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サマナーズ・バトルロワイアルif...
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もし……
【まとめwiki】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br-if/
【基本ルール】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br-if/d/%b4%f0%cb%dc%a5%eb%a1%bc%a5%eb
【地図】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br-if/d/%c3%cf%bf%de
【現在位置CGI】ttp://r0109.sitemix.jp/summoner_if/
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当企画は「サマナーズ・バトルロワイアル」の派生企画となります。
板のルールに伴い、これよりOPを再投下します。
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「おはよう、諸君」
暗い、暗い部屋の中。
ふと、そんな声で目が覚めた。
ゆっくりと起きあがり、目を擦りながらあたりを見渡す。
一番初めに見つけたのは、真っ白な学生服に身を包んだ、一人の少年だった。
それに気がついたのと同時に、ふわりと辺りが明るくなっていく。
再び辺りを見渡すと、ここが体育館のような場所なのだと察することができた。
そのほかには、先ほどの自分と同じように、眠りに就いている者達が何人もいることも分かった。
一人、また一人と彼らは次々に起きあがり、自分と同じように困惑の表情を浮かべていく。
「今回集まって貰ったのは、他でもない。君たちに、最後の一人になるまで殺し合いをして貰うためだ」
大半の人間が事態を飲み込めないまま、学生服の少年は衝撃的な言葉を平然と放った。
殺し合い、聞き間違えでなければ、確かにそう言っていた。
「生き残った者には、この魔神皇の片腕として働く権利と、願いを一つなんでも叶えてやることにしよう」
余りに突拍子もない話に、思わず息を飲み込んでしまう。
だが、少年の表情は真剣そのものだ。
彼は、本気で自分たちに"殺し合い"を強いているのだと、分かる。
「ふざけんな!!」
そんな中、一人の少年が立ち上がる。
青いブレザーに、青と緑のチェックのズボンの制服に身を包んだ、一人の少年だった。
彼は、怒りを露わにしながら、白服の少年へと食ってかかる。
「何のつもりかは知らねえが、殺し合いなんて――――」
だが、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
白服の少年の手から放たれた紫色の光が、彼を一瞬で焼き尽くしたからだ。
一瞬の出来事を、不幸にも理解してしまった一部から、怯えるような声が漏れる。
「誰に口を利いていると思っている」
そう告げる少年には、わずかに怒りが浮かんでいた。
だが、それは即座に怪しげな笑顔へと切り替えられる。
「ああ、今の光景を見てもなお逆らおうとする者の為に、一つ良いものを見せてやろう」
そう言った後、白服の少年が指を鳴らすと同時に、警告のようなブザー音が鳴り響いた。
「えっ」
それは、一人の少女の首から、鳴り響いていた。
そして、彼女がそれを理解するよりも早く、警告音は加速していき、やがて。
「やだ――――」
ぼんっ、という軽い音と共に爆発が起こり。
一つの首が宙へと舞い、一部で再び悲鳴が漏れた。
「君たちの首に付けられた首輪、それは私の意志一つで爆発し、君たちの命を奪う。
詳しいことは、後でCOMPでも見ると良い。それに全てを記しておいたからな」
少年の言葉の後に、ゆっくりと首元に手を当てる。
触れたのは、ひんやりとした感触。
今し方一人の少女の命を奪ったのと、同じ物がそこにあるという証拠だった。
「そうだ、一つ教えておこう。
細やかながらCOMPには君たちの"友"となりうる悪魔を封じ込めておいた。
それをどう使うかは、君たち次第だ」
友、という言葉も、悪魔という言葉も引っかかる。
いったい、それは何を指しているのだろうか。
そんなことを考え始めた、矢先であった。
「では、幸運を祈るよ」
少年が指を鳴らすと同時に、体が不安定になる。
次は一体なんだ、と理解すると同時に、自分の体はどこかへと飛んでいった。
「ハハハ、ハハハハハ、ハァーッハッハッハッハ!!」
少年の笑い声を聞きながら、彼らは向かう。
これから始まる、殺し合いの地へと。
【リュウイチ@真・女神転生if... 死亡】
【アキコ@真・女神転生if... 死亡】
【バトルロワイアル 開始】
主催者
【ハザマ@真・女神転生if...】
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OP投下を終了します。
確定登場話の転載は随時進めてまいります。
こちらの当選作の皆さんにもお願いしたいのですが、
参加者名簿の個人ページに、ある程度の解説を記載していただけると助かります。
また、個人ページに初期悪魔の解説も掲載していただけると助かります。
また、予約スレも用意しました。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/5008/1464010199/
こちらの解禁日は5/29(日) 00:00:00です。
本家の翌日ですので、よろしくお願い致します。
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こちらは、OPが同じだけで本家とは別世界(パラレルワールド)になるのでしょうか?
それとも、同じ世界、同じOPでの、別会場になるのでしょうか?
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>>5
前者の認識で大丈夫です(本家とは完全別世界)
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>>6
了解です、ありがとうございます。
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アイテムは買うだけで拾ったりは出来ないんでしょうか?
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>>8
程度によります。
例えば候補話などにもあった日用品程度の調達なら大丈夫なんですが、
たまたま入った民家にマシンガンが〜とか、戦車があったよ! でかした! みたいなことをやられると流石に、って感じですね。
各属性ストーンや破魔矢、メガテン世界の道具は基本的に購入のみ、悪魔ドロップもなしとさせてください。
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投下します
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「火」とは、最も原始的な「力」の象徴である。
◆ ◆ ◆
(マジかよ……)
葛西は自分のCOMPを見ながら、うっすらと顔に汗を浮かべていた。
いちおう知っている名前がないか確認しておくか、くらいの軽い気持ちで開いた名簿。
そこには、信じがたい名前が記されていた。
『シックス』
葛西がこれまで仕えてきた、主の名前である。
(どうしたもんかねえ……)
彼らが普通の主従関係であったなら、合流を考えただろう。
しかし相手は何せ、悪意の化身とも言えるシックスである。
殺し合いという異常な状況下で下手に接触すれば、悪意の方向性が葛西に向く可能性も否定できない。
それより何より、すっかり志々雄に鞍替えする気満々だったのでばつが悪い。
「どうした、知ってる名前でもあったか?」
突っ立ったまま考え込む葛西に、けだるげな様子の志々雄が声をかける。
「まあ、いちおう。とはいえ積極的に合流したい相手でもないんで、どうするかは会っちまったときに考えようかと」
葛西はとりあえず、シックスへの対応については保留することにした。
会場はけっこうな広さだ。偶然出会う確率は、そう高いものではない。
無策というのもよろしくないが、そう深刻に考える必要はないだろう。
もしこの場であの怪物が葬られるようなことがあれば、それはそれでけっこうなことだ。
「それより旦那、なんだか慣れ親しんだにおいがしないかい?」
「あ? ああ、なるほど……」
葛西の発言に最初は顔をしかめた志々雄だったが、すぐに彼の言わんとすることを理解する。
「こりゃ……生き物が焦げたにおいだな」
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◆ ◆ ◆
時は少しさかのぼる。
「その女の子寄越すにゃー! お人形さんにしてかわいがるにゃー!」
「ええい! 寄るな、変態!」
八神はやてと彼女の悪魔であるコックリさんは、野良悪魔のネコマタに絡まれていた。
「いいかげんにしろー!」
コックリさんの手から放出されたのは、青い炎。彼の固有能力・「狐火」である。
自慢の毛皮を焦がされてしまったネコマタは、這々の体で逃げていった。
「あー、ちょっと残念やなあ。ああいうかわいい子なら、友達になりたかったんやけど」
「ダメだ! ああいうのは教育に悪い!」
不満げな表情を浮かべるはやてを、コックリさんが叱責する。
その直後、二人よりもはるかに大きな声が一帯に響いた。
「ぎにゃあああああ!!」
「何や、今の声!?」
「あれは……さっきのネコマタか!」
即座に警戒を強めるコックリさん。
より強力な野良悪魔か、あるいは他の参加者か。
どちらにせよ、生存を最優先する自分たちが関わるべきではない。
彼は素早くそう判断し、その場からはやてを連れて逃げようとする。
だが、最善を尽くしてもなお来訪者から逃れるには遅かった。
「あれを焼いたのは、そっちの獣耳の兄ちゃんかな……?
火力はなかなかだが、焼く時間が短すぎる。
野生動物の肉は、しっかり焼かねえとなあ。火火火……」
砂煙の向こうから、わざとらしく体を揺らしながら葛西が姿を現す。
その傍らには、当然志々雄の姿もあった。
「コックリさん……」
「ああ、わかってる」
葛西たちが放つ禍々しい気配は、はやてにも感じ取られた。
彼らと仲良く話し合いなど、まず出来ない。一刻も早く、離脱するべきだ。
はやてもコックリさんも、そう考えていた。
だが、それを易々とさせるほど葛西たちも甘くはない。
「完全に逃げ腰かよ。つれねえなあ。
少しくらいは付き合ってくれや!」
志々雄が地を蹴る。間合いが一気につまり、コックリさんに刃が振り下ろされる。
コックリさんはとっさに、ふところから取り出したフライパンでそれを防御した。
「おいおい、そりゃたしか調理器具じゃなかったか?
そんなもんで俺とやり合うつもりかよ」
志々雄は、さらに刀を振るう。コックリさんは、必死でそれを受け止める。
「そもそも……やり合う気なんざねえよ!」
劣勢を覆そうと、コックリさんは口から狐火を吐き出す。
だが志々雄は、刀を大きく振るい風圧で炎を吹き飛ばした。
「まるで大道芸だな、おい」
「うるせえ!」
捨て台詞を吐きつつ、コックリさんは斬撃がやんだ隙に距離を取る。
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「手伝おうか、旦那」
「この程度の相手、二人がかりでやるまでもねえよ。
おとなしく見てて……」
葛西に対する志々雄の返答が、途中で途切れる。
「おい……後ろから何か来るぞ」
「え?」
素早く振り向く葛西。彼の視界に移ったのは、四本足で疾走する謎の機械の上に仁王立ちする少女の姿だった。
「なんだぁ!?」
ファンキーな光景に、さすがの葛西も面食らう。
だが動揺しつつも、怪しい物体から遠ざかるのは忘れない。
直後、彼のすぐ脇を機械から放射された炎が通過していった。
「なかなかいかす登場の仕方じゃねえか、お嬢ちゃん。
今の炎は、おじさんたちへの挑戦状って受け取っていいのかな?」
「におう……におうぞ……」
少女に話しかける葛西であったが、少女の口から出たのは返答になっていない言葉であった。
「さてはオメーら、集英社からの刺客だな?」
【文京区・講談社付近/1日目/朝】
【葛西善二郎@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:誰よりも長生きする。
1:とりあえず目の前の相手を倒す。もしくはやり過ごす。
2:シックスに関しては保留
[COMP]
1:志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
[状態]:健康
【ポプ子@ポプテピピック】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:殺し合いを勝ち抜いて、ポプテピピックを復活させる
[備考]
※ファーストシーズン終了時点での参加です
※魔神皇を竹書房の人間だと思っています
[COMP]
1:オメガ@FINAL FANTASY5
[種族]:マシン
[状態]:正常
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一方、コックリさんはこの隙にはやてを車いすごと担いで全力疾走で離脱していた。
【八神はやて@魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's】
[状態]:健康
[装備]:車いす型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:まだどうすればいいかわからないが、とりあえず生き残る。
[COMP]
1:コックリさん@繰繰れ!コックリさん
[種族]:神獣
[状態]:健康
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投下終了です
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投下乙です
シックスの参戦に冷や汗をかく善二郎が微笑ましい。そしてダイナミックに乱入してくるポプ子が集英社の刺客扱いしてて草
はやてちゃんたちも車椅子というハンデがあって大変そうだけど、逃げられて良かったですね
自分も投下します
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(……なるほど、そういうことね)
液晶に目を落とし、表示された情報に目を通していく。
先程のフリッピーの急激な変化に危機感を抱いたヘックスは、情報収集のために悪魔辞典に目を通していた
結果、フリッピーのある程度の情報を知ることができた。
スマートフォンを操作しながら、ヘックスはフリッピーを一別する。
彼は先程の事を気にしているのか、それとも素なのか、おどおどとした視線を返してきた。
ーーフリッピー。種族は妖精。年齢は27。ベトナム帰還兵で、最終的な階級は軍曹。
まさかこんなファンシーな存在が、いわば自分の同士だったとは、驚きというより笑ってしまった。
フリッピーは普段は素直で穏やかな性格らしいが、ナムのトラウマから重度の戦闘神経症を患っているらしい。
その為、戦争を連想させるものに過敏に反応し、狂暴かつ猟奇的な人格に変貌してしまうとか。
具体的には
破裂音等の銃声に似た音
刃物、爆発物等の武器を見る
火を見る(特に激しい炎等)
血痕(ケチャップを血と勘違いしたこともある)
などが例とされていた
ーー連れ歩くには危なすぎる。
ヘックスがそう判断するのに数秒と掛からなかった。
先程の豹変も納得がいった。自分の持つM16カービンをみて、ナムのトラウマが過ったのだろう。幸いにも、不発に終わったが……
だがその特性が渋いことには代わりがない。
召喚によるマッカの消費は痛いが、ヘタに刺激して背後から襲いかかってきたらたまったものじゃない。
「ごめんね。貴方はもう少しこの中に居て」
ヘックスは、しゅんとするフリッピーを慎重に宥めつつ、彼を一度COMPへと戻した。
「……さてっと、行きましょうか」
銃も問題ない。悪魔の問題にも一段落ついた。
このホテルを拠点にするにしても、何か行動を起こさねばならない。
ヘックスは、近隣の参加者と接触するためにその場を移動することにした。
「あれは……」
予想よりも早くに他の参加者は発見できた。
大通りを歩く二人組で、両方とも男性。
遠目からでも、両者ともかなりガッチリとした体格なのがわかる。その上、片方はロケットランチャーを担いでいた
(あの男たち……ただ者じゃないわね。よく鍛えられてるわぁ)
何気ない動作から、何らかの訓練を施してきた人物だと直感した。恐らく軍人、それも相当の手練れだろう
接触を持つべきか否か、ヘックスは悩んだ。この時点で彼らが殺し合いに乗っているとは確定していないが、もし乗っていたら、此方が不利だ。
(RPGなんて厄介なものまで持っているし、さてどうするか……ん?)
そこでふとヘックスは、男の顔に見覚えがあることに気がついた。
あの顔立ちにあの体格。どこかで、確か、まだ軍に居た頃に……まさか……
その可能性に思い至ったとき、ヘックスは戦慄した。
確かに名簿に同じ名前はあったが……本人かもしれないという可能性を失念していた
もし彼が、想像している人物なら、確実に接触しておくべき人間だ。
意を決して、ヘックスは彼らへ近づいた。
「すみません」
その声に、ヘックスからより近い距離に居た男が振り向く。
その顔を間近でみて、ヘックスは確信した。直接会ったことはないが、資料で見た通りの顔立ち。やはり『彼』だ。
「貴方は……ジョン・メイトリックス大佐ですか?」
ーージョン・メイトリックス
元コマンドー精鋭部隊の隊長で、直属の上司であるカービー将軍の命の下、東南アジアや南米、 ソ連邦、更にはテロリストといった資本主義社会の敵と戦って来た最強の兵士にして、アメリカの英雄的人物。
祖国のためにテロと戦っている自分にとって、謂わば理想とも言える男の名を、彼女は確信と共に口にした。
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訪ねられた男は、無表情にヘックスを一別する。最初、その視線は彼女の持つM16カービンヘ向けられたが、銃口が下がっていることと、彼女に撃つ意志がないことを察すると、口を開いた。
「ジョン・メイトリックスは彼だ」
そういって無表情に同行者を指差す。
ヘックスは固まった。それは間違いを指摘されたからではなく、もうひとりの方の顔をみたからだった。
同じ顔、同じ体格
なぜ気がつかなかったのか、このふたり組は、不気味なほど似通っていた。
「俺は確かにジョン・メイトリックスだが…… 君は誰だ?」
さらに驚いた。なんと声まで同じだ!
「わ、私はCIAの者で、名簿ではヘックスと記載されています」
交渉においては、その容姿や性で相手を手玉にとってきたヘックスも、さすがに動揺したようだった。
少しつま付きながらも、自分の履歴や方針などを伝えていく
それが、合衆国のために働く者たちのファーストコンタクトだった。
【豊島区・センチュリオンホテル付近/1日目/朝】
【ヘックス@ヨルムンガンド】
[状態]:健康
[装備]:M16カービン(30/30発、予備弾30×3)、COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:民間人は保護し、殺し合いに乗った危険人物と魔神皇を排除する
1:大佐と情報交換し、できれば行動を共にしたい
[備考]
※軍所属時代の経験から、ジョン・メイトリックスのことを知識として把握しています
[COMP]
1:フリッピー@Happy Tree Friends
[種族]:妖精
[状態]:健康、COMPの中
結局、T-800と名乗る自分そっくりの悪魔からは、魔神皇に繋がるような情報は得られなかった。
その事実に落胆しつつも、脱出のためにどう行動するべきか俺は悩んでいた。
それを考えると、CIA所属を名乗る女性と遭遇したことは幸運だったのかもしれない。
先程なら誰かに尾行されていることに気がついてはいたが、それが殺し合いに乗っておらず、尚且つ同じ合衆国の人間だったという事実は心情ともに喜ばしかった。
ヘックス。本名ではないだろうが、確かに名簿に名前があった。
現在はCIA所属だが、軍に居たことがあるらしく、彼女は俺の事を知っていた。
予想通りというべきか、俺と瓜二つのT-800を見て驚いていたが……
そういえば昔、カービー将軍が女性隊員のみの部隊が企画されたことがあったと話していた事があるが、政治的理由でお蔵入りしたと聞いている。話を聞くと、彼女はその部隊で訓練を受けたようだ。
「ーーというわけで、私は魔神皇の排除と民間人の保護を目的としています」
そう語ったヘックスは、俺に協力を依頼してきた。英雄の力添えがあれば心強いとか。参ったな、もう隠居しているんだが……
だが、その指針自体に異議を唱える気はない。
「わかった。ぜひとも協力させてくれ」
俺は彼女の提案に乗ることにした。
【ジョン・メイトリックス@コマンドー】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ロケットランチャー型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:ヘックスと行動を共にする
2:民間人は保護する
[COMP]
1:T-800@ターミネーター2
[状態]:健康
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投下終了です
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投下します。
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右足を引き吊りながらビルの通路を歩く男。
その男の名は『DIO』。
一先ず、近くにあった布で応急処置を行ったDIO。
だが、そこで自身の身体の異変に気付いた。
吸血鬼の肉体を持つこの男。
少々の傷ならばすぐに回復は出来る。
しかし、今は違う。そんなに早く傷は治らない。
(身体の回復速度が遅い……!
くっ、忌々しいぞ、魔神皇……!)
恐らくは何かしら仕組まれた。
考えられるとしたら、この首輪にそういう力がある。
そう考えるのが妥当であった。
なら、この首輪をどうにかして外す。
ならば自身の首を切断して、首輪を外して、再び身体と繋ぎ合わせる。
そんなことも考えたが、恐らくは無理である。
吸血鬼としての再生能力が衰えている状態でもしそのようなことで死んでしまったら……
DIOはターバンのガキに警戒しつつ、進む。
右足をピンポイントで狙ってくる悪魔。
警戒するのは他にもいるが、今はターバンのガキを警戒する。
ターバンのガキに肉の芽を埋め込んでやろうかとも考えたが。
もしかしたら、傷の回復速度同様何かしらの制限が掛かっているかもしれない。
自分にこんな悪魔を友としてこんなガキを寄越してきたような輩だ。
魔神皇が他にどんな仕打ちを仕掛けているか見当も付かない。
スタートの時間も朝だったし。あと少しで自身も灰になることだった。
そんな仕打ちを受ければキレるよ、だってDIOは吸血鬼なのだから。
(おのれ……この帝王DIOにここまでコケにされるなどとーーーーっ!!)
「えいっ!」
「ぬうっ!?」
再びターバンのガキに右足を刺された。
今度は自身にはでなく、自身のスタンド『ザ・ワールド』が刺された。
もちろん自身のスタンドへのダメージなのでも自身にもダメージはある。
だが、分かったことがある。
先程、DIO直々に『友達になろうよ』と誘った野良悪魔の右足にもナイフを突き刺した。
その一撃で野良悪魔は息絶えて、消滅してしまった。
せっかく合体素材にして、ターバンのガキを悪魔合体させようとしたのに……。
もうやけっぱちになり、DIOはCOMP内にターバンのガキをRETURNさせた。
再召喚にマッカが掛かるが、もうそんなことはどうだっていいのだ。
今を生ききり、夜まで耐えれられればいいのだ。
そして、DIOは府r他度右足を引き吊りながらビルの通路を歩きだした。
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しばらく歩くとDIOはとある場所を発見した。
そこには四つの椅子とどこか機械的にテーブルが一つ。
そこでやれることをDIOは知っていた。
「ほう、麻雀卓か……」
近くにはその麻雀卓の近くにはルールブックらしきものが置かれていた。
だが、DIOは麻雀のルールは知っている。
全世界の麻雀競技者人口は1億人以上いるのだから。
そして、DIOはさっさと麻雀卓に座……
「舐めてるのかーーーーーーーっ!!!!!!」
らなかった。
DIOは麻雀卓を左足で思いっきり蹴り飛ばした。
一人しかいないので麻雀は出来ない。
『ザ・ワールド』とターバンのガキを合わせても三麻しかできない。
それでもいいかと考えたが、ターバンのガキに再び右足をさsれるかもしれない。
だが、そんなことよりも……
『殺し合いの最中に麻雀するようなマヌケな輩が居たら見てみたいものだ』
そう思うDIOであった。
こうして帝王DIOはまだ動けずにいた。
【新宿区内ビル/1日目/朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右足に刺し傷、イライラしている
[装備]:ナイフ型COMP
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:殺し合いを勝ち残り、あの主催の少年を処刑する。
0:このターバンのガキをどうにかする。
[COMP]
1:ターバンのガキ@北斗の拳イチゴ味
[状態]:健康、COMPの中
残存MP180/200(参加者には確認できない)
スキル:分裂、消費MP:10
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投下終了です
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投下乙!
『殺し合いの最中に麻雀するようなマヌケな輩が居たら見てみたいものだ』
鏡を用意しよう
-
皆様投下乙です!
>>15
ポプ子wwwww 間違ってねーけどさーw
はやては間一髪ラッキーでしたね。
>>19
なるほどCIAならメイトリックスを知ってるかも!
しかし、誰でも同じ顔で同じ声の人間がいたらびっくりしますね。
>>23
とりあえず冷静にCOMPにしまうDIO様。
麻雀、別所では打ってるらしいですね……
-
皆さま投下乙です。
>:誰も彼も、火の前で踊れ
葛西&CCOの作ったシリアスムードをぶち壊すポプ子w
そういやこいつらジャンプ出身だったな
はやてちゃんとコックリさんは上手いこと逃げられてラッキー
>星条旗よ、永遠なれ
この軍人ども、頼もしすぎる。
特にシュワちゃんコンビ、彼らを脅かせる者はいるのだろうか。
>吸血鬼は朝に弱い(物理)
ターバンのガキに刺されるわ勧誘しようとした野良悪魔消されるわ朝でロクに動けないわ、踏んだり蹴ったりなDIO様
次はきっといいことがあるよ、うん。
ところであなたの言ったマヌケな輩、きっと黄色い服でハートマークをいっぱい付けてる素敵なおじ様だと思いますよ
投下します。
-
☆
小さな一軒家。
4人の男女がテーブルに向かい合って座っている。
「いやあ、よかったよ。殺し合いに乗ってる人と出会わなくて」
そう切り出したのは、爽やかな風貌の青年、遠野英治だった。
「ええ。最初に出遭ったのがあなたたちで本当に助かったわ」
服の代用としてタオルを巻いた綾女は、身体を擦りながらそう返した。
別に身体が疼いているとかそういうことではなく、単に寒いのだ。
「すまないな、ミス華城。上着でも持ってれば貸してやることが出来たんだが」
「お気遣いありがとうございます、ムテバさん」
さりげなく気遣ってくれるムテバに対して、綾女は下ネタを口にしない生徒会副会長としての顔で礼を述べる。
ホントはこの機に下ネタを大声で叫びまわって街中を駆け巡りたいが、危険人物がどこに潜んでるかわからない危険な状況では、まあ多少はね?
それにしても、海パン一丁で全身に刺青を彫ったガチムチのムテバという男。
どう見てもカタギではない強面だが、そこはかとない紳士な佇まいのおかげで接する者にかなり好印象を抱かせる。
白スーツなんかも難なく着こなせるだろう。
「これ、淫夢くんっていうんだ。触って、どうぞ」
「は、はぁ...」
それに対してこちらのクソ汚いステロイドハゲは、淫夢くんを弄ぶだけでこちらには一切気を配らない。
しかも言葉をかけるのはほとんど遠野とムテバ、更に言えばほとんど遠野にばかり喋りかけている。
同じ海パン一丁の男で、どうしてこうも差が出るのか。
交換できるなら是非交換して欲しい。そう切に願う。
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遠野英治とムテバ・ギゼンガ。
ゲームに乗った彼らが、こうして綾女達に和やかに接しているのは理由があった。
遠野達が綾女達と出会う前のこと。
彼らは、会場の野良悪魔に襲われた。
その悪魔はムテバが難なく排除したが、人外の者がいると解れば自然と警戒心も高まってしまう。
たまたまムテバは肉弾戦を得意とする悪魔だったが、もっと奇術染みた技を使う悪魔もいるかもしれない。
この人間狩り(マンハント)、生半可なものではないことを改めて思い知らされた。
だが、この程度の障害でを諦めるほど、遠野の執念はヤワではない。
そう、螢子を殺した犯人を捜しだし、この手で殺すという執念は。
皆殺しの方針を変えないとするならばどうするか?
決まっている。焦らず、着実に、確実に一人一人殺していくだけだ。
念のためにムテバに意見を求めたが、意外にも二つ返事で同意。
見るからに肉体派である彼だが、その実は格闘家ではなく傭兵である。
人類最強の男を自負する彼だが、決してその強さに驕っているわけではない。
敵が実力者であればその強さを認め、未知の敵に対してはしっかりと分析をし、着実に勝機を増やしていく慎重さも持ち合わせている。
そうでなければ、その身一つで戦場を生き残るのは不可能だ。
そして、慎重なのは遠野も同じ。
彼が無計画に殺すだけの殺戮者なら、そもそも『悲恋湖リゾートモニターツアー』を利用しての計画など思いつくはずも無い。
ましてや、自分が死んだと思い込ませるため、急きょ参加を辞退してしまった男を利用するなど不可能である。
そんな彼だからこそ、螢子を殺した人物がわからなければ、唯一の手がかりである"オリエンタル号に乗っていたS・Kのイニシャルの人間"を一纏めに集め全員を殺すという合理的な発想ができたのだ。
故に、彼らは待つ。
狩りの好機が訪れる、その時を。
だが、チャンスを窺っているのは彼らだけでなかった。
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「喉渇いた...喉渇かない?」
野獣先輩のその唐突な提案に、偶然喉が渇いていた綾女は思わず同意してしまう。
「何か飲み物持ってくる。ちょっと待ってて」
遠野たちの同意を求める間もなく、野獣先輩は台所へと向かっていく。
意外にいいところあるのね、とほんのちょっぴり見直す綾女。
遠野も、唐突な提案意外は不自然な流れではなかったため、行動自体には何ら違和感をおぼえなかった。
(ククッ...なにを興奮してやがる)
だが、この男、ムテバ・ギゼンガは違う。
彼は、過去の戦いの中で視力を失った。つまり全盲である。だが、それでも戦うことを諦めなかった。
人間の五感というものは、一つを失うと残りの感覚で不足分を補おうとする。
失った視力の代わりに得たものは、並外れた聴力、嗅覚、触覚。
彼の言葉を借りるなら、「常人以上に視えている」ということだ。
もちろん、そんな彼が野獣先輩の一挙一動を見逃すはずも無く。
(あいつ...なにか盛りやがったな?)
遠野たちからは見えないようにうまく手元を隠しているが、ムテバの前ではなんの意味も為さない。
四つのコップに何かを注ぎ終えた後、野獣先輩は、その内三つになにかを入れた。
臭いはしないことから、おそらく劇薬ではないはず。
しかし、少なくとも飲めばただでは済むまい。
(なにより気にかかるのは、入れたのは"三つ"。即ち、こいつのマスターであるミス華城もターゲットってことだ)
自分の主である少女にすら牙を剥く悪魔。
何が目的かは知らないが、呼び出された悪魔の主が死ねばロクなことにならないのは考えずとも解るだろうに。
それすら厭わず己の願望のままに振る舞う。まさに獣、いや野獣だ。
こんな悪魔なら、放っておいても他の参加者とぶつかり合うのは目に見えている。
人類最強を自負するムテバとはいえ、戦闘を重ねすぎて自滅する可能性はある。
楽に仕事ができるならそれに越したことはない。
(こいつを放っておいて適当に他の参加者と潰しあわせるか。それとも狂獣はさっさと殺処分しちまうか。さてどうするかな)
ムテバは考える。この殺し合いを有利に運ぶ最適な回答を。
-
そして、ムテバから疑念をかけられている当の野獣先輩は―――
(遠野...)
ムテバの予想通り、彼はアイスティーの中にホモコロリ(超強力睡眠薬)を混入していた。
何故?決まっている。己の欲望を満たすためだ。
彼が入れたホモコロリの数は三つ。
綾女、ムテバ、遠野の三人分である。
勿論、サマナーである綾女が眠りに堕ちれば彼女は無防備になる上に、野獣先輩の行動は制限される。
利益などなにもない。マイナスなだけだ。
だが、自分を壊して火が点きそうなこの情熱は、衝動は、最早彼にも止められなくなっていた。
なにが彼をここまで駆り立てるのか。
そもそも、野獣先輩が野獣と呼ばれるようになった由縁はなにか。
連れ込んだ後輩を睡眠薬で眠らせ、性欲のままに襲ったことからだ。
では、なぜそんな野獣の行いをしてしまったのか。
偏に、その後輩―――"遠野"という青年を愛してしまった故の結果である。
男同士、ましてや成人済みの男への恋だ。
公序良俗健全育成法は勿論、そんなものが無かった日本でも煙たがられていた存在だ。
そんな決して叶わぬ恋が、彼を野獣へと駆り立ててしまったのだ。
これが野獣先輩の成り立ちである。
そんな折、この殺し合いで召喚されて間もなく現れた青年の名は"遠野"。
彼の存在が、再び先輩を野獣へと変貌させてしまったのだ。
いくら野獣先輩とはいえ、苗字が同じだけで、且つ遠野というありふれた苗字だけで彼が愛した後輩と間違えるなんてあるわけないだろいい加減にしろ!
