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金田一少年の事件簿バトルロワイアル

1 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:25:02 y6mUNds20










注意>『金田一少年の事件簿』に関する重大なネタバレを含みますので、把握してから読んでください。


   ちなみにリレーです。









【参加者名簿】
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○

60/60



【主催者】

???



【主催進行役】

九条章太郎@悲恋湖伝説殺人事件








"
"
2 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:25:20 y6mUNds20
オープニングを投下します。


3 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:26:22 y6mUNds20





 今宵、殺し合いに招かれた不幸な参加者たちは、外で轟いた禍々しい雷鳴に目を覚ました。


 この場所に集められていた、おおよそ六十人前後の人間が、一斉に――起き上がる。
 それぞれ、まだ働かない頭が少しだけ動いた。
 ここに来る前、自分が一体何をしていたのかを思い出そうとすると――未だガンガンする頭は冴えきれず、自分が泥のように眠っていた事しか思い出させなかった。
 どうやら、何者かによって睡眠薬を盛られてしまったらしい。

 周囲を見回すと――どうやらここは、どこかの学校の体育館のようだ。
 それだけは誰にでもわかった。参加者の多くは国内の学校に通った経験があったし、体育館のデザインは今も昔も変わらず懐かしい内装である。
 しかし、そこに来る用事はなく、眠る前までここにいた記憶があるという者もいない。
 故に、誰もが不思議そうに周囲を見回し続けるだけだった。



 ここは――東京都不動山市にある、私立不動高校の体育館であった。



 私立不動高校。
 この高校に通った事のある者も、その中には何人かいた。

 ――少なくとも。
 この高校に通っていた「ある少年」や「ある少女」を知っている者ならば、きっと大勢いる筈だ。
 ここに集められた者は、基本的にはその少年を繋がりにして集められたのだから。
 中には、不動高校を舞台にした凄惨な連続殺人事件を思い出す者もいるかもしれない。


 ある者は、この高校の演劇部の合宿で発生した『オペラ座の怪人』に見立てられた凄惨な連続殺人事件を思い出したかもしれない。

 ある者は、この高校の教師が実は本物の教師を殺して入れ替わっていた悲しき殺人マシーンが青森県の村の住民をほぼ全滅させた凄惨な殺人事件を思い出したかもしれない。

 ある者は、この高校の旧校舎で七不思議に見立てられ生徒が殺された凄惨な連続殺人事件を思い出したかもしれない。

 ある者は、この高校の旧校舎が実は元々製薬会社の実験所で、校内の至る所に人体実験の犠牲者の骨が埋められていた凄惨な事件を思い出したかもしれない。

 ある者は、この高校の生徒が(ry


 不動高校の生徒たちは、同じ制服を纏っている人間を見つけながら、その周囲にいる明かに高校生でも何でもない連中を見て狼狽えていた。
 ただの学校の集会ではないのは、誰の目で見ても明らかである。
 そんな時、ふと、体育館のステージに、誰かが現れた。



 !?



 ワカメヘアー。メガネ。
 おどおどした様子の成人男性――それは一体誰なのだ。
 彼に見覚えがある者も何人かいるかもしれないし、いないかもしれない(書き手枠による)。
 何にせよ、不動高校の生徒の多くにとっては見覚えがない顔に違いなかった。


「――皆様、目を覚ましたようですね」

「誰だ、お前は!?」

「……私は、今回のバトルロワイアルのツアーコンダクターを務めさせて頂きます、観月旅行社の『九条章太郎』と申します」


 男は、そう名乗った。
 別誌の有名な少年漫画に登場する主人公に酷似した名前を持つ彼は、その主人公とはまるで正反対の弱弱しい体つきで、性格もどこか気弱そうである。
 だが、彼もかつては、悲恋湖リゾートで起きた凄惨な連続殺人事件に巻き込まれ生還した経験がある。
 とはいえ腕っぷしが強い訳ではない。
 集まった容疑者ほぼ全員が無差別的にターゲットにされた事件の仲で、幸いにも犯人に目を付けられるのが遅かったお陰で助かったのだ。
 ちなみに、その事件の犯人も不動高校生である。


4 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:26:49 y6mUNds20


「バトルロワイアル!? ツアー!? 私は聞いてないぞ!」


 しかし、九条の物腰やわらかな説明とは対照的な怒った様子のおっさんが、突如として立ち上がり、九条に罵声を浴びせた。
 白髪交じりで、小太り。口元のちょび髭が似合っているナイスミドル。
 極限状況でなければ、物腰やわらかそうでニッコニコの顔もできるが、今は怒らずにはいられなかったのだろう。
 彼は忙しい立場にある人間なのだ。


「なんだここは! 私は忙しいんだぞ! こんな所に俺を呼んで何のつもりだ!!」


 彼の名は、香山三郎――不動産会社社長という名の成金である。
 名前を聞いて誰だかわかる人間がどれほどいるかわからないので、一応本編での彼の活躍を伝えておこう。

 彼もまた、九条と同じくあの『悲恋湖伝説殺人事件』で登場した人物だ。ジェイソンに二番目に殺され、遺体を冷蔵庫に詰められた悲惨なおっさんであった。
 常にルイ・ヴィトンのバッグに詰めた大量の紙幣を抱えていたあの香山さん。
 妻・聖子に愛想を尽かされており、「スケベジジイ」などと呼ばれていたあの香山さん。
 若い頃に山歩きをしていたと妻に元気に告げた、あの香山さんである。
 確かに横暴で善人とも言い難いが、別に殺されるほど悪い事はしておらず、「イニシャルが仇と同じだったから」というふざけた理由で殺され、顔をズタズタに潰された悲惨な男だった。
 彼は、危機的状況に陥ると、身勝手な本性が晒され、周囲に当たり散らすようなきらいがある。今もまさにそんな感じだった。


「はあ。実は、私も会社の方から依頼を受けただけで、詳しくは聞いていないのですが……」

「そんな事でよくツアーコンダクターが務まるなッ! いいから責任者を呼んで来い!」

「そ、それが実は――――私もまだ、会った事がないのです」


 は? と言いたげな顔を六十人が一斉に九条に向けた。


「このツアーの企画者とは、直接面識がありません。全て電話のみで応対させていただきましたから……」

「そんな馬鹿な話があるか! せ、責任者の名前を言ってみろ」

「責任者の名前は……」


 また弱弱しい声で、九条が続ける。
 そして明かされた責任者の名前は――





「『災厄の皇帝(エンペラー)』とだけ……」





 名前、という程の名前ではなかった。
 いくらなんでも、「災厄の皇帝」と書いて、「エンペラー」と読む名前の人間などいまい。
 それに、その名前は『王室(ロワイアル)』を意味する言葉から連想させた怪人名であった。
 要するに、バトルロワイアルに高みの見物を決め込む王様を気取る何者かである。


「その『災厄の皇帝(エンペラー)』とかいう奴は、一体私たちに何をするつもりなんだ!!」

「なんでも、これまで、金田一一、明智健悟、高遠遙一などに関わった人間に――――――『殺し合いをさせてみる実験』をする、と。
 皆様をお呼びしたのは、これからこの島で殺し合っていただく為のようです」

「な、なんだと! 貴様、ふざけるのもいい加減に――」


 香山三郎がそう叫び、ブチギレて九条の元へと歩み出そうとした瞬間――。



 ピカァァァァッ……ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ



 ドシャーーーーーーーン



 雷が、再び大きく光り轟いた。
 どうやら、近くに落ちてきたらしい。
 何人かの女性が「きゃーっ!」と悲鳴をあげた。


「あっ」


 それと同時に、香山三郎は、自分の足元に影が落ちてくるのを感じて、咄嗟に足を止めて真上を見上げる。
 そこには、急速に自分の元へと接近していく――いや、落ちてくる、何かがあった。
 しかし、それが何なのかわかる前に、雷は光るのを辞め、そして、香山はその何かに押しつぶされた。


5 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:27:38 y6mUNds20



 ドン……ガシャーーーン



「あああああああああああああーーーーーっ! ――」


 雷が光った次の瞬間――。
 香山三郎は、真上から突然降って来た照明器具によって、押しつぶされたのである。


「きゃーーーっ!!」


 女性参加者の悲鳴が、先ほどより大きく上がった。
 男性参加者は、ただ唖然としていた。


「し、死んでる……!」


 何人かが真上を見上げると、天井に並列して設置された証明が、一つ抜け落ちて光を発さなくなっていた。
 十メートル以上の高さがある天井にぶら下がっているそれは、古くなって落ちてきてしまったのだ。
 これが金属部を頭上に落とし、頭を割った上、彼の頭を支える首の骨まで奇妙な形へと折り曲げた。
 香山は即死と見て間違いない。まだ生新しい血が、伏した香山の遺体の頭から垂れて広がっている……。
 香山以外には、幸いにも死者や怪我人は出ていなかったが、それでも見ていた者のショックは計り知れまい。
 泣き出す者もいた。嘔吐する者はギリいなかった。

 



【香山三郎@金田一少年の事件簿・悲恋湖伝説殺人事件 死亡】





◆ ◆ ◆ ◆ ◆


"
"
6 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:28:27 y6mUNds20





 ――そう。
 それは、かつて、『金田一少年の事件簿』の二十年以上の歴史で、最初に死んだ少女・日高織絵と、同じ死に方だった。


 決定的に違うのは、香山の死体は別に日高織絵のそれに比べ美しくない事と、それがステージの上ではない事であった。
 美少女の死体のある種異様な美しさに比べると、おっさんの死体は別に印象に残らない――その辺の事は、金田一読者は重々承知しているに違いない。

 とにかく、日高の死に端を発した金田一少年の死神人生をなぞらえるかのように、この殺し合いの最初の死体はこの世に産み落とされたのだ。

 ……あ。
 ちなみに、よく誤解されるので注釈を入れておこう。
 実は原作の日高織絵は、「シャンデリア」ではなく、これと同じく「照明器具」に押しつぶされて死亡するという形で亡くなっている。
 度々、「金田一の最初の犠牲者はシャンデリアに押しつぶされて死ぬ」というイメージで語られるが、彼女を圧死させた落下物は単なる照明器具に過ぎないのだ。
 原作でシャンデリアで死亡するのは、『オペラ座館・新たなる殺人』の能条聖子、『オペラ座館・第三の殺人』の絵門いずみの二名のみである。
 とはいえ、アニメ版では確かに日高はシャンデリアの落下による圧死となっており、『オペラ座館』=シャンデリア、という認識は確かにこうしたメディアミックスを通して根深く印象付いた物なのかもしれない。
 それから、かなり関係ない捕捉であるが、実は原作となるガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』では、シャンデリアが落ちてきた際に舞台女優・カルロッタは死んでいない事も合わせて伝えておこう。
 確かにシャンデリアの落下によって死者が出た描写はあるが、『金田一少年の事件簿』内で解説される「カルロッタが劇場で死亡した」という認識は誤りである。
 これは金田一原作のミスの一つである。
 要するに、これらの誤認識を持っている読者は、今のうちにこの辺の認識を改めておこう。

 で、こうして香山がいきなり照明に押しつぶされて死んだのは確かだが、やはり衝撃度は日高織絵に適う物はないと言えよう。
 Fカップと推定される巨乳が、落下した照明器具で更に凹凸を増したあのトラウマな第一話。
 それはまさしく、もう少し低年齢を意識しているかのような明るい漫画の雰囲気を、一瞬にして本格推理の世界へと引き込むには、充分な衝撃を持っていた。
 金田一が始まった時、「正直ガキ向けのショボい探偵モノでしょ?」みたいに思った読者のハートを一気に掴んだのである。
 筆者は生まれてないが、当時はあの第一話の結果として、連載初回でマガジンのアンケートで一位を獲得したらしい。すごい。
 何より、あれだけ可愛く無邪気なキャラとして描写されたロリ巨乳系キャラが、生気を失った目で天井を眺める物言わぬ肉塊と成り果てる姿は、誰の目にも大きなショックを与えたのである。
 もはや最近はそういう展開の漫画やアニメにも慣れちゃったのと、そんな当時の金田一なんぞとっくに絵が古いのとで、今読んでもその辺わかりづらいかもしれないが、当時としては結構凄かったのだ。

 何が言いたいかと言うと、つまり、香山の死は、日高に比べると大した事はないという事であった。
 閑話休題。


7 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:28:47 y6mUNds20


「……申し訳ありません。言い忘れてましたが、どうやら、歯向かう素振りを見せると、死ぬ事になっているようです……」


 九条の言葉に、何人かががくりと膝を落とした。
 こんな偶然の死には何の強制力もない。本家バトロワの首輪に比べて、なんと実感の湧きづらい抑止力だろう。
 しかし、偶然の死を前にしたばかりの人間が、九条に言い返せる気力を持ちうる筈もない。


「そ、そんな……」


 それに、『金田一少年の事件簿』を一読した人間ならば知っているだろう……。
 憎悪や思惑の渦巻く連続殺人の中に、時として、ただの理不尽な事故死が紛れ込んでしまうという事である。

 つまりは――『魔神遺跡殺人事件』で港屋さんを殺ったあの釣鐘や、『異人館村殺人事件』で時田さんを殺った殺人でも何でもない只の心臓発作。
 あれらの例と同じく、不穏な動きを見せる者には、殺人者以外の手で裁きが下される事が少なくない。
 いかにもヒステリックな言いがかりをつけた人物に、死が招かれてしまうのも致し方ない話だろう。
 それを本能的に悟ったのか、まるでその偶然の死もまた、お約束の首輪爆弾以上の抑止力となって、そこにいる者たちを黙らせた。


「……ガイドを続けさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 九条は淡々と説明を続けた。
 もはや、そんな彼の言葉を遮る者はいなかった。


「――まずは私たちの今いる島についてガイドしましょう。
 現在、私たちがいる島は、頃詩哀島(ころしあいじま)という絶海の孤島です。
 ちなみに全敷地面積が約四二五平方キロメートル。これはほぼ横浜市に匹敵する広さです」

「横浜市って……そんなに!?」

「……広いだけではありません。設備も揃っています。
 リゾートホテル(オペラ座館)はもちろん、この不動高校やタロット山荘……これまで惨劇の舞台になってきた忌まわしき場所がそのまま再現されております。
 場所によっては雪も積もっているのでスキーも楽しめるかと。来年には、リゾート島としてオープンする予定です」


 彼の説明が真実ならば、恐ろしいまでに殺し合いの現場として完成された島であると言えよう。
 過去に殺し合いが起きたあらゆる呪いスポットが全て一同にある、猟奇殺人マニア等にとっては垂涎ものかもしれない。
 それにしても、これだけ多くの施設を島に運ぶには、莫大な手間と金がかかっているに相違ない。
 しかし、金に飽かせて足のつかない外国人のバイトでも使えば、島に建てるのも不可能ではないと言える。
 参加者の中には、既に死んでいる者も何名かいたが、これもまた帰国直前の外国人が黒魔術とかで何とかしたんだろう。


「ちなみに、殺し合いの優勝者には、そんなこのリゾート島の会員権が譲渡されます。
 この頃詩哀島リゾートは来年のオープン後、全施設が少人数の会員制になる予定です。
 来年には会員権が売りに出されますが、既に申し込みが殺到し数百倍の抽選になるといわれています。
 そうなればバブル時代のNTT株やゴルフ会員権以上のプレミアがついて――会員権の価値はだいたい五千万以上にはね上がるでしょう」


 九条がそう言った瞬間――ピクッと目の色を変える者もいた。
 優勝者はこのリゾート島の会員権が手に入る。
 それは、数名の参加者の目を欲にくらませるに充分であった。
 それぞれ事情はあるだろうが、金を必要とする者は少なくない。
 実際、原作でも何名かの犯人は金の為に人を殺した事実もある。
 ただ、そいつらが必要とした額に比べるとショボい気がしないでもない。


8 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:29:06 y6mUNds20


「まあ、皆様の中には殺し合いを過去に体験した方が多いというか、何らかの形で殺人事件に巻き込まれた方も少なくないと思います。
 ここまで、多くの皆様に冷静にお話を聞いていただけて幸いです。
 殺し合いの際に重要な凶器は、我々の方から皆様に支給致しますのでご安心ください。この凶器は、それぞれ違った物が支給されますから、上手くアタリを引ける事を祈っています」


 それから、九条はロワで重要な要素を淡々と説明した。
 放送とか。
 まあ、その辺は後で貼るルールを見てください。
 ――そこまで話を進めたあたりで、また九条に怒号を飛ばす者もいた。

 
「もういい、もうたくさんだ!! 早くこんな島から出してくれ!!」


 あれだけ、主催に歯向かってはならないと言われているのに、耐えきれない者が現れたのだ。
 さすがに六十人もの人間が集まったうえに、横暴なヤツやクズや殺人鬼が結構な割合で存在する為、こういった暴動も起きてしまうのだ。


「こんな殺し合いに呼ばれるなんて――まさか、あの事が原因じゃ……」

「よせっ! 二度とその話を口にするな!!」  !?


 会場の隅の方では、何か後ろめたい事を口に出して弱気になる者もいた。
 彼らは過去になんかやらかしたらしい。村を燃やしたのか、友達に硫酸をかけたのかは定かではない。
 しかし、体育館内は徐々にヒステリックな空気に包まれ始めた。
 このままでは、ここにいる人間がポンポン死んでしまう。
 事態を見かねた九条は、毅然とした瞳で、声をあげた。


「――皆様、ご安心ください。三日後には、船が来ます」

「なんですって!? 何故その事を早く言わなかったの!?」

「……私、水恐怖症で船が乗れないので」

「そ、そう。とにかくそれなら安心ね。三日待てば、外に出られるのよ」

「ええ。ただ、この島はそれまで外部との連絡手段が一切使えません。
 先ほど確認したところ、電話線は全て何者かによって切断されていました。
 あと、この辺りは田舎なので、あらゆる通信機器の電波も通じません」


9 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:29:23 y6mUNds20


 通信機器――携帯電話、とは言わなかった。
 参加者の中には、あらゆる通信機器を使う人間がいる。
 ポケベルを愛用する者、PHSを愛用する者、携帯電話を愛用する者、スマホを愛用する者。
 今現在高校二年生の金田一や美雪がポケベルを使っている筈なのに、高校二年生当時に携帯を使っていた明智健悟(28)や高遠遙一(23)。
 ともさかりえと人気を二分するスーパーアイドル速水玲香。
 レシートの日付が92年(『オペラ座館』)。
 1983年の事故や行方不明事件が10年前(『雪夜叉』『学園七不思議』)。
 ノストラダムスの大予言が目前(『殺戮のディープブルー』)。
 1997年の中国への香港返還が3年前(『金田一少年の決死行』)。
 東日本大震災と思しき震災が動機(『亡霊校舎』)
 15年前に死んだ青桐岳人の墓に刻まれている命日は「平成 年」(『吸血桜』)。
 ネット掲示板の書き込みが「20XX年」(『白蛇蔵』←NEW)。
 etc etc……(覚えてる限りこんな感じで、他にも色々ある)

 時系列の話は面倒なのでやめよう。



「まあ、それまで皆様、どうにか生き残ってください。
 あ、殺人鬼が結構いるので、三日後を待つのはやっぱり危険かと。
 ……ガイドは以上です。――では、御健闘を」



 九条がそう合図すると、睡眠ガスが部屋に一斉に充満した。
 その瞬間、足のつかない外国人のバイトが大量に押し寄せ、眠っている参加者たちを連れてどこかへ消えていく。
 各参加者をランダムで配置する為に、彼らを運んでいったのだ。
 九条と足のつかない外国人は、そこまでの作業を終えると、そのままヘリで島から消えた。




【金田一少年の事件簿バトルロワイアル GAME START】








10 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:30:17 y6mUNds20





【ルール】

・三日間、バトルロワイアルをします。
 食料とか水とか地図とかライトとか時計とかルールブックとかはデイパックに入ってますが、多分その辺の施設にもいっぱいあります。
 支給品は、漫画『金田一少年の事件簿』シリーズに登場する道具から、1〜2個デイパックにに入れて適当に支給されます。

・首輪とかはないですが、どっちにしろ島を出るのは無理です。
 抑止力がなくてもどうせ勝手に殺し合うと思うので、別に首輪はなくていいと思います。
 また、無理に脱出しようとして船を作った場合、船が突然爆発します。
 他にも不穏な動きを見せて脱出に近づきつつある人間は、色々あって死にます。

・放送が六時間おきくらいにあります。放送でやる事は他のロワと大して変わりません。

・収集がつかなくなったり、飽きたりしたら、夢オチか毒龍オチになります。







【舞台】

・舞台は、頃詩哀島(ころしあいじま)と呼ばれる絶海の孤島です。
 携帯の電波が全く通じず、島には内線しかありません。つまり、来た瞬間外部との連絡手段は遮断されます。
 だいたい三日後にフェリーが来る予定です。

・これまでの事件に登場した施設が全部ある凄い島です。場所によっては雪とかも積もってます。
 地形は特に考えてないので参加者は適当にノリで移動してノリで合流してください。
 なんかすごいトリックを考えてくれた人がいたら、その回だけちゃんとした地形とか考えてもいいです。
 別の回ではわざわざそれ拾う必要ないです。マップ作るのは面倒なので、全部適当で。
(これは、『雪夜叉伝説殺人事件』に登場した背氷村が、後の推理ブックではトリックの為に地形が変えられたり、
 不動高校内の描写が回によって微妙に異なっていたり、オペラ座館とか出てくるたびに別物っぽかったりなど、
 わりと原作にもある理不尽なので、もうどうでもいいです)






11 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:30:52 y6mUNds20



【支給品のルール】

・原則的に、参戦作品内からの出典でお願いします。数は1〜2個。基本的にはデイパック内に入ってます。
 転送先(運送先)に支給品が置いてある場合もあります。
 デイパックは四次元式ではないので重いですが、金田一世界の住民は、女性犯人でも体格の良い男性の遺体を数分で運べるくらい力持ちなので大丈夫です。
 デカすぎる物だとアレですが、多少ならデイパックより大きめな物が出てきても気にしないと思います。チェーンソーくらいなら大丈夫です。

・「毒龍@香港九龍財宝殺人事件」など、核爆弾の支給は禁止です。

・登場人物の死体の欠損部(例:「征丸さんの首@飛騨からくり屋敷殺人事件」など)の支給は禁止です。
 これは、この支給品の人が参加者として参戦するとややこしい事になる為です。

・支給品の出典は明示し、どの場面で登場した道具なのかを明確に表記してください。
 たとえば、「ナイフ@異人館村殺人事件」だと、異人館村殺人事件には数種類のナイフが登場しているのでどのナイフなのかわかりません。
 以下のように、どの場面に登場したのかが誰でもわかるように書いてください。
 
 ☆金田一少年が推理の際に人形を切る為に使った折りたたみナイフ
 ☆五塔婦人が美雪の生き血を抜こうとした時に構えていたナイフ
 ☆連城久彦が六星竜一を暗殺(未遂)する際に使ったナイフ
 ☆六星が母親を殺害する際に使ったナイフ
 ☆六星が一色を殺害する時に使ったナイフ
 ☆風祭が教会で六つの死体を切り刻んだ時に使ったナイフ

 また、支給品解説さえ入れてくれれば、「金田一ナイフ@異人館村」、「五塔ナイフ@異人館村」、「連城ナイフ@異人館村」、「六星(幼少期)ナイフ@異人館村」、「六星(青年期)ナイフ@異人館村」、「風祭(回想)ナイフ@異人館村」でも構いません。
 とにかく、原作をよく見て適切な書き方をお願いします。

・現実出典よりかは『金田一少年の事件簿』に登場している支給品を推奨しますが、あまり銃器が登場していない作品でもあるので、現実の銃器などを支給させる事は可能とします。
 ただし、現実出典でも、戦車とかを参戦するのはやめましょう。基本的に銃のみという感じで(他の凶器は多分だいたい原作に出てます)。






12 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:31:10 y6mUNds20


【参戦キャラ・書き手枠】

・60人は、全部書き手枠です。数えるのが面倒なので、多少増えてもいいです。適当なタイミングで打ち切ります。
 それで書かれなくなったパートのキャラや余ったキャラは、適当に投げ込まれた檜山爆弾で吹き飛ばして纏めて死にます。

・参戦キャラは下記の出典から選んでください。

 ○漫画『金田一少年の事件簿』シリーズの『オペラ座館殺人事件』〜『黒霊ホテル殺人事件』までの短編・中編・長編事件

 ○漫画『高遠少年の事件簿』

 ○短編集の後ろに載っている、金田一、明智、フミなどがきちんと登場するオマケ漫画(『金田一少年の怪奇事件簿』など)

 ○ノベライズの『オペラ座館・新たなる殺人』〜『邪宗館殺人事件』(『旅の途中』は普通に単行本や小説を集めると見られないので不可とする)

 ×ゲーム作品、アニメ・ドラマ、謎解きブック、CDブック、『明智警部の事件簿』、『金田一少年の一泊二日小旅行』、さとうふみやの仕事日記、DVD特典漫画、エルカンターレファイトなど
  (×となっているのは参戦は不可能ですが、ネタとして話題に挙げたり、その設定を考察や解釈に利用したりする程度なら可)
 
・下記のキャラクターは、重要キャラですが、だからこそ逆に設定が多く、色々めんどくさいので登場禁止です。
 今回は、敢えて脇役だけでやりましょう。

 ○金田一一/○七瀬美雪/○剣持勇/○明智健悟/○高遠遙一
 ○佐木竜二/○いつき陽介/○金田一二三/○怪盗紳士(醍醐真紀)/○速水玲香

・草太や真壁は別にいいです。原作漫画では、一、二件程度しか本格的に事件に巻き込まれる事がないので。

・『錬金術殺人事件』に登場する探偵学園Qのキャラや、金田一耕助など、明かに他作品が活躍現場なキャラは参戦禁止です。
 また、「天草四郎@天草財宝伝説殺人事件」、「ジョン・レノン@人形島殺人事件」など、「原作で話題に挙がってるから出せるんだよね?」と屁理屈でねじ込むような現実出典キャラも禁止です。

・名前のないキャラを出してもいいですが、ちゃんと誰だかわかるように書いてください(例:「放課後の魔術師の噂を怖がっていたショートカット黒髪の少女@学園七不思議殺人事件」など)。

・参戦キャラは人間、もしくは、奴利壁のみでお願いします。「ポアロ@怪盗紳士の殺人」や、「毒薬カプセルを誤飲したネズミ@墓場島殺人事件」のような動物は参戦禁止(支給は可)。

・多少独自解釈などを踏まえて誇張して書いてもいいです。どうせこんなロワなので。

・キャラの重複参戦は禁止です。遠野と深山で区別するのもダメです。先に予約された方のみです。
 また、スカーレット・ローゼスや遠山遙治など単なる偽名は、高遠に含まれているので参戦禁止です。

・小田切進や不破鳴美など入れ替わられた人物の場合、予約されている人物が本物か偽物かわからなくなるので、小田切進(真)、小田切進(偽)とか、真・不破鳴美、偽・不破鳴美とか、誰だかわかるように予約してください。
 電脳山荘メンバーとか複雑なので、一度読んできちんと把握してから予約する事を推奨します。






13 : OP ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:31:23 y6mUNds20



【予約】

・予約期限は5日(延長2日)。そんな厳密じゃないです。投下後、24時間は再予約禁止(連続で投下・予約を繰り返されて書き手枠が独占されると困るので)。
 まあ、正直このロワではあんまり気合い入れなくていいので、3日くらいで仕上げてくれるとありがたいです。
 でも、いくらこんなロワとはいえ、原作はちゃんと読んで書いてください。

・書き手枠の予約上限は1度の予約につき3名まででお願いします。
 いきなり書き手枠を60人予約されると詰むので。

・予約破棄した後のペナルティとかは特にないです。強いて言えば、あとで殺される動機になるかもしれないくらいです。







【時間表記】

 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24


14 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:32:12 y6mUNds20
オープニング、ルールは以上です。
次に、月江茉莉香と星桂馬を予約して投下します。


15 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:33:03 y6mUNds20



 桜が美しい花であるのは、今更言葉を連ねて伝えるまでもないが、中でもその桜が最も輝くのは、暗闇の中で照らし出された時に違いない。



 そう、たとえばこの洋館――夜桜亭の二階窓から月江茉莉香が見下ろしているような、妖しい『夜桜』の事でである。
 茉莉香は、あの体育館でのツアーガイドの後、気づけばこの洋館のベッドで眠らされており、目が覚めてからはただその夜桜を見下ろしてばかりいた。
 睡眠薬を盛られて寝ていたので動く為の士気が皆無……というのも一つの言い訳として挙げられるが、何より本能的に美しいと思えてしまう光景が真下に広がっている事が彼女をここに留まらせた。
 今自分が独り占めしている光景に見惚れ、そこから離れるのを何となく拒んでしまうのも無理はないだろう。
 一つの美しさが、彼女への心理的抑圧(『心理的〜』『精神的〜』と最初につけると何でも金田一っぽくなる)になっているのだ。


(殺し合い、か……)


 殺し合い。
 その言葉を意識すると、急に茉莉香にとって、あの夜桜が妖怪のように見えてしまう。
 何か夜桜には、そんな得体の知れない恐怖さえ感じさせるグロテスクが感じられた。

 そういえば、「桜の木の下には死体が埋まっている」と何処かで聞いた事がある。
 その血を吸ったからこそ、あれほど鮮やかな花びらを散らすのだと――茉莉香は、その言葉の意味もよく知らないので、そう解釈している。
 既に誰かが凄惨な死体となって、あの木の下に埋められている事を茉莉香は発作的にイメージした。

 母親。父親(義理)。友達にして義理の妹の凛。
 ツアーガイドでは「金田一一等に関わった人間」を呼んでいるという話だったので、この三人だって殺し合いに巻き込まれているかもしれない。
 どうでもいいが、友達の父親と自分の母親が結婚して、「友達が妹になった」という経緯は若干引く。

 あと、この三人だけではない。
 小五の夏にカブスカウトに参加したあの遭難組のみんなは、金田一と一緒にいたので、軒並み茉莉香と同じように参加させられる危険性があるのだ。
 あれ以来会っていない彼らが、果たしてどう成長しているか楽しみなのに――その再会で片方が死体というのは悲しい結末だと思う。
 そうはならないでほしい。

 凛。美咲。あかり。光太郎。忍。亮。心平。金田一。
 そして、陸。


「はぁ。陸に会って謝らなきゃ」


 茉莉香は突然、「はぁ。すき」とツイートする女性のように、そう独り言ちた。
 かつて、友人・神小路陸にムカついてやってしまったお茶目なイタズラ。
 今から思えば、あれは少しインケーンな感じがしたので、今度陸に会ったら謝っておきたいと思っていたのだ。

 そうだ。
 とりあえず、陸がいたら謝っとこう。そうしよう。そのあたりを第一行動方針にしておこう。


「――あなたにも謝りたい人がいるんですね(唐突)」


 ふと。
 背後から、誰か若い男の声がした。咄嗟に茉莉香は、物々しい形相で振り返る。


「……」


 彼女の部屋に唐突に現れたのは、高校一年か二年くらいの陰気な少年だった。
 茉莉香が桜を見ながら考え事をしているうちに、勝手に誰かが部屋に入ったらしいのだ。

 学ランを着ており、目線は常に沈んでいる。明らかに髪をいじっている感じではなく、サラッサラの髪を全部おろしていてオタクっぽい。
 若干、キノコみたいな髪形だ。
 コイツが現れたのを見て、茉莉香は「……」した後、眉を不快そうに曲げた。


16 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:34:14 y6mUNds20


「インケーン」

「え」

「あんたインケンよ! 突然女の子の部屋に入って来るなんて! ノックとかしないワケ?」


 ――ついキレ気味にそこまで言ってしまったところで、茉莉香は我に返った。
 そういえば、よく考えると今は殺し合いをさせられている現場である。

 茉莉香は我欲の為に他人を殺すつもりは全くないので、三日間なんとかうまくやり過ごしていきたいと思っていた。
 なんというか、三日間やり過ごせば勝手に迎えの船が来るらしい。食料や水も充分ある。
 茉莉香も、「こんなんで誰が殺し合いするねん」と思っている。

 しかし、「他のやつは殺していいよ」「むしろ殺せ」と言われている状況下、他人の機嫌を損ねちゃマズい。キレて何するかわからないからだ。
 なるべく、殺されないような人間として行動していた方がいい。
 ともかく、この少年はキレて殺しに来る人ではなかったらしい。

 茉莉香の言葉に引きつつも、暗い表情を更に沈ませて謝罪を始めた。


「……すみません。俺は、そもそもこの部屋にいちゃいけない人間なんだ……」

「お、大袈裟ね。別にいいわよ。ノックくらいしてから入ってきて欲しかっただけ」


 まるでこの世にいちゃいけないとでも思っているかのような自殺したげなオーラ。
 茉莉香みたいな、やたら強気で微妙にキレ気味なビッチが一番嫌うタイプの男であった。

 だが、こうして会った以上、世間話程度の軽い雑談でもしておこうと茉莉香は思った。
 きまずいのだ。
 知らない同士で話す事などない。かといって、このままお別れとも言い難い雰囲気だ。
 仕方なく、茉莉香は自分の名前を彼に告げる。


「あ、あたしは月江茉莉香。あなたは?」

「俺は、星桂馬です。……今となってはどうでもいい事ですが、都内の難関名門進学校・開桜学院の一年生です。
 ……でも、俺は、都内屈指の難関名門進学校にいちゃいけない人間なんだ。裏切者だから……」

「そう……」

「最低だ、俺って。殺されても文句言えないよ」

「そう……」


 星くんのパーソナリティを聞いた茉莉香は答えた。
 根暗っぽい星くんはあはり茉莉香とは相性が悪かった。
 またインケーンしてしまいそうな衝動を必死に抑える。
 なんとかそれを抑え込んで、世間話につなぐとしている。


「それより、星くん。大変な事になっちゃったわね。殺し合いだなんて」

「でも、俺は裏切り者だから。突然殺し合いに巻き込まれても文句言えないよ……」

「…………。……そういえば、星くん、あなたの支給品は? あれって全部違うんでしょ?
 あたしはまだ確認してないんだけど、星くんは何だった?」

「俺のは、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束だけでした……」

「そう……」


17 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:35:10 y6mUNds20


 思ったよりもニッチな支給品が出てきたらしく、茉莉香は困惑する。
 彼女がどれだけ頭を振り絞っても、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束の使いどころはわからない。
 あまり考えたくない。
 そこで茉莉香は考えたのさ。だったら、考えなきゃいいってね。


「あ、そうだ、ねえ星くん。星くんも、謝りたい人がいるんだっけ? どんな人なの?」

「月江さん……。俺は、俺は……」


 そういわれて、不意にポロポロと泣き出した星くん。
 それは、天元さんを喫茶店に呼び出して、相談しようとしたくせに何も言わなかった星くんの姿と同じだった。
 しかし、あの時何も言えなかった星くんは、ここに呼ばれる直前にある出来事――親友があれからどんな目に遭ったのかを全て知る、という状況に遭遇している。
 それに、初対面で今後も自分の日常に何も関係なく過ごせそうだからこそ何もかも自分の卑怯さまで打ち明けられるというのもある。
 そこで、星くんは、この茉莉香にすべて話してしまうのだった。


「俺は最低だ……。俺、もう限界なんです……」

「……どういう事?」

「俺は……親友の……海峰の、高校入学を勝手に取り消して……電話して、必要な書類も全部送って……。
 それで、その事であいつの母親が思い悩んで自殺しちゃって……あいつは一人になって……。
 だから、海峰も、最近、物凄い形相で俺を殺そうとして来て……」

「え」

「本当、俺って最低だ……殺されても文句言えないよ」

「……」

「……これが、俺の罪なんです。俺は最低です。俺は卑怯です。
 私立不動高校一年生・囲碁部の海峰学に……俺の元親友の 海 峰 学 に、殺されても――文句言えない……」


 絶対文句言うだろコイツ、と茉莉香は思っていた。
 そして――気づけば、湧き上がる衝動を抑えきれず、口を開いていた。


18 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:35:37 y6mUNds20















「インケーン」















「え」

「やっぱあんたインケンよ! そんな事で、友達のお母さんを死なせちゃうなんて!
 たとえ反省してても、母親が死んじゃった海峰くんからしたら取返しのつかない事じゃない!
 あんたのしてる事は人殺しと変わらないわ!」


19 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:36:00 y6mUNds20


 茉莉香は、過去を悔やんで自殺しかねない勢いの星くんに対しても――余計な慰めはしなかった。
 火に油を注いでいるように見えるが、本人に悪気はない(多分正義感)。

 インケンだと思った瞬間、それまでの流れを無視してキレ気味になるのは彼女の悪い癖である。
 相手がキレて襲い掛かる事など、その瞬間に頭から消えてしまう。
 
 
「やっぱり俺は殺されても文句言えない人間なんだ……」

「――そればっかり! いくらインケンでもね、殺されていい人間なんていないのよ!」

「え」

「命はね、とても大事な物なのよ。そのくらいわかるでしょ? 星くんっ!」


 ただ、悪気はないので、一応まともな事も言う。


「こんな……俺でもですか……」

「ええ。そうよ。
 ……そうね。たとえば、毒で死にかけている友達がいるとするでしょ。
 その子と川を渡る為に救命胴衣を作る必要があるとする時……何よりも優先すべきはその友達の命だと思うわ。当たり前よね。
 でも、そういう時に『靴紐をそういう事に使われるのは嫌だから救命胴衣を作るのに手は貸さない』と言い出すインケンがいる事があるの」

「ああ、そうなんですか……」

「ムカつかない?」

「でも、俺はムカつく資格なんてない人間だから……」

「そうよね、ムカつくわよね。でも、命は何者にも代えがたいものだから……。
 だから、星くんがした事はインケンで――でも、星くんを殺そうとした海峰くんだって、靴紐と同じくらいインケンよっ!
 二度と、殺されても文句言えないなんて言っちゃダメっ!!」

「……」


 星くんは――こういうキャンキャン言うタイプの女子とは相性が悪かった。
 話したい事ばかり話すので、話が噛み合わないのだ(どっちもどっち、とも言える部分はあるが)。
 星くんからすると、茉莉香が何が言いたいのかさえサッパリわからなかった。


20 : 月と星 ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:36:22 y6mUNds20

 だが、茉莉香は既に、良い事を言った気分になっていた。
 それは、星くん的にはそれは全く心に響いていなかった。


「……月江さん。とりあえず、俺はこれから、海峰を探します。
 今更謝ったって許してもらえるかわからないけど。
 ……とにかく、俺はあいつに殺されるとしても、絶対にそれくらいはしておきたいから」

「星くん……わかったわ。もし、海峰くんに会う事があったら、あなたの気持ちはちゃんと伝えておくから」

「……ありがとうございます。
 そうだ。月江さん。そういえば月江さんは、その友達に一体、何を謝ろうとしてたんですか?」


 星くんは、移動の準備の前に、自分も茉莉香がその謝りたい人物に何の事を謝ろうとしているのか聞いておこうと思った。
 あまり話したくない事情ならばともかく、もし茉莉香の謝りたい相手と会った時の為に、それくらいは聞いておいた方が良い。
 もし茉莉香が海峰と会ったら、彼女は海峰に星の気持ちを伝えておいてくれるらしいが、それならば自分も同じ事を約束しておこうと思ったのだ。
 その気持ちを汲んだのか、茉莉香は口を開いた。


「大した事ないわ。小学校の時のちょっとしたイタズラの事よ。
 ……神小路陸っていう友達なんだけどね」

「はい」

「……その子の水筒の中に、スズメバチを何匹か入れたの。ちょっと酷かったかなーって……」


 ――星くんは、あっけからんとしてそう言う茉莉香の顔を二度見した。








【一日目/深夜/夜桜亭(吸血桜殺人事件)】


【月江茉莉香@狐火流し殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:しばらくはこの場に留まる。
1:カブスカウトのメンバーや両親などがいたら、優先的に合流する。
2:陸に会ったら謝りたい。
3:海峰に出会ったら、星の気持ちを伝えておく。
[備考]
※参戦時期は、陸に再会する前。
※本人に悪気は全くないのにちょっとアレです。
※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。


【星桂馬@血溜之間殺人事件】
[状態]健康
[装備]全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束@香港九龍財宝
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:海峰を探す。
1:海峰に謝る。
2:俺は殺されても文句言えない(文句を言わないとは言ってない)。
3:月江さんもインケンでは?
[備考]
※参戦時期は、海峰に拘束されて母親の死を聞かされてから、殺害されるまでの間。
※本人に悪気は全くないものの、切羽詰まると保身に走りがちです(後で反省はします)。
※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。


21 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/21(木) 12:38:05 y6mUNds20
以上で投下終了です。
ルールを見てもわからない事や、ルールを読むのがめんどくさくてわからない事、
金田一少年の事件簿についてわからない事があったら、全部答えます。

予約はもう始めてもいいです。


22 : ◆3LWjgcR03U :2016/07/21(木) 18:59:40 Nv4PDkd.0
鬼沢龍子、潮美波瑠を予約します。


23 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/21(木) 19:05:10 h2DnUnVc0
スレ立て&投下乙です。

悪気はないけど地雷を踏み抜きまくる二人
特に星君の
※本人に悪気は全くないものの、切羽詰まると保身に走りがちです(後で反省はします)。
には笑うw

高森ますみ、五塔蘭、斑目るりを予約します


24 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/22(金) 17:04:49 tD/.//DQ0
何故作ったしw

井沢研太郎、宗像さつき、倉田壮一、黒沼繁樹、鬼城歩夢で予約します


25 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/22(金) 18:04:01 mEZBZqck0
>>24
申し訳ありません。一度の予約で使える書き手枠は三名までです。
いらないキャラを二人くらい予約から外してください。

で、私は一日置いたので、小泉螢子、尾ノ上貴裕で予約します。
(ポケモンGOの配信が始まってしまったので多少執筆が遅れます。)


26 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/22(金) 19:06:46 XSU8sI2M0
黒沼と倉田外します


27 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/22(金) 20:07:01 bhdj.Voc0
宗像さつきではなく白神海人に変更します


28 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 21:39:21 H3b4dXNM0
投下します


29 : 動機のターゲットにされなければ事件は起きない(例外はある) ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 21:42:06 H3b4dXNM0
金田一少年の事件簿25周年(2016年現在)の歴史の中でゲストキャラクターはおおまかに3つに分類されているのはこのロワを読んでいる諸君は理解できているだろう。
というか20周年記念シリーズから既に5年程経っているのが恐ろしい(本編でどれくらい時間が経ったのかは知らない)。
21周年で不定期連載から長期連載へと体制を変え、金田一少年事件簿Rにタイトル変更、14年ぶりのアニメ化に、13年ぶりの連ドラと実は次の年でやったことの方を20周年目でやれよと思ったのは筆者だけではない。
かなり話が脱線してしまったが気にしないでいただきたい。

「金田一……」

名前の出された金田一一とは何人目なのかはわからないが幼い頃の親友であり2度の殺人事件に巻き込まれたことのある少年『井沢研太郎』。
というか2度目の葡萄の館の事件では地獄の傀儡師の協力の元事件を起こした側の人間――そう『犯人枠』。

「今回は何も招待状なんか無かったんだが……」

タバコを蒸かしながらぼやくのはファントムの仮面をあしらった招待状を前にもらったがこんなものを出した覚えはないと言われた男『白神海人』。
金田一一に『なんかあったら電話してくれ』と約10年前に発言したのだがいまのいままで出番が無かった。
いつきさんと被る為仕方がない、そのいつきさんも再開後蟻地獄壕まで事件に絡まなかったのだ(後日談で雪霊には登場)。
事件に巻き込まれたが特に殺されたり、殺さなかったりが無かった生存者――そう『容疑者枠』。

「……船まだかなー……」

特に金田一一と会話が1度もなく序盤で亡くなられてしまったけど可愛いと評判でなかなか人気のある女『鬼城歩夢』。
畜生度はどうであれ悪人でも善人でも誰が殺されるのかわからなくハラハラさせられる者――『被害者枠』。

大体こんな感じである(殺人事件を扱う作品では全てそうなのだが……)。
容疑者枠が1人も出なく完結した2番目のあの事件がどれだけ異色なのかがわかるだろう。
犯人も容疑者も全員幽霊だった事件とか特殊な例は除く。

他にも顔が隠されている『連城枠』とか、『警察枠』とかはあるがこの際このSSの登場人物には関係ない為省略。


30 : 動機のターゲットにされなければ事件は起きない(例外はある) ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 21:42:52 H3b4dXNM0
話は脱線したがとにかく『犯人枠』と『容疑者枠』と『被害者枠』の3つで構成されている。
だがこれは動機とそのターゲットが一致する為に事件が起きる為、その動機から離れれば事件は起きないのだ。
事実、首吊り学園では千家は殺人をしていないし、邪宗館でも井沢は人を殺していない。
あくまで動機が問題なのだ。
この3人は全然接点もなく、あえて言うなら『災厄の皇帝(エンペラー)』の巻き添えというだけである。

とにかくこの3人は偶然出会ったのである。
辺り一面ラベンダーが広がるまんまな名前『ラベンダー荘』に。





(安全第一でこんなところから脱出して帰らないと)

金田一のおかげで慣れているのかもしれない井沢。
家族が絡まなければ好印象な善人はみんなと協力することを望む。

(でもこんなので何しろってんだ……)

恐ろしい顔をしたニューギニアの呪術師がつかう仮面が気味悪かった。





(あれは殺人……なのか……?)

ミステリールポライター白神は香山の不可解な死のトリックを本当に偶然なのか疑っていた。
あの現場に戻れば手がかりはあるのかもしれないがいまの現場はラベンダー荘。
不動高校からは離れている。

(このイタズラをした人間が何かよからぬことを企んでいるのは確実だ。だが、私を招いたことを後悔するでしょう)

本編の金田一少年主人公と同じく探偵役としてこの場に君臨する。





(あのことが世間にばれてる?いや、色々な人もいるって……)

この場で一番混乱していたが他2人もいまいち何かわかっていない表情なのを悟りなんとかこころを落ち着かせる。
教師を見捨てた彼女は後輩を見捨てられないで殺された辺り本当の小悪党なのだろう。
火事場泥棒も充分犯罪なのだが、村を事故とはいえ全焼させた連中でさえ金田一史ではまあまあな畜生度な動機と認知される辺りちょっとやばいと思うこの世界観。

(襲ってくるなら返り討ちにしてやる)

だが支給された馬鹿でかい剣は不意打ちに向かない気がするし、そもそも扱えるのか頭を抱える。
とりあえず襲ってくる気配は他2人からは無さそうなので信用もとい会話をしてみようと決める。





本来の意味で全く接点の無かった3人が一堂に介したラベンダー荘。
果たして彼らはこの島から脱出することが出来るのだろうか……。


31 : 動機のターゲットにされなければ事件は起きない(例外はある) ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 21:43:17 H3b4dXNM0


【一日目/深夜/ラベンダー荘@怪盗紳士の殺人】


【井沢研太郎@邪宗館殺人事件&黒魔術殺人事件】
[状態]健康
[装備] ニューギニアの呪術師がつかう仮面@学園七不思議殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:仲間を集める。
2:他2人(白神、鬼城)と話をして協力出来るのだろうか?。
[備考]
※参戦時期は、邪宗館後から黒魔術前までの間。
※高遠と接点を持っているかどうかは後の書き手さんにお任せします。



【白神海人@オペラ座館第3の殺人】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:『災厄の皇帝(エンペラー)』を後悔させる。
2:他2人(井沢、鬼城)と話をする。
3:香山の事故は本当に事故だったのか?
[備考]
※参戦時期は、オペラ座館第3の殺人生還後。
※香山の死を事件ではないかと疑っています。



【鬼城歩夢@亡霊校舎の殺人】
[状態]健康
[装備]錬金術師が事件で使った剣(剣の状態)@錬金術殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:生存する。
2:他2人(井沢、鬼城)と話をする。
3:襲われそうになったら返り討ちにするが極力殺しはしない。
[備考]
※参戦時期は、亡霊校舎の殺人前。


32 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 21:48:38 H3b4dXNM0
投下終了です
不動高校の資料室にニューギニアの呪術師がつかう仮面が置かれてあっても登場人物にもリアルでも突っ込まれることがない不動高校って本当に真っ当な学校なのでしょうか?

鯖木海人、多岐川かほるで予約します


33 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:52:43 H3b4dXNM0
投下します


34 : 同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:57:15 H3b4dXNM0
大雪が降りかう電脳山荘周辺。
視界はまだなんとか信頼できる、だがこんな天気ではまずは屋根のある場所へと足を運ぶのが人間の心理であろう。

「嗚呼、うぜぇうぜぇうぜぇ」

ネガティブな言葉を発しながらアラサーな男鯖木海人は雪の粒に当てられていた。
腸が煮え返る思いでその顔は怒りに満ちていた。





香山三郎が謎の不審死を遂げた瞬間この男はドキドキ感がMAX状態であった。

「リアル祟りキターッ」

と大声を出して大喜びしていたのは60人いれどこの男だけだろう(他の登場人物がまだ誰なのかわからない為もう1人か2人くらいなら居るかもしれない)。
だが九条は告げた。
『バトルロワイアル』と……。
しかも観客のつもりでいた鯖木は自分の参加者であることを理解した瞬間地獄に叩き付けられた。
因果応報である。





「観月旅行者って言ってやがったか」

おぼろげな記憶を思い出す。
確かちょっと前に悲恋湖がどうこうって問題になったニュースで関わっていた様な気がする。

「俺は炎上のプロだかんな。旅行会社にエンペラー(笑)だかなんだかしれねーがこんなバトルロワイアルなんてシステム一瞬で潰してやるぜ」

己が屈強な立場に置かれようが我流を突き進む男であった。

「早くネットの繋がる環境に辿り着いて掲示板に書き込めば俺の勝利よ。そしたら俺はバトルロワイアルを終わらせた英雄だ。くっくっく」

趣味パソコンの男(無職)はネットに書き込んだ自分の姿を思い浮かべ嫌らしく気持ち悪く笑っている。

「ちっ、まずは屋根だ屋根」

当然パソコンもスマホも取り上げられている。
自分のデイパックもこの雪の中で開ける気にならずまだ未確認状態。

数十分辺りをぐるぐる周りようやく1つの小屋が見つかった。
ようやく一息付けそうである。

「よし」

ガッツポーズをしながら彼は電脳山荘に入り込む。
そこは<僧正>が事件時に使っていたコテージであった。
彼は油断していた。
――大雪の中でも殺意の目を向けていた者の視線に。


35 : 同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:57:54 H3b4dXNM0

そんなことには気づいていない鯖木はコテージの中で支給品の確認をしていた。

「『双子姉妹探偵』……んじゃこりゃ……」

ミステリー小説が中から出てきた。

「あの九条とかいう奴の口ぶりじゃあ武器とか言ってじゃねーかよ!」

もう1つの支給品は『S・K』の文字が掘られたキーホルダーである。

「俺のイニシャルは逆だっての」

名前ではなく苗字が先なのだろうか?
いや、まず鯖木の持ち物ではない。

「ちっ、まあいいや。ネットさえ繋がれば」

一応デイパックを持ち歩きコテージを物色する。
すると見つけたのだ、念願のパソコンを。

「ラッキーって、大丈夫かこれ?」

ついぞ見かけなくなった現在のパソコンよりも大きく、重たいブラウン管パソコンである。
不安を抱きながらもそれの電源を付ける鯖木。

「げえ、95なんてOS使えんのかよ」

電脳山荘殺人事件の発行日は1996年、この時はまだバリバリ現役だったパソコンのOSもいまや骨董品だ。
だがまだXPユーザーも少ないながらいるのだ、95ぐらいなら動きそうな気もする。

「クソッ」

だが当然パスワードが邪魔をする。
パソコンに詳しい者であればこんなぼろいパソコンのセキュリティなど造作もなく外せる。
しかし、それも機械に頼らなくてはならない。
スキルはあるのに道具がなければどうしようもない。
例えるならネジをドライバーで回して締結するのは子供でも可能だが、ドライバーがなければプロレスラーでも不可能なのだ。
つまり、このドライバーのない状態が現在の鯖木を指す。
誰かこのパソコンの持ち主さえ入れば、いや道具だけでもあれば十分だ。
炎上させるだけ、日頃の行いで現在の状態を引っくり返せるのに歯がゆい感情が彼をイライラさせる。

『トントン』

とノック音が聞こえた。

「空耳か?」

呟いた後もそれを否定する様にまたノック音が響く。
おそるおそる入口に近付く。
深夜という時間帯に明かりを付けているのだから居留守は通じない。


36 : 同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:58:22 H3b4dXNM0
「お、おい何者だ?」

なるべく強気な声で相手を脅す感じで声を掛けた。

『な、中に入れてください。ここら一辺に全然コテージがないのよ!』

年のいった女性の弱弱しい声が返ってきた。
怖そうな野郎でもなく怯えた女の声に鯖木はほっと息を付く。

「あんた名は?」
『…………多岐川かほるよ』
「……ん?」

つい最近その名前を聞いた、否見つけた気がした。
いつだ、このバトルロワイアルより前か?
違う、本当にさっきだ。

デイパックからその名前を見つけた。
『双子姉妹探偵 著書多岐川かほる』

「この小説の作者か?」

最近の小説家はパソコンを使うのが多いらしく、レトロに文章を文字にして書き込む人も滅法減った世の中だ。
漫画家でさえすでにデジタルな者が多い時代だ。
なら、それなりにパソコンを扱える人という図が出来る。
運が良ければこのパソコンの使用者の可能性もなきにしにあらず。
これは利用出来る者だと腹のそこでクツクツと嗤う鯖木。

「ほらよ、入り……なっ!?」

出入り口を開けた鯖木の目に映ったのは冷酷な目で狩りをする中年の女性であった。
その手には一丁の猟銃を構えていて……。





37 : 同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:58:46 H3b4dXNM0


「あ、あれは坂東!?」

大雪の中彼女の悪い視界に入ったのはメガネを掛けた老け顔の男だった。
そう、何故か当麻とリチャードを始末してあと一人となった時に何故かこの島に連れられていた。
クローズドサークルからクローズドサークルに移動させられた謎の体験を彼女は経験したのである。
だが、運よく彼女は最後のターゲットの坂東を発見したのだ。
――それがちょっと似ているだけの赤の他人ということも知らずに。
それさえ済めばこころ起きなく島から脱出に集中することが出来る。

彼がコテージに入り込むのを確認する。

彼が明かりを付けたのを確認し、その明かりを光源とし窓に近付き支給品を漁る。
そこで見つけた武器は1つ、猟銃だ。
これさえあればあいつを撃ちさえすれば……。
失敗しても鈍器にはなるだろう。
弾が込められているのを確認し、彼女はコテージの入口を叩く。

彼は彼女の記憶通りオドオドとしている態度なのに強気でいるのがわかるあからさまな奴であった。
狭山恭二の敵、20年に続く恨みを果たすこの日が計画はずれてしまったが訪れたのだ。

「ほらよ、入り……なっ!?」

老け顔の男と目があった瞬間引き金を弾く。
そこら一帯に銃声が響くが、雪の影響でどこまで響いたのか……。





38 : 同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/23(土) 23:59:12 H3b4dXNM0
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『おれは撃たれて死んだと思ったらいつのまにか相手のがくたばっていた』
な……何を言っているのかわからねーと思うがおれもなにされたかわからなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。





鯖木の視界に広がるのは中年女が血まみれで倒れ伏した姿であった。
息を確認するまでもない、もうピクリともしない。
彼女の持った銃弾は鉛の込められた猟銃である。
仙田猿彦の死因にもなった自滅用のあれである。

「お、俺を殺そうとして自滅とかだっせ!」

彼女の遺体にげらげら笑いながら蹴りを入れていく。

「は、はは。俺いまリアル死体蹴りしてんじゃん、ははは」

狂った笑いを上げながら蹴る、蹴る、蹴る――。

「た、多岐川かほる、お前も炎上してやるからな!」

ミステリー小説家、人を殺そうとしてミステリーな死を遂げる。
もっと、面白い触れ込みに出来ないだろうか。

「どいつもこいつも死ねばいいのに……」

パソコンまたはスマホがあれば手が動いていたはずなのに。
とにかくこんな人が死んでいる場所にずっといちゃあいけない。
ネット環境のあるところへ逃げ切らなければ――。


【多岐川かほる@蝋人形城殺人事件 死亡】



【一日目/深夜/電脳山荘<僧正>のコテージ@電脳山荘殺人事件】


【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:この95のPC持っていくかどうか……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※OS95のPCを持っていくかどうかは後の書き手さんにお任せします。


※多岐川かほるの死体は電脳山荘<僧正>のコテージに転がっています。
※鉛の詰めてあった銃@飛騨からくり屋敷殺人事件は電脳山荘<僧正>のコテージに落ちています。


39 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/24(日) 00:01:02 WW/wrkrU0
投下終了です
なんなんだこの男は……

仁藤伸幸で予約します


40 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/24(日) 00:21:59 WW/wrkrU0
あと当たり前ですが外部連絡法がないのは把握してますが鯖は把握していない状態なのを書き忘れていました。


【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:この95のPC持っていくかどうか……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※OS95のPCを持っていくかどうかは後の書き手さんにお任せします。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。


最後の1文追加させてもらいます


41 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/24(日) 17:10:25 sKgiVC6I0
投下乙です。

>動機のターゲットにされなければ事件は起きない(例外はある)

適当な誤解で動機を作りましょう。
来年は25周年、アニメの方が20周年ですが、中途半端にしかDVD出てないアニメが全部ソフト化するといいですね。
ビデオもレンタルビデオでしか存在しないので、そっちは衰えつつある中古VHSを漁って地道にそろえてます。

>同じ海人なのに白神はイケメン、怖い顔で犯人の陸は大差ない

犯人の名前が二連続で「蘭」だった時は、もはや名前のパターンつける気ゼロだなと思いました。
で、鯖木っちはなんで93ブローと間違えられてしまったのか。雪で視界がおかしくなっていたゲレンデマジックかもしれません。
鉛銃はいつか出てくると思いましたが、ここで登場とは。
塩噴きおばさんが使う前にビンタして止めてあげたかったですね。

それはそれとして、このロワは一応、投下したら24時間再予約できないので、次からは気を付けてください(>>9参照)。
投下されちゃったので通して枠を2枠くらい増やしとく事にします。
仁藤の予約はルール違反なので一端破棄にして、また0時くらいに再予約してください。
それまでに仁藤が予約されてしまったら諦めてください。


42 : ◆3LWjgcR03U :2016/07/24(日) 19:23:07 sY.vaHeE0
すみません、予約を破棄いたします。


43 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:56:29 0XvNmciw0
投下します。


44 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:56:54 0XvNmciw0



 尾ノ上貴裕という人物について、軽くまとめ上げてみようと思う。
 何故こんな事をするかと言えば、それは、尾ノ上が今回のエピソードでズガンされる事が予め約束されている存在だからである。

 今回の題名を見ればわかる通り、尾ノ上は死ぬ。
 ひっかけも、どんでん返しも、叙述トリックも仕掛けられてはいない。
 それは、『金田一少年の事件簿』で金田一少年が事件に遭う事や、『オペラ座館殺人事件』でオペラ座館で殺人事件が発生する事と同じ原理だと考えてもらって構わない。
 早い話がネタバレであるが、「〜〜死す」というネタバレが痛いのは、その人物への特別な愛着や思い入れを持つ人物が多かったり、勝敗の行方が気になったりする場合であり、尾ノ上の死がネタバレされたところで、「ふーん、そう」で終わる。
 つまり、ネタバレをしたところで、誰も迷惑を被る事はないし、早いうちに結果を人目に晒してしまった方が早いのも確かである。

 ちなみに、どう死ぬかというと、普通に小泉螢子に殺されて死ぬ。
 ここまでの話に全く嘘偽りはない。

 最後に死亡表記が出るので、それもスクロールして参照してほしい。
 というか、もう先にこうして書いてしまっている以上、いっそこの場ですぐに書いてしまった方が早いのではないか。
 そうだ、もういっそ書いてしまおう。



【尾ノ上貴裕@学園七不思議殺人事件 死亡】



 と、このように、尾ノ上は間違いなく死ぬ。それは覆らない。
 黒魔術で蘇る事も、少なくともこの話ではない。彼はただの大きめな肉塊になる。
 念のために最後にもう一度、こうして尾ノ上の死亡表記を確実に掲載する事もあらかじめ告げておこう。
 またスクロールすれば尾ノ上の死亡表記をもう一度見る事になる筈だ。



 ……こうして、既に始まりに結果が書かれてしまったら、もうこの先の物語を読む必要はないかに思われるかもしれない。



 そう。
 それは、まったく、その通りである。正論だ。
 結果だけわかれば良いのならば、もう今回は状態表までスクロールしてしまえばいい
 そして、もうポケモンGOをするなり、金田一を読むなり、自由に余暇を過ごせばいいのだ。
 この話が「文章を楽しむ」といううえでも何の期待値も抱けないのは、ここまで見れば充分にわかる事だろう。
 だが、それでも読みたいという人の為に、敢えて、今回は尾ノ上を語る最初で最後の機会として、このような場を設けさせてもらった。

 今回は、ある問いの為だけに或るような話なのである。
 そう。





 ――――尾ノ上とは、何者なのか? という、素朴な問いだ。





 もし、この問いに興味がないならば、もはや読む価値はない。
 この続きを書きたい人間も、今回で死ぬ書き手枠の尾ノ上など気に掛ける必要は全くない。
 仮にもし、金田一ロワを全話きっちり読んだと胸を張って言いたいならば――あるいはそれくらい本気で金田一ロワを見たいならば、読んでもいいかもしれない。
 文章力や話の構成を知りたい人間は、どうぞ、他のロワを読むと良い。
 だが、一度でも、『金田一少年の事件簿』を本気で読み込もうとしたならば、より深い問題を追及する必要があると、私は考えるのである。


45 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:57:32 0XvNmciw0



 これらを知った上で尾ノ上について論じたいならば、まず尾ノ上の説明から始めよう。
 尾ノ上貴裕は、『学園七不思議殺人事件』に登場し、放課後の魔術師に殺されるデブである。
 桜樹先輩の死や美雪の負傷、犯人の開き直りや校舎の秘密など、色々と濃い内容に隠れがちとはいえ、彼もそこそこ印象に残る事は間違いない。
 割とグロめな遺体描写も特徴的だし、何の非もないのに死んで晒しものにされる哀れさは一度見れば忘れがたいのだ。
 テレビスペシャルだとデブがプールに浮いているシュールな画が脳裏に焼き付くだろう。
 そもそも『学園七不思議』自体が、ドラマやアニメの第一話(ドラマではパイロットのようなスペシャルドラマ)となり、完成度も屈指の事件なので、何かと話を覚えている人も少なくないと思う。

 で、そんな尾ノ上はミステリマニアらしい。
 しかし、「ミステリマニア」という設定のキャラが、これまでこの作品に何人出てきただろうか。
 ミステリ小説を書いている設定のキャラも、度々登場するくらいである。
 賞の応募では、どうやら箸にも棒にもかからない様子だが、まあ正直普通の高校生ならそんな物だろう。
 ここまでは何もおかしくない。
 脇役相応の扱いである。
 きわめて本格ミステリらしい凡庸な脇キャラ設定と、数合わせや賑やかしの為に存在するかのような適当な個性。
 実にどうでもいい被害者だ。死のうが誰もショックを受けない。

 しかし。

 ただ一点、彼に関して、気になってしまう描写がある。
 もう一度、尾ノ上が初登場した際のやり取り(単行本4巻・学園七不思議殺人事件①)を読み返してほしい。
 ここにはこんな会話が記されている。


「尾ノ上、お前ミス研だったのか?」

「ああ、こう見えても推理小説マニアなんだぜ」 


 明らかに金田一は尾ノ上を知っているようなのだ。
 我らが主人公・金田一と、ミス研入部以前からの知り合いである……という場面だ。
 そう――それこそが、尾ノ上に対して、金田一ファンがどうしても引っかかってしまう点の一つなのである。

 金田一がさも当然のように「尾ノ上、お前ミス研だったのか?」と言っているが、そもそも読者はこの時点で尾ノ上なんぞ知らない。
 オペラ座館にも、異人館村にも、雪夜叉伝説にも、尾ノ上の存在は見受けられない。つまり、今回からの新キャラである。
 それにも関わらず、金田一が一切の説明を抜きに尾ノ上を既知の友人であるかのように扱い、普通に尾ノ上と接している。
 勿論、金田一の交友関係は謎になっており、そこがまた「あくまで普段は一生徒」という探偵キャラの個性を立てている。
 普段はどうやら悪友たち三人を含んだ四人グループで行動しているようだが、殆どのエピソードではそのうち二人しか登場しない(『悲恋湖伝説』、『蝋人形城』、『怪盗紳士』を手に取って、冒頭で出てくる金田一の友人を見比べてみればわかる)というあたり、やはり金田一の人間関係は物語中ではおおざっぱに考えられている。

 しかし、尾ノ上の場合は、そんな名前のないモブどもと違って、「死ぬ」のだ。
 死んだうえに金田一に対して反応してもらえず、普通にスルーされるのだ。
 その尾ノ上が一体、金田一とどのくらいの距離感にあった人物なのか、気にならないだろうか。


46 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:57:50 0XvNmciw0

 そう、もっと根本的に言うなら、制作者は、果たして金田一と尾ノ上の関係をどういう物だと想定してあの話を書いたのだろうか?
 ああしたやり取りが描写されるという事は、少なくとも、制作者の中には尾ノ上に対して漠然としたイメージや設定が存在していた筈である。
 しかし、それは最後まで表に出される事もなく、尾ノ上の死にも金田一はほぼ無頓着に『学園七不思議』は幕を閉じた。
 事件解決ごろ、金田一は、過去の事件の死者、最初の死者、そして犯人の死にさえも何か反応を示すのに対して――尾ノ上に関するアクションは全くのゼロなのである。
 もう一度問おう。



 ――――尾ノ上とは、何者なのか?



 金田一の事なら何でも知りたい、という読者は、勿論、こんなどうでもいい事も気にして然るべきである。
 謎に包まれている金田一の交友関係を紐解く一つのカギになるのではないだろうか。
 今や、「雪影村で綾花は何を探してたの?」や「金田一はなんであんなにダビデの星に詳しいの?」、「なんで不動高校ってA組とか3組とか5組とかF組とかあるの?」、「F組の相馬真紀ちゃんって何の為に出てきたの?」などに次いで、「多少気になる金田一の謎」の一つに数えてもよさげな尾ノ上のあの反応。
 まさに、彼の方こそ、「金田一七不思議」の一つと数えて良い存在なのではないか。

 もう一度、金田一の台詞に焦点を当てよう。


「尾ノ上、お前ミス研だったのか?」


 たとえば、金田一のタイミングとこの言い方だと、「一年生の時の友人」とかよりも、もう少し、「ごく身近な友人」というニュアンスに感じ取れる。
 去年の知りあいならば、もう少し久々に会うようなやり取りや余所余所しさも出てくるだろうし、普段よく合っている人物だからこそ、素早くこうした質問を投げかけられるのではないか。
 尾ノ上の顔を見た瞬間、馴染みのある様子でこんな言葉を投げかけるのは、ごく最近の友人だと考えて良い。
 また、それでいて「尾ノ上がミス研だと知らない」「尾ノ上がミステリー好きである事さえ知らない」という距離感から、近しい友人・親しい友人ではないようだ。

 それに加え、あの美雪が金田一に対して、「はじめちゃん? この人は知りあい?」というような反応を示さないのが妙でもある。
 美雪は『首吊り学園殺人事件』においても、久しぶりに千家に会った時に金田一に彼が知りあいであるのかを訊いている。
 それに対して、尾ノ上に関するリアクションはゼロだ。
 そうであるならば、金田一、美雪、尾ノ上はそれぞれ共通して知りあい同士である可能性が考えられる。
 金田一だけの知りあいであはにらしい。

 そして、金田一、美雪の二名と現在進行形で付き合いを続けられる手段といえば、やはりクラスメイトである可能性は高い。





 そう――尾ノ上は、金田一のクラスメイトなのではないか?





 金田一のクラス描写についても話したいが、これが現時点で非常に謎が多い物であったりもする。
 一度、『墓場島殺人事件』を通して読んでいただきたいが、陣馬や岡崎が冒頭で「A組」と紹介された後、墓場島の別の回で「こいつらはクラスメイトの陣馬と岡崎」と金田一が紹介する場面がある。
 すると、金田一は2年A組となるが、そのもっと前の話『蝋人形城殺人事件』では、金田一はテストのナンバーに「B」と書いてある(ただし一場面のみ誤植で「C」と書いていたりする)。
 その後の『雪鬼伝説殺人事件』のテスト用紙を確認すると、ここでは金田一をよく叱っている数学教師(ただし一回のみ『岩窟王』について授業を行っている)・ノモッツァンが指で隠している。
 このあたりから考えるに、「作者としては金田一のクラスは特に決めておらず、謎としておきたかったのに、墓場島でうっかり設定を忘れてA組の連中を『クラスメイト』と紹介してしまい、BやCは適当に書いた」という可能性が高い。
 また、こうしたメタな事情を無視して考えると、「金田一は『学校の友人』という厳密で面倒な言い回しを避け、『クラスメイト』とおおざっぱに紹介した(本当はクラスメイトではなくただの同級生)」という感じだと思われる。
 で、それが何の役に立つかというと、金田一のクラス分けについて考える際にそこそこ役に立つ。


47 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:58:11 0XvNmciw0


 A組→陣馬、岡崎
 3組→鈴森
 5組→千家(小学生時代のクラスが5組という説もある)
 F組→相馬

 これらは基本的に、「金田一とは別クラス」とする(アルファベットだったり数字だったりするのは気にするな)。


 すると、金田一のクラスはおそらくこうなる。

 金田一、美雪、草太、朝基、冴子、ミナ、若葉(転校)、さくら(転校)、トマル、イケダ、キバヤシ、いつもの金田一のダチ三名(一人の名前が「横田」の可能性あり?)、
 体育祭の三人四脚で金田一の右側にいる女の子、むさい男×2、放課後の魔術師の噂を聞いている奴ら、オペラ座館の冒頭で美雪や冴子と飯食ってる人たち、
 金田一が少年Aとして指名手配された際に金田一の噂をしていた男子たち、剣持警部の殺人に登場する女子、異人館村冒頭のモブ、多間木(転入→即死)

 暫定:さくらを屋上でカツアゲしていた二人の不良女、森下・平嶋(少なくとも森下・平嶋はA組ではなく陣馬や岡崎と同クラスではない)

 +尾ノ上

 担任・副担任と思しき人物→吉永先生(こちらは金田一のクラスを担当している事が確定)、ノモッツァン(吉永先生が副担任、ノモッツァンが担任という説あり)
 このクラスで授業を行った事がある人物→小田切進(偽)、ナスガイ、白樹紅音



 だから何だといわれても困る。
 主人公のクラスメイトがこれだけたくさんいるのが楽しいという話だ。
 まどマギやAnotherの座席表を作っていた人間がいたように、金田一のクラスについて考えたっていいじゃないか。
 それを考えるうえで、「尾ノ上の正体は、金田一や美雪のクラスメイトではないのか」という新説が出たというだけの話である。
 尾ノ上と草太とか、若葉とさくらとか、本編で一切関わらなかった人物が同じクラスで会っていたと思うと燃えないか?
 燃えないならいい。



 そんな尾ノ上は――――ボウガンの矢が頭に刺さって死んだ。

 

【尾ノ上貴裕@学園七不思議殺人事件 死亡】








48 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:58:32 0XvNmciw0





 ――小泉螢子は、自分が頭を射抜いた肥満体型の男子高校生の遺体を見ていた。



 尾ノ上のぽっちゃりした体型を見て、この十四、五歳ほどの少女・螢子が殺意を覚えるのは無理もない話だった。

 螢子は、満員の救命ボートに乗れず、海に放りだされて死んだ。そのへんは、『悲恋湖伝説』を読めばわかる(説明が面倒だから読んで)。
 で、救命ボートというのは、重い奴やデカい奴が一人乗っていれば、それだけ沈みやすくなる。
 定員は適当に決まってると思うが、まあ体重が重けりゃ沈んじゃうのは当たり前の話で、エレベーターとかだと思えばわかりやすい。
 重い奴が載っていると、動かないし使えないのだ。そのリスクが「沈む」だとすれば最悪である。
 救命ボートにしろ、エレベーターにしろ、体重がめっちゃ重い奴が乗っただけで迷惑だという話だ。

 わかりやすく、具体例を挙げよう。
 チャネラー桜庭(体重80kg)が最大積載量80kgボートに乗っているとする。
 そこに速水玲香(36kg)が二人(36×2=72kg)ほど助けを求めてきた。が、二人の玲香ちゃんの手は、「もう乗れないぞ」とチャネラー桜庭に振り払われてしまった。
 結果的に、チャネラー桜庭が一人生き残り、速水玲香が二人も死んだとする。
 チャネラーの体重は80kg。玲香ちゃんの体重は36kg。
 もし、チャネラー桜庭がいなければ、玲香ちゃんは二人も助かったのである。
 一人分の脳みそで二人分というのは、それほど非合理な事なのだ。

 これを、尾ノ上=チャネラー桜庭、螢子=速水玲香だと仮定して考えるならば、もはや尾ノ上は人殺しである。
 尾ノ上にしろ、桜庭にしろ、「不摂生が原因だろ」という感じで太っている(玲香ちゃんの体型もそれはそれでヤバイが)。

 ボートに縋りついて突き飛ばされ、そのまま漂流して水死した螢子としては、そうした感じの人が原因で自分が死ぬのは納得いかなかったのだろう。
 ラグビーとかで体格が良くなったならともかく、単に太っているだけな感じの奴が原因で死にたくはない。
 香山とか微妙に太目のやつが生き残ってるのになぜ自分は死んじまったんだ、と。
 老い先短い老人が載ってて、十五、六歳の未来ある輝かしい美少女が死ぬというのも理不尽すぎないか、と。
 とにかく、救命ボートに乗れるか乗れないか問題というのはデリケートで、大抵なんか色々の理不尽が出てくる。
 だが、その理不尽をブチ壊したいと思ったのが螢子なのだ。

 まあ、そんな思いが大きな衝動となり、尾ノ上の体格を見た瞬間、螢子は発作的に怒りの引き金を引いた。
 螢子を誰かと勘違いして、ニヤニヤしながら「やあ、七瀬さん」と声をかけてきた尾ノ上の顔面に矢が貫かれたあの瞬間。
 螢子は、全く後悔はしなかった。

 これはもう仕方ない。
 今すぐポケモンGOで歩きまくって肥満を解消するしかない。
 今の話を聞いて傷ついた人は、ポケモン捕まえる為に歩きに行こう。


49 : 尾ノ上死す ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:58:49 0XvNmciw0


「――」


 ――だが、螢子にとって、尾ノ上の死は一つの見せしめだ。
 単にデブだから殺したのではない。
 殺そうとしていた相手の一人が、たまたま螢子的に特に憎いデブだったからそこに憎しみが籠ったのである。
 結局のところ、そこに含まれる憎しみの大きさが原因であって、彼が標準体型でも螢子は殺しにかかっている事実に違いない。
 彼が速水玲香並に痩せていても、螢子は殺しに行った。



 ――何故か。



 螢子からすれば、もう救命ボート乗っていた奴全員同罪なのである。
 だって、そいつらのせいで容量オーバー宣告されて死んだわけで。
 なら、もう自分の手を突き放した奴を殺すとかでなく、ボート乗ってる奴ら全員殺すのも仕方ない。
 だって、そいつらの椅子取りゲームに負けて死んじゃったとか、もうそれは逆恨みに近いが、死ぬのはめっちゃつらかったのだ。
 水は凍りのように冷えているし、しょっぱいし、鼻に入るし、苦しいし、沈んでいく時とか絶望的でこの世すべてと隔絶されてしまったような辛さがあるし。
 ボートに乗った奴にも分けてやりたい。
 そう、分けてやろうじゃないか。



 これが螢子のもくろむ復讐計画である。


 だが、一つ問題が生じた。
 自分が乗ろうとしていたボートに乗りやがった連中――螢子一人分の場所を埋め合わせた連中を殺そうにも、そいつらの顔なんて覚えているはずがない。
 頑張って思い出そうとしたが、どうしてもわからなかった。
 だから、彼女は考えたのさ。





 だったら、全員殺せばいいってね(※よく似た兄妹)





【尾ノ上貴裕@学園七不思議殺人事件 死亡】





【一日目/深夜/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


【小泉螢子@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康(ただし指にめっちゃバンドエイド巻いてます)←バンドエイドは関東だけでしか呼ばないらしい
[装備]金田一お手製ボウガン@墓場島
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1、尾ノ上のランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:全員殺せばいいってね。
1:めっちゃ殺す。
2:遠野がいたら流石に殺さない方針だと思う。
3:体重重い奴は特に憎い。年寄りも難い。
[備考]
※参戦時期は、しんだ後。
※原作で台詞がないのでほぼオリキャラです。女版遠野みたいな感じ。
※七瀬美雪、楊蘭と酷似した外見をしている為、それだけで結構人が寄ってきます。
※金田一は遠野に昔、「あんたの螢子がよろこぶと思ってるのかよ!」と説教してましたが、
 螢子は死んでもキーホルダーを握っていた程度には自分の手を突き放したSKを憎んでいます。
※高遠はジゼルに「犯罪者の血縁者まで犯罪者って事ぁないでしょ」と言ってましたが、まさにその通り。
 遠野と螢子は単に両方頭おかしかっただけで、犯罪者の血縁者が犯罪者であるというような意図で螢子がこんな感じなわけではないです。




【尾ノ上貴裕@学園七不思議殺人事件 死亡】


50 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 02:59:03 0XvNmciw0
投下終了です。


51 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/25(月) 14:59:12 BkuIHgDU0
投下乙です
尾ノ上はどうでもいいですが、首吊り学園では美雪と疎遠だった千家が再登場時ははじめちゃんをはぶって(未遂ですが)まで遊びに行く仲にまでなっていたのにあの最後はとても残念でした
尾ノ上は本当にどうでもいいですが、千家は普通に暴かれたのにぽっと出の島津にはじめちゃんが「お前に自首して欲しい」とか言っていたのが残念でした
尾ノ上は(ry、さて遠野兄妹が揃う時はくるんでしょうか、楽しみだよなです


52 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 17:14:28 0XvNmciw0
>>51
感想ありがとうございます。

差し出がましいようですが、感想に一か所、指摘があります。
美雪が千家や八尾と旅行に行く事になったのは、冴子と一緒に千家に誘われていた女の子がドタキャンしたからで、美雪は千家ではなく冴子に誘われる形でついていった形だったかと思います。
美雪もその辺は後ろめたく思ってましたし、千家自身も幼い頃からの友人である金田一や美雪は呼びたくなかったのでしょう。
それに、千家は元々、金田一の推理力を高く評価しており、金田一と美雪が親しい事もよく知っているキャラなので、美雪を能動的に呼ぶ事は殺人計画にとってデメリットである事もわかっているはずです。
たとえば、千家は『首吊り学園』で、浅野先生に「不動高校で起きた事件(『学園七不思議』)を解決したのが金田一」という事を教えていました事が判明しましたが、実際には金田一が事件を解決した事は公表されていないのでミス研の関係者しか知りません(もう一人、不動高校内で起きた事件を解決したのが金田一だと知っていた生徒の鈴森は元ミス研です)。
そのうえで千家が事件の功労者は金田一だと知っていたのは、おそらく「事件の関係者に金田一がいたという事は、あの事件は金田一が解決してくれたんだな」とすぐにわかるくらいに彼の推理力をよく知っていたという事だと考えて良いかと思います。
また、『首吊り学園』の作中では、事件に首を突っ込む金田一に「昔と変わらねーな」と言っていたので、やはり幼馴染として多くの事件に遭遇していた事がこうした信頼の起源なのでしょうね。
千家と美雪の名誉の為に、このあたりはしっかり指摘しておきます。

あと、どうでもいいですが>>41に予約に関する注意をしておいたので、そっちにも返答ください。


53 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/25(月) 19:01:34 4PVlzBjA0
>>41
はい、仁藤の予約は取り消しで大丈夫です
申し訳ありません


54 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/25(月) 20:32:56 pAT0GqxY0
尾ノ上について「笑顔が特徴的だな」以上のことを考えた試しがなかったので
とても興味深く拝読させていただきました。
小泉螢子なるモンスターが爆誕し、今後がとても楽しみです。

佐伯航一郎、楊蘭、霧島純平を予約させていただきます。
メンバーが豪華すぎてNGでしたら変更致しますので仰ってください。


55 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:13:19 vGx.TbKA0
投下乙です。

投下乙です。

みなさん尾ノ上くんを馬鹿にしてますが、あの子はああ見えて桜木先輩からのメッセージをあの金田一よりも早く解いているということをお忘れではないでしょうか。
また、記者たちがはやし立てていた真壁の密室トリックを金田一同様安っぽいトリックであると評していることから真壁以上の推理力を有していると考えられます。
ましてや、彼がミス研の部室で殺されたからこそ放課後の魔術師は犯罪に粗が出始め、金田一たちにつけこまれることになったわけでもありますし。

要約すると、いくら印象が薄かろうが彼もまた1人の男の苦悩に揉まれてしまった被害者であり、事件の解決に貢献した人物であるのを私たちは忘れてはならないということです。


緊急避難というカルネアデスの板は生き残った方の罪悪感は勿論あるけれど、やられた方はやられた方でたまったモンじゃないからね、(八つ当たり気味に全員殺せばいいって考えちゃっても)仕方ないね。

投下します


56 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:14:53 vGx.TbKA0





もしも、あたしに勇気があったなら。




「ん...」

目を覚ました高森ますみは、まず己の身体の異変に気が付いた。

(う、動けない...なんで...?)

動けない―――正確に言えば、両手首だけが動かせない。
拘束されているのか―――なぜ?
それも、割りと自由なこんな不完全な恰好で?

「お目覚めかしら?」

声をかけられる。
振り向けば、そこには蝋燭の灯りに照らされた美熟女―――五塔蘭が微笑みを浮かべ佇んでいた。

「あ、あの...?」
「運が悪かったわね。私よりあなたの方が早くに目覚めるなんて」

困惑するまなみを余所に、蘭はますみの肌をなぞりあげる。

「ひゃいっ!?」
「いいわねえ〜〜〜若いって」

ぞくぞくと走る怖気と若干の快感を堪えつつ、現状を整理する。

たしか、最初に気を失う前―――正確に言えば、九条章太郎という男がバトルロワイアルツアーとやらの説明をする前。
烏丸奈緒子によって引き起こしてしまった事件を金田一が解決し、ますみも彼女に扇動されていたとはいえ罪を犯した償いをしていた。
その後、一旦仮釈放され、小学校の同窓会に参加していた。
そして、意識が遠のいたかと思えば、あのバトルロワイアルツアーの説明を受け、再び意識が遠のき、現在に至る。


57 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:15:29 vGx.TbKA0

(要はなに?このおばさんがあたしが眠ってる間に縛り上げたってこと?)

「あ、あの...ふわぁ!」
「肌なんかこんなにすべすべして...髪も黒々とつやつやして...」

なぜこんなことをするのか、問いただそうとするますみの言葉は、下着ごしに身体中を弄る蘭の手つきに遮られる。

「ほんと...あの子、美雪だったかしら。あの子にも負けないくらい若々しいわぁ」

美雪。
その名に、ますみの眉根がピクリと動く。
もし、その美雪が自分の知る美雪であれば―――彼女も、この女にこうして?

「美雪ちゃんを知ってるの!?」

思わず食ってかかるますみだが、蘭はにこりと笑みを返すだけで言葉で答えない。
その蘭の態度にますみの苛立ちは募っていく。

―――なんなのよこの色ボケババアは!?人を縛り上げたと思ったらセクハラ紛いに人の身体を弄ったりして!

もともと男勝りな性格であるますみは思わず怒りと共にそう口にしかける。
が、しかし。
ますみは仮にも業界人である。
ここで下手に逆らえば良い結果は生まないことはわかっていた。
そのため、ここまでどうにか耐えていたのだが―――


「その若さ...羨ましいわ...」

蘭はますみの服の襟を掴み、そして

「ほんと...憎ったらしいくらい...!」

ビ リ ッ

腕を振りおろし、一気に下腹部まで服を引き裂いた。


58 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:15:52 vGx.TbKA0

「きゃあっ!」

思わず悲鳴をあげるますみに、蘭は相も変わらず笑みを浮かべている。
ここで捕まっていたのが、原作通り七瀬美雪であれば蘭に為すがままにされていただろう。

「なに...すんのよっ!」

だが、ここで捕まっているのは高森ますみ。
男勝りであり、且つ中学生時代は不良だったフダつきだ。
そんな彼女がこうまでされて黙っていられるはずもない。

拘束されていない自由な足での蹴りあげを放つ―――が。

「でも私の若さと美しさを保つ方法が一つだけあるの」

蘭は、ますみから一歩退くことで蹴りをあっさりと回避。
そのまま、『若さと美しさを保つ方法』について解説を始める。

「ハンガリーのエリザベート・バートリ夫人って知ってるかしら?彼女は自分の美しさのために"若い乙女の生血"を身体にそそいだのよ」

ますみは、エリザベート・バートリー夫人など知らない。知ってる人の方が少ないだろう。
だが、そんな彼女でも蘭の言いたいことはわかっていた。

(この人は、あたしを殺すつもりだ)

「な、なんで殺しなんか...そんなに優勝したいの!?」
「いいえ。あんなチャチなものには興味が無いわ。私は三日後の船に乗せてもらって堂々と帰るつもりよ」
「じゃあ、なんで...!」
「若さを保ち

傍からみれば、蘭はおほほほほ、と高笑いする創作にありがちなマダムだ。
しかし、いまのますみにはそんなものは見えない。
悪魔。
眼前にいるのは、人の皮を被った醜き悪魔だ。


59 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:16:19 vGx.TbKA0

「さて。どこからがいいかしら...?」

蘭の手が、再びますみの身体を蹂躙せんと伸ばされる。

(やだ...)

ますみは、迫りくる悪魔の手になにも出来ない。
ただ恐怖に身を震わせるだけだ。

(あたしは、こんなところで死にたくない...!)

まだやらなければならないことは山ほどある。
自分の罪を隠すために犯してしまった罪の贖罪。
償い終えた時に恩人である君沢先生へ報いること。
そして、いつだってますみを救ってくれた大切な『彼』と今度こそ胸を張って会うこと。

まだ何も成し遂げていないというのに、自分の命はこんなよくわからないおばさんに絶たれてしまうのか。

(助けて...)

目を瞑り、いもしない救世主に縋ってしまう。
だが、極限にまで追い詰められた人間にできることなど、精々祈ることくらいだ。

(助けて...はじめちゃん...!)

彼女が望む『彼』は、この会場にはいない。
故に、都合の良い奇跡など起きない。
だから。

「うっ!」
!?


起きるとすれば、それは『必然』か『偶然』だけだ。


60 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:17:24 vGx.TbKA0



あの人は、泣いてるあたしに手を差し伸べてくれた。

あの人は、あたしにとっての光だった。




(こわい...)

片目が緑色の少女―――斑目るりは、物陰から部屋の様子を窺っていた。
九条章太郎の説明の後、獄門塾のとある無人の一室で目を覚ました彼女は幼いながらも努めて冷静に状況を整理していた。
そんな折だった。
しばらく待機していると、階下から物音が聞こえたので、るりはおそるおそる音の出所を確認しに向かった。

その先で行われていたのは、熟女による凌辱。
母に対して憎き"あの男"がやっていたのと酷似していた。

違う点があるとすれば―――あの女は、捉えている女性を殺そうとしている点だろうか。

(に、逃げないと)

捉えられている人は可哀想だとは思う。
しかし、彼女はるりの家族、ましてや知り合いなどではない。
非力な少女の力ではなにもできはしない。あの女がこちらに気が付く前に逃げるのが最も賢い選択だろう。

(...でも。あのお兄ちゃんは)

ここに連れてこられる前の最後に会った人の姿を思い出す。
彼は、見ず知らずの自分を身体を張って助けてくれた。
相談しにいけば、一緒に遊んでくれると笑顔で約束してくれた。

きっと、お母さんのことを相談すれば、あの人は力になってくれるだろう。

(あのお兄ちゃんだったら...!)

その"もし"がよぎった時、るりの足は自然と進んでいた。
あの恐ろしい光景から逃げるのではなく、向き合う方へと。
手に持った護身武器を構え、憎むべき悪魔へと一気に駆け出した。


61 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:18:49 vGx.TbKA0


よほど"お楽しみ"に夢中になっていたのか、蘭はるりの接近への反応が遅れてしまう。
るりが蘭の腹部に突き立てたのはスタンガン。
大の大人でもしばらくは動けなくなる代物だ。

「うっ!」

蘭は悲鳴をあげ、その場に蹲る。

「え...?」

ますみは、予想外の出来事に目を白黒させた。
突如現れた少女がスタンガンで変態熟女を攻撃したのだ。
それを瞬時に理解しろというのは無茶な話だ。

るりは、ますみの両手を縛り上げていた布を側に備え付けてあった蝋燭で焼き、ますみを解放する。

「あなた、なんで...?」

ますみの問いに、なにかを答えようとするるり―――その背後で、蘭がゆらりと立ち上がる。

「ッ...あんたなんか!」

ますみはとっさにるりを引き寄せ、蘭の顎を蹴りあげる。
仮にも元ヤンの彼女の蹴りだ。そんじょそこらの女子高生のものよりは強烈なそれを受け、蘭は地面に倒れてしまった。

「行こう!」

これを好機と見たますみは、るりの手を引いたまま全力疾走で部屋を後にする。
残されたのは、呻きつつ仰向けに転がる蘭と二人分のデイバックだけだった。


62 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:19:16 vGx.TbKA0



どれほど走っただろうか。
気が付けば、真っ暗闇の森の中だった。
息を切らしながら膝に手をつくますみとるりは、追手がないことを確認して木陰に身を潜める。

「こ、これでしばらくは安全なはず...」
「......」
「助けてくれてありがとうね。...でも、なんであたしを助けてくれたの?」
「......」

るりは、顔をあげつつも、しかしますみからは視線を逸らしつつポツリと呟いた。

「お母さんも...あいつにあんなことされてたの」
「え?」
「あたしの父親のフリしてるあいつは、いつもいつもお母さんにひどいことばっかりしてた」

徐々に、ますみへと視線を合わせつつ、るりは己の身の上を語っていく。

「だから、あたしはあいつが大嫌いだった。でも、止められなかった」
「怖かったの。あたしが止めようとしたら、お母さんはもっとひどいことされちゃうかもって...ううん。本当は、あたしがお母さんみたいなことをされるのが怖かったのかもしれない」
「でも、あのお兄ちゃんは自分が傷ついてもあたしを庇ってくれた。あたしの所為で怪我したのに、それでも明日遊んでくれるって約束してくれた」
「もしもお兄ちゃんみたいになれたら、お母さんをあいつから助けられるかもしれない。そう思ったら...」

いまにも泣き出しそうになるるりの境遇に、ますみは同情の念を抱く。
このどうみても小学生程度であろう彼女の身の回りには、どうやらとても大きな"苦しみ"が渦巻いているらしい。
ますみ自身、小学生の内から親戚をたらいまわしにされていることから、親に対して、特に出て行ってしまった母についてはあまりいい思い出はない。しかし、それでも両親をあいつ呼ばわりするほどではなかった。
同時に。
るりが犯罪を犯してしまうのではと一抹の不安がよぎる。
愛情と怒り。
それが原因で烏丸奈緒子も犯罪に走ってしまった。
これほどまでに父を憎んでいるとすれば、彼女が成長した後に父を殺してしまう可能性も否定できない。

既に犯罪を侵してしまった者として、彼女にそんなことはさせたくない。

「...よし、わかった。このツアーから帰ったら、お母さんはあたしがなんとかしてあげる」


63 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:20:33 vGx.TbKA0

唐突な提案に、るりは思わず顔をあげる。

「あなたはあたしを助けてくれたでしょ。だったら、今度はあたしが助ける番よ」
「で、でも、どうやって?」
「そ、それは...」

勢いで言ってしまったが、なにも思いつかない。
彼女の複雑な家庭についてなにも知らないのだから当然だ。

けれど。

小さいころからますみを何度も救ってくれた彼なら。
金田一はじめなら、なにか良い考えを思いつくかもしれない。

「―――あたしの友達に、金田一はじめっていう頭のいい男の子がいるの。はじめちゃんにかかれば、どんな難事件もあっという間に解決しちゃうんだから!」
「金田一...お兄ちゃん?」
「へ?」
「あたしを助けてくれたお兄ちゃんも、金田一はじめって名前だったの」
「!そうなんだ」

彼女の語った"お兄ちゃん"の像が、ますみの金田一はじめの姿とピタリと重なる。
なるほど、彼ならそんなことを言うだろうな、とますみは納得する。

「そっか...変わってないんだね、はじめちゃん。あたしもね、はじめちゃんに助けられたの」
「お姉さんも?」
「うん。はじめちゃんは、今までも色んな人の悩みや苦しみを解決してくれたの。だからあなたの苦しみだってきっとくれる!...って、あたしが力になるって言ったのに、いきなりはじめちゃんに頼るなんてかっこ悪いね」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう、お姉ちゃん」

るりの笑顔に、ますみは思わず照れくさくなり頬をかく。
なんだ、この子、こんな笑顔もできるんだ。

「よし。とにもかくにも、ここから脱出しなくちゃ。えっと...」
「るり。斑目るり」
「るりちゃんね。あたしは高森ますみ。よろしくね!」
「よろしく、ますみお姉ちゃん」

互いに微笑みを浮かべ、握手を交わす二人。
同じ光を求めた二人の事件簿は、まだ始まったばかり―――



【一日目/深夜/獄門塾敷地内】


【斑目るり@黒死蝶殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]速水玲香を気絶させた時に安岡真奈美が使用したスタンガン@速水玲香殺人事件、
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出して金田一お兄ちゃんと遊ぶ。
0:ますみお姉ちゃんと一緒に行動する。
※参戦時期は金田一と遊ぶ約束をした後。


【高森ますみ@仏蘭西銀貨殺人事件】
[状態]疲労(大)、ほぼ半裸(下着)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出する。
0:るりちゃんの力になる。


64 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:21:05 vGx.TbKA0







「いいわねえ、若いって」

!?


65 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:21:49 vGx.TbKA0


ますみの左肩に、次いで右脚に灼熱が走る。
たちまちそれは激痛に変わり、ますみはたまらず悲鳴を上げてしまう。

矢だ。
前方から放たれた矢がますみの肩と足を貫いたのだ。

「安心したら足を止めて、つい口が軽くなる...ほんと...若い子ってわかりやすい...」
「な、なんで...!」

姿を現したのは、ボーガンを携えた五塔蘭。
完全に撒いたはずのあの悪魔のような女だった。

(ずっと背後には注意していたはず...なのに、なんで!?)

「あなたたちの足跡、馬鹿正直に真っ直ぐ進んでいたもの。だから先回りさせてもらっただけよ」

そう言う彼女の身体は、ひどく濡れていた(性的な意味ではない)。
なぜか。簡単だ。
彼女は、ますみを捕えていた獄門塾からこの付近まで、流れる川を泳いで来たからだ。
泳ぐといっても、この川は非常に流れが早く、ただ浮かんでいるだけでもかなり流されてしまう。
更に言えば、人一人の手を引き走るというのは存外体力を消耗するものだ。
ましてやここは森。足場の悪さも相まって、更に二人の疲労は増しており、二人は体感ほどには獄門塾から離れていなかった。
その結果、蘭は走りつかれた二人に比べ少ない疲労で先回りすることができたのだ。

「それにしても...あなたたちは随分とオイタがすぎたわね」

蘭は再びボーガンに矢を装填し、発射。
今度はますみの腹部に刺さった。

「ッ!!」
「あなたはそこでしばらく寝ていなさいな。この子の次に可愛がってあげるわ」

倒れたますみに微笑みかけながら、蘭はじりじりと距離を詰め寄る。
身体を苛む声を出せない程の激痛で動けないますみは勿論、るりもまた蛇に睨まれた蛙のごとく動くことが出来なかった。

(ここまで...なの...?)

今度こそ逃げ場はない。
るりのような救けなど都合よくは現れない。
自分はるり諸共あの女に嬲り殺されるのが運命だ。

(ごめん―――)

絶望に支配されたますみは、目蓋を閉じ全てを投げ出した。


66 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:23:10 vGx.TbKA0

「―――たすけて」

声が聞こえた。
泣きそうになりながら、助けを求めるるりの声が。

でも。
あたしはこの様で、もう動けない。
ごめんね、るりちゃん。
あたしじゃ、どうしようも―――

「助けて、金田一お兄ちゃん!」

―――お前を陥れた真犯人「葬送銀貨」は、必ず俺が捕まえてみせる!ジッチャンの、名に懸けて!

