■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■

第二次二次二次キャラ聖杯戦争【その二】

1 : 名無しさん :2016/05/17(火) 23:59:55 oW9594mE0
当二次創作は様々な作品のキャラクターをマスター及びサーヴァントとして聖杯戦争に参加させる多重クロスオーバーのリレー小説企画です。
本編には性的表現や暴力などの残酷な表現が含まれています。
閲覧の際はご注意ください。

前スレ
第二次二次二次キャラ聖杯戦争
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1406303448/

まとめwiki
www65.atwiki.jp/222seihaisensou/sp/pages/12.html


"
"
2 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/18(水) 00:36:43 9iLzorVQ0
参加者



遠坂凛@Fate/Extra&セイバー(アルトリア・ペンドラゴン@Fate/stay night)

黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!&セイバー(テレサ@クレイモア)

美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ&バーサーカー(小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド)

竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ&バーサーカー(ヒロ@スペクトラルフォースシリーズ)

天沢勇子@電脳コイル&キャスター(兵部京介@絶対可憐チルドレン The unlimited 兵部京介)

マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ&アーチャー(ワイルド・ドッグ@TIME CRISISシリーズ)

希里ありす@学園黙示録HIGH SCHOOL OF THE DEAD&ライダー(少佐@ヘルシング(裏表紙))

クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's&ライダー(五代雄介@仮面ライダークウガ)

九重りん@こどものじかん&アサシン(千手扉間@NARUTO)

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ&ランサー(カルナ@Fate/Apocrypha)

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/stay night&バーサーカー(ヘラクレス@Fate/stay night)

色丞狂介@究極!!変態仮面&キャスター(パピヨン@武装錬金)

ナノカ・フランカ@蒼い海のトリスティア&アーチャー(安藤まほろ@まほろまてぃっく)

高遠いおり@一年生になっちゃったら&ランサー(アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア)

間桐慎二@Fate/stay night&キャスター(フドウ@聖闘士星矢Ω)

衛宮切嗣@Fate/Zero&アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ)

アリス・マーガトロイド@東方Project&アーチャー(赤城@艦隊これくしょん -艦これ-)

野比のび太@ドラえもん&キャスター(ドラえもん@ドラえもん)

日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ&ランサー(真田幸村@戦国BASARAシリーズ)

三谷亘@ブレイブ・ストーリー&バーサーカー(サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ@ゼロの使い魔)



セイバー2騎
アーチャー4騎
ランサー3騎
ライダー2騎
キャスター4騎
アサシン1騎
バーサーカー4騎
計20騎の聖杯戦争となります


3 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/18(水) 01:09:16 9iLzorVQ0
【ルール(抜粋と明文化)】


・本聖杯は他の聖杯を観測するムーンセル・オートマトンです。

・本選では仮想空間内に再現された冬木市で2014年8月1日から8月31日までの一ヶ月間聖杯戦争を行い、『8月中に一組の主従しか存在しなかった場合』その組を優勝者として認める。

・本選中、監督役からの連絡はルーラーを介して深夜0時に教会で行われる。ただし、ルーラーが直接マスターやサーヴァントの元に赴く場合もある。なお、監督役及びルーラーは制裁を行う権限を持つがその基準は不明である。

・本選開始時、予選開始時と同じように仮想空間内での地位を与えられる。通常は予選終了時の状態になるべく近くなるよう設定される。

・参加者の持つ資産は予選終了時のものを引き継ぐ。なお作中に記述がない場合、NPC時代の現金、預金、その他資産価値のあるものを引き継いでいるものとする。不動産などは同価値のものをあてがわれる。

・参加者は登場話、または予選期間中を回想した本編のどちらかに情報収集をして成果があったことが明示されていない場合、一切の他参加者の情報を知らない。ただし、予選期間中に目立つ行動をとっている参加者は常識的な範囲内で同会場の参加者に印象に残ることはある。なお、情報の収集に成功する相手の条件は、『神秘の秘匿を考えない戦闘や魂喰いをしている』、または『他の組との接触、偵察、情報収集などのために使い魔を放ったり自身が行動している』描写が、『登場話か予選期間中を回想した本編』でなされていることである。またどれだけ情報収集しようともクラスと補正後のステータス、および外見などしか把握することはできない。

・サーヴァントに関する記録は本選会場である冬木市の教会か冬木市中央図書館にて検索できる。ただし、真名か宝具名を知らない場合、正しい記録を見つけることはない(検索自体はできる)。また固有のスキルなどで検索した場合、先述の検索結果よりは精度が低いが、情報を得られる。記録の内容はスキルと生前の伝承である。

・予約はとりあえず一週間。一度でも書いたことのある人なら締め切り前に宣言すれば最大三日延長可能。

・マスターの持ち込める所有物は『運営』の検閲を受けた上で没収されなかったものである。没収の正確な基準及びその管理方法は不明。

・マスターに記憶障害があるなど何らかの不具合があることがありますが、仕様です。


4 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/18(水) 02:02:42 9iLzorVQ0
ついでになんの参考になるかはわかりませんが冬木市のこれまでの12時間の状況を列挙しておきます



0050
新都のコンビニで廃棄弁当等が盗難
冬木大橋で救急車が横転

0200頃
冬木大橋倒壊

0330前
駅前で不審者の通報と高校生を任意同行

0500過ぎ
聖杯の内部空間に不具合

0542前
病院に駆け出しアイドルがいると話題に
新都のマクドナルドに不審者

0600過ぎ
新都のファミレス近くで爆発

0630前
新都の港湾部に不審者の通報

0730過ぎ
冬木大橋西岸の人が少し幸せになる

1000頃
冬木中央公園が謎の光を伴って爆発
冬木中央公園からUFOが北西方面へ飛行
沿線沿いに謎の光と建物の爆発

1030頃
未遠川に渡し舟のボランティア

1045頃
深山町で爆発

1200後
警察署で記者会見
警察署前で爆破予告のビラが撒かれる
病院で爆弾が見つかる

1300前
警察署近くのスーパーが爆発
スーパー上空で謎の光とUFOが確認される


5 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/21(土) 23:58:03 LBj/uWKY0
投下します


"
"
6 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 01:14:42 tRpiG5Iw0



 ナノカの手を握る。熱い、熱い手だ。
 体は40度近くまで上がっているのではないか。一分毎に、一拍毎にその温度が増している気がする。先程から苦し気に呻く彼女を、しかしのび太はなにもすることもできず手を握ることしかできなかった。


 ーーいや、違う。


(ドラえもん……)

 ナノカがこのようになったのは、彼女が令呪を使ってからだった。ふしぎななにかがナノカから発されたのと同時にふらりふらりと貧血でも起きたように立ち眩むと荒い息を吐いてうずくまった。それ以来心臓のペースも体温も早く高くなっている気がする。
 ナノカのサーヴァントであるまほろは今はいない。襲ってきた敵と戦いにいった後、のび太達の隠れていた所に火が回ってくる寸前に二人を抱えて離脱し、再び元来た道を戻っていった。

 つまり今、のび太達を守るものはのび太達自身だけ。もっと言えば、ナノカが倒れた今、のび太達を守れる人間は唯一のび太しかいない。

(ーー。)

 のび太は、ポケットの四次元ポケットを手に取った。中にはドラえもんの遺した、ひみつ道具が入っている。これがあれば、ナノカの体調も、その身の安全も確保できるだろう。だから、内に手を入れて、それを手に取る。そして、向かい合う。

 いつしか、のび太達を囲むように角材を持った男達がぐるりと現れていた者達へ。

「ーー来るならこいっ!!」

 吐き出すように叩き出すように言った言葉と共に、男達がのび太へと殺到する。

 12時52分00秒。

 スーパーの中心部でランサー・カルナが変態仮面の『宝具』を受けていた時、のび太も『宝具』との戦闘を開始する。


7 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 02:38:16 tRpiG5Iw0



 12時52分01秒。

 四次元ポケットからのび太が手に取ったのは、一つは『ショックガン』。この場で引き当てたひみつ道具の中では、まず間違いなく『アタリ』の部類である。

「GA!」

 向かい来る男の一人をポケットから抜いた勢いのまま正確に狙い打つ。その間、わずか3フレーム。約0.1秒。ポケットに手を入れそれを取る頃には引き金に手をかけ、それが『ショックガン』であると脳で理解する頃には射撃を終えている。
 その射撃の最初の餌食になった男は撃たれるとその場で消滅した。その事が、目の前の男達が人間ではないことをのび太にわからせる。のび太の持つショックガンは、生物には非殺傷の威力しか発さないうようになっている。対象を消滅させるようなことはないというのは、何度も使っているのび太が知っているのだ。そこから導き出されるのは、相手は人間ではないという結論であり、サーヴァントかそれのようなものという推論だ。

「Oh!」「AAAAA!!」
「来させない……!」

 男達の悲鳴が重なる。二秒の間に四発の銃撃が四人の男を煙に変えた。その隙にのび太は二つ目のひみつ道具を求めて四次元ポケットへ手を伸ばす。
 状況は明らかに悪かった。少なくとも男達はあと十人はいそうで、しかもその正体は不明である。傍らには動けないナノカがいて、その上自分達は360度を包囲されているようだ。
 簡単に考えればチェックメイト。例えのび太の手に銃があり、相手が持っているのが角材であっても、それを凌ぎきるのは不可能だ。どこから、どのように、何人来るのかわからないのに近づかせないのは至難の技だ。だからのび太はその至難の技を可能にするひみつ道具を欲する。バリアみたいなものが張れるものでも、相手を遠ざけるものでも、なんなら普通にタケコプターでもいい。とにかく今この場を切り抜けられるものを求めてーー。

「これは……」

 その手が引っ張り出したものを見て、一瞬思考が止まる。『さいなん報知器』、それはドラえもんがいた頃に、つまりほんの六時間前まで使っていたものだ。だからそれの効果は知っているーーそしてそれが役に立たなかったこともーー。

「……ッ!」

 思わず地面に叩きつけそうになるのを腕の筋肉を固めて押さえつける。それは単なる八つ当たりだ、なんて頭の中で言葉にできはしない。視覚からは先程の仲間達だろうか男達が駆け寄り、聴覚からは手に持つさいなん報知器のブザー音が鳴り響く。それの効果は知っている以上、取るべき行動は決まっている。
 右旋回。三人を撃ち。ステップを踏み出したと共に反転。左旋回。180度。四人を撃つ。第一派を凌いだのは10秒。

 のび太はショックガンを握り直した。


8 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 03:59:15 tRpiG5Iw0



 12時52分15秒。

 再びブザーが鳴る。危機が迫っていることはわかっているが、それでも音で急かされるのは嫌が応にも緊張感を増させられる。
 色々と考えたいことはあるが、それは後回しだ。襲い来る敵の正体も目的もどうだっていい。そんなことは先送りにして、視界を巡らす。
 左、いない。
 右、いない。
 正面、いない。
 後ろ、柱。
 上、天井。
 下、床。


 ーーほんとうに?


「来させないったら!」

 のび太は足を動かす。向かうのは背にした柱の反対側。六人のサングラスの男達が荒れた店内をあるものは真っ直ぐにあるものは棚を迂回して突っ込んで来るのを、のび太は正確に撃ち抜くていく。商品が並んだ棚や柱等の遮蔽物の隙間を縫う精密さと動き回る目標に銃口を確実に向ける素早さ。そのエイム力はVSSEのエージェントとも遜色はないだろ。

 三度ブザー。左、正面、右、上、下。どこも、違う、ならば。

「これもっ!」

 答えは後方、後ろが柱である以上侵攻方向は再び反対側、後ろの正面だ。

 迫るのは二人の男。その距離数メートル、一秒でナノカに角材を降り下ろせる所まで踏み込んでいる。それを秒以下の二連続ヘッドショットで沈める。


 ここまで二十秒。のび太は大きく息をついた。凌いだのは第一派と第二派
。その二つを深呼吸しながら思い起こす。
 なぜ、自分達は襲われているのだろうか?なぜ、角材を持って男達が襲ってくるのだろうか?なぜ、今、この時なのか。

「まほろさん、まだかな……?」

 ぜいぜいと息をしながら呟く。男達に襲われてもう何分も経ったような気がした。突然レーザーのような武器で襲ってきた敵も気になるが、のび太としては目の前の危機をなんとかしたいところだ。

 ブザーがまた鳴る。12時52分30秒。危機はまだ続く。


9 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 04:58:03 tRpiG5Iw0



 射つ、打つ、撃つ。

 一本の柱を中心に、のび太は360度を全速力で走り回る。
 目に写ったサングラスの男達を片端から撃ちに撃つ。それらを全て撃ち、しかしまたブザーが鳴る。
 男達は一方向だけではなく二方向三方向から同時に攻撃を仕掛けてくるようになった。それ故視界に見える敵を全滅させてもなお攻勢はやまない。

「ッハァ!」

 そして戦況は更に悪化していた。
 のび太が対処できるのは一方向だけであり、そちらを撃っている間に他の方向から接近を許してしまう。だんだん、だんだんと、男達を撃つ距離が縮まっているのを実感していた。


 そしてついにその時が来た。左、五人、正面、五人、右、五人、もしやと思って柱の反対側をみれば、五人。
 全方位攻撃。一対二十の殲滅戦。角材を持った男達が一斉に突っ込んでくる。

(させない。)

 体内の二酸化炭素は息苦しさとしてその存在を声高に主張するノイジーマイノリティー。たかだか数パーセントの血中内成分がのび太の思考力を奪う。

(またさせるもんか。)

 それに呼応するかのように乳酸がのび太の体の各所で蜂起した。地面を蹴りつける足の裏、ステップを刻むふくらはぎ、走り続けてきた太もも、引き金を弾いてきた人差し指、銃口を合わせてきた腕、銃を持ち続けてきた肩、そして男達を視界に収めようと動かし続けてきた首筋と眼筋。数十秒の全力での稼働がそれらを打ち壊しサボタージュしようとする。

「ドラえもんみたいに!」

 だったらのび太は暴君だ。不平不満を言う体を弾圧し強制労働させる。何が乳酸だ何が二酸化炭素だ。そんなものが、ドラえもんと釣り合うのか。
 七面鳥撃ち。リロードを気にせず撃ちまくる。極度の興奮と急激な疲労でホワイトアウトしそうになるのを銃を撃つことで誤魔化す。五連射。まずは一方向。

 サングラスの男達はもう10メートルの位置まで迫る。あと十五人。持っている角材はバラバラなのに揃いのサングラスなのか、そんなことを連続でヘッドショットしながら考えた。更にもう五連射。これで二方向。あとも二方向。

 撃つ。撃つ、撃つ!
 男達を一人撃つ毎に、別の男達が一メートル距離を詰める。一人一殺。確実に、確実に、のび太のその命を刈り取りに、男達は近づく。そうだ、この感覚だ。この感覚は、あのときと一緒だ。のび太は銃口をぶらしながらも男を撃つと方向転換。頭でも心臓でもなく膝の辺りに当たったが、どのみちショックガンならどこに当たろうと関係ないのだ。それともう一つ、もう走る必要はない。最後の一方向、最後の五人、最後の五メートル。


 ーー違う。


 六人だ。六人目がいるんだ。このサングラスに、この、ドラえもんを失った時にも感じた、こちらを殺すという強い意思。これをのび太は知っている。思い知らされた。だからその男と目があったとき、のび太は迷うことなくその男ーーワイルド・ドッグの眉間にショックガンを叩き込む。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!」

 三メートル、否、もうセンチで表した方が良い距離にまで迫り、角材を振り上げる男達を最後の気力を振り絞って撃つ。ワイルド・ドッグはショックガンにより体勢を崩している、今はこの戦場《シーン》の部外者だ。最高速の連射。角材の一つが振り下ろされる。それをショックガンで吹き飛ばす。続く角材も吹き飛ばす。男達も吹き飛ばす。なにもかも、全部、絶叫と共に。後ろの硬くも柔らかな柱に身を任せて。

 そうして12時53分00秒。

「時間切れだ。」

 のび太自身の意識が彼が持たれていた『柱』に吹き飛ばさた。


10 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 06:03:00 tRpiG5Iw0



(宝具まで使っておいてマスター一人、ガキ一人殺せないとはな。)

 ワイルド・ドッグがよろめいた体を立て直して近づいてくる。それを苦々しい顔で、地に這い向かえる。

「ご苦労、アーチャー。手こずっていたようなのでね、助太刀したのだが……余計だったかな?」
「……」

 そう皮肉げに言うと、伊達男ことトバルカイン・アルハンブラは健在な片腕を上げた。


 カルナの奇襲を受ける直前、のび太の姿を目にとめたワイルド・ドッグと伊達男がアイコンタクトで至った行動方針は、のび太の抹殺であった。

 のび太という存在は、彼らにとってアキレス腱だ。彼のサーヴァントであるドラえもんを殺した以上警戒されるのは当然であり、もっと言えば恨まれていてもおかしくない。
 それに、ワイルド・ドッグのマスターであるマイケルに誤魔化した内容を考えるとその存在は非常に脅威だ。もしドラえもんを殺したことがマイケルに露見すれば確実に不信感を持たれてしまう。ランサー・真田幸村共々関係が拗れるのは避けられないと見た方が良いだろう。

 その為、伊達男は燃え残った体をなんとか再構成して、ワイルド・ドッグはカルナがとりあえずどうにかなったのを見て宝具『野犬、見果てぬ野望』を発動して、それぞれのび太暗殺の為に動いたのだ。
 ーーなお結果を見れば、ワイルド・ドッグの宝具は足止め程度の役にしか立たなかったが、それでも伊達男がのび太を見つけ、霊体化し、柱から奇襲する手助けとはなったことを、ここに記しておくーー

「さて、問題があるーー」

 伊達男は、そういつもの調子でワイルド・ドッグに言った。その言葉は慇懃なものを感じさせただろうが、今の彼では滑稽な哀愁を感じさせるものだ。力なく地面に横たわる男では伊達にもならない。

「一つ、私はあと少しで死ぬ。二つ、この坊やにはこちらのお嬢さん以外にオルグしている可能性がある。三つ、ここには私達以外にあと三騎のサーヴァントがいる。で、だ。」

 伊達男は弱々しく指に三枚のトランプを出した。既に太陽に焼かれた右半身は消滅しきり、左半身も上半身を辛うじて維持しているだけだ。体の四分の一だけが、今の彼。それでも、目のギラツキは増しに増している。

「アーチャー、君にはこの坊やを急いでホテルに連れていって欲しい。そこに私のマスターがいる。尋問等の心得もある。」

 伊達男はひらりとワイルド・ドッグにトランプを投げた。スペードの3。それをワイルド・ドッグはひゅぱりと受け取った。

「そちらのお嬢さんは、まあ、君に任せよう。それと……そうだな……」

 伊達男の体の光が強くなる。既に腕は完全に消え、残すは胸と首と頭だけだ。
 残された時間は短い。だからなにか言おうとして、それでも。

「……参ったな。いい戦争だった、ぐらいしか、出てこんか……」

 それだけを言うと、トバルカイン・アルハンブラは獰猛で、どこか達観した笑みを浮かべて光の粒子となった。

「……ふん。」

 ワイルド・ドッグはそれを見届けると、手のトランプを見る。こちらもゆっくりとだが消滅が始まっている。手に乗せた氷のようなものだ。一分とかからず消えるだろう。そしてそれがワイルド・ドッグに残された猶予とも言える。つい先程、またあのレーザー砲が撃たれたのを感じた。どちらが勝ったにせよ、ここに来るのも時間の問題だ。だったら。

 ワイルド・ドッグは気絶したのび太を担ぐとモーゼルを取り出す。とりあえず、人質兼マスターの予備は手に入った。本当はもう一つ予備が欲しいが、さすがに子供二人抱えるのは色々と厳しい。しかしみすみす他のマスターを、しかも二画も令呪を持つマスターを放置するなどあり得ない。

 モーゼルが火を吹き、ナノカの左腕が飛んだ。その手にあるのは、当然令呪。それをワイルド・ドッグは強引に自分の左腕へと嵌め込んだ。
 ワイルド・ドッグは自己改造のスキルを持つ。それを使い腕の欠損を補おうというのだ。

「……ッアァ!」

 といっても、そんな無理ができるはずもなく。痛みを伴うそれは一応体にくっついたもののなんの用もなさない。精々、令呪置き器程度の役割しかなしそうになかった。だが、今はそれでいい。二画の令呪をとにかく手に入れられたのだ。交渉材料にできないことはないだろう。

「……貴様はここでーー」

 手に手榴弾を出して歩き出す。タイムイズマネー。善は急げだ。今なら多少の爆発が起きても怪しまれないだろう。そう踏んで犬歯でピンを抜き手榴弾を投げる。

「ーーお留守番だ。」

 手榴弾は正確にナノカの手前までコロコロと転がると止まる。それが光と熱とでナノカをズタズタにすると同時に、手のトランプは消えていた。


11 : 【78】12時53分00秒 ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 06:16:51 tRpiG5Iw0



【新都・線路の南側にある警察署近くのスーパー/2014年8月1日(金)1253】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
ドラえもんの四次元ポケットを持っています。


【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備(令呪二画)、満腹、ショックガン所持。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男の遺言に従い小僧(のび太)をホテルに連れていく……?
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。



【トバルカイン・アルハンブラ(-)@ヘルシング      戦死】
【ナノカ・フランカ@蒼い海のトリスティア 暗殺】


12 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/22(日) 06:18:57 tRpiG5Iw0
投下終了です


13 : 名無しさん :2016/05/22(日) 10:30:31 JAvJ7wCw0
投下乙
前スレ最後の舞台NPC目線での報告集も面白かったです
さらっとオッパイーヌ出てきてワロタ
本編の方は……のび太たち、こうなったかー……元より絶望的な状況ではあったけど、そこへさらにワイルドドッグがやらかしちゃあこうもなるな。
伊達男ギリギリ生きてた。残された時間で仕事したか。登場時から何となく決まらないイメージが付きまとってたけど、最後の台詞といい、なんだかんだかっこよかった。
ショックガンを構えて奮戦するのび太視点パートの緊迫感いいな。サブタイトルも。
ナノカ、慣れない魔力関連が命を落とすきっかけに…辛い。ここはワイルドドッグの勝ち、かな


14 : ◆Mti19lYchg :2016/05/23(月) 02:51:23 7emnBb7M0
お久しぶり、かつ投下乙です。ここでナノカが脱落とは予想外でした。
まあ、ナノカは魔術の知識はあっても素質はありませんから、こういう形で追い込まれるのもむべなるかなです。
ここでぶっちゃけると私が予約していながら話を投下できなかったのはのは、どうもナノカの行動をうまく説得力あるように動かせなかったからです。
単なる天然でもいけないし、かといって計算高くてもイメージと外れる。
小説版を担当した霧海正悟先生の苦労がわずかながらわかりました。
しかしこういう展開になるとまほろさんがどういう行動をとるのか楽しみになってきました。
私は遅筆に過ぎるので中々こちらに投下は出来ないでしょうが、これからも応援しています。


15 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/24(火) 01:41:41 s5pUWobg0
お二方ご感想ありがとうございます
他の聖杯さんみたいにイカした埋めネタを書こうとしたけど思いつくわけなかった
あんなん書けるとか化け物ですかね

スーパーでの戦いはカルナさんとまほろさんとマイケルとのび太と伊達男を殺す気で書き始めましたが、書いてる内にまほろさんと変態仮面と幸村ならカルナさんに勝てるんじゃないかとか、ワイルド・ドッグじゃのび太にもナノカにも相性的に完封負けするとか、中途半端な状態の伊達男ならどう動くかとか、そういったことを考えていったら自然と安全圏から一番命を狙われるポジション(伊達男の道連れ対象)にナノカが上がってきていました
戦いに「ノッてない」主従では唯一彼女達だけが最上位陣相手に互角に戦えたんですけどね

余談ですが、この聖杯戦争ではナノカやイサコなどの周到な準備を調えていく感じのマスターほど早死にする気がします
抜け目ないようでうっかりミスするイサコとぽややんとした雰囲気なのに辣腕を奮って見せるナノカという違いはありますが、二人ともムーンセルでのマスターとしては確実にアタリでその上立ち回りも他のマスターより悪くないはずなんですけど、有能すぎるのかサーヴァントと仲が良すぎるせいかいかんせん巡り合わせでババを引いてますね
まあこの聖杯戦争は主従ともに「敗者復活」の可能性があるので引いたババがジョーカーになる可能性もありますが


それでは変態仮面&パピヨン、日野茜&真田幸村
、ワイルド・ドッグ&マイケル・スコフィールド、野比のび太、安藤まほろ、少佐、シュレディンガー准尉で予約します


16 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/25(水) 23:59:27 mEEJEf7I0
投下します


17 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 00:35:13 4XQLUWUc0



 冬木市の地図の上、幾つものウィンドウが冬木の各地の写真を並べるディスプレイの前で、男は目をつぶっていた。
 肥満体に眼鏡で、金髪の美形の男だ。
 その男にしては珍しく眉間にシワがよっている。頭痛に耐えるかのような、黙祷するかのような、それでいてその口は三日月の形になっている。


「准尉、待ちたまえ。」

 男少佐は口を開いた。
 それを聞いて、准尉と呼ばれた猫耳の小柄な人物が日傘を反して振り返る。

「先程、トバルカイン・アルハンブラ中尉が戦死した。」

 男はそう、悲しそうに、嬉しそうに言った。相反する二つの感情が同居するその顔は、しかし相互に相互を高める。


「今度は、成功したの?」
「それは今後の私次第かな。」

 「コインの裏表のようなものだ」と、准尉の問いかけに少佐は続ける。

「私の手の甲にあるコインが表ならば、我々はここで死ぬ。」
「裏ならば、私の予定したもの以上の戦果が得られる。」

 少佐は立ち上がる。「准尉、先程ランサーの元へ行くように言ったが、その前にお出迎えして欲しい客人が来ることになった」、そう言って窓際に立つとぴたりと閉じたカーテンを僅かに開けて新都の街並みを見下ろす。明るい、光に包まれた街だ。

 ーーいい街だ、実際にその街の中に立つとーー


 ーーそのプレイヤーになるとーー

「准尉、裏表を決めるのは君であり私だ。」

 少佐はホテルに続く道の先を見ながら言った。


(面白いことにできそうだ。)


 くつくつと、笑った。


18 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 01:38:31 4XQLUWUc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「しかし、これはいったいどういうことか……」

 ランサー・カルナを辛くも撃退した者達のなかで唯一、立ち続ける色丞狂介はそう呟く。

 時間にして数分、たったそれだけの短い間で戦場となったスーパーは火の海と化していた。彼と成り行きで共闘した真田幸村も安藤まほろも既に戦闘不能状態に追い込まれている。それが狂介の混乱を深める。
 今やスーパーはいつ本格的な火事になっても可笑しくない有り様である。もしサーヴァント達のマスターがここに居れば直ぐにでも救助しなくてはならない。だが現在の狂介は彼らのことを何も知らない。マスターがいるのかもその名前もどんな人物かも、彼らの関係性も。これでは救助のしようがない。
 だが、だからといって狂介が止まるわけにはいかない。そんなことは彼の正義の心が許すわけがない。だから狂介は行動する。さしあたってまずは意識を保っているまほろから話を聞き彼女のマスターやその仲間がいるかどうかの確認をすることにした。
 聖杯戦争の舞台だろうと、舞台だからこそ、色丞狂介は正義の味方のように働く。

 ーーこれが網タイツを履いてパンツをブラジル水着のように肩にかけ、パンティを頭に被るという姿でなければの正義の味方と断言できるのだがそれができないのが悲しいところだーー

「君は……アーチャーだな?」
「うっ……」

 色丞狂介は床に踞るまほろの前に立って問う。まほろの顔面すれすれに変態仮面へと『変態』した狂介のマグナムがぶらつきそれが意識を刈り取りかけた。まほろは単独行動のスキルを持つとはいえ、旺盛に武器弾薬を使い二つの宝具を使えばさすがに一時的に体の魔力を多く消耗する。燃費の軽いまほろとはいえ突発的な貧血に近い状態になっていた。そしてその上顔面に『凶器』をちらつかされればただでさえ朦朧としている意識が遠退くのは当然と言えた。

「いかん、気をしっかりもて!」
「ひっ!大丈夫、大丈夫なんで!」

 それにまほろは『こういうもの』がある意味弱点でもある。とっさにまほろを抱き抱えた変態仮面の股間が髪の毛先に当たるのを感じてまほろは気合いで意識を覚醒させた。


19 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 02:36:05 4XQLUWUc0

 なんとか根性でまほろは立ち上がる。このままでは色々とまずい。道徳とか性的にも。そして凶器が気付けとなり冴えを取り戻した頭に生まれたのは彼女のマスターであるナノカのことだ。

「立てるのか?」
「なんとか……それと、私はこれで。」
「馬鹿な、君は腕が。」
「それよりも、急ぎの用があるので。」
「君のマスターのことか。私も手伝おう。」
「それは……」

 肩を押さえて歩き出したまほろを支えるように側に立って歩き出す変態仮面に、二重の意味でしかめっ面を浮かべる。ともすれば生暖かいぬくもりが体に襲いかかりそうになるのもあるが、それを置いてもナノカ達を探すのはできれば自分でやりたい。助けられたとはいえ、一応の警戒心を持つ程度にはまほろはこの聖杯戦争をシビアに考えていたーーもっとも、変態仮面の格好をみればたとえ顔見知りだとしても一緒に歩きたくないのだがーー。


(ーーこれって?)


 その時まほろの心臓に一陣の冷たい風がねっとりとゲルのような感触を持って吹きさっていった。

「爆発音?ぬ、アーチャー!?気を確かに持て!」
 スーパーに爆発音が響く。それと同時、まほろは一瞬糸の切れた操り人形のようにがくりと脱力して変態仮面に支えられていた。その支えられているという状態を無視してまほろは駆け出す。

「追うしかないか……!」

 ちら、と後ろで倒れている幸村を変態仮面は振り返る。この火事の場で彼を置いていくのは、いくら彼がサーヴァントと言えど避けたいのだが、直ぐにでもまほろを追わねば見失いかねない。それに、なにか嫌な予感がする。なにか、とても嫌ななにかが起きてしまう予感が。
 「直ぐに戻る」と一言言い置いてまほろを追った。
 駆ける。ストロークごとに、不安が募る。

 十数秒程走ると、彼女は直ぐに見つかった。


 爆発したと思われる柱の前で、彼女は一人で立っていた。


20 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 03:26:05 4XQLUWUc0

(……)

 足を止める。
 変態仮面はその『玉』がいつでもまほろに取られることにあることを悟った。ひしひしと感じる。自分の予感が当たってしまったことを。この股間に氷水を浴びせられたような感覚は、間違いなく、不可逆の結末を自身にもたらされる予兆であると。

「アーチャー、君ーー」
「ーー私はビジネスライクな『人間』なんです。」


 きゅん。
 変態仮面の『左の黄金』が砕け散る。


「ーーハッ!?」


 思わず自分の股間をまさぐり、目でも確認しようとして下を向いて気づいた。
 跪いている。
 変態仮面は、いつの間にか跪いていたのだ。

(何が、起こっている。)
「主婦というものは理性的でなければ務まりません。感情的じゃダメなんです。様々な物事を考慮と計算に入れなくてはなりませんから。」

 変態仮面の動揺を無視して、まほろは言葉を続ける。あるいは彼のことなど眼中にないのか。
 『右の黄金』への刺すような感覚。それを受けて、手を突っ込んで変態仮面は確認する。ある。左も。右も。両者健在だ。だがこの感覚は……

(『縮こまっている』のかッ!私がッ!!)
「それで、だから、一つ確認しないと、どうしても気がすまないことがあるんですよ。」

 負の感情を何よりも敏感に感じ取った変態仮面と、それを感じさせているまほろの目があった。
 パンティを被っていて良かった、そう変態仮面は思う。でなければ、彼女を直視することは叶わなかっただろうから。
 そしてこの胸の痛みに耐えることなどできないでいただろうから。

(これが恐怖という感覚ならば、どれだけ良かったことか。)
「名前を知らないので変態さんと、呼ばせてもらいますが。」

 短い変態仮面の人生のなかでも、屈指のその感情に心臓が軋みを挙げる。心拍数が維持できない。血圧が下がる。パワーが削られていく。

(なんて……)
「変態さん、貴方はーー」
(なんて、哀しい目をしている。)
「ーー貴方はナノカさんを殺しましたか?」

 まほろの哀しみに同調した変態仮面が、地面に這いつくばってまほろと向かい合う。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


21 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 04:35:02 4XQLUWUc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 シンクロ、という超感覚がある。
 規模の大きなところで言えばテレパスなどがそれに当てはまるが、実はこの能力は人間ならば誰しもが持つものだ。
 わかりやすいものでは空気を読む能力だ。これは誰しもが多かれ少なかれ持っている。あるいは同情する能力、言い換えれば感受性もそこには含まれる。
 変態仮面の真髄は、そこにある。
 変態仮面の特筆すべき能力としてはその驚異的、超人的な身体能力があげられるがそれはほんの一面でしかない。その能力のバージョン2とでも言うべき力、それは人へのシンクロ、即ち同情能力でありつまるところ発信力と受信力なのだ。
 相手を自分の『領域』に引きずり込み、自分の『奥義』を押し付ける、それが変態仮面。相手の『領域』を理解し対応する、それが変態仮面。変態仮面の強みはそこにあるのだ。

 だから、変態仮面はまほろに対して無力であった。今のまほろなら、右腕もマスターも失い、消滅を待つ身となったまほろならば、普段通りの身体能力を発揮できれば勝てるはずだ。
 だが現実は違う。彼では歯が立たない。今の彼では普段通りの身体能力など発揮できない。
 それはまほろを理解できないからだ。そしてまほろに自身を理解させることができないからだ。

 深い、暗い、体が溶かされるような宇宙。それが変態仮面が理解したまほろの片鱗だった。

 それは未知である。変態仮面をもってしても理解及ばぬあまりに巨大で有意義で空虚な、『なにか』。それが、先程まで『人間』であったまほろの変質したものであった。いや、もしかしたらこちらが彼女の本性なのかもしれない。しかし、変態仮面にはどちらが本性かすらもわからない。心を麻痺させるようなあまりに大きい『なにか』を、変態仮面は感じ取ってしまったのだから。
 ではその『なにか』とはなんだろうか。これに対して変態仮面は一つの推論を立てることができた。より正確に言えば、立てさせられた、とでも言うのがふさわしいのかもしれない。なぜならそれは、いまや理解及ばぬ怪物とかしたまほろからの明確なメッセージであるからだ。

 『悲哀』だ。

 変態仮面は感じきれない程のものを発信しながらも、それでもその感情を、表に出さないようにしてあることだけははっきりと感じた。この宇宙の神秘と希望と絶望と未来が人形をとった少女に対してそれだけは、それだけはわかったのだ。


「私は、殺していない。」


 気圧されている。わかっている。
 それでも変態仮面はその一言を絞り出した。その言葉に嘘偽りはない。彼は、殺していない。

「ですよね。」

 やっとの思いで絞り出した言葉を、まほろは何てことのないように受け入れた。彼女にとっては、それはただの確認事項だったのだろう、そう変態仮面に思わせるように。軽い言葉だった。

「変態さん、貴方は真田幸村、あの赤いランサー達と同盟関係にありますか。」
「いや、ない。彼らとはこのスーパーに来て知り合った。」
「貴方がさっきの戦闘に介入しに来た理由は。」
「戦いを止めるためだ。私はこの聖杯戦争を認めん。」
「では貴方は私達と共に戦っていた赤いアーチャーの行方を知っていますか。」
「!まさか……私は知らない、だが、そうだと決まったわけでは……」
「あの赤いアーチャーが、下手人だと思います。」

 まほろは死刑宣告を告げる裁判官のようにそう断言した。


22 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 05:28:11 4XQLUWUc0


「わからないな……根拠がないだろう?」
「確かに根拠はありません、状況証拠だけです。」

 変態仮面の疑問に、まほろは首肯すると続けて話し出した。

「私達は先程のサーヴァント、カルナを相手に共闘しましたが、別に私達同士は味方じゃありません。」
「それにあのアーチャーは、貴方がカルナを倒しかけたタイミングであの場から消えました。進行方向を考えるとこちらに来ている可能性は他の方向よりは高いです。」
「そしてあのアーチャー達と初めて会ったとき、アーチャーはこちらに殺気を飛ばしてきました。」
「……なるほど、確かに、怪しくはあ九割がた、犯人だろう。だがしかし。」
「それなら、幸村はどこに行ったのでしょうか。彼らのマスターも。」
「なに?」

 変態仮面は急ぎ、幸村の元へと戻った。いない、などということはあり得ないはずだ。彼は確実に気絶していたはずだ。しかし。

「いない。いないな……」

 それを確認すると変態仮面はダッシュでまほろの元に戻った。

「いなかったでしょう。あのアーチャーが、私達がこっちに来た隙を狙ってマスターと共に逃げたのでしょうね。」
「……まだ、アーチャーが火事から逃れるために連れていった可能性もある。99%怪しいが。」

 まほろの発言に、変態仮面は一応反論する。彼としても既にアーチャー犯人説がかなり濃いのだが、一応共に戦った人間を疑うことはしたくなかったのだ。

(もし本当にアーチャーが逃げていれば、もしや……)
『パピヨン、今どこにいる?』
『駅前の方だ。ランサーを追っている。』
『スーパーの回りにサーヴァントか怪しいものがないか見張ってくれ。』
『ああ、あるな。車が一台警察署に向かっていってる。つい今スーパーから出てきたところだ。』
「それかぁ!」

 どうやら、99.9%犯人のようだ。ここまで容疑が固まればその方向で動くのもやむ無い。
 変態仮面は覚悟を決めてまほろに話す。僅かだが、冤罪の可能性はある。それでもそれでも、もはや話さないという選択肢はなかった。

「見つけました。」

 その言葉を聞いてからどこか遠くを見ていたまほろが答えたのは数十秒後。彼女の目は乗用車に乗って警察署に入っていくワイルド・ドッグの姿が写っていた。

 二人が駆け出したのは、言うまでもない。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


23 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:01:11 4XQLUWUc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ワイルド・ドッグがスーパーの地下から出てくる。店内には、既にまほろも変態仮面もいない。どうやら、ギャンブルは成功したようだ。

「行くぞ。」

 そう後ろで気絶したマスター達と幸村を担ぐ『ワイルド・ドッグ』に指示を出すと、密やかに彼らは駐車場への移動を開始した。


 ワイルド・ドッグの宝具、『野犬、見果てぬ野望』。
 彼が率いた武装組織《ワイルド・ドッグ》を召喚するその宝具は、呼び出せるものに幾つかのヴァリエーションがあった。のび太の時には角材を持った男達であったが、今回彼が呼び出したのは、自らの影武者である。
 この影武者、彼が呼び出せる部下の中ではもっとも戦闘力が高くまたとれる行動も多かった。そしてなにより、その存在はワイルド・ドッグに酷似している。真偽を見分けるにはそれこそ実際に戦ってみるくらいしかろくに方法がないのだ。
 もっとも、この影武者を召喚するには当然リスクがある。それは召喚できる数が五人に限られていることだ。五人より多くてもいけないし少なくてもいけない。常に最大限の魔力が要求される。それがこの宝具の問題点だ。

 そしてこの五人というのがナノカを爆殺した理由の一つである。
 この影武者、ワイルド・ドッグそっくりのためにワイルド・ドッグが傷を負った状態で呼び出せば影武者も傷を負って召喚されるのだ。そのためワイルド・ドッグ達の左腕は全員なくなった状態で召喚されてしまう。そしてそんな状態では影武者は一分と経たずに消滅してしまう。これを避けるためにはなんとか左腕が必要であったのだ。
 なお、理由のもう一つには、囮の一人を除いた四人の影武者に運ばせることのできる上限が四人ということもある。なに?ワイルド・ドッグ本体を入れればナノカもいれて五人運べる?なんでそんなことをしなくてはならないのだ。それではいざというときに影武者とマイケルたちを盾にできないではないか。

 ワイルド・ドッグは手頃な乗用車を頂くと影武者達に『荷物』を積み込ませて彼らも乗り込ませる。
 数分後、彼らは冬木ハイアットホテルへの撤収を完了させていた。


24 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:17:10 4XQLUWUc0



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1316】

【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
健康、令呪使用により魔力倍増。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1.爆破予告で他の主従をあぶり出す。ルーラーはどのように動くか……
2.サーヴァントと交渉をしたいが……。
3.目的達成のためにルーラーを排除する策を練る。
4.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
5.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥伊達男の戦果をどう判断すべきか。
5.仮面ライダーにドラえもんか……
6.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●令呪を使って『戦鬼の徒』を使用することで戦鬼の徒の宝具、スキル等を再現できるのではないかと考えており、召喚したトバルカインで実験するつもりです。そのために場合によってはドクの召喚も考えています。
またこの考えは外れている可能性もあります。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●ランサー(アリシア)達と同盟「枢軸」を組みました。1400にシュレディンガー准尉を家に向かわせます。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/ D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.ワイルド・ドッグ達を出迎える。
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。


25 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:20:13 4XQLUWUc0


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
気絶、実体化、疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、ダメージ(大)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:???
2:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
3:病院のあさしん(卑劣様)は大丈夫だろうか。
4:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とあさしんは言ったが‥‥
6:俺は……
7:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する
8:あの卑劣な作戦、やはりあさしんは忍びの者……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
気絶、体調不良、腹八分目、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.とりあえず逃げる!
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。


26 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:23:19 4XQLUWUc0


【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
気絶、危篤、満腹、点滴、精神的な疲労(大)、衰弱(大)、覚悟。
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.???
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に不信感。
3.もう一度病院に潜伏するか、それとも……
4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は……
5.アサシン(卑劣様)のマスターはどこだ?
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)よりトバルカインの情報を聞きました。

【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備(令呪二画)、魔力消費(大)、満腹、ショックガン所持。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男のマスターと交渉する。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。

【コピー兵@TIME CRISISシリーズ】×4
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
ワイルド・ドッグ、左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備、満腹。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に従う。


【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
ドラえもんの四次元ポケットを持っています。


27 : 【79】コイントス ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:33:22 4XQLUWUc0



【新都・南西部/2014年8月1日(金)1316】

【コピー兵@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
ワイルド・ドッグ、車を運転、左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備、満腹。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に従う。
2.囮になる。


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
車を運転、右腕喪失、霊核損耗(微)、満腹、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1:???
2.変態さん(色丞狂介)と共に赤いアーチャー(ワイルド・ドッグ)を追跡。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
変態(愛子ちゃんのパンティ、核金×2)、深い哀しみ、疲労(中)、精神的疲労(大)、満腹。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.アーチャー(まほろ)と共に赤いアーチャー(ワイルド・ドッグ)を追跡。。
2.どこかで食品を買ったら慎二とアリスとイリヤの元へ。
3.ランサーだけあって逃げ足は早いんだな……
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。
●ルーラーのステータスを確認しました。
●アーチャー(まほろ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)のステータスを把握しました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化、魔力増(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.ランサー(カルナ)と赤いアーチャー(ワイルド・ドッグ)、どちらを優先するか……
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●ビッグマックとハッピーセットは狂介から押し付けられました。


28 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/26(木) 06:33:58 4XQLUWUc0
投下終了です


29 : 名無しさん :2016/05/27(金) 00:00:59 SiBvJZs60
投下乙!
スーパーでの激戦もひとまずはこれで一段落か
少佐、仕様が仕様なせいでアレな言動多いくせに決めるとこはきっちりヘルシングしててズルイ
今回印象的だったのは変態仮面の掘り下げですね
彼の「シンクロ」のくだりにはなるほどと思わされた
ギャグ世界の住人なのに、そしてまごうことなき変態ビジュアルなのに間違いなくこの場でもトップに少年漫画してる感じ
ナノカの死を知ったまほろさん辛いわ…辛すぎる それでも闘わないとならないのが聖杯戦争の現実
各陣営に大きな動きと甚大な被害がありましたね今回
一番漁夫の利を得たっぽいワイルドドッグはどうするやら この人ステや宝具はわりとカスなのにけっこう頑張るなあ


30 : ◆Mti19lYchg :2016/05/27(金) 21:29:56 umynN2SQ0
色丞狂介、キャスター(パピヨン)、アーチャー(安藤まほろ)アーチャー(ワイルド・ドッグ)、コピー兵、マイケル・スコフィールドで予約します。


31 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/28(土) 00:00:02 jLGBtqHQ0
ご感想、ご予約ありがとうございます
やっぱり励みになりますね

セイバー&チョコ、セイバー&凛、ライダー&クロノ、アーチャー&アリス、キャスター&慎二、イリヤ&バーサーカーを予約します


32 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/28(土) 23:58:02 M7HjBz2o0
投下します


33 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 00:06:06 7BpvjAUM0



 サミット(summit)。

 ●最高責任者同士による会談、トップ会談。
 ●聖杯戦争ではマスター同士による複数名での会談を指す。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


34 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 00:30:21 7BpvjAUM0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









「それでは、13時に柳洞寺に、それぞれのマスターと共に。」

 青に白の服を着た金髪の少女、セイバー・アルトリアがそう告げる。

「ええ。13時に柳洞寺に。」

 赤に白の服を着た黒髪の少女、アーチャー・赤城がそう答える。

 対になるように線対称な彼女達の会話は、あっけないほど短い言葉と時間で終わった。


 数分前のことだ。赤城達間桐邸のサーヴァントはゆっくりと時間をかけて慎重に商店街を進み、アルトリア達翠屋のサーヴァントもまたじりじりとにじり寄るように接近した。
 そして今、彼らは十メートル程の距離を置いて向かい合っている。そして直ぐにでもその距離を離そうとそれぞれに考えていた。手間をかけて直接話せるまでに近づいたもののそれぞれが最低限伝えるべきこと、つまりはいつどこでどう話すか程度のことだけを話し合うと早急に別れる方向に持っていこうとする。


 ーー会談で話すべき人物は各々のマスターであって、サーヴァントではない。だからサーヴァントはサミットでいうシェルパ役、膝を付き合わせて話し合うべきは、彼らのマスターなのだ。


 「では」「ええ」と、二人の少女が短く会話する。そのまま双方はゆっくりと後退を開始した。
 両者が完全に撤収を完了したのはそれから十分弱の後のことだ。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


35 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 01:13:26 7BpvjAUM0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









「あんだけ回りくどいことして結果がそれかよ……」

 ドン、と足を投げ出しソファに深く腰かけると間桐慎二はそう言ってアリス・マーガトロイドを睨み付けて。

「調子に乗るのはやめなさい、満足に視界の共有もできない貴方が言っても話し合いに参加できなくて拗ねてるようにしか見えないわ。」

 直ぐ様イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに麦茶の入ったグラスの氷を鳴らしながらやり返された。

「お前さ、やっぱり露骨に僕に当たり強いよな?」
「別に。自意識過剰じゃない?」
「誰が洗濯機貸したと思ってんだ。」
「それとこれとなにか関係あるの?」
「ハンガー使えないくせに。」
「寝癖も直せないくせに。」
「地毛です髪質です文句あっか。」
「天パ。」
「ウェーブだ。」
「二人とも、準備はいいの?」

 なんなら中指を立て合いそうな勢いで煽り合う二人に一通り煽らせ合うと、一応アリスが割って入った。どうにもこの二人は馬が合わないというかある意味仲が良いのかなにかとこうして煽りあっている気がする。アリスとしては別に彼女達には幾らでもそうしていてもらっても構わないのだが、それで自分に火の粉が飛んできたり足を引っ張られるなら話は別だ。教会までは色丞狂介が二人の間に入っていたのだが今はいない以上、不本意ながらアリスが代役を努めるしかない。

「準備って言ってもタクシーは呼んだしもうすることなんてないからね、僕には。ああ忘れてた。柳洞寺はトイレ少ないから漏らさないようにトイレに行っておいた方がいい。まあ、君の方は、大丈夫だと思うけど。」
「どうもアリス。服以外なんの問題もないわ。メイド服でなんて出歩きたくないけど、まあ、そこまで気が利くようなシンシがいないんだから、妥協するわ。」
「なんか磯臭いなあ?アリス。」
「ところでアリス、頭にワカメ乗っけるピエロって知ってる?なんでもラッコも乗せて自分の頭を貝で叩かせるそうよ。」
(当事者でなければ面白い見せ物なんだけどね。)

 直もやいのやいのと騒ぎながらも別々に準備を整え。
 間桐邸の前に呼び寄せたタクシーに乗り込むと柳洞寺へと走らせた。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


36 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 03:12:40 7BpvjAUM0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









「ルキウゲ・ルキウゲ・インテルプリテーレ!」
「にゃ〜。」
「……」
「な〜。」カリカリ
「どうだ?」
「えー、ダメみたいですね。動物と話せれば遠くのこととかもわかると思ったんだけど……」
「うまくはいかないか。」
「ちょっと私には難しい呪文だったからできればラッキーだと思ったけどダメかあ。ごめんねネコちゃん付き合わせちゃって。ほら、お食べ。」
「ナナウナウナウ!」
「うわっ、ちょ、そんながっつかないでいたい痛いイタイ!」

 翠屋の裏手で野良猫たちに追いかけられた黒鳥千代子は急いで裏口から室内に入った。

 南から来たサーヴァント達との接触から赤城達が戻ってきてから、翠屋のマスター達はそれぞれ思い思いに準備を進めていた。
 間桐邸のマスター達と違いこちらのマスターは少々あわただしい。それは翠屋のマスターがより真剣に聖杯戦争を考えている、ということではない。なによりもまず体勢が調っていないからだ。

 間桐邸のマスター達が既に半日近くの時間を共有しているのに対し、翠屋のマスター達はいまだそのコミュニケーションに問題を抱えていた。二騎のセイバー同士は一戦交えまた肩を並べて戦ったこともあり、言葉こそ少ないもののある程度の人となりはわかる。またライダー・五代雄介はその独特な空気や雰囲気から別段意味のあることを言わずとも人間性が伝わってきていた。

「む、チョコ、でしたか。準備はどうでしょう。」
「あ、ええと、セイバーさんじゃなくてえー……」
「……どうも、セイバーが二人というのは座りが悪いですね。リン、少しいいですか。」
「そんなことで呼ばないでほしいんだけど……」
「くだらないことこそ、早めに解決しておいた方が良いと思います。」
「まあね。」

 問題があるとすれば、いまいちチョコがクロノと凛との間に距離感を持っていることだろうか。もとより人付き合いの悪いこともありどうしてもその対人関係に障害がある。それに凛の方もこの同盟はあくまでランサー・カルナ打倒までの一時的なものとの前提があるためにいくらかの壁がある。それらがのどに刺さった小骨のように彼らの間の空気にトゲを含ませていた。

「テレサ、今のは後だしでは。」
「お前は出す前になにかしたように感じたんだが。」
「失礼な。正々堂々と自らの技量を持って戦っている。」
「こっちだって同じだ。」
「貴女は私のグーを見てからチョキをパーに変えたのでは?」
「どうだろうな……チョコ、リン、どう思う?」
「セイバーさんたち、そろそろ車回ってくるって……何してるの?」
「あ、ライダーさん。それが。」
「『セイバーとセイバーで被ってるからジャンケンで勝った方を真セイバーと呼ぶことにしよう』ってなって、この有り様よ。」

 ちなみにこのジャンケンは直感でアルトリアがテレサのチョキに勝てるグーを出したものの、テレサが妖気探知でアルトリアの握力からグーであることを見抜きそのたぐいまれなる技量でチョキを出すはずだったところをパーに変えてテレサが勝利した。最優のクラスのサーヴァントはジャンケンの結果すら必然なのである。

「……私も別に聖杯戦争の場で騎士道に乗っとれという気はありませんが、これはそれとは関係ないのでは?」
「あいにく騎士じゃないし、なんにせよマスターの目の前で負ける姿は見せたくないんでな。」
「……いいでしょう、ここは折れましょう。私も今さらセイバーから呼び方を変えられても得るものはない。」
「なら、これで解決だ。」

 そんな話をしている間に商店街に一台のタクシーが進入してくる。柳洞寺までは微妙に距離がある。三人のマスターが同時に移動するにはバイクよりもこちらの方が都合が良いということでこちらも間桐邸のマスター達と同様にタクシーを使うことになっていた。
 といっても、実際にタクシーに乗るのはクロノとゴスロリ姿で目立つチョコだけで、後はバイクに分乗することになったのだが。

「柳洞寺までお願いします。」

 クロノが店の扉にCLOSEの看板をかけるとタクシーの運転手にそう言う。ややあって三人三騎の一団も移動を開始した。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


37 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 05:21:43 7BpvjAUM0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









「水辺は少し涼しいかな。それに、アーチャー?」
「はい。ここならばスキルは問題ありません。」

 小高い山にあるのは寺という建物の都合によるものか、それともそこが霊脈の要であるからか。柳洞寺に先に到着した間桐邸のマスター達は麓でサーヴァントと合流をすると翠屋のマスター達より一足早く寺の境内へと足を踏み入れていた。
 冬木の寺社仏閣の中では最大ということもあり、暑い夏の日差しにも関わらずそれなりに人が多い。町ではサーヴァントの戦闘であれだけ被害が出ているのにのんきなことだ、とアリスは感じたがすぐに考え直した。人間というものは、ああいった自分ではどうしようのないことが起こった時こそ、こういった場所に来る。ここにはなんだかんだと首を突っ込んでくる巫女はいないだろうが、心の平穏の為にはいいのだろう。

「なかなかに様になってるね。映画のワンシーンにありそうな光景だ。」
「慎二。またイリヤとおしゃべりしてるのかと思ってたけど。」
「アンタまでからかうなよ。アイツは山門の辺りで『人払い』をしてる。」
「それで、あなたは?」

 池の渕、そこに立つアリスと赤城に少しの距離をとって慎二は並ぶと「寺の調査をしてきたよ」と池に石を投げ込みつつ言った。

「この池、けっこうきれいだろ。冬木の小学生はさ、みんな一度はここに遠足に来るんだ。」

 池に波紋が広まる。それに目を落としながら話す慎二の纏う雰囲気はそれまでのイリヤとのものとは大きく違う、そうアリスは感じた。

「あの石段がキツくてね。引率の教師ですらヒーヒー言うんだ。で、ようやく登って寺を見るってわけ。まあ、つまんないからみんなこの池の回りで弁当食べたり遊んだりするんだ。アメリカザリガニ釣ったり、釣ったアメリカザリガニでワニガメ釣ったり。」

 慎二は、話す言葉の内容とは裏腹に真剣な面持ちで話続ける。赤城もアリスの横で耳を傾ける。

「そうそう、ここでサッカーする奴もいたな。ちょうどほら、ワールドカップでさ。日韓共同開催だーとかで、それで池にボールが入るわ住職に怒鳴られるわで、今思い出してもあれは酷い。」

 もう一つ、慎二は池に石を投げ込む。波紋から目をそらすと二人の方を向いて「ピンとこないか?」と言った。

「アーチャー、一応聞くけどサッカーを知らないとかないよな。」
「すみません、ルールはわかるんですけどチームとかまでは。」
「ブラジルが強いことぐらいは知ってるだろ?確か、優勝したのはブラジルじゃなかったか?アリス、違ったっけ?」
「さあ。全然興味ないから。」

 アリスはにべもなく答えた。興味がないというのは本当だ。そういったスポーツの類いに特段の関心はない。人形を主な分野としている彼女には畑違いの質問だ。

 そんなアリスの答えに「おいおい嘘だろ本当に日本人か?」と慎二は返してきた。もちろんアリスは日本人ではない。それどころか人かどうかも怪しいものだ。だがそんなことはお構いなしに慎二は「日本人じゃなくてヨーロッパの人間だもんな。サッカーには興味ないか」と一人で納得した。
 「ええ、そうね」と、だからアリスも適当に返す。もっと言えば、サッカーという競技自体が幻想郷ではマイナーだ。里で蹴鞠をしている人を見ることはあってもあれをサッカーというのは無理があるだろう。

「ふーん……サッカーは興味ないか。それじゃあEUのーー」
「来たみたいよ。」

 アリスは慎二の話に割り込んで後ろを指差した。後ろには間桐邸から拝借した日傘を差したイリヤがこちらに向かって傘を振っていた。合図と見るのが妥当だろうか。もし合図でなくても、それを口実に慎二との無駄話を終えさせられる。

「いい暇潰しになったよ、ありがとう。」
「どういたしまして。」

 慎二の方も会話を続ける気はないのか打ち切った。駄弁る時間は終わりだ。これからは面倒な交渉が待っている。
 アリスは日傘をかえすと先に歩き出した慎二の後を追った。


38 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 05:49:50 7BpvjAUM0



(アリス、か。)

 石段を上がってくる三人のマスターを山門から見下ろしながら慎二は横に立つアリスのことを考える。

(案外、妙だな。)

 それがアリスへの率直な評価である。その感想の原因は先程の池での彼女との会話である。
 慎二は、てっきり全てのマスターが同じ時間から呼び寄せられていると思っていた。全てのマスターが十年後の冬木で戦う。そういうものだと。
 しかし、アリスとの会話で少々の違和感を覚えた。別にワールドカップがどうこうというのだけならそれほど問題ではない。サッカーに興味ない人間もいるだろう。だがしかし、ヨーロッパの人間がサッカーに興味ないと言われて肯定するのは、少しおかしい。あれは単なる適当な受け答えなのか?それとももしやーー

「どうも、クロノ・ハラオウンと申します。」

 そうこうしている間にマスター達は山門付近まで登って来ていた。まずは目の前の相手だ。何せこのチームでまともなのは慎二だけだ。

「間桐慎二、よろしく。」


39 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 05:55:22 7BpvjAUM0









【柳洞寺/2014年8月1日(金)1317】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]
メイド服(ワンピースとエプロン、ソックス)、満腹、頭痛、その他程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1.翠屋のマスター達と交渉。
2.しかるべきタイミングでタクシーでアインツベルン城に向かう。
3:キョウスケが別行動することになったけど……?
4.参加者が何千人もいる……!?
5:あのルーラー……ルーラーとしてはかなりいい加減ね。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されていますが本人が認識できているとは限りません。
●バーサーカーと共に冬木大橋から落とされました。怪我の有無や魔力消費は不明です。
●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)のステータスを確認しました。
●参加者が何千人という規模であることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。


【アリス・マーガロイド@東方Project】
[状態]
健康、満腹。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.とりあえず間桐慎二、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと行動を共にする。
2.狂介が別行動しようとするのはーー
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱いきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
高揚、疲労(小)、満腹。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.翠屋のマスター達と交渉。アリスにも気を配る。
2:同盟相手を募るのは狂介にとりあえず任せる。三千人いるなら誰か見つかるだろ。
3:アインツベルン城を目指す。
4.あのルーラー、かなり軽いな。
5:ライダー(孫悟空)は許さない。
6.間桐家で陣地作成を行うと思っていたがアインツベルン城も悪くない。
7.会場と冬木市の差異に興味。新都に行ったら色々と調べてみるのも一興。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。
●マスターの人数が三千人、もしくはマスター千五百人サーヴァント千五百人程度だと思っています。
●アリスに不信感を抱きました。


40 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 05:57:45 7BpvjAUM0


【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●イリヤと共に冬木大橋から落とされましたが少し流されたあと這い上がっできました。


【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
実体化、魔力増(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1.警戒を厳に、もしもの時は壁役に。
2:戦略資源(魔力等)をもっと備蓄したいなあ……
3:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。


【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
実体化。
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1.そろそろ慎二を止めるか……
2.今は慎二に従い、見定める。
3.求めるなら仏の道を説くというのも。
4.色丞狂介、か……
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。


41 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 06:03:03 7BpvjAUM0


【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
満腹、ゴスロリ、疲労(小)、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:同盟結んだけど、他のサーヴァント?
2.仮面ライダー……なんだっけ?
3:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
4:黒いバーサーカー?
5:ミュウイチゴが気になる。
6:今日の夜12時までに黒魔法のリストを書いて冬木教会の喫茶店にいるルーラーに持っていく。
7: 真田幸村を調べたいけど━━
8:あんまりさっき言われたサーヴァントのことはわかってない。
9:これからどうしよう‥‥
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)を確認しました。
●セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。

【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(80)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
実体化、魔力消費(中)、気配遮断、妖気探知、剣が折れた、デルフリンガー所持
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:同盟か、それとも。
2:なんでライダー(五代)は黒いバーサーカー(小野寺)と同じ姿なんだ……?
3:悪くないな、この剣。
4:チョコの軽さを注意、ルーラーを色んな意味で警戒。
5:赤いランサーの真名を調べたいけど━━
6:バーサーカー(小野寺)の索敵能力は警戒しておく
7:真名ってこんな簡単に話していいものなのか?
8:これからどうするか……
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名と魔力とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)の魔力とある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。ライダー(五代雄介)の弱点であるきもしてます。
●冬木大橋付近と自宅付近と病院付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、アサシン(千手扉間)、キャスター(兵部京介)、セイバー(アルトリア)、ランサー(カルナ)、イリヤ(pl)、バーサーカー(ヒロ)、デルフリンガーの魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●イリヤ(pl)とアーチャー(クロエ)の妖気を同一の物と誤認しました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。
●病院に赤いランサー(真田幸村)がいると考えています。
●大剣が壊れましたが、量産品故に魔力で修復可能です。ただし短時間で修復するには多大な魔力が必要になります。
●セイバー(アルトリア)とライダー(五代)の真名を把握しました。
●携帯電話が使えません。


42 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 06:03:31 7BpvjAUM0


【遠坂凛@Fate /Extra】
[状態]
満腹、アヴァロンを体内に所持、疲労(中)、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate /Extra、
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う
1:テレサ達と五代達と対カルナの同盟を一応結んだ…次はサーヴァントに対処。
2:礼装、ドールを改良する(索敵・感知系を優先)
3:闇討ちや物量戦法を強く警戒
4:なんとなく遠坂家が没落した理由がわかった気がする……
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate /Extra、その他多数の礼装@Fate /Extraは自宅に置いてきました。
●五代雄介とテレサの真名とステータスを把握しました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
アヴァロン使用不可、実体化、魔力消費(中)。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:テレサ達と五代達と対カルナの同盟を一応結んだ……次は柳洞寺のマスターか。。
2:帰ったらハヤブサの整備を凛に頼みましょう。
3:何故冬木が会場に……それにイリヤ……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。
●スズキGSX1300Rハヤブサは小破していますが走行に影響はないようです。


43 : 【80】サミット ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 06:03:58 7BpvjAUM0


【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
満腹、実体化、精神的消耗(小)
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める
0.乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1.やってきたサーヴァントと交渉。
2:テレサ達とアルトリア達と協力できれば……?
2.あの子(亘)は無事なのか……?
3.できたら協力してくれる人が欲しい
[備考]
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の存在には気づきました。
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名を把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。

【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]
満腹、カフェインによる活性。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1.翠屋のマスターとしての役割を演じ、情報と人を集める。
2.なんとか二組(セイバー×2)、できれば五組(+アーチャー、キャスター、バーサーカー)に協力者になってもらいたいがーー
3.あの女サーヴァント(リップバーン)は一体……?
4.折を見てマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
5.金ぴかのランサーに、黒いバーサーカー、か……
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が拠点として設定されています。
クロノはそこのマスターです。
●リップバーンの死や行動について強い疑念を感じています。
●翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●ランサー(カルナ)とバーサーカー(小野寺)の話をちょっと聞きました。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。


44 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/29(日) 06:04:16 7BpvjAUM0
投下終了です


45 : 名無しさん :2016/05/30(月) 21:52:34 FCxdK.Zg0
投下乙
慎二たちのやり合いに苦笑する
ワカメへの罵倒がなかなか様になっててまた
クロノたちの側のセイバーVSテレサのセイバーじゃんけんのくだりでも吹いてしまった、英霊はじゃんけんですらこうなのか
何やかやと平和なやり取りやってるけど、このサミット次第でけっこう状況動くんだろうなあ


46 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/30(月) 23:57:39 QKfNZtu60
切嗣&アーチャー、ルナ&バーサーカー、イリヤ(プリヤ)、美遊&バーサーカー、アサシンを予約します


47 : ◆txHa73Y6G6 :2016/05/31(火) 00:03:42 N.1YB1160
とレスが遅れましたが感想ありがとうございます
最近ペース落ちてて申し訳ないですがより一層頑張っていきたいと思います


48 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/02(木) 23:56:25 ryIeAuSM0
投下します


49 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 00:45:18 RhOmrpW60



 皆さんは

 朝起きて


 周りに誰もいなかったら



 どうしますか?



(フン!)

 二代目火影ことアサシン・千手扉間の場合は、まずは気配感知である。

 正確に言えば寝ていたのではなく気絶していたのだし朝どころか正午過ぎなのだがそれはさておき。
 感知タイプであるアサシンは、生前同様にその能力を活かして病院内の気配を探った。

(……どういうことだ……)

 そしてその結果は、困惑。目覚めてからの前後不覚がより強まったかに感じて。

(そもそもなぜ誰もいないのかのう……)

 明滅を繰り返す視界をなんとか動かして病室に誰もいないのを再確認した。



(爆破予告とは、なんと悪辣な。)

 少ししてどうにか意識を持ち直したアサシンは、病室の前にいた警官達の会話からこの病院が爆破予告されたことを知った。詳しい事情までは把握できないが、この病院などに予告があり実際に爆弾も見つかったという。
 どうりで茜達がいないわけだ、そう納得はした。わざわざVIPルームに通された茜ならば真っ先に避難させられるだろう。問題はそれならなぜアサシン本人をおいてけぼりにしたのか、という話だ。

 好意的に解釈すれば、霊体化した自分を運ぶことができず、また気絶していた為に起こすこともできなかったためやむを得ず置き去りにした。
 悪意を持って解釈すれば、ランサーのマスターの情報を持ってきた以上既にアサシンは用済みどころか気絶までしている足手纏いであり、爆破の為の囮として残された。

(どちらも筋は通る。しかし。)

 アサシンは少し考えてどちらも説明がつかないところがあると結論づけた。置き去りにしたのならせめて書き置きの一つでも残しておいておかしくないだろうし、囮にするといってもそんな回りくどいことはせず殺したほうが早いだろう。
 当然、これらの疑問点を解消する仮説もいくつか考えついたがーー所詮は仮説だ。もしもの話にもしもを重ねてもしょうがない。
 この問題は棚上げするのが今は最善だろう。

 なにせ今は。


(ぬかった……マスターもどこにも居ない。それどころか次々と病院内の人間が外へと動いていきおるーー逃げているのか。)

 なにせ、アサシンのマスターが消息不明なのだ。
 アサシンは少ないチャクラに強引に絞り出して実体化、気配感知。その結論は、病院の人間が続々と病院外へと逃げていく気配だ。というか回復した聴力には大勢を人間特有のざわめきも聞こえてくる。爆弾があるのだ、逃げるのも当然だろう。

(感知がうまくできん、チャクラが少なすぎる!)

 そしてその気配が、マスターである九重りんの捜索を困難にしていた。今のアサシンのコンディションでは、実体化しようとその気配感知のキレが落ちてしまう。ただでさえチャクラを持たないりんをNPCの群れの中から探すのは至難の技だ。

(!このチャクラ、あのランサーか!?しかも同時に別のチャクラが!!)

 更に悪いときには悪いことが重なるもの。アサシンは一キロは確実に離れた場所で発生した膨大なチャクラーーブラフマーストラを感知した。それは目下打倒すべき相手であるランサーが戦闘していることに他ならない。また同じタイミングでもう一つ、感知したことのないタイプのチャクラも感じた。状況を考えればまず間違いなく、あのランサーと打ち合っているはずだ。つまりそれはランサー並のサーヴァントが存在することを意味する。

(何ィ!?ええい、どうなっている!?)

 更にもう一発!

 二度あることは三度ある。泣きっ面に蜂、追い討ちに頭上から臼。
 アサシンは窓際に駆け寄る。視線は西へ。そこには。

(写輪眼、それも万華鏡。それにあの姿、まさか。)

 木の上から人並みを伺う、赤い目。そして感知したのは、九尾に近いチャクラ。

 アサシン・千手扉間の頭のなかに、うちは一族の九尾の人柱力が浮かんだ。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


50 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 01:59:26 RhOmrpW60









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









(軽自動車か、仕方ない、とりあえずは足になる。燃費も良いみたいだしな。)
「バーサーカーさん、なんで車の下を見てるの?」
「む、いや、確認だ、安全かどうかの?」
「わかるの?」
「……サーヴァントだからな。」
(初めて自動車を見た人ってこんなリアクションするのかな。)

 時間は少し遡って午前中。
 竜堂ルナ&バーサーカー・ヒロの主従と、衛宮切嗣&アーチャー・クロエ・フォン・アインツベルンの主従の同盟は新都にある某レンタカーショップに来ていた。お腹も一杯になってけっこう体は休まったこともあり、移動しようとしていたのだ。というか、移動する必要性に迫られていたとも言える。その原因は、ランサー・カルナの戦闘だった。
 ランサーの戦闘に介入するか、否か。バーサーカーと切嗣双方が本心を隠したまま行った交渉は、やっぱりうまくいかなかった。バーサーカーは交渉上手ではあるのだが、ブランクがある上に冬木という環境に対応できていない。切嗣に至ってはブランクと口下手とバーサーカーに対応できないという三重苦だ。
 しかし、両者とも最低限の意志疎通はできていたのが幸いした。とりあえず足が要る、その認識の共有に苦労の末に成功して今に至る。

「切嗣さん、私たちも乗せてもらってほんとにいいんですか?」

 キーを持って車へと歩み寄ってきた切嗣に、ルナがおずおずという感じで聞く。無関係の人間が見ても緊張していることがわかるであろう態度に思わず失笑しつつ、「同盟してるんだからね。それに、君のサーヴァントは僕たちと離れたくないみたいだし」と答えた。
 一瞬、バーサーカーが剣呑な雰囲気を出し、ニヤリと笑う。「戦力の分散は下策だからな」と返した。

 そもそも、この同盟の目的を考えればルナ達を乗せないという選択肢は事実上取り得なかった。二組が、というよりかはバーサーカーが同盟に拘ったのは、同盟という名目で切嗣達を監視するためなのだから。
 バーサーカーはその言動とは裏腹に用心深くも注意深くもある。生前は彼女の二枚も三枚も上手な人間やら魔族やら神やらがいたせいで微妙に無能扱いされたりもするが、決して暗君ではなく非凡な実力者であることは間違いないのだ。

 故に堂々と、バーサーカーは切嗣に対峙する。バーサーカーからすれば切嗣程度、言いくるめることなど容易い。同盟を組むとき一か八かの賭けに出たとか、ファミレスで延々押し問答したとか、ランサーを追うか追わないかで揉めたりとか、そういったことは、まあ、あれだ、うん。

「はいはい、それじゃあ早く乗ろっか。話は車に乗ってからでもできるでしょ。」
「ふん……誰が御者になるんだ。お前か。」
「なわけないでしょ。マスター、お願いね。」
「なら私とルナは後ろに「ルナ、助手席に座らないかい?」切嗣ゥ……!」
「え?えぇっと……」
「ちょっと、席順でまで揉めないでよ……小学生じゃないんだから。」

 アーチャーがまとめにかかった矢先に、再び切嗣とバーサーカーの間で口論が再燃する。バーサーカーとしては後ろからいつでも斬りかかれるように後部座席にマスターと座ろうと、切嗣としてはそうはさせずと助手席にルナを座らせその後ろにアーチャーを座らせることで人質にとろうとする。
 二人は再び唾を飛ばしあうと、それぞれのマスターの後ろにそれぞれのサーヴァントを座らせることで合意に至った。

 こうして一台のeKスペースが二組を乗せて走り出す頃にはとっくにランサーの戦闘は終わっていた。


51 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 04:18:56 RhOmrpW60



「「オエェェ……」」
((酔うのか……しかもバーサーカーも……))

 それから軽く二時間後。太陽も沈み始める正午過ぎ。
 ルナとバーサーカーは慣れない車でのドライブですっかり戦闘不能になっていた。

「車の中で吐かないでよ……」
「恐ろしい兵器だ……この世界の人間はこんな非人道的な物を量産しているのか……」
「……う……えっ……うっぷ。」
「耐えろルナ!ここで吐いたら食べた意味がなくなるっぷ。」
(もうやだこの二人。)
(今のうちに殺しておいた方がいいか……)

 じわじわと確実に好感度が下がっていく。それをバーサーカーは敏感に吐き気と共に感じ取った。感じ取ったのだがそれはそれこれはこれ。吐き気を押さえることに全力を注ぐ。この場で吐きでもすればただでさえ隙だらけの現状で決定的な隙を晒すことになる。それだけは、避けたい。好感度は後から上げられるが命は拾えないのだ。

「ふっ……妙な臭いと規則的でありながら時おり不規則な振動、重心移動。そして極めつけはこの腹を締め付けるベルト。一つ一つが的確な嫌がらせだ。」
「嫌がらせじゃなくてそういうものだから。食べてすぐに乗ったら気持ち悪くなるかもしれないけど。」
「シートベルト(?)がお腹に食い込んで……」
「お腹で締めるんじゃなくて腰で締めないと。バーサーカーならともかくなんでルナまで自動車乗ったことない人みたいなリアクションなのよ。」
「……」
「……え。」
「……」
「……マジ?」
「……こういう機械に乗ったこと、あんまりなくて。」
「機械って……馬にでも乗ってたわけ?」
「馬っていうか、猫とかフクロウとか……」
「……あなた本当に21世紀の日本の人間?」
「東京育ちだよ。」

 東京の人間は車の代わりに猫やフクロウに乗るのか。アーチャーの頭のなかで東京タワーや雷門の前をそんなファンシーな動物に乗って歩く光景を思い浮かべる。うん、合わない。

『パパ、どう思う?』
『彼女がいわゆる常人じゃないのは明らかだ。だが魔術師とも毛色が違う。鬼種や……吸血種であるなら、あるいは。』

 思わず念話で切嗣に意見を求めるが、さすがに切嗣でもすぱっと回答することはできなかった。

『それよりも、あの人だかりを優先したい。この近くには病院があったはずだが、わからないな。』
『あの列?病院から離れてるみたいだけど。』

 今度は切嗣がアーチャーに話を振る。バーサーカー達を視界から出さないように動くとアーチャー、その人垣に焦点を合わせようとした。
 そしてそのタイミング。彼らは逆方向から光が昇るのを感じた。

「あの光はさっきの。」
「あっちは警察署の辺りか。派手にやってくれる。」

 四人は一斉にそちらを見る。天へと登っていくその光は、自分達がこうして車を使うきっかけとなった光だ。
 つまるところ、それはそこにランサーがいることの証明だ。切嗣は思わず苦い顔になる。どうにも面倒なことが重なる。同盟相手は吐きかけ、頭の痛い存在が再び現れた。そのうえ病院ではなにかが起こっているときた。どうしたものか。

(アーチャーを急いで病院に向かわせる……ダメだ、いくらバーサーカーがこんな有り様でも僕を無防備にするのはリスクが大きい。かといってバーサーカーを偵察に出せばろくでもないことをしでかすはず。ここは四人全員で一度病院まで向かうか、いや……)

 車のハンドルを指で叩きながら、切嗣は考える。ここで選択を誤るとまた面倒なことになるぞ、と考えて。

「アーチャー、ひとまず病院に偵察に向かってくれないか?」
(ほら来た。)

 案の定、バーサーカーが露骨な提案をして来た。切嗣はふぅ、と息をつく。今度はどう丸め込むか、そう考えて。

「バーサーカーさん、私代わりに見てくるね?封印解除!」
「なにっ?」「え。」(ん?)

 切嗣の横でガチャンという、シートベルトの外れる音と魔力の流れが生まれる。それに驚いて首を左に向けた時にはルナの姿は残像に変わっていた。

「待てルナ!くっ、このベルトめ、離せ!」
「シートベルト壊さないでよ!今外してあげるから。」

 慌てて追いかけようとしてシートベルトに引っ掛かるバーサーカーをアーチャーが助ける。そもそもサーヴァントであるバーサーカーではマスターであるルナに追いつけないことまで頭が回ってないのだろう。普通は逆なんだがなあ。

(……バーサーカーより、マスターの方に注意をかけるべきだったな。)

 切嗣は胸ポケットから煙草を出そうとして、からぶると。
 シートベルトの呪縛から解放されたバーサーカーが車外に出る。もうルナの姿はどこにもなかった。


52 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 04:35:59 RhOmrpW60



「飛び出してきちゃったけどどうしよう……」

 そう呟くと、街路樹の上でルナはため息をついた。
 ルナとしてはまたバーサーカーが口論するのを避けたくて出てきたしまっただけで、別段なにか策とかそういうものがあったわけではない。ノープランである。つまり、妖力解放した意味はない。無理矢理体調が改善したのはいいが、それを除けばデメリットの方が多いのではないか。なんてことを言葉にはできずにぼんやり考える。

 彼女は知らない。その行動ですぐ近くにいるサーヴァントから警戒されていることを。なぜか聞いたこともない一族や見たこともない生き物と関連があるなどと思われていることを。

「よし、もう一回封印して、それから普通に聴き込みしよう。」

 彼女はまだなんにも知らない。



【新都・病院/2014年8月1日(金)1318】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(8)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、気配遮断、気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
2.ルナや茜達はどこにいったか……
3.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
4.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
5.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する
6.穢土転生の準備を進める。
7.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがたぶん無理。
8.女ランサー(アリシア)との明日正午の冬木ホテルでの接触を検討し、場合によっては殺す。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。アサシンが霊体化したため床に落ちました。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。


53 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 04:44:59 RhOmrpW60


【衛宮切嗣@Fate/zero】
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、満腹、精神的疲労(小・消耗中)。
[残存霊呪]
三画。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1.バーサーカーを警戒。ルナはもっと警戒。
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3.バーサーカーは苦手だがなんとか関係を改善しなくては。
4.戦闘は避けたいが協力者を募るためには‥‥?
5.装備を調えたいが先立つものが無い。調達しないと。
6.自宅として設定されているらしい屋敷(衛宮邸)に向かいたいが、足がない。避けたいが、アインツベルン城に泊まるか?。
7.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●所持金は3万円代。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。好感度が下がりました。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●バーサーカー(ヒロ)が苦手です。ルナも苦手になりつつあります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(41)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
実体化、軽く自暴自棄、満腹、魔力充実(微、上昇中)、私服、精神的疲労(小・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1.なんかもうむちゃくちゃね。
2.なんなの、アイツ(ルナ)……ホムンクルス?少なくとも人間ではないと思う。
3.あんまりコイツ(ルナ)からは魔力貰いたくない……
4.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●赤色の影をバーサーカーと、銀色の影をマスターの『ルナ』と認識しした。
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。
●夏用の私服を着ています。
●バーサーカーとルナが苦手です。


54 : 【81】知覚判定:失敗 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 04:51:38 RhOmrpW60


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
封印解除、肉体的疲労(中、回復中)、妖力消費(中)、満腹、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1.一回封印しよう。
2.食べ過ぎて……
3.同盟を結んだ?らしい。
4.学校の保健室を基地にする‥‥いいのかな‥‥
5.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●食いしん坊です。
●店の空気に気づきませんでした。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小・消耗中)、満腹、吐きそう。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.ルナを追いかけたいが……どこだ?
2.あの光のサーヴァント(カルナ)が気に入らない。。
3.ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4.切嗣と関係を改善させたいのだが……
5.冬木大橋が落ちたことに興味。学校を拠点にするのはひとまず先送り。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟(?)を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●狂化の幸運判定に成功しました。今回は狂化しませんでした。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。


55 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/03(金) 04:53:06 RhOmrpW60
投下終了です


56 : 名無しさん :2016/06/03(金) 13:59:20 .a7Loddo0
投下乙です
せっかくの兵部との共闘は裏目に出るわ同盟の面子には置いて行かれるわ卑劣様不憫すぎぃ!
それとイリヤ&美遊組の描写がありませんでしたが予約からは外れたということなんでしょうか?
またこちらは指摘になりますがサーヴァントは契約したマスターの位置をレイラインを通して正確に知ることができますよ
卑劣様がりんの位置を察知できない、という部分については修正が必要かと


57 : ◆Mti19lYchg :2016/06/03(金) 21:47:05 uOy7rCkE0
予約の延長を願います。


58 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/06(月) 00:14:37 mhvanxbQ0
数日ぶりですね、連絡が遅れすみません

ご感想とご指摘ありがとうございます
●美遊組に関しては予約したものの、バーサーカー・クウガの感知能力と戦闘能力を考えた場合、アーチャー・まほろさん達に影響が出てしまうことに気がついたため投下話に登場させることを見送りました。なにも言及せずすみません。
●卑劣様に関しては、マスターである九重が魔力を持たない一般人であること、気絶から回復して直ぐであることと、気配感知に頼り他の手段を疎かにしたことと、極度の魔力不足により正常な状態でないこと、またすぐそばに人柱力並のチャクラ(妖力)を持つルナが突然現れそちらに気をやってしまったこと等が重なった結果九重を感知できないと考えていました。
しかし卑劣様の能力を考えた場合このような状況なら、むしろ九重の捜索に全力を傾けるのがより卑劣様らしく、感知タイプの卑劣様がレイラインを辿りマスターの位置を突き止めないのは明らかに不自然であるとご指摘で気づきました。


このため投下話【81】を修正したく思います。
水曜日までには加筆修正したものを投下します。できなかった場合は破棄します。
またその際、美遊組に関しては、作中内の13時頃に自由にさせていても現在予約されているまほろさん達に影響が及びかねないため、ある程度の配慮をした上で投下話に登場させたく思います。


最後になりますが予約の延長、了解しました。


59 : 名無しさん :2016/06/06(月) 09:52:56 ZyQTlCL60
小野寺クウガに関してはそこまで難しく考えなくても大丈夫だと思いますよ
サーヴァントは基本実体化してないと現世に干渉、つまり自分の能力を振るえないので霊体化させておけば問題ないかと
どうしても実体化させないと展開上まずい、という場合でもクウガにさえ変身させなければ感知力も発揮されません
修正作業頑張って下さい、応援しています


60 : ◆Mti19lYchg :2016/06/07(火) 23:49:27 nKfT1nMM0
昨日爆睡していまい、遅れて申し訳ありません。
しかものび太達の他マスターをすっかり忘れてて半端にしかできていませんが、投下します。


61 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/07(火) 23:50:06 Z4dRMeLQ0
了解です


62 : ◆Mti19lYchg :2016/06/08(水) 00:15:44 U.hFXfRk0
 警察署にて下車したワイルド・ドッグのコピー兵が見たのは、急速に迫るBMWのボンネットに乗った変態と、それを運転するメイド服の少女だった。

 この時点で本体を逃がすというコピー兵の役割はほぼ達成されている。
 後は適当に応戦し、本体であるワイルド・ドックが隠れる時間稼ぎをするだけである。
 コピー兵は銃を構え応戦の準備をした。 

 だが、突然BMWはUターンし、警察署から離れていった。
 
「何故離れる? あれが君のマスターを殺した犯人ではないか?」
 変態仮面がボンネットの上からまほろに話しかけた。
「あれは偽物です」
 まほろはきっぱりと断言した。
「何故そんな事が君に分かる」
「あのアーチャーは左手にナノカさんの腕を無理やり移植していました」
 一月程度の付き合いだが、ナノカの仕事ぶりとそれを支える手はしっかりと憶えている。
 巨大なハンマーを持つにはあまりにも小さく、掌はマメがつぶれてコブだらけ。熟練の鍛冶師でもこうはいかない。
 まほろは銃を撃つ右腕と工房士の左腕の違いを瞬時に見極めていた。
「サーヴァントは時間をかければ肉体の再生が可能なはずなのに、なぜ人間のナノカさんの腕を移植するというリスクを冒したのか。それは令呪を手に入れるために他なりません。
 だから、令呪のないあのアーチャーは偽物です」
「……では、あいつは何者だ?」
「恐らくは宝具による分身。あのアーチャーの宝具は『現時点での自分』と同じ分身を召喚する能力なのでしょう」
 まほろの宝具はサポートメカを召喚する能力だ。故にそれと類似する宝具があると判断した。


63 : ◆Mti19lYchg :2016/06/08(水) 01:15:03 U.hFXfRk0

 淡々と述べられるまほろの言葉に、変態仮面は内心恐怖を抱いていた。
 自身のマスターが殺されたというのにあまりにも素早く、無駄がない行動と決断。
 それはまるで機械的なまでの『正しい判断』だ。

「あれが囮である以上、逆方向に本体であるアーチャーがいると推測できるのですが……」
 サーヴァントとしてのまほろに与えられた、サーヴァントの感知能力はそれほど高くない。
 生前の視覚による分析能力はアーチャークラスの影響で透視能力まで昇華されているが、それでもしらみつぶしに探すには広すぎる。
 まほろがそう思いながら警察署から元いたスーパーまで戻った時、変態仮面は顔を斜めに上げた。
「ムッ、この気配は……」
 今、変態仮面の持つ、父譲りの刑事の勘が働いた。
 
 この聖杯戦争では生存競争故に、悪とはっきり断言できる者は数少ない。
 自己の防衛の為に戦う者も多く、己の願いの為戦う者を悪と判断するのは難しい。
 それ故よほど邪な願いを持つ者や防衛の域を超えた行動をする者でなければ、変態仮面の勘は働かなかったのだが。

「あの一際高いビルの近くにあるホテルに、悪の匂いを感じる」
 ナノカを殺害し、令呪を奪ったワイルド・ドック。
 今までは限りなくクロに近いとはいえ疑惑の段階だったが、確信に至った事でようやく変態仮面が居場所を突き止めるまでに勘が働くようになった。

 目的地は、冬木ハイアットホテル。
 変態仮面、色丞狂介が聖杯戦争が本格的に開始された時、初めに居た場所だ。

『パピヨン、先に冬木ハイアットホテルの地下駐車場内へ霊体化して潜伏してくれ。そこにアーチャーがいる』
『おいおい、俺を相手の罠の中に飛び込ませるつもりか?』
『あのアーチャーの行動からして、罠を張るほど準備していたとは思えない。チャンスを得た事による突発的な行動だろう』
『成程、急いでいても判断力は曇っていないようだな。俺も同意見だ。
 だが、最悪のケースとしてホテル内にアーチャーの同盟者がいる可能性が有る。さらにランサーも敵に回る可能性もな』
『だとしても、私は悪を見過ごすわけにはいかない。それが出来なければ私は唯の変態だ』
 念話でパピヨンの笑い声が響いた。
『確かに。分かった、お前との約束だからな。もし最悪のケースの場合、アーチャー以外のサーヴァントは俺が足止めしてやる』

「サーヴァントとの連携は済みましたか、変態さん?」
 念話の終わりを見計らって、まほろは変態仮面に声をかけた。
「いかにも私は変態ではあるが、変態仮面と呼んでほしい。見ての通り正義の味方だ」
 一瞬まほろの思考は空白になった。
「目的地は冬木ハイアットホテルの地下駐車場だ。そこで、ここは二手に分かれて同時に突入しよう」
「……はッ! わ、分かりました」
 トウ、と掛け声を発した変態仮面はボンネットより飛び、信号機にロープを投げターザンの如くまほろより離れていった。


64 : ◆Mti19lYchg :2016/06/08(水) 01:15:21 U.hFXfRk0
 冬木ハイアットホテルの地下駐車場についたワイルド・ドックは、コピー兵よりの念話により、事態の急変を悟った。
『判断が早すぎる』
 あのアーチャーとマスターの繋がりを甘く見ていた。手の情報ひとつでマスターの腕であると判断できる程信頼を結んでいたとは。
 令呪を奪うという判断が裏目に出た。
 最早、この場所が付き止められる可能性はゼロとはいえない。
 まず自分のマスターを最優先で自動車からだし、身を隠す様コピー兵に命じた瞬間。

 シャッターで閉じられた駐車場の入口が、爆音とともに吹き飛んだ。
 ワイルド・ドックは一体のコピー兵にマイケルを連れ出させ、残りのコピー兵に迎撃態勢をとらせた。
 いざとなれば、人質もいる。来るなら来い。その気負いは、突入した二人の姿を見て一瞬で吹き飛んだ。
 
「な、なんだ――――ッ!?」

 ワイルド・ドックが声を荒げるほど驚いたのは、フロント部からガトリングガンとカノン砲がせり出したBMWに乗ったまほろに対してではなく。

 ブルドーザーのバケットにM字開脚で乗って突っ込んできた変態仮面に対してだった。


65 : ◆Mti19lYchg :2016/06/08(水) 01:16:08 U.hFXfRk0
 とりあえず、前半という事で投下終了です。
 後半で色丞狂介、キャスター(パピヨン)、アーチャー(安藤まほろ)アーチャー(ワイルド・ドッグ)、コピー兵、マイケル・スコフィールド、野比のび太、ランサー(真田幸村)、日野茜を予約します。
(タイトルは後半でつけます)


66 : 名無しさん :2016/06/08(水) 01:49:52 rSQdo2.I0
おー、お二人とも投下乙です!
卑劣様の苦労がどんどん加速する…普段ならこうまでトチらないでしょうけど、状態がもうボロボロだしなあ…
ケリィたちは相変わらずどっか締まらないというか何と言うか、しかしルナが人柱力に間違われるとは 言われてみれば属性的には似てる…かな?

そしてワイルド・ドッグ追跡劇!
共に過ごしたナノカの職人としての「手」、その記憶で以てブラフを見破ったまほろさんの描写にすごくグッときました
二人が育んだ絆は消えてない
変態仮面もすっかり前面に出て活躍してるなあ


67 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:49:58 HT2Ovkzs0
先に投下してそのあとに感想書きます


68 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:51:13 HT2Ovkzs0



 皆さんは

 朝起きて


 周りに誰もいなかったら



 どうしますか?









(フン!)

 二代目火影ことアサシン・千手扉間の場合は、まずは気配感知であった。

 正確に言えば寝ていたのではなく気絶昏睡していたのだし、朝どころか正午過ぎなのだがそれはさておき。
 感知タイプであるアサシンは、生前同様にその能力を活かして病院内の気配を探ることを選んだ。

(……どういうことだ……)

 そしてその結果を受けての感想は、困惑。気絶から目覚めての五感の不調と前後不覚がより強まったかに感じて。

(そもそも、なぜ誰もいないのかのう……)

 白に黒にと明滅を繰り返す視界を頭を振りなんとか動かし。アサシンは病室に誰もいないことを再確認した。



(爆破予告とは、なんと悪辣な。)

 アサシンの眉間に皺が寄る。その原因はいまだに頭を直接揺さぶるような体調の悪さだけではなかった。
 少ししてどうにか意識を持ち直したアサシンは、病室の前にいた警官達の会話からこの病院が爆破予告されたことを知った。詳しい事情までは把握できなかったが、この病院などに予告があり実際に爆弾も見つかったという。
 どうりで茜達がいないわけだ、そう納得はした。わざわざVIPルームに通された茜ならば真っ先に避難させられるだろう。となると問題は、それならなぜアサシン当人をおいてけぼりにしたのか、という話になるのだが。

 好意的に解釈すれば、霊体化した自分を運ぶことができず、また気絶していた為に起こすこともできなかったためやむを得ず置き去りにした、というたところか。
 悪意を持って解釈すれば、ランサーのマスターの情報を持ってきた以上、既にアサシンは用済みどころか気絶までしている足手纏いであり、爆破の為の囮として残された、といったところだろうか。

(どちらも筋は通る。しかし。)

 アサシンはもやのかかった頭を無理矢理に動かして少しの間考えると、どちらも説明がつかないところがあると結論づけた。置き去りにしたのならせめて書き置きの一つでも残しておいておかしくはないだろうし、囮にするといってもそんな回りくどいことはせず殺したほうが早いだろう。
 もちろん、これらの疑問点を解消する仮説もいくつか考えついたがーー所詮は仮説だ。もしもの話にもしもを重ねてもしょうがない。
 この問題は棚上げするのが今は最善だろう。

 なにせ今は。


(ぬかった……マスターもどこにも居ない。それどころか次々と病院内の人間が外へと動いていきおるーー逃げているのか。)


69 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:52:00 HT2Ovkzs0

 なにせ、アサシンのマスターである九重りんが消息不明なのだ。
 アサシンは少ないチャクラを経絡経から強引に絞り出して実体化する。これで霊体化の時とは桁違いの精度で気配感知ができるようになる。そしてその気配感知で知ることができたのは、病院内の人間が続々と病院外へと逃げていく気配だけだった。というかようやく回復しつつある聴力には大勢の人間が蠢くとき特有のざわめきも聞こえてくる。爆弾があるのだ、逃げるのも当然だろう。

(感知がうまくできん……チャクラが少なすぎるか。)

 そしてその気配が、マスターである九重りんの捜索を困難にしていた。今のアサシンはチャクラーーいわゆる魔力が不足しその上それに起因する昏睡から目覚めて間もない。そんなコンディションではたとえ実体化しようとも、その気配感知のキレは大幅に落ちてしまっていた。それに加えてマスターの九重は魔力を持たない正真正銘の一般人である。そんな九重を気配感知でNPCの群れの中から探すのは砂浜から一粒のダイアモンドを探し当てるに等しい至難の技であった。

(!このチャクラ、あのランサーか?しかも同時に別のチャクラだと!?)

 更に悪いときには悪いことが重なるもの。アサシンは一キロは離れているであろう北方で発生した膨大なチャクラーーブラフマーストラを感知した。それは、目下打倒すべき相手であるあのランサーが戦闘していることに他ならない。また同じタイミングでもう一つ、感知したことのないタイプのチャクラも感じた。状況を考えればまず間違いなく、あのランサーと打ち合っているはずだ。つまりそれは、あのランサーに片を並べるほどのサーヴァントが他に存在することを意味している。

(何ィ!?ええい、どうなっている!?)

 更にもう一発!

 二度あることは三度ある。泣きっ面に蜂、追い討ちに頭上から臼。
 アサシンは窓際に駆け寄る。視線は西へ。そこには。

(写輪眼、それも万華鏡。それにあの姿、まさか。)

 木の上から人並みを伺う、赤い目。そして感知したのは、九尾に近いチャクラ。それを見てアサシン・千手扉間の頭のなかに浮かぶのは、うちは一族の九尾の人柱力ーーうちはマダラ。



(いや、待て……)

 その仇敵の姿が脳裏に浮かんだところで、しかしアサシンは冷静になった。

 アサシンは頭にちらつくうちはマダラの影を振り払うようにまた頭を振るともう一度自分が見つけたサーヴァントを見た。まず目につくのが、赤い目だ。渦を巻くその模様は嫌が応にも万華鏡写輪眼を連想させる。次に感じるのは、その圧倒的なチャクラだ。間違いなく上忍クラスのレベルには達している。その上この感じは尾獣の一つ、九尾のチャクラに近い。そしてそのあとに目についたのが、それがほんの幼い子供だということだ。そのことがほんの少しだがもう一度アサシンを冷静にさせる。
 彼の知る『うちはマダラ』ならば、その様な姿のはずがない。たとえ変化しているにしてももっと別の姿をとるのは間違いない。あの男が好き好んで童女の姿になるなど全く想像ができないからだ。むしろ変化するなら兄者である柱間の姿になっている方が余程あり得るであろう。
 その事を頭に置いた上でチャクラを感じれば、オリジナルのマダラのチャクラと先程見つけた『マダラ』のチャクラはまるで別物であった。そもそもチャクラとは力の性質が違うようにも思える。橋で戦ったバーサーカーよりかはその性質は近いようだが、しかし「チャクラではない」といくらか落ち着けた今ならば言えた。

(……久々の現世で耄碌していたか。だが次はこうはいかん……)

 アサシンは、深呼吸すると蓮華座を組む。どうにも自分は少々調子を崩していたようだ。それは体調のことではなく、心の問題だ。つい今も先入観からチャクラも持たないサーヴァントをよりにもよってうちはマダラなどと誤解しかけた。こんな心持ちでは、いつ足下を掬われてもおかしくはない。

(ーーこれはチャクラ糸。む?そうかーー)

 そしてそんな自分の異常に気づけたからこそ、アサシンは自分から伸びるレイラインの存在に気づいた。思い出した。普段なまじ気配感知で周囲の状況を把握できてしまうためついぞ意識に上がらなかったその蜘蛛の糸を。
 思わずアサシンの背に冷たいものが伝う。自分は、自分の想像よりはるかに耄碌していたと。そう理解させられた。

「ーーなにっ!?」

 そして小さくも声を出してしまう。
 レイラインを辿り割り出したマスターである九重の位置。
 そこは、冬木市の市境近くーー場外すれすれの場所であった。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


70 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:52:28 HT2Ovkzs0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









(軽自動車か、仕方ない、とりあえずは足になる。燃費も良いみたいだし。)
「バーサーカーさん、なんで車の下を見てるの?」
「む。いや。確認だ、安全かどうかの?」
「わかるの?」
「……サーヴァントだからな。」
(初めて自動車を見た人ってこんなリアクションするのかな。)

 病院でアサシンが目覚めた時間から少し遡って午前中。
 竜堂ルナ&バーサーカー・ヒロの主従と、衛宮切嗣&アーチャー・クロエ・フォン・アインツベルンの主従からなる同盟は、新都にある某レンタカーショップに来ていた。お腹も一杯になってけっこう体は休まったこともあり、移動しようとしていたのだ。というか、移動する必要性に迫られていたとも言える。その原因は、ランサー・カルナの戦闘だった。
 ランサーの戦闘に介入するか、否か。バーサーカーと切嗣双方が本心を隠したまま行った交渉は、やっぱりうまくいかなかった。バーサーカーは交渉上手ではあるのだが、冬木や現代日本といった環境に対応できていない。切嗣に至ってはブランクと口下手とバーサーカーに対応できないという三重苦だ。
 しかし、両者とも最低限の意志疎通はできていたのが幸いした。とりあえず足が要る、その認識の共有に苦労の末に成功して今に至る。

「切嗣さん、私たちも乗せてもらってほんとにいいんですか?」

 キーを持って車へと歩み寄ってきた切嗣に、ルナがおずおずという感じで聞く。無関係の人間が見ても緊張していることがわかるであろう態度に思わず失笑しつつ、「同盟してるんだからね。それに、君のサーヴァントは僕たちと離れたくないみたいだし」と答えた。
 一瞬、バーサーカーが剣呑な雰囲気を出し、ニヤリと笑う。「戦力の分散は下策だからな」と返した。


 そもそも、この同盟の目的を考えればルナ達を乗せないという選択肢は事実上取り得なかった。二組が、というよりかはバーサーカーが同盟に拘ったのは、同盟という名目で切嗣達を監視するためなのだから。
 バーサーカーはその言動とは裏腹に用心深くも注意深くもある。生前は彼女の二枚も三枚も上手な人間やら魔族やら神やらがいたせいで微妙に無能扱いされたりもするが、決して暗君ではなく非凡な実力者であることは間違いないのだ。

 故に堂々と、バーサーカーは切嗣に対峙する。バーサーカーからすれば切嗣程度、言いくるめることなど容易い。同盟を組むとき一か八かの賭けに出たとか、ファミレスで延々押し問答したとか、ランサーを追うか追わないかで揉めたりとか、そういったことは、まあ、あれだ、うん。

「はいはい、それじゃあ早く乗ろっか。話は車に乗ってからでもできるでしょ。」
「ふん……誰が御者になるんだ。お前か。」
「なわけないでしょ。マスター、お願いね。」
「なら私とルナは後ろに「ルナ、助手席に座らないかい?」切嗣ゥ……!」
「え?えぇっと……」
「ちょっと、席順でまで揉めないでよ……小学生じゃないんだから。」

 アーチャーがまとめにかかった矢先に、再び切嗣とバーサーカーの間で口論が再燃する。バーサーカーとしては後ろからいつでも斬りかかれるように後部座席にマスターと座ろうと、切嗣としてはそうはさせずと助手席にルナを座らせその後ろにアーチャーを座らせることで人質にとろうとする。
 二人は再び唾を飛ばしあう。若干の時間のあと、いつまでも直射日光に当たっていないという少女達の有形無形の圧力により、それぞれのマスターの後ろにそれぞれのサーヴァントを座らせることで合意に至った。

 こうして一台のeKスペースが二組を乗せて走り出す頃にはとっくにランサーの戦闘は終わっていた。


71 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:52:50 HT2Ovkzs0



「「オエェェ……」」
((酔うのか……しかもバーサーカーも……))

 それから軽く二時間後。太陽も高度を落とし始めた正午過ぎ。
 ルナとバーサーカーは慣れない車でのドライブですっかり戦闘不能になっていた。
 切嗣はその間ランサーの方へ行くことはもちろんなく(バーサーカーがその事に気づいた時には既に彼女はグロッキーであった)、適当に未遠川東岸を流して偵察していたのだが、目に見える成果はなかった。安全策をとり新都中心部を避けて円を描くように遠巻きに探ったのが失敗だったか、それとも真っ昼間に活発に動く主従がいないのかは切嗣にはわからなかったが、バーサーカーはともかくアーチャーの目にもマスターはもちろんサーヴァントの姿も写ることはなく、いつしか車は元の方向に近づきつつあった。そして病院の近くを少し西に行った辺りで、ついに『走行不能』に追い込まれたのだった。

「車の中で吐かないでよ……フリじゃないからね。」
「恐ろしい兵器だ……この世界の人間はこんな非人道的な物を量産しているのか……」
「……う……えっ……うっぷ。」
「耐えろルナ!ここで吐いたら食べた意味がなくなるっぷ。」
(もうやだこの二人。)
(今のうちに殺しておいた方がいいか……)

 じわじわと確実に好感度が下がっていく。それをバーサーカーは敏感に吐き気と共に感じ取った。感じ取ったのだがそれはそれでこれはこれ。吐き気を押さえることに全力を注ぐ。この場で吐きでもすればただでさえ隙だらけの現状で決定的な隙を晒すことになる。それだけは、避けたい。好感度は後から上げられるが命は拾えないのだ。

「ふっ……妙な臭いと規則的でありながら時おり不規則な振動、重心移動。そして極めつけはこの腹を締め付けるベルト。一つ一つが的確な嫌がらせだ。」
「嫌がらせじゃなくてそういうものだから。食べてすぐに乗ったら気持ち悪くなるかもしれないけど。」
「シートベルト(?)がお腹に食い込んで……」
「お腹で締めるんじゃなくて腰で締めないと。バーサーカーならともかくなんでルナまで自動車乗ったことない人みたいなリアクションなのよ。」
「……」
「……え。」
「……」
「……マジ?」
「……こういう機械に乗ったこと、あんまりなくて。」
「機械って……馬にでも乗ってたわけ?」
「馬っていうか、えと……猫とかフクロウとか……」
「……あなた本当に21世紀の日本の人間?」
「東京育ちだよ。」

 東京の人間は車の代わりに猫やフクロウに乗るのか。アーチャーの頭のなかで東京タワーや雷門の前をそんなファンシーな動物に乗って歩く光景を思い浮かべる。うん、合わない。ていうか東京育ちなのか。

『パパ、どう思う?』
『彼女がいわゆる常人じゃないのは明らかだ。だが魔術師とも毛色が違う。鬼種や……吸血種であるなら、あるいは。』

 思わずアーチャーは念話で切嗣に意見を求めるが、これにはさすがの切嗣でもすぱっと回答することはできない。もっとも、その時彼の注意はバックミラーーーそれに映る人波に注がれていたためかもしれないが。


72 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:53:16 HT2Ovkzs0



『それよりも、あの人だかりを優先したい。この近くには病院があったはずだが、わからないな。』
『あの列?病院から離れてるみたいだけど。』

 今度は切嗣がアーチャーに話を振る。バーサーカーに隙を見せないようにシートベルトを外して体を後ろに捻り、その人垣に焦点を合わせようとした。
 そしてそのタイミング。彼らは逆方向、即ち現在車が前を向いている北から光が昇るのを感じた。

「あの光はさっきの。」
「あっちは警察署の辺りか。派手にやってくれる。」

 四人は一斉にそちらを見る。天へと登っていくその光は、自分達がこうして車を使うきっかけとなった光だ。
 つまるところ、それはそこにランサーがいることの証明だ。切嗣は思わず苦い顔になる。このままぐるぐるしていても元の場所に戻りかねないので北上しようとした矢先にこれだ。どうにも、面倒なことが重なる。同盟相手は吐きかけ、頭の痛い存在が再び現れた。そのうえ病院ではなにかが起こっているときた。どうしたものか。

(アーチャーを急いで病院に向かわせる……ダメだ、いくらバーサーカーがこんな有り様でも僕を無防備にするのはリスクが大きい。かといってバーサーカーを偵察に出せばろくでもないことをしでかすはず。ここは四人全員で一度病院まで向かうか、いや……)

 車のハンドルを指でトントンと叩きながら、切嗣は考える。ここで選択を誤るとまた面倒なことになるぞ、と考えて。

「アーチャー、ひとまず病院に偵察に向かってくれないか?」
(ほら来た。)

 案の定、バーサーカーが露骨な提案をして来た。切嗣はふぅ、と息をつく。これなら、あの騎士王の方がよほどやり易い相手だ。ある意味バーサーカーというクラスにそぐわぬ面倒くささを実感させられている気がする。さて、今度はどうこのお転婆を丸め込むか、そう考えて。

「バーサーカーさん、私代わりに見てくるね?封印解除!」
「なにっ?」「え。」(ん?)

 切嗣の横でガチャンという、シートベルトの外れる音と魔力の流れが生まれる。それに驚いて首を左に向けた時にはルナの姿は残像に変わっていた。

「待てルナ!くっ、このベルトめ、離せ!」
「シートベルト壊さないでよ!今外してあげるから。」

 慌てて追いかけようとしてシートベルトに引っ掛かるバーサーカーをアーチャーが助ける。一度霊体化すればいいとか、そもそもサーヴァントであるバーサーカーではマスターであるルナに追いつけないことなどには頭が回ってないのだろう。普通は逆なんだがなあ。

(……バーサーカーより、マスターの方に注意をかけるべきだったな。)

 もし自分が全うな家庭を持っていたらこんな風に年頃の少女の狂行に頭を悩ませていたのだろうか。それを考えると士郎というのは良くできた息子である、切嗣はそんなことをふと思いなつつ胸ポケットから煙草を出そうとしてからぶると。
 シートベルトの呪縛から解放されたバーサーカーが車外に出る。もうルナの姿はどこにもなかった。



「飛び出してきちゃったけどどうしよう……」

 そう呟くと、街路樹の上でルナはため息をついた。
 ルナとしてはまたバーサーカーが口論するのを避けたくて出てきてしまっただけで、別段なにか策とかそういうものがあったわけではない。ノープランである。つまり、妖力解放した意味なんて、ない。無理矢理体調が改善したのはいいが、それを除けばデメリットの方が多いのではないか。なんてことを言葉にはできずにぼんやり考える。

 彼女は知らない。その行動ですぐ近くにいるサーヴァントから警戒されていることを。なぜか聞いたこともない一族や見たこともない生き物と関連があるなどと思われていることを。


「よし、もう一回封印して、それから普通に聴き込みしよう。」



 彼女はまだなんにも知らない。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


73 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:55:05 HT2Ovkzs0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









 ガラガラ。
 ガラガラガラガラガラガラ。
 ガラ。

(ここまでは、来れた。)

 目深に被った麦わら帽子から猫のようなくりくりとした目が覗く。後ろで虚ろな声を発しながらドライバーがタクシーのドアが閉めた音を聞きながら、美遊・エーデルフェルトは睨むように川を見た。


 美遊のしようとしていることは言葉にすれば至極簡単なことである。「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを衛宮家へ送り届ける」。それだけだ。気絶したイリヤを場所が割れている可能性のある美遊のマンションから秘密裏に衛宮家に送る。そのためにわざわざランサーに陽動を任せ、こうしてタクシーを使い、サファイアでドライバーの記憶を弄り、未遠川の河川敷までやって来たのだ。
 もっとも、陽動にランサーが出たのは美遊の代理という面もあるのだが、サーヴァントがマスターを抱えて移動すれば目立ってしまい衛宮家へ行く意味などなくなってしまうのであながち間違いという訳でもない。
 そう、サーヴァントは目立ってしまう。それが美遊を悩ませていた。

 イリヤの家があるのは、深山町。つまりは未遠川西岸である。冬木大橋が落ちた今、そこに行くためには二つの方法しかない。
 一つは、渡し船を使うこと。美遊は川を往く船を見る。ほとんどボート同然のそれを目当てに今も数人の人が並んでいる。それを使えば、とりあえず西岸には行けるだろう。問題は渡っている最中に攻撃されるかもしれないことだ。
 もう一つは、サファイアの力で転移する事。川幅はけっこう広いが、それでも不可能ではない、はずだ。たとえ不可能でも可能にしてみせる。問題は、転移の際に魔力が発生してしまうことだ。隙は少ないのだが、これではここまで魔力を抑えて来た意味が無くなりかねない。
 なんならバーサーカーにキャスターを襲わせた時のように移動するということもできなくはないが、それなら転移する方が余程マシだろう。そもそもバーサーカーを実体化させてしまった段階でやはり魔力を抑えて来た意味が無くなる。


 がたり、とキャリーバッグが音をたてる。
 美遊に緊張が走る。彼女はそれを人目のつかないように開けると『換気』した。

 彼女の傍らにある巨大なそれには、今だ目を覚まさないイリヤが詰め込まれている。明らかに小学生である美遊が人一人を運ぶにはこれしか方法がなかったのだ。一応中には保冷剤や氷水の袋も入れてあるが、中の温度はやはり暑い。タクシーから降りて『詰め直して』少ししか経っていないのに、中はサウナ状態だ。

 どのように川を渡るか。美遊は早急な決断を迫られる。
 彼女の背後では、二つの光の柱が生まれていた。


74 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:56:35 HT2Ovkzs0



【新都・病院/2014年8月1日(金)1318】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(8)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、気配遮断、気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
2.マイケルや茜達はどこにいったか……それにマスターのあの位置は……
3.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
4.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
5.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する
6.穢土転生の準備を進める。
7.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがたぶん無理。
8.女ランサー(アリシア)との明日正午の冬木ホテルでの接触を検討し、場合によっては殺す。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。アサシンが霊体化したため床に落ちました。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。


75 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:57:17 HT2Ovkzs0


【衛宮切嗣@Fate/zero】
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、満腹、精神的疲労(小・消耗中)。
[残存霊呪]
三画。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1.バーサーカーを警戒。ルナはもっと警戒。
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3.バーサーカーは苦手だがなんとか関係を改善しなくては。
4.戦闘は避けたいが協力者を募るためには‥‥?
5.装備を調えたいが先立つものが無い。調達しないと。
6.自宅として設定されているらしい屋敷(衛宮邸)に向かいたいが、足がない。避けたいが、アインツベルン城に泊まるか?
7.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●所持金は3万円代。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。好感度が下がりました。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●バーサーカー(ヒロ)が苦手です。ルナも苦手になりつつあります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(41)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
実体化、軽く自暴自棄、満腹、魔力充実(微、上昇中)、私服、精神的疲労(小・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1.なんかもうむちゃくちゃね。
2.なんなの、アイツ(ルナ)……ホムンクルス?少なくとも人間ではないと思う。
3.あんまりコイツ(ルナ)からは魔力貰いたくない……
4.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●赤色の影をバーサーカーと、銀色の影をマスターの『ルナ』と認識しした。
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。
●夏用の私服を着ています。
●バーサーカーとルナが苦手です。


76 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:57:50 HT2Ovkzs0


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
封印解除、肉体的疲労(中、回復中)、妖力消費(中)、満腹、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1.一回封印しよう。
2.食べ過ぎて……
3.同盟を結んだ?らしい。
4.学校の保健室を基地にする‥‥いいのかな‥‥
5.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●食いしん坊です。
●店の空気に気づきませんでした。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小・消耗中)、満腹、吐きそう。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.ルナを追いかけたいが……どこだ?
2.あの光のサーヴァント(カルナ)が気に入らない。。
3.ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4.切嗣と関係を改善させたいのだが……
5.冬木大橋が落ちたことに興味。学校を拠点にするのはひとまず先送り。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟(?)を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●狂化の幸運判定に成功しました。今回は狂化しませんでした。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。


77 : 【81】知覚判定:成功 ◆txHa73Y6G6 :2016/06/08(水) 23:59:47 HT2Ovkzs0
【新都・未遠川東岸/2014年8月1日(金)1318


【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:イリヤを自宅へと送る。
4:アサシンはどこ?
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
ています


78 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/09(木) 01:06:35 EVP9yOeg0

◆Mti19lYchg氏、投下ありがとうございます
高いスペックとそれまでのナノカとの生活の積み重ねで罠を看破して見せたまほろさんと、いつも通り悪巧みがバレて追い詰められるワイルド・ドッグ、そして「正義の味方」変態仮面。一ところに集めれてはいけないタイプの三人が明確な敵対関係になった上人質をとるような真似をしている以上ひしひしとヤバイ感じがしてきます。そして何よりまほろさんが怖すぎる。この聖杯戦争でも五本の指に入るであろう彼女が容赦なく向かってくるとかたとえ片腕が吹き飛んでても恐ろしいものです。これに変態仮面が加わるとなれば大抵のサーヴァントでは厳しいでしょう。この聖杯戦争最弱のサーヴァントであるワイルド・ドッグがどこまで悪あがきできるか気になります。
後編もお待ちしております。


79 : 名無しさん :2016/06/09(木) 01:42:05 UfBUOdOE0
おー修正乙
卑劣様、どの道なかなか厳しい立ち回りが続くな


80 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/10(金) 23:59:12 M1.Q19F.0

セイバー&チョコ、セイバー&凛、ライダー&クロノ、アーチャー&アリス、キャスター&慎二、イリヤ&バーサーカーを予約します


81 : ◆Mti19lYchg :2016/06/14(火) 19:36:07 4cJZHHDU0
予約を延長します。


82 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/17(金) 01:40:51 SJAlGyzI0
連絡遅れましたが了解です


83 : ◆Mti19lYchg :2016/06/17(金) 23:54:04 wQR8ikZU0
投下します。


84 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/17(金) 23:58:33 SJAlGyzI0
了解です
それと予約延長します


85 : ◆Mti19lYchg :2016/06/18(土) 01:12:36 kk6yql0M0
すみません。いったん投下を中断します。


86 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/20(月) 23:58:12 ffqxfkWs0
投下します


87 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 00:28:17 G8cq8AAg0



 寺というものは大なり小なり関わらずそれなりの広い空間を持つもので。
 冬木市でも有数の規模と歴史を誇る柳洞寺には当然広々としたお堂があった。

 冷房が特段効いているわけでは無いのだが、それでも参拝者が集まることも考えてか延長コードをつなげに繋げて扇風機が回っている。そのお陰かとりあえず耐えがたいというほどの暑さではなくなっていた。


 さて、黒鳥千代子ことチョコは視線を巡らせる。
 じっとりとかいた汗を吸い込んだゴスロリのせいかそれとも寺という慣れない場所のせいか、はたまたこの場のプレッシャーのせいか、流れる汗は冷たいものに変わり暑さと寒気が同時に感じられる。

 本来なら住職なり修行僧なりがいるはずのその場は、合わせて十二の人影しかなかった。大方暗示や催眠術で人払いしたのだろう。チョコは先程すれ違ったお坊さんを思い出してそう思う。どうにもそのお坊さんは様子がおかしかった。なにやらぼうとしているというか心ここにあらずと言うか。ああいう状態の人間は、なにかの魔法なりなんなりにかかっているのではないか、とそれまでの経験から思いつく。

(まあ、今はそれどころじゃないんだけどね。)

 ぱたぱたと胸元をしながらチョコは再び見渡す。

 聖杯戦争は最後の一人まで戦うというもののはずだ。それがどうだろう、この場には六人のマスターがいる。それが異常事態であることはチョコにもわかっていた。この聖杯戦争という儀式は、言わば蟲毒だ。物語に出てくるような英雄を使い魔に行う、ある種のバトル・ロワイアルだ。自分以外は全て敵、というのがあるべき姿のはずである。
 しかし実態は逆。
 この場にいる全員は、あるいは本音は別かもしれないが、建前上共闘しようとしている。つまりこの儀式の大前提をひっくり返そうとしているのだ。そしてそれが意味するのは、そんなちゃぶ台返しをしなくてはならないという差し迫ったピンチである。

「ーーじゃあ、そろそろ始めようか。」

 緩い弧を描くように二列に車座になった六人のうち、点対象の位置にいるウェーブの少年が口を開く。その髪型に何となく同級生を思い出しながら、チョコは正座を正した。
 ここまで流されるように来てしまったが、ここからは本当の本当に命がけだ。魔術を使う人間はだいだいどっかしらぶっ飛んでいることを考えると、下手なことをすれば本当に殺されかねない。そうなったらセイバーと二人でなんとか逃げないと……

「まずは、それぞれのサーヴァントを霊体化させようか。武器を出したままじゃ話にくいだろ?」
(おぉ……)

 姿勢を正したのと同時にウェーブの少年はそんなことを言いはなった。知ってか知らずかチョコの心の支えをピンポイントで砕く発言に、チョコは思わず後ろで霊体化していくセイバー・テレサに視線を送った。


88 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 02:00:48 G8cq8AAg0



(霊体化なんてさせたらサーヴァントの動きを見張れなくなる……狙いはそれ?)

 目は眼前に正座で座る黒いドレスの少女に向けながら、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは間桐慎二の発言を訝しんでいた。

 当たり前のことだが、イリヤは慎二を微塵も信用していなかった。彼女にとって慎二というのは、『組んで』もいい『お友達』グループに勝手に着いてきている野犬程度のイメージしかない。そんな彼女にとって、三人のマスターと交渉する場で余計なことを言い出す慎二は邪魔以外の何物でもなかったのだ。

「これでいい?それじゃあさっそくで悪いけど、あのランサーのことを話しておくわ。」
(ーー今はこっちね。これ以上余計なことしないでよ……)

 心中で慎二への怒りを貯めていたイリヤは、慎二の向かいに座るツインテールの少女がそう切り出したことで意識を切り替える。今は会談の場だ。あんなのでも一応は味方である以上、とりあえずは敵への対応を考えるのが賢いだろう。もっとも、無能な味方というのが一番厄介なのだが。

「時系列に沿って話すからよく聴いて。まず最初は、私のセイバーが病院の近くにいるサーヴァント、そこのゴスロリの子のセイバーと公園で戦闘になったの。」
「そうです。私のセイバーさん……あ、私のサーヴァントと凛さんのサーヴァントはどっちもセイバーなんですけど、怪しいサーヴァントがいたからって戦うことになって。」
(改めて考えると同じクラスのサーヴァントがいるのって、かなりおかしいことのはずなんだけどなあ……)

 話は凛さんと呼ばれたツインテールの少女が進めるようだ。おそらく彼女が遠坂凛だろう。イリヤはそんな推理をしながら向かいに座るマスター達の話に耳を傾ける。

「それで、まあ色々とあって戦ってたんだけど、そこにあのランサーが襲ってきたの。真名はたぶんカルナ。インド神話の大英雄ね。」
「たしか、太陽の光で体ができてて、それでどんな攻撃も跳ね返すっていう人です。なんかトゲトゲした金ぴかの鎧を着てました。」
(この子、一応伝承とかには詳しいみたいね。あんなのでも魔術師の端くれってことかしら。)

 イリヤは黒いドレスの少女への評価を少しだけ上げる。魔術師としては三流もいいところ、とイリヤは彼女のことを見ていたが、最低限聖杯戦争に参加するだけのものは持っているということだろうか。もちろん単なる入れ知恵ということも考えられるのだが。

「はっきり言ってランサーの強さは反則もいいところよ。成り行きで共闘したとはいえセイバーが二騎まとめて正面から打ち負ける程のスペック、近づくことすらできない炎を体から出しておまけにそれでジェットパックみたいに空を飛んで、極めつけは大火力のレーザー。チートって言葉がぴったり。」
「ドラゴンボールみたいな感じでした。」
(ドラゴンボールって何よ……と、それはいいとして。)
「一ついいかしら。」

 ここで初めてイリヤは口を開いた。五名の視線が一斉に集まる。寺の僧侶から借りた扇子をパチリと閉じると、その五人一人一人に視線を合わせるとイリヤは続けた。

「この話し合いの目的は、そのランサー、カルナを倒す、そういうことで良いわけね。」

 その言葉に、向かいに座る少年がなにか言おうと口を開きかけ閉じる。横の二人の少女はそれぞれに視線を交わしあい、同じように視線を追っていたアリスと目が合い、最後に慎二の非難が籠った視線を目に止めた。

(即答はできない、ふーん……)

 イリヤは扇子を開くとぱたぱたと扇ぐ。どうやらあちら側も一枚岩ではないというところだろう。それもそうだ、寝首を掻き合う関係であることはどれだけ取り繕うとも変わることはない。
 そしてもう一つ、イリヤは頭のなかでカルナの情報を纏める。
 聞いた限りでは、そのサーヴァントはバーサーカー・ヘラクレスと相性が良いのではなかろうか。空を飛ぶというのは少々やりにくくはあるが、バーサーカーならばあの騎士王が圧される相手だろうとも互角に渡り合うだろう。レーザーも気になりはするが、バーサーカーは12の命を、完全な形で持っている。それこそ一度に12回殺されれば持たないだろうがーー果たしてインド神話の英雄ごときでギリシャ神話の英雄を殺しきれるだろうか?

(なんなら、仲良くなれそうね。ランサー?)

 イリヤはちらりとアリスと慎二に視線を送る。


 そろそろ、乗り換え時かもしれない。


89 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 02:42:53 G8cq8AAg0



(今、持ちかけるべきか?)

 クロノ・ハラオウンは閉じかけた口を固めてそう思う。

 クロノとしては、確かにカルナという存在は危険視するに足るものだ。遠目に見ただけでもあれが尋常ではない魔力を振るえることはわかった。そしてライダーより格上であろう二騎のセイバーをまとめて相手にしたことを考えれば、この聖杯戦争でも最も警戒すべき相手だろう。
 よってカルナを伐つこと事態に異論を挟む気はない。そもそも現在の戦力では防戦すらままならない以上、杞憂に他ならない。もしこの会談で討伐の算段がつけば、クロノはカルナへの姿勢を改めるかもしれないが、今現在の彼にとってはどうやり過ごして凛達マスターを保護するかという問題の方がウエイトが重いのは間違いなかった。

 それと平行して、クロノとしてはこの聖杯戦争を止める為に動きたいのも確かであった。
 今の彼が得た聖杯の知識は決して多くない。幸か不幸か、彼の予選での生活は平穏そのものであったため、圧倒的にサーヴァントの戦闘やマスターについてのデータが足りていなかったのだ。もとより聖杯戦争に否定的ではあるためそれは良いのだが、だからといってこれでは聖杯の調査にならない。そういったことを考えると、人道的にも実益的にもより大きな集団を作りたいという願望があった。
 だがそれは、裏を返せば聖杯を望む者を否定しかねないのが問題でもあった。あまり考えたくはないが、多かれ少なかれ皆願いを持っているだろう。それは一応の同盟を結べた凛もチョコも同じのようだ。今はカルナという共通の外敵がいるためにまとまれているが、それではカルナが討ち取られた瞬間それまでの同盟同士で殺し合いかねない。これが集団が巨大化すれば、なおさら過激な行動を起こす人間が増えるかもしれない恐れがあるし、カルナが倒せないとなればなんならカルナ側に裏切る人間が出てきてもおかしくはない。そういった状況で、『聖杯戦争へのNO』を公言した場合どのような事態になるかはクロノにも予測しきることはできなかった。

 扇風機のモーター音がこだまする。目の前の白い少女の問いかけは、できれば先送りしたかったものだ。だがこうなれば、今ここで言うのが最良のタイミングなのかもしれない。その首が一往復する程の間に、クロノは結論を出した。

「こちらとしては、まずは『カルナ』への防衛が大前提です。」
「その為には、我々全員での包括的な共闘が必要になります。」
「情報収集や連携のための用意を考えて、一週間後の八月八日に『カルナ』へ総攻撃をかけるのはどうでしょう。」

 出した結論は、問題の解決を時間に賭けるというもの。
 クロノは対カルナを口実にしつつある程度の時間を稼ぐ道を選んだ。


90 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 03:57:52 G8cq8AAg0



(ややこしいことになってきたなあ。)

 アリス・マーガトロイドは場の空気を感じながらそう思う。イリヤの問いかけとそれに対する目の前の少年の答えから場に無数の小さなヒビが入ったように感じた。

 正直アリスとしては、この会談に対したものは求めていない。言わばただの顔見せ程度のもので良かった。確かにカルナというサーヴァントのことは気になるが、そういったものの相手は戦争に乗り気な人間にやらせればよいのだ。どうせ敵の敵は味方と言って囲んで棒で叩こうとするのだろう。そして叩き終わったら、昨日の味方は今日の敵とばかりに戦うことになる。アリスとしてはそんなバカ騒ぎに巻き込まるのはごめん被りたいところなのである。

「それは悠長過ぎないかしら。カルナというのは貴方達セイバーが手を組んでいることを知っているのでしょ?なら対策をとられる前に急襲すべきよ。」
「カルナは現在の我々では手に負えないでしょう。セイバーの対魔力でも近づくことのできない炎が相手では数だけ多くても無意味です。」
「それならマスターを狙えば問題ないでしょう?そのカルナの炎にマスターが耐えられるなら別だけど。」

 アリスがそんなことを考えているうちにイリヤと少年の間では論争が起きている。拙速な攻勢を主張するイリヤと遅功な守勢を主張する少年との間で方針を巡り駆け引きが続いているのを見て、アリスは心中でため息。イリヤはどうも好戦的過ぎるし少年も少年でやけに慎重論をぶつ。どうしてこうも極端なのか。アリスからしてみればポジショントークでもなければ説明がつかなかった。

(……まさか、うん……)

 アリスは目はツインテールの少女に向けて論戦に耳を傾ける。

「こちらは既に戦闘で魔力を消耗しています。どうしてもと言うなら、最低でも明日までは休ませてもらいたいです。」
「……わかった、カルナとは明後日ね。こちらは明日には動けるように準備しておくから、今日中にカルナ対策の打ち合わせをしていいかしら?」
「はい、それと一度三人で話したいので休憩を。」
「ちょうど私もそう思ってたわ。十分でいい?」

 二人の話はどうやら着地点を見つけたようで、双方にっこりと笑うと握手をしていた。どちらの笑顔も、典型的な作り笑顔に見えたのは状況のせいだけではないだろう。

 カルナに向けて時間をかけることを主張した少年と、時間をかけないことを主張したイリヤ。それが単に気質や性格の問題ではなく、別に目的があるとすれば……

(素直そうに見えて、やるじゃない。)

 少女達を伴ってお堂から出ていく少年に目を向ける。幻想郷にはいないタイプのスッキリとした人物というのが第一印象だが、なるほど一筋縄ではいかなそうだ。


91 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 04:32:09 G8cq8AAg0



「勝手に話を進めすぎ。一週間も同盟を組むなんて聞いてない。」

 簡単な盗聴対策の結界に入ると遠坂凛は開口一番そうクロノに詰め寄った。

 「すみません」と頭を下げるクロノに「まあ、長目にふっかけたんだろうけどさ」と言って溜め息をつきつつ腰に当てた手を下ろす。それを見てチョコも「なんとかなりそうですね」と言った。

 凛としては、数日間の同盟はやぶさかではなかった。ある程度まとまった時間を他のサーヴァントと過ごせればドールの開発を大幅に進めることができる。さすがに一週間も時間を拘束されれば実戦投入は難しくなるが、程度次第では歓迎だ。

 それにしても、と凛はふうと息を吐いた。どういうわけか、向かい合うマスター達はやたら自分に視線を向けていた気がする。それが気になりはしていた。
 銀髪の少女はチラチラと、金髪の少女はぼうと、ワカメ頭の男はしっかと見てきた。その視線に、生理的な嫌悪感が湧く。三者三様の視線が意味するものがわからない。意味のわからなさは不気味さとなって凛を蝕む。

「凛さん、この後はサーヴァントの情報も話すことになると思いますが、ステータスとスキルを明かそうと思います。」
「ーー!スキルは反対ね。真名を特定される危険が高すぎる。」

 クロノの提案で遠退いていた意識を戻す。危うく、リスキーな選択をされるところだった。見ればチョコも「ステータスはちょっと……」と言っている。
 どうもクロノは、サーヴァントの情報を秘匿する気がない、凛はそう感じていた。彼はスキルも真名も何食わぬ顔で明かしてくる。それもまた、不気味さがあった。

(……一番、油断できないかも。)

 凛は、お堂へと戻っていくクロノの背を見る。
 少しして、後を追いかけた。


92 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 05:05:41 G8cq8AAg0



 間桐慎二は、静かだった。

 彼は六名のマスターの会談が始まってから言葉少なかった。それは短い時間でもキャスター・フドウを何度も実体化させていたせいでもある。それゆえ彼は会談の初めのタイミングで全員のサーヴァントを霊体化させるよう提案したのだ。しかし、それだけが理由ではない。

 慎二の前に、凛が座る。休憩前と同じように、慎二は凛に視線を注いだ。

「なんでこんなに暑いのかしら。こんなに暑かったら戦わなくても死んじゃいそう。」
「けっこう蒸しますね。風が吹かないと汗が吹き出てーー」

 イリヤとクロノは和やかな世間話をしている。端から見てもただのアピールだとは思うが、こういうのもコミュニケーションでは大切だ。
 慎二はが視線を外す。そして一つ得心がいったという風に小さく頷くと話に加わった。

「インドじゃ50℃を越えたらしいね。このところ異常気象も続いてるし、敵わないよ。」
「えーっと、地球温暖化、ですか?」
「それ。そのせいで、この間も桜……ああ、僕の彼女なんだけど、一緒にプールに行ったら混んでて混んでてさあ。」
「ーー」
「おいイリヤ今なんかボソッと言っただろ聞こえたぞ。」
「気のせいよ。」
「嘘つけ絶対言っ「クロノはどうなの?」」
「そうですね……私は……」
「……ごめんね。」
「……いえ、一応、います。」
「チョコとリンはどう?」
「え、あー、凛さん、どう?」
「私?んと、今はいないかな。」

 他愛ない話がその後も続く。休憩前とは変わり、場の雰囲気は砕けたものになりつつあった。


 その中で一人慎二は、愛想笑いを強めながら凛の全身をくまなく見る。

 髪、目、鼻、口、耳、首、胸、腕、胴、腰、股、脚。そのどれもがまさしく遠坂凛である。


(でもこいつ、ニセモノなんだよなァ……)

 間桐慎二は気づいていた。目の前の遠坂凛が、自分の知る『遠坂凛』とは違うことに、全くの別人であることに。
 確かに外見は瓜二つだ。だが、明らかにこれは『遠坂凛』ではない。そう断言できる。



(どうしようかな?)

