どうすればいいのだろう。
途方に暮れる僕を、ボロアパートに部類する自宅で出迎えてくれたのは僕が召喚してしまったサーヴァント・ランサーだ。

サーヴァントは歴史の偉人だったり、過去の戦士とか。
現代社会とは想像を絶する別世界で生きた人間だったりする、らしいが。
僕が召喚したランサーは、ビックリするほど普通の人間だ。
普通というのは人間っぽさが強く、異端な雰囲気が一切ない。変な表現、一般人として紹介されても違和感ない風貌だ。


736 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/09(金) 15:47:25 /8wUZ9Eo0

美少年。中性的と例えればいいのか。
アイドルとかモデル、タレントの一人だと嘘ついても真に受け止められそうな整った容姿。
一瞬、非現実的な能力を持つ超人らしさは感じられなかったが。
召喚した際、物騒な『大鎌』を手にして「僕のマスターですか?」と笑顔で問いかけてきたのには腰を抜かした。
やっぱり常識がズレているんだろう、と僕は思う。

「どうしましたか、厄介。元気ないですよ」

心配して声をかけてくれたランサーは、僕が帰り際に購入したドーナツの箱に注目。
わーっと子供のように飛びついてきてくれる姿は、微笑ましい。
僕は少し気を取り直した。

「実は今日……クビになりまして」

「ありゃりゃ」

ランサーは随分おとぼけた反応だった。別にクビになったのは良いのだ。(改めて良くは無いが)
問題は時期である。

「やっぱり怪しまれますよね……」

「うーん、そうかもしれませんねー」

ドーナツを頬張るランサーは割と呑気に同意してくれる。
聖杯戦争がもう間もなく始まろうと言うタイミングで退職。
僕自身、どう警戒したところで予測可能回避不可能という奴だ。
同時に僕はランサーの機嫌が不安でならなかった。
彼がどんな英霊か、正直まだ理解しきっていない。呑気を装って、内心何を抱え込んでいるかも定かじゃない。
僕はなるべく前向きに話を続けた。

「普通に次の就職先を探す姿勢でいます。聖杯戦争を期に退職したんじゃ、って怪しまれない為にも――」

「厄介、今日は特訓の成果を見せる日ですよ。お願いします」

あ、はい。と僕はドーナツと共に購入してきたプリンを取り出した。


ランサーが要求してきたことは、プリンを綺麗にお皿に盛る、という試験。
面接でもこんな緊張した例がないだろうに、披露するのはプリンの盛り付けである。
一体何の意味があるのか、僕には皆目見当がつかないけども。

綺麗に皿の上へ着地したプリンにご満悦なランサーは、それを平らげて僕に「合格です」と告げてくれた。
とにかく、マスターとして認められたのだ。
聖杯をどうするか、戦争に加担するのか。
まだ漠然としているが、絶対に見限られないようにしなければ………


737 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/09(金) 15:47:54 /8wUZ9Eo0
【クラス】ランサー
【真名】鈴屋什造@東京喰種:re
【属性】混沌・中立

【ステータス】
筋力:B 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:D


【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 戦場において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す。

精神汚染:E
 精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
 ランサーで召喚された什造は、それほど錯乱はしておらず、対話は問題ない。

投擲(ナイフ):B-
 ナイフを的確かつ強力な威力で投げるスキル。
 ただし、什造は故意か癖か、あらぬ方向に投げつけてしまう事がしばしば。



【宝具】
『十三の時を刻む死神の鎌(ジューゾーズジェイソン)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1~5人
 什造の象徴として印象強い大鎌。攻撃時、仕込み『赫子』が飛び出す。
 一振りが強力な一撃であり、人食を行う種族に対する攻撃判定・与ダメージが追加される。


『骸拾いの鎧(アラタジョーカー)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 高い防御性を兼ね備えた鎧。人食種族に対する攻撃補正のある鉤爪やブレードが鎧から展開される。
 この宝具を使用すれば什造の幸運を除いたステータスが+補正が添付される。
 しかし、什造自身に負担があり、マスターの魔力消費も大きい。長期戦になっては逆に危うくなる。


【weapon】
 『サソリ』……義足の右足に収納されたナイフ。合計56本ある。
        『十三の時を刻む死神の鎌』と同じく人食種族に対する攻撃補正つき。
        使い勝手がいい。


【人物背景】
中性的な容姿と高い身体能力を持つ喰種捜査官。
召喚された彼は特等捜査官就任後の鈴屋什造。
会議中にお菓子を食べたり、ナイフの指導をしたり、この頃は比較的穏やかで会話も通じる。


【サーヴァントとしての願い】
ゆっくりお菓子を食べたい。







【マスター】
隠館厄介@忘却探偵シリーズ

【マスターとしての願い】
犯罪はしたくない。とにかく聖杯戦争から離脱する術を模索。

【能力・技能】
冤罪体質。
事件が起きるたびに何故か犯人だと疑われてしまう。
勿論、彼が犯人であった事はない。

【人物背景】
でかい身長で気弱な性格。
残念なことに聖杯戦争では彼の頼れる探偵がいない為、今後が不安であったりする。


738 : ◆3SNKkWKBjc :2016/12/09(金) 15:49:01 /8wUZ9Eo0
投下終了です。タイトルは「隠館厄介&ランサー」でお願いします


739 : ◆GO82qGZUNE :2016/12/09(金) 18:52:11 5q55NSGU0
拙作「愛のフーガ」においてステータス等を修正したことをご報告させていただきます


740 : ◆Vj6e1anjAc :2016/12/09(金) 23:14:06 g5pyfVdY0
拙作「決死 -Vivid Strike-」にて、レオン・ルイスの性能を変更させていただきました
「魔性殺し」EXランク時の性能の上方修正および説明追加、
宝具『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』の説明追加、
宝具『■■■■(ディバイン・ブレイド)』のタイムリミットを十分未満へ変更の三点です

ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/100.html


741 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:14:46 ovJKkhto0
投下します。


742 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:15:13 ovJKkhto0
「聖杯戦争、か……」

何の変哲もないが、しかしやや古びている屋敷。
その中にある、閉鎖的な雰囲気のある自室。
年季のある四角い机。
錆が少し付いている燭台。
机に腰掛けているエルヴィン・スミスはそこで、自分が置かれている情報を整理する。

「しかし、聖杯戦争、か。」

全く変わったことも有るものだ、とエルヴィンは独りごちる。

―聖杯戦争。
願いを掛けて殺し合い、「聖杯」と呼ばれる物を手にする儀式。
エルヴィンは、その参加者として呼ばれた、と言う事になるらしい。

「願い……か。」

エルヴィンにも、叶えたい願いが無いわけではない。
人類の進撃。
100年もの間、人類を鳥籠の如く閉じ込めてきていた三層の壁を必要ともせぬ世界の実現。
人類種の天敵たる巨人への勝利。
父親が話したことを真実だと証明するための戦い。
それが、エルヴィンが戦う理由である。

その結果が、エルヴィンがいるこのSE.RA.PHだ。
SE.RA.PHが構築した世界において、巨人など確認されていない。
ましてや存在したと言う文献すら明るみに出ていなかった。
時は1200年後の未来。
無論場所は、エルヴィンのいた世界の地図では確認されていない所だ。
アメリカ、スノーフィールド。
そもそも国と言う概念すら構築されているかどうかすら曖昧な世界において、幾つもの国があったと言うのは、エルヴィンからしてみても驚くべきことだ。
しかし最も驚くべきことは、この世界の文化だ。

「進化しているな……この時代は。」

窓の外から見える景色を見つめながら、エルヴィンはそう呟く。
1200年後の未来。
其処でエルヴィンが眼にしたものは、どれもこれも全て、とても当時からは考えられない様な物ばかりであった。
例えば「自動車」は兵団で扱われている馬など遥かに越す程のスピードで走る。
「電話」と言う代物は自動的に、遠くの相手に声を届ける事が出来る。
もしこれが自分達の世界にあったら、と言うような便利な道具ばかりが、この世界に揃っている。

しかしそれらを、エルヴィンは聖杯で叶えるつもりはない。
確かに、聖杯という願望機さえあれば、巨人の存在を瞬く間に消し去ることなど容易だろう。
寧ろそれこそが願いへの最もな最短ルートだ。
だがそれを叶えれば、先人達が培ってきた努力はどうなるのか。
父が見つけ出した答えはどうなるのか。
死んでいった兵士達の命は何なのか。


743 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:15:34 ovJKkhto0
何より、壁外への進撃は、人間が行うべきことだ。
人間が人間として有り続け、人間が巨人に進撃し勝ち取る事で初めて、それは本当の価値を持つだろう。
故に、エルヴィンが選ぶは、脱出の道。
この世界で得た知識を持ち帰り、再び巨人と闘う。
それがエルヴィンの望む事だ。

「しかし、私のサーヴァントはどうしたものか。」

聖杯戦争の鍵となるトランプ。
つい先程まであったそれだが、今では光り輝いたかと思えば何処かへ消え去っている。
地下街の調査をしていた所で拾った物だが、はてさて何処へ行ったのか。
と考えていた矢先である。

開けっ放しにしていた目の前の窓ガラスから不意に、何かが飛び出してくる。
それも銃弾の如き速さで。
エルヴィンはそれに驚き目を覆うが、直ぐに眼に翳した手を離す。
その時見たものは、大変驚くべきものだった。

「何だ……!?」

其処にいたのは、一匹の蝙蝠…の様な何かだった。
しかし、その見た目はかなり異様だった。
顔は大きく、見た目は全体的にねずみ色。
何より特徴的なのは、まるで頭蓋骨のようにも見えるその顔だ。
人の死骸を見飽きた程に見てきたエルヴィンでさえ、顔を傾けそうになるほどに変わっている。

「何だ、これは。」
『つ〜いてっきて、マスター。』

更に更に驚くべきことに、その蝙蝠は、喋った。



◆  ◆  ◆


エルヴィンの元に突然やって来た蝙蝠は、己のサーヴァントの使い魔、だそうだ。
その使い魔に案内されるがままに、エルヴィンは道を歩いて行く。
ふと自分が歩いて行く道を見てみれば、それは見たこともない材質の物だった。
アスファルトと言う物を見たこともないため、その珍しさに少し、眼を開く。

『こ〜こ〜だ〜よ〜』

到着したのは、一軒の古びた城だった。
まるで王族が済んでいたかのように感じられるこの巨大な城は、この世界にしては珍しく、エルヴィンの時代の建造物と寸分違わぬデザインだった。
しかしそれはそれは巨大な城で、おまけに何処か不気味な雰囲気を持っている。

(この中に、私のサーヴァントが……)

少し眉間に皺を寄せながらも、エルヴィンは城の入り口に入っていく。


◆  ◆  ◆


「成る程、貴様が俺のマスターか。」

エルヴィンのサーヴァントがいる場所は、チェック模様の入った大きな部屋。
その部屋の中心にある、巨大な玉座に座る化物がいた。
視界に数値と、クラスが浮かび上がる。

「……成る程、君が、私のサーヴァント、ランサーかね?」
「その通り、俺はレジェンドルガの王(ロード)、ランサーのクラスで現界した者だ。」

顎をフンとした表情で釣り上げた尊大な男は、エルヴィンの問いに答える。
エルヴィンは彼に一歩、二歩、三歩近づいて、更に問いかける。
弩の如く何かを狙い撃つような、その眼差しで。

「ランサー、君に是非とも、更に聞きたいことが有るんだが、構わないね?」


◆  ◆  ◆


エルヴィンは、ランサーについて様々な事を聞き出した。
レジェンドルガ、とは、嘗て13の「魔族」と呼ばれる種族の内の一つで、その中で最も誇り深く強い力を持っていた種族だそうだ。
因みに、その中には人間も含まれているとか。
しかし、レジェンドルガはとある大きな戦争において大敗を喫し、自らもまた滅んだと。
まるで自分たち人間と同じだな、と内心エルヴィンは思った。

「それで、君の望む願いは?」
「嘗てこの俺を封印した王……キバを、この手で倒すことだ。」

苛立ったような口調で、ランサーは、自分のマスターに己の願いを曝け出す。
彼は怪物であるが故に表情は分からないが、恐らく相当に怒っているのだろう。

実際、ランサーのサーヴァント、ロードは強い怒りを示している。
嘗て、魔族の中でも猛威を振るっていた一族の誇りを汚した、あの王を。
世界を滅ぼしてしまいそうな程のエネルギーを振るい、自らを棺へと追い込んだ、あの忌まわしきファンガイア族の王を。
決して忘れることはしない。
これまでも、これからも。
何時しかこの槍を、あの剣にぶつけるその日まで。



◆  ◆  ◆


744 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:15:55 ovJKkhto0

「来たか。」

エルヴィンがこの城に来たのは、これで何度目だろうか。
とにかく、記憶を取り戻して1週間程経過したというのは事実だ。

「済まなかったな、仕事があって来るのが遅れてしまった。」

部屋の真ん中にある玉座に座るは、やはりランサーだった。
しかし今回のランサーは見た目が異なる。
全長は先程の数倍に跳ね上がっており、全身には胸に鎖が縛りついている甲冑を纏っている。
曰く、これがランサーの誇る宝具、だそうだ。

鎧を纏い、図体がでかくなろうとも相も変わらず玉座にふんぞり返り座っているランサーに、エルヴィンは軽く頭を下げる。
エルヴィンに与えられたロールは「教師」だった。
奇しくも死んだ父親と同じ職であることには、何やら運命を感じさせられるものだが。

「フン、構わん。」
「それとランサー、今日は何人ほど殺した?」

冷たい表情を向けて、エルヴィンは問う。
このランサーのサーヴァント、ロードは人を殺すことに躊躇をしない男だ。
まるで人を家畜だとも思っているかのように、彼は人を殺す。
そういう点ではある意味、巨人に似たような者なのかもしれない。

「先程アサシンと交戦した。然程歯答えの無い相手だったがな。」
「マスターはどうした。」
「貴様の想像通りだ。」

ランサーはそう言うと、パチンと指を鳴らす。
ふと後ろで、ガタッと音がする。
その音にエルヴィンは振り向くが、しかし表情は対して変えない。

出てきたのは、赤いジャケットを着たごく普通の青年。
しかしその身体はふらついており、眼は真っ白になっている。
そしてその様な状態になった人間を、エルヴィンは何度も見てきている。

「やはり、『洗礼』したのか。」

玉座が見える方向に振り返り、エルヴィンはランサーに問う。

「ああ、そうだ。文句はあるのか?」
「いや、無いが。」

エルヴィンは既に、聖杯戦争に乗ることを決めている。
確かに、人の命を奪うことに躊躇はある。
だが、部下の命など既に、元の世界で何度も奪って来ている。
今更惜しむことも無い、堪えると言えば堪えるのだが。

それに、自分にはまだ果たしていないことが山程ある。
外の世界を見るためにも自分は、まだ死ぬ訳にはいかない。
寧ろ、未来の技術を知る事が出来る絶好の機会に巡り会えたとすら思える。
既にノートには、幾らかこの世界の知識が書き込まれている。
聖杯など目の前の王にくれてやる。
だが願いを叶えるためにも自分は、こんな所で死ぬわけには行かない。


745 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:16:17 ovJKkhto0





【マスター名】エルヴィン・スミス
【出典】進撃の巨人
【性別】男


【Weapon】

「立体機動装置」

人類が巨人と闘う糧。
腰に付けられており、ワイヤーを括り付け、ガスを噴出することで三次元的な戦闘を行うことが出来る。
ただし、これを扱うのは素人には極めて困難で、優れた空間把握能力が持たなければ扱えない。


「刃」

立体機動装置のコントローラーを拵えとして装着されているブレード。
エルヴィンのいる世界では最も鋭いとされている「硬質スチール」を素材としている。



【能力・技能】


・立体機動
三次元的な空間移動を行う、「立体機動装置」を扱う技能。


・戦術能力
優れた戦術能力の持ち主。


・カリスマ
調査兵団を率いられるほどのカリスマ性を持つ。


【人物背景】

3層の壁で仕切られた世界の外を調査する「調査兵団」の隊長。
壁の外の世界を見ようという熱い思いに突き動かされており、周囲の人間からは「もっと先を見据えている」「何を考えているのか分からない」と評されている。
その背景には、教員である父が「壁内の人間は全て記憶を改ざんされているのではないか」と考えていることを聞き、その仮設に共感を覚えたことに有る。
しかしそれが原因となり、父は憲兵団に暗殺される。
父の仮説を証明しようと考えたエルヴィンは調査兵団に入り、巨人に進撃をすることを決意する。
温厚で人望は強いが、反面手段を選ばぬ冷酷な一面も持ち合わせており、民衆からブーイングを受けている時にも無表情でい続けた。


【聖杯にかける願い】

人類の進撃は聖杯で叶えるものではない。
強いて言うのなら、この世界の知識を持ち帰り、人類への進撃に利用することである。


746 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:16:42 ovJKkhto0



【クラス名】ランサー
【出典】劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【性別】男
【真名】ロード・オブ・レジェンドルガ
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具EX


【クラス別スキル】


対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。


【保有スキル】


カリスマ:B-
人々を導く天性の才能。
一族を束ねるほどのカリスマ性の持ち主ではあるが、他の一族からすれば恐怖の対象となる。


戦闘続行:A+
往生際が悪い。
例え肉体が滅びようとも、その霊核を鎧に移し生き延びた逸話から。


一族の洗礼:A
他の種族をレジェンドルガとする能力。
レジェンドルガとなった者は神秘を帯びた使い魔となるが、常人以上の力を与える程度に留まらせたり、洗脳する程度にすることも出来る。


陣地作成:C
自らに有利な陣地を作り出す能力。
陣地を作る宝具を入手している。


747 : エルヴィン・スミス&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:17:29 ovJKkhto0
【宝具】

「爪槍振るう原魔族の巨王鎧(アーマードロード・アーク)」

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大捕捉:1〜50

ランサーが装着する、レジェンドルガの王の鎧。
装備は専用の巨大な三叉槍「アークトライデント」で、地面に突き立てることで天変地異を巻き起こす力も持ち合わせている。
胸のカテナを外すことでブラックホールを発生させ、敵を吸い込む能力も持ち合わせている。
そしてランサーは、この鎧に魂を移した逸話を持っており、もしランサーが死んだとしても、鎧に霊核を移すことでその死を免れることが可能となる。
全長3mを誇っているが、魔力消費を抑えるために縮めることも可能。


「月夜が照らす王の魔界城(ヘルキャッスル・オブ・ロード)」

ランク:B+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:100

ランサーが生前居住していた魔界城を召喚する宝具。
キャスターのクラスで喚ばれていれば、この宝具は生前従えたレジェンドルガを召喚する宝具として機能するだろう。
だがランサーのクラスで喚ばれた今では殆ど劣化しており、殆ど拠点としての役割しか果たさない。
その代わり、城内においてのみランサーに対し補正を働かせることが可能で、後述の宝具を起動させればその効果は増大するであろう。



「一族を見守る月の眼(サークル・オブ・ライフ・レジェンドアーク)」

ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:100 最大捕捉:1000

レジェンドルガを守護する「月の眼」の具現化。
SE.RA.PHにおいて再現されている月の景色に、月の眼を出現させる。
この眼が開いている間には、レジェンドルガに補正が働く。
更に、「幻想族の王鎧」のブラックホールに月の眼を吸収させることで、「レジェンドアーク」と呼ばれる姿にランサーを变化させることも可能。
レジェンドアークとなれば飛行が可能となり、凄まじいスピードとパワーを手にするだろう。
ただし、この宝具の起動に必要な魔力は相当な物となり、令呪三角程の魔力を要する。



【Weapon】

「アークキバット」

宝具「爪槍振るう原魔族の巨王鎧」を起動するための鍵にして制御装置。
ファンガイア族に隷属する「キバット族」に酷似した形状を持っており、自我を持ち言葉も発せる。
しかし明確な意思は持っておらず、単にアークの鎧の制御装置としてしか扱われていない。
ウェイクアップフエッスルを出現させることでそれを吹き、鎧に有る胸の魔鎖「カテナ」を開放しブラックホールを発生することが可能。


「アークトライデント」

ランサーが持つ魔槍。
アークの鎧とは別に召喚することも出来る。


【人物背景】

全ての魔族のルーツとされている種族「レジェンドルガ」の支配者。
圧倒的な威厳を見せつけ、全ての魔族に恐怖を齎した存在とも言われた。
しかし、一族の威厳はファンガイア族との戦いで瓦解してしまう。
ファンガイア族の切り札である「キバの鎧」によって。
しかし、どこかに有るだろうその棺には、未だロードの魂が残っているとも言われている。

【聖杯にかける願い】

キバの系譜を破戒する。


748 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/10(土) 05:17:53 ovJKkhto0
投下を終了します。


749 : ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:30:59 sI04Anmo0
投下します


750 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:31:52 sI04Anmo0


木王 早苗は苛立っていた。
偵察を終え、変身を解いた彼女は道路脇の歩道を不機嫌そうに歩く。
共に偵察を行っていた『サーヴァントの配下』達は既に解散し、単独の偵察を継続している。
人を小馬鹿にしたような彼らの目付きが脳裏に焼き付いている。
自分は彼らから確実に侮られている。
あくまで現場の指揮官は自分である筈なのに、彼らは自分を見下している。
早苗はそう認識していたし、それは事実であった。
所詮は自分達とは違う存在、マスターでありながらサーヴァントに従う無能だとでも思っているのか。
馬鹿にして。今に見ていろ。
お前たちはいつか私の優秀さを思い知ることになるのだ。
それまでは精々いい気になっているがいい。
そう思い込むようにしても、早苗の中の苛立ちは膨れ上がる。
今にも怒り散らかしたい思いを抑え込みつつ、彼女は歩を進める。

木王 早苗――――彼女の正体は魔法少女である。
正確に言えば魔法少女候補生なのだが、彼女はそのことを知らない。
早苗はN市という町で魔法少女『ルーラ』として活動していた。
かつては都内の一流企業に属し、地方都市であるN市へと左遷させられた彼女にとって魔法少女の資格を得られたことは僥倖だった。
否、優れた能力を持つ自分が勝ち取った必然であると言うべきか。
魔法少女となったことで早苗は舞い上がり、下らない仕事ばかりの勤務先へ退職届を出してルーラとしての活動に専念するようになった。
その過程で紆余曲折があり、スイムスイムやピーキーエンジェルズ、たまといった配下を従えた。
どいつもこいつも使えない馬鹿ばかりだが、仮にもルーラはリーダーであるのだ。
どうしようもない馬鹿共にとっての指針となる優秀かつ偉大なリーダーになれるよう、ルーラは務めていた。
思い返せば、ルーラがこの聖杯戦争とやらに巻き込まれることになったのも配下が偶然『トランプのカード』を拾ったからだ。
それは絵柄の描かれていない白紙のトランプ。
キャンディー集めの為のゴミ処理を配下たちに任せていたある日、スイムスイムが偶然見つけたとされる代物だ。
用途の全く解らない代物であったが、そのトランプに何か感じるものがあったルーラは一応それを保管しておくことにした。
それが聖杯戦争へと参加する権利である、ということを知ったのはスノーフィールドの地へと誘われた後だった。
馬鹿でも少しは役に立つこともあるのだな、と当時の早苗は配下に一匙程の感謝をした。

早苗/ルーラの方針は当然、聖杯狙い。
されど彼女の目的は聖杯によって願いを叶えることではない。
『勝つこと』自体が目的であるのだ。
早苗は己が優秀な人間であると自負している。
それ故に、社会が自分の実力を認めないことを理解できない。
早苗は己の自尊心を満たすことに飢えている。
魔法少女としての活動もその欲求に則したものである。
スノーフィールドに召還され、聖杯戦争のマスターとなってからもそれは変わらない。
早苗は己の優秀さを示す為に。
己の実力を証明する為に、この聖杯戦争にて勝つのだ。

とはいえ、早苗は出来る限りは早くN市へ帰還したいとも考えている。
配下たちは自分がいなければ何も出来ない阿呆ばかりなのだから。
リーダーとして自分が上に立たなければ、どうしようも出来なくなるだろう。
故にいつかは偉大な統率者である自身が戻らねばならない。
彼女らを纏める存在は自分しかいないのだから。
それまでに彼女らが大人しくしていることを願いたいものだ。
あるいは少しは優秀な一面でも見せてくれればいいのだが、とも早苗は思う。

この聖杯戦争は、いわば己の実力を示す為の機会。
木王早苗は優秀であるという自尊心を満たす為の戦場。
にも拘らず、早苗は苛立っていた。
それは彼女が召還したサーヴァントに原因がある。
あのサーヴァントがいなければ、彼女は『使い走り』に甘んじる必要も無かった。
早苗は奥歯をギリギリと歯軋りさせながら目的地となる施設へと目を向ける。
ようやく到着だ。
この頃は魔法少女としての身体能力に頼りっぱなしだった為、久々にこうして歩くと少々疲れる。


751 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:32:34 sI04Anmo0

早苗は町でも有数の高級ホテルへと入り、そのまま足早にエレベーターへと向かう。
チェックインなどはとうの昔に済ませている。
大金を積み上げ、最上階フロアの貸し切りという破格の条件での滞在を成立させた。
無論、それは就労によって得られた報酬によるものではない。
そもそも早苗はこのスノーフィールドでの仕事を辞めている。
「大都市から地方の事業所に左遷させられた女性社員」という役割を此処でも担わされているのは不快だった。
辞めるに決まっている。二度とやるか、あんな程度の低い仕事。
ましてや聖杯戦争という一世一代の戦いがあれば尚更のこと。
さて、では早苗は何処でフロアの貸し切りを行えるだけの資金を手に入れたのか?
答えは単純明快。
窃盗である。
自身の配下と言える存在達が、銀行等から金を盗んだのだ。

上昇するエレベーターの中でじっと待つ。
十秒程の移動を終え、最上階フロアの扉が開かれる。
早苗はエレベーターから降り、不機嫌な表情を貼付けたままかつかつと通路を進んでいく。
華美で気品に満ちた通路の内装をちらちらと見つめる。
そこいらのビジネスホテルとは訳が違う。
格が違うと言ってもいい。
そこいらの庶民では足を踏み入れることも出来ない、富豪にのみ許される空間。
当然、自身もこのフロアの一室で生活を送っている。
このような豪勢なフロアを貸し切ることになるとは夢にも思わなかった。
どこかそわそわとした感覚を覚えつつも、早苗は通路の最奥部へと辿り着く。

最高級とされるスイートルーム、その扉の前。
異様に長い両腕に包帯を巻いた男が門を守護している。
その肉体は屈強であり、フォーマルなスーツに身を包んでいる。
彼の姿は一見要人の警護を行うボディーガードのように見えなくもない。
しかし、その頭部は余りにも異様極まりないものだった。
黄緑色の頭巾を巻き、爬虫類めいたメンポ(面頬)で顔を覆い隠しているのだ。
その頭部を見た者は、彼をこう認識するだろう。
伝説の存在……ニンジャである、と。
彼は早苗のサーヴァントの宝具で召還された使い魔の一人である。
そして、ニンジャは現れた早苗に一礼する。


「ドーモ、ルーラ=サン」
「ドーモ、コッカトリス=サン。ただいまお戻りしました」


早苗もまた礼儀正しくアイサツを交わす。
傾けられる姿勢。ぴったりと合わせた両手。言葉のイントネーション。
タツジン。完璧である。恐らくは老練なリアルニンジャも認めるであろう丁寧なアイサツ。
早苗は己のサーヴァントを召還した日、ニンジャ同士のアイサツを目の当たりにした。
最初こそ困惑したものの「これが彼らなりの礼節なのだろう」と認識した早苗は彼らのアイサツを学習、そして体得した。
アイサツの完成度に限れば実際ニンジャ。
更には彼らの言葉遣いもある程度は習得している。
それが幸いし、サーヴァントの配下である上位のニンジャ達は早苗に対しても一定の敬意を払うようになっていた。
更にはサーヴァントの機嫌を取ることにも成功している。
今はこうして大人しくご機嫌取りでもしてやるが、いずれは寝首を掻いてやる。
礼儀正しいアイサツを行いつつ、彼女は内心思う。


752 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:33:02 sI04Anmo0

早苗は最早慣れ始めている。
彼らの異様極まりない姿、そしてアイサツに。
彼らがニンジャであるということもとうに理解している。
それにしたってこんな異様な姿で通路に立つ必要はないのではないか。
そう思っていたが、早苗にはそれを指摘できる程の度胸がなかった。
尤も、このフロアは完全に貸し切り状態である。
ホテルの従業員も呼び出されることが無ければ最上階へ足を踏み入れることは無いし、そういう意味で彼らの秘匿性は保たれている。

しかし、何故こんなに両腕が長いのだろう。
早苗はニンジャの両腕をちらちらと見つめながら思う。
アイサツの時に呼んだ通り、彼の名はコッカトリス。
シックス・ゲイツの精鋭6人に名を連ねた経験を持つニンジャである。
その能力には確かな信が置けると、自身のサーヴァントであるセイバーが言っていた。
こんな馬鹿げた外見の男が優秀であると言われてもいまいち実感が持てない。
そんな異様に長い両腕で何が出来るというのか。
もしかすると、更に伸びたりでもするのだろうか。
あるいは両腕に何か秘密兵器でも仕込んでいるのだろうか。
そんなに不自然に長いのだから、きっと何かあるのだろう。
コッカトリスをまじまじと見つめる早苗の疑問は膨れ上がる。


「ドーゾ。セイバー=サンが待っています」
「アッ、ハイ」


扉の前から退くコッカトリスの言葉に、ハッとした様子で早苗が返答する。
いけない。つい考え込んで棒立ちしてしまった。
こんなことではエリート失格だ。
早苗は己の行動を戒め、コッカトリスの言葉に応じてスイートルームの扉を開く。


がちゃり。
きぃぃ。
扉を開ける何気ない動作、何気ない音。
それさえも今の早苗には憂鬱に感じてしまう。
己の従者に会うだけだというのに。
それだけで奇妙な緊張感を覚えてしまう。
かつ、かつ、かつ。
一歩一歩、歩を進めて行く。
豪華絢爛な室内を進んでいき、やがてサーヴァントの姿が目に入る。


広大なリビングにて、豪華なソファーにどっしりと腰掛ける男が一人。
どこから連れてきたのか、娼婦と思われる美女を複数名侍らせている。
その下品な光景に早苗は思わず表情を歪めそうになるが、あくまで平静を保つ。
下手な真似をすれば顰蹙を買う可能性があるからだ。
そうなった場合、このサーヴァントは何をしでかすか解らない。
怒り狂うかもしれないし、非道な拷問を行う可能性だってある。
何はともあれ、我が身が危なくなるのは確実である。
故に最低限の機嫌は保たせる。


そして早苗は、再び礼儀正しくオジギをする。
先程とは違う。今度は早苗からのアイサツ。
それは早苗が謙っていることの証明か。
あるいは見せかけだけの礼節か。



「ドーモ、ラオモト=サン!」
「ムッハハハハハハ!ドーモ、ルーラ=サン!」



早苗のアイサツに応えるように、美女を侍らせた男が高らかに笑う。
彼こそはセイバーのサーヴァント。
平安時代の日本をカラテによって支配した超人『ニンジャ』の力を得た男。
暗黒経済組織『ソウカイヤ』の恐るべき首領―――――ラオモト・カンである!


753 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:34:51 sI04Anmo0


「首尾を報告せよ、ルーラ=サン」
「……ヨロコンデー!」


ふんぞり返るセイバーに対し、早苗はあくまで下手に出て報告をする。
セイバーの召還から数日、既にこう言った関係が定着している。
主従関係を結んだ日に起こったいざこざがその発端だ。
無論、このような関係は早苗に取って大変不本意である。
しかし今は逆らえない。逆らえば無事では済まないだろう。
それを理解してしまったからこそ、早苗はこうして下手に出ている。
今は耐えるべし。耐えるのだ、木王早苗。
早苗は自らにそう言い聞かせ、歯軋りを心中に仕舞い込みつつ報告を行う。

とはいえ、今回の収穫は乏しいものだった。
早苗は魔法少女『ルーラ』に変身し、使い走りの下級ニンジャ数名と共に会場内の散策を行った。
特にめぼしい発見は得られず、結局複数名による探索は一旦打ち切った。
故に報告においても、さしたる成果は述べられない。
あの地点を探索したが、特に何も無かった。
あの場所へと赴いたが、何も掴めなかった。
彼女が報告できるのはその程度の詰まらぬ話のみ。
それでも言い訳を並べずに淡々と報告できる肝の大きさは、ある意味で早苗の長所とでも言えるか。
さて、報告を聞いたセイバーはどうか。


―――――――――――沈黙。
退屈そうな表情を浮かべ、右脇の娼婦の豊満なバストを揉みしだいている。
期待はずれ。そう言わんばかりの態度に、早苗は息を飲む。
この沈黙が息苦しい。
何をされるのか解らないのが薄気味悪い。
そして、仮にも従者である相手に怯んでしまう自分が悔しい。
早苗は苛立ちを抑えつつもセイバーを見上げ、返答を待つ。


―――――――――――沈黙。
セイバーは左脇の娼婦に酒を注がれ、杯で豪快に飲み下している。
早苗の表情が僅かに歪みそうになる。
かろうじてそれを抑える。


―――――――――――沈黙。
テーブルの上のスシを贅沢にも二つ纏めて摘み、一気に喰らう。
何と下品な食べ方か。そもそも、アメリカのホテルにスシがあったのか。
早苗の眉が一瞬だけぴくりと動く。


―――――――――――沈黙。
スシを飲み込んだセイバーが、ようやく早苗へと再び目を向ける。
爆発しかけていた苛立ちを必死に抑え、セイバーの言葉を待つ。



「ルーラ=サン」



そして、セイバーが口を開いた。


754 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:35:20 sI04Anmo0
その一言だけでも、異様な威圧感があり。
早苗はごくりと唾を飲む。


「ワシは使える者が好きだ」


セイバーが、ニヤリと笑う。
傲岸不遜な笑みとも取れる。
あるいは、嗜虐的な笑みにも見える。
何処か気味の悪い笑みに、早苗は僅かながら身構えてしまう。
されど耐える。目の前のセイバーの気迫に耐える。


「無論、それはマスターであっても同様。
 ルーラ=サン、半端な仕事でワシの期待を裏切ることはするな。
 『何でも使え』!ミヤモト・マサシもそう言っている。
 貴様も勝利の為にあらゆる手段を使うのだ!ムッハハハハハ!」


セイバーの言う通り、それは彼が敬愛するミヤモト・マサシの兵法書に記された有名な格言である。
彼は笑ってみせた。
ムッハハハハハ。ムッハハハハハハ。
どこまでも豪快に、大胆に、喧しくセイバーは笑う。
それはまさしく王の哄笑。
支配者にのみ許される傲岸不遜な笑い。
先程までの沈黙と不気味な間は何だったのか。
やかましく笑うセイバーに、早苗は苛立ちを覚える。

何なんだ、この男は。
自分が上に立った気になって。
私の指示も聞かずに勝手に部下を動かしたりして。
毎回毎回、訳の解らない態度で私を翻弄して。
本当に、心の底から――――――苛つく。


755 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:35:54 sI04Anmo0
◆◆◆◆


木王 早苗は苛立っていた。
セイバーへの報告を終え、自室へと戻った彼女はくたびれた身体をベッドへと投げ出す。
ぼふんと跳ね返るベッドの感触に身を任せ、仰向けの状態で天上を見つめる。
色々と思う所はある。
というより、思う所しかない。
彼女の苛立ちの原因の大半はあのセイバーによるものだ。
下品に笑うセイバーの姿を脳裏に過らせ、軽く舌打ちをする。

マスターとはサーヴァントを従えるもの。
古今東西の英霊を隷属させ、主人として使役するもの。
支配する側に立つのは此方のはずだ。
だというのに、この有様は何だ。

セイバーを召還した日。
早苗は部下達と接する時と同じようにセイバーに指図した。
私に従え、私の命令には逆らうな、と。
聖杯戦争とはそういうものだと認識していた。
自身が命令を下せばセイバーは当然のように従うのだと思っていた。
だが、それが逆にセイバーの逆鱗に触れた。
「貴様ごとき小娘が俺様に指図する気か?」とセイバーが怒り、あろうことかマスターである早苗を力ずくで脅迫。
自身にあれこれと指図しないよう早苗を威圧させて以来、気が付けばこんな関係になっている。
セイバーがルーラ/早苗を使役し、ルーラ/早苗はセイバーに従うという主従関係の逆転が発生しているのだ。

無論、早苗の変身態であるルーラとて魔法が使える。
『目の前の相手になんでも命令できるよ』。
それは文字通り、眼前の対象に絶対服従の命令を下せるという恐るべき魔法。
N市でルーラが魔法少女のチームを築くことが出来たのも、この魔法があってこそだ。
では、何故早苗はセイバーにこの魔法を行使しないのか?
それは早苗がセイバーのカラテの片鱗を目の当たりにしてしまったからだ。

セイバーに脅迫されたとき、彼は凄まじい身体能力で早苗に接近してきた。
あれを見て以来、早苗は理解してしまった。
それは矮小な小鳥が大空を羽搏くイーグルには敵わない事を直感するような、本能的な理解。
魔法を使おうとした瞬間、きっとセイバーはそれよりも速く動いて自分を殺しに掛かる。
セイバーにはそれが出来る。瞬時に動いてルーラを殺すことが可能である。
早苗はそれを理解してしまったのだ。
故に彼女は『魔法を使う』という選択肢を諦める。
尤も対魔力を持つセイバーに魔法が通用するのか、それ自体が不明確ではあったが。


756 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:36:16 sI04Anmo0

セイバーを従える上でもう一つの選択肢がある。
それはマスターに三画ずつ与えられるという令呪だ。
早苗は自らの手の甲に刻まれた令呪を見つめる。
王冠を制圧する一対の剣を思わせる不吉な形状に、表情が僅かに歪む。
これに一言『私に従え』とでも命じれば、早苗はサーヴァントを支配できる。
しかし、それでは駄目だ。
令呪は三画しかない貴重な手札であり、サーヴァントの能力を超えた指示をも下す事が出来るという強力な武器。
それを『サーヴァントを従える』などという通常ならば至極当然に行えることのために態々使うのは無駄でしかない。
結局の所、早苗はセイバーを自らの手で従える手段しか選ぶ事が出来ない。

何かしらの策を弄すればセイバーを出し抜き、魔法を叩き込む隙を作れるかもしれない。
あるいはセイバーを従える事を最優先とすれば、惜しみなく令呪を使えるかもしれない。
だが、早苗はそうしない。
そうすることができない。
何故ならば、早苗は無意識下で『セイバーに敵わない』と認識してしまったからだ。
ネオサイタマを牛耳り、暗黒経済組織を統べる帝王ラオモト・カンに恐怖してしまったからだ。
ラオモトは超人的な能力を持つニンジャをも従える絶対無比の支配者だ。
その力に多くの者が畏怖し、多くの者が畏敬の念を示した。
そう考えれば、彼に恐怖し気圧されるのも当然のことである。
尤も早苗はそれに気付くことは無いし、認めることもしない。
『これはこういう戦術だ』『こういった理由がある』といった都合の良い理屈を並べ立て、自己の沽券を守るのみだ。
カラミティ・メアリという前例を経ても尚、早苗は己の中の恐怖という感情を認める事をしなかった。
とはいえ、表向きは何事も無く振る舞えるのは魔法少女となって得たふてぶてしいメンタルの賜物か。

いつか奴を従えさせる。
どちらが偉大なるリーダーとして相応しいのか、きっちりと叩き込む。
今でなくとも、いずれ解らせてやる。
早苗は宛の無い展望を胸に抱きながら、改めて決意する。


(今は貴方のしもべに甘んじてあげるわ、セイバー。
 だけど、いずれ解らせてやる。最後に笑うのはこの私だということを)


757 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:36:50 sI04Anmo0

【クラス】
セイバー

【真名】
ラオモト・カン@ニンジャスレイヤー

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具A

【属性】
中立・悪

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:-
乗り物の運転、操縦などは配下が行うべきこと。
帝王であるラオモトが自らの手で乗り物を操る必要性など存在しない。
よって騎乗スキルは不要。

【保有スキル】
カリスマ:C++
ソウカイ・シンジケートを統べる帝王としての器。
属性が『悪』の者に対しては効果が倍増する。
更に自身と相対した者に精神干渉判定を行い、成功時には『威圧』(相手の筋力値・敏捷値にマイナス補正+精神抵抗判定のファンブル率上昇)のバッドステータスを与える。
ラオモト・カンは優れた実力を持ちながらも本質的には欲深い俗物である。
しかし生前ラオモトの下に集ったニンジャの多くは彼の人間味に身近さを感じ、彼のような大物になりたい、あるいは彼のような人間の下で働きたいという憧れを抱いた。

カラテ:A+
ニンジャの基礎的な戦闘技術。
ランクが高いほど白兵戦・戦術などにおいて有利な補正が掛かり、クリティカル判定が発生しやすくなる。
更に同ランクの「心眼(真)」「勇猛」と同等の効果も兼ね備える。
ソウカイヤを統べるラオモトは圧倒的なカラテを誇る。

チャドー:D
ニンジャの祖“カツ・ワンソー”を開祖とする古代の暗殺拳。
ラオモトの場合暗殺拳そのものは行使できず、自身の体力と魔力を回復させ状態異常を癒す『チャドーの呼吸』を行うことができる。
とはいえ短時間の呼吸では効果は微弱であり、有効に活用するためには連続して繰り返す必要がある。

交渉:B+
メガコーポ経営者としての政治手腕。
取引や対話の際に有利な補正が掛かり、自身にとって優位な条件を取り付けやすくなる。
更に話術判定の成功率にプラス補正が掛かる。
因みに『威圧』のバッドステータスを与えることで、話術判定をより有利な条件で行える。

【宝具】
「デモリション・ニンジャ」
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ソウカイヤの総帥にして最強のニンジャ「デモリション・ニンジャ」としての能力。
ニンジャとしての驚異的な身体能力に加え、『ヨクバリ計画』と呼ばれる施術によって7つのニンジャソウルを内包する存在と化している。
これによってラオモトは7つ分のニンジャソウルの力を備えており、メインとなるニンジャソウルを切り替えることで強力な固有のジツやカラテを繰り出すことが可能。
ラオモトは別のニンジャソウルに切り替えるという形で戦闘中にも突然全く異なる戦闘スタイルへと変貌し、そのまま戦闘を続行することが可能。
ただしジツの行使などによって個々のニンジャソウルの力を使いきると、暫くの間はそのソウルの力を引き出せなくなるという欠点を持つ。

「ガイデット・バイ・マサシ」
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:10
平安時代に名を馳せた伝説の剣豪ミヤモト・マサシが携えたとされる二本のカタナ『ナンバン』『カロウシ』が宝具化したもの。
ラオモトのカラテと一体化して用いられるため、彼の気力や体術の冴えに応じて与ダメージ値と攻撃判定にボーナス補正が付加される。
更に前述の補正効果に関係なくあらゆる筋力値判定に有利な補正が付く。

「ソウカイ・シックスゲイツ」
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ラオモト・カンの手足となるニンジャ集団、威力部門『ソウカイ・シックスゲイツ』のニンジャを召喚する。
召喚可能なのはシックスゲイツの6人に属した精鋭ニンジャ、およびそれ以外の下級ニンジャである。
同時召喚人数が増えるか、より強力なニンジャを召喚すれば、それに応じて現界に必要な魔力も大きくなる。
取るに足らぬサンシタ共ならまだしも、シックスゲイツ級のニンジャを複数名召喚するとなればマスターの消耗も極めて膨大なものとなるだろう。
なおクラス制限によってゲイトキーパー、ダークニンジャといった幹部ニンジャの召還は不可能である。
またシックスゲイツの6人に関してもインターラプターはオハギに溺れて以降の劣化した状態、ビホルダーは車椅子の状態でしか召還できない。


758 : ザ・グレイト・リーダー・フー・イズ・アゴナイズド ◆DdYPP2qvSs :2016/12/10(土) 19:37:21 sI04Anmo0

【Weapon】
ナンバン・カロウシ、己の肉体

『甲冑』
ラオモト・カンが全力の戦闘を行う時のみに着用する鋼の武者甲冑。
その姿はまさしく武田信玄の生き写しめいている。
物理攻撃のダメージを半減させる効果を持つ。

【人物背景】
近未来都市ネオサイタマを牛耳る暗黒経済組織「ソウカイ・シンジケート」の首領にしてニンジャ。
数多のニンジャと恐るべき政治手腕を駆使し、暗黒社会の帝王としての地位を築く悪のカリスマ。
残虐非道かつ欲深い俗物であるが、経済組織の総帥としての確かな実力と豪腕を兼ね備える。

【サーヴァントとしての願い】
不老不死の肉体を得て復活を果たす。

【方針】
まずはルーラやシックスゲイツを使役して地盤固め。
必要があれば自ら動く。



【マスター】
ルーラ(木王 早苗)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
自身の実力を証明する為に聖杯戦争に勝ち残る。

【weapon】


【能力・技能】
『魔法少女』
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。

『目の前の相手になんでも命令できるよ』
対象に絶対服従の命令を下せる魔法。
発動時には「ルーラの名のもとに命ずる」という命令を下して杖を相手に向けるポーズを取る必要がある。
魔法の射程は5m程。ポーズを維持している限り効力は続く。

【人物背景】
N市の廃寺を拠点とする魔法少女。
スイムスイムを始めとする複数名の魔法少女を従えてチームを形成している。
高飛車で傲慢な性格。完璧主義者であり他人にも厳しいが面倒見のいい一面も持ち、根は努力家。
かつては一流企業で働くエリート社員だったが、性格を疎まれて左遷させられた過去を持つ。

【令呪】
王冠を二本の交差した刀剣が貫いているような形状。
令呪の消費は左の刀(一画目)→右の刀(二画目)→王冠(三画目)。

【方針】
勝ち残る。
どうにかしてセイバーから主従の主導権を奪いたい。


759 : 名無しさん :2016/12/10(土) 19:37:45 sI04Anmo0
投下終了です


760 : ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:03:59 ZMho73cE0
投下します


761 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:04:38 ZMho73cE0




 小さな頃、一度だけ大きな映画館に連れて行ってもらったことがある。
 みすぼらしかったヒロインの少女は魔法使いや王子様と出会って、とても綺麗なお姫様になった。
 自分もいつか、こんな風に輝けるのかな?
 そう思うと、胸が躍った。
 いつか誰かが、この世界から連れ出してくれる。
 そう思って私は、ずっと待ち続けた。
 物語のヒロインみたいな、不思議な出会いを。








 その"出会い"は偶然か必然か。そもそも偶然と必然にどれほどの違いがあるのか。


 さわ、


 と木々を揺らせて吹き抜けた風に、微かに、ほんの微かに混じったその音。
 気付いた瞬間、関谷なるは胸の内に強烈な高揚感が湧きあがり、夜闇を街灯が照らす通学路を歩いていた足を止め、俯いていたその顔を驚愕に染めながら上げた。
 荘厳な音、とでも言えばいいのだろうか。
 桜舞う春風に混じるには酷く場違いな、例えるならば遥か遠い時代を綴った古めかしい書籍を捲るような、懐かしくも荘厳な音は、錯覚でもなければ聞き間違いでもなかった。

「うそ……」

 見上げた先にあったのは、山の中腹にある神社に続く参道であった。
 誰もいないはずの場所であった。古書を捲るような音が聞こえる余地などないはずだった。
 けれど、なるには確信があった。言葉では形容しがたい、しかし明確な意識によって、そこに自分の求めたものがあると言って憚らない。
 そして、なるの直感が正しいが故か。
 微かに聞こえていたその音は、特別鋭敏でもないなるの聴覚でもはっきりと分かるほどに、その距離を徐々に遠いものとしつつあるのだった。

 ―――うそ、行っちゃう!

「待って……!」

 置いてかないで……!

 言い知れぬ強迫感に突き動かされ、なるは神社の参道を全力で駆け上がった。音を追う、桜の花びらが揺れる山を必死に昇る。月夜に佇む千本鳥居を、潜り抜けるように駆け抜ける。

 関谷なるは夢見がちな少女であった。
 幼いころに見た御伽噺。彼女はそこに幻想の一端を垣間見た。運命的な出会いを果たすヒロインに憧れた。そしてそれは、今になっても尚消えない純粋な想いとなって彼女の内に深く重くつもっていた。
 颯爽と現れる白馬の王子様。
 不思議なおまじないを唱える魔法使い。
 かぼちゃとねずみが変身した馬車に、ガラスでできた綺麗な靴。色とりどりの花々が咲き乱れる草原に、踊るように歩く美しいお姫様。
 そんな綺麗な御伽噺に出会うことができれば、こんな自分でも何かが変わるのではないのかと。
 関谷なるは常日頃よりずっと、ずっと真摯に思い続けてきた。

 異なる世界に憧れた。綺麗な夢に憧れた。"何か"ができる自分に、特別な意味を持つ自分に憧れた。
 彼女は、自分に自信の持てない少女であった。
 だから。

「私も連れて行って―――!」

 何かを求めるように、差し伸べられた手を掴みたいと願うように。
 少女の手は、伸ばされて。



 ―――凛。



 と、澄んだ透明な音が、詩篇の存在を今に遺し。

「―――え?」

 関谷なるは、その手に確かな"何か"を掴み。
 次の瞬間、この世界から完全にその姿を消したのだった。





   ▼  ▼  ▼


762 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:05:03 ZMho73cE0





「私は聖杯に何も望まない。だが君のように巻き込まれた者のためならば、全力で努めを果たそう」



 いつも私を迎えに来てほしいと願っていた。
 普通の日常から私を連れ出してくれる、勇壮で勇敢な白馬の王子様。
 そんな人がいてくれたなら、何もかもが平凡な自分でも、何かが変われると思ってた。
 輝けると思ってた。
 特別な、世界に一人だけの、他ならない"私"になれるんだと信じていた。


 ………。

 ……。

 …。


 人の夢はあまりに儚く、嘘を吐く。一切は空。
 王子様(あなた)もお姫様(わたし)も、存在しない。
 目を覚ませ、安らぎの微睡みから。





   ▼  ▼  ▼


763 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:05:33 ZMho73cE0





「ぎ、があああああああああああああ!!?」

 一軒家を根城としてロールを与えられ、来る聖杯戦争に備えていた一組の主従。
 アサシンというクラスが故に気配遮断のスキルに頼り切り、油断していた彼らを襲ったのは形容しがたい異形のサーヴァントであった。
 異形。そう、アサシンたちは"彼"を目撃した瞬間、思わず攻撃の手を止め呆気に取られていたいたのだった。それほどまでに、そのサーヴァントは奇矯に過ぎた。
 第一の印象として抱いたのは、「炎」だった。
 燃え盛る炎が人の形をしている。そして炎の中の男は、総身を焼かれる激痛に苦悶の叫びを轟かせ、大口を開けて絶叫しているのだった。
 先の悲鳴はアサシンでも、そのマスターのものでもない。
 他ならぬ襲撃者自身のものだったのだ。

「ひぎぃぃぃいああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 異常極まるのはそれだけではない。異形の男は、しかし肉体を焼かれ損耗する傍から瞬く間にその傷を癒し、再度焼死の苦痛を味わい、その叫びを巨大なものとしていた。
 その目は何をも見ていない。宿るのは苦痛と狂気と、そこから逃れたいのだという狂おしいまでの渇望。
 そして、己にこのような苦行を強いる"全て"に対する、文字通り燃えるような憎悪であった。

「ッ!?」

 瞬間、異形の男の周囲に蒼白の魔術方陣が浮かび上がり、そこから巨大な「腕」たちがアサシンたちに向かって伸びあがったのだ。
 気配そのものは人だった。
 だが、人ではあり得なかった。
 「それら」は這いずり、のたうり、絡み合いながら、次々と吐き気をもたらすような変形と伸縮を繰り返し、戯画的なまでに伸びながらアサシンたちへと追い縋った。
 ある腕は地面に当たると挽肉のようにひしゃげて潰れ、またある腕は見当違いな方向に際限なく伸びながら無差別に周囲を破壊している。
 ずるずる。
 ずるずる。
 ひたすら展開される異常な光景。
 その、死人のように白い腕は肉でできていた。
 異形の肉の、塊だった。

「ぐぅ!?」

 次々と迫りくる腕を躱し、いなし、あるいは切り捨てるアサシンが、しかし遂に捕捉され握り上げられた。
 その異様な感触に、命の危機にあることすら忘却して上げそうになった悲鳴を、アサシンは寸でのところで呑みこんだ。
 ぎしぎしと骨が軋む。締め上げる力は、恐ろしい膂力だった。あまりに硬く、重い質量を有していながら、それはぶよぶよと屍肉のように波打った。
 握る力が威力を増す。アサシンは撤退の進言をしようと、真っ先に避難させたマスターに振り返った。そしてすぐ、見たことを後悔した。
 そこにマスターはいなかった。群がる無数の腕が蟲壺のようにおぞましく絡み合う中で、かつてマスターだった肉塊が死後の尊厳すら奪われるように掻き回され、最早人だった面影すらないほどに蹂躙を受けていた。
 アサシンは今度こそ悲鳴をあげた。
 後ろを振り返ったまま恐怖の形相で悲鳴をあげる。そんなアサシンを、更に三つの腕が掴み、締め上げた。

 血の華が、真っ赤に咲いた。





   ▼  ▼  ▼


764 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:06:11 ZMho73cE0





 人の気配も明かりもない真っ暗闇の部屋に、がちがちと何か硬いものを鳴らす音だけが響いていた。
 そこには一人だけ、人の影があった。隅に蹲り膝を抱え、何かに耐えるように歯を食いしばり、大きく見開かれた目だけが異様な存在感を発している。
 精神的に追い詰められているのだろう。目尻には濃い隈が浮かび、顔からは血の気が引いていた。がちがちと鳴らされる音は、根が合わない彼女の歯が鳴らす音だった。
 その少女は部屋にいて、しかし部屋から人の気配がしなかったのも当然の話だった。今の彼女はあまりにも生の気配が薄い。

「――――――……」

 ぶつぶつ、ぶつぶつ。呟かれるのは一つきり。
 焦点が合わない瞳はどこも見ていない。
 部屋の温度は冬場に差し掛かっていることを差し引いても異常なほどに低く、呟かれる毎に白い息が吐き出された。

「たすけて」

 少女は何も知らなかった。

「たすけて」

 少女はただ、憧れただけだ。

「たすけて」

 非日常。特別な何か。平凡な自分を変えてくれる劇的な出会い。

「たすけて」

 夢を見ていたかっただけだ。

「たすけて」

 綺麗なものを夢見ていただけだ。

「たすけて」

 子供ならば誰でも抱く、当たり前の感情。

「たすけて」


 ―――それがなんで、こんなことになってしまったんだろう。


「だれか……」

 ―――かみさま。

 かみさま。かみさま。奇跡なんていらないんです。
 ただ、わたしに。もとの場所へ、あたりまえだった陽だまりへ帰れるすくいをください。

「たすけてよぉ……」

 かみさま。かみさま。
 ふしぎな出会いを願いつづけておきながら、いまさらこんなことを願うなんて。
 わたしは卑しい、にんげん、ですか?


765 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:07:10 ZMho73cE0

【クラス】
キャスター

【真名】
メンドーサ@牙狼 -GARO- 炎の刻印

【ステータス】
筋力E 耐久EX 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
陣地作成:-(A)
自らに有利な陣地を作成する。
ただし現在は知性の喪失によりこの技能を失っている。

道具作成:-(A)
魔術的な道具を作成する。
魔戒法師であるキャスターは魔導具の作成にも長けていた。しかし現在は知性の喪失によりこの技能を失っている。

【保有スキル】
盗国の悪鬼:-(A+)
その奸計によりヴァリアンテ国を簒奪した策謀と手腕。
ただし現在は知性の喪失によりそれら技能の悉くを喪失している。

神性(偽):A
伝説の超巨大ホラー・アニマと融合したことにより手に入れた神の如き力。
本来アニマは神霊の類ではないのだが、キャスター自身の狂信によりこのスキルが付与された。

不死の祝福:EX
アニマとの融合によりキャスターは真実不滅の存在と化した。肉体の不滅は元より、その力の根源すら無尽蔵であるため、高ランクの魔力回復(自己)を内包する。
マスターの消失以外において、如何な外的・内的損傷を被ろうと、あらゆる魔術・呪詛による干渉であろうとキャスターが滅びることはない。
霊核が破壊されようと魔力の消費で瞬時に元通りとなる他、不老の加護により時の劣化を受け付けない。

精神破綻:EX
キャスターの精神は完全に焼き切れており、最早まともな理性も知性も存在しない。辛うじて敵性存在の認知とそれに対する攻撃の意思は残しているようだが、彼自身は戦闘時ですら自分が何をやっているのか理解できていない。
その精神性故に現状のキャスターはマスターの制御下を離れている。肉体と魂と魔力が不滅となろうとも、それらに比するには彼の精神はあまりにも脆弱に過ぎた。

【宝具】
『穿ち砕く偽神の巨腕』
ランク:A- 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:100
アニメとの融合により手に入れた「神の如き力」、その一端。
周囲に顕現させた魔導陣より長大な腕を召喚して殴りつける。性質は単純極まりないが元の存在規模が膨大なためその拳打の威力は驚異的。キャスター自身の肉体でもあるため、消費される魔力は非常に少ない。
本来であるならば神の如きという謳い文句に相違ない多種多様な神威を行使できるのだが、後述の宝具により精神が破綻している現在のキャスターにそれらの行使は叶わない。

『慈母の愛は此処に在りて(ラ・ピュセル)』
ランク:EX 種別:対罪宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
キャスターの総身を常に途切れることなく包み続ける浄化の炎。この炎は不滅となったキャスターの霊核すらも毎秒ごとに砕いて余りある強大なものだが、キャスター以外の存在には決して害を及ぼさない。そしてこの宝具は如何なる要因においても決して解除されることはない。
それはかつて愛する者を守るために殉死した一人の女が刻み込んだ炎の記憶にしてその刻印。本来であるならばこの炎を生み出す女の影が存在するはずだが、サーヴァントとなった現在においてその影はついてきていない。そのため行動不能であるはずのキャスターにも戦闘行為が可能となる程度の自由が生まれたが、朽ちることのない肉体を砕き続ける火力に代わりはないため彼の知性が復活することはないだろう。
かつて幼き黄金騎士が幻視したものは復讐の炎などではなかった。
ただ一心に息子を想う母の愛。その想いこそが永遠である。


766 : その出会いは奇跡のように ◆GO82qGZUNE :2016/12/11(日) 00:08:06 ZMho73cE0

【weapon】
穿ち砕く偽神の巨腕

【人物背景】
ヴァリアンテ国を「盗んだ」男。魔戒騎士や魔戒法師を異常なまでに憎悪しており、彼らを「血族を増やすことしか能のない卑しい獣の如き奴ら」と蔑んでいる。
物語終盤において超巨大ホラー・アニマと融合することにより不滅の存在となったが、「炎の記憶」から顕現したアンナの魂によって永遠にその身を焼かれ続けながら魔界に封印されるという壮絶な末路を迎えた。

【運用方針】
何をされようが決して死ぬことなく、強大な魔術を行使し、魔力の回復までできるという万能のキャスター……のはずだった。
しかし宝具の炎によりキャスターは毎秒ごとに殺され続け、再生にかかる魔力消費は回復する魔力を超えて余りあるものとなっている。魔術師の適性が存在しないマスターにかかる負荷は相当なものであり、現状のマスターは足りない魔力を精神と神経、そして魂を削ることにより何とか均衡を保っているに過ぎない。
だが、しかし。
本来在ったはずのキャスター、すなわち理性と悪心が健在な場合のメンドーサが呼ばれたIfを考えれば。死よりも尚おぞましい運命をもたらすであろう悪鬼の召喚が防がれたと考えるならば。
関谷なるにとって、この"幻想との出会い"はまだマシな部類なのかもしれない。

【サーヴァントとしての願い】
「願い」を理解できるほどの知性を、最早彼は有していない。



【マスター】
関谷なる@ハナヤマタ

【マスターとしての願い】
帰りたい。

【weapon】
ない

【能力・技能】
居合を嗜んでる

【人物背景】
由比浜学園中学の2年生。
自分のことを「何の取り柄もない、極めて普通な女の子」だと思い込んでおり、そのことに劣等感を抱いている。
一方、子供の頃に親と見に行ったおとぎ話の映画の影響でヒロインに憧れている。
本来であれば、作中を通して精神的に成長していくはずだったのだが……

【方針】
もう何も考えたくない。考えられない


767 : 名無しさん :2016/12/11(日) 00:08:25 ZMho73cE0
投下を終了します


768 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:02:50 B0uEYhlk0

皆様、お疲れ様です。
変わらずたくさんのご投下ありがとうございます。
どうにも見立てが狂って遅れてしまっておりますが、また一部ながら感想を順次述べさせて頂きます。



>よつぎサーヴァント

○○はつきもの、という言い回しに付喪神を絡めてくる言葉遊びで始まる本作。原作者がどなたなのかを予想させて、本文と合わせてニヤリとさせてくれますね。
続く、お調子者なサーヴァントの性格が実によく出た地の文で、遠坂さんまたウッカ凛しちゃったのねと思わず苦笑。
しかし余接も自負するだけあって、その実力は出自故のしぶとさと情報処理能力、スキルと宝具で応用に富む身体能力とかなりのもの。エクストラクラスの意地を見せます。
とはいえ、そのエキセントリックな性格が本当に玉に瑕。士郎達とはまた別の方向に余接に振り回される凛の心労が忍ばれます。
◆As6lpa2ikE氏、執筆お疲れ様でした。読んでいてついつい笑ってしまうような作品をありがとうございました!



>ルシウス・モデストゥス&ランサー

ローマ!(挨拶)
ローマを深く愛するテルマエ技師ルシウスの前に召喚されたのは、偉大過ぎるローマの建国王……これほどタイトルのクラス名だけで真名が看破できる組み合わせがかつてあっただろうか、いやない(反語)
そう思ってしまうほど出落ちじみたインパクトを初手で与えておきながら、最後の最後まで完成度たけーなオイ、流石ローマ。
ローマが宝具でローマを展開した瞬間、二人の重なる「ローマ!」の叫びに思わず釣られてこちらも叫んでしまいそう。読後は暫く脳内の感想がローマの一言だったので本当に素晴らしいローマ。
最早テルマエ・ロマエⅢ。ルシウスの完成させたテルマエに浸かり、「これもまたローマである」と頷くロムルスと感涙するルシウスの未来図が容易に相応できて困る。これがローマの魔力か。
地味にロムルスの宝具ステータスがEXランクにFGOマテから変更されているのは、彼が此度召喚された舞台が月であるからなのですね。最新作の設定回収までお見事なローマです。
◆7WJp/yel/Y氏、執筆お疲れ様です。偉大なる作品(ローマ)をありがとうございました!



>風と星に抱かれて…

仮面ライダー作品の中でも聖杯企画と好相性なウィザードから、ヒロインのコヨミが登場。
参戦時期はなるほど、メタ的に見れば死亡直前。晴人と引き離されて久しい時期の彼女の願いは確かに、笛木のように他者を犠牲にして我欲を叶えることではなく、ただ晴人の傍らに居たいというものでしょうね。
そんなコヨミのために戦うのは、残念ながらサーヴァントとしての晴人というわけではなく。しかしながら彼女もまた、竜を従えるライダー。しかも本来はそのような召喚が在り得なかった者が結ばれた縁に導かれ……滾ります。
コヨミの願いが叶うことを前提とした行動での気分転換や、コヨミのためなら奪う側にもなれるという覚悟を正直伝えてくれて、コヨミの不幸を本気で嘆いてくれる舞衣はもう、コヨミにとっても決して他人ではなく。
彼との関係を思えば軽々しく代わりと呼べるものではないとしても、舞衣もまた確かにこの箱庭での「最後の希望」なのだろうと、確信することができました。
◆T9Gw6qZZpg氏、執筆お疲れ様でした。熱を感じられる「暖かい」作品をありがとうございました!


769 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:03:51 B0uEYhlk0

>ロストフレンド

企画独自の設置として、ホームステイ推奨地となったスノーフィールドとはいえ、その寄宿先でも和食布教を速攻で完遂している東郷さんは流石過ぎるw
そんな東郷さんのサーヴァントは当企画初のシールダー。その英霊は、「東郷サン」より年下の女の子。続くやり取りを見れば、ああ、やはり彼女は、東郷さんが「東郷サン」になる以前の、戦友でした。
友達との思い出が失われることが何より怖いと語る「東郷サン」の前に、失われた記憶の中にいる友人が召喚されるのは、見事な縁召喚だとしても……銀の胸中を思えば、なんて酷い話なのでしょう。
勇者として散ったのだとしても、まだ小学生に過ぎなかった彼女が、大切な友達との絆を取り戻したいと願いを抱えることを誰が責められるでしょうか。
それでも、今度こそ彼女の絆をこそ守る決意を固める銀の悲壮さが痛々しい。銀の様子を目の当たりにした「美森」との間に、都合が良いとしても、未来で勇者達が勝ち取ったような奇跡が訪れることを祈らずには居られません。
◆deFECPYDAg氏、執筆お疲れ様でした。胸の切なくなる作品をありがとうございました!



>愛のフーガ

どこか桜井イズムを感じさせる文体の綺麗な情景描写で始まり、それを最後まで貫いた見事な作品。
神とのはざまの少女と、神ならざる万能の王の、人間への敵対や負の感情を重ねながらも最後は人間を信じた二人の邂逅。
小さな淑女と穏やかな紳士の間で交わされるやり取りは、なるほどこの二人でなければ縁は結べないであろうと納得させられる組み合わせです。
しかし、しかし。人の輝きを信じようと手を取り合ったはずの二人に残る不安。ダ・ヴィンチが人間を見通す秤と見出したありすの中に伏せられた願い。
圧倒的な能力を誇り、それ故に輝きだけでなく、人の闇をも目にして来た二人がどのように転んでしまうのか、最後まで目を離せない主従となりそうですね。
◆GO82qGZUNE氏、執筆お疲れ様でした。雰囲気演出の素晴らしい作品をありがとうございました!



