■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
DMMバトルロワイアル
-
歴史を変えては何故いけないの?
11/11【艦隊これくしょん-艦これ-】
◯赤城/◯加賀/◯島風/◯金剛/◯比叡/◯榛名/◯霧島/◯暁/◯Верный/◯時雨/◯夕立
11/11【刀剣乱舞-ONLINE-】
◯三日月宗近/◯岩融/◯今剣/◯明石国行/◯蛍丸/◯愛染国俊/◯燭台切光忠/◯加州清光/◯大和守安定/◯へし切長谷部/◯鶴丸国永
9/9【御城プロジェクト:RE〜CASTLE DEFENSE〜】
◯仙台城/◯小田喜城/◯鹿野城/◯一乗谷城/◯フランケンシュタイン城/◯与板城/◯柳川城/◯五稜郭/◯犬山城
9/9【FLOWER KNIGHT GIRL】
◯アルストロメリア/◯オトメユリ/◯シクラメン/◯クロユリ/◯アネモネ/◯ネリネ/◯ヒガンバナ/◯アイビー/◯イカリソウ
10/10【書き手枠】
◯/◯/◯/◯/◯/◯/◯/◯/◯/◯
50/50
まとめwiki:ttp://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/1.html
"
"
-
『目は覚めたか』
そこは潮風の入り込む鎮守府でも、秋風の吹く本丸でもない。
血風が荒ぶ戦場でもなければ、はたまた芳しい香りの満たすスプリングガーデンでもない。
暗い、暗い、空間の広狭すら満足に推し測れない闇の中。
勝利の誉れとは無縁の常闇――そんな世界に突如響いたのは、地の底から響くような重々しい声だった。
それと同時に、淡い光に照らされて闇が晴れる。
現代の電球のように目に痛い光ではなく、どちらかと言うと灯籠や提灯のそれを思わせる風情ある光だ。
照らし出された空間がどこまで続いているのかは相変わらず確認できなかったが、そこには大勢の人間の姿があった。
人数は合わせて四、五十名程度と言うところだろうか。ちなみに男女比は、女性の方が圧倒的に多いようだ。
一箇所に集められた彼らから少し離れたところに、声の主は立っていた。
鬼……幽鬼。落ち武者。そういう単語を連想させる、人間離れした姿を持った存在だった。
黒目と白目の区別も付かない眼球は常に発光しており、眼だけに留まらず全身が妖しく輝いている。
少し動くだけでギチギチと不気味な音を奏でる彼らに対し、恐怖よりも敵愾心を向けている者の方が多いのは流石、日々戦いに明け暮れる戦士達と言うべきだろう。
海であれ、陸であれ、花の世界であれ。
彼ら彼女らが常人とは比べ物にならないほどの場数を踏んでいることは変わらない。
ただ――眼前の『敵』の正体を正しく認識している者の数はわずかだ。刀剣の付喪神、都合十一体。彼らだけが、この敵に関する正しい知識を持っていた。
「歴史修正主義者……!?」
歴史修正主義。それは本来歴史の通説を再検討し、正当な改訂を加えるべきという思想の持ち主を指す言葉だ。
逆に言えば改訂と称して歴史を歪曲する者を指す言葉でもあり、刀剣達が戦っている主義者達は後者である。
彼らは時代を超え、武力活動による歴史改変を目論む社会の敵だ。
彼らの活動を阻止するために審神者と言う職業が生まれ、古の刀達は刀剣男士として現世に顕現することとなった。
要するに、何度となく戦ってきた相手だ。
今更驚くような相手でもないし、落ち着いて戦えば余程の状況でもない限りほぼ確実に倒せる、その程度の敵。
『止めておくがいい。命が惜しければな』
ただ、一つ妙なことがあった。
先に述べたように、歴史修正主義者の活動はほとんどが武力によるものだ。
こうしてわざわざ大勢を一箇所に集めるなんて真似をしたことはなかったし、ここまで意思疎通の出来る主義者にも遭遇した試しはない。
-
『それに私は、今すぐにお前達へ危害を加えるつもりはない。そちらが刀を抜かない限り、手を出すことはしないと約束しよう』
今こうして淡い闇の中に立ち、集められた者達と向かい合っている歴史修正主義者は、普通の人間のように饒舌だった。
普段なら姿を目視するなり問答無用で仕掛けてくるというのに、今回のそれは嫌に落ち着いているように見える。
その事実の奇妙さに、臨戦態勢を取っていた刀剣達も一歩を踏み出せずにいた。
不気味な静寂が再び漂い始めた頃、口を開いたのは天下五剣――三日月宗近と呼ばれる刀である。
「……その余裕は、俺達に巻かれている『これ』から来るものか」
『然り』
指の甲で三度、三日月は首に巻かれた『それ』を叩く。
すると、やや軽い音がした。金属音だ。『それ』は金属で出来ていた。
首に巻き付けられた金属の輪。本来飼い犬に付けるべき『それ』は、察しの通り首輪だ。
集められた全員の首に、黒く鈍い輝きを放つ首輪が取り付けられている。
いや、それだけではない。首輪は十秒に一回ほど、ピッと小さな電子音を鳴らしてもいた。
機械じかけの首輪、多数の人間がよからぬ者の手で集められているこの状況。
『その首輪の中には爆薬が内蔵されている。もしお前達が私に攻撃しようと言うのであれば、それを起爆させてもらう。
……言うまでもないが、首は急所だ。どれだけ練度やレベルの高い者でも、密着した状態で爆発を浴びれば即死する』
淡々と語り、元凶の彼は異音を鳴らしながら右腕を挙げた。
それと同時に、一人の少女の首輪が一際喧しく電子音を鳴らし始める。
「えっ? えっ?」と慌てる少女はまだ小さく、あどけない顔立ちをしていた。
幼いながらに説明を聞いていたのが一番の不運だった。最初は困惑していた彼女も、三秒と経つ頃には理解してしまう。
歴史修正主義者と呼ばれた怪人は、この首輪には爆薬が内蔵されていると言っていた。
そして彼の任意で起爆することが出来、爆破された者は誰であろうと即死するとも。
途端に込み上げてくる恐怖、現実を直視できないが故に浮いてしまう笑み。
泣き笑いのような顔で、少女は自分の姉達の方を見た。
……歴史修正主義者の挙げた右手が下ろされたのは、まさにその瞬間だった。
『――このようにな』
枕に銃口を押し当てて引き金を引いたような、くぐもった音が淡闇の中で不吉に響く。
少女の首がサッカーボールのように宙を舞い、熟れた果実でも落としたような音を鳴らして墜落する。
ごちゃごちゃの表情を顔に浮かべたまま血液を噴き出すだけのスプリンクラーとなった彼女の名前を、電と言った。
倒した敵にすら温情をかけ、誰よりも争いごとが嫌いな――皆の妹のような駆逐艦娘だった。
-
首から上を失った胴体に縋り付き、わあわあと甲高い泣き声をあげる彼女の姉達。
そんな光景を一瞥もせずに、歴史修正主義者は話の続きを始める。
無臭の淡闇はすっかり血生臭く、喧しい空間に成り下がっていた。
集中する敵意の目線の中でも淡々とした調子を崩さない辺り、やはり彼は怪人なのだろう。
この状況に昔読んだとある小説を連想したのは、軍艦の記憶を受け継ぐ『艦娘』の一人だった。
二十一世紀に入るやや前に刊行され、社会に大層大きな衝撃を与えたというデスゲーム・ノベル。
そのタイトルは確か……『バトル・ロワイアル』。
『刀剣男士。艦娘。城娘。そして、花騎士。お前達にはこれから、我々の主催する遊戯に参加して貰う』
作品の登場人物達が舞台となる島に集められ、腐敗した政府に行わされた『プログラム』の内容は――そう。
『――殺し合え。同胞を、見知らぬ顔を、全て、全て。自分以外の全てを殺戮せよ。そして、勝者となるがいい』
殺し合い、だ。
死をもって他人を蹴落とす椅子取りゲーム。
小説の内容をなぞるように爆弾付きの首輪を用意して、この怪人は自分達にそれをさせようと言う。
……到底認められる話ではない。仲間を無惨に殺しておきながら何を偉そうに語っているのだと噛み付きたくなる。
にも関わらず誰も行動に移せず、拘泥たる思いを飲み込むしか出来ずにいるのは、首筋に突き付けられた死の重さ故。
この怪人の指先一つで、いつでも自分の首はあの少女のように宙を舞う。