そう考える人もいるだろう。
だが少しだけ待ってほしい。
確かに顔も声も違う彼らを同一人物だと間違えるのは難しいかもしれない。
しかし、それは『野獣先輩が水泳部の田所本人である』という前提があればこそだ。
この野獣先輩、114514MPの内いくらかを消費することと、諸々の諸説を重ね合わせることにより、様々な姿に変身できる。
言い変えれば、それは本当の姿を持たない・確定していないことに他ならない。
幾多の姿を用いることにより、『水泳部の田所』の記憶が薄れてしまったのだとしたら。
その中でも一際深く濃厚な『遠野という青年への愛』のみが情報として残ってしまったのだとしたら。
彼が、遠野英治を愛してしまったのも無理はないのかもしれない。
そして、参加者の名簿もまた彼の遠野英治への想いを滾らせることになる。
彼は、綾女のCOMPである淫夢くんを弄っている際、さりげなく参加者の名簿を確認していた。
淫夢くんがガッツポーズをしている間だけ、且つ触れている者にしか見えない、脇に表示された液晶画面。
僅かなサイズから与えられる情報を、野獣先輩は一つ余さず読み取っていた。
その中には、『遠野』という名字の人間は『遠野英治』しか存在しなかった。
己の中に燻る『遠野』の名と、参加者として呼ばれたただ一人の『遠野』英治。
この奇跡的な事実に、野獣先輩は運命を感じずにはいられなかった。
"遠野という苗字"、"名簿には『遠野』が他に存在しない"、"野獣先輩に残っているのは遠野を愛したという事実のみ"、"運命の如く最初に出遭ってしまった"
奇しくも、これらの事実が重なってしまったことにより、野獣先輩は決めたのだ。
もう一度遠野に想いをぶつけようと。
そのためには、自分のサマナーである綾女も、ガチホモ的にはそそられる身体つきのムテバも邪魔者でしかなかった。
そこで彼は考えたのだ。だったら全員眠らせればいいってね!(迫真)
「お ま た せ。アイスティーしかなかったけどいいかな」
そして、野獣の愛の結晶はテーブルに置かれた。
それに気づいているのは、盲目の殺戮傭兵ただ一人。
四者四様の思いが交差する中、最初に動くのは―――
-
※テーブルに並べられた四つのアイスティーの内、三つにホモコロリ(超強力睡眠剤:無味無臭)が入っています。
【華城綾女@下ネタという概念が存在しない退屈な世界】
[状態]:健康、雪原の青装備、身体にタオルを巻いている
[装備]:COMP(淫夢くん型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する
0:ちゃんとした服が欲しい。
1:これからの方針を決める。
[COMP]
1:野獣先輩@真夏の夜の淫夢
[種族]:淫夢
[状態]:健康、興奮
0:遠野に薬(ホモコロリ)を盛って犯す。
1:邪魔者(綾女とムテバ)は眠らせる。
※遠野英治を後輩の遠野と勘違いをしています。
【遠野英治@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:優勝し、螢子を殺した奴を探し出してもらう。できなければあの主催の少年も殺す。
0:油断せず、殺せる者は着実に殺していく。
1:『S・K』のイニシャルの者はできればこの手で殺したい。
[COMP]
1:ムテバ・ギゼンガ@ケンガンアシュラ
[状態]:健康
0:さて、どうするかねぇ
※ムテバはアイスティーになにかが入っていることに気が付いています。
投下終了です
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投下乙です
なんだこれは……たまげたなぁ
悪魔と化してもなお昏睡レイプを敢行しようとする野獣は人間の屑
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質問ですが。
・夜などに寝る場所はどうなるのでしょか?
誰もいない建物を使ったりとか野宿は有りですか?
(ホテルとかに泊まるのは高そうなので)
ついでに温泉とかOKでしょか?
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遠野新説シリーズかな?
サイコパスとはいえ、イケメンだから多少はね?
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>>15
集英社からの刺客にくっそ吹いた
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投下乙です!
見境いなさすぎィ!! きたないホモはやりかたも汚い、はっきりわかんだね。
ムテバさんがどう転がるか……?
>>33
基本的にNPCは排除されてると考えていただいて結構です。
(本家の方でも既にコンビニなどからルートされてる描写が有ります)
よろず屋や回復の泉にいるNPCは魔神皇の手下で、「ただ者ではない」認識をしておいていただければ。
なので、赤坂プリンスホテルとかに泊まっても大丈夫です。
-
突然の投下失礼するゾ〜(謝罪)
◆ZbV3TMNKJw兄貴の投下面白スギィ!!!!!
自分、投下乙いいっすか?
淫夢知ってそうだから淫夢のリストにぶち込んでやるぜー
いきなり投下乙してすみません!
許してください!なんでもしますから!(なんでもするとは言ってない)
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多くの感想ありがとうございます。
現在地の表示を忘れていたので>>31の状態表に
【港区のとある民家/1日目/朝】
を追加します。
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投下乙です
そら遠野も記憶を消したくなりますわ
まあ記憶消えてからも変態に捕まるんだけど…
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投下します
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王は背中に主を乗せ、空を優雅に駆けて行く。
地上にある障害物が走りの邪魔になることはなく、道端に小石が落ちている程度の
認識で進路を進んで行く。
「貴様は浮いているようだが、疲れないのか?」
『呼吸をするのは運動と呼びません。つまりはそういうことです』
初めてこの馬からテレパシーを受けたときは、何となく分かる程度だった。
まるで雑音混じりのラジオを聞いているようで、ある程度の意味しか理解出来ない。
そんな感じで何度かやりとりをしているうちに、徐々に言葉として聞こえるようになった。
それについて尋ねれば、テレパシーは初めて使ったためにやり方がよく分かりませんでした
と俺に正直に答えた。
「主で実験をするとは、とんだ馬だな貴様」
そう言った顔は怒っていない。むしろ、何と返答するのか面白そうだと言っている。
『実験目的の使用ではありません。サマナーが意思疎通の問題で困惑しておりましたから実行しました』
「・・・・・俺の考えが分かるのか?」
『えぇっ、分かります。思考を読めますから・・・迷惑でしたら今後止めましょうか?』
「かまわん、便利だ・・・・・っと。下に行け、悪魔共がいる」
鳥、犬、ライオンと大小様々有象無象の悪魔が徘徊している。
地上へ静かに降り立ったためか、まだこちらには気付いていない。
「貴様だけで戦えるか?」
『問題ありません』
視界に映る敵を睨みつけるように、水色の瞳が怪しく赤く光っている。
鬣が、ザワリッと蠢いた。
「そうか・・・ならば、お前の価値を俺に見せてみろ」
鬣を使い、馬車から降りる主をエスコートする従者のように優しくアドラーを背中から降ろす。
そうしてから、悪魔の群れへと飛び込んで行った。
「◆◆◆◆◆ー!!」
悪魔達を前にして高らかに上げた雄叫びのような嘶きが、決闘開始の合図となった。
-
「ガアアアァァァー!!」
ライオンのような悪魔ケルベロスは、口から高温の火炎を目の前の敵へとお見舞いする。
当たった。そう思った次の瞬間に、相手の姿は消えていた。
普通、避ける場合は手や足を使う。動くにはそれが必要だから。
しかし、サイキック族のゲノム・ヘリターは超能力を使える。
よって普通では不可能な方法、予備動作なしで素早く浮き上がり回避を成功させる。
ついでに、後ろで襲いかかろうとしていた悪魔が攻撃をうけて哀れな鳴き声と共に崩れおちた。
「グルルル・・・・・」
こちらの思考を読んでいるかのように攻撃を躱し、利用する不気味な相手へと怒りの混じった唸り声をあげる。
相手は遠くに着地すると、そのまま動かなくなった。
優越感にでも浸っているのか?
「グウウゥゥゥ、キサマァー!?」
いや違う。みれば、何か光のようなものが相手の目の前に集まっている。
「◆◆◆◆ー!!」
フラッシュインパクト。
そう名付けられた攻撃は、悪魔の群れへと撃ちだされた。
-
一匹だけ生き残り逃げようとした相手の前へ、ゲノム・ヘリターは立ち塞がった。
「・・・・・」
「ガアアアー!!」
ゲノム・ヘリター本人は動かずに、黄色の鬣がシュルシュルと音をたてて相手に襲いかかる。
獲物へ手の代わりに伸ばされたソレはまるで鞭のようにしなり、
蛇のように標的を締め付け捕らえて離さない。
「ウ、ウウウゥゥ・・・・・」
そうして、抵抗が出来なくなった相手から何もかもを奪いつくし始める。
【名前】を奪い、ゲノム・ヘリターはケルベロスという名前になる。
【力】を奪い、今現在名無しさんにされた悪魔を無力にして。
【能力】を奪い、抵抗すための切り札さえ台無しにする。
無常にもケルベロスをただの名も無き悪魔へと変えてしまうと、今度は自身の全身を変え始める。
「ナ、ナンダ。ナンダオマエ!?」
そうして今現在ケルベロスであるゲノムヘリターは、顔に仮面を付けているが相手と同じ姿になった。
「オ、オレサマダレ?オマエオレ?ド、ドウシテカラダニチカラガハイラナイ?」
「◆◆◆◆ー!!」
混乱している元ケルベルスは、力がまったく入らない身体を懸命に奮い立たせて
ブレスで反撃しようとした。
しかし、口からは何も出ない。
逆に相手が炎を吐き出して、名無しの悪魔は炎に包まれた。
-
『どうでしたか?私は』
身体も名前もゲノム・ヘリターへと戻った悪魔は、主へと感想を求める。
褒めることをねだるペットというよりも、事務報告をする秘書のように。
「貴様は随分と面白い悪魔だな?なかなか楽しめたぞ」
悪魔の問いに、研究材料が予想外の結果を出して喜ぶ科学者のような顔で返答する。
悪魔というからには人知を超えた力を持っているだろうと思っていたが、
配られた悪魔がまさにそれだったとは。
『そうですか、それはよかった』
「・・・考えが分かるというのに、おかしなことをいうな?」
『いつでもサマナーの思考を読んでいるわけではありません。許可はいただきましたが、
TPOは大事ですから』
「律儀な奴め。で、あのライオンに変身したり、ライオンがおかしくなったりしていたが・・・・・何をした?」
『ケルベロス・・・あの悪魔から【名前】【力】【能力】を奪いました』
【名前】がないから自分がわからず、【力】がないから虚脱し、【能力】を奪ったから炎が扱えなくなった。
【名前】という血を啜り
【力】という肉を喰らい
【能力】という骨をしゃぶりつくす
アドラーは、品評会が似合うと思ったことを改めた。
この馬は、相手が座る玉座を無理矢理に奪い取り居座る王だ。
お上品そうな格好や口調に礼儀正しい性格をしているがその実、掠奪には一切手を抜くことがない。
相手が泣き叫ぼうが、悲鳴を上げようがお構いなしに喰らい尽くす。
この悪魔は、弱肉強食のこの世界に相応しい存在だろう。
「最後に一匹生かしていたのはワザとだな。貴様の能力を俺に見せるためか」
『出来ることの全てを見たいと望んでおりましたから』
主人に忠実な駿馬のように、基本的にサマナー優先思考らしい。
『次はどうしますか?』
「仲魔(駒)を増やしたい。が、その前に街を見て回りたい」
【豊島区・公園/1日目/朝】
【エルンスト・フォン・アドラー@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康
[装備]:COMP(トロンのデュエルディスク型)、電光服
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:30000
[思考・状況]
基本:シャイセ!片腕として使ってやろう?願い事を叶える?ふざけるな魔神皇!!
1:街を色々と見て回る。
2:仲魔(駒)を増やす
3:首輪の取得と解析(いまは保留)
[COMP]
1:No.8 紋章王ゲノム・ヘリター@遊☆戯☆王ZEXAL
[種族]:神獣
[状態]:健康
-
リゾットは、メタリカを使って姿を消しながら監視に集中していた。
相手は、物言わぬ悪魔とまるで会話をしているように話しかけている男。
立ち振る舞いからの推測だが、男は本物の軍人。
軍服はコスプレではなく本物なのだろう。
その男を見つけたのは、本当に偶然だった。
こいしと共に歩いていると、空から馬のような悪魔に乗っている人物が見えた。
(なんだ、あの男は?)
地上に降りた相手を、メタリカで姿を隠しながら気配を消して様子を窺ってみた。
結果は、接触を試みようとしなくて正解という結論になった。
一挙一動が自信に満ち溢れていて隙が無く、悪魔を見る眼差しからは人の持つ
温かさを感じられない。おそらく他者に心を開くことは絶対にないタイプの人間。
暗殺者としての経験からくる勘と人間観察の結果だが、間違ってはいないはず。
リゾットは、その場から静かに立ち去った。
ちなみに、気付いたときにはこいしがまたいなくなっていた。
(・・・・・何処に行ったんだ)
【リゾット・ネエロ@ジョジョの奇妙な冒険 part5 黄金の旋風】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[所持マッカ]:30000
[思考・状況]
基本:
1:脱出する
2:魔神皇に落とし前をつける
3:魔獣ネコマタと霊鳥ヤタガラスをCOMPに入れています。
[COMP]
1:古明地こいし@東方project
[種族]:地霊
[状態]:健康
2:ネコマタ
[種族]:魔獣
[状態]:健康
3:ヤタガラス
[種族]:霊鳥
[状態]:健康
-
投下終了します。
遺伝子と心理学という共通点があることに後で気付いた。
-
ケルベロスを容易く葬ってしまうゲノム・ヘリターコワすぎィ!
【名前】【力】【能力】を奪うってヤバいっすね……
そしてあいかわらずのフリーダムなこいしちゃん、リゾットがんばれ……
それでは、自分も投下します
-
東京都新宿区――歌舞伎町
誰でも見るからにご機嫌だと分かる程の笑みを浮かべた獣耳の少女が、繁華街を歩いていた。
その場所を象徴するネオンの光りが軒並み消えているにも関わらず、色とりどりの看板が五月蝿いくらいに色街である事を主張している。
その少女は大胆に胸部が露出する服を着ており、妙にこの街に馴染んで見えた。
「や、やっぱり、自分で歩くよ……この姿でもそんなに遅くはないし……」
「ダメですよ〜、それでご主人様が疲れちゃったら本末転倒じゃないですか♪」
一見1人でいるように見える少女が、楽しげに会話をし始めた。
見る所、彼女は通信機器などを持っている様子はない。
ならば彼女は誰と喋っているのか――その答えは、大きなその胸にあった。
歩を進める度に揺れる立派な乳房の谷間には、イタチ科の小動物が顔を覗かせている。
まさか、と思われるかも知れないが、声の発信源はその小動物である。
ユーノ・スクライア――それが彼の名前であり、その正体も、動物ではなく紛れも無い人間だ。
魔導師である彼は、魔力消費を抑えるために一時的にフェレットに变化しているのだ。
「でも、これじゃあいざって時に動きづらいし……」
「ご主人様は私が守るんですから、ここに居るのが一番安全なんです♪」
ユーノの必死の抗議に獣耳の少女――玉藻の前(以下:タマモ)は聞く耳を持たない。
というのも、ただ自分の楽しみの為だけに行っている訳ではないからだ。
「こういうのは聖杯戦争で慣れてますからね〜♪ 私にバリバリ任せちゃって下さいっ!」
その言葉の通り、タマモはこういったバトルロワイヤル的事象に慣れていた。
彼女は英霊としてムーンセル式の聖杯戦争に呼ばれ、バトルロワイヤルと似たような経験をしてきた。
弱冠9歳の少年としては大変恥ずかしいのだが、経験豊富な英霊に言われてしまえば返す言葉を失ってしまう。
大人しく谷間に挟まれることを受諾したユーノの様子に、タマモは満足した様にうなずいた。
今回のご主人様は今までに比べてかなり幼い、それ故に自分が守らなければならないという使命感があった。
その上、聖杯戦争と大きく違う点である“野良悪魔”という危険な存在がそこら中にのさばっているのだから、多少強引でも密着してもらうのが一番だと考えたのだ。
(早速悪魔がお出まししちゃってますしね〜)
タマモの高い魔力による勘が、進行方向に悪魔がいることを知らせていた。
野良悪魔かサマナーに召喚された悪魔かは分からないが、なかなか強大な魔力を持っている事は明白であった。
(ま、スルー安定ですね)
-
ユーノはまだ気づいていないようだし、ここは触らぬ神に祟り無しの精神だ。
自ら進んで危険に近寄る必要はないだろう、とタマモはユーノに悪魔の存在を黙っておく事に決めた。
タマモはそのままさりげない動作で別の小道に入ろうとしたが――
「た、タマモ、ちょっと待って! あそこ!」
(あちゃ〜気づいちゃいました?)
ユーノはタマモの谷間から身を乗り出して叫んだ。
どうやらタマモが思っているよりもユーノは有能だったようだ。
元々遺跡などを探索して旅を続けてきたユーノは、探知能力もそれなりに高い。
神霊であるタマモの勘には及ばないが、それ故にユーノは視覚で補おうと目を凝らしていたのだ。
距離としてはまだ随分先だが、ガード下の薄暗いトンネル内に人魂が浮かんでいる。
まるで洞窟探検のトーチの様に煌々と光を放っており、遠目からでも目立っていてよく見える。
更に注視すると、その人魂には胴体があることがわかり、足元には炎に照らされた1人の少女が座り込んでいるのが確認できた。
悪魔の魔力を感知してすぐに無視しようと決めたタマモより、少女の存在の発見はユーノの方が早かった。
悪魔の魔力が強大だったことも大きいだろう、少女の魔力は見事に隠れてしまっていたのだ。
故に、タマモは出遅れた。
「女の子が悪魔に襲われてる!」
「あっ! ちょっと、ご主人様!!」
ユーノは器用に胸の谷間から抜け出すと、すぐさま人間に戻って走りだした。
当然向かう先は少女と悪魔だ。
今まさに、目の前では悪魔が少女に鋭い形状のその指を伸ばそうとしているところであろ、ユーノは一刻の猶予も無い様に感じたのだ。
タマモは慌ててユーノを引きとめようと、手を伸ばす。
しかし、その指先は彼のマントの端を掠めるだけに終わってしまった。
「間に合えっ――『サークルプロテクション』『チェーンバインド』!!」
ユーノの身体から緑の光が溢れだし、魔法は発動した――
*
時は数分前に遡る。
ドーマムゥを引き連れたパチュリーが移動を開始して数十分――
「はぁ……はぁ……もう歩けないわ」
パチュリーは地面にへたり込んでいた。
カヒューカヒューと喘息気味に大きく肩で息をする姿は、先程までの威勢など一切感じられない。
朝の日差しを避けて、トンネル内の日陰に逃げ込み息を整えているパチュリーを、ドーマムゥは呆れたように見下していた。
「Umm……魔神皇を倒すと言ったが、キミ、やる気はあるのかい?」
「うる、さい、わね……これも、あの男の、せいよ」
パチュリーはドーマムゥの嫌味に鋭く睨むことで返答し、途切れ途切れに反論する。
-
酷い言いがかりだ――と思われるかも知れないが、これはあながち間違いではなかった。
パチュリーは基本的に日常の動作の何から何までを魔法で行っていた。
遠くの物は魔法で取り、移動は飛び、自分で行うのは本のページをめくるくらいだ。
その上、司書という肩書で体のいい召使である“小悪魔”の存在もあるのだから尚更であった。
『動かない大図書館』の異名は伊達ではなく、一日中、部屋どころか椅子から一歩も動かないことなどざらである。
それが今や魔神皇によって一部の魔法は制限され、魔力の貯蔵量も減らされてしまっている。
パチュリーにはいざという時のために少しでも魔力消費を抑える必要があった。
その為に、今は飛行どころか身体能力の向上にも魔力を割かず、純粋に四肢のみで移動を行っている。
当然そんな暮らしをしてきたパチュリーにまともな筋肉などついているはずもなく、案の定地面にへばっている状況が出来上がってしまったのだ。
「あんた……その顔暑苦しいのよ……」
ここでの暑苦しいとはむさいという意味ではなく、言葉通り燃え盛る炎に対してである。
折角日陰にいるのに、近くで燃え盛られてはたまったものではない。
「底の浅い魔術で満足しているからそうなるのだよ。それは君の怠慢の結果じゃあないかな?」
少々辛辣だが、ドーマムゥは別にパチュリーを貶めようとして言っているのではなく、本心からの言葉である。
その証拠に、親切心から何処か屋内にでも入れてやろうとドーマムゥはパチュリーに手を伸ばした。
――その時、遠くから少年の叫ぶような声が聞こえた。
瞬間、パチュリーの周囲を半円状に緑の障壁が包み込む。
同時に、ドーマムゥの身体には腕を拘束するように障壁と同じ緑色の鎖が巻き付けられた。
2人が魔力反応の出処を目で追うと、小柄な少年とそれに続いて少女が走ってきていた。
――言わずもがなユーノ・スクライアとその悪魔のタマモである。
「ん?」
――バリンッ
ドーマムゥは苦も無く、魔力を操作することでバインドを壊す。
そして犯人がユーノであることに気づくと、ユーノに向かって蒼い炎を纏った掌を向けた。
「な!?」
バインドを解かれた事に驚愕の表情を浮かべたユーノは、その手に対して何のアクションも取ることができなかった。
ご主人様の危険を感じ取ったタマモは、加速してユーノを後ろへ引っ張った。
そのまま目にも止まらぬ速さでユーノの前に躍り出ると、タマモは全面に魔法陣を展開する。
-
それは彼女のスキルの一つである『呪層・黒天洞』を発動させた証だ。
「おお、知らない魔術だ、ではこれはどうかな?」
それを見てドーマムゥは歓喜の声を上げる。
ドーマムゥがタマモの足元に手を向けると、コンクリートを突き破って鋭い棘が飛び出した。
ドーマムゥ自身の想定よりも少し小さい棘であったが、殺傷するには十分な威力である。
それをタマモは冷静に、手に持った鏡――『水天日光天照八野鎮石』を棘へ向ける事で軽くいなす。
「効きませんよ!」
「ハハハ、魔力を吸収するのか。いいぞ、もっと見せてくれ」
「言われなくてもっ! 氷天よ、砕け!」
愉快そうに笑うドーマムゥは、タマモの使う呪術に興味津々な様子である。
元来魔導師というものは知識に対して貪欲であり、未知の技術は知らずにはいられないものなのだ。
対するタマモは懐から札を取り出し、ドーマムゥへ投げつけた。
興味を惹かれたドーマムゥが札をキャッチすると、腕全体が凍りついてしまった。
「自ら掛かるなんてお馬鹿さんですね!」
タマモがこの機を逃がすはずもなく、すぐさまドーマムゥに殴り掛かった。
今までの攻防を傍観していたユーノも、この機を逃すかと走りだした。
なまじ観察力に優れ、2人の戦闘に付いて行けていたが故に、タマモの守りから飛び出して行ってしまったのだ。
パチュリーの外見が、ユーノの不手際で最近事件に巻き込んでしまった少女に近い年頃だった事も手伝って、優しい性格の彼は少女の保護を優先して行動を取ったのだ。
ドーマムゥは飛び出していったユーノを横目でチラリと見やると、凍った方の腕で炎を作り出した。
炎によって腕の氷は一瞬で溶け、そのまま腕を振って炎をユーノに投げつけた。
「ご主人様!!」
タマモ悲痛な叫びがトンネル内に木霊する。
ドーマムゥに殴りかかっている最中であるタマモは、ユーノをかばう術がなかった。
一瞬が無限の様に感じられる時間の中で、炎は無情にもユーノの小さな身体に迫っていく。
――そして、爆音とともにトンネル内は炎に包まれた。
タマモはドーマムゥを殴ることも忘れて、唖然とその光景を眺め、立ち尽くしている。
一秒が何分にも感じられる時間にもやがて終わりが訪れ、少しずつ煙は晴れていく。
確かな視界が確保できた時、そこに――少年の死体は無かった。
その代わりに見えるのは、淡紫色の魔法陣。
「そこまでにしておきなさい」
緊張状態のトンネル内に、パチュリーの声が響き渡った。
ユーノの前に展開されている魔法陣はパチュリーの物であり、彼女はユーノの結界の中から防御魔法を展開していた。
パチュリーはドーマムゥを睨みつけ、苦言を呈する。
-
「あなたの遊びに私まで巻き込まないで頂戴。何のために魔力消費を抑えていたと思っているのよ」
「おお、怖い。彼女の絶望に歪む顔が面白そうでつい、ね」
初めて相対した自分以外の悪魔の存在と、その存在が未知の技術を使っていた事にドーマムゥは絶大な興味を持ってしまったのだ。
ドーマムゥにとって、強い者をより強い力で屈服させるのは愉快で楽しいものだった。
紳士的な態度とはいえ、彼は世界を欲する悪者(ヴィラン)なのだから。
自分を前にしても冷静に戦術を駆使する彼女の態度を崩すには、ユーノを殺すことが一番面白そうだったから、ドーマムゥはその通りに行動しただけである。
「魔神皇への足がかりになりそうな奴は仲間に引き入れる約束でしょ」
「先に敵対してきたのは彼らだ。有益かなんてわからないだろう?」
「て、敵対なんて、僕は……」
ドーマムゥの発した責任逃がれする子供の言い訳じみた言葉に、今まで黙っていたユーノが反応する。
今となってはこの2人がサマナーとその悪魔だということがなんとなく理解できるが、あの時は本当に焦っていたのだ。
ユーノに敵対する意思なんてこれっぽっちも無かった。
冷静に考えればもっと良い方法もあっただろうが、身体が動いてしまったものは仕方ないのだ。
その行動が死に直結するバトルロワイヤルでなければ、の話だが。
「敵対するつもりがないのは私達も同じよ。妖狐のあなたも構えを解いてくれないかしら」
「この悪魔がご主人様を狙った以上、構えを解くわけにはいきません」
タマモから帰ってきたのは至極当然の答えである。
いきなり主人と慕っている者が殺されそうになったのに、「なら安心ですね」となるわけがない。
タマモの見せる忠誠心に知り合いの賢者が使役している九尾の式神を彷彿としながら、パチュリーはどうにか話し合いに持っていく方法を考える。
ドーマムゥの勝手な行動で拗れてしまった関係に、パチュリーは頭を抱える事になった。
「はぁ、まったく……ドーマムゥ、COMPに戻っていてくれないかしら?」
「いいのかい? 再召喚には金銭が掛かるのだろう?」
「誰のせいだと思ってんのよ……」
ドーマムゥのあっけらかんとした態度に、パチュリーは憎々しげに呟いた。
バトルロワイヤルが始まってからというもの、魔神皇だけでなく自分の悪魔にさえストレスを溜めさせられているパチュリーは頭痛まで併発しそうな勢いだ。
自分だって不利になるような事はしたくないが、もはや苦肉の策を用いるしか無いのだ。
パチュリーはそのまま怒りに任せてドーマムゥをCOMPに戻した。
-
「これでいいかしら?」
「まあ、いいですけど。あなたがそうまでして魔神皇に辿り着きたい理由ってなんなんですか?」
「私の目的は、魔神皇の打倒――それだけよ。効率的に達成するために、色々な知識を持った者達から意見を集いたいの」
パチュリーの魔神皇の打倒と、ユーノの会場からの脱出。
必ずしもイコールで結ばれる関係ではないが、どちらかを目指せば自ずともう片方の手掛かりも掴める事だろう。
つまり、今のところ両者の利害は一致しているといえる。
「殺しを楽しんだり、願いを叶える――だったかしら? あんな甘言に踊らされた者じゃあない限り、敵対するつもりはないわ」
言い換えると、危害を加えてきたら容赦なく殺すということだが、ユーノはともかくタマモに反対の意思はない。
パチュリーは少し黙りこんで思慮を巡らせると、ユーノの方へ向き直った。
「あなた……あの魔法だけど、ミッドチルダ式のものよね?」
2つ魔法を使っただけで――ひとつは一瞬で破壊されてしまったが――まさか看破されると思っていなかったユーノは、困惑の色を浮かべた。
しかし、友好関係が結べる可能性が高い今、ここで隠すのは得策ではないと思ったのだろう。
ユーノは正直に話すことに決めた。
「はい、そうですけど……確か地球は管理外世界のはずじゃあ……」
「私も実際にこの目で見たのは初めの経験よ。けど、様々な文献にミッドチルダの記載が残っているのを読んだことがあるの。“ミッドチルダ”――異世界で発展した魔法形態。魔力光には個々の性質が表れる事が特徴。あなたは緑だから……確か『控えめ・想いやり深い』とかだったかしら?」
「おっ、当たってますね〜♪」
ドーマムゥがいなくなった事で露骨に機嫌が良くなったタマモが、パチュリーの解説に茶々を入れる。
あからさまな態度の違いにパチュリーも一瞬言葉を詰まらせたが、恐らくこちらが素に近いのだろう、と自分を納得させた。
「……そして、さらに特徴的なのがデバイスと呼ばれる魔法補助用精密機器。これはベルカにも似た記述があったと記憶してるわ。私があなたに期待しているのはそこなのよ」
この時点でユーノもパチュリーの言いたいことが徐々に分かり始めていた。
参加者全員にはめられた首輪や、ユーノの持つタブレット型のCOMP――これらはどちらかと言えば魔術よりも科学色が強い。
パチュリーは見るからにバリバリのインドア派だが、同時に機械に強そうにも見えなかった。
-
事実パチュリーは、錬金術的要素を持つ所謂“化学”ならば相当なものだが、機械機械的要素を含む科学はからっきしダメなのだ。
ユーノも現在のミッドチルダ式の者達には珍しく、デバイスを用いない古いタイプの魔導師であった。
しかし、技術開発の人間を除けば自分のデバイスを隅から隅まで理解している者など少数派だ。
その点、遺跡でロストロギアの探索・発掘・解析まで単独で行うこともあるユーノには、多少のアドバンテージがあるとも言えるだろう。
ユーノは迷うこと無く行動を共にすることを決めた。
「僕の知識が何処までお役に立てるか分かりませんが、これからよろしくお願いします。あ、えと……」
「ああ、私はパチュリー・ノーレッジよ。パチュリーって呼んで貰って構わないわ」
「僕はユーノ・スクライアです。改めて、よろしくパチュリー」
「あ、私のことはタマモでいいですよ〜」
自己紹介を終えた彼らには、先程の一触即発な空気など無くなっていた。
まあ全ての原因がCOMPに戻った事が大きいかも知れないが。
意見交換が大好きな魔術師という名の学者達の仲間集めは、まず2人と2体からスタートするのだった。
【新宿区歌舞伎町・ガード下トンネル/1日目/朝】
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:バリアジャケット(民族衣装のような服にマント)
[道具]:基本支給品、タブレット型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:会場からの脱出
1:パチュリーと同行する
2:ドーマムゥに対する少しの恐怖
3:どこかで首輪を解析したい
※第一期当時のため、八神はやての存在は知りません
[COMP]
1:玉藻の前@Faet/EXTRA
[種族]:神霊
[状態]:健康、内心にドーマムゥへの怒り
【パチュリー・ノーレッジ@東方Project】
[状態]:疲労(小)、ストレス(中)
[装備]:グリモワール型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇をぶちのめす。
1:ユーノと同行する
2:あいつ(ドーマムゥ)のせいで……
3:首輪解析のための仲間を集める
[COMP]
1:ドーマムゥ@MARVELコミックス
[種族]:ファルティナ
[状態]:健康、満足、COMPの中にいる
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投下終了です
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皆様投下乙です!