>2000の技を持つ男達。

男達(マスターは女性)。しかしこれは夏目実加自身のことではなく、彼女にかつてサムズアップの薫陶を授けた英雄と、そして目の前に現れた元祖2000の技を持つ男の二人を指すわけですね。
というわけで二人目のローマ! 建国王ロムルスの再臨です! ロォォォーマッ!!
先行して登場した紛うことなきローマ臣民であるルシウスとのペアはこちらの思考もローマ化させる圧倒的ローマ力でしたが、そも神祖ロムルスにとってのローマとはその息吹を受け継いだ後に続く世界そのもの。
事実、遠い島国の平たい顔族ながらに古代ローマの薫陶を受け継いだ実加をただちに己が愛子として慈しむ様は、人を越えた視点を持つ超越者たるロムルスのキャラクター性を感じるのに充分な描写ですね。これもまたローマ。
その実加はテレビシリーズではなく、プロトタイプアマダムと融合したもう一人のクウガとなってからの参戦。主従揃ってのハイスペックで聖杯戦争で大荒れが予想されるスノーフィールドの刑事としての奮闘が期待されますが、数多くの外道を目の当たりにする可能性もある分、既に懸念されているように凄まじき戦士と戦そのものを起源とする者として宿すバーサーク適正だけは不安の種ですね。破壊のローマが誕生してしまわないか気がかりです。
◆yy7mpGr1KA氏、投下お疲れ様でした。サムズアップに相応しい作品(ローマ)をありがとうございました!


770 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:04:48 B0uEYhlk0

それと最後に、大変申し訳ございませんが、順番どおりと言いながら前々回の感想で、◆As6lpa2ikE氏の『Ace HUMAN』の順番を失念してしまっていたことに遅ればせながら気づきましたことを告白いたします。
当企画に多数の投下を頂いているにも関わらず、◆As6lpa2ikE氏、大変申し訳ございませんでした。深く謝罪申しあげます。
その一環というわけではありませんが、改めて感想を述べさせて頂ければと思います。



>Ace HUMAN

温和そうな中年が近づいてきたので呼び止めるマフィアの下っ端二人。完全に死亡フラグです、ありがとうございました。
案の定銃で武装した人間複数を相手に、しかも明確に脳天を撃ち抜かれながらけろりと復活して虐殺するおっさん。
しかしサーヴァントでもだいたいは頭を潰されれば死ぬ、というか銃でダメージを受ける時点で……と思えばやはりマスターだったのですね。人外スギィ!
ということでおっさんの正体は亜人の佐藤さん。サーヴァントよりよほど荒事が平気そうな迷惑な戦闘狂です。
あくまでプロフェッショナルであるアサシンこと物知りみっちゃんはこんなマスターにもしっかり仕えるでしょうが、地の文がより佐藤の異常性を映えさせる客観性を維持していたように、その狂気と理性、不死者と魔法少女の差がいずれ大きな齟齬を生んでしまいそうですね。
◆As6lpa2ikE氏、執筆お疲れ様でした。狂気を映えさせる工夫のされた作品をありがとうございました!



それでは私も、以前に『Gotham Chalice』様に投下した主従の流用となりますが、一作候補話を投下します。


771 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:05:42 B0uEYhlk0







     かつて世界の中心に、マナを生む大樹があった。



     しかし争いで樹は枯れ、代わりに勇者の命がマナになった。
     それを嘆いた女神は、天へ消えた。
     この時、女神は天使を遣わした。
    「私が眠れば、世界は滅ぶ。私を目覚めさせよ」
     天使は神子を生み、神子は天へと続く塔を目指す。



     ……これが世界再生の始まりである。






     そして旅に出た神子は、今――――遥か遠い偽りの街に取り込まれ、悪魔と邂逅しようとしていた。






◆◆◆◆






 金属質の、無慈悲な破砕音が奏でられる。
 長いプラチナブロンドの髪が視界の端で靡いているのを見て、コレット・ブルーネルは自らの体が後方へと投げ出されていたことに気づいた。
 次の瞬間には、薄暗い陰を掻き分けて、微かな凹凸のある人造石の床が視界の左半分を埋め尽くした。どうやら、そちら向きに転んでしまっているらしいと、一拍遅れて理解する。
 痛いことは嫌だけど、何も感じられないのはやっぱり不便だな、と……赤く染まった掌を見て、いくらか呑気が過ぎるかもしれない感想をコレットは抱いた。
 薄くではあるが、両の掌が裂けていた。厳しい旅の中で苦楽を共にしてきた金色のチャクラムは、敵の一撃を受け損ね砕け散らせてしまった不甲斐ない持ち主に、その刃を立てていたらしい。

 世界再生の旅で、数々の悪漢や魔物を仲間と共に退けて来た経歴から、荒事にも慣れてはいるつもりだった。しかし容易く武器を砕かれ、成す術なく追い詰められている現状を、神子は不思議でも何でもないことと受け止めていた。

 記憶を取り戻したその時点で、聞いたこともなかった知識は完全な形で授けられている。故に、既に察しはついていた。
 今、自らに歪で巨大な剣の鋒を向ける男が、サーヴァントと呼ばれる存在であることを。

 サーヴァント。人々に語り継がれる伝説を成した英霊を、使い魔として再現した事象。
 コレットが有無を言わせず参加させられることとなったこの戦いにおいて、要となる力であり――かつて世界の命運すらも、左右した存在なのだ。
 言うなれば、かつて古代大戦を終結させた勇者ミトスが蘇り、自分の敵として立ち塞がっているに等しいということ。世界を救済し得るだけの力が破壊に用いられるのに、助けられてばかりの旅も道半ばの己が一人きりで相対すれば、こうなるのも当然の結末でしかなかった。

 ……それがわかっていても、抗わずには居られなかった。

 ここではまだ、死ねないから。
 この命を捧げるべき場所は、生まれた時から定められている。
 その約束を果たさなければどうなってしまうのかも、知っている。

 村の皆や、旅先で出会った人達や、仲間や、彼の――ロイドの笑顔が、脳裏を過ぎって。
 円の半分が欠けたチャクラムをそれでも握り締めて、言うことを聞かない体に難儀しながら――背に生えた翼の浮力を利用して、コレットは強引に起き上がった。


772 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:06:36 B0uEYhlk0

「……少し待て、セイバー。謝罪が要る」

 コレットが起き上がった瞬間、一息に踏み込もうとしていた剣士に向けて、その背後に控えていた青年が待ったをかけた。

「失礼。婦人の顔に傷をつけるのは本意ではなかった。その前に苦しませぬよう刈り取らせるつもりだったのだが……」
「……面目次第もございませぬ」
 マスターである男に一瞥され、伝説の化身であるはずの剣兵の英霊は仮面越しに、確かな謝意を口から放つ。

 一方、言われてからようやく、コレットは己が頬を浅く切っていることを発見していた。
 さぞや見事な切れ味なのだろう。おそらく痛みは元から感じなかったに違いない。しかし……

「……そのご様子だと、貴女が無くされているのは言葉だけではないようだな」
 血の雫を拭った手の甲へと視線を走らせた様子を見咎め、セイバーのマスターである青年は、コレットの状態を言い当てた。
 微かに動揺するも、必要もないことだと判断したコレットは逃げる隙を伺うために彼らを睨めつけるが――そんな油断、どこにもなかった。

「差し詰め、願いはその身を癒されることだろうか? ……いや、このような詮索も無躾か。改めて謝罪しよう。
 何にせよその目を見れば、貴女にも切実な事情があることは伺える。
 しかしそれは我ら一族も、このセイバーも同じこと。悪いが矛を収めるつもりはない」

 主の宣告と同時、セイバーから放たれる威圧感が再び増大する。
 その研ぎ澄まされた殺意の重圧に晒された瞬間、コレットは必死に保っていた己の戦意が崩れ去るのを耳にした。

 ――――死ぬ。

 そんな確信が、コレットの全身に牙を立て、何も感じなくなったはずの肌を粟立たさせる。
 裏切ってしまう。皆の希望を。
 損なってしまう。ここまで共に旅をして来た、仲間達の努力が勝ち取る未来を。

 もう――本当に二度と、逢えなくなってしまう。ジーニアスやリフィル、クラトスにしいな、ノイッシュにコリン、ウンディーネ……それから、ロイドに。

 ――辛いのに、涙も出ないや。

「……せめてその意気が貶められることがないよう、安らかに眠らせると約束しよう」

 ごめんね、ロイド、皆……

 …………ううん、やっぱり、諦めたくないな。

 誰か――――――助けて。

「やれ」
 青年の、涼やかというには冷た過ぎる声音が、一方的に処刑を命ずると同時。
 眩い白光が、廃工場に充満した宵闇を切り裂いた。

 それによって生じた一瞬の空白の後。絶対の死の予感を前に、それでも諦めきれずに瞼を開いていたコレットは、見た。
 突如として出現した白と黒、そしてマゼンタに塗り分けられた双輪の獣が、重低音の咆哮を轟かせながらセイバーとそのマスターに猛然と襲いかかり、彼らを後退させるその様を。
 絶望の淵に現れた、救世主のその姿を。

「……随分と遅いご到着だな。大切なマスターが危うく死ぬところだったぞ? 無能なサーヴァント」
 無人で疾駆するバイク、その更に奥から現れた人影に向けて、セイバーのマスターが侮蔑を隠そうともせずに呟いた。
 それを聞いて、コレットはどっと肩の力が抜けるのを感じた。
 助、かった……?

「――知るか。俺は別に、サーヴァントだからマスターを助けに来たってわけじゃないからな」
 対し、先程何度か白光を放っていた箱を首から垂らした一人の若い男――白紙のトランプが変化した、コレットのサーヴァントであるはずの存在は、そんなことを宣った。


773 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:07:42 B0uEYhlk0

「……我が君。此奴、何やら奇妙にございます」
 不遜な返答に眉を寄せた自らの主に警告を発し、覆い被さっていたバイクを弾き返して一歩進み出たのはセイバーだった。
「この距離で、サーヴァントの気配を感じ取れませぬ」
「……成程。確かに、私の目から見てもサーヴァントとは確認できない。貴様を攻撃できているにも関わらずな」
 セイバーに弾き飛ばされた後も無人のまま自走したバイクを傍らへと控えさせ、コレットとの間に割り込むように歩んできた年若い男へと、青年は微かに険しさを増した表情で問いを投げる。
「マスターを助けに来たわけではないとも言ったな。ならば貴様は、彼女のサーヴァントではないということか?」
「いーや? 俺は確かに、その娘に召喚されたライダーのサーヴァントらしい。だがそんなことはどーだって良い。ただ……」
 そこで彼は――ライダーは、微かにコレットを振り返った。

「助けて欲しいって声が聞こえた。俺が来た理由は、それだけだ」

 ――この身から、声は。既に取り上げられているはずだというのに。
 自らに必要だからではなく、ただ、誰にも届かぬはずだった声が聞こえたから来たのだと――ライダーは、そう嘯いた。
 その時の眼差しと、安心させるようにして一瞬浮かべた笑顔を目にして。コレットは彼の存在に、覚えのない種類の、しかし確かな心強さを感じていた。

「お仕着せの役割なんかに従うつもりはない。俺のすることは俺が決める。おまえに文句を言われる筋合いはどこにもない」
「……随分と自由に物を言ってくれる。何なのだ、貴様は」
 青年の鋭い眼光に睨めつけられたライダーは、不敵に笑みを崩さぬまま白い箱を取り出して――それから一枚のカードを抜き取った。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ……変身!」

《――KAMENRIDE DECADE!!――》



 それがコレットの、世界再生の旅における十人目の仲間(ディケイド)との、出会いだった。






◆◆◆◆






「……それで、決まったか? コレット」

 聖杯戦争というシステムから――厳密に言えばライダーに、だが――自宅として与えられたマンションの一室。
 その中で昨夜のことを思い返していたコレットは、ライダーの問いかけに微かに身を強ばらせた……気がした。実際のところは、自分にはそれを感じることができないのだから、わかりようもないのだが。

「この聖杯戦争で、おまえはどんな道を選ぶのか」
 ライダーは己のマスターであるコレットに、決断を求めて来ていた。

「おまえの方針が決まらなければ、俺からはこれ以上何もしてやれない。昨日みたいに、決着を先延ばしに逃げるぐらいしかな」
 あのセイバー達との戦いを振り返り、ライダーは言う。
「とはいえ昨日のでわかっただろうが、いくら俺でもサーヴァント同士の戦いとなっちゃ骨が折れる。悪いが考える時間ばかりおまえにくれてやることはできない」
「(うん……そだよ、ね)」
 机を挟んで対面する己がサーヴァントの言葉に、コレットはやや気後れしながらも相槌を打つ。

 昨夜は、巻き込まれたばかりで気持ちの整理がついていないというコレットの状況を看破したライダーが早々に撤退を選択したことで、戦闘行為そのものはあっさりと収束した。
 それでもサーヴァント同士の対決の舞台となった廃工場は更地となり、またライダーは今後も敵対するかもしれない主従に打撃を加えられることなく、徒に手の内を晒したのみで終わってしまった。今後も同じことを繰り返せば周辺への更なる被害を招き、加えて言えばライダーとコレット自身が聖杯戦争という状況に追い詰められるのを座して見守ることとなってしまう。

 それを避けるならば、どんな形であれ、方針を抱えることが必要だ。目的さえあれば、瞬間ごとにする決断もそれを見据えて行うことができる。節操なく破壊を撒き散らすことも、無意味に追い詰められることも格段に減らすことができるだろう。

 だから――自分がこの聖杯戦争の中でどのように振舞うべきなのかを、しっかり考えて自分で決めろと。コレットは昨夜、ライダーに告げられていた。


774 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:08:30 B0uEYhlk0

 与えられた猶予は一日。今この時こそが、その答えを問われる時だった。

「どうするんだ? 聖杯があれば、シルヴァラントとテセアラ、二つの世界を両方とも救うことができるかもしれないし……何よりおまえも、死なずに済むかもしれない」
 既にコレットの事情を把握しているライダーは、彼女の抱えた悩みをそのまま、直球で尋ねて来た。

 旅の中で天使化が進み、最早声を発することもできない身ではあるが――契約で結ばれたレイラインを介してか、自身のサーヴァントとは、コレットも久方ぶりに体験する淀みない会話が叶っていた。
 それに浮かれてしまったために、ライダーとの語らいでつい歯止めを効かせ忘れてしまったのかもしれないと、コレットの中を微かな後悔が過ぎる。

「(わたし、は……)」

 ――コレットは元居た世界において、世界再生の旅に身を投じた神子だった。

 生命の源であるマナが枯渇し、死滅の危機に瀕した衰退世界シルヴァラントにおける救世主。旅を終え天使となることで女神マーテルを目覚めさせ、世界をマナで満たして再生させるために生まれて来た血族の、当代の神子。
 コレットはもちろん、自らの世界を愛していた。そこで暮らす人々に飢えることなく、死の影に怯えることなく生きて欲しいと願い。そのために神子としての使命を果たそうと、心に決めていた。

 それでも、今の彼女には微かに後ろ髪を引かれる要因が二つ、存在していた。

 一つは世界の壁を越えて現れた仲間、藤林しいなの故郷テセアラ。互いに見ることも触れることもできずとも、確かにシルヴァラントと隣り合い、限られたマナをお互いに搾取し合う関係にあるもう一つの世界。
 衰退世界シルヴァラントのマナは現在、繁栄世界であるテセアラに吸い上げられている。神子の執り行う世界再生の真相とは、その関係を逆転させる儀式なのだという。
 故に、シルヴァラントが再生すれば今度はテセアラが滅亡へと向かう。それを阻止するための使命を帯びて、コレットの暗殺に差し向けられたのがしいなだった。

 コレットは、シルヴァラントの皆が大好きで。だから、世界再生の使命を放棄するなんてことはできない。
 でも、しいなを見ていれば……テセアラの人々も、シルヴァラントの皆と同じで、日々を懸命に生きていて。なのにマナが枯れてしまえばどんなに苦しむのか、コレットにもその時の顔がくっきりと想像できてしまって……
 コレット同様、しいなもシルヴァラントの現状を見て迷いを抱き、二つの世界がともに救われる道がないものかと今はコレットに賭けてくれている。彼女との約束で、世界再生の旅の最後の目的地・救いの塔で待つ、コレットの父である天使レミエルに、何か方法がないものかと尋ねるつもりではある。
 しかし、それでテセアラも救われるという保証などどこにもない――聖杯の力があればあるいは、と縋りたい気持ちは確かにある。

 ライダーが口にしたもう一つの理由……世界を再生する天使となることと引き換えに齎されるコレット自身の死を、もしも許されるのなら回避したい、という欲求と同時に。

「声や、感覚や、食べて眠ることも……おまえが世界を救うために支払った物も、聖杯を使えば取り戻すことができるかもしれないぜ」
 淡々とライダーは告げる。あくまで一つの事実、一つの選択肢として、修羅の道の果てに茂る蠱惑の果実を提示する。

「(……ダメだよ。使えない)」
 それでもコレットは、その願いに蓋をした。

「(ううん……もしかしたら使うかも、だけど……そっちを優先にはできない、かな)」
「……どーいう意味だ?」
 値踏みするようだったライダーの表情に、初めて胡乱げな色が足された。
 そんな彼に連れられて、今日一日巡った先々で目にした景色を思い返し、コレットは確認のための問いをかける。

「(ライダー。NPCって呼ばれている人達も、外から聖杯に拐われて来た、普通の人なんだよね?)」
「ああ。そういった記憶も全部消されて、返しても貰えないまま強制された役割を演じるしかない……な」
 微かな怒りを滲ませたライダーの返答に、コレットも万能を謳う願望器への嫌悪を抑えきれないまま、自らの考えを述べる。
「(だったら、その人達も助けなくちゃって思うの)」
「……そいつらも、か」
 先に続く言葉を予想できたのだろう。ぽつりと呟くライダーに、コレットは頷いた。

「(昨日の人もね、ライダー。多分、悪い人じゃないと思う)」


775 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:09:15 B0uEYhlk0

 そもそも何故、彼らに追われていたのかと言えば。記憶を取り戻した直後の心身の乱れに膝を折ったコレットを、あのセイバーのマスターが介抱しようとしたのが発端だった。
 それで偶然、背筋に発現した令呪を見咎められ、命のやり取りにまでもつれ込んでしまっていたが……元を正せばあの青年も、この偽りの街のNPCと目した相手を、それでも気遣うような人格者だったのだ。
 ただ、それでも提示された願望器に縋らざるを得ないような事情があるだけで。
 そんな彼らを単に倒すべき敵と断じてしまうことは、コレットにはできなかった。

「(他のマスターも、NPCも……わたしも。聖杯戦争に巻き込まれた人、皆で元の世界に帰りたい。だから……この聖杯戦争を破壊して、ライダー)」

 コレット自身も含めた、聖杯に拐われた全ての被害者の生還。
 この偽りの街を破壊し、騙られた住民達のあるべき人生(物語)を再生する――ライダーの話を聞いた上で一日考えた結論が、それだった。

 とはいえ現状、それを成すための方法は見当もつかない。故に最終的には、聖杯を使う可能性も一応視野に入れておく必要があるとコレットは考えた。

 ただそのためは、他のサーヴァントを全て倒す必要がある。
 しかし彼らは、英霊の写し身に過ぎず、聖杯から離れればどれだけの間存在していられるのかもわからないとしても。遠からずそれを失くす自分とは違って……目の前に居るライダーのように、間違いなく彼ら自身の、心がある。例え本物ではなくとも、偽物でもない彼ら自身の心が。
 叶うのなら、彼らも犠牲にしないで済む方法を探したいという気持ちが確かにあることも――つまりは結局、覚悟が決まったとはいえず、またもライダーに厳しい戦いを強いてしまうかもしれないと伝えたコレットへと、彼は険しい表情で尋ね返した。

「……良いのか? それで、本当に」
「(うん……あのね、ロイドが言ってたの。目の前の人も救えなくて、世界再生なんかできるわけないって……だからわたし、まずは目の前にいる人から助けなきゃって)」
「どーかな。おまえに情けをかけられた全員が、救われたと思うとは限らないぜ。例えば昨日のアイツとかな」
「(うん、そだね……でも、きっとこんなやり方は間違ってると思うから。叶えた後に、その人の中に後悔が生まれないようなやり方を、探して欲しい)」
 そんなに強い想いが本物なら……どんなに困難でも。神様はきっと、その人に幸福な道を残していてくれるはずだと、コレットは信じていた。
 だから、この選択が自分の望みを押し通すために他者の願いを踏み躙るような行為になるのだとしても。これだけは譲れなかった。

「(元々、わたしの願いは……シルヴァラントが再生されて、皆が救われるって分だけなら、わたしだけでも叶えられるから。テセアラのことはまだわからないけれど、レミエル様達にお願いしてみたら済むかもしれないことで、誰かを殺すのなんて、嫌だもん)」
「……おまえは?」
「(わたしは……そのために生まれて、ちゃんと生きてきたから。もう、だいじょぶだよ)」

 そう、それで良いのだ。
 そのために、苦しい思いをしている世界中の皆から大切にして貰った。なのに今更、犠牲になるのは他の人に押し付けますなんて、そんなの、ダメだ。
 もちろん、もしも聖杯を使うことになって。その時、聖杯に余力があるのなら、願わずにはいられないだろうけれど……それを一番に据えるなんてことは、できない。

「……だいたいわかった。それがおまえの答えなんだな?」
「(うん……ごめんね、ライダー。折角助けてくれたのに何だか、台無しにしちゃうようなことを言って。
  でもお願い。勝手なのを許して貰えるなら……あなたの、力を貸して)」

 マスターでありながら、コレットはサーヴァントに頭を下げるしかできない。
 心理的な理由だけではない。そんな要因を無視しても、そもそもコレットには本当の意味で、ライダーを命令に従わせるだけの権利がないのだ。
 何しろコレットは、肉声を発することができない――即ち、絶対命令権である令呪を使うことができないのだから。
 もしここでライダーが、呆れたことを言う図々しいコレットを見捨てて出て行ってしまうとなっても。コレットには彼を止める資格も、術もないのだ。

 ――だが。

「……昔。ある悪魔が、いくつもの世界を巡る旅をしていた」
 ライダーが開いた口から放たれたのは、コレットの懇願に対する返答ではなかった。


776 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:10:22 B0uEYhlk0

「そいつには使命があった。世界が滅びる未来を変えるという使命が。
 そのためにそいつは訪れた世界で出会った者達と力を合わせて、それぞれの世界を脅かす邪悪と戦った。
 だが、それは間違いだった。そいつは仲間と力を合わせるのではなく、悪魔として彼らを破壊しなければならなかった」

 ライダーは語る。世界が滅びる未来を変えるため旅に出たという――天使となる神子によく似た宿命を背負った、悪魔となる破壊者の話を。

「創造は破壊からしか生まれない。滅びの未来を覆すには、一度全てを破壊するしかなかった。
 だから悪魔は、かつて仲間だった者達と争って、その全てを破壊して……そして最後に、自分自身を破壊した。
 悪魔が死んだことで、悪魔に破壊されたものは全て再生された。今度は定められた滅びの運命なんかもない、そこに住む者達の決断次第でどうとでも転ぶ真っ白な未来を許された世界が。
 だが、悪魔は死んだままだった。そいつが悪魔として死ぬことが、無数の世界を再生するためのたった一つの方法だったからな」

 ……悲しい物語だと、コレットは感じた。
 自分達、マナの神子が背負うそれと似ていて。だけど神子と違って、その悪魔の使命は、どんなに彼が苦しんでいる最中でも、誰にも感謝されたりしない。
 ただ延々と、自らの手でこれまで繋いで来た絆を断ち切って、孤独に死んでいくための戦い――その末に、かつて繋がっていた者達の平穏だけでも、守るための。

 結果として世界再生を成し遂げられたことは、彼にとってこの上ない報酬であり、救いだったのかもしれない。
 だとしても……死の間際、悪魔の胸に去来したのは、本当に達成感だけだったのだろうかと、想いを馳せずにはいられない。
 もしかして、だから彼は、コレットに――

「……それでも、かつて悪魔と旅をした仲間達は、それを良しとしなかった。旅の先で出会った仲間達も、悪魔のことを忘れなかった」

 しかし。コレットの予想に反して、ライダーの話はそこで終わりはしなかった。

「旅は間違いだったはずなのに。彼らは、使命を終えて消えた悪魔を取り戻すために戦った。
 ……その中の一人が言っていた。世界と誰かの命を天秤にかけるのなんて間違いだ。目の前にいるたった一人の笑顔も守れないなら、世界中の人を笑顔になんてできるはずがない……あの時も、九のために一を切り捨てて終わるような物語を受け入れなかったのは、そんな気持ちがあいつらにあったからなんだろうな」
「(……素敵な人達だね)」
 まるで、ロイドみたいな。
 彼にもそんな仲間がいたのだということに、コレットは胸の内が熱くなるのを感じていた。

「そんな仲間達のおかげで、復活することができた悪魔はもう一度旅に出た。今度は使命なんか関係なく、自分の意志で。及ばずながら人間の自由のために戦って、世界の壁を越えまた新しい仲間を作って、色んな奴らの物語を繋げて……それで今は、おまえの前に通りすがっている」
 予想の通り。ライダーがコレットに伝えていたのは――彼自身の、物語だった。

 薄々、彼がかつてコレットと似た運命を生きたのだということは察し取れていた。
 願いを抱えて聖杯の呼びかけに応じるという仕様上、サーヴァントは非業な最期を遂げた者も多いという。だからライダーも、その生前の無念から、同じ境遇を辿るコレットに聖杯を掴むよう促そうとして、こんな話をし始めたのではないかと思っていたが……違った。

「……サーヴァントっていうのは、相性の良い相手やよく似た性質を持つマスターのところに召喚されるらしい。
 ならきっと、あいつらとよく似た仲間を持つおまえのことも……俺と同じで、仲間が放っておいてくれやしない。
 だから、もしもだ。もしおまえが、ここで自分を助けることまではできなかったとしても……心配するな。おまえの仲間は、そんなところで終わる物語を認めたりしない。
 シルヴァラントもテセアラも、コレットのことも。きっとロイド達は、全て救うことを諦めない――俺は、そう信じてる」
「(ライダー……)」
 直接会ったこともないロイド達のことを、それでもライダーは信じてくれている。
 かつて使命のために犠牲になろうとした己を救った仲間と、よく似ているからと。
 それが、妙に嬉しくて……こんな体じゃなかったら、少し泣いてしまっていたかもしれないほどの感情を、コレットは心に覚えていた。


777 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:10:59 B0uEYhlk0

「だからおまえは、自分の信じた道を行け。そんな自由ぐらいは、俺が護ってやる。ロイド達の分も、ロイド達のところに還してやれるまで――それが勝手に決めさせて貰った俺の願いだ。だから、おまえが謝る必要なんかない」
「(うん……ありがと)」

 ――彼は最初から、コレットの選ぶ答えがわかっていたのかもしれない。
 何しろこの英霊は、かつて同じ宿命を生き抜いたのだから。

 だから、答えを導くまでの迷いもわかっていて。それを晴らさせるために、敢えて意地悪な選択肢も提示して。
 それでも選んだコレットの願いを、今度は後押しするために。誰のためでもなくコレットのために戦うと、仲間としての決意を表明してくれた。
 そして――仲間の持つ優しさを信じろと、コレットに希望を与えるために。彼は、自らの物語を教えてくれたのだ。



「……そーいや、忘れてたな」

 大きな目標も決まって、後はそれを実現するための手段を模索して行こうということで、話が纏まった頃。ふとライダーが、そんな呟きを漏らした。

「(どしたの?)」
「今日一緒に売り込みに行った時には出さなかった写真がある。一番出来が良いんだが、羽が生えてたおまえが写っちまってるんじゃ、他人に見せるわけにはいかなかったからな」

 昨日召喚されると同時、ライダーはまず牽制を宝具に任せ、戦いの現場を撮影していた。それがあの時の発光の正体だった。
 サーヴァントでありながら、ライダーはその特異なスキルのために聖杯から役割が与えられている。遠縁のコレットを居候させている、スノーフィールド在住のフリーカメラマンというのが今回の役割なのだそうだ。
 元々写真を撮るのが趣味だというライダーにとっては、聖杯戦争中でもフットワークが軽いこともあって好都合な役割だそうだが、当然カメラマンとして生活していくには写真を売り込む必要がある。
 そのために今日はコレットを伴い、数社のマスコミへ営業に行っていたのだ……結果は、いずれも不採用だったが。

 コレットからすると、ライダーの写真は芸術的で素敵と思えるのだが、どうも歪んだり謎の光が写り込んだりしているようではジャーナリズムに好まれないらしい。
 そして帰宅直後は酷評に憤懣やるかたない様子だったライダーの一番の自信作は、しかし、どうやら自分のせいで売り物にはできなかったようだ。

「(ごめんね……)」
「だから、謝る必要なんかないって言ってるだろ。そもそも俺は写真を撮りたいから撮ってるだけで、別に金が欲しいわけじゃないんだからな」

 そう言いながら荷物を漁っていたライダーは、目当ての写真を見つけ出すと――抜き取ったそれを、コレットへと差し出した。

「どの道神秘の秘匿とやらがある時点で、聖杯戦争に関わる写真なんか売りに出せるわけがない……とはいえ俺が持ってたって仕方ないからな。やるよ」
「(あっ……うん)」
 言われるがまま受け取っても、コレットも自分が襲われているだけの写真を貰っても――と、困惑したところで。
「(……ライダー)」
「なんだ?」

 ライダーが手渡してきた歪んだ写真には――そこにいるはずのない、鳶色の髪の青年の姿が映り込んでいた。
 サーヴァントと対峙するという絶望的な状況の中、なおもコレットを見捨てず庇って立ち向かおうとする彼の姿が。

 ライダーの写真の歪みだとは、わかっているのに。彼ならきっと、そうするのだろうということがありありと想像できて。

「(ありがと……大切にするね)」

 未来の希望を暗示するようなその紙切れを、コレットはぎゅっと抱きしめた。
 握っているという感覚もないまま。それでも既に失われたはずの暖かさを、確かにそこで覚えて。


778 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:12:35 B0uEYhlk0






◆◆◆◆






 ……旅の途中に訪れた新たな世界は、月に広がる電脳空間だった。

 魔法石の世界を訪れた時のように、予め役割とともに必要最低限の知識を与えられた状態で招かれたこの世界での自分は、“擬似サーヴァント”とカテゴライズされる存在であるらしい。
 厳密には未だ生者ながら――一応、死んだこともあるにはあるのだが――願望器を求めて古今東西、三千世界より招かれた英霊を従えし者どもによる殺し合いの参加者とされてしまったのだ。

 はっきり言って、付き合ってなど居られない。使命も既に終えた今、気に食わないお仕着せの役割を果たす義理などないのだから。
 どんな大層な理想を掲げようが、自ら人を傷つけることを是とする輩に従うことなどありはしない――サーヴァントとしての知識を与えられた時点では、彼はそのように結論していた。

 だが……助けを呼ぶ声を、無視できるような性分でもなく。そして自らのマスターとして宛てがわれた少女が、私利私欲で誰かを傷つけるようなことのない優しい心の持ち主であったから。
 彼女にも、従者として仕えるつもりなどありはしないが――かつての己とよく似た宿命に生きる少女の助けぐらいには、なってやりたいと思った。



 ……そうして。差し出した写真を抱きしめる己のマスターの姿に、おそらくはあの赤い服の少年がロイドなのだろうと見当をつけ、ライダーは考える。

 コレットが誰より信頼――というよりも、おそらくは慕っている少年のことを。
 本当に彼なら、コレットを神子の宿命から救うことができるのか――二つの世界を救うことができるのか、と。
 答えは、すぐに下された。

「――できるさ。俺達にだってできたんだからな」

 顔も知らないロイド達を信じることに、ライダーは躊躇いを覚えなかった。

 ……本来ライダーは、知人だろうが他人だろうが、人を信じることができなかった。
 似通った宿命を背負ったコレットのことはともかく。弱い彼には、他人の痛みをわかることができなかったからだ。

 故にライダーは、一人の友のことを信じると決めた。
 あいつは……優しいだけが取り柄の、バカだったから。

 だから。そんな友と同じような言葉を吐いたロイドのことなら、彼が実現を目指す理想なら、ライダーにも信じることができたのだ。

(待ってろよ、ロイド・アーヴィング。コレットは必ずおまえ達の世界へ……あるべき物語の中へ、無事に還す)

 それこそが、この世界に与えられた“擬似サーヴァント”というそれではなく、コレットの十番目の仲間となった自分が、果たすべき役割であると。
 ライダーのサーヴァント、門矢士――又の名を仮面ライダーディケイドは、誰にお仕着せされるでもなく。

 自らの意志で、歩むべき道を見出していた。







【出典】仮面ライダーディケイド
【CLASS】ライダー
【真名】門矢士
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A
【クラススキル】
騎乗:A++
 騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
 A++ランクともなれば、竜種を含む全ての乗り物を乗りこなす。

対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。


779 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:13:13 B0uEYhlk0

【保有スキル】
偽悪:D
 自らの属性を混沌・悪に偽装する。また日頃の言動が相手に悪印象を与え易くなる。
 但し相手に素性を尋ねられてから、「通りすがりの仮面ライダー」と名乗った場合、その声を聞いた全員に対して効果を喪失する。

異物の役殻:B-
 擬似サーヴァントという異物であり、そして訪れたその世界から、何らかの役割を与えられていることを示すスキル。
 此度の聖杯戦争においては、サーヴァントでありながらマスター候補同様、偽りの生活を送るための役割を獲得するスキルとして機能している。
 また宝具を発動していない場合、ステータスを喪失することでサーヴァントとしての気配を断ち、更に他のマスターに対しては自身がサーヴァントであると気づかれる情報を非公開にすることができる。
 但し擬似サーヴァントであるためにライダーは実体を有しており、霊体化もできなければ神秘を伴わない物理干渉も全て受け付けてしまい、また撮影した写真が怪奇的に歪んでしまう等のデメリットを付与されている。

次元戦士:A
 通りすがりの仮面ライダー。
 数多の並行世界を渡り歩いた経験から、同ランクの心眼(真)相当の洞察力を発揮することができるスキル。
 また異世界やそれに類する空間内において、その特定領域内でのみ適用される法則による影響をランクを問わず一律無効化し、ルールに縛られない活動が可能となる。
 ただし、その世界から与えられた役割だけは対象外となり、今回の場合はサーヴァントとしてマスターに現界や力の行使を依存するという制限からは逃れられていない。


【宝具】

『全てを破壊し繋ぐもの(ディケイドライバー)』
ランク:A 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 ライダーを象徴する変身アイテム、次元転換解放機が宝具化したもの。ライダーを未知の鉱物ディバインオレの鎧に身を包んだ戦闘形態である、仮面ライダーディケイドへと変身させる。
 変身後のライダーは疑似サーヴァントとしてのステータスと共に、世界の破壊者として、"世界に対する特攻"を獲得する。
 これにより、ライダーは自身の攻性干渉に対する、純粋な実数値以外のあらゆる防御・耐性・遮断・修正・復元・非実在性等の阻害要素を、それを成立させる物語(セカイ)の設定(ルール)ごと種別・ランクを問わずに全て破壊することができる。
 また、ライダーのクラスでは変身中のライダーの能力・兵装しか行使できないが、騎乗関連の能力のみ本来の姿である激情態の仕様を再現しており、カメンライドを介さずに『伝承写す札』で直接他の仮面ライダーの騎乗兵装の召喚・再現が可能となっている。


『縹渺たる英騎の宝鑑(ライドブッカー)』
ランク:C+ 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:10人

『全てを破壊し繋ぐもの』と番となる、ライダーのもう一つの象徴となるアイテム。
 無限の空間であるクラインの壷に通じ、無数に内包する『伝承写す札』を任意に出納できる本型のブックモード、限定的な多重次元屈折現象を引き起こした攻撃を可能とする剣型のソードモード及び銃型のガンモードの三形態を持つ万能兵装。
 この宝具はクラインの壷に通じているため事実上無尽蔵の魔力炉を内包しており、武器として用いる場合は実質魔力を消費せず多重次元屈折現象(アタックライド)を行使でき、更に事実上弾数制限が存在しない。
 但し、クラインの壷が通じていない他の宝具やライダー本体にその魔力を供給することはできず、また内包した魔力炉に無尽蔵の貯蓄があっても瞬間出力の問題から、擬似真名解放(ファイナルアタックライド)発動時には相応の魔力消費を要求されてしまう。


『伝承写す札(ライダーカード)』
ランク:E-~EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

『縹渺たる英騎の宝鑑』のクラインの壷内に収納されている、仮面ライダーの伝説そのものを結晶化した宝具。
『全てを破壊し繋ぐもの』を用いてそれぞれの真名を解放することで、歴代の仮面ライダー達それぞれの伝説を完全に再現する能力を得られる。

 但し、仮令擬似サーヴァントであるとしても、ライダーのクラスとして現界する場合カメンライド及びフォームライドに分類されるカードは、ディケイド自身のカード以外はクウガ〜キバの九人の仮面ライダーの内、サーヴァントとして召喚された時に選択した三人分までしか『縹渺たる英騎の宝鑑』から取り出すことができない。
 今回の召喚ではアギト・響鬼・キバの三人を選択しているため、他の仮面ライダーへの変身、及びその騎乗物を除く固有能力の行使は不可能である。


780 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:14:14 B0uEYhlk0

『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』
ランク:A 種別:対界、対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:10人

 大型二輪車の形をした次元移動機である、ライダーの愛車。ライダーが騎乗せずとも意思一つで無人走行も可能とする上、常時現界している代わりに性能を落とし宝具としての気配を絶つことができるため、日常生活でも他のサーヴァントに感知されることなく使用可能。
 本領発揮時にはライダー本体同様、特定領域でのみ適用される異界法則に縛られず、更には聖杯戦争の範疇を逸脱しない限りであればミラーワールドや既に展開された他者の固有結界内といった、ライダーが認識し得たあらゆる異空間への侵入、及び脱出を可能とする。
『縹渺たる英騎の宝鑑』同様クラインの壷に通じているため無尽蔵の魔力炉を内包しマスターの負担を要求しないが、『伝承写す札』によって他の騎乗宝具に変化している間はその限りではない。


『次元王の九鼎(ケータッチ)』
ランク:EX 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:1000人

『全てを破壊し繋ぐもの』を予め解放している状態でのみ解放可能な、ライダーの誇る最強宝具。
 仮面ライダーディケイドを並行世界の王者とされるコンプリートフォームへファイナルカメンライドさせ、更に紋章(ライダーズクレスト)に触れることで対応する仮面ライダーの最強フォームを分身体として召喚可能とするファイナルカメン端末。
 コンプリートフォームとなったライダーは筋力、耐久、魔力、対魔力の値が一ランク上昇し、更に召喚した分身の力をライダー本体にも上乗せで付加することができる。
 最大で九人の最強フォームを同時召喚・一斉攻撃することも可能であり、一サーヴァントという規格の中では最高峰の一角に食い込む大火力を発揮することも可能な切札中の切札。


【weapon】
・上記宝具及び、『伝承写す札』で召喚・再現できる各仮面ライダー由来の兵装
※『伝承写す札』は原則ムーンセルがディケイドが使用しているところを観測したカード(映像作品で使用描写のあるカード)のみ実装されている。今回の場合で言えば、トリニティ、バーニング、紅、ドガバキのフォームライドカードは保有していない。
 但しファイナルアタックライドのカードについては劇中同様、同名のカードでも複数の必殺技の中から状況に応じて任意に選択し発動することができるため、映像作品でディケイドが使用していない技も設定と実際に描写された公式媒体が存在するのなら特に明記せずとも再現可能。
 また、先述の通り、ライダーのクラス補正によりクウガ〜キバの九つの世界の仮面ライダーが保有していた記録のある騎乗兵装の類は例外として、その大部分を今回の召喚でも持ち込むことができている。
 具体的にはゴウラムやオートバジン、ジェットスライガーやキャッスルドラン等は映像作品でアタックライドカードが使用されていなかった、もしくは今回の召喚におけるカメンライド先として選択されなかった仮面ライダーの騎乗兵装となるものの、アタックライドで召喚・再現できる宝具として関連カードと合わせて持ち込むことができている。
 なお仮面ライダー電王自身が担い手というわけではないデンライナーやキングライナーは持ち込めておらず、一方でゼロライナーやガオウライナー、ネガデンライナーのカードは持ち込めたもののサーヴァントの宝具に過ぎないため、キャッスルドランともども「時の砂漠」へ侵入する権能を失っている。


【人物背景】

 真名、門矢士。
 素性不明で本人も過去の記憶がないまま、光夏海とその祖父が営む写真館にいつの間にか居着いていた謎の青年。
 ある日、突然始まった世界の崩壊に際し、そこに現れた『紅渡』から並行世界が互いに融合し消滅の危機に瀕していること、「世界を救うためにはディケイドが九つの世界を巡らなければならない」という使命を伝えられ、 仮面ライダーディケイドとして仮面ライダーの世界を巡る旅に出ることとなった。
 時に悪魔や破壊者等と罵られながらも、訪れた世界が直面する『滅びの現象』を各々の世界の仮面ライダーらと協力して打破し、幾つもの世界を滅亡の危機から救った士だったが、やがて訪れた「ライダー大戦の世界」で次々と仲間が消滅していく中で再会した紅渡に、それらの行いは使命を曲解してしまっていた誤りであったと明かされることとなる。


781 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:18:06 B0uEYhlk0

 彼やその仲間から自分の本来の使命である「破壊による全ての世界の再生」を宣告された士は遂に、『世界の破壊者』という使命とその運命を受け入れる。
 その後は並行世界に存在する全ての仮面ライダーを次々と襲い破壊して行ったが、最後は新たな仮面ライダーであるキバーラとの戦いでわざと倒された。
 士の死と同時に、ディケイドによって破壊されていた仮面ライダーが復活し、更に『滅びの現象』によって消滅していた世界までも全てが再生を遂げる。
 ディケイドの真の使命とは、「仮面ライダーの世界を一度破壊し倒されることで、消える運命にあった仮面ライダーの物語を永遠の物にする」ためのものだったのだ。
 物語が再生したことによって、全ての並行世界も『滅びの現象』から解放され変わらぬ存続を許されたが、ただ一人――この使命のためだけに生まれた物語を持たない装置である仮面ライダー、ディケイドこと門矢士は、世界再生のために捧げられた生贄として、消滅したままであった。

 しかし、物語を持たなかったはずのディケイドは真相を知った仲間達の想い、誤りであったと断じられていた旅の中で出会った者達との絆を自身の撮っていた写真に込められたことで「仮面ライダーディケイドの物語」を得て、他の存在同様に再生、復活を遂げる。

 その後のスーパーショッカーとの戦いや、魔宝石の世界、さらには沢芽市に出現した地下帝国バダンとの戦いに、世界の破壊者ではなく「人類の自由を守る」仮面ライダーの一人として通りすがり、新たな物語を繋ぐために旅を続けていることが確認されていた。



 そんな旅の途中、彼が此度訪れたのは、月の眼により偽りの聖杯戦争が再現された特異の世界。
 異世界から招かれたマスターの一人である、コレット・ブルーネルという少女のサーヴァントとなることが、彼に与えられた役割であった。
 使命を終えた今、お仕着せの役割に従う義理はない。故に従者の役を与えられようと、自由を愛する彼がその立場に束縛されることはない。

 ただ――かつての己と同じ宿命を背負った、妹と同じ年頃の少女の助けになりたいという感情だけを理由にして。
 仮面ライダーディケイドは、新たな戦いに臨む決意を固めた。


【サーヴァントとしての願い】

 コレットの十番目の仲間としての役目を果たす。


【基本戦術、方針、運用法】

 このライダーは正式なサーヴァントではなく、その特質から「コレットのサーヴァント」という役割を与えられた異世界からの訪問者、擬似サーヴァントである。
 そのため役割に合わせて半霊化するなど存在が変質している部分も多いが、彼はれっきとした生者であり、肉体を魔力によって作っていないため、通常のサーヴァントとの差異が多く存在する。

 第一に言及すべきは霊体化ができないことであり、加えて睡眠や食事などの生理現象の維持を必要とする点が上げられる。彼の場合は更に、最低限とはいえ既に社会的な立場も与えられてしまっているなど制約は多い。
 また厳密には「仮面ライダーディケイド」の状態が擬似サーヴァントであるため、通常時のライダーはサーヴァント特有の気配を持たない代わりに、他のサーヴァント特有の気配を感知することもできない。
 一方、現界の維持にマスターの魔力を一切消費しない擬似とはいえサーヴァントであり、宝具の行使にはマスターからの魔力供給を必要とする点には変わりはなく、無制限な変身は不可能となっている。

 それらを差し引いて純粋にサーヴァントとして見た場合、並行世界に存在する仮面ライダーの力を受け継ぎ、その物語を守るために戦った世界の破壊者という存在の特異性もあってか、騎兵クラスの該当者としても異例なほどに豊富かつ強力な宝具を所有している。
 しかし擬似とはいえサーヴァントという規格を役割と共に与えられ、それに応じて個体能力の調整を始め様々な変質が起こっている。カメンライドできる仮面ライダーの姿が限られていることは最たる弱体化要素として挙げることができるだろう。
 他にも騎兵のクラス故、宝具の強力さと引き換えに個体能力は抑えられており、純粋な白兵戦では本職の三騎士クラスには及ばず、強力な宝具ほど魔力消費や神秘の秘匿の観点から運用が限られる等、実際にはその潜在能力を基準値として見るのは非現実的だろう。


782 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:18:52 B0uEYhlk0

 また能力の相性上、「特定の性質を持つ・持たない者への耐性」や「問答無用の無敵・不死」といった搦手や性質的条件に頼る相手には文字通り滅法強いが、対粛清防御を始めとする一定ランクや割合分ダメージを削減あるいは無効化するスキルや宝具、はたまた一定回数復活することができる命のストックを持つといった、性質ではなく有限実数値に拠る強さを誇る相手には通常のサーヴァント同様に苦戦を強いられることとなる。

 単体で勝ち進むことも充分視野に入れることのできる強力なサーヴァントではあるが、情報収集等の弱点の解消やライダー自身がどのような役割でも万能な活躍を期待できる、集団戦でこそ真価を発揮するタイプのサーヴァントであるとも言えること、そして何より最終目標から考慮すると、目的を同じくする仲間を早期に発見することが安定性を増す必勝パターンになると言えるだろう。

 なお、ライダーは前述通り生者であり擬似サーヴァントに過ぎないが、これまたこの世界においてはその役割に合わせて在り方が変質しているため、脱落すれば他のサーヴァント同様『■■■』が残ることとなる。




【出典】テイルズオブシンフォニア
【マスター】コレット・ブルーネル
【マスターとしての願い】
 聖杯戦争に巻き込まれた人々を、可能な限り元の世界に生還させる。
 ……もしも聖杯に余力があれば、テセアラを衰退させず、自分が犠牲にならなくてもシルヴァラントを再生させられる手段を得たい。

【weapon】
 チャクラム(破損中・使用不可)

【能力・技能】
 天使化した影響で魔術を扱えるようになっており、元は純粋な人間ながら一流魔術師にも遜色しない魔力供給をサーヴァントに可能とする。
 視覚と聴覚以外の感覚や声を失っているため、事実上当人の戦闘力は失われているが、天使の羽を用いた飛行等一部の能力は残されている。また、天使化の影響で食事と睡眠が不要(正確には、不可能)。
 但し、『■■■■』すると――――

(なお当企画内では、参戦時期直後の救いの塔で発声できなくなっていたコレットの声がロイドに聞こえたのは、アストラル体(霊体)となっていたイガグリ老やアリシア同様、クルシスの輝石の侵食によって心身分離に近い状態となっていたためであると解釈し、それに近い状態にある現在のコレットは同じく半霊体かつ因果線で繋がっているライダーにのみ、その術を知らずとも本来の声が届く範囲内で念話が可能となっている)


【人物背景】

 衰退世界シルヴァラントにおけるマナの血族の末裔。宝玉「クルシスの輝石」を握って生まれたことで神子として育てられ、十六歳のある日に神託を受け世界再生の役目を背負うことになる。
 神子という立場からイセリアの学校では浮いている存在であったため、友達になってくれたロイド・アーヴィングに単なる幼馴染以上の仄かな想いを抱いていた。
 
 世界再生の神子として各地の封印を解き、救いの塔を目指す旅に出ることになったコレットは、ロイドを始めとする仲間達と共に故郷イセリアを出発。人類を虐げる邪悪な闇の一族・ディザイアンによる妨害を受けながらも、それらを退け世界再生のために旅を続ける一行の前に、やがてコレットの命を狙う暗殺者・藤林しいなが現れるようになる。
 人間でありながら世界再生を拒もうとする彼女の存在を不可思議に思っていた一行は、後に恩義ある町のためディザイアンと戦った成り行きで同行することになったしいなからシルヴァラントと隣り合うもう一つの世界・テセアラの存在を知らされる。
 現在シルヴァラントが衰退し滅びに向かっているのはテセアラにマナを吸われているからで、コレットの世界再生の旅が完遂されてしまえばその関係が逆転してしまう故に、現在のテセアラを守るために差し向けられた刺客こそがしいなの正体だったのだ。


783 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:19:18 B0uEYhlk0

 真相を知ったコレットはシルヴァラントもテセアラも、等しく救われる方法がないものかと心を痛めるようになるものの、二つの世界を等しく救う具体的な解決策が見えないまま、救いの塔へ――世界を再生する天使となるために、人間としての死が定められた場所へと向かうその時を、迎えつつあった。
 ……永遠の別れが訪れることを、ロイドに云えないまま。



 封印を解くに連れて天使として肉体が変化し始めると、紫色に輝く光の羽を纏って空を飛べるようになるなど超常的な力を得、視覚や聴覚も強化されたが、代わりに味覚や痛覚に触覚、眠気や疲労、果ては言葉など人間としての営みを徐々に失っていくことになった。
 最終的には精神や記憶まで喪失し、世界の再生と引き換えに、コレット・ブルーネルという人間の少女は事実上の死を迎える運命を定められている。
 そんな宿命の中で育てられた影響からか自己犠牲心や責任感が非常に強く、原作中での選択肢では一貫して「危険よりも人の命を気遣う」ことを好む。


【参戦方法】
 救いの塔に赴く前日、ハイマで偶然拾った白紙のトランプに導かれて参戦


【令呪】
 うなじの下側(胸のクルシスの輝石の対となる位置)に刻まれた、三つに分割可能な形で描かれた八枚羽型


【方針】

 聖杯戦争に巻き込まれた全員の脱出を最大の目標とし、そのための手段を模索。他の可能性が見つからない場合には、最終手段としてサーヴァントのみを倒すことで聖杯獲得を狙う。
 当面は志を同じくする同盟相手を探したい(……が、コレット自身は喋れないため、他者に悪印象を持たれ易くなるスキルを持つ上に指図されることが死ぬほど嫌いなライダーに交渉役を任せるしかなく、やや苦戦が予想される)。
 なお、コレットはライダーが擬似サーヴァント――未だ生きた人間であることを告白されておらず、現時点ではその事実を認識していない。


784 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/11(日) 01:19:56 B0uEYhlk0
以上で投下を完了します。


785 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/11(日) 06:33:52 PWqcsT.s0
拙作「未来と欲望と思い出の欠片」を修正させていただきました。


786 : ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:42:02 jcIpia4w0
投下します


787 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:45:11 jcIpia4w0



――――ざん、ざざん。



遠く、聞こえる。



――――ざん、ざざん、ざん。



寄せては返す水の音。
通り抜ける潮の匂い、踏みしめる砂の柔らかさ。
細めた目に染み込むような、強い、鋭い、日差し。



――――ざん、ざん、ざぁ。


遠い波の音に紛れて。
隣を歩く誰かの声。
懐かしい、いつかの言葉。


―――ー―……ゃん。


陽ざしよりもきっと、眩しくて、暖かい。
誰かの笑顔。



―――――ぎ、ちゃん。



守りたいと思った。
一緒にいたいと願った。
いつまでも、何度でも、この場所に。
帰って、きたいと。



――――帰ってきたら、伝えたいことが……。


遠く、聞こえていた。
寄せては返す波の音。

今はもう、何も聞こえない。
真っ暗な海に沈みながら、私は思い出す。

帰るべき場所。
私を、待っていてくれた誰かとの、いつかの風景。







###


788 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:47:22 jcIpia4w0







声が、聞こえた気がした。


どこまでも凪いだ海の中。
その底の底、敷かれた石の揺り籠の上、私は薄らと目を開ける。
こぽこぽと昇る空気の球を、ぼんやりと追うように。
青で満たされた景色を、視界いっぱいに吸い込んだ。

「……ぁぁ」

綺麗だなぁ。
なんて気の抜けた言葉がフワフワとした頭の中を漂って、
感嘆の息となって口から零れ、コポりと、水中を昇っていった。

見上げる遥か上方の海面から、僅かに降り注ぐ光のカーテン。
震えながら昇っていく碧いビー玉のような気泡。
隊列を組んで泳ぐ虹色の魚たちの群れ。
カラフルな手を振る鮮やかな海藻の草原。
降り積もる、雪のようなデトリタス。

ずっと憧れていた海の世界。
目の前に広がる景色はどこまでも澄んでいて、昔の私が願った通りに煌いて。

だから私は、きっと笑っていたんだと思う。
今の自分の状況を、分かっていながら、それでも。
閉ざされた海底で、海神様の、海にとけたカミサマの、生贄となった今でも。

『―――!』

無音の世界で、声がするならそれはきっと、私の心の中の声。
いつか聞いた、過去の声。

『―――みうなぁ!』

誰かが、私を呼ぶ、声。呼んでいた、声。
ついさっきまで呼んでいた、いや、それは今目覚めたばかりの私の、体感でしかなくて、
もしかすると遥か昔に、気の遠くなる程の、どうしようも無いほどの年月を隔て、耳に届く彼の叫び。

『―――みうなあああああ!!』

私を呼んだ。
呼んでくれた、誰かの声。
私の、大好きな人の、声。


『―――奪ってくれよ、俺の心を! そんで美海を助けてくれよ!』


今はもう聞こえない。
私の心の中にしか無い、光の声。

大好きだった。
守りたいと思った。
彼を、『彼の好き』を私は守りたかった。
だから、これでいいって、思った。

私は守る事が出来たのだから。
『彼の本当のすき』を。
だからきっと、思う事があるとすれば一つだけ。


789 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:47:49 jcIpia4w0


「光は、ばかだなあ」

もう届かない声を、いつかの彼へ。
こんなにも私は、嬉しいのに。
私を呼ぶあなたの声が、私を思って悲しんでくれる声が、涙が溢れるほど、
辛くて、痛くて、なのに、嬉しいから。

私は、嬉しかったから。嬉しく、なれたんだから。
あなたを好きになって、良かった。
だから、心なんて無ければいい、なんて、言わないで、って。
ああ、あの人に伝えてあげたいな。

「それに海神様も、ばかだ」

そして私を包む白き繭。
全身を厚い“胞衣(えな)”で守るように捕える、海にとけたカミサマへ。

「人を好きになる心は―――」

ダメじゃない、って。
伝えて、あげたかったな。

海は今も凪いでいる。
美しさだけを、永遠に閉じ込めたまま。
とり返しがつかないほど隔絶した時間と、たくさんの溶けた想いだけを流れさせて。

光も、海神さまも、おじょし様の気持ちも。
海に漂う感情のすべてを、今の私なら分かる。
新たなおじょし様になった私の中を、過去現在、そして未来の感情が通過する。

だから、それが、きっと私の心のこり。
私の願い。
伝えたい、会いたい、小さい頃ずっと憧れていた海の中から、
ずっと待っていた陸の、あの日々。
あの、暖かな、場所へ、伝えたい。

「―――――ぃ」

声が、聞こえた。

「―――――かえりたい、なぁ」

それは私の声。
私の願い、私の、もう叶わない願望の―――


『―――――還り……たい……』

違う。
それだけじゃ、ない。
声が、聞こえた気がした。

私の声に共鳴するように、被さるように流れる声。
流れる、『今』の感情。

見上げる海中。
そこに、あった。

海流に乗って、目の前にひらりと届く、一枚の漂流物(トランプ)。
ひらひらと送り届けられたそれが、一瞬、
紅い華のような髪飾りに変わったように幻視して。

ぱらぱらと、散らすように降りる花びらへ。
私は、つい、反射的に手を伸ばす。
無意識に、私を守るエナすら突き破り、指先が触れて。

「かえり、たい」

掴んだ髪飾りから流れ込む蒼い焔。
―――抜錨。
刹那、全身を走り抜けた鮮烈な感情が、私を深海から引き揚げた。


###


790 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:49:56 jcIpia4w0



「美海!」

隣から呼ばれる声で、私――潮留美海――は意識を浮上させた。
くわん、と一瞬酩酊、前後不覚に陥りつつも、深呼吸すればすぐに平衡感覚が戻ってくる。

ゆっくりと緩慢な動作で隣を伺えば、友人が少し眉間に皺を寄せた怪訝そうな表情でこっちを見ていた。
しまったなあ、と私もつい表情が強張るのを自覚する。
また、あの夢を観ていたらしい。

「ぼーっとしてたよ、どした?」
「あ、うん、ごめん……」

曇り空の下の通学路。
友人との帰り道。
その真っ最中、私は数十秒間くらい空を見上げたまま固まっていたらしい。
隣から怪訝な、いや心配そうな視線が突き刺さる。

「美海、最近ちょっと変だよ」
「ごめん、大丈夫……だから」

首を振って、歩を進める。
学校に通って、友達と帰って、眠って、次の日も同じ繰り返し。
私は何の疑問もなく、ずっと繰り返していた。

「じゃあ私、こっちだから」
「うん、また、ね」

親友と別れ、一人帰路につく。
もう一度、今度はハッキリとした意識で、曇り空を見上げてみた。

「ぬくみ……雪……」

頬に柔らかい感覚。
その意味を噛み締めるようにして、私は家路を急いでいた。

家が近づくにつれ、より意識が鮮明になる。
置かれた状況が頭の中に書きこまれていく。

玄関を開けて、靴を脱ぐ。
お母さんの声は聞こえない。

コートを脱いで、鞄を置いて、手を洗う。
弟の晃の声は聞こえない。

自室に向かって歩いて行く。
きっと夜が来て、どれだけ待っても、
お父さんの声は聞こえないだろう。

凪いだ海から届く潮の匂いすら、この場所では遠い。
ドアを閉めて、自分の部屋の隅で座り込む。
日が沈むまで、ずっと、そうしていると。

「目覚めたのですね」

声が、聞こえた気がした。
それは私の家族の誰でも無い、女の子の声だった。

「うん、本当は三日くらい前から、分かってた」

声だけの存在に、私は応える。
誰もいない、居なくなってしまった家の中で。

「もう、あなたの姿を見る事も、出来るんだよね?」

この世界における、唯一の同居人に。

「始まっちゃうん……だよね」
「はい、始まります。聖杯戦争が」

宣告と共に。
ぱらぱらと、砂が擦れるような音と共に、花びらみたいな欠片が集まる。
像を結んだそれは、女の子の形をして、私の隣に座っていた。


791 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:50:21 jcIpia4w0

綺麗な人だ、と。
最初に思った事はそれだった。
年は私と同じくらいだろうか、セーラー服に紺色のパーカーを羽織った少女。
パーカーのフードで隠れた髪型は分からないけど、
そこからちらりと覗く紅い長髪、そして端正な顔立ちに一瞬、息が詰まる。

胸を締め付けられるような、苦しい気持ちになる。
何故かって、それは――

「私は、睦月型2番艦」

寂しげに、優しげに、微笑む彼女のパラメーターが、私の目に少しずつ映し出される。
マスターである私には、サーヴァントである彼女の全てが知らされる。
彼女の名前、彼女の武器、彼女のクラス。

「如月と申します。おそばに置いてくださいね」

そしてほんの少しの、彼女の想い。
いつかどこかで、海にとけた、感情。
私のエナに触れて、合わさった気持ち。

戦う覚悟も、何もかも、
きっと私には足りなくて、だけど、
ただ一つ分かる事があった。

「私は、駆逐艦」

彼女はゆっくりと立ち上がる、ひらりとスカートが浮き上がり、
砂の擦れるような音が、何処か遠くで鳴った。

「貴女を乗せ、貴女を守る、一隻の船」

目指す場所へと送り届けるモノ。

「貴女の、サーヴァントです。マスター」

改めて名乗る彼女に、私は一言だけ、告げる。

「私、きっと弱いよ」

間違いなく、すぐに死んでしまうだろう弱小マスター。
貴女の願いを、きっと私は――

「大丈夫」

けれど彼女は、儚く、強く微笑んで、言い切った。

「私は駆逐艦。
 ここが海である限り、貴女を守り通します」

発せられた言葉の違和感につい、表情を強張らせてしまう。
海、海と言ったのだろうか、彼女は、このスノーフィールドの地を。
そのどこが果たして―――

「海よ」

彼女の、如月さんの身に纏うパーカーのフードが、落ちる。
瞬間、蒼白い光が、部屋を満たした。
そう、ここは、この世界は、

「ここは、月の海」

スノーフィールドである前に月の、電子の海の底にある。
ならば彼女の、駆逐艦の立つべき戦場に他ならず。
艦娘の、果たすべき役目とは、

「私は貴女を守る為に。――還すために来た」

フードから零れ、はらりと広がる長髪。
袖口から覗く、黒い痣。
私を見つめる真紅に染まった、片目の輝き。
そして、頭部には―――

「貴女の″帰還″。それこそが私の願い」

ゆっくりと、煌きながら霊体化していく彼女は、そのとき初めて自身のクラスを口にした。

「私の、アヴェンジャーとしての役割だから」


###


792 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:51:22 jcIpia4w0



――――ざん、ざざん。


未だ耳に残る残響を塞いで深く息を吸う。
美海を残したまま霊体化により部屋を出た如月は中庭で像を結び、
夜風にあたりながら星を見上げていた。

スノーフィールド、偽りの聖杯戦争。
波の音も、潮の臭いも、強い日差しも此処には無い。
そしてあの、眩しい笑顔も。


――――如月ちゃん。


名前を呼ぶ声がする。
大切な人が居た。
ずっと一緒にいたかった。
笑っていて欲しかった。
大好きだった。

果たせなかった約束。
落ちていく海の底。
真っ黒に染まる視界。
塗り潰されていく、想いの全て。

「こんなになっても、まだ沈めない、なんてね」

如月が虚空に呟いた途端、全身に変化が訪れた。
袖口から覗いていた痣がじわじわと指先まで伸びていく。
ゆっくりと脱色していく髪と肌の色。
焔の灯る片目。
そして、頭部を飾る数本のツノ。

他でもない人類の敵、深海棲艦に近い姿に変じた肉体を自嘲しながら、
如月は此処に至るまでを想起していた。
轟沈の記憶。
深海と海上を廻る残酷な連鎖の真実。
そして、アイアンボトム・サウンドの決戦、その結末。

「でも、マスターが良い子で良かった」

行き場を失くし、海中を漂っていた如月の想いを、
彼女は、潮留美海は拾い上げてくれた。
その気持ちに報いたい。

大切な友達との別れは、もう、済ませたから。
ここから先はきっと、ただの我儘だ。

駆逐艦如月の、駆逐艦としての、役割に殉じたい。
覆せぬ運命を打倒する。
過酷を極める聖杯戦争において、
決して勝ち得ぬ彼女の、非力な潮留美海の″帰還″をもって達成する。

それが如月とっての、運命の軛への『復讐(アヴェンジ)』。
潮留美海の想いの正しさを、この閉ざされた深海から、彼女の陸へと送り届ける。

その為ならばいま一度、深海の底に沈もうと構わない。
喩えこの身、この想い、全て。



―――海色に溶けても。




###


793 : 海色に溶けても ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:52:07 jcIpia4w0


―――旗を振ろうと思った。



外に消えた気配、如月さんの向かった方向を目で追って、
もうすっかり外が夜になっていることに気が付いた。
月の光が私の部屋を蒼白く照らし、まるで海の中にいるようだった。
いや、実際いま私は海の中にいる。今もまだ、私は海の底にいるんだ。
今までとの違いは、海神様のエナに守られていないってことだけ。

私を守ると言ってくれた如月さんの為に、何が出来るか、私はずっと考えていた。
これから始まる恐ろしい全てを、考えないようにしていた、だけかもしれないけど。

事実、私は弱い。
自分に戦争に参加して生き残れるような力があるとは思えないし、
人を殺せるかどうかなんて、考える事すら出来なかった。
だけど、あの人の、如月さんの気持ちを蔑ろには、したくなかった。
私の事を守ると言ってくれた人の為に、今の私の精一杯で、出来る事をしたいと思った。

今の私にできること。
今までの私に、できたこと。


―――かえりたい。


また、声が聞こえた。
それは耳に残る過去の声、確かに、あの海の底で聴いた声。
ああ、そっか、そうだったっけ。

「あの人も、私と同じなんだ」

いつか、目に焼き付いた景色がある。
みんなを導く為に先頭に立つ、私の憧れた人の姿。
誰も迷わないようにと、旗を振った彼自身にも、必要だったように。

「如月さんも、帰らなきゃ、いけないんだ」

彼女が迷わないように、私はこの場所でもう一度。
旗を、振ろうと思う。

海に溶けた感情を。
私のエナに触れた彼女の想いを、彼女が語らない本当の気持ちを。
彼女がもう、二度と、見失わないように。

凪いだ海の底で、迷わないように。
私はここで、彼女の旗に。



「如月さん、帰ろう……一緒に」




―――月に、なりたいと思った。


794 : 潮留美海&アヴェンジャー ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:55:42 jcIpia4w0

【出展】劇場版 艦これ
【CLASS】アヴェンジャー
【真名】如月〔オルタ〕
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力D+ 耐久C+ 敏捷B+ 魔力E+ 幸運E- 宝具C++
(深海棲艦化によるそれぞれのステータスへの影響有)

【クラス別スキル】
 復讐者:C
 詳細不明。
 彼女の場合、艦娘かそれに準ずる属性に対し効力を現すと考えられるが……。

 忘却補正:A
 詳細不明。
「如月のこと、忘れないでね」

 自己回復(艤装):C
 詳細不明。
 自力で艤装その他を生成するスキルと推測される。


【保有スキル】

 艦娘:C--
 深海棲艦を倒すべく存在する、在りし日の艦艇の魂を持つ少女達の総称。
 水上において全ステータスが上昇する。
 また資材を消費することによって能力の底上げ、修復が可能となる。
 この如月は艦娘と深海棲艦の中間存在であり、状況によってランクが著しく下がる。

 深海棲艦:C++
 艦娘と対になる存在の総称。
 突如として深海より来たり、人類に害為すモノ。
 長らくその正体は謎とされていたが、近年■■した■■の■れの■てであるとの情報が齎されている。
 全人類及び艦娘に対して脅威となる火器、装甲を有し、その幽鬼の如き姿は絶えず変貌を続けている。
 この如月は艦娘と深海棲艦の中間存在であり、状況によってランクが上昇する。

 戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

 自己改造:B
 自身の肉体に別の肉体、艤装を付属・融合させる。
 このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。


795 : 潮留美海&アヴェンジャー ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:57:44 jcIpia4w0

【宝具】

『睦月型2番艦 駆逐棲姫・如月』
 ランク:D+ 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:-
 睦月型2番艦如月そのものであり、主砲、副砲、魚雷、その他、
 駆逐艦として現出可能な武装及び機能の全て。
 深海棲艦(オルタ)化の影響により装備すべてに悪性のプラス補正が乗る。
 それにより宝具の名称も、本来のモノから変化が見られる。
 また艤装の一部には、史実での装備はあり得ないようなif火器も散見される。



『紅色水域・鉄底海峡(エコー・オブ・アイアンボトム・サウンド)』
 ランク:C++ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜1000 最大補足:100
 流れ出す紅い海。
 鉄底海峡に住まう深海棲艦が共有する固有結界。
 効果範囲内における敵対存在のステータスを下降させ、武装を腐食させる。
 尚、成功判定は深海棲艦との属性親和性に左右され、効力は物理的、魔的な防御手段を貫通する。
 
 如月自身はこの宝具との親和性が低いため、通常使用は不可能。
 深海棲艦のランクを上げた状態でも完全展開は難しいとされる。


【weapon】

「12.7cm連装高角砲(深海仕様)」
「61cm三連装(酸素)魚雷」

その他宝具により装備可能な艤装等。


【人物背景】
 睦月型駆逐艦2番艦の艦娘。
 人類の敵である深海棲艦と戦うべく生み出された存在。
 1番艦の睦月とは親友だった。

 W島攻略戦において敵の攻撃を受け轟沈。
 後に帰還するも、その身は深海棲艦へと変わろうとしていた。

 本編終了後からの召喚。
 サーヴァントとして通常時は劇中の艦娘と深海棲艦の中間の姿を取り、
 スキル深海棲艦のランクを上げる事で見た目もそれに近い姿に切り替わる。
 深海棲艦(オルタ)化の深度を上げるメリットとしてステータスの上方修正があるが、
 同時に狂化と精神汚染のスキルを得、理性が薄まってしまうデメリットも存在する。

【サーヴァントとしての願い】
 艦娘としての役割を果たす。マスターの帰還。

【基本戦術、運用法、方針】
 元は非常に燃費の良い睦月型駆逐艦であり、魔力消費量が低く非力なマスターにも悪影響を与えずらい。
 ただし総合的に言って火力のあるサーヴァンとは言い難く、運用には一工夫必要とされる。
 駆逐艦の機動性と深海棲艦化の能力底上げ、そしてフィールドの優位性を駆使し、
 如何に上手くたちまわるかが重要であると言えるだろう。


796 : 潮留美海&アヴェンジャー ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:59:29 jcIpia4w0

【マスター】
 潮留美海@凪のあすから

【参加方法】
 おじょし様として生贄となっていた水底で、流れてきたトランプに触れて参戦


【人物背景】
 美濱中学校の2年生。
 海に住む人と陸に住む人が共存する世界出身。
 地上の人と海の人のハーフである美海はずっと海への憧れを抱いていた。
 小学生の頃、自分を救ってくれた海の人間に恋をし、その後も様々な人達との交流を得て成長する。

 本編二十五話終了後の参戦。
 地上を襲うぬくみ雪の脅威を抑えるため、『向井戸まなか』の心を取り戻すために実行したおふねひきの際、
 海神様の大渦に巻き込まれ、海底にて「おじょし様」として生贄にされていた。

【weapon】
 なし


【能力・技能】
 エナと呼ばれる海で暮らす人の身体全体を包む薄い膜状の皮膚。
 海で暮らす人々の海中生活を可能にしている。長時間大気にさらされると壊死を起こし、ひどくなると致命傷となる。
 陸の人間は持たないとされているが、美海は海の人と陸の人のハーフであり、自身の危機的状況に際してエナを得ている。


【令呪】
 左手の甲。三つ重なった水の波紋。


【マスターとしての願い】
 如月さんと一緒に帰る。



【方針】
 生存重視


797 : ◆7ajsW0xJOg :2016/12/11(日) 18:59:57 jcIpia4w0
投下終了です


798 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/12(月) 19:27:58 7/KlQtZE0
拙作「エルヴィン・スミス&ランサー」の文章を修正しましたこと、此処に報告させていただきます。


799 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:12:30 4OFZ7PLo0
投下します


800 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:13:04 4OFZ7PLo0
「なんだそれは?ちょっと見せてみろ」

金髪の少年が持っていた『白紙のトランプ』を取り上げて、そして少女は人の世が終わった世界から消滅した。





スノーフィールド南方に広がる砂漠地帯。人と文明を拒む砂の大地を震源とした地震が起きたのは十日前。
その地震は奇怪な事に、確かに地を揺らしたものの、震度計には全く観測されなかった。
不可解な現象を調査する為にやってきた者達は、非常に希少な─────地球には存在しない金属塊を持ち帰った。

本質と無縁の者達にとっては隕石の件はここで終わる。然し、これが始まりであることを知っているのは外から来た生者と死者のみだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


轟音が大気と大地を震わせ、閃光が世界を染める。
砂漠で起きた地震の震源地の調査にやってきたセイバーとそのマスターは、今まさに滅びの時を迎えようとしていた。
対峙するサーヴァントは一人。棒立ちのままセイバーを圧倒し、息もつかぬ。
セイバーの巨岩すら砕く劍威と鋼すら断ち切る鋭さを併せ持った剛剣を、セイバーの攻撃に合わせて出現させた黄金に輝く盾で悉く弾いている。
短く息をついたセイバーが大きく後ろに飛ぶ。一旦息を入れて仕切り直そうとした試みは、結局失敗に終わった。
敵サーヴァントの右手に金色の光が点ると、無限長の長さの刃と化してセイバーの首目掛け襲いきたのだ。
間一髪で回避したものの、首筋を浅く裂かれたセイバーに、マスターが不利を悟って令呪を用い、セイバーに宝具の使用をを命じた。
首を薙ぐ黄金の光を宝具である剣で弾き、セイバーは宝具の真名を開放する。

「─────!!!」

白銀の閃光が周囲を染め、そして吸い込まれる様に消滅した。
敵サーヴァントの手には漆黒の長大な剣。セイバーとサーヴァントの間には縦に裂け、名状し難い光を漏らす裂け目。

─────あの剣で空間を斬り裂いたのか!?

