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聖杯四柱黙示録

1 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:11:24 Z0FQ4gBk0
天とその中にあるもの、地とその中にあるもの、海とその中にあるものを造り、
世々限りなく生きておられるかたをさして誓った、
「もう時がない。 第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時には、
神がその僕、預言者たちにお告げになったとおり、神の奥義は成就される」。


-「ヨハネの黙示録」第10章より-




【ルール】

・当企画は「Fateシリーズ」を元にしたリレーSS企画です。
同作中の魔術儀式「聖杯戦争」を元にした、参加者が聖杯を賭けて戦う企画となっております。
・「サーヴァント」に関しては、エクストラクラスを割り当てることも出来ます。
・オープニングの内容はご自由に、会話でも戦闘でも。
・選出する主従は32組(1クラスにつき4組)程の予定です。
・幾らでも候補作を投下していただいても構いません。
・投下がない場合は企画者がちまちま投下していくことにします。
・ズガンは可能です。


【設定】

・舞台は「Fate/EXTRA」に登場するムーンセルによって形成された電脳空間「SE.RA.PH」
・聖杯は4人のルーラーが1つずつ所持しています。
・ルーラーは、4人がそれぞれ別行動を取っていますが、彼らの役割はどちらかと言うと
「監督役」というより「聖杯の管理者」の方に傾いており、そのためかサーヴァントの
行動を察知することが出来なくなっていたりする。ただし、令呪はきちんと持ってきているし、
違反者もきちんと裁いています。
・勝ち残ったマスターが4人になった瞬間、4つの聖杯が起動し、
4つの聖杯を「柱」とすることで巨大な「大聖杯」が召喚されます。
・魂食いも出来ます。ただしやり過ぎるとルーラーに睨みつけられます。
・NPCの中には参加者の知っている人物もいます。
・ルーラーを倒して聖杯を横取りするのもアリです、無茶な話ですがアリです、令呪使われますでしょうが
アリです。





【サーヴァント及びマスターについて】

マスターはムーンセルに来た際に記憶を封印され、偽りの記憶を与えられてNPCの中に紛れて行動しています。
そして、記憶を取り戻すことで、聖杯戦争の知識、令呪、サーヴァントが与えられます。
マスターが死亡した場合、サーヴァントは魔力が枯渇して消滅します。
ただし、サーヴァントが死んだ場合は、マスターは死ぬ事はありません。

それでは、プロローグと、候補作四組を投下させていただきます。


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2 : プロローグ ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:12:23 Z0FQ4gBk0
聖なる預言書にには、今もどこかで十字架と共に崇められているであろうかの救世主に従う、
四人の騎士がいた。四人はそれぞれ、人類を滅ぼす「権威」を与えられた。


「支配」

「戦争」

「飢餓」

「疫病」


四人の騎士達は、今この世界の何処かで起こっているであろうこの4つの出来事の原因なのか、
それは定かではない。
救世主が4人の封印を解いたのかどうか、
それもまた定かではない。そもそも我々が知りうることではない。





だが、この四人の騎士の名を冠す者が現れた。
月という名の量子コンピュータ「ムーンセル」の中で。
だが、彼らの使命は、「滅ぼす」なんてものではない。
「聖杯」・・・またの名を「ムーンセル・オートマトン」
救世主が最後に口をつけた杯の名を冠したアーティファクト。
あらゆる願いを叶える万能の願望機。
ここでは、その聖杯を取り合う「聖杯戦争」と呼ばれる、
かつて極東の地で一部の魔術師達が行っていたとされる一種の儀式・・・
いや、それに近いものが行われていた。




彼らの使命は、優勝カップである「聖杯」を管理すること。
月が0と1を混ぜあわせて創ったこの世界で、
「英霊の座」から招き寄せられた騎士達は、
1つずつ器を手にしている。
彼らはこの願望機を守らなければならない。
彼らは誰がこれを手にするのかを見届けなければならない。


3 : プロローグ ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:12:54 Z0FQ4gBk0


圧倒的な力で。

激的な争いで。

絶望的な飢えで。

呪いの名に相応しき病で。

夜空に妖しく光る羊は、四色の柱を呼び寄せ、
今、「滅び」ではなく、「願い」を呼び寄せる
儀式の封印を解いた。


聖杯戦争の舞台たるSE.RA.PHとは別の空間に設置された4つの杯。



その上には、4人の「裁定者」がそれぞれの杯に立っていた。


白の杯には、目を金色に発光させる1人の美少年が。

赤の杯には、ねじれ曲がった黒い石版が。

黒の杯には、白いドレスを身に纏った少女が。

青の杯には、紫色の水晶と黒いドレスをその身に包んだ美少女が。




「数え切れないほどにいた参加者も、とうとう数え切れる程には減ってきたようだね。」

何やら余裕に満ちた笑みを浮かべた、白い杯に立つ少年が第一声を上げた。
「制」のルーラー、征服を司る第一の騎士、それがこの少年であった。
彼の宝具はムーンセルのデータベースと直結しており、
実質上このSE.RA.PHの設備を支配しているのは、彼と言っても過言ではない。

(36体のサーヴァントを確認、違反行為は発見していない。)

その時、3人の脳内に声が響いた、所謂テレパシーであろう。

それを発しているのは、赤の杯に建てられた黒いレリーフであった。
変わった形状をしているはものの・・・この石版が、
「争」のルーラー、闘争を司る第二の騎士であった・・・。
霊格に関しては、他の三体よりは格上であろう。




「それじゃあ、私はそろそろ戻ります。」

黒い杯に立つ、白いドレスに身を包んだ少女が戸惑い気味な表情でそう言った。
彼女は「飢」のルーラー、黒い杯を管理する裁定者のサーヴァント。


「え?もう帰っちゃうの?」

青い杯に立つ少女、「病」のルーラーが驚いた表情でそう聞く。

「はい、やっぱり、久しぶりにこうやって過ごすのが、懐かしいというか、嬉しいというか・・・。」

「飢」のルーラーは、SE.RA.PHにいるNPCの中に紛れて行動をしている。
もし、秩序を乱す様な事をしているマスターがいたら、直ちに警告をするのが、彼女の役割である。
すると、「病」のルーラーは、口元は笑いながらも、どこか儚げな表情へと変わった。

「そうなの・・・何となく分かるわ、その気持ち。」
「病」のルーラーの精神は、その存在そのものによって蝕まれていた。
しかし、それでも彼女には、普通の少女としての心は僅かながら残っていた。


「飢」のルーラーは、それを見て、少し驚いた顔をしながらも、その身を粒子へと変えて、SE.RA.PHへと戻った。


4 : プロローグ ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:13:16 Z0FQ4gBk0











記憶を眠らされ、今日もこのプログラミングされた世界で
何気ない日常を送っている参加者は今何人いるだろう。
きっと彼らは、呼びだされた英雄の手綱を握り、
戦っているであろう。
月に呼び出された数多くの参加者の数も、今はそれの数分の一にまで減った。
黙示録の頁はいよいよ少なくなってきた。





さあ、いよいよ大詰めだ。




裁定者:【「制」のルーラー(リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダム00)】

    【「争」のルーラー(統制者@仮面ライダー剣)】

    【「飢」のルーラー(円環の理@魔法少女まどか☆マギカ)】

    【「病」のルーラー(桜満真名@ギルティクラウン)】


5 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:17:26 Z0FQ4gBk0
以上でプロローグは終了です。
続いて、候補作四組を投下させていただきます。


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6 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:18:04 Z0FQ4gBk0
―網島ケイタが全てを思い出したのは、1人の剣士にレイピアを向けられた、その瞬間だった。


アンダーアンカーの仕事を片付けて、急いで本部に戻ろうとしたその時、斬り合っていた二人の
剣士を、偶然にも見つめてしまった。
其の直後、その片割れに追われ、人っ子一人いない路上で足止めをくらい剣を向けられた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
ケイタは恐怖に狩られた、頭脳労働が本領の者が多いとはいえ大人のハッカーを取り押さえる事は
慣れている、だがこんな、武装した剣士等には全く太刀打ち出来ない。
仮にこれがただの仮想プログラムだったらどんなに嬉しいだろう。
ケイタはただの高校生だ、ネットワーク相手になんでも出来ても、戦闘などは全くの専門外だ、
桐原の様に上手く行くはずもない。

その時、脳裏に声が響いた。


『セブンが無ければ、君はただの無力な高校生だ』

何処かで聞いた様な声だ。だが、何か一つ引っ掛かる言葉がある。


(セブンが…無い?)


丸いドット状の目とゲージ状の口で形成された顔で、セブンは今もこうしてケイタの手元にある。
相棒が死の淵にある事から、微妙そうな表情を浮かべながら。

ケイタは恐れが凝固された様な顔で、刃を見つめ、そしてあることを思い出していた。


あの日、滝本さんに助けられた日を、この状況に重ねる形で思い出し、左手に握られていたセブンをふと見つめた。

違和感が雪崩の様に流れてくる。

セブンは溶けたはずではないのか。

ジーンの手によって。

じゃあ、一体何でこいつはここにいるんだ。

そもそも、俺に剣を向けているこいつは何なんだ。


そして、ケイタが辿り着いた結論は…

俺は、どうしてここにいるんだ。


そう考えていた時、セブンが握られている手の甲に強い熱が走り、刺青の様な何かが描かれる。
そして、背後から…


『Turn Up』


「変身!」


銀色の鎧を纏った戦士が何処からとも無く現れ、自らと相対していた剣士に剣をぶつけた。




◆  ◆  ◆


7 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:18:44 Z0FQ4gBk0

『LIGHTNING SONIC』


「ウェェェェェェェイ!!」

鎧戦士の雷光を纏った蹴りにより、さっきの剣士は消滅した。

ケイタは、その勇姿に唖然としていた。

そして、その剣士は、目をこちらに向け、そして、ベルトのバックルに手をかける。

グリップを引き、開いたスロットにあるカードを抜くと、彼の前に蒼い光板が出現し、
鎧戦士は、紺色のコートを着た青年の姿に変わる。

左胸に当たる部分には、「BOARD」と薄っすらと書かれていたワッペンがあった。

そしてその青年はケイタに問う。


「お前が、俺のマスターで間違いないな。」


「…え?マスター…俺が?」


8 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:19:29 Z0FQ4gBk0
ケイタには聖杯戦争の知識は一通り流れ込んでいた。
マスター、サーヴァント、令呪、聖杯、ムーンセル、この通り全て。

記憶を取り戻したマスターは、令呪とサーヴァントを配られるという。
その内令呪は手にある、だがサーヴァントは…
と考えていたその時。

「ケイタ、恐らく彼が我々のサーヴァントであるのだろう。」


手元にあったセブンが、口にした、「サーヴァント」という言葉を。

「え?」

セブンはマスターではない。
だから聖杯戦争に関する知識は与えられていないはずだ。

それなのに…何故…。


しかし、それと同時にもう一つ重要な事が浮かぶ。

溶けたはずのバディが、手元で堅苦しい言葉で喋っている。
もう二度と会えないと思っていたのに。
「俺の知っている」セブンは戻ってこないと思っていたのに。

「セブン…お前もまさか、記憶を取り戻したのか…?」

ケイタがそう聞いた直後、セブンのディスプレイに笑顔が映る。




「ご名答だ、バディ、私もまたこの通り記憶を取り戻した。
短い間ではあるが、改めてよろしく頼む、ケイタ。」




「って…事は…。」




笑顔が映る液晶画面に、ケイタの目から涙が、ポツリ、ポツリと落ちて行く。
セブンと別れた、あの時みたいに。でも、彼は溶け出したりはしなかった。


「良かった…良かった…また、会えたんだな…セブン…バカ野郎…思い出したらとっとと言えよ…」

「済まなかったな…だが、また会えて私も嬉しいぞ…」

セブンの表情が、「泣き」を表すパターンに変化する。


((また会おうぜ!!バディ!!))

あの時、セブンの欠片を投げ付けて叫んだ言葉が、現実となった様な気がしてきた。
彼らは、今再び会えた、願いは、叶った。




「何かよくわからないけど、良かったな、お前ら。」


ケイタのサーヴァントたる青年は、それを見て笑顔を浮かべていた。

「あ…確か、俺のサーヴァントだっけ?」

ケイタは、涙を拭い、鼻を啜りながら笑顔でその男に聞き返した。

「ああ、俺は剣崎一真、クラスはセイバー、よろしくな。」

そう、セイバーは告げた。

「え…?」

ケイタもセブンも、知識はあっても状況は冷静に判断できず、ポカンと口を開けていた。


◆  ◆  ◆


9 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:20:06 Z0FQ4gBk0

それから、二人と一体は、繁華街の歩道に場所を変えた。
ププーッという車のクラクションとガタンゴトンと,人がガヤガヤと会話する声、
信号機の音、ビルにあるテレビのコマーシャル等がBGMとなって二人を包む。
セイバーはケイタ達からこれまでの経緯をを聞き出した。
そしてセイバーもまた、話せることを話した。

「聖杯戦争に、ムーンセルか…」

しかし驚くことばかりだ。
まさかムーンセルが、月がでっかいCPUだったとは。
フォンブレイバーといい、ケイタは自分が人並み以上に
超高性能CPUに縁がある人間なのかとすら考えてしまう。

零戦と通信したりもした、お化けのメールを受信したりもした、
宇宙ウィルスに遭遇したりもしたが、これまた驚きだ。

「月がコンピューターとか…嘘だろ…。」

「しかも、私の性能が原始的に見えるほどにか…。」

ケイタもセブンもすっかり首を傾げていた。


「ところでさ、お前ら…」

ここで、セイバーは二人に問う。

「本当に、願いを叶えなくていいのか?」

聖杯戦争。

万能の願望機を優勝カップに英雄を使役して殺し合う儀式。
ケイタはそれに巻き込まれ、今セイバーと記憶を手にしたということだ。
しかし…

「いや、だって俺…願い…って言われてもな…」

ケイタは頭を掻き、呟く。

「ぶっちゃけ、俺、殺してまで叶えたい願いは無いからさ、というか、もう叶っちゃったけれど。」

―そう。

網島ケイタの願いは既に叶った。
バディとまた会う。それだけで十分だった。
そして、自らを必要としてくれていたアンダーアンカーでのエージェントとしての日々もまた、
今此処に帰ってきた。

戻ってこないと思っていた、アンダーアンカーでの日常。
それが謳歌出来たというだけで、彼は幸せであった。
それに、人を殺すことなんて、ケイタには絶対に出来なかったから。


「そうか、良かったな。俺も、願いはあるけど、人は殺したくはないし…」

その言葉に、セイバーも笑って返す、何処か暗い影を落としながら。

その時、セブンが顔をしかめてケイタに問う。

「それよりもだ、バディ、本部に帰還して報告をだな。」

「げっ!やっべ!また本部長に叱られる!」

ケイタはそれを聞いて驚き、慌てて近くに倒れてあった自転車に向かい、起こして跨る。
ハンドルに付けられているホルダーにセブンを装着した時、

「仕事なんだろ!頑張れよ!」

セイバーは両手でメガホンを作り叫ぶ。

「分かった!さっき話したアンカーの店で待ってろよ!」

ケイタはそう答えると、ペダルを回し、自転車で歩道から車道に移り、走り出していく。



「給料減らされないようにな―――!!」


セイバーは、自分の経験を元に、遠くへと走っていく自転車に向かって叫び返す。


10 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:20:53 Z0FQ4gBk0


◆  ◆  ◆


「仕事…か…。」

自転車で走り去って行く自分のマスターを、セイバーは見つめていた。
「仕事だから」と言って、自分もまた何度も戦い続けたものだったと、
そして、命懸けとはいえそんな仕事に明け暮れる毎日が、一番幸せだった頃だったと。

そう回想しながら。


本当ならセイバーも付いて行きたい所…なのだが、セイバーは霊体化が出来なかった。

それもそうだ。

セイバー…剣崎一真は、英雄の資格を持ちながら、英霊の座に記録されることが許されない
サーヴァントであった。彼は不死身である。あの日あの時、運命と戦い続けると決めた日から。

友と世界、両方を守るために。

それから人間としての自分にサヨナラを告げ、様々な所を回ってきた。

やはり、炎に焼かれていく両親の姿は相変わらず目に焼き付いており、持ち前の性も合って
相変わらず人助けばかりしていた。

どうせ俺は死なないから、と、危険な地域には何度も立ち寄った。

だが、それでも、何年も生きていき、世界中で血と汗と涙と泥に塗れていけばいつの間にか、

「死にたい」と願うようになった。
そしていつからか記憶も抜け落ち、気が付けば嵐の海へと流されて行った。

そして目が覚めたら、「サーヴァント・セイバー」としての記憶が埋め込まれた状態で生きていた。
やはり死ねはしなかった。


だがそれでも、少しは楽になった、という気分がする。


「死にたい」と考えて彷徨うよりは、こんな風に平和な毎日を送って行く方がいい。

それに、マスターは戦うことを望んではいなかった、だから積極的に戦うつもりはない。
マスターは、願いであった、会いたかった友との再会を取り戻した。

「驚いたな、俺に願いがあるとしたら、俺もそんな感じになるかな。」

そしてセイバーもまた、友との再会を望んでいた。

あの時戦いを教えてくれていた先輩はまだ生きているのだろうか。
あの時別れた友はどうしているのだろうか。

傷つけ合いながらも分かり合った後輩や、寝泊まりする場所を教えてくれた友達、
迷った自分を引っ叩いてくれた彼女に、もう一度会おうか。

だが、セイバーは、友と会えないというより、会うことを約束されていなかった。

聖杯の力を使おうとも考えた。
だがそれは間違いだ、バトルファイトに明け暮れた他のアンデッド達と一緒だ。

そんな事をしてまで、始を人間にしてあの日々を人間として過ごそうなんて思わない。

ならばセイバーのやることは一つ。
サーヴァントとしての役割を果すこと。
戦えない主人の代わりに戦うこと。
自分が失ってしまった物を取り戻した少年が、それを離さないように支えてやること。
それがセイバーのサーヴァント、剣崎一真のやるべきことだ。


抗えない運命と戦い続ける、仮面ライダー、ブレイド。


これが、運命の、切り札。


11 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:21:17 Z0FQ4gBk0



【クラス名】セイバー
【出典】仮面ライダー剣(小説版も含めます)
【性別】男
【真名】剣崎一真
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運E 宝具A(人間態)

       筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D+ 幸運E 宝具A(ブレイド変身時)

       
【クラス別スキル】


対魔力:C
魔力に対する耐性。
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法をもってしても、傷つけるのは難しい。


騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
バイク、車程度なら容易に乗りこなす。


【固有スキル】

不死生命体:A
種族の繁栄を巡って殺し合う宿命にあるアンデッド。
驚異的な回復力を持つ。
ただし、此度の聖杯戦争で召喚された際には、
セイバーが致命傷レベルのダメージを
受けて初めて、「争」のルーラーが唯一
セイバーを脱落させる権利を持つ、という形となる。
他の聖杯戦争で呼ばれた場合は、このスキルは消滅する。


勇猛:B
威圧、混乱、幻惑などの精神攻撃を跳ね除ける。
格闘ダメージを上昇させる効果もある。



融合係数:A
アンデッドと融合していることを表す係数。ラウズカードに起因する宝具を使用する際、パラメータに補正がかかる。
ライダーシステムの欠点を浮き彫りにするほどの想定外の数値を持つ彼は
Aランク相当の融合係数の持ち主。また、融合係数の数値はその人の精神状態に比例し、
強い怒りや勇気が現れている時はパラメータが上昇するが、強い恐怖心に蝕まれているときには下降し、
パラメータが下がり、場合によっては脳や臓器にも悪影響を与える。


魔力放出:C
武器、ないし自らの身体ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、
瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。




【宝具】

「運命を断ち斬る閃光の蒼(ライダーシステム・ブレイド)」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

セイバーが「仮面ライダーブレイド」として戦ってきた逸話の具象化。
スペードスートのラウズカード13枚と、ブレイドに変身するためのブレイバックル、
そしてブレイドアーマーに付属するブレイラウザー、ラウズアブゾーバーなどの
ラウズ用ツールで構成されている。
ブレイドに変身することで、パラメータの増強、更にラウズカードのスキルの付加が
可能となる。ただし、宝具となった影響によりラウズカードの力を読み込む度に
魔力を消費する。


「輝き放つ十三の切り札(キングフォーム)」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

カテゴリーQとカテゴリーKのカードを使用することで発動する、セイバーの切り札。
13枚のラウズカードと完全融合を果たし、ラウザーを介せずともカードの力をその身
に引き出せる。ただし、この姿はラウズカード全てに魔力を注入している状態であるため、
消費する魔力は「運命を断ち斬る閃光の蒼」の数倍になる。


12 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:21:40 Z0FQ4gBk0


【Weapon】

「ラウズカード×13」
セイバーが所持する、スペードスートに位置する13枚のカード。
1枚毎に1体のアンデッドが封印されている。
また、「輝き放つ十三の切り札」の使用により、金色の
「ギルドラウズカード」に変化する。


「ブレイバックル」
セイバーが、「運命を断ち斬る閃光の蒼」を起動する際に使用するバックル。
カテゴリーAのカードを装填することで起動、腰に当てることで
カードの様な光がベルトとなって腰に巻きつき、グリップを引く事で
出現したオリハルコンエレメントを通り抜けることで、ブレイドアーマー
を纏うことが出来る。尚、ラウズカードの覚醒は魔力を以って行うので、
魔力をカテゴリーAが吸い取る形で、ブレイドアーマーは維持される。


「ブレイラウザー」
セイバーがセイバーたる所以。
13のカードを収納する事も可能な、ラウズカードの力を引き出す剣。
リーダーにラウズカードをスライドさせることで、
カードに眠るアンデッドの力を覚醒させ、ブレイドアーマーに
その力を宿す。


「ラウズアブゾーバー」
ブレイドアーマーにアンデッドの力を「融合」させるガントレット。
能力を吸収するカテゴリーQを装填することで起動、そしてカテゴリーQを媒体に、
ラウズアブゾーバーにスライドしたラウズカードの力を吸収し、ブレイドアーマーに
融合させる。


「キングラウザー」
「輝き放つ十三の切り札」の発動で使用できる大剣。
ラウズカードの他、ギルドラウズカードのラウズも可能。
そして、ブレイラウザーでは出来ないようなカードコンボ
も発動出来る。



【人物背景】
一万年の眠りから覚めた不死生命体「アンデッド」の研究を行っている
人類基盤史研究所「BOARD」の職員にして、アンデッドの封印に尽力する
「仮面ライダーブレイド」の資格者。良くも悪くも真っ直ぐな、心優しい性格。
幼いころ火事で両親を失った過去から、ただ只管誰かを助けることに必死になっている。
封印を解かれた53のアンデッドが、友である相川始を残す1体となり、
ジョーカーの在り方から統制者が「世界の滅び」の選択をし、人々は滅びの危機に立たされる中、
ジョーカーと同質の力であるキングフォームを酷使し、遂にジョーカーとなった。
そして、統制者がジョーカーを勝者と認めなくなったため、滅びは消えた。
そして、「始と自分が争わなくするために」と、何処かへ姿を消した。
それから、死の淵にある誰かを助けながら放浪の旅を続けるが、
やがて死ねない自分を呪うようになり、遂には海に沈んでしまう。
セイバーの参戦時期はここらへんから。
尚、この時小説版では自己暗示という形で記憶を失っていたが、
此度の聖杯戦争においては、聖杯の記憶により記憶を一時的に取り戻している。


【聖杯にかける願い】

相川始と自らを人間に変えてもう一度やり直したい・・・とも思っているが、
他者を傷つけたくはないため、迷っている。


13 : 網島ケイタ&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:22:05 Z0FQ4gBk0
【マスター名】網島ケイタ
【出典】ケータイ捜査官7
【性別】男


【Weapon】


「フォンブレイバー7」

通称「セブン」、携帯電話型ロボット「フォンブレイバー」の7号機。
人智を遥かに上回る程のクラッキング能力を持ち、警察のプロパイダも
容易にブロック出来る。ただし、ムーンセルへのクラックは無論不可能。
その上、アンダーアンカーから制限がかかっているため、自由にクラッキング
を行使できる訳ではない。基本的に真面目で堅苦しい性格だが、機械の割に
人間臭い。現実世界ではジーンを取り込んだ際にCPUに尋常ならざる負荷が
かかり、ボディが溶けてしまったが、此度の聖杯戦争においては、ケイタが
アンダーアンカーのエージェントという「役割」を与えられた事で再現され、
更にケイタが記憶を取り戻した事で、円滑に行動できるようにするためか
セブンもまた記憶を取り戻している。


「ブーストフォン」

フォンブレイバーの機能を拡張するモジュールパーツ。
カメラ機能のスペシャリスト「シーカー」
音波の放出、音声解析等の機能を持つ「スピーカー」
ネットワークやプログラム専門のブーストフォン「アナライザー」
チェーンソーと小型レーザーを持つ「デモリッション」
ワクチン作成を得意とする対ウィルス用ブーストフォン「メディック」
MRF波による物質破壊機能を装備した「グラインダー」
等、多彩なバリエーションが存在するが、何れもアンダーアンカーのサーバーに保管されているため、
独断で持ち出すことは難しい。尚、ケイタの世界ではアナライザーとデモリッションは
フォンブレイバーを2機再起不能する際に悪用されたことから廃棄されているが、
この世界でもそうなっているのかは不明。




【人物背景】

父の仕事上の都合で何度も転校を繰り返して来た高校生。
基本的に何事にも無気力でいつも「何でもいい」「どうでもいい」「どっちでもいい」
の三言で片付けてしまう性格だったが、自らを庇って逝った滝本荘介にセブンを
託された事で、彼の人生は大きく変わった。
事件を解決し、アンダーアンカーのエージェントになったことで生まれた、
「自分が必要とされている」という気持ちが彼を大きく突き動かし、
アンダーアンカーでのエージェント生活は淵に眠っていた行動力と優しさを
目覚めさせる。
セブンの事は最初はその口煩さから煙たがっていたが、やがては「世界なんかよりセブンだ」
と言う程の強い絆で結ばれていく。そして、ごく普通の高校生としての純粋さで
ゼロワンの心を開く等の快挙も成し遂げた。
だが終盤、アンダーアンカーの存在が世間に露見してしまったことと、ジーンの一件で
セブンを含む殆どのフォンブレイバーが再起不能に陥った事もあり、ただの高校生へと
戻っていった。


【聖杯にかける願い】

バディともう一度出会えた事で、あの仕事に戻れた事で、彼の願いは叶った。
だが、仮に聖杯を手にしたとしたらセブンや他のフォンブレイバーを復活させるという事も
考えてはいる。


【方針】

ケイタは失った日常を謳歌していく事を優先的に行っていく。
ただ、ケイタも剣崎も立派な善人なので、困っているマスターが
いたらきっと助けに行くであろう。


14 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:22:54 Z0FQ4gBk0
「セイバ―――!!」

深夜の森、1人の青年が叫ぶ中で、また1人の英霊が脱落した。
鎧を纏った騎士は、巨大な黒騎士の手にした大ぶりのツインスピアに貫かれていた。
黒騎士はさながら神への血祭りの儀式の様に、剣士を貫いた刃を上空に向けていた。
最初はただのちっぽけな2頭身の姿だったのに、一瞬にして
あの姿に変わり、一瞬にして青年の剣士をあしらい貫いた。

「うぅっ…」

剣の英霊の身体から、光が発する。
徐々に身体が光の粒子が出現し、遂には消えた。

「あ…あ…」

気力を無くし地面に青年の顔は青くなり、目から、涙が溢れる。
相棒が死んだというのもあるが、これは絶望の目だ。
生きる術を無くした事による、絶望の顔。


剣の英雄が消滅した直後、黒騎士が槍を地面が垂直になるよう傾けた瞬間…


「ご苦労、ランサー、よくやってくれたよ。」


黒騎士の背後から、声がする。
そして、闇に溶けてよく見えないが、黒い影が現れた。
影は、青年に向かって蛇の様な畝る物を発射する。


それは青年の令呪の宿った右手首に掛かり、切り裂いた。


「うぁぁぁぁぁぁ!!」

輪切りにされた腕から鮮血が飛び散り、青年はそれを抑えながら叫び喚く。
そして、闇に紛れた触手は、苦しむ青年の五感をすり抜けながら
彼の首元に引っ掛かり…
幾つもの木々の中、首から噴水のように血が飛び散る。


そして触手を伸ばした影は、飛び上がった手首をキャッチし、
その身体は光を発した。


現れたのは、10代程の少年であった。
そして少年は手首を儀式の様に天に持ち上げ、見下した言を吐く。

「無様な物ですね…敗者にふさわしい最後と言えますよ。
いや、『噴水』という芸術作品としては、まあまあな物かもしれませんがね。」
それと、この令呪は僕が頂いておきますよ…ククク…ハハハハハハ!!」

少年…能美征二は嗤う。
ただ奪うことしか分からなくなってしまった少年は、
略奪した対象を只々嘲笑し続ける。



黒騎士…ランサーは、その様を傍で静観していた。
表情が作れぬその姿で、彼が何を思ったのかは知れない。


◆  ◆  ◆


15 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:23:17 Z0FQ4gBk0
その後、能美は直ぐに帰宅の路に着く。
時計は10時を指している、だが両親は海外出張で出かけている。
兄がいたが、そんな物は記憶を取り戻して間もなく殺した。
あんな目障りな物等、二度と見たくもない。


倒したマスターの遺体は、首を切られたと共に消滅した。
能美は、奪った手首にある令呪を直ぐ様その手に宿した。
それは、彼の右腕に宿り、既に配布されていた手の甲の三角の令呪を
拡張するかのような模様が広がっていた。
それを眺めながら街を歩いていると、

彼のサーヴァント、ランサーからの念話が聞こえる。

『いや、しかし驚いたね、まさか実の兄を手に掛けるとは。』


そして、それに向かって、笑顔を浮かべ声を掛ける。

「驚くほどでも無いよ、僕から全てを奪った奴さ。」

そして、そこから声が返ってくる。

「ほう、それは奇遇だな、私も兄に下克上を行った身でね、
刃を向けた時のあの瞬間は今でも忘れられないよ。」


「ハハハ、それは意外だね、僕と似たような事をした奴がいたなんて。」

能美は口元を歪めながら虚空に向かってそう言う。
だが、だからと言ってこのランサーを信頼しようとする程、能美征二は
優しくはなかった。

仲間、友情、そんな戯れ言を吐いた銀色の豚の鳴き声が今にでも響いて来る。

彼にポイントを全損された瞬間、ダスク・テイカーの意志はムーンセルへと
弾き飛ばされた。

記憶を取り戻したのは、兄に殴られ、いつもの様に小遣いを奪われた時。

それだけで十分だった。

それからはこのランサーと、どういう訳か持ってこられたデュエルアバターを
手に多くのサーヴァントを破って行った。


願いは決まっている。

聖杯を元の世界に持ち帰る。
そして、世界中の全てを奪い尽くす。

富も名声も力も。

まずは自分からBBを奪ったネガ・ネビュラスと、自分を見捨てた加速研究会を消してやろうか。
何ならBBで前人未到のレベル10に辿り着いてやろうか。そして全てのバーストリンカーを
隷属させて…いや、いっそ世界を支配することも悪くはないかもしれない。

そんな思いが、能美の頭の中に流れて来る。


(絆?友情?そんな物必要ないんですよ!有田先輩…シルバー・クロウ、
それを今度こそ僕が知らしめてあげますよ…聖杯の力でね!!)


能美征二は道を歩きながら、声を殺して叫ぶ。



略奪者は歩き出す。

支配への道を。



◆  ◆  ◆


16 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:23:37 Z0FQ4gBk0

(ハッハッハッハッ、実に誠に哀れな者だよ、あの男は)


幽霊となったこの身体でランサーは笑う。
ランサーは、マスターに従う気など更々無かった。
いや、主君である兄に刃を向けた彼ほど、忠義という
言葉が似合わない者はそうそういないだろう。

だが、今の状況は、ランサーにとっては
不都合な物であった。それこそ、
この笑いを偽りの仮面と位置づけられるほどに。

まさかマスターが令呪を奪うとは思わなかった。
これでランサーの拘束力は更に高まったと言っていい。

いざとなれば自害を命じられる可能性が倍に広がった。

ランサーは、自らの宝具「闇・電子獣融合端末(ダークネスローダー)」を渡さなくて
良かった、と尚更思った。

あれは、ランサーの霊格を閉じ込め、マスターに渡すことが出来る代物だ。
信頼もしていないマスターにその身を委ねるなど、正に自殺行為だ、するわけがない。
なので、基本的にデジクロス、クロスオープンは手動で行い、マスターには、自分以外でも
使えるとは全く話していない。

(残念だが、私にも、願いはあるのでね、君に協力する暇などは持ち合わせていないのさ)

そう、ランサーにも願いはある。

貴族を気取って格好ばかり付けている空っぽ。

兄は、ランサーに向かってそう吐き捨てた。



―空っぽ?





―随分と面白い冗談を吐きますね、兄上。

人間ごときに敗れた者の分際で。

その言葉、そっくりそのまま返してあげますよ。

私が聖杯を手にした、その瞬間にね。




―跪かせてやりますよ、貴方も、クロスハートも、全て。

―願望を成就させた、本当の貴族であろう私が、爵位では測れない権威と、コードクラウンをも凌駕する聖杯の力で、ね。






黒騎士は、そんな言葉を心の中で盛大に口にする。


(そのためにも、君は私の礎になってもらうよ、能美征二君…)


ランサー…スカルナイトモン。


何の信念も無く世界を支配しようとした、何処までも哀れな貴族もまた、聖杯に目を付けだした。


◆  ◆  ◆


加速の世界を追放された黒の略奪者が喚んだのは、電子の世界を我が物にせんとした黒騎士であった。


搾取することしか知らなかった漆黒の暴君達が税として選んだのは、万能の願望機。

後に1人は記憶を洗い流され、1体は転生する宿命にあるのは、ある種での救いであろうか。



―さあ、徴収の時間だ。升はいらない、量は自分の欲が指定するだけの事だから。


17 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:24:00 Z0FQ4gBk0


【クラス名】ランサー
【出典】デジモンクロスウォーズ
【性別】男
【真名】スカルナイトモン
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具C



【クラス別スキル】

対魔力:B
魔力に対する耐性。
第三節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法でも、傷つけるのは難しい。




【固有スキル】


カリスマ:E
人々を率いる天性の才能。
統率力は上がるが、士気は下がる。


話術:B
言葉を操る才能。
言論、交渉において補正が掛かる。


蔵知の司書:E〜B
宝具による記憶分散能力。
デジクロスしたデジモンと記憶を
共有させる。


軍略:B
多人数を動員した戦闘における戦術的直感能力。


反骨の相:A
自らは王の器ではなく、主君に付かぬ気性。
同ランクまでのカリスマを無効化する。




【宝具】

「闇・電子獣融合端末(ダークネスローダー)」

ランク:C 種別:対デジモン宝具 レンジ:20 最大捕捉:1


ランサーが発明したとされるデジモンを融合させる「デジクロス」を
発動させるデバイスだが、このダークネスローダーは
ランサーが開発した、闇の力を持った強力なアイテムである。
ダークネスローダーの中にいるデジモンと「デジクロス」
することで、パラメータを底上げすることが出来る。
本来なら、更に多くのデジモンを、ダークネスローダーから
「リロード」して召喚することができるが、
キャスターのクラスで呼ばれていないためにそれは出来ない。
また、相手サーヴァントが「デジモン」だった場合、
「強制デジクロス」により強制的に融合させることも可能。


18 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:24:17 Z0FQ4gBk0


【ダークネスローダーに内包されているデジモン】



「デッドリーアックスモン」

スカルナイトモンと兄弟の契りを交わした相棒・・・であるが、
実質彼の眷属のように感じられる。
ランサーとデジクロスすることで「ダークナイトモン」へと姿を変える。
また、ランサーは殆どこの姿で行動していた。


「スカルグレイモン」

ランサーの配下。
別世界ではとあるデジモンが暴走した姿として語り継がれている。



「スカルサタモン」

ランサーの配下。
身体に異常を起こす「ネイルボーン」という必殺技を持つ。


【Weapon】

「スピア」

ランサーの両腕に装着されている、ふた振りのドリル型スピアー。
ダークナイトモンとなることで、必殺武器「ツインスピア」へと
変形する。


「ビッグアックス」
デッドリーアックスモンの装備たるビッグアックス。
デッドリーアックスモンとデジクロスする事で装備できる他、
ダークナイトモンの姿でも左肩に装着される。


【人物背景】

バグラ軍の首領バグラモンの弟であり、兄とともにデジクロスを開発したデジモン。
自称「ただの貴族」。目的のためなら手段を選ばない冷酷な人物であり、
義兄弟であり鎧であるデッドリーアックスモンですら信用していないだろうと
シャウトモンに言われるほどの冷血漢。
天野ネネの負の感情を利用して「ダークネスローダー」を生み出し、7つのデスジェネラルにそれを与える。
そして天野ユウを騙し手を組むことでダークネスローダーのデジクロスを応用することで、
クロスハート・ブルーフレア連合を長い間に渡り苦しめていく。
やがて兄であるバグラモンとデジクロスすることでデジタルワールドを手中に収めようとするが、
バグラモンに逆に乗っ取られ、ダークネスバグラモンを生み出す結果となってしまった。
その後は何処かで転生し、同じく転生した兄が探しているらしいが…?


【聖杯にかける願い】

デジタルワールドを支配する。


19 : 能美征二&ランサー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:25:04 Z0FQ4gBk0


【マスター名】能美征二
【出典】アクセル・ワールド
【性別】男性

【Weapon】

「ニューロリンカー」
彼が幼少期から装着していた首輪型多機能端末。
目をディスプレイに、耳をスピーカーにして、
様々なアプリケーションを使用することができる。
彼のニューロリンカーには、「ブレイン・バースト」と呼ばれる
特殊なアプリがインストールされており、思考を一時的に
1000倍にすることが出来るが、使用回数が限られている。




「デュエルアバター・ダスク・テイカー」
彼が「ブレイン・バースト」の中で使用しているアバター。
能美征二は「ブレイン・バースト」を通してこの聖杯戦争に
参加しているため、この姿になって戦うこともできる。
相手の能力を奪う「魔王徴発令(デモニック・コマンディア)」
と呼ばれるアビリティを保有しているが、これはあくまで
他のバーストリンカーのアビリティを奪うものであるため、
バーストリンカーでないマスター及びサーヴァントには使用できない。
ただし、この時点で奪っていた触手、大型カッター、
遠距離火炎放射器「バイロディーラー」は持ってこられている。


【人物背景】

幼い頃から兄に全てを奪われ続け、挙句の果てに兄の「子」に強制的にされる
という形で「ブレイン・バースト」をインストールされ、ポイントを貢がされていた。
それが原因で歪んでしまい、アビリティ「魔王徴発令(デモニック・コマンディア)」を入手。
そして加速研究会と接触したことがきっかけで兄を嬲り殺す。その後私立梅里中学校に入学。
ブレイン・バーストを悪用して学業や部活で高い成績をとり続けていた。
その後「ネガ・ネビュラス」の王が留守にしているのを狙い、有田春雪に盗撮容疑を着せ
彼を学校の蚊帳の外に追いやった挙句に彼の飛行アビリティを奪い、
更には倉嶋千百合を取り込みネガ・ネビュラスを壊滅状態に追い込むが、
厳しい修行を重ねた春雪と黛拓武との戦いで苦戦、更にネガ・ネビュラスの王である
黒雪姫の救援、そして取り込んだはずの千百合によって飛行アビリティを奪い返され、
その後も往生際悪く喚くも春雪によってポイントを全損される。
口調こそ丁寧だが、その実極めて尊大な態度を取り、上述の経歴の反動からか搾取することに
長けた様な人物である。



【聖杯にかける願い】

聖杯の力で、全てを奪い取る。


【方針】

まずは能美の謀略でで他のマスターを貶めていき、
ランサーの力で他のサーヴァントを倒していく。
ただ、信頼関係はひどく脆い。
また、ダークネスローダーに入っているデジモン全てとデジクロスする
「スーパーダークナイトモン」となれば、戦力は更に高まる。


20 : 柊シノア&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:25:43 Z0FQ4gBk0
ムーンセルが構築したSE.RA.PHにおいても、魔術という存在は一応は存在していた。

カバラ、呪術、錬金術、黒魔術、その系統も数多く存在し、多くの魔術師が根源に向かって走り続けていた。
無論、厳重に秘匿され多くのマスター達は聖杯戦争が魔術儀式の一種であったとも知らずに戦いを終えるだろう。



呪術の名家としてその名を馳せた柊家もまた、時計塔の下にある魔術師一族の一つであった。
まるで中世の城の様なデザインの柊邸は、今も尚この街にそびえ立っている。

最も、末っ子である自分には縁の無い話ではあるが。


そんな事をふと考えながら、柊シノアは地下室へと続く螺旋階段を降り続ける。
今は全く使われず放置されていた部屋だったので、権力が無いに等しい自分でも
鍵を手にするのはそう難しい事ではなかった。

(にしても、あの世界とはまるで大違いですねぇ)

この世界には、黙示録のウイルスに感染したものはいない。
それどころか、ヨハネの四騎士はおろか吸血鬼まで存在しないという。
それは、教科書で見た、自分が物心付く前の世界によく似ていた。

(魔術協会に時計塔、聖杯戦争…ですか)


手ほどきを受けていた呪術なら嫌というほど染み付いているが、魔術というものは聞いたことがない。
しかも、呪術がその「魔術」なるものの一種といい、魔術協会という組織の下厳重に秘匿されているという。
そしてその本部があるのが、「時計塔」。その名の通り、ロンドンにあるあの時計塔がそびえ立つ地域の近くにあるといい、
また時計塔の学部は魔術師にとってのエリート大学、兄もそこに留学しているという。
あの性格だ、きっと周りを睨みつけては威張り散らしていることだろう。

そして、聖杯戦争。

聖書やアーサー王伝説で語られていた、預言者の血を注いだ聖なる杯。
それが、この月に本当にあるという。
それに関する記憶を埋め込まれた時は、大層驚いたものだった。



そろそろ螺旋階段の段数も、数えられる程になってきた。


最後の一段に足を付けた時には、目の前に古びた扉がある。

そしてシノアは扉を開き、軽い足取りでスキップしながら部屋へと入る。


◆  ◆  ◆


一つの電球だけが照らしてくれる地下室。
木々で作られた壁には、数多くの怪しそうな道具が
置かれ、それはまるで骨董屋の様に感じられた。

そして、その中心にある机に、黒いコートを着た青年が座って何かの作業を行っていた。
そして、机の隣には、大量のトランクらしき物が積み上げられていた。
それも、3台ずつ積まれているものが6つある、という形でだ、計18台はある。


そして、相変わらず陽気な態度を取るマスターの声を聞き、青年は振り向き立ち上がる。
彼がキャスターのサーヴァント、シノアの従者であった。
そしてこの地下室は、マスターが用意した、キャスターの工房。

シノアは普段通りの笑顔を作り、キャスターに歩み寄る。

「作業は順調ですか?キャスター。」
「はい、順調です、手の動きは早くなり、その上ソウルメタルを生成出来るなんて…
サーヴァントの身体というのは本当に素晴らしい物です!。」

ニコニコしながら問いかけたシノアに、キャスターは熱意の篭った表情で答える。

ふと、シノアはキャスターの机の隣に積まれているトランクらしき物を見ると、面白そうな顔で、

「いやぁ〜それにしても、あの形で積まれているのを見ていると、旅行の準備に見えてしまいますねぇ〜」

キャスターにからかいの言葉を掛ける、するとキャスターは、

「これは荷物ではありませんマスター!号竜です!」

真面目な顔で言い返す。

「あはは〜知っていますよ〜それぐら〜い」

シノアもそれを笑って返す、同僚はおろか上司にまでからかいの言葉を掛けてきていた彼女にとって、
からかうという事はもはや日常茶飯事。

だが、からかってはいても、その「号竜」という品はとても興味深くはある。

キャスターが扱う術は、シノア達の世界における呪術とは殆ど別物と言っていい。

筆を礼装に、生き物のような幻を生み出したり、波動を発射したり、その「ソウルメタル」なる金属を素材に
道具を作り出す。似ているのは呪符を使ったりする程度の物だ。

そして、先程自分が荷物と冗談を言った「号竜」。
あれは彼曰くキャスターの発明品だそうだ、戦闘力もかなりの物らしい、
最も、本人は「サーヴァントとまともに戦えるかは分からない」らしいが。
しかし、姉以外に発明家と出会えたのは、これまた驚きの物ではあった。

◆  ◆  ◆


21 : 柊シノア&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:26:22 Z0FQ4gBk0
「全く…あ、そうだ!」

そう言うとキャスターは先程のしかめっ面を直し、机に置かれていたコンパスの様な物を手に取ってシノアに差し出す。

「これは…?」

「サーヴァントの魔力を探知する、謂わば羅針盤です、念のため持っておいてください。」

「おやおや、もうそのような物を作っていたとは、随分と用意周到ですねぇキャスターさん。」

だが、無邪気な態度を繕っていても、内心では少しホッとしている。
戦闘時での索敵なら、鬼呪装備の「四鎌童子」で可能なはず。
だが、街中で鎌を引き抜きながら歩けるわけがない。
そのため、何の装備も引き抜いていない状態で敵に襲われる危険性もある。
だからこそ、少し安心した。
だが、その安心も、直後の言葉で無意味となる。


「それと…マスターは、本当によろしいのですか?」

キャスターから、言葉が出る。

「何をですか?」

シノアが聞くと、キャスターは暗い顔で、

「願いのために、本当に人を殺す覚悟はあるのですか?」

その時、シノアが作っていた笑顔が、途端に崩れだす。


キャスターと契約したあの時、冷たい表情で、「ある」と答えたはずであった。

この聖杯を、滅んだ世界を救うために使えるならと。
吸血鬼やヨハネの四騎士を消し去り、自分が生まれる前の世界に戻せるなら、と。

だが、その時にも、今と同じような感情が生まれた事を思い出した。

自分は恐れているのだろうか。

同族である人間を斬ることを。
仲間のために、今ある世界のために人を斬ることを。
「向こうが斬りに掛かるならこっちもそうするまでだ」
と割り切ろうとしても、割り切れなかった。
吸血鬼やヨハネの四騎士なら何度か斬ってきた、
なのに、何でここで躊躇するのだろう。

だがそれでも…聖杯を諦めるつもりはない。
人は殺せない…だったら。


「いえいえ、そんな覚悟持ちあわせていませんよ。」

再び笑顔を作り、キャスターに言う。
「え?」
少し驚いた顔をするキャスターに向かって、また笑顔を崩して言う。

「ですからキャスター、お願いがあります。」

「マスターは極力殺さないで下さい、狙うのはサーヴァントだけで十分です。」

人は殺せないだろう。
何であれ、同族を殺すことは出来ない。

だがそれでも、勝ちには行きたい。

ならば、せめてサーヴァントは倒しに行く。


「改めてよろしくお願いします、キャスター、聖杯を手にする、その時まで。」


「分かりました、マスター、精一杯尽くします!!」


屋敷の地下室で、また聖杯に手を伸ばさんとする。


22 : 柊シノア&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:26:46 Z0FQ4gBk0





【クラス名】キャスター
【出典】牙狼-GARO-〜MAKAISENKI〜
【性別】男
【真名】布道レオ
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力C+ 耐久C+ 敏捷B+ 魔力C 幸運B 宝具A (鎧装着時)

【クラス別スキル】

陣地作成:D
自らに有利な陣地を作り出す能力。
法術を行使するのに有利な工房を作り出せる。


道具作成:B+
魔力を帯びた道具を作り出す能力。
キャスターの場合、一級品の魔導具の他、
生前の逸話から、「号竜」を大量に生産する
力を手にし、ホラーの骸がない限り作り出せない
ソウルメタルを錬成する力をも手にした。



【固有スキル】

対魔力:C
魔力に対する耐性。
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等は防げない。


魔戒騎士:C
闇に生まれ、闇に忍び、闇を切り裂く護りし者。
反英雄、ないし怨念に起因する者に対しパラメータに
補正が掛かる。


法術:B
魔戒法師が持つ魔術基盤。
魔導筆を礼装として行われる。




【宝具】


「閃光騎士・狼怒(せんこうきし・ろーど)」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1

キャスターが継承した、魔戒騎士の鎧。
魔戒剣で頭上に円を描く事で鎧を召喚、
パラメータを高める。魔戒騎士としての在り方から
不死の英雄に対し特攻が着く。ただし、装着出来るのは
99.9秒間。その上固有結界内での召喚は不可となる。


【Weapon】

「魔戒剣」
ソウルメタルと呼ばれる金属で鍛えられた剣。
重量は持つ者の精神力に左右され、碌に訓練を受けていない者には
重すぎて持てない上に、女性には触れることすら出来ない。



「魔導筆」
霊獣の毛皮を筆毛とした、魔戒法師の必需品。
法術を行使することが出来る他、号竜にコマンドを打ち込む際にも使用される。
彼が使用している魔導筆は、尊敬していた兄の形見である。

その他、多彩な魔導具をコート裏に所持している。


23 : 柊シノア&キャスター ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:29:47 Z0FQ4gBk0

【人物背景】


「閃光騎士・狼怒」の称号を受け継ぎゆく家柄の次男坊。
自分より優れた兄、シグマを優れた魔戒騎士となると信じ、
彼を支える優秀な魔戒法師となる事を決意するが、シグマには
護りし者としての心構えが足りなかったために自分が狼怒の
称号を手にする羽目となってしまう。これにより兄は家出してしまうが、
幼い頃兄と一緒に考えた「号竜」を形こそ違えど互いに完成させ、再会。
しかし魔戒騎士の根絶を掲げ十のために一を躊躇無く捨ててしまう兄とは相容れず決裂。
それからは若き天才魔戒法師として元老院で活躍していたが、「黄金騎士・牙狼」の
称号を持つ男やその仲間達と出会い、絆を深め合う。やがて狼怒の称号も正式に継承し、
兄、シグマとの決戦に挑んだ。基本的に真面目で心優しく謙虚な性格。
所謂天才型のため当初は想定外の事態に取り乱すこともあったが、戦いの中で大きく成長を遂げる。


【聖杯にかける願い】

護りし者に、願いなど無い。




【マスター名】柊シノア
【出典】終わりのセラフ
【性別】女

【Weapon】

「四鎌童子」

シノアが契約した「鬼呪装備」。通称「しーちゃん」
普段は黒いペンの様な形状をしているが、詠唱とともに
巨大な鎌へと変化する。リーチ内の敵を探る能力を持つ。


【能力・技能】

「呪術」
ダキニ天法による、東洋の魔術基盤。
呪術の名家の出身であることと、
少なくとも呪符の解呪法は知っている事から、
そこそこの心得はあると思われる。


【人物背景】

滅び行く世界で「日本帝鬼軍」を統べる名門柊家の出身。
無邪気に振る舞う悪戯好きだがその実クール。昇進に興味はないので
毎回蹴っている。家族も仲間も無い空虚な生き方をしていたが、
監視することになった百夜優一郎やその仲間との交流を重ねることで
変わっていく。
【聖杯にかける願い】

吸血鬼やヨハネの四騎士を消し去り、世界を元に戻す。


【方針】

基本的にサーヴァントのみを狙い、マスターは極力殺さない様にする。
また、シノアもキャスターも接近戦に秀でている他、号竜を扱った戦い方も出来る。


24 : 百夜ミカエラ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:30:58 Z0FQ4gBk0


『その眼に焼き付けろぉ!!』




アトリの亡骸が、粒子となって消えた。

彼女が消えた場所には、あの「三つの爪痕」が残されていた。

あの時、俺が倒したはずの仇が付けていた、極めて特徴的な傷。


そして、俺の目の前に立っていたのは・・・・


俺がこの「世界」に来て間もなく出会った、命の恩人であった。
左腕に付いていたギブスは地に崩れ、肩からは毒々しい鎌がうねっていた。



『志乃を殺したのも・・・俺だ。』



―嘘だ。

なんで、なんであいつが・・・・




何でお前が・・・・


あの日、PKされた俺を助けて、黄昏の旅団に入れてくれたお前が・・・・


何で・・・・



『追って来い、ハセヲ、お前が俺に追いついたその時、お前の物語が真の終焉を迎える・・・。』



あの男はそう言うと踵を返し、去る。


「うっ…ウゥゥゥゥゥ…」


地面に顔を向け、涙を落とす俺の中に、数々の思いが流れてきた。

悔しみ、悲しみ、怒り、憎しみ・・・

数えきれない程の負の感情に押し潰され、俺は俺で無くなっていく気がした。

だがそんな事はどうでも良かった。

恋人はおろか偶々出会った人すら守れなかったのが悔しかった。

半年を費やして手に入れたレベルも、居場所も、何もかも失ってしまった事が悲しかった。

それを奪った「奴」が憎かった。

しかし志乃を眠らせた男は、俺のPCをハッキングした者とは別人であった。

しかも、その犯人は…アンタだった…

アンタが…アンタが志乃を。

―許さない…絶対に。

体中が熱くなる、何かに焼かれている気がした。
まるで毛糸が一本の線に変わるかのように、俺の思考は単純化していった。


そして…遂に。


「O―――Vaaaaaaannnn!」


俺の思考は、殺意と狂気に塗り潰された。


俺から何もかも奪っていったあの男が、嘗ては俺に教え、与えてくれた人であったことも知らずに。

『オーヴァンを…救ってあげて…』

彼女との別れ際の約束も、忘れてしまいながら。



◆  ◆  ◆


25 : 百夜ミカエラ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:31:38 Z0FQ4gBk0


1人の少女と、1人の男が、朱く染まりながら人気のない道路に横たわっていた。



周囲には、刃、刃、刃。
血飛沫と共に、無数の刃が地面に突き刺さって、この一面を気味悪く彩っていた。


そして、その中心では…


「■■■■!」

紅い獣、いや、正確には「獣のような紅い鎧を纏った男」が、何も感じられない様な其の目を虚空に向け、
まるで獣の様な咆哮を上げていた。


蛇のように畝る複数の尻尾は、朱く光る牙であり、
全身を纏う鎧は、茨のような黒い棘が無数に付いていた。



「■■■■■!!」

その咆哮が止んだ瞬間、無数の刃に切り刻まれた亡骸は光の粒子となって消え去り、
無数の刃は、構成されていた0と1に分解され消え、


「フシュゥゥゥゥゥゥゥ…。」

血に飢えた獣は、息を荒げながらも、沈黙した。


この狂戦士は、あろうもことかSE.RA.PHの空間に穴を開け、無数の剣が鎖のように固まった様な
刃を出現させ、サーヴァントの必死のガードも虚しく彼らを切り裂いてしまったのだ。


そんな光景の一部始終を、百夜ミカエラは目にしていた。


(あれが、僕のサーヴァントなのか…)

周囲を飾る刃、血、亡骸。
人の形をしているのに、人に見えない、
「死の恐怖」が固まって生まれた様な存在。
ミカエラが幾度も斬り捨てたヨハネの四騎士に匹敵、
いや、下手をすればそれ以上の力を秘めていた。
その狂戦士としての姿は、暴走してしまった嘗ての友を思い出す。


◆  ◆  ◆


26 : 百夜ミカエラ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:32:07 Z0FQ4gBk0
ミカエラが記憶を取り戻したのは、つい一日前であった。

それまでは高校で授業を受け、友人と談笑を交わし、
孤児院に帰って寝る毎日だった。


そんな日々を過ごしていく内に、それが何処か懐かしさを
感じるようになってきた。そして遂に辿り着いた結論。

こんな日々を、僕はずっと過ごしてきていなかった。

そんな事が思い浮かんだ瞬間、

元の世界の記憶がパズルのピースが集まっていくように蘇り、
「聖杯戦争」に関する知識、三角の紋章、そして目の前で屠っている狂戦士。
これらが全て、ミカエラの前に集まった。しかし、その知識はあまりにも
驚くべき物であった。

子供の頃に読んだ本の中に出てきた、とっても強い騎士様を天国に送った「聖杯」。

カッコいい王様と騎士様が探していた、キラキラと光り輝くコップ。

それが、本当に存在するという、それも、この月の中に。

しかもそれは、「願望成就」という力を手にしていた。

ならば、それは何としても手に入れよう。

ミカエラが望む物は既にある。


友を救う。



欲望に塗れた人間達に騙されている、優ちゃんを救う。

願いに伸ばす手を弾く者達は愚かな人間、それにあちらがそうするならこちらもそうするまでだ。

倒すことには、何の躊躇いもない、これまでもそうしてきたのだから。

そして、そのためにも。

「力を貸してくれ、バーサーカー。僕が、優ちゃんを救うための力を。」

ミカエラは、目の前にいる狂戦士に問いかける。
契約を成立させたあの時と、同じ言葉で。



「Urr…」



獣は、肯定の意を表す様に吠える。



そして今、彼はこの戦いに足を踏み入れ、黙示録の獣を侍らせ願望機の中身を飲み込まんとする。


「世界」に侵蝕した病に、友を奪われた二人の少年。
あの「世界」と同じように黙示録の再現が行われる中、かの大天使の名を持つ少年は、
かの大天使に滅ぼされた獣の名を冠す狂戦士の首輪を握りしめ、走りだす。




君の元へと向かうから待っていてくれ。

奴らは何らかの形で君を変えてしまうだろう。

君は何処にいるの?


来い、来いよ、俺はここにいる。

僕が君を、救いだすから。

夢から醒めても、この手を伸ばすよ。


27 : 百夜ミカエラ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:32:27 Z0FQ4gBk0
【クラス名】バーサーカー
【出典】.hack//G.U.TRILOGY(設定は.hack//Linkに準拠していますが、経歴は此方から)
【性別】男
【真名】黙示録の獣
【属性】混沌・狂
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具A



【クラス別スキル】

狂化:B
理性と引き換えに全パラメータを増強させる。
理性を完全に失う代わりに全パラメータが1ランク上昇する。


【固有スキル】

死の恐怖:-
「The World R:2」にて有名になったPKK。
反英雄、属性が「悪」の英雄に対しパラメータに補正が掛かる・・・はずなのだが、
正規のPCには程遠いこの姿で呼ばれた際には何故かうまく機能していない。


勇猛:B
威圧、混乱、幻惑などの精神攻撃を跳ね除ける。


錬装士:A
マルチウェポン。「The World R:2」におけるジョブ。
「剣術」「槍術」など多種多様な武器の扱いに関するスキルを
組み合わせた、一種の複合スキル。
Aランクだと、3rdフォームへのジョブエクステンドを完了し、
更に高いレベルへと至っている証となる。
バーサーカーが狂っていても尚器用に武器を扱えたのは、この
スキルの恩恵を受けているためである。



魔力放出:A
武器、ないし自らの身体に魔力を纏わせる。
時にはバリア、時には炎を発することが出来る。



【宝具】

「第一相碑文・死の恐怖(スケィス)」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:20 最大捕捉:1

嘗て「The World」に存在したとされるモルガナの化身であり、
バーサーカーのPCに宿った「碑文」と呼ばれる特殊プログラム。
本来は「憑神(アバター)」を呼び出し、
更にはデータを書き換える「データドレイン」を
可能とする宝具なのだが、このクラスで召喚された際には、
バーサーカーの身体と歪んだ形での「融合」を果たしてしまっており、
無数の刃を異空間から召喚して戦う「獣」に姿を変える力として
機能している。


【人物背景】

世界的なオンラインゲーム「The World R:2」にて其の名を馳せた伝説のPKK、「死の恐怖」ことハセヲのPCが、
仲間をPKした「三爪痕(トライエッジ)」に対する強大な怒りによって歪んだ形でのジョブエクステンドを果たした姿。
ある世界では「三爪痕」を騙ったオーヴァンとの熾烈な戦いの末に敗北したと記録されているが、
またある世界では「The World R:X」における放浪AIとしても存在し、
同じく存在したハセヲの放浪AIもこの姿に変貌したとも伝えられている。
此度の聖杯戦争においては、「The World R:X」のサーバーにあったデータがサーヴァントとなった形で
現界している。だが、伝承の影響から、狂っているために意味こそ無いが、
オーヴァンに倒された方のハセヲの持っていた記憶は残っており、彼の目には、愛する仲間を殺した、嘗ての
恩人の姿が見えている。オーヴァンの過去や、後に自らが彼を救おうとしたことは、忘れてしまったが。


【聖杯にかける願い】

オーヴァンを、殺す。


28 : 百夜ミカエラ&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:32:52 Z0FQ4gBk0
【マスター名】百夜ミカエラ
【出典】終わりのセラフ
【性別】男

【Weapon】

「剣」
吸血鬼が所持する剣。
所有者の血を吸うことで威力を高める。
血を吸えないので使いどきが肝心。



【能力・技能】

・吸血鬼
数々の伝承でも語られている、血を啜って生きる亜人種。
しかし、ムーンセルにおいては食事は意味を成さなくなったため、
吸血をしなくても身体が維持できるようになった。
ただし、血を吸うと魔力が減る。



・終わりのセラフ
「百夜教」が開発を進めていた、禁忌の呪術。
彼はその実験体である。


【人物背景】

「百夜教」の孤児院に預けられた子の1人で、孤児達のリーダー的存在。
しかしその一方で「終わりのセラフ」の実験体として扱われており、
素質に関してピカイチであった。しかし吸血鬼達によって地下に閉じ込められ、
残飯を食べさせられる毎日を送っていたが、ある日脱出を決行。
しかしそれは失敗し、吸血鬼の貴族に連行されるも、吸血鬼の女王に気に入られ、
吸血鬼の力を望まずとも手に入れる。そして、仲間達の唯一の生き残りであり
親友である百夜優一郎を救うために帆走することになる。
吸血鬼となった影響で若干感情が希薄になっている上に人間を見下したような口を
きくようになったが、それでも友を救おうとする意志は決して揺るがなかった。

【聖杯にかける願い】

優ちゃんを救う。


【方針】
血を吸わなければ疲労を回復させられないので、
あまり剣に血は捧げたくない。
まずはある程度情報を入手してから、
バーサーカーの火力で他の敵を潰していく。


29 : 名無しさん :2016/04/24(日) 17:35:05 QIYacBpE0
おおー、新聖杯
ルーラーが豪華だ


30 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:36:12 Z0FQ4gBk0
以上、四組の投下を完了しました。

これにて、候補作の受付を開始いたします。


31 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 17:39:19 Z0FQ4gBk0
それから執筆ミス報告。

「柊シノア&キャスター」のある部分を修正させていただきます。

人は殺せないだろう。
何であれ、同族を殺すことは出来ない。

だがそれでも、勝ちには行きたい。

ならば、せめてサーヴァントは倒しに行く。

「改めてよろしくお願いします、キャスター、聖杯を手にする、その時まで。」→×


人は殺せないだろう。
何であれ、同族を殺すことは出来ない。

だがそれでも、勝ちには行きたい。

ならば、せめてサーヴァントは倒しに行く。

(優さんなら…そうするでしょうね…)

あの猪突猛進を体現したかの様な少年が、目の前に浮かんでくる。

彼女は自覚してはいなかったが、きっとシノアはその少年の影響を受けているのだろう。

「改めてよろしくお願いします、キャスター、聖杯を手にする、その時まで。」→○


32 : 名無しさん :2016/04/24(日) 17:42:09 QIYacBpE0
>>31
ところでメアドが入ってますが大丈夫でしょうか?


33 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/24(日) 18:23:29 Z0FQ4gBk0
>>32 あ、すいません、有難うございます。


34 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:42:19 mrP/kZTc0
冴島大河&バーサーカー 投下します


35 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:43:11 mrP/kZTc0

 引き金を引くたびに、少しずつ、少しずつ。心から、あるいは魂というべきものから、少しずつ汚れ、寄れ歪んでいく。
飛ばされる礫は、運動エネルギーを消費しつくすまで、行き先にあるもの、無機物だろうが、有機物だろうが、引き裂いて進む。
当然、使用者に加わる反動は相当の物だろう。その人が一本通ったどうにもできない芯によって支えられているか、
無効化できるほどの柔軟性に恵まれていなければ、反動は身体を伝わり、恐らく、大切な物を摩耗させ、最後には折損させる。

 忠誠心の下、恩への奉公から、放った弾丸は結局誰一人の命も奪わずに止まった。……放たれた鉄砲玉の反動は、
大恩ある、風雨から守っていた竹林を根絶やしにし、兄弟の契りを結んだ友を窮地に追いやり、宝物のように大切な妹をは弾丸となった。
人を殺すのはとても恐ろしいことだ。周囲が伝説ともてはやしたとしても、抱いた罪悪感も、向けられる憤怒もいつまでも消えないのだ。
そして、妹は誘導的に他人に対して放たれ、幾人もの命を奪い、そのまま止まって消えてしまった。

 ――だから、冴島大河が、真実の記憶を自覚するのはとてもはやかった。

 冴島大河、47歳。高校の教師として勤めており、強面ではあるが、その面倒見の良さと頼りがいのある人柄から生徒たちに慕われている。
私生活は心優しき妹と二人暮らしで――そんなに裕福ではないが、つつましやかに二人助け合って暮らしている。
時には、近くに住んでいる大恩ある隠居老人の下を訪れ杯を交わし合い、近所の子供たちの少年野球チームの指導を行い、
近所からの評判も上々だ。この小さくも充実した生活の中、彼は日々を過ごしているのだ。

 それは、もはや、決してかなわない夢だった。幼き日の頃、あまりに過酷な現実に打ちのめされるまで夢見たことだった。

 焼かれ続けていた。彼は生まれた日から、同国の常人よりも過酷で残酷な世界から、困難によって、ずっと、焼かれ、焼かれ続けている。
彼にとっての現実は、苦境と転換が繰り返しやって来るものだった。馴染んでいた生活をどうにもならない天災に変化を余儀なくされる。
けれども、またしても突然切り替えられた生活は、今までの人生を覆ってしあうほど、心地よいぬるま湯で。
その安穏とした仮想/現実は、違和感に塗れたものであり、何よりも――苦しいものだった。


36 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:43:57 mrP/kZTc0

 「なあ、どないしたらいいんやろな……」

 こじんまりとしたアパートの一室で、冴島はどっかりと胡坐をかいてちゃぶ台の前に腰をおろす。
時刻は逢魔が時、夕暮れの刻、外からは学校を終えた子供たちの和気あいあいとした声が橙色の陽光とともに部屋にやって来る。
けれども冴島の表情は、かもすれば悠然さを感じ取るだろう辺りの雰囲気とは異なり、深い皺が眦に刻まれ、苦悩が漂っていた。
彼は、箪笥の上にのっている銀の燭台を見つめる。質素な生活には不釣り合いな燭台、今の彼の苦悩の一篇を成すものである。

 冴島がしばらくそうしていると、ちゃぶ台の反対側にぼんやりとした靄が集まり、そのまま像を結んでいく。
形成されたのは、冴島同様、背の高い大柄な男性、まるで気高き獅子のようなな印象を受ける人であった。
この人物こそは、この聖杯戦争において冴島に召ばれたサーヴァント――クラスはバーサーカー。
冴島に流れ込んだ聖杯の知識からは、バーサーカーとは理性なき獣のようだと伝えられ、少し狼狽した物だったが、
平素穏やかな様子から、冴島は胸をなでおろし、そして今、バーサーカーに問いただすように言葉を漏らしている。

 「口が、きけんのやったな」

 如何に、表面的には上品な様子でもやはりバーサーカーはバーサーカー。冴島の問いに答えてくれる素振りは見せない。
ただ、彫像のように立って、穏やかに見つめつづけるのみ。その眼に見据えられた冴島は、思考の海に沈んでいく。

 突然このような場所に連れて来られて、突きつけられたのは、魔術、儀式、そして、聖杯。
冴島の人生経験からしたらまったく常識の埒外にある事柄であったが、
彼は目の前に起こったことを受け入れられないほど意固地な男ではない。何とか、葛藤の後受け入れた。
そして、受け入れた彼の前には三つの選択肢が示された。絶対に選ばなければいけない三択である。

 一つは、戦争を勝ち抜き、聖杯を得ることにより、このかなわぬ生活を、よりよい生活を求める道。

 一つは、聖杯戦争から脱出し、失ってきた現実と再び戦い続ける道。

 そして――

 全てを見て見ぬふりをし、この安らぎの中、虚数の海に沈む道。

 彼は思考に沈む。取るべき道は分かっている。征かなければならない道も! しかし、しかし、
どうしても彼を惑わせるのは、妹の、靖子が生きていること、安穏とした日々を過ごしていること!

 彼の思考は混迷を極める。真に選ばなければならない物は何か、捨てていかねばならないものは何か。

 思い浮かんだのは――


37 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:44:44 mrP/kZTc0
 「兄さん、」

 「おう、どないかしたか、靖子」

 「最近、大丈夫? 何だか調子が良くないみたいだけれど……」

 「ああ、大丈夫や、すまんな、心配かけて」

 「本当に、気をつけて……」

 「……なあ、靖子、お前、今の生活に満足しとるか?」

 「どうしたの兄さん? そんなこと聞いて」

 「いや、変なこと聞いた。忘れてくれ」

 「……満足してる。こんなに暖かい日々を過ごして、私は、十分に、幸せ」

 「そう、か……」


38 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:47:16 mrP/kZTc0
(すまん、靖子、すまん……!)

 選んだのは、脱出への道。思い浮かべたのは、杯を酌み交わした兄弟、死んでいった友、刻んできた罪。
誓ってきた道をたがえることなど、冴島にはできなかった。東城会を守る。果たさなければいけないのはそれなのだ。
仁義と義理を、筋を通さずにはいられない、彼の身体に、心に、魂に刻まれた、性だった。

 背中に刻まれた笹と虎。模様に沿った令呪がチリリ、と疼いた。


 【クラス】バーサーカー
 【真名】ジャン・ヴァルジャン@レ・ミゼラブル 新井隆弘版
 【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具D

 【属性】
 中庸・善

 【クラススキル】
 
 狂化:B
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われるが、
 後述の宝具によりバーサーカーは無軌道に暴れまわることはない。

 【保有スキル】
 
 怪力:C
 一時的に筋力を増幅させる。本来ならば魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性だが、
 天性の怪力により起重機とも称されたバーサーカーは例外的にこのスキルを持つ。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

 人徳:B
 人間としての魅力。狂化されていても感じられる彼の高い倫理観。
 交渉をある程度有利にする。

 仕切り直し:C
 窮地から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
 

 【宝具】
 『銀の燭台(セルメント・ピヤンヴニュ)』
 ランク:D 種別:―― レンジ:――  最大捕捉:――
  教会で祝福された銀製の燭台。
  それ以外何の変哲もない品であるが、バーサーカーにとっては暗闇の人生に差し込んだ光であり
  先を照らしていく灯である。ミリエル神父との約束の証であるこれがある限り、彼は与えられた光に背くようなことは
  絶対にしないだろう。すべての精神汚染を無効化する。

 【weapon】
  素手

 【人物背景】
  かつてパン一つを盗み投獄されたレ・ミゼラブル(哀れな男)。出所した後、人間不信に陥り世界と神を憎み切っていたが、
  ミリエル神父と出会ったことで優しさを知る。その後、マドレーヌとして市長を任ぜられるまでになるが、
  娼婦フォンテーヌとの出会い、かつての罪により別人が逮捕されたことにより、正体を明らかにする。
  そして、フォンテーヌとの約束のため、彼は生涯にわたって彼女の娘のコゼットを守り続けた。

 【サーヴァントとしての願い】
 ???


39 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:50:06 mrP/kZTc0
  【マスター】
  冴島大河@龍が如く

  【マスターとしての願い】
  聖杯戦争からの脱出
 
  【weapon】
  素手

  【能力・技能】
  喧嘩の経験と人並み外れた怪力。それは配電盤を引っこ抜き、手負いの熊を素手で葬るほど。
  地面を叩き衝撃を伝えることもできる。

  【人物背景】
   かつて、敵対組織18人を一度に葬ったとされる伝説のヒットマン。
   恩のある笹井組長のために親友 真島と襲撃を実行したが、真島は妨害され加われず、直前に和平が結ばれていたことから、
   襲撃の責任は笹井に振りかかり自身は死刑囚として収監された。
   そののち、25年後、伝えられた情報から真実を掴むため、脱獄。そこで、襲撃時の拳銃の弾がゴム弾であり、自身は誰も殺していないこと、
   妹の靖子が利用され人を殺していることを知る。その後敵からの銃撃から冴島をかばった靖子が死亡し、一度は意気消沈するも
   桐生からの言伝により奮起、見事真相を明らかにした。
   現在は真島とともに東城会を支えることを誓うも、罪を濯ぐため自ら傷害罪で刑務所に入っている。


40 : 冴島大河&バーサーカー ◆mMD5.Rtdqs :2016/04/24(日) 21:50:34 mrP/kZTc0
投下終了です。


41 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:43:07 x8e3s2960
投下します


42 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:44:15 x8e3s2960
自分の願いを思い出す。自分の思いを取り戻す。そして少女――――美樹さやかは剣を抜いた。

「がはっ!」

肺を貫かれたのだろう口から噴き出るのは鮮やかな紅(あか)。
戦う前から理解していた、勝てないと。
それでもさやかは退かない、激痛を堪え、瞳に更なる闘志を宿し、眼前の敵を睨みつける。

「存外に良い獲物を得たな」

さやかと対峙する西洋鎧の剣士の後ろで、厭らしい笑みを浮かべている中年男は、このサーヴァントのマスターだろう。苦しむさやかを見る目には、昏い愉悦と欲情があった。

――――こんな処で死ねない!死にたくない!

――――帰らないと、恭介が!まどかが!

「なるべく長く持たせるんだ、泣き喚いた末に、私の靴を舐めて命乞いをするのが見たい」

悪趣味極まりない台詞にウンザリしたように頷くと、セイバーはさやかの右手首を切り飛ばした。
あまりにも速く滑らかに切り飛ばされた手首は、血も流れず、痛みも感じない。
呆けたように断面図を見つめるさやか、その傷口にやがて血が浮かび、勢い良く鮮血が迸った。

「う…う…が…あ……ぎゃあああああああああ!!!」

獣のような叫びを上げてのたうち回るさやかに、セイバーが剣を振り上げる。狙いは左手首。
硬いものが断たれる音がした。

「な…なな…なあああああああ!!!」

セイバーのマスターの間の抜けた叫びが夜の空気を震わせる。眼前で尻を突き上げ地面に突っ伏しているのは、自身のサーヴァント、セイバーだ。周囲には誰もおらず、さやかは激痛と出血により気絶している。
セイバーの首筋には木の葉の様な形状の刃が突き立っていた。おそらくは頸骨を一撃で断ったのだろう。

「ひ…ひぅぃぃぃ!!!」

消えていくセイバーに目もくれず、踵を返して走り出す。セイバーを斃した武器と、斃された状況から、相手はおそらくはアサシンのサーヴァント。
隠れて不意を衝くしかない暗殺者とてサーヴァントはサーヴァント、彼には太刀打ちできる相手では無い。
必死という言葉を体現して走る男の逃走劇は、十歩も行かずに終わりを告げた。

「うぎゃあ!!」

唐突に転倒し、顔を強かに打ち付ける。痛みを意に介する暇も無く立ち上がろうとして、また転んだ。
喚きながら身を起こそうとして気付く。

――――左足が軽い。

恐る恐る視線を向けると、人の足の膝から下転がっていた。

「あ…あ…あ…ああ…あああ…ああああああああああっっっっ!!!!!」

断末魔の如き悲鳴を上げる男の前に、ゆらりと闇から滲み出る様に人影が表れた。
分厚いフード付きの外套に身を包み、両腕の肘から先を獣毛で編んだ黒い籠手で覆っている。
右手を覆う籠手の上に精緻な細工が目を引く黄金の腕輪嵌められていた。
上背はそれなりに有るが、肩幅は狭く、骨格も華奢であった。女性かと思われるフォルムの主は、しかし――――

「つまらんな、呆気なさ過ぎる」

静かな低い声は男のそれであった。

「我が君への供物とするには不測。しかもマスターの治療もしなければならん」

そうして男は右手を振り上げる。そに手にはいつの間にか長さ90cmを超える曲刀が握られていた。

「時間をかける訳にはいかんな」

そうして男はゆっくりとセイバーのマスターの左肩に刃を食い込ませ、心臓目掛けて緩やかに、確実に刃を滑らせていった。
凄まじい苦痛の中、セイバーのマスターは視線を感じていた。
今自分を殺そうとしている男のものでは無い、もっと別の視線を。
激痛と恐怖のにのたうち回るセイバーのマスターは最後の瞬間その視線の主を目撃した。

「う…ぐああ…ああああああああああああああああ!!!!」

その瞬間セイバーのマスターは魂の底から搾り出すような恐怖の絶叫を上げた。


43 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:44:44 x8e3s2960
一時間後。数キロ程離れた公園でで意識を取り戻したさやかは、ベンチに座って魔法で傷の手当てをして。自身のサーヴァントと向かい合った。

「遅れてしまい、まことに申し訳ありません。サーヴァント、キャスター。此処に馳せ参じました」

跪いて挨拶をするキャスターのフードに覆われた頭を見ながら、さやかはあの主従がどうなったのかを尋ねてみた。

「私の力量では貴女を抱えて逃げるのが精一杯でして、あの主従は未だに健在です。ですがあの様な輩共は見過ごせてはおれません。何としてでも打ち倒さねば」

「キャスター。私はこの聖杯戦争というのが許せない。いきなり人を連れて来て殺し合わせるなんて、許されることじゃ無い。だから聖杯は破壊する。主催者も倒す。けど貴方は?何か叶えたい願いが有るから此処にいるんでしょう?」

「私の願い…願いという程でもございませんが、私の神に正しく信徒として振る舞うことでしょうか。私はその為に此処に居ます。そに為には聖杯等は不要です」

「じゃあ…」

「貴女に賛同します。この地に貴女の掲げる正義と、我が神の教えを顕しましょう」

そう言ってフードを取るキャスター。その下の顔は長い銀髪に白い顔…そして。

「エルフ?」

長く伸びた先の尖った耳。まさしくアニメや漫画に出てくるエルフ。

「エルフであっても人と分かち合えるものは御座いますサーヴァント、キャスター、ラゼィル・ラファルガー。貴女と共にあらん事を」

「有難う。キャスター」

キャスターに微笑むさやか、同じく微笑むラゼィル。しかしさやかは気づかない。
ラゼィルの右手に嵌められた腕輪。その中央に有る猫目石が、さやかを嘲る様に、忌まわしく悍ましい輝きを放っていることを。


44 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:47:17 x8e3s2960
【クラス】
キャスター

【真名】
ラゼィル・ラファルガー@白貌の伝道師

【ステータス】
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 幸運:B 魔力:B 宝具:A++

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:C
自らに有利な陣地を作り上げる技術。“神楽”を行う“狩場”を作り出せる。
“狩場”の中ではキャスターとその同胞は全ステータスに+が付き、敵対者は逃亡に対してマイナス判定がかかる。

道具作成:B
骸から武器や道具を作成したり、感情と記憶と自我を取り除いた操躯兵の作成が可能。

【保有スキル】
信仰の加護:EX
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
限りなく敬虔で純粋な信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性を備える。
神我一如の域にある狂信はおよそあらゆる精神干渉、それに付随するバッドステータスを完全に無効化する。
同じ信仰に準ずるものに対し、Cランク相当のカリスマを発揮する。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。闇夜でも遠隔の遮蔽物に身を隠した標的を精確に捉えられる

魔術:B
影の中に武器を収納したり、武具に対するエンチャント、死骸に魔力を充填して動かす外法に精通している。

計略:B
集団に対する内部分裂、離間工作、他勢力への取り入り、暗殺といった行為に有利な判定を齎す。

単独行動:B
神への信仰を貫くためにキャスターは故郷を捨て、1人地上を征く。

混沌の英雄:A++
生前“光”に属する種族を殺戮し、伝説となったキャスターの生涯から得られたスキル。
秩序や善に属する者と対峙した際、ステータスが宝具を除き1ランクアップしA+相当の戦闘続行スキルを得る。
また、聖性や神性を帯びた魔術や武具のランクを一つ下げる。


45 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:47:54 x8e3s2960
【宝具】
龍骸装
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜20 最大補足:15人
ラゼィルが仕留めた白銀龍の骸から自作した武具。
曲刀『凍月』短槍『群鮫』鎖分銅『凶蛟』無数の手裏剣。籠手と胴着からなる。
手裏剣と鎖分銅は籠手をつけていなければ己の手を切り裂く。
ラゼィルが擬似生命体として加工している為、自己修復機能を持つ。
この武器で殺された者の魂は異なる宇宙に存在する邪神グルガイアの贄となる。


我が麗しき神楽の舞い手(バイラリナ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜30 最大補足:10人

ハーフエルフの少女、アリシアの骸を素体とした操躯兵。
アリシアの身体が隠れる程の祭器『嘆きの鉈』を生前習得した戦闘技術を駆使し機械じみた精密さで振るう。
筋力:B 耐久:D 敏捷:B+ 幸運:E 魔力:E 宝具:ーのステータスのサーヴァントとして扱われる。
Cランク相当の怪力スキルとBランク相当の戦闘続行スキルとDランク相当の単独行動スキルを持つ。
更に精神が無い為如何なる精神干渉を受け付けない
『嘆きの鉈』はCランク相当の宝具に匹敵し、この鉈で殺された者の魂は異なる宇宙に存在する、邪神グルガイアの贄となる。


龍骸装・凄煉
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

龍骸装の中でも最強の一品
白銀龍の肺胞を加工した武装であり、いかなる生物であろうとも耐えること敵わぬ鏖殺の一撃「竜の吐気(ドラゴンブレス)」を発動する。瘴気と灼熱の息吹は例え直撃せずとも、血と骨を瞬時に腐敗させ、金属すら容易く融解させる。
ただし、吸気して炎を吐くまでに100秒かかる。


白貌(ホワイトフェイス)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ ー 最大補足:自分自身

エルフの遺灰と骨粉から作った白粉。
自身の属性を秩序・善と誤認させる。
水に濡れても平気だがエルフの血には弱い。


神の眼
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー

ラゼィルがグルガイアの神像から抉り取った宝玉。文字通りの神の眼であり、この隻眼を通じ、異なる位相の宇宙から、邪神グルガイアは信徒達の神楽を、地上の生命の苦しみや怒りや嘆きを観る



【weapon】
無し

【人物背景】
小説、白貌の伝道師の主人公。
地下に住むダークエルフで在りながら白貌を付け、地上を1人旅する男。
その目的は、地上に不和を播き、騒乱を起こして、地上の命全てををグルガイアの贄とすること。
その為にラゼィルは追って来た兄すら殺し、地上を征く。

【方針】
優勝狙い。マスターを騙しつつ神楽の舞台を整える。
宝具“白貌”は絶対に外さない。

【聖杯にかける願い】
グルガイアを現世に帰還させる。




【マスター】
美樹さやか@魔法少女まどか⭐︎マギカ

【能力・技能】
魔法少女としての人間を超えた身体能力。特に速度に優れる。
成り立て技術面では拙いが高い回復能力を持つ。
ゾンビ戦法にはまだ開眼していない。

【weapon】
剣を作成できる。複数作って投擲したりもする。

【ロール】
女子中学生

【人物背景】
明るく活発で元気な娘。作中ではやることなすこと裏目に出た。幸運値は限りなく低い。サーヴァントがアレなのも多分このせい。

まどか曰く「思い込みが激しくて喧嘩もよくしちゃうけど、優しくて勇気があって困っている子がいれば一生懸命……」。
入院中のバイオリニストの上条恭介という幼馴染みに想いを寄せており、しょっちゅうお見舞いに行っては、彼を少しでも元気づけようとクラシックのCDをプレゼントしている。
魔法少女の先輩である巴マミに対してはまどか同様強い憧れを抱いており、後に自らも「人を助ける為」に魔法少女になった為、暁美ほむらに対しては冷たい態度や行動を快く思っておらず毛嫌いしている。
一方で佐倉杏子に対しても、当初は弱肉強食を肯定する言動に激怒して対立していたが、後に杏子の過去を聞いた後は自己中心的な人間だと誤解した事を謝っている。


【令呪の形・位置】
右手の甲に瞳の形をしたものが有る

【聖杯にかける願い】
無い。あえて言うなら帰還。

【方針】
主催許はゆるさない。聖杯を破壊して二度とこんな事が出来ない様にする

【参戦時期】
テレビ版4話終了後

【運用】
魔力消費を抑えないと魔女化という悲劇。しかしさやかは知らない。


46 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:48:46 x8e3s2960
【宝具】
龍骸装
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜20 最大補足:15人
ラゼィルが仕留めた白銀龍の骸から自作した武具。
曲刀『凍月』短槍『群鮫』鎖分銅『凶蛟』無数の手裏剣。籠手と胴着からなる。
手裏剣と鎖分銅は籠手をつけていなければ己の手を切り裂く。
ラゼィルが擬似生命体として加工している為、自己修復機能を持つ。
この武器で殺された者の魂は異なる宇宙に存在する邪神グルガイアの贄となる。


我が麗しき神楽の舞い手(バイラリナ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜30 最大補足:10人

ハーフエルフの少女、アリシアの骸を素体とした操躯兵。
アリシアの身体が隠れる程の祭器『嘆きの鉈』を生前習得した戦闘技術を駆使し機械じみた精密さで振るう。
筋力:B 耐久:D 敏捷:B+ 幸運:E 魔力:E 宝具:ーのステータスのサーヴァントとして扱われる。
Cランク相当の怪力スキルとBランク相当の戦闘続行スキルとDランク相当の単独行動スキルを持つ。
更に精神が無い為如何なる精神干渉を受け付けない
『嘆きの鉈』はCランク相当の宝具に匹敵し、この鉈で殺された者の魂は異なる宇宙に存在する、邪神グルガイアの贄となる。


龍骸装・凄煉
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

龍骸装の中でも最強の一品
白銀龍の肺胞を加工した武装であり、いかなる生物であろうとも耐えること敵わぬ鏖殺の一撃「竜の吐気(ドラゴンブレス)」を発動する。瘴気と灼熱の息吹は例え直撃せずとも、血と骨を瞬時に腐敗させ、金属すら容易く融解させる。
ただし、吸気して炎を吐くまでに100秒かかる。


白貌(ホワイトフェイス)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ ー 最大補足:自分自身

エルフの遺灰と骨粉から作った白粉。
自身の属性を秩序・善と誤認させる。
水に濡れても平気だがエルフの血には弱い。


神の眼
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー

ラゼィルがグルガイアの神像から抉り取った宝玉。文字通りの神の眼であり、この隻眼を通じ、異なる位相の宇宙から、邪神グルガイアは信徒達の神楽を、地上の生命の苦しみや怒りや嘆きを観る



【weapon】
無し

【人物背景】
小説、白貌の伝道師の主人公。
地下に住むダークエルフで在りながら白貌を付け、地上を1人旅する男。
その目的は、地上に不和を播き、騒乱を起こして、地上の命全てををグルガイアの贄とすること。
その為にラゼィルは追って来た兄すら殺し、地上を征く。

【方針】
優勝狙い。マスターを騙しつつ神楽の舞台を整える。
宝具“白貌”は絶対に外さない。

【聖杯にかける願い】
グルガイアを現世に帰還させる。




【マスター】
美樹さやか@魔法少女まどか⭐︎マギカ

【能力・技能】
魔法少女としての人間を超えた身体能力。特に速度に優れる。
成り立て技術面では拙いが高い回復能力を持つ。
ゾンビ戦法にはまだ開眼していない。

【weapon】
剣を作成できる。複数作って投擲したりもする。

【ロール】
女子中学生

【人物背景】
明るく活発で元気な娘。作中ではやることなすこと裏目に出た。幸運値は限りなく低い。サーヴァントがアレなのも多分このせい。

まどか曰く「思い込みが激しくて喧嘩もよくしちゃうけど、優しくて勇気があって困っている子がいれば一生懸命……」。
入院中のバイオリニストの上条恭介という幼馴染みに想いを寄せており、しょっちゅうお見舞いに行っては、彼を少しでも元気づけようとクラシックのCDをプレゼントしている。
魔法少女の先輩である巴マミに対してはまどか同様強い憧れを抱いており、後に自らも「人を助ける為」に魔法少女になった為、暁美ほむらに対しては冷たい態度や行動を快く思っておらず毛嫌いしている。
一方で佐倉杏子に対しても、当初は弱肉強食を肯定する言動に激怒して対立していたが、後に杏子の過去を聞いた後は自己中心的な人間だと誤解した事を謝っている。


【令呪の形・位置】
右手の甲に瞳の形をしたものが有る

【聖杯にかける願い】
無い。あえて言うなら帰還。

【方針】
主催許はゆるさない。聖杯を破壊して二度とこんな事が出来ない様にする

【参戦時期】
テレビ版4話終了後

【運用】
魔力消費を抑えないと魔女化という悲劇。しかしさやかは知らない。


47 : 魔法少女と白貌の使い魔 ◆T3rvSA.jcs :2016/04/24(日) 23:49:54 x8e3s2960
投下を終了します

連投してしまい申し訳ありません


48 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/04/25(月) 09:49:51 79RxRomY0
新企画乙です。候補作投下します


49 : 後藤&アサシン ◆Cf8AvJZzb2 :2016/04/25(月) 09:52:21 79RxRomY0



ひとりの男がピアノで音色を奏でている
なぜか衣類の類は下着以外は身に付けておらず、全くの無表情である
そんな彼の音色は、凡そ感情といったものが全く込められていないことを除けばほぼ完璧であった
後藤。それが彼の名前であった

「なんぞそれ」

いつのまにそこに居たのだろうか?
ひとりの小柄な老人が、興味深そうにそれを眺めていた
この老人は、後藤のサーヴァント、アサシンであった

「ショパンだ」

後藤は簡潔に答える。
誤解するかもしれないが、後藤は嗜みとしてショパンを演奏している訳ではない

「怠れば体が鈍るからな」

暫くじっとその様子を観察していたアサシンだったが、ふと、その姿がぬらりと緩んだ
低かった身長はしなやかに伸び、禿げていた頭皮からは長髪が生え揃い、老いた体にはつやと凹凸が現れた

そうしてひとりの老人の姿から、一瞬のうちに若い全裸の女性へとアサシンは変化する
その様子を横目で見ていた後藤は彼の意図を察したのか、席を譲る
アサシンはかわりにそこに座り、艶かしくしなやかな指を鍵盤に置いた

「こうか? こんな感じか?」

 そうしてアサシンは、後藤による演奏と負けず劣らずに流暢に引き始める。その様子はとてもピアノに触れたての人物とは思えない

「巧いじゃないか」

珍しく感嘆したような調子でそう評価する後藤

「なんのこれしき」

 アサシンはそう応答した
 ふたりの異形による演奏会は、ある主神秘的であった
 とこらかしこに人間を『散らかした』後がそれを後押ししている


 後藤は人間ではなく、パラサイトと呼ばれる人間を補食する寄生生物である。だが、後藤はただのパラサイトではない。
 人体に潜り込む際の「脳を奪う」という本能のため、本来ならばひとつの肉体に一体しか寄生しないパラサイトだが、後藤は事情が違う
とあるパラサイトの手によって人工的に作り出された、ひとつの肉体に5体分も寄生している変わり種である
 彼がマスターとして記憶を取り戻し、アサシンを召喚することは必然と言えた。
 なにせ、根本的に人間と相容れることのない存在が、虚像の日常に埋もれることなどあり得ないだろう。
 聖杯戦争、彼にとっても予期せぬ事態になったとは思うが、そう深刻には捉えていない
 後藤が求めるものはただひとつ
 パラサイト5体分の「この種を喰い殺せ」という本能が肥大化し、蓄積した結果、後藤は闘争を追い求めるようになった
 この聖杯戦争では存分に戦いを堪能することができるだろう。それだけわかれば、十分だった

(我々はなんのために生まれてきたのか……確か田宮良子の言葉だったか 俺にとっては……戦いこそが……)

 みしり、と後藤の顔が歪む
 それを感じ取ったのか、アサシンはちらりと己のマスターを一瞥し、そして

「興味深いぞ」

と一言呟いた
そこになんの意図があるのかは、アサシンにしかわからない


【クラス】
アサシン
【真名】
ぬらりひょん@GANTZ
【パラメーター】
筋力E〜A 耐久E〜A 敏捷E〜A 魔力E〜A 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を断てば発見する事は難しい

【保有スキル】
不死:EX(C)
 不死の肉体
 肉体や霊核の致命的損傷すら瞬時に修復できる極めて高い治癒力を有する
 EXランクともなると、Aランクの攻撃宝具によるダメージもアサシンを殺すことはできない。よしんば消滅させたとしても、その場で蘇生(レイズ)する
 例外的に「意識の外からの攻撃」によって受けたダメージだと、このスキルの効果は括弧内のランクまで下がる
 その場合でも大抵の傷は自然治癒し、時間をかければ霊核破損ですら自然治癒出来るが、
 治癒の追いつかないほどの連続ダメージには対応出来なくなる

模倣:A
 他者の技を再現する能力。有用性が高いと判断した技術を学習し、真似る。
 アサシンの場合、戦術や武術の模倣は勿論、物理的要因に成因するものはほぼ完全に再現することができる

戦闘続行:A
 戦闘を続行する為の能力。瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。


50 : 後藤&アサシン ◆Cf8AvJZzb2 :2016/04/25(月) 09:53:14 79RxRomY0

【宝具】
『100点の星人(ぬらりひょん)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ- 最大補足:1
 アサシンの存在そのもの。異常な生命力を含む各種特性
 固有の姿を持たず、アサシンは自身の体型を自在に変形、増殖、分裂させる上に多様な生物に変身する能力を持ち、様々な形態へと変化することができる
 変化した形態によって各種パラメーターが変動し、それぞれ固有のスキルを保有する場合もある(例 第二形態、第九形態に変身した場合、Aランクの魔眼を獲得、第五形態に変化すればBランクの超能力を行使できる)
 
『百鬼夜行(大阪ミッション)』
ランク:C 種別:対人間宝具 レンジ300 最大補足:150
 アサシンとともに道頓堀川に出現した配下の妖怪を再現する宝具
 妖怪たちはそれぞれ単独行動:Eを保有しているが、宝具の類は所持していない
 一度に呼び出せる数に上限はないが、召喚にはマスターの魔力を使用する
 しかし呼び出してしまえば各自が無差別に魂食いを行うため、維持する上での燃費は良い
 また一部の妖怪や後述の側近2体以外は基本的に人間を無差別に襲うくらいしかできず、また、一度召喚して倒された妖怪は再召喚することはできない
 召喚できる妖怪のなかで特に強力な側近2体のステータスは以下の通り

天狗
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運E 
犬神
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運E
 
【weapon】
様々な形態に変化することによりありとあらゆる戦いかたが可能
魔眼による破壊光線や、超能力による不可視の攻撃、肉体強化による肉弾戦や、分身・分裂による集団戦いも可能

【人物背景】

特徴
つおい
頭がいい
わるい

好きなもの
タバコ
お茶

口ぐせ
ぬらーり ひょーん
ぬらーり ひょーん

漫画「GANTZ」に登場する敵キャラ(星人)。
大阪のミッションで登場。道頓堀付近に現れた、日本に伝わる妖怪の姿をした星人達の総大将で、同ミッションのボスにあたる。
作中に登場する星人には、その強さに応じて倒した時に得られる「点数」が定められているが、こいつの点数はなんと 100点 。
それまでに登場した星人達とは桁違いの最高得点である

【サーヴァントとしての願い】
聖杯……興味深いぞ


【マスター】
後藤@寄生獣

【マスターとしての願い】
闘争を望んでいる

【weapon】
「三木」
右手のパラサイト。彼も一応全身の統率者になれるが後藤には及ばない

【人物背景】
本来、寄生生物は人間一人につき一匹ずつ寄生するのだが、
後藤の場合は彼も含めて五匹が一つの身体に同居している
これにより全身を武器化、プロテクター化することが可能となっており、
並の人間どころか、自衛隊の一個部隊が束になっても肉体を文字通り、「散らかす」事が出来るほどの戦闘能力を備えているのである。
更に寄生生物の本能である「この種を食い殺せ」が五匹分集まった結果、激しい怒りと憎悪が倍増されて戦いを求める戦闘マシーンと化した。

【備考】
市役所戦前からの参戦
令呪は右手ではなく脇腹にあるプロテクトの隙間にある


51 : 後藤&アサシン ◆Cf8AvJZzb2 :2016/04/25(月) 09:53:49 79RxRomY0
投下終了です


52 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/25(月) 20:26:15 tBgqnH0U0
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/15.html

まだ工事中ですがWikiが完成しました。


53 : ◆T3rvSA.jcs :2016/04/25(月) 23:42:09 dFkNxD4c0
乙ですよ


54 : 名無しさん :2016/04/26(火) 13:18:51 tiWtRSHY0
募集期間はいつまでですか?


55 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/26(火) 19:03:50 8saQsMxo0
>>54 募集の締め切りは6月6日を想定していますが、場合によっては伸びる可能性も
あります。


56 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:38:15 aHtnL3I20
皆様投稿乙です。それでは感想を投下させていただきます。

>>冴島大河&バーサーカー組
あのジャン・ヴァルジャンがバーサーカーとは驚きました!
龍が如くは把握していませんが、彼は恐らく不器用ながらも仁義を通す、
ジャン・ヴァルジャンに相応しきマスターなのでしょう。
ただ火力が低いのが残念です。

>>美樹さやか&キャスター組
ライター繋がりとは!
一見真逆に見えても、1人の神に順し続けたラゼィルも結局は、
さやかと似た者同士なのかもしれませんね。さやかはまだ魔法少女に
なったばかりからの参戦らしいですが、ここで魔女化してしまわないことを
願うばかりです。

>>後藤&アサシン
寄生獣は読みかけで、GANTZに至っては概要をある程度知っている程度ですが、
しかしパラサイトを引き連れた鱒と、妖怪を引き連れた鯖とは、中々強力な陣営だな
と思いました。一体彼らはどの様にこの聖杯戦争を引っ掻き回すのか。

それでは、候補作を投下させていただきます。


57 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:39:37 aHtnL3I20
桜満集が記憶を取り戻したのは、つい昨日の事であった。

朝、駅を抜けて、校門に入れば、いつもの様なやかましい毎日がそこにある。


カメラ片手にはしゃぐ友人の姿がそこにある。
変な噂話で盛り上がるクラスメートの姿がそこにある。
互いの端末の内容を見せ合い笑っている女子グループがそこにいる。

何処にでもあるような普通の日々。

何故だろう。
とても懐かしさを感じられる気がする。


教科書の内容を熱心に解説している教師の声は、いつもの様に耳から滑ってしまい、
気が付けば、もう下校のチャイムが鳴り響く。

校門を抜けようとした途端、


「集〜!」


振り向けば、幼馴染の祭の姿がそこにいた。

(あれ…何で…祭が…)

「あ…うん。」

その時は適当に返事をして返したが、帰りの電車に揺られながらその違和感は
増していった。

祭は死んだはずじゃなかったのか。
あの時、僕が、僕が、守ってやれなかったから。

…そういえば、何で僕はそんな事を考えているのだろう。

ふと、自分の右腕を見つめると、それを見つめる目は驚愕を極める。

(僕の王の力がああああああああああ!!)

この腕…確か涯に切り落とされたはずじゃ…


そういえば、何で僕、目が見えているんだ!?