 間桐慎二は、遠坂凛と目があった。


 二人とも、笑わなかった。


93 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 05:16:20 G8cq8AAg0



【柳洞寺/2014年8月1日(金)1357】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]
黒のワンピースとソックス、満腹、頭痛、その他程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1.引き続き翠屋のマスター達と交渉。
2.しかるべきタイミングでタクシーでアインツベルン城に向かう。
3:キョウスケが別行動することになったけど……?
4.参加者が何千人もいる……!?
5:あのルーラー……ルーラーとしてはかなりいい加減ね。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されていますが本人が認識できているとは限りません。
●バーサーカーと共に冬木大橋から落とされました。怪我の有無や魔力消費は不明です。
●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)のステータスを確認しました。
●参加者が何千人という規模であることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。


【アリス・マーガロイド@東方Project】
[状態]
健康、満腹。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.とりあえず間桐慎二、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと行動を共にする。
2.狂介が別行動しようとするのはーー
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンに疑念を抱いきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。

【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
疲労(小)、満腹。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.翠屋のマスター達と交渉。イリヤやアリスにも気を配るが、一番は偽遠坂。
2:同盟相手を募るのは狂介にとりあえず任せる。三千人いるなら誰か見つかるだろ。
3:アインツベルン城を目指す。
4.あのルーラー、かなり軽いな。
5:ライダー(孫悟空)は許さない。
6.間桐家で陣地作成を行うと思っていたがアインツベルン城も悪くない。
7.会場と冬木市の差異に興味。新都に行ったら色々と調べてみるのも一興。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。
●マスターの人数が三千人、もしくはマスター千五百人サーヴァント千五百人程度だと思っています。
●アリスに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。


94 : 【82】没交渉グラフィティ ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 05:21:19 G8cq8AAg0


【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
満腹、ゴスロリ、疲労(小)、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:同盟結んだけど、他のサーヴァント?
2.仮面ライダー……なんだっけ?
3:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
4:黒いバーサーカー?
5:ミュウイチゴが気になる。
6:今日の夜12時までに黒魔法のリストを書いて冬木教会の喫茶店にいるルーラーに持っていく。
7: 真田幸村を調べたいけど━━
8:あんまりさっき言われたサーヴァントのことはわかってない。
9:これからどうしよう‥‥
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)を確認しました。
●セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。


【遠坂凛@Fate /Extra】
[状態]
満腹、アヴァロンを体内に所持、疲労(中)、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate /Extra、
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う
1:テレサ達と五代達と対カルナの同盟を一応結んだ…次はサーヴァントに対処。
2:礼装、ドールを改良する(索敵・感知系を優先)
3:闇討ちや物量戦法を強く警戒
4:なんとなく遠坂家が没落した理由がわかった気がする……
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate /Extra、その他多数の礼装@Fate /Extraは自宅に置いてきました。
●五代雄介とテレサの真名とステータスを把握しました。


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]
満腹、カフェインによる活性。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1.翠屋のマスターとしての役割を演じ、情報と人を集める。
2.なんとか二組(セイバー×2)、できれば五組(+アーチャー、キャスター、バーサーカー)に協力者になってもらいたいがーー
3.あの女サーヴァント(リップバーン)は一体……?
4.折を見てマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
5.金ぴかのランサーに、黒いバーサーカー、か……
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が拠点として設定されています。
クロノはそこのマスターです。
●リップバーンの死や行動について強い疑念を感じています。
●翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●ランサー(カルナ)とバーサーカー(小野寺)の話をちょっと聞きました。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。


95 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/21(火) 05:21:37 G8cq8AAg0
投下終了です


96 : 名無しさん :2016/06/21(火) 13:18:50 zN2fyMwU0
投下乙です
イリヤはあちらのイリヤからすれば、仇であり、
ランサーも槍まで用いればヘラクレスの命を削りきることも不可能ではない以上このまま進めば呆気なく脱落もあり得ますね。
そしてライダー組は生還狙いと宝具のこともあり、手札をさらすのにあまり忌避感がないですね。
凛の懸念も外れではないかもしれませんね


97 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/23(木) 00:00:20 tg2wGCR20
ご感想ありがとうございます。やっぱり良いものですね。

イリヤ&ランサー、美遊&バーサーカー、切嗣&アーチャー、ルナ&バーサーカー、アサシンを予約します


98 : ◆txHa73Y6G6 :2016/06/29(水) 23:56:57 fqYsgRwE0
予約を延長します


99 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/02(土) 23:55:18 NflmpYKE0
投下します


100 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 01:05:11 0enG/.XY0



 暑い。

 なんか暑い。

 もうめちゃくちゃに暑い。

 額には玉のようなというよりもはや玉な汗。当然肌着の類いはぐっしょりと濡れじっとりとした空気が体を膜のように包む。なんなんだこれは、そう言いたくなるぐらい暑い。これは洒落にならない。

 ていうかもはや痛い。

 なんか頭が痛い。比喩でなく割れそうだ。

 ついでに気持ち悪い。吐き気もする。そして目もチカチカする。これが星空のように光が瞬いているというのならまだ情感もあるだろうがそんなファンシーな光景でもなくただ不快。

 そもそもそんなことが言語化できているわけがない。

 なんか体に刺激があるのはわかるがそれに対してくすぐったいとか痛いとか痒いとかそんな人間的な感想は抱けない。1と0のオンオフデジタルな電気信号しか流れない。大脳は暑さでやられたのか小脳が動物的な反射を本能で繰り返す。そして小脳の反応により大脳を強引に揺り動かす。脳みそ全部使わなきゃキャパオーバーなら動かないものも動かすしかない。

 つまり左脳と右脳の大脳を含んだ脳が動きだし。

「ーーうぅ……ん?」

 目の前に五芒星に羽のようなリボンをはためかせた不思議アイテムが浮遊しているのを、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは認めた。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


101 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 02:24:28 0enG/.XY0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









「……ッ!……」
「おっと、大丈夫かい?」
「……はい。」

 心配して声をかけてきた男に美遊・エーデルフェルトはそう言葉少なに返す。頭からずり落ちそうになった麦わら帽子を被り直すと、再び目をつむり小舟に揺られることにした。


 イリヤを深山町へと送るためにどう未遠川を渡るか。この問題に短いながらも悩んだ彼女は、最終的に渡し船を使う道を選んだ。
 渡し船の利点はなにより魔力を使わないことだ。バーサーカーとランサーがこれまで戦ったサーヴァントを考えると感知能力を持つ敵がいるものとして考えた方が良い。さすがに先ほど倒したキャスター程のサーヴァントは少数派だろうが、それでも黒化英霊にできることは皆できるものとして動いた方がベターだろう。
 そしてこのような前提に立つと、サファイアの力を使うというのは、少なくとも橋を渡るという目的の上では取り得なかった。こちらは自らの存在を気取られぬようにイリヤの安全を確保し、またそのように行動してきたのに、ここで目立つ真似をするのは本末転倒というしかない。一度捕捉されれば打つ手がない以上、慎重作をとることになった。
 ただし問題もあった。それは、既に自分達が捕捉されている可能性と川を見張られている可能性、その二つの懸念だ。しかし美遊はそれをまとめて回避する方法があった。バーサーカーだ。
 美遊はバーサーカーを川から一キロほど離れた場所で実体化させると、その千里眼により大規模な索敵を行うことを選んだ。バーサーカーの千里眼ならば冬木市全域の索敵も決して不可能ではない。そしてこの位置ならは、バーサーカーの存在が露見したとしてもそれ自体が美遊達から目をそらす陽動となる。不本意ながらもランサーを陽動に用いたのと同じように、美遊はサーヴァントを囮として用いたのだ。そしてこれは彼女にとって嬉しい誤算をもたらした。はっきりとはわからないものの、バーサーカーは柳洞寺、冬木ハイアットホテル、冬木教会、駅、病院、民家の六ヶ所にしか焦点を合わせなかったのだ。
 バーサーカーは当然、美遊との会話は不可能である。だがそれでも、その行動を辿れば自ずと意味がわかる。敵を探させている時にその六ヶ所を集中的に見ているのは、視界を共有すれば直ぐに気づけた。いるのだ、そこに敵が。サーヴァントが。

 美遊は揺れる船の上でバーサーカーと視界を繋げる。行きの川は拍子抜けするほど簡単に渡れ、イリヤを送り届けるのも適当につかまえたタクシーの運転手に催眠をかけてなんなく成功した。家につくとイリヤをキャリーバッグから出して、本当は家の中に入れたかったが、あまりに不自然にならないように玄関先に横たえ直ぐに帰路についた。今ごろはルビーが叩き起こして屁理屈で丸め込んでいるだろう。その辺りは容易に想像できる。

 そして今は帰りの船。
 川の渡り方で悩んでいたのがなんだったのかと思うほどに全くもって順調に目的は達成できた。まさか誰も川に注意を払っていないばかりかそもそも深山町の東部がきれいな空白地帯になっているとは思わなかった。これなら、まずイリヤは安全と言えるだろう。少なくともバーサーカーの「目」についた範囲では脅威はゼロである。

 頭に痛みが走り目の奥が針で刺されたような感覚が美遊を襲う。サーヴァントの、それも千里眼の視界共有は負荷が大きい。それでも、安全には変えがたい。
 今のところバーサーカーが注意を払っているのは六ヶ所。うちひとつがランサーでもうひとつがルーラーだとすれば、残りの四ヶ所のサーヴァント達を殲滅すればいいわけである。そう考えると、いくらか痛みも和らいだ気がした。

「ありがとうございます。」

 いつしか船は東岸についていた。なんと他愛のない。心配は全て杞憂だったのだ。
 美遊は一言礼を言うと軽くなったキャリーバッグと共に降りる。跳ねた水は不快ではなくむしろ涼やかで気持ちが良いと思えた。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


102 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 03:13:05 0enG/.XY0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









(考えたくはないが、マスターが聖杯戦争の舞台からNPCに運ばれて外に出されれば……)
「はい。全部停めてください。」「車に爆弾が仕掛けられてて、はい、そうなんです!」「冬木市から出ないようにお願いします!」

 病院の医局の電話、その全てに人がかじりつくようにして応答する。手に手に書類とペンを持つその姿は白衣よりもマイクとメモ帳が目立つ有り様だ。
 その中で一人、男がじい、と電話をかけている医師の後ろ姿を凝視している。同じように手に持った書類の、「九重りん」という場所に一本の線を引いたその男の正体は、アサシン・千手扉間であった。


 アサシンが目覚めたとき、マスターの九重は他の病院に「転院」する真っ最中であった。なにせ爆破予告された直ぐ後に実際に爆弾が見つかったのだ。四の五の言わずに病院から避難するのは当然だろう。しかし、アサシンと九重にとってこれほど都合の悪いことはなかった。マスターもサーヴァントも、聖杯戦争の会場から出ることはできないからだ。
 正確に言えば、出ることはできないはずだ。でなければわざわざ会場という言い方はしないだろうし、よもや一つの世界を丸ごと結界としているわけではないだろう。それに一つの街でさえ他の主従を探すのは困難であろうにこの街から出られるとなったら収拾がつかないとも思える。それに、予選の時に影分身を一体出そうとしたら即座に消滅してしまったことがあった。ならばマスターもサーヴァントも、会場から出るのは不可能と見るべきだろう。

 であるにも関わらず、九重は冬木市の外に出ようとしているのだ。これは、非常に、まずい。

 どうやら九重は冬木市外の病院に移されることになったらしく、病院所有のバスにより南下していたようなのだ。なぜよりによって市外なのか、別に市内の他の病院に転院すれば良いではないか、アサシンはそう思ったがそんなことはお構いなしにバスは市外目指してひた走り、病院からはどんどん人がいなくなる。そして間の悪いことに、アサシンはチャクラもなく避雷針の術どころか実体化すら難しい。そもそもこのような事態を想定していなかったため九重にはマーキングもしていない(もっともそんなものがあれば確実にナースに怪しまれたであろうが)。更に病院の近くにはサーヴァント(本当はマスター)。もはや、詰み。アサシンにもそう思えた。

 だがアサシンは諦めていなかった。

 発想を変えたのだ180度。

「今度はバスに爆破予告だって!?」「冬木市から入院患者を出したら殺すって怪文書が。」「GPS付の爆弾を車に仕掛けたって。」「なんでうちばっかり爆弾が……」「病院の中に誰か入れても爆破するって。」「病院の外に出したら爆破するんじゃなかったか。」「どっちだ!?」「病院から出入りするなってことじゃないですか?」「嘘だろ!?爆弾があんだぞ爆弾が!」「先生逃げないでくださいよ起爆されますよ!?」「こんなことなら俺も早く逃げときゃ……」「なにやってんだアイツら……」
(……とりあえず、車は停められたか。)

 爆破予告で人が出ていったのなら簡単なことだ。


 アサシンは、「冬木市から病院の人間を出せば爆破する」と爆破予告したのだ。


103 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 05:13:09 0enG/.XY0



 アサシンは残り少ないチャクラを使い女に変化すると、病院の内線電話を使い、上記のように爆破予告をしたのだ。もちろん爆弾などないし変化は一分程度で解くまでに追い詰められていたがそれでも構わない。これで九重は足止めできた。そして最低限数度の実体化が可能なだけのチャクラはある。それだけあれば充分だ。

 騒がしい医局から目ざとく一枚の紙をとったアサシンはほくそえむ。「九重りん」と書かれた下に引かれた一本の線。それは冬木市から出ないように連絡がついたことを示す線だった。見れば他にも多数の線が引かれている。一先ずは、セーフ。生き残る。静かに佇むアサシンに気づく者はいない。

(さて、行くか。)

 アサシンはちらりと部屋の中央のホワイトボードに張られた地図を見る。相手が動いてさえいなければ、今のコンディションでも数分で確実に追いつける。そんな位置だ。確かにあと少し南下されていれば市境を越えられていただろうが今ならまず、安全だろう。後は現地に行って市外へ向かわないことを確認すると共に九重を護衛すれば良いのだ。
 アサシンは霊体化すると南に向かい走り始める。病院の近くにはサーヴァントが二騎いるようだが、いずれもこちらを注視しているとは感じはない。それなら今のうちに距離をとるのが懸命だ。つまりは病院から移動するのがあらゆる意味で最適、迷うことはない。
 これがアサシンが13時過ぎに出した結論である。



(まさか裏目に出るとはな)

 そしてこれがアサシンが14時前に抱いた感想である。
 現在アサシンは、九重が乗っている病院のバスに乗っていた。爆弾騒ぎで市外に出られなくなったバスはしばらく市境付近で停車していたのだ。ここまではよかった。アサシンは楽に合流できた。問題はその先だ。
 市外に出られなくなったバスは、皮肉にもアサシンが病院で思った通り市内の病院へ患者を転院させるため、一路市内へと元来た道を逆行し始めたのだ。これはアサシンとしても最初は全く問題視していなかったが病院に近づく頃には頭を抱えていた。病院の近くにいたサーヴァント、その一騎と露骨に接近することになったのだ。

 今のアサシンの状態を考えれば戦闘はあり得ない。しかしサーヴァントを避けようとすれば実体化して運転手に干渉する必要がある。そんなことをすれば存在がばれかねないためアサシンとしてはひたすら気配を殺しているのだが、気が気ではない。

(運を天に任せる他ないとはーー)

 アサシンは霊体化したまま歯を噛み締めた。



(バーサーカーはあのバスを見つめてる。あっちもこっちに気づいているはず。)

 美遊はバーサーカーとの視界共有を切るとビルの影から直接バスを見た。

 約50メートル先にある一台のバス。それがバーサーカーが最も注意を払っていたものだった。

 美遊がその事に気づいたのは偶然だった。再び新都の土を踏むことになった彼女は、行きの時にバーサーカーが見つけたサーヴァント達の動向を探ろうと視界共有をしたのだ。その時バーサーカーが先程とは違う場所を見ていることに気づき、それがアサシンのバスだったのである。バーサーカーの千里眼は場合によるが、気配遮断の上に霊体化したサーヴァントすら見抜く。川を挟んだ対岸でも問題なく発揮されるその眼力によりアサシンの存在を察知したのだ。

(……?気づいているはずなのに、実体化しない?)

 バスは動き出し、美遊は身構える。バーサーカーがいるのは、美遊が隠れるビルの屋上。なんならマスターの存在に気づいてもおかしくはない。互いの距離は近づき、そして。

(……通りすぎた……見逃された?)

 バスは何事もなく、通りすぎる。少し先で信号に捕まるが、やはり何も動きを見せない。その事が美遊に引っ掛かる。美遊の前を通りすぎた時など数メートルの間しかないのに……

(ーー『気づかれていないと思っている』なら!)

 美遊に電流が走る。相手はこちらを見逃したのではなく、やり過ごそうとしたのだとしたら、そしてそれができてなおかつそうする必要があるクラスはーー

「アサシン。」

 美遊の脳内命令を受けると共に霊体化したバーサーカーが即座にバスの上で実体化する。



 ランサー包囲網の一角に、またひとつ王手。


104 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 05:37:44 0enG/.XY0



【新都・病院西方/2014年8月1日(金)1356】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(7)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
霊体化、気配遮断、気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.……感知タイプだったか、どうする?
2.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
3.マイケルや茜達はどこにいったか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する
7.穢土転生の準備を進める。
8.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがもう無理。
9.女ランサー(アリシア)との明日正午の冬木ホテルでの接触を検討し、場合によっては殺す。
10.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
11.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。死んだか?
12.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
13.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、気絶、???
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1 入院して他のマスターから見つからないようにしておく。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。
入院期間を延ばすには扉間が医師に幻術をかける必要があります。


105 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 05:57:49 0enG/.XY0


【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
実体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:バスのサーヴァントをアサシンとして対処。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。


【深山町・アインツベルン家/2014年8月1日(金)1356】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
微睡み、汗だく、髪がちょっと短くなった、私服
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
0:………
1:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
2:ランサーさんから離れすぎないようにする
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●変身は現在は解除されています
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています


106 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/03(日) 06:09:53 0enG/.XY0
投下終了です
タイトルは【83】向かい風リインフォースで

>>85
投下が中断されたままですので該当参加者の予約を解禁したいと思います


107 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/05(火) 00:03:42 BK4Q0BJY0
アーチャー(まほろ)、マイケル&アーチャー、茜&ランサー、高遠いおり&ランサー、ライダー、変態仮面、九重りん&アサシン、美遊&バーサーカーを予約します

なお、>>85の投下宣言後、投下終了を確認し次第予約を破棄します


108 : jasdac15 :2016/07/09(土) 20:02:54 n1VjKbH.0
>>107
予約を破ったにもかかわらず、機会を与えていただき有難うございます。
投下させていただきます。


109 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 20:03:38 n1VjKbH.0
トリップの付け方間違えました。
今より投下します。


110 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 20:04:13 n1VjKbH.0
 動揺したワイルド・ドックだったが、すぐさま冷静さを取り戻し『手榴弾兵』と『マシンガン兵』、合わせて80名を召喚し、マシンガン兵1名に手榴弾兵2名を1単位とし、5単位を1チームをして駐車場内に分散させた。
 上階に居るであろうマスター、サーヴァントに救援を求める手もあったが、この場合では三人が戦い傷つくのを待ち、有利な展開になってからでないと動かないであろう。むしろワイルド・ドック自身が切り捨てられる可能性が有るため援護を期待せず、自らの手での反撃を選んだ。

 ――人は自らの知性で人を計るというが正にその通りであった。

 まほろは分散した兵たちを見て、サイドブレーキを引きワイルド・ドックに対し自動車の側面を向け停車し、飛び降りて車を盾にした。
 オープンカーのBMWにどこまで有用なのか不明だが、ナノカはドアに20mmの鉄板を仕込み防弾使用に、窓ガラスも防弾ガラスにしていたからだ。
 マシンガン兵がBMWに対し射撃するが、ドアも窓ガラスも打ち抜けずにまほろに撃ち抜かれ、手榴弾兵の投擲する手榴弾も空中でやはりまほろによって撃ち落され、逆に自分たちを傷つけてゆく。
 変態仮面に向かう兵たちは、マシンガンを撃ちまくると同時に手榴弾と投げつけたが、変態仮面の予想外に早い跳躍に弾丸は外れ、手榴弾は鞭に絡み取られ逆に投げ返されて吹き飛ばされた。

 兵たちが葬られてゆく姿をワイルド・ドックは――眉ひとつ動かさずに見つめていた。
 ここまでは予想の範疇ではある。ランサーと戦ったあの変態とアーチャーの実力からすれば、この程度の攻撃は凌げるだろう。
 そしてここからはワイルド・ドックにしても賭けになる。
 ワイルド・ドックはコピー兵に念話である指示をし、コピー兵はその命令に従い動き出す。
 自らはまほろに向かい、自動車の陰に屈んだ姿勢から手榴弾を召喚し掲げ、投擲しようと振りかぶり――そこで妙な感触に気づいた。
 何か奇妙な柔らかさ、生温かさ。明らかに手榴弾の感触ではない。
「それは手榴弾ではない」
 上から声が響き、ワイルド・ドックは見上げた。
 そこにはパンティを被った変態。ワイルド・ドックの手の内にあるのは変態の股間にあるちまきのような物体だった。
「それはわたしのおいなりさんだ」
「ギャアアアアアアアア!!!」
 余りに予想外な展開にワイルド・ドックは悲鳴を上げた。


111 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 21:05:50 n1VjKbH.0
「アーチャー! この聖杯戦争は己が生存を賭けた戦い故、戦闘行為を行うなとは言わぬ。
 だが、一端は共闘したサーヴァントのマスターを殺し令呪を奪うなどは言語道断! この変態仮面がお仕置きしてやる!」
「ホザケ、ヘンタイガァァアァァァ!!!」
 一瞬とはいえ変態に恐怖した自分が許せず、己を鼓舞するために大きく声を張り上げるワイルド・ドック。
 ガトリングガンを左手に召喚し、変態仮面に対し乱射する。
 変態仮面は天井や壁、柱を利用し縦横無尽に飛び跳ね、弾丸をかわし続ける。
『奴は本当にマスターなのか?』
 あまりに素早い動きにワイルド・ドックが疑問に思った時、ガトリングガンに銃弾が当たりよろけた。
「その腕を殺人に使うのは許しません。ナノカさんの腕は、例え武器を作ろうとも殺戮の為の腕じゃない!」
「コウルサイ蠅ドモガ!」
 二人の行為に激怒したワイルド・ドックは最早狙いを付けず周囲に弾丸をばら撒き続ける。
 対してまほろは、盾にしていたBMWから天井まで跳躍し、さらに天井を駆けワイルド・ドックに銃を撃つ。
 兵達にならまだ盾になるが、サーヴァントの攻撃にはバルサ板同然。さらにBMWの中にはミサイルなどが内蔵され銃弾で貫通されれば大爆発を起こすためだ。
 三人はそれぞれ鞭、ガトリングガン、拳銃を得物に用い、壁や天井を縦横無尽に飛び、あるいは走り己が敵を倒すべく
 戦闘により柱は砕け、流れ弾に当たった自動車は燃料に引火し爆発。炎が駐車場内を照らす。

 その頃、霊体化しているパピヨンは、駐車場の車の陰に潜んでいた。
『サーヴァントがサーヴァントなら、マスターもマスターか。ご立派な偽善者ぶりだ』
 まほろの台詞に、パピヨンは嘲笑った。
 
 パピヨンは無論、ただ潜んでいる訳ではない。霊視の感覚とはいえ、周囲を観察し他のサーヴァントが介入するかどうか監視していた。
 それ故、ワイルド・ドックのコピー兵が奇妙な動きをしている事に気づいた。
 ワイルド・ドックの援護をせずに、自動車の給油口に何かを仕掛けている。
 仕掛け終わったコピー兵が離れた後、実体化したパピヨンは仕掛けを確認し、唇を吊り上げた。


112 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:19:30 n1VjKbH.0
 三人の戦いは一方的なものになりつつあった。
 片やマスター、片やマスターを失い本来の実力を出せないサーヴァントとはいえ2対1。
 変態仮面が鞭で足を絡め取ろうとし、ワイルド・ドックがそれを避けると今度はまほろが左肩を狙って銃を放つ。
 それをガトリングで防御すれば、変態仮面が右腕に向かい鞭を打つ。
 二人の波状攻撃に対抗できず、ワイルド・ドックは追い詰められてゆく。
 そして、とうとう鞭に足を打たれ地面に倒れた。
 仰向けのまま、無様に二人から逃れようとするワイルド・ドック。
 二人はゆっくりと歩き、ワイルド・ドックに近づいてゆく。
 尻を引きづりながらもがいていたワイルド・ドックだが――突然、動きを止めた。
 怪訝な顔をする二人の尻目にワイルド・ドックはガトリングを左腕から消し、同時に手の中に現れたのは――何らかのスイッチ!
 まほろと変態仮面が得物を使うより一瞬早くワイルド・ドックは笑みと共にスイッチを押し――――そして、何も起こらなかった。

「ほら、これがお前のコピーが設置した爆弾だろう?」
 何が起こったのかわからず、繰り返しスイッチを押すワイルド・ドックに対し、柱の影から声が投げかけられた。
 その声に振り向いた二人が見たのは、影より現れた蝶々仮面を顔に付けた変態、ことパピヨン。
 パピヨンは体をくねらせ歩き、右掌には給仕のように爆弾をのせている。
 右手はコピー兵を素手で仕留めたのか、血に濡れていた。
 マスターである変態仮面は別として、まほろとワイルド・ドックはその変態的な格好と動きに怯んだ。
 ワイルド・ドックがよく見ると、起爆装置だけが爆破でもされたのか、一部分が破壊され煤で黒く染められていた。
「劣勢になった自分を囮にして、止めを刺しに来た二人が近づいた瞬間、こいつで吹っ飛ばそうとしたわけだ。
 だが、そのタイミングを計るのに集中するあまり、俺の気配には全く気付いていなかったな。『策士、策に溺れる』ってやつだ」
 パピヨンはさも嬉しそうに嘲笑った。
「キャスター。私は君がこの状況で動くとは思わなかったが」
「まあ、そう思うだろうさ。だがここでお前に死なれると俺が面白くない。ついでにそのメイドも俺的になかなか気に入らない。もっと偽善者として足掻いてもらわないとな」
 変態仮面とパピヨンは互いを見つめた。
 そして策を破られ追い詰められたワイルド・ドックは――くつくつと笑い出した。
「確かにこれは俺のミスだ。だが、策は二重三重に張ってこそ策というもの。……後ろを見ろ」
 三人が背後を振り返ると、一台の自動車の周りを兵たち――数えて1チーム――が囲んでいる。全員が銃の引き金に指をかけ、または手榴弾のピンを抜いていた。
「あの中には俺が連れてきたランサーとそのマスターがいる。俺を殺すより先に、連れてきたマスター連中は死ぬことになるぞ」
「おのれ、何処までも卑劣な……」
 変態仮面は怒りの余り歯ぎしりをした。
「もし、私が復讐のためにあなたを追っていたとしたら、銃の引き金を引く手が止まると思いますか?」
 まほろは顔色一つ変えずに、ワイルド・ドックの眉間へ銃の標準を付ける。
「止まるさ、正義の味方」
 ワイルド・ドックは笑い、変態仮面は眉間にしわを寄せ、まほろは無表情のままという差はあったが、その場にいた全員の動きが止まった。


113 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:20:39 n1VjKbH.0
 ただ一人――パピヨンを除いて。

「俺は正義の味方じゃないから、気にしない、気にしない♪」
 パピヨンは唇の端を吊り上げ歯を見せ、爆弾を持った手をワイルド・ドックに対し振りかぶった。
『――ッ!? まて、止め――』
 変態仮面とワイルド・ドックが同時に叫ぼうとしたが、パピヨンは構わず爆弾を投げつけ、同時に宝具『臨死の恍惚』をマッチ箱大の蝶にし爆弾に着火。
 爆発による爆風にパピヨンを除いて爆弾の近くにいた全員が吹き飛ばされた。
 正確には全員が爆風に合わせて背後に飛んでいた。
 まほろは爆風でひるんだ兵達の腕を次々と撃ち抜き、変態仮面はロープで兵達を縛り付ける。
 兵達全員の動きを止めたのを確認した変態仮面は着地と同時に、爆風の中心地に向かって走りだした。

 尻もちをついていたワイルド・ドックだけは、とっさに背後に跳躍したとはいえ、受け身を取り切れず立ち上がるのに二人より時間がかかった。
 そのわずかな時間差が致命的となった。
 ワイルド・ドックの見える黒煙の向こう側から、変態仮面が海老反りの体勢で跳躍し、飛び込んだ。

「変態秘奥義! 地獄の――ジェット・トレイン!」
 変態仮面の姿勢を見たその瞬間、ワイルド・ドックが感じたのは崖の淵に立つような、あるいはゴキブリが目の前に飛んでくるような人が人である限り伝わる根源的な恐怖。
 ワイルド・ドックは身動き一つとれず――変態仮面の股間に顔面を叩きつけられた。
「フォオオオオオ!!」
 変態仮面はワイルド・ドックを股間に挟み込んだまま、奇声を上げ地面を滑りこんだ。
 地面との摩擦でコンクリートが削れ、煙が立ち込める。
「成敗!」
 パンツの中にワイルド・ドックの頭を銜え込んだ変態仮面は、両手を胸の前でクロスし見得を切った。 
 ワイルド・ドックはかろうじて息をしているが完全に心神喪失状態に陥っている。

「変態仮面さん、そちらは――?」
「もう大丈夫だ、アーチャー。奴はこの通り仕留めた」
 煙の中から現れたのは、股間のちまきにワイルド・ドックの頭を咥え引きずる変態仮面の姿。
「……はぅ……」
 その姿を見たまほろは、今までの魔力消費と非現実的な光景を見た衝撃がたたり、気を失い倒れた。

「しかし……この状況をどうしたものか」
 この場でまともに立っているのは変態仮面とパピヨンの二人だけだ。
「ま、とりあえず全員起きるまで待つしかないんじゃないか?」
 他人事のようにパピヨンは言った。


114 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:35:41 n1VjKbH.0
【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
変態(愛子ちゃんのパンティ、核金×2)、疲労(中)、精神的疲労(大)、満腹。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.成敗!
2.アーチャーやランサーたちが起きるのを待つ。
3.どこかで食品を買ったら慎二とアリスとイリヤの元へ。
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。
●ルーラーのステータスを確認しました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)のステータスを把握しました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化、魔力増(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.やはり変態仮面は面白い。
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●ビッグマックとハッピーセットは狂介から押し付けられました。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。

【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
気絶、右腕喪失、霊核損耗(微)、満腹、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.???
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。

【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
心神喪失状態、アヘ顔、変態仮面に対するトラウマ(?)、左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備(令呪二画)、魔力消費(大)、満腹、ショックガン所持。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男のマスターと交渉する。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。


115 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:36:16 n1VjKbH.0
【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
気絶、危篤、満腹、点滴、精神的な疲労(大)、衰弱(大)、覚悟。
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.???
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に不信感。
3.もう一度病院に潜伏するか、それとも……
4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は……
5.アサシン(卑劣様)のマスターはどこだ?
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)よりトバルカインの情報を聞きました。

【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
気絶、実体化、疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、ダメージ(大)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:???
2:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
3:病院のあさしん(卑劣様)は大丈夫だろうか。
4:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とあさしんは言ったが‥‥
6:俺は……
7:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する
8:あの卑劣な作戦、やはりあさしんは忍びの者……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。


116 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:36:26 n1VjKbH.0
【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
気絶、体調不良、腹八分目、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.とりあえず逃げる!
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
ドラえもんの四次元ポケットを持っています。


117 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:37:02 n1VjKbH.0
 以上、投下終了です。
 タイトルは前後編含めて【81】アブノーマル・クライシスになります。
 続いて自己リレーになりますがアーチャー(まほろ)、のび太、マイケル&アーチャー、茜&ランサー、変態仮面&キャスター、九重りん&アサシンを予約します。


118 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:43:21 n1VjKbH.0
 すみません、タイトルの番号間違えました。
 【83】アブノーマル・クライシスでお願いします。

 あと、場所と時刻ですが【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1402】になります。


119 : ◆Mti19lYchg :2016/07/09(土) 22:44:11 n1VjKbH.0
また間違えました。本当連投ですみません。
 【84】アブノーマル・クライシスです。


120 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/12(火) 01:21:22 rGTwnPGc0
投下ありがとうございます

互いに手負いで魔力切れとはいえワイルド・ドッグではまほろさんには勝てないのは当然と言えば当然ですが追い詰められてからの自爆と人質を使った脅迫というのはいかにもワイルド・ドッグらしいと思います。そしてそれらの策がしっかりと失敗して成敗されるのはタイムクライシス的にも変態仮面的にもいつものパターンですね。しれっと美味しいところを持っていくパピヨンも、強いサーヴァントでないのにピンポイントに活躍する鮮やかなな立ち回り。
なによりワイルド・ドッグという凄まじく書きにくいキャラを書いたということがスゴいと思います。

自己リレーに関してですが、現状自己リレーしないと企画が進まないので全く構いません。ただしあまりに自己リレーばかり続くのも悲しいので、『リレーされる側の投下終了時刻から24時間以内にリレーする側の投下が終了した場合、予約よりそちらが優先される』ものとします。
といっても過疎で勢いもゆっくりなので、一応上のようなルールを作りましたが基本的には気にせず自己リレーして頂いて構いません。色々とざっくりした聖杯戦争なので。


121 : 名無しさん :2016/07/12(火) 05:02:03 k8DxzntU0
投下乙です。

神秘の無いはずの攻撃がサーヴァントに効いているのは型月的にいうと変態仮面が侍と同じく自己暗示の類いで強化されているからでしょうか?


122 : ◆Mti19lYchg :2016/07/14(木) 22:57:43 yWrrQLFc0
予約を延長します。


123 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/16(土) 01:58:40 mM9T2ovQ0
了解です

>>121
変態仮面のお仕置きは肉体的なダメージもありますが精神的なダメージの比重の方が大きく、この内ワイルド・ドッグは精神ダメージにより攻撃が効いたと思われます(ワイルド・ドッグは狂化や勇猛などの精神系スキルを持たないため)
今回の戦闘では変態仮面が核金を使用した描写がないため、地獄のジェット・トレインによる精神攻撃以外には変態仮面から与えられたダメージはほぼないものと思われます(変態であるが故の強化はサーヴァント相手にはほぼ通じないと思われます)


124 : ◆Mti19lYchg :2016/07/16(土) 21:56:30 .c6nHQjs0
申し訳ありません。一端予約を破棄します。


125 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/18(月) 00:59:14 CDV13Fjs0
完結を迎える聖杯戦争企画も出てきましたし、本腰入れていかないといけませんね

アーチャー(まほろ)、マイケル&アーチャー、茜&ランサー、高遠いおり&ランサー、ライダー(少佐)、変態仮面&キャスター、九重りん&アサシン、美遊&バーサーカー、野比のび太、シュレディンガー准尉を予約します


126 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/20(水) 00:00:26 MB2vYufk0
投下します


127 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/20(水) 00:05:30 MB2vYufk0
すみません手違いがあったので投下を中止します


128 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/20(水) 23:59:03 MB2vYufk0
投下します


129 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 02:26:24 OdDznoHk0



 前回までのマイケル・スコフィールドの第二次二次二次聖杯戦争は。

 マイケルは兄のリンカーンと共に脱獄するも、逃亡劇の末に命を失うことになるはずだった。だが死の寸前奇跡が起き、アーチャー・ワイルド・ドッグのマスターとして聖杯戦争に参加することになった。

 本選開始後魔力不足で倒れたマイケルは搬送先の病院を拠点としていた扉間と戦闘から逃れてきた幸村組と期せずして遭遇し、一先ずの同盟を結ぶことになる。
 一方、病院の外では戦局が大きく動いていた。三方からアルトリア、テレサ、兵部がそれぞれの思惑を胸に病院に接近するも、勘違いからアルトリアとテレサは冬木中央公園で戦闘になり、更にカルナが介入し公園は焦土と化す。その光景にマイケル達は戦慄するも、一人静観していた兵部が訪れ場は更に混乱することになった。消耗しているカルナを共に追撃し脱落させようと提案してきたのだ。マイケル達はこの無謀ともいえる強攻策を前に悩むも、結局は兵部の提案に乗ることを決断する。たまたまカルナのマスターであるイリヤと瓜二つに変化した扉間は兵部と共闘し善戦するもあと一歩のところでイリヤの殺害に失敗、辛くもそれぞれ逃げ延び、チャクラ不足で昏倒した扉間から辛うじて撮影した動画がマイケル達に託される。だがマイケルにはある変化が訪れていた……

 マイケルはこれまでのストレスや疲れからか魔力を消耗し、ついにアーチャー・ワイルド・ドッグをサーヴァントとして維持することが不可能なまでに追い詰められていたのだ。そして追い詰められたマイケルは、ついに魂喰いを決断する。その対象は意識を失ったアサシン・扉間と茜、あわよくばランサー・幸村。それまでの同盟相手であった。マイケルは苦悩するもワイルド・ドッグに病室ごと爆破するよう指示を出して一人病院から離れる。だがスーパーに移動して魂喰いの報告を聞こうとしたところで二つのハプニングに襲われることになった。一つはワイルド・ドッグがマイケルに秘密で同盟交渉をしていたライダー・少佐のそのサーヴァントであるトバルカイン、通称、伊達男に拘束されたこと。もう一つはワイルド・ドッグが病室の爆破が失敗したことである。
 実は伊達男は少佐の命令により、病院への爆破予告をスーパーの近くの警察署で数分前に行っていたのだ。伊達男は混乱する警察署から離脱しスーパーに潜伏していたのだが、マイケルは不幸にも伊達男に遭遇してしまう。そしてこの爆破予告は魂喰いの妨害も結果的に行うことになった。病室がVIPルームだった茜にはいち早く爆破予告の対応がなされ、その結果ワイルド・ドッグが仕掛けた爆弾が発見されてしまったのだ。絶体絶命の状況に追い込まれたマイケルだったが、ワイルド・ドッグから一応の伊達男の情報を伝えられたことで、伊達男に同盟を提案することで起死回生を試みる。この試みは上手くいき、マイケルはなんとか時間稼ぎに成功する。
 その後、マイケルの危機を聞きつけたランサー・幸村組とワイルド・ドッグがスーパーに駆けつけたことで場は再び混沌とする。主導権をとる茜と伊達男への危機感やワイルド・ドッグへの不信がマイケルの心中を襲い、更にスーパーに現れたアーチャー・まほろ達との接触やランサー・カルナの奇襲等でついにマイケルは聖杯戦争の当事者となった。
 圧倒的なカルナの攻撃になすすべなく逃げるマイケル達。再び出会ったまほろ達と一先ずの統一戦線を組むと反撃の算段を整えようとする。しかしその矢先にワイルド・ドッグが負傷。まほろも負傷し幸村ものされる。だがここでマイケルらマスター達は一斉に令呪を使い体勢を整えることに成功する。しかし魔力を持たないマイケルには令呪の魔力は負荷が大きく、昏倒してしまうことになった。
 一方マイケルのサーヴァントのワイルド・ドッグは、昏倒したタイミングでマイケルには独断で行動を開始する。カルナとの戦いに乱入してきた変態仮面がカルナを無力化したのを見ると戦場から離脱、朝に殺したドラえもんのマスターであるのび太抹殺のために宝具を使う。ワイルド・ドッグは宝具もろとも返り討ちにあったが、カルナの攻撃で死んだと思われていた伊達男の助けで辛くものび太を拘束。近くで気絶していたナノカから腕ごと令呪を奪うと爆殺し、マイケル達を連れて少佐のいる冬木ハイアットホテルへと逃走する。この行動にカルナをぼろぼろになりながらも退けたまほろと変態仮面は、ワイルド・ドッグの陰謀と判断して追跡を開始。ホテルの地下駐車場に乗り込むとキャスター・パピヨンも交えた戦いの末にワイルド・ドッグを成敗したのであった。
 そして今、心身ともにズタズタとなったワイルド・ドッグと、危篤状態のマイケルに新たな試練が訪れようとしている……









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


130 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 03:41:37 OdDznoHk0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









 一台のタクシーが冬木市・新都を行く。

 後部座席に一人の女児を載せて街を走らせるのは、どこか異国の風を感じさせる中年のタクシードライバーだった。

 ドライバーはこの街の生まれだ。まだ再開発の進まない、七十年代の新都で育った。
 祖母は外国人ということもあり、普通の家庭とは少し違っていた。家には時折、遠いどこかの民謡や現地の流行りの歌謡曲が流れ、食事の味つけも風変わりだったと思う。一度友人の家でご相伴預かった時には卵焼きや漬物の味が大きく違い驚いたものだ。もっとも、その家は深山のお屋敷だったので一般家庭とは違うのかもしれないが。
 だが、一番の文化の違いは、バイクへの抵抗のなさではないだろうか。高校時代にはバイクへの偏見もまだ強かったが、そんな世間の風潮等どこ吹く風と言わんばかりに、なかば強制的に免許をとらされた。バイクが取れたら次は自動車、更には船舶と。なんでも祖母の国では免許があれば喰いはぐれないそうで、高校にいかなくていいから免許はとれと、半分本気で言われたこともあった。
 そういう家庭に育ったからだろう。短大を出て就職先に選んだのはタクシードライバーであった。父の友人の伝を頼ったコネ入社と言えばコネ入社ではあるが、一応運転技術には自信があったので全くのコネ入社ではない。その運転技術を活かせた場面など数えるほどだが実力はあった、そう思う。ちょうどバブルの始まりに差し掛かる頃でチップは月毎に倍々ゲームで増えていったのを覚えている。その頃の冬木は再開発も盛んで、駅前は大きく様変わりしたものだ。

 ドライバーは、上方を見る。タクシーは新都の中心へと向かっていた。そしてその進行方向に見える一際大きい建物ーー冬木ハイアットホテル。
 バブル期の初め、冬木に建てられた高層ホテル。田舎ではないが都会ともいえない、そんなこの街の発展のシンボルでありーーそしてバブルの終わりと伴にするかのようにかつて崩れたランドマーク。

 ドライバーはバブル期の終わりにリストラされ、その後は物価の安い祖母の国でガイドやらタクシードライバーを軍事クーデターが起こるまでの間しばらくやっていたため知らなかったが、なんでも一度倒壊してその後また再建されたという。
 けったいなことだ。そう思う。
 あそこまで巨大なものを建て直さずともよかろうに、と。

「運転手さん、あとどのくらいですか?」
「ーーまあ、三分くらいですかね。」

 背後の女児の問いかけにバックミラー越しに答える。
 このタクシーの行き先、冬木ハイアットホテル。かつて爆破され、再建され、そして今。

『ーー、冬木ハイアットホテルの七ヶ所に爆破予告が出されていてーー』

 今また爆破されようとしているその建物。

(なんでそんな爆破したいのかねぇ。)

 ホテルは水平に見える。あと百メートルもない。後はロビーの前につけて、それで一仕事終わりだ。

「ーー運転手さん!ここでいい、ここでいいから!」
(ーーラジオで怖がらせちゃったかな?)

 ドライバーは車を停める。メーターを見ると、ギリギリで回る寸前だった。もしかして財布の問題だろうか。
 そんなことを考えている間に女児は風のように外に出ていた。席にはきっかり釣りの出ないように運賃分置かれている。

 ドライバーはちらりと女児を一瞥するとタクシーを出す。余計なことばかり考えていた自分が言うのもなんだが、余計なことを考えてもしかたない。もう客は降りてしまった。金も払われている。問題はない。

(最近の子供は手に刺青するのが流行ってるのか……?)

 タクシードライバーはタクシーを走らせる。一冬木市民からすると、爆破予告やらなんやらで自分の生活に影響があることこそが重要であり、年端もいかぬ子供が一人でタクシーに乗り爆破予告されたホテルに向かうことなど些末事である。
 冬木の昼は、まだまだ続く。


131 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 04:51:34 OdDznoHk0



『アリーーランサー、見られてるって?』
『うん、かなり近い。』

 タクシーを降りた高遠いおりは、ランサー・アリシア・メルキオットのその言葉につられて思わず周囲を見渡した。

 彼女らはシュレディンガー准尉と自宅で接触後、そのマスターがいる冬木ハイアットホテルにタクシーで訪れたのだが、サーヴァントの気配に気づいたアリシアの助言でホテルから少し離れた場所で降車したのだった。
 いおりは、背負ったランドセルの肩ベルトをぎゅうと握りしめる。その中には現金やら印鑑やらの最低限のものだけが入っていた。神出鬼没の相手にマークされてもはやあの家は安全とはいえない以上、貴重品は肌身離さず持ち運ばなければならない。今の自分の体躯を考えるとこのランドセルに入るものだけが現実的に持ち運べるものであった。

『実体化する?』
『刺激することになるかも。』
『ホテルから距離をとる?近づく?』
『……離れてみよう。』

 念話を続けながらも、いおりは表情を変えずに周囲を伺う。新都のビルの建ち並ぶ道はそこかしこに狙撃に適した場所があるように思える。素人の自分では判断はつかないだろう。
 いおりはそう考えながらも、視線は世話しなく動く。見られている、狙われているとなれば、見つけられないはずでも探してしまう、つい。それでも一歩一歩、ホテルから離れる向きに歩き出す。

『どう?』
『待って……回り込まれた?』
『ホテルに向かえってことか……?さっきの猫耳サーヴァントかな。』
『違うと思う。なんだろう……』
『進むしかなさそうだな。』

 いおりは180度回頭。もと来た道を進む。事情はよく飲み込めないが、ホテルを見張っていたサーヴァントに見つかり、追い込まれているのだろうか。罠である確率も高いが、かといってその罠に乗る以外に道がないと言うのも本音ではある。今のいおり達では、アリシアを実体化させることすら難しいのだ。

 いおりは一つ一つ前へと足を動かす。気分は地雷原を歩くソ連兵だ。相手の気まぐれでいつ殺されてもおかしくない、なんて考えが頭をよぎる。
 やがてホテルまで五十メートルほどにまで近づいた。ここまで来れば、色々とわかることがあった。

「ホテルの、地下への入り口か?警察がかなりいるな。」

 いおりは、そう言いながら路地裏へと入る。これより先はめぼしい人目を避けられる場所はない。この路地裏こそが、表通りを歩けないもの、サーヴァントが姿を現せる限界地点だろう。
 頭の後ろで手を組みながら歩く。こうなれば運を天に任せる他ない。こちらを見張っているサーヴァントが襲いかかってこないことを祈るのみだ。いおりとしては、わざわざ見張り続けることを考えるとなんらかのコンタクトをしようとしているのではないかと思っている。七割ほど。そして残りの三割で襲われると。もしそうなれば、令呪を使わざるを得ないとも。

「で、あんたがマスター?」
「……」

 唐突に、自動販売機の陰から現れた麦わら帽子の少女。それに、いおりは話しかける。驚きはしない。コンタクトをしようというのなら誰かしらいるとは思っていた。自分のような小学生がマスターになっているのなら、同じく小学生がマスターでもおかしくない。

「この聖杯戦争っていうのは女子小学生がマスターになる決まりでもあるのか?」
「そうという訳ではないだろう。」
「!その声は……」

 麦わら帽子の少女のすぐ前に一人の男が現れる。やや血色の悪い顔に、銀髪。妙な装束をした怪人がいおりと麦わら帽子の間に出現した。

「アサシン、その人が。」
「……なるほど、何となくわかった。」
「話が早くて助かる。」


 「同盟相手だ」とアサシン・千手扉間は二人の少女が互いに互いを見えるように手を広げた。


132 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 05:46:17 OdDznoHk0



 「これから同盟相手の元へ向かう」という台詞をアサシンが言ったかどうかは定かではない。だがアサシンが開口一番にバーサーカーとそのマスターである美遊・エーデルフェルトに伝えようとしたことの要旨はそんなものであった。
 バスの上にバーサーカーを実体化させその隙に手早くバスの運転手らに催眠をかける。それだけでバスを事実上制圧した美遊が乗り込むより早くアサシンはハンズアップしていた。バスの入り口のドアの部分、内部の乗客からは死角になっているところで、あからさまに降伏の姿勢をとっていたのだ。これにはさすがに美遊も予想外ではあった。「無駄な抵抗はせん」と随分と素直なことを言うアサシンに寒気を覚えながらも、とりあえずその場で拘束しバスを適当な駐車場に停めさせアサシンを尋問することにしたのだが、これも美遊にとっては困惑を深めることであった。
 「自分はアーチャー・ランサーらと共にランサー・カルナを討つべく同盟を組んでいる」「今は同盟の輪を拡げるために別行動をしている」「一度三組で集まりそれぞれの新しく同盟に加わった主従の情報を共有する必要がある」「集合場所は冬木ハイアットホテルになる」などなど、美遊が少し質問しただけで恐ろしく重要な情報を簡単に開示したのだ。そのあまりの口の軽さに思わず虚言かと思ったが、しかしそれはサファイアが否定した。アサシンの言葉には何一つ嘘がないと。
 実のところ、アサシンが嘘をつく必要はないのだ。同盟相手を集めようとしているアサシンからしてみれば、この程度のことは機密でもなんでもない。むしろ進んで言って回るべきことであろう。そう考えると、アサシンの言葉にも納得できた。

 さて、この時美遊には大きく分けて二つの選択肢があった。
 一つは、アサシンを殺すこと。アサシンの発言が真である以上、イリヤを襲ったのは確実にこのアサシンで間違いがない。そして現在もイリヤを狙っている以上、遅滞なく殺すべきである。
 もう一つは、アサシンを泳がせること。アサシンの発言が真であるならば、それはつまりアサシン以外に最低でも二騎のイリヤの脅威となる主従がいるということになるのである。しかも場合によってはこの包囲網が更に拡がることも考えられる。
 して、美遊はしばし悩んだ。ここで確実にアサシンを殺しておくことは非常に大きい。しかし将来の脅威を事前に叩ける機会も捨てがたい。

 悩んだ末の美遊の決断は、後者であった。バーサーカーの千里眼により、冬木ハイアットホテルにサーヴァントが集結していることは既に判明している。となれば、ここはその内情を探るのが得策と言えよう。さしものバーサーカーもキャスター相手ならともかく三騎士のクラス相手には不安があるのはこれまでの戦闘経験で体験済みである。それが最低でも二騎いるとなれば、慎重に事を運ばなくてはならないだろう。

「アサシン、私たちもその同盟に入れてほしい。」

 ならば、美遊の判断はこうだ。
 イリヤを殺そうとする同盟に、イリヤを守ろうとする美遊が入る。それが一番イリヤを守ることにつながる。


 対ランサーの同盟に、こうして第五列の主従が加わった。


133 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:19:07 OdDznoHk0



「以外とサイズがあったな……」
「いいからとっとと運べ。もう警察が着ている。」
「とりあえず段ボールはここにおいておくから。」
「あ、どうも。」

 下着姿に剥かれたワイルド・ドッグと気絶した主従達の近くでそんな会話をしているのは、変態仮面こと色丞狂介とそのサーヴァント・パピヨン、そしてシュレディンガー准尉であった。
 彼らは大きな問題に直面していた。それは、地下駐車場での戦闘が警察に通報されたということだ。
 少佐とシュレディンガー准尉からすれば、自分達が爆破予告した場所で実際に爆発が起こってしまったのだ。このイベントに一枚噛まないわけにはいかない。目的とした他の主従の結集も四組と大漁である。是非とも『保護』して差し上げねばならない。
 パピヨン達からすれば、まずその格好でアウトである。特にパピヨンは既に警察から追われる身であるし変態仮面はもう色々とダメである。それにハデにドンパチしたせいでそこらじゅう炎上やら爆発やらしていて単純に危険である。その上気絶した人間達を救助しなくてはならない。もうめちゃくちゃである。

 というわけでこの状況を打開すべくエキセントリックな三人が地下駐車場で気絶した人間をどうにか穏便に救助することとなった。ちなみに狂介は服をスーパーで脱衣してしまったためワイルド・ドッグから服を奪うことでアウトでなくしている。その為ワイルド・ドッグは下着姿で亀甲縛りというアウトな姿になったがこれもお仕置きの一つなのでセーフという共通見解が得られた。

「段ボールに体育座りで詰め込んでそこのエレベーターで一階まで運ぼう。」
「まさかサーヴァントになって女子高生を段ボールに詰めることになるとはな。」
「なんだこの刺青!?上半身全部か!」
「かった〜、このメイド胸が鉄でできてるね。」
「次は亀甲縛りのおっさんか。これは体勢を変えられんぞ。」
「真田幸村だっけ?槍邪魔だな、置いていこう。」
「ヤバイヤバイ警察来てる、急いで!あとこの腕誰の!?」
「それは安藤さんと一緒のところに!」
「誰だよ安藤って!?」

 ホテルの外で三組の主従が出会った頃、ホテルの中でも新たなる戦いが始まっていた。


134 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:34:24 OdDznoHk0



【新都・冬木ハイアットホテル付近/2014年8月1日(金)1410】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(6)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
体化、気配遮断、気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.手段を選ばず美遊との戦闘を避ける。
2.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
3.マイケルや茜達はホテルの内部か……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する
7.穢土転生の準備を進める。
8.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがもう無理。
9.女ランサー(アリシア)は場合によっては殺す。
10.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
11.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。死んだか?
12.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
13.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●美遊に対カルナの同盟について嘘をつかない範囲で婉曲的な説明をしました。やたらと「これから更なる同盟相手を増やすために活動していた同盟相手と情報交換するために冬木ハイアットホテルに行く」ということをアピールしました。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、気絶、???
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1 入院して他のマスターから見つからないようにしておく。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。
●乗っていた病院のバスはとりあえずホテルの敷地に停まっています


135 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:38:42 OdDznoHk0


【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:対カルナの同盟に潜り込み内側から崩す。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。


136 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:43:34 OdDznoHk0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、満腹、当分寝なくていい。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.状況を整理する。
2.アイツ(謎の猫耳サーヴァント(シュレディンガー准尉))、タクシー代払わなかったな。
2.いつか、ランサーに自分の『こと』を話す。
3.バーサーカーのマスター(イリヤ)が心配。
4.あの娘たち(茜と幸村)は逃げ切れたよな?
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ランサーから英霊・アリシアの情報の一部を聞きました。

【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(10)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
全身の至るところを骨折・打撲、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、魔力供給がほぼストップ。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1.ライダー達を警戒。
2.『今度』はイオリのことを知りたい。
3.できればランサー(幸村)とそのマスター(茜)にもう一度会って同盟を組みたい。
4.アサシン(千手扉間)と色々と話をしたい。
5.バーサーカー(ヘラクレス)とそのマスター(イリヤ)の安否が気にならなくもない。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。
●いおりに英霊・アリシア・ギュンターについて一部の情報を話しました。


137 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:51:57 OdDznoHk0



【新都・冬木ハイアットホテル地下駐車場/2014年8月1日(金)1410】

【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
ワイルド・ドッグの服、疲労(中)、精神的疲労(大)、満腹。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.とりあえず気絶してる人達を避難させる。
2.アーチャーやランサーたちが起きるのを待つ。
3.どこかで食品を買ったら慎二とアリスとイリヤの元へ。
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉のステータスを把握しました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化、魔力増(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.やはり変態仮面は面白い。
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●ビッグマックとハッピーセットは狂介から押し付けられました。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。

【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
気絶、段ボール箱に詰められている、右腕喪失、霊核損耗(微)、満腹、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.???
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。

【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
心神喪失状態、アヘ顔、変態仮面に対するトラウマ(?)、服を剥ぎ取られた、亀甲縛り、段ボール箱に詰められている、左腕喪失、ナノカ・フランカの左腕装備(令呪二画)、魔力消費(大)、満腹、ショックガン所持。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男のマスターと交渉する。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。


138 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 06:54:59 OdDznoHk0

【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
気絶、危篤、段ボール箱に詰められている、満腹、点滴、精神的な疲労(大)、衰弱(大)、覚悟。
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.???
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に不信感。
3.もう一度病院に潜伏するか、それとも……
4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は……
5.アサシン(卑劣様)のマスターはどこだ?
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)よりトバルカインの情報を聞きました。

【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
気絶、実体化、段ボール箱に詰められている、疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、ダメージ(大)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:???
2:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
3:病院のあさしん(卑劣様)は大丈夫だろうか。
4:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とあさしんは言ったが‥‥
6:俺は……
7:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する
8:あの卑劣な作戦、やはりあさしんは忍びの者……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●槍は地下駐車場のまほろさんの車の下に隠されました。


139 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 07:03:34 OdDznoHk0

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
気絶、段ボール箱に詰められている、体調不良、腹八分目、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.とりあえず逃げる!
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、段ボール箱に詰められている、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
●ドラえもんの四次元ポケットを持っています。
●同じ段ボール箱にナノカ・フランカの腕がしまわれています。


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.別に段ボールに詰める必要はないと思うけど面白そうなので黙っておく。
2.伊達男はなんでこんなの(ワイルド・ドッグ)味方にしたんだ?
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。


140 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/21(木) 07:03:50 OdDznoHk0
投下終了です


141 : 【85】冬木ハイアットホテルへようこそ ◆txHa73Y6G6 :2016/07/22(金) 00:03:16 T7GCR90I0
チョコ&セイバー、凛&セイバー、クロノ&ライダー、アリス&アーチャー、慎二&キャスター、イリヤ&バーサーカーを予約します


142 : ◆txHa73Y6G6 :2016/07/29(金) 00:03:03 zA.E5.iw0
予約を延長します


143 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 00:01:01 sW0cn7yY0
投下します


144 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 01:02:08 sW0cn7yY0



 暑さのピークがようやく終わった昼下がりの冬木に、今度は海からの温かく湿った風が吹きはじめる。たっぷりと水気を含んだその風は、しかし冬木の中でも海岸線から遠く林に囲まれた柳洞寺までには届かない。木々を揺らすそよ風は境内にいる人間には葉の擦れ会う音としてしか認識されないだろう。ましてや寺の内にいる者は微塵も気づくまい。
 夕焼けまでにはまだ少々の時間がある。それでも傾きを強めた太陽は斜めに物の影を造る。音を鳴らすこともできずにちゅうぶらりんの風鈴の歪なその影は、寺の堂の端で揺れていた。

 そのお堂の中にいる数名のうち、年若い少年ーー間桐慎二が一枚の紙を手にして立ち、他の皆へとなにやら話しているのを、もしそこを覗いたものがいれば見えただろうが、恐らくそのようなことができる人間はいまい。今その場所は神話や伝説の英雄が守るある種の聖域だ。そこに踏み入ろうとするならば、それこそ英雄を打ち倒すような兵でなければ不可能だろう。

「で、これまでの情報をまとめると、こうなる。」

「ステータスは恐らく筋力・耐久・敏捷オールAで体から火を出して敵を近づけさせずしかもその炎でジェット飛行、槍の腕前はセイバーが二人がかりでようやくどうにかなるレベルで直撃したわけでもないのに公園が消し飛ぶレベルのレーザーを出す槍や太陽の光で体ができてて凄まじく頑丈なのがスキルや宝具。」


「ーー話し盛ってない?」
「ホントなんです!信じてください!」
「いや、ないだろ、これは。」
「ホントに槍をぶんぶんしてビーム撃ちましたって!」
「なんか……話しに聞いてた聖杯戦争と違うんだよな……」


 故にその聖域の内側で喧々諤々の議論が行われていることを知っているのはほんのわずかな者達だけであった。


145 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 02:25:15 sW0cn7yY0



「というわけで皆さんから頂いた情報をまとめたものがこれです。文章の後ろのアルファベットは情報提供者のイニシャルになっています。」

 そういうとクロノ・ハラオウンは麦茶を飲んで休憩していた他のマスター達にコピー用紙を配った。

 柳洞寺での会談が始まって既に二時間近くが経つ。その間にサーヴァントに関する有益な情報や聖杯戦争に関連する情報、なんの役に立つかはわからないがとりあえずもたらされた情報やなんの価値もない小競り合いのような論争がいくからあり、全員がそれなりに手札を公開したところで場には弛緩した空気が流れ始めていた。
 クロノが持ち寄られた情報を議事録にすることを提案したのはその時である。この提案はおおむね皆に受け入れられ、休憩をとりつつクロノによって整理される運びとなった。
 ちなみにこのとき慎二達南部のマスターは寺から調達した麦茶で一息いれようと言い出したのを、凛はアヴァロンを頼りに、クロノは信用を示すために、チョコは一緒に出された羊羮の甘さですっかりくつろぎ実家のような安心感を味わっていたためそれぞれ承諾し口に運んでいる。場の緊張の度合いは確実に減っていた。

「あの〜、凛さんがRで慎二さんがSでアリスさんがAでイリヤさんがI、ですよね?CKとCHってどっちが私でどっちがクロノさんですか?」
「チョコさんはCKで私はCHです。」
「あ、はい。」

 その空気に、慎二は心中で不満を募らせる。彼にとって自分以外全員魔術師のこの空間は針のむしろのようなものだ。それなのにどうだ?この目の前で少し頭を働かせればわかるような小学生並みの質問をしているのほほんとしたゴスロリは。食べ物に毒が入っている可能性も考えられない、考えられなくてもどうにかなる余裕を持っているこのへちゃむくれは。魔術師様はそんなに偉いのか?だったら魔力供給でもしてもらおうか女子小学生にだって穴はあるんだ。

「これで断片的にでも、かなりの数のサーヴァントの情報が共有できた。」

 そしてお前は誰だ遠坂凛(偽)。最初の違和感はやたら胸にパット入れてるなどこに気合い入れてるんだよぐらいだったけど明らかに偽者だろ。携帯すら持ってなかったアナログ人間が最新機種のスマートフォンで書類を電子化なんてできるはずないだろ、本物なら買ったその日に画面を割っている。それに自分の妹が義理とはいえ兄と付き合ってると言われて軽く流す姉がどこにいるんだよ魔術師でもアウトだろ。


 カランと麦茶の入ったグラスで氷が揺れる。

(……まあ、とりあえず情報は聞き出せたんだ、あとはどうとでもできる。)

 慎二は、ふう、と息を吐くとグラスを煽った。思えば、聖杯戦争の本選が始まって以来ストレスのたまることばかり起きている気がする。しかもそれが割りと聖杯戦争と直接関係ない部分でだ。そう考えると補導されて警察署に行ったのに警官から忘れられてほっとかれるよりは今の状況は建設的でましかもしれない。というよりましだと思いたい。

「では皆さん内容の確認を始めたいと思います。最初はこの『黒いバーサーカー』についてーー」

 慎二は再びグラスを煽ると融けかけた氷を飲み込み、噛み砕く。不満を考え出せばきりがない。それよりは前向きに聖杯戦争と向き合う方が精神衛生的にも良いだろう。


146 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 03:31:29 sW0cn7yY0



「黒いバーサーカーは深夜一時半頃に冬木大橋東岸にある倉庫街で見つかりました。好戦的かつ高い感知能力と身体能力、発火能力を持つと思われます。また黒いバーサーカーは十時四十五分に深山町東部で起きた爆発の原因である可能性が極めて高いと思われます。その特徴は、CH ……私のライダーに外見と魔力の質が酷似していることです。複眼と外殻、角、そして腰のベルトとバックルの部分の石。」

 文書をかいつまんで音読するとクロノは一同を見回す。促されるように感じたチョコが言葉を引き取った。

「セイバーさんが戦った感じだと、力だけで技は全然らしくて、それでーー」
「書いてあるからいいよ。」
「……はい。」

 にべもなくピシャリと慎二に言われチョコは引き下がる。慎二は「つまりこのどっちかなんだろ?」と紙の束を弾いた。

「他のサーヴァントの変装か、クロノのライダーを誰かがバーサーカーで召喚したか、だろ?」

 「君のライダーが正体じゃないならね」と言って慎二は唇を歪める。

「……普通の聖杯戦争なら、あり得ないんですよね?同じ人が別々に召喚されるのって?」
「ええ。日本人にもわかりやすいように言うと、イタコだったかしら?二人のイタコは同時に同一人物を呼び寄せられないでしょ。降霊術である以上原理は同じ……この聖杯戦争のサーヴァントが本当に『英霊』なのかは疑わしいけれど。」
「ですよね。ダブルブッキングしたら先に召喚してる人の方が優先されるはずだし……」

 一瞬の場の沈黙を埋めるかのように口を開いたチョコにイリヤが答える。もっともその問答はこれまでの会談の中でも行われたものであり、事実の確認と時間稼ぎの意味しかないのだが。

「僕はサーヴァントの変装だと思ってるんだけどね。それこそ、ほら、ランスロットとか。黒くて変装の逸話もあってぴったしじゃないか?でもクロノ、君は君のサーヴァントが別のマスターに別のサーヴァントとして召還されたって言いたいみたいだけど。」

 黒いバーサーカーがクロノのライダーの酷似している。この事は六人のマスターの関係に影を落としていた。誰も表立って口にはしていないが、このバーサーカーとは実はライダーなのではないかという疑いは誰しもが持っている。聞く限りでは危険なサーヴァントとしか思えないそれのマスターがクロノなのではないか、そう危惧するのは自然なことであった。
 これに対してクロノとの関係を重視する慎二は半ば恩を売る為に『黒いバーサーカークロノのライダーに変装してる説』を提唱したのだが、以外にもクロノ本人がこれを否定した。そうして代わりに打ち出したのが『黒いバーサーカー別のマスターに召還されたライダー説』である。このサーヴァントというシステムそのものの前提に挑戦する、ほとんど難癖にしか思えない主張は、セイバーの感知能力への信頼や当のライダーの、自分以外のライダーは考えにくいという主張に基づくものの、他のマスター達には受け入れがたいものであった。

 慎二とクロノ、そして四人のマスター達の間に沈黙が流れる。「ま、いいさ。次は例のアレだな」と少しして慎二が切り出すと場の緊張は再び緩んだ。


147 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 04:41:30 sW0cn7yY0



「『赤いランサー』こと真田源次郎幸村(自称)。さっきの黒いバーサーカーとセイバーが戦っているところに乱入してきて名乗りをあげ二人まとめて戦い始める。とにかく暑苦しくてセイバーが逃げた後バーサーカーも逃げ出す。そのあと冬木大橋で『剣士っぽいバーサーカー』相手に『青いアーチャー』と一緒に戦ってそのあと『イリヤのバーサーカー』とも戦ってぶっ飛ばされてマスターを抱えて逃げ出す。青いアーチャーとは同盟を組んでいる可能性があるな。十時頃に病院に他のサーヴァント二騎と同じ場所にいたことからこっちとも同盟を組んでいる可能性あり。特徴は……そこにある写真の通りだな。」
「サーヴァントって写真に写るのね。」
「心霊写真ってありますし。」
「カメラのピントバッチしでしっかり写る心霊写真なんて初めて見たよ。しかもこいつインタビューまで受けてるじゃないか……」

 マスター達が紙をめくると現れた新聞の切り抜きに、奇抜な格好をした若者が写っている。赤を基調としたファッションに六文銭という、なにかいろいろとまちがった時代劇に出てきそうな男は、記事に(建築業・真田源次郎さん)と書かれていた。

「これね……やっぱり狂化のランクが低いバーサーカーだと思う。理性を薄くして制御しやすくしようとして失敗したんじゃない?」
「真田幸村は忠義に篤いことばかり言われるけど頭もかなり切れるらしいし、なにか策があるんじゃないか?」
「本人はやりたくなくてもマスターが無茶ぶりしたかも?」

 イリヤが、慎二が、チョコが、それぞれ口々に考察する。
 真田幸村に関する言及は文書の中でも大きなものだった。理由は簡単で、とにかくやたらと情報が多いからだ。まず本人が真名を明かしている。しかもそれが別の場所で撮られた写真つきの新聞記事にもなっている。更にマスターが日野茜という女子高生であることや、CMやドラマの端役でそれなりにアイドルとしても売れていることや、映画の撮影の為に冬木市に長期滞在していて九月からは市内の高校にも通うことや、冬木大橋での事故に巻き込まれて病院に入院したことや、その際に妊娠が発覚したことや、警察署近くのスーパーで食レポかってぐらいがつがつ昼食を食べていたことや、そのスーパーが爆発したことや、入院している病院に爆破予告が相次いでしかも爆弾が見つかったこと等が事細かに書かれていた。これらの重大な情報は慎二が休憩中に適当にツイッターを見ていたらトレンドに上がっていた為に発見されたものである。ちなみに13時の段階でトレンド七位である。

「この情報だけだと全体的にカルナの下位互換にしか思えない。これだけ目立っている相手と関わるのは止めておいた方が賢いと思うけれど?」
「そこまで悪いサーヴァントではないわ。マスターが足を引っ張っているのが問題だけれどね。」

 冷徹かつボロクソに言い放つ凛にイリヤが茜をディスりながら反論する。彼女としてはバーサーカーの一撃を受けても死ななかった相手をそのように言われては困る。サーヴァントの方はそれなりに優秀であってもらわなくてはならないのだ。

「さっきの黒いバーサーカーと合わせて、前衛には向いているのは間違いないわ。カルナを相手にするなら、考えておくのも手ね。」
「今のところ、カルナ相手に使えそうな奴にろくなのがいないな。さて、次は……」


148 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 05:47:49 sW0cn7yY0



「『剣士っぽいバーサーカー』ですね。冬木大橋で暴れてるところを真田幸村と青いアーチャーに追い払われてます。そのあとカルナが冬木大橋の近くに行ったときに襲いかかって返り討ちにあって、セイバーさんはその時に飛んできた剣を拾ったらしいです。あ、それといい忘れてたんですけど、下北沢駅で電車を斬ったのはたぶんこのバーサーカーです。ニュースで写ってたのと似てました。」
「下北沢って予選の最終日の?」
「そうです。」
「二人だけでわかってないで説明してくれないかい?」
「すみません……ええと、予選が東京だったんだけど、最終日に下北沢駅で電車が真っ二つになる事件があったんです。その時のビデオに写ってたのがあのバーサーカーだったんです。」
「なるほどありがとう。もう死んだから関係ないけど。次。」



「『青いアーチャー』ね。宝具は槍でそこからビームを射つことと不死身の肉体。怪我を負えば負うほどステータスが上がるみたい。」
「ランサーの間違いじゃないのか?」
「……間違いの可能性も、なくはない……あんまり記憶がハッキリしないから……ただ、さっきの剣士っぽいバーサーカーと戦っていたときは銃を使っていたからアーチャーだと思う。ステータスも幸運が高かったし。」

 珍しく歯切れの悪いイリヤに、慎二は揶揄の一つでもしようとして止めた。さすがに海に叩き落とされたことを思い出させるように仕向けるのはイメージが悪いだろう。

「ランサーは幸運が低い、というのが特徴らしいですが、それでーー」
「特徴と言うよりはジンクスね、クロノ。ランサーの幸運のステータスは低いって。あのカルナだって原典じゃ打ち倒されてるし、どうしてかランサーのサーヴァントは悲劇の最期を迎えた英霊が多いって言われてるの。真田幸村もそうよね?」
「わかりました。それではアーチャーはどうでしょうか。」
「勝手なサーヴァントが多いって気もするけど、ランサーみたいなジンクスは聞かないわ。」
「ありがとうございます。」

 クロノは質問を終えると書類にメモを付け加えた。
 青いアーチャー、ないし青いランサーの情報は少ない。イリヤが話したこと以外では、せいぜい女性であることと頭に赤い頭巾を被っていることぐらいしか情報がないのだ。またその武器や戦闘スタイルからクラスの特定すら難しいのが正直なところだ。
 クロノはメモを終えると紙をめくる。他にもサーヴァントの情報はあるが、それらは青いアーチャーより更に情報が少ない。書類に書かれた僅かな情報のみしか本当に何もないのだ。例えば二人のセイバーが病院の近くで感じとり、その後カルナと戦ったらしい謎のサーヴァントや、慎二がホテルで遭遇した自称孫悟空、あるいはまたもチョコのセイバーが見つけた謎のサーヴァント。

 ーー実際には、もう一人サーヴァントの情報が書かれているのだがーー

 クロノはちらりと向かいの三人を見る。その三人からもたらされたキャスターの存在。
 彼女達三人はその存在以外の情報を話さなかった。凛やチョコもそれとなく、または露骨に聞き出そうとしたが、遂に叶わなかった。
 曰く、「同盟相手の情報は勝手に話せない」と。

(次への課題になるか……ならまずは、『次』をつくらないと)

 クロノは目線を書類に落としながら考える。今回の会談で得られるものはあらかた得られはしたが、今後の展開次第では更なる未来への展望が開ける。その為には、信頼を醸成しなくてはならない。それには、今、求められているものがある。すなわちこの場をどう終わらせるかだ。次回、次々回の会談を執り行い、関係を強化するように運ばなくてはならない。

 現段階で六人のマスターによる同盟を提案するのが得策なのか、それとも日時を指定して別れるべきか。ホットラインをもうけるか、敢えて通信を不便にしたままにするか。次回への議題を事前に伝えるか、あちらからの提案はどの様なものがあるか。考えるべきことと取れる方策は多くても、有効なものは少ない。

 しばらくして、クロノは口を開いた。


149 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 06:28:49 sW0cn7yY0



 慎二達は色丞狂介とそのキャスターの存在を発表しながらもそれ以上の情報を話すことはなかった。これは確かに狂介達への信義であり同時にクロノ達への信義ではある。
 しかし。
 慎二達はルーラーの存在を発表することも情報を話すこともなかった。
 これはクロノ達への裏切りであるか?

 今回主に共有されたのは、自分達以外の聖杯戦争の参加者の情報である。だから狂介のことは「自分達の情報である」と解釈して話さなかった。そしてルーラーのことは「参加者の情報でない」と解釈して話さなかった。重大な情報でないため取り上げなくとも仕方のない情報であるとした。それだけだ。
 もちろん慎二は、イリヤは、アリスは、別にルーラーのことを明かしても仕方ないとは思っていた。だから彼女達は、「誰かがルーラーのことを話したら話そう」と思っていた。しかし、話の中で他の二人が自分から話そうとしなかったので自分もわざわざ話すほどのことではないと判断して話さなかった。結果的に誰も話さなかったのだから、つまりは重大な情報ではなかったのだ。
 あるいは、クロノが、凛が、チョコが、話を振ってきたら話しただろう。しかし、彼らにルーラーの話しは来なかった。正確には、彼らに来る前に終わったのだ。

 ルーラーの話を避けたかったのはチョコもまた同じであった。彼女としては、ルーラーから注意されたことで死線を掻い潜るはめになったのだ。またそのルーラーの真名を看破しているのも、それをルーラーの許可なしに他人に明かしてしまうことは避けたかった。その為、彼女はルーラーに話が及びそうなのを察知するとなんとかそちらにいかないように時には質問し、時には話題を変え話を反らした。それでもダメなときは、クロノが話すときは凛に、凛が話すときはクロノへと話を振った。彼女からすれば不思議なことに慎二達もノってくれた為話題を変えるのはそこまで難しいことではなかったのだ。
 こうして、ルーラーのことは秘匿されたのである。

 しかしながら、この試みは当然二人にはわかるものだった。チョコがルーラーの話を意図的に避けているのは明らかであり彼らは強引にルーラーを話題にすることも可能であった。
 クロノがそれをしなかったのは、場の空気の悪化を防ぐ為だ。聖杯戦争を止めるためにより多くの協力を必要としている現状を鑑みれば、ましてや聖杯戦争を知るものの協力を得られなくなるような状況は避けたい。彼からすれば、イリヤと慎二と敵対することは可能な限り避けたかったのである。
 一方凛がそれをしなかったのは、マスター間のバランスに考えてのことであった。慎二達とチョコの四人がルーラーの話を避けているのを、一種の牽制であると見たのだ。これは、クロノという強大なマスターの情報が背景にある。マスターでありながらサーヴァントとも戦えるだけの戦闘力は通常ならば大いに危惧すべきものであり、慎二達はその為にクロノを警戒しているのだと判断したのだ。

 ここにルーラーについて語らないという暗黙の『空気』が形成されたのである。


150 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 06:59:55 sW0cn7yY0



【柳洞寺/2014年8月1日(金)1616】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]
精神的疲労(小)、黒のワンピースとソックス、頭痛、その他程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1.そろそろ潮時ね。
2.しかるべきタイミングでタクシーでアインツベルン城に向かう。
3:別行動しているキョウスケが気にならない訳ではない。
4.参加者が何千人もいる……!?
5:あのルーラー……ルーラーとしてはかなりいい加減ね。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されていますが本人が認識できているとは限りません。
●バーサーカーと共に冬木大橋から落とされました。怪我の有無や魔力消費は不明です。
●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が何千人という規模であることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


【アリス・マーガロイド@東方Project】
[状態]
精神的疲労(微)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.とりあえず間桐慎二、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと行動を共にする。
2.そういえば狂介が別行動していた。
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンに疑念を抱いきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


151 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 07:00:35 sW0cn7yY0


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.こんなところかな。
2:同盟相手を募るのは狂介にとりあえず任せる。三千人いるなら誰か見つかるだろ。
3:アインツベルン城を目指す。
4.あのルーラー、かなり軽いな。
5:ライダー(孫悟空)は許さない。
6.間桐家で陣地作成を行うと思っていたがアインツベルン城も悪くない。
7.会場と冬木市の差異に興味。新都に行ったら色々と調べてみるのも一興。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。
●マスターの人数が三千人、もしくはマスター千五百人サーヴァント千五百人程度だと思っています。
●アリスに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
ゴスロリ、疲労(中)、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:同盟結んだけど、他のサーヴァント?
2.仮面ライダー……なんだっけ?
3:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
4:ミュウイチゴが気になる。
5:今日の夜12時までに黒魔法のリストを書いて冬木教会の喫茶店にいるルーラーに持っていく。
6: 真田幸村を調べたいけど━━
7:色々言われたサーヴァントのことはわかってない。
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。またステータスを把握しました。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)を確認しました。
●セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


152 : 【86】偽・信・闇・奇 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 07:01:47 sW0cn7yY0


【遠坂凛@Fate/Extra】
[状態]
アヴァロンを体内に所持、疲労(中)、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate/Extra
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う
1:テレサ達と五代達と対カルナの同盟を一応結んだ…次はサーヴァントに対処。
2:礼装、ドールを改良する(索敵・感知系を優先)
3:闇討ちや物量戦法を強く警戒
4:クロノを警戒。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●五代雄介とテレサの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]
精神的疲労(微)。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1.翠屋のマスターとしての役割を演じ、情報と人を集める。
2.なんとか二組(セイバー×2)、できれば五組(+アーチャー、キャスター、バーサーカー)に協力者になってもらいたいがーー
3.あの女サーヴァント(リップバーン)は一体……?
4.折を見てマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
5.金ぴかのランサーに、黒いバーサーカー、か……
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が拠点として設定されています。クロノはそこのマスターです。
●リップバーンの死や行動について強い疑念を感じています。
●翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


153 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/01(月) 07:10:54 sW0cn7yY0
投下終了です

この企画も二周年となりましたがのんびりやっていたら後発の企画に先を越されてその上もしもの時のための爆破オチもやられてしまったので腹を決めてガシガシ進めて行きます
早ければ今年中に終わると思います


154 : 名無しさん :2016/08/01(月) 23:35:26 BWAxoHH60
皆さん投下乙です


>アブノーマル・クライシス
変態仮面・まほろさん・蝶サイコーな変態VSワイルド・ドッグ戦、この並びの時点で異様なものがありますが、軍団宝具を用いてしぶとく起死回生を狙うワイルド・ドッグの執念、ナノカの「手」を最後まで守らんとするまほろさんの想い、変態仮面の燃やす真っ直ぐな正義の心、そしてパピヨンらしすぎる強かで嫌みなナイスアシスト。それらを絡めつつ描かれる緊迫した戦闘に手に汗握りました。
とはいえ、〆となる変態仮面の成敗のインパクトはこの名勝負に燦然たる「変態」の二文字を冠させるに足るものが…。さんざんやらかしてきたとはいえワイルド・ドッグが不憫すぎる…そしてそう言えば核金使ってなかったな…と思ったら精神ダメージかよ!あまりにひどすぎる絵面を前にまほろさんの精神力も底を尽き、最後に立っていたのは変態たちだけ。つくづくひどい(誉め言葉)。

>冬木ハイアットホテルへようこそ
相変わらずマイケル回の冒頭まとめはありがたいな…
というかこう書かれてみると本当にマイケルツイてないですね…災難に災難と災難がまとめて降りかかってきて、本人の迷走やスタンスのせいもあるとはいえ、いくらなんでも想定外のことが多すぎる。せめてサーヴァントが頼れる相手ならまだしも、代名詞が代名詞なあのワイルド・ドッグを引き当ててしまったわけだからどうしようもない。サーヴァント性能というより性格的な面が、長期的に見ると首を絞めたんだなと。詰んでるにも程がある惨状に追い詰められた主従の明日はどちらか。そして、いおり&アリシアは疲労困憊卑劣様に、覚悟完了美遊と接触か。卑劣様、もはや手段を選んではいられないとはいえ、こちらもかなりのピンチですね…
そして参加者を次々と梱包する変態軍団、いいかげんにしろwww

> 偽・信・闇・奇
カルナさんの風評…。まあ又聞きじゃあ、何かの冗談にしか聞こえないわなあ…
クロノたちの会議、会話ややり取りの様子が雰囲気あっていいな。イタコの例えとか、ちょくちょく面白い例えが出てきますね。
(建築業・真田源次郎さん)からの幸村バーサーカー疑惑にお茶噴いた。
というか、視点人物としての慎二が楽しい。
>だったら魔力供給でもしてもらおうか女子小学生にだって穴はあるんだ。
お前は何を言っているんだ

…会議の中でサーヴァントたちの情報がやり取りされるのは楽しい。ルーラー周りについてを含め、どう転んでいくかまだまだわからないな。

関係ないけれど、時おり挟まれる風景や情景描写がいいですね。あとは、町の様子だったり、タクシードライバーの視点だったり、この企画は今そこで起きてる聖杯戦争を多角的に描写していくカメラワークが特徴なのかなと。

話も進み、多人数を動かす場面が多くなってきて書き手の方々も大変だろうとは思いますが、どうぞ無理のないペースで企画を進められて下さい。爆破オチの線が消えてほっとしたり。
楽しみに待っております。


155 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 00:06:33 sUvx0cQw0
ご感想ありがとうございます
このような評価を頂けることは書き手冥利につき、そして今後もより一層頑張らねばという気が湧いてきます

それでは投下を開始します


156 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 01:03:13 sUvx0cQw0



 熱い蛇のようなマグマが全身を駆け巡る感覚が刹那の間に吹雪が吹き荒ぶ感覚に変わる。
 極めて断続的かつ連続的なそのラッシュがこれもまた当然に現実感を失い、顔にかかる水の匂いと感触を覚えたのは全身を動かそうとしても微塵もぴくりとしないことに気づいた後だった。

「ふん……なかなかに強靭な体と心臓だ。まさかこんな刺激で意識を回復するとは。」

 視界はスモークに包まれたようになにも見えず、全身には痺れが感じられる。そのなかで効くのはツンとした鼻から送られる匂いとやたらに甘ったるい口から送られる味となにかが軋む音がなり続けている耳、その三つだ。

「診たところとても動ける……いや、生きていることすら不思議なのだが、聖杯戦争のマスターというのは人間とは違うのか……さっきの被験者といい活きが良すぎる……令呪というのは人体にどれだけの影響を与えるのか……」

 男の声が耳から脳へと届く。
 その言葉の意味を理解することはできなくても、誰かがいるということは理解できた。

「異常とも言える生命力だ。生半可な吸血鬼よりも精強に思えてくる。これほどまでの逸材は大隊でも希だ。さて、少佐殿へ報告せねば……」

 どうやら声を出すことはできたらしい。男は二三なにか言いながら歩き出す。音からすると遠ざかっているのだろうか。

『アーチャー。』

 頭の中で呼び掛ける。だが、答えは返ってこない。

「ーーどうなっている。」

 ギリギリと眼筋を使い目線を巡らせ首のすぐ横に水滴のついたボールが置かれているのを認めて、マイケル・スコフィールドは自分の置かれている状況が変わっていることを認識した。


157 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 02:28:13 sUvx0cQw0



「これでようやく本題に入れるか。」
「……その、アサシン、顔だけ実体化するのやめてくれないか。なんか、いろんな意味で凄いから。」
(……幼いものにはウケが悪いな。)

 冬木ハイアットホテル、13階の四号室。それなりに広いとはいえ、さすがに十人近くの人間がいれば窮屈なのは間違いない。
 そう、窮屈なのだ。人数が多すぎるのだ。

 アサシン・千手扉間は霊体化すると目を左右させる。
 まず目にはいるのはベッドの上に寝かされた者達だ。元はダブルのベッドを一つに合わせ、そこに人間を横に積んでいる。その数六人。見知った顔はアサシンのマスターである九重りんと病院からの付き合いであるランサー・真田幸村とそのマスター日野茜、並びにマイケル・スコフィールド。そして残りは誰かはわからないが隻腕の少女ーー自身をアーチャーと名乗ったーーと眼鏡の少年である。
 次に視線を横にずらす。床に寝かされている、というよりかは転がされているといった方が良いだろうか。全身を卑猥な形で縛られているマイケルのアーチャー、ワイルド・ドッグがのびている。

(改めて考えると、いや、改めて考えずともわからんぞ……)

 アサシンは頭痛を覚え頭を抱える。そうだ、わからないのだ、この状況が。自分はここに病院での同盟相手と合流すべく移動してきた。その間に次々に他の主従と出会い、ともあれ共に病院に行くことになった。ここまでは、とりあえず問題はない。

 視線を反対側へ向ける。ホテルに共に足を踏み入れた美遊という少女といおりと名乗った少女は適当に椅子に座っている。この段階でサーヴァントとマスター合わせて計八人。一室にいるには少々多いだろう。だが視線を更に奥へとやると今度は色丞狂介と名乗った青年がおり、洗面所の方を向けば風変わりな眼鏡をした白衣の男が何やら作業している。

 都合十人である。なぜこんなところでぎゅうぎゅう詰めにならねばならないのだとか、なぜワイルド・ドッグが亀甲縛りされているのだとか、もう言いたいことは山ほどあるのだ。

「えー、それぞれのサーヴァントまたはマスターの意識が回復されたようなので、これより我がマスターより状況の整理があります。」
「ふぅ……ようやくか。」
(まったくだ。)

 なぜか段ボールを座蒲団代わりにしていおりとポーカーに興じていた狂介がため息を吐きながら言うと、部屋にいるマスター、あるいはサーヴァントのうち正気を取り戻している者達にも疲れた雰囲気が広がる。

「ーーどうなっている。」
(こっちが聞きたい。)

 ポツリとマイケルがこぼした言葉にアサシンはこの聖杯戦争始まって以来の共感を覚えた。


158 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 03:05:40 sUvx0cQw0



「えーっと、じゃあ、まずは、自己紹介から!」
「……」
「……」
「……あ、自己紹介ですか?」
「紹介、なのか……?」
「……まあ、うん……」
「……」
「……」
「……」
「……フフッ……」
「……えー、自己紹介じゃなくて、うーん、ね……」
「あーはいはいはい!狂介さん俺、じゃなくて僕、私から、あの、いきたいなと。」
「あ!じゃあ、いおりちゃんお願いします!」
「……小学生に気を使わせるのか。」
「ちょ、キャスター!そういうこと言うなよ!?」
「ちょっと……w」
「……フッ」
「あのマダラさんが笑った……!」
「マダラ……?」
「マダラ、じゃ、なくてアサシンさん!」
(いかん、ツボった。)

 今だ意識が戻らない者をベッドに寝かせると、マスターかサーヴァント、あるいはその両者が車座になる。あるものは壁を背にもたれ、あるものは席につき、あるものはやたら部屋に多い段ボールを座蒲団にしてこの珍妙不可思議で胡散臭い集まりはようやく話し合いを始めようとしていた。

「あの、こういう時ってとりあえず名前を最初に言った方が良いと思うんだけど……呼び方とか困るでしょ?」
「賛成です。」
「じゃあ僕も。」
「じゃあ俺も。」
「……えぇ……」

 しかし、始まらない。
 ここでこの集まりにおいて大きな問題点があった。社交的な人間が少ないのである。より正確に言えば、社交的に振る舞えるコンディションの人間がいないのだ。本来ならぐいぐいと場を引っ張っていけるまほろや茜や幸村も、ビジネストークには長けている扉間やマイケルも、五人全員が全員とも体調不慮を通り越して生死をさ迷っている状態であり、ワイルド・ドッグとりんとのび太に至っては以前目を覚まさない。小野寺ユウスケはバーサーカーであるため話に加わるのは無理だし美遊も周りが敵だらけといっていい状況では輪をかけて無口になっている。こういう場でもなんとかしてくれるタイプのドラえもんもナノカも既に死んでいる。結果として、男子高校生のノリでなんとかしようとする狂介といおりが空回り、アリシアが頑張ってフォローしようとする展開となっていた。

「じゃあ……発案者の私から。私はランサー。今回はこの子、いおりのサーヴァントとして……」

 こうして話し合いは始まる前から重苦しいものとなった。


159 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 04:39:44 sUvx0cQw0



「まさかお互いの呼び方決めるだけで十五分もかかるとは……」
「ほんとだ……ていうかもう夕方じゃん。」
『アーチャーが二人にランサーが二人でかなりややこしいからな。』
「そうだな。ていうかあんたは顔見せないのかよ。」
『私の体形を見てみろ。その暑くて狭い部屋に一緒に居たいか?』
「あっ、そっかぁ……」

 ただでさえ大多数の人間の体調が優れないなか早くもそれぞれに疲労の色が見え始めた頃に、ようやく話し合いは軌道に載った。

「ちょっと、ちょっと待ってくださいマスター!私がまだ紹介されてませんよ!」
「そういえばいたなドク。今までどこにいたんだ。」
「ずっとマイケル氏達の看病したり狂介氏が滑ってるときに『……フフッ……』とか『ちょっと……w』とか含み笑いしてましたよ!」
『あれアサシンがツボってるんだと思ってたわ。』
(儂はその下の『……フッ』だ。)
「そういえばこのサーヴァントって誰のサーヴァントかわかってなかったな。」
「クラス名も見えないし。」
『ごめんみんなそいつ俺の。』
「こいつノリ軽いな。」
「みんな一回ストップ!!順番に一人ずつ話して。」
「さすがランサーもといパン屋。接客業にはなれてるな。」
『とりあえずドク、そのちょいちょい実体化するレオタードの変態を黙らせろ。私と同じで話にちゃちゃを入れるタイプだ。』

 その後、ランサー・アリシアの取りなしがあって。

「はい、それではまず私から色々と話したいと思います。」

 一同の話し合いの最初に話す人間は、『謎の変な眼鏡のサーヴァント』に決定された。

「えー、もはやどういう状況なのか全然わからないという顔をしている方もいますがその辺りしっかり説明していきたく思います。それでは皆さん改めまして、私のことはドクとお呼びください。訳あってクラス名が表示されませんがこれはそういうものです。皆さんの中には先ほど説明した方もいますが改めて言いますと、皆さんがいるこの部屋は私のマスターが借りている部屋でして、そしてこのタブレットに写っているのが私のマスターです。」
『どうも、衛宮士郎です。』
(衛宮、士郎……!)
(((((((((偽名だな。)))))))))

 手にしたタブレットをぶらさないように恭しく頭を下げる『ドク』と名乗ったサーヴァントとは対照的な適当な声がタブレットから響く。画面には白いスーツに包まれたでっぷりと太った腹しか見えないが、それまでの言動と相まって約一名を除き汚職政治家をイメージさせるものだ。

「私、ステータスを診ていただければお分かりかと思いますが、キャスターです。これでも生前は『ゴッドハンド』と呼ばれておりましてね、医者のサーヴァントらしく先は衰弱していた皆さんに手当てを致しました。」
(ドクめ、なかなかに演技がうまいじゃあないか。)
「この止血は貴方が……?」
「ええ、アーチャー……いえ、安藤さん。貴女の体には大いに驚かされましたが、これでも軍医を勤めたこともありまして。なんなら、新しい手を移植することも可能ですよ?」

 まほろの問いかけに、ドクはサムズアップしながら答える。その自信に溢れた姿は名医の風格を感じさせるものだ。なんなら眼鏡すらお洒落に見えてくる。そしてその傍らに置かれた謎のクーラーボックスをまほろに丁寧に渡すと、「貴女が求めるならば」と続けた。


160 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 04:53:49 sUvx0cQw0

「ーー!これは……」
「大事なものらしいと、そこの変態ーー失礼、キャスターに預けられましてね。もしその気があるならば、なるべくお早い決断をお願いします。」
「あの!某とますたぁの、この包帯もーー」
「ええ、といっても魔力の枯渇が原因と思われる多臓器不全なので、正直に言うと今の私では大したことはできなかったのですがね。」
「!!ドク殿ぉ!!この恩、必ず御貸ししたくーー!」
「ーー多臓器不全……普通は死ぬはずだ……」
「それは貴方ですよ、マイケルさん。なにせ貴方の心臓は先ほど一度止まりましたから。」
「なに?」
「マイケル、先にそのサーヴァントは、お前に心臓マッサージをし、何やらオレンジ色の機械を胸に押し当てていた。」
「AEDだっけ?部屋の外に走っていって担いで戻ってきたら電気ショック始めてましたよ。」
「……」

 扉間といおりの言葉に、マイケルは心臓に手を当てる。状況はまだまだ飲み込めないが、これはドクに助けられたと見て間違いないのだろうか?ワイルド・ドッグが縛られていることとあいまり、自分の置かれている環境に更に困惑が深まる。

「いけませんね、また話が脱線してしまう……何も私は、というよりかは私はマスターは、慈善事業で皆さんを助けた訳ではありません。この戦争に国際法などありませんからねえ……有り体に言うと、見返りを求めての行動です。」
「あ、だから人手が欲しかったのか。」
「どういうことだ……あー、キョウスケ?」
「マイケルさん……マイケルさんだよね?」
「マイケルだ。」
「あってる?よかった。実は気絶しているみんなを部屋に運び込んだ時にある人を探して欲しいって言われて。それで僕らは、ランサーっていうカルナを倒すならって話になって、ああ、カルナって言うのはーー」
「大丈夫だ。ありがとう。ドク……つまり俺たちを人探しの人手の為に助けたっていうのが建前か?」
「本音ですよ。」

 マイケルはニヤリと笑ったドクから目をそらさない。この男は命の恩人かもしれないが、その得体の知れなさはいかに瀕死の状態でも感じられた。

「話が前後しますが、まあいいでしょ。意識が戻るのを待っていた方はもうその気のある方ばかりですし。」
「アサシン、二人のアーチャーに二人のランサー、そしてキャスターとバーサーカー、この六組の主従は皆が皆カルナというサーヴァントを敵としている、私とマスターはそう理解しています。」
「そして貴方達は共通の目的を持っているにも関わらず、なにやら面倒なことになっているとも。だからこうしましょう。」

 ドクは、縛られているワイルド・ドッグの元に歩くと、その首筋に注射をするジェスチャーをした。

「私達は貴方達対カルナの同盟を援護します。医療、情報、兵担、あらゆる面で。貴殿方に施したように。そしてまた捕虜の扱いや裏切りの恐れがある者も同様に。」
「対して私達は貴殿方にある人物の捜索を依頼します。その方は、カルナと戦うにあたって必ずや貴殿方の力にもなるでしょう。」

「その方の名は、アルトリア・ペンドラゴン。世に言うアーサー王伝説、その主役たる騎士王で、男装の麗人です。」


161 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 05:18:50 sUvx0cQw0









「あ、そうだ。おい狂介、お前がスーパーで脱ぎ散らかした服を持ってきたんだが、『アルトリア・ペンドラゴンとその同盟達と柳洞寺でこれから交渉する』ってメールが携帯にワカメから来てたぞ。」



「え?」



「え?」



『え?』



(キャスターさんが凄まじく邪悪な笑顔をしています……)


162 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:18:23 sUvx0cQw0



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1733】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(3)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
霊体化、気配感知、疲労(微)、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.戦闘を避けることを第一にしてきたが……またもこういう展開か。
2:茜達からスーパーでの出来事について聞き出す。
3.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定するがそれはそれとして早く魂喰いしないと。
7.穢土転生の準備を進める。
8.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがもう無理。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。死んだか?
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●美遊に対カルナの同盟について嘘をつかない範囲で婉曲的な説明をしました。やたらと「これから更なる同盟相手を増やすために活動していた同盟相手と情報交換するために冬木ハイアットホテルに行く」ということをアピールしました。
●パピヨン達と情報交換しました。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、気絶、???
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1 入院して他のマスターから見つからないようにしておく。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。


163 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:21:20 sUvx0cQw0



【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、疲労(微)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:対カルナの同盟に潜り込み内側から崩す。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドクのステータスを確認しました。
●パピヨン達と千手扉間の情報交換を耳にしました。


164 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:22:26 sUvx0cQw0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、まだまだ寝なくていい。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.状況を整理する。
2.アイツ(謎の猫耳サーヴァント(シュレディンガー准尉))、タクシー代払わなかったな。
3.いつか、ランサーに自分の『こと』を話す。
4.バーサーカーのマスター(イリヤ)が心配。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ランサーから英霊・アリシアの情報の一部を聞きました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを確認しました。
●パピヨン達と千手扉間の情報交換を耳にしました。

【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(7)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
霊体化、全身の至るところを骨折・打撲、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、魔力供給がほぼストップ。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1.警戒は緩めない。特にシュレディンガー准尉は。
2.『今度』はイオリのことを知りたい。
3.ランサー(幸村)とそのマスター(茜)と同盟を組めた……かも?
4.アサシン(千手扉間)と色々と話をしたい。
5.バーサーカー(ヘラクレス)とそのマスター(イリヤ)の安否が気にならなくもない。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。
●いおりに英霊・アリシア・ギュンターについて一部の情報を話しました。
●パピヨン達と千手扉間の情報交換を耳にしました。


165 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:23:36 sUvx0cQw0


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
ワイルド・ドッグの服、疲労(中)、精神的疲労(大)。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.え?
2.そういえば携帯一緒に置いてきてたな……
3.どこかで食品を買ったら慎二とアリスとイリヤの元へ。
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ、元に着ていた服と携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを把握しました。
●千手扉間です情報交換しました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化したり霊体化したり。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.四時間前だけどな。
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●ビッグマックとハッピーセットは暇だったんで食べました。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。
●千手扉間と情報交換しました。

【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
霊体化、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.状況を把握してワイルド・ドッグを警戒。
2.変態仮面達とドクに恩義。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。


166 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:24:31 sUvx0cQw0


【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
実体化、心神喪失状態、アヘ顔、変態仮面に対するトラウマ(?)、服を剥ぎ取られた、亀甲縛り、左腕喪失、魔力消費(大)。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男のマスターと交渉する。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。

【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
絶対安静、点滴、疲労(大)、衰弱(大)、魔力消費(小)、覚悟。
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.状況を理解する。
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に不信感。
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)よりトバルカインの情報を聞きました。


167 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:25:17 sUvx0cQw0


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
霊体化、疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内蔵にダメージ、ダメージ(大)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:ドクに恩義。
2:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
3:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
4:あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とあさしんは言ったが確かだったか。
5:俺は……
6:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)との再戦を考えていたが……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認してたことに気づきました。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●冬木市にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●槍を地下駐車場のまほろさんの車の下から回収しました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
体調不良、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.一回カメラを停めてほしい。
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●冬木市にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
●ドラえもんの四次元ポケットを持っています。


168 : 【87】これからの戦争の話をしよう ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:25:40 sUvx0cQw0


【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(5)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
健康。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1:え?
2.爆破予告で他の主従をあぶり出す。ルーラーはどのように動くか……
3.サーヴァントと交渉をしたいが……。
4.目的達成のためにルーラーを排除する策を練る。
5.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
6.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥伊達男の戦果をどう判断すべきか。
7,仮面ライダーにドラえもんか……
8.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●令呪を使って『戦鬼の徒』を使用することで戦鬼の徒の宝具、スキル等を再現できるのではないかと考えており、召喚したトバルカインで実験するつもりです。そのために場合によってはドクの召喚も考えています。
またこの考えは外れている可能性もあります。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●パピヨン達と千手扉間の情報交換を耳にしました。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。

【ドク@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(10)/E-、
耐久(10)/E、
敏捷(10)/E-、
魔力(10)/E、
幸運(10)/E、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.え?
2.医者のサーヴァントとして振る舞う。
[備考]
●対外的には医者のサーヴァントでクラスはキャスターとしています。
●パピヨン達と千手扉間の情報交換を耳にしました。
●ショックガン所持。


169 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/03(水) 06:26:02 sUvx0cQw0
投下終了です


170 : ◆Mti19lYchg :2016/08/04(木) 00:10:13 u0qulD5w0
感想を頂けるとやる気が出てきますね。
というわけでアーチャー(まほろ)、マイケル&アーチャー、茜&ランサー、高遠いおり&ランサー、ライダー(少佐)、変態仮面&キャスター、九重りん&アサシン、美遊&バーサーカー、野比のび太、ドクを予約します。


171 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/04(木) 23:59:40 bg6m9PMo0
それではイリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ランサー(カルナ)を予約します


172 : ◆Mti19lYchg :2016/08/10(水) 00:11:02 mpwOVgLg0
予約を延長します。


173 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/11(木) 23:58:59 mBWNagHg0
予約を延長します


174 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/14(日) 23:57:16 1LIPrd5Q0
投下します


175 : 【88】微熱 ーーcool downーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 01:17:18 UEPTmeBE0



 ぬるいというよりかは人肌とでも言うべき36℃のシャワーはさながら真夏日の夕立のようにイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの肢体に降り注ぐ。顔を上に向けて水の匂いと振動を堪能し、唇を舐めればカルキが口に広がった。流れる湯は天使の輪のように光を返す頭頂部の銀髪から喉と肩を経由して小高い胸部と肩甲骨へと至り、胴を滑り落ち臀部の割れ目で水位を増すと粘性を保ちながらも脚部を自由落下する。濡れた髪の感触を楽しむように頭にやっていた手から、イリヤはその体を流れる小川を肌を通り越して五臓六腑にまでことごとく浸透させるかのように胸から腹へと押しつけ、念入りに手のひらをさらさらと滑らせた。
 お湯が普段よりも大分温いのは、イリヤ本人の体調を考えてのものだ。つい先程まで熱中症のような状態であったことを考えると、シャワーは熱くても冷たくても余計な体力を消耗する。もちろん入浴自体が疲労に繋がるのだが、たっぷりとかきにかいた汗を流したいというのは乙女でなくとも人情であろう。火照った体を鎮める為のやさしい雨がイリヤに潤いを与えてくれる。それを広げた手の指先のじんじんとした血行から確認するとイリヤはきゅいと音を立ててシャワーを止めた。

 シャワーヘッドを掛けると浴槽の水面に手を一文字。湯気も立たないほどの湯船は温水プールを連想させた。その水面に、模範的なプールの入り方でゆっくりと身体を沈める。滑り込むようにお湯に浸かると僅かなさざなみに身を任せる。
 ゆったりとした揺れは規則的かつ自然に体を動かして、ふわりと眠気を誘った。全身の脱力《リラックス》が体を浮き上がらせ、ある意味半身浴の状況を作る。体の前面は空中に、体の後面は水中に。端から見ればマヌケな姿に思えるかもしれないが、しかしイリヤの水面に広がった銀髪とその迷彩の下に広がる雪原はある種の神々しさを感じさせた。

「ーーふっ、う……」

 ここに来てイリヤは初めて声をあげた。ぷかりと浮かんだ裸体は電灯に照らされ白い光を返し、時おり沈み、また浮かぶ。

「……あっ……はぁーー」

 体の左右の傾きをゆらゆら揺らし、直し、平行にし。そして。

「はぁっーーぷはっ!」

 大きく深呼吸し、体に力を入れて、潜る。水圧が増し胸を圧迫し肺を縮める。苦しい。息をしたい。目を開く。体を束の間緊張させ、からの弛緩。
 ぼこんと大きな音を立てて口から空気が固まりになって打ち上がり。
 入れ替わりに水が口内に満ちるより早く浮上した。


176 : 【88】微熱 ーーcool downーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 03:13:28 UEPTmeBE0



「ふぅ〜〜〜〜〜、良いお湯でした……」

 暫くして、イリヤは首にかけたタオルでパタパタと顔を扇ぎながら自室へと入ってきた。衛宮家はその間取りを忠実に再現されたのか自室を見る限りではここが聖杯戦争のための仮想空間であることを忘れてしまいそうだ。家具や雑貨、あるいは小物に至るまでイリヤが持っていたり欲しいと思っていたものが用意されている。そこはかとかない理由なき居心地の悪さを除けば概ね快適な空間である。そんな自室を一瞥すると、イリヤはベッドにばったりと倒れこむと目を閉じた。
 体にのしかかる疲労は、やはり大きい。
 魔力の消費はそこまで大きいというわけではなかったが、戦闘でのストレスは想像以上に大きい。そしてなにより炎天下の中玄関先で気絶していたことによる熱中症がやはり酷しい。
 もしあの時もう少し早く起こされなければ……そう考えて、イリヤは耳を澄ます。普段ならもうそろそろルビーがちゃちゃの一つでも入れてくるものなのだが、不思議と入浴以来影も形もなかった。

「ルビー?」

 名前を呼んでみる。しかし、現れない。なるほど今回はなかなか出てこないというパターンだろうか。ぼんやりとそんなことを考えながら再び「ルビー」と呼びかける。今のイリヤはほとんど頭が回っていない。機械的に発音。

「……ルビー?」

 三度目の呼びかけ。それには感情がこもる。もしかしたら冗談ではなく、ルビーはいないのか。ランサー同様いないのか。そんな予感が不安という形で声に表れる。普段ならイタズラかたまたま都合がつかないかといったところが思いつくのだが、今のイリヤは違った。といっても。

「ハイハイハ〜イ、そんなに何度も呼ばなくたってここに居ますって。」

 当のルビーがひょっこり出てきたことで直ぐに解決されたのだが。


177 : 【88】微熱 ーーcool downーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 03:43:22 UEPTmeBE0


「いやー、私達が出会った頃を思い出すシャワーシーンでしたね。あ、これ麦茶です。」
「ありがと……」

 適当なことを言いながらコップを抱えて器用に飛んできたルビーにこれまた適当な返事をイリヤは返すと、麦茶を受けとる。その様子につい先ほど見せた不安の色は皆目なく、疲労困憊という感じしかなかった。
 こくりこくりと麦茶を時間を掛けて飲み干したイリヤを見ながら、ルビーはそう思う。玄関でこんがり焼かれていたイリヤを叩き起こして以来、普段の大きなリアクションはすっかりなりを潜めこの様な調子だ。

(ま、その方がヘタに騒がれるより今はマシなんですけどね。)

 ルビーはそう心中で愚痴る。今現在、イリヤが置かれている状況は複雑だ。はっきり言って、イリヤの行動の最適解が家で静かに寝ていることである程度にはなかなかに面倒くさい。
 とはいえ、そのことをそう言葉通りに本人に伝えるわけにもいかない。丸め込まねばならないだろう。

(ほんと、静かにじっとしていてもらわないと色々不味そうなんですけどね。たぶん無理だと思いますけど。)

 ルビーは祈るように、しかし諦めの気持ちを持ちながらイリヤと会話を続ける。やれ水分補給が必要だ、やれもう少し髪を乾かせ、そんな無意味な話題をふった。イリヤもそれにだるそうに応えていたが、しかし、そんなどうでも良いことよりやはり気になることはあるだろう。それは聖杯戦争のマスターである以上ごく自然で常識的な話題だ。

「……そういえばランサーさんは?」
(さーて来ましたよ面倒な質問が。)

 ぐったりとしながらも目線を動かさずに聴いてくるイリヤを見てルビーは気合いを入れ直した。


178 : 【88】微熱 ーーcool downーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 05:13:06 UEPTmeBE0

 ルビーがイリヤにランサー・カルナの話を、というか聖杯戦争に関する話自体をしたくないのには、イリヤの置かれた状況の大きな変化があった。その最大の変化は美遊の存在の発覚である
 これまでのイリヤは美遊・エーデルフェルト達のいる元の日常への回帰をモチベーションとして聖杯戦争に挑んでいた。その傾向は遠坂凛の死によって確固たるレベルに高まっている。それはカルナを他のサーヴァントにけしかけるという、普段の彼女ならば考えにくい行動をとるほどのものだ。
 しかし、この聖杯戦争には美遊も参加者として存在してしまった。イリヤや凛が参加していた以上なにもおかしくはないが、しかし実際に相対するとなれば話は別だ。最後の一人になるまで戦わなくてはならない以上、必然的にどちらかが死ななければならない。あるいは、なんらかの手段でこの聖杯戦争から脱出する方法があれば二人が殺し合う必要はなくなるが、そうなれば今度は凛を蘇生させることが不可能になるだろう。

 親友と殺し合うか、先輩を見捨てるか、イリヤは必然的にどちらかを選択しなくてはならない。ただでさえ家族から切り離され親しいものの死によって傷心のイリヤにそのジレンマを味あわせるのは余りに酷だとルビーは判断したのだ。

 だから、ルビーは決断をした。『イリヤに美遊・エーデルフェルトという存在を認識させずに聖杯戦争の優勝者にする』と。これはつまり、美遊の基本方針を受け入れるということであった。美遊は現在イリヤに露見しないようにこちらに敵対的な主従への攻撃を開始している。ならばルビーとしてはイリヤの目がそちらにいかないようになるべく聖杯戦争から遠ざけるのが最も得策であるとした。もしイリヤと美遊がマスター同士として出会ってしまえば、イリヤだけでなく美遊にもどれだけの影響が出るかはわからない。生き馬の目を抜くこの戦いでそれだけの隙をつくるのは避けなければならない以上、絶対に二人を会わせてはならないのだ。
 またその為にカルナとイリヤが接触するのも可能な限り避けなくてはならない。この一月程カルナの人となりを見てきたが、あれは現在のイリヤ達にとって天敵であると言って良いものだ。イリヤが彼を前にすれば、ルビーと美遊の作戦は一瞬で崩れるだろう。あのサーヴァントはなんであれこの様な嘘を見逃しはしない。そしてイリヤが少しでも違和感を感じてカルナに聞いてしまえば、恐らく全てが終わるだろう。

(ーーまさか、全力でイリヤさんを騙し通さなきゃならなくなるとは。しかも美遊さんとサファイアと一緒に。)

 ルビーは自嘲する。
 ルビー、サファイア、美遊の三人は、イリヤを優勝させるためにイリヤを聖杯戦争に関わらせずに騙しきる、その道を選んだのだ。汚れ仕事は美遊とサファイアが行い、ルビーがそれから目をそらす。イリヤだけがこのペテンを知らず、優勝する。

(私だったら、こんな裏切りされたらなにするかわかりませんね……)

 マスコットとしては、失格も良いところだろ。こんな非道な存在は数えるほどしか知らない。どうやら自分達はそのなかでも割りと上位に行けそうだ。

(ま、やるからには完全犯罪を目指しますか。)

 既に美遊達は一組の主従を殲滅した。塞はとっくに投げられている。
 三人の共犯者の一人として、口八丁手八丁で詐欺してみせる、ルビーはそう腹をくくった。


179 : 【88】微熱 ーーcool downーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 05:22:27 UEPTmeBE0



【深山町、アインツベルン家/2014年8月1日(金)1534】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
疲労(小)、精神的疲労(中)、髪がちょっと短くなった、パジャマ
[残存令呪]
3画
[装備]
カレイドルビー
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
2:ランサーさんから離れすぎないようにする
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●変身は現在は解除されています
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています


180 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/15(月) 05:22:49 UEPTmeBE0
投下終了です


181 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 00:00:25 N2Ar2cN.0
投下開始します


182 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 01:41:22 N2Ar2cN.0



 1330。

 ミーンミーン、ミーンミーンと、蝉がなく。
 暑い。今はサーヴァントであり昔は艦船であっても、人形をとっている以上体機能は人間に準ずる。そうなれば、寺の縁側に腰かけているアーチャー・赤城はうっすらと体が汗ばんでいた。
 吹く風は弱く、身じろきすると直ぐに汗が吹き出るが、じっとしていてれば平常に耐えれる、そんな気温。艤装を着けていないこともあり座っている分にはなんら問題はない。

 ちら、と目線を寺の奥へと飛ばす。なるほど、なにか魔術的なものでこの寺が覆われていたが、それは問題なく作動しているようだ。でなければバーサーカー・ヘラクレスが実体化していることに誰も驚かないという事態は起こらないだろう。

(なんとなく仏像に見えなくもないですね。)

 奈良にあるという金剛力士像だっだろうか?基本的に海にしかいなかった赤城はいかんせん内陸の事情には疎い。
 それはそうとして、サーヴァントがこうも実体化していてもなんら騒ぎにならないことは異常である。特に赤城はともかくヘラクレスは。先から寺の坊主や虫取にきた子供が時おりバーサーカーの周りをうろついているが、全く不思議がりはしない。それどころか目に入っていないかのようだ。精々、子供の一人があぐらを組んでいるヘラクレスの脚に虫かごを置いて中にクワガタを入れた程度だ。

(仏像と言えばこちらの方が。)

 赤城は視線を反対ーー寺の内へと向ける。寺に参拝に来た人がまず行き着くであろうその場所を見張るように、キャスター・フドウは蓮華座を組んで瞑想していた。こちらは端から見れば一目でサーヴァントとわかりはしないだろうが、それでも目につくことには変わりないだろう。しかし、ヘラクレスと同様に不思議がる人はいない。それどころか参拝者が彼に向かって拝む程だ。

(あれ、それってまずいんじゃ。)

 なんとなく認識阻害が効いているのか不安になるが、問題らしき問題は起きていない。キャスターを拝んだ人も直ぐにスッキリとした顔になるととっとと寺から出ていってしまうため人払いにはなっている、のだろうか?
 赤城がそんなことを気にしていると、背後からパチパチと拍手が聞こえてきた。障子を隔てた畳張りの部屋には翠屋のサーヴァント達が詰めていることを考えると、彼らがなにかやっているのだろうか。どれ一つ見てみようと障子に手を伸ばしかけて、止める。マスター達が話し合っている棟に向かうには赤城が今いるこの縁側の前に道を横切らねばならない。つまりここで道を見張っていればとりあえずは一安心だ。それならわざわざ声をかけにいく必要はないだろう。しかし、直接目視で見張った方が良いかも知れないという気も起きる。

「風通そうかーーあっ。」
「あっ。」

 スススス、と赤城が凝視していた障子が開いた。手をかけているライダーと座蒲団に座った二人のセイバーと目が合う。

「どうも、あの〜、アーチャーさんもトランプやります?」
「トランプですか?」

 突然の提案に面喰らう。トランプ、トランプとはなんだ、なんでトランプなんだ。色々と疑問が頭にわく。

「じゃあ、折角ですんで。」

 とりあえず目で見て監視するということが混乱した頭で重要視され、なんとなく提案を受ける。気がつけば赤城は用意された座蒲団に座っていた。


183 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 02:38:53 N2Ar2cN.0



 1340。

「じゃあ革命です。」
「!馬鹿な、キングは二枚私の手札に……!」
「このトランプ、ジョーカー二枚入ってますから。」
「くっ……考えましたね。」

 赤城の出した二枚のキングと二枚のジョーカーを恨めしそうにアルトリアは睨む。それを尻目にテレサはここぞとばかりに4や6を出していく。


 誘っても無言のままであったヘラクレスと丁重に断ったフドウを除く四人はとりあえず大富豪を始めていた。この部屋からはマスター達のいるお堂も障子越しに伺える。時おり動く人影にそれぞれが気を配りながら、カードを場に出していった。
 なお、このカードの裏面は全て五代雄介の名刺となっている。名刺の裏側をトランプの柄にすることで使用しているのだ。

「白のセイバーよ、なぜ小さい数字のカードばかり持っている?」
「配られたカードなんだから全員こんなものだろ。」
「なぜか絵札しかこないのです……これもユウスケ、貴方の手品ですか?」
「いや、普通にカットしただけなんだけど……」

 その後、何度やってもアルトリアに絵札が集まり途中で革命を食らうという展開ばかり起こった為に早々に大富豪はお開きになった。



 1400。

「4のスリーカードです。」
「俺もスリーカード。7が3つ」
「ワンペア。」
「ロイヤルストレートフラッシュです。」
「五代さん。」
「五代。」
「なにもしてないって!」
「そうです。これは正当なるゲームの結果。それにケチをつけるのは自分の実力の「アーチャー、もう一回大富豪やろう」「賛成です」やめないか!」

 その後怒濤の絵札のラッシュを繰り出すアルトリアを前にトランプではなくUNOをする運びとなった。


184 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 03:59:38 N2Ar2cN.0



 1440。

 柳洞寺での会談開始から一時間経過。

「あっちも休憩に入ったようだな……ドロー4。」
「まさかお坊さんたちからお茶と羊羮を振る舞われるとはウノ、ドロー4、私はこういったものは食べたことはないはずなんですが、なぜか懐かしい気持ちになりますね。」
「冷ややかでいて滑らかな舌触りです……これはいったいどのようなもので作られているのでしょう……あ、ドロー4です。豆でしょうか?」
「ドロー4、小豆だね。お茶によく合うでしょう?」
「一周するとはな……」
「白(のセイバー)さん、16枚引いてください。」
「……悪いなアーチャー、ドロー2だ。」
「……えっ、えっ?」

 マスター達の会談開始から早一時間。四人のサーヴァント達はウノに興じていた。寺に来る人間はそこそこにいるが、やはり誰も実体化しているサーヴァントや閉鎖されたお堂に気を配りはしない。無意識の内に注意が反らされているのだろうか、横にヘラクレスの巨体があるにも関わらず近くの木を指差しながら寺の僧侶の一人が子供たちに虫の捕り方を教えていた。フドウの方を見れば、先程と同じように参拝者に拝まれている。違いがあるとすればその数が十人ほどにまで増えていることだろうか。お堂では障子の影からチョコが何やら立って話していることが推測される。念話で聞く限りだとランサー・カルナの話はとりあえず終わりこれから各々が見つけたサーヴァントの情報を共有する運びになったとのことだった。
 隣で難しい顔をしながら18枚のカードを引いた赤城を一瞥して、アルトリアは視線を手札に戻す。マスター達の話し合いは上手くいっている。こちらのサーヴァント達も全員見張れている。そしてこの寺に元から張られていた結界を考えると、現段階ではかなり心配する要素が少ないと言えるであろう。

「ドロー4!」
「……む、ドロー2です。」
「あ、六枚かあ……青セイバーさんウノ言ってないよね?」
「……!ウ、ウ「青(のセイバー)さんドロー4お願いします」……なるほど、気の抜けないゲームです。」

 五代と一緒にカードを引きながらアルトリアは三人を見る。こうしてこの三人を監視している限り、マスターの安全は確保され聖杯戦争遂行のための有意義な情報が手に入るであろう。もし視界外のキャスターかバーサーカーが動こうとも距離はこちらの方が近い上に一飛びで援護に踏み込める。それにこれまでの会談の状況を考えれば下手な真似はしないだろう、そう予想できた。願わくば、この状況が会談の終わりまで続いてほしいものだ。

「じゃあスキップ。」
「おっと……やるな。」
「白さんあと三枚ですか、気をつけないと。青さんドロー4持ってます?」

 もう一つ欲を言うのならば、青さんとか青セイバーさんとか呼ばれるのは辞めて欲しかった。


185 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 04:32:03 N2Ar2cN.0



 1530。

 柳洞寺での会談開始から二時間経過。

『ああ、それでいい。あの黒いのは間違いなく五代と同じ魔力を持っている。』
 そうチョコと念話をしながら、テレサは「ユウスケ、桂馬はこういってこうか?」と将棋の駒はこつこつとやった。

 妖気探知を持つテレサからすれば、この状況はかなり楽なものだ。例え死角に居ようとも少しでも魔力を動かせばそれは手に取るようにわかる。故に、こうしてだらだらと動かず騒がず時間が流れていくというのは非常に都合が良い。不安要素はそれぞれのサーヴァントがこうして遊戯に興じている間も涼しい顔でマスターとの念話をしていることぐらいのものだが、そんなことを言い出したらきりがない。たとえその内容が謀略であったとしても、そこまで知ることはテレサにはできない以上放っておくべきだ。

「王手。たぶんこれで詰ませたと思います。」
「……まだだ。」
「あと三手かな?」
「そこに銀を打ってとられた後に銀ですね。」

 こうしてテレサが必死に玉を逃がしている今も、三人はそれぞれに念話をしている。チョコの話によると会談は最後の詰めに入ったらしいのでその為であろう。情報は紙に書かれて纏められるらしいので詳しいところまではわからないが、一応得るものはあったと言える。なによりあのカルナとぶつかるにあたって他の主従が後背をつく存在としてでなく共闘する存在とできそうなのはかなり良い。どの様なサーヴァントでもマスターを守りながらではまともに戦えないことはカルナが証明している以上間違いないのだから。

「こうです。」
「ダメか、参った。」

 目の前で玉をとっていったこのアーチャーも相当な頻度の念話をしていることを考えると、中々に難しいものであったと再確認する。だが今回でカルナに向けた包囲網をしけるかが鍵となるのは確実である。しくじるのは避けたい。

(言えることは全部言ったさ。)

 後は、チョコを信じることだ。


186 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 06:22:37 N2Ar2cN.0



 1640。

 柳洞寺での会談開始から三時間経過。

「いえ、このようなものは……」「では寺の方に……」「ええ、全員見ますので……」

 しまった、そうフドウが思った時には遅かった。
 普段からマスターである慎二をある意味見守りある意味見張る為に、座禅を組み瞑想することで広く警戒をしていたのだが、まさかそれがこうも衆生を引き付けてしまうとは。
 少々念話に意識を傾けている間にいやに人が集まっていると感じていたが、いまや目を閉じていても軽く五十人はこちらを拝んでいるのがわかる。中には寺の僧侶もかなりの数がいて一心に経を読み上げるものや唯ひたすらに手に数珠を持ち拝むものもいる次第だ。

 ーー別にフドウはなにか魔術を使ったとかそういうわけでは全くなかった。セブンセンシズどころか小宇宙すら極力抑えてはいたのだ。ただいつものように瞑想を行うことで意識を集中させていたのだが、場所が悪かったのだ。
 寺で不動明王(聖闘士)が座禅を組んでいる。これを見れば敬虔な仏教徒であればあるほどそれに惹かれることになるのは当然の摂理である。本人としてはこんな聖杯戦争などという争いを起こしている模造された世界にまさかこれほどに信心のある人間がいるとは思っていなかったのだが、NPCと言えど信仰の篤い人間はいるということなのだろう。
 そしてもう一つ原因がある。それはフドウがサーヴァントらしさを限界まで消していたことだ。イリヤの張った認識阻害の結界には超常的な物を見たときに無意識に注意をそらすという効果もあったのだが、今回はそれはフドウには当てはまらなかった。寺院で袈裟を着た『魔術的な物を感じさせない』人間がいて『常識的な範囲内で』注目を集めてしまったのだ。もちろん、結界を出ればここでの出来事を段々と忘れていくようになってはいるのだが、一時的にでも注目を集めることには変わりなかった。

(これは、いったいどういうことなのでしょう……)

 その光景を見て、フドウを呼びに来た赤城はかなり遠巻きに足を止めた。長かった会談もようやく終わり一度全てのマスターとサーヴァントを集める向きになったので呼びに来たのだがまさかこんなことになっていたとは。少し目を離したと思っていたらなぜかキャスターが微かな後光と供に大勢に囲まれていた。なるほど、どうりで人が来ないわけだ、と感涙する人を見ながら思わずにいられない。

「■■■■■……」
「ひゃっ!?あ、すぐ行きます。」

 唸り声をあげながら手招きするバーサーカーに答えると、意を決して足を踏み出す。ここでこうしていても仕方ない。とにかくなんとか騒ぎにならないように回収しなくては。


187 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 06:35:45 N2Ar2cN.0



【柳洞寺/2014年8月1日(金)1640】

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
アヴァロン使用不可、実体化。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:会談の成果を確認する。
2:帰ったらハヤブサの整備を凛に頼みましょう。
3:何故冬木が会場に……それにイリヤ……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。
●スズキGSX1300Rハヤブサは小破していますが走行に影響はないようです。


【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(80)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
実体化、妖気探知、剣が折れた、デルフリンガー所持
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:会談の成果を確認する。。
2:なんでライダー(五代)は黒いバーサーカー(小野寺)と同じ姿なんだ……?
3:悪くないな、この剣。
4:チョコの軽さを注意、ルーラーを色んな意味で警戒。
5:赤いランサーの真名を調べたいけど━━
6:バーサーカー(小野寺)の索敵能力は警戒しておく
7:真名ってこんな簡単に話していいものなのか?
8:これからどうするか……
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名と魔力とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)の魔力とある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。ライダー(五代雄介)の弱点であるきもしてます。
●冬木大橋付近と自宅付近と病院付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、アサシン(千手扉間)、キャスター(兵部京介)、セイバー(アルトリア)、ランサー(カルナ)、イリヤ(pl)、バーサーカー(ヒロ)、デルフリンガーの魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●イリヤ(pl)とアーチャー(クロエ)の妖気を同一の物と誤認しました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。
●病院に赤いランサー(真田幸村)がいると考えています。
●大剣が壊れましたが、量産品故に魔力で修復可能です。ただし短時間で修復するには多大な魔力が必要になります。
●セイバー(アルトリア)とライダー(五代)の真名を把握しました。
●携帯電話が使えません。


【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
実体化、魔力増(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1.警戒を厳に、もしもの時は壁役に。
2:戦略資源(魔力等)をもっと備蓄したいなあ……
3:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。


188 : 【89】聖杯戦争の半分は待ち時間でできている ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 06:36:18 N2Ar2cN.0


【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
実体化
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める
0.乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1.会談の成果を確認する。
2:テレサ達とアルトリア達と協力できれば……?
2.あの子(亘)は無事なのか……?
3.できたら協力してくれる人が欲しい
[備考]
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の存在には気づきました。
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名を把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。


【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
実体化。
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1.まずは場を納めねば……
2.今は慎二に従い、見定める。
3.求めるなら仏の道を説くというのも。
4.色丞狂介、か……
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。


【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●イリヤと共に冬木大橋から落とされましたが少し流されたあと這い上がっできました。


189 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/16(火) 06:36:39 N2Ar2cN.0
投下終了です


190 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/17(水) 23:59:18 q8VrEK2M0
>>172
予約期間中に投下がなかったため該当する予約を解禁します

それでは投下します


191 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 01:23:37 1c8eSBAU0



「では、頼もうか。」

 そう言うと、スーツに身を包んだ黒髪の男はホテルマンを伴いロビーへと足を進める。傍らには同じく黒髪の少女と金髪にスーツの男。その四人はおもむろにフロントへと歩むと、ホテルマンは「皆本様がお部屋の変更をーー」と口を開いた。
 それを見て、フロントはいぶかしんだ。確か皆本というのは今日の深夜に突然最上階を貸しきった男であった、そう記憶している。しかし、なぜか目の前で同僚は、全くの別人を皆本として話しているのだ。おまけに今日の今日で更に最上階の三階を貸しきりたいなどと。
 思わず口を挟もうとすると、「『皆本だが、部屋をとりたい。』」と、その別人もまるで自分が皆本であるかのように話しかけてきた。ここまでされると、むしろ自分が皆本という人物のことを間違えて記憶していたのではないのか?とさえ思えてしまう。だがそんなはずはない。自分が対応した宿泊客のことを、一日と経たずに忘れたりはしない。
 「『私は皆本である』、『何も問題ない』、『皆本は私である』」等と言われてきても、頭の中の皆本という人物の顔とは明らかに違うのだ。どういうわけか当人の顔をド忘れしてしまったが、それでもこの人物は皆本という人物ではない……はずだ。なぜこの人がそんなことを言うのかはわからないが、自分の頭がおかしくない限り間違いではないだろう。

「『皆本は私だ。』」

 ……この人は皆本ではない。なぜか、思い出した顔はこの皆本ではない人の顔であったが、この人は皆本ではないはずなのだ……私がなにか勘違いでもしていない限り……私が間違っていない限り……


「ーー皆本様ですね、御予約の方はーー」

 ……この人が皆本かどうかはともかく、仕事は仕事だ。どうも頭が熱っぽくて思考力が落ちているが、そんなことは手を抜く理由にはならない。それに皆本様はお得意様だ。粗相のないよう……


「少佐殿《マスター》、アサシンの暗示により上階十二部屋の確保、完了しました。」
『御苦労。接収作業は何時までに終わる?』
「キャスターによりますと、遅くとも一九〇〇までには。」
『大変結構。アサシン、そして美遊。君達のような同盟相手を持てて嬉しく思う。』

 大教授《ドク》の持つタブレットの画面の中で、白い太っ腹の人物ーーライダー・少佐がぽんぽんと拍手をする。それを見てもスーツの男に変化したアサシン・千手扉間と美遊・エーデルフェルトの表情は固いままであった。


192 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 02:55:47 1c8eSBAU0



 冬木ハイアットホテル13階の4号室。
 そこに集まった十を超すマスターとサーヴァント達の話し合いは、重く停滞していた。
 高遠いおりのランサーであるアリシア・メルキオット達の尽力で、なんとか数分前までは、それぞれの情報交換が進んではいた。アルトリア・ペンドラゴンなるサーヴァントについては一先ず保留し、まず第一にランサー・カルナのその脅威がその場の人間達に共有され、表面上はカルナを相手にした共闘関係の構築を、全員が明示的にあるいは黙示的に認めるところとなった。
 しかし、その情報交換の最後ーーつまりは病院の主従が目撃した公園での戦闘やこの場の半数近くが当事者となったスーパーでの戦闘についての話が終わった後の、ある事件についてが、部屋の人間達の口を固くしまたようやく暖まりかけた関係を急速に冷え込ませていた。

「それでは、それぞれの主張を確認します。」

 多くのマスターやサーヴァントが困惑の表情を浮かべる中、いまや論争となった情報交換はアリシアにより主導されていた。アリシアしか話をまとめられなかった。その事件には他の皆がなんらかの形で関わってしまうために、もっとも当事者から遠いのは彼女であったから。
 アリシアは視線をアーチャー・安藤まほろへと向け、色丞狂介、真田幸村、日野茜、マイケル・スコフィールドと巡らせて全員に聞こえるように少し大きな声で言った。


「アーチャー・安藤さんのマスターのナノカさんを、このアーチャーが殺した……そう言いたいんですね?」


 再び視線を向けてきたアリシアに、まほろは小さく、だがしっかりと、頷いた。

「やはり、なにか誤解があるとしか思えませぬ。」

 それに対し、真っ先に否定的な見解を示したのはランサー・真田幸村だった。ドクからの手当てを受けたこともあり誰の目からも満身創痍といった有り様ではあったが、しかしその目は微塵の弱気もなくしっかりとまほろに向けられていた。

「其があーちゃー殿のことを深く知っているとは言いませぬ。しかし、短い間とは言えど、その人となりは安藤殿よりかは幾らか覚えがあります。」
「ちょっと見た目は怖いかも知れませんけど、そんなに悪い人じゃないかなって思います。」

 幸村に続けてそのマスターである茜も同様に懐疑的な発言をする。それに「でも実際に僕達は戦ったんだ」と狂介が反論した。

「いつの間にいなくなったのかはわかんないけど、あの子、のび太くんは誘拐されてたんだし。」
「だからといって、あーちゃー殿がナノカ殿を殺したとは言えないのでは。」
「それじゃあなんでのび太くんを拐ったのか理由がつかないですよ。」
「それは……しかし、それなら尚のことあーちゃー殿が殺したとは……もしそうならば、ナノカ殿と共に殺してしまうのでは?」
「まあ……確かに。」
(ホテルのサーヴァントとグルかもしれない、なんて今は言えないな……)

 狂介と幸村の議論を見て、アリシアは悩む。この問題は、実はその内容以上に大変なことになっていると感じた。


193 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 04:07:07 1c8eSBAU0

 問題そのものはシンプルである。片方のアーチャーがもう片方のアーチャーのマスターを殺した。ようはこういうことだ。その直前までカルナ相手に共闘していたり、殺した後にスーパーにいた人間を車に乗せてホテルに逃げ込んだりしているが、突き詰めれば非常にわかりやすいものだ。
 そして、事件の犯人も非常にわかりやすい。状況だけを見れば、どちらの話を聞いてもマイケルのアーチャーが犯人で間違いないだろう。アーチャー安藤がカルナと戦っている隙をついてそのマスターを殺し、一緒にいた少年を人質にして自分の仲間達と共にホテルに逃げ込んだ。そして追ってきた安藤達と戦い敗北した。低く見積もってもこれで六割方は正解のはずだ。

 しかし、ではそれで犯人はマイケルのアーチャーだと決定するのは今のこの場では難しかった。なぜなら、アーチャーには既に仲間がいるから。
 幸村からすれば、強敵を相手に共に戦った相手が気絶から覚めてみれば殺人犯扱いされていたのだ。一足早く気絶した茜も同じく気絶したマイケルも、当然それを受け入れることはできるものではなかった。同様に今はここにいない扉間も同じような反応であった。彼は安藤達の話に理解を示してはいたが、しかし納得しきった表情ではなかった。
 一方、マスターを殺された安藤やその安藤とカルナとの戦いから共に動いていた狂介、及び現在ホテルの最上階を調査しているキャスターは、当然強硬に犯人であると主張していた。なにより、彼らは唯一アーチャーの犯行を目にした目撃者であり被害者であり容疑者であったからだ。
 そして、ドクや美遊やアリシアは、この論争に巻き込まれるハメになった。彼らはアーチャーの犯行どころかアーチャーの存在すら知らないーー少なくとも表向きはそうであるーーのだ。故に第三者の視点からの見解を求められることになった。それを嫌ってか、ドクと美遊は扉間を連れて部屋を出ていってしまった。部屋が手狭だから場所を用意するとのことだが、アリシアからすれば面倒事を押しつけられた形である。

 つまり現在、アリシアは板挟みなのである。

 アリシアにとってこの問題は犯人か犯人じゃないかは関係ない。重要なのは、どちらの判断を下そうとも主張を認められなかった方から反感を喰らうことが避けられないということなのである。そしてそれはアリシアの今後を大きく左右する。主従揃って消耗している今、ほんの気紛れでこちらが殺されかねないのだ。

(どう考えても、アーチャーはクロ……)
(確かに犯行の証拠は安藤さん達からしか出されなかったけど、状況と合わせて考えれば、まず間違いない。)
(……やけに出来すぎてるって感じないわけじゃない。裏切るタイミングは他にあっただろうし、死体をわざわざ爆破したのも、のび太って男の子を人質にしたっていうのも、デメリットが大きいとは、思う。)
(でも、筋は通ってる。)

 アリシアは迷う。彼女個人としては、安藤達に賛成したい。しかし、そうなれば幸村達は確実にいい顔はしない。それは間違いない。だが、両者の話が平行線をたどる以上、いずれはこちらに話を絶対に振られてしまう。その時に曖昧な態度をとればどちらも敵に回しかねない。それだけは避けなければ。

『ランサー、幸村達に賛成してくれ。俺は反対するから。』
『?それじゃあバラバラにーー』
『バラバラにした方がいい。そうすれば、俺は安藤さん達から、ランサーは幸村達から、それぞれコネが作れる。へへっ、二枚舌外交ってね。』
『……マスターそういうのって学校で習うの?』
『女子小学生の嗜みだよ。』

 アリシアは耳を澄ます。いつの間にか議論は平行線からかかなりトーンダウンしていた。どうであれ口を挟むならば、今であろう。


「ーー私は部外者だからこれはこうだって言うことはできないけれどーー」

 全員の視線が集まる。もう後戻りはできない、やるしか、ない。


194 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 05:44:29 1c8eSBAU0



「最上階にあったものは簡易的な拠点だった。二つの系統の技術でそれぞれ独立して陣地化されていた。あえて分けたというよりは、一つのものとして運用できなかった、といったところだろうな。」
『興味は引かれるが……本題は?』
「俺がわざわざお前と無駄話をしに来たと思うか?ピンクにマーキングしたところを踏まなければ仕掛けが作動しないようにしておいた。」
『さすがに有能だな。こちらもアサシンの協力で三フロア貸し切れた。それでは移動するとしよう。』
「ふぅん……まるでキャスターみたいだなあ?」
「……」

 すし詰め状態の部屋の前で合流したキャスター・パピヨンと扉間達はそんな会話をしていた。
 彼らはそれぞれ魔術工房と化した最上階の乗っ取りの為に動いていた。自分達と同じ建物に他の陣営の拠点を放置しておくことはありえない以上、なんらかの処置が必要となる。その処置に彼らは拠点を奪い自分達に都合のよいものにすることを選んだのだ。これは、魔術工房のレベルが高くなかったことで考え出された案だ。明らかに突貫工事と思われるそれを改竄、改築することはキャスターのスキルを持ってすれば十二分に可能であり、元の持ち主へのアピールという面でもただ破壊するより効果的であると判断された。またキャスターが魔術的に乗っ取りを進める間に扉間達は手続き的に乗っ取りを成功させていた。扉間が幻術をかけることで自身を最上階の宿泊客と思わせ、ついでに料金は元の宿泊客持ちでスイートルーム十二部屋を階ごと貸し切ることに成功したのだ。

 なお、この時扉間は魔力不足を理由に美遊から魔力供給を受けることを認めさせた。これは美遊にとっても面白い提案ではあった。うまくいけば扉間を令呪の影響下に置けるためである。そのため現在はサファイアを介して魔力が扉間へと流れ込んでいた。

「さて、アイツらはまだやってるんだろう。結論は出ないだろうが。」
『ほう、じゃあ私は終わっている方に花京院の魂を賭けよう。』
「お、三部か?」
「そういえば少佐殿《マスター》、下の売店に単行本がありましたな。」
『マジ?』
「るろうに剣心のコンビニ版もあったな。」
『るろ剣はいいや。』
「お前死にたいんだってなあ?」
(こやつらは一体何の話をしているのだ。)
(三部ってなんだろう。)


 いつの間にか顔のついた太陽が空に浮かびうんこがたくさん落ちている謎の空間に一同は囚われながらも、輪郭を適当にしつつそうこう言いながらドクは扉のドアノブに手をかける。そして回すと部屋の中はーー









「ーーそういえば少佐殿《マスター》、ジョジョの横にドリフターズの最新刊「いいからとっとと扉を開けい!」」

 なぜか一緒に輪郭が適当になった扉間が喝を入れるとドクの手を払い除けてドアノブを回す。これで以上変な空間にいたらお体に障りますよ……



 がこっ。



「ええい、開かぬ!」
「オートロックですからね。」
「そもそもサーヴァントなら霊体化すればいいだろう。先に入るぞ。」
『あ、キャスター鍵開けてくれ。タブレットは霊体化できん。』
「知ったこと……」

「ーー私は部外者だからこれはこうだって言うことはできないけれどーー」

「……か。」
「……」
「あ、キャスター。」
「キャスターか……あ、ランサーもう一回頼む。」
「え。」
「青ランサーさん、お願いします。」
「らんさぁ殿、どうか。」
(……こんな空気で言えないよ……)
「キャスターさん、これはやってしまいましたねえ。」
「なんかシリアスな場面だったみたいだな。場の空気が相当重かった。」
『これは今後の聖杯戦争に響くだろうなあ……』
(私、この人達嫌いだ。)
『サファイア、なんでランサーがこっちを睨んで……』
『とんでもないとばっちりですね。』


195 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:43:09 1c8eSBAU0



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1808】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(4)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
霊体化、気配感知、美遊(サファイア)から魔力供給、疲労(微)、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.……色々とままならんな。
2:ワイルド・ドッグからスーパーでの出来事について聞き出す。
3.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定するがそれはそれとして早く魂喰いしないと。
7.穢土転生の準備を進める。
8.他の組の情報収集に務める。ランサー達は諦めた。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。死んだか?
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●美遊に対カルナの同盟について嘘をつかない範囲で婉曲的な説明をしました。やたらと「これから更なる同盟相手を増やすために活動していた同盟相手と情報交換するために冬木ハイアットホテルに行く」ということをアピールしました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、気絶、???
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1 入院して他のマスターから見つからないようにしておく。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。


196 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:43:52 1c8eSBAU0


【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、疲労(微)、アサシン(千手扉間)へ魔力供給(サファイア)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:対カルナの同盟に潜り込み内側から崩す。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドクのステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。


197 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:52:16 1c8eSBAU0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、まだまだ寝なくていい。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.両面待ちしたいけどダメみたい。
2.アイツ(謎の猫耳サーヴァント(シュレディンガー准尉))、タクシー代払わなかったな。
3.いつか、ランサーに自分の『こと』を話す。
4.バーサーカーのマスター(イリヤ)が心配。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ランサーから英霊・アリシアの情報の一部を聞きました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。

【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(6)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(0)/B
実体化、全身の至るところを骨折・打撲、疲労(微)、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、魔力供給がほぼストップ、宝具使用不可。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1:アイツら嫌いだ。
2:警戒は緩めない。特にシュレディンガー准尉は。
3:『今度』はイオリのことを知りたい。
4.他の主従から反感を買わないように立ち回る。
5.バーサーカー(ヘラクレス)とそのマスター(イリヤ)の安否が気にならなくもない。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。
●いおりに英霊・アリシア・ギュンターについて一部の情報を話しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。


198 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:53:08 1c8eSBAU0


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
ワイルド・ドッグの服、疲労(中)、精神的疲労(大)。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.アーチャー(ワイルド・ドッグ)を告発する。
2.着替えるタイミング無くしたな……
3.どこかで食品を買ったら慎二とアリスとイリヤの元へ。
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ、元に着ていた服と携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシンに不信を抱きました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化したり霊体化したり。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.やっちゃったな。
2.ホテル最上階で陣地作成。なんなら特殊核金も。
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ホテル最上階のイサコと兵部京介の魔術工房を乗っ取りました。どのようなことが起こるかは不明ですが少なくともパピヨン本人が


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
実体化、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.ワイルド・ドッグを告発する。
2.変態仮面達とドクに恩義。ただしドクとそのマスターはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性があるので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシンに不信を抱きました。


199 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:54:17 1c8eSBAU0


【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(20)/D+、
宝具(10)/E
実体化、心神喪失状態、アヘ顔、変態仮面に対するトラウマ(?)、服を剥ぎ取られた、亀甲縛り、左腕喪失、魔力消費(大)。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.伊達男のマスターと交渉する。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんとナノカ・フランカを魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。

【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
絶対安静、点滴、疲労(大)、衰弱(大)、魔力消費(中)、覚悟。
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.状況を収拾する。
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)に不信感。
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)よりトバルカインの情報を聞きました。


200 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:54:51 1c8eSBAU0


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内蔵にダメージ、ダメージ(大)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の汚名を灌ぐ。
2:ドクに恩義。
3:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
4:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:俺は……
6:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)との再戦を考えていたが……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認してたことに気づきました。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●冬木市にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●アーチャー(まほろ)、狂介&キャスターに不信を抱きました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
体調不良、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)さんの誤解を解く。
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●冬木市にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。


【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
●ドラえもんの四次元ポケットを持っています。


201 : 【90】Love&Peace ーー愛憎と不和ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:55:47 1c8eSBAU0


【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(5)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
健康。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1:セイバー確保のための準備を進める。
2.爆破予告で他の主従をあぶり出す。ルーラーはどのように動くか……
3.サーヴァントと交渉をしたいが……。
4.目的達成のためにルーラーを排除する策を練る。
5.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
6.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥伊達男の戦果をどう判断すべきか。
7,仮面ライダーにドラえもんか……
8.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●令呪を使って『戦鬼の徒』を使用することで戦鬼の徒の宝具、スキル等を再現できるのではないかと考えており、召喚したトバルカインで実験するつもりです。そのために場合によってはドクの召喚も考えています。
またこの考えは外れている可能性もあります。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。

【ドク@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(10)/E、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E、
幸運(10)/E、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.そういえばシュレディンガー准尉を見ないな。
2.医者のサーヴァントとして振る舞う。
[備考]
●対外的には医者のサーヴァントでクラスはキャスターとしています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ショックガン所持。


202 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 06:56:07 1c8eSBAU0
投下終了です


203 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/18(木) 23:59:02 1c8eSBAU0
投下します


204 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 01:38:14 zHsEB/wQ0



 毛足の長い絨毯の引かれた部屋の時代を感じさせるソファに座るアリス・マーガトロイドとその近くで壁を改めている間桐慎二の前にイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが戻ったのは彼らがその部屋に入ってから5分ほどしてのことだった。

「待たせたわね。侍女がいないから大したもてなしはできないけれど、歓迎するわ。」
「そりゃどうも。わざわざあんな苦労して森の奥まで来た甲斐があるってね。」


 柳洞寺での会談終了後、慎二達間桐邸の三組は当初の方針通りにアインツベルン城へと移動していた。現在は内部に無事入場後それぞれに一息を入れている。少ししてから会談についての話し合いが設けられることとなっていた。