額然としたセイバーを裂け目に吸い込まれる空気が吸い上げて、敵サーヴァントへと引き寄せ、無防備を晒すセイバーを黄金光が両断した。


消滅したセイバーを見て、悲鳴と共に逃げ出したマスターを敵サーヴァントは追おうともせず、無言で右手を挙げ、振り下ろした。
万魔の軍勢に指揮を下す魔王の如く。
核でも使用したかの様な閃光が世界を白く染め上げ、最早衝撃波としか言いようのない轟音が天地を震わせた。
サーヴァントの右手に呼応して落ちた雷の音と光が収束した時、砂漠には何も存在していなかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


801 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:13:38 4OFZ7PLo0
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

陽光に満ちた果てなど到底見えぬ広大な大理石の床が広がる空間で、逆さ吊りにされ炎に包まれた薄い桃色の髪の少女が声無き絶叫を上げて身悶える。
焼かれた喉が声を封じていなければ、この空間を断末魔の悲鳴で満たされただろう。
顔を歪ませる苦痛と恐怖は万人が美少女と認める美貌を見るも無残なものとしていた。
それを黄金にも似て、黄金よりも美しく鮮烈に輝く物質で作られた玉座に座して見つめる青年がいた。
身を包む衣服を織りなす一本一本の繊維は黄金から出来ており、陽光を反射してそれ自体が光を放つかの様に輝いていた。
玉座にせよ身を包む衣服にせよ、青年の持つ世に並ぶものなき富と権勢を如実に表し、そしてなお足りない。
然し青年が全裸で荒野に立っていたとしても、見る者総てがこう悟るだろう。“この青年は万象の上に君臨する存在である”と。
衣服も玉座も燻んで見える程に輝く黄金の髪。衣服の上からでも判る肩から胸にかけての逞しさとプロポーションの素晴らしさよ。天才彫刻家が生涯をかけて創り上げた戦神像ですらなお及ぶまい。
戦う男ならば皆欲しいと願う両の腕よ、一剣を持てば千軍万馬も一討ちにするだろう。
地を蹴れば天を駆け、波濤を踏めば大海原も疾駆すると見る者に確信させる、野性とと優美の極致たる尻から腿にかけてのラインよ。
顔もまた身体に相応しいものだった。
神域の才を持つ絵師が生涯を費やしても描けぬ鼻梁と眉のライン。力強さと典雅を湛えた口元。
そして万物を見下ろし、見たものの魂すら戦慄させる冷酷と無慈悲を湛えた、支配する者の眼光を放つ眼。
その迫力、その闘志、その気品。青年は、槍を剣を弓を手にして戦う戦士にして、百万の軍を指揮統率する将にして、世界の全てを膝下に跪かせる支配者だった。
少女もまた支配するものであり、気品と誇りに満ちた美少女であったがこればかりは格が違う。
野に咲く可憐な花と、春夏秋冬を通じて青々と葉を繁らせ、年に一度満開の花を咲かせる、樹齢万年の大樹を比べる様なもの。
少女は誇りも意志も、存在そのものすらが、青年に呑まれる寸前だった。

─────偽りの陽光で焼けるか。

青年は胸中に呟く。意識を向けられた事による重圧で少女の全身が震え、口から血を吐くが、青年は気に留めない。この程度で死ぬ訳が無いからだ。
此の地に顕現してより、青年は少女をありとあらゆる方法で責め苛み、その身体能力について完全に把握していた。
その結果として、少女は青年と同じでありながら異なる種ということが、初日の時点で判明している。
残りの日数で少女に行われた仕打ちは、只の無聊の慰めに過ぎない。それも今日で終わりだが。

─────他にもこの娘の様な、“異なる同族”が居るやも知れん。

青年はそんな事をふと思う。そう考えると胸中にフツフツと沸き立つものを感じた。
もし居れば己の手で確実に屠る。夜の覇者を称する青年の種族の中でも別格であった青年の誇りがそう思わせる。
ならば何故にこの娘を滅ぼさない。そう考えて青年は苦笑した。
青年にとって少女はマスター。この世にある為に必要な存在。
しかしセイバークラスとして現界した為に、著しく効果を発揮しづらくなっている青年の宝具が機能すればマスター等不要。
にも関わらず青年には少女を滅ぼす意志が起きなかった
青年は戦意と殺意の篭った真紅の瞳を閉じ、繋がったパスにより少女の記憶を引き出した時のことを思い出した。


802 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:14:06 4OFZ7PLo0
一人を除く全ての同族を見捨てた父である始祖に、唯一の例外である兄を連れ去られ、たった一人で泣く少女。
別段に同情や哀れみなどを感じたわけでは無い。青年が感じたのは、奇妙な事に『共感』だった。
戦わねば、殺さねばいられなくなったあの時を青年は思い出したのだ。
自分を造り出した存在にが、嘗て青年に告げた“唯一の成功例”の呼び方を別の者に与えると青年に告げた日のことを。
滅びある限り青年の種族も絶対では無いと、青年が理解した日の事を。
己の運命を理解した日の事を。


随分と甘くなったものだと青年は自嘲する。
たかだかこの程度で命を奪わないなどと、生前に戦った奴等が知れば天地が崩壊する前触れかと思うことだろう。
だが、青年には少女を滅ぼす意志は無く。聖杯を手に入れれば、少女の願いを叶えてやっても良いかもしれないと思っている。
その後で聖杯は破壊するが。
甘くなったと改めて青年は自嘲する。
嘗ての青年なら、少女を首と心臓だけにして、激痛成分と精神安定ナノマシンと絶対の孤独と絶望に精神を膝下させる“仮想現実”を与えて、死なせも発狂も出来ぬ様にしていただろう。

─────これも滅びを迎えてしがらみから解放された為か。

そう考えると、自分を滅ぼした男にほんのわずかだけ感謝する気になった。

青年が手を僅かに振る。ほんの僅か、手を動かしただけで山すら消し飛びそうな力を感じさせた。
そして青年の動きと同時、空間は闇に閉ざされた。
位相がずれた空間内に存在し常人には認識出来ぬ、青年の宝具の内部であるこの空間は、全てが青年の意思の元に統御される。
尤も、青年の宝具は未だにその本来の力を発揮できずにいるが。
ライダークラスなら最初から、キャスタークラスならば既に完成しているが、青年のクラスはセイバー。このクラスでは完成には時間がかかる。

「ァ…………ァ……………」

闇に閉ざされると同時、身を焼く炎が消え、掠れ声を喉から漏らすだけの少女を見もせず、青年は呟いた。

「くだらん」

少女の口から鮮血が噴水の様に噴き出し、顔を紅く染めて床に流れ落ちる。青年の声に含まれたものが少女の精神を打擲し、更には空気を変質させて酸と変え、喉から肺にかけて焼いたのだとは、青年と少女にしか解らない。

青年にとって少女に対する極小の共感と、存在するかも知れぬ“異なる同族”以外の全ては何の価値もなかった。
この虚構の舞台も、生前の百分の一の力も無い己にも。その全ての原因である万能の願望機にも。


803 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:14:46 4OFZ7PLo0
「くだらん」

再度呟く。
青年が生前に属し、その繁栄の一翼を担っていた文明は、青年と同等─────認めたく無いが─────の存在の、生前の力と技とを完全に再現することが出来た。
その文明の力を以ってしても青年が挑んだ存在と、青年を滅ぼした者には及ぶまい。
ならば己をここまで脆弱な存在としてしか再現出来ない代物に何が期待できる?
尤も、此処に居る者共は時間と空間、果ては次元を越えて呼び寄せられているのは、自分の記憶とマスターであるあの娘との知識との差異でも明らかだ。
こればかりは青年の文明でも為し得ぬ技だった。空間の秘密はともかく、時間の秘密は解き明かせなかったのだから。
そして青年はこう考えた。

「いっその事、過去に遡るか」

時間を遡行する────青年や青年と同じ種は時間経過と共にその力が増大する─────時を遡れば青年の知るものより遥かに劣るあの者達と合間見えることが出来るだろう。

だが青年は意味が無いと嗤う。時間を遡行して脆弱な頃のあの者共を滅ぼすなど青年の矜恃が許さない。
それにそんな事をしても最早意味も意義も無い。最早全ては終わった事だ。
では戦わないのか─────否。
戦わないという選択肢は青年─────青年の種族には存在しない。
敵が居れば─────本来の青年の力ならば到底敵足り得ぬ弱者共だが─────戦わずにはおれず、敵が強大であればある程その血が燃え上がるのが青年の種族。
此の地に招かれた者達は本来なら容易く滅ぼせる者達、然し今は死力を尽くさねばならぬ強者。
己が脆弱になった事を忘れて青年は嗤う。
戦わねば、殺さねばいられなかった狂気はもはや無い。だが、元より凶猛無惨と言われた性状に何ら変わりは無い。敵を殺し、この虚構の地の者共を殺し尽くし、聖杯とやらも砕いてくれる。
一体自分が如何なる存在を招いたのか、この下らぬ茶番を思いついた者に思い知らせてくれる。
人類文明が滅びた後に地球を支配し、神代の生物を造り出し、外宇宙にすら進出し、異次元からの怪生物を追い払い、外宇宙からの侵略者を根拠の星ごと原子に還元してのけた、貴族を名乗る新たなる地球の支配者─────吸血鬼。
その吸血鬼─────貴族の歴史に鮮血を以ってその名を刻んだ“絶対貴族”ローレンス・ヴァルキュアの名にかけて。


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804 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:15:09 4OFZ7PLo0
口内の血を屈辱と苦痛とともに少女は嚥下する。
不味いことこの上ないが、血を飲まないと醜い鬼となる以上仕方ない。
身体を焼かれ、身を切り刻まれ、ありとあらゆる苦痛を受けても、己が呼び出したサーヴァントとの根源的な存在の差を理解してもなお少女の心は折れていない。
万能の願望機。全ての願いが叶う杯。少女が千年前から抱く願いを叶える好機なのだ。
喉を潰され、令呪を封じられてもなお少女は諦めない。
連れ去られた兄を取り戻す為、この世界で一人ぼっちでいないようにする為に。

少女─────クルル・ツェペシは聖杯を何としてでもその手に掴む決意を心に虐境に抗い続ける。


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805 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:15:33 4OFZ7PLo0
【クラス】
セイバー

【真名】
ローレンス・ヴァルキュア@吸血鬼ハンターシリーズ

【ステータス】
筋力:A++ 耐久:A+++ 敏捷:A+ 幸運:E 魔力:B 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、魔術ではセイバーに傷をつけられない。
人類文明が滅んだ後に地球を支配した吸血鬼達が“神”の如く崇めた存在に、進化の可能性の一つとして造られ、一時期は只一つの成功例と言われたセイバーの神秘は破格である。

騎乗:A++
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
竜種を含む神世の生物を再現して地球中に解き放ち、その生物群の頂点に君臨した“貴族”である為にこのランク
竜種ですらも乗りこなせる。

【保有スキル】

貴族の栄光:A+

人類には及びもつかぬ超文明を以って地球に君臨し、異なる銀河にも進出し、外宇宙や異次元より襲来した敵と戦い、空間の秘密を解き明かし、無より物質を創り出し、神世の生物を再現した貴族の超技術を行使する能力。
魔術に依らずして、最高ランクの陣地作成・道具作成・使い魔の作成及び使役を行える。
空間制御を可能とし、位相のずれた空間に自分や物体やエネルギーを収納しておくことも可能。
また、高速思考も発揮するがセイバーランクの現界の為Dランク相応のものでしか無い。


吸血鬼:A+

吸血鬼としての格を表すスキル。
天性の魔。怪力。吸血。魔眼を併せ持つ複合スキル。
魔眼は精神力や精神耐性でしか防げない魅了の効果を発揮する。
また、ランク以下の存在を吸血することにより下僕とすることが可能。
下僕となった者にはA+ランクのカリスマ(偽)を発揮し、セイバーに服従させる。
下僕化は対魔力では無く神性や魔性のランクでしか抵抗出来ない。
このランクではCランク以上の神性や魔性でないと吸血鬼化を遅らせる事も出来ない。
下僕化によるセイバーへの服従は精神力若しくは精神耐性を保証するスキルにより効果を減少或いは無効化させることができる。
流れ水や十字架に対して非常に脆弱で、陽光を浴びれば即座に塵と化す程だが、“地球上で真性の陽の光を浴びる”という条件を満たさねば陽光を浴びても何とも無い。
月の内部の仮想現実空間である此の地において、セイバーは昼間でも問題無く活動できる。


不老不死:A+

例え総身が消滅しても魔力が枯渇していなければ復活する“貴族”の特性がスキルになったもの。
最高ランクの戦闘続行及び再生スキルを併せ持つ。
攻撃を受ける端から再生し、一見傷を受けていないようにすら見える程。
但し聖性や神性を帯びた攻撃には非常に脆く。流れ水に漬けられたうえでの攻撃は通常のそれと変わらぬ効果を発揮する。
また、肉体を老化させるといった攻撃を無効化する。
宇宙空間ですら死ぬ事は無い。行動出来ないのでその内考える事を止めるが。
“貴族”を滅ぼすには古の礼に則り、心臓に白木の杭を打ち込むか首を落とすかのどちらかしかない。


勇猛A+

威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
格闘ダメージの向上は通常のものと異なり、敵が強ければ強い程ランク相応のものとなる。
敵が脆弱であった場合格闘ダメージの向上は無い。


叛骨の相:A+++
権威に囚われない、裏切りと策謀の梟雄としての性質。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。
貴族の総てから神のように崇められた存在“神祖”に叛逆したセイバーはこのランク。


無窮の武練:A

ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
いかなる地形・戦況下にあっても十分の戦闘能力を発揮出来る。
比類無き剛勇を誇る同族三人を相手にし圧倒する程の強さを持つ。


806 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:17:18 4OFZ7PLo0
【宝具】
万象斬断す邪王剣(グレンキャリバー)
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:2-3 最大補足:2人

全長1m幅20cmの漆黒の長剣。
触れたもの全てを断ち斬り、空間すらも斬り裂く。自動的に動いて敵を斬る事も有る。
斬り裂いた空間を別の場所へと繋ぐことも可能。斬り裂かれた空間はもう一度斬れば塞がる。
生命の根源的な部分をも斬り、不老不死の肉体を持つ“貴族”:ですら再生を許さない。
まともに撃ち合えばランク相応の宝具でも無い限り破壊される。



鋼の大地
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1-1000 最大補足:100000人

嘗てセイバーが君臨した領土が宝具となったもの。
全てが鋼で覆われた大地を現出させる。
本来ならば大陸一つを覆う程だがサーヴァントの宝具と化した事により劣化し、直径10km程度でしかなくなっている。
この中ではセイバーは宝具内で起きるあらゆる出来事を知ることが可能。そして意思一つで山を動かし地形すらも変える。
本来ならば魔力炉ともなる反陽子炉、血液製造プラント、兵器製造プラント、ホムンクルスや妖物の製造プラント、迎撃装置等が存在するが、セイバークラスの現界の為“貴族の栄光”スキルを活用して造っていくしかない。
この宝具は惑星が滅びる程の隕石の衝突にも耐えただけあって対界宝具でも使わなければ破壊不能。



万象記すエーテルの霧(アカシア記録)
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:鋼の大地全域 最大補足:鋼の大地全域

アカシア記録に接続することで最高ランクの真名看破、蔵知の司書、専科百般、千里眼を可能とする。
キャスタークラスならばスキルとして無条件で使えるが、セイバークラスの現界の為宝具『鋼の大地』内でのみ、絶大な魔力を消費して漸く使用可能。
更には因果律操作や因果逆転、起きた結果を無かったことにするといった事すらも可能とするが、セイバークラスの現界の為使用不能。
辛うじて因果や運命操作系の攻撃に対して『鋼の大地』内でのみファンブル率を大幅に上げる効果しか発揮していない。
■■■■キャスターとして現界すれば聖杯と同じ万能の存在となる程の宝具。



【weapon】
黄金光の剣と盾

【人物背景】
199X年、世界は核の炎に包まれた!!
海は枯れ、地は裂けあらゆる生命体は絶滅したかに見えた。
しかし、人類は死に絶えてはいなかった!!

長き歳月の果てに核シェルターから出た人類をウェルカムしたのは、ヒャッハーと叫ぶアメリカ先住民族の一部族の名を持つ人種では無く、
汚染され荒廃した大地と、放射能で変異した生態系と、そして変わり果てた大地に君臨する貴族─────吸血鬼だった!!
セイバーはその中でも“絶対貴族”と呼ばれた存在であり破格の強さと並ぶもの無き富と権勢を誇った。
外宇宙から侵攻してきた生命体との戦争では自ら陣頭に立って戦い、最終的に侵略者達の母星を原子に変えた。
その性格は獰猛苛烈にして残虐非常。“神祖”に叛旗を翻した時、五百万の人間と貴族を捕らえ、四百万を凡そあらゆる方法を用いて惨殺し、
残り百万を首と心臓だけにして、激痛成分と精神安定ナノマシンと絶対の孤独と絶望に精神を膝下させる“仮想現実”を与えて、死なせも発狂も出来ぬ様にしていた。
“神祖”の命を受けた三人の貴族と、一人の人間により捕らえられ、“神祖”に宇宙へと追放されるが、五千年後に地球へと帰還し、己を捕らえた人間の子孫と貴族とに復讐を開始する。
そして最強の吸血鬼ハンター“D”と戦い、致命傷を負わされた。
その後“神祖”に己の敗北の運命が定まっていることを告げられ、運命を覆す為に“神祖”と融合する。
運命すら超越し、文字通り“神”にも等しい力を得るが、同じ領域に至った“D”により滅ぼされた。
嘗て“神祖”が造り出した唯一つの成功例であり、後にその呼び名を別のものに与えられ、己を待つ運命を知り、狂わずにはいられなかった男。
“神祖”に選ばれ、そして捨てられた男。

【方針】
先ずは空間制御により位相空間に展開した“鋼の大地”を頑張って完成させる。
“吸血鬼”がいれば積極的に滅ぼしにいく。

【聖杯にかける願い】
無い。全ては終わったことだから。


807 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:18:30 4OFZ7PLo0
【マスター】
クルル・ツェペシ@終わりのセラフ

【能力・技能】
幼い容姿に反して絶大な戦闘能力を持つ。
この世界の吸血鬼は極限まで鍛えて特殊な武器持ってドーピングまでした人間を身体能力だけで殺せる程度には強力

【weapon】
無し

【ロール】
女子中学生
現在は行方不明中

【人物背景】
第三位始祖の吸血鬼。吸血鬼の間では禁忌とされている終わりのせラフを手に入れたがっている。
1000年前に父である始祖に捨てられて兄を連れて行かれて一人ぼっちになった少女。

【令呪の形・位置】
背中に逆十字。

【聖杯にかける願い】
兄を取り戻したい。

【方針】
何とかしてセイバーの元から脱出して聖杯を手にする。

【参戦経緯】
原作の6~7巻辺り、アニメだと1クール目が終わった後で、百夜ミカエラが拾ってきた『白紙のトランプ』を取り上げた。

【運用】
クルルの魔力が潤沢な為、積極的に攻めていける。しかしセイバーは強力だが大技を使う為には『鋼の大地』内でなければならないので相手次第では負ける。
しかもクルルの状態はセイバーには基本的に解らないので、下手をするとクルルが干からびて死ぬ可能性もある。
連戦を避けて、一戦毎に様子を見に行くしか無いだろう。


808 : クルル・ツェペシ&セイバー ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/12(月) 23:18:59 4OFZ7PLo0
投下を終了します


809 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:19:38 6qB.swzo0
投下します


810 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:20:35 6qB.swzo0
何時からこの身は、この姿を形取っていたのか。
それすら分からず、彼女は人を救い続けた。
記憶が戻った今としては、何故―――義務もないこの異国の地で人を助け続けたのか、自分でもわからない。
だが、この身は忍者だった。
魔法少女だった。
今まで一人だった。
これからも、一人のはずだった。
ひゅるり。ひゅるり。
夜風が頬を撫でる。
和の趣を残す瓦屋根の上で、思う。
わたしを一人から掬い上げた、『彼女』と浴びた夜風がふと記憶に蘇る。
ああ。
彼女が持ってきた食事は、美味しかったな。
あれほど美味しいものを食べたのは、何時ぶりだっただろうか。
そんな物思いに耽り、ふと想いを溢す。
己の名は何だと、心が問い掛ける。
私は誰だ。
私は誰だ。
私は誰だ。
私は―――リップルだ。
リップル。
そうだ、リップルだ。
もう魔法少女ではない。
もう人間ではない。
人間であることを、魔法少女であることを此処に棄てる。
細波華乃には、もう戻らない。
戻れない。
人を助ける魔法少女は、既に死んだ。
細波華乃は、もう死んだ。
此処にいるのは、忍者だ。
修羅に堕ちた、忍者が一人。
ああ、殺そう。
私は、この場にいる全てを殺そう。
三千世界に血の海を。
臓物を注いだ万能の願望器で、願いを叶える。
こんなことを『彼女』が望むかと言えば、否だろう。
しかし。
しかし。
―――それでもわたしは、夢見てる。
あの人との―――ええ、認めましょう―――楽しかった、夜空の旅をもう一度。

「やーやー。良い夜空ッスね。忍者は夜空に映えるというか、何というか」
「……キャスターか」
「寝ないでいいンスか、明日に響きますよ」

舌を鳴らす。
苛立たしい。
己のサーヴァントが、飄々としたこの和風の男の雰囲気に腹が立つ。
気遣っているような態度に腹が立つ。
にへらえへらとした態度に腹が立つ。
何がそんなに可笑しいのか、問い正したいほどに。

「お隣失礼しますよっと」
「邪魔だ」
「はっはー、サーヴァントに神秘の籠ってない攻撃は効かな―――痛い!!!!!」

足元の瓦を適当に投げると、弧を描きキャスターの顔面へと直撃する。
…少しやり過ぎたかとも思うが、キャスターには丁度いいお灸だと判断した。
神秘云々は気にしたこともないが、魔法の力が働いたのだろうと思う。


811 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:21:38 6qB.swzo0
「アタシの顔めり込みましたよ、5cmほど」

顔面にめり込んだ瓦をすぽっと取り除きつつ、キャスターは語る。
……大した耐久性能だと思う。
この程度では死なないだろうと思って投げたのだが、此処まで直撃するとは思ってもなかった。
そんなリップルの想いを知ってか知らずか、キャスターは話を続ける。

「ねえリップルサン」
「何」
「聞いてもいいッス?聖杯なんかを求める理由」

その目元は深く被った帽子で見えない。
だが、その口調は飄々としたキャスターとしては珍しく、何かを含んでいた。

「……聞いて何になる」
「いえね。こう言っちゃ何ですが貴女、望みの強いタイプに見えなかったモンで。
こんな負けたら死ぬ争いに身を投じてまで叶えたい願いってなんなのかなーと」

世界征服でも願っちゃいます?とおどけて見せるキャスターに、また舌を鳴らす。
別に教える義理はない。
キャスターとは聖杯戦争に必要だから手を組んでいるだけ。
仲良しこよしの馴れ合いをするつもりはない。
…ない、つもりだったが。

「まあ、言わないならアタシも手は貸さないッスけど。
ほら、アタシ商売人なモンで。ギーブアンドテーイク。
戦力が欲しけりゃ見返りを・ってヤツッス」

と釘を刺され、残念ながら明かすこととなった。
何か、キャスターの旨い方向に話を進められているようで、また腹が立ったが。

「―――生き返らせる」
「誰を?」
「そこまで教える義理はない」

疑問を増やしたキャスターの言葉を、即切り捨てる。
目的は教えた。
だから大人しく力を貸せ、と。

「ほうほう、ふむふむ」

顎に手を当て、短い髭を撫で。
うんうんと唸る素振りをして見せた後。
キャスターは、言い放った。

「恋人ッス?」
「違う」
「彼氏?」
「違う」
「夫?」
「……全部同じ意味だろ、ソレ」

下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとは言うが、同じ場所に複数当てては当たるものも当たるまいに。
まるでクイズでもしているかのように。
ハズレかーとまたにへらと笑うキャスターに、また腹が立った。
手に握った杖で足元をコツン、と叩き。
あ、と何かを思い出した風に、またキャスターが話を切り出す。

「取り敢えず、人生の大先輩として言っときますけどね」


812 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:22:54 6qB.swzo0
―――瞬間。
空気が、凍った。
キャスターの殺気―――いや、殺気ではなく威圧か。
まるで上から押さえつけられているような、威圧感が全身を蝕む。

「死にに行く理由に他人を使うなよ」

それは。
まるで、人が変わったかのような。
先程までの能天気さが、嘘に見えた。

「聖杯使って誰かを蘇らせるのは自由」

「でもね」

「弱者が無謀に無闇矢鱈に挑むのは戦争とは言わない」

「自殺・って言うんスよ」

弱者。
何の力も持たない者。
即座に反論が、出来なかった。
現時点で、今も重圧に潰されそうになっている己を見て、反論が出来ようか。

「じゃあ、どうしろって言うんだ…ッ!」

冷や汗が止まらない。
口を開いているだけで胃液が逆流しそうになる。
クソッ、と口の中で悪態を吐く。
すると。
フッと―――重圧が、消えたのだ。

「アタシを使いましょ」
「…は?」
「アタシを使え・って言ったんス。
一人じゃ貴女ならどう足掻いても死ぬ。バラされて終わりッス。
だから―――その願いの成就まで、アタシが働いてあげましょ」

…意味が、わからない。
自分を使えと。
そんな提案をするために、此処までしたのか?
脅迫紛いのことを。

「目的は?」
「そうッスね。聖杯の仕組みを理解したい・とかどうです?」
「適応だな」
「これがアタシなモンで」

また、飄々とした調子に戻る。
この反応が、こんな調子のヤツに反論が出来なかった先程の己に腹が立ち、また舌を鳴らす。

「理由は」
「理由?」
「商売人、なんだろ。ギブアンドテイクなんだろ?」
「…そうッスね。店の看板娘をしてもらうとかどうスか?」
「ふざけるな」

ぱさっと扇子を開き、キャスターが笑う。
ああ、調子が狂う。
どうもこのタイプの人間は苦手だ―――と、リップルはまた舌を鳴らした。


813 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:24:17 6qB.swzo0
○ ○

この少女は、間違いなく死ぬ。
死なないとしても深い傷を負うだろう。
死に急いでいる、と言うべきか。
願い一つのために周りが見えていない。
このままでは勝ち目もない戦いに挑み、勝機もない相手に殺されるだろう。
それは、忍びない。
『今すぐ助けに行く』
『いつ殺されるかわからない』と。
無謀な勝負を挑もうとしたオレンジ色の髪の少年と、同じ眼をしていた。
それだけだ。
別に、助ける義理もない。
少し前に召喚されて知り合っただけの、赤の他人だ。
これが同じ技術者―――マユリと名乗る彼なら、彼女を捕らえて解剖しとっとと座に帰るだろう。
これが友―――夜一なら、適当に守りつつ望まれた通りに戦うだろう。
それだけでは足りない。
彼女の無謀さを、不器用さを改めさせなければ、聖杯戦争を勝ち抜いたとしても何れ彼女はまた機会さえあれば大怪我を負うような戦いをしかねない。
ならば。
この聖杯戦争で、彼女を変えるしかない。

「…アタシもお人好しッスね」

ポツリ、と。
キャスターは、魔力の粒子として夜に消えながら。
そう、呟いた。


814 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:25:09 6qB.swzo0
【出展】BLEACH
【CLASS】キャスター
【真名】浦原喜助
【属性】中立・善
【ステータス】
筋力D 耐久D 俊敏B 魔力A 幸運C 宝具A+

【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
彼の場合は、「技術開発局」を作成する。

道具作成:EX
魔力を帯びた器具を作成可能。
彼の場合は、どんなものでも僅かな時間さえあれば薬と器具を制作できる。
後述のスキル"特記戦力"と合わさり更に強大なスキルとなる。

【保有スキル】
偽装の師:B
尸魂界を追放され、現世にて隠し拠点を造り上げ地下に巨大空間を開いたことによるスキル。
陣地作成により造り上げた陣地は外からサーヴァントや魔術に精通したものが観察してもその真価は掴ませず、普通の一軒家として誤認させる。
彼の場合、駄菓子商店としての偽装効果を持つ。

攻略眼:A
人間観察を更に狭めた技術。
キャスターの場合は対象がどのような性質を持っているか、どのような動きをしどのような仕組みで動いているのかを判別する能力に優れている。

死神:C(A)
 素質のあるものが修練を重ね、斬魄刀を持ち現世と霊界の魂魄の量を一定に保つ役割を持つ霊的存在。
 精神汚染への対策を持ち、サーヴァントなど霊的なものへの特効を持つ複合スキル。
 本来なら隊長格にまで登り詰めた彼は最高クラスのAを持つはずだが、尸魂界を追放された逸話によりランクダウン。

万策の一:EX
「千の備えで一使えれば上等」
「可能性のあるものは全て残らず備えておく、それがアタシのやり方です」
「戦いですよ、負けたら死ぬんス」
「死なないために死ぬほど準備することなんて、みんなやってる事でしょう」
 死神の中でも、特に警戒された五人の人物の一人。
彼の場合、それは"未知数の手段"に該当する。
あらゆる出来事においてあらゆる準備を備え最適解を導き出し、"道具作成"のスキルにより効果的な器具や薬を造り出す。

【宝具】

『起き随え、血濡れ姫(べにひめ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:50人

普段は仕込み杖の形状にして封印しているが、"起きろ"の真名解放と
魔力を血液のような形と為し斬撃・防御・相殺・拘束・爆破と様々な柄の先だけが折れ曲がった直刀の形状に姿を変える。

『造り改め、血濡れ姫(かんのんびらきべにひめあらため)』
ランク:A+ 種別:対物質宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:50人

解放すると、身体中に継ぎ目のある巨大な仙女を召喚する。
能力は「触れたモノを造り変える」。
この能力の影響下に置かれると、どんなものでもまるでフェルトのように裂け、次の瞬間縫い合わされるように修復され、造り変えられる。
死滅した臓器や細胞なども一瞬で新品同様のものに造り替えられ、復活してしまう。
自身に使用した時は、腕を作り変えて、一時的に強化させた。
色々なものを作り出して様々な局面に対応する始解をさらに発展させ、造り変えることでその局面自体を大きく変えてしまう能力であると言える。
生物や物質に対しても勿論のこと、その能力は空間にも作用する。

【人物背景】

深緑の下駄に甚平、目深に帽子をかぶり、扇子やステッキお持ちの洒落たオジサマ。
自称「ちょっと影あるハンサムエロ店主」、また「しがない駄菓子屋の店長」と言った事もある。いつも下駄と帽子、甚平という格好(同じものを百個ほど持っているとのこと)で杖と扇子を携帯し、飄々としていて真面目なのかふざけているのか判別が難しい。
初登場時からことあるごとに何かを隠しているような、あるいは仄めかすような言動を繰り返している為その真意は掴みにくい。
また、若干Sの気がある。以上の性格・言動のために、周りからは「胡散臭い」「変態」と思われている。一方で地声で凄むと一護が凍りつくほどの迫力がある。
その正体は藍染惣右介の策略により尸魂界を追われた先代の護廷十三隊・十二番隊隊長であり、技術開発局創設者にして初代局長を兼任した死神である。
戦闘においては十刃(エスパーダ)の一人であるヤミーを赤子同然にあしらうなど、元・隊長としての実力を垣間見ることができる。
また、鬼道を術名すら唱えず使用し、得意の義骸技術を活かした新発明“携帯用義骸”を使用することで変わり身の防御技を編み出している。
作中では折に触れ、一護や死神らがピンチに陥った際に駆けつけている。
夜一と共に事実上の一護の師として、彼の能力を伸ばすための助力を行う。
鬼道もかなりの腕で扱える。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
既に死んだ身で望みごとと言われても…な思考。


815 : 血濡れ忍者 ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:26:07 6qB.swzo0
【出展】
 魔法少女育成計画

【マスター】
 リップル

【参戦方法】
 人助けの際に拾った紙がトランプだった模様。

【人物背景】
忍者姿の魔法少女。
人間関係を構築するのが苦手で、売られた喧嘩は買う主義。
本人は否定しているが、魔法少女トップスピードの相棒役。

―――しかし、それは永遠に喪われた。
子を宿した身体ごと切断された遺体。
朗らかな笑顔。優しい言葉。
それらは全て、奪われた。
故に、この身はただひとつ。
万能の願望器を得て、ただひとりの女性を蘇らさんが為に。

【weapon】
・クナイに手裏剣、忍び刀。

【能力・技能】
・魔法『手裏剣を投げれば百発百中だよ』
何であれ彼女が投擲すれば必ず相手に命中する能力。
忍者が投げるもの=手裏剣という理論で何を投げても追尾し必中する。
魔法少女としての肉体・戦闘能力も高い。

【マスターとしての願い】
 トップスピードを甦らせる。

【方針】
勝ち残る。


816 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/12(月) 23:26:42 6qB.swzo0
投下終了です


817 : ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:05:24 kN2avJWQ0
投下します。


818 : 血濡れと殺戮 ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:07:38 kN2avJWQ0
   ―――――銀の月が夜を照らしている



 温く流れる青白い明かりが、窓を通り越して「それ」を私の瞳に映し貫く。
刃こぼれだらけの、けれど不思議とよく切れるボロボロのナイフ
………私にくれた「  」のナイフ


  『諦めていた』とは違う
  でも、叶わないと

 閉じた誓いを信じて。けど、どこまでも見えなくなって


    ………――――白い何かが、羽のように舞って視界を横切った




        ※※※※






「疾くその首を曝せ。刹那の間に刈り取ってやる」

 暗がりの中、光が描いたような綺麗な曲線が、音もなく金髪青眼の少女――――レイチェル・ガードナーの眼前に迫る。
煌めく刀の主は、荒々しく鋭利な気配を漂わせる幽鬼のような長身の男。

「………なぜ?私はあなたの気分を悪くするようなことをしてしまったの?」

 開口一番。(意訳して)「殺す」と宣言してきた男に、切っ先を向けられている少女はそう言った。
怖気づいた様子もなく、彼女は単純な疑問をただ口に出しただけのようだったが、男にとってはとても気に障ることだったようで。男の表情が怒りと嫌悪に染まっていくのが見て取れた。

「貴様のその死に顔がなにより癪に障る」
「…………」

 死に顔。
 なるほど確かに。レイチェルの顔はその年の子供と思えないほど生気がほとんど窺えない。まるでこの世の希望という希望を一度も感じたことのないようだ。
 彼女も、その言葉に思うところがあったのだろうか。男から目線を外し、顔をわずかに伏せる。

「彼岸にいるかの如く死に顔を晒すその心中が腹立たしい………!貴様のような愚物を、一時たりとて主などと認めるものか!」

 破裂するかのような激情を、男は容赦なくレイチェルにぶつける。

  主。
 そう、この二人はマスターとサーヴァント………即ちこの「聖杯戦争」を共に勝ち残る為の主従のはずなのだ。

 それがサーヴァント――――セイバーである男が主人のマスター相手に早々に殺意を示し切り付けている。


819 : 血濡れと殺戮 ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:08:34 kN2avJWQ0

そんな事情を知っていようといまいと、傍から見れば大の男が本気で少女を殺しにかかっている図だ。滑稽にさえ見える。
 だが対照的に、少女の方はなんら微動だにしない。
冷静沈着というより、我関せず。他人事。まぎれもなくこの場の当事者であるのに、明らかな自暴自棄さが窺えるほど少女からは空虚しか感じない。

「………よく言われた。つまらないとか、目が死んでるとか。」

 そして、空気の読めてないこの一言。
一歩間違えれば次の瞬間首が飛ぶかも知れないというのに、場を濁すかのような発言。
レイチェルは別にそのつもりはなく、ただ自身の事実を述べているだけなのだが。
 セイバーはレイチェルを見下る。幽鬼のような影が揺らめき、光の角度を変えながら刀の軌跡を定める。

  だが、


「………でも、ダメ。私はあなたに殺されない。私を殺す人は、もう決まっているの」


 すっ………と、レイチェルは顔を上げ、セイバーの目線と合わさる。二人の間に奇妙な火花が散った。

「私はザックに殺される。私が死ぬのはザックに殺されたとき。あなたじゃない」
「…………」

 キッパリと、レイチェルはそうセイバーの殺意を拒否した。
 先程と変わらずがらんどうな気配は拭い切れていない。だが、今のその瞳にはなにか意思のような、陰りがある光のようなもの感じられた。
 数秒。セイバーはその瞳に縫い止められたかのように睨み付ける。その眼差しは目の前の少女への嫌悪で溢れている。
やがて背を向けながら納刀し、苛立ちを隠すことなく鼻を鳴らす。

「……気狂いが。貴様ごとき、どこで野垂れ死のうと同義だ。愚物」

 顔だけを向け、セイバーはそう返す。
怒りと殺意と軽蔑。貫くかと錯覚するほどの激情を宿した男の瞳が、少女を映している。

(………でも、きっと「これ」はこの人の「普通」なんだろうな)

 と、レイチェルは自身のサーヴァントをそう分析した。
それしか知らないから、分からないから、そうし続ける。
無知。だが、それゆえの純粋さ

(――――ザック)

 彼と同じものを、何故か目の前のサーヴァントに感じた。
 彼女がかつて出会った男。殺すことしか知らない、殺すことを、殺されることを誓い合った殺人鬼。
 脳裏に浮かべたとたん、あのビルで誓い合った約束を同時に思い出す。



   諦めていたわけではない。あの施設での何もない日々の中、ずっと信じていた。信じ続けていた。
   ――――背負って持っていくと。そう心にしまい込んで

   でも、叶うのなら。願うのなら。


      ――――死にたきゃ、俺に殺されると誓え!!

      ――――お前自身に、そして――この俺に誓え!


(………ああ、やっぱり私は、ザックに殺されたい)
 
   誓いは、彼女の中で今なお息づいている。




     ――――月はまだ、満ちていない


820 : 血濡れと殺戮 ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:09:19 kN2avJWQ0
【出典】戦国BASARAシリーズ
【クラス】セイバー
【真名】石田三成
【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:D 宝具:B

【属性】
 混沌:悪(正しくは秩序:中庸)

【クラススキル】
 対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力除けのアミュレット程度の対魔力

 騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

 戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 精神汚染:B
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。

 刹那:B+
 セイバー独自の縮地法
 瞬間移動とも見間違う程の神速で間合いを一瞬にして詰める。
見切るのは至難の業だろう。

 凶王:A
 凶暴酷薄。冷酷かつ苛烈。『凶王』と渾名されるほど人々から侮蔑され恐れられた。
敵対するサーヴァントのステータスをワンランクダウン。確率で相手の行動判定のファンブル率を上昇させる。
 また、このスキルの効果によりセイバーの属性は混沌:悪と表示される。真名が判明すればこの効果は消滅する。

 輪廻に絆す憎悪の罪咎:A
 戦前の経験からくる嘘や裏切りに対する過剰なまでの憎しみがスキルにまで昇華したもの。
 セイバーに対する虚言や何らかの裏切り行為が発覚した場合、その行為を行ったものに対するセイバーのあらゆる判定に有利な補正が付く。


【宝具】

『死色の翅翼よ 私を抉れ』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:50人
 突進しながら無数の斬撃を放つ。
 止まぬ斬撃を残しつつ姿を消した一瞬ののち、捉えた相手の背後から大きく斬りかかり、空中からの叩き斬りでトドメを刺す。
 終わりまでの一連が一つの事象として固定・確定している為、解放されれば如何なる手段を用いてもキャンセルすることはできない。


『君子殉凶・凶王三成』
 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 魔王・覇王に続く「凶王」という畏怖そのものに自らの内に燻る憎悪を複合・増幅させ自身を大幅に強化する。相対している対象への憎しみに比例してセイバーは強化される。
 発動時にセイバーは黒い瘴気のようなオーラを纏う。
これは「凶王三成」としてのイメージそのものをより具象化した姿であり、自身へ強制的にロックオンさせると同時に無条件に恐怖や警戒心を抱かせる。
 また、セイバーの斬撃がヒットするほどそれに応じて体力を吸収し、敏捷が上昇する。敏捷の上昇値は戦闘終了時にリセットされる。

【weapon】
無名刀・白

【人物背景】
 豊臣秀吉率いる豊臣軍の将
 主君である豊臣秀吉を神のごとく崇拝しており、その忠誠心は病的を通り越して狂信とも言えるほど。
 性格は良くも悪くも真っ直ぐ。極めて感情的で融通が利かないが、反面興味のないものはとことん無頓着。
 元来の苛烈さも相まってか人から嫌われやすく「生きているだけで損をする」とまで言われるほど。しかし、一度懐に入れた者には絶対の信頼を置く人らしい一面も存在する。
 その極端すぎる馬鹿正直な生き方や人としての危うさに惹かれるものも多い。

【サーヴァントとしての願い】
 主君・豊臣秀吉が統べる天下
 しかし、それは自分が願わずとも秀吉が存命であれば成し遂げられると信じて疑わないため、願いは「豊臣秀吉の死の回避」に止まるだろう。


821 : 血濡れと殺戮 ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:10:02 kN2avJWQ0


【出典】
殺戮の天使
【マスター】
レイチェル・ガードナー
【参戦方法】
施設で日々を過ごしていた時に白紙のトランプを拾った。
【人物背景】
 虚ろな妖しい気配を漂わせる少女。
 とあるビルの地下で目を覚ました彼女は、ザックという殺人鬼に「脱出を協力する代わりに自分を殺してほしい」という約束を交わす。
地上を目指し。フロアに待ち構える殺人鬼を退け。己の「罪」を思い出し………「殺し」「殺される」誓いは、しかし果たされぬまま、二人は離ればなれになる。
 頭はいいが感情が乏しく、外からの刺激にあまり反応を返さない。
 
【weapon】
 ポシェット
 中には財布など外出に必要な最低限のものと、裁縫道具一式。そしてボロボロのナイフ(元居た世界で手に持っていたので偶然持ってこれた)
【能力・技能】
 特になし
【マスターとしての願い】
 ザックに殺される
【方針】
 決めてないが、とにかくザックに殺されるまでは絶対に死なない


822 : ◆7u0X2tPX0. :2016/12/15(木) 23:10:43 kN2avJWQ0
投下終了です。


823 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:23:29 nlB7ALzM0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


824 : 宇佐和成&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:24:33 nlB7ALzM0


この度の聖杯戦争は、英霊の座に就いていない者でもサーヴァントとして召喚される可能性がある。
よって、こんなろくでもないサーヴァントが現れる可能性だってあるのだ。


◆ ◆ ◆


宇佐和成は、あ然としていた。
念願の一人暮らしを満喫していたはずが、どこか違和感がぬぐえなかった。
大切な人がそばにいないという事実に気づいたのがきっかけで、記憶を取り戻したのがつい先ほどのこと。
サーヴァントは、すぐに彼の前に現れた。
それは軍服のようなデザインの服を着た、紫の髪の美青年だった。
その青年は、宇佐の顔をみるなり思いっきりわざとらしく溜息をついた。

「はずれ、ですか……」
「は?」
「聖杯を手に入れ、我が願いを叶える千載一遇のチャンスと思って一も二もなく参加しましたが……。
 少しくらいはえり好みするべきでしたね。
 まさか魔術の素養も無ければそれ以外の役に立ちそうなスキルを持っているわけでもない、おまけに(ピー)くさい役立たずのマスターに当たってしまうとは」
「え、なんで俺、初対面の相手にそこまで罵倒されてるの!?」

そんなわけで、宇佐和成はあ然としていた。


825 : 宇佐和成&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:25:28 nlB7ALzM0


◆ ◆ ◆


なんでこんなことになってしまったのだろう、と宇佐は思い返す。
たしか最後の日常の中での記憶は、図書委員として本の整理をしていた光景だ。
その時本に挟まっていた紙に気づき、手に取ったところで記憶がぷっつりと途切れている。
思うに、あれが脳に叩き込まれたルールの中にある「白紙のトランプ」だったのだろう。
日常の中の何気ない行動のせいでこんなデスゲームに巻き込まれてしまうとは、もっと慎重に生きるべきだっただろうか。
いや、ただ紙を手に取っただけでこんなことになるなんて、想像できるはずがない。
そこまで気をつけていたら、24時間心の安まるときはないということになってしまう。

「何をアホ面でボーッとしているのですか。ただでさえ知性の足りない顔立ちをしているというのに」

サーヴァントの暴言が、宇佐の思考を中断させる。
あれから自分のクラスがアーチャーであることだけは教えてくれたが、それを除けば彼の口から出るのは罵詈雑言ばかり。
宇佐にとって有益な情報は、全くない。

「あのさあ……」
「何です? 不快なのであまり口をききたくないのですが」
「いや、それだよ! そりゃ俺だって、会ったばっかりのやつとすぐ仲良くなれるとは思ってないよ?
 けど、なんでそうやってわざわざ溝を作るんだよ!
 俺たち、これから協力していかなきゃならないんだぞ?
 お互い歩み寄る努力をさあ……」
「いやでございます」

宇佐の熱弁を、アーチャーはあっさり否定する。

「私は呪いの塊でございます。他人を信頼し、協力するなど有り得ません。
 私にとってあなたは、一方的に利用するだけの存在でございます」
「こいつめんどくせえぇぇぇぇぇぇ!!」

がっくりうなだれる宇佐。
だが、その心は折れたわけではない。
宇佐は、死にたくない。ずっとそばにいたい人が、元の世界で帰りを待っているのだから。
いや、本当に待っていてくれるかはわからないが。そうだと信じたい。
とにかく、宇佐は生きて帰りたい。
だが平凡な高校生にすぎない彼が生き延びるには、サーヴァントの力を借りるしかない。
ゆえに、何としてでもアーチャーと良好な関係を築かなければならないのだ。

(見てろよ、ちくしょう。絶対に利用されるだけで終わったりしないからな!
 伊達に今まで、変人の相手ばっかりしてきたわけじゃないってところを見せてやる!)

静かに闘志を燃やす宇佐。
その傍らで、アーチャーもまた自分の世界に入っていた。

(聖杯さえ手に入れば、私とこひな様だけの理想の世界が……。
 ふふふふふ、何としてでも手に入れてやりましょう!)

こうして、惚れた相手のことしか頭にない二人の聖杯戦争が始まった。


826 : 宇佐和成&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:26:19 nlB7ALzM0

【クラス】アーチャー
【真名】狗神
【出典】繰繰れ!コックリさん
【性別】不明(人格は男)
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:E 耐久:EX 敏捷:C 魔力:C 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:C-
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
ただし呪いの化身であるアーチャーは、聖なる力や浄化の魔術は無効化できないどころか致命傷になりかねない。

単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Aランクなら、マスター不在でも一週間程度現界可能。

【保有スキル】
超再生:A
元来妖怪というものは滅多なことでは死なない存在であるが、アーチャーは特に回復力に優れた妖怪である。
具体的には、全身をミンチにされても蘇るほど。
ただし「超速再生」ではないので、大きな負傷はそれだけ回復に時間がかかる。

ストーキング:B
愛した標的を追い求め続けるためのスキル。五感と魔力を含めた野生の本能とでも言うべき代物。

精神異常:A
精神を病んでいる。狂化ではなく、周囲の空気を読めなくなる精神的なスーパーアーマー。

変化:D
文字通り「変身」する。
女体化したりアニマルモードになったりできる。


【宝具】
『1匹見たら30匹(インフィニティ・ストーカー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
自らの分身を生み出す能力が、宝具となったもの。
生み出した分身は姿がアニマルモードで固定され、「超再生」のスキルを持たない。
ステータスも本体より低いためすぐ死ぬが、死んでも本体にはまったく影響がない。
分身がいる状態で本体が消滅した場合、即座に分身も消滅する。

【weapon】
拳銃

【人物背景】
ある捨て犬が死後、この世への未練と恨みにより妖怪に転生した存在。
生前に唯一優しくしてくれた(後に彼の思い込みであることが判明するのだが)市松こひなに偏執的な愛情を抱き、彼女の元に押しかけて強引に取り憑いてしまった。
生前の性別を覚えていないため、男女どちらの肉体にもなれるが男の方がデフォルトである。
なぜか軍服風の服装で、拳銃を武器とする。
他の妖怪と違い、アニマルモードでは犬そのものではなくファンシーなマスコット風の姿になる(こひなの気を引くために、意図的に選んだ姿である)。
性格は陰険で陰湿。「こひな以外のものは自分も含めて全て嫌い」とのたまう。

【サーヴァントとしての願い】
こひなと自分だけの世界を作り上げる。

【基本戦術、方針、運用法】
マスターに従う気ゼロなので、運用もクソもない。
いちおう戦術としては、サーヴァントとしての力量不足を補う奇襲が有効だろう。
超再生があるので、多少無茶な策を取ってもリカバリー可能である。


827 : 宇佐和成&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:27:08 nlB7ALzM0

【マスター】宇佐和成
【出典】僕らはみんな河合荘
【性別】男

【マスターとしての願い】
無事に元の世界に帰る

【weapon】
なし

【能力・技能】
「変ショリ」
『変人処理班』の略。
周りに変人ばかり集まってくる星の下に生まれたため、そういった人種の扱いに長けている。

【人物背景】
家庭の事情により、下宿屋「河合荘」に住むことになった高校生。
同じく河合荘に住む学校の先輩・河合律に惚れており果敢にアプローチを続けているものの、彼女の異様に面倒な性格のせいで悪戦苦闘している。
やや妄想癖の気があるものの、基本的には善良で平凡な男子高校生である。

【ロール】
留学中の高校生

【方針】
生存優先


828 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/16(金) 00:28:04 nlB7ALzM0
投下終了です


829 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:00:14 nmgSBVm60
投下します


830 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:03:37 nmgSBVm60
 少年は、スラム街の孤児として生活を強いられていた。
 ストリートファイトで僅かながらも食い扶持を稼ぐ生活。
 力なくしては、この街では今日を生きるのは苛酷な環境だ。
 そんな中、少年は一人の少年と、その姉の女性と邂逅する。
 特に少年とは気が合うのか、程なくして親友となった存在だ。
 姉に対して少年は慕うに近く、三人で撮った写真が今でも宝物である。

 ある日、二人は少年が集団にリンチされている現場に出くわした。
 その少年は助かることはなく、二人は少年を埋葬すると、親友はつぶやく。

『戦わずして朽ち果てたくない。いつかここを抜け出して、全てを手に入れてやる。』

 少年もこんな場所で死ぬつもりはなく、親友の固めた決意に同意し、彼を助けると誓った。
 その悠久の絆は何年経とうと、どれだけ傷つこうとも、変わることはなく。

 ―――

 一人の男が、路地裏で囲まれていた。
 二メートルはあろう巨躯に、露出した筋肉はかなり鍛えられたものだ。
 一方で、上はマントしか羽織ってなく、上半身の鍛えられた筋肉全てが露出しており、
 顔は袴と同じ、赤茶色の陶器の仮面を被り、統一性もなければ一般的な格好からかけ離れた人の姿
 異様な雰囲気を醸し出す男を、黒服の男達は十数人ほどで逃がさないように取り囲んでいた。

「油断するなよ、こいつは何人もの刺客を返り討ちにしてる怪物だ!」

 一人の男が、周囲の仲間へと促していた。
 この状況の経緯は大したものではない。あるマフィアにおける内輪もめだ。
 今、彼らが属するマフィアのリーダーは、若くして組織のトップにのし上がった。
 それだけの手腕、才能がリーダー、および補佐にあるのは事実だが、早すぎる出世を好まぬ幹部も多い。
 故に、多くの暗殺者をその男へと彼らはけしかけてきたが、悉く仮面を被った男がそれを阻み続けてきた。
 目の前にいる仮面の男こそ、今までの暗殺を阻止し続けてきた、リーダーの守護者たる補佐だ。

「貴様らの所業は既に理解している。暗殺執行の計画を企てた貴様らへ告ぐ。
 盟友からの伝言だ。『これ以上暗殺を執行しようものなら、制裁を下す』と。」

 様々な得物を構えられながらも、陶器の仮面の奥から覗く視線は変わらない。
 声色は人数差もものともせず、動揺もしてないのだろう。
 ただ淡々と、盟友から頼まれた伝言を部下へと伝えるだけだ。

「おいおい。この数で勝つつもりでいるのは、流石に自惚れが強すぎるんじゃ―――」

「手を引くなら今までの刺客の件、全てを不問とすると盟友からの通達だ。
 この場で攻撃する意志を見せたならば、命と共に話は無に帰ると知れ。」

 部下の言葉を遮るように、再び仮面の男警告をする。
 それが調子に乗ってると判断したのか、一人が先走って鉤爪を持って襲い掛かった。
 機敏な動きで翻弄されているのだろうか、仮面の男は動く様子を見せない。
 そして死角となる背後に、機敏な動きながら音もなく忍び寄り―――

 バキッ

 何かにひびが入るような音とともに、
 陶器の男は振り向きざまのアッパーが、鉤爪の男の顎へと叩き込まれる。鉤爪は肌に届いてすらない。
 一瞬間をおいた後、男は勢いよく空を舞い、間をおかず次の一人へと突進し、これも吹き飛ばす。
 続けざまに仮面の男の近くにいた部下が銃を構えて、仮面の男の胸元を狙うが、狙いをつける前に跳躍。
 跳躍と同時に空中からの飛び蹴りで一人を蹴り飛ばし、続けて一人を掴んで頭から地面に叩きつける。
 バックドロップのようなものではない。箱を持つように軽々と人を持ち上げ、頭から叩き落したのだ。
 一瞬にして数人が蹴散らされ、空を飛んできた男が落下し、残った者に恐怖が伝染するが、もう遅い。
 彼らは魔人を縛っていた盟友の誓いの楔を、自分達で解き放ってしまったのだ。

「汝らがさだめ―――滅びなり!」

 楔から解き放たれた魔人は鉤爪の男とは比にならない、
 とても巨体とは思えぬスピードで、蹂躙を開始した。


831 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:05:26 nmgSBVm60
 僅か数分。ほんの数分である。
 男は何一つ傷を受けることなく、その身一つで数の差を圧倒した。
 彼に武器など必要ない。拳と足だけで生き抜いてきたのだ。
 それだけで、彼は盟友から刺客を守り続けている魔人である。

「まずは、報告か。」

 部下の謀反だが、処遇は盟友が決めることで、彼ではない。
 その為、全員重傷もいるが、誰一人として殺めてはいなかった。
 全員を無力化させたことで、彼が守り続ける盟友の下へ歩き出す。

 だが、彼は気づいていなかった。
 この場に居合わせた暗殺執行の計画した犯人は、もう一人いることに。
 その男は仲間がやられながら、その機会をうかがっていた。
 完全に油断したその瞬間を、獲物を狙う獣のように。

 そして、機会は訪れる。
 仮面の男が背を向けた、その瞬間。
 物陰から、サイレンサー越しの銃口が彼を狙う。

 弾丸を放つ寸前、その場が眩い光に包まれる―――



「ハッ、弱者らしい小細工だな―――」

 光と共に、一人の男は姿を現すと同時に、腰に携えた刀を抜き、刃で弾丸を弾く。
 同時に刀身が燃え上がり、その炎を払うように物陰の男へと飛ばす。
 炎は男を包み込み、暫くした後、一つの巨大な炭を作り上げる。

 本来なら、そのまま彼の胸に弾丸が打ち込まれていたのだろうか。
 殺気に気づき、振り向いている彼の様子からは、はっきりとは分からない。
 ただ一ついえるのは―――彼の前に立つ男が、彼を凶弾から守ったこと。

 燃え尽きた人だったそれを一瞥した後、仮面の男は彼を見た。
 男の姿は、彼と同様に、異様な格好をしている。
 紫の着流しに、皮ブーツという格好もさることながら、
 全身を覆う包帯姿は、ミイラを髣髴とさせる姿だ。

「―――礼を言おう、サーヴァント。」

 そういって、仮面の男は礼を言う。
 対処できていたかもしれないが、助けてもらったのは事実。
 殺さないようにするのが盟友の命令ではあるが、
 あくまで殺さないようにするのは『自分の命令』で、
 今のはサーヴァントの防衛であり、咎めることはない。
 それよりも、彼は自分の頭に流れ込む聖杯戦争を優先した。

 凶弾に撃たれるその寸前、彼は思い出した。
 状況は違えど、似た出来事があったことに。
 盟友から凶弾を庇い、それは今も自分の胸に埋まっていて自身を蝕み、余命が僅かと宣告されていることも。
 そして、KOF(キングオブファイターズ)を勝ち進んできた者との戦いに敗北し、死を迎えるその寸前
 空から風に乗って彼の手元にやってきた、一枚の白紙のトランプが光り、この世界へ招かれたことも。

「偶然とは言え、そいつは俺に引き金を引いた。いうなれば、
 ただの正当防衛に変わりはしねえよ。礼を言う必要はどこにもねえ。」

「そうか・・・・・・我は力の殉教者―――グラントという。
 我が願いは理想も持たず、惰性に生きる者を嫌う、盟友の願いの成就。
 力だけで生き抜き、弱者に明日なき街を目指す。それが、我が望みだ。」

 まずは自分の意に賛同するか否か。
 それが出来なければ、今後やっていくのは難しいだろう。
 場合によっては、令呪の強制も辞さないほどに
 仮面の男、グラントはセイバーへと問いかけるが―――

「・・・・・・フッ、ハハハハハハ!!」

 グラントの言葉を聞くと、唐突にセイバーは笑い出す。
 路地裏に響き渡るほどの、快活な大声だ。

「何がおかしい?」

 自分の聖杯を求める理由を述べただけで、
 笑える要素など、何処にもないはずだ。
 それは真面目なグラントでなくとも思うだろう。
 別に不快感はない。たとえ理解されなくとも構わなかった。
 理解されない程度で、彼と盟友の目指すものは揺らぐことはない。