るりの叫びと共に、ますみの英雄(ヒーロー)の顔が脳裏を過る。

(はじめ、ちゃん...?)

そうだ。きっと、彼ならばこの状況でも決して諦めない。
最期まで生きるため、救うために知恵を振り絞る。
けれど、ますみは金田一はじめではない。
どうあがいても、犯罪者である自分はヒーローにはなれない。

(でも...)

だから諦めるのか。
しょうがなかったで済ませるのか。
それで―――はじめちゃんに、胸を張って向き合えるのか。

(そんなの、できるわけがない)


67 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:23:51 vGx.TbKA0


「あら?」

倒れたますみの傍を通り過ぎようとした蘭は、右足に違和感を憶える。
目を向ければ、ますみの右手が掴んでいた。

「...はぁ」

蘭は溜め息をつき、ますみの手を振り払おうと足を振る。
しかし、ますみは離さない。
歯を食いしばり、動かされる度に走る激痛に耐えている。
あまりのしつこさに、蘭のこめかみに青筋が奔る。

「この、いい加減に―――ッ!」

ますみの息の根を止めるためにボウガンを向けたその時。
蘭は、迫りくるるりの気配に気が付く。
ますみを救うために、るりが手に持つのはスタンガン。
先程同様、蘭の身体に電流が―――

「やっぱり若いって単純ねえ」

流れなかった。
先程は彼女の存在を認識していないうえでの不意打ちだったために不覚をとったが、いまは違う。
スタンガンが蘭の身体に触れる寸前に、るりの手は蘭の空いた左手に抑えられていた。
所詮は子供の力である。
体重約47㎏の美雪を引きずる程度の力しかない蘭でも、突き飛ばすのは容易だ。

これ以上スタンガンを受けてはたまらないと、蘭はますみへ向けていたボーガンをるりへと向ける。

その隙をつき、ますみが―――気が飛びそうになる程の激痛に耐えながら―――蘭の横っ面を殴り飛ばす。
倒れた蘭に追い打ちをかけるように、ますみもまた肘を突出し倒れ込む。
ますみのひじ打ちは、蘭の鼻柱に当たり、蘭の鼻からはどくどくと不様に血が溢れだす。
だが、ますみもこれ以上追撃をかけることも出来ず、ふらふらと立ち上がり、るりに手をひかれるまま木陰に身を隠した。


68 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:24:29 vGx.TbKA0

「はぁっ、はぁっ...」

ますみは、絶え間なく身体を走る激痛と荒ぶる呼吸を抑えることができず、木に背を預ける。
心配そうに覗き込むるりの頭に手を載せ、無理やり笑顔をつくって見せる。

「だい、じょうぶ、るりちゃん」
「うん...ますみお姉ちゃんが、助けてくれたから...」
「そっか...よかった。約束、守れたみたいね」

ますみは、一旦るりから視線を離し、木陰から蘭の様子を窺う。
彼女もまた、ますみやるりの反撃を警戒し、一旦木陰に身を潜めてこちらの様子を窺っていた。

あの女が警戒してくれたのはこれ以上ない幸運だろう。
おかげで、るりと言葉を交わす時間ができたのだから。

「...るりちゃん、よく聞いて。あたしは、あいつをここで喰いとめる―――だから、あなたは逃げて」
「...!...嫌...お姉ちゃん、死んじゃうよ...!」
「だいじょうぶ。お姉さんは、あんなおばさんになんか負けないから!...ただ、誰か連れてきてくれると助かるかな、なんて...」

たはは、と笑みをこぼしつつ、ますみはどうにかるりをこの場から離れさせようとする。

「あたしが誰かを連れて来れば、ますみお姉ちゃんは死なないの?」
「もちろん。あたしはこんなところで死んでられないの」
「本当に死なない?」
「本当だって。約束する」
「絶対...絶対だからね!」
「るりちゃんも、気をつけてね」

るりの言葉に熱がこもっていくのがわかる。
ますみから見ても、るりは大人びている―――というか、賢い子だということはわかる。
だからこそ、るりはここでますみを置いていくことの意味がわかっていた。
わかっていたからこそ、二人で留まる・逃走する選択肢を選べなかった。ますみが時間を稼いでいる間にるりが助けになる人物を探し出す選択こそが最善の道だとわかってしまった。

「絶対、お兄ちゃんとお姉ちゃんの3人で遊ぶから!」
「うん。あたしも楽しみに待ってるよ」

その言葉を最後に、るりはとうとう背中を向けて駆けだした。
ますみを救う、一縷の望みにかけて。



【一日目/深夜/獄門塾敷地内】


【斑目るり@黒死蝶殺人事件】
[状態]疲労(中)、精神的ダメージ(大)
[装備]速水玲香を気絶させた時に安岡真奈美が使用したスタンガン@速水玲香殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出して金田一お兄ちゃんと遊ぶ。
0:ここから離れて、ますみお姉ちゃんの力になってくれる人を急いで探す。


[備考]
※参戦時期は金田一と遊ぶ約束をした後。


69 : 君がいるから… ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:26:45 vGx.TbKA0



「やってくれるじゃない...!」

痺れを切らした蘭が木陰から姿を現す。
もはや彼女の微笑みの仮面は崩れ、醜悪なほどに歪んだ憎悪が浮かび上がっていた。

このまま木陰に身を潜めてあの女が通り過ぎるのを祈ることもできたが―――やめた。
あえて姿を見せ、逃げていくるりに気取られないように蘭の注意を引く。

「ニタニタ笑ってるよりそっちの方が似合ってるわよ、おばさま」

蘭の平手が奔り、パァン、と気持ちのいい音が鳴る。
しかしますみは最後の意地で倒れそうになる身体を持ち直し、挑発するように笑みを浮かべる。

挑発とは相手の怒りを誘発する行為であり、冷静さを失わせる意味を持つ。
彼―――金田一はじめなら、きっとこうして時間を稼ぐだろう。


「傷ついたあたしに逃げ場なんてない...そんな風に思ってないかしら」
「?」
「あたしを甘く見てるんじゃない?色ボケしたおばさん!!」


そのますみの言動は、彼女の狙い通り蘭の怒りを買うことになった。
蘭はボウガンの矢を振り上げ、そして―――





もしも、あたしに勇気があったなら。
きっと、多くの人を不幸にすることはなかっただろう。

あの人は、泣いてるあたしに手を差し伸べてくれた。
いつだって助けてくれた。
あの人は、あたしにとっての光だった。

けれど。
光は眩しすぎて、いつもどこか遠くの世界だって感じてて。
あたしはあのひとと向き合っちゃいけないと思ってた。


ねえ、はじめちゃん。

あたし、あなたに失望されるようなことばかりしてきたかもしれないけど。

今度こそ、あなたに正面から向き合えるかな。




【高森ますみ@仏蘭西銀貨殺人事件 死亡】


【一日目/深夜/獄門塾敷地内】




【五塔蘭@異人館村殺人事件】
[状態]スタンガンとますみの蹴りのダメージ、鼻血、怒り、ずぶ濡れ、全裸
[装備]布施光彦のボウガン@オペラ座館殺人事件、矢(1/5)、いつも来ている服
[所持品]基本支給品一式×2、ますみの不明支給品
[思考・行動]
基本:美しさを保つために若い女の子を狩る(性的な意味ではない)
0:若い乙女の生き血を身体にそそぐ。
1:ますみの血を身体にそそぐ

[備考]
※参戦時期は美雪を拉致した後
※優勝を目指しているわけではありませんが、若い女の子は積極的に狩りにいくスタンスです。


70 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/25(月) 23:27:18 vGx.TbKA0
投下終了です


71 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/25(月) 23:46:04 0XvNmciw0
投下乙です。
まるでロワみたいなまともな回が来て驚きました。
タイトルを見て「もう最終回かな?」と思いましたが、これ読んだあたりで「これクライマックスかな?」とさえ思いました。

しかし、金田一の初恋の人(美雪談)、ここで死す…か。
原作で生存したキャラの死はこのロワでは初めてですかね。
実は、「金田一は小学生時代は美雪とかなり親しいというほどではなく、もっと他の友人と遊ぶ機会が多かったのではないか?」という描写が原作で目立つのですが、ますみはまさにそれを象徴するキャラでしたね。
(「美雪が千家の事をよく覚えていない」、「邪宗館や狐火流しの幼少期の出来事に美雪が一切かかわっていない」といった描写などから、小学校時代は美雪の話題が中学・高校に比べて少ない)
たびたび泣いているますみを金田一が慰めていたという話から考えても、やはりますみや千家は金田一にとって小学生時代の思い出として、非常に大事な存在だったのでしょう。結構胸が痛いです。
五塔のインランババアは、次回で原作で果たせなかった良いご趣味を披露しそうですね。
いったいどの書き手がおはDの全裸恍惚血液シャワーを書くハメになるのか楽しみです。
るりちゃん、拾われなきゃ死にそうですが、彼女も誰かが拾うのか普通に死ぬのか…。

>>53
もう仁藤を予約しても大丈夫なので、できれば予約してください。

>>54
メンバーは豪華でも構いません。
今の投下のるりちゃん&ますみもわりと豪華なので。

>>55
ぶっちゃけ現代人ならすぐ解けますよね。
尾ノ上は未来人なのかもしれない。


72 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/26(火) 00:56:07 s8hiG2Mk0
投下乙です
るりちゃんは原作があれでしたので報われて欲しいですが現状かなり厳しいのではないでしょうか…
まさかRになって中の人が美咲蓮花役で登場することになるとは想像もしておりませんでした


では改めて仁藤を予約させてもらいます


73 : 名無しさん :2016/07/26(火) 02:14:41 s8hiG2Mk0
投下乙
はじめちゃんの小学生の友達同士千家とますみも面識があったらと思うと燃えますね
中学の友達同士緑川繭と草太や岡崎とも面識があったらと思うとまた燃えますね

さも当たり前の様に名前だけ登場して全く本人が姿を現さない千家君は何者なのでしょうか
名簿に載る日がくるのでしょうかね?楽しみです


74 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/26(火) 09:42:57 5vMqJqgQ0
遠野英治、香取洋子で予約します。


75 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/26(火) 10:09:22 euSVzY7s0
○月江茉莉香/○星桂馬/○井沢研太郎/○白神海人/○鬼城歩夢/○鯖木海人/○多岐川かほる/○尾ノ上貴裕/○小泉螢子/○高森ますみ
○五塔蘭/○斑目るり/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○


12/60

参戦作品バラバラな暫定名簿
果たして海峰とか陸とかフラグのある者が参加するのでしょうかね


76 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/26(火) 12:27:49 iZAJ1ClM0
すいません
仁藤の予約ですが、あまり話が膨らませることが出来なかった為仁藤を削除して変わりに六星竜一、的場勇一郎、津雲成人で予約します


77 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/26(火) 22:33:34 5vMqJqgQ0
>>73
一つ指摘があります。
千家は不明ですが、ますみは少なくとも中学時代に関していえば金田一と別の中学です。
ますみが中学の時にグレていた事を金田一が知らなかったのもその辺りの事情による物だったと言及があったかと思います。

そういえば、中学の友人の話で言うと、一つ豆知識を。
『人喰い研究所殺人事件』が手元にあるなら、是非そこに登場する中学時代の座席表を確認してみてください。
実は、「金田一」「七瀬」「緑川」「村上」「岡崎」「秋峰」「鷹野」以外にも、「加藤」「木下」は過去の短編に登場していたりします。
もし加藤と木下の存在を知らなかったら、ぜひ色んな話を読んで探してみてください。

>>65
お疲れ様です。まあ、60人超えてもネタがあったら書き手枠増やして良さそうですね。
因縁のあるキャラが出ない結果、ネタが行き詰まるのも辛いですし。
それで描ききれなかったら檜山爆弾もあるので、おおざっぱに60人くらいだと思っててください。

>>76
不動高校の職員室は刑務所に設置した方がよさそうですね。


78 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/26(火) 22:54:47 s8hiG2Mk0
オノウェイの話で金田一のクラスの話題がありましたが貴船葉平が高2の時転校したってことは同じクラスだったんでしょうかね?
1回ちょっとはじめちゃんのクラスメート集めてみたいですね


79 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/26(火) 23:42:45 5vMqJqgQ0
そもそも、「高2の時に転校した」っていう言い回しが不自然ですよね。
金田一や美雪は、こんな言い方しなくても現在進行形で高2のはずです。
それなら、「高2の時に転校した」ではなく、「転校した」「この間転校した」と言うのではないかと思います。
しかも、吸血鬼伝説自体が8月10日のエピソードなので高2の出来事なんて4か月以内の話です。わざわざ時期を指定しなくても覚えてそうなもんです。
学年が上がって高3になっているにしても、その後のエピソードでは普通に2年ですし、真壁たちが登場しているグランドフィナーレから1ヶ月後の話で2年生じゃないのは余計におかしい気も。

明らかにベタもトーンも塗ってない真っ白な肌の葉平が「すっかり日焼けした」みたいに言われているのも意味不明ですし、
「バスタオルを巻いて風呂入る奴なんていない」という推理にしても過去のエピソード(『オペラ座館・新たなる殺人』など)で悲鳴あげた美雪のもとに駆け付けたらバスタオル巻いていた事実と矛盾しますし、
「この状況で美雪が犯人という事は人間心理的に100パーセントありえない」という『首吊り学園』から何の反省もしてない推理もメチャクチャですし、
ボンベイタイプいすぎだし、
死ぬギリギリまで血を抜いたって言っても0.9kgはどう考えてもかなりヤバい症状出るレベルだし、
メディアミックスが二つとも黒歴史みたいになってるし、
部屋を偽装するトリックは『異人館ホテル』とか『殺戮のディープブルー』とかの流用同然ですし、、
高遠は他人の旅行先を指定しておきながらお金はくれないケチ野郎だし、

なんなんでしょうねほんと。


80 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:36:32 AQJYWCUU0
投下します
ダンガンロンパを見て希望は必要だなって思いました


81 : 職員会議 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:37:16 AQJYWCUU0
不動高校で大勢の人物が足の付かない外国人のバイトに移動させられる中、ほとんど移動されずに不動高校の職員室に集められた3人の大人が揃っていた。
しかも3人共、同じ共通点を持っていた。
――小田切進という教師を殺害し、その名前を名乗りながら不動高校の教師(原作では何の教科を教えているのかは不明だがドラマ版では英語教師)を務める『六星竜一』。
――ミステリー研究会顧問で物理教師を務める『的場勇一郎』。
――写真部顧問で化学教師を務める『津雲成人』。
そう、この不動高校の教師であり全員事件の犯人であった人物だ。
だがこの3人の中では『異人館村殺人事件』が起きたことすら前の時間軸であり、彼らが人を殺す恐ろしい事件を引き起こすことすら知らないのだ(約2名はまだ人を殺してないとは言ってない)。
つまり、逮捕あるいは死んだ人物であってもそんな突っ込みは野暮なのである。
しかし考えても見て欲しい。
オペラ座館殺人事件の前の不動高校には有森裕二(3人殺害)、六星竜一(最低8人以上殺害)、時田若葉(1人殺害)、的場勇一郎(3人殺害)、立花良造(1人殺害)、遠野英治(4人殺害)、和泉さくら(2人殺害)、森下麗美(詳しくは不明だが最低1人以上殺害)、千家貴司(3人殺害)、海峰学(1人殺害)、津雲成人(1人殺害)、鈴森笑美(殺人未遂)、汐見初音(殺人未遂)と現時点で判明しているだけでこんなにたくさんの人間が同じ空間で勉強や仕事をしていた不動高校であり、減ることはないがこれ以上に増えることはまだまだ考えられる。

では詳しく無い者に1人ずつ特徴を挙げていこう。

まず、犯人の中で最強の犯人(物理)は誰かという話題からだ。
よく挙げられる3人をピックアップしてみるとまずは8ミリフィルムでグルグル巻きの状態で天井に吊るすという行為をトリック等使わないでやり遂げた犯人遊佐チエミが思い当たるだろうか。
フィルムをてこの原理で吊るしたとかフォローさえあればまだそんな評価は無かったのだが、さも当たり前の様にまるで遊佐チエミであったなら可能だっただろうと言わんばかりに説明がない。
兄に憧れスタントマンの練習をしていて力には自信があるとかフォローさえ(ry
あとは、剣持警部の殺人では睡眠薬を使って意識を失わせた毒島陸という筋肉質な犯人がいたのだが、その少し前にその剣持警部を一撃でズガンと殺さない程度にかつ意識を失わせる的確な力で気絶させた湖月レオナであろうか。
毒島とレオナがもし逆であるならばまだ納得もできただろう。
しかし虫も潰せそうにない女性が力尽くで不安定なやり方で行動をしたのを見るとまるで脳筋みたいであり、毒島の方がよっぽど知恵がありそうに見えてしまうだろう。
剣持警部の名誉の為に言っておくが柔道黒帯5段であり、身長182センチの大柄な男性であると最後に記しておこう。
そして彼女らを差し置いてでも真っ先に名前を挙げられるのは六星竜一その人である。
金田一少年の事件簿の流れを掴みたいのなら一読願いたいのが異人館村殺人事件であろうか。


82 : 職員会議 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:37:45 AQJYWCUU0
なんかこの名前と本人の活躍をリンクさせてみると金田一少年のとあるライバルと様々な点で似ている部分が現われないだろうか?
ベクトルは違うが芸術的な殺人に拘るところ、金田一一を死亡寸前にまで追い込んだ手腕、最初はヘタレを演じていたところ、動機は母親の復讐でありその母親から託された力で事件を進めたところ、事件の間は金田一一に友好的に接していた事、そして何より本名の最後がまるで『金田一一』と同格にしているかのように最後の文字が『一』で締めるものであること。
偶然なのかはわからないがとにかくまるで高遠遙一のプロトタイプであるかの様に見えてしまえないだろうか?
戸籍のない母親から暗殺術を学び殺人マシーンとしての悲しい過去を持つ。
そんな彼は2番目という序盤の序盤の犯人であり、犯人がばれた瞬間それ以降残ったターゲットは生き残る法則すら無視して2キルかます姿はとても印象に残る(この法則を破ったのはこの男と高遠遙一だけである)。
好きな犯人の名前でも嫌いな犯人の名前でも真っ先に名前が挙がる。
だが残念なことにアニメでは未登場であり、ドラマ版では欠番扱いになっている第1話である。
というかトリック盗用を抜きにしても何故ドラマでやったしと言わざるを得ない事件であり、他事件と比べても作画や血の描写が明らかに別作品の様に感じてしまうだろう。
普段ならゲストキャラの案内役がダビデの星の説明をするところがお馴染みとなるところであるのがお決まりであるが、はじめちゃんが説明しているところもなんか不思議な違和感がある。
レギュラーキャラも出揃っていないので明智さんや佐木の名前が挙がることもない。
しかし、吸血鬼伝説殺人事件や文庫版オペラ座館のあとがきでは作者に触れられているという破格な扱いを受けていることが伺えるだろう。
だが悲しいことにこの事件「まああの程度の事件ならロスで何件も見てきたがね……」と明智警視にきっぱり言われてしまい、その明智がまんまと雪夜叉に騙されているので『雪夜叉>七人目のミイラ』みたいな図が成り立つ。
こんな事件が日常茶飯事に起きるロス怖い。
この発言を真に受け今後の事件はもっと恐ろしい事件がくるのではないかとガクブルに震える方もいるだろうが、この事件に耐性を付けたならもうどんな事件を読んでも恐怖に震えることは少ないと思うので断念しないで読んでみて欲しい。
因みにどうでもいいが教え子である時田若葉を事件の為とはいえ本気で愛した男である。

それが『六星竜一』という男と起こした事件の簡単な説明である。

次に聖人な被害者として3人挙げるなら巽征丸、斑目るり、影原夕菜辺りであろうか。
個人的にはツンデレ枠として虹枝光代辺りでも入れてもいいかなと思っている。
では、同情出来ない犯人は?といわれて3人挙げるなら血は繋がっていないがずっと育て続けた子供の顔が本物の母親と似ているだけで殺した巽紫乃、『天性の勘で感じ取った同類の天才である高遠に近付く薄汚いメスどもを断罪するため(本人談)』霧島純平、そして過去の犯罪をずっと隠し続け偶然不動高校の七不思議の秘密を知ってしまい生徒に手を出して保身をずっと続けてきた的場勇一郎である。
これも金田一少年の事件簿の流れを掴みたいのなら一読願いたいのが学園七不思議殺人事件であろうか。
原作の流れを切って、ドラマ版とアニメ版で初回に放送された回である。
グロやトリックは控えめ(初期作品の中では)であるが、放課後の魔術師の仮面が怖かったり、不動高校という魔境の成り立ちが明かされる動機であったり、白骨が現われたりと原作の中でもホラー色の強い作品で、桜樹先輩エロいな事件である。
金田一少年の事件簿のパッケージやポスターではよく着ている制服姿があるが大体冒頭とエピローグだけ制服というのが多いが、この事件の間はほぼずっと制服姿を見続けられるという数少ない貴重な回だ。
因みにどうでもいいが原作での家族構成は不明だが、ドラマ版では元教え子に好意を寄せられており、その教え子を庇って自殺するという最後になっていたりする。

それが『的場勇一郎』という男と起こした事件の簡単な説明である。


83 : 職員会議 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:38:17 AQJYWCUU0
最後に現在職員室にいる3人の内2人はわかるけど1人だけ誰?ってなる人物がいた場合十中八九多分この人津雲成人であろう。
これは金田一少年の事件簿の流れを掴みたいだけという方は残念ながら省いても仕方ないが、つまらないというわけではないし、ゲストキャラも可愛い子が多いので長編で苦しくなってきたら一読してみてもいいかもしれませんね、不動高校学園祭殺人事件を参照(上の事件では学園とぼかしてあるのに何故かこのタイトルは不動高校とばっさり表記している謎)。
殺した男の死体にメイド服を着せる誰得なことを仕出かした人物ぐらいの印象しか残らない。
語ることが多すぎる前2人が異常なのだ。
因みにどうでもいいが年齢が30離れている自殺した生徒六野冬花のことを本気で愛し、恋人関係であった。

それが『津雲成人』という男と事件の簡単な説明である。

この学園ちょっと教師と生徒の恋愛が多すぎないだろうか?
中津川賢人と汐見初音というカップルも存在しているのだ。
生徒と生徒で恋人関係になっている者同士で頭に浮かぶのは有森裕二(故)と月島冬子(故)、岡崎浩司郎と平嶋千絵(岡崎君は最近別な女の子とばっかり出演している気がする)、鈴森笑美と渋沢圭介ぐらいだろうか?
ちょっと頭が痛くなってきたのでこの話は切らせていただきたい。





とりあえずこの3人が職員室での自分の席に座っていたのだ。
当然この集まりは職員会議だ。
自分たちの愛する職場がまさかこんなバトルロワイアルの舞台にされてしまったのだからだ。
愛する生徒も巻き込まれているのだとしたらこれは世間的にも大きな事件になってしまう。
その被害を最小に収める為にもこうして話し合いをしているのだ。

「こ、こほん。年長者としてこの場をまとめさせてもらうよ」

代理のリーダーを年功序列にして的場をリーダーにしていた。

「そうですね、うちの生徒に限らず一般の人もこの学校という一か所にまとめて全員で船を待つべきでしょう。誰か暴れても全員で押さえつけられるでしょうし」
「そ、そうですよね」

ちょっと自信のなさそうに六星は津雲の意見に賛成を入れる。
それを聞いた的場もそれはそれで賛成なのだが、素直にうんとは頷けなかった。

(うちの生徒ですら冷や冷やさせられているのに一般の者まで学校に集めるだと!?そんなことしたら青山君やあの人体実験の体まで見つけられる可能性が上がってしまうではないか!?ああ、どうすればいいんだ……)

当然この2人は的場の罪を知らない。
悪気など全然ない状態なのだ。
焦りと共に六星と津雲はこれから不動高校を出て他の参加者を学校に連れていき、的場がその人たちを率先するという流れになった。
的場の年齢では体力がもたないだろうという至極もっともな理由である。


84 : 職員会議 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:38:40 AQJYWCUU0
「では集めた人たちをどこに置いておきましょうか?」
「体育館だ!そうだ、そこがいい!」

的場はとりあえず隠されていないと自信のあるところへ指示を出す。

「ですがあそこは先ほど亡くなられた男性の体が転がっていますよ!?」
「う、うむ。では私が処分しておきましょう」
「…………」

驚いた声を上げた六星が的場の言葉を聞いて冷たい瞳になったことに他2人は気付かなかった。

(処分ね……、まるで慣れた言い方ではないか……)

あえて深く突っ込まないことにした。
六星はこの時、的場をこっち側の人間と判断したのであった。

話し合いも終わり六星と津雲は外へ、的場は1人職員室に居残った。

「ふぅ……、もう少しで定年なんだ……、ばれるわけにはいかない……」

体育館で避難した人間の率先なんて役割だがそれは二の次だ。
この学校の七不思議を隠し通さなくてはならない。

支給された大ばさみを手にし、七不思議の番人放課後の魔術師がこの不動高校に復活を遂げるのであった。



【一日目/深夜/不動高校職員室】


【的場勇一郎@学園七不思議殺人事件】
[状態]焦り
[装備] 和泉さくらの髪を切った大ばさみ@怪盗紳士の殺人
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:七不思議の秘密を隠し通す。
0:七不思議に近付く者は消す。
1:避難してきた人物の率先という名の監視。
[備考]
※異人館村殺人事件前からの参戦。


85 : 職員会議 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:39:03 AQJYWCUU0
「ではお気をつけてください津雲先生」

礼儀正しく津雲に頭を下げる六星と津雲は二手に別れたのだ。
役割としては西から北へと回るコースを津雲。
逆に東から南へと回るコースが六星の担当だ。

(伊志田、私はもしこの島で君を見つけた場合は許さない!!)

津雲の復讐心は燃えているが、だが伊志田が絡まなければ仕事に全うし、一人でも多くの人と共に脱出を考えていた。
蛇が出るか蛇が出るか。
1歩1歩不動高校から離れていく。



【一日目/深夜/不動高校周辺】


【津雲成人@不動高校学園祭殺人事件】
[状態]健康
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:1人でも多くの人を不動高校に集めて脱出する。
0:もし伊志田純がこの島にいたら……。
[備考]
※参戦時期は、六野冬花自殺後〜異人館村殺人事件前(時系列不明だったのでこうさせていただきました)。



「とりあえず俺はあの体育館で五塔のババアの姿ははっきりと見つけた!」

下調べという形でしか確認していないが復讐の相手は間違えようがない。
こんな事態になったら馬鹿正直に教師を演じる必要もないだろう。
かといって的場と津雲の話を真面目に聞いていたということはなりふり構わず参加者を消していくつもりもないという表れでもあった。
ただ復讐する相手――六角村の連中においては例外なく消していくつもりだ。
それが本気で愛した女であっても……。

「まあ武器は合格点というところか」

斧を振り回し重さを確認。
現場の装飾に凝った演出をこのバトルロワイアルという場においてでも準備しようとしているのだ。

「気が向いたら学校へ案内するというスタンスで俺は向かわせてもらうぜ」

復讐鬼がいま不動高校という檻から解き放たれたッ!!



【一日目/深夜/不動高校周辺】


【六星竜一@異人館村殺人事件】
[状態]健康
[装備] ジェイソンの斧@悲恋湖伝説殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:六角村の連中は皆殺し。
0:六角村の連中は凝った演出をして場を彩る
1:他の連中はどうでもいい、生死すらどうでもいい。
2:気が向いたら不動高校へ案内する。
[備考]
※参戦時期は、小田切進(本物)発見〜異人館村殺人事件前。


86 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/27(水) 22:51:00 AQJYWCUU0
投下終了です
>>79
吸血鬼伝説のアニメとドラマに触れられておりましたが、原作も絵柄が探偵学園Qであったりと色々不遇な作品ですよね
黒死蝶のエピローグの時に事件から半年後という描写がありましたがもしかしたらはじめちゃんが半年も事件に巻き込まれないのはあり得ないので、金田一少年の事件簿という作品は同時並行して起きている事件を解決している漫画なのかもしれません
時系列も信用できなくなりますね
中学時代既にデジカメが使われていますね
中学→高校という流れも信用できないかもですね
ヒロイン2人の呼び方から見ても明らかに黒霊ホテルよりも錬金術の方が時系列が後だと私は認知しております
更にいえばセガサターンでは美雪ちゃん呼びが当たり前の様になっているので黒霊ホテル→錬金術→悲しみの復讐鬼が正規の時系列であると推理します


87 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:43:29 nXi00SZg0
投下乙です。
この話に関する感想は、ほとんど予約時に先行して告げてしまいましたが、聖人被害者といえば斑目舘羽も結構凄いと思います。
それでいて、揚羽と深山の事を応援していたり、あんな母親を庇ったり、小野寺の事はちゃんと愛していたり、調子の悪い母親の代わりに揚羽と一緒に朝食を作っていたり、よく見るととんでもなくまともな人なんですよね。
初登場時の印象が「ケバくてキツそうな女」だったものの、揚羽や小野寺への態度に関しては、揚羽が客をもてなす時に雑談していた事や、小野寺が手相見た程度でうるさかった事なんかもありますし。
アニメではるりの死に心を痛めて一人で泣いていたところを小野寺に殺害されるという形で可哀想でした。
あとは、花蓮さんとかも、空気読めないだけですげえまともな人だったり。

>>86
何がヤバいって、明智や高遠の高校時代の話でも普通に当時に最新技術が出てきてしまう事ですよね。
あとは、剣持との出会いが9月、明智や玲香といった準レギュラー級のキャラとの出会いが高2の冬というのも……。
オープニングにも書きましたが、時系列の話はやめよう。

ついでに投下しときます。


88 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:45:17 nXi00SZg0



 香取洋子は、幼い頃に帰ったかのように眠っていた。
 懐かしい匂いが鼻の中を通り抜けて、脳を擽ってくれているようだった。
 そのおかげか、いつもに比べて随分と寝汗は抑えられている。

 その日見た夢は、ある事故が起きてからの長い悪夢ではなく、広大な海と優しい父の傍に抱かれていた遠い日の夢だった。
 父と二人暮らしてきた楽しかった日々――大きな海の真ん中で、父の操縦する船を走り回っていた時の事。
 夢の中では子供に帰れた。
 夢の中にいる洋子は、香取洋子ではなく、鹿島洋子という少女で……その名前の持つ意味が変わっていく事を知らなかった。
 自分の手が血塗られていく事など考えもしなければ、多くの人間が父に憎しみのまなざしを向ける事など予期していない。
 まるで、全てを忘れ去ったかのような快感。



 こんな安らかな夢を見るのは、いつ振りだろうか。



 多くの犠牲者を出した海難事故の「元凶」の娘となってからも。
 鹿島洋子という名前を名乗れなくなり、悔しさの中で死んだ母の姓を名乗るようになってからも。
 父の命はおろか名誉までも奪った男たちに復讐を誓ってからも。
 そして、彼らを殺して、やがて血塗られた幽霊船長となってからも。

 悪夢以外の夢を、見る事はなかった。

 きっと、多くの復讐鬼たちは、その復讐の起源となった地獄の瞬間だけを夢に見るようになっていくのだ。
 固く刻まれた憎しみを胸に宿し続け、それを忘れないように、夢が何度も彼らの脳裏にその瞬間をしみこませていく。
 決して憎しみを忘れる事がないように、囁き続ける言葉と、フラッシュバックする光景。
 それは、たとえ忘れたくても、憎しみを骨肉に彫り込まれていくような痛みだった。
 それを誰もが繰り返し、繰り返し、そして頭の中に描かれた復讐の計画を現実のものに変えていこうとするのだ。
 復讐鬼たちは、地獄の夢を見る。



 しかし――その一日だけ、香取洋子はその復讐の日々から解放されていたのだ。



 そっと目を開けた。
 洋子の胸にじわじわと残る、夢の残滓のせつなさ。
 心地良い夢から現実に変える時の、どこまでも胸が痛い感覚――あと少しだけでも夢の中に溺れていたい。

 だが、一瞬にして彼女の眼は冷めた。
 周囲を見回した。


89 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:45:36 nXi00SZg0


「どういう事……?」


 洋子は慌てて起き上がり、思わずそう口に出してしまった。
 頭の中で考えた事が口に出てしまうのは久々の感覚だ。
 絶対に明かされてはならない計画が頭の中に存在しているうちは、それがどこかから漏れないように必死に押し込めていた。
 しかし、頭の中だけの口で言った言葉が、そのまま吐き出された。
 それくらいに驚くべき瞬間だった。

 何故って。


「ここは……」


 それは、洋子が今いるのはかつて暮らしていた家――父との思い出の残る家、だったからだ。
 生まれついた町の中で、今確かに浮いている筈の一軒家。
 しかし、この家だけがリゾート島に運ばれたかのようで、町並みなんていう物は存在しない。
 誰もこの家に石を投げないし、この家が壊されていくのを見て見ぬふりする者もいない。


「リゾート島って、まさか……こんな事まで」


 そうだ。そういえば、九条という男は、観月旅行社と言っていた。
 観月旅行社といえば、あのオリエンタル号の処女航海を担当した旅行会社である。
 あの旅行会社に、家を一軒まるごとリゾート島に移築する力まであったというのか。
 これまで惨劇の舞台となった場所を再現する、とは言っていたが――まさか、この家まで。

 洋子は、呆気にとられつつもそれを事実として認めた。
 今自分がいるのは夢の中ではない。
 現実なのだ。
 それをまず受容して、それから進まなければならない。
 今自分がいるのは――間違いなく、遠い昔、親子が暮らしていた懐かしい我が家なのだ。


「――……」


 ――だが。

 やはり、そこは、洋子が幼かった時とは違い、誰かによって向けられた悪意の痕跡が残っていた。

 少しだけ、洋子の顔から笑顔が消える。
 笑顔……?
 そうか、自分は今、笑っていたのだと、口元がそっと落ち込んでいった時に洋子は気が付いた。
 彼女は、ゆっくりと外に出た。

 壁にはたくさんのラクガキ……『人殺し』『地獄に落ちろ』。
 窓は割られていて、そうか、夜風が入り込んでいた。
 道理でというべきか、洋子はここで眠っている時、僅かな肌寒さを感じていたのである。
 暖かさだけに包まれなかったあの感覚は、この隙間風が齎した物らしい。
 ただ嬉しいだけの感覚じゃないのは、これがあの事故の後の光景だったからであろう。


「……」


 それでも――。



 これまで、遠くから見る事しか出来なかった家に、ただ一人で入っているという事実が、洋子にとっては感慨深いものだった。
 勿論、この場所に向けられた多くの人間の悪意の証は残っている。
 だが、そんな事も頭の片隅から消えて行った。
 家の中の匂いも、雑誌の付録のシールが大量に張られた家具も、在りし日の両親と三人が映った写真立ても、幼児が描いた船乗りの絵も。
 すべてが、そんな悪意を忘れさせるほどに、懐かしかった。

 やっと会えた。
 やっと帰って来られた。
 何度近づいても、絶対に潜る事の出来なかった門に――この殺し合いは導いてくれた。


90 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:46:02 nXi00SZg0


「……ただいま」


 家の門の前で、ずっと言えなかった言葉をつぶやく。
 胸から熱い物がこみあげてきた。
 おかえり、という返事はない。
 その寂しさと――長く言えなかった言葉を言えた喜びと。


「お父さん…………ただいま」


 嗚咽が出て、涙が溢れ、しゃがみこむように崩れるるまで時間はかからなかった。
 それは、空虚と憎しみとが忘れさせた、幼い少女の純粋な涙のようにさえ見えた。

 復讐の悪夢の中にあった洋子も、ほんの少しだけ帰りたかった過去に帰れた――。
 復讐鬼の目が潤み、少女に戻っていくのを、祝福する者はいなかった。











 数十分が過ぎた。

 周囲には誰もいないと、洋子はしっかり確認した。
 この家と洋子だけが、まるで時間や場所の概念から消されていったかのように、此処にある。
 いつでも帰れる。
 誰かの視線に怯える事もない。誰かの悪意が向けられる事もない。
 ずっとここにいても、誰も殺人犯の子供だなんて言わない。

 その感激に飲まれながら、洋子は掃除を始めていた。
 彼女もまた、ほんの少しでもかつてのこの家の姿を取り戻したいのだ。
 この見るに堪えない、まるではきだめのように扱われていた場所を、そっと本来の形に戻していきたい。
 誰にも見られないところで、こうして、訴えるようにしてラクガキを消せる。
 誰かの間違った主張に対抗できる。

 いつまた崩されてもいい。
 ほんの少しの間だけ、夢を見ていたい。
 その為に、まずは、支給されていた洗剤を手に取った。

 ブラシを手に取り、洗剤と水で壁のラクガキを消していく。
 洋子たちを攻撃していた文字が、弱弱しく、薄まっていく。

 甲板を掃除するような重労働は慣れているが、何故、彼女がこれを掃除しなければならないのか――。
 誰かに理不尽に向けられた悪意に対抗するのに、被害者自身が労力を割かねばならないのは理不尽そのものであると言える。

 それでも彼女は、どこか楽しそうに掃除をした。
 ラクガキが消えていくだけで、気持ちが晴れていくのがわかったからだ。
 この悪意を一刻も早く消す事ができれば、もう文句はない。


「……お父さん」


 最初に、『人殺し』という字が消えていった。
 人殺し。
 確かに洋子は――人を殺した。それは否定しない。
 だが、この言葉を向けた人間の意図は、その事を指示しているわけじゃない。
 百人以上の人間が死んだオリエンタル号事故で、父の過失を責め立てているのだ。
 遺族たちはすべて、鹿島伸吾に憎しみを向けている。そして、彼らに必要以上に共感した正義感の第三者たちが壁をラクガキで埋めた。


91 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:46:37 nXi00SZg0

 鹿島伸吾は冤罪だった。
 やってもいない罪で、ただひたすらに攻め立てられ、死んでも尚憎まれ続けた。
 早く消したい。
 この言葉を。


 父は違うのだから。


 父は、船乗りとしての責任を全うした。
 その誇りさえも、こうして真実を知らない誰かの悪意によって汚されている。
 諸悪の根源が別に存在しているのはわかっている。
 しかし、何も知らずに悪意を向ける人々にさえも、洋子はずっと苛立っていたのだ。
 それを発散するのに、今の行動はちょうど良かった。



 薄まっていく『人殺し』の文字を見ていた洋子は――次の瞬間、背後から頭を殴られ、どさっと倒れた。











 一瞬、何が起きたのかも理解できないまま、洋子は洗剤の混じった小さな水の川の中に顔を沈ませた。
 石の味と、洗剤の匂いと。


(どう、したの……)


 もう一撃、何か細長くて固い物が脇腹に叩きつけられた。
 筋肉と内臓とを叩きつける鈍器の一撃が、全身に駆け巡る。
 連打するように何かを振りかぶる襲撃者がいたのだ。
 ――洋子はそれに気づかなかった。


「くっ……!」


 だが、襲撃者が凶器を振り上げているうちに、洋子は這うように転がって、塀に寄りかかって起き上がる。
 脇腹が痛んだ。頭を殴られた衝撃か、目の前が蜃気楼のように歪み、立っているのに自分が倒れているのか立っているのかわからなくなった。
 それでも、洋子は立ち上がり、バットを振り上げる誰かを見た。











 襲撃者は、アイスホッケーのマスクを被っていた。
 あの有名な『13日の金曜日』に出てくるマスクの男――ジェイソンに酷似している怪物である。
 それを想起させるが、洋子もそれが映画の怪物とは思わなかった。
 仮面を装着する事で身元を隠した別の誰かだと、判りきっている。

 それが成人男性程度の体躯である事は、洋子の目からは容易に想像できた。
 とはいえ、太い骨格や筋肉の持ち主とは思えない。洋子が見てきた船の男と比べると、見劣りする体つきであった。
 ただ、その男が優位なのは、洋子より高い位置からバットを振り上げる事が出来る身長の方だ。


「螢子が受けた苦しみ……キサマも味わえ!!」


 木製のバットが真上からたたきつけられようとする。
 幸いなのは金属製ではない事だった。もし金属製だったら、洋子は既に意識を失っていたかもしれない。
 その男からは、殺人鬼らしい殺意を感じた。
 そして、洋子に悪寒を覚えさせるような悪意もまた、彼からは放たれていた――。


「きゃっ!」


 次の一撃は、洋子が上手に避けて幸いにも空ぶった。
 壁を背にしていた事も大きかったのだろう。それによって、距離感を掴むのが難しかったようだ。


「避けたかッ」


 しかし、それでもジェイソンの悪意は冷めやらない。次の一撃を放つ為、マスク越しに洋子を睨む。
 何者かはわからないが、少なくとも彼女にわかるのは、彼が敵である事はわかっている。
 もう一つわかっているのは、生き残る為に最大限対処しなければならないという事。


92 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:46:58 nXi00SZg0


(――誰なの? この男!)


 いきなり深手を負ってしまった洋子は少々分が悪い。
 今は上手に向かい合う形になったので、まだ回避の術はあるが――さて。
 洋子は、デッキブラシを手に取った。
 次の一撃までに使える武器は、ただそれだけだ。


「はぁッ!」


 振り上げられようとしているバットを躱すよりも――ブラシが真っすぐ突き出された。
 まだ水と洗剤が仕込まれたヘッド部分がジェイソンの顔に勢いよく激突する。


「くっ……!」


 大きく後ろにバランスを崩すジェイソン。
 彼は、バットを握ったまま、もう片方の手で目を抑えた。
 今の一撃で、期せずして目に洗剤が入ったのだ。


(――よしっ!)


 思わぬ優勢だった。
 脇腹がズキズキと痛む中でも、つい笑い転げてしまうくらいの安心感が過る。
 逃げるならば今だが、おそらくすぐに追いつかれてしまうだろう。

 だが、安心している場合ではない。畳みかけるならば今である。
 むしろ緊張を維持したまま、相手を追い返すのだ。


(これなら――!!)


 しかし、その一瞬で洋子は、デッキブラシを左手に持ち替え、懐から果物ナイフを取り出した。
 鞘を口で外し、吐き出すように地面に捨てる。
 からん、と音が鳴り、ジェイソンがこちらを向いた。
 これが彼女のもう一つの支給品であった。護身用に、こうして懐に隠し持っていたのだ。
 刃を向け、ジェイソンを威嚇する。デッキブラシも、今度は持ち手を反転させて、棒の先端の方がジェイソンを向いた。
 考えてみれば、わざわざ木製のバットで襲ってくるという事は、彼にはそれ以上の武器はないという事に違いない。


「!」


 ジェイソンは、些か驚いたようだった。
 不意打ちにも関わらず、自分が劣勢に立った事に……。
 しかし、どうやら執念は膨らんでいるらしく、肩を揺るがせながら洋子と目を合わせ、些かの沈黙に応える。
 洋子がどう動くのか見定めているのも勿論の事、洋子をどう叩き伏せるかも未だ考えているらしい。
 暴力を振るいたいだけにしては、妙に物分かりも良かったので、洋子は少し助かってもいた。


「――どう? まだやる気?」


 頭や脇腹は痛んでいるが、それを悟らせないような冷や汗混じりの笑みで洋子は言う。
 まるで本当に怪物でも相手にしているかのような気分だ。
 性格もわからない相手にどう言葉を投げていいのかは、こんな状況でもわからない。


「あなたの目的はわからないけど……とにかく、あたしとこの家に手を出すのはやめて。
 余計な危害は加えたくないのよ。たとえ身を護る為でも……」


 その言葉が取引を意味する事は、ジェイソンにもわかっている筈だった。
 手を出して来たら殺す。手を出さなければお互い、余計な血は流さない。
 明らかに、誰にとっても損のない取引の筈だ。


「……」


 しかし、どうやらその言葉を聞いても彼は諦める様子を全く見せず、まだ食らいつこうか迷っているようにさえ見える。
 そこまでの執念とは、一体何なのか。
 わざわざ殺し合いなどする必要もないにも関わらず単純な暴力で襲い掛かるのも奇妙だし、反撃を受けてもナイフを突き出されても引く事がない。
 彼が男で洋子が女である以上、別の目的もある可能性も否めないが、それでも流石に凶器を前に怯まないほど婦女暴行に執着する者も少ないだろう。
 まるで、洋子という個人を標的に定めており、その存在そのものを執念深く狙っているようである。


93 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:48:03 nXi00SZg0


(まさか……)


 思い当たるのは――そう。
 この家の人間を恨んでいる者――オリエンタル号沈没事故の遺族、といった存在だ。
 他にいくつかの可能性があるとしても、洋子の中ではその可能性が肥大化して、他の可能性を考えられないくらいに大きな出来事だった。
 遺族たちの怒りを洋子はニュースでいくらでも知っているし、彼らが鹿島伸吾をもう一度殺してやりたいほど憎んでいるのもわかっている。
 だとすれば、その鹿島伸吾の家で「お父さん」と呟いた少女が、同じくらい恨まれていて、この状況下、好機とばかりにそれを狙う者がいてもおかしくない。

 洋子はおそるおそる、口を開いた。


「……ねえ、一つ聞いていい?」


 答えはない。
 しかし、それで良い。
 答えなど求めてはいない。
 恥ずかしい独り言を、通りすがりの人間に聞かれるような心持で、目の前のジェイソンとの対話が始まる。
 それは、洋子にとっては、「鹿島伸吾への誤解を持つ世間」と戦うよりはずっとマシな状況に見えた。
 あの大軍は、どれだけ訴えても絶対に洋子の言葉など信じてくれるわけがない。

 それでも、もしそれが――――個人と、個人の対話であったなら。
 まだ、分がある。
 目の前にいるたった一人の人間を見る事と、「鹿島伸吾の娘」を見る事は、この男にとっても違う筈だ。
 別の動機があるのならば仕方ないが、彼の動機が「オリエンタル号沈没事故」に関わるものであるならば――と、洋子は賭けた。


「もし違っているなら、聞き流して。
 ――ねえ、あなたの動機は、あたしの父……鹿島伸吾に関わる事?」

「!?」


 反応が、あった。
 予想していた事とはいえ、洋子も驚いている。
 それは明らかに――鹿島伸吾を恨む誰かの悪意だった。


「……やっぱり。ねえ、それなら、聞いてほしい事があるの」

「……」

「あの事故の……あの事故の、本当の原因を伝えておきたいのよ。
 武器を下して。そうすれば、あたしもそれに応える」

「……」

「――それとも、このままがいいの? それなら、あたしもそうするわ」


 ジェイソンがバットを構えたままである以上、やはり対話は緊張を維持する事になる。
 洋子は、戦いを避ける為に真実を出しにしようとしていたが、相手にとってはそれは武器を下す理由にはなりえないようだ。
 相手が真実を知りたいかといえば、そうとも言い切れない。要するに、やり場のない怒りをぶつける相手が欲しいのだから、それがオリエンタル号でも竜王丸でも構わないのだ。
 本当に真実を教えたいのは洋子の方なのである。

 優勢なようで、どこまでも劣勢でもあった。
 しかし、それを悟られない為に、うまく堪える。


「あの事故の責任は、父の操縦していた竜王丸じゃない……オリエンタル号側にあったのよ。
 父は昔からあたしを船に乗せてくれていた。――でも、酒を口にしながら船を動かした事なんて一度もなかった!
 あれは全て、オリエンタル号の鷹守と若王子が、責任を全て父に擦り付ける為に仕組んだ事だったのよ!」


 この話をする時、洋子の中から冷静さが消えた。
 こらえきれない怒りや悲しみが、強い主張となってジェイソンに投げかけられる。
 ナイフを持つ手が震えるが、もう一度しっかりと握りしめる。


94 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:48:22 nXi00SZg0


「あの事故の事で憎むべき相手は、鷹守と若王子なの……。
 信じてくれなくてもいい。あたしは、ずっと、この話をしたかった……。
 これ以上、誰も父を憎まないでほしい……いや、違うわね。
 父が最後まで貫いた誇りが捻じ曲げられるのが耐えられないの。だから――」

「……」

「聞いてくれたでしょ。信じるか信じないか、少しでも考えてくれたならそれで良い。
 だから、早くどこかへ行って。
 ……あたしは、ずっとここにいるわ。
 もし、まだあたしたちを恨むとしても、考える時間はあるでしょ?」


 それは、ただの取引ではなかった。
 洋子は、今にも泣きそうな気持ちになっている自分を慰める時間が欲しかった。
 一刻も早く、この男に消えてもらって、涙を流す余裕を得たかったのだ。

 ようやく、ジェイソンが口を開いた。


「――なるほど」


 それは、洋子を安心させる、落ち着いた若い男の声だった。
 彼女も、ジェイソンが納得した事を悟って、どこかでほっとしていた。
 早く彼が退散してくれる事を願いながら、彼を見つめる。


「考えておくッ!!」


 しかし――、その言葉と共に、ジェイソンのバットは振り上げられた。











 ――ジェイソンの攻撃に対して、反応はできた。



 構えているナイフは飾りではない。
 残念だが、襲ってくるならば反撃するしかないのだ。
 果物ナイフを構えたまま、せめて急所にならないところを狙って刺突しようと、洋子は前に出る。
 正当防衛という後ろ盾が、その罪悪感を打ち消していた。
 しかし、どこか準備が欠けていたらしい。


「あっ……!!」


 一歩を踏み出した洋子の体が大きく傾いた。
 洗剤が撒かれた地面で、足を持っていかれたのだ。
 ジェイソンの元へと肉薄しようとしていた洋子は、そのまま激しく転倒し、顎からアスファルトに叩きつけられる。
 口の中で歯と歯が激突して、痛んだ。


「痛ッ……」


 そんな彼女に追い打ちをかけるように、右腕に打撃。
 バットが叩きつけられたのだ。
 ジェイソンが圧倒的に優位に立った。
 彼女の握っていた手はほどけ、果物ナイフが地面を滑る。


95 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:48:53 nXi00SZg0


「痛ッ……」


 そんな彼女に追い打ちをかけるように、右腕に打撃。
 バットが叩きつけられたのだ。
 ジェイソンが圧倒的に優位に立った。
 彼女の握っていた手はほどけ、果物ナイフが地面を滑る。


「フンッ!!」


 それを取ったのは、ジェイソンの方であった。
 そして、もはや洋子に反撃の術はなかった。


(違う……)


 背中から馬乗りになるジェイソンは、次に洋子の首を後ろからナイフで突き刺した。
 一度、二度、三度と突き刺される果物ナイフ。首の中を冷たい感触が走る。
 嘔吐感、と不快感。


「違ゥッ……!!」


 叫ぼうとした。


 違う。
 お前が憎むべきは、あたしたちじゃないのに……。
 父は人殺しなんかじゃない。


 どうして。
 どうして信じてくれないの。


 こんな。
 最後まで……。


 だって、まだ、するべき事が………………。


 おとうさ…………。


 …………。


 …………。





【香取洋子@幽霊客船殺人事件 死亡】








96 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:49:17 nXi00SZg0





 ジェイソン――遠野英治からすれば、それは当然の結果であった。



 香取洋子――いや、鹿島洋子が言っていた事が本当の事かどうかはわからない。
 鷹守、若王子というオリエンタル号の関係者が事故の原因なのか、それとも竜王丸の鹿島伸吾が事故の原因なのかは知る由もない事である。
 実際のところ、竜王丸の乗員も鹿島について証言しているので、原因は鹿島にあるという説の方が一般的だ。
 しかし、一応、遠野は洋子の言っていた事を全く聞いていないわけではない。



 オリエンタル号と竜王丸。

 どちらが事故の原因なのかなど、客観的に見ればわからない話なのだ。

 それならば、面倒だ。

 疑わしい者は、全員殺してしまえばいい。



 流れていく血液と、洗剤とが混じり合って、それは徐々に鮮血よりグロテスクなピンク色に変わっていく。
 その上にうつ伏せに倒れる香取洋子の遺体を、遠野は一瞥だけして、視線をそらした。
 それが女の死体である事が、遠野に別の記憶を思い出させる。
 そう、最愛の螢子の死だ。
 だからこそ、遠野は悲恋湖で男性から優先的に狙っていったのかもしれない。

 ……しかし、遠野にとって機会は今しかなかった。
 確かに香取洋子は、そこに留まり続けると言っていたが、果たしてそれは真実かはわからない。
 父の無罪の話も、その場を取り繕って逃げる為の嘘かもしれない。
 だが、逃がさない。
 殺せる時に殺さなければ、この島には充分な逃げ場が存在しているのだ。


「――くっくっくっ」


 とりあえず、この殺し合いでは一人だ。
 鹿島伸吾の娘を殺した。
 遠野英治が恨みながらも――殺す事のできない地獄にいる男が鹿島伸吾だった。
 だが、その娘を殺す事で、遠野は最愛の人間を失う痛みを、地獄の鹿島に届ける事が出来た。
 それだけでも良い。それだけでも、多分満足なのだ。


「くっくっくっくっ……」


 それは、罪悪感を打ち消す為の狂気の笑みなのかもしれなかった。
 しかし、傍から見れば満足気に聞こえただろう。


 鹿島伸吾。
 遠野が最初に憎んだSKだった。
 彼が酒を飲みながら船を動かしていたから、オリエンタル号は沈んだ。
 SKのイニシャルを持つ人間に螢子が殺されたのも事実だが、根本的にオリエンタル号が沈まなければ螢子が死ぬ事がなかったのも事実だ。
 最も憎むべき相手のように思えるが、まあオリエンタル号が沈んだだけならば螢子はまだ助かる余地はあった筈なので、責任は五分五分程度と言えよう。
 同じくらいに憎い相手には違いない。


 あれから、SKのイニシャルのキーホルダーを握りしめながら、遠野は犯人を探すべく必死に調べた。
 毎日のようにSKのイニシャルを眺めていくうちに、遠野は正体不明の誰かを探す事への限界を感じ始めていく。
 霞のように手に取れない「誰か」ではなく、憎しみの対象はキーホルダーに刻まれたイニシャルへとすり替わっていった。

 そして、ある「符合」の中にも、彼はジンクスを見出した。
 オリエンタル号沈没の原因である「鹿島伸吾」と、螢子を殺した相手が同じイニシャルである事。
 それはすなわち――自分たち兄妹を不幸にする存在そのものが「SK」であるという思考である。
 そのイニシャルを持つ者たちが、自分たちの運命を突き崩してくる。
 そんなジンクスを感じ始めた彼は、そのイニシャルの人間自体を憎み、――「殺す」事を考えたのである。


「待っていてくれ、螢子……」


 遠野は、その場を後にした。
 まだ薄く残る、壁の『人殺し』のラクガキを背にしながら――。


97 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:49:31 nXi00SZg0





【一日目/深夜/鹿島家@幽霊客船殺人事件 付近】


【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、返り血、ジェイソンに変身(これをつけると罪悪感が消失する)
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説、果物ナイフ@狐火流し、ド根性バット(ミラクルミステリーパワーステッキ最終形態)@美少女探偵金田一フミ3
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘
[思考・行動]
基本:三日待って九条をころす。
1:SKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。


98 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 12:50:40 nXi00SZg0
投下終了です。
本当は書きたくないですが、ロワなのでそこそこ胸糞悪い話を書きました。
タイトルは考えるのを忘れていたので、>>100の方の考えたタイトルを採用します。


99 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/28(木) 13:41:35 Izhsz9XY0
投下乙です。

香取さん...最後までお父さんの無罪を訴える姿もこの男には届かなかったか。
そしてジェイソンもとい遠野英治。相変わらずのガバガバなSK判断は怖いよ
でも状態表の
2:脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです

は笑ってしまう...w


連城久彦、千家高司、和泉さくら、斑目るりを予約します


100 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/28(木) 13:42:36 Izhsz9XY0
タイトルは、「ココロ やせてとがってく」で


101 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/28(木) 14:59:05 jt/d4QCo0
投下乙です
遠野に真実を告げて誤解を説くルートになるのかな?と思っていたら予想を180度違うルートに変えられてくるとは思ってなかったです
ジェイソンのマスクの説明が明らかに金田一の皮を被った何かみたいな作品みたいで酷いw

>>87
どうしてドラマ版の揚羽を男にしたのかだけは理解出来ないです


102 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/28(木) 15:00:51 nXi00SZg0
>>100
ありがとうございます。
じゃあ、↑の作品は「ココロ やせてとがってく」という事で。

あと、投下後一日待つのがそろそろしんどくなってきたので、7/29の0時から投下後24時間置くルールを消します。
ここにいる人々ももっと多くの作品を手早く見たいのではないかと思うので。
でもあんまり連チャンで投下→予約→投下を繰り返されると読むのが追いつかなくなるので、一日の投下数は一人二作くらいに抑えてください。


103 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/28(木) 23:00:29 UkhCoNDs0
月江茉莉香、星桂馬、蓮沼綾花、島津匠、巽紫乃で予約します


104 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:43:38 thpe/q120
不動高校の先生方の殺意の高さはさすがですね。
遠野はあの不動高校の元生徒会長だけあって格の違いを感じました。

遅くなってしまい申し訳ありません。
投下します。


105 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:44:52 thpe/q120
佐伯航一郎は薄暗い部屋でぼんやりとした意識を取り戻し、
口寂しさを感じて煙草を求めたが、彼の手元にあったのは見知らぬデイパックのみだった。
何の期待も無しにファスナーを開けると、日用品一式が折り畳まれたメイド服に埋もれているのが見えた。
すぐに閉めた。

彼のいる部屋はよく見るとどこかの学校の美術室のようで、
暗がりに配置された長机には、よく見るともう二人ほど突っ伏した人影が見えた。
四方の壁際に所狭しと飾られた美術品の中で、
棚のビーナス像だけがなぜか半分に切断されており、なんだか気味が悪い。


だんだんと意識がはっきりしてきた佐伯航一郎は、
先ほど目にした光景を思い返してみる。

体育館に集められた六十人ほどの人影。
舞台に立つワカメヘアーの男性。
男性の口から告げられる「バトルロワイヤル」の言葉。
激昂して男性に歩み寄るおっさん。
雷鳴と電光。
ぐらりと動く影。
そして……。


「俺にわからないんだ、誰にもわかるもんか…」

佐伯は、このツアーの企画者『災厄の皇帝(エンペラー)』とやらに対する自身の憤りを確かめるように、
口に出して呟いた。
彼は幼い頃から天才児と言われ、その明晰な頭脳を用いて数々の殺人計画を実行してきた過去を持つ。
今回とやや似たようなツアーを催して参加者同士の殺し合いを煽った経験すらあるし、
その前科は13歳にしてすでに殺人6件である。

そんな佐伯にすら、『災厄の皇帝(エンペラー)』の狙いは理解しがたかった。
端的な印象としては、
正気じゃない。

すべからく殺意というのはエネルギーを要するもので、
一人の人間が一度に殺意を抱くことのできる相手なんて、
せいぜい数名単位が限界だというのが、彼の考えだった。
あるいは、特定の集団…
例えば自分を虐げた村の人間、自分を脅かす民族、自分を排除しようとする世間、
そういうものを一塊に見て、集団全体に対して復讐を遂げようとすることはあるだろう。


106 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:46:24 thpe/q120


だが、60人もの人間を一同に介させ、殺し合いをさせるというのはどういう心理なのか。
こんな数の人間一人一人に対し、個別にそこまで深い殺意を持てるはずがない。
それに集められた人間にはぱっと見たところさしたる共通点も法則性も見受けられなかったため、
別段何か復讐の意図になぞらえて集められた人員というわけでもなさそうだ。

参加者の詳細については今後探っていく必要があるが、
事の規模の大きさ、参加者の無作為さ、過剰な演出などの現状を総合して考えるに、
この一件の首謀者は、「追い詰められて牙を剥く獣」のごとき犯罪者とは
全く異なるあり方をしているように思えてならなかった。
むしろ、その人物はまさに『皇帝(エンペラー)』のごとく、
参加者を掌中で転がすことそのものを楽しんでいるのではないか。


「だっせえ」

佐伯は思った。
『皇帝(エンペラー)』だって?思い上がりも甚だしい。
人間はみんな人間に過ぎない。
どんな奴でも泥にまみれて生きてるし、どんな奴でも切れば死ぬ。
でも自分は他人を支配する強者だと勘違いして皇帝面をしているような人間は、
引きずり下され、縛られ、切られて自分の無力を晒すまで、
きっとそのことに気づかないだろう。
となれば自分がすべきことは…



そこまで考えたとき、ふいに衣擦れの音がしたのに気づいた佐伯は、
顔を上げ、彼のもとから四、五歩離れた席で突っ伏しているその人影に注意を向けた。
「ん…」
「!お前は…!」
起き上がった少女の顔を見て、佐伯はぎょっとした。
前回のバトルロワイヤル、もとい秘宝島殺人事件のときに、
探偵役として選んだあの高校生についてきた、七瀬美雪とかいう女じゃないか。
今回は目立たないように動きながら主催者について探ろうと思っていた矢先なのに
この女に自分の前科をバラされでもしたら、
他の参加者に危険視されて刃を向けられることは必至だ。
ならばこの女、まずは始末しなければ…!


しかし、佐伯に気づいた少女の口からは意外な言葉が飛び出した。
「誰…?」

無理もない。美雪と会ったとき佐伯は終始女装しており、短髪の姿を見られたことは無かった。
それに、佐伯はこんなこと知る由もないが、
秘宝島殺人事件はFile05なので、美雪はあれから40件以上の殺人事件に遭遇しているのである。
全部覚えていなくても仕方ない。
佐伯はとりあえず13歳の外見に見合う従順な少年として振る舞いながら、様子を見ることにした。

「良かった、気が付いたんですね、お姉さん。僕、佐伯航一郎って言います。
 さっき体育館に集められて、気が付いたらここにいたんです」
「体育館…あっ」
少女はびくっとすると周りをきょろきょろ見回し、
もう一人、少年が机に突っ伏しているのを見つけた。
「あ、あの人は…?」
「わかりません。お姉さんと一緒で、僕が気が付いたときにはここで寝てました」
それを聞くなり少女は慌てたように少年に駆け寄り、
ねえ、君、生きてる?大丈夫?と半泣きで少年の背中を叩いた。
すぐに少年は体を起こした。
「あれ?俺…」
「よかった!じゃあ、誰も死んでないんだね」
ほっと笑みをこぼす少女に、今しがた起きたばかりの少年は怪訝な顔をする。
「君たちは?」
「私、楊蘭っていいます。香港出身なんです。あっちの子は…」
「佐伯航一郎です。よろしくお願いします。僕たち、どこかの学校の美術室にいるみたい」
「ふーん。俺は、霧島純平。よろしくね。」


107 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:47:54 thpe/q120


佐伯は内心驚いていた。
楊蘭?香港出身?どういうことだ?こいつは七瀬美雪だろ?
もしかしてこいつ、俺のことを覚えていて、殺されまいと他人のふりをしているのか?
「あ、あの、楊さん…?」
「え、なに」
「香港出身って言ってましたよね。中国語もできるんですか?」
「できるよ。ここに連れて来られるまで、香港にいたんだもん」
「へー、すごい。じゃあ、なんで日本語もそんなに上手なんですか?」
「母さんが日本人なのよ。それに小さい頃、色々あって日本に亡命してたの」
「亡命!?危ない目に遭ったんですか」
「うん。ちょっとね」
ここまで話したとき、楊は遠い過去を見るように虚ろな視線を空に向けた。

「日本は平和でいい国…
 綺麗で遊ぶところも一杯あって何でも手に入る。
 でもあたしの心はまだあの香港の闇の中…」

その様子は、佐伯の胸に響くものがあった。
自分がアメリカのスラム街でドブネズミのような日々を過ごしていたとき、
きっと自分はあんな目をしていただろう。
それに日本に来てからというもの、佐伯も似たような違和感を禁じえなかった。
何もかもが滞りなく、表面的には平和に、流れていく街。
その安寧の只中に立ってみたところで、佐伯の内側にあるのは
失われた恋人の笑顔とスラム街で受けた辱めの数々だった。
あの女の抱える闇は、きっと本物だ。
七瀬美雪が他人のふりをするなら、こんなすぐにばれるような嘘をわざわざつくはずがない。

一方で、霧島は文句ありげに楊に突っかかった。
「えーっ!君、さっきの殺し合いの話、聞いたんだろ?
 こんなところに閉じ込められても、日本は平和って思うの?」
「ええ。確かに今は大変なことになってるけど…でもきっとこの三日間が異常なだけよ」
「へーっ。やっぱり亡命してただけあって蘭さんは強いな!
 でもさ、じゃあ、誰かに殺されそうになったらどうするんだ?」
「…そうね、そのとき考えるわ」

まだ質問を続けようとする霧島を、楊は有無を言わさぬ笑顔で制し、
「そういえば、凶器が支給されるって言ってたわね。このデイパックの中、かな?」
楊の言葉につられて、霧島も自分のデイパックを探る。
「あった!俺、こーんなちっちゃい折り畳みナイフだけだったよ。
 あーあ、こんなのじゃ護身にもなんねえや」
「あら、私はこれ…何かしら。何か液体が入った袋だったわ」
「えっなんだよそれ。飲めるの?」
「さあ…毒かもしれないね」
自分が以前使った毒を思い出しながら、大分違うなと首をかしげる楊。
「佐伯くんは?」
「僕は…さっき見たんですけど、ちょっと言いたくないです…」
「えー、なんでだよー!俺たち教えたのに」
「ごめんなさい。でも、役に立てそうなときには絶対出すから、お願いします」
「ちぇー。ずるい奴」


108 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:50:07 thpe/q120


楊は外を眺めた。校舎周りには弱々しい街頭の明かりが点々としていた。
「これから、どうしようかな」
「殺し合い…みんな本当にやるんですかね」
「さあ… 景品、会員権だっけ?こんなことして手に入るようなお宝なんて、ろくな物じゃないわ」
「ええ、僕もそう思います」

会員権…。佐伯はもう一度先ほどの体育館での出来事を思い出していた。

『災厄の皇帝(エンペラー)』に対する手掛かりは現状ほとんどないが、
景品が会員権というのは気になる点だった。
もし本当に横浜市に匹敵するほどの広さの島に、本当に様々な施設が建設されているのだとしたら、
そんなものの開発費用は並の人間には到底出せるはずもない。
その上、この島は来年リゾート施設としてオープン予定で、会員権まで出るということだった。
これを素直に受け取れば、バトルロワイヤルの主催者は
リゾート開発を行っている会社のトップに近い人間だということになる。

更に、あの九条とかいうツアーコンダクターは観月旅行社から依頼されたと言っていたが、
観月ほどの名の知れた会社が、こんな猟奇じみたツアーにコンダクターを派遣するのも不自然だ。

罠かもしれない。
だが、誰が考えてもリゾート開発を行っている観月旅行社の親会社が怪しい。
とりあえず明日は、観月旅行社のリゾート開発について、
参加者にそれとなく話を振って情報を集めよう、と佐伯は考えた。

もしかすると。
もしこのツアーに愉快犯以外の目的があるとすれば。
『皇帝(エンペラー)』が作ったこの檻の中で、その張本人の息の根を止められる可能性もある。
すなわちそれは、『皇帝(エンペラー)』が「木を隠すなら森」の発想に基づき、
集められた60人の中に主催者の復讐対象数名を織り込んでいる可能性だった。
さながら戦時に誰が誰を殺したのか最早判別がつかないように、
この島で繰り広げらる誰の手によるかもわからない殺人劇の混沌の中に自分の犯行をそっと潜ませる。
そうすれば、最終的に被害者面して無罪釈放となるかもしれない。
この場合、『皇帝(エンペラー)』は参加者の中に身を潜めているかもしれないということになる。
そうであってくれれば、話は更に早い。
この手で、殺せる。


109 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:56:16 thpe/q120


佐伯が一人で考え込んでいると、霧島が急に声を上げた。
「あーあーあー!もう考え込んでたって埒が明かねえや。
 なー、ここでこれからの作戦建てる班と、学校の中探検する班に分かれねえ?
 それで、何かあったら探検班が作戦班に報告するの」
「うん、霧島くんの言う通りかもしれない。探検班の方がきっと危ないし、
 二人にするのがいいわ。…いえ、待って」

思わず笑みをこぼした霧島は、楊の突然の制止に面食らった。
なにしろ霧島にはまだ殺人の経験がなかった。
一対一ならまだしも、何の武器を持っているか分からない相手に二対一は危険すぎる。
三人が二班に分かれれば、確実に一対一の状況を作れる、と思ったのに。

「見て、窓の下。誰か出ていく。」
楊の言葉に応じて霧島、佐伯が外に目をやると
男が二人、薄暗い街頭に照らされて校舎から出ていくところだった。
一人は20代くらいの若者、もう一人は40代くらいだろうか。
二人は何かを話し合いながら、どこかへ向かって歩いていく。
様子を見る限り、佐伯にはそれが「見知らぬ土地を警戒しながら歩いている」人間には
とても見えなかった。

「あの二人、周りをほとんど気にしないで話し合ってる…
 この学校の構造に慣れてるように見えます。
 それに、あの様子ならすぐにでも殺し合いをしようって雰囲気ではなさそうじゃないですか?
 合流する相手としては、安全かもしれません」
その言葉に楊も頷く。
「確かにそうね…よし、あの人たちを追いかけてみよう」
「えっ、行くの?じゃ、じゃあ俺も行く!」

バタバタと部屋を出ていく楊、佐伯を追いかけるように、
少し遅れて霧島も廊下へと飛び出した。
美術室を出るときに目に入った糸ノコギリを、手始めにデイパックに詰めておいた。




【一日目/深夜/不動高校美術室(誰が女神を殺したか?)】



【佐伯航一郎@秘宝島殺人事件】
[状態]健康
[装備]伊志田が着ていたメイド服@不動高校学園祭殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体を暴き、殺す。
0:歯向かうと殺される可能性があることはわかっているので、大っぴらには活動しない。
1:とりあえず色々な人に話を聞きながら手掛かりを集めて、色々考える。
2:人殺しなんてハエやゴキブリを殺すのと同じさ。
3:楊蘭にはなんとなく共感するので殺したくない。
4:メイド服では首を絞めるくらいしかできないので、できればまともな武器が欲しい。

[備考]
※参戦は秘宝島殺人事件の犯行後です。
※6人殺害しているものの、まだ13歳だし反省していたのですぐに出てきました。
※頭が良いそうです。
※女装癖があります。



【楊蘭@香港九龍財宝殺人事件】
[状態]健康
[装備]2種類の液体が入った袋@電脳山荘殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:亡命してた幼少期と比べたら三日間なんてそんなに気負うことでもない。
1:殺されそうになったら殺し返すかもしれない。
[備考]
※参戦時期は、犯行後ファッションショーに出てから刑務所に入れられるまでです。



【霧島純平@高遠少年の事件簿】
[状態]健康
[装備]金田一が人形を切断するのに使用した折り畳み式ナイフ@異人館村殺人事件、糸ノコ@誰が女神を殺したか?
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺す。
0:誰かと二人きりになったら、基本殺す。
1:殺した死体は、余裕があればサプライズ感が出るように演出する。
2:楊蘭は「日本は平和で良い」とか言っていて気に入らないので、できれば殺したい。
[備考]
※参戦時期は、高遠少年の事件簿における最初の事件の直前くらいです。
※とりあえずこのナイフで人を殺せるかどうか試してみたいので、ずっとチャンスを伺っています。


110 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/29(金) 03:57:47 thpe/q120
投下終了です。


111 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/29(金) 06:11:07 odpByy8E0
投下乙です
このパーティーのギスギス間ひと悶着ありそうで怖いですね
しかも合流相手もきちんと選ばないとと考えると…


112 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 12:00:25 /w3kXTEk0
投下乙です。
申し訳ないですが、感想は後程。

佐伯航一郎の伯父、藤枝つばきで予約します。


113 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 14:29:43 /w3kXTEk0
感想。

>※6人殺害しているものの、まだ13歳だし反省していたのですぐに出てきました。

反省してないやんけ。


投下します。


114 : ジョンベネ ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 14:30:09 /w3kXTEk0



 佐伯航一郎の伯父は、日本語がわからなかった。

 無理もない。彼はアメリカ人なのだ。
 ピザで、牧場で働いていて、児童を虐待しているという雑なアメリカの認識で生まれたようなキャラで、一コマか二コマしか出番がなかった。
 そんな彼に日本語がわかる筈がない。

 九条章太郎による日本語のアナウンスは、何を言っているのか全くわからないし、あのオープニングでも突然電気つける奴が落ちてきて人が死んだ事くらいしか知らない。
 不幸な事故が起きたっぽい事はよくわかった。
 それから眠くなって、気づけば彼は、日本風の屋敷の中にいた。
 起き上がって、周囲を見回しても誰一人として他の人間が見つからなかった。

 もう、彼は右も左もわからない状態なのである。
 殺し合いのスタンスがどうのという話をする以前に、もはや殺し合いだと認識していないし、まともな参加者とはコミュニケーションを取るのが難しい。


「This is a pen.(くそっ、どうなってやがる)」


 酷く苛立った様子で、伯父は廊下を歩いていた。
 勿論土足だ。何故なら、彼は日本の文化圏の人間ではないからだ。
 太っているので、廊下の木の板がギシギシと音を立てる。


「My name is John.(俺は今何をしているんだ? ここは日本なのか?)」


 彼にも、そこが日本っぽい屋敷である事はなんとなくわかった。
 たぶん学のない設定のキャラだろうが、一応、妹が日本人と結婚しているのでそのお陰で、この建物が日本っぽい事くらいは何となくわかるのだろう。
 ここで、ややこしいところについて勉強しておくと、「伯父」は母親・父親の兄、「叔父」は母親・父親の弟の方である。
 つまり、彼は、佐伯航一郎の母親の兄であり、佐伯家の両親亡き後、航一郎を引き取った義父にあたる。

 彼は人間としては最低の男だった。
 まだ幼い航一郎の事を牧場でこき使った挙句、成長するにつれ母親に似てきた航一郎を女装して犯そうとしたのだ。

 ホモではない。多分、男の娘ならセーフなのだろう。
 いや、ホモかもしれない。わからない。
 でも、そうだとしても母親に似てから女装して犯そうとしているからバイだと思う。

 よりによって、妹似の親戚を犯そうとするあたり、妹に対してもその手の劣情を抱いていた可能性が否めないヤツである。
 下手すると、妹を犯していたのかもしれない。
 女優だった母は、実は子役とか美少女コンテストとかもやっていて、その手の家庭にありがちな闇を抱えている可能性はある。
 まあ、どっちにしろ今ロワでは「男の娘ならセーフ、基本的には女好きのクソ野郎」という事にしておこう。


「Sushi.(おっ、いい女がいるじゃねえか。黄色い顔のモンキーだがな。HAHAHA)」


 そんな彼は、屋敷の移動中、ある高校の制服を着た一人の女子生徒を見つけた。
 ショートカットの髪型の、さながら日本人形のような女の子である。
 なんだかわからないが、こんな深夜にあんな人通りのない外をウロウロしている。
 これはもう、コイツからすれば、「犯してください」と言っているような物だった。
 伯父は、下卑た笑いを隠そうともせず、その女子生徒に近づていった。



 ――――その少女は、藤枝つばきと言った。


115 : ジョンベネ ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 14:30:25 /w3kXTEk0





【一日目/深夜/巽家の屋敷@飛騨からくり屋敷殺人事件】


【佐伯航一郎の伯父@秘宝島殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:よくわからないので適当にウロウロする。
1:あそこにいるかわいいジャップを犯す。
[備考]
※参戦時期は、佐伯航一郎を女装させて犯そうとしている時。
※「伯父」はお母さんやお父さんの「年上」の人(つまりお母さんやお父さんの兄)
 「叔父」はお母さんやお父さんの「年下」の人(つまりお母さんやお父さんの弟)です。
 ややこしいですが覚えておきましょう。
※日本語がわかりません。そのため、説明も全然わかっていません。
※レイプを描く場合、女性読者がドン引きして金田一ロワから離れてしまうかもしれないので、
 注意書きなどの配慮をするか、いっそレイプを描かないでください。


【藤枝つばき@高遠少年の事件簿】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:不明。
[備考]
※参戦時期は、不明。
※詳しい事は知りませんが、佐伯航一郎の伯父が今彼女を狙ってます。
 それ以外はもう全部後続の書き手にお任せします。


116 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 14:33:11 /w3kXTEk0
投下終了です。

続けて、海峰学、インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員、高槻鈴音を予約します。


117 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/29(金) 14:59:07 JQ9/EBp60
投下乙です
まるで打ち切り感漂う展開に島内の火の消し忘れの山火事エンドになるのではないかとひやひやしています
叔父・伯父知識はとても為になりました
出番がろくに無かったキャラの掘り下げが何人あるのでしょうね、楽しみです


118 : ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 16:09:10 47I70Ge.0
ロワ初心者ですが参戦させていただきます。
藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁を予約させてください。


119 : 名無しさん :2016/07/29(金) 17:06:47 0erNJmJY0
投下乙です
佐伯の叔父参戦ですか
果たして彼は伝説となった某所の偉大なる先人を超えられるのでしょうか……
これから先が楽しみですね


120 : 首狩られ女子with壁 ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 18:24:17 .6TZqpDU0
藤枝つばきは混乱していた。

「……一体どういうことなの……?」

五月祭前日、パスケースを忘れて部室に戻った彼女は、背後から襲われ気を失った。
そして目覚めてみるといきなりバトルロワイアルを行う宣言をされ、再び目覚めた時には田舎の立派な屋敷の前にいた。

「……あたし、夢でも見てるの?」

現在の状況は全く信じがたいものだ。
いや、信じがたい状況は部室に戻った時から始まっていた。

「……なんで……霧島くんが……?」

首を絞められ、食い込む縄にもがきながら振り向いた先に立っていたのは───明るくてちょっとお調子者の、部活の後輩……霧島純平だった。
ただ、その表情はひどく歪んだおぞましいもので、つばきの知る霧島とは到底似ても似つかなかったが───

(あれも夢………?)

しかし、震える手を見つめたとき、つばきはそれが現実のものであったことを知る。

「っ!」

自分の指先、爪にこびり付いた血の跡。
あの時無我夢中で霧島を引っ掻いた、その証だった。

(そんな……)

震えは全身に回り、つばきは自分をきつく抱きしめてしゃがみ込んだ。

「───覚めて……これは夢よ、早く覚めて……!」


121 : 首狩られ女子with壁 ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 18:24:58 .6TZqpDU0

その時。


「───ねえ、あなた……大丈夫?」
「!」

はっとして顔を上げると、そこには黒いパンツスーツに身を包んだ女性が立っていた。色素の薄い髪が顔の片側を隠しているが、なかなかの美人だ。

「……あ、あなたは……」
「ああ、怖がらないで。あなたを傷つけるつもりはないの」

彼女は両手を広げ、武器のないことをアピールした。

「あたしは幽月来夢。挿絵画家をやっているわ。あなたは?」
「あ、あたしは……秀央高校2年の、藤枝つばきって言います」
「つばきさんね」

柔らかな幽月の微笑みに、ほんの少しつばきの警戒が緩んだ。

「……あの、幽月さん……もいきなりここに?」
「ええ」

そう言うと彼女はつばきの首に手を触れた。

「あなた……この痕は?」
「!?」

首を押さえると幽月はバッグの中から手鏡を出し、彼女に見せる。
ぐるり、とその白い皮膚を取り巻くのは、赤い索条痕だった。

「……これは……」
「あたしもなの」

答えに窮していると、幽月はチョーカーを外した。

「!幽月さんも、首を……」
「あたしは、北海道のとある館で遺産相続レースの最中に首を絞められて───死んだと思ったら、ここにいたの」

奇妙な共通点に、つばきは驚愕する。
まさか首を絞められた者が集められている?いや、彼女は北海道にいたと言っていた。自分がいたのは東京の秀央高校だ。

「幽月さん……一体誰がこんなことを、どうやって、なんのために?」
「さあね」

ただ───と、幽月の目が厳しくなった。

「ただ、あたしに分かるのは、このバトルロワイアルとやらを勝ち抜けば5000万が手に入る、ってことだけ」
「え?」
「───さっき遺産相続レースにいたって言ったでしょ?あたし、お金が要るのよ。弟が植物状態でね」

さあっと血の気が引いた。
この人はこの状況において、まだお金のことなどを考えているのか。
そうであるとするならば、やはりつばきを───

「ああ、だからそんなに怯えないで。別にお金のために他の人を皆殺しにしようって言うわけじゃないの。ただ、最後まで生き残ればその5000万円を手にするチャンスはゼロではなくなるってことでしょ?でもひとりじゃとても無理そうじゃない。だから、生き抜くために仲間を探してるの」
「仲間………」
「すでにひとり見つけてあるのよ。ご紹介するわ───」

そう幽月が示した先を見て、つばきはすうっと頭の芯が冷えるのを感じた。
あまりにも信じがたい状況、理不尽なものに出会うと、時として人間は恐ろしく冷静になる。

「奴利 壁さんです」


122 : 首狩られ女子with壁 ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 18:25:44 .6TZqpDU0
…………。

「その───奴利さんは、どういう経緯でここに」

目からハイライトが消えたつばきが問うと、分厚い鉄板のようなもの───
いや、奴利 壁(29)は無駄なイケメンボイスで答えた。

「……俺は、とある女性を救うために人を殺した。だが、その女性のためにも捕まるわけにはいかない。クレーンで連行されながらそう考えていた時、突如雷が落ちて……気がつくとここにいた」
「ここを出たら奴利さんを匿うという条件で、協力関係を結んだの」

いろいろあって犯罪者を匿うことには慣れているから、と微笑む幽月に、つばきはもう何も言わなかった。

「……あたしは、お金も何もいりません。ただここから出たい。その為なら、協力します」
「ありがとう、つばきさん」

夢でも幻でも現実でも、もうやるしかない。
ここを出て───どうしてこうなったのかを調べるのも、霧島のことを確かめるのも、その後でいい。

「あ、ところであなたには何が支給されているのかしら?」
「え?」
「デイパックの中身だ。ちなみに俺はこの刀だった」

奴利が取り出したのは、七色に輝く不思議な日本刀───の、脇差だった。

「あたしはこれね。バトルロワイアルとしてはなかなかいいものが当たったみたい」

幽月が笑顔で抱えているのは猟銃。

「……えっと……」

つばきはデイパックを探り、何やら箱を見つけた。

「これ、でしょうか」
「……これは……」

その木箱に入っていたのは、魔神遺跡の魔神具レプリカ(矛欠品)だった。

「これ……銅鐸ですよね、よく歴史に出てくる」
「あとは鏡と宝玉……まるで三種の神器みたいね。でもあんまり役に立ちそうには……」
「いや、そうとも言えない。こういう霊験あらたかなものには何か力があるかも───」

そう奴利が鏡を取り上げたとき、その鏡が屋敷の篝火を映し、奴利の鉄板……じゃない、身体に反射して───

「auch!」
「?!」

突如屋敷の庭の茂みから聞こえてきた英語に、3人は慌てて振り向いた。


123 : 首狩られ女子with壁 ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 18:26:21 .6TZqpDU0
【一日目/深夜/巽家の屋敷前@飛騨からくり屋敷殺人事件】


【幽月来夢@露西亜人形殺人事件】
[状態]健康
[装備]大広間に並べられていた猟銃@秘宝島
[所持品]基本支給品一式、
[思考・行動]
基本:生き残りあわよくばお金を手に入れたい。
1:奴利とつばきを味方につけ生存確率を上げる。
2:他に協力的な人物を見つけたら仲間に引き入れたいが、敵対するものは射殺も止むなし。
[備考]
※参戦時期は想子さんに首絞められ意識を失ったとき
※高遠を匿うくらいの人なので大抵のことでは動揺しなさそう。

【奴利壁@金田一少年の怪奇事件簿】
[状態]健康
[装備]妖刀毒蜂の脇差
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出する。
1:脱出後幽月に匿ってもらうことを条件に協力。
[備考]
※参戦時期は話後逮捕されクレーンで連行される最中
※どうやら五里押重蔵を殺したのは「愛する女性」のためらしい。

【藤枝つばき@高遠少年の事件簿】
[状態]健康
[装備]魔神具レプリカ(矛欠品)@魔神遺跡
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出したい。
1:なんかもうよくわからないけどとりあえず幽月たちと協力して生き残る道を探す。
2:霧島に出会ったらなぜ自分を殺そうとしたのか聞きたい。
[備考]
※参戦時期は霧島に首絞められた直後
※佐伯航一郎の伯父に狙われている。


124 : ◆oAN11QKYGA :2016/07/29(金) 18:27:22 .6TZqpDU0
投下完了です。これでいいのかな…?
初めてなので不備あったらすみません。


125 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 23:16:43 /w3kXTEk0
投下乙です。
幽月さんは変態犯罪者に縁がありますね。
奴利さん、なんか原作からしてそんな悪い人(?)じゃなさそうなオーラは出てましたが、まさか愛する女性がいたとは。
もしかすると響子さんあたりかもしれない。
まあ、何はともあれマシンガンとか使う敵がいたら二人にとって良い盾になりそうです。
伯父は今、奴利見てちびってそう。


126 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/29(金) 23:30:52 /w3kXTEk0
>>114

シン・誤字ラ。



 彼は人間としては最低の男だった。
 まだ幼い航一郎の事を牧場でこき使った挙句、成長するにつれ母親に似てきた航一郎を女装して犯そうとしたのだ。

 ホモではない。多分、男の娘ならセーフなのだろう。
 いや、ホモかもしれない。わからない。
 でも、そうだとしても母親に似てから女装して犯そうとしているからバイだと思う。



これの「女装して」っていう部分を「女装させて」に修正しといてください。
伯父が女装して航一郎を犯しているわけではなく、航一郎を女装させて犯そうとしていたのが正解です。


127 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:51:12 lso5ZoNM0
投下します
綾花が冬美のことを呼び捨てで呼んだりちゃん付けになったりしている部分を読み返していて気付いて、私も同じ友達を気分次第で呼び捨てたり君付けにしたりとの経験があるのでちょっとシンパシーを感じたところでした


128 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:52:12 lso5ZoNM0
雪の降る景色に混ざる桜の花びら。
子供の頃から見慣れたその風景はあのあたしが住んでいたあの村だけの現象なんだなとしみじみと噛み締めながら妖しい『夜桜』を見下ろしていた。
理屈ではわかっている。
本や教科書を読んでも桜の花びらが空に舞っている始まりと出会いの季節は『春』に分類され、既に透き通る白い雪が降ることがない。
たまに低気圧の問題の異常気象で何年かに一度は起こるらしいがなんとも夢のない話ではないだろうか。
では毎年の様に訪れる雪と桜の同時に舞うあの村は果たしてどんな秘密があるのか、野暮だよね、これは。

「どうしてあんな下らない嘘なんか付いちゃったのかな……」

あたし、蓮沼綾花と社冬美の嫉妬がまさか幼馴染で親友だった彼女1人を苦しませて自殺するなんて考えてもいなかった。
謝っても償いきれない罪があたしと冬美ちゃんの間に生まれただけの最悪な結果だけが残ってしまった。
そんなことが親友のみんなにばれてしまわないかってビクビクしながら保身のことを考えているとかずるい女だよね。
そんな後悔を胸に沈んだ状態であたしは金田一君の通う不動高校という場に放り込まれておじさんが潰される光景を目に焼き付けられて、意識が遠のいて……。
目が覚めると雪影村のものとは違う桜の木と大きくてオシャレな洋館が聳え立った場所に眠らされていたのだった。
あの出来事は夢ではなく現実の出来事であると忠告するかの様にデイパックも添えられた状態で、だ。

まずは状況把握をしながら周辺の探索をする。
どうやらこの洋館は『夜桜亭』との名前らしいのが中に侵入して把握出来た。
深夜という時間帯にぴったりな名前だな、と空元気を起こしながら思った。
宿泊する様な造り方で客室も何個か見付けられた。

「3日間泊まるぶんには問題ないけど……」

殺し合いという発言をした九条さんという弱弱しい男が脳裏を過ぎる。
そんなことを仕掛けてくる様な人物が0ではない以上安心するのは不可能だし、そもそも1人では不安だな……。

「金田一君か……」

小学生の頃わずか2週間くらいの付き合いでしか無かったのだが、まだ村での幼馴染グループの中で話題になるほど彼の存在は強く印象に残っている。
一緒に名前の出された明智健吾と高遠遙一という名は誰なのかわからないが、どうして金田一君の名前があの人から飛び出したのか、どうでもいいことだと理解しても懐かしい名前が頭から離れない。
また、こんなよくわからない島で再会する時が来るのではないかと期待の様な感情が湧き上がる。

考え事をしながら歩みを進めて1階での探索を終え、2階に上がり最初の部屋を空けようとした時であった。
そのドアの向こうから微かだが男女の声が交互に耳に入ってくる。

「もしかして悪い会話でもしてんじゃねーべか」

たまに出る訛りが口から出てしまう。
周りは雪影村の人ではないとすればちょっと恥ずかしい。
赤くなりながら、悪いと心の中で頭を下げつつドアに近付き盗聴をしてしまう。

『……すみません。俺は、そもそもこの部屋にいちゃいけない人間なんだ……』

若い男の贖罪の言葉。
自分を責めた口調、まるであたしと同じ心境を彼は持っているのではないだろうか?
浮かぶ幼馴染の顔――葉多野春菜に何度も何度も頭を下げる。
果たして彼女があたしたちを赦すなんてありえない日がくるのだろうか……。





129 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:52:59 lso5ZoNM0


「俺がこんなこと言える資格も義理もないですが、一言いいですか?」
「な、なによ……?」

あっけからんとした口調でとんでもない爆弾発言をした彼女に星は気まずそうに茉莉香に物申した。

「月江さんも陰険ではないでしょうか?」

『インケーン』ではない、『陰険』である。
つまり、星の言いたかったことはマジである。

「流石にそのイタズラはシャレにならないですよ!?」
「一緒に遊ぶ仲だった友達の母親を間接的に殺している人殺しに言われたくないわよ!」

素直に謝らずに一言、一言余計なことを口に出す茉莉香。
多分上小路陸って人と再会できても彼女すんなり謝ることが出来ない人だな、と失礼ながら心の中で思った。
いや、思う資格すら俺にはないと星は否定するかもしれない。

「本当に和解したいのなら素直になりましょう。俺の部活に天元先輩って人がいるんですけど先輩はきちんと俺の話を聞いてくれる人でしたよ」
「知らないわよそんな人!?」

どんどんどんどん泥沼に走り、火に油を注ぐ2人。
やがて根負けした様に星が出入り口のドアに手を付ける。

「俺はこれから海峰を探しにいきます。それと差し出がましいですが月江さんが上小路さんに謝っていたかったともし本人を見かけたら伝えておきます」
「ちょっと余計なことしないでよ、これはあたしの問題よ」

茉莉香が身を乗り出すのを見計らった様にドアを開ける星。
そのまま茉莉香と別れようとしたが、そのドアに張り付いていた若い女性が潜んでいた。

「ぐす……」

同じくバトルロワイアルのスタート地点が夜桜亭であった蓮沼綾花である。
彼らの謝りたい人、罪、自分と写し鏡である様な境遇であり自分の仕出かしたことに押しつぶされそうになっていた。
『殺されていい人間なんていないのよ!』という茉莉香の言葉。
葉多野春菜だって当然殺されていい人間ではなかった。
全てが遅すぎたのだ……。





130 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:53:39 lso5ZoNM0


「全く星君が泣かせたものだとばかり……」
「いまのいままで月江さんとただ喋っていただけなんだけど……。大体俺には人を泣かせる資格なんてないよ」
「てか、星くん色々な資格無さすぎでしょ……」

平手打ちを一発もらってしまった星であったがそれを綾花が違いますと静止したのだ。
せめて平手打ちをくらう前に静止をして欲しかったと思った星であった。
で、当の泣いていた綾花はというと……。

「ご、ごめんね……。勝手に自分の心境と合わせちゃって……、あたしだって馬鹿しちゃったんだもん……」

ポケットのハンカチで涙を拭う綾花。
これは別れるに別れにくくなった星。
茉莉香も茉莉香でこれはあたしの相談室なのかとちょっと的外れなことを考えていたりしていた。
なんかもう乗りかかった船だ。

「えーと、あなたの名前は?」
「は、はい。蓮沼綾花です」
「じゃあ綾花ね!」

女が2名に増えて居心地の悪い星。

「あたしと星くんの過去や過ちを聞いたからってわけでもないけどさ、……話して楽になるなら聞くよ!それで一緒に謝りたいってなら協力はするし、黙ってて欲しいって言うんなら絶対に口を割らないし」

姉御肌で困った人を見捨てることが出来ない茉莉香。
こんな自分の命も危ない地において自ら首を突っ込もうとしているのだ。

「あたしとその親友の社冬美って子がいるんだけどね……」

そして語り始めた。
――うれしい色だったはずが許されない色に『してしまった』罪を。
ちょっとした嫉妬が巻き起こした親友を殺してしまった話を……、2人に綾花は語ったのだ。





131 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:54:07 lso5ZoNM0


「うれしい色だったはずが許されない色だったなんて もうだめ死ぬしかない、か……」

当然そこには殺意なんて全くない。
星に至っても綾花に至っても――本人はまだ知らないが茉莉香に至っても。
ちょっと歯車がズレただけで、噛み合わないでは済まない程の結果が待っている。
それこそ歯車そのものが壊れてしまったみたいに……。

「子供の時はそんなことなかったのになー……、凛、美咲、あかり、光太郎、忍、亮、心平、金田一、陸」

ふとカブスカウトのメンバーの名前が漏れてくる。
凛とは姉妹になったが他の人物とはあれ以降会っていない……。

「金田一君……、やっぱり知っているんだね……」
「え?」
「え?」

綾花にとって金田一とは雪影村に短い期間の滞在ながら幼馴染全員に好かれ未だ仲間だと思われている古い親友。
茉莉香にとって金田一とはカブスカウトのメンバーで協力しあった親友。
星にとって金田一とはオセロをやろうと誘ってきてくれた人懐っこい人だ。
全員に金田一という男はいい奴というのが根付いている。

「綾花、その春菜って子のことなんだけどさ……」

どう説明しようか。
いや、回りくどい言い方は伝わらないだろう。
ストレートにこの感想を伝えよう。


「インケーン」


「え?」
「もう、あんたも星くんもインケンなのよ!好きな人がいたら好きってずばっと言いなさいよ!それだけで絶対変われたはずよ!たとえ断られたとしてもそんな結果になっちゃった現実よりは少し変われて幼馴染同士偽りなく笑いあえた仲になれたかもしれないのに……」

なれたかもだ。
不安定なパラレルだ。
もしもの数だけ違った世界に成り得たかもしれないのだ。
もし、安易な嘘を伝えなかったら?
もし、スズメバチを水筒に入れるのを思い留まったら?
もし、自分が我慢して親友の志望校を祝福できたら?
もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし……。


132 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:54:33 lso5ZoNM0

「でも起こってしまったことは受け入れて罪を償わなくちゃいけないわよ!消せる罪なんてないけど、隠すぐらいなら、ごまかすくらいならあたしはそれでいいかな?ってそう思う」

茉莉香はまた、良い事を言った気分になっていた。
さっきは全然響いていなかった星も、わずかばかり心に響いて虚無が少し埋まった感じがした。

「綾花、あんたはその島津くんって人にも謝りなさい。それがスタート地点じゃないかってあたしはそう思う」
「島津君に謝る……」

綾花は冬美と共に隠そうと保身をしていた。
それを自ら告げろと茉莉香は言うのだ。
でも、なんとなく隠し続けて罪悪感で押しつぶされるずっとずっとマシになる様な気がした。
それがたとえ彼に嫌われ、絶交になったとしても……。

「うん」

綾花は大きく頷いた。
よし、このまま行動しようと茉莉香が仕切ろうとした時だ、星が窓に近付き、開ける。
そしてゴソゴソとなにかよくわからない行動に出た。
もともと掴みにくい人物だなと印象を持っていた茉莉香の中でますますそれに拍車に掛かった。

「星くん?なにしてるの?」

綾花の質問にきょろきょろ仕出して何故か焦りながら言葉を紡ぐ。

「杞憂だったらそれでいいんだ」
「ん?」

そして突然大きな声で星は問いかける口ぶりで叫びだした。

「な、何者だ!?」

彼女らは会話をしていて気付いていなかったが、蚊帳の外に置かれた星は異変がないか辺りを見渡していて異音がしたのだ。
しかも人為的な音だ。
それを察知した星はとにかく保険を売っておいた。
茉莉香や綾花の様に物分りのいい人物ばかりが揃うとはとうてい思えない。
しかもわざと音をたてている様な不自然に荒らしているかの音……。
やがて星のその声に釣られる様に1人の茉莉香たちよりも大きく年をくった女性が姿を現す。


133 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:55:01 lso5ZoNM0

「あら?龍之介はいないのかしら?」

文だけでは異常もなく人を訪ねる言葉である。
だが、雰囲気は目が血走り右手には大きな斧を握りしめている。





巽紫乃は育てた息子ではなく、産んだ息子を選んだ女だ。
どんなにその息子に虐げられようと、実の息子が1番可愛いのだ。
リゾートの会員権とかそんなものどうでもいい。
巽龍之介が巽家の跡取りになることだけが夢なのだ。
そして、自分が巻き込まれたのなら息子の龍之介が巻き込まれた可能性も0ではない。
でも、0ではないというだけで危惧してはならないのだ。
どう足掻いても息子だけは生かさないといけない。
このバトルロワイアルにまだ巻き込まれたかすらわからないのに彼女は龍之介以外の皆殺しを目的に島を探索していた。
そしてようやくそのターゲットが一気に3人も発見したのだ。
1人男がいるが、まだ全員年端もいかない者たちだ。
くぐった修羅場は段違いだと自負していた。
だから彼女は3対1でも不利とは全く考えていなかった。
だが慢心もしていない、とてもやっかいな思考回路をしていた。





134 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:55:32 lso5ZoNM0


「な、なによあのおばさん!」

茉莉香はすぐに逃走しようとするが出入り口が紫乃に塞がれている。
窓から逃げられなくはないが背中を見せるのはとても危険だ。
というか場所も悪くここは2階、飛び降りて死にはしないだろうが、怪我をするかもしれない。
だがその怪我が致命的に機動性を失うのは確実だ。
何かをなして成功させるには可能性を限りなく100に近づけなければ辞めておいた方がいいだろう。

「こ、この!」

茉莉香は拳銃を向ける。
だが手が震えて標準が定まらない。
当然だ、見おう見まねだしこんなものを使うことになる人生も歩んでいないのだから。
綾花は恐怖で足が竦んでいるし、星の武器はなんかニッチなハンガーでろくに対応が出来ない。
星が全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束なんて言い出した時きちんと使い方を考えておくべきだった、完全に他人事だったとここでも新しい後悔が生まれる。

「チックショー!このインケンを通り越したイジョーシャー!」

もう自分が何言ったのかもわからないまま引き金を弾く。
しかし紫乃は避けるでもなくただ軌道を外しただけであった。

「威勢がいいのは口だけかしら」

斧を見せびらかす様に1歩1歩3人に近寄る。

「う、うおおおお!!!」

唯一の男の星が紫乃に体当たりをする。
ドンと当たり少し怯んだがそんなに体育会系でもない星の攻撃は有効打とは程遠かった。
そのまま紫乃が星の肩を掴み床に叩き付けられ情けなく倒れこむ。

「あら?最初は龍之介よりも若い男の子からかしら」

斧の刃の向きが星に重なる。
振り落とされれば大きなダメージがあるのは想像に難しくない。

(まだ、海峰に謝っていないんだ!こんなところで死ねない!勝負に口を出した者は殺されてその生首を血溜まりに置かれる……、まんまこのババアじゃないか!)