その状況で後先考えずに牙を剥いてかかるような馬鹿は、どうやらこの中には居ないようだった。
『安心しろ。何の報酬も与えないと言うわけではない』
「……報酬だって?」
『見事全ての命を摘み取り、最後の一人となった勝者には……とある権利を贈呈しよう』
一拍置いて歴史の冒涜者が吐いた言葉は――……楔のように、あるいは返しの付いた針のように心へ深く突き刺さった。
『それは結果を変える権利。歴史を変える権利だ。世界を二分する大戦の結果、主君の生涯、生前の悔恨、世界を千年に渡り蝕み続けた呪いですら、我らが容易く書き換えてやろう。我らが殺し合いを起こさなかった世界、特定の人物が死ななかった世界、というものでも構わない。何でも叶えてやる』
それでは本末転倒だろうと呟く声が聞こえたが、彼はそれでも構わないと豪語する。
変えられる歴史は一つ。しかし、個数さえ守れば改変に限度はないと言う。
殺し合いをなかったことにすることすら可能だと言われ、心に不穏なものを芽吹かせた者も少なからず居た。
『拒むと言うのならそれも道だ、好きにするがいい。だがその首輪は無理に引き剥がそうとしたり、一定時間毎に我々が提示する侵入禁止区域に踏み込んだ場合に爆発する。更に言うなら、死者が六時間以上出ない場合もだ。その時には残念だが、全員の首輪を起爆させて貰う』
何が道だと誰かが悪態をつく。
これでは最初から、選択肢などないも同然だ。
生きたければ殺し合え、死にたいのなら何もするな。
―――怠惰に膝を抱いたまま、歴史の闇へと落ちていけ。
『では、良き戦いを』
怪人が左腕を挙げると、全員の首輪が一際甲高い電子音を一度だけ鳴らした。
それと同時に首輪の接合面から電流が瞬間的に流れ、全員の意識を一瞬にして奪い去る。
どれだけ戦いを重ねた者であろうと、一瞬抗うことすら敵わない。
砂袋を叩き付けるような音が数十回連続し、遂には闇の中、意識を保っている人間は一人も居なくなった。
残されたのは歴史修正主義者――人類の仇敵のみである。
これから始まる戦いに、誇りも誉れもありはしない。
あるのは血臭と死臭、銃声と剣戟、裏切りと無念。
艦娘。刀剣男士。城娘。花騎士。世のため人のために戦っていた彼ら彼女らの生き様は、この時一人残らず陵辱された。
奪い合え、歴史を。勝者だけが、世界を変えることが出来る。
勝者にならなければ――伸ばした手が、何かを掴み取ることはない。
【電@艦隊これくしょん 死亡】
【残り50人――DMMバトルロワイアル、開始】
-
■ルール
・五十名の『刀剣男士』『艦娘』『城娘』『花騎士』に殺し合いを行わせ、最後の一人まで生き残った勝者を決める
・参加者間のやり取りに反則はない
・勝者には生きて帰る権利と、歴史を一つだけ思い通りに改変する権利が与えられる
・ルール説明後、参加者は電流で気絶させられ、舞台となる沖木島内にランダムに配置される
■首輪、禁止エリア、放送について
・全ての参加者は、爆薬を内蔵した首輪を装着されている
・首輪を無理に外そうとした場合、首輪は爆発する
・首輪の爆発は確実に急所を破壊して首を吹き飛ばすため、爆破を受けて生存することは不可能
・六時間の間誰も死者が出なかった場合、全参加者の首輪が爆発する
・六時間ごとに主催による定時放送が行われ、死者の通達と禁止エリアが発表される
・禁止エリアは指定から一時間の猶予を経て進入禁止となり、禁止エリア化以後に踏み入った場合、十五秒の警告の後に首輪が爆発する
■支給品、持ち物について
・基本私物は没収されるが、元々持っていた武器一つはあらかじめ与えられる
・ただしその場合も支給品の枠を一つ消費する
・基本支給品の内訳は以下の通り。
『デイパック』『三日分の携帯食料(固形)』『一日分の水』『懐中電灯』『PDA』『ランダム支給品』『筆記用具』『メモ帳』
・携帯食料はカロリーメイトのようなもの。栄養価が高く、体力の回復に適している
・PDAには地図機能・名簿機能・放送受信機能が内蔵されている
・地図には常に自分の現在位置が表示され、第一放送以後は禁止エリアの箇所が黒く塗り潰される
・名簿は第一放送まで非公開。放送後、機能が更新される
・放送の時間になるとPDAが自動起動して放送を受信する。録音機能は付いていない。
・ランダム支給品は一〜三個の範囲で支給される。
■バランス調整や各種設定など
・『艦隊これくしょん』勢の艤装は威力が劣化している。この措置がなければ、相手が一撃で木っ端微塵になってしまうため。
・『刀剣乱舞』勢には必ず自分の写し身が支給される。これを破壊された場合、刀剣男士はその場で死亡する。
・『御城プロジェクト』勢の巨大化は完全禁止。理由は言わずもがな。
■舞台
・原作『バトル・ロワイヤル』より沖木島。
■時間表記
深夜:0〜2 ※開始時刻
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
"
"
-
■状態表テンプレ
【日数/エリア・場所】
【キャラ名@作品名】
[状態]:キャラの健康状態や精神状態
[装備]:装備している道具や武器
[道具]:支給品状況や回収アイテムの内訳
[思考・状況]
基本方針:殺し合いにおけるスタンス
1:(以下、優先度順に)
[備考]
その他何かあれば記載
■書き手の方向けのルール
・予約期間は七日+延長三日。変更の可能性大いにあり
・予約はトリップ必須
・ゲリラ投下の場合はこの限りではない
・自己リレーは節度ある範囲でならば可
・書き手枠は一度に一枠まで使用可能
■その他
Q.前に似たようなロワあったけど別人?
A.別人です。ただ、企画のコンセプトは少し影響を受けました
Q.アニメ版の世界観とは違うの?
A.艦これと刀剣乱舞はアニメ化していますが、あくまでも当ロワで扱うのはブラウザゲーム版です。
そのためオリ設定やキャラ付けなど大歓迎ですが、あまりにもキャラクターが崩壊しているようであれば注意やご指摘をすることがあるかもしれません。
Q.二次創作の設定使っていい?
A.節度ある範囲でなら大丈夫だと思います。
Q.DMMロワを名乗っておきながらかんぱに☆ガールズやアイギス、シャドウバースがないやん!
A.さすがに>>1がプレイしてない作品は出せませんでした、ゆるして
シャドウバースはやってますが、ストーリーがまだ全然進んでないので厳しいかと思い採用を見送りました
Q.把握にゲームプレイって必要?
A.どのゲームもwikiに台詞集があるので、実際にプレイすることの重要度はそんなに高くないです。
ただし艦これ以外には個別エピソードとかがあったりするので、プレイするとよりキャラ理解が深まるとは思います
Q.どのキャラが好きですか?
A.言うと真っ先に落とされそうなのでコメントを控えさせていただきます
-
以上でOPやルール等、一連の投下を終了します。
皆様、これからどうぞ宜しくお願いします。
燭台切光忠、鶴丸国永、シクラメンで予約します。
-
書き手枠で神姫projectやかんぱになどの他のDMMゲーのキャラを出すのはアウト?
CMに出てただけのたけしやローラは流石に無理だと思うけど
-
>>8
出来ればナシでお願いします。
理由は先述の通り>>1が完全に把握していないのと、他のDMMゲーからの参戦を許可してしまうと場合によっては範囲がかなり膨大になってしまう(いわゆる抜きゲーの部類なども含め)可能性があるためです。
-
LoWは把握してますか?
DMMゲームではかなり有名所ですが
-
ご希望の方が割と多いようですので、書き手枠限定で他のDMMゲーム(アイギス、かんぱに、LoWなど)からの参戦を許可しようと思います。
ただし、出来れば露骨な抜きゲーは控えていただけるとありがたいです。
予約分は多分今夜中に投下します
-
ふむ、ソシャゲロワみたいな広範囲じゃなくてDMM縛りか
いい具合にまとまってると思うけど、他のDMMまで範囲広げるとシャドバとか来そうだな―
1さんが未把握とかで書けなさそうなら初期の枠のままでもいいですからね?