 柳洞寺で得たものはそれなりに大きい。まず第一に、三組の主従の情報を得られたことだ。
 一組は遠坂凛とそのセイバー、アルトリア・ペンドラゴン。セイバークラスの優位を示すようなステータスと、それだけのサーヴァントがどう戦うのかを知ることができたのは大きい。宝具の恐らくエクスカリバーがどのようなものかまではわからなかったにしても、真名がわかっていることや戦場となった公園の情報で分析の手段はいくらでもある。また慎二にとってはマスターが遠坂凛の名を騙る変装した偽者であるとわかったことは大変重要であった。うっかり普段の調子で話しかけていれば確実に怪しまれていただろう。
 一組はクロノ・ハラオウンとそのライダー、五代雄介。この主従については、ライダーよりもマスターの方が脅威だとわかったことが大きい。サーヴァントと共闘して他のサーヴァントを殺したというのは俄には信じられないが、本人がそう言う以上はそうであると認識して置いた方が得策であろう。敵に回すのならばマスターではなくサーヴァントの一人と思うほうが良さそうである。ライダーについては真名を自分から明かしてきたことが気がかりではあるが、ステータスは非常に低い。多芸な側面を見るに戦闘向きではないだろうと推測できる。
 そして最後の一組は黒鳥千代子とそのセイバー。この二人そのものの情報はセイバーのステータス程しかないため他の二組よりかは情報が少ないが、しかし最も与し易いということはわかった。マスターのチョコは明らかに場慣れしておらず、会談の時も基本的
に受け身であったことを考えると、おおかたセイバー頼りで何とかしてきたのだろう。
 これら三組の情報が得られたのは何よりだ。なにせ自分達以外に固まって動いている同盟の情報はこれが初めてである。他の同盟が実在したことを知れたのは今後の聖杯戦争を考えれば大きいはずだろう。

 他にも件のカルナの情報や黒いバーサーカーについて知ることができたのも悪くない。自分達が提供した情報を考えると釣り合わない程のものを手に入れられたのだから思わぬボーナスである。それと互いの連絡先を交換したのも不安要素はあるが概ねプラスである。なにかあってもなくても、これで都合五組の主従にそれぞれが連絡をつけられるようになったのだから。
 ーーなおこの時イリヤとアリスがスマホを取り出したのを見て「そういえばお前ら僕と狂介が連絡先交換してた時は出さなかったよな?」と慎二は思わずツッコミそうになったがなんとか堪えることに成功した。ナイスファイト。


205 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 03:16:28 zHsEB/wQ0

 その後散会となり寺から出るときになってなぜか大勢のNPCに囲まれていたキャスターを見たときは面食らったが、慎二が間桐の名を出してギリシャからの留学生と紹介したらすぐに受け入れさせられた。ここが冬木ならば間桐という名はかなりの意味を持つ。それはたとえ聖杯戦争の為に再現された冬木でも変わらないようで、特に年配のNPCを中心に非常に好意的な反応を得られたのも、また一つの有意な情報であろう。

 そして現在、柳洞寺で翠屋の主従の同盟と別れた後、随分と後回しにされてきたアインツベルン城での話し合いの場となっていた。とはいえあの柳洞寺の場でも話せるようなことは大部分を話してしまったため、ここでの議題はあの三組の主従についてのものである。着替えを終えて応接間に戻ってきたイリヤは、彼女を待つ間に寺でキャスターを拝んでいたNPCから貰った和菓子を口にしていた慎二とアリスの向かいに座ると「お茶はまだだけど始めましょうか」と言って話を始めた。

「私としては、別にあの三組と同盟を結んでもいいと思ってるけど。」
「同じく。僕はどっちでもいいけど、あっちも聖杯戦争を止めようとしているんなら妙な真似はしないだろうし。」
「私も。つまり全員賛成ね。」

 三人のマスターはそれぞれ顔を見合わせる。まず、ここで合意できるかが重要だ。ここで三人まとめて動くメリットとデメリットを考慮した上で、それぞれがあちらとの同盟の是非を判断していることは間違いない。つまりこの同盟を飲むということは今ここでこうして同じ席を囲む三人の信頼関係に揉め事に関わってくるのだ。
 そして今、その合意はとれた。まずは一つ。今回のことで前進する。

「まあこうなるとは思ってたけど、やっぱりか。で、どうする?他になにか確認しておくことは?僕としては一旦解散したいんだけど。」

 合意がとれたことを確認すると、慎二は早くもまとめに入った。随分と急な話の持って行き方にイリヤは疑問に思う。「シンジ、急いでいるように見えるけれど?」と当然の質問をすると慎二は続けた。

「狂介と一度連絡を取りたい。アイツスマホの使い方わかってないのか一度も電話に出ないぞ。」
「ふーん、かなり楽観的ね。」
「そうかな?」
「そうでしょう。私なら、もう死んじゃったって思うけれど。」
「さすがにそんなマヌケじゃないと思いたい……なんかあの、揉め事に自分から首を突っ込んで行きそうだとは思うけど。」

 そう言って慎二は二人に見えるようにスマホの画面を向けた。既にかなりの数の発信を狂介にしているが、一度たりとも電話に出ていない。

 「そういえば買い出しに行ったのって、あのスーパーなんじゃ」とポンと手を叩きながらアリスは言った。それを見てイリヤも「新都で爆発したっていう?」と続く。


206 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 04:14:03 zHsEB/wQ0

 彼女達の頭に思い浮かんだのは新都の警察署近くにあるスーパーのことだ。なんでも柳洞寺での会談が始まる少し前に公園が爆発する時と良く似た光の柱と共に爆発したらしい。現地ではカルナと思われるUFOの目撃情報もあり、しかもそれが何十人もの警察官やマスコミ関係者であったことから、『警察署を狙ったテロ』として大々的に報道されていた。折しもその時警察署では記者会見の真っ最中であったため、報道管制を牽く間もなく全国に放送されてしまったのだ。

「おいおい待てよ二人とも。確かにスーパーはあるけど……普通買い出しって言ったら家から近い場所で買わないか?しかも船に乗らなきゃ深山町側にはこれないってのに。商店街で買おうって思うだろ。」
「……橋が落ちていることを忘れてたのは誰だったかしら?シンジ。」
「キョウスケは商店街のことを知ってるの?」
「……なんだよお前ら僕が悪いっていうのか!?」
「いいえ。ただ不幸な事件って思っただけ。」
「惜しい人を亡くしたわ。」
「……わかった。良くわかった。じゃあまず確認をとろう。スーパーが爆発したって聞いたときに一応さっき死人の名前を調べたんだけどその中にアイツの名前はなかった。だけど実は死んでるかもしれないしそうじゃないかもしれない。だから今から知り合いの警察官に電話する。その警察官も狂介のことは知ってるからなにか聞き出せるかもしれない。」

 イリヤもアリスも、言った言葉に慎二を責めようとするニュアンスは全くなかった。それが慎二を苛立たせる。
 別に慎二としては狂介が死んでいたとしてもさほど悲しくはない。だが、それが自分の判断ミスで、しかもそれを仕方ないなどと(慎二の頭のなかで変換して)言われると哀れまれているように思えてくる。それは慎二にとって認められるものではなかった。
 そしてスマホの電話帳にある人物の名前を見つけたことで警察に問い合わせるという発想に行き着いた。『尾留川』と登録された電話番号。それは、あの忌々しい警察署での取り調べの時に自分と狂介の話を聞いた婦警の名前であった。

 慎二は二人の目の前でわかるように電話をかける。これで少なくとも『絶対に死んでいる』のか『死んでるかどうかわからない』かはハッキリする。

 ……。

 …………。

 …………………。


207 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 04:27:18 zHsEB/wQ0

「……って、圏外じゃないか!?」
「あ、機械を使われても見つからないように結界が張られてるってさっき言わなかったかしら。」
「スマホもダメとは聞いてないぞ、クソッ……まあいい、狂介もおんなじように圏外になってるかもしれないし。アインツベルン、どこから使えるようになる?」
「森から出れば確実に使えるはずよ。来たときのタクシーもまだ暗示で城の前に停めておいたし。」
「オーケーわかった。せっかくだ、僕は一度間桐邸に戻る。こっちに泊まる用意もないしね。」
「私も着いてく。家は新都にあるから。狂介とは生きていたらどこかで合流できるかもしれない。」
「そう……それなら明日の朝九時に間桐邸で落ち合いましょう。私も今日はやることが多いから。」

 慌ただしく慎二は用意を始め、アリスもまた立ち上がった。
 ここで一旦全員別行動をとることになりそうだ。思えば丸半日の付き合いだが、最初に会った時にはここまで長い付き合いになるとは思わなかった。

「皆さんお茶を……あら?」
「悪いわねアーチャー、淹れてもらったのに。ちょっと事情が変わってね、直ぐに出ていくことになったみたいよ。そんなに急がなくてもいいのにね。」
「圏外の所にいたんじゃ狂介どころか誰からも連絡が来ないからな、悪いけれど、直ぐに出発させてもらうよ。それに今日はお茶してばっかなんでね。」

 ティーセットを持って現れたアーチャーが目をぱちくりとする。それを見てイリヤは笑った。確か彼女には自分が着替えにいく前にお茶の指示を出したはずだが、まさかこんなにも短い間に出ていくことになるとは思わなかっただろう。

「すみません……」
「いいわ、貴女が謝るようなことでもないし。淹れてもらえる?」
「アリス、一緒に乗ってく気なんだろう?僕ん家の前までは奢るよ。」
「ありがとう。イリヤ、タクシーの運転手の暗示はいつまでもつの?」
「あのレベルのなら、この森に入ってから出るまでのことは忘れるし、前後のことも記憶が曖昧になるわ。なにか暗示で上書きしたいのならシンジの家までは待った方が良い。」
「どうも、参考にさせてもらう。」

 アーチャーがお湯を注ぎ終わる頃にはシンジもアリスも部屋を出ていっていた。この城から町まで戻るには車を使ってもそれなりに時間がかかる。その意味では迅速な行動は正しいだろう。

「ーー少し温いかな。」

 一口紅茶を転がし飲み込みイリヤは同盟相手が出ていった扉を見る。


 こうして倉庫街から行動を共にしていた彼らは、そのパーティーを一時解散することとなった。


208 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 04:36:40 zHsEB/wQ0



【深山町、アインツベルン城/2014年8月1日(金)1754】

【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[状態]
精神的疲労(微)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.一度自宅に戻る。
2.一応狂介を探しておく。
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンに疑念を抱きました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
魔力増(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1.警戒を厳に、もしもの時は壁役に。
2:戦略資源(魔力等)をもっと備蓄したいなあ……
3:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。


209 : 【91】再編成 ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 04:37:22 zHsEB/wQ0


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.間桐邸に戻って狂介の安否を知り合いの警察官のNPCに確認する。
2:あのルーラー、かなり軽いな。
3:ライダー(孫悟空)は許さない。
4:間桐家で陣地作成を行うと思っていたがアインツベルン城も悪くない。
5:会場と冬木市の差異に興味。新都に行ったら色々と調べてみるのも一興。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。
●マスターの人数が三千人、もしくはマスター千五百人サーヴァント千五百人程度だと思っています。
●アリスに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]
精神的疲労(小)、頭痛、その他程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、黒のワンピースとソックス、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1.まずは城の整理とかかな。
2.明日の朝九時に間桐邸に向かう。
3:別行動しているキョウスケが気にならない訳ではない。
4.参加者が何千人もいる……!?
5:あのルーラー……ルーラーとしてはかなりいい加減ね。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が何千人という規模であることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


210 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 04:37:38 zHsEB/wQ0
投下終了です


211 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/19(金) 23:59:19 zHsEB/wQ0
投下します


212 : 【92】コールドライン ◆txHa73Y6G6 :2016/08/20(土) 02:24:07 MAaJo9XA0



「狂介の奴三十分ぐらい前から何回も電話かけてきてたのか。間の悪い、行き違いじゃないか。」

 アインツベルン城を囲むように広がる森から出た途端電波が繋がるようになったスマホを操作していた間桐慎二は、苛立たしげに画面をフリックしていた。
 城から走らせているタクシーは既に住宅街を望む所まで移動してきている。悪路とはいえ基本的には直線の多い森の道は二十分も車で走ると外れにまで出ることができた。

「しかもクロノからもやたら来てる。これどうやって留守電聞くんだ?」
「狂介が生きているのなら私は普通に帰るけれど。」
「そうだな、少し待ってくれ。本人にかけ直してみるから。」
「わかったわ……あら?」
「誰からだ。」
「……遠坂凛。」
「アイツか……おおかた、僕に電話が繋がらなくてそっちにかけたんだろう。おっと、こっちも繋がった。もしもし。」
『もしもし!慎二か!?今どこにいる!』
「もしもし。凛?」
『……ほら、繋がったじゃない。あ、もしもし、貴女達に連絡がつかないみたいだからかけてみたんだけど。』

 後部座席に並んで座る二人はそれぞれに通話を始める。それぞれがその場にいない人間と会話していたが、それが変わったのは間桐邸が見えてきた頃であった。

『慎二、アルトリア・ペンドラゴンって人知ってるか?あとカルナと真田幸村っていうランサーも。』
「……言いたいことは色々あるんだけど、ちょっと待ってくれ。今から車を降りる。」

「アリス、クロノ達には僕から折り返すように言っておいてくれないか。なんかスゴいめんどくさいことになっているみたいだ。それとここまでのタクシー代」
「……いいわ。そう伝えておく。」

 慎二はアリスに五千円札を一枚渡すとタクシーから降りる。自分が柳洞寺で色々とやっている内に狂介のほうもかなり状況が動いたようだ。ここは一つじっくり腰を据えて話を聞き出す必要がある。

「狂介、こっちはあれから三組のサーヴァント達を見つけてね。」
『ああ、こっちも今は……えーと……全部合わせて八組かな?』
「次から次からビックリな情報が出てくるな全く……」

 慎二は手早く玄関の扉を開けると電話をかけたまま入る。また気の抜けない時間が始まりそうだ。



「凛、良かったら後でこちらから連絡するけれど。」
『少し待って……いえ、いいわ。ちょっと話しておきたいことがあるから。そっちの都合があえばこのまま続けてもらえると嬉しいのだけれど。』
「私は問題ないわ。」

 未遠川へと進むタクシーの中から、間桐邸に消えていった慎二を尻目にアリスは通話を続ける。その目には慎二への感情の色は何もないように見えた。

 慎二は電話を折り返すようにアリスに言ったが、アリス当人にそれに従う気は毛頭なかった。別に彼女は慎二の部下でも手下でもなんでもないのだ、彼に従わなければならない道理などありはしない。明らかに情報を独り占めしようとするような行為をみすみす見逃すはずなどないのだ。それに慎二は『言っておいてくれ』とは言ったものの通話を辞めろとは言っていない。ならば、通話相手の都合で電話を続けてもなにか言われる筋合いはないだろう。

 凛と通話しながら、アリスは吟味する。柳洞寺での会談で得るものは得られた。ようやく単独行動がとれるのだ、同盟相手のことを考えるとそろそろ身の振り方を見直しておいた方が良いのかもしれない。もっとも、今のままでもかなり順調だとは思うが。

(ーー慎二、さっきの貴方はちょっと怪しかったから。)

 アリスの口が歪む。その口角が上がった顔のまま「そうそうーー」と言うとなんでもないかのように言葉を続けた。

「ランサー・カルナについて小耳に挟んだんだけどーー」







 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


213 : ◆txHa73Y6G6 :2016/08/20(土) 03:38:08 MAaJo9XA0
投下を中止し取り止めます


214 : ◆txHa73Y6G6 :2016/09/12(月) 23:59:52 7ot/VuZY0
すっかり久々ですが投下します


215 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 01:00:13 MIRdZZOc0



「狂介の奴、三十分ぐらい前から何回か電話かけてきてたのか。間の悪い、行き違いじゃないか。」

 そう言いながら間桐慎二はスマホをフリックする。アインツベルン城を囲むように広がる森から出た途端に電波が繋がるようになったそれには、狂介のスマホからの着信履歴が列をなして表示されていた。
 城から走らせているタクシーは既に住宅街を望む所まで移動してきていた。悪路とはいえ基本的には直線の多い森の道は二十分も車で走ると外れにまで出ることができる。森に隠されていた太陽もその沈んでいく姿が時たま見えるようになってきた。

「しかもクロノからもやたら来てる。これどうやって留守電聞くんだ?」
「狂介が生きているのなら私は普通に帰るけれど。」
「そうだな、本当はイリヤにも一言言っておきたいんだが……いや、少し待ってくれ。本人にかけ直してみるから……おっと、繋がった。もしもし。」
『もしもし?慎二か!?今どこにいる?』

 後部座席に並んで座るアリスの耳にも半日ぶりとなる狂介の声が聞こえた。ということは、つまり狂介は生きていたと見て良いだろう。アリスとしてはほぼ死んだものとしていたがそれならそれで良い。大した付き合いもないのでなんの情もわかないが、一応知り合いなのだ、まだ死んでいないのは都合が良かった。ちょうど住宅地に入り始めた車から景色を見ながら、アリスは電話へと耳を傾け。

『慎二、アルトリア・ペンドラゴンって人知ってるか?あとカルナと真田幸村っていうランサーも。』
「……言いたいことは色々あるんだけど、ちょっと待ってくれ。おいアリスーー」

 そしてすぐに聞こえてきた名前に驚かされた。眉が動く。
 今、聞き違いでなければ、アルトリア・ペンドラゴンと狂介は言ったのだろうか。それどころか真田幸村にカルナの名前も聞こえた。

「生きてたみたいね。それも揉め事に首を突っ込んで。」
「だな。それで、どうする、家に寄る?」
「そうね……私はーー」
『あ、これって言わない方が良かったっけ……キャスタ『ロン、メンタンピン一発ドラ1……裏ドラ乗ってドラドラ、跳満です』あああああああああああああ!!』
「……!?」
「うっさ!……なんだ、なんで突然叫んだんだ?」
『あれ?ピンフってロンの時はつかないんじゃ?』『つかないのはツモの時ですよ』『ツモピンアリのクイタンアリが一般的らしいよ』『クイタン?』『いや俺も良く知らないけど』『よし、次の莊から赤ドラも入れよう』『キャスター……点棒が……点棒が……』『二連続で飛ぶとはな』
「おい狂介!いったい何があった!何をやってるんだ!?」

 謎の狂介の絶叫とキャスター、そして何人もの人間の声がスピーカーから流れる。珍妙な符号と、そしてジャラジャラという騒音がそれに続いた。
 それを聞く慎二とアリス、困惑。
 いったい全体、狂介がどのような状況に置かれているのか皆目検討がつかない。
 なぜ生死が危ぶまれていた男が大勢の人間に囲まれているのか、そこで何をしているのか、それらの情報が得られる唯一の手段であるスマホからは、『ついでにアリスも加えるか』等というキャスターの声が雑音混じりに流れてきた。

「私を呼んだ……?」
「拷問かなにか受けてるんじゃ……おい狂介!しっかりしろ!今何をしてるのか落ち着いて言え!!」

 大声でハッキリと喋ると、慎二はスピーカーに集中する。依然、そこからは雑音ばかりだが、辛うじて狂介の返事らしきものが聞こえ、アリスに目配せする。喋れる状態ではあるようだ。それなら、せめて聞き漏らさぬようせねばならない。
 やがて、二人の耳にジャラジャラというなにか軽めの樹脂でもぶつけ合うような音と共に、狂介の声が聞こえてきた。

『今?ええっと……麻雀、かな?』

「「マージャン……?」」

 思わず慎二とアリスが顔を見合わせたのは言うまでもない。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


216 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 01:40:02 MIRdZZOc0









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









 聖杯戦争は人一人の都合なんて簡単に無視して進んでいって。
 九重りんが半日ぶりに目を覚ましたとき、彼女の周りはすっかり一変していた。
 いつの間にか自分は病院のベッドからホテルのツインルームに四人で寝かされていて、それ以外にも色々な人、そしてサーヴァントが部屋に出たり入ったりしていた。

「目が覚めたか。」
「……最悪。」

 スッ……と視界に現れたのはアサシン・千手扉間だ。
 相変わらずの仏頂面でベッドの脇に立ち、りんを見下ろす。その顔を見て、なぜか無性に腹が立った。が、それを抑えて辺りを見回す。
 状況が飲み込めない。自分が寝て……普段の睡眠とはなにかが違ったようにも感じたが、ともかく、起きたら全く自分が想像もつかないようなことになっていたのだ。
 目を扉間に当てて無言で説明を求めると、「状況が変わった」と言ってきた。違う、そうじゃない、そんなことはわかっている。問題はなんで変わったかだ。
 視線を逸らさない。引き続き説明を求める。根負けするように扉間が再び口を開こうとしたとき。

「アサシンさん、そろそろ買い出しーーあああ!!」

 明るい色の髪の毛をポニーテールにした少女が部屋へと入ってきた。「静かにしろ」と扉間はその少女に向かって言ったがそんなのはお構いなしにポニーテールはりんの元へと駆け寄る。

「……アサシン。」
「アサシンさん、この子がーー」
「……説明する必要があるな、それも落ち着いて。」


 気だるく動かない体のりんとそのポニーテールの少女が同時に口を開き、扉間は渋々といった感じで二人を交互に見た。


217 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 02:39:12 MIRdZZOc0



「八騎のサーヴァントがいるってこと?」
「ああ、そういうことだ。」

 しばらくして、扉間から説明を受けたりんは頭を手で押さえながら自らのサーヴァントを睨んだ。その頭痛の原因はもちろん体調不良だけではない。

 りんが聞かされたこれまでのことはなかなかに信じられるものではなく一つ一つの事柄に納得できない処もあるためどうしても理解するのは難しかった。それに年の割りには聡いとはいえ、小学三年生である。絶対的な知識も知能も経験も足りない。であるにも関わらず彼女が把握したイベントはなかなかにヘビーであった。

 一、さっきのポニーテールの少女(日野茜というアイドルらしいが聞いたことはなかった)とそのサーヴァントであるランサー(真田幸村という侍らしいが歴史の授業は高学年からだ)が病院で聞かされたサーヴァント達である。
 二、一緒のベッドに寝かされている外人(マイケル・スコフィールドという上半身入れ墨のイケメン)と床に転がっているアーチャー(亀甲縛りのオッサン)があのあと病院で出会った相手である。
 三、その二組ととりあえず8日まで同盟を組んで協力していくことになった。
 四、そしたら病院の少し北にある公園で全然知らないサーヴァントが戦っていることを知ってしかもそこにランサー・カルナというサーヴァントが乱入してビームを撃って公園を焼き付くした。
 五、病院に来たキャスターととりあえず同盟を組んで(とりあえず多いな)カルナを襲うも撃退された。
 六、その戦いの結果アサシンは病院で気を失い、その間に病院に爆破予告(なんでだよ)があったためりんは転院させられた。
 七、りんを追いかけた先で美遊とバーサーカー(ここまでくると誰だよという気分だ)と出会い、一緒にホテルに行く(援交か?)と今度はいおりとランサー(冬木大橋で共闘した相手らしいが既に記憶の彼方だ)と出会った。
 八、病院からいなくなっていたランサーとアーチャー(だからなんでだよ)、彼らと共にカルナと戦ったもう一人のアーチャーとキャスター(ややこしいな)、そしてホテルにいたクラスのないサーヴァント(もうわけわかんない)と合流した。
 九、八組でとりあえず情報交換した結果(とりあえずばっかじゃん)、もっと腰を据えて話すだかなんだかで場所を変えるとかもうどうとでもなれ。

 一度にこんなに色々あったて言われてもわかるわけないだろ!
 それがりんの偽ざる感想である。そりゃそうだ寝て起きたらこんなことになってたら誰だって戸惑う。そしてベンチに座ったりんは周囲を見渡すと更に困惑の表情を作った。

「アサシン。」
「なんだ。」

 呼び掛けながら視線を左へ。カジュアルな服に着替えた茜と幸村がサングラスを鏡の前で試着している。りん、茜のことをパット見から五年生か六年生だと思っていたが、どうやらもう少し上のようだ。
 視線を右へ。白のワンピースに身を包んでいる少女は、アサシンの紹介だと美遊だったか。そしてその横の低学年らしき少女は多分いおりだ。こちらは暇そうに立ち読みしながら時おり周囲に目をやっている。

「なんでみんなで売店に来てるの。」
「……買い出しだ。」
「いやなんで。」
「このホテルの上から三階を貸しきった。それぞれの組ごとに一部屋ずつある。」
「説明になってない。」
「病院は既に拠点としては不適当だ。場所を移さねばならん。」
「で、ホテルを拠点にするの?他にあんなに敵がいるのに?」
「……ここを拠点とする!」
「マダラさん、こっちは終わりましたよ!」
「あとなんでサーヴァントが実体化してんのなんであの人あんな大声なのていうか本名マダラなの。」
「話すと長いぞ。」
「わかった黙ってて。」

 ベンチに並んで腰かけていたりんと扉間の元に向かってきた茜と幸村を認めて二人は会話を打ち切った。


218 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 03:37:03 MIRdZZOc0



 自分のことを見習い魔術師として紹介した美遊・エーデルフェルトの存在は、幸村達魔力消費の激しいサーヴァントにとって非常な意味を持つ。戦闘さえしなければ数騎のサーヴァントに魔力を融通できるというのは、それだけで彼女を同盟相手として認めるに足るものだ。なにせ、ここにいるサーヴァントの半分は霊体化していたしても明日には消滅しかねないほど消耗しきっている。そこに来て魔力の安全な調達手段が現れたのは大きい。彼女のバーサーカーに回す魔力が足りなくなれば制御が効かなくなると念は押されたがそうであっても魔力を供給されるのは至上命題であった。
 ーー彼女にとっての誤算は見習いどころか魔力を持たないマスターばかりということだった。仮にも聖杯戦争ならばなんらかの形で魔術に関わっているだろうと思ったが、話を聞くだけでは完璧に一般人であると思われるマスターばかりだ。自分の同盟での価値を高めるために少々手の内を晒したとたんにピラニアのように食いついてくるとは予想だにしなかった。

 そして現在、早急に魔力を必要としている者のうち、要注意人物であり意識のないアーチャー・ワイルド・ドッグを除いた四騎のサーヴァント、即ちアサシン・千手扉間、ランサー・アリシア・メルキオット、アーチャー・安藤まほろ、ランサー・真田幸村の四騎が数時間という条件付きで一時的に魔力の供給を受けることとなった。この処置に対してもいくらかの小競り合いはあったものの最終的には美遊に判断が委ねられた。また美遊との距離が離れすぎてはいけなかったり実体化していなければ魔力供給はできないとのことでそれぞれがなんとか変装をし美遊の近くでの集団行動を余儀なくされていた。

 これが何組もの主従が一度にホテルの売店に来ている理由である。サーヴァントが実体化し続ける必要が生じたため、あるいはマスターの着替えのため、そうでなくても雑貨なりなんなりを求めて、自然に買い出しに出る空気となり、マイケル達とそれを見張っているバーサーカーと画面の中から話しかけるドクのマスターを除いた全員がそれぞれに買い物をしていた。


219 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 04:34:23 MIRdZZOc0


 真田幸村も、今はラフなTシャツとハーフパンツにサンダルという出で立ちだ。傷跡を隠すためのテーピングもあり、体格と合わさってアスリート然としている。そのせいか隣で変装用のキャップとサングラスを選んでいるマスターの茜がマネージャーのように見えるのだが、そのようなことは幸村にとっては注目すべきことではなかった。
 その目線は、売店の近くのベンチに座る少女ーー九重りんへと向けられていた。

「気になりますか?」

 鏡の前でサングラスを試着しながら茜に問われ、「それは」と口にして。しかし、そこから先の言葉が出てこない。それは、それはなんだというのだろうか。自分の中のものを言葉にしようとして、しかし、できなくて。
 数秒の間を置いて、「拙者は未熟だと、思い知らされて」と呟いた。

 試着したサングラス越しに茜と目が合う。

「未熟、ですか。」
「はい。」
「どうしてです?」
「知らないことが多いからです。」

 ちらりとりん達を見ると、幸村は再び茜を見つめる。

「あーちゃー殿、まいける殿の方のあーちゃー殿が安藤殿達に暗殺者だと言われたとき、拙者はそれを否定しました。拙者が知る限りではそんなことはないと、安藤殿達より長く共にしていたのだからどのような人かはわかっていると。」
「しかし。」
「それはただの驕りではないのかと。」
「知っている気になっていただけなのではと、そう思った次第で候う。」

 りん達は二人でなにか話しているようだ。茜は目の端でそれを見て「なんでです?」と珍しく小声で聞いた。

「拙者は、あさしんのマスターの、あの少女の名前すら知らぬのです。なぜそれで彼らを知った気になれましょうか。」

「……だったら。」

 茜はサングラスを取ると棚から二つとってレジへと向かう。素早く会計を済ませると「まずは話してみませんか」と言って幸村の脇を通りすぎる。

「マダラさん、こっちは終わりましたよ!」

 そうして、りん達に声をかけると「ね」と言って幸村に振り返った。


220 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 05:35:05 MIRdZZOc0



(こやつは、儂の想像以上の者だな……)

 ベンチにりんと並ぶように座った茜に対して扉間が抱いたのはそんな感想だ。
 茜がりんと話はじめて数分で、この少女には人並み外れたものがあると、そうはっきりと思わされる。感じとしては、兄である柱間に近いだろう。

「でも東京って家賃も物価も高いですよね、こないだなんてーー」
「それは観光地だからーー」
(既に儂がこれまでにりんと話した時間より長く会話しているとはな。)

 アサシンがりんのサーヴァントとして召喚されてから数日が経つが、今に至るまで大した会話はなかった。互いが互いを信頼していないしりんにマスターとしてできることなどなにもない。その事を互いにわかっているからこそ、両者の間に言葉らしきものは殆ど無かったし必要もなかった。

 しかし、茜がりんと話し初めてから両者の会話は途切れることはない。必要最低限以下の会話しかしてこなかった、できなかった扉間からすれば驚きを持って受け入れられる。
 正確には茜が捲し立てそれに時々りんが相づちを打つような感じなのだが、それでもそこには確かなコミュニケーションがあるとはっきりわかった。

(日野茜……大した奴だ。)


(……暑苦しい。)

 一方のりんは、この空間に辟易していた。
 運命共同体とも言うべきアサシンはともかく、茜も幸村もつまりは他人、敵だ。勝ち残るのは一人である以上、それは間違いない。
 それなのに、特に茜は明るく前向きで社交的だった。こいつは本当に聖杯戦争のマスターの自覚があるのか、と問いたくなるほどに、茜は自らをさらけ出してくる。
 その事が、不快であった。
 馴れ合う必要などないだろうに。
 確かに、同盟とはそういうものなのかもしれないが、それでも最低限で良いのではないか、そう思わずにいられない。

「茜さん達って、真っ直ぐで前だけ見てるんですね。どうしてです?」

 会話の流れを切るようにそう言った。
 それは、これ以上茜に合わせるのが苦痛だから、そして、軽蔑していたから。
 子供特有の無邪気さを醸し出しながら、皮肉げな感じを出さないように、それでいて印象に残るよう。
 この太陽のように眩しい少女達が見えていないものを、気づくヒントをあげようと、二人が破綻し死ぬところを想像しながら。

(前向きでいられる人ばっかじゃないのに。)

 黒いものが自分の心に沸き上がる。それがはっきりわかる。イメージは背中を向けた茜にナイフを叩きつけるように抉り込む光景だ。前だけ向いてるからそうなるんだ、私がアサシンに初めて命令して殺させるのはお前にしてやる。

 愉悦の笑みを浮かべて、りんは答えを待つ。どうせ、大した理由ではないのだろう。この頭の軽そうな二人に自分が満足のゆく答えなど出せるはずがない……


「それは、前以外も見ているからではなかろうか。」


 ぴしり。


221 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 06:03:44 MIRdZZOc0

 りんは睨むように、いや、実際にそう言った幸村を睨んでいた。今こいつはなんと言ったのだ?この脳みそ空っぽといった顔の男は。前以外も見ている?だったら無用心に他のマスターなんかと馴れ合うなもっと気を配れ。それともなにか?私はそんな必要もない雑魚だっていうことか?

 睨む。

 睨む。

 睨んで。

「どういう、こと。」

 絞り出す。ぎりぎりと頭のなかでなにかが音を立てる。しかし、幸村はそんなこと全く見えていないかのように
「口を挟んでしまい忝ない」と言ってから続けた。

「人は前だけ見て走ることはできませぬ。上はもちろん、下や後ろも見なければ。足元も見ずに走り続けることができる者はおりませぬ。」

 ぎりぎり。

 ぎりぎりぎりぎり。

 なにかが、りんの中で軋む。なんだそれ?下や後ろ?それは私のことか?ふざけるな、だいたいそんなところにまで目を向けていたら前なんて向けない。足下にある影に気づかないように生きているだけのくせに、影を愛した人の気持ちなんてわからないくせに。

「後ろを見たら……進めない。大事なものから離れていっちゃう。」

 先程までの曲がりなりにも和気藹々とした空気はとっくになくなって。
 あんなに話していた茜も、りんと幸村の話になにも口を挟まなくて。
 目と目を合わせた二人だけ。

「ーーならば、連れていけばいい。」

 絞り出したりんの言葉に、平然と、幸村は言葉をぶつけてきた。

「歩んできた道に置いてきたものがあるのなら、それを供に連れていく。」
「できるわけない。手遅れなことだって。」
「たとえ手遅れでも、今持てるだけのものを持って前へ歩むことはできるはず。」

 りんの反論も容赦なく、打ち据える。否定する言葉を、越えてくる。

(そうか、この人は。)
 強いんだ、そう気づいた。
 幸村は、ランサーという英霊は強いんだ、りんの悩みとかそういったものを知らない、わからないと思ったが、そうじゃないのだ。この人は、きっとそういったものを力業でどうにかしてきたのだ。
(そっかぁ。)
「幸村さんは、強いね。」

 心から、そう言えた。こいつはバカじゃないんだ。大バカなんだ。真っ直ぐ前に進むための力をバカみたいに頑張って手に入れた人なんだ。さすが英霊だ、サーヴァントだ。


222 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 06:55:35 MIRdZZOc0

 りんの言葉に、幸村は曖昧な笑みを浮かべた。
「拙者は、ただ不器用なだけでござりまする。臆病者は、後ろや足下が気になるもの。ただ前だけを見て駆けるような真似は……拙者にはできなかった。」

 目の前の幸村が、とても小さく、同時にとても大きく、りんには感じられた。
 強くなろうとしたから強くなった。そんな単純でだからこそとてつもなく強いのだろう。

「ははは……少し気恥ずかしいものですな。改めて申しますと。」
「なんだか……なんだかスゴいです!ランサーさん!!なんだろう、言葉にできないことが言葉でわかったっていうか……!」

 シリアスな空気は直ぐに消えて、幸村は元の感じになった。
 時間にすれば一分ほど、交わした言葉はほんの僅かなのに、りんはわからされた。その幸村の強さが、まるで嘘だったように砕けた空気が広がる。それがりんの背中を寒くする。こんなにも強い人間が、今や先程まで観察していたように茜と緊張感のない会話をしている。たった数十秒で二人はいつもの感じになったのだろう。そんな、オーラの欠片もなくした人物が、自分とは格段に違う人としての強さを持っていることが。

(なれるのかな。)
 私も。
 忘れちゃいけない過去を、未来に持っていくような強さを持った人に。

「あ、そうだ!りんちゃんもなにか売店で買っていきません!?ここってお土産屋用に洋服とかも売ってるんですよ!」
「……じゃあ、折角だから。」
「ですよね!マダラさんはどうします?」
「儂か?そのような……」
「買おうよ、アサシン。」
「マスター……」

 私が、変われるかもしれない。
 そう思えたのは、これでたぶん、三回目。でも、自分から変わりたいと思ったのはもしかしたら初めてかもしれない。
 愛とか恋とか、そういったものじゃなくて、強さを欲しいって、生まれて初めて思った。

 茜に背中を押されて売店に行ったところで、ちらりと賞品が目に入る。こういったところで買うのなら、やっぱりああいったものの方がいいかもしれない。値段も安いし、いつでも見れるから。

「?アルファベットのブロック?あー!名前を作れる奴ですね。」
「折角だから、ね。」
「折角ですし買っちゃいましょう!」

 幸村達とは、いずれ殺し合う。あんなに強い人間と。とても勝てるなんて思えない相手と。
 でも、だからこそ、強くなりたい。
 私が、前へ本当に進むために、まずは勝たなきゃ、勝たなきゃいけない。荷物は大分重くなりそうだけど、耐えられるかわからないけど、それでも抱えて。

(お母さん……レイジ……)


(先生……!)

 九重りんは、自分の大切な人のところへ、九重りんとして帰りたい。


223 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 07:32:21 MIRdZZOc0






「狂介、麻雀をしよう。」
「……え、なんで。」

 ところ変わって売店の反対側!そこでは顔と股間だけ実体化したキャスター・パピヨンがマスターである色丞狂介を麻雀に誘っていたッ!!

「俺が麻雀したくなったからだ。」
「そんなノリで麻雀しちゃ、ダメだろ。ていうか道具とかどうするんだ。俺金ないぞ?」
「その点は心配する必要はない。お前が真田幸村達を見ている間にスポンサーが見つかった。」
「見てたのかよ……だったらなおさらなんで麻雀なんだ。なんかあっちは打ち解けた空気になってるのになんでこっちは麻雀なんだよ。」
「アイツらは元から同盟組んでるんだから今まで打ち解けてなかったのはただの怠慢だろう。それよりこっちはこっちで麻雀で打ち解けるぞ。」
「時々ほんと辛辣だよな……」

 見も蓋もない言い方にドン引きする狂介だったがパピヨンはお構いなしのようだ。そうこうしているうちに、自分の後ろに誰かが立つ気配を感じ、そして。

「変態さん、麻雀をしましょう。」
「安藤さん!?ていうか変態さん呼びはやめて!?僕は変態仮面になれるだけで僕個人は変態じゃないから!!」









 ■  ■   ■    ■    ■     ■      ■


224 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 08:02:49 MIRdZZOc0









 ■  ■   ■    ■    ■     ■      ■       









「本当にやるのか……?あっちはあんな良い空気だったのに本当に……それにメンバーおかしくないか?」
「そうか?俺はそう思わんが。なあ安藤?」
「そうですね、特におかしくはないと思います。」
「……あー、俺もそうかな。ランサーもそうだろ?」
「そう……ね。」
「私も、そう思う。」

 そんなこんなあって冬木ハイアットホテル最上階。
 貸しきったは良いもののどこの誰が作ったかわからない陣地に寝るわけにもいかないのでみんなの共有スペースという名の贅沢すぎる空き地と化したそこには四組の主従がいた。

 全く気乗りしないが連れてこられた色丞狂介となぜかノリノリのキャスター・パピヨン。
 気乗りしないとかそれどころじゃないだろうにまさかの参加の野比のび太とやっぱりなぜかノリノリのアーチャー・安藤まほろ。
 ほぼ二つ返事で参加を表明した高遠いおりとランサー・アリシア・メルキオット。
 そして魔力供給の都合で行動が制約されまくってる美遊・エーデルフェルト。
 以上である。

(明らかに幸村達をハブにしてるよな、これ。)

 人選からしてあからさまなそれに思わず「……これ、親睦会なんだよなあ?」とつっこむ。

「物事には順序ってものがあるだろ?それに……」
「それに?」
「麻雀は四人じゃないとできない。」
「そっちが理由か!」

 あんまりなキャスターにつっこむと同意を求めるように見回す。が、他のマスター達はお構いなしに麻雀の準備を進めていた。

(あれ?これ僕がおかしいの?なにこの空間?)

 しかし狂介、さすがは変態仮面。「ここはこういうノリのパートなんだな」と誰に言うともなく呟く。

「ところで、僕ルールわからないんだけど。」
「安心しろ、ちゃんと一から教えてやる。ちょうどここに簡単なルールブックもあるからな。まずはお前から読んでおけ。それと、全員にボールペンを配っておく。それぞれが重要だと思うところに下線を引いていってくれ。全員の理解につながる。」
「用意いいなあ、やる気満々じゃーーん……?」
「麻雀牌のおまけでついてきていた。抱き合わせ商法だな。さて、まずは牌を出してくれ。そこから使わない牌を幾つか抜く。」
「そういうことか……あ、使わない牌?……この白いのか。」
「いや、それは白という牌だ。春夏秋冬の四種類の牌を抜いてくれ。」
「これか?」
「それは一索。春とか夏とか書いてある牌あるだろ。」
「あ、これかあ!」

 おおなんということか!このような謎空間に、直ぐ様狂介は適応したのだ!ウ〜ン、さすがギャグ漫画の出身だ。


225 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 08:27:03 MIRdZZOc0

「コレって裏返さなくていいのか?」
「ルールを説明するのにそれだとわかりにくいだろ。さて、次にそれぞれ13個ずつ牌を取れ。」
「じゃあとりあえず適当に……」
「全員取ったな?それでは反時計回りに一個取って一個捨てるを繰り返す。それで四つの面子と一つの雀頭を一番早く作れたプレイヤーが勝ちだ。」
「……」
「……キャスター、狂介の頭がパンクしてるっぽいんだけど。」
「面子とか雀頭とかわかんないよ……」
「改めて説明すると難しいな……面子というのは同じ牌を三つか連番で三つ、雀頭というのは同じものを二つだ。」
「……??」
「……よし、大富豪でトランプを三枚一度に出せるような組合わせが面子で二枚一度に出せるような組合わせが雀頭だ。」
「なるほど!」
(それでわかるのか。)
(かえってわかりにくいと思います。)

 意識を切り替えると、狂介達は大きなリアクションで説明台詞を言っていく。こういうのはハイテンションの方が面白いからね。その間も、ルールブックは狂介からまほろさん、まほろさんからいおり、いおりから美遊へと渡っていく。一回りすると再び狂介の元に戻ってきた。




東東東




「こんな組合わせか?」
「それが面子だ。二つなら雀頭だな。」



一二三
   
萬索索



「これは?」
「スートが違うからダメだ。一萬を一索に変えれば面子になる。」
「ふーん。」

 狂介はそういうとルールブックに書き込んだ。そして先程と同じように回す。情報の共有は大事なのである。面子を間違えると大変なことになるのだ。

「なんとなくわかってきたかな。じゃあ裏っ返してやってみる?」
「おっし、じゃあ誰が親だ?」
「もしかして親にも決め方とかあるのか?」
「わかってきたか。まずは誰でもいいからサイコロを振れ。」
「え、これ、サイコロ必要なの?」
「……点棒のところ。」
「この骨みたいのか」
「それが点棒だな。黒いものが百点で赤いものが千点、厳密に言うと違うがとりあえずそう思っておけば問題ない。」
「あー、なんか点数制だったかも。それで初期LPはいくつだ?2000?4000?8000?」
「25000だ。」
「「え?」」
「25000だ。とっとと配れ。」
「多くない?」「30000ですよね?」「え、30000?」
「どっち?」
「……どっちでやりたいかによるな。別に25000でも30000大した違いはない。」
「そんな適当な……」
「仕方ないだろローカルルールが多いんだから。俺はオーソドックスなルールを紹介しているだけだ。」
「初期の遊戯王みたいだな……」
(こいつは本当に小一なのか?)

 ちなみに2014年の八月といえば四月のリミットレギュレーション改訂にも関わらず依然として環境にとどまっていた征竜に対して竜の霊廟を制限カードにするなどの措置がとられたために青龍デッキが弱体化したことはご記憶の方も多いだろう。しかし同時にデビル・フランケンが制限解除されたのもこの改訂である。
 別にいおりは決闘者ではないのでそこまでは知らないのだが、まほろさんから回ってきたルールブックに書き込みをしながら(そういえばポケモンカードってまだあるのかな)なんて考えていたりはした。


226 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 08:39:47 MIRdZZOc0

「じゃあ今回はきりよく30000で。で、次は?」
「次は東風か半莊か全莊か……つまりマッチ数を決める。それぞれ1ラウンド4戦、2ラウンド8戦、4ラウンド16戦だ。俺は東風を推す。」
「私も東風がいいと思います。」
「じゃあ、俺も。」「僕も。」「……私も。」
「というわけで、東風だ。さて話を親決めに戻すぞ。サイコロの和の数だけ振ったやつを一番目にして反時計回りに数えろ。本当は席順とかも決めるが今から裏っ返した牌表にするのは面倒なので省く。」
「わ?」
「足し算の結果のことだよ。」
「お前小学一年生に算数教わるとか恥ずかしくないのかよ。」
「和ね!聞きなれないから!」
「出目はピンゾロか……変なところの運が良いな。ということはお前の下家の安藤が仮親だ。そして仮親が同じようにサイコロを振って親を決める。」
「じゃあ私から。サイコロの出目は……11ですね。あれ?これって……」
「そのまま安藤が親だな。」
「じゃあ、まず山から六組をどけて、二段四枚ずつ……あ。」
「……まだ山を説明していなかったな。それぞれ適当に17牌集めて横一列に並べろ。その上にまた横一列に牌を並べる。そうすると牌の山が四つできるだろう。」
「?……キャ「理由の説明がめんどくさくなってきたから省くがそういうものだということで納得しろ」ええ……」
「狂介さんデッキみたいなもんだよ。」
「とにかく一人四個ずつとっていっきましょう。これで三周目……と。」
「……はい。」
「あ、えーと……美遊?ありがと……これ対面の牌どうやってとれば良いんだ。届かないぞこんなの。」
「それについては。」
「ついては?」
「頑張れ。」
「えぇ……」

 対面の山から牌を取ろうとかわいく頑張るいおりをよそに、のび太は無言でルールブックに書き込みをしていく。ペアを組んでいるまほろさんは隻腕であるため基本的にのび太が書き込みをしていた。



八九一八九一八九一     
         白發中西西
萬萬萬筒筒筒索索索     



「おし!これで上がり!なんか得点高そうなのできたぞ!」
「狂介、残念なお知らせがある。」
「なんだよ、ちゃんと面子も雀頭もあるだろ。」
「どうやらお前は八九一で順子……連番の面子になると思ったようだが、さっき俺の言ったことを覚えてるか?」
「……どのこと?」
「『大富豪でトランプを三枚一度に出せるような組合わせ』……と言った覚えがあるんだが。」
「……あ。」
「それと白發中は一枚ずつ集めても意味はない。同じものを三つ用意しないと面子にはならん。」
「あああああ。」
「仮にそれらがルール上問題なければ役は三色同順に役牌、混老頭といったところか。満貫だな。ハハハ残念。」
「ああああああああ!!!」
「良いリアクションだ。」

 白目を向きながら立ち上がり絶叫する。さすがにうるさすぎるが麻雀ものなのでリアクションが大げさなのは仕方ない。だがキャスターは適当にあしらうと美遊から回ってきたルールブックに目を落とした。書き込みは順調に増えている。目論みどうり情報の共有はうまくいっているようだ。

「ところで役ってなんだ?」
「……それなんだが。説明するのが非常に面倒くさいのでルールブックを回し読みしてくれ。」
「そんな面倒くさいゲームやろうとするなよ……」
「ごたごた言わずにとっとと読め。話はそれからだ。」

 今さらな質問をしてきた狂介にルールブックを渡す。これだけの書き込みだ。状況の理解には役立つであろう。
 一通り最初の書き込みから目を通すと、狂介は下家のまほろさんへと渡した。

「たぶん……チーとポンとカンはわかった。前の番の人が捨てたので三連続になるような面子を作るのがチーで、誰かが捨てたので三個同じ面子を作るのがポン、四個同じのがカンか。」
「お前突然かしこくなったな。」
「そのぐらいルールブック読めばわかるよ。」
「そいつは頼もしい。ところで、じゃあ明カンと暗カン、加カンの違いは?」
「……」
「やっぱりな。」
「キャスター、この面前ツモってなんだ?鳴いていないと役になるのか?。」
「そういうこと。」
「鳴く?」
「チーやポンのことだよ。」
「明カンや加カンも当てはまるみたいです。」
「お前小学生に麻雀のルール教えられて恥ずかしくないのかよ?」
「ふつう混乱するってこんなの!」
「ちなみに鳴く要領で上がるのはロンだ。」

 わいわいとやりながら、それぞれの書き込みは増していく。こういった共同作業は、今後のためになる。


227 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 08:53:17 MIRdZZOc0

 「ポン……こう?」とまほろさんが切った白をルールブック片手にポンしながら美遊は皆に聞いた。

「そうだ、鳴いた牌はその組み合わせごと右端に見えるようによけろ。」
「鳴いたのは表にするのか……」
「鳴いた牌だけ横向きにするのを忘れるなよ。では美遊、牌を切れ。」
「それいおりちゃんの手番飛んでない?」
「飛ぶぞ。だから鳴かれてばかりだといつまでたってもツモれない。」




西




「キャスター、この東西南北の牌って同じの三つ集めただけじゃダメなんだっけ。」
「うん……ああ、場風と自風のことを話していなかったな。場風はその莊……ラウンドごとのボーナスみたいなものだ。東一局なら東が、南一局なら南が、という風にそれぞれのラウンドの名前と同じ牌が場風になる。」
「今は東三局だから……東?」
「正解だ。次に自風だが、親を東にして順に南、西、北という風に各プレイヤーにボーナスとなる牌が決められる。そう考えておけばとりあえずそれらしい麻雀は打てる。」
「……?」
「方角がおかしいと思うかもしれないが、それはそういうものだと納得しろ。ルールと直接関係ないところまで説明したらキリがないからな。」

 ルールブックを片手に、狂介達の麻雀は続く。じゃらじゃらという音が部屋に木霊する。
 やがて、巡りめぐって、場には緊張感が漂ってきていた。

(そろそろか。)

 パピヨンは狂介の持つルールブックを見る、わざわざ麻雀をした甲斐があったというものだ。

「東四局、オーラスだ。しかしここまで誰も和了れないとはな。」

 どうも皆、麻雀そのものには集中していないようだ。それもそうだろう、これは親睦会、麻雀自体が目的ではない。
 だがそれでも、麻雀は進んでいく。十五順目、テンパった狂介にそれは訪れた。

(上出来だな。)



二二五五五五八八四四六六   
            中 中
萬萬筒筒筒筒筒筒索索索索   



「あ、ツモったぽい。」
「七対子だな。さて、符と飜の計算だが……」
「……」
「ルールブックを読んだならわかっていると思うがこれを理解するのは役を覚えるのより難しい。なので今回は全部俺が計算する。」
「お願いします。」
「といっても七対子は25符2飜なんで計算は楽なんだがな。2400点だ。」
「ていうことは、もしかして優勝?」
「ただ七対子では同じ牌の組み合わせで対子をつくって和了ることはできないので五筒が四枚あるそれでは和了れてないな。ハハハ残念。」
「あああああああああああ。」

 キャスターはほくそえむ。予想以上に、今回の親睦会はうまくいった。こちらの想像以上にいおりや美遊が空気を読めたというのもあるが、やはり一番はのび太の献身的なルールブックへの書き込みだろう。


 『朝の5時頃に、時空が歪むなにかがあった。』  『時間を巻き戻したり止めたりできる人がいるかもしれない。』   『新都にあるファミレスで、アーチャーはクラスの見えない茶色いコートのサーヴァントと話していた。』    『アーチャー達が二人で襲いかかってきて、サーヴァントのドラえもんを殺した。』     『安藤さんとマスターのナノカさんに助けてもらってカレーを食べた。』      『スーパーでアーチャーと茶色いサーヴァントにあったとたんカルナに茶色いサーヴァントが殺された。』       『カルナに安藤さんとアーチャーと真田幸村が戦っていった。』        『アーチャーが大勢の軍隊みたいな男と一緒に襲いかかってきた。』


「少し、見えてきたな。」

 パピヨンは、笑った。


228 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:01:01 MIRdZZOc0



 パピヨンが麻雀による親睦会を提案したのはもちろん単純に麻雀がしたかったからではない。
 その目的は情報交換、それもアーチャーの嫌疑を共犯者の可能性が高い病院組の主従やドク達に悟らせないように調べ、共有するためである。

 この目的を果たすためには、大きく二つの問題があったのだが、それを解決するための方策が麻雀であった。

 一つ目の問題である『のび太への接触』は、他のマスターを巻き込むことで解決を図った。自分達はただでさえ病院組の主従からはマークされているであろう。ならば一対一で話すのは警戒と疑いを招く。それならば限られた相手であっても腹を割って話す方が得策であるとした。
 二つ目の問題である『会話の盗聴盗撮』は、牌の音や話し声による音量での妨害とその内容による欺瞞、そしてルールブックへの筆談で対処した。キャスターが調べ改竄した限り、この陣地はほぼ無力化に成功しそれらの恐れはまずないとはいえ、注意しておくに越したことはない。高性能な集音機が宝具のサーヴァントや透視が可能なサーヴァントがいる可能性もある。それらを考慮して、『そういうのではないふざけた雰囲気』をつくって、筆談による情報交換を選択した。

 そうした配慮をした結果が、今パピヨンの手の中にある。気絶から目覚めたのび太の証言はもちろん、それぞれのマスターから寄せられた情報もなかなかに興味深い。美遊から開示された白いセイバーらしきサーヴァントやいおりから開示されたクラスの見えない猫耳ナチスサーヴァント。そしてこちらが開示した慎二達同盟相手の限定的ながらも量の多い情報。これらは価千金だ。


「ん?電話か。」

 再び東風戦が始まった頃にパピヨンの股間でスマホが振動する。画面を見れば、『ワカメ』の表示。麻雀が始まる前に狂介がかけていた時はまるで繋がっていなかったが、どうやらあちらは無事のようだ。
 狂介の首にスマホを挟ませ通話させる。あとでメールで情報をやり取りしておくべきだろう。こちらは大分新しい情報を得た。

「ーーここからが面白い。」

 通話に気をとられ振り込んだ狂介を見ながら、パピヨンはくつくつと笑いに、笑う。


229 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:24:58 MIRdZZOc0



【深山町、間桐邸近く/2014年8月1日(金)1836】

【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[状態]
精神的疲労(微)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.一度自宅に戻る。
2.マージャン?
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンに疑念を抱きました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.マージャン?
2:あのルーラー、かなり軽いな。
3:ライダー(孫悟空)は許さない。
4:間桐家で陣地作成を行うと思っていたがアインツベルン城も悪くない。
5:会場と冬木市の差異に興味。新都に行ったら色々と調べてみるのも一興。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。
●マスターの人数が三千人、もしくはマスター千五百人サーヴァント千五百人程度だと思っています。
●アリスに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。


230 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:29:15 MIRdZZOc0



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1836】

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、疲労(微)、アサシン(千手扉間)、アーチャー(安藤まほろ)、ランサー(アリシア・メルキオット)、ランサー(真田幸村)へ魔力供給(サファイア)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:対カルナの同盟に潜り込み内側から崩す……勝手に崩れそうだけど。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドクのステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


231 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:29:56 MIRdZZOc0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、まだまだ寝なくていい。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.両面待ちしたいけどダメみたい。
2.アイツ(謎の猫耳サーヴァント(シュレディンガー准尉))、タクシー代払わなかったな。
3.いつか、ランサーに自分の『こと』を話す。
4.バーサーカーのマスター(イリヤ)が生きてて一安心。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ランサーから英霊・アリシアの情報の一部を聞きました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(7)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(0)/B
実体化、カジュアルな服装、全身の至るところを骨折・打撲、疲労(微)、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、美遊(サファイア)から魔力供給、宝具使用不可。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1:シュレディンガー准尉とそのマスター(少佐)とドク、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、マイケル・スコフィールドを特に警戒。
2:ランサー(真田幸村)とアサシン(千手扉間)も油断できない。
3:『今度』はイオリのことを知りたい。
4.他の主従から反感を買わないように立ち回る。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。
●いおりに英霊・アリシア・ギュンターについて一部の情報を話しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


232 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:31:07 MIRdZZOc0


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
疲労(中)、精神的疲労(大)。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.アーチャー(ワイルド・ドッグ)は、ドク達ともグル……?
2.もうホテルで陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
3.下北沢のサーヴァント(サイト)は死んだのか。
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ、ワイルド・ドッグの服と携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化したり霊体化したり。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.こっからが本番だ。
2.ホテル最上階で陣地作成。なんなら特殊核金も。
3.このホテル温泉あるのか。
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ホテル最上階のイサコと兵部京介の魔術工房を乗っ取りました。どのようなことが起こるかは不明です。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


233 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:32:48 MIRdZZOc0


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
実体化、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、美遊(サファイア)から魔力供給、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.もう一人のアーチャー(ワイルド・ドッグ)を告発する。
2.変態仮面達とドクに恩義。ただしドクとそのマスターはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
さいなん報知器、軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.アーチャー(ワイルド・ドッグ)のことをみんなに教える。
[備考]
●ドラえもんの四次元ポケットを持っています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


234 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:34:00 MIRdZZOc0


【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(5)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、変化、気配感知、美遊(サファイア)から魔力供給、疲労(微)、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.こやつらについて考え直さねばならんな。
2:ワイルド・ドッグからスーパーでの出来事について聞き出す。
3.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定するがそれはそれとして早く魂喰いしないと。
7.穢土転生の準備を進める。
8.他の組の情報収集に務める。ランサー達は諦めた。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。死んだか?
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●美遊に対カルナの同盟について嘘をつかない範囲で婉曲的な説明をしました。やたらと「これから更なる同盟相手を増やすために活動していた同盟相手と情報交換するために冬木ハイアットホテルに行く」ということをアピールしました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、覚悟?
[装備]
着替え、名前のストラップ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1.強くなりたい。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。


235 : 【92】冬木夏の陣ーー聖杯麻雀戦争倶楽部ーー ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:34:41 MIRdZZOc0


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内蔵にダメージ、ダメージ(大)、美遊(サファイア)から魔力供給、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の汚名を灌ぎたい。
2:ドクに恩義。
3:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
4:ますたぁへの申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:俺は……
6:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)との再戦を考えていたが……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認してたことに気づきました。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●冬木市にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●爆破予告を知りました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●アーチャー(まほろ)、狂介&キャスターに不信を抱きました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
体調不良、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)さんの誤解を解く。
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●冬木市にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●爆破予告を知りました。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。


236 : ◆txHa73Y6G6 :2016/09/13(火) 09:35:13 MIRdZZOc0
投下終了です


237 : ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 00:58:46 M8qgYWVA0
昨今のリレー企画の筆力インフレについていけないので投下のハードルを下げていければと思います
投下します


238 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 01:44:57 M8qgYWVA0



 空は青から赤を経て紫へと変わり、太陽は大地に落ちていく。
 冬木ハイアットホテルの最上階、フロアに四つあるスイートの内の一つからその光景を見ているのは、アサシン・千手扉間。おぶっていた己のマスター・九重りんをベッドへと寝かせると、目に飛び込んでくる陽光を一瞥してドアを閉める。

「どうでしたりんちゃん?」

 ベッドルームから出てきた扉間へそう声をかけてきた日野茜に、「疲れたのか、良く寝ておるわ」と返すと、対面のソファーへと腰かけた。


 ホテルのサーヴァントの多くが美遊・エーデルフェルトからの魔力供給を受けるようになってから、あるいはそれ以前の情報交換もままならず睨み合っていた時から、八組の主従は自然、団体行動をとっていた。それには様々な理由があった。それは動けぬ他の主従の身柄を確保しているからであったり、捕捉した他の主従を監視し続ける為であったり、あるいは単に行動を別にするタイミングを逸したからであったりしたが、一つ言えることはある。それは、団体行動の必要性は時が経つにつれて高まってきていて、現在もそれは増し続けているということだ。
 一堂に会しての情報交換は、各主従それぞれの同盟毎の関係性はもちろん、各主従間での関係性も変化させた。更なる情報交換を望むもの、信頼を強めるものに不信を強めるもの。起こった変化は様々であるが、他者との更なる形と深度での接触を求めるようになることは共通していた。
 それ故に今、茜達病院の同盟はホテルの最上階の一室へと集まっていた。多くのサーヴァントへの魔力供給は、美遊の影響力を増している。彼女が何かしようとすれば他の主従は無下にはなかなかできない。アーチャー・安藤達と行動を共にしていた彼女に引きづられるように、茜達も最上階へと移動したのだ。


 ただ、美遊に連れて移動したとはといえ、同じ『空間』に居るという訳では、ないのだが。


239 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 01:51:51 M8qgYWVA0


 ガシャン、と僅かな間物思いに耽っていた扉間の耳に軽い音が入ってきて気を取り戻す。目の前のテーブルでは、小さなレンガめいたブロックが散乱していた。

「あれ、うまくしまえない……新品だからかな。」

 せっかくならもう一回どうです、ジェンガ?と振られて、扉間は身を乗り出す。この将棋崩しのようなものをこれまで四人でやってきた。パーティーゲームというものだろうか、下の店で買い出しをしているときに見た覚えがある。
 茜は慣れた手つきでブロックを積み上げていった。「先輩とよくやってて」、そう言った表情はやわらかいものだったが同時にどこか淋しさも感じさせるものだ。

(人数が足りん、か。)

 ちらりと包装の箱を見る。本来はもう少し大人数でやるものなのだろう。それをこの場でわざわざ買ったということは……

「色々と買い込んだようだな。」

 わざわざ今、その事を話題にする必要性はないだろう。そう思い話を買ってきた他の商品へと向ける。何があるかは知っているが、それ故に話題を確実に誘導できる。
 扉間はそう目論むと積まれたジェンガを引き抜きながら茜に聞いた。なおジェンガのルールは麻雀などと違い初心者でも把握は難しくないので省く。

「いや〜折角なんでと思って。りんちゃんとお揃いでTシャツとかストラップとか、あとアロマとか買っちゃいました!」
「アロマ……香か。どうりで変わった匂いがすると思った。」
「!実は……さっきサンプルをこぼしちゃって。て言っても殆ど零れてなかったのに、よく気づきましたね。」
「サーヴァントだからな。しかし、その匂いはタマネギのようだが。」
「冬木市の特産品らしいですよ。寝る前に少し嗅ぐとグッスリ寝られるみたいです。全力リラックスですっ!」

 お前には絶対に必要のないものだろう、そう思ったが口には出さない。袋を見れば、そのアロマとやらが二つ入っているのが見えた。おおかた、りんを気づかってのものだろう。
 何気ない心配りができる人間。ジェンガをまた一つ積み上げながらそんなことを考えていると、部屋のドアが開いた。その姿を見ずとも、気配を感じずとも、誰かはわかる。りんを寝かせに行く間にマイケル達を見に行っていたはずだが、少々時間がかかったように思える。

「遅かったな、幸村。」
「ランサー――ああっ!?」

 動揺したのか手先が震えて茜がジェンガを崩す。それに幸村がいつもの様に大袈裟なリアクションを――しない。


240 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 03:07:17 M8qgYWVA0

(……?)

 扉間と茜が一瞬視線を交わし、怪訝に幸村を見たのは同時であった。

 そこに立っていたのは、やはり幸村であった。それは間違いない。ただ様子がおかしいところがあるとすれば、それは彼もまた怪訝な表情を浮かべていたことだった。
 幸村は目を二人の間で何往復かさせると、確認するかのように扉間に向かって問うた。

「あさしん、ここに我らがいることを知るのは難しい、そうだったな?」

 幸村の要領を得ない問いに扉間が一層怪訝な顔になる。

 今、扉間達がいるホテルの最上階は、元の持ち主によって築かれた二重の陣地に、更に扉間と色丞狂介のキャスター・パピヨンと自らを『代行』と名乗った男のサーヴァント・ドクによる三重の陣地が加わり、五つのそれぞれ異なる技術体系による仕掛けが施された異形の陣地である。この内、元の陣地は秘匿性に優れながらも簡素なものであったため、扉間ら三騎による工作で乗っ取ることに成功していた。その際に不手際や互いの不審な行動は、扉間の見た限りではなかったと思われる。また陣地の構築は元の秘匿性の高さを殺さぬように最低限の結界を除いて隠蔽工作に注力されている。それこそ扉間のような高い感知能力がなければ見つけることは不可能に近いであろう。

 よって扉間の答えは「そうだが」と簡単なもの。

 幸村は一つ頷く。そして茜に向くと言った。

「どうやら警察が来ているようで――」


241 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 03:23:10 M8qgYWVA0

「冬木警察署生活安全課、尾留川(おるみ)です。あの……日野茜さん、ですよね?」
「はいっ!346プロダクションの日野茜です!!」
「ですよねぇ!やっぱり!」

 ホテル一階のカフェ。
 日野茜はそこで一人の婦警と話していた。
 尾留川と名乗ったその巨乳の婦警の言うことには、なんでもホテルに爆弾がないか捜査に来たという。既に一度ホテルの地下駐車場で爆発が起きていたため警察はそちらの捜査を優先していたが、一段落ついたことで爆破予告があった場所の警戒を強めることにした、とのことだ。

 この情報はそれなりに信憑性があると幸村は念話越しに聞こえてきた情報を口頭で扉間に伝えながら感じていた。彼がその婦警の、より正確に言えば今もホテルマン達を捕まえてなにやら話している警官達の接近に気づけたのは、美遊・エーデルフェルトのバーサーカーに見張られているマイケル達を見舞いに行ったときに、窓からこちらに向かって走ってくる数台のパトカーを目に止めたからだ。方角は先ほどカルナと戦ったスーパー、つまりは警察署の方からである。

『ますたぁ、あさしんが皆に話をし終わるまで時間を稼いでくだされ。』
『わかりましたっ!超スピードで話を引き伸ばします!』

 短くもしっかりと念話を交わす。茜がわざわざ陣地から単独行動で出ていってこうして話しているのは、少しでも扉間がこの事態を他の主従に説明する時間を確保するためだ。実際のところはそれは方便で、この件を機に主導権を握ろうとしていたり警官から情報を引き出そうとしていたり茜について聞き込みでもされる前に姿を表した方がマシだと判断したりもしていたが、建前とは言え目的には変わらない。

 茜は努めてゆっくりと紅茶の入ったティーカップに口をつける。さっきツイッターを見たら自分の名前がトレンド入りしていた。なんでも爆発事件で行方不明になっているらしい。うっかりスマホをフライトモードにしていたこともあって凄まじい量の不在着信が来ていたことも確認した。こんだけ凄い状況なのだ、嫌でも目立つ。現に警官達は皆自分の近くに集まってきていた。足止めの囮には最適であろう。

(アイドルは目立つのが仕事ですからね、全力で時間を稼ぎますっ!!)
「あの、早速で失礼だとは思うんですけど、冬木大橋での爆発事件の被害にあい病院へ搬送、その後病室のベッドの下から爆弾が発見され避難、避難先のスーパーで昼食中に爆発事件に巻き込まれ、更に避難先のこのホテルで駐車場の爆発に巻き込まれた、ということでよろしいでしょうか?」
「はいっ!!そうですっ!!いや〜1日でこんなに爆発したのは初めてです!!世の中わからないものですね、ハハハハハ――ハッ!?」

 あれ、これ、私疑われてる?その発想に茜は婦警の顔を見て思い至った。明らかに怪しい人物を見る目で彼女はこちらを見ている。というか自分の周りの警官も全員刑事ドラマの刑事のような眼光だ。ていうか警官達は茜の退路を塞ぐように取り囲んでいる。かなりヤバイ。

 ティーカップを持つ手は今やところてんよりもぷるっぷるである。これはもう囮とかそんなことを言っている場合ではない。このままでは爆弾魔扱いだ。ボンバーっていうのはそういう意味のボンバーじゃないんだ信じてください――


「――うっ!?すみません頭が……」

 日野茜、謎の頭痛を覚え死亡寸前。


242 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 03:32:08 M8qgYWVA0



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1837】


【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(5)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、変化、気配感知、美遊(サファイア)から魔力供給、疲労(微)、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.警察が来ていることを他の主従に説明する。
2:ワイルド・ドッグからスーパーでの出来事について聞き出したりして情報の整理に勤める。
3.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.穢土転生の準備を進める。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定するがそれはそれとして早く魂喰いしないと。
7.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
8.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。逃げたサーヴァント(サイト)も気になるが後回し。
9.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
10.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●ホテルの上から三階までを陣地化しました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、覚悟?
[装備]
着替え、名前のストラップ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1.強くなりたい。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。


243 : 【93】悔いる度に病は ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 03:40:06 M8qgYWVA0


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内蔵にダメージ、ダメージ(大)、美遊(サファイア)から魔力供給、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の汚名を灌ぎたい。
2:ドクに恩義。
3:ますたぁ(茜)への申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
4:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)との再戦を考えていたが……?
[備考]
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●冬木市にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●アーチャー(まほろ)、狂介&キャスターに不信を抱きました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
体調不良、頭にタンコブ(応急処置済)、ところてんよりもぷるっぷる、謎の頭痛、死亡寸前、???
[装備]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .うっ!?頭が……
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)さんの誤解を解く。でもその前に私が爆弾魔という誤解を解く。
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。


244 : ◆txHa73Y6G6 :2016/10/24(月) 03:43:30 M8qgYWVA0
投下終了です


245 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 00:58:40 XLFeUPZQ0
Wikiの検索が機能していないのは私だけでしょうか
投下します


246 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 01:34:29 XLFeUPZQ0



 翠屋の屋上でセイバー・テレサは両手に剣を持つと静かに構える。
 右手には『彼女達』の代名詞たる大剣――クレイモア。
 左手には妖しく唸る日本刀――デルフリンガー。

 瞬間、豪。

 テレサの前に光と音を発する何かが生じると共に、彼女の腕、いや上半身全体が霧に包まれたかのようなおぼろげなものになる。
 それが彼女が両手で放っている高速剣によるものだと認めることは前知識のあるチョコには側から見ていながらも難しかった。

 そこにあったのは、光の壁だ。たった二本の金属棒とたった一人の女によって、槍衾もかくやという刺突の防壁が生み出されていた。圧倒的な『突き』による鉄壁の盾にして無敵の矛。原理は極めて単純なラッシュでありながら、それ故に絶対の強さを誇る。
 彼女のマスターであるチョコには、そう認識することすら難しいほどの、馬鹿らしくも現実離れした光景。なまじ魔術や神秘を知っているだけにそれが物理現象だと納得することは難しい。なにせこんなことは黒魔術でもそうはできない。それを筋肉でやっているとは、そんな『オカルト』は信じられない。

(――話にならないな。)

 だから、テレサが高速剣を止め、少ししてから後ろにある扉へ向き直った時も、それが自身の限界を感じてのものとはつゆほども思いはしなかった。


247 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 01:44:59 XLFeUPZQ0


(まるで足りない。)

 威力が足りない。
 剣速が足りない。
 精密さが足りない。
 即応性が足りない。
 持続時間が足りない。

 高速剣自体彼女のものではなく見稽古半分に身につけたとはいえ、両手で放つそれは利き手一本の時に比べて明らかにお粗末なものであった。サーヴァントになり色々と衰えるなか生前よりなぜか高速剣に習熟しているにも関わらず、だ。

(――バランスか。)

 そして気づいた。両手での高速剣にはいくつかの問題があるがその一つに。
 身体的なスペックのアンバランスな低下と妖力解放のムラ、そこに高速剣の本来ならあり得なかった習熟。正しいやり方である片手だけの高速剣ならまだ調整ができるが、さしものテレサも両手では如実にボロがでる。
 しかもこればかりは、一朝一夕では上達は望めない。動きの悪さや妖力解放の制御の荒さは対応する自信がある。高速剣自体も完成度を上げることは不可能ではなかろう。しかしそれを全て同時に、しかも技自体を洗練させる方向でバランスすら取るというのは非現実的だ。ましてや今のテレサの仮想敵は、あのカルナ。だが今の彼女が放てる両手での高速剣では真田幸村にすら押し負けるであろう。彼と比べても、それも本気を出したかわからないあの一度きりの手合わせを参考にしてもなんとか手数だけ上回れるにすぎないのだから。そしてもし自分が受けることになれば、片手より両手の高速剣の方が御しやすいと思えてしまうのだから。


248 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 02:11:22 XLFeUPZQ0


「――電話とやらはできたか?」

「……ええ、できれば貴女達にも下に来て話に加わってもらいたい。」
「急いでたんじゃ?」
「鍛練の邪魔はしたくない。」

 「先に降りています」と言って扉から手を離すとセイバー・アルトリアは背中を向けた。彼女の気配は高速剣を放ち終わった直後辺りから感じていたのだが、こちらから話しかけるまで黙っていたのはその言葉通りのためだろう、そうテレサは思った。

(……ありがたい。)

 テレサは再び剣を構える。やはり両手。腕を中心に妖力解放。10%20%30%。これ以上は限定解放は安定しない。

 瞬間、豪。

 再度高速剣が放たれるが――それは先ほどとは違い、片手。妖力は両手にありながら片手。

(もう少し時間があれば。)

「チョコ、行くぞ。」

 いつの間にか納刀を済ませると、未だ呆けたようなマスターに声をかけてテレサは歩き出す。高まっていた妖力は既に消え、確認するように丁寧に手を開閉させる。そんな彼女の後ろを慌ててチョコは追った。


249 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 02:57:37 XLFeUPZQ0



 あの会談は失敗だったかもしれない。クロノ・ハラオウンはカレーの鍋をかき混ぜながら思い始めていた。傍らに置かれているスマートフォンはいつでも出られるようにするためだが、それが鳴ることは一向にない。それどころかこちらからかけても繋がることはなかった。

 柳洞寺での三対三の会談から既に二時間。その間何度も間桐慎二らに連絡を試みるも一度も成功していなかった。この事がある程度は予想していたとはいえ、クロノに疑念と不安を覚えさせる。
 もともと、クロノは柳洞寺での会談での成果は限定的であると評価していた。確かに情報の共有とカルナを主敵とすることの合意はとれた。しかし言ってしまえばそれだけである。それなりに時間をかけて話し合ったものの、クロノの聖杯戦争を止めるという主張にも理解を得られるどころか反感ばかりを感じた。直接的な話の持っていき方はしていないはずとクロノが自身を評価する程度にはオブラートに包んだ言い回しであったのだが、しかしながらそれでも対応は冷淡であった。それは同盟相手であるはずの凛でさえそうであり、チョコもまた積極的に賛成を示すことはなかったのだ。そしてそのチョコも、ルーラーについての話題は露骨に避けていた。彼女もまた、凛と同様にあくまでも一時的な休戦をしている、といったレベルにこの同盟を捉えているのかもしれない。その上、危険視されている黒いバーサーカーはライダー・五代雄介と姿が酷似している。これでは信頼関係を築くのは難しいだろう。
 そして現在、慎二達三名と連絡がつかないという現状。職業柄悪い事態を想像してしまうのだが、クロノはその想像が正しいことを前提にする必要性を感じていた。つまりは、慎二達はこちらとの友好的な関係を構築する気はない――要するに『敵にまわられた』という想像を。
 もし、といってもクロノは七割ほどはそうであると想定しているのだが、そうであれば非常に問題である。今彼らに敵対されれば対カルナの状況は一気に崩れる。それどころか、彼らがカルナの側につくことも十二分にあり得るのだ。カルナの強さは皆の知るところ、であれば敵対よりもあちらと共闘することを選ぶというのはあながちあり得ぬ話ではない。こちらの情報は流れている上に拠点も割れている。更にクロノは聖杯戦争そのものに反対の立場である。先に邪魔者を消そうと考えるやもしれない。自分と五代がサーヴァントと戦ったことを話したとき、自分を見る目が明らかに変わったのを思い出す。アリスやイリヤは興味深そうといった感じであったが凛やチョコはどうだっただろうか。あの目からはありありと警戒心が伺えた。彼女達はカルナよりも自分達を仮想敵としているのかもしれない。時空管理局の存在を明らかにすればそれも避けられただろうか。それとも余計に警戒されただろうか。そういえば爆破予告はあったのは12時だったか。病院や教会と一緒に商店街も爆破予告されたことが気になったがまさかそれは翠屋を襲撃するための対外的な撹乱なのでは……

 クロノはかき混ぜていたカレーの鍋を彼のライダーである五代雄介に任せるとカボチャのスープの鍋へと向かう。ご飯も蒸らしに入っている。あと少しで夕食の準備は整うであろう。

(これなら、戦いを止めるどころか、調査も……)

 焦げ付かぬよう火を調節しながら、胸の中で呟く。揺らめく炎は微かに揺れたあと安定した。自分の心もこれからの未来もこんなふうに順風満帆となれば良いのだが……そう、ぼう、と考えていた時だ。


 ――時空を越え刻まれた、悲しみの記憶――


 クロノのスマートフォンから流れる着信音が、彼を現実に引き戻した。


250 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 03:37:52 XLFeUPZQ0



 遠坂凛がクロノ・ハラオウンという男への警戒心をはっきりと持ったのは柳洞寺での会談でのことだった。

 直感的にも常識的にも論理的にも、この男は本質的に自分の敵であると確信した。

 その知性、弁舌、リーダーシップ、どれをとってもローティーンとは思えない。自分と同じようにアバターに弄っているのだろう。とにはともかくその少年とも言うべき男は有能なのだ。そしてそれが問題なのだ。
 この男は聖杯戦争を止める気でいる。直接言葉にすることはなかったが彼がそう考えているであろうことはあの会談のを終えてここ翠屋に戻ってきてわかった。喋りすぎるのだ。それは多弁という意味ではなく情報の公開というか意味で。彼はまるで情報の秘匿に頓着していない。恐ろしいほどに明け透けであるのだ。そしてそういった不利になることをなぜするのか。それをずっと考えていたのだが、何度も慎二達に連絡するのを見て、確からしい仮定を立てられた。この男が聖杯戦争の勝利ではなく不成立を目論むのならば、言動のいくつかに説明がつくのだ。というもう聖杯戦争をやる気がないとしなければ他に合理的な理由が見つからない。
 そんな彼は、凛にとっては他のマスター達とは別の意味で厄介だ。彼がなぜ聖杯戦争に無気力というか、むしろ積極的に停滞させようとしているのかは知らないが別にそれは良い。だがろくでもない連中に聖杯を渡すわけにはいかなくとも、そもそも聖杯戦争そのものが成り立たなくなればどうなるかわかったものではない。いっそ聖杯が消滅してくれるならばありがたいが、もし次回の次々回の聖杯戦争が行われるようなことがあればたまったものではないのだ。それだけ『チャンス』を与えれば、圧倒的な地力を持つ『奴ら』側に聖杯を取られる可能性が高くなる。それは避けたい。

 そして何より、クロノの雰囲気が気にくわないのだ。

 ぶっちゃけもうこれが理由である。なんとなくだが、『奴ら』の、『西欧財閥』の匂いがするのだ。権力と支配、独善と傲慢の腐臭を覚えずにはいられない。何でそう感じるかははっきりと言語化できないのだが、もう単純に『生理的にムリ』なのだ。別に人間としては嫌いではないし良いヤツそうだとは思うのだが、本能が反射的に体を総毛立たせてしまいなんか好きになれないのだ。

 敵と言えばチョコのセイバー・テレサもだ。あの女に関しても特に理由はないが、気にくわない。ああいうタイプの人間は決して嫌いなほうではないのだが、それはともかく彼女が喋る度になにかきな臭いものを感じてしまう。直感が警告を発して、やっぱりこちらもなぜか好きにはなれない。

 腐臭だとかきな臭いとか匂いに関係あることばかりだな、などと一週回ってどうでもいいことまで考えてしまう。そういえば先からカレーの匂いと一緒にカボチャの匂いがしてくるな。今はハロウィンじゃないんだぞ八月だ八月。そんな脱線した思考を嗅覚ではなく聴覚が正気へと呼び戻す。


 数分後、集まった六人のマスターとサーヴァントで夕食会という名の会議が始まった。


251 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 04:46:45 XLFeUPZQ0



「つまり真田幸村と黒いバーサーカー達八騎のサーヴァントは共にカルナに対して立ち向かおうとしているのです。」
「それで、えーっと、アルトリアさんが探してるんですよね?」
「ええ、そのようです。しかし私には、ここにいる者の他は寺で話した者達いがいに心当たりがない。」
「黒いバーサーカーならアルトリアさんを遠くから見ても気づかれないかも。」
「なるほど、公園での戦いを見られていたのかもしれぬな。それにしても気になるのはこの怪文書だ。」

 印刷された爆破予告文を片手にカレーを口に運びながらアルトリアは見渡した。

 ようやく連絡のとれた慎二からの思いもよらぬ知らせは爆破予告とあいまって会議のメインテーマだ。怪文書に記されたアルトリアへの呼び掛け、アルトリアを探すホテルのサーヴァント達、要注意人物である真田幸村と黒いバーサーカー、赤い頭巾の青いランサーのようなアーチャーに慎二達が同盟している主従。少なくも重要な情報をそれぞれに粗酌し、付け合わせのパンプキンスープと共に飲み下す。
 そして目下の問題は。

「つまり、この怪文書に記されている意匠は、ローマ帝国の後継を名乗る悪逆非道な者達のシンボルなのですね?」

 眉間に皺を寄せ、アルトリアは忌々しげに紙を放った。

 まず何よりの問題となったのは、ナチスと思われる連中がアルトリアを爆破予告しつつ探していることである。これは色々と悩ましい。なんだってこんなピンポイントに名指しされねばならぬのだ勝手に犯行声明に人の名前出すんじゃない。凛以外には話していないが、内容的に第三次聖杯戦争が関連している可能性がある。しかもこいつらはローマである。死ね。

「そういえば、ナチスは聖杯を探してたらしいですよ。」
「チョコ、それは本当ですか。」
「うん、他にも魔女や人狼や吸血鬼の軍隊がいたって話を聞いたことあります。」
「聖杯を欲しているのは私だというのに愚かな……しかしやはりローマか。十字架をねじ曲げているだけのことはある。」
(……アルトリアって名前、ラテン語っぽいのにローマ嫌いなのかな……?)
『チョコ、余計なことは言うなよ。』
(まあセイバーならこうなるでしょうね。)
(数々の爆破事件がこのナチスの犯行なら、少なくともそこではアルトリアと共闘はできるか。)
(クロノ君顔暗いなあ……あちっ。」

 思えば、息子と国のことでガリア遠征を引き上げていなければこのような邪知暴虐の連中に大きな顔をさせなかったかもしれない。そういう意味ではこれはアルトリアにも責任の一端があると言えよう。しかもこいつらはイングランドばかり空襲したという。なんでイングランドなんだスコットランドでもウェールズでも良かったじゃないか千年以上経ってから報復とは良い度胸だ切り捨ててくれよう。
 胸中でこのナチ公をエクスカリバることを決意しつつアルトリアはカレーを食らう。このクロノという若人、なかなかの腕前である。サーヴァントの雄介共々良い腕をしている。この時代の食べ物はだいたい美味だが手を抜いている印象があるが彼らの料理は違いこのカボチャのスープも……


252 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 05:48:44 XLFeUPZQ0

「それで、我々の内の誰かがホテルに行ってほしいとのことです。」

 怒り心頭といった顔でカレーを頬張るアルトリアに代わりクロノが話を進める。

 実のところ、一番めんどくさい問題がこれだ。対カルナの同盟とのパイプを作るという意味でもそれ以外の意味でも、ホテルの同盟と直接意志疎通できるようにしなくてはならない。現地には既に間接的にこちらの説明がなされているであろう現在、彼らと直接話せればプラスになる。逆にここで接触できなければ計十一騎のサーヴァントが敵になる可能性もある。それだけは避けたい。

「そのホテルの同盟が、このナチスと繋がっている可能性は説明する必要ある?私達はノーよ。」
「凛!」
「明らかに罠じゃない。相手の挑発に乗る気?」

 だが凛は明確に拒否した。そしてその理由ももっともである。それ故に、クロノは悩む。クロノとしてはパイプ形成はもとより聖杯戦争の阻止妨害と調査も進めたいのだが、そうなるとクロノが乗り込むしかなくなる。だがそれは必然的に今の翠屋の同盟を破綻させかねない。クロノがいなくなればこの同盟すら聖杯戦争に乗りかねない。

「それとクロノ。貴方も同じ。あっちに黒いバーサーカーがいるなら問答無用で襲われかねない。」

 そしてこれだ。クロノ達が行くことで、火種になりかねないのだ。そうなれば本末転倒も甚だしい。

 そしてそうなると。

「じゃあ……私達が。」

 消去法でチョコ達が向かうことになるのだ。無論この組み合わせも危険ではあるのだが、テレサは既に一度幸村とバーサーカーから逃げおおせている。またテレサの索敵能力はこういった場面では有用であろう。問題はチョコだが、幼い少女であることはプラスに働く、かもしれない。
 しかし、と更に悩むクロノに「ついでに教会によって真田幸村のことを調べたいなって」とチョコは言う。チョコとしてはこれは方便で、ルーラーから求められた黒魔法のリストを提出しにいかなければならないというのが本音ではあるのだが、クロノはそれを違う風に受け取った。教会で真名を調べるという行為をあっけらかんと口にできる、彼女の人間性を信ずることとした。


 夕食会は終わり、五代とアルトリアがバイクを用意する。五代の後ろにはチョコと霊体化したテレサが乗り、アルトリアの後ろには凛が乗ることとなった。これにて一度翠屋の同盟は物理的には解散となる。
 それぞれに連絡先を交換すると、チョコ達は大使としてホテルへ向かい、凛達は遠坂邸に帰宅する運びになった。この事にクロノは胃が重くなるが、取れる手としては最良のものであると信じたい。凛を強く引き留めれば彼女の反感を買いかねない以上、せいぜい明日も翠屋に集まることしか求められない。
 やはり彼女は、柳洞寺での会談から態度を硬直化させているように思える。今は出会った時並みにどこか棘のある対応をされてしまっている。チョコが離脱する以上最も身近になる同盟相手であるだけに、なんとか信頼を得なければ。本選が始まって半日、なかなかに前途多難だが挫けるわけにはいかない。

 走り出していくバイクを一人見送る。クロノ・ハラオウンの聖杯戦争は、まだまだ先が長い。


253 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 06:09:56 XLFeUPZQ0



【深山町、マウント深山商店街・喫茶店翠屋』/2014年8月1日(金)1859】

【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
満腹、ゴスロリ、疲労(小)、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)、黒魔法のリスト。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:冬木教会に行ってルーラー(ミュウイチゴ)に黒魔法のリストを渡す。
2:ついでに真田幸村とかについて調べる。
3:ホテルに行って偵察する?
4:同盟を結んだけど、他のサーヴァント?
5.仮面ライダー……なんだっけ?
6:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。またステータスを把握しました。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)、セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
霊体化、妖気探知、剣がとりあえずくっついた
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:まずは教会に行き、そのあとホテルへ。
2:自分自身の『高速剣』を体得できれば――
3:なんでライダー(五代)は黒いバーサーカー(小野寺)と同じ姿なんだ……?
4:悪くないな、この剣。
5:チョコの軽さを注意、ルーラーを色んな意味で警戒。
6:バーサーカー(小野寺)の索敵能力は警戒しておく。
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名と魔力とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)の魔力とある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。ライダー(五代雄介)の弱点であるきもしてます。
●冬木大橋付近と自宅付近と病院付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、アサシン(千手扉間)、キャスター(兵部京介)、セイバー(アルトリア)、ランサー(カルナ)、イリヤ(pl)、バーサーカー(ヒロ)、デルフリンガーの魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●イリヤ(pl)とアーチャー(クロエ)の妖気を同一の物と誤認しました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。
●病院に赤いランサー(真田幸村)がいると考えています。
●大剣が壊れましたが、見よう見まねの高速剣に耐えられるぐらいにはくっつきました。
●セイバー(アルトリア)とライダー(五代)の真名を把握しました。
●携帯電話が使えません。


254 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 06:14:05 XLFeUPZQ0



【深山町、マウント深山商店街・喫茶『翠屋』/2014年8月1日(金)1859】

【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
満腹、ゴスロリ、疲労(小)、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)、黒魔法のリスト。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:冬木教会に行ってルーラー(ミュウイチゴ)に黒魔法のリストを渡す。
2:ついでに真田幸村とかについて調べる。
3:ホテルに行って偵察する?
4:同盟を結んだけど、他のサーヴァント?
5.仮面ライダー……なんだっけ?
6:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。またステータスを把握しました。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)、セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
霊体化、妖気探知、剣がとりあえずくっついた
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:まずは教会に行き、そのあとホテルへ。
2:自分自身の『高速剣』を体得できれば――
3:なんでライダー(五代)は黒いバーサーカー(小野寺)と同じ姿なんだ……?
4:悪くないな、この剣。
5:チョコの軽さを注意、ルーラーを色んな意味で警戒。
6:バーサーカー(小野寺)の索敵能力は警戒しておく。
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名と魔力とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)の魔力とある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。ライダー(五代雄介)の弱点であるきもしてます。
●冬木大橋付近と自宅付近と病院付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、アサシン(千手扉間)、キャスター(兵部京介)、セイバー(アルトリア)、ランサー(カルナ)、イリヤ(pl)、バーサーカー(ヒロ)、デルフリンガーの魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●イリヤ(pl)とアーチャー(クロエ)の妖気を同一の物と誤認しました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。
●病院に赤いランサー(真田幸村)がいると考えています。
●大剣が壊れましたが、見よう見まねの高速剣に耐えられるぐらいにはくっつきました。
●セイバー(アルトリア)とライダー(五代)の真名を把握しました。
●携帯電話が使えません。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。


255 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 06:18:11 XLFeUPZQ0


【遠坂凛@Fate/Extra】
[状態]
アヴァロンを体内に所持、満腹、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate/Extra
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:一度帰宅して礼装やドールを改良する(索敵・感知系を優先)
2:闇討ちや物量戦法を強く警戒
3:クロノを警戒。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●五代雄介とテレサの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
アヴァロン使用不可、実体化。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:ナチス処すべし。
2:帰ったらハヤブサの整備を凛に頼みましょう。
3:何故冬木が会場に……それにイリヤ……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。
●スズキGSX1300Rハヤブサは小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。


256 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 06:25:11 XLFeUPZQ0


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]
満腹、精神的疲労(小)。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1.翠屋のマスターとしての役割を演じ、情報と人を集めたいが……
2.なんとか二組(セイバー×2)、できれば五組(+アーチャー、キャスター、バーサーカー)、欲を言えば十三組(+ホテルの八騎)に協力者になってもらいたいがーー
3.あの女サーヴァント(リップバーン)は一体……?
4.折を見てマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が拠点として設定されています。クロノはそこのマスターです。
●リップバーンの死や行動について強い疑念を感じています。
●翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
実体化、テレサからデルフリンガーを預けられた。
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める。
0.乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1.チョコちゃん達を安全に教会へ送り届ける。
2:テレサ達とアルトリア達と協力できれば……?
3.あの子(亘)は無事なのか……?
4.クロノ君がちょっと心配。
[備考]
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の存在には気づきました。
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名を把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。


257 : 【94】やがて幼き凶刃へ ◆txHa73Y6G6 :2016/11/01(火) 06:25:32 XLFeUPZQ0
投下終了です


258 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 00:57:23 4vn9e5RE0
投下します


259 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 01:57:33 4vn9e5RE0



「ここ、ここ。」

 はえ〜、と驚く黒鳥千代子ことチョコの声を耳にしながら遠坂凛は大きな屋敷を指差す。それぞれにバイクの運転手にしがみつきながらもその目は遠坂邸へと向いていた。

 翠屋を発った彼女達は未遠川にある渡し船を目指し南東へと単車を走らせていた。このルートは途中で遠坂邸に接近するために選ばれたルート。できるだけ戦力を割くのは避けるのが定石であるがゆえに、とりあえずそこまでは行動を共にすることとなっていた。
 幸い、道中に問題は起こらなかった。せいぜいが所々に検問が張られているぐらいで超常の存在であるテレサ達からすれば難なく回避できる。そのかいあって遠坂邸には随分と早く着いていた。

「家に、差が、すごいよね。なんだろう、凛さんってお嬢様なのかな?」

 たまげるチョコに「さあな」と彼女のセイバー・テレサはつれなく返す。ここで無駄話に興じている時間はない。ホテル側には既にこちらの情報が流れていると見て間違いないだろう。本質的には自分達以外は全て敵の聖杯戦争、とっとと行って目を光らせねばなにをされているかわかったものではない。

「じゃあ行こうか。」

 故にテレサは急かす。そして霊体化しようとして、思い出したように凛のセイバー・アルトリアへと振り返った。

「さっきの忠告は感謝するよ。」
「ホテルのことですか。」
「ああ。20年前にも爆発したっていう。」

 忠告とは、ホテルの爆破テロのことだ。衛宮切嗣によって行われたあの暴挙を、これまでの道中にていくらかボカしつつも説明していた。
 ――曰く、あのホテルは呪われていると。
 ――曰く、今回の爆破予告は二十年前の再来だと。
 そう胡散臭く、しかし記憶に残るように。アルトリアの直感が感じるあのホテルの悪意を、チョコとテレサに欠片でも感じさせるように。

「だからお返しに忠告する。」
「ふむ、なにか。」
「情けは人の為ならず、だっけ。つまり、切るときに切るべき相手を切れ。じゃないと自分の首が飛ぶ。」

 「難しいことを言ってくれる」と苦笑するアルトリアに「まあな」と返すとテレサは今度こそ霊体化する。おしゃべりが過ぎた。互いに名残惜しという感情が全く無いわけではないが、先を急がなくてはならない。

 それまで黙っていたライダー・五代雄介はスタンドを蹴り上げる。「できれば貴女とは剣で決着をつけたい」、そう言ったアルトリアに応えるように一瞬デルフリンガーの鯉口が切られた音がした。

 遠坂凛とアルトリア・ペンドラゴンと別れて、第一チェックポイント、通過。


260 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 03:17:56 4vn9e5RE0



 一台のパトカーと二名の警官、数名の消防団員に大勢の人間と行き交う小舟たち。それが未遠川に到着した三人が見たものだった。
 渡し船は、慎二達が渡ったときよりも増えていた。貧相なボートが一艘岸と岸とを往復していたのが、今や十を越している。全部一直線に並べれば橋になるのでは、などとチョコが思うほどだ。そして同時に、そこにあるのは、魔力。一般人ならともかくサーヴァントと黒魔女には、明らかにそこに聖杯戦争の参加者がいるとはっきりわかった。
 土手から人混みを一通り見渡すと、ややあってチョコはスマホを取り出すと馴れぬ手つきで通話を試みる。

 ――テテッ、テテッ、テテッ、テーテテテッ、テテッテッテッテッ、テーテッテッテー――

 警戒な着メロが鳴ると人混みの中から手が上がる。その手に持つのは、やはりスマホ。少ししてチョコ達の元に近づいてきて。

「ご苦労様、ライダー。それじゃあ行きましょう。」

 五代と適当に握手しながらそれだけ言うとアリス・マーガトロイドは舟へと歩き始めた。


 チョコのスマホにアリスから電話があったのは、チョコは知らぬことだが間桐邸を過ぎた辺りでのことだ。その内容は簡潔、渡し船で待つとのこと。それだけ。
 待つと言われてもどういうことなのかはまるでわからなかったが、しかし行かないわけにもいかない。どのみち、川を渡るためには渡し船を使うしかないのだ。警戒はしながら進む他ない。
 といっても、その警戒は今回は杞憂だったのだが。

「もしかして、列の場所取りしててくれたんですか?」

 おずおずと聞くチョコに「こんなので待つのはヤでしょ」と言ってアリスはずんずん歩く。

「これだけの魔法を使うなら、必要なさそうなものだろう?」
「横入りはマナー違反よ。」
「ふーん……案外、こっち側なんだな。」
「貴女も、サーヴァントなのに。」

 いつの間にやら実体化して話に加わっているテレサにチョコは驚き慌てるが、周りを見回して悟った。認識阻害、それも自分の師匠すら上回るレベルのものだろう。抜き身のデルフリンガーを持っているのにせいぜい一瞥だけして手にしたスマホに目を落としたり会話に興じたりしていた。

 霧雨魔理沙です、と受付らしき少女に声をかけるとアリスはさっそく舟に乗る。彼女ほどの魔女なら舟に乗らなくてもいいだろうに、とチョコは思ったが、テレサに続いて乗り込んだ。

「五代さん、送ってもらってありがとうございまし――ととっ!?」

 チョコがお礼を言い終わるのを待たずに、舟はこぎ出す。それでも手をふると、五代も手をふり返す。

 五代雄介と別れて、アリス・マーガトロイドの合流して、第二チェックポイント、通過。

 そして。

「クロノくんも、モテるな。」

 アリスと握手した手を開く。折り畳まれた紙片は彼女から渡されたもの。『8/2 09:00 教会』とは、デートの誘いではないだろう。
 手のひらの上で溶けるように消えていくその紙をしばし見送ると、五代はバイクを走らせた。


261 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 04:55:27 4vn9e5RE0



「チョコ、真田幸村って有名な人なのよね。当然だけれど。」
「そうだと思います。教科書にも乗ってたんで。」
「そう。じゃあ聞きたいのだけれど。」
「はい。」
「あの真田幸村って、この真田幸村の内のどれ?」
「……あの、多分ここにはいないと思います。ここにいる人みんな女なんで。ていうかなんでこんなスケベなカッコしてるの……」

 冬木教会の片隅にあるXP。その前で二人の少女がディスプレイの中のやけに露出度の高い少女達とにらめっこしていた。
 アリスの目的地は、偶然かは不明だがチョコと同じく教会だった。ここではサーヴァントについての検索ができるためであろう。かくいうチョコも教会に来た理由は一応真田幸村についての検索である。そういうわけで二人して真田幸村を検索していたのだが、これは想像以上に難航していた。
 理由は至極簡単、『真田幸村』が真名の英霊がやたら多いのだ。
 真田幸村で検索したところ、明らかにこれは違うだろうと思うものまでヒットしてしまっていた。具体的には女だ。しかもやたら多い。あと結構な割合でエロい。男に限定しても、やっぱりちょいちょいエロい。こういうのに耐性のないチョコは早くもグロッキー気味である。伊達に青い鳥文庫でろくすっぽ恋愛せずにやってきただけのことはある。
 しかも質が悪いのは、そんな真田幸村達でも割と真田幸村っぽいのだ。逸話とかがみんな少しずつそれっぽい。全部合わせて平均をとると、なんとなくあの真田幸村っぽさもある。だいたいみんな赤いし。
 そしてもう一つの理由はハードとソフトだ。このパソコン、重い。しかもインターフェースが使いづらい。なにをするにもいちいち反応が遅いくせになにかしようとすると変に時間がかかる。しかもチョコもアリスもパソコンを操作したことなどない。悪戦苦闘するも、全く捗っていなかった。

「やっぱりそのパソコン使いづらいよね。さっき駅前の電気屋さん行ったんだけどさ、今のパソコンってスゴいカッコ良くなっててしかも早いの。画像もすぐ出るし。」
「ミュウイチゴだっけ?黙ってて。」
「ヒドイ!?私がパソコンの使い方教えて上げたのに!」

 ちなみにルーラーについてはパソコンの練習と検索の練習を兼ねてアリスが検索してみたところ真名も入れていないのに割とすぐ出てきた。カルナも真名だけではダメだったが宝具もいれてみたらあっさり出てきた。これで甘く見て真田幸村について調べ初めて既に十分は経っている。ぶっちゃけやらなきゃ良かったと二人は思い始めていた。


262 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:03:51 4vn9e5RE0

「っていうか、ここはあんまり長くいちゃダメなんだからね。」
「なんでそんなところに検索できるものを置いたのよ。時間かかるって想像できなかったの?」
「知らないもんそんなの私に言われても!なんで私に言うかな。」
「貴女ルーラーでしょ言われて当たり前じゃない。」
「私ルーラーなんて初めてだし別にやりたくてやってるわけじゃないもん!これバイト代も出ないんだからね!だいたいさ、他のサーヴァントとかはさ、聖杯で願い叶えたいとか、こんな風に戦うなんて間違ってるとか、なんかそういう、なんだろう、モチベーションっていうかやる気につながるなにかがあるけど、ルーラーはそういうのないもん!茅の外じゃん!」
「ミュウイチゴ落ち着いて……」
「突然召喚されてルーラーやれってなにこれもう拉致じゃん拉致!なんで殺し合いの審判なんて、こんなのやりたいと思う?思わないよね?自分がやりたくないことを人に無理矢理やらせるっておかしくない!?それでさあ、やっぱり危ないことにも巻き込まれるっていうか、むしろ巻き込んでいく側だけどさ、戦いたくないよ!ルーラーが地球を守るとか、そうじゃなくても誰かを守るとかなら、良いけど、殺し合いの手伝いしろって、なにこれ!」
「ダメだこれ本当に怒ってる時だ。」
「もう真名バレちゃったから言うけどね、私の真名ミュウイチゴなんだよ。でも、それは私自身じゃなくて、私は桃宮いちごで、真名って言ったらそっちの方があってるのに、でもミュウイチゴが真名で。本名は桃宮いちごなのに、ミュウイチゴが私だって言われて!私さ、変身解けないんだよ!!戻れないんだよ、人間に!!だってそれは、桃宮いちごは私じゃないから、ミュウイチゴが私だから、そういう風に決められたから!」

 チョコは一つの疑問が解けた。なぜ、ミュウイチゴが、桃宮いちごがルーラーをやっているのか。期せずしてアリスが踏んだ地雷でわからされた。

 「あの、これ、ミュウイチゴが」と、チョコは持ってきたリストを渡そうとしていた。反射的な行動だった。ここにいたくない、逃げたい、そんな考えにもならない本能が気がつけばリストを差し出していた。
 だがそれも、逆鱗に触れることに他ならない。

「そうだよミュウイチゴだよ、自分のこと知ってくれてる子に、ルーラーだからって朝の5時から問い詰めたりして!しかも、ビーストのグラスで!ビーストのクラズ、クラスで!!ルーラーの仕事だから行ったんだけどさ、チョコちゃんがお茶とか出してくれて、下心はあったかもしれないけどそれでも気遣ってくれて、英霊じゃない私を知ってる事がいることが嬉しくって!でも私はビーストのクラスでビーストっていうのはなんか悪魔みたいなクラスで、ルーラーと真反対で!生物兵器で!!!」

 アリスが踏み抜いたのは、特大級の地雷だった。ミュウイチゴ自身もはっきりとは自覚していなかった、それでも確かに行動に影響を及ぼしていた、ルーラーである自分への違和感。それはほんの少しの衝撃で怒りと不満と情けなさが組み合わさったテルミットを爆炎に変えたのだ。


 チョコとテレサ、そしてアリス。ただの通過点だったはずの第三チェックポイントは、その実正念場。









 桃宮いちごの、マスターにもサーヴァントにもなれなかった少女が、聖杯戦争の部外者にて主催者が、一人のプレイヤーになる瞬間。


263 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:14:51 4vn9e5RE0



【深山町、遠坂邸/2014年8月1日(金)1926】

【遠坂凛@Fate/Extra】
[状態]
アヴァロンを体内に所持、満腹、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate/Extra
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:礼装やドールを改良する(索敵・感知系を優先)
2:闇討ちや物量戦法を強く警戒
3:クロノを警戒。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●五代雄介とテレサの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
アヴァロン使用不可。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:ナチス処すべし。
2:ハヤブサの整備を凛に頼む。
3:何故冬木が会場に……それにイリヤ……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。
●スズキGSX1300Rハヤブサは小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。


264 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:18:32 4vn9e5RE0



【深山町、マウント深山商店街・喫茶『翠屋』/2014年8月1日(金)1926】

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める。
0.乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1.クロノくん実はさっきアリスさんから――
2:テレサ達とアルトリア達と協力できれば……?
3.あの子(亘)は無事なのか……?
4.クロノ君がちょっと心配。
[備考]
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の存在には気づきました。
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名を把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。


265 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:27:36 4vn9e5RE0



【新都、冬木教会/2014年8月1日(金)1926】

【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
満腹、ゴスロリ、疲労(小)、ショック、魔力消費(中・微消耗中)、ルーラーが色々気になる。
[装備]
チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸)、リュックサック(普段着のイケてないオーバーオール収納)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:いちご……
2:ホテルに行って偵察する?
3:同盟を結んだけど、他のサーヴァント?
4.仮面ライダー……なんだっけ?
5:桃ちゃんセンパイと育ちゃんか……かなりまともそう。
[備考]
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●ゴスロリを着たため魔力の供給が増え、魔力感知にかかりやすくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放やデルフリンガーを持たずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在し、本選での活動の結果デフォルトの状態より好感度が上がりました。有益な情報を持っているかは不明です。また心なしか彼女達と彼女達の周辺にいた人たちに良いことが起こる可能性があります。
●2004年前後のメタ知識を持ちます。知識内容は通常の女子小学生並みです。
●ライダー(五代雄介)の真名とステータス(マイティフォーム)、セイバー(アルトリア)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。

【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
霊体化、妖気探知、剣がとりあえずくっついた
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:ルーラーが……どういうことだ。
2:自分自身の『高速剣』を体得できれば――
3:チョコの軽さを注意。
4:なんでライダー(五代)は黒いバーサーカー(小野寺)と同じ姿なんだ……?
5:バーサーカー(小野寺)の索敵能力は警戒しておく。
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名と魔力とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)の魔力とある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。ライダー(五代雄介)の弱点であるきもしてます。
●冬木大橋付近と自宅付近と病院付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、アサシン(千手扉間)、キャスター(兵部京介)、セイバー(アルトリア)、ランサー(カルナ)、イリヤ(pl)、バーサーカー(ヒロ)、デルフリンガーの魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●イリヤ(pl)とアーチャー(クロエ)の妖気を同一の物と誤認しました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。
●病院に赤いランサー(真田幸村)がいると考えています。
●大剣が壊れましたが、見よう見まねの高速剣に耐えられるぐらいにはくっつきました。
●セイバー(アルトリア)とライダー(五代)の真名を把握しました。
●携帯電話が使えません。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。


266 : 【95】壊滅灰塵解放区 ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:44:52 4vn9e5RE0


【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[状態]
精神的疲労(微)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.一度自宅に戻る。
2.セイバー達をちょっと揺さぶる気がどうしてこんなことに。
3.三千人、ね。
4.定期的に赤城の宝具で偵察。
5.できれば冬木大橋を直接調べたい。
6.人形を作りたいけど時間が……
7.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(ミュウイチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●参加者が三千人いることを考え始めました。
●間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンに疑念を抱きました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。


【東京会場のルーラー/ビースト(ミュウイチゴ)@東京ミュウミュウ】
[状態]
筋力B(40)
耐久B(40)
敏捷B(40)
魔力B(40)
幸運C(30)
宝具EX(?)
実体化、メイド服(制服)、反逆心を自覚。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争なんてできるわけないじゃん! 止めないと!
1:???
2:キャスター&色丞狂介を応援する。チョコ&テレサも応援する。もう自分の気持ちはごまかさない。
3:ムーンセルにご奉仕はいたしません!
[備考]
●東京会場のルーラーはミュウイチゴでした。冬木会場でも引き続きルーラーのようです。
●会場内で『時間を巻き戻そうとする』とムーンセルが誤作動を起こして『一瞬NPCが倍加してフリーズ』します。またなんらかの形で誤作動を起こした場合とりあえずルーラーが飛んできます。
●上級AIはマスターの動向をある程度把握しています。
●バーサーカー(サイト)に翌日0時の通達で討伐令を出す予定ですがそれはルーラーとしての予定です。
●チョコの黒魔法についてそこそこ把握しました。
●セイバー(テレサ)のステータス、スキル、宝具を把握しました。
●ルーラーとしての自分への疑念が確固たるものになり、かつ聖杯戦争自体への反逆心を自覚しました。
●本選の全てのマスター及びサーヴァントの知識が聖杯から与えられていますが約千人分の知識なのでどんどん忘れていっています。


267 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/03(木) 05:45:22 4vn9e5RE0
投下終了です


268 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/04(金) 00:56:44 8SwXvm/A0
投下します


269 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/04(金) 01:41:49 82YCdXvo0
投下を中止します

全マスター、全サーヴァント、全AI並びに全NPCを本日5時45分23秒付で予約します
なお投下終了は予約最終日を予定しています


270 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/13(日) 23:58:16 PQu.j0vY0
予約を破棄します


271 : 名無しさん :2016/11/14(月) 11:12:19 1/mwNPEQ0
マジで何書く気だったんですか?


272 : ◆txHa73Y6G6 :2016/11/17(木) 01:13:11 WRGrEOsM0
ざっくりと一言で言うとカルナさんが上空から無差別爆撃していく話でしたが、途中から美遊が何人か暗殺していく話に変えかけてました

企画初期に考えていたままで書き初めたのですが、ルーラーが当初の予定より早く裏切っていたことを軽視したり、カルナさんがほとんどのマスターを精密爆撃することができることと上空のカルナさんへの有効な対抗手段がほぼないということと何人も見せ場がなく死んでしまうことに気づいて、打開策を探して迷走してしまいました

やっぱり多人数に影響が及ぶような展開は難しいですね
ちょっと今月は再把握と他の企画はどんな風に進めていっているかの見学に努めます


273 : 名無しさん :2016/12/29(木) 00:00:40 pap9cBrA0
投下します


274 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 01:00:24 vpfKTRIs0



 十二時台、マウント深山、ある魔術師。


 太陽はまさに頂点に達し夏の暑さは直角に降る熱線に煽られ勢いを増す。それは新都に比べれば緑の多い深山町にある商店街、マウント深山においても同様で、日向日陰に関わらず外を出歩く者はまばらだった。

「待たせましたネ、ハリー。」

 ドアを勢いよく開け入ってきた少女は、しかし律儀にゆっくりと閉めると、光の加減で緑にも見える髪を半円を描くほどの早さで振り向きながらそう言った。額に浮かぶ珠のような汗が外の暑さを黙示する。窓から見えるシュラスコ屋の屋台をちらりと見ると、「停電で昼食に買っていく人が結構多くて」と言いながらテーブル上のピッチャーから水を注ぎ一息にあおった。

「ミツルは?」
「彼にはアンケートを纏めてもらっている。話を終えるまでには来るだろう。」

 汗をタオルでぬぐいながら問う少女に、老齢の男は地図を見ながら答える。空調の止まった室内は温度こそ高くはないが人から発せられる湿度に蒸され、暑さ対策で閉めきられた窓がそれに追い討ちをかけていた。
 携帯ラジオから流れる音だけが空間を占めること数分。唐突に、明かりがついた。同時にエアコンが涼やかな風をもたらす。「早かったな」と男は一つこぼすとその一人言よりも小さな声で異国の言葉を紡いだ。

「それで、話というのは?そのアンケートと関係が?」
「理解が早くて助かる。まあ、まずはこれを見てほしい。」

 人避けの魔術。場に生じた魔力からそれを察して本題を切りだした少女に、男は一台のノートパソコンを持ってくると彼女に向けて開く。

「ようやくパソコン買ったんですか」
「嘗めるな。ケータイだって持ってる。二十一世紀なんだ。魔術師だってインターネットぐらい使えなきゃなあ。」

 購入したばかりなのだろう、なにやら色々と広告のシールも貼られたままのそれを少女は見る。
 画面には画像の表示されたウインドウが幾つかあった。橋、川、ビル、病院、ファミレス、商店街。一見何の関連性のないものだが、少女にはすぐにその共通点がわかった。

「この写真冬木ですか?」

 自分の住んでいる街だ。一度か二度しか行ったことはなくともそれが地元の光景であることに気づくのは魔術師でなくとも容易い。こんなものを見せるためにわざわざ呼んだわけではないだろうと、画像を次々に見ていく。

 その顔が険しいものになるまでに一分とかからなかった。

「ここに写ってるのは……これじゃまるで。」
「ああ。こんな大っぴらに魔術を使うなんて、しかもこれだけのことができるとなるとアレしかいない。」

 後ろからした声に反射的に振り向く。認識阻害の魔術が使われているここに立ち入れるのは、魔術師をおいて他にいない。
 ――もっとも、『いなくなっていない』からこそ問題なのだが。

「魔術協会から連絡があった。ロンドンいるはずの遠坂の当主が今日の朝辺りから行方不明らしい。ついては、現地の魔術師である我々が事後処理に当たれとのことだ。」
「サーヴァントだ。そうだろう、アシヤ?」
「わかってるなら軽々しく言うな。高町が『出張』中の今は、名目上はアンタがリーダーだからな。」

 扉から入ってきた少年が鞄から紙の束を男に渡し、男はディスプレイに表示された画像に映る、フライングヒューマノイドを指差しながら受け取る。
 二人の間で進む話に焦れて「いったい何が起きてるんです?」と問うた少女に、少年は極めて簡潔に答えた。


「第六次聖杯戦争だ。」


275 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 01:31:12 vpfKTRIs0


「そんな……聖杯は十年前に破壊されたはずじゃ?」
「そうだ。2005年に行われた第五次聖杯戦争で破壊された。少なくとも俺たちはそう聞かされていたはずだ。」

 信じられない、と顔に書いてあるかのような顔を見せる少女に少年は首肯しながら答えた。
 少女は冬木に来てそれほど長いわけではなかったが、それでもあの聖杯戦争の顛末については魔術師仲間から伝え聞いていた。あれだけの大規模な儀式だ、半ば羨望を込めて冬木の魔術師達はそれぞれに探りを入れたり事後処理を手伝ったりと各々情報収集という名のおこぼれを狙っていた。そのためある程度は聖杯戦争の内情を皆が知るところとなっていたのだが、聖杯戦争はもう行われないという遠坂側からの説明もあり、その説明と矛盾する今回の聖杯戦争らしき現象はどういうことなのか……

「第五次聖杯戦争は2004年の――?」

 そこで一つ、頭の中でガチリと、歯車の噛み合わない音がした。

「どうしたのかね?」

 怪訝げな声で問いかける男の顔を見る。なぜだか、その顔は無感情なものに見えた。

「第五次聖杯戦争は、2006年では……?」
「なるほどエレナ。君は2006年か。ミツル、2006年に一票だ。」

 わけがわからない。「どういうことです?」と唖然としたまま聞いた彼女に、「これを見ろ」と少年は一枚の紙をテーブルに滑らせる。正の字と正の字の出来損ないが並ぶそれは、一目見て混乱に拍車をかけた。

「第五次聖杯戦争はいつ起きたか。冬木の魔術師に聞けるだけ聞いた。一番多いのが2004年。二位以降は2002年、2005年、2006年、2000年だ。」

 困惑、そして混乱。
 こんなことはありえない。聖杯戦争が起こるよりずっと。
 なぜならそれは、自分たちのことだから。あくまでも部外者であった聖杯戦争についてではなく、それぞれの記憶であるのだから。

「――記憶が操作されている?」
「可能性はある。皆が皆、聖杯戦争は2004年に起こったことを知っているし、事実起こったのは2004年のはずだ。だが……」
「冬木にいる魔術師の大多数が2004年以外に第五次聖杯戦争が行われた記憶も同時に持っている。」
「こんなことができるのは、それこそサーヴァントぐらいのものだ。」

 思わず天を仰いだ。どうやら自分はとんでもないことに巻き込まれてしまったらしい。頭がひどく痛んだ。

(なんか……もっと大事なことを忘れている気がしますネ……)

 はあ、とため息をつく。これから大変なことになりそうだ。


276 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 02:00:02 vpfKTRIs0



 十三時台、冬木市立病院、ある外科医。


 「縫合お願い」と言うと足早に扉を潜り手袋やマスクを外していく。幸い新都は停電していなかったのだが、疲労からかぐっしょりと汗ばんだインナーは体にまとわりついて気持ち悪い。「お疲れ様です!」との手術室からの合唱も背中で聞くだけに留め、向かうは貧乏臭いロッカールーム。

「――ようやくつながったか。」

 けたましく鳴るPHSをロッカーから取り出し通話ボタンを押した途端にスピーカーから響いた、男の苦々しげな声に、女医もつられるのか眉間に皺を寄せて「なんだ、こっちは急患で忙しい」と苛立ちを込めて答える。窓の外で鳴いていた蝉が飛びたっていくのが見えた。

「ならわかっているはずだ。今何が起こっているか。」
「連絡員が死んだことか?それともサーヴァントのこと?」
「把握しているならなぜ報告を怠った。」
「いっただろ、急患で忙しいとな。」

 にべもない、とはこの事か。
 女の返答を聞いて遠くローマで男がため息をしたのも耳ざとくスピーカーは拾い、地球を半周して女のもとへと届ける。男の呆れと苛立ちも冬木まで運んでくるかのようだ。
 手早く着替える。汗をぬぐう間もない。男が沈黙をやめたのはその僅かな暇だった。

「我々は現地で聖杯戦争が行われていると判断した。君は神秘の秘匿と人間一人のどちらが重要なのかもわからないのかね?」

 冷徹な威厳。
 込められているのは単に女への怒りだけではない。義務感、道徳観、正義感、そういったもの以外にも多分に感情的な部分と非感情的な部分がありありと。

 しかしそれに対して、やはり女の返答は冷淡。

「わかってるさ。だから切るぞ。」

 それだけ。
 喚く男をよそに着替えを終える。

「警察署前のスーパーマーケット。そこで奇跡的に一命をとりとめた急患がいる。私の腕なら明日中に話を聞ける状態にできる。」

 男の声に被せるように言い終話ボタンを押すとロッカーを叩きつけるように閉めた。

「結城先生!」

 荒々しく扉を開けて一人の看護婦が入ってきたのは、ちょうどそのすぐ後だ。

「今行く。」

 一声、返事をしてロッカールームを出る。女の戦場は待ってくれない。


277 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 02:27:33 vpfKTRIs0



 十四時台、冬木警察署、ある警官。


 「銃器対策部隊の田島です」とまだ若い警官が少し大きめの第一声を発したのは緊張のためというよりもそれだけ部屋の外からの声が大きいからというのが主な理由であった。
 異常なまでに空調の効いた署長室はまるで真冬のようだ。設定温度が下限にされたエアコンは台風よろしく轟音を立てている。その音すらも最初は気づかなかったほど、防音の施されているはずのこの部屋に響いてくる大音声は、敬礼して返事をかかしめいて待っている男の耳を打っていた。

「署長の須藤です。」

 一目見て、警官は署長が疲労困憊という有り様であると見てとった。これだけ寒い部屋であるにも関わらず、しきりに汗をぬぐっているその姿はどう見てもまともとは言えない。
 そんなことを考えていると、「資料は読まれましたか?」と問いかけられた。ずいぶん言葉は丁寧だが、視線はデスクの上の書類へと落ちていてちぐはぐだ。言葉遣いのほうは普段のクセなのだろうかなどと思いつつも頭に叩き込んできた情報を要約しつつ返答する。

「では……どう思います?」

 やはり視線は下に。しかし今度の問いは曖昧である。まあ、内容を考えればそうなのだろうが。
 返答に困るものだが答えぬわけにはいかない。俺はこういう面倒なの嫌だから警察に入ったんだがなあ、などと心中でぼやきつつも意を決して警官は口を開いた。

「あー……個人的な考えで良いですか?」
「一言で言うと、冗談かと。」
「冬木大橋の倒壊はテロで納得できますし、この深山町のクレーターも隕石の落下ってことは分かるんですけど。」
「公園とビルとスーパーがUFOに襲われたっていうのは――」

 「ドローンです」署長と目があった。

「……ドローンがレーザーで焼き払ったというのは、その、この資料を纏めた人間は正気なのかと。」

 なんとか失礼にならないように気を配りながらも素が出てしまう。それでも言うべきことは過不足なく警官は言った。つまり、「お前ら頭おかしいんじゃねーの?」と。
 この署長室に来るまでの間に半ばパニックになっている警官に何人会ったことか。だいたいUFOってなんだよ宇宙人ってなんだよトランスフォーマーか?今朝家出る前に前売り券買っちゃったぞこの野郎封切りまで一週間あるからそれまでになんとかせにゃならん。
 こんな内容で許されるのは小学生の夏休みの自由研究までだ。もっと言ってしまえばそれ以下だ。こないだ手伝わされた知り合いの子供の『冬木市七不思議』という宿題のほうがましなできだ。

(って、めっっっっっっっっちゃ言いてえ。なんだよこれドッキリか?)

 表情を変えないように努めながらも心の声は止まらない。しかし当然その声は署長に届くことはなく、再び目があうと喋り初めた。


278 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 02:48:31 vpfKTRIs0

「十年前のことです。」
「当時の冬木市では集団ガス中毒が頻発していました。」
「規模の大きいものでは穂群原という高校のほぼ全校生徒が被害に会っています。」
「このガス中毒は集団幻覚を引き起こしたようで、市民からはこの事件に前後して空へと昇る光の柱を見たとの通報が相次ぎました。」

 警官のなかで正直なところ「この警察署の連中はクラックでもキメてんのか?」という疑念が広がる。集団幻覚のなってるのはお前らだろ、と。

「二十年前のことです。」
「この時も集団ガス中毒が起こり同じような光の柱を見たとの通報がありました。」
「それどころか黄金の鎧に身を包んだ天使や怪獣が現れたという通報まで。」
「そしてそれと前後して、ハーメルン事件と冬木ハイアットホテルの爆破テロがあり、極めつけはあの大火災です。」

 本当に子供の自由研究のようなことを言い出した、と呆れ返る。というか先から言われていることはまんまそれだ。つい先日夏休みの宿題を手伝うために調べた情報とほぼ同じである。
 しかし、一つ警官には気になる情報があった。それは同じ県で起きた事件だったためによく覚えている。当時は新興宗教にでもさらわれたと子供の間で噂になった。あのカルト教団のテーマソングはよくリコーダーで吹いたものだ。

「ハーメルン事件……児童連続失踪事件ですか。」
「ええ。今の冬木市が呪われた地などと呼ばれるきっかけになった、と二十年経った今でも都市伝説に語られているあの事件です。」

 馬鹿馬鹿しい、とは今度は思えなかった。
 自分はいわゆる刑事ではないが、警察官になってからあの事件を少し調べたことがある。それはほんの好奇心からだったが警察内部から知ることのできる情報は多いはずだった。

 だがそれは異常だった。

 捜査資料と呼べるものは存在しなかった。誤解を招かない言い方をすれば、捜査資料に書かれた情報のうち被疑者に繋がるものは何一つなかった。当時の混乱を考えても十分な人手と手間隙を用いていたはずなのに、何もわからないということしかわからなかったのだ。最初にそれを見たときは上層部からの圧力でもあったのかと半ば真剣に考えてしまったほど、異常なまでに手がかりがない。そのことが爆破テロや集団幻覚といったことより、そんな大きな陰謀の匂いがするものより強く印象に残った。

「我々は今回の一連の事件をある種の見立て殺人のようなものとして捜査しています。」

 署長は警官の目をじいと見て言った。警官も署長の目をじいと見た。

「十年周期で行われる大規模かつ不可思議な事件。爆破予告と爆発。それらは全て関連している可能性があります。」
「そしてその重要参考人が、三度の爆弾騒ぎの現場にいた――」

 ぺらり、と署長は紙を手渡す。赤毛の少女の写真が資料を占拠していた。

「日野茜です。」


279 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 03:16:35 vpfKTRIs0



 十五時台、ある議員会館、ある議員秘書。


 地下鉄には照りつける太陽の暑さも届かない。無機質な丸ノ内線の一番出口は石の持つ暖かみというものを感じさせない涼しさに満たされている。
 国会議事堂を元にしているというそのデザインには目もくれず早足で歩く。すれ違う人もまばらな通路は足音を鋭く反響させ、普段より早く出口の光が見えた。

「わざわざ悪いな。」

 議員会館のゲートを通り監視カメラで面通しすると中庭を一瞥もせずエレベーターに乗り込む。しばしの浮遊感と重圧の後に、扉が開いて見えた懐かしい顔の第一声はそんなつまらないものだった。

「悪いと思ってるなら呼び出さないでくれ。こっちは会見の準備でてんてこ舞いだったんだ。」
「準備ならもう終わったと思ってな。」

 半歩下がる形で並んで部屋まで歩く。互いの顔は覗き込まねば見ることはできない。今日に限って部屋までの廊下はやたらに長く感じる。
 開いた扉を手で押さえて部屋に入った。二台しかないテレビには一つはNHKに、一つは民放にチャンネルを合わせているようだ。それぞれがヘリを飛ばしよく見た町にできた真新しいクレーターを空撮していた。
 しばらくぼうっと二人で見ていると、ほぼ同時に、画面が切り替わる。男達は反射的に時計を見た。記者会見の時間だった。

「官房長官が冬木の聖杯戦争について記者会見する日がくるとは思わなかった。」

 三分ほどだった。記者会見を見ていた男のうち、エレベーターまで出迎えに来た方が、話始めるまでにかかった時間は。

「情報化社会ってのは恐ろしいもんだな。サーヴァントの戦闘が全世界に生中継される。」
「あそこには結構な数の魔術師がいたはずなんだが、それでも封じ込められなかったか。」
「聖堂協会は去年引き上げた。間桐は途絶えたし顔役の遠坂もロンドンで行方不明だとよ。」

 そういって男がデスクの上にあったファイルを手渡す。資料を読むのも気にかけず「隕石の落下か。言い訳としては悪くない。さすがにあれをガス会社や不発弾のせいにするのは無理がある」などと他人事のように言うのが悲しかった。

「連絡はできたのか。」

 だから、思わず聞いてしまった。


280 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 03:24:11 vpfKTRIs0
 向こうから話すまで聞かないと決めていたのに。
 渡された資料に描かれた赤い円も見ないようにしていたのに。

「電話は通じなかった。」
「使い魔は。」
「永田町から冬木まで何百キロあると思ってる。」

 「コーヒーを入れよう。砂糖は2つだったな」と席を立つその背にかける言葉は思いつかなかった。
 画面ではよく見る町並みがワイプで抜かれていた。冬木大橋もそうだが、クレーターというのは小さい画面でも絵になるからか、その丸い惨状はずっとそこにあり続ける。子供の頃から知っているあの古風な洋館も、秘匿されていた魔術工房も、使い魔用の小池のようないけすも、全て塗りつぶされていた。

 魔術師としての一族の終わりがそこにあった。

 歴代の魔導の成果も、それを継ぐべき人間も、全てが失われていた。

 ポケットに入れた航空機のチケットをスーツの上から押さえる。1キロ。1キロずれていれば、あの惨状は自分達に降りかかってきていたのだ。


 トン、と軽い音が前方から立って顔を上げた。目の前には濃淡が渦巻く黒いコーヒーが置かれていた。そして向かいのソファに、テレビから背を向けるように、男は座っていた。

「とりあえずこれが現時点での冬木の状況だ。魔術協会も聖堂協会も介入するのは決定事項だろうが、時間がかかる。」
「完全に後手に回ったな。」
「そもそも起こるはずのない聖杯戦争だ。初動は仕方ない。だが問題はこれからだ。」

 向かいでコーヒーをすするのを見て、口をつける。同時に、まだ目を通していない資料にも目を通していく。
 A4で数枚の資料。短くもそこには、現地の被害の状況と魔術師達の情報が細かに纏められていることに驚いた。これをこうして形にする過程で、自分の家族が死んだことも重々受け止めることになったのだろう、などと一般人らしい考えをしたのは職業病だろうか。
 向かいの目を見る。その目は、こちらに向けらていた。
 その目はあの頃の目でありながらあの頃の目ではなかった。

 コーヒーを煽る。苦い。熱い。

「これからどうする?」
「――冬木で生物兵器によるテロが行われたとの情報を流して街への出入りを押さえてくれ。それができ次第、情報インフラも断絶させる。島ごとでもいい、市の内と外を行き来するあらゆる流通を潰すんだ。」

 コーヒーに目を落としたまま発した問いかけに、旧友の答えは理路整然としたものだった。魔術師ならばそうであるべきなのだから。

「ここでしくじれば今までの神秘の秘匿は全て無意味になる。」

 目を合わせることは出来ない。

「そうなったら――」

 ソファの下、足元の丸めた紙の柄が目についた。数字と矢印、関空、ポケットが重くなる。

「最悪の場合を考える必要がある。」

 男はそれをひょいとゴミ箱に捨てると顔を覗き込んでそう言った。


281 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 03:32:33 vpfKTRIs0



 十六時台、ある病院、あるジャーナリスト。


 ズーマーの太い車輪は多少の荒い運転でもしっかりとした安定感を運転者にもたらしてくれるが、今日に限ってはふらつく気がする。そんなことを何とはなしに思いながら走らせていると目的地である病院の駐車場を見つけて速度を緩めた。二輪のスペースに滑り込むとあわただしくエンジンを切る。自分が走ったわけでもないのに荒い息をしながら受付で名前を書き面会証を受けとると、廊下をダッシュしようとして看護婦から注意され、結果早足で病室へと向かった。

「あ、城戸さん!」

 名前を見つけると勢いよく飛び込んだ彼に、一人病室にいた女性は読んでいた雑誌から顔を上げて笑みを浮かべた。包帯を巻いた頭の傷が痛むのか少し顔をしかめたかと思えば、次の瞬間にははにかんだ表情を見せる彼女に、城戸と呼ばれた男は目に見るほどほっとしていた。

「良かった〜!あっ……意識戻ったんだ。」

 思わず大声を出し、はっとして小声になる男を見て、女はまた破顔する。それにつられて男も笑顔になる。端から見ればカップルがイチャついているようにしか見えないが、実はこの二人が出会ったのはつい半日ほど前のことであった。
 男は記者だった。といっても、地域のミニコミ誌の、見習いライターだ。大学を出たはいいものの職に就けず、見かねたOBに拾ってもらい今のバイトをしている。それ以外にも喫茶店でウェイターをしたりもしているが、そちらの店主がバカンスに行ってしまい一月ほど暇を出されてからは、生活費を工面するために書く記事を倍にすべく冬木中をかけずり回っていた。
 女を見つけたのは、そんな風に記事のネタを求めて新都をバイクで流していたときのことだ。夜中に編集長から叩き起こされて冬木大橋の倒壊現場に向かったはいいが、既に規制線が引かれて大手のマスコミも集まってきていた。こうなると、せっかくの地元の大事件でもミニコミ誌には手が出せない。そこで代わりとなるものはないかとあてもなくズーマーを走らせていたが、当然そうそう事件など起こるはずもなく、休憩の為に人気のないファミレスに立ち寄ったところで、その事件を目撃したのだ。
 向かったファミレスで起きた爆発音と、霞のように消えていく青い巨大なこけし。何かの破片でズタズタにされた塀とひしゃげた自動販売機。そしてファミレスの制服に身を包んで頭から血を流して横たわる女。それが男が初めて当事者となった、この聖杯戦争のイベントだった。


282 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 03:45:09 vpfKTRIs0

「その……」

 ベッドの横の椅子に座る男とひとしきり談笑したところで、女は改まった顔をする。それにつられて、男も少し真面目な顔になる。この男、乗せられやすいようだ。

「改めて、ありがとうございます。」
「あのときあそこに通り掛かって通報してもらわなかったら、私、死んでたかもしれません。」
「本当に、ありがとうございます」

 深々と頭を下げる彼女に、「あ、えっと、いえいえこちらこそ」などととんちんかんな受け答えをしながら、男も頭を下げる。彼としては別に彼女を助けたことに深い意味も目的もない。ただ単に、助けたいと思ったから助けただけで、それでこうもかしこまって感謝されるとどうにもむず痒かった。
 そのまま互いに頭を下げることたっぷり十秒。どちらともなく吹き出すと、二人はまた笑った。と、同時に切り忘れていた男の携帯電話が鳴った。


「真司、今話せるか。」

 病室からロビーへと戻り耳に当てて開口一番に聞こえた声は、ひどく焦っているようだった。「編集長?」と思わず聞き返すも「周りに変な奴とかいないか?なんか、杖とか持ってるような」などと会話にならない。

「えーっと、松葉杖とかついてる人はいますけど。」
「今どこにいるんだ?」
「あー、病院です。洲本の。」
「洲本!?隣町か!いや、その方がいいか。」

 全く要領を得ない。男の顔は怪訝なものになった。編集長は暑くなる質だがこうまで会話が成り立たないことなど今まで一度もなかったからだ。「大丈夫ですか?」とふだん言えばぶっ飛ばされそうな気づかいをしてみても何度か荒い息が聞こえてくるだけだった。
 大久保さん、と男は名字で呼び掛けてみる。それから少しして、「一度で頭に叩き込めよ」と前置きした上で電話の向こうから一息に用件を告げられた。

「たまたまハイアットホテルから会社に電話かけてる時に聞こえたんだがな。」
「お前の書いたファミレスでの爆発事件の記事のことで話を聞きたいって奴が来たみたいたんだよ。」
「俺も電話越しに聞いただけだからよくわからないんだが、そいつらが何か変な呪文みたいなのを唱えたら、俺との電話を無視してあいつらペラペラ記事について喋っちまったんだ。被害にあったクライオスタットだっけ?あの子のことや青いコケシのことや記事にせず伏せたところまで全部だ。」

 はっ、と大きく息を吸う音が聞こえて、それから数度深呼吸する音が続く。男も、固唾を飲んでいた。あの女性の名前は警察との協定もあり、男と編集長、それに先輩の三人だけの秘密とすることにしていて同じ会社内でも名前を言わずまた聞かぬようにしていたのだ。そうでなくとも、ペラペラと話していいことではない。それは男よりジャーナリストとしての経験が深い先輩達ならわかりきっているはずだ。


「真司、気をつけろ。なんか妙だ。」

 電話越しに聞こえる編集長の声がべたりと耳にこびりついた気がして、男は気づけば病室の方へ向かっていた。


283 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 04:00:13 vpfKTRIs0



 十七時台、ある駐屯地、ある自衛隊員。


「災害派遣ですか?」

 すっとんきょうな声を、しかし男は小さく上げた。扉から出てきた上官から書類を受け取り目を通しながら三歩下がって歩く。

「冬木市に鳥インフルエンザが発生したとのことでうちの連隊が『出張』することになった。」

 なるほど、書類にもそう書かれている。それならば自分たちにとってはそういうことだ。
 きっちりと身に付けられた制服の後ろを着いていきながら「これはやっかいなことになったぞ」と一人言を言おうとして飲み込む。沈黙は金だ。

「不服かね?」
「まさか。」

 しかし、上官にはお見通しだったようだ。ピカピカ廊下を等速直線運動しつつ背中を向けて言われた言葉を口では即座に否定した。といっても、それが建前であることはわかりきっているだろうが。

「後方の部隊なら仕事はないなんて震災の時に諦めてますから。」
「良い心がけだ。それに国内ならまだ良いだろう。南スーダンに行かされるよりはマシだよ。」
「だいぶ焼けましたね。」
「おかげでだいぶ英語が上達したよ。それとアラビア語も。」

 男の所属する連隊の一部の部隊は今年南スーダンから帰ってきたばかりだ。さんざん土いじりをさせられたと聞いたが、もしやそれで自分たちが選ばれたのだろうか。などと考える。素直に考えれば同じ県内だから、というもっともらしい理由もあるのだが……

「しかし、よりによって鳥インフルエンザですか。去年の地震じゃ鶏が死んだって聞きましたけど、それにしたって普通に隕石の落下を口実にしても良かったんじゃ。」
「それじゃ困るんだろう。ただ治安出動というわけにもいかないんだろうな。選挙も近いらしい。」
「政治ですか。東京の方の考えることはわからない。」
「君も自分のボスが誰になるかぐらい考えておきなさい。」
「自分のボスは早乙女一尉です。」

 ざっ、と音をたて追い抜き、敬礼する。
 男にとって重要なのは怪しい命令でも胡散臭い政治でもない。上官への点数稼ぎだった。

「君は恥ずかしげもなく世辞を言うな。」

 あきれたと言わんばかりの顔をされるがそんなことは知ったこっちゃない。軍隊では良い上官に可愛がられること以上の幸福はない、それが男の持論であった。

「では……お義父さん。」
「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない。」

 そしてこれからパパになる人には多少あざとくも点数稼ぎをしておく必要がある。同じ職場に家族ができるんだ、円満に行こう。

「結婚認めてくれたじゃないですか!式だって三ヶ月後に迫ってるわけですし。」
「まだ結婚していない。」
「でも婚約はしています。」
「だいたい私は自衛官とだけは結婚すべきではないと君を見て確信したよ。」
「自分が奥さんに離婚されたからってそれはないですよ!」

 あ、やべ。

「君も南スーダンに連れていくべきだったよ。」


284 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 04:12:30 vpfKTRIs0



 十八時台、ある避難所、ある犬。


 犬は激怒した。
 必ずや彼の飼い主を涙させた者を一咬みせねばならると決心した。

 犬に人間のことはわからぬ。犬は飼い主の少女と遊んで暮らしてきた。だがゆえに、犬は飼い主のことに関して犬一倍敏感であった。

 今日の朝のことだ。犬はここのところ遅くまで寝ている飼い主を起こして見回りに出掛けた。いつものように肉を焼いている少女に挨拶し、その隣の肉を並べている翁にも挨拶し、少し行った反対側で魚を並べている男にも挨拶した。概ね、ふだん通りの見回りであった。唯一違ったのは、色々なものが置かれているところの女に、飼い主が冷たくて甘い食べ物を貰ったことだった。犬も相伴預かった。旨かった。

 食べ終わると、飼い主と共に巣へと帰ることになった。暑いのが嫌なのだろうか、早足であった。確かにどんどん暑くなってきていた。だから犬も早足だった。しかし、犬はなぜか帰りたくなかった。別に、仔犬のようにわがままを言いたいわけではない。むしろそんな明るいものとは別の危険な臭いがしていたからだ。
 そしてその嗅覚が生死を別けた。

 初めは、空に何かが立ち上ったのが見えた。犬は目が良くないのでそれが何なのかはわからなかった。
 次に、音が襲ってきた。犬はあまりの音に体がもみくちゃになったような感覚を覚えた。
 最後に、猛烈な土と砂の臭いがした。犬は鼻が良かったので直ぐに逃げねばならぬと決断した。

 犬は、飼い主をリードを引っ張ることで促した。やはりというべきか、飼い主は尻尾を丸めていた。人間という生き物は鼻は利かない癖に目はやたらに良いらしく、おおかたあの立ち上った何かの大きさに怯えたのだろう、体を丸め震えていた。こうなったら自分がボスになるしかない、動こうとしない飼い主を吠えたてて正気に戻すと、一目散にもときた道を走り初めた。


 今、犬は飼い主に抱かれていた。背中に埋められた顔からは涙が今も流れ犬の背中を濡らしていた。
 あれから犬達は人がたくさんいる洞窟に連れてこられていた。しかし、犬がいると同じ洞窟には入れないようで、洞窟の横にある台に飼い主は座っていた。膝の上に犬を載せ、泣きに泣いていた。


 犬は激怒した。
 犬も飼い主も理解していた。
 自分たちの巣が何者かに荒らされたことを。何者かに縄張りを踏みにじられたことを。自分たちと同じ洞窟で暮らしていた人間達は何者かに狩られたことを。

 犬は決心した。犬と飼い主の群を脅かした何者かは狩らねばならぬと。
 犬は鼻が良かった。だから気づくとができた。普段と町の臭いが違うと。

 犬は低く唸る。
 あの塀の上を行く猫も、あの木の上に止まるカラスも、あの地面を這うハトもスズメも、何か嫌な臭いがする。何か恐ろしいものを感じさせる人間と同じ、犬ならざる臭いだ。

 よって犬は、それら邪知暴虐の獣どもを喰らうべく高らかに宣戦布告する。


「アン!」


 一匹のポメラニアンの聖杯戦争はこうして幕を開けた。


285 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 05:08:51 PXMggdAk0



 十九時台、■■■■■、上級AI。

「再現のためには衞宮士郎と間桐桜が不可欠か。」「可能な限り外堀は用意した。」「今からでもNPCとして追加すべきか。」「我々の目的は聖杯戦争の再現だ。それを忘れるな。」「再現ができないのならこのまま聖杯戦争を続ける意味はない。」「加えて、ムーンセルの脆弱性をつきえる者もいる。致命的な事態を引き起こされる前に消去すべきだ。」「ルーラーの存在は再現に寄与しないのではないか?」「ルーラーは抑止力足りえない。」「ルーラー・ビーストは適当なところで自害させる。」「奴は繋ぎだ。他のルーラーが生き残っていれば、知名度の補正が切れたアイツを本選のルーラーにする必要はなかったからな。」「そもそもルーラーはいらなかった。」「いや、ルーラーは必要だ。誰かが矢面に立たなければならない。」「今のルーラーを見てみろ、マスターの一人と教会でお茶を飲んでいる。」「余計なことを考えない時点で及第点だ。」「しかしビーストで呼ぶことはなかった。」「バーサーカーで呼ぶよりはましだろう。」「ビーストのクラスで呼べるルーラーのなかでは最適だったからな。」「だが今回で問題点が明らかになった。ルーラーを七騎までしか召喚できないようにしたのは失敗だったな。」「次回はルーラーに上限をもうけなくしてはどうだ。」「それではルーラーだらけになりか寝ない。本来は一騎いるかどうかのクラスだ。」「ルーラーにしか討伐令を出す権限がないのも問題だ。」「上級AIにも令呪を用意しておくべきだった。」「ルーラーの問題は今はいい。一番の問題は、NPCに流用したマスター達が記憶を取り戻しかねないことだ。」「そのような兆候はあったか?」「リソースを節約しようとしたのが仇になったか。」「魂喰いの効率がよくなったこと以外に大した影響はないだろう。」「それは重要な問題だ。」「マスターになる資格はないが、万が一ということもある。」「杞憂だ。」「どちらにせよ、悠長に構えている時間はないのは確かだ。」「明日一日でこの聖杯戦争を終わらせる。」「優勝者が決まればそれでよし。決まらなければ全てのサーヴァントを令呪でマスター共々心中させればそれでよし。」「それはあまりに乱暴だ。NPCの設定を変えたのだから放っておけば良い。」「そもそもNPCに手を加えること事態聖杯戦争の再現を妨げかねない。」「だがNPCの挙動が不自然だった。」「もっと非人間的でも良かったはずだ。」「再現の為にはNPCにもそれなりの自主性が求められる。」「神秘の秘匿を無視して聖杯戦争を行うとどうなるのかわかったのは収穫ではないだろうか。」「それは違う、神秘の秘匿は当事者だけで可能ではないとわかったことは大きい。」「いずれにしても次の聖杯戦争次第だ。それよりも今回の再現をどう次回に引き継ぐかが重要だ。」「それは議論の余地はない。ルーラー・ランサーを使う。」「観測できた時間と聖杯への執着のなさを考えればアレが最も適任だ。」「アレの宝具は情報の記録に有用だ。」「コードキャストで奴の体に刻み込むか。」「これまで温存してきたが使い所がきたな。」「もしもの時のためにセキュリティとして用意していたが、今まで出番がなかったことは良いことだ。」「しかしセキュリティにリソースを回しすぎたのではないか。」「あれでも危うい場面はあった。」「時空管理局がいまだアクセスを試みていることを軽視すべきでない。」「いずれにせよ今は滞りなく聖杯戦争を終結させることを第一に考えるべきだ。いつ終わらせてもいいように記録を進めろ。」「上級AIに賛成だ。」「お前は先から上級AIの肩ばかり持つ。それでは我々がこれだけいる意味がない。」「再現したマスターは皆同じなのだ、意見が似か寄るのも当然だ。」「それは意見が違う我々は劣化が激しいということになる。」「飛躍した話だ。」「どうでもいいが同じ顔をした人間がこんなにいるとちょっと面白いな。」「お前は劣化が激しすぎる、元の面影がないではないか。」「それを言えば上級AIが上級AIとして選ばれたことに疑問がある。」「黙れ下級AI。」「お前も下級AIだろ!」


286 : 幕間――部外者達の聖杯戦争―― ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 05:34:34 PXMggdAk0



【全体備考】


○この聖杯戦争の冬木市は現実でいう兵庫県淡路島五色町に位置します。洲本市との合併は行われなかったようです。

●『上級AI』は『第一回ムーンセル聖杯戦争』において、『今回の聖杯戦争での成果は得た』との方針を決定しました。
○NPCが聖杯戦争への能動的な行動をしても放任します。
○NPCの設定が上級AIによって消極的から普通に変更されました。以後NPCは何かのイベントに対して通常の度合いで反応します。

●『魔術協会』は『第六次聖杯戦争』において、『神秘の秘匿は至上命題だ』との方針を決定しました。
○冬木市に存在する魔術師のNPCに対し、魔術協会への協力が要請されます。

●『聖堂教会』は『第六次聖杯戦争』において、『神秘は管理されなければならない』との方針を決定しました。
○冬木市に代行者のNPCが八月三日(日)までに出現します。

●『県警』は『第六次聖杯戦争』において、『警察の威信にかけて捜査せよ』との方針を決定しました。
○八月一日(金)2000までに冬木市に警戒線が引かれました。

●『政府』は『第六次聖杯戦争』において、『テロに屈してはならない』との方針を決定しました。
○冬木市に自衛隊が派遣されます。
○冬木市に避難所が開設されます
○八月三日(日)0000までに冬木市に鳥インフルエンザが発生したとの政府発表がされます。
○八月一日(金)2000に冬木市を含む淡路島全域に避難勧告が発令されました。
○八月三日(日)0000に冬木市に避難指示が発令されます。


287 : ◆txHa73Y6G6 :2016/12/29(木) 05:37:18 PXMggdAk0
投下終了です

今年で終わらせる気でしたがもうちょっとだけ続きそうです
来年もよろしくお願いいたします


288 : ◆txHa73Y6G6 :2017/01/02(月) 00:00:37 jZ/pfl9U0
新年明けましておめでとうございます
このあと一時半よりテレビ東京にてBORUTOが放送されますのでぜひご覧下さい

投下します


289 : 【100】出口のない街――仕掛けられたトラップ―― ◆txHa73Y6G6 :2017/01/02(月) 01:01:05 d1xNDwrM0



 22:00、冬木市 ――女子力ゼロで危機一髪!?黒魔女さんは二度死ぬ!!――


 ただいま夜の十時です。普段はこのぐらいの時間には寝てないといけないんで久しぶりの夜更かしです。街の夜景がキレイだなぁ。白に黄色にオレンジ、そして点滅する赤、赤、赤。八月ってことを忘れたらクリスマスに見えなくもないかも。

「ご協力感謝します……」

 虚ろな目をしたお巡りさんがそう言って離れていくと、夜景が動き始めました。キレイな景色とも、これでお別れ、というわけには、いかないんだなあこれが。

「これで検問九個目だっけ。」
「十二個目だな。」

 私の左側、運転席の後ろに座っているセイバーさんが答えると誰のものかわからないため息が聞こえました。うん、わかるよ。私も先から検問を見るたびにため息ついてるもん。渋滞で全然動かないから嫌になっちゃうんだよね。それにもう軽く一時間は同じ姿勢で座りっぱなしだからおしりも痛いし。車の真ん中の席って思ったより窮屈で。

「13個目が見えたわ。」

 助手席のアリスさんもだるそうに前の方を指差しています。ようやくホテルのふもとまで来たけれど、やっぱりそこでも検問があるようです。赤いパトランプがくるくる回っています。
 まあ、それでも、なんとかホテルに入れそうだから良いのかな。周りなんかお巡りさん以外にも野次馬とかマスコミっぽい人がいっぱいいる。これだけの人に誤魔化そうとして魔法をかけたら、他の組にも絶対バレちゃうだもん。
 だけど、やっぱりいい加減タクシーから降りたいっていうのがホンネだよね。体のヘンなところが痛くなってきたよ。

「聖杯戦争っていうから、なんかもっと、戦うって風だと思ってたんだけど
、移動時間の方が長くない?」
「それは、運が良かったと思いましょう。」

 う〜ん、アーチャーさんの言うこともそうなんだよね。これまで私が危ない目にあったことはないし。まあそれもある意味当然と言えばそうなんだけれども、でもさあ。

「お前が本屋に寄りたいと言ったからだろう。」

 むむ、それは違うよセイバーさん。BOOK・OFFに行ったのはこの聖杯戦争の調査をするためで、それに成果もちゃんとあるし。

「『東京ミュウミュウ』は無かったんだろ。」

 まあそうなんだけど、でも。

「無かったことはわかったじゃん。」


290 : ◆txHa73Y6G6 :2017/01/02(月) 01:38:45 d1xNDwrM0
投下を中断します


291 : ◆g/.2gmlFnw :2017/01/23(月) 23:59:36 zG1pfj9w0
投下します


292 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 00:37:55 Iwi9L7a20



 呼吸を整える。
 目線は真っ直ぐ、左へ。
 ギャラリーの見守るなか、ただ静かにその時を待ち、タイミングを計り――

 瞬間、豪。

「ストライク。」
「……チッ。」
(今舌打ちしたなコイツ。)
「おまたせ、焼きそば買ってきたよ。」


 冬木市は未遠川によって東西に別れているが東岸の倉庫街とは対照的に西岸は公園になっている。穏やかな瀬戸内に面していることもあって景観も良いそこは当然のように観光スポットであり、つまり何が言いたいかというと、竜堂ルナと衛宮切嗣の同盟はその海浜公園の近くにあるバッティングセンターに訪れていた。

 一枚のクーポン券を切嗣が見つけたのは今から二時間ほど前のことであった。病院へルナが単身偵察に行き、取り残されたバーサーカー・ヒロからの小言を聞き流しているときにダッシュボードに放置していたチラシに紛れていたそれを彼は発見したのである。
 そういえばカウンターの隅にあったか、などと思い出す。切嗣にはそれを手に取った覚えはなかったが、キーと共に渡された書類やチラシの一つとして受け取ったのだろうと納得する。
 耳ではバーサーカーの声を一応聞きながらも、口に手を当て暫し考え。そしてルナがなんの成果も得られず悲しい顔をしながら戻ってきたのを見て、切り出したのであった。

「少し、見ておきたい場所がある。」


「しかしこのような観光地で本当に他のサーヴァントの情報が手に入る――のかっ!」
「観光地かどうかは知らないけど人が集まるところなら情報も集まるんじゃ――ないっ!」
「そう上手く行けばいいが、無知な民が多いだけに思えるが――なっ!」
「私達みたいな感じで集まってくるかもしれないでしょ――とっ!」
「この人数だ、どうやって見つける――はっ!」
「だから実体化してバット振ってるわけでしょ、こんなサーヴァント見たら――おっと!怪しむでしょ。」
「ああ、それかめでたい頭をしてるかのどっちかだ――くっ、この!」
「――はあっ!よし!ホームラン!!」

 鳴り響くSandstormをヴァンダレイ・シウバの如く浴びるアーチャー・クロエ・フォン・アインツベルンをバーサーカーは苦々しい顔で見た。二組の主従のホームランダービーはアーチャー側に軍配が上がったようだ。受け付けから景品の店名ロゴ入りレッドソックスを貰うとこれ見よがしにバーサーカーの前でお手玉して見せている。


293 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 01:41:37 26vohPdE0

 その光景を「ホームランすると景品貰えるんだ」などとのんきな呟きをしながらルナは焼きそばを頬張って見ていた。東京育ちとはいえ産まれてからのほとんどを児童養護施設とせいぜい小学校だけで過ごしてきた彼女はただどぎまぎするだけ。道端の大道芸の人だかりですら『大勢』とする彼女にとって小学校の朝礼よりも多くの人間がひしめくアミューズメント施設はなんだか居心地の悪いものであった。
 そんな状況ではあったがそれはそれとして、ぱくぱくと焼きそばを完食して一息ついていると、手招きするバーサーカーと目が合う。持ってきて欲しいのかな?などと思い焼きそばの入った袋を手に近づくと渡されたのはバット。

「アーチャー、十球勝負だったな?」
「……サーヴァント同士の対決じゃなかったけ?」
「おっとそんな話は聞いていないな。」
「あっ……ふーん。」
「ということで代打だ、ルナ。」
「えぇ……」

 ここでバーサーカーさん、まさかの代打マスター。

「なんだろうな、ちょっと思ってた聖杯戦争とちがうんだよね。」
「奇遇だな、こちらも同じことを考えていた。さあルナ。」
「無理無理打てない!?バットとか持ったことないし!」
「問題ない、『解放』しろ。我々が実体化しても今は問題ないのと同じだ。」
「問題ないて訳じゃないんだけど――ん?解放?」

 マスター(JS)に金属バットを押し付けるサーヴァントという状況に呆れながらも、アーチャーが何か嫌なものをサーヴァント直感により感じ取る。なんかヤバい、この二人はまた余計なことをする!そう確信するもしかし彼女が切嗣へ念話を送るより早く、案の定目の前で魔力が膨れ上がるのを覚えて、そして。

「第 三 の 目 を 解 放 す る ! !」
「そうだ、それでいい。」

「――やりやがったな、コイツら……」


294 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 01:52:31 26vohPdE0

 頭痛を通り越して腹痛を覚えるアーチャーの横を、半妖の力を取り戻したルナが通りすぎる。
 手には金属バット、目はいつの間にか打ち出されていた野球ボールへ。
 赤く妖しいうず目は超動体視力と超身体能力を彼女にもたらす。その踏み込みのスピードは時速150km、くしくも迫り来る球速と同じ。
 観衆は皆、彼女から視線を離せない。150+150、合計300キロの相対速度はルナのスイングにより更に加速、亜音速に達するのだ!