自分は殺されても文句は言えないが、こんな狂ったババアに殺されるものだったら文句を言ってやる、てか文句しかない。
こんなこと、星には言う資格はないかもしれないが資格とか関係なく絶対嫌だ。


135 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:56:01 lso5ZoNM0
「なにしてやがんだ!」

威勢の良い男の声と同時にまたこの部屋に素早く入り込む人物の影が現われた。

(だ、誰だろう?)

助かったのか?、星の体に斧が喰いこまれる展開がまだ訪れないらしい。

「おりゃあああ!」
「きゃあ」

と、その影が星の体当たりよりも勢いのある突進で紫乃を直撃させるかの如く襲った。

「なんなんだこの危ない女は!?」
「し、島津君!?」
「お、お前綾花か?」

銃声が聞こえて隠れて近寄ってみたらとんでもない出来事が起こっていたのを見過ごせずそのまま飛び込んできたのは島津匠であった。
雪影村の綾花の幼馴染であり、真っ先に謝らなければならない相手だ。

「ここは俺に任せろ!みんなを連れて逃げろ!」

だが、島津は知らない。
綾花と冬美が恋人の春菜の死の原因を作ってしまったことに……。
もし、知っていれば綾花の方を見殺しにしていたかもしれないのに。
彼も彼でまた春菜が亡くなったばかりであり自暴自棄気味になっていたのであった。
もし、生への執念があればもっと慎重にかつ冷静に島津という男は動けたはずだったのだ。

謝るとは言ったがこんなすぐに再会するとは思ってもいなかったし、まだ心が割り切れてもいない綾花は返事も返せずただ気まずそうに目を逸らす。
それを素早く察知した茉莉香は島津の言葉にフォローをする。

「で、でもここは2階よ!?」
「ちっ、そうだった。なら食い止めるしかないのか……」

島津が紫乃に向く。
紫乃は一撃を喰らわせた島津が1番のやっかい者だと判断した。

(こういう男は可愛い龍之介の1番の害になるのよッ!!)

その優しさはあの征丸の姿と重なる。
豹変したあの顔はダメだ。
そんな顔、あの女を思わせる顔。
見るな見るな見るな……。
斧を握る拳がギリリと強くなる。

そこでまた置いてきぼりをくらった感じで床に転がっていた星はユラユラと立ち上がる。


136 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:56:28 lso5ZoNM0
「星くん!?大丈夫!?」

茉莉香は心配して星に声を掛けるが彼は返事をしなかった。
何故かというとそのまま何事も無かった様に、でも申し訳なさそうに茉莉香たちに背を向けて、紫乃の後ろを走って通り抜け部屋から逃走を始めたのだ。
ぽかんと茉莉香、綾花、助けに入った島津は開いた口が塞がらなかった。

「ほ……」

なんだこれは。
まるでいま心配した自分が馬鹿ではないか!?
確かに綾花と出会わなければ自然消失して別れていたかもしれない仲だったがだからと言ってこんな命の掛かった瞬間に女を見捨てて一目散に逃げる男だったのか。
お前もうその海峰って奴からまたぶん殴られてこいよ(流石に殺されるのは寝覚めが悪い)。

「星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!」

こんなのが自分の断末魔になるのか。

(ちょっと星くんを頼っているみたいで癪に触る……)

女の子らしく悲鳴を挙げた方がいいか?
なんだその気持ち悪いあたしに似合わないキャラは?

「ふふふ、命が惜しいわよね。1人くらいなら見逃してあげるわ」

紫乃は、あんなもやしみたいなヘタレ男は龍之介にとって全く害にならないと判断した。
むしろ龍之介ならば簡単に返り討ちにしてみせるだろうと。

「じゃあ、あなたから!」

島津に斧を振り回すが動体視力でどうにか躱す。
スポーツマンの島津だが斧なんていう殺意の塊を振り回されるのは初めてでどこまでそれが持つのか。
どちらが音を上げるのが先か、指摘するまでもない。

そして、音が上がる。
いや、叫び声の方だ。
先ほど星が保険にと開けていたドアから、普段のおどおどしたキャラを捨てて勇気を出して、頼りになるぞとアピールをしている声であった。

「俺はここにいるよ!!!!」





137 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:57:05 lso5ZoNM0


星桂馬は紫乃の気配を察知した時保険を掛けていた。
どう役にたつのかよくわからない全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束を窓から乗り出しずっと引っ張り伸ばし続けた。
たかが建物の2階だ、200mもあるはずもなくちょっと伸ばしただけで地面に辿り着く。
余ってまだハンガーの原型が残っている部分を窓枠に引っ掛けた。
星特製ロープ替わりのハンガーだ。
だが金属でツルツルしてロープの様にすんなりと降りられないだろう。
あるだけまだマシ、本当にしょうもない使い道であった。

そしてどさくさに紛れて走った星はすぐ外へ出て、そのハンガーが飛び出している場所へ辿り着く。

「はあはあ……」

もう既に息が上がっていたがこのままでは全員あのおばさんに殺されてしまう。
だがこんなところで休憩なんてしていられない。
自分が海峰に頭を下げる様にみんなで頭を下げる、そんな傷の舐め合いの様な関係だが同じ境遇の人間を肌で感じると意外と情が移るものらしい。

「俺はここにいるよ!!!!」

自分はまだ逃げていないよと存在をアピールした。
さっき茉莉香の散々と罵倒した声は夜桜亭中に響いていたが、わざと聞こえていなかった風だけ装っていよう。

綾花が窓から顔を出す。
中がどんな状況であるかだけ、下からは確認出来ない。

「これをロープ変わりに降りてきて蓮沼さん」
「ってこんなの無理だよ……」

――至極もっともだった。

「うん、無理ねこんなの……」

後から続いて茉莉香もハンガーを見て呟いた。
なんて無茶を要求するのだこの男は。

「もし無理だったとしても俺がキャッチするから」

お前も無理だろう、と茉莉香と綾花のこころがリンクした。

「まずいきなり自分は階段使って逃げ出した癖にあたしたちにこれをやれってそれっておかしくない?」

折角頑張ったのに女子に総スカンを喰らいちょっと見捨てようかなと思い始めてきた星。


138 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:57:45 lso5ZoNM0
それを叱る声が部屋の男から星の耳に届く。

「ごちゃごちゃ言ってねーで下に行け!」
「は、はい」

2人素直に窓に乗り出し茉莉香が先にハンガーに手を付けた。

「くっ……、星桂馬のアホォォォォォォ」

とりあえず男を見せた茉莉香。

「島津くんも早く」
「無理だ!」

綾花の言葉に諦めた声を挙げた。
紫乃の攻撃を1人で防いでいる状態だ。
背中を見せた途端綾花もハンガーを使っている茉莉香も突き落とされて怪我、最悪死亡が予想される。

「それに、わかるだろ?」

首で右腕を指し、綾花は瞬間悟ってしまった。
そうだ、彼はもう野球をしていないのはもう肩より上に上げられないからだ。
そんな人がハンガーを使って下に降りられるかどうかと言われたら……。





139 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 00:58:51 lso5ZoNM0


「早く喰らいなさいよ」

何回もう避けただろうか。
何回もう斧が振られただろうか。
お互い限界が近い。
生き残れるかどうかは執念の差といっていい。

「島津くん、あたしと冬美はあなたに謝らなくてはいけないの……」

え?と疑問が浮かんだ顔になるがその表情が変わったのを目撃したのは向き合って対峙している紫乃のみであった。

「ごめんなさい……、春菜の自殺はあたしたちの嘘が原因だったの……。お腹に赤ちゃんが出来たんじゃないかってあたしは思っているんだけど」

赤ちゃん……?
それは自分の子ってことなのか?
でも何故それで自殺なんか……?

そこから綾花1人で2人ぶんの自白がなされた。
信じていた幼馴染からの、それこそ世界が逆転するかの様な告白。
目の前の女のことよりも優先して殺してやりたいくらいの殺意が湧き上がる。

「そっか……」

でもそんなことして何になる?
泣きながら謝っているし、それこそ自分に対しても死なないでって涙を流している親友だ。
今更綾花と冬美を殺してどうなる?
それこそ普通の奴なら一生墓まで持っていこうとする秘密であるだろう。
それがもし偶然俺がそのことを村で知ってしまったとしたら俺はその殺意に身を任せていたかもしれない。
だが、それがこの目の前のおばさんと同じ顔になる俺って想像すると、すっげー醜いなって客観的に思う。

「俺はお前と冬美を絶対に許さねえ!許せるもんかよそんなこと!」

悔しさで涙が溢れてくる。
それをチャンスだとまた紫乃は襲うがそれもまた寸でカットする。

「こ……こっちは終わったわよ……!」

よほどびびったのか疲れたのか安堵の声と混ざった茉莉香の声でおそらく手を振っているのだろうなとなんとなく目に浮かぶ。


140 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:00:07 lso5ZoNM0

「これさ、もし冬美と会ったら一緒に伝えて欲しいんだけどさ……」

そろそろ体が限界だと訴えてくる島津の体。
でも最後に許せないこの女たちに伝えなくちゃいけないんだ……。

「許す……、努力だけはしてみようと思う。大好きだった野球と同じでずっとずっと努力してみるよ……」

憎い人を殺す、それだけしか問題の解決方法がないわけではないのが人間だから。
許す、許さない、それだけで成り立っているわけじゃないのが人間だから。
事件が解決したわけではないが、それでも区切りを付けられるのが人間だから。

(春菜……、俺もお前のところへ……)

本来の正史のルートからほんの少し歯車の外れたルート。
これもまた1つの事件の終着点であったのだ……。



【島津匠@雪影村殺人事件 死亡】



「ふぅ……、疲れたわ……」

結局1人しか始末出来なかった。
なんか自分には無かった甘酸っぱい青春って感じがしてものすごく胸クソの悪いものであったけど。
もう何回振ったかもわからない斧を床に置いた。

遺言を言った途端いままでの苦労はなんだったの?ってくらいあっけなく頭に攻撃をもらって瀕死になりとどめを刺した。

顔面に振り下ろした時に手でガードすればまだもう少し持ちこたえたかもしれないのにそれをしなかったのを見ると手が上がらなかったか、単に生きるのを諦めたのかそんなのはわからない。
どうでもいい。
二兎追う者は一兎も得ず、いやこの場合四兎追う者は一兎も得ずか。
そうならない様にいちばん強そうな男から確実に消す方向へシフトしていた。

「デイパックの回収したし……」

まずは休憩をしよう……。
死体のある部屋では誰かに見られる場合もある。
この洋館のどこか隠れられる場所を確保して体力と腕を回復させよう。

「龍之介……待っててね……」

海より深く、山より高い母の愛は自分が悪いことをやっているという認識もないまま目を血走らせているのであった……。



【一日目/黎明/夜桜亭(吸血桜殺人事件)】

【巽紫乃@飛騨からくり屋敷殺人事件】
[状態]疲労(大)、腕の疲れ
[装備]雪夜叉の斧@雪夜叉伝説殺人事件
[所持品]基本支給品一式、島津のランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:龍之介を生還させる(龍之介が参加しているとは言っていない)。
0:龍之介の害になる人物、というか参加者全員の始末。
1:隠れて疲労を癒せる場所を探す。
[備考]
※参戦時期は、仙田猿彦始末後。
※本人も龍之介が参加していない可能性も考慮してのスタンスです。
※基本話は噛み合いません。


141 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:00:35 lso5ZoNM0





「島津くん……」

冬美のぶんも含めた島津の想いを受け取った綾花は泣く泣くハンガーに飛びついた。
あとちょっとってなった時、手を放してしまったのだが茉莉香の必至な助けで怪我なく降りられた。
その後星はごめんと2人に謝っていた。
もはや完全に尻に敷かれる星なのであった。

「大丈夫よ、あの島津くんっていの一番に逃げ出した星くんと違ってすっごく強かったしあんなおばさんをやっつけちゃってるよ!」

綾花を元気付けさせる為にそう言って肩をバンバンと叩く。
だがあの少し後ものすごく嫌な音が部屋から聞こえたのだがそんなの違うと全員で否定した。

「いつまでもネチネチって月江さんもやっぱりインケンじゃ……、いえなんでもないです。俺には言う資格ないよ」

卑屈に笑いながらワイヤーを回収する星。
とりあえずあのおばさんが追ってくるのも考慮して夜桜亭の敷地内から脱出をする為足を進める。

「とりあえずさ……、しばらくあたしたちで固まって行動して探し人を探さない?」
「そうだね、やっぱりさっきみたいな問答無用で襲ってくる人もいるみたいだし……」

茉莉香の昔水筒にスズメバチを入れてしまった相手、上小路陸。
親友の開桜学院の入学辞退の書類を勝手に出して母親を自殺までさせてしまった相手、海峰。
まだ生きていると信じているけれど、――島津から受けとったメッセージを伝える為に一緒に罪を犯してしまった相手、社冬美。

この3人に邂逅する為、走り出す。


142 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:01:06 lso5ZoNM0



3人の決意を見守る『夜桜』が花びらを散らす。
それは彼らの先の未来を闇だと告げているのか、逆に光と告げているのか。
まだ、それはわからない。
――どうしたら最後まで頑張れるの?
――その答えを探して辿り着く為。
――あなたの心の鍵を探し求める。
――誰のこころにも秘められた想いがある。
――真っ白なスタートライン。


そして、ここから始まってく――AMAZING STORY――


143 : 月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:01:30 lso5ZoNM0
【一日目/黎明/夜桜亭周辺(吸血桜殺人事件)】


【月江茉莉香@狐火流し殺人事件】
[状態]疲労(小)
[装備]明智警視が高遠に撃った銃@獄門塾殺人時間
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:星くんと綾花と行動する。
1:カブスカウトのメンバーや両親などがいたら、優先的に合流する。
2:陸に会ったら謝りたい(素直に謝るとは言ってない)。
3:海峰と冬美の探索。
4:あのインケーンを通り越したおばさんとは関わらない。
5:何?このインケーンなパーティーは!?
[備考]
※参戦時期は、陸に再会する前。
※本人に悪気は全くないのにちょっとアレです。
※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。
※蓮沼綾花と社冬美の罪を知りました。
※多分このパーティーのリーダーです。
※というか本人がリーダーだと自負しています。


【星桂馬@血溜之間殺人事件】
[状態]疲労(小)
[装備]全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束@香港九龍財宝
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:月江さんと蓮沼さんと行動しながら海峰を探す。
1:海峰に謝る。
2:俺は殺されても文句言えない(文句を言わないとは言ってない)。
3:もうインケンでいいよ……。
4:あのおばさんとか含めて全く俺の罪に関係ない人に殺されそうになったらさすがに文句は言う。
[備考]
※参戦時期は、海峰に拘束されて母親の死を聞かされてから、殺害されるまでの間。
※本人に悪気は全くないものの、切羽詰まると保身に走りがちです(後で反省はします)。
※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。
※綾花と冬美の罪を知りました。
※茉莉香から尻に敷かれつつあります。
※本人は意図していないですが何故か空気になりがちです。
※茉莉香が叫んだ『星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!』という言葉は聞こえなかったことにしました。


【蓮沼綾花@雪影村殺人事件】
[状態]疲労(小)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:茉莉香ちゃんと星くんと行動する。
1:冬美に会って島津くんの言葉を伝える。
2:島津くん……。
[備考]
※参戦時期は、春菜自殺後。
※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。
※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。
※たまに素で訛りが入ります。
※冬美の呼び方が呼び捨てになったり、ちゃん付けになったりします。


144 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:05:13 lso5ZoNM0
投下終了です
回想でしか出番の無かったキャラで1番キャラが濃いのは茉莉香なのではないのか、インケーンがゲシュタルト崩壊してきたりと頭を悩ませる事態に陥りました。


145 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:07:08 lso5ZoNM0
茉莉香の装備欄
[装備]明智警視が高遠に撃った銃@獄門塾殺人事件です
殺人時間は間違いです


146 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 01:26:45 lso5ZoNM0
改めて仁藤伸幸で予約します


147 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 02:34:20 nYnCTH3s0
投下乙です。

このロワ、普通にまともに散るシリアスなキャラが多いですね。
出来心でスズメバチを水筒に入れた茉莉香や、出来心で友達の入学取り消した☆くん、出来心というか出来ちゃった島津に比べると、出来心で嘘ついた綾花は比較的マシな感じも。
そういえば、島津VS紫乃は、できちゃったバトルですね。田舎でも避妊はしよう。

茉莉香は一番やばいくせに他人に説教しすぎ。
そして☆くんは☆くんで文句言いすぎ。
ファッションやポーズで「文句言えない」とか言うなら、最初から「文句言えない」とか言わなきゃいいのに。
絶対☆くんは海峰に会っても少なからず文句言うと思いますね。

そして、序盤から引用されまくる歌詞。終盤にさしかかったらどうするんだ。


148 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:47:15 nYnCTH3s0
投下します。


149 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:47:43 nYnCTH3s0



 鉄は熱いうちに打て、という言葉がある。
 これを、たこ焼きに喩えるならば、「たこ焼きは熱いうちに食え」と言い換えられるだろう。
 要約すると、たこ焼きは、冷めたらまずいのである。そもそも、「焼き」と入っている物を冷ましてしまうと、それは「焼き」ではない。
 いや、たこ焼きの場合、調理方法に「焼く」という工程が出てくる為に、もしかすると冷ましてからも「たこ焼き」に違いないかもしれない。
 まあ、そのあたりはどうでもいい。大阪の連中だけが拘ればいいんじゃないか。



 ――高槻鈴音は、たこ焼きを食べていた。



 丁度、支給品がたこ焼きだったので、近くにあった八尾の別荘の炎を使って温め、腹ごしらえに喫する事にしたのだ。
 何故、八尾の別荘は燃えていたか? ――それを説明すると長くなる。
 長くなるうえに、『金田一少年の事件簿』という作品の主人公設定の根底に関わるレベルの描写ミスが関わって来る。
 その為、この話はしない方が良いだろう。

 とにかく、八尾の別荘は食べ物を温めるには充分な量の炎で燃え上がっていたので、鈴音はちょうど良いと思ってそこでたこ焼きを温め、その場を後にする形になった。
 そして、今現在は、その辺りのエリアから少し離れた藤田時継氏の別荘に行って、八尾の別荘で温めたたこ焼きを食べている。

 同じ別荘でも、八尾の別荘と藤田時継氏の別荘は、体感温度が大きく違っていた。
 少なくとも、八尾の別荘は落ち着いてたこ焼きを食べるのに適していないし、藤田時継氏の別荘はそれに比べると適温である。
 炎の中でたこ焼きを食べるか、それとも燃えていない普通の豪邸でたこ焼きを食べるかと言われれば、大抵の人は後者だろう。
 その点、鈴音は多数派的思考の持ち主であると言える。


(武器が支給されているなんて言うから見てみたら、大した武器じゃないわね。
 食べ物と飲み物が入っているだけじゃない)


 そして、そんな多数派的――つまり常識的感覚の持ち主な鈴音は、思った。



 殺し合いをしろと言われたが、普通に考えて、三日後に来る船があるのに殺し合いなんかする奴がいる筈がない、と。



 多少生活に支障は出るものの、三日程度なら普通に待てば良いし、こんなのはちょっとしたハプニングだと思えば良い。
 忙しいので早くここから逃げたい奴はいるかもしれない。だが、忙しいからといって人を殺すだろうか。
 なんだかんだで衣食住は困らないし、のんびりしていれば三日などすぐに過ぎる。
 五千万円の会員権? そんなもんこれから手に入る数十億の遺産に比べればゴミクズでしょ。
 こんなリスクを犯してまで五千万円ぽっちを手に入れようとする奴は頭おかしい。

 結論から言うと、殺し合いが起こる可能性はほぼない。
 三日待てばいいのだ。


「ほふ……ほふ……」


 そんなこんなで余裕を持っていた彼女だった。
 実際に殺し合いが行われているかどうかはともかくとして、彼女にはかなりの余裕があった。
 殺し合いの最中に、ふらふらと移動して真っ先にたこ焼きを食べるという行為も、まさしくその余裕が現れている行為に思える。
 毒でも入っているのではないか、と疑いこそしたが、それならばここまで大がかりな事をする必要はないと推理した。
 体育館に集めた時点で毒ガスでも使って一斉に殺してしまえばいいだけなのだ。それならば、毒入りのたこ焼きなど使う必要がない。
 つまり、このたこ焼きは普通に食べられる筈だ。


150 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:48:02 nYnCTH3s0

 ……ただ、一点だけ問題があった。
 それは、たこ焼きの温度が高すぎた事である。何分、八尾の別荘はかなり派手に燃えていたのである。
 そんな中で焼いたたこ焼きが熱くない筈はなかった。正真正銘の炎に突っ込んで焼き直せば、当然レンジで温めるよりも熱くなる。
 鈴音は、一口目で思わず舌を火傷しそうになっていた。


 考えてみれば、たこ焼きは実に矛盾した食い物である。
 熱い方が美味いのに、熱すぎると食えない。
 程よいバランスが要される不便な食べ物であるくせに、大阪をはじめとする日本中で今なお愛されている。

 そういう話は置いといて、こういう時、何が欲しいかと問われれば、当然水だ。
 水を以て、舌を冷やす。その行為に走るのが人間として当然の心理である。
 しかし、彼女はまだ知る由もなかった。



 ――これがこのバトルロワイアルに仕掛けられた思わぬ心理トリックであるという事に。



「あつつ……」


 デイパックから出てきたのは、子供ものの水筒のようだ。
 その辺のデザインは拘らない事にする。子供向けだろうが大人向けだろうが構わない。
 とにかく、冷やせればいいのだ。舌も冷やしたいし、たこ焼きも冷やしたい。
 冷やしてから飲み込みたい。
 だが、悲しい事に、口をつけようとしても、水は出てこなかった。


「あへ? ひふはいっへはいほはひら(あれ? 水入ってないのかしら)……」


 確認の為、鈴音は水筒の蓋を開ける。
 中に水が入っていないか、慌てて確認したのである。
 舌の中を転がるたこ焼きがこれほどアツアツな現状、冷静な判断はできない。
 水筒の重みで水が入っているか確認するという最低限の行動はできなかった。





 そのときである――。





 チク





「きゃっ」


 水筒からなんかが出てきた。
 飛んでる。




 なんだ。

 ――なんだ、この黄色と、黒の……。


151 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:48:20 nYnCTH3s0




(エッ?)


 ……そう、それは。



 なんと、スズメバチだった。



 鈴音が今右手に感じた、「チク」という刺激。
 それは、このスズメバチに刺されたという事であった。
 そして、それと同時に、彼女は急激に呼吸が苦しくなるのを感じていた。


(く……苦し……い……息が……)




 ――「アナフィラキシーショック」。
 短期間に複数回蜂に刺される時に起きるアレルギーショック。
 吐き気やめまい、呼吸困難に陥り死に至ることもある。




(あ……あたし死ぬの……?
 そ……そんな! これからって時に……)


 そう、不幸にも、彼女の支給品はスズメバチが入った水筒だった。
 かつて、これは神小路陸の水筒だったのだ。

 ――この中には、月江茉莉香が入れたスズメバチが入っていてもおかしくはない。
 だが、まさかこれからたこ焼きを食べようと言う時に、まさかスズメバチに刺されるなんて。


(あたしは何も悪いことなんてしてないわ!
 待ってただけよ……! ただ待って――)


 普通に三日間、助けを待つだけ。
 そんな無害極まりない行為もまた、殺し合いの場では不適応だった。

 よーするに、バトルロワイアルは厳しいのだ。
 よくパロロワファンが「ロワはうまくいかない」と言うが、もはやバトルロワイアル自体がそういう事象を惹きつけるのである。
 中村青司が作った館で人が死にまくるように、不思議な力学が働いて勝手に人が死ぬ。
 夜見山で起こる災厄のように人が死ぬ。
 そして、金田一少年の事件簿で金田一が行った先で必ず事件が起こるように、人が死ぬ。
 バトルロワイアルと名前がついた時点で、こんなガバガバルールでも、とにかく都合良く都合の悪い話が発生して人が死ぬのである。
 
 そう――こんな風に。


「!」


 高槻鈴音は――溺死のように、限りなく苦しい中で、意識を途絶した。
 それからもう二度と起き上がる事はなかった。




【高槻鈴音@妖刀毒蜂殺人事件 死亡】








152 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:48:35 nYnCTH3s0





 ……それから、また、ほんの少し時間が経った。



 たまたま一人で行動していて、藤田時継氏の別荘に辿りついた海峰学は、高槻鈴音の遺体を発見する事になった。
 若い女性の遺体を見かけた彼のショックは計り知れなかっただろう。

 なんと恐ろしい事だろう。
 こうして立ち寄った場所で、早速人が死んでいるのを目にするなんて。


「クッ……死んでる」


 誰かに殺されたのだろうか――彼女の口から、たこ焼きが吐き出され、遺体の近くに転がっていた。
 既に何度か咀嚼された痕があるのを見るに、それは誰かに毒殺された証であるように見えた。

 誰がこんなひどい事を?

 あんなグダグダなルールで、殺し合う者が本当にいるとは――海峰は信じたくなかった。
 殺さなくても生きていける中、それでも誰かを殺そうという奴がいるのだ。
 そういえば、近くを歩いていた時は八尾の別荘が燃えていた。
 あれも誰かが火をつけたと考えれば説明がつく。


(殺し合いは始まっているのか……?)


 海峰は、恐ろしさのあまり震えていた。
 彼はまだ、自分が裏切りに遭う事も、誰かを殺そうとする事も知らない――中学三年生の少年だったからだ。
 彼はしばらく、その場から動けなかった。





【一日目/黎明/藤田時継氏の別荘@怪盗紳士からの挑戦状】

【海峰学@血溜之間殺人事件】
[状態]健康
[装備]
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:この場から動けない。
2:不動高校とかいうクソ高校、遂に島流しに遭ったか……。
[備考]
※参戦時期は、中学三年生の時(不動高校生ではないです)。
 まだ星くんとお母さん以外のキャラと知りあいになっていません。
※不動高校がリゾート島にある事について、「遂に島流しに遭った」と解釈しています。
※参戦時期の都合で、お母さんは死んでおらず、星くんはまだ友人です。








153 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:49:08 nYnCTH3s0





 ……更に、その光景を窓から見ているひとりの少女がいた。

 彼女は、インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員。
 インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員は、不動高校囲碁部の部員で、インフルエンザで休んだ生徒だった。
 開桜学院との対局をインフルで欠席し、金田一や美雪を呼びよせる切欠になった人物。
 登場こそしないが、こいつがいなければ血溜之間の事件は解決できなかった可能性が高い何気に重要なキャラである。

 しかし、本当に登場していないので、実際のところ、囲碁部である事とインフルエンザである事以外、なんだかわからない人物だ。
 ただ、小角部長と同じ部にこれ以上男子がいると羨ましくて殺したくなるし、海峰が逮捕された後は小角部長と二人きりで囲碁している男子がいると思うと余計に死ねと思ってしまうので、一応女性という設定にしておく。
 そうであってほしい。


(海峰くん……あんな恐ろしい事を……!!)


 インフルは、偶々、海峰が倒れている女性に近寄っているのを見ていた。
 休めるような建物をずっと探していたのだ。
 途中で死にそうになったが、なんとか頑張った。休みながらとはいえ、何時間もインフルのまま歩くのはさぞ大変だっただろう。
 しかし、その果てに彼女が対面する事になったのは、ぐったりとした女性と、その近くで何かしている海峰である。
 それを見て、悲鳴をかみ殺した。

 それからは、ひたすらその場から逃げようとしていた。
 インフルでクラクラする頭のまま、体全体を動かして走り出すのは、かなり大変だったが、なんとか耐えた。
 頭がシェイクされる上に、通常以上に発汗し、すぐにバテてしまう。

 しかし、ある程度は逃げきれた。
 たどり着いた先は、八尾の別荘のあるあたりである。
 彼女は何故、知りあいである海峰を置いて、その場から逃げ出してしまったのか。


(まさか、海峰くんが――人を殺すなんて!!)


 そう、そこには、一つの誤解が生じていたのである。


 海峰が、人を殺している――と、彼女は勘違いしたのだ。


 普通ならそんな誤解はしない。よく見て判断できるからである。
 しかし、インフルは、インフルなのである。
 インフルで朦朧としていた彼女の頭は、海峰が鈴音の遺体に触れている光景に別の解釈を生じさせたとしても全くおかしくない。
 判断能力はかなり低くなってきている。

 そうした不幸もあって、残念ながら、海峰は、部員の一人に誤解されてしまった。
 いや、海峰はまだ不動高校に入学していない時期の参戦なので、部員の一人に誤解されたという言い方は不適切かもしれない。
 全く見ず知らずの赤の他人に誤解されてしまったのだ。

 しかも、現時点で友人の星くんと、その同行者の茉莉香や綾花にも誤解されている。
 小角部長と同じ部にいる時点で、殺されても文句言えない部分があるが、まあまだ小角部長と関係ないので多少可哀想。
 

 インフルは、逃げ続けようとしたが――頭がふらふらになり、八尾の別荘の前で倒れた。


154 : 安い誤解 ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:49:41 nYnCTH3s0



【一日目/黎明/八尾の別荘@魔犬の森の殺人】
※常に燃えています。燃え尽きる事もなければ、燃え広がる事もなく、鎮火する事さえありません。
 ドラゴンボールの牛魔王が出てきた山(名前ド忘れした)みたいな感じになっています。

【インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員@血溜之間殺人事件】
[状態]気絶、インフルエンザ、疲労(極大)
[装備]
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:三日待つ。できればその間にインフルを治したい。
0:この場から逃げる。
1:海峰が人を殺していた事がショック。
2:海峰が人を殺した事を一刻も早く多くの人に知らせなければならない。
[備考]
※参戦時期は、風邪を引いた後。
※仮名は「挟間ヒカル」です。不動高校二年生です。女の子です。
 ウィキペで調べた適当な囲碁用語と、進藤ヒカルを組み合わせました(『血溜之間』の登場人物は囲碁用語+棋士の名前が多いので)。
※とても早とちりな性格なので、海峰が高槻さんを殺したと誤解しています。
※とても噂好きな性格なので、海峰が高槻さんを殺した話を色んな人にばらします。
※それはそれとして、インフルエンザなので結構インフルの症状が出ますし、場合によっては感染します。
 下手すると体育館で説明聞いた時点でインフルエンザに感染した奴がいるかもしれません。
※次の回で適当な相手に拾われ、その相手に海峰の悪評を広める展開にしていただけると幸いです。










【高槻鈴音に関する備考】
※支給品は、スズメバチの入った水筒@狐火流し殺人事件と、千家の焼いていたたこ焼き@誰が女神を殺したか?でした。
 その場に放置されていますが、誰かが手を付ける事はないと思います。


155 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:50:44 nYnCTH3s0
投下終了です。

冬部蒼介、葉崎栞で予約します。


156 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/30(土) 11:58:14 nYnCTH3s0
>ドラゴンボールの牛魔王が出てきた山(名前ド忘れした)みたいな感じになっています。

フライパン山でした(投下してから思い出しました)。


157 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 20:32:46 MKW0euLA0
海峰が無害なせいで星君の決意が空回りしてしまったw
本当に無意味にインケンさんに尻に敷かれていてカワイソス


158 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/30(土) 20:41:49 MKW0euLA0
仁藤の予約に出門章一追加します


159 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/30(土) 23:23:02 iuXG0BFo0
>>99の予約の千家、さくら、るりを外して
六星に瞬殺された警官B(腕を折られた方)を予約します。


160 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/31(日) 00:57:24 /RXo5Cxw0
投下します。


161 : meet again ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/31(日) 00:59:02 /RXo5Cxw0
「ちっ」

俺は思わず舌打ちをした。

当然だ。

なんせ俺は、金田一とかいうガキに追い詰められたはずの小田切進に腕を折られかけ、気が付けばあの意味不明な場に呼び出され殺し合いツアーに参加させられているのだ。
そう。警視庁でも腕の立つ男だと噂されながら、一日に何度も敗北しているのだ。
情けないったらありゃしない。
とりあえず、いまの俺にできることは、船が来るらしい三日後まで参加者たちを鎮めることだろう。
この異常事態だ。
混乱して事件を起こしてしまう者やこれを好機と見て犯罪を犯す者は必ずいるだろう。
俺の役割は、そういった奴らを取り押さえ、極力事件が起こるのを防ぐことだ。
ともあれ、俺は早速辺りを散策してみることにした。

10分程が経過しただろうか。

俺は初めて他の参加者と遭遇した。
そいつは、覆面を被った男だった。
確かこいつの名は連城久彦。時田若葉の婚約者(フィアンセ)だったはずだ。
あからさまに怪しい男であったが異人館村での事件の犯人ではなかったので、俺は声をかけようとしてみる。
だが、連城の持つナイフを見た瞬間、俺は確信した。
こいつは、この殺し合いに乗っている―――!!

「ちっ!」

早速かよ、ついてねえ!
そんな心境を舌打ちで表しつつ、俺は連城に殴りかかった。
が。

!?

なんと連城はあの時の六星の動きとほぼ違わぬ動きで俺の背後をとったではないか!
予想外だ。あの男がここまでできるやつだったとは。
そして、戦闘において背後を取られるのは文字通り死に直結する。
いかん、殺られる!

そう覚悟し目を瞑った俺だったが、しかしいつまで経っても激痛はこない。


162 : meet again ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/31(日) 01:00:09 /RXo5Cxw0

「...?」

おそるおそる目を開けてみると、奴はふるふると首を横に振っていた。
奴は、ナイフの先端に指をやり、このナイフが奇術用のトリックナイフであることを証明した。
この時、俺は理解した。
この男は、俺に『このまま正面から立ち向かっていては奴に勝てない』と伝えたかったのだと。
やがて、連城は俺に背を向け暗い森の中を歩いて行く。

「ま、待ってくれ!」

俺は思わず彼を呼び止めていた。
彼はピタリ、と足を止め俺に視線だけを向けた。

「俺はこの殺し合いを防ぎ、六星竜一を捕まえたいと思っている!」
「!」

連城は、先程までとは打って変わって殊更に反応を示した。
やはり。
俺に助言したことから、彼もまた殺し合いを止めるつもりだったのだろう。
そうと決まれば話は早い。
彼が味方についてくれれば百人力だ。

「あんたが良ければ協力してくれないか。頼む、この通りだ!」

俺は意地もプライドも捨てて頭をさげた。
そうだ。
何度も敗北した俺に今さらかけられるプライドなどあるものか。
それで殺し合いが止められるなら安いものだ。

「......」

静寂が辺りを包む。
どれほど時間が経過しただろうか。
やがて連城は、俺のもとへと歩み寄り、手を差し伸べてきた。

「恩に着る!」

俺は、連城の手を握り返し、固い、固い信頼の握手を交わした。



殺し合いは起きないに越したことは無い。

けれど。

奴を逮捕などさせてたまるものか。

彼女の、若葉の仇をとるのは―――僕だ。



【一日目/深夜/獄門塾敷地内の森】



【六星に瞬殺された警官B(腕を折られた方)@異人館村殺人事件】
[状態]健康
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本:殺し合いを止める
0:連城についていく
1:六星竜一がいればこんどこそ止めてみせる。

[備考]
※参戦時期は六星に腕を折られる寸前。
※どんなキャラかわからなくなったら、基本舌打ちしながら殴りかかる人だという認識で大丈夫です。


【連城久彦@異人館村殺人事件】
[状態]健康、六星への憎しみ。
[装備]高遠が使ったトリックナイフ@露西亜人形殺人事件
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本:若葉の仇をとる。それ以外はたぶん殺さない。
0:若葉の仇(六星)を見つけ次第殺す。
1:警官と共に行動し若葉の仇を探し出す。



[備考]
※参戦時期は六星にナイフを刺す直前
※六星を見つけ次第殺しにかかります。


163 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/07/31(日) 01:01:03 /RXo5Cxw0
投下終了です


164 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 02:49:59 dHo/0ZQY0
投下乙です
連城さん一瞬1泊2日のアサシン設定少し生かされてるw
この警官、警視庁が誇る最強の2人組とか設定もありますが活かされるのかどうか……


投下します


165 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 02:50:26 dHo/0ZQY0
金田一少年の事件簿で死者が出てしまった時、皆さんはこんなことを考えたことはないだろうか?
よく復讐の動機が両親、兄弟、姉妹の復讐を果たす為というのは何回も遭遇してきただろう。
でも、いくら悪いことを仕出かし殺された被害者にだって家族はいるものだろう。
社冬美の母親、月江茉莉香と霧谷凛の両親、時田若葉の父親、斑目姉妹の母親など子供が殺されてしまったという報告を受けて泣き崩れてしまう姿に心を痛めないだろうか?
もちろん描写されていないだけで萬屋の家族や多間木の家族だって存在しているのは表記されている。
本編に描かれていないだけで心を痛めている遺族はたくさんいるだろう。
そして、首吊り学園に登場した仁藤伸幸という男にも母親が登場しているが、仁藤死後以降登場していないのを見ると家で大事に約16年も育ててきた息子が亡くなり大泣きしているだろうことを考えると素直にざまあとは私は思えないのだ。
千家回想の深町いじめのシーンが仁藤だけ不自然に影で隠されまるで黒幕の様に見えたけど実際本当に古谷直樹のパシリだったで終わった仁藤ではあるが、ちょっと同情してしまう。
その犯人であった浅野遙子先生の判決に未成年者を3人も殺しておいて当然死刑にしてくださいなんて泣きながら仁藤ママが古谷ママと室井ママと協力して裁判官に訴えるドラマもあるのかもしれない(もちろん深町両親も先生の弁護をしてくれているだろうというのも忘れていない)。
遺族に限らず、『俺たちのあのセクシー女優加納りえを殺しやがって!!』、『深森蛍ちゃんが生涯かけて応援するって誓ったのにふざけんな!』なんてファンの声が上がってそれこそファンがもっと罪を重くしろなんてドラマがあるのかもしれない。
それこそ深森のバックにはマスコミにも強く働く大きな力が働いていて深森の悪事は世間にはばれないが、その加害者神丘風馬には麻薬をしていた様なアイドル夕凪はるかの兄貴なら人殺しもやりかねないと炎上しているのではないかとたまに現実と重ね合わせて考える時がある。
私が金田一作品に関わらず推理ものの作品においてそういうことを考えたのもこの仁藤という男とその母親が登場した首吊り学園殺人事件を初めて読んだ時であった。
もし仁藤にマザコン設定がなく、ただ古谷のパシリで犯人のトリックに加担しただけの被害者であったなら多分いまでもそういうことを考えていなかったかもしれない、そう思うのだ。
別に犯人側が悪いとも被害者側が悪いとも私は言っていない、あくまで客観的に考えただけの持論であるので興味がなければ忘れてもらってかまわない。
ここから本編は始まる。


166 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 02:50:49 dHo/0ZQY0



仁藤伸幸は四ノ倉学園の古谷と室井がいれば人に危害を加えている立場に回っていたかもしれない。
だが、1人ではなにも出来ず殺される可能性がある以上ただ震えるしかできなかった。
バックにジャイアンとも呼べる強い力の象徴がなければそれこそ古谷たちからのイジメ被害者になっていた可能性もありそうという印象だ。
彼は弱いなりに生き残る方法を考えて考えて考えた。
頭のいい人を続出させている予備校の生徒だ、彼も頭はまわる方なのかもしれない。
もしかしたら頭脳役としてイジメグループに重宝されていたかもしれない。
とりあえず頭は回るという設定にしておく。

――そこで彼は思い至ったのだ。
この島を脱出するにはただ3日間生き延びればいいだけだってね。
手元には生き抜くだけの食料はデイパックに既に手にしている。
それなら3日間、人と会わなければ俺死なないじゃん、てね。

仁藤は錬金術館という館を発見したのだ。
しかも1つ1つの部屋が金属の壁でとても頑丈そうだ。
これなら無理矢理開けられることもないし、かんぬきで施錠するドアだからピッキングもされない。
まるで生き抜くだけなら特化した造りじゃないかってね。
そして帰りの船が来たら部屋を出て真っ先に船に乗る。
完璧な計画であった。

仁藤はビクビクしながら『55』の部屋に閉じこもり安堵の声を挙げた。













――しかし、この館には弱点があってトイレが部屋には供えられていないのだ。


【一日目/深夜/錬金術館『55』の部屋@錬金術殺人事件】


【仁藤伸幸@首吊り学園殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:船が来るまでずっと部屋に閉じこもる。
0:死にたくない。
[備考]
※参戦時期は、深町自殺後、事件前。
※そこそこ頭が回る方だと思います。
※部屋にトイレがないことに気付いていません。
※ジャイアンタイプの人間には取り入る人間かもしれません。


167 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 02:51:13 dHo/0ZQY0





わたしたちの知る出門章一という男の情報はあまりのも少ない。
指名手配中の殺人犯であり、近くに逃げてきたという情報が出てきており、年齢は35歳、長野県在住の劇団員の男。
首を握りしめて苦痛の中で殺す事を好む快楽殺人者。
デモンという悪魔といった怪人を名乗りながら間抜けなミスを仕出かした。
金田一史屈指のシリアルマーダーであり、何気に10人の人間を葬った何気に犯人勢でもトップの殺害数を誇っているぐらいしか情報がないのだ(あれ、こいつも高遠と六星と同じく名前の最後『一』じゃねーか)。
顔もよくわからず、アニメ版では事件そのものが小説の中での出来事なので別人と捉えていいだろう。
そんな人物もまたこのロワイアルに巻き込まれていた。
まさに『迷い込んできた悪魔』であった。

手袋を嵌めながら彼は錬金術館のトイレ前で息を潜めて待機しているのであった。



【一日目/深夜/錬金術館トイレ前@錬金術殺人事件】


【出門章一@迷い込んできた悪魔】
[状態]健康
[装備]怪盗紳士の手袋@怪盗紳士の挑戦
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:殺れるだけ殺る。
0:トイレに潜んで油断している参加者を殺る。
1:なるべく首を握りしめて殺る。
[備考]
※参戦時期は、逮捕後。
※温和そうな顔立ちをしているらしいです。
※劇団員をしていたので演技力は能条くらいあってもおかしくないです。


168 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 02:53:03 dHo/0ZQY0
投下終了です
タイトルは『!?』です


矢森雪雄、遠間もえぎ、上小路陸で予約します


169 : ◆CKro7V0jEc :2016/07/31(日) 03:22:08 uutKw55w0
投下乙です。

>meet again

流石、体が弱く家にこもりがちな美青年の連城さん。
警官ごときにここまで接近されるなんて、異人館村の恥ですね。
100人しか殺してない彼に六星退治が務まるのか疑問ですが、頑張ってほしいです。

>!?

佐木の遺族の反応が一番気になります。息子の葬式でカメラ回しててもおかしくない。
神丘風馬は、あいつ復讐果たしたとしても自分が犯人だと名乗り出て動機を公表しなければ妹の名誉が穢されたままだけど、それでいいんですかね。
香取洋子とかもそうですが。
仁藤は、筆圧で鍛えたマッスルボディで出門を倒すかもしれないですね。それくらいしか勝機ないから悲惨です。
というか、なんでコイツはいじめグループ側なんでしょうね。到底、室井がつるむようなタイプに見えない。


170 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 03:25:24 dHo/0ZQY0
○月江茉莉香/○星桂馬/○井沢研太郎/○白神海人/○鬼城歩夢/○鯖木海人/○多岐川かほる/○尾ノ上貴裕/○小泉螢子/○高森ますみ
○五塔蘭/○斑目るり/○六星竜一/○的場勇一郎/○津雲成人/○香取洋子/○遠野英治/○佐伯航一郎/○楊蘭/○霧島純平
○佐伯航一郎の伯父/○藤枝つばき/○幽月来夢/○奴利壁/○蓮沼綾花/○島津匠/○高槻鈴音/○海峰学/○インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部部員/○六星に瞬殺された警官B
○連城久彦/○仁藤伸幸/○出門章一/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○


33/60
漏れあったらすまん
大分埋まってきてカオスになってきたぞ


171 : ◆5oInWSSsJQ :2016/07/31(日) 14:37:17 0OJ/xHbk0
怒涛の展開、とても面白かったです。今後も楽しみに読ませていただきます。

・まさかハンガーが役に立つとは思いませんでした。
・島津くんが安らかに逝けたようでなによりです。
・ヌリカベさんはすごいダークホースですね。つよそう。
・海峰くんまわりはどこまでこじれるのか楽しみです。
・六星さんに瞬殺された警官Bさんにはぜひとも頑張ってほしいです。
・55番の融点は28℃ですが大丈夫なんでしょうか。

楊蘭、佐伯航一郎、六星竜一、五塔蘭で予約させてください。


172 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:31:14 dHo/0ZQY0
投下します


173 : アンジャッシュ ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:31:52 dHo/0ZQY0
「フンッ!!」

ガンガンガンガン。
その音は不調和音を奏でながら人を死に誘うメロディーを辺りにまき散らしていた。

(な、なにこれ……!?)

それを偶然耳にしていた少女がいた。
早坂教頭先生の敵を討つ為に様々な準備をいろいろと準備をしていて地獄の傀儡師からのトリックも仕込んでもらい、その復讐を果たす前日といった直後に彼女はこの催しに巻き込まれた。
名を遠間もえぎと彼女は云った。





殺し合いに巻き込まれたとはいえ遠間は不動高校の体育館で既に復讐する相手の2人は発見していたのでこの場で探して殺ってしまえばそれでいいと納得させた。
しかも周り全員が誰でも殺せといわれている場だ。
わざわざ自分の手を汚さずとも他の参加者が復讐を果たしてくれるかもしれない。
苦しむ顔は見ることは叶わないが、苦しんだという事実さえあればそれでいいやとちょっと妥協した心も持っていた。
撲殺、刺殺、毒殺、爆殺、絞殺……。
どんな苦しみ方で始末させるか、そればかりを視野に入れて探索していると先ほどのとても不快な命の削っている伴奏会が遠くから開かれていたのを耳で察知した。
もしかしたら自分の復讐の参考になるのではと嬉々として向かった。
窓から覗き込むとただの少女が目撃するには余りにも惨い惨劇が開かれていたのであった。

「違うッ……!!」

被害者から漏れる断末魔。
その言葉だけが素直に聞き取れた言葉であり、他の言葉は発言すら許されないかの様なバットでの暴力、暴力、暴力――。
右頬を叩かれたら左に首は曲がり、左頬を叩かれたら右に首は曲がる。
もう助からないのは誰の目にも明らかであった。
そして彼女の瞳の輝きがシャットダウンされる瞬間、視線が重なった。
『助けて――、敵を……討って……』
そんな目をしていた。
『私』の敵なのか、もえぎと同じく『復讐』の敵なのか、そんなのはわからないがまだやり遂げていない者の顔をしていた。
その最後が恩師の最後の意識が途切れた瞬間と重なりフラッシュバックされる。


174 : アンジャッシュ ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:32:19 dHo/0ZQY0
大声を出しそうにする。
しかし、加害者の何者かはまだその女に暴力の雨を未だに浴びせていた。
ここで大声を挙げたらどうする?
目撃者なんか当然始末の出来る人間なのは誰の目からも明らかだ。
しかも目を引くのは被られている洋画のジェイソンを傍観させるホッケーマスクだ。
異常だ。
あのマスクのせいで加害者は男なのか、女なのかもわからない。
ほんの数分の出来事がもえぎの体感では何時間もそうしていた様に感じられる。

「――くっくっくっ」

やがて演奏会は終わりだと告げる様にくぐもった嗤いが漏れる。
そこで初めて異常者は男であったことを知る。
まだ叫ぶな!!、本能が必至に口を閉ざす。

「くっくっくっくっ……」

やがて満足そうにこの場から去った。
口から吐き出したくなる衝動を必至に噛み殺し耐えた。
だが、音の出ない方――下着はアンモニアのにおいとびしょびしょに濡れた感触だけが残っていた。





「おえ、おええっ……」

ジェイソンが去った安堵の変わりに吐き出したのは胃の中のものをぶちまけた。
人の原型を留めていないあれは壁を越えて辺りに死臭をばらまいていた。
自分がいまから果たそうとしていることと彼がやっていたことは自分と同じだということに気付いた。
こんなのが早坂先生の敵を取る為だと言い訳をして人間として下してのいい裁きなのか?
彼女の思考がぐるぐる回る。

「おえええ……」

服が何色だったのかわからなくなるほど吐いた。
その後デイパックを開いた。
水は入っているらしいし、着替えやタオルなども無きにしも非ず。
そのデイパックに手を突っ込んだ瞬間――。


――チクッ。


――ビクッ。



そのまま彼女の意識は闇に落ちて行った。




【遠間もえぎ@亡霊校舎の殺人 死亡】


175 : アンジャッシュ ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:32:47 dHo/0ZQY0



小学生の男の子には殺しや死、命といったものがよくわかっていなかった。
自分の両親がもし殺されたとしたらそのことについて傷つき、深く悩んでいる未来が約束された男の子こそこの男であった。
名を上小路陸という。
陸という男の子はカブスカウトのメンバーあかりが蛇に噛まれてみんなでスニーカーの紐を集めようとなった際、彼は差し出さなかった。
インケーンだったわけではなく(全くないとは言ってない)、自分の母さんが誕生日に買ってくれたばかりの物で、それこそ彼には宝物といっても過言では無かった物で差し出せなかったという理由があった。
これが成長していたなら素直に差し出していただろうが、小学生の男の子の心理からしてみれば誰でもわかる話ではないだろうか。

そして陸はこの小学生時代のままの姿でこのバトルロワイアルというゲームに参加させられたのであった。





「ああ?金田一だ?」

OP時に出た金田一一という名前はついさっきまで行動していたカブスカウトメンバーで靴ひもを出せという提案をした男の子だ。
他にも道具を使ったことに関しての知識はカブスカウトメンバーでも随一であった。
そのくらいの認識であった。
みんなわけがわかっていないのに小学生に殺し合いをしろなんてアナウンスされても本当にポカンとするしかないだろう。
デイパックをぶら下げその母さんから貰ったスニーカーを履いて島をうろうろしていた。
うろうろして発見したのだ。

!?

家屋の前に原因不明だが倒れている女性の死体とその家屋内に原型のない死体が1つ。
どちらももう生きていない。

「え?え?」

原型の残っている女のデイパックからはウニを傍観させるピンポン玉が1個だけ転げっていた。
これは亡霊学校殺人事件での毒殺に使われた殺意MAXのピンポン玉である。
それを発見した。
小学生の好奇心で――毒なんてぬられているなんて知らずに陸は触ろうと手を伸ばした。
が、触ろうとした瞬間人の足音が聞こえてきた。
とても目付きの悪そうなヤモリ柄の服を着た男性である。
怖い見た目に殺したのはこの男ではないかという被害妄想が広がっていく。

「う、うわあああああ」

恐怖を感じた陸は洋子ともえぎの遺体から逃げる様に去っていくのであった。
まだ薄く残る、壁の『人殺し』のラクガキを背にしながら――。


【一日目/深夜/香取家周辺@幽霊客船殺人事件】


【上小路陸@狐火流し殺人事件】
[状態]焦り
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:逃げる。
0:とりあえず怖い兄ちゃんが来たから逃げる。
[備考]
※参戦時期は、あかりに靴ひもを貸さなかった直後。
※この陸はショタなので母親は生存しています。
※ヤモリ柄の服を着た男性のことを2人殺害した犯人ではないかと思っています。
※陸の靴ひもを貸さなかったスニーカーは元々履いていたものなのでランダム支給品には含まれません。


176 : アンジャッシュ ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:33:12 dHo/0ZQY0



「人殺しなんてやってられっかよ……」

矢森雪雄は人を見殺しにしてしまった過去を思い出すがあれは事故だったと頭を振り割り切った。
これからツアーを始めるってんでちょっと気になっている後輩と仲が進展するかどうかと楽しみにしていたのにこんな3日間生き残るかツアーなんかに参加させられ気分も悪い。

「しかもあんながばがばなルールで人殺す奴なんかいるわけねーじゃん」

首輪とかで脅したり、武器を渡したりするもんじゃんと突っ込む。
矢守の確認したデイパックに武器なんか入っていなかったし、はったりじゃないかという疑惑が湧き上がる。
それこそ何か映画の撮影に強制的に巻き込まれたんじゃないかと思う様になる。

と、現実を否定し始めた頃ようやく最初の参加者との邂逅を果たす。

「お、おい」

小さな子供がいた。
10歳前後くらいだろうか、声を掛けるが目があった瞬間その子供は錯乱した声を上げて逃げ出した。
ちょっと矢森は傷付いたが子供のことだと水に流すことにしたが、子供が立っていた場所に倒れている様な体勢になっているのを発見した。

「は、はあ!?」

情けない声を上げてその体に近寄る。
その場には2つの遺体、――片方は矢森が好意を寄せている後輩の姿であった。

「も、もえぎちゃん?おい、おいっ!!」

しかし、体は冷たくなっておりもう二度と目が覚めないという現実が矢森に襲いかかる。
隣の家屋に放置された遺体なんかグロテスクで本当に人間だったのか疑わしく感じる程、矢森の背中に恐怖が走る。

(う、嘘だろ!!なんなんだよこれは!?)

クラクラする頭を抱えながらこの目の前の家に何かあるのではないかと探索を始める。
ところどころ人間の悪意が込められたイタズラ書きがあった跡が目に映る。
それは洋子が掃除しても落ちない程濃く残された刻印であった。
『人殺し』や『恥さらし』などネガティブな言葉のみが発見されていく。

(もしかしたらあのガキがこの家の持ち主であの2人を殺っちまったってのか……)

もう1度もえぎの遺体に駆け寄る。
明らかに毒の塗ってありそうなピンポン玉が転がっているし、もえぎの掌には痛ましくも針の跡が何個も付けられてある。
これを握らされたのは間違いないだろう。
それを俺に目撃されそうになり逃げだしたに違いない。

「あのガキ!!許せねえ!!」

もうあの子供が離れたのを目撃したのは30分も前だ。
だが小学生の足の長さじゃ大学生である矢森の歩幅では適うわけがない。
あの子供を問い詰める為、上小路陸の去った方向に矢森も駆け出した。



【一日目/深夜/香取家周辺@幽霊客船殺人事件】


【矢森雪雄@亡霊校舎の殺人】
[状態]怒り
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(武器はない)
[思考・行動]
基本:スタンスは特になし。
0:とりあえずさっき逃げ出したガキを追う。
[備考]
※参戦時期は、事件前日。
※香取家を上小路陸の家だと思っています。
※上小路陸が洋子ともえぎの殺害した犯人だと思っています。


※香取家周辺@幽霊客船殺人事件には遠間もえぎの死体と毒針を仕込んだピンポン玉@亡霊学校殺人事件が転がっています。
※まだ毒が仕込んであるので握った瞬間即死します。


177 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:35:55 dHo/0ZQY0
投下終了です
ヤモリは可哀想なのに、似た最後を迎えた三木谷はざまあと思ったのはストーカー気質に鳥肌が立ったからでしょうか
ヤモリと陸って事件隣同士だしマガジンで読んだ時似てるなって思ったのを思い出しました


178 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/07/31(日) 20:55:45 dHo/0ZQY0
上の2つの状態表深夜表記ですが黎明にした方がいいかもしれないです
自己リレーになりますが刀丸猛人、鯖木海人で予約します


179 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:18:56 wX/lGya.0
誤解がいっぱい重なっていくの面白いですね。
今後どうもつれていくんでしょう…。


投下します。


180 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:20:03 wX/lGya.0
楊蘭と佐伯航一郎が校舎を出たときには、先ほど下に見えた二人の人影はもう姿を消していた。
さっき歩いていた様子から、進んでいった大体の方向はわかる。
あのペースなら走れば追いつけるだろう。
楊蘭は振り返り、霧島純平の姿が見えないことに気が付いた。
「あれ?霧島くんは?」
「あれ。見失っちゃいました。戻りましょうか?」
ええそうね、そう言おうとしたとき、彼女の脳裏に浮かんだのは燃える母親の光景だった。
戻ってはいけない、なぜだかそんな気がして、彼女は前を向き直った。
「いいえ、行くわよ」
「…わかりました」

校門を出て左右を見ると、さっきの人影らしき二人が、それぞれの方向に分かれて歩いているのが見えた。

「迷ったら右、って誰かが言ってたわ!」
「はい!」


「待ってください!」
ようやく追いついて、楊蘭が声を上げると、
振り向いた人影は驚いたように楊蘭を見つめた。

「七瀬さん…?ど、どうしたのそんなに慌てて」

肩で息をしながら楊は答える。
「いえ、その、誰かと合流しなきゃって…さっき窓から…あなた達が見えたので…」

するとその男性は、なあんだ、と言いたげに笑ってみせた。

「…そうかあ。僕はこれからぐるっと南回りに巡回して、
 だれか人がいたら不動高校の体育館に誘導するつもりなんだけど、君たちも一緒に来る?」

「巡回って、一人でですか?こんな殺し合いをしてる中、危なくないんですか?」

佐伯が訊ねると、
男性は意表を突かれたような顔をして手を顎の方に添える。

「ああ、それは考えてなかったな」

この状況で一人で歩き回る危険性を考えないとは、
この人大丈夫なんだろうか。佐伯は思った。
男性は手に支給品らしい古い斧を手にしていたが、それも護身のための気休め程度にしかならないだろう。
斧なんて重くて隙のできやすい物を、並の人間がまともに扱えるはずはなかった。

「そうだね、危ないかもしれないけど、
 ……一応僕も先生だし、君みたいな若い子たちを放っておけないしね」

少し間抜けだけどいい人そうだ。
しかし、先生たちと話し合った結果妥結されたのがこんな危険な方法だとは、
不動高校の教師の頭は一体どうなっているのか。馬鹿なんじゃないか。


ともあれ、合流した三人は現在までの状況を話し合った。
まず楊蘭が美雪に激似な別人であることを男性に納得させた上で、
お互いの自己紹介を行った。
男性は、不動高校で教員をしている小田切進だと名乗った。
それから、先ほど体育館であったことの確認。
目が覚めたときの状況。
小田切先生の他にも的場先生、津雲先生という二人の殺人者もとい教員が
このバトルロワイヤルに参加していること。
校舎を出るときにはぐれた霧島のこと。

…霧島はどうなっただろう、と呟く佐伯に、小田切先生は優しく言った。

「大丈夫。校内には的場先生が残っているから。
 もし迷っていたとしても、きっと見つけて安全なところに誘導してくれるさ」

それから、このバトルロワイヤルの主催とは一体何者なのだろうかと、
そこまで話したとき六星は気づいた。

「あれ、楊さんは?」

佐伯も振り返る。
しかし、楊蘭の姿は影も形もなかった。

「おかしい…何も言わずにいなくなってしまうなんて…」

佐伯のその言葉を聞いて、
六星は意を決したように道脇の林の奥を睨んだ。


「…ちょっと様子を見てくる。君は先に体育館に行っていてくれ。」

それだけ言い残すと、六星は振り返りもせずに林の奥へと駆けていった。
学校からしばらく歩いた通りの上に残された佐伯は、六星の背中を無言で見つめていた。





181 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:21:42 wX/lGya.0



「うふふ、さっきのちっちゃな子は見失っちゃったけど、
 もっと大事なものが見つかって良かったわ」

胸に抱きかかえた少女の口を塞いだまま、全裸の五塔蘭はほくそ笑んだ。

「美雪ちゃん、だったかしら。
 さっきはせっかく捕まえてあげたのに、長いことほったらかしてしまってごめんなさいね」

なんのこと!?そう問いたい楊蘭だったが、その声はもごもごと言葉にならなかった。
彼女の手の中でもがく楊蘭を見つめて、五塔蘭は嬉しそうにうなずいた。

「ええそうね、あなたの体はもう、私に血を注ぐ体制になっていたのにねぇ?」

それから、楊の黒髪を手で梳きながら、慈しむように口にした。

「やっぱり黒々として綺麗な髪。まるであの時のあの子みたいに…。
 いいわね〜若いって…」

「うふっ。ねえ、喜びなさいな。
 きっとあなた、今まで私に注がれた血の中でも、一番の極上品よ」

五塔蘭は必死に抵抗する楊を地面に組み伏せると、
左手でその口を塞ぎながら、右手でボウガンの矢を手に取った。
そして口元に上品な笑みを浮かべながら、振り上げた矢を楊の肩に突き立てた。

ドンッ

殆ど音はしなかった。楊の肩に激痛が走り、塞がれた口から声にならない悲痛な叫びが漏れた。

「〜〜〜〜〜ッ!!!!!!」

そのとき。

迫ってくる足音に気づいて、五塔蘭は振り返った。

「誰!?」


182 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:22:37 wX/lGya.0



彼女の目に留まった人物は、図々しくも時田若葉の結婚式に出席すると村に乗り込んできた
あの若葉の交際相手の教師とかいう男だった。
なんとか名乗っていたが、男の名前は覚えていない。

「なあにあなた。今頃来たってこの子はあげないわよ」

五塔蘭は楊からボウガンの矢を引き抜くと、斧を持って走ってくる男に対して身構えた。

(この傷ならそう簡単に逃げられるはずないわ。この男を黙らせてからまたゆっくり味わってあげましょう)

五塔は男の走り方から隙を探った。

(やっぱり若い子はバカねえ。斧なんて重いもので闘えるわけないじゃない。
 振りかぶったところに一刺し入れてあげたら、それでおしまいね)

しかし、男の動きは五塔蘭の予想に反していた。
軽く踏み切る一歩、次いで勢いをつける一歩、
最後の一歩は間合いを一気に詰める非常に直線的なものだった。

「!!」

首元めがけて放たれた斧は、すんでのところで五塔蘭の皮膚を掠り、空を切った。
五塔蘭は、この感覚に確かな覚えがあった。

「あら」

「あらあらあらあらあらあらぁ〜〜〜〜」

「うふ、ふふふふふふっ!おーほほほほほほほほ・・・・・」

遠くから走ってきた六星が再び五塔蘭との間合いを取って息を整えているうちに、
五塔蘭は狂ったように高笑いを始めた。

「やっと、やっと見つけたわ…!あなた、詩織ちゃんの子なのね!」
「嫌だわ私ったら。詩織ちゃんの子が自分から来てくれたのに。
 私ともあろうものが気が付かないなんて。」

何を言っているんだこいつは?
五塔蘭と母さんの仲が良かったなんて聞いたことねえぞ。六星は思った。
むしろ、五塔蘭には気を付けろ、何をおいてもあの女は殺さなければならない、と
そればかり聞かされていた。
五塔蘭は、六星が怪訝そうな顔をしているのに気付き、静かに言葉を継いだ。

「あの子は何も言わなかったけれど、私にはわかったわ。
 あの子、妊娠していたのよ」

それから一息置いて、燃えるような瞳で六星を見ながら、

「絶対に許さない。私を裏切るなんて。私より詩織ちゃんを大事にできる男がこの世にいて?
 いいえ、いいえ!そんなわけないじゃない!」

とヒステリックに叫ぶ。
六星には、五塔蘭が何を言っているのかいよいよわからなかった。
もはや草薙のネコババアと同じような、狂人の言としか思えなかった。
そこで、ついに口にした。

「何言ってんだ。てめえは母さんの保護者じゃねえだろ」

その言葉を聞いた五塔蘭は、急に興を削がれたように眉間にしわを寄せた。
六星竜一の頬、髪、眉、瞼、鼻、あご、耳、耳の付け根の生え際、首と、
舐めるように見回しながら不快そうに言う。

「あら、あなたお母さんから何も聞かされてないの?
 …いいわ。詩織ちゃんの子だもの。あの世へのお土産として教えてあげる。お聞きなさい」





183 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:23:19 wX/lGya.0



「六星家の七人の娘たちは、表向きはみんな孤児ってことになってたわ。
 でも、あの強さを見れば誰にだってわかる。詩織ちゃんは六星夫妻の子だったの」

「そう、あのたくましさ。つやつやした頬は薄く紅く染まって、笑顔はいつもこの世のものとは思えない輝きを湛えていたわ。
 それにあの残忍さ。大麻のことを嗅ぎつけて村に入ってくる者たちを、なんの躊躇もなく葬っていった。
 それこそ、息をするように自然に!眉一つ動かさずに!
 ねえ、素敵じゃない?返り血を浴びたあの子の顔は、ときには笑顔ですらあった…。」

――100年に渡って大麻の栽培を行ってきた六角村。
その秘密を隠し通すために費やされてきた労力は、並大抵のものではなかった。
なにしろあれほど広大な大麻畑である。今時分、衛星写真にまるまる写ってしまう。
そこで、この秘密に近づく者すべてを排除するため、
六角村を代表する七家ではそれぞれ秘伝の暗殺術が生み出され、独自の発展を遂げていた。


その中でも、五塔蘭はとにかく強かった。
あまりにも強かった。
その実力たるや、彼女の滅茶苦茶な倫理観に誰もが多少の疑問を抱きつつ
誰一人として彼女を止めることができないほどだった。

五塔蘭に迫るほどの殺傷技能を持つ実力者は唯一、六星詩織だけだった。
六星詩織は幾度となく五塔蘭との決闘を行ったが、いつもあと一歩力及ばず涙を飲んだ。
どれだけ血みどろになっても、骨の二、三本をへし折られても、また再び自分の前に現れる唯一の少女、六星詩織。
そんな詩織を、五塔蘭は次第にかわいらしい妹のように感じるようになっていた。


誰もが一度は考えたことがある筈である。
「六星詩織は息子に暗殺術を教えるほどの力を持ちながら、なぜ自分で復讐を行わなかったのか」と。
筆者の考えでは、「六星詩織自身では復讐を遂げることができなかった」のだ。
若くとめどない力を持て余し、暴虐の限りを尽くす五塔蘭を止めることができる者など、最早いなかった。
彼女の歩いた後には、ただ死屍累々と物言わぬ亡骸が山を成すだけであった。

「あんな子、この世に二人といないわ。
 あの子は私のための天使なの。私の美しさへのご褒美として神様が遣わしてくださったのよ。
 ええ、あなたのお母さんはね、天使なのよ」


立ちはだかるのは、抗いようのない狂気。
教会から助け出され、病院のベッドで日々復讐の暗い炎を宿す六星詩織にとって、
五塔蘭の存在は絶望にも似ていた。
それに。

もし自分が復讐に行ったとして、風祭淳也はどんな顔をするのだろうか。

風祭淳也。
一生詩織を守ると言ったくせに、彼女を裏切って六星一家の惨殺に加担した風祭淳也を、
詩織はどうしても許すわけにはいかなかった。
しかし、詩織には風祭の優しさが怖かった。首元にナイフを突きつけても、彼は笑って受け入れるかもしれない。
そのとき、果たして自分に復讐を続行することはできるのだろうか。
私はここにいる、あなたの赤ちゃんと一緒にここに。あの人にそのことを伝えたい。でもあなたを許すわけにはいかない。
苦しい、苦しい、苦しい、苦しい…。

そうして逃げ場のない苦痛に日々身悶えする彼女の中に、その日。
ある閃きと共に、一条の光が差した。
彼女は思い至ったのだ。
五塔蘭が老い、その力が少しでも削がれたとき、私の力を継ぐ者がいたならば。
風祭淳也に対して、余計な感情を持たない存在が、彼女の代わりに復讐を決行してくれたならば。

……六星詩織は膨らんだお腹をさすり、にっこりと微笑んだ。
竜一。
あの人の血が流れるあなたがあの村人たちに復讐してくれたなら
あの人が復讐してくれたも同じよね?
それにあの人だけを殺さずに見逃しておけば、きっとそのうちあの人自身、何が起こったのか気が付くわ。
私がこれからどんな気持ちで生きていくのか。どんな気持ちでこの子を育てていくのか。
私の長年の想いは全部あの人に伝わる。
あの人は私を裏切ったことを後悔するでしょうね。

そうよ竜一。
あなたはあの村の連中を殺すために生まれるの。





184 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:25:41 wX/lGya.0

やがて息子の竜一に持てる暗殺術のすべてを授けた六星詩織は、
「最後の仕上げ」をする前に息子に説いた。

「今のお前ならきっと五塔蘭とでも闘えるわ。でもあの女を侮ってはダメ。
 まともに闘うのじゃなく、できる限り不意討ちなさい。
 お前は村人を皆殺しにするまで、どうあっても死んではいけないのよ。」

「それに、五塔蘭ほどではないにしても、他の連中にもみんな暗殺術の心得がある。
 剣術の兜、狙撃の風祭、幻術の草薙、軽業の時田、仕掛け罠の一色…。
 複数人を同時に相手したら厄介なことになるわ。
 そうね…どうにかして疑いを持たれないようにしながら、一人ずつ闇討ちするの。いいわね」





「愛しているの。今でもこんなに愛しているのよ」

狂乱に耽る五塔蘭の視線は六星竜一の方に向けられていたが、
瞳は夢を見るように、どこかずっと遠くを求めていた。


「だから、詩織ちゃんを後悔させてあげようと思ってね、私。あの日みんなを誘ったの」

その瞬間、六星竜一の顔色が変わった。
あの日?あの日というのはまさか…
六星竜一の中に渦巻いた嫌な予感は、五塔蘭の次の言葉で決定的なものになってしまった。

「私、六星夫妻を殺すだけでいいと思ってたの。
 詩織ちゃんを殺すなんてそんなむごいことできないわ…。
 お腹の赤ちゃんだけ刺して汚れを落としてあげればそれでいいって思ってたのよ。」
 
「でもほら、六星家の方々って銃弾の一発二発じゃ死なないじゃない。
 噂には聞いてたし、詩織ちゃんもね…何度かちょっと痛めつけてあげたけど、数日後には元気になってたの。
 それにしても、歳のいったおじ様ですら、まさかあんなにしぶといなんて…嫌になっちゃう。うふっ。
 だからみんなでパンパンやってるうちに、気持ちが高まって来ちゃったみたい。」

そう。原作で村人たちが六星家を襲った場面では、風祭以外の五人の村人が五丁もの猟銃を抱えているのが確認できる。
更にドラマ版において、銃の名手である風祭が、六星夫妻に向けて真顔でものすごい連射を繰り出している。
なぜ、たった二人を射殺するのにこれほどの銃弾数が必要だったのか。

…考えられることは一つ。つまり、六星家の人間は一発二発の弾丸が当たった程度では死なないのだ。
そうでなければ、常識人で通っているあの風祭淳也が、いきなり実の息子めがけて散弾銃をぶっぱなすこともなかっただろう。
さて、五塔蘭の話は続く。


「炎に包まれた教会を見たとき、私は思ったわ。
 このままじゃいくら詩織ちゃんでも死んじゃう、詩織ちゃんを助けなきゃ、って。
 でもね、そのとき、私ひらめいてしまったの。
 このまま放っておけば、従順なお人形さんになった詩織ちゃんを連れて帰って、毎日楽しく遊べるかもしれない、って。
 そうしたらお腹も切り開いて、赤ちゃんだけ切り刻むこともできるじゃない。ね、いい考えでしょう?
 それなのに。
 焼け跡から出てきたミイラに私の詩織ちゃんはいなかったの。七つのミイラは全部、弱々しくやせ細っていて醜かった…」

「私、詩織ちゃんが欲しかったの…!それだけなのに…!!」

感情が乗ったのか、五塔蘭は右手に握りしめたボウガンの矢を振りかざして六星竜一に襲い掛かる。
左半身の体勢で五塔の攻撃を自分の右側に受け流した六星は、そのまま背中に一撃を入れようとするが、
五塔蘭は素早く距離を取ってそれをかわした。


185 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:26:46 wX/lGya.0

少し落ち着いたのか、何事も無かったかのように話を続ける五塔蘭。

「………詩織ちゃんを失ってしまった自分はなんだかとても歳を取ったように見えたわ…
 私焦って、若くて綺麗な女の子の血を取っては自分の体に注いでみたの」

「そう、あれからたくさん殺したわ。たくさん、たくさん、たくさん、たくさん、たくさん…
 血に濡れた私の肌は、確かに美しかった。どんな赤いドレスよりもずっと劇的に新鮮だった。
 でも。女の子たちの肉片の海の中で私が思うのはいつも詩織ちゃんのことだけ。
 どんな美しさも強くて賢い私の詩織ちゃんには遠く及ばないのよ。詩織ちゃん…詩織ちゃんは私の天使だったのに……」

「汚い男に身体を明け渡してしまうんなんて!」

六星竜一はぎょっとした。五塔蘭の目からは涙が零れだしていた。
救いようもなく歪んだ愛情。それでも、五塔蘭は本気なのだ。

六星竜一は少し前から薄々、自分の母親の異常性に気づき始めていた。
しかし、母親がああなってしまったのは、
きっと姉妹の縁を結んだ少女たちが生きながらミイラにされたときからだろうと考えていた。
まさか、その前からこんな焼けるような愛情に当てられていたとは思っていなかった。
この村は一体何なのか。どこまで狂っているのか。
六星家の血を引く自分も、世間から見ればまた五塔のような存在なのだろうか。


「なぜ?なぜなのよ、私はこんなに美しいのに!
 私の美しさだけじゃ不満だったの?」

涙に咽ぶ五塔を哀れな目で見ながら、
同時に六星の中に浮かび上がる一つの確信があった。
彼は、自分の感情とは全く別に、この確信に従うことにした。


「まともに闘うのじゃなく、できる限り不意討ちなさい。」

 今だ。

五塔が涙を拾おうと瞼を覆った一瞬の隙を突き、六星竜一は渾身の力で斧を奮った。
勢い、五塔の首は体から離れて空を切り、地へと叩きつけられた。



【五塔蘭@異人館村殺人事件 死亡】





◆   ◆   ◆


186 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:27:51 wX/lGya.0


気が付くと楊蘭はその場から姿を消しており、
代わりに少し離れた茂みに佐伯航一郎が立っていた。
六星が見る限り、佐伯は少し動揺してはいるものの、
目の前で人の首が飛んだのを見たとは到底思えない落ち着きぶりだった。

開口一番、佐伯は呟くように言った。

「このおばさん…やっべえな…」

「…だよなあ」

それは六星も心底同意できる点だった。
とりあえず佐伯のことは無視して、五塔蘭の死体を加工する作業に入ることにした。

「なんでそこ切るんだ?」

「いや…ちょっとした趣味だ」

「そんな古い斧で器用に切るな」

「まあな」

そんなことを言いながら、五塔蘭の「右肩から左腕にかけて」を斜めに切り取ると、
六星はそれを手に取りぷらぷら動かしながら、佐伯の方を振り返った。

「この腕、要るか?」

「要らねえよ」

「そうか。どうしようかな」

ある程度落ち着きを取り戻した表情で、手にした「女の右肩から左腕にかけて」の肉片を見つめ、
指をピースさせてみたりと控えめにいじくる六星の様子は
佐伯にとってもかなりシュールに映った。
薄々そんな気はしていたが、こいつもちょっとやばいのかもしれない、と佐伯は思った。

「…食えば?」

「嫌だよ。胸糞悪りい。どっかあっちのほうに投げておこう」

ブーーーーーン。ドサッ。

この六星竜一の雑な死体遺棄方法は、すでに真・小田切の死体発見という事態を招いており、
不動高校教師としての六星竜一の立場を窮地に立たせつつあった。
しかし彼生来の、問題解決能力自体は極めて高いのになんとなく詰めが甘くざっくりした性格は直しようがないので、
今後六角村で殺人劇を繰り広げることになっても、切り取った死体の一部はやはりゴミみたいに捨てることであろう。


187 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:28:45 wX/lGya.0


肉片が視界から消えたので、今度は何か場を彩る花みたいなものはないかと
六星竜一は辺りを見回した。

「おい佐伯、お前薔薇かなんか持ってねえか」

「メイド服なら、ある」

真意を測りかねた佐伯が一応それらしいものを答えると、六星竜一は少し首をひねった。

「メイド服か…ちょっと違うな」

こんなとき、高遠遙一の得意技であるマジックという名のチートを以てすれば
何もない空間から薔薇の1本2本出現させることなど造作もなかっただろう。
しかし、物理極振りの六星にそんなことできるはずもない。
そのへんの陽だまりにすみれが4,5本生えているのを見つけて、
とりあえず死体の周りにばらまいておいた。
溢れ出す血の海に可憐なすみれの花が浮かび、ほんの気持ちだけほほえましいかんじになった。
佐伯は気になっていたことを聞いてみることにした。

「…お前、まさかとは思うが、特に目的があるわけじゃなく、
 単に面白半分で死体を飾ってんのか?」

「面白半分、と言われるとそうかもな。芸術的な死体にしたいだけなんだが」

「へえ…(ドン引き)」



最後に六星は、全裸で倒れる五塔蘭の背中に血文字を記した。


 女の狂気の叫びは七人目のミイラの渇きを癒す


佐伯は一連の様子を見て、こいつは美術教師にはなれないな、と思った。血文字もなんか語呂悪いし。
「よし」、と頷き一応の作業を終えたっぽい六星に対し、
色々言いたいことはあったがとりあえず最初に思いついたことを言った。

「お前先生なんだろ?字下手すぎじゃねえ?」

「うるせえよ」

六星の字は異人館ホテルに残された赤髭のサンタクロースの血文字と比べても明らかな下手さを誇っており、
1年以上この筆跡で授業を受けていた高校生たちがいると思うと佐伯には哀れに思えた。
もしかすると、筆跡鑑定をくぐりぬけるために故意に下手に書いただけで、普段の字はもっと綺麗なのかもしれない。
しかし、何しろ六星というのはとにかく自己弁護ができない人物である。
どのくらい自己弁護ができないかというと、本編で美雪に「あなたが若葉ちゃんに人殺しをそそのかしたのね」と言われた際、
よりにもよって

「自分が殺されるとも知らずにバカな女だ。妙なTVドラマの見すぎじゃねえか?くっくっくっ」

というすさまじいディスコミュニケーションを働き、
最終的にはそのせいで撃たれたと言っても過言ではないほどだ。
よって、筆跡に関しても真相は闇の中だ。


さて、そんな自己弁護ができない六星は佐伯に向き直ると、
単刀直入に問うた。

「お前、俺を消すつもりあるか?」

「ねえよ…。俺はこのバトルロワイヤルの主催者を殺したいだけだし、
 それ以前に今の光景を見た上でお前に切りかかろうとは思わねえよ」

「じゃあ別にいいや。このことは誰にも言うなよ」

「わかってる」


愛はなぜこの地球に生まれるのだろうか。
人はなぜ傷つけるくせに許されたいのだろうか。
そんなことを考えながら、佐伯と六星は現場を立ち去った。


188 : 六角村 ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:30:17 wX/lGya.0



【一日目/黎明/不動高校周辺】


【六星竜一@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(小)、五塔蘭に真相を聞かされたことによる精神的ダメージ(軽)
[装備] ジェイソンの斧@悲恋湖伝説殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:六角村の連中は皆殺し。
0:六角村の連中は凝った演出をして場を彩る
1:他の連中はどうでもいい、生死すらどうでもいい。
2:気が向いたら不動高校へ案内する
[備考]
※参戦時期は、小田切進(本物)発見〜異人館村殺人事件前。
※佐伯航一郎はなんとなく同族っぽい臭いがするので、
 ちょっと話は聞いてみたいけど信用してもいいかなと思っています。



【佐伯航一郎@秘宝島殺人事件】
[状態]健康、動揺(小)
[装備]伊志田が着ていたメイド服@不動高校学園祭殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体を暴き、殺す。
0:歯向かうと殺される可能性があることはわかっているので、大っぴらには活動しない。
1:とりあえず色々な人に話を聞きながら手掛かりを集めて、色々考える。
2:人殺しなんてハエやゴキブリを殺すのと同じさ。
3:楊蘭にはなんとなく共感するので殺したくない。
4:メイド服では首を絞めるくらいしかできないので、できればまともな武器が欲しい。

[備考]
※参戦は秘宝島殺人事件の犯行後です。
※6人殺害しているものの、まだ13歳だし反省していたのですぐに出てきました。
※頭が良いそうです。
※女装癖があります。
※六星竜一とはあまり争いたくないし、味方につけられたら使えるかもしれないと思っています。




【楊蘭@香港九龍財宝殺人事件】
[状態]負傷(左肩を矢が貫通した程度)、逃走中
[装備]2種類の液体が入った袋@電脳山荘殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:亡命してた幼少期と比べたら三日間なんてそんなに気負うことでもない。
1:殺されそうになったら殺し返すかもしれない。
[備考]
※参戦時期は、犯行後ファッションショーに出てから刑務所に入れられるまでです。
※日本は平和でいい国でもないかもしれないと思い始めました。


189 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/01(月) 21:31:00 wX/lGya.0
投下終了です。
異人館村殺人事件を読んだとき「なんでこの人こんなことしたんやろな」って思ったところを
拾えるだけ拾ってみました。
教会の十字架の仕掛けは拾えませんでした。


190 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/01(月) 21:47:08 HD1W9d1c0
私がダビデの星の形が嫌いになったのは間違いなく六角村のせいですが本当に冗談抜きでイカれてて金田一の世界観の中でもずば抜けておかしい連中の集まりですね
同じ東北で村の付く雪影村とどうしてこんな差が出てしまったのでしょうかね…

佐伯と六星普通に仲良しでかつシュールでこの仲嫌いじゃない
この二人で無双してしまえばロワ1日で終わってしまう様な…


191 : ◆oAN11QKYGA :2016/08/02(火) 17:17:00 NVBKohSg0
六角村新説がぶっ飛んでるのに妙な辻褄が合っていて笑いながらもなんだか納得してしまいました。
六角村メンバーだけで漫画一本かけそう。ただ絵柄が北◯の拳でしか想像できませんが。

藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁、航一郎伯父で予約します。
あと書き手枠で狩谷純を追加予約させてください。


192 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:32:48 8unQaq/k0
投下します


193 : オペラ座の怪人は再び姿を現す ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:33:38 8unQaq/k0
「こんなガラクタなPCは邪魔になるだけだろうし所持は諦めるか」

コテージ内のブラウン管のPCはそのまま置いておく判断をする鯖木。
まずはこのコテージからの移動をしようと方針を経てる。
外に置き去りにされた死体のある場所にずっと留まれるわけがなかった。

「にしてもこの女見覚えがあるんだよな……」

襲われた際には恐怖が勝りパニック状態になっていたがよくよく考えればどこかで見た顔であったことを鯖木は引っかかりを覚える。
どこかで、実際に会ったことはない。
では『何で』見たと考えたとしたら?
その時、小説『双子探偵姉妹』とリンクさせた時ピンときた。

「このババアってもしかして3億円事件がどうたらって女じゃなかったか?」

目先だけで炎上することを目標にしていたが、既に炎上した人物であったと鯖木はインターネットのニュースの記事と一緒に思い出した。
『人気ミステリー小説家の過去、実は3億円事件の加害者!?』、そんな内容で共犯者の数人を殺害してその犯人って確か死亡したのではなかったか?
ではこの女はいったい?

鯖木が炎上させたわけではないが色々な人物が炎上にあったのを鯖木はネットを通して知識として持っている。
人気アイドル深森蛍の死亡、犯罪者怪盗紳士の名をかたって画家の殺害事件、墓場島での亡霊の仕業に見せ掛けた事件、吸血鬼の仕業だという事件など……。
こんなのではキリがないほど鯖木はPCの前で無造作に時間を使い事件という事件の記事やスレッドを読み込んだ人間であった。

「ちっ、まったくわけわかんねーよ」

舌打ちをしながらコテージを出ていく。
ネット環境を探す鯖木だが3日間という期間は絶対にそれに触れられないことを聞き逃した鯖木はまた歩きだす。

(『災厄の皇帝(エンペラー)』か、もしかしたらこのバトルロワイアルの参加者として身を隠しているんじゃないか?)

では誰なのか。
知るはずがない。
だが、堂々とした監視カメラが見つからないとなるとその『災厄の皇帝(エンペラー)』とやらはどうやって実験の結果を知ろうとする?
こういうゲームにありがちな首が爆発したり、発信機及びカメラ及び盗聴器などの機能付き首輪も付けられたわけではないのだ。
では、どうやって過程を知るのか?

「簡単だ、このゲーム参加者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでやがる」

これが鯖木の結論であった。


194 : オペラ座の怪人は再び姿を現す ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:34:09 8unQaq/k0



では、実際に紛れ込もう。
どういう奴がその黒幕であるかだ。

「性格がよくてリーダーシップを取ろうとするお人よし、絶対に信用できないし……」

「そんな奴消えちまえばいいのに」と付け加える。
そういう奴は殺されない自信のある奴だ。
紛れ込むならばこういう奴の方が1番可能性・危険性が高い。
このことに関しては襲ってくる奴の方がまだ信頼できる(信頼するとは言ってない)。

「殺されない自信のある奴……、理由なく襲う奴も黒に近いか」

動機のない殺人、それは某傀儡師の嫌うスタンスの人間である。
鯖木はこのタイプも参加者に紛れ込んだ『災厄の皇帝(エンペラー)』であると予想した。
人を殺してみたかったみたいなぶっ飛んだ思考の奴、だから60人もの人間を集めたと過程すれば無理はない。

「本当に紛れ込んでいる可能性は50パーセントと置いておくか」

当然鯖木の知らない技術で監視しているとも考えられる。
仮定は仮定でしかない。
悪意に満ちた人間側である自分だからこそこういう悪意に満ちたことを考えられる。
『災厄の皇帝(エンペラー)』も悪意の高い同族であると察して、それに吐き気がする。
つまり同族嫌悪である。

雪の降るステージを抜けた鯖木は一息付く。
信用できるのは己のみ。
誰の瞳にも映らない様にと気配を殺しながら鯖木は道を進んで行くのであった。



【一日目/黎明/電脳山荘を抜けたところ】


【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り、一定の冷静
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。
※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。
※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。


195 : オペラ座の怪人は再び姿を現す ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:34:30 8unQaq/k0



鯖木の去ったコテージに広がる血と雪景色。
そこには村人13人を殺害した本物の殺人鬼(ジェイソン)が見下ろしていた。
彼『刀丸猛人』にとっては自分が映画やドラマの世界の登場人物だ。
現にいまはバトルロワイアルという作品の登場人物として呼び出されたのだと解釈している。
彼にとって妄想と日常には境目がない。
デイパックにはその醜い顔を隠せといわんばかりにファントムの仮面とその武器のロープが支給されていた。
どうやら今日の彼(わたし)にキャスティングされたのはファントムというオペラ座の怪人の主人公役であるらしい。

歪んだ顔、歪んだ思考。
ファントムの仮面を身に着けた瞬間それは収まった。
だって彼(わたし)は怪人ファントムなのだから。
ファントムにとって歪んであること自体が正常なのだから。

女の既に息絶えた死体を手に取る。
手が朱に染まることに何も感じなかった。
だってそういう役なのだから。
彼(わたし)は参加者をこうしていけばいいのかと役になりきろうとする。

地獄の業火に思考を焼かれながら彼(わたし)はファントムへと姿を変えていく。
遺体を無碍に投げ捨てたと同時に刀丸猛人はファントムになっていた。


【一日目/黎明/電脳山荘<僧正>のコテージ@電脳山荘殺人事件】


【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]ファントム
[装備] オペラ座の怪人『ファントム』の仮面@オペラ座館殺人事件、コンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープ@首吊り学園殺人時間
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:ファントムになりきる。
0:この手で参加者を消していく。
[備考]
※参戦時期は、逮捕された後。
※クリスティーン役(ヒロイン)がいれば浄化するかもしれません。
※妄想と現実の境目がありません。
※ファントムになりきっているので自分の名前が刀丸猛人という名前だということも役になりきっている間は理解していません。
※そもそも人と接することが出来ない人間らしい。


196 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:36:49 8unQaq/k0
投下終了です
六星竜一、佐伯航一郎、霧島純平で予約します


197 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/02(火) 20:38:59 8unQaq/k0
刀丸の状態表また事件が時間になっていた……
申し訳ない


198 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/03(水) 00:27:46 144hEZrs0
海堂瞳、多間木匠、古谷直樹、自己リレーで斑目るり、六星に瞬殺された警官B、連城久彦で予約します。


199 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 01:39:39 TQEuYb3Y0
投下乙です。
何かと感想が遅れて申し訳ありません。
先週のマガジンで金田一が休載という苦痛の中、よくこれだけ書いて投下して頂けたなと感激しております。
私は日曜ごろにはすっかり死んでました。

>アンジャッシュ
支給品確認しただけで死ぬ奴が多すぎる。支給品の確認=死亡フラグとか鬼ですか。
原作でもほぼ吐く人がおらず、オープニングでもギリギリ吐く人がいなかった中、ゲロインしちゃう遠間の方のもえぎはもうちょっと耐えてほしかったですね(可愛いので良いですけど…)。
子供が成人女性二人も殺せると思っている矢森やばい。頭悪すぎるこいつ。

>六角村

六星っていったいどんなテレビドラマをイメージしてたんでしょうね。当時の流行のトレンディドラマなんでしょうけど、果たしてどれなのか。
有名な「高校教師」(2話くらいしか見てないけど)かなと思ってましたが、あれ1993年らしいですし。
あいつがテレビつけてドラマを見て「ドラマってこういうもんなんだ」と知る機会があったという事実が奇妙奇天烈です。
それにしても何の漫画だよ。
十字架の仕掛けは拾った事にしておきます。

>オペラ座の怪人は再び姿を現す
再び(四回目)
鯖木はネットやってるだけのようですが、実際三日くらいならネットやって過ごす人も少なくないでしょう。
刀丸はヤバいマーダーだと思いますが、支給品の武器がコンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープなので、まだなんとかなりそうな感じはありますね。

それでは、投下します。


200 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 01:40:14 TQEuYb3Y0
あ、すみません。投下しません。
出来てないのについ投下宣言しちゃいましたが、誤報です。


201 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:09:38 TQEuYb3Y0
投下します。


202 : if ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:10:27 TQEuYb3Y0





 ――冬部蒼介と葉崎栞は、色々あって生還し、結婚した。




【冬部蒼介@吸血桜殺人事件 生還】
【葉崎栞@吸血桜殺人事件 生還】



※三日目まで防空壕@墓場島殺人事件に籠ってました。

※冬部蒼介の参戦時期は後続の書き手にお任せ状態、葉崎栞の参戦時期は金田一から全ての事情を聞いた後でした。

※めでたく一日目に合流し、和解を果たし、近くの防空壕に逃げ込みました。
 三日間で色々あった為、帰った後で森下・汐見・春菜よろしく栞の妊娠が発覚。
 それによって、生還後に結婚する事になりました。おわり。
 その辺りの詳しい経緯や会話内容は金田一ファンの皆さんのご想像にお任せします。

※このように、情報を最低限に抑える事で多用な解釈が可能な作品もたまにはあってはいいのではないかと思います(本当にいいかどうかは置いておいて)。

※前話のエピソードをなんとなく理解できたのに今回全く話の意味が理解できないという方や、
 もはやこの辺りを想像する余地がないくらい、冬部や栞の事を知らない方。

 あなたは、もしかすると『金田一少年の事件簿R』の『吸血桜殺人事件』を読んでいない可能性があります。
 今回の金田一ロワの話について把握したいのであれば、是非目を通しておく事をオススメします。



 そういった方々の為に、把握の方法を今から説明します。

 『吸血桜殺人事件』は、単行本では、6巻と7巻に収録されている事件(『R』の単行本です。無印と間違えないでください)です。
 ちなみに、解こうとした側からの忠告ですが、この話はトリック的に考えて、推理はほぼ無理なので、問題編で悩まずに普通に解決編まで一気に読んじゃいましょう。
 一応、がんばれば犯人くらいならわかるかもしれませんが、トリック当てはヒント少なすぎて鬼です。
 解けなくても、あなたの頭が悪いのではなく、作った側がずるいだけなので、気にしないでください。

 下記のURLはAmazonのリンクです。

『金田一少年の事件簿R』6巻
 ttps://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E7%94%B0%E4%B8%80%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E7%B0%BFR-6-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E3%81%95%E3%81%A8%E3%81%86-%E3%81%B5%E3%81%BF%E3%82%84/dp/406395420X

『金田一少年の事件簿R』7巻
 ttps://www.amazon.co.jp/dp/4063954838/ref=pd_lpo_sbs_dp_ss_2?pf_rd_p=187205609&pf_rd_s=lpo-top-stripe&pf_rd_t=201&pf_rd_i=406395420X&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_r=0PK8YW3KKEC5WWQ73W05

 Kindle版も存在するようです。
 他には、GEO等でレンタルコミックとして見るのも一つの手かもしれません。場合によっては図書館にあるかもしれませんが、その辺は知りません。
 ちなみに、ブックオフで立ち読みという手を使うにしても、現状、このシリーズが108円で並ぶには新しすぎますし、中古がある保証はありません。
 無料で済む立ち読みで片づけられないようで申し訳ありませんが、まあ金田一ほど文字多い漫画を立ち読みすると足腰が痛くなるのでやはり手元に置いてゴロゴロしながら読んだ方がいいでしょう。
 もしかすると、友達に貸してもらえればタダかもしれません。
 ただし、それは漫画を貸してくれるような友達が金田一を持っている事が前提なので、かなりの好条件が続かないと難しくなります。
 金田一を読んでいる人間こそ多いものの、「いまだに金田一を集めている」というのは限られた人間なので期待しないでください。
 万引きしてもタダですが、それは絶対にしないでください。犯罪は芸術なんかじゃありません。
 あるいは、運よく道端に金田一が落ちていた場合、それを警察に届け、半年待てばタダで金田一を手に入れられます。
 しかし、そうした幸運は、貸してくれる友達がいる幸運以上に少ない確率なので、半年待つくらいなら買った方が良いのも事実です。
 結論から言うと、買うのが一番手っ取り早いです。
 こんなロワのお陰で、この世で金田一が一冊売れ、仮にもフォローしている漫画に対し経済的な貢献が出来た事実があれば嬉しいので、ぜひ、「金田一ロワのお陰で金田一買った」というネタに数百円えるならば買ってください。


203 : if ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:11:26 TQEuYb3Y0

※また、上記には6巻と7巻のリンクを貼りましたが、6巻には中途半端に『蟻地獄壕殺人事件』の後半だけ収録されてしまっています。
 そこで、単行本の買い方に関してですが、もし経済的余裕が多少なりともあるならば、1巻〜7巻までを購入(レンタル)するという形がベストかと思われます。
 かつて、無印で丁度『悲恋湖伝説殺人事件』が終わる巻数ですが、『R』でも『吸血桜殺人事件』で終わるので、ひとまずここまで買えば区切りが良い形になります。
 そもそも、6巻や7巻だけ手元に置いてあるのは気持ちが悪いという方もいるので、やはりこの薦め方も一つの手かと思います。
 Rの最初の方くらいならブックオフやエンターキング等の新古書店にあるかもしれません。
 新古書店を薦めるのは講談社に申し訳ないですが、結果として金田一に興味を持ってもらって、「今月発売の10巻をいち早く手に入れたい」とまで思わせる事が出来ればと思い、薦めさせて頂きます。
 流石に漫画を1巻〜7巻まで新刊で買えと他人に言われて買ってくれる人はなかなかいませんし、元々興味がなかった方々に金田一が行きわたれば作っている側も本望であると思います。
 始めは中古でもいいんです。買って読んでもらって、そこから10巻に繋げられればいいと思うのです。
 とはいえ、半端に蟻地獄壕が入ってたり、6巻・7巻だけ持ってても気持ち悪くないという方は、是非、6巻と7巻の『吸血桜殺人事件』だけを読んでみてください。
 あんまり薦めすぎても引かれるだけなので、把握する必要がある部分だけ読めばいいと思います。

※ここからは『吸血桜殺人事件』の個人的な評価になります。
 このRシリーズは、微妙なトリックかつ人物描写が希薄な事件が多いかと思いますが、『吸血桜殺人事件』だけは、何故か良く出来ているエピソードです。
 トリックをどうこう言うより、初期のような人間ドラマを踏襲している点が評価に値する事件かなという事で、初期金田一が好きな人にオススメです。
 それ以前の『R』の収録事件は脱力する点が少なからずあると思うので、ネタとして楽しむのもアリかもしれません。

※1巻〜7巻を纏めて購入(レンタル)する方の為、主観による難易度を説明します。
 難易度を知らない状態で読むのを楽しみたい方や、別に1巻〜7巻を纏めて購入しない方は読み飛ばして構いません。
 行きます。


204 : if ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:11:40 TQEuYb3Y0

 難易度基準
 難易度:むずかしい(むずかしい事件です。読者の10パーセント以下しか解けないであろう難問です)
 難易度:ふつう(ふつうの事件です。これまでの金田一を知っていれば解けるかも)
 難易度:かんたん(悲恋湖とか魔神遺跡とかの事です)
 難易度:その他(事件特有の問題があり、難易度を図る事が困難な場合です)


 雪鬼伝説殺人事件→難易度:ズル(犯人はわかりますが、メイントリックのヒントが皆無なので完答できるわけがありません)
          トリックは後出しです。何の根拠もないあてずっぽうなら当てられるかもしれません。過去に別のミステリに似たようなトリックはあるそうです。
          真面目に、「犯人はわかったけど、この人はどう死んだんだ?」という部分を推理しようと悩むと馬鹿を見ます。

 亡霊校舎の殺人→難易度:ズル(犯人はわかりますが、メイントリックのヒントが皆無なので完答できるわけがありません)
         トリックは後出しです。何の根拠もないあてずっぽうなら当てられるかも。
         真面目に、「犯人はわかったけど、こいつはどうやってここに移動したんだ?」という部分を推理しようとすると馬鹿を見ます。

 狐火流し殺人事件→難易度:ズル(犯人はわかりますが、メイントリックがずるいので完答できるわけがありません)
          真面目に、「犯人はわかったけど、こいつはあの時にアリバイが……」という矛盾で悩むと馬鹿を見ます。
          ただ、注意深く見ると、確かにそのシーンが……。金田一視点では色々おかしい気がしますが。

 蟻地獄壕殺人事件→難易度:わけわからん(そもそも現場の構造が複雑なので考える気になりませんでした)
          トリックの一つくらいなら頑張ればわかると思います。
          複雑な蟻地獄壕の構造を理解する気になれるなら、挑戦するのもアリかもしれません。私はあの図面見てやめました。
          むしろ動機の流れで怒った人が多いようです。

 学生明智健悟の事件簿→難易度:なし(最初から犯人がわかっています)
            古畑任三郎で見ました。

 吸血桜殺人事件→難易度:ズル(がんばれば犯人はわかりますが、メイントリックのヒントが皆無なので完答できるわけがありません)
         私は犯人すらわかりませんでした。
         トリックは、『雪鬼伝説』や『亡霊校舎』同様、後出しなので真面目に推理しようとしないでください。

※金田一とはあまり関係ないですが、予約したけどモチベが上がらなかった場合や、思ったより話が膨らまなかった場合、
 このロワではあまり気にせず、こういう感じの話を投下しても構いません(他の人からのリレーだと駄目だけど)。
 つまり、これは、いわゆる一つのお手本です。
 「どのくらいなら許されるのかわからない」と悩んでいる方も、「とりあえずルールに違反してなきゃ許す」と思ってください。


205 : if ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:12:07 TQEuYb3Y0





※ちなみに、ほぼ関係ないですが、『金田一少年の事件簿R』の最新刊は8月17日発売予定です。

 下記のURLはAmazonのリンクです。

『金田一少年の事件簿R』10巻
 ttps://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E7%94%B0%E4%B8%80%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E7%B0%BFR-10-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E3%81%95%E3%81%A8%E3%81%86-%E3%81%B5%E3%81%BF%E3%82%84/dp/4063957403/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1470160000&sr=1-1&keywords=%E9%87%91%E7%94%B0%E4%B8%80%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E7%B0%BFR

 今回は、『ソムリエ明智健悟の事件簿』、『黒霊ホテル殺人事件』の二作が収録されています。
 金田一ロワに参戦可能となっているキャラは、この『黒霊ホテル殺人事件』までの登場人物なので、ここまで買えばよろしいかなと思います。
 いまURL貼って気づきましたが、表紙公開してたんですね。結構いいんじゃないでしょうか。楽しみです。

※『金田一少年の事件簿R』の最新話が掲載された週刊少年マガジンは今日発売ですが、事件の途中です。


206 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/03(水) 14:12:24 TQEuYb3Y0
投下終了です。


207 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 15:00:24 aPjRzniE0
投下乙です
ってなんじゃいこれ!?
防空壕には3日間襲われなかったという解釈でよろしいのでしょうか?
この二人しか生還しなかったわけじゃなくてこの二人の他+これから現れる生還者って解釈でよろしいのでしょうか?