あ、あと、基本ルールに載せてた、放送ごとの悪魔の出現レベル制限ですが、
後乗せのルールですし面倒なことにナリそうなので取っ払っちゃいました。
>>45
ノリノリの隊長、嬉しそうですね。しかし悪魔はえげつない能力をお持ちで……
それをじっと見ていたリゾットは冷静なんだけど、同行人がフリーすぎw
>>55
うーんこのコジマ電気、人の話を聞かない……
魔術という共通点で膨らむ話と、面倒な奴がいなくなったから結べる協定と。
ひとまず盤石? ですかね。
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あ、あと再度お願いなのですが、書き手枠を使用した方は、
書き手枠のキャラの話をwikiに収録してください。
(ルールにも明記しています、ご協力よろしくお願いします)
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それと、後出しで大変申し訳無いのですが、書き手枠を予約している方は、予約期限の厳守をお願いします。
予約期限超過→開放までの24時間に投下ということになると、事実上の予約期間6日となってしまうため、
万が一超過した場合は、書き手枠解放後に再度予約→投下でお願い致します。
(開放までの24時間に投下しないよう、よろしくお願いいたします)
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投下します
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“霧”による海上封鎖が解け、復興が始まった日本では、窮乏していた頃には絶えて久しかった娯楽が急激に息を吹き返した。
其れは日本人に新しい時代が来たと認識させるに十分なものであった。
そして数多の娯楽は無数のスターを生んだ。その中でも最も人口に膾炙した者。
それは奇しくも第二次大戦後の日本人を熱狂させたものと似通ったジャンルから登場した。
アイドルと女子プロレスから世に出たスター達は、超新星の如き輝きで歴史に名を刻んだのだった。
まあ要するにアイドルと女子プロレスラーはこの世界の日本の女の子の憧れの職業だと思っといて下さい。
人というものが存在しない街並みを、ゆっくりと歩く少女とガンダム。
そう、少女とガンダムが連れ立って歩いているのだ。
警戒しているのか、周囲を見回しながら歩く一人と一体。
魔神皇とかいう中二病全開な名乗りの高校生に拉致されたアイドル、南条光と彼女に与えられら悪魔こと劉備ガンダムである。
「誰にも合わないね」
「人…どころか生物の気配も無い」
探索を始めてかれこれ一時間。二人の前には、人間どころか悪魔すら現れなかった。
不幸と言うべきか、それとも幸いと言うべきか。何しろ名簿を確認したところ、
連続放火魔の葛西善二郎と、「日本犯罪史上最低の殺人鬼」と言われる連続殺人犯、片桐安十郎の名が見つかったのだから。
光が傍目から見ればガンダムでしか無い劉備と共に居るのもむべなるかな、危険人物が少なくとも2人も存在しているのだから。
「渋谷凛……か?行動をともに出来そうな人と出会えれば良いのだが……む?」
「な…何?」
突然振り返って、後方にあるビルの屋上を睨む劉備に光も同じ方向を見つめる。
「何者かに見られていた様な気がしたんだがな」
「嘘ッ!」
視線を忙しなく動かすが、人っ子一人見えなかった。
「気の所為か?」
呟いた劉備が視線を再び前方に向けると、風景が変わっていた。。
屍が無数に転がっているわけでも無い。辺り一面が瓦礫になっているわけでも無い。先刻までとの違いはただ一つ、10mの距離をおいて劉備の視界の真ん中に立つ一人の青年の姿。それだけだ。
ただそれだけで、辺りは異界と化していた。
-
「何者だ!?」
真龍帝剣を抜き、光を庇って前に出る。敵かどうかは未だ判らないが、異常なまでの存在感を持つ青年の放つ気配がそうさせたのだ。
威圧感はあの戦慄の暴将に勝るとも劣らぬが、あの侠(おとこ)とは気配の質が全く異なる。
呂布が荒れ狂う暴風であり全てを焼き尽くす業火なら、この青年は無限に広がる虚空であり無窮の深さを持つ深淵であった。
瞳も髪も黄金でありながら、全く輝きを持たぬ底知れない昏さを身に纏う青年だった。
「ふむ…名を問う時はまず自分から名乗るべきでは無いか?まあ良い…」
青年は僅かに目を細め、劉備と…その後ろの光を見つめた。
「ひ……」
光が小さく息を飲む。光が青年から感じているのは違和感。この世のものでは無い存在と対峙しているという認識。劉備より人に近いカタチをしているが、劉備とは比較にならないくらい人から遠い存在だった。
「ドーモ、ガンダム=サン。マスターテリオンデス」
「「……………………………は?」」
異常極まりない青年から異常極まりない挨拶をされ
「どうだ亜魅。最近のトレンドを取り入れた、張り詰めた空気を解す完璧な挨拶だろう」
「完璧です!ご主人様!!」
青年の存在感に紛れて気付かなかったが、青年の後ろに少女が控えていた。
「ハハハ。亜魅、見るが良い。彼等もすっかり寛いでくれているようだ」
「「…………………………………」」
実際には呆然としているのだが。
「余は名乗ったぞ。今度は貴公等が名乗る番だ」
言葉と共に軽く放たれる妖気、それに打たれて劉備の精神が明後日から戻ってくる。
「俺は性は劉名を備、字を玄徳という。こっちは南条光だ。それで、一体何が目的で俺たちの前に現れた」
「その問いに答える前に此方も名乗りを済ませておこう。亜魅」
「始めまして。ご主人様の忠実な下僕、栗浜亜魅と申します」
胸のところが大胆にカットされた黒いワンピースの少女が2人に挨拶をする。
青年と比べるまでも無くあらゆる点から尋常に枠に収まる少女は、首の戒めを見るまでも無く参加者だろう。
見たところ普通の人間であるのに、異質極まりない青年に従っているのは異常そのものだった。
-
「……………ああーーっ!?」
突如として叫んだ光に他の三人の視線が集まる。
「アンタ、ソニックキャットさんからベルト奪った挙句長期欠場に追い込んだ、あのヒールレスラーか!!」
「……あの時彼女は既に怪我をしていました。貴女も知っているはずでしょう」
経緯としては、やや童顔ではあるが恵まれたルックスと肉付きの良い体。高い身体能力と確かな技術を併せ持ち、小さなお友達から大きなお友達まで大人気な特撮オタレスラーのソニックキャットを、変身ヒーローもののレギュラーに採用したのが始まりで有る。
起用自体は成功であり、高い視聴率を稼いだものの、そこで欲張ったのが運の尽き。
番組終盤で投入された、大空みぎりと諸星きらりの、加減を出来ない&加減の仕方を知らない巨⚫️兵コンビの攻撃でソニックキャットが肋骨を折ったのである。
「人力で人間が5m以上も垂直に飛ぶとは思わなかった」
そうのたまったアクション監督は速攻で変えられた。
全力でやれと言った監督も実際にやる巨⚫️兵ズも受けるソニックも大概であった。
そして番組終了後、ソニックキャットと同じ番組に悪役として出演した栗浜との間でタイトルマッチが組まれ……負傷していたソニックは惨敗を喫したのである。
「あの時彼女は棄権してタイトルを返上すべきでした。無益無謀な行為に及んだ挙句怪我を悪化させたのは自業自得というものです」
「だからって!!」
光は激昂した。ソニックキャットは同じ特撮好きとして雑誌の企画で対談して以来、友人と言える仲となった相手である。
その友人をp怪我させた上に、大事にしていたベルトまで奪った相手に心穏やかでいられるはずも無い。
「知り合いか?亜魅」
「いいえ、ご主人様。向こうが私を知っているだけです」
「この……」
いきり立って栗浜に掴みかかろうとした光を劉備が制する。2人の因縁は全く知らないが、栗浜の悪魔である黄金の青年――――マスターテリオンは強大かつ底しれない。そんな相手に光が近づくのは危険だと思ったのだ。
「もう一度聞こう。一体何の用で俺たちの前に立った」
「……ああ、そうであったな。用事…用事か……決まっているだろう?そんな事は」
急激に膨れ上がる瘴気が2人の心身を凍てつかせ、動きを封じる。
青年が右掌を劉備達に無造作に翳すと黄金に輝く光球が光に向かって放たれた。
当たれば死ぬ――――頭はそう認識しているのに身体は全く動かない。明確な“死”のイメージが光を木偶に変えていた。
「何をする!?」
劉備が咄嗟に手にした真龍帝剣で打ち払う。弾かれた光球は付近のビルに直撃し、大穴を穿った。
「このような場で為す事は一つであろう」
答えた青年のその手に輝くは黄金の十字架剣、魔力で編んだと思しきそれを青年は振りかざす。
1m程の長さの剣身が15mを越える長さに伸びる。
「ぐ…おおおお!!」
真っ向から振り降ろされるグランドクロス、光を庇って受け止めた劉備の足元のアスファルトが10mに渡って陥没し、周囲に蜘蛛の巣上の亀裂が走る。
-
「此れはフェアではないな」
続いて放たれる横薙ぎの一撃、首を狙った剣撃は後ろの光に届かぬ長さに縮んでいた。
「ぬおっ」
姿勢を低くして回避、間髪入れずに襲ってくる連続攻撃をを剣で受け、身を捻って躱していく。が、このままでは何れ直撃を受け、劉備の命は潰えるだろう。
「貴公の力はそんなものか?秘めているものがあるなら出すと良い。貴公の命が潰えれば、あの娘も後を追うのだぞ」
「させる……かああああ!!」
絶叫して横薙ぎに振るわれた十字架を叩き落として、走り出した劉備に青年の放った魔力弾が直撃、
劉備は地面と水平に宙を飛び、ビルの壁面に叩きつけられる直前になんとか着地するも、振り降ろされた十字架剣をまともに受けて、地面とキスしてそのまま気絶してしまった。
光はその光景を瞳に涙を滲ませて見ていた。何とかしたい。助けたい。そう思っても人域を超えた戦いに只人でしかない光が割って入る事など出来はしない。
怖い、あの青年の全てが怖い。恐ろしい。眼を逸らし、膝を抱えて蹲りたい。
光は自問自答する。
――――こんなことでいいのか?
このままでは間違い無く劉備は殺される。
――――それでいいのか?
己の正義の心の力になると言ってくれた劉備が死ぬのを黙って見ているだけか。
――――力になると言った劉備が力になってくれているのなら、私がやることは?
「う……うわあああああああああ!!!」
光は叫んで走り出す。
――――正義の心を、悪に立ち向かう意思を示す事!!
「ご主人様!?」
「光!?」
バックに入っていた支給品を取り出し、マスターテリオンの脇腹に突き立てた。
「ほう……」
マスターテリオンは感嘆していた。
己の存在感に震え、瘴気に竦み、鮮明に死を意識して震えていた無力な少女が、己の中のちっぽけな勇気を振り絞って立ち向かって来たのだ。
例え眼から絶えること無く涙を流し、全身が熱病にかかった様に震え、喘鳴の様な呼吸を繰り返していても、この少女は確かに勇気を示したのだ。
「気概は認めるが、力が絶無だな」
「……ひっ……ふっ……」
人の姿をしたものを刺した精神的な衝撃で、まともに口を利けない光が手にしている巨大な戟を取り上げると、光を劉備の側に優しく放り投げる。
「ふぎゃっ」
「亜魅、我等に与えられた物をこの娘に渡してやれ」
「お言葉ですが、お戯れが過ぎるのでは……」
「良い、この娘ならば、アレを用いて、余を満足させる舞闘を見せてくれるやも知れん」
「承知しました」
-
唐突に現れた青年と少女は唐突に去って行った。
残されたのは傷ついた劉備と、今だに震える自分だけ。
悪魔の集団でも襲ってくれば一たまりも無いだろう。
光は少女から渡されたベルトと大量のメダルを見る。あの青年は戦う為の力だと言っていた。取り敢えず付属のマニュアルを読んで見ることにする。
「はあ…はあ……」
今だに精神的に落ち着かず、荒い呼吸を繰り返しながら、マニュアルを読み出す。生き残る為の行為というよりも、現実逃避であったのかも知れないが、とにかくマニュアルを読むことに没頭していた。
【中野区/1日目/朝】
【南条光@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ファイズフォン似の折り畳み式携帯電話)
[道具]:基本支給品、バースドライバー(セルメダル×5000&取扱説明書付き)@仮面ライダーオーズ
[思考・状況]
基本:正義を信じて、悪を倒す
1:栗浜亜魅&マスターテリオンを倒す
2:バースドライバーの取説を読む
3:マスターテリオンに強い恐怖
[所持マッカ]:三万
[COMP]
1:劉備ガンダム@BB戦士三国伝
[種族]:人間(ガンダム族)
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、気絶中
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
一部始終を離れたビルの屋上から伺う二つの影が有った。
「あの悪魔、ヤバ過ぎるだろ」
「アレが他所に行くまで動かない方がいいぞ」
二つの影は片桐案十郎&ワイアルド。下で悪魔を殺し回り、捕まえたリャナンシーとモー・ショボーを此処に運び込んで、他の参加者の捜索兼お楽しみの真っ最中だった所に、光と劉備が通ったのだ。
現役アイドルという上質の獲物にアンジェロが飛び付くも、そこは狡猾な犯罪者である。まずは様子見をしていた所で、更にもう一組が現れたのだ。
サマナーと思しき紫髪の少女も中々『そそる』外見だったが、一緒にいた悪魔の前ではどうでも良い存在だった。
アンジェロにも一目見て異常だと分かる昏い黄金の青年は、ワイアルドが言うには
ゴッド・ハンド――――アンジェロには何のことか分からなかったが、ワイアルドとは比べることも出来ぬ、遥か上位の存在らしい――――と比肩しうる怪物だそうだ。
そんな化け物の前に出て行く気は全く無いアンジェロは、取り敢えず静観することにした。
「んで……何で俺等が居るビルの入り口に陣取ってやがるんだ!?」
【中野区のどこかのビルの屋上/1日目/朝】
【片桐安十郎@ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:スタンド『アクア・ネックレス』、COMP(ナイフ型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いを楽しむ
1.栗浜亜魅&マスターテリオンが何処かへ行ったら光を襲う
2.マスターテリオンを警戒
[所持マッカ]:三万
[COMP]
1:ワイアルド@ベルセルク
[種族]:外道
[状態]:健康
-
「宜しかったのですか?ご主人様?」
「構わぬ。我が剣であるリベル・レギスも我が半身エセルドレーダも居らぬ以上、余は全力を出すことが出来ぬ。舞闘に興じることが出来ぬのであるなら、良い舞手を捜し、その成長振りを見る事位しか興が湧かぬ」
無限螺旋の中で悪の魔王の役割(ロール)を演じさせられ続けてきた青年が、自由に自らの役割(ロールを決められるこの舞台で、自らに課した役割(ロール)は魔法使い。
機会(力)を求めるシンデレラにガラスの靴を与える役割(ロール)。
「あの女は、ご主人様のお眼鏡にかなったのですか?」
「資質は有る。あの魂の輝き、嘗て無限螺旋の中で余の無聊を慰めた者達に通じるものが有る」
「そうですか……」
栗浜の声に混じる嫉妬の響き。自分を聖書の獣を名乗った魔術師の使い魔の生まれ変わりで有ると信じる栗浜にとって、マスターテリオン(聖書の獣)を名乗る青年との出会いは正しく運命に導かれたもの。
その運命の相手が気を惹かれる者――――それも女ともなれば、嫉妬の念を禁じ得ない
「ガンダム=サンが起きるまで此処にとどまるぞ。その頃にはあのガラスの靴(バースドライバー)の扱い方を覚えるだろう」
そうして青年はビルの屋上に眼差しを向ける。
「この程度の試練は越えられる力は得るだろう」
言うと、手にした戟を足元に突き立てた。
「時にご主人様」
「何だ」
「ガンダム=サンとは……?」
「何故かは知らぬがそう記憶しているのだ。あの娘の悪魔がガンダム=サンだと……虚億…というものかも知れぬな」
【中野区/1日目/朝】
【栗浜亜魅@レッスルエンジェルス サバイバー2
[状態]:健康
[装備]:COMP:魔道書(グリモワール)型
[道具]:基本支給品、確認済み支給
[思考・状況]
基本:魔神皇を誅殺する
1.ご主人様に従う
2.会場を巡って参加者を見て回る
3.面白そうな相手には取り敢えず手を出してみる。
4.南条光に軽い嫉妬
{所持マッカ]三万
[COMP]
1:マスターテリオン@デモンベインシリーズ
[種族]:魔人
[状態]:健康
【備考】
・アンジェロとワイアルドが居るビルの玄関付近に破塵戟@BB戦士三国伝 が突き刺さっています。
・中野区のどこかのビル壁に大穴が空いています。
・中野区どこかの路上に10mほどのクレーターが出来ています。
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投下を終了します
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かなり期限にギリギリになりましたが、投下します
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「バカなっ!?なぜDIOの奴が生きとるんじゃあああっ!?」
と名簿を確認していたジョセフが、宿敵がここにいることを知ってそう叫んでいたのは10数分ほど前のことだった。
アヴドゥル、イギー、花京院。険しくも楽しかった、エジプトへの旅路。
彼らは宿敵DIOの館へ乗り込んだものの、その過程で命を落とした。
アヴドゥルとイギーは敵スタンド使いからポルナレフを庇って死んだと聞いた。
花京院はDIOとの戦いの最中、最後の力を振り絞ってジョセフにDIOの能力を教えてくれた。
旅路を共にした仲間がいなければ勝利は有り得なかったと、今でも思う。
仲間の死を無駄にしないためにも、絶対にDIOを倒さなければならない。
それに、DIOと同じ姓を持つ者も気になる。
現在、ジョセフは召喚した悪魔、もとい妖怪のさとりを連れて、板橋区にあるこの家電量販店のJ○shinに訪れていた。
店に入るや否や、並べられていた商品を物色し、店のカウンターに持ってきたポラロイドカメラを並べる。
「これは…ああ、あの文屋の持っていたカメラって物ね。一概にカメラとは言うけどいろんな種類があるのね…これを何に?……ああ、なるほど」
ジョセフのやろうとしていることを、心を読むことで一人で勝手に合点がいったように納得するさとり。
「次にお前は○○と言うッ!」と相手の心理を読んで次の台詞を言い当てるというジョセフお抱えの特技をするのは、さとりも自重しているようだ。
ジョセフは多数のポラロイドカメラを前にして、DIOの奪ったジョナサンの肉体、娘のホリィ、孫の承太郎、そして自分にもつけられている星型のアザのある場所を触れる。
今もDIOが生きているとなれば、娘は今も茨のスタンドに苦しめられていることだろう。
早く因縁に決着をつけて娘の元気な姿を再び見たいという想いがこみ上げてくる。
「家族想いなんですね」
「ワシの大切な一人娘じゃからな…『隠者の紫』!」
さとりに相槌を打ちつつ、DIOの場所を割り出すべく力を込めて『隠者の紫』でカメラの一つを叩き割る。
『隠者の紫』の能力は念写。然るべき媒体さえあれば、単なる光景だけでなく周辺の地図や思考を読み取ったりと意外と幅が利く能力である。
J○shinに訪れたのも、ポラロイドカメラやテレビを拝借して『隠者の紫』でDIOや他に参加者がいるかどうかを念写できるからだ。
だが、その結果はジョセフを驚愕と落胆に陥らせた。
「見事なまでに何も写らんのぉ」
「『暗い所にうっすらと浮き出ている』写真でもありませんよ、これは。黒一色、何も写っていません」
「おかしいのォ〜、旅に出る前は日本からエジプトのカイロまで念写できたというのに」
「おそらく、ジョースターさんのスタンド…『隠者の紫』の能力に制限がかかって弱体化しているのでは?」
「何ィ〜!?なぜそんなことがわかるんじゃ?」
「私達、召喚される悪魔は、便利すぎる能力は制限を受けています。きっとサマナーの方もそれが適用されていると考えた方が――」
「OH MY GOD!」
ジョセフはそれを悟り、声高に叫ぶ。
道理でポラロイドカメラに何も写し出されないわけだ。
確かに、相手の位置を映し出す念写能力は相手によっては強力な武器になり得る。
特に自分のいる場所を知られたくない魔神皇であれば、尚のこと警戒すべき能力だろう。
そう考えると、『隠者の紫』が制限されるのも当然といえる。
-
「…ですが、使えないと決まったわけではありませんよ」
「うむ、それはわかっておる。『隠者の紫』は多分、効果の範囲を狭められただけじゃろう。なら、せめてこの区にいる参加者ならば…!」
そう言いつつ、ジョセフは同じ区にいる参加者を念写するため、カウンターから離れて近くにあったテレビへと向かっていく。
そのままポラロイドカメラを使ってもよかったが、相手の動きをリアルタイムで映せるテレビでも念写ができるのか否かを確かめる意味合いもあった。
「『隠者の紫』!」
念写するのは、『板橋区内にいる参加者』。
紫の茨がテレビの中に入り込み、バチバチと電気を漏らしながら、次第に真っ黒だった画面に光がともる。
「よし…」
流石に距離が近ければ念写能力は差し支えなく使えるようだ。
逆に言えば、近くにDIOはいないことになる。
このまま念写した参加者と接触し、できることなら一緒に行動してこの状況を打開したいところだが…。
「映ったぞ!」
『隠者の紫』によって起動したテレビの画面には、路上に立っている制服を着ている小柄な少女と、赤いリボンをした紅白の装束と清楚な雰囲気を身に纏う少女が映っていた。
(あら――?)
その頃、さとりは第三の眼を介して外から思考が流れてきたことに気付き、入口の方へ向かっていた。
家電量販店の外には、バサバサと羽をはばたかせてこちらを見つめる鷹の姿があった。
【板橋区・J○shin内/1日目/朝】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 part3 スターダスト・クルセイダーズ】
[状態]:健康、テレビで念写中
[装備]:COMP:義手型
[道具]:基本支給品、未確認支給品、ポラロイドカメラ(そこそこの数)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:
1.脱出する
2.殺し合いに乗った奴を倒す
3.他の参加者と合流したい
※『隠者の紫』には制限がかかっており、カメラなどを経由しての念写は周囲の区までに範囲が狭められています。地面の砂などを使っての念写範囲は自分がいる区の中だけです。
※波紋法に制限があるかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※一族同士の波長が繋がるのは、地図上での同じ区内のみです。
[COMP]
1:古明地さとり@東方Project
[種族]:地霊
[状態]:健康
◇
-
四国。極東の島国を構成する4つの県が合わさった大地には、世界から隠蔽された幻とも言われる存在があった。
それが『神樹』である。神樹は一説によれば人類にあらゆる恵みを与えるものであると言われている。
あらゆる作物が豊富になる肥沃な大地。決して汚染されることのない空気に水。
たとえ世界中が死のウイルスに犯されようと、宇宙の神が人類に牙を向こうと神樹が根を下ろしている四国は絶対安全で、
神樹を知る数少ない者達の間では「四国は人類最後の楽園である」とまでささやかれていた。
しかし、世界から存在を隠蔽されているといっても、何らかの情報ルートを辿って神樹の存在を知るに至った者も四国の外部には数多く存在する。
中には世界征服を掲げる悪の組織も含まれており、神樹を知った彼らは当然ながら、その強大な力を我が物にしようと神樹の力を狙っていた。
これらの脅威に対抗するために、四国には神樹によって選ばれた、神樹の力を得た少女達がいた。
それが勇者と呼ばれる存在である。
「ママハハ…大丈夫かな…」
「大丈夫ですよ。危なくなったら帰ってきてと言ってありますから」
仮想の東京・板橋区の路上で、飛び去っていった鷹のママハハを見送る樹とナコルル。
ナコルルは高層な建造物の並ぶ東京では周囲を見渡しにくいため、宝刀「チチウシ」の守護鳥であり友人のママハハに斥候を頼んでいた。
「それで、ナコルルさん。大自然の声って…」
「ええ…カムイの戦士である私には自然の声を聞くことができるんです。ですが、その自然が今、泣いている」
ナコルルの憂いに満ちた顔で言ったことに対し、樹はおぼろげながらも理解を示すことができた。
神樹からは、大赦の巫女に対してお告げ――信託――が為されることがある。
これによって、樹を含めた勇者達は敵が襲来するおおまかな時期を予測することができるのである。
ナコルルの言う『大自然の声』とは信託に近いものではないかと、樹は考えていた。
ナコルルが言うには、殺し合いの場となる仮想の東京には自然を傷つける邪気が溢れているという。
それだけではなく、大自然の声からこのままでは東京に跋扈している悪魔やウェンカムイ――きっと魔神皇のことだろう――により、
この東京だけでなく世界中に災いがもたらされるというお告げを受けたらしい。
「それに、樹さんの持つ力もカムイによるもの…私にはわかります。あなたもカムイの戦士なのですね」
「だからあの時、ナコルルさんから協力を――」
「はい。もちろん、殺し合いも止めるよう尽力しますよ。『みんなのためになることを勇んで行う』。あなたのいう勇者部…とても素敵だと思います」
「ナコルルさん…」
ナコルルは温かい微笑みと共に贈られた言葉に樹は少し嬉しくなる。
ナコルルも樹も、カムイの力を授かった戦士であり、勇者なのだ。
すると、ママハハが鳴き声を上げながらナコルルの手に戻ってくる。
「どうだった、ママハハ?」
そして、ママハハと意思疎通できるナコルルの口から、近くのJ○shinなる場所に別の参加者がいることが告げられる。
【板橋区・路上/1日目/朝】
【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康
[装備]:樹のスマートフォン(アプリ型COMP入り)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らず、魔神皇を倒す。
1.ナコルルと協力する。
※現代に生息する同姓同名の似たような性格の勇者のため、バーテックスの知識はありません。
※神世紀の人間とも、多少の認識のズレがあるかもしれません。
※現代に生息している(と描写のあった)勇者部員並びに四国民とは面識があるかもしれません。
※以前に共闘したことがある者とは面識があるかもしれません。
[COMP]
1:ナコルル@サムライスピリッツ
[種族]:聖霊
[状態]:健康
※COMPは樹のスマートフォンにアプリとなって勇者システムと一緒に入っています
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以上で投下を終了します
なお、現代の勇者の説明のために、拙作『ゆうながんばる!』から地の文を一部引用しましたことを付記しておきます。
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皆様投下乙です!
>>66
多重クロスらしさがすげー出てますね。凶悪犯罪者だとか、アイドルとプロレスラーのつながりとか……
逆境でも立ち向かっていった光がかっこ良かっただけに、そこの二人はなにしてるんだか……w
>>71
念写は健在でおじいちゃんもニッコリ。
そしてママハハをパシ……もとい、協力してもらって得た情報はなかなかに有力。
強力な対主催チームになりそうですね。
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投下します
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ぶん、と空気の裂く音が響く。
この槍型COMPは実に手によく馴染む。
それを握る男六星竜一は自らの得物に不敵な笑みを向けた。
これならば、武器として申し分ない。
槍という武器の性質上、隠し持てないのは不満だったがCOMPという参加者にとっての生命線と直結している以上、堂々と持てる。
まぁ、出会った参加者に一々説明しなくてはならない手間を考えるとやはり少し不満が残るが。
隣を見れば、オールバックのタンクトップ悪魔が興味なさげな視線をこちらに向けてくる。
「もう終わった……自分の武器を確かめとくのは当然だろ?」
「ふん、そんな冗談はどうでもいい。貴様はこの聖帝サウザーの後をゆるりとついてくればそれで良いのだ」
くく、と六星は含み笑いを漏らす。
ならば今度はもう一つの武器の力量を検めさせてもらうとしよう。
「じゃあ、行くか―――まずはさっきから下で暴れてる田ゴ作野郎のツラを拝んでやろう。俺の少し後からついてきてくれ」
そして、六星竜一の顔が、雰囲気までもが変わる。
人の命をハエやゴキブリと同価値にしか思わぬ殺戮マシンから、気弱な不動高校の不倫男性教諭、小田切進へと。
復讐が終わった今、小田切進を演じる必要は彼にはない。
だが、それでも小田切進を演じるほうが楽だと彼は認識していた。
それは殺す相手の油断を誘えるからか――それとも、あの名探偵の言葉を、バカな女の顔を思い出さずに済むからか。
それは彼にも、隣の悪魔にもわからなかった。
▲△▼△▲△▼△▲△▼△▲△▼△
-
「ウリリリリィーッ!無駄無駄無駄ッ!!」
帝王の咆哮と同時に、麻雀卓が『世界』のラッシュを受ける。
なぜそんな非生産的なことをしているかというと、一時間ほど前に自らの悪魔に刺された足の回復を測るためだった。
憂さ晴らしもかねて麻雀卓を蹂躙していたのだが、何と麻雀卓は吸血鬼の脚力に耐え抜いたではないか!