「いや、何。まさかいいマスターに巡り会うとは思わなかったからな。
 此処まで俺の思想とあまりに似ていて、つい笑いが出ちまっただけだ。
 所詮、この世は弱肉強食だ。強い奴だけが生き残り、弱い奴は死ぬ。
 そうだ、それが正しい。弱ぇ奴に明日なんざねえ、優者必勝の摂理。
 テメエの・・・・・・いや、テメエの盟友って奴の思想は俺と同じだ。
 もっとも、俺が手にするのは街なんて小さなもんじゃあねえ―――国だ。」

「国、か。」

「どうだ? 街一つといわず、国ごと弱肉強食にするのも悪くはねえだろ?」

 キセルで喫煙をしながら、セイバーはグラントに持ちかける。
 国ごと弱肉強食にすれば、盟友の目指す目的も変わらないものだ。
 盟友の願いは、平和になったセカンドサウスを再びスラム化させること。
 国と言う、壮大な部分までは考えていたかどうかは分からない。


832 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:15:39 nmgSBVm60
「いずれはそうなるやもしれぬが、あくまで我が願いは盟友のためにある。必要以上の行為は望まぬ。」

 とは言え、盟友が望むのは一先ず街であって、国ではない。
 同じ弱者に明日を生きる資格がないという思想は同じではあるが、一先ず保留とした。

「そうか。ま、『志』は同じくする『雄』同士、仲良くやっていこうじゃあねえか。」

 ポン、と肩を叩き、セイバーは霊体化してその場から消える。
 セイバーの消えた場所を一瞥した後、グラントは盟友の下へと向かう。



 戦いの殉教者は、幕末の人斬りと共に聖杯を狙う。
 全ては己の為ではなく、元いた世界の悠久の絆結びし、本当の盟友の夢の為に。



【出展】るろうに剣心
【CLASS】セイバー
【真名】志々雄真実
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力:B++ 耐久:B++ 敏捷:B++ 魔力:E 幸運:B 宝具:B

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する
しかし、魔力と無縁に近い彼には、気休め程度の耐性しか施されない

騎乗:D
騎乗の才能。馬を乗りこなす経験があるが、同時にそれを用いた戦闘をしておらず、ランクは低い
一般的な乗り物も騎乗スキルによって使った事がなくとも乗りこなすことは可能

【保有スキル】
炎を統べるもの:A
警官隊五千人を軽く上回るほどの人数の部下、僅か十人(一人は非戦闘要員実質九人)で二百の兵団を屠る強さの十本刀
彼に恩があり、彼を慕い、彼の思想に理想を求め、彼を殺そうとする為にとついていった者達、
雑兵には『真の自由と平等の時代を創るため』と伝えており、熱狂的な支持を受けている
粗野な口調とは裏腹に言動には高い知性をうかがわせるのも、彼の魅力の一つだろう
それらの人物の上に立つ男が持つカリスマは絶大であり、信念も最期どころか死んですら曲げない
軍略やカリスマと言ったスキルが混合し、信念の強さから精神干渉魔術への耐性に加え、精神異常:D- も有する
精神異常の割りに意志の疎通に全く支障はないが、誰に対しても口が粗野であり、
凄惨な光景も動揺する事はなく、むしろその光景を生み出した者を賞賛するかもしれないと、
人としての感性から見れば明らかにいかれている部分があるだろう

心眼(真):B+
修行と鍛錬に基づく戦場での洞察力
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理
龍鎚閃・牙突零式・回天剣舞六連といった多くの技を防いできた逸話から来るスキル
事前に情報があったとはいえ、天翔龍閃だと察知して一撃を防げたのもあるだろう
また、ある人物に中に人がいると察していたり、部下の一人の本質も見抜いている
一方で一度見た技は通じないと豪語したが、二度目の攻撃を受けた事が災いし、
卓越した技量を持ちながらもランクAには届かない
異常体温により、その能力はさらに発揮できる

異常体温:A-
全身の火傷により体温の調節が出来ないが、変わりに異常なまでの体温を得ている
氷といった低温に関する攻撃に耐性がつくが、極端な温度差の攻撃は防ぐ事は出来ず、
氷を槍の様にして飛ばすなど温度差関係なく物理的に攻撃を仕掛けるものも、僅かに威力を抑えられる程度
十五分以上全力で戦うと人体の限界を超えて、体温が高まり続け最終的に人体発火を起こすが、
低温の環境であれば、結果は人体発火であっても戦闘できる時間は伸びる可能性がある
なお、一般的な環境において三十分以上の戦闘で人体発火を起こす可能性が極めて高い
あくまで極めて高いだけであり、十五分以上の戦闘でも発火の可能性がありうるし、
常に全力で戦っていた場合、十五分どころではすまないかもしれない

志々雄の体内には内燃機関に近いものが備わり、高温になればなるほどその力は増していく
戦う間徐々に強くなり、サーヴァントの幸運以外のステータスが最大で1ランク上昇するが、
1ランク上がる=十中八九人体発火を起こすぐらいの戦闘時間が必要となり、現実的に不可能
(勿論、何らかの外的要因やマスターが変われば不可能ではなくなるかもしれない)
戦闘を終えてクールダウンすると、上昇したステータスはすぐに戻る


833 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:19:10 nmgSBVm60
また、外見からは想像できぬほどに怪力やタフさを誇り
『無銘の脇差だが片手で握り潰し、へし折る』『肩の肉を食い破る顎』
『手袋をつけた状態で貫手をすると第二関節まで突き刺し入れる』
『一撃必倒と言われた攻撃を(使用者は負傷してたが)直撃で受けながら耐える』
『作中屈指の打たれ強い男を剣ではなく、拳の一撃で壁を粉砕する威力で殴り飛ばし気絶させる』
など、人間離れしたパワーについてはいくつもある(これらはさほど高温にならずとも発揮してるので、素の実力)
タフさも、全員負傷してたと言えども一人で四人を連戦で相手し、さらに多数の大技を受けながらも倒れないほど

【宝具】
『壱の秘剣 焔霊(ほむらだま)』
ランク:E〜C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1〜3
刀が燃える技。燃えた無限刃で相手を斬り、更に傷口に火傷を負わせる
斬ると焼くを同時に味わわせるため、浅くともダメージがかさみ、傷の治癒が遅れる
一方で無限刃は構造上、切れ味が落ちるため、斬るダメージはさほど大きくはない
なのだが、試し切りの際は火達磨にするほどで、幸運判定によって威力が上下する

『弐の秘剣 紅蓮腕(ぐれんかいな)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1(爆風は1〜3以上) 最大補足:1(爆風は1〜5)
相手の胸倉をつかみ、掴んだ手の皮手袋に仕込んだ火薬を無限刃で着火させ、至近距離で大爆発を起こす
威力は直撃で仮死状態にするほどだが、皮手袋に仕込んだ火薬を要求する技なので、予備がなければ二発しか使えない
また、威力が大きすぎて使用すれば手袋は大体壊れる。自身への反動は皮手袋の下にある手甲で相殺
矛先を変えられ自爆という形で破られる可能性があり、見切られると結構危険な技。とは言え当たれば瀕死である
尚、本当に殺る気なら普通に首を取れる状況になるが、聖杯戦争なら爆発の方が有利かもしれない

『終の秘剣 火産霊神(カグヅチ)』
ランク:A 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1〜2 最大補足:1(残り火や衝撃は測定不能)
無限刃を鞘で発火。全発火能力を解放し、無限刃を炎の竜巻が覆い、相手にぶつける大技
威力は紅蓮腕を超えており、ある男に使用した際一瞬にして辺り一帯を火の海に変え、
さらにその炎を纏った斬撃は直撃すると相手は炎の柱となりその身体を燃やしつくし、その後も燃え続けた程
対人宝具ではかなりの高性能だが、他の二つと違って火が大きく、周りに引火する可能性が非常に高い
その為、引火するものが多い場所や狭い場所での使用は控えなければマスターはおろか、自分も巻き添えになりかねない

『恐を運ぶ黒船来航(大型甲鉄戦艦煉獄)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:測定不能 最大捕捉:測定不能
一見巨大で使い込まれた木造船・・・・・・に見せかけて、その実は大型甲鉄戦艦
爆発を意図的に起こすことで、その木造船から鋼鉄の戦艦が姿を現す構造をしている
大型甲鉄戦艦だけあって、筋力:B以下の攻撃は無効化され、A以上でも一撃での破壊は非常に難しい(あくまで一撃の話)
ただし、対煉獄を想定した炸裂弾によって僅か三発の手投げ炸裂弾で轟沈したことから、
対城宝具に対しては逆に装甲が下がり、対城宝具の性質も相乗してしまい、最悪の天敵
確率は低いが、船影を見るだけで相手に恐怖を与える精神攻撃も併せ持つ
黒船来航を剣心が例えた逸話が昇華した一方、その前に計画を阻止されたので確率は低い

性質上、水上で呼ばなければ船と言う優位性が失われる。スノーフィールドに湖はあるが、海は果たして・・・・・・
(陸で呼べば重火器は扱える、或いは盾にしたり押しつぶすなども可能ではある。使い方は完全に間違ってるが)
兵器の使い方は理解しているが準備に手間がかかり、結果的に宝具としてはランクの割りに使い勝手が悪い
元々、志々雄一派の部下が操作し、参謀である方治が指揮していたもので、人員を要求するものだからと言うのが大きい
海上からの一方的な攻撃が可能な一方で、自分も逃げ場がないので飛べる相手、即座に泳いで到達できる相手も分が悪い
そうなると大量の重火器がある以上、彼のスタイルの無限刃の戦闘はかなり危険なものとなる
もっとも船で決着をつける誘いに乗ろうとしたことから、持ち出さなければ甲板に引火するものは恐らくないのだろう
(元より轟沈手前の船だから関係ない、と言うのもあるのかもしれないが真偽は不明)
また、近付く相手はガトリング砲で対処出来るので完全にどうしようもないわけではない
一度姿を晒した場合、以後常にその姿で呼び出される(ガトリング砲は艤装ではないので使用しても木造船のまま)
あくまで規格外の強さを誇るわけではなく、人間が作り出した兵器であることから、
宝具の巨大さに反しては呼び出したり維持する魔力は低い(あくまで低いだけで結局の所それなりに要求する)


834 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:21:17 nmgSBVm60
搭載、あるいは搭乗されている兵器など
アームストロング砲
方治の発言ではアームストロング砲だが、当時は安式と呼ばれる模様
深い穴が出来るぐらいの威力は勿論あるが、その分連絡して装填と撃つのに時間がかかる

ガトリング砲
二輪で転がして持ってくるタイプのガトリング砲。気軽に使える

小船
脱出用。少なくとも数隻はある

他にも多くの重火器があると思われるが、
ムーンセルが観測できたのはそれらと未使用の主砲のみで再現されていない
主砲はどの主砲でも使用は可能

【weapon】
無限刃(むげんじん)
刀匠 新井赤空(あらい しゃっくう)の最終型殺人奇剣
通常の刀が人を斬り続ける事で刃こぼれが生じ切れ味が鈍るため、
発想を逆転し、あらかじめ刃をある程度こぼしておく事で切れ味を一定に保つ事を可能にした刀
その為、刃はよく見なければわからない程度にだがギザギザでのこぎりに近い
それ以外は、一般的な日本刀と余り変わりない姿をしているが、切れ味は性質上一般的な刀に劣ってしまう
刃の間にはこれまで志々雄が斬った多数の人間の脂が染み込んでおり、そのため摩擦熱で斬ると同時に発火が起きる
弱者を糧に己の力を高めていくという、弱肉強食の思想を持つ志々雄を体現しているともいえる刀

【人物背景】
千八百四十八年(嘉永元年)、八月生まれ、出身は京都府(余談だが新京都編では新月村に変わっている)
『志』を同じくする『雄』と書いて『ししお』と読み、『真実』と書いて『まこと』と読む
幕末期にて長州派維新志士として活動し、緋村剣心に変わる影の人斬りとなり
政府からは剣の腕と頭の切れは剣心と互角以上と評された実力者ではあったが、
その政府にとって口外されれば致命的になりうる暗殺もしており、同時に弱みを握る存在となっていた
仲間である維新志士らが戊辰戦争の混乱に乗じて昏倒させ油をかけ、彼は全身を炎で焼かれてしまう
(アニメにおいては頭を狙撃されたとされているが、大久保利通の言及では上述の通り)
このことが原因で汗腺がほぼ全滅。発汗による体温調節が出来ず、常時異常なまでの体温を纏う事になった
九死に一生を得た彼はその後、多くの実力者や政府を恨む者を集め、さらにバケモノ狩りと称して精鋭十本刀を集め、
ある男から『煉獄』を購入し、明治政府の転覆と、日本征服を狙う一大兵団『志々雄一派』を築き、その指導者となる
なお、明治政府への恨みは『良い経験になった』程度にしか考えてない

弱肉強食こそこの世界の摂理と言う信念を持っており、徹底した自然淘汰による優者必勝社会の世界を志向する
因みに、彼が国盗りに成功した場合、彼が関わり地獄絵図と化した新月村が、日本全土に行き渡っていたとされるだろう
強者や覚悟を決めた者なら敵味方問わず敬意を払い、行動を共にする事情は、たとえ自分を殺したい奴でも構わない

弱者が嫌いではあるものの、見所のある者には配慮を行い、取引に応じる一面も持ち合わせている
だが、どれだけ優秀な部下や同志であっても、一切迷わず自らの目的への捨て駒とする非情さも併せ持つ

京都を火の海にする京都大火、そしてその大火の裏に計画していた東京襲撃が立て続けに失敗し、
軍艦の煉獄はおろか、十本刀まで失うことになり、剣心達を国盗りの障害と認識し、
比叡山のアジトにて迎え撃ち、剣心たち一向と対峙する
(正確に言えば、軍艦を失ったとき既に敵と認めて、十本刀は後に全滅する)

全員が手負いにしても、立て続けに四人との連戦であろうと退けるほどの実力、洞察力、タフさを備え、
また、身体から放つ剣気の昂ぶりは、周囲の巨大な炎さえも影響を受けるほどであり、
最後の一撃を入れる際も満身創痍でありながら、周囲の岩盤が吹き飛ぶほどの斬撃など、絶大な力を持っている

血液が蒸発するほどに熱が高まりながらも、なお戦う意志を捨てなかった志々雄だが、
肉体的限界を超えた超高熱により体内の脂肪とリン分が人体発火を引き起こし炎上
剣心の目の前で巨大な火柱となりながらも笑い声を残して灰になるという、壮絶な最期を遂げた

死後は地獄にて彼が殺した駒形由美と、後に政府に絶望し自殺した佐渡島方治の二人と共に、
閻魔相手に地獄の国盗りを行うと宣言し、高笑いを揚げながら地獄へと向かって行った
『時代が俺を恐れて奴に力を貸した』と剣心に負けたとは全く思ってなく、『ここには悪人しかない』と楽しそうに語る
後に人誅編で生き地獄に落とされた剣心の夢の中にも出てくるが、それが本人どうかは定かではない
ただ、『地獄に連れて行ってもいい』と言っていた事から、もしかしたら当人なのかもしれない


835 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:22:56 nmgSBVm60
なお、剣心は最後まで彼の思想を否定したが、皮肉にもこの後明治政府は富国強兵政策を取り、
日本という国が力による支配という志々雄の思想をそっくりそのまま体現する歴史を辿ってしまった
※日本が植民地化になるなど仕方がない部分があるのだが、此処で語る事ではないので割愛

その他情報として
身長:170cm 体重:59kg 血液型:O 趣味:湯治 キセルでよく喫煙している
火傷を負う前の彼の姿は、サムライスピリッツの牙神幻十郎という人物そっくりそのままである
剣に対する考え方もモロに彼の座右の銘、『剣の道とはしょせん殺人剣。それ以外に道はなし』である

彼は知る人ぞ知る存在で、その偉業もなそうとしただけでなせたわけではなく、
強さこそ英霊に匹敵するかもしれないが、英霊の座につく器になるのは難しい
それでも呼ばれたのは、死後何年も経っていながら彼の事を忘れられなかった武藤のように、
人口からすれば多くはないものの、それでも多くの人々に慕われていて支持を受けたことか、
或いは死後もある男の方便を真に受けた部下の一人が、語り部として後世に彼の事を語り継いだのが繋がったのか
グラントの『弱者に明日を生きる資格はない』という考えに引き寄せられたのかもしれない

【サーヴァントとしての願い】
日本の国盗りだが、聖杯戦争が弱肉強食そのものであり、楽しむつもりもある
もし日本の国盗りが面白く感じなくなる、或いは無駄だと思ったり、
地獄の方に興味が沸いたのなら、願いを地獄の国盗りに変えるかもしれない

【基本戦術、運用法】
基本的に無限刃の応用による戦いになる
十五分以内に勝負をつけなければ危険な状態になるが、
三十分以内なら寧ろ活性化して強くなる可能性があり、
その後早急に身体を冷やすなどで、発火の危険を防ぐのがベストか
また、奇襲対策として頭の包帯の中には鉢鉄を仕込んでおり、
相当な威力を誇る牙突の衝撃も防げる代物

他にも前述の通り、全身火傷とは思えないぐらいに怪力とタフさを有しており、
魔力も『恐を運ぶ黒船来航』を除くと、酷く要求するものもなく安定しているが、問題が二つ

一つは数で圧倒する攻撃には対処する手段がないということ
『恐を運ぶ黒船来航』を盾にするという豪快な無駄遣いをしなければ防ぐことも儘ならない

何よりの問題は、異常体温による時間制限。雪原地帯などの低温の環境や状況を覗き、
十五分以内に決着をつけなければ、発火して自滅する危機すらありえる
異常体温により強化もされるが、安全を考えるとよくて二十分の戦闘が限度となるだろう
それでも発火の危険を押さえるため、身体を冷やすなどのケアが望ましい

『恐を運ぶ黒船来航』を使用する場合、マスターや同盟を組んだ相手との連携が必須になる
人員が多く、連携が取れれば戦艦らしい豪快で一方的な蹂躙も難しくはないだろう

【方針】
弱肉強食だが、前述の通り肝の据わった人物や見所がある奴、強者とは協力も考える
一方で、非情な方法での切り捨ても考えるだろう

【出展】
餓狼 MARK OF THE WOLVES(マーク オブ ザ ウルヴス)

【マスター】
グラント

【weapon】
本人は持たないが、マフィアなので拳銃ぐらいは扱える、はず

【参戦方法】
サウスタウンでKOFを勝ち進んできた者に立ちはだかり(原作におけるボス戦)、
その者に敗北し、死を迎える寸前に風が運んできた白紙のトランプによって招かれた
※誰に敗れたかは、誰でもいいようにあえて曖昧にしてます(原作は操作したキャラが倒した扱い。正史ならロック?)


836 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:23:50 nmgSBVm60
【人物背景】
本名アベル・キャメロン、アメリカ生まれ
スラム街の孤児として生活を強いられていたところ、
カイン・R・ハインラインとその姉メアリーと邂逅し、カインとは特に仲がよく程なくして親友となった存在
ストリートファイトで僅かながらも食い扶持を稼いでいたある日、二人は少年がチンピラにリンチされる現場に出くわした
その少年は死に、埋葬したカインは『戦わずして朽ち果てたくない。いつかここを抜け出して全てを手に入れてやる』と決意
アベルも彼の固めた決意に同意し、カインを助けると誓う。これが、二人が誓う悠久の絆である

月日は流れ、ストリートファイトで腕を鳴らしたカイン(当時八歳)は、
ドン・パパスと言うマフィアの幹部から強さを買われスカウトされる
アベルはカインに付き従い、誓いの通り盟友を裏から支え続け、いつしか仮面を被りグラントと名乗って活動する
(正確に言うと、グラントとして活動していたのはいつからかは不明)
アベルの補佐は完璧で、その甲斐もあってカインは僅か十年でドン・パパスを追放し組織のトップにまで上り詰める
だが早すぎる出世を好まない幹部達も多く、度々カイン暗殺が敢行されたが、その都度仮面の男が犯行を阻み続けた
そしてある時、裏切った幹部がカインに銃を向け、放った凶弾から庇ったことで、盲管銃創となってしまう

ギースの死後、荒くれ者が多かったサウスタウンは自由の街セカンドサウスへと変わった
だが自由に浮かれ、平和な日々を過ごす人々を、何の理想も持たず、惰性に生きる者と嫌ったカインは野望を抱く
セカンドサウスの完全独立化、そして全地区のスラム化。幼い頃を生き抜いた力だけの街を、
真の自由をセカンドサウスにもたらさんと画策したのだった
その計画の手始めとしてギースの死後、十年ぶりにKOF(キングオブファイターズ)を開催する
アベルもカインの理想に殉ずるべく、KOFを勝ち進んだ強者の前へと立ちはだかる

異様な格好だが、その実は魔人と呼ばれる破滅の存在。彼が関わってゴーストタウンと化した街は数知れない
自身を力の殉教者、戦いの殉教者と称しており、言うだけに見合った実力を有している

なお、盲管銃創とは銃弾が心臓付近に残り、徐々に心臓へと近付くという、実在する病名である
心臓付近に盲管するのは極めて危険な状態であり、作品の当時の医療技術もあいまって治療率は低い
銃弾の位置があまりに心臓に近く、運動機能に障害は無いものの外科手術では摘出不能になってしまい、
余命はおよそ数年なので、聖杯戦争で死亡する心配はないが、外的要因で進む可能性がある
※今では人工心肺装置を使って除去する技術があるが、身元確認などの問題で出来ないかもしれない
この事をカインには隠しているが、どうやらカインは気づいていた様子

年齢は不明だが、カインとそう歳は違わないものと思われる
三十五歳のテリーを老兵という当たり、二十代〜三十未満の可能性が高い(にしては顔が渋い)
また、いつからかは分からないが、仮面を脱いだ顔には大きな生傷がある
傷を隠すためなのか素性を隠すためなのか、それもまた謎
目立つが醜い顔と言うわけではないので恐らく後者

その他
身長:201cm、体重:105kg、血液:A型 髪色:銀髪(白髪?)
好きな食べ物にビーフシチュー、好きなものは民族的な仮面、嫌いなものは命乞い
苦手なものは湿気の高い場所(恐らく湿気で仮面が蒸れるからかも)、得意スポーツに重量あげ


837 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:24:33 nmgSBVm60
【能力・技能】
・暗黒空手
恐らく流派・・・・・・なのだが、その実態は原作からして不明
盟友がドイツの技名で暗黒真空拳とか言う胡散臭さ爆発しているので、恐らく我流に名前をつけただけの可能性
手足は両方用いるが、その巨体に見合わない機敏さを使った攻撃から、巨体に見合ったパワフルなのも多い
影武者らしき人物(アーケードにおける同キャラ戦)曰く『人を超えた拳』と賞賛される
技らしきものは以下の通り。オーラは基本紫色だが、破天弾や円月輪の狐を描く際はは炎のような色もある
暗黒落とし:相手を掴み、頭から地面へ叩き落す
魔壁:両手をクロスさせながら前進しそれを開いて攻撃する。大胸筋を突き出し攻撃してるように見えるが違う
黒炎流:オーラをまとったアッパーカットを出す。オーラの範囲が広く、視界を遮れるかもしれない
凶鳥刃:片腕を振り上げながら空高く飛び上がり、落下時は地面を突く。飛ぶ間に滅焼飛刹を繋げたり
滅焼飛刹:足を中心にオーラを纏い、空中から斜め下へ向かって飛び蹴り
剛裂衝:腕を大きく振り下ろしてからさらにもう片方の腕を振り上げて相手を殴り飛ばす
豪弾劾:身を屈めて構えてから、前方へ素早く突進する。巨体に見合わぬ速度を誇る
魔神岩:横蹴りからショルダータックル(頭突き?)に続け、とどめにツッパリに似た攻撃で相手を突き飛ばす三連撃
魔神破天弾:巨大なオーラを片足に纏い、斜め上前方へ蹴り技の一撃を放つ。対空攻撃のようなもの
魔神円月輪:前進しながら脚で何度も円弧を描くように蹴り、締めに『豪弾劾』を叩き込む

・どんな感情も押し殺すことが出来る
特技に表記されており、殺気を悟らせないことも可能と思われる
性格から動揺はしないだろうけどそういったものも出ないのだろう
物事を冷静に判断することも可能なはず

・陶器作り
戦闘には全く関係はないが、彼は陶器作りが趣味である
恐らく身につける仮面も、その陶器作りによって誕生したものだろう

【ロール】
スノーフィールドに巣食うマフィアのリーダーの補佐
プロローグで言及されたマフィアが彼の組織なのかどうかは不明
※どちらでも構わないという意味でもあります
此処でのリーダーも原作のカインのようにのし上がっているが、
スノーフィールドにおけるリーダーがカイン・R・ハインラインかは不明
※此方も、どちらでも大丈夫なようにあえて曖昧にしてますが、
 若くしてリーダーへと上り詰めた経歴を持っています

【マスターとしての願い】
盟友の願いである、セカンドサウスの全地区スラム化
彼自身の願いはなく、死の結末も変えるつもりはない
盟友の為に、全てをささげる
国盗りは現在は目的としていない

【方針】
協力は考慮の余地あり
弱者とは組むつもりはないが、サーヴァント同様、ただの弱者でないなら考える

【情報把握】
・るろうに剣心
京都編のラスボスだが、京都編初期からたびたび登場するので京都編全編と言った方が良い
人誅編でも出てくるが、前述の通り夢に出ただけなので余り必要ではないだろう
スピンオフも存在しており、裏幕『炎を統べる』は把握には事実上必須
アニメの把握でも問題ないが、アニメと原作では展開が少々違うので注意
(前述の頭の狙撃など差異はあるが、多少違うだけで根本的な問題にはならない)
アニメだと三十話より彼の名前が登場し、そこから京都編が始まる
実写映画版は設定、描写がかなり違うため別物に近いので、把握の必要はない
(例を上げれば政府に恨みがある、決戦の舞台は煉獄など、アニメと違い差異で済ますのが難しい)

・餓狼 MARK OF THE WOLVES(マーク オブ ザ ウルヴス)
PS2のゲーム(海外だとPS4やVitaでも出た模様)かACとして稼動する本ゲームで把握が可能
ACでの情報収集は現実的ではないので、PS2の本作か、プレイ動画が望ましい
この作品だけで殆どが把握できる一方、この作品はコミックスも小説も一切出ておらず、
外部の出演もNBC(ネオジオバトルコロシアム)にて背景キャラとしての出演のみ


838 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 07:25:12 nmgSBVm60
以上で投下終了です


839 : ◆EPyDv9DKJs :2016/12/16(金) 10:41:11 nmgSBVm60
失礼、タイトルが抜けてました
タイトルは「怪物のような人間」です


840 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:39:03 VN4CYzkw0
投下します。


841 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:39:35 VN4CYzkw0
―幕末の世が過ぎ、明治の夜明けが到来してきた頃。
歴史の闇に葬られた、幕末の亡霊が動き始めた。

剣の腕、頭の切れ、他者を惹き付ける人望、彼はどれを取っても人より上を行っていた。
同時に、彼は幕府にとって危険視された存在でも有り、故に幕府によって存在もろとも焼かれた―はずだった。
弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ世を望んだ彼は、この京都を大火に沈めんと画策した。
だが、彼は変わろうとする時代には選ばれず、故に彼は焼かれた。
時代に焼かれ、時代を焼こうとした男の名は、志々雄真実と言った。
そして、その男の到来を待ち続けている、一人の男がいた。


◆  ◆  ◆


―この世に蔓延る13の魔族。
その魔族を次々と滅ぼしていった、一人の王がいた。

王には力があった。
万物を葬る闇の鎧。
魂を喰らう魔晶の剣。
竜の姿をした城。
そして、この世の誰よりも美しき伴侶。

この世の全てを我が物とした王は、殆どの魔族を絶滅に追い込んだ。
貴族たるファンガイア族の名を盤石の固きに置いた王の実績は、英雄の名に相応しい物だった。
しかし吸血王の退廃は、途轍もなく儚きものだった。
鎧も、城も、愛する伴侶さえも人間に奪われた哀れな王。
大半の魔族を絶滅に追い込んだ王の輝かしさなど、今の王には微塵も残されず、家畜との共存を望んだハーフの手で王は倒される。
しかし、その王の復活を望む、一人の男がいた。


◆  ◆  ◆


842 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:40:04 VN4CYzkw0



月が輝かしい夜。
静寂こそが相応しいその夜の公園の芝生に、数々の絶叫が鳴り響く。

「ああああああ!!」
「きゃあああああああ!!」

木々が生え芝生が敷かれ、多くの人々が寛いでいたその場所。
多くの笑顔が月夜の中で輝いていたそれは、一瞬で地獄絵図へと変貌を遂げてみせたのだ。
喘ぐ人々の首にあるは、二本の牙の如き物体。
牙に噛みつかれた人々の身体は、徐々に透明色に染まっていく。
まるで、魂を抜き取られているかのように。
色を失い、最早一片の生気も感じられなくなった人は、バタリと倒れる。
ある人が倒れ、またある人も倒れと。

色を失った人々は次々と倒れ行き、十秒後には、最早其処に生きている人など一人もいなかった。
皆々、色を失い芝生に倒れている。

しかし、ある木陰に、一人だけ色を残し立ち上がっている人がいた。
白いマフラーを首に巻き、眼鏡を掛けた男性。
その身は痩せ細ってはいるが、しかし眼はギラギラと光っている。

「足りぬ……足りぬ……」

男はボソボソと呟く。
飢えるように、菓子のお代わりを強請る子のように。

「まだだ……もっとだ……。」

男はそう呟くと、光の粒子となって消滅する。
1時間後に、警察や救急車がサイレンを鳴らしてやって来ることは、言うまでもない。



◆  ◆  ◆


早朝を迎えた、クリスタル・ヒルにある部屋。
其処に有る机で珈琲を飲む男がいた。
痩せ細った体型に彫りが深い顔を持った男は、その眼をギラつかせながらも、窓の外の景色を見つめている。
男の名は佐渡島方治。
日本に務める国会議員であり、今回はアメリカの視察に訪れていると言う。
それが、方治に与えられた「役割」だった。

「……やはり錆びた物だな、我が国も。」

しかし方治は、今いるロールに満足などしてはいない。
方治がいた時代といえば、明治維新が始まって幾年か立ったぐらいの頃だ。
その世において日本といえば、開国が始まった瞬間に欧米諸国の言いなりだった。
そして今も、それは変わっていない。

「やはり、あの方がいなければ……。」

方治は、一先ず明治から今に至るまでの150年間、日本がどうなったのかを調べてみた。
見てみれば、日本は欧米に影響を受け「富国強兵」の道を進んだという。
これは方治にとっても喜ばしい事だ。
法廷でぶちまけることこそ叶わなかった物の、結果的に自分が望んだ日本がやって来たのだから。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。
日本も漸く、それが分かってきたということとなる。

だがしかし、日本は負け犬となった。
確かに日本は粘った。
国の誇りを掛けて戦った。
しかし力は及ばず燃え尽きてしまった。

(富国強兵……これを掲げた日本が何故負けた……)

答えは簡単だ。
―弱かった。
強ければ生き弱ければ死ぬ、その摂理に従い、儚くも日本は食われる側へと堕ちていった。
その挙句の果てに日本は武器を捨て平和主義を謳っていると言う。

(だがもし、志々雄様が生きていれば……)

もしも彼が、日の本の国を手にし。
この国を支配したとなれば。
他の国も全て焼けたのではないのか。
日本が、今方治のいるこの米国に敗れる未来も、無くなるのではないのかと。
十本刀、百識の方治の眼には、確かにそう映っている。

最早、現世に思い残すことなどなかった。
しかし、命を絶とうとした方治を引き留めたのが、何処かで手に入れたかも検討が付かぬ白紙の札。
これは寧ろ絶好の機会だ。
聖杯を手にし、志々雄真実を現世に舞い戻す絶好の機会。
それをむざむざ見逃す理由はない。
思い残すことなど無い。
ともなれば死ぬことなど覚悟の上。
ならば方治の向かう道は一つ。

(私は聖杯を手に入れる……そして志々雄様を蘇らせ……この国を最強の国へと作り変えてみせる!!)

改めてその想いを胸に宿した方治は、より一層顔を引き締める。

「只今戻りました、我がマスター。」

ふと、後ろから声が響く。
早口だが、しかしやや疲れているような声が。


843 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:41:09 VN4CYzkw0

「戻ったか。」

方治はそう答え、回転式の椅子を180度回転させ後ろを振り向く。
其処にいたのは、眼鏡を掛けた一人の痩せ細った男性だった。
彼こそが、方治の喚んだサーヴァント、アサシンである。

「ええ、昨夜も幾ばくかのライフエナジーを摂取しました。」
「そうか、ご苦労だ。」

アサシンの報告に、方治はウムと頷く。
方治が喚んだサーヴァント、アサシンは、人間が持つ「ライフエナジー」と呼ばれる生命エネルギーを貯蓄し、それを活用することに長けている。
故に、方治はアサシンには常日頃からNPCを襲わせる形で「魂喰い」を行わせ、魔力を貯蓄しているのだった。
既にアサシンを召喚して数日が立つ。
魔力は十分すぎる程に貯蓄されているが、使い道は有るのだろうか。

「念のために報告はしておくが、他のサーヴァントには発見されていないだろうな。」
「ご心配感謝いたします、今の所は発見されていませんご安心を。宝具は本戦において力を引き出しますので、貯蓄に関してはご安心を。」

アサシンの宝具。
それは、死んだ吸血鬼の亡霊を復活させ、使い魔として操ることだとか。
更に契約時に聞いた話によれば、その真価はその使い魔が「死んだ」時に発揮されるという。
死んだ使い魔の霊核は保存させることが可能で、数体の霊核を融合させることでより強大な使い魔を召喚することが可能、だということも聞いてはいる。
勿論、平時から派手に使うつもりはない。
使うのは本戦、闘うサーヴァントが減った時の話だ。
溜まった資金の切り方といえば、百識の方治の十八番、失敗するつもりは毛頭ない。

「そうか、引き続き魂喰いを続けてくれ。」
「畏まりました。」

方治の命令を聞き、アサシンは霊体化する。



◆  ◆  ◆



(やれやれ、まさかこんな物が宝具になるとは、しかし好都合な話です。)


アサシンのサーヴァント、チェックメイトフォーのビショップは笑う。
ビショップには、これという伝説的な武器はなかった。
例えばキングなら、キバの鎧やザンバットソードが宝具となりうるだろう。
しかしビショップには、そのような装備は与えられていなかった。
そんな彼に与えられた宝具とは、逸話系の宝具。
キングを蘇らせるために自ら行った儀式が宝具になるとは、座にいた時にビショップには想像もつかなかっただろう。

(ですが、これで計画は順調……)

しかし、その御蔭でビショップは願いへとまた一歩近づくことが出来たのだ。
ビショップが聖杯に託す願い。
それは、嘗て13の魔族を怖れさせたあの英雄、2代目のキングの復活である。
あの時英雄は、人間と言う家畜の手で殺された。
しかし英雄の息子は、英雄に等成りきれなかった。
三代目が結ばれる定めとなったクイーン、それが全ての発端となり、チェックメイトフォーの秩序はグラグラと揺れ始めた。
彼女を殺害する形でそれを止めたは良いが、しかしキングはそれを許さなかった。

何故許さなかったのか、今でもビショップには理解に苦しむ一方だ。
ファンガイアが従うべきは、永久に続く血の証であるはずなのに。
何故私情で己を踏んだのか、理解に苦しむ。

結局、三代目は出来損ないの無能に過ぎなかった。
真のキングに相応しき存在は、やはりあの御方だった。

(ああ、お待ち下さい真のキング、今すぐに貴方様を蘇らせ、再びファンガイア族の誇りを築き直して差し上げます)

座から得た知識によると、儀式は失敗に終わりキングは暴走したと言う。
結果、無能のキングと紛い物のキングにより滅び去る運命に至り、貴族の血は人間に汚された。
次は失敗しない。
今度こそ、ファンガイアの秩序を作り直してみせると、吸血鬼の宰相は再び己が一族に誓った。


844 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:41:59 VN4CYzkw0






【クラス名】アサシン
【出典】仮面ライダーキバ
【性別】男
【真名】禁欲家と左足だけの靴下
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A+


【クラス別スキル】

気配遮断:C
自らの気配を絶つ能力。
ただし、戦闘中は解除される。


【保有スキル】

吸魂:A
魔族が持つ「ライフエナジー」を吸うファンガイアの力。
空中に牙を発生させ、対象に噛みつかせてライフエナジーを吸収、魔力を回復する。
サーヴァントに対してもこれは有効である。


護法の宰相:A
ファンガイアの在り方を護り続ける宰相(ビショップ)。
彼は秩序を尊重する人物だが、決して忠臣というわけではない。
王が王足り得ぬ器だった場合、彼が司る天秤は間違いなく傾くであろう。
属性が「混沌」の王と対峙した際に補正が掛かる他、「反骨の相」「単独行動」と同等の効果も併せ持っている。
三代目キングを見限り先代を蘇らせようとした逸話から。


変化:C
己の姿を「人間態」に変化させる。
ファンガイアは人間の姿に変化することで社会に溶け込んでいる。
この姿ではパラメータが隠蔽され、消費魔力は少なくなるが、パラメータは大幅に減少する。


戦闘続行:B
往生際が悪い。
ボロボロになっても尚先代キングを蘇らせようとした逸話から。


【宝具】


「死にゆく同胞達よ、その魂を汝が王に(サバト・フォー・マイキング)」

ランク:A+ 種別:対霊魂宝具 レンジ:50 最大捕捉:1000

アサシンが生前、死んだファンガイアの亡霊を解き放ち、そのライフエナジーを先代キングを復活させる糧に使用した逸話から。
地面からファンガイアの亡霊達を召喚する、ただし魔力はアサシンが負担するため、そう何体も召喚できるわけではない。
その上同じ真名のファンガイアは一度喚んだらそのファンガイアが死ぬまで召喚は出来なくなる。
復活したファンガイアに理性はなく、只ライフエナジーのみを求めて本能的に行動する。
一体一体がサーヴァントに勝てる見込みは無いが、それでも頭数が揃えば話は別である。
そしてこの宝具の最も恐ろしい所は、それらのファンガイアが死に、ライフエナジーのみが残った瞬間からである。
残ったライフエナジーは、融合させて「サバト」と呼ばれる対城宝具レベルの魔獣に変化させて暴れださせることが出来る。
更に、ある一定以上の膨大なライフエナジーを完全に使い切ることにより、「二代目キング」をサーヴァントとして召喚することが出来る。
二代目キングはセイバー、ライダー、アサシン、バーサーカーの適性を持ち合わせているが、復活時に魔力が足りなかった場合はバーサーカーとして現界する。


845 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:42:17 VN4CYzkw0

【Weapon】

「剣」
セイバーが己の身体から生成する剣。
相当な切れ味の持ち主。


「燐粉」
口から発射する粉。
敵に当たった瞬間爆裂し、対象にダメージを与える。



【人物背景】

人間のライフエナジーを糧とするファンガイア族の秩序を管理する「チェックメイトフォー」の「宰相(ビショップ)」に位置する人物。
「全てのファンガイアの在り方」を管理する天秤の如き存在で、管理する対象にはキングを初めとするチェックメイトフォーも含まれている。
冷静沈着で早口、秩序に固執し、その為なら手段を選ばぬ非道且つ狡猾な性格。
二代目キング亡き後は三代目の世話係をし、彼がキングの称号を受け継いだ後は補佐を担当する。
しかし三代目がクイーンとの恋愛関係で悩んでいることに気付き、それに何体もの同胞を殺した「黄金のキバ」が絡んでいる事に気づく。
「このままではチェックメイトフォーの在り方が崩れてしまう」と判断しクイーンを暗殺するが、それによりキングは激怒、しかし怒る理由にビショップは気づけなかった。
彼は王の器ではないと判断したビショップは、ライフエナジーを大量に集めることで先代キングを現世に復活させることを考える。
ビショップ本人は人間の戦士の手で殺されるも、結果的に策略は成功し、先代キングは現世に復活を遂げた。


【聖杯にかける願い】

先代キングを現世に復活させる。


【基本戦術・方針・運用方法】

頭脳労働派にして宝具が使い魔という、実質キャスターに近いサーヴァント。
一応、剣術と燐粉を使った卓越した戦術能力の持ち主であるが、彼は魂喰いを行うことで本領を発揮する。
普段はスキル「吸魂」でNPCのライフエナジーを吸い取り、魔力を集めることに専念しよう。
召喚したファンガイアは使い魔としても贄としてもサバトの材料としても活用できるので、何処でカードを切るべきかは慎重に考えよう。
因みに二代目キングを蘇らせることはアサシンが聖杯にかける願いでもあるので、恐らくは死の直前に使用する可能性が高い。


846 : 佐渡島方治&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:42:35 VN4CYzkw0





【マスター名】佐渡島方治
【出典】るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
【性別】男


【参戦経緯】

拘置所で何らかの形(政府からの賄賂の封筒からか、或いは隣の囚人からか)で白紙のトランプを入手した。


【Weapon】

「ライフル」
方治がロールにおいて飾り物としていた旧式のライフル。
それは奇しくも、彼が嘗て所持していた物と同物だった。


【能力・技能】

その明晰な頭脳と政治力。
組織の財布持ちも担当しており、志々雄一派を戦艦一隻買える程の巨大な組織に変えたのは紛れも無く彼である。
ただ決して肉体労働が苦手なわけでもなく、銃撃戦においても人間離れした戦闘を見せつける。


【ロール】

海外視察に訪れている国会議員。

【人物背景】

幕末の亡霊、志々雄真実が擁する「十本刀」の一人で、「百識の方治」と言う二つ名を持っていた男。
元は明治政府の官僚だったが、腐敗したその内部事情に絶望し途方に暮れていた所を志々雄真実に拾われる。
その優れた手腕で志々雄一派の財政を支えており、甲鉄艦「煉獄」の購入に一役買うなど十本刀の中でも特に重要な存在の一人となった。
志々雄に「完全勝利」を齎すことを目的としており、彼と真っ向対立し、挙句親指以外の爪を全て引き千切ってでもそれを成し遂げようとする。
しかし方治が立てた作戦は緋村一行によって力押しで滅茶苦茶にされ、結局の所剣心と志々雄を対峙させるに至ってしまう。
その際志々雄の勝利を確信し愛用の銃を捨てるが、彼は業火の中に消え去る。
虚しくも方治は投獄され、挙句その手腕を買った政府に国家反逆罪を帳消しする代わりに戻ることを勧められる。
今回は、獄内で自決するよりも少し前からの参戦。

真面目で冷静沈着だが、一方で堅物であるためマイペースな人間には弱かったりする一面も。
志々雄に心酔しており、「今の日本が生き残る為には弱肉強食の考えを掲げる他ない、彼こそが国を率いるべき存在である」と考えている。



【聖杯にかける願い】

志々雄真実を復活させる。


847 : ◆lkOcs49yLc :2016/12/16(金) 19:42:54 VN4CYzkw0
投下を終了します。


848 : ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:37:23 xwi4MYbY0
投下します
今回の投下作品は、「Fate/Grand Order」第七章のネタバレを含みます。ご注意ください


849 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:38:40 xwi4MYbY0
 何一つない町並みを、ただ一人きりで歩いている。
 それなりに記憶はあったはずだが、常に一番に思い出すのは、そんな寂しい光景だった。
 けれどもあるいはそれこそが、今の自分を象徴するに、最もふさわしいものなのだろうと、彼はそう理解していた。

 人のいない町。眠りについた廃墟。
 人を憎悪する魔獣を引き連れ、荒らして回ったメソポタミアに、数多打ち捨てられた墓標。
 それを築いた側の己が、今やそれら同様の、廃棄物に成り下がっているのは、何とも皮肉な話ではあった。

 いいや、なおのこと質が悪い。町であるなら、人がいれば、建て直すこともできただろう。
 けれど一人きりの自分には、拾い上げてくれる者など、地上のどこにもいなかった。
 ただ一人手を差し伸べた者は、それきり力を使い果たし、引き寄せたそばから消えてしまった。
 自分の両足で立とうとも、どこに行けばいいのかも、どこに行きたいのかも判然としない。
 結局己には何一つ、確かなものなどなかったのだ。
 吹けば消えてしまうような、幼稚な使命感一つを剥ぎ取ってしまえば、そこには何も残らない。
 そのことに気づけるだけの時間を、手に入れることができたのは、幸運かも、あるいは不幸かもしれなかった。

 そうだ。この地は神代の紀元前ではない。
 遠く時間と距離を隔て、未来の都市を更に模倣した、虚構に満ちた電子の世界だ。
 この地へと踏み込むための切符を、偶然見つけ出したのも、ひょっとしたら、何らかの作為が、この身を動かした結果だったのかもしれない。
 古代メソポタミアの世界には、存在し得ないはずのもの。
 白紙の紙切れ一枚が、何故か廃墟の町の中で、無性に気を引いていたことを覚えている。
 そうしてその場に歩み寄り、カードを拾い上げた時から、全ては始まっていたのだ。
 この身の余生、無意味な歩み――神の名前を与えられた、伽藍堂の人形の最期は。


850 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:39:26 xwi4MYbY0


 キングゥという名前は、数ある神の中でも、それほどメジャーなものではない。
 だとしても、不思議な響きを持った名前は、このスノーフィールドの地においては、それだけで目立つものだった。
 キング――王様を意味する単語が、彼らのイングリッシュに存在したことも、それを助長させたのかもしれない。
 いずれにせよ、神秘的な響きの名前と、輝く美貌の持ち主であった彼は、それなりに人気者として、ハイスクールライフを謳歌していた。

「………」

 目に見える全てが一変したのは、そんな満たされた日常に、僅かな虚しさを覚えた時からだ。
 今は大勢の仲間に囲まれ、ちやほやされているけれど、果たして卒業した後に、ここで培ったものの何割が、価値あるものとして残るのだろう。
 そんな無価値への冷めた視線を、どこかで覚えがあると認識した時、彼は本来あるべき記憶を、一挙に取り戻してしまったのだった。

「………」

 ストリートの片隅で、膝を抱えるその身体に、損傷の痛みはもはやない。
 しかし健康体になったところで、そのことに何の意味がある。
 一番大事な霊格のコア――聖杯をその力ごと失った時点で、新人類というアイデンティティは、まるごと消え失せてしまっているのだ。
 いいやそれすらも、そもそもの奪われた原因を思えば、些末なことなのかもしれない。
 力の有る無しなどどうでもいい。どちらであっても要らないと、死刑宣告を食らった己にとっては、存在そのものが無価値なのだった。

「ヒュウ、どうしたんだいそこの姉ちゃん」

 男の声が聞こえてくる。
 それが自分を呼んだものだと、正確に理解するまでには、ほんの少しだけ時間を要した。
 元々オリジナルの身体は、その身をもって人の愛を伝えた、娼婦の姿を参考にしているらしい。
 男神の名前を与えられ、男として振る舞っていたキングゥだったが、なるほど確かに黙っていれば、この顔はどちらかと言えば女顔だ。

「こんなとこで湿気たツラしてるよりもよ。どうだい、俺らと一緒に遊ばない?」

 下衆た笑みが、合計二つ。二十代そこそこの若い男が、にやついた顔でこちらを見ている。
 あわよくば据え膳を、と言わんばかりの、好色そのものの目線だ。
 それが今のキングゥにとって、殊の外堪えた。
 旧人類の卑しさに、呆れ果てただけでなく、思い出したくもないものを、思い起こされてしまったから。

「……遊ぶなら、行きたいところがあるんだ」

 内心と裏腹に、シニカルに笑う。
 すっくと身体を立ち上がらせて、男の傍へと歩み寄る。
 また一度、口笛の音が聞こえた。これはひょっとして脈ありかもと、期待を隠そうともしない顔つきだったが。

「地獄まで、付き合ってくれるかい?」

 瞬間、男のにやけ面は、一瞬にして凍りついた。
 頬にぎらりと当てつけられた、輝く金の冷たさが、その熱を悉く奪ったのだ。
 氷の笑みを浮かべたキングゥが、男の顔に添わせた右手――その手のひらが、光を放つ。
 鋭さを宿した切っ先が、柔肌から恐るべき毒牙を覗かせ、男を静かに威嚇している。

「ひっ……ひぃぃ!」

 予想通りの反応だ。そこには驚くまでもない。
 神の刃を突きつけられて、命の危機を察した男が、情けない悲鳴で鼓膜を揺さぶる。
 そうしてその男と、連れ添いの男が、示し合わせたかのように、一目散に立ち去っていく。
 そこまでは、読めたことだった。
 しかし意外だったのは、もう一人の男の視線が、妙な方向を向いていたこと。
 何故か横に立っていた男は、キングゥの抜いた得物ではなく――背中に意識を向けていたのだ。


851 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:40:34 xwi4MYbY0
「……オマエは……」

 答え合わせはすぐだった。
 遮る背中がなくなってしまえば、当然視線の先にあるものも見える。
 何ということはない。もう一人いたのだ。
 キングゥとまるきり同じことを、全く別の角度から、同時に行っていたもう一人の者が。

「――忙しない呼びつけだと思ったが、よもや貴様だったとはな」

 しかしその者の正体に、驚きが全くなかったと言えば、それは嘘になるだろう。
 あり得たことだ。分かっていたはずだ。少なくともこの地において、サーヴァントに出くわすということ自体は。
 英霊召喚の儀式を、人間が殺戮に転用し、聖杯を奪い合う戦と成した聖杯戦争。
 それがこの偽りの町で、行われている出来事であるなら、マスターとして呼ばれた己にも、サーヴァントは割り振られて然るべきだった。
 それこそ花の魔術師を始めとした、八騎の英霊を揃えてのけた、英雄王ギルガメッシュのようにだ。

「して、今度は何用だ? 貴様は何ゆえにこの私を、抜け抜けとこの地へ呼び寄せたのだ」

 ああ、しかし誰に分かる。
 そうして呼ばれたサーヴァントが、よりもよってこの女だったと、一体誰に予想ができる。
 長い黒髪をひと束に括り、女だてらに刀を抜いて。
 そのくせ雌の肢体を隠そうともせず、これ見よがしに露出させた、アンバランスな装いを纏い。
 少女にしては高い背丈で、ほとんど目線を持ち上げることなく、キングゥを真っ向から見据えるこの女だと。

「牛若、丸……」

 ライダーのサーヴァント、牛若丸。
 灰の曇天の只中にあって、剣のように煌めく女を、キングゥは既に知っていた。
 絶対魔獣戦線の、急先鋒に立ち戦った武芸者。
 偽りの母神に打ち倒され、他ならぬキングゥが拾い上げ、そして汚し尽くした女。
 真なるティアマトの洗礼を浴び、人理焼却の尖兵として、反旗を翻した女――だった、はずだ。

「……ハ、そうか。キミも死んでいたわけか」

 ざまぁないな、と口走りながら、精一杯の笑みを作る。
 動揺を押し隠さんがために、敢えて虚勢を張り軽口を叩く。
 過去に召喚された彼女が、再度この地へと召喚された。
 それもメソポタミアの記憶を持った、まるきり同じ霊基であるなら、それはつまりあの戦場で、彼女が一度消えたことを意味する。
 偉そうに人を嗤っておきながら、結局は同じように滅ぼされ、この地へと流れ着いたわけだ。

「当然だ。あの方々は死力を尽くし、そして見事使命を果たした。であるならば、私も貴様も、首を討たれたのは必定であろう」

 しかし嗤われた牛若丸に、怒りの色は浮かばない。
 それどころか自らの死を、さながら栄誉であるかのように、薄めの胸を張って語る。

「……何だって?」

 そのことが、キングゥにとってはとてつもなく――不可解で度し難いことだった。

「何だ貴様、何を驚く」
「それはこっちの台詞だ。牛若丸、オマエは……一体何を知っている?」

 豆鉄砲を食らったような顔に、キングゥは真顔で詰め寄った。
 受けた驚きを前にしては、笑顔を取り繕う余裕もなかった。
 こいつは今まさに、間違いなく、聞き捨てならないことを言ったはずだ。
 それは中途で退場し、あの戦いの顛末に、立ち会えなかった己にとっては、決して無視できない事柄であるはずだ。
 使命を果たした者がいる? その果てに牛若丸が討ち死にしている?
 あの古代メソポタミアの地で――誰が、何を成し遂げている?

「……どうやら、事は予想以上に、面倒な拗れ方をしているようだな」

 切迫したキングゥの問いかけに、牛若丸も悟ったのだろう。
 目を丸くした間抜けな顔を、即座にきりりと引き締めて、真剣な面持ちで目線を合わせる。

「私も話す。だから全て話せ。貴様に起こったこと、全てをだ」

 サーヴァントの身の上でありながら、主人に命令する不遜な態度も、今のキングゥにとっては、まるで問題にもならなかった。


852 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:41:56 xwi4MYbY0


 人理焼却は失敗に終わった。
 自らを産み落としたティアマトは、未来から訪れたマスターに討たれ、滅亡の危機は見事消え去った。
 それが人類と神々の、最後の決戦を体験し散った、牛若丸の見解だった。
 言われてみれば、当然のことだ。キングゥは既にそれなりの時間を、この電子の檻で過ごしている。
 それだけの時間を、あのティアマトが、悠長に過ごしていたというのは、あまりにも考えにくいことではあった。
 戦いは続いていたのではない。終わっていたのだ。
 それもティアマトの敗北により、人類史も、この箱庭も、燃え尽きることなく存続した。それだけのことだったのだ。

「人理が燃え尽きんとするその時に、この地に呼ばれたというのか。こいつは」

 視線の先では牛若丸が、ぶつぶつと考え事をしている。
 聖杯を宿していた時に得た知識によれば、こいつは天才と名高かった武将だ。
 何か見逃しがたいことに勘付き、思考を巡らせているのかもしれない。
 しかし今のキングゥにとっては、その程度の瑣末事など、もはや、どうとでもなれという心地だった。

「は……はは、ハハハハ!」

 立ち上がり、乾いた声で笑う。
 目元を右手で覆いながら、力ない笑いを挙げ続ける。
 母の願いが挫かれたと、それを理解した時に、浮かび上がってきた感情は、悲しみでも喜びでもなかった。
 負けて悔しいという思いも、ざまぁ見ろという思いも、不思議とこみ上げることはなく。
 空っぽの胸の中にあって、その虚しさだけが際立つような――敢えて言うなら、それ自体が滑稽だった。

「何故笑う」

 どこか不機嫌そうな顔で、牛若丸が問いかけた。
 当然と言えば当然だ。こいつは己の顛末を、きっと言伝でしか知らない。
 黒く染め上げられた後に、ろくに共闘することもなく、淡白に別れたこの女には、きっと己の思いなど、理解できるはずもないのだろう。

「これを笑わずにいられるか! 戦いが終わった? 全て無駄だったと? じゃあ結局のところボクは、何のために戦ってきた!?」

 引き笑い気味に、吐いて捨てる。
 悲劇に酔った役者のように、ふらふらと舞台を彷徨いながら。
 埋まることのない虚無感を、無理やりにでも埋めようと、靄を言語化して吐き出していく。
 無いものなど掻き出せないというのに。逆に埋め込むことをしなければ、虚ろは塞がらないというのに。

「ああ分かるとも、何も無い! 何も望まれなかったボクに、掴み取れるものなど、何も!」

 結局は使い捨ての命だった。
 自我なき破壊者であるティアマトが、自らの代わりに思考を行い、土壌を作ることだけを望み、作り出した消耗品だ。
 にも関わらず、その命題を、至上の大義だと驕り、浮かれた顔をして無様に踊った。
 何も見えていなかったのだ。であれば、どこにも行けなかったのだから、何も得られずして当然だったのだ。
 初めから何のためにという問いすらも、何もかも放棄していた自分などは。


853 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:43:31 xwi4MYbY0
「――ッ!」

 不意に、靴音が聞こえた。
 かつかつと歩み寄る音が途切れ、ぐいと何かに引き寄せられた。
 それが自身の襟首を掴む、牛若丸の左手だと気付いた瞬間。

「っ……!?」

 既にキングゥの視点は、軽く宙を舞っていた。
 アスファルトの上に、ごろごろと転がる。擦り傷の痛みが走った後に、微塵もぶつけていないはずの、顔面から痛みが湧き上がってくる。
 この痛みは、あれだ。殴られた時のものだ。
 いつ、誰に殴られたのだ。答えなど考えるまでもない。
 両目をかっ開いた牛若丸が、空いていた方の右拳で、容赦なくキングゥを殴り飛ばしたのだ。
 力を失った泥人形を、英雄サーヴァントの腕力によってだ。

「腑抜けたことを抜かすなよ、下郎……!」

 見上げた先の牛若丸は、わなわなと肩を震わせている。
 蒼天のように青い瞳は、今や嵐の苛烈さで、雷鳴の光を伴っていた。
 その怒気が、まさしく天を衝き、灰色の暗雲を揺さぶったのか。
 ぽつぽつ、と冷たい音が鳴り、水の雫を伴って、キングゥの身体を濡らしていく。
 たちどころに、雨、となった。ぐずついた空は決壊し、バケツをひっくり返したように、世界に豪雨を降り注がせた。

「人々から伝え聞いた言葉からも、あの日この目で見た姿からも……もう少しばかりの自負と矜持が、貴様からは感じられていた」

 嵐の只中にあっても、鬼の荒武者は動じない。
 怒気の炎を絶やすことなく、射殺す威圧を瞳から放ち、倒れたキングゥを睨み続ける。

「それが何だ。何も無かったと? ただその程度を悟っただけで、全て終わりだと投げ出すと?」

 靴音は、未だ鋭かった。
 水たまりができるより早く、牛若丸は歩み寄り、足元のキングゥを見下ろす。

「空虚を嘆く暇があったら……虚ろを認められたのならば! 埋める努めを怠ってきたと、それを自覚しているのなら、今度こそ己を探すために立て!」

 足りないものがあったのだと、それを自覚できるのであれば、どうにか埋める努力だってできたはずだ。
 知っているはずの不足を放置し、諦観の中で立ち止まるのならば、それは無知ではなく罪悪だ。
 そんな無様は許さない。罪を見逃すつもりなどない。
 多くの仲間達を屠ってきた、悪鬼羅刹の反英雄が、その程度の糞餓鬼でしかなかったなどと、墓標に告げることがあってたまるか。
 貴様の手前勝手な諦めは、あの魔獣戦線を戦ってきた、全ての同胞への侮辱なのだと、牛若丸は雷のように叫んだ。

「……オマエが、それを言うのか……」

 そこまで糞味噌に罵られては、さすがのキングゥも堪える。
 特によりにもよってその言葉を、他でもないあの牛若丸が、偉そうにたれたのであればなおさらだ。

「こともあろうに、己を、自我を! オマエがボクに説くのか、義経ッ!」

 立ち上がり、怒声と詰め寄った。
 白装束の襟首を、今度はキングゥが掴み返した。
 お前にだけはその言葉は、決して言われたくはなかったと、紫の瞳が睨みつける。
 偉大な兄を愛して慕い、自らはその二番手として、尻尾を振り獲物を追い続けた狂犬。
 そしてその存在を疎まれ、結局は無慈悲に切り捨てられ、何者にもなれぬまま終わった敗北者。
 お前は自分と同じではないのか。源義経の顛末は、この哀れな道化人形と、まるきり同じではなかったというのか。
 その義経が――牛若丸が、この胸にぽっかりと空いた虚無を、偉そうに否定するというのか。


854 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:44:50 xwi4MYbY0
「……何も見えていないのならば、今だけは私が道を示そう」

 言うべきことは言い終えた。
 後は自分で受け止めろ、ということか。
 キングゥの怒りなど意に介さず、返す牛若丸の言葉は、至極冷静なものであった。

「人理全体を脅かす、グランドオーダーへのわざわざの介入……此度の聖杯戦争は、明らかに異常極まるものだ。
 あの方々の真似ではないが、見ぬふりをするわけにもいかん。委細を調べ上げるため、私に力を貸せ、キングゥ」

 歴史の存亡の瀬戸際に、このムーンセルとやらはわざわざ、横槍を入れてキングゥを捕らえた。
 そんな面倒な案件であると、知りながら介入を仕掛けたというのは、尋常な事態だとは言えない。
 ただの聖杯戦争であるなら、個人的な願いのために、戦いに乗ることもあっただろう。
 しかしどうやらこの戦い、それ以上の裏の意図が、渦を巻いているように思えてならない。
 絶望に足を止めていられるほど、悠長な状況ではないのだ。
 なればこそ、状況に対処するために、貴様にも働いてもらわねばならんと、牛若丸はそう言ったのだった。

「……命令した挙句、手下扱いか」

 あんまりな物言いだ。
 こいつは自分がサーヴァントであることも、キングゥの令呪の存在も、きちんと把握できているのか。
 怒りよりも呆れが勝り、白けてしまったキングゥは、手に込めた力をゆっくりと緩める。
 解放された牛若丸の、両足がアスファルトへとついて、すとん、と小さな音を立てた。

「何しろ、女を傷物にしたのだからな。男子(おのこ)であれば責任は取れ」

 それで鮮血神殿でのことは、ひとまず我慢しておいてやると、牛若丸がキングゥに言った。
 話すべきことはそれで終わりだ。拒否権など認めるつもりはない。
 そう言わんばかりに、牛若丸の背は、雨の中を歩み去っていく。
 いつまでも濡れ鼠でいるくらいなら、家に帰ろうということだろうか。彼女が歩いていったのは、キングゥの仮住まいの方向だ。

(ああ、そうだ)

 今更ながら、自覚する。
 黙ってついて行く他に、行くあてもない己を嗤いながらも、キングゥは記憶を掘り返す。
 怒りに燃えた彼女の瞳を、最後の一言を発した瞳を、彼は既に知っていた。

(その自信たっぷりな目が、ボクは嫌いだったんだ)

 絶体絶命の窮地にあっても、減らず口を叩いたあの時の顔。
 手も足も出ない有様で、陵辱されかかったその時に、阿呆と罵った不敵な笑み。
 こともあろうにあの状況で、図星を突いて怯ませてきた、彼女の根拠のない自負が、ずっと気に食わなかったのだ。
 全然似ていないはずなのに、何故だかあの英雄王を、思い出させたあの瞳が。
 望めば何でも手に入れられた、黄金のギルガメッシュを想起させる、牛若丸の在り方が。
 そこで王を思い出すことも、無論キングゥにとっては、耐えられないほどに業腹だった。


855 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:45:59 xwi4MYbY0
【出展】Fate/Grand Order
【CLASS】ライダー
【真名】牛若丸
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運A 宝具A+

【クラス別スキル】
対魔力:C
 魔術に対する守り。
 二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣まで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

【保有スキル】
天狗の兵法:A
 人外の存在である天狗から兵法を習ったという逸話から。
 剣術、弓術、槍術などの近接戦闘力及び軍略や対魔力などにボーナス。

カリスマ:C+
 万人に好かれる器ではないが、近付けば近付くほどに彼女の奇妙な魅力に取り憑かれる。

燕の早業:B
 燕のように軽々とした身のこなしから。五条大橋にて、弁慶の恐るべき斬撃を一度ならず二度三度とかわしきった。

【宝具】
『遮那王流離譚(しゃなおうりゅうりたん)』
ランク:A++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 牛若丸が源義経となり、奥州で果てるまでに産み出された様々な伝説の具現化。
 五景の伝説全てが「奥義」と分類されているのは、個人の技量が宝具として認定される領域に至ったことの証明である。

○自在天眼・六韜看破/対軍奥義
 フィールド上にいる全員の強制転移。自陣を圧倒的有利、敵陣を圧倒的不利に変更する。

○薄緑・天刃縮歩/対人奥義
 薄緑による煌光の斬撃。天狗の歩法による縮地からの一撃は、躱すことが難しい。

○弁慶・不動立地/対人奥義
 武蔵坊弁慶の肉体のみを擬似的に再現。弁慶への信頼が強ければ強いほど、盾として強固になる。
 Bランクの対軍宝具までなら防ぎきれる。

○壇ノ浦・八艘跳/対人奥義
 壇ノ浦で見せたという、八艘跳びの具現化。
 どれほど足場が悪くとも、足を載せる箇所がわずかでもあれば、跳躍による移動が可能。
 また、跳躍力そのものの強化も行う。

○吼丸・蜘蛛殺/対軍奥義
 薄緑の本来の「力」を発揮する。周囲の「魔」を打ち払い、音によるダメージを加える。


856 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:47:16 xwi4MYbY0
【weapon】
薄緑
 腰に携えた日本刀。退魔の力を帯びており、宝具解放によってその真価を発揮する。

【人物背景】
五条大橋の昔語りで知られる、日本有数の武将・源義経。
それが知名度補正によるものか、全盛期の姿ではなく、幼少期の姿で現界したサーヴァントである。

多くの人々を惹きつける、麗しの天才武者として知られているが、
挫折を知らぬが故に恐怖を知らず、家族を知らぬが故に愛を知らぬ彼女には、人として有して然るべき、思考のブレーキが存在しない。
故に戦場においては犠牲を厭わず、実行難度を悉く度外視し、最大効率での敵殲滅を実行する、冷酷非情な鬼武者へと変貌する。
ただし、他者に犠牲を強いる時には、それに見合った戦果を約束し、死を無駄にはしないと豪語するなど、彼女なりの仁義も有している模様。
部下に対しては厳しいが、上官に対する態度は忠犬そのもの。
特に最愛の兄・頼朝に関しては、酒の勢いで「兄上は厠になど行きません!」とか言っちゃう。

今回は通常の召喚とは異なり、第七特異点・絶対魔獣戦線バビロニアでの戦いを終え、「成仏」して以降の再召喚がなされている。
始祖の英雄王の呼び声に応え、バビロニアの地に降り立った彼女は、激動の運命に翻弄されながら、神代の血戦を駆け抜けた。
マスターであるキングゥとは、浅からぬ因縁の持ち主であるようだが……