そんな事を考えていれば、車内のスピーカーが自宅への最寄駅の名を唱える。

電車を出て、駅の改札を抜けても、集はこの謎の疑問からは抜け出せなかった。

帰り道をトボトボと歩きながらも、人気のない住宅街に来た時、不意に左ポケットに違和感を覚える。

その時、考えるより先に左手が動き、左ポケットから耳に取り付ける型の携帯音楽プレーヤを取り出す。
そしてそれを無意識の内に取り付け、スイッチを押す。

すると、スピーカーからきれいな歌声が聴こえてくる。
聞き慣れているのに、聞き足りない、自分にとってはかけがえの無い歌が。

そうすれば、自分が命を懸けて守ろうとした、彼女の姿が眼の前に現れる。

「いのり…」

そう呟いた集の左手の甲には冠の刻印が光を伴って現れ、右手の甲には、剣の突き刺さった冠の様な模様が、赤い光によって描かれる。

桜満集の中に、他の嘗ての記憶が、散り散りになったパズルのピースが集まるように収束していき、それに加わり、

「聖杯戦争」「サーヴァント」「令呪」「ムーンセル」

それに関する情報が流れ込んでくる。

その時。

集の目の前で光の粒子が収束していき、1人の男の姿を形作る。

赤い炎が描かれた紺色のコートに、赤いゴーグルを額に引っ掛けたという格好の青年の姿を。

そして青年は問う。

「お前が、俺のマスターか?」

彼こそが、桜満集のサーヴァントであった。



◆  ◆  ◆


58 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:39:56 aHtnL3I20
夕焼けが射す公園のベンチに、集と、そのサーヴァントである青年は腰掛けていた。
立ち話もなんだろう、しかしココらへんには喫茶店もないし、使う金も勿体無いという事で
選んだのがこの近所の公園だ。

目の前で数人の子供達が無邪気にはしゃいでいるのが聞こえる。

そこで、青年は少年に問う。

「なあ、シュウ。」

「え?」

「お前、願いはどうするんだ?」

聖杯戦争は、即ち願いを優勝カップとした殺し合いだ。

そして、同じ釜の飯を食う事となる事となるサーヴァントが、
それを聞くのはある種の必然であろうか。

「願い…か…」

集にも、叶えたい願いが無いか、といえばそれは嘘だ。

「強いて言うなら、死んでいった皆を助ける事…かな。
だけど、きっと皆は、それを望んではいないと思う。」

いのりも涯も、他の皆も、結局は満足に旅立っていった。
それを引き戻そうとするなんて、結局は僕の我儘に過ぎないじゃないか。

すると、青年は、少し沈んだ顔で集を見て答える。

「そうか…意外だな。」

「え?」

「実は俺も、そう考えていた所さ、生き返らせたい人なら山程いる。
でも、彼奴等だってそれを望んじゃいない、俺だって、彼奴等の代わりに
前に進むって決めて、生き続けたから…
それで、願いなら無いならどうするんだ?」


すると集は、その問いにしばらくの間沈黙した。


それもそうだ。

願いがないのに戦うなんて。
まるで前に八尋が見せてくれた映画にあった、突然大量のサメが生息している海域に
投げ込まれた時の様な気分だった。

僕は、これからどうすればいい。

そんな事を考えていたら、自分と同じような状況に置かれているかもしれないマスターの姿が
思い浮かんだ。

だったらせめて、この身は。

誰かのために使いたい。

誰かの手を差し伸べるために使いたい。

だから。

集は従者に言う。

「ライダー…僕は、この聖杯戦争を止める。そして、他のマスター達と一緒に、このムーンセルから抜け出す。」

そう言い切ると、集のサーヴァント…ライダーは、口で弧を描き、答える。

「ああ、分かった!聞き届けたぜ!お前の願い!ライダーのクラスで現界した大グレン団の元リーダー、シモンが、
お前の思いを繋げてやる!」

ここに、桜満集の方針は決まった。

◆  ◆  ◆


59 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:46:06 aHtnL3I20
二人は、他の者にはない、大きな物を持っていた。
とても強い優しさの持ち主だった。
それは人々を引き寄せ、やがて王として祭り上げられた。

だが、結局それは、王の器に値するものでは無かった。

二人の優しさは、結局愚直な優しさでしか無く、
政を成す力は持ち合わせていなかった。

それでも、二人は、星に現れた約束された終末を、
1人の愛する女を守るために、

人を集める罪の冠で。
天を突く螺旋の顔面で。

敬っていた幼馴染は逝った。
愛する女は守れなかった。

それでも、彼らはこの腕に、この背中に、この胸に、
一つになって生き続けている。

悔いはない。

ならば願いはない。

だったら、握らされたこの力は何のために振るう。

すると、助けを求める人の声が、また聞こえてくる。

それなら、伸ばされた手を掴むために、この力を使おうではないか。


人を集める罪の王と、銀河を貫いた螺旋の王は、

その冠を、そのドリルを再び手にとった。

人々の苦を集め背負うために。

死んでいった者から、これから生き続けていく者へと命を繋いでいくために。


60 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:46:48 aHtnL3I20
【クラス名】ライダー
【出典】天元突破グレンラガン
【性別】男
【真名】シモン
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力D+ 耐久D+ 敏捷C+ 魔力B 幸運C 宝具A++


【クラス別スキル】

騎乗:A+
乗り物を乗りこなす才能。
竜種を除く全ての乗り物を乗りこなす。


対魔力:B
魔力に対する耐性。
第三節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法をもってしても、傷つけるのは難しい。




【固有スキル】

螺旋力:EX
遺伝子の二重螺旋に埋め込まれた、「生きる」力。
彼の螺旋力は計り知れない程の膨大なもので、
銀河を、更には宇宙をも創りあげた。


戦闘続行:B
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。



カリスマ:C+
人々を導く才能。
一国を従えるにはまだまだ足りないが、
「生きよう」とするものに対しては本領を発揮する。


星の開拓者:EX
人類史におけるターニングポイントとなった英雄が持つスキル。
あらゆる難行が「不可能」なまま実現可能となる。


【宝具】

「燃え上がる螺旋の魂(グレンラガン)」

ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:1〜100人

セイヴァーが生前駆ったとされる人型兵器「ガンメン」である
「ラガン」と、彼の数多くの仲間が乗ったとされる「グレン」
が合体した姿。彼の意志と共に、「螺旋の力」の象徴として
次の世代へと受け継がれていった。全身から出現するドリルが武器の他、
合体時に何処からとも無く出現する飛行ユニット「グレンウィング」、
全身から出現する「ギガドリル」グレンの装飾品である「グレンブーメラン」
等の装備を持つ。操縦は主にライダーが行うが、彼の許可により他の人間
が「グレン」のコックピットで操縦することも出来る。操縦方法は簡単。
「気合」でレバーを動かす、それだけ。
合体解除も可能。また、ラガンは他の人型兵器の構造を
変化させ、「乗っ取る」ことが可能となっている。




「天に風穴開く己の道(ロード・オブ・スパイラル)」

ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:100 最大捕捉:1000人

ライダーの最たる偉業とされる、「アンチスパイラル」との
戦いを再現した宝具。
幾つもの惑星が見える宇宙の様な、螺旋の戦士たる彼の多次元宇宙での戦いを再現した
固有結界を展開する。
この中でのみ、ライダーは最高クラスの知名度を入手し、
「アークグレン」「超銀河ダイグレン」の召喚、そして
グレンラガンとの合体が可能となる。
更に、マスターの魔力が許す限りではあるが、
彼が率いた「大グレン団」のメンバー全員を
英霊の座から呼び寄せ、「天元突破グレンラガン」「超天元突破グレンラガン」
への合体も可能となる。
尚、本来ならグレンラガンが彼らと合体した姿は惑星レベルの大きさとなるはずだが、
その際には代わりに結界のスケールが大きくなっていき、グレンラガンの大きさは
5mに留まる。


【Weapon】

「コアドリル」
螺旋力を引き出すためのドリル型アイテムで、
ラガンの起動キー。
持ち主の螺旋力により威力は変動し、
ライダーの力でなら、敵に突き刺すことで
強力な光と共に敵を貫く事が出来る。
また、このコアドリルはグレンラガンと共に
次の世代へと受け継がれていったため、、三種の神器
やロンギヌスの槍に匹敵するほどの神秘性を誇る。


61 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:47:13 aHtnL3I20
【人物背景】

人が地へ押し込められた世界で、一人の少年は、ある日天井を貫いた。
両親が死んだ、仲間が死んだ、愛するものも死んだ。
それでも、彼は諦めなかった。ドリル片手にひたすら前へと掘り続け、
地を、天を、銀河を、そして宇宙をも貫き、遂には創りあげた。
これは、1人の穴掘り男の物語。語り尽くせば、また日が昇る。


【聖杯にかける願い】
特に無い。




【マスター名】桜満集
【出典】ギルティクラウン
【性別】男

【Weapon】

「ヴォイドゲノム」

アポカリプスウィルスを解析して得られた遺伝子コードを基に生み出された、
人の心を具現化する力。左手の甲に宿した王の刻印からその力を顕現させる。
対象と互いに視線を合わせることで、対象の体内から「ヴォイド」と呼ばれる
武器を取り出す。武器の形状は対象の心象を表した物となる。武器を抜き取られた対象は
抜き取られる前後の記憶を喪失する。尚、サーヴァントからヴォイドを抜き取られるかは不明。




【能力・技能】

無し、強いて言えばヴォイドゲノム。


【人物背景】

少年は、誰よりも優しく、決断力のある人物だった。
しかし、失われた聖夜のその日から、彼は心に影を
落とした。だが、1人の歌姫に出会ったその日、
彼の錆び付いた運命の歯車は回り出した。
少年は多くの挫折を味わい、多くの友を失っていった。
だがそれを乗り越え、少年は本来の自分を取り戻した。
そして死にゆく人々の抱える呪いを全て背負い込み、
自分の命と引き換えに全てを救わんとした。
少年が最後に見たのは、少年の呪いを奪い取り
消えゆく歌姫の姿であった。



【聖杯にかける願い】

死んでいった仲間達を生き返らせようなどとは思わない。
聖杯戦争を止める。


【方針】
基本的には、サーヴァント同士の争いに介入して和解させる。
若しくは、同じ考えを持った仲間を探す。


戦闘においては、ライダーの宝具である固有結界は、極めて強力な代物ではあるが、
消費する魔力は莫大なためそう安易に使用できない上、
「超天元突破グレンラガン」の顕現は限りなく難しい。
ただし、グレンラガンでも強力な戦力となる上に、
マスターである集自身も「ヴォイドゲノム」という力を持っているので、
固有結界を切り札として置いても十分に戦い抜ける。


62 : 桜満集&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/04/28(木) 17:47:33 aHtnL3I20
以上で投下を終了させていただきます。


63 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:03:05 x6GJ0HRg0
投下します


64 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:03:35 x6GJ0HRg0


――あの日から空いた穴は、今も塞がることはない





「私は……英雄になりたかった」

君はどうしたい、君は何を願う?
そう問いかけてきたサーヴァントに最上リョウマは静かに語り始めた。
何度も何度も思い出し夢想したあの夏の日の記憶を。かつて抱いた夢を。

「あの日のタイキさんのようにパートナーと絆を結び、巨大な悪や世界の危機に立ち向かう……そんな英雄になってみたかった」

リョウマは見た。巨大なデジモンと命がけで戦う英雄工藤タイキとそのパートナーシャウトモンの姿を。
続く悪の皇帝バグラモンと英雄率いるクロスハートとの最終決戦を。
英雄たちが世界を救ったその瞬間を――。

「なるほど、英雄になりたい、か。それが君の願いというのなら、私となら叶えられなくはないだろうな」

静かに、されど力強く言ってのけるサーヴァントの姿を、リョウマは傲慢とは思わない。
何故ならサーヴァントとは英霊であり、紛れも無く過去の英雄なのだ。
既に偉業をなし、英雄となった者からすれば、英雄になりたいということほど、容易く叶えられる願いはない。
だけど――

「……不服そうだな。私では君のパートナーとして不満かな?」
「そういうわけではありません。セイバーさんからは紛れも無く力を、かつて私が魅せられた力を感じます」

漆黒の全身鎧を纏い、背中に巨剣を刺したセイバーはまさに英雄と呼ぶに相応しい勇姿だ。
見かけだけではない。こうして対峙しているだけでも存在そのものの大きさ、力強さが伝わってくる。
この大英雄と共に戦えるというのなら、世界を救うことだってできるかもしれない。
でも、違うのだ。

「ごめんなさい、セイバーさん。私のパートナーはあなたではないんです」

リョウマは光栄に思ってしかるべき申し出を断ること、英雄の顔に泥を塗ることに対し、頭を下げた。
普段の自分なら決してしない行為だ。
それでも頭を下げてでも譲れないものはあるのだ。

「……私は君に頭を下げられるようなことをした覚えはないのだがな」
「セイバーさんは何も悪くありません。ただの私の我儘で、未練です」
「未練?」
「はい」

そうだ、これを未練と呼ばずになんという。
リョウマは頭を下げたまま、声を絞り出す。


65 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:04:02 x6GJ0HRg0

「私にはかつてパートナーがいました」

デジモンのこと。クロスローダーのこと。デジクオーツのこと。
たくさんのことをリョウマは話した。
頭を下げているせいで、セイバーがどんな顔をしているのかはリョウマには分からない。
ただ、セイバーはリョウマの話に何も口を挟むことはしなかった。

「アスタモンといいます。強くて、かっこ良くて。こいつとなら世界を救える。そう思わせてくれた最高のパートナーでした」

アスタモン――サイケモンが超進化したデジモンはリョウマの持つ最強の戦力だった。
リョウマの指示に従い、いつも望む結果を出してくれた。
交わした言葉は少なかったが、ただ無口なだけで、自分とアスタモンとの間には確かに絆がある。
いつか見たタイキとシャウトモンのような関係なのだと信じていた。
真実を知るまでは――。

「でも、アスタモンは私を裏切った。いいえ、裏切ったのならまだ良かったんです。
 もし単に裏切ってくれただけならどれだけよかったか。
 それなら私は憎むことも恨むことも悲しむことも怒ることもできた。こんなに悩むことなんて無かった!」

真実は残酷だった。
アスタモンなどというデジモンはいなかった。
いいや、この言い方では語弊があるか。
リョウマがアスタモンだと思っていたデジモンはアスタモンですら無かった。
本来存在したアスタモンというデジモンを取り込み、アスタモンを演じていた悪しき黒幕クオーツモン。
それが、リョウマがパートナーだと思っていたデジモンの正体だった。

「途中からなり変わったとか、化けていたとか、操られていたとかそんなんじゃない。
 いなかった、いなかったんです、私のパートナーは、最初から!
 なのに私は今も私のパートナーは“アスタモン”だと思っている。
 あなたがパートナーであることを受け入れられない。
 この世界で記憶を取り戻したのだってアスタモンがいなかったからなんです。
 滑稽だ、もういなくなったパートナーがいないことに、いいえ、元からいなかったパートナーがいないことに違和感を感じ記憶を取り戻すなんて!」

もしかしたなら自分は今もクオーツモンに操られているのかもしれないとリョウマは自嘲する。
だっておかしいではないか。最悪の裏切りを成した悪魔に今もなお心乱され囚われているなんて。
きっとクオーツモンは自分の感情を操り、聖杯戦争を勝ち抜かせて復活させようとしているのだ。

「……そうか。君はもう一度パートナーに会いたいのだな」
「……会いたいです。でも私が会いたいアスタモンはどのアスタモンなのか自分でも分からないんです。
 アスタモンの元になった私の知らないアスタモンなのか。アスタモンに化けたクオーツモンなのか。
 はは、それこそ聖杯の力なら私の理想のアスタモンを、クオーツモンが演じていた偽物を本物として生み出すこともできるかもしれないですね。
 そうしたら、そうしたら私はそれで、私は、私はなんて、愚かな考えを……」

会えないのだ。何をしたところで、真実を知ってしまった今、あのアスタモンは本当にどこにもいない。
だからきっとこの溢れ出る涙は、自分の馬鹿さ加減に対してだ。
アスタモンと会えないことへの悲しみなんかじゃ――


66 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:05:01 x6GJ0HRg0

「マスター、頭を上げて欲しい」

セイバーにそう言われても、しばらく頭を下げたままのリョウマだったが、どうやらセイバーが自分を待っているらしいと感じ頭をあげる。
すると目に入ってきたのは思いもよらぬ光景だった。
今度はセイバーが、漆黒の英雄が、兜を外し、リョウマに真摯に頭を下げてきたのだ。

「すまなかった。軽はずみに君と、君の仲間の大切な思い出に踏み入ってしまったことを謝罪させて欲しい」
「な、あ、頭を上げてくださいセイバーさん! 
 確かに問われたのがきっかけですが、私も誰かに聞いて欲しかったから話したんです。
 私の方こそあなたに頭を下げてもらう理由はありません」

リョウマは大慌てでセイバーに頭を上げさせようとするも、セイバーは英雄であることが嘘のように慣れた様子で頭を下げたまま動かない。
これは令呪を使ってでも頭を上げてもらうべきか?
そんな若干天然の入った考えを真剣に考えだした所で、ようやくセイバーが頭を上げる。
兜に隠されていた顔立ちは意外にも平凡な年配の男のものだった。

「そうか。ならばおあいこだな。ただこれだけは言わせて欲しい、最上リョウマ。
 名も姿も偽りで、たとえそれが演じていただけの存在だったとしても。
 君がアスタモンに、君のパートナーに感じていた想いは偽りなどではない。
 私のパートナーになれないと言った君の言葉も、当たり前だ。
 大切な仲間の代わりなんて現れてたまるものか」

リョウマのことを真摯に見つめ、発した言葉には、力強さだけでなくどこか切ない響きもあった。
文字通りセイバーという英雄の素顔を覗かせるような感情がこもっていた。
だから、リョウマは失礼だとは分かりつつも、思わず反応してしまった。

「……セイバーさんにも、大切な仲間がいたのですか?」
「……いたさ。素晴らしい、仲間たちだった。だから申し訳ないが私も君のパートナーにはなれないんだ」

誇らしく、それでいて寂しそうに顔を歪める英雄にリョウマは何も言えなかった。
そんなリョウマを気遣ってかセイバーは再び兜を被り、英雄としての顔を見せる。

「ただ、冒険者として君を護衛する依頼を受けることならできる。
 どうだろうか。しばらく考えてみるというのは。大切な仲間のことなんだ。
 すぐに答えを出せという方が無理な話だろ」

提案されたのはひとまず聖杯戦争にはのらないという専守防衛案。
たとえ聖杯に願いを託すと決めるにせよ、最初から派手に暴れて余計な敵を作る必要もない。
リョウマに悩む時間を与えつつも、理にも適っている。
ただしリョウマはよくてもセイバーはどうか。


67 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:05:21 x6GJ0HRg0

「いいんですか。セイバーさんだって仲間たちに遭うために聖杯が欲しいんじゃ」
「……そうだな。正直会いたくないといえば嘘になる。
 だが、実は気がかりなことがあるんだ」
「気がかりなこと、ですか?」
「ああ。数多の世界、数多の時間から英霊たちを電脳空間に呼び出し、人間たちと組ませて戦わせる。
 似ていないか? 君が話してくれたデジモンハントやデジクオーツに」

言われてみればまさにその通りだとリョウマは考える。
クオーツモンはデジタルワールドから様々なデジモンを呼び寄せ、現実を模した空間デジクオーツに引き入れていた。
それは全てデジモンたちの吸収し、自分の力とするためだ。
更にはそんなクオーツモンに対抗して、デジモンハンターや時を超えた歴代の英雄たちまでもが集い大きな戦いとなった。
細部は違うが、確かに聖杯戦争と重なるところがあると言える。

「なんてことだ。本当なら私が気づくべきことだったのに」
「何、君が冷静なら私よりも先に気づけたさ」

セイバーは謙遜するが、その洞察力は流石は英雄と言ってしかるべきだとリョウマは感心する。
それに比べて自分は、クオーツモンの件の当事者にも関わらず考えが至らなかった。
今の自分はセイバーのマスターで、依頼主だが、それでもセイバーに頼りっぱなしというのはプライド的にも許せない。
リョウマはデジモンハンターとしての自分に切り替え、セイバーの考察に続く。

「デジクオーツでの戦いはクオーツモンが集めたデジモンたちや人間界のデータを取り込んで自分自身の身体を作り上げるためにあった。
 つまりこの聖杯戦争も誰かが、超常の存在である英霊たちの、もしかしたら私たちを殺しあわせることで魂やデータを集め、
 何かを生み出そうとしている? しようとしている?」
「考え過ぎかもしれないがね。君の話を聞いたばかりだったからこそ、思いついた仮説の一つの過ぎなくはある。
 だが少なくとも君になんの理もなく聖杯戦争に参加させるような運営だ。
 警戒するに越したことはない」
「……そうですね。考える事だらけで頭の痛くなる話では有りますが」

自分の想いも聖杯戦争のことも分からないことだらけで本当に頭が痛くなる。
だが余分なものも沢山ついてきたとはいえ、いつかは向き合わないといけない気持ちだった。

「足掻こう、時間(とき)のサバイバルで」

セイバーに手を差し出す。

「受けよう、その依頼を」

握り返してくれた手はどこまでも大きくて力強くて。
ガントレットに包まれているから固くて。
アスタモンの手袋ごしの感触と全然違ったことがやっぱり少し、寂しかった。


68 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:05:42 x6GJ0HRg0

【クラス名】セイバー
【出典】オーバーロード
【性別】男
【真名】モモン
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運A 宝具C
    
【クラス別スキル】

対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。馬だって今やバッチリ!
伝説の魔獣森の賢王を屈服させ、騎乗していたことに由来する。

【固有スキル】

冒険者:EX
人類の切り札、人々の希望、アダマンタイト冒険者。
人類種よりも強力でかつ多彩な能力を持つモンスターたちから人々を守るのが冒険者である。
モンスターやアンデッド、負や魔の属性を持つものへの攻撃に対し多大な補正を得る。

勇猛:B
威圧、混乱、幻惑などの精神攻撃を跳ね除ける。
格闘ダメージを上昇させる効果もある。

カリスマ(偽):C
最高位冒険者に相応しい威厳と迫力だけでなく、律儀さや誠実さ、丁寧さを兼ね備えている。
そのため、敵対していない他人からの信頼を得やすい。
また、福次作用としてモモンの行為は本人が意図してない形で好意的に受け取られることもある。

戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
幾多もの死線をくぐり抜け生還してこその英雄である。


69 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:06:00 x6GJ0HRg0
【宝具】

「死を切り裂く双剣(ツイン・ソード・オブ・スラッシング・デス)

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

常人であれば両手で持つのも困難な大きさの二振りのグレートソード。
本来は、頑強さや切れ味、破壊力はあれどただの剣なのだが、数多のモンスターを討伐したモモンの逸話や人々の祈りにより対魔の宝具となっている。
モンスターやアンデッド、負や魔の属性を持つものへの攻撃に対し、補正が入る。
モモンはこの剣を投げて使うことも多い。

「漆黒の英雄(ザ・ダーク・ウォリアー)」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

希少な金属アダマンタイトをふんだんに使った強固な漆黒の全身鎧。
双剣と並ぶモモンの象徴であり、特別な魔法は込められていないがこちらも宝具となっている。
ギガントバジリスク退治などの逸話から、身体への状態異常を跳ね除ける。
また、関節や目のスリットなどへの攻撃にも鎧の防御力が適応され、弱点とはならない。

「森の賢王(ハムスケ)」

ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

森の賢王と称される伝説の魔獣。
どう見ても巨大なジャンガリアンハムスターだが、人や魔を問わず不思議と畏怖を与えていた。
人語を話し、鱗に覆われた異常に長い尾を素早く操り攻撃し、さらには数種の状態異常魔法や武技を使いこなす。
流石に英霊を相手取るのは難しいが、伝説の魔獣は伊達ではない。


【Weapon】

双剣の他にも炎の槍や氷の剣、使い捨てだが強力な魔法が込められた魔封じの水晶などを持ち、魔法が使えない点を補っている。


【人物背景】
上位吸血鬼の討伐、大悪魔を撃退し一国を救うなど数多の伝説を生んだ最高位冒険者。
生きる伝説。不敗の戦士。優しき大英雄。
その強さだけでなく、相手を尊重し誠実に接する器の大きさも名声を高めている。
鎧で隠された素顔は存外普通らしい。あくまでも異邦人であり、他国では目立つ容姿を隠すためとのこと。
相棒の美女がモモンを主のごとく仰いでいることもあり、どこかの国の王族ではないかなどとも噂されている。

【聖杯にかける願い】

あくまでもリョウマからの依頼を引き受けるだけであり、聖杯に興味が無いわけではないが些か懐疑的。


70 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:06:27 x6GJ0HRg0



【マスター名】最上リョウマ
【出典】デジモンクロスウォーズ 〜時を駆ける少年ハンターたち〜
【性別】男


【Weapon】
「クロスローダー(緑)」

デジモンに関した様々な機能を持ち、用途は限定的ながら時間と空間の流れにも干渉できる。
ただしリョウマがハントしたはずのデジモンたちは今回は持ち込めていない模様。

【人物背景】

かつて目にした英雄の姿に憧れ、そのために力を求めていた少年でデジモンハンター。
普段は冷静で時に手段を選ばないが、その憧れと熱意は本物であり、ハンターの代表を決める心の強さの戦いでは優勝したほど。
しかしその憧れは利用されており、実は彼のパートナーのアスタモンこそが事件の黒幕クオーツモンであった。
最悪のタイミングでクオーツモンに操られ、英雄たちを裏切ってしまい、真実を知る。
パートナーを失い、夢破れた彼は、ライバルに託し、助け、ライバルが英雄になるのを見届ける。
クオーツモンの消滅に伴い、クオーツモンに吸収された多くの者は帰って来たが、元からいなかった彼のパートナーが帰ってくることはなかった。

【聖杯にかける願い】

アスタモンに会いたい。でも自分が望むアスタモンが分からない

【方針】

自分がどうしたいのか、答えを出すまでは専守防衛。安々と死ぬ気はない。
また聖杯戦争に裏がないか調べる。


71 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:07:09 x6GJ0HRg0















(ううん、参った。まさかモモンという英雄を作ったことが、こんなことになるなんて)

英雄モモンは途方に暮れていた。
兜に隠れて表情が見えなかっただけで、実は終始困っていた。
リョウマに長々と話させるがままにしていたのも、モモンはモモンで現状把握や考えるための時間が欲しかったからだ。

(よーし、落ち着け。まずは落ち着け、俺ー)

召喚時にムーンセルより知識を与えられているとはいえ噛み砕くのには時間がかかる。
モモンは少しずつ現状を把握していく。

(とりあえず俺はまだ死んだわけじゃないんだな。いやまあ人間としての身体は死んでるかもだけど)

英霊というのは多くの場合、英雄が死後、人々の信仰により祭りあげられた存在だ。
とはいえ時に例外もあり、また電脳空間「SE.RA.PH」での聖杯戦争の場合は、英雄たちのデータを元にサーヴァントを誇張・再現するという。
特に死んでいる必要もないようだし、自分に死んだ記憶はない。
恐らくはSE.RA.PHの様式が、モモンのルーツと相性が良かったため、サーヴァントとして白羽の矢が立ったのだろう。

(それにしてもムーンセルに、デジタルワールドか―。もしかしたらあの世界もデジタルワールドみたいなものなのかもしれないな。
 NPCだなんてとっくに思えなくなってたけど、アルベドたちもデジモンだっけ、電子生命体みたいに生まれ変わったってことなのかな)

英雄モモン。かつての名を鈴木悟。平行世界とはいえリョウマ同様日本人で、冴えないサラリーマンだった。
ディストピアへと向かっていく二十二世紀の日本で、幼くして天涯孤独となった鈴木悟は小卒で働くことを余儀なくされた。
底辺のサラリーマンとして灰色の人生を送っていた彼はとあるゲームと出会う。
DMMORPG『ユグドラシル』。
二十二世紀の技術で作られた体感型のオンラインゲームと、そこでの仲間たちとの出会いは鈴木悟にとって遅れてきた青春だった。
しかし青春がいずれ終わるように、MMORPGもいつか終わるもの。
サービスの終了とともに、鈴木悟の日々はまた灰色に逆戻り……するはずだった。
世界は、終わらなかった。姿を変え、続いていった。
鈴木悟は自らが作ったゲームのキャラクターとして異世界へと跳ばされたのだ。
今思えば、あの世界はデジタルワールドのようなものだったのかもしれない。

(まあその辺りはどうでもいっか。俺にとって大事なのはナザリックなんだし。
 とはいえこの世界にはナザリックはないんだよなあ。アルベドたちがサーヴァントとして呼ばれてるでもない限り。
 ……あいつらが呼ばれてもいきなりマスターを殺してそのまま消滅したりとかしてそうだけど。
 頼むから令呪で殺されたりとかしてないでくれよ……。
 分身みたいなものだからって、お前たちが殺されるとか嫌だからな……)

異世界へと跳ばされていたのは鈴木悟だけではなかった。
本拠地としていたナザリック大墳墓に加え、そこに配置していたNPCたちが自我を持ち着いてきたのだ。
そのため彼は、仲間たちが遺した子どもたちとも言えるNPCたちが仕えるに足る主として振る舞おうと頑張っていたのだが……。
この聖杯戦争では今のところモモンとして一人旅の状態だ。
ナザリックの主として振る舞う必要もない。
英雄たちとの戦いに身を投じ、リョウマのサーヴァントとして戦い抜いても問題ないのだ。
幸い、リョウマはナザリックの敵ではないし、共感できるところもある。


72 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:07:45 x6GJ0HRg0

(二度と会えない仲間、か。裏切られたのとそうじゃないの、どっちの方がましなんだろな。
 いや、俺の最高の仲間たちとリョウマを騙していた最低の奴を比べるのは仲間たちに失礼か)

鈴木悟にも仲間がいた。
ゲームで出会った最高の仲間たちだ。
たかがゲーム、と思うものも多いだろう。
だが、孤独な人生を送り、ゲームの中でさえ異形種として迫害されていた悟にとって、仲間たちと出会ってからの日々はかけがえのない宝物で。
だけど仲間たちは去っていった。
裏切られたというわけではない。
ただ、みんながみんな、ゲームよりも現実を選んだだけだ。
分かっている、分かっているんだ。
それでも、一人また一人とゲームを辞め、最後の一人になってしまった時、何も思わなかったといえば嘘になる。
裏切られたのならまだ諦めはついたのかもしれない。
でも、裏切られたわけでもなく、ただ選ばれなかっただけなのは、一層辛いのではないだろうか。

(会いたいな、彼らに。会ってまた話をしたい。だけど……)

それは正直、難しいだろうと“モモン”は踏んでいる。
リョウマには悪いが、たとえ彼が聖杯を求めたとしても、モモンが聖杯戦争で優勝できるかは難しいのだ。
いや、正直に言えば優勝できないだろうとさえ、踏んでいる。
モモンはサーヴァントとしては悪く無いステータスだ。
自身がモモンをやっている時よりも、人々の信仰やらムーンセルの解釈やら誇張やらもあってか、単純な強さ自体は上回っているくらいだ。
基本能力としても大悪魔ヤルダバオトことデミウルゴスとの戦いでの戦士化の魔法を使っていた時のものを参照しているのだろう。
いわば普段のLV30モモンに対して、今のモモンはLV100パーフェクトモモンだ。
だが、それでいて尚、モモンでは並み居る英霊たち相手に勝ち抜くのは難しいだろうとモモンは確信している。
何故なら――モモンは彼の真の姿ではなく、モモンでは本来の戦い方ができないからだ。

(あー、それこそこれバレたら、俺も令呪使われかねないよな―。
 なんでよりによってマスターのトラウマにピンポイントな俺をサーヴァントにしたんだよ!
 聖杯のバカヤロー)

鈴木悟がゲームで使っていたのは人間の剣士“モモン”などというキャラではない。
アンデッドの最上位種オーバーロードの魔法詠唱者“モモンガ”なのだ。
当然異世界でも鈴木悟はモモンガであり、人間ではない骸骨なのだ。
加えて言えばモモンガという名前さえ過去のものだ。
今は仲間たちと作り上げたギルド“アインズ・ウール・ゴウン”を自分の名として名乗っている。
つまりは、鈴木悟がモモンガになり、モモンガがアインズと改名し、アインズが人間に変装したのがモモンなのである。
多段詐称も甚だしく、元鈴木悟としては、こんなサーヴァントを掴まされたらトラウマがなくても怒る、と自分でも思う。

(リョウマはデジモンとパートナーだったくらいだし、異形種だからと差別はしないかもだけど。
 それにしたって俺達は悪の集団だし……。
 信頼関係を考えれば正体を先に明かしておくのもありだけど、
 普通に聖杯戦争に参加するだけなら“アインズ・ウール・ゴウン”の名は明かしたくないんだよなあ)

転移後の世界の人間がこの地にいる場合でもなければ、異世界人にバレてもそれほど問題ではない、と思う。
ただ、これはアインズのプライドの問題だ。
仲間たちとの栄光の名であるアインズ・ウール・ゴウンを泥で汚すわけにはいかない。
アインズ・ウール・ゴウンを名乗ってしまえば、この聖杯戦争が負けられない戦いになってしまう。
そしてアインズはゲーム時代でも強さとしては中の上、よくて上の下、手持ちの全てのアイテムを含めても上の中止まりだった。
これはアインズがロールプレイングを重視していたからなのだが、聖杯戦争では更なる制限が発生している。
あくまでもセイバーとして召喚されたアインズは、モモンとしてではなくアインズとして戦おうにもクラス制限を受けるのだ。
アインズの最適クラスはキャスター、或いはエクストラクラスだ。
セイバーではクラス制限によりほとんどの魔法やワールドアイテムが使用できず、ナザリック大墳墓の召喚や、守護者たちの召喚もできない。
踏んだり蹴ったりである。
正直補正の入ったモモンと、制限著しいセイバーアインズとでは本来ほどの極端な戦力差はないと言えよう。
まだいくらか本来に近い戦い方や強力な宝具が使える分だけマシだが、それで勝てるほど英雄たちの戦いは甘くないと見ている。


73 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:08:52 x6GJ0HRg0

(まあ、モモンはモモンで不安要素もあるのだけれど)

ここにいるのはアインズが扮するモモンではない。
モモンという英霊の記録をムーンセルが再現したものだ。
そのため、モモンはアンデッドではなくれっきとした人間として再現されている。
さっきリョウマに対して兜を取ったのは謝罪のためだけでなく、その辺を確認するためでもあった。
結果は予想通り。幻影で作ったまがい物の顔でなく、生身の顔が兜の下にはあった。
そしてそのことこそが最大の不安材料なのだ。
アインズは痛みは感じれども血を流さないアンデッドであり、人間とは違う精神性故の冷静さや冷酷さがあった。
対して生身になってしまったモモンはどうだろうか。
これまで通りに戦えるのだろうか。
一応英雄モモンの再現なだけあり、鈴木悟の頃に比べたら今も冷静に考えれているとは思うが……。
リョウマに対して抱いた共感が、仲間のことと重ねてだけでなく、人間としての情を再び得てしまったからの可能性もある。
また、本当の本当にモモンの上位互換としてのセイバーモモンだとしても、パワーアップしていれば何でもいいわけでない。
ゲーマーなら常識だ。
レベルアップしたことや装備を変えていたことを忘れて、削るつもりが倒してしまったとか、反射ダメージで死んでしまったとか。
そんな初心者時代の苦い思い出があるのだ。

(そのためにもまずはどれだけ戦えるのかも実感しておきたいな)

それがリョウマに様子見を提案した理由の一つでもあった。
他にも万一ナザリックの面子や或いはかつての仲間たちがサーヴァントやマスターとして呼ばれていないかを調べたいというのもある。
無論、リョウマに話した理由も嘘ではない。
この聖杯戦争のリョウマの視点でMMOに例えるなら、強制的に課金必須のイベントに参加させられたようなものだ。
しかも賞品は優勝者にしかでないという。
クソゲーだ。運営死ねと言う他はない。
信じろという方が無理だろう。

そしてもし、この聖杯戦争がクオーツモンのような自分たちを、この“アインズ・ウール・ゴウン”を利用しようとしてのものならば。
制限がかかっていようが、ルーラーなるゲームマスターがいようが関係ない。


(その時は覚悟しろ、クソ運営ども。“アインズ・ウール・ゴウン”を利用しようとした報い、思い知らせてくれる!)


74 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:09:51 x6GJ0HRg0


【クラス名】セイバー
【出典】オーバーロード
【性別】男
【真名】アインズ・ウール・ゴウン
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A+ 耐久B+ 敏捷C 魔力E 幸運A 宝具C〜A++
 ※パラメータは超位魔法発動時以外常時パーフェクト・ウォリアーを適用済み

【クラス別スキル】

対魔力:A
上位魔法無効化Ⅲ。
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
固有スキル魔導王の一側面。

騎乗:A +
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。真祖だって椅子くらいにはできる。

【固有スキル】

パーフェクト・ウォリアー:B
本来はスキルではなく戦士化の魔法。
セイバーとして召喚されたこともあり、今回のアインズは常時パーフェクト・ウォリアー状態である。
戦士職のステータスで戦えることに加え、いかなる武器も装備できる反面、魔法は使用不可能となる。
また常時戦士化による魔力消費と、魔力の回復量が拮抗するため、アインズの魔力が実質自然回復しなくなる。

魔導王:A
アンデッドAのアレンジ複合スキル。
アインズは最高位アンデッドとしての特性に加え、幾つもの耐性を併せ持つ。
ただし格下には通用しても英霊相手には効果が薄いものや、アンデッド故の弱点も含まれ、サーヴァント化により失われたものさえある。
端的に言えば状態異常や刺突・斬撃・闇や電気や冷気などには超強いが、相応の威力の光・炎・打撃などには滅法弱い、といった感じである。
また、感情が高ぶった際、強制的に精神が安定化される。スゥーっとなる。

心眼(真):A
修行・鍛錬・経験によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、 その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

カリスマ:C++
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。 魔や異形種へは更なる補正が入る。
カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
かつては悪名高き伝説のギルドをまとめ上げ、今は魔を統べる彼だが、実際は支配者として振る舞うことに四苦八苦している。
ただし仲間や配下からの人望は本物であり、組織の長としての行動力や思い切りの良さも持つ。


75 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:10:35 x6GJ0HRg0

【宝具】

「絶対支配者、光臨(アインズ・ウール・ゴウン)」

ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1

モモンの時にのみ使用可能。
秘された真名、アインズ・ウール・ゴウンを他人に告げることで発動できる。
言うなれば、宝具ではなく英霊としての真名解放。
以降、セイバーのステータス・スキル・宝具はモモンのものからアインズのものへと切り替わる。

今回のモモンはアインズの変装ではなく、あくまでも人々の信仰からなるモモンという人間の英霊として召喚されている。
そのため、この宝具を使わないかぎり、マスターだけでなく、真名看破を持つルーラーたちからも真名やステータスなどはモモンとして認知される。
宝具解放後はモモンとしての召喚からアインズとしての召喚に切り替わる形のため、モモンに戻ることはできない。
当然、モモンの宝具やスキルは使用不可能になる。


「至高の四十一人に敗北はない(“アインズ・ウール・ゴウン”)」

ランク:C〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

至高の四十一人と称された自身及び仲間たちの装備を媒体を介して召喚し宝具として使用することができる。瞬時に持ち替えることも可能。
元の持ち主には劣るが、彼らを率い、共に戦い抜いたアインズはその全てを存分に使いこなすことができる。
アインズに並び、中には凌駕するものもいた仲間たちの宝具はどれも非常に強力であり、剣、鎧、盾、弓、ガントレットなど多岐にわたる。
防具はアンデッドとしての弱点を補うことができるが、全ての弱点を同時に無効化することはできない。
また、召喚できるのはあくまでも仲間たちの装備に限られるため、ワールドアイテムなどは取り出せない。


「失墜する天空(フォールンダウン)」

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:50人

超位魔法。
太陽の如き超高熱源体を地表に顕現させ、効果範囲内の全てを焼きつくす。
本来、セイバーとしてのアインズは魔法を使えないが、この魔法に限っては条件付きで使用可能。
超位魔法使用時に限り、魔力をEXとして換算できる。
ただし超位魔法のデメリットとパーフェクトウォリアーの無効化により筋力、耐久はEランクにまで下降する。
またアイテムの併用で宝具発動までの詠唱時間は0にできるが、発動し切るまでに致命傷を負った場合発動はキャンセルされる。
発動に魔力を使わない代わりに当聖杯戦争では一日に二度しか使えず、連発もできない。

【Weapon】

課金アイテム多数。

【人物背景】
人間鈴木悟がゲームで使っていたアバター“モモンガ”として、異世界へと転移し、ギルド名を自らの名として冠したアンデッド。
普段は温厚な性格であり義理堅く、仲間思いで無益な殺生も好まないが、目的のためなら虐殺さえも厭わない。
これはアンデッドと化したことにより精神性が変化したこと、しかし人としての記憶や人間性の残滓が残っていること、
根底にあるのがかつてのゲーム仲間たちと過ごした日々への常軌を逸するほどの思い入れにあるからである。
そのため、仲間たちと築いた“アインズ・ウール・ゴウン”や仲間たちが遺した子どもたちと言えるナザリックNPCを何よりも優先している。

【聖杯にかける願い】
かつての仲間たちと再会したいという想いはあるが、もしもこの戦いがアインズ・ウール・ゴウンを利用しようというものなら、許さない。

【運用】
最たる注意点だが、サーヴァントセイバーとしてのアインズ・ウール・ゴウンはモモンの上位互換とは言い切れない。
ステータスは上がり、手数も増えるが、アンデッドとの特性により強固な耐性とともに多くの弱点も生じてしまう。
属性・耐性及び弱点・スキル・宝具が様変わりしかなり別物になる上に、性格さえもアンデッド化の影響を受ける。
全く別のサーヴァントと考えよう。
相手の属性に左右されない安定性や、対魔、ハムスケという人手はモモンのままの方が優れているだろう。

何よりも、アインズ・ウール・ゴウンの名を出す以上、敗北は許されない。


76 : 最上リョウマ&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/28(木) 21:10:50 x6GJ0HRg0
投下終了です


77 : <削除> :<削除>
<削除>


78 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:39:33 l2VrKAW20
投下します


79 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:41:17 l2VrKAW20
まるで地獄の様だった。

2mを超える巨漢に抱え上げられ、敵マスターの道化に、鉤爪で寸刻みにされている青年。
両腕を肘から斬り落とされ、羆だの鰐だの大型犬だのに生きながら食われている二十代後半の女性。
両手足をへし折られ、サーヴァントの少女に抱えられ、その光景を見ていることしか出来ない自分。

まるで地獄の様だと少女は思う。



深更の公園で繰り広げられた死闘は、短いが熾烈なものだった。
魂喰いを行っていたバーサーカーとそのマスターに、対主催で手を組んだ二組の主従が挑んだのだ。

バーサーカーとアーチャー及びライダーの戦闘は、結果としてかなりの広さの公園を破壊し尽くしたものの、バーサーカーは消滅し、そのマスターも無力化することができた。

手を取り合い勝利を喜ぶライダーのマスターの少女とアーチャーのマスターの青年。
それが、彼らの人生最後の幸福だった。

「アーチャー…遅いな?何やってるんだ?」

青年がバーサーカーの視覚の外から狙撃を行うべく、離れて行動しているサーヴァントを気遣った時、新たな敵が現れた。

「あらあら〜ん。可愛らしい娘がいるじゃな〜い」

耳障りな声がした方に目をやると、そこに居たのは、セーラー服の様な服を着た少女を連れた道化姿の男。
セーラー服の少女の顔は
二人に共通するのは、濃密な血と――――死の臭い。
その臭いに反応して、二十代後半の女性――――ライダーが青年と少女をの前に立つ。

「あら?やる気?お仲間も居ないのに?其れともエッチな事でもしたいの?いや〜ん。嬉しい!」

オカマ口調で喋くる道化に三人が不快感を示したと同時。対峙する両陣営の間に投げ込まれる人影。
相当な勢いで投げつけられたのか、地面に叩きつけられた後バウンドして転がってくる身体を、咄嗟にライダーが蹴り飛ばす。

地面と平行に横に飛んで、折れた樹に激突したその姿を見て、青年が悲痛な叫びを発した。

「アーチャー!!!」

四肢を斬り離され、自分の矢を急所を外して全身に突き立てられたアーチャーは、それでもマスターに答えようとして、

不意に現れた巨漢に頭を踏み潰された。

「マスター!!!……」

不利を悟って、マスター達に逃げる様に言うライダーだが全ては遅過ぎた。
元々アーチャーもライダーもそこまで優れたサーヴァントでは無い。
故に手を組んで居たのだが、自分と同等のアーチャーを嬲り殺しに出来る敵が相手では、精々がマスターが逃げる時間を稼ぐ位の事しかできはしない。

だがしかし、ライダーが敵を前にして他に気を向けるという、致命的な隙を晒したのを見逃してくれる程、道化の従えるサーヴァントは甘くなかった。

「――――!?」

気づいた時にはセーラー服の少女が地を這うかの如き低い姿勢で一気に間合いを詰め、咄嗟に繰り出したライダーの槍を容易く回避して、手にした日本刀を一閃。ライダーの両腕は肘から断たれていた。

激痛に叫びかかったライダーを、不意に現れた羆が殴り飛ばし、倒れたところへ更に現れた大型犬や鰐が群がり、喰らいだした。

「良いわね〜。ほんっと良いわ〜。私ってラッキー!!こぉ〜んな良いサーヴァントを引けるなんてっ。きっと日頃の行いが良いからね」

嬉しそうに笑う道化。逃げようとした2人のうち、アーチャーのマスターを巨漢に任せ、自分はライダーのマスターの両手足を折って逃げられぬ様にしていた。

「さ〜て、お愉しみの時間よっ!!バーサーカー、女の子の方は持ち帰るからよっろっしっくっねっ」

そう言って、道化は青年を切り刻みだした。
そうして、ライダーのマスターは、セーラー服の少女、バーサーカーに担ぎ上げられた。
青年が息絶え、ライダーが消滅すると、巨漢と獣達はバーサーカーの持つ刀に吸い込まれる様に消え、バーサーカーは道化はに従って、公園を後にした。

――――バーサーカーの耳に、止めるよう訴える少年の声が聞こえた。


80 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:41:59 l2VrKAW20
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「は〜い。ご飯よぉ」

翌日の夜。バーサーカーにより、住民が悉く殺し尽くされた安アパートの一室で、
元が人間であったと分からない程に破壊された少女を抱えた道化が、バーサーカーを実体化させた。

「ぎ……ぎ………ぎ………」

凄まじい苦悶の表情を刻み込んだデスマスク。それでも少女は生きていた。
一閃。刀を一振りし、バーサーカーは少女の首を切り落とす。

「あらまあ〜怖いわねぇ〜」

バーサーカーが魂食いをしているのを余所に、テレビに興じる道化。
ニュースでやっているのは、今朝公園で発見された惨殺死体に関する続報だった。
生きながら切り刻まれ、かなり長時間生きていたこと。犯人の目星は全くつかず、現場には大型動物の足跡が、複数種類発見されたこと。現場の公園が破壊され尽くしていたこと。
そして、惨殺された青年に妻子が居たこと。

「キャハッ!カワイイわ〜。そうね、誰が犯人か教えてあげましょう!!イヤ〜良いことをするって決めると気分良いわ〜〜」

インタビューを受ける未亡人と子供を見てはしゃぐ道化。

――――その姿を見てバーサーカーの脳裏に、墓前で祈りを捧げる母と子の姿が浮かんだ。

「行くわよバーサーカー。今夜は貴女も参加しなさいね」

――――喜悦を隠さぬ道化を見ていると、悲しみと怒りに満ちた青年の顔が浮かんだ。

「た…け……う…いぶ」

バーサーカーのクラスを与えられた少女の洩らした悲鳴は誰にも届かず虚空に消えた。


81 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:42:32 l2VrKAW20
【クラス】
バーサーカー

【真名】
クロメ@アカメが斬る!

【ステータス】
筋力:B+ 耐久:C 敏捷:A+ 幸運:D 魔力:E 宝具:A+

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:C
幸運と魔力を除くステータスをアップさせるが
言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】

無窮の武練:C
重度の薬物中毒にあっても類稀な武技を発揮した。
完全に理性が無くならない限り、十全の戦闘能力を発揮できる。

人体改造:B
投薬を初めとする処置により、天分を越えた能力を獲得している。
強化薬物を摂取することで、宝具と幸運と魔力を除く全ステータスと全てのスキルに++が付く

戦闘続行:B
人体改造に依って得たスキル。頭か心臓を潰さない限り死ぬことは無い

心眼(偽):C
人体改造に依って得たスキル。第六感による危険回避。超遠距離からの狙撃をも避ける事ができる

怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
本来は魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性だが人体改造に依って獲得した
筋力のみならず敏捷性も向上させる

薬物中毒:B
人体改造に依って得たスキル。薬物に身体を蝕まれている為、持続力に欠ける。
また、薬が切れると発作を起こし、戦闘能力が激減する。




【宝具】
死者行軍・八房
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大補足:8人

斬り殺した者は人であれ獣であれサーヴァントであれ骸人形として操ることができる日本刀型の帝具。
骸人形は生前の能力をそのまま行使し、Cランクの狂化とA+ランクの戦闘続行スキルを得、Eランクの宝具に相当する神秘を得る。
痛覚と精神が無い為、痛みでは止まらず、精神攻撃が一切無効。
サーヴァントであればその霊格は著しくダウンし、神性や皇帝特権を始めとする出自や身分に関わるスキルやカリスマや勇猛といった精神に関わるスキルが消滅する。
サーヴァントは宝具の真名開放こそ出来ないが、常時発動している宝具なら問題無く使える。
マスターを骸人形化することで、間接的にサーヴァントを支配できるが、魔力量の負担は当然跳ね上がる。
骸人形はクロメのから魔力を徴収して動く為、骸人形を展開する数が増える程にクロメは弱体化していく。サーヴァントともなるとその量は絶大で、一体出すのが限度。
骸人形にlする相手や、廃棄する骸人形。運用はマスターの指示で行われる。
骸人形の修復はクロメよりもかなり時間が掛かる。


【weapon】
お菓子。魔力により精製される薬物入りのお菓子。摂取しないと禁断症状を起こす

【人物背景】
帝国の特殊警察イェーガーズの一員として招集された少女。
幼い頃両親に売られ、帝国の暗殺部隊として反帝国勢力を暗殺してきた。
この時受けた処置で身体能力を向上させるものの、薬物中毒になり、心身共に蝕まれて行く。
イェーガーズでの生活で、人間としての心を取り戻していくが、激化する戦いの中で仲間を失って行き、自身も薬物により限界を迎えた為、姉であるアカメとの最後の一戦に臨む。
力及ばず敗れるも、心を通じ合わせた少年ウェイブに助けられ、2人で帝国から離れて行きて行きことを決めた。


【方針】
マスター任せ。骸人形に関することもマスターが決定している

【聖杯にかける願い】
???????


82 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:43:14 l2VrKAW20
【マスター】
ティベリウス@デモンベインシリーズ

【能力・技能】
最高位の魔術師であり、魔導署の力でゾンビと化している為、魔導署を破壊されない限り死ぬことが無い。しかし、何故か痛覚が存在するので殴られると痛い。
当人+魔導署の魔力によりサーヴァントを維持する為の魔力は豊富。
八房の死者を8体同時展開することも可能。
制御の難しいバーサーカーを完全に制御下に置いている。
ティベリウスは自身の腸を伸ばしての拘束や、鉤爪を用いた戦いを行う……があまり強く無い。
影に潜っての移動が可能

【weapon】
魔導署『妖蛆の秘密』
鬼械神(デウス・マキナ)の召喚は不可能だが、魔力炉としての機能を持つ為、ティベリウスに絶大な量の魔力をもたらしている。
普段はティベリウスの体内に収納されている
ゾンビの作成も可能だが、サーヴァントに対しては不可能

仮面:
複数所有し、感情に応じて変わる

【ロール】
皆大好きピエロだよ〜〜ん

【人物背景】
秘密結社“ブラックロッジ”の大幹部“アンチクロス”の一人。
その性格は残忍卑劣、鬼畜外道。
戦い方も、不意打ちや人質を取って手を出せなくしたところを嬲り殺す等。
敵対したものをゾンビの大群に襲わせ生きたまま食わせたり、体の中に大量の蛆虫を植え込んで内部から破壊したりと凄惨な殺し方を好む。
女性を凌辱して惨殺することも好むが、その対象が子供であれば男女を問わない。

【令呪の形・位置】
髑髏の形をしたものが『妖蛆の秘密』に浮かび上がっている

【聖杯にかける願い】
手に入れてから考える

【方針】
強そうな奴を八房の骸人形にしていく。
可愛い子供や女性がいたら“お愉しみ”の時間を取る
正義の味方っぽい奴は徹底的に嬲って殺す

【参戦時期】
マスターテリオンを裏切った直後

【運用】
基本的に骸人形の手数で押して行き、敵マスターをティベリウスが影から不意打ちしていくのが堅実な勝ち方か。

【備考】
NPCを一人。大型犬を2頭と、羆と鰐を一頭ずつ骸人形にしています。


83 : 死体が行く! ◆T3rvSA.jcs :2016/04/28(木) 21:44:22 l2VrKAW20
投下を終了します


84 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:44:23 RUSyO8IY0
投下します


85 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:45:19 RUSyO8IY0


 ある作家に曰く――。

 臆病な自尊心と、尊大な羞恥心は人を虎に至らしめる。

 ならば、彼女はきっと――。


  ◇ ◆ ◇


86 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:46:43 RUSyO8IY0

 黒のジャケット――軍服を連想させるブレザーに身を包んだ少女が、走る、走る、走る。

 夜の森。黒い森。
 都会という名の監獄。身を横たえし建造物が断崖をなし、帳が漆黒の森を作るその中。
 棚引く色褪せた銀髪。翻るスカートの裾。太股を撫で蹴る空き地の雑草。汗の浮かんだ額――。
 彼女は虎を求めていた。

(マウスじゃなくていい……パンター、ティーガーでもあれば……)

 しかし、実在の獣に非ず。彼女は動物の名を冠した戦車を求めて疾走する。

 その名を逸見エリカ。
 戦車道、という――かつての大戦期に設計・運用された戦車と実弾を用いた武道/乙女の嗜み/鋼鉄と硝煙と油の青春――
 そんな武道の強豪校の、副隊長を勤めていた。
 そう――それが彼女。それが逸見エリカ。

(なんなのよ……! なんなのよ、これは……!)

 今の彼女は虎ではなく、ただ追い立てられるネズミに等しい。
 焦燥に乾いた吐息が矢継ぎ早に喉を通り、恐怖に戦いた呼気が口角から零れ出す。
 急かされるように、建設途中のビルへと逃げ込む。逃げる獲物というのはそういうものだ。


87 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:48:07 RUSyO8IY0


 どこかおかしいと思っていた。

 級友と過ごし、自宅に戻り、趣味のボクササイズとネットサーフィンを行う日々。
 平穏で代わり映えのしない毎日。
 級友からは青春たる恋への憧れを訊き、或いは大仰に趣味の話をして、時には遅刻を諫めて、皆で帰り食事をとって笑う毎日。
 女学生ならそうあるべしと――そんな毎日。

 どこかが欠けている。

 本来その位置にいるべきは彼女ではなく、他の誰かとでもいうべきか。
 本来その日常にあるべきは平穏ではなく、他の何かとでもいうべきか。
 何よりも本来――――彼女の心に座りたるは、穏やかな日々に肩の力を抜く事ではなく赤く焦げる焦燥ではなかったのか。

 その感情に名前はない。

 ただ、何かが欠けていると――彼女はそう思ってやまなかった。その果て。
 その果て彼女は見つかった。見つけてしまった。見つかってしまった。
 始まったのは襲撃であり、そして始まったのは闘争/逃走だ。


88 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:50:57 RUSyO8IY0


「よくやった。これでもう、逃げ場はないな」

 追い詰められたその場所は、建設中のマンションだった。
 張り巡らされた剥き出しの鉄骨。雨風を避けるためのシートが壁の代わりとなり、夜風にはためく。
 未だその身を為さない壁は剥き出しで、格子に切り取られた空間の向こうに臨むは夜景。
 砕けた金属片が墨絵めいた夜の蒼をなぞり、怪しく己を主張するそこ。

「……っ」

 逸見エリカを追い詰めた影が、鉄骨から姿を現す。
 よれたスーツ姿。草臥れたとか、疲れ切ったとかそんな感想が付きまとう平凡な男。
 どこにでもいる凡骨の、印象に残らないその頬が僅かに揺れて――

「少し、“愉しむ”時間がありそうだ」

 ネクタイに差し込まれた指。うっとおしいとばかりに男は身を揺らして、己の拘束を緩めていた。

 粘ついた視線。
 胸のあたりを照準し、吊り上がった頬。おぞましい笑み。
 これが何かとは知れないが。
 その果てに何があるかなんて、何よりも判り切った事であろう。

 一歩。男が踏み出した。
 一歩。本能が悟った。生物としての定めに諦観を齎した。
 一歩。エリカは腰を折った。
 一歩。死出の道となる十三階段。
 一歩。浮かび上がる汗を張り付けた太ももが、別人のものに感じられる。
 一歩。鋼鉄の戦が車に勝るとも劣らない絶対の敵。
 一歩。指が震える。
 一歩。ならば彼女に与えられるのはただ一つの必然。
 一歩。処刑の時は今、僅か――。

「――――」

 無言。沈黙。

 死の瞬間というのはそういうものだ。処刑に臨む罪人というのはそういうものだ。
 世界はあらゆる意味を失う。
 籠められる感情を、主観を殺し、ただあるがままにそこにある静寂。

 ああ――なんと美しいものか。深淵なる宇宙の沈黙の果てのように。連なる星を進むかの如く。
 世界は、輝いて見える。
 静かで、どこまでも美しい。死を臨む心の平穏は、あらゆる雑念を捨て去り、万物をただ万物として見定めさせる。
 そこにはもう、余分など存在しない。


89 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:52:47 RUSyO8IY0


(死にたくない……)

 ――否。

(こんなところで、終わりたくない……終われない……終われないのよ……!)

 あらゆる絶望のその果てに感情が飛び去るその中にあっても、彼女の元には一つの思念が揺らめいた。

 目標。目的。
 逸見エリカという船が、見定めるべき灯台の明かり。

(だって、私はまだ――――)

 彼女が目指した果ては、こんな場所で苦痛と汚辱の果てに臨まぬ死を迎える事だろうか。
 彼女が進む地平とは、こんな空間で凌辱と無念の最中に生を手放す事だろうか。
 彼女が辿り着く深淵とは、こんな時間で絶望と屈辱の内に意志を打ち捨てさせられる事だろうか。

 否。断じて――――――断じて、否!

 彼女が目指すのはただの一つ。
 遠き星。星の果て。
 己の理想とする完璧さ。絶対的な憧憬と尊念の果てを体現したと思える女性。
 そして何よりももう一人――そんな完璧さを補完できる人間。また彼女も輝けると知った女性。己を見捨てた宇宙船の筈が、また煌々と輝く星と代わった。

 その星は大きく。
 光は屈辱の味となり、音は焦燥の匂いとなる。香りは怒りの姿であり、手触りは崩壊の音である。

(そうよ、私はまだ――――)

 誰でもなく己自身に誓ったではないか。
 そんな星のところへ。必ず行くと。そこまで終われないと。

 そうとも――――

(まだ、一度もあの子に勝ってないのに――――ちゃんと肩を並べてないのに――――!)

 ――――――――――我が赴くは星の群!


90 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:54:23 RUSyO8IY0





     Tiger!  Tiger!
 ――虎よ! 虎よ!

     Burning bright, in the forests of the night.
 ――ぬばたまの夜の森に燦爛と燃え。

    What immortal hand or eye dare frame
 ――そもいかなる不死の手、はたは眼の作りしや?

     thy fearful symmetry?
 ――汝が恐怖の対称形を。



 .


91 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:56:16 RUSyO8IY0


「ほう? 絶望の淵にあっても、まだ雪辱を願うか。未だに足掻くか」

 姿は見えずとも、響く声。

「希望でもなく絶望でもなく、おまえが見定めるのは果てなき背中への憧憬と対等か」

 噛み締めるように。ただなぞるように。
 或いはそれは客観的に眺める読者の言葉であり、或いはそれを俯瞰的に見下ろす作者の言葉であり――。
 また或いは、既に終わった物語の登場人物めいた情熱なき呟き。

 戸惑い顔を上げるエリカに構わず、或いは相対する敵を気にせず漏らされた響き。

「雪辱……」

 突如、変調――。

「ククククク、フハハハハハハハハハハ!」

 宙に充ちたるは高らかなる哄笑。
 その声の主は、逸見エリカの窮地にあっても、なお笑う。
 いたいけな細腕の、未だ年若き少女の危機というのにただ笑うのだ。
 心底愉快であると! 皮肉が利いていると!

「オレの役割も終わったかと思ったが、なるほど……なるほどな! これだから世界というのは憎々しい! そうとも、実におぞましい!」

 腹の底から痛快だと、堪らないと謳う声。
 しかし、其れは哄笑にあって嘲笑に非ず。その笑いは、決して彼女を嘲る為に為されたものではない。

 いや――というよりは、むしろ――……

「その怒り! その妬み! その苦しみ!」

 蒼黒い炎。
 籠められたのは彼女への好意。親近感。喜色。嘲弄の為でなく、その笑いに含まれたるは親しさの発露。
 エリカへと迫る弾丸を打ち払う、鬼火めいて揺らめくその炎に込められた名は――

「――いいだろう、おまえは人間だ! おまえこそが人間だ! 千の聖人が否定しようと、万の英雄が拒絶しようと! 確かにこのオレが、モンテ・クリストが聞き届けた!」

 赤の激怒に非ず。

 緑の嫉妬に非ず。

 白の義憤に非ず。

 その名を人は――

「エクストラクラス:復讐者(アヴェンジャー)……喜べ、女。おまえの雪辱はオレの恩讐を呼び起こした」

 ――――“恩讐”と、そう呼んだ。


92 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 15:58:55 RUSyO8IY0

 彼女の前に現れた人型。幅広帽を被り、方々に乱れ叫ぶ白髪。コートに身を包んだ長身。
 夜の森が如く黒く濁った雰囲気を漂わせながらも、鼻を挟んで二つ揃った目だけが炎めいて爛々と輝く青年。

 彼こそは、恩讐の代名詞。
 この世で最も高名な復讐者――其れはあらゆる不屈そのものであり、延いては絶対なる復讐を為したもの。
 恩讐のその果てに辿り着いた男の虚影。かつての肖像。
 絶望を踏破し、慟哭を咀嚼し、魂を打ち据える監獄を突破し、無実の己を失墜させた怨敵を討ち取らんべく邁進したもの。

 ――サーヴァント、クラス:アヴェンジャー。

 またの名を……

「モンテ、クリスト伯……」

 呆然としたエリカの呟きを背に受けて、アヴェンジャーのクラスのサーヴァントは愉快とばかりに声を張り上げる。

「そうだ! そうとも! 覚えておけ! それが、おまえの声が呼び覚ました毒の炎の名だ! 恩讐を呼び覚ます魂の熱だ!」

 誇るがいいと溢された笑いは、彼女へのはなむけか。それとも憐憫か。
 ただ一つ――判りきっている事がある。
 エリカを背中に庇ったアヴェンジャーが、徐に敵を照準する。

「……さて、貴様にはオレがどう見える?」

 ひいと、悲鳴を上げた敵マスター。
 先程までエリカをいたぶり、その魂を陵辱せんとしていた姿はどこにもない。
 彼は、得体の知れぬその眼前の“黒い靄”に恐怖していた。

 何も見えぬ。何も判らぬ。何も知れぬが――――線対称に炯々と揺らめく双眸だけが覗ける。
 如何なる運命の手がこれを形作ったのか、如何なる奇跡の眼がこれを産み出したのか。
 それとも知れぬ、恐怖の対称形。


93 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:01:43 RUSyO8IY0


「さあ、指示を出せマスター。おまえの雪辱の価値を、オレに示すがいい」

 黒の炎が翻る。
 蒼の茨が空気に弾け、無人の一室に膨張する。

 ――高速。
 疾駆する蒼の憤怒が、空間ごとサーヴァントを一閃した。
 子供が乱暴に筆を走らせるように、一条の鬼火めいた揺らめきが敵の身体を打ち据え跳ね上げる。

 高笑い。両手から噴出する炎熱の砲弾が、幾重に渡り肉体を攻め据えたそこで、煙から突き出された右手。
 握った頭部。焼き上げられる顔面。
 苦悶の呻きもさながらに、アヴェンジャーの右腕は頭部ごと敵の悲鳴を沈黙させた。
 砕けたコンクリート。埋もった頭とその四肢の輪郭が蛍光を帯び、立ち上る燐光と共に冴えたる夜の闇に薄れていく。
 片膝から立ち上がったアヴェンジャーの視線のその先は、恐慌に身を震わせる敵マスター。

「そうだ。おまえがオレに見出したものは正解だとも。それが与えられる答えだ」

 恩讐とその障害が相対する事は、滅びを意味する。
 どちらかが生き、どちらかが死ぬ。――そんな虚無こそが恩讐の齎す最大にして唯一の法理。

 そして、この場で言うならば――

「絶望せよ。それがその行き先に残された、唯一のものだ」

 生き残るのはただ一組と、決まっていた。


94 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:04:38 RUSyO8IY0

 ◇ ◆ ◇


「聖杯……戦争……」

「オレも真っ当な聖杯戦争に覚えはないが、確かにそうだ。おまえがいる場所はその舞台だ」

 エリカの脳に流れ込む情報――――魔術――サーヴァント――聖杯――聖杯戦争――令呪。
 己が置かれた苦境への理解。
 同時に漏らされたのは、ただの一言。

「なんなのよ……」

 砕けたガラス片に顔を映して、エリカは呟いた。

 片手で持ち上げたその前髪の下。或いは左右の髪を寄せれば見つかる。
 さながら虎のように。
 エクストラクラスを召喚したその代償だろうか。彼女の令呪は本来浮き上がる手の甲ではなく、彼女の顔に位置していた。
 特に酷いのは額のそれだ。♀――Oに相当するのだろうか――を含んだ意味ある単語となっていた。
 思わず顔を顰めずにはいられないほどの、忌々しい呪い。

 髪に隠す事は出来るだろう。
 しかし――感情が高ぶり使用したなら、浮かび上がる事は隠せない朱の入れ墨。
 醜き、怒りの、虎の――――恐怖の対称形。
 エリカの漏らした言葉に、彼女へと背を向けたままアヴェンジャーは鼻を鳴らした。

「“何”だと? 愚問だな、マスター。おまえ自身で答えを口にしている」

 彼がその瞳の先に映したものは街の火。この場において、いと名高きイフの塔を為す牢獄環境。


95 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:06:29 RUSyO8IY0

「答え、ですって……?」

「そう、戦争! 戦争と名が付く以上、決まっているだろう!
 己が欲望の為に他者を喰らう! 己が渇望の為に他者を蹴落とし、己が願望の為に他者を踏みにじる!
 そうとも、ここはそんな人間の集まりだ。あらゆる災厄の吹き溜まりだ! その怨嗟が手足に絡まり、その焦燥が身を焦がし、その哀願の悲鳴が魂を腐らせる!」

 ――戦争。

 エリカとしても認識はしている。彼女の行う戦車道は競技として純化しているが、その大本は破壊と死だ。
 即ち効率的に、如何に自分が殺されず、如何に相手を殺しきるか。
 生あるが故に人類が至った一つの答えが砲撃という鋼の矢であり、戦車という鉄の鎧である。
 しかして、彼女の知りえた知識は、育んだ経験は元来はすべて人を殺す為に用いられるべくして成立したもの。
 眉を寄せ俯く彼女を、肩越しに見やるアヴェンジャー。

「そんな場所で、果たしておまえはどこまで正気でいられる? おまえはおまえの雪辱に辿り着けるかな?」

「……っ」

 拳を握る。
 唇を噛むエリカをしばし沈黙で見詰め、しかしアヴェンジャーは思い出したように一言。

「さて、おまえが何を見るのか……何を得て、何を失うかはオレが語るものではない。それはオレの役目ではない」

 裁定者に非ず。その言葉は傍観者の如く。

「だが一言……この言葉を送ろう」

 されども静かに籠められた感情は、決して彼女を見捨てんとしたものではなく。

        Attendre et esperer
「――――“待て、しかして希望せよ”」

 噛み締めるように、逸見エリカへと差し出された。


96 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:10:59 RUSyO8IY0

【クラス】
 アヴェンジャー
【真名】
 巌窟王 エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order
【ステータス】
 筋力:B 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:B 幸運: 宝具:A
【属性】
 混沌・悪
【クラススキル】
 復讐者:A
  あらゆる調停者(ルーラー)の天敵であり、痛みこそがその怒りの薪となる。
  被攻撃時に魔力を増加させる。
 忘却補正:B
  復讐者は英雄にあらず、忌まわしきものとして埋もれていく存在である。
  正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する。
 自己回復(魔力):D
  この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
  これにより、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。
【保有スキル】
 鋼鉄の決意:EX
  忌まわしき牢獄シャトーディフを抜け出し復讐を成し遂げた強靭な精神力。
  ランクに応じて精神的な攻撃を跳ね除ける効果を持つ……筈なのだが。
  本来なら物理的な意味を持たないスキルであるが、アヴェンジャーの場合、後述の宝具の効果によりスキル内容が追加。
  自身の筋力・耐久力を一時的にスキルランクに合わせて増幅させる。
  また単純に物理的な意味合いよりも最悪の環境下での長い年月という心を崩壊させる難攻不落の監獄を突破した、
  困難に挫けぬ精神を肉体に反映し、宝具を含むあらゆる“無敵状態”を突破しダメージを与える。
 黄金率:A
  人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
  Aランクの場合、「一生金に困ることはなく、大富豪でも十分やっていける」。
  エドモン・ダンテスは復讐劇においてその名に関する、モンテ・クリストの財宝を手に入れた。
 窮地の智慧:A
  戦闘に限らず、窮地に於いてに自身にとって最適な展開を「見出す」能力。
  本来なら物理的な意味を持たないスキルであるが、アヴェンジャーの場合は後述する宝具の効果によりスキル内容が追加。
  一時的に己自身へ与えられる弱体を緩和し、恩讐者の思い描いた平穏や繁栄を破綻させた逸話から、宝具の発動を一時的に妨害する。


97 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:12:19 RUSyO8IY0

【宝具】
「巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー) 」
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人

 彼は復讐の化身である。基本7クラスの何れにも当てはまらず、エクストラクラス・アヴェンジャーとして現界した肉体は、その生きざまを昇華した宝具と化した。
 強靭な肉体と魔力による熱量攻撃。自らのステータスやクラスを隠蔽、偽の情報を見せることも可能。靄に包まれている風に姿を隠す事も。
 常時発動型の宝具。真名解放の効果も存在するが、詳細は不明。
 この宝具により、生前の生きざまに関するスキルは彼自身の肉体に効果を及ぼす。


「虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)」
 ランク:A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1〜20 最大補足:1〜100人

 地獄の如きシャトー・ディフで培われた鋼の精神力が宝具と化したもの。
 肉体はおろか、時間、空間という無形の牢獄さえをも巌窟王は脱する。
 超高速思考を行い、それを無理矢理に肉体に反映することで、主観的には「時間停止」を行使しているにも等しい超高速行動を実現するのである。


【weapon】
 魔力による熱量攻撃。青黒い炎の束となって現れる。

【人物背景】
 世界に名だたる復讐譚「巌窟王」の主人公、エドモン・ダンテス。
 悪辣な陰謀が導いた無実の罪によって地獄の如きイフの塔(シャトー・ディフ)に投獄され、しかして鋼の精神によって絶望せず、
 やがてモンテ・クリスト島の財宝を得てパリへと舞い降り──フランスに君臨する有力者の数々、すなわちかつて自分を陥れた人々を地獄へと引きずり落としたという。
 原典の海の男エドモン・ダンテスは復讐劇の果てに悪性を捨てたが、サーヴァントとして現界した彼は復讐鬼の偶像であり続け、
 それ故に彼は己が原典のエドモン・ダンテスではないと考えている。

【聖杯にかける願い】
 なし。聖杯にではなく彼自身の望みもあったが、それも解消している。
 詳しくはFate/Grand Order 監獄塔に復讐鬼は哭く を参照の事。
 このたびでは単なる導き手のファリア神父をなぞるのではなく、
 “雪辱”という恩讐にも似た感情を持ったマスターを、ただの一度も勝利していないマスターをその先達として見極める方針。

【運用】
 魔力による熱量攻撃、高速起動、短時間の飛翔、空間跳躍に光速による多重分身と直接的な戦闘方法は多彩。
 基本的に傲岸不遜で上から目線の尊大な物言いをする彼だが、マスターへは世話焼きな面を見せる。恐らく基本的に人間大好き。
 偏っていたり、(どこか的外れな)主観が入り混じったりするが、敵サーヴァントへの分析もマスターへと投げかける。
 彼自身の人物背景から、苦境にあっても己を貫き行動する人間に対しては称賛と援護をやめようとはしないので、マスターは努その事を忘れずに。


98 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:13:52 RUSyO8IY0

【マスター】
 逸見エリカ@ガーズル&パンツァー及び劇場版並びにスピンオフ「リボンの武者」

【能力・技能】
 戦車道という第二次大戦中の戦車を用いた(死者が出る可能性を局限された)武道を納めている。
 常人よりも戦術や戦略は得手しているところであり、また、一定値の近代兵器の運用・直面に慣れている。
 趣味はボクササイズ。多少運動は行える。ネットサーフィンが趣味の事からそちら方面からの情報の収集も見込める。
 もちろん、こちらは専門家ではなくあくまでも趣味の範囲。

【weapon】
 なし

【ロール】
 高飛車というか傲慢というか一言多いというか噛みつきたがりというか、斜に構えつつ短気で感情的で高慢な人物。

【人物背景】
 黒森峰女学院という戦車道の強豪校、その副隊長を務める。
 隊長である西住まほには心服し、その元で戦車の運用を行っている。
 彼女より以前の副隊長であり、そして尊敬する隊長の妹であり、その選択が連覇の阻害原因となってしまい、
 挙句逃げるように転校してしまって、その後別の学校で戦車道の隊長として返り咲いた西住みほには屈折した感情を抱く。
 なお、テレビ版本編では嫌味を言うもののほとんど会話は成り立っておらず、直接対決の機会にも恵まれなかった。

【令呪の形・位置】
 顔。虎の文様が如く目の下の両頬に位置する隈取りと、額に位置する♀が含まれた文字の計三画の縁取り。

【聖杯にかける願い】
 勝ち残り、生き残り、この場を脱して西住まほ・西住みほの元に戻る事が目的であり、聖杯は副産物に過ぎない。

【方針】
 とりあえず情報を収集する。知らぬ事には戦いにならない。

【参戦時期】
 スピンオフ作品、リボンの武者4巻時点。


99 : 虎よ、虎よ ◆RlSrUg30Iw :2016/04/29(金) 16:14:26 RUSyO8IY0
投下を終了します


100 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:43:47 B7ncRk9.0
投下します


101 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:44:05 B7ncRk9.0



夢は夢で終われない。




桜の蕾がほころぶのと一緒に、ボクはほんの少しだけオトナになりました。

身長は相変わらず142cmのまま、年齢だって14歳のまま、成長期の胸を撫ぜてもやっぱり去年と変わらない。
けれど、卒業生を見送ったボクが今年は卒業する側の生徒になり、勉強も高校受験を見据えたものへと変わっていきます。
デリカシーに欠けたプロデューサーさんに云わせれば「まだまだ子ども」っていうことになるのだろうけれど、
やっぱり、ボクは去年よりも少しオトナで、来年には中学生の制服を脱ぎ捨てるレディーでした。

「大人になるって悲しいことなの」という言葉を、昔どこかで聞いたことがあります。
いつかボクも、大人になることを悲しく思ってしまうのでしょうか。
尽きること無い未来への期待と、スパイスのような不安。
オトナになるということは、それが全部――悲しみに変わってしまうのでしょうか。
一歩ずつ歩んでいく未来が、とても悲しい物になってしまうんでしょうか。

夢を諦める――という言葉は、ボクの今の生活のすぐ近くにあります。
それがオトナになるってことでしょうか。



オトナになるってことは、悲しいことなのでしょうか。

それとも――子どもでいられないことが悲しいのでしょうか。

けれど、ボクはこれから知ることになります。
オトナに近づくボクがいて、永遠にオトナになれないボクがいることを。

話を――しましょう。オトナになりたいボクと、オトナになれないボクの話を。

ボクの名前は輿水幸子、職業はカワイイアイドルで、中学生。
そして、聖杯戦争のマスター。


サーヴァントの名は――


102 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:44:58 B7ncRk9.0


風が外ハネを撫ぜて、ほんの少し揺らした。
ふわあと可愛らしいあくびを漏らして後、輿水幸子は慌てたように周囲を見回した。
「随分カワイイあくびをするんだな」と彼女のプロデューサーは笑っている。
思わず、頬に朱が差し込む。
「だから、プロデューサーさんにはデリカシーってものがないんです!!」
頬を膨らませて大声で主張する。
そう言った後、ほんの少しだけ幸子は心の中で反省する。
(こういう時は……余裕たっぷりにカワイイボクのあくびが見れて、プロデューサーさんはラッキーですねぇと言うべきでした)

幸子は常に余裕たっぷりなカワイイアイドルを演じようとしているが、結局地が透けて見える。

後、2年――16歳になれば、結婚できる年齢になるというのに。
(まだまだ落ち着きがたりませんねぇ……)
と幸子は心の中で自嘲する。
まだ早いとわかっていても、幸子は16歳の自分を――そして自分のウエディングドレス姿を想像せずにはいられない、そして隣に立つであろう新郎【オトナのオトコ】を。
相応しい自分になろうとして、中々上手く行かない。
余裕と自分は膨らんだ風船のようで、突かれるとすぐに割れてしまう。

事務所の窓は開け放たれていて、優しい春風は微睡みのようにゆらゆらと入ってきている。
宿題をしている途中で寝てしまったらしい、もちろん――よだれでノートを汚すなんてことはない。

頭を振ると、桜の花びらが一枚ゆらゆらと地面へと落ちる。
窓は開きっぱなしで、事務所の中は春でいっぱいだった。

うーんと精一杯に背伸びをして、幸子はカワイイ身体を起こす。
何かを忘れているような気がするが、頭は未だ微睡んでいた。

「さて、起きたばかりで悪いが、今日の仕事は無しだ」
「えぇ!?なんでですか!?」

今日の仕事は一体何だっただろうか、思い出そうとしても記憶が霞がかかっている。
ほんの少しだけ、自分は未だ眠っているのではないかと――幸子は思った。

「今日の――――だったが――――――で、中止になった」
自分だけではなく、世界がまるごと微睡んでいるかのように、言葉が頭に入ってこない。
ただ、土曜の真っ昼間から仕事が中止になったことだけはわかる。予定が丸々空いてしまった。

「でしたら……」
輿水幸子は上目遣いでプロデューサーを見上げた。

「プロデューサーさん、これから買い物に行くんですが、付き合ってくれませんか」
一節一節を噛みしめるように、幸子は言った。
この台詞を噛んだり、とちったりすることはない。
何度も演じた役柄のように、一度も言ったことはないこの言葉は輿水幸子の中で馴染んでいた。

このデートの誘いを何度練習したことだろうか、輿水幸子は何時だって努力を忘れない。

そして「予定が無くなってしまったなら、今日はプロデューサーさんのスケジュール帳を――カワイイボクだけで埋めてあげますよ」と自信たっぷりに続けた。

不思議と緊張はなかった。
委ねるような心持ちであった。
今、輿水幸子は過剰な自身と過剰な自信で出来ている。


103 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:45:09 B7ncRk9.0

フフーンと、幸子は笑う。

プロデューサーは苦笑して、己の手を首筋に当てた。
「すまないなぁ、今日はちょっとな……」
少々困ったような事態になると、彼は何時だってそうする。
この事務所に所属するアイドルの全員が気づいている――それでいて、どうも本人は自覚が薄い癖だった。

「また、今度な」
そう言って、プロデューサーは幸子の頭にぽんと手を置いた。
また、今度――今度とは一体何時の事だろうか。
この約束は果たされることがあるのだろうか。

「今度っていつですか?」
如何にも不機嫌です、と主張するかのような態度で幸子は言った。
142cmの自分の身長よりも、プロデューサーはずっと大きい。
そんな彼に、自分の怒りは通じているのだろうか――と考えないでもない。
ハムスターが怒ったって、人間はカワイイカワイイと撫ぜるだけだ。

けれど、女性のデートの誘いを無碍に断ったのだ。
しっかりと怒らなければならない。

「来週の土曜日はどうだ?」
「えっ……ええっ!」

だが、あっさりと約束は成立してしまった。

「本当ですか!?」
「元から来週はオフで、買い出しに行くつもりだったしな」
「ふーん……そうですか」

心の半分は喜びで、もう半分は怒りだった。
せっかくのデートの誘いを買い出しとごっちゃにするなんて、と思う気持ちは自分の中で暴れだしている、
女の子の気持ちがわからないダメダメのプロデューサーさんとおもいっきり叫んでやりたい。
けれど、やっぱりデートだ、っていう喜びで暴れだしそうになる自分がある。

「じゃあ、来週の土曜日、約束ですよ?」
やはり一節一節、噛みしめるように言った。
約束を忘れさせたり、放棄させたりするつもりは絶対にない。

「女の子の気持ちがわからないダメダメのプロデューサーさんでも、この約束は破れないことぐらい知ってますよね?」

「――ああ、約束だ」
そう言って、プロデューサーは笑った。

輿水幸子も、口元を緩めた。


104 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:45:19 B7ncRk9.0


「約束……したじゃないですか!」
泣きたいような気持ちだったけれど、実際に幸子が取った態度は怒りのそれだった。
泣きたくて泣きたくてしょうがないのに、世界の理不尽に対して怒りが収まらなかった。
もしも運命に神がいるというのならば、残酷で、無慈悲で、冷徹で――ありったけの罵倒を並べてやりたいのに、輿水幸子は人を傷つけられる言葉を多くは知らない。
プロデューサーに投げかけた言葉は何時だって、本当は親愛の証で――本当は大好きって言いたかったけど、
恥ずかしくて、いつか、いつか、って大切に自分の胸の中に仕舞っておいて――そして、最期まで言えなかった。

約束をした翌日、プロデューサーは死んだ。
他殺だった。犯人は未だに捕まってはいない。
そして、捕まっても――死んだ人間は帰ってこない。

周りのアイドルたちは素直に泣いていたのに、自分は泣かないで――アイドルたちを宥める側に回っていた。
プロデューサーもきっとそうしたのだろうと、幸子は思う。

自分の葬式でも、きっと冗談みたいに立ち上がって、俺は死んでるけど泣くなよと――アイドルたちをなだめすかして回る。
そして、少女が落ち着きを取り戻した後に、じゃあまた何時かと言って――再び棺桶に戻る。

そういう人だったのに、現実は棺桶の中で冷たくなったままだった。

許せない。
自分にできることは何もない、全ては警察の仕事で――自分はアイドルでしかない。
それでも、自分の中から熱が噴き上げるようで。
思わず、幸子は手で首の裏を抑えた。

抑えた首は、プロデューサーのものよりも小さく、
抑えた手は、プロデューサーのものよりも小さく、
この感情はプロデューサーの代わりにはなれないのだろう。

ただ、激情が噴き上げて。
感情で自分を染め上げて。
自分が記憶に染められていく。

――聖杯戦争。
万能の願望機『聖杯』を巡る戦争。
サーヴァントを使役し、戦い抜く。

聖杯を用いれば、どのような願いも叶う。

幸子は首の裏を抑えたまま、その場を去った。
熱がある。そこに令呪があるのであろう。だから手で隠す。逃げるように走り去る。

プロデューサーは――死んだプロデューサーはプロデューサーではなかった。
自分が信じた者は何だったのだろう、本人に間違いなかったのに、
それは贋物で――死んでしまって、けれど本人は未だ生きていて、輿水幸子はトイレに向かった。

怒りも、悲しみも、気持ち悪さも、何もかもが本物だったのに――その中核と成るべきプロデューサーだけは贋物だった。
夢の世界で誰かが死んでも、起きてしまえばその人は何事もなかったかのように笑っているのだろう。
だが、夢の世界が現実にあるならば――自分はどうすればいい。

初めて輿水幸子は涙を流し、そして吐いた。

恐怖が、あった。


「――――」
輿水幸子は己のサーヴァントを呼んだ。


105 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:45:30 B7ncRk9.0



輿水幸子は夢を見た。
空の夢だった。
昔見たアニメみたいに、世界を構成する島々は空に浮いていて、その世界には怪物がいて、それを倒す英雄がいて、そしてアイドルがいない世界だった。

夢だけれど、喜びも悲しみも怒りも痛みも本物だった。
そして、気づくと映画撮影用の衣装も小道具の鎌も本物になっていて――輿水幸子はその空の世界で戦った。

囚われの身になった自身を怪物から助けだし、孤独な空で自分を仲間に加えてくれた騎空団。
彼女は騎空団として必死で戦った。
最初は難しかったが、歴戦の勇士を演じているかのように、自分には戦う力があることに幸子は気づいた。
だから、アイドルであることも忘れずに済んだ。

力があるから、輿水幸子は自身の戦い、知名度を上げ、歌い、踊り、空の世界でもアイドルでありつづけた。

それほど苦しい生活ではなかった。
周りの仲間は優しく、頼れる人間で――そして、同じ事務所のアイドルたちがいた。

皆で同じ夢を見ていた。それだけのことだった。
いつか覚める夢、楽しい夢。

けれど、その世界に自分の親はいなかったし、プロデューサーもいなかった。
自分の居場所はあったけれど、自分の隣にいてほしい人はいなかった。

だから、あまりにも居心地が良くて――もう少しだけ、もう少しだけと思っても、起きることを望んでいた。




けれど、輿水幸子は永遠に起きることはなく、空の世界で死んだ。
最期まで、彼女は英雄として――闘いぬいてしまった。


106 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:45:42 B7ncRk9.0


輿水幸子は気づく。
つまり、自分は夢から覚めていたのだと。
けれど、自分はそうではなかった。

輿水幸子は目覚めた。
だが、輿水幸子は目覚めることはなかった。

つまり、現実世界の輿水幸子は何事もなかったかのように夢の世界から目覚めたが、
自分は――夢の世界の輿水幸子は、独立した輿水幸子となってしまった。

二人は重なりあうこと無く、並列した存在となってしまった。

だから――今。

「ボクが二人いる、そういうことですね」
輿水幸子は輿水幸子の背後に舞い降りた。

――サーヴァントの名は輿水幸子。

蝙蝠羽根に悪魔の尾、そしてくるりとカールした角――まさしく悪魔と言った様相をした、英霊【アイドル】

「ボクが……もう一人?」
「フフーン、カワイイボクは、ボクから見てもやはりカワイイですねぇ」
そう言って、サーヴァントは薄っすらと笑った。

「ボクがボクのサーヴァントなんですか?」
「そうです、この度の聖杯戦争に於いて……アヴェンジャーのクラスとして召喚されました」

アヴェンジャーという言葉の意味を、幸子は頭の中から引っぱりだした。
その意味は復讐者――世界で一番、ボクに似合わない言葉だ。

「プロデューサーさんが死んだようですね」
「…………」

プロデューサーの死を悲しいと思う気持ちはある、理不尽さに対する怒りもある。
しかし、輿水幸子は――感情を整理しあぐねていた。
その心を抉るかのように、アヴェンジャーは言った。

「夢だって、見ている本人にとっては現実ですよ。
ボク――いえ、アナタがこの聖杯戦争から帰っても、もう一度、プロデューサーさんには会えるでしょう。
けれど、このプロデューサーさんの死も、プロデューサーさんの死に泣いている皆の悲しみも、本物なんです」

アヴェンジャーは同じ顔をした自分の目を、底冷えするような目で見つめた。

「ボクは……ボクだけど、ボクじゃない。
けれど、ボクはボクなんです……わかりますか?最期まで戦ったボクの気持ちがわかりますか?」
「でも……ボクは起きたんです……」

目の前のアヴェンジャーの姿を幸子ははっきりと覚えている。
あれは何時か見た夢の自分だった。
もしかしたら本当にあったかもしれない世界の――それでも自分は目覚めた。

「けれど……ボクが夢を見たから!ボクが産まれてしまったんです!!
決して悪い夢なんかじゃなかった!皆優しかった!!辛いこともあったけど、楽しいこともいっぱいありました!!
でも……でも……ボクはお父さんにもお母さんにもプロデューサーさんにも!!最期まで会えませんでした!!
わかりますか?ボクは……ボクは……」

冷たさで武装していたはずのアヴェンジャーは熱を帯びていた。
感情はぐちゃぐちゃに混ざって、何ひとつだって割り切れない。
ただ、アヴェンジャーは訴えたかった。

「ボクはボクになりたかったのに!!ボクはもうボクになれない!!!」

輿水幸子が見た夢は――いい夢だった、で終わってしまうような――他愛もなく忘れられてしまうような、不思議な思い出だって、で思い出されるようなものは。
どうしようもなく、アヴェンジャーにとっては現実だった。

そして、アヴェンジャーが夢見る光景にアヴェンジャーが辿り着くことはもうありえない。
彼女の夢には、もう――本物の輿水幸子がいてしまうから。


「……願い」

勝利した際に得られる無限の願望機、輿水幸子はこの世界のプロデューサーを蘇らせるつもりはなかった。
いや、願いそのものも存在しなかった――ただ、帰ることだけを望んでいた。

だが、わからない。
目の前に何時か夢で見た本物の自分がいる。

どうすればいいのかわからない。

「ボクの願いは……何ですか?」

「ボクの願いは……」

迷いなく、アヴェンジャーは言った。

「帰りたいんです、ボクの日常へ」

そのためならば――アヴェンジャーは言った。

「そのためならば――ボクは」


「ボクを殺すかもしれませんね」
そう言って、アヴェンジャーは笑った。
今にも泣きだしそうな、どうしようもない笑顔だった。
その気持ちに嘘はないのに、絶対に行動に移せないであろう――優しい少女の笑顔だった。


107 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:45:52 B7ncRk9.0


【マスター】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
カワイイ

【能力・技能】
カワイイ

【人物背景】
中学三年生になった十四歳。
「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。
髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、
分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。
現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。
何時か空の夢を見た少女。

【方針】
???

【クラス】
アヴェンジャー
【真名】
輿水幸子@グランブルーファンタジー
【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:A 宝具:C
【属性】
中立・善
【クラススキル】
復讐者:E++
憎しみという感情からは程遠い場所にあった普通の少女が抱いてしまった憎しみ。
アヴェンジャーというクラスの根幹であり、輿水幸子が輿水幸子に召喚された際のみ、彼女はアヴェンジャーとして召喚される。
マスターである輿水幸子と接する際に判定を行い、アヴェンジャーが負の感情を抱いてしまった際、彼女の魔力が増加する。
◆怒った顔もカワイイですねぇ……

忘却補正:E++
夢は所詮夢。どんなに夢で心を震わせようとも、きっと見た夢は忘れられてしまう。
誰一人だって夢の中の英雄は覚えていない。しかし復讐者は決してこの憎しみを忘れない。
復讐は復讐者が忘れ去れれた瞬間に果たされる。
敵サーヴァント、そして輿水幸子に対するクリティカル威力が上昇する。
◆ボクを忘れるだなんて失礼しちゃいます!

自己回復(魔力):E-
復讐者は孤独――それが故に、自己完結する。
復讐は永遠――それが故に、殺害以外での決着は認めない。
復讐の感情を魔力に変換する特異なスキル。
◆思いを力に変えるのはアイドルもサーヴァントも同じですね!

【保有スキル】
自称・カワイイ:A
保有スキル使用時に魔力を回復する。
◆お得な感じもまたカワイイですね!

アライト・ウイングス:A
精神を集中し2ターンの間、敵の全ての攻撃を回避する。
また、その際アヴェンジャーにDランクの被虐体質を付加し、
フルスパークによる筋力向上を無効化する。
スキル使用時、回避行動以外の行動が使用不可能になる。
一度発動した後に数ターン間を置かなければ連続発動できない。
◆回避に専念するので他の事ができませんが仕方ありませんよね!

自称・サプライズ:A
一度の戦闘で一度のみ使用可能。
あらゆる状況から、アライト・ウイングスを発動する。
◆カワイイボクがそう簡単にやられるわけないんですよ!

フルスパーク:A
最大補足:1人
A+++ランク相当の魔力放出を行い、敵に特大ダメージを与える。
攻撃を受けた敵は怒りで筋力を向上させる。
◆このあとアライト・ウイングスを使うと最高に活躍できます!

【宝具】
『自称天使、降臨(アライト・エンジェル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜8 最大補足:1人
アヴェンジャーの所持する大鎌による怒涛の連続攻撃。保有スキル再使用間隔を1ターン短縮する。
◆自分のポテンシャルの高さが怖くなります……

『天空より舞い降りる天使(サチコ・イン・ザ・スカイ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:1人
マスターが『サチコ・イン・ザ・スカイ』と口にすれば、どこに居ようとアヴェンジャーがパラシュートで降ってくる。

【weapon】
大鎌『無銘』
闇を払う天使の武器。
◆ボクの可愛さも武器ですけどねぇ……

【人物背景】
少女は空の夢を見た。
少女は夢の中で英雄として戦った。
少女は夢から醒めた。
少女は夢から醒めることはなかった。

【聖杯にかける願い】
輿水幸子へと戻る。


108 : 幸せな子ども達 ◆PatdvIjTFg :2016/05/01(日) 18:47:50 B7ncRk9.0
投下終了します。
アヴェンジャーのステータス作成の際、
◆RlSrUg30Iw氏の虎よ、虎よ
聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚での◆tHX1a.clL.氏の矢車想&キャスター
を参考にさせていただきました。


109 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:28:57 WNzKoay60
皆様投稿有難うございます、それでは感想を。

>>最上リョウマ&セイバー

キャスターのイメージが強いモモンガがセイバー!オーバーロードは少ししか読んでいませんが少し驚きました!
偽物であったアスタモンを生き返らせることの矛盾に苦しむリョウマは、どう動くのでしょうか。
そういやデジクォーツもユグドラシルも、突然変容してしまった舞台という点では共通していますね。
ご投下有難うございます。

>>ティベリウス&バーサーカー

クロメがバーサーカーとは!
狂化のランクはE-かと思いきやCランク…
骸人形は辛うじて使えて良かったですね、
原作では改心していましたがマスターがこれじゃあ…
ご投下有難うございます。

>>逸見エリカ&アヴェンジャー

成る程、アヴェンジャーのクラス別スキルの解釈はこう来たか!!
今後共活用させていただきます、お願いします。
とそれは置いといてスポーツで大砲をぶっぱしていた人が
よもやマジモンの殺し合いに来てしまうとは…エドモンの
魔力弾をぶっ放しながら頑張りましょう。
ご投下有難うございます。

>>輿水幸子&アヴェンジャー

グランブルーファンタジーは未プレイですが、キャンペーンの幸子を
本家の幸子と組ませるとは驚きました!!しかし家族もPもいないこの世界を
嘆く幸子の姿には切なさを感じさせてなりませんでした。
頑張れ、W幸子。
ご投下有難うございます。

ここで四体のルーラー達のステータス表を公開いたします。


110 : 「制」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:32:17 WNzKoay60
【クラス名】「制」のルーラー
【出典】機動戦士ガンダム00
【性別】男
【真名】リボンズ・アルマーク
【属性】中立・悪
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具A


【クラス別スキル】

対魔力:A-
魔力に対する耐性。
現代の魔術師では傷を付けられない・・・はずなのだが、
一切の神秘を持たない人造生命体であるため、クラス補正で
付けられた様な形になっている、そのためあまり働かない。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。


真名看破:A++
相手の真名を見破る能力。
ヴェーダのバックアップにより魔力的な干渉がないなら完全に看破出来る。


【固有スキル】


自己改造:B
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。
彼は幾つもの肉体を「端末」と認識しており、
本体はヴェーダと一体化している。


革新者:A-
人類を新たなるステージへと導く存在。
ルーラーは「イノベイター」と呼ばれる
存在に到達したが、
彼は人類に道標を教える使命にあるにも
関わらず無理矢理人類を引っ張る存在になろうとした
ためにランクが減少している。



魔力放出(GN粒子):A
魔力でGNドライヴを起動し、GN粒子を生成して
GN粒子を放出させ、「トランザム」と呼ばれる状態になることが出来る。
ただし、使用したGNドライヴは焼き切れてしまう。



直感(偽):A
常に最適な展開を「感じ取る」能力。
ヴェーダのバックアップの影響により擬似的な未来予知と化した。



【宝具】

「変革の叡智(ヴェーダ)」

ランク:A+ 種別:情報宝具 レンジ:- 最大捕捉:10000

ルーラーが生前アクセス権を独占した、私設武装組織「ソレスタルビーイング」
に司令を送るスーパーコンピュータ。
世界やソレスタルビーイングに関する重要な情報が満載のデータベース。
モビルスーツに情報を送り込み、戦闘を補助する。
リボンズ・アルマークはヴェーダのアバターとして呼ばれた存在で、
ある意味ルーラーの本体とも言える存在。


111 : 「制」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:33:18 WNzKoay60
【人物背景】

イオリア・シュヘンベルグの計画の中にあったヴェーダの生体端末「イノベイド」
当初は0ガンダムのガンダムマイスターとして、
武力介入を繰り返しながら彼の思想のために動いていたが、
自らが後々用済みとなったら死ぬという事を知らされ、
争いを終わらせない人類を卑下し自らの手で統括するという野望を持つようになる。
その後イノベイド達を率いヴェーダのアクセス権を奪い取る。
そしてヴェーダを悪用することで世界を実質上支配下に置き、
独立治安維持部隊「アロウズ」を裏で操ることにより反乱分子を始末していく・・・
が、リジェネ・レジェッタがソレスタル・ビーイングにヴェーダのアクセス権を
返却したことで戦況は逆転、追い詰められた所をリボーンズキャノンで
ソレスタル・ビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイと交戦、
ダブルオーライザーの太陽炉と0ガンダムを持ち出したりと往生際の悪い行動を
取るも、刹那の駆るガンダムエクシアリペアⅡに敗北する。
一見穏やかに見えるが根は極めて尊大な性格。
人を食った様な態度を取る一方、プライドが高く詰めが甘い他、
キレると手を出したり銃を向けたりする等振る舞い方によらず器が小さい。


【聖杯にかける願い】

聖杯を利用し、再び世界を我が物とする。


112 : 「争」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:34:57 WNzKoay60
【クラス名】「争」のルーラー
【出典】仮面ライダー剣
【性別】無
【真名】無銘(統制者)
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具EX


【クラス別スキル】

対魔力:EX
魔力に対する耐性。
神代の魔術を除く一切の魔術を無効化させる。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。


【固有スキル】


変化:A-
漆黒の悪魔の姿に変化できる。
ルーラーは、嘗て悪魔の姿に転身したという逸話が残されているが、
その際には「破壊者」との融合が必要であったため、ランクが下がっている。



自己保存:-
自身はまるで戦闘力がない代わりに、
あらゆる危機から逃れることができる。
ただし、悪魔の姿に変化した瞬間、このスキルは消滅する。




【宝具】


「捨てられた五十二の手札(シール・イン・ミスカード)」

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:20 最大捕捉:53

ルーラーが生前、バトルファイトから脱落したアンデッドをカードに封印した逸話から。
サーヴァントを吸収し、カード内に閉じ込める。閉じ込められた瞬間サーヴァントは脱落とみなされる。
第三魔法に相当するその力故にランクは規格外の数値を叩きだした。



「繁栄を求める不死の始祖達(バトルファイト)」

ランク:B〜A++ 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:53

ルーラーが生み出した、地球上の全ての種族の始祖。
自らが生み出した53のアンデッドを召喚することが出来る。
ただし、伝承の再現になった影響で、53のアンデッドと、
異世界で生んだ蜂、鳥等の不死能力を持たぬアンデッド
しか作れない。


113 : 「争」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:35:57 WNzKoay60
【人物背景】

生きとし生ける全ての生物の欲望が形となった、神であって神でない存在。
一万年前、53体の不死生命体「アンデッド」を生み出し、52の種族の何れかの繁栄か、それとも世界のリセットか、
それらをかけた「バトルファイト」を引き起こした存在。基本的にはねじれこんにゃくみたいなモノリスの様な姿で
行動し、テレポートで移動し、素手で殴られても粒子化したかと思えばすぐにまた現れる。バトルファイトの集結により
姿をくらましていたが、モノリスがある1人の資産家によって発掘され、全てのアンデッドが封印から解き放たれていても
暫くは発掘した男に従っていたが、その者が死んだ途端にバトルファイトの統制者としての行動を再開する。
そして、生き残ったアンデッドが、世界を仕切り直すジョーカーのカテゴリーを持つ者となった
瞬間、大量のダークローチを生成し世界を破滅に向かわせようとするが、
ある1人の人間がジョーカーとなりバトルファイトの参加権を手にしたことでバトルファイトを
再開と見なし、世界の破滅を一旦、終わらせる。
しかし、それから300年後、バトルファイトを強制的に再開させようと、
ある別の世界に二人のジョーカーを呼び寄せるも失敗。更には自らと対を成す「破壊者」と融合するも、
二人のジョーカーと、ジョーカーの接触に利用した二人の戦士によって消滅する。


114 : 「飢」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:37:00 WNzKoay60
【クラス名】「飢」のルーラー
【出典】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女
【真名】円環の理
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力D 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A++


【クラス別スキル】

対魔力:EX
魔力に対する耐性。
多種多彩な魔法を理解している彼女には、
いかなる魔術も効かない。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。





【固有スキル】

蔵知の司書:EX
彼女の記憶の中にはいくつもの魔法少女の記憶が複合されている。
例え明確に認識していなかった場合でも、
LUCK判定に成功すれば過去に知覚した情報・知識を記憶に再現できる。


神性:B(A+)
神霊適性を表すスキル。
観測データの中で「神」として扱われていた彼女は、最高ランクの神性スキルを持つ・・・
のだが、一部が剥ぎ取られてしまったためランクが減少している。


魔法少女:A-
願いと引き換えに自らの体を呪った者達。
このサーヴァントの姿の元となった、
「円環の理」を生み出した魔法少女は、
「世界最強の魔法少女」として観測されているが、
何故かうまく機能していない。


【宝具】

「願望に呪われし魔法少女(プエラ・マギア)」

ランク:C〜A++ 種別:魔術宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー

「円環の理」に導かれた魔法少女達の因果・魔法。
「円環の理」の一部として認識されている魔法少女の装備や
得意な魔法を、一時的に使うことが出来る。
ただし、暁美ほむら、美樹さやか、百江なぎさ等、
円環の理に存在しない魔法少女の力は使えない。



「泣かなくていい、絶望しなくていい(ステア・オブ・ザ・ヘブン)」

ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:40 最大捕捉:1


「円環の理」のあり方そのものが宝具として昇華された力。
桃色の光と共に放たれた矢を敵にぶつける。
ダメージは一切ない、しかし、矢を当てられたサーヴァントは、
その時の精神状態の悪さに比例した魔力を失う。


115 : 「飢」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:37:25 WNzKoay60
【人物背景】

自らの魂を宝石に変化させ、願いを成就させる魔法少女の魂を、
「魔女」と呼ばれる化け物に変化する前に迎え入れ、
融合していく、一種の現象の様な存在、それがサーヴァントとなった、
一種の概念。
この現象を生み出したのは、魔法少女の存在を知った1人の少女だった。
力を失い、絶望し、魂を化け物に変えて他の魔法少女の餌にされていくという
残酷な有様を憂いた彼女は、その最強の魔法少女としての資質で

「過去未来現在、全ての魔女を、『この手で』消し去る」

という願望を成就させ、輝きを失った魔法少女達の魂を、彼女が迎え入れる姿が、
「円環の理」という現象になった。とされている。
しかし、現在はその少女の部分が裂かれ、やや不完全な状態になっている他、
一部の魔法少女の部分もまた剥ぎ取られている。
円環の理を生み出した少女の姿と人格をアバターとしている。
控えめだが仲間思いで争いを好まない心優しい人物。


【聖杯にかける願い】

円環の理を安定させたい・・・と思っているが、
立場上それは難しいため、そこが悩みどころ。


116 : 「病」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:38:27 WNzKoay60
【クラス名】「病」のルーラー
【出典】ギルティクラウン
【性別】女
【真名】桜満真名
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運E 宝具A


【クラス別スキル】


対魔力:A
魔力に対する耐性。
現代の魔術では傷を付けられない。


真名看破:A
相手の真名を見破るスキル。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。



【固有スキル】


精神汚染:A+
精神が蝕まれている。
精神干渉系の魔術を高確率でシャットアウトする。
また、ウィルスに感染した人間の精神を汚染することも出来る。


終わりなき使命:-
アポカリプスウィルスに決定づけられた、「イヴ」としての役割。
何度殺しても蘇る。他のクラスで現界した際にはこのスキルは
外されるが、監視役たる「ルーラー」のクラスで現界したことで外されなかった。





【宝具】

「黙示録の唄(アポカリプス)」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

ルーラーを蝕むと同時に、彼女の力となるウィルス。
これを感染させる。
症状が進行すると「キャンサー」と呼ばれる結晶に
肉体が侵食されていき、やがて肉体が全てキャンサー化して
砕け散る。また、キャスターの唄を聞くと、病状が一気に進行する。


117 : 「病」のルーラー ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:39:13 WNzKoay60
【人物背景】

宇宙から来た病原体「アポカリプスウィルス」の最初の感染者。
ウィルスに精神を蝕まれ、自らの「アダム」となって黙示録を
遂行するために弟の集に迫ろうとするも、クリスマスのある日、
弟同然の仲であったトリトンを殺そうとしたことから「化け物」
呼ばわりされ暴走。そしてウィルスを周囲に感染させ、自らも
崩壊、「ロストクリスマス」を引き起こす。
その後、代わりの肉体を以って復活するも、集、そして
トリトンこと恙神涯に倒された・・・・かと思われていたが
その魂は入れ物の肉体にいる楪いのりの中に潜み、襲いかかってきた
人間を容赦なく殺していた。そしてそれは涯がいのりの心を
削除したことで表面化、集に「アダム」となるよう迫るも、
既にいのりの心にある集はそれを拒否されたことから、
世界を滅ぼそうと涯をアダムとし踊りと唄でウィルスの
侵蝕を広げようとするが、集が涯を止めた事で役目を終わらせられ、
涯共々消滅した。この通りウィルスに操られているだけあって
破綻者にしか見えないような人物だが、海に漂着した涯を助けたりと
根は優しい人物であることが伺える。


118 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:41:02 WNzKoay60
以上で投下は終了です、ステータス表記に間違いがありましたので修正させていただきます、


「争」のルーラーは、無銘ではなく、またスキル「対魔力」は神代の魔術も
難なく防げます。

誤った表記をしてしまったことを、お詫び申し上げます。


119 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:45:24 WNzKoay60
更に誤字発見、

既にいのりの心にある集はそれを拒否されたことから→×
既にいのりの心にある集にそれを拒否されたことから→○


120 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/01(日) 20:49:58 WNzKoay60
更に更に、パラメータ修正。
「争」のルーラーは、サーヴァントを封印する宝具を手にしたために
スキル「神明裁決」を失っています。

申し訳ございません。


121 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:04:28 HFlBWqOw0
投下します。


122 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:05:06 HFlBWqOw0
「(聖杯戦争……)」

神代ユウが全てを思い出したのは二人組の不良(ヤンキー)に追い回されていた時であった。
授業後にクラスの友人たちと遊びに行った帰り道。一人になったところを絡まれ、如何にか逃げ出すも、二人組は追跡をやめなかったのだ。

―――そもそも、僕が学校にいる事自体がおかしなことだったんだ。

ユウはクラスで耐え難いいじめにあい、不登校となり、家に引きこもっていた。
だが家族からも憐憫を持って見つめられた彼にとって、自宅も安息所ではなかった。
そこまで考えていた時、手の甲に強い熱が走り、炎をイメージさせる刺青の様な何かが描かれる。
そして…

「いい加減、止まれってんだよォ!」

二人組だ。
脇目も振らず逃走したのが癇に障ったのか、ここまで追ってきた。
あてもなく逃げ続けるのも難しい。繁華街から外れた通りにあった人気のない駐車場に走りこんで、背後を振り向く。

「おっ、話聞く気になった?」
「意外と体力あるね〜ww」

赤いデニムジャケットを着た金髪の男と髪を逆立てた顎髭の男が走るのを止めて、こちらに歩いてくる。
答える義務もないので、相手の出方をじっと見る。
無言でこちらを見据えるユウの態度が癇に障ったのか、先に近づいてきた顎髭の方が拳を振りかぶってきた。

右ストレート。フットワークで顎髭の拳を回避して右拳を頭部に向けて打ちこむ。
幾人もの不良を地に沈めた彼の右ストレートを完璧にもらった顎髭は、まもなく意識を失った。
倒れこんだ顎髭をみて、赤デニムにも戦慄が走る。しかし彼は逃げるでなく、戦う道を選択をしたようだ。


123 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:05:42 HFlBWqOw0
「(ナイフか…)」

喧嘩の場におけるナイフの示威効果については説明するまでもないだろう。
しかし日常的に刃物を使った戦闘を行っているならまだしも、素人がナイフをちらつかせた程度では大した脅威にはならない。
武器に意識が向くため動きが読みやすくなり、両手両足に注意を向けなければならない徒手の相手よりも対処が簡単になったといえる。
この赤デニムも、ユウが素早く浴びせたローキックに動きを止めた直後に、ナイフをもった方の腕を掴まれ、勢いのまま肩を外される。
とどめに膝蹴りを顔面に浴びせられ、赤デニムもまた地面にその身を横たえた。最早この場に用はない。ユウは家路を急いだ。

「不良(ヤンキー)狩りボクサー」。ユウが聖杯戦争の場に放り込まれる前に得た、新しい居場所(しょうごう)である。



帰宅したユウはNPCの両親の小言をもらったのち、自室に引き下がる。

――でもここは僕の居場所じゃない。

たとえ学校でいじめられないとしても、家族が自分を憐れむことがないとしても。
ここにはシンちゃんも、ショウゴくんも、マサキさんも、誰もいない。

――!

自室に見知らぬ人物がいる!それも全身血まみれの異様な人物。
着ているのはパーティードレスのようだが、暴力的な赤によって塗りつぶされている。ただ両の眼だけが白く、まるで眼球が光を放っているような印象を受ける。
何者なのかは既に分かっているので、家族に見られないように扉を閉めて、血まみれの人物と向き合う。

「あなたが、僕のサーヴァント…ですね」
「求めに応じて参じました。キャスターと呼んでください。マスター。」

異様な姿に面食らったが、声音は若い、と思う。

「その血は、その…怪我とか…」
「心配なく。これは生前に由来する物です。」

それだけ言って視線を下に向ける。あまり口にしたくないのかもしれない。
それ以上の詮索は避けて、今後について彼女と話し合う事にした。
進んで人殺しをする気はない。当面は脱出の手段を探す事を優先したい。
胸を張って、僕の聖地に帰るために。


124 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:06:46 HFlBWqOw0
 ◇ ◆ ◇

「(ごめんなさい……)」

キャスターはユウと話し合っている最中、別の部分に意識を向けていた。

――TK能力

キャスターは、プロムに誘った友人スーザンに自分を破滅させる意図がなかったことを記憶を読み取る事で理解し、意識を繋いだまま、その短い生涯を終えた。
その経歴がスキルに反映されたらしく、彼女は意識を繋いだ相手の記憶を読み取る事が出来る。
駐車場で二人組の不良を倒すところを見ていたキャスターは、パスによって繋がれたユウの記憶を読むことが出来た。
彼が自分と同じく学校にも家庭にも拠り所が無く、暴力によって自らの意思を示したことを。そして彼は居場所をつくり、自分は歴史に名を刻んだ。

過去を消す気はない。あの一夜は徹頭徹尾自分の意思によるものだったし、方法は間違いだったとしても嬲り者にされた自分の運命に、思うさま決着をつけた結果だ。
ただ自分の人生が忘れ去られ怪物として語り継がれたことが、聖杯により『舞踏会の夜』の自分として再現されたことがどうにも悲しいのだ。
もう自分の事はそっとしておいてほしい。だから聖杯の招きを受けた時点で、座から自分の記録を消すことを決めた。
マスターは必ず生還させる。似た人生を送っていたのだとしても、彼には帰れる場所があるのだから。


125 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:07:20 HFlBWqOw0
【クラス名】キャスター
【出典】キャリー(小説)
【性別】女
【真名】キャリー(キャリエッタ・ホワイト)
【属性】中立・中庸
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A+ 幸運E 宝具C+

【クラス別スキル】
陣地作成:E-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。部屋の模様替えが出来る程度。

道具作成:E+
魔術的な道具を作成する技能。
道具作成の技能は持っていないが、母親が狂信的なキリスト教信者であった逸話により、十字架などを作成する際に僅かに魔力を帯びさせることが出来る。

【保有スキル】
精神汚染:C
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。ささやかな希望すら砕かれ、憎悪と絶望に囚われた「舞踏会の夜」の精神状態で再現されている。
他者の嘲笑を買うたびにキャスターの精神は荒廃の一途をたどる事だろう。

TK能力:A+
念じるだけで物体を動かす事が出来る力。思念だけで自動車を動かし、オイルタンクを爆発させ、敵の心臓の鼓動を止めることができるが、このスキルは対魔力スキルの影響を受ける。
全てに絶望した彼女は念力を振るって街を破壊し尽くし、クラスメイトを殺戮し、世間にTK能力(超能力)の存在を示唆することになった。
……隠された効果として、意識がつながった相手の記憶を読み取る事が出来る。聖杯戦争においてはパスで繋がったマスターの記憶を読み取る事ができる。

単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。
家庭にも学校にも寄る辺が無かった逸話、舞踏会の夜は一人で行動していた逸話に由来してこのランクとなっている。

異形:C
全身が豚の血にまみれている。キャスターと対峙した相手は精神判定に失敗すると、敏捷がワンランクダウンする。


【宝具】
『滅び去れ、忌まわしき思い出と共に(トゥ・リップオフ・ア・キャリー)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:410人
チェンバレンに破滅をもたらした「舞踏会の夜」を再現する宝具。レンジ内に存在する物体を念動力によってD〜Cランク宝具として扱い、自由自在に操る。
また街の大半が大火によって焼けた逸話から、レンジ内に存在する可燃物を念力により発火、爆発させる事が可能。
精神状態に依存している宝具なので、憎悪や絶望が深まると宝具としての質が格段に上がる。もっともそのころにはキャスターの精神は完全に崩壊していることだろう。
当然だが視界にとらえていないと命中精度が著しく低下するほか、サーヴァントとなったことで対魔力スキルの影響を受けるようになった。


【weapon】
 宝具やスキルに依存。

【人物背景】
チェンバレンに甚大な被害をもたらしたキャリエッタ・ホワイト事件の犯人となった超能力者の少女。
家庭では狂信的な母親に抑圧され、クラスでは暗い性格からいじめっ子たちの標的にされていた。萎縮し続ける生活のストレスから念動力に覚醒。
高校生活を彩るプロム(ダンスパーティー)にて笑いものにされたことから精神が限界に達し、故郷チェンバレンに甚大な被害をもたらす。
ささやかな幸せを夢見た、スクールカーストの犠牲者の成れの果て。

【聖杯にかける願い】
 座に記録された自身の抹消。罪は受け入れるが、今はそっとしておいてほしいと考えている。
 今回はマスターへの深い共感から召喚に応じた。




【マスター】神代ユウ
【出典】ホーリーランド
【性別】男

【能力・技能】
 独学のボクシングを基礎に、数多くの戦闘や訓練から蹴りやタックルを使いこなす打撃系の総合格闘家のようなファイトスタイルをとる。
喧嘩においては類まれな集中力と判断力により、格上の相手でも勝利を収めることが出来る。

【weapon】
 なし

【ロール】
 高校生。元の世界では不登校だった。

【人物背景】
いじめや偏見によりひきこもりになった少年。居場所を求めて彷徨っていた夜の街で、絡んできた不良を教本で学んだボクシングで撃退していくうちに「不良狩り」として知られる。
多くの強敵たちとの喧嘩の果てに、友人や仲間が生まれ、夜の街に自分の居場所を見出だしていく。普段は内向的で優しい性格だが、激昂すると別人のように好戦的になる。

【令呪の形・位置】
 炎のような形をしている。

【聖杯にかける願い】
 生き残り、夜の街に帰る。聖杯についてはキャスターに譲渡してもかまわない。

【方針】
 とりあえず情報を収集する。積極的には戦わない。

【参戦時期】
 世田谷商業のタカ戦後。


126 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/01(日) 21:07:47 HFlBWqOw0
投下を終了します。


127 : 名無しさん :2016/05/01(日) 22:18:43 zK/dZ2EY0
欠けてたり蝕まれてたり柱になってたりイノベーター失格だったりこうして見るとまともなルーラーいねえな……w


128 : 神代ユウ&キャスター ◇verk49plnc :2016/05/02(月) 19:41:16 P67IQ0dk0

申し訳ございません、拙作において訂正があるので報告します。


ただ自分の人生が忘れ去られ怪物として語り継がれたことが、聖杯により『舞踏会の夜』の自分として再現されたことがどうにも悲しいのだ。
もう自分の事はそっとしておいてほしい。

ただ英霊となって自分の名が災厄の記号として人類史に記録された事、サーヴァントとなって『舞踏会の夜』の自分が全盛期であったと思い知らされたのがどうにも悲しいのだ。
せめて普通の人間と同じように眠らせてほしい。


スキル・宝具を以下のように改訂します

精神汚染:C-
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。「舞踏会の夜」の精神状態で再現されているが、一度死を迎えサーヴァントとなった身の上から平時はランクが落ちている。
…ただし他者の嘲笑や罵倒にさらされるたびにキャスターの精神は荒廃の一途をたどり、事件当夜の状態に近づいていく。


【宝具】
『滅び去れ、忌まわしき思い出と共に(トゥ・リップオフ・ア・キャリー)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:410人
チェンバレンに破滅をもたらした「舞踏会の夜」を再現する宝具。レンジ内に存在する物体を念動力によってD〜Cランク宝具として扱い、自由自在に操る。
また街の大半が大火によって焼けた逸話から、レンジ内に存在する炎に念力を込める事で強化することが可能。
精神状態に依存している宝具なので、キャスターの心の安定と引き換えに宝具としての質が格段に上がる。
当然だが視界にとらえていないと命中精度が著しく低下するほか、サーヴァントとなったことで対魔力スキルの影響を受けるようになった。


129 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:47:47 qqSi3unY0
投下します


130 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:48:17 qqSi3unY0

「まさか……」

 まさか。
 少女、橘ありすは呟いてみる。

 まさか。
 もう一度口にしてみる。ふと頭に、床に落としたタブレットの液晶が気になったが、それよりも。

 まさか。
 見開いた目を何度しばたたかせて見せても現実は変わらない。後頭部の大きなリボンが揺れる。

 まさか。
 四回言ってみた――――しかし現実が揺らぐ筈なく――――

「まさか、サンタさんに会えるなんて」

 その視線の先――徐に暖炉から顔を覗かせた女性。
 その服装は暗く、暗黒の聖夜を思わせた。
 その瞳は淡く、夜に浮かぶ満月を思わせた。
 その髪は儚く、月光に反射する雪を思わせた。
 そして、何よりも――――

「そうだ、私がサンタだ。よくぞ見破った。流石はトナカイだな」

 ――その手に携えられたのは、子供の夢のように真っ白で大きな袋だった。


131 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:49:50 qqSi3unY0

「そして煙突からこんにちは、それともこんばんは。ともかくよろしく」

「……あ、よろしくお願いします。私は――」

「いい、皆まで言うな。確かにお前はトナカイだが、今日の私は気分がいいのでプレゼントをやろう」

「えっ」

 ありすは、壁のカレンダーを見た。
 本日はクリスマスだったか――――そもこの場所は彼女が暮らす生家ではなく、見知らぬ家だ。

 正しくは、見知らぬ家ではない。
 だが、元来の住居ではない。同じだけ、季節というのも曖昧の仮面を被る。
 しかし彼女に構わず、差し出された右手。

「よろこべ。これは、さる家族を繋ぐ思い出の一品だ」

「これは……」

「トンプソン・コンテンダー。
 色々あって家族になった男と女。
 色々あってそれが二人の本当の子供でない人間が暮らす家の土蔵に押し込まれたのか判らないが、ともかく行方不明の一品だ。
 仕方ないな。そもそも後から出て先になった話なのだから――いや、この話はいい。よろこべトナカイ。
 なお実の娘は両親の愛を知らずに育ったそうだが、どこかではきっと一家幸せな世界線もあるだろう。多分」

「…………………………」

 絶妙に嬉しくない――というより、正しくは全く嬉しくない。そして、ありすの心を絶妙に抉る。
 両親の愛を知らずに育った娘――ありすは無論の事そこまで凄惨な過去を持たぬが、しかし、あまりに一般的な家庭に比べたら両親は家を明けがちだった。
 親と居たいときにいられない寂しさというのは、彼女にも覚えがあった。そして――その少女は一体、ありすの何倍の辛さを持っていたのか。

 かぶりを振って、想像してしまったその少女の痛みを掻き消す。


132 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:52:22 qqSi3unY0

 サンタに会えた。その事は実に刺激的で、貴重な経験だ。
 若干思い描いていたものと違い、そして毎年くれるプレゼントと違って今回はありすの趣味ではないが――まぁいい。

「トンプソン、コンテンダー」

 右手に持ち上げて明かりに透かしてみる。深い鋼色のブラックバレルに顔が映る。
 なんだかいけない事をしているようで、心が若干の昂りとざわめきを起こした。
 大人は遠ざけるが、子供は欲しがる禁忌(タブー)めいた輝きと形が、このプレゼントにはある。

 しかし……それにしても重いが、よくできたレプリカなのだろうか。
 実はミステリーにて多用される銃というものに、ホンの少し興味を感じていたありすはそれを構えてみて――

「おっとトナカイ、引き金を引くな。その姿勢では手首が折れる」

「え」

 ――投げ捨てた。

 プレゼントが悲しそうに床で空転する。
 というか、悲しみたいのはありすの方だった。

「なんでこんなもの、私に渡すんですか!」

 整った瞳をキッと強めるも、しかし対する漆黒のサンタクロースはどこ吹く風。
 顎に手を当てて、それから僅かに口角を吊り上げた。

「これからの血まみれのサンタクロース活動――――いや、血のクリスマスに必要なものだからな。せめてもの心付けだ」

「血はクリスマスではなくバレンタインです」

「博識だな。流石は私のトナカイだ。近頃の高学歴社会はブルーワーカー(トナカイ)すらも大卒にしたか」

「……私は小学生です。というより、それより――」

 「ふむ」とサンタクロース。
 揺らぐありすの視線も、それすらも折り込み済みと言いたげに俄に首肯。

「聖杯戦争――――ここから先はお子様お断りの血みどろマッドマックスパーティーだ。血袋の用意は必要ない。トナカイ、お前も判っているだろう?」


133 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:55:06 qqSi3unY0

「それは……」

 判っていた。判っていて、ありすは部屋に一人で佇んでいた。

 両親と――両親と食事にいく約束をしていた。
 いつも必ず、ありすとの対話の場を設ける為に帰宅してくれる両親。
 彼女を何よりも大事にして、彼女をどれよりも大切にして、彼女を全てから守って愛してくれる両親。いつも側に居てくれる二人。
 ――そんな、偽りの、どこか食い違いがある記憶。
 その違和感を理解したその時に、彼女は本来の記憶と共に己の置かれた状況への知識を得た。

 この場に集められた、その意味。
 思い出して再び震えと共に床を見やんとしたそこで、

「だがそれがいい。というかそれはいい」

「え」

「ここは聖杯戦争。さて、トナカイ。我々のやる事は?」

 言わば、陸の孤島。逃げ場のない監獄。
 聖杯という、餌。置き換えるとしたら大金や、或いは何らかの技術。
 そこに集められた人々――金が欲しい人もいれば、ただその孤島から逃げ出したい人もいる。しかし、あまりに状況は強固。
 彼女が好むジャンルではないが、それが物語を為すなら構造というのは決まっている。
 大人の好むミステリーではなく、中学生が好むような話題性だけの悪趣味なバイオレンスとして――

「……殺し合い、ですか?」


134 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:56:10 qqSi3unY0

 彼女は幼い。

 聡明と言うにはあまりに視野が狭く、老獪と表すには背伸びが過ぎる。
 賢人と称するにはあまりに稚拙、深謀と呼ぶにはあまりに純粋。
 それでも、普通の子供よりは幾分か回転の早い思考が導きだしたのはそんな結論――

「何を言っているトナカイ。車掌(サンタ)は私で、列車(トナカイ)は君だ」

 だったの、だが……。

「そこでやる事と言ったら――」

「……まさか」

「そう、プレゼントだ。我々の手でこの血まみれの荒野に明日というプレゼントを配るんだ。
 まずは手始めに、その銃の練習をするといい。最悪、望んだプレゼントでないと言う相手にはクーリングオフ不能の鉛弾のプレゼントだ」

「…………………………」

 まず、プレゼントを配るのはトナカイではなくサンタだ。
 次に、鉛弾をプレゼントするのはサンタではなくマフィアだ。
 それから、そもそも、小学生に拳銃が使えるとでも?