言われるがままに広げてポシャるのはもったいないですし
-
>>12
ありがとうございます。
シャドバは流石にストーリーが始まったばかり過ぎるのでアレですが、他なら把握不可能な奴とかじゃない限りはどうにかなるとは思います
予約分を投下します。
-
誰かが死ぬ瞬間を見たのは初めてだった。
薄黄色の灯りに照らされた淡闇の中で鳴り響いた電子音の音色が頭に焼き付いて離れない。
殺された少女はあの時、花騎士――シクラメンのすぐ近くに立っていた。
自分がこれからどうなるのかを理解して、それでも現実を受け入れられずに浮かべていた泣き笑いの表情。
幼い顔が軽い音と共に宙を舞い、水っぽい音と一緒になって地面に落ちる瞬間。
シクラメンは全てを見ていた。少女がどうやって死んだかの一部始終を観測していた。
それはとても悲惨で残酷で、言葉に尽くせないような光景だった。
死体に縋り付いて泣く者もあったのだ、さぞかし彼女は愛されていたのだろう。
これはシクラメンの想像だが、きっと彼女は優しくて明るくて、誰からも愛される子供だったのだと思う。
そんな子の命を、歴史修正主義者とか言われていたあの怪人は事もなげに動作一つで奪い去ってしまった。
“首輪が爆発するとどうなるか”を見せ付けるためだけの犠牲にして、その死に感慨一つ漏らしはしなかった。
…………狂ってる。その行動を理解できないし、したいとも思わない。
大人しく優しい性格のシクラメンでさえ、嫌悪感が込み上げてくるのを禁じ得ない。
だがそれ以上に―――恐ろしかった。
自分と同じ形をした命が壊れる瞬間を見たシクラメンだからこそ、恐怖の度合いは他人の比ではない。
一瞬で人をあんな風に殺してしまう爆弾が、自分の首にも等しく巻き付けられているのだ。
主催者の居場所と通信でもしているのだろうか、首輪は十秒くらいの周期で電子音をピッと鳴らす。
その度に心臓が弾けそうになる。
首を飛ばされた少女の死に顔や、離れた首の断面から噴水のように溢れてくる血液の色合いが簡単に瞼裏に再現される。
臆病な彼女にとって、それは耐え難い苦痛だった。
ほんの僅かな物音ですら、自分を害そうとする誰かが鳴らしたものかと錯覚してしまう。
そんな有様だから、彼女はゲームが開始してから今に至るまで、目を覚ました地点から一歩も動いていない。
シクラメンは今、観音堂の境内で膝を抱えていた。
深夜帯には少々お近付きになりたくない場所だが、幽霊よりもよっぽど身近な脅威が島中を彷徨いている以上、そういう想像をしている余裕はあまりない。
「団長さん……」
自分の体温を抱きながら、自然と口をついて出たのは敬愛する名前だった。
花騎士達を従えて害虫に立ち向かう彼の背中が、今は無性に懐かしい。
その懐かしさが、今の二人の間にある距離がいかに遠いかを物語っているようでもある。
-
今までも辛い戦いはあったし、死んでしまうのではないかと思ったことも何度かはあった。
それと比べても今回のは別だ。生きて帰れる目が極端に少ない。少なすぎる。
敬愛する――あるいはそれ以上の感情を寄せている――彼ともう一度会える可能性は、砂粒もかくやというほど微小だ。
ましてシクラメンは、花騎士の中でもそう強い方ではない。
仮に歴史修正主義者の用意したゲームに乗ったとして……いわゆる優秀な騎士達に勝てるかと言うと怪しいものがある。
……こんな風に、ふと気を抜けば自分が得をする方に考えてしまうのが嫌になる。
心のどこかでシクラメンは既に諦めてしまっていた。何故ならどれだけ頭を回しても、未来というものが全く見えない。
精密な作りの首輪。いつでも主催者が操作することが出来、生殺与奪はいつでもあちらに握られている。
よしんばそれをどうにかする手段が見つかったとしても、殺し合いに乗った参加者に殺される可能性だってあるわけで。
つまり、状況を打開できる可能性は限りなく低い。先程も言ったが、賭けにしては分が悪すぎる。
そんな微小な確率に賭けるくらいなら、いっそ誰かが優勝し、歴史を変えてしまうのが一番楽なのではないか。
そう思ってしまうのも、無理のないことだった。
いつも手放すことなく持ち歩いている分厚い本のハードカバーを握る手に力が籠もる。
―――彼女が視界に自分以外の誰かを見含めたのは、まさにその瞬間だった。
「よう、お嬢ちゃん。いい夜……たぁ、言えねえか」
境内に植えられた唐松の木に凭れて立つのは、美しい白髪と黄金色の瞳を持った男だ。
顔立ちの整った男のことを俗に“イケメン”と呼ぶが、そんな一言では形容しきれない、不思議な男であった。
神秘的、と言うのか。まるでこの世ならざるものを目にしているような感覚を覚えてしまう。
「えっ、あっ、その」
「はははは、驚かせちまったか? さっきからずっとこうして立ってたんだが、お嬢ちゃんと来たらまるで気付く様子がねえ。俺は他人を驚かせるのが好きでね。ついつい悪癖が出ちまった」
シクラメンは自分の顔に朱が差すのを感じる。
彼が居たことには本当に、全く気付かなかった。
悪い想像に没頭するあまり、自分の身を疎かにしていたようだ。
これでは世話がない、と思わず苦笑と溜息が漏れて出る。
「――鶴丸国永だ。面倒臭い説明はこの際省くが、お嬢ちゃんと同じく、この趣味の悪い遊戯に巻き込まれた被害者さ」
「……シクラメン、です」
「シクラメン? ……ふむ、どっかで聞いたような名前だな。うちの主が確か、そんな花を育ててたような」
顎に手を当て首を傾げる鶴丸。花騎士の説明をしようかとも思ったが、それよりも優先して話すべきことがある。
「えと――国永、さん……?」
「鶴丸でいい。呼び名に対した意味はないが、そっちの方が呼ばれ慣れているもんでな」
「じゃあ、鶴丸さん。……鶴丸さんは、どうするつもりなんですか?」
「どうする、とは?」
-
意地悪な返しだとシクラメンは少しむっとした。
出会って……もとい、シクラメンが鶴丸を認識してから一分と経っていないが、それでも彼が聡明な人物だというのは話していて伝わってくる。
質問の意味が分かっていて、敢えてとぼけているのだ。
……こっちは真面目に聞いているのに。そんなシクラメンの不満を感じ取ったのか、鶴丸は大きく笑った。
「悪い悪い、そう怒るなよ。俺は……もちろん乗っちゃいない。殺し合いなんぞする気はない、安心しな」
「それは……どうしてですか?」
「どうして、って言われてもなあ。お嬢ちゃんはもしかして乗ってるのかい?」
「う――そういうわけじゃ、ないですけど」
「ふむ、理由か。理由……ね。雅じゃないから、って答えじゃ不満か?」
「へ?」
思ってもいなかった答えに、シクラメンは間の抜けた声を漏らしてしまう。
それを見て鶴丸はまた笑うと凭れた木幹から背を離し、シクラメンの座り込む本堂前へと歩み寄ってくる。
「知り合いの受け売りだ。歴史を変えちまえばそりゃ何も起きなかったことに出来るんだろうが、そいつはちと不格好過ぎるだろう? 仲間殺しを進んでやる趣味もない。刃向かう理由は山ほど浮かんでも、言いなりになる理由は一つも浮かばない……だから乗らない。これで納得するかい?」
理屈が通っていないと文句をつけるのは簡単だった。
しかしシクラメンは、爽やかな笑顔で言い放たれたそれに何も言い返せない。
理屈だの何だの細かいことを度外視したなら、彼の台詞はとても正しく、理想的な答えだったからだ。
シクラメンだって、仲間を殺したくなんてない。苦楽を共にした同じ花騎士だ。殺したいわけがない。
そう頭では分かっていても、困難すぎる道のりからつい目を背けてしまっていた。
鶴丸のようにあっさりと断言してのけるには、シクラメンは少々年季が足りなすぎる。
「そう難しく考えることもない。それに、こんなことを仕出かす連中だ。約束を守る保証もそもそもないってもんだろ?」
「それは……そう、ですね」
「前向きに考えるんだよ、何事も。女ってのは明るい方が可愛いからな」
古びた木の段差を踏み越えて、鶴丸はシクラメンの隣を通り過ぎた。
「すいません……クセなんです、下を向くの。でも……確かにこんな暗い顔してたら、どうにかなるものもどうにもならなくなっちゃいますね」
シクラメンの花言葉は“内気”だ。
花騎士の彼女もまた、この通り誰が見ても分かる内気な人物である。
そんな少女だからこそ、この絶望的すぎる極限状況の中で人一倍追い詰められていた。
下を向いて物事をマイナスにばかり考え、一人で悪い方へ悪い方へと歩いていってしまう。
そこで鶴丸という前向きな人物に出会い、言葉を貰えたというのは……間違いなく彼女にとってプラスの展開だった。
殺し合いという趣向が善か悪かは、改めて問うまでもない。
年端もいかない女の子をあんな風に惨殺し、見せしめにするような遊戯なのだ。
であれば――花騎士として、団長の剣となることを誓った身として、選ぶべき道は一つだろう。
「おや、いい雰囲気になったな。さっきとは打って変わって、明るく前向きな感じが伝わってくるぜ」
「えへ……そうですか?」
「ああ。ところでお嬢ちゃんにいくつか聞きたいんだが、此処に来る前に誰か会った参加者は居るかい?」
-
どうやら鶴丸は、最初から境内の中に居たわけではないようだった。
ということは、シクラメンは境内の外から入ってきた彼に全く気付かなかったということになる。
自分の迂闊さにまた頬が熱くなってくるのを感じたが、それはそれとして質問には答えなければならない。
「いえ、居ません。……目が覚めた時からこの……観音堂? の前に居て、それから一歩も動いてないので」
「そうか。そいつは残念だ」
鶴丸は嘆息すると、不意に足音を止めた。
…………?
シクラメンの頭に、疑問符が浮かんだ。
何か、違和感がある。
別におかしなところはないといえばそれまでだが、どうにも居心地の悪い感覚がある。
なんだろう、これは。
例えるなら間違い探しの問題を解いていて、答えが浮かんでこない時のよう。
「……鶴丸さん?」
「どうした?」
「あの……どうして私の後ろに?」
観音堂の中でも検めるのかと思ったが、そういう気配はない。
シクラメンが純粋に疑問を抱いてそう問うと、返ってきたのはやはり笑い声だった。
先程までの爽やかなものとは少し違う――乾いたような、色のない笑い声だった。
「―――俺は、他人を驚かせるのが好きでな」
それなら、さっきも聞いた。
「ただ、俺は別に人を怖がらせたくて驚かすわけじゃない。そいつの驚いた顔と、それから安心する顔を見たいだけなのさ」
「は、はあ」
「人生には驚きが必要だ。予想し得る出来事だけじゃあ、体より先に心が死んでいく。
なら俺が振り撒く驚きには、心を殺すようなものはあっちゃならないわけだ。そこでこの状況。俺は色々考えた末に答えを出した」
その瞬間――シクラメンの本能がけたたましく警鐘を鳴らした。
まずい。何かは分からない、いや分かっている、この状況はまずい!