【聖杯にかける願い】
自身を危険視し抹殺を命じた、兄・頼朝との仲直り。
ただし現状においては、不確定要素が多すぎるため、単純な聖杯確保よりも、状況確認が最優先。

【基本戦術・方針・運用方法】
天狗の兵法と伝説の五景により、白兵戦では無類の強さを誇る。
特に敏捷性に関しては、およそサーヴァントとして実現し得る中でも、最高クラスのポテンシャルを発揮するので、
これを活かして懐に飛び込み、一気呵成に畳み掛けることを心がけたい。
弱点は非力であることと、遠距離攻撃の手段を持たないこと。
一応弓術も使えることは使えるのだが、現地調達した弓矢では、大した戦果は望めないものと思われる。
本人も足は速いのだが、できれば乗り物を確保しておけば、戦術の幅も広まるかもしれない。


857 : 虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:48:22 xwi4MYbY0
【出展】Fate/Grand Order
【マスター】キングゥ

【参戦方法】
 ラフムのジャングルから逃れた後からの参戦。廃墟と化したメソポタミアのどこかに、白紙のカードが落ちていた

【人物背景】
 ギルガメッシュ叙事詩にその名を刻まれた、神の造りし兵器・エルキドゥ。
 彼は死したエルキドゥの肉体に、全く異なる新しい魂を植え付け産み出された、存在しなかったはずの英霊である。
 元々キングゥという名前は、ティアマトの魔獣達を率いる神に与えられたものであり、同じ役割を割り振られた彼に、改めてその名が与えられることになった。

 自らを人理消滅後を担う「新人類」と豪語してはばからず、傲岸不遜に振る舞う独善的な人物。
 ……しかし、その自信はあくまでも、ティアマトに選ばれた人間であるという自負によって支えられたもの。
 使命を果たし用済みと断じられ、追われる身となったキングゥは、それまで自分を支えてきたもの全てを、一昼夜にして喪ったのだった。

 人型兵器であるキングゥは、自分自身が触媒として機能し、自身と縁を結んだ英霊を引き寄せることができる。
 彼が特異点で関わったのは、復讐の蛇神、燕の鬼武者、最古の賢王の三名。
 しかし、魔力の源泉を失った今の彼が、使いこなせる英霊はただ一人――三名の中でも最下位に位置する、鬼武者・牛若丸のみである。

【weapon】
・『天の鎖(エルキドゥ)』
 神造兵器として産み出されたエルキドゥは、自身の肉体そのものが、千変万化する無形の武器である。
 当然その特性は、肉体を引き継いだキングゥにも備わっている。
 ……しかし、いかに神の兵器といえど、所詮は一度停止した死人の器。
 動力源たる聖杯を失った、今のキングゥの肉体は、その機能の大部分を喪失している。
 サーヴァントを傷つけるための、最低限の神秘性こそ備えているが、出力は大きく減衰してしまっている。
 当然ながら、最大駆動による絶技『母よ、始まりの叫をあげよ(ナンム・ドゥルアンキ)』は、使用することすら敵わない。

【能力・技能】
・聖杯の寵児(偽)
 キングゥは本来、エルキドゥが生前有していた機能を、聖杯によって再起動させていた存在である。
 ……しかし、現在のキングゥには、その聖杯が存在しない。
 このため、彼の戦闘能力、および魔力総量は大幅に弱体化。
 優秀な魔術師程度の力こそあれど、一般的なサーヴァントですら、相手取ることが難しくなってしまっている。

・気配感知
 最高クラスのものを有していたが、霊格が落ちた現在では、相応にスペックダウンしてしまっている。

【マスターとしての願い】
 知る由もない。

【方針】
 何となく死にたくないとは思う。牛若丸ごときに諭されたのは業腹だが、今はついていくしかないらしい。
 自身も戦えないことはないし、人間ごときに遅れを取るつもりはない。
 しかし、無理をすればサーヴァントの使役すらままならなくなるのが、自分の現状であるようなので、それなりに自重することにする。


858 : ◆Vj6e1anjAc :2016/12/17(土) 03:49:05 xwi4MYbY0
投下は以上です


859 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:11:52 wLtG8b0k0
投下します。


860 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:12:52 wLtG8b0k0



 夢を見た。
 一人の父親の夢だった。

 娘を救おうと伸ばした手は、遂に娘を二度と撫でることなく崩れていく。
 救えなかった娘の命は、きっと悪魔に殺され消えることとなる。
 娘が、希望が、最早為す術なく砕け散っていく。

 それはまるで、『私』の末路かと錯覚してしまうほどに似通っていて。
 彼が『私』の同類なのだと察するには十分なものであって。

 決して相容れることの無いはずだった男の想いを、痛ましいまでに『私』は理解してしまった。






861 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:14:35 wLtG8b0k0



「…………ぐぁ」

 連続的に襲い来る爆風の勢いに圧され吹き飛ばされた身体が、背中からコンクリート壁に叩きつけられた。
 死にはしない。ある程度は防ぎ軽減したダメージは、戦闘の続行には支障の無い程度のものに過ぎない。
 それなのに、身体は幾百もの重石でも括りつけられたかのように動こうとしてくれない。
 奴を止めろ。害意を撒き散らす、吐き気を催す邪悪と言うべきこの男に屈するな。
 立ち上がらねばならない理屈を頭で何度唱えても、身体が抗うことをやめてしまっている。
 そんな私の姿を見て、決着は付いたとでも言うかのようにキャスターのサーヴァントは白の装束で覆っていた本来の姿を再び晒した。
 私とさほど年齢の変わらないように見える、壮年の男の姿だった。

「貴様では私に勝てない。その精神を、正義を貫く意志を捨てた貴様では私を止められない。諦めるんだな」

 侮蔑的に吐き捨てたキャスターは、他のマスターに命じられて私と戦ったのではない。
 当然だ。キャスターのマスターは、他の何者でもなくこの私自身なのだ。
 キャスターは聖杯を求めている。そのためなら他の何者を切り捨てることも、絶望の底へと突き落とすことも最早一切躊躇しない。
 この男は同類だ。百年にも渡って人間を食い物にしてきたあの邪悪の権化と、イカれた性癖のために罪の無い人々の命を奪った殺人鬼と、何ら変わらない。
 怒りの感情を頭で燃え上がらせることで、私は「召喚してしまったこのキャスターを倒す」と決意し、挑みかかり、しかし、敗れた。
 それほどまでにこのサーヴァントは強敵であった。この敗北は、私の力が及ばなかったがための結果。

「……その令呪で『死ね』と一言命じれば、それだけで全てが終わっていた。強い弱い以前の問題だ。貴様は、私に戦いを挑む必要すら無かったのだ」

 右手の甲に刻まれるのは、赤い紋章。
 初めて目にした時と変わらない形状を保っているそれは、今に至るまで私が「令呪によってキャスターを自害させる」という選択肢を取らなかった証明だった。

「全ての人々の希望を守る……そんな綺麗事を言うのは、いい加減にやめればいい。自らの死よりも深い絶望を味わった貴様に、貴様自身の聖杯への望みを諦めることなど出来ない」

 威圧的で、確信的なキャスターの物言い。
 自らの歪みを指摘されてなお、私の口が正しさで構築された反論を紡ぐことはなく、ぎりぎりと噛み締めるだけだった。
 呆れたように、キャスターは背を向けた。

「何処へ行く」
「他のサーヴァントを倒すための策を弄しに行くだけだ」
「私が、それを許すとでも……」
「ああ、許すだろうな。貴様はいずれ、暦の未来を願う私と共に歩む。その黄金の精神に泥を塗りたくり、貴様は私と同じ殺人者となる。絶望を撒き散らす怪物だ。だが、それを恥じるな」

 自らが悪であることをキャスターは罪だと考えない。そのための倫理観を、既に失っている。
 この男は、どうしようもなく狂ってしまっている。
 そして私もまたこの男のように狂い果てる……なんて予言など、やれやれと聞き流すだけで済む妄言だ。
 妄言の、はずだった。
 それなのに、ナイフでするりと切り開いてから刺し込むように、キャスターの言葉は私の胸へと冷たく侵入する。
 くぐもった声が、私の口から洩れ出すのを聞いた。

「私と同じ絶望を知った貴様こそ、私と同じ希望を胸に抱ける。変身しろ。その意思を黒く染めろ。貴様には最早その道しか残されていないと、認めるんだ」

 背を向けたキャスターの姿が、遠ざかっていく。
 時を止めれば、握り締めた拳を伸ばせば、まだ奴を殴り飛ばせる。
 そう頭で分かっていても、私はただ奴の背中を眺めるだけだった。

「空条承太郎。聖杯こそ、貴様の最後の希望だ」

 最後に残された声は、甘美な響きを纏って私の耳に届いた。






862 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:15:36 wLtG8b0k0



 エンリコ・プッチのスタンド、メイド・イン・ヘブンに頭を潰され、私は死んだはずだった。
 そのはずが、こうして死を免れ見知らぬ地で生を実感することが許されている。
 だから、何だ。
 私の希望は、既に摘み取られている。
 最後の決戦の場からおめおめと逃げたに等しい姿を晒していること、ではない。
 プッチの言う天国とやらの実現のために世界が崩壊を迎えたこと、ではない。

「徐倫」

 この世界の中で、過去から未来までの時間の中で、たった一人だけの私の娘。
 私の死より少し先の未来で彼女が殺されることこそ、私にとって最も大きな、絶望。
 時を止められない彼女では、エンリコ・プッチに勝てる道理が無い。
 私が直接目にしていないだけで、空条徐倫が負けて死ぬ運命は既に決まっている。

 あの時、徐倫を救おうとしなければ、プッチを殺すことは出来ただろう。
 それなのに徐倫を救うために手を尽くしたことで私はプッチに負け、徐倫も結局は負ける。
 つまり、徐倫はどの道生きられなかった。
 その事実に気付くまでの時間は、この地に訪れた私が全ての記憶を取り戻してから一分もかからなかった。

 悪のカリスマというべきあの吸血鬼を討ち取った十七歳の空条承太郎なら間違いなく選択する道を、今の私も選ぼうとした。
 しかし、揺らいでしまった。
 二十四年という時間が、空条承太郎を変えてしまった。
 無鉄砲にして無敵の強さを武器とした戦士を戸惑いと迷いに溺れさせる力を持った、出会いというものを経験してしまった。
 家族へ捧げる愛と、それを奪われる絶望を知ってしまったから。

 キャスターは吐き気を催す邪悪であると断言して立ち向かうべきなのに。
 私には未だ、それが出来ない。
 それは、聖杯戦争を勝ち抜くための仲間としての側面を持つからか。
 或いは、彼もまた私と同じ絶望を知る者であると、悟ってしまったからなのか。

 我欲に身を堕とすなど、空条徐倫ならば有り得ない。
 それは遥か昔に逝ったというジョナサン・ジョースターも同じだろう。
 数十年の時を経て戦ったジョセフ・ジョースターも。
 人々の生きる街の平和を愛した東方仗助も。
 そして、遂に出会うことのなかったジョルノ・ジョバァーナもだ。
 私も、そうあるべきはずなのだ。
 有無を言わさず犠牲を強いる聖杯を徹底的に叩き潰し、元いた世界へと帰る。
 それが正しい。
 ……娘のいない世界へと、帰ることが。

「最後の、希望」

 縋り付くように零れゆく言葉を、私は抑え込むことが出来なかった。


863 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:17:14 wLtG8b0k0



【クラス】
キャスター

【真名】
笛木奏@仮面ライダーウィザード

【パラメーター】
通常時⇒筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運D 宝具C
変身時⇒筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具C

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
・陣地作成:C
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
人避けの効果を持つ結界や、後述の宝具発動のための陣地を作成可能。

・道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。

【保有スキル】
・高速詠唱:-
魔術の詠唱を高速化するスキル。
呪文詠唱は全て宝具が代行するため、必要としない。
上級魔術であっても一瞬で詠唱を終えることが可能。

・ウィザードローブ:C
変身によって身に纏うローブによる特性。対魔力と魔力放出の複合スキルで、それぞれCランク相当。
なお、このスキルは変身前の状態では一切機能しない。

・勇猛(偽):A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
精神干渉の無効化は、実際には精神汚染スキルを内包しているために実現されることとなる。
ただの一人の父親でしかなかった笛木奏は、歴戦の英霊達のような気高き黄金の精神など持たない。
愛する娘を喪った絶望と狂気。ただそれだけを糧に、彼は『魔法使い』へと変わり果てた。


864 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:18:08 wLtG8b0k0

【宝具】
・『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
キャスターが腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
普段はベルトに偽装されているが、ドライバーオンの指輪で本来の姿を取り戻す。
ウィザードリングを翳すことでそれぞれに対応した音声を発し、本人の詠唱無しで呪文を行使する。
『白い魔法使い・ワイズマン』に変身した状態では各能力が上昇し、ウィザードローブのスキルを獲得する。
性能は事実上『指輪の魔法使い・ウィザード』が持つ同型の宝具の上位互換であり、数々の上級魔術を行使可能。

・『煌めく亜獣(カーバンクル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1体
生前のキャスターによって生み出された人造ファントム。科学と魔法の融合による産物。
このファントムを自らの肉体に融合させることにより、キャスターは『魔法使い』となることを可能とした。
生前はこのファントムの姿を表出させることが可能となっていたが、サーヴァントと化した今のキャスターでは不可能。
キャスターが自らの力を行使するパワーソースとしての機能が主となっている。
また、「魔法石の原石を新たに創造する」という元来の能力は「創造した原石をそのまま魔力に再変換する」という形となっている。
そのためキャスターの魔力回復は他のサーヴァントと比較してある程度効率良く行われる。

・『蝕まれし希望の光、絶望の幕開け(サバト)』
ランク:EX 種別:対人・対界宝具 レンジ:? 最大補足:?
数多の罪無き人々を犠牲にして得た魔力を願望器に込める、贄の儀式。キャスターの反英雄としての象徴。
解放のために必要な条件は少なくとも四つ。
日食を人為的に引き起こすエクリプスリング、及び効果発動に要する多量の魔力。
生前に拿捕した『魔法使い』の代替となる、強大な魔力を有する四人の生者。
魔方陣の発動によって魔力を吸い上げられるスノーフィールド全市民。
そして、魔力を込める器となる『賢者の石』あるいはその代替物。
これらを宝具解放のために設けた陣地に集めることで、初めて解放可能となる。
その実態は、言うなればスノーフィールド全域で一斉に発生させる魂喰い。そして聖杯戦争の完遂すら要さずに起こされ得る奇跡の実現。
仮にこの宝具の効果が完全に発揮された時、何が遺されるか誰にも予測し得ない。
故にランクは測定不能。

【weapon】
・ウィザードリング
宝具『詠うは白き慟哭の声』で呪文を行使するための指輪。
生前に使用した指輪は既に一通り揃えられている。

・ハーメルケイン
専用の剣。笛と横槍を合わせたような形状。
魔力で構成された物品・肉体に対しては特に有効な破壊力を与えられる。
刃自体で魔術を切り伏せることも、魔力による障壁を発生させることも出来る。
また、キャスター以外の者であっても武器として問題なく使用可能。

【人物背景】
かつて娘を喪った一人の父親。
絶望の中、娘にもう一度生きてほしい一心で魔法の力へと手を伸ばした。
そしてあまりにも多くの人々へ痛苦と非業を振り撒いた彼は、しかし娘の蘇生を果たせず逝った。
手を下したのは一体のファントム。他ならぬ笛木によって絶望させられた青年の、成れの果て。
笛木の愛を起点とした絶望の連鎖は、笛木自身を終わらせた。

【サーヴァントとしての願い】
暦の幸福な未来。


865 : Father ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/17(土) 18:18:59 wLtG8b0k0



【マスター】
空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン

【マスターとしての願い】
徐倫の幸福な未来。

【weapon】
特に無し。

【能力・技能】
・『スタープラチナ』
 破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - C(2m) / 持続力 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - E
空条承太郎の持つ近距離パワー型スタンド。
破壊力・スピード・精密性の三点において最上級の能力を持ち、こと近接戦闘においては無類の強さを誇る。
パワーを集中させた指を伸ばす「流星指刺(スターフィンガー)」という技も持つ。

・『スタープラチナ・ザ・ワールド』
宿敵DIOとの決闘の中で発現した時間停止能力。光速をも超えたスピードによって辿り着く極致。
記憶喪失から復活した承太郎は全盛期の頃に近い能力を取り戻しつつあり、現時点では主観計測で約5秒間の時間停止が可能。

【人物背景】
かつて悪の帝王DIOを討ち倒したスタンド使い。
勇者と評するに値する少年は、時を経て家族を愛する一人の父親となった。
その家族を庇ったために、彼はDIOの意志を継ぐエンリコ・プッチの前に斃れた。
悪を滅ぼす黄金の精神は、愛へと姿を変えて彼自身を滅ぼした。

【方針】
聖杯戦争を止める――――?


866 : 名無しさん :2016/12/17(土) 18:19:32 wLtG8b0k0
投下終了します。


867 : ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:06:12 6yzZivrc0
投下乙です
自分も投下します


868 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:07:38 6yzZivrc0


カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


診察室。
カルテの上で筆が踊る。
本日の『検査結果』が書き連ねられる。
患者は6名。
まるで殴り書くような荒々しい書体で、患者の容態が記されていく。


カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


『標本1への×××薬物投与記録』。
『標本2の解剖記録』。
『標本3・標本4の接合手術記録』。
それは宛ら、治療と言うよりも実験の記録。
患者への施しを記したものと呼ぶには、余りにも残虐。
見た者に嫌悪感を与えることは間違いない。
人間をモノとして扱うかのような、非人道的な――――――人体実験のカルテ。


カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


筆者は、闇医者。
この非合法の診療所をたった一人で経営する男。
狂気に淀んだ眼が一字一字を舐めるように見つめる。
まるで自らの記した記録を反復するかのように。
その口元に不気味な微笑を浮かべ。
机の傍らへと、ゆっくりと、目を向けた。

異様な光景が存在していた。
人形程の大きさの人間二人が、小さなカプセルに納められているのだ。
会社員風の男性――――標本5。
妙齢の女性――――標本6。
二人はそれぞれのカプセルの中で何か喚き続けている。
何度ももがき、カプセルを叩いて外に出ようとしている。
無駄な努力だった。
男は壁を叩く両手を負傷させ、血に染め上げるのみ。
女もまた、ただ虚しい悲鳴だけが轟くのみ。

このスノーフィールドで人生を送り、生活を営んできた二人の男女も。
狂気に染まった診療所においては、ただの無力な実験動物でしかない。
医師は嗜虐的に嘲笑し、また別の方向へと視線を向けた。


869 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:08:58 6yzZivrc0


「おまえは人間の身体に興味があるか?」


記録の手を止めた医師が、唐突に声を掛ける。
ぼんやりと浮かび上がるのは、白と黒の人影。
医師は人影に語りかけるように言葉を続ける。


「私はあった 人体に興味があった!だから医者を志した」


まるで人生を振り返るかのようにしみじみと語る医師。
彼は幼い頃から好奇心旺盛だった。
人間の身体というモノへの果て無き探究心を備えていた。
学生時代には老人ホームでのボランティアによって賞を貰ったこともあった。
成人してからは当然のように医者となり、数々の外科手術に携わってきた。

尤も、そんなものは表の顔でしかなかったが。

彼の探究心は極めて歪んだ形で発露されることとなる。
人体への好奇心は、同時に人間の精神への関心をも生み出した。
そして彼は、人間の苦痛を観察することを好むようになった。
老人ホームにおいては老人相手への虐待を繰り返した。
自殺へと追い込み事故として処理された老人は複数名いた。
医者となってからは更に歯止めが利かなくなった。
健康なものをわざと病気と診断し、手術などの実験台として利用した。
人体はどこまで切り刻めるのか。
毒性の強い薬にどこまで耐えられるのか。
四肢の分断と接合はどこまで出来るのか。
彼の好奇心と嗜虐性は暴走を繰り返し、数多の犠牲者を出し続けた。
最終的に『医療ミス』としてその一環がバレ、医者としての資格を剥奪された彼はギャングに拾われた。


「この場においても私の『好奇心』は変わらない……」


医者としての資格を奪われた今。
彼の精神性は、どうなっているのか?
答えは『かつてと何ら変わっていない』。
それどころか、彼の魂は更にドス黒く輝いていた。
『スタンド能力』を獲得し、その残虐性にますます歯止めが利かなくなったッ!



「『聖杯』!!私はそれを手にし!『生命』を掌握したいッ!!」



医師は高らかに宣言する!
残虐非道のスタンド使い『チョコラータ』の飽くなき好奇心は留まることを知らない。
彼の欲望は未だに満たされず、それどころか『聖杯』の存在を知ったことで更に膨れ上がった!


870 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:09:53 6yzZivrc0


「人間だろーと 動物だろーと この地球上に存在するありとあらゆる生物をッ!
 この私の『実験対象』にしたいのだよ!わかるか?え?アーチャー!」


この世に存在するありとあらゆる生命を己の意のままにする!
そうすれば、あらゆる生命を使ったあらゆる実験が可能となる!
それはつまり地球という惑星そのものを己の実験台へと書き換えること!
狂人の妄言と捉えられかねない果てしない野望だ。
しかし、それを可能にする道具を巡る戦いにチョコラータは身を投じてしまったのだ!

対する『話し相手』。
白黒の人影は、何とも言えぬ様子で念話を飛ばす。


『いえ、わかりません……』
「フン!つまらん奴だ」


『人影』の反応に対し、心底つまらなそうに吐き捨てる。
チョコラータは己のサーヴァントを見定めていたが、やはり退屈な奴だと断定する。
人体実験に関する話を降っても『はぁ』だの『楽しそうですね』だの空返事をするのみ。
怪物じみた姿をしている割に存外つまらぬ性格をしているのだ。
尤も彼の宝具はチョコラータ自身重宝している。
人間を小型化し、回収できたのもサーヴァントの宝具によるものだ。
こうして人間をモルモットのように捕獲して実験してやるのも中々楽しい。
暫くはこれで遊べそうだとチョコラータは内心ほくそ笑む。


(聖杯戦争に関してはまず様子見ッ!
 我が『グリーン・デイ』は無差別殺戮のスタンド能力!
 虐殺そのものはやぶさかじゃあないが 裁定者とやらに目をつけられるのは御免だ……)


同時にチョコラータは思考する。
己のスタンド『グリーン・デイ』の強さは自負している。
恐るべき殺人カビを撒き散らし、広範囲の人間を殺戮する能力。
このスノーフィールドの住人を虐殺することも容易いだろう。
だが、下手に目立った殺戮を行えば裁定者に目をつけられる危険性がある。
最悪の場合、討伐令――――――それだけは避けなければ。
故に『実験動物』で我慢だ。
それに、己のサーヴァントははっきり言って弱い。
幻惑などにはある程度適しているのかもしれないが、戦闘においてはからっきしだ。
下手に他のサーヴァントとぶつかれば敗北は必至だろう。

狡猾に。冷静に。
『勝ち』を掴み取る必要がある。


「まあ どのみち勝つのはこの私だがな……
 人間の好奇心は何よりも強い!好奇心こそが人間を成長させる!
 そう!無尽蔵の好奇心をいだく私は誰にも負けんのだからなアアアァァァァァァッ!!」


871 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:10:33 6yzZivrc0




―――――何なんだこの男は……



冗談ではない。
こんな男の遊びに何故付き合わねばならないのか。
チョコラータのサーヴァントは心底呆れていた。
というより、引いていた。
宝具によってNPCを小型化、回収。
そしてチョコラータの実験台としてその生命を弄ばれる。
サーヴァントは彼の凶行の一端を担っていた。

アーチャーのサーヴァント『ダダ271号』。
かつて上司に命じられ、人間標本の作成・転送の為に地球へと降り立った宇宙人。
しかし地球を守る科学特捜隊、そしてウルトラマンの手によって任務は妨げられた。
ダダ271号は死後『任務に失敗したダダ』として同胞から蔑まれ、人類史においてもウルトラマンとの戦いに置ける敗者として記録されているのである。
彼が聖杯に託す願い。
それは失敗に終わった任務によって着せられた汚名の返上である。
過去を改竄し、己の任務失敗という結果を覆すこと。
敗北に終わった歴史を勝利の歴史へと書き換え、己の汚名を塗り潰すのだ。
そのためにダダは意気揚々と聖杯戦争への召還に応じたのだ。
尤も、今は三割程後悔の念が頭の中に浮かんでいるのだが。


―――――人使いの荒い上司の次は、こんなイカレた人間の下で働かなければならないのか……


ダダは頭を抱えていた。
まさか自分のマスターがこんな狂人だとは思わなかったからだ。
生前の上司も余り性格のいいタイプではなかった。
ウルトラマンの強さに何ら関心を寄せず、無慈悲にも任務の続行を言い渡してきたのだから。
人使いが荒い上に現場の意見に耳を傾けない。嫌な上司の典型例だ。
しかし、今回の上司はまさに別次元の異常。
同族を採集し、人体実験に利用?
同族を自分の欲望の為に手術し、そのことに何の呵責も無い?
狂っている。これほどまでに馬鹿げた人間がいるのか。
地球人はどうかしている。
ウルトラマンは自分なんかよりこいつを叩き潰すべきだろう。
どう見たってこいつの方が遥かに地球人類にとって危険だ。
ダダはそんなことを思い続ける。

今後暫くはこの男の下で働き続けなければならないのだ。
いっそマスターを乗り換えるか?という思考も過った。
しかし、そんな都合良く野良マスターが見つかるのか。
ダダはサーヴァントとしては弱小であり、敵サーヴァントとまともにやりあえるだけの能力は持たない。
むしろマスターを狙うべきという、アサシンに近い性能のアーチャーなのだ。
そのことが却って他マスターへの鞍替えをさせにくくしている。
単体でサーヴァントを潰し、マスターを未契約状態にすることが極めて困難なのだ。
とどのつまり、自発的な鞍替えの可能性は絶望的。
ならばはチョコラータをマスターとして認めて素直に戦い続ける他無い。


「さて!気分も良くなった 始めるぞアーチャーよッ!『手術』再開だッ!!」
(結局そうなるのか……)


人間標本5・6が納められたカプセルを手に取り、チョコラータは宣言する。
全く以て、先が思いやられる。
一応戦う意思があるだけマシと思うべきなのか……
ダダ271号は再び頭を抱えた。


872 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:11:06 6yzZivrc0

【クラス】
アーチャー

【真名】
ダダ271号@ウルトラマン

【パラメーター】
筋力E- 耐久D 敏捷E 魔力C 幸運D 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力への耐性。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給無しでも行動できる能力。
Cランクならばマスターを失っても1日程度の現界が可能。

【保有スキル】
空間転移:D
その場から姿を消し、瞬時に別の位置へと瞬間移動することが可能。
転移時は霊体化の際と同様、移動距離上に存在する物質を無視することが出来る。
ただし遠距離の移動は出来ず、多くの魔力を使っても数十メートル前後の移動が限界。
更に他者を空間転移させることも可能なのだが、多大な魔力を必要とする上にNPCにのみしか使用できない。

透明化:C
自身の肉体を透明化する。
霊体化とは異なり、物理的な干渉力を持った状態で肉体を不可視化させる。
発動中はEランク相当の気配遮断効果を得られる。
ただし宝具「ミクロ化器」を使用する場合は透明化を解除する必要がある。

憑依:C
NPCに憑依し、肉体を自在に操る。
憑依中はサーヴァントとしての気配を絶つが、優れた魔力察知能力を持つサーヴァントには見破られる危険性がある。

戦闘続行:E-
戦闘時、致命的なダメージを負っても一度だけHPが極僅かに残る。
数多の怪獣を葬ったウルトラマンの必殺技「スペシウム光線」が直撃しながらもしぶとく逃げ延びた逸話の具現。

【宝具】
「ミクロ化器」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~10 最大捕捉:1
『ダダ時間2・2・2以内に人間標本を完成させよ!』
ダダ271号に課せられた任務を達成するための装置。
対象に向けてミクロ化光線を放ち、人形サイズにまで小型化させてしまう。
一度小型化してしまえば能力もサイズ相応になってしまい、ダダが圧倒的に優位な状況となる。
ミクロ化器を破壊するか、ダダに一定以上のダメージ与えることで能力は解除される。
……とはいえ、サーヴァントならば光線を受けても抵抗することが可能。
対魔力スキルを保有していれば更に抵抗の成功率が上がる。

「三面怪人」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
自らの異名となった奇怪な顔面変化能力。
三種類の顔を自在に使い分け、他者を幻惑させる。
彼の正体を知らぬ者に「同種のサーヴァントが三体存在する」と誤認させることが可能。
ただし、それだけである。

「小型エレクトロニクス動力源」
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100
生前にダダが宇宙線研究所に持ち込んだ機械。
レンジ内に特殊なジャミング波を発生させ、外部との一切の連絡を遮断させる。
機械的な通信手段は勿論、念話や令呪をも完全に遮断してしまう。
ダダとそのマスターのみ念話や令呪の影響を受けない。


873 : 診療記録5・6 ◆DdYPP2qvSs :2016/12/17(土) 19:11:43 6yzZivrc0

【Weapon】
ミクロ化器、格闘攻撃

【人物背景】
「三面怪人」の異名を持つ宇宙人。作中では人間大の大きさで主に行動していた。
複数の人間を小型化し標本にする任務を達成するべく奥多摩で怪事件を引き起こす。
警視庁の依頼を受けた科学特捜隊によってその陰謀を暴かれ、最後はウルトラマンに倒された。
怪獣・宇宙人の類いなのだが、ウルトラマンどころかムラマツ隊長にも格闘戦で負けるなど戦闘能力は極めて低い。
また上司のダダに「ウルトラマンには敵わない」と報告しても無視され、無慈悲に任務続行を言い渡される場面もあった。

作中で見せた巨大化はサーヴァントの能力として再現できず、使用不可。
また本来は地球の言語での会話は出来ないが、念話でのみ意思疎通が可能。

【サーヴァントとしての願い】
過去を改竄し、『人間標本作戦成功』という歴史に塗り替えることで自らの汚名を雪ぐ。

【方針】
とにかく勝ち残る。
チョコラータの趣味はどうでもいいのでさっさと戦術を練りたい。



【マスター】
チョコラータ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部「黄金の風」

【マスターとしての願い】
ありとあらゆる『生物』を実験対象として管理。
全ての生命が自分の意のままとなる世界を作り上げる。

【weapon】
手術道具

【能力・技能】
『グリーン・デイ』
破壊力A スピードC 射程距離A 持続力A 精密動作性E 成長性A
周囲に殺人カビをばらまくスタンド。
感染者は現在地より低い位置に移動することで急速にカビが繁殖し、肉が腐り死に至る。
カビの犠牲者を媒介に更に他者へと感染を引き起こし、放っておけば無制限にカビは蔓延していく。
更にあろうことかチョコラータは傷口をカビで保護することで自身の肉体をバラバラに分離できる。

【人物背景】
イタリアのギャング組織「パッショーネ」に所属するスタンド使い。
かつては医者だったが些細な医療ミスをきっかけに解雇されている。
その正体は殺人鬼であり、手術や治療と称して数多の患者を残虐な人体実験に用いてきた狂人。
パッショーネのボスであるディアボロさえもその性格や能力を警戒していた。

【令呪】
亀裂が入った横向きの髑髏を模した形状。
消費は下顎(一画目)→後頭部(二画目)→顔面(三画目)。

【方針】
勝ち残る。その過程で『人間採集』を楽しむ。
裁定者からの罰を避ける為、カビの無差別な散布は極力控える。


874 : 名無しさん :2016/12/17(土) 19:11:56 6yzZivrc0
投下終了です


875 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/12/18(日) 12:12:16 yNoRe3pI0
昨日の投下作について、スキル欄および宝具欄をWikiにて修正したことを報告します。
問題があると判断した場合はご意見お願いします。


876 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/19(月) 23:32:35 NKniOTj.0

皆様、お疲れ様です。
変わらずたくさんのご投下ありがとうございます!



>勲は全て我に在り

戦場という地獄を見た少女。艦娘である彼女にとってそれは、二度目の惨劇だった。
艦娘が特殊な存在とは言え、人格のある部下を人とも思わないような上官の下で同胞の命が消費される悪夢に抗おうとした彼女だからこそ手にした奇跡への挑戦権。
しかし五十鈴が召喚したのは、クズのような上官とよく似た暴君の如きサーヴァントだった――ということで、衝撃の斧手のモーガン登場です。逸話系宝具練り込まれてるなおい。
狂っているとはいえサーヴァントのくせにマスターより自分が偉いなどと本気で思い込んでいるし、お子ちゃまな舌を揶揄されるだけでマスターである五十鈴を殺そうとするし……こいつの人間性、同じ艦娘マスターのバサカである野獣先輩以下では?(疑問)
件の野獣先輩は狂気どころか無辜の怪物まで付いて完全に自我がおかしくなっている中でもhmkzのことをちゃんと気遣っていましたし、器が違うってはっきりわかんだね。
五十鈴の言うとおり、こんな奴が聖杯を取れるとはとても思えないので、何としても地獄を打ち砕きたい五十鈴には他に組むべきサーヴァントと再契約できるよう考えを改めて欲しいところですね。
◆uL1TgWrWZ氏、執筆お疲れ様でした。応援したくなるマスターと酷い目にあって欲しいサーヴァントをどちらも見事に描写し、描き分けた作品をありがとうございました!



>ROMANCE DAWN

東の海(イーストブルー)からの刺客が連続している……!?
ということで同じく東の海の脳筋系、首領クリークの登場です! ただし今度はマスターなのでモーガンにボロ負けする可能性も微粒子レベルで存在している……!?
しかし、モーガンと同じく腑抜けた部下に対しては冷酷な印象の強いクリークですがどうしてなかなか、思いやりと信頼が溢れていて大物オーラが醸し出されていますね……w
聖杯に願うのもひとつなぎの財宝そのものではなく、それを手に入れる旅をするための武力。冒険こそに価値があると言わんばかりの海賊の浪漫に満ちた回答と不屈の野心はドレイク姐さんが気に入るのも納得です。
そして「魅力的な女」と感じている、クリークの話を聞きたがりせがむドレイク姐さんに「おまえごと奪いに行ってやるよ」と宣言し二人で盛り上がる様子はこれ完全にロマンスですね。黒髭(パイケットに参加する方)が血の涙を流してクリークを殺しに来そう。
しかし容赦がないので格下には強いなんてもんじゃないクリークと、格上にこそ強いドレイクのコンビはロマンスの香り以外にも相性ばっちりそうなのがなんだか笑える。魔力の問題さえクリアできればダークホースどころか本命馬としての活躍も充分有り得そうな、夢のある主従ですね。
◆wFkyuCOTbQ氏、執筆お疲れ様です。首領クリークという形に、ありったけの夢を掻き集めたような作品をありがとうございました!



>黄金の果実、栄光の大樹

駆紋戒斗とミトス・ユグドラシル。神話の植物の力を廻り、家族を喪った自分なりの理想の世界を築こうとして主人公と争い、敗れた影の主役達の、その後の物語。
それぞれの視点から、最後の瞬間二人が自分達の選ばなかった道を選んだ勝者をどう思っているのかガッツリ掘り下げられていて、何故彼らが争わなければならない世界だったのかと改めて悲痛な気持ちになりました。
そんな似通った境遇にあっても、、強者であった戒斗と、独裁者になってしまったミトスの意見の相違は自然な帰結。そして互いに譲らぬまま、しかし逃げることだけはないという一点で対立には至らず。
結論を託した格好良い運試しは引き分けですが、しかしこの適度な厨二具合が彼ららしくて格好良い。さりげなく会話の中で戒斗さんが使うには珍しいイメージの横文字はキャラソンからだと気づくとくすりとしました。キャラクターの再現度は当然の如く素晴らしい中で、小ネタの扱いまでお見事です。
主従ともに間違いなく最強格と言って良い実力を誇る二人ですが、一方で主従関係そのものは完全に合致しているわけでもないことが足枷になりそう。逆を言えば、この二人の心が重なることがあれば圧倒的な強さを魅せてくれそうですね。
◆zzpohGTsas氏、執筆お疲れ様です。主人公の影の果てであるラスボス同士の、浪漫溢れる作品をありがとうございました!


877 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/19(月) 23:33:39 NKniOTj.0

>利根川幸雄&キャスター

利根川っ……! 圧倒的、社会人っ……!! 中間管理職の悲哀っ……!
描写と語り手の哲学……そして会話っ……! 完璧な再現度の文章っ……! その出来栄えに、>>1っ、ただただ感服っ……!
「秘密結社中間管理録利根川」とでもいうべき……圧倒的存在感の異色作……ここに降臨っ……!(>>1はここで再現に力尽きる)
ということで利根川さんです。聖杯戦争に参加して最初に思うことが願いや命の危機ではなく一週間の無断欠勤への恐怖、なかなか感じられるものじゃないよ。
部下(※黒髪)の名前や全てが「Fake」、年代的に横文字が苦手っ……っ! 等々、読み進める最中に通常の呼吸を保つことすら難しい圧倒的破壊力っ……! 一人完全に元のままで異物と化した死神博士のクールな対応が面白さを加速するっ……!!
しかし、聖杯への願いをなしとするその根幹が利根川が常々述べて来た彼の人生哲学、一時だけ命を賭けて一発逆手を目指すものより、絶えず努力する人間の方が優れている……そして自分はそちら側だと断じられる人間的な強さが感じられました。
そして死神博士の用意できる軍事力、利根川の培ってきた中間管理力が合わされば主従としても充分に有能。上手く死神博士を説き伏せて、無事に脱出し、焼き土下座で〆て欲しいところです。
◆CKro7V0jEc氏、執筆お疲れ様です。努力の大切さを噛み締められるような深い作品をありがとうございました!



>encounter

ショタ士郎とイシュタ凛でおねショタ……っ!? 獅子王以外にもそんな組み合わせがあるのか!
なるほど聖杯戦争のサンプルとして、彼らほど適した者はいないでしょう。ということではい、本家主人公&ヒロイン、特殊な姿で優雅に華麗に大胆に登場です!
七章の印象が強いイシュタ凛ですが、感想が遅れていることを考慮すると投下はそれ以前! しかし逸れる印象がないのはは見事な分析力という他ありません。
それがイシュタル女神をも引っ張る凛のキャラクター性のせいでしょうが、同じようにショタであろうと士郎は士郎。その在り方は女神凛から見ても歪な人間。だから放ってはおけないという結論は同じ。
どんな形の出会いでも、お互いを知らないイフの姿でも、二人が最後に至る関係性に差はないのだろうと思えるボーイ・ミーツ・ガールでした。
◆DpgFZhamPE氏、執筆お疲れ様です。運命を感じる、雰囲気作りの巧みな作品をありがとうございました!



>遊城十代&バーサーカー

二人の覇王、邂逅!
死してなお過去に縛られ、バーサーカーで現界したイングヴァルトを笑顔にするため、片っ端から決闘して回るつもりの十代! ある意味こいつも決闘脳(バーサーカー)じゃねぇか!
とはいえ決闘者ばかりではない戦いである以上、そんなコナミくん的危険人物にまではならないだろうし一安心(?)
決闘者リアルファイト最強候補の一角である十代。精霊であるユベルと融合しているために予選を無効化できる超級マスターでもありますが、イングヴァルトはかなり扱い難いバーサーカー。
無茶だってする常に全力の十代にとっては、本来有用スキルである守護の執念も厄介そうです。十代の想いが、狂気に憑かれた彼に通じることを信じたいですね。
◆yaJDyrluOY氏、執筆お疲れ様です。ワクワクを思い出して欲しくなる作品をありがとうございました!


878 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/19(月) 23:34:04 NKniOTj.0

>HEATS

もっと熱くなれよおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォ――――――――――――――!!!!!!!!
熱くねぇ奴は死んでよし!!! などと暴論暴走爆熱男のバーサーカー・爆熱番長のマスターは――――松岡修造!!
熱い、熱すぎるこの男! 熱血の権化、かつ、そこに確かな理性を宿した修造の前では、爆熱番長の騙る熱さの中にある欺瞞も瞬く間に融け落とされた! でもタオルと間違えてトランプで汗を拭うのは粗忽過ぎるだろ!!
危険人物である爆熱番長をただ否定するのではなく、彼を越える暴力で押さえつけるのでもなく、その魂の熱さと一流のスポーツマンとしての心で魅せて改心させ、主従ではなく友として一緒に進む道を切り拓けたのは彼ならばでしょうね。
◆ZbV3TMNKJw氏、執筆お疲れ様です。実在かつ存命の人物を現実を出典に版権キャラのデスゲームに送り込むというのは控えて欲しいところですが、それはそれとして夢見る彼方に熱くなる、退屈しなくなる作品をありがとうございました!



>菅部阿久乃&ランサー

予選を突破する特撮オタクの違和感は日々の習慣と放送局の齟齬から始まる。
こうして結成されたのは悪の女幹部同士の主従。人間の感情を集めるデーボスと人間の信じない心を集めるシィド、想念が高次存在を形作るタイプムーン世界観とのクロスにも期待の持てる組み合わせです。
……って、賢人になったのに悪の幹部スタンス優先で良いのかキャンデリラ!? 今更ですが、縁召喚も良いことばかりじゃないですね……
ま、まぁ、喜びの戦騎とやられ役にに肩入れする根が優しい特ヲタのコンビなので、そこまで邪悪に戻るわけでもないからいい……のか……?
とはいえ、方針は悪の幹部としてお邪魔虫。正義から弱者を守るために戦うのではなく、譲れない願いのために命を懸けている参加者からは普段以上に目の敵にされ、憎しみを買いそうなスタンスです。別の意味で心配だなぁ……
◆NIKUcB1AGw氏、執筆お疲れ様です。憎めない二人のキャラクターが充分に描写された作品をありがとうございました!



>リュータ&アヴェンジャー

殺した側に理があって、殺された側には非があって……あるいはそもそも、存在する意義がなく。多くの人間にとっては咎めるに値しない罪かもしれない。関心すら抱かないようなことかもしれない。
それでも、殺された側の傍らにいた者にとっては、決して解けない呪縛となる――そんな煮えたぎる憎悪を抱えて邂逅したのは、二人の復讐者。
片割れはその道の果てに死した竜。その灰であるズオ・ルーは、レメディウスはもう戻れない。ただ、せめて心優しい人々が綺麗な願いを捧げるささやかな時間を、世界から取り戻すために戦い続けるしかないのだから。
しかしもう一人は、リュータはまだ戻れたはずだった。彼には救いが訪れる未来があった。なのにそれを待たず、悪竜と手を結んだのは、多くの人間から見れば間違っている選択なのでしょう。
「それでも」、彼らは自分自身の復讐のために、その心を作ってくれた全てのために手を伸ばした。それは誰かに何を言われても関係ない、彼らだけの全てなのだから。
……と、なんだか昔の厨二心が蘇ってしまったような感想で恥ずかしいですが、それを想起させた冒頭の書記の配置からして素晴らしい原作再現ぶり。不器用に足掻き続ける者達の暗い情熱、その中に潜む一点の美しい輝きが見事に演出された作品でした。
◆GTQfDOtfTI氏、執筆お疲れ様です。悲哀と切なさの溢れるような作品をありがとうございました!


879 : ◆aptFsfXzZw :2016/12/19(月) 23:35:34 NKniOTj.0

>春野はるか&アーチャー(春野ムサシ)

プリキュアとウルトラマン。今度は名字繋がりで光の戦士同盟が再び光臨!
文字通りの正義の味方である二人は当然のように聖杯戦争への反抗を決意する。その目的、願いの根底は一致する。
けれど、はるかがはそれだけではムサシの手を取れなかった。なぜなら彼はサーヴァント。そうと決められた、強制されて戦いに巻き込まれた被害者の一人だったから。
自らの夢を応援してくれた優しい青年への罪悪感を抱く彼女の心を解かすのは、力だけじゃ足りない。コスモスの花のような優しさが必要なのですよね。
しかしそれこそ、慈愛の戦士コスモスからも真の勇者と認められたムサシの真骨頂。マスターとサーヴァントだからではなく、春野はるかと春野ムサシだから一緒に戦うのだと語る姿にぐっと来ます。
リドリアスも、パフとアロマも含めた、彼らの絆が希望に繋がることを信じたいですね。
◆k7RtnnRnf2氏、執筆お疲れ様です。眩しい春の日差しのような作品をありがとうございました!



>狂気のエメラルド煮込み

うーんこの狂気のエメラルド煮込み……(そうとしか表現できない)。
何を言っているのかまるで理解できないはずなのに何となく察することができる感覚は、実は自分もSCP-022-JPの影響を受け始めているから……? いえ地の文の力ですね、はい。
……………………凄い翻訳力だ。
さて、異常性の付与を抜きにしてもめちゃくちゃな喋り方をするホンナですが、彼女の特性もサーヴァントには無効。本来なら関係性の構築が多大な壁となりそうです。
しかしこのバーサーカーならそのおしゃべりも問題ない。そう、タマモキャットならね。こいつもSCPっぽいよなぁ……
正気ではないながらも割と善性な二人。どう足掻いても引っ掻き回し役となって安心はできないでしょうが、時々ホッコリさせてくれそうな組み合わせです。でも関わりたいかというとうーん。
◆3SNKkWKBjc氏、執筆お疲れ様です。本当に狂気が煮詰まっているとしか思えない素晴らしい再現度の作品をありがとうございました!





今回の感想はここまでとなります。
引き続きお待たせしている皆様には大変申し訳ございませんが、ご了承いただければと思います。
最後に繰り返しとなりますが皆様、本当にご投下ありがとうございました!


880 : ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:47:29 dJt/bogI0
感想お疲れ様です、投下しようと思います


881 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:48:54 dJt/bogI0

姫河小雪は本人の自覚は薄いが、器用な少女だった。
彼女の魔法である『困っている人の声を聴くことができるよ』は助けを求めている人を探すのには絶対的に便利な魔法だが、助けられる手段とは直結しない。
それでも彼女は細やかな工夫や機転で人を助けつづけてきた。
魔法の端末に溜まった膨大な数のキャンディーが、その証左と言えるだろう。
そして、その器用さを裏付けるように、彼女は招かれた異邦の地―――スノーフィールドでの生活にも見事に順応していた。
……それが彼女の望んだ生活かは別として。





夜のパトロール後、深呼吸二回。
カバンの中から魔法の端末を取り出し、手早く変身し直す。
一瞬光が瞬いた後、スノーホワイトは簡素なビル、その二階にある事務所の前にいた。
変身した後、すぐさま己の魔法を使用する。
そして、ドアノブに手を―――、

“マジカルしてぇ…トゥルーしてぇよ…”

伸ばす事は無くそのまま地面に伏せる。
直後、バン!と勢いよくドアが開き、中から女装した脳みそまで筋肉で出来ていそうなモリモリのマッチョメンが飛び出してきた。

「俺は魔法少女だあぁああぁああああああ!!!!!!!!」

伏せていたためぶつかる事は無く、スノーホワイトは勢い余って階段から転がり落ちていく変態を見届ける。
転がり落ちて行った男はそのまま道路まで転がっていき、ゴテゴテとしたアメ車に吹っ飛ばされて路地目がけて星となった。
その後の療養生活に励んでほしいものである。

「フム、外れか。白ダンゴ虫にしては中々どうしてやる」
「……キャスター」

開け放たれた入口の奥から聞こえる軽薄な青年の声。
ため息を一つ漏らし、スノーホワイトが立ち上がろうとした時、表札代わりに着けていたプレートが彼女の膝にポトリと落ちる。
何故こうなったのか、そのプレートを見て思い、彼女はさらに深いため息を漏らした。
プレートには、英語でこう書かれていた。

『スノーホワイト魔界探偵事務所』


882 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:50:35 dJt/bogI0



きっかけは、一枚のトランプだった。
ハードゴア・アリスの最期を看取った翌週、リップルから連絡を貰う前、
何故弱虫で、怖くて、震えて逃げているばかりだった自分が生き残っているのだろうと思っていた丁度その頃。
魔法の端末に、一枚のメールが来たのだ。
きっとファヴの定期報告だろうと身構え、恐る恐るソフトを起動させた。
残り人数は少ない。凄惨を極めた殺戮劇のエンドロールももうすぐのはずだ。
それを考えるほど、何故自分が生き残っているのかと僅かに自嘲し、開いた通知を迎える。
開いた手紙には何も書かれてはいなかった。
その代わりに、白く四角いアイコンが浮かんでいた。
まるで、白紙のトランプの様な。
数十秒待っても何の変化もないソレを怪訝に思い、意を決してタップする

そして意識がホワイトアウトし――――、


「めでたいぞ、マスター。明朝には幕が開ける
我が輩、喜びのあまりケーキの用意のついでにこの事務所を取り返しに来た男を貴様のファンにしてしまった」


この都市にいた。


「めでたいって、何が?」

「……本気で言っているのなら貴様は白ダンゴムシからシロアリに降格だ
分かっているはずだぞ、我が輩達は戦争の駒としてここへ来た、と」


少女が対峙するのは上背のあるスーツ姿の青年。
その青年の言葉を受けた少女の脳裏に、これまでの事が駆け巡る。
異国の空の下、小雪はハードゴア・アリスから託された兎の足により、幸運にもこの世界に来て数分で記憶が戻り自我を取り戻したが、その代償としてNPCとしての生活がどんなものであるかあやふやだった。
下手をすれば知識はあれど右も左も分からぬ状態でスノーフィールドを彷徨う事となっていた彼女を救った者こそ、目の前に立つ、キャスターに他ならない。
彼は小雪の大まかな事情を把握すると、突然首根っこをニギニギし、マフィアの詰所に足を運んで""穏便""に譲ってもらったのだ。
……その時の事は、思い出したくはない。アリスとのファーストコンタクトと同じく、余りにも心臓に悪すぎた。
さっきの変態はその時のマフィアの構成員だろう、恐らく事務所を取り返しに来たのだろうが、不憫だ。
そんなこんなで以後はこのキャスターの陣地、もとい『魔界探偵事務所』で寝泊まりし、キャスターのいぢめにあいながら、割と平穏なモラトリアムを送っていた。
今、この瞬間までは。


883 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:51:37 dJt/bogI0


「……貴方も、私に殺し合いをさせたいの?
結局は、貴方も同じなの?」


『誰』を指して同じと問うているのかは、彼女自身にもよく分かっていない。
けれど、ここへ来る前に自分が巻き込まれたマジカルキャンディー争奪戦。
あれが実は魔法の国の手違いなどでは無く、明確な誰かの悪意により起きたものであることは薄々感ずいていた。
それがファヴなのか、あるいは自分と同じ参加者の誰かだったのか、真相は闇の中。
それでも少女は、信じたくなかった。自分が引き当てたサーヴァントが、殺し合いを尊び、自分にも殺し合いを強要してくる、マジカルキャンディー争奪戦に悪意を持ち込んだ者と同じであるなど。
だからこその、絞り出すような問い。


青年の返答は、ケーキだった。

「ぶっ……!?」

スノーホワイトはキャスターの心の声を聴くことができない。
キャスターは一度もスノーホワイトの前で困ったことが無いからだ。
例えマフィア数十人に囲まれ銃口を向けられたとしても、彼は鼻歌交じりに切り抜けてみせる、まさに本物の怪物。
だから、キャスターの不意打ちにスノーホワイトは対応できない。
出来るかもしれないが、できたらできたでよりひどいことになるのが眼に見えているのでしない。
顔を覆う、甘いクリームの元を掴み取る。
べしゃりと床に落ちたそれは、五秒後腐食し硫酸めいた液体となって流れて行った。

「言ったはずだマスター、我が輩は謎を、悪意を喰らって生きる魔人であるとな」

「……だから、アナタはこの街の謎を食べに来た」

キャスターは肯首する。

「我が輩、聖杯そのものはどうでも良い。究極の謎の足掛かりにはするかもしれんがな、
本命は万能の願望器・聖杯を守護する殺意と悪意……即ち謎だ」

願いを叶える魔法の器を優勝賞品とした大規模な殺し合いにして蹴落としあい。
成程悪意に満ちている。そしてそれを喰いたいと、やってきたのだ、この男は。
上手い料理を喰いたいと言う願いに理由はいらない。これ以上無く生物らしい願いだった。
線と線が繋がり、スノーホワイトは理解した。けれど、納得はしない。

「……でも、それなら私はやっぱりアナタに協力できない。
いくら美味しいものが食べたくても、そのためにマスターを…他の人を殺すなんて」

その言葉を聞いたキャスターは心底心外そうな顔をして、スノーホワイトに答える。

「シロアリが、誰が殺すと言った」


884 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:53:29 dJt/bogI0

え?そう声を上げ意外そうにする少女に青年は機嫌を悪くしたのか、三白眼で睨みつけ、その表情のまま言葉を紡ぐ。

「人間とは須く我が輩の駒であり、食糧であり、可能性なのだ。
それを何故自分から減らさねばならん。あのマフィア達も一人として死んでいたか?
ましてこんな儀式に参加する人間は後々に謎を生む見込みが大いにある、有望だ」

そう言えば、と記憶を辿る。
この一見人の命を何とも思っていなさそうな魔人は、スノーホワイトの記憶している範囲では誰一人として殺害していない。
それどころか、結果は惨敗だろうが、さっき報復を狙った者も来ていたではないか。
この魔人はそれでも、殺していない。NPCであるのにも関わらずだ。

「そもそも協力する立場なのは貴様ではない、我が輩だ。身の程をわきまえろ。
奴隷の分際で業腹ではあるが…貴様にもあるのだろう、聖杯に願ってでも叶えたい願いとやらが」

「………!」

青年の問いに息が詰まったかのような錯覚を覚える。
私の、願い?
自分の願いとは何だったのだろうか。
小さいころからずっと、魔法少女に憧れていた。
ハードゴア・アリス。彼女はスノーホワイトの事を魔法少女であると言ってくれた。
でも、今の自分は果たして本当に正しい魔法少女だろうか?
闘いから目を背け、守られるばかり、後悔するばかりだった自分が。
もし、自分が正しい魔法少女でないなら。その資格を失っているのなら。
それならば――――、


「……でも、それでも誰かを傷つけるのは、私はいやだ」

「さて、我が輩、人間の感情には疎いのでな。共感はしてやれん。
だが、ここへ来る人間は覚悟の有無はあれど自身の願いのを持っている人間が大半だろう。
もし、貴様もその意思があると言うのなら、我が輩を使うがいい。我が輩も貴様を使う、死の一歩手前、馬車馬の如くな」

何やら最後の方は恐ろしい事を言っていたが、キャスターの瞳は真剣だった。
そして言い終わるとその饒舌さは鳴りを潜め、スノーホワイトの返答を静かに待つ。


885 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:54:14 dJt/bogI0

…………
………
……
…。

ひりつく様な空気の中、沈黙だけが事務所を支配する。
スノーホワイトは、何も答える事が出来なかった。
これが少し前、ラ・ピュセルが脱落した直後なら彼女はキャスターないし聖杯に縋っていただろう。
これがもうしばらく後、『魔法少女狩り』ならば鋼の様な冷たい決意と意思を以て聖杯の破壊に動いていたかもしれない。
だが、彼女は『魔法少女狩り』に至る前、その世界に立つ前にここへ来てしまった。
彼女には貴方こそ魔法少女であり、貴方に憧れていたと言ってくれる者こそ必要としていたのだ。
だが、その代りとして、彼女には魔人と、万能の願望器を得るチャンスが与えられた。
その事実への戸惑いが、少女の返答を鈍らせていた。

「………止まってはいない。秒針はしっかり動いていると言った所か。
だが長針と短針が共に動かなければ意味はない、いささか期待外れだな。
仕方がない、今日はもう睡眠をとって精々その錆びた頭に油を指して来い
そうしなければ貴様に聖杯はやらん、我が輩の魔力バッテリーで役目を終えるがいい」

「アナタに言われなくても、分かってる」

何故だろう。白ダンゴ虫だのシロアリだの散々毒を吐かれたのに、そのソフトな暴言は今までキャスターが吐いた中で一番胸を抉った。
聖杯云々ではない、この暴虐武人傲岸不遜が服を着た様な青年に期待外れと称された所でショックを受けた自分にスノーホワイトは動揺を深めた。
唇を噛み、キャスターに背を向け、事務所から出ようとする。
だが、少女は自分が引き当てたサーヴァントの意地の悪さを見誤っていた。
彼は自分で今日はもう寝ろと言っておいて、無防備なその背中に容赦のない追撃を放つ。


886 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:54:59 dJt/bogI0

「何もできなかった自分に負い目を感じるのは良い。答えを出すために悩むことも我が輩は歓迎しよう。
―――だがな、コユキ。忘れるな。貴様の感じた負い目も。その苦悩も。これから起きる全て、何もかもを忘れるな。忘れる事は進化の放棄だ。
忘れなければ、貴様はどんな状況になったとしても進化することができる」

「……ッッ!!!」

人間の感情が分からないとのたまっておきながら、何故こうも鋭いのか。
少女は感情のやり場を失い、堪らず扉を閉める。
そうして、キャスターの視界から魔法少女・スノーホワイトは消えた。
一人になった事務所で魔人は、


「繊細な奴隷は手がかかるな」

そう、独りごちた。





887 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:55:50 dJt/bogI0


自室代わりである事務所の仮眠室にあるベットに身を投げ、思考する。
自分は、ラ・ピュセルやハードゴア・アリスを裏切りたくない。
彼女達に恥ずかしくない魔法少女でありたいと、ここへ来てからも何度も思った。
でも、聖杯の事を考えると、どうしても囁く声が聞こえる。
それは知らない誰かの声であり、キャスターの声であり、姫河小雪の声だった。

『理不尽に奪われた彼女達の未来を取り戻そう』と。

こんな時、ラ・ピュセルやアリスならどうするだろうか。
……分からない。今の自分にとって彼女たちは余りにも遠い。
0と1、死と生。隣り合っているはずの両者の距離が何故、こんなにも遠いのだろう。
それを意識するたび、囁く声は一層強まる。

『彼女たちの、未来を造ろう』

『美化もせず、風化もせず、万能の奇跡を以て1ビット足りとも違うことない彼女達を造ろう』

『どんな手段を使ってでも、本当の彼女たちにもう一度会いに行こう』

その誘惑はキークという魔法少女が引き起こした事件の中で『魔法少女狩り』が振り払った誘惑だった。
しかし今の姫河小雪/スノーホワイトは魔法少女狩りではない。
魔法少女狩り生誕の最後のピースが欠いた状態、1と0の狭間で彼女はここへ来た。
故にその願いを否定することはできない。
前のゲームでは散々守って貰った、では次は自分が体を張るべきだ。
眼を閉じ、耳を塞いでも、そんな声は消えることなく少女を苛み――――


888 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/19(月) 23:59:35 dJt/bogI0


“”―――そして、もし、聖杯の前に立つ貴様の『日付』が変わっていたら―――””


その瞬間、彼女が初めて聞いたキャスターの心の声が蘇る。
それと同時に、囁く声は潮が引くように聞こえなくなった。
扉が閉まる直前に彼女が初めて聞いた、今まで一度足りとて聞けなかった魔人・脳噛ネウロの心の声。
あれはどういう意味だったのだろう。
そして、スノーホワイトの魔法は読心ではない、『困った人の声が聞こえる』だ。
キャスターはあの時困っていたのだろうか?
それとも、

(私の日付が変わらないと困るって事なのかな…?)

けれど、日付とは一体どういった意味なのだろうか。
分からない。あのキャスターの心中を察するなど、彼女の魔法を以てしても余りにも荷が勝ちすぎる。
それに眠い、心労が祟ったか。瞼が下りる。
悔しいが、変身を解いた今抵抗できそうにない眠気だ。
霞んでいく視界の端に、カチカチと音を鳴らす時計を捉える。


(……どうなったと、しても、今回は、後悔する前に…自分で、選ぶ…)




―――その針は、23時59分を指していた。


889 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/20(火) 00:00:05 KtEe943g0

【クラス】
キャスター

【真名】
脳噛ネウロ

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力:A(--) 耐久:A(--) 敏捷:A(--) 魔力:A++ 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】

陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
適当な場所を乗っ取り謎を集める『探偵事務所』の設立が可能。

道具作成:E
新たな魔術的道具を作成する能力は無いが、
自らの魔力で魔界777ッ能力を作成・行使できる。

【保有スキル】

魔人:A++
人間とは異なる世界『魔界』の住人。
初期状態では一億度の火炎に耐え、核弾頭の直撃を受けても死なない程の身体強度を持つ。
肉体の切断などを受けても切断面を合わせれば即時に修復が可能であるばかりか、重力すら無視して移動もできる。
しかし、自身の肉体の維持に膨大な魔力と瘴気を必要とする。
マスターからの魔力供給では不足するため、急速に身体能力は低下していきパラメーターにマイナス補正がかかる様になっている。
主食である謎を喰うか、瘴気に満ちた異界で休息を取ることで回復可能。
ただし『謎』は天然ものでなければならない。

高速思考:A+
物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。
卓越した思考能力により、弁論や策略や戦術などにおいて大きな効果を発揮する。
攻め手においては同レベルの心眼(真)と同様の効果を発揮する。

無窮の叡知:A
この世のあらゆる知識から算出される正体看破能力。
使用者の知識次第で知りたい事柄を考察の末に叩きだせる。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【宝具】

『魔界777ツ能力』
ランク:E〜A++ 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの保有する777の魔界道具。
それぞれに異なる能力を持ち、消費魔力量も道具それぞれに異なる。
余りにも膨大な数のため人間界ではキャスターも使ったことない能力も多く、
その能力はサーヴァントとして劣化した過程で削ぎ落とされ、使用不可となっている。

『魔帝7ツ兵器』
ランク:EX 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの保有する7つの魔界の道具。
魔界でも数人しか使う事のできない魔界王の保有兵器。
『魔界777ツ能力』とは桁違いの威力を誇る兵器である。
それ故に莫大な魔力を使用し、発動の際にはマスターの令呪のバックアップが必要。
また上述の宝具と同じく、人間界で使用していない兵器は呼び出すことができない。

【Weapon】
上述の宝具と魔人としての身体能力

【人物背景】
かつて魔界の謎を食い尽くし地上に降り立った、人の心が分からぬ魔人。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争に纏わる謎を喰う。


890 : 魔【まじんとまほうしょうじょ】 ◆5/xkzIw9lE :2016/12/20(火) 00:00:34 KtEe943g0

【マスター】
姫河小雪@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
マジカルキャンディー争奪ゲームで死んでしまった人たちを生き返らせる…?

【weapon】
『兎の足』
大ピンチになったらラッキーな事が起こるアイテム。
ただし、それでピンチから逃れられるとは限らない。

【能力・技能】
『困っている人の心の声が聞こえるよ』
困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえる。それによって行動の先読みや隠し事の傍受も可能。

【令呪】
右手に刻まれている。形状はネウロの真の姿のシルエット。
嘴(一画目)山羊の様な左右の角で(二画目、三画目)


【人物背景】
魔法少女に憧れていた、困った人の心の声を聴くことができる少女。

【方針】
聖杯戦争を止める――――?