その事実に気づいた瞬間、DIOの腸に衝く様な怒りが走った。
この吸血鬼の、我が友ジョナサン・ジョースターのボディの蹴りを受けて
まだ下賎な麻雀卓が原型を留めているなどあってはならないのだ、そんな事。
そうんなこんなで、気づけばいつの間にか『世界』まで行使し、麻雀卓は瓦礫に変わっていた。
「ようやく完全回復したといった所か……ムッ!?」
『世界』を戻し、魔神皇への苛立ちをぶつけ切ったお陰で晴れやかな表情に戻ったまさにその時、
DIOの吸血鬼としての優れた聴覚がこのビルの屋上に続く非常階段から響いてくる足音を捕らえた。
素人ではない、足早ではあるが最低限の足音だ。
一切隙のない足音だ。吸血鬼としての鋭敏化された感覚がなければまず気づかなかっただろう。
「フフ、足も回復したところでこんどこそ『友達』を作るとするか」
DIOも足音を立てることなく非常階段の方へ向かった。
ゆっくりと扉の前に立つ。
もう足音はこの階の上の階段の踊り場だ。
「―――『世界(ザ・ワールド)』時よ止まれ』
一息に扉を開け、止まった時の中を帝王が駆ける。
十段飛ばしで階段を駆け上がり、男の背後に舞うように降り立った。
そして、セーターを着た男の顔を確認すると、DIOの顔が喜色に歪んだ。
いい顔だ。気に入った。
この男は善悪の倫理観…タガが外れた悪のエリートだ。
利用価値は、ある。
「時は動き出す」
時間停止を解除しながら優しくセーターの男の肩を抱く。
すると、男は意識が戻ると同時に背後の圧倒的な存在感に固まった。
戸惑いながらも男は仮面(ペルソナ)を被り、いかにも気弱そうな声を上げる。
「あ、あの……僕は」
「フフ、取り繕わなくても良いんだ。私は君がどういう人間かは見ただけとはいえ分かっているつもりだよ……」
「ど、どう言う」
「そのままの意味さ…乗っているんだろう?君は、この殺し合いに」
実際に、声さえ震えているが、見知らぬ男に背後を取られているにもかかわらずセーターの男は身じろぎ一つしていなかった。
そののまま目の前のセーター男を観察するべくDIOが口を噤むと、訪れるのは沈黙。
たっぷり十秒は経過した後、セーターの男はゆっくりと口を開いた。
「……それで?その殺し合いに乗ってる俺に何の用が?」
「フ、実は私もこのゲームの勝者を目指していてね…いずれはあの魔神皇すら排除することになるだろう。だが、問題があるんだ」
「問題?」
訝しげな視線をしながら、セーターの男が向き直り、目の前の金髪で全身にハートを誂えた男を見つめた。
「私は体質のせいで日光が苦手でね……そこで、ええと、なんだっけ」
「六星。六星竜一だ」
「自己紹介どうも…リュウイチに力を貸して欲しいと思ったのだよ、『友達』としてね」
-
魔的なまでに怪しい魅力を漂わせ、DIOは男に笑いかけた。
だが、竜一は未だ、半信半疑といった様子だ。
竜一は不敵に微笑み、わざと意地の悪い問いを投げる。
「……どうかな、殺し合いに乗るフリをしてあんたが俺をほかの参加者に売るって事もあるだろう。協力するにしても、あんたが乗ってるって確証が欲しい」
そうそう答えられるハズがない。
この問い腹の内のほとんどを明かせと言ってるようなものなのだから。
だが、DIOは事も無げに何だ、そんなことかと呟くと―――徐に自分の指を頭に突き刺した。
「なッ!」
流石に狼狽するような顔を見せる竜一。
それを見てDIOは満足そうに嗤った。
「見てのとおりだ、私は既に人間を止めたのだよリュウイチ。最早この世界は私に支配されるためにあると言っていい」
故に私はこのゲームでも完全勝利を目指すと、DIOはきっぱりと宣言した。
そして、竜一に向けて手を伸ばす。
「おっと、紹介が遅れたな……私はDIOと言うんだ。
さあ、リュウイチ。友好の印にシェイクハンドでもしようじゃないか」
差し出された手を無感動に竜一は見つめた。
そして、視線を持っている槍に移すと、再び含み笑いを漏らし、返答する。
彼が持っていた槍型COMPに移っていたのは竜一の物とも違う、DIOの物でもない第三の影。
「フン、マヌケな下郎は見つかったようだな。
この聖帝に友などいらぬ。これ以上蒙昧をぬかす前に―――死ねッ!!」
!?
「な、何ィッ!!」
一瞬で振り返ったDIOの背後にいたのは、大柄なオールバックのタンクトップ男。
掌を槍のように正眼に構え、此方の首を狙ってきていた。
あり得ない。このDIOに事ここに至るまでまったく気取られぬなど。
だが、衝撃を受けている場合ではない。
「クッ、『世(ザ・ワール……」
「遅い!極星十字拳!!」
世界を出す前に、タンクトップ男の拳が迫る。
不味い、このままでは間に合わぬ。
たとえ『世界』を出したところでこの男の拳は自分の頭蓋を撃ちぬくだろう。
迎撃も完全に不意を撃たれたこの状況では―――北斗神拳伝承者をしてなお早いと言われたこの男の拳の前では同じ結果が待っている。
(馬鹿な……絢爛たる永遠を生きるハズのこのDIOが…全てを支配するはずのこのDIOが……)
嗚呼、全てがスローになっているこの視界の中では時を制せし帝王でも打つ手なし。
鳳凰の拳を収めた聖帝の前に、そのスタンド使いとしての生を終えようとしていたそのときだった。
ドスッ。
-
「ぬふぅ!」
瞬間、タンクトップ男の右足に突き立つナイフッ!!
DIOは目を見開き自らの悪魔、ターバンのガキの雄姿を括目する。
何故COMPも操作していないのに勝手にマッカを消費して出てきたのか、それは言うまでもないだろう。
―――この悪魔はたった今、宿敵(とも)に出会ったのだ。
ナイフをねじ込まれた聖帝サウザーの瞳が驚愕に染まる。
「馬鹿な、貴様は……シュウへの愛故に狂ったガキ!!!」
ドスッ。
将星墜ちるべし!!!
再びナイフがねじ込まれ、翼をもがれた鳳凰は階段へと、地へと墜ちる。
イチゴ味ではない、この聖帝にとってこの事態は完全に予想の外だった。
まさかあの時の有象無象のガキとここでまた逢いまみえる事になるとは。
「お、おぉ……ッ!」
対して、もう一人の帝王、DIOは驚愕と歓喜を浮かべていた。
まさか、身を挺してこのターバンの悪魔が死地に飛び込むとは。
しかも世界の突きすら上回るこのタンクトップ男の動きを完全に予見し稲妻の如く飛び込んでくるとは、予想だにしなかった。
この性能ならば、空条承太郎の足すら容易に捕えるだろう。
「WRY!、それでこそ、このDIOに仕えるに相応し―――」
ドスッ。
言い終わる前にDIOの右足から何かが刺さる音がした。
否、音はまだ続いている。
「ごああッッ!!!!!」
「こ、こんなバカなッ!あ、脚に力が入らんッ!た、立ち上がれないッ!」
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
刻まれるターバンのガキのビートッ!!
馬乗りになって二人の偉丈夫にナイフを突き立てまくるターバンのガキと、
ごろごろと転がる帝王二人を見て六星竜一は思った。
―――こいつらは、一体何をやってるんだろう―――
とりあえず、槍型COMPを振り上げてみる。
しかしターバンのガキは二匹の極上の獲物に夢中で此方は見抜きもしない。
あるいは、刺してはいけない相手の空気を読んでいるのだろうか?
まぁ彼にはどうでもよかった。
確かなのはこのままでは話が進まないということだ。
そのまま竜一は手の槍型COMPをターバンのガキの頭上に振り下ろした。
▲△▼△▲△▼△▲△▼△▲△▼△
数分後、竜一の姿はビルの外にあった。
そして、彼は一言で言うのならばDIOの提案を飲んだ。
優勝を目指す者としては態々他の参加者を減らせると言っている奴を
殺すこともないだろうと判断したからだ。
流石にサマナーを殺そうとすればあのターバンのガキの悪魔も黙ってはいないだろうし、
悪魔であるサウザーや化け物のヤツは良いとしても自分は足にナイフなぞ刺されればかなりの不利を負うことになる。
どの道ヤツはあそこからしばらく動けないだろう。
自分の本性を、『七人目のミイラ』の存在を広められる心配も夜まではない。
しかし、マッカを使用し再召喚した悪魔はいかにも不服そうだった。
「フン、この帝王を置いて勝手にあのような下郎と同盟を結ぶとは、偉くなったものだな、貴様」
「まぁいずれは奴も殺すんだ…楽しみはとっておくモンだろ?
それよりも、次はあのターバンのガキを何とかしろよ」
「無論だ。既にあのガキの動きは見切っておる。最早この帝王に死角は無い!
極星は常に一つ!天に輝く天帝はこのサウザーの将星よーッ!」
(多分あのバケモノも同じこと思ってるだろうよ)
無駄に自信満々の答えに竜一はそうかい、と呆れた様な声色で返答したのだった。
▲△▼△▲△▼△▲△▼△▲△▼△
竜一の予想は当たっていた。
帝王DIOもまた、刺されまくった脚を癒し、天井を見上げながら考える。
「あのタンクトップモンキーめ…殺し合いが進んだ時、
まだ生き残っていれば我が『世界』で地面の染みにしてくれる。
天を、見上げた星を握る帝王は未来永劫このDIOただ一人よッ!!」
こうして、DIOはまだまだ動けずにいた。
-
【新宿区内ビル/1日目/朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右足に刺し傷、イライラしている
[装備]:ナイフ型COMP
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:二万五千
[思考・状況]
基本:殺し合いを勝ち残り、あの主催の少年を処刑する。
0:このターバンのガキをどうにかする。
[COMP]
1:ターバンのガキ@北斗の拳イチゴ味
[状態]:健康、COMPの中
残存MP170/200(参加者には確認できない)
スキル:分裂、消費MP:10
【六星竜一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、槍型COMP
[思考・状況]
基本:優勝狙い
[備考]
※参戦時期は死亡後です
[COMP]
1:サウザー@北斗の拳
[種族]:拳士
[状態]:右足に刺し傷
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投下終了です
タイトルは「二人の帝王の奇妙な事件簿」で
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投下乙
前半はシリアスだったのになあw
恐るべし、ターバンのガキw
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投下します
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「機械の操作が可能ってことは、この首輪を外すことが」
「サマナーは、本当にそんなことが簡単に出来ると思っているのか?」
「・・・・・ですよね」
COMPを取り戻し情報を確認したイリヤは、今後の行動について自分の仲魔であるワイゼルと話し合っていた。
(虫ケラ呼びは、イリヤが半泣きで訴えはじめたために仕方なく止めてサマナー呼びに変えている)
「殺し合いを望んでない奴を探し、仲魔を集める。当面の目標はこれでいいんだな?」
「うん、それでいいよ」
細かいことは後々に考えるとして、とりあえず方針を決めることにした。
行動するにしても、何か目標はあったほうがいい。
「それにしても、宿に泊まったり食べ物とか手に入れたりするのは好きにしていいらしいけど・・・・・」
飲食物や衣類その他が三万しかないマッカを使わずにタダ。即物的思考のイリヤにとってそれはいい。
だけど宿泊施設は休みたければ勝手に泊まり、品物は店からお金を払わずに手に入れる必要がある。
それが泥棒のような行為に思えて、一般常識のある少女の心は罪悪感を感じてしまう。
「・・・なんか、盗みをするみたいだなぁ・・・」
「嫌なら野宿をして、悪魔を食べるか?」
「それだけは絶対にしません!!」
嫌そうに言ったイリヤの発言に、意地悪っぽくワイゼルは答える。
悪魔がウロウロしていて、殺し合いに乗っているかもしれない人がいる。
そんな場所で野宿をするのは、殺してくれといっているようなもの。
狩って食べるのも危険だ。悪魔を食べるというのが、身体にどんな影響を与えるか考えるだけでも恐ろしい。
「移動したり、悪魔を相手にするなら丸腰だと危ないよね。よしっ!まずは装備を整えよう!!」
「妥当な手段だ、当てはあるのか?」
「COMPに地図があるから大丈夫です」
悪魔を仲魔にする方法は色々あるが、基本的には【交渉】即ち話し合いである。
ただ会話をするだけなら安全だが、悪魔によってはこちらに牙を剥いて襲いかかってくる。
ワイゼルはともかく、イリヤは自己防衛の手段が逃走以外にない。
「武器、いやせめてサマナーが自分の身を守れる物だな。ここから近い場所で、そういう物を売っているか置いてある所はあるか?」
「う〜ん、それなら万屋っていうお店に行ってみようかな・・・・・。あっ、そういえば支給品を確認してなかった!?」
今さらながら、確認していない物に気付く。
目の前のことに集中しすぎて、頭の隅に追いやっていた大事なことをやっと思いだした。
-
「なんか忘れてるなー、とは思ってたんだけど」
「そういうのは早く確かめておけ、死にたいのか」
(いや、それは色々あったからなんですけど)
殺されかけて逃げたり、虫けらって呼ばれたり。
大変だったことを思いだしながらディパックの中にある支給品を確認して、出てきた物に驚愕する。
「えっ、うそ?これ、ギル君が持ってたのだ。でもどうして入ってるの!?」
「どうした、どんな道具だ?」
出て来たのは一つの帽子、だがそれがただの帽子ではないことをイリヤは知っている。
それを、ワイゼルは目のような部分を赤く光らせてじっ見つめだした。
「・・・・・?」
突然、凝視しだした悪魔にイリヤは不思議そうな視線を向ける。
相手は気にしていないのか、それともあえて無視しているのか止める気配は無い。
(もしかして、何かしてるのかな?)
悪魔辞典には大体のことは載っているが、詳しいことは書かれていない。
もしかして、隠し機能があるのではとイリヤはワクワクしながら待っていた。
「・・・なんだそれは、ただの帽子ではない・・・!?」
数分後。目のような部分の光をチカチカと瞬きのように点滅させながら、驚きが込もった声を上げる。
どうやら帽子を解析していたらしい。
「ワイゼルさん、分かるの?」
「オレは相手を分析することが出来る。そして、装備も」
「装備・・・・・はっ!?ワイゼルさんまさか服を透視でき」
「・・・・・」
「いえ、何でもアリマセン!!」
点滅が止まり、赤い光が強くなったのを見て急いで発言を撤回する。
強く光るのは怒るときだと今までの行動で学習したからだ。
身体はイリヤより小さいが、謎の威圧感を感じるためか恐いと思ってしまう。
(ワイゼルさんて、怒りっぽいなぁ)
その外見からは想像も出来ないほどキレやすくて口が悪い。
悪魔でありながら人のような感情を持ったロボットのワイゼルさんを見ていると、姿も性別(?)も声も何もかも違うのに
お喋りなルビーが脳裏に浮かぶ。
(魔法少女に変身できたらいいのに、そうしたらきっと・・・・・。ううん、駄目!出来ないなら、今できることを精一杯やらなきゃ!!)
心のなかでイリヤは弱気になった自分を叱咤激励する。今の自分は【魔法少女】ではなく【サマナー】なのだからと。
-
「・・・・・で、それは何だ?」
「【ハデスの隠れ兜】って言うんですけど、これは広げても使えるんですよ」
「・・・・・兜・・・・・?」
兜とはいうが、どこをどう見てもそこはかとなくお洒落な帽子にしか見えなくてワイゼルは思わず首を傾げた。
見た目とその仕草は可愛いのに、声と性格でいまいち可愛いって言い切れないなー。とそんなことを
思いながらイリヤは説明を続けていく。
「ギ、ギル君は兜って言ってたから兜です・・・・。それで、これを使うと見えなくなるんですよ・・・・・ほら!」
そういって、被った瞬間にその姿は消失してしまう。まるで、今までいたのは幻だったかのようにパッと消えてしまった。
視覚以外の機能は反応している。左手で何も無いような場所を触ってみれば、そこにサマナーがいるらしいが見えない。
「視覚系統のセンサーは一切感知出来ない。だが、触覚や温度や聴覚その他のセンサーには引っ掛かっている。
つまり『見』えなくなることだけに特化している道具ということか」
道具じゃなくて宝具だが、知らないワイゼルには関係ないことだ。
「戦う力を持たないサマナーには丁度いい支給品だな。それにしても、これだと味覚でも感知できそうだな」
「凄い!味が分かるんですか!!ロボットなのに!?」
「それだけではない、食物を摂取することも出来るぞ」
褒められたためか、嬉しそうな声でワイゼルさんは答えた。
大体怒ってばかりだったので、その反応はなんだか新鮮に感じた。
(・・・あれ、もしかしてワイゼルさんて実は結構チョロい?)
ついでにさりげなく酷いことを相手に思っていた。
それと同時に、味が理解できるだけでなく食事をすると聞いてイリヤは驚いた。
そういうものは漫画かアニメの中にしか存在しないと思っていたから。
(そういえば、魔法少女もそうだったな)
現実にはありえないと思っていたことが、本当にあった。それは魔法少女であり、悪魔であり、ロボット。
探せば、実はフィクションでない物は結構あるかもしれない。
殺伐とした状況の中だけど、そう思ったら少しだけ気が楽になった。
「そして、オレは上手いコーヒーを淹れるのが得意だ。なんせ、カフェでの腕前は好評だったからな」
「へぇー・・・・・ん?カフェ?え?」
待って、なんか話が違う方向に行ったんですけど。なんで突然というか脈絡もなく話がカフェになってるんですか。
あれ?もしかしてわたし、何か聞き逃した?
自慢げに言ってる本人はまったく気付いていない。というか特におかしいと思っていないらしく、話を続けている。
(悪魔もバイトをするんだ。そういえば、わたしもアーネンエルベって喫茶店で働いたことあったなぁ)
もしもワイゼルがイリヤの心を読めたなら、金銭を得るためではなく監視のために仕方なくやったんだと
言っただろう。
が、読心機能は無いために訂正されることは無い。バイトをする悪魔と勘違いされたままでイリヤは話を聞いている。
-
「まったく。あの時は任務のサポートの為とはいえ、何故オレが執事の真似事などをしなければ――――」
「えっ」
「その「えっ」はどういう意味だ・・・?」
任務やサポートとは一体どういうことなのか訊ねてみたかったが、それ以前に気になることが聞こえた。
「・・・執事・・・できるんですか?」
執事と聞いて、オーギュストさんを思いだす。
ルヴィアさんの屋敷にいるあの人みたいなことが出来るのだろうか。
「その程度のことが出来ないとでも言うのか?」
信じられないというふうに言ったイリヤに、馬鹿にされたと思ったのか少しだけ声が低い。
イリヤは脳内で、執事の服を着たワイゼルが「いらっしゃいませ、お嬢様」と言っているのを想像しようとしたが、
なにがあろうと絶対に丁寧口調を使わなそうなので「ふん。遅いぞ貴様、やっと来たか」という
ツンデレ喫茶のような対応しか妄想できなかった。
カフェで働いていたならすくなくとも敬語は使えるのでは?と指摘する者はここにはいない。
「今、オレに対して何を思ったか言え。場合によっては覚悟しろ」
「・・・・・」
イリヤは、赤い光を強く輝かせているワイゼルをちらっと見て無言で顔を逸らした。
絶対に怒るから言わなかっただけなのだが、ワイゼルはそれを「お前には絶対に無理だ」と見下されたような気がした。
だから、今ここで彼は宣言する。
「みていろ・・・・・いつか貴様にこのオレの執事対応を見せてやるからな!!」
(いや、なんで!?)
左前足を伸ばし、三本ある指の一つを人差指のようにサマナーに突きつけて断言した言葉に
イリヤは内心でツッコミをいれた。
【新宿区・公園/1日目/朝】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)、ハデスの隠れ兜
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:30000
[思考・状況]
基本:死にたくない、殺し合いには乗らない
1:殺し合いに乗っていない人を探す、仲魔を集める
2:街の探索
3:いや、なんで!?
【ハデスの隠れ兜】
ランクEの姿を隠す宝具の原典。極めて複雑な織りをした布で、折りたたむことで帽子として使うことが出来る。織りの方向は
少なくとも五次元に達しているとされ、この布の完全再現は人間には不可能と言われている。被せる、または括ったものは
魔術的・光学的に観測不能となり、高度な結界にも探知されなくなる。ただし、音・匂い・体温・気配などは隠すことが出来ない。
[COMP]
1:ワイゼルT3@遊☆戯☆王5D`s
[種族]:マシン
[状態]:正常
※ワイゼルが執事宣言をしました。朝に執事対応で起こしてくれるかもしれません
-
投下終了します
-
だんだんずれて行く2人の会話。ワイゼルは執事対応を見せる機を得られるのか?