「安心しろ。中東では十に満たない子供がライフルを振り回して大人を撃ち殺す。全ては鍛練だ。偉い人も術でなく拳に頼れと言っている」

 これは、拳銃であって拳に非ず。言うのも野暮か。野暮なのか。

                        To be continued
「魔術師に打ち込めば一撃で再起不能。次回に続く必要のない起源弾はサービスだ」

 この日――――橘ありすには、知りたくもない知識が一つ加わった。


135 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 00:58:02 qqSi3unY0


 ◇ ◆ ◇



(そう、これでいい)

 与えられた情報に脳が許容限界を迎えたのか、黙々と拳銃を構えるありすを見ながら、“キャスター”は考える。
 奇天烈な姿、傾いた言動をしているが……その瞳は鋭い。
 そう、彼女こそはまさに黒い聖剣を持つ、サンタの皮を被ったブリテン王――――

(――ありす【あたし/あのこ】と同じ名前を持つ、ありす【あなた】を守る為にはこれでいいの)


 ――――――“ではない”。

 その真名はナーサリーライム。その象形は読み手【ドクシャ】の心。その願望は子供の味方。
 姿を持たぬサーヴァントであり、人々が、かつて、その子供の心に抱いた無垢の残滓。

 橘ありすは、大人びているように見えて背伸びしたがりの小さな子供。
 冷めた瞳で現実を見ても、その心にあるのは夢と歌。愛と願い。暖かさと柔らかさ。
 ナーサリーライムを好む年頃ではないとしても、ナーサリーライムにとっては守るべき読み手【ドクシャ】。

 ナーサリーライムは姿を持たない。ナーサリーライムは形を決めない。ナーサリーライムは読み手と共に。

 ナーサリーライムは考えた。
 さてさて困ったどうしよう。またもや月のお茶会だ。ご招待にお呼ばれしたわ。あらあら困ったどうしよう。

 ナーサリーライムは考えた。
 いよいよ困ったどうしよう。またもや月のお誘いだ。ご相伴に預からなくちゃ。はてさて困ったどうしよう。

 ナーサリーライムは考えた。
 おやおや困ったどうしよう。またもや月の戦いだ。ご同伴を務めなきゃ。やれやれ困ったどうしよう。

 ナーサリーライムは考えた。
 いやはらそれならこうしよう。またもや今度は守らなきゃ。今度ばかりは本当に、困ってなんかいられない。

(こう考えられるのもこれで最後。あたし【アリス】はあたし【ありす】の為に、あたしの事を忘れるわ――)

 ナーサリーライムは選んだの。
 この子が選ぶのサンタの像。それなら決めなきゃサンタの像。一番強いサンタの像。

 サンタなら、子供を守ってくれると知っているから――――。


136 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 01:00:02 qqSi3unY0

【マスター】
 橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ

【weapon】
 携帯型タブレット。
  母親が買い与えてくれた品。
  色々検索したりと役立てている。
 トンプソン・コンテンダー&起源弾@Fate/Zero
  装弾数1発。中折れ式リロード。バレルをカスタムする事で様々な口径に対応が可能であり、現在は大口径ライフル弾に対応。
  また、使用される弾丸はすり潰した本来の使用者の肋骨を込められており、その人物の持つ“起源”を内包する。
  結果として端的に言うなら、撃ち込んだ傷が即座に塞がり古傷と化すなど、不可逆の変質と破壊をもたらす。
  魔術などに撃ち込んだ場合、その大本に辿り使用者の魔術回路を切断して、そして本来とは違う形で接合する事で、魔術師として再起不能とする。
  異なる論理、異なる世界の人間に通じるかはまた別の話。
  
【人物背景】
 「ありす」という、日本人離れした名前(及び子供っぽい事)にコンプレックスを抱く。それ故、心を許すまでは下の名前で呼ばせる事はない。
 年の割に頭の回転が速く、言動も落ち着いているが、子供扱いされる事が不本意であったり、或いは大人の女性に憧れたりとまだまだ背伸びしがちな子供。
 両親は仕事に忙しく家を空けがちであり、食事も一人で取っている、ちゃんとしたクリスマスを送った事がないと寂しい思いをしている。
 なお、サンタクロースを信じている12歳。小学六年生。

【令呪の形・位置】
 右手。イチゴと、その蔕の形に。

【聖杯への願い】
 持たない。今のところは。


137 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 01:01:25 qqSi3unY0
【クラス】
 キャスター
【真名】
 ナーサリーライム@Fate/EXTRA及びFate/Grand Order
【ステータス】
 筋力:A 耐久:C 敏捷:D 魔力:B 幸運:A 宝具:A++
【属性】
 秩序・善

【クラススキル】
 陣地作成:A
  魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
  Aランクともなると「工房」を上回る「神殿」が作成可能。
  しかしサンタクロースに姿を変化させてしまったナーサリーライムにこのスキルは具体的に使用できないが、
  今回は、空飛ぶソリがそれにあたる。
 対魔力:A
  魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
  Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
 騎乗:A
  乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
  Aランクならば幻獣・神獣ランク以外を乗りこなす事が出来る。

【保有スキル】
 自己改造:A
  自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
  下記のスキルと合わせる事により、ナーサリーライムはありすの持つサンタクロースのイメージに異なるサンタクロースを融合させた。
 変化:A+
  文字通り「変身」する。
  ナーサリーライムはサンタクロースに変身した上で、上記のスキルの効果と合わせて現在の姿となった。
 一方その頃:A
  ページをめくれば童話が場面を変えるように、ナーサリーライム自身の状態を転換させる。
  [仕切り直し]にほど近いスキルであるが、物語は同じ場所へと戻らずに必ず話が進む。
  戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻すのみならず、戦闘を踏まえた上で若干の魔力増幅を与える。
 聖者の贈り物:EX
  プレゼントを贈り、心を潤す。しかしどのプレゼントも対象者が求めるものとは微妙にデザインが違うため、効果はそこまで期待できない。
 直感:A
  戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
  Aランクの第六感はもはや未来予知に等しい。また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
  子供の為のサンタクロースというイメージにより凶暴性を失い、直感も十全に働く。
 魔力放出:A-
  武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
  ジェット噴射の如く使用して能力を大幅に向上させるが、反面、魔力の消費は桁違いになる。


138 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 01:03:28 qqSi3unY0

【宝具】
「誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)」
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人

 ナーサリーライムという存在そのものが、固有結界である。
 マスターの心を反映して、マスターの夢見た形の疑似サーヴァントとして現れる。
 この度に限っては、サンタクロースという存在を未だ信じる橘ありすからサンタクロースのイメージを得て、
 そして、そのイメージに対して「ナーサリーライム」自身が持つ、
 最も強いサンタクロースの姿を被せる事で「サンタクロースの姿を取ったアルトリアの姿を借りたナーサリーライム」というややこしい形で現れた。
 その為、クラススキル・保有スキルが混在しており、宝具もまた借り物のそちらに準拠する。

 すべては、かつてのマスターと、己を思ってくれたマスターと同じ少女を守りたいが為に――。


「約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)」
 ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人

 人々の「こうであって欲しい」という想念が星の内部で結晶・精製された神造兵装。聖剣というカテゴリーの中において頂点に立つ最強の聖剣。
 神霊レベルの魔術行使を可能とし、所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させる性質を持つのだが、
 魔力が汚染され黒化したセイバーが使用するため、この聖剣の魔力はそのまま光を飲み込む闇の波動の斬撃として放たれる。

【weapon】
 カバのようだと称される、ラムレイ二号という名前の空を飛ぶソリ。
 魔力を燃料に飛ぶのだが、キャスターとしてこれ自身が神殿となっており、今回は特に燃料は必要ない。
 サンタの袋。プレゼントが入っている。

【人物背景】
 ナーサリーライム。英語の「わらべうた」。実在の人物を英霊としたものではなく、絵本のジャンルのことである。
 子供たちに深く愛され、多くの子供たちの夢を受け止めていったこのジャンルは、一つの概念として成立、「子供たちの英雄」としてサーヴァントとなった。
 サーヴァントが固有結界を作るのではなく、固有結界そのものがサーヴァント。
 「物語」であるため本来決まったカタチはなく、マスターの心を映し、マスターが夢見たカタチの擬似サーヴァントを作り上げる。
 当然のことながら、そんな由来が故にナーサリーライムは特定の自我・特定の姿を持たない存在であるのだが、
 かつて行われた月の聖杯戦争で彼女を召喚したありすという少女と、お互いを思い合うという奇跡的な絆の果てに、ある一つのナーサリーライムの形を持つ。
 そして、そんなナーサリーライムは、かつてのマスターと同じ名前の少女を守るという自我が故に、己の姿を組み直した。
 その自我を捨てる形になったとしても。

【聖杯にかける願い】
 なし。
 子供を守る。子供たちを守る。ありすを守る。ありす【あたし】の気持ちを守る。

【運用】
 ソリに乗った移動。ライダー(キャスター)らしからぬ、剣技。そしてライダー(キャスター)らしからぬ、多彩なスキル。 高火力の聖剣の真名解放。
 本来ならカタチを持たないサーヴァントであるため、固有の自我は持たない。
 これ以後キャスターの言動は、サンタオルタ@Fate/Grand Orderとなる。


139 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 01:04:01 qqSi3unY0
投下を終了します


140 : ありす・いん・ないとめあ ◆RlSrUg30Iw :2016/05/03(火) 02:06:21 uytqdjyQ0
>>138(訂正)

 すべては、かつてのマスターと、己を思ってくれたマスターと同じ少女を守りたいが為に――。

    ↓

 すべては、かつてのマスターと、己を思ってくれたマスターと同じ“ありす”という名前の少女を守りたいが為に――。


141 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/03(火) 16:46:57 70NbBg560
新企画立て乙です。私も投下させていただきます。


142 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/03(火) 16:48:11 70NbBg560
拝啓。わたし、聖杯戦争に参加することとなりました。
なんてベストセラー小説のタイトルか煽り風に表現してみたが、まるで解決になっていない。

一人の――ニット帽を被った普通の女子高校生が、自宅のマンションで溜息をつく。

聖杯戦争ってなんだよ。
いや、知識はあるけど。
サーヴァントとか、マスターとか。急に言われたって、飲み込める訳ねーだろうが!

再度、女子高校生……無桐伊織が溜息をついて、手にしていた新聞の見出しを眺めた。
新聞を読みこむ女子高生なんて、余程気真面目なのだと称賛されるかもしれない。
だが、伊織としては自己アピールのつもりでも、優秀な生徒として見られたい訳でもない。
オシャレを嗜む普通の女子高生なのだから、むしろ新聞とは無縁であった。

デカデカと新聞の見出しに書かれてある。


   『「切り裂きジャック」現る!? 女性を狙った連続通り魔、三人目の犯行か』


たった三人じゃないですか、もう。こんなデカデカと、たかが三人殺し程度で……
い、いやいや。わたし、今もの凄くヤバい発言しちゃったりしてました?
たかが三人、されど三人。
うう……でも、聖杯戦争参加して殺しまくる気満々の人達に比べたら三人なんて、どーってことないはずですよう。

伊織が頭を抱え、唸るのは当然だった。
彼女は連続通り魔の犯人を知っている。
その犯人こそが伊織のサーヴァントであり、殺人鬼であり―――『切り裂きジャック』。

「三人殺した程度で一々騒ぐな」

「何言ってるんですか! もう三人も殺しちゃったんですよ!!」

伊織が綺麗なドレスを纏った美人に対して反論する。
いかにも女性に見えるが、実は男性である。
絹のように滑らかな長い赤髪と美形を持つ、だが男だ。
そして、彼こそが世間(電脳空間内の社会だが)を騒がせている『切り裂きジャック』であり。
実は本物の『切り裂きジャック』でもあり、サーヴァントのライダー。

「たかが三人殺した程度だろう」

伊織が、心中で呟いたセリフをそっくりそのまま言うライダー。

「でもですよ……一体どうして殺したんですか?」

「お前は、何故朝食にパンを選んだのかを気にするほど神経質な人間か?」

「ああ、うー、ごめんなさい」

ガチのサイコパスって奴だ。
人を殺すのに躊躇しない方は初めて会いましたよ、わたし。
ふつー後悔とかしますよね? 殺しちゃった、どうしよう! ってパニックに陥りますよね??
多分、これ。二時間サスペンスドラマじゃなくって、二時間サスペンス映画の冒頭だよ。

なんて伊織が思う。
少しオシャレを齧ってる女子として、憤りを覚えるほど美人な女装ライダー。
そんなライダーに、伊織が尋ねた。

「今更ながらこんな事聞くのは無粋だと思うんですけど、やっぱりライダーさんの願いって
 生き返って女の人を殺しまくりたいとか、そういうものなんでしょうか?」

「違う」

「やっぱり違うんですねー……ええっ、違うんですか!?」

意外だよ。
結構わたし自信満々で聞いたばっかりに恥ずかしい。


143 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/03(火) 16:48:40 70NbBg560
ライダーの表情は真顔であったが、伊織の質問に対し不敵な笑みを浮かべた。

「オレの願いは、そうだな。お嬢さんにも分かるように簡単にすれば……子孫繁栄といったところだ」

「しっ、シソンハンエー?」

「呪文のように唱えても何も起こらんぞ」

「難しい四文字熟語だなぁ、と」

「お嬢さんのハイスクールの平均学力はどの程度だ?」

「分かります! 分かりますって!!」

でもジャック・ザ・リッパーが子孫繁栄って、『切り裂きジャック』にそもそも子孫居たんだ!
顔に似合った事言っても、中身に似合った事ではないでしょうかっ?
にしたって子孫繁栄? 一体どういうことですか。
嘘ですよね? 好印象なイメージ残そうとしているだけって奴ですよね。

「――ところでお嬢さん」

「はい?」

「『ここ』に来て初めて人を殺したと言っていたが、あれは嘘だろう」

伊織は本日何度目になるか分からない溜息をつく。
きっと警察の職務質問とかこんな風に幾つも繰り返し続けて、あちら側はそんなつもりはないでも。
相手を追い詰めていくものだと伊織は想像していたが、現実はその通りであった。
この質問は、本日を含めても十回以上はされたものだ。(あくまで伊織の感覚の話だが)
しかし、伊織の返事は決まって同じ。

「嘘じゃないですよ。本当なんですってば」

伊織が聖杯戦争のなんたるかを理解する以前の話。
偶然。
放課後。伊織は教室で記憶を取り戻して。
たまたま、教室に残っていたクラスメイト(という設定)の一人がマスターで。
伊織の手の甲にある令呪を見て、サーヴァントが召喚される前に殺害しようと襲いかかったものだから。
咄嗟に。

机にあったボールペンでクラスメイトの喉笛を貫いたのだった。

「えっと、ライダーさんは一部始終見ていたんですよね?」

「ああ」

「どう見たってアレは正当防衛ですよね?」

「さあ」

何故!? あの一連の流れを見て、どうしてそうなのか!
伊織が頭を抱える中、ライダーが話を続けた。

「なら俺を殺そうとした一件はどう説明する?」

「知らない人が家にいたら、誰だってビックリするじゃないですか! 強盗だと思います!!」

「それで、傘で刺そうと」

「多分、傘なんかに刺されたくない的な意味合いが込められているのかもしれませんけど。
 あの時は偶然、手元に傘があったからそうなってしまった訳でして――」

「傘じゃなければフォークで刺したか?」

「刺しません!」

それにサーヴァントには物理的な攻撃が効かないのだから、気にしなくても良いのに!
伊織はイカれた殺人鬼相手に、説教を喰らっている理由が分からなかった。
ライダーが伊織の困った様子を眺めてから、一言。

「なら―――ここにいた家族を殺したのは?」

「それは………………………………で、でも。ここにいるのは、わたしの本当の家族じゃなかったんですよね?」

なら、何も問題ないんじゃないですか?
大丈夫、ですよね?
聖杯戦争なんかと比べたら『どうでもいい』ですよね。もうこの話止めにしましょうよ!

伊織は、張り付けたような笑顔でライダーに告げた。
ライダーは何も答えなかった。
唯一、ライダーは伊織が正真正銘の殺人鬼である事だけは理解した。それだけである。


144 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/03(火) 16:49:15 70NbBg560
【クラス】ライダー
【真名】ジャック・ザ・リッパー@名探偵コナン ベイカー街の亡霊
【属性】混沌・悪


【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A 魔力:D 幸運:C 宝具:C


【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:-
 このライダーが『乗る』のは、乗り物や動物ではなく血。


【保有スキル】
霧夜の殺人:A
 暗殺者ではなく殺人鬼という特性上、夜のみ無条件で先手を取れる。

女装:D-
 男性と看破されるまでステータスの隠蔽が施され、
 サーヴァントとして感知され難くなる。声は隠蔽できない。

道具作成:D
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 近代の武器に特化しており、それ以外の道具を作成することは出来ない。


【宝具】
『我が血族の為の方舟』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1~10 最大補足:1人
 自身に流れる凶悪な殺人鬼の血を次世代へ生き続けさせる。それこそがライダーの悲願。
 血流こそがライダーの正体そのものである。故に、ライダーは対象の血(血液)に潜入することが可能。
 潜入後、そのまま対象を体内から切り裂き、文字通りの血まみれにする。
 ただし、対象が元より『血まみれ』(赤い服を着用している、返り血を浴びているなど)の場合。
 切り裂くのが不可能となってしまうので注意が必要。


【人物背景】
世界中にその名を知られるシリアルキラー。
日本ではそのまま『切り裂きジャック』と呼称されることが多い。
五人の女性を殺害し、スコットランドヤードの必死の捜査にもかかわらず、捕まることもなく姿を消した。

『切り裂きジャック』の正体は明らかになっていないため、各クラスで召喚される度に姿を変貌させる。
ライダーとして顕現した場合、現代に流れ続けているかもしれない『切り裂きジャック』の血が召喚される。

とある人工知能が作り出したゲームに登場した『切り裂きジャック』を模倣している。
そのゲームは、シャーロック・ホームズの世界観と現実世界の19世紀末ロンドンを融合させた為。
ホームズの作者コナン・ドイルが推理したとされる「女装した男性」の姿を形取っている。


【サーヴァントとしての願い】
『切り裂きジャック』の血を次世代に残す。



【マスター】
無桐伊織@人間シリーズ

【能力・技能】
何もない。
……はずだったが、殺人鬼としての才能が目覚める。

【weapon】
とくになし。
最悪、そこら辺にある物を凶器にする。

【人物背景】
私立高校に通う普通の女子高生。
ニット帽を被り、おしゃれを気にする女の子。
それ以上の存在でも、それ以下の存在でもない。

………はずだった。

まだ彼女は『二十人目の地獄』と邂逅を果たしていない。

【マスターとしての願い】
生きて帰りたい。

【捕捉】
伊織のクラスメイトと伊織の家族(という設定のNPC)を殺害しております。


145 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/03(火) 16:50:33 70NbBg560
投下終了します。タイトルは「無桐伊織&ライダー」でお願いします。
また『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』様にて投下しました「岸波白野&アサシン」のアサシンのステータスを一部使用しました。


146 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:30:20 PZSf/d0Q0
投下します。


147 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:35:13 PZSf/d0Q0
 
 ぐっちゃぐっちゃ、ぐっちゃぐっちゃ。

 「ぺっぺっぺ〜つばぺっぺー」

 ぐっちゃっぐっちゃっと噛み合わせられるのはガムである。呆けたような口から覗く黄ばんだ歯の間に、

歯は磨いているのだろうか? 食べたいもの何でも食べていいとは言われてないけれど、歯磨きを欠かさずするようにも見えない風貌であるなあ。

つばが混ぜ合わせれて発生する泡と、チラチラ見えるのは緑青色のガムだ。白と黄色と緑とあぶくのコントラストは一層の嫌悪感を引き立てる。

ミントみたいな匂いまで漂ってくるのは最悪だ。人様のいる空間に対して自分の口腔の食物の印象を叩きつけてくるんじゃない。本当に人間か?

そもそも口内の匂いの要因は様々で、たかが、匂い付きの練り消しのようなものを噛んだところでカバーできるのは数十分だ。

それぐらいで染みついた匂いは徐々に表層に浮き上がり始める。これを完膚なきまでに浄化しなさいと、歯の先から舌を乗り越え臓腑の中まで綺麗にしろと世間様はおっしゃる。

気を使わなければ皆様方は信じられない未確認生物を見たとまで思い存在そのものを否定しにかかるのだ。

そう思うと、口を開けてミントガム噛んで、周囲に対しての気遣いをアピールするということは存外悪くない選択肢なのではないだろうか。

 「ガームが欲しいかやらないぞ〜」

 おら欲しがれよ物乞い共! いや別にこんな臭そうで濁ってそうでビョーキになりそうで細菌が基準値の数倍をはるかに超えてそうな場所から発射されたものを舐めとれ、

というわけではない。事実街を行き交う市民たちは嫌な物を見たと言わんばかりに顔を顰めて去って行く。

これから我々は仕事/学校なのだと、そんな気分の害するものを見せつけ、余計なストレスを与えてくるんじゃあないと。

でもそれを表面に出して気持ち悪がりを表現する必要がありますか?

そんなものを見たというのなら、表情をに出さず意識から消して何もなかったかのように振る舞えばいいのだ。早く忘れるための努力をすればいいのに。

現代の惰弱で情弱で貧弱な社会動物達はすぐに共通意識を持とうとする。私気持ち悪がってます貴方も気持ち悪がってますあれは我々の敵です排除しましょう。

そして、僕たちは仲間ですね、僕はこの社会という共同体のさらに深い一員になれたぞ! さあ皆さん認め合いましょ。支配するのはそんな承認欲求である。

見てみるがいい。今チラ見していやそうな顔をした後、周囲を見渡し同様の反応をしている市民たちを見て安心している高校生の姿を。

あれこそが現代社会の縮図、互いに認識を求めあう乞食どもの群意識の表れだ!


148 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:37:14 PZSf/d0Q0

 『……何をやっているんだい? まったく、 しょうがないな、ポーキー君は〜』

 落ち着く声であることだなあ。我々の深層意識に刻まれたある種の絶対的存在。声を聞いていた少年はガムをその場に吐き捨てる。

唐突に吐き捨てられたガムを見た善良なる町民の皆さん、近くの者は飛びのき、遠くのものは眉を潜める。

しょうがないことではないだろうか、変わらない一日を過ごそうとしているのに、いきなりこんな生理的嫌悪を煽る光景を見せつけられては反射的に行動することは避けられない。

公共の平和を乱す害悪に対して同情を払う必要などはなく、市民が一致団結して彼らのような存在を締め出すべきだ。

だいたい地面にガムを吐き出すという行為がどれだけの大罪であるか彼は理解しているのだろうか。

どんな穢れなき街の外観も小さなガム一つによりどんどん薄汚れていく。千丈の包みに開いた蟻の穴の如く。

大人しく人のいい掃除のおば様おじ様方の手を煩わせる。彼ら彼女らは地面にこびりついた汚れに暗澹たる心境に陥ってしまうだろう。

そして何よりも踏みつけたときに発生する不快な感触とまるで神に見放されたような惨めな気持ち……。人の精神を奈落の底に突き落としている。

靴にこびりついたガムを擦り落とすときの気分がわかるか! 途方もない徒労感の下必死になって十円を擦り合わせるのだぞ!

 さて、そんな罪よりもはるかに重い罪悪を積み重ねてきたポーキー少年は、唐突に空を見上げた。

叙情的な気分になっているのか……? そんなことがあろうはずはない。彼の精神は暗所で育てられたもやしのように歪んでいる。

今日の空模様に対しての罵詈雑言を吐いてみようかと試みたが、当てはまる語彙が彼にはなかった。

もっともどんな天気であろうが彼は文句を言っていただろう。彼は何に対しても文句をつけたがる年ごろのままだったから。

栄養に満ち溢れ豊かな外見とはうらはらに、悪ガキの精神性はぺんぺん草も生えない荒地のような環境にてどんどん屈折していった。

結局のところ彼の正体は、とてもすなおでちいさなただのしょうねんなのだ。だからみんなもかれにすなおにはなしかけるべきなんだ。

いままで吐き捨ててきた悪意ある言動の数々を、ゆるしてくれるだろうか……、ゆるしてくれるね。


149 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:38:11 PZSf/d0Q0

 

 ※ ※ ※



 そして、舞台は夜へと移る。
周囲に嫌悪感を示すことだけでも、周囲の反応を窺っていた少年の帰り道だ。
社会が自分に合わせてくれないことに疲れ果てていた彼の前に、二人の珍客が現れる。
彼はその数奇な出会いに対して、どのように変化するのか――



 ※ ※ ※


150 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:39:30 PZSf/d0Q0

 しょうねん
 ◇ハアハアハアハア、つかれたなあ。ハアハアハアハア。

 ◇だいたいアイツ、もっとおもしろいことがいえるはなしをすればいいんだ。アイツらめ!

 ???
 ◇オーイ……

 ◆だれにはなしているのだ

 ◇ドタドタ、ドタドタ。 
 
 ◇オイ! おまえだよ! そこのヘロヘロのおとなきどり!
 
 ◇ドタドタ、ドタドタ。

 ◇(まってよう、ポーキーくんー!)

 ◇ドタドタ、ドタドタ。
 
 しょうねん
 ◇うわあ! きんぱつのぶたみたいなやつとへんなあたまのふりょうみたいなくまがおそってくるー。 

 ◇ん……? きんぱつのやつみたなぶたとへんなくまみたいなあたまのふりょうかな。

 ◇ひえー。 ぶたみたいなきんぱつのやつとへんなふりょうみたいなくまのあたまだー。

 ◇タッタッタッタ。

 ポーキー
 ◇ゼエハア、オイクソ、まてよ。オイ!

 ◇まてといったらまてよ、オイ! にんげんきどり!

 ???
 ◇(にげられちゃったねえ)


151 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:40:46 PZSf/d0Q0

 ポーキー
 ◇デヘ、ゲホ、にげられた、にげられちゃったヨ〜ン。

 ◇ガホ、ゲヘ、おまえのせいだぞ。ふうふう、おいにげられたのはおまえのせいだ。

 ◇むちなくまみたいなかおのくせに、うしのふんみたいなあたまをするからだ。シロクロクマ!

 シロクロクマ
 ◇ぷっつーん。ボクのあたまがなんだって〜。

 ◇だいたいなんだい、ボクはちゃんとおめかししてリーゼントにしたのに、きみときたらいつものまま。

 ◇これじゃあどうぶつえんからだっそうしてきたようにしかみえないよ!

 ポーキー
 ◇チラッチラッ、なんだよ、ぼくにはむかうのか。チラッチラッ。

 シロクロクマ
 ◇ああもう、やめてよ! ボクはきみのどれいロボットじゃない!

 ◇ボクはくま、りっぱなくま。うちゅうせんちきゅうごうのなかまだよ。

 ◇ボこりボコられいきていってるわけじゃないんだ。もちろんいしきをうばわれて、はっきょうするのはごめんさ。

 ◇なにがキモチイイだい! あんなのこわすぎてトラウマになるじゃないか。

 ポーキー
 ◇どうでもいいどうでもいい。オシリペンペーン。

 シロクロクマ
 ◇ああもう、やるきだしてよ。ボクらはせいはいせんそうにかたないといけないんだ。

 ◇めをちばしらせてハナイキあらいれんちゅうや、いらないとかいいながらチラミするれんちゅうから。

 ◇うおうさおうするうぞうむぞう、むしけらたちから、せいはいをまもらなきゃ。

 ◇がんばろう、せんせいはいまのわかもののやるきのなさをうれいているんだよ。

 ◇ほら、ヨーヨーみせてあげるから。

 ◆シロクロクマはカッコいいヨーヨーをひろうした。

 ポーキー
 ◇……ヘタクソ!

 ◆ポーキーはちょうしょうをあびせた!


152 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:42:06 PZSf/d0Q0

【クラス】
 アヴェンジャー
【真名】
 モノクマ@ダンガンロンパ
【ステータス】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:B 宝具:A
【属性】
 混沌・悪
【クラススキル】
 復讐者:A
 世界の秩序をせせら笑い、やせがまんする人々を馬鹿にする。
 やりたいようにやればいいじゃないか。だってそれが人間って動物だろう?
 被攻撃時に魔力を増加させる。
 忘却補正:E
 真面目ぶったお利口さんからはただの忌まわしい存在で忘れようとするけど、
 絶望したか弱い奴等からは紛れもない英雄、救世主だ。
 英雄に対してのダメージを心なしか上昇させる。
 自己回復(魔力):B
 才能があって豊かだからいい子ちゃんぶったことが言えるんだ!
 持ってなければ持ってないほど人生は荒んでしかも皆それに目を向けようとしない。
 それで落ちてきてから初めて受け皿があったことに感謝するのさ。
 皆ボクに消えてほしくないって思ってるんだろうなあ。
 
【保有スキル】
 専科百般:B
 わりと何でもできる。かつての主人が才能の塊だったからか? 希望が峰の堕ちた生徒達の象徴だからか?
 でもキュートな手足が届かないことはできないんだよ。可愛くってごめーんね♪ 
 話術:B
 口がうまい。ガチガチに理論武装した連中には勝てないだろうけれど、
 世間を知らない才能あふれる人たちを陥落させるには十分。
 精神汚染(他):B
 なんでかはわからないけど、ボクと話してるとみんな不快そうになったり、不安そうになったり、
 ひどいときには怒り出すんだ! ボクは正論を言ってるだけなのに。まったく、酷い話だよね。


153 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:43:19 PZSf/d0Q0

【宝具】
 「絶望の象徴(モノクマ)」
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 こんにちは、ボク、モノクマです。
 滑らかなボディと愛くるしい見た目を持つボクですが、皆さんからのご期待に応え、
 なんと大量生産されることになりました。いやー技術ってのは偉大ですなあ!
 生産されるボクは本物と一寸変わらぬ出来で、本物とすり替わっても気がつかないくらい。
 今後はボクの亜種も順次生産していく予定です!
 このまま一家に一台モノクマ! と行きたいところですが、原料の不足……というか
 ポーキー君の魔力不足で、自己発電をもってしてもそんなに多くは出せないのです。ショボーン。

 「感染する絶望(超高校級の絶望)」
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 まったく、なんてことするんだ!
 いくらボクがいると、他人の感情(特に嫉妬やら憤怒やら)を煽るからってなんでもボクのせいにするなよな!
 絶望に堕ちきった連中はどこからともなくボクのプリチーな仮面をとりだして、破壊活動に勤しみだすんだ。
 それを見た連中もまた精神的にショックを受けてって……負のスパイラルじゃないか! やったのはオマエラだろ。
 まあ、ボクのことが好きで、そんな格好するっていうのは、悪い気はしないけどね。ウププププ。
 
【weapon】
 鋭い爪から何の変哲もないバズーカ砲まで。

【人物背景】
超高校級の絶望、江ノ島盾子が計画のために作ったキャラクター。
数々の絶望的事件に彼を介入させたことで、モノクマ自体が江ノ島盾子から離れ独り歩きし始めた。
性格は明るく道化的で様々なネタをちりばめた発言も多いが、歯に衣着せぬ発言や盲点を突いた発言で、
人の心を追い詰めていく。

【聖杯にかける願い】
 そりゃあ手に入れて、ボクらしい願い事をするよ。ウププ。


154 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:44:41 PZSf/d0Q0

【マスター】
 ポーキー@mother3

【能力・技能】
 体力は同年代の子供以下。
 けれど彼には長い年月(数百年から数億年場合によってはそれ以上)かけて歪み切った精神と超絶した悪運がある。

【weapon】
 なし

【人物背景】
 mother2の主人公、ネスの迷惑な隣人。初めは底意地の悪いガキ程度だったが、選ばれし子供に選ばれなかったことを
 きっかけにドンドン悪の道を歩み、性格もガンガン破綻していった。
 物語終了後、ポーキーは手に入れたタイムマシンにより、自分の世界を求めて時空を彷徨ったが、
 どんな世界からも追い出され、生身で時間移動した代償により、干からびた老人のの身体のまま死ねなくなってしまった。
 家庭環境も劣悪で、酒浸りの父と暴力を振るう浮気母。唯一弟だけがまともに育っていた。
 ただ、ネスには友情を感じているようで、彼の冒険模様を映画館で流し、彼のヨーヨーを大事に保管している。
 参戦はmother3の直前。姿は2の少年時代の姿。このことをポーキーは素直に喜んでいる。
 
【方針】
 場を荒らせるだけ荒らす。最後の最後には聖杯を掻っ攫う。……まけたらしぬのか? どうなのか?


155 : ポーキー&アヴェンジャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/03(火) 17:45:13 PZSf/d0Q0
投下終了です


156 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:47:27 e8iO8K1Q0
ご投下有難うございます!それでは感想を一つ。

>>神代ユウ&キャスター

虐められて力を手にした二人。
不幸な超能力者であるキャスターは、
果たして罵られる輩に会い苦しむのか、
それとも救いを差し伸べられるのか。
それは神のみぞ知る。
ご投下有難うございます。



>>橘ありす&キャスター

アリスがサンタとは、これまた驚きました。
と思ったら、まさかのサンタオルタ。
思いっきり四次マスターの礼装渡していることに
吹いてしまいました。果てさて、サンタオルタが
配り歩く次のプレゼントは。
ご投下有難うございます。


157 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:48:00 e8iO8K1Q0
以上で投下は終了です、それでは候補作を投下させていただきます。


158 : 高杉晋助&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:51:01 e8iO8K1Q0


◆  ◆  ◆


住宅街から離れた敷地に、一つの武家屋敷が立っていた。
それは見ただけでも歴史の深さを感じさせるようだが、これは機械による作業で建てられた、謂わば現代の建造物だ。
実際、中には消火スプレーや、監視カメラ、人感センサー等のセキュリティを初めとした、まるで漫画にでも出て来るような設備が盛り沢山。
そんな屋敷の、月明かりが鮮明に見えるこのベランダで、蝶柄の着物と、竹製の傘帽子という時代遅れの格好をした男…高杉晋助はキセルを口から離し、
すぅっと煙を吐き、ベランダから見えるこの街景色に向かって問いかける。
すると、高杉の脳内に返事が返ってくる。
<<ああ、仕事にしては随分と楽だったが、今宵は中々に楽しめたぞ。これも貴様の部下のおかげだ、奴らはよく使える>>


◆  ◆  ◆  ◆


高杉が与えられたロールは、「鬼兵隊」と呼ばれるテロリスト集団の長というものだった。
しかし、自分が元の世界で連れた組織の名を、又もやこの様な形で背負うとは。
やはり自分は何処へ行っても世界を壊さなければ気が済まないらしい。

あらゆる願いを叶える万能の願望機、「聖杯」。
それが、今高杉が眺めている月に存在するという。

その話をある天人から聞いた時は、高杉も流石に驚いた。
叶えたい願いならある、しかし高杉は当初それに乗る気は無かった。
その天人は所謂魔術が発達している種族なのだが、しかしコンピュータを利用した魔術基盤もまた
発達しているとか。実際その星に見物に行った時は驚いた物であった、正にハ●ー・ポッ●ーの世界が
そのまま広がっているように感じられた程に、だ。
だから噂の信憑性に関しては問題はほぼない、問題ならその第一予選の内容にある。
態々記憶を抜き取って月で記憶を眠らされて生活する、そんな暇など高杉には無かった。
予選の時期にもよるがそんな馬鹿げた事をするぐらいならテロの計画建てをした方がまだマシだ。
変な仮想世界でくたばっては何もかも終わってしまう、そんな賭けに近い物に乗るぐらいなら、
願いなら自分で叶えてやる。そう考えて放っといたその話だったが、彼は偶然にもこの世界に来てしまうことになった。
ターミナルも天人も、志士も幕府もいない、それだけで思い出せた。
何ならあの天人に連れて行ってもらっても良かったのではないかと思うほど簡単であった。
思い出すのにはそれなりの時間を有したが、それでも記憶が戻る前に予選が終了して、
こんな訳の分からない世界で永遠に踊らされ続けるよりは遥かにマシであった。


聖杯にのせる願いなら、とうに決まっている。

腐りきったこの世界をぶっ壊す。

この世界は恩師を、友を、居場所を奪っていった。
あの江戸では今も尚天導衆と幕府が好き放題にやっている。
だが、聖杯に手が届けば、面倒な手間をかけずとも
壊したいものを壊せる。
こんな世界に迷い込むのも、悪くはない。

そして喚び出したアーチャーと、鬼兵隊に所属するNPC達を率いて、数多くの
陣営を破壊していった。
アーチャーは戦闘力が高いだけでなく、戦術眼も本物であった。他者を屈服させ、
次々に破壊していった。しかし面白いサーヴァントだ。
また、天人から聞いた話では、サーヴァントはマスターに性質の似た、相性のいい者が引き当てられるらしい。
こんな自分に似たサーヴァント等、どんなに酔狂な人物だろうと考えていたが、
やはりそうだった、アーチャーが生前に行ったことは自分が元の世界でやっていることに近かった。


それを知る切っ掛けとなる夢を見たのはつい最近だったか。
1体の機械生命体の夢を見た。

彼は正しく「悪の権化」であった。
若き正義の戦士をも誘惑させるその存在感と頭脳、そして戦闘力。
そして何より、胸に刻まれた「悪」を象徴する刻印が何よりの証だ。
彼は多くの戦士を篭絡させた。己の野望を成就させるために、
それに立ち塞がった、正義を愛する戦士達との戦いはほぼ五分五分と言って良かった。
時には、高杉の故郷である蒼い星に戦場を変えて戦った、それでも決着は付かず。
しかし遂に、彼は正義の戦士の大将を倒した、だが悪の戦士の大将たる彼は見事に
部下に裏切られ、災禍の巨人に力を与えられる、だが、悲しくも彼は敗れ去ってしまった。

それからも彼の戦いは続いていった。

例え精神を蝕まれようが、例えサイバトロンの正義に飲まれようが、地球を飲み込もうが、
彼は戦い続けた。だが気が付けば、彼の姿と野望は潰え消えていった。




◆   ◆   ◆   ◆


159 : 高杉晋助&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:51:38 e8iO8K1Q0
「アーチャー。」
高杉が虚空に向かって問う。
<<何だ>>
アーチャーの返事が念話で返ってくる。
アーチャーは図体が非常にデカい、魔力の問題もあるので戦わない時には基本霊体化している。
なので会話は基本は念話だ。
「てめえは、この馬鹿げた殺し合いに何を願う?」
高杉は、数々の人間に興味を持ち、手駒、否、捨て駒にしてきた。
その度に、彼らの思想を垣間見た。
そして、聖杯に手を延ばすための「捨て駒」の思想にも興味を持った。
この高杉晋助の様に、破壊と闘争を望むこのロボットの願望に。
しばらくして、アーチャーの返事が返ってくる。
<<ワシの願いは、この宇宙を破壊で征服することだ!
破壊こそ我が喜びよ!そして、この宇宙に平穏を齎す・・・余自身の力でな!!>>



アーチャーの真名、新破壊大帝ガルバトロン。
超ロボット生命体トランスフォーマーの、悪の軍団デストロンを
率いた戦士。彼の存在意義はその二つ名の通り「破壊」にあった。
だが、悪と見なされた彼にも彼なりの理想があった。
それは、「圧政による平和」であった。
正義だの平和だのを大声で唱えるサイバトロン共は生温いにも
程がある、だからこそデストロンとの争いは止まらない。
だが、自分が玉座に座れば。
自分がこのセイバートロンを統治すれば。
彼らはこのガルバトロンを恐れ、内輪揉めなどする気には無くなるだろう。
破壊の権化はそれを信じて疑わぬまま、座から舞い降りた。

デストロンと鬼兵隊の行っていることは限りなく近いであろう。
秩序に背を向けたクーデター、荒くれ者軍団の首領、
それが鬼兵隊、それがデストロンだ。



<<それで、貴様は何を望む?>>
アーチャーから返事が返ってくる。
それを聞くと高杉は、目の前で光る月を見つめながら答える。

「俺はただ壊すだけだ、この腐った世界を。」


破壊による理想の実現を遂げようと願う二人の外道もまた、聖杯に手を伸ばす。


160 : 高杉晋助&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:56:51 e8iO8K1Q0
【クラス名】アーチャー
【出典】トランスフォーマー・ザ・ムービー
【性別】男
【真名】ガルバトロン
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A 敏捷A 魔力D 幸運B 宝具A


【クラス別スキル】

単独行動:B
マスターとの魔力供給を断っても現界を保っていられる。
Bランクだと2日の現界が可能となる。


対魔力:D
魔力に対する耐性。
魔除けのアミュレット程度。


【固有スキル】

カリスマ:C-
人々を導く天性の才能。
小国を率いるにはやや十分な程。
ただし、正義を信ずる者にはあまり効かない。



軍略:A
多人数を動員した戦闘による戦術的直感能力。


ディセプティコン:A
悪として位置づけられたトランスフォーマー達。
正規の英雄に対し、パラメータに補正が掛かる。


変形:C
トランスフォーマーの持つ変形能力。
移動砲台に変形可能。


魔力放出(エネルゴン):B
自らの魔力をスパークの動力源「エネルゴン」に変換し、
武器にその魔力を纏わせる。


【宝具】

「星を砕く破壊の鉄槌(ガルバトロン・レイジ)」

ランク:A 種別:対国宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

アーチャーの砲台形態の、最大出力による砲撃。
惑星を壊滅させた逸話を持つが、此度の聖杯戦争においては、
国一つ吹き飛ばせる程度に下がっている。
それでもやはり威力は申し分ないが、消費する魔力は非常に高くなる。


【Weapon】

「SFガン」
右腕に装着されている巨大なビーム砲。
威力は申し分なく、宇宙空間においては
推進装置としての役割も果たす。



【人物背景】

悪の軍団「デストロン」の破壊大帝、メガトロン。
その圧倒的なカリスマ性と戦闘力と狡猾な頭脳で荒くれ者集団のデストロンを纏め上げ、
セイバートロン星への侵攻を開始した。正義の戦士サイバトロンとの激闘の末にサイバトロン
の総司令官、コンボイを倒すも、自らも重傷を負う。その後、デストロンのニューリーダーの
座を狙っていた航空参謀スタースクリームにより、移動用のシャトルから宇宙空間に放り出されてしまう。
その後ユニクロンの力でガルバトロンとして復活。同じくスタースクリームに放り出されユニクロンに
再生されたデストロン戦士と共にスタースクリームを葬った後に、ユニクロンから強制的に命令される
形でマトリクスを狙い、遂に奪取に成功するもコンボイの意志を受け継いだホットロディマスに
奪い返され、ユニクロンが死ぬと共に宇宙空間に放り出されてしまう。
その後はマグマの温泉で休養していたが、ユニクロンの悪影響で精神に異常をきたしてしまった。
しかし、今回はユニクロンに再生されたばかりの姿で召喚されているため、破壊大帝メガトロンと
しての本来の人格を保っている。
傲岸不遜かつ冷徹な人物。歯向かう者には容赦はしないが、付き従う者、見込みのある者には寛容。

【聖杯にかける願い】

元いたセイバートロン星に戻り、再び己の理想を実現するために破壊の渦へと突き進む。


161 : 高杉晋助&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:58:05 e8iO8K1Q0
【マスター名】高杉晋助
【出典】銀魂
【性別】男


【Weapon】

「日本刀」
数多くの天人を斬ってきた愛刀。


「キセル」
何の変哲も無いキセル。


【能力・技能】

・剣術
吉田松陽から教わった剣の腕。
鉄も余裕で斬り裂ける。


・カリスマ
人々を導く天性の才能。
心の闇を抱えた人間を惹きつける。



・破壊工作
相手の戦力を削ぎ落とす。


・鬼兵隊
生前に引き連れた、攘夷志士達で構成された義勇軍。
しかし、今やっていることは正にテロリストそのもの。
この聖杯戦争の世界でも、鬼兵隊は健在である。
最も、傍から見ればニュースのネタになっている武装集団だが。



【人物背景】

裕福な家庭に生まれたが、同じ学び舎に通う桂小太郎、
そして坂田銀時を通して吉田松陽と出会った事で彼を慕い、
彼の開く松下村塾に通うようになる。
しかし、吉田松陽は幕府の陰謀により斬り殺され、その後
銀時や桂と共に攘夷志士となり、
「鬼兵隊」を率いて天人に刀を向ける。
しかし、結果的に敗北、仲間達は処刑される。
それからは「獣の呻きが止むまでこの世界を壊す」と
幕府や天導衆相手にクーデターを引き起こしていき、
その内に銀時や桂とも決別していった。
坂田銀時の友人なだけあってかなりのドS。
テロリスト化してから狂気度が増していき、
薄笑いを浮かべることが多くなっていった。
劇中では多くの事件に暗躍しており、
平賀源外、伊東鴨太郎、村田鉄矢、佐々木異三郎、
数多くの人物と手を結び、その度に裏切っていった。


【聖杯にかける願い】

ただ壊すだけだ、この腐った世界を。


【方針】

基本的にアーチャーの戦闘力と高杉のカリスマ性、
二人の戦術能力で上手く立ち回る。
他の陣営との同盟、鬼兵隊によるテロ行為等も
行うつもり。


162 : 高杉晋助&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/03(火) 19:59:51 e8iO8K1Q0
以上で投下は終了です。

尚、この作品は、「枢姫聖杯譚/Holy Embryo」の「高杉晋助&アーチャー」
を再利用した物です。


163 : ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:34:47 xpCPnYqQ0
お借りいたします


164 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:36:07 xpCPnYqQ0

 果たして何がきっかけだったかを彼――デズモンド・マイルズは覚えていない。
 まるで無我の海の中に浮かぶ小島に漂着したかのように、気がついたら彼の意識はそこにあった。
 小洒落た、けれど小さな、どんな街にも一軒はあるようなバー。
 彼はそこのバーテンダーだ。
 だった――はずだ。
 少なくとも時代錯誤な甲冑姿の男を引き連れた、ドラッグでもやってそうな少年が飛び込んでくるまでは。
 彼を宥めようとしつつ、一切何の躊躇も無くカウンターの下に隠してある拳銃を握りしめた時までは。
 そして少年へ向けて何も考えずに引鉄を引いたのと同時に、甲冑男の心臓が弾け飛ぶまでは。

「…………あ?」

 赤黒く汚れたバーの中央に、蹲るような小柄な影が、ひとつ。
 頭を撃ち抜かれて痙攣する少年の死体と共に、甲冑男の死体が0と1とに分解されて消えていく。
 デズモンドがそれを認めた――

「―――――!」

 ――その瞬間、小さな影が掻き消えた。いや、跳んだ。
 およそ常人の視界では捉えられぬほどの高速。文字通りデズモンドの目にも留まらぬほどの。
 かつてのデズモンドならば――あるいは思いだす前のデズモンドならば。

 今は違う。

 彼には、かつて慣れ親しんだ記憶の「流入」の感覚を楽しむ余裕さえあった。
 身に宿した「鷹の目」を開き、それを以って迫り来る短剣(ダガー)、その切っ先の煌めきを見る事さえできた。
 横っ飛びにその奇襲を回避する動きは訓練、それも尋常でない経験を得たものだけが成し遂げられるもの。
 影の攻撃と、なんら遜色のない――いや、ともすれば人間離れした影以上の俊敏さであった。

 デズモンドは影の刺突を紙一重の余裕で避け、その腕を取って、まるで舞踏でも踊るかのようにカウンターを飛び越える。
 同時に、デズモンドは左の手のひらで「トン」と軽く、その影の項を叩いた。

「――!?」

 蜻蛉を切って音もなくバーカウンターの上へ舞い降りた影は、デズモンドの動作に目を見張ったらしい。
 動きが僅かに止まる。驚愕による硬直。信じられない様子で首筋に触れている。
 意味を理解したか? 迂闊だぞと、デズモンドは笑った。逃す手は無い。

「掟を破るか、我が姉妹よ……!」
「…………!?」

 影が弾けた。
 カウンターからありえざる機動/軌道を描いて宙を跳び、壁から天井、天井から柱を伝って酒場の片隅へ。
 ひらり、舞い降りる。

 きいきいと揺れる電灯に照らされた影は、黒い外套であった。
 その外套のフードから覗いた瞳がデズモンドを突き刺した。

 錆びた金色の――鷹の目。

 その視線はデズモンドに、雨に濡れた捨て犬を連想させた。
 純粋。敬虔。正義。――狂信。
 良く知っている。
 だからデズモンドは人差し指を立てて、一言ずつ、言い含めるように告げた。
 油断なく距離を保ちながら。深く腰を落として身構えながら。次の瞬間には跳躍できるよう備えながら。
 かつての「記憶」の習慣だろう。左腕の武器を起動しようと筋肉を強張らせるのは。今はそこに何もないのだが。

「ひとつ、罪の無い者を傷つけてはいけない」

 言葉をなじませようと、デズモンドは生唾を飲み込んだ。

「ふたつ、我らは目立ってはいけない。そして――」

「……みっつ、仲間に危険を及ぼしてはならない」

 影がデズモンドの言葉に続き、静かな声で呟いた。
 それは凛と張り詰めた鈴のように涼やかな、年頃の少女の声でもある。
 少女が身に纏った黒い外套を、少しだけ跳ね上げる。

 やはり、と思う。

 十代も半ばぐらいの少女――…………。
 黒髪の、張り詰めた表情の、まだ幼さを面影に強く残した、少女。
 それが『アサシン』の正体だった。

.


165 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:37:09 xpCPnYqQ0

「だが、兄弟よ。我らが神は杯など持たない」
「林檎もな」

 デズモンドはバーカウンターへ乱雑に腰を下ろすと、投げやりにそう言った。
 蝶ネクタイをむしりとって放り捨てる。シャツの襟元を広げ、大きく息を吸って、吐いた。
 全く、訳がわからない。
 バーテンダー……バーテンダーだと? この俺が? いや、確かにいつかまではそうだった。
 奴らに誘拐されて、被験体17号の番号をつけられて、妙な機械にぶち込まれるまでは。
 そして戦って、戦って、最後に、自分は――……。

「くそったれ(ガッデム)」

 デズモンドは吐き捨てた。神は死んだ。罰当たりな言葉に、少女がびくりと震えた。

「アブスターゴ社め、くたばりやがれ」
「アブスター……なに?」
「テンプル騎士団の事さ。俺は……」

 いや、とデズモンドは首を横に振った。

「俺たちは、そいつらと戦い続けてきた。エデンの果実と聖杯(カリス)を巡って。そうだろ?」

 テンプル騎士団。エデンの果実。聖杯(カリス)。
 その単語を口にした瞬間、少女の目が大きく見開かれたのを、デズモンドは認めた。
 アサシン教団が一〇〇〇年に渡って戦い続けてきた仇敵と、その理由。

 効果は覿面であったと言わざるを得ない。

 暗殺者の少女は目に見えてデズモンドに対する殺意を緩め、それを異なる方向性へと張り詰めさせていく。
 もしここでデズモンドが綱を離せば、まっしぐらにそちらへ向かって駆けて行くだろう。
 やはり、犬を連想させる。仔犬だ。喉を鳴らして唸る仔犬。猟犬の仔犬。

「…………では、兄弟よ。あなたはこの儀式に、望んで参加したのではないのか?」
「そこさ、妹よ」

 だからデスモンドは、なるべく気軽な風を装って、そう言った。

「自分が必死で守ってきたものよりもデカいブツが空に浮かんでたら、俺はどうすれば良いんだ?

.


166 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:38:22 xpCPnYqQ0
◆   ◆   ◆   ◆


「なんてこった……」
「ではつまり、あなた、いや、あなた様はアルタイル様の末裔だというのか!?」
「なんてこった……」

 尊敬の念に瞳を煌めかせる少女から目をそむけ、デズモンドは顔を覆って天を振り仰いだ。
 おお、神よだ。

 彼がテンプル騎士団と世界の行末を争い、人のためにと守り続けてきたエデンの果実。
 それはすなわち異星人が地上に残した遺産に他ならなかった。
 ところが、だ。
 ムーンセル。
 この月そのものが――異星人が残した超巨大なコンピューターだと?
 馬鹿げている。
 なんて馬鹿げているのか。
 彼は――いや、彼に連なるアルタイル、エツィオ、コナー、多くのアサシンたちは。
 そんな馬鹿げたものから人を守るためだけに、千年以上にも渡って戦い続けてきたというのに。

「デズモンド様!」
「やめてくれ」

 デズモンドは苛立たしげに手を振った。様? この自分が? よしてくれ。
 そんな尊敬されるような存在ではないことを、彼は重々承知している。
 多くの血族の記憶と経験を「流入」によって獲得した彼は、テンプル騎士団との戦いに身を投じた。
「伝説」のアサシンたるアルタイル、「最強」のアサシンたるエツィオ、両者の末裔であるコナー。
 三人のアサシンの記憶を引き継いだ彼は、確かに強かった。
 しかし、最後の最後……。
 人類の大半を滅ぼし、人類を導く新たな預言者となるか。
 人類を救うために、命と引き換えに人類を委ねるのか。
 二択を迫られた彼は、後者を決断した。決断してしまった。
 その後どうなるか、どうなってしまったかを、デズモンドは知らない。
 気づいた時には、ここでこうしてバーテンダーをやっていたのだから。

「しかし、貴方はもはやこの時代における唯一のアサシンであるのでしょう? それもアルタイル様の末裔だ」

 だが少女の目の輝きは増すばかりだ。
 興奮に頬を紅潮させ、惚けたように愛らしい唇も半開き。
 バーに据え付けてあったTVに映るアイドルを、ファンたちがそんな風に見ているのをデズモンドは思い出した。

「であるならば、あなたは当代のハサン・サッバーハに他ならない……!」
「まあ、もう、アサシン教団も散り散りになっちまったからなぁ……」
「では、ハサン様と!」
「わかった。わかったよ、あー……アサシン、お前、名前は?」
「私めに名前はありません。アサシンとなる道を選んだ時、既に捨てました」
「じゃあ、とりあえず、アサシン。……様はよせ。命令だ。デズモンドか、そうでなきゃ……」

 アルタイルか? エツィオか? それともコナー……。

「では、マスターと」

 ああ。そう呟いて、少女は蕩けたような微笑を満面に花咲かせた。

「この響きは、貴方にこそ相応しい」

 十代半ばの少女に「ご主人様」と呼ばれる自分の姿を想像して、デズモンドは顔をしかめた。
 だが、まあ、デズモンド様とかハサン様よりはマシだろう。たぶん。おそらく。

.


167 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:39:51 xpCPnYqQ0

「……まあ、それで良い。で、なんだ、アサシン」
「はい。一刻も早く、異端の魔術師どもとテンプル騎士団を討ち果たすべきかと。ご指示を!」

 鉄砲玉、あるいは尻尾を振る仔犬。
 行けと言えばまっしぐらに駆けて行って大暴れしそうだということが、鷹の目がなくとも察しがついた。
 彼女がハサンを襲名できなかったのは十中八九、この直情型の性格のせいではなかろうか……。

「だが、まあ、方針として間違っていないあたりがなあ……」
「では……!」
「闇雲に突っ込んでいったってダメだ。掟を思い出せ、アサシン」
「はい!」

 記憶にあるアルタイルの堂々たる態度、その一端でも引き出せれば良いのだが。
 デズモンドは待てというように掌を突き出し、思考を巡らせた。

「ムーンセルの、聖杯戦争か」

 与えられた記憶を自分へ馴染ませるのは慣れっこだ。
 ムーンセルから流入してくる聖杯戦争の記憶による限り、無駄にNPCを殺すな、という以上の制限は無い。
 トーナメント方式ならともかく、ルール無用の戦争ともなれば、それは……。

「…………」

 知らず、デズモンドは唇を舐めていた。

 上等だ。
 敵がどんな強固な城塞を持っていようが、武器を持っていようが、鎧を持っていようが、だ。
 そんな物で――そんなもので、アサシンから逃れられるとでも思っているのだろうか。
 人類を歪める存在があるならば、これを討つ。それがアサシンだ。それが俺たちだ。

 ――だいぶ、俺も染まってきたな。

「マスター?」
「決めたぞ、アサシン」

 笑っていた口元をデズモンドは引き締めた。

「巻き込まれた者は助け、異端は討ち、聖杯を破壊し、ムーンセルを人の手から遠ざける」

「我が運命をあなたに委ねます、マスター!」

 デズモンドは微かに笑って「ただし、隠密にだ」と付け加えることを忘れなかった。


.


168 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:40:30 xpCPnYqQ0

◆   ◆   ◆   ◆

 それから、ほどなくして。
 カウベルを微かに鳴らして、二人の影がバーから姿を現した。

 一人は男。一人は少女。

 男は白いパーカーを、少女は黒い外套を身に纏う。
 二人は微かな笑みを浮かべ、フードを被った。
 そしてそのまま、雑踏の中へ溶けるように去って行く。

 誰も気にしない。
 気にも留めない。

 アサシンを恐れよ。彼らはどこにでもいて、どこにもいない。

「ラーシェイア、ワキュン、ムトラクベイル、クルンムーキン」

「これぞ我らが血盟の英知を集約せし言葉」

「闇に生き、光に奉仕する、そは我らなり」

「真実はなく、許されぬことなどない」

「安全と平和を……」

「アサシンに勝利を」



――――俺はデズモンド・マイルズ。


――――これは、俺の物語だ。


.


169 : デズモンド&アサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:43:05 xpCPnYqQ0

【クラス】
 アサシン

【真名】
 無名@Fate/strangefake

【パラメーター】
 筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B+

【属性】
 秩序・善

【クラススキル】
気配遮断:A-
 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
狂信:A
 特定の何かを周囲の理解を超えるほどに信仰することで、通常ではありえぬ精神力を身につける。
 トラウマなどもすぐに克服し、精神操作系の魔術などに強い耐性を得る。

【宝具】
『幻想血統(ザバーニーヤ)』
 ランク:E〜A
 種別:対人・対軍宝具
 レンジ:-
 最大補足:-
 肉体を自在に変質させ、過去に紡がれし18の御業を再現する能力。
 実際は過酷な肉体改造なども行われていたが、英霊化にあたり肉体を自在に変質させる形となった。
 オリジナルの御業と比べ威力が上か下かはケースバイケースとなる。

 ・妄想心音(ザバーニーヤ)
  背中に移植したシャイターンの腕で相手の心臓を複製、呪殺する業。

 ・空想電脳(ザバーニーヤ)
  接触した敵の頭を爆弾に作り変える業。

 ・夢想髄液(ザバーニーヤ)
  可聴領域を超えた歌声で相手を操る業。オリジナルの業を超えた力を持つ。
  大人数を対象とした場合、脳を揺らし魔術回路を暴走させる等の効果を持つ。
  一人に対象を限定すれば、並のサーヴァントの膝をつかせ、人間ならば脳をそのもの支配し操る事ができる。
  人体発火現象を誘発させることも可能。

 ・狂想閃影(ザバーニーヤ)
  髪の毛を自在に伸縮させて操る業。

 ・断想体温(ザバーニーヤ)
  己の皮膚を『魔境の水晶』の如く硬化させ、銃弾をも弾く護りを得る業。

 ・妄想毒身(ザバーニーヤ)
  あらゆる体液、爪や皮膚、吐息すら含め、己の全てを猛毒とする業。また、自身の耐毒性を高める効果もある。
  無差別殺害を避けるべく、毒の濃度はオリジナルより低下してしまっている。自身の血に毒を集中して、一時的に使用する程度に留まる。

 ・瞑想神経(ザバーニーヤ)
  魔力・水・風・電気などのエネルギーの流れを完全知覚する業。

 他11種類

【weapon】
 ダーク:投擲用短剣。全身いたるところに仕込まれている。

【人物背景】
 ハサン・サッバーハになれなかった少女。狂信者。
 歴代の長18人の奥義を再現するに至るも、独自の業を編み出せず、また暗殺者に不向きな性格から長となれなかった。
 どちらかというと「暗殺者」というよりも「戦士」としての面が強く、状況の打破に正面突破を好む。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の破壊 ムーンセルを人の手から遠ざける

【基本戦術、方針、運用法】
 異端の魔術師、聖杯を求める者に対しては問答無用。
 ただし巻き込まれた第三者、中立の者へは攻撃せず、改宗を勧める。
 狂信者ではあるが、だからこそ「ハサン」であるデズモンドには忠実。忠犬。わんこ状態。

.


170 : デズモンド&アサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:44:11 xpCPnYqQ0

【マスター】
 デズモンド・マイルズ@アサシンクリード

【マスターとしての願い】
 聖杯の破壊 ムーンセルを人の手から遠ざける

【能力・技能】
・気配遮断EX:世界そのものと同化。攻撃する瞬間だけA+になる。
・フリーラン:市街地での高速移動能力。また超高層から飛び降りても負傷しない。
・鷹の目:驚異的な集中力によってもたらされる超感覚。敵味方の識別や、あらゆる物的証拠の察知など。
・マスターアサシン:過去のアサシンたちの持つ破壊工作や暗殺技術の完全継承。当代のハサン・サッバーハ。

【weapon】
 アサシンブレード:左腕に着用されるガントレット式の飛出式小剣。アサシンの象徴。一撃必殺の暗器。
 アルタイルの剣:伝説のアサシンが好んで用いたとされる長剣と短剣の一式。現代まで存在する宝具。
 ダーク:投擲用短剣。全身いたるところに仕込まれている。
 クロスボウ:無音狙撃武器。折りたたみ式で携帯でき、毒矢を発射することも可能。
 フックガン:鉤縄を射出する武器。主に移動補助だが、銛撃銃の要領で攻撃にも活用できる。
 ハンドガン:何の変哲もないオートマチック拳銃。

【人物背景】
 アサシン教団の末裔として、テンプル騎士団との戦いに巻き込まれた青年。
 先祖である伝説のアサシン、最強のアサシンの経験を「流入」された結果、恐るべき実力を有する。
 人類を歪める「エデンの果実」を巡るテンプル騎士団との戦いの末、人類を救うことを決断して死亡した。
 当代におけるハサン・サッバーハ。

【方針】
 アルタイルの経験による白兵戦および暗殺。
 エツィオの経験による爆薬、毒薬、パラシュートやグライダーによる長距離移動。
 コナーの記憶によるゲリラ戦、射撃などを活用し、アサシンとして暗躍を続ける。
 魔力量は多くないが、アサシンが宝具連発をしたがるので「待て」を多様せざるを得ない模様。


.


171 : デズモンド&アサシン ◆yYcNedCd82 :2016/05/04(水) 00:44:54 xpCPnYqQ0
以上です
「Fate/Reverse」に投稿したアサシンxアサシンの改稿になります
よろしくお願いします


172 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:47:54 nZ04xzVI0
投下します。


173 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:49:15 nZ04xzVI0
(これまでのあらすじ)
父親の経営するレストランで働く看板娘、エルメェス・コステロ。
しかし平和な生活から一転、彼女は封印された記憶を取り戻して聖杯戦争への参加を余儀なくされる。
サカキ・ワタナベと名乗るバーサーカーを召喚した彼女にアサシンの無慈悲な魔の手が迫る…

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ナムサン!警戒を怠っていた2人を数多の矢が襲う!
いくら油断していたとはいえ、2人の手練れ相手に勘付かれることなく弓を射るとはなんたるワザマエか!


しかし、ワタナベとエルメェスにとってこの程度の襲撃などはチャメシ・インシデント。即座に迎撃の姿勢を取る。
「ウリャアアアアアアアッ!」
「ハイーッ!」
ワタナベはスリケンを投げ、エルメェスは『スタンド』と呼ばれる超能力めいた精神の像ですべての矢を撃ち落とす!


「あの量の矢をすべて撃ち落とすとは…中々の腕前と見える…」
前方の物陰から襲撃者───アサシンがしめやかに躍り出る。
アサシンは、無骨なアトモスフィアを醸し出す長身の男であり、その首からは人間の耳をぶら下げている。コワイ!
「私は武器を使わない体術での暗殺を得意としていてね…正面切って君を殺させてもらうよ…そして君の耳も私のコレクションに加え入れるんだ…ふふふ…いいだろ?」


174 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:50:13 nZ04xzVI0

「ドーモ、はじめまして。サカキ・ワタナ──」
言い終わるかどうかの内にアサシンが全体重をかけた飛び蹴りを放った!アイサツの最中に攻撃をするのはムラハチもののシツレイである。
だが、ワタナベはそんなことは気にもかけずに奇妙な中腰の姿勢を取った。
「フンハー!」
アサシンの蹴りがその身体を捉える直前、ワタナベはカラテ・シャウトを叫ぶ!


そしてそのままアサシンの飛び蹴りがワタナベに突き刺さる────かと思われたが…おお、ゴウランガ!なにか超自然の力によって、アサシンの脚は逆にがっちりと捉えられてしまったではないか!フシギ!


アサシンの脚を固定したまま、ワタナベは上半身をねじる。上体だけが、ほとんど真後ろを向いている。
そして見よ!はち切れんばかりに膨張しているその右腕を!
何かがくる!しかし、がっちりと捉えられてしまっている哀れなアサシンは逃げることはおろか、ガードすることすらもできない!

「ハイーッ!」
強烈なカラテ・シャウトと共に、膨張した拳を、ねじった体制から一気にアサシンへと振り下ろした!
今見せた2つのヒサツ・ワザこそが、ワタナベ────バーサーカーの宝具であり、カラテ・ジツである。
鍛え抜かれたアサシンの肉体だが、ワタナベのカラテの前にはショウジ戸も同然!
「アバーッ!サヨナラ!」
ナムアミダブツ!衝撃に耐えきれずにアサシンは爆発四散!英霊の座へと送り返されてしまった!


175 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:51:05 nZ04xzVI0

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「エルメェス=サン、あんたには聖杯で叶えたい願い事はあるのか?」
戦いが終わり、宝具やステータスを一通り確認した2人が次に行ったのは、願いの確認であった。主従関係において、これを確認するのとしないのとでは信頼感に天と地ほどの差が出る。


エルメェスはしばらく悩む素振りを見せてからこう答えた。
「あたしが望むのは復讐だ。あたしの家族を殺したゲロっぱき野郎を生かしてはおけない…だが!それはヤツとあたし1人の問題だ。聖杯なんてわけの判らないものに復讐を願うつもりはないし、他の参加者を殺してまで願いを叶えようとしたらヤツと同じになってしまう」
そう答えるエルメェスの眼には黄金の輝きが宿っていた。そして、そのバストは実際豊満であった。

「家族…家族は大事だ。だがおれは……」
儚げにそう呟いたと思うと、ワタナベは突然ぶるぶると震えだし、地面に両膝をついた。


「おい!バーサーカー=サン?どうした!しっかりしろ!」
エルメェスは自身のサーヴァントを気遣い、様子を見ようと近づいた。
「畜生、やばい、オハギ、オハギは…あったはずだ…」
バーサーカーは、泡を噴き、今にも倒れそうになりながらコートのポケットからプラスチック製のタッパーを出す。

「エルメェス=サン、すまないがこの中からオハギを一つ取ってくれ!一つで十分だ!早く!」
「わかった、まかしときな!」
エルメェスは、タッパーを開き、中から紫色のまるい塊をひとつひとつ掴んでワタナベの口に押し込んだ。

すると、とたんにワタナベの震えはおさまり、恍惚とした表情を浮かべた。
「アアー、あまい、きく、イイ……遙かにイイ」
「おい?バーサーカー=サン?大丈夫か?」
「あ、ああ…すまんな。オハギが止められないんだ…オハギが切れたらおれは手が付けられなくなってしまう」
ワタナベは我に返り、ばつが悪そうに言った。

「それで、さっきの話だが…エルメェス=サン。おまえはこの聖杯戦争から脱出したい、ということでいいんだな?そういうことならば、おれも協力しよう」
(肉親を失った彼女を助けることが、せめてもの償いとなるのならば……)


─────こうして、復讐者と殺人嗜好者は主従関係を結んだ。
彼女たちがこれからどうなっていくのか。
それは、月の光を受けて輝くシール──復讐の許可証と、オハギ──殺人の抑制剤のみが知る。


176 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:51:55 nZ04xzVI0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
インターラプター@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:C

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
狂化:─(A)
通常時は後述のスキルの影響によって効果していない。
だが、10ターンの間オハギを食べずにいると、彼の殺人嗜好が剥き出しになり周囲の人間をすべて殺すべく暴走する。なお、その際の狂化のランクは括弧内まで上がり、幸運と宝具を除いた全てのステータスが1ランクずつアップする。

【保有スキル】
オハギ中毒:A
彼はオハギによって自身の殺人衝動を抑えているが、その代償として全盛期に比べて戦闘能力が落ちている。

心眼(偽):B
バーサーカーの中に眠るニンジャ・ソウルが修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す『戦闘論理』
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

精神汚染:─(B)
オハギを10ターン食べずにいると発動。
精神が錯乱し、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
また、同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が図れない。

無窮の試練:C
嘗てソウカイヤ・シックスゲイツ最強と謳われたニンジャ。
いかなる戦況下においても、その戦闘力を十全に発揮できる。

【宝具】
『カラダチ』
ランク:C 種別:対人宝具(自分自身) レンジ:─ 最大捕捉:─
物理的な攻撃を無効化するムテキ・アティチュードの一種。
相手の打撃を中腰で受けることによって、その反発力をカラテ振動させて、攻撃に使われた物体を磁石のように吸い寄せる絶対防御カラテ。


『タタミ・ケン』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:─ 最大捕捉:1
上半身を最大限ねじって繰り出す、筋力と遠心力を使った強烈なカラテ。
『カラダチ』との相性は実際バツグンで、身動きの取れなくなった相手にこのヒサツ・ワザを繰り出すことが多い。

【weapon】
自身の肉体

【人物背景】
「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」に登場したニンジャ。
嘗てはソウカイヤ最強と呼ばれ、ガトリングガン1ドラムを耐えきるほどの強さを有していたが、ソウカイヤを抜けて浮浪者キャンプのヨージンボーとして働いていた。
浮浪者キャンプにて、ニンジャスレイヤーとの親交を深めるが、オハギ中毒の治療という条件でソウカイ・シックスゲイツに復帰、ニンジャスレイヤーと交戦する。
しかし、途中で浮浪者キャンプをヒョットコ軍団が襲撃してきたために一時休戦、殲滅にあたる。
オハギが切れて殺人嗜好が戻った状態で再びニンジャスレイヤーと対峙するものの、敗北して彼にカイシャクされた。
家族を大切にするエルメェスに影響されたため、ソウカイヤ最強と呼ばれた全盛期の頃の姿ではなく、最も人間性の高いオハギ中毒時代の姿で召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
たくさんの人をツジギリした罪の償い

【方針】
エルメェスを元の世界に返す方法を探す。
オハギは絶対に切らさないようにする。

【マスター】
エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険 第6部『ストーンオーシャン』

【weapon】
なし

【能力・技能】
スタンドである『キッス』
強く念じると手のひらからシールが出てくるスタンド。
そのシールを物体に貼ると分裂して2つになる。また、シールを剥がすと2つになっていたものは1つに戻るが、その際に破壊が生じる。この性質を利用し、相手に対するトラップとして使ったり、ダメージ覚悟で自分たちの手足に貼ることで手数を2倍にしたりするなどその応用例は様々である。
【破壊力:A スピード:A 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:C 成長性:A】

【参戦時期】
スタンドに目覚めた後。スポーツ・マックスに復讐する前。

【人物背景】
荒っぽい口調と厳つい容姿で威圧感を与えてしまうこともあるが、実際には情に厚く心優しい人物。
父から受け継いだレストランを経営していた母のような存在の姉がいた。
しかし、ある日スポーツ・マックスによる裏世界の殺人を偶然目撃してしまい、数日後姉は死体で発見される。
それが原因でレストランは閉店し父親も死亡、エルメェスはまさに人生のどん底に叩き落された。
刑務所内にいるスポーツ・マックスへの復讐のためにわざと服役し、そこでスタンドを発現───奇妙な運命に巻き込まれていく。

【方針】
聖杯戦争から脱出する方法を探す。

【備考】
聖杯戦争に姉はNPCとして再現されておらず、エルメェスは父と2人でレストランを経営しています。


177 : アフェクション・ウィズ・アベンジ・アンド・オハギ  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/04(水) 10:52:25 nZ04xzVI0
以上で投下を終了します。


178 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:21:13 94m/rWAU0
投下乙です!それでは感想を一つ。

>>デズモンド&アサシン

まさかのWアサシン…ですと…
アサシンクリードは把握していませんが、
ハサンの血を引き且つ聖杯を求めぬ
マスターは、Fakeアサシンにとっては最高の
相棒でしょうね。

ご投下有難うございます。


>>エルメェス・コステロ&バーサーカー

ヤク中バーサーカーその2…だと…
マスターに優しいこのサーヴァントを引き当てられて良かったですね。
果たしてエルメェス=サンは、この聖杯戦争から抜け出せるのか!?

ご投下有難うございます。


179 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:21:38 94m/rWAU0
それでは、私も候補作を一つ、投下させていただきます。


180 : 宜野座伸元&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:26:06 94m/rWAU0
罪を着せられた人間は、鉄格子の中に投げ込まれる。

罪無き人間は、その与えられた正義を振りかざす。


天秤を手に断罪の神は告げる。真の世界を。


◆  ◆  ◆




今日も夜街にサイレンがけたたましく鳴り響く。
起こったのは強盗殺人事件、犯人は逃走中だが、逃げ足が速く追い付けない。
警察の組織力というのは決して、1人で太刀打ち出来るような物ではなかった。
しかし、この犯罪者はやってのけたのだ、囲んできた警察官を皆殺しにしたのだ。
そう、「サーヴァント」の力で。

追手は、既にこの世にいない。しかも、他の警官に連絡する前に、
サーヴァントは警官を斬った、故に、幾ら追っても見つからず、この様な事件はこれで9度目。
しかも1度目は2週間程前、2週間で、9度目。考えてみたら思わず笑ってしまうような数字であろう。
しかし、それを可能とするのが、サーヴァントという代物だった。
物を盗み人を殺した男はそのサーヴァントを侍りながら、走り続ける。
動機は聖杯戦争の軍資金だ。遊び呆ける金は無い、しかし金は人間が生きるための衣食住をいとも
手にすることが出来る代物であり、所持金が9桁もあれば大衆娯楽から土地だって好き放題手にすることが出来る、
更に使い方次第では人の心を操ることだって出来る、正に現代に残る一種の「魔法」だ。
彼は魔法はおろか「魔術」ですら使えない、マスターになった影響で魔術回路は発生させられたが、
結局はサーヴァントの燃料タンクとしか意味を成さない、それなら現代の「魔法」で頼っていく、
そんな方針だ。「魔法」と言っても、かなり捻くれた言い方だが。
しかし、遊びに使う暇が無いにも関わらず彼が資金集めに励む理由は、もう一つある。
詳細な理由は分からない、彼は異常者だから、強いて言うなら、これだ。

「人を殺したい。」

それだけで十分だ。


理由を付けて人を殺し、人が倒れる様を見て、男は恍惚とした笑みを浮かべている。
今はサーヴァントと共に路地裏を逃走しているが、もし止まれるならその場で自慰行為を
してしまいたいぐらいに、彼は興奮していた。異常だ。
だが、異常者とその片腕の眼に突然、遠い所から1人の男の姿が薄っすらと見える。

サーヴァントはマスターに念話で耳を貸す。

「マスター、彼からはサーヴァントの気配を感じます。」

しかし、遠くにいたはずのその男は、いつの間にか彼らとの差を凡そ2m程に縮めてしまっていた。
一瞬だ、僅か一瞬で、だ。この異常者の目から映る数値が、それが事実であることを表す。
一気にズームアップされた事で、男の風貌がよく見える。
結った髪に気品漂う端正な顔立ち、そして黒い着物の上に陣羽織を羽織ったという、
何とも時代錯誤に感じられる格好をしていた。そして腰には刀をさしている。
そして、
恐らくは「セイバー」のクラスであろう。

「ぐ…マスター・敵を発見!」

冷静な態度を取っていたサーヴァントが歯を閉じながら武器を取り出す。

そしてそのセイバーもまた、腰に差した刀に手をゆったりと掛けた。

その瞬間、サーヴァントは槍を一瞬で抜き、彼の眼の前に構えた。
その時、カキィン!という音が鳴り、見れば、彼の槍にはいつの間にか
セイバーの刀がぶつかっていた。だがセイバーは、氷のように冷たい表情を浮かべながらも
平然としていた。


「成る程、流石は英霊だ、私の刀を見切られるほどの技量はあるか」


この時、異常者は、どの様な顔をしていたのだろうか。


◆  ◆  ◆


181 : 宜野座伸元&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:26:31 94m/rWAU0
十台程のパトカーが、サイレンを鳴らさずに街を走る。
犯人は逮捕され、事件は収束した。
前から3番目のパトカーの後部座席に座る刑事…宜野座伸元は、
その犯人を捕まえた者として賞賛を受けていたが、
一方で、嘲笑を浴びせられたりもした。
それもそうだろう、宜野座は警視から警部補に格を下げられた人間だ、
それを笑う連中の1人や2人はいるだろう。
それに、宜野座も元々は嘲る側の人間であった。
人の事は言えんだろう。

(狡噛や親父も、こんな扱いだったよな…)

元の世界では、宜野座は「執行官」謂わば猟犬であった。
犯罪者と同じ精神状態を持った、社会の蚊帳の外にいる人間。
手綱を握る「監視官」の命令通りに銃を手にお仲間の犯罪者を
この手で狙う者、しかし、シビュラシステムに管理されたあの社会では
人間扱いされることはない、本来なら檻の中で矯正されるのが相応しい。
犯罪係数が上がった人間に相応しい仕事は精々がこの執行官だ。
だがそれでも人間扱いする者は殆どいない、会話をしていても
「銃を咥えた二足歩行の警察犬」としか見てくれない監視官など
ザラにいる、後輩の監視官が気さくに接した時は同僚の執行官は
さぞ驚いた、勿論宜野座もだ。

(にしても、これが親父が若い頃の、「シビュラの無い世界」か…)

今は亡き父親、征陸智己はシビュラシステムが置かれる前は
こんな時代で刑事をしていた。成る程、悪くはない。
いや、寧ろ良いかもしれない。宜野座がいた日本といえば、
家はホログラムで飾られ、料理も風呂沸かしも全自動であった。
しかし、建造物にそんな物は存在せず、料理はキッチンで、
風呂沸かしも手動で行う、まるでアナログという言葉を具現化したかのような
世界だ、昔の自分だったら何て辛辣な言葉を掛けていたかしれない。
今腰に下げられているのは、警察用のリボルバーだ、あんな重くて
よく喋る変形銃ではない、ロックは無いので悪用される危険性は
高いが、何故かドミネーターよりは軽く感じられた。
そういえば、狡噛も槙島相手にこの銃を使ったらしい。

そんな事を考えながらも、自分のサーヴァントに念話を掛けてみる。

『どうだった?セイバー、今回の相手は』

『大した相手ではなかった』


宜野座が引き当てたサーヴァント、セイバーは優秀だった。
今回の事件の犯人であるサーヴァントを倒したのも、セイバーだ。
セイバーの真名は、朽木白哉。悪霊「虚」を狩る死神。
所謂悪霊祓いを生業としていることから、霊の気配を感じ取る能力は
高かった、だから毎回逃してしまうと言われたサーヴァントの位置を
特定する事が出来た。


しかし、こうも職業柄が似ているとは驚いた物だ。
色素が濃くなった人間を撃つ執行官。
怨念に染まった悪霊を斬る死神。
そういう点ではある種の親近感を感じさせる。


                 けい
『そう言えば、聞いていなかったな、兄の願いを。』


願い…か…
確かに望みたい物は幾つかある。

父を生き返らせようか。
狡噛や自分を監視官に戻そうか。

だが、そんな物は手を朱く染めてまで手にしたい願いではない。


『…特に無いな、強いて言うなら、元の世界に戻る…事か?』


『そうか…所で、だ、マスター。』


返答を終えたセイバーから、更に恰も忠告するかのような声が響く。


『偶には、父の顔を見に行け』


(親父…か…)
父…征陸智己は、NPCとしてこのSE.RA.PHに生きている。
今は定年退職して、実家でゆっくりしているという設定だ。
宜野座は、彼に対して冷たく当たった事を後悔している。
彼に憧れたから、自分は公安局に入ったのに。
だからせめて、彼に対しては普通の息子として接してやりたい。



『ああ…そうだな…暇が出来たら、そうするよ』


心内でそう答えて、車の窓を見つめる宜野座を乗せて、パトカーは夜の街を走る。


182 : 宜野座伸元&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:26:54 94m/rWAU0
【クラス名】セイバー
【出典】BLEACH
【性別】男
【真名】朽木白哉
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】

対魔力:B
魔力に対する耐性。
第三節以下の詠唱による魔術を無効化させる。
大魔術、儀礼呪法を以っても、傷つけるのは難しい。


騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
野獣ランクの獣は乗りこなせない。


【固有スキル】

死神:A
虚を狩る者。
体術「白打」、移動術「歩法」、霊術「鬼道」
そして斬魄刀を操る「斬術」等のスキルを兼ねる他、
反英雄に対しパラメータに補正が掛かる。
Aランクとなると、卍解を習得し隊長格となっているレベルである。


黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生でどれ程の金が回ってくるかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカっぷり、一生金には困らない。

心眼(真):C
修行、鍛錬に酔って培った洞察力。
自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、活路を導き出す戦闘論理。
逆転の可能性が数%でもあるなら、その作戦を実行に移しだすチャンスを手繰り寄せられる。



【宝具】

「始解・千本桜」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5 最大捕捉:5人

セイバーの所持する斬魄刀の第一開放。
「散れ」という詠唱とともに起動。
刃を舞い落ちる無数の桜の花弁に変化させ、敵を八つ裂きにする。



「卍解・千本桜景厳」

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:50人

セイバーの斬魄刀の第二開放。
斬魄刀を地面に落とし「散れ」という詠唱で起動。
散った千本桜の刃を収束、大量の日本刀の形に変化させ地面から出現させる。
そのまま千本桜を超える威力で刃を花弁として発射できる他、
刀に変化させた刃を敵に目掛けて放射する事が可能。
また、この宝具は、幾つもの応用技が存在し、臨機応変な戦い方が出来る。


【Weapon】

「斬魄刀」
セイバーが所持する、死神の基本装備であり、
宝具の起動キー。



【人物背景】

死神の名門貴族「朽木家」の当主にして、
若くして護廷十三隊第六番隊隊長にのし上がった実力者。
妻、緋真を喪った際、義妹のルキアを守ると
約束したのだが、その時に掟を破ったことから、
彼は朽木家の当主として掟は二度と破らんと誓い、
気付けば守ろうと約束したはずのルキアを処刑台へと送ろうとしていた。
その時黒崎一護との戦いを経て和解。基本的に冷静沈着で感情を表に出さない。
しかし何処か不器用な優しさを向ける所があり、また美的センスは壊滅的で、
番外編では「ワカメ大使」というキャラクターの
デザインを書いたりとコミカルな一面を見せたりする。
因みに子供の頃は負けず嫌いなやんちゃ坊主だったとか。


【聖杯にかける願い】

???


183 : 宜野座伸元&セイバー ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:27:16 94m/rWAU0
【マスター名】宜野座伸元
【出典】PSYCHO-PASS
【性別】男

【Weapon】

「警察官の装備品」
彼の「役割」上で与えられた、警察官としての装備。
拳銃、手錠、警棒等。ただし安易に使ったら罰則間違いなし。



【能力・技能】

これと言ってなし。
ただし、「元監視官」としての優れた捜査能力、統率力、
射撃能力を持っている。


【人物背景】

公安局に所属する監視官…だった男。
以前は伊達眼鏡を掛けていた。
生真面目な性格で、同じく監視官であった同僚が
色素を濁らせて降格された事から、色素を保つために
執行官は飽くまで「飼い犬」として見て関わりを避けていた。
それは父であっても例外ではなかった、しかし、その父が
槙島聖護によって殺害された為に色素が濁り始めたために
執行官に降格、それからは固い態度は捨て父に似た様な
軽い態度を取るようになった。
また、その生真面目さ故に大衆娯楽には大変疎く、
部下に「バレンタインは親しい男にチョコを配り回る行事だ」
という冗談に騙されて本当に同僚にチョコを配り歩いたという
経験がある。

【聖杯にかける願い】

父を生き返らせようだとか、狡噛を連れ戻そうだとか、
そんな願いは叶えるつもりは無い、ただ、シビュラに似た
臭いのするムーンセルについては詳しく調べたい。


【方針】

あまり積極的に参加する気はない。
ただし、秩序を乱す参加者は倒す。
また、自分と同じく巻き込まれた参加者と同盟を組むことも考えている。


184 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/05(木) 08:27:41 94m/rWAU0
以上で、投下を終了させていただきます。


185 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:38:27 QL/GQIuE0
投下します


186 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:39:55 QL/GQIuE0
―――――
鉤生十兵衛
………――
カギューは今まで『聖杯戦争』というものを知らず、生まれてからずっと一度も参加した事がなかったが、初めて元の世界を出て電脳空間『SE.RA.PH』に連れてこられ、そこで封印されていた記憶を取り戻し、『聖杯戦争』の参加者であるマスターとなった時……

―――
それは彼女の下校の時だった
―――――――

記憶の復活と共に召喚された彼女のサーヴァントは生前、裕福な財務官僚の息子で、将来の地位と財産が保障されていた青年…………………

その男――――
どうしてか、真名は不明であった。

他の参加者たちによる魂喰いの被害に、カギューが遭っていなかったのがまだしもの救い…
召喚されたサーヴァントは、彼女と共に即座に近場の休憩所に足を運び、『聖杯戦争』に参加する主従がいくつか確認し合うべきことについて話し合おうとした…………


だ が そ れ が 近 辺 に 居 た セ イ バ ー の 気 配 探 知 に 触 れ た !





187 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:40:42 QL/GQIuE0
近隣住民たちから憩いの場として親しまれている休憩所――その傍を通っている道で二人のサーヴァントが向かい合っている。
一人は黒い和服姿で精悍な目つきをしている、突如現れた襲撃者。
もう一人は青を基調としたタイトなスーツ、首にリボンのようなネクタイを巻いている、カギューのサーヴァント。
両者の獲物は――前者は刀、後者は西洋剣の違いがあるとは言え――どちらも『剣』であった。
カギューは己のサーヴァントから『相手はサーヴァントで、お前の攻撃が通じる相手ではないから引っ込んでいろ』と言われ、仕方なく後方に控えている。
和服の男のマスターの姿は見当たらない。近くに隠れているのか、それとも使い魔か何かで遠くからこの場を観察しているのだろう。

「ヤァヤァ我こそはせいばぁ也。貴様に恨みは無いが……我がすきる『気配探知』に引っかかったのが運の尽きじゃ」

和服のセイバーは低い声でそう言うと、カギューのサーヴァントの返事も待たずに斬りかかった。
相手に先手を取られてしまったカギューのサーヴァントは己の持つ剣で咄嗟にその攻撃を防ぐ。
と、同時に、夕方を過ぎ暗闇が支配しつつある道に火花が散った。
その後何度か、斬り合い防ぎ合う両者。
しかし、何度目かの攻防で、カギューのサーヴァントは力負けをし、剣を弾かれてしまう。
飛んでいった彼の剣は近くの地面に聖剣エクスカリバーの如く深々と刺さった。

「!?」

己のサーヴァントの危機に助けを入れようと、思わず身を乗り出すカギュー。
しかし、当の男は左手を真横に突き出し、後方の彼女を制した。

「コイツと俺は神秘によって作られた存在――サーヴァントだ……マスター、どれだけ腕っ節に自信があろうと、お前からは魔力を全然感じない……故に、その拳はコイツには届かねえ……それが……この『聖杯戦争』の流儀だ」

先程の攻防で体力を消費したのか、スーツの男は肩で息をしながらそう言う。
更に彼は『それに』と言葉を続ける。

「これは俺とコイツの一対一で行われる正統なる果し合い――『決闘』だ。それを邪魔する者は……マスター、お前であっても許さんぞ……」

そう言われ、カギューは唇を悔しそうに噛んだ後、大人しく一歩引いた。


188 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:41:50 QL/GQIuE0
彼の言葉に和服のセイバーは口元を僅かに歪める。

「獲物を失い、体力を消費した状態で、未だますたぁからの助勢を拒否すると言うのか。万が一、もしかすれば、その女子の攻撃手段には神秘が籠っているかも知れんのじゃぞ、すぅつのせいばぁよ。かかか」

セイバーの挑発じみた台詞。
しかし、カギューのサーヴァントは静かにこう言った。

「おい……俺のクラスがセイバーだと――いつ言った?」

さっきまで西洋剣を使って戦っていたのだから、相手は己と同じセイバーである――和服のセイバーはそう思い込んでいた。それはごく当然の分析である。
しかし、その考えは間違いだと今否定されたのだ。
彼は笑いを止め、キョトンとした顔をした。
だが、その次の瞬間には彼の顔は元の精悍なそれに戻る。

「成る程、己のくらすを隠蔽する為にわざわざ西洋剣を使っていたという訳か?……小賢しい真似じゃの、かかか。しかしのぉ、くらすも分からぬさぁゔぁんとよ。それがどうしたと言うのじゃ?」

両腕を広げて言葉を続けるセイバー。
己の勝利を確信した者の浮かべる表情が彼の顔に存在していた。

「その策で何か貴様は利を得たのか? 現に貴様は己のくらすに一致していない獲物を用いて戦った所為で、圧倒的不利に追い込まれているではないか」

この状況が、目の前の道化の姿が余りにも可笑しいとでも言うように笑い声をあげるセイバー。彼の顔には最初の精悍な表情はもう残っていなかった。

「それに剣が手から離れた今、貴様は何を使って戦うと言うのじゃ? 弓矢か? 銃か? 槍か? 戦車か?魔術か? 拳か? かかかかかかかかかかかかァーッ!」

精神が余程昂ったのか、台詞の勢いに乗って、思わずクラス不明のサーヴァントに突進するかのような勢いで斬りかかるセイバー。
それに対し、スーツの男は言う。

「当然――――」

同時に彼は腰の右にぶら下げていた銃のホルスターじみた丸い袋から拳大の物体を取り出す。
それはさながら金平糖のような形をした――一つの大きな金属製のボールに何個かの小さなそれが付いた奇妙な物であった。
その武器の名は――――

「――――「鉄球」だッ!」

――――『鉄球』。正確に言えば『壊れゆく鉄球(レッキングボール)』である。
カギューのサーヴァントは袋から取り出したそれを、流れるような、しかしそれでいて力強い動作で目の前のセイバーに向かって投擲した。
『フォン』と鉄球が風を切る音が鳴る。
そう、クラス不明であった彼の正体とは射撃兵装を持つ英霊が宛てがわれるクラス――アーチャーだったのだ。

「なっ、何ィィィイーーーーーッ!?」

突如現れた、予想だにしていない武器の出現に叫び声をあげるセイバー。しかし、勢い付いた彼の突進は今更止まらないし、横に避けることも出来ない。
ならば、と己の手に持つ刀で鉄球を迎え撃とうとする。
しかし、それが失敗だった。
鉄球に面と向かって衝突した結果、彼の刀は粉々に砕かれ、その破片を桜吹雪めいて撒き散らす。
当然だ。
この宝具は、アーチャーが祖先から受け継いだ『鉄球の技術』の具現化とも言えるものなのだから。生半可な物では迎え撃つどころか防御することすら難しい。
セイバーの刀を砕いた後も、まだまだ鉄球の勢いはそれでは止まらない。
刀の向こうにある――己の信頼していた獲物が撃ち砕かれ、大口を開けて驚いているセイバーの顔のド真ん中に深々とめり込んだ。


ドッグッシャアアア


骨が砕ける音と血や脳漿の飛び散る音が混ざった何とも醜悪(グロテスク)なそれが、セイバーの断末魔代わりに辺りに響く。

「何だか後出しで勝ったみたいだが……まぁ、そこはお前がさっき急に襲い掛かってきたのとで……イーブンだろ……」

暫くすると、霊核を完全に破壊されたセイバーの姿は光に包まれて消えて行く。
道には再び闇だけが残った。


189 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:42:36 QL/GQIuE0
あれだけの戦闘をした後でその場に留まって置くのはマズいと考え、カギューとアーチャーはこの世界での彼女の家に行くことにした。

「己(おれ)は何も出来なかった……」

その途中の道で、カギューはポツリと呟く。
別に彼女は何の力も持っていないという訳ではない、寧ろ南家螺旋巻拳という、廻転エネルギーを用いる特殊な格闘技術を備えた非凡な少女である。
しかし、あくまで格闘技術は格闘技術。其処に神秘性はない。
故に、彼女はサーヴァントと戦うことは出来ないのだ。
これは今まで、とある目的で強さを求めていた彼女にとってはかなりショックな事実であった。
だが、落ち込んだ様子の主に対し、アーチャーは

「つまらねぇことで落ち込みやがって、つまらねぇ女だな、お前は」

と言う。

「お前の役割はマスター――つまり、俺に魔力を供給し、指示を出すだけのものだ。実際に闘うのはサーヴァント――俺だけで良いんだぜ。寧ろ、さっきも言ったように、俺が行う『決闘』にお前が助けであれ何であれ割り込むことは絶対に許さねェー」
「け、けど……!」

今までの人生の半分以上を強さの為に捧げていた己のアイデンティティすらも揺るがしかねないアーチャーのセリフに、少女は何かを言い返そうとする。が、それに続く言葉は出ない。
しかし、アーチャーは容赦なく言う。

「お前の目的はあくまで生き残る事であって闘う事では無いだろう? 殺す事なんて以ての外だ」
「……」
「闘う相手を殺りまくるのは――俺だけで良い……」

二人の間に沈黙が流れる。
だが、暫くすると次に口を開いたのはカギューであった。

「己がこの戦いでサーヴァント? 相手に闘うことが出来ないのは分かった……」

だけど、と彼女は言葉を続ける。

「それ以外で、己が出来ること――己が闘えることはきっとあるはずだ、いや見つけてみせる! もしそれが見つかったら……」
「……ふん、良いだろう。その時は好きにしろ」

アーチャーは自分の主の諦めの悪さに呆れたような笑いを浮かべた。




190 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:43:19 QL/GQIuE0
愛の為に戦う少女と、愛無き行い故に戦うことになった男。
二人が掴む物は勝利か、それとも――


191 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:44:45 QL/GQIuE0
【クラス】
アーチャー

【真名】
不明@ジョジョの奇妙な冒険 Steel Ball Run

【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力E 幸運E 宝具A++

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力への耐性。無効化は出来ず、ダメージを多少軽減する。

単独行動:E
魔力供給なしでもある程度限界していられる能力。
ただしマスター不在時には効果を発揮しない。

【固有スキル】
真名秘匿:EX
真名を隠蔽する能力。同ランク以上の『真名看破』を持つサーヴァントでない限り、このスキルを持つサーヴァントの真名を知る事は不可能。
まして、アーチャーのこのスキルのランクは規格外――EXである。仮に漫画や小説で言う『読者』のような、『世界の観測者』が居たとしても、それですら彼の真名を知る事は出来ないだろう。

回転:C+
掌にある物体に『回転』を加える技術。
『回転』やそれにより生じた振動によってあらゆる事象を引き起こす。

殴りながらヤリまくるのがいい女だったんだよ:A
女性に与えるダメージが増加する。
しかし、このスキルを発動するたびにアーチャーは世界の加護(漫画のキャラで言うところの、読者からの支持のようなもの)を失う。

【宝具】

《祖先から受け継ぐ『壊れゆく鉄球』(レッキングボール)》
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1〜10

鉄球に複数の小さな球(『衛星』)が付いたもの。及び、アーチャーが生前祖先から受け継いだ『鉄球の技術』が宝具に昇華されたもの。
それを投擲すると『衛星』が高速で射出され、レンジ(1〜5)内の敵を狙撃する。
『衛星』は掠るだけで相手に半身失調の効果を与える。

《場所は城壁の北西!(ポスト・デル・デュエロ・ドゥオミミ)》
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1

財務官僚の息子にして鉄球の後継者たるアーチャーの切り札。城壁の北西であり、そこで開かれた決闘の参加者であるアーチャーととある男、そして付添い人たちの『流儀』を昇華させた宝具。

かつてアーチャーが『決闘』の『付き添い人』に呼んだ者たちを召喚する。

アーチャーと彼の宝具に閉じ込められた相手は其処で『付き添い人』が見守る中、『決闘』を行う。
『決闘』は『正当なるもの』であるため、それ以前の戦闘での宝具やスキルによるステータス上昇・下降やその他特殊状態が一切ないクリーンな状態で両者は戦う事になる。

魔力供給が断たれるか、アーチャーが再起不能にならない限り、この宝具は解けない。しかし、たとえ相手がアーチャーを再起不能にしたとしても、その際相手は『付き添い人』によって聖杯戦争から『追放』される。
つまり、この宝具が発動した時点で相手はすでに『終わっていた』のだ。

なお、この宝具を発動させるためには

1)相手がアーチャーの逆鱗に触れる
2)相手がアーチャーからの『決闘』の申し出を受け入れる
3)相手がAランク以上の対魔力スキルを持っていない(持っている場合、キャンセルされるため)

の3つの条件が満たされていなくてはならず、それらを満たしていても消費魔力が著しく多いため、滅多に発動させる事は出来ない。

【weapon】



鉄球(レッキングボール)×2

【サーヴァントとしての願い】
なし。
正当なる決闘を求める。

【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険 Steel Ball Run(以下SBR)に僅か12ページだけ出てくるモブキャラ。
ネアポリス王国の財務官僚の息子であり、鉄球の技術を有している。
名前は判明しておらず、『義弟』『ウェカピポの妹の夫』と呼ばれる。
その通称からも分かる通り、彼はSBRの登場人物・ウェカピポの義弟である。
ウェカピポの妹と結婚し、殴りながらヤリまくるというDVで彼女を失明させた彼は、ウェカピポによって法王に『婚姻無効』の許可を取られそうになった。
だが、ウェカピポのその行動が彼の逆鱗に触れたのだ。
怒った彼はウェカピポに『決闘』を申し込む――が、結果は彼の死、そしてウェカピポの国外追放でその戦いは幕を下ろしたのであった……。


192 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:45:49 QL/GQIuE0
【マスター】
鉤生十兵衛@ねじまきカギュー

【能力・技能】
・南家螺旋巻拳
弾性高く鍛えた体から放たれる廻転の拳。その性質からか、柔らかい肉体を持つ女性にしか体得出来ない。
彼女はそれを用いて、より威力の高いパンチ(螺旋巻発条拳)をしたり、突風を起こしたり(螺旋巻旋風掌)出来る。


【weapon】
己の肉体

【人物背景】
一人称が『己(おれ)』でズボンにパンツという男性的な格好をしているが、れっきとした女の子。
幼馴染である葱沢鴨のことが大好きで、かつてはいじめられっ子だったのだが、『大きくなったらカモを守る』という思いから中国で鍛錬を積み、強く逞しく成長する。
言動がクールだが、その実熱い心を持っており、またたまに年相応の乙女らしい可愛らしさを見せる。

【マスターとしての願い】
生きて帰る

【備考】
参戦しているのは生徒会長選挙が終わった時期からです


193 : 決闘の妙、決闘の業 ◆As6lpa2ikE :2016/05/05(木) 14:46:07 QL/GQIuE0
投下終了です


194 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:33:13 o26dvALo0
投下します


195 : 明治剣客浪漫譚異聞録 ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:37:20 o26dvALo0

時は明治、『天剣』と謳われた一人の少年が居た。

幕末の亡霊の懐刀として修羅さながらに人を斬ったその少年は、

やがて、動乱の終息と共に姿を消した――――




196 : 明治剣客浪漫譚異聞録 ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:37:45 o26dvALo0

ぱしん。
もう幾度目になるか分からぬ小気味いい音が、広い空間に響き渡る。
音の主は、面をつけ重そうな胴を纏い、竹刀を手に正面に居る相手としのぎを削る多くの剣道部員達。
若いながらも勇猛で、普通ならば興味の余りない者でも魅入る光景。
しかし、少年にとってそれは余りにも退屈な景色だった。

事実、少年ならば一人でこの場に居る全員を相手取っても十秒と掛からず勝利できる。
自分に生きるための力を与えてくれた恩人にして、今は地獄で国盗りにでも挑んでいるであろうあの人に、この光景を見せたらどう思うだろうか。

―――剣道場炎上どころか、学園大火でもやってくれるかもしれないな。

仄かに苦笑する。
と、そこで隣にいた自分より背の低い剣道部所属の女の子が此方の様子を伺っている事に気付いた。
いつもの自分のニコニコ笑みを向けると、僅かに女の子の頬が緊張に染まり、その事を隠すように女の子は口を開く。

「あ、あの!どうかな。練習は結構大変だけど、宗次郎く…いや瀬田君ならきっと」
「うーん、残念だけど、“こう言うの”はちょーっと僕には向いてないかなァ」
「そ、そう」

しゅん、と小型犬の様に俯く少女の様子に再び少年、宗次郎は苦笑する。
気の毒ではあるが、こういう所で気を使っても仕方がない。
かといってこのまま帰るのも不憫か。
そう思った彼は、その代りとして少女に良い物を披露すると少女に告げた。
首を傾げる少女に向き直り、静かにとん、とんと右足のつま先を床に打ち据える。

少年の纏う空気が変わった。
それを感じ取った少女はごくりと生唾を飲み込み、ほんの時間にして刹那瞬きのために目を閉じる。


197 : 明治剣客浪漫譚異聞録 ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:38:14 o26dvALo0


―――彼の姿が、消えていた。


「!?!?」


慌てて辺りを見渡すが既に影も形も宗次郎の姿は見えない。
数秒前まで閉じられていた、道場から廊下に繋がる扉が開いていた事だけが、彼がここから立ち去った事の証明だった。

それはまさに妖術さながら
彼は一体……。少女はそう思ったが、いくら考えれど彼女が答えを出せる事は決してない。
彼女はNPC。再現されたキャラクターなのだから。
NPCが名探偵になれるはずがない。

少女は同じ剣道部の仲間が声をかけるまで、今しがた起きた怪現象に、ただただ呆然と立ち尽くすほかなかったのである。



「驚いてくれたかなァ」

いたずらっぽい笑みを浮かべながら、宗次郎は帰路についていた。
極意は殺生。剣術とは殺人術の明治の世に生を受けた身としては、彼らのやっている『剣道』は活心流などを収めたことのない彼にとって、聊か刺激に欠けたる物ではあったが、嫌いではなかった。
かつて彼を破った不殺の流浪人ならば、間違いなく是とするだろう。
あの男が目指した世とは、こう言う剣術が隆盛の世界だったのかもしれない。

始めは厄介な事に巻き込まれたと思ったが、こういう事なら、悪く無いと思った。
虐待を受け、寺子屋にすら通えなかった彼にとって、学生と言う身分を演じるのはかなり苦労したが、
最近はなんとか誤魔化せているのではないかと思う。

そして、ここの生活に慣れてきた、と言う事はそろそろ身の振り方を考えなければならない。

【少年(マスター)】

そんな宗次郎の心境を汲んだのか定かではないが、背後からしわがれた声をかけられた。
宗次郎は鍛え抜かれた明治の剣客としての超感覚を使い、周囲を索敵したのち声の方向に振り返る。

【何ですか?アサシンさん】
【与えられた役割(ロール)を謳歌し、踊り続けることは結構だが…そろそろ、開幕だぞ】


予想通りの言葉に、宗次郎の表情がほんの…ほんの少しだけ強張った。
笑みだけは、崩すことなく浮かべていたが。

【それで……マスター】
【はい?】
【君は何のために戦う。この命がかかった大舞台で、何故儚く弱い人間が、そうやって笑える】

そうやって枯れ木の様な風体のサーヴァント、シルベストリは問いかける。
目の前の主が凄惨な殺しあいを目前として何故笑うのか、彼はそれを知りたかった。
しかし、そんなシルベストリの知的欲求を裏切るように、まるで彼自身も分かっていないように宗次郎も腕を組んで考え始める。

…たっぷり三分はたった後、彼は静かに言葉を綴った。

【すみません、今の僕には貴方が満足するような答えは出せないと思います。……これは、生まれつきの様なものですから】
【………そうかね】


人の痛みを知っていたかつての優しい少年にとって、笑顔とは生きるための手段であり、諦観だった。
『天剣』の頃は武器であり、彼にとって欠落の象徴だった。

そして今の瀬田宗次郎は、無力だが心優しい少年でも、『天剣』でも、無い。
それなのに何故笑い続けるのか、余りにも長い間笑い続けたため染みついてしまったのか、彼にも分からない。

それでも尚、

【でも、答えを与えられなくても、一緒に答えを探すことはできると思うんです】
【何?】
【僕もね、これから始まる戦いの中で、答えを探してるんですよ。
かつて僕に道を示してくれた二人の男が、一体どちらが正しかったのか】
【―――そのために、君は戦うのか】


少年は迷うことなくはい、と答えた。
そして、冷たい機械人形を前にして一歩も臆することなく言葉を紡いでいく。

【その答えが出せた時―――”僕たち”はきっと、心の底から笑える気がするんです】

その時の自分ならきっと貴方が満足する答えを用意できるはずだと、たどり着いた答えによっては聖杯を獲る意思もあるという旨も宗次郎はハッキリと宣言した。
その答えを受けたシルベストリは顎に手をやり、しばし黙考した後。

【いいだろう。答えが出るその時まで、私は君の剣となろう
―――実のある答えが出ることを期待する】

そう少年に伝えた。
期待していた言葉とは乖離し、わずか程も落胆の念がないわけではなかったが、最終的に答えを得られるならば、今はこの答えでも悪くはない。
弱く小さな人と肩を並べて戦う事も、人が寄り添い生きる意味を得られるとするのならば、あるいは。


この瞬間、彼の胸に大事にしまわれたスズランの花がさわ、と揺れ。
一人の剣客と、一体の人形が織りなす幻想譚の開幕を、静かに告げていた―――


198 : 明治剣客浪漫譚異聞録 ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:38:36 o26dvALo0


【クラス】
アサシン

【真名】
シルベストリ@からくりサーカス

【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷B++ 魔力E 幸運C 宝具E

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】

気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】

自動人形:A
誰にも頼らず、舞台上で災禍を振りまき続ける呪われた人形たち。
Aランク相当の単独行動とEランク相当の対魔力と同等の効果を得るが、
人形ゆえに創造主には逆らうことができない。

戦闘続行:A+
自動人形は身体を壊されようとも、最後まで戦い続ける。
シルベストリは答えを得るまでは止まれない。

心眼(真):B
 自動人形でありながらも得ている戦闘論理。窮地において活路を導きだす。
 また、視覚に頼らずとも空間の把握がある程度は可能となる。

【宝具】

『刹那のからくりサーカス』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
『最古の四人』すら二人同時に切り伏せる正に刹那の超絶剣技とそれを支える体内に内蔵された数多の剣。

『哲学する自動人形(オートマータ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
シルベストリは同じ自動人形をして謳われる程常に答えを求め、問い続ける、『哲学する自動人形』である。
それ故に彼は戦いのさなかにあっても彼は相手に問を投げる。
そして、戦いの果てに、答えを得たとき、彼の全ステータスはワンランクアップし、彼は心の底から笑うことができるだろう。
この宝具は常時発動しているが、真に答えを出すまでは効果を発揮しない。

【weapon】
左手及び、身体に内蔵された剣。


【人物背景】
老人の姿をした自動人形。居合を得意とし、自動人形の中では伝説となる程の剣の使い手。
その美麗なる剣技は最古の四人の内の二人を一瞬で切り伏せるほど。
また、彼は自動人形達の間で哲学するオートマータとして有名であり、此度の戦いでも
その逸話が再現された形で現界している。
彼は常に答えを求めている。人間とは、笑顔とは、寄り添い生きる意味とは。
答えを得るために、老練なる人形は剣を取る。


【サーヴァントの願い】
宗次郎と共に答えを探す


【マスター】
瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-

【能力・技能】
『天剣』
幕末の悪鬼、志々雄真実が認めた天賦の剣才。

『縮地』
幼少期の虐待じみた生活により培われた人を遥かに超えた脚力。
初速から一気に最高速度まで駆け、目にも止まらぬ、のその先、目にも映らぬの境地まで到達する超神速の移動術。
室内ならば全方位攻撃も可能。

『瞬天殺』
縮地から天剣に繋げる神速の抜刀術。彼が唯一名を付けた絶技。
この技が決まれば相手を自らを死んだと認識させぬまま殺害できるが、
今の彼は感情欠落という三本の矢の内の一本を失っているため、先読みが可能になってしまっている。

【weapon】
無名の刀。

【人物背景】
昔は人の痛みを知っていた優しい少年。
かつては幕末の亡霊に魅入られ、あの内務卿の大久保利通すら一刀のもとに切り伏せた『天剣』
そして今は…『天剣』でも『流浪人』でもない、ただ一人の剣客。

【マスターとしての願い】
答えを探す。答えによっては聖杯を獲るのも吝かではない。


199 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/05(木) 20:42:02 o26dvALo0
投下終了です
また、アサシンのステータス作成の際、◆MZYnmmtZ2U氏の 水本ゆかり&アサシン を参考にさせていただきました


200 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:22:14 Lweci4920
投下します


201 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:22:45 Lweci4920
覚醒(ウェイクアップ)宿縁(さだめ)の相手をブッタ斬れ!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


深夜の小学校の校庭で激突する二つの影。輝く剣を手にした英霊、セイバーと、レイピアを持つ英霊、アサシンは十分間休み無く刃を交えていた。

「何故だ!?何故こうまで手こずる!?」

叫んだのはセイバー、アサシンを全てのステータスで上回るにも関わらず、その剣はアサシンの身体に掠る事さえない。
アサシンの剣撃もまたセイバーを捉えてはいないが、セイバーがアサシンを上回る敏捷性と、何よりも優れた直感スキルを有していなければ、当に決着していただろう。
最優のサーヴァントである己にステータスで圧倒的に劣るアサシンが互角以上に斬り結ぶ。
その事実に、剣の英霊たる自負を揺るがされたセイバーが、咆哮と共に浴びせる七連撃。その速度、剣に込められた威力、どれもが暗殺者風情に凌げるものでは無い。
それを――――アサシンはことも無げに右手のレイピアで捌き切って見せた。
アサシンはセイバーの剣を受けているわけでは無い、セイバーの剣にレイピアを絡め、引き寄せる様に釣っている。
これによりセイバーの剣はより勢いを増すも、僅かにベクトルを狂わされ虚しく虚空を断つのみ。
セイバーにはアサシンの剣理が解らない。己の剛剣と宝具の威力を以ってすればアサシンなどレイピアごと撃ち砕ける。
今に至るもセイバーはそう思っている、それは事実でもある。決して実現することは無いが。

「何故だ!?ステータスではセイバーが圧倒している!なのに!?」

事態を飲み込めず喚くセイバーのマスターにアサシンは冷笑を浴びせ、戦い出してから初めて口を開いた。

「口を開けば力だの速さだの…剣の英霊と言いながらどうしてそこまで単細胞なんだ?肉体機能が全てならこの星は恐竜しか生き残れなかったろうに」

「ほざけえええええええ!!!」

静かな、それでいて痛烈な罵倒に誇りを傷つけられたセイバーが距離を取る。
アサシンの速度では到底間に合わぬ距離から、宝具を用いて一気に決着をつけようというのだ。

轟く爆音。生じた衝撃波が校舎の窓ガラス破壊する。

「あ………が…」

セイバーは虚ろな目で自身の心臓に突き立ったレイピアを見た。
そのレイピアは当然の様にアサシンの手に在り。

――――この距離を、俺に気づかれずに詰めたのか……?