「驚きが来るより先に終わらす。特に、お嬢ちゃんみたいな童っ子相手にはな」
急いで振り返ろうとした時には既に、金属と何かの擦れ合う音が夜闇に聞こえた後だった。
読書家でもあるシクラメンは、既存の知識の中からその音の正体を見つけ出してしまう。
まして彼女は鶴丸国永という男が、腰から提げていた物を見ていた。
そんな相手に背後を渡すということ自体、この状況では迂闊が過ぎる怠慢だったのだ。
振り向き、もう一度鶴丸の姿を見ることすら間に合わない。
どうすれば。
どうすればいい。
………………どうしようもない。
思考回路がオーバーヒートし、シクラメンという花騎士は、まるで現実から逃げるかのように意識を手放した。
-
□
「……ほう、こいつは驚いた。臆病な性根が功を奏するとは」
太刀の刀剣男士、鶴丸国永の振り抜いた刀が、花騎士シクラメンの首を落とすことはなかった。
鶴丸が良心の呵責を覚えたわけではない。彼は本当に殺すつもりで、自分の写し身である刀を振るった。
にも関わらずシクラメンを仕留めることが出来なかったのは、刃が首に触れる寸前で彼女が意識を失ったことだ。
意識をなくした体は脱力して座っていた小階段から転げ落ち、結果として鶴丸の一閃から逃れるに到った。
歴戦の刀剣男士である鶴丸も、全く予想しない展開。
臆病で内気な少女相手だからこそ起きた偶然の、生還だった。
「しかし、俺もまだまだだ。驚くより先に殺すと豪語しておきながら、結局は驚かせてしまった。背後に回るというのはやはり不自然過ぎたな……本堂の扉を開き、中を物色する素振りでも見せるべきだったか」
シクラメンは完全に失神しており、その下にはアンモニア臭を放つ水溜りが広がっている。
言わずもがな、失禁の跡だ。鶴丸が彼女をそれだけ恐怖させてしまったという意味では、失敗の痕跡とも言える。
「何、次は上手くやる。見せしめにされた娘やこの娘のように、恐怖に慄き死なせるようなことはしないさ」
刀剣男士に暗殺の心得はない。彼らの職務は戦場で華々しくも泥臭く戦い、歴史修正主義者を跳ね除けること。
物言わぬ刀だった頃ならいざ知らず、付喪神として顕現してからは人を殺したことなど当然ない。
不慣れ故に、さしもの鶴丸も失敗してしまった。殺すというのもなかなか上手くいかないものだ。
「だから、そう怖い目で見るなよ。美顔が台無しだぞ、光坊」
そう言って鶴丸は視線を境内の入り口の方へと移す。
鶴丸も数分前には彼処から少女を見つけ、境内の中へと入ってきた。
しかし今、其処には鶴丸の見知った顔が立っている。
右の眼を眼帯で覆った、端正な顔立ちの男だった。
腰から刀を提げていることから、彼も鶴丸と同じ刀剣男士であると分かる。
時に、隻眼の戦国武将と言えば思い浮かぶ人物は一人だろう。
伊達政宗。奥州の独眼竜と呼ばれた彼の逸話に、燭台の陰に隠れた家臣を燭台諸共切り捨てたと言うものがある。
この彼は、その“燭台切”に使われた刀が時を経て、審神者の手で刀剣男士として顕現された存在。
燭台切光忠と言う、太刀に他ならなかった。
-
隻眼に長身という見た目は結構な威圧感を持つが、見た目に反して燭台切は穏やかな刀だった。
本丸では炊事を好んで担当し、出陣すれば勇猛果敢に沢山の戦果を上げる――彼いわく“格好よく決める”。
その彼が、鶴丸を鋭い眼差しで睥睨している。鶴丸は冗談の通じない様子を見て、一人肩を竦めた。
燭台切の口から出た言葉は、さながら刃の切っ先のように硬く、鋭い声色で鶴丸の耳に届く。
「――鶴さんは僕よりも早く鍛刀された刀のはずだ。歴史を変えることがどれだけの重罪か、知らないとは言わせない」
不都合な過去を消したいと考えた覚えは、きっと誰にでもある。
しかし一つの些細な歴史を変えただけでも、後の世界は大きく変動する。
世界情勢、文明の発展、社会の興亡、果てには人の存在すらも。
だから刀剣男士達は、審神者と共に歴史修正主義者と戦ってきたのだ。
……歴史を変えたい思いを時に飲み込みながら、世界を守る刃として戦場を馳せてきたのだ。
燭台切には、許せなかった。
自分や仲間と一緒にそういう戦いをしてきたというのに、歴史修正主義者の甘言に乗ってしまった鶴丸が。
一方で敵意を向けられた鶴丸は気圧された風でもなく、あくまでいつも通りの調子を保ったまま口を開く。
「ああ、知っているともさ。四十……せいぜい五十か? それくらいの人数に、沖ノ木島というごく限られた空間。
そんな狭い歴史だろうと、もしも改変した日にはどれだけの影響が出るか分かったもんじゃない。そんなことも分からないような阿呆ではないぞ、俺も」
「なら……」
「取捨選択……って言葉を知ってるか?」
当然、燭台切もそんな言葉くらいは知っている。
「俺だって考えなしにこういう道を選んだわけじゃない。短い時間だったが、よ〜く考えたさ。俺はな、光坊。ちゃんと考えた末に、何も起きなかったことにしようと思ったんだ。――取捨選択さ。歴史の改変によって失われる色んなもんを俺は捨てた。代わりに、お前や主と過ごす日常を取った」
「鶴さんの捨てた物が、どれだけの人を狂わせるか分からない。生きているはずの誰かが死んでしまうことになるかもしれない。……それでも、鶴さんはそれを捨てるのか」
「捨てる」
鶴丸は、即答した。
「別に見ず知らずの誰かの命や、世の安寧を軽く見てるわけじゃあないさ。だが俺の中では、そんなものより遥かにお前達の命の方が重い」
「……本気、なんだね」
「虚仮でこんなことを言うほど、悪趣味な男になった覚えはないぜ」
燭台切は唇を噛み締め、変わってしまった同胞の顔を真っ直ぐに見据えた。
鶴丸が即答した瞬間に、燭台切は悟ってしまった。――この人は、もう止まりはしないと。
鶴丸ほどの刀が、伊達や酔狂ではなく、確たる自分の意思として殺すことを選んでいるのだ。
誰がどんな言葉をかけようと、この人――この男が止まることはもうないだろう。
それこそ、全てを終わらせるまでは。歴史を改変し、沖木島で殺し合いが行われたという事実を消し去るまでは。
-
「だとしたら――僕は貴方の敵だよ、鶴さん」
「ははははっ、それでこそ光坊だ。お前はそっちの側に立ってる姿がよく似合ってる」
「……僕だけじゃない。他の皆だって、歴史を改変するなんてことに賛成はしないはずだ」
「どうかな。俺はぱっと思い浮かべただけでも、俺と同じ考えをする奴の顔がいくつか浮かぶぜ」
皮肉るように言うと鶴丸は足元の少女を一瞥し――しかし刃を向けることはなく、刀を鞘に収めた。
「俺もお前も練度は結構なもんだ。お互い、この場でやり合って無駄に消耗したくはないだろう。此処は俺が折れてやる」
シクラメンをこの場では殺さない。だから、お前と俺が此処で今すぐやり合う理由はない。
鶴丸は一方的に戦わないことを決め付けると、そのまま境内の外へと歩き始めた。
燭台切はそれを、ただ黙って見つめている。一歩も動かずに、視線も動かさずに、黙って。
堕ちた同胞の足が自分の真横を通り過ぎる瞬間に、燭台切はやっと言葉を発した。
「……似合わないよ、鶴さん」
「そうか? 俺は我ながら、自分によく似合った役回りだと思ってるんだけどな」
鶴丸はこれから、殺人者として島中を行脚するだろう。
人を驚かせるための口先を騙しの道具にして、歴史を変える権利のために殺して回るだろう。
……この島には刀剣男士のことを知らない参加者も沢山いる。
彼らはそんな鶴丸のことを殺人鬼と罵り、悪として断罪することだろう。
そう考えると、肩を並べて戦場を共にした刀として得も言われぬ悲しみに襲われる。
燭台切には、立ち去る鶴丸の背中を黙って見送ることしか出来なかった。
ただ――歴史を変えるのは禁忌であり、間違ったことだという認識は一切変わらない。
燭台切光忠という刀はあくまで正攻法での状況打破に挑むつもりだ。
それだけに、歴史を変えるという鶴丸国永を無視することは出来ない。
次に遭遇することがあったなら、その時は雌雄を決する時になるだろう。
境内へ足を踏み入れ、倒れた少女を抱え上げる。
ひとまずは本堂の中で休ませ、目が覚め次第事の経緯を説明――……という流れがベターか。
「……ああ。本当に、嫌な夜だ」
溜息混じりに見上げた夜空は、いつもよりずっと薄汚らわしいものに見えた。
【一日目・深夜/C-6・観音堂】
【燭台切光忠@刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]:健康
[装備]:燭台切光忠@刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:歴史は変えない。歴史修正主義者を打破し、本丸へ帰る
1:……とりあえず、起きるまで待とうか。
2:鶴さんと次に会ったなら――
【シクラメン@FLOWER KNIGHT GIRL】
[状態]:気絶、失禁
[装備]:シクラメンの本@FLOWER KNIGHT GIRL
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:???