質問ばっかりでしたが幸せに暮らせよと二人を祝福します


208 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:43:33 sUMZDKiY0
生還して結婚の話を呼んでふと金田一って大体犯罪者や後ろめたい人たちの集まりのせいか赤の他人から何故かカップリングが生まれませんね
違う事件の人同士の恋愛には発展しないんでしょうか?

投下します


209 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:44:30 sUMZDKiY0
霧島純平は高揚していた。
その男は躊躇いなく人体を切断させた。
そこにはなんの抵抗もなく、まるで繊維に沿って綺麗に野菜の皮をむいてゆく手際の良さを披露しながら短時間で女性を肉塊に変えたのだ。
斧という原始的で野蛮な武器で緻密な繊細にやってのけた。

「お、俺もあんな風に――」

ばらしてみたい、狂った思考だと理解しても高ぶる殺人衝動を抑えられなくなりつつある。
高遠と同じ、天才、生まれながらの犯罪者、それをあの窓から嗅ぎ取りすぐに楊と佐伯と別れてすぐに尾行を始めた。
ついてるのかついてないのか、あの2人もこっちの教師側との接触をはかっていたらしい。
そして一連の出来事を苦戦はすれど結果は圧勝という形で幕切れであった。
高遠の才能はまだ芽吹きだとすれば、こっちの才能はすでに開花している。

「ふふ、ふふ……」

俺の15年の人生で2人もの同族に出会えることに狂喜していた。
類は友を呼ぶ、磁石の様にそれは引き付けあうものだと運命を初めて感心した。
あの男もこの手で殺したとすればどのような達成感を味わえるだろうか、想像すら付かない。
当然誰にも犯人だと思われない様に2人は現場から離れていく。
俺もそれに導かれていく。





「まずはお互い情報交換といこうか佐伯くん」

明るく務めている様に振る舞う六星は佐伯にちょっとおどおどした感じで小田切進として演じる。
だが既に相手も相手だったがこっちもこっちで本性がやばい人間なのを知っているのでなんとも白々しい演技なんだとドン引きする。

「先生よ、お互い素でいきましょうや」
「僕はむしろこっちが素で通してるんだけどなー」
「あんたさっき思いっきり俺を呼び捨てていたじゃないか……」

参ったと困った様に笑う。
が、すぐに六星竜一の姿に様変わりする。

「まず、そうだな。共通の認識として七瀬さんを知っていたみたいだな」
「七瀬美雪だな、あの女は楊蘭と名乗っていたみたいだが……」
「本当に別人だろうな彼女は」

そもそもあんな自己紹介すら必要なかったはずだし、彼女からは幼馴染の彼に対する依存さがまるで無かったと教師目線で分析する。

「不動高校ってあれだろ?最近七不思議になぞらえた事件があったって話題になった学校なんだってな?ああいうのって教師も大変だったりするのか?」
「七不思議になぞらえた?お前は何を言ってるんだ?」
「はあ?すげー話題になってたじゃねーかよ。青山なんとかって行方不明になっていた生徒が発見されたとかってマスコミが大騒ぎだったじゃないか」

佐伯は興味のない事件だったが彼が悲報島で起こした事件の探偵役として金田一一を選んだ理由としておおやけにはされてなかったが何個かの事件を解決したことのある素人探偵という理由だったはずだ。
中学校の飛び込みプール事件、オペラ座館での事件、青森の六角村の事件、北海道の背氷村の事件、そして悲報島で事件を起こす1週間前に解決した不動高校の事件。
厳選に調査を進めたはずだ、復讐は遂げようとあまりにも優秀な探偵役をチョイスしてしまったわけだが。


210 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:44:50 sUMZDKiY0
「七不思議、青山ちひろ……、あったな確かにそんな噂があるな」

成りすましで過ごす六星には知識としてはあるが、真相などはどうでもいい。
だが何故マスコミに騒がれたというわりに自分は知らないんだ?

「思い出してきた。物理室のミステリー研究会ってとこの担当のセンコーが確かその青山って奴の親父に殺されたはずだ」
「ミステリー研究会ね……」

ついさっき別れたばかりの老人を思い出す。
なんか裏があるとは思ってはいたがやっぱり黒であったか……。
だが、死んだだと?
津雲も的場が生存していたことに疑問はもたなかったはずだ。
どうなっているんだ、これは?

「どうした先生、顔色が悪いぞ?」
「ちょっとね、動揺しているんだ」

ふうとため息を付き、汗をぬぐう。

「さっき俺はその的場と会話をしていたんだがね」
「的場……、そうだそんな名だ」

パズルが埋まっていくのにパズル自体がまったく別のものを埋めていく感覚に気持ち悪さを覚えた六星。

「お前未来人か?」
「んな真顔で何言っているんだよ?」
「疑問で疑問を返すな」

佐伯も噛み合わない会話にごちゃごちゃしてくる。
俺は未来人だったのかとさえ思えてくるほどに。

「俺の勘違いかもしれん。金田一って奴の解決した事件の経歴にオペラ座館とか六角村とかそんなんが出てきただけだ」
「ちょっと待て、何故そこで六角村が出てくる?」
「だから金田一が解決したんだろ?その青森だか忘れたけど村人が全滅した事件」

佐伯の口からは六星のことを言い当てる様な決定的な発言が飛び出した。
首のない花嫁、響き渡る葬式の鐘の音――。


211 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:45:10 sUMZDKiY0



オペラ座館、たしかに1週間前に騒がれた演劇部での女子生徒殺傷事件。
佐伯からはその1週間後に六角村の事件に巻き込まれる旨を聞かされた。
麻薬の密売していた村、不動山市で発見された身元不明の遺体、全滅した村人、そこそこに話題になったニュースだ。
高校生が事件を解決したとは公言されてはいないが、世間的には話題になっているはずだ。

「そうか……、俺が近頃起こす事件はそんなことになるのか」

佐伯からは覚えている限り事件の詳細を聞かせてもらった。
さっき殺した女がその村人だと教えたら現在六星の身に起きている異常が佐伯にもよく伝わった。
そして教わった自分の死。
だが、六星は特に気にすることないとばっさり切り捨てた。

「俺が金田一を連れて行かないなり、大幅にトリックを変えちまえばいいんだ」

むしろ村人の全滅という結末を知れたのだ。
もっと完成度が高く残虐な方法で始末すればいい。
佐伯から得られた情報は彼にとっては最高の贈り物であった。
そんな未来、変えちまえばいいと……。


212 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:45:39 sUMZDKiY0



「それで先生よ、俺は『災厄の皇帝(エンペラー)』を殺してやりたい。俺と協力しないか?」
「協力か……」

佐伯という男は自分と似た思考であること、こっち側の人間であることから気に入りつつあった。
『災厄の皇帝(エンペラー)』を殺す、俺の邪魔をしてしまった以上それはぜひにもやっておきたいことだ。
生きているだけで邪魔になる人間だとしたら尚更だ。

「だが青いなお前」

13歳で6人を殺した男にきっぱりと叩き付ける。

「始めての殺しはいつだ?」
「9歳で伯父を殺った」
「ほう、お前って奴はとことん境遇が似てやがるな」

六星も幼少期に身内を殺した男だ。
息子にしてはでかいし、兄弟にしてはちょっと幼い。
そんな風に佐伯を観察していた。

「でも青い」
「むしろ碧といってくれ」

「いや、なんでもない」と笑って付け足す。

「じゃあどうすればいいんだよ?」
「そうだな……、次に出会った参加者を殺ってみろよ。方法ややり方は問わない。ただ殺っただけで協力してやろう。足手まといはいらないんでな」

と言って六星は木々の間を睨み付ける。
そこからはずっと尾行をしてきた霧島純平が姿を現していた。

「あいつ霧島か!?」

案の定佐伯は霧島の尾行に気付いていなかった。
「だから青い」と3度目の忠告をする。

「知り合いか?」
「名前だけ知ってるだけ。まああいつ糸ノコ持ってきたりと怪しさ万全だったし」

殺すのにはまったく抵抗がないと付け加える。
だが困ったことに佐伯には武器という武器がない。
メイド服での絞殺なんて不意打ちでやっとだろう。

「先生、武器くれよ」

あっけからんと右手を伸ばし六星におねだりする。
六星は舌打ちをしながら五塔の持っていたボウガンの矢を1本のみ手渡す。


213 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:46:02 sUMZDKiY0
「ずっりーよな、先生は斧なんか持ってるくせに俺にはあのおばさんの中古かよ」
「むしろ素手だけでも骨折させたり骨をずらすくらいわけないだろ」
「あんた、どんだけチートスペックなんだよ……」
「お前の倍生きている人間だ。お前も出来るさ」

13歳に殺しを説く27歳。
13歳佐伯は口には出さなかったが絶対無理だろとちょっと目の前の男に恐怖とドン引きをした瞬間であった。

「おい、そこのお前」
「!?」

霧島に語りかける六星。
霧島も驚いてそれに反応を示す。

「俺は手を出さねえ、だから佐伯を殺ってみろ」
「あ、ああ!」

霧島は恐怖心より楽しさの気持ちの方がどんどんあふれ出ていた。
もうすぐ自分は夢にまで見た殺しという行動に移すのだから。

「おいおい、なにやる気にさせちゃってんだよ」
「あんな勘違い野郎一瞬で殺せ。人を殺すことでしか生き抜けなかった俺たちとは違うただの狂人ぶった馬鹿野郎だ、吐き気がする」

霧島という人間の器の小ささを前に六星は彼への殺意が増していた。
絶対にありえないが佐伯が殺されて霧島が勝った瞬間六星は霧島を殺すつもりであった。

「人殺しなんてハエやゴキブリを殺すのと同じさ」

初めて殺せそうにない人間に背を見せながら面倒そうに霧島に向かう。

「早くこいよ!」

イライラしてきた霧島は頭に血が上ってきた。
青いという評価すら過大に見える問題外だ。

「1つだけお前にアドバイスをやろう」

佐伯を応援のつもりだろうか?
ちょっと興味ありげに耳を傾ける。

「生きる術は理屈じゃなく身体で覚えるんだ」

常に理屈なんか凌駕して身体1つで生き抜いた男にとっての生き様そのものであった。

「お前と楊を見た瞬間からどっちでもいいから殺したかったぜ佐伯!」

(ピーピーうるせえ虫だな。どっちでもいいからって安い殺意だな……)

佐伯は既に霧島など眼中になく『災厄の皇帝(エンペラー)』をどう探すかの方へ思考はシフトしていた。
そんな佐伯のことなど知らずナイフを向け一直線に霧島は突き進んできた。
ナイフが佐伯の腹を抉るまでの距離――残り30センチ。


214 : 生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:46:25 sUMZDKiY0
【一日目/黎明/不動高校周辺】


【六星竜一@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(小)、五塔蘭に真相を聞かされたことによる精神的ダメージ(軽)
[装備] ジェイソンの斧@悲恋湖伝説殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:六角村の連中は皆殺し。
0:六角村の連中は凝った演出をして場を彩る
1:他の連中はどうでもいい、生死すらどうでもいい。
2:気が向いたら不動高校へ案内する。
3:佐伯はそれなりに共感できるから殺すのはもったいない。
4:万が一にもないが佐伯が負けて霧島が勝った瞬間霧島も殺す。
[備考]
※参戦時期は、小田切進(本物)発見〜異人館村殺人事件前。
※異人館村殺人事件の結末を知りました。



【佐伯航一郎@秘宝島殺人事件】
[状態]健康、動揺(小)
[装備] 布施光彦のボウガンの矢1本@オペラ座館殺人事件、伊志田が着ていたメイド服@不動高校学園祭殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体を暴き、殺す。
0:歯向かうと殺される可能性があることはわかっているので、大っぴらには活動しない。
1:とりあえず色々な人に話を聞きながら手掛かりを集めて、色々考える。
2:人殺しなんてハエやゴキブリを殺すのと同じさ。
3:楊蘭にはなんとなく共感するので殺したくない。
4:メイド服では首を絞めるくらいしかできないので、できればまともな武器が欲しい。
5:先生と協力をする(信用はしない)。
6:まずは霧島を殺す。
[備考]
※参戦は秘宝島殺人事件の犯行後です。
※6人殺害しているものの、まだ13歳だし反省していたのですぐに出てきました。
※頭が良いそうです。
※女装癖があります。
※六星竜一とはあまり争いたくないし、味方につけられたら使えるかもしれないと思っています。




【霧島純平@高遠少年の事件簿】
[状態]健康、六星に当てられ狂喜
[装備]金田一が人形を切断するのに使用した折り畳み式ナイフ@異人館村殺人事件、糸ノコ@誰が女神を殺したか?
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺す。
0:誰かと二人きりになったら、基本殺す。
1:殺した死体は、余裕があればサプライズ感が出るように演出する。
2:佐伯を殺す。その後六星もできれば殺りたい。
3:楊蘭は「日本は平和で良い」とか言っていて気に入らないので、できれば殺したい。
[備考]
※参戦時期は、高遠少年の事件簿における最初の事件の直前くらいです。
※とりあえずこのナイフで人を殺せるかどうか試してみたいので、ずっとチャンスを伺っています。


215 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/03(水) 22:49:14 sUMZDKiY0
投下終了です
遠野英治、霧谷凛、雲沢夏樹、冬木ウメで予約します


216 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/03(水) 23:07:24 144hEZrs0
投下乙です。

>if
ファッ!?...まあ、冬部さんは本編で頑張ったからね。こういったハッピーエンドも祝福したい

>生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい
ノリノリな小田切先生に霧島くん
果たして彼らの運命や如何に(霧島勝ち目なくね?)
佐伯、やっぱり反省しとらんやんけ


冬部蒼介、葉崎栞を追加予約します。


217 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/04(木) 03:31:06 FM6tQ7RI0
感想は申し訳ないですが、後にします。

神小路陸、甲田征作、鐘本あかり、ノーブル由良間で予約します。


218 : 名無しさん :2016/08/04(木) 07:50:08 L2Yxh9Bk0
殺意の高すぎるアイドル達を見た後はここに来ると安心できますね


219 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:48:07 979BHjmg0
投下します


220 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:50:01 979BHjmg0
「はい、あなた」

栞さんが、仕事帰りで腹ペコの俺に白米をよそってくれる。

俺の隣には、彼女との子供―――ひとり息子が行儀よく座り、家族三人で食卓を囲んでいた。

あの奇妙なバトルロワイアルツアーでの三日間、俺と栞さんは恐怖を憶えつつも互いに励まし合い生き延びた。
思ったよりも犠牲者は少なく、優勝者も決まらなかったため得点を巡る争いにも発展せず。
多くの生存者はこれまで通りの、または俺のように少し変わった生活に戻っていった。
だから、これは多くの参加者にとってのハッピーエンドという奴なのだろう。

「......」

だが、それでいいのか。
栞さんに許され、俺は過去に犯した罪を清算したといえるのか。

「あなた?」

栞さんが俺の様子に気が付いたのか、顔を覗き込んでくる。

「どうかしたの?」
「...俺は、本当にこれでよかったのかな」

同じ生還者として、つい本音を漏らしてしまう。

「栞さん。きみは俺を許してくれた。でも...きみの兄さんは、あいつは、俺を許してくれるはずがないんだ」

つい箸を握る手に力が籠ってしまう。このままへし折れそうなくらいだ。

「岳人だけじゃない。俺は、両親やきみも不幸にしてきた。そんな俺が、こんな...幸せに...!」

俺はなにを言っているのか。
決して不幸になりたいわけじゃない。
けれど、このままではいけない―――そんなふうに思ってしまう。

「...きみは、まだ自分を許せてないんだよ」

しばらく間をおいて、俺の子供が口を開いた。

「蒼介くん。俺は、きみを許さない」
「おまえ...なにを...?」

俺は子供に手を伸ばし―――気が付く。
彼の声が、顔が、彼自身の存在がまるで別の者に変わっていくことに。

「でも、きみが夏美を幸せにしてくれるなら、俺のことを忘れずに時折思い出して弁護士として頑張ってくれるなら。俺はそれでもいいと思ったよ」
「あ、あぁ...」

俺はわかった。
俺の子供が、なにに、誰に変わっていくのかを。

「きみは...ああ、そんな...!」
「でも、肝心のきみが納得していないなら駄目だ。きみがこの人生を幸せだと思ってくれていても、納得していないなら駄目だ」

俺の子供―――いや、『彼』は言った。
悲しいくらい優しげな微笑みを浮かべて―――『彼』は俺の手にそっと掌を重ねた。

「だから...もし、きみが『納得』していないなら、最後まで戦ってくれ。きみが弁護士を目指した本当の理由と共に」

『彼』―――岳人のその言葉を最後に、俺の偽りの幸せは消え失せた。


221 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:50:33 979BHjmg0



「うっ...」

冬部蒼介は目を覚ます。
彼の隣には、葉崎栞―――自分がイジメ殺してしまった青桐岳人の妹―――が眠っている。
別に殺した比喩とかではなく、普通にスースーと寝息を立てて眠っているのだ。
ここはどこだ―――周囲を見回し、これまでのことを思い出す。

俺は葉崎栞に刺されることで罪を償い、彼女に疑いをかけぬよう桜を己の傷口に刺して後は死を待つのみだったはずだ。
ところが、目を覚ませば傷はすっかり消えており、あの九条とかいう男から珍妙な殺し合いツアーの説明を受け、再び眠りにつかされた。

目を覚ませばそこは樹海で、暗闇のために視界もきかず、このまま突っ立っていても仕方ないのであてもなくさまよっていた。
傷は塞がっていたものの、出血はそのままだったようで、貧血気味になりながらもやがて初めて参加者に遭遇。
その参加者は紛れもなく葉崎栞―――俺がその命をもってして償おうとした少女だった。
あの事件のこともあってお互いに気まずい空気が流れ、俺がどうにか声をかけようとしたその時、彼女は深々と頭をさげ謝罪の言葉を涙とともに吐き出した。

突然のことに俺も動揺してしまい、それ以上に混乱する彼女を落ち着けるためにも俺は近くにあった物置らしき場所に避難。
彼女から大まかな説明を聞いている内に貧血で気絶。次第に彼女も泣き疲れてしまい眠りについた。

事の顛末はこんな感じだった。


(...まあ、流石にあんな目立つ防空壕に三日間二人っきりなんて都合がよすぎるよな)

あの防空壕で過ごした三日間は夢だったのだろう。あんな都合の良い出来事、夢に決まってる。
冬部はそう結論付けた。

状況を整理したところで冬部はこれからの方針を考える。

自分はもちろん、あの様子では栞も優勝には興味が無いだろう。
また、自分は死んでも構わないが、栞は絶対に死なせるわけにはいかない。
そこで優勝を目指さない自分達がとるべき行動は二つ。
争いを望まない参加者と合流すること。そして、三日間無事に過ごせる場所を探すことだ。
さて、いつ栞を起こそうかと冬部がタイミングを測っていた時だ。

『――――――――――!』

耳に届いた悲鳴。
あの甲高い声は、子供だろうか。

(まさか、殺し合いに乗った奴に襲われて――――!!)

このまま隠れて見殺しにするわけにはいかない。
かといって、危険人物のもとに栞を連れて行き危険に晒すわけにはいかない。

「栞さん、起きてくれ」

そこで、冬部が選択したのは、自分一人が現場へ向かうことだった。

突如起こされ、状況がつかめない栞の肩を掴み冬部は説明と共にこれからの行動を指示する。

「いいかい。さっきこの近くで子供の悲鳴があがった。俺はそこへ向かい、その子供を救けに行ってくる」
「だ、ダメよそんな...危険だわ!」
「見捨てることはできないんだ。...それで、もし俺が20分以内に戻ってこなければ、きみはどこか遠くへ逃げてくれ」
「...わ、わかったわ」

渋々と頷く栞を物置に待機させ、冬部は貧血で覚束ない足取りで悲鳴のもとへと向かう。

(頼む、間に合ってくれよ...!)


222 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:50:55 979BHjmg0





(ますみお姉ちゃん...!)

少女は走る。ただ走る。
自分を逃がしてくれた、遊んでくれると約束したあの人を救うため、ひたすらに我武者羅に走る。
だが、未だに希望は見えない。
進んでも進んでも森、森、森。

自分がちゃんとあの場から離れられているのかもわからない。

どれほど走っただろうか。

やがてるりは森を抜け、道路へと到着する。
よかった、ようやく抜けられたのか。そんな安堵すらする暇もない。
例え足が潰れようとも、救けを見つけるまで足を止めてはいけない。

よろよろとした足取りで、それでもるりは進む―――


「おっと」

カーブの影で隠れていた青年の膝にぶつかり、るりは尻もちをついてしまう。

「どうしたのきみ?そんなに慌ててさ」

青年は控えめに見ても整った顔立ちであり、その爽やかな笑みからは、人見知りのケがあるるりからしても良い印象しか受けない。

「おい、多間木。なんか見つけたのか?」

次いで後方から現れたのは、どこか冷たい目をしたロン毛の青年と、ジャージ姿の目付きの悪い女性。
多間木と呼ばれた青年以外は、どこからどう見ても悪人面である。

「古谷...いや、なんか女の子がぶつかってきてさ。大丈夫かな〜、お嬢ちゃん」
「ハンッ、イイヒトぶってんじゃないわよ」
「人聞きの悪いこと言うなよ海堂」

意地わるく鼻を鳴らす海堂に、多間木は困ったような笑みを見せる。
多間木以外は少し怖い雰囲気を漂わせているが、少なくとも先程のおばさんのような気味悪さは感じなかった。

「あ、あのっ!」

だから、ようやく出会えた希望にるりは賭ける。

「ますみお姉ちゃんを助けて!」

決して縋り付いてはいけない泥船に乗り合わせてしまったことにも気づかずに。


223 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:51:28 979BHjmg0




「なあ、連城さん。これって子供の足跡だよな?」

その頃の獄門塾付近の森の中。
そこに参加者の調査をしに来た警官Bと連城の二人は、子供の足跡らしきものを発見する。

「......」
「とりあえず追おう。子供なら保護しないといけないしな」

連城の返事を聞かず、警官Bは足跡を追っていく。
まあ、返事も何も、覆面被ったままほとんど言葉を発さないような奴なのでこの対応は間違ってはいない。警官Bが悪いわけではないのだ。

数分程歩くと、途中で足跡は薄くなり、追跡は困難となってしまった。

「ちっ、これじゃあ見失ったも同然じゃないか」

警官Bは、舌打ちと共に溜め息をつく。
そんな己の無力感に苛立つ警官Bの肩を叩き、連城が指を西方へと向けて指を指す。

「なんだ?...あれは物置か?」

連城は頷き、物置へと足を進める。
もしかしたらなにか見つかるかもしれない。そう思ったからだろうか。
警官Bとしても、道具はあるにこしたことはない。
そのため連城に続き、物置へと向かう。

そして、連城が扉を開けたその時だ。

「きゃああああああ――――――!!」

!?

突如、女性の悲鳴が響き渡りペットボトルやらチョークやら様々なものが連城へと向けて投擲される。
明らかに恐怖し錯乱している。それほど怖い目にでもあったのか。
そう思った警官Bは、連城の前へと進み出て、女性を落ち着かせるために手帳を見せる。

「安心してください、私は警察です。よければ事情をお聞きしたいのですが...」
「え...警察?」

警察。それは法に従い悪を捕える正義の味方である。
それを認識した彼女―――葉崎栞は、どうにか気持ちを落ち着かせて現状を告白することにした。

ちなみに、なぜ彼女はモノを投げつけたか。
隠れていたところに突如不気味な覆面男が扉を開けてきたら誰だってそうするでしょ。


224 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:52:56 979BHjmg0




るりは語った。
ますみと共に変なおばさんに襲われたこと、そしていまはますみが足止めをしてくれていることを。

「げぇ〜、マジかよ」

多間木は殊更に嫌悪の表情を醸し出す。
ボウガン片手に女の子を色々な意味で狙い撃ってくる熟女など想像もしたくないだろう。
多間木の反応は決して間違っていない。

「どーするよ」
「決まってんでしょ」

るりは、目を瞑り祈る。
どうか、彼らがますみの助けになってくれることを。

「んなヤバイ奴がいるならさっさと逃げるのよ」

海堂の言葉に続き、多間木と古谷も荷物を纏めていつでも出発できる準備をする。

「ま、待って!」

るりは、一番近かった多間木の足に縋り付く。
わかっている。
誰しもが他人のために命を賭けられるわけではないことは。
けれど、ここで彼らと別れてしまえば、ますみはもう助からないかもしれない。
そのため、なんとしても手助けして貰わねばならない。
そのるりの焦りが彼らに縋り付くことになってしまう。

だがそれが逆に彼らの逆鱗に触れた。

「しつけーんだよ、ガキが!」

多間木の突如の豹変。
これには思わずるりも驚き息を詰まらせてしまう。


225 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:54:07 979BHjmg0

「どうして俺たちがテメェのツレを助けなきゃならねえんだ、ああ!?んなもん警察にでも頼みやがれ!」

しがみつく手は、しかし振り払われ足元に唾を吐きかけられる。
その様を見て、古谷も海堂もニタニタと笑みを浮かべている。
恐い。さっきまで大人しかった人たちが、いまはあのおばさんみたいに見えてくる。
でも、ここで逃げたらますみは助からない。だから。

「お願い、るり、なんでもするから!だから...!」
「しつけーって言ってんだよ、なんべんいわせりゃわかんだよ!」
「多間木」

怒りの激をとばす多間木を押しやり、古谷がるりの前に立ちはだかる。

「こういった生意気な手合いはな...」

瞬間。
るりの腹部に古谷の爪先がメリ込み、あまりの激痛にるりは蹲る。

「こうしちまうのが一番だ」

古谷はしゃがみ込み、蹲るるりの髪を掴み上げる。

「おいガキ。これでもまだ俺たちに頼みたいか、あ?」
「おねが...い...ますみ、おねちゃんを...」
「しぶといガキだ」

古谷は拳を握りしめ、るりの顔へと向けて振り下ろす―――が。

「ちょっと待ちなよ」

海堂の制止の言葉により、古谷の拳は止まる。

「殴るのも悪くないけど、どうせならもっと面白いゲームにしない?」

彼女が手に持つのは、手ごろなサイズのビデオカメラ。
それをまわしながら、海堂は笑みを浮かべつつるりへと歩み寄る。

「ねえ、さっきなんでもするって言ったよね?」
「え...」
「だったらさ、当然、こういうのも覚悟できてるんだよねぇ!」

海堂はるりの帯を解き、着物をはだけさせる。


226 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:55:04 979BHjmg0

「きゃあああああ!」
「ハンッ、ガキの癖に一丁前に恥ずかしがっちゃってさ!」

思わず両手で着物を掴むるりを海堂は鼻で笑う。

「お、おい...?」
「アッタマワリーわね。ここに玩具があって、ビデオカメラ持ってたらやることは一つでしょ」
「...ああ、そういうことか」

海堂の言葉に、多間木と古谷は邪悪な笑みを浮かべ、るりを取り押さえようとする。

「小学生のヌードっつーのは売れるのか?」
「さぁねえ。けど、マニアな奴には人気あるっしょ...まあ、そういうわけだから、あんまり見えるところを殴らないでよね」
「ハッ、良い趣味してるぜ」

迫りくる凶悪な男と女たちの魔の手。

(いや...)

これからなにをされるか―――そんなことはわからない。
けれど、このまま彼らのいう事を聞いていても、ますみの助けには向かってくれないだろう。

(あたしは、ますみお姉ちゃんを助けるの...だから...!)

だったら―――もういい。
こうまでして邪魔するつもりなら、もうこんな奴らには頼まない。

るりは、隠し持っていたスタンガンで古谷と多間木の腕に電流を流す。

「ぐっ!」
「あがっ!?」

腕を抑えてもがく悶える男たちを尻目に、るりは元来た道を引き返す。


227 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:56:16 979BHjmg0

「...っのガキ!」

怒りを露わにする多間木が、次いで古谷、最後に撮影しながら海堂が後を追う。

追ってきた。狙い通りだ。
るりは、もう多間木たちに助けを求めなかった。
断るだけならいざ知らず、邪魔までしてくるのだ。だったらこちらも手段を択ばない。
だから、多間木たちをあのおばさんにぶつけ、同士討ちさせる。

敵の敵は味方―――なんて言葉があるが、るりはそれをやってのけようとした。

ただ、誤算は走りつかれたいまの自分の体力の無さ、そしてほとんど万全である多間木たちとの速度の差だ。

ほどなくして、るりは再び捕まり、今度こそ下着姿に剥かれてしまう。

結局、彼女一人では運命を変えられなかった。
るりはこの三人に玩具にされ、ますみも救えず、悲惨な人生を送ることになる。
それが、るりの運命だった。

故に。

「なにをしている、おまえたち!」

もしも運命を変えられるとしたら、それは第三者の介入だろう。


228 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:57:24 979BHjmg0



悲鳴を聞きつけ、辿りついた先には、三人の男女に押さえつけられ囲まれている女児という異様な光景だった。

(クソッ...)

冬部はまるで悪夢を見ているようだった。
いま眼前で行われているのはまさにイジメ。
冬部も加担していた最低の行いだ。
それも、男二人に女一人という人数比まで同じとくれば、まるであの時の自分達のように見えて仕方ない。

「その子を...放せッ!」

冬部は力づくでるりから古谷たちを引きはがそうとする。が、貧血気味ではロクに力が入らず、突き飛ばされればあっさりと倒れてしまう。
立ち上がっては転ばされ、立ち上がっては転ばされ。
その姿はまさに親父狩りにあうサラリーマンそのものだった。

「なんだぁ、このよわっちいおっさんは」
「もしかしてロリコン?性癖キッモイわね」

ヒャヒャヒャ、と邪悪で歪んだ笑みを浮かべる三人に、冬部は歯ぎしりをする。
こんなやつらに勝てない悔しさではない。
自分と同じ道を歩もうとしている彼らに怒りを抱いてだ。

(チクショウ...)

冬部は、岳人を死なせ、両親までも死なせてしまった時、心から決めた。
自分と同じ過ちを犯す人間をこれ以上増やしたくない、加害者も被害者も必ず減らして見せると。
彼が弁護士になったのもそのためだ。

「...お前達がなにをしようとしてるのか、わかってるのか」
「は?」
「お前達のやっていることは、お前達だけの問題じゃないんだ...!」


だから冬部は訴える。
心から声を絞り出し、彼らの、『かつての自分達』の凶行を止めるために。


229 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 16:58:23 979BHjmg0



冬部は語った。
かつて自分達が犯した罪、そしてそれが招いた被害の全てを。

「イジメは、加害者と被害者だけの問題じゃない...お互いの家族まで不幸にする最悪な行いなんだ。だから、もう止めるんだ...!」

息を切らしながら、冬部は言葉を終える。
苦しい。
当然だ。
貧血による疲労のみならず、自分の過去の傷口を抉っているのだから。

やがて。
海堂がふらふらと冬部へと歩みよる。
彼女は小刻みに身体を震わせていた。

「そ...そんなことがあるなんて...」
「...本当なんだ。俺も、岳人の妹も、全てを失った。きみたちが思っているほど、イジメは軽いことじゃないんだ」
「あ...あたし...!」

海堂は顔を俯けつつ、冬部へと抱き着く。

「お、おい...?」
「冬部さん...」

海堂の冬部を抱きしめる力が強くなり、海堂は未だに身体を震わせている。
よかった、伝わったのか。
仮に、彼女が今までも同じようなことをしていても、後悔する気持ちがあるならまだ間に合う。
被害者に謝り、罪をつぐな






「アンタ、あったまワリーわね」


230 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:01:08 979BHjmg0

ドス。
冬部の背に激痛と灼熱が走る。

冬部の背には、海堂が握り隠していたボールペンが突き刺さっていた。



―――ボールペンが身体に突き刺さるという格闘漫画でもめったに見られない光景を理解し難い・許し難い人もいるかもしれない。
そんな方は金田一少年の事件簿の単行本の一つ『錬金術殺人殺人事件(下)』に同時収録されている事件、高度1万メートルの殺人を一読することをお勧めする。


「ぁ...が...ッ!?」
「ハンッ、なに今さら偽善者ぶってんのさ。所詮あんたも同じ穴のムジナの癖に」


倒れる冬部に追い打ちをかけるように、海堂は彼の頭を踏みつける。
次いで古谷も冬部の掌をぐりぐりと踏みつける。

「くだらねえ綺麗ごとばかり吐きやがって。要はあれだろ?あんた、不様にもマトモな後処理ができなかった負け犬ってことだ」
「キャハハ、言えてる」

何が可笑しいのか、古谷と海堂は互いに笑い合い、ついでと言わんばかりに冬部を蹴り、踏みつけ痛めつける。

「そーそー、それに、そん時は未成年だったんだろ?バレたところで誰かを主犯にして押し付ければよかったじゃん。そうすりゃ年少にちょこっと入るだけで済んだのによ。やっぱバカと金の無い奴は駄目だね〜」

多間木ははケタケタと笑いながら、るりを抑え込み下着を剥ごうとする。

「おい、海堂。そっちのおっさんのリンチは譲るからさ、ビデオカメラ貸してくれよ」
「なぁに、あんたもこのおっさんみたいにロリコンなわけ?」
「ちげぇよ。けどどうせならやってみたいだろ、JSのハメ撮りってやつ。中々できることじゃないし、何事も経験よ経験」
「ハッ、人のこと言えないじゃん」

海堂はビデオカメラを放り渡し、多間木は受け取りビデオ撮影を始める。


231 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:02:06 979BHjmg0

「やだ、やだぁ!」
「暴れんなって。じゃないとまた痛い目に遭っちゃうぞ〜?」

(コイツラ...!)

冬部は、痛みを与え続けられる身体に耐えつつ怒りに手を震わせる。
おそらく彼らは既にイジメかそれに近いモノを加害者として経験しているのだろう。
だが、その態度がこれか?
反省の色が無いどころかまるで玩具のように人の尊厳を、命を弄び、踏みにじる。
これが人間のやることなのか。これが―――!!

「があああぁぁぁぁああ!!」

荒ぶる怒りの感情に任せて冬部が吼える。


―――火事場の馬鹿力、というものをご存じだろうか。
土壇場になって限界以上の力を引きだせるというアレだ。
過去の金田一少年の事件簿においても、短時間で女手一つで氷の橋を作ってみせた雪夜叉や、常人よりは鍛え上げられているであろう剣持警部を暗殺者の如く一撃で殴り倒したファントムの花嫁などがいい例だ。
これは所謂犯人補正という奴かもしれないが、ここはバトルロワイアルという全員が被害者であり加害者にも成り得る場である。
となれば、冬部がその補正を使えたとしてもなんら不思議ではない。


冬部は海堂と古谷を跳ねのけ、多間木を突き飛ばし、るりを救出する。
痛む腹部と貧血から苛まれる頭痛と吐き気に苦しみながらも、冬部はるりを抱きかかえて走り出した。
だが、僅かに走っただけで覚束ない足取りになり、ドサリと前のめりに倒れ込んでるりを落としてしまう。

限界だ。
もう、これ以上自分の力で動くことはできない。
せめて、この畜生どもから彼女だけでも逃がさなければ―――

「に...げろ...」

絞り出した声は、ひどく弱弱しいものだった。
だが、冬部にはもうどうすることもできない。
この少女の、物置に残してきた栞の安否を心配しながら息絶えるだけだ。
しかし。
眼を瞑ろうとした冬部の視界に入るのは、少女の背中。
彼女は、多間木たちから冬部を庇うように立ち塞がっていた。


232 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:02:53 979BHjmg0

「な...ぜ...」

冬部は知らない。
るりが、ここに至るまでに既にますみという新たにできた"友達"を置いてきてしまったことを。
そんな彼女が、自分を助けてくれた冬部を見殺しにするなど、出来る筈もなかった。

やがて、追いついた三人に囲まれたるりは、突き出したスタンガンもあっさり躱され取り押さえられてしまう。
五党蘭に敵わなかったるりが、彼ら三人に敵う道理はない。

冬部は最期の力で立ち上がろうとする―――が、現実は非常だ。
二度も火事場の馬鹿力は起こらない。
冬部に出来るのは、幼気な少女があの薄汚い野獣どもに蹂躙されるのを見届けることだけだ。

(誰か...彼女を助けてくれ...!)

冬部の瞳から涙が毀れ落ちる。

そんな冬部の願いが届いたのだろうか。

ガサリ、と音がしたかと思えば、道脇から現れるのは警官と謎の覆面男。

彼らは、三人を殴り飛ばしるりを救いだす。
るりは気を失っているようだが、命に別状はないようだ。
その光景を見た冬部は、思わず安堵の涙を流してしまう。

「冬部さん!」

彼らの後から現れた栞は倒れる冬部に声をかける。
だが、冬部はもう答えることすらできない。
このままではまずい。
彼の容態を見て危険だと悟った警官Bは三人へと向き直る。

「栞さん、連城さん!あんたたちはその子達を連れて逃げてくれ!俺がコイツラを食い止める!」

相手は三人。ならば片方が残り、片方が怪我人たちを逃がすのが道理である。
そして、怪我人を護衛するならば強い方がつくのも定石だ。
連城はこくりと頷くとすぐさま冬部を背負い、栞にるりを抱きかかえさせる。


「お、おい、警官だぜ。どうするよ」
「慌てるな多間木。ここは殺し合いだ。警官の一人や二人、殺したところで誰も気にかけねえよ」
「そーそー、三人に勝てる訳ないでしょ」

古谷は、ゴキゴキと拳を鳴らし、これ見よがしに強さをアピールする。

(流石に死ぬかもな...)

警官Bは、去っていく二人を横目で見て、冷や汗と共に死を覚悟する。
だが、か弱き市民を護って散るなら警官冥利に尽きるというものだ。

(無事でいてくれよ、連城さん、栞さん!)

警官Bは、己の職務を果たすべく、舌打ちと共に悪鬼どもへと殴りかかった。


233 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:03:59 979BHjmg0


『なに今さら偽善者ぶってんのさ。所詮あんたも同じ穴のムジナの癖に』
『くだらねえ綺麗ごとばかり吐きやがって。要はあれだろ?あんた、不様にもマトモな後処理ができなかった負け犬ってことだ』
『そーそー、それに、そん時は未成年だったんだろ?バレたところで誰かを主犯にして押し付ければよかったじゃん。そうすりゃ年少にちょこっと入るだけで済んだのによ。やっぱバカと金の無い奴は駄目だね〜』

朦朧とする意識の中、冬部の脳裏にはあの三人の言葉がぐるぐると渦巻いていた。

冬部個人としても、彼らの言動は許せない。
しかし、こうも思う。
もしも、両親が自殺していなかったら。
もしも、自分が彼らのように上手くイジメのことを隠蔽したとしたら。
もしも、主犯を絵東や斧田に仕立て上げていたとしたら。

自分も彼らと同じ道を歩んでいたのではないか。
自分のしてきた償いは、罪から逃れるためのただの自己満足にしか過ぎないのではないか、と。
この期に及んで、彼という人間は己の安否よりも、そんな"IF"に苦しんでいるのだった。

(なあ、岳人。俺のしてきたことは...全部、偽物だったのかな)
『僕にはわからないよ』

今わの際に冬部が言葉を交わすのは、自らが殺した『被害者』。
もちろん、彼は既に死んでいる。
そのため、いま話しているのは彼の魂かもしれないし、冬部の頭の中の幻想かもしれない。
それを冬部自身が確認する術はないが、いまとなってはもうどちらでもよかった。

(...岳人。俺は、やっぱり死んで正解だったのかな)

もしも一皮向けば奴らのような畜生と同類だというのなら、やはり死んでしまえと思う。
ならば。
栞の罪を被る形で死のうとしたあの時の決意は、やはり間違っていなかったのだろうか。

『...きみがそれで納得するなら、それでいいよ』

岳人は、目を瞑り肯定する。
やはりそうなのか。
俺も奴らと同じ、最低な悪党なんだな。


234 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:04:52 979BHjmg0

『けれど、きみがいくら偽物だと思おうとも、きみの償いや弁護士になった理由は間違っていないと思うんだ』

岳人は目を開け笑顔を浮かべる。

『それに、環境が影響した結果とはいえ、きみはあいつらとは違う。その証拠に、ホラ』

岳人が指を刺すと、そこには涙目になりながら冬部に声をかけ続ける栞の姿が見えた。

『夏美...いや、葉崎栞がきみのために涙を流している。それ以上の理由がいるかい?』

(...いいや)

冬部は、呼びかける栞ににこりと笑いかけ、『だいじょうぶ』と口を動かす。
それを見てホッとした様子の栞を見た途端、冬部の身体は奇妙な心地よさに包まれた。

きっと、これは自己満足の結果にすぎないのだろう。

しかし、それでも。

僅かな一時でも彼女を安心させられた―――その充足感に包まれ、次第に目蓋も落ちていく。
冬部は、最期に浮かべたその笑顔のまま、静かに意識を手放した。



【冬部蒼介@吸血桜殺人事件 死亡確認】
※参戦時期は栞に刺させた後に自分の腹部に木の枝を突き刺して意識を手放している最中でした。
※加賀谷が小金井に突き刺したボールペン@高度1万メートルの殺人 は冬部の背中に刺さったままです。
※死因は失血死です。


235 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:05:35 979BHjmg0

【一日目/黎明/獄門塾敷地内】

【斑目るり@黒死蝶殺人事件】
[状態]疲労(絶大)、精神的ダメージ(絶大)、激しい怒り、五塔・多間木・古谷・海堂への憎しみ(大)、下着姿、気絶
[装備]速水玲香を気絶させた時に安岡真奈美が使用したスタンガン@速水玲香殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出して金田一お兄ちゃんと遊ぶ
0:......
1:ますみおねえちゃんを救けに行く。
2:あいつら(多間木・古谷・海堂)は許さない。

※参戦時期は金田一と遊ぶ約束をした後。



【葉崎栞@吸血桜殺人事件】
[状態]疲労(中)、精神的ダメージ(中)
[装備]
[所持品]基本支給品一式×2、不明支給品1〜2、冬部の不明支給品1〜2(武器の類ではない)
[思考・行動]
基本:三日目まで生き残りたい。
0:冬部さんと最後まで生き抜く。

※参戦時期は金田一に全ての事情を聞かされたあと
※冬部の死に気が付いていません。


【連城久彦@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(大)、六星への憎しみ。
[装備]高遠が使ったトリックナイフ@露西亜人形殺人事件
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本:若葉の仇をとる。それ以外はたぶん殺さない。
0:若葉の仇(六星)を見つけ次第殺す。
1:若葉の仇を探し出す。
2:とりあえず落ち着ける場所で冬部とかいう男を休ませる。


[備考]
※参戦時期は六星にナイフを刺す直前
※六星を見つけ次第殺しにかかります。
※冬部の死に気が付いていません。


236 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:06:42 979BHjmg0

一方の警官Bと多間木、古谷、海堂ら三人組だが、彼らの勝負など誰も興味がないと思うので割愛させていただく。
結論だけ述べよう。
警官Bは勝利した。
特に重傷を負うことも無く、舌打ちしながら殴りかかってたらあっさりと勝てた。
当然だ。
なにせ、三人とはいえその面子が、目付きが悪いだけの女の海堂、喧嘩は毒島に頼りっきりの多間木、深町のような気弱な少年さえ集団で虐めていた古谷だ。
そんな『喧嘩なんて急所狙えばヨユーっしょ』な考えの彼らが、鍛え上げられた警官、ましてやその中でも屈指の腕前と噂される彼に敵うはずもない。
とりあえず気絶させておこうと考えたところで、多間木は煙玉を使い三人で逃走。そのまま背を向けて走り去って行った。
不意をつかずに即座に逃げ出すあたり、やはり素人である。
これがあの六星竜一ならばまず間違いなく警官Bは殺されていただろう。

(とりあえず、あいつらを追う前に連城さんたちと合流しなくちゃな)

彼らが逃げた先に六星のような強者がいないとも限らない。
ならば、彼らの身の安全を保障する意味も込めて早めに合流するべきだろう。
これ見よがしに死亡フラグを立てておいてほぼ無傷で合流するのは恥ずかしい気もするが、いまはそんなことを言っている場合ではない。
こうして警官Bは、先に逃がした市民たちと合流することにした。



【一日目/黎明/獄門塾敷地内】


【六星に瞬殺された警官B(腕を折られた方)@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いを止める
0:連城たちと合流する。
1:六星竜一がいればこんどこそ止めてみせる。
2:あのクソガキ共(多間木、海堂、古谷)は必ず逮捕する。

[備考]
※参戦時期は六星に腕を折られる寸前。
※どんなキャラかわからなくなったら、基本舌打ちしながら殴りかかる人だという認識で大丈夫です。


237 : すべてが終わる前に、明かりが帰る前に ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:09:07 979BHjmg0


「はぁっ、はぁっ...」

煙玉を使い逃走した三人は、木陰に座り込みひとまずの休憩をとる。

「冗談じゃねー、あの警官強すぎるだろ」
「ふん...正攻法で無理なら奇襲かトリックでも使って殺せばいいのさ」
「賛成ィー。あたしらのゲームを知っちゃったんだもの。生かしておくわけにはいかないっしょ」

三人は、なんの反省もなくケタケタと笑いながら警官B及びあの覆面男たちの殺害計画を練り始める。


さて。

『首つり学園殺人事件』『獄門塾殺人事件』『剣持警部の殺人』の三作品を呼んだことのある方ならばここで一つの疑問が生まれると思う。
『なんでこいつらこんな仲良く行動してんの?』と。疑問に思わないなら別にいい。

彼らが共に行動する理由―――それを語るにはおそらくそれ相応の文字数がかかることだろう。

果たしてそれは語られるのか、それとも語られずに流されるのか、檜山爆弾が投下されるのが先か。

彼らの行きつく果てはわからないが、これだけは言っておこう。

彼ら三人は"同じ穴のムジナ"である、と。


【一日目/黎明/獄門塾敷地内】


【チーム:同じ穴のムジナ】


【多間木匠@剣持警部の殺人】
[状態]疲労(大)、腕にスタンガンのダメージ、警官Bに殴られたダメージ(大)
[装備]煙玉@高度一万メートルの殺人
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本:好きにやる
0:いーよねー、「バトロワ」ってヤツは!犯罪するならやっぱ殺し合いでってかー?
1:とりあえず古谷、海堂とつるんで行動する。
2:魚崎がいれば合流する。
3:毒島や湖森弁護士がいれば利用する。

※参戦時期は魚崎死亡前


【古谷直樹@首つり学園殺人事件】
[状態]疲労(大)、腕にスタンガンのダメージ、警官Bに殴られたダメージ(大)
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1〜2
[思考・行動]
基本:好きにやる
0:誰が死のうと知ったこっちゃねえ。負け犬は死ぬ、ただそれだけのことさ。
1:とりあえず多間木、海堂とつるんで行動する
2:室井、仁藤がいれば利用する。

※参戦時期は室井が宮園の花壇を踏み荒らしたあたり


【海堂瞳@獄門塾殺人事件】
[状態]疲労(大)、警官Bに殴られたダメージ(中)
[装備]佐木竜二のビデオカメラ@金田一少年の殺人
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:好きにやる
0:こんなものゲームよ。そう、ただのゲーム
1:とりあえず多間木、古谷とつるんで行動する
2:元のメンバー(鯨木、絵波、近衛、霧沢、茂呂井)よりこいつらの方が気が合うから優先するのはこっちにする。いたらいたで利用する。

※参戦時期は茂呂井死亡前


238 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/04(木) 17:09:38 979BHjmg0
投下終了です


239 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/04(木) 18:39:49 k4WhTlNY0
なんでこの3人こんな仲良しなんだよw
絶対1人置いて逃げると思ったのに律儀に固まってるし結束力高過ぎや
そしてまともな冬部や島津や香取は死んでるのに彼らは死なないという真面目な人には厳しい世界や
七人目のミイラさん、招かれざる客さん、ジェイソンさん、首狩り武者さん、死神マジシャンさん、デモンさん、刀丸さんどこいんだよ…
鯖が炎上させなきゃならない相手固まってんのに…

しかしこんなガバガバなルールなのに下手なロワより脱落者のペースが早いのは流石金田一世界ですね
3日も持つのでしょうか?
このペースは21世紀深夜アニメバトルロワイアルを傍観させますが1話で4人とか退場しないぶんマシに見える不思議


240 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/04(木) 19:01:34 FM6tQ7RI0
>生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい

サエキチへの金田一の説教はなんだったのか。彼が見つけた希望とはなんだったのか。
少年院の判断もミスってたとしか思えませんが、いずれ伯父さんと因縁の対決が見られるかもしれないと思うとワクワクしますね。
幼い頃からマーダーやってる彼ら(霧島は描写ないけど)ですが、茉莉香ブラザーズも考えてみると小五で陸ママ殺ってますよね。
金田一の幼馴染は千家といい、ますみといい、井沢といい、瑠璃子といい、陸といい、茉莉香といい、凛といい、光太郎といい、何らかの形で人殺してる奴多すぎる。

>すべてが終わる前に、明かりが帰る前に

夢オチかーい。
雑な話で進捗駄目なのを誤魔化すとこういう事になる。まさに殺人の動機。
るりちゃんが性的悪戯を切欠に悪い方に染まりつつあるけど、斑目ファミリーの光だった三姉妹が濁りつつあるのは悲しいですな。
海堂はブスゆえ多間木のレイプから助かりましたが、るりちゃんの心に残ったトラウマは大きいでしょう。
どうでもいいけどるりちゃんはあの和服のせいであんまり下着つけてるイメージがない。
しかし、警官Bは流石警官だけあって強いですねぇ…。対主催的には希望の星だけど、壁が分厚い。

私は追加で矢森雪雄を予約します。


241 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/04(木) 19:11:34 FM6tQ7RI0
○月江茉莉香/○星桂馬/○井沢研太郎/○白神海人/○鬼城歩夢/○鯖木海人/○多岐川かほる/○尾ノ上貴裕/○小泉螢子/○高森ますみ
○五塔蘭/○斑目るり/○六星竜一/○的場勇一郎/○津雲成人/○香取洋子/○遠野英治/○佐伯航一郎/○楊蘭/○霧島純平
○佐伯航一郎の伯父/○藤枝つばき/○幽月来夢/○奴利壁/○蓮沼綾花/○島津匠/○高槻鈴音/○海峰学/○インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部部員/○六星に瞬殺された警官B
○連城久彦/○仁藤伸幸/○出門章一/○巽紫乃/○遠間もえぎ/○神小路陸/○矢森雪雄/○刀丸猛人/○冬部蒼介/○葉崎栞
○多間木匠/○古谷直樹/○海堂瞳/○/○/○/○/○/○/○
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○

たくさん/60


予約

◆oAN11QKYGA(8/2に予約)
藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁、航一郎伯父、狩谷純

◆rGsyzf.Kp2(8/3に予約)
遠野英治、霧谷凛、雲沢夏樹、冬木ウメ

私(8/4に予約)
神小路陸、甲田征作、鐘本あかり、ノーブル由良間


242 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/04(木) 19:33:42 k4WhTlNY0
出番が多いキャラですら10話前後、最初の犠牲者なら2話くらいで退場するキャラクターだけでロワイアルが成立するんだからすごい濃いキャラクターの作品なんやなって実感する
物語の展開上仕方ないとはいえ六星とか遠野とか使い捨てなのがもったいないなぁ…
メインのはじめちゃんや高遠が参加しないのはある意味成功していると思う


243 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/04(木) 22:08:01 FM6tQ7RI0
【現時点の名簿】

【異人館村殺人事件】
○六星竜一/●五塔蘭/○連城久彦/○六星に瞬殺された警官B

【学園七不思議殺人事件】
●尾ノ上貴裕/○的場勇一郎

【秘宝島殺人事件】
○佐伯航一郎/○佐伯航一郎の伯父

【悲恋湖伝説殺人事件】
○遠野英治/○小泉螢子/○刀丸猛人

【首吊り学園殺人事件】
○古谷直樹/○仁藤伸幸

【飛騨からくり屋敷殺人事件】
○巽紫乃

【蝋人形城殺人事件】
●多岐川かほる

【黒死蝶殺人事件】
○斑目るり

【仏蘭西銀貨殺人事件】
●高森ますみ

【雪影村殺人事件】
○蓮沼綾花/○島津匠

【露西亜人形殺人事件】
○幽月来夢

【オペラ座館・第三の殺人】
○白神海人

【獄門塾殺人事件】
○海堂瞳

【剣持警部の殺人】
○多間木匠

【香港九龍財宝殺人事件】
○楊蘭

【雪鬼伝説殺人事件】
○鯖木海人

【亡霊校舎の殺人】
○鬼城歩夢/○遠間もえぎ/○矢森雪雄

【狐火流し殺人事件】
○月江茉莉香/○神小路陸

【吸血桜殺人事件】
○冬部蒼介/○葉崎栞

【妖刀毒蜂殺人事件】
○高槻鈴音

【不動高校学園祭殺人事件】
○津雲成人

【血溜之間殺人事件】
○星桂馬/○海峰学/○インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部部員

【幽霊客船殺人事件】
○香取洋子

【邪宗館殺人事件】
○井沢研太郎

【迷い込んできた悪魔(デモン)】
○出門章一

【高遠少年の事件簿】
○霧島純平/○藤枝つばき

【金田一少年の怪奇事件簿】
○奴利壁

たくさん/60


244 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/04(木) 22:11:01 FM6tQ7RI0
あっ、途中から死亡表記入れ忘れてました。

【現時点の名簿】

【異人館村殺人事件】
○六星竜一/●五塔蘭/○連城久彦/○六星に瞬殺された警官B

【学園七不思議殺人事件】
●尾ノ上貴裕/○的場勇一郎

【秘宝島殺人事件】
○佐伯航一郎/○佐伯航一郎の伯父

【悲恋湖伝説殺人事件】
○遠野英治/○小泉螢子/○刀丸猛人

【首吊り学園殺人事件】
○古谷直樹/○仁藤伸幸

【飛騨からくり屋敷殺人事件】
○巽紫乃

【蝋人形城殺人事件】
●多岐川かほる

【黒死蝶殺人事件】
○斑目るり

【仏蘭西銀貨殺人事件】
●高森ますみ

【雪影村殺人事件】
○蓮沼綾花/●島津匠

【露西亜人形殺人事件】
○幽月来夢

【オペラ座館・第三の殺人】
○白神海人

【獄門塾殺人事件】
○海堂瞳

【剣持警部の殺人】
○多間木匠

【香港九龍財宝殺人事件】
○楊蘭

【雪鬼伝説殺人事件】
○鯖木海人

【亡霊校舎の殺人】
○鬼城歩夢/●遠間もえぎ/○矢森雪雄

【狐火流し殺人事件】
○月江茉莉香/○神小路陸

【吸血桜殺人事件】
●冬部蒼介/○葉崎栞

【妖刀毒蜂殺人事件】
●高槻鈴音

【不動高校学園祭殺人事件】
○津雲成人

【血溜之間殺人事件】
○星桂馬/○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●海峰学/○インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部部員

【幽霊客船殺人事件】
●香取洋子

【邪宗館殺人事件】
○井沢研太郎

【迷い込んできた悪魔(デモン)】
○出門章一

【高遠少年の事件簿】
○霧島純平/○藤枝つばき

【金田一少年の怪奇事件簿】
○奴利壁

たくさん/60


245 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/04(木) 22:32:40 k4WhTlNY0
名簿乙です
海峰死にすぎじゃねーか


246 : 名無しさん :2016/08/05(金) 09:06:34 0ZTXFptY0
海峰さんだけ残機制だから多少の死はへっちゃら


247 : 名無しさん :2016/08/05(金) 15:22:25 bDlpfyk.0
一人だけSIRENかよ


248 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 00:59:31 O79wnRGQ0
小林さん殺害時「なぜ、あんたが!?」って驚いていましたが何故ホッケーマスクを被っていたのに顔がわかったのでしょうか?
もう何年も疑問に思っています
遠野先輩の動きのクセとか歩き方でわかったんでしょうかね?
投下します


249 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:00:35 O79wnRGQ0
(金田一くんに関わった相手、か……)

なつかしい名前が全く知らない人から出されるというのはちょっと気味が悪いとあたしは思った。
あれから彼はどんなことをしてどんな恋愛を経験してどんな人生を歩んでいるのか、全然知らない。
でもニュアンスからするとその金田一くんと他の明智とか高遠って人に恨みを持っている者の仕業なのかな、なんてあたしは考えてしまった。
そう思うと恨みを買う様な人生を歩んでいる金田一くんを考えると悲しいし、かと言ってあんな意味不明な話を信じて親友の金田一くんを疑っているあたしというのも悲しい。
疑うという行為そのものを覚えてしまった自分が嫌いになる。

(恨みか……)

あたしに恨みを持っている人、1人思い浮かべる。
あたしと義理の姉の月江茉莉香と乾光太郎で子供ながらの無知さで犯してしまったシャレにならないイタズラをしてしまった相手上小路陸。
あれからあたしも茉莉香も陸には会っていないし(光太郎はどうなんだろう?)、彼が開けた水筒の中身がどうなったのかわからない。
ただ蜂が水筒の中で死んでいたなら、と6年前のことについていまでも祈る時がある。
もし生きていたとしても驚いたぐらいで済めばいいのだけど……、と都合の良い保身を考える。
でも、それはそれだ。

(きちんと謝らないといけないよねっ!)

もう年賀状での付き合いしか彼とは残っていないし、返事もあるということは陸が蜂に刺されて大事になったという可能性は低いだろう。
でもきちんと謝るというのはカブスカウトの話題が挙がると絶対に茉莉香と行き着くゴールになっていた。
こんな機会で、なんてのも奇妙な話だがこの際陸と会ったらきちんと謝ろうとデイパックを握って歩きだす。
親友だからなのか、茉莉香と最初に考えていたことは霧谷凛も同じであった。
それくらい2人の姉妹には深く根付いた問題であり、後悔のしていることであった。
いつか、その後悔も果たせればいいのだが、我々の知る2人の運命は――(もう1人いるが)。


250 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:01:01 O79wnRGQ0



雲沢夏樹は溺れそうになっていた。
どういうわけかコテージが沈み、助けを求めても誰も現れない。
冷たい水に体が浸食されながらこのまま死んでしまうんだと諦めたくなかったが諦めざるを得なくなっていた。

(――ッ!!)

これは自分が椿原先輩の命令でやらされた(やっていた)クラスメイトへのイジメの天罰だったのか。
そんな懺悔の時間も許されたのか許されなかったのか。

だが、それが悪い夢であったとでもいう様に一瞬にして周りは体育館に。
塗れていた服も体も乾いた状態であった。
だがこちらで始まったのはバトルロワイアル。
悪い夢のベクトルが変わっただけであった……。





(な、なにがどうなってんの……?)

雲沢が目を覚ますと死への恐怖が全身に広がっていく。
どうあがいても自分はもうここで終わりなのではないか、死ぬしかないのではないのか。
ゲーム自体を半信半疑な状態で把握している参加者が多い中、彼女にはその余裕すらなかったのだ。
誰が自分を殺そうとしたのかもわからない悪意、事故とするにはありえない程コテージの床への浸食(というか真下が何故か池だった)。
みんなあたしを殺そうとする悪意なのではないかと押しつぶされそうだ。

ゴソゴソ。

誰かが近付く足音に過剰に驚く雲沢。
いつもならイケメンが来るかなステキ、なんて考えているかもしれないがそこまで頭が空っぽではなかった。
腰が抜けてうまく立てない、逃げることすら出来なくて襲撃者への接近を許してしまう。
もうダメだ、思いっきり目を瞑る。

「だ、大丈夫ですか……?」

優しそうな女性の声で話を掛けられる。
『諦めていた生』を『諦める』ように生への執着を大きくさせながら目を開いていく。

手を指しのばしていたのは少しばかり虚ろな瞳で黒髪を肩にまでは届かない長さをしていて年齢も近そうな女性が1人立っていた。

「怪我でもしましたか?」

彼女はまるで友達や小さい子供に声を掛ける様な優しい慌てた声で雲沢に語り掛ける。
雲沢はとりあえず大丈夫だと首を振ってそれを伝える。

「そうですか、良かったです」

自分のことを喜ぶみたいに彼女は微笑んだ。


251 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:01:25 O79wnRGQ0



お互い自己紹介をした。
どちらとも同じくらいの髪の長さをしていて黒い髪の方が霧谷凛、茶髪の方が雲沢夏樹と名乗った。
年は1つだけ雲沢の方が上だった(年齢が知りたい?女の子なのにデリケートな話はやめましょう。本編を読みましょう。凛の年齢は明かされていませんが個人でジッチャンの名にかけて推理しましょう)。

「あたしも何も把握できてないんですけどね……」

目覚めてからどうしたのか、凛も途方もない広さの島を歩いて人を探していたら雲沢を見つけたというだけであった。
陸を探していたのだが探し人じゃなかったというだけでスルーするのは彼女には出来なかった。
この島に来ているかはわからないが姉の茉莉香なんかはむしろどんどん首を突っ込んでいきそうだなとちょっと心配になる。

(すぐに毒舌吐いて殺されないといいけど……)

空気を読まないでガンガンに陸を責めた過去を思い出して苦笑した。
だが、再会したいなと親友の顔を思い浮かべる。

「よくこんな殺されるかもしれない場所で見知らぬ人に声を掛けて手も伸ばせるんですね」

雲沢が自分には出来なかったことを彼女に問う。
「霧谷さんが怯えていたのを発見しても自分なら見捨てちゃったかもしれないよ?」とちょっと神妙そうな声であった。
凛がそれを聞かれて思い浮かべたのはスズメバチに囲まれて動けなくなった自分を心配する仲間と手を伸ばす桃瀬心平の右手。
そんな体験をしただけに自分も放って置くことが出来なかった。

(なんでその恐怖したスズメバチを水筒に入れたんだろうな……、馬鹿だ本当……)

心が苦しくなり愚痴を零す感じで雲沢に自分の体験を話した。
スズメバチを入れてしまったことは口には出せなかったのだが、言えるわけがない。
ドン引きされるだろう。

「なんかチョーステキな話ですね。その手伸ばした人イケメンでした?」
「さあ、あたしと雲沢さんのイケメンの基準が違うと思うのでそこまではちょっと……」

いまどきな子の反応だった。
因みに雲沢の方が年上です。


252 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:02:08 O79wnRGQ0



「雲沢さん、どうしましょうねこの後?」
「どうしようねー?」

落ち着いた雲沢と一緒にただぼんやりと暗い空を見上げていた。
こんな空だけ眺めていると殺し合いの場に巻き込まれたなんて説明が嘘で、目が覚めたあの瞬間から現実に目覚めた気がする。
雲沢が死にそうになったあの水中よりよっぽど凛と会話をしてぐだっているいまが平和であって――。

だが、平和は既に崩されていて――。
既に1人の女性を殺した殺人鬼ジェイソンが傍に居て――。





「あー、眠いよね……」

深夜から黎明に変わる頃。
普通の真人間ならとっくに寝ている時間帯だ。
あくびが1つ出て当然である。
このまま眠気に誘われていきそうになる。

「雲沢さんっ!!」

凛の大声に眠気が一気に消し飛び意識が覚醒する。
なにがあったか!?
状況を把握しようとした瞬間凛が雲沢に飛びつく。

「え?」

やっぱり霧谷さんもあたしを殺そうとするのか、そんな言葉が口から洩れそうになる。
が、口にする前に雲沢の体に凛の体が覆い重なり凛の大きな胸が雲沢の手に収まっていた。

(チョーデカッ!チョー柔らかい!!)

殺されそうになる瞬間にこころで口にしたのは凛の胸の感想だった。
いや、ちょっと女としてこれは後悔のある死に方じゃないか?
イケメン何人も釣れそうじゃね?

(でもなんか……クセになるような……)

ちょっと指を動かそうかな、なんて新しい道が――。

「起きてくださいっ、雲沢さん!!」

胸元から凛のくぐもった声がした。
一大事の気配がする。
いままで座っていた場所に視線を移すと見覚えのないバットが地面を叩いていた。

(な、なにこれっ!?チョーキケン!?)

驚いて声も出ない雲沢のセリフを遮る様に『ちっ……』と舌打ちをする男の声があった。
イケメン、かは知らないがジェイソンの仮面を被った怪しい男であった。

「くぅ……」

雲沢から立ち上がり庇う様に立つ凛。
彼女は雲沢を庇い背中に軽傷だがダメージを受けてしまった。

「何故、螢子が殺されてお前たちみたいな女が生きているんだ?」

その問いはあまりにも理不尽な問いであった。
自分の妹で恋人だった女は海で流されて息絶えたのに、他の女が生きているのはおかしい。
思考が遠野英治のものでなく殺人鬼ジェイソンの思考に毒されつつあった。
香取から真相を聞いた途端彼は混乱した。
SKのイニシャルだけに絞った生還者リスト、いやあいつらが悪いんだ。
俺がいままで向けてきた復讐心が実は違いましたと言われてそうですか、とは首を振れない。
そう決意した瞬間、遠野英治の理性は消えた。


253 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:02:59 O79wnRGQ0
怪しい奴ら全員殺してしまえと囁く鬼。
1人も2人も3人も4人も5人も6人も7人も8人も9人も10人も変わらない。
変わらない、変わらない、変わらない。

じゃあもう全員敵だ、そこには温和で優しい不動高校の元生徒会長の姿は無かった。

(俺は絶対に死なない――!!死ねない――!死という概念がないッ!!)

もし俺は爆発したとしても死なない自信がある。
記憶はどうなるかわからないが、大火傷で済む自信がある。
どんな奴らでさえ殺せるビジョンがありありと思い浮かべられる。
だが、自分の死というビジョンが彼には思い浮かばなかった。

――ジェイソンは何度でも蘇る。
1度でも2度でも3度でも4度でも5度でも6度でも7度でも8度でも9度でも10度でも……。





「ちょ、チョーやばくない……」
「チョーやばいですねこれは」

雲沢の現代風な言葉に凛も思わず釣られてしまう。
それくらいやばい、どれくらいやばいかと言うと比喩でもなんでもなくジェイソンがバットで襲ってくるくらい、くらいというか襲ってきている。
これぐらいちぐはぐなくらい2人の思考回路は壊れつつあった。

「逃げましょう」

一瞬で壊れた思考回路を繋ぎ合わせ凛が強引に雲沢を引っ張る。
足がもたついて雲沢が転びそうになるがもう1度凛が引っ張り直し体勢を元に戻す。

「ご、ごめんねぇ……」

雲沢は頭を下げながら謝るが既に凛には返事する余裕もなくただ冷たく足だけ動かす。
当然だ、あのバットで殴られない様にする為必至に逃げているのだから。
もう鬼ごっこは開始の宣告すらなくスタートしている。
その鬼は本物の殺人鬼、遊びでは済まされない命がけの鬼ごっこが……。


254 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:03:39 O79wnRGQ0



「はぁはぁはぁ……」

もう何分走り回ったのか、まだ5分かもしれないしもう1時間走り回ったのかもしれないが時間がわからない。
ジェイソンの方はまだまだ息が上がっていなく、相当タフだ。
性別の差があれどあまりにも体力が劣っているのを凛は痛感する。

「ど、どうすんの霧谷さん?」
「…………」

走りながらどうやって撒くのかシュミレーションしていく。
この雑木林で隠れながら隠れながらで動いても向こうは読めていると言わんばかりに先回りしているのを3回は繰り返しただろうか……。

「ちょ、ちょっとは返事をしてよ」

それこそ何分かわからないくらい雲沢の言葉に凛は反応すら示さない。
示さないのではなく示せない。
ようやく走り始めて凛は息が途切れ途切れになりながら口を開いた。

「し、支給品を、……確認しましょう」

木の影に隠れながらデイパックを開く凛。
中からは黒光りした非現実的な物が飛び出る。

「ぴ、ぴすとる?」
「いや、持ってみるとずっしりしていますね。引き金も固いし……」
「え、本物?ウッソー……、チョーありえない……」

姉妹ともども貴重な銃を手にするとはとてもついている2人である。
それを扱えるかどうかは別として……。

(こんな固い引き金を引く力なんか残っているかしら……?)

撃ったことないし、撃てる人生を送ったことのない普通の女子高生だ。
それに威嚇で怯む相手ではないし……。

「雲沢さんのは!?」

ちょっと冷たく聞こえてしまっただろうか?
でも気にしている程周りは見えていない凛。


255 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:04:01 O79wnRGQ0
「え、えっと……向日葵柄のマグカップにサッカーボールがありますよ」
「……」

どう見てもはずれです。
ありがとうございました。
困惑する凛。
彼女がどれだけ頭を振り絞っても、マグカップにサッカーボールの使いどころはわからない。
あまり考えたくない。
そこで凛は考えたのさ。だったら、考えなきゃいいってね。
って、いまはそんなことしたらあたしたちの人生終わってしまうんだと現実逃避から戻る。

(サッカーボールって見た目は子供、頭脳は大人の武器よね?時間帯30分早いよ……)

突っ込み待ちなのかもしれない。
でも知恵がなければどうにもならない。
3人寄れば文殊の知恵とは言うが1人足りない。
ジェイソンにどうしたらいいですかね?なんて聞けないし……。
グルグルグルグル……。
ミキサーに掛けられた様にさっき何を思ったのかすら原型がなくなっていった凛。

(ちょっと茉莉香……、こんな使い道のない支給品を配ったエンペラーって人になんか言ってやってよ……)

3人寄れば文殊の知恵の3人目をこの場にいない茉莉香に縋る様に呼びかける。
どうせ返事がないものだとわかっているので本当にどうしようか迷う。
もう命乞いでもなんでもしてしまおうかと悩んでいると奇跡が起きた。
本来ありえるはずのない奇跡であった。

(あ?凛?)

茉莉香の声が聞こえた気がした。
本当に聞こえているわけではなく当然雲沢には全く聞こえていない。
しかし、本当に凛には幻聴でもなんでもいいが茉莉香の声が聞こえたのだ。
こういうのをテレパシーというのかもしれない。
姉妹で親友だからこそ起こり得る奇跡、先ほど冬部を喚起させた火事場のバカ力とも言えるかもしれない。

(メンドーイ。ちょっといま上から下に降りるところで集中しないといけないから)

だが、無意味に奇跡は終わり、テレパシーは消えてしまった。
奇跡が起きたからといってなにかが劇的に変わるものではない。
世の中甘くないのを凛は知った。

(役に立たなかったけど茉莉香もこの島にいるんだね)

知り合いがいるのを知って安心する様な、ちょっと不安の様な……。

と、ちょっとポンコツになり始めたことを知らない雲沢から見たらあまりにも真剣に悩んでいる凛の顔がずっと映っていた。
もうチェックメイトだと諦め寸前なのかもしれない。
自分の運の悪さのせいで、雲沢は自分を責めることになる。


256 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:04:27 O79wnRGQ0



(あたしはもう終わりなんだ……)

これは沈んでいく自分の身体が見せている夢なのではないだろうか……?
そうこのままジェイソンに殺され目を覚ますとそこは水の中。
息が出来なく助けを呼べないまま冷たくなっていく地獄。
ずっと否定して否定して、否定してきたけど……。
やっぱりあたしの人生終わっているんだよね……。

「霧谷さん……」

もう終わりなんだ、そう伝えよう。
現実逃避の時間はとっくに終わっていたのだ。
ちょっと長いロスタイムでもがいていただけなんだよ……。

ああ、死にたくないよ……。
目が濡れてきてきちゃった……。
このまま全部が濡れていくんだよね……。

「ずっと足手まといにしかなっていないしあたしを捨てていいよ……、多分それが正解だから……」

足手まとい。
本当だ、口でぎゃあぎゃあ騒いでばっかり。
殺されそうになった時は庇われるし。
足はもつれるし。
支給品も外れだったし。
なにもかも劣ってるじゃん……。

「わかった」
「え?」

即答!?
即答したよこの人!?

「わかりました、投げ捨てましょう」

曇りなくすっきりした声ではっきりと。
とてもまぶしい笑顔で。
待ってましたと言わんばかりで。

「え?」

自分で言っちゃった手前もう取り消しなんて無理だけどさ……。
でも、でもさ……。
やっぱり生きたいよ……。
霧谷さんから見たらやっぱりあたしは赤の他人なんだよね……。
これが普通の反応だよね……。
そうか、死ぬんだあたし。


――そして、霧谷さんは投げ捨てたのだ。


257 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:04:50 O79wnRGQ0



「ん?」

追いかけていた2つの姿に動きがあった。
俺は先回りしていたのでようやくかと足を動かしていく。
だが、これまでとは違った動きがあった。
1つがこちらを囮にする様に接近してくる音。
もう1つがどこか遠くへ逃げる音。
分断したのだ。
どちらから生きて、どちらかが命を捨てて。

「ならそれに乗ってやろうか」

俺は囮となっている方の音目掛けて走り込む。
やがてぴたりと音が止まる。

「やはりそうだったが」

一方逃げている方はぐんぐん距離を離しているのがわかる。
どちらが囮であるのか考えてみる。

(あの黒髪の方が茶髪女を庇っていたな。つまり黒髪の方が囮か?)

予測を立て音が止まった位置に辿り着く。

「何だと!?」

ジェイソンが驚きの声を上げる。
それは何故か。
予想とは違う結末が待っていたからであった。


258 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:05:12 O79wnRGQ0



「ふー」

どうやらあの殺人鬼はあちらの方向へ向かっていったようだ。
ようやく一息付けると凛は溜息を1つ上げた。
生きた心地がしないなと生ぬるい夜風に吹かれながらそう思う。

「ど、どうして切り捨てなかったの?」

雲沢も遅れて凛の横に並ぶ。
結果的に言おう。
2人はジェイソンを撒いた。
ジェイソンはどちらも捕まえることが出来なかった。

凛が雲沢に支給されたサッカーボールを右手で持ち上げそのまま思いっきりジェイソンをおびき出せそうな位置へ投げ捨てた。
そのままバウンドして転がっていくボール。
それをジェイソンは追っていき、隙を付いて別の方向へ走り出す。
単純な作戦であった。
ジェイソンがどこに隠れているのかわからないので賭けではあったのだがいままで先回りされたデータを元に隠れ場所の目安を付けた。
ただ追いかけられたデータが役に立った。
この作戦を思いついたのは雲沢が『捨てて』と言っただけの偶然だったのだ。
じゃあボールを捨ててしまおうってね。

「酷いことをしたくなかったからかな……」

これが贖罪になるとは全然思っていない。
でも被害者の気持ちが考えられるだけの年は重ねたのだ。
泣いている人を見捨てることが出来なかった。

(どっかの姉に似ちゃったのかな……)

上から下に降りるとか何言ってるかわからなかったけどよくよく考えると茉莉香は思考するより感情で動く人だ。
また知らない人と友達になって説教なり助けている姿が思い浮かんだ。

「雲沢さん、あそこでちょっと休憩しましょう……」
「チョー疲れましたもんね……」

ラベンダーの香りに釣られたのか。
2人はラベンダー荘で休憩する為そこ目掛けて歩いていく。

(チョーイケメン……)

複雑な心境が1つ残り……。


259 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:05:32 O79wnRGQ0
【一日目/黎明/ラベンダー荘周辺(怪盗紳士の殺人)】


【霧谷凛@狐火流し殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]道化人形が安岡に発砲した銃@速水玲香誘拐殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:雲沢さんと行動。
1:茉莉香に合流する。
2:陸に会ったら素直に謝る。
3:ラベンダー荘で休む。
[備考]
※参戦時期は、茉莉香死亡より前。
※姉妹だからなのか親友だからなのかはわかりませんが何故か茉莉香のテレパシー的な何かを受信・発信できます(向こうからくるかは知りません)。
※凛の胸の感想:(チョーデカッ!チョー柔らかい!!)by雲沢夏樹


【雲沢夏樹@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、向日葵柄のマグカップ@雪霊伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:チョー死にたくない。
0:霧谷さんと行動。
1:ラベンダー荘で休む。
2:霧谷さんって(性格が)イケメン?
[備考]
※参戦時期は、死亡直前。
※チョー死にたくないです。
※チョーイケメンが好きです。


260 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:05:56 O79wnRGQ0



雑木林に残るボールとジェイソン。

(ちっ、下手な小細工しやがって!!)

だが、似た様なことをすれば作戦の幅が広がるのではないか?と失敗から作戦を学ぶ。
それこそ同じ様に逃走する時の囮にも使えるし、ボールを転がして俺の場所を誤認させて襲うという攻撃にも使える。
ボールを感情のままに潰さずにデイパックに仕舞う。
ちょっと走って疲労を感じるがまだ少々といったところだ。
まだ数日もあるんだ。
体力ばかり使っていられないよな。
ジェイソンの仮面を剥がし、ジェイソンモードを解除して遠野英治に戻る。

「やっぱり仮面が無い方が呼吸はしやすいな」

だが、仮面を被った瞬間闘士も上がるし、体力も上がるし、残虐性も増す。
復讐を果たす際には必ず必要となるペルソナだ。
遠野は辺りの探索を始めることとする。





「ん?」

探索を始めて数分。
かぎ慣れた様な、慣れない様ななにかのにおいに遠野が気付く。

「血、なのか……」

それに導かれる様に、吸い込まれる様に遠野はその先へと進んでいく。

「うっ……、なんて酷い!?」

ボウガンに刺されて息絶えた死体を発見する。
しかも自分の学校と同じ制服を着ている。

「お、尾上くん!?七瀬さんと同じクラスだったかな……。あれ?こないだ亡くなったんだっけか?」

元生徒会長の遠野だ。
ごく少数である真実を知らされた生徒であるのは当然だ。
だが尾上は七不思議の事件で亡くなったと先生に聞かされていた。
だが、ボウガンの矢が刺さっている、この場で亡くなったのだろう。

因みに本当の苗字は尾ノ上なのだが全然付き合いが無かったのでなんとなくでしか覚えていない遠野。
学年も違うので仕方ないのかもしれない。

「くっ、誰がこんな酷いことを……」

尾上の死に遠野が悲しみを覚えていると不思議な記憶がフラッシュバックされる。


261 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:06:21 O79wnRGQ0



「…………」

俺が眠っている。
いや、寝たふりをしているんだ。
あれ?何故俺はこの光景を知っているんだ?
だが、夢は続いていく。

「ふふふ、エーくんぐっすり寝てる」

膝枕された顔の鼻に温かい手で触られる感触が蘇る。
これは過去だ。
俺と螢子との2人の過去なんだ。

「可愛いなー」
「全部聞こえているぞ螢子……」
「あ、起きてたのエーくん?」

目を瞑りながら俺は会話をしていた。
もう2度と取り戻せない陽だまりだ。

「だからエーくんは辞めろって……」
「いいじゃん、2人っきりなんだしさ……」

邪魔する家族もいない俺と螢子だけの空間。

「それに螢子のが可愛いしさ」

目を開くと螢子が真っ赤な顔に染まっていた。


262 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:06:45 O79wnRGQ0



「あ?」

瞬間、俺は現実に戻っていた。
尾上の死体が横に転がった現実だ。

「どうしてあんな過去なんか……」

また夢が始まる。





「ごめんな螢子……、オリエンタル号に乗れなくなって……」
「まあ、仕方ないよねエーくんの家族は私を邪魔者に見ているみたいだし」

そんなことないよ、と口には出せなかった。
どうしようもない現実だったのだから。

「俺さ、将来自分で独立してさ会社作ってさ……お前と一緒に暮らしたいんだ」

プロポーズになるのかはわからない。
ただ、一世一代の告白であった。

「嬉しいよ、エーくん」

このまま俺はキスをしてしまえば良かったんだ。

「なんで私たち兄妹なんだろうね……」

泣き出した螢子を泣き止ませることができなくて……。





「螢子!!」

事故のニュースが通り過ぎていく。
だってあれには螢子が乗っていて……。
そうだ、生還したんだよなッ!!

でも、俺が見つけた姿は螢子の姿をしていた物になっていて……。
警察にも冷たくあしらわれて……。

最初で最後の口づけは――冷たい『死』の味がした。
俺はこの時――悪魔に魂を売り渡したんだ。
法律で裁けないのなら、……俺が裁いてやる。
俺から螢子を奪った奴を、必ずこの手で――!!


俺の決意で突如フラッシュバックが終わる。


263 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:07:10 O79wnRGQ0



「け、螢子なのか!?」

ようやく遠野は気付いた。
死体が物語っていたのだ、これをやったのは螢子だと。

「た、確かに微かだが螢子の気があるッ!!」

冷たい『死』がない。
温かい『生』がある。

「おおお!!兼春様が蘇ったんじゃ……」

と、謎の信仰の言葉が背中から聞こえた。
振り返るとばあさん『冬木ウメ』が1人、遠野の後ろで頭を下げていた。

「首狩り武者じゃよ……」
「?」
「武者様が甦って……恨みを晴らされようとしているのじゃ……」

なんか会話が噛み合っていなかったが年齢のせいもあるのだろう。
そういうことにしておいた。

「そこの若造は目が覚めた瞬間七瀬美雪の様な顔をした者に殺害されたのじゃ、わしが全て目撃しているぞ」
「な、何!?」
「若造も声を発することなく即死してのぅ……」

もうばあさんの声は聞こえない。
七瀬くんの様な……。
確かに七瀬くんの顔は……。
問い詰めねばならない。

「そ、その女の他の特徴は!?なんでもいいんだ!!」
「特徴……、手に傷を隠すような物が貼られておったのじゃ……」
「螢子!?そ、そんな!?まさかっ!!」

バンドエイドを撒いていた痛々しい手が記憶を抉る。
冷静さを欠いて愛しい名前を叫ぶ。
でも返事はない。

「この『災厄の皇帝(エンペラー)』様の正体は兼春様なんじゃああああああ」

もう既に遠野の姿は無かった。


【一日目/黎明/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


【冬木ウメ@飛騨からくり屋敷殺人事件】
[状態]錯乱気味
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:柊兼春様の怒りを鎮める。
1:兼春様が甦ったんじゃああああ。
2:わ、わしの出番ない……。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも巽征丸死亡後。
※特に語られていませんが隠れていたので螢子に見つけられませんでした。
※尾ノ上殺害シーンを一部始終目撃しておりました。
※尾ノ上殺害は声を発する間もなくゲーム開始直後に起きたらしいです。


264 : 霧と雲が混ざりあって…… ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:07:32 O79wnRGQ0



「螢子、どこに行ったんだ!!」

本当に別人だったのかもしれない。
でも俺はまだ立ち止まるわけにはいかないんだ。

「何度も何度もごめんな……」

愛用のホッケーマスクに謝罪をする。
俺にはまだまだこれが必要なんだと実感する。

「俺は確かめなくちゃいけないんだ」

手に収めたそれを顔に装着する。
瞬間世界の流れが遅くなり、自分の動きだけが早くなる。
この情熱。
この衝動は自分を壊して火が付きそうであった。

「う、うおおおおッ!!」

螢子の気を探ってみる。
だが、ゲーム開始より既に4時間弱過ぎている。
もう気が遠くなりすぎてわからなくなってしまった。
自分がもう自分じゃない。
でもそれでもいい。
自分は既にジェイソン(自分)になっているのだから。





――さあ、新しい物語を語ろう。
さて、どこから語っていこうか……。




【一日目/黎明/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、返り血、ジェイソンに変身(これをつけると罪悪感が消失する)、ジェイソンモード
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説、果物ナイフ@狐火流し殺人事件、ド根性バット(ミラクルミステリーパワーステッキ最終形態)@美少女探偵金田一フミ3、光太郎が拾った(貰った?)サッカーボール@狐火流し殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘殺人事件、
[思考・行動]
基本:螢子は生きているかもしれない、だが三日待って九条をころす。
0:螢子を探す。優先して探す。
1:螢子は生きているかもしれない、だがSKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:螢子は生きているかもしれない、だが脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:螢子は生きているかもしれない、だが鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。
※ジェイソンモードになると身体能力や回復能力、危険察知能力、その他もろもろがほんの少し上がります。


265 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 01:12:17 O79wnRGQ0
投下終了です
タイトル的にH.J.という謎の私服センスを持つ凛がメインの様ですがジェイソンメインみたいになってしまいました……

水沢利緒、ピエロ左近寺、伊志田純で予約します


266 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/06(土) 01:42:17 ForoRYmg0
投下乙です。

雲沢さんが裏切らなかったのは予想外。その優しさをブーちゃんにも分けてあげてほしかった。
流石遠野センパイ、妹が犯した殺人にも一切動じない。そこに痺れないし憧れない。
ウメさんなにしに出てきたん...


近宮玲子、チャネラー桜庭を予約します


267 : ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:46:37 sDUnLC4g0
投下お疲れ様です。
みなさんちょいちょい原作セリフや主題歌歌詞もじりを入れててクスッとさせられます。
新参戦メンバーに嵐の予感を覚えつつ投下します。


268 : 鏡よ鏡 ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:50:08 sDUnLC4g0
3人が振り向いた先には、屋敷から出てきたと思しき男が目を押さえてうずくまっていた。
どうやら鏡の反射光がダイレクトに眼球を直撃したらしい。

「ただの篝火の反射のはずなのに……」
「……どうやら光を反射するときにその照度を異様に高める仕組みみたいね」

そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、レプリカとはいえ神器なのでそういうこともあるのだ。神器には人智を超えた力が宿るものである。
だが、鏡の本当の力は別にあった。

「 I play baseball.Do you study English?(くそっ、なんだこれは。お前らは一体なんなんだ?)」
「何か言ってるわ」

と、男───佐伯航一郎の伯父が低く唸った。

「……あなたは結束する。と言ってます」
「え?」

口を開いたのはつばきだった。名門秀央高校生、多少の英語は聞き取れる。
ただし───

「He is my friend!She is not from America!(言葉が通じないのかジャップめ!くそっ、邪魔だ、どけ!)」
「同じ言語またはJAPPU私!KUSOは邪魔で、置く!と言ってます…!」
「……ちょっ、どういうことなの?」

───この時、神器である鏡の光を浴びたものは、その言葉が自然にエキサイト翻訳に20回ほどかけられるという呪いが発動していたのである。
これこそが鏡の本当の力であった。

「あたしにも何が何だか……!」
「I went to school yesterday!I can swim well!(俺はただそこの女といい思いをしようと思っただけなのに!どうなってるんだ!)」
「い、今のは?」
「そこの予想女性 自由に !なんとは起こるか!と言ってます!」

意味のわからない能力であるが、神器は人智を超えた力が宿るものであるので仕方ない。あとレプリカだし。


269 : 鏡よ鏡 ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:50:48 sDUnLC4g0
「とりあえず味方ではなさそうね……」
「……この男、狂人か?身体の表面だけ黒いしな、怪しいやつだ」

奴利が鋭く目を細め、一歩前に進み出る。それに対し、怯えた佐伯の伯父は手近にあった石やらを投げつけた。

「I do not like soccer!(近寄るな化け物め!)」
「おいお前、なんだか知らないが落ち着け。俺は───」

その時、悲劇は起こった。

「待って、奴利さ……!」

……奴利は殺人を犯したとはいえ、根からの悪人ではない。むしろ温厚な男であった。
佐伯の伯父に対しても、困惑しつつも錯乱する彼を止めようとしたのだ。

……ただ、その寛容な心とは裏腹に、彼の生まれ持った身体───巨大な壁、もしくは鉄板にも似たそのボディは、そこまで柔軟な動きができるわけではなかった。

だから、たまたまそこに転がっていた首狩り武者の鎧兜につまずいた時。


270 : 鏡よ鏡 ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:51:38 sDUnLC4g0
……彼は、傾いだ身体を立て直すことができなかった。


「あ」


グシャリ。


倒れ、地面にめり込んだ奴利の下で、次の瞬間───なんとも言えない音がした。




【佐伯航一郎の伯父@秘宝島殺人事件 死亡】

【一日目/黎明/巽家の屋敷前@飛騨からくり屋敷殺人事件】


【幽月来夢@露西亜人形殺人事件】
[状態]健康
[装備]大広間に並べられていた猟銃@秘宝島
[所持品]基本支給品一式、
[思考・行動]
基本:生き残りあわよくばお金を手に入れたい。
1:奴利とつばきを味方につけ生存確率を上げる。
2:他に協力的な人物を見つけたら仲間に引き入れたいが、敵対するものは射殺も止むなし。
[備考]
※参戦時期は想子さんに首絞められ意識を失ったとき
※高遠を匿うくらいの人なので大抵のことでは動揺しなさそう。

【奴利壁@金田一少年の怪奇事件簿】
[状態]健康、地面にめり込んでいる
[装備]妖刀毒蜂の脇差
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出する。
1:脱出後幽月に匿ってもらうことを条件に協力。
[備考]
※参戦時期は話後逮捕されクレーンで連行される最中
※どうやら五里押重蔵を殺したのは「愛する女性」のためらしい。

【藤枝つばき@高遠少年の事件簿】
[状態]健康
[装備]魔神具レプリカ(矛欠品)@魔神遺跡
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出したい。
1:なんかもうよくわからないけどとりあえず幽月たちと協力して生き残る道を探す。
2:霧島に出会ったらなぜ自分を殺そうとしたのか聞きたい。
[備考]
※参戦時期は霧島に首絞められた直後
※佐伯航一郎の伯父に狙われている。→事故、もしくは奴利のファインプレーにて回避。
※魔神具の鏡レプリカには反射光を異常に強める、かつ反射光の当たった者はその言葉が自然にエキサイト翻訳に20回ほどかけられるという呪いがかかるという力があるようです。
意思疎通ができなくなるので、使いようによっては有用かも。


271 : 鏡よ鏡 ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:52:19 sDUnLC4g0
さて、その頃───
鏡によって悩まされている人物が、もうひとりいた。

「……痛い……」

いや、鏡だけではない。彼は全身の痛みにも悩まされていた。
というのも、彼は現在急激な成長の真っ最中であったからだ。

(殺し合い……だって……?)