891 : ◆5/xkzIw9lE :2016/12/20(火) 00:00:57 KtEe943g0
投下終了です


892 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:23:41 Aq46/PIQ0
投下します


893 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:28:13 Aq46/PIQ0
とてとてとて。
たったったっ。
小さな少女が駆ける。
此処が何処かはわからない。
空を見上げても暗く。
先を見据えても、海のように青い床が拡がっている。
風はない。
音もない。
ただただ、ゆらりゆらりと水面のように揺れる世界が、そこにあった。

「……あら?」

ふと、空を見上げる。
青くはない、雲もない空だけれど、それはもう慣れた。
いつもと違うのは、一つ。

―――流れ星。
流れ星のように光が、一点に向かって動いている。
まるで、何かに導かれるように。
それも一つではない。
十。百。もっと多いかもしれないし、少ないかもしれない。
一目では数えきれないほどの流星が、一つの方向へと向かっていた。

…あまりの綺麗さに、見惚れていた。
あれほど綺麗なものを見たのは、何時振りかしら。
すると。
ひらりひらり、と。
流星の一部が欠け、ひらりひらりと落ちてくる。
とても遅く。まるで、雪のように。
……よく見ると、紙だった。

「これ、見たことがあるわ。
確か、とらんぷ…だったかしら。遊んだことはないけれど。
一枚だけ落とすなんて、可哀想だわ」

これを集めて遊ぶのかしら、と少女は落ちてきたトランプを小さな掌で掴み取り、まじまじと見つめている。
流星を見上げる。
流星たちは、空を流れ、一点へと向かっている。
あの先に行けば、このトランプの持ち主がいるかもしれない。
少女は先を見据える。
この世界の先の先―――電脳空間の先にある、ムーンセル・オートマトンを。

「行ってみましょう?届けてあげたら、きっと喜ぶかもしれないわ」

とてとてとて。
たったったっ。
少女は再び青い床を駆ける。
ムーンセル・オートマトンが作り上げた虚構世界。
異世界の中心―――スノーフィールドへと。

もしかしたら。
友達とか、出来るかもしれないわ、と。
そんな、場違いな考えを抱きながら。

闘争の中心へと、駆けていく。

○ ○


894 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:30:49 Aq46/PIQ0
「ちょっ……待って……!!」
「いいえ、待たないわ!今度はキャスターが鬼よ」

ばさり!と。
丸く刈られた草木の影から、少女が勢いよく顔を出す。
身体は草木に隠れているが、頭だけ出ているその姿はまるで雪だるまのよう。
かくれんぼでもいいわ!と満面の笑みで答える少女。
白いドレスは草木にまみれているが、気にもしていないよう。
―――『ありす』。
白い少女は、そう名乗った。
キャスターをこの場……ムーンセル・オートマトンの虚構世界『スノーフィールド』にて召喚した直後に、彼女はおどおどした様子で、人見知りのようにそう名乗ったのだ。
そして。
目を輝かせ―――"あなた、わたし(ありす)といっしょね"と。
まるで長年の友を見つけたかのように、そう言い放った。
その後は、この通り。
聖杯戦争らしく戦闘に巻き込まれることもなく、あたふたとおにごっこを繰り返している。
子供のエネルギーは無尽蔵だ。
サーヴァントとして現界しているキャスターと言えど、そのテンションにずっと付き合うのは骨が折れる。

「ちょっと……休憩、しよう……お兄さん、疲れた……」
「あら、みっともないわ。……む。でもおにごっこももう何度もやったわ。次はお茶にしましょ」

そう語ると、少女はまるで用意していたかのように地面にシートを拡げティーカップを並べていく。
こんなもの何処から持ってきたのだろうとキャスターは疑問に思ったが、ありすは答えてくれそうにない。
水筒のような筒から、とぽとぽと薄茶の液体が注がれていく。
……紅茶、だろうか。

「キャスターは東洋の人だから緑茶がいいかもしれないけど、今は紅茶しか持ってないの」
「いや、大丈夫だよ。うん、頂くね」

ずず、と口に含む。
……何処から持ってきたものかはわからないが、それなりに美味だった。
こほん。
キャスターは咳払いしながら、ありすを見つめる。

「ちょっと話、いいかな」
「いいわ。たのしいお話なら大歓迎よ」

きらきらと目を輝かせるありす。
こう見ると、十歳前後の少女と何も変わらない。
130cm前後のその身長も、軽そうなその身体も。
まるで、生きている子供そのものだ。

―――だが、違う。
彼女は、『生きていない』。
霊体に経験のあるキャスターだからこそ、ようやくわかるレベルの違和感。
この少女は―――幽霊"ゴースト"だ。
ムーンセル・オートマトンは死者の介入を許さない。
ムーンセル・オートマトンが観測するのは"今"であり"過去の人間"ではない。
資料として集めた人間も、平行世界等の違いはあれど"生きている人間"か"死ぬ直前の人間"だろう。
…だというのに。
目の前の少女は、如何なる理由か―――地上に肉体が存在しない状況下で、このムーンセルに存在している。
明らかに、異常。
それを、キャスターは聞き出そうとしているのだ。

「ありすちゃん……で、いいかな」

前置きを一つ。
そして、本題へ。

「『聖杯戦争』って知ってる?」


895 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:31:33 Aq46/PIQ0
「知らないわ」

即答、だった。
きょとんとした顔で。
何かのゲームかしら、とでも言いたげな顔で。
その後、幾つか質問しても、サーヴァントもマスターも、何も知らないという。
此処に来たのも、ただ目立つ方向に歩いてきただけだと。

「それでも良かったわ。だってキャスターと出会えたんだもの!
あなたはわたし(ありす)といっしょ。
……わたしは、きっと生きていないもの。
うん、何もない。最初から何もない、ぬけがら。
キャスターと、いっしょね」

そう語る彼女の顔は、一差しの影が差す。
……彼女は、死んでいる。
サイバーゴースト。精神だけの、肉体を失った脱け殻。
ああ、と。
キャスターは、理解する。
彼女は、命を燃やすことなく―――孤独に、死んだのだ。
ならば。
この聖杯戦争の中でだけでも、この子と友達でいられたら。

「……わかった。じゃあお兄さんが、守ってあげる。
ありすちゃんが寂しくないように、一緒にいよう」
「ほんと?」

ぱあっと。
ありすの顔が、華開くように笑顔を灯す。

「うん。だから…えっと、いつまでもキャスター、じゃ他人行儀だよね。
俺は、タケル。
―――天空寺タケル。タケル、でいいよ」
「うん。よろしくね、タケル」

キャスターの手を、ありすが握る。
小さな、小さな手だった。
ああ、自分はこの子を守り抜こう。
死んでしまった、泡沫の夢だとしても。
それでも、それを大事に守り抜こうと。
キャスターは胸に決め


















―――瞬間。
彼女の記憶が、華咲いた。


896 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:32:44 Aq46/PIQ0
灰色の空。
爆撃。進撃。掃討。
その中で、無惨に散っていく命達。
消えていく。
命が、消えていく。
……その中に、ありすはいた。
最早虫の息。どう施しても、救いようがない命。
手を伸ばした。必死に手を伸ばす。
しかし、キャスターの手は届かない。
当たり前だ。これは記憶。
"既に起こってしまった現実"。
キャスターがいくら足掻こうと、変えられるものではない。
―――そして、場面は変わる。
ありすは血液にまみれた格好のまま、担ぎ込まれる。
病院、だろうか。
キャスターには見覚えのない建物だが、傷だらけのありすが運ばれたということは病院なのだろう。
此処で、ありすは死んだのだろうか。
瀕死のありすを囲む医師たちの一人が、呟く。

『…驚いた。この子、魔術回路があるぞ』

此処で死ぬ、なんて。
希望的観測も良いところだった。
地獄は、ここからだ。
無数に繋がれた管。
機械に接続された身体。
小さな身体は、医師―――魔術師たちによって、良いように弄ばれる。
実験。
投薬。
研究。
地獄のような、生きているとはとても言い難い、人としての尊厳を奪われ尽くした環境。
それを、数年間。
数年間もの間、続けられていた。
……もう見ていられない。
涙が溢れてくる。
あまりの非人道的な行為に、怒りを通り越して絶句する。
彼女は、自分のために生きていたのではない。
"誰かの益になるから、生かされていた"。
そして。
数年もの間続けられた無茶な実験の末、ありすは死んだ。
当然の帰結である。
幼き身に耐えられないほどの苦痛と絶望を与えられ続けたのだ。
瞳からはとっくの昔に希望が消え失せ。
肉体が耐えられず、死滅した。
……幸か不幸か。
彼女の精神は、まだ生きていた。
接続された機械を通り、彼女の精神は肉体を離れ、インターネットへと飛び立つ。
これが、始まり。
長いさ迷いの果てにムーンセルへと辿り着く、その序章。
あらゆる尊厳を奪われた少女の成れの果て―――それが、サイバーゴーストのありすだった。



○ ○


897 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:33:27 Aq46/PIQ0
「…ないてるの?」

意識が現実へと帰って来た瞬間に掛けられた言葉は、それだった。
ふと、自分の頬に手を当てる。
……頬が、濡れている。
俺は、泣いていたのか。
キャスターのスキル『命の限り』を通して見た記憶は酷いものだった。
これが、現実としてあっていいものなのか。
……怒りが込み上がる。
これは、許していいことではない。
目の前のありすを、強く抱き締める。
強く。強く。
身体は、こんなにも小さい。
こんなにも小さい、のに。

「いたいわ、キャスター」

苦笑したように、ありすが呟く。
ああ。
自分は、この小さな命を―――再び、生きることの幸せを教えてあげたい。

「大丈夫」
「俺が、絶対に何とかしてみせる」
「絶対に、もう一度、楽しく生きられるように―――」

その先の言葉は、空気に消えた。
自分が、この子に呼ばれた理由が、今わかった。
助けるためだ。
自分は―――この子ために、命を燃やすべく呼ばれたのだ。
ゴースト。
ありすと同じ、幽霊。
幽き戦士は、そのために、もう一度立ち上がった。


898 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:38:21 Aq46/PIQ0
【出展】仮面ライダーゴースト
【CLASS】キャスター
【真名】天空寺タケル
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力D 耐久C 俊敏B 魔力A 幸運A 宝具A+

【クラス別スキル】
陣地作成:C
魔術師として自らに有利な陣地な陣地、小規模な「工房」を作成可能。
彼の場合は、「大天空寺」を作成する。
しかし、彼にとってその空間にて鎮座するだけで魔力が微少に回復する、と言った小さな利点しか得られない。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
彼の場合は、後述の宝具から特定のアイテムを制作可能。

【保有スキル】
変身:A
文字通り変身する。
キャスターの場合、降霊魔術に似た技術にて己を強化する。

英雄降霊:A
戦士として英雄と心を繋ぎ、その力を借り受けた証。
後述の宝具を用い、座へと接続し英雄の魂を降霊させ纏った場合、その英雄の技術を完全に模倣することができる。
そして同ランクまでの真名看破スキルを得る。

単独霊体:C
生前、彼は生きながらにして霊体だった。
つまり、生きていた頃から擬似的なサーヴァントなのだ。
故にサーヴァントとしての行動に関する魔力消費を減らし、霊体の修復を早めることができる。
激闘の果てに生身の身体を取り戻したため幾らかスキルがランクダウンしている。

命の限り:EX
命、燃やすぜ。
彼は戦士である限り、人間の可能性を信じる限り、歩みを止めることはない。
同ランクまでの戦闘続行を得て、他人の感情に干渉し魂を接続、記憶を見たり己の願いを魂へ直接繋ぐ能力を持つ。
このスキルのおかげで彼の言葉は言葉としての形より大きな力を持ち、相手に己の言葉を信じさせることができる。

【宝具】

『開眼セシ幽キ腰布(ゴーストドライバー)』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

異界の存在、不滅の存在への対抗策として作られた宝具。
魂やエネルギーを物質へと変換し、鎧を作る。
この宝具により作られた物質は対不死・不滅。そして対異界の存在への特効を得る。
キャスタークラスでは己に英雄を降霊させるための出力源として機能する。
瞬間的に魔力を増幅させる『オメガドライブ』の使用により、擬似的な真名解放を可能。
道具作成スキルにより、ガンガンセイバーやゴーストガジェットを産み出すことができる。
しかしライダーのクラスではないため、マシンゴーストライカーの召喚は不可能。
また、キャスタークラスならば英霊の魂が籠められた聖遺物から『開キ繋グ英雄眼球(ゴーストアイコン)』を産み出すことが可能である。

『開キ繋グ英雄眼球(ゴーストアイコン)』
ランク:B 種別:対霊宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

座へと接続し、対応した英雄の魂の一部を己へと降霊・変化させ纏うための、眼球を模した宝具。
逸話では十五の英雄を従えたと言われているが、その規格外の能力はサーヴァントとしての霊基では再現しきれないため、召喚前に選んだ六つと、基本である『オレ』のみの『開キ繋グ英雄眼球』しか持ってこれなかった。
今回はキャスタークラスであるため、所持しているのは
オレ・エジソン・ニュートン・ベンケイ・ヒミコ・ベートーベンである。
それぞれ対応したスキルや能力を獲得可能。
ライダークラスの場合、更に扱える『開キ繋グ英雄眼球(ゴーストアイコン)』は増え、更に『闘魂』を含めた十の数を持ち召喚されるという。

『生命燃ヤシ果タス可能性(ムゲンゴーストアイコン)』
ランク:A+ 種別:対人類悪宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

光のゴースト。
人間の無限の可能性を一点に集約した
、言わば『人類が産み出した人類に仇なす者への最終防衛』。
喜怒哀楽。愛、信念、勇気。
七つの感情を宿したゴーストの最終形態である。
人間の産み出す可能性の集大成であり、人類という存在がもたらす希望そのもの。
瞬間的な霊体化が可能であり、粒子化や瞬間的な高速移動が可能。
人類を脅かす者への特効能力があり、ステータスの筋力・耐久・俊敏を2ランクずつアップさせる。

【人物背景】

「明るく呑気で無鉄砲だが、自分が信じたことは曲げない、気持ちが真っ直ぐな青年」。
基本的には心優しく温厚な性格だが、自身が死を経験している為に「命」に関わる事柄については真剣に向き合っている。
その為、目的達成の為なら人の命を平気で弄ぶ眼魔や自分の命を簡単に捨てようとする人間に対しては怒りを露わにしている。
加えて、自分の命に関わるゴーストアイコン入手についても、他人を犠牲にしない事を第一にしている。
上記の様に偉人や英雄に対して憧れを抱いており、彼らを「命を燃やしきった人物」とみなして尊敬している。


899 : 幽世の門 ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:39:48 Aq46/PIQ0
偉人に関する知識は人並み以上にあり、エジソンの有名な言葉が意味を間違えて伝えられていることや、ゴエモン魂からねずみ小僧と因縁があると言われても石川五右衛門とねずみ小僧では活躍した時期が違うと指摘して嘘だと白状させたりしている。
また、死んで霊体となった自分の能力や偉人に関わる事柄をド忘れして慌てふためく等おっちょこちょいな一面も持ち合わせている。

【サーヴァントとしての願い】
ありすを、人間として生き返らせる。
他のマスターを殺すつもりはないが、サーヴァントだけを座へと帰らせるつもり。

【出展】
 Fate/EXTRA

【マスター】
 ありす

【参戦方法】
 サイバーゴーストとしてさ迷う内に招かれた、異物。
電脳空間において、スノーフィールドへと導かれる魂達からトランプを手に入れた。

【人物背景】
さあ、あそびましょ。
焼かれた人型。
管に繋がれた人形。
解剖された、肉体。
片方を失った双子。
傾いた天秤。
真ん中で裂かれた果物。
それが、わたし。
でも、寂しくないわ。
だって、キャスターがいるもの。
あなたもわたしと同じ。
幽霊。
いいわ、いいわ。
あたしだけのあたしじゃないのが残念だけれども。
それでも、時間一杯、遊びましょう?

【weapon】
・なし

【能力・技能】
・サイバーゴーストとしての際限のない魔力量

【マスターとしての願い】
 ? ないわ。
強いていうなら、みんなで遊びたい。
キャスターも一緒に遊んでくれるから、さびしくないわ。

【方針】
遊ぶ。


900 : ◆DpgFZhamPE :2016/12/20(火) 00:40:21 Aq46/PIQ0
投下終了です


901 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:51:27 f2Z98VHk0
みなさま投下乙です。私も投下します


902 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:52:58 f2Z98VHk0

男は、暗き帽子の下に瞳を隠し、暗きタキシードにその四肢をつめ込む。

腰に一振りの蛮刀だけを携えて...

手ぶら!都市、スノーフィールドにおいて、金さえ持たずに手ぶら!

その男、文字通り無鉄砲!

「......」

ヨロリと男はうつ伏せに倒れ込む

そう。男は空腹に打ちのめされ正しく死にかけている。

当然だっ!

人脈も無い、家もない、金もない、知識もない、労働意欲もない...

そんなバカに決して甘くない。それがいわゆる都会の掟!

「...腹ァ、減ったなぁ」

空腹を満たすのに必要な物はなにか。

友情。努力。勝利。信頼。絆。

どれも違う。

答えは―――

「金だ」


903 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:53:41 f2Z98VHk0


―――――数か月後

街には奇妙な男、『ヴァン』の噂がとびかった。

ある時には、銀行強盗の奪った金をそのまま持ち去った"銀行泣かせのヴァン"

ある時には、一食のお礼のためにサラ金を全滅させた"義理人情のヴァン"

ある時には、民家に侵入しドッグフードを貪り三日間腹を下した"泣き虫トイレのヴァン"

食い逃げ、無能、安眠、イイ人、外道、泣き虫、縁の下の力持ちetc...

とにかく清濁ひっくるめてありとあらゆる呼び名が蔓延っていた。

唯一なかったのは女絡みのスキャンダルだけだろうか。

その噂に共通していたのは、黒いタキシードにテンガロンハットという、まるで荒野の新郎染みた格好のみ。

この奇妙な噂の男。

果たして、その正体は――――

「なんでもない、ただのヴァンだ」


904 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:55:13 f2Z98VHk0




「もう一度確認するわね」

とある民家に二人の男女が向き合い座っていた。
タキシードに身を包んだ男の方はヴァン。名字などない。ただのヴァンだ。
学生服に身を包んだ少女の方は暁美ほむら。一見ではただの少女だが、その実は魔法少女。奇跡のために戦いに身を捧げた存在である。
その年齢もそこそこに離れた二人は、見様によっては兄妹にでも見えるかもしれない。
無理はない。なんせ二人の目はソックリ。両者とも死んだ目をしており、更には無愛想。
しかし、彼らは兄妹などではないし、互いの名前も知ったばかり。家族とは程遠い間柄である。
では、赤の他人であるこの二人はなにをしているのだろう。
ナンパ。待ち合わせ。援助交際。どれも違う。


「私はサーヴァントで、あなたは私のマスター...ここまではいいわね」
「ああ」

ヴァンの前に並べられるのは出来合いのハンバーグ。その脇に並べられるのはマヨネーズ、ケチャップ、ソース、ワサビ、辛子、バニラエッセンス...とにかく大量の調味料だ。
どれをつけてもいいように手元においてあるのだろうか。

まず手を伸ばしたのはケチャップだ。焦げ目のついた肉が瞬く間に赤に染まっていく。

「私たちは、これから他のマスターやサーヴァントと戦い倒さなければならない。サーヴァントはおおまかにセイバー、ランサー、キャスター、アーチャー、ライダー、バーサーカー、アサシンなどの種類に分かれていて、そこからある程度の戦闘スタイルを予測することができる」
「そうか」

空になったケチャップの容器を脇に寄せ、次いでマヨネーズに手を伸ばす。
真赤だったハンバーグの色に黄が混じり次第に変色していく。
空になった容器をケチャップ同様脇に寄せ、今度はソースに手を伸ばす。

「その目的は、願いを叶える聖杯を手に入れること。これを手に入れれば、私たちは願いを叶えることが出来る」
「......」

ソースを出し終えた辺りで面倒になったのか、ヴァンは両の指に容器を挟み一気にハンバーグにぶちまける。
マスタード、辛子、タル○ルソース、和風ドレッシング、ごまドレッシング、エ○ラ焼き肉のタレ。
それらがぶちまけられたハンバーグは、そもそもハンバーグなのか怪しい様相を醸し出していく。
空になった容器を脇に寄せ、今度は醤油、ポッ○レモン、ワサビ、生しょうが、おろしにんにくを投下。
目の前で繰り広げられる悪魔の所業に思わずほむらは口元を押さえた。
いったいハンバーグになんの恨みがあるのか。そう問いただしたくなる衝動を抑え、ほむらは話を続ける。


905 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:55:52 f2Z98VHk0

「そのため、私たちは協力してこの戦いを勝ち残らなくてはならない...これでわかったかしら」
「まあ、半分くらいは」
「...とにかく、私たちは協力しなければならない。それだけは覚えておいて」

容器が空になったところで、トドメといわんばかりにバニラエッセンスと粉チーズをキリキリと振り掛ける。
それらもかけ終えたところでハンバーグだったものは改めてその異様さを醸し出した。
赤と黄と無色の油と緑と肌色と黒と...とにかくしっちゃかめっちゃかに混ぜられた調味料たちは見るも無残な毒沼に変貌していた。
もはや異臭を放っているレベルである。

「...本当に食べるの?」
「やらねえぞ。これは俺のもんだ」
「いらないわよ」

ナイフで調味料の山をかき分け肉を切り分ける。
フォークで口に運ばれる変色しきったソレを見るだけでほむらは胸焼けしてしまう。
それを口に含んだヴァンは目を見開きひとこと。

「からあああああああああぁぁぁぁぁい!!!!」

当然の叫びである。

眼前の馬鹿を放っておきつつ、ほむらは自分の食事にとりかかる。
サーヴァントであるため、食事を取らなくても生きてはいけるが、少しでも魔力を温存するためだ。
彼女の食事はなんとも味気ないもので、スティック状の菓子が数本。つまりカロリーメイ○だけだ。

「そんだけでいいのか」
「食事なんてエネルギーが取れればそれでいいもの」
「そうか」

極限まで味を求める男は変色した肉を口に運び、味など求めない少女は簡素な食事を続ける。
食物を咀嚼する音のみが支配する食卓。ただ食事を堪能しているだけならいいのだが、何故か二人の間には第三者からみれば重苦しい沈黙すら漂っている。
だが、二人は空気を変えようだとか話題を探そうだとか、相手に気を遣う素振りなど一切見せない。
むしろ黙っている間は互いの声を聞く必要もないのでむしろマシだった。
ただ、最低限の意思疎通は必要だし、下手に離れる訳にもいかない。
そのため、否が応でも互いに目の届く範囲にいなければならないだけだ。


906 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 00:57:38 f2Z98VHk0

「......」

食事を続けながらヴァンは思う。
気に入らない。現状も、ここに連れてこられたことも、いまの彼をとりまくなにもかもだ。
ここに連れてこられる前―――あのパリカールとかいうロバの背で眠っていたら、いつの間にかここへ飛ばされていた。
カギ爪の男への道を邪魔されたというのだからそれだけでも憤慨ものなのだが、それ以上に気に入らなかったのは、最愛の妻であるエレナの記憶を一時的に消されていたことだ。
この数週間、ヴァンは欲望のままに暮らしていた。
気に入らないことがあれば大抵は暴力に訴え、腹が減れば金を奪うことすらあった。
エレナやガドヴェドから教わったことを全て忘れて、だ。
もちろん故意に彼らの教えを頭の隅にやったわけではない。本当に、彼らが記憶から跡形も無く失せていたのだ。
お蔭で彼らと出会う前の金と暴力のままに生きたあの時を過ごすハメになった。
許せない。許せるはずもない。
セイハイだかなんだか知らないが、勝手に他人様の記憶を弄り、愛しのエレナを一時でも忘れ去らせるとは。
故に、ヴァンの方針はここから脱出しもとの場所へと帰ること、そして旅の邪魔をしたセイハイをぶった斬ることに自然と定まっていた。


「......」
食事を続けながら暁美ほむらは思う。
己の目的は円環の理からまどかの人間での部分を引き離すことである。
生前―――円環の理に導かれる寸前のこと。
暁美ほむらは、唯一彼女へと干渉できるそのチャンスを逃さなかった。
彼女に触れられる前に、逆に彼女を掴みまどかを引きはがす。本来の魔法少女ではできないことだ。
だが、暁美ほむらにはこれまで積み重ねてきた因果、なにより『救済を否定する意思』があった。
その僅かなアドバンテージに賭け、微かな可能性を掴み目的を達成した―――はずだった。
だが、彼女は失敗した。あと少しでまどかを裂けるといっったところで、まどかと円環の理は再び融合。
結局、円環の理と鹿目まどかを引きはがすことはできなかったのだ。
なにがいけなかったか―――いや、なにがいけなかった、というわけではない。
ネットに弾かれたテニスボールはどちらに落ちるかわからない―――つまり、単純に賭けに負けたのだ。
そして、神の救いを拒んだ代償がただの失敗で終わる筈も無し。
ソウルジェムが変質し、もはや魔法少女でなくなった彼女は円環の理の救済を受けることができない。
彼女がいきついた結果は、希望も絶望も無いただの虚無。つまり死だ。
最早誰からも救われず、救うこともできず。彼女はなにも掴めぬままに命を散らした。

だが、いまはこうして英霊として復活し、聖杯戦争にも参加することが出来ている。

またインキュベーターの小細工かとも思ったが、そこで考えるのをやめた。
再びチャンスが巡ってきたというのなら、それを存分に利用し願いを叶えるだけ。
例えその道が自らの救いにならずともだ。
彼女は、聖杯を手にするため如何なる手段をも行使することに決めた。


907 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:00:04 f2Z98VHk0


食事に味のみを求める男、食事に最低限の栄養のみを求める女。
聖杯を殺す男、聖杯を狙う女。
刀を武器にする男、銃を武器にする女。
一見にして正反対の彼らだが、共有する思いはある。

―――この眼前の女【男】は気に入らない。

いまの二人はその理由を知る由がない。
当然だ。なんせ両者ともロクに互いの情報を交換していないのだから。
だが、もしも彼らがより多くの言葉を交わせばその嫌悪はより強固なものとなるだろう。



男は一人の女を愛した。ずっと独りぼっちだった男は、彼女の優しさに触れ、共に幸せになりたいと願った。

女は一人の少女を愛した。ずっと独りぼっちだった女は、彼女の優しさに触れ、共に幸せになりたいと願った。

原点は同じ。そして、その愛した者を理不尽に殺され奪われたのも同じ。

だが、彼らは決定的に道を違えた。

男は仇を討つために旅に出た。誰のためでもない。他ならぬ自分自身のために。

女は少女を救うための旅に出た。他でもない。ただただ少女を救うために。

男はただ一人しか愛せなかった。例え愛した女と寸分違わぬ者と出会える可能性があろうとも、彼はそれを断固として否定した。
彼と過ごした女は、二度と触れることのできないところへ行ってしまったのだから。

女はただ一人を愛する訳にはいかなかった。例え己を知らぬとしても、疎むとしても。
目の前にいるのが、愛した少女ではないただの偶像だとしても。愛した少女と同じ者であれば―――『鹿目まどか』であれば見捨てることなどできなかったから。

彼らにはそれが許せない。

どのツラさげてエレナとの愛を裏切るつもりだ/まどかとの約束を守ると息巻いてなにを自己満足しているの。

そうやってエレナの死を消して、あいつのためだとカッコつけてあの時の俺に目を背けるのか/そうやってまどかに許してもらってあの時の私に目を背けるのか。

―――それができれば、どれほど幸せだったことか。


もしも彼が彼女のように愛した者の幸福に殉ずることができれば/もしも彼女が彼のように愛した者との絆に殉ずることができれば。
ヴァンはエレナの救世主になれただろう/暁美ほむらは鹿目まどかを裏切ることなく真の絆を結べただろう。

エレナを決して裏切らないヴァン。まどかを裏切ってでも彼女の幸福を願う暁美ほむら。

彼らはお互いの弱(つよ)さが疎ましい。

故に、自分の選べなかった道へ向かう彼/彼女がひどく羨ましかった。

そんな互いに秘めた想いなど自身すらも露知らず。彼らは黙々と食事を続けるのだった。


908 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:00:27 f2Z98VHk0


これは、愛に生きた者たちの物語。

一人の少女は、愛する者のために地獄へと赴いた。

一人の男は、愛する者のために叩き落された地獄を耐え抜いてきた。

彼らの旅は多くの人々の未来を変え、時には奪い、奪われてきた。

どんな旅もいつかは終わる。

人は、その終わりにどこへ辿りつくのか

見捨てられた流刑地。

希望と絶望が渦巻く宇宙の再生地点。

惑星・エンドレスイリュージョンはそんな星。

所詮、宇宙の吹き溜まり。


909 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:01:02 f2Z98VHk0


【クラス】アヴェンジャー

【真名】暁美ほむら

【出典作品】魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【ステータス】
筋力C 魔力B 耐久D 幸運E 敏捷C 宝具:B



【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】

復讐者:A
まどかを苦しめる運命への復讐心。彼女を脅かす運命や使命などこの手で壊してやる。


忘却補正:A
忘れない。決して彼女(まどか)を忘れたくない。


自己回復:C
魔法少女であるため、魔力がある限りは身体の修復は可能だが、回復速度はあまり速くない。



【保有スキル】

対英雄:EX
英雄を相手にした際、そのパラーメーターをダウンさせる。
反英雄や怪物など、一般的な“英雄崇拝”から外れた存在であるほど影響を受けない。

奇蹟:B
時に不可能を可能とする奇蹟。固有スキル。
星の開拓者スキルに似た部分があるものの、本質的に異なるものである。適用される物事についても異なっている。

精神異常:E
鹿目まどかに対する異常なまでの執着。他の精神干渉系の魔術を極稀にシャットアウトする。




【宝具】
『魔法:時間停止』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己と己が触れたもの。
魔力を消費し文字通り己以外の時間を止める。その中で動けるのは、ほむら自身と彼女があらかじめ触れていたものに限る。

『魔法少女の絶望』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜50 最大補足:30人
魔力を大幅に消費し魔女の結界を張る。結界内は使用者の思うままに操れるが、取込まれた者の動きを制限する力はないため、単純な拘束にはあまり向いていない。


『漆黒の翼』
ランク:A 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己と翼が触れたもの。
己の因果と背負ってきた呪いの詰められた禍々しい翼。基本的に発動はできない。魔力もほとんど尽き、打つ手が無くなった時に限り偶発的に発動できる。
翼そのものに大した威力はないが、その因果と呪いを受けた者にはなにかが訪れるだろう。※個人差はある。



【weapon】
・ベレッタ
拳銃。魔力を込めることで弾の威力が増す。

・その他銃火器。
機関銃や対空ミサイル、タンクローリーなど種類は様々。どう見ても物騒な現代武器ばかりだが彼女はれっきとした魔法少女である。


910 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:01:49 f2Z98VHk0


【人物背景】
魔法少女。ファンからの愛称はほむほむ。貧乳。
本来の時間軸では病弱で内気なメガネ少女だったが、魔女に襲われた所を魔法少女の鹿目まどかと巴マミに助けられる。
その後ワルプルギスの夜戦にてまどかが死亡し、「まどかとの出会いをやり直したい、彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守れる私になりたい」と願い魔法少女として契約を交わす。
手にした願いは時間跳躍(タイムリープ)。
以降、まどかやその周囲を救うために奔走するが、様々な苦難や絶望を経験した結果、まどか以外のすべてを諦めるしかないと答えを出し、冷徹な言動しか吐けなくなった。
しかし、なんやかんやで未だに他の者も気にかけている辺りやはり根は甘ちゃんである。
本編最終話でワルプルギスの夜に敗北。絶望しかけたところで、まどかが叶えた「全ての時間軸から魔女を消す」という願いにより、円環の理という概念となったまどかのいない時間軸を過ごす。
もう時間を戻せなくなった世界で巴マミや佐倉杏子と共に魔法少女としての戦いの日々に明けくれるが、インキュベーダーの実験により半魔女化。
結果、マミや杏子ら身近な人物や円環の理であるまどかを巻き込んでの大事件を起こす。
自らが作りだした結界の中で、まどかの本音ともとれる言葉を聞いてしまい―――。

この聖杯戦争では、叛逆の物語にてまどかを裂くのを失敗してしまい死亡という形で参戦している。悪魔化は不可。


余談だが、彼女にはほむほむ以外にも作中とファンを問わず色々とあだ名が多い。
以下は暁美ほむらのあだ名一覧である。
メガほむ、転校生、イレギュラー、サイコな電波、ホマンドー、クーほむ、リボほむ、変態ほむらさん、戦場ヶ原ほむら、たむら、悪魔ほむら、クレイジーサイコレズ。



【方針】
聖杯を手に入れるために戦う。


【聖杯にかける願い】
円環の理からまどかの人間部分を引きはがす。


911 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:02:19 f2Z98VHk0


【マスター名】ヴァン
【出典作品】ガン×ソード
【性別】男

【weapon】
・蛮刀
一見すると銃のようだが、抜くと長い布状になり、さらに硬化して蛮刀になる。その特殊な性質もまたG-ER流体のなせる業である。
ヴァンの意思によって、無数の穴が剣の表面に開き、その状態で刀をV字型に振りかざすことで発せられる高周波により、オリジナルセブン「ダン・オブ・サーズデイ」を衛星軌道上から召喚する。
また、ダンに搭乗後にはコクピットの床に突き刺し、ヴァンのタキシードの右手首のカバーで固定することでヴァンの思考とダンの動きをリンクさせる思考制御ツールになる。

この聖杯戦争では、ダンを直接呼ぶことはできない。が、もしかしたら会場のどこかに隠されている可能性が...?


【人物背景】
『ガン×ソード』の主人公。ファンからの愛称は童帝。
両親を知らずに育ち、金と力だけで生きてきた無法者。童貞。
途中、居着いた町でオリジナル7の一機〈ダン・オブ・サーズデイ〉のテストパイロットに選ばれる。
そこでダンの調整を行っていたエレナという女性に生まれて初めて“優しさ”を与えられ、恋に落ちた。
エレナとは相思相愛となるが、結婚式の当日に恩師ガドヴェドが呼んでいた『カギ爪の男』の手によりエレナと共に重傷を負ってしまう。
延命の為に瀕死のエレナとガドヴェドにより改造を施され〈オリジナル〉となって生き長らえ、同時にダンの正式なパイロットとなる。 しかし手術後にエレナは死亡。
それ以降エレナを殺した(厳密には重傷を負わせたたが)『カギ爪の男』を殺すために旅を始めた。
エレナ以外の女性に興味が無い為に女性の名前を覚えるのが苦手で、 旧知の仲の女性すら覚えられないほど。
しかし「面白い奴」は例外で、女性的には興味はないものの、その面白い部分を認めてあっさりと覚えられることもある。
逆に言えば、女性として見ていない者の名前なら覚えられる...ということかもしれない。


かなり腕が立ち、そこかしこで暴れているらしく(自分から暴れることはほとんどないが、巻き込まれたり仕事たりするため)通り名を持っている。
...が、ころころ変わるため数がかなり多い。
基本的に『○○のヴァン』という形式だが派生形も多く、当人はその中で比較的新しく、かつ何となく気に入ったものを名乗る。
以下は『ガン×ソード』作中でのヴァンの通り名一覧である。
無職、食い逃げ、地獄の泣き虫、寝場所を選ばない男、夜明け、二日酔い、鋼鉄、縁の下の力任せ、いい人、悪魔の毒毒タキシード、掃き溜めのプリティ、だめ

非情に味覚オンチであり、食事にはいつも大量の調味料をかける。

実際に食べてみると案外いける...が、そのあとは保証できないので実食には注意しよう。
※実食する際には水分とトイレの確保をお忘れなく。
また、食べ物を粗末にしてはいけません。作った調味料は責任を持って使い切りましょう。


【能力・技能】


・身体能力
高い方。また、我流の剣術も使える。

・改造人間
死の淵に立たされたヴァンを生かすために改造を施された。それによりダンと遠隔接続され、生命と体調が衛星システムによって維持される体になってしまったが、その恩恵として弾丸を撃ちこまれた程度では死なない身体になっている。


【参戦経緯】
ミズーギーへ向かう途中でパリカールの背で寝ていたら降ってきたトランプに触れてしまった。(アニメ本編17話)


【方針】
さっさと帰る。セイハイとかいうやつも叩き斬る。帰るのを邪魔する奴は状況次第では容赦しない。
※聖杯戦争についてあまり理解していませんが、興味もないため覚えるつもりもありません。また、聖杯を人の名前だと思っています。

【聖杯にかける願い】

カギ爪は俺が殺さなきゃ意味ねえだろ


912 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/20(火) 01:02:50 f2Z98VHk0
投下終了です


913 : 名無しさん :2016/12/20(火) 01:35:30 g1P8MJr60
ヴァンほむらめっちゃいいな。最後の互い嫌い羨ましいがすんげえ納得した


914 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:00:46 v0K7/ITQ0
皆様投下お疲れ様です。私も投下させていただきます。


915 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:02:37 v0K7/ITQ0
「友子、覚えてるか?」
「覚えてるって、何を?」
「リーグ優勝が決まった日のこと」
「……私、それ知らない」
「え?」
「リーグ優勝なんて、そりゃあキミが頑張ったのは分かるけど、そんなのよりもっと大事なことがあるの。私にとって十月のあの日はさ」
 夜の公園。あの日のように『本当に?』、彼女の手を取って語り合う。
「ああ、ごめんごめん」
 重なった手と手は熱を生み出し、これが確かな現実なのだと確信させてくれる。『本当に?』
「分かったならいいけど、それじゃ最初からやり直して」
 彼女は笑う。中学の時から、いや、出会ったときからずっと変わらない輝くような笑顔。
「うん。……友子、覚えてるか?」
 俺はもう一度『本当に?』この公園で彼女に問うた。
「覚えてるって、何を?」
 そしてもう一度、
 もう一度だけ、俺は彼女に――――――――



「……人は忘れていくから生きていられるでやんすよ。苦しいことや悲しいことを全部覚えてたんじゃ、辛くて仕方ないでやんすよ」
 そんな言葉を思い出しながら、俺はスノーフィールドの街で迎えた幾度目かの朝を噛み締めていた。俺の居た球団、大神ホッパーズは解散した。子供の頃から憧れだった『』ホッパーズが無くなるのはファンとしても悲しい。だけど仲間と共に全力で立ち向かい、戦い、走り抜けたあの三年間は何にも変え難く、おかげで俺はメジャーから声がかかる程の選手にもなり、キャンプ開始よりも早く異国の地で時を過ごすことになった。……最愛の伴侶と共に。
「よ!起きてる?」ノックの一つもなく、無遠慮に扉を空けて彼女は部屋に入ってきた。
 森友子。俺がホッパーズに入団した頃に偶然再会した、中学の頃の同級生『気―――』。そして今は俺の妻として『』『』『―――て』このスノーフィールドで一緒に生活をしている。今でこそこうして何事もなく一緒に暮らせているが、結婚前はそれはもう大変だった。彼女の親父さんは厳格な人で、俺達の結婚を認めてくれなかった。友子はそれに腹を立てて駆け落ちをしようなんて持ちかけてきて、最初は戸惑った俺も最終的にはその気になって、待ち合わせの日時を決めて、しばらくは縁を断ったフリをしていた。そして運命の日、俺達はあの公園で――――――『忘れないで』
「起きてるよ。そろそろ自主トレも再開しなきゃなんないし、のんびり二度寝もしてられない」
「ふふ、球技大会で三塁側に走ってったキミが今ではメジャーリーガーだもんね。私、先見の明があるなあ!」
「もう、そのことは言うなよ! あれはしょうがないだろ! 坂田に騙されてたんだ」俺は言い返す。友子はもう部屋から出てキッチンに立っていた。
「坂田くんって、あの全裸の坂田くん?」
「アレ以外にどの坂田がいるんだよ」食卓に着き、友子の差し出したコーヒーを一口飲む。やけに苦い。料理は最近上達してきたけど、これだけはどうにも治らないらしい。
「いやあ、坂田くんはバカなことばっかりしてたけど、そんな嘘言う人には見えなかったなって」
 友子は坂田の数々の武勇伝を思い出しているのか『気――て』、せっかく淹れたコーヒーにも手を付けずクスクス笑っている。
「……ああ、いいな」ふと、何でもない言葉がこぼれた。友子は訝しげに俺を見つめる。きれいな栗色の瞳が俺を見据える。『気付いて』俺は友子の髪を撫でた。
「いや、なんかさ。友子とこうやって二人で昔の話をしてるのがさ。まるで――」
 ――俺の言葉は言葉にならず、ただ泡沫として虚空に昇る。シャボン玉のように、触れれば割れてしまいそうで。カタチにすれば壊れてしまいそうで、俺はその言葉を最後まで言うことが出来なかった。友子はそんな俺をやっぱり訝しげに睨んだ後、表情を崩してにへへと笑った。
「まあいいや。だってキミ、本当に嬉しそうな顔してるんだもの。きっと悪いことじゃないでしょ?」『――――』
「……うん。とにかく、俺は今最高に幸せだよ」
「へへ、私も。……ねえ、私いいとこ見つけたの。ウチから歩いて一時間くらいのところにね。大きな公園があるの。私達のあの公園にそっくりなんだから!」そう言って彼女は笑う。栗色の瞳はまるで大きな宝石のよう。俺はいつまでもその瞳に囚われている。
「じゃあ今日の夜は二人でそこへ行こう。トレーニング中の楽しみにしとくから」言い終えて、俺は席を立った。トレーニング用のジャージに着替えてから玄関を出る。
「じゃあ、行ってくる」それだけ言って家を出て行く俺を、
「いってらっしゃい、あなた」最愛の妻は、なによりも優しく、残酷に送り出してくれた。


916 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:04:26 v0K7/ITQ0




 俺の胸の中で何か赤黒いものが輝いている。それは蠢き、嘆き、この世の全てを憎もうとしている。藻掻き、揺蕩い、この世の全てに対して苦しんでいる。これは俺にとって不要なもの。これは俺にとって忘れた方が良いもの。これは俺にとって失くした方が良いもの。全部分かっている。こんなもの捨ててしまった方がいいんだって。全部投げ出して今を受け入れればいいんだって。全部、全部、全部分かっている。
 だけどそれならどうして、俺はこんな不可解なものを、ずっと大事に胸の中に抱えているんだろう?



 夜の公園を二人で歩く。話題は尽きることがなく、そして取り留めもない。明日は雨らしいから二人でずっと家にいようね。昨日はお酒飲みすぎちゃったね。今日も寒いけど肩は冷えてない? こんな日がずっと続けばいいのにね。『』 
「ほら、あれ!」友子は突然俺の手を放し、駆け足で何処かへ向かっていった。俺はゆっくりとその後を追う。彼女が向かった先には小さな木製のベンチがあった。幅は狭く、大人二人がなんとか座れる程度しかない。友子は先に腰を下ろして早く早く、と木板を叩いている。そんなにはしゃぐことか? と苦笑しながら、俺は彼女の隣に座った。
「ねえ。ここの雰囲気、球場近くのあの公園に似てるでしょ?」
「ああ、確かに似てるな」プロ入りして二年目、友子の誕生日にブレスレットを贈った公園がこんな感じだったはずだ。『思い出して』
 ――ブレスレット? 
 頭が痛い。思い出してはいけない。これを思い出してしまったら、俺はもう取り返しのつかないことをしてしまう。『思い出して』思い出さなければこのまま続けられる。『思い出して』こんなこと、忘れてしまえば幸せなままでいられる。ずっと、ずっと、ずっと、俺は友子と幸せに暮らせる!



 ……だけど、駄目なんだ。駄目なんだよ。きっとそれはニセモノなんだ。偽物の記憶から始まったキミと俺の物語だったけど、あそこにいたのは紛れもなく本当のキミだった。





 思い出していく。
「よ、元気?」
 友子と俺の出会い。繁華街での邂逅。時と体を重ねるたびに深まっていった想い。
「私たちは、こうなる運命だったのかもよ?」
 CCR。サイボーグ対策室。俺の属した組織の名前。
「……降伏は無駄だ。抵抗しろ」
 サイボーグ同盟。違法改造を施した危険なサイボーグの寄せ集め。
「どうして連中はアンドロイド同盟ではなく、サイボーグ同盟と名乗っていると思う?」
 でも真実は違った。サイボーグ同盟はアンドロイド――大神に作られた人造人間の最後の拠り所だった。
「サイボーグは改造された人間だが、アンドロイドは作られたモノだ。その事実を認めたくないのだろうな」
 CCRはサイボーグを摘発し、元の人間に戻す組織ではなく、大神の異常な研究の被害者であるアンドロイドたちを秘密裏に始末するための組織だった。
「……よくわかったよ。あんただけは間違いなくモノだ」
 友子も実は記憶を植え付ける能力を持った大神製第二世代型アンドロイドの一人で、最初は情報を引き出すためだけに俺に接触してきた。
「ごめんなさい。私に関する記憶は全て作り物だったの」
 でも、それは本当に最初だけで。
「俺と一緒に逃げないか。ずっとお前を死ぬまで守ってやるよ」
 この想いだけはきっと、最初から全部ホンモノだった。
「サイボーグ同盟のアジトを強襲したですって?!」
 だからこそ、目を背けちゃいけないんだ。
「ああ、プラチナのブレスレット? 犯人の中に女のサイボーグがいたのかしらね」



「……どうしたの? 気分悪い?」『気付いて』
「いや、大丈夫。……なあ、友子」『気付いて』
「ん?」
「覚えてるか?」『気付いて』
「覚えてるって、何を?」
「リーグ優勝が決まった日のこと」言ってはいけない言葉が近付く。
「……私、それ知らない」『だって私は』
「え?」
「リーグ優勝なんて、そりゃあキミが頑張ったのは分かるけど、そんなのよりもっと大事なことがあるの。私にとって十月のあの日はさ」『私にとっては』
 夜の公園。あの日のように『本当に』、彼女の手を取って語り合う。これは泡沫の夢。ずっと浸っていてはいけない、甘い蜜のような毒の泉。
「ああ、ごめんごめん」
 重なった手と手は熱を生み出し、これが確かな幻なのだと確信させてくれる。『本当に』
「分かったならいいけど、それじゃ最初からやり直して」
 彼女は笑う。中学の時から、いや、出会ったときからずっと変わらない輝くような笑顔。いっそこれが偽物であってくれたならよかった。それならきっとすぐに気付けたし、きっとすぐに俺は正気に戻っていたんだろう。俺はもう一度だけ、この公園で彼女に真実を問う。


917 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:06:16 v0K7/ITQ0
「友子。俺が渡したブレスレット、今でもちゃんと持ってるか?」
「え? 何よいきなり。そんなの当たり前じゃない。今だってこうして、しっかり左腕に……」
 ああ、やっぱりそうなんだな。
「ごめん、友子」友子が言い終わるよりも早く、俺はベルトから銃を抜いて友子の胸を撃ち抜く。涙は流せない。彼女の最期を、くだらない感情でぼやけさせたくない。
「あ、あはは。なんだ、バレちゃってたか」胸に空いた穴から血が湧き出る。アンドロイドは人間だ。撃たれれば痛いし、体には俺のものとなんら変わりない、真っ赤な血液が流れている。決してモノなんかじゃない。……それは、この幻の中だって変わらない。
「ごめん、友子」俺は銃を捨て彼女の前に立つ。彼女も立ち上がろうとするが、もう体の感覚がないのだろう、足取りは余りにも頼りない。俺は彼女を抱き寄せた。
「……ううん。いいのよ。私はムーンセルに作られたNPC。いつかのどこかにいたあなたの大切な人のまがい物。私たちはこうなる運命だったのよ」
「ごめん、友子」彼女の体からどんどん力が抜けていく。強く抱きしめないとすぐに彼女は腕の中から零れ落ちてしまいそうになる。
「あーあ。これがハッピーエンドの映画だったらなあ。偽者を見事見破ったキミのところに、悪いヤツに捕まってた本当の彼女さんがやってくるの。よ! 元気? なんて言いながらね」
「そんなの、ハッピーエンドなんかじゃないさ」役者は偽物だったとしても。そこにあった幸せな日々だけは確かに本物だった。
「……ありがとう。キミがそういう人だからこそ、『私』はキミを好きになったんだね」彼女は照れたように笑う。もう二度と見ることのないだろうそれを、俺は脳裏に焼き付けた。
「ムーンセルも酷いよね。いくら記憶を消去するサイボーグがキミの親しい人にいたからって、それをシステムに組み込んじゃうなんてさ」彼女はうつろな目をして言う。その瞳にはもう、俺の姿は映っていない。
 俺は彼女の傷口に手を突っ込んだ。肉の中を掻き分けて、掻き分けて、途中で硬いものに手が当たった。それを掴み、勢い良く腕を伸ばす。彼女の胴を俺の腕が貫く。その手の中には、本来の『彼女』にも組み込まれていた、強力な暗示能力を持った機械。この世界での彼女を構成する唯一の核となるモノ。
「ごめん、友子」最後に俺は呟いた。もはや彼女の姿はどこにもない。俺をべったりと汚していたはずの赤い血も完全に消え去っている。NPCですらなかった彼女はもうどこにもいない。唯一残された痕跡は、俺の手の中に収まった一枚の白紙のトランプだけ。それは徐々にとある図柄を浮かび上がらせる。常闇の街を飛び回る暗殺者の姿を。



「サーヴァント、アサシン。召喚に応じ参上した。……問おう、マスター。オヌシは私に何を求め、何を命じ、何を望む」
「ムーンセルに復讐する。聖杯に掛ける願いなんてもう無くなった。俺は友子を――愛する人の魂を弄んだムーンセルだけは、絶対に許さない」
 そして俺は振り返った。目の前には憎悪を形にしたような赤黒い装束。地獄の猟犬、憤怒の化身、赤黒の殺戮者。――あまりにも哀しい男がそこに居た。彼は俺を見つめた。その右目は線香のように、赤い炎を宿していた。
「ドーモ。マスター=サン。ニンジャスレイヤーです。これより私のカラテはオヌシの拳であり、俺の憎悪は常にマスターと共に在る。オヌシとオヌシの復讐の為に、我がカラテ、思うがまま使ってみせよ」



 かくて二人の復讐者は邂逅を為し、運命の歯車は回り始める。
 二人の最後にどんな結末が待ち構えていようとも、ただ尽きることのない愛と憎悪が炉に焚べられる限り、彼らは未来無き行軍を止めはしないだろう。
 箱庭の外から彼らを見下ろす月の光。無垢であり、彼らにとって紛れもない邪悪であるソレは、彼らの無謀をインガオホーと嗤うのだろうか。


918 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:08:47 v0K7/ITQ0
【マスター】
主人公(パワプロクンポケット8)
【出展】
パワプロクンポケット8
【マスターとしての願い】
彼の願いは既に叶えられた。
【能力・技能】
プロ野球選手であることを差し引いても異常な身体能力。余りにも人間離れしたソレから実は人間ではなくアンドロイドなのではないかという噂もあるが、真偽は定かではない。ただ少なくとも、その能力とCCRで鍛えられた戦闘技術は本物である。銃器全般の扱いに習熟しており、好んで扱うのはリボルバータイプの拳銃。
【人物背景】
表向きはプロ野球球団「大神ホッパーズ」の選手の1人。ポジションはピッチャー。プロテストを経て入団し、わずか三年でチームの主力選手となったホッパーズ希望の星。しかしその実態は身体の一部を機械に置き換える技術、すなわちサイボーグ化が一般化した世界で発生するイレギュラー、過剰な身体強化を施した違法サイボーグを摘発する秘密組織「CCR」のエージェント。……だったが、大神製第二世代アンドロイドである森友子と出会い、組織からの離脱、駆け落ちを決意する。
そして約束の日の前日、CCRはサイボーグ同盟のアジトの一つを強襲。アジトは爆破され、回収された証拠品には主人公が友子にプレゼントしたプラチナのブレスレットがあった。
約束のあの場所で、男はいつまでも待ち続ける。愛した女がやってくる、その時を。
【方針】
友子の魂を弄んだムーンセルに対する復讐。熾天の玉座に到達し、ムーンセルの機能を停止させる。他の参加者に危害を加えるつもりは現段階では無いが、降りかかる火の粉は払う。

【出展】ニンジャスレイヤー 第三部 「不滅のニンジャソウル」より 召喚時間軸は「リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ」以降、「ニンジャスレイヤー:ネヴァー・ダイズ」以前
【CLASS】アサシン
【真名】ニンジャスレイヤー(フジキド・ケンジ)
【属性】混沌・中立
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運E 宝具B
【クラス別スキル】
気配遮断:B
「暗殺者」のクラス特性。
自身の気配を消す能力。隠密行動に適している。攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
戦闘続行:B+ 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。ソウカイヤ殲滅の折、ソウカイシックスゲイツと激闘を繰り広げながらトコロザワピラーを駆け上った彼の決死行は、突き抜ける血染めの矢の如きデスパレートなものであった。スシを補給することで継戦能力の向上も可能。

魔力放出(カトン):C++   武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。
 ニンジャスレイヤーの場合、魔力の代わりに憎悪を燃やすことで――つまりフジキド・ケンジの人間性をすり減らすことでこのスキルを使用できる。『消え癒えぬ憎悪は我が半身』を使用している時はこのスキルを無尽蔵に使用できる他、出力も飛躍的に上昇する。

直感(状況判断):A 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。Aランクの第六感はもはや未来予知に等しい。本人はこのスキルを「状況判断」という言葉で表現する。また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

チャドー:A ニンジャを超えたニンジャ、カツ・ワンソーが編み出した暗殺拳の体系。独特の呼吸法によってカラテやニンジャ回復力を高める他、チャドー暗殺拳を使用できる。

復讐者:EX
復讐の対象となる者を前にした時、憎しみにより己の魔力を本来の値以上に増加させる。
生来の仇敵のみならず、その復讐対象に連なる者、単に自らを負傷させる・不利な状況に追い込む等した相手に対してもわずかながらに効果を発揮する。
クラスではなく、英霊の座に刻まれた彼の根源に由来するスキル。フジキド・ケンジは復讐者であり、復讐者以外の己を認めず、しかしてアヴェンジャーではない。このスキルは彼の覚め止まぬ憎悪の象徴であるが、同時にその根源には妻子への深い愛がある。


919 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:09:32 v0K7/ITQ0
【宝具】
『ニンジャを殺す者(ニンジャスレイヤー)』
ランク:B 種別:対ニンジャ宝具 レンジ:- 最大補足:この世全ての悪(ニンジャ)
「ネオサイタマの死神」「ベイン・オブ・ソウカイヤ」「赤黒の殺戮者」つまり「ニンジャスレイヤー」自身が宝具として昇華されたもの。ただ揺らがぬ決意を持って行動する彼の精神が発露した自動発動型の宝具。あらゆる精神干渉を無効化し、概念を書き換える宝具(例:ゲイ・ボルグ、フラガラックなど)に対して筋力、耐久・敏捷を用いて対抗判定を行うことができる。さらにニンジャ、またはニンジャに連なる相手との戦闘に限り自身のカラテに関連するステータス(筋力・耐久・敏捷)、スキル(戦闘続行・直感・チャドー)のランクを1段階上昇させる。
『消え癒えぬ憎悪は我が半身(ナラク・ニンジャ)』
ランク:B 種別:対ニンジャ宝具 レンジ:- 最大補足:この世全てのニンジャ
フジキドケンジに憑依したナラク・ニンジャのソウル。フジキドの精神の奥底に眠るもう一人のニンジャを殺す者。フジキドは己のカラテと彼に宿ったナラク・ニンジャのソウルの力を部分的に引き出して戦闘を行うが、精神を同調させることでナラク・ニンジャをその身に顕現させることも可能。その場合、カラテに関するステータス(筋力・耐久・敏捷)、スキル(戦闘続行・直感)のランクが1段階上昇するが、チャドースキルの使用は不可能になる。ナラクに心を明け渡すことは即ちフジキド・ケンジの人間性の手綱を放棄することであるため、緊急事態であると判断した時以外にナラクとの同調を行うことは無い。『ニンジャを殺す者』と同時に使用した場合、ステータス上昇効果のみが重複し、『ニンジャを殺す者』のそれ以外の効果は『消え癒えぬ憎悪は我が半身』に打ち消される。
【weapon】
血液から生成するスリケン・ドウグ社製のフックロープ・非人道的兵器マキビシなどを補助に使うが、主武装は彼自身の肉体、即ちカラテである。
【サーヴァントとしての願い】
英霊として、悪しきニンジャの英霊を殺し尽くすこと。聖杯に掛ける願いは無い。
【人物背景】
ニンジャ同士の抗争に巻き込まれ、自身は致命傷を負い、愛する妻子を目の前で殺されたサラリマン、フジキドケンジにナラク・ニンジャのソウルが憑依した者。邪悪なるニンジャ組織ソウカイヤを滅ぼし、ロードオブザイバツ率いるザイバツ・シャドーギルドを壊滅させ、秘密結社アマクダリセクトに戦いを挑む狂った復讐者。
【基本戦術、方針】
ジュー・ジツ、チャドー暗殺拳、そしてナラク由来の不浄の炎を用いた肉弾戦闘を主として戦う。
仮初の妻を失ったマスターの拳となることを誓い、最後まで運命を共にしようと考えている。ただしナラク・ニンジャとは意向が異なるため、『消え癒えぬ憎悪は我が半身』の使用によるナラクとの合一は可能な限り避けるか、短時間の使用に留めるつもりでいる。


920 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/20(火) 20:10:24 v0K7/ITQ0
投下終了しました。


921 : ◆87GyKNhZiA :2016/12/20(火) 22:41:31 ss1owvOU0
拙作「炎の記憶」の本文を一部加筆しましたことを報告させていただきます。


922 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:36:18 eSOFQW.s0
投下します


923 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:36:41 eSOFQW.s0
聖杯戦争、万能の願望機を巡り
マスターと呼ばれる魔術師がサーヴァントと呼ばれる英霊を召喚し二人一組で戦う、これは良い。
No.1よりNo.2、これが彼、ホル・ホースの人生哲学であり、矢面に立つ側を用意してくれると言うなら願ったり叶ったりである。だがーーー

「オレにか弱い女子どもを相棒にする趣味はねーぜ…」

相棒運の無さに、思わずため息を付いてしまった。

「え?」

とぼけた顔の目の前の少女を見つめる。
頭から生えた犬耳が貫通したフード付きケープ、尻尾、肉球グローブともこもこふわふわした格好、
これで英霊とは何かの間違いではないかと頭を抱えたくなる十代半ば程度の美少女。
ホル・ホースの白紙のトランプを核にしたサーヴァント、たまである。

「いや、なんでもねえ、悪いな。
で、嬢ちゃんがオレのサーヴァント…ってことで良いのか?」

「は、はい!そうだと…思います」

いかにも気の弱そうな返事だぜ…
オマケに会話も苦手そうだが、まぁオレの口説きテクにかかればどうにでもなるだろう


924 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:37:15 eSOFQW.s0
萎える気持ちに鞭打って、もう一つ質問を投げつける。

「OK,理解したぜ。
それで、お嬢ちゃんは何ができるんだ?」

重要な質問だ、あのDIOもスタンド使いを集めているように、人を選ぶのに、一番『大切な』事は『何ができるか』!
あの元相棒のボインゴも異常な人見知りだったが、能力は万能の願望具にも負けるとも劣らない『都合のいい未来を漫画にして映し出す』なんてインチキ能力。
英霊になるんだ、たまもきっとすごい能力を持ってるに違いねえ!
「ええと、ちょっと、待っててください」

訝しむオレを横目にアサシンは中庭に駆け出し、芝生に爪を立てる。
すると、爪を立てた所に直径1mほどの穴が開いた!
驚いたオレはすぐに駆け寄り、穴を覗き込んでみたが底が見えねえ…
試しに咥えていたタバコを落としてみた所、か細いタバコの火はすぐに見えなくなり、煙も出てこなくなった、どれだけ深いのかは全く検討もつかねえ。

「その…こうやって、穴を開ける魔法が使えます」

「ふぅむ…」


925 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:37:39 eSOFQW.s0
整った真円の穴に思わず右手が疼いた。

「なあ嬢ちゃん、この穴っていうのは地面じゃねえと開けられねえのか?」

「え?いや、傷つけられればなんでも大丈夫です」

「そうか」

あのエンヤ婆のスタンドのように人体でも…と聞きそうになったが、
能力を使ったアサシンの自信なさげに子犬のように小さく縮こまった佇まいを見てやめにしておいた。
常にコンビで動いてきたオレにはわかる、この嬢ちゃんはあのボインゴの様に強力な能力を持ってもビビって使えねえタイプ。
それに加え、女に対してボインゴの様に発破をかけるのは流儀に反する、ちっと厄介な相棒を引いちまったもんだぜ。

「あ、あのう…他にも…こんな道具もあります」

穴を見つめながら考え込んでるオレを、能力を微妙と思ってると見られちまったのか、アサシンが自信なさげに怖ず怖ずと飴の二つ入ったビンを差し出してきた。

「えっと、元気の出る薬です」

元気の出る薬、アサシンを自信付けるためにも精一杯フォローしようと思ったオレだが、なんと返せばいのかわからない。
ヤバイ薬じゃないのか、健全な薬でも元気が出るからどうなのか、返事に詰まってしまった。
そんなオレを見て、アサシンはさらにたどたどしく外套を取り出した。

「えっと、その、スイムちゃんのだけど、うんと、透明外套です…」

そう言って、外套を着たアサシンは消えたーーー消えた!?
魔力のパスからしても、目の前にアサシンが居るのは感じる。
しかし、目を凝らしても全く見えない。
そうして固まってる間に、外套を脱いだアサシンが目の前に現れた。

「えっと…どうですか…?」

「凄え道具じゃねえか…疑ってたわけじゃねえが、本当に魔法みてえな道具だな…
 それ、お嬢ちゃんじゃねえと使えないのか?」


926 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:38:06 eSOFQW.s0

「あの…どうぞ」

返答代わりにアサシンは外套を差し出した。
受け取ったオレは早速外套を羽織ってみる。
サイズは合わないが魔法の道具というだけあり、オレが無理に扱っても破けそうにはない。
着終わったオレは自分の腕があるべき所を見てみる、無い、いや、完璧に透明になっている。
それを確認したオレは静かに外套を脱いだ。

「ど、どうですか…?」

「クックックック…」

笑いが止まらねえ、『暗殺』のオレの能力と『透明』のこの外套、これほど相性が良いものがあるだろうか

「オレたちゃ無敵だ!無敵のコンビだぜ!」

「え!?」

「凄えな嬢ちゃん、これさえあれば聖杯に手が届くぜ」

「ほ、本当ですか…?」

「ああ、きっと手に入れようぜ、オレたちの手でな」

アサシンの顔にここで初めて笑顔が浮かぶ。
オレも嬉しい。
このお嬢ちゃんの手を、わざわざ汚させねえで聖杯を取る。
このやり方に差し込んだ一筋の、いや大量の光にオレの目の前は明るくなった。

「じゃあ、そろそろこれ閉じてくれ」

「え?」

「魔法とやらで開けたこの穴だ、泊めて貰ってるガールフレンドの家に穴あけっぱなしは流石に不味いからな」

「え、えっと…」
アサシンの顔がみるみる青くなっていく。

「ん?」

「ご、ごめんなさい!私の魔法だと穴を開けても閉じられないです!」

この答えを聞いた時、光は消え、オレの顔も真っ青に染まった。


『この後二人は頑張って穴を埋めようとしたけど、埋めきる前に家の持ち主が帰ってきてホル・ホースはメチャクチャ怒られたあげく、絶交されて家から追い出されちゃった!
 がんばれ、ホルホースとたま、人生そんなものさ!』


927 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:38:30 eSOFQW.s0

【クラス】アサシン
【真名】犬吠埼 珠
【出典】魔法少女育成計画
【性別】女性
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:B

【固有スキル】

気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。

【保有スキル】
観察眼(土):B
大地に対する造詣が深い。
落とし穴などの罠に回避補正がつく。

仕切り直し:D
戦闘から離脱する能力。

落第生:A
落ちこぼれゆえに自分以外に敵対対象がいる場合、アサシンの優先順位が大きく落ちる。
幸運、宝具を覗いたパラメーターが全てアサシンより2段階上回る相手は実力差故慢心し、アサシンに対し心眼(真)と直感が無効になる。

【宝具】
いろんなものに素早く穴を開けられるよ
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:1-10 最大補足:1人
視界内にある自分で掘り返した穴・傷などを一瞬で、直径1mまでの穴に広げられる。
たとえどれだけわずかな傷であっても、傷つけることさえできれば広げることができる。

元気の出る薬
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
服用してから30分の間、敏捷値を一段階上げ、戦闘続行D、心眼(偽)Dを付与する。
本来は10錠だがアサシンは己が服用した2錠分しか出せない。
かの試験官との戦いでもこの薬を服用していたのがアサシンの勝因の一つであったとされる。




透明外套
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
羽織っている人間の姿・匂いを消すマント。
本来はアサシンの所有物でもなければ、
元気の出る薬のように、有用に扱った覚えのないこの道具を英霊となったアサシンが所有できている理由は謎。

【サーヴァントとしての願い】
受肉して復活。

【マスター】
ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険

【参戦時期】
ボインゴと仲良く病院に入れられている最中。

【マスターとしての願い】
DIOの粛清から逃げる。


928 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/21(水) 13:38:50 eSOFQW.s0
投下終了します


929 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:44:49 OFOnYHRI0
投下します


930 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:46:11 OFOnYHRI0


「……問おう」


 ――――衛宮士郎はその日、全てを思い出した。
 10年前に起きた、あの大災害を。
 そこで見た、まるで自分の方が救われたかのような顔をした、自分を助けてくれた男のことを。
 一番大切な、亡き養父と交わした誓いを。
 冬木の町で過ごした、10年を。

 記憶喪失、というほどでもない。
 ただ、自分の根幹をなす記憶が排除されていた。
 あの大災害の記憶が無くなっていた。
 ■■士郎が死に、衛宮士郎が産まれた日のことを忘れていた。
 その記憶は、土地に根差したものだったからだ。
 代替の記憶では賄えない、無二の原風景であり、だからこそ士郎は全てを思い出した。
 白いトランプに導かれ、自分が巻き込まれたものがなんであるかを理解した。
 聖杯戦争――――ふざけた魔術儀式に巻き込まれたことを理解した。


「……貴方が……」


 そして士郎の目の前にいるのは、黒づくめの女だ。
 士郎はそれが“自らのサーヴァント”であると理解した。
 工房とも呼べない、士郎の魔術の修練場である土蔵で、彼はサーヴァントを召喚したのだ。
 目元だけを露出させた黒衣の女は、現代の人間では到達し得ぬ膨大な神秘を伴っている。
 その佇まいは、まるで物語の中に現れる暗殺者のようで。
 あるいは、実際にそうなのかもしれない。
 士郎は聖杯戦争について詳しくはないが、聖杯から授けられた知識がアサシンというクラスの存在を示している。
 ともあれ黒衣の女は、召喚による魔力の本流に気圧されて尻餅をついた士郎を静かに見下し、か細い声で問いを投げかけた。


「貴方が……聖杯を得るために……私を呼び出した魔術師か……?」


 静かな問いかけである。
 だが、士郎は直感した。
 答えを誤れば、殺される。
 嘘をついても、殺される。
 女の、唯一露出した瞳からは、死を直感させるほどの冷たさがあった。
 ゾッとするような、どこまでも冷たい鉄のような瞳。
 その瞳を、その強固な意志で塗り固められた視線を、どこか美しいとすら感じながら、士郎は喉の奥からこみ上げてくる恐怖を飲み込んだ。
 答えなくてはならない。
 女は答えを急かすことは無く、ただ微動だにせず士郎を見下ろしているが、それが逆に士郎にとっての恐怖であった。

「お、俺は……」

 声を絞り出す。
 言葉を選ぶ。
 誤解なく、嘘をつかず、虚飾もなく、ただありのままに自分を理解してもらえる言葉を探す。

「……俺は確かに魔術を使えるが、魔術師じゃない」

 まず、否定。
 その回答が、正解であるかどうかもわからない。

「聖杯も、俺には必要ない……!」

 続けてもう一度、否定。
 衛宮士郎に、聖杯に託す望みはない。
 彼の中にある望みは、自分自身の行いで成すべきものだからだ。
 女はその答えをどう受け取ったか、しばし士郎を見下し続け、それからゆっくりと黒布越しに言葉を発する。


931 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:48:36 OFOnYHRI0

「……魔術を使えるが魔術師ではない、とは……どういうことだ」

 再度の問い。
 士郎は言葉を自分の中でかみ砕きながら、再び答えた。

「……俺にとって、魔術は目的じゃなくて手段だ。
 魔術を手段とする人間は、魔術師ではなく魔術使いなんだって爺さんに教わった。
 だいたい、俺の魔術の腕じゃとうてい魔術師なんて名乗れない」