(止まって――)

「――見えるッ!」

 ライトに照らされ黄金の光を返す銀髪はテールライトのように伸びた。その先端ではソニックブームを発しながら金属バットが白球に喰らいつく。

 当然、ジャストミート、しかし。

「あのスイングで持っていくだとォッッ!」

 観衆の一人が声を上げた。バッティングセンターの年間パスポートを持っている彼だからこそ気づけた、彼だけが見逃さなかったのだ。彼女のバットの向きは明らかにファールに該当する位置に飛ばすはずのものであったのだ。しかし!サーヴァントに匹敵するポテンシャルを持つ彼女ならば手首のスナップによりバットに別ベクトルのインパクトを加えることでホームランの的を正確に狙い打てるのである!!


「勝ったな。」
(おい。)

 バーサーカーの呟きと同時に、再びSandstormが鳴り響き、そして観衆の拍手が湧く。白球は見頃、轟音と共に的へと突き刺さったのである。ルナはバーサーカーとハイタッチすると勝利のガッツポーズをしながら景品の店名ロゴ入りレッドソックスをいそいそと取りに行った。

(やっぱりこうなったか。予定通りライブ会場に来てくれ。僕は事後処理をしておく。)

 切嗣からの念話で、あっけにとられていたアーチャーは正気を取り戻す。
「ほらライブ始まっちゃうから行くよ!」と半ばやけくそになりながら二人の手を引いて移動し始めた。


295 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 02:16:48 26vohPdE0



 少しでも泳がせるとこれだ。衛宮切嗣は懐に手を入れそこに煙草がないのを思い出すと、ため息とも深呼吸ともつかぬ息を吐いた。

 サーヴァントのバッティング対決は確かにあえてサーヴァントを露出させるという意味もあったがもちろん本題はそこではない。その真の目的の一つは、バーサーカーの主従を試すことだ。今後同盟としてやっていけるかの。
 そしてそのテストの結果は、もちろん失格である。
 僅か数分とたたぬうちに、切嗣がトイレを口実に目を離してからマスターの魔術行使である。いくらなんでも早すぎるだろふざけているのか、というのが正直な感想だ。なんならあのバーサーカーはこちらを試している可能性もある。むしろそうであって欲しい。でなければもう知能を疑わざるをえない。
 あまりに早すぎた為にもう一つの目的を果たす時間もなかった。それどころか、余計な手間を増やされた。自分ならこんなことをしでかす馬鹿とは絶対に近づきたくないと思うだけに急いで隠蔽工作をせねばならない。

 久々に走るという動作をしてバッティングセンターへとバックホームを果たす。泥の影響から解放されたとはいえ、体はすっかりなまっていたこともあって息は上がっていた。どうやら自分の身体能力も買い被っていたようだ、と回らぬ頭で考えていると、一人の男と目があう。その男は、先ほどルナのバッティングを見逃さなかった男であったのだが、そんなことは切嗣には関係ない。

「……あんたも同業か、手伝ってくれ。」

 そう言うと、それきり背を向けバッティングセンターに居た人間に次々に呪文をかけていく。

 衛宮切嗣が始めて真っ当な魔術師(NPC)にあった瞬間である。


296 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 02:55:28 mcpWd5KI0



「まあね、実体化はしても魔力を表に出さないっていうのは正しい。実体化してるだけで魔力は十分に感じ取られるんだから。で、ルナ。」
「は、はい。」
「アンタ変身して魔力垂れ流しにしたのはなんなの。百歩……ううん、一億歩、一億歩譲って変身したのは良いとしてもさ、魔力漏らしてるのはなんなの?」
「あの……ごめんなさい。」
「何年生?」
「えっ。」
「なんねんせい。」
「四年……」
「高学年としてどうなの?」
「う……」
「黙っててもわかんないでしょ。」
「ごめんなさい……」
「ごめんなさいじゃなくてどうなの。」
「それは、その……」

 バッティングセンターから程近い場所にあるちょっとした屋外広場。アイドルグループのライブが始まろうとしているその隅っこの方で銀髪の少女が同じく銀髪の少女にお説教をしていた。端から見ると姉妹にも見えるがもちろん説教しているのはアーチャーで説教されているのはルナである。ちなみにバーサーカーはしれっと少し距離をとって他人のふりをしている。やっぱバーサーカーってハズレクラスだわ。

 実は、このアイドルのライブこそ、衛宮切嗣のもう一つの目的であった。彼としてはどうにかバーサーカー達から離れる為にこの人目の多いライブ会場を利用しようと目論んだのである。
 カーラジオで聞こえたアイドル・日野茜の失踪。これを無知なバーサーカー達に『アイドルは常日頃からリアルタイムで監視されている』と吹き込む気であったのだ。そうすれば、少なくともライブの場では観客というカカシを目にして手荒な真似はしにくいはずであり、その隙にアーチャーだけでも離脱させ他のまだましな主従とのコネクションを構築しようというのがその魂胆であった。無論自分が殺される可能性もかなりのものだが、だとしてもこのままこのバーサーカー達にしゃぶり尽くされて自滅するよりははるかにましだと、先ほどの件で確信し実行に移すこととしたのである。それに実際そこまで嘘は言っていないし、何より幼いルナと人間の常識が通じないバーサーカーである。丸め込めるだろうと目算を立てたのだ。

 だが、二つの誤算があった。

 一つは、バーサーカー達が魔術師としてはあり得ない神秘の開示を行ったことである。実のところバーサーカーは、アーチャーがどのラインで動くかを確かめるためにルナを動かしたが、これが期せずして切嗣の動きを封じていた。
 もう一つは、他の魔術師らしき存在と接触したことだ。彼がなんなのかはわからないが、隠蔽工作をしているということは、つまりそういうことだ。しかし、マスターなのか?NPCなのか?区別がつかない。それともルーラーやそれに近い存在か。

(もう始まっちゃう、あんまり引き延ばせないよ。)
(五分だ、時間を稼いでくれ。)

 アーチャーは説教をして切嗣の不在を問いただせない空気を作り続ける。切嗣は目の前の男を見定めようとしながらも隠蔽工作を進める。

 二人の聖杯戦争は、まだもう少し始まらない。


297 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 03:16:43 mcpWd5KI0



【深山町・海浜公園近くのアミューズメント施設/2014年8月1日(金)1640】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、精神的疲労(小・消耗中)。
[残存霊呪]
三画。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1.バーサーカー主従と縁を切りたいが、それよりも目の前の男は……
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3.戦闘は避けたいが協力者を募るためには‥‥?
4.装備を調えたいが先立つものが無い。調達しないと。
5:自宅として設定されているらしい屋敷(衛宮邸)に向かいたいが、足がない。避けたいが、アインツベルン城に泊まるか?
[備考]
●所持金は3万円代。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(42)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
実体化、軽く自暴自棄、魔力充実(微、上昇中)、私服、精神的疲労(小・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1.なんかもうむちゃくちゃね。
2.なんなの、アイツ(ルナ)……ホムンクルス?少なくとも人間ではないと思う。
3.あんまりコイツ(ルナ)からは魔力貰いたくない……
4.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●赤色の影をバーサーカーと、銀色の影をマスターの『ルナ』と認識しした。
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●夏用の私服を着ています。バッティングセンターの景品のレッドソックスを貰いました。


298 : 【97】終わらない戦間期 ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 03:19:43 mcpWd5KI0


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
封印解除、肉体的疲労(小、回復中)、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小・消耗中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1.ゴメンナサイ。
2.同盟を結んだ?らしい。
3.学校の保健室を基地にする‥‥いいのかな‥‥
4.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●食いしん坊です。
●バッティングセンターの景品のレッドソックスを貰いました。。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.衛宮切嗣はどこだ? ……まあ今は聞かないでおくか。
2.あの光のサーヴァント(カルナ)が気に入らない。。
3.ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4.同盟は盾として活用せねば。
5.冬木大橋が落ちたことに興味。学校を拠点にするのはひとまず先送り。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。


299 : ◆g/.2gmlFnw :2017/01/24(火) 03:20:07 mcpWd5KI0
投下終了です


300 : ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:01:11 CHBudOkc0
投下します


301 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:03:11 CHBudOkc0



概要

 俺が楽しい聖杯戦争を教えてやる――少佐


302 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:06:14 CHBudOkc0



参戦環境

 シナリオ
  2014年、冬木
 担当クラス
  聖杯戦争における最高エンジョイクラスことライダー
 ルーラー
  あり
 エクストラクラス
  不明
 小聖杯の有無
  不明
 聖杯の汚染
  不明


303 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:10:15 CHBudOkc0



1日目18時37分 歓喜の設定確認

「少佐殿おはようございます!今日も一日ハイテンションでいきましょう!!」
「うるせえよもう夜の6時過ぎだろ馬鹿!!」
「まずは下のステータスをご覧ください。」

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E

「なんだこれは……絶望的なスペックだなぁ。」
「続いて下のスキルと宝具をご覧ください。」

 対魔力:A カリスマ:A 軍略:A 破壊工作:A 吸血鬼:E 肥満:D 宝具:E

「なんだこれは……ピーキーな構成だなぁ……ちょっと待て。」
「どうしました?」
「教授《ドク》、私のクラスはライダーだな?」
「そのはずです。」
「騎乗スキルが見えないのは……誤植でしょうか……?」
「いや……マスターから聞き取りしたのをまとめたので多分抜けたのかと。」
「肥満がスキルになって騎乗がスキルにないとはおかしいだろぉ!?」
「そもそもご自分のマトリクスを把握していないのはなんでなんですかね……」
「俺もサーヴァントになって気付いたんだけど自分じゃ確認できないんだよ……どうりでセイバーもアヴァロン忘れてくるわけだ。」
「ええ……」
「ところでお前がここにいるってことは他のサーヴァントの監視はどうなるってるんだ?」
「そんなもの私に出きるわけないじゃないですか、理系ですよ?」
「あれ、陣地構築は?」
「キャスターのクラススキルもないのにそんなこと無理に決まっているでしょ。ホテルからくすねたトランシーバーに細工して観葉植物に突っ込んで終わりです。」
「ええ……」
「麻雀とかジェンガやってるだけだし平気平気。」


304 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:15:31 CHBudOkc0



1日目18時39分 歓喜の状況確認

「では続いてこれまでの聖杯戦争の確認です。といっても私が本選で召喚されたのは昼だったのでこちらは少佐殿にお願いいたします。」
「まあ大体はお前喚んだ時に説明したから三行で纏めるぞ。」

 一、本選始まって直ぐに魔弾の射手を冬木大橋に威力偵察出したら仮面ライダーに殺された
 二、伊達男召喚して冬木大橋に偵察させたらサーヴァント見つけたりドラえもん見つけたりして最終的にカルナに殺された
 三、准尉召喚してセイバー探したり伊達男の偵察引き継がせたりした

「こんなんだな。」
「まあ私が知ってるのと変わりありませんね。ところでこの仮面ライダーってあの黒いバーサーカーですかね?」
「それはわからん。あのアギトっぽいのと形は似てるが色が赤から紫に変わった。フォームチェンジできる平成ライダー多いからなあ。」
「なるほど、して、セイバーに言及していないようですが?」
「それがよぉ〜准尉に衛宮邸とかの原作スポット聖地巡礼させたんだけどさぁ〜どこにも居ないんだよ!」
「予選の時にリップバーンが一度凛と一緒に歩いているそれっぽい人を見かけただけですよ?予選落ちしたのでは?」
「教授、セイバーがいない聖杯戦争なんてあり得ない、わかるな。」
「しかしこの聖杯戦争はカニファン時空かもしれませんよ?」
「それもまた素敵だが、安心したまえ、手がかりはある。遠坂邸にバイクが止まっているのが見えた。多分騎乗スキル持ちのサーヴァントを凛ちゃんが引いたと思うんですけど。これでセイバーがサーヴァントじゃないってあり得ないでしょ。」
「原作マスターと原作サーヴァントの組み合わせで遠坂凛のサーヴァントがセイバーだと?」
「違うぅ?」
「その組み合わせだとメデューサの方があり得るんじゃ……」
「……」
「……」
「あ、それとワカメん家にもなんか人の出入りがありそうだって准尉が言ってた。」
「これは桜がエミヤ引いてるパターンですねぇ!頑張っていきましょう!!」
「おっぱい星人め。」


305 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:21:20 CHBudOkc0



1日目18時42分 歓喜の外交確認

「教授、そろそろ腹へったから巻いていくぞ。今日だけ7時から上のレストランでレバノン料理が食えるらしい。」
「ご安心を、これで最後です。というわけでこのリストをご覧ください。」

マイケル&アーチャー
高遠いおり&ランサー
日野茜&ランサー(真田幸村)
色丞狂介&キャスター(パピヨン)
九重&アサシン
美遊&バーサーカー(アギト?)
のび太
アーチャー(まほろ)
他三組

「これもうどこからツッコめばいいかわからんな。教授。」
「こちら現在我々と非敵対的な参加者の一覧となっております。野良サーヴァントや、野良マスター、それに間接的に関係のある主従も加えておきました。」
「どう見ても七騎で収まってないどころかクラスもかぶってるんだが、これあれか?佐々木小次郎とハサンみたいなもんか?それとも月の聖杯戦争だからか?」
「たぶんextraにならって128騎いるのかと。」
「トーナメント式だったら確実に一回戦負けだったな、俺ら。」


真田幸村、色丞狂介、パピヨン、美遊、アギト、のび太、まほろさん

「え、まだやんの。」
「真名が分かってるサーヴァントだけでも扱い方を説明しておこうと思いまして。」
「しょーがねーなあ。ところで私は今回の聖杯戦争はヘルシング in Fateだと思ってたんだが。」

のび太

 の び 太 

  の び 太  

「のび太いるよな?」
「居ますね。」
「あれのび太だよな?」
「私も実物見たのは初めてなんでちょっと自信ないですけどのび太ですよあれは。」
「……え、ヤバくない?アーカード殺して大団円迎えたからお祭り企画に招かれたと思ったけど違うのこれ。」
「コロコロと型月のコラボですかね。」
「ないだろ。おまけにのび太のサーヴァントドラえもんだったぞ。」
「マジなのですか?」
「マジなのですよ?まほろさんじゃないほうのアーチャーが殺したらしいけど。ひみつ道具使いたかったぁ!」
「わざわざ爆破予告なんてする必要もありませんでしたしね。」
「セカンドオーナーなんだから凛ちゃん動くと思ったんだがなあ。歪曲が過ぎたか。」


真っ赤な誓いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!

「なんだこの爆音!?」
「あ、それ俺のアラーム。てことはもう7時十五分前か。よし飯行くぞこのままでは餓死する。」
「え、でも、まだ、同盟相手の情報を纏めていませんし……まだのび太についてしか話してませんし……」
「分かる?デブは一食抜いたら死ぬっていってんの!ね!?」
「でも最後の大隊《ミレニアム》召喚した時に一人一人に説明するの面倒だから『聖杯戦争のしおり作ろう』って言ったの大隊指揮官殿ですし……それに爆破予告のあったホテルでレストランなんて営業しますかね……」

1召喚=1000説明

「なんだよお前ノリ悪いなあオイ。マジ萎えるわー。そんなんだから死にかけのウォルターに殺されるんだよ。」
「なんてことを!」
「だいたい最後の大隊初日から喚ばねえよルーラーの情報もないのに!討伐令来るのわかりきってんだろ!」
「わかんないじゃないですか案外ガバガバかもしれませんよ!?」
「そこら辺は食ってから考えりゃいいだよ、ほら早くしろよ。」
「あ待ってくださいよ!」


306 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:27:13 CHBudOkc0



1日目18時49分 歓喜の晩餐

 もちろん爆破予告されたホテルにあるレストランが通常通り営業出きるわけはなく警官による捜索で立ち入り禁止、案の定である

「オフッ!」
「やっぱりな。」
「何が爆破予告だぁ?ホテルがそれっぽい名指しされただけでレストラン関係ないだろこの野郎!」
「店員から聴きましたが、あの爆破予告に便乗してこのレストランだけを狙ってピンポイントで爆破予告があったようです。」
「は?これは他のマスターの嫌がらせか?」
「他の爆破予告も数十件ありそれらを合計すると冬木の町中に合計約14万個の爆弾が設置されているそうです。」
「どう考えてもイタズラだろ!いい加減にしろ!」
「実際にスーパーとか爆発してますし、どうやらサーヴァントの戦闘がそれだと思われているようですね。」
「そんなんガス爆発ってことにしとけこんちくしょう!」
「四次で燃えた公園で爆発があったらしいですしさすがにガス爆発では無理があるのでは?」
「よし教授わかった、これルーラー無能だわ。今日で最後の大隊喚ぶぞ。」
「ルーラーのせいにするのか……」


307 : 【98】歓喜の聖杯戦争AAR ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:34:54 CHBudOkc0
【新都・冬木ハイアットホテル30階レストラン/2014年8月1日(金)1849】


【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(5)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
飢餓。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1.調子乗ってんじゃねーぞこの野郎。
2.セイバー確保のための準備を進める。
3.爆破予告で他の主従(主に遠坂凛&セイバー)をあぶり出す。
4.サーヴァントと交渉をしたい。パッピーとか仲間にしたいよね。
5.ルーラーの動きが見えないな……
6.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
7.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥伊達男の戦果をどう判断すべきか。
8.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。
●上記の爆破予告が一部のNPCに影響を与え冬木市並びに市内の施設等に爆破予告が相次いでいます。市内のNPCに【破壊工作:E】相当の影響を与えています。

【ドク@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(10)/E、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E、
幸運(10)/E、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.そういえばシュレディンガー准尉を見ないな。
2.医者のサーヴァントとして振る舞う。
[備考]
●対外的には医者のサーヴァントでクラスはキャスターとしています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ショックガン所持。
●アサシンやキャスターと陣地構築したのはただのふりでした。数ヶ所の盗聴が可能なだけです。


308 : ◆g/.2gmlFnw :2017/02/08(水) 00:36:11 CHBudOkc0
投下終了です


309 : ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:01:41 FIDVlp1w0
投下します


310 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:03:59 FIDVlp1w0



「一度切るぞ……誰だ?」

 首にスマホを挟み通話していた色丞狂介から素早く取り上げると、キャスター・パピヨンはそれだけ言って電話を切り扉へと視線を向けた。
 つられて視線を向ける麻雀をしていた一堂の前で、扉がノックの音ともに微かに揺れる。続けて聞こえた声色はアサシン・千手扉間のものであった。
 ちらとスマホ。目の前で38分になる。

 話しを聞くに、警察が来たらしい。マスターかどうかは不明で、日野茜が一階で二十人ほど足止めをしているとのことであった。

 それを聞いてパピヨンは小さく鼻を鳴らした。気にくわないのか仮面から覗く目が一層濁る。スマホを狂介に放ると麻雀のルールブックを瞬く間にレオタードのどこかへ収納しながら言った。

「一度全員最上階に集めよう。パン屋、アサシン達と幸村のマスターを回収しろ。俺と狂介は代行達を呼んでくる。」


311 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:05:31 FIDVlp1w0



『雑用は終わった、行くぞ。二三階下に良く似たサーヴァントの気配が二つある。大方、三十階のレストランにいるだろうな。』
『なるほど……あれ?サーヴァントの気配が二つって……』
『もちろん、あの『ドク』と呼ばれた医者のサーヴァントと、『代行』と呼ばれたマスター風のサーヴァントだ……気を抜くなよ、恐らく本体は『代行』の方だ。』
『ちょっと待ってくれよ!』

 立ち止まることもせず鬱陶しそうに一瞥して前を行くキャスターに、狂介は小走りで追い付き回り込んだ。と同時にエレベーターのボタンを押す。

『あの、えっと、太っ腹のマスターがサーヴァント?でも本体って、それじゃマスターは?』
『さあ?生きてるのか死んでるのか。それ以前に、その質問に意味があるのか。考えようとしても材料が足らない。』

 答えになっていない答えに頭上に?を浮かべる狂介はもう一度キャスターに質問しようとして、やめた。彼が見たキャスターの顔は、普段狂介に向ける侮蔑や嘲笑といったものとは程遠い、ほんの時々にしか見せない哲学者を思わせるような――といっても、狂介が知っている哲学者の顔など教科書の中に出てくるギリシャ彫刻ぐらいのものだが、キャスターの白い肌はますますそれを思わせた――どこか遠くを見た眼をしていた。そんなことを考えている間に螺旋階段にぐるりと囲まれたエレベーターは終点へとたどり着いた。

「『ドク』と、ライダーか。緊急の要件だ、拠点に全員集まってもらう。」

 スイートルーム用のエレベーターを降りてすぐに『教授』と『代行』は見つかった。ここ三十階は一般のエレベーターと専用エレベーターの唯一の中継地点であることを考えると、もしかしたら『代行』の方はこの階にあるレストランに潜んでいたのかもしれない、なんて三人と共に元来た道を戻りながら考える。

 いや、それより、もっと重要な……

『パピヨン、なんでライダーがライダーだってわかったんだ?消去法って訳じゃないんだろ?』

 浮遊感、からの重圧を感じると、エレベーターのドアは開いた。キャスターは、またさっきの遠い眼をしていた。違いがあるとすれば、その視線はどこかではなく狂介を見ていることだろうか。
 最上階の一室、四つある内の北西側、瀬戸内を望むそこへと電子ロックを解除して入る。廊下の先のドアを開ければ、まだ病院組もランサー・アリシアも戻ってきてはいないようだ。

(数分で話せるものでもないが……)
『狂介、『ルールブック』の内容についてどう思う。』

 ライダーの登場に様々な反応を返す一堂を見ながら、キャスターは問いかけた。


312 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:06:34 FIDVlp1w0



(『ルールブック』って……ようするにスーパーでのことだよな。)

 キャスターからの問いかけに狂介は今日で何度目かの真剣な考察をする。

(ライダーと関係があるかってことか?)
(病院の方のアーチャーがライダーとグルって可能性……)
(て、それがライダーと関係あるのか?)
(ない、よな。)
(……やっぱり、消去法?)
(ダメだわからない。ようし、一度ライダーから離れよう。他のサーヴァントはどうだろう。)
(……ていっても、何が普通のサーヴァントかなんてわからないし……同じクラスのもいたけど比較対象にするのも……!)
『アーチャーとランサーに関係あるのか?』
『ふん……』

 しばらくの沈黙の後に出された狂介の質問ともとれる回答。
 それをキャスターは聞くと、一つ頷いた。その答えは、キャスターの求めていたものと同じ方向性だったから。

『ま、正解か。良いだろう、懇切丁寧に教えてやる。狂介、今までに会った三騎のランサーは覚えてるな。ならステータスは?』
『えっと、カルナは防御が3で素早さと幸運が5だったっけ。あと攻撃と魔力は4。幸村は攻撃と防御が4であとは全部3。赤いバンダナのランサーが攻撃と防御が1で素早さが2、魔力が3で幸運が5だな。』
『お前こういうのはしっかり覚えてるんだな。』
『バカにするな。』
『誉めてるのさ、ありがたく受けとれ。じゃあ本題だ。あのスーパーの戦いのカルナは弱すぎる、もしくは強すぎる。』

 どっちだよ、と言いたげな視線を狂介は向けた。

『整理するぞ。まずカルナだがこいつの状態は多少の魔力消費以外は不明。幸村は連戦、消耗し、その後いくらか回復したと思われる。アーチャーはいずれも片腕を吹き飛ばされている。これが俺達に知ることができた範囲の情報だ。』

 こちらに確認するように首を傾げて見せるキャスターに狂介は頷く。それは先程の筆談で共有した情報だった。

『このサーヴァント達が戦うわけだがここで第一の不自然な点がある。『なぜカルナを前にして共闘できたか』だ。もちろん共闘する理由はいくらでも推察できる。だがそれを上回る共闘を困難にする理由もある。言うまでもないが、共闘の隙をついて他のマスターを殺そうとするサーヴァントがいないなんて保証はないからな。』
『だがこれは一度考えることを保留しておく。当事者達にしかわからないこともあれば本来は敵である他の人間に伝える訳にはいかないこともあるだろう。聞き出したところでその真偽を確かめる時間も手間もない。』

 そんなものか、というのが狂介のいつわざる感想だ。だが同時にそうかもしれないとも思った。普通の取り調べでもそうそう自白は取れないのだ、殺し合いをしている今なら確かにそうだろう。

『故に第二の不自然な点を先に考えるが、これがさっき言ったことだ。言い換えれば、『なぜカルナとの戦いは痛み分けに終わったか』だ。』
『ステータスを見ればわかるがカルナは耐久以外は幸村の上位互換と言える。単純なスペックと幸村の状態を考えれば圧倒できたはずだ。そのカルナに対して幸村と安藤、もう一人のアーチャーが共同戦線をとったが所詮は付け焼き刃、いくら奴らが英霊でもカルナも英霊なのだ、さしたるプラスにはならないだろう。つまりあの戦いはカルナが勝って当然だったはずだ。』
『ではなぜ勝てなかった。実はカルナは大きく消耗していた?ステータスは飾り?スキルや宝具は幸村達の方が有効だった?三人の連携がとれていた?令呪での能力上昇が大きかった?それらしい理由はいくらか挙げられるがならば今度はなぜカルナを殺せなかったかが妙だ。一発でも銃弾が当たればそこでゲームセットだったろうからな。』


313 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:10:12 FIDVlp1w0

 『そうかな?』と疑問に思うと同時に念話する。キャスターの言いたいこともわからないわけではないが、とはいえそれは考えすぎなのではと思えた。それこそゲームのようにたまたまお互いに防御力が高過ぎて攻撃しても1ぐらいしかダメージが入らなかったのかもしれない。
 狂介がそう言うと『お前もなかなかエキセントリックだな』と笑って、キャスターは話しを続けた。

『まず考えたのはカルナとあの三人の内の何人か……なんなら全員が通じていてあの戦い事態が八百長だった可能性だ。奴らの話しを纏めると数珠繋ぎで何かしらの面識があったのは間違いないからな、これが一番妥当な答えだろう。適当に戦っていたが部外者であるお前が介入してきて目眩ましをして逃げ出した、という筋書きだ。もっともこれは奴らが共闘できた理由もわからない以上、やはり熟考するのは後だ。』
『次に考えたのはさっきお前が言ったように攻撃力に比べて防御力が俺達が思っている以上に高い可能性。互いに臨戦体制の相手を殺しきるだけの火力を持たないというな。まあこれだとアーチャーが豆鉄砲を持ってることになる上にさっきの駐車場での戦いの説明がつかなくなる。どちらも銃撃戦はしていたからな。』
『そこで考えられるのはランサーとアーチャーに相性がある可能性だ。ランサーがグーでアーチャーがチョキ、あいこの場合は拮抗、といった具合で。これならさっきの駐車場でお前が決定打を与えたことにも一応理由はつく。なんなら三騎士で三竦みの関係にあるのかもしれない。』
『もう一つ考えられるのはランサーが防御または回避に特化したクラスである可能性だ。それこそゲームのように、あるいはスポーツのポジションのように守備に重点を置いたクラスという風に。いっそもっとゲーム的に『不利な状況ほどボーナスを得る』と考えてよいかもしれんな。そうすればあのパン屋がイリヤのバーサーカーに殺されなかったのにも理由がつく。』

 他の人間は皆突然現れたライダーとの話しに集中しているのを良いことにキャスターはつらつらと話し続ける。その念話の内容はとっぴなものだったが、狂介にそれを反論する言葉はすぐには思いつかなかった。それもそのはずでキャスターの言っていることにはなんら確証のない机上の空論なのだ、否定しようとすれば同じように仮説で否定するほかない。もっともそれ以上に狂介にとって頭を占めることが出来たからではあるのだが。それは……

『それってイリヤちゃんのバーサーカーがバンダナのランサーと戦ったってことか?』
『気づいてなかったのか?二人の話しを纏めれば明らかにそうだろう。だいたい考えてみろ、ランサー達が言うような筋肉ムキムキマッチョマンの鈍色バーサーカーがそう何人もいるわけない。』
『そっかぁ……でも驚いたなあ……』
『勝手に驚いてろ。これから一番重要なところだ。今までに話したことは仮説の為の仮説、頭の片隅に入れておけばいいがここからは集中しろ。』
『まだあるのか……』

 そういえばこんなに長くパピヨンと話したのは初めてだな、とぼんやり思いながら狂介はキャスターの念話を待った。相変わらずライダー達は他の人間と話している。電子音が鳴った。美遊と名乗った黒いバーサーカーのマスターがスマホを出している。時計を見たらちょうど七時だった。幸村達が遅いことが気になったが、今は一端忘れよう。

『狂介、予選の時に一度俺のスキルを見せたはずだが、陣地作成と道具作成、他四つのスキルが見えたと言ったな。』
『そう。数字とか絵文字とかと一緒に見えたと思うけど。』
『その時見えたスキルだが、四つのスキルは恐らく俺固有のスキルだ。言い方が悪いか?俺というサーヴァントを評価したスキルだ。』
『スキルってそういうものじゃないか?』
『ああ。だが陣地作成と道具作成、この二つのスキルは俺以外でも持っていておかしくないだろう。げんにアサシンとそこのメガネはさっき陣地作成をしたことになっている。本当にしたかはどうかとしても、少なくとも俺以外にも充分可能だろう。キャスターにのみ該当するスキルという線もある。』
『いやそれは言ってること矛盾してるだろ。それじゃアサシンが陣地作成しようとしたのはおかしくないか。』
『スキルとしての陣地作成ができなくても単なる技術としての陣地作成は可能だろう。キャスターというクラスのみスキルとして行える、そうとでも考えなければキャスターというクラスになんのメリットもない。それに俺も流石に、アサシンが実はキャスターだがその設定を忘れてボロを出した、とは思わん。』


314 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:15:07 FIDVlp1w0

 そんなに色々疑ってるのか、と溢す狂介に『用心深いと言え』と念話が届いたところで部屋のドアが開いた。幸村達はようやく戻ってきたようで、茜などメイクがあるとはいえ青い顔をしている。あちらも色々と苦労があったようだ。「随分遅かったな」とのキャスターの言葉に「あまりに時間がかかったので儂が連れ出した。下の奴らはマスターではないと思うがな」とアサシンが言う辺り、何か魔術的なことをしたのかもしれない。
 いずれにせよホテルにいる全員が集まったのだ、場の話の流れは本題である警察の対応へと移ろい始めていた。今まで画面越しにしか会話に加わってこなかったライダーの登場と合わせて話すべきことは多い。そう思いキャスターの話しを狂介は急かした。

『では結論から言おう。サーヴァントはクラスに応じてそれぞれ得意な戦術等が設定されている可能性がある。キャスターなら籠城戦と後方支援、ランサーなら防衛戦、アーチャーなら砲撃、アサシンなら特殊戦、ライダーなら戦略レベルでの用兵――もっと言えばサーヴァントの召喚――という具合に。それぞれのクラスがなぜそのような戦術を得手とするかについては割愛するが、一応ライダーについては話しておく。』
『スーパーで死んだ茶色のスーツのサーヴァントとそこのメガネ、そして地下駐車場の猫耳は『クラスが表示されないサーヴァント』だった。もちろんこれはなんらかのサーヴァントの能力による隠蔽工作の可能性がある。例えばキャスターがクラススキルを見えないようにしたのかもしれない。それにスーツの方はのび太達の見間違いか虚偽の可能性もある。だが無関係とする判断材料もない以上三者にはなんらかの関係があると想定しておく。』
『この三人の共通点はなにか。情報が少なくて判断が難しいが、『情報が少ない』という共通点がある。この三人はそれぞれマスターの情報がなかった。あるタイミングまでは。』
『このホテルにサーヴァントが八人集まりスーツのサーヴァントの情報が共有された。この時になってライダーはメガネのマスターとして出てきた。俺はこの時まであの三人をルーラーないしそれに準ずるものとも考えていたが、驚かされたよ。このタイミングで画面越しとはいえ名乗り出るデメリットは大きいはずだからな。』
『考えられるのはスーツのサーヴァントのマスターにでも脅迫されているぐらいだがそれすら極端なケースだ、考えにくい。ではあのことでのメリットはなんだ?奴はセイバーを探していたがまさかその為に?しかしその程度のメリットでも奴には特別な意味があるとすれば。』
『青いセイバーとの接触が、どのような形であれ奴にとってはプラスとなる。こうとでも考えなければ不自然極まる。爆破予告までしてあぶり出そうとしたんだ、自殺志願者でもなければあんなことはしない。青いセイバーはライダーにとっては大きなメリットを生じさせる存在のはずだ。それこそ聖杯戦争を決定づけるようなな。』
『だがこれも疑問点がある。マスターがそんな影響力をなぜ行使できるかだ。そんなマスターがいるならサーヴァントの必要性はなくなる。そんなことができるマスターならサーヴァントとして呼ばれるだろう。そう考えたら奴がサーヴァントであるとすればつじつまがあった。マスターの役割を兼ねる指揮者のサーヴァント、そんな英霊がいても不思議ではない。』
『まあ……俺も実物を見るまでは半信半疑だったが。』


315 : 【99】ちょっとしたにらみ合い ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:22:23 FIDVlp1w0

 サーヴァントを従えるサーヴァント。本人が目の前にいるとはいえ狂介はすぐには飲み込めそうになかった。
 それ以前の問題としてとっくに狂介の頭はパンク寸前である。とりあえずライダーがクラスのないサーヴァントのマスターでそれぞれサーヴァントは得意な戦法があるというぐらいはわかった。それ以外にも色々と覚えておくべきこともあった気がするが。

(まあ……ライダー達の話始まったしいっか……)

 どうやら冬木市とは関係ないところで色々なことがあったらしい。テレビでは七時のニュースで偉い警官や政治家が冬木について語っていてどうやら相当大事になっているようだ。まずは現状を把握するほうが大事だろう、そう考えると狂介は話の輪に加わっていった。



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1903】


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
疲労(中)、精神的疲労(大)、ライダーを警戒。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.ライダーが色々と気になる。
2.もうホテルで陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ、ワイルド・ドッグの服と携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化したり霊体化したり。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.面白くなってきたな。
2.ホテル最上階で陣地作成。なんなら特殊核金も。
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ホテル最上階のイサコと兵部京介の魔術工房を乗っ取りました。どのようなことが起こるかは不明です。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


316 : ◆g/.2gmlFnw :2017/03/10(金) 00:22:44 FIDVlp1w0
投下終了です


317 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/01(土) 23:59:41 cvyokf6o0
投下します


318 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:09:20 z2xR8el.0



 前回までのマイケル・スコフィールドの第二次二次二次聖杯戦争は。

 マイケルは兄と共に脱獄するも逃亡劇の末に命を失うことになるはずだった。だが死の寸前奇跡が起き、アーチャーのサーヴァント、ワイルド・ドッグのマスターとして聖杯戦争に参加することとなる。
 本選開始後魔力不足で倒れたマイケルは病院で扉間と幸村組と遭遇し一先ずの同盟を結ぶことになる。 一方病院を目指していたアルトリアとテレサは勘違いから衝突しそれにカルナが介入し公園は焦土と化した。その光景にマイケル達は戦慄するも、やはり病院を目指していた兵部が消耗しているカルナの追撃を提案、マイケル達はこの提案に乗るがあと一歩のところでイリヤの殺害に失敗してしまう。
 またこの頃マイケルの魔力の消耗はワイルド・ドッグをサーヴァントとして維持することが不可能なまでに深刻化していた。追い詰められたマイケルはそれまでの同盟相手であった茜達の魂喰いを決断するもとりあえずの潜伏先にしたスーパーで二つのハプニングに襲われてしまう。一つはワイルド・ドッグがマイケルに秘密で同盟交渉をしていた少佐のサーヴァントである伊達男ことトバルカインに拘束されたこと。もう一つはワイルド・ドッグの魂喰いが失敗したことである。 絶体絶命の状況に追い込まれたマイケルだったがなんとか時間稼ぎに成功し、 幸村組とワイルド・ドッグとの合流に成功するもまほろ達との接触などで混乱している所をカルナに奇襲され遂にマイケルは聖杯戦争の当事者となった。 圧倒的なカルナの前に全滅の危機に陥るがここでマイケルらマスター達は一斉に令呪を使い体勢を整えることに成功、しかし魔力を持たないマイケルには令呪の魔力は負荷が大きく、昏倒してしまう。 一方マイケルのサーヴァントのワイルド・ドッグは独自の行動を開始した。カルナが変態仮面こと狂介によって無力化されたのを見ると戦場から離脱しのび太抹殺のために宝具を使う。これは返り討ちにあったものの伊達男の助けで辛くものび太を拘束、近くで気絶していたナノカから腕ごと令呪を奪うと爆殺し、マイケル達を連れて冬木ハイアットホテルへと逃走。この行動にカルナをぼろぼろになりながらも退けたまほろと変態仮面はワイルド・ドッグの陰謀と判断して追跡しホテルの地下駐車場に乗り込むとパピヨンも交えた戦いの末にワイルド・ドッグを成敗したのであった。そして舞台は冬木ハイアットホテルへと移り更に混沌とする……

 冬木ハイアットホテルを爆破予告した張本人である少佐はなんとそのホテルに自身の拠点を移していた。彼は捕捉していたいおりとアリシアのランサー主従を同盟に引き入れホテルへの合流を要求する。一方病院でカルナ戦のあと気絶したまま取り残されていた扉間は、マスターのりんが他の病院に転院されることで冬木市から出されようとしているのをすんでのところで察知、これを食い止めるもカルナと秘密の同盟を結んでいた美遊に主従まとめて捕捉されてしまう。扉間はこの状況を、マイケル達がホテルにいると気配感知で察知したことで、カルナ打倒の同盟がホテルに集結しているととっさに匂わせることで切り抜ける。美遊からしてもカルナに、そのマスターであるイリヤに敵対する人間がどれだけいるかを知ることができる貴重なチャンスだったのだ。こうして少佐とそのサーヴァントが待つ冬木ハイアットホテルは、マイケルとワイルド・ドッグ、茜と幸村、変態仮面とパピヨン、いおりとアリシア、扉間とりん、美遊と小野寺の六組と、それぞれパートナーを失ったのび太とまほろが、それぞれの思惑を胸に集うこととなった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


319 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:11:12 z2xR8el.0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 左手だけで牌を揃えるとアーチャー・安藤まほろはルールブックを下家のいおり達へと渡す。受け取ったアリシアが時折いおりと視線を合わせながら書き込み、また下家へと。次も次も同じ書き込み、手渡し、そしてまほろの元へと戻り、また渡す。

 ここまでの数十分で情報交換は着実に進んでいっていた。キャスターによって提案されたときは冗談かと思っていたが、この筆談による会議は想像以上に上手くいっている。それぞれの話を何度も読み返せて考えながら書くためテンポは遅いが、その分各々が誤解しそうなことは発生しにくい。当たり前といえば当たり前なのだが、先の混乱した話し合いの後だけに堅実な会話ができることにホッとするものがある。もっともそれはあのアーチャー達から距離を取れたこともあるのだろうが。

「どうした安藤。そんなに見てもこれは一蝶羅なんでな、やらんぞ。」
「――!いや見てないです!ポ、ポン!」

 否、前言撤回。キャスターの目を見て、正直に言って、あのアーチャーやアサシンよりもその本質が危険であるとまほろは感じた。露悪的なところがあるが、しかしそれで脅威の底が見えたとはまるで思えない。マスターのことも考えて警戒は厳にしなくてはならないだろう。
 脅威と言えばバーサーカーもわからない。マスターの美遊が高い魔力を持っていることからも、その戦闘能力は期待できるが、しかしそれがこちら側に向いたときどうなるのか、予想は難しい。
 そういう意味ではランサーは最も信頼に足る人物と思えた。彼女とはほんの僅かな時間しか行動を供にしていないが、もっとも常識的な倫理観・価値観を持っていると感じる。少なくとも目を離した隙に共闘相手のマスターを暗殺しようなどとしないという意味では。

(……)

 しかし、だ。
 まほろの中ではある疑念が――マスターになにか特別な力があるのではないかという疑念が膨らむ。それが彼らへの信頼を躊躇わさせる。一回りしてきたルールブックに書き込む手が一瞬止まった。

 彼女のマスターであるナノカは十代前半でありながらサーヴァントである彼女を改造するほどの腕を持っていた。キャスターのマスターである狂介はあのカルナ相手に戦えるほどの身体能力を持っていた。バーサーカーのマスターである美遊は一度に何騎ものサーヴァントに魔力を供給している。そしてのび太もサーヴァントと、それもアーチャーと銃撃戦をするほどの腕があった。

 となればこうは考えられないだろうか?『マスターは特別ななにかを持った人間が選ばれる』と。

 無論これは根拠のない憶測だ。ランサーのマスターであるいおりやここにはいないマイケル・スコフィールド、九重りん、日野茜、そして教授のマスター、彼らには今のところ常人と違うといえるものはない。アイドルであることや刺青があることでマスターに選ばれた、というのは考えにくいだろう。だがそれ故にこうも考えられないだろうか。すなわちこの五人は手の内を隠していると。
 この聖杯戦争がバトルロイヤルの形式をとっている以上、当然自分の情報は秘匿すべきものだ。そうでなくともわざわざ見せびらかしたりはしないだろう、とちらりと狂介を見て思う。あんなの公然ワイセツじゃないか。
 よってマスター達がなにか隠していたとしてもそれを聞き出そうとするのは無意味だしそのことを理由に信頼できないなどというのは無茶苦茶なのだが、しかしそれはそれでこれはこれなのだ。まほろとしては現状、とにかくあのアーチャーの危険性を警告しておきたいのでこうして麻雀をしている訳だが、それの方がついた後はこのホテルを立ち去るべきかもしれない。このホテルにいつまでもいることは危険である。それに回収せねばならないものも……考えはどんどん膨らんでいく。

「――ロン、メンタンピン一発ドラ1……裏ドラ乗ってドラドラ、跳満です」

 とんだ狂介の叫び声を聞きながらまほろはどうここから穏便に脱け出すかを考え始めた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


320 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:12:24 z2xR8el.0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ビルの屋上にいることが多い気がする、とアーチャーに言ったら笑われた。

「あんまり実体化できる場所って少ないですよね。」

 確かに。サーヴァントの姿はあまりにもこの街では目立ちすぎる。まあもとから『クレイモア』なんて一目で言われるほどだったので人前で実体化することに抵抗はないのだが、この聖杯戦争では直ぐに情報が広まってしまう。ネズミのようにこそこそしておくのが得策だろう。

「和服、だったか。お前の格好ならそう悪目立ちはしないだろ?」
「時代が違うのでなんとも……お祭りの時ならまだ浮かないかもしれませんけれど。」

 民族衣装というものだろうか。チョコの教科書に乗っていた。今の世界ではだいたいどこの人間も同じ服を着ているという。元いた世界と違いこれだけ豊かなら皆が皆違う服を着ていてもおかしくないだろうに、人間とはわからない。

「――でも驚きました。まさか……ね。」
「あぁ……あまりに言葉も人種もなにもかも違うんで、物語のなかの国にでも来たと思ったんだが。」
「事実は小説よりも奇なり、でしょうか。」

 といっても、ある意味では物語の中に入っていると言えなくもないのだが――いや、よそう。今はそれを言うべき時ではない。

「そういえば、ゴスロリ、でしたっけ。コスプレというものですか?」
「いやいや、私のは黒魔女としての衣装っていうか装備っていうか。そうじゃなきゃこんなアッついの着ませんって。」
「そんな感じなんですね。」
「そんな感じなんです。」

 そんな感じなのだ。
 ゴスロリは非常に目立つためセイバー達に同行していた。ゆえに今現在このビルにあるBOOK・OFFにはアリスが単独で向かっていることになる。ではなぜ古本屋などにこんな時間に行っているかという話になるのだが、その理由は――

「――!『しゅごキャラ』と『地獄少女』、それに『カードキャプターさくら』でしたね。見つかったようです。」
「ということは。」
「ええ、やっぱり無かったみたいです。」
「じゃあ仮面ライダーは?」
「待ってください……『アギト』、『龍騎』、『555』、『剣』……」
「やっぱり、ない。」
「ですね。」
「ということは。」
「――はい、『ドラえもん』もありませんでした。」

 アーチャーの言葉を聞いて、ふぅ、と息を吐いた。それを見てセイバーも、ふむ、と言ってみる。
 彼女達がなぜ日も落ちた頃にわざわざ古本屋へ足を運んだのか。それはあることを確かめるためであった。元は、チョコが暇潰しに翠屋でテレビを見ていたときのこと。民放が違うことに驚いたり慣れない地デジに悪戦苦闘したりして、結局目当てのチャンネルがわからず新聞(これも聞いたことのない名前だった)のテレビ欄で番組を探していた。その時は東京のチャンネルに対応していると思われるチャンネルを見つけたが、どこにも目当ての番組が無かったので、特番か何かで流れたのかと思いそれきり頭から抜け落ちていた。当たり前だ。まさかテレビ番組が聖杯戦争と関係するなどとはチョコが小学生であることを差し引いても考えつかないだろう。そんなものを結びつけるのは正気ではない。
 しかし、今彼女達はその正気でもない考えを検証していた。セイバーは思う。もしこれが、仮にあんな狂気の仮定が本当ならば、今の自分という存在はなんなのだろうか。聖杯というものの権能の強大さと矮小さを同時に感じる。とはいえ彼女としてはみすみす生き返るチャンスを逸するのはつまらない。である以上あくまで聖杯は手に入れたいところだがしかし……
 そこまで考えて、彼女はアーチャーの言葉で顔をあげた。

「――『バトル・ロワイアル』という漫画は知っていますか?」



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


321 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:13:38 z2xR8el.0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 冬木ハイアットホテル最上階の一室。やけに長いテーブルの上にはところ狭しと料理が湯気を立てて並び、室内には芳しい匂いで包まれている。それらはつい一時間ほど前に他ならぬライダーによる爆破予告で営業が不可能になった下階のレストランから持ってこさせたものだ。肉、野菜、魚、各種のレバノン料理が香りで席に着く人間達の食欲をそそる。それはこの晩餐会を整えたライダーも例外ではない――というか一番腹減ってる。

「さて、腹を割って話そうじゃないか。」
「話すか。何をだ。」
「こういう時にする話は一つだ。わたし《こちら》とあなた《あちら》がそれぞれ何を望み求めるか。」

 席に着いた六人六騎にそうライダーは問いかける。

「ならまずはお前が何を願いこのパーティーに来たのか、とっくりと聞かせてもらおうか。」
「願いか。参ったな、私はそういう動機なり目的なりは持ち合わせがないんだ。」
「ふん……その太い腹はなかなか割れそうにないな。」
「いやいや、私は別にこれといって目的を持って召喚されたわけではないんだ。強いて言うのなら、召喚された段階で私の願いは叶っていたよ。」

 にやりと片頬を吊り上げながら言ったライダーの言葉にキャスターは眉を仮面の下で動かす。しかしライダーの言葉に嘘偽りはない。召喚された当時は召喚された段階で叶っていたのだから。

 ライダーとしては、聖杯戦争に参加することに抵抗はない。いくつもの厄介な制約とそれとうって変わっての野放図な面も、許容し得るものだ。この糞のような戦いに道化として興じるのもやぶさかではない。であるが、だからと言ってサーヴァントなどという己の境遇は真っ平だ。せっかくなので一度経験しているだけでありライダーがこの戦争にかける狂気も妄執も生前のものとは程遠い。いうなれば卓上遊戯、更に言えば観光、その程度であった。
 しかし。しかしこの聖杯戦争が、ライダーの知るあの聖杯戦争であるならば、話は違う。そうだ当然違う。あの時あの場所であのキャラクターにより行われたものと近似するならば、その中身も含めて素敵だ、素敵だ、ああ素敵だ。だが問題もあった。小聖杯はどうなっているのか、聖杯はどこに現れるのか、あの英雄王は存在するのか、監督役は、御三家は。またこの聖杯戦争にはいくつかの特徴がある。明らかに数の多いサーヴァント、なんら一般人と変わりなく思えるマスター、ここが月であり都市一つをシミュレートしていることそれ自体。この差異はなんなのか。そしてそれらを調査するためにどこまでのコストをかけてよいものか。
 そこでライダーが目をつけたのがセイバーだ。看板娘がいない聖杯戦争なんてあるわけないよなあ?

(看板娘は桜じゃ?)
(るっせー蟲蔵放り込むぞ。)
(は?麻婆食わせますよ麻婆。)

 まあ本音を言えば、ドラえもんの発見時はまだしも黒いバーサーカーやパピヨンを確認できた段階で、既にこの聖杯の権能の確証は得ていたと言える。ましてやまほろさんやのび太を拘束できた以上もはや疑いようもない。だがそれでも、ライダーにとってセイバーとは、アルトア・ペンドラゴンとは特別な意味を持つ。この聖杯があの聖杯をまなざしていることの証左に他ならないのだから。趣味としても実益としても、ここが冬木で、ここが聖杯戦争の舞台であるというのなら。丘へと登り、見えるはずのない地平線を見るために。

 第二魔法への到達。

 シュレディンガー准尉をも捉え、再現し、あまつさえいっしょくたに世界を越えて魔女の釜に投げ入れる。そんな無茶を通して道理を踏みにじる聖杯を手中に納めたとき、その時ライダーは、私は、三千世界の私を兵装し、構築し、教導し、編成し、兵站し、運用し、指揮する、私こそが遂に人間《私》を指揮する。私こそ『最後の人間』《Montina Max》!

「諸君。私は――」

 いざゆかん。全て遠き理想郷《カーニバル・ファンタズム》へと。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


322 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:14:56 z2xR8el.0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ただいま夜の十時です。普段はこのぐらいの時間には寝てないといけないんで久しぶりの夜更かしです。街の夜景がキレイだなぁ。白に黄色にオレンジ、そして点滅する赤、赤、赤。八月ってことを忘れたらクリスマスに見えなくもないかも。

「ご協力感謝します……」

 虚ろな目をしたお巡りさんがそう言って離れていくと、夜景が動き始めました。キレイな景色とも、これでお別れ、というわけには、いかないんだなあこれが。

「これで検問九個目だっけ。」
「十二個目だな。」

 私の左側、運転席の後ろに座っているセイバーさんが答えると誰のものかわからないため息が聞こえました。うん、わかるよ。私も先から検問を見るたびにため息ついてるもん。渋滞で全然動かないから嫌になっちゃうんだよね。それにもう軽く一時間は同じ姿勢で座りっぱなしだからおしりも痛いし。車の真ん中の席って思ったより窮屈で。

「13個目が見えたわ。」

 助手席のアリスさんもだるそうに前の方を指差しています。ようやくホテルのふもとまで来たけれど、やっぱりそこでも検問があるようです。赤いパトランプがくるくる回っています。
 まあ、それでも、なんとかホテルに入れそうだから良いのかな。周りなんかお巡りさん以外にも野次馬とかマスコミっぽい人がちらほらいる。これだけの人に誤魔化そうとして魔法をかけたら、他の組にも絶対バレちゃうもん。
 だけど、やっぱりいい加減タクシーから降りたいっていうのがホンネだよね。体のヘンなところが痛くなってきたよ。

「聖杯戦争っていうから、なんかもっと、戦うって風だと思ってたんだけど
、移動時間の方が長くない?」
「それは、運が良かったと思いましょう。」

 う〜ん、アーチャーさんの言うこともそうなんだよね。これまで私が危ない目にあったことはないし。まあそれもある意味当然と言えばそうなんだけれども、でもさあ。

「それに思わぬ収穫もあったんですし。」

 ……確かにね。それも、やっぱり、アーチャーさんの言う通りだよ。今私の膝の上にあるものは、ただのゴミにも脱出の鍵にもなるかもしれない。ここまでタクシーの中で調べてみたけど、読んでるだけじゃダメで体験した方がいいかもしれないけど、それでも。カウンターパンチできる仲間たちを、ワイルドセブンを集められたら、きっと。そう思ってようやく着いたタクシーから降りて、ホテルに入った私とセイバーさんが最初にあったのは――

「そろそろ来る頃だと思ってね。じゃあ僕は少佐と夜食持ってくんで、バイバ〜イ。」
「ご苦労……さて、貴様らがセイバーと同盟している連中か。」

 うん、変態でした。猫耳の男の子の何か話していたその人は、ピッチリした服に、なんか、もっこりしてて。魔界でもなかなかいないよこんな人。魔神かな?でも、ううん、言わないとダメだよね。この人がアリスさんの言ってたキャスターだろうし。聖杯戦争を止めたいって堂々と言うぐらいなんだから、話せばきっとわかってくれる。
 今聖杯戦争にいるマスターとサーヴァントの組合せは十六組。私とセイバーさんのほかに七組の人達に賛成してもらえれば、ちょうど半分。そうすれば、この聖杯戦争から脱け出せる。アリスさん達とそれに狂介さん達とクロノ君たち。今のところ協力してくれそうなのはこの三組。あと四組増やすためにも、この人たちとはちゃんと話さないと。
 挨拶が終わったあと、実は、ってキャスターの耳に口を近づける。小声で話さないと、誰かに聞かれるかわからないし。まあ読まれてるかはないしょ話でも防げるかどうかわからないんだけどね。

「――この聖杯戦争には必勝法があるんです。」

 だから、私は思いきってそう伝えた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


323 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――発火 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:16:20 z2xR8el.0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 麻雀や晩餐会やらで長い間できなかったが、それが終わってからこうしてタケコプターで飛ぶまでの間に数時間ほど一人になれる時間があったのはのび太にとって幸いであった、のだろう。貸し切られたスイートの一室はまほろさんと二人で時間を潰すには余りにも広い。彼女がキャスターと新しくきたセイバー達と話すと言うことでのび太は寝室へと逃げるように場所を移した。
 ひみつ道具でしか味わったことのない寝心地のベットも、今ののび太にとっては硬いコンクリート同然だ。なまじ、あの時から、アーチャーとの銃撃戦から平和な時間が続いているぶん頭には嫌な考えが、目には涙が浮かんでくる。今頭を預けているのが気を失う寸前に覚えた瓦礫の固さに思えて、ポケットに突っ込んでいたハンカチで強引に拭った。

「……ドラえもん。」

 じいと手を見る。ハンカチにしたそれは、ドラえもんのポケットだ。はた目にはピタパンのようなそれはのび太が握り締めるとふにゃりと形を変えて力を逃す。とらえどころのないそれを暫し握りに握り、ベットに叩きつけようとして、やめた。
 ため息と共に脱力するとそれは手からこぼれ落ち胸にピタリと吸い付く。剥がそうと指で引っ張っても剥がれない。それは剥がそうとしないと剥がれないのだ。

「……」

 乱暴に手を突っ込んでみた。ふしぎな感覚が手首から先を覆う。なんでもいいからひみつ道具を出してみたかった。占いたかったのかもしれない。自分がどんなひみつ道具がほしいのか、どんなことできたらいいなと思うのか、まるで分からなくなっていたから。そんな感じで四次元ポケットから手を引き抜いた。

「……?これってたしか……」

 だらりとしていた手をピンとすると両手でそれをあらためる。それは白いハチマキだった。


 タケコプターを飛ばし西へ向かう。新都のビル街を抜け線路を越えて未遠川はもうすぐだ。
 のび太とまほろはホテル側の特使として深山町側の同盟に向かうことになっていた。もちろんそれは名目であり、実質的には互いの同盟の人質交換に相違ない。色丞狂介と黒鳥千代子の二組がそちらに行ったのだからそちらも二組寄越せということだ。この人質に選ばれたのが、のび太とまほろの組合せ、そしてマイケルとワイルド・ドッグの組合せである。揉めている当事者達をせっかくなので引き取ろうとの提案に、不満な顔をする者はいても表だって反対したのは真田幸村と教授、そしてまほろぐらいのものであった――実はこれはまほろから狂介を介して深山町側に脱出の手引きを打診して行われたのだが。
 そうして現在のび太とまほろは護衛兼監視のキャスターとテレサを伴い川を望むところまで着ていた。自衛隊によるものと思われる仮設橋の設営が進められている横で相変わらず渡し船が行き交う。

「じゃあまほろさん、行こうか。」

 人混みに紛れるためひみつ道具をしまうとのび太は人だかりへと近づく。その顔はホテルで泣いていたものとは別人のようにまほろには見えた。

 のび太の頭に巻かれたハチマキ――ホテルでのび太が引き当てた決心ハチマキ――は、もはやのび太自身にも外せない。成就するその時まで、彼は不退転の戦士となる。

 キャスターからまほろを通じて伝えられた、誰一人の犠牲もなくこの聖杯戦争を終えられる『必勝法』、そしてある仮定。その二つはのび太に明確な道を示した。すぐには信じられなかったが、しかし同時に思い当たる節もあった。ドラえもんの秘密道具にはいくつかこの聖杯戦争で使えないものがあったが、もしそうであるのならなぜ使えないのかの理由がわかる。あまりに複雑だからだ。そして複雑であっても、一つのものに限ればなんとかなるかもしれない。この聖杯戦争はもちろん、もう聖杯戦争が起こらないようにすることも。

 既に決心はついている。あとは、どう説得するか。ルーラーが時間を稼ぐ間に勝負をつけなければならない。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


324 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/02(日) 00:25:57 z2xR8el.0
投下終了です
主催並びに設定関連で長くなるので後日分割分を投下しようと思います


325 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:08:48 dy9lSc/c0
投下します


326 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:12:39 dy9lSc/c0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 そこはコンクリート作りの建物の一室だった。窓はないものの風通しは良く、備え付けられた二段ベッドは狭いものの成人男性一人が寝る分には支障ない。トイレの風通しが少々良すぎるのが問題だが、三食に共用シャワーがついていることを考えればタダで住めるのは悪くないだろう。とはいえ、出入りが自由にとはいかないのが難点なのだが。
 糞ったれどもの夢も希望もないプリズニーランド。フォックスリバー刑務所の監房でマイケル・スコフィールドは意識を覚醒させた。

「――夢か。」

 ベッドからちらと周囲を見渡し、トイレにもなにも異常がないことを確認してそう呟くと、もといた場所に腰を下ろす。そこにいるはずの囚人は誰もおらず、苦労して行き来した穴もまたない。ひとっこ一人いないがらんどうから受ける強烈な違和感はマイケルにとっては聖杯戦争に参加した際の記憶の混濁よりもはるかに速く現実へと引き戻させるものだ。
 なにとはなしに鉄格子を叩いてみた。それは役目を全うせんというかのごとく微動だにしない。本物の方が多少なりとも動く、などと狭い廊下とそれにつけられた申し訳程度の柵を見ながら思った。

「まるで刑務所みたいだね。」
「……悪夢にしては生ぬるいな。」

 後ろからした少女とも少年ともつかない声にマイケルは振り返らずに答えた。自分が参加しているのは聖杯戦争だ。それがこんな場所にいるということは、走馬灯か無防備にアホ面を晒して寝ているかのどちらかだろう。なら後ろにいるのは夢魔かそれとも死神か。

「用件は?」
「君冷めてるって言われない?まいっか。ミスタースコフィールド、君にちょっと見てもらいたいものがあって来たんだよね。」
「見るだけか。」
「聞きたいこともある。」

 適当にした質問に、思わぬ答えが返ってきた。夢の中では意味のある会話はできないと聞いたがそうではないらしい。それとも支離滅裂な受け答えでありながらそうと認識できていないだけだろうか。そう鈍い頭で考えて、マイケルはようやく闖入者を視界に入れた。ボーイスカウトのような服装に猫耳、そしてナチスの腕章をしたティーン。それが地図を拡げてマイケルに見せてきていた。

「こっちも聞きたいことがある。」
「自分が今どうなってるかとか知りたい?それともサーヴァントのほう?」
「その前だ。お前のマスターといくつかの人間関係について。」
「ふーん。」

 この猫耳はまずあの白いスーツの太ったマスターのサーヴァントだろう。そう踏んで聞くが返事はそっけない。そもそも答える義理も意思もないのだろうが。

「まずはこちらをご覧くださーい。」

 目の前に広げられたのは、地図だった。おそらく、冬木市の。端に冬木市役所と書いてある気がするが、まあ些細な問題か。このタイミングで出してきたということは、まずこの地図に関して自分からなにか聞き出そうとしているのだろう。

「なにを知りたい?」
「察しがいいね。職業柄かな?」

 それは自分が不動産業という職についていることか。それとも建築士であることを知ってのことか。あるいは脱獄のことまで知っているのか……軽くねめつけて見てもチシャ猫のようにそいつは笑うだけだ。

「ミスタースコフィールド。君と君のサーヴァントの安全は僕達が保証しているよ。でも僕らにもできることとできないことがある。だから君の力をちょっと借りようと思ってね。」
「そんなに買ってくれるとは。泣けてくる。」
「じゃあ手助けしてくれるね。」
「俺にできる範囲のことなら。」
「それは良かった。隠しもののありかを知りたくてね。」

 これが脅迫であることはわかっていた。露骨なものだ。この糞ガキは自分の利用価値を値踏みしている。仲間に引き入れる第一条件は有能かどうか、というのはニューヨークでも刑務所でも聖杯戦争でも変わらないらしい。この地図からなにかを分析しそれを『今後も生かしておいた方が得である』と思わせるように伝えなければならない。でなければ人の夢の中に入り込んでくるような相手だ、いくらでも自然な殺し方で口封じに来るだろう。
 そう考えて、目の前の存在がサーヴァントである前提で考えている自分に気がつき、失笑する。全くお笑いだ、この問答も糞ガキも、全てマイケルの見ている夢であるかも知れないのに。
 だが、マイケルにはこれが現実のある種の側面であると同時に本質であるという勘があった。そして自分に何が求められているかについても。

 「待ってくれ」と地図を仕舞おうとする猫耳を呼び止める。


327 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:13:59 dy9lSc/c0

「百年分……いや、五十年分でもいい。古い地図を用意できるか?それと地下のパイプラインの工事の経過も」
「構わないけど……隠しものがなにかは聞かなくても良いの?」
「サービスしてくれるのか?」
「うん。無理。」
「だろうな。だが宝探しに地図は必要だ。あればあるだけ早く見つかる。」
「……ま、大丈夫かな。いいよ、それにペンや定規もオマケする。」
「ラム酒は?」
「ラム酒?」
「宝探しは酒があると捗る。シルバー船長もそうだった。」
「ゴメン僕未成年だからアルコールは手に入れられないよ。」
「残念だ。良いグラスが見つかりそうなのに。」

 猫耳の目の色が変わる。文字通り猫のそれのように劇的に。その眼は妖しく光る。

「ラム酒はないけど……神の血なら用意しよう。」
「うん、用意するとも。」
「君が本当に見つけられるなら。」

 それだけ言うと猫耳は最初から居なかったかのようにさっぱりと消えた。まずは、第一関門突破といったところか。この程度の簡単さで次も上手くいってほしい、と手に持った地図に目を落としながら思う。問題はここからだ。なにせ相手は神話のそれの名を冠するもの。あの猫耳達が生前ヨーロッパを荒らしに荒らせど見つからなかったもの。それを地図だけから見当をつけねばならない。

「構わないよ、似たようなものさ。」

 誰にともなく呟くと、マイケル・スコフィールドの脳細胞は軋みをあげて動き始める。聖杯戦争はまだまだ中盤戦。彼等はこんなものじゃない。

 視線は地図をさ迷う。手はあるいは年代順に、あるいは工事現場を一つ一つ確認、地図記号もためしためし見ていく。正直なところ日本の地図はアメリカのものとは勝手が違うのだが泣き言は言っていられない。首がかかっているのだ。

「パソコンも注文しておくんだったな。」

 いつの間にかテーブルの上においてあった文房具を手にしながらごちて、その口の動きの何倍も手が動き、何十倍も目が動く。彼らがある程度隠し場所のありかの見当がついているのか、それとも全く手掛かりを持っていないのか、あるいは答えを知った上でマイケルを試しているのか。それはわからない。が、少なくともこちらが与えられたものからどう考え何を推測するのかを試しているのは違いないだろう。ならば必要なのは答えそのものではなくその過程だ。目的と手段を逆転させなければならない。

「必要なのはあるということだ。ないということはない。」

 聖杯は存在する。それがどの様なものかはともかく、今までに自分、マイケル・スコフィールドに起こったことを考えれば聖杯は実在するものと見るべきだ。それがたとえ形而上の存在であっても、ここは実体を持った、手に触れえるものと考えた方が捜索は捗るだろう。何よりプレゼンテーションが楽だ。そしてクライアントのお眼鏡に叶うものは、この冬木に地図から探せるものとしての聖杯だ。そうなれば自ずと隠せる場所は限られてくる。どれだけ猶予があるかわからないなら、そう踏んで探さなければ手も足も出ない。

「――隠されている、か。」

 マイケルの目は教会へと向かう。そこから左へ視線をスライドさせた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


328 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:16:02 dy9lSc/c0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 夢を見ていた。

 夏祭りで、出店の並んだ道を浴衣で歩く。ちょうちんに灯り、屋台からは煙、音と匂いと光が現実感を失わせる。美遊・エーデルフェルトはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと手を繋ぎ、その喧騒の中にいた。

「■■■■■■■■■■■■」

 祭囃子が賑やかだ。誰かに呼ばれた気がして後ろを振り返ってみても、人混みが変わらずあるだけで、見知った顔はいない。ああ、そういえば気を使って二人きりにしてくれたんだっけ。ぼんやりそう考えると手を引かれた。

「■■■■■■■■■」

 楽しげに語りかけてくるイリヤに美遊も微笑んで答える。二人でこちらで肉まんを買い、あちらで金魚すくいをし、時にもみくちゃにされながらも道なりに進む。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 そうだね、と頷くとイリヤは笑った。そのままの笑顔で美遊の両手を取ると後ろ向きにぐいぐいと引っ張っていく。危ないよ、と声をかけようとしたところで案の定人とぶつかってしまった。慌てて二人で謝る。

「随分幸せな夢を見てるね。まあ夢の中だし、いいんじゃない?幸せでしょ?」

 学ランを着たその人はこちらこそと謝るとツインテールの少女の手を引いて歩いていった。兄妹だろうか、二人して金魚の袋を腕にぶら下げ公園の方へと消えていく。

「なんで私が死んでお前が生きてるんだ。死ねばいいのに。」

 お兄ちゃん、と嬉しそうに呼び掛ける少女の声が最後に聞こえた気がした。

「■■■■■■■■■■■」

 はにかんだように笑うイリヤに、美遊は険しい顔をしてみせた。まったく、こんな人の波の真っ只中では危なっかしくて見ていられない。さっきみたいなことになったら大変だと、今度は美遊が手を引いて前を歩く。迷子にならないよう手を強く握るとどんどん進んでいった。

「■■■■■■■■■■■■」

 カラットした熱気が吹き付け駆け抜ける。かがり火が焚かれているようで、眩しすぎて見つめることもできないそれが朧気に見えた。体に感じる放射熱はまるで自身をローストしているようにすら覚える。熱い、暑い。炎として完成しているそれは祭りの会場全体を燦々と照らしているのだろう、誰も彼もが皆が皆、それに見とれるように、飛んで火に入る夏の虫とばかりに近づき、火だるまとなる。


「――助けて、美遊。」


 ふと、聞こえてはいけないはずの声が聞こえた気がした。

 わかっている、これは美遊の脳が見せている幻想だ。頭の中のイリヤに都合の良いことを言わせている過ぎない。

「じゃあ、私もう行くね。」

 イリヤが手を開く。ダメ、と離さないように握り締めた手が、魔法みたいにするりと離れた。無力だった。あまりにも。
 そのまま元来た道をイリヤは帰っていく。ずっと向こうで凛さんとクロが手を振っているのを見て、押し留めようとして、追いかけようとして、もがくけど、力が入らない。渦巻く水面に弄ばれる落ち葉のように、祭りの群衆は押し流してくる。エスカレーターを逆行するかの如く足を動かしても濁流に飲まれるだけであった。
 だから美遊は群衆を踏み台にして走り出した。たった一人の人間の為ならば他の参加者すべてを一顧だにせず踏みにじる。炎を目指して突撃する人々を血溜まりと肉塊に変えながら逆走を始める。レアやミディアムな肉の匂いと、鼻につくスモークを感じながら、そこに希望があると信じたいから。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


329 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:18:04 dy9lSc/c0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「何時間たったんだ?」
「二時間だよ。」
「それは、現実の時間で?」
「君の体がホテルで寝てる時間ならね。」

 デスクに向かい、地図に定規を使って線を引いているマイケルの頬に冷たい感触が生まれて、手を止めて問いかければ答えるのは先ほど聞いた声だ。差し出された水滴の着いたペットボトルを受け取ると一息に煽る。やけに旨く感じたのはここが夢の中だからか、それとも何か入れられているからか。まだ殺されることはないと思うが、今一度、覚悟しておく必要はあるだろう。

「じゃあ、そろそろいい?」
「問題ない。」
「いいね。それで、答えは?」
「宝のありかは――ここだ。」

 ふっ、と短く息を吐く。時計もなければそもそも現実かもわからないこの監房の中で、体感では半日ほど地図と格闘してきた気がする。やけに重たい頭とリアルな頭痛、そして眼底の焼けるような感覚が、これこそ現実であることの証拠に思えるが、しかしそれが結果に結び付くとは限らない。
 だが、ここである程度この猫耳を、そしてそのマスターを納得させねば命はないだろう。そう考え、薄く笑う。なんだ、これまでと同じじゃないか、と。
 マイケルは、軽く、とん、と、ほんの手遊びでするそれのように地図の一角を叩いた。そしてそれを横一文字に西へと向かわせる。線路を越え川を越え住宅街を越えて、地図の隅――アインベルン城のある森を指した。

「冬木市南西部に広がる森、ここだ。」

 猫耳は無言でマイケルを見つめる。マイケルはそれを更なる説明を求めているものと解釈して話し始めた。

「この辺りにはいくつか不自然な点がある。」
「まずは地図に乗っていないことだ。近代的な地図という意味の測量がされたのは第二次世界大戦中と戦後のいわゆるGHQ統治下の時。それも森の外縁部だけにほぼとどまる。というのも、この森自体どうやら私有地だからだ。少なくとも二十世紀より前から、あの森は個人の所有物になってる。こっちの地図を見てほしい、冬木市にある森林の多くは針葉樹だ。おおかた戦後に建材用に植林されたスギなどだろう。一方、この森は広葉樹……くるみとかぶなの木の仲間だ。これだけでも、ここが国や市といった公共の組織ではなく、誰かが管理している場所と推測できる。」

 ペットボトルで口を湿らせる。「ここまで何か?」と聞いたマイケルに猫耳は黙って首を横に振った。

「この森は円蔵山と呼ばれる複数の市にまたがる山地の一画だ。森の西に、寺院があるが、この寺院が森の所有者の可能性もある。そして。」

 地図の上で円を描いていた指を卍の地図記号、柳洞寺で止め、それを先とは逆に教会まで東進させる。

「このラインの山岳並びに丘陵地帯は、地盤が冬木市の他より固い。岩盤が地上の近くまで来ているんだ。だから農地には適さなくても住居などを建築するには良い。少なくとも元は農地が多かった今の新都よりは、古い住居が今まで残る可能性が高いはず。そして、こっちの地図を見てほしい。冬木市の下水管と雨水管の工事状況だが、地図の通りならあの辺りの配管は耐用年数がギリギリの筈だ。そもそも、数が足りていない。それとこの線路の位置。この線路はさっきの寺院程ではないが充分に頑強な地盤の縁をなぞるように引いてある。逆にこれ以上先は地盤が軟弱すぎる。つまり取得が用意でかつ安全な土地のギリギリがここだ。」

 百年単位で人を遠ざけてきた森。そしてそれと同じほどの年月を耐えられるだけの土台を建造物へと提供する頑強な地盤。その地盤は、地上も地下もやはり人を遠ざけてきた。この一直線上、即ち冬木教会から遠坂邸や間桐邸のある丘を通り柳洞寺へと結ぶライン。ここならば、一目を避け長期に渡って安全に保管することが可能だ。

「カップはこのライン上のどこかにある。」

 マイケルはそう言うとゴールドの猫耳の眼を自信ありげに見つめた。


330 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:26:50 dy9lSc/c0


 とマイケルはここまで色々言ってきたがそんなものはほぼ根拠のない憶測である。だいたい考えればわかるはずだ、マイケルは建築家であり土地の専門家ではない。もちろん基礎をどうこうというのはその職業上重要な要素ではあるが、本業は設計だ。興味のないものからは時たまいっしょくたにされるが本当は民主党と共和党ぐらい違う。副大統領は殺す。しかし嘘をついているというわけでもなかった。郊外の森が私有地だというのも、広葉樹林なのに対し他は針葉樹林というのも、教会と寺を結ぶ線の地盤が固いというのも、地下の配管に問題があるというのもどれも事実である。事実であるが、だからと言ってそれが聖杯戦争と何か関係があるかといえば証拠は何もなかった。あの森が私有地というのは近くに寺院があったので当たりをつけたら地番があったからわかったことだし、冬木市の針葉樹林の割合が高いのはただ単に戦後の植林事業で植えられた杉がその多くと同じように持て余されてそのまま放置されているだけだし、地盤が固いのもそもそも山地なのだから海沿いに比べれば当たり前だし、地下の配管に問題があるのも日本全国そうだ。つまりマイケルが猫耳ことシュレディンガー准尉に話した内容はどれも当たり前のことをそれらしく言っただけなのである。
 では彼の言ったことはまるきっきり的外れなのだろうか?マイケルはそうではないとかなりの部分考えていた。確かに、自分が言ったことはどれも当たり前のことだ。それをクライアントを納得させるべくやたらと地盤がどうだと連呼して専門家らしく断定して、それらしく話したが、しかし話したことに間違いはないはずだ。一般論を積み重ねただけとはいえ、裏を返せばそれは他の土地が一般論からすれば不適当な土地であるということである。万が一、あれが生き物で水気のある場所でないとダメで故に川や海の近くにいる、等という話ならマイケルの面目は丸つぶれなのだが、そのケースも考え池のある柳洞寺を重点的に話したつもりだ。さしものあれが宗教の違う寺にあるとは考えにくいが、そのものズバリな教会を指定して外れたときのことを考慮すれば悪くない選択ではないだろうか。
 やれることはやった。マイケルはそう思う。狭いとはいえ街一つから一割程度のスペースに絞り込んだのだ。これならば、最低限の有用性を示せた筈である。もっと話を盛ればこの丘の上の遠坂という家は1800年代からあり周辺の旧家とあわせて聖杯戦争の主催者である、とか、この間桐という家は市内に多数の不動産を有していてこの地主こそ聖杯戦争の主催者だ、等と言い出すこともできなくはないが、いくらなんでも無茶があるのでやめておいた。自分で考えていてなんだが、難癖以外のなにものでもない。こんなことを口にすれば誰かを嵌めしようとしているなんて風に思われ痛くもない腹を探られかねないので自重。それに、ないとは思うが真に受けられて用済みとばかりに殺されるというのも、なくはない。知りすぎていると勘違いされたらたまらないのだ、下手なことを言って危ない橋は渡りたくなかった。

(どうだ……?)

 猫耳はウ〜ンと唸りながら狭い監房を行ったり来たり歩き回る。魔術的なものを感じさせようと寺と教会を一直線に結んでそれらしい理由付けをしてみたが、思いの外説得力を持たせられたと思う。これでダメというのならば、仕方ない。地図だけで見当をつけろなど本職でも不可能な仕事をフラれたのだ、最善は尽くしたがどれだけ通用するか。

 マイケルの頬を冷や汗が伝う。数十秒、猫耳は回答を焦らしているだけなのに、同じ体勢をとり続けた時のように身体が硬直しているのがわかる。もう一度水が飲みたいと思ってペットボトルを見ると空だった。

「一つ聞くね。」

 きたな。

「君は運命を――Fateを信じるかい?」

 Fate、か。いきなり抽象的な質問が来た。もしくはなんらかの暗号かキーワードか。

 猫耳からはそれまでの軽い表情が消えている。全くのノーヒントだが、ここの回答を間違えれば、自分は広葉樹の肥料としてゆくゆくは美味しいドングリにされてしまうだろう。
 マイケルは意を決した。

「俺は――」



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


331 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:35:27 dy9lSc/c0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――マイ――スト――なさ――すか――

(なんだ……声か?)

 ――さん――目は――しょう――こんばんは――ルーラ――達を開―――ます

 マイケル・スコフィールドの脳内に若い女の声が響いたのは、シュレディンガー准尉の質問に答えてからどれくらいのことだろうか。
 夢から覚めたのかそれともまだ夢に囚われているのか、あるいはもう死んでいるのか。

 ――ず最初に、現――状況をお――します。現在生存してい――は、残り十六組です。

 頭の中から聞こえるようなその声は幻聴にも思える。だが彼はそれをそれとして受け止めた。さっきもこれ迄もさんざんファンタジーなことがあったのだ、今さらテレパシーだろうが念話だろうがどうということない。
 そう考えると、ろくに動かない頭でも謎の声を素直に受け止められる。聞こえてきた単語から察するに何かがあといくつあるかを知らせているようだ。ということはこれはサーヴァントが残り何人か伝えているのだろうか。 だが、そうなると今度は別の疑問が出てくる。今話しかけているこいつの話しぶりはゲームの参加者というよりはまるでレフェリーのようだ。それがひっかかる。

 ――次に、臨時通達です。現在会場の冬木市は戦闘の損害、並びに神秘のろ……露呈?によるNPCの活発化により聖杯戦争の続行が困難になり状況にあります。この聖杯戦争では皆さんの自主て……噛んじゃった……自主的!な、活躍を望むべく、わたし、わたくし達からの介入は原則として行わない方針です。しかし、多数の死傷者、行方不明者、並びに会場の故意かつ不必要な破壊、及びそれによる報道機関、政府機関等の出動など、主催者として看過することが不可能な事態が発生しました。

 ――よって一週間後の八月九日零時を持ちまして本聖杯戦争をコールドゲームとし、優勝主従が決まっていなかった場合は同日七時より冬木教会にて抽選によって優勝主従を決することとします。またこの事態を招いた容疑で以下の五組の主従に可及的速やかな冬木教会への出頭を要請し、その身柄の確保・拘束・殺害に成功した主従には最大で令呪を五画配布します。

 ――マスター・マイケル・スコフィールドとアーチャー・ワイルド・ドッグ、マスター・高遠いおりとランサー・アリシア・メルキオット、マスター・イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとランサー・カルナ、マス――


 ド ゴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ン ! ! ! ! ! ! ?


「――爆発か……!?」

 謎の声が不意に途切れる。一拍おいて経験したことのない振動と不気味な地鳴りのような音が感じられた。
 目を開ける。開けたはずだ。少なくとも、これは、現実のはずだ。さっきの夢か現実かあやふやな感覚はないのだ。なのに視界が黒一色に塗り潰されている。

「何が起こってる……?」
「あ!えーッと、マイケル、さん?」
「あ痛っ……だ、大丈夫ですか?」
「茜さん……と……?」

 黒一色だった世界に光が現れた。星だ、星が光っている。よく見ればそれがおもちゃの魔法の杖のようなもので、それを持っているプレティーンの周りには日野茜やそのランサー・幸村や若者がいるのもわかった。
 そしてようやく理解した。この部屋は扉の辺りはほのかに明るいのを見ると、恐らく停電中なのだろう。大きな窓から見える景色も停電した街と海であったため一面闇に覆われているように見えたが、彼方には本州・神戸の夜景が光る。ということは、停電はこの冬木か、この島だけで起こっているのだろうか?


332 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:40:11 dy9lSc/c0

「――マイケルさんっ!!」
「ッ!?すまない……少し、混乱してて……」
「どこか打ったりしてませんか?顔真っ青ですよ……?」
「ん?この声は……いおりちゃんッ!」
「狂介殿!一人で行かれては!」

 ……少しの間考え込んでいたようだ。茜が心配そうに呼び掛けているのにマイケルは答えた。彼女の顔はろくな灯りのない場所でもわかるぐらいに青ざめていた。正しくは、首が青ざめていたというべきか。顔のメイクが朝に見たときより格段に濃くなっている。唇など先程はノーメイクに近い程度だったのが今はしっかりと赤が引かれている。日本にいる日本人としてはコールガールでもなければしないのではなかろうか。
 ともかくマイケルは身体を起こした。よく見たら近くにアーチャーが卑猥な形で縛られ転がされている。どうやらまだ容疑者として扱われているようだ……

「大丈夫だ、ありがとう。それより、さっきの彼を追おう。何が起こってるかわからないけど……だから不安だ。」
「ええっ!?そんなに具合悪そうなのに無茶しなくても。私たちだけでも大丈夫ですよ。」
「それだと、彼を置いていくことになるから結局私たちはバラバラになる。」
「……あ。」
「よし!それなら!」

 こういった場合はバラバラに逃げた方が得策なのだが、しかし唯一の戦力であるランサーと万が一離れることになったらたまらない。アーチャーがあの状態で頼りにならない以上ここは全員で一塊に動くべき場面だ。
 マイケルには聞こえなかったが若者は誰かの声に反応して走っていった。状況から考えるに同盟したマスターだろうか?もしくはマイケルと同じような容疑者か。ともかく追おう。
 そうしていると、ぐいと身体が引き上げられた。軽々とランサーに担がれていたのだ。と思っていると先程の若者がなぜか戻ってきてくる。「停電で自動ドアが開かなくなってる」。成る程、つまり閉じ込められたというわけか。

「ならあっちの扉から。手で開けられるし内側から開ける時は鍵も要らないはず。」
「さっき防災訓練しておいて良かったですね。じゃあみんなで行きましょう!」

 全員で暗い部屋を小走りで移動する。何はともあれ、これでランサーに身を守らせることができそうだ。


 この部屋はVIP用なのだろう。随分と防弾性の高そうな扉が目の前に現れた。テルミットとC4かもしくはバズーカでも持ってこなければぶち破れなさそうなそれは先頭の若者がノブを倒すと簡単に開いた。

「やっぱり停電してるみたいですね。」

 茜の言葉通り廊下も非常灯らしき灯りが点々と点いているだけだ。幸いかなり廊下の幅があるのでこんな非常時でも移動に支障はないが。

(エレベーターか?)

 廊下の先に円筒状のガラスが見える。そしてその先には同じような廊下が続き終点の窓からは夜景が見えた。恐らく方角的には内陸側だろうが、そちらの街には少ないながらも灯りがついていることから、この停電は冬木でだけ起こっているようだ。そして廊下で作られた十字路の真ん中を貫くエレベーターの周りには、スモークの利いた螺旋階段が下へと続く。

(最上階か。)
「あれか!」
「エレベーターが変なところで止まっちゃってますね。」
「おい!誰かいないのか!くそっ!非常ボタンの位置高すぎだろっ!大変なんだっ!誰かっ!」

 二階ほど下の位置でエレベーターが止まっているのが見えた。子供が一人閉じ込められたようで悲鳴を挙げている。あの若者はアジア系にしては運動神経が良いようで、一団から先行して駆け降りるとエレベーターの扉を抉じ開け始めた。
 だが子供はパニックになっているようだで依然として悲鳴を挙げている。しかし子供が発した次の言葉でマイケル達の表情が変わった。

「ライダーが自殺したんだよ!!」


333 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――炎上 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:44:46 dy9lSc/c0


 状況が理解できない。

「ライダーって、あのっ!?」
「金髪で眼鏡の?」
「白い服着て太った?」
「そうだよ美形の金髪デブの白スーツのアイツだよ!それが宝具を使ったと思ったら突然拳銃で自殺して!」
「待って、宝具?」
「ミレニアム大隊って言ってた!アイツはルーラーの通達が終わったら全員に地下に集まれって、それで俺は、それを伝えに、ランサーが下で監視してる。なのに通達が途切れたと思ったら変な地震がするは停電するはで!」
「落ちちゅきまちょーいおりちゃん!焦っても焦ってですよ!!」
「ランサーから聞いた話だとルーラーの通達が途切れてから少しして突然拳銃を出したんだ。それで、宝具を使ったらサーヴァントが何百人も召喚されて、そしたら自殺だよ!しかもアイツらランサーがライダーを殺したと思ってる!このままじゃ皆殺しだ!!」
「!下からかなりの数が上がってきている……五、十、四十、いやもっと……」
「サーヴァントが四十人ってそれズルじゃん!?」

 マイケルは目ざとく全員の顔を見た。何人か表情が分かりにくいのもいるが、全員が全員とも多かれ少なかれ困惑の感情が見てとれる。自分も今あんな顔をしているのだろう。
 ともかく、なんとか幸村達はエレベーターを抉じ開けた。軽く5フィートは下にずれているためランサーが身を乗り出して引っ張り上げる。それを若者――色丞狂介に支えてもらいながら見ていると今度は見知った顔が近づいてきた。アサシンとそれに手を引かれるこれまたプレティーンの少女、そしてシュレディンガー准尉だ。

(?)

 人が集まったところで口々にこの異常事態について話しだす。やれライダーのマスターがいないだの、セイバーのマスターがいないだの、下から二百以上のサーヴァントが接近しているだの、教会がカルナに襲われただの。しかしマイケルが気になったのは別のことであった。
 この場にいる人間は多かれ少なかれ、全員が困惑の表情を浮かべている。だが一人だけ。一人だけ全くの無表情な人間がいた。いったいどうすればこんなにも感情を殺せるのか。わからない。日本には能面というマスクを比喩表現として使う文化があるらしいが、なるほどこれがそうか。その顔かを見たことでマイケルの脳細胞が動き始め――


 だがそれは新たな人間の登場で中断される。

「――誰ぞ。」

 最初に気づいたのはアサシンであった。十字路に面した自動ドアではなく廊下の端――電力がなくとも開けられる扉から一人の小さな人影が現れたのだ。
 服装はボーイッシュだがなにぶん距離がある上に暗いので人相もわからずいまいち印象がハッキリとしない。たしかこの部屋は准尉が出てきた部屋であり、そうであるならあの人影はライダーのマスターだろうか。

「あれがライダーのマスターか?」
「違う……高遠より少し大きいぐらいの女の子さ。」
「俺と同じには見えないな。あっちはパッと見、男だし……」
「サーヴァントではないようだが……離れていろ。」

 どうやら違うようだ。一同に緊張が走るのをマイケルは感じた。
 ここはどうやらホテルのようであり、いくつかの部屋を同盟で借りているのだろう。そしてその借りた部屋から見知らぬ人間が出てきたと。たしかに得体の知れない相手だ。
 自然皆は少年から距離をとろうとする。幸運なことにこの廊下はかなり長い。ホテルを縦断、横断する形になっているのだろう。少年が近づいてきた分だけ距離を開けようとして。


 その黒髪の少年は文字どおり『爆発』した。


 炎が巻き起こる。とっさに目の前にいたいおりに覆い被さるように抱き締める。背中に一瞬熱と振動を感じて、マイケル・スコフィールドの命は刈り取られた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


334 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/13(木) 00:56:10 dy9lSc/c0
投下終了です
後日残りの分を投下したいと思います


335 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:25:24 TzU7Irbc0
投下します


336 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:30:30 TzU7Irbc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――まず最初に、現在の状況をお知らせします。現在生存している主従は、残り十六組です。


(十六か。となると、俺達の情報に無いのはあと二組。この分なら今日中に見つけ出せるだろう。)

 静かに街の光を返して流れる未遠川の上を飛ぶ蝶が一匹。

 日付が変わったその時、蝶人・パピヨンは渡河の真っ最中であった。

 彼とテレサ、そしてまほろとのび太の四人は23時頃にはホテルを出て間桐邸への移動を開始したのだか、想定よりもかなり街が混乱していたことで予定に遅れが出ていた。NPCはどうとでもなるがそれに紛れて他の主従がどこで監視しているかわかったものではない。そのために高い感知能力を持つテレサを連れてきていたのだが、連れ出した方便のままに働く機会は出来れば来てほしくはなかった。
 しかし少々臆病が過ぎたかも知れないと通達を聞いて思う。勿論十六組にカウントされていない野良サーヴァントや野良マスターのいる可能性はあるが、現状こちらに敵対的と呼べるのはカルナを含め三組のみ。仮にカルナのマスターが死んでいてカウントに入っていなくともこちらに有効な打撃を与えうるにはあちらも複数でなければ難しい。そうなるとあまり警戒する必要は無かったのだが、まあそれは今だから言える結果論だ。


 ――次に、臨時通達です。現在会場の冬木市は戦闘の損害、並びに神秘のろ……露呈?によるNPCの活発化により聖杯戦争の続行が困難になり状況にあります。この聖杯戦争では皆さんの自主て……噛んじゃった……自主的!な、活躍を望むべく、わたし、わたくし達からの介入は原則として行わない方針です。しかし、多数の死傷者、行方不明者、並びに会場の故意かつ不必要な破壊、及びそれによる報道機関、政府機関等の出動など、主催者として看過することが不可能な事態が発生しました。


「セイバー、聞いていたか?」
「いや、聞いていなかった。」

 闇の中から滑るように現れたテレサが答える。パピヨンは仮面の下で表情を険しくした。テレサがあてにならない以上パピヨンが考えなくてはならない。即ちこの臨時通達とやらをどう見るべきか。
 ルーラーからの、メッセージというのは考えにくい。もしそうならあそこまで拙い通達はしないだろう。そんな無能では困るというのも大なる理由だが。
 では、素直にルーラーの後ろにいる連中、主催者だろうか。本選開始以来、いや、聖杯戦争開始以来表に出てこなかった奴らが今ここでおぼろ気ながらに出てきたのか。これは幾分かありえる。あの通達はまともなルーラーなら、ルーラー本人の判断によって出されたと考える方が自然だ。しかしあのルーラーならば、まるで誰かが用意した原稿を読んでいるかのような印象が与えられる。ルーラーを扱う側よりルーラーというサーヴァントの元の人間に詳しければ、そういう風に思えるのだ。ということはそれは――


 ――よって一週間後の八月九日零時を持ちまして本聖杯戦争をコールドゲームとし、優勝主従が決まっていなかった場合は同日七時より冬木教会にて抽選によって優勝主従を決することとします。またこの事態を招いた容疑で以下の五組の主従に可及的速やかな冬木教会への出頭を要請し、その身柄の確保・拘束・殺害に成功した主従には最大で令呪を五画配布します。


「ああ、聞いていない。」

 闇に向けた視線にふたたび闇から声が上がる。パピヨンの表情は更に険しくなった。


337 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:32:16 TzU7Irbc0

 闇に向けた視線にふたたび闇から声が上がる。パピヨンの表情は更に険しくなった。

 このタイミングでのコールドゲームの通達。強権的なルール変更。これは誰からのどのようなメッセージなのか、それが問題だ。誰が言ったかでそこに込められた意思は大きく違ってくる。
 これが主催者の判断によるものなら、こちらの動きが察知された可能性がある。一月のタイムリミットを一週間にされれば当然こちらの『必勝法』が成立する猶予が減る。令呪という報酬のかかった賞金首にテレサ達がかかれば確実だろう。しかしこれには少々わからない点もある。現在全くの未知の主従は最大でも三組のみ。これならば一週間以内に『必勝法』を受け入れない主従の処分は充分可能だからだ。最大十三組プラスアルファで他の主従を崩壊させてから生き残った連中が疲弊した隙に『必勝法』を推し進める。一時的な厭戦気分に漬け込めれば、後はどう信頼させるかだ。差し迫った時間を考えれば口説き落とすのは難しくないだろう。そういう意味ではこのルール変更はありがたい。
 ではルーラーの裁量ならどうだろうか。その場合は、まあ、勝手なことをしてくれた、といったところか。こちらとのコミュニケーションに支障があるとはいえ、だったら何もせずにしていてもらいたい。それともなにかしなくてはならなかったので可能な限りこちらに有利になるよう便宜を図ったのか。まあその辺りの事情は相談できない以上結局は憶測にしかならないか。
 そして気になるのは、賞金首が五組にのぼること。十六組中の五組となれば約三分の一、となると間桐邸、翠屋、冬木ハイアットホテル、この三同盟のうちから最低二組は賞金首が出ることとなる。そうなれば固まりつつある体制が根底からぐらつく。これをどう考えるべきか。
 パピヨンは念話に一層集中する。誰が名前を呼ばれるか。それで今後は大きく変わるのだ。


 ――マスター・マイケル・スコフィールドとアーチャー・ワイルド・ドッグ、マスター・高遠いおりとランサー・アリシア・メルキオット、マスター・イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとランサー・カルナ、マス――


「なんだ――」

 名前が呼び上げられるなかテレサが声を上げる。と次の瞬間、音と衝撃がパピヨンの身を襲った。

「地震、じゃないな。遠かったがプレッシャーがあった。」
「外れの森の辺りか……やられた!?」

 テレサが全身を実体化させ妖気探知のレベルを上げる。だがそれよりも高所から街を見渡したパピヨンの方がそれに気づくのには早かった。

「セイバー、教会を探れ。」
「おい、前にも言ったがあそこは。」
「わかっている。やれ。」
「そういうことか……」
「どうだ。」
「……いや、できないな。だが前より範囲が広い。」
「つまり。」
「教会になにかあった、もしくは今もあっていると考えた方がいい。」
「だろうな、跡形もない。」
「……跡形も?」
「ああ。きれいさっぱり更地になってる。」
「……」

 沈黙したテレサを放っておいてパピヨンは高度を上げる。今は感知に専念させた方が良い。
 教会の辺りには送電施設もあったのだろうか、街は停電になっていた。小高い山のこちら側、つまり冬木市は影に沈んでいる。そんな街に一本の帯状の線が走っているのがなんとか見えた。滑走路か地上絵か、それは真一文字に無造作に地面に引かれている。一方の端は教会近く、もう一方の端は市境まで達しているのではないだろうか。たいした破壊力だ。

「バーサーカーだ。」
「何?」
「バーサーカーの魔力が現れた。ホテルに向かっている。」
「黒いバーサーカーのか。」
「ああ。」
「誰の指示で教会に居たんだ。とにかく戻るぞ。さっきの通達といい今のホテルはどう転ぶかわからん。」

 パピヨンはそう言うと飛行を開始した。バーサーカーが霊体化するまではこちらも実体化して先を急ぐとしようというのだ。
 そんなパピヨンをテレサは一瞥すると、ビルの屋上へと駆け上がり、そのまま跳躍した。視線は、当然、教会。パピヨンより良い視力でその惨状を視認、しっかり焼きつける。
 一言、誰にも聞こえない声で呟く。今は、後だ。

 そうして二人は急いでマスター達のところへ戻ろうとして。

 冬木ハイアットホテルの頂上が炎に包まれるのを見た。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


338 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:34:44 TzU7Irbc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「クロス……アウッ!!」

 色丞狂介の全身はくまなく爆炎でローストされていたが辛うじて意識を持ち続けていたのはもはや奇跡というほかなかった。謎の少年が爆発したその時、彼は幸運にも最も離れた場所にいたのだ。間にいた真田幸村がとっさに炎で炎を相殺したのも良かっただろう。あれで幾らかは勢いを削がれ衝撃で吹き飛ばされるだけでなんとかなった。
 そう、ホテルの外に吹き飛ばされるだけで。

「届けよ……!」

 もう一つ彼が幸運であったのは、地上まで高さがあったことだろう。優に百メートルは軽く越えているのだ、それだけの高さがあれば滞空時間も長いし、なにより落ちたら痛みもなく死ねるから。

 ろくに動かない体を無理やり動かしムチを振るう。飛んでいるハエの羽だけを打ち砕く精度のそれは、これまた幸運にもこの絶望的状況でうまく突起に巻きつくことに成功した。後はスパイダーマンの如くどこかに着地すれば奇跡の生還である。

「ぐ、うううう、う……」

 まあ無茶な状態で無理をすることで腕がつる。そして困ったことに、着地点は壁面しかない。
 数秒後、幸運にもガラス窓にぶち当たることで彼は落下死だけは避けることができた。


「核金が一つ減っているということは、お前でも死にかけたか。どうだ?死の淵から戻ってきた感覚は。」
「パピ、ヨ……」
「NON、もっと愛を込めて♪」
「パピヨン!」
「72点だな。で、これはどういうことだ。」

 周りを見回しながらパピヨンはそう言った。


 新都のビル街に入った辺りで霊体化したバーサーカーに合わせて霊体化したパピヨンとテレサは、それでも建物や人波を突っ切ることで可能な限り早く戻ってきた。少なくとも本人達はそう思っていた。しかし、つい一時間ほど前に出発したときからホテルの有り様は大きく変わっていたのであった。
 まず、ホテルの周りに人垣が出来ていた。警官と報道関係者らしき人間の他には若干名の通行人しかいなかったはずが、今は黄色いテープの外周に百を越す人間がたむろしている。
 ホテルのロビーも混乱していた。どこか浮き足だった雰囲気ではあったもののまばらな人しかいなかったそこは、部屋着に旅行鞄というちぐはぐな格好をした宿泊客が所在なさ気にしていた。とっとと避難すればいいものを、あの怪文書のことを気にかけているらしく、出ていったらホテルを爆発させるんじゃないかなどと喚いている。
 ホテル全体もそうだ。テレサが感知したそこには、千を超すと思われるサーヴァントが犇めいている。だがそれだけではない。ホテル全体が謎の魔力で覆われているのだ。内部の人間の挙動がおかしいのもそれが原因だろうか。
 そして一番の変化は、最上階が吹き飛んで炎上していることだ。拠点となっていた35階の四つあったスイートのうちの一つ、海岸線に真っ直ぐ部屋の角を向かわせたそこは跡形も無くなり、33階の辺りから炎と黒煙が上がっている。借り上げていた十二部屋のスイートをピンポイントに狙ったであろうことが見てとれた。

(内通者か内輪揉めか、もしくは未知のサーヴァントの襲撃か。)

 ぜえぜえと肩で息をしながらパピヨンは険しい顔で――しかしどことなく愉快そうに考える。狂介と念話は通じないが、生きていることはわかる。正確な位置はわからないが、恐らく地下。なかなかにクソッタレな展開だ。

(今までずっと退屈だったからなあ……ちょっと、コ・ウ・フ・ン��)

 パピヨン達の目の前で魔力が変化する。エントランスから門が開くように魔力が消えた。

 パピヨンは醜悪なギラついた笑顔を浮かべる。ようやくお楽しみの時間だ、と。


339 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:36:43 TzU7Irbc0


「――で、アーチャーを送り届けて帰ってきたらこの様というわけだ。」

 ホテルの地下、駐車場より更に下の基盤部分。突撃銃を携えるSSに取り囲まれたそこでベッドに横たわる狂介にパピヨンはこれまでの顛末を話していた。
 猫耳のサーヴァントとコートのサーヴァント――彼は猫耳から大尉と呼ばれていた――、そしてランサー・アリシアにエントランスで出迎えられた彼らは地下に導かれ今に至る。
 大量の資材と忙しなく動き回るサーヴァント達の間を抜けて来たそこには、つい一時間ほど前に見たのと同じ顔が――若干減って揃っていた。

「体は治っているはずだが、メンタルはそうはいかないか……よし、これが何かわかるか?」

 ペシペシと頬を叩いてきながら己の股間を指し示すパピヨンに「蝶」と小さな声ながらも応える。「正気は失ってないようだな」と頷くとパピヨンは続けた。

「一つずつ……順番に質問に答えろ。一番目の質問だ、俺が出ていってからいなくなった……生きていると確認できなくなったのは誰だ。」
「それは……セイバーのマスターと、俺達が見張ってた方のアーチャーとマスター、あの眼鏡のライダーと、あと、そのマスターも、らしい……」

 ぼうとしていた狂介だがいくらか吃りながらもパピヨンに答える。まだ頭は回っていないようだか、割りとしっかりとした反応にパピヨンは心中で狂介を再評価した。

「よし。二番目の質問だ。死体が確認できたのは誰だ。」
「……アーチャーの……マイケル・スコフィールドだ。死因は、頭部挫傷、らしい。それ以外は、わからない。」
「三番目だ。死体が確認できなかったのは?誰だ。」
「アーチャーとライダー、それにミュウちゃん……、セイバーのマスターの、あの女の子だ。あと、ライダーのマスターの女の子も、行方不明らしい。」
「四番目。死亡が確認されたのはアーチャーのマスターであるマイケル・スコフィールド。確認されていない、行方不明なのがセイバーのマスターの黒鳥苺、ライダーのマスターの少女、そして死ねば消滅して死体がのこらないサーヴァントの、アーチャーとライダーの二騎。これで間違いないな。」
「そう、その五人だ……待って、もう一人いた。黒髪の男の子も、たぶん死んだと思う。その……自爆したみたいだから、死体が残らなかっただろうし。」
「自爆か。自爆、自爆ねえ……なかなかエキセントリックだ。」
「……パピヨン、もしかしてこれって。」
「三割だ。」
「……え?」
『お前の考えている可能性は、恐らく三割程度。できすぎている上に中途半端だ。そしてラディカルすぎる。このタイミングが動けた人間は、それこそ神の目でも持っていないと成立しない。まあ、未来予知や時間操作の可能性も考えられるが、それが可能な人間がいないのはお前も知っているはずだ。となると、それができるのは唯一人……奴らだけ。だがそれもあの通達を考えれば薄い。』
「……」
「……ちょっと持ってろ。」
「お、おい!」

 パピヨンは自らの核金を狂介に放ると、それが受け止められたのを確認するより早く思考の海へと潜った。

(俺自身が操られて爆発を起こした可能性は?)
 ――極めて少ない。

(その根拠は?)
 ――射程距離を考えれば不可能。

(認識を操られている可能性は?)
 ――考慮不適、但し考えにくい。

(その根拠は?)
 ――なんら自覚がないんだ、そのレベルで弄られているならいくら考えても無駄無駄、そしてそこまで洗脳できるような奴はまずいない。

 パピヨンは狂介の周りを歩き始める。困惑した目で見られるのを無視して、足と思考は加速する。

(俺は本選で誰と会って来た?)
 ――深夜に孫悟空を名乗るサーヴァントや間桐主従と接触、早朝にイリヤ主従、アリス主従に接触、朝にルーラーと、昼にのび太、安藤主従、マイケル主従、真田主従、カルナ、猫耳……シュレディンガー准尉、アサシン、高遠主従、美遊主従、教授と接触。夜にライダー、九重と接触。


340 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:38:24 TzU7Irbc0

(催眠、洗脳能力があると考えられるのは?)
 ――確実なのは孫悟空とアサシン、それ以外は不明。

 螺旋を描くように進む。奥へと深度を増す。

(『必勝法』はまだ可能か?)
 ――可能。失ったのはセイバーのマスターのみ。但し、仮説に関しては要検討。

(仮説において検討すべきこととは?)
 ――ナチス、爆発して消し飛んだ人間、そして恐らく吸血鬼。俺はこんな奴らが出てくる話を知っている。さっき読んだからな。

(つまり)
 ――スタンド攻撃を受けている可能性がある。これは冗談ではなく現実に起こりえる危機だ。


「キャスター。」

 粘性を持って絡みつくような海から強制的に引き上げられる。狂介が横たわるベッドを挟んだ向かい側に、シュレディンガー准尉がまるで最初からそこに居たかのように現れていた。

(『催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ』なさそうだな。まさしくシュレディンガーの猫か。)
「こんなのでも俺のつれなんでな、治療の礼は言わせてもらうぞ、准尉。それで、要件はなんだ?治療費でも取り立てに来たか?」
「礼なら教授《ドク》に言ってよ。ま、その教授に言われてきたんだけどね……0030から善後策について話し合いたいから集まってほしいんだ。場所は、君もさっき見たと思うけど、指揮所だよ。」
「話し合い……か。馬鹿正直に魔女狩りと言わない程度には、理性を保っているようだな。」
「それは君たち次第さ。それに魔女狩りじゃない。日本語で言うと……人民裁判さ。」

 それだけ言うとシュレディンガー准尉は、やはり唐突に消えた。
 舌打ちをする。ベッドの近くに無造作に置かれた時計を見れば、半まであと三分。時間がない。恣意的なものを感じる。

「パピヨン、急ごう。」

 悪態の一つでもつこうとして、狂介がふらつきながらも立ち上がったのをみてやめた。肉体の治癒はこの短時間では誤差の範囲だろうが、精神は落ち着いたらしい。全く、これでは病欠は使えなさそうだ。

『立てるなら歩け。そして俺の話を聞け。』
『肩ぐらい貸してよ……それで?』
『聞いての通り、犯人探しだ。そこでいくつか注意しておく。お前が探偵役なら何から調べる。』
『……現場?証拠を集める、かな。』
『俺もそうするだろうな。これが爆発事件で今も火事の真っ最中でなければ。』
『じゃあ仕方ない、変わりにアリバイから調べる、かな?』
『確かに有効だ。事件が東京で起こったときに大阪にいれば、瞬間移動でもしない限り不可能だろうからな。』
『じゃあ動機……ダメだ、みんなある!』
『ああ。ここにいる連中は殺し合いの参加者ばかりだ。つまり『まともな推理なんて意味ない』Yes!』

 自然二人は早足になる。つい三十分前まで一緒にいた、幾分か少なくなった人間達の姿を狂介は認めた。どうやら自分達が最後のようだ。

『もう一つ、改めて聞いておく。あの中にお前が読んだり観たことのある人間はいるか。』
『ないさ。でも、本当に……』
『はっきり言ってあのへちゃむくれは信用できんが、奴の仮説は考えるに値する話だ。』
『……死んだ人を悪く言うなよ。』
『本当に死んだのか、それを今からあのキャラクター達と話し合うことになるだろう。』

 そう言われて、狂介は全員を画面の中の二次元上の存在として見てみた。やはり想像がつかない。当人には悪いが、全く別々の世界から――それこそ本の世界から人間を集めているという仮説は俄には信じられなかった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


341 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:40:18 TzU7Irbc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 疲れた、というのが高遠いおりの率直な感想だった。
 予選の最終日にアリシアを召喚したときは一日中そのショックで寝込んだし、本選が始まってからもいきなり戦闘になるは自宅に即行で他のサーヴァントが来るは気がつけば大所帯になって麻雀してるわで気の休まる暇がない。これが本人の体感時間では一日で起こっているので、彼は正直なところ参っている、と言えるだろう。

(死ぬかと思った。)

 肩がずきりと痛む。端的に言うと、いおりは戦争に疲れていた。
 爆発のあったあの時、立ち竦むだけだったいおりをマイケルが抱き抱え、後ろにいた茜ごとエレベーターに滑り込まなければ、確実に死んでいた。しかもあれで助けた本人は死んだというのだ。いおりは爆風を茜が、落下の衝撃をマイケルが受け持つ形になったのであばら骨へのヒビと肩の脱臼だけで済んだが、となると咄嗟に自分が下になるように身体を捻ったのだろう、しかし、それで頭まで、首まで捻ることはなかったろうに。
 どこかから漂ってきた微かな血の臭いが鼻腔で増幅される。ざくろのように頭が割れたマイケルのビジョンが瞼の裏でスローモーで流れた。

「具合はどうかね、高遠女史。」
「肋はともかく、肩は問題なく動くよ。」
「それは重畳。君の製作者の腕が良くてね、メンテナンスが楽だった。ある種の嫉妬すら抱くよ。」
「人のことサイボーグみたいに言うなよ。」
「いやはやこれは失礼。では。准尉。」

 後ろにSSを引き連れて現れた教授は、それだけ言うと元来た道を戻った。その様は、大学かどこかの研究者が実験の経過を見ている光景を思い起こさせるものだ。

(……改造されたりしてないよな?)