1:…………
【鶴丸国永@刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]:健康
[装備]:鶴丸国永@刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:全員殺し、歴史を変えて殺し合いを起きなかったことにする
1:参加者を殺して回る。手段を選ぶつもりはない。
-
投下終了です。
今剣、島風で予約します。
-
投下します。
-
「んー」
帳の下りた沖木島に、殺し合いの空気とは場違いな声が響いた。
間延びした、聞きようによっては真剣味がなくも聞こえる、そんな声だ。
「参ったなあ。これ、ちょっとヤバいかも――」
声の主は子供らしさ、幼さを多分に残した少女だった。
顔立ちはあどけなくも端正で、もう少し歳を重ねれば息を呑むような美人になること請け合いのそれ。
にも関わらず、その服装は際どいの一言では形容しきれないほど“アレ”だ。
ウサギの耳を思わせるカチューシャも奇抜だが、何より下だ。
ミニスカートとしてもやり過ぎだろう丈の短さに加え、下着の紐が思い切り覗いてしまっている。
見ようによってはギャグか何かにも見える絵。しかし当の彼女は今、至って真剣だ。
「うーん。どうしようかなあ」
そう言って、首に巻き付けられた肌触りのやけに良い首輪をコンコン叩く。
過度な衝撃にならない程度に触ってみた感じ、まず力技では無理だろうという当たり前のことが分かった。
少なくとも中の爆薬なりセンサーなりを作動させずに外すのは不可能に違いない。
専門の道具なり知識なりがあれば別なのかもしれないが――生憎、駆逐艦娘・島風にはそういう分野の知慧はなかった。
となると、ゲームから逃げ出すという選択肢は早々に潰えてしまったことになる。
残された選択肢はこの悪趣味なゲームを催した運営を叩くか、彼らの口車に乗って仲間を殺すかのどちらかだ。
「一応、最後に全部なあなあには出来るんだよね――あの変なのの話が本当なら」
殺しは禁忌だ。そのくらい、島風だって当然知っている。
敵以外に砲を向けることも演習などで時折ありはしたが、殺す気……もとい沈める気で向けたことは一度もない。
純粋に殺す理由がないからと言ってしまえばそれまでだが、そうでなくとも島風はそんなことはしなかったろう。
それは何も自分だけじゃない。他の仲間も皆そうである筈だと、島風は思っていた。
殺してしまえば、もう取り返しは付かない。
同じ艦娘を建造することは資材さえあれば理論上はいくらでもできるが、そうして建造された二代目はあくまでも“二代目”だ。
沈んだ艦は、失われた命は戻らない。直せない。そう知っているから、人も艦娘も誰かを殺しはしないのだ。
-
だが、その“当たり前”はこの沖ノ木島の戦いには適用されない。
優勝した人物が望みさえすれば、命の重さも殺しの罪も、みんなまとめてなあなあになってしまう。
……もちろん、あんな約束全部口先だけだと言われてしまえば反論する材料はないのだが。
「どーしよっかなーっ」
自分の背丈より少し高いブロック塀の上に座って、足をばたつかせながら島風はおとがいを上へと向けた。
嫌な空だ。これならいっそ、雨でも降ってくれればいいものを。
殺し合いの一コマとは思えないほど暢気に、島風は自分の立ち位置を考える。
「はぁ」
―――正直に言えば、島風はどちらでもよかった。
殺し合いに乗って皆のために皆を殺す方でも、殺し合いに歯向かってあるかもわからない光明を探してみるのでも、どちらでも構わなかった。
流石に殺した相手を殺したままにしておくのは寝覚めが悪いからやらないが、生き返るなら事態の収束に向けて頑張ってみるのもアリかな、と思っていた。
あまりにも浮つきすぎている。これでは宙ぶらりんだ。今の島風を見たなら、誰もがそういう苛立ちを抱くだろう。
事実、今の彼女は宙に浮いていた。仲間の駆逐艦が殺された時も、どこか上の空でそれを見ていた。
元々島風は協調性にやや欠けるきらいがあったが、それでもこれほどではなかった。
何もかもどうでもいいとまでは言わない。しかしやはり、殺し合いという現実に対して真剣になれない。
他人事のようにこの地獄を見つめ、観測している自分がいる。
「結局、肝心な時には助けてくれないんじゃない。―――提督の、ばか」
島風は人と打ち解けるのがそれほど得意ではない。
協調性に欠けると言ったのもそういう一面だ。
建造されてからと言うもの、友達を作るでもなく一人で過ごしていた彼女。
そんな彼女を見かねて話しかけて来てくれたのが、島風をこの時代に再現した『提督』だった。
最初は鬱陶しかった。ただ、心の深いところに彼が入ってくるまでに時間はかからなかった。
彼は島風が速く走ると喜んでくれたし、戦果を上げて帰ってくると頭を撫でて褒めてくれた。
彼に褒められたい一心で島風は頑張って、頑張って頑張って頑張って――いつしか、島風も“みんな”の一員になっていた。
それからの日々は楽しかった。けれど、長くは続かなかった。
聞いてしまったからだ――提督が、他の艦娘と『ケッコン』したという話を。
-
別に、自分がそうなりたかったわけではない。
そういうことは考えたこともなかったし、自分と彼の間に打算はなかったと断言出来る。
出来る筈なのに、それを聞いた時から島風の頭の中の大事な物が一つぽっかりと抜け落ちてしまった。
いつも通り朝起きて座学の授業を受ける。命令があれば出撃し、時にはMVPだって取ってくる。
いつもと変わらない日常のはずなのに、世界はあまりにも虚ろに見えた。白黒のアニメでも見ているようだった。
今思い返せば。自分が提督に感じていたものは、異性としての愛情――だったのだと思う。
気付いた今では、もう何もかも遅い。巻き返しの機会は奪われたままで、ダメ押しにこの殺し合いゲームだ。
……せめてもう少し早く呼んでくれればよかったのに。これだから遅いやつは嫌いなんだ。
心の中で毒づく島風が、夜闇の中に自分を見つめる視線を感じ取ったのは丁度その時のことである。
「おや。みつかってしまいました」
「だあれ、あなた」
「みてのとおり、てんぐです」
「なにそれ」
島風は失笑したが、確かに視線の主の格好はそれらしかった。
中性的な顔立ちの、恐らくは島風より年下だろう少年。
赤い両目が暗闇の中でも月明かりのおかげで見て取れる。
その服装は、現代の日本では時代錯誤と謗られるようなものだ。
おまけに少年は、島風が座っているブロック塀よりも更に高い空き家の屋根上に立って彼女を見下ろしている。
これなら確かに、それらしいと言えばそれらしい。後は首の輪っかさえなければ完璧だ。
「ぼくは今剣。おたがいさいなんでしたね、こよいは」
「そうね。私は今、どうするか迷い中」
気だるげに島風が答えると、少年――今剣は目を丸くした。
「おや。ころしてしまうんですか?」
「言ったでしょ、迷い中。最後に元通りに出来るんだったら、それでもいいかなとは思う」
「それはいけません。れきしをかえるのはいけないことだと、岩融……ぼくのなかまがいっていましたよ。
かなしいことがあっても、そのさきにいまがあるんだーって」
「よくわかんない」
「じつはぼくもなんです」
-
……なんだか、この子と話してると気が抜ける。
島風ははあ、とややわざとらしく溜息をつき、ひょいと塀の上から飛び降りた。
それを追うように今剣も屋根を蹴って今度は塀に飛び移り、また島風を見下ろす。
「ついて来ても面白くないよ」
「さあ、それはいってみないとわかりません」
「……天狗なら、皆連れてどこか遠い山の奥にでも運んでくれたらいいのに」
「むう。いじわるをいうかたですね、えぇと――」
今のは少し大人気なかったと、さしもの島風も(言ってからではあるが)反省する。
ただ素直に詫びるのも癪なので、名前を名乗ることで手を打つことにした。
「島風よ。駆逐艦、島風」
「くちく……? ……って、あ! まってくださいよう!」
追いかけてくる天狗の少年を無視して、島風はあてもなく歩き始めた。
普段の島風なら此処らで一つ速さ比べと洒落込むところだが、今はそういう気分でもない。
……どうするかは未だに決めかねている。殺すか、立ち向かうか。心はまだ浮いている。
夜は――まだ長そうだ。
【一日目/深夜/B-4・鎌石村】
【島風@艦隊これくしょん-艦これ-】
[状態]:健康、やや上の空
[装備]:12.7cm連装砲@艦隊これくしょん-艦これ-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:どちらでもいい
1:どうしようかな。
[備考]
※本人支給の連装砲はいわゆる「連装砲ちゃん」ではありません
【今剣@刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]:健康
[装備]:短刀『今剣』@刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:かたなとして、つとめをはたします
1:島風さんについていってみましょう! しんぱいです
-
投下終了です。
-
Верный、五稜郭、アネモネで予約します。
-
予約のアネモネをネリネに変更します。
-
新スレ立て乙です!私も読ませていただいて興が乗りましたので、
書き手枠で皐月改二、岩融で予約します。
-
予約ありがとうございます!