-
投下乙です
>>79
だめだ、ターバンのガキで笑うw
マーダー同士利害は一致、ひとまず休戦ですね。
>>86
噛み合わないというか、ずれているというか。
お前ら何しに来たんだ、って感じですね……w
-
遅くなりましたが、投下します。
-
「え」
「あ」
「ぬ」
「へ」
その場に居合わせた四者から、異口同音に変な声が漏れる。
奇妙な和音となって辺りに響く音は、それが嘘偽り無い感情から出たものだと強く主張していた。
─────ばったり。
そんな擬音がとにかく似合う、あまりにも唐突で、少しだけ間抜けな遭遇だった。
─────時は、数分前に遡る。
白鳥昴と犬吠埼風の二人は、潮風に吹かれながらお台場の広場の隅で座っていた。
初期位置の建物を出てすぐのここは、建物も少なくないためにそれなりに身を隠せ、それでいて周囲の異変に気付かないほど入り組んでいるわけでもない。
周囲を警戒しつつ腰を落ち着けるには、それなりに適した場所だった。
(しっかし、なんだかねえ)
風が眺めるのは、先の見えぬ海の向こう岸。
いったい何処までがこの会場で、どこからが「外」なのだろうか─────そんな思考が、彼女が本来いるはずだった世界の思い出が頭を過る。
閉じられた世界─────外界から隔絶された世界。
神樹の結界によって守られた、人類最後の世界・四国。
内部が楽園か地獄か、という意味では真逆でこそあるが、それでも脱出ができないという点で頭に浮かべてしまう。
「やっぱり、連想はしちゃうんだけどね……」
「え?何か言った?」
「ううん、何でも。それより、どう?誰か見つかった?」
「うーん…わかんない」
確認作業を終えた昴の言葉に、少なからず落胆を隠せない風。
今彼女たちが行っているのは、名簿の確認作業だった。
もしもここに昴の友人や知り合いがいたならば、相手もこちらを探してくれるはず。
高確率で信頼できる人物が一人いるだけでも、気持ちの持ちようはだいぶ変わってくる。
もちろん、こんな危険な場所に知り合いが呼ばれている、というのは、心苦しいことなのだが。
(そういう意味じゃ、見つからなかったのはかなりいいことなんだけどね…)
昴の今の発言曰く、結局彼の知っている名前はどこにもなかったらしい。
見覚えがある名前はいくつかあるけど、あんまり覚えてないからわかんないや、とは彼の言葉だった。
語弊が無いように言えば、世界でも指折りの不動産会社の主であり、会社名にもファーストネームが刻まれているジョセフ・ジョースターなど、聞き覚えがあってもおかしくない名前は散見される。
しかし、昴は同じクラスかつかなりの有名人である朝倉恭介についてすら何一つ知らないような少年。
ニュースなども好んで見るわけではない為に、とにかくこういう流行や社会的常識には疎いという面がある。
ともあれ、この場ですぐに信用できる、或いは顔がわかる参加者はいない、という結論が出そうになり。
まあ仕方ないか─────と風がため息をつこうとした、その瞬間。
「でも、凄い偶然なら見つけたよ。はい」
「偶然?」
そんな事を言いながら差し出してきた名簿を受け取り、昴が指を差すところに目を向けた風。
-
─────瞬間。
─────彼女は、静止した。
そこに刻まれていた名前が、あまりにも衝撃的。
ともすれば、心臓が凍りつくかと錯覚するほどに。
「結構珍しい苗字だと思うのに、被ることなんてあるん─────え、ちょ、ちょっと待っ!?」
離れないように昴の身体を抱えるように掴み、一般人にも負担がかからない程度の強さで地面を蹴る。
そのまま、巨大なロボットの模型を蹴り、辺りでは一番高い建物─────某TV局である─────の屋上へと跳ぶ。
そのまま、勇者の力によって強化された視覚をフル活用して、近くにある人影を探し─────
「…………はあ」
当然、それくらいで目的の人間が見つかる筈もなく。
というより、周辺にはビルで遮られているとはいえ人っ子一人見当たらない状況。
上手くはいかないな、と一人顔を落とすと、そこにあったのは物凄く青い顔をした昴だった。
「い、いきなり何なの………」
「………ごめん、少し焦りすぎた」
一応の謝罪はしたが、しかし焦りすぎたのは確かだ。
あまりに唐突なこの行動では、不審に思われてしまうのも無理はない。
ともあれ、と。
引っ張り回した理由は説明しておくべきだろう、と、下ろした昴に向き直る。
「妹と、同じ名前だったからさ」
─────犬吠埼、樹。
この場で見ることなどないだろうと思っていた、何よりも大切な妹の名前がそこにあるのを見て、彼女が動転してしまったのは無理のないことだった。
そしてその言葉に、昴の表情もまたほんの少し曇る。
可能性は、もしかしたらあるかもと少しだけ思ってしまっていた。
自分の姉である司が、同じように巻き込まれているのではないか─────という、小さな不安。
もしも、彼女のように、自分の姉である司が呼ばれていると多い知ったならば。
その時、自分が平静でいられたかどうか─────多分、無理だっただろう。
事実、名簿を読み、その名前がどこにも見当たらなかった時には、そんな不安が払拭されてほっとした。
「あれ、でもそれって…」
あれ、と。
昴が思い当たったのは、そもそもの疑問だった。
そもそも、白鳥昴の悪魔として召喚された犬吠埼風の妹が、参加者として呼ばれる、というこの状況に違和感があること。
「うん。だから、他人なのかとも思ったけど…それでも、気になっちゃうのよね」
もちろん風も、その可能性に思い当たってはいたが─────しかし、それは些細なことだ。
もしも自分が知っている妹ならば、確かに信頼できる人間が一人増える。
そうでなくとも、まあその時はその時だ。人を殺して回っているのならば止めるだけだし、そうでないのならば手を取り合えばよい。
「とりあえず、ここから降りましょうか。ゴメンね、無理矢理引っ張ってきちゃって」
そう言って屋上を見渡すと、ちょうど屋内へと続くような扉を発見。
もう一度昴を抱えて飛び降りる事も考えたが、落とすつもりはさらさら無いとはいえ流石にベルト一本で挑むジェットコースターのようなものを何度も体験させるのも問題である。
次にやるとしたら緊急時かな、なんて呑気に思いながら、風は昴が隣で扉を開くのを眺め─────
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再び時間は遡り、数分前、某テレビ局のとある一室。
そこにいた千尋がまず最初に取り掛かったのは、PCの機能をどこまで使えるのか試すことだった。
超高校級のプログラマーそしで同時に超高校級のハッカーである千尋にとって、その力を最も活かせるのは迷うべくもなく電子の戦場だ。
そして、この殺し合いに於いては、COMPという電子機器が支給されるようになっている。
強くなる、という目標、そしてそのためにこの殺し合いで生き延びること。
彼が持っていた才能が生存に活かせる機会に恵まれていたのは、かなりの幸運といっても差し支えがないものだった。
「……うーん……」
ふと。
それまでキーボードの上を絶えず動いていた千尋の指が、その時初めて止まった。
悩むように顎に手をあてつつ、画面とにらめっこをする、
「どうした千尋よ。腱鞘炎か?」
「いや、そうじゃなくて…ちょっとこれ以上は難しいかなって」
そう言いながら千尋が睨むのは、画面に表示された奇妙な文字列。
それは、画像というわけでもないのに何故か円形に文字が浮かび、しかも何本もの曲線がそれらを区切るように交差しているというものだった。
有体に言ってしまえば、『魔法陣』と呼ぶのが最も正しいであろうそれを眺め、しかし千尋は思考を止めない。
記憶の中にある様々なプロトコルなどと照らし合わせ、適合するものを模索し─────
「………うーん、やっぱりわかんないか」
しかし、それでも思い当たるものはない。
世界中を探しても有数のプログラマーである彼であっても、悪魔召喚プログラムという異能の産物をすぐに解き明かすには至らなかった。
「でも、なんというか……糸口は、見つかったかも」
そう呟き、考えを整理し始める。
─────そもそも、だ。
悪魔とは、一体何か。
もちろん、これまでの生涯で彼が一切悪魔なるものを見聞きしたことがなかった、というわけではない。 しかし、それはいずれも空想上の物語として語られるべき存在である。現実にそれが出現したなどというのは、体験したことがある人間など存在し得るのかすらも疑わしいと世間一般ではいわれるべき事例だ。
それに加え、その悪魔というのも、自分の認識とは大きく異なっているのではないか、と千尋は疑っている。
その根拠は、といえば、もちろん今彼の傍らで体幹を優に五分はしているキントレスキーだ。
彼は確かに見てくれこそ普通の人間とは大きく異なるが、一般的に悪魔と呼ばれるようなそれかと問われれば疑問符が浮かぶ。
悪魔とは便宜上の呼び名であり、もっと広義の意味で─────そう、例えば非人間を指す言葉としてのものなのではないだろうか。
憶測に過ぎないけど、と思いつつも、しかしそこまで間違っているとも思えないために、それを仮定としてさらに考えを進めてみる。
非人間─────キントレスキーは己のことをダークフォールという世界の住人だと語った──────を悪魔とするならば、これもそれに関連するオカルトチックなものである可能性が大きくなる。
そうなれば、ただの人間一人に過ぎない千尋の独力ではどうにかなる可能性が低い。
よりそういうものに詳しい人間によるサポートが、これを解き明かすために必要なことだ。
どんどん非現実的な方向へと進んでいく話を、千尋は全く臆することなく推論立てていく。
正直半信半疑ではあるのだが、しかし現実を受け入れねば先には進めない。
逃げずに立ち向かう、という、これはそのための一つの練習でもあるのだ。
自分にできることを見つめ、「強く」生きるための。
そのきっかけをくれた自らの悪魔に感謝を述べようとして、その前に、とひとつ聞いてみることにする。
「すいません、キントレスキーさん。これ、見覚えがあったりしません?」
「うん、どうした?─────ふむ、見たことはないな。何か関係があるのか?」
「ええ、多分重要なもののひとつだと思うんですけど・・・」
どうやら、彼がこれを知っているというわけでもないらしい。
あらかじめ魔神皇について知っているかどうか聞いたところ「しらない」とのことだったのであまり期待はしていなかったが、進展がないというのはやはり苦い顔をしたくはなる。
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(あのハザマって人の知り合いか誰かがいてくれたら、一番手っ取り早いんだろうけど…)
ハザマが自分の知らない技術を用いてこれをプログラミングした、という可能性が、現状では一番大きい。
つまり、彼と同じ知識を持っている人間と出会えたなら、このプログラムの解析は少なくとも一歩くらいは前進してくれるはず。
ともあれ、もう少し解析を続けようと再び画面へと目を向けようとした──────が、それを遮るように、唐突にキントレスキーの手が伸びる。
「千尋よ、さっきから画面を眺めているだけ─────ではないのはわかるが、しかしそれでは煮詰まるばかりではないのか」
「…うん、確かに」
さっきから画面を眺めてばかりで、流石に目も疲れてきた。
リラックスも大事だし、そろそろ場所の移動もして他の人間とも会っておきたい─────情報を集めるという目的ができたのだから、尚更だ。
外に行こうか、と部屋を出て下に向かおうとした、そこで。
「ふむ。どうせなら、普通は入らないようなところへ行ってみないか?」
キントレスキーが、上を指差しながら第二の提案を口にしたのだった。
─────そうして、時間は冒頭へと戻る。
屋上へとやってきた千尋たちと、屋上から中に入ろうとした昴たち。
全く予期しない出会いによって、風が吹き荒れる屋上は時が止まったように凍りついていた。
目の前で突如として出来上がった膠着状態は、慣れぬ場で少なからず緊張を孕んでいた少年達にとってはすぐには受け入れられぬもの。
故に。
「私の名前はキントレスキー。彼、不二咲千尋の悪魔だ」
最初に口を開いたのは、千尋の悪魔にしてこの場で最も成熟した存在であるキントレスキー。
礼儀正しい立ち居振る舞いを崩さず、しかし相応の威圧感を醸し出す彼の言葉に、相対する風は小さく身震いする。
「ふじさき………?」
と。
その名前に引っかかることでもあったのか、昴が頭を捻り始める。
名簿を見た時には分からなかったらしいが、改めて聞いて思い出しでもしたのだろうか。
しかし、それに構っている暇は今の風にはない。
状況はまさに一触即発。
何かが起これば、たちまち戦闘が始まってもおかしくない。
気を抜くな─────そう自分に言い聞かせながら、相手を観察する。
「どうした!こちらが名乗ったのだから、そちらも名乗るのが礼儀だろう!」
「え、えー…?」
…が、しかし次の台詞にはつい風も変な言葉を漏らしてしまう。
緊張していたのが馬鹿らしくなる、という程ではないが─────しかし、警戒している中でいきなりのこれはどう反応したものか。
向こうが名乗りを上げた時点で、そこまで警戒しなくとも良かったか、とも考えつつ、ひとまず言う通りに名乗っておくことにする。
「…犬吠埼風。こっちの、白鳥昴の悪魔よ」
それを聞いたキントレスキーは、何かに満足したように大きく頷き。
─────徐に、拳を胸の前で構えた。
「よろしい──────では、ゆくぞ!そちらも構えろ!」
「……ッ!」
やはり戦闘か、と風が認識し、大剣を召喚して構える。
悠長に剣の召喚が終わるまで待ってくれている相手に疑問を覚えつつも、いつでも攻撃を仕掛けてきても対応できるよう神経を尖らせる。
開戦の火蓋が切って落とされるか─────と思われた、その時。
「や、やめて!キントレスキーさん!風さんや昴さんも、敵って訳じゃなさそうだし!」
と。
千尋がその間に割り込み、己の悪魔を制止にかかる。
あまりに急に緊迫した空間に放り込まれ置いて行かれた彼が状況を理解するまでに、ここまでの時間がかかってしまった、というのがより正確な形容ではあるのだが。
とにかく、やっとのことで止めに入ることができた彼の叫びに、結果的にだが場の空気も僅かに緩む。
-
「…ふむ」
キントレスキーとしては、いつもと同じように戦うことで、千尋に自らの戦いぶりを示し一つの教材とすると共に、障害になり得る敵を正々堂々と戦って排除する、とそういう考えであった。
しかし、今はアクダイカーンの為に戦っているのではない。魔神皇の掌の上から逃げ、生き残ることが最大の目的。
ここは、彼の言う通りにして一度話し合い、もしできそうなら彼等と協力するのもありだろう。
幸い、といっては何だが。
悪魔である風と名乗った少女からは、かつて自分と戦った好敵手、プリキュアに似た輝くような心を感じる。それなりに信用も出来そうだ。
「ふむ、確かにそれもそうだな。
しかし千尋。危険を承知で戦闘に飛び込むのは男としてとても勇ましいと言えるが、無防備なのは良くないぞ。
まだ鍛えていないお前の身体では、かなりよ危険を伴う」
「う…はい」
キントレスキーの的を得た指摘に、う、と言葉を詰まらせる。
彼がその顔に反省の色を浮かべているのを確認し、改めて向かいにいる二人へとからだを向ける。
「すまなかったな風、そして昴」
「え、ええっと…、すいませんでし……………?」
そして、そこで二人はようやく気付く。
風と昴の表情が、明らかに変わっている。
昴は、意外なものを見るような目で。
そして風は、それに加えてなんだか微妙な表情も加わっているように見える。
何かあっただろうかと、キントレスキーとの会話を思い起こして。
「…………あ」
「その……男の子、だったの?」
そう。
キントレスキーの発言の中にあった、「男として」という言葉。
間接的ながら、それは千尋の秘密のカミングアウトとなってしまっていた。
本当に何気ない一言ながら、しかしこの二人にとっては見抜くに足る十分な条件だった。
「───────」
何か言おうにも、千尋の口はぱくぱくと開くだけで言葉を発さない。
そんな千尋を尻目に、徐に昴も自分の頭部へと手を伸ばし。
「なんだ、僕と同じなのか」
そう言って、昴もカツラを取った。
その下から現れたのは、平均よりも前髪が長く少し鬱陶しそうなショートカット。
女性もよくやるショートカット?いや、そもそも本来の髪型が明らかになるとその顔立ちはよく見れば男のそれとよくわかる。
こうやって見れば、なるほど白鳥昴もまた女装少年だったのだろう。
キントレスキーの一言だけですぐにそれを見抜いたのも、もしかしたらそれがあったから。
「…なんか、なあなあになっちゃったわね…。
にしても、二人とも女子力ほんっと高いわね〜…男の子にしとくの勿体無いんじゃないかしら」
「いや、違うな。彼等は鍛えれば伸びる。より鍛え上げ、立派な姿に育てるべきだ」
「そうだ、思い出した。不二咲さんってあれでしょ。『ぺちゃくちゃ』作った人」
「へ、は、うん、そう、だよ?」
二人の女装少年、そして彼らの悪魔である金色に身を包んだ二人。
四人が口々に言い合う姿が、しばらく屋上に残っていた。
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─────逃避の為に女の姿をする己に恥じ、自らの変革を願う少年。
─────ただ変わらぬ事を願い、その為に姉と同じ姿を選んだ少年。
─────世界を滅ぼす為に、世界を司る大樹を抹消せんと争う怪人。
─────世界を守る為に、世界を包み込む大樹の力を得て戦う勇者。
もし表面上が似ていたとしても、彼等が心の内に抱えるものは示し合わせたように正反対なそれ。
けれど、この争い自体、所詮もしもの産物で。
ならば、せめて願うのは。
彼等がこのもしもの舞台の中で、本来なら手にし得なかった何かを互いから掴む事─────
【江東区・某テレビ局屋上/1日目/朝】
【白鳥昴@ななしのアステリズム】
[状態]:健康、女装
[装備]:白鳥昴の女装キット
[道具]:基本支給品、スマートフォン型COMP
[思考・状況]
基本:殺さない。なんとかして脱出。
0:この人も女装してたんだ…
[備考]
※白鳥司の姿に女装しています。
[COMP]
1:犬吠埼風@結城友奈は勇者である
[状態]:健康
【不二咲千尋@ダンガンロンパ】
[状態]:健康、少しの自信、カミングアウトとカミングアウト返しによる困惑やら恥ずかしさやら
[装備]:COMP(ノートパソコン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:少しでも強くなるために、生き残る。
0:な、なんか凄い偶然だなあ…
1:COMPについて調べてみたい。その為に悪魔や悪魔召喚プログラムについて調べたり話を聞きたい。
[COMP]
1:キントレスキー@ふたりはプリキュアSplash☆Star
[種族]:ダークフォールの住人
[状態]:健康
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投下終了です。
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投下乙です
女装という共通点……!
さらっとヅラを外す昴が図太いというか、なんというか……w
そしてサマナーとして召喚されてる妹、気になるところが多いですね。
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書き手枠って名簿に反映されるんでしたっけ?
ともかく、プログラミングでハザマへの足がかりを得た千尋は凄いですね
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>>66
投下より一週間経過していますが、書き手枠のキャラクターの登場話の収録が確認できていません。
予約スレにも記載しております通り、書き手枠使用時は書き手枠のキャラの登場話の収録が
ルールとなっておりますので、収録をお願い致します。
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昨日編集しましたが。誰かと間違えていませんか?
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>>100
キャッシュ残りで古い情報を参照していました、申し訳ございません。
収録を確認いたしました、ご協力ありがとうございます。
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投下します。
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「しかし、東京も随分変わったなぁ……」
キートンはセラスとの自己紹介を終え、改めて町並みを見渡す余裕ができた。
まさに“東京”といった感じの都会だが、その景色には見覚えが無かった。
というのも、胡桃沢大学を追い出されてしまってからは日本に帰省しても実家以外には寄る事も無く、東京という地に赴くことは久しぶりのことであったからだ。
海外の田舎暮らしが長い今のキートンにとって、都会はどこも似たような景色に見えてしまっている。
「で、キートンさん。これからどうするんですか?」
「うーん、まずはこの辺りがどこなのか確認したいんだが……あそこのコンビニに地図おいてるかなぁ」
キートン100m程の近い距離にコンビニエンスストアを見つけ、その咆哮へと歩を進め始めた。
しかし、セラスが思いついたようにポンと手を叩き、タブレットを指差す。
「あの、それに載ってたりしませんか? 地図」
「ああ、そういえば君の召喚以外の項目はまだ見てなかったな」
キートンはセラスに指摘されて初めてタブレットの存在を思い出した。
海外を転々としていたためか、すぐに現地で物資を調達しようと考える癖が付いてしまっていたようだ。
最近流行り始めたこれらのハイテク機器が苦手というわけではないが、キートンはどうもメールやらの資料よりも紙束の方がしっくり来るタイプの人間だった。
“おじさん”を過ぎて“初老”になってくると、キートンも一般人も
僕も古い人間になってしまったか、と独りごちながらキートンはタブレットを操作する。
中には「地図+コンパス」「名簿」「時計」「メモ帳」「悪魔辞典」と様々なものが入っている。
とりあえず目的であった地図を開き、現地の確認を行った。
ここはどうやら豊島区の南池袋辺りのようだ。
「地図ありました?」
キートンがしばらく地図とにらめっこしていると、周囲を見張っていたセラスがタブレットを覗き込んできた。
余談だが、セラスからキートンへの呼び名は“キートンさん”で決定された。
日本語で意思疎通が取れている彼女だが、やはり英国名の方がしっくり来るようだ。
「ああ、あったよ。それに、これには地図以外にも色々入っているらしいんだ。例えば……この名簿とか」
キートンは地図の画面からメニューへ戻り、一つのアプリをタッチした。
開かれたのはアプリの名称通り名簿である。
当然のことではあるが、キートンはその中に自分の名前があることを再確認した。
明らかに五十音順ではない並びで記された参加者達を、上から順番に眺めていく。
「んん!? 見たことある名前がいくつかあるぞ?」
キートンはガバッとタブレットに顔を近づけ、食い入るように名簿を読み始めた。
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「ジョセフ・ジョースター、峰不二子、南条光、鴻上光生、不二咲千尋……このヘックスというのはCIAの彼女なのか? あとは、メイトリックス?」
ジョセフや鴻上、不二咲の名は世間的にもよく知られている有名人だ。
特にジョセフはオプの仕事で一度会ったことがあるのを覚えている。
南条光も日本で活動しているアイドルだと娘から名前を聞かされた事あった。
キートン自身も考古学者としてテレビメディアに出演することはあるが、基本的に海外の番組であり彼女達のようなアイドルとは無縁である。
彼らとは別に、峰不二子とヘックスは個人的な知り合いである。
彼女達の立場は真逆と言っていい程だが、キートンは仕事の関係で何度か遭遇したことがある。
そして、最後にキートンの目についたのはジョン・メイトリックスという名前だ。
頭の片隅に引っかかっているが、中々思い出せそうに無いのだ。
そのままキートンは顎を指でなぞりながら数十秒悩み、やっとこさ記憶を浮上させることができた。
「うーん、メイトリックス、メイトリックス……――あ! ジョン・メイトリックスか!!」
何かを思い出したのか大声を上げるキートンに、セラスの身体が一瞬ビクッと跳ねた。
「ど、どうしたんですか?」
「ああ、名簿に懐かしい名前を見つけたんだ……とても古い知り合いだよ――」
キートンがまだSASのサバイバル教官をしていた頃、アメリカ軍の訓練兵達と合同訓練が行われた事があった。
演習や射撃訓練などの後、プログラムの中でレクリエーションの一貫として英米での組手が行われた。
その時、米軍側の格闘技教官が「こっちにゃすげぇ奴がいるぜ」と言って1人の訓練兵を紹介してきたことがあった。
その場に出てきたのはキートンとは真逆な筋骨隆々の大男で、名前を「ジョン・メイトリックス」といった。
まだコマンドー部隊が編成される前のことであったが、メイトリックスは当時から抜きん出た強さを持っていた。
相手方の教官に「いっちょ組んでみないか?」と誘われ、メイトリックスからも頼まれてしまえば断りきれず、キートンは組手を行うことになったのだ。
かの教官の言葉に嘘はなく、見た目通りの身体能力と恐ろしく練度の高い技術にキートンも苦戦を強いられた。
しかし、結果はやはりキートンの勝利で終わった。
その後、キートンは組手から感じたメイトリックスの短所や長所を自分の意見を交えてアドバイスし、メイトリックスもそれを真剣に聞いた。
無骨ではあるがユニークな性格のメイトリックスと気のいい性格のキートンはすぐに意気投合し、短い合同訓練期間内において両軍の間では一番の親友になった。
「――あれ以来一度も会っていないけど、彼がいるならコンタクトを取ってみるのもアリかもしれないな」
「薄々わかってましたけど、キートンさんって軍人だったんですね」
「昔のことだし、あくまで本業は考古学者なんだけどね……さて! 地理もわかったことだし、ここから移動しようか」
-
タブレットを鞄にしまうと、キートンは静かに歩き始めた。
どうやら目的地は決まっている様で、その足取りには迷いはない。
「どこに向かうんですか?」
「池袋にはパルコっていう大型店があったはずだから、取り敢えずそこに向かおう」
キートンが示したのは大型のファッションビルだった。
池袋の景色が変わっているとはいえ、パルコのようなテナントの多い店は需要と供給の関係からどの時代でも傾向自体に大きな差は無いものだ。
キートンの知る時代でも、おもちゃからホームセンターまで幅広く揃った場所だった。
パルコを目指した理由は、キートンがまず優先したのが物資の調達であるからだ。
ゾンビものの創作で必ずと言っていいほどショッピングモールに篭もる事でも分かるように、幅広く物が揃っているということはその分行動の幅も広がるということに繋がる。
ましてや周囲の物を駆使して闘う事に優れたキートンならば尚更である。
そして、キートンが物資の調達を優先する理由は支給された武器に関係があった。
キートンに支給されていたのは「コルト ガバメント」という拳銃だった。
19世紀に発生した米比戦争において武器の威力不足を嘆いた米軍の意見から開発された銃だ。
『M1900』『M1905』など呼び名を変え、改良が重ねられたが、1911年に米軍から正式採用されて以降は『M1911』として親しまれている。
更に改良された物が出てからは第二次世界大戦においてコルト社以外からも大量生産され、半世紀以上も前線で活躍し続けた。
その人気は米軍の正式拳銃から外れた今も衰えを見せず、キートンにとっても扱い慣れた銃といえるだろう。
拳銃が支給されていたなら十分だと考えるのが普通だが、キートンに関してはそうではなかった。
確かに軍隊では銃の扱い方も教わったし、凶悪な人物に対してはやむを得ず発砲した事もあった。
しかし、銃を構え、しっかりと人間に照準を合わせた時、心優しい性格のキートンには引き金を引く事ができないのだ。
そんな甘さを捨てきれなかったからこそ、彼は“プロフェッサー”ではなく“マスター”なのだ。
もしも悪魔という者達が全てセラスの様な容姿をしているならば、おそらくキートンに彼らを打つことはできないだろう。
「おっと、その前にコンビニに寄ってもいいかい?」
パルコへと移動する前に、キートンがセラスに提案する。
セラスも了承し、移動を開始した。
*
-
数分間コンビニを漁り、キートンは外へ出た。
バッグの中には爪楊枝、シャープペンシル、ライター、電球、嵩張らないようにジップロックに入れたトイレ用洗剤などの様々なものが詰まっている。
さて今度こそ向かおうか――と思った時、セラスが急に立ち止まった。
「キートンさん、多分、ですけど悪魔っぽいのがいました」
「えっ!? どこだい? 私には見えないが……」
「わたし達の進行方向5km先にいます。向こうはまだわたし達に気づいてませんよ」
セラスの吸血鬼の目でない限り見えない距離に、悪魔はいた。
緑色で植物のようでもあれば、生物のようでもあり、人形のようでもある不思議な悪魔。
片手にブーメランを持ったそれは、「モコイ」と呼ばれる悪魔だった。
「あの悪魔なんかよくわかんない感じなんですけど……どうします?」
「……とりあえず、もう少し近づいてみようか」
キートンはまだセラスという悪魔しか知らないため、悪魔全体を知るための判断材料が欲しかった。
危険な悪魔か、安全な悪魔か、遠目からでは計り知ることはできない。
しかし、どちらにせよ接触を測ることが一番の近道である。
ポケットに拳銃を納め、敵意の無いように見せるためにキートンは堂々と道の真中を歩き始めた。
【豊島区/1日目/朝】
【平賀=キートン・太一@MASTERキートンReマスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、タブレット型COMP、コルト ガバメント、爪楊枝やトイレ用洗剤等々
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:悪魔か……どうするかな
2:パルコに向かう
[COMP]
1:セラス・ヴィクトリア@HELLSING
[種族]:吸血鬼
[状態]:健康
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投下終了です
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>>106に
※5km先にモコイがいます。
を入れ忘れました。
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投下乙です
過去に繋がりがあるのもサマロワならではですね
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投下乙です! さすがキートンさん、顔が広い。
どこかアナログな所を見せつつ、しっかりとしてるのはさすが。
相方もしっかりしてる(?)し、先が気になりますね……
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投下します。
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>>111
トリミス
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「リトは高校生なのか」
「はい。彩南町ってところなんですけど」
「彩南町...ああ、あの校長を名乗る露出狂が有名なところか」
「やっぱり有名なんですね...よし、こんなところかな」
廃病院の一室。
リトは小さな妖精の肩の傷口を消毒し、包帯を巻いていた。
この妖精の名はピクシー。倒れていたところを見つけた野良悪魔である。
「......」
「痛むところはないかな?」
「ッ...!」
リトが話しかける度に、ピクシーは身体を震わせ、声も出せないほど怯えた様子を見せる。
(こりゃ、相当深刻な拒絶症状だな)
リトも阿部も、ピクシーに対してはなんら敵意を向けられるような行為をしていない。
だというのに、彼女はずっと怯え続けている。
よっぽど人間に酷い目に遭わされたに違いない。
だから、こうして友好的に接する者に対しても必要以上に警戒してしまうのだろう。
阿部の予想は当たっていた。
中野区で水のようなものを操る男(安十郎)と獣のような男(ワイアルド)に襲われ、奇跡的に逃げ延びていたのだ。
おそらく、彼女以外にも逃げ延びた者はいるかもしれないが、彼女がそんなことを知る由もない。
蹂躙されていく仲間たちを目の当たりにして、恐怖を憶えないわけがない。
応急手当を終えたリトの肩に阿部は手を置き、ふるふると首を振る。
これ以上人間である自分達が関わるのは彼女にはよくないという意味を察し、リトは尾が引かれる思いで立ち上がった。
「それじゃあ、俺たちは行くから。...誰にも見つからないところに隠れてるんだぞ」
リトとしては、傷ついた彼女を放っておきたくはない。
だが、あそこまで怯えられては連れまわすのも気の毒になる。
ならば、この殺し合いが終わるまでできるだけ人間のいないところに隠れてもらう他ないだろう。
そうして、二人が部屋を発とうとした時だった。
『――――――――――――――!!!』
「いまのは...!」
「悲鳴だな。どうする...って聞くまでもないか」
全ての決定権はサマナーである阿部にある。
しかし、苦しんでいる人を放ってはおけないという純粋な気持ちの籠った瞳を、股間が熱くなるのを感じる程のリトの真っ直ぐで熱い想いを受ければ断ることはできない。
人間として、なによりいい男としてだ。
「いくぞ、リト!」
「はい!」
「――――ぁっ」
駆けだし遠ざかる二人の背中へとピクシーは小さく声を漏らし手を伸ばしかける。
が、二人には届かない。
「......」
バタンと扉が閉ざされ、二人のいい男は去っていく。
あっという間に、ピクシーは1人病室に取り残されてしまった。
-
☆
(なーんで私がこの子に従わなくちゃいけないのかなぁ)
クレマンティーヌは、息を切らしながら後をついてくる己のマスター、鹿目まどかを見て思った。
せっかくこのような場所に呼び出されたのだ。
好戦的―――というより、嗜虐的な嗜好の彼女は、いますぐにでもこの少女を殺すなり離れるなりして、他の参加者を狩りに周りたかった。
だが、まどかが死ねば自分はCOMPに強制送還されてしまうし、彼女の認識外に出てしまえばまた然りだ。
結局、トロ臭いという言葉をそのまま体現したような少女にペースを合わせなければならないのだ。
「あー、もう面倒くさいなぁ」
「ご、ごめんなさい...」
「謝らないでって言ったでしょ。ムカツクから」
なにより、まどかの声が自分と非常に似通っているのが彼女のフラストレーションを加速させていた。
拷問をしている最中に心が折れ、泣き叫びながら謝り続けられるというシチューションは嫌いじゃない。
むしろそそるものがある。
だが、自分と似た声でそれをされるのは嫌だ。
まるで、このクレマンティーヌが泣き叫んでいるようではないか。
「これが苦労人ってやつなのかな。お姉さん挫けそう」
トロイ主従。
似た声。
せっかくの狩場なのにコレから離れられない。
このストレスしか溜まらない現状に、クレマンティーヌはこれ以上なく苛立っていた。
(最初の時しかモンスターも出てこないし...はぁ)
そんな彼女が欲するのは、血だった。
己のではない。
弱者でも強者でもなんでもいい。
この手で嬲り、潰し、切り裂き、流れる血。
いまはただそれが欲しかった。
「く、クレマンティーヌさん、あれ!」
「ん?」
そして、思いがけず機会は訪れる。
-
建物の曲がり角。
そこから姿を現したのは、一人の男だった。
鍛え上げられた体躯、荒い息遣い、見開かれた双眸、だらしなく伸ばされた舌。
そのどれもが、鹿目まどかの考え得る常人とは異なる者であり、彼女に恐怖を抱かせるには十分すぎた。
「...ふぅ〜ん、少しは楽しめそう」
「あ、あの...」
「あんたは適当にさがってて。邪魔したら殺しちゃうよ」
ハートマークがつきそうな軽い口調で、しかしその言葉が冗談の類ではないことを匂わせ、クレマンティーヌはまどかを邪魔にならない位置までさがらせる。
無論、悪魔としてまどかを護るためではない。そんな気持ちは欠片もない。
総べては己の愉しみの為に。
クレマンティーヌは舌なめずりと共に男への距離を詰めていく。
「お姉さん壊していい?壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊す壊す壊す殺す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す」
「壊すって...お姉さんのマントをひん剥いたり?いや〜ん、変態エロスケベぇ」
軽く茶化してみたが、男は全く意に介さない。
ただ譫言のように「壊す」と言い続けるだけだ。
「...しょうがないなぁ。あなたの熱烈なラブコールに心打たれちゃったしぃ、少しだけ相手してあ・げ・る」
クレマンティーヌは殺戮が大好き。
大義名分?そんなものはありはしない。
ただ殺戮が大好きで、恋していて、愛しているだけ(ついでにいえば拷問も大好きだよ)
だから、彼女は嗤う。
自分に歯向かおうとする可愛い玩具を徹底的に苛め抜き、虐殺することに昂ぶりを感じながら。
-
「それじゃあ、いくよっ」
言うが早いか、先手を打つのはクレマンティーヌ。
地を蹴り、男へと一気に肉迫する。
男は彼女の腕を掴もうとする
「ダメダメ、そんなに遅いとお姉さんは捕まえられないぞ」
が、しかし、彼女の身体は男の腕をあっさりとすり抜け、すれ違いざまにクレマンティーヌの剣は男の右足の甲に突き立てられる。
ただでさえ身体能力が高いうえに、『不落要塞』、『流水加速』、『超回避』の防御スキルを使いこなす彼女を容易く捉えることなど不可能に近い。
「はい、もーいっかい」
男の背後に廻ったクレマンティーヌは、再び懐に入り込み、今度は左足に剣を突き立てる。
「これで終わりかと思った?残念、まだでした」
男が悲鳴を上げる間もなく、クレマンティーヌはすれ違いざまに突き立てていた剣を回収し、今度は男の両掌に突き刺した。
「そーれっ、し・あ・げ・に」
両掌を刺された男はそのまま仰向けに倒れ、クレマンティーヌは剣を押し込み地面に打ち付ける。
「はぁい、汚い標本のできあがりぃ!」
両手を左右に開いた状態で地面に固定され、大の字で倒れる男。
その姿は、まさに蝶の標本そのものだった。
-
「一回で殺すこともできたけどぉ、やっぱりストレス発散にはコレだよねっ」
クレマンティーヌは、仰向けの男へと身体を乗せる。
逞しい胸板に鎧で覆われた局部を乗せ、身体の自由を奪う。
両掌を固定され、両脚にも傷を負い、上半身はクレマンティーヌに固定されている。
これで全ての支配権は、彼女のもの。
俗にいう、マウントポジションである。
「そーれっ、気付けの一発!」
手始めに拳を顔面に振り下ろす。
男の鼻骨にダメージが伝わり、肌に赤みがかかる。
ギ、と男は声を漏らすが、それがクレマンティーヌの手を止めるには至らない。
固めた拳は、何度も、何度も、何度も振り下ろされ、その度に鼻の形が歪になっていく。
鼻血が溢れ、悲鳴をあげたところでようやく拳はその動きを止める。
「あぁん...いい鳴き声」
うっとりと恍惚の表情を浮かべつつ、男の腹部を指でゆっくりとなぞる。
「お兄さん、鍛えてるんだねぇ。これじゃあお姉さんの細い腕じゃなにもできなさそう」
ざーんねん、とでも言いたげに溜め息と共に肩を窄めるクレマンティーヌ。
「なーんてね。こんなこともあろうかと...じゃ〜ん」
しかし、胸元からガラス片を取り出すと、途端に邪悪な笑みに火が灯る。
投げやりな掛け声と共に男の身体にブスリ!
如何に鍛え上げられていようとも、静止した状態で刃物を貫通させないことは不可能。
ぐりぐりとねじ込まれる激痛に、男の悲鳴は更に甲高いものとなる。
「あれ?」
ふと、男の股ぐらの盛り上がりが目につく。
クレマンティーヌは、その山にそっと手を乗せる。
彼女が触れるそれは、生命の危機に瀕した雄の本能か、それとも―――
「アホかてめぇ、勝手に気持ちよくなろうとしてんじゃねえぞ」
クレマンティーヌの声のトーンが一気に下がる。
グ チ ャ リ 。
潰れた。
男の大事なナニかが握り潰されてしまった。
「あ〜あ、お兄さんってば、お姉さんになっちゃったねぇ」
勲章を失った男にケタケタと蔑みの笑い声を浴びせるクレマンティーヌ。
クレマンティーヌは拷問が大好き。
せっかく手に入れた玩具は離さない。
玩具が壊れるまで、彼女の笑みが消えることは、きっとない。
-
(ひどい...!)
少し離れた距離で、猟奇的一部始終を見ていたまどかは、口を押え、涙目になりながら思った。
現れた男も確かに異常ではあったが、クレマンティーヌはもっと異常で非情だ。
今すぐにでも止めたい。
あの男の人を助けてあげたい。
でも、口を挟めば彼女に殺される。
もしも、既に魔法少女を知っている彼女であったならば、無理にでもクレマンティーヌを止めようとしただろう。
けれど。
いまの鹿目まどかは、平凡な生活の中で暮らしてきただけの臆病で脆弱な人間だ。
優しさはあっても、暴走する汚いのを止める術を持たないし、無謀と紙一重の勇気を持つこともできない。
(せめて、誰かを呼んでこなくちゃ...!)