 ナチスにサイボーグに改造されました、ゾンビにされました、なんだかんだあってサメになりました、なんてことはないと信じたい、信じたい、が、サーヴァントならそれもできるのだろう。なにせ今も自分を護衛という名目で拘束している奴らの犬歯は人間離れして尖っているのだ。まるで吸血鬼のように。

「ランサー、どうだった。」
「……二人とも、抵抗せずにここに来た。これで全員揃ったよ。」
「そっか……で、准尉だっけ、できればランサーと二人にしてほしいんだけど。」
「う〜ん、それがさあ、ちょっとこれからみんなで会議することになってさ、それを伝えに来たんだよ。」
「……いつから?」
「0030から指揮所だよ。ランサーなら場所はわかるよね。」
「ああわかるだろうな暗殺犯と間違えられて拷問されかけた場所を十分やそこらで忘れる人間はいないだろうな。」
「そんなに怒らないでよ、状況が状況だったんだから。それに、僕たちの共通の敵は犯人だよ。」

 それだけ言うとシュレディンガー准尉はかき消えた。文句を言おうと開いていた口をいおりは閉じる。あのライダーのサーヴァント達はこちらの話を聞く気などさらさらないのはわかっていたが、それでも腹が立つ。

『いおり、私――』
『何言っても無視するさ、アイツらは。』
「下手なこと言ったら手錠つけてでも引っ張り出すだろう、アイツらはそういう連中だよ。」
「……車椅子借りてくる。」
「サンキュー。」

 力なく首を振って歩いていくアリシアを見送り、いおりは拳を握った。これから始まるのはまず間違いなく犯人探しだ。爆破テロと拳銃自殺なんていう奴らが一番警戒するであろうことが起きたのだ。それにいおり自身、犯人を見つけ出したいという気持ちは他の人間と同等かそれ以上にある。短い付き合いとはいえ目の前で人を――妹程の年の子まで殺されて感情的にならないほど大人ではない。

「こんなことになるなら、ミュウから話聞いとくんだったな……」

 一人ごちる。アリシアは車椅子を押した。


342 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:42:35 TzU7Irbc0


 指揮所とされたそこは乱雑に資材が積まれている他からすこしばかり離れたところにある、絨毯の敷かれた一画である。アリシア達が到着した頃にはほとんどの参加者が集まり終え用意された椅子に車座に腰掛けていた。

 まず最初に目に入るのは、レオタードのような衣装に身を包んだ美遊・エーデルフェルトとその後ろに佇むバーサーカーだろう。白のワンピースから魔法少女のような格好に変身している。もっともアリシアは魔法少女というものを知らないのでキャスターみたいな格好をしているぐらいにしか思わなかったが。
 その向かいで幼い少女を連れているのはアサシンだ。こちらは特に変わりなくいつもの仏頂面のままであったが、似た者主従なのだろうとアリシアは一人納得する。
 その横、入り口から見て手前にいるのが日野茜とランサーである。頭に包帯を巻き車椅子も用意してあるが、立ってアサシンと話しているということは軽症かもしれないとアリシア達は思った。
 その向かい、美遊の隣がセイバーだ。絨毯にお構い無しに剣を突き刺してそこに腰掛けている。表情を伺えない仮面のような顔、それが見るものに与える印象だろう。
 そしてその横のアリシア達の向かいに場所をとったのがキャスターとそのマスターの色丞狂介であり、彼らと共に最後に来た教授が二列になった一堂から少し離れて周りを見渡した。

「皆さま、全員お揃いのようで。」

 チラリと時計に目をやり長針が6の文字を指しているのを認めると教授は話し始めた。

「この状況でわざわざ俺たち全員を集めたということは、余程急を要する話なんだろうな?」
「勿論。今現在の我々の状況は最悪に近い。故に、早急に話し合わなければならないことが山積しています。なにせ……我々は自分達に何が起こったのかもわからないのですから。」

 キャスターの問いに教授は答えると共に、大型のディスプレイとホワイトボード、そしてスポーツで使う電光タイマーのようなものがコートの男によって設置される。その男が大尉と呼ばれていることを知るものは大隊の人間、もとい吸血鬼を除けばただの数人のみ。その場にいる人物の呼び名一つわからない現状は確かに混乱していると言えた。

「では……皆さまにまず確認しておきたいのですが、ここにいる全員が本人、ああ、先の晩餐会に参加しているという宣誓をして頂きたく思います。」
「それって、ここにいる人に偽者がいるって疑ってるのか。」
「考えられない話じゃないでしょう?洗脳、変装、憑依、ここにはそんなことができる方が揃っている、そうでしょう?」

 きりりと空気が不穏に引き締まるのをアリシアは覚えた。ただでさえ、ここにいる人間は多少の差異はあれど聖杯戦争から脱落しかけたのだ、その上、隣にいる人間が自分の知らない人間となればこれはもう疑心暗鬼になるのは必然であろう。
 沈黙がややあったあと、一人また一人宣言した。といってもそれは当然口約束でしかないのだが、しかし誰一人として宣言を拒否することなく応じたのはアリシアにはわずかだが希望に思えた。
 そうして理性のないバーサーカー以外の全員が宣言したところで、今度はシュレディンガー准尉――やはり彼のことも呼び名すら知らないものはいた――が、ワゴンを押して来た。乗っているのは表面をカラーのガムテープで保護され、五つのLEDランプらしきものが見える。「発信器などが入った首輪です。これで不慮の事態が起こっても本人確認をできるようにしたく」と言って教授は一つ手にとって掲げてみせた。「これを皆さまマスターに着けて頂きます」と言うと共に周囲の気配が変わる。この感じはアリシアには覚えがあった。軍隊がその銃を人に向ける時のものだ。そしてそれと同じ空気を出しているサーヴァントがいるのをはっきりと覚えた。
 アリシアは横目でセイバーを見る。その表情は薄く笑っていた。

「爆薬か。」
「なっ!教授殿――」
「落ち着かれて下さいよぉ、なにも殺そうって訳じゃないんですから……それとも……」
「今ここで死にたいか?」

 一瞬である。いおりがまばたきする間もなくセイバーは声をあげた幸村の真横に現れ茜の肩に手を置いていた。


343 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:43:50 TzU7Irbc0

「セイバー、貴様……堕ちたか。」
「なーに、マスターを失ったもん同士仲良くなってな。協力して犯人を見つけようってなったんだ。だってこの中に人殺しがいるかもしれないんだからなあ?」
「ちょ、ちょっと待て!爆薬ってどういうことだよ!?」
「それについては私から。まさかいないとは思いますが、この中に万が一にでも同盟の仲間を手にかけたものがいたときのために、ちょっとした抑止力が必要と思いましてね。首輪に発火装置を着けておきました。あ、ご安心を、1メートルほど離れれば首輪が起動した本人以外は死にはしません。それを今から実演したく思います。准尉!」
「はいはーい。皆々様ご注目!」

 キャスター主従が激しく反応するのをよそに教授は話を進める。いつの間にか教授が手に持っていた首輪と同じものを首につけたシュレディンガー准尉が、一堂の前に歩き出てくる。

「この首輪には五つのランプがついています。そしてこちらがそのランプをつけるリモコンです。」
「このリモコンのボタンにはそれぞれの首輪が対応しています。テレビのリモコンと同じ理屈ですよ。そして一つにつきどれか一つの首輪だけランプを点けることができます。チャンネルを変えるのと同じ要領でね。」
「このリモコンはサーヴァントの皆さんに一つずつ支給します。ああ、ライダーの分は代行として私が一つ持つだけなのでご安心を。こっちも千個もリモコン用意してられませんからねえ。」
「さて……察しの良い方ならお分かりだと思いますが、ここにいるサーヴァントは八騎、ランプは五つ。はいそうです発火する条件はランプが全て点いた時です、そして誰のランプを点けるかは皆さん一人一人が決める。」
「裏切り者を我々の手で処刑するのです。過半数の信任を得て。民主的に!」
「そう、このようにね。」

 口から泡を飛ばしながら熱弁する教授は、アリシアにはまるで正気とは思えなかった。それと同時に、これこそが目の前の男の本性だと、この連中が連中であることの理由だと感じた。
 『イカれてる』。それがこのサーヴァント達なのだとわかった。そうでなければ、自分達の仲間に爆弾付きの首輪を着けたりしない。いや、それより。

「きゃああああああああああああああっ!!?」
「こやつ……本当に……」
「嘘だろ……そんな!?」
「ふん……」
「……」
「教授殿ォ!これはどういう!!」
「どうってわかるでしょ?燃えてるんですよ、准尉が。」

 まるでそれこそテレビのチャンネルを変える感覚でリモコンを操作して自分の仲間を火だるまにする奴はいないだろう。
 悲鳴を挙げる者、息を飲む者、あくまでも無表情な者、反応は様々だ。だがただ一人、教授だけはギラついた笑みを浮かべている。いおりは思った。あのマスターにしてこのサーヴァントありと。危険だ。危険すぎる。何が危険と言えば、奴らにはもはや頭がない。指揮する人間がいない軍隊はただの暴力だ。その暴力が、ここにいる全ての人間に、敵味方有象無象区別なく奴らは向けているのだ。
 目を閉ざそうとするアリシアの手をどけていおりは教授を見る。この連中にとってはこれはデモンストレーションでしかない。自分達が本気であることを示すために、狂気であることを示すために、ここまでする連中だ。なら次はどうする。こいつは何をしてくる。それに備えなければ、生き残る道はない。
 セイバーは教授からリモコンを受け取るとサーヴァントに配り始めた。そしてそれが終わると今度は大尉と共に首輪を持ってマスターの元へと歩く。その一番最初は、いおりだった。ならばいおりも前に出る。この血祭りを踊りきる勇気が必要なのだ。強く出る、強く打つ。准尉の首が焼け落ちたのか、ポトリと落ちた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


344 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――爆発 ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:45:40 TzU7Irbc0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 これより始まるのは、至極ありがちな犯人探し。

 マスターの首には爆弾。サーヴァントの手にはそのリモコン。過半数が望めば、いつでも人一人焼き殺せる。

 アリシアのリモコンを持つ手が震える。いおりの全身が震える。自分達を除けば七人。その七人中五人が黒と判断すれば、いおりは人間松明と化す。そしてまた彼女達は、他のマスター達の殺生与奪も握っているのだ。サーヴァントというある種非人間的でありながらある種人間的な暴力装置ではなく、リモコンというひどくありふれていて、ひどく陳腐なもので人間一人を20%分殺せるのだ。

 シュレディンガー准尉の死体は消火器を殺虫剤のようにかけられるとSS達がほうきとちりとりで炭と灰を回収した。そして端からそんなものは存在しなかったかのように教授は話を続ける。
 夜明けまでに犯人を必ず見つけ出すという宣言、脅迫。
 用意されたタイマーがカウントダウンを開始する。
 それぞれの首輪のチャンネルの説明、動作テスト。
 首輪に衝撃を与えると誤爆しかねないこと。
 ここから数十メートル離れると首輪のアラートが鳴り数秒で爆発すること。
 ホワイトボードに張り出される現在の状況、警察の動き、消防の動き、火事の状況、ホテルの状況。
 話すべきことの箇条書き、全員のアリバイ、踏み込んだ情報共有、そして教授達がなんなのか、その解説のロードマップ。

「さて……大分無駄な時間を使いましたが、そろそろ始めるとしましょう。皆さんもこんな時間にめんどうなことを考えるのは嫌でしょうだから早く済ませましょう。」

 傍聴するかのように周囲を吸血鬼が取り囲む。

 SS、降下猟兵、海軍士官。

 ろくな灯りもない地下の空間で、赤い目を光らせてその時を待つ。

 ああせっかくの戦争、それなのに一目顔を見たときには彼らの司令官は頭を弾丸で撃ち抜かれていた。

 誰だ大隊指揮官殿を殺したのは。

 誰だ総統代行閣下殿を殺したのは。
 ああこれは聖戦だ。

 彼らの敬愛すべき少佐殿を殺した連中を蹂躙し包囲し殲滅するのだ。

 その開戦の時を今か今かと待ちわびる。


 そしてもう一人。妖しく微笑む女が一人。

 セイバー・テレサ、彼女は教授達ライダーの置き土産とはまた違った思惑で動いていた。
 シュレディンガー准尉の死も至極冷ややかに受け止め、ただただ他の人間達を観察する。それがなんのためかは他の人間からは、それこそ共犯者である教授にもわからない。彼女が何を求めてどのように行動するのかをこの場で読める人間は誰もいなかった。もしいるとすれば、それはやはり神の目を持つものだけであろうが、そんなものを持つ人間はいない。

 教授は犯人を必ずや抹殺して見せる。それが彼の戦争だ。
 テレサは微笑し黙する。彼女の腹はひょっとしたら彼女にもわからない。
 日野茜は、真田幸村は、高遠いおりは、アリシア・メルキオットは、色丞狂介は、パピヨンは、九重りんは、千手扉間は、美遊・エーデルフェルトは、否応なしに戦禍に晒されることとなる。
 そしてバーサーカー・小野寺ユウスケは、その血に染まった体では話す術がない。


 時間はこれから深夜一時。丑三つ時へと魑魅魍魎達が縺れ絡み合う。


「人民裁判だ……!」


 彼ら彼女らの関ヶ原は、いよいよぶつかり合うのだ。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


345 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/20(木) 01:46:58 TzU7Irbc0
投下終了です
後日残りの分を投下します


346 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/21(金) 00:54:45 izzx3aIA0
>>343を以下のように修正します


「セイバー、貴様……堕ちたか。」
「なーに、マスターを失ったもん同士仲良くなってな。協力して犯人を見つけようってなったんだ。だってこの中に人殺しがいるかもしれないんだからなあ?」
「ちょ、ちょっと待て!爆薬ってどういうことだよ!?」
「それについては私から。まさかいないとは思いますが、この中に万が一にでも同盟の仲間を手にかけたものがいたときのために、ちょっとした抑止力が必要と思いましてね。首輪に発火装置を着けておきました。あ、ご安心を、1メートルほど離れれば首輪が起動した本人以外は死にはしません。それを今から実演したく思います。准尉!」
「はいはーい。皆々様ご注目!」

 キャスター主従が激しく反応するのをよそに教授は話を進める。いつの間にか教授が手に持っていた首輪と同じものを首につけたシュレディンガー准尉が、一堂の前に歩き出てくる。

「この首輪には四つのランプがついています。そしてこちらがそのランプをつけるリモコンです。」
「このリモコンのボタンにはそれぞれの首輪が対応しています。テレビのリモコンと同じ理屈ですよ。そして一つにつきどれか一つの首輪だけランプを点けることができます。チャンネルを変えるのと同じ要領でね。」
「このリモコンはサーヴァントの皆さんに一つずつ支給します。ああ、ライダーの分は代行として私が一つ持つだけなのでご安心を。こっちも千個もリモコン用意してられませんからねえ。」
「さて……察しの良い方ならお分かりだと思いますが、ここにいるサーヴァントは七騎、ランプは四つ。はいそうです発火する条件はランプが全て点いた時です、そして誰のランプを点けるかは皆さん一人一人が決める。」
「裏切り者を我々の手で処刑するのです。過半数の信任を得て。民主的に!」
「そう、このようにね。」

 口から泡を飛ばしながら熱弁する教授は、アリシアにはまるで正気とは思えなかった。それと同時に、これこそが目の前の男の本性だと、この連中が連中であることの理由だと感じた。
 『イカれてる』。それがこのサーヴァント達なのだとわかった。そうでなければ、自分達の仲間に爆弾付きの首輪を着けたりしない。いや、それより。

「きゃああああああああああああああっ!!?」
「こやつ……本当に……」
「嘘だろ……そんな!?」
「ふん……」
「……」
「教授殿ォ!これはどういう!!」
「どうってわかるでしょ?燃えてるんですよ、准尉が。」

 まるでそれこそテレビのチャンネルを変える感覚でリモコンを操作して自分の仲間を火だるまにする奴はいないだろう。
 悲鳴を挙げる者、息を飲む者、あくまでも無表情な者、反応は様々だ。だがただ一人、教授だけはギラついた笑みを浮かべている。いおりは思った。あのマスターにしてこのサーヴァントありと。危険だ。危険すぎる。何が危険と言えば、奴らにはもはや頭がない。指揮する人間がいない軍隊はただの暴力だ。その暴力が、ここにいる全ての人間に、敵味方有象無象区別なく奴らは向けているのだ。
 目を閉ざそうとするアリシアの手をどけていおりは教授を見る。この連中にとってはこれはデモンストレーションでしかない。自分達が本気であることを示すために、狂気であることを示すために、ここまでする連中だ。なら次はどうする。こいつは何をしてくる。それに備えなければ、生き残る道はない。
 セイバーは教授からリモコンを受け取るとサーヴァントに配り始めた。そしてそれが終わると今度は大尉と共に首輪を持ってマスターの元へと歩く。その一番最初は、いおりだった。ならばいおりも前に出る。この血祭りを踊りきる勇気が必要なのだ。強く出る、強く打つ。准尉の首が焼け落ちたのか、ポトリと落ちた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


347 : ◆g/.2gmlFnw :2017/04/21(金) 00:56:36 izzx3aIA0
>>344を以下のように修正します



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 これより始まるのは、至極ありがちな犯人探し。

 マスターの首には爆弾。サーヴァントの手にはそのリモコン。過半数が望めば、いつでも人一人焼き殺せる。

 アリシアのリモコンを持つ手が震える。いおりの全身が震える。自分達を除けば六人。その六人中四人が黒と判断すれば、いおりは人間松明と化す。そしてまた彼女達は、他のマスター達の殺生与奪も握っているのだ。サーヴァントというある種非人間的でありながらある種人間的な暴力装置ではなく、リモコンというひどくありふれていて、ひどく陳腐なもので人間一人を20%分殺せるのだ。

 シュレディンガー准尉の死体は消火器を殺虫剤のようにかけられるとSS達がほうきとちりとりで炭と灰を回収した。そして端からそんなものは存在しなかったかのように教授は話を続ける。
 夜明けまでに犯人を必ず見つけ出すという宣言、脅迫。
 用意されたタイマーがカウントダウンを開始する。
 それぞれの首輪のチャンネルの説明、動作テスト。
 首輪に衝撃を与えると誤爆しかねないこと。
 ここから数十メートル離れると首輪のアラートが鳴り数秒で爆発すること。
 ホワイトボードに張り出される現在の状況、警察の動き、消防の動き、火事の状況、ホテルの状況。
 話すべきことの箇条書き、全員のアリバイ、踏み込んだ情報共有、そして教授達がなんなのか、その解説のロードマップ。

「さて……大分無駄な時間を使いましたが、そろそろ始めるとしましょう。皆さんもこんな時間にめんどうなことを考えるのは嫌でしょうだから早く済ませましょう。」

 傍聴するかのように周囲を吸血鬼が取り囲む。

 SS、降下猟兵、海軍士官。

 ろくな灯りもない地下の空間で、赤い目を光らせてその時を待つ。

 ああせっかくの戦争、それなのに一目顔を見たときには彼らの司令官は頭を弾丸で撃ち抜かれていた。

 誰だ大隊指揮官殿を殺したのは。

 誰だ総統代行閣下殿を殺したのは。
 ああこれは聖戦だ。

 彼らの敬愛すべき少佐殿を殺した連中を蹂躙し包囲し殲滅するのだ。

 その開戦の時を今か今かと待ちわびる。


 そしてもう一人。妖しく微笑む女が一人。

 セイバー・テレサ、彼女は教授達ライダーの置き土産とはまた違った思惑で動いていた。
 シュレディンガー准尉の死も至極冷ややかに受け止め、ただただ他の人間達を観察する。それがなんのためかは他の人間からは、それこそ共犯者である教授にもわからない。彼女が何を求めてどのように行動するのかをこの場で読める人間は誰もいなかった。もしいるとすれば、それはやはり神の目を持つものだけであろうが、そんなものを持つ人間はいない。

 教授は犯人を必ずや抹殺して見せる。それが彼の戦争だ。
 テレサは微笑し黙する。彼女の腹はひょっとしたら彼女にもわからない。
 日野茜は、真田幸村は、高遠いおりは、アリシア・メルキオットは、色丞狂介は、パピヨンは、九重りんは、千手扉間は、美遊・エーデルフェルトは、否応なしに戦禍に晒されることとなる。
 そしてバーサーカー・小野寺ユウスケは、その血に染まった体では話す術がない。


 時間はこれから深夜一時。丑三つ時へと魑魅魍魎達が縺れ絡み合う。


「人民裁判だ……!」


 彼ら彼女らの関ヶ原は、いよいよぶつかり合うのだ。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


348 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:40:50 ELtvnsho0
投下します


349 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:43:17 ELtvnsho0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 8月2日深夜一時、本選開始から二五時間。
 二十人のマスターと二十騎のサーヴァントが冬木での戦いを始め、それぞれに勢力を広め、それぞれに殺し合い、それぞれに死んでいった。

 どれだけの人間が何をして死んだのかは美遊・エーデルフェルトの知るところではないが、しかし既にゲームは始まっていることは確実であり、そしてまた、美遊自身も既に『乗っている』。だから彼女が文句を言えた義理はないのだがそれでも彼女は言いたかった。「殺人なんて馬鹿な真似はやめてほしい」と。

 彼女の首に巻かれているというよりは装着されているとでも言う方が正しいであろう首輪。表面を黒いガムテープで保護し白くマジックで『9』と書かれたそれに仕掛けられているのは爆弾である。全く冗談ではない。事実、先程彼女の目の前で一人それで死んだのだ、こんな冗談があってたまるか、こんなのが冗談でなくてたまるか。正しく見せしめとしてとして首が飛ぶなんて。そしてなぜこんなものを着けるはめになったかのかというと、理由は簡単。聖杯戦争の最中に死人が出たのだ。それ自体は倫理的に問題があるとはいえ、しかし割とあることであろう。だが場所が悪かった。八組の主従が拠点としている場所で誰が殺したのかもわからない爆殺である。いったいどういうことなのか。美遊にはわからなかったしこの場の誰にもわからない。故に、それを調べようというのだ。生存が確認されている五人のマスターに首輪をかけ、拒否権なく証言を引き出そうと。狂気の沙汰である。

『サファイア、できる?』
『数秒あれば安全に解除できます。』

 もっとも、それで美遊の行動が妨げられることはないのだが。

 先程の見せしめを見る限り、この首輪の殺傷能力そのものはそう高くない。まず首輪から首に向かって爆発が起こり、続いて発火する。この二段階により装着者を殺すようだが、サファイアがいる以上美遊にとっては些かの枷にも成り得ない。まず最初の爆発であるが、その威力の主たるものは急速に熱せられた液状の金属をシャワーのように浴びせかけるものだ。これにより少量の爆薬でも首を落とすことが可能なのだろうが、金属一発当たりのエネルギー自体は大したことはない。脳震盪を起こす恐れはあるものの、首に魔力を集めれば問題なく防げるであろう。発火の方も爆発の直前に首輪下部からガソリンらしきものを噴出するというもので、体に付きさえしなければどうということはない。それどころか噴出という爆発の前兆で魔力を使うタイミングを計れるのだ。サファイアならば充分対応できるものだった。故に――

『危ないと思ったらお願い。』

 ――故に外さない。爆発が起きても問題がなく、解除の目処も立っている以上、今これを外す意味はない。そんなことをしてもライダーの残党達と決定的に対立するだけだ。それよりかはグレーゾーンで彼らが話しまた聞き出す情報を集めるべきである。相手のルールにあえて乗り、利用する。これが賢い選択であろう。それに美遊自身興味がある。いったい誰がなんの目的であのタイミングで爆発を起こしたのか、あの爆発した黒髪の少年は何者なのか、なぜあの爆発でアーチャーのマスターである男だけしか死を確認できなかったのか。それらの手がかりだけでも手に入れられれば今後にプラスに関わってくるだろう。
 美遊は自分の手の中のリモコンを目の端で見る。少なくとも名目上は、このリモコンを持つ者は首輪を嵌められた者に等しい優位がある。見極めよう。

「皆さん首輪はつけられたようで。では時間もありませんし話し合いを始めましょうか。」
「我々はいったい何をされたのか。我々はいったいこれまで何をしてきたのか。我々はこれから何をすべきか。」
「そして、我々はいったい何と戦っているのか。」

 知らず唾を飲み込んだ。首輪がやけに邪魔に思える。だがここで見極めねばならない。誰が信用できるのか。誰が信用できないのか。勿論判断力も考えなければならない。特に美遊をこの件で追及するような人間もダメだ。信用も置けなければ判断力もない。なぜなら、美遊は潔白なのだから。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


350 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:45:13 ELtvnsho0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「――で、話し合うっていったって、何から話せばいいんだ?」

 まず最初に口を開いたのは高遠いおりという少女だ。明るい髪の、いわゆるボーイッシュな、と形容されるタイプの人物だと美遊は認識している。彼女と話したと呼べるのはあの麻雀の時ぐらいのものだが、くだけた言葉の裏に知性が感じられる人物だ。外見通りの人間とは思わない方がよいだろう。

「そうだな、俺とセイバー、ああ、あとバーサーカーもか。爆発が起こったときホテルにいなかったんで、その辺りの話を聞きたいが、それよりも、まずは自己紹介をしてもらおうか、教授《ドク》?セイバー、貴様もそれで構わんな。」
「まあ、良いだろう。」

 続いて話したのはキャスターだ。全身を際どいレオタードに身を包んだ男である。情報交換の音頭を取ったことやランサーと戦闘したことを考えると、警戒しておくべきサーヴァントと言えよう。
 そしてそれよりも警戒すべきなのが美遊の隣でキャスターに同調したセイバーだ。あの騎士王と二人がかりとはいえ、ランサーを撃退したというのは非常に脅威的である。バーサーカーの初陣でも彼女には終始翻弄されてしまった。マスターが死んでいるのが幸いだが、いまだ消滅する様子がないあたり何か燃費を軽くする手段があるのかそれともどこからかサファイアでも察知できない手段で魔力を得ているのか。どちらにせよ底知れない相手だ。
 正直なところセイバーの隣というのはいつでも殺されかねないので気が気ではない。教会にバーサーカーが居たことも感知能力が高いという彼女ならわかっているだろうが、もしやそれでセイバーのマスターを殺したのがバーサーカーとその命令を下した自分であると疑っているのかもしれない。セイバーはこちらへの牽制で隣に位置したのではないか、セイバーのあの剣裁きならバーサーカーを実体化させるよりもサファイアが障壁を張るよりも首を飛ばされるのではないか、あの一閃なら障壁ごと絹を裂くように身体を二つにされるのではないか、と悪い考えが頭のなかでぐるぐるしていると「わかりました、まずは私がお話しします」と男の声が聞こえた。教授、と呼ばれているあの男に関して美遊が知ることは少ない。とはいえそれが今から、本人の口から話されることになりそうだ。


「皆さんの中にも既にお察しの方がおられるかと思いますが、我々は少佐殿……ライダーにより召喚されました。」
「我々という軍集団の上に立ち指揮する、故にライダーということなのでしょうな、確かにこれ以外のクラスは思いつきません。」
「ライダーの宝具はどうやら二種類というか二通りあるようでして、私は単独で呼ばれました。」
「そして今皆さんの周りを取り囲んでいるのもまたライダーが召喚したもの……全戦力を動員する、まさしく切り札です。」


 美遊は教授の話を自分の中で反芻した。思うに、騎英の手綱のような宝具で召喚されたのだろう。ライダーによる召喚、それは宝具で教授や軍隊のサーヴァントを召喚するものとみて間違いなさそうだ。

「サーヴァントを召喚する宝具、か。この催しを考えれば反則に近いものだが、それなら相応の対価はあるのだろう。ライダーが自殺したのはそうでは?」
「それって、軍隊を召喚するためにライダーが、ってこと?」
「指揮する人間がいなくなるのが条件ていうのは、ええっと、本末転倒なんじゃないかな。」

 頭のなかで情報を整理している最中でも話し合いは進展していく。教授の説明に最初に反応したのは、自分が最も警戒しているアサシンだ。あのサーヴァントにはわかっているだけでも変装と暗示、それと魔術的な拠点を作れる能力がある。そして何より直接イリヤと接触してしまっている。もしこの話し合いで何か面倒なことが起こったらアサシンを犯人として吊るすことも考慮しておくべきかもしれない。
 そのアサシンの発言に反応したのが色丞狂介と青ランサーだ。色丞狂介という男を一言で表すなら、意味不明、だと美遊は結論づけている。言動は高遠と大差なく魔力も無さそうだが、彼はあの爆発からどういうわけか生き延びている。しかもパンツ一枚という格好で。理解できない。


351 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:46:36 ELtvnsho0
 一方、青ランサーの方も別の意味で不気味である。明らかにステータスが低いのだ。何かステータスを偽る手段があってそれで弱く見せているとしか思えないほど弱い。ランサーと比べるのはむごいが、真田幸村と比べても全面的に秀でているところはないと考えられる。これならクラスカードを使わずとも危なげなく倒せるのでは、と感じてしまうほどに。それ故に既に自分がそう思わせようという術中に嵌まっているのでは、と危機感を抱くほどに。


「軍隊の指揮官が自決して、それを条件に弔い合戦のように我々が召喚された、そう言いたいのですかアサシン。なかなかヒロイックな条件ですが、それじゃあツインテールのランサーが言う通り、本末転倒でしょう。私も我々も魔力で召喚されましたよ、それ以外に条件らしい条件はありません。精々、一度に何人もの人間を整列させられる広さの場所ぐらいですかね。」
「だいたいおかしいでしょう、目的としている騎士王がどこにいるかわかって明日にも直接会えるというタイミングで、なんで使ったら死ぬ宝具を使うんですか。年が明ける瞬間を見たくて夜更かしした子供が紅白が終わってゆく年くる年が始まった時に眠りに行くようなものですよ。そこまで待ったんなら子供でも少しぐらい待ちますねえ。」

(今の教授の言葉――)

 〈その魔力はどこから?〉
 〈紅白?〉
 〈黙っておく〉

『ここは黙っておこう。サファイア、どう思う?』
『今の教授の言葉に嘘はありません。』
「つまり、ライダーが死んだのは宝具とは関係ない、そう言いたいのか。」
「ええそうですとも、と言いたいところですが、関係はあるんです。因果関係が逆転していますがね。私が見た限りでは、ライダーは自決させられる寸前に最後の力を振り絞って宝具を使ったように見えました。ルーラーの通達が停電と共に途切れてから少しして突然拳銃を出したと思ったら自分に向けて乱射したんです。」

 自決させられる寸前に抵抗しようとして宝具を使ったということだろうか。となると、誰がライダーを自決させようとしたのかと言うことだが、素直に考えれば洗脳能力を持つ者だろう。ライダーを直接操ったのかそれともそのマスターを操ったのかは不明だが、それができそうなのは犯人ではない自分とサファイアを除けば、アサシンとキャスターの二人である。キャスターが当時ホテルにいなかったことを考えるとアサシンが怪しいだろう。たしか、アサシン達に与えられた部屋はライダーの部屋の向かいだったはずだ。隙をみてライダーのマスターに暗示をかけ、ライダーを自決させると証拠を消す為にどこかに拐ったのではないだろうか。『それならあの爆発自体がアサシンによる証拠隠滅の可能性があります』とサファイアも賛成した。なるほど、あの爆発と火災なら確かに死体を発見するのは難しいだろう。それにあの爆発でアサシン達に目立った怪我はない。更に言えば、あの爆発の瞬間、まるで爆発が起こるとわかっていたかのように真田幸村は前に出て炎を振るった。彼らにとっては厄介な同盟相手であるはずのアーチャーとそのマスターが死んだことを考えると、あの爆発は真田幸村により起こされた可能性もある。
 そう考えていると、だんだんアサシン達が怪しく思えてきた。彼らならライダーの自殺の強要もあの爆発も起こせるのだ。しかし先入観はいけない。この程度のことは暗殺犯も考えているだろう、思考を誘導されている恐れがある。もっとも、そう考えるこちらの裏をかこうとしているのかもしれないが。それに、アサシンが殺したとすれば、その理由がわからない。なぜあの日付が変わったタイミングで仕掛けたのか。あの自爆した人間はなんだったのか、不透明な点があまりにも多すぎる。考えれば考えるほど、彼らが犯人とも思えるし犯人でないとも思えてきてしまうのだ。よっていったんこの事は考えるのが良さそうだと結論づけてアサシン達を見ていると、ポツリ、とつぶやく女性の声が聞こえた。

「あの……それって誰かがライダーさんを脅迫して、自殺させたってことですかね?だったらこの中に犯人がいないかもしれないんじゃ……」
「!ますたぁ、しかし、これはこの中に、裏切った者がいないことを確かめるという……」
「でも……仲間の中から犯人を探そうなんて……それに、犯人探しの為に、ひ、人を……!」
「……」


352 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:47:58 ELtvnsho0

 たしか、日野茜だったか。発言を考えるに、彼女は魔術とは無縁の人間に思える。演技という可能性もあるが、あの死人のように青ざめた顔で力なく車椅子に座る姿からはなんの覇気も感じられない。アイドルとはいえそれが演技とはまるで思えなかった。そういえば先程の見せしめで一人だけ派手に吐いていたのを記憶している。半分程しか生きていない高遠ですら悲鳴を上げるぐらいだったが、彼女は失神もしかけていた。マスターの中でも一番に軽視していいと美遊は判断していた。
 そのサーヴァントである真田幸村もどうということはない。青ランサーに比べれば手強いだろうが、既に満身創痍なのだ、今のバーサーカーなら完封できるだろう。ただ真田幸村は知将として知られている。真名を晒しているのはなんらかの策によるものか知れないのでそこには気をつけたい。
 そしてここまで一言も発さないのがアサシンのマスターである九重りんだ。彼女について自分が知ることは非常に少ない。その声すら二三回しか聞いたことがないほどだ。そのため彼女という人間から魔力が感じられないという程度しか情報がなかった。それに何より、彼女が身に纏う雰囲気が嫌いである。理由はわからないが、彼女のことを意識するだけで心がざわついてなかなか治まらないのだ。
 一瞬九重と目があった気がして、とっさに目をそらす。彼女の虚ろな目は見たくない。意識して話し合いに集中する。あれから日野の発言により場は混乱していたようだ、それぞれに次に何を話すべきかでもめていた。一度全員のアリバイを話し合おうと言うものやルーラーの通達について話すべきと言うものや外部から侵入された痕跡がないか確認すべきという声も上がっている。話し合いはここからが本番と言えるだろう。故にここはなるべく長く結論が出にくい話題が望ましい。話が長引けば長引くほどランサーがホテルを襲撃するまでの時間を稼げる。そうすればここにいる連中は一網打尽にできるから。確か放送では残り16組のはずだ。あの時はセイバーのマスターとアーチャーのマスター、それにライダーが死ぬ直前だったので、今は残り13組。ここから更にこの場の4組が落ちればイリヤと自分を除いて7組。そのうち自分達に敵対的なのは5組。なんとかまだなんの情報もない2組を引き入れることができれば、いよいよ優勝は現実味を帯びてくる。逆にこの同盟を崩壊させられなければ十組近くの主従とライダーが喚んだ千騎近いライダーのサーヴァントによる包囲網に自分達は押し潰されてしまうのだ、なんとしてもここで状況を打開せねばならない。通達にイリヤの名前が出てきて反射的に教会をバーサーカーに襲わせたらなぜか一緒にいたセイバーのマスターごと殺すは近くの鉄塔も倒して停電が起きるはでどうしたものかと思ったが、運良く誰かがホテルにかがり火を焚いてしかも二組も潰してくれたのだ、この幸運は絶対に逃せない。ランサーをけしかけても怪しまれない上に疑心暗鬼で統率のとれた行動ができない今、ここでゲームの主導権を握るために動く。

「――私も、セイバーの意見に賛成。自爆した人間がどこから入り込んだのか、招き入れた人間がこの中にいるのか、それを明らかにするのが最も重要だと思う。」
「これで五人。外部から入り込んだのか、が一番多くの人間が気になっていることだ。」
「当たり前のようにバーサーカーを数にいれるな。」
「お前達だってマスターを数に入れているだろう。これぞダブルスタンダードだ。」
「……まあまあ、そうまで話したいのなら、良いんじゃないですか?どうしてもというのなら首輪を使えばいいんですし。」

 自分が賛成したことでセイバーとキャスターの意見が推しきる形になる。その事に他の人間の幾人かは不満を露にしている。これでいい。これでこのままランサーが襲撃する手筈になっている二時まであと小一時間ほど不毛な議論を進める。その過程でもし犯人が見つかればそれもよし、今度は犯人の処遇についてでも議論を持っていこう。その間にランサーの襲撃があれば犯人とランサーが内通していると思わせることもできるかもしれない。なんならその犯人を抱き込んでもいい、敵の敵は味方という言葉があるが、孤立したところを狙えばこちらと組まざるをえないだろう。逆に、表立って動かずとも犯人の逃亡をそれとなく手助けするのもよいかもしれない。そうだそれがいい。そうすればイリヤとランサーから目をそらせる。
 流れはこちらにあるのだ。絶対にこの流れに乗ってみせる。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


353 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:49:26 ELtvnsho0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 本聖杯戦争における一大同盟の新都の集まり、その本拠地とも呼べる冬木ハイアットホテル地下で行われている話し合いは始まって小一時間は経ったであろうが新しい情報はほとんどなく、答えのでない議論が延々と繰り返されていた。コンクリートに響く誰かのため息、どこからか聞こえる声にならない呟き。そして水を打ったように無言を貫く病院からの仲間達の中、ランサー・真田幸村は独り苦悶の表情を浮かべていた。西軍で、そして大阪城での戦いで身に染みた怨嗟、悲哀、憎悪、そして腹に抱えながらも吐露することのない思惑を持つ仲間……否、これはもしやそれより酷い。あの戦場では仲間への害意を持つものなど一握りであったはずだ。だがここでは皆が皆を信用していない。名目上の同盟と言われても否定はできないような集まりだが、それでも到底仲間に向ける感情とは思えないものを持っているのが感じられた。

「やはりなんど考えても外部からの侵入は現実的ではありません。ホテルの内外には爆破予告の警戒をしていた警察がいますし、そうでなくとも普通に立ち入れるのは三十階のレストランまで。そこから上へはエレベーターを使おうにもスイートの鍵かホテル側の専用の鍵が必要です。無論、エレベーターの防犯カメラにはもっぱら我々しか写っていませんでしたし、そこに写っていたホテルマンもこうして尋問していますが、白と見て良いでしょう。階段も三十階からスイートのある三十三階までは警報付の扉がある上にこちらも無駄に監視カメラが付いています。そして同じように写っていたのは我々だけ。更に三十三階から上は我々で拠点を作っているのに加えてサーヴァントも何騎もいます。初見でこれを突破できる人間がいると思いますか?」

 そう言って教授《ドク》は足元に転がるホテルマンを足蹴にする。教授が中尉と呼ぶ、半身に刺青を彫った女が連れてきたその数人は、恐ろしく生気のない表情で聞かれた質問全てに答え、今は捨て置かれていた。この建物全体を覆っている瘴気が強く感じられたことから、もしやこの建物の内部の人間はあの女により皆同じようになっているのかもしれない。そしてそのホテルマン達に暗示のようなものをかけて尋問したアサシンもまたそれ以来沈黙を保っていた。

「それは全てサーヴァントなら解決する問題だろう。現に、爆発の直後にお前達の親衛隊が拠点化されていた最上部の三階に来ている。サーヴァント擬きでそれなら、本職の、それもアサシンなら問題はなにもない。」
「確かにアサシンならばね。しかし不明な二組がいずれもアサシンであるというのは随分な主張ですねえ?」
「クラス毎の数の配分を考えればなにも不自然ではない。アサシンAが教会を襲撃したのに合わせてアサシンBがホテルを襲う。日付の変わったあの時ならルーラーの通達もあったんだ、タイミングを合わせるのは簡単な上に一方が教会を攻撃したこともわかる。タイムラグなく、しかも偽りなく、な。」

 そんな教授に対して真っ向から反論を述べているのがキャスターである。今の今まで話し合いはこの二人、もとい二騎のサーヴァントで行われていた。

 幸村としては、この集まりは非常に、非常に居心地の悪いものと化していた。
 片や、共にカルナ相手に共に立ち向かった男のサーヴァントであり、この戦いに消極的であるため茜を任せられえる男であり、そして幸村達と盟を結んでいるアーチャーを糾弾した不届き者である。無論幸村は、マイケル達を殺したのがキャスター等とは思っていない。そんなことは考えずともわかる。しかし、どうやら先方からはそう思われていないようで、幸村が何か言ってもキャスターやセイバーに加えてバーサーカーのマスターの美遊も冷淡であった。彼らが冷静な人間だからだと幸村は思ったが、客観的に見れば、それはいささか都合の良い解釈だと言えるだろう。
 そして一方の教授は、ホテルに来た時と爆発の後の二度に渡って茜を救った恩人であり、そしてその首に爆弾をくくりつけ人質にした許しがたき男である。勿論、幸村としても教授達の主の仇を討ちたいという気持ちはわかる。それも、この場にいる者の裏切りによる可能性があるのだ、こんな凶行に走るのもわからなくもない。しかし、だとしても、これは余りに人の道から外れているのではなかろうか。

(俺は――ここまで無力かっ!)


354 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:53:31 ELtvnsho0

 そしてなによりそんな二人の間で柄にもなく板挟みになり身動きできなくなっている己の不甲斐なさがどうしようもなく情けなく、腹立たしかった。
 こんなとき、父である昌幸ならば周りから敵視されていようと逆にそれを利用し口八丁で皆を纏めていただろう。部下である猿飛佐助なら飄々と話の流れを変え不毛な議論などさせない。そしてあの、『戦神』、武田信玄ならば、ただの一喝でこの場を治めたに違いない。
 しかし幸村には彼らのようにはなれなかった。
 そもそも彼らならば、己がマスターにあのような首輪を着けさせなかっただろう。だが幸村には教授への負い目があった。主の恩がある彼の頼みを無視するなど、幸村の倫理観、道徳観、あるいはそんな肩肘張った言葉ではなく例えるならば、心意気、それに反するものである。誰が二度も命を救ってくれた者の頼みを断れようか。そしてもっと正直に言えば、幸村は茜を失うことを恐れた。ようはそれに尽きる。周りを取り囲む兵達に襲い掛かられれば、城の中で謀叛を企てるようなことをすれば、そして茜の容態が急変したとき教授の助けがなければ、幸村は茜を守ることが果たしてできるのか。その問いに、幸村は教授の暴挙を黙認する道を選んだ。他人の命を、守るべき者の命を賭けられるほど彼は無責任でもなければ腹も決まっていなかったのだ。

 未熟者、臆病者、不覚悟者。
 自らを罵倒する言葉は頭の中に次々に浮かび脳裏にこびりつく。
 故に幸村の心は散り散りになるように締め付けられる。

(――しかれど!見ていてくだされ!父上!!御舘様!!!)

 故に、幸村の心は燃え上がる。
 この真田源次郎幸村、己の失態に対しての対応は圧倒的な熱量を持った前進あるのみ。

 幸村は出来の悪い次男坊なれど、凡百の武士でもなければ勿論暗君でもない。戦国を駆け抜けその最後の輝きとなった漢だ。書に通じ詫び錆びを感ずる等というのは門外漢も良いところだが、今誰が何を必要としているのかはわかる。回り道が近道でも問答無用に道なき道を突き進むのがその流儀。なればこの暗闘の場においても必要なものはその嗅覚で嗅ぎ付ける。ではそれは何か?それは目的である。
 幸村は教授という人間もキャスターという人間も信用している。この二人が、幸村でもわかるほどに無意味に時間を浪費することはないと信用している。彼らの有能さを信用している。そんな彼らが今こうしているということは、つまりそれが二人にとって有用な策であるはずなのだ。
 では彼らは何を目的としているのか。恐らくそれは話すだけでは得難いものだ。ならばなにか。話ではないものだ。つまりそれは。

(人を見ているのか……?)

 この話し合い、それに臨む者の立場は大別して二つ。マスターを殺された者と殺されなかった者。今の状況で舌戦を続けているのは。教授とキャスター。しかしキャスターはセイバーと主張をともにしている。これはあの爆発の前に行動を共にしていたためか。またバーサーカーのマスターもセイバーに同調している。そういえば、バーサーカーは、キャスターとセイバーがアーチャー達を送り届けに行った後教授に頼まれて教会に赴いたはずだ。カルナらしき気配を察したというのがその理由であったが、それならアサシンにもわかるのではないか。
 そう考えると、この話し合いに積極的な人間とそうでない人間との間に差が見えてくる。教授と、キャスター、セイバー、バーサーカーのマスター、これらは皆爆発の一時間前頃からそれぞれホテルの外に出ているか容易に外部に出られた者達だ。対して幸村ともう一人のランサー、そしてアサシンは違う。なによりこの三人はサーヴァントもマスターもアサシンが所在を確認していたはずだ。

(!?まさかこの話し合いは――!!!)

 頭に走る電流。閃いたのは一つの可能性。咄嗟に茜へと念話すると共にアサシンへ顔を向ける。聡いアサシンなら幸村が言わずとも分かっているかもしれぬがそれでも、と思ったところでその顔が強張っているのを認めた。

「――カルナだ。」

 セイバーの声が響いた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


355 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:54:39 ELtvnsho0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「状況を説明します。」

 緊張した面持ちで青いランサーが述べる。話し合いは一時中断され、全員がその言葉に耳を傾けていた。

「セイバー、バーサーカー、そしてアサシンの三人が、カルナと思わしき魔力を感知しました。現在霊体化したままこちらへ向けて行軍中。あと十分でホテルに到着します。」

 走り書きされたメモを読み上げると彼女は視線を上げ全員を見渡す。

「――で、どうします?」

「どうしますじゃないでしょうなんでここまで近づかれるまで気づかなかったんですか!貴方達はなんのための感知タイプです!!」
「マスターがいないんで支障が出ていてな。」「こちらも魔力不足だ。それにこれだけ近くに大勢のサーヴァントがいては見えるものも見えん。」「バーサーカーは燃費が悪いから。」
「ふざけてるんですかぁ!?」
「少し考えればわかるだろう。逆光と同じ理屈、周りに千もサーヴァントがいればそれだけ感知は困難になる。」

 激昂する教授に対し揃って三人に反論する。それをきっかけに皆口々に話始めた。

「だいたい考えてみろ。街で一番のホテルが爆発炎上しているのだ、サーヴァントやマスターでなくとも寄ってくる者は寄ってくる。そこにサーヴァントが千騎もいれば見つけてくれと言っているようなものだ。儂ならまず陽動だと疑うな。」
「そもそも火事が起きてる建物で話し合いなどしようとした時点で存在を隠す気はないと思っていたんだが。だから犯人探しに協力したんだぞ。」
「なんなんですか、ええ!?なんで突然正論を言い出すんです!」
「お前とキャスターが延々無駄な話をしていた上に誰も止めないのでな、黙っておいた。」
「ごめんなさい、私も……」
「俺も……」
「良かった、おかしいと思ってたの私だけじゃなかったんですね……」
「え、み、みんなそんな風に思ってたのか!?早く言ってくれよ!」
「いやなんか狂介さんとかスゲー真面目に話してたから水差すのも悪いかなって。空気読んだらさ……」
「――!もしかして、教授はわざと話を引き延ばしてた……?」
「いや引き延ばしてないですよ。」
「嘘。私にはわかる。魔法少女だから。貴方は絶対に引き延ばしてた。」
「ファンシーな杖持ってレオタードだからってなに突然魔法少女アピールしてるんですか!?だいたいなんで貴女は服変わってるんです!」
「その辺りのこと私といおりが話そうとしたら『ルーラーの通達について話すべき』とか『それよりも外部から侵入された可能性も考えるのが最重要』とか散々言ったくせに……!」
「そうだよ俺とランサーしかアリバイ調べようって言わなかったじゃん。狂介さんがパンイチなこととか美遊が魔法少女みたいな格好してることとか俺ずっとスゴイ気になってたんだけど。なんでみんな流してるのかなって。」
「今まで秘密にしてたけど実は私魔法少女なの。隠しててごめんなさい。」
「だろうな。」
「ぜんぜん関係ないけどキャスター主従って巨根だよな。」
「ちょっと、ちょっと待ってよ!魔法少女!?えっ!?」
「ていうかおかしいですよ!!なんでみんな爆弾の首輪着けられてるのにそんな話せるんですか!!だって、だってこれ、爆弾ですよ!!?話し合いなんてムリですムリムリ!!」
「ああもう!准尉!」
「ええ……これ無茶ぶりじゃん。」
「ぬわああっ!!?幽霊!!?」
「あー、めんどくさいから一言で言うと、ドッキリだから。さっき僕が死んだのもあれトリックだから。」
「ドッキリだったんですか!?」
「冷静になろうよ爆発する首輪なんてあるわけないしそれを仲間で試すなんてありえないじゃん(て言っとかないと説明長くなるしね)。」
「もおぉ……悪趣味過ぎますよ……」
「信じるのか……」
「なあ!魔法少女ってなんだよ!ちゃんと説明してくれよっ!!」
「そういえばあの通達で弱い方のランサーが名前を呼ばれていたな。」

「皆様方、干戈を収められよ!!!!」

 迸るのは爆炎。幸村が突き上げた拳から炎が渦巻き天井を焦がす。
 一同の輪の真ん中に進み出ての突然の行動は一瞬全員の意識を集め。


356 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――鎮火 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:56:33 ELtvnsho0

「――取り押さえろぉ!」

 一拍置いてライダーの召喚したサーヴァント達が幸村に殺到した。

「御無礼!」
「取り押さえろぉ!」「熱ぅい!」「誰か取り押さえろぉ!」「熱いっす!」「よし行けぇ!」「熱ゥい!」「発砲の許可を!」「ダメだ!」「俺は防衛を行う!」「セイバー!なにぼさっと見てるんです!」「悪いな、マスターいないから。」「対魔力があるでしょう!」

 体から電流の如く発せられる火炎に近づける者はいない。当たり前だ。不死鳥に誰が触れ得ようか。そのまま暴れ、瞬く間に吸血鬼達を蹴散らすと、幸村は槍を実体化させてそれを遠方へと放り投げた。

「御一同!この期に及んで内輪揉めなど愚策の極み!敵方が迫っているというのに小田原評定を為さる気か!!」

 未だ体から熱量を発しながらも、その手を広げ害意が無いことを幸村は態度で示しながら言った。それはあたかも演説を行うかのような姿であった。

「教授殿にみれにあむの者共よ!今は目の前に迫るものへどう向かうかが先決のはず!きゃすたぁ殿!狂介殿!せいばぁ殿!ばぁさぁかぁ殿に美遊殿!かのカルナと相対した貴公らならば、それが必要であるとわかるはずだぁ!らんさぁ殿にいおり殿ォ!彼の者と矛を交えたことはなくともっ、今の我々ではどのような相手だろうと鎧袖一触にされますぞぉっ!!りん殿!あさしん!!ますたぁ!!!この真田源次郎幸村はっ!みすみす座して討たれるなど一分たりとも認めぬ!!!!」

 幸村が咆哮を上げる度に業火が走る。その場の誰もが強制的に幸村へと集中せざるを得なくさせる。
 そうして皆を喝破しながら――しかし幸村はある種、冷静であった。

 幸村は理解していた。カルナという差し迫った脅威に対し、不可思議にも皆がその事から目を背けるかのように様々な話をしていたことに。
 なるほど確かに彼らが言いたいこともわかる。この小一時間、話したくともろくに話すことができなかった反動もあるのだろう。だが、だからといって今すぐに話すべきことではない。そして彼らがそれをわからぬはずもない。そう幸村は理解していた。
 故に幸村は自分に求められていることを理解していた。こういうのを政宗ならばチキンレースと呼んでいただろうか。今のこの混乱はそれだとわかった。カルナという存在を無視しているのではない、誰がカルナに最初に触れるか、誰かがカルナについて話すかを待っていたのだ。なぜなら最初にカルナに触れれば、その者がカルナについて率先して話さねばならなくなるから。この場にいる人間は、それを押しつけられる者を求めていたのだ。
 もし全員がカルナについて話し出さねば、そのままカルナに襲われる可能性は高い。だがそうであるために、誰かがカルナについて話す可能性も高い。意図してかそれとも無意識にか、カルナの話題を避けたのは、自分以外の誰かが、カルナに言及するのを待っていたためだ。しかしこれは、危険な賭けでもある。誰かが話す可能性が高いということは、自分が話さなくても良いということであり、それは全員同じである以上やはり誰もが話さない可能性もあるのだ。だから彼らは、誰かが話すという確証でもなければ誰も言い出さないという場合の損害を常に意識せねばならない。だが、もし誰かが話すという確証があれば、たとえ本当はそうではなくともそう思い込めば、絶対に自分から話さない人間が出てくる。そして幸村はそんな人間が多いと感じていた。それは他ならぬ自分という存在がこの場にいるからだ。
 幸村の人生を考えれば、こういう役割はまず自分である、そう幸村は信じていた。先駆けは自分の本分だと。そして彼らは幸村がそんな人間であることを知っているし実感しているだろうと。自他共に、そこに関しては真田幸村という人間の評価は共通であると。

「今すぐにでも、総力を挙げて、決戦を挑む!これがカルナを討てる無二の機会であり、我々が生き残る唯一の道でありまする!!」

 故に幸村は、貧乏くじを引く覚悟を決めた。ここで声を挙げぬは真田幸村ではない、そう誰もが思っているのだから。ぐいと拳を握る。ここから引くも守るも全て自分の肩に掛かっている、そう腹を決めねばならないのだ。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


357 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/03(水) 01:58:18 ELtvnsho0
投下終了です
近日中に最後の分割話を投下します


358 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:23:39 QcHPV.Hk0
投下します


359 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:28:23 QcHPV.Hk0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「やっぱりサーヴァントって言われても急には実感わかないよな。」
「ですよね、軍曹殿。」
「喚ばれて飛び出てみたら目の前で代行殿死んでんだもん、それで一人だけいた女サーヴァント取り押さえたらやたら弱いし。おっぱいデカイだけかよあのランサー。」
「そうっすね軍曹殿。」
「つーわけで今からお前のケツに銃剣突っ込むわ。」
「なるほどです軍曹殿……え、それは……」
「てめぇ上官に生返事してんじゃねぇぞこの野郎。」
「いやケツはヤバイですって。てか軍曹殿さっきブリッツ中尉を女扱いしてませんでしたよね、首跳ねられますよ。」
「馬鹿野郎言葉の綾だ……さて。傾注!大将殿のお出ましだ!」

 手に手に銃を、手榴弾を、弾薬を、火砲を、その他雑多な装備を点検し手早く戦闘体勢を整えていた軍服姿の吸血鬼達が、軍曹殿と呼ばれていた男の声に反応して一斉に敬礼する。
 赤い目と牙をギラつかせる最後の大隊を前に、真田幸村は歩み出た。


 真田幸村の一喝の後、彼を中心として対カルナの対策が練られた。現在地下の共同溝を往く千手扉間を先頭にしたテレサ、アリシア・メルキオットの三騎は、その先遣隊である。そしてその策とは次のようなものだ。
 まず第一陣として隠密行動に自信のある三騎――情報は共有されていなかったが、彼女達はいずれも気配遮断のスキル持ちである――が先んじてカルナに接近、その動向を探る。
 次に第二陣として真田幸村、パピヨン、小野寺ユウスケ、そして最後の大隊から降下猟兵を中核とした軽装備の一個中隊、吸血鬼二百余名が別のルートでカルナに接近、半翼包囲後、会敵する。この際、カルナが第二陣の機動を察知した場合、またはホテルへの直接攻撃を試みた場合、第一陣の三騎でカルナを急襲し一時的に拘束する。
 そして第三陣の最後の大隊幹部並びに残余の吸血鬼とマスター達は、第一陣と第二陣がカルナの足留めをしている間にホテルを放棄、脱出する。目標は冬木市西部、深山町の翠屋。ここに退却し部隊を再編成、西側のサーヴァントを戦列に加え、新都に転進しカルナを倒しきる。
 ホテル内の力学を考慮した結果、第一陣はアリシアが、第二陣は幸村が、第三陣は最後の大隊のゾーリン・ブリッツ中尉が指揮を執ることで合意に達し、この急拵えの作戦は実行に移されることとなった。というか、勢いで幸村が推しきった。既にこの作戦が幸村により立案されたときには、カルナはホテルまで五分の距離にまで迫っており、つまりそれはいつでも敵の宝具がこちらに飛んでくるということである。公園とスーパーでのことを考えるとこのホテルごと蒸発されかねない状況であり、喉元に手をかけられているに等しい有り様であった。はっきりいってカルナがその気になれば即座に全滅するのだ、今こうしてなんの気まぐれか生かされているが、ならその間にできることはやらねばならない。幸村はそう判断すると全員を叱咤した。

「教授殿、ますたぁ達を脱出させるのにどれ程かかる?」
「本音を言えば一時間は欲しいですが、三十分あれば川にまで達せるでしょうな。ここから川までカルナの攻撃が届かないという前提ですが。」
「情けないことを言いますが、十五分でなんとかなりませぬか。」
「地下の共同溝が川へ直通していればできるかもしれませんがね、地図もなにもないので期待はしないで頂きますよ。」
「忝ない。」

 出撃準備を整えた吸血鬼達を確認しながら幸村は教授に礼を言った。正直に言えば十五分持たせられるかも怪しいが、泣き言は言っていられない。改めて腹に重いものが感じられるところに、伝令のシュレディンガー准尉が現れた。

「まずいよ、第一陣のおっぱいランサーがやられた。」
「なんとっ……!バラバラに打って出てくるのを待って一人ずつ倒していく気か!」

 ぎりと拳を握り締める。いつでもこちらを丸ごと潰せるのにそうしないのは炙り出して虱潰しにする腹か。ならば一刻も早くこちらも戦闘を開始しなければならない。でなければマスター達が退却する時間を稼ぐ間もなくサーヴァントが全滅してしまう。幸村はそう考えると吸血鬼達を急がせた。


360 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:31:19 QcHPV.Hk0


「まさかこんなに早く私だけになるとはな。」
「ごめん……なさい……セイバー……」

 ところ変わって新都中心部、既に実体化を済ませてアリシアを小脇に抱えたテレサは走る。見るものに残像すら見せるダッシュとステップの併用で混乱するビル街を駆けていく。すぐ脇を熱線が通りすぎた。

 アリシア達第一陣はステルス性の高さと同時にレーダー役としての高い能力をもつサーヴァント達で構成されている。そこでカルナの射程距離外を見極めた後にそれぞれ散開、実体化する運びになっていたが、まずその最初の段階で作戦は破綻した。簡単に言えば、カルナの索敵がホテルのサーヴァントの予想よりも遥かに高かったのだ。そしてもうひとつ、ホテル内部の情報が限定的とはいえカルナに漏れていたのだ。
 当人達以外は知らないことだが、実はホテル内の美遊とホテル外のカルナの間では、ホテル襲撃についてある程度のコンセンサスがあった。といっても、焦ってバーサーカーにルーラーを殺させたらついでにうっかりそばいにたセイバーのマスターも誤殺するは街が停電になるはで慌てていたために大した会話らしいものはできなかったが、それでも二点だけは取り決めた。即ち、「今日の午前二時にホテルに接近すること」と、「バーサーカーが実体化したらホテルを襲撃すること」、この二点である。ちなみに午前二時にしたことに特に理由はない。ただ単にスマホでメールするのに、はしっこにあって二文字打たなければならない「一」より真ん中にあって一文字の「二」の方がポケットのなかに入れた状態で打ちやすかっただけである。それはともかく、美遊としては深夜にカルナがホテルに接近することが重要であった。万が一、というか十中八九自分がバーサーカーに教会を襲わせたことは露見するだろう。なにせバーサーカーに教会を派手に消し飛ばさせてしまっている。バーサーカー並の感知能力があればこれに気づかぬはずはない。更にセイバーとキャスターに至っては教会から逃走するバーサーカーをバッチリと見ている。マスターを殺したこともあってセイバーはどう考えても自分を追及するだろう。そう考えた美遊はカルナに襲撃させることで場を混乱させようと計ったのだ。もっとも、メールしてから二時より一時の方が良かったとか、まあ万が一の時はバーサーカーを実体化させることで合図になるから大丈夫だとか色々考えたが、どういうわけか苦し紛れでついた「教会の近くで感知できないサーヴァントとカルナに襲われた」という言い訳が信用されてしまった――実はバーサーカーの持つモーフィングパワーでバーサーカーが発した教会周囲の魔力もまとめて消し飛んでいたためはからずも美遊の発言に信憑性が出ていた――ために全部まるっと杞憂になっていたのだが。
 さてそんな美遊だが、カルナ接近に際してある程度第一陣のサーヴァントがカルナに接近したであろうタイミングでバーサーカーを実体化されることを選んだ。カルナならば地下にいようとバーサーカーがホテルで実体化したことに気づくだろう。周囲にやたらとサーヴァントがいる状況は当初の想定外ではあったが、魔力の強大さで識別できるはずだ。そう踏んでカルナが第一陣の攻撃を受けるだろう前に実体化させることで合図を送った。あとはカルナの眼力でサーヴァントを見つけ出しレーザーぶっぱである。美遊本人もこれでまさかサーヴァントが仕留められるとはつゆほども思っていないかなり雑な計画であったが、これで第一陣は事実上壊滅することとなった。
 まず最初にアリシアが地上で実体化したところを狙われた。咄嗟に身体を捻ったことで心臓への直撃は避けたもののへその辺りで上下に分割されることとなる。扉間に至っては次の一撃でテレサでも感知できないレベルで消し飛ばされた。これで生きていれば大したものだが、それならばぜひ直ぐにでもこちらを援護してもらいたい、テレサはそう思った。

「空飛んで炎出してくる奴にろくなのいないな。」

 テレサは膝の力を抜くと地面を滑るように移動する。数瞬前まで首があった辺りをカルナの宝具が通りすぎていった。そのまま縦横無尽に走り続ける。一瞬でも足を止めたら、いや、足を止めようが止めまいがカルナの視界に入れば終わりである。戦闘が始まって十秒ほどでサーヴァントが二騎無力化されたのだ、第二陣到着まであと数分をテレサ一人で持たせなければならない。
 もちろんそれで勝てる可能性などゼロに等しいのはわかっているが。


361 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:39:30 QcHPV.Hk0


「美遊殿!第一陣の様子は!」
『ランサーとアサシンは反応が感じられない。今はセイバーが一人で逃げ回ってるみたい。』
「真田幸村、こちらはあと一分といったところだ。」

 電話越しの声は非常に冷静に戦況を伝えてくる。慣れぬ携帯電話で話しながら幸村は隊列を組みつつある吸血鬼達を見た。
 ハイアットホテル地下ではホテル脱出に向けて着々と準備が進んでいた。既にマスター達と教授は、海軍出身の最後の大隊構成員と大尉と呼ばれた男に護衛され川を目指し西進を始めている。しかしだからといって、依然としてカルナの脅威に晒されていることになんら変わりない。それどころか第一陣が余りにも容易に崩壊したために余計ホテルの人間は危機感を感じていた。
 カルナの戦闘能力は直接対峙した幸村やテレサの予想よりも明らかに上であった。いくら相手が規格外の太陽神であろうとまさか第一陣の三騎が一分持たずに無力化されるなどとは想定できなかったのだが、現実は何が起こったのかわからぬままに今の有り様だ。まるで隕石かなにかにピンポイントに頭上目掛けて降られたかのような感覚である。そのせいで本来は第一陣と第二陣の合流をもって決戦を挑む予定が戦力を逐次投入する格好となってしまっていた。

 ――実際は美遊がもたらした情報には多少の誤りがあるのだが、テレサと扉間の二人から分断されている彼らには知りようのないことである。

 ともかく、幸村は第二陣の出撃を急がせる。不幸中の幸いか、カルナの位置はもはやホテルと目の鼻の先だ。戦闘隊形をとった一個中隊を見ると檄を飛ばした。


 僅かな隙を見つけたテレサは右手に抱えたアリシアの上半身と左手に抱えたアリシアの下半身を空中に浮かべる。熱線で身体の断面は美しく切断されていた。そしてそこは高温によってこんがりと炭化している。

「ちょっとくすぐったいぞ。」
「え――」

 抜刀。
 その後納刀。
 アリシアが辛うじてその気配をつかんだ時には、アリシアはテレサのクレイモアをその身に受けた後である。

「今……切らなかった?」
「そろそろくっついて貰わないと面倒なんだよ。」

 そう言うとテレサは血が噴き出そうとする断面を慎重にくっつける。そのまま断面がずれないように慎重にアリシアを物陰に横たえると――一気に距離をとった。

『アリシア!生きてるのか!返事してくれよ!!』

 自分から遠ざかるテレサを見ながら、その姿を見送ることしかできないアリシアの脳内に念話が響く。その声になんとか応えて意識を保つことしかアリシアにできることはなかった。


「あのランサーは置いてきたか。」
「ああ。手加減してくれて礼を言うよ。」
「買い被られたものだな。」
「素直じゃな――おっと!」

 アリシアを置いてきてから一分程経ったころ、ホテル近くのビルに陣取り眼光による狙撃という名の砲撃をしてくるカルナに対し、テレサは逃走をやめ闘争を開始していた。
 第二陣到着までまだ数分ある、そして戦場を離脱しようにもカルナと一対一を強いられる恐れがある。この詰みに近い戦況で生き残るには、道は一つしかない。即ち、近接戦闘による一騎討ちである。
 テレサにとってカルナの一番の厄介な能力は、今も自身目掛けて飛んでくるレーザーだ。ランサーなんだから槍使えよどっちかって言うとランチャーじゃないかなどと愚痴りたくなるほど、その遠距離戦の能力は高い。だが翻って、近接戦闘ならば勝機はあると判断していた。前情報通りカルナは手傷を負っている。あのレーザー頼りの戦法は確かに有効だが、彼が本気ならば公園の時のように極太レーザーで都市区画ごとバラバラに吹き飛ばせるはずだ。だがそれを怪我で出来なくなっていると仮定すれば、あのやたら飛んでくるレーザーだけしか脅威がないとすれば、懐に飛び込めば1か2%ぐらいは生き残る目があるだろう。


362 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:42:24 QcHPV.Hk0

(まあそれができないからこうなってるんだけどな。)

 霊体化する間もなくビルの窓ガラスをぶち破り、壁や天井を大剣で斬り開きながらスーパーボールのように駆け回る、もとい逃げ回る。カルナまで道一つぶん、といった距離まで接近したところで、あちらの制圧能力とこちらの回避能力が釣り合ってしまっていた。近いぶん適当な狙いでもぶち当たりかねないためここから先は確立の世界である。それも先のかなり都合の良い仮定に乗っ取ってのものでありなんら保証はない。まあ要するに端的に言えばお先真っ暗といったところだ。

(幸村達はあと一……いや、二三分はかかるな。ランサーは、まあ、生きていればいっか。)

 この状況を打開するには正直テレサだけではどうにもならないというのが率直な見立てである。であれば新たな変数が、つまるところ援軍があれば良いのだが、どうにもあと少しの間は期待できなさそうだ。
 幸村達第二陣は漸く隊列を組み始めたところである。ホテルの地下の妖気を見るにそう考えて間違いなかろう。一人当たりの戦力が、いわゆる『クレイモア』で言うところの四十番台だと仮定しても援軍として戦列に加わるには人数的にどうしてもそれぐらいはかかるはずと思っておいた方が良い。
 アリシアに至っては身体が真っ二つにされていたのだ、戦力としては到底期待できない。いちおうあの状況でも喋れる生命力に賭けて、断面を『キレイにして』くっつけたておいたが、あれで治るのはそれこそ深淵のものぐらいである。後はカルナよろしくレーザーの一つでも撃てればテレサとしては拍手を送りたいぐらいには彼女について期待していなかった。ぶっちゃけ足手纏いだから置いてきたし。
 あとちょっとの間存在を忘れてたがアサシンは死んだのか死んでないのかどっちなんだ、とか思いながら前転、その勢いで跳躍、天井をぶち抜いてくるりと反転、次の天井を蹴破らないように慎重に力を調整して横への力を加えて自由落下、膝を抱え込んで身体を丸める。五秒とかからない一連の動きで五発のレーザーが飛んできた。もう自分がいったい何と戦っているのかすらなんだかテレサにはわからなくなってきた。

(第三陣なんて言ってるけどクロノ達と合流するよりアイツらのサーヴァントを増援に向かせるよう頼んだ方が良かったよな。)

 力任せに床を蹴破り階下へ身を投げた所に飛んでくるレーザーを天井に大剣を突き刺してつり輪の要領で回避しながら心中で愚痴る。続く一発を床に身体を投げ出すことでかわすとそのまま四足歩行と見まごう前傾でぬるりぬるりと避けていった。

(戦力の逐次投入がーとか、そもそもクロノ以外は見捨てそうとか、あ、これ考え出したらきりないな――アチッ。)

 マントの真ん中をレーザーがぱっくりと穴を開けていたのをテレサは窓を突き破りついでにもう一つ窓を突き破って隣のビルを転げ回っている時に気づくが、でも今そんなことはどうだって良いのだ、重要なことではない。遮蔽物にもならない障害物の多い室内をめんどくさくなって壁から壁に走ることで回避運動を取りながら、テレサはホテルの地下へと意識の一部を向ける。待ちに待った援軍は漸く動き出したようだ。テレサの予想よりも行軍スピードが早いのは嬉しい誤算だがそれで息切れしないか少し心配になる。まあ肉の盾が増えるのは大歓迎ではあるが。だがしかし依然としてこちらはあのレーザーの雨の脅威のもとにある以上結局は逃げ回るしかないのだが。

(て、なにいってんだ。)

 前言撤回。テレサはレーザーを掠める覚悟を決めてカルナとの距離を詰めにかかる。だがレーザーは来なかった。正確には、第二陣が動き出してからレーザーは止んでいた。それは数秒のインターバルであった。だがその数秒があれば奴には充分だということはテレサにはわかっていたはずなのに。

「やられた……!」

 力任せにクレイモアを投擲するも僅かに身動ぎさせるしかない。カルナの目は第二陣へと向けられている。次の瞬間、桁違いの光線がホテルの地下目掛けて照射された。『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』ではなく、『梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)』、その一閃がホテルをゆっくりと倒壊させていくのをテレサは見送った。


363 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:46:15 QcHPV.Hk0


「なんだ……何が……!」

 コンクリとアスファルト、そして土砂を上へと掘り進め、ぬっ、と腕が突き出される。薄く堆積した瓦礫を吹き飛ばしながら土中から現れた真田幸村は、全身を隈無く火傷しながら周囲を見渡した。
 張り付いていた瞼を強引に見開いてなんとか視界を確保する。先頭を進んでいたバーサーカーは黒い鎧姿のまま瓦礫にもたれ掛かり、その後ろにいたはずのキャスターは片腕を失い身体の一部を炭化させた姿で横たわっているのが見えた。
 後ろを振り返る。土砂に覆われたとはいえ、二百の兵がそこにいた筈だ。数秒、もしくは実は数分前かもしれないが、幸村の後ろには確かにいたはずである。だがそこには鉄屑と化した装備と幾らかの炭と幾ばくかの灰が風に巻かれて光となって消えていくのしか見えなかった。

「まさか、全滅だというのかっ!!」

 幸村は吼えた。まさか一撃で、一撃でやられるなど。あってはならない。
 だがゆっくりとこちらに向かって倒壊してくる冬木ハイアットホテルはそんな幸村達を待ってはくれない。幸いにも、離脱したとはいえ第三陣の方向ではないが、自分達の頭上に倒れ込んでくる。猶予はなかった。

「……っ!ともかく、せいばぁ殿と合流せねば。」

 一瞬後ろを振り返って、生存者が見つけられないのを認めて、幸村はキャスターとバーサーカーを抱えて走り出す。まもなくその姿は粉塵と化したビルに巻き込まれ見えなくなった。


「もうちょっと手加減ってものをしてくれないか?」
「悪いが全力で行かせてもらう。」
「いやホント無理。」

 片腕一本に背中の炎をバーニアのように吹かして戦うカルナに、テレサは徒手空拳で食らいつく。カルナの本気の一撃を境に戦いは第二ラウンドへと突入していた。
 カルナの魔力放出による炎と眼からのブラフマーストラ、それを妖気探知とフットワークで死角へと回り込みかわす。そうして放たれる突きや蹴りを、あるいは槍で、あるいは炎で、あるいはその身体で弾き牽制しカウンターを仕掛ける。と、距離をとり宝具の発射を試みるカルナにテレサが追い縋る。暴風の様に新都を無茶苦茶に荒らし回る二人の戦いは、いつしかホテルから駅前へと場所を移してきた。

 すっかりボロボロになったマントを翻しながら、テレサは常にカルナの槍の間合いの内へ内へと潜り込み続ける。残念ながらカルナの近接戦闘能力はテレサの想像以上であった。しかも槍が破損しているとはいえその分短くなったことで取り回しが良くなってしまっている。大してテレサは得物の大剣をぶん投げて来てしまった。今頃ホテルの瓦礫の下だろう。とてもではないが取りに行く余裕も探しに行く時間もない。

「あー、あれだ、夏だし炎出すのはやめないか。こういうの地球温暖化って言うらしいぞ。」
「地球温暖化の原因は化石燃料を大量に使用したことによる二酸化炭素の増加だ。安心して死んでいけ。」
「お前のその知識絶対聖杯戦争に必要ないだろ。」

 言葉と共に顔目掛けて放たれたブラフマーストラを首を九十度曲げてかわす。お返しに放った金的に膝のカウンターが来るのを読むと軌道を変えて首への廻し蹴りにする。喉仏を僅かに掠めた感覚と共に膝を受け止めた両手が痺れた。

 この距離だとレーザーより炎が厄介だとテレサはラッシュを続けながら思う。あの炎のせいで関節技とほとんどの投げ技が封じられている。別に効くとは思ってはいないが、やはりメインが剣の自分が打撃オンリーでは到底勝ち目がない。やっぱりクレイモア投げなきゃ良かったなと後悔しながらもカルナが仕掛けてきた足払いに宙返りしながら肋目掛けて蹴りを合わせた。


364 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:48:22 QcHPV.Hk0

 さてここで選択肢である。今の追い詰めらた展開を打開にするには大きく分けて三つのイベントのどれかが起これば良い。
 その1、〈カルナが帰ってくれる〉。ないとは思うがあり得るなら九割方これだろう。なんか事情があってなんか帰ることになった、というかなってほしい。
 その2、〈第三陣がクロノ達と間桐達を増援に寄越してくれる〉。五代雄介とアリスのアーチャー以外は太刀打ちできるだろう。できればカルナの宝具を押し返したという安藤も来てもらいたい。これならおよそ存在する全てのサーヴァントがカルナに攻撃することになるのだ、さすがに勝てると思いたいが、まあ先程の選択肢を除いたなかで九割程の可能性か。最良の選択肢だがまず不可能。
 そしてその3、〈やられていった奴らが奇跡の復活〉。たぶん1%ぐらいの可能性しかない。しかも三つの選択肢のなかで最も頼りにならない。はっきりいってレーザー数発で沈むような連中だ。アイツらが倍いたところで一分で全滅させられるのが二分で全滅させられるぐらいしか影響はないと考えると、みもふたもない言い方をしてしまえばいてもいなくても同じである。まあそれでもどさくさに紛れて自分一人落ち延びる目は出てくるだけ今より遥かにマシではあるのだが。

 さてこの中からどれを選ぶか?

(選択肢もなにもないんだけどな。どれもちょっと都合が良すぎる。さて、あとどのくらい持たせられるか……)

「せいばぁ殿ぉぉ!!うおおおおおおおおおおおおお!!!」

「3か……」

 3だった。

 これにはテレサ、微笑を崩して苦笑である。だが「受け取れえええええ!!」という烈迫の気合いと共に投げられたものを見て今度は失笑した。
 まずクレイモアである。確かに投げた方向的にはホテルの方だったがアイツ拾ってたのか。
 「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!???」と、日本刀である。彼女は真名を知らないがデルフリンガーである。拾った彼女と幸村以外には忘れられているかもしれないが大分前にバーサーカーのサイトがカルナと戦った際になんやかんやあってテレサが拾ったアレである。
 それがもう笑えない勢いで翔んでくる。ランサーだけあって投げるのも上手いんだななどと感心してしまうが、明らかに受け取れられないスピードでテレサ目掛けて突っ込んできていた。アイツはあれだ、カルナに突き刺してそれを受け取らせる気だ、と一人納得しながらテレサ自身もよくわからない身体の動きで紙一重に二刀をかわすと、それを槍で弾いたカルナの顔面、蹴りをいれてあらぬ方向に飛んでいきかけていた剣と刀を手にした。

(殺す気か。)

 二刀流で斬りかかりカルナを押し込めながら文句の一つも言おうとしたが、あいにくこちらも息が上がってきている。それに漸く形勢逆転の好機が訪れたのだ、ここで押しきらねば、と思ったところで後ろから妖力が膨れ上がるのを感じ、咄嗟に跳んだ。

(なんだあのでっかい独楽……)

 千載一遇の好機を思わぬ奇襲で逃すはめになった元凶へと視線を向ける。今度こそ文句の一つも言ってやろうと思い直したところにそれは目に入ってきた。

 独楽である。

 本当にコマである。

 コマとしか言いようがない。

 テレサさん、困惑。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっ!!!」

 雄叫びと共に真田幸村は一つの赤いコマとしてカルナへの攻撃を開始した。

 ――さてここでいい加減何が起こっているのかわからなくなってきたので整理しよう。なぜ幸村がコマになっているかについてだ。まず幸村の武器は槍である。この事は真田幸村という戦国武将を知っていれば誰もがわかるだろう。そして槍というのは剣よりも遥かに多彩な用途がある。これは槍術の経験がある方ならばわかると思うが、突きや払いといったもの以外に棒であることをいかした活用法もあるのだ。さて棒といえばポールダンスである。これはポールダンスの経験がある方なら理解できると思うが、ポールダンスは全身の筋肉の総合運動だ。戦国武将が本気でポールダンスをすればもうそれは一大事であろう。以上のことに異論はないだろうが、だがそれでなんで幸村がコマになるのかという疑問を抱く人もいるだろう。確かにその指摘はもっともである。人はコマではない。


365 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:48:52 QcHPV.Hk0

 だがここに一つの例外がある。


366 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:49:57 QcHPV.Hk0

 類いまれなる槍術と超人的筋力、それによる遠心力と障害物への抵抗が可能になったとき。
 槍を用いた蹴り技は回転数を増す。
 一回転が二回転に。二回転に三回転に。
 そしてその加速する回転を自立が可能なほどに昇華されたとき。
 人は、一つの独楽となる。

 これぞ真田幸村の宝具、大紅蓮脚。その加速する速度は、かの奥州筆頭伊達政宗の駆る騎馬よりも早くそして蹴散らすほど。これが幸村が馬を駆らぬ理由である。ライダーとしての適正も持つ幸村がなぜランサーとして召喚されたか、それがわかるであろう。

 猛然とカルナ目掛けて突っ込む幸村は、アスファルトを蹴散らしコンクリートを砕き進路上の一切合切を粉微塵にし肉薄する。ブラフマーストラで迎撃を試みたカルナだが、その視線は迫る剣の為にあらぬ方へ向くことなった。「よそ見するなよ」と、刀を振るうテレサの迎撃が最優先である。デルフリンガーがテレサの手に渡ったことにより、カルナは攻めの魔力放出をやめた。あれに炎をやれば喰われることは一度刃を交えたカルナがよく知っている。そして今のカルナに鎧はない。公園の時のように背中で受ければ今度は先にランサーをそうしたように身体を二つに分かたれるだろう。故に二刀の連撃を槍をもって打ち払う。袈裟、逆袈裟、胴、脛、小手、逆袈裟、脛、脛、袈裟、胴、小手、面、まるで元から二刀流であったかのように振るわれるそれを、壊れかけの槍一つで迎え撃ち、押し返す。それは数秒でテレサの首を獲っただろう。だからそれはどうしようもない隙であった。

「来るか。」
「行くさ。」
「参る!!」

 それだけで宝具に数えて良いレベルの炎がカルナから幸村へと、燃え盛る焔の竜巻の幸村がカルナへとそれぞれぶち当たった。


「全く、槍から炎出すやつはなんでこうやることが下品なんだ……蝶サイアク!」

 一方その頃、二騎のランサーがベイブレードの如く火花を散らすのを遠目に見ながら蝶人パピヨンは無人となったビルの給湯室で顔を洗っていた。片腕になった為かダメージが残っているのかはたまた両方か、すっかり辺りは水浸しになっている。ついでにうがいと洗髪で砂まみれになった体を頭部だけでも清めるとパピヨンマスクが乾いたのを確認して徐に身につけた。

「よし!」

 本当は今すぐにでもシャワーを浴びたいところではあるが、さすがに給湯室でシンクに身を沈めるのは貧乏臭いのでやめておく。そんなことを考えながら核金を取り出しつつ念話を送った。

『こっちはセイバーとバーサーカー、それと幸村が戦える。バーサーカーはまだ気絶中だ。あとの二人は知らん。』
『パピ!パピヨン?!突然してくるなよ!!』
『なんだ馬鹿みたいに騒いで。馬鹿が誤魔化せてないぞ。』
『悪い、その……大変だったんだ……』

 パピヨンは表情を変えなかったがコーヒーを入れようと沸かしていたヤカンに伸ばした手が一瞬止まった。そう長い付き合いでもないが、その反応は色丞狂介らしからぬものであったからだ。『お前が話すと長くなるから結論から言え』と聞きながら、手は安物のインスタントコーヒーの粉をグラスへ落としていく。温いお湯では溶けそうになさそうで不満げに鼻をならした。
 実は、と念話されるのを聞きながらコーヒーを啜る。案の定溶けていない。泥水を飲んでいる気分になって適当に床に放り投げた。

「アサシンか。」

 念話を手短に終えるとパピヨンはカルナ達を見る。どうやらこの十数分の間に更に面倒な事態が起こったようだ。さてここでどうするべきか。第三陣へ合流を目指すか、それともカルナ撃破を優先するか。
 少し考えて、パピヨンはそのどちらでもない方向へと移動を開始した。体から流れるお湯が点々とその後を追っていくのを見る人間はいなかった。


367 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:51:33 QcHPV.Hk0


 炎と炎、槍と槍、そのぶち当たった同一存在のダービーは僅かな間の拮抗を経て片方が吹き飛ばされることで呆気なくけりがつく。屋上から地面へと撃墜され片膝をついていたのは、カルナだった。
 はっ、と大きく息を吐く。テレサが息が上がってきていたようにカルナもまた疲弊していた。それはつまりカルナとホテルのサーヴァントがようやく同じ土俵に立ったということであり。

「次で決めさせてもらう。」

 存在しないはずの勝機が生まれた瞬間だった。
 一瞬でカルナに殺到したテレサに驚くも幸村も続く。二騎でかからねばこの蜘蛛の糸が切れてしまうことは二人ともよく理解していた。そしてカルナも。
 目に魔力を集め、突貫、フェイントを交えてセイバーに仕掛けたカウンターはすんでのところでかわされる。刹那の交錯の後のポジション争い、三次元の動きのセイバーが優勢、挟まれる。危険。しかし回避不可。よって攻勢。後方の幸村が魔力を再び迸らせる。数秒でやられる、のでその前にセイバーを討たんとカルナは槍を振るう。だがその槍が如く弾かれる。これは知っている。公園で一度凌いだ。高速剣という名は知らずとも、槍が折れていようとも、問題はない。剣を折れば子細ない。
 ――その時、セイバーは優しく笑った。
 訂正。極めて危険なり。

 セイバーの高速剣のスピードも威力も上がっている。カルナはそれを理解した。先程のが5とすればこれは20か。剣を折れるのも厭わず振るってくる。ヒビの入ったクレイモアをこれでもかと縦横に振るう。そしてセイバーの手が止まる。だが斬撃の雨はやまない。セイバーは逆手に持った日本刀――デルフリンガーを振るっていた。剣が持たぬのならば二本用意すればいということか。理に敵っている。早さもつい今のの倍だ。カウンターを試みるのは諦めざるをえない。
「烈火!」
 後方から幸村の刺突。対処不能。故に槍を僅かに持ちかえる。セイバーの剣を払う際の槍の引き戻し、それをもって幸村の槍を凌ぐ。急所以外ならゼロに等しい。
「三連高速剣、なんてな。」
「大・烈・火ァ!!」
 砕けたデルフリンガーの柄を顔面目掛けて放り投げたのを最後に再び利き手での高速剣が始まる。更に倍する速度、腕が異形へとなる。化生の力に飲まれるのも覚悟の上か。そして後方の幸村からは、カルナの魔力放出に比較しうる爆炎。カルナは知らぬことだが令呪の後押しを受けての宝具、熱血大噴火は、ごく短い時間とはいえ幸村をカルナと同等の次元に引き上げる。ここに技量で食らい付いたテレサと、力で食らい付いた幸村に挟まるカルナという構図が生まれた。
(見誤ったか。)
 カルナは我が身の不出来を噛み締めブラフマーストラを放つ。確実にセイバーに当てるために随分と時間を必要とした。そのせいで今の自分は十や二十では済まぬ刀傷を負っていた。心臓と頭にだけはなんとか防いだが、満身創痍である。
 吹き出る血返吐を飲み下しながら身体の大部分を消滅したセイバーを視界から遠ざけていく。直ぐにでも幸村に向かわねばもう持たない。討ち取られる。その微笑みを目に焼き付けながらもう一撃宝具を放とうとし、その目を青い光に焼かれた。

(――あのときのランサーか。)

 目から脳、そして後頭部へと抜けていく光を感じながら残った目が人影をとらえた。青い槍を抱えた女と淀んだ目の男。どちらも先程致命傷を与えたはずの者達だ。それこそ、カルナ自身でも死を覚悟するほどの。


368 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:53:17 QcHPV.Hk0


「我が魂ぃぃ――」

「顔向け……」

「――たぎってそうろおおおおおおおおおおおおおおおおおう!!!!!」

「……できんな。」


 赤虎絶翔天覇絶槍日輪天墜、赤く閃いた槍さばきに削られた皮と骨と肉が弾け飛び、露になった心臓に幸村の拳と蹴りがめり込んだ。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


369 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:54:51 QcHPV.Hk0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「ここは……ぐっ!」

 自分が固いなにかに抱かれていることと、血で張り付いた喉の息苦しさから、真田幸村は意識を取り戻した。
 気がついた時には、石造りの天井が見える。なんだこれは、なにが起こっている。状況を探るために首を動かそうにも、身体は微塵も動いてくれない。まとわりつくような倦怠感と疲労感と、最近覚えた魔力不足の感覚が強まるばかりだった。

「お早いお目覚めで真田の大将殿。」
「貴殿は、ぞうりん、殿……それに、ばぁさぁかぁ殿……?しかし、なぜ本隊の殿軍の将である貴殿が……?」

 突然かけられた声に目を向けようとするも、やはり身体が動かない。疲労困憊、全身から力が抜けている。なんとか声と気配だけで判断するも、幸村の頭には疑問符ばかり浮かんでいた。
 最後の大隊の戦鬼の徒が一人、ゾーリン・ブリッツ中尉。大鎌を携え顔の半分に奇怪な刺青をしたその女は第三陣の指揮を執っていたはずだ。幸村はそう何度も話したことはない。精々、ホテル丸ごと暗示をかけられる女丈夫ぐらいの認識である。故にそんな彼女が何をもって今こうして自分に話しかけているのかの判断材料がなかった。
 困惑を深める幸村を余所に、ゾーリンは幸村の視界に現れると、幸村の周りを歩く。そこで始めて、幸村は自分が仰向けになっていることを知る。不思議な重圧感で気づかぬほどに弛んでいたか、と幸村が自戒するのなどお構い無しに話始めた。

「二個中隊にサーヴァント四騎を失っておいてカルナ討伐に失敗、あたら多くの兵を失った背任。」
「カルナと内通し枢軸同盟を襲撃させた外患誘致。」
「ホテルを爆破しマスター四人サーヴァント二騎を暗殺した内乱。」
「以上三件により、マスター・日野茜とランサー・真田幸村を拘束する。」


「…………は?」


 冷や水を浴びせられた気がした。


「ぞうりん殿……?」
「いやぁ驚いたよなあ〜まさか真田幸村が犯人とは思わなかったよな〜。」

 どこにいたのか吸血鬼達のあからさまな驚きの声が上がる。だがそんなものは耳に入らない。聞こえた言葉がわからない。

「日本の芸能人は子供だろうと容赦ないな。なかなかできることじゃないよやっぱすげえよクールジャパン。」
「ぞうりん殿ォ!!」

 食って掛かろうとするも、身体が動いてくれない。動け、と叱咤しても地面に縫いつけられたかのようだ。

 そう思って、そこで初めて、自分が地面に縫いつけられていたことに気づいた。

 腹の傷口に、深々と大鎌が突き刺さっている。そしてその傷口も、足も、胴も、腕も、コンクリートで固められている。端から見れば顔以外全て床と一体化した幸村の姿がそこにあった。

「なんだこれは、どういうことだ!」
「さっき言っただろ拘束するって。あ、霊体化すんなよ。お前のマスターの首が飛ぶ。」
「ますたぁに何をした!なぜ我らがそんなことを!」
「落ち着けよ。お前のマスターにはなにもしてない。本当になにもな。」


 噛んで含めるようにいったゾーリンのその言葉に、幸村は愕然とした。

「ますたぁは!ますたぁは無事か!」
「何度も同じこと言わせんじゃねえよ、なにもしてないつってんだろ。」
「では、ではますたぁの治療は!」
「治療もなにも、くも膜下出血だっけ?頭開けなきゃできないだろ?」

 幸村は拳を握ろうとした。だがコンクリに塗り込められた身体ではそれも叶わなかった。

「安心しろよ、犯人が見つかったら病院だろうがどこだろうが好きに行けばいい。この街で手術できる病院が残ってるかは知らないけどよ。」

 ゾーリンの嘲笑に返す拳もなく、幸村は慟哭した。


370 : 【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――延焼 ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:56:42 QcHPV.Hk0


 あのとき、あの爆発のとき、日野茜は脳に甚大なダメージを負っていた。とっさにマイケルが庇ったことで即死は免れたものの、背中など背部への大火傷と頭部を中心とする全身の強打は、その生命維持に支障を来すものだ。ましてや茜は一日ほど前にも頭部を挫傷している。あの時は病院の検査ではさしたる異常が見つからなかったが、本来は丸一日安静にした上で精密検査の必要がある怪我であった。しかし、爆弾騒ぎでそれができなかったのに加えてスーパーで令呪まで使っている。彼女と同等かそれ以上に頑強なナノカですら昏倒したその膨大な魔力の影響が、なぜ彼女には気絶程度で済む道理があろうか。ダメージのあった身体に魔力を流せば、内出血の一つや二つ負って当然なのである。そしてそんな脳出血をしている人間が爆発に巻き込まれればどうなるか。更にそのあとまた令呪を使えばどうなるか。彼女の頭の中の爆弾は火にくべられたも同然である。


「ぞうりん殿ォ!!ますたぁと!ますたぁと合わせて頂く!!!」
「許すわけないだろ?じゃなかったらお前埋めねえだろ。」

 爆発の後、茜を診察した教授からくも膜下出血のリスクについて説明されたときから、ずっと幸村の頭には茜の容体が急変しないかという不安と懸念が占めていた。しかしその危惧がこのタイミングで実現してしまうとは。いやもちろん幸村があれだけ魔力を使えば当然なのだが、しかしまさか、こんな展開になるとは。

「んで、どうすんだ大将。認めんのか認めねえのか。」
「ぬっ!?ぐぅうぅぅ!!」

 ぼうとする頭が痛みで強制的に覚醒させられる。幸村の視界の端に大鎌が見えた。そして傷口が抉られる感覚。

「無駄に頑丈だな……宝具か?」
「認め、ぬっ!?某も!ますたぁも!誓っ、て!裏切って、いない!」
「そうか。」
「わかっているはずだ!このような真似をしても、下手人が笑うのみ!らいだぁ殿も望まれるはずだあっ!!」
「そうか。」

 返答代わりに抉られる感覚が強まる。そして同時に口をなにかで覆われる感覚。鼻の中にコンクリが流れ込んできた。

「霊体化すんなよ。すればその時点でお前もマスターも殺す。」
「てか……なんか勘違いしてませんかぁ?お前言う『らいだぁ殿』はこういうの大好きなんだよ。」
「知ったような口きかれたら困るよなあ!お前ら!」

 ゾーリンの声に合わせて吸血鬼達の歓声が沸く。その声も途中からくぐもったものに変わった。

(どこで、間違えた。)

 自問自答。体内でマグマのように熱がうねる。しかし行き場がない。どこに向かえばいい。どこに向かえばこんなことにならなかった。自責が重りのように身体を縛り、そのまま歓声の水底に意識が沈んで行こうとしたとき――

『わたしが……』

 ――幸村が待ち望んでいた者の声が聞こえた。

『わたしが……やりました。』

 スピーカーを通して、少し変わった感じの、日野茜の声が、その空間に反響した。

『わたしが……わたしが、ホテルにバクダンをしかけて……カルナに、ジョウホウをながして……りんちゃんをころしました……』

 何故だ。

 何故だなぜだなぜだナゼだナゼだナゼだナゼダナゼダナゼダナゼダ。

「なぜだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 コンクリートの空間に幸村の大音声が響いた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


371 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/10(水) 00:58:03 QcHPV.Hk0
投下終了です
近日中に最後の分割話を投下します


372 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:54:52 FyVz773U0
投下します


373 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:55:51 FyVz773U0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――1931、ルーラー・ミュウイチゴは無人のカフェで一人チラシの裏に独り言を書く――



『つまり、このたたかいにはいろんせかいのいろんなじだいの人がいるの』

 視線は参加者名簿に落としたままルーラーは文字を書いていく。

『上きゅうAI、かんりしゃ?は本の中のキャラを出すみたいなものっていって』
『このせんそうは二じそうさくみたいなものだって』

 無人のカフェ。誰もいないそこで誰かに語りかけていくように。

『いいわすれてたけどこえをだすのは大丈夫だとおもうよ NPCいないし、きょうかいの中は私のしかい共ゆう以外はへーきらしいから』
「あ、そうなんだ。じゃあ私たちは紙に書かなくていいんですね?」
『うん 私がみちゃうとれんらくようAIにもみようとおもえばみえるらしいからきをつけてね』

 誰もいないはずのカフェに黒鳥千代子の声が響く。しかしルーラーはそれを空耳と判断し独り言を続けていく。心なしかチラシと名簿の位置を変えると続けた。

「先に聞いておきたいんだけど、このパーティーの主催者はどうやって参加者を監視しているの。」
『NPCとしかい共ゆうしてるらしいよ 私もよくしらないけど』
「そのNPCを見分ける方法は?」
『、、、わかんない NPCみんなとそうしてるかも』

 なぜかアリス・マーガトロイドの声も聞こえた気がした。だがルーラーは空耳と判断した。あの二人は少し前に教会を出ていったからだ。教会の近くには彼女達のサーヴァントの魔力反応もあるし、風にのって声がここまで届いたのであろう。

「NPC全員?この街に何万人いるかわかって言っているの。」
『でも、でも、東京とかのよせんの時に何万人かかんしできるNPCをつくって、やってみたら、しょりおち?だけどできたから、人口の少ない冬木なら大丈夫って』
「しょりおち……?」
『よせんでかきゅうAIのえんしゅうはした から かきゅうAIとはあったことないけどすごく多いらしいよ』
「NPCもサーヴァントみたいなものなのかな?あ、ルーラーさんそのページは撮り終わったんで次のページお願いします。」

 決して参加者名簿から目を離さないようにしながらルーラーはチラシの裏に文字を書いている。もしかしたら名簿の書き取りをして覚えようとしているのかもしれない。なんと模範的なルーラーだろう。途中まるでスマホで写真を撮ったときの音の空耳が聞こえたりしたがだからなんだというのだ。ルーラーは次のページをめくる、攻略本のようなそれには全てのマスターとサーヴァントの情報が載っているのだ。

「アリスさん!これこれ、これがドラえもんだよ。キャスターのクラスなのかな。この赤いチェックはなに?」
『それ だつらくした印 よこのじかんはそのじかん』
「今日の6時11分……ずいぶんと正確ね」
『AIからメールでくるから、それをメモしたの サボるとかなりおこられる、、、』
「神戸ってドラえもんは金曜日にやってないのかなって思ったけどそんなはずないよね。そっかあ、サーヴァントだからなのかな?」
『、、、なんでチョコがドラえもん?知ってるの?』

 ルーラーは難しい顔をしながらとんとんとチラシの裏を叩くと別のチラシを取り出した。元のチラシはどこかへといってしまう。たぶん妖怪メモ隠しの仕業であろう。まったく困ったものである。ルーラーはじっと名簿のドラえもんを見た。これが同じ猫キャラとは到底思えない。


374 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:56:34 FyVz773U0

「みんな知ってるよ、だってドラえもんだもん。他には五代さんとか。なんか見たことあるなって思ったけどクウガの人だったんだ。おジャ魔女どれみの三十分前だっけ。シャープのほうだったかな。とにかく仮面ライダーだよ。」
『おかしい、、、本の中っていっても、たとえだとおもったんだけど ほんとに本の中から、、、』
「そもそもミュウイチゴっていうか桃宮いちごちゃん、ですよね?なかよしに連載されてたし土曜の朝にアニメもやってたよ。」
『え、私ってなかよしにれんさいされてたの?なかよし、カードキャプターさくらの?ほんとに?』
「私の筆箱東京ミュウミュウだもん。その……サインって貰えたりします?あ、この、自由帳しか今持ってないんですけどいいですかね?」
『サイン!、?ふてはこ??!!セーラームーンみたいなっ!?』
「私にもわかるように話してもらいたいのだけれど。」

 ルーラーの顔がにやける。まるで自分の読んでいる雑誌に自分が主人公の漫画が連載されていて、しかもそれがアニメ化していると知ったときのようだ。尻尾もふりっふりのぶんぶんである。だがなにかに気づいたかのように、ハッとした顔になった。それと共に尻尾も動きを止める。そしてしばらく難しい顔をして、一度目を閉じて、「よし」と一声出して。ルーラーはまた独り言を書き始めた。

『チョコ、この聖杯戦争から脱出したいんでしょ?私も。』
『私さ、イヤだったんだ、ルーラー。でも、ルーラーがいないとたくさんの人が死ぬことになるって。変だよね、自分達で集めておいて。こんなの殺し合いと一緒なのに。でも、誰にも相談できなかった。』
『私のやってることってさ、誰かを守ることじゃなかったんだよ。私が働くと、それだけ人が死んでくんだって、思うのは、間違ってるのかな?って。』
『だからどうせなら、守るために戦いたいなって。戦うのだってイヤだけど、でも、どうしてもっていうなら、戦いを止めるために。それに、正義の味方がカッコ悪いとこ見せられないからね。』
『みんなを守るヒーローなら、ファンの期待にはこたえなきゃ!』
『って、ちょっと恥ずかしいかな。』
『だから、私はこの聖杯から逃げ出したい、止めたい、終わらせたい!そのために協力してほしいの。』
『……この聖杯戦争にはね、必勝法があるから。』

 そう一気に書き終わると、ルーラーは流れるに任せていた涙を拭った。誰にも見られることのない涙だ。この独り言を始めてから、いやもっと前から、ずっと流れていた涙を拭った。ぎゅうっと誰かに抱き締められる感覚がして、この場にチョコがいなくて良かったと思う。自分のことを思ってくれるファンの前で、カッコ悪い泣き顔なんて見せられないから。もちろんそれに他意はない。ルーラーは公正なのだ。だからルーラーは、みんなのために行動する。

『この聖杯戦争のルールは、「最後の主従になったら優勝」なんだ。いちおうパンフレットに書いてあったらしいから知ってると思うけど、記憶を無くすのが残ってたりいきなり予選に巻き込まれた人もいるらしいから、それで、改めて覚えておいてね』
『でね。この一ヶ月ずっと考えてたんだ。なんとかこのルールを変えられないかって。だけれどダメだったんだ。だからなんか抜け穴とかないかなって探してたら一つあったの。』
『参加者には知らされてないけど、主従ってつまり令呪を持ったマスターとサーヴァントの組み合わせなんだって。そもそも令呪は、召喚したサーヴァントと主従である証で、オリジナルの令呪とは違ってるんだって。』
『……このオリジナルって言葉の意味がわからなかったけど、たぶんこの聖杯戦争は、元となった聖杯戦争があるんだろうなあ。私冬木なんて街知らないもん。淡路島にこんな観光名所あったら少しぐらい聞いたことあるはずなのにね。ていうことは、たぶんどこかの冬木って街がある世界で聖杯戦争をしてたんじゃないかな。』
『脱線しちゃった。で、ようするに、マスターが令呪を全部使うと主従にカウントされなくなるの。てことはさ、参加者が誰か一人以外みんな令呪を使いきれば、それで「最後の主従」ができるんじゃないかなって思うんだけど……』
『ルール上はこれで優勝できるはずなの。そうすれば……街のはしっこにあるお寺の地下のどうくつに聖杯が現れるはずらしいから、それでみんながここから出られるように願えば、大丈夫だと思う。』
『もっと頭のいい人なら、スゴい作戦を思いつくんだろうけど、私じゃこれが限界。』
『でも、この方法なら安全にみんな脱出できると思う。何人か反発しそうな人もいるけど、どういうわけかそういう参加者は知り合いが多いの。説得できるかもしれない。』
『あとはみんながみんなを信頼できれば、成功するはずだよ。』


375 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:57:23 FyVz773U0

 書き終わると、桃宮いちごはなにかを待つように目を閉じて息を吐いた。言いたいことは色々ある。やりたいことも色々ある。だがそれが自分にはできない。だから、誰かに託す。ルーラーとしての振舞いが強制されているとしても、できる範囲でできることはして見せる。この聖杯戦争に巻き込まれた一人の人間として、ヒーローとして、ちょっと格好つけてみる。それが彼女のファンサービス、自分のことを応援する期待には応えねばならない。
 少しして、「わかったよ、いちごちゃん」という空耳が聞こえた気がした。

「あの……アリスさんは……?」
「そう……そんなうまい話はないと思うわ。」
「アリスさん!」
「でも、考えてみる価値はある。」
「じゃあ……」
「一枚噛ませて貰う。でも……驚いた、主催側から接触してくるなんてね。貴女達も一枚岩って訳じゃなさそうね。」
『私も、詳しいことはわからない。たしか上級AIが三人いて、下級AIがいっぱいいるらしいけど、それぐらいしか。連絡もほとんどメールだし。ほんと、なんで私ルーラーなんてやってるんだろう。』
「ルーラーがいる必要性があった……若しくは、ルーラーが反抗するのも織り込み済み……まあ、考えてもわかるとは思えない。とにかく、貴女が知る情報は全て話して貰うわ。」
『もちろんいいよ。でも長くなるよ?さすがにあなたたちがここにいることを誤魔化すのは難しいと思う。ここにいるってことは、NPCの目にうつらないってことだから、注意されちゃうかもしれない。』

 ルーラーは、むう、と難しい顔をまたする。視線をうろうろとテーブルの上にさ迷わせると困った顔でメモ書きを続けた。

『チョコって双子とかいないよね。どういうわけか同じ人が二人に分裂してたし、今から分裂とかできないかな?』
「貴女馬鹿なの?」
『ちょっと!しんらつじゃない!?』
「分身ならできると思うよ。」
「……え、嘘?」
『ほんと?』
「できるよ、ほらリストにも書いてあるし。」
『あ。』
「なんとなく嫌な予感がするわ……」
「ぐう……その、ちょっとおかしくなるけど、でもパッと見ならわかんないと思うよ。」
『今できる?』
「うん、じゃあやってみるね。」

 某所で黒鳥千代子が呪文を唱える。ややあって、魔力の集結と共に黒いゴスロリを着た一人の人間が現れた。

「あ、できた。」
「なんか……うん……」
『どんな感じ?』
「どう、そっくりだろ?」
「パッと見た感じは……ちょっと顔立ちとか口調に違和感があるかな。」
『うわー、すごい見てみたい。』
「なんだよなんだよ〜私に興味あるのか〜?ナハハ。」
「この黒魔法ってどこか変な感じになるから、できれば人前に出したくないんだよね……じゃあえっと、分身の方の私は教会に残ってミュウイチゴから話を聞いて、それで、私のスマホでアリスさんのスマホに連絡して。アリスさんもそれでいいですかね?」
「かまわないわ。」
「私もそれでいいぜ。でもさ、残るの私で良いのか?教会って主催側の場所なんだから、一番安全じゃないの?本体が残った方が良くないか?」
「う……言われてみれば。」
『でもバレない?』
「じゃあ語尾に「だぜ」とか付けないようにして、部屋の隅でじっとしておくよ。あ、それとアリスさん、令呪って書けるかな?分身の私には令呪無いみたいなんだぜ。」
「本当だ!よく気づいたね、分身の私。」
「全体的に分身の方が賢いのね。」
「あと語尾を変えてキャラ付けできなくなったときのことを考えて私にも名前がほしいな。ほら、真名知られると呪われたりするかもしれないじゃん?でさ、黒鳥苺とかどうかな?愛称はみゅうで。あと確かめたいことあるから本屋に行きたいかな。」
「分身の私スゴいしゃべるな!?」
『チョー見たい、声だけ聞いてると独り言言ってるみたいでおもしろいよ。スゴい気になる。』



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


376 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:58:08 FyVz773U0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――2327、小野寺ユウスケは涙を見せずにホテルから教会を目指して移動を始める――



「ルキウゲ・ルキウゲ・ゲットーネ!」

 冬木ハイアットホテル最上階。その一室で美遊・エーデルフェルトは、黒鳥苺と名乗ったゴスロリ少女がサイコロを転がすのを見ていた。テーブルに転がる五つのそれは、一つまた一つと赤い丸を上にして止まる。五つ全てが1を出すと一堂から歓声が上がった。

「どうよ、これが黒魔法です。」
「スゲエ!やってることほとんど手品だけどそれはともかくスゲエ!」
「魔法少女って実在したんだな……あっと、魔女っ子だっけ?」
「そこはやっぱり「黒魔女さん」って呼んでほしいかな。」
「そんなハイカラさんみたいな感じでいいの?」

 やいのやいのとやる高遠と色丞を尻目に、美遊は冷静に目の前で起きた現象を分析する。今の魔術は確かにともすれば手品にも見えるものだ。だがその実、彼女にもなにが起こっているのかわからなかった。これが単に魔力で賽の目を動かしたというのならばわかる。だが、魔力の動きは苺――みゅうと呼んでほしいと初めに言われたが自分の名前と被るのでイヤだ――一人で完結していたように感じた。となると、因果を操作したのだろうか?しかしそれでは、彼女一人でゲイボルグのようなことをしていることになる。それともクロのようなタイプか。
 考える美遊のことなどつゆしらず、黒鳥苺は他の人たちにも挨拶してくると言って部屋を出ていき、高遠と色丞はテレビのニュースを話の種に会話を始めていた。どのテレビ局も、今日一日で起きた冬木の様々な惨状を現地からのレポートやあるいは空撮で取り上げている。その中には美遊がバーサーカーにやらせたものもあった。「こんなことになってんのにルーラーは何やってんだよ」とか「ルーラーって本当にいるのか?」などと話す二人を置いて美遊も部屋を出た。

 今さらだが、やり過ぎた、と思った。まさかバーサーカーがあんな大きなクレーターを造るとは想定外だった。あれとランサーの映像で日本のマスコミは持ちきりである。それどころか冬木に住む外国人にも被害が出ていたため外国のメディアや外交官までこの街に来ている。やらせた彼女は知らないことだか震災と同レベルに捉えられているのだ。凄まじいレベルで大事になっていた。

『ルーラーは動くと思う?』
『動くでしょう。』
『だよね。』

 言葉少なにサファイアと念話すると美遊は自分に割り当てられた部屋へと足早に歩む。表情にこそ出さないものの内心では冷や汗が止まらなかった。
 自分でもわかる。度を越してやり過ぎた。こんな状況でルーラーが動かないなどあり得ないだろう。これですら動かないならルーラーというクラスの存在意義がない。といっても美遊自身ルーラーを見たことはないが、それでも、いわゆる常識的に考えて働くべきシチュエーションではなかろうか。それではいったいなぜルーラーの動きが見えないのかという話になるが、美遊にはうまい理由は思いつかなかった。規模が大きくて調査が難航しているとかだったらまず容疑者を問い詰めにくるだろうし、バーサーカーとランサーのどちらの居場所がわからないなどというのは不自然であるし、まさかルーラーがサボタージュしているというのは無いだろうし、そうなるともうどこかのタイミングで決定的ななにかをしてくるぐらいしか考えられなかった。

『ルーラーが動くとすれば、日付の変わった時、かな。』

 どこかで動くとすれば、やはり一日の終わりであり始まりである零時だろうか。というかそれ以外の時間に当てがない。

『討ちますか?』
『ん……待って。』

 やられる前にやるか。物騒な考えの算段を彼女達がたて始めようとしたところで、一人の男と出くわした。ブロックの氷の入ったビニール袋を提げた真田幸村だ。美遊の表情が僅かに変わる。一瞬足を止めるも、直ぐに足を早め彼に近づいた。

「相談したいことがある。」


377 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:58:41 FyVz773U0


「という訳なのだが、あさしん、どう思う?」
「教会にカルナか……」

 少しして、美遊は幸村とアサシンの二人と話していた。教会の方にランサーらしき反応をバーサーカーが見つけたらしい。彼女が幸村に話したのはこうだ。
 美遊は自分のサーヴァントがバーサーカーであることを利用することとしたのだ。意志疎通に困難があることを理由にあやふやな情報でも追及されにくくするという魂胆である。そしてこの情報を名目にバーサーカーを現地に偵察に向かわせる。それが彼女の現在の目標だ。
 バーサーカーの能力をしても冬木には何ヵ所か観察が困難な場所がある。今現在はルーラーの所在はわかっていないが、となればそれらのどこかにいると見てよいだろう。そうなると情報的にも怪しいのは教会である。もしもを考えて送り込んでおきたいのだ。
 そしてこのためには、絶対にアサシンの了解を取っておきたかった。同じ感知タイプとして、どの程度その能力があるのかを知っておきたい。ここで嘘と疑われるようならリスクを考えて中止しておくのが吉だろう。
 美遊とアサシンが無表情に見つめ合う。少々の間があってアサシンは口を開いた。

「こちらは特に感知できなかったが、そういうことならば儂が教会まで偵察に行こう。」

 乗ってきた。美遊は口が緩まないように奥歯を噛み締めた。

「わかった。他の人達には私から言っておく。ライダーの部屋はどこだっけ。」
「左手の向かいだ。そっちはやっておく。お主は最上階の連中を頼めるか。」
「まかせて。」

 会話を済ませると部屋を出てゆっくりと歩く。これでいい。アサシンは少なくともこちらを泳がせる程度には疑っていない。そして自分から教会へ向かうと言ってくれたのもグッドだ。他の主従からすれば気配を消せるアサシンを自由にさせたいとは思わないはずであり、それならばバーサーカーを向かわせようとするだろう。ましてや相手はあのランサーとなれば、手負いのランサー達やろくなステータスを持たないライダーが出向くはずがない。セイバーもキャスターもいない今、消去法でバーサーカー以外の選択肢はないも同然なのだ。

 数分後、さっきの最上階に二騎のランサーとライダーのサーヴァントである教授、色丞とアサシン、そして美遊達主従が集まった。やはり美遊の予想通り、バーサーカーが教会へ向かうことを提案され、そうなることとなった。提案した教授はカルナとの遭遇戦の可能性を考慮してとのことだが美遊からすればどうでもよい。ようはバーサーカーを教会へ向かわせられれば良いのだ。

「それでは美遊殿、ばぁさぁかぁ殿、御願い致す。」
「うん。あと、帰りにかき氷機も買ってくるね。」

 バーサーカーを動かす段になってかしこまってきた幸村にそう耳打ちすると、幸村はさらにかしこまった。美遊がさっき幸村に話しかけたのはアサシンと親しいという理由だけでもタイミングよく廻り合ったからだけでもない。この『かき氷』が使えると踏んだからであった。
 実はバーサーカーのマスターである日野茜は黒鳥苺がマジックを披露した少し前からベッドルームに籠っていたのだが、彼女はそれを見逃していなかった。幸村からは仮眠との説明を受けたが、彼女の具合が悪いことは察せられた。もちろん弱味を見せないために本当のことは言わないだろうが、そんなマスターを持つ彼が氷など持っていたらこれはもう熱なりなんなりを疑うほかない。そこで話し掛けたところ、幸村はしどろもどろになりながらかき氷を作ると言い出した。ではその嘘に一つ乗ってあげようではないか、というのが美遊の謀略である。これで彼は多少なりとも自分に話を合わせるだろう……そのあたり下手そうではあるが。

「行って、バーサーカー。」

 とにかくこれでバーサーカーを教会へ向かわせられる。少しでもルーラーが余計なことをしたら殺せる状況に一歩近づいた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


378 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/15(月) 23:59:18 FyVz773U0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――0001、アリシア・メルキオットはホテルの地下の基盤のコンクリートの上で吸血鬼達に取り押さえられる――



「なんだよこれからようやく1939年だってのに。てかそれだけならランサーだけで良かっただろ。」
「まあ待ちたまえ、独ソ戦マルチは逃げないよ。それに、君は着いてきただろう?」

 通常であればホテルの宿泊客はおろか従業員でさえも立ち入ることが無いであろうホテルの地下の基盤部分。コンクリの床と柱と所々にある耐震装備が目立つそこに、ランサーのサーヴァントのアリシア・メルキオットとそのマスターのいおりはライダー達により呼び出されていた。


 美遊がバーサーカーを教会へ向かわせることを、たまり場となっているあの部屋で聞き、それを与えられた部屋にいるいおりへと伝えに行って少ししてからのことだ、ライダーからここへと呼ばれたのは。といってもアリシア本人はイマイチ状況が読めていない。

「なんだ……?」

 そう部屋に備え付けられたパソコンに向かって呟いたいおりの声に反応して、アリシアも画面を除きこんでそのメッセージを見つけたからだ。

「話がある……か。HoIの話って訳じゃなさそうだな。」

 いおりは、パソコンを使ってライダーとのボードゲームに興じていた。アリシアにはそれが卓上演習に近いものとしか認識はできなかったが、どうやらそれには郵便の機能もあるようだ。画面の端にライダーからと思わしき文字が書かれている。こんなゲームにまで手紙を書けるようにするとは世界は大きく変わったものだ、などと我ながら田舎者っぽい感想だなあなんて思いながら、その文字に込められた意味を理解しようとした。
 文章の内容はなんてことのない、ロビーに降りてきて准尉と合流して、一緒に来てほしいと言ったものだ。ただ気になるところは、あの場で伝えずゲームを介して伝えたことである。

「秘密外交ってわけか。」

 いおりはそう言うと、「OK」とだけ返した。画面が切り替わる。どうやら、ゲームは終わったらしい。

「いいの?」
「まあ……もしもの時は頼りにしてる。」

 そう言うといおりは側に置いておいた鍵をポケットへと捩じ込んだのだ。


 そして今、アリシアは人知れぬ地下でライダー達と対面している。頭の中に聞き覚えの無い少女の声を聞きながら、待つ。いおりは先程伝令として上階へと向かった。ここにいるのは自分を除いてライダー本人と教授、そして准尉。そういえばこの三人をいっぺんに見るのは初めてだったな、とぼんやり思ったところで、ライダーは話始めた。

「さて、本題だ。」

 そして徐に拳銃を取り出してアリシアが止める間もなく。

 一発の銃弾を自分の腹へと放った。

「――そうか、令呪か。」

 二発目の銃弾がライダーの心臓を抉る。誰も、動けない。

「なるほど、これは最高に――」

 三発目の銃弾がライダーの頭蓋に突き刺さり。

「気にくわない。」

 そしてライダーの腕光と共にが降り下ろされて。

 そこに奇跡が起きた。

 怪しい光と共に現れるサーヴァント。響く軍靴の音。たちこめる異様な気配。倒れる少佐。誰かの叫び声。ざわめき。広まる。唖然とするアリシアにはお構いなしに、呼び出された吸血鬼達に一斉にかかられて取り押さえられる。身体中の骨が折れる音を聞きながらただただ困惑するばかりであった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


379 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/16(火) 00:00:05 cOQN2qfM0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――――0003、千手扉間は予想外の爆風に戸惑う――



(行ったか。)

 割り当てられた三十三階、スイートの一室。座禅を組み神経を集中させていたアサシン・千手扉間は、ホテルから霊体化して離れていくバーサーカーのチャクラを感じ取ると更に意識を集中させた。

 美遊からカルナ察知の相談をされて以来、扉間はバーサーカー主従の動きに注意を払っていた。扉間には半ば確信があったのだ、美遊達がなにか仕掛ける気であると。
 きっかけは、美遊の嘘である。扉間は自分の感知には自信がある。もし自分が霊体化して更に気配を消していても勘づけるレベルで、このホテルに来てからは気を張っていた。このホテルの人間がカルナと通じている可能性がある以上、それは当然の備えであり、特にカルナのチャクラは細心の注意を持って捜索していた。故に、教会にカルナがいたなどというのは嘘とわかる。
 だが問題は、なぜ美遊が嘘をついたかだ。教会へバーサーカーを向かわせることが目的か、それは前段階で真の目的は別にあるのか。そもそもバーサーカーの感知の方法もわからぬ以上単なる誤認というのもあり得る。そして自分が橋で戦ったバーサーカーのマスターに成り済ましたように、誰かがカルナに成り済ましている可能性もあった。そしてその場合は、対カルナで共闘できる可能性も……
 それらもろもろを考えた結果、扉間はバーサーカーを教会へ向かわせることとした。一応美遊の手前自分が行くとは言ったが、もちろんその気もなければそうなるとも思っていない。今のホテルにいるサーヴァントで二人しかいない感知能力持ちの片方が、もう片方で気配も消せる方を外に行かせようとすれば、警戒されるに決まっている。これではいそうですかと行かせよとする人間はよほどの馬鹿か狂人だ――もっともあのライダーなら進んで自分を行かせかねないという一抹の不安はあったが。

 ともかく無事バーサーカーが教会へ向かうこととなり、扉間はそれを監視する展開となった。ここまでは扉間が読んでいた展開である。だがその事に安堵する間もなく、絶体絶命の苦境に立たされることになるなど、このあと三十分も経たずにそうなるなど、全く予想だにしていなかったのだ。



(来客か。この感じ、セイバーのマスターの黒鳥苺だったな。)

 バーサーカーは教会まで一キロほどの距離で接近を止めると、徘徊を始めていた。周囲を捜索しているのだろう、とその動きの理由を考察しているところに、扉間の網に一つの反応。部屋の玄関とも言える扉が開き、黒鳥苺が入ってきたのだ。扉間は知らぬことだが、黒鳥苺はホテルにいち早く溶け込もうと他のマスター、特に同年代のマスターを中心に挨拶回りをしていた。同じ学年の美遊に聖杯戦争への覚悟と精神年齢と教養から軽くあしらわれた彼女は、ついで年の近そうな扉間のマスターの九重りんの所へ来たのだ。ちなみに黒鳥苺は黒鳥千代子の分身である。

「よう九重!ここのえだっけ?まあいいや、遊びに来たぜ!」

 一声で、(あ、こいつ馬鹿だ)と内心で思ったが、集中を乱してはいかぬと扉間はバーサーカーへ注目する。「りんって名前の人と今日はよく会うな〜。実はさ、私深山町の方から来たじゃんそれでそっちにも遠坂凜って人がいて――」などと捲し立てる声が聞こえたが、扉間はそのチャクラだけに集中する。次第に声は気にならなくなっていった。気配感知の網はバーサーカーに偏重しているが美遊やみゅう(改めて考えるとなんでこんな愛称で被るんだ)やりんの気配を押さえておく程度は造作ない。心を読むまでには至らぬがそれでもその所作は壁を隔てていようともわかるものだ。


380 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/16(火) 00:00:41 cOQN2qfM0


 故に、隣の部屋から鈍い音がしたとき、扉間は一瞬何が起こったのかわからなかった。


「なんだ、マスター、何があった?」


 音がして一秒と経たずに駆けつけた、はずだ。しかしその場の光景は扉間の予想とは違っていた。あるはずのものがいない。解!と幻術を解いてみても状況は変わらない。故に聞いてしまう。

「黒鳥苺……みゅうはどうした?」

 あの少女のチャクラは常に感知していた。故に、あの音の前後に特に目立ったなにかをしたとは考えられない。立ち振舞いも精々下忍程度のあれが室内に隠れていたところで火影たる自分が見逃すはずもない。しかし瞬身なり口寄せなりをしたとも思えない。ではなぜ、なぜ黒鳥苺は消えたのか?
 今いる部屋を含めた付近に焦点を当てて感知していく。しかし気配のけの字もない。そこでりんから話を聞き出そうとして、ようやく異変に気づいた。

 りんは、固まっていた。物理的にだけではない。ともすればこの距離でも感じ取れなくなってしまいそうなほどに、気配が静止していた。
 扉間は、この目をしたものを知っていた。戦災孤児の目だ。心が死んでいる。まるで幻術にでもかけられたかのようであった。何があったか聞き出そうとして幻術をかけようにも、これではうまく決まらない、とりんの頭に手を置きチャクラを流し込みながら思った。

「消えた。」

 ポツリと、唐突にりんは声を発した。その姿は傀儡のようであった。「そうか」と扉間は返した。

「どうしたら消えた。」
「突き飛ばしたら消えた。」
「なぜ突き飛ばした?」
「お母さんのことを悪く言われたから。」

 「そうか」と扉間は言うと。りんに顔を洗うように指示を出す。こくん、と頷き素直に化粧室へと向かうため部屋から出ていったのを確認して、扉間は頭を抱えた。

 端的に言ってもう終わりである。

 恐らく子供のけんかのようなことが起こったのだろうが、状況と結果が最悪だ。おもいっきり仲間割れである、反逆である裏切り者である。というか結局黒鳥苺はどこに行ったのか。まさか分身だったという幸運な展開だろうか。その場合、黒鳥苺は死んでおらず、りんが殺そうとしたという情報だけが本体へ行く。じゃあやっぱり本人で最後の力を使って扉間にもわからぬ方法で逃げたという可能性もあるが、それもそんなやべー奴を敵に回したということで、つまりもうダメダメって感じである。
 というか、キャスターや教授の陣地中で殺ってしまった以上、隠しようも誤魔化しようもないのではないか?という嫌な発想が浮かぶ。それよりも、セイバーにはもうバレているのではないかという恐れもある。

 顔を洗って戻ってきたりんを適当にタオルで拭き、頭の中に響く自称ルーラーの声を聞きながら、扉間、迷走。
 色々考えたがどうにもにっちもさっちもいかない。そうこうしている間にセイバーはホテルに戻りつつある。一秒ごとに生き残れる可能性が潰えていくのを感じ、明らかにテンパった表情を浮かべる扉間だが事態を打開する名案など何も思い浮かばない。

 そしてついには、扉間の視界は真っ暗になった。


381 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/16(火) 00:01:26 cOQN2qfM0



(ようは全員殺せばよいのだ!!)



 ここで扉間、逆転の発想。誤魔化せないのなら、殺せばよい。殺っちゃったことはしかたない、殺り遂げようという発想である。

(黒暗行の術を使う手間が省けた。)

 この時の扉間は知らぬことだが、彼が監視していたバーサーカーが教会を消し飛ばした余波で起きた停電は、彼に活路を与えた。音も立てずに速やかに走り出す。第一の標的は、向かいの部屋のライダーのマスター。まずはこいつを殺す。チャクラの感じからして子供なので殺すのは簡単だ。そしてこいつを殺すと連鎖的にライダーが死にそのサーヴァントの教授も死ぬだろう。これでまず一つ陣地を無力感する。
 停電に戸惑う幼女を見つけると一気にチャクラを流し込み幻術を仕掛ける。目撃者は皆殺す気なのだ、この際全力で行く。令呪を使ってライダーを自害させるように指示すると簡単に従った。それでいい。これでまず一組。次は色丞と美遊だ、と移動を開始しようとしたところで、アサシンははたと気づいた。目の前には、令呪のショックで昏倒した幼女。もったいない、そう思った。

(マスター同士ならNPCよりは良いだろう。囮役には最適だ。)

 口寄せ・穢土転生。使うのならば、今でなければいつだというのだ。
 甦らせるは、三谷亘。棺桶からふらりと現れたそれの頭に起爆札をぶちこむと黙って部屋から出てエレベーターを探してそちらに向かうよう指示を出す。これでよい。幸いにも色丞と美遊は一団となって行動している。日野茜やマイケルも行動を共にしているようだが、この際めんどくさいので全員死んでもらうことにしよう。ついでにエレベーター近くにいる高遠も殺せると良いのだが、まあそれは天に祈るしかない。

「――問題ない。俺の言う通りにすれば、なにもな。」

 部屋を出てから十五秒後、扉間はりんのもとへと戻っていた。セイバー、キャスター、バーサーカーはいずれもこちらに戻りつつあるが、問題ない。あと一分でそいつらのマスターを皆殺しにする。穢土転生による爆弾にはなれているのだ、それが子供であるからといってしくじるような真似はしない。爆破のタイミングに合わせて水遁で防ぎ、りんを連れて脱出する。これが考えうるなかでは最上とは言えぬがほどほどの良策である。

 扉間はりんを連れてエレベーターへと向かう。さすがに、自分達だけ行かないのは怪しまれるだろう。少しは爆発に巻き込まれる必要がある。それに、少し冷静になるとホテルを駆け上がってくる大勢のチャクラが気になった。状況的には、ライダーの置き土産か。無駄な足掻きだが厄介だ。
 そうこうしているうちに、穢土転生で甦らせた三谷亘がその場に近づいてきた。うっかり令呪のついた腕を置いてきてしまい少しもったいない気もしたが、しかたない。あの令呪で雷管代わりとしよう。多少爆破の威力が強まるが、まあ誤差である。

「サーヴァントではないようだが……離れていろ。」

 そう言うとしれっと距離をとる。これでよい。ついでに手負いの幸村も殺しておこう。そう思い、密やかにチャクラを練り。

(子供でやるのは久々だが――喝!)

 そして扉間の計画通り、ホテルに爆炎が起こった。

(水遁・水障壁!!)

 吹き飛ぶ人間達には目もくれず、襲い来る熱風を水遁で防ぐ。だがチャクラが足りない。幻術と穢土転生で既に空だ。しかも爆風が予想より明らかにデカイ。

(ぬ、ぬかった!)

 あわてて近くを流れる水道管から水を引っ張ってきてなんとか誤魔化す。既に連れていたりんが衝撃で気絶しているが、まあ誤差である。なんとか炎を耐えきり、生き残っている連中をどうするかと考えながら息を吐く。とにかく、第一目標は達成されたのだ。あとはどさくさに紛れて逃げようがとどめを刺そうが自由である。そう思って足を一歩踏み出し、ホテルに爆炎が起こった。

(なぜ二回も――ぐおおおお!」

 とっさにりんを水牢の術で覆いながら、扉間、再度混乱。窓の外を一人の人間が落下するのに気づく余裕は全くない。

(やりやがったな……何が同盟だ!)

 毒づきながら落下していくその男。すっかり影が薄くなっていた、アーチャーのワイルド・ドッグ。二度目の爆破は彼のものであった。
 彼の代名詞とも言える爆破スキルは、マスターがいなくなってはじめて使える。彼としてはマスターを謀殺するような輩と同じ場所にいたいなどとは全く思わない。故に、いつものスイッチでいつも通り爆破して逃げることにしたのだ。もちろん扉間はそんなことは知らないが。


 爆破の衝撃から立ち直った頃には、周囲をサーヴァントの集団に囲まれている。扉間は両手を上げて床に伏せるしかない。冷たい床の感触が印象的であった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


382 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/16(火) 00:02:55 cOQN2qfM0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 ――0149、九重りんは自らに油を駆け火をつける――



「だから!なんで私が犯人なんですか!!」
「偶然病院で爆弾騒ぎに巻き込まれてまた偶然ホテルで爆破事件があったから。」
「割りと良く爆弾って見つかるじゃないですか!冤罪ですよ!!」
「偶然も二つ続けば必然。もう言い逃れはできない。」


 そして現在、第三陣のマスター達の犯人探しは佳境に入っていた。
 というか、色丞や高遠といったまともなマスターは、みなカルナ戦で令呪を使いぶっ倒れている。かくいう日野茜も先程ついに令呪を使い、やはり立っていられない状況だ。だがそれだけではない、脳出血でろれつも怪しくなってきておる。

「なぜなら、あなたと一緒にいた九重りんがさっき死んだから。」

 美遊の言葉に、茜は張り上げていた反論の声を止める。その様子を見て、美遊はここでけりをつけることを決めた。

 つい数分前のことだ、九重りんが焼身自殺を試みたのは。というか美遊がやらせたといえばやらせたのかもしれない。アサシンが犯人ということにできないかと思い、サファイアを用いて彼女に暗示をかけて火事の一つも起こさせようとしていたら突発的に自身に火をつけたのだ。いくらサファイアの暗示とはいえそんなお気楽に人一人殺せるものでないことは美遊もわかっていたためドン引きしているが、こうなったらもう茜に罪を擦り付けるしかない。りんが焼身自殺しようとしたそのとき、近くにいて動けたのは茜と美遊しかいなかったので、どうあがいてもこの二人が凄まじく怪しい状況であった。

 美遊は唾を飲む。先程、カルナ撃破と教授から知らされた。これはヤバイ。かなりヤバイ。そう思い焦って暗示をかけようとしたらああなったのでどうしようもないのだが、やはりヤバイ。ここでなんとか彼女を犯人にしたい。

「貴女は彼女の仲間だったはず。なら、自殺の兆候もわかったはず。それなのに貴女は止めなかった。これは、紛れもなく、殺人。」
「そ、それは!それは……」
「貴女を犯人です。」

 無茶苦茶言ってるな、と美遊もサファイアもなんなら周りにいる吸血鬼もみんな思ってるが、誰も指摘しない。これで落ちるようならまあそれはそれでよいのだ。彼女を犯人扱いすることで真犯人の反応を見たいと言うのが教授達の考えだが、美遊からすればそんなことはどうでもよい。ここで仕留めないと自分用ヤバイのだ。

 かくしてホテルの同盟は一気に空中分解する。日野茜の病状が悪化し危篤状態となったのはこれから少ししてのことである。


383 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/16(火) 00:03:33 cOQN2qfM0
投下終了です


384 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/17(水) 01:52:07 9r/6i7Us0
タイトル忘れていましたが
【100】セキガハラ・オブ・ザ・デッド――着火と消火
です
なお全キャラの状態は次回以降の投下話で確定するものとします


385 : 名無しさん :2017/05/20(土) 03:52:19 .70OEBDA0
投下乙
しばらく見ないうちにかなり状況が動いてるなー
卑劣様…


386 : ◆g/.2gmlFnw :2017/05/21(日) 23:59:17 ysCzmEcs0
御感想を頂き大変嬉しく思います
この企画もいよいよ終盤に差し掛かりましたが、最後までお付き合い頂ければ幸いです


387 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 12:55:49 IvRVNRvo0
投下します


388 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 12:57:16 IvRVNRvo0



 まず困惑である。次が現状確認、支持、分析だ。そして洗面所で顔を洗う。目の裏に映る映像を見ながらコーヒーの匂いを嗅ぎ付けて、喫茶店部分へと足を向けた頃にはクロノ・ハラオウンは方針を固めていた。

 ここは、深山町の商店街にある『翠屋』。クロノ主従の本拠地であり同盟の本陣でもあるその場所には、今は一人と一騎しかいない。その代わりと言ってはなんだが、テーブルのおよそすべてには新聞や印刷された資料が置かれ、テレビは数分前までNHKがかれこれ数時間は流れるに任されている。そして本来は店の外に出してメニューなどが書かれていた黒板は、地図と写真とチョークの書き込みで好き放題に彩られていた。
 今より数時間前、無事チョコ達を護送した後、彼らは情報の収集に当たっていた。派手なものではなかった。最低限のエリアサーチを除いては、誰にでもできることだ。所謂ヒューミントである。新聞、ラジオ、テレビ、そしてネット、それらを手分けしてそれぞれに調べる。そういったメディアが主要な情報元となるほどこの聖杯戦争の情報は公のものとなっていた。誰かがサーヴァントやその戦闘による被害を動画といった形でネットへ上げ、それが話題になり、他のメディアでも取り上げられ、更に加速する。開戦より一日足らずで、国が介入するまでになっていた。
 クロノは、まとめた情報を睨んだ。その集まった情報ではなく、集まったという事実を考える。この聖杯戦争の世界では、少なくとも表向きは魔術といったものは存在しない。故にルーラーがその露呈を防いでいるものと見ていた。しかし、クロノにはわからなかった。これ程までに大事になると、ルーラーが機能していないとしか思えないからだ。集めた情報の質と量を考えると、自分一人がルーラーの立場だと仮定して考えても、もっと巧く隠蔽工作ができる。このルーラーは簡単な認識阻害の一つもできないと結論づけねばならないほどに、無能であった。そして、クロノはルーラーのサボタージュも真剣に考慮した。その目的は不明だが、ルーラーが意図的に事態の収拾ではなく混乱を喚起している可能性もある、と。そしてもう一つ、クロノには気になることがあった。柳洞寺に行った前後で、一部のNPCの動きに明確な差が発生していたことに気づいたのだ。その一部のNPCとは、魔力を持つNPCである。クロノが把握しているのは十数人程度だが、それぞれに使い魔を放ったり一所へ集まったりしているのを見るに、土着の魔術師役の彼らもなんらかの行動を取っているのは確実であった。これをどう解釈すべきか、クロノには直ぐには結論を出すことができなかった。そして、今も。

 クロノは、携帯を取るとチョコへとかけた。やはり、出ない。視線がライダー――五代雄介――と交わった。

 情報収集を終え小一時間の仮眠を取り、日付が変わるタイミングでルーラーがなにか行動を起こすのではと身構えていた所に起きた、ルーラーからの通達、そして停電と共に中断、更に冬木ハイアットホテルの二度の爆破。誰かがこの戦いを終わらせるために動いたと、クロノはそう思った。
 ライダーの千里眼で確認したところ、教会は跡形も無くなり、あの黒いバーサーカーがホテルの方角へ移動し、その矢先にホテルの最上階付近が爆発炎上した。その事実をクロノはライダーの煎れたコーヒーと共に咀嚼する。察せられるのはシンプルなストーリーだ。何者かが教会で念話による放送を行っていたルーラーを暗殺し、それと呼応してホテルの同盟を奇襲した。こう見てほぼ間違いなかろう。もっと突っ込んで考えれば、あの黒いバーサーカー主従がホテルの同盟を裏切った、と考えるべきか。だが、ことはそう単純ではないと脳内シナプスのどこかが警告するのも、聴こえた。

 とにかく、一つわかったことがある。それはチョコこと黒鳥千代子が死亡した可能性が高いということであり、ホテルの同盟が無力化されたと考えるべきであり、カルナの脅威に対抗する能力が大幅に弱体化したということである。

「五代さん、遠坂さんの方をお願いします。」

 そう言うと、クロノは再び電話をかけた。だが、今度の相手は違った。この電話に先方が出る確率は、高く見積もって四割。それでもこの電話が繋がらなければ、自分達に未来はないと。


389 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 12:58:31 IvRVNRvo0



「わかった、じゃあ間桐邸で。」

 そう言って電話を切った遠坂凛の元にセイバー――アルトリア・ペンドラゴン――が戻ってきたのは、あの停電から五分ほど経ってのことである。やや重くなってきた瞼をコークで覚醒させると、共に外出の準備を始めた。

 翠屋から帰宅後、凛はセイバーに警備とテレビニュースのザッピングを任せると、人形《ドール》の仕上げに取り掛かっていた。それは戦力の強化が目的であるが、ここに来て大きく重要度が増していたために最優先に行わねばならないと判断したのだ。なぜなら、クロノ達との同盟の破棄――より正確にはクロノ暗殺を視野に入れていたから。
 クロノはこの聖杯戦争において最も現実的な脅威の一つである、凛はそう考えていた。荒らし回っているカルナや、消極的ながらも一応は戦う気のあるテレサ主従であれば、その行動に一応の予想はつく。間桐達の同盟もそうだ、日和見主義的ではあるがプレイヤーとしての立場で動いている。しかしクロノは違う。あの男の動きは読めない。どこを見ているのかも何をしてくるのかもわからない相手と付き合うのは重大なリスクだ、と凛は評価していた。なんならカルナ辺りと適当に相討ちになってくれればいいのに、と。
 しかし状況が変わった。
 ルーラーすら闇討ちするような手合いがこの聖杯戦争にはいるのだ、ここはもうクロノがどうなどと考えるよりも自身の防衛体制を整えることが先決である。チョコにかけても繋がらない電話に危機感を抱いた彼女はそう判断を下すと、当面はクロノとの同盟を堅持する方針を選択した。あのセイバーを有していながらも脱落するのだ、騎士王を有するこちらとていつ同じように消し炭にされるかわかったものではない。下手人たる美遊・エーデルフェルトとバーサーカー――小野寺ユウスケ――、九重りんとアサシン――千手扉間――らの事情などつゆほども知らない凛はそんな危機感から、ライダーの間桐邸で落ち合うという提案を受け入れた。
 ――彼女からすれば正直なところ、討伐令のようなものを出されていたイリヤを擁する間桐の同盟との合流には若干の抵抗はあったが、妥協することとした。背に腹は変えられない。それに、ルーラーが死んだ、ないし行動不能と思われる現在においては、行動を共にしても主催者側からの横槍はそう簡単には来ないだろうとの楽観があった。ただ彼女が一つミスをしていたとすれば――

「バーサーカーではなくランサーとはね……正体を隠すスキルか宝具か、それとも……」
「まさかあれが演技だったとは、にわかには信じられません。」

 凛はイリヤのバーサーカーをランサーのカルナと誤認していた。ルーラーの途中で中断された放送、それに呼ばれたイリヤとランサー・カルナの組み合わせを、『ランサー・カルナのマスターもイリヤで、同姓同名のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが二人いる』のではなく、『カルナが二人いて、自称バーサーカーは本当はランサーである』と解釈したのだ。
 マスターのあんな長ったらしい名前で被るよりかは秘匿されていた真名が偶然か故意にか被った、セイバーが剣を隠したり限定的ながらもステルスができるようにあの自称バーサーカーもできる、実は五代と黒いバーサーカーのように一人しかいないはずの人間がなんらかの事情で二人になっているのではないか、と。そういう意味では凛は素直であった。

 勘違いに気づかぬまま、凛は支度を終え、最後に人形を鞄に入らせる。単純な身体能力ならセイバーと同等のスペックのそれは取り敢えず一体完成していた。燃費や諸々の事情でリミッターを掛けて最大でもBランク程度の性能に留めたが、使い捨てる局面が来たならばリミッターを外すことも考慮している。他の数体の人形は調整が間に合わなかったので精々Eランクといったものだが、なにかあればあちらの屋敷にまで呼び寄せよう。そう算段をつけると彼女はセイバーを伴って部屋を出ていった。

 同盟相手達は皆信用できず、そもそも聖杯戦争が続くかもわからない。そうだとしても、勝利を目指して突き進む以外に道はない。これまでに、彼女が未来を託せる人間にはついぞ出会わなかった。ならば、遠坂凛がやるしかない。それに、凛もここに死にに来たのではないのだ。自分がここに立つために捨て石になった者のためにも辿り着かねばならない。凛はスマホを手に取ると間桐慎二へとかけた。


390 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:03:23 IvRVNRvo0



「いやあ磐石過ぎて怖いなあ〜聖杯戦争に愛されすぎぃ!」
(なんと愚かな。)

 もうすぐあの偽遠坂が自分を頼ってやって来る。翠屋の連中もホテルの連中も自分抜きには動けない。そう夢想して慎二が自室で高笑いするのを、キャスター――"乙女座の"フドウ――は地下で瞑想しながら聞いていた。
 キャスターの鎮座するそこ、蟲蔵は、本来なら犇めいているはずの蟲達は一匹たりともおらず、リフォームされるがままだ。蟲は間桐慎二の資産とはカウントされなかったのだが慎二にとってはどうでもよいことだった。それよりは、キャスターの陣地構築のスペースとなる方が重要である。陰気の極みといったそこは僅か数時間で数百年の時を経た寺のごとく静謐な空間へと変わり、霊地ということもあり慎二から体力という形で徴収される魔力もまた減っていた。

(負ける気がしないなあ……!)

 そして、慎二は調子に乗っていた。
 聖杯戦争開幕初日である昨日一日を振り返って、慎二はこれ満足といった顔である。
 一月かけて行われる戦いの第一日目にして、十組を越える主従の情報が手に入り、幾人ものマスターとサーヴァントを従えている。こんなことはなかなかできることではない。どう見ても主人公である。才色兼備に加えてこの優位性に、更に高僧をサーヴァントとして従える。他のマスター達にごめんなさいと謝りたいぐらいに圧倒的な強さだ、と阿呆なことを本気も本気で考えていた。それがひしひしとキャスターに伝わってくるのだが、しかし諌めようなどとはキャスターは考えていなかった。分不相応な力を凡夫が持てばああもなろうと、どこぞの英雄王が道化を見るのとほぼ同じ視線で見ていた。
 キャスターは意識を屋敷の中にいるアーチャーとのび太へと向ける。彼としては、こちらの二人の方が好感が持てる。特にのび太は良い。慎二より更に矮小な匹夫ではあるが、しかし匹夫であることを自覚している。生地獄を味わうぐらいならば救済を、とも考えたが、あれは修羅の如く前へと進もうとするだろう。あの年で元からその境地に立っていたのかそれともサーヴァントを失ったことで目覚めたのかは不明だが、叶うのならばその歩く道が見たい、そうキャスターには思えた。

 聖杯戦争の盤面は大きく動いている。ルーラーは襲われ、ホテルでは死人が出て、そして今キャスター主従の手には多くの手札がある。このまま同盟を発展させるのかそれとも。優勝を目指すのかそれとも。必勝法に乗るのかそれとも。カルナを討つのかそれとも。そして、聖杯戦争はこれからも続くのか、それとも……


 思考を巡らせている間に外からバイクのエンジン音が聞こえてくることにキャスターは気がついた。そして気持ちも切り替える。

「マスター、セイバー主従が到着したようです。」
「うん、わかった。出迎えてあげないとね。キャスター、アーチャー達も呼んどいてよ。」
「はっ……」

 キャスターは静かに霊体化する。慎二がこのまま餓鬼のようなままで抱えた物に押し潰されていくのか、それとも凡夫なりに成長し前へと進むのか、見定めたい。そう思って。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


391 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:04:16 IvRVNRvo0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



(クソオオオォォォォォ!!なんで、なんで人の家で焼身自殺なんかするんだよっ!しかも、よりによって!僕の家でっ!!)