巌窟王、もとい狩谷純。
12年、大人の事情でアニメでは18年も、暗い洞窟の中に閉じ込められ、少年の身体のまま大人になってしまった男。
そんな彼の身体も、復讐劇の果てに高遠に負わされた傷の癒える頃、止まっていた時を刻み始めた。

(人の気配はしない……今のところは安全なのか?どちらにしろこの身体じゃ長くは移動できない……)

ただし、それはあまりにも急激であった。
その歪みは全身の痛み───成長痛となって、彼を苛んでいたのだ。

筆者は幸いにして経験がないが、少年期に急に背の伸びた男性読者諸賢はもしかしたらその痛みをご存知かも知れない。
その中にもしもめちゃくちゃ辛い思いをされた方がいたら申し訳ないが、通常の成長痛というのは主に夜間のみに発現する一過性のもので、そこまで重大な症状ではないらしい。

ただ、なんといっても彼はそれが12年ぶんであった。
チリも積もれば何とやら。今の狩谷はなんとか動けはするものの、その度に激痛を覚えるという、バトロワには不利すぎる状態だ。

(でも、ここに3日?……あの洞窟よりはマシだとしても……)


272 : 鏡よ鏡 ◆oAN11QKYGA :2016/08/06(土) 14:53:03 sDUnLC4g0
さらに不運は重なり───彼が足のつかない外国人に連れられてきたのは、見渡す限り鏡、鏡、鏡の鏡迷宮。
アトラクションとしてはともかく、3日間こもるには辛すぎる場所だ。

「……出口を探すしかないか……」

ただひとつ幸いなのは、あまりにイレギュラーな人生を送ってきた彼は、この不可解なバトロワという状況にあってもそれなりの冷静さを保っていた。
同じく急激な声変わりのため、かすれにかすれた声でつぶやき、新たなサバイバルを生き抜くために彼はよろよろと歩き始めた。


【一日目/黎明/鏡迷宮@鏡迷宮の殺人】

【狩谷純@金田一少年の決死行】
[状態]全身の成長痛、大声が出ない。思考は比較的冷静
[装備]ランダム支給品0〜2
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出したい。
1:とりあえず鏡迷宮から出たい。
[備考]
※参戦時期は事件後


273 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:48:45 O79wnRGQ0
投下乙です
奴利さん最強候補の一角に踊り出ましたね
物理と防御最強ですが果たして彼が退場する日がくるのでしょうか?

私も投下します


274 : ピエロ左近寺のマジックショー ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:49:36 O79wnRGQ0
ふう、さて僕はどこから話していけばいいだろうか?
じゃあまず最初にこれだけは言っておこうかな
僕は『災厄の皇帝(エンペラー)』だ。
僕だけじゃわからない?
はは、自己紹介がまだだったね。
僕はピエロ左近寺、本名は僕も知らないんだ。


なんてね。


Why?


「何?おっさん『災厄の皇帝(エンペラー)』なの?」
「おっさんじゃなくてピエロ左近寺さ、『地獄のピエロ氏』でもいいよ」
「そうなんか」

金田一一と同じ制服を着たちょっと生意気僧そうな男と左近寺は机で対面になっていた。
左近寺側から「ちょっと面白い話をしようよ」と声を掛けられてそのまま着いてきた。
この生徒の名前は伊志田純と名乗った。

「別に殺しとか興味ないんだよね、女の裸を写真に収めて芸術だと褒める。それだけで俺は楽しいんですよ」
「芸術!素晴らしい言葉ですよね、ははは」

胡散臭そうにピエロ左近寺は笑った。
伊志田はなんとなくだが(このおっさん焼死しそうだな)と不謹慎にも思っていた。

「手品師なんだっけ?なんかやってみせてよ」
「マジシャンですよ、間違えないでください」

全然面白い話が始まんなかったので痺れを切らして伊志田が退屈そうにお願いした。

「もうしょうがないなぁ」

デイパックからトランプを取り出し伊志田にカードを引かせる。
ダイヤの2を確認し左近寺に裏側にして返す。
それをシャッフルして、念の為だよと伊志田にもシャッフルをさせた。

「ほらよ」

左近寺にトランプを返すとカードをばっと全部広げる。
そしてこれだねとカードを手に取った。

「君の引いたカードはダイヤの2だね!」
「おっさん、なんかこのトランプの裏の角っこ変なマークあんぞ……」
「マジシャンはタネがばれてしまった場合は身を引くことになりますよ、では終了」

ピエロ左近寺マジックショーが終わってしまった。
(しょうもねーな……)と興味もなくなっていた。


275 : ピエロ左近寺のマジックショー ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:50:02 O79wnRGQ0
「じゃあ俺もう行くっすわ」

何が悲しくて俺はこんなおっさんと並んで2人っきりでカフェなんかに居るんだか……。
メイド服を着せられるくらいの屈辱だぜこれは。

席を立つと『待った、待った』と止められてしまう。
どうやら話を聞くと『催眠術に興味はないかい?』との誘い文句。
先ほどのマジックもチャチだったけど特にすることもないので伊志田はまた観客でいることにする。

「では行きましょう、ゲストキャラの登場でーす」

左近寺が拍手と共に現れたのは千家貴司の彼女の水沢利緒であった。
何故ここに連れられたのか、利緒は理解していなかった。
ただ、左近寺にちょっとマジックのお手伝いだけですからと誘われ人の良い利緒には断ることが出来なかった。
だが、この強引さで利緒は来なかった方が良かったのではないかと後悔を始めるが既にマジックショーが否が応でも始まってしまう。

「ではこれからクリスタルパワーで催眠術を掛けましょう」
「は、はぁ……」

打ち合わせ通り利緒はクリスタルに集中する。
クリスタルのペンデュラムが左近寺の右手で揺られるのを利緒の両の眼が追っていく。

ユーラユラ。
振り子が揺れる。
右から左。
左から右。
――。


276 : ピエロ左近寺のマジックショー ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:50:25 O79wnRGQ0
Why?


あなたは殺人衝動とかあります?
あるわけないですよね、ははは、わかっておりますとも。

ええ。
はい。
あーいい彼氏さんですねえ。

あれれ?でもさ……。
あなた死んでませんでした?

半年の寿命から一気に無くなった。
死んでしまった、そんな体験ありません?



そうですか。
――ありましたか。
記憶蘇ってきたみたいですね。


その数人のこと憎いですか?
その千家くんとの約束果たしたいですよね。
金田一くんを紹介してもらって千家くんの自慢な友達とお話ししてみたいですよね。



では、これを使って復讐始めません?


277 : ピエロ左近寺のマジックショー ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:50:53 O79wnRGQ0
Why?


そのまま彼女は操られる様に店から出て行ってしまった。
左近寺から手渡されたのは彼女の大切な相棒を躾ける為の犬笛であった。

この狭い店内のどこに潜んで隠れていたのか、彼女に続く様に数匹の犬たちもゾロゾロと彼女に着いて行った。

「どうでした僕の催眠術?」
「胸クソでしたよ」

なんか催眠術とか使った女の写真なんか残したくはないなと写真部の伊志田純に考えさせられる出来事であった。

「んで、結局あんたの正体が『災厄の皇帝(エンペラー)』ってマジですか?」
「さあどうでしょうね?」

ピエロの様に笑ってごまかしてこの場を収めるのであった。
ではまた今度マジックショーで会いましょう。


278 : ピエロ左近寺のマジックショー ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:51:12 O79wnRGQ0
【一日目/深夜/カフェふくろう@亡霊校舎の殺人】


【ピエロ左近寺@狐火流し殺人事件】
[状態]健康
[装備]クリスタル@金田一少年の決死行
[所持品]基本支給品一式、マジック用トランプ@オペラ座館殺人事件
[思考・行動]
基本:???
0:マジックショーをする。
[備考]
※参戦時期は不明(金田一一のことは知っている)。
※クリスタル催眠術の正体がよくわかりません。
※『災厄の皇帝(エンペラー)』を名乗っていますが本人か愉快犯か共犯者かは後の書き手に任せます。


【伊志田純@不動高校学園祭殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺しとか興味ない。
0:女の写真さえ撮れればいい。
1:催眠術で操られた女とか胸クソ。
2:あのおっさん(ピエロ左近寺)は焼死しそう。
[備考]
※参戦時期は、六野冬花自殺前。
※自殺させた過去もないので趣味以外は割と真面目?


【水沢利緒@魔犬の森の殺人】
[状態]催眠状態?
[装備]利緒の犬笛@魔犬の森の殺人
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:自分の実験台にした連中への復讐?
0:???
[備考]
※参戦時期は、死亡後。
※なにかきっかけがあれば催眠術が解けるかもしれないです。
※制限時間で催眠が解けるかもしれないです。
※千家くんに会えれば催眠が解けるかもしれないです。
※ポケモンの笛的なものがあれば催眠が解けるかもしれないです。
※びっくりすれば催眠が解けるかもしれないです。
※目的を果たせば催眠が解けるかもしれないです。
※満足すれば催眠が解けるかもしれないです。
※死なないと解けないとかは可哀想なのでやめてください。
※そもそも催眠状態かどうかも不明です。
※利緒の近くには数匹の犬が付いて来ます(催眠の間)。
※萬屋、参道、渡辺、百田には問答無用で襲いかかるかもしれないです。
※他の参加者にも問答無用で襲いかかるかもしれないです。


279 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/06(土) 15:52:39 O79wnRGQ0
投下終了します
あとピエロ左近寺@魔術列車殺人事件ですね

申し訳ないです


280 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/06(土) 19:28:10 I8Iy...Q0
>死という概念がないッ!!
さすが無差別殺人と爆弾テロをやらかしながら美人の揚羽さんとゴールインした遠野ですね。掟破りの風格を感じます。

ヌリカベもやはり安定の強キャラだったようで心強いです。

ピエロ左近司と冬木ウメはトリックスターみたいになりそうでいいキャラですね。ますますカオス化していて今後の展開が気になります。海峰くんの運命やいかに。

遠野英治、楊蘭で予約致します。


281 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:20:49 AChmZwpQ0
投下します


282 : Boo Bee MAGIC ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:22:27 AChmZwpQ0
「はぁっ...はぁっ...」

肥満体系の男が、無我夢中に走っている。
彼の名はチャネラー桜庭。かつて、幻想魔術団に所属していたマジシャンの一人である。

彼はただひたすらに逃げていた。気分的には5kgぐらい痩せたんじゃないかと思うくらい必死だった。
逃げている。即ち、彼は追われているのだ。
彼は一応霊媒師の肩書きを持ってはいるが、そんなものはクソの役にも立たない。
彼の霊媒師という称号は、あくまでもサイコマジックの売り文句であり、本職ではないからだ。
そんな偽りの称号では歯が立たない相手とはなにか。
そう。それは本物の霊である。
彼は、今現在確かにそれに追われているのだ。

どれほど走っただろうか。
彼の行く先は、運が悪いことに昇り階段しかなく、迫りくるそれに歯向かう勇気もない彼は、それに従い階段を昇ってしまう。
これでは逃げ場がない。それは彼もわかっている。
だが、気が付けばこの逃走経路を選んでいた。
まるで、彼女に誘導されるように、この階段まで辿りついていたのだ。

やがて、桜庭は天井裏―――かつて、偉大なるマジシャンの命を奪った死骨ヶ原ホテルの劇場の―――に追い詰められる。

「お...オレじゃない!おれじゃないんです!」

桜庭は、詰め寄ってくる彼女に弁明するかのように涙目になりながら弁解する。
しかし、それでも彼女はじりじりと桜庭に詰め寄る。

「お、オレはあの時、左近寺さんが天井裏に行ったのを見ただけで...あんなことになると思わなかったんだ!」

桜庭は、詰め寄られるままに後ずさりしていき、ついに渡し板にまで足をつける。

「お、オレは関係ないんです...そ、そうだ!あの板に細工したのは全部左近寺さんで、他の人は誰もそれをしらな」

ガコン

板が外れ、桜庭は足を踏み外し落下する。

「うわああああああああ!!!」

かつての偉大なるマジシャンと全く同じ展開で桜庭は落下し―――その意識は途絶えた。


283 : Boo Bee MAGIC ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:23:14 AChmZwpQ0



「なるほどね」

泡を吹いて気絶する桜庭を見下ろす稀代のマジシャン―――近宮玲子は理解した。
あの時踏み外してしまった板が、なぜあんなにもあっさりと外れたのか。その理由を。

(どうりであそこだけ踏んだ感触が変だと思ったわ。左近寺...まさか、私のみならず山神たちまで利用してあのトリックノートを手に入れようだなんてね)

この殺し合いに連れてこられる前に落下したあの時。
玲子は、あの板に対しては確かに違和感を抱いていたのだ。
だが、それでも反応は間に合わず落下。
本来ならば彼女はそれで転落死しているはずなのだが、なんの妙かこうして無事に生存している。
命を救ってくれた災厄の皇帝とやらには感謝すべきだろう。

お蔭で、真犯人がわかった上に、この手で復讐する機会を得たのだから。

「左近寺...私を殺した挙句にトリックノートを奪った罪、その命をもって償わせてあげるわ」

桜庭の話によれば、自分は既に死に、左近寺もあのトリックノートに仕掛けられた制裁を受けていた途中らしい。
なぜそのような齟齬が起きているか―――そんなことは後回しだ。
いま最優先すべきなのは、全ての元凶である左近寺は殺すこと。それも、マジシャンらしく芸術的にだ。
山神たちは、殺すつもりはなかったらしいので、私にした仕打ちを泣いてお詫びすれば考えてやらないこともない。
精神的にも肉体的にも二度とマジックに関われないほど痛めつけてやるのは確実だが。
チャネラー桜庭は、まあ、別にどうでもいい。
左近寺を止められなかった件に関してはまあ仕方ない。
実際、彼は左近寺たちとは違い、トリックノートのネタを使っていなかったようなので微罪としておく。
わざわざ、自分が落ちた時の再現までしたにも関わらず、落下しても助かるようマットを敷いておいたのもそのためだ。
真相を白状し、気絶させたこの一件で水に流しておいてやろう。

「さて、彼らに見せつけてやりますか―――この近宮玲子の、真のマジックをね」

こうして、希代のマジシャン近宮玲子は、復讐のマジシャンとして生まれ変わり、未だ気絶しているチャネラー桜庭を置いて劇場から姿を消した。


284 : Boo Bee MAGIC ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:24:19 AChmZwpQ0



...さて。

魔術列車殺人事件をおぼろげながらでも覚えている方はこう思うかもしれない。
『近宮玲子ってもっと穏やかな人じゃなかったっけ?』と。
確かにそうだ。

明智警視の回想では常に笑顔で、会話の節々には息子を気遣う場面もあった。
また、高遠の回想でも、未熟ながらマジックの練習をしていた彼に簡単なマジックの手ほどきをしてやったこともある。
高遠の18歳の誕生日にトリックノートをプレゼントするという粋な計らいもしてやっていた。
そのような描写から、おそらく読者の彼女への第一印象は「息子想いの心優しいマジシャン」といった感じのものだろう。
確かにそれも嘘偽りない真実であり彼女という人間だろう。

だが、考えてみてほしい。

左近寺の命を奪うことになった、彼女がトリックノートに仕掛けた欠陥マジック。
これは、実行すれば死ぬように意図的に作ったものである。決して彼女の書き損じや没ネタなどではない。
彼女がそれをトリックノートに書き込んだ理由は、ただひとつ。
このノートを奪った者への制裁。ただそれだけだ。

そう。恐ろしいことに、彼女はトリックノートが狙われていることを悟りながらも、如何に犯人に芸術的に復讐するかを考えていたのだ。

己の財産ともいえるものが狙われていると気が付いた時。
咄嗟に考え付く策としては、絶対にバレない場所へ隠す、一部を心当たりの人物に渡すといった感じで穏便にすませるだろう。
もしかしたら、衝動的に殺してしまう時もあるかもしれない。

だが、彼女は違う。
彼女は綿密に計画を練った。
敢えてトリックノートを奪わせることによって、犯人を殺すことを目論んだのだ。

この手品は、彼女が殺されたことによって『近宮玲子の呪い』『奪った者への死の制裁』といった烙印をおされている。
だが、もしも彼女が生きていたら。
これはひとつの『完全犯罪』に成り得るだろう。


このトリックは、決して近宮玲子が罪を被ることのない造りになっている。
何故なら、近宮玲子はトリックノートを奪われた『被害者』にすぎず、『加害者』はトリックノートを奪った左近寺であるからだ。
例え近宮玲子が追求されようとも、彼女はいくらでも言い逃れができる。


285 : Boo Bee MAGIC ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:26:16 AChmZwpQ0



なぜこんな欠陥マジックをノートに書いたのか→書いている途中はイケると思っていた。
なぜこんなものを消さなかったのか→消そうと思ったら左近寺に奪われた。
そのせいで左近寺は死んだのですよ→あのマジックは、心得があればすぐに欠陥だとわかります。彼は奪っただけで深く考えようとしなかったのでしょう。マジシャンとしても半端者ですね。
高遠に贈ったノートにはあの欠陥マジックは書いてありませんでしたが→彼にノートを贈った後に思いついたから当然です。
もう言い逃れはできないぜ、近宮さん!→状況だけで被害者を加害者に変えるのは立派な捜査かく乱よ、金田一くん。



こんな具合で、自分に罪は及ばずそもそも犯罪だとすら気づかれない上に、左近寺の尊厳をも傷付けることができるのだ。
もしも彼女が生きており、左近寺の有り様を見ていれば必ずやほくそ笑んでいたことだろう。

タネがばれたら潔く身を引くのがマジシャンらしいが、息子である彼はわりと往生際が悪いのでそこら辺は結構アバウトなのかもしれない。わからない。

長々と語ってしまったが、要約するとこうだ。



世の中には、決して怒らせてはいけない人間がいる。

そして。

彼女は、その内の一人である、と。



【死骨ヶ原ホテルの劇場/一日目/深夜】


【チャネラー桜庭@魔術列車殺人事件】
[状態]精神的疲労、気絶
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本:死にたくない
0:......
1:もうやだあのおばさん。

※参戦時期はピエロ左近寺が燃えている時です。
※近宮玲子を幽霊かなにかだと思っています。


【近宮玲子@魔術列車殺人事件】
[状態]健康、ピエロ左近寺への激しい憎しみ
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本:左近寺ブッ殺す。
0:左近寺は見つけ次第芸術的なトリックで殺す。
1:ジェントル山神、ノーブル由良間、マーメイド夕海は、あたしにした仕打ちを泣いてお詫びすれば重傷程度で勘弁してやってもいいかもしれない。
2:チャネラー桜庭は別にいいや。

※参戦時期は落下して死ぬ直前です。
※山神たちも近宮の気分次第では左近寺同様殺します。


286 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/08/07(日) 11:27:57 AChmZwpQ0
投下終了です。

Wikiを作成しました。
まだ全話収録は出来ていませんがボチボチと更新していきたいと思います。
リンクはこちらです
ttps://www65.atwiki.jp/00805/pages/1.html


287 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/07(日) 11:59:38 vClhbNsg0
投下乙です
流石あの子の母親ですね!
なんであのマジックをカードマジックを得意とする左近寺がやったのか、慣れないことはするなということですね!
ファイヤーマジックのジェントル山神が欠陥に気付いていなかったとしたらとんだ恥さらしですね!
気付いていたからあえてあのマジックに手を出さなかったと予想します!
なんたって団長ですからね!
近宮先生に続くNo.2であったはずですしね!
ノーブル以下どころかチャネラーしかパシりがいなかった点から見ても左近寺は格下なのは誰の目から見ても明らかですね!

小泉螢子、警官B、インフルエンザの囲碁部で予約します


288 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/08(月) 16:18:00 wtigpw4E0
神小路陸、甲田征作、鐘本あかり、ノーブル由良間の予約延長します。


289 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/08(月) 22:36:05 UBM8baZI0
ちょっとwikiいじったんですがパロロワのwiki更新するの2年ぶりぐらいだったんでもしかしたらリンク間違ってたりとかしてるかもしれないです

まだ途中なんで中途半端になってます、申し訳ない


290 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 02:41:10 opPb5paQ0
投下乙です。

>霧と雲が混ざりあって……

足のつかない外国人は、雲沢を沈没させてから殺し合いに連れてくるという最高に意味不明な事してますね。
まあ、足のつかない外国人と言っても色々いるんでしょうけど、足のつかない外国人はもう全てが同一個体のような認識になってきています。
ところで、凛さんがあれをシャレにならないイタズラと捉えていた事は喜ばしい限りです。
ウメばあさんもなんか今後、イカレた事ばっかり言ってるのに誰にも相手にされなそうで怖い。
遠野がさらっと見逃したのが凄い。

>鏡よ鏡

伯父wwwwwwwwww

>ピエロ左近寺のマジックショー

(そんなに解きたいなら催眠するなよ……)

>Boo Bee MAGIC

なんか魔術列車の投下が連続しますね(この後投下する予定の話でもノーブル由良間が大活躍します)。
チャネラー桜庭、あれじゃないのコレ。
細工していたのに体重で勝手に踏板が外れた速水玲香誘拐殺人事件パターン。
玲香ちゃん二人より重いんですよ?


wikiも乙です。
面倒がってwiki作らずに進めようと思っていたので、大助かりです。
「wiki作りたいけど色んなロワでwiki作ってしまったのでまたwiki作るのがアレ」という状態だったので、wikiなしで進めようかと思っていたんですが、wikiがある事ほど喜ばしい事はないのでwikiあって嬉しいなと思います。


291 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:04:49 opPb5paQ0
投下します。


292 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:05:53 opPb5paQ0




「はぁ……はぁ……」


 神小路陸少年は、息を切らせて走っていた。
 女性二名の物言わぬ死体の形を恐れながら、そしてその肉塊を作り上げたと思われる成人男性の人影に追われながら、ひたすら足を動かし、その場との距離を広めている。


(なんだよあいつ……!)


 彼の内情は未知の恐怖で充満していた。
 根本的に、小五の男子が一人こんな深夜に出歩く事は稀でもある。
 余程の事情がない限りは床に就いているだろうし、まして外を出歩く事など早々ある筈はない。
 加えて、その行きあたった街というのが奇妙で、誰もいないゴーストタウンであるのは勿論の事、悪意に満ちたラクガキのある民家にはある種のグロテスクがあった。
 彼のようなまだ小さな子供にとっては、肉色のスプレーで刺々しく書かれたラクガキは、胸を締め付ける恐怖でもある。

 そう、ああして辛辣な悪口が書かれているという事は、書いた誰かがいるという事なのだ。
 ――それは、「悪い大人がどこかにいた」に違いないと思えた。
 しかし、そんな悪い大人たちに立ち向かう力は子供にはなく、ただ一方的にひねりつぶされるだけの脆弱な存在でしかない。
 悪い大人というのが、実際目の前に立った時、それがいかに弱い人間なのかさえ彼にはまだわからない。
 彼にとっては、中学生も大人だし、高校生も大人だ。そして、大人は常に大きいのだ。
 大人が道路に書き記された若者のラクガキを見る事と、子供がそれを見る事とでは、また敵の大きさが変わってしまう。
 そして、そんな場所で死体を二つも見つけてしまった事や、そんな折に一人の成人男性を見つけてしまった事もまた、陸にとって大きな問題だった。
 死体もまた誰かによって齎されたものであり、あの男性もまたそれを齎した物であるようだった。
 そいつが追ってくるのである。


「はぁ……はぁ……」


 そして、それは陸の今日までの短い人生で、鬼ごっこというゲームに最も本気をかけた瞬間だった。
 物静かな陸だが、小学生相応に遊んだり、スポーツを楽しんだりもする。普段は、逃げたり追いかけたりの中で高揚する心があった。
 女子をタッチすると、「ヘンタイ」と言われる。茉莉香あたりの使う卑怯な手でもある。
 そこで、陸はどちらかといえば女子よりも男子を狙う事を考え、大抵は忍や金田一のように動きの鈍い奴を狙った(※注釈1)。
 それから先の鬼ごっこは、動きが自分より遅い相手から逃げるだけでいくらか有利にゲームを運べる。


 ――だが今は違う。絶対の不利だ。


(くそっ!)


 物々しい声をあげて追いかけてくる奇妙な男に、陸は全力の逃避行を見せようとしているが、内心では殆ど諦めかけている。
 成人男性と陸との間では、走力には大きな開きがある。
 小学生が五十メートルの速度を計測した場合、学年で一番速い子でも、七秒台に差し掛かるくらいが限度だろう。
 陸は別にスポーツ万能というわけでもない一般児童だ。サッカーや野球などの習い事をしているわけではなく、あくまで遊びの一貫としてそれらをやってみる程度である。
 すると、平均的な速度である九秒程度か、あるいは細く身長も高い体格を考慮に入れて八秒台程度であると考えられる。


293 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:07:14 opPb5paQ0

 小学生が運動会とかでその場しのぎ的に走行速度を上げる方法として、「輪ゴムを八の字型にして親指と踵にかける」、「ゴルフボールを握って走る」という裏技もある。
 あとは、アキレスの「俊足」を履くというのも、コーナーで差をつける場合には一つの手だ。
 しかし、いずれの手段も手遅れだ。
 どちらにせよ、それらを使ったところで、相当こざかしく動かなければ、限度は七秒台や八秒台相応の小学生だと思われる。
 やはり無理だ。

 では、矢森はどうか。
 もし、一般的な成人男性が五十メートルを測れば、七秒台というのはほとんど平均的な速度で、下手をすると六秒台で走れるかもしれない。
 何せ、走力を計測する競技になると、日本人の筋力構造では体重が軽いほど有利になる。
 陸上選手などを見ても、日本人だと大抵は上半身の筋肉は最低限で、下半身も余分な脂肪はない。
 ケンブリッジ飛鳥が増量してあれだけの速さで走る事が出来るのは、ジャマイカ人の父と日本人の母を持つハーフであるのが大前提で、純正の日本人ならばやはり軽量である方が有利なのは仕方がない。
 ケンブリッジ飛鳥自身も、陸上部時代は華奢な身体を走らせていたのだから、彼にとってのかつての常識もまた「体重を増やし過ぎない」事であったに違いない。
 やはり、そうした一部例外を除けば、体重は軽い方が走行時に余計な負担をかけずスピードを出せるという通説に従って良いだろう。

 陸も細身の体型には違いなかったが、矢森もまた、見事なまでに細身である。
 ましてや、陸をそのまま縦に引き延ばしたような外見の矢森は、足の長さが幼少陸よりも十センチほど上だった。
 これが三十代、四十代ならばまだしも、矢森はまだ大学生である。体力が衰える前だと考えて良い。
 どう考えても、陸と矢森は鬼ごっこをするには不適切な力量差を持つ相手であるという事だった。
 こういう時こそ、矢森がチャネラー桜庭だったなら……と思わずにはいられない。
 しかし、彼はチャネラー桜庭ではなく、矢森なのだ。


 長々と説明したが、それは一体どういう事なのか。
 この長い説明を読み上げる頃には、とうに陸は矢森に捕まっていてもおかしくはないという事である。


「野郎〜〜〜〜!!!」


 ――が、矢森はバカだった。
 大学生と小学生という圧倒的な体力差を埋めるレベルでバカだった。


294 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:07:29 opPb5paQ0

 ところで、矢森がバカであるという前提でこうして上二行を書いてしまったが、果たして矢森はバカなのか?
 筆者は彼がバカであると考える。
 彼のどこがバカなのか、いくつかの言葉を使って論じてみせよう。


 まあ、もう基礎的な話は面倒なので、このロワの読者はすべからく『亡霊校舎の殺人』は読んでいる前提で話したい。
 もうそんな説明は疲れたし、このロワを読む人はもういいだろう。
 読む方も、既に金田一読んだお陰でとうに知ってる話を延々説明されるのは面倒だろう。もういい。
 それでもよく読まないと知らないであろう事を全身全霊を以て伝えよう。
 細かすぎて伝わらない金田一キャラの話をしようじゃないか。


 さて、それを踏まえたうえで、亡霊校舎で矢森について着目すべき場面といえば、事件の動機となる火事場泥棒の際に「あのおっさん助けなくていいのか?」という提案をしている点である。
 クズ被害者にしては、割と優し気に見えるというか、人として当たり前の提案をしたかのように見えるだろう。なので妙に印象に残る。
 しかし、矢森雪雄という男は、その直後に鬼城や花泉の言葉に流されて、あっさりおっさんを助ける事を拒んでいる。
 実は、その点において、矢森は余計にバカなのである。

 そう――要するに、矢森という男には、「自分」という物がないのである。

 他人の生命が関わる非常に重大な場面においても周囲の判断を求め、「あっ、みんな逃げるんだし俺もいーや」という感じで見捨てた。
 ああいった場面で他人の決断に流されるという事がいかに愚かしい事か。ここが一番、バカなのである。
 鬼城や花泉はいざという時の判断は、悪賢いという意味では出来ていたが、矢森は冷徹な判断をするでもなく、自分を通すわけでもなく、判断を他人に任せる結果に終わった。
 最終判断に至るまでの過程では、確かに「助ける」という選択肢もあったし、実際残り二人が助けようとしたら助けただろう。
 しかし、彼の場合、おっさんを助けるという行為も、「なんかやばそうだから」くらいの感覚なのである。
 つまるところ、彼は「なんで死にかけのおっさんを助けなきゃいけないのか」がわかっていないし、それを当然の事として理解するだけの知能もないのだ。
 提案しただけマシか。そんな事はない。やらなきゃ同じである。
 あれは良い事をしようとしたのではなく、「なんかそうした方がよさげな空気だから提案した」でしかない。
 バカは、「なんか○○っぽいから」という感じで、理由を突き詰める能力が欠如し、常に最後の決断を他人にゆだねるのである。
 そう考えると、彼はあの瞬間、善人としての判断をしたのではなく、バカとしての判断をして、それをあっさり覆してしまったと言えよう。
 じゃあ、別にいい奴じゃないじゃん。
 つまり矢森はバカ。
 卒業証書取りに行って死んだおっさんもバカだが、矢森もめっちゃバカ(※注釈2)。


295 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:07:50 opPb5paQ0

 さて、改めて考えると、矢森の服装も、そんな彼のバカ性を表象しているように見えてくる。
 彼はその名に沿って、「ヤモリ」が描かれている服を身に纏っているが、何故こんな服を着ているのか。
 あのシャツを気にした読者は少なくない。何せ、矢森がヤモリを着ているのだ。初見で吹き出してもまったくおかしくない。どんな神経をしてたらあんなダサい恰好が出来るのか。
 では、仮説の一つとして、「自らあんな服を着たのではなく、女の子にでも『矢森くん、このヤモリの服着てみたら?w』と冗談を言われて、真に受けたのではないか」という説を挙げたい。
 そもそも大前提として、あの服は明らかにお調子者しか着ない服だ(この前提に異論を唱えたい者は自分のファッションセンスが変じゃないか友達に訊いておいた方が良いと思うんだ)。
 しかし、矢森は言う程お調子者かというと、普段は結構沈黙を決め込んでいるタイプでもあるので、別にお調子者という程でもないだろう。
 ぶっちゃけコミュ障だと思う。大学デビューなんじゃないかアイツ。
 キョロ充とかそう呼ばれているタイプのやつで、多分グループで嫌われる事とか外れる事を結構気にしてる。
 実際、身内と赤熊(いわば店員みたいなもん)にしか絡まないあたり、幅広い交友関係を構築するのが苦手で、知りあいとばかり話して心を満足させるタイプなんじゃないか。
 それが悪いとは言わないが、彼の場合、「自分はイケてますよ」みたいな感じで調子に乗るのでなんか腹立つ。

 閑話休題。

 そういえば、本人も、初登場時に「なんか人増えてね? 赤熊サーン」と言っていた。
 この場面、「実は彼はあの服を初対面に見せるのが超恥ずかしかったから、人が増える事を気にしたのではないか」とも解釈できる。
 矢森はそれだけ周囲の反応にデリケートで、かつ、自分の服装についても気にしていたのではないだろうか。

 流石に、初対面の相手に「矢森雪雄です」と自己紹介している時に、ヤモリのシャツを着ているのは恥ずかしい。
 仮にもし、その恰好を突っ込まれれば幸いだが、突っ込まれなかったらただのアホである。とんでもないお調子者だと思われてしまう。
 そして、最後まで金田一や明智や美雪や剣持はあの恰好に突っ込んではくれなかった。
 この後、矢森が金田一たちとろくに絡まないのも、あの服に突っ込まなかったから妙な溝ができて絡みづらくなってしまったというのが最大の原因のように思う。
 しかも、それでいて、当人は「チッ、ノリ悪い奴らだな、この服になんか突っ込めよ」と逆恨みしてそうで嫌(こういう奴が生理的に受け付けない)。

 それから、更に問題となるのは、その後の描写である。
 他の容疑者たちは二日目も同じデザインの服を着ているのに、矢森だけは入浴後のタイミングであのヤモリシャツを脱いで普通の白地シャツに変えているのである(ただし、第3話には前後で白シャツを着ているにも関わらずヤモリ服らしき服を着用している描写がある、これはミスと思われる)。
 全員同じ服を着っぱなしなのにも関わらず(それもどうかと思うが)、矢森だけ着替えているのはあまりにも不自然だ。
 奴はなぜ着替えたのか。
 普段流されっぱなしのくせに、全員が二日続けて同じ服を着ている異様な状況の中、一人だけさらっと着替えているのは何故なのか。
 おかしくはないか。
 結論を言おう。



 ――やっぱり恥ずかしかったからに違いない。



 ここで、風呂に入る前のやり取りを思い出してみるべきではなかろうか。
 矢森は、「風呂はさっさと済ませて軽く校内探検でもすっかな」と言った後、花泉に「抜け駆けすんなよ! 矢森」と返されていた。
 このやり取りを普通に解釈するなら、「速やかに風呂を済ませてお宝を探そうとしている」となるだろう。
 実際、そういう風に読んだ人が圧倒的多数だと思われる。
 だが、こうしてあのファッションセンスを恥ずかしがっている前提で考え、矢森が風呂あがりを境に着替えたのを見た時、ある仮説が浮かぶのである。



 ――あれは「風呂をすぐ出て宝探しをしたかったから」ではなく、「さっさと着替えたかったから」だったんじゃないか。



 つまり、あんな服を選んで着て行って、「初対面の奴らに遭遇して慌てて着替える」という不測の事態への対応に奔走する羽目になったのだ。
 それこそが、矢森のバカさなのではないか。 
 やっぱり彼はバカである(※注釈3)。


296 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:08:08 opPb5paQ0

 他にも、犯人の恐るべきトリックへの引っかかりっぷりも、他人の言葉を真に受ける彼のバカさが伝わって来る。
 カップ麺の上に地図広げて写真撮る行為の怪しさに気づけよバカと。「ん?なんでカップ麺の上に地図置いたのw」くらいのツッコミでもえぎの天然キャラを弄るくらいは出来たんじゃないだろうか。
 幸いというか、「男湯に来い」みたいな手紙は真に受けずに引っかからなかったようだが、流石に指示の発信者に応じて判断を変えるくらいの事は出来るようだ。
 あと、大好きなもえぎに対して「早くしてくれ!こっちはハラへってんだ」、「オイオイ泣きたいのはこっちだって同じだぜ!」などと暴言みたいなのを浴びせているのも変。
 こんなんでもえぎに好かれると思ってたのかバカ。
 何気に火事場泥棒提案してるものの、リュック一つで中学校乗り込むのもバカだし、実際見つかっているのもバカ。
 クズというかバカなんじゃないだろうか。
 いや、もっと言えば、バカすぎた結果がクズなんじゃないだろうか。
 こんなにバカだからこのロワでも、成人女性を二人も殺した犯人が小学生の男の子だという発想に至ってしまったんだろうね。
 矢森がバカという意見に異論がある方は感想の際に指摘をば。



 ――ところで、話題が逸れに逸れた結果、この「陸を追う」という状況で、彼がバカだった事がどう災いしたのか……などという部分がおざなりになってしまったが、結局彼はどうなったのか。




 彼は洗剤で滑ってこけたのである。
 アスファルトの上の洗剤ってそんなにこけやすいか?
 まあ、洗剤抜きにも濡れてれば滑りやすくこけやすい。
 何より、彼はあの死に方からして、足元が弱点でかつ、水も弱点なのだ。
 つまり、矢森は多少の水で滑ってこけてもおかしくない。QED。


「いててて……」


 矢森は、転んだ悔しさをかみしめながら、立ち上がった。
 転んだ時の悔しさは半端なものではない。転ぶと悔しいのだ。一人でも走ってて転ぶと惨めになるのだ。とにかく悔しいのだ。わかれ。

 で、転んだ彼には、擦り傷が出来ており、若干足が痛んで走力が落ちていた。
 受け身を取れないままアスファルトに思い切り転んだのだから、まあ無理もない話だろう。
 そうなると、もう成人男性平均レベルの走力は期待できず、追跡者としての能力は大きく損なわれる事になってしまったわけだ。

 起き上がるのがだるかったが、彼は必死に起き上がった。
 仕方がないのは仕方ない。たとえもえぎの仇であっても、もう追うのは諦めるべきに違いなかった。
 しかし、矢森はバカだった。


(ヤロ〜〜〜!!)


 半ば足を引きずるような形で、矢森は陸を追いかけようとしたのである。
 数分で退く痛みかもしれないが、全力で駆け抜ける事を体は拒んでいる。
 一瞬ズキッと痛む体を押してまで、場違いな復讐に燃える根性は矢森にはない。
 もう駄目である。

 これだけ長い文章を連ねておきながら、前回の話の終わりから五秒くらいしか経っていないが、もうこの時点でこんな感じという時点で彼は駄目だ。
 もう陸を追えない。前回から僅か五秒でこのザマである。
 この話の序盤の陸の心境や、走行速度に関する解説はなんだったんだというくらいに、矢森は価値がなくなった。
 もうこの話自体が「前回の五秒後に矢森が転ぶ」というだけの部分にこれだけの文章を費やしてしまった。
 この話の総量をざっと見っところ、だいたいここまで五秒のペースだと、この話は終わるまでに十五秒程度の話にしかならない可能性がある。

 そんな事はいけない。
 ここからペースを早めよう。猥雑で冗長で説明的で急場しのぎで思いつきだらけのロワはもうたくさんだ。
 結論を言ってしまおう。



 とにかく、追跡者としての価値がなくなった彼に待ち受けている運命は――



 ばきゅーんっ!!



 ――追われる側としての末路、のみだったのだ。








297 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:08:23 opPb5paQ0





「え」


 矢森の腹に、鉛の弾丸が貫通していた。
 あまりに一瞬の出来事だった故か、矢森もそれを感知できなかった。
 先に多少クリーンヒットしてしまった転倒ダメージがあり、そこでアドレナリン放出祭だったせいか、何故か思ったほどの痛みもない。
 しかし、体が横にそれた感覚が確かにあり、何かが真横から自分の体を貫通したのを彼は理解した。
 というか、確実に銃声が聞こえたのもあるし、実際、何かが自分の体をすっぽり通って抜けて行ったような感じはしたのだ。


「な……」


 脇腹に手をやった。
 手を目の前にやってみると、その手は血に濡れていた。


「なんじゃこりゃあっ!!」


 ここで、『太陽にほえろ!』に関する豆知識をば。
 この「なんじゃこりゃあ」という台詞でおなじみ、ジーパン刑事こと柴田純。演じたのは松田優作である。
 この台詞が登場するのは、第111話『ジーパン・シンコその愛と死』で、助けた犯人に撃たれてジーパンが殉職してしまう場面である。
 そのあまりに皮肉な結末と、ヒーロー性と裏腹な人間らしく、醜く、弱い死に方が衝撃を与えたという事で、あの最期をよく知っている人は多いだろう。
 かなり多くのバラエティやフィクションでパロディされており、日本人なら元ネタのドラマもどこかしらでタイトルを聞いた事はあるはずだと思われる。

 で、この台詞は、本来は、「なんじゃあこりゃあ」という感じのアクセントの置き方なのを知っているだろうか(活字だとわかりづらいが)。
 この訛りは、実は演じた松田優作の故郷・山口県の方言がかなり入っているのである。
 大抵パロられる時、その「なんじゃこりゃあ」がかなり原典とアクセントの置き方が違ってしまっているのが個人的に気になるし、山口県民はその辺りがかなり気になるらしい。
 もうこの話はいいや。


 どさりと倒れた矢森は、その男の顔を見た。
 影になって見えなかったが、そこには男がいた。


「あ、あんた……一体……」











【読者への挑戦状】


 ここで、予約内容をもう一度振り返ってみましょう。



 今回、事前に予約されたキャラは、五名。
 神小路陸、矢森雪雄、ノーブル由良間、鐘本あかり、甲田征作です。



 陸と矢森の二名は、既に登場しているので除外されます。
 これは自殺でもなければ、陸が銃を持っていたというケースでもありません。
 先ほど、矢森の視点で「男の顔を見た」とあるので、あかりも除外される形になります。


 そうすると、犯人はノーブル由良間か甲田征作という事になります。
 犯人は二分の一。
 このうち、大抵は意外な方が犯人です。



 犯人は、ノーブル由良間でしょうか?
 それとも、甲田征作でしょうか? 



 ――――健闘を祈る。



 ヒント:手がかりがないので、この犯人を当てる方法はあてずっぽうしかない。








298 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:08:58 opPb5paQ0





 解答編。
 甲田征作でした。
 甲田征作は、猟銃を構え、鬼神の如き眼差しで矢森を見下ろしていた。


「この日本にはまだ医者のいない山村や離島がいっぱいある。
 そんな無医村に一つでも多く病院を開業するのが私の罪ほろぼしなんだ。
 しかし、そのためにはお金がいるんだよ。
 ――莫大な資金がね……!」


 動機を説明しながら、甲田は矢森に近寄り、遂に矢森を見下ろせる距離まで近づいていたのだ。
 そんな甲田の顔色を見た矢森は、血の気が引く想いであった。
 薄い目の男が、感情のない開眼を示している光景を見上げて、血の気が引かない方がおかしい。


「あんた、そのために殺し合いに!」

「ああ! そうでなければわざわざ人殺しなんて……」


 このリゾート島の会員権で手に入る五千万円は、言うまでもなく大金である。
 勿論、金の為とはいえ人殺しはよくない。
 よくないが、金が手に入る→病院つくる→大助かり。
 無医村医療の為、仕方ない犠牲である。
 これはもう仕方ない。
 甲田さんはもう、何百人殺しても心を痛めないだろう。


「ひっ……!!」


 矢森は、僅かな体力で這うようにして逃げようとしたが、甲田はそんな彼の背中を足で踏み潰すように押した。
 四つん這いだった矢森も、今の一撃に衝撃を受け、ぺちゃんこのうつ伏せ状態になる。


「げふっ」

「チッ」


 だが、それでは狙いが定めにくいと思ったのか、甲田は更に、彼を蹂躙するかのように、甲田は矢森を足蹴にして、うつ伏せの体勢から仰向けへと転がした。
 矢森の視界には、おっさんが猟銃を構えて自分の体に片足を乗せている光景が映し出された。
 それは、矢森にとって過去に感じた事がないほどの恐怖だった。
 あまりの出来事に、矢森は助けを乞う為の言葉すら出てこなかった。
 そして、そのおっさんは矢森に向けて語りかけ、矢森はそれをただ聞くだけなのである。


「もういいんだヤモリシャツくん……君が死ねば済む事なんだ」


 その声は、やたら静かだった。
 甲田は、言いながら矢森の口に猟銃の銃口を突っ込んだ。
 それから、銃を持つ手が震えるのは、矢森の歯がガタガタと震えているからに違いなかった。
 甲田は、それから数秒数えた後、その引き金を引いた。



 ばひぇーんっっっ!!



 大きな音がそこに響き渡り、彼はこの場にある三番目の死体となった。


「"カルネアデスの板"だよ……」


 甲田は、それだけ言って、またどこかへと姿を消していった。


 次に甲田に殺されるのは、この話を見ているあなたかもしれません。
 ほら、よく見てください。
 あなたの後ろに甲田さんが……。





【矢森雪雄@亡霊校舎の殺人 死亡】


299 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:09:17 opPb5paQ0





【一日目/黎明/香取家周辺@幽霊客船殺人事件】


【甲田征作@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、精神不安定、六角村症候群
[装備]大広間に並べられていた猟銃@秘宝島殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:無医村に病院を開業する為に殺し合いに乗る。
1:過ぎてしまった事をいくら悩んでも仕方ない。それより未来に向けて努力をしよう。
 (略:殺しちゃっても、まあ後々がんばればいいよね)
2:ええどうもスミマせん――……
 (略:罪の意識はそこそこあるかもしれない)
[備考]
※参戦時期は、「闘いたまえ」とか金田一を激励したあたり。
※さっきまで六角村にいたのと、香山が二度死んだのと、九条がなんやかんやで裏切ったのとが原因なのか、頭がいかれました。
※大広間に並べられていた猟銃は八つあるので、八人までなら支給していいんじゃないかと思いますがいかがでしょう。











 一方、逃げていた神小路陸は、逃げまくった結果、へんな村へと来ていた。
 ここまでだいたい十分。
 矢森がこけるまでに五秒。そこからここまで十分。
 小説の文章のバランスとはどこまでも奇妙である。しかし、人間の体感時間も不思議な物である。
 たとえば、小学生の過ごす一ヶ月と、大人が過ごす一ヶ月は、もう明らかに別物だ。
 又聞きだしソースもないのであんまり真に受けないで欲しいが、人間が八十年生きた場合、感覚的な折り返しは十八歳程度だとか。
 陸はまだ折り返す前、矢森はもう折り返した後だったのかもしれない。

 まあ、五秒が短すぎるだけで、十分もそんなに長い時間ではない。
 先程までの町並みから、ポケモンGOが出来そうにないこのド田舎の村みたいなところまで、走ってもそんなに時間がかからなかった方だと言えよう。
 さすがリゾート島である。


(逃げ切った……のか?)


 陸が辿りついた場所は、崖になっていたので、陸も流石に足を止めて、背後を一度見た。
 誰かが追ってくる気配はない。
 どうやら、奇跡的にも逃げ切ったらしい。
 肩で息をしながら、陸は休もうとしていた。


「!」


 しかし、そんな陸だったが、前方の崖の下を見た瞬間、稲妻のような衝撃が走った。。










 そこで陸が見た物とは――――


300 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:09:45 opPb5paQ0




















「『ダビデの星だ』……!」



















.


301 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:10:09 opPb5paQ0
 ダビデの星の形をした村であった。
 それを見た陸は、思わず仰々しい顔でその衝撃を口に出してしまったのである。
 すると、どこからか女性の声が訊き返した。


「ダビデ?」

「ああ……ダビデはヘブライ人――つまり古代イスラエル人の王だ。
 この村の形は そのダビデ王の紋章の形そのものだぜ。
 名づけるなら、その形をそのまま村の名前にした『六角村』ってところだな(大正解)。
 俺に支給されたペンダント(新事実)も頭にもう一つ三角がつけば『ダビデの星』になる」


 陸はやたら詳しい解説を始める。
 六角村に入ると、ある者はダビデの星の解説を始めたくなり、ある者はその解説を聞きたくなってしまうのだ。
 それもまた人情。
 六角村には不思議な力がある。
 解説を聞いていた人は、思わず聞き返してしまった。


「へ〜〜〜っ。
 でもなぜそんなものがこんなリゾート島に?」

「さあね……。
 でも青森県にある『戸来村』(現・新郷村)の村名も『ヘブライ』がなまったものと言われてるんだ。
 その村にはヘブライ語らしい民謡も伝わっているそうだぜ。
 だから、ここはもしかすると青森県なのかもしれないな(不正解)」

「へぇ〜〜〜〜〜」

「って……。ん?」


 陸はそこまで解説したところで、聞き手がいる事に気づいた。
 六角村のあまりのダビデ力(ちから)に圧された陸は、小学生らしからぬ博識を披露してしまっていたが、それにしても解説の聞き役に全く気付かなかったのである。
 そこにいたのは、なんだかどことなく見覚えのある顔つきの女性だった。
 

「え、陸……?」


 先に話しかけてきたのは、その女性の方だった。
 金髪のふわふわしたショートヘアーで、それに合ったようなふわふわした天然系の雰囲気の女子高生。



 彼女の名は、鐘本あかり。
 狐火流しの女性陣の中で一番闇が浅く、陸にとって縁のある少女が――六年だけ、大人になった姿であった(タイトルはこれで回収、おねショタ好きが繋いでくれたら嬉しい)。





【一日目/黎明/六角村@異人館村殺人事件】


【神小路陸@狐火流し殺人事件】
[状態]異人館村症候群
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1、若葉のペンダント@異人館村殺人事件
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:あかり……?
[備考]
※参戦時期は、あかりに靴ひもを貸さなかった直後。
※この陸はショタなので母親は生存しています。
※ヤモリ柄の服を着た男性のことを2人殺害した犯人ではないかと思っています。
※陸の靴ひもを貸さなかったスニーカーは元々履いていたものなのでランダム支給品には含まれません。


【鐘本あかり@狐火流し殺人事件】
[状態]異人館村症候群
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:陸だよね……?
[備考]
※参戦時期は、第3話終了くらい。
※陸を見て、「陸だなあ」と思っています。



【異人館村症候群】
※六角村の大麻のせいで起こる風土病で、発症すると多少頭がおかしくなる場合があります。
 金田一少年の場合は、異人館村に来て間もなくしてダビデの星を解説し始めたり、人形を裁断し始めたりなどの奇行が始りました。
 他にも、殺人術を習い始めたり、変な袋を被ったり、屋根に上って無意味に十字架を細工したり、エリザベートしたり、「エリザベート・バートリ夫人」「エデンのリンゴ」「ソドムとゴモラ」などのそれっぽい文学用語を引用してインテリぶったりしてしまいます。
 とにかく、ここに入ると、登場人物の設定や方向性が固まっていないかのような空気になってしまいます。
 六角村出身でなければ、外に出ると治ります(出身者は手遅れの場合が多いです)。
※島田荘司のトリックの引用は、ネタバレになるので控えてください。
 







302 : おねショタ ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:10:31 opPb5paQ0





 その頃、ノーブル由良間は、人形と一緒に木にぶら下がっていた(※注釈4)。





【一日目/黎明/六角村@異人館村殺人事件】

【ノーブル由良間@魔術列車殺人事件】
[状態]健康、宙ぶらりん
[装備]生きたマリオネット@魔術列車殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:助けて。
2:ブラをスる。
[備考]
※参戦時期は、団長が逝ったあたり。
※生きたマリオネットとロープで繋がれており、シーソートリックみたいな感じでぶら下がっています。
 人形が70kg、由良間が60kgなので、10kg以上の物がないと宙ぶらりん状態からどうにもなりません。
 初期位置で既に宙ぶらりんでした。自らこうなったわけではありません。
※既に三時間ほどこのままなのでそろそろきついと思われます。
※高遠が180cm前後の身長なのに50kgとか言われてますけど、よくよく考えると由良間もあの身長であの体重は軽すぎる気がします。
 我々は、高遠の体重がヤバすぎて由良間も結構細いのを気にしなくなる心理トリックに引っかかっていたのではないでしょうか。
※「ノーブル由良間」で検索すると、腐女子のみなさんが考えた「由良高(由良間×高遠)」という変なBLカップリングが出てきます。
 あんな出番のくせにpixivで人気すぎる気がします。
※まあ、それは置いといて、実際、団長が死んだ後の態度はどうかと思うものの、とんでもなく悪い奴ってほどでもないただのタカビーな人だと思います。
 近宮の件も、彼は本当に事故だと思っていたようですし、たまにゆるい顔になった時が結構可愛いのでそんな悪い奴じゃないと思います。











【本編注釈】

(注釈1)ここに記されている内容は、基本的には原作にはない描写であり、殆どオリジナルや想像の物である。

(注釈2)お前らせめてヘルメットしろよ。

(注釈3)服装に関しては、シャツに大きく「Ping Pong(卓球)」と書いてある鶴野冬華も、二日目に着替えるべきだったのではないかと思う。

(注釈4)なんで由良間を予約してしまったのか、私にもわかりません。


303 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:10:57 opPb5paQ0
投下終了です。


304 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/10(水) 03:18:36 opPb5paQ0
斧寺空美を予約します。


305 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/10(水) 05:50:14 FTTznD0U0
投下乙です
あ…、六角村症候群って…、うっ、頭が…
六角村なら仕方ない
おねショタ逃げて


306 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/10(水) 05:54:58 FTTznD0U0
異人館村症候群だったか
あれ?
由良間が異人館村症候群かかってないのは流石近宮先生の弟子ですね
今後出番あるのでしょうか…


307 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:31:44 6Y9O835o0
近宮玲子や山之内恒聖みたいな、
罪に問いようのないやり方で殺人してる人たちは一番怖いですよね。
めっちゃ殺してる勢はめっちゃ殺してますが、
めっちゃ殺してる分まだかわいいような気もします。

六角村のアレは風土病だったんですね。
緑川因子みたいなものなんでしょうか。同じ青森だし。

風祭邸にも最低四丁は銃あったし、まだまだ出せそうですね。

投下します。


308 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:33:45 6Y9O835o0


―私はまだ生きているのだろうか?

楊蘭の問いかけに答えるように、彼女の肩には徐々に
抉るような痛みの脈動が戻ってきた。
この耐えがたい痛みこそ、彼女の生がこの世に繋ぎ留められたことを示していた。

なぜ…?

考えようとすればするほどはっきりしてくる痛みの輪郭に刺されながら、
楊蘭は必死に記憶を辿って今自分が置かれた状況を推測しようとした。


あのとき。
小田切進、佐伯航一郎と共に学校前の夜道を歩いていたら、
急に後ろから襲われ、林の奥へと連れ込まれた。
抵抗虚しく、見知らぬ裸の熟女にわけもわからぬまま矢を刺され、
そのとき誰かがそこへ走ってきた。
熟女がその「誰か」に気を取られた隙をついて、無我夢中で逃げた。
―逃げるごとに。
意識は次第に朦朧とし、痛みも次第に鈍くなっていった。
深くは考えなかったが、
こんな真っ暗な雑木林に人なんているはずもない、とどこかで悟っていた。
もう死ぬんだな、と思った。
なぜだか笑みがこぼれた。


もういいかな。肩の痛みも、もう殆ど無くなったわ。
あたし、ゴミみたいね。





309 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:34:47 6Y9O835o0

それからどのくらい経ったのかわからない。
楊蘭が静かに目を開けると、
暗がりの中に、彼女を覗き込む人影がそびえていた。


「気が付いたんだね。ええと…七瀬くん」


人影は青年の優しい声色で語りかけた。
この人もあたしを殺しに来たのかしら、
そう思っていた楊蘭は、思いがけず自身の緊張がほぐれるのを感じた。

「七瀬…?あなたも美雪を知ってるの?」

楊蘭の問いかけに、青年はピクリと動いた。

「えっ?」


「…私、楊蘭っていうの。香港でモデルをしていて。
 私にそっくりな子が代役でショーに出てくれることになって、
 それで初めて美雪のことを知ったわ。」

「なん…それじゃ君は、七瀬くんでも無いのか」

青年の驚愕の表情を声からありありと聞き取り、楊蘭は後ろめたさに苛まれた。
美雪という少女は、彼女を誘拐し、軟禁した楊蘭に対してすら優しかった。
きっとこの青年も、美雪との大切な思い出を抱えているに違いない。
楊蘭は自分の傷口に布がきつく巻かれ止血が施されているのに気が付いたが、
この青年が優しい美雪と取り違えて助けた女は、3人もの人物を殺害した犯罪者なのだ。

「…ごめんなさい。
 あなたは私を美雪だと思って助けてくれたのね」

楊蘭は傷口に巻かれた布を見ながら消え入りそうな声で言うと、
青年は彼女を元気づけるように明るい声を出した。

「いいんだよ。僕は君が誰であれ、見捨てられなかっただけなんだ。
 …ところで、その傷はどうしたんだい?」

「…私もよくわからないの。佐伯くんと小田切先生と一緒に歩いていたら、
 後ろから裸のおばさんに襲われて…そのまま矢を…」

下手したら母親が火だるまになったときよりもトラウマになるかもしれない。
思い出すだけでも逃げ出したくなるような体験に、楊蘭は言葉を詰まらせた。
しかし、青年が食いついたのは意外なところだった。

「小田切先生…?まさか、小田切進?」

「えっ? ええ、そう言ってたと思うわ。不動高校の先生だって」


暗闇でほとんど見えなかったが、楊蘭は青年が明らかに青ざめるのを感じた。
青年は少し低い声でそうか、とだけ言い、
それからなにか考え込んでしまったらしく、
風の音、どこかから地鳴りのように聞こえるざわめき、木々の葉擦れ、
その中で彼の呼吸の音だけが楊蘭の耳をくすぐっていた。







310 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:35:15 6Y9O835o0



遠野英治は愛と正義に燃えた青年だった。
そんな遠野を試すかのように、彼の愛の前には幾多の障壁が立ちはだかっていた。
そもそも、愛した人物が実の妹だったという段階で
並の人間ならば神を呪い、愛を諦めところだろう。
しかし、遠野英治は他のすべての価値観をおいてもその愛を貫こうとする直向きな男だった。



孤児だった遠野英治と妹の螢子は、やがて別々の家に引き取られることになった。
それぞれが家族を持つとなれば否応無しにしがらみも増えるだろう。
螢子と離れたくない、ずっと二人寄り添って同じ景色を見ていたい、という思いが
遠野英治の中に強く渦巻いていた。
しかし、妹の幸せを切に願った結果、彼は自分の感情如何よりも螢子に人並みの生活をさせてやることを取った。
別れの朝、遠野英治は自分の感情をぐっと抑え、
螢子に向けて笑って見せた。
痛ましいまでの献身的な愛は、遠野英治の礎となり
彼の行動原理を形造っていた。



「私は大丈夫。だって、エーくんの彼女なんだもん」

久しぶりに出会った螢子は気丈に笑ったが、彼女の指は傷だらけだった。
世の中は思うようにはいかないものだ。
だとしても。
どんな障壁に阻まれようとも、
遠野英治は自身のすべてを犠牲にして螢子を守ろうと決めていた。

巨大グループの跡取りとして養子に取られた遠野英治を妬む者は多かったが、
彼が孤児だということを嗅ぎつけ、跡取りとしての彼の適性を問う者が現れるたび、
遠野が考えるのは小泉家に引き取られた螢子のことだった。

誰よりも幸せになってほしいと願う螢子がもしこんな恥辱に晒されていたら、と考えるだけで、
正義感が彼の心に火をつけた。
世の中にはびこる有象無象の価値観など、耳を傾けるに値しないものだと一蹴りし、
彼はただ螢子を少しでも引き上げてやろうと、自らの道をひた走った。



そんな遠野にとって、オリエンタル号の乗船チケットは
日ごろ虐げられているであろう螢子に本来の笑顔を取り戻してやれる
またとない機会だった。
だが、愛する螢子の喜ぶ姿を間近に見たい、という彼の無欲な願いすらも
養父母の冷たい反対によって打ち砕かれてしまった。
説明しても、懇願しても、養父母は首を縦に振らなかった。

遠野英治は養父母の理解の無さに愕然とした。

自分はただ一つこの世で信じられるもの、
ただ純粋な愛にのみ生きているというのに、
なぜそれをこんなに否定され、妨害されるのだろうか。

―俺が跡継ぎだからか。
俺の気持ちなんかどうでもいいのか。
そうだ、言うなれば、跡継ぎなんて本当はロボットの方が良いのだ。
ただ人間でなければ表に顔向けできないという理由だけでここに置かれた駒なんだ、俺は。

だが、養父母は一つ間違えている。
人間はロボットと違って、何の正義も信念も無しに生きることはできない。
どんな心無い中傷を受けようとも、どんな過酷な要求を背負おうとも、
俺が迷わずに生きて行けるのは、
この世で唯一の真実がそこにあるからなのだ。

――螢子。


遠野はぶつけようのない悔しさに涙を流した。
なぜ自分が跡継ぎとして課せられる要求に耐え、
生徒会長として、完璧な息子として、努力し続けられているのか、
そんなことすら奴らは考えようとしないのか。

私利私欲にまみれた浅はかな考えから、ささやかな純情をすら踏みにじる連中、
遠野が愛に支えられ重ねてきたこれまでの努力を見ようともせずに
なにもかもを自分の都合の価値観のもとに捻じ伏せようとする連中の
なんと醜く汚いことか!






311 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:36:04 6Y9O835o0



さて、愛と正義に燃えた遠野英治は、
愛する螢子の無念を晴らし、より良い世の中を作るため、
総勢九名に対する無差別殺人を実行中だった。
悲恋湖に集めた倉田壮一、香山三郎、橘川茂、小林星二の四人を殺し、
次の殺人のタイミングを狙って盗聴を行う。
万事思惑通りに事は進んでいた。
茂みに身を潜ませ盗聴器に耳を澄ませていると、不意に意識が遠のき
気が付くと体育館だったわけだ。



殺人計画を実行に移すにあたり、彼の背中を後押しする最後の要因となったのが、
最近不動高校関係者により立て続けに起きた3件の連続殺人だった。
事件はどれもそれぞれに高い凶悪性を有するもので、
3件目、的場の事件の記事を一面に認めた朝、遠野は確信した。


この学校は呪われている。
ならば乗るしかない、このビッグウェーブに…!


螢子と一緒に撮った最後の写真。その中からいつも彼女は微笑みかけていた。
この笑顔を守るためならなんだってできる。
遠野はあの時の唇の感触を思い出しながら、写真の中の螢子に優しくキスをした。


俺は正義を失った今までの3人のように、失態を犯して死んだりはしない。
俺には螢子がいる。生き残って螢子を守る。
螢子が死なずに済んだ世界を、螢子が幸せになれる世界を作る。
ただそれだけのために、俺はこの人生を捧げるんだ。


遠野英治は正義に燃えていた。







312 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:37:39 6Y9O835o0


そんなこんなで、尾ノ上の死体を発見した遠野は、
この近くに螢子がいたと知って狂喜した。
螢子が生きている!
それは遠野英治にとって何にも代えがたい希望だった。
迅速な捜索のためにジェイソンマスクを被った遠野は
人類の1.3倍の速さで森を駆けた。

「螢子!どこにいるんだ螢子!」

茂った森の草木は彼の叫びを吸ってあざ笑うように揺れた。
ジェイソンは夜の森を舞う――

ほどなくして。
何気なく見下ろした自分の足元に、
月明かりに照らされた螢子が倒れているのを発見した。


「螢子!!!!」


抱き起こすとそれは螢子ではないようだった。
外見は激似だが、なんとなく気配が違う。
おそらく七瀬美雪だろうと思った。
しかし、ひどい出血である。
他人とはいえ螢子の姿をした者を、遠野が見捨てられるはずもなかった。

「生き返ってくれ、七瀬くん…」

遠野はジェイソンマスクを外すと、自分の服の裾を破り、
女の傷を縛った。
早く螢子を探したい…でも、ここで彼女の死を見るのは
螢子の死をまた見せられるようで耐えられない…。

そんな心境でやきもきしていた遠野なので、
女が目を覚ましたときの安堵は一入のものだった。
彼女は驚いたことに、七瀬美雪でもないらしい。
この世には似た人間が3人ずついるというが、
まさにその3人を自分はコンプリートしてしまったわけである。
やはり螢子との並々ならぬ絆が引き寄せた運命なのだろうか。


「いいんだよ。僕は君が誰であれ、見捨てられなかっただけなんだ。
 …ところで、その傷はどうしたんだい?」

遠野は目の前にいる螢子の分身に優しく尋ねた。
すると、彼女から返ってきたのはとんでもない一言だった。

「…私もよくわからないの。佐伯くんと小田切先生と一緒に歩いていたら、
 後ろから裸のおばさんに襲われて…そのまま矢を…」

「小田切先生…?まさか、小田切進?」

「えっ?ええ、そう言ってたと思うわ。不動高校の先生だって」

「そうか…」


313 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:38:33 6Y9O835o0


これはとんでもない事態だ、と遠野は思った。
確かに、一度は死んだはずの螢子が生き返っているとなれば、
そういうこともあり得なくはない話だった。
だが彼の知る限り、不動高校の小田切進というのは
学校では温和な教師の仮面をかぶりながら
つい最近、青森県の村を全滅に追い込んだ、恐ろしい人物だ。

それも、遠野の後輩の時田若葉をかどわかし、彼女をホテルに連れ込んだ挙句
彼女を利用するだけ利用して、用済みになると首を落として殺したという
血も涙も無い凶悪犯だった。
バトルロワイヤルなどと言われたら嬉々として殺人に勤しむに決まっている。

その異常な男が、彼女の話ではこの近くにいるらしい。
彼女が裸婦に襲われたのだって、小田切の差し金かもしれない。
螢子にそっくりの彼女が襲われて、螢子が襲われないはずがあるだろうか?
いや、ない。



このままでは、近くにいるはずの螢子が危ない。


遠野は自分のなかに渦巻きだす焦燥を必死に抑えながら、
楊蘭に尋ねた。

「…ねえ、君って、不動高校の方から来たんだよね…?」

楊蘭はこくんと頷いた。

「じゃあ、あっち、で合ってるかな…?」

楊蘭は少し記憶をたどるように迷ったようだったが、
すぐにこくんと頷いた。

「ありがとう。じゃあ、元気でね。」


314 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:39:21 6Y9O835o0

楊蘭ににこりと笑って一瞥すると、
遠野は振り返って再びジェイソンのマスクをつけた。

殺す…!


熱い血潮の脈動にクラクラする。
自分の感覚器官を抑えることもできないまま、どちらが上か下かもよくわからないままに
彼は再び駆け出した。



この世の中で螢子に害を為す者すべて!

俺たちの幸せに口出しする虫けら共すべて!

殺しつくして!

何もかもが理想的に!!

一抹の不安すらなく!!

完璧に平和な世の中を作る!

そのために俺は、すべてを捧げる!!




遠野英治は正義に燃えていた。




【一日目/黎明/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


315 : 次は頭のおかしくない人を書く ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:40:04 6Y9O835o0


【楊蘭@香港九龍財宝殺人事件】
[状態]負傷(左肩を矢が貫通した程度)(半分くらい治癒)
[装備]2種類の液体が入った袋@電脳山荘殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:亡命してた幼少期と比べたら三日間なんてそんなに気負うことでもない。
1:殺されそうになったら殺し返すかもしれない。
[備考]
※参戦時期は、犯行後ファッションショーに出てから刑務所に入れられるまでです。
※日本は香港とあまり変わらないくらい治安が悪いかもしれないと考えを改めました。




【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、返り血、ジェイソンに変身(これをつけると罪悪感が消失する)、ジェイソンモード
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説、果物ナイフ@狐火流し殺人事件、ド根性バット(ミラクルミステリーパワーステッキ最終形態)@美少女探偵金田一フミ3、光太郎が拾った(貰った?)サッカーボール@狐火流し殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘殺人事件、
[思考・行動]
基本:螢子は生きているかもしれない、だが三日待って九条をころす。
0:螢子を探す。優先して探す。
1:螢子は生きているかもしれない、だがSKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:螢子は生きているかもしれない、だが脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:螢子は生きているかもしれない、だが鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
4:螢子に危害を加える可能性のある参加者は全員殺す。凶悪犯は優先的に殺す。

[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。
※ジェイソンモードになると身体能力や回復能力、危険察知能力、その他もろもろがほんの少し上がります。


316 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 01:41:26 6Y9O835o0
投下終了です。すみません、最初の一回タイトルが抜けました。


317 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/11(木) 02:23:16 BI0QihII0
投下乙です。
今回はヒーローものかな?
…なんというか、遠野もいざとなると意外と大人しいというか、楊蘭とかにとっては結構頼り甲斐がありますね。
でも、それは螢子似だったお陰なのかも。美雪に絡む姿といい、僕らの生徒会長は温和な性格だったに違いありませんが、やはりSKは許せません。
イニシャルがSKという大罪を犯した奴らにはどこまでも厳しい彼なので、もし楊蘭がブスでSKだったら正義の鉄槌が下っていたのでしょう。
ほろべSK。

あと、関係ないですが、「あーあのキャラいないまま60人出尽くしちゃったー」っていう惨事を防ぐ為に、皆さんも「見たいキャラ」を適当に教えてください。
優しい人が書いてくれるかもしれないので。


318 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 03:32:00 6Y9O835o0
ありがとうございます。
おっしゃるとおりのヒーローもので、
遠野が正義ってことを言いたかっただけです。
もっと短くしたかったんですがすみません。

あと、現在予約されていない水沢利緒、ノーブル由良間で
続けて投下致します。


319 : 理由など無くても死ぬときには死ぬ ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 03:34:02 6Y9O835o0


どこをどう歩いてきたのかわからないが、
水沢利緒は気が付くと見晴らしの良い丘の上に立っていた。
白み始めた地平の手前に、
妙な形に整地された村が見えた。


「ダビデの星だ…」

利緒は呟いた。

ちなみに、ダビデの星は古代イスラエルにおいてダビデが使用していた文様ではなく、
十七世紀頃にユダヤ人の民兵に何か特別な紋章を与えようと苦心した結果、
ダビデのDをギリシャ語のΔ(デルタ)に置き換え、Δを二つ合わせて図案化したものだそうだ。
このため、風祭淳也&六星詩織カップルが
「家紋をかたどって」作成したという三角形のペンダントは、
紋章の由来まで踏まえたカバー域の広い仕上がりとなっている。


そんなことを考えながら水沢利緒が振り返ると、
木の下に置かれた人形が目に入った。


「こんなところに人形…?罠かしら」

訝しみながら辺りを見回す。
木の上に人がいる。
やはり罠か。
水沢利緒は犬笛を使わなかった。
手で合図をするだけで、犬たちがノーブル由良間にとびかかった。
由良間の足に3匹ほど食らいついたところで、由良間はずるずると引きずり下された。
殆ど失神寸前だった。

「それっ」

水沢利緒は、由良間の足が地面に触れるか触れないかの瞬間
彼の胸に犬笛を突き立てた。
ボールペンで人が殺せるなら、犬笛でも殺せるだろうと思ったのだ。
由良間はつぶれたナメクジのような声を出した。
犬笛はボールペンより短かったので、
人差し指と中指を第二関節くらいまで胸部にめり込ませ、深めに犬笛を押し込んだ。
最早指で突いて殺したと言っても過言ではなかった。
そのまま、由良間は何も言わずに死んだ。

5時間ほどの中吊りが、犬たちに噛みつかれて唐突に終わったと思ったら
いきなり胸に円筒を突っ込まれたので、びっくりしたのだ。


「笛、取れなくなっちゃったね」

利緒は少し残念そうに言った。
日の光が差し込んだとき、そこにもう彼女の姿はなかった。


【ノーブル由良間@魔術列車殺人事件 死亡】



【一日目/早朝/六角村@異人館村殺人事件】



【水沢利緒@魔犬の森の殺人】
[状態]催眠状態?
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:自分の実験台にした連中への復讐?
0:???
[備考]
※参戦時期は、死亡後。
※なにかきっかけがあれば催眠術が解けるかもしれないです。
※制限時間で催眠が解けるかもしれないです。
※千家くんに会えれば催眠が解けるかもしれないです。
※ポケモンの笛的なものがあれば催眠が解けるかもしれないです。
※びっくりすれば催眠が解けるかもしれないです。
※目的を果たせば催眠が解けるかもしれないです。
※満足すれば催眠が解けるかもしれないです。
※死なないと解けないとかは可哀想なのでやめてください。
※そもそも催眠状態かどうかも不明です。
※利緒の近くには数匹の犬が付いて来ます(催眠の間)。
※萬屋、参道、渡辺、百田には問答無用で襲いかかるかもしれないです。
※他の参加者にも問答無用で襲いかかるかもしれないです。


320 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/11(木) 03:35:17 6Y9O835o0
投下終了です。


321 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 03:58:18 09.sKaWs0
投下乙です
遠野先輩って病気なんでしょうか?
いや、六角村の連中に比べたらまだいいほうだと解釈しておきましょう
登場する度にいつパワーアップするのかつい期待しちゃいますね

ダビデの星ってなんだっけ……
投下します


322 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:05:17 09.sKaWs0
A.七瀬美雪(ラリってた)が八尾の別荘に火を付けて、千家貴司(ラリってた)が灯油をぶちまけたからである。
そしてそれをやらかした黒幕は週刊少年マガジン『金田一少年の事件簿』の主人公金田一一(故意)である。
彼らは放火の罪があるが八尾は別に訴えることのしない心の広すぎるお方なので3人は感謝すべきである(1人別の罪で捕まってしまっているが……)。
情状酌量の余地がないのは誰の目にも明らかである。
そもそもこの強引な展開が無かったら千家くんはガチの放火でもするつもりだったのだろうか?
アニメはアニメであの展開は器物損害である。

タイトル回収終了。
以下おまけ。


323 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:05:43 09.sKaWs0




狭間ヒカルはうなされていた。
それは単にインフルエンザだけに苦しめられているわけではなかった。

(で、出来の悪い子で……ごめんなさい……)

不動高校囲碁部の部員の彼女もまた同じ部活の仲間の小角部長と後輩の海峰と不動高校に入学した経緯が一緒なのであった。
2次募集組。
それは囲碁部3人という少ない人数の全員に課せられた呪いであった。
勉強も囲碁も名門開桜学園狙いであったのだが、補欠2位での受験結果であり1人両親の引っ越しという理由で開いた1枠補欠が開いたらしいがもう1枠が開くことはなくそのまま2次募集の不動高校に入学した過去が金田一一や七瀬美雪、千家貴司、村上草太、他諸々の生徒入学時に繰り広げられていた狭間の過去である。
一緒に受験した親友は合格をもらい羨ましかったけど祝福した。
親友の名を語って入学を辞退させてしまおうとか、そんな事を考える様なことはない純粋な子であった。
――それから彼女は落ちぶれていった。
ついには親から「予備校の四ノ倉学園か極問塾のどっちかに入って学力を上げなさい!」と説教を受けたばかりだ。
四ノ倉学園はいつかに起きた殺人事件後も首吊り者と入学者が跡を絶たない。
あの殺人事件で亡くなったいじめっ子だった3人の亡霊が自殺に見せかけていたずらに生徒を吊るし回っているなんて噂もあるくらいだ。
極問塾は最近の殺人事件後もっと規制を掛けなくてはならないとかで益々厳重になって監獄っぷりに拍車が掛かっているらしい。
監獄より厳しいって噂だ。
どっちも入りたくない、そんな心労も溜まった結果インフルエンザにかかってしまう。

(私も美雪ちゃんみたいに頭が良かったらな……)

努力しても努力しても追い付けず……。
差が大きく離される一方……。
生徒会長兼演劇部兼オカ研部長。
たまに囲碁部マネジャーをやっていたり、スキー部の合宿に参加したり、スキー部の代役が持ち上げられたり。
それどころか殺人事件に50件以上巻き込まれていたり……。
いつ勉強しているんだろうって思うんだけどそれでも学年上位を保有しているのだ。
最近はミステリー小説も読み始めているらしい、すごい!
行方不明になっている元生徒会長・遠野英治と付き合っているという噂もあり先輩と一緒についつい広めてしまったこともある。
いま遠野先輩は何をしているんだろう?
学校を中退した噂はないけどまさか駆け落ちして結婚していたりするのかな?
すごい厳しい家みたいだしあり得るよね、なんて友達と最近噂を流していたな。
美雪ちゃんすごいマンセーから遠野先輩どこ行ったに話が変わったけどいまはそんな噂は役に立たない。
海峰くんが人を殺してしまった、という噂の方を広めなくては……。
こんな特大スクープを広められないでくたばる私なんてありえない!!
誰か、だれかに言わなくちゃ……。



狭間の脳内で色々な話が渦巻いているが身体がいうことを聞かないでいる。


324 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:06:27 09.sKaWs0



(意識が……)

各参加者の不利な点を上げていこう。
的場勇一郎や冬木ウメの高齢、神小路陸や斑目るり、海峰学の人生の経験不足が否めない中学生以下の幼すぎる年齢(佐伯くんもだって、こやつめ)、日本語が通じない佐伯航一郎の伯父。
そしてインフルの病原菌が体内で暴れ回っている狭間であろう。
インフルであるインフル。
彼らのデメリットは生まれの問題だししゃーないで済むのに対し、彼女は健康な時だってあるのによりにもよってという悔やみきれないものがそこにはあるだろう。

そして八尾の別荘周辺で転がっている。
この別荘が登場する事件が起きた際の容疑者に数字が1人以外全員に付いているという法則があった。
我らが『金田一』、『七瀬』という主人公とヒロインにすらあった法則だ。
この事件の為に2人がこういう苗字だったと思うと燃えないだろうか(偶然であるというリアリスト諸君の方がむしろ正しいだろうが一応そういうことにしておこう。金田一の苗字は仕方ないが、もし美雪の苗字に数字が無かった際はお留守番か離れ離れになっていたであろう。そもそも千家くんが事件を引き起こすことすら無かったかもしれない)。

そこに本庁の警官、通称六星に瞬殺された警官Bがこの場を発見してしまうのは時刻が早朝を迎える寸前である。





(ちっ、やっぱり連城さんたちとの合流が難しいか?あのクソガキ共め、けしからん)

3対1という不利な戦いを26分24秒でほぼ無傷で制した警官はやはり時間を掛けすぎてしまったかとちょっと後悔していた。
説得でせめて変な考えだけでも取り除いてやろうかと警官説得をしてやったのだがやはり最初の殺し合いという場に巻き込まれたというショックもあるのかして取り除くのがほぼ不可能であった。
説得さえしなければ時間も半分まで短縮出来たのだが腐っても愛する国の住民だ。
警官の名にかけてそんな職務放棄は彼には出来なかった。
連城たちと合流したいのだが分断されると再会するのは投下を50回や100回繰り返さないとできないというパロロワの暗黙の了解もあり彼もそんなメタな事情に巻き込まれてしまう。

あの4人がどこに行ったのか目処も付けられないまま辿り着いた先には燃えた小屋と倒れている女子生徒であった。

「君!?大丈夫か!?」

警官は慌てて彼女に近付いていく。

「はあはあ……」

彼女は息があるみたいだ。
だがこの小屋の火事は危険だ。
火災の際には麻酔性ガスで二酸化炭素、一酸化炭素、シアン化水素など。
刺激性ガスで塩化水素、アクロレイン、アンモニア、窒素酸化物などの毒性ガスが発生される。
そんな場所へ人間は置いてはおけない。
すぐさま距離を離した。
警官は燃える小屋を見ながら何故都合よくこちらに火の手が回らない不自然な燃え方をしているなと六角村で起きた館の火災を思い出しながら小屋を背にした。





325 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:06:59 09.sKaWs0


「うーむ……、私が口を付けてしまった水など飲みたくないだろうしな……」

彼女の身体が熱を帯びている。
すぐさま水を飲ませねばと行動に移そうとするが警官は自らの水を既に口にした後であった。
仕方なく申し訳ないと思いながら狭間のデイパックを開ける。

(これは手錠だな。一般人が持ち歩いていい物ではないな)

警官は狭間のデイパックから手錠を預かった。

(だがこれでは病人の荷物を奪い去る泥棒と変わらんな。私も変わりの物を彼女に渡しぶつぶつ交換としよう)

彼は自分が使いそうになかった鎧とか兜を狭間のデイパックに入れて物々交換をしたことにする。
これならば安心して身を護れるだろう。

「さあ、口を開いて」

狭間の口にむりくり水を流し込む。
『ゴク』と喉が鳴ったのでどうやら水分補給がうまくいったらしい。

「あ、ありがとう……ございます」
「おっ、目が覚めたか!?」

だが彼女の症状は風邪、あるいはそれ以上に悪い病気だ。
病気がうつることも厭わず警官は看病を続ける。

「ここは……?」

口調も絞り出すものになっている。

「安心しろ、廃墟みたいになってはいるが造りは丈夫みたいだ」

赤い逆鱗の場所に警官は辿り着いていた。
少しちらかっているし埃っぽいが状況も状況なので我慢するしかない。

「海峰くんは……?」
「いや、誰もいないぞ」
「そうですか」

海峰とは誰かはわからない。
だがくんを付けている辺り彼氏の名前なんかなとか警官が想像していると斜め上な話を聞かされる。

「うちの不動高校の1年生の囲碁部で私の後輩海峰学くんが人を殺すのを目撃しました。私の推理では50パー毒殺、30パー暗殺、30パー不意打ちだと予想します。確実に事件です。私がシャー芯を忘れた時芯の入れ物ごとくれた海峰くんとは到底思えません。悪魔かなんかが取り付いているんです。お願いします、海峰くんの狂気を止めてください!!あの子は人の首を絞めたり切ったりするような残酷なことをする後輩ではないんです!!おお願いします、おねがっ…………ゴホ、ゴホッ」

いきなりダムが決壊した如く饒舌になったがちょっと思考が回っていない様だなと警官は思ったがそれでも人殺しを目撃したとあっては黙っていられない。


326 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:07:24 09.sKaWs0

(大体50+30+30=110じゃないか……)

さて、本格的に連城との合流が難しくなる警官。
海峰学を連行させなくては、調査せねば。
どれから実行に移そうか悩んでいると――。


ダダダダダダッ。


インフルエンザの子には真似できないスピードで階段を駆け上がるスピードダッシュであった。





「ふふふ……、みーつけた」

小泉螢子が次なるターゲットを発見した。
警察と同じ年くらいの女子学生。
どうして自分はこの年でくたばってしまうのかという理不尽。
老い先が短い老人ばかりを助け、未来ある若者を振り払うカルネアデスの板だと!?
ボートに乗っていたのはみんな自分の人生を4〜5倍も生きながらえた奴だったではないか。
手を振り払った奴も自分の3倍は生きていそうな奴だった。
とんだ老害である。

この世全ての悪(アンリマユ)を取り込んでいるわけではないが、なんかそれくらい憎しみという物を小さな身体1つで身にまとっていた。

「な、七瀬くん!?」
「え……、美雪ちゃん?」

狭間も警官の声に釣られる。
確かに彼女は七瀬美雪の顔をした鬼であった。

「また、……また!!!!!」

憎悪を包む嫉妬。
湧き上がるこの衝動はなんだ!?
『七瀬美雪』――。
彼女に対する嫉妬。
自分が死んでいた為に忘れていた嫉妬。

「また七瀬かよ!!!」

さっきのデブも衝動的に殺してしまったのだが、その体型に腹がたったから殺したと自分を偽っていた。
いや、別に偽りではない。
本当に嫌いだ。
だが、それ以上に――。

「七瀬美雪が嫌いだッ!!」





327 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:07:51 09.sKaWs0


「僕の時期生徒会長は七瀬くんに決まったんだよ」

最近自分のお兄ちゃんから『七瀬』という苗字がよく出る。
誰だろう、と聞くとお兄ちゃんは「後輩だよ」と答える。

お兄ちゃん、兄さん、英兄さん、エーくん、エー兄ちゃん、エージ、にいに、兄貴、トーエー。
私が好きだという気持ちに比例して遠野英治の様々な呼び方が溢れてくる。
隠さずいうと、お兄ちゃんに振り向いてもらいたかった。
お兄ちゃんと一緒にいたかった。
エーくんと結婚して子供つくりたかった。
でも、やっぱりそれは出来ない世界。
それは私じゃなくて世界がおかしいんだよ。

だから、いつか、悲恋湖で一緒に身を投げる。

そんな、ささやかなことで人生が終わっても悔いはない。
でも、ふざけた事故で人生が全部狂った。
キス1つエーくんに出来ないまま海に沈んでいった。

「七瀬くんみたいな子と話してると教えがいがあってね」
「風邪で休んだ七瀬くんの家にプリント届けに行ってきてね」
「流石に僕も七瀬くんに怒ったよ」

よく名前が挙がるのだ。
顔が似ているとかいう奴の名前の女が。
嫉妬深いんだって最近ようやく気付いた。
エーくんに対する気持ちが溢れて兄妹じゃ収まらない……。
いいよな、七瀬は。

血が繋がってなくてさ……。

――でもお兄ちゃんは私だけ見てくれているんだ。
それでも足りない……。

私とエーくんの絆は――。
たとえエーくんがすべての記憶が無くしてしまったとしても、私との記憶だけは残り続ける。
結ばれた絆だッ!!





328 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:08:16 09.sKaWs0


「ちっ」

やばいぞあいつは……。
あのガキ共は遊びの範疇の殺意であった。
だがこの殺意は本物だッ!!
六星と同じ狂った目をしてやがる。

それでも小柄な女1人だ。
あしらうのなんか警官が本気出せば気絶なんか容易だ。

(だがこの子を放っておくわけにはいかねーよな)

まだ名前すら知らなく、何故か気を付けて欲しいって人間の方の名前しか知らないくらいの仲だが見捨てる、放置という選択肢はない。
だが背負ってとなると満足に実力を発揮できない。
既に覚悟を決めた人間って奴は実力とか関係なく最悪の結果だけを見せつけてくるのは人生からたくさん学んだ。
六星なんかはいい例だ、2人ならだと完全に油断していた。

(俺の命だってまだ捨てるわけにはいかねえ!!)

家のローンはまだ半分も払ってないし、こないだ2人目の守るべき命が産まれたばかりなのだ。
殉職なんてしてたまるかよ。
俺は彼女を背負う。
申し訳ない顔をしているがなんにも申し訳ないことなんてない。

(だってそれが警察という俺たち、私たちの仕事なんだからよ!)

さあ。一世一代の大勝負、賭けるのは命、架けるのは大切な我々市民の命。
護り切る覚悟は、できている。

「ちっ」

舌打ちをしながらこの女を振り切るか、この場を振り切るか。
これからどう動いていこうか。



刹那で駆ける。







そして私も。
遠野英治のことを想いながら――。



刹那で駆ける。







(美雪ちゃんって流石いっぱいの事件に巻き込まれただけあって怖い顔するなあ)




刹那で意識が落ちる。


329 : Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか? ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:08:55 09.sKaWs0
【一日目/早朝/赤い逆鱗@香港九龍財宝殺人事件】


【六星に瞬殺された警官B(腕を折られた方)@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(中) 、狭間を背負っている
[装備]金田一と長嶋刑事を繋いだ手錠@金田一少年の殺人
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いを止める
0:連城たちと合流する。
1:六星竜一がいればこんどこそ止めてみせる。
2:女の子(螢子)を撒くか気絶させるか。
3:あのクソガキ共(多間木、海堂、古谷)は必ず逮捕する。
4:海峰を警戒。

[備考]
※参戦時期は六星に腕を折られる寸前。
※どんなキャラかわからなくなったら、基本舌打ちしながら殴りかかる人だという認識で大丈夫です。
※2人の子持ちらしい。
※インフルエンザがうつる可能性が1番高い?



【インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員@血溜之間殺人事件】
[状態]気絶、インフルエンザ、疲労(極大)、警官Bに背負われている
[装備]
[所持品]基本支給品一式、兜霧子が詰められた鎧と兜@異人館村殺人事件
[思考・行動]
基本:三日待つ。できればその間にインフルを治したい。
0:美雪ちゃん怖いなあ……。
1:海峰が人を殺していた事がショック。
2:海峰が人を殺した事を一刻も早く多くの人に知らせなければならない。
[備考]
※参戦時期は、風邪を引いた後。
※仮名は「挟間ヒカル」です。不動高校二年生です。女の子です。
 ウィキペで調べた適当な囲碁用語と、進藤ヒカルを組み合わせました(『血溜之間』の登場人物は囲碁用語+棋士の名前が多いので)。
※とても早とちりな性格なので、海峰が高槻さんを殺したと誤解しています。
※とても噂好きな性格なので、海峰が高槻さんを殺した話を色んな人にばらします。
※それはそれとして、インフルエンザなので結構インフルの症状が出ますし、場合によっては感染します。
 下手すると体育館で説明聞いた時点でインフルエンザに感染した奴がいるかもしれません。
※美雪とは不動高校で7番目くらいの親友という立ち位置(狭間視点)。
※美雪からは不動高校で18番目くらいの親友という立ち位置(美雪視点)。
※小泉螢子を七瀬美雪と勘違いしています。



【小泉螢子@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康(ただし指にめっちゃバンドエイド巻いてます)←バンドエイドは関東だけでしか呼ばないらしい
[装備]金田一お手製ボウガン@墓場島殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1、尾ノ上のランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:全員殺せばいいってね。
1:めっちゃ殺す。
2:お兄ちゃん大好き。七瀬嫌い。
3:体重重い奴は特に憎い。年寄りも難い。
[備考]
※参戦時期は、しんだ後。
※原作で台詞がないのでほぼオリキャラです。女版遠野みたいな感じ。
※七瀬美雪、楊蘭と酷似した外見をしている為、それだけで結構人が寄ってきます。
※金田一は遠野に昔、「あんたの螢子がよろこぶと思ってるのかよ!」と説教してましたが、
 螢子は死んでもキーホルダーを握っていた程度には自分の手を突き放したSKを憎んでいます。
※高遠はジゼルに「犯罪者の血縁者まで犯罪者って事ぁないでしょ」と言ってましたが、まさにその通り。
 遠野と螢子は単に両方頭おかしかっただけで、犯罪者の血縁者が犯罪者であるというような意図で螢子がこんな感じなわけではないです。
※ブラコンです。
※ヤンデレというか多分病んでるだけです。
※遠野先輩の前では理想の妹になっている、……筈。
※彼女がおかしいのではなく世界がおかしいと思っています。
※七瀬美雪という名前を聴くだけで殺意が5割増し。
※Q遠野先輩をなんて呼んでいたのか?Aお兄ちゃん大好きというのが伝われば全部正解です。


330 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/11(木) 04:11:41 09.sKaWs0
投下終了します
倉田壮一、和田守男、津雲成人で予約します


331 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/14(日) 01:07:17 U3KgffdI0
sumimasen.

nazeka ,pasokon de nyuuryoku sitemo
hiragana ni henkan dekinakunattanode,
konkai ha ro-maji de kansou wo
kakaseteitadakimasu.

sore ha sore to shite,
minasama,
toukaotu desu.

>理由など無くても死ぬときには死ぬ

yurama ha nani sini kitanda koitu.
rio ga ikinari hito wo korositesimattano ha
syousyou zan-nen desuga,
ningen ha yarinaoserunode,
nantoka naruto iina to omoimasu.

>Q.なぜ八尾の別荘は燃えていたか?

keiko,
hutuu ni toono yori atama okasii ki ga suru ten ten.
maa, imouto ha yandere to souba ga kimatteiru mono.
shikatanai.
souieba,
konkai no kyara,
hitori taritomo gensaku de matomo ni byousya saretenai desuyone ten ten.
mobukyara maturi tte kanji desu.

ato, onodera-chan no yoyaku wo enchou shimasu.


332 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/16(火) 12:17:23 7ILbgpEE0
投下できるかわからないので予約を破棄します


333 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:20:46 XnxzdkXM0
投下します。
期限超過したような気がしますが、どうせ予約も投下もないので気にしないでください。


334 : 脱出派の一番星 ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:21:32 XnxzdkXM0



 斧寺空美は、自称・東京大学在学中の三年生である。
 東京大学とは何かというと、この日本における最高学府であり、超頭の良い人間しか入学できない大学だ。
 この辺りの説明は今更いらないと思うが、なるべく適当な解説に文章を割く事で少なからず、作品が果てしなくゴミである事を誤魔化すのも良いだろう。
 この東大は、現実の有名人では、国語学者の金田一春彦や金田一京助(当時は東京帝国大学)、『金田一少年の事件簿』の編集の一員である都丸尚史などを輩出している。
 フィクションになるが、『金田一少年の事件簿』の登場人物の中では、明智健悟、不破鳴美、小城拓也、萩元哲範、赤門秀明(中退)、新堂雄一、周防武(確か映画だけ)など、東大出身・東大在学中キャラが結構出てくるが、ぶっちゃけ犯人か死ぬかクズかのどれかである。
 結構多くのキャラが登場して犯人か死ぬかクズかという最中、斧寺はそうした目に遭う事はなかった。すごい。

 その話は置いといて、東大に現役で入っているのを見るに、斧寺はやはり明晰な頭脳の持ち主であるのは疑いようのない事実であろう。
 頭が良すぎて変な事件が多いとか、ある意味とんでもない変わり者みたいな奴もいるとか、そういった事態も確かに度々発生するものの、やはり東大には地頭がなければ入れない。
 ちなみに、東大に在学している学生の親の世帯年収は一千万円並の家庭が半分以上らしい。
 勿論、親の世帯年収が平均以下の家庭からも東大生は十パーセント以上輩出されているので、凡人が全く入れないわけではないが、傾向としてはやはり金持ちの方が入りやすいのである。
 そう考えると斧寺家も結構お金持ちなのかもしれない。
 斧寺家は果たしてどれくらいの家庭で育ったのか謎だが、事件現場にスキー客としてやってきているあたりを考えるに、そんなに貧しい生活を送っているわけでもなさそうだ。
 将来的にどうなるのだろう。彼女の場合は普通に官僚を目指してやっていくのかもしれない。
 学部は作中では不明だが、民間伝承やオカルトに興味を示す性格は、どちらかといえば文系寄りっぽい感じがある。漫画的イメージとして。

 正直、よく考えたらその辺りはどうでもいい。
 個人的に気になるのは、男女関係とかの方だが、それも考察の材料が少ないしあんまり掘り下げて「斧寺さん彼氏いる説」が出てきたら嫌なのでやめる。


 というわけで、斧寺はその東大能力を全て「脱出」の為につぎ込んでいた。


「……距離は、だいたい二百メートルというところね」


335 : 脱出派の一番星 ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:21:53 XnxzdkXM0


 ――斧寺の初期配置は、北海道の背氷村であった。
 人工雪などは使われていない天然の雪が吹き荒れており、幸いにもスキーウェアを着て、室内で眠らされていた斧寺さんは生きていた。
 いきなり遭難する可能性があるようなこのバトルロワイアル。殺し合うまでもなく、勝手に死ぬ奴が続出してもおかしくはない。
 ランダム配置で、こんな大雪の中に閉じ込められたら普通に死ぬ。
 多分、初期配置が背氷村&薄着&睡眠薬という状況で死んだ奴が何名かいるのではないかと思う。

 そんな事もあって、斧寺は一刻も早くこの殺し合いから生きて脱出する術を模索していた。このまま三日もいたら本当に死ぬかもしれない。
 そして、そこで脱出方法を探していて目についたのが、だいたい二百メートル先にある島である。
 これは目測だけではなく、サイン、コサイン、タンジェントなどの数学のアレを東大頭脳フル活用で計算して導き出した距離であった。
 距離がわかった以上、後はその島に何があるかの確認をするのみだ。
 ちなみに、背氷村エリアは南極みたいに氷の上に作られてぷかぷか浮いており、その上から土を被せて背氷村が再現されているので、砂浜はない。





 ……で、しばらくして(この間に深夜から早朝になった)。

 東大合格レベルの頭脳を持つスーパー人間にしか理解できない計算式を使い、彼女はその島に主催陣営が待機している事に気づいた。
 そして、あの島に辿りつけば脱出できる事にもスーパー計算式で気づいた。

 とにかく、この頃詩哀島から脱出する方法は主催襲撃しかないのである。
 主催を倒してバトルロワイアルを終えるというのはパロロワの王道でもあり、かなり多くのロワがそうやって終わっていった。
 実際、原作からしてそれに近く、似た趣旨の作品でもデスゲームの根幹が破壊されるケースはある(優勝も珍しくはないが)。
 参加者の一人として目指すべきは、「三日待つ」というやる気のない脱出方法ではなく、自ら進んで脱出の為に力を尽くすという手法である。
 その為、斧寺は脱出を視野に入れていた。

 しかし、問題は島に向かう方法だ。
 もし泳いだら確実に凍死するし、船になるような物はない。
 だとすると、頭を使ってあちらの島へと上陸する方法を考えねば……。


(……まずはあの島に渡る方法を考えなくちゃ)


 そう、まずはそこだ。
 斧寺はその後、少し考えた。
 頭を唸らせ、あらゆる方法を模索する。
 斧寺はトロそうに見えてもやはり東大である。
 すぐにある方法を思いつくのだった。


336 : 脱出派の一番星 ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:22:13 XnxzdkXM0


(仮にもし、全長二百メートルの形状記憶合金で出来たワイヤーのような物があったらどうかしら……?)