そうなれば、彼女がこの行動をとるのは必然だ。
自分が力になれないなら、せめて助けを呼ぶ。
それが、いまの彼女にできる精一杯のことだった。
「だいぶお楽しみのようだね」
惨状に背を向け、振り返ろうとしたまどかに声をかけたのは、ウェーブのかかった黒髪の男だった。
いつの間にいたのだろうか。彼は、まどかの側にあった瓦礫に悠々と腰かけていた。
「あ、あなたは..,?」
「私の名はシックス。いま痛めつけられている子のサマナーさ」
「た、助けなくていいんですか?」
「必要ないさ。ここは殺し合い。弱い者は死ぬだけだからね」
男―――シックスの眼が細まり、口角が吊り上げられる。
それは、目の前で起きている惨状を心底楽しんでいるように見えた。
そう、クレマンティーヌと広い意味では同種であり、狭く見ればケタが違うとでもいうべき、醜悪な笑みだ。
(に、逃げないと...)
彼の言葉遣い自体は圧迫するようなものではない。
しかし、まどかは本能的に察していた。
この男とは決して関わってはいけないと。
その本能に従いまどかは逃げ出し―――
ズ ン ッ
突如、肺を圧迫されるような息苦しさを覚える。
その発生源は、間違いなくこの男だ。
少年漫画でよく見る強者特有のプレッシャーとでもいうのだろうか。
いや、違う。
これはそんなものじゃない。
これは―――
「かけなさい」
シックスの言葉と共に、まどかの膝ががくりと折れる。
「イイ子だ。ご褒美に少しだけ長生きする権利を与えよう。それも特等席でね」
シックスは、ヒョイとまどかの身体を持ち上げると、その膝の上に座らせる。
長身の男の膝にちょこんと座る小さな女の子。
絵面だけを見れば、仲睦まじい親子にでも見えるかもしれない。
しかし、それと現実との差は一目瞭然。
例えるなら活造りにされるためにまな板に乗せられた魚といったところか。
逆らうことを許されないまどかは震えることしかできなかった。
ポン、とシックスはまどかの頭に手を乗せる。
「見ていなさい。これからが面白いところだからね」
-
「ん...?」
歯を何本か叩き折り、右手の爪を剥がしにかかっていたクレマンティーヌの背筋に怖気が走る。
振り返ると、そこにはおっさんの膝にちょこんと座るトロ臭いサマナーの間抜けな姿があった。
「...なにやってんだか」
せっかく解消しつつあったストレスが、再びぶり返してくる。
どこまでおまぬけだ、もう付き合ってられない。
イチイチ足手まといになるくらいならいっそ捨ててしまおう。
「そこのおじさまぁ、もうメンドくさいからその子好きにしちゃってよ」
溜め息と共に吐かれる言葉に、まどかの身体がビクリと震えあがる。
おそらく、クレマンティーヌはこの男の異常性に気付いている。
気付いていながら、好きにしろと言っているのだ。
「きみはこの子の悪魔ではないのかな?」
「まぁ、そうなんだけどさぁ...イチイチその子にビクビクしながら戦うのはもうメンドクサイっていうか、ウザイ」
まどかが殺されれば悪魔である自分はCOMPにRETURNされてしまうことは知っている。
だが、イチイチストレスを溜めながら戦うよりは閉じ込められていた方がマシだ。
いや、目の前の男なら自分を抜き取ってくれるかもしれない。
自分と似た匂い(ドS)を放つこの男ならば、サマナーとして悪くないだろう。
「別に一気に殺してくれてもいいし?じわじわいたぶって殺してもいいよ。なんなら私がやってあげよっかー?」
心底愉快気に笑みを浮かべるクレマンティーヌに、まどかはヒッと喉を鳴らす。
クレマンティーヌの身体の下にいる男...これから、彼のように殺される。
そのことを予感すると、もう震えは収まらなかった。
「まあ、悪くは無いが―――なにか勘違いをしていないかな?」
「はぁ?」
「きみに支配権などはない。全ての支配権は私にあるんだよ」
「なに言って―――」
―――バンッ
突如、クレマンティーヌの身体が宙に跳ねあがる。
-
「なっ...!?」
もちろん、それは彼女の意志ではない。
彼女が乗っていた男が、上半身の筋力だけで跳ねあげたのだ。
「ハ ァ アァ アア ァ ア」
荒い息遣いと共に起き上がった男は、掌に刺された剣を引き抜き背後に放り捨てる。
「...まぁだ、そんな元気があったんだ」
クレマンティーヌのこめかみがピクピクと痙攣する。
まどかのトロ臭さにいい加減イラついていた時にこれだ。
もう、拷問ではなく殺さなければ気が済みそうにない。
一方の男は。
「殺す」
笑っていた。
立ち上がることすら困難であるはずのそのボロボロの身体で。
舌をだらんと垂らして。
それでも、笑っていた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
『壊す』が『殺す』に変わると共に、ぽたりぽたりと赤い水滴が滴り落ちる。
頭部からの出血?
違う。とめどなく溢れだすあれは―――
(血涙...!?)
一瞬だけ驚くクレマンティーヌだが、舌打ちと共に気持ちを切り替える。
立ち上がったからなんだ。
血の涙を流したからなんだ。
この男は、つい先ほどまで自分に手も足も出なかった雑魚じゃないか。
「テメエ如きが、このクレマンティーヌ様に勝てるわけねえだろ!!」
呟きと同時に、豹のように体勢を低く構え、一気に駆け出す。
彼女の得意とする高速の突進だ。
一瞬にして、男の眼前にクレマンティーヌの指先が迫り、そして。
ズ ブ リ
その爪先は、容赦なく男の右目を抉った。
が、しかし。
「ぇ」
同時に、クレマンティーヌの視界が逆転したかと思えば、強い衝撃を背中に打ちつけられた。
「――――ぁっ」
あまりの衝撃に、クレマンティーヌは悲鳴をあげることすらできなかった。
そのまま男は倒れたクレマンティーヌにどすりと伸しかかり、マウントのポジションをとった。
なにが起こったのか理解ができない。悲鳴をあげる間もない。
ただ、先程とは立場が逆になったことしか、彼女にはわからない。
-
「た、多幸感?」
「そう。エンドルフィンやドーパミンといった脳内麻薬物質がもたらす効用の一つさ」
シックスは、まどかを膝に乗せたまま悠々と先程起きた現象について語る。
「彼は『痛み』に比例して脳内麻薬の分泌が上昇する特異体質。即ち、『全てのダメージが快楽に転化される』ということだ」
まどかは息をのむ。
だから、あの男はあれだけ痛めつけられても笑っていられるのか。
だが、理屈では理解できても、感情では到底理解のできない事象だ。
理解などできなくていい。
あの男は、人間の範疇を越えた狂獣なのだから。
そして、男がクレマンティーヌにしたことは至って単純だ。
彼女が目を突き刺した瞬間に腕を掴み、投げ飛ばしたのだ。
彼のその完成された『柔道』で。
そう。
彼の名は、目黒正樹。日本代表の猛者である父や兄弟子たちを投げ殺した、最強の柔道家である。
「が、あ、あっ」
「...お父さんが言ってたんだ。柔道は、最強の格闘技だって」
どうにか呼吸を取り戻そうとするクレマンティーヌの顔に、血涙が滴り落ちる。
朝日が降りかかる目黒の姿は、まさしく怪物のそれだった。
「ざ、けんなぁっ!」
空いた右手で、懸命に目黒の顔を殴りつけマウントから逃れようと試みる。
だが、先程の投げのダメージに加え、この仰向けの体勢から放つ弱り切ったパンチでは効果はない。
目黒は、頬を殴りつけてくるクレマンティーヌの拳などものともせず、その強靭な握力でクレマンティーヌの首を締め上げる。
「くぁっ...!」
あまりの苦しさに、思わず目黒の腕を掴むが、依然力は緩まない。
こんな話がある。
柔道のグラウンドでの攻防技術は、全格闘技の中でも一・二を争う。
特筆すべきは、いかなる状況でも崩れない抜群の安定感。
歴戦の柔道家とのグラウンドの攻防。
それは、水中で鮫に勝負を挑むに等しい行為である、と。
-
「...苦しい?」
クレマンティーヌの口から泡が吹き出し始める。
気道が確保できなくなった証だ。
「...うん、苦しいよね...あっちでお父さんに会ったら伝えてよ...」
目黒の右手が首元から離れ、高く掲げられる。
その隙をつき、クレマンティーヌは目黒の左目を突こうとするが、リーチが足りず届かない。
「柔道を教えてくれてありがとうって」
そして、掲げられた右掌はそのまま振り下ろされ―――
「待った」
シックスの言葉に、ピタリと止められた。
「目には目を、片目には両目を。確かに悪くはないが、勿体ないな」
「?」
「こっちの方が楽しめるということさ」
ズ ッ
唐突だった。
シックスの指先は、まどかの右目を呆気なく潰したのだ。
「―――――ァッ」
まどかは小さくうめき声を漏らし、徐々に右目に走る激痛に従い、やがて甲高い絶叫へと変わる。
その様を、シックスはにこにこと嫌らしい笑みで聞いていた。
やがて満足したのか、まどかの喉元をとん、と掌で小突くと、まどかは激しく咳き込み、絶叫も途端に小さくなる。
次に、シックスはまどかの掌の甲にそっと手を添え。
ベ リ ッ
まずは右手から、次いで左手の爪を全てはぎ取った。
再びあがる絶叫に、シックスの口端は再び釣りあがり、しばらくすると今度はまどかの口に剥ぎ取った爪を詰め込み、無理やり黙らせる。
いくら彼女がえづき吐きだそうとしようが関係ない。全てを飲みこませるまで彼は抑え込むのを止めはしない。
ばたばたともがく足には、わざと骨折させない程度に強い打撃を与え、脱臼させることで動きを制限する。
-
その一部始終を見たクレマンティーヌは背筋が凍る思いだった。
殺さない程度に自由を奪い、徐々に痛めつけることは拷問の基本である。
両目を潰さないのはいま起きていることをその目で確かめさせるためだ。
両耳を削がないのは、なにをされているかをその耳に刷り込むためだ。
その基本を見せられたということは、つまり―――
「ア ハ ァ 」
目黒と、再び目があった。
彼は、全てを理解したかのような笑みを浮かべ再び右手を振り上げた。
クレマンティーヌは、必死に首を締め上げている目黒の腕を殴りつけた。
ばたばたと、みっともなく、ただただ逃げるためだけに必死の抵抗をする。
効率など考えていられない。ただこの場から逃げたいだけだ。
だが無意味。
ダメージを快楽に転化する、いやそれ以前に、歴戦の柔道家である彼に、そんなものは通用しない。
そして。
振り下ろされた掌は―――彼女の右目のみを、綺麗に潰した。
「あ、ぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁああぁあああ!!!」
クレマンティーヌの絶叫が響き渡る。
その様を眺めるシックスは、やはり笑顔だった。
「...そうだよね。勿体ないよね」
ずい、と目黒はクレマンティーヌに顔を寄せる。
「もっと遊ぼう、ね?」
ブ チ リ。
クレマンティーヌの左肩の肉が噛み千切られる。
再び絶叫があがる。
今度は頭突きで鼻骨を砕く。
絶叫はあげられない。
次は腹部に連続で殴打する。
胃液と吐しゃ物が彼女の口内へと溢れだす。
その豊満な胸の下に掌撃を何度も放つ。
折れはしなかったが、ミシミシと音が鳴りヒビが入った。
クレマンティーヌは強者でありサディストである。
彼女は今まで追い込まれたことがなければ責められたこともない。
ただただ、その強さにものを言わせ、大勢の弱者を一方的に嬲り殺しにしてきた。
『不落要塞』、『流水加速』、『超回避』の防御スキルも相まって、己の痛みへの耐性などなかった。
そんな彼女が、この状況を覆す術を持てるはずなどなかった。
単純な強さではクレマンティーヌの方が上だ。
彼女の不運はサディストであったこと。
最初のすれ違い様に目黒を殺しておかなかったことが、この状況を作り上げた全ての要因だ。
-
「......」
「さて。次はどうしようか」
シックスの膝元に座るまどかは、見せつけられる惨状にがちがちと身体を震わせるのみ。
右目を失い、両手足は砕かれ激痛のみしか与えられなかった彼女は、最早悲鳴をあげる余力すら残ってはいなかった。
(やれやれ。まあ、一般人ではこの辺りが限界かな)
以前、情報を搾り取るために拷問した国際警察捜査員アンドリュー・シクソンは、頭と内臓しか残っていない状態になるまではこうはならなかった。
曲がりなりにも大人であり警察である彼のようにはいかないか、と特に残念にも思わず、淡々と分析するのみだ。
(ああ、そうだ)
ふと、見逃したお楽しみのことを思いだす。
以前、怪盗"X"を5年かかっても探し出せなかった無能な部下、リコのことを思いだす。
あの時は好奇心で刃物で自殺(腹にのこぎりを当てさせ、自分の手でじっくりと引かせた)させたが、ついうっかり魔人であるネウロのことを思い出したお蔭で見逃してしまった。
今度こそは、なにかの拍子で気を逸らさないように見届けようと思い―――まどかの両手を砕いていたことを思いだす。
順番を間違えた。これでは己の手で腹を裂くことは不可能だ。
シックス、ここにきて痛恨のミスである。
仕方ない。少々手間がかかるが、この手で裂いてあげよう。
面倒だという感情を体現するかの如く、彼の顔は満面の笑みだった。
ギ ギ ギ という金属の音と共に、シックスの指先がノコギリのような形状に変化する。
なぜ変化したのか、などまどかにとってはどうでもいい。
彼の指先が腹部に当てられると、まどかは抵抗することを思いだしたかのように必死にもがこうとする。
(それでいい。無抵抗な玩具ほどつまらないものはないからね)
嫌だ嫌だと拒否すればするほど、彼の嗜虐心は刺激される。
そして、まどかの抵抗も空しく、ノコギリは引かれ始める。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
腹部に走る激痛、激痛、激痛。
地獄の苦しみに、脳内は嫌でも活発に働きだし気絶という逃避さえ許してはくれない。
血と共にアンモニアが地面に滴り落ちるが、それでも彼女はまだ死ねない。
まどかの絶叫が響き渡るが、彼は気にも留めない。
獲物が死にたいと思えば、ただでは死なせず更なる苦痛を与えたがるのがこの男である。
-
「さて、次は」
「ずいぶん悪趣味なことをするんだな」
突如、肩に置かれた手に、シックスは思わず振り向く。
が、時すでに遅し。
眼前にまで迫った拳を躱すことはできず、その横っ面を殴られた彼は不様に地面に転がるハメになった。
「ッ...!」
シックスを殴り飛ばした青いツナギのいい男―――阿部高和の右拳に激痛が走る。
かつて、阿部の知り合いである警官の兄に、スニーキング能力が異常な男がいた。
その男は、モヒカン頭で上半身裸にレザーを付け、下半身はほぼ露出しているという通報一発モノの姿でも一度として捕まらないという偉業を達成した猛者だった。
警官からそのことを聞き、念のためにその能力を身に着けていた阿部は、シックスに気付かれぬように接近。
完全なる不意をつき、拳を浴びせたはずだが―――
(固い...!まるで鉄をぶん殴った感触だ)
「リト!」
「うおおおおお!」
苛む激痛に耐え、阿部の掛け声と共に、リトがCOMPから出現しシックスへととびつく。
如何に彼と言えど、完全に不意を突かれれば多少の隙が生じる。
その隙をつき、阿部はまどかを抱きかかえ、彼らには目もくれず走り去った。
「チッ」
舌打ちと共に、跳びかかってきた少年、リトを払い飛ばす。
リトはすぐに立ち上がり、シックスと対峙する。
「まったく...私は楽しみを邪魔されるのは嫌いでね。きみが彼女の代わりになってくれるのかな?」
「なにが楽しみだ...俺はお前みたいな奴は絶対に許さねー!」
ブロロロ、というエンジン音と共に、バイクに乗った阿部の背中が遠ざかっていく。
即ち、この少年は一人でここに残ったという訳だ。
本気で一人でこのシックスを止めるつもりか...いや、浅はかな正義感による自己犠牲か。
-
「...シハシハシハ」
新たな玩具が増えたことに対する悦び、そして少年の希望を打ち砕けるという期待感を込めて。
アンドリュー・シクソンから引きだした笑い方で、シックスは嗤う。
「まったく、若気の至りというものは恐ろしいな」
これより、リトは生きるのも後悔するような痛みを味わうことになる。
当然だ。
シックスは、新しい血族の長であり、何千倍にも強化された『元』人間。
対するリトは、悪魔でも人間程度の力しか持っておらず、対人の喧嘩ですら決して強くは無い。
そんな彼が、この場に留まれば結果は見えている。
先程のまどかのように激痛という激痛を味わわされ最後には虫けらのように殺されるだけだ。
そう。
この場に留まれば、だ。
「?」
相対していた少年の姿が、突如消え去った。
文字通り、音も残さずだ。
めっきり音が聞こえなくなった目黒の方を見てみると、彼の方も同じだ。
瀕死体だったはずのクレマンティーヌの姿は、目黒を遺して何処へと消え去っていた。
「...そういうことか」
状況を把握したシックスは、憎々し気に溜め息を漏らした。
-
☆
ピクシーを治療した廃病院へと舞い戻った阿部は、再び召喚したリトと共にまどかの治療を試みた。
だが...
「なんで...なんで止まってくれないんだよ!」
まどかの身体から溢れる血は、どうやっても留まることはなかった。
当然だ。
血はもちろん、腹部から零れ落ちそうになる内臓は、皮膚を閉じなければどうしようもない。
そして、痛みを感じさせないほどの縫合医療技術を二人は持ち合わせてはいない。
内臓を傷付けぬように必死に皮膚同士を合わせてみるが、勿論無意味。
つまり...彼らには、どう足掻いてもまどかを救う術などないのだ。
それでも尚、まどかに即死は許されない。
シックスの『死なせず痛めつける』技術による賜物である。
「...ろ...して...」
まどかの声が、ぽつぽつと紡がれる。
「ころ...して...」
それは、必死の懇願だった。
これ以上、この地獄に留まりたくはない。命を断ってくれという、残酷な願いだった。
「な、何言ってるんだ!きみは絶対に助かる!だから...!」
「リト」
どうにか励まそうとするリトの肩に手を置き、阿部はふるふると顔を横に振る。
わかっている。
治す術がなければ、彼女はずっと地獄の痛みに苛まれ続けることになるだろうことは。
リトは、己の無力さに拳を握りしめ、涙目になりながら歯を食いしばった。
「...お嬢ちゃん。最後に言い残したいことはないか?」
優しい声で阿部に語りかけられたまどかは、どうにか声を振り絞ろうとする。
会ったばかりの自分に、ここまで優しくしてくれる人たちに届くようにと。
そんな彼らにヒドイ頼みをしてしまうことを申し訳なく思いながら、ようやく声を発することができた。
「ごめん...ね...」
「ッ...!」
彼女を助けられない不甲斐なさに、二人の胸が締め付けられる。
そう。彼らはこれから彼女を殺す。
自分を痛めつけた男や間に合わなかった二人への恨み言ではなく、彼らを気遣おうとする優しい彼女を、その手で殺すのだ。
「すまない、お嬢ちゃん」
最後に謝罪をし、彼女の首に手をかける。
そして、力を込め一気に―――
-
「見つけた!」
響き渡る声に、阿部もリトも思わず振り向く。
声の主は、先程応急手当をしたピクシーだった。
悲鳴を聞き、二人が去っていった後、野良悪魔でしかない自分にこれだけ尽くしてくれた彼らに恩を返すため、勇気を振り絞り彼女は二人の後を追った。
しかし、躊躇っていたのが仇となり、ピクシーは二人を見失い、しばらく闇雲に探し回っていたところ、アンジェロたちから逃げ出していたもう一人の仲間である姉のピクシーと再会。
喜ぶのも束の間、傷ついたまどかを背負った阿部がバイクに乗り廃病院へと戻るのを見つけ、現在に至る。
「きみは、さっきの」
「その子を助けたいんだよね?私には無理だけど、お姉ちゃんなら多分助けられるかもしれない!」
ピクシーA(リトに手当されていた方)の後に続き、ピクシーB(お姉ちゃん)が部屋に現れ、まどかの容態を確認する。
「...お前さん、彼女を治せるのかい」
「一か八かだけど...やってみるわ」
まどかの腹部に手を当てると、ピクシーBの手に光が宿っていく。
するとどうだろうか。裂けていた皮膚が徐々に繋がっていき、まどかを襲っていた苦痛も幾分か和らいだではないか。
ピクシーBが使用した魔法は『ディア』。
己のMPを消費し傷を癒す魔法である。
だが、それでもまどかを救うには足りない。
ディアはもとより少しの傷しか治せない低級魔法。
ましてや、制限が掛かっているのなら尚更だ。
(やっぱり一回じゃ無理...だったら!)
「ディア!ディア!ディア!」
これでもかと言うほどのディアの連発。
塵も積もれば山となる。
治せる傷が僅かでも、それを重ねれば大けがだって治せる。
ディアを重ねる度に、まどかの顔に生気が取り戻されていく。
そして―――
「これで...最後っ!」
ディア!
MPが尽きるまで、重ねた結果―――見事、まどかの傷は塞がった。
「......」
まどかは、信じられないと言った表情でゆっくりと起き上がる。
先程まで全身を襲っていた痛みは、もうほとんどない。
だが、失った右目と血液は戻らず、ふらふらと身体を傾けてしまう。
それでも。
自分は生きている。地獄の苦しみから解放された。
その事実に、彼女の顔はくしゃりと歪み、ぽろぽろと涙が溢れだす。
それが、大きな泣き声に変わるのにはさほど時間はかからなかった。
周りにはどんな危険が潜んでいるかわからないこの状況。
しかし、彼女の涙を止める者は誰もいなかった。
廃病院の一室で、ただただ、非力な少女の泣き声が響き渡っていた。
-
☆
まどかが落ち着いたのを見計らい、阿部はリトに彼女の相手を任せると言って部屋の片隅に身を寄せた。
あのワカメ男と年齢の近い自分よりは、リトの方が話しやすいだろうという配慮からだ。
「俺、結城梨斗っていうんだ。あっちの人は阿部さん。きみは?」
「か、鹿目まどかです」
お互いに名前だけを確認し合うと、それだけでシン...と静寂に包まれてしまう。
当然だ。
なにせ、まどかは先程まで殺されかけていたのだ。
そんな彼女と打ち解けるなど、高難易度も甚だしい。
この重い空気を変えようと、リトはどうにか話題を模索する。
「あの...リトさん」
おどおどとしつつも、先に口を開いたのは、まどかだった。
「どうして、わたしを助けてくれたんですか?」
まどかは純粋な疑問を口にした。
当然だろう。
一歩間違えばまどかのようになっていたというのに、彼らは迷わず初対面であるまどかを救ったのだから。
「どうしてって言われても...苦しんでる人がいたら当然だよ」
―――トクン
特に悩まず言ってのけたリトの微笑みに、ほんの少しだけまどかの頬が赤く染まる。
なんの打算も無い純粋な善意。
それこそが、男女問わずリトへの好意へと結びつくのだ。
「あ、あの...リトさん。それに、阿部さんも、ピクシーさんたちも」
壁に背を預けていた阿部たちに振り返り、いまできる精一杯の笑顔を作りつつ、まどかは頭をさげた。
「助けてくれて、ありがとうございました」
もう、彼らには感謝しかなかった。
いまのまどかには、ただただ、礼を言い続けることしかできなかった。
「どういたしまして」
阿部高和は、決してノンケではない。
しかし、子供に礼を言われて何も思わない冷血漢でもない。
阿部は、彼女の礼に大人としての渋みのある笑みを携え、正面から向き合った。
「これからヨロシクな、まどか」
「はい!」
笑みと共に、握手を交わすいい男と少女。
その手は、彼らの信頼関係を象徴するかの如く、固く、固く握り絞められていた。
-
【渋谷区/廃病院/1日目/朝】
【阿部高和@くそみそテクニック】
[状態]:右手にダメージ、身体の疼き
[装備]:腕時計型COMP
[道具]:基本支給品、バイク
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出。
0:強姦ダメ、絶対
1:さて、これからどうしようかね。
2:あのワカメ男(シックス)には要警戒
※スニーキング能力:モヒカン頭で上半身裸にレザーを付け、下半身はほぼ露出しているという通報一発モノの姿で徘徊しても一度として捕まらないどころか足跡すら掴めない程度。
[COMP]
1:結城梨斗@TOLOVEる-とらぶる-ダークネス
[状態]:健康
0:まどかが生きててよかった...
※悪魔としての自覚は一切なく、なぜ自分が悪魔として召喚されたのかも知りません。
2:ピクシーA@女神転生シリーズ
MP0/0
[状態]:全身に傷(リトたちによる手当済)
3:ピクシーB@女神転生シリーズ
MP0/60
魔法:ディア 消費MP2
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:貧血、右目損傷、手足に青痣、失禁跡
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:死にたくない
0:阿部さんたちと共に行動する。
[COMP]
1:クレマンティーヌ@オーバーロード
[状態]:疲労(極大)、全身に青痣、戦意喪失(極大)、鼻骨骨折、左肩損傷、あばら骨にヒビ(多数)、右目損失、気道にダメージ(絶大)、背部打撲(大)、擦過傷多数、内臓にダメージ(大)、嘔吐、失禁、気絶、COMPの中
-
☆
(チッ、魔人皇め...!)
獲物をこの手で殺せなかったシックスは、舌打ちと共に毒を吐いた。
おそらく、あの青いツナギのいい男は、サマナーと悪魔が一定距離を離れるとCOMPに戻ることを知っていたに違いない。
そうでなければ、あんな作戦を実行することはできない。
では、なぜシックスはそのことを知らなかったのか?
簡単なことだ。
彼のCOMPには画面は存在しておらず、COMPについての簡易的な説明書と名簿が一緒に入っていただけだからだ。
「殺せ...なかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった」
しょんぼりとした様子で、ぶつぶつと呟く目黒の頭に、ポンと手を乗せる。
「確かに残念だったが...楽しかっただろう?」
「うん...うん...遊ぶの、サイコー」
人間を徐々に壊していく快感を思い出したのか、目黒は途端に上機嫌になる。
目黒がクレマンティーヌで遊んでいた時、シックスの笑みはおさまらなかった。
少々粗削りではあったが、まあ問題はない。
元々、目黒は弱者強者問わず殺すこと自体に悦びを憶える男だ。
それに加え、柔道という一撃必殺のスタイルは獲物を痛めつけるのとは正反対のものだ。
だが、痛めつける喜びを味わえば後は慣れだ。
徐々に、徐々にサディストに調教していけばいい。
ドMとドS。これらを両立した怪物は面白い存在になるに違いない。
それまでに彼が壊れればそれまでのことだ。
「さて、これからどうしようか」
記憶した名簿の中には、直接の面識はないものの、知った名前もいくつかあった。
世界的にも有名な不動産王であるジョセフ・ジョースター。
コマンドー部隊最強の男ジョン・メイトリックス。
残虐な誘拐殺人事件の犯人である片桐安十郎、etc...
そして、唯一知人である男の名が一つ。
葛西善二郎。自らが指揮する『五本指』の中でも特異な男である。
シックスの狂信者である新しい血族の中で、彼だけは唯一シックスに忠誠を誓っていない。
そんな彼が、『一人しか生き残れない』というこの状況でどう動くか...非情に気になるところである。
流石に正面切って挑んでくるほど愚かではないとは思うが、形だけでも従いシックスの次まで生き残るのを目標にするか、それとも人間としての知恵を振り絞り抗うか...
前者であれば、その望み通り自分の次までは生かしておく。
後者であれば、容赦なく徹底的に苛め抜いたうえで殺してあげよう。
そして、『悪』の帝王は次なる獲物を求めて気ままにぶらつく。
悪意の次なる矛先は―――?