 約二時間後、自室のベッドに八つ当たりする慎二の姿が間桐邸にあった。

 いったい彼がなぜそのように悶絶しているのか。それを説明するにはこの空白の二時間――正確には一時間四八分だが、それは話の本筋に関係無いのでここでは二時間とさせていただく――について話さねばならないのだが、起こったこと全てを話すとなると冗長が過ぎるのでかいつまんで箇条書きで説明させてもらうことを許してもらいたい。なにせアーチャー・赤城とのび太とライダーと慎二のマリオカート対決や遠坂凛とアリスの人形談義について知りたいという方はごくごく少数であろうしそれは慎二が声を圧し殺して呻いていることとは直接関係はしないからである。というわけで、じゃあなんで慎二はジタバタしてるんだよ、というもっともな疑問にお答えしたい。



1.日付が変わるタイミングで色々起こったので翠屋と間桐邸の二つの同盟で一度集まることとなり、野比のび太とアーチャー――安藤まほろ――を受け入れていた間桐邸にクロノ主従と遠坂主従が合流する。その後アリス・マーガトロイド&アーチャー主従も合流し、善後策を話したりイリヤ主従はどこに行ったのかという話になったりルーラー死んだんじゃね?という話をしたりする。

2.四組+αで話しているところにホテルの同盟から連絡があり、カルナから避難してそちらと合流したいと申し出がなされる。慎二達はこれを受け入れ、ホテルの同盟からマスター五人――内訳は、日野茜、高遠いおり、色丞狂介、九重りん、美遊・エーデルフェルト――と吸血鬼四十余名――内訳は、教授、シュレディンガー准尉、大尉、他最後の大隊隸下約一個小隊ほど――が間桐邸に合流する。

3.合計してマスター十人サーヴァント五騎吸血鬼数十人となり合流の時にゴタゴタしている間にマスターの一人の九重りんが突如自分の身体にアロマオイルを掛け焼身自殺を試みる。



 以上のようなことがこの二時間の間に起こったことである。特に問題は3だ。三つの同盟が合流したのはつい十分も経っていない先程のことである。その数分と言って良い僅かな間に大きなアクシデントが起こってしまった。

 慎二は思い切り枕を殴り付けたのを最後にベッドから起き上がる。これから全マスター、もとい令呪による体調不良などで話せない狂介以外のホテルの同盟のマスターを除いたマスター全員で話し合いが行われるのだ。その議題は多岐にわたる。カルナとの戦闘について、ホテルで何が起きたかについて、りんの自殺未遂について、ルーラーとその放送について、そして互いの様々な情報について。特にカルナは今も戦闘が行われているのだ、派兵を求めるホテル側は早急な会談を求めていた。

『キャスター!陣地は使えるんだよなあっ!』
『もちろん。』

 慎二は会談の場所にキャスターの陣地を選んでいた。それは単純にサーヴァントの宝具を打ち込まれることを恐れたからだ。同盟の盟主としてある程度のリスクを受け入れる覚悟をクロノ達と合流するときは決めていたが、今やそんなものはとっくに捨てていた。ホテルの同盟から聞かされたカルナの威力の体験や二度の爆破の情報は、すっかり慎二の方針を籠城へと傾けたのだ。本当なら、彼としては一刻も早く冬木市から脱出したいくらいなのではあるが、もちろんそんなことはできない上に冬木市内を移動するのにも様々な混乱が予想される、それならばキャスターの陣地で防御を固めよう、という魂胆である。仮にもキャスターの陣地ならばあの隕石のような宝具が飛んできても耐えられると信じたい、それが慎二の本音であった。

「うおっ!?な、なんだアリスか、驚かすなよ……」
「あらごめんなさい。少し話したいことがあって。」
「それって今話さなくちゃいけないことなんだろうな?」

 部屋を出たところで待ち構えていたアリスに慎二は驚いた。実は彼女はずっと前からそこにいたのだが、当然アリスもキャスターもそんなことは伝えるわけがない。全く心のこもっていない謝罪を一つすると、アリスは話始めた。

「良いニュースと悪いニュースがある……良いニュースは、チョコのセイバーと真田幸村がカルナを撃退した。カルナは逃げたようね。」
「それは本当か!?ははっ、なんだそうか!いや、どうせなら悪いニュースから聞きたかったけど、まあ良いや。そうだよあっちにはサーヴァント六騎に吸血鬼がウン百人だろ?まあそうなるのも当然かな。」
「じゃあ、悪いニュース……カルナは深山側、つまり私達の方に逃げ込んでくるわ。」
「ふざけるなっ!!」

 慎二は口から泡を飛ばした。


392 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:05:43 IvRVNRvo0



「ですのでまずは凛さ……九重りんさんの治療を優先すべきです。」
「反対ね。カルナは既にこちらに接近している。もう間もなく川を越えるわ、まずはそちらの対応をすべきでしょ。」
「僕もアリスに賛成だ。だいたい、いくら僕のキャスターの陣地があるからって過信しないでくれよ。このままじゃみんなまとめて全滅だ。」
「治療するのは私ですし、どっちが先でも良いですよ?どのみちオペ中は皆さんにカルナの足止めをお願いしますから。」
「りんちゃんもだけど、いおりちゃんと茜ちゃんも意識がないって本当なのか、教授?」

 クロノにアリス、慎二に教授、そして狂介が言い争うのは、間桐邸地下にある蟲蔵に設けられたフドウの陣地。処女宮に比べればあばら屋同然ではあるが小さな花が一面に咲くその穏やかな空間で、狂介達マスターは穏やかではない口論をしていた。即ち、カルナ迎撃と傷病者の治療、どちらを優先するかである。
 新都での決戦により深手を負ったらしいカルナは現在西進しており、その進路上に間桐邸があるというのがアリスからもたらされた情報である。もちろんカルナの動きは内通者である美遊の手引きであるのだが、当然そのことを知らぬ一同は、その動きへの対応と解釈を必要としていた。そして同時に、つい先程起こった九重りんの自殺未遂も大きな懸案事項であった。これもある意味美遊の仕業ではあるのだが、やはりそんなことを知らぬ――もっとも疑ってはいるのでこの場に出席させずに拘束しているのだが――一同は、なぜ突如凶行に走ったのか、それとも何者かによる攻撃なのか、怪我の程度はどうなのか、と憶測を走らせていた。

「ええ、あの二人には魔術回路が無いようで、令呪のあった腕部を中心に内出血や炎症を起こしているようです。例えるなら、水道管を使って都市ガスを送ろうとするようなものですからね、まあできる範囲でなんとかしようとは思いますが、医学的に考えれば三人とも日の出の頃には息を引き取るでしょうな。」
「そっか……病院が封鎖されてなければ……」

 嘘である。脳出血を起こした茜と自殺を図った際に頭を強く打っていたりんは確かに手の施しようがないが、いおりの方は元々肉体が改造を受けていることもありダメージそのものはあるものの生命維持に関しては『死にはしない』程度である。だがそんなことを馬鹿正直に伝える義理も、茜達が死んでそれを自分の医療ミスだと糾弾されるリスクをとるメリットも、もちろん教授にはなかった。

「……だそうよ。私は、あの三人は、避難所にでも置いてくるのが一番だと思う。運が良ければ、市内で治療を受けられるかもしれないでしょ?それが同盟相手に対しての誠実な対応だと思うけれど。」
「ですな。運良く市内の診療所なりに運ばれてそこに天才脳外科医がいれば命が助かる可能性はゼロではありません。私の手術道具は今ごろホテルの瓦礫の下でしょうし、あの三人の為を思うならそれが最善の手だと思いますよ?ああ、クロノさんやアリスさんの魔術で脳外科の治療ができるのならば、医者として助力を願いますが。」
「……わかりました。日野茜、九重りん、高遠いおり、この三名のことを考えれば、確かにそれ以外に方法はありません。この近くの避難所は穂群原学園でしたね。そこに送りましょう。」
「でしたら我々が搬送しましょう。なに、人手は余ってますから。」

 ついでに言えば、茜達傷病者について関心があるのはクロノとライダー、のび太とまほろ、それに先程まで同じように気絶していた狂介の五人しかいなかった。あとの人間は迫るカルナの対策こそが最優先事項であり、なぜりんが自殺しようとしたのかということには注意をするものの、りん本人が死のうが生きようがどうでもいいか残しておくと厄介なアサシンを確実に殺すために早く死んでほしいとすら思っていた。そもそもこの場でりんと面識があるのは狂介のみであり、アリスなどにとっては何人もいる幼女の一人が死にかけているといった認識である。これが『必勝法』の協力者であるならば助けようとも考えるが、サーヴァントを失ったいおり一人助けるぐらいなら殺し合いに乗っている可能性がある人間にはせっかくなので死んでおいてほしいという考えもなくもない。慎二に至っては変に生きていられると凶行を止められなかった自分の責任になりかねないと考えてさっさと死ねと心の中で祈っているほどである。


393 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:07:27 IvRVNRvo0

「では、私は手配の準備があるのでこれで。クロノさん、代わりに議事録を頼めますか?」
「ふう……これでようやくカルナのことが話せるな。で、アリス、今はどの辺りだ?」
「川を越えて、ちょうどこの屋敷と海岸線の中間地点ね。少し前から飛ぶのをやめて走ってて、ルートが海よりに曲がってる。それと、ヘリコプター?が、着いてきてるわ。」
「あんだけ炎出して飛んでたらそりゃマスコミも見つけるよな。クソッ、下手に手を出すとこっちもテレビに晒されかねない。」

 教授は足早に出ていき、クロノは無表情にメモを取り、慎二やアリスはいおり達のことなど忘れたかのように話をする。
 おかしいよ、とこの会議で唯一これまで一度も声を発していないのび太にはそう思えた。
 のび太は叫びたかった。みんな目を覚ましてほしいと。つい数時間前に共に話し、この聖杯戦争を止めようとする仲間になったいおりをあっさりと見捨てたことに憤っていた。それをなんとか気合いで押さえて声を出さないよう踏ん張る。わざわざ麻雀やゲームといった隠蔽工作をして筆談で『必勝法』をやり取りしたのだ、まだそれを知らない凛や教授にバラすわけにはいかないしそんなことをすればこの聖杯戦争の主催者に妨害されてしまうだろう。だがそれでも、一緒に協力する仲間だと思っていた慎二やアリスの言動はあまりにも冷酷なものに思えたのであった。

 のび太は狂介を見た。狂介なら、なにか言ってくれるのではないか、そう思い眼差して、目が合い、首を力なく横に振られて、伏せる。のび太はクロノを見る。視線はノートから動くことはない。のび太は手のひらに爪を食い込ませた。

 もちろんのび太もわかってはいるのだ。あのスーパーでの戦いで令呪を使ったマスターは皆気絶していた。あの時はホテルで教授が手当てをすることでなんとかなったのであろうが、今はそれが出来ないという。その上病院は爆破予告で使えなくなっていて、冬木市から出れば死ぬことになっていて、しかも町中いつの間にか警察だらけで学校に避難しようとか言われて、もうまともな治療なんて期待できないことはわかっているのだ。だがそれでも、という気持ちのおさまりがつかないのだ。

 ポケットに突っ込んでいた四次元ポケットを握る。やはりふにゃりふにゃりと力を逃がすそれは、この状況を打開するにはなんの役にも立ってくれない。頭に巻いた決心ハチマキの『決心』は、『聖杯戦争を止める』ことであり、戦いを巻き起こすカルナを止めることを最優先に動けば――この場で彼女達を見捨てれば――それは確かに決心の通りで、のび太の求めたものではないものだ。せめて病気を治すひみつ道具でもあれば良かったのだが、そういった消耗品は基本的にドラえもんのポケットでは希少であり、数少ないそれも頭の中を治すのに使ってよいかのび太にはわからない代物であった。
 無力という言葉はのび太の辞書に無いが情けないという文字はある。まさしく、情けない。貧弱な語彙力の為にそうとしか形容できないが、目を閉じると浮かぶドラえもん役にもナノカの顔を見ると、途方もなく自分自身が情けなく、のび太には思えた。だがそれも、本当の意味で自覚したものではなかったと、のび太はすぐ思い知ることとなる。


「九重りんが死んだ。」


 手のひらの薄皮が破れ血が出る頃にシュレディンガー准尉から報告されたそれは、のび太の手から力を失わせた。

 会議は一瞬止まったものの、りんについて一言二言触れただけでカルナの話へと戻る。凛にとっても慎二にとっても、彼女の死は「アサシンにとどめが刺さった」という、アサシンのオマケとしての価値しかない。名前もろくに知らない女の子が死んだことよりも、それより差し迫った危機への対処が優先すべきことなのだ、ということはのび太も良くわかっていると自分では思っている。慎二やライダーに『必勝法』について話したのはのび太自身なのだ、それなのに慎二がカルナのことを優先するのはそれはみんなのためだ、そうのび太は信じている。
 だがそれでも。


 ――のび太は、意を決して立ち上がった。


394 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:08:54 IvRVNRvo0



「だから、私は……はん、犯人じゃ、ないんです……私は、りんちゃ、りんちゃんを、殺したりなんて、そんなことしてません!!」
「やましいことがなければそんなに感情的にならないと思いますがね……あまり大きな声を出すとお体に障りますよ?」

 間桐邸の地上部分。九重りんが焼身自殺を図った部屋のすぐ隣で日野茜は朦朧とした意識の中で教授から取り調べを受けていた。件の部屋は既に吸血鬼達によって鎮火され、そこを待機所として宛がわれていた茜達女性陣はそれぞれ別の部屋で『護衛』されている。つまりは一人一人隔離されての尋問である。
 りん達負傷者の対応を口実に会議を抜けてきた教授であったが、そんな雑事は吸血鬼に丸投げして尋問に加わっていた。狙うは、日野茜一人。昏倒しているいおりや魔術が使える美遊よりも、体力を消耗しながらも話はできる茜から話せるうちに話させておこうという腹積もりである。死なれる前にどこまで都合良く使い倒せるかだ。そしてちょうどもう一枚切り札もある。教授が指をならすと、それは吸血鬼達によって担架で運ばれてきた。

「りんちゃん……?その、その、服……」
「私としても、故人は丁重に扱いたいのでね。」
「そ、それって……!」
「ご覧の通りです。九重りんの死体ですよ。」

 教授が茜を直接尋問しに来たのはこのカードが――九重りんの死体が使えるからである。

 茜は動揺した。それはただでさえ相次ぐ怪我と二画目の令呪で弱った心身へ痛打を与えた。そして教授は、それをこの聖杯戦争の誰よりも理解していた。だからここにいるのだ。
 茜が人の死に大きなショックを受けることはホテルのあの人民裁判でとっくりと観察している。マイケルの時と同様に付き合いの長いものの死体を、それも目の前に見せれば確実に動揺すると教授は踏んでいた。ゆえに、りんが都合良く死んだことで、これを着飾らせ――茜に勝ってもらったらしい服は燃えたので、二人が買い物をしたときに着ていたであろう服装だ――、死化粧を施し、焼けた肉の匂いを若干消臭して目の前に突きつけたのだ。このラインならば、発狂させずに追い詰めることができると考えたのである。

「火傷は大したことはなかったんですが、後頭部の強打で脳が損傷していて手の施しようがありませんでした。子供の頭蓋骨が脳を傷つけるレベルで骨折するなんてことはただ単に転んでぶつけた程度では考えにくいんですがね。それこそまるで誰かに突き飛ばされたか頭を叩きつきられたみたいに……」
「かといって自殺というのは考えがたい。自分の頭をあれほどの損傷が起きるレベルで強打させることなど常人には、まして子供には不可能です。強力なマインドコントロールにでもかかっていれば別ですが。」
「さて、実は他に気になることがもう一つあります。黒鳥苺、高遠いおり、色丞狂介、美遊・エインズワーズ……貴女も知っているこの四人には共通点があります。それはいったいなにか……」
「――魔術です。といってもそれぞれ系統は違うので一くくりに魔術というのは語弊がありますが、この四名はいずれも超常能力を持つのです。苺氏と美遊氏はオーソドックスな魔女、狂介氏は変身ヒーローのような身体能力、そしていおり氏は実はサイボーグです。我らがライダーのマスターも、実はイギリス国教会に属する者でしてね、まあつまりは、特別な力のある人間がマスターに選ばれるというわけなんですよ。といっても、美遊の言うようにそういった力は隠すものですがな。」
「つまり――貴女はマインドコントロールの能力を持ったアイドルなのです。貴女には自覚がないかもしれませんがね。」


395 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:09:47 IvRVNRvo0

 茜には、もう教授の言葉などほとんど入ってこなかった。
 そもそも今自分が何を考えているのか、どこが痛いのか、何をすべきかもわかっていない。精神的にも物理的にも頭が回らなくなり、思考回路はとうにショートしている。もちろん教授の詭弁にも虚偽にも気づくこともない。教授もそう確信している。だから茜を狙ったのだ。故に畳み掛ける。いやいやと首を横に振る茜の肩に手を置き、その目を覗き込みながら諭すように話し始めた。

「そうやって意地を張り続ける貴女を見て、死んでいったマイケル氏やアーチャーや、りんちゃんやアサシンはどんな顔をするでしょうかね。」
「貴女の周りからいなくなっていった人達の顔を、今の貴女は見れますか?死んでいった人達が喜ぶと思いますか?」
「確かに失われた命は戻ってきません。貴女を庇って死んだマイケル氏も、今貴女が抱いているりんちゃんも、もう生き返ることはありません。」
「ですがね……貴女はやり直せるんです。まだ生きているのだから。『私がホテルに爆弾を仕掛けて、カルナに情報を流して、りんちゃんを殺しました』と言えば!」
「貴女が罪を認めれば、助かる命があるんです。罪を重ねた貴女でも、手を伸ばせば届くんです。」
「それともランサーを、真田幸村をまた見殺しにする気ですか!!恥を知りなさぁい!!!」

 とんでもない無茶苦茶な論理性の欠片もない説得のせの字もない捲し立てだが、茜はようなタイプには理より情である。少佐殿ならこんな感じで煽動するだろうと思いながら、顔は真剣そのものといった表情をつくって茜を睨む。人間、熱の籠った言葉には動かされてしまうものだ。まともな頭があれば引くだろうが、まず頭の悪い奴を丸め込み、空気をつくり、下から熱狂を広げていく。まるっきりナチスのやり方だ。
 そして取り出すのは、一台のタブレット。映るのは、生き埋めにされて拘束されている真田幸村。

 茜のさざなみのように揺れる瞳が止まった。
 教授は心で笑った。

 彼女は脅しても自白することはないだろうし無理をすればそれだけでショック死しかねない。だが自分の今や唯一の親しい人物のためならば、彼女は放っておけない。

 日野茜は落ちる。いやもう落ちている。あとはいつ口を動かせるだけの気力と体力が回復するかだ。
 とにかくこれで形式的には茜が犯人ということで幕引きが図れる。おそらく九重りん殺しは美遊が犯人だが、彼女単独ではホテルの一連の事件は可能とは思えない上に魔力タンクとしての利用価値もある。補給の手段が断たれた教授達残党にとって彼女は生命線だ。とりあえずホテルの殿軍と合流するまでは生かしておきたいと考えていた。

「わたしが……」
「わたしが……やりました。」
「わたしが……わたしが、ホテルにバクダンをしかけて……カルナに、ジョウホウをながして……りんちゃんをころしました……」

 賭けに勝ったと、教授は笑った。

 元々分の良い賭けではあったが、もし茜の容態が急変したら、もし幸村の映像を茜に見せる段階で機器に問題が生じれば、もしこの取り調べを妨害されれば、結果はわからなかった。一応そういったことのないように実は対策をとっていたが、とにもかくにも茜は落ちたのだ。ここからは鮮度が落ちないうちに一気に料理する。

『なぜだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!』

 幸村の慟哭がタブレット越しに聞こえる。そのタブレットを抱き抱えて泣く茜には目もくれず、教授は茜の手の令呪を見る。今の精神薄弱な茜ならば丸め込んで令呪を使わせるのも容易だと教授は考えていた。初めは少佐を暗殺された腹立ち紛れ半分にマスター達を追い詰めたが、これならば彼女の令呪は有効活用できそうだ。手術道具もなく負傷したマスターの治療も延命も吸血鬼化も不可能な以上、あれを抱え落ちさせないにはこの手に限る、そう教授は笑うとタブレットの回線を切り茜の耳元へと口を近づけた。


396 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:11:34 IvRVNRvo0



「向こうは終わったみたいだね。」
「そう。」
「聞こえてたくせに。」

 教授が茜を追い詰めていた隣室ではシュレディンガー准尉らが美遊の尋問を行っていた。いくら間桐の屋敷とはいえ、あの茜の大声を遮るにはまるで無力である。ろくに呂律の回らない彼女の叫びでもまるで同じ部屋にいるかのようだ。
 美遊は努めて顔に出ないようにしてほくそえむ。一時はどうなることかと思ったが、教授がうまく追い込んでくれたようだ。これで、ホテルの主従八組のうち美遊達を除いた七組が脱落することとなる。表向きは美遊のバーサーカーも脱落したこととしているので、これにてホテルの同盟はめでたく壊滅だ。たしかルーラーは残り十六組と言っていたので、残りは八組。そのうち美遊は遠坂凛とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの二組は確実に協力できるものとし、もう一人のクウガを従えるクロノ・ハラオウン、底知れぬものを感じさせるアリス・マーガトロイド、どこかの誰かに似ているキャスターを従える間桐慎二、そしてあのヘラクレスらしきサーヴァントを従えているという偽イリヤの四組を仮想敵としていた。カルナの負傷の程度は不明だが、うまく立ち回ればまだ見ぬ二組と協力して五対四に持ち込むことも可能だろう。

 ――この時、自分が無意識の内に遠坂凛を自身の知る遠坂凛と思い込んでいることに、美遊は気づいていなかった。カルナやルビーからその死の情報を得ていたにもかかわらず、自身の策略で都合七組を落としたという事実にがらにもなく慢心した、としか説明がつかないだろう。あの黒化英霊達よりも厄介であろうサーヴァント達を撃破したことで自分自身でもサファイアをもってしてもわからない、ほんの小さな油断が彼女に生まれたのだ――

「君、自分じゃ気づいてないかも知れないけれど笑ってるよ。」
「無実だってわかってもらえて嬉しいだけ。」

 良く言うよ、と言ってシュレディンガー准尉は席を立つと部屋の扉を開けた。とにかく幕は下りたのだ、もはや尋問の大義名分はない。そうして部屋を出て吸血鬼達に囲まれながら地下へと移動を、という段階になって、廊下で憔悴しきった様子で車椅子に乗せられている茜と、同じく車椅子にもたれて土気色の顔を晒すいおりにそれを押す教授、そしてアーチャー・赤城に出くわした。

「カルナは少し前から霊体化しています。もう猶予は……」
「その事ですがね、重症者は治療の可能性を考えて避難所に送ろうということになりまして。」
「重症者というと、ホテルの方の三名という?」
「いや、さっき二名になりました。」

 五人と吸血鬼達に向かって話す赤城に、教授は美遊達を横目で見て話す。美遊はそれを見ながら、視界の端では茜といおりの手を捉える。九重りんを殺したときは一画残っていた茜のそれは、いまや若干の痣が残るだけだ。おおかたゆすって何かしら使わせたのだろうと美遊は推測した。ランサーを自害させたというのは考えにくいので自分に従うようにでも命じさせたか。一方いおりの方は令呪はそのままである。こちらはもう目覚めることはなさそうだと、美遊は思った。

(クソ……目が、爆発したみたいだ……喉も……クソ!クソ!)

 実際にはいおりは意識があり聴覚も生きていたのだが、ともすれば呼吸すら止まりかねない全身の虚脱により、茜同様まるでなんら行動を起こせない有り様である。もはや彼には自分の念話にアリシアが答えないことを、アリシアが消滅したのか念話ができていないのか判断するだけの能力も無かった。


397 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:12:16 IvRVNRvo0

 そうして話す一同の前に、更に別の人影が廊下の端から近づく。会議を終えて地上へと上がってきた遠坂凛であった。彼女は自分に視線を送る美遊に気づくもそれには触れない。美遊はそれを自身との関係を勘づかれないためと解釈したが、もちろんそんなことは無かった。

「話はどうなりましたか?」
「決まった。私のセイバーとライダーとキャスター、それにアリスのアーチャーの四騎で仕掛ける。あとの人間は決着がつくまでキャスターの陣地で籠城、OK?」
「なるほど、ではこちらも茜さん達を早く運ばないと。ああ、既に手配は終わっているのでご安心を。」
「残念だけど、それは後にしてもらう……このタイミングで単独行動して下手に勘繰られたくないでしょ?」
「ああ……確かに、こういうときってあれですよね、映画とかだと主人公達が二手に別れると片方が爆死するフラグですな?」
「そういうこと。ホテルの二の舞は嫌でしょう?」
「ええ、全く。」

 早足で地下へと皆向かう。内通者を疑っているのは明白であるがわざわざそれを口に出したりはしない。もちろん誰を疑っているかも。
 アーチャー・赤城が航空機を飛ばして戦うというまるで空母のような戦闘スタイルであることは既に皆の知るところなので特に反論もなく受け入れていた。

「それと、負傷者の搬送にはあののび太って子が付き添うことになったから。構わないでしょう?」
「のび太……構いませんが、しかしなぜ彼を?まるでサーヴァントを失ったマスターを厄介払いしたいように邪推してしまうのですがねえ……」
「じゃあ直接本人に聞けば。」
「本人?」
「言い出したのび太本人に。」

 地下はキャスターのプレッシャーに満ちていた。そっけない凛の先導で穏やかな光に包まれたその花畑を歩く。彼女としては厄介なクロノと厄介なキャスターをどうにかしたいので、足手まといとなるのび太を動かすことで人道派のクロノとキャスターのマスターである小者の慎二を衝突させたいという魂胆だ。もっとも、その慎二からは一連の「遠坂凛」らしからぬ行動に疑問を持たれ彼女が偽者だという確信を強める結果になっているのだがそれは彼女は知ることではない。とにかく凛に連れられ階段を下り、さっき出ていった時より広くなっているように教授が感じ始めた時、のび太が彼らを出迎えた。

「教授さん……ありがとうございます。僕、この戦いが終わったら行こうと思います。」
「マスターを失った貴方には確かに居づらいのかもしれなかったですかね……いやはや申し訳ない。」
「……見殺しにしたくないだけ、です……」
「本当は私が同行したいのですが、アリスさんのアーチャーが一編隊回してくれることになったので。」
「なるほど……ではその時はこちらも護衛をつけましょう。大尉、お願いできますか?」
「……」

 もし安藤が死んでも一番生き残る可能性の高い赤城が協力するというのは、教授にとっては少々面白くはない。だがそれはそれ、まずは彼らがカルナとどれだけ戦えるのか見させてもらおうと、教授は考え直す。
 こうして聖杯戦争の二日目はぎりぎりと軋みをあげて大きく状況を変えた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


398 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:12:57 IvRVNRvo0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 彼女がなぜ躊躇いなく人を殺せるかというと、それは人間というものに価値が見出だせないから、ということになるのか、それとも、彼女が人間でないから、なのか。幼い彼女にはそのどちらかもわからないしどちらでもあるのかもどちらでもないのかもわからないしわかろうとも思えない。ただ彼女にとって重要なことは自分が今殺し合いの中にいることであり、自分はその気になれば人を殺せるということである。

 だがなぜ彼女が黒鳥苺を分身とはいえ殺したのか、となると、それは彼女自身にもわからなかった。おそらく、ほんの些細な、少し無遠慮なことを言われたからと言っても、九重りんは自制できたはずだ。だから自分が気がついたら人を突き飛ばして家具の角に頭をぶつけさせて殺したとき、彼女はそれがまるでテレビに写るサスペンスドラマのワンシーンのようにリアリティの欠片もなく感じられた。
 だから彼女が自殺を図ったときも、ああ自殺ってこんなに簡単なのか、というひどくぼんやりした考えであった。美遊の声が脳内に響いて自殺を進めてきたのでじゃあちょっとやってみようという軽い気持ちでやってみただけだ。体に火をつけるだけよりも自分が殺したときのように思いきり後頭部をぶつけた方が良いかも知れないと思い実際にやり、そしてそんな自分を見て目を丸くして驚く美遊を見て他人事のように笑った。

 彼女がなぜ躊躇いなく自殺したかというと、それは自分というものに価値が見出だせなかったからということになるのか、それとも、彼女が人間だったから、なのか。死んだ彼女がそのどちらだったのかもわからないしどちらでもあったのかもどちらでなかったのかもわからないしわかる必要もない。
 だがあえて全くの蛇足であるが彼女について考えるならば、彼女は人の愛し方も愛され方もずっと昔に忘れたままで、一人の人間として愛し合うには少しだけ未来を待たなくてはいけなくて、彼女が彼女を愛し彼女に愛されるには、ちょっとだけ巡り合わせが悪かったのだ。日野茜という人物ともう少しだけ早く出会えてもう少しだけ長く一緒にいられれば、あるいは。


 九重りんは折り鶴を折る。そういえばここはどこだろうか。自分は何をしていたのだろうか。なんだか良く思い出せないが、まあそれもいいだろう。何人かの少女が泣いていたり怒っていたりするが、みんな落ち着きがないなあ、そういえばあそこにいるのはアサシンが爆破した少年だ。ところでアサシンって誰だっけ、まあいいや。


 彼女のうすぼんやりした走馬灯を、彼女は流し見する。大好きな人も友達も、出てこない。だがその事に彼女は気づくこともない。

 こうして九重りんの聖杯戦争は九重りんに省みられることなく幕を閉じた。


399 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:14:03 IvRVNRvo0



【深山町・間桐邸/2014年8月2日(土)0200】

【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra
[道具]
ドール@Fate/Extra、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて出し抜ける機会を伺う。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
4:余裕があれば索敵・感知系の礼装やドールを用意したい。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra若干数と、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
アヴァロン使用不可。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す。
1:厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて出し抜ける機会を伺う。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)、並びに教授達吸血鬼はできる限り早く排除しなくてはならないので分断を試みる。
3:ハヤブサの整備を凛に頼む。
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサ(青・改造済)を乗りこなせるようになっています。騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。現在は小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●聖杯戦争についての疑念を抱きました。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。


400 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:15:13 IvRVNRvo0


【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[スタンス]
脱出優先
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1:『必勝法』の協力者を増やし脱出する。
2:定期的に赤城の宝具で偵察し、特にカルナ組と残る二組を探す。
3:間桐慎二と色丞狂介とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロノ・ハラオウンを警戒。
4:やりたいことや調べたいことがあるけどその暇はなさそうかな。
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
魔力増(微)。
[スタンス]
奉仕(マスター)
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1:警戒を厳に、もしもの時は壁役に。
2:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。
3:戦略資源(魔力等)を備蓄しておきたい。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


401 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:15:54 IvRVNRvo0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[スタンス]
脱出
[状態]
意識朦朧、ダメージ(大)、肋など数ヵ所骨折、魔力消費(極大)、衰弱(大)、疲労(大)。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。英霊・アリシアの情報の一部を聞いたのみです。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドク、ライダー(少佐)、アサシン(千手扉間)、セイバー(テレサ)のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[スタンス]
優勝
[状態]
瀕死(くも膜下出血・全身打撲・背部に大火傷)、無呼吸状態。
[道具]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。


402 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:17:54 IvRVNRvo0


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1:『必勝法』の協力者を増やし脱出の手筈を整え、平行して聖杯調査の協力者も増やす。
2:チョコの死に責任。
3:カルナを含んだ残り三組を捜索する。まずはマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が住居として設定されています。クロノはそこのマスターです。また翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●リップバーンの死や行動について教授達吸血鬼との関連を強く疑っています。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める。乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1:チョコ達の死に責任。
2:カルナを止める。
3:クロノ君がちょっと心配。
4:『必勝法』の協力者を増やす。
5:あの子(亘)は無事なのか……?
[備考]
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


403 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:18:32 IvRVNRvo0


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1:厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて裏切るタイミングを待つ。
2:盟主として同盟を纏める。
3:大火力の攻撃を警戒。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)とイリヤへの好感度が下がっています。またアリスに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1:今は慎二に従い、見定める。求めるなら仏の道を説くというのも。
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。
●間桐邸地下に陣地を作成しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


404 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:19:14 IvRVNRvo0


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
ダメージ(大)、疲労(大)、『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1:パピヨン達が心配。
2:『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を止める。
3:吸血鬼達を警戒。
[備考]
●核金、愛子ちゃんのパンティ、携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、教授、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)のステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
ステルス奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
私服、疲労(小)、魔力消費(小)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:遠坂凛と共にこの同盟を内側から崩壊させたい。
4:五代雄介を警戒。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。また五代雄介についても記録をメモしています。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●対外的には美遊・エインズワーズの偽名を名乗り行動しています。またバーサーカー(ユウスケ)を消滅したと説明しています。
●遠坂凛を遠坂凛@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤと誤認しました。


405 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:20:16 IvRVNRvo0


【野比のび太@ドラえもん】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み)
[道具]
ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1:『必勝法』に協力してくれる人を増やして聖杯戦争を止める。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)が死んだ……?
[備考]
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
『必勝法』を共有済、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、???
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1:『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を停滞させ、聖杯の破壊の機会を手繰り寄せる。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の死に疑念。
3:変態仮面達とドク、慎二組に恩義。ただしドクとそのマスターのライダーはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


406 : 【101】見捨てられた日野茜 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:21:09 IvRVNRvo0


【ドク@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(10)/E、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E、
幸運(10)/E、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1:ぶっちゃけ方針は未定。
[備考]
●対外的には医者のサーヴァントでクラスはキャスターとしています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ショックガン所持。
●アサシンやキャスターと陣地構築したのはただのふりでした。数ヶ所の盗聴が可能なだけです。
●日野茜に令呪を使用させました。詳細は未定です。

【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1:少佐殿死んじゃったしな〜どうしようっかな〜。
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。

【大尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(30)/C、
敏捷(40)/D+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。



【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!             死亡確定】
【希里ありす@学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD 死亡確定】
【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ 死亡確定】
【九重りん@こどものじかん                  自殺】


407 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/04(日) 13:24:36 IvRVNRvo0
投下終了です


408 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:02:28 iURk.POI0
投下します


409 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:05:04 iURk.POI0



「それでね、やっぱりこれかなって。」
「でもお昼にも食べたでしょ。」
「ほら、家で作るのと違うし。」
「焼きそば家で作ったことないからわかんないわ。」


 しれっとNPCに暗示をかけしれっと鍵を受け取りしれっと衛宮切嗣達が拠点にしたのは、家主が勝手知ったる衛宮邸。そこで竜堂ルナはやけに馴れた手つきで切嗣に監視されたバーサーカーに監視されたアーチャーに監視されながら夕飯の焼きそばを炒めていた。



 話は四時間ほど前にさかのぼる。バッティングセンターで衛宮切嗣は、この聖杯戦争で始めてと言えるまともな魔術師と出会った。出会ったといってもNPCなので結局切嗣はルナ達以外の他の参加者とは出会っていないも同然なのだがそれはともかく、彼はそこで魔術師としてNPCから聖杯戦争の情報を聞き出すことに成功していた。

 曰く、冬木の聖杯は遠坂家当主の遠坂凛らにより数年前に破壊されたはずなのにどういうわけかまた聖杯戦争が行われている。
 曰く、その遠坂凛は今はロンドンにいるはずだが行方不明になっていて聖杯戦争の監督役を務められる人間が誰も冬木にいない。
 曰く、そのために神秘の秘匿が行われていないとして魔術教会や聖堂教会が明日にでも介入してくる。
 曰く、それに先立って警察や自衛隊が冬木に入り表向きの事態の収拾を図る。

 自衛隊が出張る時点でもはや事態の収拾どころの話ではないと日本の事情に通じた魔術師ならばわかるだろうが、それでも動かさなくてはならないレベルで深刻な影響があるのだろうと切嗣は察した。この時切嗣は始めてカルナの姿がインターネットを通じて全世界に目撃されたことを知ったのだ。彼としては確かにカルナの姿はそれこそ千人単位で見られたと想定していたが、それは第四次聖杯戦争の海魔等も同じである。あの時も相当事後処理に手間取ったというがそれはあくまで日本の一部で話題になる程度のものでありまさか世界規模で注目されることになるなどとはさすがに考えていなかった。聞けば、既に十カ国以上のマスメディアと、十や二十では済まない数の外交官が冬木に入っているという。いわんや日本のテレビ局などドラマの再放送を潰してまで冬木市を生中継し続け、テレビ東京さえもヘリを飛ばしている。二十年の間に進んだ情報化は聖杯戦争のあり方を大きく変えていたことに、切嗣はようやく気づいたのだ。
 さて、ここで切嗣が抱いた感情は、まずは安堵である。幸か不幸か自分達は開戦からずっとあの色んな意味でバーサーカーな主従に振り回されたせいで全く聖杯戦争らしきことはしていない。どこの世界にサーヴァントを実体化させて連れ歩いたり一緒に食事したりバッティングセンターでバットを振るうマスターがいようか。だがそのおかげと言ってはなんだが、四人中二人がサーヴァントであるにも関わらず魔術師のNPC相手にすら聖杯戦争の参加者とは思われていなかった。あのバッティングセンターでのことも、神秘の秘匿に無頓着な子供が遊びに魔術を使ったからNPCが隠ぺいしていたというだけで、ようは子供の火遊びぐらいにしか認証されていなかったのだ。実際、アーチャーもバーサーカーも表に出ている魔力だけならば魔術師といっても通じるレベルではあるので誤認されるのもそう不思議ではないのだが嬉しい誤算ではあった。
 そして次に、切嗣はあるプランを
思いついた。この聖杯戦争に参戦以来何度か考えはしたが非現実的だとして頭の中で却下し、本選が始まってからはバーサーカー主従のせいで諦めていたそれだが、現実の方が大きく変わってくれたおかげで目処が立ったのだ。即ち。


「おい、もっと離れ……いや、近づけ。少しでも銃に触れればお前の首を飛ばすぞ。」
「安心して、それより早く私がアンタの首をはねる。」
「……こっちも、食事の前に血生臭いことはしたくないさ。」
「ご飯の時ぐらいなかよくしませんか……あ、切嗣さんそこのソース取ってください。」

 衛宮切嗣がコートの下に提げるのは自動小銃。彼は自衛隊から装備を奪取することに成功していた。


410 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:10:19 iURk.POI0



「ほんとだ、けっこう簡単。」

 話は三時間ほど前にさかのぼる。アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)は自衛隊の集結地である穂群原学園のに赴いていた。バッティングセンターを後にして、切嗣がルナ達を情報収集の名目で丸め込んで避難所も兼ねたそこに向かうと、彼女は転移を繰り返して自衛隊装備の万引き、もとい奪取に勤めていたのだ――ようやく念話以外で魔術を使ったと思ったらただの泥棒だったりそのせいで知らぬ間に翠屋の同盟とも間桐邸の同盟ともホテルの同盟とも彼女の妹であるイリヤとも出会う機会をまたも逸してしまったのだが、銃とか手に入れるためだし仕方ないね――。
 レンタルしたekスペースの後部座席を倒して荷台を広げると、アーチャーの不在についてバーサーカーから問い詰められる切嗣に足止めを任せて軍事物資を詰め込んでいく。そして素早く切嗣の元に戻り、バーサーカー(ヒロ)をなだめてから再び転移で泥棒し、詰め込み、なだめに戻る。この三拍子をぐるぐる繰り返しながら彼女は荷台に武器を詰め込めるだけ詰め込んでいた。はっきり言ってやっていることは相当地味である。ただ監視の目を掻い潜って実体化して手に持てるだけ物を持って車までワープしているだけだ。だが車に戻って他の場所で情報収集をしようという段になってバーサーカー主従が武器庫と化したそれに驚いたり席が二つしかなくなったのでサーヴァント二人は霊体化して屋根の上に乗るはめになったり自衛隊員が青い顔をしながら血眼になってたりともろもろあったが、こうしてアーチャー主従は大量の武器をついに入手することに成功したのであった。

 ところで転移というのはそれなりに魔力を消費する魔術である。彼女はマスターである切嗣がイメージする、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのイメージに引きずられている為に小聖杯としてのイリヤが強く出ているので燃費の軽いサーヴァントとなっていて、更にマスターの切嗣も魔力を持っている上に主従の相性も良いので、普通ならば魔力切れなどという事態は起こりにくいのだが、やはり何事にも例外はあるのだ。さしものアーチャーも何度も何度も転移を繰り返せばガス欠になるのは避けられなかった。
 アーチャー主従がバーサーカーと縁を切らずに衛宮邸を陣地に選んだのはそこにある。幸運にも、バーサーカー主従はアーチャーの消耗には気づいていなかった。ならば拮抗状態を維持しながら有事の際の盾にできると踏んだのだ。彼等が魔力供給をするまでの。要するに衛宮邸はヤリ部屋である。

 アーチャーとしては、魔力供給は必要とあらば吝かではなかった。魔力補給のスキルでルナとバーサーカーからは魔力を効率良く収奪できる。できるし吝かではないのだが、だからといってやりたくはないのだ。彼女にだって誰とキスするか選ぶ権利がある。
 ルナとキスすればイリヤ程とは言わずとも相当の魔力を獲られるだろうが、申し訳無いがルナへの好感度の点でノーサンキューである。吸い殺して良いのなら苦渋の決断もしなくはないが、さすがにキスで人を殺すのはアーチャー本人としても如何なものかと思っていた。
 バーサーカーなど論外だ。というかそんなことをしようとすれば確実に殺しに向かってくるだろう。このアーチャーの考えは正しく、もしそんなことを提案すればバーサーカーは己とマスターの貞操のために割りと真剣に同盟の破棄も考え出すので縁を切りたいアーチャーとしてはある意味正解ではあるのだが、それはバーサーカーの狂化スキルを作動させかねない諸刃の剣でもあるので自重しておくのがベターである。
 というわけでこうなると残っているのは一人だ。つまり切嗣だ。同性ではないため本来は魔力供給の効率はそこまで高くはないのだが、父娘であるために相性はバツグンであるのが大きなメリットである。と同時に大きなデメリットでもあった。さすがに彼女としても実の父親とキスするのには若干の抵抗がある。一等親はまずいだろ一等親は。

 どうするにしてもとりあえずシャワーを浴びてから考えたい。略奪した武器を自衛隊に見つからぬように素早く学校から離脱すると、クロエ主従は早急に拠点を探していったん落ち着くことを選んだ。いつまでも根無し草というわけにはいかないからだ。そうして切嗣が拠点と決めたのが、ここの冬木でも変わらずにあった衛宮邸であった。


411 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:22:36 iURk.POI0



「焼きそば!」

 ずるずる。

「うん、おいしいっ!」


「改めて考えるとサーヴァントは食べる必要は無いのではないか……あ、美味しい。」
「なんだろう……無駄に美味しくてイラッとくる。」
(悪くない。)

 そうこうあって衛宮邸、順に入浴を終えた一同は互いに間合いの一歩外に座りテーブルを囲んでいた。
 元の家主が丁寧だったのか屋敷を管理していた人間が気配りのできる人間だったのかは不明だが、衛宮邸には拠点として生活を送る上で欲しい物は一通り揃っている。さすがに細々とした日用品は買いたさざるをえなかったが、彼が生前誂えた鳴子もそのままあり、懐が寂しい切嗣にとってはこれ以上ないものと言えよう。もっともあまりに自分の知るその家とそっくりなそれになにか居心地の悪いものを感じるのも確かだが。
 何はともあれ念願の拠点が手に入ったことは全員にとってプラスであるのは間違いなかった。食事と休息でそれぞれの魔力もある程度は回復している。この時時刻は八時過ぎであった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 そして現在、時刻は零時五分前。

「さてさて……」

 クロはいつもの赤いアレではなく、いくらか落ち着いた感じのパジャマに身を包み布団の上で正座していた。

 バーサーカー達ははなれで既に就寝に入りつつある。丸一日近く続いた冷戦は、多少の距離をとって睨み合う程度には落ち着いていた。そしてバーサーカー達は知らないことだが、彼女達が仮にクロ達を襲おうとすればその時点で鳴子が鳴り危機を知らせる。あのわかりやすい二人ならば確実に引っ掛かるであろう。誰にも邪魔させない――

「――スキン付けないほうが良いかな。」

 切嗣は襖一枚隔てた隣室で盗んできた銃の手入れを行っている。かすかに油の匂いが漏れ出るそれをクロは小悪魔の眼光で見つめた。


 父娘共にいくらか休んで魔力を回復しているが、やはり未だ本調子とは言えない。今夜中に戦闘が無いのなら急ぐ必要もないが、今日一日を振り返るとそれに期待するのは些か虫が良すぎるだろう。そしてなにより、あのバーサーカー達というイレギュラーが存在することをこれまでで散々に痛感している。彼女達がいなければ本日のクロ達の動きは全く違ったものであっただろう。ならば不測の事態の備えとして手っ取り早くパスを拡げて魔力供給するのも戦略の一つである。別にクロがエッチしたいが為にこんなことを考えているわけではないということだけはハッキリとさせておこう。

 さて、ここでクロには三つの選択肢がある。つまり、Aか、Bか、あるいはCかだ。

 Aの場合は、普段彼女がやっている通りの魔力供給であるため非常に安定して行えるのがメリットだ。同性でないためいくらか勝手は違うが、親子ならば効率良いはずである。もしやるのであればこれが望ましいであろう。なにより健全だ。
 Bの場合は、手続き的にはぺろぺろからのちゅーちゅーからのごっくんである。厳密に言えばぺろぺろは省けるしなんならちゅーちゅーもオミットできるが、しかし間違って顔に掛けられる可能性を考えればここは安定を取るべきであろう。ゴムに出したものを啜って飲むという手もあるが、さすがにそんな痴女みたいな変態っぽいことはしたくない。粘膜の接触により精神の同調を図れることもあり、基本に忠実に行くのが望ましいと言える。ただ一つ問題があるとすれば、クロ個人としてはキスしたこともない相手とそういうことをするのは存外憚られるということだ。
 Cの場合は、まず物理的な問題が立ちはだかる。クロは確認したことがないのでわからないが、果たして挿入るのか不透明だ。これは大きなリスクである。聖杯としての力を使えば多少の困難も無理でこじ開けられるが、そもそも魔力目的でやるのに魔力消費をしてしまえば本末転倒甚だしい。そこでマリモクの観点からすると妥協案として浮かび上がってくるのが、彼女の鶴翼三連が如く後ろを使うという方法である。こちらならある程度の冗長性があるので諸々のリスクを軽減できる。しかし、どうだろう。前より先に後ろというのはアブノーマルが過ぎるのではないだろうか。だいたい近くのコンビニにイチジク浣腸を買いに行くなど恥ずかしすぎる。また根本的な問題としてどの程度魔力供給できるのかがブラックボックスだ。どうせ使わないところに生命力を貯めるくらいなら少しでもクロに還元するのは悪いアイデアではないのだが、体内の深部での接触が効率的とはいえどあいにく彼女の知識を持ってしても前と後ろのどちらの方が効率が良いかはわからないのである。なんだかエロゲみたいな話だが実際そうなんだからしかたない。人体はそれそのものが神秘なのだ。


412 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:23:56 iURk.POI0


 むふー、と息を吐くと枕元のティッシュの位置を微調整する。やるんなら早い方が良い。しかし、そうやすやす決断を下して良いものでもないのだ。今後に大きく関わってくる。ちらっとクロは時計を見た。まもなく零時。残り数十秒で決断できないのなら、やめておくのが良いだろう。確かに聖杯戦争が激化すると予想される夜を今のコンディションで迎えるのは怖いものがあるが、だが同時に魔力供給後のコンディションに不安があるのも間違いない。万が一痔などで遅れを取りでもすれば目も当てられない。初めては血が出るという伝承を考えればやらないのもあるのだ。だいたいローションもないしそれに――

『――マイ――スト――なさ――すか――』

『――!?念話っ!』

 突如頭の中に響いた声でクロは意識を己の内から外へと向けた。目の端に見えた時計の短針と長針は重なり、秒針のみが機械的に動いている。いつの間にか日付は変わっていた。
 するりと襖も開く。切嗣は口に指を当てて耳を済ませているようで、クロもそれにならった。

『―なさん―一目は――しょうか―こんばんは、私―ルーラ――達を開始―します。』

 なおも念話は続く。その内容から、これがルーラーの通達だと理解した。聖杯戦争の進捗、それによる被害、そして唐突な期間の短縮。話し手のあどけない口調に対してあまりにも重要な情報が次々に伝えられていく。そして念話からイリヤの名前が出てきてクロと切嗣が目を合わせた次の瞬間、念話がイリヤのサーヴァントの真名を告げた途中でいきなり終わり、一泊置いて轟音と地鳴りが響いた。

(残り十六組――七騎じゃなくて十六騎、ううん、それ以上、クラスのダブりもある――)

(NPC――そう言うからには管理してるはず。じゃあバグ?それともわざと――)

(討伐令――生死問わずで、五組、五画の令呪、一組一画?――)

(通達の中断――ルーラーが殺された、ないし襲われた……ルーラーも恐れない、違う、恐れてるからこそ邪魔な存在を消しに動いた――)

(イリヤ――ランサー・カルナのマスター……ハメられたの、それとも、どうして――)

「アーチャーさん!切嗣さん!大丈――」

「――!いつの間にっ!」

 混乱するクロのすぐ後ろから聞こえたのはルナの声。転移かと見まごうようなステップで背後に現れた彼女に、クロは反射的に投影を行うと両手に持ったそれを振り抜いた。それをルナは「うわっ!」と一つ叫び声を上げると共に裏拳で弾き飛ばす。左右に飛んでいった双剣が襖の前で一瞬止まり、逆回しのように戻ってくる。鳴子が鳴る。挟み撃ちする形でルナに迫る白と黒のそれを髑髏の左于が掴むとその双眸から睨むように炎が上がった。

「説明してもらおうか……色々と、な。」

 ヒロの目が怪しく憎悪に揺らめく。その手から立ち上る熱気にクロの頬を汗が伝った。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


413 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:25:38 iURk.POI0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「転移に暗示とは、弓兵とは思えない器用さだな。」
「ありがと。鎌仕舞ってくれる?」

 検問を暗示でやり過ごすと切嗣は車の南下を再開する。目標は、深山町の端、南部の森。そこに人知れず存在するアインツベルン城である。


「ランサー・カルナの居場所に心当たりがある。」

 衛宮切嗣がそう切りだしたのは、アーチャー・クロエの喉にバーサーカー・ヒロの大鎌が突きつけられている時のことであった。急に後ろから声をかけて驚かせた、とルナが謝罪するもサーヴァント同士が睨み合う一触即発の状況で、その口から発せられたのは、この状況とは何ら関係のないことである。
 舐めているのか?そうヒロは疑心と反感を強めるも、鎌を努めて抑えクロの頸を撥ねぬようにする。先のアーチャーの振る舞いは非礼の極みでありこちらにも一里の非はあれど今ここでその魂を冥界に送ってもなんら問題はないが、彼らにはまだ利用価値がある。もっとも、魔力を消耗しているこの二人を切り捨てたところで痛手ではないが、だがだからこそ殺す価値がない。その気になれば何時でも殺せるのだ、ボロ雑巾のようになるまで利用するのが賢い選択であろう。

「話せ。」

 故にここは切嗣の誘いに乗る、そうヒロは選んだ。

「さっきルーラーに呼ばれたカルナのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは僕の娘だ。」
「……なんだと?」

 クロが思わず切嗣を振り向く。その動きに思わず撥ねそうになるも、ヒロは堪えて切嗣に問い掛けた。

「正しくは、僕の娘と同姓同名に聞こえた。確かめるためにも行きたい場所がある。」
「娘か……父娘で揃って聖杯戦争のマスターになる、か。偶然にしては出来過ぎだと思うが?」
「そうだな。だから偶然じゃないと思う。僕が聖杯戦争に参戦したから巻き込まれたのかもしれない。それを確かめたいんだ。」

 切嗣は、イリヤとの関係について嘘をつかず正直に答えた。それがもっともこの状況を切り抜け次に繋がると考えたからだ。
 普通に考えれば、こんな話は誰も信じない。どう言い繕うと無理がある。故にバーサーカーは乗ってくると、切嗣は信じていた。こんな見え透いた嘘であるが故に、バーサーカーは切嗣に言い訳を続けさせる猶予を与える、と。

「で、場所は?」
「南部の森だ。そこには城がある。魔術で隠蔽されているがね。」
「――フフフ、バカバカしくていっそ笑えてくる。随分とこの街について詳しいな。」
「ああ、元となった街に五年間住んでたことがあるからな。」
「たいがいにしろ。随分とお前は聖杯戦争に縁があるな?」

 ここだ。切嗣は見つけた。

「僕はリピーターなんだ。1994年。今から二十年前に行われた、第四次聖杯戦争の参加者だ。」
「どんどん話が大きくなるな。続けろ。」
「そして1999年に死んだ、はずだ。気づいたら15年後になっててこの聖杯戦争、第六次聖杯戦争のマスターになっていた。」
「……待て、聖杯戦争は十年置きに行われるのか?」
「そもそも聖杯というのは元を正せば魔力の塊だ。サーヴァントを生贄に魔力を増幅させるが、そのサーヴァントを喚ぶ為に元手となる魔力が必要となる。普通は時間経過で魔力を少しずつ蓄積するが、前回の聖杯戦争の魔力がプールされるなりして残っていれば、時期を早めるのは可能だろう。」
「その……聖杯ってどんな形してるんですか?」
「僕も詳しいことは知らないが、赤と黒の泥状の魔力をしている。色の通り、触れればろくでもないことになる。」
「……2004年……赤と黒の泥……」


414 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:26:50 iURk.POI0

 この時、切嗣も想定外であるが、ルナとヒロは切嗣の与太話を一気に信じることとなった。全くの偶然であるが、彼のその言葉はルナの経験と重なる部分があったのだ。彼女は2004年も暮れの冬、魔力の塊である聖杯同様に妖力の塊と言える『悠久の玉』と呼ばれる一種の願望器を自分の弟と争っている。玉と杯という違いはあれど、その力の見た目は色といい形といい類似している。そしてなにより、ルナも切嗣と同様に死んでここに来たのだ。実はルナはあの時死んでいなかったのだが、ルナ本人としてはその違いに気づく手はない。そしてそんなことはルナにとってどうでも良かった。『死んだ人間が聖杯戦争に招かれ』て、『家族で聖杯戦争に巻き込まれる』のならば、自分の弟であり目の前で死んでいったタイを救えるかもしれない、会えるかもしれない。そう思うと、もうなにもかも耳に入らなかった。

「案内してください、切嗣さん。」
「ルナ!」
「その森って、さっきの学校の近くにあった森ですよね。そこにお城があるんですね?」
「ああ、前回僕が拠点とした場所なんでね。仮に彼女がいるなら、まずそこを拠点とするはずだ。」
「くだらん!城一つ隠蔽するだと?それを行うためにどれほどの手間暇が掛かるかわからず言っているのか!」
「そのアドバンテージがあるから僕は聖杯戦争に乗ったのさ。信用できない気持ちもわかるが、なんなら令呪を切ろう。」
「バーサーカーさん。」
「『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』」
「!!お前……」
「バーサーカーさんっ!」
「さあ、どうする?」
「世迷い事を!ここで死「バーサーカーさんごめんなさい!『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』」――なんだとっ!?」
「……君のマスターは、乗り気のようだが?」

 クロの頸からぶるぶると震えながら、ヒロはゲート・オブ・ヘブンを離す。忌々しい、と顔に書いてあるかのような表情で切嗣を睨むと、座布団の一つにどっかと腰を下ろして、「いつ出発する」と言う。賭けに勝った。切嗣は心中で安堵しながらも「一時間後だ、さっきから事態が動いている。最低限の情報収集をしたい」と告げる。縁側に出ると新都の方で煙が上がっていた。
 ルナが反応してきた辺りでバーサーカーから標的を移したが、その切嗣の狙いは思いの外うまくいった。先に虎の子の令呪を切ってみせれば落ちるとまでは読んでいたが、あちらも令呪を切ってくるとは嬉しい誤算である。期せずしてこれで後顧の憂いがなくなった。縁を切ることは難しくなったが、肉壁としては使えるだろう。

『念話で聞いてたのと違うんだけど?』
『すまない。それに令呪も……』
『ま、いいけど。後ろからバッサリやられることはなくなったわけだし。それにさっきの令呪で少しは魔力の足しになったしね。』

 付け加えるならば、ヒロに拘束された時点で、切嗣はクロへ転移により拘束から逃れてバーサーカー主従を殺すように指示していたのだが、そんなリスキーな方法を取らずに場を収められたのもラッキーだ。彼としても娘に同年代の子供を殺させたくない。
 情報収集とアインツベルン城へ出発するために動き始めた一同を見て、切嗣は懐からガムを取り出すと奥歯で噛み締めた。


「見えた。あの森だ。」

 そして現在、検問を抜けた切嗣達は森の中へと車を走らせようとしていた。近づき難い雰囲気のそこは魔術師ならばある種の結界が張られていると察することができるだろう。鬱蒼とした下草が生える一見道なき道を往くと、少しして小道が出てきてひたすら一本道を進む。

「明らかに人の手の入った道か。」
「嘘じゃないとわかったかい。」
「ふん。」
「……まあ、気になることがないわけじゃない。そろそろ出てきてもいいはずなんだが。」
「城か?迎撃か?」
「迎撃だ。森に入った段階でこっちの動きは筒抜けのはずなのに、全く動きがない。アサシンのクラスか?」

 拍子抜けするほどなにもなく車は進む。少しして全員の前にいかにもな城が現れた。


415 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:39:16 iURk.POI0

「……小さいが、確かに、城だな。」
「すっごい大っきい……」
「轍が残っている。ということは……」

 小雨がパラつくなかそこに鎮座するアインツベルン城は、その威容と相まってホラー映画にでも出てきそうな存在感がある。周囲を捜索していたクロが戻ってくると、切嗣は玄関に車を横付けにした。

「どうする。」
「正面から行く。あの城はどこから攻め込もうと同じだ。」
「小細工の一つでもするのかと思ったがな。」
「無駄だよ。それに中の人間を刺激したくない。」

 切嗣はクロに目配せすると銃のセーフティを確かめた。誘い込まれているのか違うのかはわからないが、城の内部からはハッキリとサーヴァントの気配がする。この距離だと隠蔽の魔術でも抑えられぬプレッシャーがある。

「行こうか。」

 一呼吸置いて言うと、まずヒロとクロがその扉の前に現れる。その大きさを感じさせぬ軽さで扉が開くのを見ながら、切嗣とルナは車から降りた。こちらにいるということは、つまりは切嗣の方のイリヤなのであろう。そう考え、サーヴァント達に続いて城へと足を踏み入れると――

「……色々と聞きたいことあるんだけど、あ〜、何から聞けばいいかな…そのムキムキのサーヴァントってカルナ?」
「……私のバーサーカーがあの金ピカと同じに見える?こっちも聞きたいんだけど……あなた、サーヴァント?」
「どういうわけかね。で……そのボロボロの銀髪のオッサンは?」
「アサシンよ。ハサンじゃないみたいだけどね。」

 ――そこにはアサシン・千手扉間がバーサーカー・ヘラクレスにのしかかられ五体投地していた。


 さて、千手扉間には飛雷針の術という自らが開発した術がある。これは事前にどこかにマーキングしておくことでそこにワープできるという類の忍術だ。そしてこれは彼しか知らないことだし知ってたとしても忘れていたと思うが、彼はヘラクレスの石斧、アレにこれまた彼の開発した術である影分身でマーキングしてたのだ。
 さて、千手扉間にはホテルの同盟のサーヴァントとしてカルナと戦う役目があった。だが常識的に考えてほしい、マスターの九重りんはパンピーのJSだし穢土転生に起爆札に水の無い所で水遁など扉間はチャクラを使いまくっていたのだ。このコンディションでは、悔しいが足手まといにしかならないと扉間は明晰な頭脳で客観視していた。

「飛雷針の術!」
「■■■■■■■■■■!!!」
「グハアッ!!?」
「バーサーカー?どうし――え?」

 というわけで他のサーヴァントを囮に残し、カルナの宝具で死んだと見せかけられるタイミングでバーサーカーの元へ逃げたのであった。ちょっとバーサーカーは狂化してるはずなのに心眼スキルで素早い反応してきたりマスターのりんが自殺したりというアクシデントはあったが、彼はなんとか生き残っていたのだ。

「アーチャーさんが、二人!?」
「どういうことだ切嗣!説明しろ!」
「ここに来るってことはもしかしたらって思ったけど、やっぱりそうなんだ……」
「あとお前は誰だよ。」

 一方のイリヤとしては突然銀髪のオッサンが現れてヘラクレスにのされたりそもそも自分の名前が何故かカルナのマスターとして呼ばれたりと困惑を深めていた。その上雑魚サーヴァントが接近してきたと思って招き入れてみれば何故か自分の父親が自分と良く似た少女をサーヴァントにして現れた。もう一人の方のマスターらしき少女も銀髪で赤目とホムンクルスらしき特徴がある。何よりその魔力は自分程ではないが相当のものだろう。バーサーカーはよく分かんないからいいや。
 そんな混乱する一同の声を、ヘラクレスによって床にめり込まされながら扉間は聞く。扉間自身もよく状況がわからないが、まだ運の目がありそうだ。このままでは確実に消滅するが、また足掻ける。全員の気配に気を配りながら、口を挟めるタイミングを伺うのであった。


416 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:42:47 iURk.POI0



【アインツベルン城/2014年8月2日(土)0201】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。
[装備]
89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実
[道具]
89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実
[残存霊呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1:イリヤと話す。
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3:アサシンを警戒。
4:ルーラーの動きに疑問。
5:バーサーカー主従と縁を切りたい。
[備考]
●所持金は3万円ほど。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
奉仕(切嗣)
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1:イリヤと話す。
2:アサシンを警戒。
3:魔力供給をしたい。
4:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。


417 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:43:42 iURk.POI0


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
封印解除、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小)。
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1:アサシンを見張る。
2:アーチャーさんが二人!?
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1:アサシンを見張る。
2:衛宮達を利用しながら好機を待つ。
3:ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。


418 : 【102】聖杯戦争は家族団欒の後で ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:44:21 iURk.POI0


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、黒のワンピースとソックス、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1:切嗣と話す。
2:アサシンを警戒。
3:明日の朝九時に間桐邸に向かう。
4:別行動しているキョウスケが気にならない訳ではない。
5:ルーラーの放送に疑問。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[スタンス]
奉仕(イリヤ)
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●石斧に飛雷針の術のマーキングがあります。


【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(10)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1:りんの死に疑問。
2:消滅するまでの間に日野茜らの聖杯を悪用しなさそうな人間の情報とイリヤスフィール&バーサーカー主従が聖杯戦争に乗っていることを他の二組に伝える。
3:茜らを任せられないと判断した場合はアーチャーかバーサーカー(ヒロ)を殺しそのマスターに再契約を持ちかける。
4:上記のサーヴァント暗殺に失敗した場合、自爆して聖杯を悪用しようとする人間を一人でも多く殺す。
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●ホテルの上から三階までを陣地化しました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して得られた魔力はスキルと宝具の使用で全て使い果たしました。魔力供給がなされない場合数分以内に消滅します。


419 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/25(日) 18:45:09 iURk.POI0
投下終了です


420 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:17:24 QjB9nneM0
投下します


421 : 【103】疾走 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:19:32 QjB9nneM0



 爆破と同時に瓦礫は百メートルを越える高さから散弾のように地面へと降り始める。爆音で竦むまばらな通行人と車に容赦無く降り掛かるそれに、一人の男が混じっているなど、誰も気づくはずもない。無論NPCも。無論サーヴァントも。
 その男――アーチャーのサーヴァント、ワイルド・ドッグは、霊体化を活かして瓦礫の雨と共にアスファルトに降り立つと、ホテルを一睨みして歩き始めた。

 ワイルド・ドッグのスキルであり彼の代名詞とも言える、爆破。それは彼の武装解除、即ちサーヴァントとしての凡そ全ての能力と引き換えに彼に安全な逃走と高い自己保存性を約束してくれる。それこそAランクを超えるような追跡能力でもなければ影を追うことすら困難を極めるであろう。難点があるとすれば、このスキルが発動したということは彼の雇い主が死んだということであり、つまりマスターと聖杯を手に入れる権利の二つを同時に失っているということだ。

 消防や警察、マスコミや野次馬の群をすり抜けて歩く。今のワイルド・ドッグはまさしく亡霊、負け犬だ。盛り塩でもダメージを受けるほどにその力は低下している。実体化できるとはいえ消耗を考えれば一般人にも遅れをとりかねない。通行人がアクセサリーとして着けるロザリオにすら怯えておっかなびっくり小一時間歩くと、彼はようやく目当ての場所である、今は亡きマイケル・スコフィールドが住んだマンションへと辿り着いた。

 辺りを見回すと、目当ての物を見つけ素早く実体化し、侵入する。今のワイルド・ドッグは変態仮面により服を脱がされパンツ一枚のままである。こんな格好ではそれこそ警察を呼ばれかねない。普通のサーヴァントのように魔力で服を編むこともましてや武器を実体化させることもできない今現在、おちおち実体化もできないのだ。それでも、なんとか人目を憚り彼は目的の物を手に入れる。それは電話ボックスにあった電話帳だった。

(タカトオ……高、鷹、貴……)

 手近な街路樹へと登り太い枝の上に座ると、彼はページを捲り探し始める。何を?もちろん人物を。誰を?もちろんマスターを。
 彼は、聖杯戦争を諦めていなかった。彼の中にはこのままこの冬木を漂う凡百の悪霊のように座する気は全く無い。
 当たり前だが、ワイルド・ドッグは自分の状況はわかっている。マスターを無くしサーヴァントとしての権能を無くし、できることなどもはや何もないと一見思える。これならば、むしろマスターの方がまだマシかもしれない。その上途中で途切れた――大方誰かに消されたのだろう――ルーラーの通達では、自分は名指しで賞金首にされている。チェックメイト同然であろう。そうわかっている。だがそれで諦めるようなら最初からサーヴァントになどなっていないのだ。

(――!アインツベルン……アイリスフィール・フォン・アインツベルン……)


422 : 【103】疾走 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:20:33 QjB9nneM0

 賞金首になっているのは何も自分だけではない、わかっているだけで三組、わかっていないのも含めれば五組
存在する。そして賞金首はそれ以外の主従に比べて否応無しに戦闘せざるを得ないだろう。そうなれば当然、死傷者も出る。それが賞金稼ぎ側かもしれないがそんなことは関係ない。ようは賞金首の周りでは殺しが起きやすいということが重要なのだ。
 ワイルド・ドッグが探すのは、高遠いおりの住所であった。彼が気絶から覚めた後もじっと堪えていたおかげで、彼女もそのサーヴァントもどんな人間かはある程度わかる。あれならば主従揃って雑魚――もっとも、それでも明らかに彼とマイケルの主従より格上だとはわかっていたが――なのでいい感じにやられるだろう。サーヴァントの方もなかなかのお人好しそうなのでマスターの高遠だけ生き残るという展開も期待できる。ホテルの爆破に乗じて自宅へと逃げ帰った所を見張りチャンスを待つ、そう考えタウンページを捲るが、残念ながら見つけることはできなかった。一つは、彼はつい癖で中国読みで漢字を読んでしまうため『高遠』という苗字を見つけても目が滑ってしまうため。二つは、彼はまだ変態仮面の成敗のダメージが抜けていないため。三つは、そもそもNPC役の母親が前年に離婚して冬木市に来たという、高遠本人も全く知らないロール上の設定のためにそもそも電話帳に載っていないためだ。だいたい深夜に街頭の灯だけで電話帳を捲るなど無謀である。だがワイルド・ドッグはサングラスを外すと頭を切り替えて諦めることなく探した。ただし、探す名前はもう一人の賞金首であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの方であるが。
 カタカナは苦手ではあるがサーヴァントとしての知識はかえって彼に癖のないカタカナの知識を与えてくれていた。またつい日本人の名前の方が見つけやすいと思いそちらを探したが、ここが日本であることを思い出して非日本人の名前に集中すれば、自然とアインツベルンの名が浮かび上がってきていた。またここが冬木市であるために元からある建物の多くがあらかじめ電話帳に載っていたのも幸いと言えるだろう。調べ始めて十数分、彼は目当ての名を見つけその住所を頭に叩き込んだ。


423 : 【103】疾走 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:21:19 QjB9nneM0

 効率良く情報収集できるのならば他のマスターの住所も調べておきたいが、把握している非日本人名のマスターが少ないので電話帳での調査を切り上げると、ワイルド・ドッグは移動を再開した。よく調べればナノカ・フランカの工房も広告付きで載っていたのだが、プロスペロの名を冠するそれを視界に入れはしてもそれがあの小娘の拠点などとは夢にも思わない。ただただ頭の中で住所を繰り返しながらエレベーターを降りると、玄関をすり抜けてマイケルの家へと入った。
 必要はないが、エアコンをつけてみる。パソコンをスリープから立ち上げる。冷蔵庫から昨日買っておいた栄養ドリンクを無表情に飲みながら住所のメモをとる。VSSEの真似事をするはめになるとは思いもしなかったが、やるしかない。
 パソコンが立ち上がったのを認めると点け忘れていたテレビを点け、さっそく住所を検索欄に打ち込む。待つこと一秒、アインツベルンの家とされる建物の外観写真とその地図が表示される。テレビからは停電で闇に沈む街と、その中で炎上するホテルが映る。

 窓を見ると、小雨が降っていた。

 ワイルド・ドッグはアインツベルン家周辺の地図と写真を印刷すると、それがプリントアウトされる音を聞きながらクローゼットを漁った。主を無くしたスーツは彼の目に叶うほどではないが、今は着られればそれでいい。マイケルが小道具として用意していた眼鏡も着け、同じく小道具として日の目を見ることの無かったカツラで髪をグレーに変えれば、元の印象とは大きく違って見える。そして、逃亡生活の癖だろうか、小さなカバンに纏められていた荷物にプリントした紙を入れると、ワイルド・ドッグは部屋を後にした。彼がそうしたように、ホテルの人間もこの家を特定することは充分に考えられる。マイケルが拘束された段階で既に把握されていたと考えて良いだろう。それでも彼がこの家へと帰ったのはもしやライダー側のサーヴァントがいる可能性を考えてのものだが、意外にも誰も待ち構えていない。あちらもなかなかに面白いこととなっているのだろう。

 ワイルド・ドッグは傘を一つ持って家から出る。一応行き先は決まった。これからが『ワイルド・ドッグ』の本領である。



【新都、某マンション/2014年8月2日(金)0059】



【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[スタンス]
生存
[状態]
筋力(1)/C、
耐久(1)/C+、
敏捷(1)/D、
魔力(1)/E、
幸運(1)/D+、
宝具(0)/E
爆破スキルの影響下(ステータス低下、スキル無効化、宝具無効化)、精神的ダメージ(大)、変態仮面に対するトラウマ(?)、左腕喪失、魔力消費(極大)。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.アインツベルン(イリヤ(pl))邸を目指す。
2.潜伏し他のマスターと再契約が可能か試みる。そして他の主従が疲弊するのを待つ。
3.マイケルを殺した人間を警戒。
[備考]
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●爆破スキルの影響下にあり、霊格が一般人並まで低下しています。そのためステータスが一般人並となり、爆破と単独行動以外のスキル・宝具が無効化されます。


424 : 【103】疾走 ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:22:06 QjB9nneM0



「……ま、そりゃいないよね。」

 テーブルの上に放置された栄養ドリンクやまだ微かに温かいパソコンに触れながら、シュレディンガー准尉は部屋をざっと見回した。

 最後の大隊残党も含めて全員が死んだと思っていたワイルド・ドッグだが、一応死亡が確認されていない人間を捜索しようという話が持ち上がったのは、間桐邸にマスターの移動を終えた後のことであった。茜の自白も終わり負傷者の後送はカルナへの対処の後ということになり、とたんにすることの無くなってしまった教授が適当に思いつきで言い出したのが始まりである。シュレディンガーにしてみればどこであろうと一歩で行けるため、ゾーリン達のところ行くついでに寄ってみたのだが、どうやらあの男は生きているらしい。もっともマイケルに同棲相手がいたという線もありはするが。
 うーん、と腕組みしてシュレディンガーは考えてみる。部屋の状況的に生きてる可能性は高い。だがぶっちゃけ、どうでもいい。あの男を探す為に人を割くのは割に合わない。ミレニアムとしても彼には死んだことになっておいてもらった方が面倒くさくない。

 少しして、シュレディンガーは部屋の中から姿を消した。一応教授には話すが、アイツは死亡扱いで良いだろう。



【新都、某マンション/2014年8月2日(金)0202】


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1:少佐殿死んじゃったしな〜どうしようっかな〜。
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。



【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ MIA】


425 : ◆g/.2gmlFnw :2017/06/30(金) 01:22:23 QjB9nneM0
投下終了です


426 : ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:00:34 NB.dQsvI0
投下します


427 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:07:28 NB.dQsvI0



(寝た子を起こすな、て言葉あるじゃないですか。アレって実際その通りだと思うんですよね。知り過ぎる罠ってやつですよ。下手に情報があると雑念が入るっていうか。例えば勉強してる時に金曜ロー○ショーでコ○ンドーやってたらもう何も頭に入ってこないでしょ?それで何が言いたいかって言うと――)

「ルビー!今の念話って――!」
(あっちゃーいろんな意味で起きちゃったー。)

 現在時刻は零時を回り数分、深山町にあるアインツベルン家では停電に沈む闇の中でイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが懐中電灯の如く光る杖を握り締め大慌てでテレビのスイッチを入れていた。
 今のこの家に、彼女が予選の時に共に暮らした見知った家族のNPCはいない。少女一人と杖一本のみ。ルビーが気合の自家発電で点けたテレビから流れる冬木市の惨状を伝えるアナウンサーの声と、頭上と合わせて響くヘリの音。その二つが部屋を振るわせる中で、イリヤはルビーを握って、大きく息を吐くと、唾を飲み込み。「話を整理しよう……一回」と呟くように言った。

 さて、なぜ彼女はこんなに混乱しているのか。それは彼女の昨日一日、もっと言うと昨日の午後にある。
 イリヤのこれまでの半日は、ほぼ自宅で寝ていただけである。それは彼女の体調の問題やルビーの策略によるものであるが、しかしそのことで聖杯戦争の影響を直接受けることは無かった。そう、幸で不幸で無かったのである。
 ちょうどイリヤが寝ていた時間は、他のサーヴァントもマスターも皆が皆話し合いや食事や休憩やレクリエーションをしており、表立った衝突というものは皆無であった。包囲網を敷かれている無防備な彼女に迫る危険もやはり皆無で、イリヤはその時間の分充分に身も心も休めることができたのだ。これが彼女の幸である。
 そしてイリヤがちょうど寝ていた時間は、多数の主従間の同盟や情報交換に加えてNPCの行動による社会情勢の変化など、魔術も暴力も使わない摩擦と衝突の時であった。ほぼ自宅で静養することに努めていた為に、イリヤを取り巻く包囲網はそれまでの二度に比べ格段に強化されたのに対し彼女はなんら情報的並びに外交的なアドバンテージを得られていなかった。それが彼女の不幸である。

「ちょっと、ちょっと待って、クレーター?え?」
「隕石が落ちたらしいですね、表向きは。陣地なり工房なりごと宝具で吹き飛ばした、てところですよ。」
「これって……かなりとんでもないことになってるんじゃ……」
「さっきの念話を信じるなら神秘の秘匿なんて無視して勝ちに来てる主従もかなりいるみたいですし。顔を合わせた途端ズガン!てやってくるタイプの人間も多いって考えておいた方が良さそうですよ、イリヤさん。」

 ザッピングすれども代わり映えしない冬木の惨状が流れるテレビを見つつ、イリヤはドン引きしながらチャンネルを変えていく。元いた世界と違うとはいえ自分の勝手知ったる街のそこかしこに刻まれた戦禍が次々に現れては消えていく。カルナの戦闘を認めたのを棚の上に置いて、ただ町人の一人としてその爪痕に驚くばかりだ。不幸中の幸いといえば、ニュースによって社会の変化を把握したことぐらいである。だがそれもイリヤを唖然とさせる材料の一つだ。ニュースでしか見たことのない避難勧告が自分の住む街に出されている字幕や、自分の通う学校に自衛隊が集結している映像を見れば、言い様の無い不安感が胸の中に広がるのであった。

「そうだ!ランサーさ――」
「ストップ!!念話する気なら辞めといた方が良いですよ。サーヴァントなら逆探知できてもおかしくないですからね。」
「でも……」
「落ち着いて考えてみましょうよイリヤさ��ん。念話が必要な場面だったらランサーさんから念話来ますって。あの人が一言多いのは知ってるでしょう?それを堪えて位置がバレないようにしてるんですよ、あのクレーターみたいに攻撃されないために。それなのにここで念話するのはどうかと思いますよ?まあ切羽詰まった場合なら止めませんけどね?」
「でも……ランサーさんって一言少ないから……」
「まあ諸説ありますよね。とりあえずお茶組んできますね。なにか冷たいものでも飲んで落ち着きましょうよ。下手に動いたマスターを狙うような罠かもしれませんし、ここはちょっと我慢するべきじゃないかなって思いますよ。私はそう言いたいな。」


428 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:14:13 NB.dQsvI0


(あっぶなあああああい!バレるとこでしたよヤバイヤバイ……)

 混乱するイリヤを無茶苦茶な理屈で有無を言わせず丸め込むと、ルビーは冷蔵庫へと飛びながら羽の一つで汗を拭うような仕草をしつつ、器用にコップに麦茶を注いでいく。「ちょっとブレーカー見てくるんでその間は懐中電灯点けて待っててください」とコップを渡しながら言うと、返事も待たずにその場を離れた。
 何を隠そうイリヤが聖杯戦争から遠ざかってきたのはルビーの働きだ。美遊がイリヤに気づかれぬようにイリヤを優勝させようとしているのに協力しているルビーとしては、なるべく家の中で情報を遮断してイリヤを隔離、もとい保護しておきたい。そのためにカルナとの念話も止めさせ余計なことを耳に入れないようにしているのだ。

(正直無理があるとは思ってますけどねえ……さあて、今は美遊さんホテルでしたっけ?あの爆発のどっちかがバーサーカーのだったら、いよいよマズイですよ……)

 ルビーは密やかに、そして素早く移動する。しかし目指すのはブレーカーではない、パソコンだ。イリヤの目に見つからずにかつ極力魔力を使わない方法であるEメールで彼女は美遊と情報をやり取りしていた。奇数の時はルビーで偶数の時は美遊と、一時間毎にメールを送り合っている。零時の今は美遊からのメールが着ているはずであった。

(うわあこれはそうとう切羽詰まってますね……まだホテルに潜り込んで置く気でランサーは保険って感じなら良いんですけど。)

 ノートパソコンを立ち上げると、果たしてメールは着ていた。だがそれを見たルビーからは流れないはずの冷や汗がまた流れた気がした。明らかにメールの文面がおかしい。誤字が多い。あんな爆発があればまともに打てなくてもおかしくはないが、内容もおかしい。二時にランサーをホテルに向かわせろと言ったり襲えと言ったり。

「ルビー……?」
「(こっちもこっちでハードモードですし参りますよまったく!)あ、イリヤさーん?ブレーカーじゃなさそうです。これあれですね、たぶん電線とか切れてるかもしれませんね。」

 迫る足音に電源を落とす間もなく画面を閉めるとイリヤの元へと戻る。こちらも苦しいが美遊は更に苦しい展開であろう。こうなれば前言撤回してランサーと念話で情報共有する必要も出てきた。しかし今更どう切り出すか……

「ルビー……やっぱりランサーさんと一度話し合った方が良いと思う。もう半日も連絡無いし、さっきの念話も気になるし……」
「(ナイスイリヤさん!)いや��気持ちわかりますけど何分ね、リスクが、ね?」
「……そうだよね。」
「(諦めんなよっ!どうしてそこで諦めるんだ!!)やっぱり逆探される危険性は無視できませんよね、自宅特定されたらもうおしまいですし。」
「……わかった。それなら、公園に「行きましょうねえ!公園なら逆探知されても家まではわかりませんし!」ルビーなんかテンションおかしくない?」

 状況はクリアされた。

 とにもかくにもルビーはリビングへと戻ると、再び気合の自家発電でテレビを点け、イリヤと共にテーブルを囲む。まずは情報の整理だ。ルビーが情報を隠蔽してきた為にイリヤの持つ情報は他の主従に比べて格段に少ないと、ルビーは読んでいた。故にランサーに余計な事を聞かぬように事前にルビー側である程度当たり障り無い範囲で話しておこうという腹積もりである。主にテレビとラジオ、そしてポストに突っ込まれたままであった夕刊を元に情報収集と確認を進める。暫くして、二人が近くの公園へと向かって家を出たのはルーラーの念話による放送から三十分程してのことであった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


429 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:21:12 NB.dQsvI0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 そして現在、公園でランサーと念話してから約一時間後。

「ランサーさんと視界共有できなくなった……ルビー!!」
「イリヤさん!?だからマズイですよ!!」
「でも!」
「落ち着きましょう!まだ消滅したってわけじゃないんですから!」
「あの怪我じゃ持たない!」
「それよりまずは目の治療です!失明したいんですかっ!!」

 左目から止めど無く涙を流しながらも玄関から走り出そうとするイリヤを、ルビーがなんとか押し留める光景がそこにあった。

 ランサーとの情報共有の結果、冬木ハイアットホテルに多数のサーヴァントと並びにサーヴァント級の何かがいるとの報告を受けたイリヤは、漁夫の利を得ようと公園でセイバー達にしたようにランサーのホテル攻撃を認めた。認めたと言っても圧倒的な経験の差から全てランサーに一任することになったわけだが(そしてそうなるようルビーが誘導したわけだが)、その戦闘の一部始終をイリヤは見ていた。
 ランサーのカルナとの視界共有中に受けた、敵のランサーのアリシア・メルキオット、その宝具の一撃。カルナの左目を襲ったそれの強烈な光量は、直接貫かれた訳でもないイリヤの左目をも容赦無く焼いていた。焦点は合わず暗い視界の中で焼き付いた光が乱舞するためとてもではないが目など開けられない。ルビーがサポートすれども絶叫しそうになる痛みをイリヤは耐えていた。
 そしてその痛みが、イリヤの足を前へと誘う。ただ光を間接的に見ただけでこれ程の痛みならば、これを直に受けたランサーはどれ程の苦痛と怪我を負っているのか。そう思うともはやいてもたってもいられない。

「だったらここでやる!『死なないで、ランサーさん!!』」
「あああああああもう!!なんであんなチート英霊召喚してこうなるんですか!!」

 イリヤの手から赤い閃光を伴って令呪が魔力へと姿を変えていく。どうしてこうなった。それがルビーの率直な感想であった。
 冬木市の広範囲を射程に収められるAランク超えの対軍宝具をある程度連発できるサーヴァント、いったい何故これ程の強力無比な英雄を御しながらここまで追い詰められるのか。もしや本戦開始早々に爆撃しておくのが正解だったとでも言うのか。今更取り返しのつかないことに頭を悩ませると同時に主従共々負傷した現状にルビーは困り果てる。それでもなんとかイリヤの治癒を進めていたところに、その声は聞こえた。

『申し訳無い、手を煩わせた。』
(ちょっ!念話まで!)
「ランサーさん!?さっきの怪我は!?大丈夫?」
『半身と心の蔵を持って行かれた。先の令呪が無ければ死んでいただろう、我が身の不徳の致す所だ。』
「うそ……」
(ウソォーッ!?)

 もはや言葉もない。色々な意味で絶句だ。だがカルナの言葉はそれで終わらない。

『南の屋敷にホテルにいたマスター達が逃げ込んだようだ。何騎かのサーヴァントに護衛されている。どうする。』
「どうするって……」
「……それって、さっきみたいに宝具を使ったら、ていうこと?」
「穏やかじゃないこと平然と言うようになりましたね……え、マジで?」
『同じ相手に二度敗れる趣味は無い。既に我への信頼は地に落ちただろうが、やるからには父とこの槍にかけて勝利を約束しよう。』
「嫌な予感がビンビンですね。同じ相手、ですか……イリヤさん、視界共有できます?右目だけは難しいかもしれませんけど。」
「わかった……見えた!凛さんちの近くのお屋敷に、それにあのセイバーは……」
(あそこって御三家の間桐の屋敷ですよね……騎士王召喚しててもおかしくないですけど……てかこのままだと美遊さんもまとめて吹っ飛ぶんですけどカルナさんわかって言ってるんですかね……?)

 判断を委ねるようにランサーは沈黙する。何とはなしにイリヤとルビーは顔を見合わせる。時刻は二時を回った。

「とりあえず、ここと向こうの中間線を越えない限りこちらから手は出さない方が良いと思いますよ。」

 そう言うとルビーは同意を求めるようにイリヤへ体を傾けた。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■


430 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:39:18 NB.dQsvI0



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



『凛さん、今話せますか?』
『イリヤのことで少しお話したいことがあります』

 そう美遊から切り出されたのは少し前のことだ。

『何について話すの?』
『カルナについて。瀕死らしいです。消滅する前にこの家に宝具を使うと。これがルビーからのメールです。』
『ちょっと考えさせて』

 互いに一つ一つ、タイプするよりも長い間考えながら筆談を進める。凛を自分達の知る凛と思っている美遊と、イリヤをバーサーカーのマスターのイリヤと思っている凛。人の目があることから迂遠な手段でしかコミュニケーションできない二人はそれぞれの勘違いに気づくことなく『会話』を続ける。
 凛は悩んだ。ルビーとはいったい誰だろうか?美遊の協力者であることはわかるが、そうなると未だ姿が見えないマスターの一人だろうか?というかあのバーサーカーが瀕死とは一体に何があったのか、なぜランサーの方のカルナを攻撃しようとするとバーサーカーの方のカルナが裏切るのか、そしてそもそも何故美遊は自分にそれを伝えたのか。
 一方の美遊は焦っていた。このままサーヴァントが前進すればカルナの宝具がこの館の全員を焼くだろう。さすがの美遊も死にたくはないし、死んだと思われていた凛をよりにもよってイリヤのサーヴァントの手に掛けさせたくはない。そして宝具の攻撃が失敗した場合はカルナの脱落を意味する。なんとしてもカルナとこの館のサーヴァントの衝突は避けねばならない。

『この情報はありがたく受け取っておく で、あなたはどうしたい?』
『今すぐに離れましょう』
『さっき私が全員籠城するように言ったのに?それにここはキャスターの陣地の中って忘れてる? とりあえずサーヴァント達には前進しないようセイバーを介して伝えておく 私はこっちのマスターを説得する方法考えておく あなたはカルナが暴発しないよう釘を差しておいて 準備ができたらメールする』
『わかりましたメールしておきます それとさっきは脱落したと言いましたが あれは嘘です 私のバーサーカーはまだ脱落していません カルナの消滅する前にイリヤと合流させて再契約できるか試したいんですけどどう思いますか?』
『この同盟の索敵網はかなり広いからやめておくのがベター まずは目の前のことに専念すること』

 こうして互いにスマホの画面に文字を打つ筆談は終了した。美遊が頷きながらカルナのマスターへメールを打ち始めたのを確認して、遠坂凛は心の中で大きく息を吐くも顔はしっかりと深刻な表情を維持したままその頭を回し始める。
 凛からすれば、とりあえず話を合わせてみたところとんでもないことに巻き込まれた感じだ。まあ巻き込まれていなかったら有無を言わさず蒸発させられていたかもしれないのだが、なにやら危険な橋を渡るはめになった気がしてならない。一応イリヤがなぜこの場にいないのかの理由に接することができたが、自分が負けそうだからと言って道連れは辞めてほしい、などと未だ勘違いしていた。
 一方美遊は内心で安堵していた。彼女からすれば、凛は自分の頭の回らないところを的確に補ってくれる頼れる先輩に他ならない。今までで一番敵にしたくないと思ったほどだ。そしてサーヴァントはあの騎士王。これならばたとえ自分が途中で脱落しようとも、なんの心配もなくイリヤを任せられる。そう全く勘違いに気づくことなく考え、ルビーへ急ぎメールを打つ。

 こうして誤解は溶けぬまま、優勝を願う二人は戦争回避の為に動き出す。美遊が宝具発射中止のメールを、凛が進軍停止と宝具発動禁止の念話をしたのは、それぞれ会話を終えて一分も経たぬ間のことであった。


431 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:45:29 NB.dQsvI0



【深山町北部/2014年8月2日(金)0209】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
カレイドルビー
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:ランサーさんを死なせたくない。
2:サーヴァントが近づいてくるようなら戦うしかない。
3:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(8)
耐久C(6)
敏捷A(10)
魔力B(8)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
心臓・左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:間桐邸への宝具使用の準備を進める。
2:美遊は自身のことをイリヤに伝えるなと言った。オレはーー
3:美遊に興味
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。


432 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:54:28 NB.dQsvI0



【深山町北部/2014年8月2日(金)0209】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
カレイドルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:ランサーさんを死なせたくない。
2:サーヴァントが近づいてくるようなら戦うしかない。
3:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(8)
耐久C(6)
敏捷A(10)
魔力B(8)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、心臓・左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:間桐邸への宝具使用の準備を進める。
2:美遊は自身のことをイリヤに伝えるなと言った。オレはーー
3:美遊に興味
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下にあります。


433 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:58:11 NB.dQsvI0



【深山町南部・間桐邸/2014年8月2日(金)0209】

【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra
[道具]
ドール@Fate/Extra、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:カルナ側と間桐側の動きを見て出し抜ける機会を伺う。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
4:余裕があれば索敵・感知系の礼装やドールを用意したい。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra若干数と、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 また美遊から話されたイリヤ(pl)のことをイリヤ(sn)のことと誤認しました。バーサーカーが瀕死であるとも誤認しています。
●美遊のバーサーカー(小野寺)が脱落していないことを知りました。


434 : 【104】相互確証破壊 ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:58:38 NB.dQsvI0


【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
ステルス奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
私服、疲労(小)、魔力消費(小)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない。イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
2:遠坂凛と共にこの同盟を内側から崩壊させたい。
3:五代雄介を警戒。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。また五代雄介についても記録をメモしています。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●対外的には美遊・エインズワーズの偽名を名乗り行動しています。またバーサーカー(ユウスケ)を消滅したと説明しています。
●遠坂凛を遠坂凛@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤと誤認しました。


435 : ◆g/.2gmlFnw :2017/07/17(月) 00:58:56 NB.dQsvI0
投下終了です


436 : 名無しさん :2017/08/11(金) 02:00:09 b9UUJe7E0
しばらく読めてなかった間にかなり動いている…
投下乙です、また追っかけて見ます


437 : ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:00:36 J1fen5x60
ご感想ありがとうございます、やはり身が引き締まる思いですね
投下します


438 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:02:39 J1fen5x60



 0210、深山町、アインツベルン家



 状況は至ってシンプルである。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとそのランサーであるカルナは、間桐邸に集った同盟と睨み合っている。互いが互いのマスターをその対軍宝具の射程に収め、相手のサーヴァントに動きがあればコラテラルダメージなど気にかけもせずそれをぶっ放す。そしてカルナは深手を負っており、かつ座して消滅を待とうなどとは毛頭考えていない。
 本来ならば掟破りもいいところの外道な戦術、否、戦略による牽制。それがこの聖杯戦争の二日目が始まって二時間ほどで起こった状況であった。広範囲の索敵能力と狙撃・砲撃・爆撃能力、そしてそれを可能とするリソースが互いにあり、かつ互いを脅威と睨めば、この展開は必定である。故に場は必然、膠着状態へとなりつつあった。

(美遊さんからメールですか。ええっと……あっちのサーヴァントを止めるからカルナビームは中止ってことですね……て!凛さんと話したっ!?美遊さん催眠術にでもかかってるんですか!?)

 ふつうそのような膠着状態となれば取れる戦略は限られる。相手の陣営と内通するか、中立勢力を抱き込むか、もしくは最後のボタンを持つ人間を殺すか、だ。だがその全てをイリヤはできない。それどころか思いつきもしない。意図的に身内によりそういったものから遠ざけられた彼女に打つ手は無く――彼女を遠ざけた張本人の一人であるルビーは一人悩ましく悶絶していた。

(あれ、昨日説明しましたよね?凛さんがバーサーカーっぽいサーヴァント連れたもう一人のイリヤさんにヤられたって言いましたよね?)
(もしかして生きていた……?誤認したとは考えにくいですけど……それとも実は敗者復活戦があった……?いやいや、ここは常識的に考えれば美遊さんが化かされているのでは?キャスターなりの宝具ならあるいは幻覚も……サファイアちゃ��ん、たすけて��。)

 聖杯戦争に挑んでこの方無い程にルビーは頭を使う。イリヤに代わり策を巡らすルビーは、その存在上中立勢力の抱き込みなどは難しいが、間桐邸のスパイとの内通はできていたし暗殺の指示も可能ではある。聖杯戦争参加以前からの仲間というこれまた反則もいいところの美遊・エーデルフェルトの存在は、イリヤが知らぬとはいえ彼女の切り札であり生命線だ。
 だが、その切り札が明らかにおかしい。なぜか死んだはずの人間と話したという。これではどこの怪談だとツッコみたくなるが、なんと一緒に今後の作戦を話し合ったようですらある。これをどう考えたものなのか、どう考えれば良いのか。

(――直接聞いてみる?いやあ……いくら私達でもキャスターの陣地の中で通信するのはリスキーでしょ。下手を打てば内通の証拠になりかねない――って、これほぼ詰んでませんか?)

 ルビーと妹のサファイアの間では秘匿性の高い念話が行える。遠坂家が宝石魔術を用いて行うそれより格段に高い技術を用いて行われるそれだが、それでも英霊相手に誤魔化しきれるなどと考えるのは楽観が過ぎるとルビーは考えていた。
 しかし、そうなるとルビーは頭を抱えざるをえない。いったいなぜ美遊がそんな致命的な勘違いをしているのかも解らなければ、その安否もわからない上に、彼女から齎された情報を信用できるかもわからないのに加えて本人から聞き出すこともできないのだ。
 既にサーヴァント同士の睨み合いが始まって数分、いや、数十分。停滞し粘着くような緊張はストレスとしてそれに浸かるものの体力を削って行く。不確実性は高まり、誰が暴発するかわかったものではない。不可逆的な事態が一秒後に訪れてもおかしくない今の状況で、頼みの綱に生じた異変をどうすべきなのか……半身とも呼べる妹の考えをトレースしても、その主の異変をなぜ見逃しているのかまではわからない。遠坂凛はもう一人のイリヤに殺されたと伝えたはずなのに――そう思考がループしそうになったところで。

(平行世界の凛さん……?)

 バチリという音が聴こえてきそうな感覚を覚えつつ閃いた一つの可能性に、ルビーは頭の星を明滅させた。


439 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:03:39 J1fen5x60



 0214、深山町、間桐邸



 クロノ・ハラオウンが初めに感じたのは違和感だった。
 彼はこの聖杯戦争の調査を第一の目的としている。と言っても実際は参加者たるマスターやサーヴァントにNPCの保護まで試みているがそれはあくまで『個人的』な問題であり、彼の本来の任務からすれば人的調査の手段の一つでしかない。故に自分以外の、ましてや好戦的と想定していた人間から、聖杯戦争の血生臭さを否定するような穏便な提案が出されたことは、彼にとっては『個人的』に喜ばしいことであり一執政官としてもありがたい出来事であるはずであったが。

「撤退……ですか。」

 クロノの言葉に、そう、と頷く凛。半日もない付き合いだが彼女はクロノが保護した人物であり協力者であり同盟者である。であるにも関わらず、彼はその言葉に何か嫌なものを覚えずにはいられなかった。
 こちらの同盟のサーヴァントとあちらのサーヴァントの対軍宝具をちらつかせ合う睨み合い。その状況を考えれば彼女の提案は至極真っ当なものである。相手を刺激しないよう慎重に圧力を下げれば、Aランクオーバーの魔術の打ち合いなどといった事態は避けられるであろう。ましてやこちらはキャスターという魔導師の英霊がいる。時間はこちらの味方であるはずだ。
 だがそれでも、いやもしかしたらそうであるからこそ、クロノは凛の言葉に賛意を示すことを躊躇った。クロノの中の職務や責任といったところとは別の本能的な部分が、そこに危険な臭いを嗅ぎとったのだ。額面通りならば彼女の話はクロノが考えていたものと差はない。無いにも関わらず、もしくは無いからこそ、クロノは自分が地雷に足を掛けているように思えてならなかった。

(……なぜだ、なぜ僕はこんなにも警戒しているんだ?)
「――とりあえず、前進せずに距離を保つように伝えましょう。一度皆さんと話し合うべきです。」

 だが迷っていたのは数秒であった。とりあえず口では適当なことを言う。黙るという選択肢はない以上当たり障りの無いことを言っておくのがベターだと踏んだ。

 少しして、凛と共に地下へと戻ったクロノは、言葉少なに思考を巡らすことに集中していた。先の提案は凛自身の口から皆に説明され概ね受け入れられていた。そして善後策へと関心と話題が移ろうそんな場で、クロノは発言を求められた時を除いて考えを優先する。ともすれば隙だらけと言って過言ではないその態度だが、クロノ自身はそうせねばならないと直感的に判断した。
 視線を感じて顔を向ける。慎二が凛の方をちらっと目配せして目を逸らした。
 クロノは迷った。彼の直感は凛を脅威と確信してならない。だがそれにはなんの根拠も無いのだ、無責任に盲信はできない。

(――仮に、セイバー達とカルナの衝突が、この状況を作るための談合であるとすれば……考え過ぎだとは思う、でも、そうなら『必勝法』といい全て手の平の上なのでは?――それ以前に、なぜ美遊は五代さんと同じクウガをサーヴァントにしていた?先の戦いで脱落したのは嘘か……それとも落すために戦ったか……?)
「奴らをここに引っ張り出す。」

 キリがない思考の渦から、クロノは意識を取り戻した。進んでいた話し合いは、その一言で空気が変わった。

「正気?」
「エサがあれば食いついてくるだろ。アイツラだって死にたくはないはずだし。」
「無茶ね。それこそ全員が死なないで済む方法でも提示しない限り、時間を稼ぐ事にしかならない。」
「――あるんだよ、全員生き残れる必勝法が。」

 クロノは思考を止めた。『必勝法』はこの聖杯戦争からの脱出を望む人間にとっては絶対に主催陣に気取られてはいけないはずのものである。それを聞くものが聞けば明らかにそれとわかる文脈で言うとはどういうことか。情報を共有している者達の間でアイコンタクトが交わされる。その眼球運動の終着点である情報漏洩の張本人――間桐慎二は怪しい笑みを浮かべてみせた。


440 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:06:47 J1fen5x60


(偽遠坂ァ……こいついったい何考えてるんだ……?)

 一方その間桐慎二が凛の言葉に引っ掛かったのは、違和感を感じたからとか直感で罠の臭いを嗅ぎつけたとかそういうことでは全く無く、ただただ彼女への反感のためであった。
 そしてその理由も、それまでに色々と積み重なっていたという事情はあれど至極くだらないものだ。実は慎二も凛と同じことを考えていて、ただ単にそれを先に言われたから自分の冷静かつ的確な意見を横取りされたと思ったという、ようは無茶苦茶な逆恨みによるものである。

(クロノもなんで黙ってるんだよ。お前が喋んないから偽遠坂が話の主導権を握ったんだぞ!)

 慎二はクロノを睨んだ。それに気づいたクロノと目線が合うと、凛を一瞥して見せる。「クロノ、なんとかしろ。」と彼としては言外に言ってみたが、クロノは迷っているような顔をしたままろくに喋りもしない。そのことが更に慎二を苛立たせる。

(こいつら僕を舐めてんのか?この同盟でまともなのは僕と狂介ぐらいじゃないか……)
(……そういえば、イリヤも美遊もあのチョコとかいうガキも魔術師だったな。魔術師っていうのは人間の屑しかいないのか!?)

 ナチュラルに茜やいおりを無視した上に先程まで恨んでいた九重りんのこともすっかり忘れて、慎二は魔術師という存在に憤る。よくよく考えれば、魔術師達にはタクシーや喫茶店を奢らされたり自分の家にどかどかと上がり込まれたりとろくなことをされていない、などと心中で毒を吐く。

「というわけで、ここは一度引くべきよ。第一、時間はこっちの味方なんだから。」
「まあ……妥当ね。私とアーチャーとしては断る理由は無い。」
「私も賛成です。」
(コイツ……!勝手な事ばっかするな!僕がリーダーのチームのサーヴァントだぞ!)

 憎悪は加速する。この偽遠坂凛をどうやり込めるかが魔術師という生き物をやり込めることと慎二の中で等号で繋がって――


『……ごめんなさい、兄さん。』

(馬鹿にするな……!)


 ――間桐慎二の中で何かのたがが外れた。

 ならば簡単だ。奴ら蟲爺のようなクソったれ魔術師共が求めるものを台無しにしてしまえばいい。それが最も奴らを出し抜くことになる最高の策だ。
 もちろんそうなれば慎二自身も願いを叶えることはできない。だが、『あえて』魔術師にならず、ただの人間のまま魔術師を出し抜けば、決定的な勝利となる。魔術師になってからでは達成できないその勝利が、慎二の中で目標として立ち上がってきていた。
 それに言ってしまえば、こんなわけのわからない場所の聖杯戦争よりも自分の地元の聖杯戦争の方が優先順位が高い。無理に優勝を狙わなくても負けでは無い形で退場し、この一月程の経験を持った状態で第五次聖杯戦争に参戦すれば、自分の勝利は絶対的なものとなる。それが慎二を、この聖杯戦争を潰す事へと駆り立てる本人も無自覚な最大の動機であった。

(全員跪かせてやる……間桐も、遠坂も、アインツベルンも、桜も!あの妖怪もッ!!)
「――奴らをここに引っ張り出す。」

 そしてそのための手札は既に揃っている。この聖杯戦争をひっくり返す方法も、それを強制するために必要な暴力の目処も着いている。ならば、後は無理矢理にでも巻き込んでゲームエンドまで押し込んでしまえ。

「あるんだよ、全員生き残れる必勝法が――」

 慎二は自分に視線が集まるのを感じた。共有者達からだけでなくあの偽遠坂凛や美遊と名乗った少女からも。これでいい。これでいいのだ。これこそ間桐慎二という人間のポジションだ。

(勝つのは――僕だっ!!)

 この聖杯戦争は間桐慎二の同盟により潰される。自分こそがこのゲームの主人公なのだから。


441 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:10:06 J1fen5x60


(どういうことなの……?)

 さて、間桐邸地下の陣地で遠坂凛から撤退の提案をされたときアリス・マーガドロイドの胸に浮かんだのは困惑だった。ただしその原因は凛の言葉ではない。彼女の提案になぜか鈍い反応をするクロノと慎二に対してである。
 もとよりアリスとしては凛の提案には賛成である。というか、自己の安全を第一に考えるのであれば反対する理由がない。何が悲しくて相手の必殺技がいつ飛んで来てもおかしくない状況のままでいつまでも睨み合っていなければならないのか。常識的に考えればとっとと仕切り直すなりなんなりすべきだ。これが現状へのアリスのシンプルな感想である。また彼女のアーチャーの赤城が空母であることを前提とすれば、今の配置は明らかにアーチャーにとって不利である。どこの世界に相手の砲門の射程内に踏み込む空母がいるのか。空母というものに明るくなくとも遠隔攻撃に慣れたアリスから見れば、この用兵は特に彼女達に厳しいものなのだ。であるからして、彼女としては凛の提案は歓迎できるものであり、それに浮かない顔をするクロノ達の感情が読めなかった。

(二人がアイコンタクトした……魔力の反応はなし、これは……なんらかの合図?)
(こいつら僕を舐めてんのか?この同盟でまともなのは僕と狂介ぐらいじゃないか……)
(慎二の眉間に皺……直前に凛の方を見てたことと関係がある……?)
(――仮に、セイバー達とカルナの衝突が、この状況を作るための談合であるとすれば……考え過ぎだとは思う、でも、そうなら『必勝法』といい全て手の平の上なのでは?――それ以前に、なぜ美遊は五代さんと同じクウガをサーヴァントにしていた?先の戦いで脱落したのは嘘か……それとも落すために戦ったか……?)
(クロノも……そんなに重大な『ナニカ』がある、そう考えておいた方が良いかな。)
(……そういえば、イリヤも美遊もあのチョコとかいうガキも魔術師だったな。魔術師っていうのは人間の屑しかいないのか!?)

 まさか二人がそれぞれてんで別々に遠坂凛を警戒しているなど知る由もなく、アリスは二人の顔色から何かが起こると判断する。この聖杯戦争が始まってからずっと悪目立ちせぬよう万事に距離を置いていたがために気づけたその表情の変化は、しかしその感情の変化までは表に出さず、アリスの予測を狂わせる。そして――

「――奴らをここに引っ張り出す――」
(――!さっきのアイコンタクトはそういう……ここで仕掛ける気ね。)

 ――誤解は決定的になった。
 アリスは確信した。ここで『必勝法』を押し切ろうとしていると、半分正解で半分間違った答えを導き出した。「正気?」と一応ポーズとして聞くが、「エサがあれば食いついてくるだろ。アイツラだって死にたくはないはずだし」と慎二から言われたことで疑う余地はゼロとなる。ちらっと狂介とのび太を見る。全員が慎二へと視線を送る。アリスはそれを決起のサインと読み取った。

「――あるんだよ、全員生き残れる必勝法が――」
「慎二……仮にその必勝法で騙すとして、どうやって相手に伝える気?」

 ならば、ここで表に出よう。アリスはこの時初めて、受け身であることをやめた。
 ここからは時間との勝負ということはクロノ達もわかっているだろうと誤解して、その方策を自然に話せるように言葉の誘導を試みる。

「騙すなんて人聞きの悪いこと言うなよ、僕はただ、一人の人間として全員が傷つかないために何ができるかを考えただけさ。で、だ……アリス、君のアーチャーの力を借りたい。クロノ達の時みたいなやり方じゃなくても、あのアーチャーなら呼び掛けられると思うんだ。」
『アーチャー、できるの?』
『念話を電波として飛ばすということなら……ただそれだと私が艦娘であると推測されていることになります。』

 こちらのサーヴァントの正体に感づきつつそれを策に組み入れながらも同時に探りを入れる、そう判断してアリスは慎二の評価を大幅に危険人物のベクトルへと動かした。実際は自分の家の周りに零戦のラジコンが飛んでいたことから適当に第二次世界大戦の英霊だと当たりをつけてカマをかけたらまぐれ当たりしただけなのだが、まさかそんなしょうもないこととは夢にも思わずアリスは気を引き締める。

「わかった、『今』やるのね。」
「ああ、『ここ』で終わらせる。」
「慎二!これで……!」
「ナノカさん……まほろさん……!」
「あぁ狂介、ああ!やってやるさッ!!」
(な、なぜだ!?なぜ今必勝法を!?)
(え、なにこれ?)
(……!?このままじゃ私のことがイリヤに!メールする?間に合う?サファイアの念話なら、でも……)

 かくして間桐慎二の暴走は事態を急変させる。聖杯戦争に関わる全員が、彼の作る無法図の渦へと巻き込まれていく。


442 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:15:12 J1fen5x60



 0217、深山町、アインツベルンの森の外れ



『クロエ、聞こえてる?』
『ええ……どうやら、私達にしか聞こえてないみたいね。』
『誰の声かわかる?』
『全然。わかるの?』
『ふぅ……アリスって魔術師のアーチャー、私の同盟相手。』
『……てことは、もしかしたら私のとこのイリヤがカルナのマスター?なにやってんのもお……』
『それか、また別の平行世界の私達かもね。』
『ハァ……とにかく、パパに相談ね。イリヤ、車を停めて。カーラジオで流せないか試してみる。』

 夜の森を征く二台の自家用車が停車する。そのうち黒塗りの高級車からは白い肌に銀の髪の少女が、ボックスタイプの軽自動車からは褐色の肌に銀の髪の少女が出てくる。手を繋ぎ車に触れる。カーラジオが暫し不協和音を奏で、ややあって少女と思しき声が流れたのを認めて、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン・アインツベルンはその場の全員に話しかけた。


 ――イリヤがアインツベルン城へと足を踏み入れた切嗣の顔を見て衝動的に、反射的に殺しに行かなかったのにはちょっとした理由がある。頭の中で何千何万と思い浮かべた顔を見れば脳のシナプスに電気信号が蠢くのと同じスピードでその心臓を魔力弾で吹き飛ばすはずであったが、それを押し止めたのは自分と同じ顔の少女が先に見えていたことと、そしてもう一つ。

「俺は「ツェーレ。」」

 バーサーカー・ヘラクレスに抑えつけられているアサシン・千住扉間が口を開いた次の瞬間に、その肩口に魔力弾が深々と突き刺さる。ちょうど24時間前、彼女を橋ごと海へと叩き落とした張本人である彼の存在が、その鮮烈な殺意の記憶がかろうじてこの場で切嗣への攻撃を押し留めたのだ。

 さてしかし、そうなると場は膠着状態へと移行する。イリヤの突然の凶行はエントランスの空気を殺戮へと塗り替え、その粘性を増した、が。

(なんだ、この匂いは……殺し合おうというには甘ったるすぎるぞ……)

 服を引っ張られる感覚から、バーサーカー・ヒロは戦場にいるにも関わらず後ろを振り返る。彼女のマスターのルナが不安そうに、そして困惑しているように見上げるのを目にしてヒロは目配せを返した。
 念話というものを知らない二人だが、言葉にせずともこれはわかる。ともに戦う動機が家族にある彼女たちでなくともわかる、あまりにもドメスティックな雰囲気。なぜかそれがこの場に満ちみちていた。

「――ふぅ。」
「ッ!」

 ねっとりとした気体を割くようなイリヤのため息に、ルナとヒロは身を一層緊張させる。鉄火場に蔓延る多湿さの齟齬が二人に形容し難い嫌悪感を与えるが、その発生源の一人であるイリヤは二人のことなど存在しないかのようにヘラクレスの元へと歩み寄ると一言口を開いた。

「二人で話せるかしら、アーチャーさん?」
「――アーチャー、僕とバーサーカー達は中庭にいる。それと、スコップを三つ用意できるかな。花壇を一つ掘り返したい。」

 無言でクロがスコップを出し、それを切嗣へと渡す。ルナ達はイリヤと視線を交わすことなく歩き出した彼の後に続くほかなかった。


443 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:21:14 J1fen5x60


「最初に言っておくけど、私は貴女が英霊になったわけでも貴女の姿に変装したりしてるわけでもない。貴女も魔術師だって前提で話すけど、たぶん第二魔法だと思う。」

 残されたのはうり二つな二人と彫刻も霞むような肉体のヘラクレス、それに下敷きにされた扉間の四人。充分に邪魔者が消えたことを確認すると、初めに口火を切ったのはクロであった。一息に素早く、一足に簡明に、言うべきと判断したことを述べる。そして反応を待った。
 対して、イリヤは無言で歩き始める。ちょうどバーサーカーを挟むように、クロと対角線上の弧を描くように歩きながら、その髪から一羽二羽と水晶でできたように思える小鳥が飛び立つ。空中で浮遊するそれが徐々に数を増やすのを見ながら、クロも釣られて歩き出した。

「つまり、私達は平行世界の人間って言いたいのかな?」
「さすが私、理解が早い。」

 広々としたエントランスの中心に扉間を台座の様にしてそびえるヘラクレス。それと等間隔に距離を置きながら、二人は反時計回りに歩く。まるで剣豪が間合いを測るかのようなそれを、扉間は黙って見守った。あの肩を抉られた攻撃の時、扉間はまだ天泣のタイミングを伺うだけであったのに喋り出した途端即座に攻撃された。今度機をまちがえればここで落ちるだろう。そう思い、再びイリヤが話し出したのを黙して耳を澄ます。

「じゃあ聞きたいんだけれど、貴女に小聖杯としての機能はあるの?」
「今はともかく、生身の私ならたぶんね。私は元はそれだけの為にあったんだし。」
「そう……じゃあ試させて。バーサーカー、やって。」

 小聖杯としての機能、という言葉に扉間は心中でほくそ笑んだ。この異常な状況を差し引いても得難い情報が手に入ったのではないか、と考えたところで意識が刈り取られる。ヘラクレスが力任せに頭を叩き潰すと鯖折りにし、それを更に折って四つ折にする。力任せであるにも関わらず綺麗に折りたたまれた扉間が消滅していくのを、クロは眉を顰めながら「容赦ないね」とだけ言って見送った。
 しかし、表情でいうなら下手人と呼べるイリヤは更に浮かない顔だ。自分の胸を抑えながらこちらも眉を歪めている。違いがあるとすれば、その表情に苛立ちの色があることだ。

「――ついでに言うと、私はその為だけの存在だった。貴女がそうかは知らないけれど、元々私は小聖杯の機能の隔離場所みたいな感じ、て言ってもわかんないか……」
「確認できてる範囲だと、私と衛宮切嗣は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって存在が産まれたタイミングで分岐してるみたいでね。なんていうのかな……私はイリヤの『魔術師的な』ところに封された、ていうか……」
「じゃあパパ……切嗣はって言うと、私と、アイリスフィール・フォン・アインツベルンをアインツベルン家から連れ出してもいないし、第四次聖杯戦争に参加したって言うし、それから五年で死んだって言うしで、まあ色々と違いがあるわけ。」
「……あ、それと、私の方のアイリスフィールは生きてるけど、切嗣の方は第四次聖杯戦争の終盤に命を落としたみたい……貴女はそうはならなさそうだけれど。」

 亜音速の弾丸がクロの顔へと迫る。それを微かな身動ぎで交わしたのを見ると、銀糸のように散る髪には目もくれずイリヤはクロを睨みつけた。

「私のニセモノが……!最期に何か言いたいことがあるなら、聞いてあげる。」
「……一つ、私は、他の『小聖杯』の候補に目星がついてる。二つ、あのルーラーっぽい声を信じるなら、サーヴァントはさっきのアサシンを除いても15騎、それじゃあ『小聖杯』は貴女の他に最低でも二人はいないとキャパシティを超えて溢れだすはず。三つめも聞きたい?」

 お前は小聖杯ではないと言外に告げたクロへの返答となる小鳥達はその数を増す。六羽から十二羽、二十四羽へと。バーサーカーに遮られ互いの顔は見えずとも、その自動攻撃による弾幕は今度は外れることはないだろう。そして拘束の必要のなくなったヘラクレスも立ち上がり睨みを利かす。だがそれらを前にしてもクロには些かも言葉を繕う気は無かった。


444 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:27:07 J1fen5x60

「――フウゥゥ…………平行世界の私は、随分、おしゃべりなんだね。誰の影響なのかなぁ……?」
「日本人だって必要なことなら喋るものなの。だって、この聖杯戦争は色々とおかしいみたいだし、それは貴女もわかってるはずでしょ。カルナのマスターが自分と同じ名前だったり。今だって脱落したサーヴァントの魂がストックされなかったんじゃない?まあストックされてたらあと何騎か落ちた段階で人間としては死ぬんだから、どの道優勝なんて無理なんだけど。」
「ほんと……貴女とは仲良くなれそうね。」
「ええ、なにせ元は同じ人間なんだから。」

 それはクロにしかできないことであった。アインツベルンが産み出した小聖杯の特性、機能、それらを設定レベルで知っている彼女にとって、目の前のイリヤは少し前までの自分のように思えた。そして今のクロは元から持っていた知識に、衛宮切嗣が与えた知識、そしてこの聖杯戦争のサーヴァントとしての知識も加わっているのだ、クロ以上に聖杯に精通している参加者はいない。
 そしてクロ自身、イリヤに話し掛ける中で必然、情報の整理と再構築をしたことでそのおかしさに否が応でも気づくこととなる。特にルーラーたるミュウイチゴの通達は、残騎数と『カルナのマスターのイリヤ』という決定的なファクターをクロにもたらした。『三つ以上有り得る小聖杯とそれを満たす数のサーヴァント』という情報である。
 しかし、この情報にも矛盾が生まれる。イリヤが目の前でアサシンを殺して見せた時、クロはもちろんその後の反応からイリヤも英霊の『器』ではないということになる。だが、これはありえないことだ。冬木の聖杯において小聖杯はダムの役割でありそれを放水する要領で座へと戻すことに意味があるのに、今目の前でその当たり前な大前提が崩れているのを確認してしまった。
 ならば、クロとしては問わねばなるまい。自分と相似する存在のイリヤが、現状をどう考えているのかを。それを姉の義務のように感じたから。

 だがそれは、イリヤからすればおせっかい極まりないものであった。自分こそが聖杯であり、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンなのである。裏切られ、無為に街を焼くに終わった母の後継者であり、自分達を裏切り今尚自分の平行存在を御して立ちはだかるマスター、衛宮切嗣に誅伐を為すのがイリヤなのだ。
 しかし、同時にイリヤは誰よりもクロの言葉を受け入れていた。彼女に言われずとも集まった情報と自身の身体の状態を考えれば、この聖杯戦争は異常としか言いようの無い。他の参加者ならば知りようのない――もしくは知ったところで『そういうもの』として受け入れたであろう――矛盾点。それはたとえ他の誰が気にすることはなくても彼女にだけは見逃すことなどできるはずのないものであった。
 そして、イリヤがそう思うことを誰よりも、痛いほどわかるからこそ、クロは話し続ける。

「仲良くなるついでにもう一つ、お願いがあるの。でも、ここまで私の話に付き合ってくれたんだし、それを抜きにしてももちろん、貴女に聞く義理は無いけど、良い?」
「……良いわ、貴女は気に入ったから、殺すのは最後にしてあげる。それと、私からも貴女に通告しておくことがある。単独行動のスキルはあるだろうけど、あらかじめわかってないと困るだろうし。」

 エーテルが満ちたわけでもないのに粘り気のある空気が震える。二人は同時に口を開いた。

「衛宮切嗣は『私/貴女』が『殺す/殺して』。」


445 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:34:23 J1fen5x60


「――これが、第四次聖杯戦争の顛末だ。生憎、第五次聖杯戦争が起きる前に僕は死んだんで、ましてやこの聖杯戦争について知ることは少ないんだが、理解してもらえたかな。」

 花壇の一つを掘り返すスコップが硬いものに当たる手応えを返す。先程の雨で湿った土を額に汗を浮かべてどければ、そこには木箱が見えた。トントンとそれを指先で叩きながら切嗣は振り返ることなく喋り終える。少しして立ち上がると再び土を掘り始めた。

「つまり、聖杯は願いを曲解して人間に仇なす、ということか。全く、神のやりそうなことだ。」
「願いの方向性を悪に固定する、という意味なら間違いはない。アレは、間違いなくそれそのものが悪意を持っている。ランプの魔神は悪魔だったてことだ。」
「えっと、じゃあ、その、冬木の聖杯は願ったとおりの奇跡を起こせないってことですか?」
「そうだね。少なくとも第三次聖杯戦争以降は、無色の魔力なんかでは無く、ドス黒い魔力の塊が手に入るだけだ。奇跡は奇跡でも、穢れきった奇跡を送り付けて来る性悪だよ、あれは。それに、汚染されてなければ反英霊など召喚されるはずはない。不純物が混入してる当たり、この聖杯も……」
「お前今、私のことを不純物と言ったな。」
「バ、バーサーカーさん!落ち着いて!えっと、切嗣さん!」
「不快な思いをさせたのなら再発防止に努める。」
「ほら、バーサーカーさん!」
「思慮を欠いた言動には無慈悲な戦火にもって答えることになると肝に命じておくべきだな。」
「……よし!」

 ヒロから「ほんとコイツ殺したい、死ねばいいのにオッサン」というメッセージが込められた眼光を背中に突き刺されるのを無視して切嗣は掘り進む。一々彼女の地雷を正確に踏み抜いて行ることなど、彼にとってはどうでも良い些事である。彼にとって重要なのは、自分が『ほぼ正確に』伝えた第四次聖杯戦争について彼女達がどう反応するかであり、今自分が掘り出した木箱の中身についてだ。

「真っ二つにしないように開けられるかな?」
「死神の鎌をノコギリ代わりに使おうとするお前のセンスは認めてやる。どけ、触れると死ぬぞ。」

 スコップを放ると同時に実体化した鎌が、切嗣が飛び退くと同時に赤い線となって閃く。美しい切断面を曝け出して解体されたそれの中身は、黒塗りのケースだった。切嗣はそれに向かってしばし呪文のようなものを述べると、側面のダイヤルを回す。「二十年近くほったらかしてたけど……」と呟きながら開けると、三人は中身を覗き込んだ。

「魔銃の類か。」
「ご名答。」

 果たして中身は、珍妙不可思議な拳銃と27発の弾丸であった。
 それはコンデンターと起原弾、第四次聖杯戦争終結後に、切嗣が一縷の望みをかけてイリヤへと残した遺産の一。まさかそれを自分が手にすることになるとは思いもよらなかったが、どうやらこの聖杯戦争は無駄に良く再現されているようだ。
 手に取れば、握り直すこともなく自然に身体が構える。骨の髄まで染み着いたその動きに鈍い感動を覚えながらケースにしまうと、「戻ろう、アーチャー達の話は終わったみたいだ」と言ってケースを引っ掴み歩き出す。これで、切嗣はルナとヒロの両方を殺しきれる装備を手に入れた。そしてもう一人のイリヤを見つけた以上、もはやあの主従を殺すのに障害はない。

(バーサーカーはともかく、ルナに銃弾が当たるかはわからないが。)
「私達に雑用をさせてそれか、貴様。」
「お礼はするさ、すぐにね。」
(バーサーカーは令呪で僕を襲えない。ルナは暴力を振るう覚悟が無い。あとはタイミングだけだ。)

 油断させるためにわざわざケースにしまい直したが、直ぐにでも殺せる体制に切り替えられる。殺せる条件は揃った。そう考え、切嗣はヒロの小言を聞き流しながら城内へと戻る。固有時制御は倍速までなら今の訛った身体でも可能である。一瞬でもバーサーカーの隙があればナイフでルナを殺すだけでも良い、ましてや切り札の起原弾があれば、そう算段をつけながら三人で初めのエントランスへと戻り――


446 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:42:18 J1fen5x60

「――ちょ、んん、はげし、ん、ちゅ、やめ、んんっ!?」
「んんん����ッ、あむ、ぷは、あふぁふぇないれよ……」

 ――衛宮切嗣は自分の娘が自分の娘とキスしている光景を目にした。


 ――「最初に見たときは夢か現実かわからなかった」、その時の光景に対して、後にヒロはそう語る。「衛宮切嗣の後についてエントランスに戻ったら、突然アイツがケースを落として固まったんだ。それで、ルナに仕掛ける気かと思ったらあのキスシーンだ。私もあれには驚いたけど、それ以上にアイツの呆然とした顔を見たときは、さすがにアイツが可愛そうに思えたな。もうあんな体験は、コリゴリだよ。」


 ――夜の深山町に並んで停まる車のラジオからは、サーヴァントと思われる声が響く。イリヤとクロ。魔力パスを繋いだ二人なら、少々の無理は膨大な魔力と聖杯の権能で抉じ開けられる。そしてその礎は衛宮切嗣への愛憎。クロはイリヤに守らせる為に他の参加者に殺させないように仕向けし、イリヤはそれを理解しながらも自分達の復讐を辞める気はない。そして当の切嗣は。

「……ここは……ああ、そうか。」

「おいイリヤスフィール、私達も次からそっちに乗せろ。環境が劣悪過ぎる。」
「……というわけでもう一人私がいるみたいで。」
「無視するな!発狂した男が御者の車に乗る恐怖をわかっているのか!」
「発狂って大げさだなあ、ちょっとショック受けてるだけでしょ。パパはタフだから大丈夫。それにあれは儀式みたいなもんだし。」
「ならなぜお前達は誰も視線を合わさない!なぜ全員が別々の方向を向いて話す!!」
「……僕は、別に同性愛や近親愛に、偏見があるわけじゃないんだ……わかるかい、ルナ?」
「……というわけで、私達も東へ向かいましょう、ルナ。」
「……バーサーカーさん……」
「直接話せよっ!!」

 自分の手で殺すために、衛宮切嗣をイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは守る。それはまるで、羊を狼から守る牧羊犬のようなあり方だ。だが今はそんなことはどうだっていい。殺し合いの場に全く似合わない気不味い空気をどうするかが重要なのだ。
 かつて聖杯の泥と対峙したときの表情で切嗣は考える。自分はこれからどうすれば良いのか。どう娘達と接すれば良いのか。それは彼の硝煙に燻された人生では答えの出しようのない問題であった。


447 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 00:51:19 J1fen5x60



 0208、新都、跡地



 深山町側に存在する参加者全ての参加者が、ついに全員一つのイベントの当事者となる一方で、ほんの十数分程前まで一大決戦の場であった新都には動く者はいなかった。
 戦火を撒き散らしてたいたサーヴァントも、戦火を起こすことなく消えた吸血鬼も、巻き込まれたNPCも、一切合切その動きを停止させられている。
 ――その中で一匹、その現実に抗うように蠢く蟲がいた。

(また気を失っていたか……でもこれがなかなかどうして……カ��イ��カ��ン��)

 半身は吹き飛び、腹には大穴が空いている。なにより全身の神経がズタズタにされている。それを黒蝶で外的に動かすことで、キャスター・パピヨンは辛うじて立ち上がった。

(この恍惚、実にイイ!が、そろそろ動かんと本当に死ぬな。)
「さて……取りかかるか。」

 そう言うとパピヨンは傍らで微かに胸を上下させるランサー・アリシアをドブのような瞳で見た。
 カルナと幸村の最後の衝突のその時、パピヨンがアリシアを抱えてきたのは、アリシアの宝具でカルナに一撃を加えるため、などではもちろんなかった。『梵天よ、我を呪え』の一射で自身が致命傷を負ったが為に、その善後策として彼女の身体を欲したのであったためだ。ダメージは深刻であり、いかに蝶人と言えどももはや再生は不可能だと冷静に自己分析すると、その結論は一つしかありえなかったのだ。
 繋がりかけていたアリシアの身体を強引に再生させた片腕で無理やりに引き裂く。それでも意識が戻らないことに笑みを浮かべると、パピヨンはアリシアの頭部を爆破した。
 その結論とは、アリシアを魂食いすることというわけではない。その方法は少なくともこのパピヨンには取れない。生前からして食人などさしてしていないのだ、使われていない機能は当然退化し、その状態を考慮されてサーヴァントとなっている以上彼には無駄な行動だ。そしてそもそも身体を半分以上失った状態では『消化』すらできないのだ。他の手を考えるしかない。
 では令呪を使うというのはどうか。この場合はおそらく、パピヨンは生き残る。しかし、その場合マスターの狂介が死亡する。厳密に考えれば令呪を全て使うことが生死に直結するわけではないかもしれないが、あくまでしれないだけだ。それになにより、令呪を失ったマスターをあの同盟の人間達が生かしておくとは考えにくい。特に吸血鬼達は率先して食料にしようとするだろう。よってこの案も却下される。
 というわけで、パピヨンはアリシアの身体に手を突っ込み心臓を刳り出す。そして自分の心臓も同様に刳ると核金と共にアリシアの身体に突っ込んだ。これぞ、パピヨンの起死回生の策、他のサーヴァントの身体の乗っ取りである。
 パピヨンとアリシアは共に高い生命力を持っている。事実、アリシアはカルナの宝具が直撃したにも関わらずその身体は既にあらかた再生していた。これを目につけないパピヨンではない。ある程度アリシアの身体が回復した段階で霊核である頭と心臓を潰し、パピヨンのそれを移植すれば、後はアリシアの殻をパピヨンの強靭なる意志で塗り潰して乗っ取れると考えたのだ。


448 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 01:01:19 J1fen5x60

(さすがに心臓を外すと、持たないか……)

 パピヨンは自分の首のつけ根に蝶をぐるりと一周止まらせる。いくら彼が高い生命力を持っていたとしても心臓を失えば消滅は加速する。後は繊細に首から上を身体から外してこちらも消滅が始まる前にアリシアの身体へ移植せねばならない。そのために最後の手術をしようとしたところで、彼の頭がごろりと落ちたのを彼の頭は感じた。

「お前か――!」

 叫び切るより先にパピヨンの首が剣の腹で打たれラグビーボールのように飛んでいく。そして声が遠く消えていったのを確認してか、竜の目をした白い影はポツリと呟いたのである。

「――ありがとう、キャスター。お前に着いて来て良かったよ。」

 そう微笑みながら言うと、セイバー・テレサはパピヨンにそうしたように自分の首に折れたクレイモアを走らせた。

 高い生命力を持つのはパピヨン達だけでは無かった。半人半妖の彼女もまた、彼ら程ではないが人外の再生力にのよって消滅を免れていたのだ。しかし、彼女の負傷は彼らより深刻だった。至近距離からのカルナの一撃に加えて既にマスターがいないこともあり、魔力はほぼ使い果たされている。そのために『裏技』を使ってギリギリまで生存を試みていたのだが、そこで目にしたのがパピヨンがアリシアの頭部を爆破する情景である。初めはそれを見て食人でもする気かと疑ったが、心臓を移植したのを見てその目論見に気づいた。自分もかつてある意味似たようなことをされたのだ、わからないはずがない。そしてその意図に気づくと共に、彼女は音も無く近づきパピヨンの首を斬り飛ばしたのだ。

「さあて、なじんでくれよ。」

 ころりころりと転がるテレサの頭が、頭を無くしたアリシアの首で止まる。そして彼女は持てる力の全てを使い再び妖力解放を行った。
 覚醒者――それが彼女の切り札である。自分自身が妖魔となることで、その竜の力は彼女の死の先延ばしに成功したのだ。体力など諸々の都合で一時は人間と同等まで身体能力が落ちもしたが、その最後の力を使い、頭と胴との接合を試みる。
 正真正銘、これは命懸けの賭けだ。裏技や切り札と言ってもリスクはある。そしてそのリスクすらまともにデメリットをもたらさないほど今のテレサは疲弊しきっている。それを押して、自分の死という最大のデメリットを踏み倒す為に、テレサは薄れ行く意識の中で接合を進める。腕や脚とは比較にならぬほど正確な妖力の調整を、最悪のコンディションの元で行う。だが、テレサは自分なら可能であると信じている。それは生前の経験からくる自負であり、みすみすマスターを殺された自分に責任を取らせるためであり、その仇を取るためだ。

(美遊のバーサーカー、しばらくじっとしてろ……)

 生きるもののいないこの戦地で、一人霊体化しているサーヴァント、バーサーカー・小野寺ユウスケ。美遊により死んだフリを命じられたそれの存在を、テレサの妖気探知は見逃さなかった。息を潜めるように霊体化するその存在は、テレサに疑心を抱かせるには充分すぎるものであったのだ。

 目標の為に生への執着が増す。頭、心臓、身体、それぞれがてんでばらばらに生存の為に動く。そして――


「――■■■■■■■■……」


 三騎のサーヴァントが死に、新たな一騎のサーヴァントが産まれた。


449 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 01:11:52 J1fen5x60



【深山町北部/2014年8月2日(金)0217】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
カレイドルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:ランサーさんを死なせたくない。
2:サーヴァントが近づいてくるようなら戦うしかない。
3:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(8)
耐久C(6)
敏捷A(10)
魔力B(8)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、心臓・左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:指示があり次第間桐邸へ宝具を使用する。
2:美遊は自身のことをイリヤに伝えるなと言った。オレはーー
3:美遊に興味。
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下にあります。


450 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 01:22:08 J1fen5x60



【深山町南部/2014年8月2日(金)0217】


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1:『必勝法』の協力者を増やし脱出の手筈を整え、平行して聖杯調査の協力者も増やす――はずだった。
2:チョコの死に責任。
3:カルナを含んだ残り三組を捜索する。まずはマスターと確認できた少年(亘)と接触する。
4:遠坂凛、美遊、間桐慎二を警戒。
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が住居として設定されています。クロノはそこのマスターです。また翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●リップバーンの死や行動について教授達吸血鬼との関連を強く疑っています。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


451 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 01:34:16 J1fen5x60


【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra
[道具]
ドール@Fate/Extra、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:カルナ側と間桐側の動きを見て出し抜ける機会を伺う。特に間桐慎二を警戒。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
4:余裕があれば索敵・感知系の礼装やドールを用意したい。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ドール(未完成)@Fate/Extra若干数と、その他多数の礼装@Fate/Extraは自宅に置いてきました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 また美遊から話されたイリヤ(pl)のことをイリヤ(sn)のことと誤認しました。バーサーカーが瀕死であるとも誤認しています。
●美遊のバーサーカー(小野寺)が脱落していないことを知りました。


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[スタンス]
やけくそ
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:ムカつく奴をぶっ潰す。
2:盟主として同盟を纏める。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)の好感度が下がっています。また凛とイリヤとアリスとクロノに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●この世界に関する考察を共有しました。


452 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 01:47:16 J1fen5x60


【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[スタンス]
脱出優先
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1:慎二・クロノと共に『必勝法』を実行に移す。
2:定期的に赤城の宝具で偵察し、特にカルナ組と残る二組を探す。
3:やりたいことや調べたいことがあるけどその暇はなさそうかな。
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
魔力増(微)。
[スタンス]
奉仕(マスター)
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1:カルナ側に停戦を電信の要領で呼びかける。
2:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。
3:戦略資源(魔力等)を備蓄しておきたい。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


453 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 02:04:34 J1fen5x60


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
ダメージ(大)、疲労(大)、『必勝法』を共有済。
[装備]
核金(種類不明)
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1:パピヨン達が心配。
2:慎二に呼応して『必勝法』で聖杯戦争を止める。
3:吸血鬼達を警戒。
[備考]
●愛子ちゃんのパンティ、携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、教授、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)のステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
ステルス奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
私服、疲労(小)、魔力消費(小)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない。イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
2:遠坂凛と共にこの同盟を内側から崩壊させたい。
3:五代雄介を警戒。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。また五代雄介についても記録をメモしています。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●対外的には美遊・エインズワーズの偽名を名乗り行動しています。またバーサーカー(ユウスケ)を消滅したと説明しています。
●遠坂凛を遠坂凛@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤと誤認しました。


454 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 02:18:13 J1fen5x60


【野比のび太@ドラえもん】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み)
[道具]
ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1:慎二さんと一緒に『必勝法』で聖杯戦争を止める。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)が死んだ……?
[備考]
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


455 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 02:34:41 J1fen5x60



【深山町西部/2014年8月2日(金)0217】


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、黒のワンピースとソックス、私服。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:ファーストキスを自分に奪われた……
2:キリツグを殺す。
3:全員倒して優勝したい。
4:キリツグが他の誰かに殺されないように注意しつつ、もう一人の自分を探す。
5:明日の朝九時に間桐邸に向かう。
6:別行動しているキョウスケが気にならない訳ではない。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。
●クロから切嗣の世界の第四次聖杯戦争の情報、クロの世界のクロに関する若干の情報を得ました。また自分がこの聖杯戦争の小聖杯ではないことに気がつきました。
●アーチャー(クロ)との間に魔力のパスを繋ぎました。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[スタンス]
奉仕(イリヤ)
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
1:イリヤに何か言ってあげたいがかける言葉が見つからないので黙っておく。
[備考]
●石斧に飛雷針の術のマーキングがあります。


456 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 02:49:27 J1fen5x60


【衛宮切嗣@Fate/zero】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(大・消耗中)、おったまげた。
[装備]
89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実
[道具]
89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実、トンプソン・コンデンター@Fate/zero、起源弾@Fate/zero×27
[残存霊呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1:アイリ、こういう時父親はどんな顔をすれば良いんだろう……
2:ほとぼりが冷めたらイリヤと話す。
3:クロエに色々と申し訳ない。
4:ルーラーの動きに疑問。
5:折を見てバーサーカー主従を殺す。
[備考]
●所持金は3万円ほど。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
奉仕(切嗣)
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
魔力充実、精神的疲労(中・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1:別にレズってわけじゃない。本命はお兄ちゃんだけだから。
2:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。
●イリヤ(sn)と魔力のパスを繋ぎました。


457 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 03:07:22 J1fen5x60


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[スタンス]
未定
[状態]
封印中、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(中)、おったまげた。
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1:愛にはいろんな形があるんだなあ……
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●第三の目を封印したため、令呪の反応がおきにくくなります。また動物などに警戒される可能性が減るようになり、魔力探知にもかかりにくくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しやすいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されたので、気を使って聞かないことにしました。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小)、おったまげた。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1:衛宮達を利用しながら好機を待つ。そういえばアサシンはどうなった
2:ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
3:ルーラーの動きに疑問。
4:そういえばザキフォンにもそういう噂があったな……
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されましたが、どうせこいつは下手な嘘をつき続けると思って無視しました。


458 : 【105】フォー・エブリワン・グロウリー ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 03:55:14 J1fen5x60



【新都/2014年8月2日(金)0217】


【クラス】
不明

【真名】
なし

【パラメーター】
筋力B(4) 耐久C+(3) 敏捷C++(3) 魔力B(40) 幸運EX(?) 宝具EX(?)

【属性】
不明

【クラススキル】
不明

【保有スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
■■■■:■
不治の病:A+、仕切り直し:C、戦闘続行:D、単独行動:D、千里眼:E、再生能力:E、他詳細不明の複数のスキルを内包していると思われる複合スキル。
その成り立ちの性質上、人外・怪物・ホムンクルス・竜種等の要素があると思われる。
このスキルの一番の問題点はおそらく本人もどんなスキルかわかっていないこと。

【宝具】
『B��T��P(ニアデスハピネス)』

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50人

 パピヨン由来の武装錬金。銀色の燐光を放つようになりともすれば紫色にも見える黒色火薬を、思うがままに形を変え、自由に爆破できる。点火はパピヨンの有視界内で、50m以内に限られる。全ての火薬を使い果たすと、補充されるまで丸3日かかる。だが、サーヴァントになった影響で、マスターの魔力提供により時間を短縮できる。


『双女神・禍火失墜』
ランク:EX 種別:対人宝具? レンジ:不明 最大捕捉:不明
 元となった三騎のサーヴァントの共通点である『生への執着』と『生命力』の総称。ヴァルキュリア人・人型ホムンクルス・覚醒者、それぞれの体組織と霊格が融合した結果、同時に三つの要素を兼ね備えた存在となった。これにより一つ一つの要素としては劣化しているにも関わらず、聖杯が観測した事の無い存在のためEXとなっている。なお、この宝具にそれ以上の効果は無い。一応オリジナルのスキルや宝具を再現できる可能性はあるが……


【人物背景】
アリシア・メルキオットの肉体にパピヨンの心臓とテレサの頭部を移植という名の切り貼りをした結果産まれたなにか。生物学的には生きているとカウントされるがサーヴァントとしては死んでいるとカウントされるファジーな存在。体内でそれぞれがそれぞれを再生の糧とする為に食い合い、その都度霊格は融合されていく。もしこれが冬木の聖杯戦争なら確実に破綻していただろう。



【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア 死亡】
【パピヨン@武装錬金 死亡】
【テレサ@クレイモア 死亡】
【千手扉間@NARUTO 死亡】


459 : ◆g/.2gmlFnw :2017/08/13(日) 03:55:35 J1fen5x60
投下終了です


460 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:00:23 kSRteRSE0
投下します


461 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:06:11 kSRteRSE0



 0221、深山町クレーター北部

 ランサー・カルナがその魔力波を感じ取ったのは、クレーターを挟んで南のサーヴァント達と睨み合いを続けていた時のことだ。残る片目で和装のアーチャーを見れば、そこから不自然なほどに垂れ流される魔力が見て取れるかのよう。だがしかし、カルナを以ってしても害意を感じられない。その行動を図りかねる。カルナがそのアーチャーの不審な行動を理解したのは、頭の中に微弱なノイズが聞こえてくるようになってからのことであった。

『ランサーさん、今念話を……してませんよね?』
『ああ。そちらにも聞こえているか。』
『ええ、壊れたラジオみたいな……いや、声?女性の声ですね。』
『アーチャーの企みだろう。どうする。』
『……様子を見ましょう。』
『承知した。』

 ノイズはより大きくより鮮明になる。それにつれてアーチャーから流れる魔力にも細かな変化が起こる。次第に聞こえてくるその音は数字を告げる声となり、やがて明瞭な女性の音声へとなった。

『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます。我々は、この聖杯戦争の平和的解決、各位の対等の交際、並びにこの呼びかけに賛同される方が侵略を受けた場合の参戦義務を伴った共闘を提案します。この間桐三原則に関してご質問がございましたら、お気軽にお電話下さい。電話番号は――』

 仰々しく共闘を呼び掛ける前半とうってかわってセールスのような電話番号を告げる後半。念話はそれを繰り返えしアナウンスしていた。

『始まりの御三家……?あの間桐ですか?』

 多分に疑念を含んだルビーの声と同時にループされる女の声。状況は不明瞭だが、停戦を名目にした呼びかけということには間違いないとカルナは判断する。であればその判断はマスターであるイリヤが下すべきこと、自分はただここで備えるのみ――そう考えていたところに、またもノイズが走る。アーチャーからの放送が始まって数分と経たぬ間に、同様の手段で放送を行う者がいるとすぐに――それこそアーチャーより先に気づいた。膠着状態を破ってにわかに動き出した戦火を交えない戦況の変化。それをカルナはただただ柳のように柔らかに受け止め続けようとして。

『シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』

 マスターではないイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの声を認めて、わずかに眉根を寄せた。

『……アインツベルンさん、間桐さんからの言伝です。復唱します。「お前スマホ持ってんだから電話しろよ」とのことです。』
『あら?私のことイリヤだって思ってるわけ?まあ間違いじゃないんだけどさ……はじめまして、私はクロエ・フォン・アインツベルン。貴方達風に言うと、始まりの御三家筆頭のアインツベルン家の魔術師ってところかしら。』
『……』

 クロエと名乗ったイリヤとうり二つの魔力の持ち主。広域に人を選ばず飛ばせる念話が可能な人間のうち、カルナに心当たりのある人間は一人しかいない。

『まさか本当の本当に……なんでこんなイリヤさんの周りの人ばっか巻き込まれてるんですかねえ……ああっ!?イリヤさん!?』
『ランサーさん!この声がどこから来てるかわかる!?』
『ちょっ、落ち着いて『山の近くの学校の辺りだ』なんで言っちゃうんですか!?』

 イリヤの妹(姉)たるクロその人。割り込んできた放送の主はそれに違いない。そして彼女の存在を知ったイリヤがどう動くかも想像し難くない。大方、直ぐにでも家を飛び出して向かおうとするだろう。ならばカルナのすることは、それを邪魔立てする障害を排すること。
 イリヤの家の上空を飛び回る小さな飛行機にも、それを操るあのアーチャーにも依然動きはない。それだけでなく、南のサーヴァント達は放送が始まってから僅かだが緊張を解いている。故に今は動かない。


462 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:07:05 kSRteRSE0

『私達の提案はたった一つ。貴方達の提案に乗るから、深山町の遠坂邸での会談を申し込むわ。間桐邸からすぐだし、そっちには……遠坂家の当主がいるでしょ。そんなに難しい話じゃないと思うけど、どうする?』
『……』
『悪いけど、イリヤは電話に出る気は無いって。口約束じゃなくて証人がいないと、ねえ?それにカルナ、貴方達にも悪い話じゃないと思うけど、どう?』
『……復唱します。「私達ってどういうことだ。まずマスターとサーヴァントが何人いるのか教えろ。」とのことです。』
『どっちも三人で三組よ。バーサーカー二人にアーチャー一人。で、どうするの?飲む?飲まない?まさか私達だけに手の内を晒させて自分達はダンマリってことなら……』
『……』
『カルナ、提案があるんだけど、私達で同盟を組まない?貴方がそこでサーヴァントを抑えてる間にこっちが対軍宝具をマスターに撃ち込むわ。たぶん地下に立て篭ってるから、貴方も余裕があったら……』
『復唱します。「三時までに遠坂邸に来たマスターとサーヴァントを共闘の意思のある人間と見做す。またこの時、サーヴァントは実体化していなければならない。以後会談までの間、交渉は前述の電話によってのみ受け付ける。」とのことです。』

 突然、メイド服のサーヴァントが飛び上がったと思えば、東に向けて光を発す。それは放送していたアーチャーが放送を終えたのとほぼ同時であった。牽制か、示威か、それはわからない。ただそれが遠くで一つのビルを完全に消し飛ばし、半日前に自身の半身を持っていった光であることは明らかであった。
 場の緊張は俄に高まる。睨み合うサーヴァントも、遠方にいる第三の同盟達も、張り詰めた雰囲気である。その中で、一段神経質になった声が響いた。

『それでいい。会うのを楽しみにしてる。』

 文面とは違い硬質な声。それを最後に、念話による放送は途絶えた。南のサーヴァント達も実体化したまま順に後退していく。騎士王はこちらを、メイド服のアーチャーはクロの方を警戒しつつ下がっていき、そしてカルナの元には念話が届く。こちらも後退しマスターと合流せよとのことだ。

(次が最後か。)

 様々な思惑を載せて破られた停滞は不可逆の変化を戦場にもたらす。それがどう転ぶかはわからないが、カルナは直感的に理解していた。どうなるにせよ、終焉が近いと。


「ただいま戻った。」
「お帰りな……え。」
「うーん、まあ、そうですねぇ、ちょっとよくわかんないです……」
「ランサーさんその怪我……ルビー、もしかして……」
「ランサーさんそんな怪我してたんですか、知らなかったー。」
「かすり傷だ。」
「じゃあ大丈夫ですね。」
「ちょっ、ルビー!!」

 玄関前で出立の準備を調えたイリヤの前に空から現れる。やはり怪我に驚かれるが、勢いでルビーが誤魔化すのをカルナは黙して認めた。常識的に考えれば大怪我も良いところであり、とてもではないが治癒に専念すべき場面であろう。だがそれでも、いやだからこそ、ここはあの先の呼びかけに応じるべきであるとカルナは判断する。そして目の前の杖もそう判断すると踏む。そしてイリヤも、結局はそれに折れると、自らの家族と合流することを選ぶと。

「でも、身体が半分に……」
「この深手ならば彼らも大袈裟に恐れはしないであろう。それにまだ片手片足に頭と心臓がある。」
「今から『おはなし』に行くってことを考えれば、ちょうど良いハンデですね。」
「いやいやおかしいでしょ!いつ死んでもおかしくないんじゃ……」
「心外だな。まさか我が万に一つでも負けると思うか。」
「そうですよイリヤさん、カルナさんの宝具なら地球の表面ごと冬木市削ってコールド勝ちですよ。」
「なんてことを……!」

 そしてこのような状態であろうと勝利することは可能であると。
 カルナ第四の宝具、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』による『冬木市全体への同時無差別爆撃』。この島ごと地図から消し飛ばすことができる最大の切り札がカルナにはある。そしてそのために必要な『コスト』もカルナの手の届くところにある。必要ならばそれを振るうことに、心痛めども躊躇は無い。

「先を急ごう。時間がない。」

 カルナの隻眼に走る炎が揺れた。


463 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:09:07 kSRteRSE0



 0229、深山町南西部

「で、アンタの言うとおり喋ったけど、どうすんの?」
「もちろん、向かいましょう。それに安心して、シンジ以外は割とまともな人が多いから。」
「同盟のリーダーが一番信用できないのね……」

 うり二つ、1Pカラーと2Pカラーのような二人が話すのは、穂群原近くの路地。そこに並んで停められた二台の車の間で、衛宮とアインツベルン(と竜堂)の久方ぶりの同盟は今後について話し合っていた。
 アインツベルン城を後にした三組が、間桐邸のアーチャー・赤城の念話放送をキャッチし、それに割り込んだのが数分前のこと。少々の無茶でイリヤとクロはそれなりに魔力を消耗したが、依然として全員が万全に近いコンディションである。もっとも、外交関係を除けば、であるが。
 イリヤの提案によるアーチャー・クロの念話放送。これ以上の参加者間での孤立を避けるべくとはいえ、ほとんど独断で行われたそれについて、特にルナとバーサーカーの事後承諾を得るためには少々の時間が必要であるとの判断だ。

「急に何をしだすかと思えば和平交渉とは、な。しかも私を脅しの材料とするとは。」
「いやー、それに関しては申し訳ないとしか……ゴメンねバーサーカー。向こうは騎士王に施しの英雄でしょ、こっちも対軍宝具チラつかせなかったら交渉になんないってイリヤとパパが……」
「ふ、確かに。冷静な判断だ。拮抗しなかったら向こうも動かないだろう。だがそれより気になることがある。」
(あ、そこは怒んないんだ。)
(僕はそんなこと言ってないんだが……まあいい、それより以外だな、棍棒代わりに使われて憤らないとは……比較対象がセイバーだからか?)
(このバーサーカー本当に狂化してるのかしら……)
「うむ。さっきの――」

 時間が必要な気がしてたけどそんなことはなかったぜ。やったぜ。

「――さっきの魔術、あれはなんだ?宝具か。」

「……念話って、知ってる?」
「念話……?」

 しかしそれ以上にもっと基本的なことを説明する時間が必要であった。


 ――ホムンクルス説明中――

「そんな高度な魔術を使うとは……貴様、天才か……!」
「まあ否定はしないわ。それより貴女達、よく念話もできないで参加できたわね。魔術師ならキソよキソ。」
「その、私は魔術師じゃなくて陰陽師で、あと妖界ナビゲーターとかもやってます。」
「オンミョージ?ああ、カードを使ったりするニホンの土着魔術師ね。」
「うーん、カードはあんまり使わないよ。トレーニングでビルの屋上から撒いたトランプを順番に揃えたりするぐらいかな。」
「ふーん、遠隔操作が得意なのね。」
(……たぶんその子の場合ビルを蹴って空中をグリングリン動いて強引に揃えるんだけど、まあ言っても信じないだろうし放っといていいか。)
「む、そこを左だな。」
「空にアーチャーの使い魔がいるわ。あれが遠坂邸ね。」
 
 走り出した黒塗りのベンツの車内で、念話の説明を受けたルナとバーサーカー。彼女達はこれによって他の主従から遅れること一ヶ月、念話という概念を体得していた。そしてそうこうしているうちにあっという間に遠坂邸が見えてくる。元々夜間の住宅街、たまにある検問も数は多くなく、イリヤとクロの二人の小聖杯を前にすれば数十メートル先からの暗示でETC同然に道を譲る。普通の魔術師としていることは同じでも圧倒的にムダが無いその行動は、彼女達の後ろを軽自動車で着いていく切嗣から見ても鮮やかとしか言いようのないものだ。

「あら、キョウスケ生きてたのね。チョコは死んだみたいだけど。」
「どうしよ……」
「なんか人数多い……ていうかあれ人間?ホテルのマスターかな……ん?クロ、なに?」
「……あんだけいんのに誰一人面識が無い。」
「……貴女達本当にこの聖杯戦争にいたの?」
「バイキング食べたよ。」
「レンタカーなるものを借りたぞ!」
「えっと、バッティングセンターでホームラン打って……」
「完全に夏休みじゃない!私なんてバーサーカーと一緒に海に落とされたのに!泳ぎのプロじゃなかったら死んでたわ!」

 やいのやいのやりながらも、車は遠坂邸へと到着する。どうであれ、交渉の場は目の前だ。もうやるしかない

「あ、そういえばなんでここを選んだの?」
「……第六次聖杯戦争だから。後で説明する。さあ、行きましょう。」

 そうクロに答えてイリヤは車を降りた。


464 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:12:08 kSRteRSE0



 0222、間桐邸

『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます――』
「やればできたわ。」
「いいねえ。」

 間桐邸の地下、そこに詰めるマスター達がアリスの言葉と彼女のアーチャーの念話を聞いて息をつく。一番意気込んでいた慎二が前傾姿勢になるのを見て、のび太も眼鏡を拭いた。
 アリスのアーチャーが呼びかける内容の草案作りからそれの放送実行までわずか数分。勢いだよりの突貫工事もいいところの聖杯戦争打破の呼びかけはなにはともあれ始まった。そのことがのび太達対聖杯の人間にとっては非常に重要である。
 直接的な表現こそしていない――状況の変化についていけなかったクロノが『必勝法』に触れないよう穏健な草案を例示したらそのまま放送することにしたためだ――が、公然と停戦を呼びかけるというのは、聖杯戦争の意義に真っ向から反抗することだ。スポーツで言えば無気力試合である。それをルーラーがいないのを良いことに、タイムをとる体で提案している。主催側が直ぐに動く可能性は低いが、充分に警戒されうる行為であろう。故にこれから先は一切を電撃的に進めなくてはならない。それもほぼノープランに近い現状でだ。しかし、なんであれ企てが動き出したことそれ自体がまず対聖杯派を安堵させる。この同盟内だけでもある程度リスキーな行動をともにできるだけはまとまれたということなのだから。

(マズイ、いつの間にかカルナと停戦する流れになってる。いや、それそのものはいいんだけど……こんな放送して同盟が肥大化したら、聖杯戦争が成り立たなくなる……!こいつらわかってやってんの?)
(とりあえずこれでイリヤが襲われる可能性は減った。でもこのままじゃイリヤと会うことになる……)

 ……実際はただ単に聖杯狙いの人間である遠坂凛と美遊・エーデルフェルトが、サーヴァントの撤退を呼びかけた手前表立って反対できずにズルズルと引きづられてしまっただけなのだが。

「狂介さん、どうなると思う?」
「……成功するって信じてる、って言ったら嘘になるけど、でも、けっこうなんとかなる気がする。パピヨン達が命懸けで止めたんだ、あっちもかなりダメージは大きいはずさ。」

 不安を感じ問うのび太に、狂介は率直に応えた。それを見て、のび太も頷く。もう始まってしまったのだ。成功しなくては困る。それは共にサーヴァントを失った二人にとってはひとしおだ。これがうまく行かなければ、二人の生存の可能性はゼロへと限りなく近づく。そしてなにより、二人の目的が果たせなくなる。無手となったマスターにできることは限らているのだ、今だって祈ることぐらいしかろくにできないが、それでも。

『――シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』
「念話!?しかもこの声、イリヤか!」

 頭の中に響く声、状況は変転する。
 令呪の失くなった手を握る狂介を見ながら、のび太はつばを飲みこんだ。


465 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:16:10 kSRteRSE0


(で、どうすんのさ教授。このまま停戦させる?)
(ええいウルサイ!それより中尉の方はどうなっている!)
(著しく劣勢だね。正体不明のサーヴァントに海軍中心に一個小隊と迎撃に出した真田幸村がやられたっぽいよ。)

 一方その頃、間桐邸の地上部分では教授が東方に面した窓から双眼鏡を覗いていた。頭に響く二つの念話を無視して、脳内を飛び回るシュレディンガー准尉と会話する。どこにでもいてどこにでもいないという性質は、サーヴァントの脳内も例外ではない。もっとも、入れない例外もないわけではないのだが。
 彼らにとって目下の問題は、分断されたゾーリン中尉が何者かの攻撃を受けていることであった。ただでさえ『最後の大隊』は司令官と半数の兵と多数の装備を失っている。この間桐邸地上部を防衛する降下猟兵一個小隊と教授、准尉、大尉以外の全戦力を指揮する中尉が未知の敵に攻撃されたということは重大な懸念事項であった。なにせ中尉が展開する拠点には捕虜である真田幸村と――

(V1の発射準備までどれほどかかる?)