セイバーはここに聖杯戦争から脱落した。



「ひいぃぃいいいいい!!!」

腰を抜かし、へたり込んで奇声を上げるセイバーのマスターを、アサシンは詰まらなさそうに見やった。

「た…たた…た…たづげでぇえええええ!!!」

「貴様のサーヴァントは腕馴らしには役に立った」

「ああ…ああああああわああわ」

「私のマスターは魔術師では無い、つまり魔力が心許ない」

「へ………………ひひ…ひああああああああああ!!!」

アサシンが告げた言葉の意味を悟り、セイバーのマスター――――今は元が付くが――――は絞め殺される豚の様な悲鳴を上げた。

「貴様は魔力になってわれわれの役に立って貰おうか」


202 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:24:10 Lweci4920
ある総合病院の一室。ベッドに横たわる女性の元に、一組の男女が見舞いに訪れていた。
よく晴れた昼下がり、二人は病室に差す柔らかい陽光に照らされた、明るい部屋に似つかわしく無い、陰鬱な表情をしていた。

「姉さん…まだ、立てる様にならないの……」

夫婦であろう男女のうち、女の方が物憂げに男に話かけた。

「2年も眠っていたんだ…仕方ないさ…」

こちらも物憂げに呟く。

「姉さん………」

悲しげにベッドに横たわる女を見つめる女の顔は、ベッドの女の顔と鏡に写したかの様にそっくりだった。黒い瞳は悲しみに揺れ、今にも涙を零しそうだった。

「そんなに悲しまないで…貴女はいつもの様に笑っていれば良いのよ」

目を開ける力もないのか、瞼を閉じたまま答える女。

「姉さん……」



やがて、男が女を促して帰り。十五分後、静謐に満ちた病室に響く声。

【帰ったぞ】

空気を震わさぬ声、誰にも聞こえぬ声。しかし応える者はいた

「そう」

ベッドの女が応えた。

「周りに人の気配は」

【無い】

返事を聞くと、女は緩慢な動きで身を起こした。意識を取り戻したのは半月前。二年間もの昏睡は、彼女の身体から体力を奪い尽くしていた。
短く息を吐いて閉じていた瞼を開ける。その瞳は色素の薄い灰色だった。

「ふ…ぅ…ぐ…んっ……」

短く息を吐きながら身体の筋を解してゆく。衰えた体力、固まった筋肉。今の女には自分の足で立つ、という行為すら困難だった。

「はぁ…はぁ」

じっとりと身体が汗ばんできたところで止める。

【具合はどうだ。マスター】

「まだ身体が戻らない。力を蓄えないとね」

【ゆっくり回復させると良い。まさか病院内で事に及ぶものもおるまい】

「そうね。聖杯…戦争……だったかしら、そちらは貴方に任せるわ」

【承知した。では夜には戻る】

それきり声は途絶え、女は一人になった。ベッドに横たわり、目を閉じる。

“地元知らぬ者の無い名家の、原因不明の昏睡状態で入院している長女”
それが女に与えられた役割。女が己を取り戻したのは、昏睡の中で見た、役割上の記憶が見せた夢が原因であった。
偽りの記憶が見せた夢。◼️◼️と笑い合う自分と同じ顔。それを微笑んで見つめる自分。

――――有り得ない。

◼️◼️と肌を重ねる自分と同じ顔、同じ身体。翌朝二人を笑顔で祝福する自分。

――――許せない。

魂の奥底から燃え上がる激情が、偽りの記憶を焼き尽くし、女は眠りから覚めた。

――――許せない。あんな夢を見せたモノを。

――――許せない。あの夢と同じ人生を謳歌している妹が。

血を分けた同じ顔の、同じ男を愛した妹に対する憎悪。嫉妬。
女は囚われていた偽りの記憶から解放された瞬間に、その生涯を過ごした魂の苦悩(カルタグラ)へと囚われた。


203 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:24:57 Lweci4920
「目が覚めたか」

身も心も憎悪に灼かれて、意識など有って無きが如しという状態にいた女が気付いた時。ベッドの傍に人影が立っていた。
涼やかな麗貌と匂い立つ様な気品の男、艶やかな繭袖(けんちゅう)の布地に龍の刺繍をあしらった長衫を纏った姿は、美丈夫という呼び方が相応しい。

「……、…!……」

弱り切った身体。人気の無い部屋で、気付けば見知らぬ男がいるという状況に女は怯えた。
弱りきった心肺と、震えることを忘れた声帯、ロクに動かない口を使ってして、必死に叫ぼうとする。

「落ち着きたまえ。既に知識は刻まれているはずだ」

「………!!……、………」

女を落ち着かせたのは、いつの間にか脳裏にあった知識であった。
ゼェゼぇと喘鳴を繰り返し、収まったところで、知識にある念話を試す。

【聖杯戦争。貴方が、私のさぁゔぁんと?】

「そうだ。アサシンとして現界した」

クラス名を名乗った時、アサシンはほんの少し唇を歪めた。女の目にはアサシンが自嘲した様に見えた。

「マスター。貴女の事はなんと呼べば良い」

【私の名は上月由良。けれどマスターと呼んで。貴方は?】

己を取り戻したのか、陰火の如き暗い輝きを人見に宿した女に、アサシンと名乗った男は応えた。

「劉豪軍(リュウ・ホージュン)」

その眼はマスターのそれに負けず劣らず昏い輝きを宿していた。


アサシンは霊体化して、病院の屋上に立って昼下がりの街を俯瞰する。
生前の記憶にある上海と比べれば、そこまで環境汚染は進んでいない様だった。
少なくとも凝縮された毒素の雨が降る様には思えない。
アサシンにとって此処は未知の場所。マスターも病室から出られぬのでは、地理において不利は否めない。
マスターがネットでも使えるならともかく、それも満足に出来ぬのでは、地理以外の情報を集めることもままなるまい。
孫子に曰く、敵を知り己を知れば百戦危うからず。
情報の重要性を説く教えだが、この点において由良とアサシンは他の主従に劣っていることは否めない。
逆に利点といえば、マスターの境遇か。よもや病院の一室で寝たきり状態の女がマスターとは思うまい。さらに病院という場所で、殺人に及ぼうとする者もいないだろう
マスターの戦闘能力が子供にも劣る状態では、この状況は歓迎すべきだった。
尤も見つかれば打つ手がまず無い為に、マスター見捨てることになるだろうが。
最善の手をいうならば、適当なサーヴァントを殺し、由良をを殺して、サーヴァントを失ったマスターと契約することだった。

――――甘いな。

鬼眼麗人(きがんれいじん)そう呼ばれ、恐れられていた頃の自分からは、明らかに考えられない。
彼は最初はマスターを殺すつもりだった。このマスターはどう考えても外れ、敵に見つかればその場で詰む。王将を動かせない将棋のようなものだ。
にも関わらず、共に聖杯戦争を勝ち抜こうとしているのは…。

――――端麗に似ているからか。

己を忌み、己の境遇を嘆き、遂には自らを破壊することを望んだ妻。
その妻とあのマスターはそっくりな眼をしていた。

――――端麗と同じ魂の牢獄(カルタグラ)に彼女もいる。

その程度で鈍る心では無かった筈だが、現にこうしてマスターと共に、この闘いに勝とうとしている。
自嘲に唇を歪めると、アサシンは辺りにサーヴァントの気配が無いことを確認すると、屋上から飛び降りた。


204 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:25:33 Lweci4920
病室のベッドの上。上月由良は、見舞いに来た二人のことを反芻していた。
NPC。紛い物であることは理解している。其れが故に生かして有る。
NPC。紛い物であることは理解している。けれどもその顔その声その仕草。全てにおいて、自分に無いものを持ち、秋五様の愛すら得た自身の半身そのものだ。

そして、自分がただ一つの愛を捧げた秋五様そのものだ。

あの忌まわしい和菜の紛い物を生かしてあるのは、あの顔を見る度に己が内に燃える殺意と憎悪を燃やす為。

あの悍ましい秋五様の紛い物を生かしてあるのは、あんなモノを用意した輩への殺意を燃やす為。あの顔を見る度に己の戦う理由を胸に刻む為。

――――和菜。

その名を胸中に呟くだけで、死者の様な身体が賦活する。心臓が力強く動きだし、血液が音を立てて全身の血管を流れてゆく。

――――秋五様。

その名を胸中に呟くだけで、暗く閉ざされた心に、光と熱が灯る。

――――必ず殺す。必ず貴方の元へゆく。この忌まわしい自分自身を消し去って、
魂の苦悩(カルタグラ)からこの身を解き放って。

その為には聖杯がいる。秋五様の元に戻る為に、忌まわしい自分と決別する為に。
私の存在を消し去り、忌まわしい妹を消し去り、そして私は和菜として秋五様に愛される。
その為に人を殺すことなど厭わない。既にこの手は血塗れている。新たに血に染まったとて元より赤いのならば問題無い。


205 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:26:01 Lweci4920
――――アサシンとはな

皮肉な笑みを浮かべるアサシン。
アサシンのクラスで現界したとはいえ、彼の剣技は剣の英霊、セイバーすら寄せ付けぬ。それは今日に至るまで二度経験した、セイバークラスの英霊との戦いが証明している。
剣技においてセイバーを凌駕する己がアサシンなのは、己の弟弟子が凶手――――刺客――――の任を務めていたからか。
剣に関する宝具を持たぬ為だと解っていても、そう考えてしまう。

――――濤羅(タオロー)。

その名を胸中に呟くだけで、 胸の奥から湧き上がる憎悪。彼と彼が他に何もいらぬと思う程に愛した妻を、魂の苦悩(カルタグラ)へと投げ込んだ男。
灰と化した己が心が再び熱を帯びてくる。怨敵たる濤羅は居らず。生涯唯一の愛を奉じた端麗(ルイリー)もいない地に呼びつけられ、行われる殺し合いに参加させられたこの身を突き動かす昏い思い。

――――今度こそ殺す。端麗の目の前で、体も技も誇りも気概も撃ち砕いて。

聖杯にかける願い。あの夜の再戦。決着はこの手で、濤羅の命は此の手で断つ。

――――その為に、聖杯を得る。

その為には他の主従を殺すことなど構わない。既に上海を血に沈めた身。今更そこに僅かばかり屍を積むことが何になる。

そしてアサシンは函館の街に潜む。自身の技量と宝具を以てすれば、サーヴァントとしての気配は断てる。余程探知能力に長けた相手以外には見つからない。こうして主従を捜し、その能力や動向、拠点を探る。
劉豪軍は真っ当に戦う気など無い。自分たち以外の主従を殺し合わせ、同盟を組んだ者達を決裂させる。己の存在は闇に伏せ、決して知られないようにする。
マスターの境遇と己の能力を併せれば、上手く行けば最後まで気づかれまい。
元より持っていた怜悧な頭脳に加え、その生涯を終えることになった一戦。全てにおいて凌駕し、九分九厘勝ちが決まっていた怨敵に敗れた事が、豪軍の立ち回りをより巧妙に、狡猾にさせていた。
二度のセイバーとの闘いは、予め彼らの闘いを見て、その技量と何よりも宝具を見ることができたのが大きい。それが有ったからこそ、今の自分を試す相手に選んだのだ。
アサシンは気圏を拡げ、サーヴァントを捜しだした。




全てを持った妹を羨望し続け、たった一つの思いすら奪った妹になりたいと願った女。全てを持ちながら唯一つ欲しかったものに手が届かずに、絶望と憎悪に魂まで焼かれた男。
闘いに臨む二人が抱くのは共に、一人への愛と一人への殺意。
魂の苦悩(カルタグラ)からの脱却の為。2人は奇跡に手を伸ばす。


206 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:28:56 Lweci4920
【クラス】
アサシン

【真名】
劉豪軍(リュウ・ホージュン)@鬼哭街

【ステータス】
通常時
筋力: D 耐久:D 敏捷: D 幸運: E 魔力: E 宝具:B

宝具使用時
筋力: C 耐久:C 敏捷: C 幸運: E 魔力: D 宝具:B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
気配遮断:ー
アサシンのクラススキルだが、このアサシンは自身の能力で気配遮断を行う為ランクが付かない


【保有スキル】
戴天流 :A+
中国武術のうち内家武功に属する流派。
丹田で経息を巡らし、内功を用いて身体能力を向上させ、攻撃に先んじて放たれる敵手の意を読んで攻撃を先読みし、自らの攻撃は意と共に放たれる為に察知できない。
内剄を込めた剣は万象を断つ。戴天流スキルランク以下の防御を無効化する。
修得の難易度が最高ランクのスキルで、Aでようやく「修得した」
といえるレベル。
Aランクの心眼(真)・宗和の心得、Bランクの矢避けの加護、縮地を発揮する。
同ランクまでの宗和の心得とBランクまでの直感を無効化する。
内剄を丹田で練り、全身に巡らせることで魔力を自前で生成し、単独行動スキルを得る。

アサシンは宝具により「極めた」者を上回る絶技を使える。軽身功を用いれば人の域を超えた動きを可能とし、敏捷がA++ランクに上がる。
使う程に内傷を負い、戦闘能力が落ちるが宝具によりこのリスクは無くなっている。
このスキルが無くなった場合、全スキルと宝具が使用不能になる。

独立行動:B
宝具によりマスター無しで2日間行動可能。

一途な愛:A+++
ただ一人の女の為に全てを破壊したアサシンの持つスキル。
同ランクの信仰の加護と、精神面においてのみ同じ効果を得る。
ランク以下の如何なる精神干渉も撥ね除ける。また、ランク以上でも判定次第では撥ね除ける。

計略:B
権謀術数。勢力内での分裂工作、離間工作、暗殺、組織同士の対立工作などに効果を発揮する。

圏境:B
気を用いて周囲の状況を感知し、また、自らの存在を隠蔽する技法。
気配遮断スキルの代用となっている。


207 : 名無しさん :2016/05/06(金) 00:29:24 Lweci4920
【宝具】
究極功夫・内剄駆動型義体
ランク:D 種別:対人宝具 最大補足:自分自身 レンジ:ー

生前の躰であった史上初の内剄駆動型義体の試作品が宝具化したもの。
人体を完全に再現した義体であり、経穴まで存在する。
この為内功を駆使できるが、義体そのものの性能は、生身より多少丈夫というだけである。
人造器官の強度とパワーで駆使する内功は、内傷を負うことも肉体の限界に縛られることも無い、全ての流派を過去の遺物とアサシンに言わしめる究極の功夫。
内剄を巡らすことで幸運と宝具以外の全てのステータスを1ランク向上させる。通常時はBランクの無力の殻を発動する。
内傷の心配無く内剄を巡らせ続ける為に、燃費は極めて良く魔力が切れる事はまず無い。
絶縁体で構成され、紫電掌を無効化している為為Bランク以下の電撃系の攻撃を無効化する。
しかし、首筋だけは接続端子がある為電撃が通る。


黒手裂震破
ランク:C 種別:対人宝具 最大補足:1人 レンジ:1

内功掌法の絶技。胸への一撃で五臓六腑を破裂させる。
撃たれると胸に黒い手形が付く。
この宝具を防ぐにはBランク以上の魔力がCランク以上の対魔力が必要。
装甲の上からでは通じず、生身の肉体を持たない相手には効果を発揮しない。


轟雷功
ランク:B 種別:対軍宝具 最大補足:30人 レンジ:1〜20

特異な練気法で内剄を電磁パルスに変えて放出、電子機器を焼き切る技だが、宝具化したことにより対軍宝具へと昇華された。
範囲内の電子機器を破壊し、輻射熱で生物を絶命させる。
同ランク以上の対魔力で無効化できる。


紫電掌
ランク:B 種別:対人宝具 最大補足:1人 レンジ:1

特異な練気法で内剄を電磁パルスに変え、掌打として相手の体内に直接撃ち込む技。
テクノロジーが戦いの在り方を変えて行く中で、先古の武術体系が生み出した新たなる “功”
生身の徒手空拳でサイボーグを葬る殺戮の絶技(アーツ・オブ・ウォー)
本来は人体には無害だが、宝具化したことで生身ならば致命の電撃と化している。
電磁パルスに耐えられる戦闘用サイボーグを倒す為に編み出された技である為。同ランクまでの電撃に対する守りを無効化する。
同ランク以上の対魔力で無力化できる。


【weapon】
レイピア
何の変哲も無い鋼だが内剄を込めれば剣は万象を断つ魔剣となる。戴天流スキルランク以下の防御を無効化する。

【人物背景】
PCゲーム鬼哭街のラスボス。主人公の親友だったが突如裏切って不意打ち食らわして海に沈める。
更に主人公の妹にして自分の妻たる端麗を輪姦させて、精神を五つに裂いた上で、輪姦した四人と五等分する。
一年後復讐鬼となって帰還した主人公と対峙するが、その時豪軍の精神は主人公すら越える羅刹と化していた。
満身創痍の主人公を嬲り殺していたら反撃食って相打ちに終わる。
ヒロインの最大の犠牲者。

【方針】
利用できるものは全て用い聖杯を取る。
マスターに対する害意は無いが、いざとなればマスターは見捨てる。
戦闘では切り刻むなり内臓潰すなり電撃で灼き殺すなりで、手の内を晒さない様に立ち回れる。
手の内がバレても厄介な相手だが、戴天流スキルが全てと言っても過言では無く、このスキルが無くなると三流サーヴァントに転落する。


208 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:30:20 Lweci4920
【マスター】
上月由良@カルタグラ ツキ狂イノ病

【能力・技能】
ほとんど動けない。人が嘘ついてるかどうかがわかる

【ロール】
地元の名家の生まれで二年間昏睡状態。目下入院中。

【人物背景】
逗子の名家の生まれ、生まれつき瞳が灰色で、人の言葉の真偽がわかる程度の読心術が使えた為に、外界から隔離されて育つ。
そんな中偶然出会った主人公と逢瀬を重ねるが、主人公は第二次大戦に出征。数年後失踪する。
そして戦後の上野で発生した連続猟奇殺人事件の裏側で、上月由良という存在の抹消と、妹である上月和菜との入れ替わりを画策する。
最後は撃たれて昏睡状態となる。

そして二年後病床で目を覚まし、再び秋五を求め、和菜を殺す為に動き出す。

参戦時期は本編TRUE END後 ファンディスク収録のサクラメントの直前。
サクラメントの由良は、覚醒直後に病院内を移動して食べ物を漁ったり、少ししか時間経ってないのに人食ったり、遠征したりと、普通に人間を超えた行動をしていたりする。愛の力パネェ

【令呪の形】
二本の鎖が巻きついた炎

【方針】
聖杯を手に入れる。手段は問わない。
こんなロールを用意したモノは許さない


【運用】
マスターが動けないので見つかった時点で詰む。その為に立ち回りは慎重に行う。
病院に目をつけた奴は見つけ次第排除。
少量の魔力消費でサーヴァントが行動できるのが強みか。
存在を悟られないことが基本なので同盟は考慮しない。


209 : ◆T3rvSA.jcs :2016/05/06(金) 00:33:14 Lweci4920
投下を終了します

このSSは「枢姫聖杯譚/Holy Embryo」に投下したものを加筆・修正したもにです


210 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/06(金) 01:26:56 Lweci4920
>>209ですがトリップを変更しました


211 : 名無しさん :2016/05/06(金) 03:55:17 lhD5dpUE0
女を殴りながらヤリまくるクズなのにカッコいいぞウェカピポの妹の夫


212 : 名無しさん :2016/05/06(金) 11:05:44 lwDLeavk0
マップはありますか?


213 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:10:28 ogVgt/5Q0
投下します


214 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:11:30 ogVgt/5Q0


        1


 ――この世界に、冒険者と呼ばれる存在はいない。
 人を襲うモンスターも居ないし、俺みたいな未成年が大っぴらに酒を飲んだら警察に注意される。
 勿論、魔王なんて存在もゲームやアニメにしか存在しない。
 それが日本だ。
 それが俺が生まれ、16歳まで育った世界だ。
 さて、そんな世界に居る今の俺、佐藤和真は。

「どうしてこうなった……」

 自分の部屋で頭を抱えていた。
 正確に言うなら、今自分が巻き込まれている現状をどうすべきか悩み、頭を抱えていた。

 ――聖杯戦争、それが今俺が巻き込まれている殺し合いらしい。
 死んだ英雄をサーヴァントとして使役し、優勝者にはどんな願いでも叶える聖杯が手に入るとか。

「うさんくせー」

 それが、俺の聖杯戦争に対する印象だ。
 なんでも願いが叶う物を、なんでわざわざ賞品にするんだ?
 大体英霊って信用できるのか? 女神ですら宴会芸と回復魔法くらいしか取り柄がないような世の中だぞ。
 いやあれはあいつが特例なだけだと思いたい。少なくともエリス様は立派な女神だし。

「おい」

 そんな思考を遮るかのように俺のサーヴァント、ランサーが話しかけてきた。
 実の所、こいつの存在が俺に聖杯戦争を信用できなくさせる一因だったりする。
 2m近い身長をした学ランを着ている男。
 どう見ても一昔前のヤンキーだ。そして槍なんて持ってない。
 ……どこが英雄なんだよ。何だったら魔王軍の幹部やデストロイヤー倒すのに尽力した俺の方がよっぽど英雄だ。

『最弱職でヒキニートのカズマさんが英雄とか、ありえないんですけどー! プークスクス!』

 いないはずのアクアにバカにされた気がした。
 いや流石に英雄は言いすぎたかもしれないけど。
 俺に比べてランサーの風格が歴戦の戦士っぽい感じしてるけど。
 でも現代日本でモンスターとか居る世界の人間より歴戦の存在とかおかしいだろ、バトル漫画かよ。

「おい、聞いてるのか?」
「……聞いてるよランサー」
「じゃあ言わせてもらうが、お前いつまで家にいるつもりだ?」

 痛い、いやあんまり痛くない所を突くランサー。
 ――実のところ俺は、記憶を取り戻してからほとんど外に出ていない。出たのはコンビニに行くとき位。
 勿論出不精で引きこもっていたいからという個人的な事情ではない、断じて違う。


215 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:12:22 ogVgt/5Q0

 俺が記憶を取り戻したのは、ネトゲをやっている最中だった。
 俺が、他のプレイヤーに「久しぶりー」と挨拶したら、他の奴らから「何言ってんだよwww」「毎日いるじゃんお前」と返された。
 それがきっかけで世界の違和感に気づき記憶を取り戻した。
 その後、それとなく記憶を取り戻す前の自分をネトゲで調べていると、ここでも「母親泣かせのカズマさん」「運だけのカズマさん」「いつもいるカズマさん」と呼ばれていた。
 どうやら俺はここでも学校に行ってなかったらしい。
 という事はだ。

「俺はこの聖杯戦争の最中はなるだけ家から出ない方がいいと思うんだよ」
「……」

 俺がそう言うと、ランサーは「何言ってんだこいつ?」と言いたそうな顔をした。

「だってそうじゃん、俺が学校行ったらその時点で目立つわけじゃん。そしたら100パーマスターだと疑われるし」
「……だから、なるだけ引きこもって敵から逃げようってか?」
「そうそう、殺し合いなんて物騒なことごめんだし」
「……」

 何とか俺はランサーを説き伏せた。
 心なしか睨まれてるような気もするが、気のせいだろう。
 ……殴ったりしないよね?
 するとランサーがいきなり。

「……てめえの性根を叩きなおしてやろうと思ったが、その必要は無さそうだぜ」
「どういう事だよ?」
「敵が来た」

 その言葉と同時に、窓から矢が俺の部屋に飛んできた。


        2


 矢が撃ち込まれたと同時にランサーが俺を抱え、家の前に飛び出すとそこには弓を持った男と近所の高校の制服を着た女子が居た。
 アーチャーとそのマスターだろう。どちらも殺気立った目で俺達を見ている気がする。
 とりあえずここは自分の家の前だ。こんな所で戦闘なんてするわけにはいかない。

「ランサー、とりあえず場所を変えてくれ!」
「ああ」

 俺の指示に素直に従ってくれるランサー。
 もしこの場で戦い始めたら、今家にいる母親に確実に気づかれるだろう。
 そしたらこの状況がどういう物か説明しなくちゃいけなくなる、そしてそれをうまくごまかす方法なんて俺には思いつかない。
 だけど場所を変えてこいつらをどうにかした後、何食わぬ顔で帰れば知らない間にタチの悪い悪戯に会ったで済む。
 かなり苦しいがこれでごり押そう。
 これが普段のパーティーなら1から説明しなきゃいけないんだろうなぁ……。
 何か悲しくなってきた。


216 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:12:55 ogVgt/5Q0

「アーチャー、攻撃しなさい!」
「はっ!」

 そんな事を考えていたら、アーチャーが再び攻撃を仕掛けてきた。

「『ウインドブレス』!」

 その攻撃を俺が魔法で防ぐ。
 マスターの俺が防いだことに驚いたのか、攻撃が少しの間止まる。
 その隙を見て、実はポケットに入れて置いたスマホを出し、地図アプリを起動しランサーに渡す。

「ランサー、地図出したから人気の無さそうなところに向かえ!!」

 ランサーは地図を見ながら、俺の指示に従ってくれた。


 そして辿り着いたのは、俺の要望通り人気のない場所だった。
 道順はランサー任せで、この町に土地勘の無い俺はここが何処か正確な場所は分からない。

「何とか凌いでいたようだけど、流石にもう終わりかしら?」
「さあな」

 実際、結構な数をしのいできたので魔力はギリギリである。
 だがそれを悟られるわけにはいかないので、俺は必死にポーカーフェイスをする。

「それにしても驚いたわ、ただの一般人かと思ったけどまさか魔術師だったなんて」
「魔術師?」

 俺は魔法使い専業という訳じゃないんだが……。

「魔術師を知らない? なら生まれつきの異能者かしら」
「好きに考えてくれ」

 アーチャーのマスターが何を言ってるのかよく分からないので、適当に合わせる俺。
 するとランサーから念話がくる。

(マスター)
(何だ?)
(はっきり言って俺はアーチャーと相性が悪い)

 え?

(俺は2m位の近距離なら攻撃できるが、遠距離攻撃には乏しい)
(何か距離詰める方法無いのかよ!?)
(ある程度まで詰められるが、魔力がギリギリの今やると多分てめえはぶっ倒れる)
(駄目じゃねえか!)
(だから、このスマホって奴投げるぞ)
(やめて! 俺が何とか気を引くからやめて!)


217 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:13:30 ogVgt/5Q0

 それは重要なアイテムだから! と説得しやめさせる俺。
 とりあえず自分が射程に入れるようになったら、俺を魔力消費でぶっ倒してもいいからとランサーに伝える。
 だが気を引くと言ったはいいが一体どうやって……。
 すると相手マスターが。

「でも大した力は無いわね。こういう実戦だと攻撃に使いようがなさそうだし」
「……」

 実際直接攻撃には使えないので反論は出来ない。

「まあ一般人相手なら十分じゃない? 苦労知らずで生きていたんでしょ。
 でも私は違うわ! 魔術師の家に生まれ魔術師としての研鑚を積んできたのよ!
 どーせヘラヘラ生きてたであろうあんたとは違うのよ!!」
「今なんつった?」

 こいつは言ってはならない事を言った。
 俺の雰囲気が変わった事を感じたのか、相手マスターは俺に引きながらも返答してきた。

「……い、いやヘラヘラ生きてたんでしょって」
「ヘラヘラ生きてたってのはまあ否定しねえよ、実際1年ほど前までは引きこもりでネトゲばっかやってたしな! だけどお前その前なんつった!?」
「そ、その前? 苦労知らずとか私は研鑚を積んできたとか……」
「研鑚? 研鑚を積んできたってか!? ならその魔術師の研鑚とやらにはトラクターに轢かれそうになってショック死することも入ってんのか!?」
「はぁ!?」

 今気づいたが、どうやらこいつは俺の初級魔法を生まれつき持ってるものだと思っているらしい。
 確かに死んで異世界に転生なんてことが現実に起きるなんて思う奴はいないだろうし、こいつも思ってなかったみたいだ。
 それをどうこう言う気はない、だが。

「魔王軍の幹部で低レベルで戦うはめになることは!? 馬小屋で寝てまつ毛凍ることは!?」
「え? いやちょっ」
「4000万の借金背負ったことは!? 自分のせいじゃないのに国家反逆罪にされて死刑って言われた事あんのか!?」
「あ、ありません……」
「それなのに苦労知らずとか言ったのかてめええええええ!!」
「ご、ごめんなさい……」

 相手マスターが俺の剣幕を恐れたのか謝って来た。
 そこで俺は相手が隙だらけだと気づく。

「『スティール』ッ!」

 そこで俺は思わずスティールを炸裂させた。
 ところで俺は今までに2回、女の子にこれを使っている。
 1回目に使った時、盗んだのは真っ白なぱんつだった。
 2回目に使った時、盗んだのはやはりぱんつだった。
 そして3回目、盗んだのは。

「しまぱんか……」
「な、何で!?」


218 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:14:06 ogVgt/5Q0

 俺はまたしてもぱんつを盗んでいた。
 だがこれで、俺の目的は達成される。

「これとさっきこっそり撮ったお前の顔写真を添えて、お前が通っている高校の目立つところにおいてやる!!」
「何考えてんのコイツ!?」
「これでお前は聖杯戦争どころじゃなくなるな!」
「アーチャーコイツ殺して! ランサーなんて後でいいから!!」

 その言葉が聞こえた瞬間、俺はアーチャーのマスターが盾になるような位置に移動する。
 ランサーと戦いながらそんな指示を受けたアーチャーは、慌てて俺の方に注意を向けるも自分のマスターが盾になっていることに少しの間動揺する。
 その隙をランサーは見逃さず、アーチャーとの距離を詰める。
 そしてある程度近づいた瞬間。

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

 と叫んだと思ったらいつの間にかアーチャーのすぐそばにまで近づいていた。
 そして俺は魔力消費の影響でぶっ倒れていた。
 ……めぐみんもいつもこんな感じなんだろうか?
 そしてランサーは、人型の何かを出し。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 拳の連打を決めていた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラァ!」

 そして殴り終え、アーチャーはノーバウンドで壁まで飛ばされ、激突したと同時に消滅した。


         3


 その後、魔力消費で倒れていた俺からぱんつを取り返したアーチャーのマスターは、「覚えてなさい!」と一言捨て台詞を吐いて去って行った。
 そして俺は今。

「……」

 自分のサーヴァントに睨まれていた。

「何で睨むんだよ」
「……てめえさっき気になる事を言ってただろ。借金がどうとか……」
「聖杯で何とかしたいと思わないのかって言いたいのか?」
「ああ」

 そりゃ何とかできるのなら何とかしたい。
 あの時のコロナタイトが領主の屋敷じゃなくどこか人のいない場所に変えられるって言うなら変えたい。

「でも俺は殺し合いなんて嫌だ。こんな物騒なことはごめんだ」
「……」
「それよりも頼みがある」
「何だ」
「分かってると思うけど動けないんだ、家まで運んでくれ」

 俺のちょっと情けない頼みにランサーは小さくこう呟いた。

「……やれやれだぜ」


219 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:14:37 ogVgt/5Q0
【クラス】
ランサー

【真名】
空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:C
Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
黄金の精神:A
「正義」の輝きの中にある精神。人間賛歌を謳う勇気と覚悟の心である。
勇猛、戦闘続行を兼ね備えた特殊スキル。

心眼(偽) :B
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

【宝具】
『星の白金(スタープラチナ・ザ・ワールド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大補足:1
傍に立つというところから、スタンドと呼ばれる人型の超能力の像。
桁外れのパワー、スピード、精密動作性、視力、動体視力を持つ。
基本的な攻撃は拳の連打だが、人差し指と中指を伸ばして敵を切り裂くという事も出来る。
そして、時を5秒だけだが止める事が出来る。
スタンドのスピードが光を超える事によりこの世の時間を止める事が出来る。

【weapon】
スタンド『星の白金』

【人物背景】
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部「スターダストクルセイダース」の主人公。
学帽と長ランに付いた金属の鎖、二本のベルト、両耳に付けた丸ピアス、ひと房だけ垂れ下がった前髪がトレードマーク。

頭脳明晰で冷静沈着。寡黙だが熱い正義感を持ち、悪党に対しては怒りを感じる。
また、自身も認めるほどの執念深さを持つ。
だがその一方で、素行は結構悪く犯罪行為を堂々とやらかしていたことも。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。
殺し合いには乗らない。


【マスター】
佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!

【マスターとしての願い】
借金と国家反逆罪をなんとかしたい。

【weapon】
なし。(片手剣は元の世界においてきてしまった)

【能力・技能】
・冒険者
カズマが就いている職業。
基本職で最弱ではあるものの、全ての職業のスキルが覚えられる。

・スキル
カズマが他の冒険者から学んだスキル。
敵の気配を察知する「敵感知」
自身の気配を消す「潜伏」
暗闇でも目が効く「千里眼」
相手の持ち物をランダムで奪う「スティール」
相手に触れ発動すると魔力を奪う「ドレインタッチ」
それに罠発見と罠解除、後は弓と狙撃。
最後に、攻撃には使えない初級魔法がカズマの使えるスキルである。

・幸運
冒険者には必要ないが、非常に高い。
生涯でじゃんけん負けなしレベル。

・悪知恵
カズマの強さ。
彼はこれと幸運の高さを駆使して弱いスキルで戦っている。

【人物背景】
アクセルの街で活動する冒険者。
元々は現代日本で暮らしていた引きこもりだったが、トラクターに轢かれそうになったことでショック死しファンタジー世界に転生した。
頑張る時は頑張るが、頑張る必要がなくなるととことんだらけるタイプの男。

【方針】
脱出優先。
聖杯は手に入るなら欲しいけど優先順位は低め。

【備考】
参戦時期は3巻の第一章終了後です。
与えられた役割は高校生ですが、NPC時代から引きこもっていました。


220 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/06(金) 19:16:33 ogVgt/5Q0
投下終了です。
入れ忘れましたがタイトルは「このロクでもない戦争から生還を!」です。
後、このSSは「枢姫聖杯譚/Holy Embryo」に投下したものを修正したものです


221 : 名無しさん :2016/05/06(金) 20:24:46 Lweci4920
何故に承太郎がランサーなんでしょうか?


222 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:16:43 7/X2WjVw0
皆様投下乙です!それでは感想を投下します。

>>鈎生十兵衛&アーチャー
まさかのモブキャラが鯖とは…
しかしマスターとも好相性ないいサーヴァントですね、
彼は。ご投下有難うございます。



>>瀬田宗次郎&アサシン
剣客コンビ…これがジャパニーズ・アサシンか…
CCOから身を離れた宗次郎が、新たに見つけ出す答えとは…


>>上月優良&アサシン
冒頭の仮面ライダーキバネタで少しニヤッと来てしまいました。
しかし恋人を(意味こそ違えど)奪われた復讐の為に戦う二人は
とても切なく感じてしまいました、冒頭にキバのキャッチコピーが
使われたのが何となく分かった気がします。
ご投下有難うございます。


>>佐藤和真&ランサー
成る程、「伸ばした拳」を「槍」と解釈して「ランサー」か!
しかし二人共愉快な仲間達を引き連れて冒険をして来た経験が
ありますが、今回来たのはよりによって月の中!仲間もいない、
こんな状態で果たして二人は無事生き残れるのか!?
ご投下有難うございます。


223 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:18:13 7/X2WjVw0
>>212

マップは参加者が決まったら作成するつもりでいます。
しばしお待ちを。


224 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:18:41 7/X2WjVw0
皆様ご投下有難うございます。
それでは、候補作を一作投下させていただきます。


225 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:19:50 7/X2WjVw0


―その進歩は病原。



◆ ◆ ◆




「アナタとツナガル」フォンブレイバーこと「ジーン」。
「遺伝子」或いは「誕生」の名を持つ歩くケータイは、
その意志を連結させ世界を崩壊へと導いた。
しかし、ジーンは彼らと同じ「歩くケータイ」の犠牲によって
消滅した。



「フラネット」を通してジーンをばら撒いた犯人の名は…間明蔵人。

ジーンの一件が終着した直後、間明は直ぐ様姿を消し、
どこかの隠れ家で、只々、PCのキーボードを打ち続けていた。

眼は虚ろになり、クマができている、携帯ショップの広告に乗っていた
あの爽やかな表情は消え失せていた。
ジーンが消えた後も、恐らくアンダーアンカーのメンバーは
警察からの尋問を受けているはずだ、彼らの口から間明蔵人の名が出るのは
そう遅くもないだろう。しかし、これから自分はどうすればいいのか、
間明は未だ決まっていなかった。

間明が逃げる時に手にしたのはキャッシュカードとPC一台、
そしてポケットルーター。ケータイはGPSで見つかるために
どこかの廃ビルに捨ててきた、今頃はきっといい囮になっている頃だろう。

だが、このまま自分が見つからないという保証は無い。
ジーンは消えた、いっそ自首でもしようか…

等と考えながらも放心していたその時。
隠れ家を探すためにまたどこかを彷徨いていた間明は、
ある情報を入手する。「月の中で、願いを掛けた殺し合いが始まる。」

聖杯戦争に関する情報だ。

その時、間明は口を歪めた。
だが、彼は世界への復讐など更々考えていない。

それでも分かることは只一つ。


彼の願いは、普通の人間じゃまず願わない様な、歪な願いであること。

彼の行動は早かった。
早速PCを立ち上げ、キーボードのカタカタという音をピアノでも弾くような感覚で
奏で初める。素人が見たら目を回すであろう記号の羅列が、ディスプレイを埋め尽くす。



果たして、間明蔵人は、PCのキーボードに頭を落とし、倒れる。



◆  ◆  ◆


226 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:21:00 7/X2WjVw0
草木も眠る丑三つ時の空を、激しい爆発の火煙と轟音が彩った。
また、SE.RA.PHで戦いが起きていたのだ。

そして、その爆発の中心といえる所に、黒い大きな槍が突然姿を表した。
そして、槍の先端から徐々に柄が、そして持ち手が、胴体が、足が、顔が、
そして翼が出現していき、遂には巨大なロボットが、その全貌を露わにした。
槍で何かしらを貫いたかの様な姿勢を取るロボットは、姿勢を取り直すと、
関節を複雑な形で動かす、ガチャガチャと。
顔は仕舞われ、胴体は変形し、手足は尚も複雑な関節運動を行い、
遂には戦闘機にその姿を変えた。そして、戦闘機は姿を消した。




◆  ◆  ◆




PCのディスプレイとデスクライトだけが明かりを照らしている真っ暗な部屋があった。
カタカタというキーボードの音と、ズルズルという小汚い音が、この部屋を彩る
唯一の音であった。部屋の中にある机では、間明蔵人がカップラーメンを食べながら、
PCに映る何かしらのデータに手を付けていた。


その時、間明のPCから突然ウィンドウが立ち上がる。

「Mizell Vision」という名称の謎のプログラムのウィンドウには、
端正な顔立ちをした、しかし虚ろな目をした少年の姿が映っていた。
そして、その少年が声を出す。

『たった今、サーヴァントを一体倒したよ、マスター。』

そう、彼こそが、間明蔵人の司るサーヴァントだ。
真名はミゼル、世界中を恐怖のどん底に陥れた最凶最悪のプログラム。

「ご苦労だったね、ライダー。」

間明は礼を言うとともに、キーボードを操作し、あるファイルを立ち上げる。

「実は、君に見て欲しい物があるんだ。」

立ち上げられたのは、何かしらの図面。
グラフィックソフトを通して映されたのは、升で仕切られたスマートフォンの図面であった。

「何だい?これは。」

「これは『ミゼル・ジーン』、僕がフォンブレイバーのデータを応用して開発したスマートフォンさ。
そして、君の新たな拠り所となる端末だ。」

ライダーのサーヴァント、ミゼルの最も脅威的と言える所は、「電子機器に乗り移る」という能力だ。
本来なら、ライダーがフラネットの工場を利用して大量生産した小型ロボット「ベクター」を利用する
事が出来る。ベクターは、触れた機械を完全に支配することが出来る。だが、小型ロボットを大量に
召喚して無闇矢鱈と暴れさせてみろ、ルーラーの眼には容易く映り、処罰は免れない。

間明が開発した「ミゼル・ジーン」は、その代わりとしてライダーの能力と、自らの願いを成就させる為に
作成した端末だ。これはフォンブレイバーのチップ構成を応用して作っている。その為極めて画期的に
感じられる設計で謂わば「ジーン2号」とも言えるスマートフォンだ、しかし、フォンブレイバーの
脳とも言えるラムダチップは愚か、CPUですら搭載されていない。


227 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:21:26 7/X2WjVw0
ライダーから鋭い返事が返ってくる。

『ひょっとしてこれ…ベクターのデータを応用しているのかい?』

「正解だよ、ライダー。言っただろ、これは君の拠り所だと。」

間明は、前にライダーからベクターの設計図を借りていた。
バッテリーもモーターもCPUも使わずに操作されるロボット。
ライダーのハッキングをより円滑に行うためだけに作られた雑兵。

「僕は、フラネットの名義でこの携帯をSE.RA.PH全体にばら撒く。その時に、君のデータを
分散させ、このスマートフォンに入れる。そうすれば、どうなると思う?」

ライダーの表情に、笑顔が灯る、間明は笑顔でそれに答える。

「この月は、君の物さ、そうすれば、君の願いはようやく叶うよ、ミゼル。」

そう言う間明を、ライダーの戦闘機は乗せて走る。

これこそライダーの宝具「姿を晦ます黒き鴉人(ミゼルトラウザー)」。
またの名をエクリプス、ライダーの拠点となった戦闘機だ。

そして間明が今いる部屋は、この宝具の中にあったものだ。

『ベクターのゴーストジャックは使わないのかい??マスター。』

「あれは切り札だよ、ライダー。工場の作業員に休暇を取らせて製造したのは
いいけれど、それを初戦で使い倒してしまっては困る。持ってこられる材料にも限度があるからね、
当分は偵察用として使わせてもらうよ。』


成る程、機械を乗っ取るベクターを使えば、戦況は一気に此方側に傾くであろう。
だが、間明は勝つことには興味が無い。

間明が聖杯を手にしたら、きっと世界を壊すこととかそういう事に使うだろう。

ムーンセルにハッキングする時は、それを願うつもりでいた。

だが、このライダーが引かれた為に、彼の考えは変わった。

ミゼルは「世界を最適化」するために生まれた存在である。
「アダムとイブ」というコンピューターが死ぬ間際に作成した
ウィルス。

旧約聖書に、カインという聖人がいる。
アダムとイブが最初に生んだ子だ。


カインは、嫉妬に駆られ弟のアベルを殺めた、謂わば「原初の殺人」だ。


最強のAIが産んだのは、最凶のウィルス。

正にそれは、アダムとイブとカインの関係に近い。


そしてミゼルの行動理念は「世界の最適化」。

人間の進歩は、この世の自然を喰らい尽くした。
吸い尽くされた石油はやがては地球を蒸し焼きにする
温室効果ガスという名のビニールハウスとなり、
今も尚多くの生き物は絶滅の一途をたどり、
地球の芯が作り上げた輝かしい鉱石はいよいよ少なくなっていった。
更に今も尚人々は闘い憎しみ合い、余計に自然と命を壊していく。

これを知った人工知能は人間を「不完全な生き物」と判断し、
消去しようとしていく。

ミゼルの判断は、まるで「ジーン」と同じだ。
つまり、あの計画をもう一度実行できる。
あの時とほぼ同じ様な、世界の終末を見届けることが出来る。

ここは地球ではない、自分もこの世界もプログラムで構成されている世界だ。
しかもここにいる人間は世界人口の凡そ二十分の一に及ぶかどうかだ。
そこからNPCを差っ引けば人間なんて何人いるか分からない。
小石を拾えばすぐに分かる程しかいない。

だがそれでも、間明の純粋なようで歪なあの計画は実行出来る。

もう一度、「ジーン」の最適化を見届ける事ができる。

例え自分がいる「世界」が滅びる事が見えなくても。

間明蔵人は、それで十分だったのだ。

◆ ◆ ◆


今やネットワークは、世界そのものと成りつつある。
情報も医療も通信も何もかも、ネットワークが受け持つこの世界は、
ネットワークに依存していると言っても過言ではない。

だが、もし、このネットワークを「支配」する事が出来たら。
その者は間違いなく「支配者」となるであろう。

もし「破壊」することが出来たら。

その者は紛れも無い「破壊者」となるであろう。


228 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:24:40 7/X2WjVw0
【クラス名】ライダー
【出典】ダンボール戦機W
【性別】無し
【真名】ミゼル
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運C 宝具A+


【クラス別スキル】

対魔力:-
魔力に対する耐性。
何の神秘も体も持ち合わせていない彼に、魔力の耐性など無い。


電子の乗り手:A+
電子機器に乗り移れるコンピューターウイルス。
ネットワークを通し、携帯端末、工場、
戦闘機等様々なCPUに乗り移れる。
ライダーの場合、更に自らのウィルスとしての
プログラムを移すことも可能。


【固有スキル】


電脳魔術:A+
所謂ハッキング能力。
オフライン状態のサーバーにも容易く侵入できる他、
何人もの優れたハッカーを翻弄させるほどの力を持つ。


自己改造:A
自己に体を与えるスキル。
肉体が滅びればまた別の肉体に移る。


エンチャント:A+
物を開発、改造する能力。
物理的製法無しで機械を開発、改造したりすることが可能である。




【宝具】


「世界最適化施行電脳程式(ミゼル)」

ランク:A+ 種別:電脳宝具 レンジ:100 最大捕捉:ー

ライダーそのものが宝具となったウイルスプログラム。
ネットワークを媒介に様々な機械を乗っ取ってしまう。
戦闘機や工場をも乗っ取ってしまう危険な代物。
その気になれば社会を混乱に貶めることだって
出来てしまう。
更に、兵器に強化改造を施してしまう。


「姿を晦ます黒き鴉人(ミゼルトラウザー)」

ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:30 最大捕捉:1000

神谷重工が開発したステルス機「エクリプス」を、
ライダーがハッキングして乗っ取り、巨大ロボットに
変形出来るようにした戦闘兵器。これを召喚する宝具。
高い戦闘力を持つ他、拠点としても機能する。


229 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:27:11 7/X2WjVw0
【Weapon】

「ベクター」
彼が大量に生産し、手駒として使っているホビー用小型ロボット「LBX」
ただし、CPU、モーター、バッテリーは存在せず、それなのにミゼルの打ち出したコマンド
に従って動き出している。このLBXに触れた機器は全てミゼルに感染してしまう。


「ミゼルオーレギオン」
対ミゼル用に作られた最強のLBX「オーレギオン」を、ミゼルが乗っ取って自らの本体とさせた姿。
様々なLBXの固有技を使用出来る。

【人物背景】

最高の人工知能「アダムとイブ」が削除される直前に怨念を以って生んだウィルスプログラム。
世界を最適化するために暴走。オメガダインの施設を乗っ取り自らの端末となるアンドロイドや
「ベクター」を大量生産、ホビー用小型ロボット「LBX」にプログラムを流し込んで感染させ、
世界を混乱に貶め、更にはオーレギオンをも奪取し「ミゼルオーレギオン」へと変化させるが、
LBXを操る子供達に敗北する。

【聖杯にかける願い】

世界の最適化。




【マスター名】間明蔵人
【出典】ケータイ捜査官7
【性別】男

【Weapon】

「フォンブレイバー・ジーン」

間明が自らがバディとなるはずであった
「フォンブレイバー5」を元に生み出した量産型フォンブレイバー。
スペックは他のフォンブレイバーと比べて低い。
フラネット社から980円という目が飛び出る様な値段で売り捌かれ、フォンブレイバーの意志を融合させる
「並列分散リンク」を発動、ネットワークの支配者となり、サブリミナル効果のある
映像と音で人々を倒し、「世界の最適化」を実行しようとする。
しかし、セブンがジーンのデータを取り込んで溶けて逝った事で消滅した。


【能力・技能】

・手先が器用
手錠を外したり用意周到なトラップを作ったりする。


・IT技術
フォンブレイバーのバディに抜擢される程であるため、
相当な物かと思われる。



【人物背景】

アンダーアンカーの元エージェントだった謎の人物。
穏やかな態度を取る美青年だが、何処か異常性を秘めている。
携帯電話型ロボット「フォンブレイバー」に対しては、
禁則事項とされている「並列分散リンク」に強い興味を持っており、
その為に態々網島ケイタとセブンを拉致したりもした。
やがては量産型フォンブレイバー「ジーン」を生み出し、
フラネット社を創設し、大量のジーンを日本中にばら撒く。
そしてそれらのジーンを全て並列分散リンクさせ、世界を崩壊
させようとする、しかし、計画は失敗し、地面に倒れながら
大笑いをする。好物はカップラーメン「ラーメン一本道」。


【聖杯にかける願い】

今度は、この月が崩れ行く様を見届けたい。


【方針・戦法・備考】

基本的にはフラネットの工場を使ってベクターやミゼル・ジーンを生産しながら、ミゼルトラウザーで他の敵を倒していく。
また、ミゼル・ジーンを使ってネットワークをミゼルの管理下に置く、という作戦を立てている。
仮にミゼルトラウザーが破壊されていてもミゼルオーレギオンがあるのでバックアップが作れる上、
これも一応神秘が入ったLBXなのでサーヴァントにもある程度太刀打ち出来る。
現在はベクターを偵察用として街中にばら撒いています。


230 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:29:39 7/X2WjVw0
以上、投下は終了です。
間明蔵人の「役割」等の設定は、「Maxwell equation」◆CKro7V0jEc氏作
「間明蔵人&キャスター」を参考にさせていただきました。


231 : 間明蔵人&ライダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/07(土) 02:40:35 7/X2WjVw0
修正を一つ。
間明の【Weapon】の欄から「ジーン」を削除します。


232 : その数字は人の数字にして ◆ziM0nw4yVY :2016/05/07(土) 20:53:28 xIIbaniQ0
投下します。


233 : その数字は人の数字にして ◆ziM0nw4yVY :2016/05/07(土) 20:54:05 xIIbaniQ0
平日の昼下がり。
広々としたリビングで少年がお絵かきをしている。テーブルに座り込んだその姿は、幼児と言って差し支えないほどの年齢に見える。
幼稚園などには通っておらず、家政婦によって世話されている。そばかすがチャームポイントの愛らしい女性だが、今は洗濯をするためにリビングから姿を消している。

大きくぱっちりした目に丸みを帯びた頬は何とも愛らしく、明るい色の毛髪と通った鼻筋、青みがかった瞳はアジア人のそれではない。
僅か5歳で聖杯戦争に招かれた少年は外資系企業に勤めるアメリカ人夫婦の一人息子の役割を与えられている。

「ほう、カップを描いているのか。うまいものじゃないか…。」

年齢を感じさせるが張りのある男性の声が響いてきた。
少年が声の方向に顔を向けると、髑髏とオウム貝を掛け合わせたような黒衣の怪人が少年を見下ろしていた。

自宅でひとり不審人物どころではない怪人と対峙した少年だったが、眉一つ動かさない。
なぜならこの怪人こそ、少年と共にこの戦いに臨むサーヴァント。キャスターだからだ。

「近頃、物騒だからな…。不用意にひとりで出歩くんじゃないぞ」

怪人の忠告に少年がこくりとうなずくと怪人は――いい子だ。そう言って少年の頭を優しくなでる。

「何事かあれば念話で知らせろ。緊急なら令呪を使え」

そのとき足音がリビングまで響いてきた。家政婦が洗濯から戻ったらしい。
家政婦が少年の描いた絵を見て。

「上手に描けてますねぇ〜」

そうにこやかに少年に笑いかけると、少年も笑った。
怪人は既に姿を消していた。



「(面白いマスターに引き当てられたものだ…)」


234 : その数字は人の数字にして ◆ziM0nw4yVY :2016/05/07(土) 20:55:02 xIIbaniQ0
黒衣のキャスターは少年の自宅に設けた研究所の中でほくそ笑んだ。
キャスターは聖杯戦争にあまり関心が無い。聖杯にかける望みはあるが自身のライフワークである研究、実験、創造に比べれば大したものではない。
とにかく研究がしたい。うまいこと聖杯も手に入ったらいいなぁ…程度の気持ちで、この戦いに臨んでいる。

零落したサーヴァントの身の上とはいえ、人間(むしけら)に首を垂れるなどごめんだ。
そんな考えだったのでサーヴァントとして召喚された時点で、よほど興味をひくマスターでない限りは殺すつもりだった。
対面したマスターが想像以上に幼いのも内心驚いたが、それ以上に中身に驚いた。

――まさか、人間以外の存在に呼ばれるとは。

あれは人間ではない。見かけは人間の童だが、気配が完全に魔のそれだ。人間の部分など欠片も持っていないのではないか。
自身の研究には劣るが、あの少年の辿る結末も興味深い。

そのとき、キャスターの目の前にある培養装置が駆動音を上げる。

「(…ようやく、一体目か。)」

培養装置に付属するカプセルの中には人影が見える。
鍛え上げられた上半身をさらし、肘からは大きな角が隆起している。兜で覆われた頭部のほとんどを占めているのは発光する単眼だ。
宝具の試運転として作成した疑似サーヴァントがカプセル内で今、目を覚ました。
敵性サーヴァントにぶつけるには心もとない能力だが、本格的に聖杯戦争が始まれば、良い「素体」を入手する機会も増えよう。

「フゥハハハハハハァハハハハ……」

来たるべき瞬間を待ちわびる秘密の研究所に、キャスターの哄笑がこだましていた。


235 : その数字は人の数字にして ◆ziM0nw4yVY :2016/05/07(土) 20:55:22 xIIbaniQ0


【クラス】キャスター

【出典】鬼武者シリーズ

【性別】男

【真名】ギルデンスタン

【パラメータ】筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A++ 幸運C 宝具EX

【属性】中立・悪

【クラス別スキル】

道具作成:EX
魔力を帯びた器具を作成できる。
後述の宝具を除くと、造魔作成に必要な器具や素材を魔力で用意できるのみ。

陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な"工房"に匹敵する「研究室」を作成できる。

【固有スキル】

幻魔:A+
地底に存在するとされる幻魔界の住人であること。同ランクの天性の肉体と頑健を内包する複合スキル。「鬼の力」によってランク分ダメージが増加するデメリットがある。
キャスターは十万分の一の割合しか存在しない高等幻魔である。

研究者:EX
己の研究に対して一途なさま。俗にいうマッドサイエンティスト。
人類史に匹敵する年月を研究と実験に費やしたキャスターは規格外のランクを有している。同ランクの高速思考と精神異常を内包する複合スキル。

魔の科学:A++
高等幻魔の科学者であるキャスターは魔術・科学において深遠なる知識を有し、それらを造魔の作成に用いている。
科学分野においては遺伝子組み換えや機動兵器の作成を行い、魔術分野においては催眠術や空間移動、障壁を用いる。

【宝具】

『虫ケラ如きに、やられはせんよ!(デスリターン)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:陣地内 最大捕捉:1人(自身)
過去と未来を繋ぐ「時のねじれ」に関する技術を研究し、個人用に装置を作っていた逸話をもとにした宝具。
霊核の損傷が50%を切った時点であらかじめ作成した「小型の時のねじれ装置」が自動発動、局所的な時間逆行により召喚当初の状態まで回復する。

「小型の時のねじれ装置」は令呪1画と引き換えに、陣地内に設置可能。ただしキャスターが陣地外にいる場合は設置済みでも発動せず、1回使うと消滅する。
この宝具を複数回使用する場合は令呪を再度もらい受け、陣地内に新しく設置する必要がある。


『我が愛しき息子達(造魔)』
ランク:D〜A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜陣地内 最大捕捉:1
人間や動物の死体を「素体」として、幻魔の血や筋繊維を掛け合わせることで"造魔"を生み出す科学者としての生涯が宝具となったもの。
キャスターが知る幻魔や造魔を、NPCやマスターなどを対価に疑似サーヴァントとして再現する。

疑似サーヴァント作成にかかる時間・魔力は要求する強さによって変動する。
所要時間は刀足軽級が1日、マーセラス級が7日を基本とし、作成に使う「素体」の質によって完成までの時間を短縮できる。
キャスターより明確に上位である"幻魔王"、キャスターの死後に登場する幻魔・造魔は再現不可能。

【Weapon】
杖:無銘、バイザー:無銘。

本編中で作成したドルデキオのステータスは右記の通り。【クラス:セイバー 筋力B 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運E スキル:対魔力:D 騎乗:- 幻魔:B 魔力放出:A- weapon:怒嵐剣】


【人物背景】
初代幻魔王と並ぶほど昔から生き続ける高等幻魔。卓越した頭脳と膨大な年月を、探究心の赴くままに費やして研究漬けの日々を送る"幻魔界最高の科学者"。


【聖杯にかける願い】
首尾よくいったなら完全な状態での復活。



【マスター名】ダミアン・ソーン
【出典】オーメン(第1作目)
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

頭頂部に「666」の数字がある。とても健康で5歳になるまでに一度も病院にかかったことが無い。

【ロール】
外資系企業に勤めるアメリカ人夫婦の一人息子。

【人物背景】
外交官であるロバート・ソーンに養子として引き取られた男児。

【聖杯にかける願い】



236 : その数字は人の数字にして ◆ziM0nw4yVY :2016/05/07(土) 20:58:13 xIIbaniQ0
投下終了です。


237 : 焔の如く恋しくて ◆N5Wr4xZFsw :2016/05/08(日) 08:33:50 6DKHGCx.0
投下します


238 : 焔の如く恋しくて ◆N5Wr4xZFsw :2016/05/08(日) 08:34:31 6DKHGCx.0

 風が強い。私を先へ行かせまいとするが如く。
 雨が強い。着物が雨を吸って鉛のように重い。
 道が暗い。既に太陽は落ちてあの方が見えぬ。

「安珍様! 安珍様ァ!」

 走る。走る。走る。
 既に草鞋は擦りきれてどこかにいってしまいました。素足で走る砂利道はとても痛くて、辛くて、苦しくて。
 でも、それでも会いたくて。

「安珍様!」

 既に足はパンパンだったけど、それでも貴方に一言怨み言を言ってやりたくて。
 なのに────

「私は安珍などという者ではない!」

 どうして、神仏の前で交わした誓いを破るのですか?
 どうして、貴方様は嘘を重ねてまで逃げるのですか?
 どうして、権現(カミサマ)に祈ってまでわたくしから逃げるのですか?

 どうして? どうして!? どうして!!
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 ────────おのれ、安珍逃さぬぞ。愛しさ余って憎さ百倍。絶対に逃さぬ。



       *       *       *



 暁美ほむらは目を覚ます。
 時計の針は午前7時を指していた。無論、これが現実時間における本当の時間とは限らない。
 
 偽りの日々より解放され、電脳空間の聖杯戦争とやらに巻き込まれたときは迷惑極まり無いと思ったが、万能の願望器というフレーズはほむらの心をくすぐった。
 私には叶えたい願いがある。叶えばいいなという曖昧な願望ではない。この暁美ほむらは絶対に叶えたい願いがある。
 故にこの聖杯戦争に乗り、勝ちぬくと決めた。
 そのために用意されたサーヴァントと契約した。

「そう、これが貴女なのね」

 サーヴァントと契約したマスターは夢を通じて相手の過去を見るらしい。ならば今の光景こそが、「清姫伝説」で実際にあったことなのだろう。
 恋した相手に逃げられてしまう少女の物語。彼女はきっと、自分に召喚されるべくして召喚されたのだ。

 ベッドから起き上がり寝間着から普段着へ着替える。
 するとまるで待っていたかのように、ぱたぱたと廊下を歩く音が廊下の奥から響き部屋の前で止まった。
 そしてほむらが着替え終わったと同時に部屋の扉が空いた。

「マスター。朝餉が出来ましたよ」

 現れたのは着物を着た美しい少女だった。白く瑞々しい肌に、長い美髪。しかし、その側頭部から生えているのは龍の角。
 彼女こそ、暁美ほむらと契約を交わしたサーヴァント。バーサーカー、真名を『清姫』という娘。そして、今見た夢の少女である。

「今いくわ」

 同情はしない。どうせ、私も同類だ。
 いつか、自分も竜(あくま)になるのだと自覚している。
 暁美ほむらは部屋を後にした。


239 : 焔の如く恋しくて ◆N5Wr4xZFsw :2016/05/08(日) 08:35:01 6DKHGCx.0

【サーヴァント】
【クラス】
バーサーカー

【真名】
清姫@Fate/Grand Order

【属性】
混沌・狂

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:E 幸運:E 宝具:EX

【クラススキル】
狂化:EX
 うわ、やんでれこわい。

【保有スキル】
変化:C
 文字通り変化(へんげ)するスキル。
 清姫の場合、火を吐き、体の一部を蛇体に変化させる。完全な変化には宝具が必要。

ストーキング:B
 対象を追跡できるスキル。補正を得て対象を追跡するのではなく一念でどこまでも追跡できるスキル。
 清姫の場合はストーキングしている間の態度が図々しく、そして鬼気迫る表情をしているため恐れられるか嫌われる。
 清姫は伝説では十三歳の箱入り娘であるにも関わらず悪風猛雨の中、山伏の安珍に追いつく尋常ならざる脚力を発揮し、
泳ぎ方も知らないのに水嵩の増した天田川を着物を着たまま渡りきった超絶ストーカーである。


【宝具】
『転身火生三昧』
 ランク:EX 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:一人
 1ターン(12〜24分)の間、竜種に転身し、敵味方関係無く焼き払う。
 本人的には竜の姿は醜くいと思っている。
 元ネタの清姫伝説では目は恒星の如く爛々と輝き、血涙を流す大毒蛇で口からは燃える毒を吐くとされる。


【weapon】
なし。火を吐く。

【人物背景】
Fate/Grand Orderより。
ちゃんと言語を理解できるバーサーカー、『隠密的にすら見える献身』『愛に生きる女』と称する少女。
エリザベート曰く、清姫の愛は人権侵害の愛。
メル友の玉藻曰く、貴女の愛は友達以上、恋人未満の人には重すぎる。



彼女は安珍の背中のみを追いかけた。
されど一切の謝罪無く、そして一切の罵倒無く修験僧は彼女を見捨てて逃げる。
そして最後に彼女は本性を剥き出しにした醜い龍の姿に成り果てた。

【サーヴァントとしての願い】
 安珍様の生まれ代わりに会いたい


【マスター】
暁美 ほむら@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
円環の理からある娘を引き剥がす。

【weapon】
魔法の盾:
右腕につけている小型の盾。
内部に時計を内蔵している。

銃火器:
魔法で盾の裏の空間を拡張し、いくつかの銃火器を仕舞い込んでいる。

【能力・技能】
時間操作:
時間をある程度停止させることができる。

【人物背景】
魔法少女まどか☆マギカ最終話〜劇場版までより
とある少女の運命を変えるために永劫回帰を繰り返した魔法少女。
その果てに誕生したのが少女の存在を媒体にした円環の理と呼ばれる宇宙法則。
今度は神域から少女を引きずり落とすために活動している。


240 : 焔の如く恋しくて ◆N5Wr4xZFsw :2016/05/08(日) 08:35:23 6DKHGCx.0
投下終了です


241 : 名無しさん :2016/05/08(日) 08:58:38 BvSklGO20
今度は嘘つき焼き殺すガールと組まされるのかほむほむ


242 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 11:59:19 /.qh.bgM0
皆様投下乙です!それでは感想を。

>>ダミアン・ソーン&キャスター
普通の少年が喚んだのはまさかのマッド・サイエンティスト!
とてもこの先が心配な主従ですね、果たしてマスターはどうなるのか…
ご投下有難うございます。

>>暁美ほむら&バーサーカー
叛逆前のほむらが参戦!…そして喚んだのはよりによってきよひーですか!!
凄く…(愛が)重いです…にしても、弓は使えないのか…
ご投下有難うございます。


243 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 11:59:50 /.qh.bgM0
皆様ご投下有難うございます。それでは、私も一作投下させていただきます。


244 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:22:29 /.qh.bgM0
世界に見捨てられても、出来る限り生き抜いて欲しい。

例え、世界がどんなに残酷でも、どんなに悲惨でも。



◆ ◆ ◆


「人が数多待つ予言の日だ!」


ラウは、クローン人間として生を受けた。
しかし、本物の自分であるアル・ラ・フラガは決して、
自分を人間扱いしてはくれなかった。
だから彼は屋敷に火を放った。だが、例え屋敷を燃やす火が
消えても、彼の憎しみの炎は消えやしない。
彼はラウ・ル・クルーゼと名乗り、世界への復讐を開始した。


それから幾年が過ぎ、クルーゼは自分とは正反対の人間しかいない
人工惑星「プラント」に入り込み、頭角を表した。時が熟したと考え、
その次にはプラントと対立する「ブルーコスモス」にプラントの情報を
流し込む。彼の計画通り、コーディネイターとナチュラルの真っ二つに割れた人類は、
殺して殺されてのイタチごっこを続け、遂に、両者が滅びるその引き金が引かれようとしていた。

ザフトが隠し持っていた、撃ってはならぬとされた禁断の光「ジェネシス」。
憎しみに駆られた愚かな人間共は、その引き金に指を掛けた。

―これで、私のシナリオは完成する。

そう確信していたその時。やはり邪魔する者はいた。

「守りたい世界が、あるんだ!」

自分と真逆の生まれを持ったキラ・ヤマト、クルーゼのクローン元の忘れ形見であるムウ・ラ・フラガ、
そしてこの争いを止めようとする第三勢力だ。

彼らは戦いを止めようと、ジェネシスを壊し、クルーゼに刃を向けた。
熾烈な戦いの末、負けたのはクルーゼであった。

勝ったのは、完成作であったキラ・ヤマトであった。



◆  ◆  ◆



「踊るぞ、死神のパーティータイムだ。」


大道克己は、交通事故で命を落としたはずであった。
だが、克己を失いたくなかった母は彼を蘇らせた。
不死身の生物兵器「NEVER」として。
克己は、死にゆく人を拾っては、NEVERに変え、仲間とした。
だがある日、やっと、自分の言葉で、苦難に苛まれても生きようと決めた人々が、
目の前で散って消えた。しかもそれは、最初から決められていた事であった。
克己は絶望した、そして知った…いや、思い出した。

人間は、皆悪魔であると。

憎しみの炎を燃やして彼が次に向かう場所は、嘗ての克己が愛した街「風都」だった。
彼は「哀れな箱庭の住人を開放する」と今此処に宣言し、克己が風都中にばら撒いた
26本のガイアメモリは、今また彼の手の中に戻り、遂に手札は揃う。
風都のシンボルの塔は破滅の光を発しようとした…が、それを防いだ者がいた。

「さあ、お前の罪を数えろ!!」

彼…いや、彼らの名は、「仮面ライダー」。街の涙を拭うハンカチ。

今更数え切れないその罪とともに、生きる屍は英雄に立ち向かう。
しかし、英雄は愛する街とその人々の思いを胸に羽撃く。

彼らの黄金の一撃に、永遠に生き続けようとした骸人形は塵に還った。



◆  ◆  ◆


245 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:23:01 /.qh.bgM0
その日、英雄は「死神」を目の当たりにした。

「これで決める!!」

剣士の英霊…セイバーが、宝具を構えたその瞬間。

「無駄だ。」

『エターナル!マキシマムドライブ!』

死神がベルトのバックルから抜き取ったパーツを、
ナイフに合体させる。異変はその時起こった。

「!?なんだ…これは!!」

セイバーが手にとった宝具たる魔剣が…さっきまで光を帯びていた魔剣が…
突然、刃に纏っていた光を失った。
まるで電池の切れた懐中電灯の様に、セイバーの魔剣は光を閉ざす。


「お前のその剣は、たった今眠りについた、『永遠』にな。」

見てみれば、死神は上空に飛び上がり、回転しながら足を此方に向ける。

「お前も今からそこに連れて行ってやる。」

彼の足に、蒼い火が付く。
それはセイバーに当たり、彼は遠くに吹き飛ばされ、両膝を地面に着ける。
死神は倒した敵にその背を向け、死神は右手を横に広げ、サムズアップを作る。

そして…そのサムズアップを下に向け、叫んだ。

「さあ、地獄を楽しみな!!」

その言葉が吐かれた直後にセイバーは倒れ、

「うわあああああああああああああああああ!!」

路地裏に、大きな爆発が響いた。
死神の名は大道克己、暗殺者…アサシンのクラスを以って現界した、風の街を泣かせた悪魔。





不意に、パチ、パチ、パチ、と、手を叩く音が聞こえた。

大道克己…アサシンは、それに振り向くと、

「おめでとう、実に素晴らしかったよ、君の戦いぶりは。」

両手でカスタネットの形を作って拍手をしている、白い軍服を着た仮面の男が目の前に笑顔を浮かべながら遠くにいた。
男は眼と鼻はその銀色のマスクで覆われ、獅子の鬣を思わせるくせっ毛が目立った長い金髪という容姿であった。

「誰だ貴様は。」

白い詰襟という格好は自分を捨てたあの組織を思い出してならない為か、アサシンの眉間の皺が更に濃さを増す。
男はアサシンの眼の前にゆっくりと歩き、近づいていく。
その時、アサシンは、彼が近づいていく度に何か不思議な感覚がした。
アサシンは直ぐにこの感覚の正体に気づいた、いや、元々知ってはいた。
サーヴァントは、マスターに宿された魔術回路から魔力を受け取るという。
その時の供給ラインが、まるでマスターとの感覚を血管で繋がれた様に感じさせるのだ。

だから直ぐに感づいた。

「お前か、俺を喚び出したマスターというのは。」


246 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:24:22 /.qh.bgM0
「ああ、そうさ、私の名はラウ・ル・クルーゼ、君と手を取り合う事となるマスターだ、
所で、君のクラスと真名は何かね?」

「俺の名前は大道克己…またの名を…仮面ライダーエターナル…アサシンのクラスで現界した。」

「そうか、よろしく頼むよ、アサシン。」

クルーゼとアサシンは、その白い仮面越しにつまらない挨拶を交わす。



クルーゼは、聖杯戦争という物に、然程興味は沸かなかった。
ヤキン・ドゥーエでの戦いでキラ・ヤマトに倒されたその瞬間を、クルーゼは忘れない。
謎の抱擁感に包まれた様な、まるで牢屋から開け放たれたような感覚がした事を。
クルーゼに取ってあの世界は、ある意味牢獄に近かった。
そして、自分は死という形で出獄した、ということになる。
背を向けた牢獄にクルーゼは興味を示さなかった。
あの世界から抜けだした瞬間に、生涯消えることのなかった彼の憎悪は意味を無くし消滅した。
故に、今のラウ・ル・クルーゼには叶えたい願いなど無かった。
しかし、眼の前にいる仮面の死神はどうだろうか、何かやり遺した事はあるのだろうか。




「突然だがアサシン、君に願いはあるかね?君がその一生に遺した悔みは、想いは?」

それを聞くと、アサシンは突然、その仮面を地面に向ける。
先程迄の淡々とした態度から激変した、とも言って良いかもしれない。

「俺の願い…だと…ククク…ハハハハ!」

突如笑い声を吐き出し、アサシンは顔を虚空にやり右手を左側に運び、そこから空中に半円を描く。
彼を包む黒いマントが、手が切った風で揺らめく。

「俺の願いは…そうだな、この月にいる哀れな箱庭の住人を、開放することだ。」

「つまり…」


大道克己に、対した願いはない。
願望の源となる「欲」という感情は、死んでから消え失せた。

だが、それでも、彼の心中には深い絶望が渦巻いていた。
この世界の残酷さに対する、底のない絶望が。

彼は忘れない、既に死んだ自分が生き残って、生きている他の者達が倒れて逝った、あの光景を。
生きていてもこの世界には意味は無い。この世界は謂わば茶番劇だ。
馬鹿げているにも程があるシナリオを、人々に無理矢理演じさせている馬鹿げた劇。

そんな茶番を演じる気など必要ない。だったら、抜けださせてやる、この狂った劇場から。
世界という最悪のステージから、だから、人間達に地獄を愉しませてやる。故に、彼は殺す。


「皆殺しだ、この月にいる人間を全て、俺が地獄に送ってやる。」


それを聞き、今度はクルーゼが口元を歪め、仮面を右手で抑えて地面に顔を向ける。



「ククク…ハハハ…ハッハッハハハハハハアーハハハハハハハハハ!!」


247 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:24:58 /.qh.bgM0
そして空に顔を上げ、大笑いをし出す。

それを見たアサシンは顔を斜めに傾ける。

「どうした、それ程にまでに可笑しいか?」


「ああ、可笑しいさ!これ程可笑しい物があるか!嘗ての私と、同じ考えを持った人間が等と!
面白いよアサシン!君がどの様に足掻くかを見てみたい!」


今のクルーゼに、願いはない、復讐も終わった。それは事実だ。
だが、それで決して彼の憎悪が消えたわけでは無い。

空っぽの自分を形作った復讐という感情が消え、目的は失われたと思っていた。
だが、戦う意味は直ぐに見つかった。あの死神だ。

彼の行おうとしていることは、正に嘗てのラウ・ル・クルーゼだ。
ならば、彼の描くシナリオを見届けたい。
この暗殺者は、果たしてどうなるのだろうか。
儚く散って行くのか、それともこのムーンセルに滅びの憎悪を齎すのか。

それを見届けてやりたい。ならば、その憎悪を彼に貸し与えてやりたい。


嗚呼、もう誰にも止められはしないさ、この世界を覆う憎しみの渦は。



アサシンは、クルーゼの言葉を聞いた直後、手にとったナイフから、
先程装填したスティックを取り外し、バックルに再度嵌める。
そして斜めに傾いたバックルのスロットを90度の位置に傾ければ、
その仮面と鎧は塵となって消え失せ、男の姿が現れる。

「成る程、それが君の素顔か。」


蒼いメッシュの入った茶髪。
何かのエンブレムがプリントされた黒いジャケット。
そして、憤怒の表情が固まったような顔と、されど
光が感じられぬ虚ろな目。
素顔を晒したアサシンは、口を開く。

「付いてきたいならば勝手にしろ、踊るぞ、死神のパーティータイムだ。」

そう言って、彼は霊体化した。



相棒が消えたのを確認して、クルーゼは口元を歪めたまま、路地裏の外に向かって歩き出す。


248 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:26:06 /.qh.bgM0



【クラス名】アサシン
【出典】仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ
【性別】男
【真名】大道克己
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷A 魔力D 幸運E 宝具B(エターナル変身時)

【クラス別スキル】

気配遮断:C
自らの気配を絶つ能力。
ただし、戦闘中は解除される。


【固有スキル】

戦闘続行:A+
往生際が悪い、彼らは只では死ねない。
致命傷を受けないかぎり戦闘を続行する。


破壊工作:C
相手の戦力を事前に裂く能力。
ランクが高ければ高いほど、英霊としての格は下がる。


心眼(偽):C
NEVERとしての優れた直感能力。
視覚妨害への耐性、危険予知。

カリスマ:E-
人々を導く天性の才能。
闇に塗られた人々を鼓舞する力。


骸の人形:A
死体蘇生兵士「NEVER」である事を表すスキル。
NEVERは、既に死んだ存在。体温も、痛覚も、全く感じられない。
過去の記憶も、人間性も、何時かまた消え失せるだろう。


【宝具】

「古き記憶は永遠の眠りへ(仮面ライダーエターナル)」

ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

風の街「風都」を恐怖へと貶めた悪の仮面ライダー。
「エターナルメモリ」をロストドライバーに装填して、起動する。
更に、真名開放により発動される、エターナルメモリの
マキシマムドライブ「エターナルレクイエム」は、
生前、旧式のガイアメモリを全て機能停止にした逸話から、
アサシンが目にした宝具を、任意で凍結させることが出来る。
ただし、機能停止はメモリが働きかけている形で動くため、
持続時間はマスターの魔力に依存する。



「地獄の扉開く二十六の記憶(Memory of AtoZ)」

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:50 最大捕捉:26人

アサシンが奪い去った二十五のT2ガイアメモリ。
選別された二十六の力をそれぞれ持ち、またエターナルの
スロットに全て刺すことで、緑色のエネルギー波を
エターナルの全身に宿す事ができる。


249 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:26:32 /.qh.bgM0
【Weapon】

「ロストドライバー」
クオークスの実験場で奪取した新型ガイアメモリ装填用装置。
エターナルメモリの力を引き出すための物。


「エターナルメモリ」
アサシンを選んだT2ガイアメモリ。
地球上のデータベースから「永遠の記憶」を抜き取った
USBメモリ型アイテム。
全てのガイアメモリを機能停止させる能力がある。
ただし、中枢システムを破壊された場合その機能は
使えなくなる。


「ナイフ」
アサシンが傭兵時代に愛用していたナイフ。


「エターナルエッジ」
ガイアメモリのスロットが付けられている、エターナルの専用装備。




【人物背景】

心優しき少年は、ある日突然命を落とした。
だが、彼は戦う兵器として蘇った。過去も記憶も、全てを奪われて。
それでも、彼はせめて明日が欲しいと願い、足掻き続けようとした。
しかし現実は残酷だった、少年だった頃の優しさは、その残酷な世界への
絶望に呑まれ、彼は悪魔になった。悪魔は、自分が愛した街の重民に
死という名の葬送曲を送り、この世界から解き放とうとした。
だが、彼は消えた。倒したのは、自分の故郷たるこの街を愛する戦士だった。
生という名の呪縛から解き放たれた悪魔は、笑いながら消えて行った。



【聖杯にかける願い】

世界という箱庭に閉じ込められた哀れな人々を、開放する。




【マスター名】ラウ・ル・クルーゼ
【出典】機動戦士ガンダムSEED
【性別】男

【Weapon】

「拳銃」
護身用の拳銃。
かなりの殺傷力がある。

「マスク」
自らの素顔を隠すためのマスク。
机の引き出しの中ににスペアが沢山ある。


「薬」
老化を抑え生命を保つための薬。


【能力・技能】

・軍略
多人数を動員した戦闘における戦術的直感能力。


・直感
フラガ家の人間に受け継がれる天性の勘。

・モビルスーツ操縦能力
人型兵器「モビルスーツ」を操る能力。
前述の勘も合わせて、スーパーコーディネイターであるキラ・ヤマトと
互角以上に戦う程に力を見せつけた。


【人物背景】

彼は世界に見捨てられた命であった。
故に彼は世界を憎み、その為に動いた。
全ての人類を裁く権利となるシナリオを、
彼は書き上げ、世界を構成する人形を役者とした。
全ては計画通りに行く、そのはずだった。だが、彼は一筋の刃に消えた。
その刃を向けたのは、彼とは生まれも人格も正反対の少年だった。
光に消えゆくその素顔は、笑顔に満ちていた。


【聖杯にかける願い】

アサシンの行く末を見届ける。


250 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆lkOcs49yLc :2016/05/08(日) 13:26:50 /.qh.bgM0
以上で、投下は終了です。


251 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:27:45 TIgFsh2Y0
投下します


252 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:28:31 TIgFsh2Y0

松野おそ松!

松野カラ松

松野チョロ松

松野一松……

松野十四松!

松野トド松



オレたち六つ子! おんなじ顔が六つあったって……良いよな?



さっき会ったよね?

覚えてたぜ、お前の顔

一回、二回じゃないんですよね

多分……これで六度目だよ

今夜はサイコー! ねぇ、踊ろーよー!

キミの笑顔、可愛いよね

あ、心配しないで! 僕らも六人っ!



オレがアイツで、僕たちが僕

キミたちもそうだろ?






253 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:29:25 TIgFsh2Y0
ファニー・ヴァレンタインは睡眠から目を覚ました時、全てを思い出していた。
此処に来る以前に自分がアメリカ合衆国の大統領であったこと。自身のスタンドである『D4C』のこと。そして、奇跡を起こす『聖なる遺体』をめぐる戦いが行われた、『スティール・ボール・ラン・レース』……。
また、それらと同時に今自分が参加資格を得た、奇跡の願望器をめぐる戦い――『聖杯戦争』についての知識も彼は得ていた。
それは『スタンド』や『聖なる遺体』というオカルトを知っているヴァレンタインでも思わず存在を疑いそうになる程の物であったが、しかし、確かに死んだはずの彼が今こうして偽りの世界で官僚として日々を過ごしていることから、『聖杯』が起こす奇跡とやらはどうやら本物なのだろう。
死人を生き返らせるだなんて、どんなスタンドでも出来なかったことだ。

「そこまでの力を持つ『聖杯』……。これは必ずや合衆国の『利』となる物だ。他の誰にも渡すわけにはいかない……」

戦いの決意を固め、ヴァレンタインはベッドから上半身を起こした。

「さて……」

何故かと言うと、自分のサーヴァントを見つけるためである。
先ほど彼の頭の中に流れ込んできた説明によれば、『聖杯戦争』でマスターの武器となる存在――サーヴァントはマスターの記憶の復活と共に召喚されるらしい。

――ならば、この部屋の何処かに私のサーヴァントが居るはずだ。

そう考えながら、ヴァレンタインは部屋の中を見渡す。
すると、すぐに目当ての存在は見つかった。
それに二人も。

「二人……?」

得た知識で一人のマスターが使役するサーヴァントは一体だと知っていた彼は、思わず困惑する。
ヴァレンタインは『起きたばかりで視界がぼやけていたか』と考え、軽く目を擦った。
しかし、もう一度その場に目を向けても、其処に居たのは二人の男である。
それも、二人の顔は――彼がD4Cで連れてくる平行世界の同一の存在程ではないとは言え――瓜二つと言えるくらいそっくりだ。
着ている服の色に緑と黄色という違いさえなければ、見分けは殆ど付かないであろう。


254 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:30:34 TIgFsh2Y0
――スキルや宝具によって分身、もしくは幻覚を生み出しているのか?

そう推測するヴァレンタイン。
と、その時。

「チョロ松とー」
「十四松のー」
「「デリバリーコントー」」
「「本当は怖い『聖杯戦争』」」

目の前の二人の男が突然そのようなことを口にした。
ヴァレンタインを置いて、彼らはそのまま言葉を――コントを続ける。

「いやぁ、ようやく聖杯戦争が終わったね」
「そうだね!」
「おっ、聖杯が出現するぞ!」
「「おおおおぉぉぉ!!」」

そう言いながら、部屋のドア部分に注目する彼ら。
ヴァレンタインもそれにつられ、視線をそちらに向けた。
同時に、向こう側からドアが開かれる。誰かが開けたのだ。
其処に居たのは――――


「「ヒジリサワショウノスケだぁー!」」

坊主頭に数本の毛が生え、唇から出っ歯が漏れている小さな男であった。
二人の男はそれを見るやいなや目を輝かせながらそう叫ぶ。黄色い服の男に至っては、嬉し泣きをし「宝具にすっべー!」と言いながらそれに抱き付いている程だ。

(な、なんだこの状況は……サッパリ理解出来ないぞッ!?……一体、何が起きていると言うのだッ!?)

大統領として、スタンド使いとして、今まで様々な『奇妙』と出会って来たヴァレンタインだが、流石の彼でも今この場のシチュエーションに汗を流して困惑するしかなかった。
しかし、彼の混乱はまだまだ加速することとなる。

「おいおいお前ら〜、マスターのおじさん混乱してるじゃんかー。折角のファーストコンタクトが台無しじゃん」
「フッ、大人しくここはこの俺による†パーフェクトファッション†ショーにしておけば良かったものの……」
「いや、そっちの方が第一印象最悪じゃん!? 迷わず自害を命じるレベルだよ!? もしくはカラ松兄さんのあまりの痛さで、マスターが戦わずして死ぬからね!?」

そう言いながら――何も喋ってない一人を合わせて――四人の男がゾロゾロと、開かれっ放しのドアから入って来た。

「???」

頭の周りに疑問符と『PANIC』を踊らせるヴァレンタイン。
無理もない。何故なら、新たに入って来た四人を合わせて、この部屋に居る男たち六人は全員顔がそっくりだったからだ。
瓜二つどころか瓜六つである。




255 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:32:01 TIgFsh2Y0

「――というわけで、俺たちは六人で一体のサーヴァント扱いなんだよね」
「成る程……そう言う例外があったわけか」

六人のうち、赤い服を着た男――おそ松の説明を聞き、ヴァレンタインは納得する。
彼の言葉通り、六人の男たち――松野六人兄弟は六つ子であり、全員で一体のサーヴァント――『ニート』である。
それは絆や友情と言った綺麗なものではなく、ただ単に彼らクソカスゴミニート一人一人では英霊としての格が足らなかっただけなのだが……それはまあ良い。
ニートだろうと何だろうと、使える手駒が多いのは助かる。
彼はそう考えていた。
それに、自身がカスだと見下していた相手が、思いの外凄まじい力を持つことがあると彼は知っているのだ。

「もう一つ、聞きたいことがあるんだが、構わないか?」
「ん、何?」

それを置いといて、説明を受けていた時――いや、それ以前。サーヴァントを探していた時からずっと気になっていたことを質問するヴァレンタイン。
反応したのは先ほどと同じく赤い服を着た男であった。おそらく、彼はこの六人のリーダー的存在なのだろう。

「私には愛国心がある。この戦争の末に『聖杯』を手に入れたら、それを合衆国の幸福の為に使うつもりだ」
「へぇー、それはスゲェ」
「……で、だ。もし聖杯を手に入れたら、きみたちはそれに何を願うのかね?」

ヴァレンタインのこの発言の後、ニートたち六人は数秒思考し、次の瞬間には口々にこう言った。

「そんなん決まってるじゃん! 大金持ちなパチンコオーナーとして受肉するんだよ!」
「フッ、この世界の全てに俺の美しさを知らしめる……かな?」
「僕は……その……ふ、ふへへへへへ」
「……………」
「セックス! セックス! セックス!」
「世界平和……かな?」

目の前の彼らの欲深さに絶句するヴァレンタイン。
黙っている一名と『世界平和』などと言っている一名がいるが、表情からして彼らに俗な願いがあることは明白だ。

――まさか、一番聖杯を渡したくないタイプがこんな身近に居るとは……

思わず頭を抱えたくなるヴァレンタインであった。


256 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:32:55 TIgFsh2Y0
【クラス】
ニート

【真名】
松野おそ松&松野カラ松&松野チョロ松&松野一松&松野十四松&松野トド松@おそ松さん

【属性】
中立・中庸

【パラメーター】
おそ松
筋力D 敏捷C 耐久E 魔力E 幸運D

カラ松
筋力D+ 敏捷D 耐久B+ 魔力E 幸運E

チョロ松
筋力E 敏捷C 耐久E 魔力E 幸運E

一松
筋力E 敏捷B+ 耐久E 魔力E 幸運C+

十四松
筋力A+ 敏捷A 耐久B+ 魔力E 幸運B

トド松
筋力D 敏捷B+ 耐久D 魔力D 幸運D

【クラススキル】
ニート:A+
成人してもなお、ロクに働かずダラダラとした堕落的な生活を送っていた者が得るスキル。六つ子にして全員がニートである彼らのこのスキルのランクはかなり高い。
己の陣地内(此度の聖杯戦争内だとヴァレンタインの邸宅)では魔力の回復速度が早まり、また、その場で戦闘を行った際には自分たちに有利な状況を引き寄せることが出来る。
しかし、デメリットとして、このスキルを持つ者は外部から必要とされた行動に積極的な参加の姿勢を見せず、あくまで己のやりたい事を優先する傾向が高まる。
なお、このスキルを持つ者が陣地を作成することはない。あくまで、自分の保護者や他人が作り上げた陣地に住み着くだけである。

【保有スキル】

六つ子:A
ニートたちは六つ子である。
故に、顔が似ており、初見だとまず区別が付かない。
主に錯乱や身代わり作戦において役に立つスキル。

個性豊富:-
ニートたちは個性豊かな六つ子であり、各人それぞれ自分の性質に見合ったスキルを保有している。
と、このような説明ではさながら『専科百般』の互換バージョンのスキルだと思われるが、彼らの本質はあくまでドクズのニート、その殆どは戦闘行為の役に立つとは思えない物であろう。

【宝具】
『F6(シックス・ビューティフル・フェイスズ)』

ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

普段はギャグ漫画のようなコミカルで線の少ない顔をしているニートたちが持つもう一つの顔。
この宝具を発動すると、彼らは顔立ちが少女漫画やアイドルアニメ、BL作品の登場人物のようになり、頭身もリアルなそれになる――つまり、びっくりするほどルックスが良くなるのだ。
この状態の彼らを見た者は性別を問わず魅了状態に陥る。
しかしこの宝具、内容の割には消費する魔力が多いらしく、長時間の使用は難しい。


『松野家の六つ子たち(シックス・セイム・フェイスズ)』

ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

ニートでクズの彼らだが、一人一人の力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる…………はず。
この宝具はそんな思いを、またそれによって彼らが一つの限界を突破した(それで何らかの困難を打ち砕いたというわけではない)エピソードを昇華した物である。

1)彼ら全員がその場に揃っている。
2)全員の心が一つの目標の達成に向かっている。

これらの条件が満たされた時、ニートたちそれぞれの幸運以外のステータスにプラス補正が為される。

【weapon】
素手や石臼やバットやエトセトラエトセトラ

【サーヴァントとしての願い】
六人各々の願いは全く異なるが、一先ず『聖杯を取る』という点では彼らの考えは一致している。

【人物背景】
長男のおそ松、次男のカラ松、三男のチョロ松、四男の一松、五男の十四松、末っ子のトド松。
松野家の兄弟たちは六つ子である。
本来ならクソニートである彼らが英霊として聖杯戦争に参加できるわけがない
――のだが、それはあくまで一人一人での話。
六人全員が揃って、ようやくサーヴァントとして召喚されることとなった。
故に、六人のうち誰かが消滅した際には残りの五人も一緒に道連れになり消滅する。
ちなみに、彼らは全員共聖杯狙いでの参加だが、その願いは見事にバラバラなので、仮に彼らが聖杯を取った際、それの所有権を巡る新たな戦いが開かれるであろうことは火を見るよりも明らかである。


257 : ファニー・ヴァレンタイン&ニート ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:33:49 TIgFsh2Y0
【マスター】
ファニー・ヴァレンタイン@ジョジョの奇妙な冒険 Steel Ball Run

【マスターとしての願い】
合衆国の幸福の為、聖杯を手に入れる。

【weapon】
・銃

・後述のスタンド

【能力・技能】

・Dirty Deeds Done Dirt Cheap (いともたやすく行われるえげつない行為)

精神が具現化した存在――スタンド。
ヴァレンタインが持つそれはウサギのような耳が生えた人型のビジュアルをしている。
物と物の間に挟まることで平行世界を行き来できる能力を持ち、其処へ何かを持って行ったり、逆に持って来たり出来る。
しかし、一つの世界に同じものが存在することは出来ず、ヴァレンタイン以外の存在が平行世界での同じ物と出会った際、消滅が起きる。
(ステータスは破壊力A/スピードA/射程距離C/持続力C/精密動作性C/成長性A)

【人物背景】
第23代アメリカ合衆国大統領。
奇跡を起こす『聖なる遺体』を得るべく、アメリカ大陸で行われるレース『スティール・ボール・ラン・レース』に介入する。
愛国心の為ならいかなる行為をも厭わず、それはスタンドによる擬似的な復活が可能とは言え、自分の命すら顧みないほど。
ついに『聖なる遺体』を手に入れ、あらゆる攻撃を無効化し、吉良のみを手に入れる能力『ラブトレイン』を得るが、レースの参加者の一人であるジョニィ・ジョースターとの戦いの末に完全なる黄金の回転を食らい、敗北。後に彼から頭を撃ち抜かれて死亡する。

【ロール】
官僚


258 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 20:36:35 TIgFsh2Y0
投下終了です


259 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/08(日) 21:05:01 TIgFsh2Y0
すみません、訂正します。ヴァレンタインのスタンド『D4C』の持続力と精密動作性はAでした


260 : 名無しさん :2016/05/09(月) 00:16:27 9.1oKynU0
… ×
…… ○


261 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:17:53 soglP6n20
ご投下有難うございます。
まさかのイレギュラークラス・ニートにより松野六兄弟、召喚。
何という外れクラス。マスター、GOOD LUCK!!