【世田谷区/1日目/朝】
【シックス@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]:健康
[装備]:ルービックキューブ型COMP
[道具]:基本支給品、猛毒薬(残:4/5)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:殺し合いを勝ち残り、あの主催の少年を彼の最も嫌がる方法で処刑する。
0:目黒をマゾヒストとサディストを両立できるよう調教する。
1:あの青いツナギのいい男は次に会ったら殺す
2:葛西との合流は特に意識しない。
※目黒の名前は、COMPの説明書に書いてあるので認識済みです。
[COMP]
1:目黒正樹@ケンガンアシュラ
[状態]:鼻骨複雑骨折、鼻血(大)、歯数本喪失、両掌に刺し傷及び出血(中)、足の甲に刺し傷(中)、腹部出血(大)、睾丸喪失、陰茎粉砕、興奮、血涙
※獲物を痛めつける快感を覚えました。
-
「さ...さっきの奴らは追いかけないの?」
「必要ないさ。もう、仕込みは終えているからね」
-
☆
「まどか!?おい、しっかりしろ!」
力なく項垂れるまどかの身体を抱き上げ、阿部は必死に呼びかける。
それは突然だった。
阿部と握手を交わした後、まどかが苦しみ始め、大量の血を吐きだしたのだ。
「ぁ...ぇ...」
まどかは必死に阿部に助けを求める。
だが、もはや声は声にならない。
伸ばした手も、力を無くし血に堕ちる。
意識は薄れ、視界が滲んでしまう。
リトやピクシーたちも必死に呼びかけてくれるが、もう彼女には何も聞こえない。
なにが起こったのか理解することすらできず、鹿目まどかは今度こそその生命を終える。
その寸前。
どこから聞こえたのだろうか。
最後に彼女が聞いたのは、あの『悪意』の笑い声だった。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】
※遺体傍のデイパックに基本支給品、クレマンティーヌ@オーバーロード入りCOMP(形態型)、三万マッカが入ったままです
-
「なんで...!」
傷は確かに塞いだはずだ。
その証拠に、貧血気味ではあったものの、先程まで彼女は元気に動いていたではないか。
だというのに、彼女は血を吐き死んだ。
傷はないのに死に至らしめるものなど―――
「まさか」
ディアはあくまでも怪我を癒す魔法である。
強制睡眠や火傷、マヒなどは治すことが出来ない。
そして、その中でも殺傷力の高いものは―――
「毒、か」
阿部の低い声が、室内に染みわたる。
阿部はどうやってシックスが毒を仕込んだかなどは知らない。
しかし、その予想は当たっていた。
シックスは、まどかの腹を裂く傍らで、己が生み出した薄い金属に包まれた猛毒薬を仕込んでいた。
多少の金属なら溶かせるほどの劇薬。
彼は、まどかがギリギリ死なないラインで腹を裂くのを止め、ひとつの金属球を見せつけこう告げるつもりだった。
『いま、きみの腹の中に猛毒のカプセルを入れた。助かりたければ、この中にある薬を飲むといい。そうすれば、きみもあちらの女性も助けよう』と。
そうして、まどかが死ぬまで薬を求めて必死に足掻くさまを眺め、その最期の絶望の瞬間を愉しむつもりだったのだ。
勿論、助けるというのは嘘である。
まず、その金属球はシックスが生み出したものであり、容易く割れるような代物ではない。
仮に割れたとしても、その中にあるのはその猛毒薬である。
即ち、まどかがその球を割ろうが割るまいが、その死は変わらない。そんな催しをするつもりだったのだ。
だが、阿部が乱入したことによりその目論見は失敗。
時間差で溶ける毒薬のみが、腹部に取り残されていた。
そして、金属を溶かしつくしたその毒は―――ついに、牙を向いてしまったのだ。
(...ひどいことをしやがる)
苦しみに見開かれたまどかの目を、そっと閉じさせる。
あの男は、純粋な少女の命を弄んだ。
生き残るため―――などではなく、己の欲望のためだけにだ。
(あのワカメ男...今度あったらキッチリとお仕置きしてやらねえとな)
阿部は静かに怒っていた。
まどかは決して性的対象などではない。
だが、幼気な少女をこうまでされて何も思わないほど、阿部は薄情な男ではない。
ましてや、無抵抗の者に毒を盛るなどという獣―――いや、野獣染みた行為なら尚更だ。
いまから正面切って殴り込みに行くような愚かな真似はしない。
だが、あの男にはキッチリとケジメを付けさせる。
最期に伸ばされた手を握りしめ、物言わぬ少女に心中で誓った。
-
【渋谷区/廃病院/1日目/朝】
【阿部高和@くそみそテクニック】
[状態]:右手にダメージ、身体の疼き、怒り
[装備]:腕時計型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出。
0:強姦ダメ、絶対
1:あのワカメ男にはいい男としてキッチリケリをつける。
※スニーキング能力:モヒカン頭で上半身裸にレザーを付け、下半身はほぼ露出しているという通報一発モノの姿で徘徊しても一度として捕まらないどころか足跡すら掴めない程度。
[COMP]
1:結城梨斗@TOLOVEる-とらぶる-ダークネス
[状態]:呆然自失
0:まどか...!
※悪魔としての自覚は一切なく、なぜ自分が悪魔として召喚されたのかも知りません。
2:ピクシーA@女神転生シリーズ
MP0/0
[状態]:全身に傷(リトたちによる手当済)
3:ピクシーB@女神転生シリーズ
MP0/60
魔法:ディア 消費MP2
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投下終了です
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投下乙です
さっそくクレマンがボコボコにされてて草。汚いのも綺麗なのも運がない。絶対悪とは相手が悪かった……
女の子も分け隔てなく助ける阿部さんは人間の鏡
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これはシックスと阿部さんのフラグが勃ったな
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投下乙です!
どこかのクソ汚い野獣と違って、やはり阿倍さんは紳士。
まどかは凶刃に倒れてしまったか……純粋な悪意は恐ろしいですね。
クレマンさんは死にかけだし、アレコースなのかな……?
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クレマン、野獣、目黒、華城、ターバン、妙な奴が多いロワですね
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葛西も殺すつもりでハザマを斃すまでの間で最後は裏切って殺すにしろ仲間を作るって選択肢が最初からないって辺りは
悪意だけの突然変異のシックスの恐ろしさであり同時に一代だけの突然変異のシックスの限界だな、と思ったり
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そう…(無関心)
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>>142
他のスレでもやってて非常に鬱陶しい
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>>142
そう…(無関心)
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投下します
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品川区に程近い目黒区の一画。
喚きあっていたキリシマと金剛は、声を聞きつけやって来た悪魔の集団を振り切り、手頃な喫茶店で休憩しながら、参加者と装備品の確認を行っていた。
与えられた食料品が燃料・鋼材というトチ狂ったラインナップにキリシマはピキピキとなるも、金剛には必需品だと知って怒りを収めた。
元よりキリシマには食べるものは不要なのだから、何の問題にもなりはしない。
装備品に至ってはサッパリ訳がわからないシロモノだった。取り出した途端に唐突に閲覧出来る様になったマニュアルによると、使用者が中に入って使うモノらしい。
嫌味かキサマッッ!と着ぐるみ状態のキリシマは逆上しかかるも、なんとか堪えて装備品をデイバックに戻す。
最後にこれまたコアにインストールされていた名簿を確認しているのだった。
「誰か知っている人は居ましタカ?」
「不二咲千尋、ジョン・メイトリックス。この二人だけだな」
“世界初の情報環境モデル都市”にソフトウェアの面で携わっている不二咲千尋の才能を知った時には、蒔絵と同じデザインチャイルドかと思って詳しく調べたものだ。
結果は只の才能だったが。
ジョン・メイトリックスはアメリカに渡した振動弾頭のデータにバグを仕込んでおいた事からその戦力を調べ上げることとなった。
事が露見した時、アメリカに滞在していた私達に真っ先に襲いかかるのはコマンドー部隊だろう事は容易に予想出来たからだ。
調査した結果はコマンドー部隊全員が、ジョン・メイトリックス並の戦力を持っていたら、私がメンタルモデルを再構築しても勝てないというモノだった。
ジョン・メイトリックスは本当に人間なんだろうか?皮膚の下に鋼鉄製の骨格があっても違和感がないぞ。
それはさておき話し合いが成立しそうな相手が二人居るというのは好ましい情報ではあった。
─────などといった事を金剛に説明してやっていると、遠くから何かを破壊する音と叫び声が聞こえてきた。
-
眼下に広がる光景を眺めながら、ディエゴは与えられた品の確認をしていた。こんなにも馴染む悪魔を寄越されてハイッ!なテンションでディバッグを探り、食料品を見て怒気を発する。
「コーヒーかよッ!」
英国上流階級のディエゴにコーヒーとは知ってやったのだとしたら随分とふざけた行為である。
しかし、それも次に出てきたものの前では些細なことだった。
「なんだこれはアァァァァ──────────ッ!!!」
出てきたのは数え切れぬ大量の食パンッ!
「此処で食ったパンを数えろっていうのか──────────ッ!!!」
逆上して『スケアリー・モンスターズ』を発動し、屋上の床を破壊しまくるDioから『世界』はそっと目を逸らしていた。
数分後─────
漸く落ち着いたディエゴは武器の確認を行い─────そして絶句した。
出てきたものは何と─────
“ロードローラーだッ!”
ロードローラーを魔神皇はDioの武器としてセレクトしていたのだッ!
さすが魔神皇!このDioにできない事を平然とやってのける
そこにシビれる!
ブチ切れるゥ!
「う…うおおおおおおおおおおおお!!!!」
愕然とした一瞬が命取り。我に返った時にはロードローラーは最早回避不能な位置まで迫っていたッ!
そしてディエゴは眼前でロードローラーが屋上に着地するのを見た。
おれは今『世界』の能力を ほんのちょっぴりだが体験した
い…いや…体験したというよりは
全く理解を超えていたのだが…
あ…ありのまま
今起こった事を話すぜ!
オレはロードローラーに潰されたと思ったら
いつの間にかロードローラーが目の前にあった。
な…何を言っているのかわからねーと思うが
オレも何が起きたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだ…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
忘我の態から我に返ったディエゴが抱いたのは激烈な怒りッ!
まあ当然である。与えられた武器で死ぬとかいうコントをやる寸前だったのだ。
「おちょくっとんのか──────────ッッ!!!!」
Dioの怒りに応えて『世界』がロードローラーを殴り飛ばした!
後を追ってディエゴは変身して屋上から飛び降り、ロードローラーに空中で『世界』と共に激しい突き(ラッシュ)を加える!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄────────────────────ッッッッ!!!!!」
空中で崩壊し、バラバラになって落下するロードローラーの破片に混じって、『世界』に抱えられたDioが地面に降り立った。
「こんなモノを武器に使うアホが何処にいるッ!」
変身を解除することも忘れて魔神皇への怒りを露わにするDioから『世界』はそっと目を逸らし─────そして、その“世界”を支配するに相応しい能力を発動し─────ディエゴと『世界』の立っていた位置は爆炎に包まれた。
-
「これでFinish?」
「避けた様には見えなかったけどな」
200m程離れた場所から、砲撃の成果を確認するキリシマと金剛。騒ぎを聞きつけてやって来てみれば、トカゲ男と金色の巨人がロードローラーを破壊し終えたところだった。
明らかに人間では無い二人を、キリシマと金剛は野良悪魔と判断。キリシマの指示により金剛が砲撃を行ったのだった。
─────存外に使えるな。
爆炎に目をやってキリシマは思考する。
─────曲がりなりにも人間の姿をした相手目掛けて、躊躇い無く砲撃するとは思わなかった。
キリシマとしては放置しても良かったが、この先殺し合いに乗った人間と戦う羽目になった時、金剛が使えるかどうか試してみたのだ。
殺し合いに乗る気は全く無いが、襲ってくる相手に容赦をしてやる気は余り無い。
彼女は蒔絵とハルナの元へ戻らなければならないのだから。
取り敢えず、結果は上々。砲撃の威力といい狙いの精確さといい、申し分無い。
金剛が戦い続けて来た深海棲艦についてキリシマは未だ聞いていなかった。
「じゃあ行きますヨ。クマさん」
「クマさん言うな!」
不意に二人の眼前に現れる金色の巨人ッ!
『世界』の射程は本来ならば10m。しかこの『世界』はスタンド属の悪魔である為に、射程距離の楔から解放されているのだ。
「!?」
完全に不意を突かれた金剛の腹目掛けて繰り出される巨拳ッ!
「ぬおおおおお!!!」
咄嗟にキリシマが蹴り飛ばさなければ、金剛の身体にはトンネルが開通したことだろう。
「ブチャラッ!?」
間の抜けた悲鳴とともにすっ飛んで行く金剛を無視して、巨人は拳撃の嵐とも言うべき突き(ラッシュ)を放つ。
「ぬあああああああああああ!!?」
縫いぐるみとは到底思えない身のこなしでラッシュを避け続けるキリシマ。
「クマさん!?」
「そのスタンドッ!生かしておいては厄介な事になるッ!キサマはここで消しおくッ!」
キリシマを襲う『世界』に照準を合わせようとした金剛にディエゴが走り寄る。
金剛の艤装をスタンドと認識したディエゴは、遠距離型の射程と近距離型のパワーを併せ持つ金剛を脅威と見なし、此処で排除しようと考えたのだ。
-
「全砲門、Fire!!」
しかし金剛も歴戦の兵。即座に反応し、150m程の距離のディエゴに砲撃を行う。
「分かっていれば、正面からの砲撃など無駄無駄ァ!」
あっさり回避するディエゴ、しかしこれはフェイント。本命は15・2cm単装砲では無く35・6cm連装砲。
ディエゴの回避機動を読んだ上で放たれた砲弾が100mの距離にまで近づいたディエゴに直撃する。
と、思いきや。コマ落としの様にディエゴの前に現れた『世界』が、その巨拳で砲弾を殴り飛ばしていた。
砲弾を受けた付近のビル壁から爆発音が響く。
「WHY!?」
額然とする金剛に。
「手前の地面を狙え!!」
キリシマが指示を飛ばす。
「OK Fire!!」
放たれた砲弾が路面を穿ち、無数のアスファルトの破片がディエゴと『世界』を襲うが、尽く『世界』の拳に撃ち落とされる。
『世界』が破片の最後の一つを撃ち落とした時、其処にはディエゴと『世界』しかいなかった。
「此処に逃げ込んだか…」
大砲のスタンドを持つ女と、縫いぐるみの悪魔の居た辺りにやって来たディエゴは、皮肉げに口元を歪めた。
見下ろす先にはマンホールが黒々と口を開けている。鉄製の蓋はひしゃげて横に転がっていた。
「あのクマ…『世界』のラッシュを躱すスピードにこのパワー……侮れないな」
狭い下水道では巨体を持つ『世界』はあのクマに対して地勢の上で不利。
加えてあの女のスタンドに対しては、対処の仕様が殆ど無い。砲弾を逸らしても壁や天井に着弾するからだ。
「まあ良い。せいぜい惨めったらしく無様に下水道を這いずり回れ。このDioが在る限り、全ては“無駄”なんだからな」
そう言って唇を歪めるディエゴから『世界』は気まずそうに視線を逸らした。
【目黒区/1日目/朝】
【ディエゴ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険Part7 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ヘルメット型)
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:優勝し、すべてを支配してやるッ!
0. ここまでおちょくってくれた魔神皇は絶対殺す。
1,あの大砲のスタンドを持つ女(金剛)は次にあったら殺す。
[備考]
※現代に生息する同姓同名の似たような境遇の存在のため、SBRレース参加者の知識はありません。
※現代に生息している(と描写のあった)SBRキャラとは面識があるかもしれません。
※金剛をスタンド使いの参加者と認識しました。
[COMP]
1:『世界(ザ・ワールド)』@ジョジョの奇妙な冒険第3部 スターダストクルセイダース
[種族]:スタンド
[状態]:健康
-
「oh…アレは一体なんだったんでしょうカ?イキナリ目の前に出て来ましたが」
「この私の目にもサッパリだ……」
金剛がキリシマを抱きかかえて下水道の中を移動しながら、キリシマと金剛が話しているのは、金色の巨人についてだった。
いきなり眼前に現れた事といい。トカゲ男を守った時といい、明らかに異質な動きだった。
キリシマや金剛の目にも捉えられないどころか、移動の前兆も形跡も無い。駒落としそのものの動き。
「あの謎を解明しなければどうにもならんかもしれんなぁ」
「WHY?アレは野良悪魔だから、避ければ良いのでは?」
「イヤ、気づかなかったのか?トカゲ男は首輪をしていたぞ」
「NO〜〜〜〜〜〜〜〜1!!?民間人に誤射してしまったのですかあああ〜〜〜!?」
「トカゲ男がお前に向かって言った事からすると、どうやら向こうは乗り気の様だぞ。早い目に手の内を知れて良かったじゃないか」
「そういう問題じゃありまセン!!確認しないで撃たせるとは何を考えてるんですかクマさん!!!」
また面倒な事になりそうだとキリシマは混合の腕の中で溜息を吐いた。
─────それにしてもコイツって結構パワー有るんだな。
キリシマは「ドラァ!!」とマンホールの蓋を破壊した時の金剛の姿を思い出していた。
【目黒区/1日目/朝】
【キリシマ@蒼き鋼のアルペジオ ARS NOVA
[状態]:損傷無し
[装備]:COMP(体内のコアに直接インストール済み)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:取り敢えず帰還する
0,金色の巨人(『世界』)の能力を解き明かす。
1,次からは悪魔かどうか確認する。
2,トカゲ男(ディエゴ・ブランドー)が殺し合いに乗っていると推測しています。
[COMP]
1:金剛@艦隊これくしょん〜艦これ〜
[種族]:艦娘
[状態]:健康
0,次からは悪魔かどうかしっかり確認する。
【備考】
※目黒区の何処かに破壊されたロードローラーが転がっています。
※目黒区の何処かに蓋の無いマンホールが有ります。
※目黒区の何処かにビルや路面に砲撃を受けたあとが有ります。
-
投下を終了します
-
書き忘れていましたがキリシマに支給された武器は 夷腕坊壱號機@るろうに剣心 です
-
投下乙です!
ディエゴにもdisられるDIO様……w
キリシマと金剛のコンビもいい感じで何よりですね。
-
投下します
-
「う〜ん…参ったねこりゃ」
泉こなたは、少し前に発したのと全く同じ言葉を口に出していた。
悪魔を呼び出してからしばらく、キーボードで悪魔を操作していた。
そして一通り動きを掴めたのでノートパソコン型のCOMPの他の項目を見ることにした。
「参加者名簿」というフォルダを開き、自分同様この場に呼ばれた者の名を見たのだが…
「まさかつかさがいたなんて」
柊つかさ。
高校時代、初めて出来た友人だ。
その出会いがきっかけで彼女の姉のかがみと出会い、そして文化祭の準備を機にクラス委員長だった高良みゆきとも友人になったのだ。
「ほっとけないよね…」
つかさはこういう場所には致命的に似合わない子だ。
支給された悪魔か、あるいは出会った他の参加者が頼りになる人物ならいいが、そうでなければ真っ先に毒牙にかかってしまうだろう。
ここには姉のかがみもいないのだ。
遊んでいる場合ではない。
自分が、見つけてやらなければ。
「となると、どうしようかな…」
地図フォルダを開き、これからの行動について考える。
この東京23区で、つかさが目指す可能性がある場所は…
「やっぱり…ここかなあ」
幸い現在地からそんなに遠くない。
行ってみる価値はあるだろう。
-
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「なんなのよ、これ!?」
ここは大田区の西端。
そこで、マリベルは叫んでいた。
彼女の目の前にあるのは、なにやらグニョグニョとした空間。
正直、気持ち悪い。
「だから言っただろう。地図の端から外には出られないと」
彼女の後ろを歩いていた男、テリーは言う。
見た目は人間だが、彼はマリベルによって召喚された悪魔だ。
「これ、触ったらどうなんの?」
「さあな、触ってみたらどうだ」
「いやよ、こんなの!」
「まあ、どうなるにせよこの外側に出ることは不可能だ」
「それじゃあ、ここの周りは、全部この変なやつがあるわけ?」
「そうだ、この大陸全体を覆っている」
「…じゃあ、海もないの?」
「さあな、俺もこの場所はよく知らない」
マリベルの顔が、少し暗くなる。
彼女の住むエスタード島は、小さな島国である。
しかし、その所在を知るのは島の人間のみで、外の人間はこの島の存在を知らない。
また島の人間も、自国以外の大陸と、何百年も交流を持たず、全く外の世界についての知識を持たなかった。
それ故にマリベルは、ここが東京という都市を模していることどころか、日本という国の存在すらも知らなかった。
外の世界と切り離されて生活していたマリベルにとって、この東京というエスタード島とはまるで様子の違う都市はまさに未知の世界だった。
そんな場所を殺し合いの舞台として連れてこられて彼女は、表向きは元気にふるまいつつも内心でかなり戸惑っていたのだ。
彼女の友人たちが一緒にいればまた違ったかもしれないが、ここにいるのは初対面の悪魔が一人。
知り合いが一人もいないという状況に、いつも勝ち気な彼女もさすがに不安であった。
だから彼女は、行き先を無意識のうちに海としていた。
元の世界の名残を求めて。
もっとも本人は、自分がホームシックに陥って不安を抱えていることなど素直に認めないだろうが。
(海がない世界なんて、調子狂うわね)
実際のところは、東に行けば海はあるのだが、東京を知らず地図は苦手だからとろくに見もせずに適当に進んでいた彼女には知る由もなかった。
だから、「大陸の外周が全てオーラで覆われているのなら海は存在しない」と判断してしまっていた。
「それでサマナー。これからどうするつもりだ」
「とりあえず、この場所に詳しい人を探すわよ」
「分かった」
マリベルの返答に、テリーは素直に応じた。
自分も彼女もこの場所に土地勘がない。
それはこの殺し合いにおいて大きなハンデだ。
ゆえに、土地勘のある人物を探すというマリベルの判断は妥当であり、異議を唱える余地はなかった。
もっとも、出会う人物が無害な存在とは限らないため、接触の際は注意する必要があるが。
こうして次の目的を定めたマリベルとテリーのもとに、
「んー、確かみゆきさんの家ってこの辺りだったよね?」
少女とウサギが、現れた。
-
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「…てなわけで、この近くにみゆきさんっていう友達の家があるはずだから、そこでつかさを探そうと思ってここに来たんだよ」
泉こなたは、出会った二人組の男女、マリベルとテリーにことのあらましを説明していた。
こなたやつかさの出身は埼玉だが、彼女の友人の一人、高良みゆきは東京在住で、そこから高校に通っている。
何度か遊びに行ったこともあるので、つかさもそこを目指すかもしれないと考えたのだ。
「じゃあ、あんたはこのトウキョウって場所の道が分かるのね?」
「んー、まあ何回か来たことあるし、多少は分かるよ」
「ちょうど良かったわ。私達、この場所について全然知らないの。案内してくれない?」
「う〜ん…つかさを探すの、手伝ってくれるならいいよ」
「フフン、決まりね!私はマリベル、こっちはテリーよ!よろしくね!」
こうして、二人の少女と、彼女達に従う男とウサギは、共に行動を開始した。
「にしてもこのウサギ、さっきから全然喋らないわね」
(ポチポチポチっと)
-
┌─────────┐
|よろしく
└─v‐───────┘
/ / /\///
/ / / く/
/ / / . ´
/ / / /
__/|∧∠,,,, / /
/)>r≪《_ >´ ∠
`く//\ミ < / ≧、
《〈\/川三圦 \}\
〉\__彡 三三》 \ 廴
/\三三三孔/\ \ \_ \
/ 弋,,弋フ  ̄ \ |\《  ̄¨}} ',
(〕 _______,,≫'" 〃
\ }厂 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ . |
._{{ 、 / }
/⌒¨^≫=========彡 ∧
/ / /::
/ / .:: }
{ / /::: |
∨::::::::::{::::::... / :: |
∨::/⌒^\:::::. .:::: /
Ⅵ ∨::... /:::: /}
「なんか頭の上に文字が出てきた!?」
-
【大田区(西端)/1日目/朝】
【マリベル@ドラゴンクエスト7】
[状態]:健康
[装備]:COMP(指輪型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇をとっちめる
1:こなたの友人探しを手伝う
2:海がない世界かあ…
[備考]
※参戦時期は主人公とキーファが小舟に乗り込んでくるのを待っていた頃です。
※この世界に海が存在しないと勘違いしています。
[COMP]
1:テリー@ドラゴンクエスト6
[種族]:剣士
[状態]:健康
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ノートパソコン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品、COMP操作用キーボード
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:つかさと共に元の世界に帰る。
1:つかさを見つける為にみゆきの家を探す
[COMP]
キングカズマ@サマーウォーズ
[状態]:健康
※COMPとは別のキーボードにて動かすことが可能です
※COMP内にあるチャットモードに文字を打ち込み入力するとキングカズマの頭上にフキダシと共に入力した文字が現れます。
-
投下終了です
-
投下乙
さすがにつかさがいるとわかれば、こなたも遊んでられないか
-
地理不案内なマリベルに良い道案内が付いたな。
テリーも前衛としては申し分無いけどドランゴが居るのがなあ……
-
峰不二子・キリシマ
投下します
-
「何?この面子!!」
廃ホテルに不二子の声が響く。
名簿に記された名は、相当数の不二子の知る名が記されていた。
昔、仕事で邂逅した平賀=太一・キートンやヘックス。
不動産王であり、石仮面を巡って争った事があるスピードワゴン財団とも関わりの深いジョセフ・ジョースター。
世界的に名を知られたプログラマーの不二咲千尋。
アイドルの渋谷凛や南条光がどうでも良くなる程の名が並んでいた。
更に。
鴻上ファウンデーションのトップ鴻上光生。ルパンとコアメダルやセルメダルといったお宝を巡って、何度か対立した男だった。不二子も鴻上の秘書の里中とは複数回戦ったが未だ決着を見ていない。
人とは思えぬ戦闘能力を持ち、米軍が極秘に開発した人型戦争機械と呼ばれる、元コマンドー部隊隊長のジョン・メイトリックス。
集められた人物の名から、魔神皇の底知れぬ実力を理解し不二子の口元が引き締まる。
だが、此れだけならどうということも無かった。彼らは殺し合いをやる様な人物では無い。油断はできないが、手を組むのも殺すのも自由に選べるし、裏切ることだってできる。
問題なのは彼等以外の不二子の脳裏に記憶されている名であった。
黒い噂が絶えない男。ディエゴ・ブランドー。ギネス級の放火魔、葛西善二郎。日本犯罪史上最低の連続殺人鬼と呼ばれた片桐安十郎。
そして不二子が職業柄知っていた、これらの名ががどうでも良い存在に思える凶名が二つ。
『シックス』と『DIO』。
ゾディア・キューブリックの名で知られる世界屈指の軍需企業のトップにして、漆黒の裏面を持つ男。裏で犯した犯罪は、千度絞首台に吊るされてもなお足りぬ程の罪に塗れたその在り方は、『人の形をした悪意』と言っても過言では無い。
ルパンですら関わり合いにはなりたく無いと断言した程の、文字通りの“怪物”。
そして、犯罪者達の間で名を密かに仄めかされる『悪のカリスマ』『悪の救世主』DIO。
未だ裏社会ですら実在を疑われ、架空の人物とまでされる男。だがDIOの部下と名乗る者達は確かに存在し、狂信的なまでの崇拝をDIOに寄せ。裏切った者は途端に奇怪極まりない死を遂げるという。
まるで伝奇小説の登場人物の如き存在として知られるDIO。
その両名がこの地に居るという。
“漆黒”。それも只の黒では無く、乾いて赤黒く変色した人間の血で、念入りに塗装された“漆黒”の道を歩んできた“怪物”の名に不二子の背に冷たいものが流れた。
この二人を連れ去り、首輪を嵌めて、己が意思に隷属させる。こんな芸当を行う魔神皇とは何者なのか?
「随分と冴えない顔をしているのね」
深刻な顔で黙りこくっている不二子顔を、モリガンが覗き込む。
「ちょっとね…怖いオジサマ方の名前があって、憂鬱なの」
「貴女がそう言うなら、大概な相手なんでしょうね」
「ええ、怖くて泣きそうよ」
「不安?」
「貴女を疑う訳じゃ無いけれどね」
「ふうん…だったら」
モリガンは面白そうな笑顔を浮かべると、不二子を抱きかかえて窓から飛び出した。
-
「此処ね…」
品川区区民公園。其処に二人の姿は在った。
野良悪魔を見つけては締め上げて、長や付近の悪魔を統括する存在について喋らせ、そして漸く此処にたどり着いたのだった。
はぐれだったり、偶々行きあった同族で行動していたりしている悪魔が大半だったが、犬の様な悪魔がかなり大規模な群れに属しており、そいつの案内で此処に来たのだった。
「ウウウ…ココニ、オレタチノ…オサ、イル」
怯えながらも道案内をした犬の様な悪魔─────ガルム─────を不二子がCOMPに収める。
予め、案内が終われば仲魔としてCOMPに収容される事を了承していたガルムは、大人しくCOMPに収まった。
不二子としては、戦力としては役に立たないが、捨て駒や合体材料に使えると判断してのことだった。
「さあ…お楽しみの時間よ」
モリガンの身体から膨大な魔力が、荒れ狂う暴風として放出される。
「出ていらっしゃい。楽しみましょう」
誘う様に手招き。それに応じたのか、モリガンのいる付近を影が覆った。
次の瞬間。モリガンの立っていた位置は、巨大なオオカミの着地により、クレーターの中心と化した。
物陰に隠れて見ていた不二子が、顔を引っ込めて、飛び散る破片をやり過ごす。
眼から業火が燃え上がるこの狼の名はフェンリル。北欧神話において、ラグナロクで主神オーディンを喰らうとされる怪狼であった。
「サキュバスガ…コノオレニナンノヨウダ……」
「仲魔になって貰いに来たんだけど、イヤでしょ?」
「ワカリキッタコトヲ……」
怒りを露わにするフェンリルにモリガンは朗らかに告げた。
「だから貴方を叩きのめして「ウン」って言わせてあげる」
「フザケルナァ!!!」
目にも止まらぬ速度で振り下ろされる右前肢。打撃された路面が陥没し、周囲に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。
だが棒立ちで受ける程モリガンは鈍くは無い、フェンリルが動くのとほぼ同時に飛び上がり、刃状に変えた蝠翼でフェンリルの顎を斬り裂きに掛かる。
鈍い音がした。
下顎を確と捉えた刃が止まる、怪狼の毛皮の毛皮は尋常では無い硬さと厚みだった。戦車砲でも恐らくは通すまいし、衝撃もロクに感じるまい。
それ程の強靭さを誇る毛皮に加え、巨像をしのぐ体躯を持つフェンリルに、人と変わらぬ大きさのモリガンの攻撃が通じるのか?