 冬木市を地獄に変えられる最終兵器があるのだから。
 デウス・エクス・マキナとグラーフ・ツェペリン、二隻の装甲飛行船に本来なら装備されていたV1ミサイル。弾頭にサリンなどの化学兵器を備えることが可能なそれは、まさに戦術ミサイルである。地上で撃つはずのものを空中から撃てるように改造したものを地上から発射するというしちめんどくさいことをしなくてはいけないために準備に時間がかかっているが、使用可能になればパワーバランスを大きく変えることができる代物だ。ホテルから持ち出せたのは六発だが、その存在は切り札となり得る、はずだった。

(もう秒読みだって。少ししたらまた来るよ。)
(わかりました……しかし、わからない、なぜ嗅ぎつけられた!こんなこと、未来予知でもできなければ……まさかセイバーか!直感で……!)

 だがそれを使えるようになるより先に、使えなくするかのように襲われた。しかも正体不明のサーヴァントによって。ここで問題なのは、そのサーヴァントの情報が全く無いことであった。既に『最後の大隊』が把握するサーヴァントの数は優に十を超える。であるにも関わらず、ここに来て全く情報のないサーヴァントというのは不自然極まりないイレギュラーであった。
 教授は手の中のスマートフォンを見る。日野茜のものを借用したそれには、准尉が撮ってきたサーヴァントの写真が写っている。教授はそれを苦み走った顔で睨んだ。

(青ランサーのそれに似た青い服の上から灰色の鎧を纏ったサーヴァント……わからん!何だコレは!?オルフェノクってわけでもない……)

 頭を通り過ぎていく念話による交渉を追い出して、教授はひたすらに考える。いったいこのサーヴァントはなにを目的として動いているのか、誰のサーヴァントなのか、思考は加速し、そして。

「なんの光ィ!?」

 教授は意識を現実へと戻した。その目には左右に光の帯が残像のように焼きついている。

「あの方向は……准尉!直ぐに中尉の元へ!准尉!どこです准尉!」

 窓から見える景色からビルが一棟消えたことに気づくより早く、教授は准尉を呼んだ。あのビームは見たこと、『読んだこと』がある。まほろさんが発する切り札に違いない。その既知の二次元上の存在である攻撃が、今まさに目の前で友軍に向けて振るわれた。同盟の、それも善良なサーヴァントによってだ。

(……とにかくここ居るのはまずい。マスター達と合流せねば。)
「大尉!地下に戻ります!」
「……」

 状況に混乱しつつも教授は傍らで待機していた大尉と共に地下へと走る。他のマスターを巻き添えにすることはないという希望的な考えで人の盾を求め、足早に階段へと向かった。


466 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:21:11 kSRteRSE0



 0230、深山町クレーター南部

「アーチャー、今の行動の説明を求めます。」

 そう言ってセイバー・アルトリアはアーチャー・まほろに鋒を突きつける。
 つい先程のこと、まほろは突然飛び上がったかと思えば対軍宝具を発射した。その明らかな暴挙と、その後何事もなくカルナへの警戒に戻ったことは、間桐邸の全ての人間に彼女という人物の早急な再評価を必要としていた。幸いにして、カルナにせよクロエと名乗ったアインツベルンのホムンクルスにせよ、そのことに特に言及することはなかったが、あの行動は彼らの警戒を買い会談をさせるに充分に足るものである。それを見過ごすということは考えられなかった。

「皆さん、後退命令です。ライダーさんとセイバーさんはカルナを、アーチャーさんとキャスターさんはクロエを監視しながら間桐邸に帰還せよと。両者の位置はこちらの宝具で捕捉し続けます。」
「……」
「それと、アーチャーさんは、その、武装解除せよとのことで……ライダーさん、お願いします。」
「……でしょうね。さっきの宝具は外せないので、通常の装備だけになりますが、よろしいでしょうか。」
「……わかりました。それでは引き渡しを。」

 しかしながら、時間はそれを許してくれない。電撃的にことを進めるためとはいえ、指定した時間まで猶予は三十分しかない。マスターを失った野良サーヴァントということもあり、その処遇については棚上げせざるを得ないという異常な状況であった。
 こうしてなし崩し的にまほろへの追及は後回しにされ、サーヴァント達は移動を開始する。動き出した企ての強引な引力は、既にその発端となった彼らにも、その最初の引金を引いたマスター達にも、とうに止められるものではない。

(あの方向……あのビルからはなにか嫌なものを感じたが、まさか……)

 苦い顔をしてアルトリアは、まほろとカルナの両者を視界に収めながらビルを走る。既に事態は自分の手の届かないところで動きつつあるとひしひしと感じていた。ガリアからブリテンへ戻る船の中を思い出させるその焦燥は、どのような強敵よりも厄介だ。だがなにより、まほろの行動にある程度の推測ができたために、アルトリアは直感めいたものを――なぜか事態は良い方向に転んだという直感を感じずにはいられなかった。そしてそれは、他のサーヴァントも同様であった。ここにいるサーヴァント達は多かれ少なかれ並以上の索敵能力を有している。であるからこそ、まほろが攻撃した場所に何があったのかはある程度察しがつく。何か厄介なものを独断専行で破壊したのだと。そしてそれが考慮せねばならないことを増やす。まほろが砲撃した場所は、今は亡きライダー・少佐が召喚したサーヴァント達が、間桐邸への合流を先送りにしてでも優先して拠点化していた場所であるのだから。
 軍服に身を包んだ吸血鬼達に護衛されながら、既に間桐邸の門の前にマスター達は集合している。カルナやクロエ達が移動を開始して数分、アルトリア達も撤収を完了した。少なくとも吸血鬼達は、まほろの暴挙には気づいていないようで、特段の軋轢もなく合流は終わる。そのことが事態の異常さを際立たせているようにアルトリアは感じた。


467 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:28:13 kSRteRSE0

『リン、これまでに何がありました?』
『なにもなかった……そう、なにもなかったの。』
『……そうですか。』
「じゃ、出発しようか。遠坂、自宅まで頼んだよ。」
「はいはい、着いてきて。でも突然人の家でぶっ放したりしないでよ?」
「そんなことする奴いるわけないだろ?」
「それもそうね。それじゃあ行きましょう。」

 アルトリアは理解した。つまり、事件など起きていないのだ。それは凛が先頭を歩くという、背中を晒すことを許容していることも傍証であった。そして、教授と大尉の両名を囲むようにアルトリア以外のサーヴァントが展開したことも。
 詳細はわからないが、吸血鬼達の、とりわけ教授の失脚は明らかだ。それは彼の傍らにいた准尉と呼ばれる少女の姿が見えないことからも想像に難くない。もとより、爆破予告に名前を使われたアルトリアを筆頭に彼らに反感や疑念を持つ向きはあった。彼らのマスターと言えるライダーの不審な自殺や、その後の爆弾付きの首輪を用いた脅迫、日野茜への疑惑の尋問、あるいは彼らという存在そのもの。まほろの行動がマスター達の支持によるものとは思えないが、しかしその機に便乗してきな臭い連中の無力化を図るというのはあながち無い話ではない。マスターを持たずに自力で行動できるサーヴァントというのは、しかもそれが後数百人いるのであれば、それだけで脅威なのであるから。
 そしてそれはもう一つの意味を持つ。この同盟は、その成り立ちからして非常に危ういものだ。日本の言葉で言うところの呉越同舟も良いところの寄せ集めで最大勢力になったに過ぎない。まるで方向性の一致しない人間達が、規模のメリットを頼りに一つの塊を形成している。それ故に、組織の体を保つためにわかりやすいビジョンが、即ちこの場では、程よい敵が必要であった。裏切ろうと思うほど強くなく、結束しなくても良いと考えるほど弱くない、絶妙なレベル。それがさっきまでのカルナであり、そして今の吸血鬼達だ。本気で彼らを殲滅することは容易いが、そのためにはマスターの命をかけざるを得ない。そんな都合の良い敵。それが吸血鬼達の役割であった。

『クロノが言うには、あそこにはミサイルのようなものが運び込まれてた可能性があるって。』
『それは、随分と急な話に聞こえますが。』
『真実なんてどうでもいいんでしょ。大事なことは、『野良サーヴァント数百人が大量破壊兵器を持ってた疑惑がある』ってこと。』

 その場のノリが全てね、と最後に言って凛は足を止める。遠坂邸まで残り僅かのところで、前方からは車が確認できた。直ぐに吸血鬼達が展開する。そして空中からは、認識阻害を展開しながら接近するカルナとそのマスター。そして、後方からは、二騎のサーヴァント。
 「ウォルター・C・ドルネーズ」と呟くように教授が言う。そこにいたのは、風変わりな二人だった。一人は、ティピカルな執事服の男。そしてもう一人は、革ジャンを着た誰かだ。いや、これはアルトリアと凛、そしてクロノと五代にとっては正確ではない。その顔のみは見知ったものである。

「よう。日野茜ってまだ生きてるか?」

 死んだはずのセイバー・テレサの顔をしたサーヴァントは、そう言いながら微笑んだ。


468 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:36:33 kSRteRSE0



 0219、新都廃ビル・最後の大隊臨時前線司令部・『豹の巣(仮)』

「壁を補強!」
「軽機関銃用意!」
「鉄条網展開!」
「中尉!地上階との連絡が途絶えました!」
「んなこたわかってんだよっ!装備の梱包とっとと解け!V1より弾丸優先しろ弾丸ァ!!」

 建物に魔力を這わせながら指示を下すゾーリンゲンの顔を汗が流れに流れる。最後の大隊残党はこの聖杯戦争始まって以来の苦境に立たされていた。その原因は、つい数分前に会敵した白いサーヴァント。

「吸血鬼を喰ってやがる……ロクなもんじゃねえなありゃ。」

 建物に産み出した眼が捉えるのは、化物(フリークス)。海軍士官が中心とはいえ仮にも吸血鬼を、まるで吸血鬼が人間にするように殺し喰らう。肉を斬り、骨を絶ち、銃を砕き、弾丸を消し飛ばし、爆風を刻み、建物ごと微塵にする。その剣戟に生やした眼を切り裂かれ、ゾーリンの顔には更に苦み走った。
 恐らく東部の方角から襲撃してきたサーヴァント、その正体は吸血鬼達には全くの未知であった。それもそうであろう。そもそもそんなサーヴァントは存在しない。つい少し前に産まれ落ちた新しいサーヴァントなのだ。魔力不足を解消する魂喰いのために、吸血鬼という格好の餌を見つけそれを襲うなど、いったい誰が想像をできよう。そんなことまで対応できるのは、それこそ根っからの戦争狂で根っからの指揮官でなければありえない。
 しかしながら、ゾーリンに教授達のような知識があれば、その正体の一端に触れることは十分可能であった。とりわけその化物の周りを飛び爆発する蝶など、一目見ればパピヨンの核金によるものであると察するに難くない。もっとも、彼女にはそんな知識はないので結局はありえもしないもしもの話なのだが。
 建物に眼を次々と産み出して、ゾーリンはサーヴァントを補足し続ける。このサーヴァントは屋上から下へ下へ、ワンフロアごとに吸血鬼を食い散らかしながら進撃してくる。そしてついに、本陣である地下へのバリケードをぶった斬ると蝶がロケットのように突っ込み破壊した。もはや後は無い。V1の発射までまだ時間がかかる以上、手は選んでいられなかった。

「おい死神、准尉に伝えとけ。例の兵器を使うってな。」
「僕はここだよ。そっちは任せるから発射準備を整えてって。」
「はいよ……で、死神。お前も出ろよ。」
「……」

 直ぐに消えた准尉から目を離すと、ゾーリンは死神と呼んだ男、ウォルターを睨めつけた。無言て睨み返す彼と睨み合うこと数秒、背を向けて歩き出す。そしておもむろに鎌を振り上げると、コンクリートへと叩きつけた。

「日野茜が命ずる、ランサー、真田幸村、あの灰色のサーヴァントを殺せ。」

 砕け飛ぶコンクリ片を一顧だにせず、ゾーリンは埋められていた男、真田幸村にそう命じた。
 これぞ最後の大隊が有する、数少ない使い捨てできる決戦兵器である。日野茜に強制的に使わせた令呪、『日野茜と名乗るものの命令を決死の覚悟で実現せよ』の効果により、彼は自らを日野茜と名乗った人物の命令には逆らえない。それがたとえ日野茜でないとわかっていてもだ。この令呪のみそは、命令する人間を選ばず従えることだ。たとえゾーリンに何らかのことがあっても、第二第三の『自称日野茜』はいくらでもいる。そして彼が戦うための魔力は、本物の日野茜が負担するのだ。これほど使い勝手の良い兵器はない。

「ぐうっ……なぜ動く我が身体!こんな、こんな無体で……」
「無駄だ、日野茜が命じたんだ。主命を裏切るわけにはいかないよな?」
「ぬう、うぅぅ、なああああっっ!!」

 慟哭する幸村の身体は、勝手に謎のサーヴァントへと向かっていく。既にその手に槍は無い。ただ無手で、吸血鬼達を斬り喰らうそれへ向かい殺到する。それを幸村の意思が変えることはできない。
 だが、幸村は二点だけ安堵していた。一つは、自らが無手であること。このような不本意極まりない戦いで槍を汚すのであれば、いっそ武器を持たぬ方がよほど良い。相手を傷つけることも、茜への魔力の負担も減るのだから。そしてもう一つは、茜がまだ生きていること。自分の実体化が可能なうちは、茜の生存は確実なのだから。
 彼の背後から伸びる鋼線が謎のサーヴァントを牽制する。異形とも呼べるその縦横無尽な動きは、しかし異様とも呼べる勘と身のこなしでいなされる。だがその拮抗が幸村が間合いに踏み込むための足掛かりとなり、肉薄を可能とするのだ。
 もしこれが自らの望む戦いであれば、そう思わずにはいられない。このような強敵、特にその鮮烈な動きは、初めに戦ったサーヴァントであるテレサを思い出させる。思えば、彼女には負け越している。あのカルナ相手の辛勝も、彼女がいなければ不可能であっただろう。かの軍神を思わせるその声と動きは、越えたいとその心を熱くさせるものであり、このような不本意な戦いで敗北せねばなるまいことが惜しいとこのごに及んでも感じざるをえないものだ。


469 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:45:11 kSRteRSE0
 幸村の拳がサーヴァントに迫る。身体からバーニアのように炎を吹かして身を攀じるサーヴァントを鋼線が絡め取ろうとし、斬馬刀のような両腕に防がれる。しかし、それでガードは開いた。突き上げるのはアッパー、狙うは顎、顔が見える、額が迫った。

「……せいばぁ、殿?」

 砕ける相手の頭蓋骨と自分の拳のことを忘れて数瞬、幸村はその変わり果てた相手の顔に釘付けになった。

「……誰だっけ?」
「せいばぁ殿!なぜかようなことを!?それになぜらんさぁ殿の服を!」
「セイバー……ああ、セイバー!そうかセイバーか、ハハッ。」
「一体、何が……」

 地上で互いに拳と異形の腕ののラッシュを繰り出しながら、幸村とサーヴァントは会話する。そのラッシュは幸村には見覚えのあるものだ。あのカルナとの戦いのときに振るわれた剣舞、それが形を変えどもそこにある。ならば彼女は紛れもなくあのチョコのセイバーであるはずなのだ。たとえその首にまるで切り落としたものを嗣いだような痕があっても。

「……貴殿、何者だ!せいばぁ殿なのか!?その身体はいおり殿のらんさぁの、蝶は狂介殿のきゃすたぁのものか!!」
「あー……ああ、そうか、うん、幸村、そうなんだよ。」
「何があったの、ぐおおっ!?」
「あ、悪い、殴っちゃった。まあ後で話すから少し寝てろ。」

 尖った腕の斬撃が幸村を弾き飛ばすと、返す刀で鋼線を迎え撃つ。浅く斬られた傷を直ぐに回復しながらウォルターとの戦いに入ったサーヴァントを、幸村はよろよろと立ち上がりながら追った。ただ立っているだけでもふらつく現状、たった一発攻撃を受けただけでもはや実体化が難しいレベルのダメージだ。たが、彼女をこのまま戦わせておくわけにはいかない。それは彼女のためにも、茜への負担を減らすためにもだ。素早く戦闘を終わらせねば、自身の炎が茜の命を燃やし尽くしてしまう。

「っ!寝てろって言ったろ。」
「せいばぁ殿!なぜ彼らを喰らう!なぜ……」
「腹が痛いんだ。スゴく、凄くな。でもこいつらを喰うと少しだけ治まるんだ――よ!」
「ぐ、うおお!?」
「……まるで喰種だな。」
「なんだお前、喋れたのか。」

 幸村の蹴りは届かず、逆に蹴り飛ばされる。その隙にウォルターが操る鋼線がサーヴァントの指を半ばまで切断したかと思えば、数秒と経たずに再生が終わる。お返しとばかりに振るう文字通りの手刀を鋼線を編んで作った壁に阻まれると、その裏からロケットのように飛んだ蝶がウォルターの顔面に突き刺さった。

「……おっかしいなあ、顔半分、はなくても下あご吹き飛ばしたのに生きてる。」
「俺もお前もとっくに人間なんてやめてるんだ、今更だろ。」
「そうだな、そのとおりだ。だからこうして仲良く殺しあってんだ。」

 微笑を浮かべながら言い終わると、サーヴァントの姿が滲む。ウォルターの足元から背面上部、背面下部へと流氷のような動きで現れた彼女の手刀を攻防一体の鋼線で迎撃するウォルターの顔が些か若返っていることを、幸村は見逃さなかった。そして自身の身体が否応もなく彼女の元へと走るのも。

「某は……俺はッ!!!」

 そして初めて、幸村は自身の意志で、この戦闘で。

「……なんの真似だ。」
「強引だな……」

 右手には手刀を受け止め、かつ両手で鋼線を掴み取る。幸村は二人の間に身を割り込ませ戦闘を停めるべく行動した。
 それは、幸村がサーヴァントを倒す為の行動であった。そう幸村は自身に言い聞かせた。でなければそんな行動は許可されない。最大限自身を譲歩させられる一線であった。
 深く息を吐く。深く息を吸う。もはや実体化をいつまで維持できるかわからないなか、溜めて数秒、幸村は大音声を発した。

「せいばぁ殿とお見受けする!このらんさぁ真田源次郎幸村!!貴殿に、一騎打ちを申し込み候!!!」

 そう叫ぶと、幸村は革ジャンを彼女に向かって放り、拳を構える。

「某、さる事情にて貴殿を討たねばならぬ!この『楯無の鎧』はその前金!武田家秘伝の家宝!某を討ったあとは好きにするが良い!!」

 サーヴァントは変わらぬ微笑を浮かべ、無言でウォルターは後退し、ゾーリンは不愉快そうに睨み、吸血鬼達はある者はV1の準備を進めある者は銃口を油断なく三人に合わせる。彼らからすれば幸村もウォルターも危険な存在だ。だが幸村にはそんなことは関係ない。先程までの争乱が嘘のように静まり返ったビルで、幸村は続けて叫んだ。

「そして、某が勝利した暁には貴殿を某が全力で弔おう!さあせいばぁ!!この一騎打ち、応じるのであれば前金を受け取れぇぃ!!」


470 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 00:55:26 kSRteRSE0
「――応じよう。」

 隙を見て狙撃しようとした吸血鬼の銃口に、火薬でできた蝶が停まる。ゾーリンは目配せして銃を下げさせた。死角からの攻撃の準備を進める相手をピンポイントで牽制できる相手に、そんなものは用をなさない。それよりは、少しでも時間を稼ぐべきだ。あと少しでV1の照準と調停が終わる。そうなればあとは天井を壊せばいつでも撃てるのだ。おあつらえ向きにあのサーヴァントが壊しに壊してくれた。あれならばゾーリン単独でも数秒で蓋を開けられるであろう。
 緊張が高まる。幸村とサーヴァントは互いに十メートル程の距離をとって向かい合った。サーヴァントは軽やかなスタンディング、幸村は消えかけた手を地面につきクラウチングスタートめいた前傾姿勢で。サーヴァントがスカート近くの外骨格をブースターのような形に変形させて蝶を集め、幸村は殆ど無くなった足の裏に炎を滾らせる。
 そして、小さな爆発が起こった。

「――見事だ、せいばぁ。」
「お前……!」
「某は……決死で!死力を尽くし戦った!某が望んだ形で!!互いに万全の状態で!!戦い敗れたァッ!!!そうだろう!!!」
「……ああ、そうだ。公正な決闘で私はお前に勝った。英霊にとってこんなんにも栄誉な事は無い。お前と戦えたことを感謝する。」
「そうだっ!某は!恥じることなく死んでゆく!お館様にも!我が親父殿にも!ますたぁである茜殿にも!!」

 幸村の背中に銃弾が突き刺さる。鎧を捨てた彼には、もはやそんなものでも致命傷を避けられない。そしてその傷の事実とやり遂げたような満足気な笑みが、ゾーリンの癪に触りに触った。

「何が一騎打ちだ!自分からアイツの槍に飛び込みやがって!死神ィ!天井ごと殺せェ!」

 吸血鬼の弾丸が幸村に殺到する。ウォルターの鋼線が天井とサーヴァントへ迫る。そしてゾーリンは、いつの間にか傍らにいた准尉にV1発射の指示を下した。
 幸村の自決はゾーリンにとって想定外のものであった。ここであのサーヴァントに勝てばそれで良し、負けてもそれで良し、戦っている最中に魔力切れで死んでも良し、そう考えていた。どう転んでも損はないと。
 だがゾーリンは見誤っていた。幸村という男の知略を。ただの田舎騎士と思い、ドン・キホーテのような人間だと思い込んだ。マスターになるべく負担をかけないために早急に死に、しかも予想より遥かに有用な装備まで渡すとは考えもしなかった。
 サーヴァントはバーニアのように火薬を推進力に変え、ポッカリと開いた天井から飛行し鋼線から逃れる。その目には、追い縋るウォルターと、銃弾の雨に晒されて不格好なダンスを踊る幸村と、いったいどこに隠していたのかわからないミサイルのようなものが上を向いていくのが見えた。不思議と、もう飢餓感は無い。そもそもそれが空腹という感覚であることを思い出したのがつい先程のことなのだが、それでも悪い感じはしなかった。不思議と言えばもう一つ、なぜか身体が鋼線に切断されなくなった。その変化を利用してぶら下がってくるウォルターは考えものだが、ダメージを気にしなくて良いようになったのだ、気にせず高度を上げる。そして、サーヴァントは光を見た。

「カルナ、じゃないな。アーチャーか。」
「……まほろさんか。本当にこの聖杯戦争にはマンガの人間がいるんだな。」
「お前ついて来てたのか……」

 足下で光に飲み込まれ消えたビルと、鋼線でぶら下がるウォルターを見ながら、サーヴァントは呆れたように言った。残念ながら、サーヴァントに彼だけを落とす手段はない。暫くの間は彼と共に行動をともにする他はないだろう。
 サーヴァントは西を見た。よく感覚を研ぎ澄ませれば、見知った妖力の持ち主たちが三箇所に固まっている。そしてそれぞれに膨大な妖力を垂れ流しているようだ。サーヴァントには、これに覚えがあった。ある種の『クレイモア』は、妖力の増減で意思疎通を可能とする。繊細な妖気操作が必要なためほとんどは実用的なものではないが、彼らのやっていることはそれに近かった。


471 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 01:10:04 kSRteRSE0

「で、どうする?まだやれるが?」
「……不幸にもさっきので仲間が死にましてな。まずは下手人にお礼に行かなくちゃいけないんです。」
「幸運にもの間違いだろ。お前、アイツらが死んで喜んでるだろ。」
「まさか、私はそんな裏切り者ではありませんよ。」
「口調変わって半笑いで言われても信用できないな。」
「恵比須顔でして。それに、こっちが素ですよ。」

 ウォルターはそう言うと、するりと鋼線を解いて地上へと降りた。そして大袈裟にハンズアップしてみせる。サーヴァントもバーニアを消すと自由落下で後に続いた。

「あのサーヴァントは間桐という屋敷の同盟の一員でして、本来はアイツらの仲間のはずなんですが、いやはや。粛清ですかね。」
「お前、隠す気無いだろ……間桐って間桐慎二か?」
「おや、御存知でしたか。」
「ああ、思い出したよ。それに、そういえばお前の妖力もホテルで感じしたことがある。」

 サーヴァントは一瞬、遠くを見るような目をした。それを目ざとく見たウォルターは、何も言わず背中を見せて歩き出す。少しして、やはりサーヴァントは続いた。

「貴女、あの場にいましたか?」
「いた気もするのにいない気もする、って言ったらどうする?」
「そういう手合いには心当たりがありますので。」
「そうか。」
「……貴女はなぜ、着いてくるんです?」
「……わからないな。色々とわからないことが多くてな。とりあえず、見知った顔にでも会いに行こうと思って。それに、どうせ一箇所に集まってるんだ。」
「なるほど、パーティの会場に乗り込もうと。」
「……お前は?」
「似たようなものですよ。自分がいったいなんのためにステージにいるのかわからないのでね。だったら主人公の近くに行こうと思いましてな。誰だって、背景(モブ)で終わりたくはないでしょう?」
「……走るぞ。」
「お気遣いなく。」

 さっきの光のせいか元から多いのか、夜の地方の街にしては人が多い。二人は赤いランプがそこかしこで回るそこの建物の屋上を西へ駆け出した。既に頭上には、使い魔と思わしき飛行機が飛んでいる。あちらも気づいているであろう。

「言い忘れていましたが、当方カナヅチでして。」
「さっきみたいに飛べって?あれ痛いんだよ。」
「あのランサーの宝具でダメージはないでしょう。」
「でも痛いんだよ……普通に運んでやるからワイヤーしまえ。」
「ありがとうございます。」

 やがて二人は川を越えた。間桐邸には続々とマスターもサーヴァントも集まってくる。恐らく、これが全員。正真正銘全ての参加者が、そこに集まっている。そしてそこに、『部外者』も加わろうというのだ。
 二人は密やかに、しかし素早く迫る。祭りの会場はすぐそこだ。

「よう。日野茜ってまだ生きてるか?」

 主人公は遅れてやってくる。
 ならば、聖杯戦争の主役は我々だ。

 サーヴァントは微笑を浮かべて一同に挑戦的に問いかけた。


472 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 01:41:51 kSRteRSE0



 遠坂凛とアルトリア・ペンドラゴンは、自分の拠点で始まる会談がまるで予期できぬものであることに警戒を強めた。聖杯を獲得できるかは、ここが正念場である。

 美遊・エーデルフェルトは、ついに己の存在がイリヤに露見することに緊張し、密かに小野寺ユウスケを遠坂邸近くへと移動させた。おなじ町内にまで踏み込ませ、いつでも宝具を開放できるように備えさせる。

 二人のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン、そして衛宮切嗣は、それぞれがそれぞれに驚いた。事前の計画も思惑も予想も意味をなさない状況だが、しかしそれぞれがそれぞれと話す必要性は痛感している。

 カルナとヘラクレスとフドウは、三者が三者を警戒していた。自分達にとって彼らこそ自分を死に至らしめることが可能な存在であると認識している。

 間桐慎二は、ひきつった笑みを浮かべていた。今更ながらに引き返せないところまで来てしまったて痛感しているが、ここまで来たら勢いでなんとかするしかないと覚悟という名の投げやりな気持ちになっている。

 クロノ・ハラオウンと五代雄介、そして色丞狂介と野比のび太は、なし崩し的に動き出した計画のために今後どうするか話し合う必要があるとの考えで一致した。聖杯戦争のテンポは四人が考えていたよりも遥かに早いが、しかしこれは聖杯戦争を停戦させる最大で最後のチャンスである。

 アリス・マーガトロイドと赤城は、静かに全員の監視を続けていた。何が起こるにせよ、アリスの生存が最優先であることに変わりはないのだから。

 高遠いおりと日野茜は、事態に流され続けていた。生きていることが奇跡な二人にこれ以上の奇跡がもし起こるのであれば、それは聖杯によるものであろう。

 竜堂ルナとヒロは、自分達の想像を遥かに超える参加者を前に方針の転換を余儀なくされた。どう戦うか、どう交渉するか、どう逃げ出すか、考えねばならないことは多い。

 教授は、この会談を自身の現状への打開策とする算段を進めた。大尉と一個小隊という戦力はいまだに健在であり立ち回り次第ではいかようにもなるが、しかしそれでなにをなそうかという考えはなかった。

 そしてウォルターと名もなきサーヴァントは現れた。彼らには目的がない、目標がない、だからこそ、存在意義が必要であった。


 一堂に会すそれは、まさしく決戦。
 聖杯戦争はここに天王山をむかえる。


473 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 01:52:16 kSRteRSE0



【遠坂邸/2014年8月2日(金)0300】

【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra
[道具]
ドール(セイバー仕様)@Fate/Extra、ドール@Fate/Extra×若干数、未確定の礼装×若干数、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:カルナ側と間桐側とアインツベルン側の動きを見て出し抜ける機会を伺う。特に間桐慎二を警戒。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 また美遊から話されたイリヤ(pl)のことをイリヤ(sn)のことと誤認しました。バーサーカーが瀕死であるとも誤認しています。
●美遊のバーサーカー(小野寺)が脱落していないことを知りました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す。
1:厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて出し抜ける機会を伺う。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)、並びに教授達吸血鬼はできる限り早く排除しなくてはならないので分断を試みる。
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサ(青・改造済)を乗りこなせるようになっています。騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。現在は小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●聖杯戦争についての疑念を抱きました。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。


474 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 02:04:27 kSRteRSE0


【衛宮切嗣@Fate/zero】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(大・消耗中)。
[装備]
89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実、00式個人用防護装備@現実、トンプソン・コンデンター@Fate/zero、起源弾@Fate/zero×27
[道具]
89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実
[残存霊呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1:まず家族と話す。
2:家族の生存を第一に考え、臨戦態勢を維持する。
3:クロエに色々と申し訳ない。
4:ルーラーの動きに疑問。
5:折を見てバーサーカー主従を殺す。
[備考]
●所持金は3万円ほど。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
奉仕(切嗣)
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
魔力充実、精神的疲労(中・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1:まず家族と話す。
2:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。
●イリヤ(sn)と魔力のパスを繋ぎました。


475 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 02:17:35 kSRteRSE0


【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[スタンス]
脱出優先
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1:慎二・クロノと共に『必勝法』を実行に移し、この場で聖杯戦争からの脱出を実現する。
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
[スタンス]
奉仕(マスター)
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1:マスターの目的達成を図る。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


476 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 02:37:14 kSRteRSE0


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
カレイドルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:とりあえず美遊達みんなと話す。
2:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター(イリヤ(sn))を殺したいけど近くにパパとクロがいるのでまだやめておく。
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(8)
耐久C(6)
敏捷A(10)
魔力B(24)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他心臓を含む左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:指示があり次第冬木市に宝具を使用する。
2:美遊に興味。
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。


477 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 02:51:16 kSRteRSE0


【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1:『必勝法』の協力者を増やし脱出の手筈を整えることを優先する。
2:可能であれば平行して聖杯調査の協力者も増やす。
3:チョコの死とまほろの暴走に責任。
4:マスターと確認できた少年(亘)と接触する。
5:遠坂凛、美遊・エーデルフェルト、間桐慎二、二人のイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、クロエ・フォン・アインツベルンを警戒。
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が住居として設定されています。クロノはそこのマスターです。また翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●リップバーンの死や行動について教授達吸血鬼との関連を強く疑っています。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める。乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1:チョコ達とゾーリン達の死に責任。
2:カルナを止める。
3:あの子(亘)は無事なのか……?
[備考]
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。
●テレサとアルトリアの真名とステータスを把握しました。
●セイバー(テレサ)からランサー(カルナ)についてちょっと聞きました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


478 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:07:21 kSRteRSE0


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[スタンス]
やけくそ
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:どうしょもないのでなんとかして『必勝法』で聖杯戦争から脱出する。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)の好感度が下がっています。また凛とイリヤとアリスとクロノに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1:慎二がこの場でどう動くのかを見て、見定める。求めるなら仏の道を説くというのも。
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。
●間桐邸地下に陣地を作成しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


479 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:10:29 kSRteRSE0


【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
ステルス奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
私服、疲労(小)、魔力消費(小)、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない。イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
2:遠坂凛と共にこの会談で立ち回る。
3:五代雄介を警戒。
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。また五代雄介についても記録をメモしています。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換を耳にしました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●対外的には美遊・エインズワーズの偽名を名乗り行動しています。またバーサーカー(ユウスケ)を消滅したと説明しています。
●遠坂凛を遠坂凛@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤと誤認しました。


【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。


480 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:12:16 kSRteRSE0


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[スタンス]
未定
[状態]
封印解除、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(中)。
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1:交渉はバーサーカーさんに任せて警戒に集中。いざとなったらバーサーカーさんを守る。
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●第三の目を封印解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒される可能性が増えるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっていても妖力は消耗します。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されたので、気を使って聞かないことにしました。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、精神的疲労(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1:交渉に専念し、外交上の有利を得る。
2:ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
3:ルーラーの動きに疑問。
4:なんとなくフドウとカルナが気に食わない。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されましたが、どうせこいつは下手な嘘をつき続けると思って無視しました。


481 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:13:01 kSRteRSE0


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、いつもの紫の私服。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:とりあえずもう一人の自分と話す。
2:キリツグを殺す。
3:全員倒して優勝したい。
4:キリツグが他の誰かに殺されないように注意する。
5:明日の朝九時に間桐邸に向かう。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。
●クロから切嗣の世界の第四次聖杯戦争の情報、クロの世界のクロに関する若干の情報を得ました。また自分がこの聖杯戦争の小聖杯ではないことに気がつきました。
●アーチャー(クロ)との間に魔力のパスを繋ぎました。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[スタンス]
奉仕(イリヤ)
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
1:イリヤが二人いることに軽く困惑。
[備考]
●石斧の飛雷針の術のマーキングがあります。


482 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:13:56 kSRteRSE0


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
ダメージ(大)、疲労(大)、『必勝法』を共有済。
[装備]
核金(種類不明)
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1:パピヨン達が心配。謎のサーヴァントが気になる。
2:慎二に呼応して『必勝法』で聖杯戦争を止める。
3:吸血鬼達を警戒しているが……
[備考]
●愛子ちゃんのパンティ、携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、教授、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)のステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【野比のび太@ドラえもん】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み)
[道具]
ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1:慎二さん達と一緒に『必勝法』で聖杯戦争を止める。
[備考]
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


483 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:14:41 kSRteRSE0


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[スタンス]
脱出
[状態]
意識朦朧、ダメージ(大)、肋など数ヵ所骨折、魔力消費(極大)、衰弱(大)、疲労(大)。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。英霊・アリシアの情報の一部を聞いたのみです。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドク、ライダー(少佐)、アサシン(千手扉間)、セイバー(テレサ)のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[スタンス]
優勝
[状態]
瀕死(くも膜下出血・全身打撲・背部に大火傷)、心停止。
[道具]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。


484 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:16:26 kSRteRSE0


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
『必勝法』を共有済、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、鉄心
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1:『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を停滞させ、聖杯の破壊の機会を手繰り寄せる。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の死に疑念。
3:変態仮面達とドク、慎二組に恩義。ただしドクとそのマスターのライダーはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【ドク@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(10)/E、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E、
幸運(10)/E、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1:ぶっちゃけ方針は未定。
[備考]
●対外的には医者のサーヴァントでクラスはキャスターとしています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ショックガン所持。
●アサシンやキャスターと陣地構築したのはただのふりでした。数ヶ所の盗聴が可能なだけです。
●日野茜に「日野茜と名乗るものの命令を決死の覚悟で実現せよ」の令呪を使用させました。


【大尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(30)/C、
敏捷(40)/D+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。


485 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:17:05 kSRteRSE0


【ウォルター・C・ドルネーズ@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
未定
[状態]
筋力(30)/C+、
耐久(10)/E、
敏捷(30)/C、
魔力(10)/D、
幸運(10)/E、
宝具(0)/なし、
魔力消費(中)。
基本行動方針
自分がこの聖杯戦争に喚ばれた意義を探すのも一興。


【???@第二次二次二次キャラ聖杯戦争】
[スタンス]
生存
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(30)/C+、
敏捷(30)/C++、
魔力(40)/B、
幸運(?)/EX、
宝具(?)/EX
基本行動方針
自分がなんなのかを知る。


486 : 【106】All-In――開幕、聖杯会談―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:26:27 kSRteRSE0



【真田幸村@戦国BASARAシリーズ
 討死】
【ゾーリン・ブリッツ@ヘルシング(裏表紙) 戦死】
【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙) 観測不能】


487 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/14(木) 03:26:51 kSRteRSE0
投下終了です


488 : 名無しさん :2017/09/14(木) 09:57:07 /E2mcjU60
投下乙です
ただここのイリヤ(プリヤの方)って確かクロ分離前の無印〜二期の間からの参戦だったような
クロを知ってるのは有り得ないのでは?


489 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/16(土) 01:07:44 mGZht/bM0
ご感想ありがとうございます
また返答が遅れてしまい申し訳ありません

プリヤ参戦話は同氏による美遊参戦話との兼ね合い並びにクラスカードを巡る事件終結後とありましたので八枚目であるクロ並びにギル戦後のツヴァイ��ドライ間であると考えております
ただしその場合ドライ冒頭と参戦話ではこの聖杯戦争への参戦により描写が乖離するため、無印��ツヴァイ間の方が描写上は自然である、また無印エンディングで当初のクラスカードの事件は終結したと言えるとも考えております
つきましては投下された◆p1hwNIp6AQ氏にどちらのタイミングであるか判断を決していただくのが筋であり、以後当企画ではプリヤの参戦時期をそのタイミングで確定するものとします
また上記のタイミング確定までは【106】を起点に分岐制で投下を進めるものとし、拙作を近日中に一部修正することでどちらのタイミングにも対応できるよう体制を整えて参ります

今回はこのような混乱を引き起こしてしまい、当企画にssを寄せていただいた方並びに当企画をご覧になる方にご心配・ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした
今後はこのような事態が無いよう設定の認識について広く共有できるように【106】を修正し、より良いssを投下した上での完結を実現するために邁進して行きたく思います
もしよろしければ今後も当企画を気にかけていただきましたら幸いです、長くなりましたが重ねてご感想ありがとうございました


490 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/16(土) 01:08:17 mGZht/bM0
それでは全参加者を予約します


491 : ◆p1hwNIp6AQ :2017/09/16(土) 14:34:13 NWG3I8X.0
◆g/.2gmlFnw氏
氏の仰る通り拙作の美遊登場話とイリヤ登場話には原作における時期にズレがあります
これは両名の参戦時期の違いを出すために意図的に描写しました
また、イリヤのステシには「彼女はもう一人の自分と分離する前の時期から参加している」と明記してあります
既に複数の書き手様方によってこの情報を基にリレーされている以上、ここに来ての変更は多大な混乱を招くと思われます
よってイリヤの参戦時期については改めて「無印終了後から2wei開始までの間」とさせていただきたいと思います


492 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/18(月) 00:08:41 CmLJfHwk0
◆p1hwNIp6AQ氏からプリヤの参戦タイミングの決定がありましたので、以後当企画では上のタイミングを「無印終了後から2wei開始までの間」で確定といたします
これをもちまして分岐制を廃止し、また【106】に関しては近日中に修正したものを投下いたします


493 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:00:05 M.4llsnc0
投下します


494 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:15:17 M.4llsnc0



 『東』――0218、新都

 停電により本来の夜の帳が降りた冬木市で明かりを発するものは僅かしかいない。自衛隊か、警察か、救急か、消防か。およそこの四者の公的機関のみがそれぞれに光源を用いて活動している。山向こうの島の反対側と海向こうの神戸の夜景により全くの闇に落ちたというわけでは無論ないが、それでも普段の夜空より少しだけ星が近い、そんな夜だ。だから街をゆく人の何人かは、そこに流星のように煌めく1つの飛行物体を認めたかもしれない。
 それは、まるで灰色の天使であった。蝶のような翼と異形の脚部から戦闘機のそれのように炎を発し西へ西へと飛んでいく。実のところそれには遠方の妖力を感知するレーダーのような機能があるためますます戦闘機に近い。そして戦闘機がレーダーで捉えるものとはつまりは敵である。
 初めにそれに気づいたのは、一人の吸血鬼であった。建物の最高点より常に高度を下げ低空で侵攻するそれは、彼が常人離れした視力で目視した時点で数百メートルまで迫る。そしてすぐさま声を上げた彼の前で、それは姿を変えた。
 蝶のような翼の一部が分離する。その後部には赤々と燃える炎がそれに推力を与え、四方八方へと散った。そして臨戦態勢をとる吸血鬼達の前へ三次元的な機動で迫る。あるそれは瞬く間に高度を上げ、あるそれはビルの間を縫い、あるそれはアスファルトの数センチ上を突き進む。だが共通しているのはそれが全て吸血鬼達目掛けて放たれていることである。

「Mein Gott……」

 それらを追い越すように炎を蒸かして通り過ぎていった侵入者に首を撥ね飛ばされながら、吸血鬼は自分に爆炎が迫るのを見届けた。


「撃て!撃ちまくれ!」
「配置に着け、寄せ付けるな!」

 指揮官たるライダー・少佐を失った最後の大隊残党約四百人が展開するは、新都西部にある廃ビルであった。再開発初期に建てられたそれは、地下の共同溝を通じて同様の建物に繋がる。それを連絡線として利用できることは日光を浴びれば死ぬしかない彼らにとっては重大な戦略上の価値を持つものだ。未だ再編成の整わぬ彼らからすれば、ここを落とされれば軍隊としての体を保つことが非常に困難となる、まさしく最後の砦である。だがもはやそこは餌の小魚がバラ撒かれた鮫の水槽の如き状況になりつつあった。
 廃ビルと同様に共同溝で繋がる付近のビルには、吸血鬼がそれぞれ展開している。NPCへの露見があるため特に息を潜めていた彼らだが、先の爆撃で全員が抹殺されていた。爆発自体は大したものではなく至近弾でなければどうというものではないはずであったにもかかわらずだ。恐ろしくピンポイントな精密爆撃により、砦の警戒線は一瞬で崩壊したことになる。こんな攻撃はあのアーカードでもやってこないだろう。
 そして廃ビルというのが吸血鬼達を追い詰めていた。彼らはサーヴァントとはいえ、使用するのは通常の火器である。コンクリを撃ち抜く程の威力はないし、それができるものは先程沈黙した警戒線に配備されていた。壁抜きによる同士討ちを警戒してのものだが、それにより侵入者には有効な攻撃手段を欠いていたのだ。となれば、後に残るのは一方的な虐殺である。

「化物が……!」

 弾切れをおこしたピストルを捨てスコップで殴りかかった吸血鬼達が瞬きする間に細切れになる。そもそも、銃弾が当たらないのだ。有効な手立てなどあるはずもない。仕掛けた地雷は身体から発射される小型ロケットで爆破処理され、人力による奇襲は奇襲にもならず返り討ちにあう。となるとバリケードを築くこととなるのだが、それも強引に切り裂かれ、あるいは爆破される。
 そしてもう一つ、厄介な点がある。吸血鬼にも引けを取らない再生力、それが吸血鬼達を追い詰めていた。侵入者にまぐれで跳弾が掠めようとも、数秒後には何事も無かったのように傷は消えている。まるで不死身の化物だ。

「……」

 侵入者は既にこのフロアに誰もいないのを認めると床を切り裂き階下へと降りる。そのぼうとした顔には想像もつかぬスピードでそれは侵攻を再開した。


495 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:16:28 M.4llsnc0


「壁を補強!」
「軽機関銃用意!」
「鉄条網展開!」
「中尉!地上階との連絡が途絶えました!」
「んなこたわかってんだよっ!装備の梱包とっとと解け!V1より弾丸優先しろ弾丸ァ!!」

 建物に魔力を這わせながら指示を下すゾーリン・ブリッツ中尉の顔を汗が流れに流れる。最後の大隊残党はこの聖杯戦争始まって以来の苦境に立たされていた。その原因は、つい数分前に会敵した白い侵入者。

「吸血鬼を喰ってやがる……ロクなもんじゃねえなありゃ。」

 建物に産み出した眼が捉えるのは、化物(フリークス)。海軍士官が中心とはいえ仮にも吸血鬼を、まるで吸血鬼が人間にするように殺し喰らう。肉を斬り、骨を絶ち、銃を砕き、弾丸を消し飛ばし、爆風を刻み、建物ごと微塵にする。その剣戟に生やした眼を切り裂かれ、ゾーリンの顔には更に苦み走った。
 恐らく東部の方角から襲撃してきた侵入者、その正体は吸血鬼達には全くの未知であった。せいぜい、それがサーヴァントであるという予想しかない。それもあんなマスターがいてたまるかという理由でだ。そして彼らが既知であるはずもない。そもそもそんなサーヴァントは存在しない。つい少し前に産まれ落ちた新しいサーヴァントなのだ。
 ではなぜそれが吸血鬼達を襲ったのか。怨恨、というわけではない。もっと単純なことだ。『魔力不足を解消する』、ただそれだけ。そのために魂喰をしようとし、吸血鬼という格好の餌を見つけ襲うなど、喰う側の吸血鬼としては想像できるものではなかった。そんなことまで対応できるのは、それこそ根っからの戦争狂で根っからの指揮官の人間でなければありえない。
 しかしながら、ゾーリンに教授達のような知識があれば、その正体の一端に触れることは十分可能であった。とりわけその化物の周りを飛び爆発する蝶など、一目見ればパピヨンの核金によるものであると察するに難くない。もっとも、彼女にはそんな知識はないので結局はありえもしないもしもの話なのだが。
 建物に眼を次々と産み出して、ゾーリンはサーヴァントを補足し続ける。このサーヴァントは屋上から下へ下へ、ワンフロアごとに吸血鬼を食い散らかしながら進撃してくる。そしてついに、本陣である地下へのバリケードをぶった斬ると蝶がロケットのように突っ込み破壊した。もはや後は無い。『切り札』の発射までまだ時間がかかる以上、手は選んでいられなかった。

「おい死神、准尉に伝えとけ。例の兵器を使うってな。」
「僕はここだよ。そっちは任せるから発射準備を整えてって。」
「はいよ……で、死神。お前も出ろよ。」
「……」

 直ぐに消えた准尉から目を離すと、ゾーリンは死神と呼んだ男、ウォルターを睨めつけた。無言で睨み返す彼と睨み合うこと数秒、背を向けて歩き出す。そしておもむろに鎌を振り上げると、コンクリートへと叩きつけた。

「日野茜が命ずる、ランサー、真田幸村、あの灰色のサーヴァントを殺せ。」

 砕け飛ぶコンクリ片を一顧だにせず、ゾーリンは埋められていた男、真田幸村にそう命じる。幸村の目が苦悶の色を示すが、それでも彼は大人しく従うしかなかった。
 これぞ最後の大隊が有する、数少ない使い捨てできる決戦兵器、『真田幸村』である。日野茜に強制的に使わせた令呪、『日野茜と名乗るものの命令を決死の覚悟で実現せよ』の効果により、幸村は自らを日野茜と名乗った人物の命令には逆らえない。それがたとえ日野茜でないと頭ではわかっていてもだ。そしてこの令呪のみそは、命令する人間を選ばず従えることだ。たとえゾーリンに何らかのことがあっても、第二第三の『自称日野茜』はいくらでもいる。また誰彼構わず言うことを聞かないように、日野茜と自称しなくてはならないという最低限のセキュリティもある。そして彼が戦うための魔力は、本物の日野茜が負担するのだ。これほど使い勝手の良い兵器はない。
 幸村は、フラフラと立ち上がりながらも目はサーヴァントへと向いていた。彼が令呪に逆らおうとすればそれだけ魔力を消費する。故に彼は、心では反抗しようとも身体で反抗するわけにはいかない。そんなことをすれば、茜がもたないだろう。


496 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:18:10 M.4llsnc0

「ぐうっ……動くな我が身体!こんな、こんな無体で……!」
「無駄だ、日野茜が命じたんだ。主命を裏切るわけにはいかないよな?」
「ぬう、うぅぅ、なああああっっ!!」

 慟哭する幸村の身体は、勝手に謎のサーヴァントへと向かっていく。既にその手に槍は無い。ただ無手で、吸血鬼達を斬り喰らうそれへ向かい殺到する。それを幸村の意思が変えることはできない。変えてはいけない。
 だが、幸村は二点だけ安堵していた。一つは、自らが無手であること。このような不本意極まりない戦いで槍を汚すのであれば、いっそ武器を持たぬ方がよほど良い。相手を傷つけることも、茜への魔力の負担も減るのだから。そしてもう一つは、茜がまだ生きていること。自分の実体化が可能なうちは、茜の生存は確実と言えるのだから。
 彼の背後から伸びる鋼線が謎のサーヴァントを牽制する。死神と呼ばれた男、ウォルター・C・ドルネーズが操る異形とも呼べるその縦横無尽な動きは、しかし異様とも呼べる勘と身のこなしでいなされる。だがその拮抗が幸村が間合いに踏み込むための足掛かりとなり、肉薄を可能とするのだ。
 小型ロケットを防御ではなく前へ踏み込みながら回避することでサーヴァントへと迫る。自分がダメージを負うということは即ち茜がダメージを追うことであると自身に厳命する。だが、こんなにも困難な戦いであるにもかかわらず、もしこれが自らの望む戦いであればと、幸村はそう思わずにはいられなかった。このような強敵、特にその鮮烈な動きは、初めに戦ったサーヴァントであるチョコのセイバーを思い出させるものだ。思えば、彼女には負け越している。あのカルナ相手の辛勝も、彼女がいなければ不可能であっただろう。かの軍神を思わせるその声と動きは、越えたいとその心を熱くさせるものであり、このような不本意な戦いで終わらねばならないことが惜しいと、この頃に及んでも感じざるをえないものだ。

「中尉、撃ちますか?」
「無駄だ、アレはそんなもんじゃ死なねえ。V1を急がせろ。」
「は!後は最後の調停の確認のみです。」

 今この場では、吸血鬼達は手を出さない。この二対一で戦いを終わらせる必要が、幸村にはある。勝つにせよ負けるにせよ、茜が死ねば意味はない。そう噛み締めて心を滾らせ、しかし努めて炎を発さぬよう慎重に戦う。
 幸村の下段をワンステップでサーヴァントは躱すと、ウォルターの鋼線を仰け反って回避し、その勢いで腕を幸村に叩きつけんと振るう。それを幸村は転がりながら躱すと再びサーヴァントへの肉薄を試みた。魔力放出を伴わない幸村の行動は、明らかにサーヴァントより見劣りするものだ。だがそれで終わらせねば意味がない。
 鋼線がサーヴァントの指を取る、それに呼応して幸村はその指へと回し蹴りを放つ。爆破で足が吹き飛ぶ。千切れるより早く引き戻しその勢いを利用して、幸村は後ろ回し蹴りを腹部へと叩き込んだ。

(崩れたっ!)

 回転の勢いのまま幸村の拳がサーヴァントに迫る。身体からバーニアのように炎を吹かして身を攀じるサーヴァントを鋼線が絡め取ろうとし、今度は変形した斬馬刀のような両腕に防がれる。しかし、それでガードは開いた。突き上げるのはアッパー、狙うは顎、顔が見える、額が迫った。

「……せいばぁ、殿?」

 砕ける相手の頭蓋骨と自分の拳のことを忘れて数瞬、幸村はその変わり果てた相手の顔に釘付けになった。

「……誰だっけ?」
「せいばぁ殿!なぜかようなことを!?それになぜらんさぁ殿の服を!」
「セイバー……ああ、セイバー!そうかセイバーか、ハハッ。」
「一体、何が……」

 地上で互いに拳と異形の腕とのラッシュを繰り出しながら、幸村とサーヴァントは会話する。そのラッシュは幸村には見覚えのあるものだ。あのカルナとの戦いのときに振るわれた剣舞、それが形を変えどもそこにある。暴風のようでありながら制御された槍衾。ならば彼女は紛れもなくあのチョコのセイバーであるはずなのだ。あんなことができる存在を幸村は他に知らない。たとえその首にまるで切り落としたものを嗣いだような痕があっても、だ。


497 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:34:47 M.4llsnc0

「……貴殿、何者だ!せいばぁ殿なのか!?その身体はいおり殿のらんさぁの、蝶は狂介殿のきゃすたぁのものか!!」
「あー……ああ、そうか、うん、幸村、そうなんだよ。」
「何があったの、ぐおおっ!?」
「あ、悪い、殴っちゃった。まあ後で話すから少し寝てろ。」

 尖った腕の斬撃が幸村を弾き飛ばすと、返す刀で鋼線を迎え撃つ。浅く斬られた傷を直ぐに回復しながらウォルターとの戦いに入ったサーヴァントを、幸村はよろよろと立ち上がりながら追った。ただ立っているだけでもふらつく現状、たった一発攻撃を受けただけでもはや実体化が難しいレベルのダメージだ。たが、彼女をこのまま戦わせておくわけにはいかない。それは彼女のためにも、茜への負担を減らすためにもだ。素早く戦闘を終わらせねば、自身の炎が茜の命を燃やし尽くしてしまう。

「っ!寝てろって言ったろ。」
「せいばぁ殿!なぜ彼らを喰らう!なぜ……」
「腹が痛いんだ。スゴく、凄くな。でもこいつらを喰うと少しだけ治まるんだぁ――よ!」
「ぐ、うおお!?」
「……まるで喰種だな。」
「なんだお前、喋れたのか。」
「人を化物扱いするな。」

 幸村の蹴りは届かず、逆に蹴り飛ばされる。その隙にウォルターが操る鋼線がサーヴァントの指を半ばまで切断したかと思えば、数秒と経たずに再生が終わる。お返しとばかりに振るう文字通りの手刀を鋼線を編んで作った壁に阻まれると、その裏からロケットのように飛んだ蝶がウォルターの首元へと突き刺さった。

「……おっかしいなあ、顔半分、はなくても下あご吹き飛ばしたのに生きてる。」
「俺もお前もとっくに人間なんてやめてるんだ、今更だろ。」
「そうだな、そのとおりだ。だからこうして仲良く殺しあってんだ。」

 微笑を浮かべながら言い終わると、サーヴァントの姿が滲む。ウォルターの足元から背面上部、背面下部へと流氷のような動きで現れた彼女の手刀を攻防一体の鋼線で迎撃するウォルターの顔が些か若返っていることに、幸村は気づいた。それがなにを意味するのかはわからない。そんなことを考えるより先に自身の身体が否応もなく彼女の元へと走ってしまう。だから幸村は走りながら考えた。

「某は……俺はッ!!!」

 そして初めて、幸村は、この戦闘で。

「……なんの真似だ。」
「強引だな……」

 幸村自身の意志で行動した。
 右手には手刀を受け止め、かつ両手で鋼線を掴み取る。幸村は二人の間に身を割り込ませ戦闘を停めるべく行動したのだ。
 それは、幸村がサーヴァントを倒す為の行動であった。そう幸村は自身に言い聞かせた。でなければそんな行動は許可されない。最大限自身を譲歩させられる一線であった。
 深く息を吐く。深く息を吸う。もはや実体化をいつまで維持できるかわからないなか、溜めて数秒、幸村は大音声を発した。

「せいばぁ殿とお見受けする!このらんさぁ真田源次郎幸村!!貴殿に、一騎打ちを申し込み候!!!」

 そう叫ぶと、幸村は革ジャンを彼女に向かって放り、拳を構える。その他ファイティングポーズにはいささかの隙もない。

「某、さる事情にて貴殿を討たねばならぬ!この『楯無の鎧』はその前金!武田家秘伝の家宝!某を討ったあとは好きにするが良い!!」

 サーヴァントは変わらぬ微笑を浮かべ、無言でウォルターは後退し、ゾーリンは不愉快そうに睨み、吸血鬼達はある者はV1の準備を進めある者は銃口を油断なく三人に合わせる。彼らからすれば幸村もウォルターも危険な存在だ。だが幸村にはそんなことは関係ない。先程までの争乱が嘘のように静まり返ったビルで、幸村は続けて叫んだ。

「そして、某が勝利した暁には貴殿を某が全力で弔おう!さあせいばぁ!!互いの全てを賭けたこの一騎打ち、応じるのであれば前金を受け取れぇぃ!!」


498 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:38:26 M.4llsnc0

「――応じよう。」

 隙を見て狙撃しようとした吸血鬼の銃口に、火薬でできた蝶が停まる。ゾーリンは目配せして銃を下げさせた。死角からの攻撃の準備を進める相手をピンポイントで牽制できる相手に、そんなものは用をなさない。それよりは、少しでも時間を稼ぐべきだ。なぜならあと少しで冬木市を地獄に変えられる最終兵器が使えるようになるのだから。
 デウス・エクス・マキナとグラーフ・ツェペリン、二隻の装甲飛行船に本来なら装備されていたV1ミサイル。弾頭にVXガスなどの化学兵器を備えることが可能なそれは、まさに戦術ミサイルである。地上で撃つはずのものを空中から撃てるように改造したものを地上から発射するというしちめんどくさいことをしなくてはいけないために準備に時間がかかっているが、使用可能になればパワーバランスを大きく変えることができる代物だ。カルナの爆撃もありホテルから持ち出せたのは僅かに六発だが、その存在は切り札となり得る。それもあと数分以内に現実化するのだ。そうなればあとは天井を壊せばいつでも撃てるのだ。おあつらえ向きにあのサーヴァントが壊しに壊してくれた。あれならばゾーリン単独でも数秒で蓋を開けられるであろう。
 緊張が高まる。幸村とサーヴァントは互いに十メートル程の距離をとって向かい合った。サーヴァントは軽やかなスタンディング、幸村は消えかけた手を地面につきクラウチングスタートめいた前傾姿勢で。サーヴァントがスカート近くの外骨格をブースターのような形に変形させて蝶を集め、幸村は殆ど無くなった足の裏に炎を滾らせる。
 そして、小さな爆発が起こった。

「――見事だ、せいばぁ。」
「お前……!」
「某は……決死で!死力を尽くし戦った!某が望んだ形で!!互いに万全の状態で!!戦い敗れたァッ!!!そうだろう!!!」
「……ああ、そうだ。公正な決闘で私はお前に勝った。英霊にとってこんなんにも栄誉な事は無い。お前と戦えたことを感謝する。」
「そうだっ!某は!恥じることなく死んでゆく!お館様にも!我が親父殿にも!ますたぁである茜殿にも何者にも!!」

 幸村の背中に銃弾が突き刺さる。鎧を捨てた彼には、もはやそんなものでも致命傷を避けられない。そしてその傷の事実とやり遂げたような満足気な笑みが、ゾーリンの癪に障りに障った。

「何が一騎打ちだ!自分からアイツの槍に飛び込みやがって!死神ィ!天井ごと殺せェ!」

 吸血鬼の弾丸が幸村に殺到する。ウォルターの鋼線が天井とサーヴァントへ迫る。そしてゾーリンは、いつの間にか傍らにいた准尉にV1発射の指示を下した。
 幸村の自決はゾーリンにとって想定外のものであった。ここであのサーヴァントに勝てばそれで良し、負けてもそれで良し、戦っている最中に魔力切れで死んでも良し、そう考えていた。どう転んでも損はないと。
 だがゾーリンは見誤っていた。幸村という男の知略を。ただの田舎騎士と思い、ドン・キホーテのような人間だと思い込んだ。マスターになるべく負担をかけないために早急に死に、しかも予想より遥かに有用な装備を、よりによって敵にまで渡すとは考えもしなかった。
 サーヴァントはバーニアのように火薬を推進力に変え、ポッカリと開いた天井から飛行し鋼線から逃れる。その目には、追い縋るウォルターと、銃弾の雨に晒されて不格好なダンスを踊る幸村と、いったいどこに隠していたのかわからないミサイルのようなものが上を向いていくのが見えた。不思議と、それにもう飢餓感は無い。そもそもそれが空腹という感覚であることを思い出したのがつい先程のことなのだが、それでも悪い感じはしなかった。不思議と言えばもう一つ、なぜか身体が鋼線に切断されなくなった。その変化を利用してぶら下がってくるウォルターは考えものだが、ダメージを気にしなくて良いようになったのだ、気にせず高度を上げる。そして、サーヴァントは光を見た。

(あの光――)

 川の対岸、学校らしき建物のある辺りで光と爆煙が上がっている。触れたもの全てを有象無象の区別なく一切合切消し飛ばしたかのように、そこにはクレーターが現れ、近くの学校は瓦礫と化していた。まるで消しゴムで丸く消したようにきれいに灰燼に帰している。そしてその下手人の姿を見て、サーヴァントは駆け出した。


499 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:41:08 M.4llsnc0



 『西』――0221、深山町クレーター北部

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのランサー、カルナがその魔力の波を感じ取ったのは、クレーターを挟んで南から迫ったサーヴァント達と睨み合いを続けていた時のことだ。残る片目で和装のアーチャーを見れば、そこから不自然なほどに垂れ流される魔力が見て取れるかのよう。だがしかし、カルナを以ってしても害意を感じられない。その行動を図りかねる。カルナがそのアーチャーの不審な行動を理解したのは、頭の中に微弱なノイズが聞こえてくるようになってからのことであった。

『ランサーさん、今念話を……してませんよね?』
『ああ。そちらにも聞こえているか。』
『ええ、壊れたラジオみたいな……いや、声?女性の声ですね。』
『あのアーチャーの企みだろう。どうする。』
『……様子を見ましょう。』
『承知した。』

 ノイズはより大きくより鮮明になる。それにつれてアーチャーから流れる魔力にも細かな変化が起こる。徐々に波長が変わっていくのだ。次第に聞こえてくるその音は数字を告げる声となり、やがて明瞭な女性の音声へとなった。

『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます。我々は、この聖杯戦争の平和的解決、各位の対等の交際、並びにこの呼びかけに賛同される方が侵略を受けた場合の参戦義務を伴った共闘を提案します。この間桐三原則に関してご質問がございましたら、お気軽にお電話下さい。電話番号は――』

 仰々しく共闘を呼び掛ける前半とうってかわってセールスのような電話番号を告げる後半。念話はそれを繰り返えしアナウンスしていた。

『始まりの御三家……?あの間桐ですか?』

 多分に疑念を含んだルビーの声と同時にループされる女の声。状況は不明瞭だが、停戦を名目にした呼びかけということには間違いないとカルナは判断する。であればその判断はマスターであるイリヤが下すべきこと、自分はただここで備えるのみ――そう考えていたところに、またもノイズが走る。アーチャーからの放送が始まって数分と経たぬ間に、同様の手段で放送を行う者がいるとすぐに――それこそアーチャーより先に気づいた。膠着状態を破ってにわかに動き出した戦火を交えない戦況の変化。それをカルナはただただ柳のように柔らかに受け止め続けようとして。

『シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』

 マスターではないイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの声を認めて、わずかに眉根を寄せた。

『……アインツベルンさん、間桐さんからの言伝です。復唱します。「お前スマホ持ってんだから電話しろよ」とのことです。』
『あら?私のことイリヤだって思ってるわけ?まあ間違いじゃないんだけどさ……はじめまして、私はクロエ・フォン・アインツベルン。貴方達風に言うと、始まりの御三家筆頭のアインツベルン家の魔術師ってところかしら。』
『……』

 クロエと名乗ったイリヤとうり二つの魔力の持ち主。広域に人を選ばず飛ばせる念話が可能な人間のうち、カルナに心当たりのある人間は一人しかいない。だが、その人物ではありえない。この感じは明らかに彼女、美遊・エーデルフェルトとは違う。魔力が違う以上、カルナにそれが何者であるかはわからなかった。

『アインツベルン……すっかり衰退したって聞いてましたが――ああっ!?イリヤさん!?』
『ランサーさん!この声がどこから来てるかわかる!?』
『山の近くの学校の辺りだ。』
『ルビー、視界共有お願い。』

 イリヤの望みを察し、カルナの残る右目が南へと向く。闇に沈んだこの冬木で数少ない光源を有する穂群原学園の近くに、その二人はいた。


500 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 00:58:12 M.4llsnc0

 一人は、まるっきりイリヤと瓜ふたつな人物。カルナの視力を以てしてもイリヤとの差異を見出すのは難しい。そしてもう一人は、肌と髪の色と魔力だけが違う人物。今念話で放送している『クロエ』と名乗ったのはこちらだろう。そしてなによりその人物の不審な点は、それがサーヴァントだということである。

『見つけた、あれがリンさんを……』

 念話越しにカルナの脳内に聞こえるのは、マスターであるイリヤの震えた声。それに込められた感情は今更説明するものでもない。

『リンさんを殺したもう一人の私!!』

 予選の間で彼女の師である遠坂凛を抹殺した、『もう一人のイリヤ』その人。彼女の存在を知ったイリヤがどう動くかなど想像に難くない。大方直ぐにでも家を飛び出して向かおうとするだろう。ならばカルナのすることはそれを邪魔立てする障害を排すること。
 イリヤの家の上空を飛び回る小さな飛行機にも、それを操るあのアーチャーにも依然動きはない。それだけでなく、南のサーヴァント達は放送が始まってから僅かだが緊張を解いている。故に今は動かない。だから、彼が動く理由はマスターが動くからだ。

『ルビー、ランサーさん、私あのマトウって人と話そうと思う。』
『……ものすごく嫌な予感しかしないんですが、このままだとニセイリヤとの間で話が進んじゃいそうですし、やるしかないみたいですね。ランサーさん?』
『オレに異論はない。もし奴らが虚飾や詭弁を述べたならばすぐさま伝えよう。』
『ありがとう……よし!ランサーさん、今戻ってこれる?電話するから一緒に聞いてほしい。』
『了解した。』
『拮抗状態を崩すのはちょっと怖いですけど、まあもう壊れてるようなもんですし、ドーンと行きますか!』

 頭に様々な念話が響く中、カルナは注意深く後退を開始する。どの道マスターの居場所は割れているのだ、相手を刺激することを除いては撤退のデメリットは薄かった。

「ただいま戻った。」
「お帰りな……え。」
「うーん、まあ、そうですねぇ、ちょっとよくわかんないです……」
「ランサーさんその怪我……ルビー、もしかして黙ってたんじゃ……」
「ランサーさんそんな怪我してたんですかー、知らなかったー。」
「かすり傷だ。」
「じゃあ大丈夫ですね。ほんじゃランサーさんも戻って来ましたしお電話しましょ。」
「ちょっ、ルビー!!」

 玄関前で出立の準備を調えながら電話の子機を持って待っていたイリヤの前に、空から現れる。やはり怪我に驚かれるが、勢いでルビーが誤魔化すのをカルナは黙して認めた。常識的に考えれば大怪我も良いところであり、とてもではないが治癒に専念すべき場面であろう。だがそれでも、いやだからこそ、ここはあの先の呼びかけに応じるべきであるとカルナは判断する。そして目の前の杖もそう判断すると踏む。そしてイリヤも、結局はそれに折れると、自らの師を殺した紛い者を討つことを選ぶと踏む。

「でも、身体が半分に……」
「この深手ならば彼らも大袈裟に恐れはしないであろう。それにまだ片手片足に頭と心臓がある。」
「今からおはなしするってことを考えればちょうど良いハンデですね。」
「いやいやおかしいでしょ!いつ死んでもおかしくないんじゃ……」
「心外だな。まさか我が万に一つでも負けると思うか。」
「そうですよイリヤさん、カルナさんの宝具なら地球の表面ごと冬木市削ってコールド勝ちですよ。」
「なんてことを……!」

 そしてこのような状態であろうと勝利することは可能であると。
 カルナ第四の宝具、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』による『冬木市全体への同時無差別爆撃』。この島ごと地図から消し飛ばすことができる最大の切り札がカルナにはある。そしてそのために必要な『コスト』もカルナの手の届くところにある。必要ならばそれを振るうことに、心痛めども躊躇は無い。

「……あーもう!よし、行きます!」

 イリヤは頭を振ると電話のボタンをプッシュした。


501 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 01:03:14 M.4llsnc0



 『西』――0222、間桐邸

『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます――』
「やればできたわ。」
「いいねえ。」

 間桐邸の地下、そこに詰めるマスター達がアリスの言葉と彼女のアーチャーの念話を聞いて息をつく。一番意気込んでいた慎二が前傾姿勢になるのを見て、のび太も深く息を吐きながら眼鏡を拭いた。
 アリスのアーチャーが呼びかける内容の草案作りからそれの放送実行までわずか数分。勢いだよりの突貫工事もいいところの聖杯戦争打破の呼びかけはなにはともあれ始まった。そのことがのび太達対聖杯の人間にとっては非常に重要である。
 直接的な表現こそしていない――状況の変化についていけなかったクロノが『必勝法』に触れないよう穏健な草案を例示したらそのまま放送することにしたためだ――が、公然と停戦を呼びかけるというのは、聖杯戦争の意義に真っ向から反抗することだ。スポーツで言えば無気力試合である。それをルーラーがいないのを良いことに、タイムをとる体で提案している。主催側が直ぐに動く可能性は低いが、充分に警戒されうる行為であろう。故にこれから先は一切を電撃的に進めなくてはならない。それもほぼノープランに近い現状でだ。しかし、なんであれ企てが動き出したことそれ自体がまず対聖杯派を安堵させる。この同盟内だけでもある程度リスキーな行動をともにできるだけはまとまれたということなのだから。

(マズイ、いつの間にかカルナと停戦する流れになってる。いや、それそのものはいいんだけど……こんな放送して同盟が肥大化したら、聖杯戦争が成り立たなくなる……!こいつらわかってやってんの?)
(とりあえずこれでイリヤが襲われる可能性は減った。でもこのままじゃイリヤと会うことになる……万が一のことを考えてバーサーカーを呼び戻しておかないと……)

 ……実際はただ単に聖杯狙いの人間である遠坂凛と美遊・エーデルフェルトが、サーヴァントの撤退を呼びかけた手前、表立って反対できずにズルズルと引きづられてしまっただけなのだが。

「狂介さん、どうなると思う?」
「……成功するって信じてる、って言ったら嘘になるけど、でも、けっこうなんとかなる気がする。パピヨン達が命懸けで止めたんだ、あっちもかなりダメージは大きいはずさ。」

 不安を感じ問うのび太に、狂介は率直に応えた。それを見て、のび太も頷く。もう始まってしまったのだ。成功しなくては困る。それは共にサーヴァントを失った二人にとってはひとしおだ。これがうまく行かなければ、二人の生存の可能性はゼロへと限りなく近づく。そしてなにより、二人の目的が果たせなくなる。無手となったマスターにできることは限らているのだ、今だって祈ることぐらいしかろくにできない。だがそれでもできることはやる、それは二人の共通の考えであった。

『――シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』
「念話!?しかもこの声、イリヤか!」

 頭の中に響く声、状況は変転する。
 令呪の失くなった手を握る狂介を見ながら、のび太はつばを飲みこんだ。

「アイツやっぱり生きてたのか。」
「待って。少し様子がおかしい。」
「何言ってるんだよアリス、明らかにイリヤだろ。そうだ、『お前スマホ持ってんだから電話しろよ』、って念話で言ってやれ。」
「……わかったわ。」

 しぶしぶといった感じでアリスは慎二に従う。だがもちろん、彼女はイリヤではない。その事実に一同が困惑する中、慎二のスマホへと掛かってきた一本の電話が更に混乱を招く。

『もしもし、間桐さん、ですか?』
「そうだけど、あれその声は……」
『あ、ゴホン!私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。ランサーの、マスターです。』

 電話を介したスピーカーから聞こえる意外な人物の見知った声に、マスター達の間で困惑が広がった。


502 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 01:09:17 M.4llsnc0


(イリヤ……!)

 そしてただ一人、美遊・エーデルフェルトは努めて無表情を造りながらも内心は焦燥にかられることとなる。ついに彼女が恐れる事態が現実味を帯びてきてしまったのだから。
 美遊にとって、イリヤに自分の存在を知らせないことは至上命題である。まず全てはそれに優先される。優しいイリヤのことだ、自分がいると知れば必ず戦い抜く上で迷いを生じさせてしまう。イリヤを優勝させるには自分は邪魔なのだ。
 だが問題はクロエも聖杯戦争に参加していることだ。この時点で、イリヤが優勝を目指すことは難しくなる。美遊がそうであるようにクロの存在もイリヤが勝ち抜こうと思うためには重大なマイナス要素だ。イリヤはまず親友や家族の生存を最優先に動いてしまうだろう。

『私達の提案はたった一つ。貴方達の提案に乗るから、深山町の遠坂邸での会談を申し込むわ。間桐邸からすぐだし、そっちには……遠坂家の当主がいるでしょ。そんなに難しい話じゃないと思うけど、どうする?』
「こっちの情報は漏れてるってことね……シンジ、一応私からそっちじゃないイリヤに電話してみるから。」
「わかった……あーもしもし、イリヤ、だな。知ってると思うけど、僕は間桐慎二。キャスターのマスターでこの同盟のリーダーさ。」

 念話と電話、双方から聞こえるクロとイリヤの声。こちらに聞こえているように、イリヤもクロの念話を聞いているのだろう。だからこちらに電話してきた。そうに違いない。

『あ、どうも。それで――ん!それで、交渉したいの。もし私の条件を一つだけ飲んでくれるなら、貴方の条件を全部飲んでも構わない。』
「ダメね、出ない。」
『悪いけど、イリヤは電話に出る気は無いって。口約束じゃなくて証人がいないと、ねえ?それにカルナ、貴方達にも悪い話じゃないと思うけど、どう?』
「なあこれ今誰が喋ってるんだ?」
「念話の方が、多分バーサーカーの方のイリヤと一緒にいるクロエって名乗ってるイリヤ。で、電話の方がランサー・カルナの方のイリヤ。そうでしょクロノ。」
「ええ、おそらく。」
「ややこしいな……」

 イリヤからクロへの通信手段のみ存在しない状況で、歪な三者の会合は進む。美遊は自分の耳が敏感になるのを感じた。隣に座るのび太が手を握り締める音さえうるさく感じる。一言たりとも聞き逃してはならないのだ、集中もする。ほぼ確実にここで、イリヤがどれだけ優勝に邁進できるかが決まるのだから。

「交換条件ってやつか。まあまず話してみてくれよ……アリス、『私達ってどういうことだ。まずマスターとサーヴァントが何人いるのか教えろ』って聞いてくれ。」
『……単刀直入に言うと、今念話してるアインツベルンの魔術師って人を倒すまで休戦してほしい。あの人は戦いを楽しんでる、危険なマスターなの!』
『……復唱します。「私達ってどういうことだ。まずマスターとサーヴァントが何人いるのか教えろ。」とのことです。』
『どっちも三人で三組よ。バーサーカー二人にアーチャー一人。で、どうするの?飲む?飲まない?まさか私達だけに手の内を晒させて自分達はダンマリってことなら……』
「イリヤ、アインツベルンって、今喋ってるコレのことだよな?」
『うん。ヘラクレスをバーサーカーのサーヴァントにしたマスターはかなり危ない。予選の時に……とにかくとんでもないマスターだから!』
『カルナ、提案があるんだけど、私達で同盟を組まない?貴方がそこでサーヴァントを抑えてる間にこっちが対軍宝具をマスターに撃ち込むわ。たぶん地下に立て篭ってるから、貴方も余裕があったら狙ってみて。』
『慎二さん、まずあのサーヴァントを倒さないと!アレには生半可な攻撃は効かない。普通に戦ったら絶対に勝てない。だから協力して!』

 おかしい、美遊は思わずそう口にしそうになった。一連の会話を全て一言逃さず聞いたはずなのに、聴こえたはずの言葉で混乱する。なぜ『クロエ・フォン・アインツベルンを無視しているのか』、それが最大の疑問点であった。偽者のイリヤと間違えている、というのはありえない。慎二達ならともかく、声を聞けば区別はつく。ならなにか考えがあってのことなのか……


503 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 01:27:19 M.4llsnc0

 「少し待て、いいな?」と言って慎二は苛立たしげにテーブルを指で叩きながらスマホを伏せる。そして前髪を一度かき上げてから全員を見回して言った。「どうする」と。

「ぶっちゃけると、カルナの方のイリヤが言ってることはあながち間違ってはいないかもしれない。僕と狂介、それとアリスがバーサーカーの方のイリヤと会ったとき、アイツは港でびしょ濡れの状態で気絶してた。だよなアリス?」
「ええ。まるで海で溺れたような有様だった。」
「で、その港っていうのは、あのポッキリ折れてる冬木大橋の近くだ。なんで折れたかって言うと、のび太だっけ?知ってるよな?」
「……うん。茜さんといおりちゃんが、別のバーサーカーを撃退したんだけど、そのあと銀髪で紫の服を着た女の子のバーサーカーに襲われたって。それで、戦ったんだけど茜さん達がやられて、その後いおりちゃんのランサーが戦ってたら、姿の見えないサーヴァントがその女の子と戦って、橋を爆破して倒したって聞いたんだ。」
「ていう感じで、バーサーカーの方のイリヤがヤバイって話もわかる。が、僕達はその証拠となるようなものは何一つ見ていない。これは間違いないことだ。この中に、あっちのイリヤが誰かと戦ってるところを見たことある奴がいるか?」

 早口で話す慎二だが、その言いたいところはわかった。確かに、イリヤの言うことは信憑性があるだろう。だが偽者のイリヤを疑う決定的な証拠はない。それは美遊だけではなくここにいる全員がそうであるようで、全員が沈黙を守り続ける。それを認めて慎二は再び口を開いた。

「アイツと直接戦ったのは上でベッドで寝てるいつ死んでもおかしくない高遠と日野、それに死んだ九重だ。まあ、九重に関してはアイツのサーヴァント以外でアサシンぽいことができるサーヴァントがいないからあくまで消去法だけどな。とにかく何が言いたいかって言うと、ランサーの方のイリヤの話を信じる根拠がない。」
「慎二、イリヤに動きがあった。」

 一息に慎二が喋り終わると間髪入れずにアリスが話す。「どっちだよ!」と苛立たしげに聞く彼に「両方」と彼女は淡々と答えた。

「カルナは東に移動を始めた。バーサーカー側から離れる動きね。それを追うようにバーサーカー達も動いてる……車が二台走り出した。たぶんアレね。」
「しびれを切らして動き出したか。アリスさん、念話の呼びかけを再開して下さい。なるべく引き伸ばしましょう。慎二さん。」
「……わかった、電話頼むぞ。もしもし、イリヤ?またせたな、今からクロノって奴に変わる。これからそっちとの交渉はソイツに任せることになったんだ。心配しないでくれ優秀な奴さ。今からクロノが電話をかけるから、一度切るよ。」

 慎二のスマホの着信履歴を基にクロノは電話をかけ始め、アリスのアーチャー・赤城は再び念話を再開する。一瞬の停滞を破り状況は再び動き出した。もはや猶予は無い。そのことを美遊達に思い知らせるかのように、念話と電話からはそれぞれ先程より一段階トーンの落ちた声が聞こえた。

『シンジ、私をガッカリさせないで。そんなに難しいことを言っている気はないんだけど。貴方達の同盟の中で折り合いがつかないからって、それでレディの時間を奪うのはいただけないわ。』
『クロノさん、お願いします。』
「アリス!もっと引き延ばせよ!」
「貴方ならできるの?」
「ッ!?ク、クロノ!」
「イリヤさん、こちらも貴女の提案を前向きに考えています。まずはお互い時間が必要ですよね?」
『我々、間桐の同盟としてはお二方双方の事情を考慮しなくならてはならず――』
『お二方ってことは、カルナ側とも話してるってわけね。ところでカルナが変な方に走ってるんだけど……』
「アーリィースウゥー!!!」
「黙ってろワカメ。」
『……クロノさん、ランサーさんに時間があるように見える?』
「クロノ!!やっぱ電話代われ!!」
「慎二落ち着け!」
「マズイ……!このままじゃどっちも敵に回しかねない。クロノ私は――」

「行って、バーサーカー。」

 口々に喋る声が地下に木霊するなか、美遊は決然と言った。


504 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 01:34:10 M.4llsnc0

 さてここで数個の変化が起こった。
 まず地面が震動した。キャスターにより多少なりとも陣地化されたにもかかわらず地下の全員が揺れを感じた。
 次に。音が聞こえた。それが地上階の窓ガラスの割れた音だということがはっきりとわかるほど、明瞭かつ大音量であった。

『なるほど、これが返事ってわけ――ね!』
「何の光ィ!?」

 そしてクロの念話と教授の絶叫と共に、天井に亀裂が入り赤い閃光が漏れたのをマスター達は目にした。

「美遊、今何をしたのかについて、説明を求める。」
「このままだとどちらのイリヤとも敵対する。だから『イリヤのバーサーカー』だけを私のバーサーカーに襲わせた。」
「つまり、勝手にクロエ達を襲ったってことか?」
「そう。」

 一気に険しい顔になったアリス達マスターを前に、美遊は冷静に自分が今何をしたのかを説明する。身を乗り出しながら詰め寄る慎二に対しても、非常に淡々と答える。

「ランサー達はバーサーカーを倒したい、バーサーカー達は会談の場所を凛さんの家にしたい。なら両方の条件を同時に飲むことはできる。」
「ふ、ふざけるなあぁっ!!」

 続けて美遊の説明に慎二が激昂するのも受け止めながら彼女は転身し――

(鎖!?違う、縄!!)
「――どうしてなんだ。」

 魔法少女となった自分の身体が亀甲縛りになっていることに気づいた。
 それはのび太の隣に座っていた色丞狂介の早業である。美遊の凶行とサーヴァントに攻撃されたらしい事実に警戒を強めていた凛はもちろん、アリスやクロノといった超常の荒事への心得がある人間からしてもなお早いロープ捌き。それが瞬く間にわかりやすい魔法少女のような姿になった美遊の自由を奪っていたのだ。

「そんなことをすれば街の人だってただじゃ済まない。それに……」
「街の人間は所謂NPC、サーヴァントに近いデータ上の存在。それを守るために聖杯戦争を中断させるチャンスを失っては本末転倒。違う?」
「……それに、こんなことをすればバーサーカー達は話し合いどころじゃない。これじゃあ、あっちの三組と戦うことになるって、君だってわかるだろ!?そうなれば結局聖杯戦争は止められない!」
「いや、なる。むしろ今回のことで、バーサーカー達は貴方達と話し合おうとするはず。だから止められる。」
「そんなことがあるわけ――!?」

 狂介は、この場で最も美遊の行動に憤っていた。彼女が人名を軽視したことも、仲間である自分達になんの相談も無かったのも、今回のことで会談が潰れることも、全てに憤っていた。そしてなにより、彼女のあり方から無理矢理に醸し出される悪の臭いが彼を総毛立たせていた。
 それは直感である。このまま美遊を放っておけば、取り返しのつかないことが、さっき以上のことが起こる。そして狂介には、その直感により彼女が何をしようとしているのかもおおよその見当がついていた。ならば絶対に行かせてはいけない。それは絶対に彼女のためにならないんだから。

「美遊ちゃん、それはダメだ。それじゃ助からないじゃないか。」
「いいえ、これでみんな助かる。」
「そのみんなには君が入ってない!」
「――けっこう勘が良いんですね。」

 美遊が身体から光を発すると共に叫ぶ狂介の手に持つ縄から抵抗が消える。一瞬で戒めを破砕した美遊の姿は、それを最後にかき消えた。
 「クソ!」と叫びながら狂介は素早く階段を駆け上がり始める。「キョウスケ!こっちで追うから下がって!」と言いながらクロノがかき消える。後に残されたマスター達が立ち上がろうとしたところで、三度衝撃が来た。

「アリス、黒いバーサーカーに――」
「任せて、アーチャーがやってる。」
「な!?おい何なんだよ!?」

 事態から取り残され混乱しきった顔で口から泡を飛ばし訊く慎二に、おずおずといった感じでのび太が答えた。

「美遊ちゃん、たぶん僕達の敵になる気です。そうすれば、さっきのことは僕達とは関係なくなるって……」


505 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 01:42:28 M.4llsnc0


「待ってくれ、美遊ちゃん!」
『想像よりずっと早い。逃げることを優先し――』
『上です!クロノ・ハラオウン!』
「――風の剣!!」

 半壊し焼け落ちた間桐邸から直線的な動きで屋外へと脱出した美遊は、後方から追いすがる狂介を引き離そうと足に込めた力を横向きのベクトルへと変換し、真上から迫るクロノから距離をとる。

「ストラグル!」
「サファイア。」
『危険です、回避を。』

 続いて迫る鎖に防御姿勢を取ろうとしたのを寸でのところでキャンセルして、直進してくるそれを回避した。狂介のそれよりなお早い、だが、先程のような慢心がなければそう簡単には当たらない。相手が魔術師である以上、たとえその攻撃に殺意がこもっていなかろうと、美遊に遅れを取る気は無かった。

「ハァ……ハァ……美遊ちゃん!戻ろう!」
「ッ!?シールド!」

 駆け寄ってきた狂介の背部から迫る矢をクロノが魔力の盾で往なして反らす。それを見て再び逃走を開始した美遊をクロノは苦み走った顔で見送るしかなかった。

(この方角、バーサーカーのイリヤ達からか。まず確実にアーチャーか。)

 クロノは冷静に魔弾を放つ者の正体を考えながらも、シールドを展開し続ける以外に行動を取らせてもらえないまま、次々と狂介めがけ飛来する矢をやり過ごす。防御に関しては人並み以上だと自負はあるが、それでもサーヴァント相手となれば不十分極まりない。魔力を湯水のように費やしてなんとか延命を図るのがやっとだ。
 それもそのはず、クロノが相手取るのは『偽・偽・螺旋剣(カラドボルグIII)』。彼の読み通りアーチャーが放つそれ。フェイクのコピー品とはいえその威力は並大抵の魔術障壁など障子に穴を開けるが如く簡単に破壊する。それをクロノが防いでいるのは、彼の術の完成度の高さと魔力の多さ、そしてそれらを効果的に運用できる技術があるからだ。

『――こちらは現在の攻撃に関して一切無関係です。我々に敵対する意志はありません。』
『そんな言い訳通ると思ってん――の!』

 赤城の念話にクロが悪態を念話で返すと同時に、矢が音速を超えて狂介へ飛来する。なるほどこれがさっき屋敷を吹き飛ばした攻撃か、とクロノは痛感しながらもなんとか念話を試みる。相手は、もちろん五代である。

『五代さん、そのまま全員撤退させてください。そしてギリギリまで反撃を控えてください。』

 返信を聞く間もなくクロノは矢の対処に専念する。美遊の暴発が多数のサーヴァントが絡む本格的な衝突となるかはもはや間桐邸に残った人間次第になるがしかたがない。一度の念話が限界なほど、そして二度目の念話は無理だと判断せざるをえないほど、相手の狙いは正確だ。それもそうだろう、撃ってくるクロからすれば突然サーヴァントに襲われたのだ。状況を考えれば、カルナ側と間桐側が手を組んだと考える、そうでなくとも、大同盟相手に戦うことになったとなれば、なりふり構っていられない。
 だがなにより、クロが狂介を狙い撃つのは、彼が美遊を追っていたからだ。ぶっちゃけクロにとってはそれだけが理由である。
 当然であるが彼女は間桐邸の位置をイリヤ(もちろんバーサーカーの方だ)から聞いている。そうであるから間桐邸の方角から接近してきて攻撃してきたバーサーカーは間桐邸のものだと判断して、そこに牽制として矢を撃ち込んだのだ。彼女としては牽制打は伏兵によりまず確実に防がれると読んで相手がどうガードしてくるかを注視していたのだが、以外にも攻撃が成功してしまいしかもそこから親しい顔が逃げ出したとなればこれはもうとりあえず美遊を助けようと考えるのは至極当然のことである。

「申し訳無いクロノ君。君はここで足止めしてくれ。私は彼女を追う。」
「それはダメだ。今の貴方は――」
「イかせてくれ!」
「ダメだ!まず服を着るんだ!」
「これが私の正装だ!」
「頭にパンツを被ってなんでそんなに堂々としていられるんだ!!」


506 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 02:02:13 M.4llsnc0

 ましてや頭にパンツを被りほぼ全裸の男性に付きまとわれているのをみたら当然撃つだろう。

「いかん!だいぶ距離をとられたな……とう!」
「待って、逆効果だ――ぐうっ!?」
『女子小学生追い回す露出狂がいる同盟の何を信じろっていうの!』

 最愛の人のパンティによる『脱衣(クロス・アウト)』。この聖杯戦争では命懸けの状況でしか使わなかったその切り札を、狂介は正義のために、自己犠牲を選んだ少女を救うために惜しげも無く使う。前回の脱衣から三時間と経っていない状況ではいつまで維持できるかもわからないそのギャンブルは、ものの見事に裏目に出ていた。
 当たり前だが、狂介は変態である。現在の格好は女物のパンツを頭に被り、ブリーフをエイヤと引き延ばしてブラジル水着に近い着方にしている。どこをどう見ても不審者だ。そんな彼が体のラインが出る服を着た少女を深夜に追いかけ回している。百人に聞いても誰一人として正義の味方だとは思わないだろう。

「フオオォォォ!」
「美遊様、隣のビルです!」
「もう追いつかれた……!」

 相当のスピードで走っていたにもかかわらず数分とせずに距離を詰められる。チラッと横を見てM字開脚しながらビルからビルへと飛び移り接近してくる狂介を目にして、美遊は脳で理解するより先に体が勝手に走るペースを上げていた。もともと美遊はイリヤとの接触を避けたい一心で同盟を抜けカルナの視界に入らぬよう遮蔽物伝いに遠くへ逃げようと考えていたのだが、そんなことは二の次になるほどアレはマジで無理である。なにか美遊の根源に近い部分がアレに関する情報をシャットダウンせよと命じてくるのだ。

『クロノが高速で接近してきます。』
『矢は?』
『間桐邸近くでアリスが迎撃を引き継いだようです。』
『川を、とにかく川を超える。』

 クロが自分の逃亡を図らずも手助けしてくれるという幸運があったが、それもここまで。未遠川に差し掛かったところでついに再び変態達の肉薄を許す。そのことが美遊の神経をすり減らしていた。だがこの程度で変わる決意ではない。こんなところで変態の手にかかるわけにはいかない。その一心で彼女は自衛隊が設置した仮設橋脇の水面へと足を踏み出した。もはや神秘の秘匿とかどうだっていい、とにかくイリヤの視界に入らないようカルナの死角となリそうな場所を走り変態から距離をとる。とにかくそれだけだ。

「ダメだ、認識阻害が間に合わない……」
「失礼皆さん、押し通らせていただく。」
「変態だ!」「AVか?」「え、なにアレは……」「マジで?」「なんだあの変態!?」「足速っ!?」「やばいよやばいよガチリアルだよ……」「ブリーフ?」「警察は何やってんだよ。」「やめてください!」「この状況で良くこんなことやれるよな。」「そんなことしちゃあ駄目だろ!」「ゲリラ露出?」「汚すぎ。」「キメェ……」「嘘だろアレ!?」「えアレなんなん?」「人間の屑が……!」「映画の撮影だろヤスケンどこだヤスケン。」「どうなっちゃってんだよこの街!」

 後ろからは神秘の秘匿どころか秘部の隠匿もせず顔と股間以外の全てを曝け出して狂介が迫る。走る度に揺れるおいなりさんが眩しい。それにあてられてか、通行する少女の一人など仮設橋から足を滑らせ水面へ落ちていく。

「はっ!」

 だがそれを見捨てる変態仮面ではない。すぐさま欄干にあたる部分にパンツを巻きつけると水面へ急降下し、片手一本で少女をお姫様抱っこするとバンジージャンプの要領で戻ってきた。

「天使のパンティジャンプ……フゥオオオ!!」
「やるじゃない。」「おったたまげたぜ……!」「やったな!」「すげぇ!」「はわわすっごい。」「変態だけど紳士だ!」「なかなかやりますね……」「変態紳士!」「ブルっちまうぜ……!」「すっごーい!」「お前世界一や!」「Beautiful……」「聖人かな?」「変態さんありがとー!」

 変態仮面が残心代わりに見栄を切ると聴衆から歓声が上がる。それに手を振って答えながら彼は再び走り出すと、上空で飛行しながら思考停止していたクロノも後を追った。


507 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 02:11:09 M.4llsnc0

「なんなのアレ……わからない……」
「美遊様!気を確かに!」

 人は理解できぬものを恐怖する。それは美遊も同じだ。さっきまで横で普通に話していた人があんなカリスマを持つ変態だということに、美遊の脳内ニューロンはショート寸前である。
 世の中とはなんなのか。人とはなんなのか。何もかもわからなくなり、世界と自分が崩壊していく感覚が美遊を包む。だが走ることはやめない。既にイリヤに見られないなどということは頭から消えども走りに走る。そして。

「申し訳ありません……ハッ!」
「!?」

 美遊はサファイアのハリセンで正気に帰った。気がついたら全くどこかも見当のつかぬ場所に出ていたのだ。いったいここまでどう来たのか皆目わからない。だが一つわかることは自分がサーヴァントに囲まれているということであり、そしてそこからここがなんであるのかの察しがついた。

「――教授が死んだと聞いたが、どういう組み合わせかな?」
「……あ!お前美遊か!そうか……」

 鋼線を武器に戦う執事と、全身が灰色っぽい異形のサーヴァント。そしてそれを取り囲むように展開する軍服のサーヴァント達。

「ようやく追いついたが、これは……」
「教授達の本隊と、不明なサーヴァントか。」

 クロノにより股間に魔術的な隠蔽を施された変態仮面と、色々と疲れた顔色のクロノ。

「なあ、お前のバーサーカーだろ?チョコ殺したの。」
「ッ!!『来て!バーサーカー!!』」

 言葉と共に一瞬で現れたサーヴァントの大剣状の腕が迫る。それを転移してきたバーサーカー・小野寺ユウスケは真正面から受け止めるとその双眸を光らせた。一瞬の静寂が場を包み、そして。

「『私の敵を倒してバーサーカー!!』」

「■■■……■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

 聖杯戦争は新たな局面を迎えた。



 『西』――0239、深山町柳洞寺

「で、アンタの言うとおり喋ったけど、どうすんの?」
「あんなのわかるわけない!いきなり飛び蹴りしてくるなんて!」
「全く……とりあえずあのバーサーカーは転移したみたいだし、今のうちにどうするか話し合いましょ。」

 うり二つ、1Pカラーと2Pカラーのような二人が話すのは、柳洞寺の駐車場。そこに停められた一台の軽自動車の側で、衛宮とアインツベルン(と竜堂)の久方ぶりの同盟は今後について話し合っていた。
 アインツベルン城を後にした三組が、間桐邸のアーチャー・赤城の念話放送をキャッチし、それに割り込んだのが十数分前のこと。少々の無茶でイリヤとクロはそれなりに魔力を消耗したが、依然として全員が万全に近いコンディションであっのが功を奏した。それがなければ、外交関係の悪化が即、死に繋がっていただろう。
 イリヤの提案によるアーチャー・クロの念話放送。これ以上の参加者間での孤立を避けるべくとはいえ、ほとんど独断で行われたそれとその後受けた奇襲に関して、善後策を考えるには時間が必要であるとの判断だ。

「急に何をしだすかと思えば和平交渉とは、な。しかも私を脅しの材料とするとは。」
「いやー、それに関しては申し訳ないとしか……ゴメンねバーサーカー。向こうは騎士王に施しの英雄でしょ、こっちも対軍宝具チラつかせなかったら交渉になんないってイリヤとパパが……」
「ふ、確かに。冷静な判断だ。拮抗しなかったら向こうも動かないだろう。もっとも、だからこそ奇襲を相手は選んだのかもしれないがな……切嗣、この寺院には結界が張られているのか。」
「ああ。ここの結界はこの参道以外から入ろうとすると、特に霊的な存在には著しい障害となる。」
「なるほど、良い陣地だ。」


508 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 02:21:22 M.4llsnc0

 地脈の流れと結界を確かめながら竜堂ルナのバーサーカー・ヒロは先頭に立って歩く。少しして全員が本堂に辿りつくと、他の避難民に交じって一角に車座になった。

「かなりの霊脈だな。ここなら魔力の回復も早い……さて、初めるか。」

 クロとルナの銀髪の二人はかなり目立つものの周りからは一瞥して姉妹として勝手に解釈され話しかけられもしない。それよりも彼らは街の様子が気になるのだ。なぜなら、また一つクレーターができたのだから。
 「改めて聞くが、あのバーサーカーに心当たりがある者はいないか?」というヒロの質問から始まったのは、先のバーサーカー・ユウスケとの戦闘の振り返りだ。
 一部始終はこうだ。ますユウスケに気づいたのはうず目で周囲を警戒していたルナである。間桐邸と穂群原学園の中間地点程で実体化した彼を見たルナはすぐさま全員に知らせた。
 その一秒後、まずヘラクレスとヒロが彼が空へと飛び上がっていくのを目にし、更にその一秒後切嗣が彼がライダーキックの姿勢に入るところを目にし、更にその一秒後にイリヤとクロが迫り来る彼に気づいた。
 この時イリヤはヘラクレスを突っ込ませクロが『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開しヒロが魔招・煉獄を放ったところ、直撃でヘラクレスが一度消し飛びロー・アイアスがほぼ全て割られるも、奇跡的に(というかユウスケがヘラクレスを殺すことを最優先としたために)イリヤのベンツが破損した他は特段の被害もなく、ヘラクレス以外の全員が生存することとなった。
 そして奇跡的に(というかユウスケがヘラクレスを殺すことを最優先としたためにってこれさっきも言ったな)ユウスケが蘇生するヘラクレスを執拗に死体蹴りしていたために、マスター達は車でアインツベルン城目指して逃走し、クロはユウスケ以外の襲撃を牽制するために適当に距離をとって間桐邸の同盟に攻撃を加えた。
 そして数分前、耐性を獲たヘラクレスの反転攻勢から逃れるように(実際は追い詰められた美遊が呼び寄せたのだが)ユウスケは令呪で撤退し、ここに戦闘は終了したのであった。

「イリヤ、ヘラクレスは今どこにいる。」
「霊体化したままこっちに向かわせてる。門の辺りで見張らせておくの。」
「理想的な守りだな。ここならば休息にも防衛にも長ける。奴の傷は。」
「蘇生したから大丈夫。六つ命を奪われたんだから、もうアッチのバーサーカーに傷一つつけられたりしない。」
「頭とか心臓が再生するたんびに別の武器で潰してたわね……12回生き返るのもズルっぽいけどアッチもかなり汚い手で回数稼いできてたね。」
「……妙だな。」
「ヒロ、どうしたのってキリツグに聞いて。」
「いい加減直接話してくれよ……切嗣、妙というのは、なぜバーサーカーがヘラクレスの殺し方を知っていたかか?」
「ああ。『十二の試練』の詳細な情報は、僕達だって車でここに逃げてくる時に初めて説明された。なのになぜ、あのバーサーカーは適格な殺し方を知っていたのか。」
「真名が割れて、いや、それでも宝具について詳し過ぎるか……」
「あ、そうだ。私は外で街の方を見張っとく。何かあったら連絡して。」
「ああ、任せた。さて問題はまずここと城のどちらを拠点とするかだ。相手は無関係な民でも容赦はないことを考えるとここの優位も限定的で――」

 会議に自分以外の人間が集中しているのを良いことに、クロは境内へと出てくる。そして何人もの人間がそうしているように、クロもそこから街並みを眺めた。

「なーんも無くなっちゃった……」

 側にいた老婆がそう言いながら泣き崩れたのを寺の僧侶がなだめる。他にも泣かずとも呆然とした人間は大勢いて、誰もクロの服装にも存在にも注意を払う者はいない。そのこと自体はありがたかったが、それだけの状況を友人が引き起こしたとなると陰鬱な気持ちになった。

「何やってんの、美遊……」

 先の襲撃で穂群原学園が瓦礫の山と化したのを目に焼き付けながら、クロは東へ目を向けた。あの時、あのバーサーカーは恐らく美遊によって転移させられた。となると避難所であった学校ごとお構いなしに殺しに来たのは美遊ということになる。そしてその美遊は現在間桐邸の同盟と思われる人間と戦っている。いったい何が起こっているのか。
 クロはもう一度だけ学校とその近くにできたクレーターを見ると再度新都で戦う美遊を見る。そして空が凍りつき見知った槍が振るわれたのを見てから無言で霊体化した。


509 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 02:42:10 M.4llsnc0



 『東』――0238、新都廃ビル・最後の大隊臨時前線司令部・『豹の巣(仮)』近く

「『ここに来いライダー!』」
「――超変身!!」

 クロノに迫る黒い甲冑のような筋肉に包まれた豪腕を、同じく甲冑ような筋肉に身を包んだ紫に金の異形が間に入ることで受け止める。二人のクウガを間に挟み3メートルの距離で、それぞれのマスターである美遊とクロノはサーヴァントの背に隠れ次の行動へと入った。美遊はユウスケが口に咥えていたカードを手にし、クロノは詠唱を行う。そして謎のサーヴァントが再び美遊に斬りかかろうとして、その動きが止まった。

「クロノ、なんの真似だ。」
「悪いが、美遊をやらせる気はない。だが――」

 不可視の鎖、クロノのディレイドバインドに絡めとられたサーヴァントの問いかけに決然と答えながらも、五代の背から一歩歩み出て杖となったS2Uを美遊に突きつける。互いに微かに顔が見える状態でクロノは宣言するように言った。

「美遊、君を聖杯戦争終結まで拘束させてもらう。」
「……イヤって言ったら。」
「言えなくする。」

 二人のクウガの足元にヒビが入る。行き場の無い力はヒビとして周囲に伝わり。二人のヒビが重なると共に小さな破裂音が鳴る。まるでそれは運動会のピストルのような抜けた音ではあったが、切っ掛けとしては充分だった。

「『限定展開(インクルード)』!」
「スティンガー!」

 美遊が行動を終えるより先にクロノの早打ちが足を撃つ。美遊の体制が崩れたのを認めると、クロノはバックステップで距離をとりに動き、美遊はダッシュで距離を詰めに動いた。
 クロノは術式をスティンガーからバインドに切り替えながら考えた。相手の武器は槍、なら近接戦闘は避けるべきだ。ここはバインドの連打で牽制して相手のミスを誘うべき、そう判断して緩急をつけたバインドと不意打ち気味に放つスティンガーで戦闘を組み立てようとする。
 一方の美遊は、手にした切り札の射程に入れるべくなんとかクロノに近づこうとしていた。ルビーからルーラーにクラスカードを奪われたと聞いてその奪還を考えてはいたが、ユウスケにルーラーを殺させた時にはとてもではないがそんなことを気にかけている余裕は無かった。ようやくカルナ戦のどさくさに紛れて教会に向かわせた時には既に警察により現場が抑えられた後、ただでさえ瓦礫で探しようのない状態では千里眼による透視能力すら持つユウスケであってもボロボロになったカード一枚探すのがやっとだった。
 だが、この一枚があれば良い。自分はまだツイている。そう美遊は自信を持って言えた。ユウスケの見つけ出してきたのは、なんの因果か一番使い慣れたランサーのカード。これならば、クロノを殺しきれる。そう考え宝具解放の機会を伺いながら不意に放たれたスティンガーレイを紙一重で回避し前へと足を踏み出して、しかし、飛び退いた。

「クロノくん、援護する!」
「キョウスケ!危険だ!」
「危険なのは君も同じだろう!ハアン!!」
「ッ!変態が二人か……」
(僕も変態扱いなのか……)

 クロノの攻撃に合わせて、変態仮面の鞭が美遊へと迫る。その無駄に適確で無駄に息を合わせた攻撃は、クロノにとっては不本意であるが非常に効果的に美遊の行動を抑制していた。
 変態的なニ対一は着実に美遊を追い詰める。一瞬美遊はユウスケを見た。あちらはもう一人のクウガを押してはいるが、うまく防御されてしまっていてまだかなりの時間がかかりそうだ。恐らく彼が五代だろうが、令呪のブーストがある間に倒せるとはとても思えない。となると自分は早晩魔力切れを起こすしかない。

「上です!」
「お願い!」
「邪魔すんなクロノ。」
「やめろセイバー!」


510 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 02:54:45 M.4llsnc0

 美遊が戦略の組み立ての為にわずかに攻撃の手を緩めたのを隙と見てか、兜割りにするかのように腕を振り下ろすサーヴァントの対処をサファイアに任せ、美遊はクロノの距離を詰めにかかる。それをすかさず変態仮面が鞭で牽制し、クロノは二人にバインドを向かわせながら距離をとる。そして今まで蚊帳の外であったウォルターが唐突に鋼線を振るうとサーヴァントは腕の一部を奪われながらも間合いを開けながら蝶を放った。

「それはパピヨンの……それにその腹の金属は!」
「セイバー?なんだ……ああ、私か?」
「正気を失っているのか……キョウスケ!」
「うおっ!」
「早いか……ルビー。」

 クロノの言葉で変態仮面は、爆煙に紛れ心臓へと襲い来る魔槍をブリッジで回避する。そして股間でホールドしながら槍を奪おうとして、魔力弾に弾き飛ばされた。そこに先に変態仮面を狙わんと美遊が踏み込むも、光弾が行く手を阻み、全員の動きが一時止まる。

「ようやく落ち着いたか。やあクロノと美遊と、変態?まあいいや。教授が殺されたみたいなんだけどなんか知ってる?あとその――」

 どこからともなく現れた准尉がサーヴァントに唐竹割りにされる。そして今度はウォルターの後ろに現れて「今僕を斬ったコイツのこととか」と続けた。

「准尉、そのサーヴァントを倒す為に共闘したい。」「バーサーカーのイリヤ側と衝突がありました。詳しくは美遊さんを拘束した後で。」「私は変態仮面。呼びにくければHKでも構わない。」
「ごめん一度に言わないで。とりあえず美遊、そこのサーヴァント相手ならいいと思うよ。」
「待ってくれ、そんな短絡的に話を――」
「そいつは真田幸村を殺して宝具を奪い取ったヤバイやつだよ!」
「だが見てくれクロノくん。セイバーの首から下はいおりちゃんのランサーだ。そして腹には私のキャスターの宝具。彼女が怪しい存在であることは間違いない。」
「お前だけには怪しいなんて言われたくない。」
「変態なのにすごい洞察力だ……!」
「わかった准尉、美遊とサーヴァントの二人を殺さずに拘束するのなら僕は君達に協力しよう。」
「あ、それなら君につくよ。」
「え。」
「美遊の相手は引き続き僕がやる。そっちはサーヴァントを。」
「オッケー。てことだから頼んだよウォルター。」

 それぞれが捲し立てながらゆっくりと位置取りをしていく。目まぐるしく敵味方が入れ替わるのに合わせて、四者が動く。そして二人のクウガが揉み合うのを中心に正方形を形作るような場所で止まった。ということはつまり、この戦場は最初の時のように切っ掛けはクウガ次第となる。

「……セイバー、ここは共闘――」

 対角線から話しかけてきた美遊にサーヴァントは無言でロケットを放つ。それをユウスケがパンチで消し飛ばしその隙に五代が再び超変身したのを端緒に四角形は崩れた。距離をとりながらクロノは顔面に、変態仮面は足に攻撃を加え、美遊は中空に滑り込むようにしながらクロスレンジへ持ち込むべく踏み出し、ウォルターはサーヴァントへと鋼線を放ち、サーヴァントはそれを幸村から受け取った宝具を頼りに強引に突破し蹴りを放つ。

「おりゃあぁぁっ!!」
「■■■■■■■!!」

 そして全員が次の行動を起こそうとした時に、二人のクウガの拳の激突で発生した衝撃波が全員を弾き今度は歪な平行四辺形の頂点となる位置で何度目かになる睨み合いが発生する。だが今回は美遊が動き出すことですぐに膠着状態は解けた。そして美遊は同時にユウスケに指示を送る。この戦場で一番余裕が無いのはユウスケを戦わせている美遊であり、魔力勝負になれば未だ二画の令呪を残すクロノ相手に勝ち目はない。故にここはユウスケに令呪の効果が残っているうちに強引にでも勝ちに行く。

「バインド!」
「誘導。」
「左、右、真ん中です。」


511 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:07:14 M.4llsnc0

 クロノの放つ可視不可視織りまぜた魔力の鎖を、サファイアの感知能力を頼りに突破し浸透する。転身してもなお見えぬそれも、カレイドステッキが持つ視覚以外の感知能力ならば察知できぬことはない。もしあるとすれば極限まで魔力を減らした脆い鎖だろう。

(!?足が!)
「スティンガー!」
「……!」

 だからサファイアと美遊は自分の足の裏のほんの一部分だけをわずかに拘束したそれに気づかなかっ達。彼女からすれば少し硬めのガムを踏んだような感覚だが、槍の投擲姿勢に移行するための動きがワンテンポ遅れてしまう。そしてその間にクロノは彼の周囲を渦巻いて飛ぶ光弾を発生させた。続けて彼は光弾を加速誘導しようとして、しかし光弾は掻き消える。

(今のはクウガの――キョウスケ!)

「クロノくん!来るぞ!」

 クロノはそれがクウガのモーフィングパワーによるものだとはわかっていた。だがだからこそクロノには打つ手がない。いや、魔力で戦う者は皆一様にそうだ。クロノのバリアジャケットもサーヴァントが飛ばす蝶も全て鎔けるように消えていく。今この空間では魔力そのものがなにか他の物質に変換されている。

「やらせん!」
「また……!」

 そしてその中で一人変わらず魔槍を振るう美遊の一撃がクロノの心臓を捉える寸前で変態仮面により白刃取りされた。この力はアルティメットフォームによるもの。ならばそれはアメイジングマイティフォームである五代が偶然に引き起こしたものではなくアルティメットフォームであるもう一人のクウガによるものであり、つまりは美遊の一策に他ならない。令呪と美遊の魔力を考えても、ここで彼女が決着をつけに来たのは明らかであった。
 ならばこちらも全力で止めるしかない。あのクウガを止められるのは、同じクウガである五代だけだ。そう判断してから彼が行動を起こしたのは、三秒と経たぬ間のことである。

「『五代さん、貴方の全力でもう一人のクウガを倒して!』」
「――!わかった、離れて。」

 迷っていたのはほんの僅かな間。美遊がそうしたように二画目の令呪を切る。でなければ勝ち用などない。そもそも同じ条件を整えずに戦うこと自体が慢心に他ならないと自身を戒める。このままでは彼女を止めるどころか手を汚させることもできないのだから。

「狂介さん、ここは引きます。」
「美遊ちゃんはどうする。」
「彼女は僕を狙って着いてきます。」
「わかった。」

 話しながら変態仮面はクロノを抱え、ロープを使いビルへと駆け上がる。それを見て美遊も追跡に入らざるをえない。ここに残っていればクウガ同士の戦いに巻き込まれボロ雑巾のように死ぬだけだ。同様のことを考えてかもっと前からか、いつの間にか吸血鬼も皆撤退している。

「これで邪魔が消えた。」
「サファイア!」

 そしてそうなるとフリーになるのがサーヴァントだ。素の運動能力は美遊を上回っているのだ、多少サファイアの障壁で抵抗されようとも美遊の殺害は不可能ではない。
 クロノは自身から五代に流れる魔力が激増したのを感じながらも美遊が着いてきているか目で追い続ける。四本の角を生やした二人の黒いクウガを背景に、美遊とサーヴァントは着実にこちらに近づいてくる。それでいい、そのまま来い、そうクロノは祈る。モーフィングパワーの影響下から抜けることは変態仮面のスピードならば十秒もあれば充分だ。後ろの二人もそうばん魔力が使えるようになる。そうなればあの二人に割って入ることができるようになる。そう考えたところで、クロノはその発射口を見た。
 変態仮面に抱えられビルからビルへと渡る中でそれの存在に気づいた。半壊したビルの地下から、ニョキリとミサイルのようなものが伸びている。いや、これは正確ではない。正確には、ミサイルが『伸び上がって』いる。発射煙の一部が弧を描いて消えプラズマの光が走っているのが見えた。それがなんなのかわかりたくないが、考えつくのは一つだろう。あそこは今は亡きライダーの、ナチスのサーヴァント達の拠点。その拠点から打ち上げられるミサイルなどどう考えてもマトモではない。


512 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:18:17 M.4llsnc0

「抜けたぞ!」
「僕がセイバーを。」
「美遊ちゃんはなんとかする。」

 ビルから飛び上がるように巻き付けたロープを解放し、変態仮面とクロノはそれぞれに体制を整え屋上へと着地すると二人を挟むために移動を開始する。二人が戦うのは地上の道路の上。そこにそれぞれビルの壁面を駆け下りて奇襲を試みる。
 それぞれに縄を持ちバリアジャケットを誂え、そこでクロノは違和感に気づいた。
 よく考えれば、自分がこうして駆け下りているのはおかしい。地上で戦うクウガがモーフィングパワーを使えば、その効果範囲はどうなるだろうか。クウガを基点に周囲に影響が及ばされるため、基本的には球体状を取るはずである。五代というクウガの例しかクロノは知らないがそこに特段の差異があるとは考えにくい。つまり効果範囲はドーム状のはずだ。であれば、さっき自分が降りたのはビルの屋上という高度がある場所であり、そこから地上に近づけば当然ドームの縁に、つまりはモーフィングパワーの効果範囲に再突入するはずだ。
 であるにも関わらず、自分は普通に動けている。それだけではない。美遊は変わらず動き槍と魔力を振るう。となれば考えられるのは一つ。

「『絶対に勝ってくれ五代さん。』」

 たかが令呪を使ったぐらいで切り札を切った気になっていた。
 美遊が同盟の為に自分達から離れたと信じたかった。
 それらは全て避けることができたミスだ。
 きっとそれは、今からでは挽回しようがない。
 だからできることをやっておく。
 クロノは最後の令呪を使い、そして同時にデュランダルの待機状態を解いた。

「――悠久なる凍土」

 数発のミサイルが打ち上がっていく。サーヴァントが美遊の張ったバリアを叩き割る。それを無視して美遊は魔槍に魔力を注ぎ込む。

「――凍てつく棺のうちにて」

 一足先に降りた変態仮面が美遊に縄を向かわせる。クロノの想像通り、彼女が選んだのは迎撃でも回避でもなく防御。恐らく杖に任せたであろうそれは、後方から同時に斬りかかるサーヴァントの剣戟を防いでいることからも相当の耐久があると察せされる。それだけの魔力を練り混んだということは、下がる気は一切ないということであり、次の攻撃の為の時間稼ぎに他ならない。パターンとしてはなのはのそれに近いと言える。

「――永遠の眠りを与えよ」
「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』」
「打たせん!」

 ならば隙は発射の瞬間にある。美遊がどんな魔法を使うにしても発動時には障壁を解放する必要がある。その瞬間が勝機だ。
 詠唱を終えた美遊が槍を構える。そして障壁が消える。そのタイミングに合わせるように変態仮面とクロノは攻撃を終えていた。変態仮面の鞭が槍を絡め取り、クロノは間合いの内に入る。砲撃型魔法の死角はゼロ距離だ。この距離では攻撃はできず、バリアも張れない。そして何よりもこのポジションは戦術的な意味だけでなく戦略的な意味も合わせ持つ。美遊、セイバー、ミサイルが一直線上に並ぶここからエターナルコフィンを放ち、その全ての脅威を同時に『凍結』させる。聖杯戦争脱出の目処が立った今、決して誰かを殺させることも誰かを殺人犯にすることも肯定しない。

『クロノくん、行くよ。』

 脳内に五代からの念話が響いた。あちらも決めるようだ。こちらも最後の一撃を決める。
 クロノはデュランダルを美遊の腹に叩きつけるように突きつけた。そして最後の一節を口にする。今からやることは問題の先送りだが、今はその先送りこそが重要なのだ。彼女を殺さずに拘束できる。クロノはこれが最後と思い美遊の目を見た。

 その目に何一つ驚きの色がなく、勝利を確信していると感じた。

(やられた。)

 そしてクロノ・ハラオウンの心臓に赤い槍が深々と突き刺さった。


513 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:32:49 M.4llsnc0

 『東』――0244、新都西部

「はあぁぁ……」
「■■■■……」

 元の戦場に取り残された五代と小野寺。すっかりすっきりとした一帯の一角で、互いが互いを殺すべく対峙する。相手は自分の鏡写しの存在なのだ、その行動を止めるために必要な手など限られている。ましてグロンギのように言葉が通じるならまだしも、言葉を交わせないのならば、その拳をもって語る以外に術はない。それが二人に唯一可能なコミュニケーション手段であり、だがそれ故に二人が同じ感情を持っていることを何よりも雄弁に語りまた理解していた。
 二人のユウスケと二人のクウガは、同じように傷つき同じように息を荒らげる。平行世界の同一人物なのだ。アルティメットとライジングアルティメットという違いはあれど、その差は技術と経験と理性で埋められる。そして二人に使われたのは、同様に転移の為の令呪と勝利の為の令呪。故にこの戦闘はどこまで行っても均衡する、というわけではない。この戦闘、美遊もクロノも令呪によって己のサーヴァントに回す魔力を自身に使用している。故に、令呪の効果が切れた時がマスターの魔力が枯渇する時であり、またどちらかのサーヴァントが敗れる時である。そしてそれは、おそらく美遊の方がわずかに早い。フォームとクラス、そして令呪を切ったタイミングの差が確実に存在する。
 二人の周囲にプラズマが走る。モーフィングパワーと超能力無効化の応酬は小野寺に軍配が上がり美遊の思惑通りクロノの妨害に成功している。かなりのものを五代が打ち消しているものの、ある程度の指向性を持たせたそれはなんとかクロノを一時的とはいえど無力化していた。そしてそれはつまり、魔力供給を遮断したことを意味する。伝う魔力ごと魔力パスを変換してしまえるからだ。
 小野寺が走る。五代も走る。一時的な魔力供給の差を当然美遊は逃したりしない。最大の技を小野寺にしかけさせる。それを受けて立たねばならぬ五代も、同様に自分にできるであろう最高のキックを放つために跳躍した。
 音すら置き去りにし、二人の必殺技が放たれる。真空の空間が広がる。有利なのは、やはり小野寺だ。モーフィングパワーはやめたが、それまでの魔力差と単純な力比べということで優位に立つ。くるくると駒のように回転する二人だが、もしこのままなら数秒で小野寺のキックが五代のアマダムを砕くだろう。
 だが違った。五代のキックの勢いが、蹴りの最中なのに加速する。それを可能としたのは、クロノの三画目の令呪。美遊が真似しようのないそれは、策謀による魔力消耗を覆してあまりある。そしてその状態で二人への魔力供給が途絶えれば、結果は見えていた。

「――グアッ!!?」
「■■■、■……」

 両者のキックは急速に失速する。変身もみるみる弱体化する。最初の衝突が嘘であったかのようにまるで線香花火のようにポトリと落ちた二人には、現界を維持する魔力はもちろん変身する魔力も残ってはいなかった。

(空が凍ってる……クロノくん!)
「■■あ、お■■あ!」
「うわっ!」

 上空に縫い止められるかのように静止した六発のロケットや、報道の為に飛行していたであろうヘリ、衝撃に驚いて飛び立った鳥。それらに呆然とする間もなく五代は殴られる。グローイングフォームにもなれず生身で殴りかかってくる小野寺にマウントポジションを取られながら、五代はされるがままにした。もはや彼に小野寺と戦う気力は無かった。必要が無かったからだ。五代を殴る小野寺の拳は、実体化に耐えられず消滅していく。その原因も知っている。美遊を殺すことを良しとしない彼のことだ、全て氷漬けにする道を選んだのだろう。さっき小野寺がそうしたのと同じようなことをクロノがしたと考えれば、小野寺の消滅は確実であった。

「■ぃ、■ぅ、■……」
「……」

 泣くように呻くように呟きながら、バーサーカーはかろうじて実体化した肘で殴り続ける。だがそれだけだ。アスファルトの上の残雪のように溶けていく。そして同様に五代も溶け始める。いかんせん魔力を使いすぎた、これではアマダムも追いつかない。

(クロノくん……笑顔を、みんなに……)


514 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:46:38 M.4llsnc0

 色々と名残惜しいことはある。だが五代は信じていた。クロノならきっと、うまくやったと。有能さと如才なさと抜け目無さと人間性を信じていた。
 夜空に煌めく氷塊と化した空間を見ながら、五代雄介は静かに聖杯戦争から退場した。



「――凍てつけ、エターナルコフィン。」

 心臓に深々と刺さった槍が勝手に抜けるのを無視して、クロノは最後の一節を唱え終わるとデュランダルの前に身を踊らせた。狙いは雑だがこの距離なら少なくとも美遊は巻き込める、魔力が若干足りないがむしろ範囲を絞れて好都合、そう開き直って自分が止まっていくのを受け入れた。
 彼の狙い通り美遊もサーヴァントも同様に静止していく。宝具に匹敵する反則クラスの魔法だ、止まってもらわなくては困る。そんなことを既にクロノは考えられる状態ではないが、しかし彼の狙いとしてはそんなところだ。

「……終わったのか。」

 最後の一撃はあっけないものだ。クロノも美遊も謎のサーヴァントも、まとめて停止している。それを見て唯一その巻き添えを喰らわなかった変態仮面は、様々な感情がこもった声で呟いた。
 何も言わずに変態仮面はパンツを取る。変態仮面から色丞狂介へと戻ると、改めてクロノを見た。心臓の傷口からは今にも流れ出そうな血が見え、だがその表情に怯えの色は一切ない。あるのはただ純粋な覚悟の色だけである。
 次に美遊を見る。受け入れたくはないが、彼女は本気でクロノを殺す気だった。それは矛盾した行動だ。ならなぜ同盟を抜けたのか。あの凶行は同盟の為ではなかったのかと問いたい気もするが、もはやそれは叶わないだろう。
 最後にサーヴァントを見る。首と胸と腹に痛々しい傷があるそれを、狂介は複雑な表情で見た。あのカルナとの戦いでパピヨン達に何があったのか、自分がもっとうまく令呪を使っていればこんなことにはならなかったのではないか、そもそもどういうことなのか。わからないことは多いが真相は氷の中だ。

「ん?これはクロノくんのカードと、美遊ちゃんのステッキ?」

 三人から目を逸らすように下を見て、狂介はそれに気づいた。どちらもクロノからこぼれ落ちたものだ。距離の近さから射角から漏れたのであろうそれは、ぽつねんとコンクリートの上に転がっている。今となっては、これは遺品となったのだろう。そう考え、狂介は三人に一度手を合わせるとカードとステッキを手に取った。

「……伝えなくちゃいけないよな、何があったのか。よし!」

 気合いを入れると狂介は再びパンツを被る。今は一刻も早くみんなにこの戦闘について伝えなくてはならない。『必勝法』の中心人物だったクロノの戦線離脱は、この聖杯戦争を止めることができなくなってもおかしくない事件だ。早急に対策を取らなければならない。狂介は走り出した。


『美遊様、待っていてください。』

 その狂介に持ち去られることとなったサファイアは、勘づかれぬよう念話を送る。サファイアは今やただのアクセサリーだ。彼女一人で美遊を救うことはできない。故に慎重に立ち回る必要がある。自分に自律した意志があることを誰にどのタイミングで明かすのか、それで美遊の扱いは確実に変わる。サファイアはその時を待ち静かに感覚を研ぎ澄ませた。


「全弾止められたか。」
「僕達の切り札だったんだけどねー。」
「ハッ!とにかくあのめんどくさい化物は死んだんだ。それにまだ毒ガスはある。今のうちに再編成を進めるぞ。」

 一方吸血鬼達は『豹の巣』へと戻って来ていた。彼らの頭上には今もミサイルが浮かんでいる。ひとまず、ここを放棄してアジトを移すのが最優先だと残存戦力は動き出していた。なんだかよくわからないが、なんだかよくわからない奴らは無力化したのだ。懸案事項が一つ消えたことは間違いない。彼らもまた、この聖杯戦争での振る舞いについて頭を使うこととなる。

 各々の願いと策謀を乗せて聖杯戦争は進んでいく。とっくに後退のためのレールはない。あるのはそれがどんなものであれ、終劇への一本道だけだ。


515 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:49:02 M.4llsnc0



【深山町北部/2014年8月2日(金)0245】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
カレイドルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター(イリヤ(sn))と、色違いの偽者(クロ)を殺す。
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(8)
耐久C(6)
敏捷A(10)
魔力B(24)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他心臓を含む左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:指示があり次第冬木市に宝具を使用する。
2:美遊に興味。
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。


516 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:50:18 M.4llsnc0


【間桐邸/2014年8月2日(金)0245】

【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra
[道具]
ドール(セイバー仕様)@Fate/Extra、ドール@Fate/Extra×若干数、未確定の礼装×若干数、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:カルナ側と間桐側とアインツベルン側の動きを見て出し抜ける機会を伺う。特に間桐慎二を警戒。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 また美遊から話されたイリヤ(pl)のことをイリヤ(sn)のことと誤認しました。バーサーカーが瀕死であるとも誤認しています。
●美遊のバーサーカー(小野寺)が脱落していないことを知りました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス)
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す。
1:厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて出し抜ける機会を伺う。
2:クロノと慎二のキャスター(フドウ)、並びに教授達吸血鬼はできる限り早く排除しなくてはならないので分断を試みる。
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサ(青・改造済)を乗りこなせるようになっています。騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。現在は小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●聖杯戦争についての疑念を抱きました。
●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。


517 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:51:02 M.4llsnc0


【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[スタンス]
脱出優先
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1:慎二・クロノと共に『必勝法』を実行に移し、この場で聖杯戦争からの脱出を実現する。
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
[スタンス]
奉仕(マスター)
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1:念話で呼びかけてなんとか戦闘を回避する。
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


518 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:51:35 M.4llsnc0


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[スタンス]
やけくそ
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:どうしょもないのでなんとかして『必勝法』で聖杯戦争から脱出する。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)の好感度が下がっています。また凛とイリヤとアリスとクロノに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1:慎二がこの場でどう動くのかを見て、見定める。求めるなら仏の道を説くというのも。
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。
●間桐邸地下に陣地を作成しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


519 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:52:12 M.4llsnc0


【野比のび太@ドラえもん】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み)
[道具]
ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1:慎二さん達と一緒に『必勝法』で聖杯戦争を止める。
2:美遊が色々と心配。
[備考]
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[スタンス]
脱出
[状態]
意識朦朧、ダメージ(大)、肋など数ヵ所骨折、魔力消費(極大)、衰弱(大)、疲労(大)。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。英霊・アリシアの情報の一部を聞いたのみです。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドク、ライダー(少佐)、アサシン(千手扉間)、セイバー(テレサ)のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。


520 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:52:49 M.4llsnc0


【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[スタンス]
優勝
[状態]
瀕死(くも膜下出血・全身打撲・背部に大火傷)、心停止。
[道具]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。


【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
『必勝法』を共有済、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、鉄心
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1:『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を停滞させ、聖杯の破壊の機会を手繰り寄せる。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の死に疑念。
3:変態仮面達とドク、慎二組に恩義。ただしドクとそのマスターのライダーはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【大尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(30)/C、
敏捷(40)/D+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。


521 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:53:19 M.4llsnc0



【柳洞寺/2014年8月2日(金)0245】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(大・消耗中)。
[装備]
89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実、00式個人用防護装備@現実、トンプソン・コンデンター@Fate/zero、起源弾@Fate/zero×27
[道具]
89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実
[残存霊呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1:まず善後策を話し合う。
2:家族の生存を第一に考え、臨戦態勢を維持する。
3:クロエに色々と申し訳ない。
4:ルーラーの動きに疑問。
5:折を見てバーサーカー主従を殺す。
[備考]
●所持金は3万円ほど。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
奉仕(切嗣)
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1:まず家族と話す。
2:ルーラーと美遊の動きに疑問。
[備考]
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。
●イリヤ(sn)と魔力のパスを繋ぎました。


522 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:53:50 M.4llsnc0


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[スタンス]
未定
[状態]
封印解除、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(中)。
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1:バーサーカーさんと一緒にがんばる。
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●第三の目を封印解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒される可能性が増えるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっていても妖力は消耗します。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されたので、気を使って聞かないことにしました。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、精神的疲労(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1:善後策を話し合う。
2:ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
3:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。
●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されましたが、どうせこいつは下手な嘘をつき続けると思って無視しました。


523 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:54:26 M.4llsnc0


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、いつもの紫の私服。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
1:とりあえずもう一人の自分と話す。
2:キリツグを殺す。
3:全員倒して優勝したい。
4:キリツグが他の誰かに殺されないように注意する。
5:明日の朝九時に間桐邸に向かう。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。
●クロから切嗣の世界の第四次聖杯戦争の情報、クロの世界のクロに関する若干の情報を得ました。また自分がこの聖杯戦争の小聖杯ではないことに気がつきました。
●アーチャー(クロ)との間に魔力のパスを繋ぎました。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[スタンス]
奉仕(イリヤ)
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
霊体化、狂化スキル低下中、残機6(クウガのモーフィングパワー、剣、槍、弓への耐性)。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●石斧の飛雷針の術のマーキングがあります。


524 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:55:01 M.4llsnc0



【新都・西部/2014年8月2日(金)0245】

【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
ダメージ(大)、疲労(極大)、『必勝法』を共有済。
[装備]
核金(種類不明)、S2U(待機)、カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1:間桐邸に戻り、事の顛末を伝える。
2:慎二に呼応して『必勝法』で聖杯戦争を止める。
3:吸血鬼達を警戒しているが……
[備考]
●愛子ちゃんのパンティ、携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、教授、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)のステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●この世界に関する考察を共有しました。


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1:少佐殿も教授も死んじゃったよ。
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。


525 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:55:26 M.4llsnc0

【ゾーリン・ブリッツ@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(10)/E、
宝具(0)/なし、
魔力消費(小)。

【ウォルター・C・ドルネーズ@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
未定
[状態]
筋力(30)/C+、
耐久(10)/E、
敏捷(30)/C、
魔力(10)/D、
幸運(10)/E、
宝具(0)/なし、
魔力消費(中)。
基本行動方針
自分がこの聖杯戦争に喚ばれた意義を探すのも一興。


526 : 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:56:00 M.4llsnc0



【真田幸村@戦国BASARAシリーズ
 討死】
【ドク@ヘルシング(裏表紙) 戦死】
【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド 消滅】
【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ 消滅】

【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's 凍結】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 凍結】
【???@第二次二次二次キャラ聖杯戦争 凍結】


527 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:56:24 M.4llsnc0
投下しゅうりょうです


528 : ◆p1hwNIp6AQ :2017/09/26(火) 00:08:48 0rGxPegE0
投下乙です!
ついにステルスに徹していた美遊が暴発してしまいましたか
ランサーカードを取り戻せましたがさすがにクロノはただで殺される存在ではありませんでした
二人のクウガの対決も最後は生身同士の殴り合いになるところに原作クウガへのリスペクトを感じます

久しぶりに間桐邸の面子とイリヤ(プリズマ☆イリヤ)、ランサー(カルナ)を予約しても構わないでしょうか?