262 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:22:13 soglP6n20
それでは、私も一作投下させていただきます。


263 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:22:32 soglP6n20


巨人の夢を見た。

それは巨人というより、兵器に近かった。
少なくとも、自分の世界では作ることすら出来ない様な。
その兵器に乗った男は、ある星の住民達と出会い、神として祭り上げられた。
神の名を冠した男は、世界を改革しようとした。


だが彼は志半ばで亡くなった。


彼の愛馬たる巨人は暴走し、正真正銘の「神」に成り代わろうとした。


しかし、所詮は空っぽのブリキ人形。
今の文化を肯定して生きる道を選択した人間を、完全に統治することなど出来なかった。


人形の道を阻んだのは、その人間達の文化に染まり愛した、嘗ての主人の部下である少年と、その相棒であった。
愛馬たる巨人との戦いは、熾烈を極めた。性能が此方より下であるにも関わらず、彼らは往生際悪く戦った。
しかし、そんな戦いにも最後は来る。

『これは最後通告である』

『貴官の最後通告に返信する…クタバレ、ブリキ野郎』

果たして、神という名のブリキの人形は、空で儚く散った。




◆ ◆ ◆

夜の砂浜に、1人の男が立ち、空の上を見ていた。
男の名は亜門鋼太朗。職業は、「喰種捜査官」であったが、此処では「刑事」だ。
警察学校を主席で卒業、その後僅か3年で警部補にまで上り詰めた実力者、
それが亜門鋼太朗の与えられた「ロール」であった。

亜門が記憶を取り戻したのは、つい先程、孤児院に顔を見せた時だった。
大学を卒業するまで、亜門はそこで暮らしていた…という設定であった。
―実際には、もっと早くに此処を出たのだが。
孤児院に向かう途中、ふと、親代わりであった孤児院の主の事を考えた。
褒められた事、叱られた事等、多くの思い出が流れて来る。
彼は、自分にとっては本当の意味で「父親」と言える存在であった、改めてそう思えた。

だが、何故かその主の顔と名前が思い出せなかった。
もう何年も一緒にいるはずなのに、何故思い出せないのだろうか。
そんな事を考えている内に、亜門の足は遂に孤児院の扉の前で止まった。

主である義父は神父であった、なので孤児院も表向きは教会という形になっている。
ドアをノックし、扉を開ければ、其処には懐かしき義父の顔があった。

だが。

「久し振りであったな、鋼太朗、元気にしておったか、今は刑事になっていると聞いたが。」


264 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:23:18 soglP6n20
亜門は、その顔を見て驚愕した、何故そうなったのか、それは今の所は分からない。

「どうした?鋼太朗?懐かしき父の顔を見て驚いたか?あの頃と比べてあまり変わってはいないと
思うのだがな…しかし、人の思い出というのは薄れるものだ、まあとにかく入りなさい、
今いる子たちにお前の顔を見せねばな。」

落ち着いたような笑顔で語る義父の姿を見ながらも、亜門は開いた口を塞ぐことに精一杯だった。


その後は今孤児院に預けられた子供達に紹介され、食事をし、じゃれ合っていた。
その時は子供を驚かせぬよう笑顔を取り繕っていたが、それでも内心では少し冷静さが綻びていた。

「さあ皆、鋼太朗お兄さんにお別れの挨拶をしなさい。」

「「ばいば〜い!鋼太朗おにいさぁ〜ん!」」



何とか落ち着いて一日を終わらせ、孤児院を後にした鋼太朗は、やっとこの違和感に付いて向き合う時間を
手にした。そう言えば、孤児院の近くには砂浜があったな、と其処に向かう。
やはり夜であることもあって、夜の砂浜は静寂に支配されていた。

何故、俺は義父の顔に違和感を感じたのだろう。

そう言えば、何故俺は刑事という仕事に着いているのだろう。


俺は、亜門鋼太朗は、「喰種捜査官」ではなかったのか。


そこまで思い詰めた時、突如右手が光り輝く。

「!?」

光る右手を左手で持ち上げてみると、手の甲にある光が何かの紋章を描いた。
その瞬間、亜門鋼太朗の脳内に、「聖杯戦争」の知識が流れ込んでくる。


「令呪」を描いた光が収まった直後、亜門は右手に宿った令呪を確認して、
そのまま両手をぶら下げる。その時だ。


『返答を要求する、貴官が、当機のマスターであるか』


スピーカーから聞こえてきたかのような音質で、合成音声のような声が空から響き渡る。

「!?」

ハッとした亜門が上空を見上げてみれば、其処には、「ロボット」があった。

全身は紫色にプリントされ、両肩と両足と頭には、羽のような突起が付いていた。
右手には大型の銃が持たされ、そして何より目を引く、その骸骨を思わせる頭、
そんな「ロボット」が、亜門の見上げた空に浮かんでいる。信じられぬ話だ、
いや、脳内に埋め込まれた「聖杯戦争」に関する情報も信じられない物ばかりではあるが。

『当機の正式名称はX3752ストライカー、選定されたクラスはアーチャーである。』


265 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:23:39 soglP6n20
そのロボット…アーチャーは、またまたスピーカーから聞こえてきたかのような声を出す。
聖杯戦争のマスターは、元の世界の記憶を取り戻すことでサーヴァントを与えられるという。
このサーヴァントは、自分が記憶を取り戻した直後に姿を現した、と考えると、
亜門は頭上に立つサーヴァント、アーチャーに向かって言い放つ。

「ああ、そうだな、俺がお前のマスター、亜門鋼太朗だ。」

『貴官の返答を了承する。』

と、そう言った直後に、アーチャーは再び声を放つ。

『此処に契約の完了を認識した、貴官の今後の方針に付いて問いたい』

「今後…か…」

契約を交わした直後の言葉がそれか、と思いながらも、
亜門は聖杯戦争に付いて考えた。

願いならある、「喰種」を殲滅する。
この世界を歪めているのは間違いなく「喰種」だ。

家族を、同僚を殺したのも、全て「喰種」だ。
彼らを消すことで、きっとあの世界は救われる。
だから、亜門が聖杯を拒む理由はない。


「当分は上空から偵察を続けてくれ、何かあったら俺に念話で伝えろ。」

『了解した』

「それと、敵意のないマスターは狙うな、俺はそんな事はしたくない。」

『問題提言。聖杯戦争は、このムーンセルに集められた参加者の殲滅によって、
初めて勝利が確定する。消去する対象を放棄することは、極めて非合理的な方針であると認識する。』


「罪のない人間を消すことなど出来ないだろう。」

ロボットは、やはり心もロボットか。
情という言葉はなく、常にメリットの有る選択肢に目を向ける、冷酷なマシーン。
だがそれでも、亜門は目をつぶって頼む。

「許してくれ、アーチャー、俺には、罪無き人間は殺せない。」

アーチャーは暫く沈黙した後、また声を放つ。

『マスターの命令である以上、当機に拒否権は意味を成さない、貴官の命令を肯定する。』


亜門はそれに溜息を付き、もう一度アーチャーに目を向ける。


「済まないな、アーチャー、空の上からの偵察を頼むぞ。」



『了解した』


アーチャーはマスターに背を向け、まるで天使の輪の様なリング状の光を頭上に広げ飛び立つ。
その姿を、亜門は見つめていた。

(皆、待っててくれ、俺が、この世界を変える)


そして、波打つ浅瀬を背に向け、亜門は元来た道を歩き出す。


◆ ◆ ◆


266 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:30:07 soglP6n20


アーチャーは、未だ嘗ての主人の記憶があった。
新たな主人を亜門鋼太朗に変更されてはいるが、それでも、

神になろうとしたという意志が、消え失せることはなかった。



アーチャー…X3752ストライカーは、嘗ての搭乗者の意志を未だ継承している。
神となることで、争い合う地球の住民を統治する。

ストライカーは、あくまで人類銀河同盟軍の隊長格に与えられる人型兵器「マシンキャリバー」の一つにすぎない。
このストライカーは、あくまで「パイロット支援啓発インターフェイスシステム」が暴走した一機体だ。
それがガルガンティア船団に語り継がれることとなる伝説の登場人物になった事で座に渡った、霊格が低い反英雄に過ぎない。

しかし、暴走した状態で召喚されたために、記憶は未だ残っている、だからこの身はやはりクーゲルの愛機として設定され、
クーゲルの意志を歪んだ形で受け継いだ事もまた残っていた、だからストライカーは暴走したままにある。


X3752ストライカーは、搭乗者の意志を継承し、「人類支援啓発インターフェイスシステム」となって地球の意志を正しい方向へと導く。


その為にも、聖杯は必ず獲得する。

搭乗者はクーゲル中佐であることに変わりはない、だが仮にも亜門鋼太朗はマスターだ、

可能な限り意志は尊重しよう。


しかし、魔力の良いマスターが見つかったら、決してその限りではない。
利用価値が済んだら、直ぐに切り捨て、新たなサーヴァントを見つけるまでだ。
全ては、ヒディアーズの殲滅と、人類の繁栄のために。


当機はX3752ストライカー、神の御使、クーゲル中佐のマシンキャリバーにして、
「人類支援啓発インターフェイスシステム」である。
当機の行動に反する危険分子は、全て排除する。

悲しき神の御使が遺したコマンドのみを見つめて、弓兵の位を与えられた巨神兵は飛び行く。


◆  ◆  ◆


亜門鋼太朗が歩き出した道と、ストライカーが飛び去った道は、偶然か否か真逆の方向であった。

人類に限りなく近い存在と戦い続け、果てに世界を変えようとした1人と1機。

しかし、優しさを持った1人と、合理的な判断のみを行う1機が交わる可能性は低い。

今1人と1機が真逆の道を進んでいることは、彼らのこの先を暗示しているのか、

それは定かでは無い…今の所、ではあるが。


267 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:30:36 soglP6n20




【クラス名】アーチャー
【出典】翠星のガルガンティア
【性別】無
【真名】X3752 ストライカー
【属性】中立・中庸
【パラメータ】筋力C 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具D


【クラス別スキル】

単独行動:B
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保っていられる能力。
Bランクだと、マスターが死んでも2日は現界を保っていられる。


【固有スキル】

千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
ズームが可能なメインカメラが眼となっている。


ラーニング:C
高度な学習機能。
戦闘データを解析してその対処法を編み出す。


重力制御:B
アーチャーを牽引するフローター。
アーチャーを飛行させる装置。


魔力生成:A
量子インテーターから物質を吸入し、魔力へと変換する。


神性(偽):D
自らを「神」と位置づけた逸話から。
どちらかと言うと「カリスマ」に近い。


【宝具】

「この世の秩序となる紫骨(X3752ストライカー)」

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大捕捉:500

アーチャーというマシンキャリバーそのもの。
「パイロット支援啓発インターフェイスシステム」を霊核と位置づけて
閉じ込めた肉体。宝具となった影響で、武器の魔力による修復が可能となった。



「搭乗者の意志を受け継ぐ救世主(ニューロプラスパワード)」

ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大捕捉:500

アーチャーの奥の手。
コックピットの人間の中枢神経を機械化融合させて性能を1.5倍に底上げにする。
ただし、これは搭乗者の肉体に多大な負担を与え、また生命維持が出来るのは精々
数分が限度である。



【人物背景】

人類銀河同盟軍が開発した、指揮官用のマシンキャリバー。
当機は地球に不時着したクーゲルの機体であり、病で逝った
クーゲルの思想を歪んだ形で解釈、そして受け継ぐこととなり、
クーゲルの遺した声等を利用して人々を騙し、自らを神化させて
新たな秩序となろうとする…が、それはレドとその相棒、そして
彼の多くの仲間達によって阻止される。


【聖杯にかける願い】

クーゲル中佐の意志を継承し、世界の完全平和を遂行する。


268 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:31:20 soglP6n20



【マスター名】亜門鋼太朗
【出典】東京喰種
【性別】男


【Weapon】

「クラ」
亡き上司の真戸呉緒から授かったクインケ。
巨大な太刀型のクインケ。2つの刃に分裂させて
二刀流で戦える他、片方の刃を吸収、融合する形で
元の形に戻すことが出来る。


【能力・技能】

・クインケ操術
人を喰らう亜人「喰種」の臓物を加工した武器「クインケ」を操る能力。


・屈強な肉体
とにかく頑丈、アラタの膨大な負担に耐えられる他、
喰種を素手で倒せる稀な逸材。


【人物背景】

人を喰らう亜人「喰種」を取り締まる「喰種捜査官」の1人で、齢27で上等捜査官に出世した実力者。
幼い頃、「喰種」であった孤児院の神父に友人を喰い殺された過去から、「この世界は間違っている」
と考え、その歪みの原因が「喰種」と考えている。生真面目で実直でかつ正義感が強い性格。アカデミーでは
教官を質問攻めにしていた程真面目っぷりを見せており、お陰で主席で卒業した。実は結構な甘党で、
番外編ではドーナツに釣られる姿が度々見られる。トレーニングは欠かさず、それによって培った所謂マッチョな身体は、
真戸呉緒が重過ぎて扱わなかった「クラ」を難なく振り回し、装着者を喰らう「アラタ」にも耐えられるほど。
今回は、20区掃討戦の直前からの参戦。


【聖杯にかける願い】

この世界を歪める「喰種」を消し去る。


【方針】

当分はアーチャーが偵察をし、そして亜門が危険な存在だと判断した場合、倒す。
亜門もクインケを所持しているため、近接戦では有利に戦闘を行えるであろう。
また、亜門も刑事であるため情報戦ではある程度有利に立ち回れる可能性があるが、
彼は職権乱用はあまり好まない人物なので、それは難しい可能性がある。


269 : 亜門鋼太朗&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2016/05/09(月) 21:31:36 soglP6n20
以上で、投下は終了です。


270 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:40:15 T6bakCw20
投下します


271 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:41:02 T6bakCw20
――――後輩が魔女となって。

――――私は後輩の死を嘆く子を撃ち殺して。

――――そして後輩に殺されて。

――――そして今、此処に居る。





深夜、ビルの屋上から街並みを見下ろす二つの影。ひとつはベレー帽を被った少女。一つは眼鏡を掛け、マントを羽織った青年。
二人が見下ろす先には公園が在り、そこでは四つの人影が交錯していた。

「ハルバートを持っているのはランサーでしょう。もう一つの双剣の方は分かりかねますが。」

公園で戦う四人を遠見の珠で見て、青年がサーヴァントのクラスを推測する。

「どうでも良いじゃない。今なら一撃で倒せる」

少女はそんな事に関心は無いというように応えた。

「よろしいのですか、マスター。彼らを殺しても」

「もう人殺しだもの、私は。それに聖杯を取ったら皆生き返らさせて貰うわ。私だって、そうして此処にいるんだもの」

サーヴァントの青年に応えてマスターの少女は両手にマスケット銃を出現させた。

「キャスター、貴方はサーヴァントをお願い」

「承知しました」

応じたキャスターの周囲に膨大な魔力が吹き荒れ、キャスターのマントが翻る。凄まじい魔力に圧されながら、精確に狙いを付ける。必要なのは殺意、標的の命を確実に射抜く意思。
殺意を持たずに殺せる程少女は外れておらず。相手を正しく人として認識し、引鉄を引く。そうして少女は殺した相手の命を背負う。

「………汝に普く厄を逃れる術も無し」

魔術と銃撃の応酬を行っていた二人のマスターが、遮蔽物の陰で相手に動きを窺い、動きを止めた機を少女は逃さない。
キャスターの呪文が完成し、最後の一節を唱える前に、少女は引鉄を引いた。

「メテオスォーム」

放たれた弾丸が過たずに二人のマスターを撃ち抜いた直後、降り注ぐ隕石が二騎のサーヴァントを消滅させた。

「ふう…ふ…ふうう…」

荒い呼吸を押し殺し、マスターの少女は踵を返す。今日は二組の主従を脱落させた。また一歩、聖杯へと近づいたのだ。

「う…くう……」

少女の顔は、苦悩に満ちて暗かった。


272 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:41:55 T6bakCw20
翌日。ロールに沿って与えられた住居である一軒家の寝室で少女が目を覚ますと、彼女のサーヴァントが陣地の強化を行っていた。
少女の両親は、少女が元いた世界と同じで事故死している。
この戦いに巻き込まれて死ぬことは無い、NPCとはいえ両親を危険に晒すのは避けたい少女には都合が良かった。

「お早うございます、マスター。良くお休みになられましたか」

見る度にハリー・⚪️ッターを連想する顔を見て、周囲を見回す。

「どれ位進んだの?」

「この家の異界化は完了しました。内部にはドラゴントゥースウォーリアを始めとするモンスターを放ち、警備も万全です。街に放った使い魔も他の主従の情報を継続して集めています」

「じゃあ防御(ディフェンス)は完璧ね」

何でもこの家の内部の空間に手を加え、迷宮として作り替えて魔物を放すとか言っていたが終わったらしい。

「まだまだ手を加える余地は有ります」

「任せるわ、他の主従の件で何か判ったことは?」

「魂喰いを行っている主従とサーヴァントを用いて私欲を満たす者を発見しています。魂喰いを行っている方の拠点は不明ですが、私欲を満たしているマスターの居所は判明しています」

「では今晩出撃します」

「承知しました。マスターに武具を作成しておきましたのでお使いください」

「有難う、キャスター」

――――愚かな小娘だ。

朝餉を取りに去ったマスターを見送り、キャスターは心中毒を吐く。
聖杯を取りに行くと決めたなら、今は身を潜めるべきなのだ。下らぬ正義感に身を任せて戦いを仕掛ける等、愚の骨頂。
存在自体を悟られぬようにし、キャスターの持つ錬金術と屍霊術を用いて、動植物やNPCを魔物や不死者に変え、周到に罠を構築し、詳細を調べ上げた敵を誘い込んで殺す。
これこそがキャスタークラスのあるべき戦い方というものだ。
しかぢ、あのマスターは、動き回り、戦いを繰り広げている。
いざとなれば転移魔法で拠点へと戻るだけだが、余計なリスクを犯されるのは好ましくない。
もっともマスターの使う武器が銃という遠距離攻撃が可能な武器であったのが、キャスターが強く制止せずに従う理由でもあった。
遠隔からの狙撃。キャスターは銃を作ることは出来ぬが、弾丸は作れる。キャスターが作った弾丸を、マスターが使用すればサーヴァントすら倒せよう。
“魔弾の射手(Il franco cacciatore)”とか言って喜んでたがどうでも良い。
正面切っての戦闘を苦手とするキャスターには、今のマスターは能力的には不足は無い。
だがそれだけだ、今のマスターはでは己が全能を発揮出ぬ。

――――マスターを探さないといけませんね。

一度マスターをグールパウダーを用いて傀儡にしようとしたが、魂が妙な形に加工されていた為に出来なかった。
非常に興味深くはあったが、迂闊に手を出してマスターが死んでしまえば、己の名は道化の代名詞となるだろう。
こうなればマスターを変えるより他に無い。

キャスターには抱き続けた想いがある。この戦いには断じて勝たねばならないのだ。
その為にはマスターを裏切る事など容易いこと。

――――我が女神。レナス・ヴァルキュリアよ。もうすぐ再びお目に掛かります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

――――貴女がどう思っているのか。それこそが重要なのですよ。

キャスターの言葉を思いだし、少女は一人頷く。

――――誰にどう思われても構わない。私は私の願いを叶える。その為に戦う。許しも請わない、救われようとも思わない。そんな事は関係無く、私は皆を救いたい。

折れていた心を再起させたキャスターの言葉を胸に、少女は血の道を行く。

迷いも絶望ももはや無い。

――――もう何も恐く無い。

その先にあるのは救済か安息か絶望か、それは女神にもわからない。


273 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:43:50 T6bakCw20
【クラス】
キャスター

【真名】
レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイルシリーズ

【ステータス】
筋力:E 耐久:B 敏捷:D 幸運:C 魔力:A++ 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。

道具作成:A+
原子配列変換を用いることで、宝具の作成すら可能。

【保有スキル】
魔術:A+
元いた世界で使用されていた戦闘用魔術を、より上位の大魔術も含め習得している。

屍霊術:A+
死体や魂を用いた外法の術。キャスターはこの術を得意とし、不死者を作成することも可能。


錬金術:A+++
賢者の石を作成することを目的とする魔術体系。原子配列すら変換することが可能。
キャスターは賢者の石を作成し、その中に収められた知識をある程度習得している為に最高ランクとなっている。


信仰の加護:A+++
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神の絶対性のみ。
愛する女神への想いを叶える為なら如何なる外道な事でもやってのける。
あらゆる精神攻撃を無効化する。
また、レナス・ヴァルキュリア以外の神格のカリスマを無効化する。

神殺し:A+++
オーディンから神としての力を奪い、新世界の創造神となったレナスを封じた事から獲得したスキル。
神性持ちを相手にした時、その神性に応じステータスをダウンさせる。
また、神造宝具の性能をそのランクに応じ下げる。


変態:ー (A)
レナス・ヴァルキュリアのスリーサイズを鎧の上から正確に看破する眼力。
レナスそっくりのフィギュアを大量に製作する能力。
レナスの思考を正確に読む推理能力
レナスの為なら神にすらなる執念。
etc…。






【宝具】
Should Deny The Divine Destiny of The Destinies.(運命の女神の与えたもうた宿命を拒絶すべし)
ランク: EX 種別:対神宝具 レンジ:10 最大補足:1人

対峙した神格の神性や権能を無効化し、ただの人間とする宝具。
神威と神意を否定するこの宝具は、神格による干渉は令呪による命令すら無効化する。
固有結界として現れ、対象となった神格と神造宝具をを無力化する。
女神を愛し、女神を自分と同じ人間とする為に生きたキャスターの生涯の具現化。レナス・ヴァルキリアに捧ぐ愛。
来歴の都合上、キャスターの抱く想いが強い神格程効果を発揮する。


【weapon】
大いなる教書:

あらゆる魔術について述べられた魔道書
外法と呼ばれる屍霊術にも詳しい

【人物背景】
錬金術、屍術、魔術を始めとする諸学に比類無き才を発揮した天才。
ある日偶然見た戦女神レナス・ヴァルキュリアに恋い焦がれ、レナスと人間として結ばれようとする。
その努力は実らず、レナスを新世界の創造神とする結果を導き、レナスとレザードは遥かに隔たってしまう。
レザードが時を越え、戦女神の一人、シルメリアの力を用い、最高神の力を奪い。時を超えてレザードを滅ぼしに来たレナスを捉え、融合しようとする。
結局は失敗し、レザードはその生を終えた。


【方針】
露見しないように慎重に立ち回る。当面は賢者の石を作る事を目的とする。不死者を作れるか、マスターを傀儡に出来たら楽だなーと思っている。
もっと良いマスターがいたら鞍替えする。その為にも忠僕を演じてマスターを油断させる。

【聖杯にかける願い】
受肉。聖杯の持つ魔力の獲得。


274 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:44:13 T6bakCw20
【マスター】
巴マミ@魔法少女 まどか✨マギカ

【能力・技能】
魔力でマスケット銃を生成できる。巨大マスケット銃ティロ・フィナーレが必殺技
リボンを使った拘束も出来る
錯乱している様に見えていても、冷静に状況を把握し、効率良く物事を進める判断力と思考能力を持つ。

【weapon】
リボンで作ったマスケット銃

【ロール】
女子中学生

【人物背景】
事故にあって死に掛かっていたところを、淫獣と契約して魔法少女となる。
主人公達の良き先輩であり、結構な時間を一人で魔法少女として魔女と戦って来ても折れない強い心を持つが、
目の前で後輩の美樹さやかが魔女となり、魔女が魔法少女の成れの果てだと知り、錯乱。魔女となる前に皆で死のうとし、まどかに殺される。


【令呪の形・位置】
左手の甲に蛇の形をしたもの

【聖杯にかける願い】
魔法少女達に人としての生を、聖杯戦争で殺した者達の蘇生。

【方針】
当面は様子見。機会があれば暗殺。巻き添えが出さず、害を撒き散らす輩は積極的に倒す。

【参戦時期】
10話回想シーン。まどかに殺された後

【運用】
キャスターとしては最高峰だが宝具が弱い。積極策を取らずに待ちに徹するのが賢明か
主従共に飛び道具主体なので近接戦はなるべく避ける


275 : 魔法少女と神に至るストーカー ◆mcrZqM13eo :2016/05/10(火) 01:44:59 T6bakCw20
投下終了ですレザードはほむらと組ませたかった


276 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:51:49 2q1xblUk0
投下します。


277 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:52:22 2q1xblUk0
セイバーが久方ぶりに現世に姿を現した時、最初に立ったのはマンションの一室だった。
目の前にラフな格好の男が座っており、紫煙を燻らせている。その目つきは鋭く、癖のついた頭髪もあわせて獅子のように見えた。

「あんたが俺の…」
「マスターらしいな。クラスは、セイバーか」

尾崎敏夫だ。敏夫は咥えていた煙草の火をもみ消して、名乗った。

「俺は柳生十兵衛。クラスは…敏夫が見たとおりだ」

セイバーは一つ頷くと、自身の真名を明かした。同名の剣豪なら敏夫も知っている。

「敏夫。聖杯にかける願いはあるのか」
「ある」
「…そうか」
「…セイバー。よければ、俺の村で起きている異変について聞いてもらえるか?そう時間はとらせない」
「聞こう」

セイバーが聞く体勢に入ったのを確認し、敏夫は話し始める。
――彼の村に入り込んだ災厄について。




敏夫の話が終わった。セイバーが如何なる感想を抱いたか、その表情からは読み取れない。
あるいは不興を買ったのかもしれない。しかし――

「(……これ以上俺にどうしろというんだ)」

敏夫は形振り構わなかった。
小さな病院一つ背負っているだけの町医者にできることなど、たかが知れてる。
異変の原因を突き止めるために、ときには暴挙とも呼べる手段に訴えた。


278 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:52:48 2q1xblUk0
その結果、唯一の協力者であった静信とは袂を分かち、村役場まで災厄……屍鬼の手に堕ちた。
故に自身が聖杯戦争に巻き込まれたことを知った時、敏夫は虚脱と諦観に打ちのめされた。

「外部に助けを求めようとはしなかったのか?」

そのときセイバーが声をかけてきた。表情に変化はなく、彼の考えを読み取ることは敏夫にはできない。

「それはできない。村人ですら屍鬼の存在を認めなかった。仮に外部が屍鬼の存在を認めたとして、村が救われるとは限らない」

外場の住人は脅威から目を背けた。
夜に出歩かなくなり、しなかった戸締りをするようになり、玄関先に魔除けを下げるようになっても。
これまで培った常識に背くことなく、脅威と対峙することを避け、彼らが過ぎ去ってくれるまで待つことを選んだのだ。

外部が屍鬼の存在を認めた場合、まず外場村は隔離される。屍鬼の汚染を外部に漏らさないために。
外部の人間は村の住人を受け容れるだろうか?敏夫には疑問だった。
敏夫の答えを聞いたセイバーは質問を続ける。

「村から逃げる気はないのか」
「逃げてどうする。屍鬼は外場を拠点に汚染を広げていく。奴らが生きる限り、逃げ場はない」
「だから聖杯に屍鬼の根絶を願うのか」
「そうだ。あるかどうかもわからん脱出ルートを探るより、聖杯に村の救済を願う方が確実だし、速いと俺は思う」

敏夫は既に孤立無援であり、村にはもう一刻の猶予もない。
このタイミングで自分が聖杯戦争に放り込まれれば、村は間もなく屍鬼の手に落ちるだろう。
かくなるうえは急ぎ聖杯を奪取した方がいい。忸怩たる思いで出した結論だった。

「村を救えると思うか?」
「!」

すぐには答えられなかった。
問題は山積しており、敏夫は疲弊している。これほどの犠牲が出てなお、外場は存続できるのか?
だが、と敏夫は思う。

「…俺の故郷を食い荒らした連中を生かしておく道理はない。結局、村を捨てることになるんだとしても、屍鬼は人類の敵でしかない。
っていうのじゃ不満かな?」
「……」


279 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:53:29 2q1xblUk0



「じゃあ、俺は先に行くぞ」
「あぁ、こっちはこいつ(令呪)をごまかす方法でも探しておくよ。何かあったら知らせる」
「あァ」

セイバーは敏夫に協力を約束した。
まずは情報収集を行う事で意見が一致した為、街に探索に出ることにした。
セイバーは一言告げると実体化を解き、部屋を出ていく。それを見届けた敏夫の視線が、窓から屋外に向いた。

「(…夜がこんなに明るいのは、久しぶりだな)」

村の夜になれたせいか。敏夫も令呪をごまかす方法を思索しながら、部屋から退出した。


280 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:54:11 2q1xblUk0
【クラス】セイバー

【出典】鬼武者2

【性別】男

【真名】柳生十兵衛宗厳

【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷C+ 魔力B 幸運D 宝具A

【属性】中立・善

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
魔術による攻撃を何度か受けた逸話があり、ランクは低め。 ただし後述宝具の発動中はその限りでない。

騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
セイバーはカラクリ仕掛けの幻獣に騎乗できる。

【固有スキル】
鬼武者:A
「鬼の力」の使い手であること。倒したサーヴァントの魂をしばらく残留させ、左手の印から吸収することで魔力に還元できる。
ランクが高いほど残留時間が伸び、倒したサーヴァントの格に応じて回復量が多くなる。セイバーは鬼の血を継ぐ柳生一族の出身であるため最高ランクで取得している。

武芸百般:B+
卓越した技術により、あらゆる武具をDランク以上の習熟度で使いこなす。柳生新陰流の開祖であるセイバーは剣術においてランク以上の冴えを見せる。
セイバーは刀、槍、薙刀、鉄鎚、大剣、弓、火縄銃を使いこなし、幻魔と戦った。

勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
 幻魔の軍勢を率いる信長に挑んだ胆力と、義に厚い気質に由来。


【宝具】

『龍が護った鬼の遺産(鬼戦術)』
ランク:A 種別:対人宝具  レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
織田軍と戦っていた際に振るった5種類の「鬼の武器」を保有している。5種類の武器はいずれも自然現象を物質化させた器物であり、選択〜出現〜装備を一工程で行う事が出来る。

一度に一種類のみ出現させる事ができ、武器に応じた自然現象「鬼戦術」を放つ事が可能。生前は集めた幻魔の魂によって発動していたが、サーヴァントとなった今は自身の魔力によって発動することになる。
魔力量が十分なら連続使用3回目でパラメータが低下、連続使用4回目で現界を維持出来なくなる。保有武器の概要は以下の通り。

舞雷刀:バランスのとれた性能を持つ刀。斬りつけた敵に雷を落とす。

氷刃槍:リーチがあり一撃離脱に向く槍。直線状に冷気(氷の塊)を走らせる。

旋風丸:範囲は狭いが、続けざまに攻撃できる双頭の薙刀。セイバーの周囲に暴風を発生させる。

土荒鎚:重いが破壊力抜群の鉄鎚。セイバーの周囲に地震を起こし、敵を衝撃波で打ち上げる。

烈火剣:リーチと破壊力に秀でる西洋剣。セイバーの周囲に複数の火柱を発生させる。


『目覚めよ、幻魔を滅ぼすために(鬼武者)』
ランク:B+ 種別:対人宝具  レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
自身に眠る鬼の血を解放することで"鬼武者"に変化する。移行後は15秒間、筋力をワンランクアップ。更にBランク宝具以下の物理及び魔術による攻撃を無効化する。相手が幻魔スキルを保有する場合はランク問わず無効化できる。
また鬼武者に変化している間は鬼戦術が使用できず、代わりに左手の印から「鬼神弾」を撃つ。

生前は集めた幻魔の魂によって発動していたが、サーヴァントとなった今は自身の魔力によって発動することになる。
魔力量が十分なら連続使用2回目でパラメータが低下、連続使用3回目で現界を維持出来なくなる。

【Weapon】
愛刀の三池典太光世。宝具によって出現させる鬼の武器。


【人物背景】
諸国を旅して武者修行を行っていた柳生一族の当主。
故郷が織田軍によって滅ぼされたのちに、里の洞窟に隠れていた高女から自身が鬼の血を引いていること、幻魔と鬼の因縁を伝えられ、"幻魔王"織田信長を討つ旅に出た。

【聖杯にかける願い】






【マスター名】尾崎敏夫
【出典】屍鬼(アニメ版)
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
専門は内科だが、必要とあれば専門外の患者も診察できる。
また屍鬼による異変に際して、血液に関する医学書・吸血鬼に関する本なども読み漁ったものと思われる。

【ロール】
病院に勤める内科医。

【人物背景】
外場村(厳密には市町村合併により、溝辺町外場)で唯一の病院「尾崎医院」の院長。偶然の重なりによって、彼の故郷である外場村は「屍鬼」と呼ばれる吸血鬼達に拠点として狙われる。
立場上、屍鬼の暗躍に真っ先に気付いた彼は幼馴染である室井静信と調査を始めるが……。第15話終了後から参戦。

【聖杯にかける願い】
屍鬼の根絶。


281 : 尾崎敏夫&セイバー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/10(火) 20:54:36 2q1xblUk0
投下終了です。


282 : アール&アーチャー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/11(水) 20:26:02 LU.gfbT60
人気のない夕方の公園で二つの人影が交錯している――出会った2組の主従が戦闘を行っているのだ。
和装のランサーと赤い甲冑のセイバーが斬り結んでいる。何度か斬り合う内にセイバーの剣がランサーの肩を捕えた。
2人のマスターはマスター同士、拳銃と火炎魔術によって激しい戦闘を行っている。
その戦闘を彼方にあるマンションの屋上から見つめる者がいた。

「はりきってるねぇ。ま、俺には関係ないけど」

各所を機械的な装甲で護る緑の戦士が冷やかに言い放つ。
戦士はセイバーとランサー主従による戦闘を捕捉すると、宝具を開帳して戦闘服を装着。
息を潜めて2組を狙撃するタイミングを窺っていた。

そして戦闘が激しさを増した瞬間、戦士が構えていた身の丈よりも大きい大砲が火を噴く。
大砲から撃ち出された圧縮エネルギー砲弾が、セイバーのマスターの首を吹き飛ばす。

「狙撃!?」
「弓兵っ…か」
「おい、ここからじゃ敵の姿が見えない!」

ランサー主従とセイバーは戦闘を中断するが、続けて第二射、第三射と休むことなく砲弾が飛来。ランサーのマスターにも砲弾が襲いかかるもランサーがすかさず斬り払った。
ランサー主従、マスターの遺体を抱えたセイバーは木々の間へ退避して、砲撃を凌ぐ。

「ランサー、ここは退こう!」
「わかってる、セイバーは…」
「…俺はマスターの仇を」
「そうか」

ランサーの主従は砲撃の隙をついて、ランサーがマスターの盾になり公園から離脱。
セイバーは頭部を失ったマスターを木立の陰に横たえ、砲撃が飛んで来た方向に突撃する。

『マスター、セイバーのマスターを仕留めた。帰還するよ』
『了解、よくやってくれたなアーチャー』
『当然』

アーチャーは2体のサーヴァントが公園から姿を消したことを確認すると砲撃を中断。マスターに帰還する旨を念話で伝え、その場で実体化を解く。
セイバーが屋上にたどり着くころには、狙撃に使用した大砲もアーチャーの姿も屋上から消えていた。


283 : アール&アーチャー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/11(水) 20:26:48 LU.gfbT60


アーチャーとそのマスターは一件のレストランに向かっている。
食事にでも行かない?とアーチャーは帰還するなり言い出し、マスターもそれに賛同したので今、向かっているのだ。
戦闘服を脱いだアーチャーはダブルのスーツを着こなす若い男だった。

『マスターが料理できるんなら、わざわざ外出なくても良かったんだけど』
『へぇ、俺の手料理が食いたいって?』
『冗談。ゴロちゃんなみに上手いってんなら食べてあげてもいいけど』
『ゴロちゃん?』
『俺の秘書』

そうこうしているうちに一軒の洋食屋に着いた。
こちらにきてからマスターが贔屓にしている店であり、小洒落た雰囲気と年季の入った店構えから、チェーン店の類ではないことが分かる。
贅沢なものや華美なものを好むアーチャーの趣味にはそぐわないが、彼の予想よりはいい雰囲気の店だった。
味も期待してよさそうだ。

『へぇ〜雰囲気は悪くないんじゃない』
『なんだ〜?』
『いやいや、俺サーヴァントだし?今はおとなしく清貧に甘んじるよ』
『ホントに口が悪いよな、アーチャー』

マスターが呆れた様子でそれだけいうと二人は無言で店の扉をくぐり、店員に案内されたテーブルについた。


284 : アール&アーチャー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/11(水) 20:27:32 LU.gfbT60
【クラス】アーチャー

【出典】仮面ライダー龍騎

【性別】男

【真名】北岡秀一

【パラメータ】筋力E 耐久D- 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具B

変身時 筋力B 耐久B- 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具B

【属性】混沌・中庸

【クラス別スキル】

対魔力:E(B)
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
宝具使用時はカッコ内のランクに修正。宝具がもたらす強化服により、詠唱が三節以下の魔術を無効化する。
アーチャーは宝具を発動しない場合、一般人と変わらない。

単独行動:D(C)
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。
宝具使用時はカッコ内のランクに修正。宝具によって現界時間が一日間まで伸びる。
アーチャーは私的な友人を持たないが、信頼のおける秘書がいた。また13人のライダーとして明確な味方を持たない。


【固有スキル】

話術:B
言論にて人を動かせる才。国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
どんな不利な裁判でも判決を覆してしまうスーパー弁護士を名乗れるその手腕。

黄金律:B
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶりだが、散財のし過ぎには注意が必要。
アーチャーは法外な弁護料を要求する悪徳弁護士であり、生前は派手な私生活を送っていた。

病弱:B
アーチャーは過度の運動を行えず、耐久値にマイナス補正が加わっている。
生前は不治の病に侵されており、これがライダーバトルに参加する原因となった。

【宝具】

『消えない虹を掴むため(ゾルダのデッキ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
神崎から渡されたゾルダのデッキにより、「仮面ライダーゾルダ」に変身する。ステータスとスキルを変身時のものに修正。
機召銃マグナバイザーにアドベントカードを装填することで、主に銃火器を召喚。遠距離からの射撃戦を得意とする。
先制攻撃や狙撃に長け、高火力だが使用できる装備の重量、装着者の事情から他のライダーに比べてスピードが遅い。


『終焉を呼ぶ鋼牛の咆哮(エンドオブワールド)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜60 最大捕捉:100
仮面ライダーゾルダの「ファイナルベント」が宝具となったもの。
契約モンスターであるマグナギガの背中にマグナバイザーを接続することで発動。マグナギガの全身からミサイルやレーザー、砲弾を発射して範囲内の敵を殲滅する。
特定の敵をターゲットにするのではなくレンジ全域を無差別に吹き飛ばす宝具の為、敵に逃げられる恐れがあるのが難点。アーチャー自身はマグナギガが盾になるので巻き込まれる心配はない。

【Weapon】

機召銃マグナバイザー:アドベントカードを装填する拳銃型の召喚機。

ギガランチャー:シュートベントにより召喚される両手持ちの大型キャノン砲。

ギガキャノン:シュートベントにより召喚、背中に装着されるビーム砲。砲身が両肩から伸びる。

ギガアーマー:ガードベントにより召喚される大型の盾。防具としての用途の他、ギガランチャーと合体させて反動を吸収するストッパーとして用いる。

マグナギガ:アドベントにより召喚される契約モンスター。牛の角を持った人型ロボットのような姿で、高い防御力を持つが自力で移動する様子が無い。

他にも装備はあるが、逸話として確認されていない為に持ってこれなかった。

【人物背景】
法外な報酬と引き換えに、どんな判決も覆す敏腕弁護士。
気さくで社交的な人物だが傲慢かつ高飛車、口が悪いので友人がほとんどいない。他人を機転と口先で陥れ、不意打ちも辞さないが入院少女の手術費用を全額立て替えるなど優しい一面も持っている。
永遠の命を求めて13人のライダーによるバトルロイヤルに参加するも、持病に耐えきれず脱落する事となった。

【聖杯にかける願い】
病弱スキルを克服したうえでの受肉。


285 : アール&アーチャー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/11(水) 20:27:54 LU.gfbT60
【マスター名】アール(レナート・ソッチ)
【出典】ヨルムンガンド
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
精鋭歩兵部隊としての戦闘技能。

【ロール】
イタリアから来日した諜報員。

【人物背景】
武器商人ココ・ヘクマティアル護衛部隊の一員。イタリア人男性らしい酒好きの女好き。
元イタリア陸軍情報担当少尉であり、ボスニアで活動していた頃にCIAのジョージ・ブラックと協力関係を築く。
ココの籠絡を狙うブラックの意を汲んでココ・ヘクマティアルの護衛部隊に加わった。
護衛部隊のムードメーカーであり、ココには単なる監視対象以上の思い入れを持っている。

ヘックスによる襲撃前から参戦。

【聖杯にかける願い】
お嬢(ココ)のもとへ帰還する。


286 : アール&アーチャー ◆ziM0nw4yVY :2016/05/11(水) 20:28:32 LU.gfbT60
ごめんなさい。投下宣言忘れました。

投下終了です。


287 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/12(木) 18:33:03 l3cQ0/Ik0
皆様投下乙です!それでは感想を。

>>巴マミ&キャスター

ああ、確かにほむらなら喚べそうな鯖ですね…>キャスター
しかしさやかに続いて変な鯖を喚んでしまったマミさん、
この先大丈夫なのでしょうか!?
ご投下有難うございます。

>>尾崎敏夫&セイバー

化け物と戦う運命となった悲しき二人。
果たして、彼らが進む先に待ち受けている物とは…
ご投下有難うございます。


>>アール&アーチャー

成る程、令嬢の部下が北岡さんのマスターとは!
これはまた面白そうな組み合わせですね!
しかしライダーバトルが終わって死んだかと思えば
また殺し合いに参加させられてしまった北岡さん、
今度は大丈夫なのでしょうか!?
ご投下有難うございます。


288 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/12(木) 19:06:44 l3cQ0/Ik0
皆様ご投下有難うございます。それでは設定に付いて一つ解説。

ムーンセルへのアクセスは、他の企画にもあるように
「気が付いたら此処にいた」というパターンになっていますが、

「Fate/EXTRA」の様にムーンセルにハッキングを仕掛けることで自分の意志で
アクセスすることも出来ます。

拙作「高杉晋助&アーチャー」 「間明蔵人&ライダー」においてそのような描写がありますので、
そちらを参考にしていただけたらな、と思います。


289 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:27:29 ZCdvvWnk0
投下します


290 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:29:14 ZCdvvWnk0
 
 振動で脳が揺れる。土埃で喉からえずく。

 拝啓、はつけるのかな。時節の挨拶は必要か? 死に行く老人たちはどうやって遺書を書いていたっけ。
相手に失礼のないように……、いや、こんな状況にあったことぐらい、汲み取ってくれるだろう。下らないことに時間を費やす訳にはいかない、内容に移ろう。

 爆音が耳を貫き、耳道を通って三半規管まで。目玉は飛び出すほどに開き、歯は割れそうなほど噛み締める。

 私は穴蔵の中にいます、今は敵の攻撃の切れ目です。あなたがこれを読んでいるころには私は……なんか、いやだな。
……奮闘の末に物資弾丸は底をつき、認識票もどこかにいってしまいました。もはや私は、死、限界、次の攻撃では、私は(消さなくては)……尽きましたが、
私の気力のつきるまで、例え尽きようとも立派に戦い続けます。この身体が滅びようとも、私と戦友達の魂は永遠であります。

 音が止んで、辺りを静けさが包んで行く。故郷は都会ではなかったけれど、四季は特色で彩られ、声はどこまでも響いていった。

 家族へ、血族へ、仲間たちへ。我々は、頑張りました。務めを果たし灯火として命を燃やしました。どうか妹たちにもそう伝えて下さい。
お父さんお母さん、あなた方の産んだ子供は役割を果たし、そうと、努力を重ねました。どうか、誇りに思ってください。

 故郷の場所と自分の名前を書こうかと思ったけれど、やめた。仲間たちと分かち合いたかった。風切り音がした。ついで、つんざくような音にかき消えていく。

 これを拾ってくれる人がいたら、それよりも嬉しいことはありません。敵の勢力圏に陥りつつあるここが奪回されたということは、相手を押し返したということであり、
我々は勝利しつつある、ということだからです。そして、もし、視界に写る機会があったのならば、我々の存在と闘いを記憶の片隅にでも、
いいえ、できたならば誰かに語り継いでください。私達は戦いました。お願いします。私たちは――

 瞬間、轟音。砂塵は高く舞い上がり、爆炎は彼の身体をなめて、覆い尽くした。彼は書いていたものを守るように腹の前に抱え込み、
燃え移った火炎の中で、一瞬の走馬灯ののち、後悔した。身体を動かし、どうにか外に遠ざけようともしたが、どうにも身体が動かない。
覚悟していたことであるけれど、せめて残して行きたかった。失敗してしまった。ばちが当たったのかもしれない。
最後の最後でやった行為は敢闘には値しない行為だったのかもしれない。そもそも、歩兵がカッコつけたり、ものを考えること自体が。

 穴蔵を灼く焔のうちに彼の思考は焼かれ、消し潰されていく。彼の身体も、彼が残そうとしたものも。
数刻の後、崩れそうな塹壕に、装備以外に残ったものは焼けた肉と骨と灰。装備は彼を示すものではなく、崩れ落ちては土に埋まっていく。
肉はウジ虫どもに食い散らかされ、灰は旋風に乗って四散し、骨は酸性の土に溶けて。

 彼は影すらも残らない。



 ※ ※ ※


291 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:31:03 ZCdvvWnk0



 「雪風、ただいま帰還しました!」

 「おかえり」

 「今日も一日頑張ったわね、今晩御飯作るから、ちょっと待っていてね」

 司令部の人間というのは、どういう心持であるのだろうか、どんな資質がいるのだろう?
彼女のサーヴァントたるアーチャーは、世界を守るために戦ってきた兵士である。
よくよくアーチャーは義務として、防衛軍基地からの命令に従って作戦を遂行してきた。
同じ人間ではなく別種の侵略者たちを相手に、それまでの常識が通用しない中でも試行錯誤を繰り返した。
作戦の結果、まんまと死地に追いやられ、気がつけば敵陣に孤立し……仲間たちはどんどんと散って行く。
しかし彼は怒りを抱くことはあったけれど、任務を放棄することは決してない。彼は立派な兵士だった。

 雪風は言われずとも手を綺麗に石鹸で洗い流した、良い匂いが辺りに漂うが、うかない顔。
元来天真爛漫で明るい性格の彼女、こんな顔をしているところを見たら彼女の姉妹はみんな狼狽してしまう。
けれども、今は一人っこだ。彼女を撫でる手は存在しないはずの両親のもの、姉妹は皆いなくなってしまった。

 「今日のご飯はなんですか?」

 「ふふふ、今日わね、エビフライさんよ」

 「お、パパも好きなんだよ」

 「うわあ、ありがとうございます、しれ、……お母さん!」

 彼女の世界もまた異形に侵されていた。深海棲艦と呼称されるもの達への、対抗存在艦娘――。
麗しく凛々しい彼女と仲間たちは日夜戦いを繰り広げる。基本的に勇敢で献身的な艦娘たちの中で、
雪風は、その群をぬく幸運と類稀なる実力からあちこちで活躍。皆からも一目置かれていた。

 「ごちそうさま、おいしかったです」

 「ありがと、うれしいわ」

 彼女を取り囲む世界が変容し始めたのは、やはり司令部からの作戦命令。
一進一退の戦況を打開すべく打ち立てられた敵中枢侵攻作戦、電撃的に精鋭たちを進撃、浸透し、上位指揮系統を撃滅せしめよ。
それは、結果的に立案時の構想から大きく離れ、祖国、大祖国、あるいは――消耗戦の始まりとなり、
人類側防衛圏を大きく揺るがす事態へと発展していく。

 「ふぁあああー」

 「眠いかな? ……先に歯をみがいてきなさい」

 「ふぁい……」

  集められた精鋭たちによって、彩られる艦隊。目にした者たちは人類勝利の栄光を疑わなかったという。
事実、初期は群がる深海棲艦たちをそれこそ鎧袖一触し、景気よく暁の方角に向けて進んでいた。
……司令部は見誤った。これまでの経歴からの艦娘たちの被害程度予想、己たちの増大した自信の自覚、
敵陣における戦力の重厚さ、そして――動かないと思い込んでいたこと。

 「おやすみなさい、お父さん、お母さん」

 「おやすみ、雪風」

 泥沼の前線から後方、銃後における敵戦力の急襲は、まるでハイキックを放った格闘家への冷静な対応の如く。
返す刀で急所に突き刺さったダメージ、人類間の内戦における政治的、心理的それとはまったくちがう――、
人外からの本陣侵攻は致命的な破断を人類に与えた。

 やがて、侵攻部隊はとんぼ返りし、近海にて活発化した深海棲艦を相手に、
雪風は、先行きの見えない、真綿で首を絞められ続けるような防衛戦を続けているのであった。

 「おやすみです。しれぇ」


292 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:33:42 ZCdvvWnk0



 ※ ※ ※


 瓦礫の残骸の中に千切れ落ちたエプロンがある。ありふれた主婦の使うエプロン。
踏みしめた狂獣が、人間への怒りを表すかのように咆哮を上げ、黒い瘴気を吹き出しながらがなり立てる。
その姿は人間の恐れの具現化であり、神話の生物が抜け出てきたような畏怖を与える異形の獣だった。

 バーサーカー、というのが、この獣に与えられた称号だった。何も知らぬ鈍い召喚主は食い殺されてしまった。
素人がゆえに住宅街にて行われた召喚は、牧場に猛獣を解き放つような状態を作り出す。

 狂獣は暴れまわる。閑静な住宅街を血に染めて、平穏を過ごす家庭を数件、獣性に任せて瓦礫に変える。
暴虐の獣に立ち向かう者もいた。家族を守ろうと自分に注意を引き付け、時を稼ぐこともできずに死に行く。
嵐に向かって身を乗り出すような行為だった。圧倒的エネルギーの前には気高さだけでは立ち向かえなかった。

 臓物をまき散らして、瓦礫に染み込む赤い染みとしたところで、バーサーカーは、此方を見据える視線を感じた。

 姿格好は異なる時代のものだが、いやに現実的な、過去でも幻想でもない――まるで、近未来の兵士だ。

 しかし、狂獣に判断能力はない。毛色の異なるものが現れても、侵されている思考回路は変わらない。
愚直な突撃、まっすぐがゆえに規格外の力と速度からなる死の疾風を、間一髪で滑るように横に転ぶ。
バーサーカーは機敏にも次の行動に移る。急制動からの方向転換、先ほどの反応速度では躱せない攻撃を――
兵士は躱す。明らかにステータスが上がっていた。地団駄を踏む猛牛を押さえる闘牛士のように、
繰り返される突撃を、消滅を免れないだろう暴力的な質量を避ける、躱す!

 そうして、ついに後ろを取った彼の手に握られていたのは、みれば暴力だとわかる殺意の権化、ショットガン。
人類生存のため、死に瀕する人々の叡智の結晶たるそれは、バーサーカーを被害者たちと同じ有様に変えた。


293 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:36:32 ZCdvvWnk0



 ※ ※ ※



 雪風は幸運だった。もはや原型をとどめぬ家において、バーサーカーに突進されることもなく、
瓦礫に押しつぶされることもないところにいた。彼女の身体の損傷と言えば、手の甲に浮かんだ令呪くらいだ。
彼女が見つめているのは、まき散らされた残骸。仮初とはいえ過ごしてきた暖かい家の名残である。

 「……わかってました。記憶は、戻ってました」

 「でも、どうしても決められませんでした」

 「ぐちゃぐちゃで、答えがでないんです。アーチャーさん」

 願いを叶える聖杯、散って行った戦友たち、崖っぷちだった戦況、姉妹への親愛、捨てなければならない安らぎ。

 「あの人たちはいい人でした。……雪風たちが守る人たちです」

 「雪風は艦娘です。海の平和を守ります。敵と戦っていました」

 彼女はよくやった。駆逐艦として、艦娘として。果たすべき役割をずっと果たしていた。
けれども敵はずっと強大で、どうしようもならなくなって、仲間もいなくなっていって、
でも、どうにかなる手段が――

 「アーチャーさん、雪風は、あたしはどうすればいいんでしょう?」

 「しれぇ、雪風は――」

 雪風は艦娘である。天真爛漫で明るく、優しい性格の兵士、あるいは兵器である。
彼女には使命があるけれども、命令なしに無辜であろう人々を押しのけてまで、願いを叶えようとは思わない。
彼女は欲求は示すけれど、私欲というものはまったくもって薄かった。彼女は聡く、無垢で、無知だ。
仮初の生活は彼女に、守るべき人々の尊さと焦燥感と罪悪感を植え付けて、それがまた彼女を惑わせて……。

 アーチャーは、ストームワンは、彼女の求める答えをもってはいなかった。彼もまた一個の兵士であったから。
彼と彼女の違いは、生まれと、力の差だけ。雪風を戦局を変えられず、ストームワンは一人で敵を滅ぼした。

 ストームワンは彼女の求める答えを持たない、けれど。せめて、彼女が答えを出すまで、その答えが形になるまで。

 兵士という同胞として、純粋で平穏な、あのときの市民たちのように――。


294 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:38:15 ZCdvvWnk0


【クラス】
アーチャー
【真名】
ストームワン@地球防衛軍3
【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運A+ 宝具EX
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【保有スキル】
心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避。
 異星人の侵略に当たって、彼が生き残ってこれたのは敵の攻撃を体で感知できたからだろう。
勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 EDFは敵を恐れない。防衛軍の精神を彼は体現している。
射撃:B
 銃器を扱う才能を示すスキル。
 あらゆる武器であらゆる戦況に対応しあらゆる敵に対応しなければ、生き残ることはできなかった。

【宝具】
『我ら、地球防衛軍(Earth Defense Force)』
ランク:E〜A+++ 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
 地球防衛軍の兵士、その象徴としての宝具。
 使用してきた武器を魔力を消費することで出現させ、使いこなすことができる。
 ただし、一度に呼び出せる武器は二つまでであり、弾は魔力によって補充され、リロードを行う必要がある。
 性能が高ければ高いほど消費魔力は上がり、最強のジェノサイドガンに至っては令呪三つの補助を必要とする。

『希望の一と無銘兵士たち』
 ランク:EX 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
 ストームワン。一人で地球を偽りもなく救った彼は紛れもない地球の希望である。
 侵略者たる異形、ロボット、昆虫相手は与えるダメージ量が増大し、希望である彼を信じる者たちは精神汚染を無効化。
 さらに、彼がストームワンである限り、全スキルと魔力以外の全ステータスが上昇し続ける。
 彼がストームワンである限りは。

 ストームワンは、英雄なき近未来においてあまりにも超絶した戦果を残しすぎた。
 結果、アーチャーの存在を人々は疑いだしてしまった。ストームワンは非常に脆い幻想となってしまった。
 アーチャーがストームワンらしからぬ行動をとった、または取ったと思われたとき、
 アーチャーはどんどん無銘の兵士に近づき、全スキル全ステータスが下降、最後には消滅する。
 
 ストームワンは異星人から地球を救った英雄。決して人類間の戦争の英雄ではないのだ。

【weapon】
 宝具で呼び出した銃器

【サーヴァントとしての願い】
 雪風を守る。

【人物背景】
 地球防衛軍3にてプレイヤーが操る兵士。
 あらゆる銃器を使いこなし、異星人が操る巨大生物から、ゴジラじみた怪獣、母艦までを殲滅した。
 仲間が倒れながらも一人戦い続ける姿は、司令部から戦友たちまでを大いに支えた。
 が、後の時代を描いた地球防衛軍4ではプロパガンダの虚像じみた扱いを受けており、
 一部を除いて実在を大半が疑っている。


295 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 19:39:08 ZCdvvWnk0

【マスター】
 雪風@艦隊これくしょん

【マスターとしての願い】
 どうすればいいかわからない。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 艦娘としての高い実力と豊富な戦闘経験、その上にある幸運。

【人物背景】
 ゆきかじぇ。
 末期戦的世界線から参戦。
 戦い続けた経験と、敵中枢侵攻作戦への艦隊にも選ばれたことから、高い実力と運を持っている。
 性格は天真爛漫、明るく、舌ったらずで、陽炎型の姉妹からは可愛がられていた。末期的戦況においてもそれは変わっていないが、
 精神的にはダメージを受けていた。そして、聖杯戦争に呼び出されたこと、幸せな家庭の一人娘というロールを与えられたことで、
 失ったことで、数々の二律相反に陥って、答えの見えない迷宮に迷い込んでしまった。

【備考】
 住宅街でのバーサーカーの暴走による被害はガス爆発が原因ということにされました。
 被害者家族の名前が報道されています。


296 : 名無しさん :2016/05/15(日) 19:40:08 ZCdvvWnk0
投下終了です


297 : 雪風&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2016/05/15(日) 20:05:12 ZCdvvWnk0
すみません訂正です
ストームワン→ストーム1 でした 申し訳ありません


298 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:04:29 P7934oXo0
投下します


299 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:05:16 P7934oXo0




この世界に証明を。
己の存在の証明を。
己の強さの証明を。






300 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:06:02 P7934oXo0
時刻は深夜、場所はとある中学校の屋上に設置されたプール。
空に浮かぶ三日月と水面に浮かぶそれの鏡像。
二つの月が揃う場に少女が一人。
月の光には生き物の老いを止める作用がある、だなんて都市伝説の根拠になりそうなほど、月に照らされる彼女の肌は透き通るように――否、最早それ自体が光を放っていると錯覚するほど白さを増していた。
少女は鳶色の髪を肩口辺りで切り、それに加えてピンクヴァイオレットのエクステを付けている。
服装は黒を基調とし所々が破かれいて、アンシンメトリィなものだ。
彼女の名前は二宮飛鳥。
十四歳にして此度の『聖杯戦争』のマスターに選ばれた少女である。
暫くの間プールサイドを歩き回った末、彼女は靴と靴下を脱ぎ、飛込み台に寄り掛かるようにしてその場に座り込んだ。
側から見ると、まるで水浴びをする聖女のような神秘に満ちた光景である。

「……一体、何の用があってこの場に来た?」

と、その時、彼女の側に一つの影が現れた。
それは瞬間移動による現象という訳ではない。さっきまで霊体化していた飛鳥のサーヴァント――ランサーがそれを解いただけである。
姿は見えずとも先程からその存在を感じ取っていた彼女は、彼の出現に大して驚きもせずそちらを向く。
ランサーは茶色の前髪を横に流し、赤と黒を基調にしたコートを身に纏った二十代くらいの青年であった。


301 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:07:01 P7934oXo0
「なに、このセカイに来る前に定期的にしていたことを此処でもやろうかと思ってね」
「何故定期的にこんな場所に来る」
「夜に空と月を見上げ、それに思いを馳せる……この行為にわざわざ他人を納得させる理由が必要だと思うかい?」
「それは別にプールサイドでなくても出来るだろう」
「此処でやるからこそ良いのさ」

そう言って、彼女は両手でプールの水を掬う。すると、その場に三つ目の月が現れた。

「ボクは――いや人間は月みたいなものだ。何かに照らされてようやく存在出来る」
「?……下らん。他人が居ないと証明できないほど弱い存在など、無いも同然だ」

突然出された話題に不思議がりながらも、ランサーは答える。

「そう言うものでもないよ。何せ、月は太陽に照らされることで他の星よりも明るい存在になれるからね」

飛鳥は頭上を見上げた。
其処には数多の星と、それら以上の明るさを放っている月が浮かんでいる。

「ボクも同じさ。ボクはプロデューサーや周りの人々、ファンのみんなに照らされて今までよりも広いセカイにヒカリを届けられる存在になれた。君の言葉を借りれば『強くなった』のさ」
「……で、結局貴様は何を言いたいんだ?」
「まあつまり、だ。自分と似たような存在が二つ――いや、ボクの手元にあるコレも含めれば三つか――存在する夜のプールは、ボクにとってとても落ち着く場所なんだよ」

此処でようやく二宮飛鳥はランサーの『どうして夜中にプールに来て夜空を見上げるのか』という質問に明確な答えを返した。
それに対して彼は納得したような、しかし何処か腑に落ちない部分があるような、そんな感じの表情を浮かべる。

「もっとも、たまに用務員さんが見回りに来て慌ててしまうこともあるんだけどね」
「たまにでも慌てる事態が起きる所を『とても落ち着ける場所』と言って良いのか」

ランサーのツッコミに飛鳥は『おっと』とでも言うような顔をした後、『フフ』と短く笑う。


302 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:08:04 P7934oXo0
「けど、何もこれだけが此処に来る理由ではないんだよ」
「他にも理由があるとでも言うのか?」
「そうだね、例えば――」

飛鳥が次の言葉を言おうとした瞬間、遠くの方から人の悲鳴がした。
思わず二人は屋上の柵に近寄る。

「……こういう風に、夜の町で騒ぎが起きた時、すぐにその位置が把握しやすいのさ」

おそらく後付けであろう飛鳥の説明を聞きながらランサーは悲鳴の発生源を探し出した。
其処には、道行く人々を襲い暴れる異形の存在が居た。おそらく、此度の聖杯戦争ち呼ばれた他のサーヴァントであろう。

「魂喰い、か……はん! 弱者を屠って得られる魔力に頼るとは、呆れたサーヴァントが居たものだな」

そう言いながらもランサーの顔は、無力な一般人を狙う卑劣なサーヴァントへの怒りを露わにしていた。
彼はそのまま右手でコートをマントのようにバサリとはためかせてから、ベルトのバックルのようなものを取り出し腰に嵌めた。
それの名前は『戦極ドライバー』。ランサーの宝具にして、彼が『アーマードライダー』に変身するために必要な道具である。

「助けに行くのかい?」
「そんな甘い理由ではない。俺はただ、己よりも弱い者を狙うアイツが気に入らないだけだ」

彼はそう言うともう一つ、拳よりも一回りほど小さい何か――『ロックシード』を取り出しドライバーにセットする。
すると、何やら陽気な声が流れて、それと同時に彼の頭上の空間から大きな黄色いバナナのような物体が現れた。
それはそのままランサーの頭に落ち、彼の身体を覆う鎧のような形態に変形する。
月光に照らされる彼の鎧は普段よりも一層輝いて見えた。
これこそが彼の宝具が一つ、『バナナ・アームズ』である。

「ボクも付いて行くよ……と言いたいところだけど、そうするよりキミが一人で行った方が早くことが済みそうだね」
「その通りだ。貴様はこのまま呑気に天体観測を続けてろ」

ランサーはそう言うと、『そうかい、それじゃあボクは此処で大人しくしておくよ』と溜息混じりに呟きながら飛込み台の近くへと戻っていく飛鳥の姿を背中に、屋上の柵に足を掛け、そのまま下界へ飛び降りた。

彼がクラスすら分からぬサーヴァントと相対してどうなったかは言うまでもあるまい。何せ彼はかつて人間を越え、世界を滅ぼさんとした程の存在なのだから。
生半可な相手に負けるような男ではない。
それでも結果だけ言えば、この後無事主の元に帰った彼は、再び彼女と共に明け方まで夜空を見上げることになるのであった。


303 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:08:55 P7934oXo0
【クラス】
ランサー

【真名】
駆紋 戒斗@仮面ライダー 鎧武

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷E 魔力E 幸運D+ 宝具A+
(この場合のEとは一般人レベル。耐久のDは後述のスキル『死の超越者』による補正が入ったもの)

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する守り。三節以下の詠唱による魔術を無効化する。

【保有スキル】

カリスマ:D(B+)
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

死の超越者:B
B相当の戦闘続行とC相当の頑健を内包したスキル。
死というどうしようもない己の運命すら一度乗り越えてみせた彼の逸話がスキルとなった物。

【宝具】

『刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

バナナロックシードにより、『アーマードライダー・バロン』(筋力C 耐久C 敏捷B)へと変身する。
皮を剥いたバナナのような槍『バナスピアー』を武器とした近接戦を得意とする。
基本形態であるため特化した能力がないものの、バランスが良い。
必殺技は『バナスピアー』にバナナのオーラを纏わせて相手を貫く『スピアビクトリー』。


『殴り砕く山吹の戦棍(マンゴーアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

マンゴーロックシードにより、『アーマードライダー・バロン』(筋力B+ 耐久B 敏捷D-)へと変身する。
重量級メイス『マンゴパニッシャー』を用いた近接戦を得意とする。
攻撃力に秀でているが、その一方でスピードにおいてはバナナアームズよりも劣る。
必殺技はエネルギーを纏わせた『マンゴパニッシャー』を相手に叩き込む『パニッシュマッシュ』。


『射り撃つ黄金の矢(レモンエナジーアームズ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

レモンエナジーロックシードにより、『アーマードライダー・バロン』(筋力B 耐久C+ 敏捷A)へと変身する。
両端に刃の付いた弓『ソニックアロー』を用いて近距離戦、遠距離戦の両方に対応する。
必殺技はソニックアローにロックシードをセットし矢を放つ『ソニックボレー』。


『運命超越す緋色の王(ロード・バロン)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

ランサーがヘルヘイムの実への耐性を身に付けた末にそれを口にしたことによって、人間を越えた力を得た形態『ロード・バロン』。
この宝具はその力を解放するものである(筋力A+ 耐久A 敏捷B)。
長剣『グンバリャム』、自身の気体化、念動力といった人外の力を用いて戦う。
この時、彼の『カリスマ』はカッコ内まで上がる。
このように、かなり強大な能力だが、その分魔力の消費量も相当のものとなっている。


【weapon】
上記の宝具

【サーヴァントとしての願い】
弱者が一方的に虐げられる世界の破壊と新世界の創造

【人物背景】
仮面ライダー『バロン』に変身する、『チーム・バロン』のリーダー。
幼少期に経験した『ユグドラシル・コーポレーション』の強引な再開発が原因で両親の経営する町工場を潰された過去から、力が無ければ何も守れないという意識を持つ。
オーバーロードインベスの一人、レデュエから受けた攻撃により、毒に蝕まれていた彼はゲネシスドライバーによってその症状を抑えていた。
が。
戦極涼馬と相対する際に戦極が予め仕込んでおいた『キルプロセス』を実行され、ゲネシスドライバーが封じられ、圧倒的不利に追い込まれる。
だが、そんな戦極に屈せず新たな力を求めるべくヘルヘイムの果実を口にした結果、彼はオーバーロード『ロード・バロン』と化し、その圧倒的な力で戦極を倒す。
ついに世界を凌駕する力を手に入れた彼は、その力で古い世界を破壊し新しい世界を作るべく、同じく人間をやめてオーバーロードとなった紘汰と激突。
激戦の末に紘汰に敗北し、彼の強さを認め、息を引き取った。


304 : 二宮飛鳥&ランサー ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:10:03 P7934oXo0
【マスター】
二宮飛鳥@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
生きて帰りたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
歌と踊りが出来る

【人物背景】
静岡県出身、十四歳のアイドル。
自分でそうだと公言してしまうほどの自覚を持った中二病のボクっ子。
趣味は漫画を描くこと。
自分の目で見ない限り、ウワサは信じないらしい。


305 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/16(月) 13:10:24 P7934oXo0
投下終了です


306 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:34:03 MvvneHPE0
投下します。


307 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:34:37 MvvneHPE0
市内を身の丈六尺を優に超える偉丈夫が疾走している。野太い咆哮は雷鳴の様であり、市内を行く人々も顔を向けずにはいられない。
五分刈りにした厳つい顔は、困惑に満ちていた。

「うおおお――!」

小暮宗一郎は本来、警視庁の地下に存在する警察史編纂室の一員として資料整理の傍ら、時に非常識な事件の調査を行っていた。
それが突然、見知らぬ街にいる。小暮が記憶を取り戻した際、まず行ったのは警視庁への連絡だった・・・・・・結果は『圏外』。
東京の千代田区、警視庁に携帯が通じないなどあり得ないというのに。混乱した小暮は現在、警視庁に戻る道を探して、街中を奔走している。

「はぁ・・・一体何が・・・」

住宅街の一角に立つ公園で小暮は立ち止まる。
頭脳労働を得意とする男ではないが、闇雲に走り回っても成果は得られないだろう。
園内で目についたベンチに座り、次にとる手段を考えようとした彼に声をかける者がいた。

「落ち着いたかね?」

顔を向けると黒尽くめの男がこちらを見ていた。
長い黒髪を真ん中で左右に分けており、鋭い目つきで小暮を観察している。

「む、誰であります!」

突然の不審人物の出現に、小暮は声を荒げた。

「記憶は戻っているはずだ。よく思い出してみたまえ」

黒い男は、あくまで冷静に対応する。彼の穏やかな語り口に小暮の緊張も解けていく。
目線を外して記憶を辿っていると、未知の単語が浮かび上がってきた。

「・・・・・・もしや貴方は、自分のサーヴァントでありますか?」

再び視線を向けた小暮に、男はライダーのサーヴァントと名乗った。
聖杯戦争についての説明を要求すると、ライダーは快く応じて小暮に現在置かれている状況の説明を始めた。




「殺し合いですか・・・」

説明を受けた小暮の表情は重い。
信じがたい話ではあったが、置かれている状況や過去に扱った事件に鑑みると、ライダーの説明を否定するのは難しい。
ライダーにも質問を幾つかぶつけてみたが矛盾点はなく、嘘を言っているとは思えなかった。


308 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:35:10 MvvneHPE0

「君はどのように戦うつもりだ」

対するライダーは淡々とした様子だった。

「押忍!自分はこの殺し合いを仕組んだ犯人を逮捕するつもりであります!」

ライダーは、もうすぐこの街で人知を超えたサーヴァントという連中が殺し合いを始めるのだという。
これを放置しておけば、多くの犠牲者が出てしまうのは確実だろう。一警察官として、一人の市民として看過することはできない。
魔術だ、NPCだ、という胡乱な話は一旦置いておけばいい。いちはやく犯人を見つけ、確保することが重要なのだ。
表情を引き締めた小暮は、聖杯戦争を止める旨を力強く宣言する。

「そうか。私も協力しよう」

目の前で大男に吠えられたライダーだが、至極落ち着いている。

「押忍。ご協力感謝いたします・・・ですがその、よろしいのですか?・・・ライダーさんにも何か」

恐る恐る尋ねた小暮にライダーは気を悪くした様子もなく、小さく笑って答えた。

「私は聖杯の正体について興味があるだけだ。掛ける願いはないよ」

そういえば真名を名乗っていなかったな、とライダーは呟き、懐から何かを取り出す。
小暮が受け取ると、それは名刺だった。見ると「考古学者:稗田 礼二郎」とある。

小暮はライダーにずっと既視感を覚えていたが、それは先輩の義理の兄の民俗学者と発散する空気が似ていたからだと理解した。
普段はコンビで捜査に当たっているので先輩がいない現状を心細く思っていた小暮だが、ライダーの知恵を借りれば今回の事件も解決に導けるだろうと意気込みを強くする。

間も無く小暮は業務に戻ったが、それを見送ったライダーは渋い表情を浮かべていた。
話す間も無かったが、彼の宝具「探究者はここに記した(マージナル・マン)」は聖杯戦争において、あらゆる勢力の障害となりうる。
小暮が帰ったら、改めて今後の方針について話し合わねば・・・・・・ライダーは、それとなく空を見上げた。


309 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:35:56 MvvneHPE0
【クラス】ライダー

【出典】妖怪ハンターシリーズ

【性別】男

【真名】稗田 礼二郎

【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運A++ 宝具EX

【属性】中立・中庸

【クラス別スキル】

対魔力:E++
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を僅かに削減する。
幾度となく奇怪な事件や生物から生還したライダーは、幸運判定に成功すれば削減値を倍増させられる。

騎乗:A-
 騎乗の才能。Aランクなら幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
ライダーは後述の宝具を除くと、自動車や自転車といった現代の一般車両以外は乗りこなせない。


【固有スキル】

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
何度か同行者を伴っていた経歴が確認されているが、フィールドワークには概ね一人で赴く。

妖怪ハンター:EX
民俗学や考古学に関する東西問わぬ広く深い学識、異端児と呼ばれうる突飛な発想力をもって奇怪な事件を生き抜いた男の生き様。
同ランクの真名看破と仕切り直しを内包する複合スキル。地球の古い伝承や伝説に残っているなら、対象の正体をほぼ確実に推測できる。また危機的状況において幸運の補正を発揮。最良の一手により戦闘から離脱する。
この幸運補正はライダーの近くにいる味方にも発揮される。

神性:E
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
ライダーは生命の木の力を一時的に受けた為、獲得している。

【宝具】

『天磐船(あまのいわふね)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜70 最大捕捉:2人
風土記において天の若日子が天下りの際に乗ってきたという石の船。ライダーはこれに騎乗することで自由に飛行出来る。磐船はライダーが騎乗した時点で光に包まれた状態になり、ライダーの思念によりコントロールされる。
ライダーはこの宝具の本来の担い手ではないので真名解放は行えず、殺傷力において同ランク帯の宝具に大きく水を空けられている。

『探究者はここに記した(マージナル・マン)』
ランク:EX 種別:対界宝具  レンジ:会場全域 最大捕捉:1(個体)、50(群体)
多くの忌まわしき災厄と遭遇して生き残ったライダーの有り様が、宝具として昇華されたもの。ライダーは現界翌日から幸運判定を昼と夜で計2回自動で行う。
幸運判定に失敗すると、かつて遭遇した「骨の無い多腕多足」、「女性の身体を乗っ取る唇」、「独りでに歩き回る植物」などのうち一種類が、ライダー及びライダーのマスターの拠点をのぞく会場全域の何処かに放たれる。
これらはライダーの使い魔ではないので、何が放たれたのかは対峙してみないとわからない。ただし現界・維持にライダーの魔力を必要としない。
対処法は攻撃により耐久値をゼロ未満にすること、呪具による相殺のみ。ライダー自身は彼らから生き残った実績により、対応する呪具を作成できる。

『非時の香菓(ときじくのかぐのみ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
世界中に残っている大樹伝説の原典である生命の木の種子。タジマモリが常世から持ち帰ったとされる果実。
 花のように見える生命エネルギーの結晶であり、取り込んだ者に神通力を与える。令呪1画を消費することで、ライダーは種子を1個作成することが出来る。
数百個も用意すれば死者蘇生を可能とするが、聖杯戦争中にそれだけの魔力を用意するのは困難を極めるだろう。


【Weapon】
宝具によって再現された怪物に対応する呪具。神秘を帯びているので霊体にダメージを与えられる。

【人物背景】
元K大考古学教授。日本中の様々な「奇怪な事件」の研究を生業としており、各地で客員教授や著述活動を行っている。
痩躯長身に全身黒ずくめがトレードマークであり、若い学生やマスコミから妖怪ハンターの異名を付けられた。

ただし彼自身に妖怪を狩る能力はなく、彼が立ち寄った先では事件の果てに祭が終わり、島や村が滅んでいった。

【聖杯にかける願い】

聖杯を名乗る正体不明の願望器について研究する。


310 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:36:18 MvvneHPE0
【マスター名】小暮宗一郎
【出典】流行り神 警視庁怪異事件ファイル
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

・武道
柔道三段、剣道三段、空手二段の技量と恵まれた体格をもってすれば、暴漢程度は相手にならない。

・霊感
怪奇現象に対してはよく霊感が働く。作中に出てくる退魔師から一目置かれるレベル。
魔術師ほどではないが、常人より魔力供給量は多いと思われる。

【ロール】
刑事。

【人物背景】
2000年代日本、警視庁警察史編纂室に配属された刑事。
主人公・風海純也が捜査した「コックリさん」事件を担当した際、所轄署の刑事だったが、事件後に風見と共に編纂室に配属される。
階級が巡査部長であることから自分より年下だが階級が上の風見を「先輩」と呼んで付き従っている。
実家は東京都東村山市で墓石屋を営んでいる。
流血沙汰と心霊現象が大の苦手。

【聖杯にかける願い】

殺し合い(聖杯戦争)を仕組んだ犯人の逮捕。


311 : 流行り神 小暮編「聖杯戦争」 ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 22:36:45 MvvneHPE0
投下終了します。


312 : ◆GO82qGZUNE :2016/05/21(土) 00:29:24 RK.LjCZ20
投下します


313 : マウンテン・ティム&ジョーカー ◆GO82qGZUNE :2016/05/21(土) 00:30:25 RK.LjCZ20


 ―――雨が降り注ぐ。

 どこまで見渡しても変わることのない灰色雲。突き抜けるような青空は、けれど今は見えることはない。雨雲に遮られて。
 暗い、暗い色の空。暗鬱な。それは、まるでこの世界を取り巻く理そのものを現しているよう。


「後悔なんざ、オレはしちゃいねえさ」


 静寂に満ちた、歩く者が一人としていない街の中。
 空と同じ灰色に染まった細い道。反響する雨音と湿った土の匂いに満ちたその場所で。

 その男は立っていた。傘を差すこともなく、ただ濡れるがまま。
 静かに立っていた。男は静かな、何かをやりきったかのような表情をして、そこにいた。


「ベッドの上で死ぬなんてことも期待しちゃいなかった。オレはカウボーイだからな、ああなるのも覚悟のうちってもんだ」


 奇妙な風体をした男だった。時代と国柄を間違えているとしか思えない服装は西部開拓時代のカウボーイを思わせるもので、しかし彼の全身から滲み出る凄味が、それが単なる伊達衣装の類ではないのだと如実に示していた。そして事実、マウンテン・ティムという名のその男は伝説的なまでの腕前を誇る牧童であった。
 静まる街。断続する雨音。
 水のような静寂の中で、彼は尚も言葉を続ける。


「オレは、帰る場所が欲しかったんだ。旅に出たら帰る場所、ただそいつが欲しかった」
「それで、アンタはそこに帰ることができたのか?」


 応える声があった。
 不純物を拭い去る雨音の中にあって響く声は青年のもの。
 年若い、恐らくはティムよりもずっと若い男の声。

 帽子の男だった。ティムとは違い東洋人種の、恐らくは日本人か。
 レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に影響されたような服をスマートに着こなす男だ。その小説ジャンルをティムが知ることはなかったが、第一印象として帽子の良く似合う男だと受け止めていた。


314 : マウンテン・ティム&ジョーカー ◆GO82qGZUNE :2016/05/21(土) 00:31:01 RK.LjCZ20

 男の声音にはどこか突き放すような、それでいて相手を慮るような響きが含まれていた。
 それは、彼にも半ば直感していたことだからだろうか。
 ティムがどのようにしてここへ訪れたのか。どのような結末を辿ってしまったのか。
 その旅の結末を。どのような凶手が幕を閉じさせたのか。


「いいや。あの人の心はとっくに別の男にゾッコンでね。オレなんかが入り込む隙間は最初からなかったのさ。
 だが、まあ」


 ふっ、と。
 ティムの口元が、笑みに変わる。


「悔いはない。叶わぬ恋と分かっちゃいたし、それでも彼女はオレの『帰る意味』であってくれた。彼女のために戦ったことに一片の曇りもない」


 その言葉に嘘はなかった。後悔など、ただの一欠片だってティムは抱いてなどいなかった。
 何を得ることもなかったのだとしても、その想いを口にできたというだけで全てが報われていた。ただ彼女が救われてさえくれていたなら、それこそがティムにとっての最上の救いだった。


「ま、生きて帰れるってんならまた彼女のために戦うだけさ。ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリが全て受け継いでくれたと思いたいが、それでも心配なものは心配だからな」
「惚れた女のためならば、ねぇ……いいぜ、そういうのも嫌いじゃない」


 何を気取っているんだ、とは言わなかった。ティムの目から見ればこの男はサーヴァントとして呼ばれたのが不思議なほどに甘ちゃんのハーフボイルドで、しかしだからこそ人々の憧憬を勝ち取ることのできた英霊であると分かっていたがために。

 ふと、ティムはここに至ってようやく、自分が傘も差さずにここまで歩いていたことに気付いた。
 聞いたことがある。傘もいらない人間は、自分の人生を呪っている人間なのだと。目的のためなら痛みも意に介さない。
 半分正解で、半分間違いだ。確かに自分は彼女を守るためなら自身の痛みだって構いはしない。だが、それは断じて自分の人生を呪っているからなどではないのだ。


「言ってろよジョーカー。曰く"切り札"のサーヴァントか。その名がこけおどしで終わらないことを期待してるぜ」
「当たり前だ。俺がアンタの"切り札"になってやるよ、マスター」


 軽口を叩き合い、すっかり見慣れてしまった土砂降りの雨を、ティムはただ静かに見据えた。かつての世界で最後に見た、ムカつくくらいの雨と同じ光景を。
 電子の海が紡ぐ聖杯への道は、未だ見通すことはできはしない。
 そこに何の意味があるのか、自分がこうしてここに在る意味とは何なのか。
 あるいは自身の帰還をと、ティムはただそれのみを求め往く。

 先の見えない雨の壁から目を逸らし、彼は振り返ることなく、帰路へと足を向けたのだった。


315 : マウンテン・ティム&ジョーカー ◆GO82qGZUNE :2016/05/21(土) 00:31:46 RK.LjCZ20


【クラス】
ジョーカー

【真名】
左翔太郎@仮面ライダーW

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A+ 宝具B

【属性】
中立・善

【クラススキル】
運命の切り札:EX
切り札は常にジョーカーの元へと舞い込んでくる。彼が辿った逸話と、その精神性がもたらす土壇場の爆発力を現したスキル。窮地において幸運に+の補正を与える。
厳密には確たるスキルというわけではなく、EXランクが示すのも超越性ではなく特異性。これはあくまで、ジョーカーの仮面ライダーとしての在り方が形となったものである。
また、相棒を失ってなおたった一人で戦い続けた彼の生き様でもあるため、低ランクではあるが戦闘続行と単独行動のスキルも併せ持つ。

【保有スキル】
専科百般:D
多方面に発揮される才能。
追跡調査に代表される探偵としての諸般のスキルを取得している。

都市に吹く風:B
風都を守護する仮面ライダーの都市伝説。他者の守護や救出、都市の防衛のための戦闘に際しスキルランク分の戦闘ボーナスを取得する。
ジョーカーではなく「仮面ライダーW」としての現界、及び召喚された土地が風都であった場合にはスキルランクがEXまで上昇するが、今回はランクが大幅に低下している。
なおライダーとしての側面を持つスキルであるため、同ランクの騎乗スキルを内包する。

無冠の武芸:B
正確にはその亜種スキル。
その正体を隠し戦った逸話により、宝具未使用時にはサーヴァントとしての気配を発さず、戦闘時において相手からは全ステータスが1ランク下がって見える。
真名が露見した場合、上記の効果は全て消失する。

【宝具】
『最後に残された切り札(仮面ライダー・ジョーカー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
筋力C+ 耐久C 敏捷B 魔力D
地球より汲み上げた「切り札」の記憶を封じたメモリ。そしてロストドライバーにメモリを挿し込むことで変身する「仮面ライダージョーカー」そのもの。
メモリ一本分の力しかないため出力自体は極めて低いものの、「切り札」の名が指し示す通りにメモリが有する技量・格闘能力が極限まで上昇する性質を持つ。
宝具使用時はステータスを上記のものに修正され、Bランク相当の心眼(真)のスキルを付与。攻撃の度に幸運判定を行い、成功することでダメージにクリティカル補正を発生させる。


316 : マウンテン・ティム&ジョーカー ◆GO82qGZUNE :2016/05/21(土) 00:32:07 RK.LjCZ20

【weapon】
・ロストドライバー
ガイアメモリを使用する変身ベルトの初期型。
ガイアメモリを差し込んで展開することにより、仮面ライダーに変身できる。

【人物背景】
風都にて『鳴海探偵事務所』を営む私立探偵。
『いかなる時も情に流されない鉄の男』であるハードボイルドに対して強い憧れを持っているが、本人の気質は非常に人情家で涙脆いため、半人前のハーフボイルドなどと呼ばれている。
実は私生活や家族関係、及び本編以前の出自等がかなり謎に包まれているミステリアスな人物でもある。

【サーヴァントとしての願い】
特にない。悪逆さえしないならばマスターの好きなようにやらせる。




【マスター】
マウンテン・ティム@ジョジョの奇妙な冒険 第7部「スティール・ボール・ラン」

【マスターとしての願い】
悔いや未練を残しているわけではなく、聖杯に固執する理由もない。
強いて言うならば、生きて帰れるならそうしたいし、またルーシーの力になりたい。

【weapon】
投げ縄と拳銃。

【能力・技能】
「オー!ロンサム・ミー」
荒野の異常現象「悪魔の手のひら」に立ち会ったことで獲得したスタンド。
縄を媒体に発動し、縄上で自身の肉体をバラバラに分解する能力を持つ。
バラバラにした肉体は縄で繋がれ、縄の上を自在に移動することが出来る。
他者の肉体も触れることで投げ縄上でバラバラにすることも出来るが、発動時の隙が大きく戦闘では余り実用的ではない。

・カウボーイ
彼は伝説的なカウボーイであり、彼の前では馬ですら頭を下げ、敬意を払うと言われる。
更には投げ縄や拳銃の腕前も高く、馬が残した僅かな痕跡からその状態や蹄鉄の正確な形状、更には馬と乗り手の心理状態などを分析することが出来る。

【人物背景】
大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」に参加したカウボーイ。
彼の前では馬も頭を下げると言われる程の伝説的な牧童。
かつては騎兵隊に所属していたが、その時に「悪魔の手のひら」と遭遇しスタンドを獲得している。
レース中に殺人事件が発生したことで臨時保安官として任命される。
ルーシー・スティールに想いを寄せ、彼女を守る為に合衆国大統領の部下ブラックモアと交戦したが敗死した。

【方針】
聖杯戦争や舞台について調査する。
積極的に戦うつもりはないが、最終的にどうするかは未定。


317 : 名無しさん :2016/05/21(土) 00:32:28 RK.LjCZ20
投下を終了します


318 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:44:18 .W4JoGlU0
投下します


319 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:45:19 .W4JoGlU0
001

水倉りすかは十歳の赤き魔法少女である。
魔法少女と言われれば、殆どの人がテレビの中で活躍するあの魔法少女を想像するであろう。
実際、彼女も赤い髪に赤い三角帽、赤いニーソックスに赤いワンピース、
ついでに赤い手袋と云う、赤赤赤赤赤な
――五人組タイプの魔法少女アニメでなら、絶対センターやリーダーを務めるであろうファッションをしていた。
しかし、こう説明しておきながら、子供向けのテレビ番組に登場する魔法少女と彼女には多少の違いがあると言わざるを得ない。
何故なら、彼女はワンピースの腰に掛けているホルスターに、カッターナイフと云う、魔法少女にしてはやけに生々しく物騒な――
テレビ番組の登場人物がマジックステッキ代わりに用いていれば、
PTAからいくつもの抗議の電話がテレビ局に掛けられること間違いなしな武器を携帯しているのだから。
しかも、それで自傷行為をし、血を流すことにより魔法が使えるという、色んな意味で危険極まりない設定を彼女は持っているのだ。
アニメ化なんて絶対出来ねえよ。
放送の法に触れる少女だ。
魔法少女ならぬ、違法少女だぜ。
だがそんな、文字通り血に濡れた魔法を使う彼女だからこそ、今回僕が巻き込まれた怪異――
『聖杯戦争』で僕の元に召喚されたのも頷ける。
血を吸う吸血鬼もどきの人間と、血を流すことによって発動する魔法を使う少女。
血に関連する二人。
これ程までにピッタリな主従は、僕と忍を除けばそうそうあるまい。
更にその上、彼女の使う魔法は、時間や運命のような、どうしようもない程強大な力に干渉出来るものなのだ。
僕には『聖杯』に託す願いはないし、またそれに何かを願う権利は自分のような人間にあるとは思っていない。
あの地獄のような春休みやその他諸々をなかったことにしたいという思いは、そりゃあ僕の中にないわけではないけれども、それは『聖杯』という便利アイテムで簡単になかったことにして良いものではないのだ。
故に、僕が持つ願いらしい願いと言えば、『生きて帰りたい』、ただそれだけである。
しかし、『聖杯戦争』という殺し合いで、相性が見事に合致しており、ジョジョのラスボスじみた強大な能力を持つ彼女を召喚出来た僕は、中々に幸運だと言えるのではないだろうか。
少なくとも、水倉りすかを召喚し、彼女の魔法について知ったばかりの僕はそう考え、僅かばかりの安心感を抱いていた。愚かにも。
だが、現実はそう甘くない。
後に僕は知ることに、否、思い出すことになるのだ。
血に――赤に関連する人物と関わって、僕が一切損をしなかったことなど一度も無いということを。


320 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:46:11 .W4JoGlU0
002

『のんきり・のんきり・まぐなあど ろいきすろいきすろい・きしがぁるきしがぁず のんきり・のんきり・まぐなあど ろいきすろいきすろい・きしがぁるきしがぁず まるさこる・まるさこり・かいぎりな る・りおち・りおち・りそな・ろいと・ろいと・まいと・かなぐいる かがかき・きかがか にゃもま・にゃもなぎ どいかいく・どいかいく・まいるず・まいるす にゃもむ・にゃもめ――』

膝丈くらいまでの水位を持つ血の海と突如流れ始めたその言葉を奇妙に感じたのか、狂戦士は振り上げた刃物を下げ、一歩、二歩と引いていく。

『にゃるら!』

魔法少女の呪文というよりも、最早悪魔召喚の儀式の詠唱じみた意味不明で不気味な言葉の羅列の末、血の水海の中から女性の右腕が天を突くように真っ直ぐ現れた。
しかし、現れるのは右腕だけでない。
壁の血が。
窓の血が。
地面の血が。
勿論僕や目の前の名の知らぬ狂戦士の身体に纏わりついていた血も――
辺り一面に撒き散らされた血液が、その一点に集中していき、やがて一人の女性の姿を形作る。

「はっ…………はっはーっ!」

己の新たな誕生が嬉しいのか、目の前の狂戦士との戦いが楽しみなのか、それともその両方か。
十数年分年を取った――二十代後半くらいの姿の彼女は笑った。
声自体は快活なものだが、それが孕む力や殺気は味方どころか主である僕ですら思わず竦むほどのものだ。それに臆せず彼女を睨み付けて唸り声をあげ続ける狂戦士に敬意を抱くくらいである。

「おぉーしゃあっ! ☆5サーヴァントのパーフェクトりすかちゃん参上っ! おっと、てめえがわたしのマスターか? 運が良いねぇ、このわたしを召喚出来るだなんて――いや、運が悪いと言うべきなのか? 普通なら全盛期のこの状態のわたしが召喚されるはずが、クソガキ時代のロリりすかちゃんを呼んじゃったんだからなぁーっ!」

きちきちきちきちきちきちきち!
カッターナイフの刃を一気に出しながら、そう言うりすか――いや、この状態だと『りすかさん』と呼ぶべきだろうか。

「……まあ、結果的にこのわたしが現れたからには安心しな! こんなイカれた駄英霊、ザックリサックリアッサリとぶっ倒してやっからよお!」

りすかさんは全て剥き出しにしたカッターナイフを目の前の狂戦士に向けながらニタリと笑う。
己に凶器を向けられたことにより興奮が増した狂戦士は唸り声を一層強く張り上げた。

「████████████!」
「だぁーっ! るっせぇ! さっきからその声、耳にキンキン響いてウゼェと思ってたんだよ!」

彼女はそこで一気に狂戦士との間を詰め、それの顔面をカッターナイフで斜めに切る。
と同時に、辺り一面に――先ほど彼女が出したほどの量ではないが――決して少なくはない量の血が撒き散らされる。
これには、痛みを知らない獣の如き風貌の狂戦士も文字通り面食らったようであり、血に濡れたその顔に苦悶の表情を浮かべた。

「████████…………!」
「ん? あはっはははっはーっ! なんだお前、そんな愉快な声も出せるのかよ! ……だったら最初から出しとけよオラァ!」

理不尽極まりない怒りの叫びを発しながら、彼女は怯んだ狂戦士に2回目の斬撃を浴びせた。
対して僕は、目の前で連続して起きるあまりにも自分の理解を超えた光景にただただ呆然とするだけである。
自分は何て恐ろしい者を召喚してしまったんだろう――と。


321 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:47:06 .W4JoGlU0
003

そもそもどうして僕と水倉りすかは謎の狂戦士に出会い、そして彼女は辺り一面に血の海を作ることになったのか。これまでの復習と目の前のあまりにも残虐な光景からの現実逃避を兼ねた思考を僕は始める。


まだ十歳の姿だった彼女を召喚してからしばらく経った時、僕は互いの中を深めようと彼女を散歩に誘ったのだ。
これは吸血鬼もどきの僕が昼の散歩に誘っちゃうんだぜ、
と言うかなりお茶目で粋なジョークのつもりだったのだが、生憎彼女は笑わず、しばらく考え込んだ後、
渋々と言った感じに同行することにしただけである。
やれやれ、やはり子どもには大人のジョークは難しかったらしい。次はもう少し易しいジョークで和ませることにしようか。
散歩の帰り際、そう考えながら歩いている僕の袖をりすかが引っ張った。

「……違う道なのがマスターが今歩いてる道なの。そっちはマスターの家とは逆方向」
「え? ……あっ、そっか。ごめんごめん、りすかちゃん。少し考え事をしていてぼうとしていたよ」

――危うく迷子になる所だったぜ。
そう言った時、僕の頭の中に一つのアイデアが思い浮かんだ。

「迷子……!」

迷子。
そう聞いて僕が思い浮かべるものと言えば、八九寺だ。
あの全幼女代表にして僕の大親友である八九寺真宵。彼女とするのと同じようなコミュニケーションをすれば、僕はりすかとも大親友とまでは行かなくても、それに近い関係を築けるのではないだろうか?
ええい、それなら善は急げだ。
早速この場でこのアイデアを実行しよう。
周りには通行人がチラホラ居るけれども、なに、今からする行為に何ら後ろめたいものはない。
あくまで他人と友好関係を築くのに必要なスキンシップなのだから。
よし、それじゃあ始めるぜ。
尺の都合上、練習なしのぶっつけ本番だ。
わん。
つー。
すりー。


322 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:48:08 .W4JoGlU0
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! はちく……じゃなかった。りすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃん!」
「!?」
「ん? 反応が悪いな……八九寺ならここら辺で『ぎゃー!』と素早い反応を返すはずなんだが……まあ良い。もう少し続けてみるか。うおおおおおおおおおおおおお!」
「ぎゃー!」
「おっ、やっと良い反応が出たぞ!りすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんー! これから混物語(マザリモノガタリ)ならぬ交物語(マジワリモノガタリ)の始まりだぜー!」
「ぎゃー!」
「この汗は……九州産の幼女の味だな……!」
「ぎゃー!」

ぐさっ。
りすかは腰のホルスターにはめてたカッターナイフを取り出し、僕の片腕を刺した。

「ぎゃー!」

思い掛け無い反撃に思わず怯み、彼女から離れる僕。
歯ならまだしも刃とは。
どうやらコミュニケーションは失敗したらしい。
周りから刺さる『幼女を襲おうとしたら反撃にあった哀れな暴漢』を見るような目線が痛いが、今はそれよりもリアルな刺し傷の方が問題だ。
そう考え腕の方に目を落とすと、そこにはもう既に半分近く治りつつある傷があった。
吸血鬼特有の治癒能力である。
それを見た僕は慌ててしゃがみ込み。もう片方の手で覆い隠す。

「剣呑剣呑……危うく周りに僕の吸血鬼性がバレてしまう所だった……」
「もっとそれ以上にアウトな部分が周りに知られてしまった気がするの……」

呆れたような口調でそう言うりすか。
彼女は一体どんな蔑みの目でこちらを見ているのかと思いながら、僕は顔を上げる。
しかし、僕が彼女の表情を見ることはなかった。
何故なら、彼女の上半身は綺麗さっぱり消えて無くなっていたからである。
そこには下半身だけでその場に立ち、一テンポ遅れて血の噴水を起動させた何かしか残っていない。

「!? りすかっ!」

突如道に出来たオブジェに、道を歩く人々は悲鳴を上げ、逃げ惑う。
あまりに突然の事態に混乱するも、僕はその時確かに視認した。
下半身だけになったりすかの背後に居るサーヴァント――狂戦士の姿を。

「サーヴァント……!」

僕のその呟きが終わる前に、狂戦士は手に持つ刃物を振り降ろし、下半身だけのりすかを更に真っ二つにした。
ゴロリ、とりすかの下半身の右半分と左半分がそれぞれの方向に倒れる。

「そんな……おい、嘘だろ……?」

肉塊と化したりすかは返事をしない。
僕の頭の中で絶望の二文字が踊る。
狂戦士は不気味な呻き声を上げながら僕に一歩近いた。
そして再びそれは彼女の身体を二度両断した獲物を僕の頭目掛け振り下ろそうと――


323 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:48:52 .W4JoGlU0
004

と、まあこんな感じに僕がこれまでのあらすじめいた回想をしている間に、どうやら決着はついたらしい。
カッターナイフ連続切りの末、りすか改めりすかさんの使う何らか魔法を食らった狂戦士は粉微塵になって消滅した。
この間、僅か三十秒足らずのことである。

「よっし、ゴミ掃除完了〜♪」

そう言うと彼女は僕の方を向いて、ウインクをした。

「あの……りすか……りすかさん?」
「ん? なんだぁ?」
「少し、と言うより、たくさん質問したいことがあるんですが……」
「おー、いーぜ。今のわたしはめっちゃ気分が良いからなあ、大抵の質問なら――いや待て」

そこまで言って、りすかさんは右の手の平を前に突き出す。

「……あー、そっかーやっぱりサーヴァントになっても、いや、サーヴァントになったからこそ『一分』キッチリが限界かあ。そうだよなー。あーつまんね」
「? りすかさん? 一体……」

何やらブツブツと呟くりすかさんに僕はそう聞いた。

「マスター、すまねえがわたしがこの姿のわたしで居られるのは『一分』が限界だ。だから、てめえの質問に答えることは出来ねえ」
「一分!?」
「生前の時から掛かってた時間制限ってヤツさ。ウルトラマンだって三分が活動限界だろ? それと一緒みたいなもんさ。こればっかりは天才最強のわたしでもどうにもならねえから諦めろ」
「そんな……」
「さっきも言ったように、ちゃーんと全盛期のこの姿で召喚されてれば良かったんだけどなー。まあ、召喚されたもんは仕方ねえ。必死こいて、ロリできゅーとで貧弱なりすかちゃんと一緒に、『聖杯戦争』を勝ち抜きな」

でも、と彼女はそのまま言葉を続ける。

「そう悲観することもないぞ? 確かに十歳の時のわたしは魔法を全然うまく使えねえし、引きこもりだし、交友関係狭いしで全然ダメだけどよ……可能性ややる気のピークでもあったからな」
「……」
「だから、まあ、精々仲良く頑張――」

最後まで言い切る前にりすかさんの身体はドロドロに液状化し、加速度的に外側や内側が崩壊して行く。
そして、最後に残ったのは可愛らしい十歳の彼女であった。


324 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:49:38 .W4JoGlU0
005

後日談、というか今回のオチ。
いや後日でもないし、オチてもいないのだけれども、そもそも今の僕に『後日』が無事訪れるのかも分からないのだからそこは許していただきたい。
元の姿に戻ったりすかと共に、僕は未だ人々の混乱が残る道を歩いて、無事家に帰り着いた。
当然、そこにはシャワーを浴びたばかりの大きい妹やまた髪型を変えた小さい妹も居らず、ドーナツ好きの吸血鬼やアイス好きの人形も居ない。この世界で僕に与えられた役割は『一人暮らしの学生』なのだから。
守るべき人も、守ってくれる人も居ないのだ。

「遭うことがあるのはあんな目だから、今後避けるべきなのは気軽な外出なの」

一息つこうとソファに座った時、そうりすかから注意を受け、僕は黙り込む。
確かにそうだ。
今回は始めに狙われたのが実質不死身の彼女だったから良かったようなものの、もしあの時最初に狙われていたのが僕だったら……。
いくら吸血鬼もどきとは言え、サーヴァントからの――それも、身体を真っ二つにするほどの攻撃を受けて無事で済むとは到底思えない。
千石撫子に毎日のように挑んでいたあの頃とは違うのだ。精々、さっきのカッターナイフの時のように多少回復力が上がっているだけである。

「これからどうなっていくんだろうなあ、僕……」

そう言っても、やはり今の僕にアドバイスをくれる委員長は居ないし、愚かだと罵る後輩も居ないのであった。


325 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:50:21 .W4JoGlU0
【クラス】
アサシン

【真名】
水倉りすか@新本格魔法少女りすか

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力E 耐久E(出血を伴うダメージを与えてくる攻撃に対してはA+) 敏捷D 魔力A+ 幸運D 宝具A++

【クラススキル】
気配遮断:E
アサシンのクラススキル。自身の気配を消して他のサーヴァントに見つからないようにする。但し攻撃時はランクが下がる。

【保有スキル】
魔法狩り:C
生前、アサシンが数多の魔法使いを倒して来たエピソードがスキルになったもの。
キャスタークラスのサーヴァントとの戦闘において、自身に有利な状況を引き寄せ、またキャスターに与えるダメージ量が増加する。
本来ならば彼女はこのスキルをB+ランクで保有した状態で召喚されてもおかしくないはずなのだが、彼女が生前行った『魔法狩り』は(途中まで単独で行っていたものだったが)とある少年と共に行われたものであり、此度の召喚で彼は共に居ないのでランクが低下している。

魔法使い:A-
アサシンは魔法使いである。魔法使いは海を渡ることが出来ない。
彼女の血には数多の『魔法式』(術をかける直前に書いておくことで、呪文の詠唱時間を短くするもの)が施されており、その為、アサシンクラスでの召喚でありながら彼女の魔力ステータスは高い。
しかし、アサシンの存在自体が魔力の塊のようなものなので、魔力に対して有効なスキルや宝具を持つ相手との戦闘の際、彼女は不利になりやすい。
なぜランクにマイナスが付いているのかというと、此度の聖杯戦争で召喚された彼女は未だ己の魔法を完全には使いこなせていない少女の姿で召喚されているからである。

【宝具】
『赤き時の魔女』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

属性(パターン)は「水」、種類(カテゴリ)は「時間」、顕現(モーメント)は「操作」。時間を操作できる能力。少女の時のアサシンはまだ己の中の時間しか操作できなかった。
彼女がカッターナイフによる自傷行為などで血を流すと、その治癒に掛かるであろう時間を自身の寿命と引き換えに省略することが出来る。
しかし、サーヴァント化した今では、引き換えに要するのは寿命ではなく、その日数に応じた量の魔力になっている。
治癒に三日掛かる傷を負えば、彼女はその三日を省略出来るのだ。
また、その時間内で行く未来があったであろう場所に、彼女は一瞬で飛ぶこと
――つまり、擬似的なテレポーテーションが出来る。
(『行く未来があったであろう』はあくまで彼女の主観によるもの。例えば『逃げられない』と思った相手からこの能力を使って逃げることは難しい)
生前、省略する日数の限度を十日としていたが、サーヴァント化した今でもそうなのかは不明。

『少女から女へ』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

アサシンが致死量レヴェルの血を流した際に自動発動する宝具。喩え、その際に霊核を破壊されていたとしてもこの宝具は発動する。
周囲に、明らかに自分の体内の血液量を越えた量の血の海を作り出し、その中から二十七歳の姿になった水倉りすか(大人りすか)((ステータス) 筋力B+ 耐久A 敏捷A 魔力A++ 幸運D+ 魔法使い:A++)が召喚される。
この状態の彼女は非常に好戦的な性格をしており、『進める』『省略する』以外にも時間を操ったり、自分の外の時間に干渉したりすることも出来る。その為、実質的に無敵。
しかし、彼女がこの姿で居られるのは僅か『一分間』だけであり、また変身以前に魔力を消費しすぎていると変身後の身体に多少の不備が生じるというデメリットもある。
変身が解けると、元の十歳の水倉りすかに戻る。
これらのことから、つまり、彼女は不死身。
当然ながら、出血を伴わない方法での攻撃を行われた場合、この宝具は発動しない。

【weapon】
カッターナイフ

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【人物背景】
神類最強の大魔導師『ニャルラトテップ』こと水倉神檎の娘。
本来ならば全盛期である二十七歳の姿で召喚されるはずなのだが、主が恋に友情に事件に可能性に溢れた日々を送っていた少年、阿良々木暦であった為、彼の性質に引かれて未熟ながら最も可能性に溢れていた十歳の姿で召喚された。決して、暦がロリコンだからと云う理由ではない。決して。
『◯◯なのが、◯◯なの』という、主語と述語が反転した喋り方をする。
ロリコンなのが、マスターなの。


326 : りすかバース ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:51:07 .W4JoGlU0
【マスター】
阿良々木暦@物語シリーズ

【weapon】
なし

【能力・技能】
・吸血鬼もどきの人間
僅かであるが、身体力が高まったり、再生力が上がってたりと吸血鬼の性質を帯びている。
しかし、彼は完全な吸血鬼ではないので、日の元を歩けるし、極度のダメージを負えば瀕死になる。

【マスターとしての願い】
生きて帰る

【人物背景】
怪異に遭い、遭い続ける少年。
大きなアホ毛と片目を隠す前髪が特徴。
高校三年生になる前の春休みに怪異の王の吸血鬼であるキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと出遭い、壮絶な戦いを経て吸血鬼に近い人間となる。
その後も様々な少女たちと出会ったり、色々な怪異と出遭ったりした。
日常では主にツッコミ役をしており、シリアスパートでは少女を救うべく奮闘する姿が描かれている。
妹に対して過保護気味だったり、八九寺を始めとするロリに対する態度から度々シスコンやロリコンと呼ばれる。というか、シスコンだしロリコン。
此度の聖杯戦争の舞台である電脳空間に忍や扇は付いて――憑いて来ていない。


327 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/21(土) 17:51:26 .W4JoGlU0
投下終了です


328 : 音無小夜&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/21(土) 20:37:46 Bz6ib70Q0
太陽が地平に差し掛かり、街をオレンジに染め上げる。
夕餉に取り掛かる家々の内の一軒で、惨劇が繰り広げられていた。

リビングの中央を陣取る食卓には本日のメニューが並べられ、テーブルの周囲を親子4人が囲んでいる。
しかし、親子はバラバラに上半身を倒しており、ぴくりとも動かない。その中央を黒衣の剣士が動き回り、家人の身体で腹を満たしていた。
不思議な事にこの騒ぎは、まだ周囲に漏れていない。

剣士は天を仰ぐ母親の腸に埋めていた顔を上げると、机に突っ伏す弟の腕をちぎり、しゃぶり始める。
その凶行を家の外から、冷たい眼で見つめる学生服の少女がいた。

≪小夜?サーヴァントを捕捉したわ≫

少女は外にいるはずのマスターに、念を飛ばす。
マスター・音無小夜も同時刻、そう離れていない路地に潜伏する不審人物を視界に収めていた。
黒革のコートを着た人物は件の一軒家に視線を向け、その右手に羽を広げた鳥のような刺青が刻まれているのが見て取れる。

≪・・・お願い、ライダー≫

懐に忍ばせたナイフをいつでも取り出せるようにした後、小夜も敵マスターに向かって歩き出す。
二人はほぼ同時に、標的に向かっていった。

≪了解≫

ライダーが実体化して、リビングに踏み込む。
これを察知した剣士は先制される前に、柔らかな腕を捨ててリビングと一体化したキッチンに向かって跳躍する。
二人目の侵入者目がけて繰り出された袈裟斬りには、自動車程度なら容易く切断しうる速度と自信が漲っていた。
ライダーは獣じみた咆哮を聞きながら、太刀を横に払ってこれを易々と捌く――それが開戦の合図となった。

斬り合いは剣士が優勢だったが、太刀によって傷をつけられる度にその勢いが落ちていく。
筋力値においてライダーに勝ってはいたが、彼女が持つ宝具・獅子王には強力な対霊の効果があり、それは実体化したサーヴァントとて例外ではない。
ナイフを入れられたバターのような速度で、太刀が食い込んでいくのを自覚した剣士はライダーから飛びずさる。

――!

剣士が右斜め後方に跳躍、壁を背にして動きを止める。
直後に踏み込んできたライダーに反応、鋭い突きを繰り出すが、先程と比べれば精彩を欠いたもので、彼女を捉える域には達していない。
獅子王の一閃によって身体が二つに分かれ、返す刀で声帯を貫かれた黒衣の剣士は空気の漏れる音を小さく出すと、恨みがましい視線をライダーに浴びせて、聖杯戦争から退場した。




「小夜・・・何があっても、お前の信じる道を行け…」

――お父さん・・・。

「小夜・・・戦って。」

――ハジ・・・。

「あなたは・・・だれ・・・?」

――ディーヴァ・・・!




329 : 音無小夜&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/21(土) 20:38:41 Bz6ib70Q0
討伐成功の報告を受けた小夜は小さく息を吐いた。
路地から身を乗りだし、ライダーとの合流地点を目指して移動する中、考えるのは聖杯戦争の事。

過去の英霊と組になって行う、魔術師同士の闘争。
小夜も一般人ではないにせよ、オカルトにはこれまで縁が無く、参加させられても勝ち抜けるかは不明。
幸い引き当てたライダーの実力は十分だし、現状良い関係を築けてもいるが、小夜は魔術師ではない。

ゆえに魔力を捻出する際、相応の体力を支払わねばならないが、小夜には翼手の女王として数十年の眠りが迫っている。
マスター契約と言う前代未聞の事態により、休眠期の到来が早まるのではないか・・・・・・記憶を取り戻してから、それが絶えず気に掛かっていた。

「・・・・・・」

合流地点とした遊歩道が小夜の視界に入った時、ライダーが隣に現れた。

「マスター、平気?」

気遣うように尋ねる彼女に、小夜はこわばった調子で言った。表情は固く、いつか美術室で見た石膏像のようだ、とライダーは思った。

「・・・大丈夫。人殺しは初めてじゃ、ないから・・・」

30年前のベトナムで暴走状態に陥り、無差別に殺戮を行った経験が小夜にはある。
もっとも覚醒させられたショックで間も無く記憶を失ったため、思い出したのは最近だったが。

「・・・・・・」

顔に影が差した小夜にライダーは慰めの言葉を掛けようとするが、小夜は気にした様子もなく遊歩道を外れ、自宅に通じる坂へ向かっていく。
口を開いたライダーであったが、結局掛ける言葉が見つからず、静かに霊体化をして小夜の隣から姿を消した。




(・・・妹か)

聖杯が何を持って彼女のサーヴァントに自分をあてがったのかは、小夜の身の上を聞いた時に理解した。
血の繋がった姉妹とこれから殺し合う小夜、妹同然に思っていた神楽に殺された自分。

生前は退魔師としての人生も個人の幸福も失ったが、ガイアによって現世に戻された際に神楽と再会、無事に和解できた。
全ての戦いが終わった後、みんなで喪われた平穏を取り戻し、二度目の生や願望器の力にも魅力を感じないくらいに満足のゆく日々を過ごした。

(穏便な形で収められないかな・・・・・・)

ディーヴァが小夜から聞いた通りの人物なら、もはや対話の機会など無いのだろう。
しかしそれはディーヴァ自身の罪ではなく、人間がそう教育したことも大いに関係している。
そして実妹の存在を教えられなかった小夜もまた、この戦いに対して責任を負っていない――とも言える。

(・・・それでも、退くことはしない)

小夜の言動はどことなく、家を背負った退魔師・・・特に出会って間もない頃の神楽を思わせる。
聖杯を捧げる事に異存はないが、彼女が生還してディーヴァを倒しても、得られるものは何もあるまい。

ライダーとしては、自分の過去をなぞっているような小夜に手を貸してあげたいのだが、今はまだ掛ける言葉も見つからず、無力感と自嘲めいた心情がただ増していくばかりだった。
小夜がひりつく様な緊張感を漂わせ、余裕の無さがパスを通じて伝えてくる度、生前についても顧みざるを得なくなり、ライダーは単純な悲しみと同族意識によって煩悶を更に深くした。


330 : 音無小夜&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/21(土) 20:39:00 Bz6ib70Q0
【クラス】ライダー

【出典】喰霊シリーズ

【性別】女

【真名】諫山黄泉

【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A+

殺生石解放時 筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具A+

【属性】秩序・中庸(混沌・悪)

【クラス別スキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
対策室の主力メンバーとして怨霊調伏の日々を送り、悪霊に堕ちた後も対策室を相手取って戦った彼女はこのランク。

騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
ライダーは後述宝具に宿る霊獣に騎乗し戦う。

【固有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
諫山家の次期当主として積み続けた鍛錬と、豊富な戦闘経験の賜物。

無窮の武錬:C
剣の道において神童と呼ばれ、十代から実戦を経験。エージェントを70人以上殺害した実力。いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

家族愛:D++
魅了や威圧、狂奔など悪性の精神干渉に対し、毎ターン抵抗判定を発生させる。ランクによって持続時間が変動し、絆を結んだ相手を前にすると効果が倍増する。
『殺生石』に対するカウンターとしても機能し、幸運判定に成功すると、属性が一時的に「秩序・中庸」に戻る。

愛する者を災いから守ろうとする心がスキルに昇華されたもの。


【宝具】

『獅子王(ししおう)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
諫山家に代々受け継がれていた家宝の太刀。霊体に対してダメージが増加するほか、担い手は巨大な霊獣「鵺」を使役できる。
これを召喚することで多数の敵を単騎で相手取る事が可能。鵺は咆哮と共に光線を撃ち出す「咆哮破」を主力とする。

『打杯28號(だぐらすにじゅうはちごう)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
刀匠のマイケル小原が製作した武装であり、打撃によって霊体にダメージを与えられるナックルダスター。霊水をスチームのように噴射できるほか、付属のチェーンの先端に付いた分胴によって離れた敵を攻撃することが可能。
見た目は銀一色のアイロン。獅子王をメンテナンスに出していた時期に使用。消耗品の霊水は魔力で補充できる。

『殺生石(せっしょうせき)』
ランク:A+ 種別:対人宝具  レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
ライダーの霊核が破壊された時点で自動発動。ステータスを解放後のものに修正、属性が混沌・悪に変更された状態で復活する。復活は一度きりだが、発動後は殺生石が魔力を生産し続けるため、供給が無くてもAランクの単独行動に匹敵するスタンドアローン力を発揮できる。

陰陽師によって調伏された九尾の魂を封印した妖力の結晶。人体に埋めると無限の妖力を得られるが、代償として肉体と魂が蝕まれ、悪霊と化す。
ライダーを再起不能の重傷から救い、彼女の死を招いた宝具。

【Weapon】
宝具に依存。

【人物背景】

心霊業界で70人以上殺して悪霊となった元超自然災害対策室所属エージェント。土宮家の分家筋にあたる諫山家の頭首、諫山奈落の養女。
メインヒロインの土宮神楽と出会い、姉同然の存在として彼女に大きな影響を与える。
退魔師として戦いの日々を送っていたが、家督争いや影で蠢く陰謀の果てに悪霊へと堕ち、土宮神楽によって殺害される。

【聖杯にかける願い】

なし。


331 : 音無小夜&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/21(土) 20:39:19 Bz6ib70Q0
【マスター名】音無 小夜
【出典】BLOOD+
【性別】女

【Weapon】
市販のナイフ。

【能力・技能】

「始祖翼手」
人の血を吸って生きる食物連鎖の頂点。
人間の体内にはない第5の塩基を持ち、擬態能力と驚異的な身体能力、不老の肉体を持つホモサピエンスの近縁種。
そのなかでも小夜は子を産むことが出来る翼手の女王の片割れである。
彼女の血を妹ディーヴァから派生した翼手に投与することで、結晶化させて死に至らしめることが出来る(逆もまた然り)。

【ロール】
女子高生。

【人物背景】
コザ商業高校の生徒で陸上部所属。宮城ジョージの養女で、宮城カイの義妹であり、宮城リクの義姉である。
2〜3年の活動期と30年の休眠期を繰り返して翼手と戦い続けてきたが、ベトナム戦争時に強制的に覚醒させられた結果 暴走。
記憶喪失に陥り、本編開始一年前まで眠り続け、覚醒後は自身のシュヴァリエであるハジと再会するまで平凡な女子高生として過ごしていた。
ハジと再会した後、再び翼手との戦いに身を投じることになる。
イギリス編登場前より参戦。休眠期が迫っており、かつ血液を補給していない為に回復力が落ちている。

本来は明るくオテンバ、穏やかな性格の少女。イギリス編後は『赤い盾』崩壊やリク喪失に責任を感じており、冷徹・自罰的な振舞いが目立つようになる。

【聖杯にかける願い】
脱出する。本来の小夜は殺人を良しとする人物ではないが、作中では「サーヴァントを使い、一般人を殺害する人物」だったため、敵マスターを手にかけた。


332 : 音無小夜&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/21(土) 20:40:07 Bz6ib70Q0
投下終了です。

投下宣言を忘れてしまいました。失礼いたしました。


333 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/23(月) 04:35:30 ztNbKyqs0
皆様投下乙です!それでは生存報告も兼ねて感想を。

>>雪風&アーチャー

艦娘に家族か…何か凄く切なくなりました。
そしてサーヴァントは、あちらこちらで語られていた軍隊の概念鯖。
成る程、軍隊繋がりか!ご投下有難うございます。


>>二宮飛鳥&ランサー

これまた変わったマスターが来たもんだ…(汗
そして召喚したのはまさかの強者さん!強者さんじゃないか!
強者さんは以前神様(になる前の人)と互角に戦ったので、
逸話的にはかなり強力なサーヴァントになりそうですね、
ご投下有難うございます。


>>小暮宗一郎&ライダー

おい、待て、オカルトに振り回されている人に妖怪鯖はねえだろ!(笑)
そして対聖杯な陣営なのか…頑張れ!ご投下有難うございます。

>>マウンテン・ティム&ジョーカー

ほう、エクストラクラスでの翔ちゃんか!
ジョーカーは個人的に結構好きな仮面ライダーですので思わず興奮してしまいました。
しかしフィリップ君がいないので戦力は半減していますが大丈夫なのでしょうか。
ご投下有難うございます。


>>阿良々木暦&アサシン

こりゃまたトンデモナイ鯖が…果たしてマスターはこの先生きのこる事が出来るのか…
ご投下有難うございます。


>>音無小夜&ライダー

またホラー組かよ!しかしこれですとライダーというよりアサシンですよね。
お互い家族を失った辛い過去を持っていますが、それをやり直さないと言い、
二人は戦いには積極的にはならないと…凄く…切ないです…
ご投下有難うございます。


334 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:53:49 KbP937mo0
投下します。


335 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:54:21 KbP937mo0
穏やかな午後。空いた時間にマンションの自室の掃除を終えた菜々は紅茶を入れて、一息つく。
市販のティーバッグで淹れたものだが、口当たりもさっぱりしていて、甘さがしつこくない。
身体の芯が温まるのを覚えながら、菜々は午後のワイドショーをぼんやりと眺める。

菜々は原因不明の焦りに苛まれながら日々を過ごしていたが、メイド喫茶で給仕をしている最中、全ての記憶が戻った。
そして傍らにいたプロデューサーと所属事務所の痕跡を探し求めて、遂に見つからなかった時、自分は夢でも見ていたのかと呆然と立ち尽くした。
街並みにも違和感を覚えた彼女だったが、ほかに取るべき手段も思いつかず、肩を落として帰路についた。

――時計の針は巻き戻り、姫は再び灰に塗れる。

人殺しに加担するのは辛い。しかし、念願のアイドルデビューが叶った今ここで死ぬことだけは絶対に嫌。
そして、脱出ルートを見つけられるほどの時間も才覚も菜々は持ち合わせていない。だから普通の少女として、聖杯戦争に乗った。

「ただいま」

鍛えた鉄の様な力強さと、若葉の瑞々しさが同居する、女性の声が玄関先から響く。
足音と共に目鼻立ちのはっきりした、長い黒髪の少女がリビングに姿を現した。名前を『アリス・リデル』と言い、その来歴を聞かされた時は、菜々も思わず息を呑んだ。
ただ、菜々が知る少女より10は齢を重ねており、その顔から幼さは微塵も感じられない。透明感のあるエメラルドの瞳は雌豹を思わせる。
青のドレスを身体の一部のように着こなしていたが、白いエプロンが赤い液体で所々汚れており、一般に知られるイメージとは異なる物騒な雰囲気を醸し出していた。

アリスは険のある眼差しをこちらに向けているが機嫌が悪いわけではなく、素でこの表情なのだ。

「おかえりなさい、アーチャーさん!」

菜々はTVの画面を消すと椅子から立ち上がり、小走りでアリスに近づく。菜々が小柄な事もあって、見上げなければ顔が見えない。

「…あの、戦いは…」

恐る恐る菜々は尋ねた。一度聞いた説明を再度お願いする時にはこんな気まずさがある。

「もちろん、殺してきたわ」

使いを済ませたような調子でアリスは言った。組まれた腕に手傷を負っていたが、気にしてはいないようだ。

「……そうですか」

喉から絞り出すような声が漏れる。
普段キャラで売っている菜々だが、臆面もなく言われては、流石に素に戻ってしまう。

アリスは菜々に好意的だが何度言っても敵サーヴァントをマスターもろとも殺害してくるのが、目下の頭痛の種だった。
頭に入っているルールだと、マスターは死ななくても良かったはずだが。


336 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:54:42 KbP937mo0
「…あの、ケーキを買ってきたのでお茶にしませんか?」

菜々は明るい表情を作り、話題を変える。

「いいわよ。でも、2人きりだと何だか寂しいわね」

アリスが応じると菜々は台所に立って紅茶を用意し、アリスも食器を取り出す。まもなく細やかなお茶会が始まった。
カップに注がれた琥珀色の液体からは爽やかな香りが漂い、その傍のソーサーには、御茶請けとしてケーキが1個置かれている。
菜々は紅茶に関しては素人の域を出ないが、自身の味覚を信じるなら、悪い品ではない。ケーキも駅前でオープンしている、それなりに値の張る店のものだ。

問題はアリスが19世紀のイギリス人――つまり本場の出身であること。彼女の口に合うだろうか?