 そう、まず全長二百メートルの形状記憶合金で出来たワイヤーをラジコンヘリに結び付けて、二百メートル向こうの岸に繋げればいいのだ。
 あちら側に橋をかけた後で、サーカスの軽業師をやっている参加者などに向こう岸に渡ってもらえばいい。
 だが、問題はその後だ。
 向こう岸に渡ってもらったとして、斧寺たちはどうすればあの島に渡れるのだろう。


「うーん……」


 そこで、更に斧寺は考える。
 そう――誰でもあちら岸に渡る方法。
 あの島に辿りつくには、一体どうすれば……。


「……橋?」


 ふと、斧寺は思いついてしまった。
 橋が向こう側に架かるとすればどうだろう?
 全長二百メートルの形状記憶合金で出来たワイヤーのような物を使って、軽業師が島に渡った後、橋を架ければいいのではないか。
 しかし、考えてみると橋を架けるのはかなりの重労働であるし、材料もない。
 この方法はお蔵入りかと思った最中――。


「氷の橋……?」


 斧寺は周囲の景色を見て、思いついてしまった。
 そう、氷を使って橋を作ってしまえばいいのである。


337 : 脱出派の一番星 ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:22:27 XnxzdkXM0



【一日目/早朝/背氷村@雪夜叉伝説殺人事件】


【斧寺空美@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:頃詩哀島から二百メートル先に島を発見。
  主催があの島にいると思われるので、そちらに渡る。
2:脱出プランを練り、より多くの人間を脱出プランに参加させる。
3:首輪を解除する。
[備考]
※参戦時期は、「なーんてね♪」って言った後。
※脱出には、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーのようなものや、サーカスの軽業師、氷橋が必要だと考えています。
※このロワには首輪がないので、エア首輪解除をする予定です。


338 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/17(水) 13:22:43 XnxzdkXM0
投下終了です。


339 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/18(木) 23:22:26 8ek11.Kw0
投下乙です
斧寺ちゃんが星くんと出会えれば良いですね!
案外星くんってフラグメーカーなんでしょうか
星くんと斧寺ちゃんが会えなくても文句は言えないでしょうけど脈絡なく赤沼三郎、津雲成人で予約します


340 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/19(金) 02:13:56 DSB2KfsQ0
井沢研太郎、白神海人、鬼城歩夢で予約します。


341 : 名称不明 :2016/08/19(金) 23:00:48 6yrsI.T.0
読みきれてないので先客いるかもですが。
近衛元彦と夕凪はるかを予約します


342 : 名称不明 :2016/08/19(金) 23:36:35 6yrsI.T.0
中々書き込めないかもですが、勝手に爆破したりしないでくださいね?


343 : 名称不明 :2016/08/20(土) 09:25:25 qL4qf9qk0
すみません、このあと冷静になって考えたのですが、こんなシリアス無理でした。
なので予約破棄します。
私のことは忘れてください。


344 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:23:03 WKK.NTCI0
投下します


345 : 参加者X ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:23:45 WKK.NTCI0
『    』は脅迫されていた。
――始まっていきなりだが『    』の正体は『災厄の皇帝(エンペラー)』しかわからない。
何故ならこの話で彼または彼女なのか、それすらわからないからだ。
彼または彼女は漫画で映っているとしたら五塔夫人を襲う七人目のミイラや暗黒城で殺人を犯す時の犯人の様に黒い人になっていると考えてくれていい。
これから彼または彼女は津雲成人と出会うことになるのだがその前に彼または彼女は素顔を隠した状態で出会うとだけネタバレしておく。
つまり彼または彼女の正体は現時点でもこの話の投下が終わった時点でも本人しか知らないのだ。
この7行目までで、彼または彼女というフレーズが既に6回も使われもう面倒なので短編ノベルの『共犯者X』をもじって『金田一少年の事件簿バトルロワイアルの参加者X』としたいところだが逆に長くなったので略して『参加者X』としておく。
とりあえず参加者Xは脅迫されていた。





参加者Xが悲恋湖でデイパックを開けた時1枚の紙、もといランダム支給品が入っていた。
『雪夜叉を愚弄するものは死をもってつぐなうべし』。
はっきり言おう、ドッキリの脅迫状である。
そもそも雪夜叉など参加者Xは知らないかもしれない(雪夜叉伝説の参戦キャラの可能性もあるので断言はしない)。
ただこの状況だ、ドッキリだと知らない人が読んだならこれは自分に宛てられたものだと解釈してしまうのも仕方ないかもしれない(中の人のよってはしてないかもしれないが)。
そもそもだ。
――一緒にイジメに参加をしていた2人が殺されている状況で言うとおりにすれば許してもらえると言われた仁藤。
――同じ遭難メンバーと双子の兄貴が殺されるのを知っていて自分は殺されないと思っていた次生。
――会いたい人が居るからという無茶なお願いを聞き届け教会で寝ているのを交代した霧子。
――あからさまに怪しいカップ麺の上に地図を置かれて共犯者が亡くなっているのに疑いもしない矢森。
――脅迫され返り討ちにすると意気込みそんな状況で後輩からのあからさまに怪しい通話を受けて素直に手伝おうとする鬼城。
――火事を起こした仲間が死んでいるのに好意を寄せている女の意味不明な足をくじいた振りをしろと言われ本当にする三鬼谷。
――犯人を知ったなら無力化させてから連絡すればいいのにわざわざいまから殺しに行くと金田一に電話をしながら逆に殺された火村。
――こうすれば呪いが強くなると言われてと証拠を馬鹿みたいに残す星子。
――霧島を怪しんでいた癖に全く対策も練らずに詰め寄る黒江。
――警察の立場を貫いて、犯人の偽のトリックにまんまと引っかかってばかりいたジッチャンの孫の推理を信用にその犯人を釈放してしまう剣持のおっさん。
――あからさまに怪しいテストで0点を取る浅野先生。
正直3人くらいで抑えるつもりであったが気付けば11人も挙がっていたが彼らの共通点として人が死んでいるのに素直過ぎるのだ。

参加者Xも素直だったに違いない。
冷静さを欠いていたと解釈してもかまわない。
この雪夜叉たる人物は自分の命を狙っている、俺/あたしやばいじゃんってなっている状態(かもしれない)。
とりあえずやばい、それが伝われば良し。


346 : 参加者X ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:24:11 WKK.NTCI0

そこで慌てて参加者Xはデイパックを漁る。
なら返り討ちにしようとか隠れようとか自衛の為とか武器を探した。
だがそこから現れたのは黒子の衣装であった。

「…………」

そこで参加者Xは顔を隠せば俺/あたし大丈夫なんじゃないかって思い至った。
ターゲットから自分を認識させなければもし命を狙っている奴がいても顔が隠されているのでわからない→セーフという図だ。
脅迫状を受け取り、冷静さを失い、しかも殺し合いをさせられているのだ。
そういう発想に至っていいじゃないか。
六星や高遠辺りならなら返り討ちにしようとむしろ堂々としていそうだが、そんな人間の方が少ない。
だから参加者Xは黒子の衣装を身のまとったのだ。
しかも丁寧に偽名で『赤沼三郎』を名乗ることとか指示されていたので、無事参加者Xは一応赤沼三郎という名を手にしたのだ。





赤沼が探索をしていると津雲成人と出会った。
もしかしたら赤沼は不動高校の生徒という可能性もあるので知っている可能性がある。

「私は赤沼三郎だ」

フィルターを通した声らしく男か女なのか、この時点で津雲は赤沼の性別がわからなかった。
だが怪しいと思ってもさっき的場と小田切と学校に参加者を集めて全員が全員を監視して殺しが起きない状況にしようとまとまったのだ。
その教師の仕事をまっとうしようと津雲は話しかけた。

「私の名前は津雲成人だ。私は不動高校の化学教師でね、別に殺し合いに乗っているわけではない。むしろ殺し合いなど起きて欲しくないと願っているんだよ」

そのまま説明を始めた。
一歩間違えたら1人で皆殺しをする輩が出るかもしれない危険な賭けだが、それでも全員で掛かれば多勢に無勢で鎮圧させられる。
むしろ殺しをするメリットの方がないくらいだ。
既に仕事を放っておいて元男の娘に殺しの極意を説いている小田切のことを知らない津雲は真面目にこのことを考えていた。

「ふむ……」と考え込む赤沼。
さて、この後赤沼はどのような行動に出るでしょう?
ハードセガサターン、メーカーは(今は亡き)ハドソンから発売された金田一少年の事件簿悲しみの復讐鬼風な選択肢から選んでください。


347 : 参加者X ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:24:43 WKK.NTCI0





A信頼の証として顔を見せて、津雲たちの作戦に乗る為に協力する。
B顔は見せられないが作戦だけは乗る。
C一緒に行動は出来ないが他の参加者と出会ったら不動高校で人を集めていることを広めておく。
Dお断りする。
E参加者全員信頼なんか出来ないと逃走する。
F津雲を気絶させる(ただし武器はない)。
G津雲を殺る(ただし武器はない)。
Hその他(それ以外)。


――赤沼は選択肢を選んだ。


348 : 参加者X ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:25:01 WKK.NTCI0




【一日目/早朝/悲恋湖@悲恋湖伝説殺人事件】


【赤沼三郎(参加者X)@飛騨からくり屋敷殺人事件(???)】
[状態]赤沼三郎
[装備]赤沼三郎の黒子の衣装@飛騨からくり屋敷殺人事件
[所持品]基本支給品一式、雪夜叉からのドッキリ脅迫状@雪夜叉伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:赤沼三郎。
0:私は赤沼三郎だ。
1:AからHのどれかをいまから実行する。
[備考]
※参加者Xの正体は不明。
※参加者Xが赤沼の恰好をしていると解釈してください。
※オペラ座館から黒霊ホテルまでのゲストキャラクターでまだ名簿に載っていない人物です(赤沼の恰好をしているからといって飛騨からくり屋敷のキャラでなくてもいいです)。
※男か女すら不明。
※雪夜叉の脅迫状にびびっている可能性が70パーセント。
※正体はいつ明らかになってもいいです。
※正体を明かさないまま退場になってもいいです。
※ナカムライチロウみたいにここぞという場面で答えを晒してもいいし、朱鷺田先生みたいに首だけになって正体が明かされてもいいし、参加者Xとして金田一ロワが完結してもいいです。
※参戦時期とかわからない。



【津雲成人@不動高校学園祭殺人事件】
[状態]健康
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:1人でも多くの人を不動高校に集めて脱出する。
0:もし伊志田純がこの島にいたら……。
1:赤沼さんと協力したい。
[備考]
※参戦時期は、六野冬花自殺後〜異人館村殺人事件前(時系列不明だったのでこうさせていただきました)。
※赤沼の恰好に驚いてはいますが、中身に関してはあまり興味がない。


349 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/22(月) 21:25:27 WKK.NTCI0
投下終了します


350 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 16:58:28 gm2QuZ0E0
斧寺空美、鯖木海人、刀丸猛人、冬木ウメで予約します


351 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/24(水) 21:52:37 CtcD7RVU0
>参加者X

投下乙です。

「合わせ扉の間!!」
「合わせ扉の間!!!!!!!」

個人的に赤沼の正体は黒沼か青沼じゃないかと思います。

あと言いにくいですけど、申し訳ありません。檜山爆弾候補組の予約を破棄します。
どちらかというと読むのにハマりすぎて五日間一文字も書いてないとか、殺されても文句言えないよ……。


352 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:12:26 QOtZkRj60
感想ありがとうございます
めっきり投下が減ってもの寂しさを感じますねえ……

投下します


353 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:15:36 QOtZkRj60
「さて、何から手を出していこうかな」

二百メートル先の怪しげな島を前にこれから具体的な方法を練っていく。
氷の橋を造って行く際に必要なこと、もの、条件。
どれから手を打っていくか。

(やっぱり人は欲しいかな)

だがゲーム開始から既に6時間以上彼女は誰とも出会っていない。
どんな人が参加して、誰がどうなって、誰がどうしているのか。
そういうアドバンテージが大きく劣っている。
既に退場してしまった尾ノ上やもえぎの方がまだバトルロワイアルの情報を得ていた気さえする。

「でも雪がある。これはついている」

資料館などで読んだ北海道を開拓する時に造られた氷橋。
そんな時代というのを考慮して材料になるのを予想する。

(藁とかかな。でもそんな物この島にあるの?)

少なくとも彼女のデイパックにも、辺りにもそんな都合のいい物は周囲にない。

(でも逆に考えて?この現代日本の技術があるなら代用出来るのも何かあるはずよ?)

読んだことはあるが、いまは使われない技術。
資料からそれをいますぐ思いつけとなると東大の頭でももう少し時間が掛かりそうだ。

(それにワイヤーでなくてもロープでもいいし……)

逆に現代の物を原始の物でも代用できるのだ。
知恵を振り絞っていかなければならない。

――そこまで彼女の思考が辿り着いた時、ようやく彼女は最初の参加者との邂逅が始まる。





354 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:16:15 QOtZkRj60


「ちっくしょう、また一瞬で雪の降っていやがる場所に出ちまった!なんなんだよクッソ!」

折角雪の降っていないステージを抜けた鯖木であったが、ものの10分歩いただけでまた雪のある背氷村に辿り着く。
不動高校、獄門塾、錬金術館といくらでも雪の降らないステージがあるのに、むしろ雪の降るステージの方が少ないのに完全に雪男である。

「引き返すか……」

そう思った時、ある発見をした。

!?

「なんだ、あの島?」

ポツンと島が数百メートル先に浮かんでいるのだ。
これは大きな情報ではないだろうか。

「近付いてみるか……」

もしかしたら雪の幻覚でそう見えるだけかもしれない。
そういう可能性もあるのでその島をもっと大きく眺められる地点を探すため崖にそって歩く。


――そして、謎の島に惹かれた者同士が邂逅を果たす。





(うわー、確かあの人って……)

斧寺は事件に巻き込まれて鯖木という男を知った。
作中で1度も会話をしている様な描写がないので斧寺自身彼をどう思っていたのかわからない。
だが、会話をしたくない程嫌悪していた可能性もある。
割と鯖木が死んだ際もドライだったし、好意なんか微塵もないと思っていいだろう。
一応だが「なーんてね」ニコのシーンでは鯖木は死んでいないので鯖木が生存していることには疑問は沸いていない(単行本金田一少年の事件簿R第1巻で「なーんてね」のわずか15ページ後に鯖木が殺害されるのであるが)。

「おう、そこの姉ちゃん」

参加者とはなるべく出会わない方針の鯖木であったが目が合ったのでは仕方ない。
さっきのおばさんみたいに襲ってくるわけでもないので話しかけてみる。
だがエンペラーが紛れ込んでいる疑惑は晴れていないので信用なんかは絶対にしないと心に誓っている。


355 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:16:40 QOtZkRj60

(ん?)

この鯖木の態度に違和感があった。
まるで本当の初対面であるかの様である。
島に来る直前まで同じコテージに居たのに、だ。

「あれ?まるで初対面みたいな声を出しますね?」

図っているのか?
黙っているより単刀直入に探りを入れた。

「初対面みたいなってか初対面だろ、俺はお前みたいな奴はしらねーしお前は逆に俺のこと知ってんのかよ?」
「詳しくないけどあなた『鯖木海人、無職、趣味はパソコン――以上』とか言ってたわよ」
「は、はあ!?」

そんな記憶、鯖木にはなかったがでも本名も現在の情けない姿も当てはまっていた。

「てめえ、まさかエンペラーって奴か!ああ!!」
「むしろそのエンペラーって奴に牙を向こうとしているところよ」

こんな男に言ってしまっていいのだろうかと思ったのだが、彼もあの島に疑問を持っていたのでそこそこ使えなくもなさそうだし情報交換をしていこうと思ったのだ。

「い、意味わかんねーし!俺の名前知っていることの疑問を晴らしてねーし」

こっちはこっちでびびっているし使えるのかこの男は?

「スキーリゾートで堂々とみんなの前で自己紹介していたじゃない?」
「ああ!?なんで俺が明日にそれに行くことを知ってやがる」
「……」

どうも噛み合っていない。
でも嘘を言っているわけでもなさそうだ。

(つまり私は未来人なわけだ)

流石は東大出身の斧寺は連れられた時間軸がバラバラだということに一瞬で辿り着いた。

――信じられないものを信じられないで片付けたら真相なんて見えないよ!
なーんてね。





356 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:17:07 QOtZkRj60


「時間軸がバラバラwwwテラワロスwww」
(やっぱり嫌いだこの人……)

わざわざ説明したのに信じてすらいなかった。

(な、なんだよそのSF!?ふっざけんなよ、んだよこれ!?)

だが内心では鯖木は怒りと不安が襲っていた。
そういえば多岐川かほるとかいう既に死んでいたと認識していた人物が自分を殺しにきたことを考えた場合……。

(やべえ、やべえよエンペラー……、死んでる奴まで復活させられるのかよ……。あれ?それとも天国、いや地獄なのかこれは!?)

そうなるといくらネット環境があっても炎上させられないのではないかと不安になる。

(炎上のプロとして炎上させてやる!!)

何がなんでも生還してやると鯖木は燃えていた。





「お互い支給品を教え合いましょう」
「は、はあ!?み、みせるわけねーだろ」

斧寺からの提案、もちろん脱出に使えそうなものを持っていないかの確認をしたい為である。
だが、鯖木にとって支給品はどれもハズレばっかり……。
命の危険があるのだ、丸腰なのを悟らせてはいけない。
だが、ここから斧寺の東大生ならではの交渉術、別の名を誘惑が始まる。

「私は絶対にあなたを襲いません。それを踏まえて考えてくださいね」
「は、はあ」
「1万円」

指を1本上げる。

「無理に決まってんだろうが!」

まあ、安い。
そうだろうなと思う。

「即金します、それを踏まえて考えてね、その10倍」
「はあ!?」
「では10万の5倍でどうでしょうか?」

鯖木の手には1万円札50枚が。
斧寺には鯖木の支給品の情報が手に入った。

(つかえねー)

正直10円の価値もない支給品であった。
だが、鯖木が多岐川かほる本人なのかはわからないがそう名乗るミステリー作家に襲われて自滅したことを知った。

(まさかあんなルールで人を殺そうとするおバカな人がいるなんてね……。でも案外私未来人って当たってる?)

鯖木から補足され3億円事件の犯人一味で亡くなっている人物であるはずという情報ももらっていた。

(この情報含めても合計10万円の価値といったところかな……)

つまり40万赤字。
死んでいる者より生存している者の情報が欲しい。

こうして情報交換を終えた2人は別れた。
斧寺的に鯖木はお眼鏡に適わなかったらしい。





357 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:17:39 QOtZkRj60


2人を襲おうとする影が1つあった。

(だが2対1では分が悪いか)

どちらかが別れたら片方に襲って命を奪おうとする殺人者であった。
その手は既に赤く塗られている。

カルロッタを殺すか。
ジョゼフ・ビュッケを殺すか。

残念だがここにはシャンデリアがない。
だが、手にはロープがある。
ならば殺すのはジョゼフ・ビュッケだ!

――そして断絶した片方の男に近寄っていく。








「う、うああああああああ」

鯖木の悲鳴が別れたばかりの斧寺の耳に届く。
急いで、かつ姿を隠してその場に駆け寄っていく。

そこには怪人ファントムに襲われて追いかけられている鯖木の姿がある。
斧寺は鯖木の命はどうだっていい。
ちょっとだけ心が痛むが。
しかし――。

(あのロープ欲しいなあ……)

ものすごく氷の橋を造る際に役に立ちそうだ。
人を殺すとかいう馬鹿みたいな使い方よりもっと有用な使い方な筈だ。

斧寺に握られた日本兵が扱っていた銃剣が握られている。

(飛び出す?飛び出さない?どっちが私にとって有用?)

飛び出すメリット、ただ非情になって見殺すメリット。
飛び出すのなら2人の命はなるべく落とさない形で、絶対にあのロープだけは回収するぐらいの意気込みがなければいかない。
時間の問題で鯖木も逃げ回っているが、捕まる可能性もあれば逃げ切れる可能性もある。

一般人の東大生の前に難しい問いが投げかけられていた。
あまりの難しさに溜息が1つ。


【一日目/早朝/背氷村@雪夜叉伝説殺人事件】


358 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:18:06 QOtZkRj60



【斧寺空美@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]健康
[装備]萩元殺害時に使われた銃剣@墓場島殺人事件
[所持品]基本支給品一式、身代金2950万円(元は3000万円)@白銀に消えた身代金
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:頃詩哀島から二百メートル先に島を発見。
主催があの島にいると思われるので、そちらに渡る。
2:脱出プランを練り、より多くの人間を脱出プランに参加させる。
3:首輪を解除する。
4:ファントムの持っているロープが欲しい。
[備考]
※参戦時期は、「なーんてね♪」って言った後。
※脱出には、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーのようなものや、サーカスの軽業師、氷橋が必要だと考えています。
※このロワには首輪がないので、エア首輪解除をする予定です。
※ある程度参戦時期にばらつきがあることを思い付きました。
※鯖木のこれまでの動向、支給品をある程度把握しています。
※「それって売ってすぐお金に換えることできるかなー」という発言があるので案外お金にドライなところがあります。
※現在40万円赤字(斧寺目線)しているのでいずれ黒字にまで持っていくつもりです。


【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り、恐怖
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。
3:誰か助けて……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。
※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。
※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。
※刀丸猛人に襲われています。



【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]ファントム
[装備] オペラ座の怪人『ファントム』の仮面@オペラ座館殺人事件、コンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープ@首吊り学園殺人時間
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:ファントムになりきる。
0:この手で参加者を消していく。
1:順番は違うがジョゼフ・ビュッケを消す。
[備考]
※参戦時期は、逮捕された後。
※クリスティーン役(ヒロイン)がいれば浄化するかもしれません。
※妄想と現実の境目がありません。
※ファントムになりきっているので自分の名前が刀丸猛人という名前だということも役になりきっている間は理解していません。
※そもそも人と接することが出来ない人間らしい。
※鯖木を襲っています。









359 : 斧寺空美の溜息 ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:18:27 QOtZkRj60


一方、その頃。
もう1人鯖木の悲鳴を聞いた参加者がいた。

「おおおお、武者様のお怒りを鎮めたまえええええええ」

お祈りをする老人。
それはそれとして無理に老体を動かしてまで移動したらその先が雪を降った背氷村とかシャレにもならないので引き返していくのであった。



【一日目/早朝/背氷村@雪夜叉伝説殺人事件】

【冬木ウメ@飛騨からくり屋敷殺人事件】
[状態]錯乱気味
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:柊兼春様の怒りを鎮める。
1:兼春様が甦ったんじゃああああ。
2:わ、わしの出番ない……。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも巽征丸死亡後。
※特に語られていませんが隠れていたので螢子に見つけられませんでした。
※尾ノ上殺害シーンを一部始終目撃しておりました。
※尾ノ上殺害は声を発する間もなくゲーム開始直後に起きたらしいです。
※『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体が柊兼春、バトルロワイアル自体を柊兼春の祟りと思っています。
※老体に雪を軽装備で歩くとか自殺行為以外の何物でもないので背氷村から離れます(徒歩10分で抜けられる)。


360 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:20:07 QOtZkRj60
投下終了します

霧谷凛、雲沢夏樹で予約します


361 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/24(水) 22:25:11 QOtZkRj60
【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り、恐怖
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件、身代金50万円
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。
3:誰か助けて……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。
※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。
※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。
※刀丸猛人に襲われています。



鯖木の持ち物変更忘れです


362 : ◆CKro7V0jEc :2016/08/24(水) 22:33:54 CtcD7RVU0
投下乙です。
後で時間があったら読みたいのですが、ちょっと上の感想にミスがあったので修正します。

>個人的に赤沼の正体は黒沼か青沼じゃないかと思います。

ですが、青沼は金田一耕助シリーズの方の人物でした。
金田一少年の事件簿に登場するのは水沼でしたので、修正します。


363 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/25(木) 04:31:30 /OF7DOvU0
投下乙です。
鯖木はいつになったらネットが断絶していることに気が付くのでしょうか。
できれば全力で炎上させてほしいですが、まだまだ先は長そうですね。
斧寺は本編では地味な活躍でしたが、今回は頭脳を生かして大暴れしてくれそうです。
島にはいったい何があるんでしょうか・・・。

赤沼の中身は奴利壁かもしれない、などと無駄な勘繰りをしてしまいましたが
奴利壁さんは忙しそうだったのでなさそうですね。
津雲先生には願わくはまっとうな道を進んでほしいところです。

登場人物が増えて時間軸がわかりにくくなってきたので
いったん整理してみました。
抜けもれや間違い等ありましたらご指摘いただけますと幸いです。

【深夜】
ラベンダー荘/井沢研太郎、白神海人、鬼城歩
死骨ヶ原ホテルの劇場/チャネラー桜庭、近宮玲子(退去)
錬金術館/仁藤信幸、出門章一
カフェふくろう/ピエロ左近寺、伊志田純

【黎明】
ラベンダー荘周辺/霧谷凛、雲沢夏樹
夜桜亭/巽紫乃
夜桜亭周辺/月江茉莉花、星桂馬、蓮沼綾花
香取家周辺/甲田征作
藤田時継の別荘/海峰学
巽家前/幽月来夢、奴利壁、藤枝つばき
鏡迷宮/狩谷純
獄門塾敷地内/斑目るり、葉崎栞、連城久彦、多間木匠、古谷直樹、海堂瞳
不動山市郊外の雑木林/楊蘭
不動高校周辺/遠野英治、六星竜一、佐伯航一郎、霧島純平
六角村/神小路陸、鐘本あかり

【早朝】
六角村/水沢利緒(退去)
赤い逆鱗/小泉螢子、六星さんに瞬殺された警官B、インフルちゃん
背氷村/斧寺空美、鯖木海人、刀丸猛人、冬木ウメ
悲恋湖/赤沼三郎、津雲成人


364 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/25(木) 05:32:28 4yzzO9s20
>>363
まとめ乙です
自分で作品挙げていてなんですが凛達の現在位置周辺のラベンダー荘に檜山爆弾候補組が居たのを前過ぎて忘れていました

>>360に予約破棄されてすぐに入れるのもなんですが井沢研太郎、白神海人、鬼城歩夢も追加します


365 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:32:15 Aoow2TuQ0
したらばが重くなっているみたいなのでいまのうちに投下します


366 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:33:23 Aoow2TuQ0
命からがらジェイソンを振り切った凛と雲沢の2人。
そこに迷い込んだラベンダー畑の周辺には2棟並んでいた。
1つはラベンダー荘、もう1つは蒲生剛三の屋敷。
最初はラベンダー荘に突入しようとしたのだがもう1つの建物の屋敷に気付いたこと、そしてラベンダー荘には明かりが付いているのに対して屋敷には明かりが消えていること。
こういうことがあり休みたいのだがどちらで休むべきか立ち止まっていた。
どちらの建物に突入するのか、それともどちらの建物でも休まずに島を探索するか、選択肢を前に雲沢はあたふたしていた。
ただ、正直しんどさを感じているので探索したくないのが雲沢の心境だが口として出すのは厭らしく思い飲み込んでいた。

「ど、どっちに行く霧谷さん?」
「うーん……」

凛の視線がちろっと辺りを見渡している時どちらの建物も視界に入れていないと雲沢はどんよりしていることに凛はとっくに気付いていた。

(歩きたくないなら言えばいいんだけどね、まあ可愛いからいっか)

それに口に出すのは恥ずかしいのだろうなと察知していた。

「明かりが付いている建物……、危険かどうかはわからないけどグレーゾーンかな。つまり休むならこっちかな」

凛は屋敷の提案をした。
こちらの建物の方が大きいし、シャワーやお風呂など見込めそうだし、隠れることも出来そうだ。
凛と雲沢は屋敷内に侵入し、――雲沢が消えていた明かりの電源を入れて明るい光が彼女らを包んだ。
深夜、黎明という外に居たのであるので、暗いのに慣れた夜目には眩しすぎた人工的な光であった。

「早速行こう、霧谷さん!チョー早く行きましょう!」
「え?どこにですか?」

もう少し用心だけはして欲しいなと年上の妹が出来た気分だ。

「お風呂だよ!お・ふ・ろ」

入浴シーン、もといサービスシーン。
もうずっと生きるか死ぬかのシリアスシーンの続くバトルロワイアルなんかどうでもいいではないか。
香山三郎の死以降、散々バトルに殺し合いに騙し合いに鬼ごっこに自滅に付き合ったではないか。
たまには息抜きというのを皆さん感じたいではないか。
これがもし、尾ノ上とチャネラー桜庭が一緒の入浴シーンだったとしよう。
はっきり言って高遠と佐久羅と一緒に入浴したはじめちゃん以上にいらないシーンだと断言するだろう。
赤間社長の入浴シーンの『タラコオヤジの入浴シーンなんて描きたくねー』という作画の女なのにホモだと間違われていたさとう先生の気持ちがよくわかるだろう。
女のさとう先生ですら描きたくないという本音を漏らすのだ。
わたしも尾ノ上@学園七不思議とチャネラー桜庭@魔術列車と百田@魔犬の森と<ワトソン>@電脳山荘と滝下@タロット山荘と仁藤@首吊り学園の入浴シーンをSSで描くことになったら『彼らは入浴した』の7文字でもう話を区切るだろう(上に挙げた人物に他意はありません。私が嫌いとか関係ありません。全員デブなのは偶然です。3枚目でも好きなキャラは好きです)。
いっそ全員檜山爆弾で肉塊になったとそんな入浴シーン事態を消してしまうかもしれない。


367 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:34:09 Aoow2TuQ0
でも、だ。
美少女だとしたら……?
はじめちゃんも健全な高校生。
美雪ちゃんと玲香ちゃんと一緒にお風呂に入っている妄想のシーンの様に。
むしろ事実が無くたってこじ付けでもシーンをぶっこみたくもなるだろう。
だが、自然にナチュラルで(意味が重複しているのはわざと)お風呂シーンを書ける無理のないシーン。
見たいか?
見たくないか?
問おう、見たいか、見たくないか。
むしろ問ってくれ、描きたいか、描きたくないか。
流石に蛍ちゃん@錬金術と桜樹先輩@学園七不思議と絵波@獄門塾と宗像先輩@魔人遺跡と1108の姉ちゃん@ゲームの館の全員を1話丸々入浴シーンとまで贅沢は言わない(上に挙げた人物に他意はありません。私が好きとか関係ありません。ただ胸が大きいという印象を抱いた人物を挙げただけです。貧乳だって好きです)。
霧谷凛と雲沢夏樹という人選ではあるが描きたいか、描きたくないか。
そう問われてしまったのなら仕方ないよね。
これは金田一少年の事件簿バトルロワイアルという話と過程を作っていく為にも必要な道なのだ。
海堂、多間木、古谷の同じ穴のムジナ3人組みの誕生秘話とか、ムジナ3人VS警官Bという場面とか、赤沼三郎に化けた参加者Xの正体には尺を割かなかったとか、入浴シーンよりも物語の重要性が高い場面ははしょられている現状ではあるが、それより優先して投下してしまっていいのか、葛藤はある。
だが、こんなうじうじと言い訳を続けていくのも見苦しい。
お前もう描きたいんだろう?と突っ込んでいる者も出始めているかもしれないが待ってもらいたい。
これはバトルロワイアルだ。
それに参加させられたメンバーがどうしてこうして殺された/生還した。
こういうのを詳しく描写をしていくことが書き手さんのお仕事だ。
報告する義務があるのだ。
誰が誰かと何をしたのか、……と。
むしろもう堂々と投下してしまおう。
高らかに宣言しよう。










――描いてもいいよね?
大丈夫、すぐに終わるさ――。
ここから20行程度の短編ながら癒しのキャッハウフフな物語を紡いでいこうではないか。
寄り道ではあるが露骨なサービスシーンを次の区切り目からバトルロワイアルを忘れて述べていこうではないか。
壊れずに。
黎明の月が折れそうな心を照らしている現状ではあるが、やけに長い夢の中の様で眉をひそめてしまいそうなアメイジングストーリーを始めていこうではないか!
もういいだろう、予約リストに凛と雲沢の他に数人居た気がするがもう空気になっているんだし触るのも野暮だ。
たまには私だって人の死なない金田一少年の事件簿を楽しみたい(誘拐とか泥棒ネタを見たいわけではない)。


368 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:34:48 Aoow2TuQ0
遊戯王タッグフォースみたいにモブとフラグをたててラブラブするゲームがある様に、金田一少年の事件簿のモブやゲストキャラとラブラブするゲームがあるなら悲しみの復讐鬼と同じく選択肢総当たりをしていきたい。
今回予約されている凛とも雲沢とも井沢とも白神とも鬼城ともイチャイチャできるなら買いたい。
他にもジェントル山神でもマーメイド夕海でもノーブル由良間でもピエロ左近寺でもチャネラー桜庭でもイチャイチャできるならみんなだって買いたいだろう?
私もハードVITAかPCで登場するのを何年も待っている。


つまるところ、必要悪ということで目を瞑ってお楽しみください。
女子高校生のサービスシーンを――。





















場面は戻ってラベンダー荘(さっきまでの熱い語り部はなんだったのか私も自分を問い詰めたいところですが、やっぱりそんな露骨なサービスシーンはばっさり飛ばされたということなので書き手さんが不必要と切り捨てたと解釈してくれたら幸いです)。
深夜にまで時間は遡る。
序盤の序盤から出会ったままずっと空気化していたパーティーである。
イケメンの方の海人さんSIDEだ。
ヒッキーの海人さんの登場の方が後であったにも関わらず私は1人で3話も登場させたのに、イケメンの海人さんは登場しただけで以降全く触れなかったし、存在すら忘れていた。
主人公金田一一ポジションの探偵役として投下したのだが、正直バトルロワイアルにおいて探偵という役目が不必要だということが如何にわかったであろう。
井沢に関しても同じポジションである千家くんの話題が度々挙がるし、古谷や仁藤や利緒が登場しているのならばむしろ千家くん絡みがあるのにあえての井沢だ。
鬼城も鬼城で同じサークル仲間のもえぎも矢森もくたばっている以上本格的に花泉でも登場させなければとも思うがもう数少ない参加者枠として参戦する人選としてどうかとも思う。
思いつきで変な人選を名簿に入れたりやズガンの出来る時間は終わってしまったのである。
名簿の枠がほぼ無いというこの段階からある意味金田一少年の事件簿バトルロワイアルが開始されると断言しよう。
接点のない、犯人枠と容疑者枠と被害者枠を合わせたところで本当に事件1つも起きないことがまさに立案されそうである。

最初に井沢から自己紹介を始めた。
そして時計回りで鬼城が紹介。
最後が白神の紹介であった。

「ミステリールポライター白神海人です」


369 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:35:14 Aoow2TuQ0

2人にはそう名乗り名刺を渡す。

「ミステリールポライター?何それ?」

全然聞き慣れない職業に鬼城が質問を投げかけた。
すると相槌を打ちながらそれに淡々と答えていく。

「ええ……、わかりやすく言えば怪奇現象や未確認生物――それに謎の殺人事件を追いかけてルポにまとめているんです」
「さ、殺人事件!?」

井沢がちょっと甲高い声で反応した。

「私は普段はしがないミステリールポライターですが何度か奇妙な殺人事件に出くわして警察とはまったく違う真相を解き明かしたこともあります」

2人はぎくっとした表情を見せる。
明らかに2人とも黒でも白とも言えない顔である。


(この状況だし、突っ込むのは野暮か……。それにこのバトルロワイアルを脱出しなくてはならんしな)

白神はこのバトルロワイアルの趣旨に覚えがあった。
ネットのUNDERGROUNDに囁かれる噂話があった。

「俺たちには争う理由もありません。白神さん、鬼城さん協力しましょう」
「そ、そうね!」
「ああ」

井沢の理想通り2人は争う側の人間ではないらしくほっとした。

「だが井沢くん、無闇に島を歩くのは危険だよ。それに2人には説明しておいた方がいいかもしれない」

白神は冗談を言っている様な顔ではなく、真面目な顔と声で冗談の様なことを口にした。

「君たちはパロロワ、通称パロディロワイアルとはご存じかな?」

白神は金田一のゲストにありがちな島の昔話や曰く付きの話をする説明役に徹していた。





370 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:35:39 Aoow2TuQ0


これは2000年代初期にバトルロワイアルという作品が盛り上がったのはご存じだね?
殺し合う、デスゲームというジャンルを開拓した作品だったね。
それをマネするかの様にネット上ではパロロワというお祭りの様なものが始まった。
パロディロワイアル、好きなマンガやアニメキャラ同士で戦ったらどっちが勝つか、どんな協力プレイを見せるかなどなど、流行になったものだったらしいよ。
でもブームがあれば下火にもなる。
パロロワも同じく勢いは落ちてきたんだ。
だがこんな噂が真なのかはわからないが流れ始めた。

『パロロワってガチらしいよ』

ガチ、つまり本物っていうことだ。
パロロワを書き上げているのはいわゆる一般人が創作しているものだと思われていた。
だがその中に紛れ込んで本当に殺し合いをさせている連中がおり、その過程として監視カメラや盗聴マイクで音声を聞き取ったり、本物の人の心理を言い当てる人を何人も揃えてその人間がどういう思考をしているかと読み取り文章に起こし、ネットに流す。
まるで本物の体験をしている様な気分にさせ、読者の気持ちを昂ぶらせているらしい。
ただあまりにも生々しいと本当に人殺しの経験があるのではと勘付かれない為にわざと変な文章を付け足してフィクション風を装っているらしいよ。
たとえばそうだな――、趣味に走っていいかどうか読者に同意を求めていたり、選択肢を見せていかにもノンフィクションなんて有り得ないって思わせる、全く……偽装するなど汚いやり方だよ!
もしかしたら俺たちはそういう組織に狙われてしまったのかもしれない。
現にパロロワってのに参加させられるのは全員共通していることが多いらしい。
九条が言っていた金田一くんや他明智健吾と高遠遙一って人となにかしら共通点があるって人たちらしいよね。
あれ、鬼城さんは金田一くんを知らないのか……。
井沢くんはよく知っているみたいだしその辺は個人差があるんだろうね。
もしかしたら道ですれ違っただけで選ばれたって可能性もあるし否定はできないよねこれは。
とりあえずそんなところかな、パロロワの説明は。
あとは首輪とかフィクションではありがちだけど人間っていうのはそんな物に頼らなくても勝手に殺し合うもんだしあえて付けなかったんだろうね。
首輪や爆弾なんてコストは無駄だよ、現にパロロワでそれが原因で死ぬなんてのは稀だ。
わざとそういうのを装着させてまたフィクション風を装っているんだろうね。
さて、パロロワの簡単な説明は終わろう。

次はどうしたら死なないか、だ。
変に島を歩くだけでは簡単に死ぬ。
強くても、最強候補でも中盤でだいたい死ぬ。
だからまずはそういう血の気の多い奴らで同士討ちさせるんだ。
問題の俺たちだが、こういう場合空気化すれば殺されにくい。
現にパロロワでは空気化した人物は生き残り易い。
結構昔にギャルゲロワというパロロワで空気王沙○○○という伝説の人物がいるからね、まずはそれにならってみよう。





371 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:36:07 Aoow2TuQ0


こうして黎明終わりぐらいまで何をするでもなく空気化していった3人。

そして、そろそろ彼らの周辺で初めて異変が起きた。

「あの屋敷、明かりが付いたな」

雲沢の付けた屋敷の明かりに白神が一番に反応を示す。
その一言で井沢と鬼城にも緊張が走る。

「ようやく空気化していられる時間も終わりが来たらしい」

せめてあと数時間、投下数でいうと10くらいは登場したくなかったが遂に重い足を上げねばならないだろう。

「とりあえず行こう井沢くんに鬼城さんも。3人も居れば対処もできるだろう」

あえてラベンダー荘の明かりは付けっぱなしにして彼らは外に飛び出し屋敷へ向かう。

「こうやって徹夜するって珍しいよなぁー」

井沢が身体をぐんと伸ばす。

「なんか身体がなまっちゃいそう」

なんにもしていないことで逆に疲労を感じてしまう鬼城であるが、外の新鮮な空気で和らいだ。

「よし、いくぞッ!」

白神の合図で歩みを進める。







372 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:36:40 Aoow2TuQ0


「チョーお風呂入りたいよぅ」
「そんな時間ないでしょう……」

屋敷のお風呂であるが、そんな描写怪盗紳士の殺人では描写されていないので想像で描いていくしかない。
だが、あんな大きなお屋敷だ。
執事もいて、斧寺ちゃんもキラキラするほどお金もある(だろう)。
風呂もどでかいスケールのがあると想像しよう。
蒲生画家と海津医師がイチャイチャしていたかもしれないお風呂など想像もしたくないが、女子高生2人のお風呂なら喜んで投下しよう。

話が横道に逸れたがそんな大きなお風呂があるのにお湯が張っていないのだ。
プール並みにあるこの広さを埋めるには果たして何リットルの水が必要になるのか想像すら難しい。
入浴剤では200リットルぐらいの表記が多く、大体一般家庭のお風呂で250リットル入るか入らないかというのが一般的らしい。
その5倍でも収まるのか、凛にも雲沢にもそんな計算できないがそんな量の水を汲む時間があるなら寝たいだろう。
大きい風呂には入りたいが入れない、非情に無念である。

なので凛はシャワーのみにしようと提案し、タオルなども現地で支給し入浴場に走り込む感覚でやって来た。
着替えはともかくデイパックが外に置いておくのは怖かった為(特に銃の持っている凛の物)、シャワーが届かなそうで濡れ無さそうな場所へ置いておく。
そしてようやく2人は裸にタオルを巻いていた。

「き、霧谷さんってもしかして着痩せする?」
「そんなものかな?よく言われるんだけど……」

ここでの凛の胸を見て着痩せするなんて指摘する野郎がいたとしたら嫉妬に狂いそうになるので姉の茉莉香が指摘するということにしておこう。
茉莉香は女にモテそうだし、凛は男を知っていそうな顔ではないと私は信じている。

「むぅ……、誰そんな指摘するの?イケメン?」
「そんな相手いないよ。あたしにね、同じ年の幼馴染で姉がいるの。その姉からだよ」
「……なんかいますごく複雑な家庭環境が見えたんだけど」
「そこまで複雑ではないかなー、あはは……」

茉莉香に言わせればドン引きらしいが。
そういえば雲沢に茉莉香のこと何も伝えてないなって今更気付いた。

「ふぅーん……」
「なんでさっきから雲沢さんの目付きがちょっと嫉妬入ってるの?元からならごめんって謝るけど故意なのこれ?」

裸になってからの雲沢はなんか胸にしか目が言ってなかったりする。

(この胸で何人イケメン捕まえられたとかライバル意識持ってんだろうなあ)


373 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:37:06 Aoow2TuQ0

どうしてこうもこの年頃の女は男、男、男なのか。
茉莉香に言わせれば男なんて『イケメンとインケンって似てるよね!』らしい、馬鹿だと思う。

「あたしさぁ、チョー死にかけたんだよねえ……」
「はあ……」

暗いトーンの声であった。
能天気な彼女の珍しい反応だ。

「ジェイソンに襲われる前から……死にそうになってたの……」
「え?」

どういう意味だろうか?
自分と出会う前に既に誰かに襲われていたとかなのか?
しかし、そんな気配も全然なかったはずだ。

「暗くて冷たい水中でね……、身体から体温がものすごい勢いで抜けて行って水が身体を貫通しそうなくらい強くて、……助けを呼んでも誰も助けてくれなかった……」
「雲沢さん……」
「そりゃああたしだって悪いことをまったくしなかったわけではないけどさ……。先輩に言われるがままやらされて……。別にあたしだけが悪いことしたわけじゃないのにあんまりじゃない、そんなの?先輩とか他の先輩に指示されてた人は生きててあたしだけ死ぬのってそんなのチョー理不尽だよ……。殺されるにしても大雪の降り積もった水に沈められて……残酷過ぎるよ、あんなの人間のクズだよ!」

殺されても文句は言えないのは自覚しているけれど、自分だけ仕返しされて快く思ってないんだなってなんとなく凛にも伝わっていた。
雲沢の罪は断片過ぎて全くわからないが……。

「だからあたし、いまある生を噛み締めて生きるにはイケメンが必要だと思うんですよ!!チョーかっこいいイケメン!!」
「……」

一気に同情する気が失せた凛。
もう「インケーン」とでも言ってやろうかと……。
「イケメンとインケンって似てるよね!」って笑顔で言ってやろうかと思った。

「で、あたしはいままで外見的なイケメンしか見ていなかったし、見えていなかったんです」
「は、はい」
「でもこうして死が間近に迫っている場では確かに外見的なイケメンとの出会いは気にしたいところだけどもしかしたら殺されるかもしれない。さっきのジェイソンだって仮面を外したらイケメンかもしれないし」

遠野英治は確かにイケメンではあるが黎明の空ではぼんやりとしか輪郭が見えず、素顔は全く見せなかった。


374 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:37:39 Aoow2TuQ0
中身は中身で、シスコンで金田一史でもベスト10以内にランクインする危険的思考のイケメンである。
同時に記憶をさっぱり忘れて美人と結婚した勝ち組なイケメンでもあるが、主人公が別人と発言したしあえてそこには深く突っ込まない。
残念なイケメンであるとだけ締めておこう。

「でもインケンなイケメンとかチョー最低じゃないですか」
「え、インケン?」

突然聞き慣れた単語にピクリと反応する凛であるが、雲沢は特に突っ込まなかった。

「だからあたし、外見的なイケメンより内面的なイケメンを好きになろうって思ったんです。そりゃあ外見的なイケメン歓迎ですしー、大好きですけどー」

殺そうとするイケメンとかマジ勘弁と雲沢は付けたしながらまた続けていく。

「それで自分の命を張ってでも助けてくれる心がイケメンの人が好きだなーって結論になりました」
「……出会えたらいいですねそんな人」

スズメバチに襲われた際に助けてくれた心平を思い出す。
ああいうのが雲沢の求めるイケメンなのだろう。
そういう出会いが彼女にも訪れてと願っているのならあたしも祈ろうではないか、凛もなんとなくわかり始めた雲沢像の姿。

「そして、遂に出会えたんです!」
「???」

(なんという急展開……)、凛は吹き出しそうになった。

「ジェイソンから襲われた時あたしをかばってバットを受けたり、あたしを見捨てずに引っ張り上げてくれたお方が」
「ッ!!??」

急に猫被っているような今どきなギャルの子が豹変して、色気のある異性を誘う声で凛の耳元で囁いたのだ。
異性を誘うが如く、――同性を誘う。

「あたしチョー尽くしますよ、凛ちゃん」
「ひうっ!」

舐めるみたいに甘い声と吐息が凛に襲う。
霧谷さんが凛ちゃんへと、雲沢の中での信愛度が上がっている。

「あう……」

いやらしい手付きで身体を弄ってくる雲沢。
腋から胸、顔から髪の毛。
浸食させていく。

シャワーのお湯が掛けられる。

「冷水よりやっぱりこっちだなー」

生きている心地を雲沢は短い人生の中で1番噛み締めていた。


375 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:38:11 Aoow2TuQ0

「この生きている心地、凛ちゃんにも体験してもらいたいなぁ」
「う、うん。気持ちいいね」

疲れた身体を癒すシャワーなのか、雲沢の手付きなのか。
どっちか、もしくはどっちもなのか。
気持ちよさは全身を支配していく。
この瞬間だけは2人共バトルロワイルということを忘れている、一種の現実逃避であった。

「ここから2人して生きて脱出できたら、あたし凛ちゃんといっぱいまた遊んでいきたいなあ。いましているみたいなお遊びを1回で終わらすのチョーもったいないよね」
「あう……」

向けられる信愛を無碍に断れなかった。
それにどういうわけか雲沢の気持ちがぶつかれる度に凛の気持ちもそれに応えていきたいという欲求が産まれてくる。
茉莉香とも違う親友という間の信頼と愛の関係。

(これが吊り橋効果ってやつなのかな……)

もっと自分が大きな姿であった時、もしかしたら心平を好きになっていたIFな吊り橋効果で恋人になるなり、片思いをしていたかもしれない。
でも幼い時にはそんなドラマチックなことは起きなかったし、何故か陸にイタズラをしちゃおうっていう茉莉香に流された。
狐火流しと同じく水流には逆らえなかった。
この水流がまさしく茉莉香の存在だ。

でも、その吊り橋効果の相手が女の子でもいいんじゃないかって――。

さっきから天然そうな妹みたいなギャルにしか見えなかった相手が、何故か守ってあげなくてはならない最愛な親友に見えてしまうのか。
いや、親友止まりでいいの?
それ以上求めなくていいの?

悪魔なのか天使なのかそんなわけのわからない囁きが脳内に問いかけられる。

『またみんなに会いたいね凛!』
『うん……!』
『……特に陸にはちゃんと言っておかないと』
『そうだね茉莉香……』

これが1番の親友との過ごしてきた日常だ。
そこには信愛も信頼もある相手だ。
茉莉香も好きだ、大好きだ。
でもなんでその好きとはまたベクトルの違う、抑えられない好きが雲沢に感じるのか。

「いいなー、チョー柔らかくて大きくて」

もっと触ってもらいたい欲求。
そんな欲望を求めていいものなのか。
真っ白でわからない。

凛は手を伸ばす。


376 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:38:34 Aoow2TuQ0
光を求めて。
その光の先に何があるのか、でも光の先に悪いものなんてないと本能的にわかっているから……。

「キャッ!?もう凛ちゃんも積極的になってきちゃって!」

手の先は雲沢の小ぶりの胸であった。
自分のが特別大きいのか、雲沢のが特別小さいのかはわからない。
でも、もっと握ってみたいと指を動かす。
意思があるのか指が停止するという命令を排除して、胸に指を喰いこませよう、喰いこませようとする。

「ぁぁん、つよいよりんちゃん」

発音が悪く聞き取れない。
やられたのならやり返そうとする人間的本能が凛をここまで突き動かしているのであろう。

「ふふん、雲沢さんにリードなんかさせませんよ」
「むう?あたしのがチョー年上なのに!」
「チョー年上なんて言うと10も上みたい聞こえますよ?」
「チョーむっかー!」

案外年上であることには自覚があるらしい。
あんなに年下を頼る年上ってのも恰好悪いが……。

「そんなこと言う凛ちゃんの口閉ざしてみせる」
「は?え?」

有言実行とばかりに凛の口を雲沢の口で塞ぐ。
それを意味することは……。

(き、――キス!?)

常にイケメン探している感を隠そうともしない雲沢は『好きな相手』に手が出すのも早かった。





ところで雲沢が死亡するまでの人生、これまでの男性経験があったかどうかとか語られてもいませんし知りません。


377 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:39:02 Aoow2TuQ0
なので、これから数行程度、彼女のそういった内面を推理していきたいと思います。
彼女が人生を狂わせた雪原さやかの如く誹謗中傷的な文章が続きますが、そんな意図はありません。
むしろ愛です。
直江兼続に誓って『愛』です。
奴利さんやチャネラー桜庭だけじゃなくて、金田一キャラ全員に同じくらい愛を注ぎたいじゃないですか。
先の尾ノ上や矢森みたいにどうでもいいことに全力で掘り下げたいと思いたいじゃないですか。
原作ではもう死亡していて出番がないので掘り下げられることがもう永遠にないので、その無念を晴らそうではないか。
『マガジンでは一回死んだヤツは生き返らないんだぞ!?』の名言の通り似た顔のキャラは今後も登場するかもしれないがそれはもう雲沢に似た違うキャラでしかない(この名言の次の事件で犯人が実は生きていましたをやってのけたので伏線を張ったのだと思う)。
なので、ちょっと踏み込んで説明をしていきたいと思う。
結論から言いますと、雪原さやかもとい椿原先輩が呼んでいた仇名のぶーちゃんに嫉妬していた辺り椿原先輩同様モテなかった可能性が高い気がします。
椿原先輩の『でもモニターに参加するだけで会員権がもらえるなんてお金持ち会社は違うなぁ!』の発言がなんか達観していて、(あ……、男いなさそう)と思った(個人的な感想です)。
モテモテだったならぶーちゃんなど眼中に無かったと思います。
ぶーちゃんをずっといじめていたみたいでしたし、いじめなんかする人に立候補する男なんか碌な男がいないと思います。
いじめをしているのも周知の事実みたいに語られていたのでそんな性格悪いとひけらかしている様な人に男性が近寄るのでしょうか。
ただ、今回は女子でのいじめみたいでしたし、もしかしたら雲沢と椿原の高校は女子校だった可能性が十分に高い(ぶーちゃんとCEOも別の学校だったっぽいし、雪原さやかが女子校に通っていたのでCEOが一緒の学校に行きたくても無理だった可能性がある。そもそもCEOは中卒の可能性もある)。
しかも雲沢の高校の卒業生である椿原先輩は現在共東女子大学に通っているらしいし、やはり女子校と考えていい。
現にいじめていたシルエットのギャルズは全員女のものである。
そうやって考えるとしっくり来ないだろうか?
女子校に通っていて出会いがないので、男に飢えている。
だから数少ない男との出会いで媚びを売る。
そう考えるとしっくり来ません?


378 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:39:30 Aoow2TuQ0
事件中も積極的にアピールしているのに男性陣はぴくりとも反応しなかったので(鯖木に至っては彼女だけのせいではありませんが雲沢の自己紹介の後に『死ねばいいのに……』とかほざいていたので相当地雷オーラが高いのが周囲に伝わっていたものと思われます)、よほどみんな眼中に無かったのでしょう。
常に好きな人を探している乙女→なのに相手にされない、これが何回も無限ループしたのでしょう。
そして女子校に通っていたという事実を踏まえると先ほどの凛とのスキンシップが妙に手馴れているのはそれほど違和感が無くならないだろうか?
現実の女の話をしているわけではないのでリアル女子校の話は知らん。
だが、金田一世界において『キャンプ場の怪事件』という事件が中学生編であったのを覚えているだろうか?
詳細とかここまでの話が理解できている人は当然読んでいると思うので掘り下げるのは辞める。
その事件の1場面でヒロイン七瀬美雪が秋峰あかねに胸を揉まれている露骨なサービスシーンのスキンシップがあったであろう。
こういうのが金田一世界において女の子同士でするのは当たり前であると考えていい。
なんせメインヒロインがスキンシップをされているのだ、他の女子学生もやっているだろうしやられているんだろう。
つまり雲沢も椿原先輩や他のギャル相手の胸を揉んだり、揉まれたりの経験があってもいい(そもそも雲沢という苗字であるなら苗字呼びでいい筈なのに椿原先輩は雲沢をわざわざ夏樹と下の名前で呼ぶ仲なのだ。相当仲良しだろう。一緒にカラオケや喫茶店、お風呂とか行く仲であったのだろう)。
もしかしたらぶーちゃんにいじめと評して彼女の胸を揉んでいる姿をスマホで撮影されていた証拠まであるかもしれない。
だから女子同士何をしようが雲沢は鈍っている可能性もある。
天然というキャラ付けもされているし、天然と素が合わさって女同士イチャイチャするのも抵抗がない人間に育っていたのだ。
結果、いまの状況の様に相手が心を許した途端爆発して、いままで溜め込んでいたモテなかった成分を一気に放出してしまったのではないか。
イケメンが好きと語っているが、男がいいなんて一言も言っていない。
イケメン=男なんて変な固定概念を持っている人物はいますぐ認識を改めないと、この先これの心理トリックに引っかかって殺されたり、はじめちゃんに犯人だと暴かれてしまうことがこれからの人生無いとは限らない。
実際、怪盗紳士という名前なら正体は男だろうという認識のせいで偽物がばれた事件も過去にある。
性格さえイケメンならもうそれは男も女も不細工もヒッキーでも関係なくイケメンだろう。
イケメンだ。
インケンではなくイケメンなのだ。
なんでこんな場面で細かすぎて伝わらない雪鬼伝説殺人事件で19コマしか出番の無かった雲沢のキャラ説明を始めてしまったのか、私にもわかりません。
私も特段好きなわけでも嫌いなわけでもないキャラになんでこんなに長い文章の説明をしてしまったのか、遺体が発見されても誰も拾おうともしないまま雪崩に巻き込まれて遺体が行方不明になっているかもしれないというあまりにも彼女の扱いが酷かったので同情してしまったのかもしれない。
そんなことを述べてしまったら、なんとなく雲沢の好感度がチョー上がってしまいそうな気がするのでここで打ち切っておく。





話を戻して凛との想いが通じたと勘違いをした雲沢は感情を爆発させて彼女がまだ誰にも見せる相手の居なかった最も好きという愛情表現を凛に曝け出したのだ。


379 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:39:57 Aoow2TuQ0
死の間際に外見的なイケメンではなく、内面的なイケメンが好きと生き方を変えて。
内面的なイケメンを凛=運命の相手と判断した。

「あっ、あ……」

いけないことだと凛は判断したのかただでさえハイライトのない瞳に涙が浮かぶ。
でも、流されたいという心境もどこかで潜在的にあった。
そんな相手いままで居たことが無かった、拒んでも誰も悲しまない(家族以外)。

「一緒に流されよう、凛ちゃん……」

艶のある囁きがトリガーで覚悟を決めた。
雲沢を護っていこうと、決めた!



――直後であった。






「え?何してんの?」

素っ裸の鬼城がドン引きした目でそこに立っていた。

(あれ?むしろあたし邪魔しちゃった?)

雲沢の驚いた眼と、凛の助かったのか残念だったのかよくわからない4つの瞳が鬼城に向けられていた……。





380 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:40:25 Aoow2TuQ0


「部屋の明かりがあるが不在だな……」

屋敷に侵入した3人は当然部屋とか居間とかそういった部屋を探索するがそこには電気だけが付けられ他荒らされたり、物色した痕跡もない。
15分くらい前に屋敷に入ってもう出たとは考えられない。
隠れているのかと白神が悩んでいると……。

「こっち、明かりありますよ!」

井沢の発言で全員お風呂場へ向かう。

そこには脱ぎ捨てられた2人ぶんの衣服と向こう側から漏れる女2人の声。
シャワーなのかお風呂かはわからないが汗を流していると思って当然だ。

「こ、この中に女子2人が……」

井沢がふと漏らす。
そこに浮かぶのは同い年くらいの女子が2人裸でシャワーを浴びている姿。
男なら仕方ない、そういう妄想を井沢は思春期だし想像してちょっと舞い上がったんだろうね。
鬼城から引いた目で見られていることも知らずにね。

「なんか井沢くんの目、もえぎちゃんにニヤニヤしてる矢森みたいな表情と同じだ……」
「だ、誰ですかそれ!?」

しかも相手の顔がわからないのにすごく屈辱的なことを言われた気がする。

「それって鬼城さんの彼氏?」
「あのヤモリシャツないわー」

白神の問いに有り得ないって表情であった。
ツンデレとかクーデレとかでなく素で有り得ない感じである。
多分鬼城や他の女子たちで矢森を弄った気もするが知らん。
もう矢森はどうでもいい。

「って男2人ここいちゃダメでしょう!?」
「すごく常識的なこと言うんだな」
「当然です!」

白神と井沢を押して脱衣所から離れさせる。
だが、これから話をしていきたいところであるので鬼城に任せるしかない。
汗も流したいと思っていたのでちょうどいい、脱衣所で服を脱ぐことにした。

「これから女が3人お風呂に入るわけだがどう思う井沢くん?」
「はい!最高っすね!」
「……」
「なんで引いてるんすか!白神さんだってどうせなんか感じてんじゃねーの!?」
「あと数年で三十路だしなぁ」

そのあとの数年がこれから先何年続くのか、わからない。
が、羨ましい話だなって思います。
男連中は女子連中が上がるまでなんやかんや親睦を深めていましたとさ。
お風呂ではとんでもないことが起きていたとも知らずに……。


とんでもない事件が起きていたのをのうのうと見逃していたのだ。








381 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:40:51 Aoow2TuQ0


「誰かいますかぁ?」

小声ではあるが声を掛けながらお風呂の扉を開ける。

(あ……、水張ってない……)

ちょっと残念であったが、ならシャワーを浴びているんだろうなとシャワーへ足を運ぶ。

「あっ、あ……」
「一緒に流されよう、凛ちゃん……」

すごく百合です……。
なんか鬼城って女に告白されたことがありそうな顔しているし、そういうのにトラウマを持っている的な設定がある感じで話を進める。

「え?何してんの?」

1メートル先で女の子同士口を付けているばかりか押し倒しそうな茶髪の女の子の行動に素で水を差してしまった。
しまったと彼女が後悔した時にはどちらもこちらに視線を向けていた。

「あ、……あはは……」

凛からはもう変な笑いしか出なかった。
人生オワタって脳内で誰か発言した。

「チョーイケメン」
「え!?」

だがスイッチの入ったギャルは怯むことが無かった。
いままで掴んだことが無かった快楽がもう目前まで迫っていたのにここで途切れるのは面白くない。
それにもう雲沢は水で溺れてもう死んでいるみたいなものだしもう1度死にたくはないが、ストッパーが壊れていた。
恋愛のストッパーだけが……。
恋する乙女は強し。
ベクトルが振り切っていた。

雲沢の手が鬼城の身体を鷲掴みしていた。

(なんで毎回毎回女ばっかり寄ってくるんだろう……)


382 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:41:13 Aoow2TuQ0

なんかの罰なのかもしれない。
それからの記憶はほぼない。
鬼城と凛が雲沢の手に寄って床に着いていたという事実だけあった。

「やっぱりあたし外見的イケメンも好きみたい。だけど凛ちゃんも好き」

どうしてこうなったのか……。
凛と鬼城にはまるで意味がわからなかった……。

「お名前なんて言うんですか?」
「き、鬼城って言います」
「勇ましくてチョーかっこいい苗字ですね!下もお願いします!」
「……歩夢です」
「チョーステキなお名前ですね!イケメンにぴったりです!」
「あたし女なんですけど……」
「え!?あら、そうなんですね」

性別すら見ていなかったらしい。
中性的な名前で男だと勘違いされていたが、イケメンならそれでいいやと考えるのを放棄した。

「あん」
「んん!?」

鬼城も凛と同じく口を付けられた。
2人とももう逃走する手段すら思い付かないまま……。





――されるがままであった……。









383 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:41:38 Aoow2TuQ0


「あ?ようやく来たみたいですよ白神さん」
「1時間くらいか?長かったな?」

男同士の話をしていて男の友情が芽生えた2人であった。
もう読むのも疲れてきたと思うのでその辺は想像で補ってください。

数人の足音が部屋に入り込んだ。
鬼城とまだ面識のない女性2人がそこに立っていた。

「あたしがいままで同行していた白神さんに井沢くんです」
「よ、よろしくお願いします」

凛が頭を下げた。
雲沢もそれに続く。

(うーん……、そんなにイケメンではないかな……)

お風呂で満足したのか雲沢は賢者タイムであった。
おかしい気がするがシャワー終了後ちょっと冷たく感じられた。

「え、えっとこちらが霧谷凛ちゃんに雲沢夏樹ちゃんです。よろしくお願いします……」

凛とも雲沢との唇の感触が残るのかまともに視界に入れられなかった。
凛も雲沢も女性メンバーとは違う方向を見ていた。
態度もどこか先ほどの井沢と白神に対し余所余所しい鬼城。





(こいつら、なんかあったな……)

名探偵としてなのか、人間の男としてなのか。
どうしてこんな態度に全員がなっているのか、なにか良からぬことがあったのかもしれないと白神は真面目に彼女たちを心配して、お風呂で何があったのか推理をしようとしていたのであった……。

何が起こっていたのかも知らずに……。

「次、俺もシャワー浴びていいですかね?」

井沢の空気の読めない発言が彼女たちにとって救いであった……。






【一日目/早朝/蒲生剛三の屋敷@怪盗紳士の殺人】


384 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:42:09 Aoow2TuQ0



【井沢研太郎@邪宗館殺人事件&黒魔術殺人事件】
[状態]健康
[装備] ニューギニアの呪術師がつかう仮面@学園七不思議殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:仲間を集めて全員で脱出する。
2:風呂かシャワーを浴びたい。
[備考]
※参戦時期は、邪宗館後から黒魔術前までの間。
※高遠と接点を持っているらしく後ろめたさがある。
※パロロワの説明を聞きました。




【白神海人@オペラ座館第3の殺人】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:『災厄の皇帝(エンペラー)』を後悔させる。
2:仲間全員で脱出する。
3:香山の事故は本当に事故だったのか?
[備考]
※参戦時期は、オペラ座館第3の殺人生還後。
※香山の死を事件ではないかと疑っています。
※パロロワに巻き込まれたのでないかと疑っています。




【鬼城歩夢@亡霊校舎の殺人】
[状態]凛と雲沢とギクシャク
[装備]錬金術師が事件で使った剣(剣の状態)@錬金術殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:生存する。
2:井沢、白神、凛、雲沢は仲間という認識。
3:襲われそうになったら返り討ちにするが極力殺しはしない。
[備考]
※参戦時期は、亡霊校舎の殺人前。
※パロロワの説明を聞きました。
※凛と雲沢とここでは説明できないことが色々ありました。



【霧谷凛@狐火流し殺人事件】
[状態]鬼城と雲沢とギクシャク、疲労(小)
[装備]道化人形が安岡に発砲した銃@速水玲香誘拐殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:仲間と行動。
1:茉莉香に合流する。
2:陸に会ったら素直に謝る。
[備考]
※参戦時期は、茉莉香死亡より前。
※姉妹だからなのか親友だからなのかはわかりませんが何故か茉莉香のテレパシー的な何かを受信・発信できます(向こうからくるかは知りません)。
※凛の胸の感想:(チョーデカッ!チョー柔らかい!!)by雲沢夏樹
※遠野に襲われた際の疲労はシャワーを浴びて少し癒されました。
※鬼城と雲沢とここでは説明できないことが色々ありました。



【雲沢夏樹@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]鬼城と凛とギクシャク、疲労(小)、賢者タイム
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、向日葵柄のマグカップ@雪霊伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:チョー死にたくない。
0:仲間と行動(特に凛と鬼城に仲間意識あり?)。
1:霧谷さんって(性格が)イケメン?歩夢さんは(外見が)イケメン?
[備考]
※参戦時期は、死亡直前。
※チョー死にたくないです。
※チョーイケメンが好きです。
※外見的イケメンより性格がイケメンの方がタイプ。
※鬼城と凛とここでは説明できないことが色々ありました。
※そこまで井沢と白神はタイプではない(外見的な意味で)、もしかしたら内面的イケメンを発揮すれば好感を抱く可能性あり。


385 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 17:45:08 Aoow2TuQ0
投下終了します

出門章一、仁藤伸幸、室井矢一、桜樹るい子、奴利壁、藤枝つばき、幽月来夢で予約します


名簿埋まっちゃうんですが大丈夫ですかね?


386 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/28(日) 19:03:14 Aoow2TuQ0
タイトル付け忘れ

快楽という海に溺れて


387 : ◆5oInWSSsJQ :2016/08/31(水) 16:23:19 ZG9lyksU0
投下乙です。急にいままで無かった展開がぶっこまれてびっくりしました。3Pなんですね……。ロワが終わる頃どうなってるんだろう…………。

斧寺も鯖木も頭いいなと思ってましたが、パロロワに気付くとはさすがミステリールポライターは一味違いますね。

悲しみの復讐鬼のようなふざk…意匠の凝らされた選択肢でゲストキャラをいじくり回せたら最高ですね。こんなに魅力的なキャラばかりなのに使い捨てなのが本当に勿体ないです。

遠野の「シスコンで金田一史でもベスト10以内にランクインする危険的思考のイケメン」という文章、
「ベスト10以内にランクインする」が「シスコン」にかかるのか
「危険思想」にかかるのか
「イケメン」にかかるのか、しばらく悩みました。

誰も書かないみたいなので、遠野英治、霧島純平、佐伯航一郎、六星竜一で予約してみます…。


388 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/08/31(水) 18:34:44 d90H.APs0
別に投下するわけではないですがwikiでの一番上に残り2枠と表記されていますが、参加者の合計が57名ってなっていますけどどっち正しいんですかね?
もう1枠余ってるのかそうでないのか…

>>387
勝手に金田一ロワではチャネラー桜庭と小田切先生とジェイソンの3人が現主人公立ち位置なのかななんて思っていたのでその二人の鉢合わせは楽しみですね


389 : ◆rGsyzf.Kp2 :2016/09/02(金) 05:08:36 ftMCzhBQ0
予約延長します
土日で挙げます


390 : ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:07:53 v5HBZa060
遅くなりすみません。投下します。


391 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:08:54 v5HBZa060



「お前と楊を見た瞬間からどっちでもいいから殺したかったぜ佐伯!」

霧島は喜びに胸を躍らせて叫んだ。

(ピーピーうるせえ虫だな。どっちでもいいからって安い殺意だな……)

面倒くさそうに身構える佐伯の心持ちなど知る由も無く、
霧島は標的にナイフを向けると一直線に突き進んで来た。
ナイフが佐伯の腹を抉るまでの距離――残り30センチ。



そのとき。



キーン!



目の前を黒い影が走ったと思うと、手元のナイフに硬い衝撃が響いた。
霧島はとっさに影を目で追った。

「さ、殺人鬼ジェイソン…!?」

霧島は自分の目を疑った。
彼の前にいたのは、全身黒タイツを着てジェイソンの仮面を被った男。
しかも片手にド根性バットまで持った、明らかな変質者だった。

「なんだてめえ…どこから降って湧いた」

佐伯が言うとジェイソン(仮)は声の方を一瞥したが、
何も答えること無くそのままあたりを見回した。
一瞬の静寂だった。
誰もがジェイソンの次の行動に備え、警戒をめぐらした。
そして。
少し離れたところに立つ六星を見つけた瞬間、
張り詰めた緊張を切り裂くように、ジェイソンは猛然と駆け出した。

「うおおおおおおっ!」

ド根性バットを振りかぶり、六星めがけて振りおろす。
六星は振り下ろされるバットの芯をじっと見上げていた。

「へえ…こんな物でよくナイフが弾けたなあ?」

呟くと、
六星は30センチ後ろに引いてバットから身を避け、
目の前に降り下ろされたバットの柄を右手で掴んで自分の右側へグイと引き寄せた。
ジェイソンがバットに引きずられて六星の方に流されるのを確認すると
今度は彼の背面に回り込み、ジェイソンの右肘を思い切りはたき込んだ。

「うっ!?」

ジェイソンは地面に叩きつけられると同時に
右肘の関節が外れたらしい。
ド根性バットがジェイソンの手から離れ、鈍い音を立てて地面に転がった。
五塔戦の直後だったせいでなんとなく拍子抜けしたような気持ちと
「まあ、普通こんなもんだよな」という気持ちが
六星の中でないまぜになった。
とりあえず関節を外す動きのまま、倒れ伏すジェイソンの右肩を地面に押し付け、
ジェイソンの腰の辺りには左膝を乗せて抑え込んだ。
彼の下でジェイソンは幾度か抵抗を試み、それから無駄だと悟ったのか、
荒い息のままおとなしくなった。

なぜ自分が襲われたのか?六星にはわからなかった。
心当たりはないわけではない。
ありすぎるほどある。
しかし、こんな実用性に反した佇まいと武器、そしてこの弱さ。
間違いなくあの村の連中の趣味ではないだろう。
となると自分が昔殺した人物の親族の一人が、
六星のことを突き止めてこんな酔狂な復讐に及んだということなのか?


「…何を考えてるのか知らねえが、とりあえずそのふざけた仮面を取ってもらおうか」

色々考えた挙句、それが一番早いだろうと考え、
六星はジェイソンの仮面に手をかけた。
ジェイソンは最早観念したように、抵抗らしい抵抗もしなかった。
乱暴に仮面を引きはがすと、その男の顔は…

「!?お前…遠野英治…!?」





392 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:09:53 v5HBZa060


色々と想像をめぐらせていたが、これはあまりにも予想外だった。
不動高校の品行方正な元生徒会長、遠野英治。
成績優秀、眉目秀麗で女性生徒からも羨望の的となっている人物だった。
それが、なぜ。
ジェイソン。


その様子を見ていた佐伯が、声をかけてきた。

佐伯「先生、知り合いかよ」

六星「いや、俺は…。いや……、知り合いといえばそうなるんだが……」

佐伯「?やけに慌ててるな…?先生らしくもない」

六星「うん…そうだな…悪い……ちょっと、高校の生徒会長だったから、予想外でね…」

霧島「生徒会長?不動高校の、か?」

六星「ああ」

霧島「うっわなんだよ不動高校すげーじゃん!
   三流高校だと思ってたけど、俺不動高校に入れば良かったかなー。高遠も呼んでさ」

六星「やかましい。不動高校の治安 これ以上下げんじゃねえよ」


組み伏せられた遠野英治は敵意に満ちた目で六星を睨み上げていた。
学校ではいつも穏やかな笑みを浮かべていた遠野の、
むき出しの牙を初めて見た気分だった。
どうしたものかわからず、とりあえず話しかけてみる。

六星「あの…遠野?いつもとだいぶ雰囲気違うね」

遠野「……」

六星「えーと、今日はなんでジェイソンだったんだ?」

佐伯「先生…結構天然だな……」

遠野「…お前を殺そうと思ったんだ」

六星「やっぱり俺なのか。ちなみに理由は?」

遠野「俺はイニシャルSKの奴を生かしておくわけにはいかないんだ!」

六星「えっ?」

遠野「SKは全員死ぬべきなんだ」

六星「俺、RRなんだけど…」

遠野「あきらめてたまるかあぁぁぁっ!!!」

六星「うわっ!?」


遠野はそう吠えると、いつき陽介・九条章太郎の二人がかりで抑え込まれた窮地を
気合いだけで抜けだした悲恋湖のラストさながら
六星の腕を振りほどいて立ち上がった。


393 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:10:47 v5HBZa060


佐伯「で、なんでイニシャルSK?」

火事場の馬鹿力を見せたとはいえ、遠野と六星の力量差は明らかだと感じた佐伯は
特に動じることもなく、話を進めた。
テンションが上がっている遠野も、勢いで佐伯の話に乗った。

遠野「SKはなあ…俺の大切な螢子と大勢の尊い命を奪った、罪の刻印なんだよ!」

遠野の態度には鬼気迫るものがあった。
「罪の刻印」というパワーワードが狂人の口から出るのを目撃して、霧島は嬉しそうに笑う。

霧島「ねえ、これ本格的にやばいやつじゃない?
   イニシャルで人殺す意味も、ジェイソンのお面してる意味もワケわかんねえしさ!」

佐伯「こいつ本当に生徒会長なのか?不動高校どうなってんだよ」

六星「いや…学校ではこんなんじゃなかったんだけど……」

こそこそと会話を交わす佐伯・霧島・六星を見た遠野は、
怒りに任せて目を見開き、三人を指さして凄む。

遠野「貴様ら何を話している!
   黙ってそこに並んで自分のイニシャルを言え!」

一同を舐め回すように見る遠野の迫力、
そしてそれを目の当たりにした自分自身の好奇心に突き動かされ、
なんとなく遠野の要請に答えてみる。
まず佐伯。

佐伯「俺KSっす」

遠野「殺す!!」

佐伯「えっ SKじゃねえのに?」

遠野「KSなんてほぼSKだろう!殺す!」

なんとなく腑に落ちなそうな佐伯を尻目に、
今度は霧島が切り出した。

霧島「ねー、じゃあ俺は?JKッスけど」

遠野「殺す!」

霧島「マジかー」

遠野「JKなんて上の方ちょっと曲げたらSKだろう!殺す!」

霧島「えーっ!?曲げんの!?」

六星「あの、俺、RRなんだけど…」

遠野「殺す!」

六星「!?」

遠野「お前はどっちにしろ殺す!お前を生かしておくと俺の螢子が危ない!」

ちょっと待てその理屈だとこいつらも最初からアウトじゃねえか、と六星は思ったが
先ほどの五塔との対峙もあり、
狂人とまともに会話する気力が残っていなかったので
そんな気持ちをそっと心の奥にしまった。
まあ、どっちにしろ全員殺すということなら大差も無いだろう。
あとは遠野の処理だが…


394 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:11:40 v5HBZa060

そう考えていると、霧島がやってきて六星の手からジェイソンの仮面を奪った。

霧島「なあなあ、SKの人。このお面俺も付けていい?」

遠野「あっそれは…」

六星「よくわかんねえけど、とりあえずお前を生かしておくと俺は殺されるんだな?
   ならまあ、殺すか」

ということで六星が斧をクッと引いたときだった。

霧島「うおおおおおおおおおっ」

六星の背後で霧島のけたたましい声がした。

振り返ると、ジェイソンの仮面をつけた霧島が
その辺の木に向かって突進し、頭からぶつかって、倒れた。
一部始終を見ていた三人の間には、しばらくの間沈黙が続いた。

佐伯「……おい。
   あの仮面、つけると知能が低下するんじゃないか?大丈夫なのか?」

遠野「え?いや、僕はむしろ冴えるくらいなんだけど」

佐伯(元々トチ狂った人間なら無問題ということか…)

六星「だが正気を失うぶん、身体能力は通常時の1.3倍になるようだな。まあ使えるか」

佐伯(今のを見て効果数値がわかるのかよ…)

六星「だいたいお前なんで人を殺す時に仮面なんて付けてるんだよ。
  視界が悪くなるだろ」

遠野「えっ?…仮面って、殺人するときはつけるもの、だよな?」

佐伯「ない」

六星「ないな」

遠野「えっ だって読者に犯人が」

佐伯「そんなものつけなくても黒くなればいいだろ」

遠野「いや、黒くなった上で仮面も付けるのが怪人としてのロマンだと僕は…」

佐伯「あ、ちょっと待て霧島が立ち上がったぞ」

六星「ほぉ、頑丈さの指数も上がるのか。1.5倍くらいかな。悪くねえ」

佐伯「先生もあれつけたらもっと強くなるんじゃねっすか」

六星「…仮面が取れた時には辺りが血の海になってそうだ」

佐伯「確かに」

遠野「あれ、あいつ折り畳みナイフなんか持ってたのか」

六星「持ってたな。しかも構えたな。こっちに来るな。」

佐伯「くそっ、さっきより速度が上がってやがる」

六星「あの速さだとキツいか?」

佐伯「ちょっとね。でもまあ、やってみますよ」

遠野「そういえば君たちなんで斬り合ってたんだ?」

六星「なんとなくだ」

遠野「へえ……」


395 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:13:22 v5HBZa060

さて。
と、佐伯は霧島ジェイソンの一撃目をかわしながら考えた。
佐伯も数年前までスラム街で毎日のように斬り合いの喧嘩をしていた。
15歳と13歳という歳の差のハンデはあるにせよ、ずぶの素人である霧島相手なら
決して不利は取らないだろう
しかし、あのジェイソンの仮面は厄介だ。
六星の話が本当なら、今の霧島は基本身体能力が1.3倍に、頑強さが1.5倍になっているらしい。
真っ向から闘ったら危ないかもしれない。
体勢を立て直して切りかかってきた霧島ジェイソンの二撃目をかわす。
佐伯は霧島から少し距離を取り、腹の底から嘲笑するような調子で霧島に怒鳴った。

「…やめとけやめとけ。お前に殺人なんて百万年早えーんだよ」

ジェイソンの肩がピクッと動いた。
挑発に乗ったようだ。
やはり狂化したぶん、思考能力は落ちているらしい。
佐伯はポジション取りしながら挑発を続ける。

「そもそもお前の殺人なんて、お坊ちゃんの火遊びなんだろ?
 誰か殺したいってんなら、てめーが死ねよ」

こちらに向き直り、ナイフを握りなおすジェイソンの動きからどんどん冷静さが失われていく。
佐伯はなおも続ける。

「人が死ぬところ見たーい!でも死にたくなーい!誰か殺しちゃえー!
 ってか?
 霧島くんは救いようのないわがまま坊やだなァ〜?え?」

佐伯がニヤリと笑うと、霧島は猛火のごとく怒りに燃えて突っ込んできた。

(よしよし、こうなるともう暴れ牛同然だな…)

ナイフの切っ先を今にも振り下ろさんと握りしめる霧島ジェイソンを
ギリギリまで引き付ける…引き付ける…

そしてフッとかわす。

霧島は佐伯の背後に立っていた大木に激突した。

「よし!今だ!」

佐伯は近くに落ちていたド根性バットを拾い上げ、
大木の直撃を受けて伸びている霧島の背後からガンガンと殴りかかった。
鈍い感触。

「ったく!俺はこういう力仕事は得意じゃねえっての!」

悪態をつきながらも、一撃、また一撃と繰り返すと
やがて霧島の首筋や後頭部から血が飛び散った。

「よし、もう一発!」

霧島の後頭部が血と肉でぐしゃぐしゃになるまで殴り、
最後の仕上げに、とジェイソンマスクを剥がした。
マスクの下には、恐ろしい痛みにゆがんだ霧島の顔があった。
ひとまず、仕事完了である。

「先生、これでたぶん死ぬぜ」

佐伯は霧島のもとに屈んだまま
赤く濡れたマスクを片手に六星を見上げた。

「そうだな、これは死ぬな…」

六星も注意深く霧島を見ながら言う。


396 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:14:33 v5HBZa060

「で、お前はどうするんだ、遠野」

既に四人殺している遠野だったが、
ジェイソンマスクを付けずに見る撲殺現場は
さすがに耐え難いものだった。
しかもこともあろうか、
事は不動高校の教師と年端も行かない少年たちの間で起きたのだ。
こんなにも言いようのなく非人道的なことが…。
気分を悪くしてうずくまっていたところに急に声をかけられ、
遠野はびくっと震えた。

「うぐっ…小田切…… 俺はお前を…いつか絶対に…」

「殺すか」

遠野は顔を真っ青にして六星を睨む。
六星は静かに遠野を見降ろした。
こいつは狂人だ。
ここで殺すのは簡単だろう。
だが、狂人なりに学校であれだけ非の打ちどころなく振る舞っていたということは
そうまでして守りたいものがあったのではないか?
なんだか忘れたが、さっき遠野は一度女の名前を口にした気がする。
尊い命がなんとか、と。
その女のためなら復讐でもなんでもするってか。
この弱さじゃできることなんて知れているだろうが…

六星は遠野から目を逸らすと、言った。

「…まあがんばれよ
 おい佐伯、お前その仮面使うか?」

「いや…デメリットが大きい」

「じゃあ返してやれよ」

「ういっす」

血まみれの仮面がフリスビーのようにして遠野の方に飛ぶ。
遠野はそれを受け取ると、森の奥の方へじわじわとしり込みしながら姿を消した。




【一日目/早朝/不動高校周辺】


【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]精神的ダメージ、右肘関節脱臼、返り血
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説(これをつけると罪悪感が消失する)、果物ナイフ@狐火流し殺人事件、光太郎が拾った(貰った?)サッカーボール@狐火流し殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘殺人事件、
[思考・行動]
基本:螢子は生きているかもしれない、だが三日待って九条をころす。
0:螢子を探す。優先して探す。
1:螢子は生きているかもしれない、だがSKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:螢子は生きているかもしれない、だが脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:螢子は生きているかもしれない、だが鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
4:螢子に危害を加える可能性のある参加者は全員殺す。凶悪犯は優先的に殺す。
5:六星と佐伯は明らかにやばいので積極的に殺していきたい。そのための戦力が欲しい。

[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。
※ジェイソンモードになると身体能力や回復能力、危険察知能力、その他もろもろがほんの少し上がります。


397 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:18:29 v5HBZa060


走り去る遠野の背中を見送りながら、
佐伯は不服そうに口を尖らせた。

「なんだよ先生、俺には霧島のこと殺させておいて」

六星は頭を掻きながらそれに答える。

「うーんそうだな、悪い。
 なんだかかわいそうになっちまってなあ」

「かわいそう?
 先生でもそういうこと思うんだな」

「たまにはね…。
 でもまあ、約束通りお前には協力するぜ。
 なんだっけ、災厄の皇帝(エンペラー)、とかいう奴を捕まえるんだったか」

そこまで話したとき、血の海のなかに倒れ伏した霧島が
うめき声をあげた。

「おい…お前、今意識戻ってきてもギリギリだろ?
 大人しく死んだ方が楽だぜ」

六星が声を掛けると、霧島は呟くようにか細い声を上げた。

「く…ははっ!残念だなあ…
 残念だけど、お前らすげえ面白かったからまあいい…かな…」

その様子に、佐伯も口を開く。

「面白いって、人殺しがか?」

霧島の口元は笑っていた。

「…だって考えてみろよ。
 平和なんてさ、リアルな死以上に酷い死じゃないか?
 何も起こらない世界、誰も死なない…誰も傷つかない…喧嘩もぶつかり合いもない…
 そんなのうすら寒い標本みたいな生だろ…?」

霧島の言っていることは、多少、わかってしまうかもしれない。
そう思っただけに、佐伯はあえて冷たい口調で突っぱねた。

「なんだ、お前の殺したいってやつは、本当にお坊ちゃんの火遊びだったのか」

「あは、ちげーよ…
 泳げない魚が死んで、綺麗な流線型の魚が残る
 醜い鳥は死んで、優れた鳥だけが選ばれる
 ちゃんと死ぬべき奴が死ぬ世界、だから自然の生は綺麗だろ?
 それが、俺の好きな、生……」

それっきり、霧島は動かなくなった。
六星は怪訝そうな顔で様子を見ていたが、しばらくして、
何か言わなければいけない空気だったので言った。

「…哲学的だったな」

「そうかな」

佐伯に冷たくあしらわれたが、まあそれはそれである。
ともあれ犯人捜しをするとなれば、
いつまでもこんな林の中でウロウロしているわけには行かないだろう。

心強い仲間をつけた佐伯は、
まるでそこに災厄の皇帝(エンペラー)が潜んでいるかのように
林奥の暗がりをキッと見据えた。

何かまだ自分にできることがあるようで。
何かまだ終わらせてしまえないことがありそうで。
早朝の光が差し込んできた森の中、
二人はどこへとなく歩き出したのだった。







【霧島純平@高遠少年の事件簿 死亡】


【一日目/早朝/不動高校周辺】


398 : ジェイソンの仮面 ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:18:53 v5HBZa060

【六星竜一@異人館村殺人事件】
[状態]健康
[装備] ジェイソンの斧@悲恋湖伝説殺人事件
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:六角村の連中は皆殺し。
0:六角村の連中は凝った演出をして場を彩る
1:他の連中はどうでもいい、生死すらどうでもいい。
2:気が向いたら不動高校へ案内する。
3:佐伯とは基本的に共闘する。
[備考]
※参戦時期は、小田切進(本物)発見〜異人館村殺人事件前。
※異人館村殺人事件の結末を知りました。



【佐伯航一郎@秘宝島殺人事件】
[状態]健康
[装備] ド根性バット(ミラクルミステリーパワーステッキ最終形態)@美少女探偵金田一フミ3、布施光彦のボウガンの矢1本@オペラ座館殺人事件、伊志田が着ていたメイド服@不動高校学園祭殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体を暴き、殺す。
0:歯向かうと殺される可能性があることはわかっているので、大っぴらには活動しない。
1:とりあえず色々な人に話を聞きながら手掛かりを集めて、色々考える。
2:人殺しなんてハエやゴキブリを殺すのと同じさ。
3:楊蘭にはなんとなく共感するので殺したくない。
4:先生と協力をする(信用はしない)。
[備考]
※参戦は秘宝島殺人事件の犯行後です。
※6人殺害しているものの、まだ13歳だし反省していたのですぐに出てきました。
※頭が良いそうです。
※女装癖があります。


399 : ◆5oInWSSsJQ :2016/09/06(火) 02:20:16 v5HBZa060
投下終了です。
できれば霧島を助けたかったのですが、
この面子で犠牲者0はどうやっても無理でした。


400 : 名無し :2016/09/25(日) 07:22:51 oQSY7SWE0
更新まだかなあ。


401 : 名無し :2016/10/19(水) 20:26:51 hel5JjJM0
あくしろよ


402 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/11(金) 23:30:03 ik0FWf1I0
斑目るり、葉崎栞、連城久彦で予約します


403 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:54:42 /rQOLqFw0
投下します


404 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:55:32 /rQOLqFw0
ずるり、ずるりと少女の身体が引きずられている。

「うふふ」

彼女の身体を引きずるのは五党蘭。
この数時間後に死ぬ運命にある夫人である。

「うふふふ」

引きずられる少女―――高森ますみは強く美しい少女だった。
自らの死を覚悟した彼女は、斑目るりを逃がすために立ちはだかるどころか、挑発までして抗ってみせた。
そうでなくてはこの身に血を注ぐ価値がない。

本当は今すぐにでも浴びたいが、万が一邪魔が入っても困る。
そのため、手ごろな場所を探しているのだ。

「もう少しの辛抱よ...もう少ししたら、ゆっくり、ゆっくりと遊んであげるから...」

うふふふ、と甲高い笑い声をあげながら、夫人は深い森へと姿を消していった。


405 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:56:05 /rQOLqFw0




冬部の様子がおかしい。
そのことに気が付いた連城は、足を止めて冬部を背中から下ろし地に横たえる。
栞もそれに習い、るりを地面に下ろした。

連城は冬部の生死を確認するため、胸に耳を当てた。鼓動は聞こえない。
次いで呼吸を確認する。息はしていない。
脈をとる。動きはない。
目蓋を上げて眼球の動きを確認する。ピクリとも反応しない。

連城はふるふると首を横に振り、既に手遅れであることを栞に伝えた。

「そんな...!」

栞は思わず口を押えてしまった。
冬部が死んだ。苦しい環境になってからも人知れず栞を支え、このバトルロワイアルにおいても支えになってくれた彼が。
一度は彼を殺そうとしていたことなど嘘のように彼女は涙を流した。

「おじさん...?」

栞の背後からそう小さく声が漏れた。斑目るりが目を覚ましたのだ。
るりは立ち上がり、よろよろと冬部の遺体に近寄り触れた。
いくら撫でても、いくら呼びかけても、冬部は反応しない。
当然だ。
彼はもう死んでいるのだから。

「ごめんなさい」

少女は涙ぐんだ声で言う。

「あたしのせいで。あたし、が...」

自分がいたから。自分が助けを呼んでしまったから。
自分がいなければ、冬部が死ぬことはきっとなかったのだろう。

少女の頬を伝う涙は、後悔は止まらない。


406 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:56:44 /rQOLqFw0

「...そうよ」

栞がポツリと漏らした。
そうだ。冬部が死んだのはこの子の所為だ。
この子がいなければ、彼はきっと最後まで一緒にいてくれた。

「あんたがいたから、あのひとは...!」

だが、るりの悲鳴で全てが変わった。
冬部は1人で悲鳴のもとへと向かいあまつさえ殺された。
許せない。ようやく取り戻せたものを奪ったこの子が。

「返してよ!あの人を返してよ!」

激情のままにつかみかかる栞に対して、るりはなにもできない。
ただ、己の無力さに唇を噛みしめ涙を堪えるだけだ。

パ ァ ン

突如として、甲高い音と共に栞の右頬が赤く染まる。
困惑する栞は、下手人へと視線を移す。
覆面の男はなにも答えない。
もう一度ふるふると首を横に振るだけだ。

だが、栞は彼の行動によって冷静さを取り戻した。
頬に残る熱さが、冬部の仇は彼女ではないと訴える。

(...そうよ。あたし、なんてことを)

冬部を死に至らしめたのはあの三人であり、るりの責任ではない。
そんなことは考えるまでもない事実だ。
だというのに、冬部の喪失に対する八つ当たりをしてしまった。
なんの罪もない少女を悪だと罵ってしまった。


407 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:57:09 /rQOLqFw0

「ごめんね、あなたはなにも悪くないのに...!」

栞はるりを抱きしめ、何度も何度も謝罪の言葉を口にする。
だが、それでもるりの心が晴れることはない。
栞に言われるまでもなく、冬部の死の責任は自分にあることを自覚していたのだから。

「おねえちゃん...」

栞の腕を易しく解き、ふらふらと覚束ない足取りで歩き出す。
あの場に一人で残った高森ますみ。せめて、彼女を一秒でも早く助けなければ。
その一念が少女の足を前へと進める。
例え場所が解らずとも、足を止める理由にはならない。

ふらふらと森の奥へと進んでいく少女を呆然とした栞に、連城は手を差し伸べる。

「......」

言葉を発しない連城だが、栞はなんとなく彼の意図を察した。
彼はるりを追おうとしているのだと。
そしてこの差し伸べられた手は自分を気遣ってのことなのだと。
栞は彼の厚意に素直に甘え、連城の手をとり立ち上がる。

(冬部さん...)

横たえられた冬部の遺体を見て、再び涙が溢れそうになる。
本当はちゃんとした場所で埋葬すべきなのだろう。
しかし、ここは危険が伴う殺し合いの場である。
彼を埋葬している間に襲撃に遭い全滅。そんなことになってはならない。
だから、彼の遺体は置いていくしかない。

(...ごめんなさい、冬部さん)

今度こそ冬部へ背を向け、前へと進む。
もう失わないために、失わせないために。


408 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 00:57:57 /rQOLqFw0



うす暗い森の中をどれほど歩いた頃だろうか。

やがてるりは、妙な跡を見つけた。
一部の草が潰れた、なにかを引きずったような跡を。

それは、がむしゃらに逃げてきた所為でなんの手がかりもなかったるりにとっては光明にすら見えた。
ようやく手がかりを見つけた。
きっとこの先でますみおねえちゃんは頑張っている。
いや、もしかしたらもうあのおばさんをやっつけているかもしれない。
そんな、別れ際には思いつかなかった偽りの希望すら期待して、るりは光におびき寄せられた蛾のように、その跡を辿った。

それに続き栞と連城もまたるりを追う。

―――人生はいつだって選択肢の連続だ。

ボタンの掛け違いひとつで全ての結果が変わってしまう。

これまでに"怪人"と化した悲しき復讐者たちのように。
これまでに"怪人に仕立て上げられた"哀しきマリオネットたちのように。

たった一つの選択肢で人生は地獄にも天国にも成り得る。

...もしも、るりがこの跡を追わなければ違った未来があったのかもしれない。

だが、彼女は選んでしまった。もう後戻りはできない。


409 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 01:00:11 /rQOLqFw0

ぐにっ

なにかを踏みつけるりは転倒する。
慌てて抱き起そうとする栞だが、るりが踏んだモノを認識した瞬間、言葉を失った。

「な、なに...?」

落ちていたのは―――


!?


「きゃあああああああ!!」

栞の悲鳴が甲高く上がる。
片腕。細身の片腕だ。

その腕を見た時、るりの心臓はドクンと跳ね上がった。

―――『るりちゃんね。あたしは高森ますみ。よろしくね!』

あの時交わした握手が鮮明に蘇る。

違う。そんな筈はない。
頭では拒絶の言葉が次々に浮かんでくるが、るりの動悸は止まらない。

(ひきずった跡が、まだ、ある...)

草むらにはまだ先がある。

行ってはいけない。行かなくてはならない。

その想いの両ばさみになりつつも、るりの震える足は確かに前へと進んでいた。

そして。

るりは見つけた。

大木に寄りかかった友達の姿を。

裸に剥かれ、中に詰まっていたものを抜かれた変わり果てた姿を。

「――――――――――」

もはや悲鳴ですらない絶望の叫びが、うす暗い森の中に木霊した。


410 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 01:01:12 /rQOLqFw0




変わり果てたともだちの、救ってくれた心優しい男性の死を嘆くように、蝶々がひらひらと舞い踊る。

やがて、蝶は泣き崩れる少女の肩にピタリと止まった。

その蝶の羽根の紋様は、人間の肋骨にそっくりだった。

彼の蝶の名は黒死蝶。

ある地域では呪いの意味を持った蝶。

―――許さない。

少女の念に応えるようにざわざわと木々が蠢き始める。

―――あたしから全てを奪う奴ら。みんな、みんな許さない。

あのイカれたおばさんも。冬部を殺した三人も。
あたしの母を虐めるあの男もだ。

ゆっくりと顔をあげた少女の目には、溢れる涙でも消せない憎悪の炎が宿っていた。

そして。

黒死蝶もまた、空へと羽ばたき始める。

―――お前達には必ず死を届けてやる。あたしが、この手で...!

新たな怪人【黒死蝶】の目覚めを祝福するかのように―――!


411 : 産声 ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 01:02:52 /rQOLqFw0


【一日目/早朝/獄門塾敷地内】
※五党蘭のイイ趣味によって弄ばれたますみの遺体が発見されました。


【斑目るり@黒死蝶殺人事件】
[状態]疲労(絶大)、精神的ダメージ(極大)、激しい怒り、激しい悲しみ、五塔・多間木・古谷・海堂への憎しみ(極大)、下着姿
[装備]速水玲香を気絶させた時に安岡真奈美が使用したスタンガン@速水玲香殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出した後に斑目紫紋を殺す。
0:五塔・多間木・古谷・海堂は必ず殺す。



※参戦時期は金田一と遊ぶ約束をした後。
※怪人【黒死蝶】になりました。


【葉崎栞@吸血桜殺人事件】
[状態]疲労(中)、精神的ダメージ(大)、冬部を失った悲しみ、ますみの遺体を見たショック
[装備]
[所持品]基本支給品一式×2、不明支給品1〜2、冬部の不明支給品1〜2(武器の類ではない)
[思考・行動]
基本:三日目まで生き残りたい。
0:冬部さん...