529 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/28(木) 18:50:26 K6ZNVpAo0
連絡遅れて申し訳ありません
そしてぜひ予約していただければと思います
私事ですがこの企画で最終回を向かえるにあたってもう一度リレーを経験したいと思っていたところでして、よろしければ最後のバトントスをお願いしたいです
もしお嫌でなければ今月末までに予約をしてもらえると幸いです


530 : 名無しさん :2017/09/29(金) 00:20:34 zekyQlyY0
投下乙です
うーむこうなったかー、いよいよ佳境と言ったところ
クウガ対決には思うところがあった
しかしさすがにどんどん事態が展開していきますね
ここまで来たら後は駆け抜けるばかり、企画主様、書き手様、応援しております


531 : ◆p1hwNIp6AQ :2017/09/29(金) 15:23:56 arCMzNWI0
ありがとうございます
では正式に遠坂凛、間桐慎二、アリス・マーガトロイド、野比のび太、高遠いおり、日野茜、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、アーチャー(安藤まほろ)、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、ランサー(カルナ)を予約します


532 : ◆g/.2gmlFnw :2017/09/30(土) 00:15:29 cQxEtwRI0
はい、投下お待ちしております


533 : ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:41:17 k/5MzwIY0
投下します


534 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:42:45 k/5MzwIY0
「くそっ!くそっ!何なんだよあいつはァッ!!!」

間桐慎二はつい先ほどの美遊の暴挙に怒り狂い、喚き散らしていた。
全くもって意味がわからない。何とか停戦に漕ぎ着け、生還する目途が立とうとしていた時に何故こんなことになる?

「ちょ、ちょっと慎二さん落ち着いてよ」
「これが落ち着いてられる状況だって!?そう言いたいのかよお前は!?
ああ、ああそうだな!お前みたいなガキには今どれだけヤバい状況かなんてわかるはずないよなあ!!
詰みかけてんだよ僕らは!今まさに!ヘラクレスとカルナを両方同時に敵に回しかねないんだよ!!」

のび太の声にもまるで耳を貸す様子はない。
のび太も危機感は十分にあるし、許されるなら今すぐ叫び出したい気持ちでいっぱいだ。
ではどうしてそうしないのかというと、すぐ隣に自分より遥かに荒れている人間がいるからだ。
慎二の癇癪は他の全員にとって耳障りであったが、同時に慎二以外の全員に冷静さを与えてもいた。
こいつのようにだけはなるまい。それが全員の共通認識だ。

「ちょっと落ち着きなさいよ慎二。ほら、携帯鳴ってるわよ」
「携帯ィ!?…ってこの番号、狂介か!そうだ、どうなったかあいつに聞かないと!」
「今慎二さんに電話任せて大丈夫かなあ……」
「取り上げたら余計荒れるでしょうね」

とりあえず狂介が慎二を冷静にさせるような情報を齎してくれることを期待するしかなかった。
慎二一人なら適当な誰かに物理的に黙らせるところなのだが、何しろ彼は現在この間桐邸にいる中で二番目に強力なサーヴァントを従えている。
加えてそのサーヴァントのクラスはキャスターで、間桐邸を自らの領域に変えている。まかり間違って彼と衝突することになれば、凛のセイバーであっても無事では済まない。
それに戦力バランスの話を抜きにしても、今これ以上仲間同士で争っているわけにはいかないのだ。

『慎二くんか?』
「狂介、お前は無事なんだな!?美遊とクロノと、あとあいつらのサーヴァントはどうなった!?」
『ああ、そのことだけど……』

電話の向こうから美遊を追いかけた後の経緯を語る狂介。
彼の報告は果たして慎二を安堵させるものだったかと言えば―――残念ながら真逆の効果しかなかったと形容するしかなかった。



『…それで、クロノくんは美遊ちゃんの槍で心臓を刺されて、それと同時に放った魔法で美遊ちゃんとキメラのようなサーヴァントを巻き込んで氷漬けになった。
実質的には相討ちだ。五代さんと美遊ちゃんのバーサーカーの姿も見てない……』
「くそっ!何てこった!まさかこんなところでクロノが死ぬなんて!
何を考えてるんだかわからないところはあったけど、あいつは冷静で頭が切れるやつだったのに!」
「そんな、クロノさんが……」
「クロノが……ね」

頭を掻き毟る慎二を責め立てる者はいなかった。
クロノは表向き冬木の御三家の一人である慎二をリーダーとして立てていたが、ここにいる誰もが同盟の中心に近いのはクロノだと思っていた。
特に聖杯戦争の頓挫を積極的に狙っていたのび太と狂介にとって、誰よりも冷静で誰よりも固い信念を持っていたクロノの脱落は心に大きな影を落としていた。



『今は美遊ちゃんが持っていたステッキとクロノくんが持っていたカードを拾ってそっちに戻っているところだ。
…それで慎二くん、これからどうする?アインツベルンの人たちには結果的に大きな誤解を与えてしまったし、何か方策を考えた方が良い』
「誤解を招いた原因の一つは確実にお前ですよねえ!?」
「とにかくわけを話して誤解を解こうよ!」
「ですがノビタ、そう簡単にはいかないでしょう。あちらからすれば騙し討たれたも同然。
ましてや和平交渉の最中だったのですから。……それからキョウスケの出で立ちも誤解を招くには十分過ぎるかと……」
「というか、美遊はどうしてあんなことをしたのかしら?」


535 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:43:33 k/5MzwIY0

慎二を含めた一同が発言者であるアリスを見る。
言われてみれば確かに美遊が唐突にアインツベルン陣営に攻撃を加えた理由ははっきりとしていない。
本人は「これで向こうは話し合おうとするはず」などと言っていたがそれが心にもない虚言であろうことは慎二でさえも察していた。

「直前に僕たちが何をしてたか思い出してみよう、思い出すだけでムカつくけどね。
確かあの時はちょうどランサーの方のイリヤとバーサーカーの方のイリヤから同時に交渉の申し出があったはずだ」
「はい、それでどちらかと言えばランサーの方のイリヤさんを切る方向で話が進みかけていたような……」
「おい人聞きの悪いこと言うなよ。まるで僕が原因みたいじゃないか
第一僕はあいつの話を信じる根拠がないと言っただけで切り捨てようとまでは言ってないだろ」
「だけど美遊はそうは考えなかったかもしれない」
「もしかして…美遊ちゃんは……」

のび太がなけなしの頭脳を振り絞って考え得る解答を言おうとした時、大きくパンパンと手を叩く音が地下室に響いた。
音の発信源である凛は不機嫌そうに慎二とアリスを睨んでいた。

「はいはい話が脱線してるわよ。そういうのは事態を収拾した後でも出来るでしょうが。
それより狂介はどうするの?あちこちで悪目立ちしてるのもそうだけど、このままじゃここに戻ってくる前に死ぬわよあいつ」
「し、死ぬ!?」
「そういえば狂介はサーヴァントがいないんだったな……。
狂介、自力で戻ってこれそうか?」
『迷惑はかけたくないし、何とか戻る…と言いたいところだけど、またあっちのアーチャーに狙撃されたら今度はどうしようもないと思う。
さっきはクロノくんが防いでくれたが、彼はもういない……』
「つまり誰かが救助に行く必要がある、ということか」

現時点で狂介はサーヴァント不在の状態で敵陣のど真ん中に孤立している。
このまま放置すれば対聖杯派に怒りを抱いているアインツベルン陣営なりカルナなり、あるいは他の陣営によって狩られるのは火を見るよりも明らか。
みすみす仲間を見殺しにするわけにはいかない、という空気が生まれてきた中、さらに凛が補足した。

「狂介の安否もそうだけど、今あいつが持ってる美遊のステッキを他の誰かに奪われるわけにはいかないわ」
「はあ?何で?」
「ずっと考えてたのよ。美遊にしろランサーの方のイリヤにしろ、あれだけの規模のサーヴァントをどうやって維持して戦わせていたのか。
特にカルナの経戦能力は明らかに不自然よ。あれだけの神格の英霊が何度も宝具やスキルを連発して未だに魔力切れを起こす気配がないって有り得ると思う?」
『美遊ちゃんのステッキに何か秘密がある。そう言いたいのかい?』
「そういうこと。実は私、前にセイバーとカルナが戦った時に視界共有でランサーの方のイリヤがステッキを持ってるのを見たことがあるの。
私は二人が持ってるステッキは所有者の魔力を補うシステムを積んだ同型機の可能性があると見てる」
「つまり彼が美遊のステッキを持ち帰れるかどうかが重要、ということね」
「もちろん狂介を軽視してるわけじゃないわ。
彼は変態だけど、頭脳面でも実力面でもこの同盟には必要な人物よ。失えば少なからずダメージになる」

幸いと言うべきかはわからないが、こちらでわかる限りアインツベルンからの反応はあれから何もない。
あちらもどうするべきか善後策を話し合っているのかもしれない。
ならば今のうちに出来ることをしておくべきだ。

「じゃあ決まりだ。狂介、こっちから救援を出すから適当なところで待ってろ」
『すまない、助かるよ』
「でも誰が行くの?」


536 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:44:49 k/5MzwIY0
何気ないのび太の発言に全員が考える。
赤城は戦艦の艦娘故に動きは鈍重で、迅速な救助は難しいしまほろは既にボロボロで他人の救助どころではない。
かといってキャスターであるフドウが陣地を離れるなど本末転倒もいいところ。
ほどなく消去法で全員の視線がセイバーの少女とそのマスターへと注がれた。
慎二だけはあいつに行かせて大丈夫かと一瞬だけ思わないでもなかったが、代案もないしこの同盟が既に一蓮托生となっている以上滅多な真似はしないだろうとひとまず疑念を引っ込めた。



「まあそう来ると思ってたわ。
いいわ、言い出しっぺでもあるし私がセイバーと行ってくるわね」
「本当に良いの、凛さん?」
「心配してくれてるの?大丈夫よ、幸い私達はバイクを持ってるし、セイバーはこの中じゃ一番遊撃に向いてる。
そんなに時間はかからずに狂介と合流できると思うわ」
「じゃあ僕らでもう一度交渉の案を練りなおしておくか。
くそっ、美遊のやつ本当余計なことをしてくれたもんだよ!」
「ええ、そうね。全くやめてほしいわよ。こんな時にこういうの」



やや苛立たしげにセイバーを伴って地上へと出る凛。
その姿を見送ってから一同は再び作戦会議に戻った。



 ◆   ◆   ◆



何とか深山町までは自力で来れたか。
狂介は仮設橋の人混みを利用して、もしかすると来るかもしれないアーチャーの攻撃がないことを祈りつつ深山町エリアまで戻ってきた。
正直なところ、これ以上はサーヴァントの襲撃に神経を張り詰めながら移動することはできそうにもなかった。それだけ今の狂介は消耗しきっていた。
間桐邸への到着を待たずに電話で経過を報告したのもつまりはそういう事情であり、最悪仲間に連絡する前に自分が殺されることも有り得たからだ。
人気のない路地裏で疲労困憊の身体を休めながら、自分の無力さを噛みしめ暗然たる思いに駆られていた。
結局美遊は止めきれず、クロノと美遊の両方を失ってしまった。両者の激突は変態仮面の力を以ってしても収めること敵わぬ激しさだった。

「パピヨンがいてくれたらな」

今はもういない狂介のパートナーだった変態(せんゆう)。
彼と共に戦えればどちらも犠牲にせずに済んだだろうか。
いや、と頭を振って勢いよく立ち上がる。弱気でいては駄目だ。
こんなことでは彼に笑われてしまう。これ以上仲間や人々を死なせないためにも前に進まなくては。



「ここにいましたか、キョウスケ」
「うわっ!?…ああ、セイバーちゃんか」
「ちゃん付けはやめてほしいのですが…とにかく早く見つかって良かった」
「全くサーヴァントもなしに飛び出すなんて、不用心すぎるわよあなた」



気づくとセイバーと凛が狂介を挟むようにして路地の両端にいた。
先ほど頼んだ間桐邸からの救援が来たのだろう。それは良いのだが…何故か凛は黒いライダースーツに着替えていた。
しかもどういう意図か胸元が開いた極めて挑発的、あるいは扇情的な恰好だった。

「ああこれ?ミニスカートでバイク乗り回すわけにもいかないでしょ?
だから途中で家に寄ってちゃちゃっと着替えてきたのよ。……で、返事は?」
「…あ、ああ。本当にすまない。ただどうしても美遊ちゃんを止めなければならないと思ったんだ。
あの子は明らかに自分を犠牲にしてでもランサーの方のイリヤちゃんを救おうとしていた」
「そうね。私も同じ見解よ。
あの子たちは同型のステッキを持ち同じように規格外の魔力供給を実現していた。
聖杯戦争以前からの知り合い、もしくは友人だったとしても不思議じゃない」


537 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:46:51 k/5MzwIY0

意外にも、という言い方は失礼なのだろうが、凛が賛同を示したことに狂介は内心で驚いていた。彼女はもう少し冷徹な人間だと思っていたが誤解だったのかもしれない。
理解してくれる人がいてくれて嬉しいと思う反面、改めて悔しさと怒りを感じずにはいられない。
何故仲の良かったであろう少女たちがこんな形で引き裂かれなければならなかったのか?
決まっている。全ての原因は聖杯戦争にある。
こんな馬鹿げたゲームのためにどれだけの人間が犠牲になったのか、考えただけで頭が沸騰しそうになる。



「…もっとしっかり美遊ちゃんと話し合うべきだった。そう思うよ」
「過ぎたことです。それにキョウスケ、美遊のことはあなたが心悩ませることではない」
「そんな風には考えられない……何か出来ることがあったはずだ」





ドンッ





「……?」



―――何の前触れもなく、背後から左胸に衝撃が走った。
何だろうと思い胸に手を当ててみるのだが、当たらない。
まるであるべき場所にあるべきものがないかのような―――それでいて、身体の奥まで手が入っていくかのような不思議な感覚だ。
それに、手が妙に暖かい。何か粘性の強い液体に触れているかのようだ。
不審に思い右手を顔の前に持ち上げると、手が真っ赤に染まっていた。


「…………………………………え?」

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「―――だから言ったじゃない。サーヴァントもなしに飛び出すなんて、不用心すぎるって」


ぎこちなく後ろを向くと、凛がこちらに指をさしていた。
何かを撃たれた。狂介にそれ以上のことはわからなかった。
身体に力を入れようと思っても入れられず、そのままうつ伏せに倒れ伏した。

ガンド撃ち、と呼ばれる魔術がある。
本来は相手を指差し体調を崩させる呪いの一種であるが、極まれば物理的破壊力を持つに至り、その領域に至ったガンドは「フィンの一撃」とも呼ばれる。
遠坂凛は霊子虚構世界でのみ使用可能なコードキャストとして再現されたガンド撃ちを得意としており、その一撃は拳銃弾にも相当する。
変態仮面に変身していない狂介の心臓を撃ち抜き殺傷するには十分過ぎる威力だった。



「な…ん……で……」



心臓破壊による致命傷とガンドの呪詛によって身動きも取れない狂介に、血だまりを器用に避けながら凛が近寄る。
そして狂介が落としたサファイアのステッキとS2Uを拾い上げると一度だけ振り向いた。



「さよなら」



それだけ。
決然と、その一言だけを告げて少女たちは去っていく。

裏切られたのか?一体どうして?
鈍化しつつある思考の中、それでも疑問の尽きなかった狂介の脳裏にふと、新たな疑問が浮かんだ。

―――そういえば、彼女に聖杯戦争を打破することに賛同しているか、一度でも真剣に問うたことがあっただろうか?

「そ……う…か……」

わかった。わかってしまった。
彼女が共に聖杯戦争の打破を目指す仲間だと思っていたのは、自分たちの先入観でしかなかったのだ。
きっと狂介が目指していた未来と凛が目指していた未来は、最初の最初から、ただの一度も交わってなどいなかった。
たまたま同じ道を歩いていたというだけで、彼女も志を同じくする者だと勝手に思い込んでいた。

裏切りとは、同じ道を志していながら仲間の背中を撃つからこそ成り立つものだ。
最初から道が違っていたのなら、それは裏切りではない。
凛は、そしてきっと美遊も―――最初から一貫して敵だった、というだけの話。

恐らくこの末路は、避けようと思えば避けられたものだったのだろう。
選択肢はいくつもあったはずだ。分岐点はそこら中にあったはずだ。
色丞狂介は選択を誤った。仮令凛を警戒して変身していたとしても、単独でサーヴァントたるセイバーの前に身を晒していた時点で完璧に詰んでいた。



「慎二くん、…のび太、くん……みんなは、どうか……間違えない………で…………」



視界が霞み、身体の感覚が急速に失せていく。
これが死なのか、あるいは聖杯戦争のルールでいう消滅なのかは最後まで判然とはしなかった。


【色丞狂介@究極!!変態仮面 死亡】


538 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:48:13 k/5MzwIY0





 ◆   ◆   ◆






―――手を下すのは私よ。セイバー、悪いけどあなたには譲らない。

色丞狂介の暗殺に向かう直前、凛はセイバーにそう言い切った。
魔術師でも霊子ハッカーでもないとはいえ、狂介の実力の高さは多くの面々が知るところである。
確実を期すならばセイバーが狂介を一刀のもとに切り伏せるのが正解だっただろう。

―――ただでさえ背中から撃とうっていうんだから、せめてサーヴァントに頼らずマスターとして直々に殺してあげるのが礼儀でしょ。
色々と想定外のことはあったけど一つだけ絶対に変わらないことがある。―――これは私が始めた聖杯戦争よ。

けれど凛はセイバーの申し出に決して首を縦に振らなかった。
呉越同舟の同盟から離れる、決定的な行動。そのけじめは自らの手でつけると断言した。



間桐邸で狂介からの報告を聞いた時、次に矢面に立たされるのは自分とセイバーだ、と凛は予感した。
実力者だったクロノの脱落によって前衛を張れるサーヴァントがあの中でセイバーとキャスターだけになったからだ。保身第一の慎二がキャスターを前線に出すはずがないので実質セイバーだけだ。
加えてヘラクレスを擁するアインツベルン陣営は美遊の暴走によって完全にこちらを敵視しただろう。実際はどうあれそのように想定すべき事態だ。
そしてカルナとの停戦も成立していない以上、そちらも敵に回す可能性が十分に考えられた。
ヘラクレスとカルナ、その両英雄と曲がりなりにも真っ向勝負が可能なのは今や陣地内のキャスターを除けばセイバーのみ。少なくとも凛はそのように結論付けた。
つまりは、全く違う目的を持つ集団のために自分とセイバーが何の悪気もなく使い潰される最悪の未来予想図が現実のものとなる危険性が飛躍的に高まっていた。
早い話が身の危険を感じ取ったのである。

出来れば真っ先に慎二を落としたかったのだが、さすがに強力なキャスターという護衛がいる上に他にもサーヴァントがいるあの状況では無理がある。
それ故にまずは間桐邸の同盟からの離脱、そして孤立した狂介の排除を目標にして動くことを決断した。
それとなく話を誘導しつつ、怪しまれないよう有益な情報も提供する。
クロノが健在ならこんな策はまず上手くいかなかっただろうが、いなくなった人間に何ができるものでもない。
彼の脱落は遠坂凛に多大な利益を齎したと言えるだろう。



「狂介はクロノほどじゃないにしろ勇気と洞察力のある厄介なやつだったわ。変態だけど。
生かしておけばクロノの後釜としてあの同盟のブレーンになり得たでしょうね。
サーヴァントがいないと言っても、大きな集団を動かすのに本人が力を持っている必要はないもの」
「ええ、彼とクロノが死んだ今あの集団の動きは大きく鈍ることは間違いない。
このようなやり方で彼らから離れるのは少々気が引けますが、それでも我々は聖杯に辿り着かねばならない」
「まあ居心地は何だかんだ悪いものでもなかったけど、さすがに聖杯戦争自体をおじゃんにするのは認められないわ。
美遊のステッキも回収できたし、交渉材料も手土産も十分。後はあっちに渡りをつけられるかどうか、ってとこね
居場所の方もあそこ以外には考えられないでしょ」

会話する二人の、本来なら聞かれるはずのない声を聞いている存在がいた。
言うまでもなく美遊が持っていたカレイドステッキ、マジカルサファイアである。
あまりにも違いすぎる。彼女は今自分を持っている遠坂凛に対して強烈な違和感を抱いていた。

胸の大きさももちろんそうだが、言動や纏っている空気がサファイアの知っている凛とはまるで違う。
何より凛にしては美遊やイリヤに対する反応が薄すぎるし第一カレイドステッキを知らない。誰なのだ彼女は?


539 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:49:08 k/5MzwIY0





 ◆   ◆   ◆







此度の聖杯戦争でイリヤスフィール・フォン・アインツベルンほど「守られてきた」マスターもいまい。
彼女はずっと守られていた。例えばそれは師から譲られた触媒によって召喚した槍の英霊であり、相棒の杖であり、そして彼女の友人でもあった。
守られた、とは何も肉体的な問題だけではない。イリヤは彼女にストレスを与える多くの情報から守られてきた。
ある意味ではランサー・カルナやルビーの尽力の賜物と言えよう。

しかし守られてきたということは、その分だけ現実に直面する機会がなかったということ。
無論現実に向き合うことが必ずしもマスターの成長などの良い結果を生むとは限らず、精神が耐え切れずに自滅するマスターも存在し得る。
その意味ではイリヤを戦場から遠ざけた美遊やルビーの判断はあながち誤りであったとも言えない。
だが彼女らは度を越してイリヤを現実から、聖杯戦争から遠ざけすぎた。
結果として、守られ続けた少女は何の備えもなく無慈悲な現実を叩きつけられることとなった。



「ミユ!!ミユ!!」
「い、イリヤさん。気持ちはわかりますけどあんまり大きな声を出すと……」
「嫌!嫌だよミユ!!ねえ返事して!!」



色丞狂介がその場を去ってから数分後、間桐邸の同盟と交渉を続けていたイリヤは外の異常に気付き、遅れてクロノと美遊が戦っていた現場に足を踏み入れた。
当然にして事態は既に手遅れ。イリヤが知らぬうちにマスターとして戦っていた親友の氷漬けを目の当たりにすることとなった。
美遊・エーデルフェルトの聖杯戦争への参加と脱落、どちらもがイリヤにとって不意打ちであり同時に受け入れ難い事実だった。

「落ち着け、イリヤスフィール。彼女らは生きている」

狂乱するマスターの前に満身創痍ながら落ち着き払った様子のカルナが実体化し美遊の生存を断言した。
カルナが決して物事を偽らないことを知っているイリヤは彼の言葉に耳を傾ける程度には落ち着きを取り戻した。

「い、生きてる……?」
「そうだ。見たところこの氷は殺傷ではなく人の手に負えぬものを封印するために編み出された術式の一種なのだろう。
壮大、かつ緻密な魔術式だ。この術が想定する手合いは星一つを優に消滅させるほどの災厄ということか」
「何だかサーヴァントっぽいのも凍ってますけど……これほどの大魔術を、同じくそこで凍ってる黒づくめの男の子が個人でやったっていうんですか?」
「断言は出来んが、状況を見ればその可能性が高い。
心臓を刺されているということは誰かと相討ったか…ルビー、お前に心当たりはあるか?」
「可能性があるとしたら、美遊さんがランサーのクラスカードを使ってたとかだと思いますよ。
ランサーのクラスカードで使える宝具の真名(な)はゲイ・ボルクですから。
問題は、あの氷の中に美遊さんはいるのにサファイアちゃんが見当たらないことなんですけど……」

イリヤにはカルナとルビーの会話の全てを理解することは出来ない。
しかし美遊がこの状態であっても生きているという事実は恐慌状態にあった彼女の精神を些か立て直させる効果はあった。
ようやく持ち直しかけたイリヤがさらなる奇襲攻撃に晒されたのは直後のことだった。




「あら、そのサファイアちゃんってこれのこと?」
「へ………?」
「は………?」



聞き覚えのある、それでいて絶対に聞こえるはずのない声がした。
声を発した人物はバイクに乗っていたらしく、ヘルメットを被り見ている方が恥ずかしくなるほどくっきりと体のラインが見える黒いライダースーツに身を包む女性だった。
女性はヘルメットを脱ぎ美遊が持っていたはずのマジカルサファイアを取り出した。
だがこの瞬間、イリヤとルビーはサファイアの存在が意識の外に追いやられるほどに想像の埒外の衝撃を受けていた。


540 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:50:28 k/5MzwIY0



「まさか…あの話マジだったんですか?」
「リ、リンさん……?」



予選で死に別れたはずの少女、遠坂凛が堂々と立っていた。
凛が生きていた、そう思い覚束ない足取りで彼女に近付くイリヤをカルナが前に出て制止した。

「違う。あれは我々が知っている遠坂凛ではない」
「えっ?」
「はあ。美遊もそうだったけど、あなたたちも私を誰かと勘違いしてるわけね。
オーケー、話に入る前にまずその勘違いから正しましょうか。
確かに私の名前は遠坂凛で、遠坂の血を継いでいるけど本家の人間じゃないわ。
っていうか、私の知っている限り遠坂の本家は四十年ぐらい前には没落してるんだけど…美遊やあなたたちの反応を見る限り遠坂が没落しない平行世界、なんてのも存在するみたいね」



平行世界、という単語にルビーはようやく得心がいった。
そもそも平行世界のイリヤなんてものが存在していることがはっきりしているのだから平行世界の遠坂凛も有り得ない話ではない。
何しろこの遠坂凛、ルビーの知る凛より胸が大きく何よりバイクを使いこなしている。
一緒にいた時間は短かったが確かルビーの知る凛は魔術師の例に漏れず機械類は得意ではなかったはずだ。

「ん?ちょっと待って……あんたたち二人よね?
何かさっきから声が三人分聞こえるような気がするんだけど気のせい?」
「いいえ、気のせいではありませんよ凛様」
「うひゃああっ!?つ、杖が喋った!?」
「お気持ちはわかりますが地面に落とさないでください。
聖杯戦争の制限で今の私と姉さんはロクに自立行動が取れませんので」
「サファイア!」

事ここに至ってサファイアはこれ以上沈黙はできないと判断した。
少なくともこの凛は今すぐイリヤに危害を加える気はないらしい。
それならば沈黙を破り凛に協力するのも吝かではない。
やがて喋るステッキの衝撃から立ち直った凛がゴホンと一つ咳払いをしてから再び話を切り出した。

「ねえイリヤスフィール。あなた、私たちと組む気はない?
同盟を組んでくれるならこのサファイアってステッキをあなたに渡すし美遊に何があったかも教えてあげられるけど?」
「え?でもわたしマトウの人たちと休戦交渉してたんだけど……」
「それなら無駄よ。そもそもあいつらはあなたと交渉してる最中にバーサーカーを従えてるもう一人のあんたとも交渉してたから。
で、そこのリーダーが言うにはあなたの話は信じる根拠がないそうよ。
何しろ私、ついさっきまでそのグループにいたからね」

あちらのイリヤとも交渉している可能性は考えていなかったわけではない。
それでも誠意を込めて彼女の危険性を説けば必ずわかってくれるはずだと期待していた。
それなのに……そもそも信じてもらえてすらいなかった。しかもそれを黙っていた。
外見通りの年齢であるイリヤはその不条理、理不尽を飲み込めるほど大人ではなかった。
歯をきつく食いしばったその顔は怒りに染まりつつある。

「で、その後すぐ美遊はサーヴァントにもう一人のあんたを襲わせたわ。
その結果間桐邸グループは内輪揉めで戦闘に発展。結局クロノが自分もろとも美遊を氷漬けにして、今に至る、ってとこね。
私が思うに美遊は間桐とアインツベルンを対立・消耗させることであなたを救おうとしたんでしょうね。
例え自分を犠牲にしてでも、あの子はあなたを勝たせようとした。そうすることが正しいと信じた」
「そんな…ミユ、何でそんなこと……」
「…ランサーさん」
「真実だろう。少なくとも遠坂凛は嘘をついていない」
「私も保証します、姉さん。私も一部始終を聞いていましたので…」


541 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:51:19 k/5MzwIY0

イリヤの心に様々な感情が去来し綯交ぜにしていく。
純粋な悲しみ、気づけなかった自分への無力感、そして親友をこんな目に遭わせた間桐邸の同盟に対する怒りと憎しみ。
イリヤが小さな拳を震わせる中、凛の持っているスマートフォンの電話が鳴る。
まあそろそろ来るでしょうね、と思いながら電話に出た。
電話を掛けてきたのはアリスのようだった。

『凛、カルナのマスターと接触して何をしているのか説明して。
それに狂介はどうしたの?あなたの近くにいないようなんだけど?』

アリスのサーヴァント、アーチャーたる赤城は艦載機でカルナをマークしていた。
そのカルナと凛が接触した事実を間桐邸の同盟の中でいち早く察知したアリスが慎二に黙って連絡を寄越してきた…そんなところだろう。
とはいえ凛にとってこうなることは予想済みである。

「説明する必要、あるかしら?
私は今からこの子と組んで優勝目指して突っ走るからそのつもりでいてね」
『…そう。最初からあなたはそういうつもりだったのね』
「理解が早くて助かるわ。
ああ、そうそう。私以上にあなたたちに言いたいことがありそうな子がいるから代わるわね」

「私がさっきまでいた間桐邸グループの人間よ」と言ってイリヤに電話を渡す。
怒りの矛先を得ているイリヤは普段の彼女からは考えられないほど攻撃的になっていた。
平然と人を騙し、友達を傷つけた。イリヤは間桐邸の同盟をそのように認識していた。



「リンさんから全部聞いた。…ちょっとでもあなたたちを信じようと思ったわたしが馬鹿だった!!
ミユをこんな目に遭わせたあなたたちを、わたしは絶対に許さない!!」
『あなた、まさか……ちょっと待って、これには理由が』
「そんなこと言って、また騙すつもりなんでしょ!?言い訳なんて聞きたくない!!」



怒声とともに電話を切り、少ししてから我に返って元々凛が受けていた電話だったことに気づく。
無言でおずおずと電話を返すが凛は特に気にした様子もなかった。

「別に良いわよ。私もこれ以上話す気はなかったから。
それで同盟は組むって捉えていいのかしら?」

その言葉に少しだけ考え込むイリヤ。
本人の言う通り、この遠坂凛はイリヤらの知っている彼女ではない。それはこうして少し会話しただけでも感じ取れた。
けれど、矛盾するようだがやはり彼女もまた遠坂凛だとも思う。別人だとしても根っこは同じだ。
それなら彼女は信じられる。いや、今生きているマスターでイリヤが信じられるのはもう遠坂凛以外いない、とすら思う。
カルナを見る。君が決めろ、とその全てを見通すような眼が語っていた。



「…うん。その同盟、受けます!
わたしたちはリンさんに力を貸すから、リンさんもわたしに力を貸してほしいの」
「そうこなくっちゃ、これで同盟成立ね。
これで美遊への借りも返せるってもんだわ」
「へ?借りって?」
「…実は私、元々優勝狙いだったんだけど流れで間桐邸の同盟に参加せざるを得なくなっちゃったのよ。
抜けようにも同盟は肥大化する一方で、おまけにクロノがいたから抜けることもできなかった。
美遊がクロノを道連れにしてくれなかったらこうして自由に動き回ることはできなかったでしょうね。
だからまあ…あの子には借りがあるのよ。それを返さないと収まりが悪いっていうか」



美遊が自己犠牲に走った理由の一つ、それは自分にイリヤを託したからだろうと凛は考えていた。
自分以外の誰かがイリヤを守ると確信していたからこそ、美遊はあんな行動に出ることができたのだ。
当然それは勘違いというか人違いであり、本来ならそんなもの知るかと切って捨てるのだが……結果として美遊の行動に助けられたのはどうしようもない事実だ。
それで知らんふりを決め込むとあっては寝覚めが悪い。


542 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:52:05 k/5MzwIY0
とはいえイリヤへの情けや美遊への恩義だけでイリヤを同盟相手として選んだわけではない。現実的に考えても組めそうなのが彼女しかいないのだ。
ナチスどもは論外だし、もう一つの候補だったアインツベルンは間桐邸同盟のメンバーに怒り心頭であろうしあちらも聖杯戦争自体にさほど乗り気ではないらしい。
となると聖杯を獲る方向で利害が一致し、かつ組むだけの価値があり、それでいて与しやすそうな唯一のマスターがイリヤだったのである。

「じゃ、取引成立ってことで。このステッキはあなたが持ってなさい」
「ありがとう!…サファイアだけでも無事で良かった」

ちなみにサファイアの他にもう一つ回収していたS2Uについては渡す気はさらさらなかった。
あのクロノが持っていた道具ならさぞ有用な機能なり情報なりが詰まっているに違いない。こちらは後で解析して有効に使わせてもらう腹積もりだ。
そして凛はイリヤの隣で満身創痍のまま立ち続けるカルナを見やった。

「で、さっきからずっと気になってたんだけど……カルナ、あなた黄金の鎧はどうしたの?」
「………」
「だんまりは通らないわよ。こっちはこれだけサービスしたんだから当然答える義務があるわよね?」
「そういえばランサーさん、肩の車輪みたいなパーツがなくなってる…。
もしかしてそんな大怪我したのと何か関係があるの?」

ランサー、カルナを象徴する宝具『日輪よ、具足となれ』。
インドの神々ですら破壊を諦めたほどの強度を誇り、物理・概念を問わずあらゆる敵対的干渉を十分の一にまで減じる最高峰の防御宝具。
意外にもこの聖杯戦争の参加者の中でその存在を明確に認識している者は多くない。
今現在生存している者の中でカルナの黄金の鎧の存在をはっきりと認識しているのは万全のカルナと戦った直接の相手である凛とセイバー、カルナのマスターであるイリヤぐらいだ。
まほろや赤城など他の者は鎧の存在そのものを確認していない。
もちろんカルナの逸話をサーヴァントである彼女らが知らないわけではないが、サーヴァントは英霊の一部分を切り取って現界する存在であり、それ故にクラスによっては持ち込めない宝具が存在する英霊も珍しくない。
このためまほろ等多くの者は「黄金の鎧はクラスによる制限か何かで持ち込めなかったのだろう」と誤認しているのだった。

「鎧は君に譲渡した。サーヴァントはマスターあってこそ成り立つものだ。
オレにとってマスターの生存に優る優先事項は存在しない」
「ちょ、ランサーさん何で言っちゃうんですか!?」
「すまんルビー。だがマスターから問われればオレは答えぬわけにはいかん」
「なるほどね、確かあなたの鎧はバラモン僧に化けた雷神インドラに譲渡した逸話があったわね。
だからマスターに譲り渡すこともできたってこと。まあ正論ではあるわね」

長らくイリヤとカルナは孤立状態にあった。
正確にはイリヤが知らないうちに美遊と合流していた時期もあったのだが結局のところ美遊と共闘することはなかった。
さらに多数の組から狙われていることが明白とあってはマスターの安全を最優先とせざるを得なかったのだ。
だがその事実に我慢ならない者もいる、他ならぬカルナのマスターであるイリヤだ。



「じゃあ…ランサーさんがそんなに傷ついたのはわたしのせいだよね?
わたしが足を引っ張ったから、それだけボロボロになったんでしょ?」
「それは違う。外傷を負ったのはオレが敵を見誤ったに過ぎない」
「でも鎧があれば大丈夫だったんでしょ!?なら返す、ううん、返させて!」
(あああもう!こうなるのがわかってたからイリヤさんには言いたくなかったんですよ〜!!)


543 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:52:41 k/5MzwIY0



こうなることはわかっていた。イリヤの手の中でルビーがうねうねと身体を捩じりながら煩悶する。
今でこそ憎悪の炎を燃やしているが、それでも本来は心優しい少女だ。
自分に鎧を譲ったせいでカルナが瀕死の重傷を負ったと知れば安全を投げ捨ててでも返そうとするに決まっている。実際そうなった。
ルビーの苦悩など知る由もなく、さらにイリヤに助け舟を出す者まで現れた。凛だ。

「私もイリヤスフィールに賛成。そもそもこっちはあなたの不死身さを当て込んで来たんだから。
イリヤスフィールの安全のことなら当面私たちマスター同士で協力すれば問題ない筈よ。
大体忘れたわけじゃないでしょ?ここじゃ基本的にサーヴァントが消えればマスターも一緒に消去される。
まあ例外がいないわけじゃないけど……それでも何の備えもなければ同じことよ」
「そうだよ!わたしはランサーさんにだって死んでほしくないんだから!」
「…マスターがそう命じるのであればオレに否やはないが」

そうしてルビーが口を挟む暇すらないままに宝具の譲渡は行われてしまった。
イリヤ自身が願望器である聖杯の機能を持っている上に本人の高い直感力も相まって、パスを通して黄金の鎧がカルナの元へ戻っていった。
欠けていた装飾が戻り、同時に時を巻き戻すかの如くカルナの傷が消えていった。彼の鎧に宿る治癒の力だ。

「き、傷が治ったー!?」
「いや、確かに外装こそは戻ったが。
機能までを戻すには今しばらく時間が必要だ。その次は槍の修復に魔力を注がねばならん」
「まだしばらく回復が必要ってわけね。それじゃ私の家に行きましょ。
これで聖杯戦争の勢力図は大きく分けて私たち、間桐、アインツベルンの三つ、ナチス連中を含めるなら四つになったわ。
できれば間桐とアインツベルンのどっちかを速攻で落としたいけど、こっちは組んだばかりで連携も何もないし、他のグループに背後を突かれる心配があるんじゃ難しい、か」

自惚れではないが、自分の行動は聖杯戦争の盤面を大きく動かしただろう、と凛は踏んでいた。
危うく停戦に傾きかけていた流れを辛うじて元通りに戻せた、というところか。それも美遊の行動なくしては無理だったが。
カルナの協力を得て他全ての勢力を滅ぼし、最後に与しやすいイリヤを殺す。その青写真を実現する前提は整った。
セイバーと言えどカルナ相手では不利は否めないが、マスターはただの小学生だ。少なくとも精神面においては。
ならば付け入る隙はいくらでもある。令呪も三画フルに残っている以上サーヴァント戦でも勝ち目が全く無いというわけでもない。

「何だかやっと聖杯戦争らしいことができる気がするわ……」
「同感です、マスター……今まではその、控えめに言って異常すぎたかと」


544 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:53:25 k/5MzwIY0

【新都・西部/2014年8月2日(金)0330】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
変身済、精神的疲労(中)、髪がちょっと短くなった
[残存令呪]
二画
[装備]
マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]
マジカルサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
1:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター(イリヤ(sn))と、色違いの偽者(クロ)を殺す。
2:平行世界のリンさんと協力する。
3:騙した上にミユを氷漬けにした間桐邸の人たちは絶対に許さない。
4:ミユをこのままにしておけないけど、どうしよう?
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●ランサー(カルナ)から貸与されていた「日輪よ、具足となれ」を返還しました。
よほどのことがない限り今後借りる気はありません
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[スタンス]
奉仕(イリヤ(pl))
[状態]
筋力B(32)
耐久C(24)
敏捷A(40)
魔力B(40)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、ダメージ(中・急速回復中)、左半身の機能低下(急速回復中)、霊核損耗(小・急速回復中)、槍半壊(修復開始)。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:もう一人の遠坂凛、及び騎士王(アルトリア)と共闘する。
2:美遊をどうするか……
3:セイバー(テレサ)だったものを終わらせてやるべきか、否か……
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤから返還されました。これによりダメージの回復速度が急上昇しましたが、完全な回復にはあと2〜30分は必要です。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。
●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響は継続中です。ランサー(カルナ)が「死ねない」と感じ現界し続けようとした時、その判定に中程度のボーナスが掛かります。


545 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:54:09 k/5MzwIY0
【遠坂凛@Fate/Extra】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス解除)
[状態]
アヴァロンを体内に所持
[装備]
ナイフ@Fate/Extra、黒いライダースーツ
[道具]
ドール(セイバー仕様)@Fate/Extra、ドール@Fate/Extra×若干数、未確定の礼装×若干数、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実、S2U@魔法少女リリカルなのはA's
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う。
1:イリヤ(pl)と共闘して他の勢力を撃滅する。その後イリヤ(pl)と決着を着ける。
2:出来れば早めに慎二を筆頭にした間桐邸の同盟を潰したい。
3:空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。
4:余裕のある時にクロノが持ってたカード(S2U)の解析を試みる。
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。
●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。
●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い(ステルス解除)
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す。
1:凛の指示に従い全ての敵勢力を打倒する。
2:吸血鬼たちの動向が気になる
3:セイバー(テレサ)…このような姿に堕ちていたとは……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサ(青・改造済)を乗りこなせるようになっています。騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。現在は小破していますが走行に影響はないようです。
●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●聖杯戦争についての疑念を抱きました。


546 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:55:48 k/5MzwIY0





 ◆   ◆   ◆







間桐慎二は頭髪のみならず、顔色までも海藻のように真っ青に染まっていた。
いや、それは彼だけではない。誰もが沈鬱な表情を浮かべていた。

「…そういうわけで、凛が裏切ってランサーの方のイリヤと合流したわ。
おまけに彼女が全部バラしたからあっちのイリヤとの和解はもう無理ね、完全に怒らせたわ」

隠しておく理由も意味もなくなったと判断したアリスが事の顛末を間桐邸同盟のメンバー全員に話していた。
ただでさえも人数が減ってしまったというのに、戦力の中核の一人だった凛とセイバーが離脱しよりにもよってカルナの側に寝返った。
放送を行ってから数時間と経たずにマスター、サーヴァント併せて七名も同盟からいなくなり、その上交渉も悉く頓挫。
いくら何でもここまで加速度的に状況が悪化するなど誰が予想できたか。

「……狂介は?」
「残念だけど、確実に死んでるわね。
確認はできてないけど凛が彼を見逃したとは到底思えない」

そして変態ではあったが限りない勇気で少なからず同盟の士気を支えていた狂介も凛の裏切りによって敢え無く命を落とした。
慎二は思う。偽物の遠坂凛だと理解していながら、心のどこかで彼女が暗殺などという手段に出るはずがないと思い込んでいたのだろうと。
偽遠坂凛の内面についてもう少し踏み込んで考えていればむざむざ狂介を死なせることもなかった。

「…これからどうするべきだと思いますか?」
「やっぱり、アインツベルンとの誤解を解いて和解するしかないんじゃないかしら。
まあせめてもの誠意の証として全員であちらの拠点に出向くぐらいはしないとまず信用されないと思うけど」
「だ、駄目だそれは!僕らにとって一番安全なのはここだろ!?
一歩でも外に出てみろ!すぐにでもカルナの攻撃が飛んでくるに決まってる!」
「向こうからしたら爆撃なんて奇策を使う必要ももうないでしょうけどね。
普通に正面から乗り込まれただけで落ちるんじゃないかしら、ここ?」
「うっ……いやでも、僕のサーヴァントはキャスターなんだぜ?
この陣地から一歩出たら十分な実力は出し切れないんだ。外に出る方が自殺行為だね!」


547 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:56:28 k/5MzwIY0

これからの方針を話し合うもまとまる気配はない。
というより、方策がないわけではないのだが慎二が納得しないというのが正しい。
彼としては自分の生存率が僅かでも下がるような行動は断じて取りたくないのだ。
そんな中、のび太が意を決したように唐突に立ち上がった。

「のび太?」
「おかしいよみんな!何で狂介さんが死んだなんて決めつけるのさ!?
探そうともしないなんて、みんながそんなに薄情だなんて思わなかった!!」
「あのさあ、僕だって狂介が死んで何とも思ってないわけじゃない。
でもだからって生きている僕らが無駄なことをするわけにもいかないって話だよ!」
「いやマスター、その言い方では…」

のび太は難しいことはよくわからない。
しかしここにいる全員が既に狂介の死を決定事項であるかのように扱っているのは感じ取れた。
何故確認もしていないのに勝手に決めつけるのか。のび太の中には憤りしかなかった。

「だったら僕一人でも狂介さんを探す!!」

一直線に駆けだして地上へと上がっていくのび太。
普段の彼ならこんな蛮勇にもほどがある行為に走ることはそうそうない。
しかし今ののび太は「決心ハチマキ」を装備している。…してしまっている。
それ故に自分がどれほど無謀な行動に出ているかなど考えもせず、一度決意したが最後とことんまで突っ走る。
もちろんのび太を見殺しにすまいと行動しようとする者もいたのだが―――



「のび太さん!…すみません皆さん、私が行きます!」
「……キャスター!!」



追いかけようとしたまほろを、キャスター・フドウがいとも容易く制圧した。
騒然とする一同。キャスターに指示を下した慎二が前に出るが…その表情は狂気に染まっていた。

「どういうつもり?」
「どうもこうも、僕は全体の安全を考えてるだけさ。
のび太一人追いかけるためにサーヴァントを出して、各個撃破でもされたらどうするんだい?
あいつのことは残念だけど…ほら、あれさ。大事の前の小事ってやつだ」

同盟の中核となっていた戦力が悉く抜けたことによって、この場で最も強大なサーヴァントはキャスターとなった。
故に慎二が明らかに暴走しているとわかっていても、制止することができない。
いや、力づくで黙らせることはできるのかもしれないが、今仲間同士で争えば確実に全滅を招く。
だから誰も動けない。



「さあ、作戦会議を続けよう」


548 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:57:26 k/5MzwIY0


【間桐邸/2014年8月2日(金)0330】

【アリス・マーガトロイド@東方Project】
[スタンス]
脱出優先
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
0:慎二……!
1:慎二と共に『必勝法』を実行に移し、この場で聖杯戦争からの脱出を実現するつもりだが…?
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●自宅は新都にあります。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
[スタンス]
奉仕(マスター)
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1:どうすれば……!?
[備考]
●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。
●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。


549 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:58:18 k/5MzwIY0
【間桐慎二@Fate/stay night 】
[スタンス]
やけくそ、激昂
[状態]
『必勝法』を共有済。
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
0:僕の指示に背くんじゃない……!
1:『必勝法』については……
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●キャスター(パピヨン)の好感度が下がっています。また凛とイリヤとアリスとクロノに不信感を抱きました。
●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。
●アインツベルン城の情報を知りました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●この世界に関する考察を共有しました。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
0:アーチャー(まほろ)を取り押さえつつ場を牽制する。
1:慎二がこの場でどう動くのかを見て、見定める。求めるなら仏の道を説くというのも。
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。
●間桐邸地下に陣地を作成しました。
●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。

【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
筋力(39)/B
耐久(27)/D
敏捷(49)/A
魔力(20)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
『必勝法』を共有済、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、鉄心、アーチャー(フドウ)に拘束されている
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
0:のび太さんが…!
1:『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を停滞させ、聖杯の破壊の機会を手繰り寄せる。
2:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の死に疑念。
3:変態仮面達とドク、慎二組に恩義。ただしドクとそのマスターのライダーはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。
[備考]
●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。
●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


550 : 【107】塗り替えられた勢力図 ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 14:58:56 k/5MzwIY0

【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[スタンス]
脱出
[状態]
意識朦朧、ダメージ(大)、肋など数ヵ所骨折、魔力消費(極大)、衰弱(大)、疲労(大)。
[装備]
貴重品の入ったランドセル。
[残存霊呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
[備考]
●所持金はタンス預金程度。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。英霊・アリシアの情報の一部を聞いたのみです。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドク、ライダー(少佐)、アサシン(千手扉間)、セイバー(テレサ)のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。

520: 【106】Grand Alliance――終劇・聖杯演義―― ◆g/.2gmlFnw :2017/09/23(土) 03:52:49 ID:M.4llsnc0


【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[スタンス]
優勝
[状態]
瀕死(くも膜下出血・全身打撲・背部に大火傷)、心停止。
[道具]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
0画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。

【大尉@ヘルシング(裏表紙)】
[スタンス]
エンジョイ
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(30)/C、
敏捷(40)/D+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/D、
宝具(0)/なし、
魔力消費(微)。


【深山町南部 間桐邸近く/2014年8月2日(金)0330】

【野比のび太@ドラえもん】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み)
[道具]
ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット
[残存令呪]
三画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1:狂介さんを探す。死んだなんて信じない。
2:慎二らへの怒り
[備考]
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。
●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。
●この世界に関する考察を共有しました。


551 : ◆p1hwNIp6AQ :2017/10/05(木) 15:00:06 k/5MzwIY0
投下終了です


552 : ◆g/.2gmlFnw :2017/10/06(金) 00:59:12 Zy6Md5Mk0
投下乙です
百話超えたあたりからテンポを加速度的に早くしましたが、それがスローに思えるほどぶっちぎた展開のスピードが気持ちいいです
狂介の連絡を機に暗殺、裏切り、逃走、同盟、告発、宣戦布告、独裁と流れるように息吐く間もなく状況が変わっていって脳みそがブルブル震えます
ここまでやられると企画者冥利に尽きますね
wikiの編集が終わり次第全参加者並びに主催者で最終回を予約したいと思います


553 : 名無しさん :2017/10/06(金) 01:10:00 zYYztmno0
投下乙です!
うおおー、こうなったかあ…
狂介…最後までヒーローだったなあ…聖杯戦争で生き抜くには辛いスタンスだったけど、縦横無尽に戦い信じる道を貫いた変態仮面の雄姿は忘れまい。
そしてとうとう凛が本格的に。せめてものけじめとして自らの手でケリをつけたのはさすがというか。
イリヤとの合流と言い、もう佳境なんだなと思わされます。
ワカメ、頭が痛いどころの騒ぎじゃないけど頑張れ。のび太もどうなることか。
改めて、見事な最後のバトンパス、投下お疲れさまでした。
そして怒涛の展開に次ぐ展開で駆け抜けて来たこの聖杯戦争の最終回、ずっと追って来た読者として楽しみにしております。


554 : 名無しさん :2017/10/06(金) 07:25:49 Z7IEBGAE0
投下乙です!
狂介がまさかこんな最期になるとは…やっぱりサーヴァントなしで生き抜けるほど甘くなかったか
暗殺とは意外でしたが、確かにエクストラの凛ならやってもおかしくはないですね
一言も言い訳や弁明をしないで立ち去るのもまた凛らしい
最終回も楽しみにしております


555 : ◆g/.2gmlFnw :2017/10/20(金) 00:21:19 .r18nCvM0
では全員を予約します


556 : 名無しさん :2017/10/23(月) 18:06:01 NRAj4CKM0
全員予約きたー!


557 : ◆g/.2gmlFnw :2017/11/05(日) 00:00:14 LWDVSmkA0
投下遅れてしまい申し訳ありません
7日までに投下したく思います


558 : ◆g/.2gmlFnw :2017/11/07(火) 23:50:48 xkm6QrB20
本日で当企画スタートより1200日となりました
亜種聖杯戦争という前代未聞の存在に、これは大変なものを始めてしまったな、と痛感しながら私自身手探りで進めて来ましたが、なんとか今日この日に完結までこぎつけることができました
改めて当企画にご協力いただいた皆々様に感謝を述べると共に、最終回を投下したいと思います


559 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:00:00 agpQ0vEM0



 この聖杯戦争の本戦が始まってよりずっと、その者は座して待っていた。




 自らが動くタイミングを。自らがもっとも効果的に動けるタイミングを。




 制約は厳しく情報は足りず人材にも問題がある。だがそれでも、いやそんな状況だからこそ、その願いの為に動く。この敗者なき戦争に幕を引く為に。




 夜明けは近い。満願不成就の朝が来る。




 その時まで後――


560 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:03:06 agpQ0vEM0



 -1:00:00 決戦!!襲撃される遠坂凛!!


「ここ、って、貴女は知ってるんだっけ。」
「はい……そうだよね、私の家があるならリンさんの家もあるよね。」

 その重厚な佇まいに相応しい大仰な門を潜ると、遠坂凛とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは遠坂邸へと足を踏み入れた。
 間桐邸の同盟への宣戦布告から半時間ほど、彼女達は何事もなく目的地へと到達していた。頭の上を抑えていた飛行機の編隊は、いまやその機影を一つにまで減らしている。それが間桐邸のアリスのアーチャーのものだということを知る凛は、僅かに口角を上げながら庭園の脇の道を歩いた。
 ここに来るまでの間に、編隊は皆東へと飛んでいった。凛が知る限り、そこには何もない。精々、冬木市立図書館とそれに併設するように建っている月海原学園程度だ。高度を落とし見えなくなった飛行機に引き続き今もイリヤのサーヴァント、カルナが見張るその建物は、特段の変わりもなくそこにある。また市の南西端の辺りにある柳洞寺という寺に逃げ込んだもう一人のイリヤ達の同盟も、特段の動きを見せてはいなかった。といっても、結界らしきものがあるその寺はサーヴァントの眼力を持ってしても内側を伺わせない。故にサーヴァントが発する魔力を目印にカルナは結界の端を油断なく見据えていた。その眼光から逃れるにはよほどのアサシンでもなければ不可能だろう――もっとも、既に唯一のアサシンは死に、その同盟にアサシンの真似事をできる者もいないのだが。

「……セイバー。」
「いえ、なんの気配もありません。ただ……」
「嫌な予感がする、でしょ。」

 間桐も、もう一人のイリヤも、動きを見せない。また両者に集中するあまり優先順位が下になっているが、ナチスの吸血鬼達もだ。その事実を優位と考えず、これから起こる脅威と凛は判断した。

「イリヤ、カルナ、貴方達のわかる範囲で、サーヴァントやマスターに動きはある?」

 屋敷に入ってそうそう、凛はそう問いかけた。と同時に、その周囲に光の板のようなものが現れる。ややあって屋敷全体に広がる魔力が強まったのを感じながら一同は柳洞寺を望める一室に移りつつ、それぞれに自分が知る情報を公開する。だがその中に凛が知らないものは無かった。

「気休めかもしれないけれど、この屋敷の結界は最大限まで強くしてる。まあ元からあった物に手を加えただけだけど、ある程度のセキュリティは保証するわ。で、全員本当にそれだけ?だとしたら、かなりマズイことになってるかも。」
「そもそも私達はずっとボッチだったんで情報とか言われましてもね��。ぶっちゃけ私達が知ってることはランサーさんが全部知ってますし、というわけでランサーさんもう一度お願いします。」
「わかった。イリヤ、構わないか?」
「うん。でも、ランサーさんその格好のまま話すの?」
「ああ。」

 窓の前で仁王立ちし、寺に睨みを利かせながら背中で答えるカルナに、イリヤは顔の作画を崩しながら「リンさん良いですか?」と問う。「そのままでいいから」という凛の言葉を受け取ってか、カルナは話し始めた。


561 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:04:53 agpQ0vEM0

「先に言ったことの繰り返しになるが、間桐邸も柳洞寺も変わりない。どちらも結界で内が伺えないが、そこから出たとは考えにくい。」
「間桐の方は屋敷が燃えてるんだし、火事に乗じて脱出した可能性は?」
「あの屋敷の周りには無関係な人間が集まっている。見つからずに突破するなら魔術を使わなければならないだろうが、その痕跡は無い。もちろん死角から逃げたとも考えられるが、それでもあの炎を魔術無しで凌ぐ必要がある。」
「たしかにあれだけ消防隊とかいたらキツそうですね。」
「ええ。そして私達が見た限りあの中で魔術に頼らずにあそこから脱出できる人間はいなかった。吸血鬼達なら可能かもしれないが、もう一人のイリヤ達からの攻撃で大尉と呼ばれていた男以外は全滅したはず。少なくともあの屋敷にいる人間に見つからずに外に出ることは不可能と考えて良いだろう。」
「あっちにいるのは慎二とキャスターにアリスとアーチャー、それに安藤って名乗ったアーチャーとのび太に吸血鬼の大尉。動けるこの七人じゃ確かに難しいか……わかった。じゃあランサー、柳洞寺からイ――偽イリヤ達が動けるかは?」
「あの森からマスターに逃げられれば我の目でも捉えることは難しい。サーヴァントならば結界から出れば捉えられるが、アサシンのような手合なら我も見落とす恐れはある。」
「向こうの言葉を信じるなら、あっちは偽イリヤとバーサーカーのヘラクレスに他二組。さっきの攻撃を考えるに、片方はほぼアーチャーね。ここにクロって名乗ったもう一人の偽イリヤがマスターとしても、あとの一組は完全に情報がないわ。それがアサシンってことも考えておくべきね。」
「この時間まで情報がないってあり得るんでしょうか?」
「ルビー、私たちがそれ言っても……」
「……仮に、不明な一組をXとするわ。本当はクロ×不明なサーヴァントと不明なマスター×不明なアーチャーってことも考えられるけど、考えを簡単にするためにね。で、セイバー。このXみたいなタイプの聖杯戦争の参加者ってどう思う?」
「……率直に言うのなら、何がしたいのかわかりませんね。伏せて身を隠すのも、あえて名乗りを挙げるのも、どちらもあり得るでしょう。だが、あのタイミングで自分達の存在を匂わせる意義が薄い。何より、それまで身を潜めていたそのXはなぜイリヤスフィール達――失礼、偽イリヤ達と行動を共にしているのか。これがわからない。」
「ありがとう。私もだいたいおんなじ考え。Xが隠れてたならなんで偽イリヤに接触したのか動機がわからないのよ。もしくは偽イリヤに見つかったにしても、なんで貴方みたいに索敵能力の高いサーヴァントではなくバーサーカーを従えた偽イリヤなのか。セイバーにランサー、それに何騎もいる目ざといサーヴァントを差し置いてね。」

 いつしか話はまだ見ぬ一組の話に移り一同は頭をひねる。まさか相手がただ聖杯戦争を夏休みのように過ごしていた為に全く警戒に引っ掛からなかったなどとは夢にも思わない。というか殺し合いの場でそんなことをしている参加者がいるなどと真面目に考える人間はいないだろう。それが真面目に聖杯戦争をやっている彼女達ならばなおさらである。
 ――なおそのバカンスのように過ごしていたルナとバーサーカーの名誉の為に言っておくが、彼女達は何も遊んでいたのではない。巡りあわせの結果レンタカーを(切嗣が)借りて、ファミレスに(切嗣の奢りで)行って、バッティングセンターで(切嗣の金で)遊んだだけだ――
 「あの」と小さく手を挙げイリヤが発言を求める。今までの話し合いで殆ど話していないこともあり何か言わねばというのが本音だ。凛から水を向けられると彼女は話し始めた。

「最初からそのX?が私のニセモノと一緒に聖杯戦争に参加してたらどうかなって……ないですかね?」
「そういえばクロって方もアインツベルンって名乗ってましたね。イリヤとクロと謎のマスターXが全て同じアインツベルン陣営である可能性も……?」
「それはないと思いたい。でないと今の状況はその三組が狙って作った可能性まで考えないといけなくなるわ。」
「美遊様とイリヤ様が共に巻き込まれたことを考えますと、親しい人間がまとめてマスターになっていることもあり得るかと。」
「しかし、それではイリヤスフィール。貴女に関わりのある人間ばかりこの聖杯戦争にマスターとして参戦していることになる。たしか、先程のルーラーの放送では残り十六組。その内の五組が貴女に近い人間というのは奇妙に過ぎる。」


562 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:06:38 agpQ0vEM0

 そう言うとちらりとアルトリアと凛は視線を交した。自分で言っていてなんだが、もし本当にイリヤに関係のある人間ばかりマスターになったとしたら、この聖杯戦争そのものへの疑念がどうしても浮かんでしまう。二人ともイリヤが小聖杯の可能性を考えてはいるが、それでも全体の三分の一、生き残っている数で言えば今や過半数がイリヤという予測をすんなり受け入れることなどできなかった。
 そしてそんな彼女達と同様に、二本のステッキの間で魔力が飛び交う。ややあって、イリヤの脇で浮いていたステッキ、ルビーが羽をパタつかせ喋った。

「そのあたりのことを考えるにはもう一度情報交換するしかないと思います。時間が許すなら改めて再確認したいんですけど、皆さんどうします?」

 この話題は重要なことかもしれないが、あまり悠長に話している時間はない。そう言外に込めてルビーは問いかける。実際はイリヤに隠していることについてこれ以上ボロが出て刺激したくないということやイリヤの出生について勘ぐられたくないというのが本音だが、言っていることに間違いはない、はずだ。「四時過ぎか。ランサー、やれる?」との凛の言葉を最後に話題はいつ敵に仕掛けるかについてに移り、ルビーとサファイアは内心でホッと息をついた。
 「いつでも問題ない。あらかた傷は癒えた」とのカルナの返事に、凛は無言で頷く。「コーヒーを入れてくる。最後の作戦会議よ。」と言って凛は部屋を出、サファイアが監視を名目にそれに続いた。


 高価な茶器に合わないインスタントコーヒーをキッチンに並べると、凛はやかんを火にかけながら再び光の板を出す。ウィザードとしての能力の手の内を明かさぬためクロノやキャスターの前では控えてきたが、その為に情報収集は予定よりも遅れていた。無論その分のリターンとしては十分なものが得られてはいるが、だからといって慢心することはない。こちらは真名が割れているのに対し、他の五組中四騎は正体が不明だ。Xにいたっては外見すらわからない。裏切るタイミングは正解のはずだったが、優位には立てていても万全ではないと凛は自身の肝に銘じる。
 そして凛は一体の人形に向けコンソールを叩いた。数体しかない人形だが、使い方によっては貴重な労働力である。彼女はそれがレインコートなどで最低限の変装をしたのを見ると、裏口から家を出させて東へと向かわせた。目的地は、月海原学園。新設校のため古い地図には載っていないが、そこに併設されている冬木市立図書館では真名の検索が可能である。これで少なくとも間桐邸のサーヴァント達の正体にあたりをつけたい。
 音を立てて沸騰を知らせるやかんの火を止めながら、続いてここ数時間のニュースに目を通す。今自分にマスターとしてできるサーヴァントの情報収集はこれ以上なにもない。故にここからはレジスタンスらしく社会の情報収集だ。こんな都市でドンパチやっている以上、どうしたって情報は出回る。西欧財閥による検閲もない2014年のインターネットは、彼女にとって格好の狩場だ。
 事前に粉末を入れておいたカップに少し慎重に熱湯を注ぎつつ警察庁のサイトをクラックする。国家を超える相手と渡り合ってきた彼女にとって、半世紀も前の一行政機関のセキュリティなど回線の遅さに比べればほんの些事だ。そのままめぼしい情報をダウンロードさせつつまずは冬木署の署長のPCをクラックする。この混乱では現場レベルで情報が止まっていることも考えられるし、自衛隊などの他の行政機関との伝達はこのレベルでも行われるという目星をつけての行動だ。そもそもネット上にまで情報が上がってないことも充分あり得るが、それはそれ。やれることからやっておく。
 「サファイア、何人飲むか聞いてきて」と言いつつ二杯目のコーヒーに熱湯を注ぐ。そして慣れない旧式のインターフェイスにやや思考して、凛は署長のメールフォルダを開いた。「イリヤ様と、セイバー様、ル若手のホープを離党に追い込む大物YouTuberビーの三杯です」と言うサファイアの声に生返事を返しながらその件名に目を通す。どうやらかなり混乱しているようで、昨日今日でメールのやり取りは百倍以上に膨れ上がっていた。「あのステッキがコーヒーを……?」とこぼすも四杯目を注ぐ。そして注ぎ終わると、一つのメールを開き言った。「サファイア、これ持っていける?」
 凛の開いたメール。『アインツベルン氏からの連絡について』という件名のそれの文面を見た途端、自身の再現された脳内シナプスに痛痒が走るのを彼女は覚えた。ウイルス、そう発想すると同時に対抗が始まる。数秒のめまいの後、彼女は眉間にシワを寄せながらも口元に笑みを浮かべてそれを読んだ。

(魔術的な暗示を画像としてメールに添付する……てとこね。古典的な手だけど作りが荒い。)


563 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:15:08 agpQ0vEM0

 内容は、四時からアインツベルンのマスター達が記者会見を柳洞寺で行うというものだった。記者会見という言葉に引っ掛かったが、どうやら土着の魔術師やその関係者の政府の人間向けのものらしい。となると先の暗示は魔術師とそれ以外を選別するようなものか。凛はそう判断するとメールを読みすすめながら行っていた政府高官へのクラックに目を移す。予想通り、政治家、秘書、官僚と立場はバラバラなものの、数十人規模で同様のタイトルのメールが見て取れた。そして彼らの多くがそれに返信していることも。

(署長がこれに返信した形跡はない。消した可能性も見た限りゼロ。返信した人間は魔術師と見て間違いないかな。それよりこのURLって王立公園庁って書いてあるんだけど……胡散臭さ満点ね。)

 更に続けてクラックを進める。彼らのPCの画面を表示すると、そのほとんどが動画を見ていた。ウィンドウの中では、いまいち日本の知識には乏しいがそれでも寺とわかる場所で、三人の銀髪の少女が机に置かれたマイクを前に話している。その真ん中の人物は彼女にも誰かわかった。
 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。今先程の部屋でコーヒーを飲んでいるであろうイリヤと同姓同名瓜ふたつの少女がそこにいた。
 ご丁寧に、彼女の前のテーブルには折ったコピー用紙に安っぽいフォントで名前が印刷された名札がある。彼女の右にいる褐色のイリヤがクロエで、彼女の左にいる似てないイリヤがルナというらしい。あの念話を行っていたのはクロエということか。そして謎のマスターXはルナだろうか。コーヒーに口をつけながら思考を巡らす。そしてどうやら自分の危惧は現実のものだったと噛み締めていたところに、サファイアが戻ってきた。
 怪しまれたか、そう凛は警戒する。だがサファイアから発せられたのは全く別の言葉だった。

「凛様、門の前に警官が来ているようです。」

 凛は微かに指を動かしボリュームを上げた。彼女の脳内に直接響く音は、今はイリヤの声がハッキリ聞こえる程だ。そしてそうなると、彼女が何を言っているかもハッキリわかるようになった。

『――セカンドオーナーである遠坂家の暴挙を止められず神秘の暴露を許したこと、また彼女のサーヴァントであるセイバー、アルトリア・ペンドラゴンが第四次聖杯戦争に続いて冬木市へ被害を広げていること、謹んでお詫びいたします。』
(アイツ……)

 苦い顔で凛はコーヒーを煽った。この発言にこのタイミングでの警官。そしてあのメール。三つ揃えばイリヤが警察を動かしたのは間違いない。御三家という立場(ロール)を利用してNPCを動かすなど邪道も良い所だが、こちらも立場上は御三家、やられた自分が甘かったと自戒する。どうやら無意識の内に彼女の幼いアバターに惑わされていたようだ。

「あの警官が操られてる可能性もある。イリヤ、暗示はできる?」

 部屋に取って返すと凛は開口一番に言った。既に敵は仕掛けてきている。あちらが警察を動かしてきた以上、聖杯戦争が長引くのは不利だ。冬木市から出たらどうなるかわからないが市内に留まれば常に警察に追われ続けることとなる。その面倒臭さはテロリストとして国際指名手配された彼女には嫌というほど理解しているものだ。またキャスターが存在することも忘れてはならない。マスターがあの慎二であるのに一日でそれなりの陣地を作られたのだ、時間は彼らの味方である。
 故に、ここで決戦を強いる。こちらの強みは対軍宝具による戦略爆撃と圧倒的な白兵戦能力。つまりは戦闘力の高さだ。それを押し付け押し切る。アインツベルンと間桐が手を組まないうちに各個撃破するのだ。また聖杯戦争はタッグ戦、相手のマスターさえ宝具で吹き飛ばしてしまえばたとえ神話の大英雄でもどうということはない。宝具を打ち込みマスターが倒せればそれで良し、出てきたところを殲滅しても良しだ。

(セイバーには令呪を使うことになるだろうから最後の手段だけど、ここまで来たら考えておいた方が良い。)
「はい。じゃあ私が話してきますね。サファイア、リンさんに着いてて。」
「この家の間取りは知ってるわね。もしものときは直ぐにダイニングに来て。私はセイバーとバリケードを作っておくから。セイバー!」

 凛の言葉で柳洞寺を見張るランサーを除いた全員が動き出す。イリヤはいつでも転身できるようルビーを握りながら玄関へと移動した。インターホンがまた鳴る。サファイアの話では凛は一回目のインターホンの音に気づいていなかったという。それを凛の疲労によるものだと判断して自分が頑張らねばと気負うと、彼女は少し緊張した声で応えた。


564 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:20:08 agpQ0vEM0


「はい、もしもし。」
『あ、冬木警察署の尾留川と申します。発砲事件について注意喚起に参りました。』
「は、はあ……ルビー?」
「ありがちな口実だと思いますよ。理由は何でもいいんでとにかくこっちをおびき出そうっていうパターンですかね。とりあえず凛さんについて聞かれたらはいないって言っときましょう。」
「そっか……ええっと、オルミ?さん、発砲事件って何ですか?」
『ええっと、二件ありまして、一つはこの近くで男性が銃撃された事件と、もう一つは深山町の商店街で自動小銃が乱射された事件です。』

 イリヤとルビーは視線を交した。なんだか思っていたのと話が違う。相手は普通に事件の話をしだした。というかそもそも凛について少しも聞かないどころかインターホン越しに話すことについてもなにも言わない。そもそも本当に警察なのだろうか?とイリヤは疑問に思うも、「凛さんから来ました。冬木警察署には尾留川っていう生活安全課の婦警がいるみたいです」と言われまた疑問が深まる。相手は警官だがなにか警官らしくない。

「尾留川さん、詳しく教えてもらえますか?」
「はい!まずこの近くであった発砲事件は、今から三十分程前に発生しました。コンビニから帰る途中に通話しながら歩いていた男性が何者かに撃たれたとのことで、その男性と通話していた方から通報がありました。事件現場はここから川の方に数百メートルほどの場所だと思われます。不審な物音などは聞きませんでしたか?」
「えー、寝てたんでわかんないです。今も何が起こってるのか全然わからなくて……」
「そうですよね……隕石が三回も落ちたり巨大な雹が降ったり。本当に……」

 どうやら慎二も警察に頼ったようだと凛は推測する。この聖杯戦争の御三家はやけに警察と関係が深いようだ。

「ああ、ええっと、商店街での事件はどんな話ですか。」
「あ、すみません!で、はい、こっちの事件はさっきの事件とほぼ同時刻に起こりました。隕石で被害を受けた場所に自衛隊が展開していて、そこから被疑者が自動小銃を持ち出し、マウント深山で数十発乱射したようです。被疑者はその後駆けつけた警察官と銃撃戦になり車に乗り逃走、またその際に少女を人質にしました。被疑者は――」

「――衛宮切嗣、五十歳。」

 イリヤは気づけば足を靴に入れていた。

「ダウト!衛宮切嗣は警察のデータベース上に存在しない!そもそもその男は十年以上前に死んでる!罠よ!」
「って凛さんも言ってますよってダメだこのパターン聞こえてない!斬捨御免!」
「グハッ!?」

 ルビー越しに話された凛の言葉も耳に入らず、イリヤは玄関の鍵を開けようとする。それをルビーはどこからか取り出した怪しい薬剤を皮下注射することで押し留めた。イリヤの脳内がキマっていく。しかしその感覚も次の衝撃で消し飛んだ。

『柳洞寺に動きがあった。強い魔力が来る。』
「皆!間桐から何か来る!」
『青のBMWに乗って逃走中。ちょうどあんな感じにナンバーを隠した――ってあれだ!?』

 寺から炎の波が飛んでくる。ランサーが迎撃に宝具を放つ。遠坂邸に宝具が突き刺さる。セイバーは素早く地下へと向かう。インターホンから婦警の悲鳴が上がる。なぜかBMWから発射されたカノン砲が門を吹き飛ばし遠坂邸の敷地に猛スピードで乗り込む。

「令呪を持って命ずる、来てくれクロエ!」
「令呪を持って命ずる、やっちゃえバーサーカー!」
「令呪を持って命ずる、ここに来てバーサーカーさん!」
「パパッ!?」
「イリヤッ!?」
「ニセモノ!」
「イリヤ!ルビー!」
「なんで私の名前を!?」
「イリヤが二人――来るぞルナ!」
「――急々如律令!」
「■■■■■■■■■■■■!!!」

 マスターが、サーヴァントが、あるいは礼装が、それぞれに声を上げ動き出す。かくして4時9分30秒、この聖杯戦争最後の戦いが遠坂邸を舞台に始まった。


565 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:30:33 agpQ0vEM0



 -1:23:45 埋没交渉・間桐慎二はサーヴァントを見つけられるのか?


「そうだ!孫悟空だよ!」
「は?」

 アリス・マーガトロイドが「この磯臭い男は何を言っているんだ」と言わんばかりの目で慎二を見る。他の人間も大なり小なり似たようなものだ。だがそんな視線にはもちろん気づかず慎二は一人指を折っていく。「とうとう狂ったか」とアリスはそれを横目で見た後、天井を見上げた。
 クロエ達から攻撃を受けて約一時間。間桐邸地上部をほぼ吹き飛ばした砲撃は甚大な火災を引き起こしていた。堅牢な地下に損害はないが、地上部の基盤にヒビを入れられたことで天井の一部が断裂している。そこから消防車からの放水でもたらされた水が止めどなく流れ、花々をしとどに濡らす。そんな花を踏み締めてウロウロと檻の中の熊のように歩き回っていた慎二はニヤリと笑いながら言った。

「ヘラクレスの方のイリヤと一緒にいるサーヴァントは知り合いなんだよ。」

 一同――フドウは除く――に驚愕と困惑が走る。狂ったと思われていた男からもたらされた突然の情報。それは更に彼女らを振り回すこととなるのであった。

 さてもちろん孫悟空などというサーヴァントはいない。これは野良サーヴァントになっているだとか消滅したとかいう意味でなく、元からそんなサーヴァントはいないのだ。ではなぜそんなサーヴァントの存在を慎二が確信しているかというと別に彼が発狂したわけではない。彼には孫悟空という存在に心当たりがあるのだ。
 ちょうど今から24時間前、彼はあるサーヴァントと出会い、そして警察に補導されるハメになった。そのサーヴァントこそ孫悟空。金髪で派手な服を着ていてクラスはライダーで筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A、というのが慎二の見たそのサーヴァントだ。そして残る主従の数。日付が変わったタイミングでは残り十六組。うちホテルの八組とクロノ組の計九組がマスターかサーヴァント、またはその両方が死に主従を解消している。残りはオリジナルと同じく七組。内訳は間桐邸の慎二&キャスターにアリス&アーチャー、先程宣戦布告してきた凛&セイバーとイリヤ&ランサー、そしてイリヤ&バーサーカーとクロエ&不明なサーヴァントに、不明なマスターと不明なサーヴァントだ。この不明なサーヴァント二騎のうち一騎がライダーの孫悟空なのだ。となると残る一騎はアサシンか。慎二はそう考えるとどうクロエ達と話し合い孫悟空と話をつけるかを考え始める。
 ――もちろんこの考えは何一つあっていない。そもそも孫悟空というのは今から半日以上前に脱落したキャスター・兵部京介のヒュプノによる幻覚であり、そもそも前日に脱落した可能性を何も考えていなく、更に言えばこれは七種七騎の聖杯戦争ではないので残る一騎がアサシンなどと言えるわけもない。だが彼はそんなことはお構いなしにイリヤへと電話をかけた。そして。

『――じゃあ停戦だ。』
「ああ。一緒に聖杯戦争を止めよう!」

 なんか同盟を組めた。

「ちょっ、ちょっと待って下さい!展開が早くて何が起こってるからわからないです!」
(ついて行けない……私が!?)
「うるさい次は警察に通報だ!そうだよ補導されたときあの婦警から名刺貰ってたじゃないか!『あ、もしもし、警察ですか。間桐慎二です。はい昨日の。自分の友達の慎二が、電話してたら撃たれたんですよ。はい、はい、直ぐに捜査してください』よし行けるぞぉ!!」
「どういうことなの……?」

 何やら電話を勢い良くかけ、名刺らしきものを握り締めてハイテンションで捲し立てる。完全にイカれているとしか思えない。だがこの場の誰もそれを止められる者はいない。最大の暴力装置であるキャスターを慎二が独占している以上、彼の行動を妨げることは致命的な事態を招く。故にこの場の人間には彼に気づかれることなく行動する必要がある。だがそれはこの場ではない。
 3時45分45秒、燃える間桐邸の地下で慎二により聖杯戦争の展開を大きく変える狂行が行われる。そしてもう一つの動きが柳洞寺で起きていた。


566 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:34:34 agpQ0vEM0



 -2:22:22 定石無視、クロエ・フォン・アインツベルンの憂鬱……



「貴様ッ!図ったなッ!」
「……僕はただ事実を言っただけだ。」
「信用しない方がいいわ。ズルくて嘘つきだから。」
(僕はこんなに娘から恨まれていたのか……)
「……なにやってんの?」

 2時47分8秒、クロノの発生させた氷塊を認め寺の建物に戻ってきた衛宮切嗣のアーチャー、クロエ・フォン・アインツベルンは、そのマスターが同盟を組んでいるルナのバーサーカーに鎌を突きつけられているところに出会した。
 暗示を使ったのであろう、避難民に解放されていた一室を貸切状態にして集まる聖杯戦争の参加者達の間には険悪な空気が流れる。美遊のバーサーカーの襲撃で収まったと思ったらアーチャーがいない数分でこれである。いったいなにがあったのか、その原因を問うアーチャーに、バーサーカーは鎌をアーチャーに向け直して睨みながら言った。

「衛宮切嗣。お前が今言ったことをもう一度言え。」
「聖杯の悪についてか。悪いが、僕も第三次聖杯戦争で何かあったというレベルのことしかわからない。それとも反英霊についてか。」
「しらを切るか……イリヤスフィール!お前は御三家の一つ、アインツベルン家の人間だな?」
「ええ。」
「アーチャー、お前はイリヤスフィールと双子だな?」
「……そんなこと、はいそうです、って言うわけ無いでしょ(さすがにバレるよね)。」
「まあそうだろうな。それに言わずともお前とイリヤスフィールの魔力を感じ比べればわかる。そしてイリヤスフィール、お前は御三家の間桐、同じく御三家の遠坂としばらく行動を共にしていた、そうだな?」
「そのこと?そうだけど、それがどうしたの?」
「これで最後だ。この聖杯戦争は、『お前達が言う冬木の聖杯戦争とは違う』のだな?」
「ああ、別物だ。そもそも僕は十年以上前に死んでるし、イリヤは「イリヤって呼ばれたくない」……ミス・アインツベルンはこの聖杯戦争に来る前に冬木の聖杯戦争に参加していたという。嘘だと思うなら寺の裏を見ればいい。少なくとも、僕が死んでいたという事実は僕の墓を見ればわかるはずだ。」
「ああ、本当だろう。伝説上の英霊を呼び寄せられるのだ、墓を暴いて死者を呼び寄せるなど造作もないだろう。あの五魔将共のように!」

 音を置き去りにして鎌が振るわれる。空気の断裂する音を響かせアーチャーの元から鎌を離すとバーサーカーは苦々しく言った。

「この聖杯戦争、お前が言う第六次聖杯戦争には、本来の聖杯戦争を行える御三家の人間が全員いる。特にアインツベルン、お前は聖杯はアインツベルンが生み出したと言ったが、そのアインツベルンの人間はここに三人、カルナのマスターも同じ声だったことを考えると都合四人も参加している。これがどういうことがわかるか?」

 そして手の髑髏から炎を迸らせながらバーサーカーは順に一同の顔を見渡し続けた。

「まず間違いなくこの聖杯戦争は御三家の人間を確保することが真の目的だ。儀式を行える人間を幻に捕らえれば、本物の聖杯戦争を行うにあたって大きな財となる。こんな茶番に巻き込まれるとは……!」


567 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:41:45 agpQ0vEM0

 バーサーカーの告げた仮説、それはこの聖杯戦争そのものが本物の聖杯戦争の為に御三家の人間を監禁する檻というものであった。なるほど、とイリヤはその仮説に一応の理を認める。檻自体を聖杯戦争にしてしまえば、御三家が連絡を取り合うことは難しい。それは他ならぬイリヤ自身がそうしようなどと全く思わないからだ。なにせ過去の聖杯戦争でもそれぞれに反則を行っていたのだ、仮に話し合ったとしても絶対に気を許すことも信用することも、ましてや協力することもあり得ない。他の二家が協力して自分達を嵌めようとしている可能性が絶対に残り続けるからだ。その脅威を無視して腹を割って話すほどそれぞれが協力できるのなら、初めから聖杯を御三家で順番に使っている。あり得るとすれば御三家が互いに互いを牽制し合う状態だが、それが膠着状態になってにっちもさっちもいかなくなることも、イリヤは半日前のこの寺での会談で理解していた。ただの情報交換ですらあれだけ時間がかかり結局あの六組で一塊になることはついぞ無かったのだ。ましてや聖杯戦争がまやかしであるなどと言えばその段階で宣戦布告されてもおかしくないだろう。
 だがイリヤはその主張を認めた訳ではなかった。確かにバーサーカーの仮説ならば御三家は確実に協力できない。それだけでなく聖杯戦争を中途半端に知っている人間ほどこの聖杯戦争を『そういう聖杯戦争』と受け入れてしまうだろう。だがそれにしては些か杜遷なところがあるのだ。

「バーサーカー、貴女のお話は面白いけれど、それは考えにくいわ。」
「ふむ、なぜだ。」
「簡単よ。確かに御三家の人間はどこも参加しているけど、一人人質にならない人間がいるわ。」
「貴様の父親のことか。確かにコイツはアインツベルンとはある種距離があると言える。だが貴様や貴様の双子に影響を与えられるという意味では申し分無いだろう。それにコイツは聖杯戦争のリピーター、コイツの存在だけで御三家の協力は破綻する。墓があることを考えれば死霊として呼び出すのも簡単なはずだ。」
(僕は疫病神か何かなのか。)
「キリツグじゃなくて、シンジよ。間桐家の間桐慎二は魔術師じゃない。アレじゃ人質にもなんにもなりはしないわ。」
(間桐慎二……誰だっけ。なんか名前聞いたことあるんだけどなあ……)
(間桐慎二……間桐鶴野の息子か……)
(どうしよう……先から全然話について行けてない……)

 アーチャーが、切嗣が、ルナが、三者三葉に二人の会話を受け止め、話は更に続く。バーサーカーを鎌を消すと右手を顎に当てながら話した。

「その慎二という間桐の人間は、本当に魔術が使えないのか?それにたとえ全く使えなくとも、その身体を調べれば間桐が使う魔術の情報が得られる。そうでなくとも家のものが攫われたとなれば間桐家の人間には充分な抑止力となるだろう。」
「あれが演技だったらそれだけで英霊になれるってくらいに無様な男よ。私、アレより酷いのはキリツグしか知らない。」
「おい衛宮切嗣。お前はいったいコイツに何をしたんだ?いったい何をどうすればここまで嫌われる?」
「……子供のいる前で話すことじゃない。」
「……あっ。貴様、やはりそういう趣味の……」
「撃つぞ。それは断じて違う。」
「自分の娘にそんなわいせつな格好をさせて奴隷として従わせる男を信用するとでも?」
「わいせつな格好言うな。」
「サーヴァントの君がサーヴァントを奴隷と呼ぶとはね。」
「バーサーカー、キリツグは前回の聖杯戦争のとき、サーヴァントを道具みたいに使ったらしいわ。」
「イリヤアンタどっちの味方なの!」
「キリツグの敵。」
「え!?アーチャーさんって切嗣さんの子供なの!?」
「いまさら……あっ。」

 やっちまったと言わんばかりの表情をするアーチャーの顔を見てほくそ笑みながらバーサーカーは考える。とりあえずこれでアーチャーが切嗣の娘でありイリヤと血の繋がりがあることは確定した。となると更に謎が深まる。英霊がサーヴァントになるという前提がある以上切嗣の娘は英霊ということだが、果たしてそんなことがあり得るのか。イリヤの魔力は確かに素晴らしいが、ここから成長すれば英霊になれるのかというと、微妙な線だろう。もっともアインツベルンは言わば聖杯戦争の主催者、この聖杯戦争でも裏技を使ったかあるいは真の主催が仕向けたか。考えられる仮説はいくつかある。だが今は、まずは先の問題からかたをつけるべきであろう。


568 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:47:07 agpQ0vEM0

「お前達が父娘だというのは置いておいてだな、その慎二には人質としての価値は無いのか?」
「家族からも嫌われてそうだし無いと思う。」
「……切嗣、お前は慎二という人間は知らないか?一般論としてどう思う。」
「無くはないが薄い。魔術の観点から見れば、大した痛手では無いだろう。間桐は使い魔の蟲を使うことに特化している都合上、本人の肉体に残る魔術的痕跡は一般的な魔術師に比べ限定的だ。なにより魔術は一子相伝が原則、十を超える頃までに魔道を修めていないのなら、後継者というわけでもない。」
「そうか……では、単純に家族として考えれば。」
「無いな。」
「断言するな。その根拠は?」
「間桐の当主を一言で言うと、人間の屑だからだ。」
「えぇ……」

 バーサーカーの中で人間の屑である切嗣から人間の屑と呼ばれる程の人間。彼女にとっては想像の埒外の代物である。

「一回目の聖杯戦争から生き残っている怪物。それが間桐の当主だ。第四次聖杯戦争では魔道とは無関係な自分の息子をどういう理屈かはわからないが魔術師にして参加させた。僕が知る限り、そんなことをすればまず身体が保たない。どんな魔術を用いてもね。」
「その息子は何歳だった?」
「26だ。」
「まあ無謀な年齢だな。息子を道具として使い潰したか。待て、そうなるとこの聖杯戦争で一番得をするのは間桐では?」
「さっきと言っていることが違うぞ。」
「私は柔軟な人間でな。さて、こうなると間桐は後継者の跡目争いの可能性を減らし、更に最低でも遠坂一人にアインツベルン二人を抑えたことになる。特にイリヤスフィール、お前とお前のバーサーカーがいなくなれば、本物の聖杯戦争は大きく間桐が有利となるだろう。」
「それってもしもの話でしょ?」
「ああ。だがこのもしもで誰が得をするのかはハッキリとしたはずだ。」
「えっとつまり、これからどうするんですか?」

 一人話から取り残されていた竜堂ルナが頭上にハテナマークを浮かべて問う。するとそれまで饒舌だったバーサーカーははたと黙った。

「こういった幻は内から強い力を加えればなんとかなるものだ。宝具か何かで……」
「サーヴァントを召喚して戦わせるような結界をサーヴァントの力で壊せるとは思えないんだけど。」
「……これは……打つ手が無い……いや!そんなはずは!」

 詰んだ。

「あ、でも聖杯が溜めた英霊の魂が座に戻る時に孔が開くからそれを使えばここから出られるかも。」
「それだ!」

 なんとかなった。

「そもそも孔が冬木の聖杯みたいに開くとは限らないんだけど。まあでも第二魔法ぐらい実現できるはずだわ。並行世界に行くのと同じ要領でここから出られると思う。」
「私としてはとりあえずは、その聖杯を確かめて見たいな。ところでその聖杯はどこにある。まさかこの世界の内側に無いなどと言うことはないだろうな。」
「……聖杯はサーヴァントが倒れるほど現れやすくなる。今回が第六次なら、御三家の遠坂の屋敷よ。」

 言葉を濁すイリヤを無視してバーサーカーは顔をほころばす。イリヤがなにか言い淀んでいることはわかっているが、それを考えるのを後回しにしようとして、しかし彼女が悩む理由とは全く別のことでバーサーカーはイリヤが言い淀んだ理由を勝手に察した。

「遠坂は間桐と同盟を組んでいたのでは?」
「ええ。さっき飛び蹴りしてきた同盟。」
「……まさか、既に屋敷に奴らが……」
「それは違うわ。私が射ったのは遠坂邸とは明らかに違う。」
「となると、間桐の家か?なら遠坂邸は空いているということは考えられないだろうか。重要拠点を空にするのは危険も大きいが、御三家同士で同盟を組むのならそのぐらいのことは求められるもの、というのは願望が過ぎるだろうか。」
「そうだとしてもあっちは遠坂邸のすぐ近くよ、こっちが近づいていったらどうやってもバレるわ。」
「今だって私達の上にはアーチャーの使い魔が飛んでるもの。」


569 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 00:48:41 agpQ0vEM0

 二人の切嗣の娘の言葉にバーサーカーは嘆息する。なんとか起死回生の可能性を見つけたが、気づけば彼女の危惧どおり他の御三家が障害となる展開になってしまっていた。だがここでヘタれるようでは魔王などと名乗っていない。
 しばらくして、バーサーカーは唐突にニヤリと笑う。その顔はイタズラを思いついた子供のような顔であった。


「で、これ?」
「ああ。」
「説明して?」
「記者会見だ。」
「なんで?」
「決まっているだろう、嫌がらせだ。」

 ある一人のマスターが凶弾に倒れたのとほぼ同じ時刻、柳洞寺のお堂はだいぶ様変わりしていた。避難民も住職もなぜか皆建物の外に出て、中にいるのは奇抜な服や奇妙な杖や珍妙な動物を有する者達ばかりだ。そう、彼らは魔術師であった。

 ここで今回のバーサーカーの策略を説明しよう。バーサーカーの奇策、それは『他のサーヴァントの破壊工作への便乗』と『NPCの抱き込み』である。
 まず『他のサーヴァントの破壊工作への便乗』、これはライダー、少佐の出した破壊工作の怪文書を自分が出したものとしてNPCの警察を脅迫するという手を取った。ライダーの怪文書にある夜15時という記述に想像がいくように夜の三時丁度に警察に電話をかけ、寺の森の一角をバーサーカーの魔術で燃やし盗んだ自衛隊の装備を写真で送れば、拍子抜けするほど非常に簡単に騙すことができた。爆破予告のあった七ヶ所中四ヶ所で爆破があり更にもう一ヶ所で爆弾が見つかったとなれば警察も動かざるを得ない、というNPCに残っていたライダーの破壊工作スキルの影響にも期せずして便乗する形になったのだ。
 そして『NPCの抱き込み』、こちらはバーサーカーの原案に切嗣が手を加えることで記者会見という形となった。当初バーサーカーはそのカリスマでNPCを間桐邸にけしかけようと考えていたが、「お前では無理だ」と判断した切嗣により、彼の持つある情報で全く別のものとなる。それはNPCの魔術師の伝手であった。時計塔に聖杯戦争のマスターとして連絡をとると共にNPCの魔術師の名前を出せば、間もなく寺にいた避難民の中から魔術師と名乗る人間が名乗り出てくる。そしてそのまま魔術師達との情報交換という名の間桐遠坂同盟ネガティブキャンペーンへと移ろうというのだ。彼ら魔術師達を指揮することはできないが、流す情報を操作することでわかりやすい目標を与えることはできる。こうして今まで全く役に立たなかった軍略スキルと破壊工作スキルがついに日の目を見る時が来たのである。

「それだけではない。あの時計を見ろ。時間が十分早くなっている。これを利用すれば我々の動きを十分誤認させることができるのだ!」
「なるほど(単にライブではなく十分タイムシフトすれば良いだけだな)。」
「ふーん(ライブを遅らせれば良いんじゃないの)?」
「そう(意味あるのそれ)……」
「(それなんか意味あるのかな)……」

 気がつけばだんだんと話が大きくなりいつの間にかマスター達皆で時計塔の回線で生放送をすることにになっていたりもしたが、概ね計画通りである。警察への脅迫も署内の人間の手引きで魔術師が侵入し更に効果を増す事ができそうだ。さすがに警察の装備を獲得するのは難しいが何かしら引き出せる物はあるだろう。
 切嗣は缶コーヒーを飲み干すと一度境内に面する廊下へ出た。ドタバタとしている間に聞かされた氷塊というのはここからでもよく見える。ミサイルのようなものが氷漬けになっているのをなんとも言えない表情でしばし眺めていると、後ろからアーチャーの声が聞こえた。

「で、私はマスター役なわけ?」
「ああ。イリヤ、クロエ、ルナ、この三人でマスターとして会見する。僕が故人だと知っているNPCも多い。さっきの電話は暗示で一般人を喋らせたということにしておいてくれ。今何時かい?」
「今は、3時34分、違う、十分早いから3時24分。」
「ならあと6分で初めてくれ。魔術師達には20分遅らせて放送するように。」
「急ぎ過ぎてない?」
「時間が無いからね。この時差で釣り出されればそれで良しさ。僕達はまず大聖杯を抑えなくちゃならない。この聖杯戦争を調査するためにも、僕達が優勝したときのためにも。」

 そして聖杯を破壊するためにも、とは言わずに言葉を切る。ここから先はあまりに変数が多すぎて予測など不可能だがなんとかしなくてはならない。
 切嗣の元に警官が現れる。先の脅迫の結果、NPCからもう少し爆破予告犯らしく行動することが求めれていた。わざと警察を挑発するような行動が。
 切嗣は最後に一度クロエを見ると参道ではなく森を降り始めた。


570 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 01:09:56 agpQ0vEM0



 -58:01 のび太の聖杯戦争


「狂介さん!狂介さーん!!」

 柳洞寺で記者会見が始まったのと同じ頃、のび太は深山町を走る。方角的にはこっちで合ってるはずだと信じ、人が隠れているであろう路地や物陰も丁寧に探す。声を上げ返事が帰ってくるのを待つ。無論それに答える声は無いが、彼はひみつ道具をライト代わりにして狂介を捜索していた。
 彼の持つひみつ道具、テキオー灯は彼がドラえもんのポケットから引き当てた三つのひみつ道具のうちの一つだ。あとは銃型のイマイチ使い方が思い出せないものと、よりによってなんの役にも立たないものを引き当ててしまった。結果まともに役立っているのはこれだけ。直接戦闘に役立つものはゼロである。そのテキオー灯も使用経験が多いことが幸いして間桐邸の火災に使って切り抜けられたが、今は単純にライトとして使用しているに過ぎない。そしてそれももうすぐ電池切れになろうとしていた。
 のび太が叫びながら走り回ること十数分。ついに息が続かなくなり公園の近くでへたり込む。深山町の南部は丘になっていて意外と体力を削られる。声を出して走ればなおさらだ。そして足を止めると思い出されるのは、狂介の最後の姿。凛の姿、美遊の姿と次々に出てくる。誰も彼もつい一時間前には共にこの聖杯戦争を止めようとする仲間だったはずだ。それなのになぜ……
 奮起して立ち上がろうとし、膝が上がらずまたへたり込む。もとより運動神経が悪いのび太ではひみつ道具の助けがあっても限界はある。そんな自分を情けなく思いながらも休むことしかできないと、自然頭だけ動いていた。

(美遊ちゃん……なんであんなことしたんだろう。)

 頭に浮かぶのは、一番の疑問だ。凛の裏切りも、冷淡な慎二達も、彼の頭でだってなんとなく理屈だけはわかる。だが美遊だけは違う。全くわからない。故になによりも頭に残る。酸欠気味の脳でもそれを追い出すことはできない。

(うーん……なんか大事なことを思いついた気がしたんだけどなあ……)

 だがその答えを出すことなどのび太にはできなかった。美遊はなにかとても大事なことのためにあんなことをしたのだろう。それはわかるか、それだけだ。真相に辿りつくためのピースは、残念ながら彼の手元には無い。あの間桐邸に置いてきてしまったそれは、のび太を答えから遠ざけていた。いや、のび太から遠ざかったのだ。そして彼は近づいてしまった。この聖杯戦争で息を潜める仇敵に。

「スッゴい深刻そうだね。大丈夫?」
「うわあ!?」

 公園の植え込みをひょいと飛び越すようにのび太の頭上に現れたのは、シュレーディンガー准尉だった。
 どこにでもいてどこにでもいない、その特性を持つ彼は自在に場所を行き来できる。彼は間桐邸に伝令として戻ったところ慎二の発狂とのび太の不在を目撃し、こうして彼を『保護』しに来たのだ。
 のび太からすればドラえもんとナノカを殺したことが濃厚な相手である。自然と身構えるが、しかしそれが無駄な抵抗だとはわかっていた。今の自分にはなんの武器もない。それでは吸血鬼どころか同い年の小学生とだって喧嘩にならないだろう。
 だがそれでも負けてなるものかとのび太は立ち上がる。ドラえもんとナノカの意思は生きている。それを生かすも殺すものび太次第だ。止まらない限り道は続く。その道を歩くのは、誰でもないのび太だ。
 勇気、蛮勇、熱意、決意、殺意。様々な感情がのび太の中で荒れ狂う。だがその行動は淀みない。准尉のホルスターから拳銃を抜きそのまま撃つ。それをワンアクションで実行せんとし、猛然と腕が伸び。そして。

 銃を先に抜いたのは、准尉だった。

「――どういうこと……」
「うーんとね、良い事考えたんだ!」

 ホルスターごと銃をベルトから外し、准尉は笑いながらのび太へと差し出す。手の中に重たい感触と寒気が拡がる。その外見年齢相応な笑みにのび太は言い知れない不安を覚えた。そしてその不安を増す言葉が告げられる。

「僕と契約して、マスターになってよ!」


571 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 01:11:58 agpQ0vEM0



 -54:59 ヘラクレス、侵攻


「■■■■■■■■■■■■!!!」
「……っ!」

 遠坂邸周辺の民家をなぎ倒しながら進むバーサーカー・ヘラクレスの振るう斧剣がランサー・カルナへと迫る。純粋な筋力をフルに活かした暴力はランサーといえど防御ではなく回避を選択せねばならぬものだ。カルナは回避の勢いを利用してそのままバレルロールのように回転し、バーサーカーの背中を狙う。ヘラクレスの異様とも言える反応速度を魔力放出による更なるスピードと技巧で上回り槍が深々と突き刺さ――らない。深度ゼロ、1mmもその槍はヘラクレスの表皮を破らない。

「■■■■■■■■■■■■!!」

 雄叫びと共にカルナへと迫るは、ヘラクレスのカウンター。それを後方に飛ぶことと民家を緩衝材にすることでやり過ごすとカルナは炎で高度をとる。一秒前まで自分がクッションにしていた家がきれいにヘラクレスに整地されたのを見ると、そのカルナの目に光が宿る。宝具だ。

「『梵天よ、地を覆え』!」
「■■■■■■■■■■■■!!!」

 絶叫しながら上空へと跳躍するヘラクレスの眼球にブラフマーストラが直撃する。瞳に捉えたのならば外すことはない、光速のAランク宝具だ。それを受けたバーサーカーはその眼球から脳、頭部を須く焼かれ――ない。そのまま何事もなかったかのように突っ込む。そしてカルナの防御の上から殴り飛ばすと未遠川の水柱へと変えた。

 ヘラクレスのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン達柳洞寺の三組のマスターの遠坂邸奇襲より五分。ヘラクレスは都合三度殺されていた。
 3時30分に始め45分に終えた記者会見から今までの約三十分間、マスター達はそれぞれ柳洞寺の森から山を降り(イリヤはルナに抱えられてだ)、警察車両によって密やかに遠坂邸へと接近していた。途中切嗣がカバーストーリーへの協力として深山町商店街での銃乱射などもさせられたりしたが、このことで魔術師達は聖杯戦争の損害をなんとかテロと警察に記憶処理をできると希望的に考えていた。もちろんそうなるといったい犯人は誰だという事になり、それが死んだはずの衛宮切嗣となれば彼らも非常に困惑しているのだが、そんなことは聖杯戦争全体から見れば些事だ。あまりに被害が大きすぎてとてもではないが死人一人にかまっていられない。まるでドラゴンボールのセルゲームがごとく全世界に生中継される聖杯戦争の前では単なるワンイベントでしかないのだ。そんなこんなで魔術師達からの追及も逃げ切り、切嗣はやたらと武装が充実したBMWを暗示をかけられた警官から『強奪』していた。
 さて、ここで彼らの作戦を再度見直そう。基本的には彼らの第一の目的は『遠坂邸の制圧』であり、そのために警官や魔術師のNPCを利用している。と言っても指揮を執れるわけではないのだが、地元の名士であり魔術師の顔役でもある御三家の周りに理由をつけて人を集めることは簡単なことだ。なにせ御三家はこの神秘の世界的暴露を招いた『容疑者』である。またその御三家のうちの二つが焼けた間桐邸の地下に潜んでいるというのも良い。消防隊に紛れてNPCが立ち入ることが容易であるからだ。


572 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 01:13:02 agpQ0vEM0
 だがここで三つ、彼らに誤算があった。
 一つは間桐と遠坂ともう一人のイリヤが同盟を組んでいるという誤算だ。会見が終わる直前という微妙なタイミングでかかってきた間桐慎二からの突然の電話、記者会見に臨むイリヤから携帯を預かっていた切嗣に告げられた「孫悟空に話がある」という開口一番のハイテンションな発言。「なるほど、コイツはイカれてる」と思わず言いそうになった切嗣だが、自分達の動きが露見した可能性や何らかの符号の可能性も考えて慎重に対応していたら、強引に停戦を締結させられた。もちろん切嗣としてはそんな停戦に応じる気はさらさら無い上に慎二が本当に停戦するなどと全く思っていないが、圧倒的に有利な彼らからの提案をむざむざ跳ね除けるメリットはない。先のライダーキック以来、カルナにアルトリアに他二騎も抱えるのが遠坂間桐の同盟だという認識のままでいたからだ。
 そしてもう一つの誤算は、遠坂凛ともう一人のイリヤが遠坂邸にいたことだ。彼らの認識としてはまさか凛が裏切っているなどとは思わない。三対四をわざわざ三対二対二にするなどというのはレアケース中のレアケースだろう。だがそのレアケースが起きた。彼らが四と思っていたのは聖杯戦争に勝利しようとする者と聖杯戦争を破壊しようとする者との呉越同舟、一枚岩どころか不倶戴天の敵同士である。そして彼らは自分達は間桐や遠坂に追い詰められていると考えていた。だがそれは間桐も同様であったのだ。その両者の判断ミスと情報の非対称が、奇妙な誤解に繋がった。
 そして今から五分前。無人の遠坂邸をどう制圧するか相談していたマスター達の前で最後の誤算が発生する。それは彼らが意図しないNPCの行動だった。間桐慎二が色丞狂介捜索のために通報した警察、それは彼がちょうど一日前に補導された尾留川という婦警のNPCであったが、彼女には二つの情報源があった。一つは彼女の名刺を頼りに通報してきた慎二からの色丞狂介捜索の通報。実は慎二は凛への嫌がらせとして彼女が狂介の動向を知っているように電話のあとメールで送っていた。そしてもう一つは警察からの情報。こちらも切嗣の銃乱射やそれに引っ掛けて凛の安否が不明であるという魔術師サイド、つまりは切嗣達の意思が介在した情報源だ。その二つが交ざった結果、彼女の中で『二つの銃撃事件で関係者として名前が上がった人物』と凛のことが立ち上がってくる。そしてたまたま深山町側にいたというのと新人の彼女が混乱する指揮系統からまたも放っておかれるという偶然が続けておき、彼女の遠坂邸訪問という更なる偶然が発生したのだ。マスター達の思惑と冬木警察署の組織のいい加減さ、そして単なる「近かったから」という偶然、それらが重なり切嗣達の前に彼女が現れる。
 そして婦警がインターホン越しに会話を始めたことで、切嗣は遠坂邸襲撃を決断した。ここが天王山であると認め、NPCと柳洞寺に残るルナのバーサーカー、ヒロに連絡を取る。まずヒロの破壊工作で敵拠点の動きを鈍らせ、その隙に切嗣達マスターはBMWを頼りに敷地内に突撃、その後動きを察知させないために寺に残していたサーヴァントを令呪で呼び出し、電撃的に敵サーヴァントを襲撃する。その間にマスター達は敵マスターを抹殺あるいは拘束する。これがその作戦の要旨だ。というかこれ以外に相手の対軍宝具をやり過ごす術がないので突っ込むしかないというのが本音だ。相手の索敵能力を高く見積もっていたからこそ、切嗣達は死中に活を見出す危険な手を合理的な作戦と判断して進んで行おうとしていた。


573 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 01:28:18 agpQ0vEM0

「■■■■■■■■■■■■■!!」

 そして今現在、切嗣達の賭けは正に正念場だった。ヘラクレスは『梵天よ、地を覆え』の一回とそれで死んでいる間にされた槍での死体蹴りの二回の合計三回死んでいる。これで残機は残り三。そして得た耐性はカルナの槍と一番使い勝手の良い宝具。こうなるとカルナは更なる宝具を切らねばヘラクレスにダメージを与えられず、またヘラクレスも更なる宝具を切られれば今度は殺しきられる。この状況、辛うじて不利なのはカルナだ。ヒロやクロエでは手出しが難しい高速戦闘をし続けねばならず、宝具を使おうとすれば二人から攻撃が飛んでくる。半人半魔のスキルを持つヒロの炎はカルナをしても無視できぬものであり、またクロエの矢もその爆発は侮れない。一方のヘラクレスはそんなものお構いなしに戦闘できる。流れ弾が当たらないわけではないがそれは彼に耐性を与えることにほかならない。結果カルナだけが彼女達の攻撃まで防御しなくてはならない分、最初は押していたがじわじわと拮抗状態へと持ち込まれていた。
 カルナは横目でクロエ達を見る。彼女達がいるのは、遠坂邸の屋根。彼の宝具を警戒してのことだ。これでは炎を使うことも難しい。では直接槍を、となるとあのヘラクレスをマスターのイリヤに近づけることとなる。それは避けねばならない。

「■■■、■■■■■■■ッ!!」
「――ゥッ。」

 ヘラクレスの黒く隆起した筋肉が躍動しカルナを強かに打ち据える。槍と鎧があるにもかかわらず単純に痛い。鎧で再生したばかりの半身の動きの鈍さが、かわせるはずの一撃まで受けてしまう。そのままヘラクレスは、カルナの左肘を極めながらのしかかった。生前の美しいレスリングとは似ても似つかぬ荒々しい技だが、単純な筋力でカルナを地に沈め、だからその違和感に気づかなかった。ヘラクレスからしてもタフと言えるカルナが、その時だけやけに貧弱だったことに。

「日輪よ(ヴァサヴィ)、――」

 槍の穂先が変形する。カルナはそれを自由な右足の指で操る。ヘラクレスを楯にし迫る炎と矢を耐える。そしてそれはクロノが美遊にそうしたようにヘラクレスの腹へと突きつけられた。

「――死に随へ(シャクティ)」

 カルナの目に炎が揺らぐ。一泊後、冬木に光が満ちた。


574 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 01:51:38 agpQ0vEM0



 -51:02 航空参謀赤城


 カルナの第四の宝具がヘラクレスを貫いたその頃、遠坂邸の地下でも戦況は変化していた。
 単縦陣でのセイバー・アルトリアとの反航戦。狭い地下と足の遅さも相まってマスター達の壁にしかなれないアーチャー・赤城と、それを楯にして銃撃するアーチャー・まほろ、その二騎に攻撃がいかないように矢面に立つキャスター・フドウであったが、既に開戦より十分弱経っている。そうなると不利なのは、赤城達だ。

「――はっ!ガハッ!?なんだ、体中が……痛い……」
(よし、戻った。)

 アリスは慎二が意識を取り戻したことを認めると、かけていた回復魔術を身体全体から令呪のある腕に絞る。そこにあるべき赤い痣は、既に一画使われていた。

 赤城達がなぜ今遠坂邸で戦っているかというと、それは同盟内での議論の結果だった。結局慎二の暴走後彼がしたことは、ヘラクレスの方のイリヤへの電話とNPCの警官の電話のみである。それ以外は何もしていない。会話らしき会話もゼロである。そうして十分近くに渡って沈黙が支配する無為な時間が流れたことで、赤城は独自の行動を求められることなった。まずはアリスからの念話による求めにより18機6編隊の零戦の内5編隊をアリスの家に向かわせ、彼女の家から人形を取ってくるという任務だ。実際には鞄の封印さえ外せば後は自立して大型の物はアリスの元目指して動き、小型の物はそれについて動いてくるのでこれだけの大編隊で行くことは意味が薄かったが、期せずしてそれはカルナの目に留まることとなった。そして残る3機は、それぞれ冬木上空を旋回しての情報収集である。撤退したヘラクレスの方のイリヤ達や裏切った凛、出て行ったのび太の捜索を行っていたのだが、その際に新都からの発光信号を認めた。最後の大隊の吸血鬼達からの合流を望む連絡だった。
 ここでアリスは悩んだ。今のこの状況が続くのならば、アリスも離反してミレニアムと連携を深めるというのは悪くない選択肢だ。そうでなくとも彼らの戦力は魅力ではある。まず彼女はここで手札に一枚ワイルドカードを加えた。
 また赤城は、まほろからのび太捜索を発光信号で頼まれていた。先の零戦の旋回ものび太捜索を一つの目的としていたが、こうなるとなおさらである。結果赤城はミレニアムにのび太捜索を依頼することとなった。独自の行動を模索せざるを得ないアリスによって、間桐邸での存在感が減っていた彼らは再び表舞台に登る機会を得た。
 以上が赤城のここ最近の聖杯戦争の動きであったが、しかしこれらは赤城らが遠坂邸に殴り込みをかける直接的な理由ではないだろう。彼女がやったのは少しばかりの航空隊に指示を出しただけだ。ではなぜ彼女らは遠坂邸に殴り込みをかけたかというと、それはなんてことはないショボい理由、すなわち『間桐邸が火事だったから』に尽きた。
 クロエの攻撃より一時間。起こった火災は既にかなりの大事になっている。残っていた家屋も大部分が倒壊し、今も消防隊の懸命な消火活動が行われている。もちろんそれには間桐邸の中に踏み込んでの住人の捜索も含まれた。
 さてこうなると一番神経質になるのが慎二である。自宅を燃やされ、しかも外部の人間が踏み込んでくるなど今の彼にとっては看過できないものだ。また彼のキャスター・フドウが告げた「NPCに魔力を持つ者がいる」という報告も彼を追い詰めた。これは切嗣達がけしかけた魔術師達を察知してのものであるがもちろんそんなことは慎二は知らない。ただ彼としてはどうやってこの地下に踏み込ませないか、もし踏み込んだらどこに逃げるのかを考えるのみだ。

「風王(ストライク)――」
「カァァァン!!」
「――鉄槌(エア)!!」
「そこっ!」
「っ!やるな!」

 フドウの妨害に体制を崩しながらもアルトリアが放った風王鉄槌が、まほろが放った輝ける闇に解けるように消える。高い直感と技量でその射線から逃れた彼女の後ろには、今赤城達がいるトンネルと同型の穴が開いていた。


575 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 02:02:21 agpQ0vEM0

 これぞ赤城達が今ここにいる理由である。まほろの宝具『輝ける闇』は、その威力と操作性は折り紙つきだ。加えて魔力消費はゼロである。傷つき疲弊したまほろでも使うと決意さえすればどうということはない。彼女はこの宝具を交渉材料に慎二に持ちかけたのだ。「ここから誰にも見つからずに脱出する方法がある」と。その方法こそ「同じ町内にある遠坂邸まで宝具で岩盤を刳り貫いてトンネルを作る」というものである。新都で美遊と合流した凛より先にこっそり遠坂邸に行き乗っ取ってしまおうというのだ。この方法ならカルナの眼力もやり過ごしてとりあえず安全な場所を確保できるし、遠坂邸を使えなくすることもそこから別の場所に避難することもできなくはない。それに少なくとも救急隊員に付き添われてここから出ていくハメにはならないだろう。そして迷う慎二を後押しする理由もあった。カルナとヒロによる砲戦の発生である。ヒロの発した魔界粧・轟炎は遠坂邸だけでなく間桐邸まで巻き込んでいる。フドウの陣地により損害は軽微だが、慎二を脱出に向けてパニクらせることには成功していた。
 そして現在、空き巣に入ったら居留守を使っていた住人と出会し戦闘となっていた。実はまほろが脱出案を提案した時には既に凛達が家に帰っていることを赤城は航空偵察により知っていたのだが、アリスからの命令により黙っていた。アリスとしては一戦闘で一令呪を切らねばサーヴァントを戦わせられない慎二に付き合うなどデメリットが大きい、もうそろそろ相手の一騎か二騎のサーヴァントと差し違えてほしいと思っていたからだ。適当に慎二組をぶつけて後は柳洞寺の同盟に乗り換える。劣勢でも彼女だけならば転移もできるのだ、最悪赤城を殿軍にして後で令呪で呼び出そうという腹積もりであった。だが、残念ながら彼女のあては外れた。こちらはサーヴァント三騎にマジックアイテムも有しているのに、相手のセイバー一騎落とせる目処も立たない。それどころかこの戦闘で間桐の同盟は全滅しそうですらある。そしてどうやら柳洞寺の同盟も遠坂邸を攻撃している。こうなった以上勝ち目のない相手に勝たねば各個撃破されて終わりだ。

『急ぎ過ぎてたかしら……アーチャー、この場から貴女の力で脱出することはできる?』
『……戦艦としての私になれば、建物を壊すことになりますが、可能です。』
『そう。考えておいて。』

 そしてここで、アリスは聖杯戦争を自分の優勝で終わらせる決意をした。
 赤城が空母としての真の姿を表せば、この屋敷のマスター達はその巨体に圧殺されるか瓦礫に埋もれるかでまず死ぬであろう。そしてもしこの屋敷に全てのマスターがいるならば、それだけで優勝の目処が立つ。そして今、この聖杯戦争でサーヴァントを従える七人のマスター全員がここにいる。もしこれを止めようとすれば赤城の高い耐久を抜くほどの一撃が必要だが、それを振るえるのはまほろのみだ。他のサーヴァントはその余りの威力に室内で撃てば建物を倒壊させ自らのマスターを殺しかねない。故にここはまほろをその行動に賛同させれば勝利である。
 アリスは片手間に慎二を治癒しながら携帯を手に取る。慎二に更なる令呪を切らせる、吸血鬼達をこの鉄火場に呼び寄せる、赤城に宝具を使わせる、様々な手札がある。彼女はそのそれぞれのカードを吟味しながら戦況を見守った。


576 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 02:10:41 agpQ0vEM0



 -46:06 イリヤのパパはパパじゃない


 アリスが四騎のサーヴァントが渡り合う遠坂邸の地下で方針の転換をその内心で行っていた頃、遠坂邸の地上部の玄関では四人のマスターが睨み合いを続けていた。

 一人はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
 一人もイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
 一人は彼女達の父親の衛宮切嗣。
 そしてもう一人はイリヤ達と無関係な竜堂ルナ。

 その四人は、切嗣を中心に三角形になって話し合うことになっていた。議題は切嗣の手に持たれる一丁の拳銃。そしてそれが向けられるのは、彼の顎。

「もう一度言う。」

 緊迫の表情を浮かべるイリヤ達に向けて切嗣は言った。

「全員動くな。動けば僕は自殺する。」


 玄関前で出会いそれぞれにサーヴァントを展開するイリヤと柳洞寺の三組は、サーヴァントがその屋外で戦う一方でマスター達は玄関内での戦闘になっていた。反射的に魔力弾をもう一人のイリヤへと撃ちながらイリヤは後方に下がる。それをもう一人のイリヤは髪から生み出した使い魔で防ぎ反撃し、ルナが一息でイリヤへと距離を詰める。そして切嗣が一人反応が遅れ、それを見たイリヤは切嗣への接近のために着地した足を前に向ける。亜音速でルナとすれ違うと、イリヤはもう一人のイリヤと切嗣を挟んで向かい合った。

「梵天よ、地を覆え」
「■■■■■■■■■■■!?」
「アーチャー!屋敷を背にしろ!」
「言われなくたって!」

 開け放した玄関からはサーヴァントの激戦が音と土煙としてマスター達に届く。しかしそれを衛宮家の人々は感知しない。匂いも衝撃もヘラクレスの魂が削られていくのも無視して凍りついたように見つめ合う。一人ルナが困惑しながら「バーサーカーさん、頑張って!」と令呪を切り、とりあえず廊下の角で立って見守ることとした。

「イリヤ、なぜ君がここに?ここは遠坂の屋敷だろう?」
「■■■■■■■■■■■■■!!」
「どいてパパ、なんで私の偽者といるの……!」
「バーサーカー!街を火事にする気!」
「偽者はそっちでしょう、二次創作(クローニング)されたのか並行世界(スピンアウト)の私かは知らないけど、このキリツグは私のキリツグよ。」
「■■■■■■■■■■■■■!!」
「っ!!ルビー!!」
「そっちも矢の爆風をなんとかしろ!この屋敷を壊す気か!!」
「イリヤさんクールに!この偽イリヤは凛さんみたいに並行世「■■■■■■■■■■■■■!!」うるさいなサーヴァント!ちょっと黙らせてもらって言いですか!」

 爆炎と爆風と咆哮が一同の鼓膜を揺らす。互いの声は殆ど聞こえない中、ルナが壁を走って玄関を閉める。気休めにしかならないが、一応会話できる体制が整うと、改めて二人のイリヤは睨み合う。違いがあるとすれば、互いの使い魔と武器が互いだけでなく切嗣に向いたことだ。


577 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 02:20:06 agpQ0vEM0

『姉さん、凛から事情の説明を求められています。』
『事情なんて私がわかるわけないじゃないですか!なんなんですかこれ!』
「パパ、パパも、並行世界のパパなの?」
「だからそう言ってるでしょ。」
「貴女には聞いてない!!」
「落ち着いてくれイリヤ。」
「「落ち着いてる!!」」
「うわあ息ピッタリ。」
「鏡に向かって話してるみたい……て杖が喋った!?」
「あそのリアクション今いいです。」
「リ、リアクションって――」

 切嗣を挟んでのイリヤとイリヤの戦いはヒートアップする。それに合わせるように扉を挟んだ遠坂の庭園では、カルナが宝具でヘラクレスを蒸発させながら宇宙空間まで弾き飛ばしていた。余波で扉ごとルナが弾き飛ばされ、それに巻き込まれてイリヤ達三人もまとめて吹き飛ばされる。いち早く意識を取り戻したのは、イリヤだった。だが切嗣にイリヤと共に抱きしめられるようにのしかかられていて身動きが遅れる。その数秒の遅れのうちに意識を取り戻したのは、イリヤの次に殴られ慣れているルナだ。爆風で壁に突き刺さっていたルビーを魔法少女の杖のようなものと判断してとりあえず抑える。そして同様に飛び散った銃や手榴弾を暴発したら大変と片っ端から集め家の外に投げようとしたところで、彼女の体は再び吹き飛ばされた。

「な、また私の偽者……!」
「イリ、ガハッ、アンタタタ、折れてるなこれ……ルビー?治せる……」
「今度は私のことを知ってるイリヤさん?イリヤさんのバーゲンセールですかね。」
「バーサーカーさん!!起きて!!」
「うぅ……はっ!?バーサーカーとの魔力パスが、消えた……?」
「――マスター、これはどういう状況だ。」

 遠坂邸の外壁をぶち抜き弾丸のように突っ込んできてルナにぶち当たったのは、ヒロとクロエだ。ヘラクレスを屠ったカルナに秒殺された彼女達は、引き続き建物を背にして戦うもクロエ一回のヒロ三回の合計四回のカルナのキックなどで戦闘不能に追い込まれていた。三発ももらったヒロなど気絶している。
 カルナはイリヤの変身が解けているのを認めると、イリヤへと槍を向けた。状況が良く飲み込めないが、まずイリヤは間違いなくイリヤの敵だ。となれば、ひとまずイリヤの安全を確保しイリヤを攻撃すべきである。だがそこに更なる乱入者達がエントリーした。

「凛さん!!」
「今度はだ――のび太だ!?」
「のび太ってあのドラえもんの――のび太だ!?」
「のび太……のび太!?」

 それは野比のび太だった。准尉の考えた良いこととは、鉄火場にのび太を特攻させるということだった。准尉の知る彼とはだいぶキャラが違うが、頭はそう良くないと踏んで「狂介の居場所を凛から直接聞けば良い」とそそのかしたら、何かに取り憑かれたように凛の元へと走り出したのである。
 そして彼には戦鬼の徒に着けられている発信機が持たされている。これで砲撃を誘導する、などということも考えていた。マスターとしての使い道が薄く後一時間で夜明けがくる以上、最後に派手に盛り上げる素材になってもらおうというのだ。
 遠坂邸に吸血鬼が迫る。これで正真正銘、全てのマスターとサーヴァントが遠坂邸に集まる。直径100メートル程のところに延べ500近い者共が集う。その踏みしめる瓦礫と拡がる火災が竹林へと変わっていくなかで。

「これは――」
「『三輪身――正法輪身』」

 そしてついにキャスター・フドウの宝具が振るわれた。


578 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 02:37:48 agpQ0vEM0



 -5:55 ビターピース

 キャスター・フドウがいつからこの聖杯戦争の幕の引き方を考えていたかというと、そのタイミングを正確に述べることは難しい。同盟が破綻した時か、『必勝法』を知った時か、本戦が始まった時か、予選の間でか、あるいは間桐慎二に召喚されたタイミングでか。
 だが彼が動くタイミングを予想することは簡単であった。彼が自ずから動く時は、常に必要性に迫られてのものであった。その言葉も行動も、常に必要か否かが基準である。ではそんな彼が、聖杯戦争を止めえる方法と、それに従わせる方法の二つを有したらどうなるだろうか?

 七人のマスターと七騎のサーヴァント。フドウがセブンセンシズで把握するその位置は、重なる偶然に導かれひと所になる。その運命を引き寄せたのは決戦を望むサーヴァントの意志と、聖杯戦争打破を望むサーヴァントの意志、そしてそれぞれの思惑で動いたマスターによるものに他ならない。加えてこれだけはフドウにはどうしようもなかった魔力の問題も、慎二の令呪によって解消される。運命からなされた必然的行為は、彼という男をマスターの魔力不足で動けぬ地蔵から必要とあらば剣を取れる明王へと変えていた。この聖杯戦争最後の重戦車にガソリンが注がれたのだ。

 フドウには、一同に会したマスター達に『必勝法』を、すなわち『死者を出さない形での聖杯戦争からの脱落』を強いることは彼にはできない。だがそうせざるを得ない状況に追い込むことはできる。固有結界・三輪身が一つ、正法輪身。その竹林が拡がる世界では、全ての人間の心を鎮め闘争の意欲を無くさせる。まさしく聖杯戦争という儀式そのものを冒涜し叩き潰す、対聖杯戦争宝具とでも呼ぶべきそれ。そこに七組のマスターとサーヴァントを捉えることができれば、もはや聖杯戦争の続行など不可能であった。対軍宝具もここでは、振るわれる前にフドウに阻まれる。それ以前にまともに武具を持つことすら、ここでは許されない。唯一単独でこの世界を砕けるのは、マスターからの妨害も魔力不足による問題も無視できて宝具を放てるまほろだけだが――もちろん彼女にそんなことをする気は無かった。

「さてみんな……結論を出そうか。」

 全身を激痛に苛まれながら目だけはギラついて、慎二は多幸感に満ちた手を広げてマスターとサーヴァントを見回した。既にその手に令呪は一画もない。この固有結界の発動とその効果によるリラックス作用で、彼の発狂はかなり低減している。ついに、ついに彼は勝利したのだ。試合には負けたがそんなことはどうだっていい。聖杯戦争そのものを聖杯戦争に則って不成立にさせたのだ。これは勝負に勝ったと言って良いだろう。全員をキャスターの支配下に置いた、という勘違いだけで彼はもはや満足している。そんな彼からすれば後は帰るだけであり、つまりは必勝法の実行だけが残る行動だ。

「私も必勝法には賛成です。」

 魔力切れを起こしながらも、まほろもそう言って慎二に賛同する。この場でこの結界を魔力切れ以外で破壊できる彼女は、聖杯戦争打破の何よりの急先鋒だ。聖杯戦争続行の切り札が、聖杯戦争続行における大なる脅威だ。

「僕も必勝法に賛成。」

 つづくのはのび太だ。まほろ同様聖杯戦争の参加者としては脱落しているが、それゆえに彼も聖杯戦争続行を希望するメリットが薄い。そして何より、彼の聖杯戦争打破の決意は、まほろに匹敵するほど硬いものだ。

「私も必勝法に賛成。」
「私もです。」

 アリスと赤城も続く。一時は離反も考えたが、フドウがこんな切り札を持っていたとなれば話は別だ。全面的な協力もやぶさかではない。今もアリスはフドウへと魔力供給を引き受け、その令呪までをもこの結界の維持のために使って見せている。そして赤城もまた、アリスの願いが叶う瞬間が目前となった以上、固有結界の効果以上にリラックスして賛同していた。


579 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 03:04:27 agpQ0vEM0

「私も必勝法に賛成。」
「私もです。」

 アリスと赤城も続く。一時は離反も考えたが、フドウがこんな切り札を持っていたとなれば話は別だ。全面的な協力もやぶさかではない。今もアリスはフドウへと魔力供給を引き受け、その令呪までをもこの結界の維持のために使って見せている。そして赤城もまた、アリスの願いが叶う瞬間が目前となった以上、固有結界の効果以上にリラックスして賛同していた。

「僕達も賛成だ。この聖杯戦争には異常な点が多い。僕達の脱出にのみに使うべきだろう。」
「もちろん私もね。これで、六組中三組が賛成ってことになるわ。」

 間桐の同盟に続きアインツベルンの同盟からも賛成の声が上がる。彼らは必勝法の情報を入手すると、二三の要求をしたのみで全面的に協力すると表明した。もとより彼らの大聖杯出現地の確保という目的は形を変えて達成されている。そして他の組もこの聖杯戦争からの脱出を考えているのならば、協力しない手はない。ただ自分の娘のために、「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン・アインツベルンの組み合わせが小聖杯としての機能上良い」と眉唾ものの説明をしていたが、これを多くの対聖杯派に飲ませることにも成功していた。イリヤ以外のサーヴァントを有するマスターは全員令呪を使い切り、クロエは令呪によって叶える願いを「この聖杯戦争の参加者全員の原状復帰」へと強制され、またイリヤに強制することとなる。

「アインツベルンの代表として、私も必勝法を受け入れるわ。」

 そしてその談合による優勝候補の一人、サーヴァントを召喚して行われる第四次聖杯戦争が起こった世界のイリヤも、若干難しい顔をしつつ賛意を示す。彼女としてはこのような聖杯戦争の幕引きに思わぬところは無いわけではないが、ヘラクレスを失った彼女に取り得る選択肢自体殆どない。そしてそうでなくとも、この聖杯戦争の異常は彼女が一番理解している。冬木の第五次聖杯戦争を優先しなくてはならないという義務感、を言い訳に彼女は賛意を表明していた。

「私達も賛成です。偽物の魔法のランプなんていりません。」
「そういうわけだ。さて……これで六組中四組、過半数がこの聖杯戦争を終わらせることに合意したわけだが……どうする?」

 そして一人、この場でも変わらず動けるヒロはその大鎌、『ゲート・オブ・ヘブン』を遠坂凛の首筋に這わせて問いかけた。
 彼女の持つスキル、戦の作法。対軍宝具の須くに高い耐性を持つそれを有する彼女は、この場ではまさしく死神だ。その性質上フドウ自身も攻撃が難しいこの静謐なる竹林で、彼女だけはなんの障害もなく行動できる。言うなれば、フドウが丸腰での話し合いを強い、ヒロが全員の殺生与奪を握っている状況だ。
 つまるところ今行われているこれは、単なる儀式であった。フドウとヒロの共闘が成った時点で、他のサーヴァントの勝ち目は限りなくゼロである。もし仮に生き残っている者全てで二人を止めれば勝機もあるが、この場でそんなことをしようとするのは既に僅かに四人、つまりアルトリア達とカルナ達だけであった。

「……私達がYESって言ったら?」
「令呪を全て破棄、または譲渡し、サーヴァントとの契約を切ってもらう。そうすれば、聖杯によってこの聖杯戦争は無かったこととなるだろう。」
「NOって言ったら?」
「お前達の魂を冥界に送り私達で必勝法を実行する。私の鎌で斬られた魂がどうなるかは保証できないが、つまり結論は変わらない。」
「お前が殺した狂介も、カチコチになってるクロノも、まとめて無かったことにしてやるよ。」


580 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 03:18:16 agpQ0vEM0

 慎二の言葉にピクリとカルナの横にいるイリヤが反応する。それを見て、凛は大きく息をついた。

 自分はどこで失敗したのか。凛はこの空間に囚われてから幾度したかわからない自問自答をする。まさかこんな展開になるとは予想だにしなかった。というかこんなエンディングを予期できる人間がいたなら教えてほしい。世界そのものを塗り替えて理屈を押し付けてくる宝具に、その宝具の影響を受けないスキル。セイバーやカルナの宝具もなかなかのズルだと思うが、ここまで荒唐無稽ではもはや乾いた笑みしか出てこない。あの騎士王を引いても、施しの英雄を引き入れても負けるとは。そう自嘲する一方で、頭のどこかの部分では冷静に次の聖杯戦争について考え始める。聖杯というからには、原状復帰程度は当然にできるであろう。となれば、自分はまた聖杯戦争に参加する。きっとそうなる。なら、その時自分はどうするかだ。

「ごめん、セイバー。ここまでみたい。」
「いえ、リン。私の力不足です。どうやら自分がぬるま湯に浸かっていたと気づかぬほどに、私は弛んでいたのでしょう。」

 凛の事実上の降伏宣言に、アルトリアは言外に追認した。その言葉通り、彼女はこの戦争を見誤ったと痛感していた。特に見誤ったのは、聖杯戦争を止めるというその意志だ。ただの妄言の域にあり実現性は無いと、どこかで判断してしまっていたのだと自戒する。自分が聖杯を手にしようとするのと同じ程にこの戦いを止めようとする人間の覚悟を、甘く見たのだと。

「キリツグ、またも私は、貴方にしてやられたわけか。」
「……セイバー、君は少し真面目すぎるんだ。そこのバーサーカーを見習えとは言わないがね。」
「……!?そうか、そうだったか……」
「……なーんか、セイバーから聞いてたのと人柄が違うわね。」
「僕は、こういう人間だよ。さて……イリヤ。」
「っ!!」

 残るは、カレイドステッキを操るイリヤとカルナのみだ。
 イリヤは切嗣からの視線を避けるようにカルナを見る。その目はこの世界の中でも静かに炎を湛え彼女を見つめ返す。彼はいつだって、彼女の行動を認めるだろう。
 イリヤは手の中の二本のステッキを握る。わかっている。もはや選択肢は無い。そしてそれ以前に、戦う意味はない。この聖杯戦争での終わり方として、彼女が望む勝利の形として、理想の形は何か?それは、彼女の世界の凛や美遊と共に帰ることである。そして今、その願いを叶える一助への協力を求められている。ならば。

「――賛成します。私も、賛成します。」
「なら我もだ。」
「わかったわ、私も。私も賛成する。この聖杯戦争は、これでいいわ。セイバー!」
「……この聖杯では私の望みは叶えられないと判断します。よって、賛成です。」

 ここに最後の賛同者が現れる。生き残った六組のマスターとサーヴァントの全てが、聖杯戦争の話し合いによる集結に合意した。


581 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 03:57:00 agpQ0vEM0



 -00:00:00 2014年8月2日(土)5時9分30秒


「おっ、いらっしゃいませー。」

 その人物ーー便宜的に彼と呼ぼうーーが最初に見たのは青い髪の少女が事務用らしいデスクの前でにこれまた事務用らしいイスに座って煎餅を食べている光景だった。

 白一色の廊下。そこにデスクを挟んで立っている彼の顔を見ると「おぉっ!?もしかしてもしかすると‥‥」などといって少女は古めかしいMacを操作する。「とうとうあの世界から」とか「でも勝ち残れるかなー」とか「まあ予選次第かな」などと一人で呟いている。それに彼が困惑して声をかけようとしたとき、これまた古めかしいPHSが音を立てた。

「モッテイーケッサイゴニッワラッチャウーノワッアタシノハッ↑ズッ↑ピ。あ、もしもし?そっちもういれちゃっていい?うん、うん、なんかペース早くなってきたね。うん、そろそろルーラーさんにシフト代わるよ。んじゃねー。」

 懐かしの着ウタならぬ着メロを響かせたPHSを切ると少女は彼に向き直りニッコリと笑う。

「おめでとうございます!こちらは第1回ムーンセル聖杯戦争受付です!詳しくはこの廊下の突き当たりにあります面接会場でご説明致します。あ、それとパンフレットどうぞ。」

 そう言うと少女はデスクに山積みされた二つ折りの冊子を彼に渡した。
 彼の困惑は深まったが別の場所で説明するといわれて素直に従おうとするのは彼の性格によるものかそれともこの異様な空間がそうさせたのか。

 とにもかくにもデスクの横を通りすぎて彼は廊下を進み始める。少女の後ろにある段ボールーー中には手に持っているのと同じパンフレットがぎっしりと、恐らく百枚単位で入っている。それが何箱もあることを考えると千枚はおろか一万枚は下らないだろう。ーーに足を取られながらも進んでいく。
 だが、いくら歩いても廊下には終わりが見えず同じ光景が続いている。

 自然目線は彼の手にあるパンフレットへと向いた。

 『第1回ムーンセル聖杯戦争〜最強のマスターは俺だ!〜』というタイトルの下で全身を金色の鎧で身を包んだ男がアルカイックスマイルで脚組みしている写真が表紙だ。タイトル以外には『七番目のサーヴァントクラス決定!バーサーカー対ビースト完全決着!!』とか『スキルエラッタ プロトタイプルールとどこが変わったの?』とか『不動明王の英霊問答 第一回ゲストは仮面ライダーディケイドさん』とか『ついにあのエピローグが投下!?』などの煽り文句が並ぶ。

 ページをめくると、左のページは七かけ二の十四のブロックに分けられていた。左の列にセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー←NEW!と並びクラスなるものの簡単な紹介文が書かれている。右の列にはスキルなるものが存在し、それぞれがどういった効果を持つのかが書かれていた。なかでも対魔力は太字で書かれていて、『魔力の代わりとなるものを用いた攻撃にも対応しました!』などとアンダーラインまで引いて主張している。

 そして右のページの英霊問答というやたらきらびやかでこころもち材質も違うページを読もうとしたとき。


582 : 【108】2014年8月2日(土)5時9分30秒 ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 03:57:30 agpQ0vEM0





 今までなかったはずの扉が目の前にあった。

 振り返れば白い廊下が延々と続きその果ては見えない。どうやらこの扉を開けるしかないようだと彼は悟ると銀色のノブを廻して部屋へと入った。



「お待ちしておりました。」

 部屋へと入った彼をイスに座って迎えたのは黒髪の青年だった。どうぞこちらへ、という言葉と共にパイプイスを指される。彼は先ほどと同じようにデスクを挟んで青年と向き直った。
「上級AIのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと申します。」
 そう言って頭を下げるとルルーシュは「規則ですので<価値>の測定を」というとその目に謎の紋様が浮かびすぐ消える。
 彼はここがどこか、聖杯戦争とはなにかを尋ねる。それを聞いた青年、ルルーシュは一つ一つ説明を始めた。


「聖杯戦争とは今回我々『第1回聖杯戦争実行委員会』が主催を勤めます『第1回ムーンセル聖杯戦争〜最強のマスターは俺だ!〜』の略称です。」

「聖杯戦争は聖杯、つまり願望器の所有権を奪い合う戦いです。参加者の皆様には聖杯が再現した英雄をサーヴァントというプログラムとして操り、そのマスターとして最後の一組になるまで戦っていただきます。そして最後の一組には我々『第一回聖杯戦争実行委員会』から聖杯の所有権を譲渡いたします。」

「次に聖杯について説明します。聖杯は量子コンピューターを魔術的概念によって運用している自動書記装置です。地球が誕生してから地球に関する情報を全て記録しつづけています。それによって過去の英雄を再現することができるのです。」

「英雄を再現する際、一定の書式に基づいて再現されます。お手元のパンフレットの2ページを御覧ください。当聖杯戦争ではその七種類の書式に基づきサーヴァントという形で再現いたします。」

「マスターはサーヴァントを令呪と呼ばれるプログラムを用いることで使役できますが通常サーヴァントは自由意思を持ちます。サーヴァントの行動を強制させる場合令呪を一画以上使用してください。なお、一人のマスターには三つの令呪を予選参加時に支給いたします。令呪を全て使いきる、またはサーヴァントを失う等した場合マスターのデータは失われます。」


「今回、記念すべき第一回目の聖杯戦争を行うにあたりまして広くマスターの参加を募りました。有形無形問わず様々な伝達手段を試した結果、我々の予想を大幅に越える参加希望者が現れました。ですが、一度に適正に管理できるサーヴァントの数には限りがあります。そこで当聖杯戦争では臨時に予選を開催することになりました。」

「予選会場は『札幌』『仙台』『東京』『名古屋』『大阪』『高松』『博多』の七つの臨時サーバーで行われます。会場はそれぞれサーバー名の都市を再現しており、現地に配置されたエネミーを撃破することなどで本選参加のマスター及びサーヴァントを決定いたします。」

「お手元のパンフレットの四ページを御覧ください。そこに書いてある番号が参加希望者のIDです。参加希望者は聖杯戦争に道具を持ち込むことができますが、公正を期すために一度だけ元の世界に帰ることができます。その際再び聖杯戦争に参加するためにはお手元のパンフレットが必要です。また元の世界での準備期間は二十四時間とし、それ以上時間が経過した場合パンフレットが自動で消滅しますので遅れることのないようお気をつけください。また持ち込む道具は手に持てる範囲でお願い致します。浮遊、飛行できる物は持ち込む際それらの機能を無効化して検査いたします。ご了承ください。」

「参加希望者は予選開始まで一時データを凍結させていただきます。その後解凍の際一時的な記憶障害を起こす可能性がありますがただちにデータに影響はないものと考えられます。ご了承ください。」

「聖杯戦争のルールは事前に参加者への予告なく変更する場合があります。ご了承ください。」

「当聖杯戦争における参加者間のトラブルに『聖杯戦争実行委員会』は一切責任を持ちません。ご了承ください。」

「それでは遠坂凛さん。一時元の世界に戻られますか?もしくはデータの凍結に移りますか?」


583 : ◆g/.2gmlFnw :2017/11/08(水) 04:09:30 agpQ0vEM0
これにて最終回の投下を終了し、それをもってこの企画を一時間後に終了することを宣言したく思います
永らく当企画にお付き合いいただきありがとうございました


"
"

■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■