「グガッ!」
通じた。シャドウブレイドで下顎を強打されたフェンリルは、で大きくよろめいたのだ。
モリガンはそのまま空中に留まりながら、鼻面目掛けて拳脚を嵐の如く撃ち込み、止めにドリル状に変化させた翼を見舞おうとする。
-
「グオオオオオオ!!!」
フェンリルが憤怒を具象化したかの様な咆哮を、真正面から、しかも至近距離で浴びせかけ、衝撃にモリガンの動きが止まったところを右前肢の一撃。
マトモに喰らったモリガンは、轟音を立てて地面に激突する。
思わず息を飲んだ不二子の眼前で、フェンリルの吐いた炎の息(ファイヤブレス)が、モリガンの落ちた場所に突き立った。一瞬でアスファルトが蒸発し、周辺の路面も高熱の炎の息からの熱伝導で溶融し、蒸発して行く。
最早炎の息と言うよりも熱線と呼ぶべき代物だった。
「ここまでくると怪獣ね」
呆れて呟く不二子の方へ、フェンリルが視線を向ける。
流石に息を飲む不二子に向けて口を開ける。口腔の奥に地獄の業火の如き炎が、鈍く輝いていた。
その開いた口に下から飛来した光弾が直撃し、口を閉じさせる。
「わお」
不二子がわざとらしく呟くと、熱線が暴発したのだろう、フェンリルの噛み合わさった牙の間から、火山活動により噴き上がるマグマの如き勢いで、紅蓮の炎が噴出した。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
咆哮─────憤怒と苦痛がないまぜになった其れは、辺りの建物を揺るがし、ビルのガラスを割り、路面をめくり上げて行く。
苦痛にのたうつフェンリルの下顎に、モリガンが再度シャドウブレイドで痛撃を浴びせ、鼻面の前でホバリングすると、翼から大量のミサイルを発射した。
「グギィヤアアアアアアアア!!!」
鼻腔や眼をミサイルに抉られさしもの怪狼も応えたのか、タタラを踏んで後退するが、神すら喰らう怪狼というのは伊達では無い。
すぐさま立て直し、至近距離からモリガン目掛けて咆哮を浴びせたのだ。
回避の仕様も無い音の壁に、モリガンが防御の体勢を取り、動きが止まったところへ再度放たれる熱線。
直撃を受けたモリガンは勢いに押されて飛ばされ、凄まじい勢いで後ろのマンションに激突した。
崩壊するマンションの瓦礫に埋れたモリガン目掛け、レース用のバイクも及ばぬ速度でフェンリルが駆け出す。その牙でモリガンを噛み裂き、血肉を喰らって止めとするつもりなのだろう。
猛速で駆けるフェンリルの鼻面目掛け、瓦礫の中から光弾が放たれるも、軽々と跳躍して飛び越し、光弾の発射地点目掛けて、落下速度と体重を乗せた右前足を振り降ろす。
突如としてフェンリルの右眼の辺りで連続して爆発が発生。姿勢を大きく狂わせた。
崩れた姿勢のままフェンリルは右足を振り下ろし、大型爆弾が爆発したかの様な轟音と周辺に落着する破片が大気を震わせる。
「誰かや知らないけどさっきは危なかったわ。これは少し本気を出さないとね」
上空からの声にフェンリルが視線を上に向けると、上空50mの高さに無傷のモリガンの姿があった。
「ガロンよりやるじゃない。見直したわ」
偶々なんとなく買ったTVゲームが、上等な掘り出し物だった時の子供の様な声で言うと、揃えた両足をフェンリルに向けて、超速で突っ込んだ。
フェンリルの咆哮が轟く、普通に攻撃したのでは回避されると踏んで、咆哮による音の壁をぶつけ、動きが止まったところに猛撃を加えるつもりなのだ。
咆哮により敵の動きを止めるバインドボイスはフェンリルは使えないが、此れだけの巨躯から放たれる咆哮は、衝撃波となって前に在るモノを撃ち倒す。
-
モリガンはそれを読んでいたのだろう。翼をドリル状に変形させて足に纏い、音の壁を貫いたのだから。
咆哮により生じた音の壁をモリガンが突破したのを見て、フェンリルは即座に回避に移ろうとして─────右前足で再度爆発が生じ、フェンリルの機動を封じる。
モリガンが勢いを殺すこと無くそのままフェンリルの頭蓋に痛打を加えるのと、上下からフェンリルの頭を挟み込む様に分身したのはほぼ同時。
そして上下から放たれるミサイルの嵐にフェンリルは遂に地を揺るがせて倒れ伏した。
「フフフ…どちらが強いのか解ったでしょう。解ったのならこちらの言うことを聞きなさい」
「ウウ…ワカッタ」
不二子に語ったモリガンの考えは至極単純。『警戒するべき相手が居るなら、数を用いて手早く見つける』というもの。先んじて見つけてしまえば避けるなり不意を衝くなり自由にできる。
その為に態々此の辺りの悪魔の群れの長であるフェンリルを屈服させたのだ。
「随分と余裕の勝利ね」
「そうでもないわ、誰かは知らないけど助けてくれなかったら怪我くらいはした相手よ」
そう言って付近にあるマンションの方をモリガンは見つめたのだ。
「とにかく数は揃えられた事だし、後は悪魔達からの情報待ちね」
不二子は悪魔達に伝えるべく、記憶にあるシックスの外見について思い出そうとしていた。
【品川区区民公園/1日目/午前十一時】
【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品 AK-47(残弾・多)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:???
0,シックスとDIOを最優先で排除する。
1,シックスの姿形をフェンリルの群れの悪魔に教える。
【備考】不二子の名簿には
パチュリー・ノーレッジ、犬吠埼樹、ヘックス、遠野英治
エルンスト・フォン・アドラー、栗浜亜魅、八神はやて、六星竜一
この八名の名は記されていません。
[COMP]
1:モリガン・アーンスランド@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:夜魔
[状態]:健康・疲労(小)
2:ガルム
種族]:妖獣
[状態]:健康
3:フェンリル
[種族]:妖獣
[状態]:ダメージ(中)
-
「終わったみたいでスネ」
「終わったみたいだな」
区民公園から数百m離れたマンションの屋上で、キリシマと金剛は公園の2人についた思考していた。
下水道に逃げ込んでトカゲ男(ディエゴ)を振り切った二人は、戦艦の本能なのか、知らず知らずの内に海へ向かって移動していたところ、
突如として轟音と激震が生じた為に、手近なマンションの屋上から、様子を探ることにしたのだった。
そして巨大な狼と戦闘する美女と、そのサマナーらしき美女を発見。キリシマの例も有るために、良く良く観察した結果。
他にサマナーらしきモノは見えなかった為に狼に砲撃を敢行したのだった。
「それにしても凄い戦闘能力だな。トカゲ男の悪魔にも勝てるんじゃないか?」
「う〜ん。あの悪魔サン凄いSexyですね〜」
「気にするのがそこかよ!!!」
【キリシマ@蒼き鋼のアルペジオ ARS NOVA
[状態]:損傷無し
[装備]:COMP(体内のコアに直接インストール済み)
[道具]:基本支給品、夷腕坊壱號機@るろうに剣心
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:取り敢えず帰還する
0,金色の巨人(『世界』)の能力を解き明かす。
1,次からは悪魔かどうか確認する。
2.トカゲ男(ディエゴ・ブランドー)が殺し合いに乗っていると推測しています。
3.公園の二人(峰不二子&モリガン・アースランド)と接触するかどうか考える。
【備考】キリシマの名簿には
パチュリー・ノーレッジ、犬吠埼樹、ヘックス、遠野英治
エルンスト・フォン・アドラー、栗浜亜魅、八神はやて、六星竜一
この八名の名は記されていません。
[COMP]
1:金剛@艦隊これくしょん〜艦これ〜
[種族]:艦娘
[状態]:健康
0,次からは悪魔かどうかしっかり確認する。
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投下を終了します
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これらをかきわすれていました
※品川区民公園周辺の路面に熱戦により空いた大穴があります。
※区民公園近辺のマンションが一つ倒壊しました。
※フェンリルの咆哮が結構広範囲に響きました。周辺で聞いた人が居るかもしれません。
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月報集計お疲れ様です。
サマif 58話(+58) 41/42 (-1) 97.6 (-2.4) ※登場話候補作42作を含む
聖杯スレに形式を合わせる場合は+16となります。
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投下します
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ZUN ZUN ZUN
新宿御苑近辺を勢い良く歩く紅白腋巫女の姿。その名は博麗霊夢、魔神皇によりこの無人の東京に放り出された幻想郷の住人である。
花園神社の境内で行われた、宛てがわれた悪魔との金銭交渉は決裂に終わり、霊夢は悪魔をCOMPに仕舞い込むと強力な悪魔を求めて、直感に任せて歩き出したのだった。
いつもなら飛ぶのだが、何故かお空を飛べない様になっているので、こうしてZUNZUN歩いているのだ。
「は〜。良い悪魔居ないかしら」
巫女とは思えぬ発言であるが、霊夢の知り合いは圧倒的に妖怪の方が多いので、霊夢にとっては極々普通の発言でしかない。
「紫とかレミリアとか萃香とか幽香とか居ればねえ」
この際ルーミアやチルノでも良いから出て来て欲しい。金銭の要求をしない奴カモン。
そんな事を思いながら道を曲がると『ソレ』は居た。
「は……」
『ソレ』は巨きかった。
『ソレ』は逞しかった。
『ソレ』は雄大だった。
『ソレ』は力強かった。
『ソレ』は震えていた。
『ソレ』はご立派だった。
『ソレ』を見た博麗霊夢はその場で回れ右して全速力で走り出した。
『ソレ』は金銭を要求する類の悪魔では無かった。
『ソレ』は金銭では無く霊夢自身を欲していた。
「ゆんやああああああああああああああ!!!!!?」
後ろにピッタリくっついてくる悪魔の気配に霊夢は絶叫しながら脚に更なる力を込める。
博麗の巫女とご立派な悪魔の姿は忽ち見えなくなった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「何だ?」
新手のスタンド使いでも湧いて来たかの様な音に、リゾット・ネエロは音の方を振り返る。
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
リゾットの視界を、暴走する機関車の如き勢いで、巨大なチ⚪️コが道を爆走して行った。
「グレート……」
確かに目にした筈の光景を脳味噌が処理できずにそんな事を呟くリゾット。何時の間にか50m程先に見えていた交差点のど真ん中に突っ立っていた。
別段にパッショーネのボスがスタンド能力を使ったわけではない。余りにもシュールな光景に意識が漂白されただけである。
「サマナー。さっきの見た?」
「……ああ」
何でコイツはあんなのを見ても平気なんだろうか?悪魔だからかそうなのか。
「私の知り合いなんだけど」
「……ちょっと待て」
チ⚪️コが知り合いとか普通なら「舐めてるのかテメェ」と言う感じで口の中に大量にカミソリ作ってやるところだが、相手は悪魔。見た目ロリでも悪魔なのだ。
リゾットがロリにハァハァする性癖の持ち主だったら、某スタンド使いがモナリザの手を初めて見た時の生理現象を引き起こす妄想に耽りそうなこいしの発言だったが、生憎とリゾットはノーマルだったのでドン引きしただけだった。
「あの紅白巫女は仲間になってくれると思うよ」
「はぁ!?」
紅白巫女とは何のことだかサッパリだが、少なくとも駆け抜けて行ったご立派な存在では無いだろう。あまり気が進まないが、先刻見た姿を変える悪魔に対抗する為にも味方は欲しい。
溜息をついてご立派な存在を追おうとした時、此方に近づいてくる男を見つけた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
-
「其処で止まれ」
首輪を付けた男が媚びた笑みを浮かべて近づいてくるのを10mの所で制止する。
「何の用だ」
10m。リゾットのスタンド能力『メタリカ』の射程圏内で男が止まったのを確認して話しかける。
「ぼ…僕はろ…六星竜一と言います」
ロクセイリュウイチ……後で名簿を確認しよう。そう思いつつリゾットは竜一の右足をハサミで切断する準備を終える。
竜一が何か言っているがリゾットは聞き流している。言っている事が本当かどうか判らないからだ。
暗殺者として闇の世界に生きて来たリゾットには解る。気弱な風を装っているが、竜一の眼は『覚悟を決めた眼』。『ブッ殺す』とキャンキャン吠えるチンピラとは違う、吠えること無く殺し終える殺人者の眼だった。
そんな眼の男が『気弱な一般人』を装って接触してくる理由となどひとつしかない。風の強い日に小便をしたらズボンにかかることと同じくらいに確信を持って断言できる。
コイツは俺を殺す気だ。
「取り敢えずおまえの知っていることは後でゆっくり尋問してやる」
「え…?」
未だに猫を被る竜一の脚を切断しようとして─────リゾットの頭上に影が差した。
「ククク…リュウイチ、貴様の演技は最初から見破られているぞ」
天空よりリゾット目掛け舞い降りるは南斗の極星サウザーに他ならない。
リゾットとこいしの姿を補足した二人は、予めサウザーが交差点の信号機の上に跳躍。その上で竜一が近付き、二人の注意を引きつけ頭上よりサウザーが奇襲を掛ける算段を立てたのだ。
竜一達が最初から殺しに掛らなかったのは、リゾットから情報を引き出すためだったが、擬態を見破られているのでは其れも望めぬとして、サウザーが攻撃に踏み切ったのだ。
南 斗 鳳 凰 拳 南 斗 剽 斬 功!!
サウザーの着地と同時に地を衝撃が走り、着地点の周囲の敵を一掃する攻撃。
足元に居れば潰れて肉塊となり、躱したとしても衝撃に天高く舞いあげられる。
数十人の屈強なモヒカンを一撃で撃砕するこの業に、たった二人が耐えられるわけもない。
無論。決まればの話だが。
表象“弾幕パラノイア”
「何ィ!?」
何時の間にかサウザーの後背を取ったこいしが至近距離から弾幕を放ちサウザーの体を崩す。
─────将星墜ちるべし!!
Z U N
あわや地面に叩きつけられるというところでサウザーは立て直して着地。滞空するこいしを睨め上げ間髪入れずに奥義を撃つ。
南 斗 鳳 凰 拳 天 将 群 星 脚
天空を舞うは鳳凰のみ、有象無象は悉く地に降りよと、傲岸な覇気を込めたサマーソルトキック。当たればこいしの華奢な体を微に砕く威力だったが、虚しく宙を切り─────。
表象“夢枕にご先祖様総立ち”
世紀末スポーツな動きで再度背後に回り込んだこいしの放ったレーザーが聖帝を打ちのめす。
「グォ!?動きが…動きが読めぬ!?」
古明池こいしは『覚り』という妖怪である。こいしは過去に自身の持つ読心能力が他者から嫌われる事を知り、哀しみから読心能力を封じ、心を閉ざした。
この事によりその心の在り様は『空』自我にすら囚われずに動くこいしの動きは当人にすら読めぬ。
─────どこぞの究極生物の様に考える事をやめただけという説も在ったりするが─────。
死を恐れるが故に間合いを恐るが心を閉ざしたちした無意識無想のこいしに間合いも隙も存在しない。そして無想故にその拳は意志を持たず、読めず覚れず見切ること能わず。
原理としては南斗鳳凰拳に並び立つ乱世の拳、北斗神拳の無想隠殺と同じ。
その結果南斗百八派の頂点に立ち、世紀末の時代に覇を唱えんとした二つの極星の内の一つ、聖帝サウザーをして一方的に打ちのめすという快挙…もとい怪挙を成し遂げたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
-
─────『メタリカ』が発動しない!?
槍構えて突っ込んでくる竜一の脚を切断しようとしてリゾットは驚愕した。
『メタリカ』磁力により鉄分を操作することで、他者の体の鉄分を刃物に変えて体内より切り裂く、周囲の鉄分を纏い迷彩を施す、切断された自分の体を接合するといった多彩な使い方が出来る能力なのだが、何故か竜一の体内に刃物を作ることが全く出来ない。
悪魔に対しては問題無く使えたので油断していたのが悪かった。
─────あの魔神皇とやらに何かされたのか!?
非常に拙い事態だった。リゾットの『メタリカ』は暗殺という一点に於いて最高峰に位置する能力だが、正面戦闘に向いているとはお世辞にも言い難い。
この状況下では迷彩を施しても即座にバレるだろう。支給品とやらに強力な武器があるかも知れないが取り出す暇も無い。絶体絶命というヤツだった。
竜一にしてみれば、何だが知らないが棒立ちで焦っているマヌケに呉れてやる情けはない。第一この男は自分に正体に最初から気づいていたのだ。ここで仕留めておかなければならない相手だった。
「死ね」
などとホザく無駄を犯さず、竜一は無言で槍を真っ直ぐリゾットの心臓に繰り出す。
対するリゾットは無防備のまま、魔神皇に嵌められた枷の為に、本来なら倒せる敵に殺される。
『死』は覚悟出来ている。こんな世界で生きているのだ。見ず知らずの男に殺されるのも受け入れる『覚悟』は有る。
だが─────。こんな『死に方』は嫌だ。『信頼』されること無く飼われ続け、仲間を惨殺され、その死を自分達への脅しに使われた。
反旗を翻した矢先に訳の分からないガキに拉致されて殺し合いを強要されるとかいうふざけた事態に巻き込まれた。
チームの仲間を辱めたボスも、舐めた真似してくれた魔神皇もキッチリ落とし前を付けてやる。
それが俺の『誇り』だ。
「だから、こんな所じゃ…死ねないんだよ」
竜一の繰り出した槍はリゾットの胸に刺さること無く止まっていた。
『メタリカ』は磁力を操るスタンド能力。竜一に対して磁力操作が行えずとも、周囲の鉄を操ることは可能ッ!
リゾットは咄嗟に周囲の鉄を操り、心臓の部分にプロテクターを形成したのだ。
「オラァ!」
繰り出される文字通りの『鉄拳』。鉄分を纏ったリゾットの拳が竜一の顔面を捉えた。
「グオォ!?」
竜一が僅かに顔を逸らさなければ、確実に頬骨を砕いたであろうパンチ。辛くも凌いだ竜一が、槍を水平に振って牽制しながら大きく後ろに飛びすさる。
すかさず追撃しようとするリゾット。迎撃しようと構える竜一。
その両者の間に、轟音と地響きと共に偉丈夫が降ってきた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
-
愕然と見やる二人の間で、降ってきた偉丈夫─────聖帝がぬおおと立ち上がる。
その聖帝目掛け襲い掛かる小さな影は古明池こいしに他ならない。
南 斗 鳳 凰 拳 悠 翔 獄
聖帝が繰り出す無数の手刀。一撃一撃がこいしの身体を貫き命を散らして余りある威力。それを一度に百を超える連弾として放つのだ。こいしを殺して身体を微塵と砕くオーバーキル。
手刀が悉く空を切り、背後にバスケな感じで回り込んだこいしが触手を束ねて聖帝の脚をかっぱらい、転んだ所を幻想郷の妖怪がデフォで持つ飛行能力を駆使して、連弾決めて天高く打ち上げて行く。
テーレッテーと始まる世紀末スポーツタイム。
─────コイツはひょっとしてガキに弱いのか。
支給された袋詰めのイチゴを口にしながら竜一は考える。ふと視線をやるとさっき竜一の顔に鉄拳見舞った男が茫然と、バスケに興じる偉丈夫と幼女を見ていた。
─────取り敢えず次からはガキ連れた奴は避けるか。
最後のイチゴを口にしたと同時。ビルの壁面に壁が砕ける勢いで叩きつけられたサウザーが、追撃のダンクされてアスファルトにめり込んだ。
199xHIT 聖帝はバスケの嵐に見舞われた!!翼をもがれ、地に墜ち、鳳凰はすでに飛ばぬかにみえた…………
だが…
聖帝はFATAL K.O.されていなかった!!
「フフ…きかぬなあ」
中野区ならば天に帰るトキィを迎えたのだろうが、生憎此処は新宿区。地の龍の拠点が在ったり、龍穴が在ったり、魔界都市になったり、聖杯戦争やったりとクソ忙しい街だが、全般的にノリは世紀末。スポーツやる雰囲気ではない。
世紀末なノリの土地に相応しく、此処に在るは世紀末荒野に君臨した聖帝サウザー。イチゴ味でもバスケ選手でも無い。
ZUNと一歩を踏み出す聖帝サウザー。
世紀末の荒野に天を目指した巨人、拳王。天地を砕くと言われた剛拳を持つ拳王が全てに於いて己と五分と認めた世紀末救世主ケンシロウ。
そのケンシロウが散々殴る蹴るしてもロクにダメージ受けなかった聖帝サウザーの肉体は金剛石すら上回る堅牢さを誇る。
見よ。こいしにひたすらドツキ回された聖帝は疲労すら見せずに無傷で佇立する。
対してこいしは疲労困憊して、聖帝をドツキ回した両の手からは血が滲み出ていた。
「俺は蟻の反逆も許さん……そろそろ死ぬか」
ゆったりと歩み寄るその姿は正しく死の絶対具現。もはやこいしに戦う力は無いと見切っている。
その全身が炎に包まれ燃え上がる。
リゾットがCOMPから実体化させた悪魔、“霊鳥ヤタガラス”のアギダインが直撃したのだ。
「フン……この程度で俺がどうにかなるとでも思っているのか」
たかだか実体の無い炎程度が聖帝の身体に届く道理なし。この程度で怯む様な肉体ならば拳王の拳風で砕け散る。
サウザーが軽く闘気を放出すると、炎は千々と砕けて舞い散った。
「アイツ等なら消えちまったぞ」
竜一が言うのを聞いてサウザーは気配を探る。短い時間で随分遠くまで行ったがまだ追える。
竜一が何もしなかったのは仕方無い。あの炎だ、只の人間にはキツかろう。
「それにしても、この俺を汚物の様に焼こうとはな」
全く以って気に食わない事をしてくれたが、大して脅威にもならない奴等など放っておいても淘汰されるだろう。
「まあ良い。お前は自分の素性がバレると都合が悪いのだったなリュウイチ」
「ああ、出来ることなら知られていない方が殺しやすい」
「ふむ…どうするかな」
このまま放っておいても良いがどうしてくれようか。
【新宿区・路上/1日目/午前】
【六星竜一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、槍型COMP
[思考・状況]
基本:優勝狙い
1.自分の正体がバレない様に立ち回る
2.あの二人(リゾット&こいし)をどうするか?
3.なるべくガキ連れた奴は避けるべきかもしれん。
[備考]
※参戦時期は死亡後です
[COMP]
1:サウザー@北斗の拳
[種族]:拳士
-
愕然と見やる二人の間で、降ってきた偉丈夫─────聖帝がぬおおと立ち上がる。
その聖帝目掛け襲い掛かる小さな影は古明池こいしに他ならない。
南 斗 鳳 凰 拳 悠 翔 獄
聖帝が繰り出す無数の手刀。一撃一撃がこいしの身体を貫き命を散らして余りある威力。それを一度に百を超える連弾として放つのだ。こいしを殺して身体を微塵と砕くオーバーキル。
手刀が悉く空を切り、背後にバスケな感じで回り込んだこいしが触手を束ねて聖帝の脚をかっぱらい、転んだ所を幻想郷の妖怪がデフォで持つ飛行能力を駆使して、連弾決めて天高く打ち上げて行く。
テーレッテーと始まる世紀末スポーツタイム。
─────コイツはひょっとしてガキに弱いのか。
支給された袋詰めのイチゴを口にしながら竜一は考える。ふと視線をやるとさっき竜一の顔に鉄拳見舞った男が茫然と、バスケに興じる偉丈夫と幼女を見ていた。
─────取り敢えず次からはガキ連れた奴は避けるか。
最後のイチゴを口にしたと同時。ビルの壁面に壁が砕ける勢いで叩きつけられたサウザーが、追撃のダンクされてアスファルトにめり込んだ。
199xHIT 聖帝はバスケの嵐に見舞われた!!翼をもがれ、地に墜ち、鳳凰はすでに飛ばぬかにみえた…………
だが…
聖帝はFATAL K.O.されていなかった!!
「フフ…きかぬなあ」
中野区ならば天に帰るトキィを迎えたのだろうが、生憎此処は新宿区。地の龍の拠点が在ったり、龍穴が在ったり、魔界都市になったり、聖杯戦争やったりとクソ忙しい街だが、全般的にノリは世紀末。スポーツやる雰囲気ではない。
世紀末なノリの土地に相応しく、此処に在るは世紀末荒野に君臨した聖帝サウザー。イチゴ味でもバスケ選手でも無い。
ZUNと一歩を踏み出す聖帝サウザー。
世紀末の荒野に天を目指した巨人、拳王。天地を砕くと言われた剛拳を持つ拳王が全てに於いて己と五分と認めた世紀末救世主ケンシロウ。
そのケンシロウが散々殴る蹴るしてもロクにダメージ受けなかった聖帝サウザーの肉体は金剛石すら上回る堅牢さを誇る。
見よ。こいしにひたすらドツキ回された聖帝は疲労すら見せずに無傷で佇立する。
対してこいしは疲労困憊して、聖帝をドツキ回した両の手からは血が滲み出ていた。
「俺は蟻の反逆も許さん……そろそろ死ぬか」
ゆったりと歩み寄るその姿は正しく死の絶対具現。もはやこいしに戦う力は無いと見切っている。
その全身が炎に包まれ燃え上がる。
リゾットがCOMPから実体化させた悪魔、“霊鳥ヤタガラス”のアギダインが直撃したのだ。
「フン……この程度で俺がどうにかなるとでも思っているのか」
たかだか実体の無い炎程度が聖帝の身体に届く道理なし。この程度で怯む様な肉体ならば拳王の拳風で砕け散る。
サウザーが軽く闘気を放出すると、炎は千々と砕けて舞い散った。
「アイツ等なら消えちまったぞ」
竜一が言うのを聞いてサウザーは気配を探る。短い時間で随分遠くまで行ったがまだ追える。
竜一が何もしなかったのは仕方無い。あの炎だ、只の人間にはキツかろう。
「それにしても、この俺を汚物の様に焼こうとはな」
全く以って気に食わない事をしてくれたが、大して脅威にもならない奴等など放っておいても淘汰されるだろう。
「まあ良い。お前は自分の素性がバレると都合が悪いのだったなリュウイチ」
「ああ、出来ることなら知られていない方が殺しやすい」
「ふむ…どうするかな」
このまま放っておいても良いがどうしてくれようか。
【新宿区・路上/1日目/午前】
【六星竜一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、槍型COMP
[思考・状況]
基本:優勝狙い
1.自分の正体がバレない様に立ち回る
2.あの二人(リゾット&こいし)をどうするか?
3.なるべくガキ連れた奴は避けるべきかもしれん。
[備考]
※参戦時期は死亡後です
[COMP]
1:サウザー@北斗の拳
[種族]:拳士
-
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そのころリゾットは路地裏をひた走っていた。
「次から次へと……『メタリカ』で攻撃出来ないのは辛いぜ」
こいしをCOMPに仕舞。ヤタガラスを連れて離脱するリゾットは、攻撃力の不足を補う悪魔なり仲間が欲しかった。
【新宿区・路地裏/1日目/午前】
【リゾット・ネエロ@ジョジョの奇妙な冒険 part5 黄金の旋風】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:
1:脱出する
2:魔神皇に落とし前をつける
3:古明池こいしと魔獣ネコマタをCOMPに入れています。
4.攻撃力を補わないとやってられん
5.紅白巫女とやらを追うか…?
【備考】
制限によりメタリカで参加者を攻撃することが出来なくなっています。
[COMP]
1:古明地こいし@東方project
[種族]:地霊
[状態]:疲労困憊・両手に怪我
2:ネコマタ
[種族]:魔獣
[状態]:健康
3:ヤタガラス
[種族]:霊鳥
[状態]:健康
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そのころ霊夢は何処ぞの路地裏を爆走していた。巨体を誇るご立派様は狭い路地裏では動きが鈍ると踏んだのだ。
この読みは当たったが、霊夢は致命的な過ちを犯していた。狭い路地に逃げ込んだことで、ご立派な悪魔は左右の壁に身を擦り付けながら霊夢を追走したのだ。
霊夢に支給された悪魔がいればナニがどうなるか察知しただろうが生憎とCOMPの中。
そして霊夢は遂に決定的な瞬間を迎えた。
『誘 惑 の 霧』
ブッシャアアアアアと噴き出た霧が霊夢の頭上から降り注ぐ。
「いやあああああああああ!!!」
飛行こそ出来ないものの『空を飛ぶ程度の能力』によりあらゆるものに捉えわれない性質は健在。誘惑の霧で全身濡れたものの、そのまま駆け去った。
後には賢者モードのご立派様が残された。
者たちである。
【新宿区/1日目/午前】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:健康・ずぶ濡れ・心身共に疲労(中)
[装備]:COMP(お祓い棒型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:異変を解決する。
1.金を要求してこない悪魔が欲しい
【備考】
制限により飛行不能となっています
[COMP]
1:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ@ウィザーズ・ブレイン(COMP内)
[種族]:魔法士
[状態]:健康
-
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そのころリゾットは路地裏をひた走っていた。
「次から次へと……『メタリカ』で攻撃出来ないのは辛いぜ」
こいしをCOMPに仕舞。ヤタガラスを連れて離脱するリゾットは、攻撃力の不足を補う悪魔なり仲間が欲しかった。
【新宿区・路地裏/1日目/午前】
【リゾット・ネエロ@ジョジョの奇妙な冒険 part5 黄金の旋風】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:
1:脱出する
2:魔神皇に落とし前をつける
3:古明池こいしと魔獣ネコマタをCOMPに入れています。
4.攻撃力を補わないとやってられん
5.紅白巫女とやらを追うか…?
【備考】
制限によりメタリカで参加者を攻撃することが出来なくなっています。
[COMP]
1:古明地こいし@東方project
[種族]:地霊
[状態]:疲労困憊・両手に怪我
2:ネコマタ
[種族]:魔獣
[状態]:健康
3:ヤタガラス
[種族]:霊鳥
[状態]:健康
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そのころ霊夢は何処ぞの路地裏を爆走していた。巨体を誇るご立派様は狭い路地裏では動きが鈍ると踏んだのだ。
この読みは当たったが、霊夢は致命的な過ちを犯していた。狭い路地に逃げ込んだことで、ご立派な悪魔は左右の壁に身を擦り付けながら霊夢を追走したのだ。
霊夢に支給された悪魔がいればナニがどうなるか察知しただろうが生憎とCOMPの中。
そして霊夢は遂に決定的な瞬間を迎えた。
『誘 惑 の 霧』
ブッシャアアアアアと噴き出た霧が霊夢の頭上から降り注ぐ。
「いやあああああああああ!!!」
飛行こそ出来ないものの『空を飛ぶ程度の能力』によりあらゆるものに捉えわれない性質は健在。誘惑の霧で全身濡れたものの、そのまま駆け去った。
後には賢者モードのご立派様が残された。
者たちである。
【新宿区/1日目/午前】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:健康・ずぶ濡れ・心身共に疲労(中)
[装備]:COMP(お祓い棒型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:異変を解決する。
1.金を要求してこない悪魔が欲しい
【備考】
制限により飛行不能となっています
[COMP]
1:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ@ウィザーズ・ブレイン(COMP内)
[種族]:魔法士
[状態]:健康
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投下を終了します
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投下乙です
聖帝が完全にイチゴ味のノリに……
と思いきやこいしにどつかれまくっても無傷とは何とも恐ろしい
氏の新宿像に笑わせてもらいました
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新しい予約が来てますね。楽しみです!
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おー
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本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
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