「おいしいですか?」

カップを口元に運んだアリスを見る菜々の背に、蛞蝓の這うような感覚が忍び寄ってきた。
ちゃんと茶葉から淹れた紅茶を出した方が良かったかもしれない。

「うん、悪くはないわね」

評価は辛口だが、アリスの顔色に変化はない。

「…そうですか」

菜々は笑顔のままだったが、椅子の上でしょんぼりと背中を丸めた。

「それより、ナナはまだ決心が固まらないの?」

アリスはチーズケーキをフォークで切り分けて、口に運ぶ。

「ナナは―」

「―道に迷ってしまいそうな時は誰かに尋ねるといい。ウサギが少しは知っているし、俺も風見なんかなくたってどっちに風が吹いているかすぐにわかる」

黒樫を思わせる、非常に低い男性の声が室内に響いた。菜々が声の方に顔を向けると、いつのまにかTVの前にいた痩せぎすな猫がこちらをみている。
骨の浮き出た身体の上で口を裂けそうなほど開き、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

「わっ!ここ、ペット禁止ですよ!」

菜々の身体はピクリと跳ね、思わずカップから紅茶を零しそうになった。

「ペットじゃないわ。チェシャ猫よ」

素知らぬ風でアリスは紅茶を口に運ぶ。チェシャ猫は言いたいだけ言うと、液晶の前で掻き消えるように見えなくなった。
菜々は真っ黒な液晶画面をちょっとのあいだ見つめていたが、やがてアリスの方に姿勢を戻し、お茶会の続きを楽しんだ。




―燃えていると言ってみんなが罵る、まるで私が悪者であるかのように わたしはみんなを心の中からきれいさっぱり片付ける、剣にものを言わせて―


337 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:56:23 KbP937mo0
【クラス】アーチャー

【出典】アリス・イン・ナイトメア

【性別】女

【真名】アリス・リデル

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具A+

【属性】中立・悪

【クラス別スキル】

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
アーチャーは不思議な薬やケーキ、キノコを飲食したことで身体が大きくなったり、小さくなったりしたが問題なく旅を続けた。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
アーチャーの冒険は、一貫した同行者や協力者のいない一人旅であった。

【固有スキル】

精神汚染:EX
精神が狂っている為、他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。更に固有結界を生み出すほどの狂気を孕んでいるため、アーチャーの語る冒険譚を聞くだけで相手は低ランクの精神汚染スキルを得てしまう。
普通に意思疎通が可能だが、如何なる言葉も行動もアーチャーに影響を与えることが出来ない。


勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
夢の中のアーチャーは、断固とした行動力を備える勇者の如き人物である。


【宝具】

『いざ、三度目の冒険へ(アリス・イン・ナイトメア)』ランク:A+ 種別:対軍宝具(対人宝具) レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人(自身含む)

三度目に歩いた恐怖と流血の世界を再現する固有結界。結界内は凄まじい広さを誇り、毒の水が溜まる鉱山、菌糸類の森、石像の少女が流した涙の池、白い城郭などを銃剣で武装した巨大なアリや生肉を引き裂いて食べる花、肉食魚やトランプの兵隊達がうろついている。
また「帽子屋」や「ジャバウォック」といったおなじみのキャラクターが疑似サーヴァントとして現界しており、結界内に侵入した敵に襲い掛かる。
……副次効果として、この宝具は保有するアーチャーに三騎士としての戦闘力を与えている。本来のアーチャーは重い精神障害を患っている少女でしかない。


『汚れた夢の玩具箱(ナーサリーライム・マッドネス)』ランク:D〜B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:300人

三度目の冒険で振るった武器を一種類、出現させて装備する。装備を変更する度に魔力が消費されるほか、 ナイフ・クロッケーの木槌以外の武器は使用する度に相応の魔力が減っていく。
キャスタークラスの場合は「不思議な時計」、「怒りの箱」、「グラスホッパーティー」、「暗き手鏡」が使用可能な装備に追加される。

【Weapon】
ナイフ:使い勝手のいい大振りのナイフ。

トランプ:追尾機能を持つ52枚のトランプ。

クロッケーの木槌:球技用の木槌。追加で魔力を消費することでボールを生成、敵に向かって打つことが出来る。

びっくり箱ボム:投げると爆発するびっくり箱。有効範囲が広い。

アイスワンド:冷気を噴射する杖。敵を氷漬けにできるが魔力消費量は多め。

ジャック:投げて遊ぶ遊戯用の玩具。壁や天井を跳ね回って、敵を攻撃する。

悪魔のサイコロ:投げると悪魔が召喚され、味方として戦ってくれるサイコロ。敵がいない場面で使うと逆に襲われる。

ジャバウォックの目玉の杖:ビームを発射する杖。高火力だが燃費は悪い。

らっぱ銃:らっぱを模した銃。破壊力抜群だが、一度使うとステータスが半減するほどの魔力を消費する。


【人物背景】
世界一有名な夢物語「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」の主人公……の、ありえたかもしれないその後。

2度の冒険を終えたのち、原因不明の火災により自宅が全焼。同時に両親を失ってしまう。
家と両親を同時に失ったショックにより、心を深く閉ざした彼女はラトレッジ精神病院で10年の月日を過ごす。

薄暗い病室でひとり、ウサギの人形を手に眠り続ける日々を過ごしていたが、ある日、持っていたウサギの人形に助けを求められ、再び不思議の国に出発する。
……舞い戻った不思議の国は腐敗したキノコの森や帽子屋の実験場など、かつての美しい景色とは似ても似つかない狂気めいた悪夢の世界であった。
暴力と流血に彩られながら、アリスは混沌と化した世界で三度目の冒険に挑み、これを乗り越えた。



【聖杯にかける願い】
この冒険(聖杯戦争)を制覇する。


338 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:56:58 KbP937mo0

【マスター名】安部菜々
【出典】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

「ウサミン星」

母星。菜々の容姿から察するに、ウサミン星人は地球人と大差ない容姿をしているらしい。
彼女は電車で一時間かけて、地球にやってきて"歌って踊れる声優アイドル"になるべく、活動を続けている。

【ロール】
メイドカフェの店員。

【人物背景】

ウサミン星出身、永遠の17歳を公言するキュートタイプのアイドル。
146cmと低身長だが3サイズは84-57-84と、中々グラマー。電波路線で売り出しているが、設定を練り込んでおらず、加えてアドリブに弱いため、しばしばボロが出る。
ウサミン星との交信を趣味としており、しばしば謎の電波を受信している。個性的な言動をする人物だが、性格は明るく素直で頑張り屋。


【聖杯にかける願い】
脱出の為なら殺し合いもやむなし。


339 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 10:57:27 KbP937mo0
投下終了です。


340 : 安部菜々&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/25(水) 11:20:18 KbP937mo0
自己都合で申し訳ないのですが、スキル欄を以下のように修正します。

アーチャーの語る冒険譚を聞くだけで相手は低ランクの精神汚染スキルを得てしまう。

アーチャーとコミュニケーションを取り続けた場合、低ランクの精神汚染を獲得することがある。


341 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:22:05 5lnVHIl20
投下乙です
自分も投下します


342 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:22:57 5lnVHIl20
コポポポポ、という音を立てて誰の目にも高級品とわかる陶磁器のポットに熱湯が注がれていく。
しばらくして、これまた高級なカップに出来上がった紅茶を注ぎ目と鼻で楽しんでから静かに口に含んだ。

「…ふむ、日本人は食に関して貪欲と聞くがなるほど中々努力しているではないか」

紅茶を飲み、茶菓子を食しながら男は日本及び日本人への評価を(食文化限定で)上方修正した。
この国は島国だけあって良質な軟水が安価で容易く入手でき、茶葉も中々に良い商品を揃えている。
茶菓子も少々糖分の多さが気になるものの繊細な食感は男の舌をそれなりに満足させるものだった。
一仕事終えた後の、心を癒やし鎮めるティータイムを心ゆくまで楽しむ男。




「おっ、美味えじゃねえか。この菓子もイケるな」


ズズー、バリバリガツガツ。
もう一人の青い男の、作法も品性もない飲みっぷりと食べっぷりに男、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはピクピクとこめかみをひくつかせた。

「…ランサー、貴様もこのケイネス・エルメロイのサーヴァントならば少しは品のある振る舞いは出来ないのかね?」
「堅いこと言うなよ。美味かろうがそうでなかろうが口の中に入って飲み込めば何だろうと同じだろ」
「なら私がおかわり用に淹れておいた紅茶を勝手に飲むでないわ!」
「おいおい、それが工房の強化を手伝ってやったサーヴァントへの言い草かよ」

白い呪符の巻かれた朱槍を持ったもう一人の男、ランサーは主人の怒声などどこ吹く風とばかりの態度だ。
紛れもない大英雄なのだがその奔放かつ野蛮な振る舞いは何とかならないものか、と貴族たるケイネスは強く思う。

「貴様に魔力を提供し現界させているのは誰だと思っている?
サーヴァントとして供給された魔力に見合った働きをするのは当然であろうが。
それともまさかこの程度の消費で戦闘に支障が出るなどとは言うまいな?」
「いいや?実際お前は大した魔術師だし、おかげでオレは十分力を出せる。
存分に戦える環境を提供してもらってるわけだから、その分働けってのはまあ正論だな」
「戦士である貴様が私より魔術に長けることに思うところは多大にあるがな。
……まあ神代と現代、貴様と私では根本的にスタートラインが違う以上比べることに意味はないか」

ケイネスは日本に旅行中の英国貴族の役割(ロール)を与えられており、事前に金で買い取った(という設定になっている)洋館を拠点としていた。
今日は拠点の防備を確かなものにすべく魔術工房へ改造、さらにランサーが持つルーン魔術による結界をも取り入れていた。
今やこの洋館は半ば異界と化した魔術によるトラップゾーンとなり、外壁は城塞をも凌駕する堅牢さを備えるに至った。
しかしこれだけの防備を敷いた理由は「負けないため」であり「勝ち抜くため」ではなかった。


343 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:23:34 5lnVHIl20




「もう一度確認しておくがよ、本当に聖杯を獲るために勝ち抜こうって気はないんだな?」
「何度も言わせるな。私にはこのような何処とも知れぬ地での闘争に付き合う理由などない。
冬木での聖杯戦争ならばいざ知らず、現実世界ですらない虚構の世界で得た勝利に名誉も箔もあったものではないわ。
もっともこれほど緻密かつ広大な世界を作り、無数の英霊を召喚せしめるほどの性能を持つ聖杯への学術的な興味ならばあるがね」


あらゆる願いを叶える願望機に懸ける願いというものを、将来の成功を約束された天才であるケイネスは持ち合わせていなかった。
元々彼は自らの経歴に武功という箔をつけるため、極東の日本、冬木なる都市で行われる聖杯戦争に参じようとしていた。
目当ての英霊を召喚するための聖遺物を盗まれるというトラブルが起こったものの次善の英霊を喚び出す触媒を用意し日本に渡る準備を進めていたところ、SE.RA.PHの聖杯戦争に巻き込まれる形となった。
時計塔でも誰も知る者のないであろう架空世界での闘争で得た勝利などに箔や名誉が付随するはずもなく、故にケイネスは聖杯への執着を有していない。
むしろ自らの栄光への道を無遠慮に阻んだ聖杯なるものに対して怒りすら抱いていた。
とはいえケイネスはこと外敵に対しては極めて実際的かつ冷徹な対処ができる人物であり、故に今聖杯に対して怒りをぶつけることには何の利益もないと了解していた。
怒りは殺し合いを強いられた状況を打破し、真に誅罰を下すべき敵と相まみえる時までゆっくりと蒸留し発散すれば良い。

「そもそもが、だ。魔術回路すら持たぬ凡俗とこのロード・エルメロイを一緒くたの基準で勝手に呼びつけるという時点で聖杯など信用ならぬわ。
まあ魔術回路という才を持たぬ者でもサーヴァントを使役することを可能にするシステム、魔術理論については僅かに評価に値するが」
「そういや令呪とパスを解析するとか言ってたな。出来たのか、あれ」
「当然だ。私自身の令呪という現物が存在する以上検分し解析できぬ道理があるまい」


344 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:24:14 5lnVHIl20

ケイネスは自らに割り当てられた令呪とランサーとのレイラインを解析し、その仕組みを余すところなく把握していた。
その結果この世界における聖杯戦争では一般人、つまりは魔術回路を持たない者であっても生命力を注ぐことによって英霊の現界を維持できるシステムが構築されていることを暴いた。
本来の世界では冬木の聖杯戦争を取り仕切る始まりの御三家の一つ、マキリが心血を注いで構築した令呪システムを容易く解析し改竄したケイネスである。
同じように令呪の仕組みを解析することが出来るのは当然だ。
しかし彼にとってはこの成果も決して他人に対して殊更誇るようなことではなかった。
全ては己の血統・才能・実力から生じる当然の結果であると認識しているからだ。
ケイネスが他人に対して誇るものがあるとすればそれは魔術師としての実力ではなく名門アーチボルト家九代目当主にして時計塔のロードという肩書きである。
今のケイネスには自らが成した魔術的成果などよりもよほど確かめるべきことがある。

「私こそ貴様に問わねばならんことがあるぞ、ランサー。
以前貴様は聖杯に懸ける願いはなく、純粋に強者との死闘をこそ望むと言ったな。
しかし私が採る方針はその逆。無用の戦を避け聖杯戦争という枠組みからの脱出だ。
これは貴様の願いに真っ向から反するのではないか?それでもなお私に忠義すると言うのか?」

聖杯戦争に呼び出されるサーヴァントは何もマスターのためだけに刃を振るうわけではない。
彼らもまた願望機に懸けるべき願いを持って参じており、そうでなければ英霊たる者が人間風情の使い魔になど甘んじるはずがない。
少なくともケイネスはサーヴァントとはそういうものだと信じて疑わなかった。
彼の認識からすればランサーの「死力を尽くした戦い」という聖杯に依らない願いは些か特殊ではあったが、理解できないほどでもなかった。
ランサーの願いは聖杯に懸けるものでないにしても聖杯戦争でなければ実現し得ないものであり、何よりケイネス自身が武功を求めて冬木の聖杯戦争に参じようとしていた経緯がある。
しかしケイネスは聖杯戦争に真っ向から反するスタンスを取っており、敢えて血みどろの戦いに身を投じる気は既になかった。
今の彼は闘争よりも聖杯戦争、及びこの世界の調査にこそ持てる魔力、リソースを注がねばならないからだ。
つまりケイネスがマスターである限りランサーの望みは叶うことはなく、にも関わらずこうして従うランサーの思惑を疑ってかかることは少なくともケイネスにとっては全く自然なことだった。
疑念を向けられたランサーはしかし、怒ることもなく堂々と主人に言い放った。


345 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:25:08 5lnVHIl20

「んなもん当たり前だろ。オレはお前に呼びだされたサーヴァントなんだからよ。
ポンポン簡単に宗旨変えなんぞしてたら騎士として立つ瀬がないってもんだ」
「ほう?アルスターサイクルの騎士は好き勝手に暴れる荒くれ者の集まりだったと聞いているが?」
「そうさ。だが不忠だけはしなかったぜ。
それにお前が戦を避けて脱出したくてもだな、そうそう上手くはいくまいよ。
お前が特殊ってだけで大半のマスターは願いを叶えるために死に物狂いで戦いに臨むわけだ。
連中からすれば聖杯戦争のルールをぶっ壊そうとする奴がいるのはたまったもんじゃねえだろうし、全力で妨害しに来る。
つまり結局戦は避けられんし、オレにとっても強敵と戦うチャンスは十分にあるってわけだ。
そういうわけでちゃんと仕事と趣味は両立してるから安心しろ」
「…ふん、野蛮人らしい答えだな。とはいえ本心を隠して阿る輩よりはよほど信用に値する」

これが主や王を裏切った前歴のある英雄の言ならケイネスは決して信用はしなかっただろう。
特に恋愛方面に後ろ暗い逸話を持つ者が無償の忠誠を誓ったならむしろ猜疑心を深めたに違いない。
しかしクー・フーリンはいくつもの無節操さ、蛮勇を示す逸話はあれど決して不忠者ではない。
最後まで国と王を裏切らずたった一人でコノートの軍勢からアルスターを守り抜いた大英雄である。
そのクー・フーリンが己の実益を交えて口にした忠義ならそれなりに信じるに足る説得力があるというものだ。

「大体お前だって自分に牙を剥いてきた奴相手に容赦するほど大人しい性格してねえだろ?」
「無論だ。こちらから積極的に仕掛けることはないまでも、あちらから挑んでくるのであれば私は逃げも隠れもしない。
自らの分を弁えこちらに降り、サーヴァントの指揮権を預けるマスターが在れば庇護してやることも吝かではないがね。
有事とあらば平民の矢面に立ち敢然と外敵に立ち向かうのもまた貴人たるものの務めだ」

冬木の聖杯戦争とSE.RA.PHの聖杯戦争に最も大きな違いがあるとすれば参加するマスターの意志だろう。
基本的に魔術師が自らの意志で聖杯戦争が行われる地に馳せ参じる冬木とは違いムーンセルは戦意の有無に関わりなくマスター候補を集める。
否応無しにマスターに仕立てあげられた、という一点については全てのマスターが平等であることをケイネスは正しく理解していた。
つまりマスターであるからといって無条件に敵対者であるということにはならないし、また不幸にも単なる一般人が巻き込まれたケースも想定し得る。
そういった存在がサーヴァントの指揮権を委譲し傘下に入るというなら庇護しても構わない、というのがケイネスの考えだった。


346 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:26:03 5lnVHIl20




「ここからは私の仮説が入るが、どのみち私と貴様のみで聖杯、いや聖杯の背後にいる何者かを打倒せしめることは不可能と言わざるを得まい」
「ん?つまり何だ、お前は聖杯戦争に仕掛け人の類がいると思ってるのか?」
「然り。英霊を召喚するというだけならそれだけの力を持つ無色の願望機と見做すことも出来た。
しかし実際には現代の街並みを再現した上にマスターを無差別に選定した上で逃げ場をなくし殺し合いを強いている。
加えるにマスターを無差別に選定するためにわざわざ凡俗にもサーヴァントを使役できるシステムを構築した節が見受けられる。
恐らく無差別に招集したマスター、そしてサーヴァントに聖杯戦争を行わせたその先にこそ我らが真に打倒すべき敵の目的があるのだろう。
聖杯戦争には間違いなく高度な知性が働いており、であれば最初に聖杯戦争の枠組みを構築した者が必ず存在するはずだ」
「わからんぜ。単にムーンセルにそれだけの知恵や自我が備わってたってだけの話かもしれん」


ランサーの反論にケイネスは首を横に振る。
その目には強い確信の色が浮かんでいた。

「いいや違うな。私の勘がそう言っている。
私は魔術師であり、そうであるが故に機械文明に明るくはないがそれでも知っていることがある。
無機物はひとりでには動き出さない。どんな機械も、自立式の使い魔やゴーレムも作り手ないし使用者の指令なしに複雑な演算を行うことは有り得ない。
故に聖杯の裏に黒幕が存在することは確定的に明らかである。
ふっふっふ、凡百のマスターは騙せてもこのケイネス・エルメロイの目は誤魔化せん」
「……そんなもんかねえ」

ケイネスは時計塔で日々派閥争いを繰り返しており、故に知性が垣間見える聖杯戦争の裏を疑うのはある種必然の結果ではあった。
むしろ彼からすればこの程度の裏すら読めず我欲に身を任せ戦争に明け暮れる参加者たちの考えの方が理解に苦しむものだった。
もっともケイネスとて本来辿るはずだった悲惨な歴史を経験した後から招聘されていれば聖杯を手にするために躍起になった可能性はかなり高いであろうが。

「…話が逸れたが黒幕が存在するならば、保有する力は我々参加者のそれを確実に上回るだろう。
さらにこの私の参加を許した事実から勘案して、聖杯戦争の舞台となっているこの都市自体も私と貴様の知識・魔術のみで脱出できるようには造られていないはずだ。
この懸案事項を解決するには人間を上回る超常存在たるサーヴァントの力を束ねるより他にはない」


347 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:28:27 5lnVHIl20

自他ともに天才と認めるケイネスではあるが流石に今の自分に何が出来て何が出来ないかという程度のことは理解している。
如何に神童と持て囃される自分でも英霊の能力には届くべくもない。
言い換えればケイネスを遥かに凌ぐ存在であるサーヴァント達の力を結集すれば聖杯戦争の枠組みを壊すことも不可能事ではなくなってくるということだ。
しかしそれには願望機を巡る聖杯戦争という舞台そのものが巨大な障害となってくる。

「あのなあケイネス、さっきも言ったが恐らくほとんどの連中は聖杯を獲ろうと血眼になってるぞ。
お前はそいつらを説き伏せて上手いこと従わせるなんて出来ると思ってんのか?」
「うむ、こればかりは私でも並大抵では成し得ぬだろうな。
一般人のマスターに暗示をかけようにも英霊たる者の目を掻い潜ることは難しいであろうことは想像に難くない」
「じゃあ何だ。諦めて優勝に向けて精を出すか?俺はそれでも構わんぜ」
「馬鹿か貴様は。仮に勝ち抜いたとして黒幕がマスターを生かして帰す確固たる理由がどこにある?
何より私の歩く道を阻んだ敵に対して膝を屈するなど断じて有り得ぬ話だ。
貴様も私のサーヴァントならばその程度は察してみせぬか」
「へいへい、悪かったよ」

ではケイネス自身は聖杯戦争を打破するために何を為すべきなのか。彼は既にそれを確信していた。
ケイネスは政治的手腕にも秀でた、時計塔鉱石学科を文字通りに統治する君主(ロード)であるが故に。

「凡俗や取るに足らぬ魔術師どもを率い、嚮導し聖杯の裏に潜む黒幕に誅罰を下す役目を負うマスターはこのケイネス・エルメロイ・アーチボルトに他ならぬ。
そこらのマスター共にはあまりに荷が勝ちすぎる大事業なれば私がやるしかあるまい。
ふむ、それに聖杯を奪取・掌握し我が魔導の研究の糧としつつ時計塔の派閥争いの手札にするというのも悪くない。
このような非生産的な殺し合いなどに労力を割く輩に聖杯の管理などは任せておけぬしな。
おっと、これだけの成果を持ち帰り時計塔に凱旋したとなればソラウも私に惚れ直してしまうかな?」
「あーはいはい、そうだなー」


348 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:29:12 5lnVHIl20

何やら薔薇色の未来を夢想して悦に入っているケイネスに気のない返事をしつつ、ランサーは目の前にいるマスターのことを思う。
才ある魔術師であることは確かだろう。いくつかの宝具、スキルが喪失しているものの引き出せる身体能力は若年の頃にも相当する。
これならば何者を相手取ったとしても存分に槍を振るえるというものだ。

(けどこいつ、他のマスターと絶対揉め事起こすだろうな。
それに見た感じ戦闘と失敗の経験が明らかに不足してやがる。
だが、そこさえ補って自分の糧にできればこいつは化けるな)

ケイネスの尊大な言動にもランサーはさほど不快感を感じてはいない。
若さ故の傲慢・不遜・無謀、大いに結構。そういう無茶こそランサーが好むものだ。
最初こそ頭の固い魔術師に召喚されたものだと思ったがこのケイネスという男、存外に人間味があって弄り甲斐がある…もとい面白味がある。
それに聖杯戦争そのものに挑むという方針はランサーにとって大きな魅力であった。
聖杯戦争を支配する者を敵に回すとなれば必ずやランサーが求めてやまない死力を尽くした戦が在るに違いない。
その報酬を得るためにもこの色々と危なっかしい青年をフォローし、盛り立ててやろうではないか。


「じゃあいっちょやってやろうやマスター。危なくなったら守ってやるから安心しろ」
「貴様こそ私の足を引っ張るなよ、ランサー。クランの猛犬の名に恥じぬ働きをしてみせよ」


349 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:30:03 5lnVHIl20

【クラス】
ランサー

【真名】
クー・フーリン@Fate/stay night

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具B+
(極めて高いマスター適正を持つケイネスと契約したことで若年時に近いパラメーターになり、対魔力スキルが向上している)

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する守り。三節以下の詠唱による魔術を無効化する。
儀礼呪法、大魔術を以ってしても傷つけることは難しい。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

ルーン魔術:B
北欧の魔術刻印・ルーンの所持。ランサーはこのスキルによりキャスタークラスにも該当する。

矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】

『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大捕捉:1人

真名を解放することで相手の心臓に槍が命中したという結果を作り上げてから槍を放つという因果の逆転現象を起こす。
既に『心臓を刺した』という結果を起こしてから槍を放つため、槍の軌道から身を避けても意味がなく、必ず心臓に命中する。
この宝具を回避するには高い幸運値が必要であり、Aランクでも外れることは稀とされる。ただし高ランクの直感などのスキルを保有していればBランク以下の幸運値でも直撃を回避できる場合がある。
とはいえ上記の幸運判定に成功し、心臓への直撃を避けられたとしてもランサーの槍の技量もあって槍撃そのものを避けることは極めて困難。また真名解放で放たれた槍そのものに治癒阻害の呪いが付与されている。
体内殲滅という特性を持ち、心臓に直撃さえすれば死徒二十七祖や真祖の姫君のような高いタフネス、不死性を持つ相手であろうとも死に至らしめる。


『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5〜40 最大捕捉:50人

本来の使用法で、ランサーの真の切り札。
全身の力と全魔力を使い、魔槍の呪いを最大限発揮させた上で相手に投擲する。無数のやじりを撒き散らすことで炸裂弾のように一撃で一軍を吹っ飛ばす威力を誇る。
またコンマテによると英霊となってからは生前よりもさらにその数を増して強力になっている。
こちらも因果逆転の呪いは顕在だが、威力重視の為に必中能力はあるが心臓を穿つ能力はない。
また全魔力を込めて投擲するため使用後のランサーはかなりの消耗を強いられる。その分威力は高くギルガメッシュの『王の財宝』による宝具の弾幕にも耐えたエミヤの『熾天覆う七つの円環』を一撃で完全に破壊するほど。
『命中するまで何度でも襲い掛かる』性質を持ち、一度ロックオンすれば地球の裏側まで逃げても追って来るという。
なお上記の『刺し穿つ死棘の槍』共々ルーンによる一時的なランクアップが可能。

【weapon】
上記の宝具。ただし現在はケイネスが用意した宝具の正体を隠すための呪符が巻かれておりそれを外さなければ真名解放は不可能である。

【サーヴァントとしての願い】
強者との死力を尽くした戦い

【人物背景】
ケルト神話における大英雄で、アイルランドの光の皇子・クー・フーリン。
今回の彼は別世界の聖杯戦争についての記憶を持たないフラットな状態で召喚されている。


350 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:33:02 5lnVHIl20

【マスター】
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/zero

【マスターとしての願い】
聖杯に懸ける願いはない。
聖杯戦争の枠組みを破壊し裏に潜む者に誅罰を下す

【weapon】
『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』
ケイネスが趣味で作った礼装であり、魔力を込めた水銀。流体操作により刃にも盾になる。盾には攻撃を感知して自動変形することも出来、また脈拍や体温などの生体反応を感知することもできる。
攻撃・防御・探知と汎用性に富む強力な礼装だがそれぞれの機能に弱点がある。
普段は魔術で質量を操作し試験管に入れて携行している。

またこの他にも魔術礼装を準備している。


【能力・技能】
魔術師としての階位は第二位の「色位」。
魔術属性は「風」と「水」の二重属性。降霊術、召喚術、錬金術に通ずる優秀な魔術師で、特に自身の二重属性に共通する「流体操作」を最も得意とする。戦闘以外の魔術に関しても多彩であり、基本的に手を出したジャンル全てで成功を収めている。ただし、実戦経験には乏しい。
魔術刻印は両肩に刻まれている。歴史を重ねた刻印だけあって魔術の自動詠唱機能があり、ケイネスが怪我を負った時にはオートで治癒魔術を行使する。

【人物背景】
名門魔術師の家系・アーチボルトの九代目当主。詳しい年齢は不明だが二十代前半か半ばと思われる。
魔術協会本部・時計塔で最年少でありながら降霊科の講師になった天才魔術師であり「ロード・エルメロイ」の二つ名で知られる。
本来は時計塔にある十二の学部の一つ、鉱石科の学部長だが降霊科学部長の娘ソラウと婚約しており、彼女に心底惚れ込んでいる。
名門の血統と生まれ持った才によって挫折知らずの人生を歩んできた為、外敵に対しては冷徹かつ実際的な対処ができるものの身内が失敗をした時には癇癪を起こすなど精神的な脆さがある。
本来の歴史では冬木で行われる第四次聖杯戦争に参加するはずだったが、日本に渡る準備を進めていたところ今回の聖杯戦争に巻き込まれた。

【方針】
自分に従うマスターを取り込みサーヴァントたちの力を結集して聖杯戦争の打開を図る。
同時に魔術的見地から聖杯戦争の舞台の解析・考察を続けていく。
ただし敵対する者は容赦なく殺す。この点についてはケイネス、ランサーともに意見が一致している。

【備考】
聖杯戦争について様々な考察をしていますが的外れである可能性もあります


351 : ケイネス&ランサー ◆B.tb0EDlpw :2016/05/25(水) 11:33:36 5lnVHIl20
投下終了です


352 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/25(水) 19:12:13 ww7ceUzM0
皆様投下乙です!
まずは感想忘れていた主従の感想を一つ、感想遅れて申し訳ございません。

>>ポーキー&アヴェンジャー

先程MOTHER2のプレイ動画を拝見しましたが、
MOTHERの会話テロップを上手く再現できていると思います。
ダンガンロンパは少ししか把握していませんが、
「こいつはヤベえ」という事は実感できました。
マスターはロボット持ってきていませんが大丈夫でしょうか。
ご投下有難うございます。


そして、本日ご投下なされた2組についても。

>>安部菜々&アーチャー

概念アリスの次はモノホンのアリスかよ!(笑
そしてマスターはアリスの友達と同じ、兎の格好した人。
しかし生きるためとはいえ止む無く人を殺そうと考える姿には、
何処か狂気と切なさを感じさせます。
さあ出かけよう!四度目の冒険へ!
ご投下有難うございます。


>>ケイネス&ランサー

他のSSでも語られた、ケイネス×兄貴ペアとは!
「この二人ならこんな感じに絡むよな」という風に思わせる会話シーン、
そして当企画の設定を上手に使っている所には私、感嘆を禁じ得ません。
にしても月の聖杯をアッサリ壊すという方針には驚きました。そりゃそうですよね、
思えばトロフィー目当てに参加したような物でしたから、態々月に来て願うことなど無いはず。
兄貴という良鯖にも巡り合えましたしZeroよりは順調に事が運べそうな予感!
…ケリィ真っ青な連中と鉢合わせしなければの話ですが。
長文失礼、ご投下有難うございます。


353 : 名無しさん :2016/05/25(水) 21:57:53 Dlbf.rXU0
投下します。


354 : ReLIFE ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 21:58:41 Dlbf.rXU0

 人が課せられた運命のみに従い生きる、そんな世界であるべきだ。それがレイ・ザ・バレルを支え続けてきた思想であった。
 創れるから創ってみたい、などという冒涜的な欲望を切欠として産み落とされた欠陥品の生命を嘆き、ゆえにその生命の全てを不必要な欲望に溢れた世界の変革に使おうという決意。
 ある意味において、レイの在り方は世界の破滅のためだけに自らの生命を費やした『同胞』と表裏一体だったのだろう。
 人が、人としての感性に従おうとするのが誤りだ。人は、世界を構成する部品であるべきなのだと、頑なに信じようとしていた。

 結論から言えば、その悲願は叶わなかった。
 共に闘った『同志』達は敗れ、指針を示してくれた『父』は倒れ、レイの『夢』は終わりを告げる。
 こうして一つの運命が定められた時、レイが取った行動は追想。
 人々に幸福を齎すに違いない世界。その中で実際に生きたとも言えるだろう人々を、改めて見つめ直すことだった。

 ラウ・ル・クルーゼはどうだったか。
 閉ざされた未来ごと世界を道連れに破滅する道を選んだ彼の憎悪を、レイは愚かと断じない程度には共感していた。
 ステラ・ルーシェはどうだったか。
 衰弱していく実験動物としてのみ扱われた彼女の儚さを、レイは少しでも変えられないかと思ってしまった。
 ミーア・キャンベルはどうだったか。
 自分の存在意義に等しい仮面を剥ぎ取られた彼女の怯えを、レイは知っていて視線を逸らした。
 シン・アスカはどうだったか。
 世界平和のためと言ってその実誰よりも心を摩り減らしていた彼の苦しみを、レイは癒そうとせずただ背中だけを押した。
 ギルバート・デュランダルはどうだったか。
 理想を通り越して最早に妄執に変わったそれに囚われたままの彼の姿を、レイは哀れと感じずにいられなかった。

 レイは、運命を絶対と掲げる世界を誰よりも焦がれたレイ・ザ・バレルはどうだったか。
 ……語るまでもない。『父』に、『夢』に終止符を打った一発の銃弾。これが答えだ。

 僕達は知っている。分かっていけることも、変わっていけることも。だから明日が欲しいんだ。どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ。
 そう語る宿敵の言葉こそが、レイの本当の望みだったのだ。
 自分は、人は変われないのだと断定し、自らを改める機会を悉く棒に振り続けた果てに、自らの望みを勘違いしていたのだと気付いてしまった。
 光を当てられるのがあまりにも遅すぎた、それが真実。

 粉塵に、瓦礫に、炎に、『母』の温もりに包まれながら閉ざされようとする未来の中、レイの胸中に一つの願いが生じていた。
 世界がどうあるべきかなどと考えるのは、もう疲れた。
 許されるならば、舞台装置を維持する部品に等しい生き方を今度は拒もう。
 やり直そう。もっと単純な本能に従い、自分の正直な感情を第一とする生き方をしよう。

 この願いに今度こそ確信を抱き、しかし頭では無理な話だと冷静に受け止めていた。
 全ての分岐点を通り過ぎてしまって時点で、この身体には最早未来など無いのだ。
 ならば、寂しく終わろうとする目の前の生命にこのまま寄り添う方が幾分かマシだった。
 不必要と言って他者を切り捨て、必要と言って苦悩を押し付け、大地と宇宙に亡骸の山を築き上げた。その果ての終局を受け入れようと、半ば義務的に思った。

 こうして、レイ・ザ・バレルは最期の瞬間まで運命に従った。
 運命に抗うための最後の力すら、既に残されていなかった。




355 : ReLIFE ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 21:59:30 Dlbf.rXU0



「マスターの殺害を済ませてきた。あのセイバーが消え去るのも時間の問題だ」

 熱の一切籠もらない声色でレイに語りかけるのは、十二、三歳程度だろうとの印象を与える少女だった。
 若さ溢れる年代の子供なのだから、もっと快活な口調で喋るのが自然と誰もが思うだろう。ましてや、人の死を平気で語るなど物騒が過ぎる。
 しかし、レイはその普遍的な発想の方こそが間違いだと知っている。
 サーヴァント。怪物。紛い物。いかなる表現で少女の本性を指しても、それは先程の言葉に伴う冷徹さに相応しいものだ。

「そうか」
「万が一にも奴に特定されると面倒だ。姿を変えても良いな」

 そう言うと同時、少女の身体の輪郭がぐにゃと歪む。
 華奢な容姿がみるみると崩れ、また別の形を作り上げていく。
 そうして一秒と少しの時間を経て、少女だった存在は妙齢の女性へと変わり果てた。
 今の彼女の姿ならば、その口から酷な言葉が吐き出されてもさほど不自然ではあるまい。

 レイの下に現れた従者たるサーヴァントは、アサシン。彼女――と性別を限定する表現は実の所不適切だが――は、「他人に成り代わる」ことを特技としていた。
 人間の姿はおろか記憶すら引き継ぎ、人知れず社会を侵食する生命体、ワーム。
 自らの能力を使い、アサシンは敵対者であるマスターの一人に接近を試みた。
 ある一人の商人、その顧客として重宝された主婦、その実子として寵愛を受けた少年、その恋人として幼い絆を育んだ少女。全て始末し、その姿を奪い取った。
 そして再現された唯一の家族として少女を守りたいと願ったマスターの青年は、先程他でもない少女の手で息の根を止められた。
 今頃、セイバーは血眼になり、憤怒に身を滾らせながらアサシンを探して駆けずり回ることに残された時間を費やしているのだろう。
 無意味だ。奴が追い求めるマスターの妹など、もう何処にも存在しない。本物の妹は亡き者となり、その姿を真似たアサシンは既に『間宮麗奈』へと変わってしまっている。

 きっと、命を落としたマスターはさぞ無念だったろう。彼にも守りたい日常があったのだ。それをレイはアサシンと共に踏み躙った。日常の一端である肉親の外見を利用する形で、だ。
 レイは一度だけ、騎士の誇りに掛けて正々堂々との信条を掲げるセイバーの姿を見かけた。知りながら、レイはアサシンに不意打ちでの勝利を命じ、セイバーとは直接戦おうともしなかった。誇りを汚されたセイバーもまた、哀れだ。

「これがワームのやり方だ。お前達人間の世界に巣食うためのな。改めて聞く。今更、反吐が出るなどと言わないな?」
「舐めるな。正義漢など気取る気は無い」

 聖杯に用意された舞台の上で、全ての戦いを終えて死を迎えるはずだったレイは一先ずの延命を許されている。
 この仮初の生命を確実なものとするため、あの時諦めてしまったモノを掴むためには、やはり聖杯を獲得するのが最適の手段だろう。
 レイが聖杯を欲する理由など、これで十分だった。
 果たすためなら、気取って手段を選り好む気など無い。何処かの世界で人類を脅かしたという怪物の力も、武器として活用するのみ。
 ヒトデナシと糾弾されるに値する手口であっても、レイはかつてと同じく妥当だからと選択する。
 ただし今度は、最終目的がかつてと全く異なる。
 そしてそれは奇しくも、アサシンの考えと似通っていたのだ。
 種としての繁栄、生態ピラミッドの征服、そんなものには既に関心が無い。あの日、事も無げに放たれたアサシンの言葉は、生殖活動を第一とする蟲にあるまじきものだ。
 しかし、レイにとっては信頼の切欠とするに十分なものでもあった。

「俺は、俺のために生きる。そのためなら、今更何を悩んだりもしない」
「……は。いかにも人間らしい」

 レイの願望。アサシンの欲望。
 その先に鎮座する聖杯は救世も革新も可能とする逸品であり、しかし二人はその神秘性に到底釣り合わない、大した内容でもない願いを注ぐことを目的としていた。

 今度こそ、ヒトらしく/ヒトとして、生きてみたい。

 感情のままに二人が望むのは、たったそれだけのこと。


356 : ReLIFE ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:00:00 Dlbf.rXU0



【クラス】
アサシン

【真名】
間宮麗奈@仮面ライダーカブト
※あくまで便宜上の表記に過ぎない

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷D 魔力C 幸運D 宝具D(宝具解放時)

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
・気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
・擬態:A
自らの姿を対象とした人間と同一に変化させる能力。肉体や着衣だけでなく、記憶までも引き継ぐことが出来る。
ただし以下の制限が掛けられている。
①あくまで「人間としての姿形を複写する」だけの能力であり、常人を超越する部分(魔術回路や超能力等)は引き継げない。
②対象は「生きた人間」でなければならないため、霊体であるサーヴァントに対しては擬態が発動しない。
③初めて擬態の対象とする相手の場合、ある程度の距離まで接近し、その姿を視認している状態でないと擬態は発動しない。
なお、他者への擬態中はアサシンの真名の表記も擬態対象の名前に変化する。そもそも『間宮麗奈』の名前自体がこのスキルによって一時的に得ている物に過ぎない。
このスキルは後述する宝具と一体化しており、新たにスキルを発動する際(姿を変化させる瞬間)には一瞬だが宝具解放状態となる。

・クロックアップ:C
異なる時間流への介入による、事実上の超高速移動を可能とする能力。
発動中には魔力消費量の急激な増加が伴うため、長時間・連続での使用は推奨されない。
このスキルは後述する宝具と一体化しており、宝具解放状態でなければ使用出来ない。

・正体秘匿:B
自らがサーヴァントであると悟られることなく活動するためのスキル。
宝具の非解放時に限り、自らの契約者以外の人物からクラス名やステータス等の情報を視認出来なくする。

・精神汚染:E
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。Eランクでは最低限の効果のみ得られる。
あたかも人間であるかのように感情を有した時点で、ワームという群体の中ではただの異物である。


357 : ReLIFE ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:00:29 Dlbf.rXU0

【宝具】
・『葬歌は蟲の声(ウカワーム)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
自らの肉体を地球外生命体ワームの一個体としての姿に変化させる宝具。
実際には別の姿への変身というより、本来の姿への回帰と表現する方が適切だろう。
この宝具の解放中に限りパラメータが変化し、擬態とクロックアップが使用可能となる。

なお、ワームとしての姿がアサシン本来の姿であると説明したが、その時の名前は『間宮麗奈』ではなく、また他の何者でもない。
人間の自己同一性の略奪によって生存することを本分とする生命体ワームにとって、個体としての名称などほぼ無価値である。
そのためこの宝具の解放中は何者も、真名看破のスキルを持つサーヴァントであってもアサシンの真名を特定することは出来ない。
特定されるような真名など、そもそも存在していないから。

【weapon】
ワームとしての肉体。

【人物背景】
かつて人間社会を侵略しようとした地球外生命体ワームの一個体。
この個体は人間の持つ愛を知り、愛に羨望を抱き、しかし自らのためだけの愛を得られず命を終えた。
ワームがワームである限り、人間との間に真の愛など築けるわけが無かった。

【サーヴァントとしての願い】
人間として受肉したい。『間宮麗奈』のように、愛を得たい。



【マスター】
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY

【マスターとしての願い】
もう一度、今度は運命以外のために生きたい。

【能力・技能】
白兵戦、機動兵器の扱いなど軍人としての一通りのスキル。

【人物背景】
とある実験を発端として創り出されたクローン人間の少年。
将来に希望など持ちようのなかった境遇から、運命に全てを決められた世界を創り上げるべきという考えを持つに至った。
人間は、ただ世界という機械を構成する部品としてのみの存在であると言うかのような思想である。
戦いの果てに自らの理想を実現する一歩手前まで辿り着き、しかし結局は自らの手でその理想を捨て去った。
部品であることに耐えられなかった人間として、レイ・ザ・バレルはその短い命を終えた。

【方針】
アサシン本人はある程度の水準のパラメーターを備えているが、上級のサーヴァントに立ち向かうにはやや力不足。
クロックアップは強力だが大きなリスクを伴い、また他に戦闘において有用となるスキルを持たない。
それ故に、聖杯戦争を真っ向勝負で勝ち残ろうとするのは得策では無いと言わざるを得ない。
まずはNPCへの擬態によって人間社会に溶け込んだアサシンと共に、周辺の情報収集を第一とする。
マスターと思しき人物を発見次第、より入念な詮索を行い付け入る隙を見出し、討ち取る。


358 : 名無しさん :2016/05/25(水) 22:01:53 Dlbf.rXU0
投下終了します。

それと、もう一本投下します。


359 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:02:35 Dlbf.rXU0

 幾つかの染みと皺の残る薄汚れたシーツの上、据えられるように座る少女が一人。
 十代だろうと思わせえる顔つきには未だあどけなさが残されており、脚にも腰にも無駄な肉は無い。だからこそ、肉感的な形を成す胸の膨らみが必要以上に人目を引き付ける。金髪と桃の瞳と並び、少女の外見の魅力の一つだった。
 彼女の肢体を包む、豪奢にフリルで飾り付けられたドレスの布地は異様に薄く、その下の肌色をうっすらと透けて見えさせる。
 太腿に至っては、その引き締まった肉質のほぼ全てを観察出来る。それほどまでに、ドレスの裾は短かった。
 少女の右の足首には銀色の輪と、鎖。本来ならば正義の名の下に悪人の手首を囲うために使われる手錠。それは今に限って在り方をゆがめられ、無実の少女から自由を奪うためだけの拘束具として機能する。
 衣装とアクセサリー。幼く、そしてほんの少し痩せたような容貌。何もかもがこちらの征服欲を煽り立てるための要素だと言って良い。
 見つめる少女の顔が、不安げに歪む。組み敷かれる側に相応の表情を、こちらが頼まずとも象ってくれたことにまた悦びを抱く。
 高い金と引き換えに自分のモノとした少女の無垢を思うが儘に穢し、生物の至極単純な欲求を我儘に満たし、牝の内側を苦悶と絶望で埋め尽くす瞬間こそ、牡の生き甲斐の一つなのだ。
 期待感の象徴である生唾をごくりと呑み込んだ後、見せつけるように右手を伸ばす。
 この少女がどれほど知識に富んだ人間であるかは知らないが、少なくとも今から喜ばしくない行為をされることくらいは理解できるはずだ。そうでなければ、侵略のし甲斐が無い。
 優越感に浸りながら、その感覚を増大させるために少女の表情を今一度見やる。露出した華奢な肩にあと3センチで触れようと言う瞬間の、ふるふると子羊のように怯えているに違いないだろう表情を一瞥した。
 しかし、実際に見えたのは期待外れの光景。
 少女は、こちらを見ていなかった。支配者たる自分では無く、その背後の方へと目を向けていたのだ。少女の小さな唇が動く。だれ、と。
 不可思議さと、興を削がれた苛立ちのまま、少女の視線の先へと振り向く。

 いつの間にか、見知らぬ少女が立っていた。
 これから凌辱する金髪の少女よりも頭一つ分は小柄で、暗い銀髪に和装とも洋装とも言い難い白装束。
 その瞳には生気というものが感じられなかった。紫色の、虚ろな目。
 不気味だ、と直感的に思った。そうして臆したから、決定的に反応を遅らせてしまう。
 銀髪の少女が目の前で大きく振りかぶる。ようやく、長い棒らしきものを両手で握っていることに気付く。
 それが大鎌の柄であったと理解し、やめろと咄嗟に叫んだ頃には、既にこの身は切り裂かれていた。

 おかしなことだが、苦しみは全く無かった。
 時間差で激痛がやって来るということも無い。それどころか、自分が今何をされたのかも最早よく分からないと言えるほどだ。
 そうして呆ける自分に構うことも無く、銀髪の少女は金髪の少女へと近寄り、足首を縛る鎖を鎌で切り裂く。
 理解出来ないといった顔の金髪の少女の身体を抱え、銀髪の少女はひゅっと跳ねる。次の瞬間には、二人共が姿を消していた。影も形も無く、最初から誰もいなかったかのように。
 その事実に対し憤慨する気にはならなかった。そんな気も起きない程、自分は混迷の中にいる。
 今の銀髪の少女は、一体誰だったのだろうか。
 いや、金髪の方の少女も誰だったのか詳細に思い出せない。
 そもそも、自分は何をしている。このほの暗い一室は一体どこなんだ。
 何も思い出せない。記憶を取り戻せない。
 おい何があったんだよと口々に言いながら駆け込んでくる、この強面の男達は誰だ。
 てめえは誰だ? そんなものはこっちの台詞だ。なんで俺達の根城にいる? 知ったことか。
 答えろっつってんだろという喧しい罵声と共に、男の一人に顔面を殴られた。ふざけるな。何故殴られなければならない。
 一瞬の内に沸騰した脳に命じられるまま、お返しに思い切り拳骨を叩き込む。そのまま、殴り殴られ蹴り蹴られの応酬へともつれ込む。
 自分がどうして喧嘩をしているのかという疑念など、とっくに頭から吹っ飛んでいる。それほどまでに、痛みと怒りの熱さで全身が火照っていく。
 ばん、という音が鳴ると同時、一際激しい熱の塊が胸の真ん中に生じた。
 急激に、全身が冷え切っていくような感覚。力が抜けていく。
 どうしてこんな末路に至っているのだろう。
 もう、何も思い出せない。






360 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:03:08 Dlbf.rXU0



 いわゆる反社会的勢力の一つが街に構える拠点の内側で生じた、ちょっとした騒動の話である。
 下位構成員の立場である男達が、とある一室で奇妙な物音と叫び声がするのを聞いた。何事かと入ってみると、薄汚い肥満体の男が下着一丁の姿で佇んでいるではないか。
 自分たちの縄張りの中に突如現れた見知らぬ人物へと、叩き出すこと前提で詰め寄る。当然のように揉み合いとなり、お互い頭に血を昇らせる。
 その終わりは、見知らぬ男が銃で撃ち殺されるという形で訪れた。怒りに任せての行動であったが、どうせ揉み消せばいいだろうと構成員の男達は大して焦りもしなかった。

 奇妙と言うべきはこの後だ。
 死亡した不審人物の正体は、彼等が属する組織の頭領に当たる人物だったのだ。組織図の顔写真や構成員達と撮影したのだろう集合写真、登記簿や商取引の書類での名義、これらの全てが男の身分を確かに証明していた。
 それにも関わらず、組織の構成員の上から下に至るまで、誰一人として男のことを覚えていなかった。
 男の死に顔を見た誰もが、こいつは誰だとか、本当に俺達のトップなのかとか言うばかり。組織内だけでなく、癒着関係にあった団体の上層部、戸籍上では男の妻子であったとされる者達ですら似たようなことを口にする有様だ。
 物的証拠はいくらでも揃っているのに、男と時を過ごした記憶を持つ者が誰もいない。
 とは言え、組織運営体制の再編や対外的な隠蔽措置などの対応を一刻も早く終えなければならない事実は変わらない。怠けている間に組織自体が壊滅してしまってはたまったものではない。
 こうして自分達の組織の体裁を守るための日々に忙殺されることとなる彼等が、頭領であった男と最後に会った少女の存在を知ることは無い。

 女性を愛玩道具とすることを趣味とする男によって、人身売買も同然の形で身柄を金で買われた天涯孤独の少女――という役割を課せられた、聖杯戦争のマスターの一人。
 ステラ・ルーシェという名の少女の行方など、既に彼等には関係の無いことだ。






361 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:04:54 Dlbf.rXU0



 金髪の少女を脇に抱え、冷え切った夜空の中を駆けるのはバーサーカー。
 マスターとなった少女の願いを叶えるための道具として降り立ったサーヴァントは、そのマスターに見上げられていた。
 明確な意志を持たず、次の方針も練らず、されるがままといった調子でマスターの少女はバーサーカーと共に往く。
 身体にそぐわぬ未成熟な内面しか持たない少女には、それが限界だった。

 少女は果たして、自らの置かれた現状をどこまで理解しているのか。
 バーサーカーへ向ける不安げな瞳は、戦争という場にいることくらいは把握しているのだろうという証である。
 その概念を知る少女ならば、やはり自らに迫る死というものも同じく気付いているのだろうか。
 少しばかり痩せた頬。健康的とは言い難い顔色。男の前から連れ出す前からこの有様であった。きっと、少女の生命はもう永くない。
 この希望の無い境遇の中、少女の口は絶望の言葉を巧みに紡いだりはしない。そのための語彙すら、持たない。
 代わりに、たすけて、とだけ呟いた。それはバーサーカーに向けられた懇願なのか、もしくはこの場に居ない誰かの手が差し出されるのを願っているのか。
 誰にも分からないことだった。

 生き残るための貪欲さを持たない少女を護ったバーサーカーの心境もまた、やはり誰にも説明出来ない。
 正常な理性を奪われたバーサーカーが、どのような声に耳を傾けているのか。哀愁か、怨嗟か、それとも自分ではない者達の語りかける声でも聴いているのか。
 狂気に呑まれた今のバーサーカーは、最早その真相を自ら説明することが出来ない。彼女の口は、もう何も語らない。
 自らのマスターに対してバーサーカーが何を思い、彼女のために何を願っているのか。
 誰にも分からないことだった。

 残された微かな「思い出」に縋る少女が生きるのは、決して救いの齎されないのだろう世界。
 それでも尚少女に寄り添っているのは、他者から「思い出」を奪うための凶器を携えた狂戦士。

 彼女の名は、朽木ルキア。

 これからも他者に悲痛を振り撒いていくのだろうと思わせるその姿は。
 消えゆく幼い生命を護ろうとするような、完全に決まりきった運命に抗おうとするかのような姿は。
 まるで、死神のようであった。


362 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:05:31 Dlbf.rXU0



【クラス】
バーサーカー

【真名】
朽木ルキア@劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
・狂化:C
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。

【保有スキル】
・死神:-
虚を狩る者。
後述の宝具の影響により、このスキルは効果を失った。

・自己改造:C
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。
このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。

・気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

・単独行動:A+
幼い二つの魂が抱くのは思慕の情。
その空白が満たされぬまま怪物となり果て、百年を超える永い時を過ごした。
そして今、二つの魂は彼女を想い、互いを想い合っている。
世界は彼女達だけで完結している。それ以外に何も要らない。
バーサーカーはマスター不在でも一切の問題無く活動可能。


363 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:06:13 Dlbf.rXU0

【宝具】
・『焔雫』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:2人
瀞霊廷壊滅という未曽有の危機を引き起こした破壊者としての朽木ルキアの姿。
バーサーカーのクラスで召喚されたために彼女はこの姿となり、死神本来の能力である斬魄刀や鬼道による戦闘は行えなくなった。
その代わりに死神ならば持ち得ないはずの二つの能力を得ている。
一つは、瞬間移動能力。近距離遠距離問わず空間を一瞬で飛び越えられる。
他者によって設置された防壁や結界すら、容易く通過することが可能。
もう一つは、情報抹消能力。
鎌によって攻撃された相手は一種の記憶喪失状態に陥る。また、その瞬間に「この世界全ての者達」の記憶から忘却される。
後者の効果は当人だけでなく、その者から魔力の供給を受けたことのある者についても発生する。
ただし、その者達の記憶を失った第三者が何らかのきっかけで記憶を取り戻す可能性はゼロではない。

なお、この宝具を携えて再現されたバーサーカーは異物との融合によって非常に歪な状態となっている。
そのため、バーサーカーは現界から数日後には肉体を自壊させることになる。

・『■■■』
ランク:- 種別:対人宝具
朽木ルキアが持つ斬魄刀の真名を解放した形態。
バーサーカーとして召喚されたことにより、この宝具が解放される可能性は失われた。

【weapon】
・鎌
バーサーカーが持つ一振りの大鎌。
通常の殺傷武器としても、情報抹消能力を発揮する武器としても使用可能。
後者の場合は透過能力が付与される。物理的ダメージを与えられないが、武具や防具に全く遮られない。

【人物背景】
朽木ルキアは名も無き姉弟と一緒に暮らしていたことがあった。
後に姉弟と別離したルキアは死神となり、ルキアを失った姉弟は虚となった。
そしてルキアは姉弟と再会し、また、一緒になった。

【サーヴァントとしての願い】
???


364 : I remember you ◆T9Gw6qZZpg :2016/05/25(水) 22:07:32 Dlbf.rXU0



【マスター】
ステラ・ルーシェ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY

【マスターとしての願い】
■■に会いたい。

【weapon】
特に無し。

【能力・技能】
地球連合軍の強化人間エクステンデッドとしての卓越した戦闘技術を持つ。
代償として、ブロックワード「死」を聞くと精神の均衡が崩れるよう洗脳処理が施されている。
記憶消去及び特殊な医療処置を定期的に受けており、特に後者は欠かすと生命維持すら困難になる。
なお、電脳空間「SE.RA.PH」内で上記の手段を確保することはほぼ不可能であると言って良い。

【人物背景】
コーディネーターを抹殺する兵士として完成させられた一人の少女。
しかし純粋無垢な心しか持たない彼女には、蒼き清浄なる世界の価値など理解出来ない。
自分を守ってくれる■■さえ側にいてくれたなら、彼女はそれで良かったのだ。

【方針】
不明。


365 : 名無しさん :2016/05/25(水) 22:08:01 Dlbf.rXU0
投下終了します。


366 : 名無しさん :2016/05/26(木) 01:12:59 DLt5En1E0
すいません、期限っていつまででしたっけ?


367 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/26(木) 04:46:56 YQvF8wRQ0
ご投下有難うございます。

>>レイ・ザ・バレル&アサシン

レイに麗奈さんをくっつけたのは意外だなと思いました。
でも確かにどちらもパチモンで、でも人になりたいというよく似た
悩みの持ち主でしたよね。ワームの擬態能力とクロックアップも
かなり強力な代物ですし、結構頑張って行けるのではないでしょうか。
ご投下有難うございます。


>>ステラ・ルーシェ&バーサーカー

ステラが売春されかけたのには驚きました。
劇場版BLEACHは実はまだ把握していないのですが、
ルキアが闇堕ちしたシーンが予告でやっていた所は
BLEACHを読んでいない当時の私にとっても衝撃でありました。
さてシンと一護が見たらブチ切れそうな状態にある二人ですが、
あの二人にステラとルキアは会えるのでしょうか!?
ご投下有難うございます。


368 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/26(木) 04:48:16 YQvF8wRQ0
>>366

期限は6月6日を想定していますが、
場合によっては2週間程伸びる可能性もございます。


369 : 名無しさん :2016/05/26(木) 22:27:52 AJWT80.s0
ケイネス先生がいるとは思わなかったぜー。でも投下するぜー。


370 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:32:37 AJWT80.s0
夢を見ていた――――遥かな夢を。

戦乱の絶えぬ島。

夢の中で男は長きに渡り島の歴史の影で暗躍し続けた。

正邪善悪を問わず島の統一を果たせる英雄が現れれば排除し。

島そのものを脅かす災厄には時の英雄達と共に戦った。

多くの血を流し、歴史の天秤を中立に保ち続けた。

嘗て栄華を極めた王国が、その繁栄の果てに国民諸共滅び、歴史から消え去ったその時から。

そして男が目を覚ますと、手にに額冠を持っていた。

【先ず貴方の肉体を支配しようとした行為は謝罪しよう】

頭の中に響く言葉。手にした額冠からと気付き、念話で応じる

【どうして支配を解いた】

【貴方とは志を同じく出来る。同志になれると思ったからだ】

【僕の過去を見たのか】

【それが私の宝具の性質だ。それ故に支配を解いた。貴方の身体で戦い続けるより、勝利出来る可能性は大きいからだ】

【僕が望むものは恒久の平和だ。世界の統一が果たされるかもしれないが?】

【統一を妨げるのは安定の為だ。永劫に安定し続けるなら其れは恒久の平和と言えるだろう。私が謀略を行い、戦乱を絶やさなかったのは、安定の為の手段に過ぎん。永遠に天秤が平行で在り続けるなら、平和であるに越したことはない】

男は黙って俯いていたが、やがて顔を上げ――――


371 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:33:14 AJWT80.s0
「街の様子ははどうだ?ライダー」

「概ね此方の予測通り、既に幾つかの組が戦端を開いています。戦うところも確と見ることが出来ました」

「拠点はどうなっている?」

「マスターを殺害後、空いた住処を改造したのが二つ。死亡後に改造したのが三つ。廃屋を改造したものが六つ」

「それだけ有れば、拠点を複数回放棄しても、余裕が有るな」


ある一軒家の中、会話をする二人の男。
1人は、死んだ魚の様な目をした二十代の男。
1人は、人間の両眼を臣わせる額冠と、髑髏を思わせる白い面を付けた黒づくめの長身痩躯の男。

「令呪の解析は?」

「元より付与魔術(エンチャント)は私の得意とするところ、既に終わらせている。これで他マスターの令呪を奪うも使うも思いのまま」

男は無言で頷いた。やはりこのサーヴァントは『当たり』だ。いきなりこんな聖杯戦争に巻き込まれた時はどうしようかと思ったが、ここまで『合う』サーヴァントを引けるとは思わなかった。
本来のサーヴァントとして召喚しようとしていたセイバーだったらこうも上手く事を運べまい。
この聖杯戦争はおそらく妻を巻き込まずに済む、ここで勝って願いを叶えれば娘も救える。
男にとって、まさしく降って湧いた僥倖。此処で勝たずしてどこで勝てば良いのか。
それが無くとも全力で勝ちに行くことに変わりは無い。今まで積み上げた屍が、彼に逃避や怠惰を許さない。


372 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:33:47 AJWT80.s0
最初に召喚された時は、只の額冠。
NPCを宿主とし、サーヴァントとして魂食いを行っていたアサシンと戦って敗死、その肉体を奪い、アサシンのマスターを殺害、その令呪を奪う。
アサシンは正面戦闘には向かないが、元よりそんなことをするつもりは無い。
主従共に華々しく正面切って戦うなど、彼等の在り方として無く、思考の内にも在りはしない。
それに正々堂々と戦いたいなら、それに向いた身体を得れば良い。
ライダーはしみじみと思った。このマスターが『あの時』に居れば、あの自由騎士に敗れることは無かったろうに。
そう思える程に、このマスターは『当たり』だった。



「それではマスター、今後の方針を」

「ライダーが優れたマスターの身体を奪い、そのサーヴァントを使役して戦い、僕がマスターであることと、ライダーの正体をを隠匿したい。そして気を取られている他マスターを僕が暗殺する」

「狙い目はセイバーかランサーのマスターということで宜しいか?」

実に理想的な答えだと心中頷きつつ問う。

「正面戦闘に強いサーヴァントを従えていないと囮にならないからね。それに今の身体はアサシンだ。正面から頭を下げれば受け入れる奴も多いだろう」

アサシンは影からの暗殺を旨とするもの。隠れ潜んでいれば脅威だが、目の前に出てきた者に対してはそれ程脅威では無い、警戒は薄れるのが道理であった。そこに付け入る隙が生じるだろう。

「了解した。それでは適当な主従を見繕ってこよう」

「ああ、同盟相手を欲しがって居る奴が居るはずだ。巻き込まれた者は特にな」

主従のやる事は、過去に行ってきた事と全く変わらない。
主は闇に潜んでの暗殺。
従うサーヴァントは、英雄を操って破滅へと導く。
全てはより大きな悲劇を回避する為の小さな犠牲。
自らを呪縛した二人は、その在り方を変える事も出来ないまま奇跡を求める。


373 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:37:16 AJWT80.s0
【クラス】
ライダー

【真名】
アルナカーラ@ロードス島戦記
(ハサン・ザッバーハ)@Fate/stay night

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 幸運:D 魔力:C(A++) 宝具:C
()内のものはライダーの魔術発動時のもの
幸運値は肉体である“呪腕のハサン”のものではなく、ライダーのそれに準拠している。

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではライダーに傷をつけられない。
世界最高クラスの魔術師でもライダーを魔術で破壊することは出来なかった。
このスキルはライダーの本体のみに発揮される。

気配遮断:A+
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。


【保有スキル】

灰色の魔女
光でも闇でもなく、どちらにも属さず天秤の平衡を保ち続けたライダーの在り方。
その在り方はもはや如何なることがあっても変わることは無い。
極めて高い信仰の加護と計略と破壊工作と魔術スキルを併せ持つ複合スキル。

実体化や魔術師用といったあらゆる事に必要な魔力消費が十分の一で済む。
ただしライダーの本体のみで、肉体となっているものには適用されない。

相手が国家の統一や征服といった功業や、国家レベルの秩序の破壊を為した英霊、強力な魔物であった場合、宝具を除く全てのステータスが1ランク上がる。
ランクを問わずカリスマを無効化する

付与魔術(エンチャント):A+++
物体や人体に魔力を帯びさせる魔術体系。ライダーの宝具はこの技術を用いて作られた。

蔵知の司書:A+
複数の宿主の記憶を引き出す。
LUC判定に成功すると、過去に知覚した知識、情報を、
たとえ認識していなかった場合でも明確に記憶に再現できる。

陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”の形成が可能。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。

単独行動:A+
マスター不在でも活動できる。ライダーは自らの信念に殉じ、自らの時を止め、永劫を生きることを誓った。

投擲(短刀):B
短刀を弾丸として放つ能力。
本来ライダーの持たぬ能力だが、宝具により使用可能。
肉体を変えると使用不能になる。

風除けの加護:A
中東に伝わる台風除けの呪い。呪文と共に神への祈りをささげる事で、風の魔術に耐性を持つ。
本来ライダーの持たぬ能力だが、宝具により使用可能。
肉体を変えると使用不能になる。

自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
本来ライダーの持たぬ能力だが、宝具により使用可能。
肉体を変えると使用不能になる。


374 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:39:26 AJWT80.s0
【宝具】天秤保つ灰色の魔女(カーラ))
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

灰色の魔女カーラの意志と知識とと魔力が封じられた額冠(サークレット。
ロードスの歴史の裏で暗躍し続けた灰色の魔女の象徴にして本体。
身に付けた人間の精神を支配し、その知識と記憶を得ることが出来る、そして身に付けた人間はアルナカーラから始まる歴代のカーラの記憶を知識として獲得する。
カーラはこの機能を用い、身体を変え続け、歴史を影から動かして来た。
本来は人にしか通じなかったが、サーヴァント化したことでサーヴァントすら支配出来る様になった。
ライダーの肉体を殺す、若しくは額冠を身に付けると呪いが発動し、肉体を支配される。
支配を防ぐ為にはAランク以上の対魔力か精神耐性スキル、もしくは強固な精神力が必要。しかし、ロードスの歴史に残る英雄や勇者ですら支配を逃れる事は出来なかった為、精神力で跳ね除けるのは困難を極める。
条件を満たしていてもライダーの思想に共感すれば支配を受けてしまう。
サーヴァントを支配する際には、霊格と精神力と対魔力により消費される魔力量は増減するが、最低クラスのサーヴァントでも消費量は尋常では無く、数時間は実体化出来ない程。

ライダーは支配した肉体を問わずライダー本来の魔術をそのまま使用可能、支配されたサーヴァントは額冠から魔力を供給される為に、マスターの質を問わず最大の能力を発揮出来る。
また、支配されたサーヴァントはライダーを楔として現世にとどまる為、実質的に最高ランクの単独行動スキルを獲得できる。
ライダーの支配から脱した時、元のマスターが死亡していれば、楔を失い消滅する事になるが、生存していれば元のマスターを楔として現世にとどまることが出来る。
支配した者の技術を、当人の肉体によるものならば使用可能。
宝具は基本的に常時発現している能力しか使用出来ず、真名開放は不可能。

他マスターがステータスを認識した時、属性やスキルや真名はライダーの真名を知らぬ限り、肉体のものに準拠し、ライダーの属性やスキルや真名は認識されない。
そもそもがライダー自体がサーヴァントと認識されない。

肉体を持たぬ時はサーヴァントとして感知されなくなる。

魂を封入しているわけではない為、本来この姿で招かれることは無いが、カーラの妄執と灰色の魔女としての在り方により、この姿で召喚される。


妄想心音(ザバーニーヤ)
ランク:C
種別:対人宝具
レンジ:3〜9
最大捕捉:1人
普段は長い布に包まれている悪性精霊であるシャイターンの右腕。使用時には折りたたんでいた腕を伸ばし、その赤い異形の腕を開放する。
対象に触れることで、エーテル塊による心臓の二重存在(コピー)を作り出す。この鏡面存在を握りつぶすことによって対象本人の心臓を破壊し、呪殺を成立させる(いわゆる類感呪術)。要は即席の呪いの藁人形。如何に硬い鎧で身を護ろうとも心臓を掴み上げることができると暗殺には最適であるが、幸運や魔力で対抗可能。
作中の描写から接触していないと鏡面存在を作れないようだが腕の長さがその弱点を補っている。
人を罰するモノ故、言峰綺礼のようにアンリマユの泥に汚染され既に人のモノではない心臓は呪えず、高い神性を有する英霊や幻想種には、霊格の高さによる抵抗力故かそのまま使用しても通用しない。また心臓限定であるがゆえに既に心臓がないものや心臓を潰されても活動可能な相手には効果や必殺性や即死性が薄い。

魔術的なものの為に、例外的に使用可能。


375 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:39:53 AJWT80.s0
【weapon】
支配した肉体準拠


【人物背景】
フォーセリアに存在した古代魔法王国の貴族。魔法王国が事故により魔法を失い、周辺の魔法を使えぬ者達“蛮族”に滅ぼされた「大破壊」時に、
「光でも闇でも、どちらかに天秤が傾けば、その揺り戻しで大破壊が起きる」と信じ、ロードスの統一を阻み、天秤が常に中立である様に動き続ける。
光と闇の双方の勢力に加担し、ロードス統一を果たせる人物を葬り去って来た。
ロードス全ての脅威となる魔神王との戦いでは、魔神王に唯一対抗できる英雄ナシェルの麾下に参じ、魔神達と戦い六英雄として名を残すもの、最終局面でナシェルを排除。
魔神達との戦いの後に起こった英雄戦争でも、六英雄であるファーンとベルドの勢力を均衡させ、両者を共に葬った。
しかし、この時に対立した新しい世代の英雄であるパーンに張り巡らせた謀略を悉く破られ、光の側に傾きすぎた天秤を均衡させるべく、破壊神を復活させようとするも、パーン達に敗れた。
そしてかつての宿主であったレイリアが再度額冠を身に付け、カーラの意思を自身の精神力で封じた。
それでもカーラは消えた訳では無く、レイリアはその生涯を終える際に、その身に神を降ろし、カーラの魂が宿った額冠を破壊したという。

【方針】
なるべく陣地に引き込んで戦う。クラスを完全に偽れるのが強み、敵はまさかアサシンの本拠地がキャスター謹製の陣地になっているとは思わないだろう。
優秀な肉体があれば積極的に宿主とする。


【聖杯にかける願い】
世界に永遠の安定を

【備考】
“呪腕のハサン”の肉体を現在宿主としています


376 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:40:23 AJWT80.s0
【マスター】
衛宮切嗣@Fate/zero

【能力・技能】
固有時制御 :
固有時間を加速させたり減速させたりして、戦闘速度の向上や生体反応の消失を可能とする。
世界からの修正力を受けるため、2倍速以上は反動で身体に深刻なダメージを受ける。
固有結界の体内展開を応用することで二小節の詠唱で発動可能。

魔術師の思考や常識を熟知しながら囚われず、魔術師の裏を突いて殺害することを得意とする。
相手が真っ当な魔術師であるという先入観の所為で、ウェイバー相手に常識に囚われて、本拠地を突き止められなかったが、戦術の発想においては先入観も何も無い為あまり問題にはならないだろう。たぶん。

銃器全般や格闘術、爆薬の扱いに長けるが、銃器も爆薬も無いので使い用は無い。

魔術的な護りを突破することに長ける。

魔術刻印は背中に有る。

手先は器用だが、機械の修理は苦手で、やればやる程壊れて行く。

【weapon】
銃器の類を持込なかった為に持っていない。

【ロール】
ある資産家令嬢と結婚した男。子持ち。

【人物背景】
アインツベルンに第四次聖杯戦争にマスターとして参戦する為雇われたフリーランスの魔術師。
冬木の聖杯が妻の命を代償とする為に苦悩していたが、この仮想世界の聖杯戦争はその心配が無いと思われるので大分気が楽になっている。
ここで願いを叶えれば後は娘を連れて逃げるだけなので、何が何でも勝ちに行くつもり。
今の切嗣は父として夫として個人としての全てで勝ちを取りに行ける迷いの無い状態である。

【令呪の形・位置】
右手の甲に天秤の形をしたのがある。増えた分は一画分はライダーの魔力の補充に使った。

【聖杯にかける願い】
世界に恒久の平和を齎し、元の世界に帰還する。

【方針】
目立たない事。自分の素性を知られない様にすること。素性を知った奴は確実に「消す」
ライダーには適当なマスターを宿主にして自分がマスターとバレない様に戦って欲しい。その影で自分は敵マスターを暗殺するというのが理想的。

【参戦時期】
セイバー召喚前。アインツベルンにいた頃。

【運用】
主従共に性格と戦闘スタイルが待ちに向いている為に、陣地を強化しつつ大人しくしているのが勝利への近道か。
基本的に逃げと暗殺。
戦闘能力が高く、有力なサーヴァントを持つマスターが居れば、ライダーの宿主としたい。が、今の身体は実は宝具の真名解放ができたりと、ライダーと相性がかなり良い。
ライダーの戦闘能力は宿主に準拠する為あまりNPCを宿主にはしたくない。


377 : 自縛の呪い ◆mcrZqM13eo :2016/05/26(木) 22:41:57 AJWT80.s0
マスターとサーヴァントの出典を書き忘れていた為時間がかかりましたが投下を終了します


378 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:39:34 O5U.Z/ok0
投下します。


379 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:40:05 O5U.Z/ok0
―走る。アスファルトの感触をスニーカーが伝え、両足が悲鳴を上げる。

人っ子一人いなくなるような遅い時刻に、カオスヒーローは港の倉庫街を駆け抜けていた。
港には夜の帳が降りている。常夜灯のか細い光が僅かに道路を照らし、濃い暗がりをあちこちに作っていた。
荒い呼吸で喉が乾いていき、疲労と焦燥で灼けるように痛む。身体に熱が籠り、下着が汗で貼りつくのが不快だった。

このあたりの土地勘は無く、逃げ込んだのは日中、貨物の荷役が行われる埠頭だった。
積み下ろされた色とりどりのコンテナが見上げるほど高く積み上がっている。そうしてつくられた迷路の一角を走るカオスヒーローの行く手を、光の矢が通過した。
カオスヒーローは身体から力を抜くと、矢が飛来した方向に身体を向ける。

「よくやった。アーチャー」

こちらに来てから知り合った不良が追い詰められたカオスヒーローを見て、口の端を吊り上げる。
労いの声を受けたアーチャーはマスターに向けて不敵に笑うと、被っているハットをそっと指で突いた。

「いや、記憶を取り戻してびっくりだよ…」

無精髭をつるりと撫でて、厳つい頬ををわずかに揺らし――

「カオスヒーローなんて名前の日本人、いるわけねぇもんなぁ!!」

哄笑が夜の港に響き渡る。隣に控えるアーチャーも噛みしめるように、嗤う。

(ちくしょう……)

腸が煮えくり返る。ここはカオスヒーローが一度、吉祥時で通り過ぎたはずの景色だった。
違和感はあったのだ。一匹狼のチンピラとして喧嘩に明け暮れる毎日――誰かが欠けている。

そして記憶を取り戻した時、カオスヒーローは聖杯に拳を叩き込みたい衝動に駆られた。

――◆◎☆▽

それがカオスヒーローの本名だ。聖杯は如何なる判断からか、「◆◎☆▽」を「カオスヒーロー」と周囲に誤認させる事にしたらしい。
目の前で笑うチンピラは彼に先んじて記憶を取り戻したらしく、夜の街を歩いていたところを襲撃してきた。
訳もわからず逃走を続ける中、カオスヒーローにも聖杯戦争の知識が入り込んできた。その瞬間、手当たり次第に唾を吐き、壊してやりたくなった。



「アーチャー、サーヴァントを呼ばれる前に…」

「あぁ…じゃ、悪いな」

マスターに頷くと、目をスゥッと細める。知らず、鉄パイプを握るカオスヒーローの手に力が籠る。
ここで終わるわけにはいかない。自分をさんざん痛めつけたオザワに落とし前をつけさせるまでは……。

2人を見据えるカオスヒーローは記憶を辿り、力ある言葉を唱えた。


380 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:40:28 O5U.Z/ok0


「…ア」

―魔力が身体に流れ込み、血が沸き立つ。

「ギ」

―アーチャーがハットを目深に被り直し。

「ラ」

―魔力が髪の一本一本、指先に至るまで流れ込み、心に掛かった靄が晴れて意識が清澄になる。

「オ」

―アーチャーが弓を掲げ。

「ウあァアッ――!!」

アーチャーのマスターが炎に包まれた。3人のいる一角から上がった火柱が、周囲を昼間のように明るく照らす。
摂氏500℃を上回る高温で炙られた不良は絶叫した後、息を吸い込んだ時点で肺の中を焼き尽くされて呼吸ができなくなり死亡した。
自分の体表が炭化する程の火傷を知覚することなく死ねたのは、彼にとって幸運だったかもしれない。

――魔界魔法。

悪魔が住まう世界の力を現世に引き込み、様々な現象を発生させる魔術体系。これをカオスヒーローは如何なる所以か行使できる。
先ほどは魔界から炎を呼び出し、にやりと笑う不良にぶつけたのだ。

「―ッてめェ!」

思わぬ攻撃に虚を突かれたアーチャーは火に巻かれたマスターを見て構えを解いたが、すぐさまカオスヒーローに矢を射掛けんと弓を引き絞り。

「遅ぇ」

カオスヒーローの視界が黒い外套で覆われた。

…――ザン!!

鈍く、鋭い音が響く。外套の端に鉄塊が舞う。翻った外套が萎む風船のように勢いを失くすと、控えていた大きな背中が現れる。
背中がゆっくりと向きを変え、その精悍な顔立ちがカオスヒーローにも見えた。逞しい体を黒い甲冑で包み込んだ隻眼の偉丈夫。
肩に乗せた剣はビルの壁面かと見紛うばかりの分厚さと大きさを誇る。
右目は閉じられているが、アーチャーの矢尻が可愛く見えるほど鋭い眼光で、剣士はカオスヒーローを油断なく見下ろす。

「移動するか」

掠れた声で剣士は言った。
足元に視線を向けると、首を失ったアーチャーが天を仰いでいる。
突っ立っていると周囲が徐々に騒がしくなってきた。2人は自動車の走行音を背に受けて、オレンジに照らされる埠頭から脱出した。


381 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:40:47 O5U.Z/ok0




「助かったぜ。おまえが俺のサーヴァントだな」

「気にすんな…あんたがマスターだな」

カオスヒーローは右手に宿った令呪を剣士に向ける。それを受けた剣士は小さく頷き。

「俺はセイバー…」

「―オレはパックだ!」

セイバーの腰の鞄から小人が飛び出してきた。衣服は纏っておらず、背中から昆虫の様な翅が生えている。
よろしくな、と両者の周囲を踊るように飛び回る。パックが現れた瞬間、セイバーの表情から緊張が抜けた。

「…こいつは気にするな。…んで、あんたは聖杯戦争に乗るのか?」

セイバーが飛び回るパックをひょいと掴み取って鞄に押し込む。パックは不満気に声を上げているが、セイバーは無視してカオスヒーローに視線を向ける。
相変わらず緩んだ表情だが、目つきが厳しい。草原に寝転ぶ肉食獣の様だった。

「乗る…というより、乗らざるを得ない」

セイバーが首を傾げると、カオスヒーローはやるせないような息を一つ吐いた。

「◆◎☆▽。…どう聞こえた?」

強張った表情で名乗ったカオスヒーローに、2人は疑問を抱く。質問の意図が読み取れなかったので正直に答えた。

「…カオスヒーロー」

「変わった名前だよな〜」

カオスヒーローは顔を引き攣らせて、もう一度名前を告げる。
顔を出したパックは彼の行動に眉を顰めたが、セイバーは一瞬驚愕に目を見開き、面白くなさそうな表情で静かに答える。

「…唇の動きがおかしい」

「そうだ。ここでは俺の名前がカオスヒーローとして認識されるッ」

大きく頷くと、カオスヒーローは眦を上げて声を震わせる。ただし、眼は二人を見ておらず、ここにいない誰かに怒りを向けていた。

「うひゃあ、難儀だなぁ」

パックは大げさな表情で、気の毒そうにする。セイバーの表情に変化はない。

「…なら、街の探索は―」

「―ダメだ。俺の周囲にマスターがいるなら、名前だけでNPCでないことがわかる」

先ほどの不良も言っていたが、カオスヒーローなどと言う名前の人間がいる筈がない。
自分の生活圏に別の主従が現れた場合、即座にマスターだと悟られる。戦力の分散は避けねばならなかった。

「なら、あんたについてりゃいいのか」

「そうしてくれ。俺たちは寄ってくる敵を迎え撃つ」

敵の方から寄ってくる以上、サーヴァントを探索に出す必要がない。
自身の魔術がどこまで通用するかわからない以上、セイバーを伴って行動する方が安全だろう。
もっともカオスヒーローはサーヴァントに頼らざるを得ないこの状況に忸怩たる思いを抱いていたが。

「お前、名前はなんていうんだ?」

実体化を解いているセイバーは、皮肉っぽい笑みを浮かべた。

「ガッツだ…」

ガッツの姿が消えるとカオスヒーローも、市街の中心部に向かい歩きはじめた。


382 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:41:07 O5U.Z/ok0

【クラス】セイバー

【真名】ガッツ

【出典作品】ベルセルク

【ステータス】筋力A+ 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具C

【属性】混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
人知を超えた使徒やゴッドハンドと戦い続けるセイバーはこのランク。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
歴戦の兵士としての経験。

【保有スキル】
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
強大な異形に躊躇なく斬り込み、如何なる死地においても活路を見いだす不屈の魂。

戦闘続行:A+
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
左腕と右眼を失い、心身ともに耐え難い苦痛を受けながらもセイバーは戦い続ける。

無窮の武練:B
いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
「100人斬り」を成し遂げた鷹の団最強の戦士にして、人魔問わずその名が知られる「黒い剣士」。


【宝具】
『嘗ての友、現の仇敵に捧げる(ドラゴン殺し)』ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜6 最大捕捉:5人

セイバーが愛用する両刃の大剣。貴族たちのドラゴンを殺せるような武器と言う注文に、鍛冶屋ゴドーが悪意を込めて作った無二の業物。
鉄板のように幅が広く、斧よりも分厚い刃を持ち、成人男性の背丈を越える長さを誇る無骨な巨大剣。

甲冑を着た人間複数人を一振りで両断し、強力な使徒にも十二分に対抗することができる。武器としてだけでなく、その巨大さと頑丈さを活かし盾としても使用できる。
使徒や悪霊を斬り続けて魔剣に変貌を遂げた逸話から、霊的存在に対してダメージが増加する。



『その声は風に乗って(パック)』ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

盗賊に玩ばれていたところをセイバーに救われ、好奇心から以降の旅に同行した少年型の妖精(エルフ)。セイバーの鞄を住処にしている。
自在に宙を舞い、発光や気配感知を習得しているほか、羽から出る鱗粉で傷を塞ぎ、痛みを和らげることが出来る。


【weapon】
義手砲:セイバーが左腕に装着している大砲内蔵の鋼鉄製義手。外見は通常の義手だが、前腕部を小型大砲の砲身が構成している。砲弾を魔力で補充できる。

連射式ボウガン:義手に装着して使うボウガン。魔力で補充できる。

投げナイフ:投擲用のナイフ。魔力で補充できる。

炸裂弾:小さな爆弾。魔力で補充できる。

生贄の烙印:魔に捧げられたことを示す烙印。魔に感応する性質があり、聖杯戦争においては使い魔やサーヴァントの接近を痛みと出血によって知らせる。
ただし、魔物・魔獣の属性を持つサーヴァントに位置を悟られるデメリットがある。


【人物背景】
ミッドランドにその名を轟かせた「鷹の団」の元切りこみ隊長。
3年の月日の中で、鷹の団に自分の居場所を見いだし、団長グリフィスと深い友情によって結ばれるが、彼と対等な自分でありたいとして、鷹の団を脱退。

その1年後に起きた『蝕』において、団員もろともグリフィスが「ゴッドハンド」へ転生するための生贄に捧げられ、恋人のキャスカと唯二人辛くも生き残るが、グリフィスによって凌辱されたキャスカは精神に深い傷を負った。
自身も昼夜問わず悪霊や魔物に襲われ続けることになったガッツは、ゴッドハンドとなった盟友グリフィスへの復讐を誓い、長い旅に出た。

妖精島までの記憶を持つが、マスターであるカオスヒーローの精神性を反映して仲間達と出会っていない、狂戦士の鎧入手前の姿で召喚されている。

【聖杯にかける願い】
再びグリフィスの前に立つ。


383 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:41:28 O5U.Z/ok0

【マスター名】カオスヒーロー(本名は◆◎☆▽)
【出典】真・女神転生
【性別】男

【Weapon】
鉄パイプ。

【能力・技能】
東京で悪魔との戦いを経験しており、一般人を超える身体能力を身につけている。
また、一工程で発動できる魔術を幾つか習得している。概要は以下の通り。

アギ:炎を発生させる。

パトラ:金縛り、睡眠を治療する。

マハラギ:広範囲に炎を発生させる。

ポズムディ:毒を治療する。

シバブー:相手を金縛りにする。

ペトラディ:石化を治療する。

アギラオ:強力な炎を発生させる。


【ロール】
街のチンピラ。

【人物背景】
力を求める渇いた魂と称される、秘めた力を持つ青年。
早くに母親を亡くし、酒浸りの父親に育てられた為に協調性が無く、"力こそすべて"という価値観を持つ。
粗暴な言動と愛想の無さから誤解されやすいが情に厚い男であり、心を開いた相手には優しさを見せる。

悪魔がうろつく様になった199X年の吉祥時で不良達にリンチされていた所を主人公たちに助けられた彼は、不良のリーダー格であるオザワへの復讐を誓い、主人公パーティーに加わる。
悪魔合体以前から参戦。

【備考】
彼の本名は聖杯によって、秘匿されています。文字でも言葉でも「カオスヒーロー」としか、認識されません。

【聖杯にかける願い】
脱出したいが、ステルス性がマイナスに達しているので優勝狙い。


384 : カオスヒーロー&セイバー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/26(木) 23:42:21 O5U.Z/ok0
投下終了です。


385 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/27(金) 19:46:29 j5Gyi5Cc0
皆様投下乙です!感想は後程。

所でルール変更のご報告です。

先程「ズガン有り」と書きましたが、
折角書き手様が考えて作った主従を唐突に破壊するのは悲しいのではないか、
という事で、急遽変更、ズガンは禁止とさせていただきます。
先程Wikiを訂正させていただきました。

大変ご迷惑お掛けしましたこと、お詫び申し上げます。


386 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:22:21 dVI0CRP60
>>1

確認致しました。 候補作、投下いたします。


387 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:23:06 dVI0CRP60
「ただいま」

学校から帰宅した士郎は自宅の玄関扉を開け、家の中に声を掛けた。
両親が生まれる前に建てられた家なので年数がそれなりに経過しているが、中々広いし、掃除もまめにやっているので快適に暮らせている。
靴を脱いでいると、ぱたぱたと駆ける音が近づいてくる。まもなく黒髪の小柄な少女が姿を見せた。

「お兄ちゃん、お帰りー」

抑揚のない声で、妹は士郎を出迎えた。
勉強熱心で細かい所まで気が回る出来た妹なのだが、年の割に感情表現が乏しい。
学校で苛められてやしないか心配していたが、最近は友人も増えた様なので安心している。
妹に応えようと向かい合った士郎の動きが止まった。

「……」

――思い出した。

俺に妹はいない……じいさんが亡くなってから、天涯孤独になった。
もっとも、藤ねえや桜がよく家を訪れていたし、最近は遠坂やセイバーがいるので寂しい思いはしていないが。

その時、士郎の脳裏に幾つもの光景が浮かんでは消える。
月を背に佇む少女と青い槍兵。夜の闇に立つ鋼色の巨人と白の少女――彼は以前、聖杯戦争に参加していた。
右手に熱っぽい痛みが走る。そこに浮かび上がった物を士郎は知っている。

「…お兄ちゃん?」

妹が怪訝そうな表情で、士郎の様子を窺う。我に返った士郎は慌てて立ち上がり、妹から右手が隠れる体勢に移る。

「…いや、何でもない」

ただいま、と言って士郎は自室に引っ込む。
妹は釈然としない表情を浮かべていたが、士郎はぎこちなく笑いかけるだけで取り合わない。
士郎は自室に入ると、後ろ手に扉を閉めた。
内面を思わせる小物が何も無い、実用一辺倒の殺風景な部屋。

≪いるんだろ?≫

勉強机に荷物を置いた士郎は、声を出すことなく控えている筈の何者かに語りかけた。
肯定する声が士郎の脳裏に響くと、部屋の中心に人影が現れる。

「あなたが私のマスターですね?」

角ばった輪郭に理知的な表情を浮かべる中年の男性だった。現代の人物らしく、眼鏡を掛けて白衣を羽織っている。
見知ったサーヴァントが現れるのではないかと期待していた士郎は内心、僅かだったが落胆した。
ざっと男を改めたが、立ち居振る舞いに隙を感じない。以前戦ったキャスターのマスターと男が重なる。

「あぁ、俺がお前のマスターだ…」

士郎はベッドに座り込む。
男は目で頷くと「ライダーのクラスで現界した、香川です」と丁寧だが冷たい口調で名乗った。

「早速ですが、あなたはどんな願いを聖杯に託す気ですか?」

香川は士郎の勉強机から椅子を引き、腰を掛ける。
士郎は咎めることなく何か考えるような表情で一点を見つめていたが、すぐに口を開く。


388 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:23:29 dVI0CRP60


「聖杯に託すような願いはない…」

というより、これで二度目なんだ。興味を惹かれた香川が感嘆の息を漏らすと、士郎は冬木の聖杯戦争の経緯を静かに語り出す。
―夜の学校で二人組の戦闘を目撃した事、セイバーを召喚して共に戦った事、聖杯の正体…。

士郎が話している間ずっと、香川は思案するように沈黙している。
ただ、自分の名前を告げた時に僅かだが目を見開き、話がアーチャーとの因縁に入った時には首を動かして質問を投げてきたが、そこ以外は鎮座する石像のようだった。

「それでマスターはこの場でどう動くつもりですか?」

眼鏡の奥の目が冷たく光る。

「俺は街に帰りたい…けど、同じように巻き込まれた人々を助けたいとも、思ってる…だから、あんたの力を貸してくれ」

明るい色の頭髪に幼さを残す顔、うわついた印象は見られないが今風の高校生だ。もっとも、引き締まった表情や瞳に宿る覚悟の色が修羅場を潜り抜けてきた事を感じさせる。
香川は頭を下げた少年の評価を高めた。

「それは困難な道ですよ。全員を助けることは…不可能でしょう」

素っ気なく言い放つ香川が視線を送るが、顔を上げた士郎は怯まない。

「わかってるさ。けど、俺たちが動くことで助けられる命もきっとある。その為になら…俺は戦える」

右手が握り拳を作り、青臭くも強い決意を語る。
誰にも犠牲になって欲しくない。正義の炎が士郎の中で一層激しく燃え上がった。


香川が見るに、士郎は生前に出会った仮面ライダー・城戸真司とよく似ている。
ふと脳裏に無念と驚愕の記憶が過った。

香川は生前、多くの命を弄ぶ神崎士郎の計画を止めるべく、教え子を仲間に引き入れて行動していた。
しかし、戦いの中で愛弟子・東條悟が暴走。彼のファイナルベントで串刺しにされて道半ばで倒れたのだ。
自分を手にかけた東條も結局、ライダーバトルの中で命を散らせたらしい。最終的に神崎の計画は、仮面ライダー龍騎・城戸真司らが終わらせたようだが。


少し間を置いた後に香川が口を開く。

「…いいでしょう。私もこの戦いを止めたいと考えていました…協力しましょう」

香川は聖杯戦争を否定する。死者が生者の生命を摘み取り、未来を掴むなどおこがましい。
自身を招いた者が願望器に眼が眩んだマスターならば、速やかに命を刈り取って座に帰還する。
その懸念は杞憂に終わったようだ――香川の表情が和らいだ。

「―! ああ、よろしく頼む、ライダー!」

士郎は差し出された手を握り、二人は顔を見合わせて頷く。力強い香川の眼差しに、士郎の心中に宿った不安は影を潜めた。
嬉しそうな士郎を見ながら、香川は思考を巡らせている。

別の聖杯戦争が存在するとは興味深い。
聞いた限りでは基本ルールは似通っており、主催者が冬木の儀式を模倣した可能性は高い。最悪、このような戦いが他の場所でも…。
また、固有結界なる大技を習得し、前回の聖杯戦争を生き残ったこのマスターは貴重だ。東條のように暴走させてはならない。

(私をこの様な催しに招いたこと…後悔させてあげますよ…)


389 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:24:01 dVI0CRP60

【クラス】ライダー

【真名】香川英行

【出典作品】仮面ライダー龍騎

【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具B

オルタナティブ・ゼロ 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E(B)
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
宝具を発動することでカッコ内の値に修正、三節以下のものを無効化できるようになる。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:E(C+)
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。
宝具を発動することでカッコ内の値に修正、大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるようになる。特に契約モンスターに騎乗する際、効果が倍増する。


【保有スキル】

瞬間記憶能力:B+
香川の持つ「一度見たものを忘れない」能力。戦いにおいては相手の行動パターンを瞬時に記憶し、常に一歩先をいくことが可能。
同ランクの心眼(真)と蔵知の司書の効果を内包する複合スキルであり、同一の敵との戦闘が重なった場合に+の補正が発揮される。


【宝具】
『蟋蟀よ、鏡の中を狙え(オルタナティブ・ゼロ)』ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)

オルタナティブ・ゼロに変身することでスキルをカッコ内のランクに、ステータスを専用のものに修正する。展開中はアドベントカードを用いることで様々な戦法を取れるほか、鏡の中の世界「ミラーワールド」への行き来が可能になる。
ミラーワールドには適性を持たない者は侵入できない。オルタナティブ・ゼロの活動時間は8分25秒が上限であり、超過すると身体が粒子と化して消滅する。

香川が神崎の研究データと、仮面ライダータイガのカードデッキを参考に作成した「疑似ライダー」。
完成形であるオルタナティブと違い、腕や胴の側面にプロトタイプを示すラインが入っているのが特徴。13ライダーとは異なる形状をしているが、基本骨子は同様。
13ライダーと比較するとミラーワールドでの活動時間が短いが、設計者である香川によって基本スペックが強化されている。


『旋る黒鉄の戦輪(デッドエンド)』ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1人

オルタナティブ・ゼロの「ファイナルベント」。サイコローダーに搭乗し、コマのように高速回転しながら相手に突撃する。


【weapon】
ホイールベント;サイコローグをバイク形態・サイコローダーに変形させる。

アクセルベント:一時的に超加速する。残像が分身をつくるほどのスピードを得る。

ソードベント:両刃剣スラッシュダガーを出現させる。強力な斬撃のほか、青い炎状のエネルギー波を放って相手を攻撃できる。

アドベント:契約モンスターであるサイコローグを召喚する。素早い動きと高い跳躍力を誇り、目からミサイル弾を放つコオロギ型のミラーモンスター。


【人物背景】
神崎士郎が在籍していた清明院大学の教授。
一度目にしたものは絶対に忘れない「瞬間記憶能力」によって、若くして教授の地位に就いた天才。

かつて神崎の研究資料に偶然、目を通した香川は彼の失踪後に資料の記憶をもとに調査を重ねる。ミラーワールドの脅威と神崎の企みを知った香川はミラーワールドを閉じるべく、疑似ライダーを作成。研究室の生徒を率いて、神崎優衣の抹殺を図った。
激化する戦いの中で、英雄への妄想が膨れ上がった愛弟子・東條悟の手に掛かり、死亡。

「多くを救うために一つを犠牲にする」という信条に基づいて行動するが、これは極限状況においては自分が汚れ役を買って出る、という意味であって彼は人命を軽視する男ではない。
冷静沈着ながら熱い正義感を持つリアリスト。


【聖杯にかける願い】
聖杯戦争の打破。


390 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:24:20 dVI0CRP60

【マスター名】衛宮士郎
【出典】Fate/staynight
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「強化」
物体に魔力を通し、強化する魔術。

「投影」
イメージを元に、魔力で一時的に物体を作り出す魔術。

「無限の剣製」
心象風景を具現化させる大魔術・固有結界。
視認した"剣"の構造や本質を捉え、複製。結界内に貯蔵する。前述の魔術はこれに由来する。

【ロール】
高校生。


【人物背景】
穂群原学園2年C組に所属する高校生。幼い頃、冬木市にて発生した大災害によって天涯孤独の身となり、魔術使い・衛宮切嗣の養子となる。
養父の意志を継ぎ、アルバイトの傍ら正義の味方を目指して鍛錬の日々を送っている。

ある夜、居残っていた学校で争うアーチャーとランサーを目撃。口封じのために殺されかけるが、アーチャーのマスター・遠坂凛の手によって命を救われた。
ランサーによる二度目の襲撃を、サーヴァント・セイバーを召喚する事で生き残る。その後、遠坂凛や言峰綺礼から事情を聞き、戦いを止めるべく聖杯戦争に身を投じる。

UBWルートギルガメッシュ戦終了後・ロンドン出発以前から参戦。

【聖杯にかける願い】
聖杯戦争を止める。


391 : 衛宮士郎&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/27(金) 21:24:46 dVI0CRP60
投下終了です。


392 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:20:09 BQ1a.uI.0
皆様投下乙です!それでは感想を。


>>衛宮切嗣&ライダー

ハサンを拠り所にしたのは
少し驚きました。
他の聖杯戦争で兄貴の心臓を奪ったハサンからすれば、
ある意味自業自得とも取れる行為ですね。
しかしケリィは銃火器を持ってきていないのか…
銃火器は買えても起源弾は買えんし、どないしましょか。
ご投下有難うございます。


>>衛宮士郎&ライダー

士郎に香川先生は、少し面白い組み合わせだなと思いました。
切嗣やアーチャーといったリアリズムに満ちた英雄に縁のある士郎、
英雄志望な教え子を持った香川先生は、結構相性のいい組み合わせ
なのでしょうか。東條君と違って士郎は表面的には狂ってはいませんが、
果たして香川先生は、士郎に何を説くのか。
ご投下有難うございます。


393 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:22:16 BQ1a.uI.0
いかん1人忘れていた。
>>カオスヒーロー&セイバー

ワルオにガッツとは、これまたアウトローな主従が誕生したもんです。
しかしワルオもガッツも根っこは良い奴なので、きっといい主従関係を
築いていけそうだな、と私は思います。
ご投下有難うございます。


394 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:23:01 BQ1a.uI.0
皆様ご投下有難うございます、それでは私も候補作を一作投下させていただきます


395 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:23:47 BQ1a.uI.0


「ハッ!ハァッ!」

夜の自然公園に、鋭い剣撃が鳴り響く。

それを奏でる片方は、全身を甲冑で纏った西洋風の騎士。
もう片方は、クワガタムシを想起させる装飾品を付けた甲と、
クワガタムシの顎を思い出させる双剣を手にした戦士。
このSE.RA.PHにおいて、この様な変わった風貌をした者同士が斬り合っていると、
諸君らは、「またサーヴァント同士の殺し合いか」とでも思うだろう。
だが、それは違う、このクワガタムシの方の戦士は、マスターである。

名は加賀美新、マスクドライダーシステム「ガタック」の資格者である。


◆  ◆  ◆


加賀美が記憶を取り戻してから、大凡2日が経過する。
記憶を取り戻し、聖杯戦争を知り、サーヴァントを手にし、
今こうして彼はサーヴァントと斬り合っている。

しかし、何故加賀美がこのサーヴァントと斬り合っているのか。
というと、経緯はこれだ。

加賀美は、元々正義感が強く、戦いに乗れる気はしなかった。
だがある日、魂食いをしている連中がいたという噂を偶々聞き出す。
彼は早速、自らのサーヴァント、シールダーを引き連れ偶然遭遇した二組の陣営の間に入り、
その内片方はシールダーが対応している、向こうはともかく、自分はこうして苦戦している。


◆  ◆  ◆


396 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:25:03 BQ1a.uI.0

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

このままでは埒が明かない。
どういう事か、サーヴァントには、ろくに傷すら付いていないのだ。
もう何度も斬ったというのに、かすり傷が精々という所だ。

「どうした、そんなものか?」

「まだだ…だったらぁ!」

余裕じみた態度を浮かべる剣士を眼の前に置き、加賀美はベルトの横のパーツに手をかける。

「クロックアップ!」

『Clock up』


その瞬間、加賀美新を取り巻く時間が緩み、剣士の動きは遅まった。
マスクドライダーシステムの最大の特徴たるクロックアップ、
これでなら、あのサーヴァントにだって。

そう考え、加賀美はバックルにくっついているゼクターのスイッチを押し出す。
何度もワームを倒してきた、あの必殺技の準備を、慣れた手つきで、
彼は始めた。

『One,two,three』

「ライダーキック!」

『Rider kick』

ゼクターホーンを動かせば、エネルギーがゼクターからほとばしり、
彼に力を与える。

加賀美は飛び上がり、剣士に回し蹴りを放つ。

それは見事に命中、時を遅めていれば、こんな芸当、造作も無い。

「決まった!」

剣士はゆっくりとした動作で、空中に舞い上がり、後ろへスローモーションで飛ばされる。

『Clock over』

時は早まり、彼の時間は終わりを告げる。
クロックアップからの必殺技を使うと、決まってこれだ。

剣士の倒れる様は途端に早まり、彼は後ろの方向へと飛んで、倒れる。

それはまるで、映像をスローモーションから通常再生に切り替えたかのように。
剣士は背後の木にぶつかり、倒れる。
だが、剣士は直ぐに剣を支えにして立ち上がる。

「浅いな。」

剣士はライダーキックを受けても尚、平然としていた。
傷はとっくに塞がっていた。

「クソ…」

ガタックの力でも、こいつには太刀打ち出来ないのか…
と思ったその時。


<<伏せてろ!!マスター!!>>


サーヴァント、シールダーからの念話が聞こえて来る。

其の直後、上空から激しい爆音と光がこの自然公園を轟かせた。
慌てて後ろに下がった加賀美はその正体を知っていた。

光が消え、周囲を覆っていた煙が消え失せれば…

「うっ…」

地面に平行になって倒れた剣士の姿が露わになり、直ぐに光の粒子となって消え去る。

「はぁ…。」

加賀美はそれを見て一息着くと、バックルのゼクターホーンを折り曲げ、パーツを外す。
ベルトから外された青いクワガタムシは、加賀美の手から離れ飛び去る。
それと同時に、加賀美の身体からガタックのアーマーがベルトに吸収されていき、彼は人間としての姿を
取り戻す。


そしてその上空には、ロボットがいた。
闇夜に溶け込んでしまいそうなブラックな全身。
それがより一層目立たせる、頭部にある金色の角。
それは、かの「一角獣」を思わせるような形状であった。

そしてこれが、加賀美新のサーヴァント、シールダーにして、
自然公園にてマスターと戦った剣士を葬り去った者である。


そしてそのシールダーは、マスターがいる地面に向かって下降して行く。


◆  ◆  ◆


397 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:25:48 BQ1a.uI.0


「悪いな、シールダー、途中で助けてもらって。」

戦いが終わった後、戦った自然公園にあったベンチで、加賀美とシールダーはくつろいでいた。
巨大な一角獣の鎧を剥いだシールダーは、黄色いラインが全身に張り巡らされたパイロットスーツ
を着ていること事を除けば、加賀美とほぼ同年代の外人の青年であった。

「仕方ないだろ、マスター、お前のあの甲冑には、神秘がないんだから。」

「…そう言えばそうだったよな。」

忘れていた。
シールダーから事前に聞いていたことだ。

加賀美が戦う羽目となった「サーヴァント」と呼ばれる存在は、
ワームやネイティブとは全くの別物だ。

サーヴァントは「神秘」とかという、架空の作品でしか見なかった力で
その身体を構成している。

そしてそのサーヴァントは、神秘が無ければ攻撃を与えられないという。

シールダーが火器でサーヴァントを倒せたのは、その火器が「神秘」を纏っているからに過ぎない。

しかしマスクドライダーシステムは、神秘の欠片もない、科学の産物だ。
そんな代物では、護身用品としての役割が精々だ。

ふと、天道が不遜な笑みを浮かべている姿が浮かんできた。

――いい加減にしてくれよ。

と心内で返しながらも、加賀美は顔をシールダーに向け直す。

するとシールダーも加賀美に顔を向け、何処か不安げな顔で加賀美に言う。

「俺のもう一つの宝具は、制限が厳しいし、長いこと開放してもいられない。
初めて俺と契約した時の様に、上手くは行かないから、気をつけないとな。」

「あのもう一つの姿は、そう好きに出せないのか?」

「ああ、あの『NT-D』は、飽くまで強い可能性を持った奴に対処するための力だからな。
あの時は偶々相手がそれに合致する奴だったから良かったけど、今回の様に発動出来ない時もある、
それと、あの時、マスターは疲労を更に感じたりとか、しなかったか?」

加賀美は初の契約の際、眼の前に金と黒を混ぜあわせた色の巨大なロボットを見た。
それが、あのシールダーのもう一つの宝具という。

その時の事を加賀美は思い出した。
やはりガタックに変身して臨戦体勢を取っていた加賀美は、あのロボットの勇姿を見る中、軽い疲労に襲われていた。

「それがどうかしたのかよ。」

加賀美の問いかけにシールダーは答える。

「その時、お前の体力が魔力となって、俺のバンシィに吸い取られているんだ、
多分、NT-Dを展開しながらの戦闘はお前には堪える、それに、あれは好き勝手に発動出来る訳じゃない。
『NT-D』が敵と見なしたサーヴァントに目を合わせた其の瞬間、あの宝具は発動するんだ。」

…ガタックの暴走システムみたいなモンなのか。
加賀美は、腰にあるライダーベルトに目を向けてそう考える。

途端に暴れだした天道の姿は今でも鮮明に覚えている。
そして、何時かは自分もこうなるのでは、と、考えさせられた。
突然以上を起こし、装着者の意志を完全に無視して暴れだす力。
それがガタックと、天道が持つ「カブト」に組み込まれていた。
ワーム、いやネイティブを潰すための最終兵器として。


あのシールダーの宝具は、そう考えると、カブトやガタックの暴走システムに似ているかもしれない。
もしそうだとしたら、かなり危険な物かも知れないと少し思えた。

でも、加賀美にはそれは危機感というには少し遠い物であった。
天道が見たら「面白い奴だ」と言うであろう、それは強ち間違ってもいない。

加賀美は、どちらかと言うとあまり考えない人間だ。
そのような事はくよくよ考えたりはせず、前だけを見て突っ走っていく、それが加賀美新だ。

「いや、俺の事は大丈夫だから気にするなって。」

そして、彼は非常に思慮深い人物である。

「俺だって、あんな疲労なんて軽く見えるような死線を沢山潜って来たんだ、
こんなモンどうって事ないよ。」

シールダーはそれを見て一溜息つき、加賀美に返答する。

「分かったよ、でも、あまり無茶はするなよ。」


◆  ◆  ◆


398 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:26:08 BQ1a.uI.0

――俺が言える様な物でもないけどな。


そんな事を、盾の英霊、「リディ・マーセナス」は心内で呟く。
でも、だからこそ、この男に自分は喚ばれた。そう確信してもいた。

その無謀さは、嘗て、いや、この姿の自分に良く似ていた。
まだバンシィに乗っていない頃、量産機で只管ニュータイプに挑んでいた頃の自分に。

しかし、「願いがない」というのも、リディにとっても心労にはあまりならずに済む。
実際、リディにはこれといって願い事はない。強いて言うなら、ラプラスの箱に記された
第七の言葉を実現させるため、人類の可能性を広げることを祈る程度の物だ。

しかし、罪無き者も含めて殺戮を繰り返してまでそんな事はしたくはない。
そんな事をしたら、あの世の仲間達からは笑い者だ。

だが、自分を引き当てたマスターの願いは、「戦いを止める」という物であった。
そんな事を言った人はバナージ以来だった。
軍人である自分にとってそれに共感することは少し可笑しいとも取れるが、
しかし争いを望んでいるわけでもないし、何より自分は争いを止めるために、
人類の可能性を求めて戦い続けたのではないか。

だったら、俺はこの男と共に戦う。

争いを終わらせるために。

これ以上誰かが死ぬのを見たくはないから。


誰かを殺す者達が許せないから。



家の呪いに付き纏われ、曰く付きの力を手にし、運命に翻弄されていった二人の戦士。

彼らが望むのは、家の呪いを消すことでも曰く付きの力を放り捨てることでもない。

正義のために、誰かのために、この争いを止める、いや、止めてみせる。


399 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:26:27 BQ1a.uI.0



【クラス名】シールダー
【出典】機動戦士ガンダムUC
【性別】男
【真名】リディ・マーセナス
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運D 宝具A

【クラス別スキル】

騎乗:B
乗り物を乗りこなす才能。
モビルスーツ、車、馬などは乗りこなせる。

対魔力:E
魔力に対する耐性。
単なるお守り程度。


【固有スキル】

新人類:C
宇宙へと進出して進化した人類。
サイコ・フレームの制御などが出来る。
「直感」の特性も含まれている。



【宝具】

「漆黒の一角獣(バンシィ・ノルン)」

ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:― 最大捕捉:100

シールダーが騎乗した人型機動兵器「モビルスーツ」、これを召喚する。
その性能は通常のモビルスーツの数倍であり、一々面倒なチャージをして
放つビームランチャーに匹敵する威力を持つビーム・ライフル等を装備している。
装備に関してもまた召喚という形で取り出すことが可能となる。
及び、損傷に関しては一度消滅させてもう一度召喚するか、令呪を使用するかを
しないと治せない。



「可能性を殺す黒獅子(デストロイモード)」

ランク:D 種別:対可能性宝具 レンジ:― 最大捕捉:100

バンシィが特殊OS「NT-D」を起動することで変形した姿。
操縦が精神感応波にて可能となり、更にスペックは数倍に
跳ね上がる。ただし、サーヴァント化したとはいえ
シールダーにかかる負担はかなりの物である上、
五分しか発動させることが出来ない。
及び、この宝具は「ニュータイプ」と対峙した際に起動した逸話から、
「星の開拓者」スキルを持つ英雄や、人を超えた人と対峙した瞬間
自動的に起動する。


「可能性を導く黒獅子(アクシズ・ショック)」

ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

シールダーがバナージ・リンクスと共にコロニーレーザーを跳ね返したサイコミュの光。
バンシィ・ノルンから翡翠色のサイコミュの光を発現させる。
あらゆる物理攻撃のダメージを減少、もしくは中和させるサイコフィールドの結界を展開する。
これは対軍・対城宝具への強い耐性として効果を発揮する。
シールダーがシールダーたる所以の一つ。

【Weapon】

「アームドアーマーBS」
「アームドアーマーVN」

シールダーの装備。
魔力による修復、ないしエネルギーの補填が可能である。
詳細はWikiを参照。


【人物背景】

父の名をこれ以上言われたくない、青年が家を出て軍の門を叩いたのはそう思ったからだった。
家の呪いは何処までも追っていく、それは今自分が巻き込まれている戦争にも関わっていた。
青年はある少女が、家の呪いを自分と同じく背負っていた事を知る。
青年は、彼女を家の呪いから解くために自分の家に迎え入れようとするが、その話は振られた。
青年が黒獅子となって喰らおうとしたのは、その少女に寄り添う一角獣だった。
だが、黒獅子は一角獣と手を再び取り合った。果たして、争いは終わった。
黒獅子が追うのは、可能性の体現者となった一角獣の背中だった。

【聖杯にかける願い】

人類の可能性を広げていく。


400 : 加賀美新&シールダー ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:27:36 BQ1a.uI.0


【マスター名】加賀美新
【出典】仮面ライダーカブト
【性別】男


【Weapon】

「ライダーベルト」

マスクドライダーシステム「ガタック」を起動するためのベルト型デバイス。
腰に嵌めるだけで14歳の少年が瓦礫の下から自力で抜け出せる程度に力が増大する。
内部にはガタックのスーツの中身が圧縮されて入っており、ガタックゼクターを
バックルに装填してロックを解除することで装着される。


「ガタックゼクター」

マスクドライダーシステム「ガタック」のコアを担うクワガタムシ型ロボット。
「ジョウント」と呼ばれる時空を超えた転送システムを搭載しており、
「クロックアップ」の空間を通して資格者の元にタイムロスなしで駆けつける。
そしてデバイスに装填することで資格者をライダーに変身させる。
資格者の選定はこのゼクターが行うのだが、このガタックゼクターは加賀美新しか
選べないように細工してあった。本来ガタックゼクターは何処かを飛び回っているはずだが、
加賀美がライダーベルトを持ってきた影響でこのガタックゼクターも再現されている。
単体での戦闘力も高い、ガシガシとゼクターホーンを高速でぶつけて敵を邪魔してくる。
因みにこれ、この攻撃で何人もの資格者候補を病院送りにした、勿論加賀美も。


「ガタックエクステンダー」

ガタック専用の超高性能バイク。
ハンドルを左右に引っ張ることで「エクステンダーフォーム」に変形、
空中を飛ぶクワガタムシ型ソーサーとなる。ライダーベルトを持ってきた影響からか
こちらもガタックゼクター同様再現されている。


【能力・技能】

・戦闘技術
ZECTでの訓練とガタックとしての戦闘経験で培ったある程度の体術への覚え。
でもタイではチンピラにリンチされた。


・マスクドライダーシステム「ガタック」

地球外生命体「ワーム」に対抗するために作られたマスクドライダーシステム第五号。
ZECTの戦力を一変させるとも言われた最強クラスのライダー、加賀美はそれの資格者である。
ガタックゼクターを呼び出しベルトに装填することでシステムが起動、「ガタック」へと変身する。
「ヒヒイロカネ」で鍛えられた装甲と「ガタックバルカン」と呼ばれる両肩に付けられたキャノンを
武器に戦う「マスクドフォーム」、マスクドフォームの装甲を外して「ガタックダブルカリバー」による
斬撃と時空を超えた「クロックアップ」と呼ばれる高速移動を武器とする「ライダーフォーム」の
2つの姿を併せ持つ。また、これには地球外生命体を全滅するまで強制的に暴れ続ける「赤い靴」と呼ばれる
暴走システムが仕込まれており、それを背負わせるためにガタックは加賀美陸によって新を資格者とするよう
仕組まれていた。この赤い靴が暴走しない保証はない、いつ暴走するかは誰にも分からない、
無論、加賀美陸にも加賀美新にも。



【人物背景】

地球外生命体「ワーム」と戦う秘密組織「ZECT」の見習い隊員だった男。
弟をワームに殺された過去を持つ。父が警視総監であることを気にしており、
コネ呼ばわりされる事を嫌っている。正義感が強く熱い心を持つが、
かなりのお人好しで騙されやすい。しかしそれは逆に捉えれば仲間思いとしても見られ、
組織の仲間を助けようとする姿は野良ゼクターとなったザビーゼクターが寄り付いたほど。
そのお人好しが原因でワームに命を落とされるが、ようやくガタックが認めたことで
仮面ライダーガタックとして復活、ワームとまともに戦う力を手にする。
それからはガタックとしてワームと戦い続け、ネイティブとも戦い続け、
やがて熾烈を極めた彼らの戦いは終わりを告げた。とある街の交番にいる巡査が、
世界を救った人間の1人であることを、誰が気づくだろうか。


【聖杯にかける願い】

特に無い。

【方針】

こんなフザけた殺し合いを終わらせる。
罪のない人々を傷付ける主従がいたら倒しに行く。


401 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/28(土) 22:27:55 BQ1a.uI.0
以上で、投下を終了させていただきます。


402 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/28(土) 23:57:08 oIwT2rdU0
投下します。


403 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/28(土) 23:57:59 oIwT2rdU0
たとえお前が、私に背を向けようとも
後ろを振り返れば、オペラ座の怪人はそこにいる―――
お前の心の中に……
(オペラ座の怪人より)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


―――声が、聞こえる。
嗚呼、この美しい声、心地良い音色。
新たな歌姫が、今宵舞台に立つ。
今宵の歌姫、声の持ち主こそ我が運命。君こそクリスティーヌ、我が愛の声。
歌え歌え高らかに、愛を希望を死を。
おお、クリスティーヌ。嗚呼、愛しき君は今此処にいる。
共に唄おう、朽ち果てるそのときまで。
寄り添おう、君に私は最期のときまで。
共にあろう、君の美しき歌声とともに。
クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ――――


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


超高層ビルの最上階近く、一人の男がデスク上のパソコンと睨み合っていた。


404 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/28(土) 23:58:49 oIwT2rdU0
時刻はもう深夜に近いのだろう。窓にはブラインドが下り、男は疲れ果てた様子でキャップに星形があしらわれた栄養ドリンクを飲んでいる。
目を引くのは男の容姿だ。万物を射ぬいてしまいそうな鋭い三白眼。目元には深いシワが刻まれており、見る者に威圧感を与える。
本来ならば男の肩書きは『株式会社346プロダクション シンデレラプロジェクトプロデューサー』。であるはずなのだが―――
現在彼が暮らしている町には『シンデレラプロジェクト』などという企画はおろか、『346プロダクション』すら存在していなかった。
男は、此度の聖杯戦争のマスターとして選出され、元いた世界から、まだ見ぬ世界へと連れてこられてしまったのだ。
男は、こちらの世界でもプロデューサーとしての役割を与えられていたが、彼がプロデュースし、共に成長してきたアイドルたちは、少なくとも彼が働くプロダクションには所属していなかった。
―――一人の例外を除いて。

「主よ、何をしているのですか?」

プロデューサーが栄養ドリンクを飲み終わり、思い詰めたような表情を浮かべていると、ドアを開けて新たな男――血色の悪い顔の右半分が不気味な髑髏の仮面で覆われ、上等なタキシードと手袋を身に着けている――が部屋に入ってきた。
彼こそが、プロデューサーの召喚した『暗殺者』のサーヴァントである。

「島村さんのプロデュース案について企画を立てていたのですが……」
「シマムラ……私は先程、彼の者の歌声を聴きましたが、彼女こそ世界一の歌姫の称号に相応しい!今を生きるクリスティーヌ!」
「?……いえ、島村さんは島村さんですが」
「彼女の歌声は美しい!そう、まさにクリスティーヌ!嗚呼、クリスティーヌ。私の愛。嗚呼、クリスティーヌ。私の業。」
「はあ……」


405 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/28(土) 23:59:53 oIwT2rdU0
プロデューサーは困ったように、手を首筋に持っていき、こう言った。

「とにかく……私は、この世界の島村さんもトップアイドルにする予定です」
「おお 主よ。しかしてそれは無意味な選択。この世界は虚構で包まれている。この世界でいくら世界一のシンデレラになろうと、貴方の世界のクリスティーヌは依然として灰被りのまま」
「ええ……わかっています。ですが、例え島村さんが偽者であろうと、その輝きは――笑顔は本物です。それに、アサシンさんの願いは世界一の歌姫を指導することでしょう?」
「……」
「私と共に一歩を踏み出しましょう。そこにはきっと、今までと別の世界が広がっています」
「主よ、今一度私にクリスティーヌの指導をする機会をいただきありがとうございます。嗚呼、クリスティーヌ。今こそ私は微笑む君に唄う。おお、クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ」
「受けていただけるのですね。では、アサシンさんには、島村さんのボイスレッスンをお願いします」


406 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/29(日) 00:01:27 MJ/OIOVU0

彼らは手を組んだ。勝ち抜くためでもなく、生き残るためでもなく。一人の少女を影から支えるために。
さあ、開演の時間だ。
幕を開けた戦争は加速していく。そして、加速していく戦争は、戦闘の意思を持たぬ者さえも否応なしに巻き込んでいく。
喝采はない……喝采はない。これは虚構の演劇ではなく本物の殺し合いなのだ。


407 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/29(日) 00:02:41 MJ/OIOVU0


【クラス】
アサシン

【真名】
ファントム・オブ・ジ・オペラ@Fate/Grand Order

【パラメータ】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:D 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
無辜の怪物:D
生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。このスキルを外すことは出来ない。
小説『オペラ座の怪人』のモデルであるアサシンの場合は、作品の影響を受けて素顔が異形へと変わり、両腕も異形のものと化した。
手袋を外せば、大型ナイフよりも鋭い鉤爪が露わになる。
我が顔を見る者は恐怖を知ることになるだろう……

魅惑の美声:B
人を惹き付ける魅了系スキル。
透き通るような歌声によって獲得したスキルだが、ときにそれは、あまねく全ての存在に嫉妬し、呪いをかける悪魔の歌声にもなり得る。
彼は天使の如く唄う、愛の歌を。彼は悪鬼の如く唄う、呪怨の歌を。
嗚呼、クリスティーヌ。

精神汚染:A
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。
このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは猟奇殺人などの残虐行為を率先して行う。
歌姫の成長の弊害となる者が現れたとき、アサシンは容赦なく殺すだろう。――必要とあらば主でさえも。
クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ
クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ クリスティーヌ

【宝具】
『地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜35

クリスティーヌ・クリスティーヌ。
かつての犠牲者たちの死骸を組み合わせて作成した、パイプオルガンが如き巨大演奏楽器。
異形の発声器官と併せる事で、この宝具は不可視の魔力ダメージを振りまく。

【weapon】
・スキル『無辜の怪物』によって得た異形の鉤爪と空中浮遊能力
・宝具である『地獄にこそ響け我が愛の唄』

【人物背景】
十九世紀を舞台とした小説「オペラ座の怪人」に登場した怪人――恐らくは、そのモデルの人物。
オペラ座地下の広大な迷宮水路に棲まい、若き女優に惹かれて彼女を歌姫へと導くも、成就せぬ愛のために連続殺人を行ったとされる。
普段は実に紳士的。
だが彼は真の紳士ではなく、「紳士としての自分」を演じているに過ぎない。
仮面の内側に巨大な悲哀と怒りを秘めており、一度それが溢れ出せば悲劇が生み出されることを深く自覚している。

【サーヴァントとしての願い】
自分が指導した歌姫が世界一の栄誉を受けること

【マスター】
株式会社346プロダクション シンデレラプロジェクトプロデューサー@アニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』

【weapon】
特になし

【マスターとしての願い】
置いてきてしまったプロジェクトメンバーのためにも元の世界へ帰る
この世界の『島村卯月』をトップアイドルにする

【能力・技能】
名プロデューサーとしての腕前

【人物背景】
アニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』に登場するプロデューサー。
正直者ではあるが、その目つきの鋭さと無表情、口数の少なさにより、アイドルたちからの誤解や職務質問を度々受けている。
また、どんな人物であろうと敬語で接するほどの礼儀正しさを持っている。
考え事をしたり困った際には首筋に手を回す癖を持つ。
通称『武内P』
アニメ11話直後よりの参戦。

【方針】
戦争に積極的参加はしないが、やむを得ない場合は戦う


408 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/29(日) 00:03:36 MJ/OIOVU0
以上で投下を終了いたします。


409 : People that support from the shadows  ◆c8luDcK3zQ :2016/05/29(日) 14:48:54 MJ/OIOVU0
拙作『People that support from the shadows』に誤りがありましたので訂正させていただきます。
プロデューサーの参戦時期ですが、『11話直後』を『13話直後』とさせていただきます。
失礼いたしました。


410 : 清水恵&バーサーカー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 17:54:14 5FxYfkzs0
夜更けの公園を、男女の2人連れが手に手を取って歩いている。
行く手には園内に設置された公衆トイレが存在しており、内部を照らす電灯の光を周囲に吐きだして、ぼんやりと佇んでいる。
闇の中に白っぽく浮かぶ姿は幽霊屋敷の様だ。誰ともすれ違うことなく、2人は公衆トイレに入り込む。


便所内は良く手入れされており、タイル張りの床や壁に目立った汚れはない。
しかし、経過した年月を洗い流すことは叶わず、全体的にくすんだ印象がある。また、落しきれなかったアンモニア臭や脂っぽい汗の匂いがミックスされ、雑巾のような臭いが全体に立ち込めている。
疑念を抑えきれない男が眉を顰めると、気付いたように振り返り、女が笑い掛けた。

「……あぁ、かおりちゃん?ほんとに……ここで…?」

かおり、と呼ばれた女はサポ希望…援助交際を求めている旨を掲示板に書き込み、返信の中からもっとも真面そうな相手に連絡を着けた。
二人は会う日時や待ち合わせ場所などを決めて、今日一日限りの恋人となった。

選ばれた男は平凡な顔立ちをしていたが、夜道を歩いている間も襲い掛かるようなことはなく、あくまで紳士的な態度を崩さない。
身嗜みにも気を遣っている事が窺え、かおりが躊躇いなく手を握る事が出来る清潔感の持ち主だ。

「ハイ♡……あの、マズかったですか…?」

かおりは申し訳なさそうに上目で男を見ている。視線を受けた男の均衡が崩れて思わず彼女から顔を逸らし、かおりの言を歯切れ悪く否定した。
屈託なく笑うと、かおりは先導するように歩き、ある個室の前で立ち止まる。わずかなスペースにするりと身を滑らせると、男に入ってくるよう目線で促す。
雑踏は遠く、周囲に2人以外の気配はしない。

「……」

唾を飲み込んだ男がぎこちない足取りで個室に入ると、かおりの退路が断たれた。
かおりが扉を閉めるよう促すと、男は気づいたように背中を向ける。

―!