※参戦時期は金田一に全ての事情を聞かされたあと


【連城久彦@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(大)、六星への憎しみ。
[装備]高遠が使ったトリックナイフ@露西亜人形殺人事件
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本:若葉の仇をとる。それ以外はたぶん殺さない。
0:若葉の仇(六星)を見つけ次第殺す。
1:若葉の仇を探し出す。



[備考]
※参戦時期は六星にナイフを刺す直前
※六星を見つけ次第殺しにかかります。


412 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/11/18(金) 01:03:23 /rQOLqFw0
投下終了です


413 : 無題 :2016/12/21(水) 07:43:16 YdUA2vNA0
更新まだかなあ。


414 : <削除> :<削除>
<削除>


415 : <削除> :<削除>
<削除>


416 : ◆CKro7V0jEc :2017/03/14(火) 00:09:20 VYDeo4Yk0
ご無沙汰してます。
かなり間が空いてしまい、スレに顔も出せず申し訳ありません。

一話書くのに金田一少年の事件簿の単行本をいちいち本棚から引っ張り出して何度も何度も細かく読み返さなければならないので、思った以上にハードかつ面倒でサボってしまいました。しかも以後、顔を出しづらくなり書き込みも長期間放置しまいました。
申し訳ありません。最低だ、殺されても文句言えないよ……。

ちなみに金田一が「怪奇サーカスの殺人」でエロサイトを見すぎてパソコンを壊したように、我が家のパソコンも去年壊れて以来直してないので、今回はスマホで書いたものをスマホで投下します。
読みづらいかもしれませんが、あしからず。

既に他の方の予約が切れてるキャラも登場しますが、その点もあしからず。


417 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:12:08 VYDeo4Yk0
昨年ヒットしたアニメ映画『君の名は。』と、大人気推理漫画『金田一少年の事件簿』との間に、実に密接な関係が生じている事実に、このロワを読んでいる方々はもうお気付きの事と思う。
たとえば、二つの作品はいずれも「き」で始まる点において共通しているし、俳優・神木隆之介は二つの作品にそれぞれ出演している。更に、神木隆之介は金田一に出演した際に上白石萌音の妹・上白石萌歌と共演している。上白石萌音は『君の名は。』のヒロインの声優だ。
「俺たち/私たち入れ替わってるー!?」という予告での台詞も、悲恋湖伝説殺人事件のトリックを暗示しているのは今更語るまでもないし、顔に落書きされる場面などは短編集一巻に収録されている『金田一少年の事件簿アナザーストーリー 美雪とはじめのエトセトラ』に酷似している。
アニメの舞台である東京都・岐阜県の二つの都道府県は、いずれも金田一少年の事件簿の作中に登場し、殺人事件の舞台になっている。
主人公の苗字「立花」は、おそらく『学園七不思議殺人事件』に登場した「立花良造」から取った物と思われる。
『君の名は。』はいまだに絶賛公開中であり(※地域による)、『金田一少年の事件簿』はいまだに絶賛連載中である。
『君の名は。』の配給は東宝で、『金田一少年の事件簿』のドラマ版が映画化した際の配給も東宝だ。
『君の名は。』にも『金田一少年の事件簿』にも自転車が登場する。


418 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:13:05 VYDeo4Yk0

このように、『君の名は。』は、実のところ『金田一少年の事件簿』をモチーフにしていると推定できる箇所が多くあるのだ。
しかし、これらの事実を根拠に「『君の名は。』は『金田一少年の事件簿』のパクリである!」などと喚くつもりはない。
だいたいどんな作品であっても、少しずつ他の作品に似てしまう事はあるだろうし、安易にパクリなどと決めつけてしまってはクリエーターに失礼である。「似ている」と「パクリ」は違うのだ。
『占星術殺人事件』のトリックのように絶対パクっちゃいけないものを露骨にパクってこそ、初めてパクリと呼ぶべきなのではないか。

そんな事はどうでもいい。
パクリとか言いたいんじゃない。
この『君の名は。』が『金田一少年の事件簿』であり、これだけ『君の名は。』に近い要素を持った作品であるという事は、『金田一少年の事件簿』が次に映画化した際の興業収入は200億を突破できるかもしれないと言いたいのだ。
金田一、もう一度映画化してくれ。


と、まあこのように金田一を再映画化させたいファンたちの間で、まことしやかに語られている『君の名は。』と『金田一少年の事件簿』の関係について、今回筆者は新たな手がかりを見つけ出した。



『君の名は。』の主題歌でもある、あのRADWIMPSの名曲『前前前世』にまつわる接点である。
まずは、今回の導入としてこの『前前前世』と『金田一少年の事件簿』の繋がりを軸に軽く考察してから、金田一ロワの久々の新作をお見せしたい。




以下は、『前前前世』の歌詞の引用と、何が『金田一少年の事件簿』なのかを客観的にわかりやすく解説したものである。
(歌詞の引用とかにうるさい某JASに目をつけられないよう、密かにやっていきたい。)


419 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:14:20 VYDeo4Yk0





>やっと眼を覚ましたかい

曲の始めのこのフレーズは、『氷点下15度の殺意』の渋沢圭介が2ヶ月ぶりに意識を取り戻した事を歌っているものと思われる。
白峰辰貴の視点で歌われたのではないかと考察できる。


>それなのになぜ眼も合わせやしないんだい?

これは、金田一に追い詰められた犯人が金田一の推理を聞きながら目を反らす場面を指している。
口調も金田一が推理する時の「〜なんだい?」という気取った口調を再現している。

以下、この調子で、歌詞に合わせて『金田一少年の事件簿』の事件名とシチュエーションを解説していく。


>「遅いよ」と怒る君

『明智警視の事件簿2』冒頭で金田一を待つ美雪。
この場面を金田一の視点から歌っていると思われる。


>これでもやれるだけ飛ばしてきたんだよ

『高度1万メートルの殺人』のラストで飛行機を飛ばしている明智警視。
ジェット機を飛ばせる人間などそうそういないのに、「これでもやれるだけ飛ばしてきた」という言い方はかなりイヤミだろう。


>心が体を追い越してきたんだよ

『金田一少年の決死行』の狩谷純。
22歳の青年の心を持っているものの、体の成長は10歳で止まっている狩谷の事を歌っている歌詞と見て間違いないだろう。


>君の髪や瞳だけで胸が痛いよ

『黒死蝶殺人事件』における小野寺将之の心情を表していると思われる。
小野寺は母・斑目緑から引き継いだオッドアイを持っており、これは息子である徹(小野寺)と、娘・るりにだけ遺伝している。


>同じ時を吸い込んで離したくないよ

『魔犬の森の殺人』の動機パートで、恋人・水沢利緒を抱き締める千家貴司の心情。
余命半年の利緒の残された時間を強調する為、「同じ時」というイカすフレーズを使っている。


420 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:17:25 VYDeo4Yk0


>遥か昔から知るその声に生まれてはじめて何を言えばいい?

『黒死蝶殺人事件』、『魔神遺跡殺人事件』、『速水玲香誘拐殺人事件』、『ゲームの館殺人事件』あたりの母娘ドラマか、『タロット山荘殺人事件』あたりの兄妹ドラマではないかと思われる。
母の真意や兄の存在などを知った子供たちの想いやいかに。


>君の前前前世から僕は君を探し始めたよ

『悲恋湖伝説殺人事件』の遠野と螢子を意味する。
あの湖の伝説の兄妹を彼らの前世と解釈した歌詞であろう。


>そのぶきっちょな笑い方をめがけてやってきたんだよ

『飛騨からくり屋敷殺人事件』で、巽征丸の笑顔にムカついた巽紫乃が、刃物を持ち、征丸めがけて殺ってくる場面。


>君が全然全部なくなってチリヂリになったって

『墓場島殺人事件』で米村チームが爆弾で纏めて殺されるシーン。
米村チームは死ぬが、米村は死んでない。


>もう迷わない

『鏡迷宮の殺人』のミラーラビリンスとかいう迷路。


>また1から探し始めるさ

また1から(=一課ら)探し始めるさ。
明智警視や剣持警部の所属する「警視庁捜査一課」らが証拠を探し始める事を歌っている。
「また」という事は、何度も殺人事件が発生し、一課が動かなければならない事への皮肉である。


>むしろ0からまた宇宙をはじめてみようか

金田一に殺人事件を解決させて、また次の日には新しい殺人事件を0から考えなければならない制作者の苦痛を宇宙に例えている。


421 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:18:33 VYDeo4Yk0


>どっから話すかな 君が眠っていた間のストーリー

『蟻地獄壕殺人事件』。
気を失ってから目が覚めた舞谷かえでに、流産した事実を伝える高遠の視点で歌われている。


>何億何光年分の物語を語りに来たんだよ

『金田一少年の事件簿』の制作者の意気込みを表しているものと思われる。
何億年分の物語のストックがあるので、それを出し切るまで金田一たちは年を取らないのである。
光年は距離。


>けどいざその姿この眼に映すと
>君も知らぬ君とジャレて戯れたいよ

『電脳山荘殺人事件』で、アガサ(偽)とオフパコする乱歩の心情。
「けどいざその姿この眼に映すと」では、アガサがブスなのではないかと不安になる乱歩の心情を描き、「君も知らぬ君とジャレて戯れたいよ」は目の前にボーイッシュな感じの美少女が現れた瞬間の乱歩の手のひら返しと劣情を表している。
ちなみに本当のアガサは小太りのメガネ。


>君の消えぬ痛みまで愛してみたいよ

『オペラ座館殺人事件』、『オペラ座館・新たなる殺人』、『オペラ座館・第三の殺人』の三つの事件の犯人の心情に相当する。
顔を火傷した恋人を愛する犯人や、強姦された恋人を愛する犯人らの心情を歌っている歌詞。
犯人とその動機となった恋人の名前、全部言えるかな?


>銀河何個分かの果てに出逢えた

『金田一少年の事件簿』はそんなに規模の大きな話じゃない。


>その手を壊さずにどう握ったならいい?

『速水玲香誘拐殺人事件』でおにぎりを握る三田村圭子の心情を歌っている。
なぜ手が壊れるのかは知らん。


422 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:20:08 VYDeo4Yk0


>君の前前前世から僕は君を探し始めたよ

ここは前と同じ。


>この騒がしい声と涙をめがけやって来たんだよ

死体を見つけて叫ぶ第一発見者を皮肉った歌詞。
「死体見つけたくらいで騒ぐなよ」みたいな金田一の本心が「この騒がしい声」という歌詞に表れている。


>そんな革命前夜の僕らを誰が止めるというんだろう

『殺戮のディープブルー』のテロリスト。


>もう迷わない

前と同じ。


>君のハートに旗を立てるよ

『妖刀毒蜂殺人事件』の高槻政宗の死体。
「毒蜂の死体は遂げられし」と書かれた紙が柄を隠している刀(=旗)を、心臓(=ハート)に突き刺されている。


>君は僕から諦め方を奪い取ったの

『秘宝島殺人事件』で、

「ナマイキ言うんじゃねえよ!ガキのくせに!
自分の不幸を他人のせいにするのはガキだって言ってんだよ!
どんなにどん底でも
どんなに暗闇の中を生きてても
やり直しのきかない人生はないんだ!!
闇の中でもがいているやうに見えても…
そこからぬけだそうと必死に生きてゆけば必ず光はさす!!」

と金田一に言われた後の佐伯航一郎の心情。


423 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:21:26 VYDeo4Yk0










ウォーーwwwwwwwウォウォウォーウォーwwwwwww

ウォーーウォウォウォウォウォーーwwwwwww

ウォーーwwwwwwwウォウォウォーウォーwwwwwww

ウォーーウォウォウォウォウォーーwwwwwww

ウォーウォウォウォウォーーーwwwwwww

(三人に増殖した仙田猿彦が八尾の別荘を囲み、手を叩いて踊り狂う)










>サビ(略)

同じ。

>何光年でもこの歌を口ずさみながら

悪魔組曲。





以上が『君の名は。』が主題歌に至るまで『金田一少年の事件簿』である事の証左である。
良い映画だから未見の人は公開中に見に行ってほしい。これだけ話題になっても見に行かないのは駄目。面白いから今からでも見に行って。
金田一映画化しろ。






424 : 顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う :2017/03/14(火) 00:25:13 VYDeo4Yk0



本編。



――――錬金術館は、雪崩に飲み込まれた。




【仁藤伸幸@首吊り学園殺人事件 死亡】
【出門章一@迷い込んできた悪魔 死亡】
※こいつらはずっと部屋やトイレに閉じ籠ってました。





【死骨ヶ原ホテルの劇場/一日目/早朝】
※近宮玲子と美咲蓮花はストレス解消の為に、即席でバンドを組んで「前前前世」を歌いました。ドラムは勿論チャネラー桜庭です。
※彼らの熱いビートが雪山を動かし、錬金術館のみをピンポイントに飲み込む雪崩を起こしました。
※ズガンさせる都合の為にバンドを結成したので、次回には何事もなく解散してると思います。
※ちなみに歌って人が死んだ事実に気づいてません。
※前の話まで二人で行動してましたが一人増えました。


【チャネラー桜庭@魔術列車殺人事件】 
[状態]精神的疲労、前回気絶してたけど起きた
[装備] 
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜2 
[思考・行動] 
基本:死にたくない
1:もうやだあのおばさん。
2:誰このおばさん。
3:チャネる。
※参戦時期はピエロ左近寺が燃えている時です。 
※近宮玲子を幽霊かなにかだと思っています。


【近宮玲子@魔術列車殺人事件】 
[状態]健康、ピエロ左近寺への激しい憎しみ 
[装備] 
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜2 
[思考・行動] 
基本:左近寺ブッ殺す。 
0:左近寺は見つけ次第芸術的なトリックで殺す。 
1:ジェントル山神、ノーブル由良間、マーメイド夕海は、あたしにした仕打ちを泣いてお詫びすれば重傷程度で勘弁してやってもいいかもしれない。 
2:チャネラー桜庭は別にいいや。

※参戦時期は落下して死ぬ直前です。 
※山神たちも近宮の気分次第では左近寺同様殺します。
※蓮花と穴姉妹ですが今のところ気づいてません。


【美咲蓮花@薔薇十字館殺人事件】 
[状態]健康、皇とか小金井とか禅田みるく(当時30歳)とか祭沢とか冬野への激しい憎しみ
[装備] 
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・行動] 
基本:薔薇レンジャーブッ殺す。 
1:薔薇レンジャーは見つけ次第殺す。 

※参戦時期は燃えて死んだ直後です。 
※皇翔、小金井睦、禅田みるく(32)、祭沢一心、冬野八重姫ら五人を纏めて「放火戦隊薔薇レンジャー」と呼んでいます。
※近宮と穴姉妹ですが今のところ気づいてません。


425 : ◆CKro7V0jEc :2017/03/14(火) 00:37:05 VYDeo4Yk0
投下終了です。
これまで金田一ロワを楽しみにしていた皆様、マガジンで金田一が休載の週はイライラしがちな皆様、新海誠監督の映画のファンの皆様、RADWIMPSのファンの皆様、長期間不在でご心配をおかけし、大変申し訳ありませんでした。

スマホで投稿する際、書き込みボタンを押したいのに上からシャンデリアの如くDMMの広告が降ってきて思いの外ウザいのがわかったので、また作品投稿は不定期になると思います。
しかし、今後は長期間SSが書けないとしても、何かしらの書き込みは継続するよう心がけます。
今後とも八尾の別荘のように温かく見守って頂けたら幸いです。


426 : ◆CKro7V0jEc :2017/06/14(水) 00:28:39 qErOamB.0
投下します。
パソコンは買いましたが、あまり話が思いつかなかったので、早朝行ってる参加者も多いからとりあえず放送にします。
あと、今回は重大な報告があるのでしっかり読んでいただけると幸いです。


427 : 第一回放送殺人事件(ご報告が遅れましたが複製原画が当たりました) :2017/06/14(水) 00:29:32 qErOamB.0


 時刻は朝六時を回った。
 頃詩愛島には朝日が昇り、この忌まわしい連続殺人のスタートから六時間を告げる。
 現実時間ではここまで約十一か月。

 十一か月とはどういう事だろうか。

 現実に置き換えよう。
 このロワが始まったとき、マガジン本誌では「白蛇蔵殺人事件」が連載中だった。
 それから、金田一少年は白蛇蔵での事件を解決し、次の「聖恋島殺人事件」を解決した。
 で、今に至る。



 ……。


 …………。


 ………………。



 ――――そう。


 金田一ロワは金田一ロワで進んでいないが、『金田一少年の事件簿』もあんまり進んでいなかった。


 名探偵は二つしか事件を解決していなかったのである。
 うち、高遠が登場する事件ゼロ(※白蛇蔵に出てきた蛇が高遠の変装だったという説があるが根拠はない)。
 チャネラー桜庭が登場する事件もゼロだ。
 その間に十五人くらい死んだんだから金田一ロワのペースはいうほど遅くもないじゃないか。

 とはいえ、その間になんと、「聖恋島殺人事件」で真相当てクイズが復活している。
 読者が推理に参加し、犯人を当てて応募すると、豪華プレゼントが当たるというあの企画だ。
 今回のプレゼントは、リクエストしたキャラをさとうふみやがサインと共に描いてくれる色紙である。これが一名に当たる。
 で、そのあとで、「一名じゃ少ないだろ」と気づいたのか、十名に複製原画が当たるというサービスも追加された。


428 : 第一回放送殺人事件(ご報告が遅れましたが複製原画が当たりました) :2017/06/14(水) 00:30:00 qErOamB.0



 本題はここから(重要)!!!!!!!!!!!!!



 自慢ではないが、なんと私は、このたび、十名にしか当たらない複製原画が当たった。
 講談社からクソデカい郵便物が届いて、「なんやねん」と思って開けてみたら、「血溜之間殺人事件」の複製原画が届いたのである。
 それは、サイン色紙に描いてほしいキャラとして「小角由香里」をリクエストしたからだった。そのキャラの複製原画がもらえる仕組みになっていたのだ。
 そのため、このロワに出ている星くんやインフルは映っていない(海峰だけ映っている)。それどころか金田一すら映っていない。
 調べてみたところ、「茅杏子」や「井沢研太郎」など、サイン色紙にリクエストされてもおかしくないような『金田一少年の事件簿』屈指の人気キャラの複製原画が当たっている人間がいた。おめでとう。
 どこかにチャネラー桜庭をリクエストした人間もいるのだろうか。


 で、複製原画が届いたのは今年の四月二十八日の事である。
 この日は、奇しくも「魔術列車殺人事件」において地獄の傀儡師からの予告状に記された事件の日から二十一年が経過した日である。
 わかりやすい言い方をするならば、ジェントル山神とノーブル由良間の命日だ。
 あの日、机の上に置いてある自分宛の封筒を開けた時、――こういう言い方は月並みだが――一瞬、何が起きたのかよくわからなかった。
 なぜかというと、金田一ファンの大多数は、もはや『金田一少年の事件簿』を読みすぎて、日常にあるあらゆるものが『金田一少年の事件簿』にしか見えなくなっているのである。
 ボールペンを持っただけで「ペンが心臓に刺さった!」を思い出して吹き出し、トイレに行くだけで毎回秘宝島殺人事件を思い出して佐伯航一郎の代わりに(あるいは高森ますみの代わりに)便座を下げておく事で精神的な余裕を保つ。
 人物名を見るとイニシャルがSKであるかそうでないかを必ず確認し、アメリカの存在を聞くだけで佐伯航一郎の伯父が頭を過る。
 末期は森羅万象あらゆる物がさとうふみやの画風で見えてしまい、目が覚めている時は勿論、眠っている時でさえ金田一少年の事件簿の事しか考えなくなる。
 つまり、封筒の中身を開けて『金田一少年の事件簿』の複製原画が入っていたとしても、それは講談社からの「金田一ロワをこれ以上書き続けたら訴える」みたいな内容の手紙がたまたま『金田一少年の事件簿』に見えていた可能性が高いと考えても違和感がないという事だ。

 しかし、なんと複製原画はマジで当たっていた。
 自慢じゃないが、複製原画が当たっていた。
 いやあ、応募して良かった。当たって良かった。毎週マガジン買うようになって良かった。
 自慢ではないが。





 ――――かくして、主催者からの放送は始まった。





『――おはようございます、六時になりました!
 リスナーの皆さん! 頃詩愛島にようこそ。
 私、美国礼奈がお送りする「第一回放送」。今日はリクエストにバンバン応えてメールもファックスもいっぱい読んじゃおうかな?』


429 : 第一回放送殺人事件(ご報告が遅れましたが複製原画が当たりました) :2017/06/14(水) 00:30:23 qErOamB.0





 美国礼奈――そう名乗った人物の放送が島内でにスピーカーを通じて響き渡る。
 主催者側と参加者側でコミュニケーションを円滑にする為、このバトルロワイアルの放送では島内の参加者がメールで送った曲やお便りを放送で流してくれるシステムになっているのだ。
 これにより、殺し合いを強要する主催者と、殺し合いを半強制されている参加者との間の溝が縮まることが狙いだ。
 また、曲やお便りが採用された参加者には抽選で追加の支給品がプレゼントされる。それ目的の参加者もいるのかもしれない。

 何より、このラジオ番組・『第一回放送』では、名鳥めぐみと美国礼奈が司会を務め、二人が再び安定期に入ったさとうふみやの作画でそれなりにかわいい事から、参加者からの人気も高い。
 対主催、マーダー問わず多くの参加者が島内のメールやファックスで彼女たちにリクエストを送っているらしい。
 人を殺したとはいえ何の罪もない彼女たちが主催サイドにいる理由はよくわからない。しかし、おそらく黒魔術による洗脳を受けている為か、ラジオパーソナリティがよっぽど好きな為だろう(そのあたりは特に掘り下げなくてもよい)。


『……さて、それじゃ今早速リクエスト届いたので、曲行っちゃおうかな?
 今日の一曲目は参加者のチャネラー桜庭さんのリクエストで、DEENの「ひとりじゃない」』


 と、そんな感じでDEENの名曲「ひとりじゃない」が放送を通じて会場に流れた。
 しかし、この会場の人間の多くは、「ひとりじゃない」という曲名を聞いて、堂本剛の「ひとりじゃない」を想像するのが自然なのではないだろうか?
 なぜ、チャネラー桜庭はあえてDEENの「ひとりじゃない」を流したのだろうか。

 そう、ご存知の通り、チャネラー桜庭は太っている。
 太っているという事は、当然オタクである。
 オタクという事は、漫画やアニメが好き。
 すなわち、ドラゴンボールが好き。
 ドラゴンボールが好きという事は、ドラゴンボールGTの主題歌であるDEENの「ひとりじゃない」をリクエストしてもおかしくないという事だ。

 マガジンじゃ一度死んだら生き返れないんだぞ!
 そんな曲が流れてから、八分ほどトークしているうちに、次のリクエストが参加者の携帯電話か何かから発されたようだ。
 今度は、宇多田ヒカルの『COLORS』。これは、別にどうでもいい。


『それでは次の曲です。不動高校三年生の――遠野英治さんのリクエストで、Mr.Childrenの「HERO」。
 どんな時も僕は君にとってのヒーローでありたい……そんな曲です』


 遠野がリクエストしたミスチルが流れる。
 そんなこんなで、参加者たちのリクエスト曲がいくつか放送で流れていった。
 ほかにも、様々なコーナーが展開される。
 たとえば、美国礼奈の高校時代トークなどだ。
 彼女の高校時代の話が笑いを交えながら語られる。暗い殺人事件の話題はあまりない。
 それというのも、彼女の出身校である秀央高校では、現在までの連載で二件程度しか殺人事件が発生しておらず、いずれも彼女の在学期間の出来事ではないからだ。
 秀央高校で発生した殺人事件といえば、『明智少年 最初の事件』と『高遠少年の事件簿』だが、『明智少年 最初の事件』は明智健悟が三年生の時に起きた彼の「最初の事件」なので、明智の先輩である美国はその場にいない。
 それからさらに時間が経過して、明智が大学二年になってから起きている『高遠少年の事件簿』の出来事は、彼女が音羽女子大で殺人事件を起こす話と前後している。
 まさか、あの高校が自分含め四名も殺人犯を輩出する事になるとは夢にも思っていないだろう。


『――というわけで、私の高校時代トークは以上でーす。意外とマジメだったんですよ?』


 そんなこんなで、ラジオが盛り上がりつつあったところで、今度はバトロワ恒例の死亡者発表が行われた。


430 : 第一回放送殺人事件(ご報告が遅れましたが複製原画が当たりました) :2017/06/14(水) 00:30:44 qErOamB.0


『それから、忘れてましたが主催側から、このバトルロワイアルでの現在までの死亡者を発表します。
 今回亡くなったのは、

 香取洋子さん
 霧島純平さん
 五塔蘭さん
 佐伯航一郎の伯父さん
 島津匠さん
 高槻鈴音さん
 高森ますみさん
 多岐川かほるさん
 出門章一さん
 遠間もえぎさん
 仁藤伸行さん
 ノーブル由良間さん
 冬部蒼介さん
 あと尾ノ上と矢森
 

 亡くなった方々、尾ノ上と矢森以外残念でしたね!

 実はこの中に高校時代の後輩らしき人がいました!
 すごくヤバいっていうか、普通に人とか殺してる人だったみたいです。
 なーんてね!

 ……ええと、じゃあもう一曲。最後のリクエストをかけちゃおうかな。
 ここまで特に何もしてないし登場もしてない参加者のダンデライオンさん。
 SMAPで「世界に一つだけの花」。これも名曲ですよね!』


 それでもまだ放送は続く。
 この放送の構成は、七十分間ほぼ美国が喋り続ける事によって成り立つ形になっているわけだ。
 七十分もかかる第一回放送を行った主催者は彼女が初めてだろう。



『長かった七十分ですけどお別れの時間がやって来ちゃいました。
 美国礼奈の「第一回放送」はいかがでしたか?

 では、あと三日間、がんばってこの殺し合いを続けて会員権を手に入れてくださいね!
 また五時間後に皆さんにお会いできるよう、願っております。

 この後、五時間のバトルロワイアルを挟んで次は一年生のキュートなコンビ鶴丸子&弥生の「爆笑本音トーク&第二回放送」。
 十二時からの放送です。

 それではバイバイ☆』



 放送は終わった。
 この放送の間、彼女たちが一人の人間を殺していた事など、誰も知る由もないだろう……。
 別に知らなくてもいいだろうし……。



【海堂理人(主催側)@学生明智健悟の事件簿 死亡】




【第一回放送の構成:

 トーク 8分
 曲① 2分(DEEN「ひとりじゃない」)
 トーク 8分
 曲② 2分(宇多田ヒカル「COLORS」)
 トーク 8分
 曲③ 2分半(Mr.Children「HERO」)
 トーク 7分30秒
 曲④ 2分(SPEED「Be My Love」)
 トーク 8分
 曲⑤ 2分(夏川りみ「涙そうそう」)
 トーク 8分
 曲⑥ 2分(ドラゴンアッシュ「ファンタジスタ」)
 トーク 7分
 曲⑦ 2分(SMAP「世界に一つだけの花」)
 トーク 1分 】



※主催者の中に、「美国礼奈、名鳥めぐみ、鶴丸子、弥生@学生明智健悟の事件簿」がいます。
※参加者の中に、「ダンデライオン@学生明智健悟の事件簿」がいます。


431 : ◆CKro7V0jEc :2017/06/14(水) 00:31:12 qErOamB.0
投下終了です。
複製原画当たりました。


432 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/09(金) 22:06:56 anx5CnCk0
投下します。


433 : 名無しさん :2018/03/09(金) 22:07:33 anx5CnCk0




 ――ダンデライオン。



 彼女は、第一回放送にてSMAPの「世界に一つだけの花」をリクエストした参加者だった。
 原作においてはその姿を現す事もなく、おそらくラジオのリスナーである事と「うちの大学」の一年生である事以外は何もわからない奇怪なキャラクターである。
 このうちの大学というのも、ラジオを行った「音羽山女子大学」の事なのか、はたまた、「うちの大学」なる架空の教育機関なのかは判然としていない。
 西東医大の内田朋宏さんや明智健悟と並び、「キャンパス・ミュージック学園祭スペシャル」を提供した事で有名だが、やはりそんな情報だけでは人物のパーソナリティはわからない。
 やはり謎尽くしの人物だった。
 つまり――それは、彼女の姿が半人半獣のクリーチャーのような人間であっても、まったくおかしくはないという事である。



 彼女はダンデライオンの名の通り、下半身が獅子となり、上半身は既に「世界に一つだけの花」をラジオでリクエストする以外の機能をほぼ失い、禍々しい狂気を伴っていた。
 両の乳を丸出しにしながらも恥じらう事なく吠えて参加者を狙う彼女は、もはや人間のそれには見えない。
 どこでどうやって生きてきたのかさえわからない。金田一の世界のどこに彼女を受け入れるキャパシティがあったのかわからない。
 だが、いるものはいるのである。仕方ない。
 鋭い爪と牙は、まさしく獲物を狩る事に特化した代物となっていた。これはもはや参加者最強に違いなかった。
 人間の中に、ひとりだけライオン同然のヤツがいるのである。
 え? ダンデライオンは英語でタンポポの事? 気にすんな。


「▂▂▅▆▆▂▅▆▂▅▆▇▇▇▇▇▅▆▆▆▇▇▇!!」


 ダンデライオンは吠える。
 己のリクエストが採用され、第一回放送で読み上げられた事実に歓喜している。
 世界で一つだけの花をリクエストする事こそ彼女の最後の人間としての理性。
 それが満たされた今、彼女は至上の喜びの中にいるに違いなかった。
 そして、何よりこの殺し合いにおいては、リクエストが採用された参加者は支給品を追加で支給される。

 それにより――彼女の手に、ある支給品が渡ったのだった。
 それを持つ限り、彼女は牛乳を飲み続けて健康になった人間よりも強いのである。







「私がこうしてクリーチャーに出くわしたのも天命かもしれんな……」

 そうつぶやいたのは甲田征作だった。
 なんとこの数時間渡って誰とも出会う事なく、見事にラジオにリクエストせしめた怪物――ダンデライオンを葬らんと、甲田さんは物陰から猟銃を構えていたのである。

「闘いたまえ! 私! ――」

 甲田さんの願いは一つ。
 無医村に病院を開業する為に必要な莫大な資金を手配する事。
 その為には人の心を捨てて、どんなクリーチャーも仕留めてみせようぞ。
 もはや怖い物など何もない。

「――くたばりたまえ、バケモノッッッ!!!!!!!!」

 そう叫ぶと、猟銃の弾丸は、確かにダンデライオンを狙って放たれた。
 あーあ、もう死んじゃったね。いくらダンデライオンでも銃で攻撃されたらひとたまりもないね。

「――ッ!!?」

 かに思われた。
 ダンデライオンへと到達した弾丸だったが、なんとこの魔獣は一瞬でそれに気づいて鋭い爪で、弾いてしまったのだ。

 暗殺をもくろんだ甲田さんだが、逆にダンデライオンに居場所を悟らせてしまったも同然だった。
 ピンチだ甲田さん。どうする甲田さん。
 この怪物を相手取る自信はあるかい? 甲田さん。


434 : 悪夢の死闘!甲田征作VSダンデライオン ◆CKro7V0jEc :2018/03/09(金) 22:08:12 anx5CnCk0




 ――ダンデライオン。



 彼女は、第一回放送にてSMAPの「世界に一つだけの花」をリクエストした参加者だった。
 原作においてはその姿を現す事もなく、おそらくラジオのリスナーである事と「うちの大学」の一年生である事以外は何もわからない奇怪なキャラクターである。
 このうちの大学というのも、ラジオを行った「音羽山女子大学」の事なのか、はたまた、「うちの大学」なる架空の教育機関なのかは判然としていない。
 西東医大の内田朋宏さんや明智健悟と並び、「キャンパス・ミュージック学園祭スペシャル」を提供した事で有名だが、やはりそんな情報だけでは人物のパーソナリティはわからない。
 やはり謎尽くしの人物だった。
 つまり――それは、彼女の姿が半人半獣のクリーチャーのような人間であっても、まったくおかしくはないという事である。



 彼女はダンデライオンの名の通り、下半身が獅子となり、上半身は既に「世界に一つだけの花」をラジオでリクエストする以外の機能をほぼ失い、禍々しい狂気を伴っていた。
 両の乳を丸出しにしながらも恥じらう事なく吠えて参加者を狙う彼女は、もはや人間のそれには見えない。
 どこでどうやって生きてきたのかさえわからない。金田一の世界のどこに彼女を受け入れるキャパシティがあったのかわからない。
 だが、いるものはいるのである。仕方ない。
 鋭い爪と牙は、まさしく獲物を狩る事に特化した代物となっていた。これはもはや参加者最強に違いなかった。
 人間の中に、ひとりだけライオン同然のヤツがいるのである。
 え? ダンデライオンは英語でタンポポの事? 気にすんな。


「▂▂▅▆▆▂▅▆▂▅▆▇▇▇▇▇▅▆▆▆▇▇▇!!」


 ダンデライオンは吠える。
 己のリクエストが採用され、第一回放送で読み上げられた事実に歓喜している。
 世界で一つだけの花をリクエストする事こそ彼女の最後の人間としての理性。
 それが満たされた今、彼女は至上の喜びの中にいるに違いなかった。
 そして、何よりこの殺し合いにおいては、リクエストが採用された参加者は支給品を追加で支給される。

 それにより――彼女の手に、ある支給品が渡ったのだった。
 それを持つ限り、彼女は牛乳を飲み続けて健康になった人間よりも強いのである。







「私がこうしてクリーチャーに出くわしたのも天命かもしれんな……」

 そうつぶやいたのは甲田征作だった。
 なんとこの数時間渡って誰とも出会う事なく、見事にラジオにリクエストせしめた怪物――ダンデライオンを葬らんと、甲田さんは物陰から猟銃を構えていたのである。

「闘いたまえ! 私! ――」

 甲田さんの願いは一つ。
 無医村に病院を開業する為に必要な莫大な資金を手配する事。
 その為には人の心を捨てて、どんなクリーチャーも仕留めてみせようぞ。
 もはや怖い物など何もない。

「――くたばりたまえ、バケモノッッッ!!!!!!!!」

 そう叫ぶと、猟銃の弾丸は、確かにダンデライオンを狙って放たれた。
 あーあ、もう死んじゃったね。いくらダンデライオンでも銃で攻撃されたらひとたまりもないね。

「――ッ!!?」

 かに思われた。
 ダンデライオンへと到達した弾丸だったが、なんとこの魔獣は一瞬でそれに気づいて鋭い爪で、弾いてしまったのだ。

 暗殺をもくろんだ甲田さんだが、逆にダンデライオンに居場所を悟らせてしまったも同然だった。
 ピンチだ甲田さん。どうする甲田さん。
 この怪物を相手取る自信はあるかい? 甲田さん。


435 : 悪夢の死闘!甲田征作VSダンデライオン ◆CKro7V0jEc :2018/03/09(金) 22:08:41 anx5CnCk0

「▂▂▅▆▆▂▅▆▂▅▆▇▇▇▇▇▅▆▆▆▇▇▇!!!!!!!!!!!!!」

 ダンデライオンは、初期の金田一の説教の如く怒りに身を任せて吠えた。
 当たり前だ。銃撃されて怒らない奴などいない。
 金田一少年も銃撃された際には「……ゆるせねえんだよ……!! てめ〜だけは」と説教を始めたではないか。
 それと同じ事だ。
 ダンデライオンもまた、「……ゆるせねえんだよ……!! てめ〜だけは」という気持ちで甲田さんに説教を始めたいに違いない。
 しかし、ダンデライオンは「……ゆるせねえんだよ……!! てめ〜だけは」という説教を行うだけの言語能力がないのだ。
 つまり、彼女にできるのは獣の如く襲い掛かる事のみ――。

「▅▆▆▆▅▆▇▇▇▂▅▅▆▇▇▅▆▆▅!!!!!!!!!!」

 まぎれもなく甲田さんを殺ろうという殺意を瞳に滾らせ、獅子の如きスピードで甲田さんに肉薄する。
 それはまさしく、回避不能な――金田一に説教された犯人が警察にも金田一にも静止されぬ間に自殺するような、一瞬の出来事である。

「▂▅▆▇▇▇▇▇▅▆▆!!!」

 そして、驚くなかれ、このダンデライオンは大学一年生である。
 一般的な大学生に出来る事といえば、授業をサボってうまく単位を貰うノウハウを得る事くらい。
 このダンデライオンは違う。
 ジャングルで生き残る為にあらゆる手段を用いて勘を高めて、時にその能力を殺しに利用してきた。
 もはや人間としての機能など、「世界に一つだけの花」をリクエストする事くらいしか残ってはいない。

 ……いや、待て。
 そう考えてみると、これはダンデライオンが凄いという話ではないかもしれない。
 単純にダンデライオンには一般的な大学生に出来ない事が出来るというだけで、普通の大学生のように単位を取る事はできない。だから、もしかすると留年し続けて一年生なのかもしれない。
 ダンデライオンに出来ない事が出来る大学生たちも凄いといえば凄い。ダンデライオンからすれば羨ましい事だろう。
 みんな違ってみんな凄い。

 私にできてあなたにできないことがあり、あなたにできて私にできないこともあります。力を合わせれば、素晴らしいことができるでしょう。
 これはマザー・テレサの言葉だ。

「くっ!!」

 その理屈で言うと、勿論、甲田さんも負けてはいないわけだ。
 甲田さんが次に取り出したのは、ツルハシである。
 天草財宝伝説で使われたあのツルハシ。接近戦ならばむしろ猟銃よりかツルハシが有効だ。
 それを考える事が甲田さんには出来る。
 向かい来るダンデライオンへと向けて横凪ぎにツルハシの一撃!!



「ヒャッハァァァァァァ!!!!!! 死んでしまうがいいわ!!!!!!!!!!」



 それはダンデライオンの首元へと暴力的に叩きつけられた――!!!!!!!!!!!









436 : 悪夢の死闘!甲田征作VSダンデライオン ◆CKro7V0jEc :2018/03/09(金) 22:09:04 anx5CnCk0
 


 最後に立っていたのは、甲田さんだった。

 ……そう。
 いくらダンデライオンが化け物の如き容姿だからといって、ダンデライオンは人間である。
 首筋をツルハシで叩きつけられて生きている人間はあまりいない。
 大きなダメージに震えて倒れ、ピクピクと動くダンデライオンの身体に、甲田さんは何度となくツルハシを叩き込み、ついにダンデライオンが動く事はなくなってしまった。
 血しぶきを浴びた甲田さんは、満足気に勝者として立っていた。

「私が殺した少女です……」

 あまりにあっけない幕切れだった。
 それはあまりにダンデライオンを神格化しすぎたがゆえの錯覚だったが、ダンデライオンが勝つと誰しもが信じていた。

 しかし、甲田さんだって接近戦は得意である。
 なぜなら、かつて彼はボートの上で、小泉螢子の接近してくる腕を振り払い、突き飛ばしたのだから。
 こうして自分に近づいてくるものを振り払う事くらい、わけはない。

 たとえそれが、半人半獣の怪物であったとしても理屈はあまり変わらないだろう。
 押し寄せてくるパワーを受け流し、冷酷に振り払うのみ。
 さすればあらゆるものを殺せる。
 神でさえも。

「――なんだこれは」

 ダンデライオンの既に動かない巨体の上に座りながら遺品を整理していた甲田さんは、ふとあるものに気づいた。
 どれか使えるモノがあるかもしれないと思っての事である。
 そして、彼は見つけたのだった。
 それを見た瞬間、甲田さんの顔が悦びに歪む。



「いいじゃないか、これ」




 彼の手にあるのは、すべての人体を一瞬で粉々に破壊できる最終兵器――――――檜山ボムである。





【ダンデライオン@学生明智健悟の事件簿 死亡】



【一日目/朝/そのへん】


【甲田征作@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、精神不安定、六角村症候群
[装備]大広間に並べられていた猟銃@秘宝島殺人事件、ツルハシ@天草財宝伝説殺人事件、檜山ボム@墓場島殺人事件
[所持品]基本支給品一式書×2、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:無医村に病院を開業する為に殺し合いに乗る。
1:過ぎてしまった事をいくら悩んでも仕方ない。それより未来に向けて努力をしよう。
 (略:殺しちゃっても、まあ後々がんばればいいよね)
2:ええどうもスミマせん――……
 (略:罪の意識はそこそこあるかもしれない)
[備考]
※参戦時期は、「闘いたまえ」とか金田一を激励したあたり。
※さっきまで六角村にいたのと、香山が二度死んだのと、九条がなんやかんやで裏切ったのとが原因なのか、頭がいかれました。
※大広間に並べられていた猟銃は八つあるので、八人までなら支給していいんじゃないかと思いますがいかがでしょう。





【檜山ボム@墓場島殺人事件】
投げれば無条件に参加者を大量虐殺できる手製の爆弾。
今回は主催者側に檜山達之がいるらしく、第一回放送で歌をリクエストした参加者全員に新しく支給されるようになった。
他にも実銃同然の威力を持つ檜山エアガンなど、他の殺人犯があまりやってこなかった「兵器製造」を当たり前に行う檜山の自信作たちが支給される。

というわけで、主催側に檜山がいます。


437 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/09(金) 22:11:14 anx5CnCk0
投下終了です。
間違えて二回同じ箇所を投下してしまいましたが、abemaTVでもこの間金田一少年が終わったら金田一少年がまた1話から始まったので、そういうものだと思って許してください。


438 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:26:39 wFEwbp5U0
投下します。


439 : 今のマガジンなら袋とじ ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:28:26 wFEwbp5U0



 背氷村から逃れた冬木ウメを待っていたのは、第一回放送という名のラジオが始まった。
 告げられるのは一時間にわたる暇つぶしのような歌番組と死者の名前である。
 一時間ちゃんと聞き続けた奴らの忍耐力を舐めてはいけない。よほどの暇人か音楽マニアだろう。
 なんと一時間かけても実のある情報が皆無で、何かあると思って聞き続ければ聞き続けるだけ損な放送である。

 ウメはそれでも聞き続けた。
 老人なので耳が遠く、放送の内容があまりわからなかったが、とりあえず歌が流れているのと十五人死んだらしい事をしっかり把握していた。
 そして、叫んだ。

「祟りじゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 実感として、結構死んだと思う。
 六時間で十五人も死んだのである。身の回りで六時間に十五人死ぬ出来事に遭遇した事があるだろうか。
 確かに呪い的でもあるし祟り的でもある。

 しかしながら、世界ベースで考えると一秒間に二人死んでいるらしい。
 つまり、六時間で、結構いっぱい死ぬ計算だ。
 それを考えれば、大した話ではないかもしれない。たまたまこの島でそのうち十五人死んだだけである。

「世界で毎秒二人死ぬのも柊兼春さまの祟りじゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

 それでも、ウメは祟りを信じる。
 ヒーローが自分を信じて戦うように、彼女は熱く祟りを信じ続けるのである。
 祟りを信じ続ける事こそが、彼女の誇り。
 彼女を信じ続ける事こそが、祟りの誇り。
 彼女は叫びながら歩き続けた。







 ……そして、冬木ウメはふらふらと歩いて、そのまま不動芸術高校に辿り着いていた。



 そう、ここは、映画研究会を舞台にした連続殺人事件が繰り広げられた忌まわしき地である。
 勿論、冬木ウメは、映画撮影などに使われている事を知らなかった。
 不動芸術高校など知る由もないし、彼女は映画なども見ないだろう。
 まあ、映画撮影などを行える場所という事はそれなりに映画の撮影機材などもそろっているし、良い画の撮れる場所でもある。

 そういうところは大概いるだけで気分が良い。
 ウメは、朝日に映えるこの校庭を散策していた。

「祟り〜♪ 祟り〜♪ 祟りりり〜ん♪」

 ウメが嬉々として歩いていると、ヤクザっぽい男が立っていた。AVの撮影だったのだ。
 逃げ出すこともできずに、無理やりアダルトビデオに出ることになってからは、転落の一路だった。
 ヤクザの女にもなった。すぐに嫌気がさして逃げ出し就職したが、職場の男たちにAVに出ていたことがばれて、いられなくなる。転職につぐ転職。結局、今は池袋西口の繁華街でファッション・マッサージ嬢として働いているのだ。
 子供は、二度堕ろした。
 生きている世界が世界だけに、ろくな男が寄ってこない。だから幸せになれないのだと、いろいろなカルチャー・スクール、専門学校などにも通った。
 何をやっても長続きがしない。気がつくと、島に入ってから丸三年が過ぎていた。
 興味の対象が変わりすぎる、と昔の友達に言われて、それまでの自分を変えるつもりではじめたのが、パソコンだった。
 とりあえずはじめるだけでも、三十万円以上かかった。これなら、簡単にはやめられない。そう思って、これを選んだのだ
 以前勤めた会社で、基礎的なことは学んでいたので、すぐにパソコン通信までは入っていけた。そこから先はなかなか進めなかったが、パソコン通信だけえも充分に元を取った気になれた。
 そこには、自分の過去や現在から解き放たれた、自由なフロンティアが広がっていたのだ。





 ――――という人生を送りかねない事態が、ウメの身に振りかかったのだった。





 先述した通り、ヤクザっぽい男が目の前にいたのだ。
 この男、ヤクザっぽい男というか、ヤクザだった。
 実は電脳山荘を舞台にした連続殺人で<ぱとりしあ>を強姦同然にAVに出演させた悪いやつだった。

 超ブラック企業といい、ヤクザといい、体罰教師といい、電脳山荘の闇は深い。現代社会の暗黒面の縮図である。
 金田一少年の事件簿を通り越して、もはや、そこにあるのは闇金ウシジマくんの世界だ。
 そんな彼が目の前の弱弱しい老人に何もしないわけがなかった。

「ワレコラァ!!! オラ!! ンダゴルァ!!! コラワレェッ!!! なんじゃワレコラッ!!!!!!!」

 ヤクザっぽい男は、とりあえずウメという貴重な女優を、脅して監禁した。
 ここからがウメにとって、本当の祟りの始まりである。






440 : 今のマガジンなら袋とじ ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:29:35 wFEwbp5U0




 ヤクザっぽい男は、殺し合いにおいてもAVを撮影する事に命をかけていた。
 パンチパーマ。鋭い目つき。グラサン。頬に傷。えげつない体格。高そうな時計。一目見てわかる高いスーツ。肩を揺らしながら歩く姿。
 どう見てもヤクザである。その外見がヤクザっぽかったゆえに、彼はヤクザとしての生き方しかできないのだ。

 哺乳瓶の代わりにハジキを吸っていた幼少期、小学校の夏休みの自由研究や自由工作では生まれて初めてAVを撮影し、中学校からは既に撮影会社を創立。
 高校に行かずにフランス外人部隊に入隊。弾丸飛び交う戦地でもAVを撮った。
 そんな彼も、今は東京で「モデルになれる」と人を騙してAVに無理やり出演させるクズ野郎になっている。
 時としてそれは男をも対象にするし、幼い子供も、老人も、獣も、機械も、酸素でさえも彼の前ではAVの道具だった。
 とりあえず性産業の負の側面を切り取って唐辛子を振りかけたようなとんでもないヤツであった。
 そんな奴に目をつけられてしまったのだから、<ぱとりしあ>はべらぼうに運が悪かったと言えよう。

 とにかく、どんな手段を駆使しても女優を探し出し、どんなやり口を使ってでも出演させ、自分の納得のいく作品を撮る。
 それがAV男優兼監督の――ヤクザっぽい男の生き様だ。

「エェ!? ワレコラァッ!!! なんだよその目はァッ!!!? エエッ!? 落とし前やぞゴルァッ!!!!」

 不動芸術高校映画研究会の部室。
 ここで、ヤクザっぽい男は、流暢な広島弁で的場勇一郎と冬木ウメを脅していた。
 ウメだけでなく、的場もまた不動高校から連れ去られ、ヤクザっぽい男に監禁を受けていたのだ。
 勿論、目的はヤクザっぽい男がここで撮影するAVの男優となってもらう為だった。

 一人でしてもらっても良かったのだが、丁度女優も見つかったのだ。
 ここからはともさかりえの楽曲の如く、「ふたり」でやってもらう。

「た……祟りじゃ……首狩り武者じゃ……」
「ひいいい……ゆるしてくれぇヤクザっぽい男くん……!! 私が悪かった! ゆるしてくれぇ〜〜〜〜」

 二人はかなり困惑しつつも、ひどくおびえていた。
 当たり前である見るからにヤクザだとわかるヤクザっぽい男が、ヤクザのような口調で脅してきているのである。
 まともな人間なら怖い。発狂してもおかしくないだろう。
 実際、二人とも殺人事件が起きたかのように――あるいは殺人犯だとバレたかのように取り乱している。

「あぁん!? オラァッ!! ワレェッ!!! よォッ!!!!!!!!!(バァン!!!!)」

 机を思いっきりバァンと叩くヤクザっぽい男。二人は、今度は黙って歯をガタガタ言わせながらかなりおびえていた。
 そういえば、小説「岩窟王」の主人公は極限状態で白髪になっていた。
 かのフランス王妃・マリー・アントワネットも投獄され、短期間で金髪が白髪に変わったという。
 二人は、同様に恐怖のあまり白髪になっていた。……あ、元からか! てへへ。

「わかってんのかオラァッ!? アァッ!!!!!?」

 そして、いまヤクザっぽい男の言ったとおり、ウメと的場は脱ぐ様子を見せず、撮影は滞っていた。
 相手が相手なのであまり乗り気になれないともいえる。だって、ウメと的場だよ? 見たい?
 絵面があんまりにもあんまりである。



 ――しかし、ヤクザっぽい男はプロだ。こんな状況だって何度も見てきた。
 彼はどうあっても見つけた参加者でのAV撮影を決行する予定だった。
 そして、AV撮影が始まったら、その男優や女優の人生を切り取るがごとく、ベストマッチなコンセプトで映像を作る自信がある。





 たとえば。


441 : 今のマガジンなら袋とじ ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:30:15 wFEwbp5U0





 これがもし、早乙女涼子が出演するAVだったらこんなコンセプトだっただろうか。

・硫酸かけてゴメンナサイ!私の顔にもみんなの精●ぶっかけて! 都内私立高校を中退した元演劇部女子高生が贖罪の為にAVデビュー! 老人ホームで性のボランティア、後輩の墓前で4時間土下座S●X、母校の制服を着ておフ●ラ座姦!それでも天国にイカされる!?

・硫酸かけてゴメンナサイ!みん精ファイル2 〜あれから一年、18歳になった後輩たちを連れて、新たなる・贖罪AV出演!〜 痴漢地獄Fカップロリ巨乳っ子、濡れ透け正装S●Xメガネっ子、三人一緒に墓前強制レズH! 三人まとめて、地獄の強姦に焼かれよ……!

・硫酸かけてゴメンナサイ!みん精ファイル3 〜自殺したはずの後輩は生きていた!?元演劇部三人で第三のAV出演!〜 撮影中に後輩出現ドッキリ、惨めな猥褻ラクガキ全裸で三人が涙の土下座、後輩の目の前で強制オ●ニー! 今夜の舞台のマ●毛いじリート役はクリ●リスティーンの涼子ちゃんだ!

・硫酸かけてゴメンナサイ!みん精ファイル4 〜涼子ちゃんたち引退記念、オフ●ラ座姦・最後の作品〜 舞台の上でファンに囲まれ『お通じ』解禁、男子トイレでは便器から首だけ出して性処理、最後は水責めバスタブ生中●しS●X! 三人とも女優になれてよかったね! 高速ピストン・クルー!?





 これがもし、綾辻真理奈が出演するAVだったらこんなコンセプトだっただろうか。

・テレビ局のタイムキーパーが射精キーパーに転身しちゃいました!〜アソコとアソコの架け橋をドロドロに溶かしてくれちゃう20歳〜 女は3つの口を持つ!! タマタマをたくさん握って幸せS●Xだ!! ガチガチに凍った背氷マラで突かれまくって、絶頂と火照りのブリザードが吹き荒れる!?

・射精キーパーまりな 〜イキ夜射ええケツ殺チン事件〜 脱衣所でオ●ニーしていた射精キーパーまりなを盗撮ドッキリ! だが、彼女はノリノリで射精キーパーの仕事を開始! ワゴン車に連れ込まれカーS●X! まりなのテクなら、射精に20分かかる遅漏のキミも2分に1回発射できちゃう!?





 これがもし、巽紫乃が出演するAVだったらこんなコンセプトだっただろうか。

・獣の村の未亡人〜征●くん、ごめんなさい!岐●県の山奥で見つけた美熟女をスカウトしてAV出演させてちゃいました!〜 高校時代のセーラー服でコスプレオ●ニー!前妻・綾子とまさかの貝合わせ扉のマ●コ!?あまりのエロさに男優たちのチ●ポも暴発しまくり! ヒダからクリまで舐め尽くして!

・獣の村の未亡人2〜岐●県の山奥で見つけた美熟女をもう一回AV出演させちゃいました!〜 今夜は『生●メ祭り』開催、大乱交!前妻・綾子とどんどん相手役をH交換しちゃいマス!脅威のまんぐり返しトリックで♂(オトコ)はみんな騙される!? クリにもカリにもムシャぶりついちゃう37歳!

・獣の村の母娘〜岐●県の山奥で見つけた熟女とその娘にAV共演してもらっちゃいました!〜 高校時代にいじめられていた紫乃さんが立場逆転、母娘丼羞恥レズいじめで綾子に復讐! 遂に開幕の母娘キャットファイト! 最後は三人で和解のレズS●X、柊兼春成仏必至の永久保存版!





 これがもし、桐江想子が出演するAVだったらこんなコンセプトだっただろうか。

・お金が欲しくてAVデビュー!?〜純情な田舎丸出し、アソコも丸出しのメイドの小娘編〜 楽団は朝礼で前から順にクリを犯された!さあお次は貝合わせ!二番の子のクリを五番の子のクリの右に並べてみてごらん!楽しいレズ夢の恥まり恥まり!

・お金が欲しくてAVデビュー!?〜純情な田舎丸出し、アソコも丸出しのメイドの小娘編〜2 私の意識が混濁ター!性交先生、私のお部屋、いっぱい覗いて?朝はノーブラサービス!ちょっとだけよ!下のスキマで挟んであげる!

・お金が欲しくてAVデビュー!?〜純情な田舎丸出し、アソコも丸出しのメイドの小娘編〜3 露出館のクインテット、いやん凌辱ゲーム!こんなチ●ポみたいな形の屋敷で使用人を抱えてお姫様みたいな性活だってできる!ハメ!ハメ!ハメよっ!!




 もし、このヤクザっぽい男が彼女たちでAVを撮影するのなら、それはこういうタイトルになるだろう。
 ヤクザっぽい男は、一瞬でその人物に適性なAVを企画する能力に長けている。それは、天性の直感であり、彼のIQ180もの頭脳が成せる技だった。それはAVを撮影する事のみにしか注がれなかったがゆえに、やり口が強引なのだが。
 とかく、的場とウメを見つけた時も、その適正にあったAVを考え出そうと考えていた。



 はたして、ヤクザっぽい男は、的場勇一郎と冬木ウメをどう捌こうというのか。 








442 : 今のマガジンなら袋とじ ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:30:39 wFEwbp5U0





「学園婆腐尻(ばばふしり)シリーズの始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!」



 ヤクザっぽい男は、自分の中に湧いたインスピレーションをすべて標準語で叫び出し、撮影に臨んだ。



「学園婆腐尻パート1!!!!!!!!!!!
 チ●ポ博士、悪夢の実験!! ポスターを剥がすと、壁に尻が隠されている!!
 製薬会社の感度100倍媚薬実験で生まれた恐怖の七不思議・壁尻老婆!!
 顔をあげろ的場!! こいつの前でもう一度イッてみろ!! 今宵はわが校の屹立祭だ!! う〜んいいねぇ!!」



「学園婆腐尻パート2!!!!!!!!!!!
 ここがあかずのS●X室だ!! この大きな鏡で自分の痴態をご覧なさい!!
 ロウソクだらけで性の儀式!! 見ろ、このオレ、的場勇一郎こそが包茎の魔術師だぜ!!!!!!!!!」



「学園婆腐尻パート3!!!!!!!!!!!
 物理教師が発明した時間の止まる腕時計!!
 スケベ物理教師が求めたのは、生徒でもなく女教師でもなく、老婆だった!!?
 七十歳新人女優・冬木ウメの鏡を使った一人レズ!!!!! 今宵のオイラは、彼女の隣でレズの番!!!!!!」








 ……。









 …………。








 …………………………。










*&bold{これがホントの大人版金田一ってね!!(激寒皇帝ペンギン)}










 ※撮影風景はお見苦しいのでカットします。








443 : 今のマガジンなら袋とじ ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:31:49 wFEwbp5U0



「――んだゴルルルァッ!!!!!!!!!!!!!!! ボケカスがぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ヤクザっぽい男は、すべての撮影を終えて、的場とウメを優しく解放していた。
 悪く言えば、用済みとも言う。
 何しろ、的場とウメにはこれ以上のポテンシャルはない。
 男優としても女優としても、ニッチ層に売れれば良いというレベルだろう。
 老婆のしわしわの尻に特化したマニア向けAV「学園婆腐尻」シリーズ三部作を三十分ほどで撮影終了したヤクザっぽい男は、至極満足気で去って行った。

「はぁ……はぁ……」

 必死に「祟りじゃ……祟りじゃ……」と唱えながら行為に及んでいたウメと、吐き気を堪えながら無理やり出演させられていた的場。
 いずれも阿鼻叫喚の地獄絵図だが、ヤクザっぽい男にはそれが「良い画」だったらしい。
 どうでもいい話だが。

「……」

 いま、二人はすさまじい姿で力なく寝そべっていた。もはや立ち上がる力もなく、すべてにおいて無気力である。
 ウメは、見苦しい形に破れたスクール水着を着てうつろな目を天井に向けたまま、「祟りじゃ……祟りじゃ……」とうわごとのように繰り返している。安定のウメさんだ。
 すっかり死にかけているようだ。

「オヴェェェェェェェェェェェェェェェェェェ……!!」

 ウメの学園婆腐尻を無理やり堪能させられた的場は嘔吐していた。
 撮影中に嘔吐するとヤクザっぽい男にボコボコにされ、怒鳴られ、無理やり撮影を続行させられる。
 そんな彼の中で色んな物が決壊した瞬間だった。
 やっとこの胃の中に残っていたモノを外に出せる。――それだけでもさぞ嬉しかろう。







 やがて、的場はすべてを吐き出して発狂し、その場で見えない何かに土下座を始めた。
 更には、「あばば」「あばば」「私は魔術師だ」「ウジムシどもが」「世界は解放される」「私こそがエル・カンターレだ」「クソ」「我に救いを」「ピーヒャラヒャララ」などと呟きながら一度着た服をすべて脱ぎ、切り裂く。
 最終的には、「フォーーーーー!!!!」と高い声で叫びながら廊下で唐突にシャトルランを始め、「見よ、これが私の平穏だ!!!!!!!!!」と高らかに宣言して階段の上からライダーキックしようとしたが、彼は空を飛ぶ事はできず、そのまま落下。
 首と頭部を階段の角に強打し、即死した。
 皮肉にも、青山ちひろを殺した時と同じ、階段から落ちての転落死であった。



 一方、冬木ウメは、数分後に起き上がって再び服を着た。
 そのまま、ここではないどこかへ歩き出すと、「祟りじゃ……祟りじゃ……」などと云いながら、どこかへと歩いて行く……。
 ヤクザっぽい男の行方は、誰も知らない。





【的場勇一郎@学園七不思議殺人事件 死亡】
※和泉さくらの髪を切った大ばさみ@怪盗紳士の殺人、基本支給品一式、ランダム支給品0〜1は不動芸術高校に放置されています。





【一日目/朝/不動芸術高校】

【冬木ウメ@飛騨からくり屋敷殺人事件】
[状態]錯乱気味、体力消費大
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2
[思考・行動]
基本:柊兼春様の怒りを鎮める。
1:兼春様が甦ったんじゃああああ。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも巽征丸死亡後。
※特に語られていませんが隠れていたので螢子に見つけられませんでした。
※尾ノ上殺害シーンを一部始終目撃しておりました。
※尾ノ上殺害は声を発する間もなくゲーム開始直後に起きたらしいです。
※『災厄の皇帝(エンペラー)』の正体が柊兼春、バトルロワイアル自体を柊兼春の祟りと思っています。
※老体に雪を軽装備で歩くとか自殺行為以外の何物でもないので背氷村から離れます(徒歩10分で抜けられる)。



【一日目/朝/不動芸術高校付近】

【ヤクザっぽい男@電脳山荘殺人事件】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、門脇靖浩の8ミリカメラ@銀幕の殺人鬼、ランダム支給品0〜2
[思考・行動]
基本:AVを撮影する
1:出演女優・出演俳優を探して無理やりAVに出演させる。
[備考]
※参戦時期は、<ぱとりしあ>をAVに出演させた直後。
※8ミリカメラに、「的場勇一郎×冬木ウメ」のAVを撮影しました。


444 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/12(月) 21:32:46 wFEwbp5U0
投下終了します。


445 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/14(水) 01:49:44 d35iXwxE0
なんかヤクザっぽい男の登場を以て参加者60名に達してたっぽいので、一旦参加者名簿はそろそろ〆ようかなと思います。
概ね60人としてたので、もしかしたらあと2人とか3人とかなら出せるかなーという気はしますけど、なんか出したい人とかいたらとりあえずなんか発言するなり声かけてください。
ちょっと待ってみて、全然反応や感想がなくて寂しいままだったらそのまま〆ます。

※最悪、その後で「これからこのロワをガンガン書いてみたいけど書きたいキャラいないからやっぱいいや」っていう方とかがいたら、
 「島にたまたま旅行に来てた」とかで書きたいキャラの参加者外としての登場もアリっちゃアリ(ただし禁止キャラはダメ)にしますけど、
 その場合は参加者として扱わず、まとまりそうになかったら檜山ボムとかで一掃する形になると思うのでご了承ください。


446 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/21(水) 18:58:09 sFd.ubvY0
しめきりますね(笑)。


447 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:08:30 IcCt/f/60
投下します。


448 : SNSより本スレに感想くれると嬉しいです ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:09:25 IcCt/f/60



【タイラント】

別名:暴君怪獣

身長:62メートル

体重:5万7千トン

出身地または出現地:海王星

特徴:シーゴラス、ベムスター、レッドキング、ハンザギラン、キングクラブの優れた部分が合体したもの。ウルトラ5兄弟を次々と倒した。

登場話:ウルトラマンタロウ第40話「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」


  ――小学館「円谷プロ怪獣図鑑」2013年3月11日第1刷より







 ……男はただ、血と硝煙の香りが漂う荒野で佇んでいた。

 アイスホッケーのマスクを被り、その下に好青年の美顔を持つ高校三年生ほどの青年。
 アベンジャーズがUSAの栄光の歴史であるのなら、ジェイソンはUSAの影の歴史。
 その影の歴史から名前をパクり、「俺こそが日本のジェイソンだ」と言わんばかりのジェイソンぶりを発揮する男。

 男の名は遠野英治。
 またの名を、殺人鬼ジェイソン。
 この殺し合い最強の復讐者(アベンジャー)だった。

 で、なんでこいつが血と硝煙の香りのする荒野に佇んでいるのか。
 その理由は、彼の口から伝えておこう。

「――俺は主催グループに檜山ボムを支給された」

 彼は続けた。

「だが、これをどう“使えば”いいのかは、どうしてもわからなかった」

 更に彼は続けた。





&bold(){「そこで俺は考えたのさ。だったら、とりあえず人のいるところに投げてみればいいってね!!」}





 結果、目の前の館が半壊し、中にいる人間がバラバラになったのであった。
 手製の爆弾の威力が想像以上に高かったと云えるだろう。
 まさか本当に人が死ぬとは……こんな物があったのなら、マジでSK集めた時にコレ欲しい。
 この爆弾があればそもそも殺人計画いらないじゃないか。
 遠野はそう思った。
 普通なら期せずして人を殺してしまった時は罪悪感に押しつぶされるところだが、ジェイソンマスクをしている彼は何百人殺しても罪悪感は湧かない。
 つまり、ここで遠野が罪悪感を抱く事はこれっぽっちもなかった。

「……こんな事になるとは思わなかったが、まあいい」

 彼はどこかへと歩みを続けた。



&color(red){【白神海人@オペラ座館第3の殺人 死亡】}
&color(red){【鬼城歩夢@亡霊校舎の殺人 死亡】}
&color(red){【霧谷凛@狐火流し殺人事件 死亡】}
&color(red){【雲沢夏樹@雪鬼伝説殺人事件 死亡】}

&color(red){【残り39人】}







449 : SNSより本スレに感想くれると嬉しいです ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:09:58 IcCt/f/60




「……マジかよ」

 アニメ化したらピンクの髪だった男――井沢研太郎がトイレから帰ってくると、そこは血と硝煙の匂いに満ちた荒野だった。
 蒲生屋敷の半分が焦土となっていたのである。
 檜山ボムが爆発したような轟音が鳴り響いていたので、何が起きたのかと心配していたが、井坂の目の前にはただ爆発でバラバラになった死体があるのみだった。
 想像以上にバラバラである。
 バラバラすぎて、具体的に書いてしまうとエグい。
 バラバラとしか言いようがなかった。

「きゃああああ」

 気づくと、心の中で七瀬美雪が叫んでいた。



 飛び散った肉片――
 壁や床にこびりついた血や髪の毛……
 胸の悪くなるような腐臭と火薬の臭いのたちこめる蒲生邸という名のジャングル……
 俺たちはいつか記録映画で観たむごたらしい戦場のただ中に迷い込んだような異様な感覚に眩暈を覚えた――……



「ぜ……全滅だ……!!」

 思わず、戦争に例えて彼はそう叫んでしまった。

 白神の腕。
 雲沢の胴体。
 鬼城の下半身。
 凛の頭。
 そして、米村のメガネだ。

 彼らのバラバラになった姿を見て、井沢は衝撃を受けていた。
 つい先ほどまでここに一緒にいたのに。
 もしかすれば、井沢もまたここで彼らとともに爆破されていたのかもしれないと思うと恐怖に駆られる。

 先ほど聞いた檜山ボムが爆発したような音……それはここで何かが爆発する音だったのだ。

 何故こんな事になっただろう。
 恨まれる事をした覚えはないし、開戦していた覚えもない。
 テロリストでもいるのだろうか?

 井沢は冷静になって考えた。

「小型の爆弾(ボム)……状況から考えておそらく手製だ。
 ――誰かが爆弾(ボム)を使ったんだ! 白神さんたちを殺すために――」

 井沢は一人でそう言いながら、彼らを黒魔術で蘇生する事に必死で思索を巡らせていた。
 ちょうど、彼らは体のパーツの各部位がキレイに残っている。
 それを繋ぎ合わせれば一人の人間になる事が明白な状況だ。

(イチかバチかだ……これは禁忌に触れる事……簡単には出来ない。
 だが、お前ならきっとこうやるだろ……!)

 心の中にいる「あいつ」を思い浮かべ、勝手に強い決意をした。
 すぐに蒲生邸でガムテープやトンカチ、釘やタコ糸を用意し、井沢は己のピンク髪を彼らの遺体に一本捧げる。
 幸いにも、井沢にはパプアニューギニアの呪術師の使う仮面が支給されていたのだ。それを被れば更に魔力は高まる。
 井沢の魔力ではせいぜい作れる人間は一人。それもかなりの魔力を使う事になってしまう。
 カーペットをくるくる巻いた後、彼は呪文を唱え始めた。

「オオ……エロイム・エッサイム エロイム・エッサイム 我は求め訴えたり――」

 彼らを生き返らせる為、呪文を唱え続ける井沢。
 信仰の光はこの世の悪を打ち砕く。

 井沢が描いた魔法陣から光が放たれ、ばらばらのパーツを継ぎ合わせて修繕された“人の形をしたそれ”を包み込んだ。
 黒魔術はとても便利だ。

「ァ……ァ…………ォ………ェ……………ァ……」

 井沢がガムテープや釘で創造した“人の形をしたそれ”は、やがて井沢の黒魔術によって起き上がり始めた。
 顔は凛で出来ていた。胴体は雲沢で頭は凛。腕は白神メガネは米村。
 かの者は常にひとり。略。

 おぞましい声をあげる、“人の形をしたそれ”を見て、井沢は歓喜した。

「やった! 米村が蘇った!」


450 : SNSより本スレに感想くれると嬉しいです ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:10:18 IcCt/f/60

 全員をそのままの形でよみがえらせる事はできなかったが、結果的に井沢の黒魔術は成功していた。
 キメラの如く、それぞれを組み合わせて一人の人間を作れた。
 そう、「異人館村殺人事件」で示唆されたバラバラのミイラの融合、そして、「学園七不思議殺人事件」では伏線のみに留められていた合体人間の蘇生術。
 何かの実験をしていたらしい「魔犬の森の殺人」の研究所や、「人喰い研究所殺人事件」に登場した緑川因子。
 サイキッカーの成れの果てとして手品師に落ちた「魔術列車殺人事件」のチャネラー桜庭や、近宮の蘇生を目指して人形を持ち歩いている長崎支配人。
 更には、謎の人物ダンデライオン。

 金田一ワールドの裏にあるオカルトの歴史を見れば、「人造人間」を作り出す実験が水面下で行われていたのは明らかだ。
 そして、あの邪宗館で天才として育てられた井沢。
 彼ら天才少年たちは、人造人間を作るべくして育てられたと考えればすべての説明がつく。
 高遠の親父もまた人造人間の制作を志した黒幕に違いない。
 井沢は「金田一少年の事件簿」の少年編のすべての伏線を回収するキーパーソンだったのだ。

 そんな時、“人の形をしたそれ”が突然、おぞましい声で喋り出した。

「ァァァァァァ…………………ァツ…………イヨ………………クル…………シィヨ…………」

「コロ……シテ…………コロ……シテ…………」

「ッェ…………ァァアゥ……………ゥァァァァアゥ…………」

 枯れた声でそう告げる“人の形をしたそれ”。
 いま蘇ったのに、なぜ死のうとするのだ。
 井沢は疑問に思った。

「コロシテ……ッェ……コロ…………シテ…………ァッ…………ァッェ………」

 黒魔術の苦労も知らずに、ひたすら呟く“人の形をしたそれ”に、耐えかねて井沢は手に持ったトンカチで“人の形をしたそれ”を殴りながら説教を始めてしまった。

「ナマイキいうんじゃねえよ! ガキのくせに!
 自分の不幸を他人のせいにするのはガキだって言ってんだよ!!」

 吐き気のような音が“人の形をしたそれ”の中から漏れた。
 灼熱のような痛みと、溺れるような苦しみ、血管を虫が這い続けるような痒み、目の前の物すべてが不愉快な映像に映り音声すべてが雑音となる感覚異常。
 そんなモノが常時身体の中で蠢き続ける煉獄の中にある、米村たちの意識。
 彼らは死と生の狭間にあり、この形をしている限り救われる事がない。
 だが、だからといって死んではいけない。
 死んでいい人間なんていないのだ。

「アナタ……ナニガ……ワカル…………コノ……クルシミ…………コノジゴク………………」

「あーわかんねーよ!! ぜんぜんわかんねーな!!
 俺はお前みたいに親を亡くした事もない……いや、やっぱりあるけど……でもこれだけは言える!!」

「コロ…………シテ…………」

「どんなにどん底でもどんな暗闇の中を生きててもやり直しのきかない人生はないんだ!!」

「……ェ……コ……ロシ……テ……オネ………………ガイ…………」

「何がなんでも死にゃあいいってもんじゃないんだよ!
 ――生きろよ!
 そうしてぶざまに生きる方がカッコつけて死ぬより100倍カッコよく見える時だってあるんだ!」

 ――そしてそれが井沢の最期の言葉になった。







 井沢の身体は、“人の形をしたそれ”の常軌を逸した腕力が放った手刀によって敢え無く死亡したのだった。
 縦半分に引き裂かれた井沢はもう二度と目を覚ます事はない。
 もう復讐を見る事もないし、もう殺人を犯す事もない。


「おかえり、研太郎……」


 だが、彼は帰れたのかもしれない。
 死んだ父や母や妹のいるあの場所へ……。



&color(red){【井沢研太郎@邪宗館殺人事件 死亡】}0
&color(red){【残り38人】}


451 : SNSより本スレに感想くれると嬉しいです ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:10:41 IcCt/f/60





【一日目/朝/不明】


【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]精神的ダメージ、右肘関節脱臼、返り血
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説(これをつけると罪悪感が消失する)、果物ナイフ@狐火流し殺人事件、光太郎が拾った(貰った?)サッカーボール@狐火流し殺人事件、檜山ボム(残数不明)@墓場島殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘殺人事件
[思考・行動]
基本:螢子は生きているかもしれない、だが三日待って九条をころす。
0:螢子を探す。優先して探す。
1:螢子は生きているかもしれない、だがSKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:螢子は生きているかもしれない、だが脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:螢子は生きているかもしれない、だが鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
4:螢子に危害を加える可能性のある参加者は全員殺す。凶悪犯は優先的に殺す。
5:六星と佐伯は明らかにやばいので積極的に殺していきたい。そのための戦力が欲しい。

[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。
※ジェイソンモードになると身体能力や回復能力、危険察知能力、その他もろもろがほんの少し上がります。



【一日目/朝/半壊した蒲生邸】

【井沢の黒魔術が生成した怪物(仮に「米村」と呼称する)】
[状態]ギェ………ァ………ゥ…………
[思考・行動]
基本:コロ……シテ…………
0:ィ………タ……ィヨ…………
0:ァ……ェァ………ォ……ェ…………
0:…………………
0:……ゥ………ァ………クル……シイ……
0:ァ…………ィェォ……………ェ…………
[備考]
※白神海人(両腕)、鬼城歩夢(下半身)、霧谷凛(頭)、雲沢夏樹(胴体)、米村(メガネ)の五名分の意識を持っています。この中で最も強く意識が残っているのは米村です。
※檜山ボムによる負傷や苦しみがまだ残っていますが、身体能力は黒魔術により大きく引き上げられており、無意識に目の前の物を殺傷できます。


452 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:12:27 IcCt/f/60
投下終了です。
wikiで読めばなんと文字が赤くなったり大きくなったりします(神トリック)。


453 : ◆CKro7V0jEc :2018/03/28(水) 18:15:45 IcCt/f/60
ちなみにもうwikiには収録しました。


454 : 名無しさん :2018/03/28(水) 19:52:32 uAMmn3s.0
投下お疲れ様です。
なんか凄まじいことになってきましたが応援してます。


455 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/09(月) 16:15:24 HHr1RdAc0
投下します。


456 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/09(月) 16:19:16 HHr1RdAc0




 ぽんやり東大美女・斧寺空美は、放送を聞いていた。
 先ほどまで彼女は、鯖木が刀丸猛人に追いかけられているのを確認していたが、正直鯖木はやはりどうでもよかった。
 というのも、彼女にとって必要なのは刀丸が持っているロープだった。
 考えてみると、あの状況で人を襲っている狂人からロープを取るというのはリスキーだった。
 そもそもロープなんてその辺のホームセンターで売っているわけで、たかがロープ欲しさに命を左右する選択など馬鹿らしい事この上ない。
 たとえば、貴方なら「金田一少年の事件簿27巻セット2000円が売られているが殺人犯が立てこもっているブックオフ」に金田一を買いに行くだろうか。

 否だ。
 金田一少年の事件簿は大概どのブックオフにでも売っている。わざわざ殺人鬼が立てこもっているブックオフに金田一を買いにはいかない。
 それを考えると、彼女がまったりと放送を聞いているのも当たり前の事だった。
 鯖木の尊い犠牲を助けないのも、まあ別に悪人ではないにせよ、ひときわ優しいわけでもないそらみちゃんの性格を考えれば致し方ない。
 か弱い女性の力で何が出来るというのだろう。



ちなみに放送からわかった情報は次の通りだ。

・いっぱい死んだ。

・美国礼奈は高校時代マジメだった。

・放送は一回に一時間ほどかかる。

・放送の最中に人が一人殺されている(推理すればわかる)。

・見捨てた鯖木は別に死んでない。



 そして、ここから導き出される結論は、早く脱出した方が良いという事だった。

 何故早く脱出した方が良いのかというと、普通に人が結構死んでいるからだ。
 先ほど鯖木が頑張って殺人鬼から逃げていた事からわかる通り、殺し合いに乗っている人間は膨大にいる。
 誰かが殺し合いに乗っているから十五人も死んでいるわけで、全員が体育館のように事故死で死んだとは思えない。
 それは流石にやべえ話である。ありえん。


(まあ、そうだとしたら呪いだったりして……なーんてね♪)


 ……そして、そんな環境下で三日も待つとか無理に決まっていた。
 常識である。
 殺し合いに何人巻き込まれているのかは正確には知らないが、体育館にいたのはだいたい六十人前後。
 僅か六時間で四分の一が死んだ事から考えて、殺し合いを積極的に行おうというちょっとやばい人が一定数集められているらしく、このままいけばいつ死んでもおかしくないのだった。
 そこから考えれば、彼女が「脱出」という手段を志している事は先見性のある行為だったと言えよう。
 具体的な脱出プランもめどがついているし、後は仲間さえいれば良いのだが……。







 そして、鯖木は、刀丸猛人から逃げていた。
 奇跡的にも、三時間逃げきっていた。
 ちなみに鯖木は次回登場時に死にます。


457 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/09(月) 16:19:42 HHr1RdAc0




【一日目/朝/背氷村@雪夜叉伝説殺人事件】

【斧寺空美@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]健康
[装備]萩元殺害時に使われた銃剣@墓場島殺人事件
[所持品]基本支給品一式、身代金2950万円(元は3000万円)@白銀に消えた身代金
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
1:頃詩哀島から二百メートル先に島を発見。
主催があの島にいると思われるので、そちらに渡る。
2:脱出プランを練り、より多くの人間を脱出プランに参加させる。
3:首輪を解除する。
4:ファントムの持っているロープが欲しい。
[備考]
※参戦時期は、「なーんてね♪」って言った後。
※脱出には、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーのようなものや、サーカスの軽業師、氷橋が必要だと考えています。
※このロワには首輪がないので、エア首輪解除をする予定です。
※ある程度参戦時期にばらつきがあることを思い付きました。
※鯖木のこれまでの動向、支給品をある程度把握しています。
※「それって売ってすぐお金に換えることできるかなー」という発言があるので案外お金にドライなところがあります。
※現在40万円赤字(斧寺目線)しているのでいずれ黒字にまで持っていくつもりです。



【一日目/朝/ロス】

【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]怒り、恐怖
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件、身代金50万円
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。
3:誰か助けて……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。
※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。
※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。
※刀丸猛人に襲われています。
※次回死にます。


【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]ファントム
[装備] オペラ座の怪人『ファントム』の仮面@オペラ座館殺人事件、コンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープ@首吊り学園殺人時間
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:ファントムになりきる。
0:この手で参加者を消していく。
1:順番は違うがジョゼフ・ビュッケを消す。
[備考]
※参戦時期は、逮捕された後。
※クリスティーン役(ヒロイン)がいれば浄化するかもしれません。
※妄想と現実の境目がありません。
※ファントムになりきっているので自分の名前が刀丸猛人という名前だということも役になりきっている間は理解していません。
※そもそも人と接することが出来ない人間らしい。
※鯖木を襲っています。


458 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/09(月) 16:20:00 HHr1RdAc0
投下終了です。
タイトルはwiki収録する時に考えます。


459 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:17:59 xlE/gBZs0
ただいまより、投下します。


460 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:18:54 xlE/gBZs0



 ――班目るりは、不動高校の体育館で再び目を覚ました。

 自分が何故こんなところにいるのかもわからず、るりはただひたすら周囲を見回していた。そこには、起きていたり眠っていたり、様々な形を取る数十名の人間の群れがあった。
 そうだ、先ほどまで自分は殺し合いに巻き込まれて、親しい人を失い、復讐に燃える激しい情動に押し流されていたばかりだった。
 それなのに何故、どうして、またここにいるのだろう。
 下着姿だったはずの衣服が再び、普段の着物に戻っている。
 何かがあったはずだ。何かが……。

「お姉さま……?」

 見回すと、そこには班目舘羽や班目揚羽の姿までもあった。二人とも、やはりとても目立つ服装なので、探し人としては嫌でも見つかる相手だった。
 二人の姉がどうしてこんなところにいるのか、るりはまた皆目見当もつかなかった。
 この二人は、そもそも殺し合いに参加などしていないはずなのに。

「るり……!」

 舘羽と揚羽が駆け寄った。
 周囲でも次々と人が目を覚ましていく。すっかり見慣れた光景で、るりは妙な既視感を覚えていた。
 それは、何か開放感があったというよりは、むしろ恐ろしい予感をるりに覚えさせた。
 また、次々と人が起き上がり、見覚えのある老人――山野教授が壇上で告げた。

「――今日、皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。皆さんには、殺し合いをしてもらいます」

 そう、それは単純な図式だった。
 あの殺し合いで参加者たちがそれぞれ別の時系列から殺し合いに参加させられたように、るりが黒死蝶として覚醒した直後を起点として、別の殺し合いに参加させられる事があってもおかしくはない。
 それは、参加者が異なる時系列から連れて来られるバトルロワイアルのシステム上、全くありえない話ではなかった。実は、前例もある。
 よって、「前の殺し合い」の途中からるりは強制連行され、今度はまた別の殺し合いに一から参加させ直される事となったのだ。

 ゲームのリスタート。
 それはあまりにも恐ろしい事で、るりを激しく戦慄させていた。
 地獄の時間は延長されていく……。







 ……気づけば、るりは不動高校の体育館で一人目を覚ましていた。
 周囲にはるりと同じように寝転ぶ人の姿があり、つい先ほど見たばかりの光景が繰り広げられていた。
 何故また、こうして殺し合いが発生しているのか、るりには理解のしようがなかった。
 彼らの前で、肥満体型のアメリカ人が、慣れない日本語で告げた。

「ニーハオ(訳:皆さんには殺し合いをしてもらいます)」

 そう、殺し合いをしていた筈のるりは、別の殺し合いに招かれ、その説明を聞いている最中に別の殺し合いに招かれる事になったのだ。
 殺し合いが殺し合いを呼び、殺し合いの最中に殺し合いが始まる。
 その螺旋の中で、るりはこれから何度となく戦わされる事になる。
 始まる事はあったが、終わる事はなかった。
 いつも途中で誰かに攫われ、やがて、また新しい殺し合いを一から始める事になっていく。






461 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:19:16 xlE/gBZs0



 それからまた、るりは不動高校の体育館にいた。
 気づけば、既にるりは何十年も、ひたすら殺し合いの最中に別の殺し合いに移っていた。
 どの殺し合いも決着がつく事はなく、殺し合いが終わる前に、るりは別の殺し合いの中に連行されていた。長い間、すべてそうだった。

 そして、持続する事のなかった殺し合いはそれから、殺し合い同士の殺し合いを生み出した。
 自らの開いた殺し合いを中断させた別の殺し合いに牙を剝き、あらゆるバトルロワイアルとバトルロワイアルがバトルロワイアルする事になったのだ。
 わかりやすく解説すると、まず折角準備して参加者を集めた殺し合いが、「別の殺し合い」というアクシデントによって中断や混乱を極める事になり、そのゲームの主催者は次のゲームの主催者を抗議する。
 相いれない二つのバトルロワイアルの主催者は、自らの兵力をすべて注ぎ込み、別のバトルロワイアルの主催者に戦争を仕掛けるようになったのだ。
 この主催者たちの以後百年に渡る深い闘争の遠因は、班目るりにあったと云える。
 しかし、彼女にとってそれは関係のない話だった。彼女の魅力が誘拐欲を引き立て、無為に殺し合いに参加させてしまう。

 班目緑は、殺し合いを行う為、八重島大学のクローン技術を用いて人為的に班目るりを創造して、この解決を試みた。
 合計六十体の班目るりを生産した緑は、自ら主催者としてるり同士を殺し合わせる実験を行い、その効力の是非によって、すべての主催者たちにるりを売り出し、それによって事態を収束させ、そうして得た資金で紫紋に復讐しようと考えたのだ。

「皆さんには殺し合いをしてもらいます」

 だが、そう緑が告げた瞬間に、六十人すべてのるりが別々の主催者によって誘拐され、全員が一斉にいなくなった。これによって、クローンるりはあらゆる世界線、あらゆる時間軸のバトルロワイアルに散らばり、世界は更なる混沌を極めた。
 これより後、クローンるりたちは、様々な末路を遂げる事となった。
 惨殺された者、解体された者、強姦された者、薬漬けにされた者……それは、世にも悍ましい人間の悪なる部分を、少女にぶつけた絶望の果てのような状況であった。
 そんな最中で、次々とクローンるりたちが潰えていく中で、オリジナルのるりは時にその恐ろしい様相を色の違う眼に映し、自分のクローンが過酷な目に遭うのを見送り、どういうわけか生きながらえた。

 るりクローンたちは、死後もまた殺し合いに参加させられ、弄ばれた。
 ある者は殺し合いを脱したというが、元の生活に還る事なく、どこかまた、別のおぞましい世界へと身を運ぶしかなかった。兵器として使われたとも、身売りしたともいわれている。
 剥製にして飾られたクローンるりもいると言う。
 兎角、それは決して良い在り方とはいえなかった。

 班目るりを巡る主催陣営たちの戦争は、やがて、自らが開いた殺し合いに他者の干渉を許さないシステムの構築に至った。
 緑川細胞を応用し、緑川繭を“煉獄の繭”の中へと放り込み、一切の外部干渉を途絶する「プロジェクトM」の進行は、ある世界の主催者に安穏の時を与えた。
 緑川繭の各生態部位に緑川細胞制御管(別名・WMC)を組み込み、“煉獄の繭”を起動させると、緑川繭の余命を犠牲にあらゆる異世界の黒魔術干渉をシャットダウンする事が出来る。それにより、主催者にとっては円滑な殺し合いが可能と感じられた。
 しかし、その非人道的な殺し合いの開戦方法に異を唱えた緑川研究所の面々により、適格者である繭が解放されてしまい、“煉獄の繭”はその機能を停止。
 るりを拉致する事が可能な状況が作られてしまった。

 そうこうしているうちに、オリジナルの班目るりが三十七歳になった。だが、その姿は依然、いたいけな少女のままであった。
 その頃もまだ、るりは終わらない殺し合いと殺し合いの中を行き来し、死なないからだのまま新しい殺し合いで参加者として生きていた。

 もはや生命の意味などわからなくなっていた。
 自分が元はどんな人間で、どんな生活をしていたのかさえ、るりの中で曖昧なものへと変わっていく。

 世界は、度重なる時空戦争によって生じた巨大なブラックホール「カオス」によって元の様相を失いつつあった。
 カオスの影響下では、あらゆる物理法則が乱れ、あらゆる時空が連結し、あらゆる概念は壊れた。文字は絵となり、絵は文字となる。
 るりはカオスにも負けなかった。

「行こう、チャネラー桜庭」


462 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:21:06 xlE/gBZs0

 誰もいない時空を彷徨い、かつての殺し合いに参加したという生き残りのチャネラー桜庭を従え、るりは新しい殺し合いの中をたくましく戦っていた。
 時には記憶を消され、時には記憶を弄られ、時にはまた別の時間軸の自分と向き合い、時には死に、時にはまた蘇って戦った。
 彼女は永久的に、誰かの手のもとで殺し合いに参加させられる運命にあった。

「皆さんには殺し合いをしてもらいます」

 その呪いの言葉を聞きながら、彼女は突き進んだ。
 もはや主催者などいないのかもしれなかった。何か自然的な力が、自動的に、そして永久的にるりを殺し合いに参加させ続けるのかもしれなかった。
 死ぬ事もなかったが、生きた瞬間など一度もない。
 主催者たちを倒そうという意志が、尚もるりの中には燃え上がっていた。
 何かの真実を突き止め、すべての諸悪の根源を知った時、るりはようやく十二歳の少女として生きられる気がした。

 そんなるりの想いとは裏腹に、主催者たちはるりを巡る戦争を更に強固で逃れられないものへと変えていった。
 何としても班目るりを手に入れようとする主催者たちは、あらゆる手を駆使した。
 何故彼女を狙っていたのかさえ、もはや主催者たちにはわからなかった。

「生きる事は戦いだよ」

 そんな言葉が、るりの胸を締め付ける。
 戦火の中で死んだ、ジャーナリストの北条アンヌの言葉だった。
 彼女はジャーナリストとして、この班目戦争の真相を追い、単身、バトルロワイアルの会場へとるりの救出に向かったのである。
 だが、その殺し合いにとっての違反行為を厳しく罰する主催者たちの思惑で、北条アンヌは目の前で銃殺され、そのままるりはまた別の殺し合いへと誘拐された。
 こんな痛み苦しみを何度味わった事だろう。
 大切な人間を何度殺されてきたかは知れない。

(殺し合いの目的は何?)