 そんなものは、本物の魔術師に対して失礼だ、と。
 士郎は心からそう思っているから、そのままを伝えた。
 女が冷たい視線を投げかける。
 殺されるのか。
 こんな、唐突な理不尽に自分は殺されるのか。
 何もできないまま、自分は殺されるのか。
 そんなことは、許されてはいけないのに。

「…………では……貴方の目的とはなんだ?」

 そして、三度目の問いが女から発せられた。
 恐らくこれが、最後の問答になるのだろう。
 より強い殺気が、視線と共に士郎の体を射抜く。
 士郎は祈るような気持ちで、焼けるように熱い胸から答えを出す。
 その答えだけは間違えようがない。
 たとえ間違いだったとしても、衛宮士郎にとってはその答え以外はあり得ない。
 これが女にとって気に入る答えかどうかはわからない。
 だが、その答えはずっと士郎の胸にあったモノだ。
 だから、口に出す答えは決まっていて、淀みなく答えることができた。


「決まってる。誰かを救える存在―――――――――――――正義の味方になることだ」


 亡き養父と約束したこと。
 かつて父がなりたくて、けれどなれなかったもの。
 かつて救われた。だから憧れた。
 そうなるために、そのためだけに、衛宮士郎は今まで生きてきた。
 誰かを救うための、誰もを救うための存在、正義の味方になるということのために。

「……いいだろう」

 一瞬だったようにも、あるいは永遠だったようにも思える沈黙を経て、女は瞠目した。
 同時に、彼女が放つ強烈な殺気と威圧感が消滅した。
 女は再び目を開き、眼下の士郎に対して言葉を告げる。

「貴方を……偽りの奇跡を打ち砕くための同志として認める。
 だが……私が主と仰ぐのは、我らが神と……偉大なる山の翁のみ。
 ……故に、名を。貴方をマスターと認めることはできないが……だからこそ……同志として、名を聞く必要がある」

 正直に言えば、士郎には彼女が言っていることを正確に理解できていない。
 緊張と安堵と、目まぐるしい急展開で冷静ではない自覚がある。
 それでも名を尋ねられたことと、彼女が自分を味方と認識したことを理解して、士郎はどうにか名を名乗った。

「――衛宮士郎だ。お前は?」
「――――……私に名はない。ただアサシン、と……そう呼べ、シロウ」


 ――――――それが、少年が偽りの運命に出会った日であり――――彼らの戦争の、始まりであった。


932 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:50:26 OFOnYHRI0



  ◆  ◆  ◆



「つまり、アサシンはこの聖杯戦争そのものが許せないのか」

 それから、士郎とアサシンは場を居間に移し、お互いのことを話し合っていた。
 アサシンが話したのは、彼女の聖杯戦争における目的――彼女たちの頭目を無暗に惑わす、異端の奇跡の否定。
 そんなものは偶像を拝する異教徒の邪法に過ぎず、異端の儀式によって奇跡が起こるなどあってはならない。
 偉大な神を信じるからこそ、その存在そのものが許せないのだとアサシンは言った。

「……そうだ。我らの神は杯など持たない。
 異教の偶像が偽りの奇跡を起こすなど……あまりにも許しがたい……
 なにより……偉大なる山の翁を惑わす偽りの奇跡など、一刻も早く破壊しなければならない。
 私はこの戦争に集る邪な異端と異教徒を殺し……聖杯を破壊する」

 机の差し向いに座る彼女の瞳には、固い決意が籠っていた。
 アサシンは狂信者だ。
 短い会話の中で、士郎はそれを理解していた。
 だが、それでも。

「殺すって……そこまでしなくてもいいんじゃないか?
 だいたい、他の参加者だって俺みたいに巻き込まれた奴もいるはずだ」

 衛宮士郎にとって、それは看過できない。
 人の命を奪うということは、いかなる理由があっても悪だ。

「……巻き込まれただけの者であれば、見逃そう。
 だが、それ以外は生かしておけない。我らの信仰と安寧のため、殺さなくてはならない」
「けど」
「…………正義の味方になりたいと言ったな、シロウ。
 それはつまり……無辜の民を脅かす邪悪を排除する、ということだ……
 ……貴方も、それは理解しているはずだろう」
「それは……」

 アサシンに諭され、士郎は押し黙った。
 “正義の味方”が孕む矛盾。9の善を生かすために、1の悪を排除する思想。
 誰かを救うために誰かを殺す矛盾。
 わかってはいる。わかってはいるが……

「……けど、他に何か方法があるはずだ。
 最初から殺すことだけを考えるなんて、そんなのは認められない。
 俺はこの戦争で、一人でも傷つく人を減らしたいんだ」

 それだけは、譲れない一線だ。
 譲ってしまえば、あとは妥協の果てに摩耗してしまう、そんな気がした。
 アサシンは瞠目し、黒布越しにため息をついた。
 ……どうも、呆れられてしまったらしい。

「…………シロウ。貴方のその優しさは美徳だ。
 確かに今は異教の神を奉じ……異端に手を染めたものであっても……いつか悔い改める可能性はある。
 しかし……この戦争に参加する異教徒どもは……聖杯を手に入れるために……我々を殺そうとしてくるだろう……
 ……自らに刃を向ける者を前に、貴方は同じことを言えるか?」


933 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:52:00 OFOnYHRI0

 ……アサシンの言うことは正論だ。
 無論、そこには狂信者であるアサシンの視点が混ざっているが、それでも。
 万能の願望器を手に入れるため、自分たちを殺そうとしてくる者はいるはずだ。
 それを前にして、誰も殺したくないなどと吠えるのは愚かな理想でしかない。

「……繰り返すが……貴方のその優しさは、美徳だ。
 貴方が殺し殺されあうことはない……私が全て、殺す」

 暗に、お前は引っ込んでいろ、と言われている。
 実際、サーヴァントに対して士郎ができることなどそうはないだろう。
 文字通り格が違うのだ。
 サーヴァントと戦うなど、身の程知らずにもほどがある。
 だから、実際に戦争を行うのはアサシンであることは理解できる。
 だから、その方針はアサシンが決めるものだということもわかる。
 衛宮士郎はあまりに無力だ。
 それでも士郎は、不思議と気落ちせずにいられた。
 理由は、とても単純なことだ。

「優しんだな、アサシンは」
「………………?」

 アサシンが、士郎の言葉を理解できずに小首をかしげる。
 その動作がひどく人間らしいものに見えて、士郎は少し笑ってしまった。

「俺のこと、気遣ってくれたんだろ」
「それは、そうだが……」
「けど、やっぱりダメだ。
 俺も戦うし、他の参加者は殺さない。俺だけ黙って見てるなんてことはできない」
「……シロウ。あまり私を……」

 それでなお甘えたことを言いだす士郎に、いよいよアサシンは声に苛立ちを乗せ始めて。
 しかしアサシンが次の言葉を言う前に、士郎は言葉を続ける。


「――――サーヴァントだけだ」


 それは妥協なのか。
 あるいは、すり合わせなのか。

「悪いサーヴァントだけ倒す。どうしてもって状況にならない限り、生きた人間は殺さない。
 ……これで納得してくれないか、アサシン」

 士郎には令呪がある。
 三度限りの絶対命令権。
 これを使えば、有無を言わさずアサシンを従えることは可能なのだろう。
 それでも、士郎はその選択肢を選びたくなかった。
 アサシンは優しい奴だ。
 こんな優しい子に、無理やり言うことを聞かせることなんて、士郎にはできなかった。
 その気持ちが通じたのか、アサシンはもう一度深くため息をついた。


934 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:53:48 OFOnYHRI0

「……いいだろう……私は最終的に、偽りの聖杯を破壊できればそれでいい。
 だが……こちらに刃を向けてくる輩の命は保証できないぞ、シロウ」
「ああ、それでいい。ありがとう、アサシン」

 士郎はほっと胸を撫でおろした。
 やっぱり、アサシンは優しい奴だ。
 士郎の譲れない気持ちを汲んでくれた。
 そのことを少しだけ申し訳なくも思うし、嬉しくも思う。

「さて! それじゃ、飯でも作るか。
 アサシンは何が食べたい?」

 とりあえず実務の話は終わったし、気分転換も兼ねてご飯でも、と、それぐらいの軽い気持ちでの提案。
 伸びをして席を立つ士郎に、アサシンは少しだけ困惑したような視線を向ける。

「……いや、我らサーヴァントは食事の必要がない」
「え、そうなのか?」
「無論、多少は魔力の糧にはなるが……」
「それなら、食べられるってことだろ。
 大した手間でも無いし、一緒に食べたほうが俺が楽しいんだ」
「しかし……」

 どうせ、士郎の魔力供給量などたかが知れている。
 それならご飯で多少なり魔力を得た方がいい……という大義名分と、その方が自分が助かるという視点の転換。
 ご飯は大切だし、誰かのために作る料理の方が士郎は好きなのだ。

「確か、アサシンの宗教だと豚はダメなんだよな」
「……聖別を受けていない獣肉も、聖典で禁じられている」
「そっか。じゃあ今日は野菜料理でも作ろう。
 肉は……この街にもアサシンと同じ宗教を信じてる人が少しはいるはずだし、今度探して買ってくるよ」

 そのまま勢いで押し切って、士郎はさっさと台所に移動する。
 よしよし、アサシンの現界初めてのご飯だ。
 とびっきり腕によりをかけてやるぞ、と主夫(せんし)は決意を固めた。
 その背に、アサシンがか細い声をかける。

「…………シロウ、話があるのだが……」
「んー?」


935 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 17:56:41 OFOnYHRI0



  ◆  ◆  ◆



「…………シロウ、話があるのだが……」
「んー?」

 ――――アサシンは考えていた。
 聖杯戦争において、サーヴァントとマスターは似通った属性を持つものが選ばれるという。
 ふざけた異端の儀式ではあるが……その法則をなんとなく、アサシンは実感として理解した。


 ―――――――――――――この少年は、どこか自分と似ている。


 アサシンの生前は、あまりに愚かで未熟なものだった。
 神を信仰し、そのために人生を捧げた。
 愚かにも、自分が確かに信仰者であったと、神の信徒であったと、それを証明できる証を望んだ。
 山の翁。ハサン・サッバーハ。
 暗殺教団の指導者たる、特別な名前。
 若かりし頃のアサシンはその名を求め、ひたすらに修行を行った。
 山の翁は、代々自らの編み出した奥義を『ザバーニーヤ』の名に隠し操るという。
 ザバーニーヤとは、地獄を管理し罪人に罰を与える19人の天使の名だ。
 山の翁の職務とはまさしくそのようなものである。
 教義に反した異端、邪神や偶像を崇める異教徒などの罪人を、速やかに処罰する処刑人。
 偉大な存在である。
 誰よりも信仰篤く、優れた技を持った尊敬すべき指導者である。
 その名を目指し――――アサシンは、歴代18人の御業を模倣した。
 それでもなお、「自ら御業を編み出すことのできない未熟」を指摘され、アサシンは山の翁になることはできなかった。
 代わりに山の翁になった者は、百の貌を自在に使い分け、あらゆる事柄をこなした。
 その姿を見て、アサシンは自らの未熟と愚かさを恥じ――――また、修行の日々に戻った。
 思えばあまりに愚かな話だ。
 偉大な長たちの背を追うあまり、その御業を穢してしまうなど。
 未熟、未熟、度し難いほどの未熟。
 それでも、それでもやはり―――――アサシンは、その背を追うことをやめられなかった。
 理想だった。
 憧れだった。
 信仰の守護者として、悪を屠り民を守る、その姿に手を伸ばし続けた。
 アサシンは未熟者だ。
 信仰は足りず、未熟を晒し続けた、愚かさの塊のような女だ。
 結局、アサシンは生前なにも成すことができなかった。
 信仰の渦と修行の日々に埋没し、歴史の闇に消えた。
 身の程をわきまえなかった未熟者の、どうということはない一生だ。
 アサシンは誰も……自分を忌み嫌った同胞も、自分を山の翁と認めなかった者たちも恨むことは無かった。
 ただ、自分の信仰が足りず未熟だったからだと、そう思っていた。
 それで結局何も成せなかったのだから、笑わせる。


936 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 18:00:29 OFOnYHRI0

 ……翻って、この少年は。

 理想を追い求めている。
 ―――――かつての自分と同じように。

 誰かの背を追い続けている。
 ―――――かつての自分と同じように。

 善なる者であろうとしている。
 ―――――かつての自分と同じように。

 そして、あまりにも未熟である。
 ―――――今なお未熟である自分と同じように。

 愚直に理想を追い求める姿に、かつての自分を幻視した。
 どこまでも笑わせる。異教徒の少年と自分を重ね合わせるなど、未熟にもほどがある。
 それでも、どうしてか、アサシンはこの少年を無視できなかった。
 漠然とした直感があった。
 この少年はいつか、自分と同じように理想を追い続け、そして自分と同じように、無銘の“セイギノミカタ”として一生を終えるのだろう、と。
 なにか根拠があるわけでなく、ただ漠然とした、しかし確信めいた直感。
 この少年は自分に似ていると。
 どこか、性質が似通っていると。
 あるいは自分は、この少年の末路の一つである、と。
 なんとなく、そういう確信があった。
 戦いは自分自身と。
 思い描くのは最強の自分。
 理想を追い求め、模倣の精度を求め、それだけしか能のない贋作者。

 ――――アサシンは未熟である。
 未熟のまま、無為に一生を終えた。
 そのことを恥じはすれど、悔いには思わない。
 だが――自分とよく似た、この少年は、まだ生きている。
 つまり、伸びしろがある。ここからさき、どうとでも進むことができる。
 であるからこそ、アサシンはこれを“信仰の試練”と認識した。
 未熟な自分に課せられた、新たな試練であると。
 すなわち、この未熟な少年を守り、導くことこそ、自分の責務であると認識した。
 そのために、アサシンがまずすべきことは――――――――


「――――シロウ。貴方は今までの無知を改め、真なる神に信仰を捧げるべきだ」
「――――えっ」





 ……結局、二人の改宗問答は「よく知りもしない宗教を信仰するのは相手に対して失礼だ」という士郎の鶴の一声でひとまず決着した。
 決着した結果、なにかにつけてアサシンが宗教講義を始めることになるのだが、それはまた別の話である。



 ――――少年はその日、未来に出会った。

 ――――狂信者はその日、過去に出会った。

 歪な二人の運命は今、始まったばかり――――


937 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 18:01:34 OFOnYHRI0

【CLASS】アサシン

【真名】――(英霊の資格を得る頃には既に名を捨てていた)

【属性】秩序・善

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B+

【クラス別スキル】
気配遮断:A-
 サーヴァントとしての気配を断つ。
 技術は十分なのだが、本人の気質があまりに愚直であり、暗殺者というよりは戦士に近しいため、隠密行動に支障をきたしがち。

【保有スキル】
狂信:A
 特定の何かを周囲の理解を超える程に信仰することで、通常ではありえぬ精神力を身につける。
 トラウマなどもすぐに克服し、精神操作系の魔術などに強い耐性を得る。

【宝具】
『幻想血統(ザバーニーヤ)』
ランク:E〜A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:-
 肉体を自在に変質させ、過去に紡がれし18の御業を再現する能力。
 実際は過酷な肉体改造も行われていたが、英霊化にあたり肉体を自在に変質させる形となった。
 オリジナルの御業と比べて威力が上か下かはケースバイケースとなる。
 現在観測されている彼女が使用する御業は以下の通り。


◎『妄想心音(ザバーニーヤ)』
 背中から第三の腕を出現させ、触れた対象の疑似心臓を作り出し握り潰す呪腕。
 接触の必要こそあるが、如何なる鎧や防御の上からでも対象を呪殺できる。反面、幸運や魔力で抵抗可能。
 本家に倣うのであればレンジは3〜9となる。

◎『空想電脳(ザバーニーヤ)』
 手で触れた相手の脳を爆薬に変え、頭部を破壊して爆殺する魔技。

◎『妄想毒身(ザバーニーヤ)』
 猛毒をその身に宿し、自身の肉体を利用して対象を毒殺する秘奥。
 本家は汗や頭髪、吐息でさえも毒を孕み、接触はおろか揮発した汗で対象に毒を与える事すら可能だった。
 が、彼女の場合は毒が無差別に無辜の民や同胞を殺めることを恐れ、毒を血液に濃縮させ、一時的に再現するに留まっている。
 この秘奥の存在と、そのための修行の副産物として、彼女には毒物が効かない。

◎『夢想髄液(ザバーニーヤ)』
 可聴領域を超えた歌声により、相手を操る魔歌。
 大人数に対して行使すれば、脳を揺らし魔術回路を暴走させ、魔術の制御を失わせる。
 個人に対して効果を集中させれば、サーヴァントでさえ膝を屈し、常人であれば脳そのものを支配して操ることが可能。

◎『狂想閃影(ザバーニーヤ)』
 自らの頭髪を操り、伸縮自在の刃とする絶技。
 本家であれば蜘蛛の糸のごとき細さで数里先の敵の首を気付かれぬままに刎ねることができたが、彼女にそれほどの力はない。

◎『断想体温(ザバーニーヤ)』
 自らの肉体を「魔境の水晶」の如く硬質化させる秘技。
 少なくとも、宝具域の銃撃を阻む程度の硬度を誇る。

◎『瞑想神経(ザバーニーヤ)』
 魔力、水、空気、電気などの「エネルギーの流れ」を感知する超知覚。
 人工物であれ自然であれ、周囲の地形や構造を我が身として完全に把握できる。


 ただしこれら秘奥の連続使用による魔力消費は甚大であり、士郎の魔力量では乱用できないと見ていい。


938 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 18:02:09 OFOnYHRI0


【weapon】
 (観測されている範囲では)なし。自らの肉体と歴代の御業で戦う。

【人物背景】
 かつて中東の暗殺教団で『山の翁』を目指した暗殺者。
 通常ならば一生をかけて習得する山の翁の秘奥を、それも歴代18人のそれ全てを、僅か数年で身に着けたほどの才覚を持つ。
 彼女の常軌を逸した信仰、常軌を逸した才覚は、異教徒どころか同胞にも恐れられた。
 その結果、彼女は山の翁になることはかなわず、19代目ハサンの名は『百の貌』の二つ名を持つ暗殺者が継ぐこととなる。
 それでも彼女は誰も恨まず、羨まず、ただ自らの未熟と信仰の不足のみを恥じた。
 同胞が自らを忌み嫌うのは自分が未熟で、信仰が足りていないからだ。
 自分は歴代の御業を模倣しただけで、自ら奇跡を生み出すという偉業には至れなかった。
 彼女は結局、未熟を恥じ信仰の渦に身を沈めながら、歴史の闇に消えて行った。
 ただそれだけの、何も成せなかった狂信者。

 なお、常軌を逸した信仰者ではあるが、同時に極めて善性の人物でもある。
 無辜の民を巻き込むことを嫌い、異教徒・異端であっても「将来的に改心して同胞となる可能性がある」と無暗に殺すことはしない。
 もちろん、害意には害意で応じ、増上慢には罰を下す程度の好戦性はあるが、異教徒・異端であっても他者を気遣える人間性を持つ。
 聖杯という偽りの奇跡を求める邪な異教徒・異端に対しては容赦しないが、逆に言えばそれ以外の人間には容赦する程度には善性。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯をこの手で破壊する。
 我らの神は杯など持たず、偉大なる山の翁を惑わせる異端の奇跡などあってはならない。


939 : Fakers/Straight faith ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 18:02:30 OFOnYHRI0

【マスター】
 衛宮士郎@Fate/stay night

【能力・技能】
 二十七本と、代続きしていない魔術師としては比較的多めの魔術回路を保有しているが、魔術の腕は壊滅的。
 満足に使えるのは構造解析の魔術程度で、あとは成功率の低い強化魔術と、ガワしか作れない投影魔術しか使えない。
 その構造解析ですら「非効率的」と言われるものなのでもう本格的にへっぽこ。
 長所としては弓が抜群にうまい他、身体能力もそこそこ高い。
 体内に聖剣の鞘が埋め込まれているが、聖剣の担い手が現界しない限りは無意味。

【weapon】
 固有の武器は持っていない。
 陣地として『衛宮邸』を保有。
 スノーフィールドでは少々目立つ本格的な日本家屋で、外敵の侵入を知らせる結界が張られている。

【ロール】
 高校生

【人物背景】
 正義の味方を志す青年。
 冬木市で開催された、第四次聖杯戦争の余波である大災害の数少ない生き残り。
 魔術使い衛宮切嗣の養子となり、彼の「正義の味方になる」という遺志を継いで魔術使いとなった。
 彼を突き動かすのは亡き養父との誓いと、「大災害で唯一生き残ってしまった」という意識。
 生き残ってしまった自分は、その分誰かのために何かをしなければならないという強迫観念にも似た義務感である。
 その結果、人助けのみを生きがいとする破綻者が誕生した。
 彼は無私の善人のようにも見えるが、その実それ以外の生き方を選べない、機械のような存在と言っていい。
 黙々と誰かのために尽くし続け、そして大災害から10年後。
 少年は運命……聖剣を担う金髪の少女……と出会うのだが――――その直前に、白いトランプに導かれた。

【聖杯にかける願い】
 とくになし。
 聖杯戦争における犠牲を可能な限り減らす。


940 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/21(水) 18:02:57 OFOnYHRI0
投下を終了します。


941 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:37:23 827ISAbE0
投下乙です。
私も投下します。


942 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:38:42 827ISAbE0
なあ答えてくれ。

俺は、お前にどうしてあげればよかったんだ?


943 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:39:25 827ISAbE0



「...あなたが僕のマスターですか?」

とある一室。

召喚された爽やかな風貌の青年は、眼前の男にそう尋ねた。

「マスター...そうだね。召喚したのは私だ」

男はにこやかな笑みでそう返答する。
その笑みは、決して嫌らしいものではなく、むしろ好感を抱きやすい類のものだ。

「それで、きみは私の置かれている状況を理解しているようだが...教えてくれるかい?」
「わかりました」

青年は、主である男の頼み通りに聖杯戦争について説明した。
本来なら、他者と殺し合う可能性を示唆されればそれに驚くなり怯えるなりするだろう。
如何なる願いでも叶う部分に興味を示せば、そちらに耳を傾け喜びの笑みを浮かべることだろう。
だが、男は相も変わらず笑みを浮かべていた。そこから漏れ出す感情は喜びではない。
悦楽。いまにも愉快だと云わんばかりである。
青年は不思議に思った。

「何故この男はこうも愉しそうなのか、かな?」

己の思考をまさに言い当てられた青年はまるで己が臓腑を鷲掴みにされたかの如く目を見開いた。

そんな青年に構わず男は続ける。

「簡単なことだ。好きなんだ。生まれついてそういうのが...」

男の笑みが邪悪なものに変わると共に、青年の背に戦慄が走る。
いや、戦慄なんて生易しいものではない。
ドス黒い圧力(プレッシャー)が青年の身体を押しつぶすかのように圧迫していく。

「願いなんてどうでもいいんだ。ただ、己が生き延びるために他者を殺し、騙し合う。そんな素敵なものに招待してくれたんだ。愉しくもなるに決まっている。...まあ、特等席で拝めないのは残念だが、たまには自分の手で作るのも悪くはない」

青年は思う。
なんなんだこの男は。
この圧力といい、言動といい。およそ人間のものとは思えない。

『他人を突き飛ばして助かった男が本当に幸せになれたと思うのか!?たとえ罪に問われなかったとしても、人殺しの十字架を背負って生きていかなければならないその男が苦しまずにいられたと思うか!?』

少なくとも、あの名探偵が俺に言い放ったあの言葉には当てはまらない。


944 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:40:05 827ISAbE0

(...だが、組むならこういう奴の方がやりやすい)

「...実は俺も勝ち残るのが目標なんだ。あんたが話がわかる奴で助かったよ」

青年は笑顔で握手の手を差し出す。

他者の痛みに悦びを覚えるゲスな性分のこの男は、青年にとって確実に"嫌い"なタイプの人間である。
しかし、青年の狙いは聖杯を手にすることである。
今まではマスターが戦争を勝ち抜くのに否定的だった場合を考えて生徒会長としての仮面を被り様子を窺っていた。
だが、こうもノリ気であるなら話は別だ。いざという時に足手まといにならないし、用が済めば特に葛藤も無く斬り捨てられる。

故に青年は友好の握手を求めた。

「その前に、きみにプレゼントがあるんだ」

だが、男はするりとそれを躱し、青年へと背を向ける。
ついてこい、と言わんばかりに男はゆっくりと階段を降りていく。
プレゼント?なんだそれは?
そんなことを考えつつもマスターであるあの男から下手に離れるのはマズイ。
青年は渋々と男に従いあとを追う。
ギシ、ギシ、と軋みが青年の不安の心を掻きたてる。

「先日、この街の警察署で興味深い資料を見つけてね」

男は背を向けたまま語りはじめる。

「とある湖で起きた連続殺人事件の資料なんだが、その殺害方法が酷く凄惨であり奇妙でもあった。
殺害方法は全て斬殺なんだが、異彩を放ったのはその方法だ。
犯人は、被害者の頭部をかち割るだけでは飽き足らず、なんと顔を誰かの判別もつかないほどに斬り裂き潰していたらしい。
そう。まさに映画に出てくる空想上の殺人鬼・ジェイソンのようにね」

ジェイソン―――その単語に、青年の眉はピクリと動いた。
男は、流し目でそれを認識すると再び言葉を紡いでいく。

「その手口自体は中々興味深かったんだが、残念なのは彼が目的を果たさなかったことだ。果たして探偵の少年の言葉に揺れたのか、それとも妹に酷似した少女に遠慮したのか...」

やがて、階段は終わり二人は扉の前に立つ。

「さて。きみが聖杯を望む理由はなんだ。妹を蘇らせるためか?それとも仇をとるためか?きみの好きにすればいい。だが、このままでは必ず失敗すると断言しよう」
「...なんだと」
「きみが"人間"を捨てない限り、きみは再び同じ間違いを犯してしまうだろう。そのままでは私のサーヴァントとしては相応しくない」

男はドアを開けるよう青年に促し、青年は仕方なくそれに従う。
そこで見たものは


「私に見せなさい。きみの本当の覚悟というものを」


木造りの壁に、計十一名の男女。
彼らは一様に身体を震わせ青年へ恐怖の視線を向けている。
ガラの悪い中年。髭を生やした恰幅のいい老人とその愛人と思しき小太りの熟女。眼鏡をかけた陰気な男。頭の軽そうな青年が二人と少女。いかにも変人そうな暗い男。
人あたりのよさそうな初老の男。眉が太く髪を後ろに束ねた少年。
最愛の妹に酷似した少女。

それは―――かつて青年が目指した目標の場面そのものだった。


945 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:40:47 827ISAbE0

「あの事件の資料には続きがあってね。どうやら、犯人はボートで逃走した後、水上で爆発。そのまま死体が上がらず生死不明となっていたそうだ。
...まさか、本当に死んでいて、あまつさえ私のもとに現れるとは思いもしなかったよ」

男は、青年の肩に手を置きそっと囁く。

「舞台は用意した。まあ、きみがやらなければ私は協力しないだけだが...果たして、マスターを失ったサーヴァントはどうなるのかな?」
「ッ!」
「さあ、君の望みを叶えたいのなら私を満足させてくれ」

手ごろな椅子に腰をかけ手を前に組む様はまるで舞台を楽しみに待つ観客のようだ。

(ふざけるな)

青年は内心で憤慨していた。

見れば、確かにあの時の面子とソックリだ。
だが、おそらくどれも本人ではない。
当然だ。男がいつの時代の者かは知らないが、少なくとも自分がこうして英霊となる程度の時間は経過している。
彼らがそのまま同じという訳ではあるまいに。わざわざソックリさんを用意してまで、男は俺に殺人を犯させたいらしい。

だが、あの時は妹に似た少女に絆されたというのも事実ではある。
彼女さえいなければ、妹の仇―――甲田征作を殺すことはできていたはずである。

青年はこつこつと靴で床を叩き、ゆっくりと彼らに歩み寄る。
斧を握りしめる力が強くなる。

「な、なあ、冗談だろあんた。そんなことマジで―――」

ズンッ

斧が役者―――『倉田壮一』の頭を叩き割る。

「―――ぁっ」

斧が引き抜かれ床を赤く染める『倉田』の様に、一同は恐怖のあまりに言葉を失う。

ザッ

青年は再び斧を振り上げ、今度は『香山三郎』を切裂いた。

ここにきてようやくあがる悲鳴は舞台を混乱に陥れ、何名かは青年を取り押さえようとする。

―――が、役者たちを襲う強烈な重圧。

役者たちは一様に足を震わせ立つことすら困難になる。

余計なことを、と青年は男へと視線を向けかけるがあの笑みを見るのが嫌だったので再び斧を振り上げた。

次いで切り裂かれるのは『橘川茂』。そして『小林星二』―――ここまでは生前までに仕留められていた。

さてこの先は達成できなかった領域。妹を殺した犯人が判明し、殺す必要もない連中だ。
それでも構わない。
なにかを言いかけた『いつき陽介』改め『樹村信介』の首を裂き。ひたすら怯える『九条章太郎』を袈裟に斬り。
パクパクと金魚のように口を開閉する『香山聖子』、そして『河西さゆり』の頭を割る。

さて、あっという間に残るは名探偵と仇。そして妹に酷似する少女。

近づくだけで腰を抜かし怯える仇。その様に若干の苛立ちを覚えつつ『甲田征作』へと斧を振り下ろす。
『甲田』はピクピクと痙攣するとやがて動かなくなる。なんともあっけない幕切れだろう。


946 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:41:20 827ISAbE0

さあ、これで『悲恋湖殺人事件』は終幕だ。
後に残るのは本来関係ない名探偵と少女だけ。
だが物語は本筋が終わろうともエピローグというものが存在する。
この事件のオチは、怪人に関わった者は誰一人として帰らなかった、だ。
そうでなければあの監督は許さないだろう。

やぶれかぶれに突撃してくる『金田一一』を逆に殴りとばし、倒れたところに斧を叩き込む。
確認するまでも無い。即死である。
最後に残った『七瀬美雪』は、涙を流し青年へと助けを乞う。

―――お兄ちゃん

一瞬。ほんの一瞬だけ、妹の影が重なる。が、『小泉螢子』ではないことを再認識し―――青年は斧を振り抜いた。

「おめでとう。きみはどうやら人間を捨てられたようだ」

地に落ちた『美雪』の生首を見届けた男は、パチパチと労いの拍手を送る。

「......」

青年は『美雪』の恐怖に見開かれた目蓋をそっとおろしてやり、改めて男へと向き合う。

「きみには私の僕たる資格がいまできた。共にこの聖杯戦争を勝ち抜こう」
「...ああ。よろしく頼む」

青年と男は血に濡れた現場を後にする。
部屋に残されたのは、もはや言葉も話せぬ屍の山だけだった。


947 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:41:50 827ISAbE0



気に入らない。
青年は男の要求通りに惨劇を作り上げたが、彼に対しての印象が覆ることはなかった。
自分のマスターは反吐が出るほどの悪党だ。
隙さえあればいますぐにでも殺してやりたいくらいに男が気に入らない。
だが、いまは我慢しなければならない。聖杯戦争を勝ち抜くためにはどうしてもマスターであるこの男の力が必要なのだ。

ここまでして青年が聖杯を求めるのは理由がある。

―――『こんなことをしてあんたの螢子がよろこぶと本気で思ってるのかよ!?』

生前に言われた名探偵の言葉。
螢子は復讐を望んでいなかったのだろうか。俺のしたことは間違いだったのか?
だが、螢子は最期まで『S・K』のキーホールダーを手放しはしなかった。
単に手がかじかんで捨てられなかっただけなのか。それとも、それほどまでに自分の仇をうって欲しかったのか。

青年にはわからない。
螢子と冷たい口付けは交わせても、彼女の想いはわからない。
わかりたいともがくほど、心は痩せて尖っていく。


そこで彼は考えた。だったら、直接聞けばいいと。


聖杯を手に入れ螢子を蘇らせる。そして、彼女の真意を聞きだす。
もしも彼の復讐が彼女の真意にそぐわぬ行為だったならすぐにでも地獄に落ちよう。
もしも彼女が真に復讐を望んだのならば如何なる手段を持ってしても本物の甲田征作を殺してみせよう。

(そのためなら、俺はなんだってやってやる)

手を汚すことも。
先程のような茶番に付き合うことも。
どんなことでもやってみせる。

全ては螢子の真意を知るために。

青年―――『遠野英治』は、再び『ジェイソン』の仮面を手にし殺戮の舞台へと舞い降りた。


948 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:43:00 827ISAbE0



実をいえば、目の前で作らせた舞台『悲恋湖伝説殺人事件』の出来に男はあまり満足していなかった。
なぜか。それは、サーヴァントである遠野英治に服従の意思が見られなかったからだ。

ここに連れてこられる前。
男は、捉えた己が子のクローン、怪盗X(サイ)―――もとい『XI(イレブン)』の調教の余興で遊んでいた。
『人体衰弱』。ルールは至って簡単。必要なものは、トランプ、そしてカードを引く男と配置する支配人だけ。
カードを引く者は目隠しをし、支配人はカードを場に配置する。
支配人の身体にはハート、ダイヤ、クローバー、スペードのそれぞれ1から13までの計52か所の印が刻まれる。
カードを引く者は、この印とカードを揃えるのがルールである。
まずはカードを引く。次いで、支配人の印へ好きに触る。
この際に刃物により印を抉るもよし。殴りつけて骨折させるもよし。なにもせずに軽く触れるもよし。
印が揃えば、カードは廃棄。揃わなければカードは再び場に戻る。
それに対して支配人が出来ることは、カードの配置を入れ替えること。
毎ターン、男がカードに触れるまでに『シャッフルタイム』を使用する権限が与えられ、その際に支配人はカードを好きなように並べ替えることができる。当然、カードの柄は見てもよい。
つまり、支配人は好きなカードを男に引かせることができるのだ。

このゲームを終わらせるには、男にジョーカーを引かせるか、場からカードを無くさせるか、男が飽きるかしかない。
要は男と支配人の根比べである。

ではジョーカーを引かせれば終わる話ではないか。
その通り。ジョーカーを引かせれば、支配人は苦しみから解放され、代わりに人質である家族が死ぬ。
そして、悲しみと無力さに打ちひしがれる支配人に男は決まってこう囁くのだ。
「きみが彼らを殺したんだ」と。
後は放置し支配人の好きにさせる。そのまま自殺するもよし。復讐心にかられ再び自分の前に現れるもよし。
後者ならば歓迎だ。精一杯おもてなしをしてあげよう。

そんな真の強者にのみ許されたゲームをやるつもりだった。

だが、何枚目かに触れたその時。突如意識が遠のき、気が付けば今までの記憶を全て失い、スノーフィールドの社会の裏で暗躍する武器商人となっていた。
とはいえ、男のやることは大して変わらない。これまで通り、武器を売り捌き人間共が絶望する様を特等席で見届ける。それだけだ。
強いて言えば、あの魔人探偵がいなかったことだろうか―――もっとも、この時点では彼の存在など忘れていたのだが。
彼のような障害もないため、商いは退屈なほどにひどく順調に進んでいた。

だが、そのせいか。彼にもいささか飽きが来てしまった。
"友人"という名の下僕である警察庁長官のもとへふらりと立ち寄り過去の事件の資料室への案内を頼む。
長官はごますり用の愛想笑いと共に二つ返事で承諾。そのまま彼を資料室まで案内した。
別に特別な理由がある訳ではない。ただ、なんとなくの暇つぶしで、刺激的な事件はないものかと思っただけだ。

そこで偶然手にとったのが『悲恋湖殺人事件』の資料。
彼はその手口や並の人間では為しえない悪意に興味を抱き、実際に再現してみたいと思い立った。


949 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:44:00 827ISAbE0

方法は簡単だ。
この世界での部下にスノーフィールドで暮らす民間人を適当に拉致させ、被害者ソックリの顔立ちに整形させる。
その後は、拉致した者たちの親族を人質に、与えられた役割を全うしろと命令。これだけで舞台はほぼ完成である。
まあ、いつか与えた気がする魔女の舞台に比べれば大した出来ではないだろうが、余興程度にはなるだろう。
そんな程度の思いつきでここまで仕上げ、最後に犯人である『遠野英治』役を探そうとしたその時だ。

まるでこの時を見計らっていたかのように。
突如、男の脳裏にここに連れてこられる前の記憶が蘇り、気が付けば遠野英治その人が召喚されたではないか。

流石に少々驚いたが、聖杯戦争について聞き進める内にそんなことは忘却の彼方へ。
いかに英霊である遠野英治へ嫌がらせを兼ねた調教をしようか。それのみがいまの彼の脳内を占めていた。

そこで思い出したのが、悲恋湖伝説殺人事件の再現だ。

かつて失敗した彼に、今度こそ事件を成功させてやろう。

目撃者のいない、完全な犯罪を。

事件に関係ない者、特に妹に似た少女をその手にかけるのは、情に絆されたきみには辛かろう―――そう思い提案したのだが、結果は予想外。

彼は顔色ひとつ変えず、己の妹に似た少女まで手をかけてみせた。
それが終わった後も、後悔の念すら抱かず、屈服すらせず。彼はあくまでも己の目標しか目に無かった。
既に壊れていたか。つまらん。
本当ならこの場で殺そうかとも考えた。

そもそも、英霊などと奉られているような者をほうっておくことができない性質である。
そうやってなにかしらの形で人望のある者は絶望の底に沈めるに限る。そうすることで男の脳髄の空腹は満たされる。
が、しかし。いかんせん男はまだ聖杯戦争については疎い。
ならば下手にサーヴァントを殺すこともない―――そう判断したため、遠野を生かしておくことにした。
それにここまで強固な信念を調教し屈服させるのもまた一興と考えれば存外悪くない。

さて、この聖杯戦争という遊びにどう興じるか。
他の参加者の苦悶を、悲鳴を、絶望の顔を想像するだけで男の笑みは止められなかった。



とある犯罪者はこう語る。

真の『悪』とは、特殊な細胞やパワーなんぞで決まるモンじゃない。
『悪』は頭の中にある。
磨かれた吐き気を催す思考回路。
揺るぎない黒い脳細胞を持つ者こそが、選ばれた『絶対悪』だと。


男の名は『シックス』。
全ての人間のsick(病気)となる男。


950 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:45:30 827ISAbE0


【クラス】バーサーカー

【真名】遠野英治

【出典作品】金田一少年の事件簿

【ステータス】
通常
筋力D 魔力E 耐久D 幸運B 敏捷C 宝具:B

宝具発動後
筋力B 魔力E 耐久B 幸運D 敏捷B 宝具:B


【属性】
秩序・善

【クラススキル】

狂化:A+
全能力を向上させるが、マスターの制御さえ不可能になる。



【保有スキル】

直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

頑健:A
 体力の豊富さ、疲れにくさ、丈夫な身体を持っている事などを表すスキル。
 通常より少ない魔力での行動を可能とし、Aランクであれば魔力消費を通常の4割近くにまで抑えられる。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】
『怪人:ジェイソン』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ。
ジェイソンの仮面を被ることにより、精神的にも肉体的にも視野を狭め己の殺意を高める。復讐者にとって殺意は何よりの糧である。
ちなみにこの仮面はマスターやNPCに被せることもできる。



【weapon】
・斧
遠野英治愛用の斧。


【人物背景】
不動高校三年で元生徒会長。キリッとした眉毛のイケメン。
悲恋湖伝説殺人事件の犯人であり、怪人『ジェイソン』として四人の犠牲者を出した。
妹である小泉螢子を心の底から愛しており、彼女を殺した犯人の特定ができなければ疑わしき者は全て殺すと豪語するほど彼女しか見えていない。
だが、決して頭が悪い訳ではなく、『標的の一人であるS・Kが代理を頼んだ挙句、殺害対象ではない少女が逃走防止用の罠にかかった』という無茶ぶりに近い状況で『あのS・Kを呼び寄せて殺し身代わりにし、自分は死んだ扱いにして復讐をスムーズに進めよう』という計画を即座に思いつくあたり、むしろ頭はキレる方。
ただ思考が極端である点は否定できない。

後に深山日影という遠野にそっくりな人間が登場するが、彼が本当に遠野英治かどうかはわからない。
記憶喪失・背中に大きな火傷の痕など妖しい点はいくつかあるが...


【方針】
聖杯を手に入れるために皆殺し。ただし状況によっては情報戦に徹することもする。


【聖杯にかける願い】
螢子を蘇生させ本音を聞く。そのためには如何なる犠牲も厭わない。


951 : 狂【あくとかいじんのゆいいつのきょうつうてん】 ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:46:01 827ISAbE0

【マスター名】シックス
【出典作品】魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】男

【weapon】
・拳銃
別に使う必要もないが、武器商人らしくいつも携帯している。

・その他兵器諸々。
武器商人であるため携帯電話ひとつで調達可能。
機関銃からステルス亜音速のステルス機までなんでもござれ。
(ただし部下が運ぶ時間は相応にかかるのでご注文はお早めに)


【人物背景】

「定向進化」から産まれ、人類から進化した「新しい血族」の長。
悪意の「定向進化」から生まれた、悪のカリスマとでもいうべき究極の卑劣男であり、人の嫌がる、苦しむ、絶望する様を見ることを誰よりも好んでいる。究極のサディストでもある。


・仕事を失敗した部下に自殺を求める際、拳銃自殺ではなくノコギリのようなもので自分の腹を徐々に裂いていくように命令する。理由は「罰なんてどうでもいいが、単に君がそれで死ぬのを見たいだけ」。尚、部下が腹を掻っ捌き始めても、シックスは葛西とのお喋りに夢中で一切目を向けず、部下が死ぬ様子になど興味はなかった。
・「6」という血文字を書かせるためだけにどこかの家族を人質にとり、父には致死性の毒を飲まなければ家族を殺すと脅し自らの吐血で「6」を書かせ、その家族には「きみたちの父親は君たちを見捨てて逃げた」と告げて絶望と憎しみの中でその命を絶たせた。

また、世界屈指の軍需企業の会長でもある。



【能力・技能】

・金属の生成
体内の細胞と合金を結合して、体内から強固な金属を生み出すことができる。足から刃物を生やすことも可能。

・「五本指」の能力。
彼の部下である、「DR」、「テラ」、「ヴァイジャヤ」、「ジェニュイン」、葛西善二郎の五人、通称五本指の力を操ることができる。
「DR」=ありとあらゆる水の流れを一目で見抜くことができる。
「テラ」=土地の状態、強度、構造を見抜くことができる。
「ヴァイジャヤ」=植物の特性、毒性、調合結果など、植物に関してあらゆる情報を本能的に感じ取ることができる。
「ジェニュイン」=群集の心理を弄び、思いのままに扇動することに長けている。
葛西善二郎=炎の流れを含む全てを自在に操ることが出来る。

尚、上記の「五本指」の能力は己の体内から生み出すものではないため、土地の状態、施設の有無などで大いに影響する。


・瞬間記憶能力
見たものを瞬間的に記憶できる力。空を舞う複数のプリントの詳細を正確に読み取るという超人染みた芸当も可。



・脳
シックスにとって一番重要な器官は脳であり、心臓を破壊されても体内の金属の制御が乱れるだけで死には当たらない。つまり、脳さえ残っていれば死ぬことはない(本人談)。
ただ、自動再生能力は有していないため、バラバラにされれば窮地に陥ることは間違いない。


【ロール】
非合法的な武器商人。裏社会では有名だが、表の世界ではまったく知られていない。


【参戦経緯】
暇つぶしに拉致した民間人で『人体衰弱』を愉しんでいたら紛れていたトランプに触れ飛ばされた。
時期的には『五本指』の残りが葛西のみになった辺り。


【方針】
聖杯戦争を思う存分に愉しむ。願いは特には決めていない。


952 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/12/21(水) 18:46:32 827ISAbE0
投下終了です


953 : ◆W9/vTj7sAM :2016/12/21(水) 21:06:24 UdeGFKfY0
>>915-919にある拙作のタイトルを「ホロウ・アタラクシア・イン・ムーンサイド」とし、一部誤字、改行修正と、マスターのステータスに令呪についての記載を追加しました。
報告が遅れたことをお詫び致します。


954 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:07:05 ohlDpnTg0
投下します


955 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:09:04 ohlDpnTg0
スノーフィールドの治安を守る警察署。それまで大過無く町の治安を維持出来ていたこの組織は、ここ十数日間批判と罵倒の嵐に見舞われていた。

「無能」「税金泥棒」「案山子」「善良な市民しか捕まえられないクズ」

頻発する怪異な出来事と、続発する奇怪な殺人事件と、後を絶たない行方不明事件に、市民の不安と怒りは未だにどの事件も解決出来ないでいる警察へと向けられた。
警察としても何もしていないわけではない。部署を問わず署員を駆り出し、調査や聞き込みに当たらせている。既に全署員が過労の兆候を見せ始めている程に、彼らは職務に励んでいた。
その努力は何一つ実を結んでいないが。
どころか彼等の努力を嘲笑う様に事件は起き続ける。
署の総てが煮えたぎった油の中でのたうち回っている罪人のごとき状態の鉄火場のさなか、署内の喧騒を余所に静まり返っている部署があった。


スノーフィールドの急激な発展は、治安当局始めとする公共機関も把握出来ぬ人間と物資の流入を招き。
ラスベガスに近いという地理的条件もあって、当然の様に犯罪組織や凶悪犯が街に流れ込み、多くの凶悪犯罪が起きた。
そもそもが治安を守るべき警察機構が、街の急激な発展に質・量共に対応出来ず、犯罪よりも激変する街の様相を把握する事に務めなければならなかった程だ。
この為、スノーフィールド警察では、一年前に警察や民間を問わず優秀な人材を集めて、“対凶悪犯罪部隊”を新設。
そして今、こういう事態に対して活動することを求められ、その為の訓練を積んできた精鋭達が指示を待っていた─────その筈だった。

薄暗い一室で、二十八人の人間が立っていた。
背筋を真っ直ぐ伸ばした直立不動の姿で、無表情に前を見つめて、一言も発さず、身じろぎもしないその様は、人というよりも機械じみたものを感じさせる。
皆一様に警察官の制服に身を包んで入るが、スノーフィールドの市民がその顔ぶれを見れば驚愕するだろう。
ある女は、サウスカロライナで数百m離れた位置の人間を六人、銃を用いて射殺した連続殺人犯だった。。
ある男は、スノーフィールドで夜な夜な人を襲い、その拳で兵役経験者や現役格闘家といった面々を次々と病院送りにし、
逮捕された時にも十人以上の警官と大立ち回りを繰り広げ、2mを越える屈強な警官を二人も殴り殺した元プロボクサーだった。
隅に固まっている数人は、スノーフィールドで旧来のファミリーを潰して台頭したファミリーの鉄砲玉だった。
浮浪者を気まぐれに半殺しにし、恐喝や売春の斡旋、果ては殺人にまで手を出した警察の面汚しと言うべき元警官が2m20cmの巨体を無表情に直立させている。
その他にも名や顔を知られた犯罪者達や汚職警官が並び、本職の真っ当な警官等は存在しない。
部屋の唯一の扉が開き、白いスーツに身を包み銀髪をオールバックに固めた眼鏡の男が、十人の男女を連れて入ってきた。
男は彼等「対凶悪犯罪部隊”の教官として、彼等を鍛え上げた人物だった。
十人のうち、男2人と女一人が集団に加わり、残り六人の少女を左右に侍らせて、教官である銀髪の男が口を開く。

「私が君たちに課した『教育』の成果を発揮する時が来た。この街は今、重大な脅威に晒されている。その脅威から街と人々を守ろうとする君達は正しく正義だ。
私達こそが、今現在この街を覆う異常事態に対する市民達の最後の希望だ胸を張って私の命に服したまえ」

この場に聖杯戦争に関わるマスターが居れば失笑したことだろう。“たかだか人間がサーヴァントをどうにか出来るものか”と。
この場に聖杯戦争に関わるサーヴァントが居れば戦慄しただろう。無表情に立ち尽くす警官達は、“確かに人間でありながら、その全身から空間すらも蝕むかの様な禍々しい英気と魔力を滲み出させている”のだから。
彼等は皆全員が正真正銘の人間だった。そして人間では無い“何か”だった。この場で彼等と異なる存在は彼等の前に立つ男唯一人。
その男は最後の言葉を紡ぐ。

「さあ諸君。ショータイムだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


956 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:09:33 ohlDpnTg0
署内の一室、手術室を思わせる部屋に長広舌をふるった男は入っていった。

「“君達は正義だ”か、確かにそうだな。まあ、私達も聖杯戦争とやらは解決してやることになるがな」

血臭が部屋中にこびり付いたかの様に、血の匂いが充満する部屋で、男を迎えたのは、長身痩躯の銀髪の男。

「“法”を掲げて戦う彼等は正義だ。“彼等はな”。しかし、良く言ったものだ」

手術台の前で端正な口元に嘲笑を浮かべて言う男。流れる様な銀の長髪と、雪の様に白い肌を黒い獣毛の胴着に包んだ姿が特徴的だが、男を見るものが先ず目を惹かれるのはその耳だったろう。
長く先端の尖ったその耳は、ファンタジー世界の住民として名高い種族、エルフのそれだった。
男は確かにエルフであり、この聖杯戦争におけるマスターの一人だった。

「彼等とて人間性を未だに有しておりますからな。ああやって士気を鼓舞してやる必要があるのですよ」

マスターに向かって説明する男は、キャスターのサーヴァントとして、この地に現界した存在だった。

「それは理解している、私にも経験があるからな」

笑みを消さぬままに返答したエルフは、目線でキャスターを促した。

「今日、調教が済んだ三人を足して二十八人。先日使用した分の不足は補えました」

「良いだろう。奴等の個々の能力は、サーヴァント相手には不足すぎるからな」

侮蔑と共に吐き出された言葉。スノーフィールドを脅かす異物達を排する為に闘う者達を、エルフは無力と切って捨てた。

「マスターに作っていただいていたものは……」

手術台の上に白い布を被せられている人型に目をやってキャスターは問いかける。
3日前から行っている作業は、予定通りなら今日終わるはずだった。

「ああ、終わっているぞ」

エルフが取り払った白い布の下には、巌の様に頑強な巨人と言っても良い男が横たわっていた。
一見しただけでは只の大男だが、よくよく目を凝らせばその異常さが見て取れよう。
黒ずんだ肌は場所により肌の色が食い違い、その色の分け目となるのは、身体を縦横に走る無数の縫合痕。
この巨人は無数の人体を繋ぎ合わせて作り出された代物だった。

「お前が宝具にしたNPCを我が奥義“骸繰り(コープスハンドラー)”で強化する。これならばサーヴァントと戦っても、すぐに倒れることは無いだろう」

“骸操り(コープスハンドラー)”その名が示す様に、巨人は骸だった。
キャスターが宝具としたNPC達を、エルフはこの部屋で切り刻み─────宝具化しているので欠損部分は再生する。三人程再生の効かない部品を取った所為で死んでしまったが─────繋ぎ合わせて一体の巨人を作り上げたのだ。
宝具化したNPCの優れた部分を厳選して作り上げた巨人は、エルフとキャスターが聖杯戦争に臨む上で大きな力となるだろう。

「ふむ…宝具化したNPC全て繋ぎ合わせて強化した方が戦力となるのでは?」

キャスターの疑問はもっともだが、エルフにはそれをやらぬ理由が有った。

「数が多ければそれなりに使い途は有る」

エルフが彼等に期待するのは、陽動と足止め程度。その隙にサーヴァントをマスターを殺すのは、キャスターの造った道具などではなく、己の造った“傑作”だ。
エルフの視線が部屋の隅に向けられ、キャスターの視線も後を追う。
その先に無言で立つ一人の黒髪黒瞳の少女。先程キャスターが長広舌をふるった者達と同じく、無表情で直立したまま動かない。その耳は木の葉の様に尖り、少女が人とは異なる種であることを示していた。
虚ろな空洞を湛えた黒い瞳は焦点を結ばぬまま虚空を見つめている。
その手には不釣り合いな代物が─────鉄塊と呼んで良い大鉈が握られていた。
この少女こそがエルフの鬼札(ジョーカー)。エルフの傑作である麗しの踊り子。
神秘の隠匿とやらの為にはあまり派手にやるわけにもいかない。この街を火の海にする術もエルフには有るが、今はそれをする時では無い。

「それで、これは何と呼べばよろしいので」

「呼び名などどうでも良い。お前が付けても構わんぞ」

言われてキャスターは暫し考え。

「此れこそは我等に聖杯を齎す騎士。そこで、“ギャラハッド”というのはどうですかな」

骸を繋ぎ合わせた怪物に、円卓の騎士の中でも最も高潔な騎士の名を付けるキャスターは、歪んだユーモアのセンスの持ち主だった。


「しかしギャラハッドといい彼女といい、マスターの業は素晴らしい。いやはや魔道の業とはこれ程のものとは、願わくば生前に巡り会いたかったものです」

マスターの“作品”を賞賛するキャスターにエルフは愉悦を湛えた眼差しを向けた。

「お前の“人形”共も大したものだと思うがな。まあこれで聖杯戦争に臨む為の手駒は一応揃った事になるな」


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957 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:10:37 ohlDpnTg0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


キャスターは己がマスターの傑作を眺めながら、生前に作った“最高傑作”を思い出す。
己の生に終止符を打った少女の姿を思い出し、そしてマスターの傑作を見てこう思うのだ。

─────この業を用いれば、私の理想は具現化する。

キャスターが生前に求め続けたもの。至高の殺戮技術を持つ、見目良い外見の殺人者。人でありながら一個の機械の様に人を殺す、人の形をした武器。
キャスターは己が理想を体現してのけたマスターに敬服し、その業を欲していた。
マスターの“作品”は、一人の少女が全てに絶望した果てに生まれたものだという。
『絶望』それこそが最高のファントムを創り出す要素なのだと、キャスターは生前の経験と合わせてそう確信する。
己の最高傑作である“アイン”が己に向かって引き金を引いたのも、“ツヴァイ”から与えられた希望の為だ。
マスターの人形の様に絶望の淵に深く深く沈ませていたならば、キャスターの理想とする至高の武器として、“アイン”は完成していただろう。

キャスターが聖杯に望むことは三つ。
再び生を得ることと、マスターの魔道の業を会得することと、己を殺した“アイン”と再度まみえ、真に完成させること。
キャスターは厭らしい笑みを浮かべて“アイン”を絶望させる為の策を巡らしだした。



─────もうじき私は蘇る。その時こそ真の“ファントム”として完成するが良い。アイン。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


良いサーヴァントを引いたとエルフは嗤う。彼のサーヴァントは脆弱極まりない。直接戦闘では間違い無く最弱、NPCにも劣る。
しかしサーヴァントの能力は宝具が決すると言って良い。そして、キャスターには非力さを補う強力な宝具が有った。
キャスターの宝具とは、“NPCを宝具とする”という反則的な代物。NPCと区別がつかず、それでいて人間を遥かに超えた身体能力を持つ存在にNPCを変えられる。
しかも質さえ問わなければ、短期間で大した魔力消費も無く量産出来る。
流石に質を追求すれば、それなりの素体を用意した上で、時間を掛けて造る必要が有るが。
先程キャスターが長広舌をふるった者達は、皆全て素質を、身体能力でも運動能力でも無い─────他者を害することに躊躇いを持たない精神を見込まれてキャスターの宝具にされた兵隊達だった。
元より殺人者に対して求められる資質の第一は、“人を害することへの抵抗の無さ”に尽きる。
いざ殺すという段になって躊躇する様な輩は、獲物を取り逃がすどころか返り討ちにすら遭いかねない。
その点キャスターが選出した者達は、皆一様に良心が欠如し加害意識をふんだんに持ち合わせている、所謂“人間の屑”が揃っていた。
ここにエルフが手を加えた“合作”を加えたものが、彼等の陣営の戦力となる。
だが、それだけの陣容を整えても、エルフにはまともに戦う意志などない。此の地の英霊もマスターも皆殺しにするつもりだが、殺意は有れど戦意は無い。
それにエルフは聖杯とやらが本当に有るのかどうかすら疑っている。美味な餌をぶら下げて殺し合いを煽るのは、エルフが散々用いてきた手だ。
しかし、それでも、エルフは聖杯戦争に乗り、此の地の生命全てを殺し尽くすつもりだった。今まで赴いた地の全てでそうしてきた様に。
聖杯の真偽は重要では無い。重要なのは此の地に最上の贄となる者が十五も居るという事。
先ずは英霊共を皆殺しにし、その後聖杯を手に入れる。そして聖なる杯とやらで人の子共を絶やし尽くしてくれる
これも全ては神の為。
全ての命はエルフの崇める神の贄として存在しているのだから。
全ての命はエルフの崇める神を楽しませる道具でしかないのだから。

─────我が混沌の君よ。これより十と五の至上の贄を捧げます。

先ずはキャスターが勤めるこの地位を利用し、手駒を増やす。
悪逆の徒なら警察組織を利用しようとやって来る。
善良な者なら警察組織に属しているというだけで、簡単に欺けよう。己が肌の色を偽るだけで、闇の子とも知らずに受け入れる愚者共が後を絶たなかったように。


─────此の地に集いし者共よ。我が君の為に踊るが良い。


エルフは邪悪な光を瞳に浮かべて、胸中に呟いた。
その右腕に嵌められた腕輪に輝く深緑の猫目石が、室内灯の光を受けて妖しく輝いた。


エルフが勝利するかは判らない。戦いがどのように推移するのかも判らない。エルフの崇める神は何もエルフに示さない。

確実なのは只一つ。
エルフが聖杯を手にしたならば、生きとし生けるもの者全ては希望を失う。エルフは全生命が最後に知る絶望となるという事だけ。


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958 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:12:58 ohlDpnTg0
【クラス】
キャスター

【真名】
サイス・マスター@Phantom 〜Requiem for the Phantom〜

【ステータス】
筋力:E- 耐久:E- 敏捷:E- 幸運:D 魔力:D 宝具:D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:C
自らに有利な陣地を作り上げる。
訓練場の建設が可能。

道具作成:D
洗脳に用いる薬物を作成できる。

【保有スキル】

教授の智慧:B
銃器や刃物や爆発物の取り扱いや、人体の構造、効率的な身体運用など戦闘と殺人に必要な技能をCランク相当で授けられる。
キャスター自身はこれらの知識を実践することは出来ない。


コレクター:C
より良い道具を獲得する才能。キャスターの適性は人間と銃器に偏っている。


洗脳:B
他者に施す洗脳。精神攻撃への耐性を上げ、キャスターに絶対服従させる。


精神異常:B
精神を病んでいる。どれだけの非道を働こうと彼の心は痛まない。目の前で残虐な行為が行われていても平然と無視する。


扇動:C
数多くの大衆・市民を導く言葉を身振りの習得。
特に個人に対して使用した場合には、
ある種の精神攻撃として働く。きわめて強力。


959 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:13:29 ohlDpnTg0
【宝具】
教育施設
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:100人

陣地作成スキル用いて造った“訓練場”の中にNPCを入れることで、NPCを宝具に改造する機能を持つ宝具。一晩も有ればNPCは人でありながら宝具と化す。
この宝具内では“教授の智慧”及び“他者暗示”の二つのスキルが高速で効果を発揮する為、短期間で戦闘技能を習得しキャスターに服従する様になる。
この宝具で宝具と化したNPCはEランク相当の宝具に相当する神秘を獲得し、この宝具内で扱いに習熟した武器にも同じランクの神秘が付与される。
NPCでありながら宝具であるという性質上、非常に探知されにくく、手足を失っても時間経過で再生し、維持に魔力を殆ど必要としない。
長くこの宝具内に入れておく程NPCは強力な宝具となる。
キャスターに対して使用された令呪の効果は、NPC達にも適用される。
この宝具の効果はキャスターが死んでも解除されないが、キャスターの掛けた暗示は時間経過と共に効果が薄れ、やがて消える。



煉獄の六姉妹(ツァーレンシュベスタン)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:6人

キャスターが生前に作り上げた六人の量産型ファントム。
六人とも筋力:D 耐久:D 敏捷:D 幸運:E 魔力:D 宝具:ーのステータスのサーヴァントに相当する能力を持つ。
気配遮断:C 単独行動:C 心眼(真):D 射撃:C 無我:A のスキルを持つ。
六人は宝具化により獲得した念話による意思疎通により完璧な連携を行い、敵を斃す。
キャスターの使い魔として扱われ、死ねば聖杯戦争中は二度と召喚できない。



煉獄に踊る亡霊(ファントム・オブ・インフェルノ)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:1人

キャスターが生前に作り上げた最高傑作。犯罪結社インフェルノで最高の暗殺者に与えられるファントムの称号を持つ殺人者達に匹敵する者を作り出す。
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 幸運:E 魔力:D 宝具:ーのステータスのサーヴァントに相当する能力を持つ。
気配遮断:B 単独行動:C 心眼(真):C 射撃:B 無我:A のスキルを持つ。
これらのステータスとスキルランクは最低限保証されるものであり、素体によってはさらに高いステータス及びスキルランクとなる場合も有る。
“教育施設”に最高クラスの資質の素体を最低三日間入れて置くことで漸く完成する。
要は教育施設の効果を最大限に発揮した結果である。


【weapon】
無し

【人物背景】
洗脳のエキスパートで、暗殺者の調教と斡旋を行っていた。
犯罪結社インフェルノの許で暗殺者の育成を担当している時に、偶々拾った吾妻玲二を、最初に暗殺者として育成した“アイン”に、調教プログラムの引き継ぎの為のテストケースとして、暗殺者として育てさせる。
この結果は成功であり、“アイン”で培ったノウハウを元に優れた兵士を量産出来るという結果を得た。
ツァーレンシュベスタンはこのテスト結果から作り出した量産型。
日本へ逃亡したアインと玲二にツァーレンシュベスタンをぶつけ、彼女達に戦闘経験を積ませようとして結果、敗北。
最後は自らの最高傑作と認定したアインに殺害された。
犯罪組織に身を寄せていたのは素体と戦闘経験を積ませる場所が容易に手に入る為。
銃フェチであり、一つの銃の様に只人を殺す為に有る殺人者を作るのが彼の目的だった。
尚アニメ版からの参戦だが、ゲーム版では最強の暗殺者“ファントム”の完成=死亡フラグである(ファントムが誰であれ必ずファントムに殺される為)


【方針】
まずは様子見。警察の組織力を使って情報を集める。

【聖杯にかける願い】
復活


960 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:13:57 ohlDpnTg0
【マスター】
ラゼィル・ラファルガー@白貌の伝道師

【能力・技能】
殺人の技を技芸として嗜み、芸術にまで昇華させたダークエルフ族において並ぶ者無き武技の冴えを謳われる戦士。屠龍の勲を讃えられる龍殺しでもある。
“骸操り”という技に長け、生前の思考力と肉体の神経網をそのまま活かした生体機構として死体を動かすことが出来る。
解剖学や拷問技術にも詳しく、どうすれば苦痛を最大限に与えたまま生かしておけるか、という知識を豊富に持つ。
狂信の域にまで達した信仰心を持ち、上述の武勲と併さり高いカリスマを同族に対しては発揮する。

【weapon】
龍骸装
ラゼィルが嘗て殺した白銀龍の死体から作り出した武器一式。様々な魔術がかけられていて、只でさえ鋼すら断つ強力な武器を、さらに強力にしている。
擬似生命体であり鮮血を滋養として代謝し、自己再生能力を持つ。
曲刀・投槍・鎖分銅・手裏剣・胴着と籠手からなる。
更にドラゴンブレスを使用可能とする龍の肺胞を用いた“凄煉”があるが、封を解いてから使用出来るまでに百秒かかる。
龍骸装は祭器としての効能を持ち、是等の武具で殺害された者の魂は、混沌神グルガイアの贄となる。


白貌
エルフの骨片と遺灰から作った白粉。ラゼィルはこの白粉を用いて地上の者達の中に紛れる。
「白い肌のダークエルフが地表に一人いるだけで、どれだけの破滅と災厄をこの世界にもたらしてやれるかとお思いか」とは当人の言。
水には強いがエルフの血が付くと簡単に取れる


バイラリナ
ラゼィルがハーフエルフの少女の死体を用いて作った操躯兵。
自身の身長以上の長さの巨大鉈“嘆きの鉈”を機械じみた精密さで振るう。
生前の思考能力や運動能力はそのままだが、記憶・感情・欲望が欠落し、身体能力を限界以上まで引き出せる。
ラゼィルが充填した魔力によって行動し、魔力が残っていれば肉体に受けた損傷は即座に治る。
但し全身を破壊されてしまえばどうにもならず。頭を落とせば行動不能になる。
バイラリナが使う“嘆きの鉈”は祭器としての効能を持ち、この武具で殺害された者の魂は、混沌神グルガイアの贄となる。


“ギャラハッド”
キャスターが宝具化したNPCの肉体の優れた部分を繋ぎ合わせて作った巨人。
身体能力ではバイラリナを凌駕する。


黄金の腕輪
中央に大粒の猫目石が象眼された、精緻かつ華美な黄金細工の腕輪。
猫目石は神体たるグルガイア神像の眼から抉り取られた宝玉であり、
異なる宇宙に存在するグルガイア神は、この眼を通して信徒の捧げる殺戮と殺される者達の悲嘆の“神楽”を見つめている。


961 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:14:51 ohlDpnTg0
【ロール】
警察の対凶悪犯罪部隊の教官。ただしこの役割はキャスターが担っている。


【人物背景】
地下世界に棲むダークエルフで名を知らぬ者の無い英雄。
骸操の匠として名を馳せ、屠龍の勲でアビサリオンの筆頭祀将となった。ダークエルフ達が皆その名を讃え、親が子に寝物語として語り聞かせるダークエルフの大英雄。
地下で権力争いに興じ続ける同族に見切りを付け、グルガイアの神像から眼の部分に該当する宝玉を抉り取り、地上に生きる者達に災厄を捲く旅に出る。
出奔と神像を傷つけた罪を問いに追ってきた兄すらも惨殺し、ラゼィルは独り地上を行く。
ハーフエルフの少女の骸から作った“神楽の舞い手”を引き連れて。

【令呪の形・位置】
右掌に瞳の形

【聖杯にかける願い】
地上世界が滅び去る程の災禍。

【方針】
英霊の誇りも尊厳も穢しつくして殺し尽くす。キャスターも最後には贄とする

【参戦時期】
原作終了後

【運用】
キャスターはステータスもスキルも宝具も戦闘向きでは無い。
ラゼィルはかなりの戦闘能力を持つが、それでもサーヴァントと戦えば勝ち目は薄い。
先ずはロールを利用して同盟者という名の手駒を作るのが先決だろう。


962 : 私達はこの事態に対する最後の希望です(嘘は言ってない) ◆v1W2ZBJUFE :2016/12/22(木) 20:15:30 ohlDpnTg0
投下を終了しますp


963 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:02:32 bB1ItZnk0
皆様、投下お疲れ様です。
私も投下します。


964 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:06:18 bB1ItZnk0
――スノーフィールド国立研究所。

新興都市の発展を国が認めたのか、近年で新しく設立された国立研究機関である。
近い将来、アメリカにおける軍事・機密研究における新たな重要拠点の一つになると目されており、それ以外でもあらゆる分野において研究が行われている。
研究所は今後の科学の進歩のためならばと資金を捻出することを惜しまず、研究の制約はないに等しい。
それに惹かれたか、世界中からも著名な科学者やエンジニアが集っており、誰が形容したか「科学者達の楽園」とも呼ばれるようになっていた。

しかし、寛容な研究所も、軍事・機密研究となれば態度を変える。
軍事・機密研究とは自国軍の使用する兵器の情報そのものである。他国に知られればフェイクを造られた上にテロに転用されかねない。
それだけでなく、その兵器の情報は国際間の情報・交渉戦においても重要なカードに位置づけられる。
まさに、研究によって生み出された成果は国防上においては命そのものと言っていい。
国からの支援もあり、研究所は研究の内容とその産物を世間から隠蔽することにぬかりはなかった。
仮にそれが正義を標榜した性質の悪い自己陶酔ジャーナリストなどにでも暴露されればアメリカという国の威信にも関わってくるため、何としてでも秘匿せねばならないのだ。

そんな国立研究所で、数ある機密兵器を保管している区画の通路にて二人の男が話しつつ歩いていた。
無機質な電灯が艶やかな床を照らす中、二人の体は防弾機能のある重装備で固めており、手には殺傷能力の高いマシンガンが握られている。
二人は研究所お抱えの警備員で、機密を守るためならばこれくらいの武装は当たり前といいたいところだが、今回ばかりは別の理由もあった。

「俺達って、この先にある兵器を警備するんだっけ?」
「ああ、聞いたところによると生物兵器らしいな。いつ背後から襲われるか分からないだとよ」
「おいおい、それ大丈夫なのか?この研究所、ちょっとチヤホヤされ始めたからってつけあがってるといずれ痛い目見るぞ」
「ま、冬眠制御装置で眠らされてるから目覚めるなんて万に一もないんだけどな。要は気を緩めるなってことだろ」
「やれやれ、そんなもん作るなんて科学者サマの考えることはわからねえぜ…」

変わり映えのない通路を進んでいると、やがて男の言う生物兵器の保存室前に辿り着いた。
見上げるほどにまで巨大な入り口はシャッターで閉ざされており、どこかで装置が動いているからか重い羽音とも思える駆動音が常に響いている。
直前まで警備に当たっていた二人の同僚に交代の旨を伝え、代わって入り口の両端の位置についた。

研究所は警備も厳重なため、侵入者の心配はない。
これから半日ほど、ずっとここの見張りをすることを考えると、警備員は気が滅入る思いだった。







965 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:07:05 bB1ItZnk0




僕は何者だ。何のために生まれて、何故ここにいる。
わからない。わからない。わからない。
過去もなく因果もなく、ただ「ここにいる」という事実だけが突きつけられている。
思い出そうにもからっぽな記憶は何も答えてくれない。
返事の代わりに在るのは深い闇と、居心地の悪い寒さ。
どこか懐かしい、そして忌々しい感覚だった。
それを知覚するたびに、やるせない感情がこみ上げてくる。
怒り、悲しみ、苦悩。負の方向に走る情動がファクターもなく僕を襲う。
これに記憶の手がかりがあるとしても、闇の中で宙吊りにされた僕にはどうすることもできない。


――お前は、何を望むのだ?