投下します。
-
「――それにしても、大変なことになってしまいましたね」
「本当よ。面倒な真似をしてくれたものだわ!」
氷川村、沖木島診療所。
エリアにしてI-7に区分されるこの施設では今、三人の少女が語らっていた。
いや、“三人の少女”と一言で纏めてしまうのは少しばかり大雑把過ぎるか。
正確には艦娘が一人、城娘が一人、花騎士が一人で計三人、という内訳である。
「でも本当に助かりました。まさかこんな早く、お仲間さんを作ることが出来るなんて」
にへらと気の抜けるような満面の笑みで言う少女は、ネリネという名前の花騎士だ。
おっとりとした性根が透けて見えるような、笑顔の似合う水髪の少女。
とても殺し合いなど出来る風には見えない彼女は、その印象通り、このゲームに乗るつもりはなかった。
「それも同感。流石に事が事だもの、仲間は一人でも多い方がいいからね」
一方で先程からネリネと話している城娘の少女は、初見の人間なら目を丸くして驚くようなものを装備している。
何を隠そう――そもそも、隠しようがないのだが――、彼女が自分の背後に置いている武装は巨大な大砲だ。
診療所に入れる際にも大層難儀したが、外に置いて盗まれでもすれば大変ということで、少々無理をして中まで運び込んだという経緯がある。
彼女は城娘、五稜郭。今は昔、旧幕府軍と新政府軍が最後の戦争を行った場所が城娘として人の形を得た存在だ。
もう一人の艦娘の少女は診療医の座る椅子に座り、談笑する二人の姿をぼんやりと眺めている。
あまり感情表現が豊かな方ではないのか、彼女はさっきからずっとこの調子だ。
他の二人はそれを別段咎めるでもなく、こうして会話を通じて親睦を深め合っていた。
「ただ、この首輪をどうにかする手段がないのは問題ですよね」
「はぁ、そうなんだよねー。こればかしは流石の私も、ちょっとどうにも出来ないし」
「せめて機械に詳しい人に会えればいいんですけど……」
仮に殺し合いに乗って優勝したとして、本当に主催の歴史修正主義者が歴史を変えてくれるという保証はない。
それに、後で元通りに出来ると言うのを免罪符に殺人に手を染めると言うことからして論外だ。
となると生き抜くために取れる選択肢は、主催に反抗することしかなくなるのだが――そこで厄介者となるのが、現在進行系で三人を戒めているこの首輪である。
これが爆発すればどうなるかは、五稜郭もネリネもよく知っている。
……忘れられるわけがない。
-
少女の首輪がけたたましく音を鳴らし、最後はくぐもった破裂音と共に小さな頭が宙に浮いた。
酸鼻を極めると言っていい光景は、今も二人の脳裏に色褪せることなく焼き付いて離れない。
気丈を装っている五稜郭ですら、一人になると思い出して顔色を曇らせてしまうほどだ。
こうしている今も、彼女達の命はあの怪人の掌にある。
そう考えると、やはり首輪の解除は急務と言っていいだろう。
問題はやはり、どうやって、という箇所なのだが。
――二人が頭を抱える中、口を開いたのはここまで黙っていた艦娘の少女だった。
「そこは……私の仲間になら、もしかしたらどうにか出来る人が居るかもしれない」
「えっ! それ、本当!?」
「確証はないよ。でも……話に聞いた限りだと、城娘や花騎士よりは私達艦娘の方が機械の扱いには慣れてると思う。流石に私じゃどうにも出来ないけど、賭けてみる価値はある」
邂逅してすぐに、三人はそれぞれの情報を交換していた。
その時真っ先に分かったのが、この三人は全員人の形をしてこそいれど、全く別な存在だということ。
艦娘、城娘、花騎士。彼女達には三者三様の戦いがあり、三者三様の歴史がある。
自分以外の誰かが語ったエピソードは、いずれも新鮮な驚きに満ちたものだった。
そしてこの三者の中でなら、成程確かに機械分野に精通しているのは艦娘だろう。
作戦を指揮する提督に近い人物や鎮守府の設備の原理などに精通している者ならば、首輪を解除する上で大きな活躍をしてくれるかもしれない。
「よかったー……戦うのは慣れてるからいいけど、そこだけが心配だったんだよね」
五稜郭はそれを聞くとほっと胸を撫で下ろす。
ネリネもそれは同じだった。まだ確証はないが、難関だった首輪の解除に対しての光明が見えたのだ。
艦娘のスキル次第では、無事に首輪を外し、皆で歴史修正主義者に逆襲するという未来もありえる。
その希望は、夜の島に指揮官なく放り出された戦士達にとってとても暖かく、安心できるものだった。
「こんな状況だけど、あまり悪い方には考えない方がいい。……と、すまない。少し、用を足してくるよ」
「ん。付いてった方がいいかな?」
「大丈夫だよ、子供じゃないんだから」
励ますような言葉を二人にかけると、艦娘の少女は立ち上がり、診察室を出てお手洗いへと向かっていった。
残されるのは城娘と花騎士の二人。本来出会うことのなかった筈の二人は、お互いに元気を出すべく努めて笑顔で話題を交わし合う。
「……それにしても、大人びた子ですね」
「ほんと。あんなに小さい子なのに、私達よりしっかりしてるように見えるもんね」
-
話は自然と、離席している少女の話題になる。
ネリネも見た目は十分幼い方だが、彼女はそれよりも更に幼い。少なくとも端からはそう見える。
だと言うのに彼女はただの一言も弱音を溢さず、この状況を怖がっている様子もなかった。
普通の子供なら泣き出してもおかしくはないと言うのに、そんな様子を彼女は全く見せない。
とてもしっかりした、優秀な子なのだろうと思う。――ただ、それだけに気がかりだった。
「あの、五稜郭さんは見ましたか?」
「? 見たって、何を?」
「その……最初に殺された子、いるじゃないですか。首輪が爆発して、頭が――……」
「ああ、もう。そこまで思い出さなくていいったら」
「す、すみません。それで、ですね……あの子、殺された子の亡骸に縋って泣いてたんです。
多分相当仲のいいお友達だったか、もしかしたら――家族、だったりするのかもしれません」
ネリネの言葉に、思わず五稜郭は言葉を失ってしまう。
それは、あまりにも壮絶な話だ。友人か家族は定かではないが、大事な人をあんな形で喪ってしまうなんて。
仮に事故や戦いの中での戦死でも、あの年の子供が受け入れられるとは到底思えない。
そんな非業の別れが、彼女達にはよりにもよってあんな形で訪れたというのだ。
それなのにああやって平静を保っているのは、心が強いと思うべきか。それとも、無理をしていると思うべきか。
きっと後者だろうと、五稜郭もネリネも思う。
「……守ってあげないとね」
「そう、ですね。私達の方がお姉さんなんですし」
彼女がいつか悲しみから立ち直り、前を向けるように。
自分達が頑張って彼女を支えようと、二人は互いに頷き合った。
――五稜郭があることに気が付いたのは、ちょうどその時のこと。
「って……いくら何でも、流石に遅くない?」
彼女がお手洗いに立ってから、もう十分も経過している。
腹痛などであれば十分自然な時間ではあるが、何せこの場は殺し合いのゲームフィールドなのだ。
「そうですね――私、ちょっと赤城ちゃんの様子見てきます!」
「あ、ちょっと!」
「大丈夫です、私だって花騎士なんですから! それに何かあったら声をあげるので!」
言うが早いか、ネリネは診察室を飛び出していってしまった。
さっきの会話が影響したのか、今はあの物静かな少女……赤城の世話を焼きたくて仕方がないようだ。
-
それを思うと、自分も負けてはいられないと対抗意識が沸いてくる。
この状況は、誰か一人の力で乗り越えられるような生易しいものでは到底ない。
力があるだけでも、知恵があるだけでも乗り越えられない――今までで、間違いなく最難関の戦い。
これを越えるため、皆で支え合い、助け合う必要がある。
この場には総裁――五稜郭が親愛する彼は居ないのだから、尚更五稜郭がしっかりしなければならない。
相棒の大砲を撫でながら、五稜郭は自分に言い聞かせるように頷いた。
それから更に五分が経過した。赤城とネリネは、戻ってこない。
「……ちょっと」
ぞわりと、背筋を撫で上げる感覚がある。
寒気だ。今の季節は冷え込む時期ではあるが、気温由来のそれでは絶対にない寒気。
本能から来る悪寒だ。もしくは、虫の知らせとでも言うべきか。
何かに急かされるように、気付けば五稜郭は診察室を飛び出していた。
あれほど大事にしていた大砲を振り返る余裕もなく、廊下を全力で走る。
そうして、程なく彼女も赤城とネリネの向かった場所……お手洗いに辿り着いた。
中から二人の声はしない。
誰の声も、物音もしない。
踏み込んで最初に目に入ったのは、開け放たれたままの窓だった。
――その次に――
五稜郭は、半開きの個室の前に倒れ伏している、水色の髪の少女を見含める。
「……ね――」
不衛生な床にうつ伏せになった彼女は、もはやピクリとも動かない。
見ればその真下から、じわじわと床に広がっていく水がある。
その水は透明ではなく、それとは縁遠い赤色をしていた。
-
「――ネリネぇッ!!」
慌てて駆け寄り、五稜郭はネリネを抱き起こす。
間に合っていてくれと祈る彼女だったが、心の中には“間に合っていてもどうしようもない”と冷静に言う自分が居た。
この出血量は明らかに致死量だ。傷も相当なものだろうし、現段階の失血でも十分死亡し得る。
仮にまだネリネが息をしていて、この診療所にあるだろう医療機器で処置をしたとして――専門的な知識も心得もない五稜郭に、果たしてそんな重傷患者を助けられるか?