 それを、るりは考え続けた。
 何度か提示されたのは、この殺し合いの大本は、「『金田一教』と、『コナン教』という二つの宗教の中で、金田一教がコナン教に対して影響力を示すべく行った」という話だった。勿論、これは確定とは言えない。
 しかしながら、それに何故自分がまきこまれるのかが彼女にはわからず、何より自分がその渦中にいなければならない事がわからなかった。
 班目るりを巡る戦争は、激化していき、やがて全く関係のない世界まで飛び火していった。







「班目るりをどうすべきか」
「いっそ殺してしまおうか」
「その通りだ」
「いや、貴重な実験材料にそんな事はできない」
「なに、いざとなれば黒魔術で蘇生してしまえばいい」
「だが、井沢先生はもういない。どうすればいい」
「井沢先生の遺した黒魔術資料がある筈だ」
「幸いにも、米村も我が陣営の手にある」
「確かに、それならば米村を再解体し、彼の魔力をすべて吸収してるりに使えるな」
「だが、出来るのなら班目るりを殺したくはない。彼女は実に興味深い」
「HS(ハッピーサイエンス)財団の差し金か? あんなもの無視すれば良い」
「そうだ、どうせ詐欺師の集団だ」
「馬鹿を言え、そんな事を言ってしまえば今に地獄に落ちるぞ」
「そうだ、HS財団は常に我々を監視している」
「ふん、くだらない。二度と私の前であの集団の名前を口に出すな」
「だが、緑川細胞実験も奴らの仕組んだ事だろうと噂だぞ」
「緑川細胞の事件か? あんなのはプロパガンダだ。まだ真に受けているのか」
「しかし……」
「緑川細胞実験は史実だよ」
「根拠はあるのか」
「否定する材料もない」
「あんな絵空事をか」
「ええい、もういい。我々はもっと、真剣に班目るりをこの殺し合いに引き戻す策を考えなければならない。HS財団も緑川細胞も、今はどうでもいい事だろう」
「その通りだな。失礼。……して、班目るりもそうだが、魔法少女たちの件はどうする」







463 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:21:31 xlE/gBZs0



 ……そんな情勢の中で妥協案として提出された、班目るりの意識を分裂させる策も棄却され、主催者と主催者は更なる対立関係を煽った。
 やがて、高度な科学や黒魔術によって班目るりの所在が多くの主催者にとって不明になると、遂にはどの勢力が班目るりを保有しているのかという議論が始まり、主催者たちは疑心暗鬼になっていった。
 るり自身もまた、自分がどこにいるのかわからなくなっていた。
 バトルロワイアルそのものが立ちいかなくなっていき、すべての主催者がバトルロワイアルを中断、放棄した結果、彼らは経済的に苦境に喘ぎ、続々と自滅していった。







「私たちは魔法少女、いいえ、もっとありていに言えばプリキュアよ」

 ある時代のバトルロワイアルでは、班目るりの前には、三人の魔法少女――いや、プリキュアが立っていた。
 プリキュアに変身しているのは、巽もえぎ、兜霧子、辺見魔子の三名だ。
 巽もえぎがプリキュアであるのは、『金田一少年の小旅行』で、女児向けアニメマニアである事を暴露された逸話や、もえぎの声がプリキュアで聞いた事のある声である事実から考えれば、容易に想像がつく。
 実を言えば、『金田一少年の事件簿R』の女性犯人役には、プリキュアを演じた事のある声優が配役されやすいというジンクスが謳われている。それに即して言うならば、制作会社の都合もあり、一歩間違えば金田一の世界にプリキュアの妖精が現れ、この三名をプリキュアに選んでもおかしくはないという話だ。
 しかし、何故兜霧子と辺見魔子はプリキュアなのか。
 以下の理由が挙げられるだろう。

 兜霧子は、作中において一度たりとも台詞がない。
 よって、巽もえぎ=プリキュア理論が声優ネタを通して「アリ」と断定されるのならば、声のない彼女には無限の可能性があり、プリキュアであってもおかしくないと云えるからだ。
 では、辺見魔子は?
 ……そう、女の子は誰だってプリキュアになれるのである。辺見魔子がプリキュアであってもおかしくない。
 よって、この三人はプリキュアだった。
 プリキュアだったが、その時、世界情勢は救いようがないほど混乱していた。班目るりを巡る戦争は最終段階にきて、遂にアルマゲドンを起こしたのだ。







 ――そう、誰かが毒龍のスイッチを押してしまった。
 爆裂した核は、世界を焦がし、他の主催だけではなく自らまでも焼いていった。三名のプリキュアをもその炎に巻き込み、消し去った毒龍は、遂に世界の終わりを始める事となった。
 この出来事と、その後の余波によって、人類の人口は一億人まで減じる事となり、世界は滅亡に近づいていく。



 ……しかし、その渦中にあって、オリジナルの班目るりは尚も生存を続けていた。





【金田一少年の事件簿バトルロワイアル 完】








464 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:25:25 xlE/gBZs0



 しかし、物語は、まだ続いた。

「――思い出した」

 るりが不意にそう言ったのを、葉崎栞は驚いて聞いた。
 ここは、獄門塾の敷地内である。放送をすべて聞き届けた葉崎栞と連城久彦の横で、ただずっと茫然としていたるりは、その人形のように黙していた口を開いたのだ。
 その目には、自ずと涙がこぼれていた。

「るりは、ずっと殺し合いを見てきた。
 この世界が壊れるまで、ずっとみんな殺し合ってた……。
 このままじゃ、みんな死んじゃうかもしれない……。
 るりは、この殺し合いに来るまで、何度も何度も……今みたいな終わらない殺し合いの中にいた」

 ――――そう、殺し合いゲームの繰り返しは、悠久の時を超えて、るりを再び最初の殺し合いに還ってきていたのだ。

 彼女は、この殺し合いゲームの最中に別の殺し合いゲームに参加し、その最中に別の殺し合いゲームに参加し、その最中に別の殺し合いゲームに参加し、その最中に別の殺し合いゲームに参加し……やがて、その記憶を封じていた。
 それが、今はこうして元の場所にいる。彼女が一番最初に殺し合いをしたと思っていた筈の殺し合いこそが、本来ならば最も新しい世界――彼女の最後の殺し合いの場なのである。

 ……栞や連城に、同一の経験があるのかはわからない。
 すべての殺し合いが行き着く先にここがあるというのなら、
 しかし、二人は顔を見合わせ、やがてるりの話を聞き始めた。

 果たして、るりは本当にそんな経験を繰り返したのか、そんな過酷な状況の最中にあったのか、二人は信じる事は出来なかった。
 何しろ、かつてもこの殺し合いを経験し、そこから抜け出して別の殺し合いに行ったとするのなら、今この殺し合いは何だというのだろう。
 現実にいまだに殺し合いは続いているのだし、るりもここにいる。

「円環構造、この殺し合いはループしているのかもしれない……」

 るりは言った。
 るりは、かつてもそれまでの記憶を消され、「金田一と遊ぶ約束をした直後」まで記憶を戻されて、これと同じ殺し合いに参加した。
 そして、そのまままた新しい殺し合いに呼ばれて、その説明の最中に次の殺し合いに呼ばれた。
 それがまた、新しい殺し合いに呼ばれていき、世の中が滅亡するまで、るりは酷使された。
 その時のるりをこの殺し合いの主催者が連れてきて、記憶を消し、「金田一と遊ぶ約束をした直後」まで記憶を戻されて、またこの殺し合いへと参加したのだ。
 円の中を回るように、るりはずっとそれを繰り返してきたのかもしれない。



 ずっと……ずっと……。







「嘘……」

 栞は、そんな折に自らの支給品だったパソコンを用いて、『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』を読み進めていた。
 それは、るりの指示によるものだった。
 殺し合いのある段階において、るりはその『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』という存在を認知するに至った。そこには、内容が書いてあったのだ。

「見て。ここにあたしたちの事が全部、書いてある!」


465 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:26:01 xlE/gBZs0

 栞の驚き。
 金田一少年の事件簿バトルロワイアルとは何か。
 それは、すべてのるりの輪廻と魔法の鍵を握る重大なネット小説であった。
 彼女たちの行動すべてがこの『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』の中に記されており、それを覗くと彼女たちのこれまでの行動はおろか、心情まですべて書き連ねられていた。
 連城もそれを覗いた。
 俺ロワ・トキワ荘にて◆CKro7V0jEcが企画し、アットウィキに纏められたその資料こそ、『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』と題されたシナリオだった。

「金田一少年の事件簿バトルロワイアル……」

 そして、そのwikiから本スレに飛んだ彼女たちは、スクロールして驚くべき話が投下されている事に気づいてしまったのだ。



 ――それは、『Sick or Victory』というタイトルのつけられた話であった。



 この『Sick or Victory』には、まさに今の彼女たちの事が書かれていた。るりのこれまでの運命は勿論の事、その中の彼女たちの心情が全て赤裸々に書きうつされており、これから先の事まで書いてある。
 彼女たちは、それを恐る恐る読み進め、息を飲んだ。

 まさしく今、このタイミングでこの行を読んでいた栞は、気が狂いそうになるのを抑えた。
 今、この文章にはまさしく自分たちの運命が書き記されているわけだが、その内容はすべて的中している。
 指は震えている。歯がガタガタと音を立てている。
 ↑の文章もすっかりそのまま、栞の行動や心情と合致している。
 恐怖するしかなかった。恐怖さえも支配されているようだった。
 思わず、るりを見た。
 そして、画面を戻すと、そこに「るりを見た」と書いてあって震える。


















 それから……。



















 閑話休題。


466 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:26:50 xlE/gBZs0







































 栞は、妙に長い改行を、少し恐れながら文章をスクロールした。



















 葉桜栞、これは作者からの個人的なメッセージだ。











 お前は自分の口にピストルの先っぽを突っ込んで、脳天に向けて発射する事になる。


467 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:27:27 xlE/gBZs0


















 そんな悪戯なメッセージを読んだ栞は、恐怖に震えながらも、ピストルを握っていた。
 震える手で、ピストルを握り、首を必死で横に振る栞だったが、そのまま操られるようにしてピストルを口の中に突っ込んだ。そこにあるのは、逃れられない死だった。

「嫌……いや……」

 分泌された唾液が銃口をぬめらせた。口の外に唾液が漏れて垂れていく姿は、いささか官能的でさえあった。
 涙とともに自分がこれから死ぬ運命を否定したい栞だったが、次の瞬間、銃声が鳴り響いて、ついに自分の運命にピリオドを打ってしまった。
 血が一面に飛び散り、連城のマスクと、るりの下着を赤く染めた。



【葉桜栞@吸血桜殺人事件 死亡】
【残り42人】







 ――同じ頃、伊志田純の身体中の細胞が突然大爆発した。



【ピエロ左近寺@魔術列車殺人事件 死亡】
【伊志田純@不動高校学園祭殺人事件 死亡】
【残り40人】







 檜山爆弾が次々と人を殺した。



【神小路陸@狐火流し殺人事件 死亡】
【鐘本あかり@狐火流し殺人事件 死亡】
【チャネラー桜庭@魔術列車殺人事件 死亡】
【近宮玲子@魔術列車殺人事件 死亡】
【美咲蓮花@薔薇十字館殺人事件 死亡】
【残り21人】






468 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:28:54 xlE/gBZs0



 鯖木は逃げそこなって、刀丸に殺されて死んだ。
 だが、刀丸も自責の念で自害した。



【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件 死亡】
【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件 死亡】
【残り6人】







 文章が、人を殺していく。
 参加者たちを次々と理不尽に。
 それは殺し合いを終わらせる為の大量虐殺。
 すべては、るりが望んだ事だった。

「ごめんね、みんな」

 班目るりは、金田一ロワの書き手になっていった。
 ロワを終わらせる為の最後の手段として、この方法を選んだのだった。
 自らが書き手となってバトルロワイアルを開始し、その運命を書き換える事で異世界に干渉を起こす。彼女の力は、殺し合いの運命に干渉する事を可能とした。

 そうだ。最初からこうすれば良かったのだ。
 文章を書くだけでどこかの可能性世界で人が死んでいき、バトルロワイアルが始まっては終わる。始まりは終わり、終わりは始まる。生きるが死んで、死ぬが生きる。
 彼女が巻き込まれた金田一少年の事件簿バトルロワイアル、その始まりを終わらせる為には、巻き込まれた彼女が巻き込んだ『災厄の皇帝(エンペラー)』になって、このプログラムを文章で書き替えて終わらせる事だ。
 檜山ボムの登場と種明かしによって、次々と参加者が死んでいった。
 連続して、るりはひたすらに参加者を雑に殺すSSを投下しまくった。
 そう、ただ一人、班目るりだけが残るように展開を調整しながら。



 ……だが、そんなるりのおかっぱ頭に向けて、背後から銃が付きつけられていた。



「……え?」

 後頭部に押し付けられているその固い感触に、るりは恐怖と絶望を感じていた。
 それは紛れもなく、何者かがるりを殺す為に向けた拳銃の感触だった。
 振り向こうとしたが、それはあまりに怖かった。

「るりちゃん、あなたはこの話の作者にはなれないわ。だってこの話の作者はね――――私だもの」

 そして、最後に生き残っていた筈のるりの後頭部は、弾丸によって貫かれ、優勝者は決まった。
 ……そこにいたのは、死んだはずの五塔蘭だった。



【班目るり@黒死蝶殺人事件 死亡】
【残り1人】







 五塔は、とにかくただひたすらに若さを求めていた。
 くたびれていく自分の身体に、若き日の情熱と艶を得て、若かりし頃に叶わなかったあらゆる事を再び叶える事を悲願としていた。
 その為に若い少女の血を欲していた。


469 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:29:24 xlE/gBZs0

 五塔は、その場ですべての衣服を脱ぎ捨て、全裸となると、るりの遺体もまた脱がせた。うつろな瞳のままに、自分が何故死んだのかさえもわからないるりの身体を持ち上げ、不敵な笑みを浮かべると、五塔は嗤った。
 血を受けるには幼すぎる気もするが、彼女の血を浴びればもう一度若返る事ができるかもしれない。五塔は、平坦なるりの身体を貪り始めた。



【金田一少年の事件簿バトルロワイアル 完】






470 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:31:55 xlE/gBZs0



「――――んだゴラァ? ブッ殺すぞ?(訳:といった内容のAVの企画なのですが、どうですかね? 売れると思いますか?)」

 ここはヤクザっぽい男が勤めているアダルトビデオメーカーだった。
 ここまでの金田一ロワの物語はすべて、このヤクザっぽい男が企画したアダルトビデオの第一章にあたるシナリオなのである。
 このビデオにおいて肝心な場面は、ラストの班目るりと五塔蘭のカラミ、疑似ロリ屍姦にあたるわけだが、この場面に合う女優を探していたのだった。
 つまるところ、熟女系の女優と、ロリータ系の女優が必須となるわけだが、何せ十八歳未満の少女などAVに出せる筈もない。そんな事をしてしまえば、忽ち警察の厄介だ。
 それに、彼の夢は、映画を使って人を幸せにする事だった。小さな女の子をこんな業界に巻き込むわけにはいかないと切に思っている。
 今はAV業界にいるが、映画界で大きな映画を作りたいと思っている。
 彼の名は蔵沢明。後に、世界で大いに評価される映画監督となる男だったが、今はまだAV業界で働く、ただのヤクザっぽい男に過ぎなかった。

「あァン? テメェ何言っとんじゃ? こんな道理が通るとおもっとンのか!?(訳:うーん……面白いんだけどちょっと難解すぎるかな? でもまあ、エロシーンさえあれば商品として出していくつもりだし、君にもエロさえあれば良いって言っちゃったからね。偉い人たちには僕の方から掛け合って見るよ)」

 別のヤクザっぽい男が、そう言った。
 ヤクザっぽい男たちは、映画業界を目指すといっても、自由に色んなものが作れるこの世界も好きだった。
 この金田一ロワのような前例のない特異な作品だって誰も拒まない。
 それに、エロさえあれば予算も下りやすい。

「アァン……どげんちらかしちょっちゃァッ!! こちとらすんでばらに死なんずくらっとっちゃァッ!!!!」

 そう感謝の言葉を告げて頭を下げると、ヤクザっぽい男はその場を後にした。
 彼もしばらくはこの業界にいるつもりだ。
 仮に――仮にもし、彼が本当の五塔蘭や班目るりでAVを作れるのなら、どんな作品になっていただろう。



 おそらく、次のようなタイトルと内容になっていたのではないかと思われる。



【弄りん姦村インランババア 五塔蘭】

〜あらすじ〜

六角村の美熟女、五塔蘭はXX歳独身。
彼女の最近の悩みは、若くて美しかった頃の自分の姿がどんどん遠ざかって行ってしまう事。はりのある肌や白髪のない黒髪が懐かしい……。
そんな時、村の若い娘・若葉が結婚式の為に帰ってきた。
十七歳になった彼女の姿を見た五塔はすっかりドキドキ。若さに嫉妬して、すべてを蹂躙したいと考えるようになる。
エロザベート・バーユリ婦人の伝説を信じ、レズエッチすれば若返るのではないかと考えた五塔は、村の若い少女や村に来た少女を狙っていく。
兜霧子編、時田若葉編、七瀬美雪編、全三章 + PTA会長編(予定)。


471 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:32:26 xlE/gBZs0



【不死蝶伝説、班目るり1●歳〜×コキしちゃう撮影事件〜】

〜あらすじ〜

長野県某所のとある蝶屋敷に住む淫らめロリチャン……じゃなかった、班目るりちゃん。
なんと今回撮影に応じてくれたのは、なんとお父さんに無理やり出演をさせられたからなんだって。そう、この班目家のみなさんはお母さんもお姉さんも全員お父さんの言いなりで、我がメーカーにAV女優を提供してくれるお得意様なのだ!
今回デビューしたるりちゃんは、中●校に上がる前の1●歳。お母さんやお姉さんが必死に止めてたんだけど、遂にデビューする事になっちゃった。
初めての撮影に「死んじゃうかもしれない……」と涙ぐんでいたけど、大丈夫大丈夫、優しくヤッてあげるから問題ないよ。
……と言いつつ、ゴム取り、マン突きしまくる、ロリコンたち。
お毛がありませんね?お姫様。
るりちゃん、今度はお母さまやお姉さまたちと四人で仲良く出演できると良いですね?
シモンさん、次回作の際も女優提供待ってまーす^^



 ……と、こんな感じである。
 これらのアダルトビデオが高い売り上げを誇れる事は、熟女マニアとロリコンの絶対数からして間違いないが、あくまで『金田一少年の事件簿』は、かつて存在した名探偵を題材としたフィクション作品である。どこまでが実際にあった出来事なのかはわからず、この五塔蘭や班目るりといった人気キャラクターにしても実在の可否は疑われる。
 その人気は留まる事を知らず、Pixivには毎日のように膨大なR-18画像が描かれていき、パロロワ界隈では金田一ロワが乱立していずれも盛況している。AV業界も負けられなかった。彼女らの登場する金田一ロワを題材にしてAVを作りたいに決まっていたのだ。
 しかし、シナリオを完全オリジナルにした結果、あらゆるアイディアが浮かんでしまい、結果的に難解で前衛的な作品が生まれてしまった。
 それが今回の金田一ロワAVであった。



【金田一少年の事件簿バトルロワイアル 完】






472 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:34:02 xlE/gBZs0



 ……班目るりは、またも葉崎栞と連城久彦の前にいた。
 バトルロワイアルの円環の中から再びこの世界に現れ、そしてすべてを思い出した彼女は、すっかり青ざめた様子だった。
 かつて、遂に掴む事の出来なかった殺し合いの意味が、るりにはわかってしまったのだ。

「――あたしたち……本当はどこにもいないのかもしれない」

 それは、AVメーカーが作り上げた想像の企画であり、これから女優に演じられる事になる想像上のキャラクターだという事。
 自分たちは『金田一少年の事件簿』という漫画の中にしかいない架空の存在であり、『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』はヤクザっぽい男が創造したAVというオチの物語だった事。

 ……しかし、そうなると、自分たちの存在は何なのだろう。ここで意思を伴って会話し、殺し合う運命と戦っている自分たちは、ただ誰かの手によって性的に消費されるだけに過ぎない存在なのだろうか。
 それとも、『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』はもっと根本で誰かが作った物語に過ぎず、性的な消費すらされない、完全に無為な存在だったとするのなら――。

「……ねえ、あたしたち、本当にどこかにいるのかな。
 本当は、誰かが考えたお話の中にしかいないのかもしれない。
 その人の考えた通り、操られるようにして生きているのかもしれない」

 るりは、浜辺に腰掛けて、そんな不安を高森ますみに打ち明けていた。

「ねえ、るりちゃん。胡蝶の夢という話を知っている?」

 自分を蝶と告げた父の姿が頭をよぎった。
 誰かが自分の運命を作り出しているのかもしれない。
 そんな事が、るりにとっては妙に生々しい真実に思えた。


473 : 名無しさん :2018/04/10(火) 00:34:06 hLtzulY.0
お疲れ様でした


474 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:34:40 xlE/gBZs0

「全部、蝶の見ている夢かもしれないっていう話?」

「うん。
 たとえばね、るりちゃんが蝶になる夢を見て目覚めたら、近くを蝶が飛んでいたとする。
 ……それで考えるの。
 るりちゃんが蝶になった夢を見たのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか」

「本当にわからないよ。
 るりは誰で、何なのか、何の為に生まれてきたのか」

「いいんじゃないかな。
 それを言い出すと、生きている人間なんてどこにもいないかもしれないし……」

「でも、どこかで誰か、生きてるよ」

「生きてる人だって、別の誰かの夢かもしれない。
 お互いがお互いの夢かもしれない。
 それが生きているって事なのかもしれないよね」

「じゃあ、これは全部あたしの夢なの?」

「そうかもしれないし、違うかもしれない」

「わからないよ」

「でも本当はね、全部『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』っていう、誰かの小説の中の出来事なんだよ」

「ビデオじゃないの?」

「うん。だから、るりちゃんにも私にも体はない。
 あるのは体じゃなくて、文字。文字から想像して、読んだ人が体を作る。
 命もないし、死なない。でも意思がある。生きている」

「どういう事……?」

「あたしにも、わからないかな」

「じゃあるりもわからないよ」

「ねえ、あなたはわかる?」

 ますみは、あなたに訊いた。
 あなたの返事をますみは聞いた。

「そっか……」

「全然わからないね」

「そうだね」

「でも……そうだ、お姉ちゃんはなんで死んだはずなのに、いま、生きてるの?」

「それはね、小説の中だから。るりちゃんの認識の中ではずっと生きてるよ」

「あたしの前に確かにいるよ?」

「それは、あたしが認識されたから。
 むかし、『金田一少年の事件簿』の仏蘭西銀貨殺人事件に出てきて、多くの人に認識された。
 その認識が次は『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』で膨らんだの。
 そこでるりちゃんに会って、あたしはるりちゃんに認識された。認識されたあたしは、るりちゃんの中で生きる事になった」

「そうか、じゃああたしも人に認識されている限り生きられるんだね」

「でも、るりちゃんはここにいる?
 自分の認識を持ってそこにいると思う?
 誰かの中のるりちゃんの認識があっても、るりちゃんの中のるりちゃんの認識はどこにあるの?」


475 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:35:08 xlE/gBZs0

「え?」

「るりちゃんは自分の意識がある? 原作の中や二次創作の中にない、るりちゃんしか知らない自分」

「いっぱいあるよ?」

「でも、見せてないよね」

「うん」

「たくさんの人がそれを探している。るりちゃんが、一体何を言って、何をする子供なのか。
 ほら、この文章を読んでいる人も、書いている人も、本当のるりちゃんは一体何をしてどういう事をする人間なのか、ずっと考えているの。
 でも、それぞれ違う解釈をしてしまう。本当は正しい解釈をしたいのにね。
 はじめちゃんも、美雪ちゃんも、あなたのお姉さんも、お母さんも、小野寺さんも、お父さんも、多分本当のあなたが考えている事は認識できないままに、あなたの性格を勝手に考えている。
 でも、るりちゃんはるりちゃんなりにに考えている事があって、自分の事も自分で考えている。誰もそれを作れないしねつ造できないんだけどね。
 だけど、るりちゃんを作った『金田一少年の事件簿』のスタッフも、考え付いたまでは良いとしても、世に出す時にきっとるりちゃんがどういうキャラクターなのか悩んで、今もわからない筈よ。はじめちゃんを描く時もそうなんじゃないかな。
 それをずっと繰り返しながら、『金田一少年の事件簿』は生まれた。
 そして、黒死蝶でるりちゃんの死は悼まれた。ねえ、るりちゃんって、どういう子なの?」

「わからないよ。だって、これを言わせているのはあたしじゃないから。
 あたしが言えるなら、あたしが言う。でも、あたしじゃない」

「そうでしょ?」

「あたしにはあたしがある。だから……」

 二人は、巨大な銭湯の中で温まっていた。
 遠くの風景を見ると、二人はどこかへ吸い込まれそうになっていった。
 やがて、二人は本当に吸い込まれて、るりはある結論に達することになった。

「ここは、誰かが作った世界だと思う……。
 班目るりはどこにもいない……。空想の存在……。
 だから、あたしにあたしがあるなら、あたしは多分、班目るりじゃないと思う……」






 そんな事を呟くと、誰かが拍手をゆっくりと鳴らした。
 次第に、もっと自信を伴った素早い拍手に変わっていくと、るりたちのいる場所はまるで別の場所であったかのように色を変えていった。

 るりが立っている場所を見ると、そこは不動高校の体育館だ。
 また殺し合いが始まったのかと思って周囲を見回したが、るりの周りには誰もいなかった。
 だとするのなら、これはどういう事なのだろう。

 目の前に――一人の男が立っていた。
 拍手の音は、彼が鳴らしたものだった。

「おめでとうございます、班目るりさん。
 貴方は、すべて自分の力で気づく事が出来た。無事、ゲームクリアです」

 それは、九条章太郎だった。
 柔和に笑う九条に、るりは妙な警戒をした。
 そもそもの話として、この九条という男の背はこんなに低かっただろうか?

「どういう事?」

 るりは訊いた。

「このゲームは、すべて、ある方による実験だったのです。
 見てください、班目るりさん――――――いいえ、“浅香奈々”」

 るりの身体は、浅香奈々のものへと戻っていた。
 班目るりの正体は、浅香奈々だったのだ。






476 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:36:13 xlE/gBZs0

 るりの身体は、浅香奈々のものへと戻っていた。
 班目るりの正体は、浅香奈々だったのだ。







 すべての種明かしをしよう。

 この『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』の主催者こと、『災厄の皇帝(エンペラー)』に、正体は存在しない。
 ただし、すべてを仕組んだ黒幕として言えるのは――ここにいる、琢磨ゆりその人だった。

 琢磨ゆりは、婚約した恩師を殺害したチャットサークル『電脳山荘』のメンバーへの復讐を企て、その手法として彼らをVRの世界に閉じ込める方法を考え付いた。
 ネット世界でミステリを批評し続けていた彼らにとって、最も皮肉な殺し方が、こうしてミステリ漫画『金田一少年の事件簿』の登場人物としての記憶を植え付けられて、破天荒な殺し合いに巻き込まれる内容のVRに彼らを閉じ込める事だった。
 VR内で死んだ段階で、脳機能は停止して、現実世界においても死亡する。あるいは、永久に閉じ込められるかもしれなかった。

 そして、電脳山荘メンバーの一人であった浅香奈々に与えられた役割こそが――班目るりだった。

 彼女は、開幕して間もなく同行者を殺害され、強姦されかけるハメになる。
 十二歳にしてそんな過酷な運命をたどりながらも、彼女は「黒死蝶」へと覚醒していく。
 筋書を与えたわけではないが、結果的に“班目るり”はこの殺し合いの中では面白い方向に転んでくれていた。
 琢磨が拉致したVRプログラマが檜山ボムやダンデライオンなどのふざけた要素を捻じ込んだわりには、彼女はすっかり殺し合いの一員として精神を汚してくれている。
 しかし、バグが生じていた彼女には、徐々にループなどの兆候が芽生え、遂に浅香本人のトラウマ的事象である「AV撮影強要」などの影響がVRデータを汚染し始めた。
 結果的に、巻き込まれる形で貴志日出男、辰巳哲、飯田文江、A子などの人間は余波を受けて意識途絶。現実において、その肉体は完全に臨終した。

 果たして、浅香の精神は琢磨はもはや呆れるところまで来ていた。
 彼女がこうして生還してしまった事で、琢磨はもう復讐の気力が失せてしまったのだ。
 浅香がこの数時間のVR実験で、数百年の体感時間を生きて、遂に体感上で「班目るり」として在った時間の方が「浅香奈々」であった時間より長い事になってしまった。

 もはや、彼女は浅香奈々ではなく、班目るりだ。
 姿こそ、二十歳を超えた成人女性ではあるが、好きだったパトリシア・コーンウェルの事も覚えていないし、電脳山荘も過去の罪も何もかもを忘却している。

 こうして、いま二人で会話をしていても、浅香は全く、自分が浅香奈々だと気づいてくれなかった。
 すっかり班目るりと思い込んでしまっているのだ。
 彼女の姿を見て、琢磨はすっかり疲れてしまった。
 もう、すべての復讐に意味を感じなくなってしまっていた。

「もう終わり。あなたもそう思うでしょう?」

 琢磨は、あなたにそう問いかけた。







 琢磨は、浅香が使ったVR装置を、今度は自分に着用する事にした。
 いまだに自分をるりと信じて疑わない浅香と同様に、すべてを忘れてVRの世界に逃避し、班目るりとなる事も悪くはないと考えたのだった。
 抜け殻のようになった琢磨が、VRのスイッチをオンにした。
 琢磨の精神が、『金田一少年の事件簿バトルロワイアル』の世界へとドッキングしていく。肉体だけをこちらの世界に残して、あとの記憶はすべて班目るりのものへと上書きされ、VR空間ではこれから班目るりとして生きる事になる。
 班目るりが見ていた長い長い琢磨ゆりの夢を捨てて、琢磨ゆりは長い長い班目るりの夢を見るのだ。そう、浅香奈々のように。

「ねえ、あなたはそこにいるの?
 本当にそこにいる?」

 ――そこにはもう、琢磨ゆりの姿はなかった。



 琢磨ゆりがいた場所には、ただの地蔵だけが立っていた。







 ――――班目るりが目を覚ますと、そこには確かに、葉崎栞と連城久彦がいた。



 何故眠っていたのか。
 何か夢を見ていた気がする。
 夢を見ていた気がするが……そんな事は忘れてしまった。



 るりはやらなければならない。
 復讐を遂げなければならない。


477 : Sick or Victory ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:36:44 xlE/gBZs0





 黒死蝶は――羽ばたいて。





【一日目/黎明/獄門塾敷地内】
※るりは疲労で眠っていました。るり自身は放送を聞き逃しています。


【斑目るり@黒死蝶殺人事件】
[状態]疲労(絶大)、精神的ダメージ(極大)、激しい怒り、激しい悲しみ、五塔・多間木・古谷・海堂への憎しみ(極大)、下着姿
[装備]速水玲香を気絶させた時に安岡真奈美が使用したスタンガン@速水玲香殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:脱出した後に斑目紫紋を殺す。
0:五塔・多間木・古谷・海堂は必ず殺す。
※参戦時期は金田一と遊ぶ約束をした後。
※怪人【黒死蝶】になりました。


【葉崎栞@吸血桜殺人事件】
[状態]疲労(中)、精神的ダメージ(大)、冬部を失った悲しみ、ますみの遺体を見たショック
[装備]
[所持品]基本支給品一式×2、不明支給品1〜2、冬部の不明支給品1〜2(武器の類ではない)
[思考・行動]
基本:三日目まで生き残りたい。
0:冬部さん...
※参戦時期は金田一に全ての事情を聞かされたあと


【連城久彦@異人館村殺人事件】
[状態]疲労(大)、六星への憎しみ。
[装備]高遠が使ったトリックナイフ@露西亜人形殺人事件
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本:若葉の仇をとる。それ以外はたぶん殺さない。
0:若葉の仇(六星)を見つけ次第殺す。
1:若葉の仇を探し出す。
[備考]
※参戦時期は六星にナイフを刺す直前
※六星を見つけ次第殺しにかかります。









「真実を思い出すにはまだ早かったようですね――班目るりさん」








478 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 00:37:08 xlE/gBZs0
投下終了です。


479 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 16:53:12 GU2ZBlmE0
投下します。


480 : 「私は赤沼三郎だ」 ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 16:54:34 GU2ZBlmE0




「私は赤沼三郎だ」

 赤沼三郎、参加者X。
 彼の正体が津雲先生と水沢利緒にも気になってくる頃合いだった。
 それは頑なに覆面を被り、「私は赤沼三郎だ」と言い張る赤沼の事が、いい加減に無礼に感じたのである。

「私は赤沼三郎だ」

「そろそろ覆面を取ったらどうなんです? 失礼じゃないですか」

「私は赤沼三郎だ」

「いい加減にしてください! いつもいつもそればっかりで……!」

「私は赤沼三郎だ」

「ずっとそんな事を言い続けるのなら、こちらにも考えがありますよ!」

 津雲は、怒りに震えて赤沼の覆面に手をかけた。
 強引にその覆面を剥いで、赤沼の姿を見つけようとしたのである。
 そんな手段を使ってまで、赤沼の正体を気にかけた津雲の気持ちはわからなくはない。
 殺し合いの最中、ひたすら無口に隣にいた赤沼が、その態度に加えて覆面を被り続けたのである。
 その瞳が一体何を映しているのか、津雲には気になって仕方がなかったのだろう。

「私は赤沼三郎だ」

 しかし、そうして津雲が覆面を剥いでも、その下にあるのは赤沼の黒い覆面があった。
 覆面の下に覆面を被っていたのだ。
 目の前の相手が狂人だと認識して、津雲は恐怖した。
 だが、それで津雲は諦めなかった。

「こんなもの……!」

 更にその覆面を剥ごうとする。

「私は赤沼三郎だ」

 その下には覆面があった。

「こんなもの……!!」

 更にその覆面を剥ごうとする。

「私は赤沼三郎だ」

 その下には覆面があった。

「こんなもの……!!!!」

 更にその覆面を剥ごうとする。





 そんな事をずっと繰り返してきた。





 そして、ある覆面を剥がした時、赤沼三郎はそこにはいなかった。
 覆面が覆面を多重に被って人のふりをして動いていたかのように、赤沼三郎に正体はなかった。
 覆面の下の覆面、それをひたすらに剥ぎ続けると、そこにはもう、何もなかった。

 何もない。

 しいて言うのなら、それが赤沼の正体だったのだ。

「ハハハハハッ、赤沼三郎なんていうものはなかったんだ! 赤沼三郎なんていうものはなかったんだ!」

 津雲は高笑いをしながら、自らを囲う鏡を見た。
 すると、そこには赤沼三郎があった。
 思わず、津雲はその鏡に触れたが、その鏡の中の赤沼は津雲と同じように津雲に触れていた。
 はっとして、津雲は己の顔に触れた。
 そこには、柔らかい布の感触があった。


481 : 「私は赤沼三郎だ」 ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 16:56:22 GU2ZBlmE0

「私が赤沼三郎だったのか……?」

 気づいた。
 そう、津雲こそが赤沼だったのだ。
 赤沼の正体が何もなかったのではなく、津雲が赤沼だった。
 だから、何もないように見えたのだった。

「私は、赤沼三郎だ」

 赤沼三郎……。
 思わずそんな声が出た。

「違う、違うんだ……私は津雲成人だ……」

 津雲は、思わず、自らの被っている覆面を剥いでいた。
 ひたすら、ひたすらに剥いでいた。
 覆面の下には覆面があった。
 その覆面も剥ぎ続けた。
 そして、最後の一枚に手をかけた。

「これで……津雲成人に戻れる……」

 そう思って、津雲は自分の手で最後の覆面を剥いだ。





 そこには、もう、何もなかった。
 そんな一人芝居を、彼らはただただ見守っていた。






【赤沼三郎@飛騨からくり屋敷殺人事件 死亡】
【津雲成人@不動高校学園祭殺人事件 死亡】


【残り36人】


482 : 「私は赤沼三郎だ」 ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 16:56:57 GU2ZBlmE0


【一日目/午前/鏡迷宮@鏡迷宮の殺人】



【水沢利緒@魔犬の森の殺人】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
[備考]
※参戦時期は、死亡後。


【狩谷純@金田一少年の決死行】
[状態]全身の成長痛、大声が出ない。思考は比較的冷静
[装備]ランダム支給品0〜2
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残り脱出したい。
[備考]
※参戦時期は事件後


483 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 16:57:36 GU2ZBlmE0
投下終了です。


484 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 17:49:29 GU2ZBlmE0
投下します。


485 : 裁き、戒と ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 17:49:58 GU2ZBlmE0










 ――――聖者は、裁きを与えない。





     ――――――裁きの歌には、小鳥の声が聞こえないから。





                (サンタリニア聖典・第Ⅲ章より)













486 : 裁き、戒と ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 17:51:24 GU2ZBlmE0









「はははははははっ」


 鯖木海人の下卑た高笑いが、ロスの街の中に響いた。
 異人館村のような事件が当たり前に発生する犯罪都市ロス、ここでまた一つの事件が起きた。
 そう、それは鯖木海人と刀丸猛人との壮絶な鬼ごっこの結末だった。
 こうして鯖木が高笑いをあげている結果からして、どういった結末を遂げたのかは誰の目にも明白だろう。


「しつこく追ってきたと思ったらバターなんかになりやがって!! バーカ、バーカ!!」


 そう、かつてこんな童話があった。
 黒人少年のサンボがトラに追われて、必死に逃げる。
 身に着けているものをすべて脱ぎ捨てて許してもらうわけだ。
 そんな中で、トラは戦利品を奪い合って木の周りをぐるぐると回って、サンボは脱ぎ捨てたものを全部回収する事に成功する。
 そして、猛スピードでぐるぐると回り続けたトラたちは溶けてバターになってしまい、サンボはそれをホットケーキに乗せて食べる。
 邦題は、『ちびくろサンボ』という。

 鯖木が振り返ると、刀丸の姿はなく、そこにはただどろどろに溶けたバターだけがあったのである。
 そこから導き出されるのは、鯖木を追いかけた刀丸はバターに変身したという推理だった。
 人間がそうそうバターになる事などあるはずないと思われるかもしれないが、あれだけしつこく追いかけてきた刀丸が消えてバターがあるのである。
 嫌でもあの童話が思い出されるし、鯖木も勿論、その童話の事を最初は考えた。
 一度は、人間がバターになるなど在り得ないと鯖木も思ったが、様子がおかしい。
 待てども待てども、真後ろにいたはずの刀丸が追って来る事がなかったのだ。
 それで、やはりあの童話は史実だったのだと納得した。
 笑いがこみあげないわけがなかった。
 心底の安心と、滑稽な殺人犯の末路に、鯖木はひたすら笑っていた。


「だいたい、人間がバターだぜ!! 笑っりまうよな!! ヒヒヒ、ホットケーキに乗せて食っちまうか!! ……ヒヒ、ヒヒ、ヒヒヒッ!!」


 鯖木は地べたのバターを踏みつぶして笑っていた。
 靴の裏がべたべたになっていたが、そんな事はどうでもいい。
 とにかく、勝利だ。
 鯖木は、そのままネットでバター化した殺人鬼の記事を書こうと、思い立った。
 事実として、自分はバター化した殺人鬼に出会ったのだ。この靴の裏が立派な証拠になる。


「ひひ、ひひひひひひひ!!!!!!!」


 笑いながら、鯖木は腰を突いた。
 気が抜けて、すっかり足の力も抜けていたのだ。すぐには立てなかった。しばらくは、笑っているしかできなかった。
 無防備だが、それは勝利者に許された一抹の休息だった。





【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件 死亡】
【残り35人】





【一日目/昼/ロス】

【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]充足感、疲労(極大)、安心感、靴の裏にバター、この後死ぬ
[装備] なし
[所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件、身代金50万円
[思考・行動]
基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。
0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。
1:ネット環境のある場所へ行く。
2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。
3:誰か助けて……。
[備考]
※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。
※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。
※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。
※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。
※ちなみにこの後で死にます。








487 : 裁き、戒と ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 17:51:59 GU2ZBlmE0




「……え?」


 鯖木の身体が、直後に背後から何かの輪で絞められていた。
 そのまま、相当の力強さで、鯖木の首に細長い力が加わっていった。
 息が出来ない。
 そう、息が出来ない。
 そのうえ、首が折れそうなほどに痛い。
 鼻も口も、目でさえも呼吸を求めながら、それが叶わない。
 苦しい。
 口の中の唾液は飲み込む事が出来ずに流れ出ていった。


「あ、あがっ……」


 そう、これが刀丸の作戦だったのだ。
 道端に落ちていたバターをそのまま地面に放置し、回り込んで鯖木の近くに隠れた刀丸は、すぐに息を殺した。
 追い払ったとも思えずに不自然がった鯖木は、動きを止める。
 思惑通りに鯖木がバターを確認して、『ちびくろサンボ』を思い出して安心したところを、後ろから襲い掛かる。
 まさにこの作戦は大当たりで、鯖木への襲撃を見事に成功せしめた。


「え、あ、う……」


 鯖木の身体から徐々に抵抗する力が失われていく。
 それはむしろ、呼吸をしたいという以上に、もっと早く意識が途絶されてほしいという反応だった。
 ぶっ、という汚い音が鳴って、そのまま鯖木の身体はその場に崩れ落ちた。
 本当に鯖木が死んだのか確認したかった刀丸は、そのままロープを離して、顔を何度も殴った。
 だが、鯖木が意識を取り戻す事はどうやらないようだった。


 鯖木は、死んだ。
 ネットで他人の悪口を書き込み続けた男は、その因果応報によって裁かれ、その罪を戒められていったのだ。
 ジョゼフ・ビュッケは、死んだ。


「……」


 刀丸は、もう何も言わなかった。
 興味を失ってその場から去っていく。
 もう間もなく、殺し合いゲームが始まってから十二時間が立ち、正午になろうとしていた。



【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件 死亡】
【残り35人】



【一日目/昼/ロス】


【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]ファントム
[装備] オペラ座の怪人『ファントム』の仮面@オペラ座館殺人事件、コンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープ@首吊り学園殺人時間
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:ファントムになりきる。
0:この手で参加者を消していく。
[備考]
※参戦時期は、逮捕された後。
※クリスティーン役(ヒロイン)がいれば浄化するかもしれません。
※妄想と現実の境目がありません。
※ファントムになりきっているので自分の名前が刀丸猛人という名前だということも役になりきっている間は理解していません。
※そもそも人と接することが出来ない人間らしい。


488 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/11(水) 17:52:31 GU2ZBlmE0
投下終了です。


489 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:16:17 jihhLEek0
投下します。


490 : 総集編(午前) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:17:31 jihhLEek0



 金田一少年の事件簿バトルロワイアルは、遂にまともに書く事を放棄し、とにかく単なる完結を目指して走り出していた。
 ルールに書いてある通り、飽きたら毒龍オチか夢オチになるのが金田一ロワだ。
 しかし、既に『Sick or Victory』という回で毒龍オチも夢オチも使ってしまっているのだ。
 よって、壊滅的なネタ切れにも関わらずオチがつけられない過酷な状況下に金田一ロワは瀕していた。
 どうあっても完結させたいが、なんと最終回のネタすべてが、『Sick or Victory』には使われている。
 すべてはVRだったというオチ、夢オチ、AVオチ、毒龍による世界戦争オチ、ループオチ、セカイ系オチなど、最終回に使えるネタを大概消費してしまい、既に行き詰っていた。
 そこで、最終回までの道筋を考えてからまともな最終回を書けばいいのだと気付く。
 だが、そうであるならば、最終回までの道筋がなければそもそも最終回は成立しない。

 そこで俺は考えたのさ。
 だったら、最終回までの道筋を箇条書きにしてしまえばいいんだってね!(神トリック)

 そう、すべての物語を総集編によって、さもあったかのように片づけ、ほとんどの話をプロットのみで描写すれば、簡単に最終回までの道筋を作り出し、面倒なプロセスを書くエネルギーを削減して完結を達成する事が出来るのである。
 最終回以外をプロット化する事で、完結までの体力を削らない。
 誰からも見捨てられたロワを完結させる為の「エデンのリンゴ」ともいうべき手法に、このロワは片足を突っ込んでいた。

 以下が、前話から考え得るプロットとネタである。
 プロットから想像を膨らませて楽しんでほしい。ろくに描写されていないからこそ想像は広がり、十人十色の金田一ロワがある。それでいいじゃないか。






491 : 総集編(午前) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:17:48 jihhLEek0



**怪物、吠える(前編)(後編)



 この話は、井沢が黒魔術で生成した怪物・米村が人の血肉を求めてさまよいだした直後のシナリオである。

「…………ウゥ、アア……イタイ、クルシイ……コロシ……テ…………」

 怪物はそう言いながら、月江茉莉香、星くん、蓮沼綾花を襲撃する。
 しかし、怪物が凛だと誤解していた茉莉香は、高速で走りだして自らを襲ってきている事に気づかなかった!
 両手足をブリッジさせて首を回転させた異常体制で茉莉香たちに近づいてくる怪物。

「え!?」

 それが襲撃だと思った頃には遅し! 絶体絶命!

「あ、危ない!」

 しかし、その瞬間、星くんは咄嗟に茉莉香を庇ったのである。
 怪物に腹を引き裂かれる星くん。
 そこら中は血だまりになる。まさしく血溜之間。

「オイ、シイヨ…………ニンゲンノオニク…………オイシイ………………アァ…………カナシイ、クルシイヨ……デモ、オイシイ…………ウゥ…………」

 怪物は言いながら、星くんの内臓を食べ始める。
 意識があるままにして腹を食われる星くんは、地獄の苦しみを感じる。

「うわーーーー!!! 殺される!! ふざけんな!! マジふざけんな!! やばい、やばい!!」

 殺されかけて文句を言い続ける星くんと、絶句する茉莉香と綾花。
 そして、徐々に星くんの声は聞こえなくなっていった。体のほとんどの内臓を食い破られた星くんは、既に意識を完全に失っていたのだ。

「アァ……オニク…………アァ…………ハヤク…………コロシテ…………ソウデナイト…………ワタシ…………ァァァァァァァァ」

「アァ……ココニモ、オニク…………マリカ…………オイシソウ…………アァ…………コロシテ……」

「ァァァァァァァァァ…………コロシテ……マリカ…………ハヤク…………ウゥ…………クルシイ…………アツイ…………オヴェェェェェェェェ……」

 怪物は星くんだった吐瀉物を吐きながら、吠える。

「逃げようよ」

 逃げようと提案する綾花をよそに、茉莉香は告げる。

「インケーン! あんたインケンよ!」

 怒りの「インケーン」罵倒によって、遂に茉莉香の身体に変化が訪れていた。
 そう、彼女の正体は、ギリシャ神話の英雄インケーンの生まれ変わりだったのだ!

「in 剣」

 英雄インケーンの有した能力によって、デイパックの中に剣を生成した茉莉香は、その剣を構えると怪物を討つべく戦うのだ。

「あなたは逃げなさい!」

 そう言われて逃げた綾花の前に、なんと星くんが現れた。

「星くん! なんで生きてるの!?」

「この碁石をポケットに入れていたお陰でかすり傷で済んだんです。……でも、俺助かっちゃいけない人間なんだ。裏切り者だから……。殺されても文句言えないよ」

 彼は胸元に碁石を入れていた為、怪物に喰われてもギリギリかすり傷で助かったのだ。
 そんな中、インケーンと怪物との戦いが本格始動しようとしていた。

「凛、今すぐあなたを地獄に送って楽にしてあげるわ」

 英雄と怪物が激突する。


【感想】
 前話で描かれた星くんの碁石の伏線や、インケーンの台詞の意味が回収された回。
 徐々に人食いの怪物となっていく米村の恐ろしさや、凛を解放しようとする茉莉香の温かい言葉が胸に刺さる。






492 : 総集編(午前) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:18:05 jihhLEek0



**チャネラー桜庭の憂鬱


「龍之介……!」

 放送で龍之介の名前を聞いた巽紫乃は、龍之介を生き返らせる為、黒魔術を得る道を探る。
 彼女の目の前にいたのは、近宮、蓮花、そしてチャネラー桜庭の三人であった。

「死になさいッ!!」

「危ないッ!!」

 彼らを襲撃する紫乃。しかし、チャネラー桜庭が咄嗟に斧から攻撃を庇った事で事なきを得たのであった。
 チャネラー桜庭の脂肪は、あらゆる攻撃を跳ね返す能力を持ち、高い霊力はそのダメージを自然に返す事が出来る。

「近宮先生、逃げて!」

 彼の霊力バリアによって紫乃の攻撃は通用しない。
 そもそもチャネラー桜庭は檜山ボムを持っていた。

「ぁああああああああッッ!!」

 そして遂に、チャネラー桜庭の檜山ボムによって紫乃は殲滅されるのだった。
 しかし、その誘爆によってチャネラー桜庭は1500メートル彼方に吹き飛ばされ、近宮たちとはぐれてしまう。


【巽紫乃@飛騨からくり屋敷殺人事件 死亡】
【残り34人】


【感想】
 投下乙。







**インフルエンサー(前編)(後編)


 インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員の持病、インフルエンザは殺し合いに来て悪化していた。
 インフルエンザは危険な病気だ。この状態で殺し合いなど不可能に決まっていたのだ。
 徐々にインフルエンザによって衰弱していくインフルエンザ。

「もう駄目かな……」

「諦めちゃダメよ! きっと助かるわ!!」

 色々経て既に彼女との間にほのかな友情が芽生えていた螢子は、彼女を休ませて薬を買いに行こうとする。
 しかし、帰って来た頃には病状は更に悪化。
 事は、三日というタイムリミットを待てない状況になってきていた。

「ありがとう、ね…………美雪ちゃん……」

 そう言って泣いているインフルエンザに、泣きながら、自分が美雪ではない事を伝える螢子。
 インフルエンザにもう一度声をかけてみせたが、既にインフルエンザは息絶えていた。
 彼女が小泉螢子であった事を知っているかもわからないままに……。
 螢子は、この殺し合いの主催者を殺し、彼女をこんな目に遭わせた海峰を殺害する事を決意したのだった。


【インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員@血溜之間殺人事件 死亡】
【残り33人】


【感想】
 マーダーの螢子とインフルエンザの間に芽生えた友情と崩壊。
 それは、微かな希望であったとともに、螢子の覚悟に繋がる物語であった。
 切ない友情に涙を禁じえないエピソード。






493 : 総集編(午前) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:18:27 jihhLEek0



**刀丸んじゃねぇぞ……


「!?」

 刀丸猛人は、1500メートル先から飛んできたチャネラー桜庭が激突して死んだ。


【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件 死亡】
【残り32人】


【感想】
 昼の話で生きている刀丸猛人が、後に投下されたそれより前の話で死んでいるというパラドックスを描いた回。
 彼もまた現代社会が生んだ一人の被害者なのかもしれない。







**あした


 色々情報好感などをした末に、遂に班目るりの前に現れた、海堂瞳、多間木匠、古谷直樹の三名。
 彼らの手には檜山ボムが握られていた。
 さあどうするるりちゃんたち。


【感想】
 次回が楽しみな回。







**Seven(前編)(後編)


 六星と警官が遂に雌雄を決する時が来た。

「六星竜一、警視庁の威信にかけてお前を逮捕する!」

 警官に訪れたのはリベンジのチャンス。六星に必死の攻撃を仕掛けるが、六星の格闘術によってすべての攻撃は回避されてしまう。
 そして、今度は両手両足を折られてしまう警官。

 このままなすすべもなくやられてしまうのか。
 そう思った折、天国に逝った警官Aの言葉が彼の脳裏に浮かんだ。

「お前は誰にも負けるなよ、お前は俺にただ一人勝った男なんだから」

 その言葉を思い出して奮い立ち、折れた両手足でなおも駆け出し六星へと攻撃を仕掛ける警官。

「これが俺たち警視庁の、最強の一撃だッッッッ!!!!!!!」

 しかし、そのパンチが六星に届く直前に、警官の肉体と精神は限界を迎えて、立ったまま果てていた。
 そう、もはや警官には立ち上がる力も残っていなかったのだ。そもそもあの状態で生きていたのは、奇跡的な事だった。
 多くの護れなかった命に対して後悔しながら、警官は殉職した仲間たちのもとへと旅立った。

「本当に、バカな警官だぜ……妙なTVドラマの見すぎじゃねえか?」

 そう言いながら警官の躯を見守る六星の目には、同じ漢としてその警官の死を称える涙が浮かんでいた。
 彼も人の心を持っていたのだ。
 一方、その涙を見た佐伯航一郎は、彼を見限る方針を考え始める。そうやって彼はすべてから見はなされていくのだ。かなしいね。


【六星に瞬殺された警官B@異人館村殺人事件 死亡】
【残り31人】


【感想】
 六星に瞬殺された警官Bという名前だった筈の男が、意地によって六星に瞬殺されずに戦い抜く回。
 警視庁の意地をかけた激戦や、六星の戦法を逆手に取った先読みの攻撃など、手に汗握るバトル回だった。
 六星の逆転によって両手足を折られながらも、最後まで戦い抜いた六星に瞬殺された警官Bはまさに漢だっただろう。






494 : 総集編(午前) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:18:42 jihhLEek0



**それが罪でしょう


「さあ、今度は誰を殺そうか」

 罪滅ぼしの為に皆殺しを決行するCodaさんは、檜山ボムの無差別投てきする。
 そして、更なる死者を出す。
 その相手は、なんと楊蘭だった。

「ああぁ……」

 そううめき声を出すとともに、爆風によって吹き飛ばされ、木に激突して死亡する楊蘭。
 彼女はわけもわからずに死んだのだった。

「なんという事だ、まさか彼女がこんなところで……誰がやったんだ!」

 そして、甲田さんは誰が七瀬美雪を殺したのかわからずに怒り狂っていた。
 その一部始終を見ていた遠野英治は、共に行動した楊蘭の死によって、完全に怒りに震えている。
 甲田は殺さなければならない。そんな強い認識とともに、ジェイソンマスクをかぶった遠野。

「貴様が彼女を殺したのかッ! 甲田征作!!」

「君があの悲恋湖の事件の犯人で、彼女を殺したのか……!! くだまりたまえ!! 遠野くん!!」

 両者譲らぬ正義によって爆発する死闘。
 戦いの火ぶたは切って落とされた。


【楊蘭@香港九龍財宝殺人事件】
【残り30人】


【感想】
 因縁のバトルへの布石が目立つ第二回放送前。
 ここから話が終盤に向けて纏まっている予感が強い。
 事実上の打ち切り最終回まで、この調子でスピーディな展開が期待できるだろう。


495 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 02:20:02 jihhLEek0
以上、投下終了です。
あともうすぐで最終回です。
最終回はちゃんとした文章で提供できると思います。
今後ともよろしくお願いします。


496 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:04:47 jihhLEek0
二作連続で投下します。


497 : 総集編(昼) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:05:34 jihhLEek0
**総集編(昼)



 今回の話は前回に引き続き手抜きでお送りします。
 次回は放送です。



**もくじ
-[[【海峰の誤算】>総集編(昼)#1]]
  海峰学、藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁
-[[【出会いと別れ】>総集編(昼)#2]]
  六星竜一、佐伯航一郎、伊志田純、ピエロ左近寺、近宮玲子、美咲蓮花
-[[【東京パフォーマンス海峰】>総集編(昼)#3]]
  海峰学、星桂馬、蓮沼綾花
-[[【夜明け前より瑠璃色な(前編)/(中編)/(後編)】>総集編(昼)#4]]
  班目るり、葉崎栞、連城久彦、海堂瞳、多間木匠、古谷直樹
-[[【ミステイク】>総集編(昼)#5]]
  斧寺空美、蓮沼綾花、水沢利緒、狩谷純、藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁
-[[【Warning want Queen(前編)/(中編)/(後編)】>総集編(昼)#6]]
  遠野英治、甲田征作、月江茉莉香、米村


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**&aname(1)海峰の誤算



 海峰はたまたまその辺に落ちていた車に載っていた。
 しかし、思いのほか参加者には合わず、あれから死者も出ていない。
 それによってまったりと眠りはじめ、すっかり車中に隠れて眠ってしまっていた。
 ちなみに放送は聞き逃していた。

「すやすや」

 そんな彼の近くに現れたのは、妖怪ぬりかべのような怪物だった。

「うわぁ……!! 化け物だあああああああ!!!!」

 慌てて車で逃げだす海峰だった……。
 彼のつたない運転技術で、果たして大丈夫なのだろうか?



【感想】
 対主催同士が誤解から合流し損ねるあるある回。
 海峰はすれ違いまくっていた。



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**&aname(2)出会いと別れ


 前回六星を見限った佐伯航一郎が、伊志田純とピエロ左近寺と出会う回。
 だが、そんなところに武装した近宮玲子と美咲蓮花が侵入してきた。
 たまたまそこらへんに落ちていた日本刀を使って、近宮と蓮花は三人を無差別に襲撃。

「左近寺はどこだぁぁぁぁぁぁ!!!! 左近寺の馬鹿はどこにいるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!」

 めちゃめちゃになるカフェふくろう。
 そこでなんと、伊志田が持っていた高威力型ダイナマイト檜山ボムがさく裂する。
 高威力型ダイナマイト檜山ボムは、持ち主さえわからないタイミングで爆発し、参加者たちを方々に吹き飛ばしてしまうのだ。
 彼らはどうなる?



【感想】
 因縁の対決と思いきや、爆発によってばらばらになる彼ら。
 それぞれはどこにいったのか、そもそも生きているのかすらわからないまま終わる回。



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498 : 総集編(昼) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:06:16 jihhLEek0



**&aname(3)東京パフォーマンス海峰


 海峰は自動車の操縦を軽々こなしていた。
 近くに星くんを見つけた海峰は、彼と合流しようと緩やかにブレーキを踏もうとする。
 しかし、この車は、他の参加者の前でブレーキを踏むと、無理矢理ブレーキがアクセルと化して追突する仕様になっていたのだ。
 猛スピードで爆進する海峰カー。

「うわああああああああああ!!!! とまれ……!!!!!」

 どしんっ!!
 それは星くんに向けて追突した。
 星くんは、運転席から降りてきた海峰の顔を見てはっとする。

「ふざけんなっ……人殺し!!!!! うわああああああああああ!!!! 痛いッ痛いッ!!!!!!! 海峰に殺される!!!!!!!!!!!!
 俺は海峰学に殺されるッ!!!!!!!!!! 海峰、お前は悪魔だッッ!!!!!!!!!!!
 ああ〜目がかすむ〜〜〜〜〜〜〜死にたくない〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!! 痛い〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!
 どうしてこんな事するんだ海峰、俺たちは親友だったのに!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 いくら俺が都内屈指の難関名門進学校・開桜学院に合格して、お前は合格しなかったからって!!!!!!!!!!!! 親友だったのに!!!!!!!!!!!!!」

 星くんは、痛みのあまり、たまたま近くに落ちていた拡声器でそう叫んだ。
 その叫びは全エリアに広がり、遂に海峰はその知名度を広げてしまう事になった。

「俺がやったのか……? 俺がやったのかよ……?」

 近くにいた蓮沼綾花に向けてそう問う海峰だったが、綾花は悲鳴をあげて逃げてしまった。

「うわああああッ……!!!! 殺されるッッ!!!!!!! 海峰学……海峰学です!!!!!!!! 名前だけでも憶えて……気を付けて……!!!!!!!!!」

 そんな痛みの叫びとともに、遂に息絶える星くん。
 親友をこの手で死なせた事に呆然とした海峰は、彼への償いとして自ら命を絶つ事を決める。
 そう、もはや生きる意味などなかった。
 涙を流し、星くんの遺体を車の助手席に乗せると、そのまま大爆走していく。

「星……死ぬ時は一緒だぜ!! 本当に悪かった、許してくれ……!!」

 そのまま崖を飛んで、心中しようとする海峰だったが……。



&color(red){【星桂馬@血溜之間殺人事件 死亡】}
&color(red){【残り29人】}


【感想】
 海峰、遂に人を殺す。
 すべての参加者に敵として認識された海峰の運命やいかに。



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499 : 総集編(昼) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:07:02 jihhLEek0



**&aname(4)夜明け前より瑠璃色な(前編)(中編)(後編)


 海堂瞳、多間木匠、古谷直樹の三名が班目るりたちの前に現れた。
 彼らへの復讐の意思がいまだ心の中に残っているるりは、彼らを殺そうとするが、逆に彼らはるりを殺害しようと画策していた。
 彼らが投げてきた檜山ボムによって、絶体絶命のピンチに陥いるるり。
 しかし、それをキャッチして空に投げた男がいた。彼は連城久彦だった。

「若葉に……似テル」

 片言で、そう言った連城。そう、るりの髪形はほぼ時田若葉と同じ、黒髪ショートなのだ。
 るりを守るべく、分身して応戦する連城。三人に分身した連城は、海堂、多間木、古谷をそれぞれ相手取る。
 三人に分身した分だけ、動きが愚鈍になっている連城。
 そのうえ、この戦法は病弱な連城にとっては心臓に負担のかかるものであった。

「な、なんてこった……!!」

 そう言って、連城の刺殺で倒れる古谷。
 そう、本当は連城は四人に分身しており、草陰からナイフで特攻していたのだ。
 海堂と多間木も同一の戦法によって次々と死んでいく。

「コレで……モウ安心……」

 そうつぶやき、連城も倒れる。
 彼の心臓は限界に来ていた。
 そうまでしてるりを助けようとしたのは、若葉と重なったからだ。
 愛する者の為に手を汚そうとした若葉の事を想い、るりが彼らを前に手を汚す事を絶対にさせまいと連城は自らが彼らを殺す道を選んだのである。

「……ヤット、若葉を……助ケラレタ……仇を取ルンジャナクテ……助ケラレタンダ……」

 連城の心臓は限界に来ていた。もう永くない。
 彼は、最期にるりの前でマスクを取って美青年フェイスでほほ笑んだ。

「サヨナラ、楽シカッタ……」

 あまりの美青年ぶりに、るりと葉崎栞の心の闇が全て晴れていく。
 そう、彼は自覚していなかったが、病弱すぎて隠していたその顔は、どぶ川をキレイにするほどの美青年だったのだ。
 るりと栞は改めて、悲劇の前に脱出を目指す事を志す。


【海堂瞳@獄門塾殺人事件 死亡】
【多間木匠@剣持警部の殺人 死亡】
【古谷直樹@首吊り学園殺人事件 死亡】
【連城久彦@異人館村殺人事件 死亡】
【残り25人】


【感想】
 若葉とるりを重ねた連城の奮闘が見事な回。
 六星を倒す事こそ叶わなかったが、彼は晴れやかに逝く事が出来ただろう。
 マーダーをめっちゃ倒す大活躍により、対主催にとってはあまりにも大健闘だと言えた。



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500 : 総集編(昼) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:08:06 jihhLEek0



**&aname(5)ミステイク


 斧寺空美のもとには、蓮沼綾花、水沢利緒、狩谷純、藤枝つばき、幽月来夢、奴利壁が結集し、共に脱出する方針が定まっていた。
 そのために、斧寺は既に首輪爆弾を作っており、それぞれの首にかけていく。
 そう、脱出の為には首輪解除が不可欠。この首輪が抑止力となって、脱出を妨げるのだ。
 しかし、このロワには首輪がなかった。だから、エア首輪解除するしかなかったが、東大生だった斧寺はそこらへんの部品で首輪を作り、一度作る事にしたのだ。
 首輪を全員に巻いて、慎重に首輪を解除しようとする斧寺。

「あ」

 だが、不幸な手違いが発生した。
 手順を間違えたのだ。

「嘘でしょ……!!」

 幽月来夢の首輪が爆発する。首輪解除のミスであった。
 それによって幽月は、またも首をなくしてしまう。

「もう私には首輪を解除するのは出来ないかもしれない……」

 この事がトラウマとなり、首輪解除に対して消極的になっていく斧寺。
 そこで、狩谷は自分が首輪解除しようと考えていく。


【幽月来夢@露西亜人形殺人事件 死亡】
【残り24人】


【感想】
 首輪解除のミスで死者が出る回。
 別に首輪解除は脱出の為に必須ではないのだが、ロワの文法的に必須だと思って首輪を作ってしまった事が最大のミステイクだろう。
 皮肉にも首輪の爆破によってまたしても首から上がなくなって死亡する幽月。対主催チームがバラバラになる序曲であった。



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501 : 総集編(昼) ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:08:21 jihhLEek0



**&aname(6)Warning want Queen(前編)(中編)(後編)


 放送前の最後の話。

 ここでは、インケーンと化した茉莉香が怪物化した凛と戦うも、やっぱり逃げる事を選ぶ場面が描かれる。
 そう、茉莉香としては、怪物はもう凛ではない物として葬ってやろうと考えていた。
 しかしながら、凛でないならそこまで面倒を見てやる義理がない。
 そこで茉莉香は考えたのさ。だったら逃げればいいってね!

 一方、その名言の元ネタである遠野は戦っていた。

「甲田! お前を許さない! このオノで甲田を殺す!」

「やってみたまえ、出来る物ならね」

 遠野と甲田の戦いは激化し、やがてその舞台は因縁の場所、オリエンタル号まで到達する。
 船上でバランスの悪い戦いを強いられた遠野だったが、甲田が振りかぶった瞬間の一瞬の隙を突いて檜山ボムによって船体そのものを破壊して海に飛び込んだのだ。

「馬鹿なッ!」

 そんな事をすれば遠野もただではすまない。
 しかし、遠野は甲田を殺す為にそれをやってのけたのだ。
 そう、遠野と甲田では覚悟に差がありすぎたのである。

 沈没していくオリエンタル号から海に飛び込んだ甲田。
 必死に泳いでいくが、なんとそこには一人用のボートに乗る遠野の姿があった。

「乗せたまえ、乗せたまえ!!」

 必死で遠野のボートに乗ろうとする甲田。
 だが、遠野はその手を振り払う。

「ふざけるな悪魔ッ!! 私を乗せたまえッ!! 私は無医村に開業しようとしている医者だぞッ!!」

「あれぇ、あんたは螢子に同じ事をしたんじゃないか!」

「仕方がなかったんだ!! たくさんの人が乗っていた!! とてもそれどころじゃなかったんだッ!!!!」

「ふざけるなッ!! 俺にとって螢子の命はお前ら百人分より重かったんだ!!」

「うるさい、いいから乗せろッ!! 私は一千万円で罪滅ぼしをするんだ。私が生き残るべきなんだ!! お前たちの命を犠牲に、多くの命を救うのだ!!」

「螢子は俺の母親になってくれたかもしれない女性だッ!!」

「黙れ、黙れ、黙れ!! 私をボートに……」

「螢子に、それからお前が殺していったいくつもの命に詫びろ、甲田……」

 甲田はそのまま沈んでいった。
 すべての復讐を終えた遠野は、自らも没する事を考えるが、その前に楊蘭の遺体を埋めてやる事を考える。
 そう、彼の心には失われていたはずの正義感が取り戻ろうとしていた。



【甲田征作@悲恋湖伝説殺人事件 死亡】
【残り23人】


【感想】
 遠野と甲田の因縁if。
 遠野の行動は許されないが、甲田という悪魔を殺したのはまさに奇跡。
 これから彼はどう行動するのか見ものだ。



----



|043:[[裁き、戒と]]|時系列|052:[[第二回放送]]|
|0:[[それが罪でしょう>総集編(午前)#7]]|投下順|052:[[第二回放送]]|


502 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:08:48 jihhLEek0
一作目の投下終了です。
次に二作目の投下に入ります。


503 : 第二回放送/弥生と鶴丸子の爆笑本音トーク ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:09:21 jihhLEek0



「放送です。
 今回の放送は、私こと鶴丸子がお送りいたします。
 今回は次の人が死にました。

 赤沼三郎さん
 井沢研太郎さん
 インフルエンザで休んだ不動高校囲碁部の部員さん
 海堂瞳さん
 鬼城歩夢さん
 霧谷凛さん
 雲沢夏樹さん
 甲田征作さん
 鯖木海人さん
 白神海人さん
 巽紫乃さん
 多間木匠さん
 ダンデライオンさん
 津雲成人さん
 刀丸猛人さん
 古谷直樹さん
 星桂馬さん
 的場勇一郎さん
 楊蘭さん
 幽月来夢さん
 連城久彦さん
 六星に瞬殺された警官Bさん

 以上22名です。
 残り人数も少なくなってきましたね。
 残っている皆さんは、この殺し合いが終わるまで頑張ってください。

 また、主催本部ではインフルエンザが流行しており、予定していた『弥生と鶴丸子の爆笑本音トーク』は中止させて頂く事をお詫び申し上げます。
 九条章太郎さん、美国礼奈さん、名鳥めぐみさん、檜山達之さん、弥生の五名がいま現在、主催本部でインフルエンザによって体調を崩しており、本土に帰りました。
 次回の放送も私が担当する予定なのでよろしくお願いします。
 皆さんもインフルエンザには気を付けてください」


504 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/15(日) 17:09:45 jihhLEek0
投下終了です。


505 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/16(月) 00:45:39 kpmZ4TKs0
投下します。


506 : 第三回放送 ◆CKro7V0jEc :2018/04/16(月) 00:46:46 kpmZ4TKs0



「放送です。前回に引き続き、鶴丸子が放送を担当いたします。
 今回の六時間で亡くなった方は以下の通りです。

 伊志田純さん
 斧寺空美さん
 鐘本あかりさん
 神小路陸さん
 佐伯航一郎さん
 奴利壁さん
 葉崎栞さん
 蓮沼綾花さん
 冬木ウメさん
 藤枝つばきさん
 水沢利緒さん

 以上、11名。

 詳しい死因や内容は、後でwikiの死亡者リストを更新します。
 なので、その辺りを知りたい方は、SSではなくwikiの死亡者リストの方を読んでください。

 残り人数は12人です。
 残っている方を読み上げます。

 海峰学さん
 小泉螢子さん
 近宮玲子さん
 チャネラー桜庭さん
 月江茉莉香さん
 遠野英治さん
 ピエロ左近寺さん
 班目るりさん
 美咲蓮花さん
 ヤクザっぽい男さん
 六星竜一さん

 以上、12名と、黒魔術によって誕生した怪物・米村が最終回のメンバーです。
 次回を以て、金田一ロワは最終回です。
 長い間ありがとうございました。鋭意最終回執筆中ですので、最後まで応援よろしくお願いします。

 また、この放送を以て主催本部はインフルエンザの流行により、この殺し合いの現場を放棄します。
 助けの船が来るのは早めてもらってますので、それまで頑張ってください」


507 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/16(月) 00:47:10 kpmZ4TKs0
投下終了です。
よろしくお願いします。


508 : 名無しさん :2018/04/16(月) 01:30:22 h9kof4Ww0
戦国ロワ思い出したけど感想まで自給自足していて総集編ってなんだっけ!?


509 : 名無しさん :2018/04/16(月) 01:48:06 3f95llSM0
魔術列車組が結構生き残ってるのでこのまま頑張ってほしい(思考放棄)


510 : 名無しさん :2018/04/16(月) 13:50:02 ie6Ft2m.0
六星!遠野!るりちゃん、君たちならきっと生き残れる!


511 : 名無しさん :2018/04/17(火) 08:02:16 KQ/7MPs20
金田一ロワ2ndフラグか!?


512 : 名無しさん :2018/04/18(水) 00:53:31 4uYtLssQ0
最終回がむばってください
ただ一言...金田一ってなんだっけ?


513 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:15:19 K/3pPHag0
投下します。


514 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:16:03 K/3pPHag0



 ――超巨大浮遊空母『黒坂村』。


 それは、この殺し合いの主催者一味の一人であった檜山達之がこの場に残した手製の空中要塞であった。
 全長2000メートルという広大さに加えて、内部にはロイホやドニーズなどのファミレスが搭載されている万能兵器だ。
 それは新たなる人類の生活圏と言って差し支えない程に、何もかもを取りそろえていた。

 いや、もはや、国である。
 檜山が新たに作り出した新しい概念。空中に浮く国家、それが、黒坂村だ。
 これさえあれば人類には、もはや兵器はいらない。兵器があるから戦争が起きるので、戦争もなくなる。戦争はつまり殺人事件なので殺人事件も消えるだろう。
 なので、この黒坂村は山火事から燃え移る事もないし、どこかで火がついた時点で自動的にスプリンクラーが作動して水没する。
 それは、さながら黒坂村の惨劇に取りつかれた男の執念のような発明だった。手製の爆弾を作るに飽き足らず、こんな物まで作り上げるとは、流石檜山だ。

 ……唐突なメタ発言だが、読者のみなさんは、もしかすると、一塊の大学生に過ぎない檜山がこれを作るのはリアリティがないと思われるかもしれない。
 しかし、原作では手製の小型爆弾、アニメでは戦艦の主砲を使って殺人を犯し、手製の銃を作れる檜山が足のつかない外国人と協力すればこうした兵器が作られるのも自然な話だ。
 そもそも人間には無限の可能性がある。そういう理屈やリアリティは、人間の可能性を前には些末な物である。
 それに見合うだけの努力を重ねれば、人間は何だってできる。人間の可能性は無限大だ!



 何でもできる。何でもなれる。
 輝く未来を〜〜〜〜〜抱きしめて!
 フレッフレッ檜山!



 ……それに、檜山にとって、復讐はただの殺人劇ではない。戦争なのだ。
 背負う物が明らかに違う。
 もしあなたが、理工学部で何年もかけて偉大なる発明を産出しようと頭を捻らせ続けている人間であるならば、安易に檜山が手製の空中要塞を作った設定にした事は謝罪しよう。
 しかし、もし夏休みの工作しか作った事がないのなら、何故檜山の行動にリアリティがないと非難できるだろうか。
 やってみなければわからないじゃないか。
 彼はやってのけたのである。あなたが何もしていないのなら、努力によってさまざまな発明を残した檜山を否定しないであげてほしい。

 なお、話題に上ったその檜山だが、残念な事に現在インフルエンザに感染して、島を出て本土で治療を受けている。
 これから物語の終わりまで、檜山が再度皆さんの前に姿を現す事はないだろう。

 ……結局、彼はなんで主催陣にに協力していたのだろう。その答えは謎のままだった。
 他にも、九条章太郎、美国礼奈、名鳥めぐみ、鶴丸子、弥生といったイカレたメンバーたちが島にいた理由も不明だったし、『災厄の皇帝(エンペラー)』もインフルエンザで帰ってしまった。
 誰が何の為に開いたバトルロワイアルだったのかは、今更もう誰もわからない。
 大事な人がわからない〜。


515 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:16:30 K/3pPHag0



 そう、この殺し合いは既に誰にも望まれず、もはや何の為に続いているのかさえ、わからなかった。




 今の参加者たちは、その中を必死で生きていた。
 しかし、どこにいても同じ事かもしれない。

 生きる事は戦いである。
 どんな人生もバトルロワイアルである。
 そこに理由はない。このロワと同じように、無意味に始まり、終わっていく運命が世界中に幾つある?



 最終回は、はじまる。
 誰が、なんと言おうと。



 そして、参加者にとって悪夢のような時間はいま、遂に終わろうとしているのだ。
 三日後に来る筈だった迎えの船は、急遽、明日に来る事になっていた。
 それと同時に、島外に拡散されてはならない怪物が誕生したこの島は、既に合衆国が熱核攻撃を仕掛けて爆破してしまうという段階に差し掛かっている。
 タイムリミットよりも先にまず怪物を倒さなければ、参加者は誰一人生き残る事が出来ない。



 遠野英治、この戦いにおいて、正義を貫き続けた愛すべき好青年。

 小泉螢子、この戦いに紛れ、何度も迷ってきた少女。

 月江茉莉香、この戦いを通して、最も「インケーン」と言い続けた少女。

 班目るり、この戦いを乗り越え、都合良く生き残ったロリ枠(このあと生還します)。

 美咲蓮花、この戦いにいながら、一切何もしていないお母さん。

 六星竜一、この戦いの中で、人として生きる道を探る元殺人マシーン。

 近宮玲子、この戦いが終われば、ただのクソババア。

 ヤクザっぽい男、この戦いのすべてを、アダルトビデオにしたヤクザ。

 海峰学、この戦いにあって、あらゆる罪を着せられた人。

 チャネラー桜庭、この戦いのストレスで、体重が2kg増。

 ピエロ左近寺、この戦いが……うーん……思いつかない。

 そして、黒魔術で生まれた怪物の米村。



 ――生き残った参加者のうち、対主催勢力ら遠野英治、小泉螢子、月江茉莉香、班目るり、美咲蓮花、六星竜一は『黒坂村』にて待機中であった。

 一方、他の参加者たちは何をしていたかというと、これもまたそれぞれである。

 たとえば、ヤクザっぽい男は頑なにAVネタを消化するノルマを最終回でも達成しようとしていたし、近宮はまさしくその魔の手が伸びようとしている最中だった。

 海峰は様々な行動が原因で完全に孤立しており、檜山が製造した搭乗用人型兵器に乗りつつも、ほとんど他参加者と接触しようとしない。

 それから、チャネラー桜庭は現在完全にその体を「なにものか」に乗っ取られ、彼もまた単独行動を取っていた。

 そして、参加者ではないが、黒魔術によって誕生した怪物・米村は、度重なる捕食や死体喰いによってその肉体を着々と巨大化させていたのだった。

 そう。あらゆる事象をwiki頼みで雑に済ませて、最終回までストーリーを飛ばした金田一ロワであるが、なんと生存者にはまとまりがない。
 しかし、この長い戦いを見届けたあなたたちには、『金田一少年の事件簿』の生か死かの殺人事件たちを生き抜き、この殺し合いでもあらゆる形で生きようとしてきた彼らを否定する事は出来まい(尾ノ上と矢森以外)。

 彼らは戦っていた。誰に何と言われようと、何を失おうと、どんなに間違おうと、ぶつかろうと。
 連れて来られてから今日までの彼らの生き様を誰より見届けたあなたたちには、彼らが何故そこまでして戦うのか、理論ではなく、心で感じる事が出来たのではないだろうか。



 さて、どうなる、最終回!(仮面ライダービルド風に)。






516 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:17:01 K/3pPHag0




「隠剣(インケーン)」


 英雄インケーンの血を引く少女、月江茉莉香は呪文を唱えていた。
 やはり調子が悪い。茉莉香以外の人間の眼から隠す事が出来る聖剣・隠剣を発動するが、それは隠遁されておらず、あまりにも見えやすかった。
 透明な刃でなければ、隠剣とは言えない。
 それはもはや、バレバレ剣であった。というか、ぶっちゃけて言えば、女子高生が産出したという以外に何の価値もない普通の剣である。
 そのうえ、女子高生が産出した事を客観的に証明しうるデータはどこにもない。
 たとえば、この剣を「女子高生が算出した剣」としてヤフオクに出品しても、女子高生が算出したという事をもはや証明できない以上、普通の剣と同じ値段でしか売買できないのである。
 よって、これは普通の剣と同義だ。
 普通の剣の殺傷能力がどれほどかというと、人を殺せる程度だ。
 そう――人じゃないのもを殺すのには向かない。


「やはり海峰を殺すしかない」


 遠野が横から言った。
 こうして茉莉香の英雄インケーンとしての力が弱まりつつあるのは、海峰の策謀によるものである可能性が非常に高かった。


「そうね」

「人は殺したくないけど、海峰は殺すしかない。あいつは人じゃない。彼こそ、人の形をしたジェイソンだ」


 茉莉香は頷いた。
 噂によれば、海峰はこの殺し合いのあらゆる原因を作っている人物らしく、実質主催者同然で、実質参加者のほぼ全員を彼が殺しているらしい。
 遠野自身が殺した筈の香取洋子の死についても、茉莉香から「死体の状態を見るに本当に殺した(トドメを刺した)犯人は海峰」と推理されている。
 洋子のほか、罪もない人をたくさん殺した海峰の事を、正義感の強い遠野が許せる筈がなかった。
 不動高校の恥晒しを生かしておくわけにはいかない。


「異議がある人はいるかい?」


 遠野は訊いた。


「異議なし」

「海峰は殺せ」

「海峰はナチスだ」

「奴は共産主義者だ」

「海峰が指パッチンをすると宇宙の人口が半分になる」

「海峰が女子供を一か所に集めて順番に火炎放射器で虐殺するのを見た」

「手足をもぎ取って引きずりまわせ」

「晒し首にしろ」


 ……どうやら誰にも異論はないようだった。
 支給されていたケータイで不動高校の裏サイトを見ても、海峰を中傷する書き込みは後を絶たない。
 サーバーは既にパンクしている。海峰のせいでIT土方が死ぬ。
 あれ? それにしても、みんなどこに書き込んでるの?
 その答えはただ一つ。
 世界で初めてゲーム病に感染したのは、あんただよ! 宝生永夢!
 あんたがこの殺し合いを仕組んだ真犯人・コンダクターだ!
 そんなわけで海峰が中傷されまくっている。

 噂は恐ろしいもので、徐々に膨れ上がって、すべてが海峰の問題へと収束していく恐怖の現象を起こしてしまう。
 人間とはかくも愚かなものなのだろうか。
 結果的に、海峰はいまや全参加者共通の抹殺対象と化していたし、遠野もすっかり洋子を殺したのは自分ではなく海峰だと思っていた。

 そして、誰より茉莉香にとっては、星くん、綾花、陸、あかり……そして凛の仇であった。
 殺すしかない存在だった。






517 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:18:11 K/3pPHag0



 そして、色々あっていくばくかの時間が過ぎた。


「ヒヤマシーン二号機、発進しなさい!」


 スピーカーから、茉莉香の指示が艦内に響き渡る。
 黒坂村の格納庫から、檜山が製造した手製の搭乗用人型兵器・通称《ヒヤ=マシーン》がめくるめくスピードで空に投げ出され、出撃するのだった。
 海峰を殺害するべく、出撃命令が下されたのは、美咲蓮花だった。


「――」


 蓮花の乗る漆黒かつ真っ黒のブラックカラーで黒くて黒いヒヤ=マシーン《マザー・ローゼンクロイツ》は、左肩に青いバラのペイントが施された全長18mほどの機体である(意味不明)。
 その装備は、超巨大キャノン砲――薔薇十字砲だ。

 右肩に装備されたその薔薇十字砲なるを用いれば、たとえ海峰が搭乗している『血溜』も一瞬で「バラバラ」になりうるだろう。薔薇だけに。
 ヒヤ=マシーンは、搭乗する人物のパーソナルデータを読み込み、それに合わせた超高次的能力を発動可能にする。
 装備も搭乗者の遺伝子コードに合わせて異次元空間「クラインの壺」から転送されるのである。緑川細胞を応用すればこの程度の巨大ロボットを製造する事は造作もない話だ。
 また、寿命を年単位で賭していく事でヒヤ=マシーンは爆発的なエネルギーを放出する事が可能になる。
 寿命を大幅に削れば、地球も容易に火の海に出来るのである。

 そして、このマザー・ローゼンクロイツは現時点で彼らの保有する全機体の中でも一、二を争う機動力を有する。
 何せ、薔薇十字砲の威力がクソ高えんだこれが。
 最大出力で、月を同時に五個破壊できるレベルである。



 が。



 ――出撃から間もなくして、爆音が轟いた。
 マザー・ローゼンクロイツが爆ぜる。


「ヒヤ=マシーン二号機、反応ロスト!! 撃墜されたものと思われます!!」

「なんだって!? 敵は!?」


 マザー・ローゼンクロイツは出撃直後に、艦内のレーダーから反応をロストさせた。
 美咲蓮花を巻き込んで、爆散し、果てていたのだ。
 マザー・ローゼンクロイツは最後の瞬間、そのメインカメラによって、自らを撃墜した敵の正体を彼らに託していた。

 緊急事態。
 画面に映像が映る。


「あれは……黒魔術の怪物、米村……あんなにデカくなっていたのか!?」


 そう、マザー・ローゼンクロイツは全長40mまで巨大化した獣――黒魔術の怪物・米村の右手の爪によって、コクピットを刺し貫かれたのだった。
 既にその体は腐り果てながらも、四足歩行で島内を駆け巡る秒速4000mの米村は、あらゆるレーダーに捕捉されず、ただ、血を求めて突如に現れる。


「……ァァ……ゥゥゥ……オニク……」


 その存在はひたすら彼らに不気味な印象と、強い警戒心を与えていたのだった。
 米村がまさかこんな近くに来ていたとは。時間までに米村を殺害しなければ、あの国がここにミサイルを発射するつもりだというのに。
 そのうえで、海峰殺害を何より優先すべき急務と考えていたのに。

 そして、黒坂村内にいる全参加者は、その不気味な声を再び聴く事になる。


「…………ァァ…………ウゥ…………イタダキ…………マァス…………」


 爪の先に滴る血を舐めとりながら、それは黒坂村の真下に現れていた。
 白神海人の両腕、鬼城歩夢の下半身、霧谷凛の頭、雲沢夏樹の胴体、そして米村のメガネをすべて肥大化させ、いまなお彼らの感覚と意識を残している。
 全身を蟲が這い回るような痒みは持続し、痛みや熱さ、時に息さえも出来ない地獄の苦しみの中で、米村は死ぬ事も出来ずに生存している。
 その苦しみが一時癒されるのは、ニンゲンを食べた時だけだった。
 ニンゲンを食べると、それがしばらく消えてくれる。罪悪感を持ちながらも、その味を覚えた米村は、肉を求めざるを得なかった。
 それが尚更、自らの息の根を止めてほしいと願う理由になっていたが、彼の興味はもはやこの島外にいる人類たちの方になっている。人の肉を食らう瞬間の、終わらない絶頂のような快感に、米村はもはや欲求を抑えられないのだ。


518 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:18:35 K/3pPHag0


「――させるかよっ!! 化け物ッ!!」


 ある機体が出撃する。
 こんな事もあろうかと、六星竜一が搭乗用龍型ヒヤ=マシーン《シックススター・ドラゴンワン》に搭乗して待機していたのだ。
 シックススター・ドラゴンワンは、あらゆる技を盗む事が出来る。
 たとえば、六人のミイラを七人にするトリックなどだ。原作で実行したのは六星ではないが、六星が犯人の事件なので、実質六星がパクったようなもんである。
 何にせよ、島田先生のトリックを使う事が出来る彼は無敵である。


「うおおおおおおおお!!!!!! 斜め屋敷の犯罪!! 異邦の騎士!! 暗闇坂の人喰いの木!!」


 巨大な龍のヒヤマシーンは、そう言って口から炎を吐く。
 二百億度に達するその炎だが、もともと黒魔術の禁忌を犯して蘇った事により灼熱の熱さを体感し続けている米村にとっては関係のない話だった。
 しかし、それはあくまで体感の話だ。肉体としては、燃え尽きていく。


「あっ、腕がもげた!」


 黒魔術を込めたガムテープによって接合されていた白神海人の腕が、シックススター・ドラゴンワンの炎によってもげたのである。
 体から離れたそれは、しばらく魚のように跳ねまわりながら指でもがいていたが、やがて動かなくなり、消滅した。
 白神が地獄の苦しみから解放されたのである。


「ウァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア…………ウゥ………」

「ああああああああああ!!!!!」(どかんっ!!!! どかんっ!!!!!!)

「コロ……シテ………………ハヤク…………」
 
「ぎゅるうううううううん!!!!!!!!! キョエエエエエエエエエ!!!!!!」

「アアアアアアアアアアアアアアア」



(中略)



「海峰……絶対に許さないッ!!」

 茉莉香は、そう決意するのだった。



【美咲蓮花@薔薇十字館殺人事件 死亡】
【残り10人】






519 : グランド・フィナーレ(前編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:18:54 K/3pPHag0



「へへへ……近宮先生……俺はずっと前からあんたの事が好きだったんだよ……」


 服を全て脱ぎ捨てたピエロ左近寺は、荒い息遣いで近宮の前でそう言っていた。
 ここは幻想魔術団の控室である。ピエロ左近寺は、ヤクザっぽい男とつるんで、近宮玲子の裏ビデオ撮影を画策していたのだ。
 ヤクザっぽい男は、言わずと知れたヤクザである。


「ラァッ!!!!! オイッ!!!!!!!! ゴルァァッ!!!!!!!!(訳:オイゴルァ!! ラァッ!!!!)」


 ヤクザである彼は、声を荒げた。

 さて、彼らの生存に、このシーン以上の理由などあるのだろうか。
 実を言えば、この『金田一少年の事件簿』AVネタは想像以上に時間がかかる作業である。何度も読み直してAVに使えそうな題材を見つけ、必死でエロ単語と結びつける。
 あの『飛騨からくり屋敷殺人事件』について、「ヒダからクリまで」という表現を見つけ出せたのは、偶発的な事であり、そうそう考え付くものではない。
 そもそも飛騨からくり屋敷に関して言うならば、どちらかというと「龍之介がボケている隼人を夜な夜な犯していたら、隼人がキレて攻守逆転する」というようなホモネタの方が浮かぶ題材だ。
 征丸といい、隼人といい、龍之介に対して攻守逆転しすぎだろうJK。

 そもそもAVネタなど、そうポンポン浮かぶものではない。
 これを考える時間だけで、脳死化した書き手がどれだけの文章が書けるとお思いだろうか。
 だいたい一日に二万字前後書ける人も、金田一少年の事件簿の原作を考えながら最低なネタを考えているだけで執筆量は三千字くらいまで減る。
 早乙女涼子AVが奇跡的に浮かんだ事ありきで、他キャラのAVタイトルやあらすじを生み出すのはかなり何度も読み返す必要があり、そのうえなかなか関連付けるのが難しい問題なのである。
 原作においてAVを撮影していたヤクザっぽい男を出したは良いが、ロワそっちのけでAVを撮る事を心情とする彼は持て余す事不可避である。

 そう、これはノルマだ。
 よって、AVネタのノルマ消化とともに彼らは何かしらの事情で死ぬ事となるだろう。


「あっ――」


 しかし、そんな時、ピエロ左近寺の前に驚くべきものが咲いた。


 ぴゅ〜〜〜〜。
 どんっ!


 それは、花火であった。
 夏の風物詩ともいえる、炎色反応。
 小気味良い音とともに空に咲く花。
 一面が深い黒の夜空を、花火たちは赤く、青く、黄色く、彩った。
 


「たまや〜っ!!」


 ピエロ左近寺は思わずそう叫んだ。
 不思議だ。左近寺の両目から、一筋の涙が伝った。



 そうだ、誰かが花火を打ち上げたのだ。
 花火の美しさには、もはや、誰も抗えない。

 あの夏祭りを、あの夏休みを、童心に帰って見つめていた。
 彼らの中に温かいものがこみ上げる。


「夏、か……」


 そう言って、左近寺は己の両腕を見つめた。
 何かを悟る。 


 そうか……。
 そういう事だったのか……。


 左近寺だけではない。
 近宮は、ヤクザは、納得する。
 自分の身体が粒子となって空へと帰るように消えていく。

 そうだ。
 自分は、あの時、もう、死んでいたのだ、と。


「おかえりなさい」


 彼らは、微笑みとともに消えていった。
 空にはまだ、花火が打ち上げられ続けていた。



【ピエロ左近寺@魔術列車殺人事件 消滅】
【近宮玲子@魔術列車殺人事件 消滅】
【ヤクザっぽい男@電脳山荘殺人事件 消滅】
【残り7人】



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


520 : グランド・フィナーレ(後編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:19:42 K/3pPHag0



 以下、当初の最終回のプロット。



●金田一暦 192年



・不動高校、ついに廃校告知(10月)

 今回のバトロワを通して不動高校が廃校と言われる。
 これまでもあまりに殺人事件が多すぎたので、廃校しかないという事になったのである。
 そこで、不動高校は、スクール刑事事件フェスティバルに出場して、廃校を免れる事を狙い、殺人事件を起こし始める。


・スクール刑事事件フェスティバル勃発(10月)

 各高校同士で殺人事件の件数を競う全国的なおまつり。優勝した高校はトロフィーが貰える。
 不動高校の生徒たちが一斉にバブルの恰好でダンシング・ヒーローを踊る。


・不動高校にアクシズが落ちる(12月)

 逆襲のシャアとほぼ同じ流れ(金田一や遠野やコナンなど相反する者同士がアクシズを止めようと推理力で押し返していく)。
 ただし、IQが足りないので色んな不動高校生たちが跳ね返されていく。
 「止めてくれ、こんなことに付き合う必要はない!」 「下がれ、来るんじゃない!」
 「駄目だ!推理力のオーバーロードで自爆するだけだぞ!」

・サイコフレームが共鳴してアクシズが消える(12月)

 ここでTMネットワークだかTMレボリューションだかが歌い出す。
 しかし、残念ながら勝手に協力して推理力がオーバーロードした<乱歩>のせいで地球の表面が爆発する。
 これにより、文明の八割が崩壊してしまう。



●金田一暦 196年



・亜種聖杯戦争「Fate/Kindaichi order ― 金田一少年の事件簿聖杯戦争」開幕(2月)

 例のテンプレは作ったけどファイルどっか行ったから添付めんどくさくてもうマヂ無理。。。
 崩壊した文明で生き残った人物たちが金田一少年の事件簿にまつわる英霊を呼び出し、金田一少年の事件簿聖杯戦争開幕。
 スピンオフシリーズとして開始する。
 全ての謎は、過去に記された歴史書「金田一少年の事件簿バトルロワイアル」に起因する事が判明し、ルーラーとしてジョン・レノンが降臨する。


・亜種聖杯戦争「Fate/Kindaichi order ― 金田一少年の事件簿聖杯戦争」閉幕(2月)

 アルティメット化し、肉体を得た遠野が勝ち残る。
 中断していた金田一少年の事件簿バトルロワイアルの再開を願う。
 これにより、再び「金田一少年の事件簿バトルロワイアル」の時系列まで時間が巻き戻る。


521 : グランド・フィナーレ(後編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:20:14 K/3pPHag0



●聖杯戦争が起きなかった別の歴史



・別の歴史において全ての悲劇の救済の神となったリチャードさんにより、金田一少年の事件簿作中に登場する全ての事件が消失

 こちらは聖杯戦争が起きなかった場合の世界。
 過去の全ての殺人事件、およびそのきっかけとなる出来事が存在しない別の歴史が登場する。
 しかし、その歴史にはリチャードさんだけがいない。
 リチャードさんだけがいないまま、金田一や美雪たちは何かを思い出しそうになりながら平穏な時間を辿る。
 最終的に、当麻恵とリチャードさんがすれ違って世界が記憶を取り戻した事で、再びこの歴史は消失して「金田一少年の事件簿」の世界に戻り、物語は終わる……。
 (その後で再び金田一少年の事件簿バトルロワイアルの歴史に繋がるかは不明)



●聖杯戦争が起きたうえで歴史が修正された後の世界(正史)



・「金田一少年の事件簿バトルロワイアル」が再開

 遠野の願望により、中断されていた「金田一少年の事件簿バトルロワイアル」が再開。
 悲劇なき世界を願ったチャネラー桜庭の決死のチャネリングのお陰で、

・チャネラー桜庭復活

 別の世界を霊体となって彷徨っていたチャネラー桜庭が再び地球に戻る。
 新しい身体を手に入れたチャネラー桜庭の戦いにより、海峰と米村の撃破に成功する。

・ラストバトル

 全ての推理力をかけたラストバトルによって、金田一少年の事件簿殺人事件を仕組んだ真犯人が解明される。
 誰が犯人だったのかは君の目で確かめてほしい。
 動機が明かされた事によって、犯人の肉体が超強化されて時空の波が歪みだす。
 これにより時系列が狂い、金田一少年の事件簿と名探偵コナンの世界はサザエ時空になる。
 また、ドラマ版やアニメ版などのパラレルの歴史が構築され、殺戮のディープブルーの歴史は複数個存在するようになる。
 あと、世界法則はやや乱れて、毒入りカプセルが注射器でコルクに刺せるようになる。

・金田一少年の孫が小学校の宿題をする為にタイムトラベルして金田一少年を訪ねる

 これにより時空の波が乱れ、ラスボスが倒れ、歪みかけていた時空の波が逆に元に戻る。
 ただし、サザエ時空やパラレルワールドは生まれたままになる(世界を崩壊させるレベルのエネルギーだけが霧消する)。
 あれほど推理力に固執していた犯人が、小学校の宿題によって倒されるとは何とも皮肉なものだ。

・エピローグ

 これにて金田一ロワが終了する。
 だが、それまでに作られた屍の数はあまりにも多かった。
 生還した者たちの表情に笑顔はない。もし、この悲劇が解放される手段があるとするのなら、すぐにでもその方法に縋るだろう。
 そこで、遠野は神様にアポを取り、その方法がないかを探る。
 これまでのような歴史修正や、SOV化(41話参照)をしなくても、金田一ロワの世界を救う方法があると神様に教えられる。





 だが、その方法がどうしてもわからなかった。





 ――そこで俺は考えたのさ。




 ――――だったら全員殺せばいいってね!





【金田一少年の事件簿バトルロワイアル 完】





【総評】

 魅力的なキャラクターと、緻密なストーリー、壮大なスケールの世界観と伏線の数々に、毎回次はどうなるのだろうと思いながら読んでいました。
 思った以上に爽やかに全滅の予感を残して終わった小気味良いラストが感動的です。
 この最終回を読んで一滴の涙も流さないのであれば、それはもはやジェイソンであると言っても良いでしょう。
 このロワと一言一句同じ内容のロワが作られる事は二度とないんじゃないかというほどの名作。
 パロロワの歴史の汚点として深く刻まれる事でしょう。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


522 : グランド・フィナーレ(後編) ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:20:36 K/3pPHag0





 ――こうして全ての戦いは終わった(ちなみに、チャネラー桜庭はダルシムになった)。



 バトル・ロワイアル。
 この言葉の響きだけで、ここまでの全ての伏線は回収されるような気がする。
 そう思うだろう? あんたも。










 金田一少年の事件簿、FORVER……









【班目るり@黒死蝶殺人事件 生還】
【チャネラー桜庭@魔術列車殺人事件 生還】
【ノーブル由良間@魔術列車殺人事件 なんか生還】
【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件 生還】
【小泉螢子@悲恋湖伝説殺人事件 生還】
【六星竜一@異人館村殺人事件 生還】
【北條アンヌ@異人館ホテル殺人事件 生還】








【劇場版 名探偵コナン ゼロの執行人 BD/DVD ―――― 本日10/3発売】
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【劇場版 名探偵コナン ゼロの執行人 BD/DVD ―――― 本日10/3発売】
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【金田一少年の事件簿バトル和お会い売る ―――― 完】












【あとがき】

『仮面ライダーゴースト』はテレビ版だけ見るとアレですが、関連作品全部見ると名作になります。
おわり。


523 : ◆CKro7V0jEc :2018/10/03(水) 12:26:27 K/3pPHag0
投下終了、というか、金田一ロワ終了です。
これまで読んでくださった皆様、支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。
この最終回は実はかなり前には完成していたのですが、『金田一少年の事件簿』が連載を開始した1992年10月14日に合わせて、10月14日に投下しようと心に決めて、ずっと温めていました。
なので、本日、コナンの映画のDVDが発売する本日10/3に投下する事に決めました。
完成していながら、投下が前回の告知から半年も遅れてしまった事は本当に申し訳なく思っています。
殺されても文句言えないよ、俺……。
そういうわけで、本作がこうして大きな破綻もなく完成したのは皆さまのお陰です。
このスレにいる皆様、2年間もの間、本当に、本当に、ありがおつございました!!!!!!!1!!

最後に一言
ジッチャンの名にかけて!!!!!!!!!!!


524 : 名無しさん :2018/10/03(水) 12:43:16 K/3pPHag0
投下乙(自演)


525 : 名無しさん :2018/10/03(水) 12:58:56 byj2bXtA0
取り急ぎ投下乙です。
何だコレはどうすればいいのだ!?
ちょっと読み直してきますね。


526 : 名無しさん :2018/10/03(水) 13:08:00 uioep.UQ0
まさかの完結、金田一よ永遠なれ


527 : SK :2018/10/03(水) 13:54:03 czKnTLC20
遠野が地獄のオリエンタルを爆破しSKや鷹守などを全員殺したが、失敗したせいで町が粉々になり檜山まで巻き込まれた


528 : 名無しさん :2018/10/03(水) 21:49:45 BVWwaUBE0
完結お疲れ様です

あっそうだ(唐突)ゴーストのVシネは平成ライダー屈指の名作だからホラ、見ろよ見ろよ


529 : 名無しさん :2019/01/08(火) 20:56:22 ldOH9eFs0
しかし、kodaさんはまだ死んではいなかった。甲田、尾ノ上、速水雄一郎(!)が現れていた。


530 : 名無しさん :2019/01/08(火) 20:59:52 ldOH9eFs0
とある男が復活した。香山三郎氏だ。ルイヴィトンの中のあれが光る


531 : ◆CKro7V0jEc :2019/01/31(木) 21:16:18 lYo19IOw0
新年あけましておめでとうございます。
先日予告した通り、エピローグを投下します。


532 : エピローグ ◆CKro7V0jEc :2019/01/31(木) 21:16:58 lYo19IOw0



 色黒の少年が、竹刀を握って立っているのを、数十名の男女が見上げていた。
 それは、金田一ロワの終焉と共に開始した新しいバトルロワイアルだった。
 金田一ロワの完結と共に、人はこう思った。――「コナンロワはないのか?」と。

 極めて順当な考えだった。
 一の次に二が来ると思うのは当たり前の話である。
 金田一が来たら、その次に金田一の後追いで金田一よりもヒットしたコナンが来るのではないかと誰しもが思うのである。
 オレアニメならコ〇ンの方がおもしろいと思うな〜。

 まっ、その期待に天が応えたと言っては何だが、今まさしく、でかいビルのセレモニー会場で、コナンの登場人物たちによるバトルロワイアルが始まろうとしていた。
 ちなみにこのビルは爆発する予定だ。

「おう、みんなぎょうさん起きなさったな」

 壇上で、色黒の少年は、流暢な関西弁でそう言った。
 この事から、その会場にいた誰もが彼を純正の関西人だと理解するに至った。
 ちなみに、会場にはめっちゃ人がいてさっき起きた事とかを本来描写すべきであるが、著者のやる気がないので、書いてない事はだいたい想像で補ってほしい(コナンロワの本来のシチュエーションを作るのはきみたちだ)。

「俺は西の高校生探偵、服部平次や。おおきに。よろしゅう」

 服部平次。
 西の高校生探偵。
 何故。
 彼が。
 バトルロワイアルの。
 司会を。
 勤めているのかは。
 わからなったが。
 とにかく。
 この次の言葉で。
 殺し合いは。
 始まった。

「早速で悪いんやけど、ここにいるあんさんらには、今からちょっとばかり殺し合いをしてもらおうっちゅーわけや」

 そう服部が言った時、会場がざわめいた。
 義経になりたかった人が言った。

「待てや! おふざけ言うたらあかん! ワイらは忙しいんやで!」

「おっと、動かん方が身の為やで。このビルには爆弾が仕掛けられとるさかい!」

 と、服部は爆弾のスイッチを見せつけた。
 義経になりたかった人が数歩退く。


533 : エピローグ ◆CKro7V0jEc :2019/01/31(木) 21:17:53 lYo19IOw0

「何っ! せやかて、おまん! そんな事言うたら、お前も木っ端微塵やんけ!」

「せやで。やけどな、やらなあかん事があるっちゅーわけや」

「そないしてまでやらなあかん事なんざある言うんか!? お前も義経になる言うんか!?」

「義経? ないない。そんなもん興味ないわ。俺が目指すのはたった一つ」

 服部は竹刀を地面に向けて叩きつけた。
 竹刀が爆発した。一同、ぎょっとする。

「最後の一人になるまで戦っちょれ言う事や」

 そうして、バトルロワイアルは始まる。
 コナンロワ。
 これは金田一ロワが生み出された事によって生み出されたワームホールによって生み出された別時空が生み出したロワであり、このロワが生み出された事はコナンロワが生み出たという事である。
 そう、バトルロワイアルは終わらないのである。

「……最後の一人? そいつは俺でも良いのか?」

 壇上から現れた一人の男が言った。

「誰やお前!」

「江戸川コナン……探偵さ!」







 遠野英治は、いつも君たちのそばにいる。
 何があっても君たちと一緒だ。
 生きて生きて、いきぬけ。
 遠野英治は、君たちとともにいる。





 金田一ロワ・エピローグ 缶


534 : ◆CKro7V0jEc :2019/01/31(木) 21:19:38 lYo19IOw0
投下終了です。
色々と紆余曲折あった為、エピローグの内容は当初の予定と大幅に異なってしまいましたが、こんな感じです。
金田一ロワという作品がより多くの人の心の中に残ってくれれば幸いです。


537 : 管理人★ :2019/02/18(月) 23:24:30 ???0
企画の完結に伴い、本スレッドを過去ログ倉庫に移動させていただきます。
完結、おめでとうございます。


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