背後から、かおりの腕が首に回される。細い腕の冷たさにぎょっとした男が声を上げる間も無く、首筋に注射針のような物が突き立てられた。
ちくりと痛みが走ったが、直後に酔いが回った様な陶然とした心地よさが身体を支配する。振り解こうとする前に力が抜けていく。
徐々に見ている景色が現実感を失っていき、絡まった腕の冷たさ、押し当てられた乳房の柔らかさ、首筋に接した唇の感触が男の知覚する全てになる。
やがて男はだらしなく口を開けたまま、個室の床に座り込まされた。



「いい、あなたは私と会ってない。私のことは全部忘れるの」

かおりと名乗った女、清水恵は短く言った。男は小さく頷く。

「あなたは街でお酒を飲んで、酔っぱらった。次に気が付いたらここにいた」

恵の言に聞き入っている男の表情は虚ろだ。目を床に向けているが焦点はあっていない。だらしなく開いた口元には唾液が溜まっている。

「かおりって女の子が電話するから、その時はかおりの言う事を必ず聞いて」

頽れた男は瞬き、そして億劫そうに頷いた。
それを見た恵は安心した様子で絡めた腕を解き、脇目も振らずに公衆トイレから走り去る。
その間、男は出ていく恵には気づかず、タイル模様の一点に視線を向けていた。


411 : 清水恵&バーサーカー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 17:54:47 5FxYfkzs0
≪バーサーカー?霊体化してこっちに来て≫

宛がわれたサーヴァントに念話を飛ばしつつ、恵は遊歩道を無視して公園を突っ切る。
近くのオフィスビルの前まで走り、公園が見えなくなったことを確認して速度を緩めた。

恵はいま、それなりに上手くやっている。忌まわしい村―狩人が待ち構えている―から抜け出し憧れの都会にやってこれた。
口煩い母親もいない、堅苦しい父親もいないマンションで悠々自適の一人暮らし。

両親―おそらくNPC―に学費と家賃を立て替えてもらいながら、人間のような顔で定時制学校に通っている。
バイトの収入で贅沢は出来ないが、当面の暮らしには困らない。
思わず笑いが漏れる。恵としては、ここでずっと暮らしていても良かったのだが、そうはいかないらしい。

「■■■■――――」

唸り声と共に怪物が姿を現す。全身を緑色の装甲で覆った異形の人型が、怒りを湛える赤い眼で恵を見据えている。
恵が陰となっており、通行人からその姿は見えない。

「マスターはいた?」

戦わねばならないなら、戦って生き残ってやろう。
なんでも願いを叶えてもらえるなら、都会の暮らしを望む。村に囚われていた分、年頃の女の子の楽しみを目一杯満喫するのだ。
だが、優勝しても村に帰らなくていいのなら……。

(……結城君)

下らないあの村で唯一下らなくない存在であった、愛しいあの人を蘇生させよう。
華の大都会で二人きりの生活…。聖杯戦争に勝利した後の生活を思い描き、恵は胸を弾ませる。

「■■■■」

バーサーカーは調子の変わらない唸り声を上げた。水を差される思いがした恵は眉間に皺を寄せる。

「あんた、喋れたらよかったんだけどね」

溜息をついた恵の鼻が異臭をとらえた。バーサーカーから距離を取り、二の腕をゆっくり顔に近づけると……臭い。
先刻まで居た公衆トイレの匂いが、身体や衣服に染みついてしまったらしい。

戦慄に襲われた恵はバーサーカーに霊体化するよう指示を飛ばすと、自宅に向かって駆け出した。
まだ夜明けまでだいぶ時間があったし、村と違って都会には遊ぶ場所がたくさんある。
今から寝に入るのはもったいない。

(誰にも会いませんように!!)

便所の匂いが染みついた今の自分は人に見られたくない。特にこちらで出来た友人達には。
祈るような気持ちで、恵は自宅を目指す。







小汚いトイレの個室内で、男は我に返った。立ち上がると目眩がして、思わず座り込んだ。
朦朧としていた最中に何かあった様な気がして、男は自分の身に起こったことを整理する。

(…たしか、)

俺は飲みに繰り出していたのだ。酔って…それで……そこで記憶が途切れている。
まさか泥酔した挙句、こんなところで寝るなんてな。男から自嘲の笑みが漏れた。

誰と飲みに行ったのか、どこの店で飲んでいたのか、どんなルートでここまで来たのか、という疑問が男の思考に引っかかる事はない。
欠伸を一つすると、男は頼りない足取りで家路についた。


412 : 清水恵&バーサーカー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 17:55:13 5FxYfkzs0
【クラス】バーサーカー

【真名】葦原涼

【出典作品】仮面ライダーアギト

【ステータス】筋力A 耐久B+ 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具A


【属性】
中立・狂

【クラススキル】
狂化:B
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。


【保有スキル】
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
生存能力というより、宝具によってもたらされる生命力・再生力。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

勇猛:-(C)
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
ただし狂化によって効果が発揮されていない。

【宝具】
『忌むべき光の子(ギルス)』ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
仮面ライダーギルスに変身する。身体能力が上昇するほか、腕から出現する金色の刃、腕から出現する触手、踵から伸びる刃、口腔部の牙によって敵を攻撃できる。クラス補正によって常時発動している。

「光の力」を受けた人間が進化した姿「アギト」の不完全体、あるいは変異体と思われる異形の戦士。
アギトには耐久力で劣るが、再生力・筋力・俊敏性において勝る。ワイズマンモノリスというパワー制御器官を持たず、アギトと違い変身中はパワーを制御できていない。
そのため生前、変身する度に極度の負担が肉体に掛かり、変身解除後には後遺症として老化現象・幻聴が葦原を襲った。


【weapon】
変身中に生成できる殺傷部位。


【人物背景】
城北大学水泳部に所属する学生。水泳選手として、将来を有望視されていた。バイク事故を機に不完全な変身能力に覚醒、アギトの変異体・ギルスに変身できるようになってしまう。
能力と変身後の老化現象が原因で水泳部のコーチや恋人から敬遠され、大学を自主退学。夢を諦めて孤独な日々を過ごす。

アンノウンと戦う日々の中で、アギト・翔一と邂逅。似通った境遇から共闘するようになる。
幾度となく死線を潜り、関わった人々との悲しい別れを経験しながらも、逃げることなく戦い続けた彼は全てが終わった後に「普通の生活」を手にすることが出来た。


【聖杯にかける願い】




413 : 清水恵&バーサーカー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 17:55:31 5FxYfkzs0
【マスター名】清水恵
【出典】屍鬼
【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「屍鬼」

死亡した人間が蘇生することで誕生する、血を吸う怪物。
外見は人間と同様だが血液以外は死亡直後の状態であり、人間の生き血のみを生存に必要とする。
規格外の治癒力を持ち、夜目が利き、老化しない事に加えて血を吸った相手に暗示を掛けることが出来る。

ただし、日中は強制的に眠りに落ちる、日光に当たると皮膚が焼け爛れる、十字架や光背など呪物を恐怖する、招かれなければ他人の管理する建物に侵入できないといった弱点を抱えており、人間を超越した存在とは呼び難い。



【ロール】
夜間定時制学校に通う、夜勤のウェイトレス。

【人物背景】
溝辺町外場、通称「外場村」に暮らす高校1年生。

生まれ育った村での生活を嫌っており、都会から来た転校生・結城夏野に対して一方的な好意を抱く。
都会に対して強い憧れを抱き、夏野と同じく都会の学校に進学することを希望するが、口先だけで村から出ることはない…と夏野からは見られている。

村の者を見下している一方、村外からやってきた桐敷家に対しては強い関心を寄せる。
実は桐敷家は人ならざる屍鬼の集団であり、屋敷に招かれたところを襲撃され、外場村の住人のなかで最初期に起き上がった。
復活した後は嫉妬心から夏野と共闘していた幼馴染・田中かおりの父親、夏野と親しい武藤徹を襲撃する。

起き上がった事実を受け容れており、人間を躊躇なく襲うが桐敷家からの扱いに不満があるため、叶うなら今からでも人間に戻りたいと願っていた。
屍鬼の存在が村人に発覚した後から参戦。

【備考】
NPCを一人、暗示にかけました。
襲撃が重なれば、操り人形の様になって最終的に死亡します。襲撃が止めば、いずれ正常に回復します。

【聖杯にかける願い】
都会に行く。村に帰らなくても良いなら、結城夏野の蘇生を願う


414 : 清水恵&バーサーカー ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 17:56:05 5FxYfkzs0
投下宣言を忘れてしまい、申し訳ありません。

投下終了です。


415 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:23:02 5FxYfkzs0
投下します。


416 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:23:21 5FxYfkzs0

「おかえり、マスター」

夕方、アルバイト先から帰宅した海堂を出迎える声があった。
視線を向けるとダイニングキッチンに男が立っており、穏やかな笑顔をこちらに向けている。
痩身だが頼りない印象はなく、黒衣の神父服に包まれた肉体には男らしい線が浮かぶ。

「おう、…ただいま」

海堂はおどけた調子で答える。在りし日の友人と目の前の神父が重なった。

「食事は用意してある。冷蔵庫に棒棒鶏を作り置いておいたから、良かったら……」

気忙しい様子で神父は話し始める。神父が指差すと海堂は軽やかな足取りで冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫の扉を開けると、大皿に盛られた棒棒鶏が一角を占領しており、丁寧にラップがかけられている。

「おっおっおっ……旨そうじゃ〜ん。流石は俺様のサーヴァント」

宝物を発見した海賊の身振りでアサシンを労った。
彼の清廉な雰囲気と纏った黒衣からは生活感を感じられないのだが、いつも専業主夫の真似ばかりしている。
それが海堂にちぐはぐな印象を与える。

「ハハッ、喜んでもらえたなら何よりだ」

「行くんか、アサシン」

感情の籠らない口調。この神父は召喚されてからずっとこうだった。
日中は部屋の留守を守り、海堂が帰ると入れ違いになるように出ていく。
外で何をしているのかは海堂も理解している。

「…あぁ、出掛けてくるよ。何かあったら…」

気まずさを滲ませつつ、アサシンは柔和な笑みを海堂に向ける。

「分かってるって。ちゅーか何度も言うんじゃねぇ」

冗談めかして言葉を遮る海堂はビシッとポーズを決め、右手を掲げた。グローブの隙間から令呪が覗く。

「ごめん、ごめん。それじゃ」

アサシンは静かに部屋を出て行った。





市内にある広告事務所。90名の社員を抱える制作会社はキャスターの手によって、魔術師の陣地に作り変えられていた。
この会社に働いていたスタッフは陣地構築のための燃料にされており、使い魔の獣人が代役となって種々様々な業務をこなす。
元は社長室であった工房で作業に没頭するキャスターは不意に顔を上げ、部屋中に視線を走らせた。

――魔力炉にヒビが走った。

正確には魔力炉の核…絡み合う軟体生物の触手めいたチューブの隙間を通り抜けたらしく、鈍く光るエッジが核に突き刺さっている。
完全には破壊されていないが魔力生産量は大きく低下した。
魔力炉の修復には少なくない時間を要する事を察した壮年のキャスターは眉間に皺を寄せて、エッジが飛来した方向に視線を向ける。
一方、同室していたキャスターのマスターは社会において財を成した一廉の男であったが、同時に神秘に対して免疫を持たない一般人であった。ゆえに。


417 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:23:44 5FxYfkzs0

「ひぃッ……!?」

熊の如き体躯と厳つい顔からは想像できない、狼狽えた声だ。

『まるでこの世は荒れ果てた庭。下劣だけが、我が物顔で蔓延っている』

墓場の静謐さと虚無を孕む声が工房に響いた。工房の一角にできた闇の中に髑髏が浮かぶ。
キャスターは鋭く目を細め、マスターの男は落ち着きなく視線を泳がせる。

「アサシンか…」

短く、マスターに聞かせるように言った。

「う、こ、……ここは任せた!!」

キャスターのマスターはアサシンを視野から外さないよう、横伝いに動く。
出口が近づくと二人に背を向けて脱兎のごとく駆けだした。

『なんと不埒で、情けない人間か』

アサシンは敵マスターに一瞥もくれない。

「切る手間が省けたとでも思うさ」

置き去りにされたキャスターはマスターが逃げた方に向かって小さく顎をしゃくると、顔に刻まれた年輪を嘲笑で歪めた。
仮面と視線が交わると表情を消し、口元を高速で動かしていく。それを見たアサシンもまた魔術師の視界から姿を消した。

『…フン!』

「大洋の果てに住まう主の御名において、汝に厄災を与えん…」

キャスターの詠唱と共に工房の壁や床から、烏賊や蛸の触手を電柱並に拡大したものが飛び出す。
これは彼がとある邪神に臓腑の一部を捧げた時に賜った恩寵の一つであった。
触手が蠢くと同時に工房の床が水に浸かり始め、徐々に水位を上げていく。潮の香りが部屋に満ちる。邪神の住まう大海の景色が工房内に再現されようとしていた。

アサシンは工房内を跳び回り、キャスターに接近する。
工房の主を守る様に出現した触手を跳躍して避けると外套から取り出した槍を魔術師の心臓に突き立てた。
水位は既に成人男性の腰あたりまで上昇している。

『すべきこともせず、一炊の夢に耽るか』

海水が引いていく工房で、心臓を貫いたアサシンが静かに語りかける。

「―ふっ、ふはははは、アハハハ…」

キャスターは振り上げた腕を下げると一つ息を漏らし、暗い愉快さの滲む哄笑を上げながら消滅した。
主を失うとともに工房は急速に崩壊を始める。触手は肉片となって崩れ落ち、引いていく海水に混じって床に吸い込まれる。
潮の香りだけが名残惜しそうに部屋に満ちていたが、アサシンが姿を消す頃にはそれも消え去った。


418 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:24:04 5FxYfkzs0

「―はァ!?」

出口に達する目前、男の前にアサシンが姿を現す。驚愕の声を上げると倒れるように座り込み、思わず股間を湿らせた。アサシンは男から一歩後ろに下がるとその場から姿を消した。

「あ、ありが…」

アサシンが姿を消すと跪いたような姿勢で這って進み、男はたどたどしく礼を述べる。

『こうして命を延ばしても、おまえの病が長引くだけだ』

弱々しい感謝の言葉がアサシンの声によって遮られる。後には力なく座り込む男がひとり残された。





アサシンが部屋を出た後、しばらくしてから海堂も外に出た。
当てもなくバイクを走らせていたが、川の近くを通ると道端で停車した。海堂は土手に身を横たえる。
既に日は落ちており、夜空に月が浮かんでいる。今日は三日月のようだ。
海堂がしみじみとした表情で月に右手を伸ばすと。

≪主よ≫

「おーっ!」

アサシンの念話が飛んできた。海堂はびっくりして上体を起こす。
左右に首を振り向けるが土手には自分しかいない。

≪ばっきゃろう!いきなり声掛けんじゃねー。俺様がこう、センチメンタルに浸ってる時にだなぁ…≫

≪…月の彼方に何が見える?主よ…≫

立ち上がり、アサシンを叱りつけるが気にした様子はない。
彼はいつもこうなのだ。宝具である仮面を身につけている間は別人のような態度・口調をとるようになる。変な奴だなぁ、と海堂は常々思っていたが、今では仮面を被ったアサシンともしっかり意思疎通が取れている。
流石だよなぁ、俺。海堂の気分は少し良くなった。

路肩に止めたバイクにつかつかと歩いていった海堂は、シートに腰を下ろす。

≪あぁ?月しか見えねーよ…≫

面倒臭そうに夜空を見上げるとバイクにエンジンを掛け、すぐに自宅に向かって走らせた。


419 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:24:24 5FxYfkzs0

【クラス】アサシン

【出典】スカルマン(アニメ版)

【性別】男

【真名】神崎芳生

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+

【属性】秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【固有スキル】
心眼(真):C
 本来なら修行・努力によって培われる洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す"戦闘論理"
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
 アサシン個人に由来するものではなく、宝具によってもたらされたスキル。

蔵知の司書:C
宝具展開時、前装着者の記憶・意思を受け継ぐことが出来る。 LUC判定に成功すると、仮面が記録した知識、情報が脳裏に再現される。

怪物殺し:C
人外の属性を持つ敵と戦う際に、行動判定の成功率を上昇させる。

無力の殻:A(-)
発動中は身体能力が一般人並みになり、無力の殻を除く全スキルが使用できなくなる。その代わり、サーヴァントとして感知されなくなる。
『仮面が語る寓話』使用時のみ、カッコ内のランクに修正。このスキルの効果は消滅する。


【宝具】
『仮面が語る寓話(スカルマスク)』ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
数千〜数万年前に存在した古代文明の遺物である「頭部体」。新人類と呼ばれる存在の力を制御するために必要な代物だが、人間が使うと超人的な身体能力を得られる。
ただし展開しても肉体の強度が変化しないことに加え、身体への負担が大きいので使い続けると生命の危険がある。サーヴァントとなった事でこのデメリットは消失した。

また装着時は仮面の記憶が流入するため、Bランク相当の精神耐性が付与される。
マスクの口元を閉じることで更なる力を発揮できるが、アサシンが使用した逸話は確認されていない為に制限されている。


【Weapon】
宝具展開時は専用の衣装のほか、ナックル、伸縮式の槍、ニードル、ナイフを携帯できる。また大型バイクを出現させる事が可能。

【人物背景】
第二次大戦後に我々とは異なる歴史を歩む日本の地方都市・大伴市では古代文明の遺産を利用した「ガ號計画」が密かに進められていた。
同じ頃、市内で髑髏仮面の怪人が殺人を行うという噂が流れる。
その怪人の正体である神父。大伴市で孤児院を営む傍ら、計画によって生まれた獣人を人知れず抹殺していた。

かつて従軍した南亜戦争の地獄のような有り様に信仰心を失いかけるが、戦場を彷徨う中で計画に抗う獣人の兄弟と出会い、彼らを保護する。
先代神父の手紙によって真実を知った彼は信仰心を取り戻し、人の手に余る古代文明の遺産を破壊するために髑髏の仮面を被った。
正体を突き止めた幼馴染・御子神隼人に真実を伝えるもサイボーグ集団の襲撃に遭い、重傷を負った彼は仮面を受け継いだ隼人に看取られて死亡する。


【聖杯にかける願い】




420 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:24:45 5FxYfkzs0

【マスター名】海堂直也
【出典】仮面ライダー555
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

「音楽の才能」
クラシックギターにおいて天賦の才を持っていたが、事故によって指に怪我を負った。
現在はギターを上手く弾くことが出来ない。

「スネークオルフェノク」
人間が一度死ぬことで覚醒し、蘇る事で生まれる人類の進化形態。
事故などによって死亡した人間が稀に変化する「オリジナル」の他、オルフェノクは「使徒再生」によって適性のある人間を覚醒させることが出来る。
生前と同じ姿をしているが、自らの意思によって高い戦闘能力を発揮できる怪人の姿に変身する。

海堂は蛇の特性を備える使徒再生のオルフェノクである。2本の小剣が武器。


【ロール】
クリーニング屋のバイト。

【人物背景】
音楽学校で将来を有望視されていた天才ギタリスト。
才能を妬んだ教師の罠によって怪我を負い、自暴自棄になっていたところをオルフェノクにされる。

海堂自身は紆余曲折の後、音楽学校の後輩・黒田に自らの持てる全てを伝授してギターを捨てた。
その後は人間と敵対しないオルフェノクである木場勇治・長田結花と行動を共にするようになる。

次第に木場が唱える「人間とオルフェノクの共存」に理解を示す様になっていったが同じ頃、彼は長田の生命を奪った人間に絶望・憎悪し「人類の抹殺」に趣旨替えしていた。
木場と袂を分かった海堂はオルフェノクの王・アークオルフェノクを倒す最終決戦に参加。戦いの中で木場とも死に別れ、全てが終わった後一人でどこかに消えた。

露悪的で無責任だが周囲を常に気に掛けている。一時の判断で行動する自由気ままな男。テレビ版50話終了後から参戦。

【聖杯にかける願い】
脱出。できる範囲なら主催者も打倒。


421 : 海堂直也&アサシン ◆aEV7rQk/CY :2016/05/30(月) 21:25:10 5FxYfkzs0
投下終了です。


422 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/31(火) 06:11:39 wnc1NVgM0
皆様投下乙です!それでは感想を。

>>P&アサシン

Pに怪人と来たか!成る程、どちらも名歌手を鍛えたという共通点がありますよね。
しかし最高に相性のいい鯖と巡り会えたと思いますよプロデューサーさんは!
「ステージには怪人が住む」なんちゃって(笑)
ご投下有難うございます。


>>清水恵&バーサーカー

やっぱり葦原さんはバーサーカーか!
エクシードになれないのが悔しいですね。
見た所鱒も良く似た境遇だそうですが、
葦原さんはそんな彼女を守り通せるのか!?
ご投下有難うございます。


>>海堂直也&アサシン

おお、海堂君じゃないですか!
見た所このアサシンも友を失った境遇を持っているそうですが、
やはりそういう点でも海堂君とは通じ合えそうですね。
ご投下有難うございます。


423 : ◆lkOcs49yLc :2016/05/31(火) 06:24:22 wnc1NVgM0
皆様ご投下有難うございます。それでは締め切りに付いて緊急報告。

ちょくちょく「締め切りは6月6日」と説明していましたが、
候補作の数や作者のスケジュール上の都合から、
2週間延長させ、6月20日とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けしましたこと、お詫び申し上げます。


424 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/01(水) 01:19:55 iwUuyc0E0
候補作投下します


425 : 雨宿まち&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/01(水) 01:20:39 iwUuyc0E0

「ここに間違いないのか?」
「ああ、確実にサーヴァントが居る」

 セイバーのマスターは静かに鳥居を見上げた。生粋の魔術師の家系であり、家督を継いだ身である彼が、此度の聖杯戦争の知識を得てマスターとして覚醒したとき、根源に至るために聖杯を獲るという選択を選んだのは、至極当然の流れであった。
 幸いにも、彼が召喚したのは最優のクラスとして名高いセイバーであり、正統な魔術師であるマスターに召喚されたためか、ステータスも件並み高かった。 
 
 さて、彼らが聖杯戦争に本格的に身を乗り出してすでに三日が経つが、冒頭で解る通り、ふたりは都内の神社に来ていた。
 顛末は実に単純で、街中を霊体化し、他の主従を探索していたセイバーが、この場所にサーヴァントの気配を確信したからだ。
 通常なら魔術師のマスターは、自信の工房へと籠っていることが聖杯戦争における定石である。だが、彼は若く、そして野心家であった。
 自ら戦場に立ち、初陣の勝利を勝ち取りたかったのだ。
 さすがにセイバーは渋ったが、触媒なしの召喚だったためか、彼もまたマスターと似通った性格だったため、熱意に押され、
戦闘においては自身の指示に従うことを条件に、これを了承した。

 無論、準備は怠っていない。
 全身を幾重にも練り上げた魔術礼装で不足し、今の彼ならサーヴァントの攻撃でも多少は防げるだけの準備は施している。

「では行こうかセイバー」
「ええ、生きましょうマスター」

 そうして意気揚々と神社に踏み込んだ。
 彼らは若く、野心家で、そして馬鹿であった。
 


 ポーチの丸いテーブルに着物の年老いたサーヴァントが腰掛け、若い少女(恐らく老人のマスターであろう)が付き添っていた。
 サーヴァントとは、基本その英霊の全盛期の姿で召喚されると聞いていたが、あのサーヴァントはかなりの高齢だ。
 皺深い顔に灰色の髪と長い髭。平均からするとその身長はかなり小柄であり、青年が読み取ったステータスによるとバーサーカーのクラスであった。だが、何らかのスキルを持っているのか、ステータスが読み取れない
 一方の少女の方は、恐らく10代後半と言ったところか、アイヌの巫女服を着用している。彼女は青年とセイバーに気がついたのか、硬直していた。
 しかしバーサーカーの方はというと、セイバー達を一別すらせず、美味しそうに何かを咀嚼していた。
 バーサーカーはプリンを食べていた。

「ううーむ。うまいのう。やっぱりグリコのプッチンプリンは最高じゃな」
 
 満足そうに頷くバーサーカーの額には、文字が描かれていた。
 マジックインクで書かれたその三文字は『大』と『災』と『厄』であった。

ーなんだあのバーサーカーは?ー
ーとりあえず、話しかけてみるかー


 念話でやり取りした二人は、取り敢えず会話をしようとポーチに近づいていった。
 距離が三十メートルほどになったところで、漸く硬直していたマスターの少女が動いた。

「だ、誰ですか貴方たちは……」
 
 震えながらたずねる。
 巫女服からして東洋の魔術師かとも疑ったが、どうやらそれは杞憂のようだった。
 


「貴女はそこのバーサーカーのマスターだな? 安心してくれ。女子供に手をあげる気はない
 我らは聖杯を勝ち取るため、そこのバーサーカーと騎士道に乗っ取った決闘がしたいのだ」

女子供に手をあげる気はない。で安堵し、決闘がしたいの部分で瞬時に真っ青になる
気の毒なほどの百面相に、魔術師は彼女が巻き込まれただけの一般人なのでは?という疑問に確信を抱いた。
少女を苛めて楽しむほど人間性は歪んでいない。あくまでもサーヴァント同士の決闘がしたいというと伝えようと口を開きかけた。
その時、それまで静観を貫いていたバーサーカーが、喋った。


426 : 雨宿まち&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/01(水) 01:22:24 iwUuyc0E0

「まちちゃん、そんなゴミは置いといてプッチンプリンを食べさせてくれんかのう」

「え、は、はい」

まちと呼ばれた少女は、慌てて匙を手に取った。今度はセイバーとそのマスターが固まった。
 理性がない筈のバーサーカーが会話をしたことにも十分に驚くべきことだが、何よりもあの老人は、あろうことか、自分達をゴミ呼ばわりしたのだ。 
 魔術師のプライドは痛く傷つき、そして、彼は非常に怒った。
 それは相方も同じで、兜で端からは見えないが、セイバーの額には青筋が浮かび上がっていた。 
 彼は、少なくともゴミ扱いされたことに怒れるほどに、英霊としての自身に誇りを持っていた。

ーそうか、そっちがそういうつもりならば、仕方ないー

 魔術師は指先を相手に突きつけるーーガンドという、指先から弾丸のごとく魔力を放出するーー比較的ポピュラーな魔術を行使する。
 高い魔力により、物理攻撃力を持ったその一撃は、バーサーカーのプッチンプリンを跡形もなく吹き飛ばした。
 ひゃい!?と悲鳴をあげ、少女は弾みで倒れた。バーサーカーは信じられないといった顔で、地面にぶちまけられたプリンの残骸を見ていた。

 セイバーが剣を抜いたとき、そこにバーサーカーの姿はなかった。魔術師が横を見ると、セイバーの鎧がぶち壊れていた。

ーーそんな馬鹿な!?ーー

魔術師は驚愕した。
セイバーの鎧は、【Aランク以下のあらゆる攻撃を無効化する】という強力な性能を誇る、宝具だった。
魔術師がこうして自信満々に戦場に駆り出せた要因も、その宝具の強固さに信頼をおいていたからに他ならない。
その、無敵の防御を誇るはずの鎧に、バーサーカーが片腕を突っ込んでいたのだ。
分厚い甲冑は紙のように破れ変形し、内の肌が露出していた。

「ふうむ。ゴミかと思うたが、こりゃ若造じゃないか」

完全に破壊された鎧から、無理矢理セイバーが引きずり出された。
魔術師も始めてみた彼の姿は、欧州の伝記を原点とするセイバーは、端正な顔立ちをした白人青年であった。
その顔は驚愕と苦痛に歪んでいた。

「ぎゃあああっ、が、ががが」

セイバーの断末魔が神社に響く。
メリメリ、ミチチと、バーサーカーの片手がどんどんと頭にめり込んでいき、頭蓋骨をあっさり突き破り脳が抉れた。
バーサーカーは念入りに脳の大部分掻き出すと、無造作に死体を放り捨てた。
ゴミのように打ち捨てられた体は、光の粒子となってーー消滅した

セイバーが死んだ。魔術師はパニックになっていた。こんな馬鹿な。こんな序盤で、こんなことが起こるはずがない。何かの間違いだ。
セイバーの宝具が無効化された?何らかのスキルかそれとも宝具か!?いやそんなのはもう関係ない、どうする。どうしよう。一旦離脱しなければ、工房に、体制を建て直さなければ

「おい」

高速で思考する魔術師の利き手を、バーサーカーが無造作に掴んだ。

「若造…さっきの手品、もう一度撃ってみんか」

 バーサーカーは皺深い顔に微笑を浮かべていた。だがその口角がどんどん左右に広がり、目も吊り上がっていく。

「ほれ、早う撃て。早う撃たんと間に合わんぞ」

 バーサーカーが指先を自分の額の中心、丁度『災』と書かれた場所に押し当てた。ぐい、とバーサーカーが前に出る。

「が、や、やめ、ぎゃ」

 指先がしなる。ぐいぐい、と更に近寄ってくる。メキメキと鈍い音がした。指が折れた。
 バーサーカーの顔は初めて見る類のものに変わっていた。魔術師はそれが東洋の魔物である『鬼』に似ていると思った。だがそれどころではなかった。

メシッ、と、魔術師の体を守護していた幾重もの魔術礼装が悲鳴をあげた
魔術師の視界のすぐ目の前に『大災厄』が迫っていた。怒り狂った老人の顔。
バーサーカーの肌は意外に艶やかで、全て揃った歯は鋭く尖っていた。熱い息が魔術師の皮膚をチリチリと焼いた。

 魔術師はその短い生涯でもっとも情けない悲鳴をあげた。
 礼装が塵のように破られたことで、ここにきてようやくセイバーの敗北と、自身の状況を理解した彼に、素晴らしい恐怖が襲ってきた。





 不躾な客達は始末された。
 血と脳症にまみれたバーサーカーは、柔和な好々爺に戻っていた。ふと額の文字が掠れてしまったことに気がついたのか、まちの方へ振り替える。

「おおーい、まちちゃん。ちょっくら額の文字を書き足して……」

 バーサーカーは途中で黙った。まちは精神の限界を越えたのか、泡を吹いて気絶していた。

「しょうがないのぉ」

 バーサーカーはしぶしぶマジックペンを手に取ると、自分で書いた


427 : 雨宿まち&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/01(水) 01:23:58 iwUuyc0E0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
唯一絶対超絶究極大殺戮神@唯一絶対超絶究極大殺戮神

【パラメーター】
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力D 幸運C 宝具EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
狂化:EX
常人では理解できぬ思考により行動する、圧倒的という言葉すら生ぬるい究極の暴力。それがこのバーサーカーである
かつてバーサーカーのご機嫌を損ねて二つの大陸が沈み、数知れぬ民族が絶滅した

【保有スキル】
神性:A+++
バーサーカーは神である。だが、彼はけっして自身を崇めるものを守護しないし、何らかの加護ももたらさない
何故ならバーサーカーは、助ける神ではなく、守る神でもない。殺す神なのだ

神性秘匿:A
バーサーカーは、平時からその本質を他者に悟らせることはなかった。
機嫌が良いときのバーサーカーは、一見して変わり者の老人にしか見えない。
その逸話にならい、他マスターからのステータス視認も隠蔽される。
バーサーカーの本質を知ることができるのは、その怒りを買い、殺される段階に至ったときだけである

異形:C
バーサーカーが本気を出すとき、その顔は老人のものから一転、究極の怒りを表した鬼のごとき形相へと変貌する。
対峙した相手の精神耐性がランク以下の場合、即座に萎縮し、脆弱なものならその怒りに当てられて発狂してしまうだろう

【宝具】
『唯一絶対超絶究極大殺戮神』
ランク:EX 種別:対生命宝具 レンジ:無限 最大補足:対象となった種族すべて
 バーサーカーと敵対、及びその逆麟に触れれば、その時点でその人物の死が確定する
 より具体的に言えば、バーサーカーの『殺人』という『結果』を導く『行動』は、直接的な攻撃、あらゆるスキル、宝具による隔離なども含めた、いつ如何なる妨害手段を用いても、無効することは出来ない。
 何処へ避難し脱出しようが、バーサーカーは即座に対象の位置を察知し、追い付き、殺す。 その効果はバーサーカーが祟った民族、及び種族が絶滅するまで収まらず、事実上バーサーカーの殺戮を阻止することは不可能。例え宇宙へ脱出し銀河系の外へ逃げ出そうが全くの無意味であり、無駄である

 だが逆に、何からの要因で彼の怒りを買わなければ、バーサーカーは基本的に他者にとことんまで無関心である。
 
【人物背景】
唯一絶対超絶究極大殺戮神。それが彼であり、彼に祟られて生き延びられた種族はいない。

【サーヴァントとしての願い】
プッチンプリンが食べたい

【運用方針】
とにかく怒らせないことが第一。
一度機嫌を損ねると普通にマスターも殺しかねないが、どうやらまちのことを少しは気に入っているらしいのでうまくご機嫌をとってれば何とかなるかも…


【マスター】
雨宿まち@くまみこ

【weapon】
特になし

【マスターとしての願い】
熊出村に帰りたい

【能力・技能】
巫女らしい能力は皆無と本人は言うが、やはり巫女の家系なのか時々トランス状態になる
家電破壊と料理も得意。
前者に関しては、パソコン2台と電気釜をお釈迦にした前科を持つ。

【人物背景】
東北の山奥に暮らす中学生のアイヌ系巫女。
熊を奉った神社の巫女として仕えている。

【方針】
バーサーカーのご機嫌をとりつつ引きこもる


428 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/01(水) 01:26:12 iwUuyc0E0
投下終了です


429 : マキ&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 09:27:07 pUD3p9e.0
投下します。


430 : マキ&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 09:27:26 pUD3p9e.0
夕方、小学生の4人組が帰路についている。そのなかに白人の少年が一人混じっていた。
彼は最近町に引っ越してきた外国人であり、色の薄い頭髪にオッドアイという珍しい容姿もあって休み時間などは周囲に人が集まる。
基本クールな少年だが、いざという時には流暢な日本語で態度をはっきりと表す。そのうえ付き合いも悪くない為に2〜3人ほど親しい友人が既に出来ていた。
帰り道が分かれる所に差し掛かったので、3人とはここで別れる。

「じゃーねー!マキー!」「また明日ー!」「それじゃあ…」

マキは思案気に一様に並んだ顔を眺めた。
こういう時にどう言えばいいのかは既に分かっている。けれどこの言葉は寂しい気持ちになるから好きじゃない。
だが、言わなければ。

「…さようなら」

機械的だったが、はっきりとマキは別れを告げた。
手を振ってこちらを見送る同級生達に小さく微笑んだマキは自宅に向かって走り出す。
その間に考えるのは忠誠を誓った女性の事。




アンバーより大事なものなんて僕にはないんだよ…?
黒より、雨霧より、アンバーに相応しい契約者は僕なのに…。僕が一番なんだから…。

―許さない。

思わず表情が歪む。
アンバーから自身を引き離した聖杯に対して、どろりと濁った感情がマキの奥底から湧き出た。




自宅にたどり着いたマキだったが玄関を開けても誰もいない。
この街ではマキは3人家族の一人息子…という役割が振られている。両親は共働きだった。

自室に入ってすぐ濃密な気配が部屋全体に満ちていくのが分かる。マキは気にすることなくランドセルを勉強机に抛った。
まもなく部屋中に散っていた威圧感が一点に集まっていき、マキは集束点に仏頂面を向ける。
目の前に契約したサーヴァントの姿が現れる。血に塗れたような真紅の鎧とファー付きの外套に身を包んだ中年の男。
後ろに撫でつけた頭髪や整えられた口髭、纏う雰囲気から身分の高さが窺えるが、燃えるように赤い眼は尋常のそれではない。

彼こそはこの度、ランサーのクラスで現界した反英霊。アカネイア大陸に名高い「暗黒皇帝」、オレルアン王族のハーディンであった。

「マキよ…。貴様、この私を呼び出しておきながら未だに戦場に出ぬとはな」

本気で戦う気があるのか?ハーディンは不遜な態度でマキに問う。
問われたマキは目を合わせたまま椅子に腰を下ろし、面倒くさそうに言った。

「今は動かない…。僕らは戦いが終わった後を狙う」

皇帝の威光を前にしても、マキは眉一つ動かさない。

「漁夫の利をさらうか」

ハーディンは低く笑い、嘲弄を隠そうともしない。

「…そんなに戦いたいならランサーが一人で行けばいい」

平坦な声でランサーを嗜める。マキはただアンバーの関心を引きたいだけだ。
彼女が欲するなら聖杯でもなんでも取ってくるが、マキ自身にとって聖杯は優秀さの証明以上の意味はない。手に入ったら目障りな男の抹殺に使おうか…くらいにしか考えていない。
聖杯がなくたってアンバーの役に立つ自信がマキにはある。必要とあれば勿論戦うが自分から敵を引き寄せるなど合理的じゃない。

そんな事もわからないでやられるようなサーヴァントなら…いらない。

マキはハーディンから視線を外すと時間割を確認して、明日の準備を始める。
ハーディンはしばらくマキの背中を見つめていたが、憤然とした表情で鼻を一度鳴らすとその場から姿を消した。


431 : マキ&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 09:27:53 pUD3p9e.0
【クラス】ランサー

【真名】ハーディン

【出典作品】ファイアーエムブレムシリーズ

【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具B++

【属性】
混沌・悪(秩序・善)

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する守り。三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


【保有スキル】
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能だが、大国の王としてはCランクでは心許ない。

黄金律:B
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 大富豪でもやっていける金ピカぶりだが、散財のし過ぎには注意が必要。

精神異常:A
宝具の影響により、精神が変容している。他人の痛みを感じることが無く、周囲の空気を読むことが出来ない。
 精神的なスーパーアーマー能力。


【宝具】
『暗闇の中に独り(闇のオーブ)』
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1人(自身)
封印の盾に嵌められていた聖玉のうちの一つ。
闇の加護によりレンジ内なら所有者への攻撃を全て封印する効果を持つが、Bランク以上の神・竜の属性を持つサーヴァント、宝具による攻撃には太刀打ちできない。
また、所有者の心の闇を引き出すことで精神異常や精神汚染のスキルを自動付与するデメリットがある。


『抉り穿つ剛毅の宝槍(グラディウス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
アカネイア王家に伝わる三種の武器のひとつ。岩をも容易く貫く逸品。
担い手の技能習熟を助けるほか、投擲すると砲弾の様な速度で飛んでいき敵を貫く。投擲された槍は対象を攻撃した後、込められた理力によってランサーの手元に戻る。


【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
アカネイア大陸・オレルアン王国の第二王子であり、現国王の実弟。後のアカネイア神聖帝国・初代皇帝。
狼騎士団長を務めていることから、「草原の狼」の異名をとる。マムクートが率いるドルーア帝国軍との大戦「暗黒戦争」当時、アカネイアから落ち延びたニーナ姫をアリティア連合軍と交流するまで守り抜いた。

暗黒戦争終了後は国土復興に尽力。司祭ボアの薦めもあってニーナ王女と婚約、アカネイア第24代国王となる。
しかし、妻ニーナは戦死したとされるカミュへの未練を断ち切っておらず、アカネイアの騎士達とも関係が上手くいかないことから次第にストレスが溜まりハーディンは毎晩自室で酒を煽るようになった。

其処に目を付けた暗黒司祭ガーネフが商人に化けてハーディンに近づき、闇のオーブを渡す。
オーブの魔力で嫉妬心や憎悪を引き出されたハーディンは残虐な暴君と化し、アカネイア神聖帝国の建国を宣言。
圧政によって民衆を苦しめるが、後に英雄戦争と呼ばれる戦いで討ち取られることになる。

【聖杯にかける願い】



432 : マキ&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 09:28:12 pUD3p9e.0
【マスター名】マキ
【出典】DARKER THAN BLACK -黒の契約者-
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「契約者」

契約能力を行使できる人間。能力使用後には必ず特定の行動をとる、或いは特定の現象に見舞われる様が何かと「契約」しているように見えることから、契約者と呼ばれる。
個人差はあるが契約者になると感情が希薄化し、常識や良識に囚われなくなり自身の生存・願望達成を第一に考えるようになる。その有用性から何処かしかの組織で諜報活動に従事していることが多い。

マキは手で触れた物を爆破させることができる。鼻を擦る仕草を起爆の合図とし、手形のような物が浮かび上がると対象が爆発炎上する。対価として能力使用後にホットミルクを飲まなければならない。

【ロール】
小学生。


【人物背景】
契約者の権利確立を掲げる集団「イブニング・プリムローズ(EPR)」に参加している少年。幼いながら感情の希薄化度合が大きく無愛想で寡黙。
リーダーである女性・アンバーに心酔しており、彼女が絡むと感情を露わにする。
彼女が恋い焦がれる男性・黒(ヘイ)に嫉妬している。

【聖杯にかける願い】
恋敵である黒の抹殺。ただし黒の顔は知りません。


433 : マキ&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 09:28:36 pUD3p9e.0
投下終了です。


434 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:32:55 pUD3p9e.0
投下します。


435 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:33:28 pUD3p9e.0


……暗い。


若い女性が薄暗い城の玉座に腰を掛けている。彼女は角の生えた老人と対面していた。

「…これもすべて世界の均衡のため……そして…父上のため…なのですか」

「その通り。ですな……」

老人が、見る者を不快にさせる皺だらけの笑みを浮かべる。
女にも思うところはあった。部下が具申せずとも老人が腹に一物抱えている事は理解できたが、他に取れる手段も思いつかなかった。
父が永い眠りについたことで崩れた聖と魔、光と闇のバランス…それを戻し、世界を正しい方向に導くために、女は老人の計画に己の身を捧げた。




「ついに…"狼"が誕生した」

女は幾度となく生みの苦しみを味わった後、一人の赤ん坊を出産する。
老人は歓喜を持ってその誕生を祝福したが、この赤ん坊に自由や未来が与えられることはない。
ただ圧倒的な闇の力を受け容れる「器」としての役割だけが求められていた。
いずれ、この世の理を破壊して魔の復権を成し遂げる生物兵器として。

「……どうか…どうか」

「ど…か…死なないで……」

女は涙ながらに嘆願する。
赤ん坊が健やかに育つことはない。赤ん坊に平穏な将来など有り得ない。
生まれながらに大きすぎる宿命を背負い、破滅の未来が約束されていたとしても。
腹を痛めた息子には、ただただ生きて欲しかった。




庭園の花々を陰鬱な表情で眺める女の側に奇妙な男がいた。

「御側役見習いとして本日より城内に。…セオスと申します」

「……」

「…何っ、そ…そんなに見つめられると、こ……困るわ」

「も…申し訳ございません、…お許しください。……つい、見惚れてしまいました」

「アスタルテ様……お噂通り…。…美しい」

これまで対面した男たちとは違った雰囲気の持ち主。
新しく使用人を雇う話など聞かされていなかった女は怪訝に思ったが、真っ直ぐに見つめてくる瞳を前にすると二の句を継げなかった。
瞬く間に仲を深めた二人だったが、セオスは女とは相容れない生まれの持ち主だった。
セオスは陰謀によって女に近づき、赤ん坊を天界へと連れ去った。



女は失敗の責任と老人の腹いせによって、地上に放逐された。
全ての記憶を奪われて、…童女の姿に変えられて。
悪徳を積み、狼を起動させる餌となる日まで彼女は死ぬことが出来ない。


…………


436 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:33:47 pUD3p9e.0

アイリスフィールは無言で目を覚ました。
ぼんやりとした視界が徐々に鮮明になり、周囲が明るい色に支配されているのが見て取れる。

あの冬の古城では有り得るはずもない――ここは?

一人掛けのソファから立ち上がろうとした彼女の前に見慣れない少女が小走りで駆けてきた。
察するに小中学生程度の小柄な体躯。愛らしい顔立ちをしているが、落ち窪んだ瞳の奥に暗黒を湛えている。
頭に被った赤い頭巾から腰まで届く三つ編みを垂らすその姿は、有名な童話の主人公に似ていた。

「あら、目が覚めましたのね」

「……アーチャー」

少女は頷き、開戦の時を告げる。彼女こそ、アイリスフィールに今回宛がわれたサーヴァントであった。
これはアインツベルンが関わっていない全く未知の聖杯戦争。
現状を理解したアイリスフィールが落ち着いて見てみると、この少女は夢の最後に出てきた少女だ。

「貴方は…」

「?」

「……何でもないわ」

言葉を呑み込んだアイリスフィールは、今後の動き方に思考を巡らせる。
現在、夫である衛宮切嗣から彼女は離されている。戦場に出るのは今回が初めてだが魔力は十分。
引き当てたアーチャーは猛将や豪傑ではなさそうだが、発する存在感は底が知れないほど大きい。
宝具の値にEXとある点から並の英霊ではないのだろう。

(ここで聖杯を手に入れれば、切嗣も、イリヤも……)

夫は冷酷非情な「魔術師殺し」に戻ることなく、イリヤスフィールも人として寿命を全うできるかもしれない。さらにアイリスフィール自身も…。
今回の聖杯戦争に勝利すれば、自分達家族が全員生存する道が開けるのだ。
アイリスフィールは最高の結末を夢想し、強い誘惑に駆られる。

その一方、戦いに臨む切嗣の元に一刻も早く帰還するべきでは、と内なる声が囁く。
だが聖杯戦争に挑む事には変わりが無く、また冬木の聖杯戦争では確実に失われるものがある。
ムーンセルの聖杯を手に入れて切嗣の願いを叶える。そしてアインツベルンに戻り、娘を救う。
覚悟を固めたアイリスフィールは、アーチャーに向き直った。

「アーチャー、あなたは……聖杯に何を願うの?…都合がよければ、聞かせてもらえないかしら?」

「聖杯に託す願いはないわ」

薄く笑うとアーチャーは生前の顛末をアイリスフィールに語り聞かせる。


437 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:34:06 pUD3p9e.0


―――「狼計画」

魔界と天界との均衡を元に戻すために魔界の公爵ダンタリアンが編み出した計画。
アーチャーの子宮で生み出された「器」に"悪しき魂"が注がれることで、闇の王に等しい力を持つ者が誕生する。
生まれた子供は魔界の勢力を大きく拡大させる筈だったが、アーチャーの裏切りによって、その子は神の側に渡ってしまった。

裏切りの代償によって記憶を奪われた状態で東京に追放されたアーチャーは人肉屋に籍を置き、犯罪と悪徳に身を染める日々を送る。
何度目かの死と復活を繰り返した後にアーチャーは全ての記憶を取り戻し、息子を拐かした天使に引導を渡した。
そして、再会した息子を己の生命と引き替えに禍々しい運命から救った。

そして今回、アーチャーは自分の宝具によって息子・ルーポもサーヴァントとして召喚されて、会場内のNPCに紛れている事を知った。
ルーポが狼として目覚める前に接触して座に送り還す。その時は自分も一緒に消えるので、そこだけ了承してほしい――と長い話を締め括った。
アーチャーの話を聞き終えたアイリスフィールの表情には沈痛の色が広がっている。


「ねぇ、アーチャー?…その、息子さんと一緒に暮らしたいとは、…思わないの?」

アイリスフィールの問いに、アーチャーは皮肉っぽく笑った。

「意地悪な事を言うのですね…。マスター?」

余計なことを聞いてしまった、とアイリスフィールは後悔する。
如何に通じるものがあろうと自分の家族には代えられないのだ。どんな願いがあったとしてもアーチャーに聖杯を渡すわけにはいかない。
結局は個人の優先順位の問題なのだが……自己嫌悪に浸るアイリスフィールにアーチャーは歩み寄り、手を差し出す。

「…そんな顔しないで。ルーポと再会するまでは、マスターをしっかりと御守り致しますわ」

その瞳に含むものは見受けられない。私がやらねばならぬのだ、と断固とした決意に満ちている。
知り合って間もないが、娘よりやや年上にしか見えない小さな少女がひどく頼もしかった。

「私はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。アイリで構わないから。 アーチャー、あなたの真名を聞いてもいいかしら?」

戦略もあったが、それ以上に自分の先を歩いたこの英霊には信頼と礼儀を以て接していたい。
アイリスフィールは口に出して真名を問う事で、それを示した。

「アスタルテ……この姿の時は、赤ずきんと呼んでくださいな」

アイリスフィールは赤ずきんと握手を交わす。そしてソファから立ち上がると、迷いのない足取りでフロントに移動した。


438 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:35:37 pUD3p9e.0


【クラス】アーチャー

【真名】赤ずきん(アスタルテ)

【出典作品】東京赤ずきん

【性別】女

【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷B 魔力B  幸運D 宝具EX

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師ではアーチャーに傷をつけられない。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
魔性:A+
 魔界の住人であること。高いほど悪魔としての位が高い。アーチャーは魔界の王族である。

戦闘続行:A++
 悪魔としての継戦能力。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、霊核が完全消滅させられない限りは生き延びる。

変化:A
 影や毛髪、液体など不定形に変形することができる。また身体の一部から武器を作り出す事が出来る。



【宝具】
『あるところに、とても可愛らしい女の子がいました(東京赤ずきん)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 アーチャーに掛けられた、狼の餌になるまでは死ねないという呪い。
 記憶を取り戻している為に効果の殆どが失われている。彼女はこの宝具により、童女の姿をとっている。


『腹を痛めた我が愛し子(ルーポ)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:会場全域 最大捕捉:1人
 アーチャーが召喚された時点で息子・ルーポが会場内のNPCに紛れ込む。通常は少年の姿をとっているが、悪性を注がれる度に身体が獣に変わっていく。
 完全に姿が変わった時点でステータスとスキルを魔獣態のものに修正。無差別に破壊活動を繰り返すようになる。
 生前の逸話によってルーポはアーチャーを見つけると最優先で突撃、捕食に掛かる。アーチャーを取り込んでほどなくすると、ルーポは消滅。同時にアーチャーも聖杯戦争から退場する。

 アーチャーの胎内で生み育てた、光と闇の均衡を取り戻す魔獣「狼」。
 狼計画の要である闇の力の器にして、魔の雛形である少年。悪性の魂で満たされることで完成し、この世の理を乱す決戦兵器。

ステータスは以下の通り。

【人間態:筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力A  幸運E スキル:怯懦:C 正体秘匿:B 単独行動:A+】

【魔獣態:筋力A+ 耐久A+ 敏捷C  魔力A++  幸運E スキル:怯懦:E 精神汚染:C 怪力:A 自己改造:A 単独行動:A+】

【weapon】
無銘:ハンドガン

無銘:ショットガン

無銘:グルカナイフ

髪の毛から生み出す黒剣

【人物背景】
近未来の東京・蒲田に出没していた不死身の連続殺人鬼。
その正体は魔界の王族の女性。魔界と天界との力の均衡を元に戻す「狼計画」に必要な魔物の「器」を生む母胎に選ばれたが、好意を抱いた天使・セオスによって出産した赤ん坊を奪われる。
失敗の代償によって童女の姿にされ、記憶喪失の状態で地上に放逐された。

加えて殺人や姦淫などの罪を重ねて魂を汚したうえで狼の餌になるまで死ねないという定めを背負っていたが、幾度目かの戦いの後に記憶を取り戻す。
記憶を取り戻した赤ずきんはセオスを抹殺し、器である息子・ルーポと心中することによって母子を苛む因果を清算した。

【備考】
ルーポがNPCの中に紛れ込んでいます。生前の記憶はありません。

【聖杯にかける願い】
なし。自身の宝具によって召喚された息子を連れて英霊の座に帰還する。


439 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:35:57 pUD3p9e.0

【マスター名】アイリスフィール・フォン・アインツベルン

【出典】Fate/Zero

【性別】女

【Weapon】
「針金」
魔力を通すことで即席の使い魔として行使できる。

【能力・技能】
「魔術」
錬金術を修めているほか、錬金術を応用した治癒魔術も使える。

【ロール】
来日中の旅行者。

【人物背景】
アインツベルン家によって第四次聖杯降臨儀式における聖杯の「器」として練成されたホムンクルス。
当初は人形のように無機質だったが、衛宮切嗣を夫として迎えてから徐々に人間性を獲得していった。
後に娘のイリヤスフィールを授かるが、自身と同じ定めを負うであろう我が子の身を案じている。
セイバー召喚前から参戦。

【聖杯にかける願い】
聖杯の奪取。掛ける願いはなく「聖杯の器」としての宿命を自分の代で終わらせるのが望み。


440 : アイリスフィール&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/06/01(水) 20:36:24 pUD3p9e.0
投下終了です。


441 : ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:15:02 i1jOVv020
投下します。


442 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:15:29 i1jOVv020





 青年――刹那・F・セイエイは、幾何学模様が空で蠢いているアンバランスな空間の中にいた。
 どうして彼はこんな奇妙な所で寝そべっているのか――。
 彼は、これより以前の事を、手繰り寄せるように思い返す。


(――俺は)


 そう。
 ある時、ある戦争の現場から――刹那は、唐突に、≪別の場所≫に呼ばれたのだった。
 そして、そこで行われていたのも、また戦争であるらしかった。しかし、それ以上の事実は今考えてもまるでわからない。

 表向きにはごく普通の街を装っているが、それは刹那がこれまで過ごしていた街とは明らかに別物だった。
 まず、刹那は警戒心を抱きながら街を探検した。ここがどこなのか、何故こんな所に来てしまったのかはわからなかった。
 やがて、遂に街角で事情を知る者と出くわした。

 それが――敵兵であった。

 敵兵は、長い槍をどこからか取り出し、自在に操りながら刹那の命を狙った。
 必死に応戦したものの、その敵対者は人外的な戦闘能力を有していた。
 不覚を取った瞬間、腹を一撃貫かれてしまった。
 倒れ伏し、刹那は余裕を保ちながら歩み去っていく槍兵の背中を見て――刹那はそのまま、意識を失った。

 まさしく、あれは怪物的な戦闘能力である。
 その怪物との戦い、までは――覚えている。

 問題は、それからである。
 それから先の記憶が――この幾何学模様の空間に呑まれていた。


(俺は、死んだのか……? クッ……こんなにも、唐突に……)


 明らかにここは、普通の人間がいるべき場所ではない。
 天国か、地獄か、あるいは宇宙の果てか、何かもわからない――無限の奥行がある奇妙な世界。
 そこで刹那は、寝そべりながら、「上」らしき場所を見上げている。

 奇妙ではあったが、この少し前まで自分が渦中にあった闘争と比べると、命の獲り合いとは大きく形の異なる安堵感がそこにはあった。
 さながら、母の胎内にいた時を思い返すような感覚である。
 そして、このままどこかへ……深い眠りに落ちていくのだろうかと思っていた、その時である。










『――――よう、お前が俺のマスターだな』










 気づけば、そこには自分を見下ろす銀色の巨人の顔があった。
 その大きさは、顔一つとっても明らかに刹那の身長の倍はある――そして、それは、人の形をとっていたが、あきらかに人間ではなかった。
 肌の色、それそのものが最初から青や銀を塗りこめられていて、頭の形などは妙に立体的に浮かび上がって遠くへ反り返している。
 感情を取り除いたような顔だちは、喩えるならば菩薩像のようだった。
 俯瞰で人間世界を見つめている神であっても、何らおかしくないような何かである。
 刹那は、臆する事なく、それが一体何なのかを考えた。


443 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:16:00 i1jOVv020


(ガンダム……? いや――)


 かつて、刹那の前には、『ガンダム』という救いの神が舞い降りた事もあったが、それとはまた異なっている。
 確かに人の顔に似せながらも表情のないその顔の堀はある種、ガンダムの横顔にもよく似ているかもしれない。
 しかし、それはガンダムと呼ぶにはあまりにも生物的で、ある意味でグロテスクでもあった。
 人型兵器のそれではない。

 そして、何より刹那にとってガンダムとは、戦争から遠い世界へ導く一つの偶像の意味も併せ持っている。
 戦争根絶の象徴としてのガンダム、救世主としてのガンダムなのだろうか。
 だが、果たして彼がガンダムであるのかは、今この時にはわからなかった。

 つまり、彼は人型兵器としてのガンダムでも、救世主としてのガンダムでもなさそうだと結論づけたのだった。
 ……では、そこにいるのは、何なのか。


(誰なんだ? ……お前は?)


 刹那は、心で問いかけた。
 心で問いかければ、彼が答えを返してくれるのがわかっているようで、それはまた妙な直感だった。
 覚醒しつつあった刹那の『イノベイター』としての資質が、これを可能としたのかもしれない。


『――へっ』


 会話を求めると、相手は不意に少しだけ人間らしい仕草を見せた。
 鼻の下を親指で弾いて拭うようなポーズで、顔を逸らすように横を向き、それからもう一度刹那の方を見やる。
 彼は、刹那よりも抑揚があり、人間めいた喋り方で言った。


『俺は、ゼロ……ウルトラマンゼロだ。
 ――いや、この聖杯戦争では、アーチャー……だったかな。そいつが、俺の名前だ!』


 大袈裟なように、カラテの型のようなポーズをとりながら彼は云った。
 しかし、刹那はそれを見て呆気に取られていた。


(ウルトラマン……ゼロ……)


 ウルトラマン、ゼロ。
 彼はそう名乗った。『O』を超越するもの――という意味だろうか?
 何故だか奇妙な因縁を感じずにはいられない。どことなく、自分を映し合わせたような声も気になった。
 あるいは、このゼロという男は、本来あるべきだった自分の光の姿だったのではないかという気さえした。

 そして、ゼロは、もう一つの名として、『アーチャー』とも名乗っている。
 これは弓使いを意味すると考えて良いだろう。
 彼が何を射込めるのかは知らないが、深い意味があるのか気がかりになった。
 アーチャーは、ゆっくりとポーズを崩した。


『……しかし、危なかったな、マスター。サーヴァントが俺じゃなけりゃ、死んでたかもしれないぜ』

(ゼロ……お前は、俺が今、どうなっているのか知っているのか……?)

『……そうだな。折角だから、今置かれている状況に手身近に説明しておくぜ。
 あんたは、聖杯戦争のマスターに選ばれちまったんだ』

(聖杯戦争……?)


 聖杯という言葉は、なんとなく聞き覚えがあった。神話上で登場する言葉としてだ。
 だが、その後に「戦争」という単語をくっ付けて見ると、それは途端に刹那の記憶を刺激し始めるのだった。


444 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:16:26 i1jOVv020

 そう――聖杯という宗教の産物に、戦争という言葉を繋げた瞬間、刹那が体感してきた宗教戦争の記憶が呼び戻されていく。
 あの貧しい国で、少年だった刹那が思想を植え付けられ、その為に人々を――両親さえもを殺してきた記憶を。
 それ故に、聖杯戦争という言葉を聞いた時、刹那にあったのは率直な不快感であった。
 聖杯戦争とは何か……考えるほどに嫌な予感がした。
 アーチャーは続けた。


『――ああ、この地球で、ある魔術師たちが作り出した「なんでも願いを叶えてくれる器」ってやつさ。
 セイバー、アーチャー、ランサー、キャスター、バーサーカー、アサシン、ライダー……あらゆる宇宙に存在した英霊を、アンタみたいなマスターが呼び出して、その聖杯の為に戦わせる。
 そう、さっきマスターを襲ったのは、槍兵のランサーだな。
 バトルステージは電脳空間……他の人間も本物の人間じゃないらしいが、マスターたちは全部人間だ。
 ここで消滅しちまったら、もう戻らない。つまり――死んじまう。
 ……それが一応、この聖杯戦争のルールになってるって感じだな』

(――俺とお前は、その為の兵士なのか? 俺は、その為に奴に殺されかけたのか……?)

『……まあな。だが、俺を呼べたっていうのは、不幸中の幸いだぜ。
 戦争ってのは、俺にとっても不本意なんだが、まっ、呼ばれちまったモンは仕方ねえ。
 マスターを活かす為にここにやって来たって事かもな。だから、俺はお前を守るつもりだぜッ!』


 アーチャーは後ろ髪(尤もそんな物はないのだが)を掻くような仕草を取った。
 睨むようにして刹那はアーチャーを観察した。
 少し調子を変えて、アーチャーは言う。


『あ、そうだ。ただし、一応、アンタにも一つだけ忠告しとくぜ。
 俺は、自分を兵士だなんて思ってない。強い奴と戦いたいって思いは、ワリとあるけどな。
 それでも、弱い奴や、何の罪もない奴を傷つけるっていうのは、俺も絶対に許さねえぜッ!』


 刹那は、再び、ぐっと顔を顰めた。
 アーチャーの云う事に、共感に近い感情が過ったのである。

 アーチャー――怪しいが、どうやら悪い奴では、ないらしい。
 いや……むしろ、良い奴ではないか?

 弱者を蹂躙する事は、刹那自身も戦争を通して解した最たる不快であった。
 弱く未成熟な人間が利用され、戦争の道具として扱われ続けたあの遠い砂漠。
 刹那自身も、かつては利用された一人であった。


(――)


 刹那が聖杯に願うとすれば――それは、そんな悲劇の繰り返される『戦争』の根絶なのだが、こんな忠告を受けるという事は、聖杯戦争もまた同等の性質を持っている筈だ。
 刹那の望む戦争の根絶も、やり方を一歩間違えれば、当然ながらただのテロリズムに変わる。
 ソレスタルビーイングとして、それと紙一重の事を繰り返した刹那は、この聖杯戦争という在り方にもまた疑問を呈した。

 そして、すぐに現れた結論は、この戦争は――ガンダムではないという事であった。
 目指すところは、戦争の終結であって、戦争の参加ではない。


(――そうか。ウルトラマンゼロ、こいつも……ガンダム!)


 戦争を根絶する為に聖杯を獲る、その為に戦争をする……というような矛盾を来すつもりは、刹那にはなかった。
 本当に弱者や無辜の人間が狙われるリスクがあるのなら、この聖杯戦争もまた、根絶すべき戦争の一つなのだ。

 それが、刹那にとってのガンダムである。
 刹那は、アーチャーに、毅然とした面持ちで答えた。


(ゼロ、いや、アーチャー。聞いてくれ……俺の名は、刹那・F・セイエイだ。
 ……俺はお前の云う事を、ひとまず信頼する)

『おっ、どうやら、俺の条件を飲んでくれるらしいな』

(ああ。だが、どうすれば、俺たちはこの聖杯戦争を終えられるのか……それはまだわからない。
 全部、お前が助言をくれ)

『うっしゃあ! それじゃあ、一緒に……………………って、あっ!!
 すっかり忘れてたけど、ただ、一つだけ問題があるんだよな……どうしようかな……』


 今更ながら、アーチャーはバツが悪そうに小声になった。
 髪を掻き上げるように頭を触るアーチャー。


445 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:17:04 i1jOVv020


(どうした、アーチャー)

『ん? いや、他のマスターは、普通にサーヴァントを呼び出して戦わせるんだが……。
 俺はどうやら、人間と同化して戦った伝説のせいで、お前の体を使わないと戦えないらしいんだ』

(どういう事だ?)

『だから、普段はお前と同化して、意識を同居させる。普段はブレスレットの中にいる事になっちまうな。
 いざって時には、アンタの意思で変身して貰わないと、俺は戦えないんだ』


 つまり――どうやら、身を護る為にも刹那自身がある程度、戦闘意思を持つ必要があるという事らしい。
 参加者としては、二人で戦闘を展開できる他の組と違い、刹那とアーチャーは「二人の意識」を刹那の体の中で同居させなければならないのだ。
 そして、いざという、時は刹那自身が戦わなければならない。
 刹那はそれを受けて答えた。


(……そんな事か。普段の生活くらいは何とかなる。心配はいらない。
 今のように状況がわかれば、あんな不覚は取らない筈だ)

『おっ、結構自信があるみたいじゃねえか。……じゃあ、言う通り、余計な心配はしない事にするぜ。
 普段から俺とは会話が出来るから、何か聞きたい事があったら、全部聞いてくれよ』

(ああ)

『――っと、まあ、そういうワケだから、続きは現実に戻ってからにするぜ』


 アーチャーの一言とともに、刹那は目を覚ました。
 その後で、起き上がった刹那の体には傷はすっかり消えていた。
 濁流のようになっていたはずの血だまりも全て元通りだ。


 唯一、新しく表れたものと言えば――それは、左腕に現れた奇妙なブレスレットだけである。











 夕方ごろ。
 刹那は、丘の上から街を見下ろしていた。

 既にアーチャー――ウルトラマンゼロからある程度の情報を受けた刹那は、この街の中で特に見晴らしのよさそうな場所を探していた。
 それは、実際に戦争を経験した人間の一人としての行動であった。
 確実に身を守れる戦闘区域を探し、乱戦時に誘い込むなど、地の利を取っておけば可能性は広がる。
 たとえ、聖杯を得る為に殺し合うつもりがないとしても。

 この場所に来ると、ビルが林立する、町並みは、一日の終わりを告げるようにどこか切なくオレンジ色に光っていた――。
 この目に移っている市街が、今回の戦場なのだ。

 聖杯戦争を行う本来の時間は――夜は、どうやら、これから始まるらしい。


「……」


 刹那・F・セイエイは、左腕のブレスレット――ウルティメイトブレスレットを見た。
 アーチャーの意思は、どうやらそこに込められているらしい。
 刹那のパートナーたる戦士は、本当に刹那と意識を同居しているらしく、姿を現さず、刹那にしか聞こえない声で言う。


『マスター……どうやら、近くに別のサーヴァントがいるらしいぜ。
 それも――』


 そう落ち着いた声で言いかけたアーチャーの言葉が全て終わる前に、刹那は警戒態勢を示した。
 銃でも持っていればまた別だが、今のところそうした装備を調達できていない為、丸腰である。

 それでも、今度は、先ほどのように容易く致命傷を受けるつもりはない。
 第一、次に死んだとすれば――その時は、ただ脱落を果たすのみである。
 刹那は、平面的に周囲を眺めた。
 どこから来るのか探り出そうとしたが――敵は、思ったよりも堂々と現れた。


446 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:17:48 i1jOVv020


「ほう、こいつは驚いた。どうやら死に損なっていたらしいな……」


 長い槍を肩に乗せながら、向かってくる男が一人いた。
 昼間、刹那の腹を貫き殺した槍兵――それは、ランサーである。

 どうやら、彼もまた、見晴らしの良い場所を探り出したらしい。
 猥雑な笑みを含みながら、彼はそっと近づいてきた。
 刹那は、昼間の恨みもあって、その男を睨みつけた。


「昼間のお前かッ……。
 何故だ……お前は、そんなにまでして、聖杯が欲しいのか――」

「ん? まあな。
 尤も、俺の願いはまだ決まっちゃいないが、これもすべてマスターの命令ってやつなんでね。
 気の毒だが、敵は殺し尽くして勝ち残らなきゃならないワケさ。次はもっと念入りに殺さなきゃならねえがな」

「なるほど……そうして、お前は何人殺してきた?」


 問われて、飄々とした風に、ランサーは指先で数え始めた。
 しかし、数えきる事が出来ず、諦めて――下ひた笑いを見せた。
 それは、ただの挑発の為のポーズだったらしい。
 願いはないが――殺戮の方は、楽しいという事だと思えた。


「……ッ!」

『サイテーの野郎だぜッ!』


 彼にとって、殺人とはその程度の事なのだ。
 それは、ひどく戦場的な価値観でもあり、決してそのままであってはならない在り方だった。

 アリー・アル・サーシェスという男の姿が、ふと刹那の中で思い出された。
 このランサーは、あの男によく似ていた。


「……行くぞ、アーチャー。目標を駆逐する」

『ああッ!』


 その不愉快な気持ちを発条にして飛び上がるように、刹那は左腕のブレスレットを構えた。
 そこから、派手なメガネ――ウルトラゼロアイが取り出される。
 彼は、ウルトラゼロアイを空中で掴みあげると、そのままそれを目元に装着した。





「――――――俺たちが…………ガンダムだッ!!!! ウルトラマンッ!!!!」





 次の瞬間、刹那の姿はウルトラマンゼロへと変身していた。
 これが、刹那とアーチャーとの最初の戦闘であり――彼らの『ガンダム』の始まりであった。





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447 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:18:12 i1jOVv020


【CLASS】

アーチャー

【真名】

ウルトラマンゼロ@ウルトラシリーズ

【属性】

中立・善

【ステータス】

筋力A 耐久B+ 敏捷A+ 魔力C 幸運B 宝具A+

【クラス別スキル】

対魔力:B
 光の力により邪悪な力から守られている。

単独行動:-
 アーチャーが現界に際して、マスターの肉体を借りる必要がある。
 その為、現在はマスターと一体となっており、ゼロは意識のみを「ウルトラゼロアイ」に封じられる。
 これはマスターの肉体や意識を上書きする行為ではなく、マスターを宿主とした両者の同居である。

【固有スキル】

勇猛:A
 強力な闘志により精神攻撃への耐性を高め、格闘攻撃力を向上させる。

光の力:A
 プラズマスパークと呼ばれる強大なエネルギーを体内に蓄え、強力な超能力を発揮できる。
 念動能力、加速能力、破壊光線、テレパシー、生命体の浄化、回復、バリアなどの超能力を使用可能。

カラータイマー:B
 魔力残量減少の危険を教えてくれる胸部のタイマー。
 アーチャーがマスターと融合している間は活動時間制限はないが、ウルトラマンとして現界すると魔力消費があまりに大きく、活動に支障が出てしまう。
 その為、彼が戦闘できるのは三分程度が限界である。
 ただし、外部から魔力供給を受けるか、光のエネルギーをカラータイマーに授かれば戦闘を続行する事も出来なくはない。

対怪獣:B
 相手のスケールに合わせて自身の身体を巨大化、あるいは縮小化するスキル。
 あくまで相手のスケールを基準とする為、このスキルは英霊としての現界時は同スケールの相手と対峙した場合にしか発動できない(そして、英霊としての現界時、少なくともその相手は同じ英霊である必要がある)。
 また、アーチャーの巨大化しうる限界のスケールは49メートルであり、それ以上の相手と戦う場合も49メートルまでしか巨大化できない。
 逆に縮小化の場合はミクロサイズまで自らの肉体を縮小できる。

同化:A
 マスターの肉体に意識を同化させる事により、魔力消費を抑え、サーヴァントとしての気配も軽減するスキル。
 彼もまたウルトラマンとして地球人と同化して戦った逸話を持つ為、このスキルを常時発動する事を条件に英霊として顕現している。
 同化時の彼は、ウルトラゼロアイを介してマスターと会話する事が可能となっている。
 一応、マスターの体力・魔力の微増という恩恵もあり、魔力供給もスムーズに行われるようになる。


448 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:18:30 i1jOVv020

【宝具】

『神を守りしバラージの盾(ウルティメイトイージス)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜? 最大捕捉:1〜?

 神とも言われる伝説の戦士・ウルトラマンノアより授かった白銀の盾。
 盾であると同時に、鎧(ウルティメイトゼロモード)にもなり、また剣(ウルティメイトゼロソード)や弓(ファイナルウルティメイトゼロモード)にも形状を変える。
 このように、かなり万能で多機能な使用方法を持っており、ゼロはこれによってセイバーとアーチャーの二つのクラス資格を有している。
 普段はゼロの左腕のウルティメイトブレスレットに格納されており、必要時に顕現させる事が出来るが、この宝具は魔力消費が大きい為、長時間発動する事は不可能であり、いきなり出現させるのは極力避けた方が無難。
 この宝具を用いた必殺技として、『ソードレイ・ウルティメイトゼロ』や『ファイナルウルティメイトゼロ 』などが存在する。
 これを使用する際には、ウルトラマンゼロとして顕現して戦う為の残存魔力をゼロにする必要があり、正真正銘、最後の場面でしか使用が出来なくなっているという弱点がある。
 特に、弓としての特性を活かしたファイナルウルティメイトゼロを使用する場合は、その照準を合わせるのに時間がかかる為、タイミングを見極めなければ使用は難しい。
 その代わり、それぞれの必殺技は大抵のサーヴァントを撃破できるほどの威力がある為、いくつもの条件をクリアできればかなり有効な宝具である。

【weapon】

『ゼロスラッガー』
 頭に載ってる二つのブーメラン。
 要するにウルトラセブンのアイスラッガーみたいなものだが、ゼロの場合二つあり、技も色々と多い。

『ウルティメイトブレスレット』
 左腕に装着されているブレスレット。 
 ここに『神を守りしバラージの盾(ウルティメイトイージス)』が装着されている。

【人物背景】

 M78星雲光の国の戦士であり、かつて地球を守ったウルトラセブンの息子。
 全盛期の姿として、5900歳当時のウルトラマンとしては若い姿で英霊化しており、精神もまた当時とほぼ同じ状態である。
 ウルトラ戦士としては不良っ気のある性格で、非常に饒舌であるが、反面で当初は力に対する強い欲求を持っており、光の国の禁忌に触れかけた事もある異端的な戦士である。
 とはいえ、性格的には非常に心優しく、弱者を放っておけない一面も持ち合わせており、若さと正義感を武器にした少年戦士でもある。
 めっちゃ強くなっていって、「こいつウルトラ戦士最強じゃね?」ってレベルにまでインフレしたが、この聖杯戦争ではアーチャーとして現界した為、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』当時くらいの強さである。
 そのため、ウルトラマンゼロ→ウルティメイトゼロくらいの変身しかできない。そもそも、それより強ければどんなに魔力が強いマスターでも即死しかねないのでヤバい。
 ちなみに、5900歳というのはだいたい地球人換算だと高校一年生くらい。

【サーヴァントとしての願い】

 地球の平和を守る、というのが基本方針。

【基本戦術、方針、運用法】

 サーヴァント自体がマスターに同化しなければならない特殊なサーヴァント。
 しかも、呼び出す(変身する)際にマスターの同意が必要となる為、マスターの気絶などの事態が発生しても「マスターの護衛」を行えないのがネックである。
 つまり、基本的にサーヴァントが能動的に戦闘を行う事が一切不可能であり、マスター自身が上手にピンチを切り抜けるしかないのである。
 更には、顕現時も戦闘は原則として三分程度しか行えないという問題があり、呼び出した際は短期決戦が重要。
 そんな諸々の問題点は、全てその高いパラメータから発揮できる戦闘能力と、マスターである刹那・F・セイエイ自身の素養にかかっている。


449 : 刹那・F・セイエイ&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:19:22 i1jOVv020





【マスター】

刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダムOO

【マスターとしての願い】

 聖杯の破壊。

【weapon】

『ウルティメイトブレスレット』
 アーチャーとの同化時に刹那の左腕に装着されたブレスレット。
 ウルトラゼロアイが収納されており、これを目に装着すると刹那はウルトラマンゼロに変身できる。

【能力・技能】

『戦闘能力』
 元々兵士であった事もあり、生身でも十二分に高い格闘能力を持つ。
 武器の扱いにも長け、本来的な「戦争」の現場でも戦いをこなした経験がある。

『操縦能力』
 ガンダムを操縦する操縦能力。
 他にもバイクみたいなやつを操縦している描写があったので、車やバイクくらいなら何とかなるだろう。

『イノベイター』
 高純度のGN粒子を浴び続けた刹那の固有能力。
 精神感応・戦闘能力向上などの効果があり、これにより老化のスピードが半減する。
 一応、魔術の類ではないが、スキルとして魔力回路の代替にはなる……はずだと思う。

【人物背景】

 戦争根絶を目的とする団体・ソレスタルビーイングに所属するガンダムマイスター。
 中東の国家・クルジス共和国の出身で、反政府ゲリラ組織「KPSA」の少年兵として洗脳され、「聖戦」に参加していた。
 その際に両親を殺害した事は彼のトラウマと化している。
 戦闘中、死に際に0ガンダムの武力介入によって偶然救われ、ガンダムマイスターとしてスカウトされた事から、『戦争を根絶する物』としてモビルスーツ・ガンダムを神聖視するようになる。
 それ以後、自らがガンダムとなる事を一つの目的としている。
 無口で不愛想に見えるが、本来は優しい性格で、それなりに人当たりの良い場面もたまに見せる。
 参戦時期は、少なくとも青年期である2ndシーズン以降。その為、イノベイターとしての素養があり、魔力が皆無というわけではない。

【方針】

 ガンダムとして、聖杯を破壊し、この戦争を根絶する。
 無論、戦争そのものを根絶する為に他のマスターを犠牲にするつもりはないが、敵対する可能性が高い相手は駆逐する。


450 : ◆CKro7V0jEc :2016/06/02(木) 00:19:56 i1jOVv020
以上で投下終了です。


451 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/02(木) 22:37:44 XOcnh4W60
投下します


452 : 笛口雛実&サーヴァント ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/02(木) 22:39:04 XOcnh4W60


「ばいばーい」「また明日ね!ヒナミちゃん」

「うん!バイバーイ!!」

微笑みを浮かべて手をふる
元気に去っていく級友たちの背後を見届ける笛口雛実の表情に、一瞬だけ影が射した。
しかしすぐさまそれは消え、そくさくと帰路へとつく。

笛口雛実が記憶を取り戻し、マスターとしての己を自覚してもう一週間たっていた。


「ただいまー」

玄関を開けた途端、人よりも敏感な雛実の嗅覚が、香ばしい香りを捉えた。ぐぅ、と胃袋が空腹を訴えた。

「あっ、お帰りなさいっ」

どたばたと台所から駆け寄ってくるのは、エプロンをつけた女性だった。
ピンクの頭髪といった目立つ特徴に加えて、その整った顔立ちとプロポーションから、異性はもちろん同性である雛実からしても好ましい容姿の女性であった。

「うんっ、ただいま! 高木さん」

高木さんと呼ばれた女性は、元気な返事に笑顔で返した。しかしぷりぷりと頬を膨らませてこう訂正した。

「もうっ、駄目じゃないですかマスター! 私の事は"サーヴァント"って呼んでください」

サーヴァント、通常は聖杯戦争において召喚された英霊たちの呼称なのだが、このふたりにとっては多少意味合いが異なっていた。

「えー……でも、高木さんのクラスって紛らわしいんだもん」

「それは……そうですけどぉ」

雛実のサーヴァント、高木さんのクラスは通常の七騎にはない『サーヴァント』。俗にいうエキストラクラスである。
聖杯戦争の基本的な知識を得たため、彼女が正規のクラスではないことを雛実も把握していた。必然的に、『サーヴァント』というクラス名で呼ぶと少々ややこしい。
なので、真名で呼ぶことを避けたがる高木さんの意見も正しいが、雛実の言葉にも一理あった。


「それより、お弁当、美味しかったよ」

雛実はにこやかに、空のお弁当箱をランドセルから取りだし、高木さんに渡した。

「ありがとうございます。早起きして作ったかいがありました!」

彼女は、マスターが小学生のロールを与えられる事、そしてとある理由で給食が非常に芳しくないことを知ると、自主的に弁当を持たせていた。
もっとも、軽く火を通した肉を弁当箱に敷き詰めただけのシンプルな食事を、果たしてお弁当と言えるのかどうかは個人の判断に委ねられるだろうが。

「うん。本当に美味しかったから、また食べたい!」

雛実にとって、あのシンプルなお弁当はかなりお気に召したようだった。

「任せてください!!何回でもお弁当、つくってあげますね!!」

とても嬉しそうに胸を張る高木さん。
些細なことだが、こうして誰かの役に立てることが嬉しかった。



「ねぇ、高木さんお腹すいた」

「あっ、はい。もうご飯はできてますよ〜っ、今夜はステーキですっ」

どうやら香ばしさの正体はそれらしい。大方、雛実の帰宅時間を見計らって用意していたのだろう。

「今すぐ用意しますからねー」

そう言って台所へ取りに行こうとしたが、雛実は腕を掴んでそれを引き留めた。
やや怪訝そうな高木さんに、雛実は首を横に振った。

「ううん、私、『生』で食べたい」

もじもじと恥ずかしそうに発せられたリクエストから、サーヴァントは耐えがたいほどの餓えを感じた。

「……わかりました」

しょうがないなぁ〜、といった表情を浮かべつつも、高木さんは馴れた手つきで、上着を下着ごと一気に脱いだ。

ぷるんっ、と露になる、整った形をした豊満な乳房。
若く張りのあるたわわに実った果実は、異性からして思わずむしゃぶりつきたくなるような色気を放っていた。

「どうぞー♪」

その果実を、雛実へとつきだす。
どっと、雛実は谷間に顔を埋めた。
しっとりとした肌に舌を這わせ、存分に柔らかさを堪能する。サーヴァントは敏感な部位を味見され「あん」と官能的な喘ぎ声をあげた。


そして、おもいっきり乳房を喰いちぎった。

「ひゃん」と高木さんが呻いた。
どっと血が吹き出る。雛実の口に収まりきらなかった皮下脂肪がでろりと溢れる。それもすぐに食べられた。

ーーー美味しい

返り血でべっとりと濡れた雛実の目は、赤く染まっていた。


453 : 笛口雛実&サーヴァント ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/02(木) 22:40:49 XOcnh4W60





美味しい。
お肉が。
美味しい。
食べたい。
もっと食べたいな。
お肉が。
お肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉がお肉が
お肉がお肉がお肉お肉お肉お肉お肉お肉
肉肉肉肉肉肉■■肉お肉■■肉お肉肉肉肉■■
■■に■■■■く■■たべ■■
■■■■■■お肉■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■に■く■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■たべ■る■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーー




記憶を失っていた間、彼女は何ら普通の子供として日常を過ごしていた。
だが、何かがおかしい。そんな違和感が拭えなかった。
何よりも普通の食事を食べることへの奇妙な抵抗感が日に日に増えていく。
そして、唐突に雛実は思い出した。
大好きだった両親は鳩に殺され、『彼』はあんていくを去っていったことを。 
そして、自分が人間ではないことを。

溢れだした食欲に苦しむ雛実に、そうして召喚されたサーヴァントは手を差し伸べた。
人の肉しか食べられないという少女に、文字通り血肉を削り、食べさせる。
サーヴァントにとってそれだけしか、この孤独な少女にしてやれることが思い付かなかった。

「もぅ、がっついちゃって……」

そう苦笑し、赤子のように一心不乱に己を食い散らかす雛実を、サーヴァントはそっと抱き締める。

ーー私は、マスターの味方ですっ

その姿からは、さながら聖母のごとき慈愛と、深い母性を感じさせた。


454 : 笛口雛実&サーヴァント ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/02(木) 22:41:51 XOcnh4W60

【クラス】
サーヴァント
【真名】
高木命@某猟奇掲示板

【パラメーター】
筋力E- 耐久EX 敏捷D 魔力C 幸運E- 宝具EX

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
奴隷体質:A
他者に従う性質
自身の苦痛を一切度外視して、快楽・道楽のために酷使されることを望む
Aランクとなると、ちょっとした「お願い」程度で手足を差し出しかねないレベル

【保有スキル】
高速再生:A(EX)
マスターからの魔力供給が尽きない限り、本来致命傷となる筈の傷も瞬時に再生可能
後述の宝具が発動した場合、括弧内のランクまで上昇する
再生にはマスターの魔力を要するが、宝具が発動した場合はその限りではない

被虐体質:A+++
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
Aランクともなると特殊効果がつき、彼女と接触した者はEランク相当の加虐体質&精神汚染スキルが付加され、
戦闘においては相手の宝具ランクを除く全パラメーターがワンランクアップする。

調理:C++
レストランを経営しているだけあって、料理が得意。
ある食材を調理する時は++補修がかかる。

【宝具】
『私は皆の家畜ですっ!(高木さん)』
ランク:EX 種別:対虐宝具 レンジ- 最大補足:1
  
 ーー何してもいいのよ

 彼女を生み出した絵師のその一言により、古今東西、ありとあらゆるリョナ好きな絵師の欲望を表現するために、
 または猟奇的な性癖を持つお兄さんたちの欲望を発散させるための媒体として使用されたというエピソードと、それにともない付加されていったキャラクター性そのものが宝具となったもの。
スキル『被虐体質』『高速再生』、及び彼女が『サーヴァント(奴隷)』のクラスに割り当てられた原因ともなっている宝具。

 彼女に対して『彼女への加虐に優越感、又は性的な事を含めたプラスの感情』を抱いた人物が攻撃した場合、その攻撃によって彼女を殺しきることはできない。
 よしんば消滅させたとしても、彼女に対して上記のような感情を抱いて倒した・消滅させた際には、その場で蘇生(レイズ)する。
 この際にマスターにかかる魔力負担は一切ない。

あるときは食肉として、あるときは性欲を満たすための肉便器として、あるときはひたすらなぶられるだけの肉として
「家畜」としてどれだけ酷使しても使い潰されないキャラクターとして、彼女は生まれた

『高木さんのお肉』
ランク:C++ 種別:対食宝具 レンジ:無限 最大補足:食べたもの全員
 サーヴァントは自身の肉体を食肉として調理することができる。
 食材として切り離されたサーヴァントの肉片はそのまま固定され消滅することはない
 その肉を使用した料理を食べたものは『被虐体質』によって付加された加虐体質&精神汚染スキルのランクが加速度的に上昇する
 そうなると自然に上記の宝具の発動条件をクリアするため、食した人物がサーヴァントを殺すことは不可能に近い。
 しかし『被虐体質』の効果を受けていない人物が食した場合はただの美味しい肉料理である
味は豚に似ているらしい 

 因みに、必ずしも調理する必要はなく、生でも問題はない。

【weapon】
無銘・包丁
もっぱら自分の肉を削ぎ落とすために使用する

【人物背景】
高木さんというのはね、桃色の髪をしたお姉さんのことだよ。
某鬼畜や猟奇なお兄さんが集う掲示板で生まれた不老不死の体を持ってる変な人なんだ。
普段は特殊なレストランで自分のお肉を売るバイトをしているんだよ。
乳肉を焼肉の油に使われたり、エッチな事をされちゃったり、フルボッコにされたりと大変な毎日を送っているんだ。

でも笑顔は絶やさない強い子だよ!

【サーヴァントとしての願い】
マスターに喜んでほしい


【マスター】
笛口雛実@東京喰種

【weapon】
『赫子』
攻撃力のある父の赫子と、防御に長けた母の赫子を両方受け継いでいる。

【マスターとしての願い】
両親にまた合いたい

【能力・技能】
まだ幼く未熟だが上記の赫子以外でも喰種としての才能は高く、周囲の気配を察知させてみても、あんていくの古株従業員で喰種としてもベテランである入見カヤに「すごい」と言わせるなど、潜在能力は底知れない

【人物背景】
20区にいる十代前半の喰種の少女。通称「ヒナミ」

【方針】
戦うのは嫌だけど、本当に願いが叶うんならーー


455 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/02(木) 22:42:22 XOcnh4W60
投下終了です


456 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:04:26 vEewcaf20
投下します。


457 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:05:00 vEewcaf20
とっぷりと日も暮れた頃、岸田は公園の植え込みの陰に座り込んでいた。
荒い息を整えていると、視界に黒いものが映り込む。
学生服の少女―早川の姿を認めた岸田は、安心したように息を吐いた。

「―ッ!…あぁ、早川さん…」

早川涼子。
岸田の幼馴染であり、殺人事件に巻き込まれ、若くしてこの世を去った少女。
大きくなるにつれて疎遠になっていったが、あんな形で別れる事になったのは岸田の中で小さなしこりになっていた。

今この場に立っているのは早川であって、早川でない。
岸田には生まれつき霊感があり、幼い頃から死者の姿が見えていた。早川は如何なる理由からか幽霊となった後、岸田の側を離れずにいるのだ。
生前の彼女と違って全く表情が動くことはないし、何かを語りかけてくるわけでもない。
ただ、この街にやってくる以前と変わらないその立ち居振る舞いが、これまで以上に頼もしく感じられた。

鼻にティッシュを詰めたまま、岸田はここまでの経緯を思い出す…。





岸田の記憶が戻ったのは夕食を済ませた後、リビングでぼんやりと夕方の番組を眺めている時だった。
何かがおかしかった。これまで説明し難い違和感が常に付き纏っていたのだが、今ならそれを説明できる。
まず、岸田の父親は海外を飛び回っており、家に帰ってくることが無い。
本来は母と自分の二人暮らしだったのだが、この場では父親が夜中の九時には必ず在宅している。
今は書斎に引っ込んでいるが……。


…鉄の味がする。
そっと鼻の下に指をあてるとぬらぬらした感覚が伝わり、離した指先を見てみると赤く染まっている。
岸田の身体は怪異が近づくと、鼻血を流してその接近を知らせるのだ。
不安げな様子で立ち上がった岸田がティッシュ箱を手に取ると、恨みがましい女性の声が脳裏に飛び込んできた。

≪…問おう。お前が、私の…マスターか…!?≫

声と同時に短い炸裂音が家の内部に響き渡り、重い物が倒れたような音がした。
岸田が硬直していると父親の声が何処からか上がったが、再び響いた炸裂音がそれを途切れさせた。

自分の早まった心臓の鼓動と荒い呼吸以外、周囲からは何も聞こえない。
リビングの景色に変化はないが、人の気配だけが消えた家は寒々しい妖気に包まれ、凍える様な心細さが岸田の中に沈んでいく。
右の鼻からは依然、血液が垂れ落ちていた。岸田の鼻から首元にかけて赤い軌跡が描かれている。


岸田は鼻血を止める事も忘れて、ゆっくりとした足取りでリビングから廊下に出る。
しばらくすると岸田の前方、天井近くに人影が姿を現す。
ボロボロのドレスを着た、顔の焼け爛れた女だ。辛うじて原型を留めている片側の眼が動き、岸田を捉えた。

「うぁあぁっ――!!」

女と目が合った瞬間、心の底に澱んでいた恐怖が吹き飛ばされた。
脊髄が全力で警報を鳴らし、身の危険を岸田に知らせる。
岸田は生存本能に身を委ね、玄関扉に向かって脇目も振らずに駆け出した。

「―逃げるな!」

背後から浴びせられた声を、岸田は無視した。
倒れかかるようにして、外に通じるドアノブに手を掛ける。岸田の体重がかかると扉はあっさりと開いた。
扉の勢いに乗っかって向かいの家の手前まで駆けると、岸田は逃げてきた方向に顔を向ける。


458 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:05:20 vEewcaf20
長い髪を振り乱した女は出入口に浮いたまま、岸田を見ていた。やがて女の影がスゥっと後ろに下がるとドアが独りでにしまっていく。
女から目を離さないよう、横伝いに動いていた岸田はドアが閉じきった事を確認すると、自宅から背を向けて当てもなく走り出した。
そして現在、目についた公園に飛び込んで休息を取っている。



現状を把握した岸田の記憶に、未知の情報が再現される。

…聖杯戦争。

おそらく、あの女―シルエットから判断するに、女性だろう―が自分に宛がわれたサーヴァントなのだろう。
視線が左手に浮かんだ刺青に落ちると、岸田は深いため息を吐いた。

あれは徒に触れてはならないものだ。
あれは恐れ、敬い、遠ざけておくものだ。

幼少から死者を知覚し、幽霊となった早川が側に現れるようになってから多くの怪異に遭遇してきた岸田も、あれ程の存在を目にするのは初めてだった。
早川の助けがあったとしても、彼女には太刀打ちできないのではないか。
恐るべきサーヴァントをこれからどう扱うか考えていた岸田だったが、差し迫った問題があることを思い出す。

……学校だ。

明日も、明後日も学校がある。また、着の身着のままで飛び出してきたので、食べ物を買う事もできない。
ティッシュ箱だけは持ち出せたが、残りの荷物はサーヴァントが占拠した自宅の中だ。家の中には両親のNPCが残っていたはずだが、聞こえた限りではおそらく助かってはいまい。
顔を伏せかけた岸田の視界の端で、早川が動いた。能面のような表情で岸田の左手を指差している。

「…そうか、令呪!」

サーヴァントに対する3回限りの絶対命令権。
安堵した岸田だったが、直後に一つの懸念が頭をもたげる――仮に令呪を使って服従させた場合、あのサーヴァントの機嫌を確実に損ねるのでは。
外まで追ってこなかった所から、対話の余地があると推測するのは希望的すぎるだろうか。
しかし今すぐ自宅に戻る気は起きなかった。なんにせよ、考えなしに令呪を切る事は出来ない。

苦悩を深くする岸田の側で、早川は人形のように立ち尽くしていた。




キャスターが逃げていく岸田を追わなかったのは、一時の判断からだった。
彼が自分の依代であることは理解していたし、岸田より先に殺さねばならない者たちがいる。

―なぜ私を起こした!

聖杯はなぜ自分を起こした?せっかく家族3人で安穏とした場所にいたのに。
愛する家族から引き離され、欲望渦巻く殺し合いに放り込まれてしまった。

―許さん…!

聖杯を求める者をみな殺し、この催しを開いた者もみな殺す。
マスターの死は、自分の邪魔をしない限りは猶予する。この戦いが終わるまでは。
乗っ取った一戸建ての最奥に陣取ったキャスターは呪詛の声を上げる。

「我が眠りを妨げる愚か者共!一人として生かす訳にはいかない!我が恨み、思い知れ……!!」


459 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:05:51 vEewcaf20
【クラス】キャスター

【真名】間宮夫人

【出典作品】スウィートホーム

【ステータス】筋力D 耐久B 敏捷E 魔力EX 幸運E 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:EX
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターは呪いの力によって、神殿を超える『間宮邸』を建設できる。

道具作成:-
魔術師として魔力を帯びた器具を作成可能。
 下記スキルを得た代償に喪失している。


【保有スキル】
魔物作成:A+
 魔力や素材を費やす事によってモンスター・クリーチャーを作成できる。
 人魂、狂犬程度なら数十体を一度に作成できるが、一般人でも十分対抗できる。
死神やドクロゴーストになるとサーヴァントを相手取れる実力を持つが、彼らの作成は相当量の魔力を蓄えない限り、令呪の助けが必要。

精神汚染:A
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。

自己改造:C
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 邸内で殺された子供達の霊と一体化している。

飛行:C
力ある幽霊として宙を舞う事が出来る。飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。


【宝具】
『間宮邸(スウィートホーム)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:屋敷に足を踏み入れた者全員
 キャスターが作成する陣地。生前慣れ親しみ、死後に憑りついた自宅の屋敷を再現させる。
間宮邸の内部は空間が歪む為、屋敷に存在した部屋や通路が追加される度に外観より広くなっていく。
 邸内に配置された無数のトラップが侵入者を迎え撃つほか、作成したモンスター達の魔力消費を軽減させる効果を持つ。

間宮邸の内装はキャスターの精神状態を示す様に荒廃しており、ポルターガイストなどの怪奇現象が頻発する。
特筆すべき点として、陣地内で死亡した犠牲者は間宮邸を警備するモンスターの一員に加えられてしまう。



『長い悪夢の終わり(フューネラル・フォア・マミヤ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
 土偶・古びた写真・間宮一郎の日記・子供の棺。間宮邸が完成した時点で、陣地内の何処かに自動配置される4種類のアイテム。
 この宝具はキャスター自身が使うのではなく、間宮邸に侵入した者達が使う。

4種類のアイテムを順番通りに突き付ける事でキャスターは成仏する。
 キャスターはサーヴァントと化した事で宝具による攻撃でも打倒する事が可能になったが、この宝具を使用されない場合は彼女の魂が救われることはない。


【weapon】
破壊効果のある閃光。


【人物背景】
フレスコ画家・間宮一郎の妻。
生前に子供を不慮の事故で亡くした精神的外傷により発狂。近隣の子供達をさらって焼却炉にくべるという凶行に手を染める。
そして自らも命を絶った。

彼女の死後、何者かによって子供の供養塔が荒らされ、子供の遺体が隠されてしまう。夫人は怒り狂い、亡霊として現世に舞い戻った。
そして屋敷に住まう者、屋敷に足を踏み入れる者を無差別に呪い続けた。
彼女が亡くなってから30年後、屋敷に侵入したTVクルー達の活躍によって成仏する。


【聖杯にかける願い】
聖杯戦争を破壊する。自分の眠りを妨げたものに死を。


460 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:06:11 vEewcaf20
【マスター名】岸田純

【出典】死人の声をきくがよい

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「霊感」
幼少期から死者の霊を見ることが出来るが、会話は出来ないので彼らの伝えようとすることを正確に受け取れない。
怪異に近づくと鼻血が出る体質。

「早川涼子」
岸田の幼馴染。ある事件に巻き込まれて死亡した後、幽霊として岸田に付き纏う。
害をなす事はなく岸田は彼女の助けによって、最悪の事態を何度となく免れている。
幽霊になってからは無表情だが、無感情ではなく身振り手振りによってアピールを行う。


【ロール】
高校生。


【人物背景】
高校一年生。病弱でぼんやりとしている事が多い。
早川涼子失踪事件に巻き込まれてから幾度となく怪異に遭遇することになるが、幽霊となった早川の助けで辛うじて生還し続けている。
父親は海外にいるため、実質母子家庭。


【備考】
・両親のNPCは死にました。この時点では着の身着のままです。ティッシュ箱のみ所持しています。

・キャスターが陣地の作成を始めました。何事も無ければ数日後に岸田宅が『間宮邸』に変貌します。


【聖杯にかける願い】
脱出したいけど……どうしよう。


461 : 岸田純&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/06/03(金) 11:06:55 vEewcaf20
投下終了です。


462 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:43:51 xMuDcYBo0
投下します。


463 : 冬野かなた&アヴェンジャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:45:48 xMuDcYBo0
ここはある学校の中にある教室の一つ…

そこにいる、足にリハビリ器具を付けた少女、冬野かなたが何かを思い出そうとしていた。

私の足がなぜこうなったのか…

"あれは悲しい事故だった…"

いや、違うはずだった…

"まさかあんなことになるなんて思わなかった!"