……無理だろう。そう分かっていても、五稜郭は彼女の心音を確かめてしまう。
頭の冷静な部分で奇跡は起こらない、起こせないと分かっているのに、そうしてしまう!
そして、何という幸運――否、双方にとって不運か。
ネリネの心臓は、まだ小さく鼓動していた。
(何か……そうだ、包帯を! 包帯で傷を塞いで止血すれば、まだなんとか……!!)
血が滲み出しているのはどうやら腹部だ。
それならまだ、急いで処置さえすれば助かる可能性はあるかもしれない。
一縷の望みに懸けて、五稜郭はネリネの体を抱き上げ、その場で勢いよく立ち上がった。
―――ちょうどその時に、五稜郭の腕の中で、花騎士の鼓動が消えた。
「あ」
がくんと膝が折れる。
重心が崩れて、そのまま不衛生な床に跪いてしまう。
それに嫌悪感を覚える余裕すらない。
腕の中のネリネの口から、新たに一滴血がたらりと垂れた。
それはまるで、最後の一欠片の命が液体となって流れ出てしまったかのようだった。
「あ――」
思えば、最初から予兆はあった。
あの艦娘――赤城とは、いきなり遭遇したわけではなかった。
最初に五稜郭とネリネが出会い、話をしている所に赤城が現れたのだ。
あの時は特に気にも留めなかったが、今考えるとおぞましい可能性が浮かんでくる。
赤城は、隠れて様子を窺っていたのではないか。
最初は装備していた砲で狙撃なりして仕留めるつもりだったが、その目の前で自分とネリネが合流してしまった。
二対一となれば、安全に仕留められる可能性は格段に低くなる。
そこで彼女は敢えて自分達に接触し、信用された上で抜け出し、心配してやって来た相手を殺すつもりだった。
……そう考えると、何もかも辻褄が合う。合ってしまう。何故ならこの場に、赤城の死体はどこにもないからだ。
開け放たれた窓。無人の個室。一体だけの死体。全ての状況証拠が――下手人が誰かを物語っていた。
「赤城ぃぃぃぃッ……!!」
怒りの矛先を向けるべき相手は、此処には居ない。
仲間を失い、仇に逃げられた城娘だけが、夜の病院で一人慟哭していた。
【ネリネ@FLOWER KNIGHT GIRL 死亡】
【残り49人】
【一日目/深夜/I-7・沖木島診療所】
【五稜郭@御城プロジェクト:RE〜CASTLE DEFENSE〜】
[状態]:失意、赤城への怒り
[装備]:軍刀
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いをするつもりはない。主催を倒して脱出したい。
1:ネリネ――
2:「赤城」への激しい怒り。
[備考]
※五稜郭の大砲@御城プロジェクト:RE〜CASTLE DEFENSE〜は診察室に放置されています
※大砲の威力は艦娘の艤装同様に劣化しています
※艦娘、花騎士についての知識を得ました
-
□
「次は灯台に行こうかな」
花騎士ネリネを殺した下手人の、赤城と名乗った艦娘は、診療所から数百メートルは離れた場所でそう呟いた。
もしも五稜郭とネリネが艦娘についてもう少し深い知識を持っていたなら、彼女の言葉が嘘だと見抜けたろう。
一概に言えないところもあるが、基本的に艦娘の年齢は艦種によって決まっている。
駆逐艦ならば幼く、空母や戦艦ならばある程度成熟した年齢の場合がほとんどだ。
潜水艦娘などは例外の最たる例だが、彼女の名乗った『赤城』は空母である。
五稜郭達の出会った『赤城』は、しかし小学生程度の幼い容姿をしていた。
これが何を意味するか、既にお分かりいただけたことと思う。
(……すまない、ネリネ、それに五稜郭。それでも――私は止まれないんだ)
彼女の本当の名前は、響。
しかし今は改装を経たことで、Верный――ヴェールヌイと名前を変えている。
普段のヴェールヌイは大人しく温厚で仲間思い、もちろん良識も持ち合わせた、間違っても凶行に走るような人物ではない。
にも関わらず、彼女は先程人を……花騎士を殺した。
五稜郭の推測は全て当たっている。
ヴェールヌイは策略で二人に近付き、希望を見せて安堵させ、信用を勝ち取ってから閉所へ誘き寄せた。
心配して個室をノックしたネリネの前で扉を開け、そのまま支給されたアーミーナイフで腹を深く貫いてやった。
……後は倒れ伏した彼女には目もくれず、あらかじめ開けておいた窓から速やかに逃げるだけだ。
使い慣れた連装高角砲などを使おうものなら音が鳴る。
だがナイフで刺したのなら音は鳴らないし、五稜郭が駆け付けてくるまでの時間を稼げる。
そして全てはうまくいき――ヴェールヌイは今ここに居る。
既に犯行からは五分以上が経過している。道も選んだし足も急がせた。五稜郭に追い付かれることはまずないだろう。
(暁は……今頃何してるかな。いい人に拾われてるといいんだけど)
ふと、自分の姉にあたる少女のことを想う。
大人ぶろうとしていつも空回ってばかりの彼女はとても怖がりだから、暗闇で泣いている姿が脳裏に浮かぶ。
まして、あんなことがあったばかりなのだ。冷静でいられるはずがない。
-
(……電。君を守れなかったことを、どうか許してほしい)
暁型四番艦、『電』。それが、あの時歴史修正主義者の手で惨殺された少女の名前だ。
姉妹の中で一番内気で、そして一番優しい子だった。艦娘向きの性格では間違いなくなかったが、それでもヴェールヌイも暁も電のことが大好きだった。
そんな優しい駆逐艦は、まるで見せしめのように殺された。電の死に顔は今もヴェールヌイの脳裏に焼き付いている。
歴史修正主義者は許せない。出来ることならこの手で殺してやりたいと、心の底からそう思う。
だが彼らへの怒りよりも優先すべきことがヴェールヌイにはあった。それは、姉妹をこれ以上殺させないことだ。
鎮守府での穏やかな日々を共に過ごし、大戦の頃には共に海を馳せた愛しい姉妹達。
あの時、あの場には暁が居た。もしかしたら見えなかっただけで、どこかに雷も居たのかもしれない。
ならば――ヴェールヌイのやることは一つだった。
彼女、あるいは彼女達を生かすために、生き残りの数を減らす。
ヴェールヌイはきっと暁達を殺せないから、自分で歴史を修正すると言うのは却下だ。
それに、暁達はまっすぐな少女である。きっと殺し合いに反発し、歴史修正主義者を打倒することを目指すだろう。
もしも出会うことがあったなら、ヴェールヌイに向けられる言葉はきっと怒りに満ちているに違いない。
――それでもいい。あくまで私は、皆を生かすことに終始する。
冷たい覚悟を胸に、信頼の名を持つ駆逐艦は夜を往く。
もう人を殺した。後戻りは出来ない。……するつもりもない。
【一日目/深夜/I-8】
【Верный@艦隊これくしょん-艦これ-】
[状態]:健康
[装備]:アーミーナイフ、10cm連装高角砲@艦隊これくしょん-艦これ-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考・状況]
基本方針:姉妹を生き残らせるために、参加者を殺す。
1:仮に、もし姉妹の中で自分だけが生き残ってしまったなら、優勝して歴史を変える
2:基本闇討ち、狙撃に徹する。人と関わる場合は顔見知りでない限り偽名を使う
[備考]
※城娘、花騎士についての知識を得ました。
-
投下終了です。
鹿野城、クロユリで予約します。
-
投下乙です
ヴェールヌイはある意味予想通りの道に進んでしまいましたね
暁、小田喜城、書き手枠で秋月を予約します
-
期限超過するかもしれないので一応延長しておきます
-
予約ありがとうございます。自分も延長します
-
すみません。延長します
-
予約分を投下します
-
これほど己の無力を感じたことはあっただろうか。
これほど心苦しくなることがあっただろうか。
金の髪に金の瞳を持つ睦月型五番艦・皐月――それも二度の改造を経てさらに上位の能力を手にした艦娘の一人・皐月改二――は宵闇の中、辛うじて目視できる道に沿って黙々と歩いていた。
しかし、普段の快活さからは想像できないほどに皐月の表情は暗い。
「電…」
同型艦ではないとはいえ、一緒の艦隊に配属され、任務を共にしたこともある駆逐艦娘が目の前でその命を散らしたのだ。
あの言いようもない混乱と恐怖と驚愕が綯い交ぜになった悲痛な表情は決して忘れられるものではないだろう。
あの場には暁と響――ヴェールヌイもいた。二人は今、何を思っているのか。
歴史を修正するために殺し合いに乗ってしまったのだろうか。
皐月の姉妹がその犠牲になったIFを思うと、やりきれない思いが募っていく。
――これから、どうする?