ふと、退屈というには余りある空虚な闇から、声がした。
誰だ、と問う間もなく、僕の体が新たな変化を感じ取る。
その感覚を発する手元を見る。
しばしの間、指すらも動かした覚えはない中、軋む掌が内から見せたものは――緑に輝く宝石だった。
闇の中ですらも妖しい輝きを放つそれに、僕は目を見開く。

「これは――」

見覚えのあるそれは、確かに僕が握りしめていた。
■■■の願いを叶えるために不可欠なもの。
■■■の願いが僕の全てだった。

「――そうだ。僕は…僕にはしなければならないことがある」

――もう一度問おう。お前は、何を望む?

「彼女の願いを叶える。スペースコロニーの力を借りなくとも、聖杯で…!」

僕は、ひたすら進む。目的のためなら手段を選んでいられない。









―――お願いよシャドウ。私のかわりに… いつかかならず… あの星に住むすべての人達に…―――

「分かっているさマリア、約束する。この星に住むすべてのものに――」







966 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:08:41 bB1ItZnk0




轟音と地響きが機密兵器の保管区を埋め尽くしたのは、警備員が見張りを始めて小一時間が経過した頃だった。
その非常事態を表すかのように赤いパトライトがあちこちで研究所を赤く染め上げる。
絶え間なく続く騒音に混じって、サイレンがけたたましく叫び声をあげる。
二人の警備員は突然の事態に、足を崩して前のめりに倒れてしまう。

「な、なんだ…!?」
「な、内部だ!このシャッターの内側で何かが起こっているんだ!」

今も巨大なシャッターの奥側で何かが蠢き、衝動の赴くままに暴れているかのような破壊が音となって警備員の耳に伝わっていた。
自分の当番に限って引き起こされた異常事態に混乱しながらも、一人はなんとか銃を構えて臨戦態勢を取った。
もう一人の方は、現在の状況を上官に伝えるために、無線機を懐から取り出そうとしていた。

「こちら――ぐふっ!?」

しかし、取り出して話し始めたところで警備員の言葉は苦悶と驚愕が入り混じった悲鳴に塗り替えられた。
震える手で武器を構えていた警備員が見ると、無線機を持っていた警備員は稲妻の如き輝きを見せるエネルギー体でできた槍に胴体を貫かれていた。
無線機からは応答を求める声が虚しく鳴いている。
胴体に深く突き刺さったやりは貫通しており、刺さった時のあまりの衝撃により心臓を中心に胸に鉄球のような穴が開いて肉を焦がしていた。
既にその警備員は絶命していたことは明らかだった。
警備員が呆然としつつも周囲を見回すと、巨大なシャッターの四角の下部に大きな穴が開けられていた。

「おい――」

眼前に広がる光景を受け止められず、遺体と化した同僚に近づこうとした警備員の言葉もその後に続くことはなかった。
シャッターの奥側から生じる爆発。爆風の熱により警備員は命ごと蒸発し、その肉体は瞬く間に粉微塵へと還った。
その衝撃でシャッターはもとあった位置から吹き飛ばされ、ついにその奥に眠っていた者を阻むモノはなくなった。

生命活動を終えた二人のNPCを後目に、噴煙の中からカツカツと靴音を鳴らしながら保存室を出る二つの影があった。
一つは、2足歩行の黒いハリネズミだった。これは比喩でもなんでもなく、ハリネズミシューズを履き、人間と同じように歩いているのだ。
もう一つは、マントと大剣を携えた青年だった。しかし、耳は尖っており、少なくとも人間でないことをうかがわせる。
二人ともこの世の全てを憎んでいるかのような表情で、ただ前を見据える。

「…行こう、アヴェンジャー。マリアの願いを叶えるために」

黒いハリネズミであるシャドウ・ザ・ヘッジホッグが自身のサーヴァントに向けて言う。
先ほど警備員を討った槍は、シャドウによるものである。
冬眠制御装置から目覚めたばかりだというのに、その実力は余すことなく発揮されていた。

「その望み、しかと聞き入れた。この聖杯戦争、何としてでも勝つぞ。我が望みのためにも…」

ピサロ――否、「デスピサロ」はそれに応じた。
それは幾度か人間とも協力したことのある魔剣士ではなかった。
シャドウの願いに引きずられ、人間を根絶やしにすべく活動していた魔族の王として現界したピサロの姿であった。

「この星に住むすべてのものに」
「欲深く身勝手な人間どもに」
「「復讐を」」

それと同時に、シャドウは片手に持っていた宝石――カオスエメラルドを掲げる。
そして「カオスコントロール」と叫ぶと、シャドウとデスピサロは眩い光に包まれ、何処かへと消えた。
シャドウの脳裏には姉のように接してくれたマリアの姿が、デスピサロの脳裏には今は亡きロザリーの姿があった。


967 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:09:50 bB1ItZnk0
【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

【パラメータ】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運E 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
復讐者:A(A++)
復讐者のクラススキル。
復讐の対象となる者を前にした時、憎しみにより己の魔力を本来の値以上に増加させる。
生来の仇敵のみならず、その復讐対象に連なる者、単に自らを負傷させる・不利な状況に追い込む等した相手に対してもわずかながらに効果を発揮する。
デスピサロの復讐の対象は『人間』であるため、多くの相手が復讐の対象となる。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

忘却補正:-(A+++)
デスピサロにおける忘却補正は、「忘れられた」ではなく「忘れる」ことによるもの。
デスピサロが最愛の恋人のことをも忘れ、復讐のためにすべてを捨て去った時、このスキルは真価を発揮する。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

自己回復(魔力):A+(A+++)
異形と化したデスピサロが、幾度ともいえる自己回復と変身を経て導かれし者たちを苦しめた逸話もあり、憎しみを魔力に変えたかのように毎ターン魔力を大幅に回復する。
その回復量はマスターとカオスエメラルドによる魔力のバックアップを抜きにしても十全な戦闘力を発揮できるほど。
実質的に単独行動スキルを有しているといっても過言ではない。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

【保有スキル】
魔王:A
魔に魅入られた者達を率いて人間を脅かす悪の象徴であり、それらを統べる長たる者。
人間の英霊に与えられる魔王スキルとは違い、生前から魔王として在った者に付与されるスキル。
「デスピサロ」として召喚されているため、「ピサロ」の時と比べてランクが著しく上がっている。
デスピサロは魔王ではなく「魔族の王」とされていたが、それでも名だたる魔王に勝るとは劣らぬ格を持つ。
魔族であるため、呪いや呪術、反英雄のスキル・宝具によるバッドステータスなどの影響を全く受けない上、
対象が人間ならば敵の全パラメータを強制的に1ランクダウンさせ、威圧によるバッドステータスを与え、あらゆる判定におけるファンブルの確率を上昇させる。
ただし、世界を救うべく戦った「勇者」にまつわる逸話を持つ者はこの効果を撥ね退けることができる。

カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる。
かつて配下の奸計により自滅した逸話を持つことからランクが下がっているが、それでも魔物達からは多大な信頼を寄せられていたため高ランクを維持している。

魔術:A
呪文を幅広い分野において最高水準で習得している。
損傷を完全回復する「ベホマ」、敵のプラスステータスを全て打ち消す「いてつく波動」、地獄より雷を呼び寄せる「ジゴスパーク」など、強力なものを取り揃える。

魔物作成:A
魔物たちを率いており、デスピサロが現れた場所には魔物が出没するようになったという逸話からくるスキル。
かつて自身の配下であった魔物を召喚することができる。


968 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:11:12 bB1ItZnk0

【宝具】
『進化の秘法』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
魔族に伝わる秘法。
人や動物、魔物などの生物を従来の成長の過程を無視して進化させる力を持ち、全ての災いの元として天空人に危険視されていた。
デスピサロは愛する者を失い、この秘法によって憎しみ以外のすべてを失った異形の怪物へと変貌して導かれし者たちと相対した逸話から、この宝具を持つ。
デスピサロはこの秘法によって異形の怪物へと変身することができ、上記のパラメータとは比べ物にならない力を得ることができるが、
一度変身すれば全ての記憶を失い、暴走してしまう諸刃の剣。
異形と化した『デスピサロ』はあらゆる傷を瞬時に再生して不死身の如き耐久力を得る他、『進化』の概念によって受けた攻撃に対し耐性を得ることができる。
一方で、この『進化の秘法』は他者にも使用することができ、動物に知性を与えて会話を可能にしたり人間を怪物に変えたりできる他、
サーヴァントに使用すると無辜の怪物スキルを強制的に付与することもできる。

【weapon】
・まかいのつるぎ、まかいのよろいといった魔界にまつわる武具

【人物背景】
ロザリーヒルに住んでいた魔族で、本来の名前は「ピサロ」。
行く宛のなかったエルフの娘に「ロザリー」という名前を与え2人で暮らしていたが、
ルビーの涙を流すエルフであるロザリーはしばしば一攫千金を狙う人間に狙われており、
その影響もあったのか人間たちを滅ぼして世界を支配する野望を抱いてロザリーヒルを飛び出し、「デスピサロ」と改名した。
世界を魔族のものにするべく、魔物たちを従え地獄の帝王の復活のために奔走し、人間を根絶やしにする決意を固める。
一方で、ロザリーに対しては優しい姿を見せており、彼女を守るために塔を建造し魔物たちに守護させ、人間たちのエルフ狩りから守っていた。
しかしその後、ロザリーを人間に殺されたことで憤怒と狂気にかられ、様々な研究・実験の末に完成させた進化の秘法を自らに施す。
比類なき強力な肉体を得たが、精神がそれに耐えられずに記憶は失われ、人間を根絶やしにするという憎悪のみが残った怪物へと変貌してしまった。
最終的には、死闘の末導かれし者たちによって倒された。

アヴェンジャーの他、セイバークラスとしても現界可能で、セイバーの場合は真名は「ピサロ」となる。
しかし、「人類に復讐する」というシャドウの願いに引きずられた結果、セイバーではなくアヴェンジャーに、
「ピサロ」ではなく人間に憎悪を抱いていた「デスピサロ」としての側面が反映されて召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
人類どもを根絶やしにする。


969 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:12:26 bB1ItZnk0
【マスター】
シャドウ・ザ・ヘッジホッグ@ソニックアドベンチャー2バトル

【マスターとしての願い】
マリアの願いを叶える。
この星に住むすべてのものに、復讐を。

【weapon】
・ホバーシューズ
シューズの裏に穴が開いており、そこから噴射される空気の力で地面を滑走するように走ることができる。
そのスピードはかの青いハリネズミに勝るとも劣らず、マッハ2で移動することも可能になる。
他にも空中でホバリングをしたり、急上昇・急下降したり、ジェットから吹き出る炎で攻撃できるなど応用も効く。
なお、ホバーダッシュのみでも相応な俊足を持つと思われる。

・カオスエメラルド
1つ1つに膨大なエネルギーが宿った世界に7つあると言われる宝石。
その1つをシャドウは元の世界から持ち込んでいる。
そのエネルギーは魔力に変換でき、魔力炉としても優秀だがその力を利用して後述のように時空を歪めることができる。

【能力・技能】
・銃火器の扱いに長け、徒手格闘もそこそこ出来る。

・カオススピア/カオスランス
エネルギーを光の矢に変えて相手を貫く。

・カオスブラスト
カオスエメラルドのエネルギーを蓄積し、一気に放出することにより発生する爆発攻撃。
周囲一帯の全てのものを吹き飛ばす。

・カオスコントロール
時空を歪めて自分以外の時の流れを遅くする。完全に時を止めることも可能。
その間、相対的に速く移動でき、物質の質量や耐久値を無視してすり抜けることができる。 
客観的に見れば尋常でないスピードで移動しているように見え、テレポートしたように見える。
時を止めた場合は動きを認識することは不可能。

・スーパー化
ソニックのスーパー化と同様、7つ全てのカオスエメラルドのエネルギーを最大限まで引き出すことにより、体中が銀色(に近い金色)に輝くスーパーシャドウとなることができる。
ソニックと同様の重力に逆らった飛行能力や、光速での移動能力を得ることができ、強力なサーヴァントをも圧倒することが可能になる。
しかし、シャドウはカオスエメラルドを1個しか持ち込んでいないため、事実上スーパーシャドウになることは不可能。
また、ソニックとの因縁がない時期から参戦しているため、スーパー化する発想に至ることすら難しいかもしれない。

【人物背景】
「プロフェッサー・ジェラルド・ロボトニック」によって作られた人工生命体であり、究極生命体。
ハリネズミを擬人化したような容姿をしている。性格は危険過ぎるほど一途で純粋。
世界最速の青いハリネズミ・ソニックと酷似した外見をしており、違いは胸毛があることと黒いことくらい。
究極生命体というだけあってその戦闘能力はずば抜けており、銃弾を受けても弾いてしまうし、神経ガスの中でも平然と動ける。
普段からカオスエメラルド頼みの戦法を使うが、上記のように格闘関連は結構何でも卒なく出来る。
普段履いているのは靴底に4筒のジェットを仕込んでいるホバーシューズ。
高速移動はこの靴から噴出されるジェットの力でスケートの要領で滑走している。
そのスピードは高速移動中のソニックに追いつくほど。

スペースコロニー『アーク』で生まれ育ち、プロフェッサーの孫娘のマリアとは実の姉弟のような関係だった。
しかし、ある一件でスペースコロニー封鎖を断行した軍によって、マリアを失ってしまう。
マリアと離れる間際にマリアが言った 「私のかわりに、いつか必ず、あの星に住むすべての人達に…」
という言葉を復讐を願うものだと信じ、聖杯でそれを叶えることを望む。
カオスエメラルドを盗み出し、ソニックと始めて相対するまでの間から参戦。
そのため、ソニックとの面識はない。

スノーフィールドにおける役割は研究所の最高機密兵器…だったが、脱走したために住所不定のホームレス。
後のシリーズにもシャドウは登場するが、ソニックアドベンチャー2の内容をメインにしているので把握はそれだけでOK。


970 : ◆TE.qT1WkJA :2016/12/22(木) 23:15:25 bB1ItZnk0
以上で投下を終了します。

なお、デスピサロのステータスシートの作成につきましては、「Gotham Chalice」の◆zhWNl6EmXM氏のジャスティス、および「第二次二次キャラ聖杯戦争」の◆zOP8kJd6Ys氏のバーンのステータスシートを参考にさせていただきました。
ありがとうございました。


971 : ◆DIOmGZNoiw :2016/12/23(金) 01:49:59 n5x/gphc0
拙作、フランドール・スカーレット&バーサーカーを再度wikiにて修正させていただきましたので、この場を借りて報告させていただきます。
具体的には、キバへの変身と戦闘自体は渡の意思で行えるものの、フランに「暴走しろ」と命じられれば確実に暴走する、という形に修正させていただきました。
それに伴い、後半の本文の修正と、宝具説明の修正を行っていますが、おおまかな流れは今まで通りです。


972 : ◆VJq6ZENwx6 :2016/12/23(金) 23:12:41 aZifQwxI0
こちらもwikiにて拙作、ホル・ホース&アサシンにて加筆、修正を加えました
具体的には状況説明を兼ねたホル・ホースが記憶を取り戻すまでも経緯、
アサシンに対するスタンスの明確化のための本文修正、
ステータスの修正、既存の宝具の説明追加とスキル・宝具の追加になります。


973 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:39:36 a9R/3FGs0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


974 : 予算の少ない聖杯戦争 ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:40:34 a9R/3FGs0
男は、真面目で誠実だった。
だが同時に、バカで好色だった。
ふとしたきっかけで女遊びを覚えた男は瞬く間にのめり込み、多額の借金を抱えることになってしまった。


◆ ◆ ◆


その朝、彼は自宅である狭いアパートで寝ていた。
彼を眠りから呼び覚ましたのは、ドアをけたたましくノックする音だった。
飛び起きた彼は、すぐに何が起きているのか理解する。
逃げ出したい、という気持ちはある。
だがなまじ性根が真面目であるがゆえに、それができない。
男はノロノロと玄関に移動し、扉を開ける。

「おう、素直に出てきたか。そこは褒めてやるよ」
「ブルアイランドさん……」

そこに立っていたのは、彼が金を借りている金融会社の社長だった。

「それじゃあ貸した金、さっさと返してもらおうか」
「もう少し、もう少し待ってください。
 明後日になれば給料が入るんです!」
「先月もそう言ってたよなあ。だから俺も待ってやったんだ。
 だがてめえは、入った給料を全部女に貢いじまったじゃねえか。
 同じ言い訳が二度通用すると思ってるのか?」
「先月は仕方なかったんです! あの子を指名してあげないと、店をクビになるかもしれなくて……」
「やかましいわ!」

男を突き飛ばし、社長はずけずけと部屋の中へ足を踏み入れる。

「現金がないなら、少しでも金になりそうなものをもらっていくぞ。
 ん? なんだこりゃ……」

社長が見つけたのは、部屋の隅で埃をかぶっていた棒状の物体だった。
よく見ればそれは、この安アパートにはまるで似合わない刀剣だった。

(なんだ、あの剣は……。あんなもの、私の部屋にあるはずが……。
 いや、違う。あれは私が、ずっと愛用してきた……)

男の脳裏に、今まで失っていた何かがよみがえってくる。

「美術品か? まあ、こいつの持ち物にしちゃ上等……」
「うおおおおお!!」
「なっ!」

突如雄叫びを上げながら突進してきた男に、社長は一瞬ひるむ。
その隙に男は剣を奪い取り、鞘から抜き取る。
そして驚愕の表情を浮かべる社長に向かって、刃を振り下ろした。


975 : 予算の少ない聖杯戦争 ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:41:38 a9R/3FGs0


◆ ◆ ◆


(思い出した……。私は、勇者ヨシヒコ!)

男……ヨシヒコは、裏路地を走っていた。

(社長が目覚めれば、血眼になって私を探すだろう……。
 もうあの家には戻れんな……)

ヨシヒコに斬られた社長だが、彼は死んだわけではない。
ヨシヒコが用いる剣は、「いざないの剣」。
斬った相手を眠らせ、命を奪うことなく制する剣である。

(それはそうと、私はいったいなぜこんなところで平凡な労働者として働いていたのだ……。
 いや、私の頭の中に流れ込んできた情報で「聖杯戦争」とやらに巻き込まれたというのはわかるのだが……。
 あまりに情報量が多すぎて、すぐには理解できん……)

改めて言うが、ヨシヒコはバカである。
与えられた膨大な知識を、即座に理解することなど不可能であった。
ましてや、走りながらなのだからなおさらである。

そうこうしていると、彼の眼前に突然白いトランプが降ってきた。
それはまばゆい光を放ち、人の形に変化していく。

「な、なんだ!?」

敵襲の可能性も考え、剣に手をかけるヨシヒコ。
やがて光が消えたとき、そこには一人の青年が立っていた。

「サーヴァント、キャスター。召喚に応じて参上した。
 君の力になろう」
「あ、あなたは……」
「ん?」

召喚されたキャスターの姿を見たとき、ヨシヒコの警戒心は驚愕に吹き飛ばされていた。
とはいえ、キャスター自身に見覚えがあったわけではない。
彼が反応したのは、その服装だ。

「その格好、普段の私にそっくりだ……。
 もしや、あなたも勇者なのですか!」

そう、紫のターバンにマントというキャスターの姿は、元の世界で冒険していたときのヨシヒコとほとんど同じものだった。
ちなみに、今のヨシヒコの服装はよれよれのTシャツに短パンというものである。
何せ寝起きの状態で家を飛び出してきたので仕方ない。

「いやあ、勇者は僕じゃないよ。僕の息子さ」

ヨシヒコの問いかけに対し、キャスターは柔和な笑みを浮かべながら答える。

「息子……? つまりあなたは、勇者の父親ということですか」
「そう、僕は勇者の父親。グランバニア王で、モンスター使い。
 でも一番気に入ってる肩書きは、ただのさすらいの旅人。
 僕はリュカ。よろしくね」


リュカが仲間になった!(ファンファーレ)


976 : 予算の少ない聖杯戦争 ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:42:52 a9R/3FGs0

【クラス】キャスター
【真名】リュカ(主人公)
【出典】ドラゴンクエストV 天空の花嫁
【性別】男
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
陣地作成:―
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
リュカは全盛期を流浪の旅人として過ごしたため、このスキルは機能していない。

道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成可能。
リュカは本来そういった能力を持たないが、クラス補正により薬草や毒消し草などの安価な消耗品なら作ることができる。

【保有スキル】
カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
Bランクであれば国を率いるに十分な度量。

魔術:B
基礎的な魔術を一通り修得していることを表す。
リュカは真空系の攻撃呪文と、回復呪文を主に用いる。

友誼の証明:C
敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。
聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。


【宝具】
『ドラゴンの杖』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:100人
龍の力が込められた杖。
打撃武器として振るえば、破格の破壊力となる。
また真名を解放すれば、一定時間自らの姿を龍に変えることができる。
ただしその間は「狂化」に近い状態となり、「敵を攻撃する」以外の行動が取れなくなる。
いちおう、マスターが令呪を使えば、それ以外の行動も可能になると思われる。

『集え、愛を知る魔物よ(リュカズ・ワンダーランド)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-75 最大捕捉:80人
固有結界。
広大な草原に生前に仲間にしたモンスターたちを召喚し、一斉攻撃を仕掛ける。
なおキラーパンサーのみ、固有結界を発動しなくても単独で召喚が可能である。

【weapon】
本来なら伝説級の装備をいくつも持つが、今回はクラス制限もあってドラゴンの杖しか持ち込めていない。

【人物背景】
グランバニア国の王子として生を受けた男。
しかし生まれた直後に母・マーサがさらわれ、それを探す旅に出た父・パパスと共に各地を放浪していたため自分が王子だということは知らずに育った。
成長した後、グランバニアの王位を継ぎ、母をさらった魔王ミルドラースを討ち取った。
目の前で父を殺され、その仇に拉致され10年以上の間奴隷として過酷な労働を強いられる、
呪いにより8年間を石像として過ごす、ようやく再会できた母をその直後に殺されるなど、
その人生はあまりに不幸続きなことで知られている。

【サーヴァントとしての願い】
一人でも多くの人を助けたい

【基本戦術、方針、運用法】
クラススキルがほぼ死んでいるため、典型的なキャスターとしての運用は事実上不可能。
前線でバリバリ戦っていくことになるだろう。
幸い強力な宝具を二つも持ち、本人の戦闘力も悪くないため真っ向勝負に不都合はない。
またそのスキル構成から、仲間を集めての集団戦に向いているといえる。


977 : 予算の少ない聖杯戦争 ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:43:55 a9R/3FGs0

【マスター】ヨシヒコ
【出典】勇者ヨシヒコシリーズ
【性別】男
【令呪】スライムのシルエット(とんがり、右半分、左半分でそれぞれ一画)

【マスターとしての願い】
巨乳のお姉ちゃ……ゲフンゲフン
特になし

【ロール】
多額の借金を抱えた、肉体労働者

【weapon】
「いざないの剣」
勇者の証である剣。
斬った相手を傷つけず、深く眠らせる。

【能力・技能】
幾度も魔王を倒した勇者であり、戦闘力は相応に高い。
……はずなのだが、雑魚モンスターに苦戦することもあり、その戦闘力は変動が激しい。
根が単純であるため、デバフ系の魔法・技にはほぼ100%かかる。
しかしバカが幸いして、相手が一般常識を持っていることを前提とした催眠術にかからなかったこともある。

【人物背景】
カボイの村で生活していた、正直者で素直な青年。
岩に刺さっていた「いざないの剣」を抜いた(というか勝手に抜けた)ことで勇者とされ、魔王打倒のために旅立つことになる。
紛れもない善人ではあるのだが「バカすぎて空気が読めない」「目の前の問題に気を取られすぎて、最終目標を放り出す」「巨乳に弱い」など
数々の問題点も抱えている。

今回は第2作「悪霊の鍵」終了後からの参戦。

【方針】
異世界だろうと、勇者のやるべきことは変わらない。
悪を倒し、平和を取り戻す。
(まだ聖杯戦争については、4割くらいしか理解していない)


978 : ◆NIKUcB1AGw :2016/12/23(金) 23:45:06 a9R/3FGs0
投下終了です


979 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:01:21 PI6szf2U0
投下します。


980 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:04:34 PI6szf2U0
 
「アアアアアアアアアア!!!」

 肉の焼けこげるにおいがする。

「止めろヤメロやめろやめらァァァアァアアアアアアア!!!」

 肉の焼けこげるにおいがする。

「バァァサァァァカァァァァァ! バァサァカァは何をしていアアアアアアアアアアアアアア!!」

 肉の焼けこげるにおいがする。
 それから、悪が焼けこげるにおいがする。

 解説をしなければなるまい。
 まず、時間は夜である。
 月も雲に隠れ、暗闇に閉ざされた世界である。
 場所はスノーフィールドである。
 スノーフィールドの、薄汚い路地裏である。

 ――――――そして状況は、惨劇である。

「…………! ………………!!」

 叫んでいた男は、もはや言葉らしい言葉を発することができないでいた。
 彼はいわゆる人外であり、非常に高い生命力を持っていた。
 肉体を真っ二つにされても死なないし、脳や心臓を撃ち抜かれても即死はしないほどに。
 それが、彼にとっての不幸であった。

「……………………」

 彼に馬乗りになっている男は、無言であった。
 無言で、人外を焼いていた。


 ――――――――否。焼いている、という表現は正しくない。


 彼の手にはアーク切断機がある。
 溶接工が金属を溶融切断するために用いる道具である。
 彼の手には犬の死体がある。
 何の変哲もない、ただひたすらに無慈悲な犬の死体である。

 アーク切断機は人外の顔を溶かしていた。
 犬の死体は、男の顔に接着されていた。


 すなわち――――――――――男は人外に、犬を溶接していた。


 誰あろうこの男こそ。
 他に並ぶものなど、該当するものなどいないこの男こそ。
 かの犯罪都市ゴッサムにて、路地裏で悪人に犬を溶接し続ける無慈悲なヒーロー。

                犬溶接マン
 ――――――――――Dog Welderに他ならない。


 このヒーロー……ヒーローである。彼が犬を溶接するのは悪人だけだ……ヒーローは、聖杯戦争に巻き込まれていた。
 罠にかけた犬がくわえていた白いトランプに触れ、スノーフィールドに導かれたマスターだ。
 その証拠に、彼の象徴たる溶接マスクには三角の令呪が刻まれている。

 となれば当然、彼が犬を溶接している人外もまた、聖杯戦争の参加者である。
 彼は魔獣の類をサーヴァントとし、NPCを襲って魂喰らいを行おうとし……そこを犬溶接マンに捕捉され、襲撃されたのである。
 死ぬに死ねない不死身性のせいで、彼は延々と顔面をアーク切断機で焼かれている。
 彼の顔面には、既に三体の犬の死体が溶接されていた。
 おそらく、彼が死ぬまで記録は伸びるだろう。おぞましい職人芸である。
 人外もマスターだ。
 ならばサーヴァントの助けがあるはずで、なぜそれが無いのかといえば――――――――


981 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:05:56 PI6szf2U0


  ◆  ◇  ◆ 


「――――エヤッ!」
「■■■■■ーーーーッ!?」

 気合一発、バーサーカーが地面に叩きつけられる。
 バーサーカーは数多の人を喰らい、数多の惨劇を引き起こした魔獣である。
 狂戦士として顕現し、人外のマスターと共にまた大いに人を喰らおうとした怪物である。
 それが今、一騎の赤いサーヴァントに蹂躙されている。

「エヤッ!」

 再び、掛け声とともに赤い男が襲いかかってくる。
 その男はサーヴァントである。
 その男は赤い。
 その男は人型だが、どうも人間のようではない。
 その男は赤い。
 その男はまともな言語機能を有していないようである。
 その男は赤い。
 その男は無慈悲だ。
 ――――そして、その男は赤い。血のように。

「エヤッ!」

 倒れ伏す魔獣に対し、赤い男はニードロップを仕掛けた。
 バーサーカーはそれを回避できず、臓腑から血をこぼす。
 赤い男もまた、自分と同じバーサーカーのようだ、と魔獣は冷静な部分で判断した。
 だが同時に、時折気配を絶ったかのように姿を消し、死角から攻撃を仕掛けてくる。
 アサシンの素養も持つのか……いずれにせよ、マズい相手であると判断した。

「エヤッ!」

 一つ覚えのように、赤い男が掛け声と共にマウントをとって拳を叩きつけてくる。
 バーサーカーは必死に抵抗した。
 防御し、相手の体を掴み、引き倒して、また引き倒されて。
 ……どれほどの時間、そうして戦っているのだろう。
 泥沼の戦いに時間の間隔は曖昧になり、疲労と負傷が判断力を低下させる。
 追い詰められている。
 この思考力の低下さえ、敵の術中であるとバーサーカーは理解する。
 再度、赤い男がマウントを取った。
 腕を振り上げる。
 大振りだ。ガードは間に合う。
 いや、だが、待て。
 その手の形は、拳を握るというにはあまりに奇妙で――――


「――――――――レッドアロー!」


 ――――――赤い男の高らかな叫びと共に、その手には赤い槍が握られていて。
 それが自らの口中に滑り込んで突き刺さる激痛を理解して―――――バーサーカーは消滅した。


982 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:05:56 PI6szf2U0


  ◆  ◇  ◆ 


「――――エヤッ!」
「■■■■■ーーーーッ!?」

 気合一発、バーサーカーが地面に叩きつけられる。
 バーサーカーは数多の人を喰らい、数多の惨劇を引き起こした魔獣である。
 狂戦士として顕現し、人外のマスターと共にまた大いに人を喰らおうとした怪物である。
 それが今、一騎の赤いサーヴァントに蹂躙されている。

「エヤッ!」

 再び、掛け声とともに赤い男が襲いかかってくる。
 その男はサーヴァントである。
 その男は赤い。
 その男は人型だが、どうも人間のようではない。
 その男は赤い。
 その男はまともな言語機能を有していないようである。
 その男は赤い。
 その男は無慈悲だ。
 ――――そして、その男は赤い。血のように。

「エヤッ!」

 倒れ伏す魔獣に対し、赤い男はニードロップを仕掛けた。
 バーサーカーはそれを回避できず、臓腑から血をこぼす。
 赤い男もまた、自分と同じバーサーカーのようだ、と魔獣は冷静な部分で判断した。
 だが同時に、時折気配を絶ったかのように姿を消し、死角から攻撃を仕掛けてくる。
 アサシンの素養も持つのか……いずれにせよ、マズい相手であると判断した。

「エヤッ!」

 一つ覚えのように、赤い男が掛け声と共にマウントをとって拳を叩きつけてくる。
 バーサーカーは必死に抵抗した。
 防御し、相手の体を掴み、引き倒して、また引き倒されて。
 ……どれほどの時間、そうして戦っているのだろう。
 泥沼の戦いに時間の間隔は曖昧になり、疲労と負傷が判断力を低下させる。
 追い詰められている。
 この思考力の低下さえ、敵の術中であるとバーサーカーは理解する。
 再度、赤い男がマウントを取った。
 腕を振り上げる。
 大振りだ。ガードは間に合う。
 いや、だが、待て。
 その手の形は、拳を握るというにはあまりに奇妙で――――


「――――――――レッドアロー!」


 ――――――赤い男の高らかな叫びと共に、その手には赤い槍が握られていて。
 それが自らの口中に滑り込んで突き刺さる激痛を理解して―――――バーサーカーは消滅した。


983 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:07:09 PI6szf2U0


  ◆  ◇  ◆


「嘘、だ、バーサーカーが、死ぬ、なんて……」

 ……人外が呆然と、うわごとのようにつぶやく。
 魔力のラインが途切れ、自らの相棒が消滅したことを彼は理解した。
 そして次の瞬間、五体目の犬が彼の顔面に溶接されて。
 バーサーカーの消滅に遅れて三分、人外は意識と命を手放した。

 …………後に残るのは、犬溶接マンのみである。
 彼は人外が沈黙したことを確認し―――― 一応念入りに六体目も溶接してから、人外の上からどいた。
 同時に、背後に佇む赤い人影を認識する。
 赤い男――――アサシンのサーヴァント、レッドマン。
 彼は犬溶接マンのサーヴァントであり、犬溶接マンは彼のマスターである。
 二人のヒーローは向き合った。

「………………」
「………………」

 無言。
 表情一つ変えず、ただ向かい合う。
 ……まぁ、片方は溶接マスクに顔を隠し、表情をうかがうことはできないのだが。
 とにかく、二人のヒーローは向かい合う。
 二人の狂人は向かい合う。
 二人は主従である。
 だが、お互いにそれを正確に認識しているかは定かではない。
 ともすれば、お互いにここで相手を悪と断じて殺しあう可能性すらある。
 それほどまでに、二人は狂っている。

 犬溶接マンは狂っている。
 悪人に犬を溶接するという異形の戦型で犯罪都市を駆け抜けたこの男は、どうしようもなく狂っている。
 そして、アサシンも狂っている。
 彼の場合はもう少し単純だ。
 彼の保有するスキル―――――『二重召喚:B』の存在を考えれば。
 一部の英霊が保有する、複数のクラスの特性を同時に持って顕現するためのスキル。
 つまるところ、彼はアサシンクラスで召喚されながら、バーサーカークラスの能力も内包していた。
 その狂化のランクはそう高くないが、狂っている事には変わりない。
 彼は怪獣を無慈悲に殺す、赤い殺戮者の側面を色濃く持って現界している。
 彼の中で“怪獣”の定義はあまりに曖昧で……

 ……だからやはり、二人は向かい合っている。
 次の瞬間には殺し合いが始まるかもしれないような淡々さで、向かい合っている。
 どれほどそうしていただろう。
 月の光が雲の切れ間から路地裏に差し込み……

「………………」
「………………」

 …………二人の狂人は、静かに踵を返してその場を去った。
 別々の方向に、である。
 犬溶接マンは次の悪人を探しに行った。
 アサシンは次の怪獣を探しに行った。
 二人の狂人は、ヒーローである。
 そして、管轄が違う。
 だから二人はお互いに関与することなく、自分の獲物を探しに夜のスノーフィールドを彷徨う。
 協調性とか、戦略とか、そういった考えは彼らの中にはなかった。
 もしかすると犬溶接マンが窮地に陥れば、なんらかの繋がりや令呪によってアサシンが呼び出されることもあるかもしれない。
 ただ、それでも――――――――二人の道は別の場所にある。

 一人の狂人は、悪人に犬を溶接しようと思った。
 一人の狂人は、怪獣に決闘を挑み退治しようと思った。


 ――――――――――――つまり、二人の狂人は聖杯戦争に参加した。


984 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:08:45 PI6szf2U0

【CLASS】アサシン

【真名】レッドマン@レッドマン

【属性】中立・狂

【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B

【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

狂化:D
 理性と引き換えに、筋力と敏捷のステータスをランクアップさせる。
 アサシンは正気と善性と言語能力の大半を失っている。

【保有スキル】
神出鬼没:C
 どこへでも現れ、敵と戦うスキル。
 敵と戦うためであれば疑似的な瞬間移動が可能。
 戦闘中でも使用可能だが、その場合は移動できる距離は極めて短くなる。

無辜の罪人:A
 観測と信仰の偏りにより、アサシンは本来持つ超常の能力をほぼ失っている。
 本来ならば40mはあったはずの身長は180cmに抑えられ、飛行能力、光線技、超耐久なども失われた。
 反面、活動時間が短い、寒さに弱いなどの弱点も失われている。
 現在のアサシンは超常の能力を持つ英雄ではなく、一介の殺戮者に過ぎない。

怪獣退治の専門家:A
 怪獣に対する膨大な知識と戦闘経験からくる戦闘術。
 怪物の類と戦う際に有利な補正がかかる他、戦闘続行、心眼(真)などのスキル効果を兼ねる。
 組み技や打撃で相手を弱らせ、確実に大技を叩きこんでトドメを刺すことこそ、怪獣退治の基本である。

二重召喚:B
 アサシンとバーサーカー、両方のクラス別スキルを獲得して現界する。
 極一部のサーヴァントのみが持つ稀少特性。

【宝具】
『赤い殺戮劇場(レッド・ファイト)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:5人
 アサシンの高らかな真名解放と共に顕現する、殺戮空間。
 この空間ではどんな存在であれ「退治される怪獣」に堕し、交戦を余儀なくされる。
 敵対者に怪獣属性を付与し、それによって対象が持つ神性や聖性に由来する能力を停止・劣化させる。
 この空間で頼りになるのは人としての技術、純粋な身体能力、そして怪物性に由来する能力のみ。
 いわゆる固有結界に分類される宝具であり、維持可能な時間は極めて短い。
 例えどんな背景や人格を持つ怪獣であっても、一切の容赦なく殺戮してきた赤い殺戮者のための独壇場。

『赤い殺戮映像(フィルムスタート)』
ランク:D 種別:対衆宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 アサシンが過去に行った戦闘を、レンジ内の人間に「夢」という形で見せる対衆宝具。
 これによって時間の経過ごとにアサシンの恐怖が周知されていき、アサシンへの信仰が高まっていく。
 高まった信仰は魔力となってアサシンに還元され、活動を補佐する。
 また、戦闘時は対峙した者にこの映像をフラッシュバックさせ、「恐怖」のバッドステータスを与える。
 基本的に映像は生前の戦いが流されるが、現界後に行われた戦闘を流すことも可能。

【weapon】
『レッドナイフ』
 切れ味鋭い大ぶりのナイフ。
 多数保有しており、投擲に用いることもあれば、二本同時に構えることもある。

『レッドアロー』
 十字架の意匠を持つ槍。
 アローと名前がついているがどう見ても槍。恐らく厳密には投げ槍。
 手に持っての刺突はもちろん、投擲による攻撃にも用いる。
 基本使い捨てだが、定期的に補充される。


985 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:09:07 PI6szf2U0

【人物背景】
 赤いアイツ。赤い通り魔。
 宇宙の過去一万年間のあらゆる怪獣関連事件と怪獣名を暗記している、怪獣退治の専門家。
 本来は平和を愛する心優しい青年で、黙々と怪獣と戦い続けたのだが……
 ……その戦闘の残虐ぶりに、見るものから「通り魔」「サイコパス」「スナッフムービーにしか見えない」と恐れられた。
 アサシン・バーサーカークラスとして現界した時、レッドマンはその「赤い通り魔」としての側面を持って召喚される。
 さらに今回は二重召喚によってその二つのクラスが重ね合わさっているため、より無慈悲な殺戮者としての側面が強調された。
 その残虐性・異常性は枚挙に暇がなく、

 ・突如として怪獣(何もしていない)の前に現れて攻撃を開始する。
 ・逃げまどう怪獣を追い回し、執拗に攻撃を加える。
 ・マウントポジションを取り、執拗にレッドアローによる刺突を繰り返す。
 ・既に倒した相手の肉体にレッドアローを墓標の如く突き刺す。
 ・きちんと倒せているか入念に確認し、確認が完了すれば天高く腕を掲げる謎のポーズをとる。
 ・倒した相手を崖下に投げ捨てる。
 ・本来は「優しい」「善良」とされる怪獣であっても容赦なく攻撃する。
 ・顔面を地面に何度も叩きつけ、頚椎を圧し折る。
 ・執拗に顔面・口腔を攻撃する。

 など。
 恐るべき「怪獣退治の専門家」としてその名を馳せた。
 ちなみにいわゆる宇宙人。レッド星雲のレッド星の出身らしい。
 
【サーヴァントとしての願い】
 怪獣を全て退治する(※)。

 ※狂化の影響下にあるアサシンにとって、怪獣の定義はひどく曖昧なものである。


986 : Welcome back,MADMAN ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:09:40 PI6szf2U0

【マスター】
 犬溶接マン(ドッグ・ウェルダー)@HITMAN

【能力・技能】
 手にしたアーク切断機を用い、敵に犬の死体を(原型をとどめたまま)溶接することができる。
 ……意味がわからない事象だが、おそらく『そういう能力』なので仕方ない。
 敵に犬の死体を溶接することが犬溶接マンの保有する唯一絶対の攻撃方法である。
 当然だが、アーク切断機で顔面を熱された段階で大抵の敵は死ぬ。

【weapon】
『アーク切断機』
 アーク放電によって発生した熱を利用して対象物を溶融切断する道具。
 ……あくまで「切断機」であり、溶接棒などもないのにこれで溶接を行うのは本来不可能である。
 当然だが、人体に向けていいものではない。死ぬ。

『犬の死体』
 犬溶接マンが悪人に溶接する犬の死体。目が×マークになっててキュート。
 当然だが死体は使い捨てであり、犬溶接マンは野良犬を罠にかけて殺害・捕獲してこれを補充している。
 動物愛護団体にバレたら訴訟不可避。そもそもそういう問題でもないが。
 ちなみにただの犬の死体なので、これを溶接することによってなにかの効果を発揮することは一切ない。

『溶接マスク』
 本体。
 ……冗談ではなく、どうも呪いのマスクの類のようで、着用者を乗っ取って犬溶接マンにする効果を持つ模様。
 この犬溶接マンがこの呪いによって乗っ取られた存在なのか、あるいは彼の怨念(?)がマスクに宿っているのかは不明。
 いずれにせよ、もしも彼の死後にこの溶接マスクを被ってしまえば、第二の『犬溶接マン』が誕生する危険性が高い。

【人物背景】
 ゴッサムシティで活動するヒーロー。
 溶接工姿でアーク切断機と犬の死体を手に、ゴッサムの悪と戦う。
 ヒーローである。大事なことなので二回言った。分類でいえばヴィジランテ。
 世界有数の犯罪都市ゴッサムシティを拠点とするヒーローチーム、『セクション8』の一員。
 一言も言葉を発することなく、ただ黙々と悪人の顔面に犬を溶接する正義のヒーロー。ヒーローなんだってば。
 明らかに正気ではなく、個人の判別ができているかも怪しい。
 が、一応リーダーの命令に従う程度の理性はある模様。
 敵と見ればマフィアでも悪魔でも、かのスーパーマンと互角に渡り合った宇宙の賞金稼ぎでも容赦なく犬を溶接する。

【令呪の形・位置】
 溶接マスクの右上部分に『R』で三角。
 なぜ肉体でなくマスクに令呪が浮かんでいるのかはよくわからない。

【聖杯にかける願い】
 不明。
 そもそも聖杯戦争をちゃんと認識できているのかも不明。

【方針】
 悪人に犬を溶接する。


【基本戦術、方針、運用法】
 アサシンは怪獣にレッドファイトを挑む。
 犬溶接マンは悪人に犬を溶接する。
 以上。協調性や戦略は存在しない。交渉の余地はあるかもしれない。あるといいな。


987 : ◆uL1TgWrWZ. :2016/12/24(土) 04:10:03 PI6szf2U0
投下を終了します。


988 : ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:41:05 wCYDWP6Q0
投下させていただきます


989 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:42:11 wCYDWP6Q0


『彼は――――』


声がする。


『彼は、ダマーヴァンドの山の頂上に立ち、運命の矢を放つ準備をした。
 彼の名はアーラシュ。昇る太陽が彼の友。』


包み込むような懐かしい声だ。


『太守が、彼の勝利の歌を歌っている。』


温もりがある。


『彼の生涯の全てをもって、ただ一本の矢を放つ、強く純粋なるアーラシュ。』


背中に回された手の懐かしい温もりだ。


『二つの国が戦乱に巻き込まれた。
 彼は、その弓と矢をもって、戦乱から両国を解放した』


歌がある。


『すべての目が彼の行動に驚き、アーラシュの勇敢さは伝説となった。
 彼の放った矢は、最も疾き流星よりも速かった。』


寝物語に語られた懐かしい歌だ。


『その後、彼の姿を見たものはなく、彼の名だけが残った。』


その全てが失われたものだ。


『ジェイフン川の向こう側が、新たな境界となった。
 両国は、この透き通った川の周りに平和を築いた』


当然だ。


『彼こそは強く純粋なるアーラシュ。
 ――――孤独な戦士、獅子の如く勇敢な、アーラシュ』



その全てを、自らが捨て去ったのだから。






990 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:43:17 wCYDWP6Q0

夜明け前。
まだ太陽の光が差し込まぬ、暗闇の世界。
だのに、誰一人として眠りについているものは居ない。
何かを待ち望むように、ひたすらに空を眺めている。
この瞬間だけは、敵も味方もなく。
そう、国境すらもない。
国境は、今この瞬間に作られるのだ。
男も。女も。子供も。老人も。
疲れ果てた顔で、ただ、ある瞬間を待っている。

――――流星が連れてくる夜明けだけを待っている。

空に最も近いダマーヴァンド山の頂上で二人の男が立っていた。
神と袂を分かち、神の愛寵こそあれど人類が自立した時代。
そんな今の時代にあって、神代の残り香を持って生まれた二人。
かつて邪竜アジ・ダハーカを退治した勇者、その末裔でありペルシアの王マヌーチェフル。
そのマヌーチェフル王に使える一人の勇者であるアーラシュ。

アーラシュは、今、矢を放つ最期の瞬間を迎えようとしていた。
アーラシュにとってマヌーチェフル王は言葉では表せない感謝を覚えている。
王なくして、今のアーラシュはなかっただろう。
アーラシュは衣服を脱ぎ捨て、その鍛え抜かれた肉体を王の目に晒した。
褐色に染まったその肌には傷一つ無く、まるで絹のような手触りを連想させる肉体だった。

「私の身体には傷一つ無く、病に冒されたこともありません」

アーラシュは敬意を持って、王へと語りかける。
神からの寵愛。
その証明たる頑健なる肉体。
数多の戦場を駆け抜けても傷一つ無く、痩せた大地で十何年と過ごし続けても病魔を跳ね除ける。

「それでも、夜が明ける時にはこの五体は砕け散っているでしょう」

その寵愛の証の肉体すらも、今より行う偉業の前では耐えられまい。
神は其れを行なえと命じつつも、人の身に余る出来事だと戒め、五体を砕くだろう。
余りにも無情。
王は、其れを行なえと命じる他なかった。
だが、アーラシュは其れを良しとした。

「それでは、哀しすぎる」

自ら命じたというのに、マヌーチェフルは思わず言葉が漏らしてしまった。

「誰よりも平和のために尽力したお前が死なない限り、平和な世の中が訪れない。
 誰よりも平和を望んだお前が居ないことでしか、平和になった世界は完成しない。
 それは……それは、余りにも虚しい」

マヌーチェフル王とて、その言葉で何かが変わるとは思ってはいない。
アーラシュは、弓をひくだろう。
それはもはや確定した出来事だ。
この男が、選ぶ道は一つだけだ。
己の言葉で変えられる段階は、とうの昔に過ぎ去ったのだ。
だからこそ、己の気持ちを偽ることだけはしたくなかった。
アーラシュの死が望まれるのはその後のためであり、
アーラシュの存在が居なくなることを望んでいるものは居ない。


991 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:44:02 wCYDWP6Q0

「王よ、違います。
 私は嬉しいのです」

だのに、アーラシュは笑ってみせた。
そして、マヌーチェフルから視線を逸し、星空を眺め、そして、平野を眺める。
そこに存在する、同じく星空を見上げる数多の人々へと視線を向ける。
マヌーチェフルには見えぬものも、この男には見えている。
見えなくて良いものまで、見えてしまっている。
多くの人が、自らの死を待っていることまで見えてしまっている。
だというのに、アーラシュは笑っていた。

「どうして自分だけが特別なのかと、ずっと考えていました。
 以前は、世界を救うための、世界の端々を見通す目なのだと思っていました。
 愛すべき民を一人としてかばう盾になるための、傷一つ負うことなく病魔を退けられる身体なのだと思っていました」

知らぬことだった。
いつだってこの男は笑っていた。

「世界が救えると、本当に思い上がっていた。
 だが、結果はそうじゃなかった。
 何人も死んでいった、何人も殺していった」

この男の偉大な戦果が何人も救った。
しかし、それでもこの男を満足させることはなかった。

「自分の為すべきことというものが、わからなかった。
 だけど、今は違う。
 はっきりと口にできる」

やはり、笑った。
これこそが真の笑みなのだろうかとマヌーチェフルは思ったが、違う。
やはり、いつもと同じような笑みだった。
この男は、いつだってこのように笑う。

「この時のために――――俺は生まれてきたんだ」

その言葉に迷いはなく。
今、この場に迷いを抱いているのは自身だけであることにマヌーチェフルは気付いた。

「私は、お前に何かを与えてやりたかった」

マヌーチェフルは顔を苦悶に染めていた。
これが最後なのだ。
何も残したくはなかった。
聖なる献身を行おうとするこの男に伝えておきたかった。

「同じく、神代の残り香を色濃く宿した者として……お前に、友と呼べる存在を与えたかった」

お前は孤独だったが、それは望まれた孤独ではなかったということを。
誰もがお前の隣に立とうと願っていたことを。

「お前が最後の時に人生を振り返って、誰よりも満たされた人生だったと笑っていけるような。
 そんなものを、与えてやりたかった。
 お前の周りには愛が多くあったと、笑って逝って欲しかったのだ」

結局、アーラシュは孤独のままで死ぬ。
だが、アーラシュが皆を愛したように、皆がアーラシュを愛していた。
死への一矢を命じる王を怨むのは良い。
だが、お前の愛を、皆の愛を。
それだけは忘れて欲しくなかった。


992 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:44:33 wCYDWP6Q0

「王よ」

アーラシュは、笑ってみせた。


「貴方は、何も間違ってはいない」


その言葉が最後だった。
アーラシュはダマーヴァンド山の頂上にて、矢を番える。
マヌーチェフルは、背を向けて山を降りた。
アーラシュが唱える祝詞が聞こえる。
アーラシュを讃える歌が聞こえる。
マヌーチェフルは、山を降りた時。
やがて、一度だけ、空を見上げた。

――――虹色の光が、空を駆けていた。

マヌーチェフルは、振り返ったことを僅かに後悔した。
これで、全てが確定してしまった。
この日、この時に交わした言葉が最後の言葉だと思いたくなかった。
だから、振り返るつもりはなかった。
アーラシュの最期を見なければ、アーラシュは何処かで生きていると信じずに生きることも出来た。
だが、振り返ってしまった。
空を駆ける流星は百の言葉よりも雄弁に語っていた。
孤独な戦士、獅子の如く勇敢なアーラシュは。


――――戦いと平和の境界となる今この時に死んだのだ。






993 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:45:08 wCYDWP6Q0

刹那・F・セイエイが長い夢から目を覚ます。
長い、長い夢だった。
刹那にとって、悪夢とも呼べぬこともない夢だった。
それでも、一つの光景が目に焼き付いていた。
流星と、その後に続くような七色の光。
自身の過去ではない記憶から読み取った光景と。
自身の過去に焼き付いた光景が重なる。

「……ガン、ダム」
「よう、目が覚めたかい?」

思わず、刹那が一言漏らすと同じか、あるいはそれよりも早いか。
そんなタイミングで、一人の男が扉を開けた。
呼びかけたわけでもなければ、何か物音を立てたわけでもない。
ただ、目を開き、上半身を起こし、少しぼうっとしただけ。
眠っているのと、なんら変わりはない。
刹那が目を覚ましたと感じられる情報は、少なくとも扉の外からでは察することが出来ない。
だのに、ちょうどのタイミングで扉を開いた。
刹那が目をさましていると確信しているかの様子で。

「飯も出来てる、気が乗りゃ来ればいい」

快活な笑みを見せながらそう言って、扉を閉めた。
気を回すが回しすぎない。
そういう男だった。
刹那は頭を軽く振り、ベッドから離れる。
やはり、夢のはずの光景が目に焼き付いている。
落ち着かない気分を抱いたまま、扉を開き、食卓へと向かう。

「……」

向かいながら、刹那は現状を整理していた。
ここはスノーフィールド、偽りの大地。
たったひとつの聖杯を巡って、無数の人間が争い続ける土地。
この世で最も小規模な戦争、『聖杯戦争』が行われる土地。
ありとあらゆる空間に置いて存在した『英雄』。
その英雄を召喚し、争わせる。
たったひとり残った英雄の主こそが万能の願望機である『聖杯』の所有者となる。

自らの手のひらに刻まれた令呪という参加権を眺める。
この令呪はその英雄への命令権。
先程の男こそが、刹那の召喚した英霊。
クラスは弓兵。
三騎士と呼ばれる、魔術への耐性を持つ正統派な英霊が多いクラスだ。

刹那にとって、聖杯戦争への参加は拉致に近いものだった。
未だ、心中落ち着かず。

「ひよこ豆のペーストだ、喰うか?」

そんな刹那を知ってか知らずか。
アーチャーは缶詰で購入していたひよこ豆を使った料理を差し出してくる。
無言で受け取り、食卓に置いたままシリアルを取りに向かう。

「で、だ。マスターの名前はなんなんだ。
 結局、聞けないままだっただろう?」
「そういえば、言っていなかったな」

刹那はシリアルに買い置きの牛乳をかけながら応える。


994 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:46:38 wCYDWP6Q0

「刹那・F・セイエイ」
「……まあ、マスターがそう言うのなら良いさ。
 よろしく頼むぜ、刹那」

どこか含みのある言葉。
アーチャーが刹那を見る目は、やはり何かを見透かすような色が濃い。
若干、不快の念を覚える。

「アーチャー」

アーチャーのサーヴァントとして、自らが召喚した男へと語りかける。
ひよこ豆のペーストにスプーンを這わせていたアーチャーが視線を上げる。
腹の中が見透かされそうな真っ直ぐな瞳に僅かに怯むが、刹那は言葉を続ける。

「アーチャーは、確かにあのアーラシュ・カマンガーなのか」
「『あの』って言われると『どの』って話になるが、まあ、多分俺は『その』アーラシュさんだよ。
 俺はアレだ、戦いを終わらせる英雄!
 御存知の通り、ペルシャの大英雄様だ!」

刹那の言葉を呑み込みながら、アーチャーは気負った様子もなく、おどけるように応えてみせた。
ただ、少し照れくさかったのか、付け足すように再び口を開いた。

「っと、まあ、実際のところはそこまで大層なもんじゃないんだがな。
 刹那、お前には悪いが、そこら辺の弓兵とそう変わりはないさ」
「そういう言い方は」

だが、アーチャーの言葉を咎めるような言葉が出てしまった。
なんでもない、と続けようとする。
するが、アーラシュの目は驚いたように見開き、続きの言葉を待っている。
仕方なしに、言葉を続けた。

「そういう言い方は、やめろ。
 今でもお前を祀っている場所はある。
 お前が良くとも、そういう人々は納得はしない」

自身でも認識できるほど、『らしくない』言葉だった。
その言葉を発する前に、本当に幼かった頃の記憶が蘇った。
背中に回された温もりと、耳から入る優しい声。
二度と取り戻せない幸せの象徴。
そんな誰もが持つ幸せを自ら捨てた刹那に、幸せを再び得る資格はない。

「そうか」

そして、アーチャーは刹那を柔らかく見つめたまま笑ってみせた。

「そうだな、ハハ、謙遜するつもりが失敗しちまったな」

それっきり、アーチャーは食事を再開した。
目の前のアーチャーのそんな様子だけを見れば、とても英霊とは思えない。
幼き頃、寝物語に聞かされてきた英雄が目の前に居る。
父母が愛した英雄が存在する。
聞いてみたいことがあった。
尋ねてみたいことがあった。
だが、刹那はその言葉を呑み込んだ。

罪が突きつけられていた。
それを呑み込まなければいけない。
自身は罪悪感に溺れることは赦されない。

自分が成したことを考えれば、闘争を根絶させなければいけない。
歪みを、正さなければいけない。
聖杯が願いを持つものを誘うというのならば、刹那がここに居る理由は其れだろう。
誰よりも戦争を憎んだ苛烈な願いが誘った場所は、また別の戦場だった。
強烈な皮肉に、しかし、刹那は笑うことなど出来なかった。


995 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:48:55 wCYDWP6Q0

【クラス】
アーチャー

【真名】
アーラシュ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:D 宝具:A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
詠唱が二節以下の魔術を無効化する。
大魔術・儀礼呪法のような大掛かりなものは防げない。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失っても一日程度現界可能。

【保有スキル】
千里眼:A
視力の良さ。
遠方の標的の補足、動体視力の向上。
Aランク以上でこのスキルを有しているアーラシュは、一種の未来視や読心すら可能としている。

頑健:EX
神代の名残を色濃く有したアーラシュは、生まれついての特別な頑健さを有する。
『戦場であっても傷を受けず、生来より病を受けたことさえない』というアーラシュの逸話がスキルになったもの。
耐久のパラメータをランクアップさせ、攻撃を受けた際の被ダメージを減少させる。
複合スキルであり、対毒スキルの能力も含まれている。

弓矢作成:A
善神アールマティから授かった智慧である『弓』の設計者であり作成者でもある彼は、材料さえあればたちまち弓と矢を作成する。
弓には物質的な材料が必要だが、矢であれば自らの魔力を削ることで作成可能。
これにより、アーラシュは無数の矢を断続的に放つことが可能となる。


【宝具】
『流星一条(ステラ)』
ランク:A 種別:対国宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:900人
究極射撃。
伝説通りの渾身の一矢。
あらゆる争いを集結させる、文字通りに大地を割る極大射程遠隔攻撃。
伝説において、アーラシュは究極の一矢によってペルシャとトゥランの両国に『国境』を作った。
大地を割ったのである。
その射程距離、実に2500km。
人ならざる絶技と引き換えに、彼は、五体四散して命を失ったという――――
その逸話の通り、アーラシュはこの宝具を放てば絶命する。
正しく、『一回きりのとっておき』。
宝具と同時に使用者をも壊す、ある意味では二重の壊れた幻想(ブロークンファンタズム)である


996 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:49:20 wCYDWP6Q0

【人物背景】
古代ペルシャにおける伝説の大英雄。
西アジアでの神代最後の王とも呼ばれるマヌーチェフル王の戦士として、
六十年に渡るペルシャ・トゥルク間の戦争を終結させた救世の勇者。

異名はアーラシュ・カマンガー。
英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャー。
アジア世界に於いて弓兵とはすなわち、両国の民に平穏と安寧をもたらせしアーラシュをこそ指し示し、
現代でも彼は西アジアの人々に広く敬われ、愛されている。
伝説において、その名と偉業は複数の伝説に刻まれ、時には歌として唄われる。

彼はこの目で見える者達全てを、地上の人間を、世界を救おうと、ソレを為そうと、
竜殺しフェリドゥーンの末裔であるマヌーチェフル王の下で一人戦い続けた。
何せ、彼はヒト以上の力を持った故に、肩を並べられる相手も、仲間もいなかった。
だから彼は最後まで孤独を選んだ。
人間を守るために。

何十年も続いた戦争により、ペルシャとトゥランはすっかり疲弊しきり、殺し合いを誰も望んでいなかった。
それを終わらせるために、アーラシュはダマーヴァンド山の頂上に立ち、
究極の一矢によってペルシャとトゥランの両国に「国境」を作り、大地を割った。
その矢は最も速き流星より疾く、その射程距離、実に2500km。
人ならざる絶技と引き換えに、彼は五体四散して命を失ったという――。

ジェイフン川の向こう側が、新たな境界となり、両国はその川の周りに平和を築いた。

これより後の人の世に、神代の如き大いなる力は悉く不要である――そう、彼自身が望み願ったままに。


【マスター】
刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00

【マスターとしての願い】
戦争の根絶

【人物背景】
機動戦士ガンダム00の主人公で、本名は『ソラン・イブラヒム』。
中東の貧困国、クルジスの出身。

過去にクルジス共和国のテログループ『KPSA』に誘拐・洗脳され、『神』の名の元に両親を殺害。
この経験は彼に暗い影を落とす。
自分を『平穏に生きることを許されない、壊す以外何も出来ない人間』と諦観して、他人にもそう吐露するようになる。
その後KPSA上層部に見捨てられ、仲間の少年兵は全滅しても尚敵MSに狙われる中逃げ惑い、
今まで信仰して来た神に絶望し死に瀕した際に『0ガンダム』の戦闘を目撃。
その姿に自分が信じてきた「神」に代わるの存在と見做した。

その後、Oガンダムのパイロットだったリボンズ・アルマークの推薦によりガンダムマイスター候補となり、最終的にヴェーダに選ばれた。
『ガンダム』を自己の体験と重ね、戦争根絶を表現するものとしてマイスターの使命に生きる。
それを象徴する彼の代名詞的台詞として「俺がガンダムだ」がある。
また、皆死んだ戦場で自分だけが生き残ったことから「生かされた以上は自分には生きる理由がある筈であり、それを見つけたい」と考えており、仲間と揉めた時にもその旨を語っている。

【能力・技能】
かつて『KPSA』で少年兵として訓練を受けており、銃器やナイフの扱いに秀でる。
白兵戦における技能も所持している。


997 : ◆7WJp/yel/Y :2016/12/24(土) 21:49:55 wCYDWP6Q0
投下終了です


998 : 名無しさん :2016/12/25(日) 23:50:22 1ZeANXn60
埋め


999 : 名無しさん :2016/12/30(金) 05:13:50 O9s7wCl20
投下乙です

これの感じと説明だとせっちゃん時代かね?


1000 : 名無しさん :2017/01/06(金) 19:16:04 0Wasy6mo0
鬼って字はきさらぎとも読むらしいね


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