惨劇の会場に参加者が放された今、乗るか拒むかを選択しなければならない。
まだ名簿を見ていないのでいるかどうかはわからないが、皐月以外の睦月型も巻き込まれていたらどうする?
因果の気まぐれで、乗った相手を殺すしかない状況に追い込まれないとも限らない。
何をするにせよ、積極的に動くには相応の覚悟が必要だろう。
だが、殺し合いにおいても皐月の為すべきことは一つだった。
「それでも、ボクは――」
――司令官に、みんなを護ってみせると誓ったんだ。
改二となって艤装や制服も一新され、心を新たにした時のことを胸に掘り起こす。
艤装には、また一段階高みへと昇った感覚とともについてきたモノがあった。
それは、単なる装備では済まされない思い出の品。それは、『あの人』の形見。それは、勇気ある恩人へ贈られた勲章。
「もう一度…ボクに力を貸してくれるかい?」
皐月は覚えている。文月や乗員と共に奮闘し、重傷を負うも艦隊指揮を取り続けた恩人のことを。
大切なみんなを守るために。あの人が命を賭して護ったように。
『武功抜群』と墨書きされた白梢の刀剣を抱き、皐月は独り言ちた。
この刀剣こそが、皐月に支給された初期装備であった。
「そこのお主」
「ッ!?」
不意に、前方から声がかけられ、皐月は身構える。
恩人の刀を没収されなかった代償か、皐月には元々あった艤装が全く支給されていない。
艦娘としては完全に丸腰だ。こんな状態で襲われては一たまりもない。
-
「誰…?」
前方に目を凝らすと、川を跨ぐ橋の上に薙刀を携えた大きな影が仁王立ちしていた。
「安心しろ、俺はこんな巫山戯た催しには乗っておらん。怖がることはないぞ」
男らしく堂々としているが、どこか優しい色を感じさせる口調だった。
あの大きい薙刀からして、刀剣男士という存在だろうか。
歴史修正主義者の言っていた刀剣男士や城娘、花騎士といった皐月の知らない存在についても少なからず興味があったため、男の言葉に従い、大人しく近づく。
「うわぁ…!」
「はっはっは!そう身構えるな!こんな状況で刀集めをしても興が醒めるわ!」
「刀集めって…!これはボクの宝物なんだから!絶対あげないからね!」
影に近づき、その姿がはっきりと見えるようになったところで、皐月は思わず声を上げてしまう。
その男は、橋の上に佇んでいることもあるかもしれないが、皐月の知る提督や大和のような超弩級戦艦娘以上の巨体だった。
それ以上に長身なのが得物の薙刀で、一振りで叩き折られてしまいそうな迫力を感じる。
袈裟に頭巾という僧めいた姿の荘厳さもさることながら、まるでかの武蔵坊弁慶そのものだ。
「うん?その刀から短刀の誰かかと思えば、見ない顔だな。なかなかに可愛げがあるが、乱の奴でもあるまい。お主、名は何という?」
「睦月型五番艦、皐月だけど…」
「むつきがたごばんかんさつきぃ?はて、そんな刀剣男士いたかのう?」
「ボ、ボクは男じゃなくて艦娘っていう女の子だよ!」
「何と!女子であったか!がはははは!これはとんだ勘違いをしていたようだな!」
心の底にくすぶっていた警戒心は、男と話すうちに解けてしまった。
この男――岩融は薙刀の刀剣男士である。本丸でも短刀の男士を可愛がっていたからか、皐月もすぐに打ち解けることができたようだ。
皐月はいつの間にか岩融の傍に寄っており、橋の上でお互いのことを話し合うことにした。
「そうか。あの娘、お主の仲間だったか」
「うん。…何もできなかったけどね」
「あの場では皆が生殺与奪を握られておったからな。無理もない」
岩融としても、短刀ではないとはいえ、年端もいかぬ子が殺されたことは許せることではなかった。
歴史修正主義者は得体の知れない連中ではあったが、首輪で参加者の手綱を握ったからといって見せつけるためだけに首輪を爆破するなど、やはり狂気の沙汰だ。
集められた広間には今剣もいた。決してそう簡単に破壊されるような奴らだとは思っていないが、やはり短刀達が心配だ。
歴史修正主義者は、歴史を変える権利を釣り餌にしていた。
刀剣男士の中には歴史を変えないことに思い悩む刀剣もいたため、彼らが殺し合いに乗る可能性も否定できない。
今剣も…道を踏み外さないでほしいとは願っているが、なるべく早く合流しておきたいところだ。
-
「皐月よ。…お主は歴史を変えたいと思うか?」
「どうして、そんなことを聞くの?」
「いやなに、前の主を持っておった刀剣の戯言とでも思ってくれ」
「ボクは――」
皐月は少しの沈黙の後、ブレザーの内側にしまっていた『武功抜群』を取り出す。
「――変えるつもりはないよ。だって、ボクにはこれがあるから」
そして、迷い一つ感じさせない澄み渡る声で答えた。
皐月の持つ刀は、奮戦の末に名誉の戦士を遂げた恩人に贈られた刀。
出撃の際も肌身離さず携行していたが、天龍のように武器として扱うことはなく、守り刀の側面が強い。
「ボクには、命をかけてみんなを護ってくれた恩人がいる。これはその形見なんだ」
確かに、歴史を変えれば皐月の恩人が死なずに済んだかもしれない。
しかし、それは悲しくとも決して変えてはならぬ歴史だった。
「あの人は死んでしまった。それはとても悲しいし、ボクも悲しい。けど、あの人が命をかけたからこそボクもそうでありたいと思うんだ。ボクは、みんなを護りたい」
恩人が死に物狂いで奮闘したからこそ、今の皐月がある。
それを変えることは恩人の勇気や武功を愚弄することに他ならなかった。
「…お主は、強いのう」
ぽん、と岩融の手が皐月の頭に乗せられ、クシャリと髪を撫でる。
岩融は静かに微笑み、尖った歯並びが少しだけ覗いていた。
「俺も刀剣男士、刀を大切にする心はよくわかる。その『武功抜群』なる刀、あまり戦に使いたくないと見える。先ほども刀の柄に手をかける動きすらなかったからな」
「この刀は、あの人の刀だから。…ボクが使うわけにはいかないよ」
「お主、艦娘とかいう女子にしては艤装とやらはないようだな」
「ボクが身に着けてたのはこれだけみたい。ちょっと調べてみたけど、使い慣れた装備はなかったかな」
「なら、これを持つといい」
そう言って、岩融はデイパックの中から皐月に何かを投げ渡した。
慌てつつも受け取ると、睦月型艦娘の標準武装、12cm単装砲が手の上にあった。
性能は連装砲よりも劣るが、拳銃の要領で片手だけでも砲撃のできる、機動性に優れた装備だ。
皐月は目を見開き、きょとんとした顔で「これ、もらっていいの?」と聞く。
「遠慮はいらぬ。俺にはこれがあるからな!」
岩融は、これ見よがしに巨大な薙刀へ視線を移す。
薙刀『岩融』の三日月の如き刃が、月明かりに反射して煌めいていた。
【一日目/深夜/D-1】
【皐月改二@艦隊これくしょん-艦これ-】
[状態]:健康
[装備]:12cm単装砲@艦隊これくしょん-艦これ-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、『武功抜群』@艦隊これくしょん-艦これ-
[思考・状況]
基本方針:歴史は変えない。みんなを護りたい。
1:岩融と共に行動する
2:暁とヴェールヌイが心配
[備考]
※参加者名簿はまだ見ていないようです
【岩融@刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]:健康
[装備]:薙刀『岩融』@刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:皐月と共に行動する
2:なるべく早く短刀と合流したい、特に今剣
3:刀剣男士の中には殺し合いに乗る者が出てくるやもしれぬな…
[備考]
-
以上で投下を終了します
皐月の掘り下げについては、史実を参照していただければわかりやすいと思います
-
投下お疲れ様です。
皐月も岩融も殺し合いに乗らない道を選びましたか。
どちらも確たる覚悟の上で殺し合いに背く方を選んだため、安定感のある対主催として活躍してくれそうですね。
期限一杯+延長までしておいて申し訳ないのですが、やはり今ひとつ話の出来に納得が行かないので、現在の予約分を破棄させて頂きます。長期拘束申し訳ありません
代わりと言っては何ですが、仙台城、アネモネで予約します。
-
すみません。予約を破棄します
-
提示された期間を既に過ぎているので大丈夫なのかもしれませんが、
予約期間は七日+延長三日。『変更の可能性大いにあり』と書かれてますので、
万が一問題にならないよう、念のため質問させていただきます
仙台城(を含むもの)を予約したいのですが、同じく仙台城を予約されてる方がいます
期限は過ぎてますが、破棄されたわけでもなく、この場合の予約って大丈夫でしょうか?
-
あ、忘れてましたが予約したいのは仙台城と暁です
※予約出来るかの確認ですので、OKでしたら日を改めて予約します
-
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
"
"
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■