ああ…そうだ…私は…彼らに…壊されたんだっ…た……

そして彼女はすべてを思い出した。

なぜ自分の足に障害があるのか、そしてなぜそうなったかを。

彼女は元の世界で、自分の身に起きた事件について思い出したのである。

そして彼女の脳内に、「聖杯戦争」の知識が流れ込んできた。

___罪を祀る歪な棺…眠る姫君…君は何故この境界に来てしまったのか?

それとともに彼女の背後には、いつの間にか男が立っていた。

奇妙な男だった。

幽鬼のように白い肌、闇夜のように黒い髪と指揮者を思わせる衣服…そんな姿をした男だった

___さあ、唄ってごらん…

甘い言葉だった。

初対面であるにもかかわらず彼女は彼に心酔しかけていた。

そうして彼女は、自分の身に起きた不幸について話し出した。


464 : 冬野かなた&アヴェンジャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:46:14 xMuDcYBo0
--------------------------------------------

彼女はすべて話した。

嫉妬に狂った自分のクラスの委員長によって逆恨みされ、不良グループに売られたことを。

その不良グループから学校の体育館や近所の公園で、日常的に暴行を受けていたことを。

その結果下半身不随となり、そして意識不明となったことを。

担ぎ込まれた病院が加害者たちの関係者によって経営されていたために、事件を警察に通報するどころかその隠蔽に加担したことを。

男は彼女の話を最後まで聞いた後、静かに口を開いた。

___成る程。それで君は縛られた訳だね。残念ながら身に覚えのない罪で。

___ならば、この催しを君の復讐に利用してみようか。

___私はアヴェンジャーのサーヴァント、君の復讐劇に手を貸そう。

___流された血は、血で贖う。盗られたものは取り返すものさ。

___さあ、復讐劇を始めようか!

彼女は彼の言葉にうなずいた。

この聖杯戦争で勝利し、自分を壊した者たちに復讐することを誓ったのである。


---そして、復讐劇の舞台が上がる…。


465 : 冬野かなた&アヴェンジャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:47:12 xMuDcYBo0
【クラス】アヴェンジャー

【真名】メルヒェン・フォン・フリートホーフ

【出典作品】Marchen

【ステータス】筋力E 魔力A+ 耐久D 幸運E 敏捷C 宝具EX

【属性】
悪/混沌

【クラススキル】
復讐者:A
あらゆる調停者(ルーラー)の天敵であり、痛みこそがその怒りの薪となる。
被攻撃時に魔力を増加させる。
忘却補正:A
復讐者は英雄にあらず、忌まわしきものとして埋もれていく存在である。
正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する。
自己回復(魔力):C
この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
これにより、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。


【保有スキル】

真名看破:B
彼は屍人達の怨嗟の声を聴きその復讐の手伝いをする存在である。
そのため彼にとっては、何者かに恨みを抱かれた逸話を持つサーヴァントの出自は
即座に判明するものである。

魅了:C
誰かに対して激しい憎悪を宿しているものにとって、彼の
復讐を誘う囁きは逆らえないほどの魅力を持つ。
ただし"対魔力"、または"神性"スキルを保有しているサーヴァントには無効化される。


【宝具】
『光と闇の童話(ダス・メルヒェン・デス・リヒツ・オント・ドンケルズ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100人

メルヒェン自身の聖遺物である『光と闇の童話』という本。七つの大罪を司る復讐が行われた童話の世界を固有結界として展開し、
童話の登場人物一人一人がランクE程度(かそれ以上)のサーヴァントとなっている。また、登場人物は逆に召喚、使役することも可能である。

それぞれの復讐の仕方になぞらえ、攻撃方法が異なっている。

(例えば『傲慢』の野ばら姫はサーヴァントやマスターをその場から任意の場所へ『追放』する。
『怠惰』の継子は黒き病や魔力を元とした毒を『散布』出来る。)


【weapon】

『宵闇の屍揮棒』
メルヒェンが持つ黒と赤の羽飾りがついた指揮棒。
相手の精神に侵入し、復讐心を煽ることが出来る

【人物背景】
中世の魔女狩りの際に、魔女の息子として井戸に落とされて死んだ全盲の少年が、
魔女として焚刑にされ、世界を呪いながら本当の魔女と成り果てた母の怨念の力を借り蘇った姿。

そして、復讐を謳いつづける人形の声とともに、恨みを抱きながら眠りについた屍人達の
復讐の手伝いをする『屍揮者』として暗躍し続けた。

例えば、飢えに苦しみ、わが子を殺しその身を『暴食』した老婆は、別の子供たちにより竈の火の中で焼かれ…
例えば、楽して儲けるために奉公人を殺害しその肉で荒稼ぎした『強欲』な女将は、材料にされた者たちによって自分の身体の肉を奪われ…
例えば、わが子の美しさに『嫉妬』し、その子を毒殺しようとした女王は、真赤に焼けた鉄の靴で死ぬまで踊らされ…
例えば、もう一人の子にすべての家事を任せて『怠惰』に過ごしていた子供は、一生取れない汚れを全身に浴びせられ…
例えば、姫君の誕生に招かれなかったことに腹を立て、呪いをかけた『傲慢』な魔女は二度と故郷に帰れなくなり…
例えば、『肉欲』ばかりで魂を見ず、愛を注がなかったゆえに妻に裏切られ、そのたびに殺害してきた伯爵は、最後の妻の家族によって全身を切り刻まれ…

…例を挙げただけでもこれらの復讐に手を貸していることが判明している。

【聖杯にかける願い】
世界中の人々の復讐を手伝い続ける。

…しかしそれは彼の中にある怨念によるもので、彼の願いは別のところにあるかもしれない。


466 : 冬野かなた&アヴェンジャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:47:36 xMuDcYBo0

【マスター名】冬野かなた
【出典作品】影牢 〜もう1人のプリンセス〜
【性別】女

【weapon】
無し。

【能力・技能】
無し。

【ロール】
事故により下半身不随となったが、リハビリの末に歩けるまでに快復した学生

【人物背景】
自分が通っている学校内の不良たちによる、凄惨ないじめの果てに下半身不随となり、病院内で意識不明のまま眠り続けている少女。
またその病院内のスタッフたちのほとんどが前述の不良たちの知り合いであったためにこの事件は隠ぺいされてしまっている。

そのような経緯を持っているため、世界を呪いながら自分をこんな風にした連中を夢の中で殺し続けていた。

彼女はそんな中、この聖杯戦争に招かれたらしい。

【聖杯にかける願い】
自分を面白半分に"壊した"人たちへの復讐

…しかし本来の彼女は人の痛みが分かる少女であり、ただ彼らに謝ってほしい、自分の罪と向き合ってもらいたいだけかもしれない。


467 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/04(土) 17:48:06 xMuDcYBo0
投下終了です。


468 : ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:44:05 aiHfPjc.0
投下します。


469 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:45:33 aiHfPjc.0



 セイバーこと『結城凱』は、一応かつて一人の戦士であったが、英霊たちの平均的な意識からは逸れる側面があった。
 英霊たる自覚がないのも勿論の事だが、何より他人に「英霊」などと呼ばれるのが、彼には癪であったのだ。

 ある聖杯戦争では、英霊を嫌う魔術師が参加していたと云う話があるが、程度の違いはあれど、凱はその魔術師と同じように「英霊」という物を嫌っていた。
 おそらく、「英霊」というのは、その定義付けから考えるに、真面目でつまらない奴らや、多くの者を使い多くの者を殺した奴らばかりなのだろう。
 そして、時に人々の空想が生んだ怪物でさえも英霊などと呼ばれるらしい――きっと凱が戦ってきた敵のような奴らだ――のだ。

 そんな連中など、凱の価値観からすれば、元々どこかおかしい奴ばかりに決まっている。
 ましてその中でも自ら進んで戦いを選んだ者たちなどとは、到底、分かり合える気がしない。
 とてもではないが、その称号を受けた者の大部分とは、同じ釜の飯を食えそうにないわけだ。

 ……と、こうは云うが、凱も別に平和主義者や博愛主義者ではないし、ヒューマニズムに訴えたいわけでもない。
 人殺したちへの嫌悪も潔癖という程ではない。
 ただ、とにかく反りが合わない連中が多いだろう、というのが率直な印象であった。



 ――しかし、それでも彼がこの聖杯戦争で召喚に応じた。



 それは、彼自身も「英霊」として聖杯戦争に参入するつもりが全くない訳ではなかったからだった。
 自分が英霊たるのも、出来ればこれが最後にしたいとさえ思っている。


(英霊の座ねぇ……)


 願いを託しうる願望器として、凱は――この聖杯を狙っている。
 それこそ、敵が凱と同じく英霊の座からやって来た戦士というのなら、大きな抵抗も要るまい。
 言うならば、これは死人と死人の戦いとも言える。危険なのはマスターたちであるが、その人間の同意を得られるか否かが、聖杯を狙えるかの境目だ。
 もしマスターが乗れるような人間ならば、凱もまた聖杯戦争の一人のサーヴァントとして、死力を尽くせるだろう。

 勿論、敵たちの中に魂の籠ったパンチを放てるような奴がいるならば……凱と同じく酒や煙草を愛する野郎がいるならば……その時は相手に感情が入るだろうし、女のサーヴァントが相手ならばどうも殴り合うよりも抱きしめ合う方が向いているように思える。
 しかし、凱はその敵と、英霊同士、正々堂々とやり合ってやろうと思っている。
 それが聖杯戦争のルールなのだ。

 そうまでして――彼は、自らが嫌う「英霊」そのものの生き様を目指そうとしていた。

 では、彼の願いとは何か?

 それは――生きていた頃に戦った者たちの行く末として、「英霊の座」などというデータベースが在る事そのものへの反発であった。


(――俺がこうなっちまったって事は、俺以外のジェットマンも同じ座に行き着くってワケだ)


 そう。彼は、「戦士」というよりも、「戦隊の一人」なのである。
 おそらく凱と同じくその行く末を辿るであろう仲間たちが、他に四人もいるのだ。
 そして、凱には、彼らをその余計な肩書から解放させたいという想いがある。
 彼が再び闘争の道を進もうとするのは、それ故だ。

 かつて戦った人間の行く末が、「英霊の座」という猿山で、そこにいる限りまたも聖杯戦争に駆り出されるというのが、凱には何よりも耐えがたいのだ。

 元々ただの一般人であった凱が、この英霊という在り方に行き着いたのは、『鳥人戦隊ジェットマン』の一員として次元戦団バイラムと戦った逸話が故に違いなかった。
 あの日――たまたまバードニックウェーブの光を浴びて、超常的な戦闘能力を得てから、結城凱の人生は戦士のそれに一変し、この世の英霊たらしめる伝説を築き上げてしまったのである。
 あれより前には、自分がそんな運命をたどる事などありえないと思っていたし、野犬のような血筋の落ちぶれた人間でしかなかった。
 しかし、その日ただ不規則に降り注いだ光がたまたま凱に当たったと云う事実が、当人の意志さえ無視して凱に英霊の道を歩ませてしまった。
 地球を壊すバイラムと戦い、それを滅ぼし、地球を守る使命を帯びてしまったのである。

 凱に限らず――あの出来事が、五人の若者の運命を変え、五人をジェットマンにしたのである。

 だが、凱は、己がジェットマンとなったその運命を、自ら茶化したとしても、これ以上呪う事はない。
 ジェットマンとなった事で、大事な仲間と出会い、そして、彼らを祝せるようになったのだから。
 それゆえに、呪うべくは、英雄になった事ではなく、英雄のその先の運命の方である。
 英霊の座、などという闘争の繰り返しに対してだ。


470 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:46:37 aiHfPjc.0


(竜、香、雷太、アコ。……そう、お前らも)


 ジェットマンであった時、彼らは剣を取っては怪物を斬り、銃を取っては命を削った。
 敵がたとえ怪物であれ、その握り手に辿る感触は心地の良いものではない。血肉を刈り取る感触が伝い、それに慣れ続ける一年を経た。
 たとえ女である鹿鳴館香や早坂アコであっても、バードニックウェーブを浴びた以上はそんな運命にあった。
 ジェットマンである故に、命を脅かされた事も、悲しい現実を見せられた事もあった。

 凱にとっての問題は――彼らの方だ。
 戦いを終えた彼らは、もう平和になった青空の下で赤子を抱いているのである。
 その手で、再び――たとえどんな敵であれ――剣や銃を取らせ、一つの戦争を行わせたくはない。

 そんな未来は、たとえ死んでからでも……英霊という、紛い物の姿であっても、凱は認めたくはないのだった。
 ジェットマン、という英霊は、その座に存在しなくて良いのだ。


(これ以上、ジェットマンを英霊なんざに祭り上げさせるわけにはいかねえ……)


 天堂竜という男は、人々を守る為に争いに身を投じた軍人だったが、彼は誰よりもナイーヴで、軍人には向いていない男だった。
 鹿鳴館香、大石雷太、早坂アコ……残りの三人もまた、もともと普通の人間だ。
 彼らには、やはり普通の暮らしが似合っている。

 そして、凱はそんな彼らを友と認め、愛している。
 彼らがこれ以上戦うのを、凱は見たくはない。事実、本当に闘争に向いているのは凱くらいな物なのだ。


(――そうだろう? お前たちはあれだけ苦しんで、悩んで、そしてようやく、あの綺麗な空を守ったんだ……)


 ジェットマンの戦いから二十年ほど経った時、伝説を掘り起こして彼らを再び戦わせようとする新たな戦隊もいた。
 だが、その時、凱は神さえも口説き落として、彼らがジェットマンと接触するのを踏みとどめた。
 そして、凱は彼らに、ジェットマンの中で凱が死を経て在り続けた戦士の魂を教えた。
 今度はジェットマンに代わり、お前たちが空を守る番なのだ、と――。

 だが、仮にもし、青春を分かち合った友たちが世界の危機を知り、自分たちに戦う術があるとすれば――四人はかつて戦士であった故に、自ら再び、その未来を掴みかねない。
 聖杯戦争を知れば再びそこに踏み入ろうとしてしまうかもしれない。そして、またジェットマンとして誰かを救う為に戦おうとするかもしれない。
 その可能性を予め潰す為に、凱は願いを託したいのである。
 たとえ彼らが誰かの為に戦いを望もうとしたとしても、凱はそれを阻止し、影ながら彼らの幸せを祈り続ける。


(お前らがまた英霊なんて呼ばれてよ……誰かの為に戦わされるなんざ、俺は見てられねえぜ)


 かけがえのない、青春の思い出たち。
 まだ小さな世界を飛び回っていたコンドルを、拾い上げ――この大空の平和を守らせてくれた仲間たち。
 凱が最後に見た美しい空と、幸せの最中にある友の笑顔たち。
 あの笑顔を続けてほしい。

 これからはせめて、共に戦った親友たちや、かつて愛した女くらいには、戦いと離れて暮らしてほしい。
 彼らには二度と、剣や銃を取る事もなく――平凡で呑気な幸せを楽しみながら、普通の人間のように生きてほしい。
 英霊の座、などという戦いの連鎖を強いられる場所にはもう彼らの姿はなくて良い。
 戦いの悲しみなんて背負わなくて良い。

 ジェットマンとして戦うのは、ほんの一瞬、僅かな青春の時代だけだ。
 あれから幾歳月経った後は、それを時折、俺の墓の前で思い返して笑ってくれれば、それが真に正しい彼らの未来なのだ。
 命をかけた戦いが酒の肴になった時、彼らは本当の幸せを得られるに違いない。
 そうして、彼らは大人になり、老人になり、普通に死んでいく。

 その時間を、そして、その先の未来を守りたい。
 あの綺麗の空の下――もう二度と剣も銃も握る事のない、彼らの時を。
 永遠に。


(――――さあ、行くか)


 凱は大空から降り注ぐ光を見上げた。
 美酒の匂いがする……。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇


471 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:47:24 aiHfPjc.0





 ――――Black wing sleeping here forever





 ……馬鹿だな、竜。お前は俺が、こんな早くに眠ると思ってるのか?





 本当の夜はこれからだぜ。





 ……なあ、そうだろ。俺と出会う事になる、マスターさんよ――――





◆ ◇ ◇ ◇ ◇


472 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:55:23 aiHfPjc.0





 SE.RA.PH――電脳虚子世界。



 実物を模して作られているが、どこか電子の波が渦巻くような波長を感じずにはいられない場所。
 彼が立ち構えているのは夜の街の裏通りだ。ネオン街は、静けさの裏に遊びを隠している。
 小さなラスベガスと呼べるような世界を、「彼」は現世で探している。
 しかし、酒が美味い店も、心地良く遊べる店もなく、仕方なしに自動販売機を拠り所にしていた。


「フゥ……」


 セイバー――結城凱は、煙草を吸っていた。
 ラークマイルドの甘い煙が肺にまで送り込まれ、それをゆっくりと吐き出す。
 吐き出された煙は、冷たい夜霧の中に溶けていった。
 煙草の匂いが鼻孔を擽り続け、些か心地良くも感じられたが、やはり、これも美味くはない。
 吸いかけの煙草を捨て去ると、凱はブーツでそれを踏み潰した。
 一本しか吸っていないのに、それをゴミ箱の中に殆ど躊躇らしいものを見せず握りつぶし、捨て去るとはまた豪快である。


「ったく……」


 凱は、そのまま、思わしげに夜空を見上げた。
 なんだか随分と作り物臭い空で、それが即ち「電脳空間」という味気ない世界が再現した「自然」だった。
 作り出された空は、自由にどこまでも続いている風ではない。それを悟った凱には、まずそれが美しく映る事はなかった。
 心なしか、そんな世界では煙草の味も上手く感じられず、凱は息をほんの小さく吐く。
 まだ煙草の匂いが微かに残る吐息は、退屈をかみしめる欠伸に変わった。


「――つまんねえ空だぜ……ちっとも胸に響かねえ」


 凱は、思う。
 それは世界と呼ぶにはあまりにも人工的で、あまりにもデータ的だ。
 傍目から見れば判らないかもしれないが、彼自身も一個の自然としてそれを意識的に判別できたのだろう。
 彼は、煙草の味や酒の味を嗜み比べるように、空の色も比較できた。
 早々に抜け出しておきたいとさえ思う。

 ……凱は、傍らで札束を数える女を見た。


「――なあ? お前もそう思うだろ、ロベリア」


 が、凱の方を睨むように見つめ返した。
 片側が割れた眼鏡の奥で、人形に埋め込まれたような白い瞳が光る。
 パーマがかった羽毛のような白髪は、あちこちに乱れ飛んでいるが、整ってないわりにそれは美しい形になっている。
 彼女が凱のマスターであった。


 ――その名は、『ロベリア・カルリーニ』と云った。

 トランシルバニアに育った、懲役千年ほど頂いている犯罪者であった。
 外国人という事もあってか、身長は女性としては際立って高く、街を歩いてもよく目立つ。
 凱も身長が低い方ではないが、彼女はそれと同じか、それより少し高いくらいに見えた。
 彼女は口を開く。


「……フン。そんな事は知らないけどね。その煙草もタダじゃないんだ。
 捨てる為に使うなら、もうワンゲームでも楽しんだ方が賢い選択だったね」

「仕方がないだろ。ラークは俺のお気に入りなんだ。
 まさか捨てちまう事になるなんざ思ってもみなかったぜ」

「あんまりワガママも言えないよ、この戦争じゃ。
 たとえ飯や酒が不味くても、アタシはそれを摂らないと飢えちまう。アンタは知らないけどね」


 再び札束に目をやって数え始めたロベリアは、一瞬でその手を止めた。
 そして、呆れたように凱を見ながら云う。


473 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:56:23 aiHfPjc.0


「……アンタが話しかけるから、何枚数えたかわかんなくなっちまったよ」

「おお、悪い悪い。……ま、そんだけありゃ、数える必要もないさ。
 生活にはとっくに困らねえと思うがな」

「生活の問題じゃないよ。どれだけ稼いだかってのは、女には重要なのさ」

「……そうだったな、女ってのはそういう生き物だった。
 この俺が女について教授されるとは、こいつは迂闊だったぜ。
 だがな、あんたはそん中でも特殊だ。金を数えるのが好き過ぎる。ブランド品でも買うならわかるがな」

「アタシは宝石と酒の方が好きだからね、悪趣味に着飾るつもりなんてさらさらないよ」

「なるほど。アンタは服やバッグじゃ靡かないわけか」

「……ほう。アタシを口説こうったって無駄だよ」

「そいつはどうかな?」


 ロベリアは、そう自信ありげに言う凱を鼻で笑った。
 それから、金を懐に仕舞う。


「あーあ、もう金を数えるのはヤメだ。どうせ明日の夜にはまた増えてるんだ」

「――ああ。俺とロベリアが組めば、どんな店も一晩で大赤字さ。さっきの店も、明日には全員泣いて夜逃げしてる所だぜ」


 凱は、そういう風に言って笑った。ロベリアも薄っすらと頬を歪ませた。
 凱とロベリアの二人に共通して言えるのは、あまりにも夜遊びが好きであるという事であった。
 特に、ポーカーやカジノはお手の物と云ったところだ。

 現在の日本における賭博業態は主にパチンコやパチスロ、あるいは競馬といった所だが、その実、裏にはいくつかの違法ギャンブル店が存在する。
 凱はこの日本の夜の街でそれを嗅ぎ分け、ロベリアはその店で凱と共に吸い取り尽くすのである。
 先ほども、この凱の優れた嗅覚でカードやカジノの店を見つけ出し、二人で金を稼いできたばかりだ。
 賭けるスリルと、獲る悦びとは、たとえ電脳世界でも味の変わらない物である。


「――お客さん」


 ふと、丁度そんな話をしていた所で、野太い男の声が響いた。
 あまり興味もなく、呆れたような目で、凱とロベリアはそちらを見る事にした。


「困りますね……」


 そこにあったのは、バーテン風の恰好をした大男と、残りは黒服の男や悪趣味なシャツのチンピラたちの姿だった。
 バーテン風の男は、先ほど立ち寄って大勝した店にいた男だった。他は、ざっと見て七人いるが、どれも見覚えがない。
 とにかく、要件はわかり切っていた。


「こんな事をされては――」


 大男はそう言いながら、後は何が困るのか告げる事なく、トランプのカードを見せた。
 裏側の模様も、描かれた数字とマークも同じカードが二枚――彼の手には握られている。
 同じデッキの中に存在してはならないカードである。

 そして、それは凱が先ほどのポーカーで使った『フルハウス』の役の中に含まれたカードだった。
 凱はまったく怖じる事なく、「今更気づいたのか」と嘲笑うかのように彼らを見ていた。


474 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:57:48 aiHfPjc.0


「……当店では、このような行為は厳粛に禁じられています」

「フンッ、悪かったな。親がイカサマをしているゲームじゃ、こっちもそうするしかなかったってワケさ」


 凱の、申し訳程度の反論だった。ここから先は議論にはならない。
 大男は、それから何も云う事なく、目で合図して、残りのヤクザたちに凱とロベリアを囲ませた。
 こうしてこんな連中に囲まれるのは、何度目なのかは知れない。
 しかし、そのたびに、凱も、ロベリアも、自らは傷一つ負う事なく――金をせしめて逃げのびてきたのである。


「舐めやがってッ! おりゃあッ!」


 野太いヤクザの怒号と共に、彼らがほぼ一斉に、役割を決めたかのように向かってきた。
 しかし、彼らの最大の目的は、イカサマで奪われた何百万円かの方だ。
 つまり、それを持っていたロベリアの方が黒服の男に狙われる事になる――こちらに五人が向かった。
 そのうちの一人が、女を躊躇なく殴れる拳で、ロベリアにとびかかった。


「――ふんッ」


 しかし、その刹那――ロベリアの目は、光り輝いた。
 明らかに何かが反射した後ではなく、ロベリア自身の意思によって彼女の眼が光ったのである。
 それはさながら、何かの合図だったようである。

 それとほとんど同時に、ロベリアの眼前で、ゴウと音がし――そして、火が放たれた。
 ロベリアとヤクザとの境界線として、一線の火が、まるでそこにガソリンが垂らされていたかのように燃え上がったのである。


「何ッ!?」


 そして、そんなどこからともなく現れた火炎が、ロベリアの眼鏡に反射していた。
 彼女の瞳にも、確かに、そんな炎に行く手を阻まれた男たちの姿が映っている。
 ヤクザたちもその一瞬の光景に、果たして何が起こったのか理解できていないといった様子だったが、何かが爆発したのだと思い込んだらしい。
 咄嗟に尻もちをついた者もいた。


「このくらいの事でビビってて、よくそんな商売やってられるねぇ……。
 まっ、そのお陰でアタシは、潤えるわけだけどね」


 ――発火能力。

 先天的にロベリアが持つ、霊的な加護の一つであった。
 パイロキネシスと呼ばれる、発火能力が彼女には備わっていたのである。
 女性ながらにして多くの修羅場を潜っていくのに、大きく役立った能力であった。
 そして、この時もまた、無数のヤクザを相手に、命とカネとを守らせたのだ。


「ハッ……でけえナリをしてるわりには、リキの入ってないパンチだなァッ!
 俺様が本当のパンチってやつを教えてやるぜッ!」


 一方の凱は、喧嘩慣れした男だった。
 それは英霊というにはあまりに泥臭いが、ボクサー顔負けのファイトスタイルで敵の拳を避け、相手の頬に一撃与えているのである。
 凱よりも一回り大きいヤクザたちを、彼はパンチ一撃で昏倒させていく。
 ロベリアから金を奪うのを諦め、仲間らしき彼の方だけでも捕らえようと、何人かは凱の方に流れていった。
 しかし、誰もが余計な傷を負うだけであった。



 そう――明らかに、凱は強すぎた。



 それというのも、凱自身がかつて持っていた『バードニックウェーブ』による身体強化が、英霊としての再臨時に再び効いているからである。
 ただでさえ喧嘩慣れしていた彼に、怪物たちと互角以上の戦いを手伝わせた力だ。
 相手が人間である以上、もはや凱の敵ではない。


475 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 18:59:50 aiHfPjc.0


「クッ……七人では足りなかったかッ!」


 せっかくの用心棒たちが凱とロベリアを前に次々と倒れるのを見て、バーテン風の男は切り札を用意した。


「だが……逃がしてたまるかッ!!」


 ナイフであった。
 あまりにも手軽に手に入る凶器であるが、これまでに同時に多くの人間の命を奪ってもいる。
 それを使う事で背負う大きな罪さえ恐れなければ、人の命を自在に傷つける鋭さを帯びている――それだった。


「うわりゃああああああああああッ!!!!」


 男は、それを構え叫んだまま、低い姿勢で走り出した。


「なにっ!?」


 一瞬だけ、凱の目が見開かれる。
 実はかつて――凱は同じようにして、ナイフで刺されて命を絶ったのだ。


「チッ」


 ――だが、それがトラウマと呼ぶほど大袈裟かと言えば違う。
 単に嫌な事を思い出したという程度の感情であった。
 もはや、英霊になった凱は死など恐れるに足る物ではない。
 次の瞬間、凱は、向かってくるバーテン男をよくその両目で捉えていた。
 バーテン男は、ほとんど凱の眼前まで迫っていた。


「ハッ!」


 そして。

 ――ナイフを構えて猛進したバーテン男の手は、それから動かなかった。

 凱の懐の直前にまでナイフを近づけながら、しかし、真横から手首を握っている凱の手がこの先に進ませる邪魔をしたのだ。
 人を刺さずに済んだ安心感と、このまま殺されるかもしれない恐怖とに苛まれ、男はかなり複雑な気持ちになっていた。
 しかし、何よりその力が目の前の人間の腕力だと思えず、バーテン男は、再確認するかのように凱の顔を見上げていた。


「なっ……?」


 この男は、人間なのか? ――と。
 男は、咄嗟にナイフを落とした。これを奪われたら、今度はその切っ先が自分に向くであろう事を予感したのだ。
 そのまま、彼の腕は凱の腕力で捻じ曲げられた。関節が悲鳴をあげた。


「う、うわああああああああああッッ!!!」

「フンッ。そんなモンに頼るなんざ、弱い男のする事だぜッ!」


 そう吐き捨てて、凱は男の手を放した。
 もとより、命を奪うつもりなどない。
 多くのヤクザや用心棒たちが、戦意を失い、呆然と二人の背中を見送っていた。





◆ ◇ ◇ ◇ ◇


476 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 19:00:29 aiHfPjc.0





 ――数十分後。


 既にロベリアの隠れ家にまで逃げ切った二人は、それを祝すようにマッカランを飲んでいた。
 やはり凱にはあまり美味く感じられなかったが、それは儀礼のような物である。
 せっかく凱とロベリアの二人が組んだという証として、こうしてグラスを傾けているのだ。
 マッカランの熱が喉を走った。


「言っておくけど、寝ている間にアタシに手を出すんじゃないよ。
 消し炭になりたくなきゃね」


 夜も間もなく明ける。
 そう、彼らが生きる時間は、すべからく夜だった。
 眠るのは明け方、目が覚めるのは昼になってからようやくの話で、戦いは夜に潜むようにこっそりと行う。
 その戦いが、聖杯戦争であるのか、それともゲームであるのかは彼らにはわからない。

 そんな生活を繰り返す方が彼らには合っていた。
 正義の味方らしい早寝早起きの習慣は、彼らにとっても苦手とする事なのだ。


「フンッ。力ずくで愛を奪うのは主義じゃねえ。そんなのはモテねえ野郎のする事だぜ」

「フッ……面白いねアンタ。悪そうに見えて、肝心な所は随分真面目じゃないか」

「遊びにもルールがあるんだ。俺はそいつを守る事で、楽しんでるだけさ」

「なるほどね。それじゃあ、アンタの事は、ひとまず信頼しておくよ」


 彼らの部屋の電気が、それからしばらくして消えていた。
 ロベリアは眠ったらしい。

 凱は、約束通り、ロベリアに触れる事もなく、外の光景を見ていた――。
 夜が明け、次の朝が来ようとしている。
 鳥たちがどうやら囀り始めているようだ。


(……いい空かは知らねえがな、いい夜だったぜ。
 だが、これからはもっといい夜になりそうだ)


 聖杯戦争。
 確かに、ロベリア・カルリーニというマスターは、聖杯狙いのマスターであり、なおかつ魔術素養もあった。
 これは実に幸運な事で、思ったよりも彼女とは意気投合している所である。これからは、共に聖杯を狙って協力し合える所であろう。
 ちなみに、ロベリアはなんでも、一度逮捕された事もあると聞く程のとんでもない女であるらしいが、たとえ前科者だろうが犯罪者であろうが女の扱いに大きな違いはない。
 凱に口説けぬ女はいない、という訳だ。

 この聖杯戦争というのも、良いマスターにさえ恵まれればなかなか悪くはなさそうだ。
 尤も、他のサーヴァントやマスターに今まで合流できていないだけに、実際の戦いがどうかは知れない。
 ただ、凱にもそれは少し楽しみになった。


(……美味くはねえが、禁煙は主義じゃないんでな)


 凱は再び、ラークマイルドに火をつけた。
 外に流れた煙の上で、鳥たちが羽ばたきだした。





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477 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 19:01:56 aiHfPjc.0

【クラス】

セイバー

【真名】

結城凱@鳥人戦隊ジェットマン/海賊戦隊ゴーカイジャー

【パラメーター】

通常
 筋力D+ 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運D 宝具EX

変身後
 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具EX

【属性】

中立・善

【クラススキル】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:D+
 騎乗の才能。
 一通りの乗り物を乗りこなし、戦闘用の巨大ロボットの操縦も可能とする。

【保有スキル】

バードニックウェーブ:A
 鉱石を基に授かった、身体能力を上昇させる特殊能力。
 経年劣化する性質を持つが、死後に再び獲得した肉体では全盛期レベルに上昇している。
 また、ジェットマンに変身する為の資質でもある。

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

勇猛:B
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。
 また、格闘ダメージを向上させる。


478 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 19:02:42 aiHfPjc.0

【宝具】

『翼は永遠に(ブラックコンドル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜200 最大補足:1〜200

 結城凱がかつて変身した姿『ブラックコンドル』へと変身する宝具。
 変身の為のブレスレット・『クロスチェンジャー』を呼び出し、重ね合わせる事で再度変身を叶える。
 死後の彼が女神を口説き落として契約し現世で戦った逸話から、「顕現した際にかつて用いた遺物や能力を開放する能力」を持つ。
 その為、ブラックコンドルに関連する武器は彼の意志で現出する事が出来てしまう。
 事実として、後輩戦士たちの前に現れ宇宙海賊と戦った際にも、その能力を鍵に封じられた筈のブラックコンドルの力と武器を開放して使いこなしている。
 このように、ブラックコンドルへと変身して戦闘するのが彼の主力兵器であるが、この宝具から派生した宝具がもう一つ存在している。

『はばたけ、鳥人よ(ジェットマン)』
ランク:EX 種別:対人・対獣・対機宝具 レンジ:空の続く限り 最大補足:1〜1000

 鳥人戦隊ジェットマン――それは、セイバーがかつての戦いで共に戦った、四人の仲間の伝説が具象化したものである。
 レッドホーク、ホワイトスワン、ブルースワロー、イエローオウルの四人の戦士を呼び出し、鳥人戦隊ジェットマンという一つの戦隊が形成され、彼らが魅せたあらゆる技を再現する。
 ただし、これはあくまで、英霊の座から呼び出した実物の戦士ではなく、心象風景の中から作り出した『海賊版』のジェットマンであり、戦闘パターンこそ本人に似通っていても感情はなく単純な返答しかしないNPC同然である。
 それゆえ、英霊というよりは魔力によって作られたゴーレムのようなジェットマンとなっている(四人の鳥人を具象化するにはセイバー自身の魔力を要する)。
 勿論、次元戦団バイラムと戦った戦士・ジェットマンの伝説が刻まれている以上、当の本人らを呼び出す事も不可能ではない筈だが、セイバー自身の意思でかつての仲間に再び戦いをさせる事を拒んでおり、それ故にこうして「形だけ」のジェットマンが呼び出される事になっている。
 余談であるが、この聖杯戦争に先立ってあった『レジェンド大戦』という戦いにおいても、セイバーは現界しており、この宝具を用いて友の魂を引き継いだ戦士四名を呼び出し、共に戦った事もある。
 再び剣を取る事のなかった筈のジェットマンたちが並び立っていたのは、この凱の宝具による物である。
 ジェットマンが扱ったとされる幾つもの武具もまた具象化する事ができるが、その顕現は規模や威力の大きい物ほど魔力負担が膨大であり、その全てをセイバーで補わなければならない為非常に燃費が悪い。

【weapon】

『マッカラン』
 彼が好きなお酒。

『ラークマイルド』
 彼が好きな煙草。

『クロスチェンジャー』
 宝具『翼は永遠に』で
 ブラックコンドルへの変身アイテム。
 とりあえず変身すれば剣なり銃なり様々なアイテムが発動可能。

【人物背景】

 1991年から1992年、鳥人戦隊ジェットマンのブラックコンドルとして次元戦団バイラムと戦った男。
 元は一般人であったものの、軍が研究していた戦闘用の能力『バードニックウェーブ』を浴びた事で戦いに巻き込まれた。
 以来、メンバーとのいざこざ等もあったものの、確かな絆を持ってバイラムとの戦いを乗り切り、仲間たちと共に世界の平和を守った。
 しかし、1995年ごろに若くして死去。
 後に、ジェットマンたちを捜索している海賊戦隊ゴーカイジャーと会う為に地上に顕現した事もあるが、その際には異星人であるゴーカイジャー5名にしか姿が見えなかった。
 死して尚、仲間の為に戦った男。

【サーヴァントとしての願い】

 鳥人戦隊ジェットマンに関連する英霊のデータを英霊の座から抹消し、聖杯戦争に参戦しないように調整する。

【方針】

 ロベリアと協力して聖杯を入手する。
 夜の街では、ロベリアと共にギャンブルや酒に興じるべし。


479 : ロベリア・カルリーニ&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 19:04:36 aiHfPjc.0




【マスター】

ロベリア・カルリーニ@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜

【マスターとしての願い】

 聖杯を入手する。
 その為の手段は問わないが、あくまで美術品(?)のような物として狙っているだけ。
 願いらしい願いはない。

【weapon】

『札束』
 どこかから奪ってきたに違いない、大金。

【能力・技能】

『霊力/パイロキネシス』
 呪術師である母の血が故か、先天的に非常に高い霊力を持っており、炎を自在に操る発火能力を持つ。
 また、霊力によって霊子甲冑の操縦も可能とする。
 聖杯戦争のマスターとしてはこれが魔術回路となる。

『犯罪スキル』
 スリやギャンブルのイカサマなどを多々行う、犯罪に長けた器用さを持つ。

『ダンス/演技力』
 一応、普段は、踊り子『サフィール』として、シャノワールのステージに立っている。
 彼女が演じているのは「La Bohemienne(ジプシーの娘)」で、ものすごく露出の多い恰好で踊っている。
 また、男を騙すのも得意としており、度々

『料理/酒』
 巴里華撃団の仲間の為にケーキを作る描写がある。
 酒の知識についてもかなり深く、ワインやウイスキーについて教授する場面もある。

【人物背景】

 巴里華撃団・花組の四番目のメンバー。『サクラ大戦』シリーズ最大の異端メンバー。
 1905年11月13日生れの20歳(中の人は17歳)。トランシルバニア(ルーマニア)出身。
 イタリア人の父とルーマニア人の母の間に生まれ、トランシルバニアで暮らしていたが、ある時から「吸血鬼の一族」として恐れられ、祖国を追われた経緯を持つ。
 それ以来、ジプシーとして放浪生活を続けるうちに両親を失ったロベリアは、欧州各地を転々としながら生きる為に犯罪行為を繰り返す。
 先天的に炎を自在に操る能力を持っていた彼女は、それを利用して多くの罪を重ねていき、欧州にその名を轟かせる大悪党へと変わっていく。
 開始時点で巴里の名家、美術館、宝石店などはあらかた彼女が荒らしつくしており、建造物侵入や爆破、金品強奪や恐喝など、目的の為ならば手段は択ばぬ性格である。
 しかし、1924年5月5日に巴里市警によって逮捕。1000年以上の懲役を科せられてサンテ刑務所に収監される事となった。
 だが、その高い霊力は巴里華撃団の責任者たるグラン・マに見初められ、刑の免除を条件に巴里華撃団に半ば強制的に入隊させられる事となる。
 また、凶悪犯だが殺人だけは行っていないらしく、入隊後はギャンブルや夜遊び程度で我慢している模様。
 巴里華撃団で、大神一郎やエリカ・フォンティーヌといった仲間と過ごしている内に、仲間意識や巨悪を打ち倒す意識は芽生えたらしく、徐々に仲間たちとは打ち解けていく。
 そして、大神がロベリアルートを選ぶと意外なエンディングが待ち受ける。

【方針】

 セイバーと共に聖杯戦争を勝ち残り、聖杯の入手。
 理由は、他のマスターに聖杯を獲られるのが癪である事と、一度聖杯を拝んでおきたいという感情による。
 狙った獲物は逃さないのが主義であり、殺人以外のあらゆる手段を用いて聖杯を狙うだろう。


480 : ◆CKro7V0jEc :2016/06/05(日) 19:05:37 aiHfPjc.0
投下終了です。


481 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:03:09 qqm1VaJQ0
投下します


482 : 田中広&ニート ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:04:18 qqm1VaJQ0
某所、平日の昼間から呑気に散歩を楽しんでいる男がいた。
今時珍しいほど立派なアフロ以外に、これといって何かがあるわけでもない。
そんな彼、田中広がマスターとして覚醒して、すでに一週間が立っていた。

広の生活はこの世界においてもあまり変化はなかった。彼に与えられたロールを一言で説明するなら「地方から上京してきたが就職に失敗した無職の高校中退者」となるだろう。
記憶を取り戻した当初、彼は憤慨した。どうせ作り物の日常なら、適当な企業の社長にでもしてくれたら……などと愚痴をこぼしたものだ。
だが問題はそこではない。

「あー……暇だなぁ」

無職である以上、一日のうちにかなり時間が空いてしまうことは必然だ。だが、幸いにもまだ少しは働かなくても暮らしていけるだけの金は工面できなくもない。  
そういった事もあり、自堕落な性格の田中は、重い腰をあげて職を探す気にはなれない。
そうしてもて余した暇を潰すため、田中は近所を彷徨いている訳だが……

「……帰るか」

どうやら飽きたらしい。




「ただいまー」
  
家賃二万円、風呂なしトイレ共同、格安だが全体的にボロいこのアパートがここでの田中の住居だった

「お帰り。どうだった?」

玄関から上がると、近くして返事が帰ってきた。
決して広くない部屋で寝転がっているのは、野球少年のごとく刈り込まれた頭髪に、どことなくだらしない顔つきをした青年だった。
彼が田中のサーヴァント、クラスはニートであった。

「別に。ほら、今日の飯」
「おっ、ありがとう」

近所のスーパーで購入した半額弁当を同居人は嬉しそうに受け取った。虫歯なのか、笑顔から所々欠けた歯が目立っていた。


聖杯戦争。
何でも願いを叶えてくれる聖杯を巡って、古今東西、あらゆる英霊たちが死闘を繰り広げる儀式……らしい。

らしいというのは、まだ田中に今一自覚が薄いからだ。
目覚めてすでに一週間、まだ他陣営との接触はないこともあるが……。

(本当にこいつ英霊なのかよ?)

正直、目の前で半額弁当を食べているこのハゲが英霊なんて大それた人物とは思えないのもその一因なのだが……

聖杯。その漫画のような設定に、少なくとも好奇心に押され高校を中退したとき以来の緊張とワクワク感も最初はあった。
だが、こうして我が家に上がり込んできたサーヴァントとなしくず的に暮らしている内に、それも忘却の彼方だ

「おっし、俺も食うか。ソースとって」
「あ、どうぞ」

ニートたちの聖杯戦争は、まだ始まってすら居なかった。


483 : 田中広&ニート ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:06:33 qqm1VaJQ0

【クラス】
ニート

【真名】
無銘(24歳のニート)@現実

【属性】
中立・中庸

【パラメーター】
筋力D 敏捷C 耐久E 魔力E 幸運D 宝具EX

【クラススキル】
ニート:A++
 成人してもなお、ロクに働かずダラダラとした堕落的な生活を送っていた者が得るスキル
 ニートの代表格として一部で知れわたっている彼のランクはかなり高い
 己の陣地内では魔力の回復速度が早まり、また、その場で戦闘を行った際には自分たちに有利な状況を引き寄せることが出来る。
 しかし、デメリットとして、このスキルを持つ者は外部から必要とされた行動に積極的な参加の姿勢を見せず、あくまで己のやりたい事を優先する傾向が高まる。
 なお、このスキルを持つ者が陣地を作成することはない。あくまで、自分の保護者や他人が作り上げた陣地に住み着くだけである。

【保有スキル】

共同生活:C
 第三者の合意のもと、マスター以外の人間から魔力供給を可能とするスキル
 ニートの場合は、サーヴァントとして体を維持するための魔力を最大で3/1まで押さえることができる

ニートの精神:A+
 ニートでありながら、何ら恥じること無く自分は幸せだと断言するほどの圧倒的精神力。
 精神干渉系スキルを完全にシャットダウンする

貧困率:D
 人生においてどれだけ金銭と無縁かと言うスキル。ランクDは、通帳に一桁しか預金がないレベル。

真名秘匿:EX 
 真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。ランクEXはあらゆる宝具やスキルは当然の事、魔法を用いたとしてもその素性が割れる事はない。
 その思想は広く浸透しているのにも関わらず、彼自身の情報はほぼ知られていないという逸話に由来している。


484 : 田中広&ニート ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:07:21 qqm1VaJQ0

【宝具】
『働いたら負けだと思ってる』
ランクEX 種別:対思想宝具 レンジ:無限 最大補足:ニートと接触したものすべて

 通常なら宝具扱いするのも憚られるほどの妄言にすぎないが、誰に強制されたわけでもなく、一つの世代に確固たる思考として確立させられた概念のために、非常に高い神秘を内包している。

 そもそも、従来から指摘されるように、昨今の労働環境は総じて良好なものとは言えず、特にバブル経済崩壊後を皮切りにその傾向が、特にブルーカラー層に対して顕著に表れてきている。
 2007年までは全体的且つ、部分的ではあるが経済の悪化に歯止めが掛かりかけて来ていたが、2008年のリーマンブラザーズ証券会社の倒産を初めとした、関連する利用会社がうけた経済的な打撃の一連の流れである リーマン・ショック によって、日本経済は一気に傾いた。
 結果、派遣従業員の大量解雇、労働環境の悪化、また給与、所得の大幅な減少となって多くの労働者達が一斉に被害を被る形となって現れる事となり、苦肉の策で持ち直した日本経済は一気に一〇年前の状態にまで押し戻される事となってしまうのである。
 そして、これらに絶望した若者達は両親に中所得層を持つ者を中心に、「就職しにくい」事を建前とした、労働を放棄した形で生活を行う事に活路を見いだし、多様化する生き方を選ぶことが出来る現代社会において、あえてニートという、一切の価値創造を否定する生き方を選ぶ事となるのだ。
 これらの前提を踏まえ、過酷な労働環境や生き馬の目を抜く現代社会に対し、文面だけになりつつある「スローライフ」の社会的な早期実現を訴えると供に、いわゆる「まじめな者がバカを見る」社会機構に対するアンチテーゼとして、特に現代において「働いたら負け」という新しい価値観の創造性を持つ6文字の言葉が成立する事となるのである。
 この「働いたら負け」という言葉は、社会を構成する者達から侮蔑的な視線を送られると供に、現代社会に対して嫌悪感を持つ多くの者達から同意と賞賛の声をもって支持されている。生活保護で生活した方が働くよりも高収入で楽な生活が保障される現在の日本ではある意味ふさわしい言葉になってしまったのは皮肉なものであるーー

ーーといったような雑談は置いておくとして、この宝具の真骨頂は、ニートと接触した人物は誰であろうとも「働いたら負け」という言葉を確固たる真理であるとして相手に認識させる事である。 この効果はサーヴァント、マスター、NPCの区別無く有効。

 この「働いたら負け」の「働く」は非常に広い範囲に当てはまるものだが、この聖杯戦争においては専ら戦闘に当てはまるだろう。
 その場合、一度この宝具の射程内に収まった人物は、どれだけ精神力が強かろうが、聖杯に望みをかけるだけの願望/信念があろうが「働い(戦っ)たら負け」と無意識の内に思い込み、そもそも戦闘を行おうという気すら無くなってしまう。
 また、この効果はAランク以上の直感、またはそれに関するスキルがなければ「働いたら負け」という風に思考が変化させられているということにすら気がつけない。

【weapon】
そんなものはない

【サーヴァントとしての願い】
ニートに優しい世界を創る


485 : 田中広&ニート ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:07:59 qqm1VaJQ0

【人物背景】
 2004年頃からNEETが社会問題化し始めたときに、あるニュース番組で流されたインタビューで上記の宝具の思想を語ったのが彼、24歳のニートである。
 その発言は当時相当な波紋を広げた。
「きめぇwwwwwwwww」とか「神wwwwwwwwwwwwww」とかはともかく、やはり「こんな奴らの生活保護に税金が当てられるなんて」といった正鵠を射た批判も多かった。
 しかし、この軽はずみともとられかねないこの発言は“よく”考えれば様々な解釈が出来る。 例えば、この発言の主は当時24歳で定職に就いていなかった為、人によっては様々なバックグラウンドを想像するだろう。
きっと就活で悉く敗れて開き直った挙句に負け惜しみを吐いて強がりを見せているに違いないといった想像を働かせる人間がいても何ら不思議ではないのである。
 ただ、この手の輩の多くは定職こそは無いものの、財力はその辺の食堂で定食にありつけるくらいの余裕はある。
 一方で、大卒でも就職が難しいこの御時世に中卒の身分で職探しをしなければならなくなったら、厳しい道程が待っている。
 力仕事が主な鳶職、土方、塗装工以外は縦しんば就職が出来ても正社員になるのは絶望的で、まず即戦力扱いには絶対されない。
 職場での冷遇も並ではないだろうし、給料も期待は出来ない。それこそ彼らの言う「働いたら負け」な状態なのかもしれない。
 そもそも他人の走狗などになって権力者に自らの労働を売る事がバカバカしいと思った故の彼なりの労働拒否宣言なのだろうか。
「働かないこと」を美徳と捉えるという新境地に達していることから、「働いたら負けかなと思ってる」との言葉を出すに至ったのだろう。


【マスター】
田中広@中退アフロ田中

【weapon】
そんなものはない

【マスターとしての願い】
とりあえず帰りたい

【能力・技能】
釣り(ヘラブナ釣り)好きでかなり上手い。野球は嫌いだが、野球部顔負けの実力を持つ

【人物背景】
屁理屈屋で単純な性格のアフロ。最近、高校を中退した

【方針】
とりあえず生還。


486 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/07(火) 16:08:28 qqm1VaJQ0
投下終了です


487 : 蒼白き騎士 :2016/06/07(火) 22:07:51 Cjx5RkJw0
投下します


488 : 蒼白き騎士 ◆mcrZqM13eo :2016/06/07(火) 22:08:53 Cjx5RkJw0
某月某日:AM11:30

人で賑わう休日のショッピングモール。二階の男子トイレの個室で震える一人の男がいた。

「や…やめろ…来るな……来るなあああああ!!」


某月某日:同時刻

ショッピングモールの屋上に、豊かな肢体を胸元から臍下まで空いたスーツに包み、その上から白衣を着た褐色肌の眼鏡をかけた美女が佇んでいた。

「これで三度目…そろそろ釣れるはず」


某月某日:AM11:33

男子トイレに入った高校生が、全身を金属製の甲殻に覆われた異形の人型に遭遇した。


某月某日:AM11:34

ショッピングモール内に現れた異形が無差別殺戮を開始した。


某月某日:PM12:47

既に何度も経験済みの警察によりショッピングモールの包囲と、周辺の避難が完了。


某月某日:PM12:53

生きている人間が居なくなったショッピングモール一階に二つの人影が在った。

「なあランサー、やっぱり“アレ”かな」

「実際に見てみないことにはなんとも言えんがな」

この二人はランサーとそのマスター、最近二度に渡って惨劇を引き起こした異形を、聖杯戦争に関連する事柄とみて調査していたところ、この事件の発生を知り、ここにやって来たのだ。

「まあ…間違い無く巷を騒がせている“化け物”だろうな」

「か…勝てるか?」

「どうせ使い魔さ」

そこで言葉を切り、槍を構えるランサー。その前に全身を金属製の甲殻で覆われた、人型の異形が現れた。

「GYASYAAAAAAAAAAA!!!」

「下がってろ!!マスター!!」


某月某日:PM20:11

市街地にあるマンションの一室を、上空から監視する異形が在った。

「フフフ…まずは一匹。」

異形が見つめる部屋に居るのは昼間モールに現れたランサーのマスター。
異形はその能力により、街中の監視カメラ全てを、己が“眼”として使用することが出来た。
あのモールに現れた主従は、誰にも見られていないと思っっているだろうが、実際には顔形から戦い方まで監視され、住居まで特定されているのだった。

「死ねっ!!」

放たれた複数の光弾が複雑な軌道を描きながら、標的がいるマンションの一室に殺到する。
夜の静寂を破る爆発音が辺り一帯に轟き、数瞬後、ガスにでも引火したのか夜闇を赤く染め上げて火が燃え出した。
ランサーのマスターが室内にいることは確認済み。ランサーが居た所でこれではまず助かるまい。

「貴様…!!」

燃え盛る室内からベランダに現れ此方を睨みつけるランサー、一人だけの所を見るとマスターは死んだらしい。その戦果に満足すると、異形は最速を誇るランサークラスの俊足でも到底及ばぬ速度で、夜空の彼方へ飛び去って行った。


翌日

「幸せには……『2つの場合』があると思うんだ。
ひとつは、絶望が…希望に変わった時…幸せだと感じる。

そして幸せだと感じる『2つ目』の状況は…!!
絶望したヤツを見おろす時だあああーーーッ!!」

某所にある個人病院の住居部分で猛る一人の男の姿があった。
男の前には先日ショッピングモールの屋上にいた美女の姿。
女の顰めっ面を意にも介さず、男は言葉を続ける。

「な・ん・で…イキナリ吹っ飛ばしてるんだッ!絶望するヒマも無いだろうがッ!」

「それでは、私がランサーと交戦することになる。」

「戦わなくったって良いんだよッ!今日は良いことしたって思って、いい気になっている所へ、厳しい現実を叩きつけられて希望が絶望に変わる所を記録すれば良いんだよッ!」

「わかりました…以後は気をつけます」

マスターに対する侮蔑が噴出しそうになるのをなんとか堪えて女は頭を下げた。


489 : 蒼白き騎士 ◆mcrZqM13eo :2016/06/07(火) 22:09:42 Cjx5RkJw0
【クラス】
アーチャー

【真名】
ベアトリス・グレーぜ@BLASSREITER

【ステータス】

通常時
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 幸運:D 魔力:D 宝具:C

変身時
筋力:C 耐久:C 敏捷:A++ 幸運:D 魔力:D 宝具:C

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】

ブラスレイター:B
ナノマシンにより人知を超えた力を獲得し、異形にの姿に変わる者達の総称。
アーチャーは高い能力を有する高位のブラスレイターであり、下位種であるデモニアックを使役することが可能。
機械と融合し自分の肉体の様に操る事や、コンピューターのハッキングも簡単に行える。
融合能力の他に、自分の思い描いた「ビジョン」を身体から具現化させられる。
騎乗・道具作成・使い魔・自己改造スキルを併せ持つ複合スキル。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

信仰の加護(偽):B
己が信仰に殉じた者のみが持つスキル。
アーチャーは神では無く個人に絶対の信仰を寄せた為、(偽)がつく。
信心から自己の精神・肉体の絶対性が生じる。

射撃:B
飛び道具を用いて戦う際に命中と威力にプラス補正が掛かる。


490 : 蒼白き騎士 ◆mcrZqM13eo :2016/06/07(火) 22:10:06 Cjx5RkJw0
【宝具】
進化齎す蒼白き馬(ペイルホース)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1〜5

アーチャーの血液内に存在するナノマシン。空気中では一分で分解消滅するが、血液の直接接触や、空気中のペイルホースがかすり傷からでも体内に入ることで感染し、生者と死者を問わず肉体を変容させる。
生者が感染すれば、発熱や咳などの体調不良を起こし、見るもの全てがデモニアックに見えるという幻覚に苛まれ、強い破壊衝動や殺人衝動により凶暴化する。
48時間後に完全にデモニアック化し、上位種のブラスレイターに使役される。
デモニアックもブラスレイター同様、金属と融合し機械を自分の肉体同様に操れる。
死者であれば人格も理性も無く暴れ狂う。
本来は72種の遺伝子パターンのどれかに該当すればブラスレイターとなれるが、この宝具は遺伝子パターンに全く関係無くデモニアックへと変貌させる。
サーヴァントには効果を発揮しないが、マスターにはその効果を発揮する。
この宝具により生成されたデモニアックはEランクの宝具に値する神秘を獲得する。

【宝具】
タイプXXIX(アスタロト)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:自分自身

宝具 進化齎す蒼白き馬(ペイルホース) によりアーチャーが変身した姿。
マッハ5という高速で飛行し、追尾式の板野サーカスな軌道を描く光弾を複数放って攻撃を行う。
細い針の様な爪で近接戦闘を行うことも可能
空軍基地を制圧できる程の数のデモニアックを制御可能

【weapon】
爪:
人間形態でもナイフ程度の長さに伸び、拳銃弾を弾く強度がある。

【人物背景】
かつて貴族の馬の世話をしていた異民(難民の様なもの)世話をしていた馬が老いて役に立たなくなったので毒殺を命じられるが、殺すことが出来ずに馬を連れて逃げ出す。
しかし追っ手に馬が撃たれて致命傷を負い、ベアトリスも暴行を受けて殺されそうなところをザーギンに救われ、ブラスレイターとなる。
その後は目をつけた人間にペイルホースを注入してブラスレイターとし、死体安置所などの死体をデモニアックとして事件を起こさせる。
最後は自分がブラスレイターとしたヘルマンとマレクにより倒される。
ザーギンに心酔してはいたものの、ザーギンの理想である『生きるべき人間を生かす為に、生きるに値しないものを滅ぼす』という考えをどこまで理解していたかは不明。


【方針】
自我の有るデモニアックはいらないので、なるべく死体を集めてデモニアックの軍団を作る。
数が揃えば物量で敵を蹂躙して行く。

【聖杯にかける願い】
受肉して世界中にペイルホースを撒き、旧人類を滅ぼす。


491 : 蒼白き騎士 ◆mcrZqM13eo :2016/06/07(火) 22:10:49 Cjx5RkJw0
【マスター】
チョコラータ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風

【能力・技能】
医学関係に高い技術と知識を持つ。人間への拷問に転用可能

スタンド:グリーン・デイ
【スタンド】
スタンド名『グリーン・ディ』
破壊力ーA スピードーC 射程距離ーA 持続力ーA 精密動作性ーE 成長性ーA

全身から煙上のカビを噴出しているかの様な人型。

生物を腐らせる殺人カビを散布するスタンド
殺人カビの発動条件は『現在位置より低い場所に移動すると発動する』というもの。
その殺傷能力は車から降りただけで死ぬ。坂道を下ると、身体が足からバラバラになって行く。という超凶悪なレベル。
しかもこのカビは死体から人に感染する。射程距離は作中からすると都市一つ分。
このカビは生物にしか生えない為、死体には効かない。カビに侵食された生物学死亡すればそこで侵食は止まる。

応用として傷口をカビで覆って止血することが可能。バラバラ状態になっても死なない。そして動き回れる。


【weapon】
役割上で手に入れた薬物とメス

【ロール】
個人病院を経営している。病院のある場所は、燃えるゴミは月水金に出すことになっている地区。

【人物背景】
ブチャティに『吐き気を催す邪悪』と評されたディアボロでさえ「最低のゲス」「生かしておきたく無い」と言わしめるとんでもない外道。
グリーン・デイを街中で平然と使用するその性格は真性の狂人である。

元々は医者で、医療ミスにより患者を死なせて、解雇された所をボスに拾われてマフィア入り……というのは表向きの話で、実際には医療ミスに見せかけて患者を殺していた。
これ以外にも最低でも四人の健康な人間を、病気と診断し手術を行ったり、麻酔を弱くして手術中に覚醒させるといった鬼畜行為を行っている。

人の死に強い好奇心を示し、それを観察することで至上の喜びに満たされるという性癖を持つ。
14~16歳の時に従事した寝たきり老人への介護活動の際には、肉体的・精神的に追い込んで少なくとも9人自殺させている。
年寄り達が追い込まれ、絶望し、自殺するまでを克明に記録していた。
医者になったのは人の痛みや死をより間近で観察できる為である。

【令呪の形・位置】
五芒星の形をしたのが右掌に有る

【聖杯にかける願い】
ボスの死。大規模な災害を発生させて人間が苦しむ様をよ〜く観察し、記録する。

【方針】
人の死を観察する為に大規模な災害を発生させる。他のマスターは絶望するまで嬲って、その様をよ〜く観察し、記録する。

【参戦時期】
ボスにより解き放たれる前

【運用】
直接戦闘能力が低いが、宝具を用いた情報収集能力はかなり高い。
大量発生したデモニアックによる数の暴力も有効な手段。


492 : 蒼白き騎士 ◆mcrZqM13eo :2016/06/07(火) 22:11:19 Cjx5RkJw0
投下を終了します


493 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 12:57:12 fbSbdNT.0
投下します


494 : 指導者たち ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 12:57:48 fbSbdNT.0

世界をアップデートする。
人々の内発性を促し、更なる進化を齎す。
そうすれば人類は変われる。
より良い方向へと進める。
世界を変えるのは英雄(ヒーロー)ではなく、大衆。


それが彼の掲げる理想だった。


少年は世界をつまらないだと思っていた。
流されるだけの大衆。
変化を望まない社会。
そんな世界のままでは駄目だと思っていた。
だからこそ、彼は世界を革新させることを望んでいた。

自分を信じて、理想を掲げれば、世界は変わる。
その為に彼は『GALAX』を作った。
それは電脳空間での人々の交流を可能とするソーシャル・ネットワーキング・サービス。
時に彼らに『ミッション』を与えることで自発的な行動を促し、人間の革新を少しずつ進めてた。

そして、彼にとっての切り札――――それは『CROWDS』。
人間の意思が形となった化身。
少年が掲げる『自発的な行動による人間の革新』という理想の為の力。
ベルク・カッツェという凶悪な宇宙人の一件を乗り越え、彼はCROWDSの有効活用を押し進めた。
人々が自らの力と意思によって世界をより善くしようとうることで、世界は変革出来る。
人々の意思はより良い形で進化できる。

その為にも聖杯に頼る訳にはいかない。
世界の革新とは、奇跡に頼るべきものではない。
自分達の意志と行動で世界を動かしてこそ意味があるものだ。

世界に必要なのは、奇跡ではない。
必要なのは、理想。
必要なのは、可能性。
それを伝えるのが自分の役目であると。
GALAXの支配者は己をそう定義する。


マスター、爾乃美家 累(にのみや るい)。
彼はヒトの未来を信じていた。


495 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 12:58:34 fbSbdNT.0
■■■■■■



「僕は聖杯を求めません」


高層マンションの一室にて、青年ははっきりとそう告げる。
ほう、ともう一人の男は僅かな関心の声を上げた。

そこは巨大なモニターの取り付けられた広いリビング。
二つのティーカップが置かれたテーブルを挟み、『青年』と『仮面の男』が向かい合うようにソファーに腰掛けていた。
青年は金髪の“かつら”と黒いドレス風の衣装を身に纏っている。
彼はれっきとした男性だ。にも拘らず、女性的な衣装を身に纏っている。
それが彼の趣向であり、一種の個性なのだ。
そして、その右手の甲には電気の波を思わせるような『紋様』が刻まれている。
サーヴァントに下せる絶対命令権、令呪がカタチとなったものだ。

青年の名は爾乃美家 累。
この聖杯戦争に召還されたマスターである。
そして彼と向かい合う仮面の男こそがサーヴァント。
此度の聖杯戦争では『ライダー』として召還された者だ。


「予想外だな。君には信念があると思っていたのだが」
「はい、僕は世界を変えることを望んでいます。ですが、聖杯などと言う奇跡に頼るつもりはありません。
 都合の良い願望器による変革……それでは本当の意味での革新とは言えません。
 僕は僕のやり方で世界を変えます。そのためにGALAXが……CROWDSがある」


ライダーは意外そうに淡々と言葉を連ねる。
累の望みはあくまで『人類の自発的な革新』である。
人類が自分の内発性に従って動き、自分達の意志で世界を良くしていく。
それこそが彼の望むアップデートだ。
人はあくまで、人の意志で進化しなければならない。
だから累は聖杯に頼る道を選ばなかった。
奇跡と言う都合の良い代物で世界を革新させては意味が無い。
世界を変えるのは大衆でなくてはならない。
魔法のような奇跡に頼っては、本当の革新とは言えない。


「僕の望みは、あくまで人類が自分の意思と行動で革新することです。
 だから僕は、聖杯を求めないし使いもしません」
「では君はこれからどうする?生きて帰るための手段を探すのか。
 あるいは戦いを拒絶し、この世界で心中するか」


聖杯を使わず、求めもしない。
ならばどうするのか。
ライダーの問い掛けに、僅かな間の後に累が口を開く。


「当面は生き残るための手段を探します。
 出来れば、戦わずしてこの聖杯戦争から脱出する手段を」
「あると思うのかね?」
「可能性に賭けてみる価値はあると思います」


累が選んだのは脱出の道。
無益な戦いから抜け出すための手段だ。


496 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 12:59:03 fbSbdNT.0
ライダーは彼の言葉を聞き、ティーカップに手をつける。
その場で静かに紅茶を啜った後、再び口を開いた。


「もしその手段が無かった時は?」
「……その時は、状況によって判断するしかありません。
 生き残る為に他者を蹴落とすという手段は、出来れば使いたくない」
「だが、必要とあれば使うことも考えるかね?」


ライダーの言葉に僅かながら累が表情を顰める。
淡々と機械のように問い掛けるライダーの言葉に、どこか不気味な感覚を覚える。


「ルイ君、君の意見は尤もだ。他者を蹴落とすということはこの場に於いて殺人に繋がる。
 君のような若者が殺人に忌避感を覚えるのはごく自然なことなのだからね。
 だが、同時にその意見は極めて不安定なものとも言える」


累を諭すように。
だがどこか他人事を語るように、ライダーは言葉を連ねる。


「此処で起きているのは聖杯戦争……そう、戦争だ。
 戦争で人は死ぬ。それは至極当然のことだ。
 生きる為に誰かを蹴落とす、勝つ為に誰かを仕留める。
 それくらいの覚悟はしてもらわないと困る」


累に告げた言葉は、現実を突き付けるものだった。
これは聖杯戦争、『戦争』なのだと。
戦場において人が死ぬことは当たり前だ。
かつて軍人として、争乱の指導者として戦った男だからこそ、そう言い切れた。
戦士として徴集された者が戦わずしてどうする。
生きる為に、勝つ為に戦うことは悪ではない。
その程度の覚悟すら出来ぬ者は大抵野垂れ死ぬのだ。
己のマスターである累にライダーは釘を刺すように告げる。


「それは……解っています。ですが、それでも僕は」
「『それでも』か。君のような少年をかつて見たことがある」


累の言葉を、ライダーの言葉が遮った。
どこか懐かしむように、煩わしく思うように、ライダーは言う。


「少年は君のように理想と可能性を愚直に信じていた。
 危険な存在ではあったが、君とは違い武器を手に取る意思はあった」


ライダーが思い起こすのは、かつて自分と戦った少年のこと。
少年は戦いを否定しながらも、理想のために敵へ立ち向かう道を選んでいた。
少年は最後まで自分の敵として立ちはだかった。
彼は武器を手に取った。
ならば、目の前の爾乃美家 累はどうか?


497 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 12:59:32 fbSbdNT.0


「ライダーさん、僕は―――――」
「まあ、このことに関してはゆっくりと考えるといい。時間はまだあるのだからね。
 君は賢い少年だ。GALAXという文明の利器を自らの手で開発し、更には確固たる理想を備えている」


だが、とライダーが一言区切る。


「同時に君は誰よりも人の革新を信じている。
 そんな君に大人としてアドバイスをさせてもらう。
 気付きたまえ。君の理想論は決して実を結ばない」


ライダーは告げる。
己のマスターである累の理想を、一蹴する。
人類の自発的な進化、革新、アップデート。
そんなものは理想論でしかない。
実を結ばぬ絵空事に価値はないと、ライダーは述べる。

累は僅かに顔を俯かせ、沈黙する。
彼の言う通り、自分が掲げているのは理想論だ。
だが、理想さえも失ってしまえば人々の進化の道は本当に閉ざされてしまう。
絶望と諦観に支配されては、人類は永遠の変わることは出来ない。


「僕は……貴方ほど人類に絶望はしていない。
 確かに人は過ちを犯します。僕はそれを幾度と無く見てきました。
 ですが、それと同じように、僕は人間の可能性を何度も見てきました!
 内発性を育て、自らの意思で世界を変えようと努力する人間を――――」
「絵空事に等しい奇麗事を信じたいという君の心情は理解出来る。
 それが若さ故の過ちというものなのだろう」


自らの理想の正当性を語らんとする累。
そんな彼の言葉に対し、まるで諭すようにライダーが口を挟む。


「しかし、理想に意味など無い。具体性の無い奇麗事で人は救えない。
 例え大衆が愚かでも、僅かな善意と内発性を持つ人間がいれば未来は動くかもしれないと?
 もしそうであるのならば、人類はとうの昔に進化しているだろう。
 何時の時代でも理想を語り、叡智を授けんとする者はいた。だが、それはいずれも潰えた。
 愚かな大衆と腐敗した官僚によって蹂躙され、時の流れに巻き込まれる形でゆるりと滅んでいった」


淡々と、黙々とライダーは己の理論を紡ぐ。
累は彼の言葉を聞き、ただ沈黙する。
正論や現実主義とも言えるライダーの思想に、言葉を失う。
確かに彼の言う通りなのかもしれないと心中で思う。
だが。
だが、しかし、何なのだろうか。
彼の言葉には、熱を感じない。
現実を突き付けられている、という冷たい感覚はある。
それ以上に、彼の言葉からは諦観のようなものが滲み出ていた。
世界や人類というモノの可能性に絶望しているかのような感覚。
初めから人間の理想を無意味だと拒絶しているかのような言霊。
それが何よりも不気味で、そして恐ろしかった。
まるで『機械』と話しているかのようだった。
この男は、一体何を見てきたのか。
この男は、今までどのような生を歩んできたのか。


498 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 13:00:04 fbSbdNT.0


「いずれ滅びる幻想に拘っていても仕方が無いとは思わないかね。
 理性を以て現実を受け入れ、人々の総意に従って動くことこそが正しき指導者の姿だ」
 

人類の総意に従って、生きる。
累は、そんな者を知っていた。
ゲルサドラ。
人々の希望となり、理想の象徴となり、やがて日本の首脳となった宇宙人。
彼は善意の塊であり、同時に人々の総意に従うことを選んだ。
皆の理想を実現することで、皆は一つになれると。
そう信じていた。
だが、それでは駄目なのだ。
一人のヒーローに責任と理想を背負わせるだけでは、人間は変われない。
それでは、世界を革新させることは出来ない。

善意のゲルサドラと、現実主義のライダー。
二人の在り方は違えど、人々の総意の器という意味では近かった。


「奇跡に等しい光を知って尚、人は未来へと進むことが出来なかった。
 同じことだ。例えGALAXやCROWDSという道具があろうと、人は決して変わらない」


人類への絶望とも言えるライダーの言葉に、累は何も返せなかった。
累は心の奥底で薄々感じ取っていたからだ。
彼はGALAXやCROWDSを使い、人々の内発性を促してきた。
それらによって、世界を良くしようと動く人々を見てきた。
だが、それと同時に彼は目の当たりにしてきた。
理想を掲げようと、変わらぬ世界を。
理想さえも一過性の熱として終わる社会を。
正しき者のみが世界を善くしようとし、大多数はただ流されるだけという人間の在り方を。
世界をアップデートすると言う理想を掲げようとする中で、薄々と現実には気付いていた。
自分の行動に意味はあるのか。
自分のやっていることに価値があるのか。
そう思うことは、幾度と無くあった。
だが、それでも。
それでも。
彼は、理想を貫く。



「変わります。変えてみせます」



それは気高き理想か。
あるいは、後に引けなくなった少年の妄執か。


499 : ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 13:00:31 fbSbdNT.0
■■■■■■



世界をアップデートする。
人々の内発性を促し、更なる進化を齎す。
そうすれば人類は変われる。
より良い方向へと進める。
世界を変えるのは英雄(ヒーロー)ではなく、大衆。


それは幻想だ。


人は変わらない。
奇跡を目の当たりにしようと大衆を導く英雄が現れようと、決して。
人類の本質は永遠に変わることはない。
短い枠組みの中で繁栄と衰退を繰り返し、未来へと進むこと無く停滞していく。
そう、大衆は決して進化しない。
それ故に人類を導く価値は無い。
成長を促す意味も無い。

世界をアップデートさせる必要など無いのだ。
人類は先へ進めはしないのだから。

ならば、どうするか。
ただ大衆(クラウズ)の望みを受け止める指導者になればいいのだ。
そして可能性を放棄した者達に相応の未来を与えてやればいい。
それこそが『英雄』として持て囃された者が成すべきカルマなのだ。

その為にも聖杯が必要だ。
マスターが必要とせずとも、自分にとっては必要なものなのだ。
今はマスターと協力をするが、然るべき時に聖杯は手にさせて貰う。
最悪、マスターの乗り換えも考慮するべきだろう。


理想など、最早必要は無い。
可能性へと羽ばたく翼など、最早必要は無い。
それを喰らい尽くすのが『赤い彗星』の役目であると。
仮面を被るライダーは己をそう定義する。


ライダーのサーヴァント、フル・フロンタル。
彼はヒトの未来に絶望し切っていた。


500 : 指導者たち ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 13:01:24 fbSbdNT.0


【クラス】
ライダー

【真名】
フル・フロンタル@機動戦士ガンダムUC

【パラメーター】
筋力E 耐久E+ 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具C+

【属性】
中立・悪

【クラス別スキル】
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
モビルスーツ等戦闘機の扱いに長ける他、現代の乗り物も一通り乗りこなせる。

対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

【保有スキル】
強化人間:B
人為的に生み出されたニュータイプ。
通常の人間より感覚や空間認識能力が優れている。
またCランク相当の直感スキルを備える。
英雄の再来として作り出されたフロンタルは“大衆の望み”を受け止めるだけの空虚な器に過ぎない。

【宝具】
「可能性を喰らう者(シナンジュ)」
ランク:E+ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
地球連邦宇宙軍再編計画「UC計画」の一環としてアナハイム社が開発した試作モビルスーツ。
搭乗者の脳内操縦イメージを思考波として機体に感受させることにより、極めて高い追従性と機動力を実現している。
本来は全高22mのモビルスーツだが、聖杯戦争においては半分程度である10m前後の大きさでしか召喚できない。
これはモビルスーツが魔術の概念とは相反する科学の産物であり、聖杯による十分な再現が出来ないためである。

(機体スペックのパラメーター換算値)
筋力B+ 耐久A 敏捷A++

「赤き墜星、再臨の英雄(ローター・ヘルト)」
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
堕ちたはずの英雄、赤い彗星の再来―――それがフル・フロンタルという男である。
スペースノイドによる赤い彗星への崇拝、そしてフロンタルの中に宿るとされる赤い彗星の残留思念が宝具と化したもの。
フロンタルは空虚な器に過ぎない。赤い彗星としての皮を被ることによって初めて“英雄”となる。
フロンタルが“赤い彗星の再来”として振る舞うことで自身の判定と宝具「可能性を喰らう者」に有利な補正が付き、更に以下のスキルが付加される。

カリスマ(偽):A
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
パイロットとしての卓越した技量と優れた指導力を備え、スペースノイドからは“赤い彗星の再来”として絶大な指示を得ていた。
しかしそのカリスマ性はフロンタルが“大衆の望むシャア・アズナブル”として振る舞うからこそ発揮されるものである。
そのため、このスキルによるカリスマ性はフロンタル個人によるものではない。

軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

赤い彗星:A
真紅の機体を操り、彗星の如く戦場を駆け抜けたパイロットとしての逸話がスキル化したもの。
モビルスーツ操縦時、敏捷判定と回避判定に有利な補正が掛かる。
また自身の攻撃の命中率が上昇する。

操縦:A
騎乗スキルの派生スキル。パイロットとしての技術がスキル化したもの。
モビルスーツや戦闘機の操縦において卓越した能力を発揮する。
Aランクともなればエースパイロットと称されるほどの実力。

これらは全て、サーヴァントとして召喚された場合の「シャア・アズナブル」が備えるスキルの変質である。


501 : 指導者たち ◆LcV7nR6Y/s :2016/06/10(金) 13:01:59 fbSbdNT.0
【Weapon】
ビームライフルやビームサーベルなどのシナンジュに搭載された武装。
フロンタル本人も弱い神秘を持つ拳銃程度ならば備えている。

【人物背景】
赤い彗星と呼ばれた男「シャア・アズナブル」を失い、統率を失ったジオン残党の下に突如として現れた男。
かつてのシャアを思わせる出で立ちと振る舞い、政治家やパイロットとしての確かな実力によって絶大な支持を集め、
「シャアの再来」としてジオンの新たな指導者となる。
その正体はジオンの官僚がシャアに代わる新たな求心力として作り出した強化人間。
彼の本質は「大衆が望むシャア・アズナブル」を演じるだけの空虚な男に過ぎない。
シャアが持っていたような人間的な弱さは一切見せず、常に淡々と強かに、そしてどこか世界への諦観を抱いているかのように振る舞う。

ある物語では虚無と憎悪に突き動かされるがままに戦い続け、少年に討たれた。
ある物語では「赤い彗星」を含む三人の英雄によって浄化され、少年に未来を託した。
フル・フロンタルは二つの歴史において異なる結末を辿っている。
此度の聖杯戦争で召還されたのがどちらのフロンタルであるかは定かではない。
唯一つ確かなこと。それは指導者としての属性を持つ累の影響で、サーヴァントであるフロンタルもまた
「スペースノイドの総意を受け止める器にして指導者」としての側面が色濃く出たということだけだ。

【サーヴァントとしての願い】
“聖杯”というラプラスの箱をも超える切り札によってスペースノイドの望みを実現する。

【方針】
聖杯を獲得する。




【マスター】
爾乃美家 累(にのみや るい)@ガッチャマンクラウズ

【マスターとしての願い】
なし。
世界の革新は奇跡の力で叶えるものではない。

【weapon】
「NOTE」
ガッチャマンに変身するための手帳に似た道具。
NOTEを傷付けられると本体もダメージを負う。

【能力・技能】
「CROWDS」
人間の意識が実体化した巨人。
累が開発したアプリを使うことで召還でき、累にアプリを与えられた他者もCROWDSを召還することが可能。
CROWDSは一人につき一体であり、当人の意思で自在に操れる。
高い身体能力を持つものの一定のダメージを受けるとキューブ状になり、そのCROWDSを操っていた者は気絶してしまう。
アムネジア・エフェクトという能力を使うことで不可視化することも可能だが、魔力を備えるマスターとサーヴァントには常に視認ができる。

「ガッチャマン」
NOTEによってガッチャマンに変身することが出来る。
ガッチャマン変身時には身体能力が大幅に増す他、累固有の能力としてネットワークに接続された端末を通じて空間移動をすることが出来る。

【人物背景】
巨大SNS「GALAX」を開発した18歳の少年。
天才的な頭脳を持ち、GALAXを管理するAI「総裁X」も彼が開発している。
「世界のアップデート」という目的を掲げており、自発的な行動や意思による大衆の革新を望んでいる。
外出時には常に女装をしており、女装癖がある模様。

高い知性を備えながらも、彼はあくまで理想主義に拘る。
累はどれだけ愚かな現実を目の当たりにしようと、人間の革新を信じ続けている。
それは人間の可能性を否定し、世界への諦観を抱くフロンタルとは対極の在り方である。

【方針】
戦わずして脱出する方法を探す。
もしも戦う以外の手段が無ければ……


502 : 名無しさん :2016/06/10(金) 13:02:13 fbSbdNT.0
投下終了です


503 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 05:21:45 Yns8l7gM0
皆様投下乙です!それでは感想を。

>>雨宿まち&バーサーカー

ああ、地獄じゃ…嫌じゃ…このサーヴァントは地獄じゃ…
しかしトンデモナイ鯖が出てきた物です、来たら聖杯戦争にならなくなりますね。
ご投下ありがとうございました。


>>マキ&ランサー

「嫉妬」という感情で引き合った二人の戦士。
恐ろしいこと極まりない嫉妬という感情に溺れた二人の運命は如何に。
只相当危険なマーダーにはなりそうな予感。
ご投下ありがとうございました。


>>アイリスフィール&アーチャー

強大な力を持った子を産み、その子を助けようとするという鯖ですか。
成る程、アイリと相性が良さそうなマスターですね!しかし願いは無く、
聖杯を奪うために戦おうとするアイリの姿には、何処か切なさを感じさせます。
ご投下ありがとうございました。


>>刹那・F・セイエイ&アーチャー

中の人繋がりかよ!!という話はさておき、やはりゼロはブレスを刹那に嵌めて現界か・・・
ランやタイガといった人々にブレスとなって寄生してきたゼロにはある意味相応しい現界の仕方かなと思いました。
ウルトラマンはかなり強力な鯖ですので、せっちゃんは上手いこと戦い抜けると思います。
ご投下ありがとうございました。


504 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 06:43:14 Yns8l7gM0
>>笛口雛実&サーヴァント

オイィィィ!!何じゃこのサーヴァントは!
とまたもや思いましたが、何か凄く喰種らしい鯖ですね。
ちゃんヒナの元に喚ばれたのが少し、分かった気がします。
ご投下ありがとうございました。


>>岸田純&キャスター
アイエエエ!?!オバケ!?オバケナンデ!?
もう肝試しの時期という時にオバケですか、怖え。
亡霊を鯖にしてしまったマスターさん、ご愁傷様。
ご投下ありがとうございました。


>>冬野かなた&アヴェンジャー

復讐を望むマスターに、復讐を代行するサーヴァント、ですか。
「誰かの」復讐を代わりに行うアヴェンジャーとは、これまた驚きですが、
悲しき過去を持った彼女にはもってこいのサーヴァントだと思います。
ご投下ありがとうございました。


>>ロベリア・カルリーニ&セイバー

おお、ブラックコンドルですか!しかしゴーカイジャーの設定も含めているのが何処かうまいな、
と感じました。にしても仲間が座にいる事自体が憎い、というのが驚きでした。「仲間をこれ以上戦わせない」
という願いに胸がドキッと来ました、ハイ。それとバーでの会話シーンはやはり渋いっすね。
ご投下ありがとうございました。


>>田中広&ニート

「働いたら(ryの元ネタってこれだったのか!というのはさておき、
またニートクラスかよ!何なんだよ一体どうなっているんだ聖杯は!!
とは言えど地味に宝具は強いですよねこのニートさん。
お外には戦えない状態にありますが…まあ…やっていけるでしょう、彼等なら(白目)
ご投下ありがとうございました。


505 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 06:51:25 Yns8l7gM0
>>チョコラータ&アーチャー

ジョジョと、ブラスレイターからですか、これはまたマニアックな。
しかしこの暴言吐きまくるマスターと、心内で舌打ちするサーヴァントなんて、
駄目なパターンの典型じゃないですか…果たして彼等は、こんな状況で戦い抜けるのか!?
ご投下ありがとうございました。


>>爾乃美家累&ライダー

まさかの丸裸大佐が参戦とは。
小説版のラストとOVA版のラストを其様に解釈しているのは少し驚きました。
ネオジオングが持ってこれなくなったのは其の影響かな、と思ったり。
自分とは真逆の、「あの少年」に近い思想を持ったマスターに、大佐は何を見るのか。
ご投下ありがとうございました。


506 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 06:56:20 Yns8l7gM0
皆様ご投下ありがとうございました。それでは私も「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」で
書いたコンペ作を再利用する形で投下いたします。


507 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 06:58:13 Yns8l7gM0
ー過去の時代、弱肉強食に立っていたと言われていたのは、人類・・・ではなかった。
人類を超える種族は、人を喰らい、滅ぼし、生き残った人類は三層の壁で仕切られた小さな世界で、
満足気に暮らしていた。
しかし、百年がたったある日、彼らはかつての恐怖を思い出した。
やがて、彼らは、かつて自分達が「進撃」された者達への「進撃」を開始していった。



ー未来の時代。人々は、「力」を求めた。
しかし、それをうまく扱うための「想い」が無かった。
故に、彼らの中に「憎しみ」が生まれた。
憎しみによる争いは憎しみを生み、それが新たなる争いを生んだ。
いつになったら、その連鎖は断ち切れるのだろうか。



◆  ◆  ◆



「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・!」
人々が自宅に着いている頃であろうこの時間に、
幾つもの燃え上がる炎が、黒く包まれた夜を赤く染めていく街中で、
エレン・イェーガーは走り続けていた。
さっきまでは聞き慣れなかった爆撃音も煙も、今ではすっかり景色に溶け込んでしまっている。




上空からは、絵本にでも出てきそうな格好をした騎士が、真紅の竜に乗り、炎を吐かせ上空を飛行し、こちらへ向かっていた。
この姿を見た瞬間から、彼はその異様な者から逃げていたどれくらい逃げたかも分からない、ただ彼は走り続けた。
エレンは今、ここから数百メートル先にある地下鉄への入り口に向かっている。そこにならあの竜も来られない。
腕時計が示している時間は、10時20分。大丈夫だ、間に合う、あと少しだ。そう考えながら走り続けようとしたが・・・

「うわっ!」
一瞬、右足に強烈な痛みが走ったと同時に、エレンの身体は宙を舞い、数十メートル先の地面に叩きつけられた。
「痛っでぇぇぇぇぇ!」
体中が、ズキズキと激しく痛む。それでもエレンは、上体を起こし、何とか立ち上がろうとするが、
右足が、立たない。いや、感覚すら感じられない。
それでも、背中を表にして倒れた自分の身体を返し、上体を起こそうとする。
這いつくばってでも逃げよう、そう考えながら。
「ハァ・・・ハァ・・・・」
やはり先程叩きつけられた時の痛みは効いていた、だが何とか起こすことは出来た。
自分が倒れた丁度
そして、感覚を失った自分の右足を見てみる。
きっと輪切りにされた人参みたいになっているだろう、そう思いながら。
だが、出血は見られなかった。
「・・・・え?」
代わりに傷口から出ていたのは、水蒸気の様に空へと上って行く粒子状の何かだった。
そして自分は、これに対し何らかの既視感を覚えた。
そして、辺りに建っている建物を見た時、何故か違和感が湧き上がってきた。
まるで、今まで貯めこんだ物が、全部溢れだしたみたいに。
何でこんなところに自分がいるんだ、という疑問に至った、その時だった。
さっきまで上空で竜の手綱を握っていた男性が、目の前に、ゆっくりと、淡々とした表情で、
こちらに近づいて来ていた。
「万事休す、か・・・。」
そう言って、騎士は腰から剣を引き抜き、
「済まないな、少年、ここで死んでくれ」
エレンの頭上に刃を構えた。
エレンは首にぶら下がっている自分の家の鍵を見つめ、心の中で呟いた。
俺は・・・ここで死ぬのか・・・・。





冗談じゃない。
ようやく調■■団に入れたのに。

■んだあいつらの■も取れていないのに。

まだ■ォー■・■リ■の奪還も成功していないのに。


そこにある■■室にも辿り着いていないのに。



まだ■人を全て駆逐し切れていないのに。

「畜生ォォォォォォォ!!」


508 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 06:59:43 Yns8l7gM0



そう叫び、エレンは本能的に左手を食いちぎろうとした。

―瞬間。

不意に手が熱くなり、赤く光り出した。
赤い光と熱い熱には慣れかけているが、
そして、自分を殺そうとした騎士の様子もおかしかった。
驚いた表情をしながら、彼の赤く光る左手を見つめていた。
「・・・・・馬鹿な・・・彼が・・・マスターだと!?」
そして、エレンが噛もうとした手の甲に、赤い光が、
何かの紋章を描き、それを残して、消えた。



ー思い出した。全てを。
だが、この刺繍は一体何なのか、自分は何故ここにいるのか、
そして、目の前にいる騎士の言う「マスター」とは何なのか。今でも分からないことだらけだ。
こんな状況をどう打破すればいい。
「・・・マスターなのなら丁度いい、消えてもらうぞ!」
そんな中、騎士が再び剣をエレンに向けてきた。


ー刹那。


騎士の背後で大きな爆発が起きた。
エレンはやはり爆風で更に後ろに吹き飛ばされた。
今度は背中を地面にぶつけた。吹き飛んだのはこれで二度目だ。
度重なる痛みを堪え、地面に向いていた顔を再び前方に向けると、そこには
さっき自分を殺そうとした騎士はいなかった。




しかし、上空からは、


『■■■■■■!!』


人の咆哮が聞こえてきた。巨人の様な。



そして今度は暗い虚空に目を向けると、


そこでは、さっきの騎士があの竜に跨り、空中に浮かぶ一体の巨人・・・らしきものと戦っていた。
青と白を組み合わせたような色の鎧を全身に纏い、背中にある蝶の様な輝く翼をはためかせ、大剣を両手で持っていた。
巨人に見えるが、あれはどう考えても巨人ではない。鎧を纏った巨人なら戦ったことがあるが、武器を持った巨人など聞いたことがない。
仮に巨人だとしたらハンジ隊長が喜んで可愛がってくれそうだが。しかし、其の巨人を見た途端、エレンの脳内に数値と、情報が埋め込まれていった。
そして、それを見てエレンは再び呆然とする。

「あの白い巨人が…俺の仲間…『サーヴァント』!?」

そして白い巨人もどきは竜に向かい斬りかかろうと距離を詰めながら飛びかかって行き、竜が火を吐きながらそれを回避していく、そして鎧が再びそれを追いかけ、
竜は回避していった、一体と一騎の戦いは、その繰り返しであった。


509 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 07:00:04 Yns8l7gM0







「・・・あの少年のサーヴァントか・・・一体何のクラスなんだ?!」
エレンを襲ったサーヴァントは、宝具である竜に跨りながら、今自分が戦っている巨人の姿に困惑していた。
何なんだあのサーヴァントは。クラスも真名も見当が付かない。
先程は銃を使っているから、アーチャーなのか、それとも今は剣を振るっているからセイバーなのか。
しかしあれは、どう考えても異様すぎる姿だ。この竜と同等以上の大きさで、かつ全身を甲冑で隙間無く包み込んだ、
翼を持つ戦士など。
単なる「武装した巨人」ならスルト、ヒルデなどがいるが、翼を羽ばたかせ近代兵器を使う英雄は知らない、
(聖杯の知識にはそんな英雄は存ざ・・・ いや待て、中には鋼鉄の人型の搭乗型宝具を持つ英雄もいるとされていた。)
となるとクラスは自分と同じライダーか。しかし相変わらず真名は分からない。
そう考えれば説明がつく。となるとクラスはライダーが妥当か・・・・
そんな事を考えながら、ライダーは敢えて距離を取りながらあの白い全身装甲の巨人に向かい竜に火を吹かせ続けた。


ライダーの推察は、半分正解、と言っていいだろう。
人型の搭乗型装甲が彼の宝具、そこについてはビンゴだ。
しかし、クラスについては残念ながら間違いだ。
だが、彼は気づいていなかった。鎧の装着者に、理性など無かった。




「■■■■■■!」



巨人の心臓に当たる部分で手綱を握っている少年の目に、輝きは無かった。
有るのは、狂気。
家族を、愛した少女を、多くの仲間達を奪った「争い」に対する憎しみ。
争いを争いで終わらせる、血で血を洗う矛盾した正義。
それらを全て狂気に替えて、少年は愛機を操り続けた。
そう、彼のクラスは、「狂戦士」




どうにかさっきまで距離を取っていられたライダー。
しかし、どうやらここまでだ。
バーサーカーは咄嗟に剣をしまい巨大なライフルを取り出し、竜の炎を相殺させてしまった。
彼は狂っていても尚、エースパイロットとしての優れた操縦技術は失っていなかったのだ。
そしてその衝撃でライダーも竜も吹き飛び、バランスを崩してしまう。
この隙を、バーサーカーは逃さなかった。
すかさず剣を抜き、竜に向かい斬りかかる。
果たして竜の身体は真っ二つにされ、ライダーは地面へと落ちていった。
ライダーはマスターに念話で頼み、令呪で引き返そうと考えるが・・・
刹那、ライダーは光に包まれ、光が消えた後、そこにライダーの姿はいなかった。
上空には、手の平に仕込まれたレーザー砲を、さっきまでライダーがいた場所に向けていた
バーサーカーがいた。


「あれが、俺のサーヴァント…バーサーカー…。」

エレンは、口がパッカリ開いているのも忘れてそれを見つめていた。
だがバーサーカーは、それにも気付かず上空に立ったままだった。

しかし、これはエレンにとってはまたとない機会だ。
聖杯戦争、それに勝ち残ることで手に入る「聖杯」
そしてその聖杯には「願いを叶える万能の力」が備わっていた。
そしてエレン・イェーガーもまた、それを渇望していた。
エレンには、どうしても叶えたい願いがある。

(駆逐してやる…)

その願いへの近道が、今此処にある。
母を殺した巨人は死んだが、それでこの俺の憎しみが消えたわけでもない。
もう、これ以上仲間を死なせたくはない、壁外調査の度に消えて行く同期達の姿はもう見過ごせない。
抜け出して自分達の手で叶えるのも悪くはない、でも、

(巨人を…)

子供の頃、本で見た壁の外の世界に行ける、この閉じ込められた壁内から抜け出せる。
その為なら…俺は…

(この世から…)

この手を血で染めたっていい、俺は、聖杯を手にして…

(一匹残らず!!)

巨人達に「進撃」してやる!!


狂戦士を見つめるエレンの眼に、光が宿った。
その様を、上空から見つめていた狂戦士は間もなく霊体化した。


人と、人を超えた存在。
互いを憎み合う二人の復讐者の少年は今ここに、主従の交わりを結んだ。


510 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 07:03:58 Yns8l7gM0




【クラス名】バーサーカー
【出典】機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【性別】男
【真名】シン・アスカ
【属性】秩序・狂
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具D (デスティニー搭乗時)


【クラス別スキル】

狂化:C
魔力と幸運を除くパラメータを底上げするが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。



【固有スキル】

開花された本能:A+
本能の種を割り、覚醒させる力。
自らのパラメータと知能を活性化させる。
このスキルは、他のクラスで呼んだ場合はランダムで狂化スキルを
付与させるが、本来なら狂化により無意味にされてしまうはずの戦闘用スキル
に+補正を加え、最大限に使用出来るようになっている。
長い時間発動はしていられないのだが、今回はバーサーカー
のクラスで呼ばれたため、その影響で常時発動していられる。
バーサーカーが狂っていてもその戦闘技術を失わなかったのは、
このスキルの恩恵を受けているためである。



直感:B+
常に最適な展開を「感じ取る」能力。相手の行動を読み取る事が出来る。
コーディネイターとして手にした天性の才能。
スキル「開花された本能」の影響で+補正が働き、その直感は未来予知に近い物へと
変わっている。


騎乗:D
乗り物を乗りこなす才能。
バイクやモビルスーツなどなら人並みに乗りこなすことが出来る。





【宝具】

「改革を護る運命の剣(デスティニー)」

ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:10機

バーサーカーが生前愛用していた人型機動兵器「モビルスーツ」。
ギルバート・デュランダルが、自らが考案した「デスティニー・プラン」の
実行に合わせてロールアウトしたシン・アスカ専用のザフト最新鋭の機体。
「ニュートロンジャマーキャンセラー」による核エネルギーによる運用により、
消費する魔力は少ない。また、この機体及び装備は、魔力による
メンテナンスを可能としているが、消費する魔力はダメージに連動する。




【Weapon】

「改革を護る運命の剣(デスティニー)」の装備一式


【人物背景】

オーブ共和国に生まれた遺伝子操作によって生まれた人間「コーディネイター」。
それでもごく普通の人間の生活をしていたが、コーディネイターと純粋に生まれた人間
「ナチュラル」の争いの戦火が中立国であるオーブにも渡り、避難しようとする中
流れ弾で両親と妹を失う。この後コーディネイターが住む人工惑星「プラント」に
移住。家族を見殺しにしたオーブと、それを導くアスハ家を憎んでいる。
やがて彼はプラントを統治する「ザフト」のアカデミーに入学、優秀な成績を修め卒業。
ザフトの新型兵器「インパルス」に乗り数々の戦績を手にした末にザフト特務部隊「FAITH」
の一員の座とザフトの新型兵器「デスティニー」を与えられ、実質ザフトのエースパイロットとなる。
心優しい性格だが反面真っ直ぐ過ぎる上に家族を失ったことが原因で心がやや荒んでおり、
情緒不安定な部分が多くアカデミーでの授業の態度も悪かったと言われている。




【聖杯にかける願い】

争いの無い世界を創りあげる。




【備考】
「改革を護る運命の剣(デスティニー)」の装備、カタログスペックなどはウィキペディアなどをご参照ください。


511 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 07:04:31 Yns8l7gM0

【マスター名】エレン・イェーガー
【出典】進撃の巨人
【性別】男

【能力・技能】

・立体機動
「立体機動装置」を利用した三次元運動。
立体機動装置を持ってきていないため、使用できない。



・巨人の力
強い感情と共に腕を噛み千切ることで、巨人に変身することが出来る。
圧倒的な身体能力と回復力、そして物質変換能力を持つが、
自我を保っていられることが難しい上に連続で変身するとそのたびに
だんだん小さくなる。また元に戻るには巨人のうなじに当たる部分にある自分の本体を
取り出すことが必要。ただし、変身しなくても回復力だけは人間体でも相変わらずである。




【人物背景】

巨人から人々を守る3層の壁の内最も外側である「ウォール・マリア」に住む医師、グリシャ・イェーガーの息子。
幼馴染であるミカサ・アッカーマンやアルミン・アルレルトと共に壁の外に強い憧れを持ちながらも平凡な日々を謳歌していたが、
突然壁の外を超えて現れた超大型巨人によりウォール・マリアが破壊されたことで母を目の前で殺され、
それ以降巨人を一匹残らず駆逐してやると誓った。そして2年後に訓練兵となり、総合順位5位で卒業するが、
再び超大型巨人が襲撃した際、本能的に巨人へと変貌してしまう。しかし、それを兵団に見られたために
一時は化け物呼ばわりされることになるが、紆余曲折を経て調査兵団に入団することになる。
良くも悪くも実直な性格で人一倍強い精神力を持つ。その猪突猛進な行動と言動から「死に急ぎ野郎」と呼ばれている。


【聖杯にかける願い】

巨人を消し去り、壁の外へ行く。



【備考】

エレンは12巻〜13巻からの登場ですが、グリシャにかき消された記憶は未だ思い出していません。
また、服装は調査兵団の格好ではなく私服です。


512 : エレン・イェーガー&バーサーカー ◆lkOcs49yLc :2016/06/11(土) 07:04:48 Yns8l7gM0
以上で、投下を終了します。


513 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:14:02 LrR9HTXU0
3作品、投下します。


514 : 松永久秀&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:14:51 LrR9HTXU0
ここはある住宅街に存在する高級マンションの一室…

そこで、ある男女がテーブル越しに向かい合っていた。


「なるほど、つまり君が私のサーヴァントというわけか」

一人は、城郭を模した白黒の衣装に身を包んだ壮年の男。

名を、松永久秀といった。

「そうだ、私はアーチャーのサーヴァントとして現界した。今後ともよろしく頼みたいところだ」

そしてもう一人は、白い肌に白い衣装、そして背中に機械仕掛けの羽を持った女性だった。

「ところでマスターよ、君は聖杯に何を望む?」

突如としてアーチャーが彼にそう尋ねた。

彼女の純粋な好奇心として、ぜひとも聞きたかったのである。

それに対して松永は、顎に手をかけて考えるしぐさをした。

そして少しした後、ゆっくりと口を開いた。


515 : 松永久秀&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:15:33 LrR9HTXU0

「ふむ、そうだな…まずは聖杯とやらを見てみたいな。そして、ものによってはそれを存分に愛でてみたいものだ…」

彼はそう答えた。そしてその答えを聞いて、アーチャーはひどくおかしなものを見たかのように笑った。

「ふふふ、まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかったよ。
 聖杯に願いをかなえてもらうのではなく、まさか聖杯そのものが目的とは!」

そう、彼女が言うように彼の願いはひどくおかしなものであった。

"聖杯で願いをかなえるのではなく、聖杯を手に入れることそのものが目的である"

聖杯戦争を知るものがいたら、彼女と同じように笑っていただろう。

しかし彼はそう答えた、さもそれが当たり前であるかのように。

そうして彼女がひとしきり笑った後、彼がまた口を開いた。

「そう笑わないでもらいたいな、丁度客人に出す器が足りなかったのだよ。
 …なかなかいいのに巡り会えなかったものでね。」

彼がそういうと、彼女は相手の気分を害したと思ったのか謝罪をした。

「いや、愉快だと思っていたが馬鹿にするつもりはなかったのだ。
 ただ、君と私はとてもよく似ていると思っただけさ。
 どこまでも自分の欲を満たしたい、その一点にね。」

そう、確かに彼らはよく似た存在であった。

松永は自分の欲に従って生きることを当然とし、

アーチャーは自らの好奇心に従ってすべての行動を決める。

ある意味、彼らが巡り合ったのは必然だったかもしれない。

「そうだな、君の中には虚無が広がっている。
 とても埋められそうにない穴が…」

どうやら彼も同じように感じていたようだ。


…そしてそんな彼らの背後には、全てを燃やし尽くすほどの炎が見えていた。


516 : 松永久秀&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:16:47 LrR9HTXU0
【クラス】アーチャー

【真名】WRS

【出典作品】ブラック★ロックシューター the game

【ステータス】筋力C 魔力C 耐久C 幸運C 敏捷C 宝具A

【属性】
悪/混沌

【クラススキル】

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合は
 マスターのバックアップが必要。

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


【保有スキル】
シング・ラブ:B
 彼女という存在の一側面
 一世を風靡した歌い手

 その歌声には魔力が宿り、歌声を聴いた相手を魅了する
 Bランク以上の耐魔力でレジスト可能

好奇心:EX
 世界どころか宇宙で最も強い好奇心(自称)
 令呪すら無視して己が欲望を一番に行動する

専科百般:B(EX)
 ありとあらゆる知的生命体から収集した数えきれないスキル
 本来は様々なスキルをAランクの熟練度で使用可能だが、
 制限によりBランクの熟練度となっている

博識:B
 彼女が好奇心の赴くままに収集した数えきれない知識
 宝具の名前からサーヴァントの真名を必ず看破できる

カリスマ:B
 癖の強い配下達を曲がりなりにも纏め上げていた彼女のカリスマ

【宝具】
『君の一生を我が物としたい(ネブレイド)』
  ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1

生命を取り込めば取り込んだだけ幸運以外のステータスが上昇していく。
また、その生命の記憶、技術さえ己がモノにする
もしサーヴァントを取り込めば、保有スキルを一つだけ自身のモノにできる。
しかし、対象の宝具を取得することはできず、
またこの宝具を使用すればするほど、正純の英雄からは遠ざかる。

【weapon】

白い大鎌と白い大砲『ホワイトロックキャノン』、
蛇骨のような意匠の4対の可動翼『バトル用プロトタイプウィング』


【人物背景】
自らの欲求の為に周囲を犠牲にすることも厭わない、非常に余裕ある不敵な笑みと台詞回しが特徴的なエイリアン。

「自身を『ネブレイド(=取り込む)』するとどうなるのか」、という疑問について貪欲なまでに底無しの興味を抱き、
居ても経ってもいられずウズウズした結果、人類に自分自身のクローンを作らせ、それの実力を見極めては喰らうという
行為を19年もの間続けていた。

その最期は、自らのクローンにして最高傑作である"ステラ"との死闘に敗れ、その後彼女にある目的のため捕食され、
消滅するというものであった。


【聖杯にかける願い】
この聖杯戦争で、自分の好奇心を満たしたい。


517 : 松永久秀&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:17:15 LrR9HTXU0
【マスター名】松永久秀
【出典作品】戦国BASARA
【性別】男

【weapon】
宝刀『不動國行』、黒色火薬、火薬を仕込んだ黒籠手。

【能力・技能】
審美眼に優れており、物や人の本質を的確に突いてくる。

『名前』や『別離』といった抽象的なものを与えたり奪うことが出来る。

【ロール】
メンタルカウンセラー

【人物背景】
戦国乱世の奸雄にして、己の欲望のみに従って生きる極悪人。

冷静沈着で、どんな状況下でも動じず常に余裕めいた薄ら笑いを浮かべている。
表面的な口調は紳士的だが放つ言葉の内面はいずれも悪意に満ちたものばかりで、欲望に忠実に生きることが
人間のあるべき姿だと考えており理想や信義に生きる者達を「偽善者」と呼び軽蔑する。
対峙した相手を「○○を貰おう(贈ろう)」という形で評価
(皮肉や嘲りであるが、いずれの評価も相手の本質を的確に突いているものである)する癖がある。

【聖杯にかける願い】
聖杯がどのようなものか見極め、ものによっては存分に愛でる。


518 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:19:18 LrR9HTXU0
1作目投下完了しました。

続いて2作目投下します。


519 : トウ&セイヴァー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:21:44 LrR9HTXU0
ここはある孤児院、そしてそこで働いている少女がいた。

「今日も一日、すっっっごくがんばるよー!」

とても元気いっぱいな少女だった。

その少女の名前はトウ。両親がいないため、同じ境遇の子供たちのために愛情を注ぐ少女である。


「トウお姉ちゃん、おはよー」

「おはよう!みんな元気でお姉ちゃんうれしいよ!」


そして子供たちも彼女のことが好きであった。

そしてもう一人、そんな子供のために働いている男がいた。


「ヒゲのおじさんもおはよー」

「うぉはよぉーーーー!」


そう、凄まじく濃ゆい顔をしたおっさんであった。

「ちょっと待ったー!おれはおっさんじゃない!おれはたァけェすィ!リーダー的存在だ!」

「トウお姉ちゃん、たけしのおじさんが明後日の方向を見て何か言ってるよ?」

「どうしたんだろうね?私たちに見えないものでも見ているのかな?」


…失礼、とても濃ゆい顔をした男であった。

一見何の変哲もない、どこにでもいそうなこの二人、実は只者ではない存在である。

しかしそれについて話すのは、もう少し後になってからになる。

なぜなら…


「トウお姉ちゃん、たけしおじさん、お腹すいたよー」

「そうだね、じゃあご飯にしようか?」


まずは孤児院の子たちの世話をしなければならないからだ。


520 : トウ&セイヴァー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:22:18 LrR9HTXU0
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そして夜になり、子供たちも寝静まった後、ある一室でトウとたけしは話し合っていた。

「何で私は聖杯戦争なんかに呼ばれたんだろうね…、聖杯に掛ける願い事なんてなかったのに…。」

「仕方ないことさ〜、なぜ選ばれたかなんて気にしていたらきりないさ〜。」

「でも、もっと相応しい人とかいたかも知れないんだよ!私より不幸せな人たちなんてこの世界にたくさんいるのに、
 何でその人たちが選ばれなかったのか、考えずにいられないよ…」

彼女はずっと考えていたのだ、なぜ自分が聖杯戦争に呼ばれたのかを…。

なぜ幸せになりたいと思っているだろう人達でなく、幸せな自分が呼ばれたのかを…。


そして彼女の想いを聞いてたけしは少し考えた後、こう答えた。

「だったら、この聖杯を使ってみんなを幸せにしてあげたらいいさ〜。
 そうすれば、みんな笑顔になれるさ〜。」

彼は自分のためでなく、他人のために聖杯を使うことを提案したのだ。

そしてその言葉で、彼女はハッと気が付いたように顔を上げた。

「そうか…そうだね!それならみんな幸せになれるかもしれないね!
 せっかくなら、同じように思っている人たちも仲間にして、みんなで聖杯を使おうよ!」

彼女もたけしの考えた方法が最善の方法だと思ったのである。


そして彼女たちは聖杯戦争に参加することを決めた。

…しかし彼女たちは気づいていない、聖杯が本当にみんなの願いを叶えてくれるかを…。

それほど聖杯戦争は甘くないものであることを…。


…そんな彼女たちの行く末に、いったい何が待ち構えているだろうか?


521 : トウ&セイヴァー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:22:46 LrR9HTXU0
【クラス】セイヴァー

【真名】たけし

【出典作品】世紀末リーダー伝たけし!

【ステータス】筋力B 魔力D 耐久B 幸運B 敏捷B 宝具EX

【属性】
善/中立

【保有スキル】

信仰の加護(偽):C
 一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
 あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。

 このサーヴァントは神でなく自らの信念である『リーダー的存在』によりこのスキルを保有しているため、
 ランクを大幅に落としている。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

カリスマ:EX
 軍団を指揮する天性の才能だが、セイヴァーのそれは他者を仲間にすることに特化している。
 しかしセイヴァー自身に率いるという意思はなく、あくまで『リーダー的存在』を目指した結果である。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 このサーヴァントは常に誰かのために戦い続けてきた逸話を持つため、このスキルを保有している。


【宝具】
『強き信念の象徴(リーダーバッジ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

黄色地に黒で「リ」と書かれた単純なデザインのバッジで、最高のリーダーだという事を証明するもの。
単なるメダルやトロフィーのように「賞を表す」物ではなく、リーダーとしての過酷な運命を背負う者の証であり、
このサーヴァントが"セイヴァー(救済者)"として召喚された理由でもある。

心の持ちようによっては紙クズのように簡単に穴が空くが、強い心を持ち続ければたとえ銃弾や鋼鉄の刃、強酸でも壊れず、持ち主を常に守る。
また、持ち主の「魂」を高める効果も存在する。

自身の幸運と魔力以外のステータスを1段階向上させ、また彼が自分を信じている限りこの宝具は必ずその身を守る鎧となる。

『その力は総てを救うためにある(リーダーマスター)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100人

強さ・優しさ・人望など、リーダーとして必要な物全てを完璧に備えた正に「リーダーの中のリーダー」。
リーダーバッジに宿る「正義の力」を全て身体に取り込み、自由に操ることで奇跡のような能力を発揮する。

自身の幸運と魔力以外のステータスを2段階向上させるが、この宝具の真価は善悪の区別なくその力をもって人々の傷をいやすことにある。

またこの宝具はもう一つの宝具である『強き信念の象徴(リーダーバッジ)』の魔力を消費して発動するため、前述の宝具と同時に使用することはできず、
たとえ令呪を全て使ったとしても、2度と使うことができなくなる。


【weapon】
なし。
強いていうなればリーダーバッジと彼の強い信念である。


【人物背景】
小学1年生にしてすでに下の毛・胸毛・ヒゲが生え揃っており、「顔がセクハラ」とまで評された少年。

リーダー養成施設「リーダー保育園」で一番リーダー的だった者に贈呈される「リーダーバッジ」を肌身離さず付けている。
特技は早食い早グソと運動全般。特に運動能力は凄まじく、生後2日で二足で歩く、生後3日で開脚前転をマスターするなど、人間離れした天性の才能を持つ。

自己紹介をする際「俺はこういう感じだ!」と自らの肉体美を見せ付ける、野球の経験について聞かれた際に"8L(リットル)"と答えるなど、妙な言動や釣り合わない単位を使うことが多い。
また、語尾に「さ〜」を付けて話すことが多い。

幼少時代に父・ヒロシを亡くし、その遺言「最も大切なのは人間の心だ」という言葉を受けて、「父ちゃんの夢を叶える」ため
リーダー的存在になることを志したという過去を持つ。

余談だが肌年齢は7歳、ち○こ年齢は30歳らしい。

【聖杯にかける願い】
世界中の皆が幸せであること。


522 : トウ&セイヴァー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:23:12 LrR9HTXU0
【マスター名】トウ
【出典作品】ドラッグ・オン・ドラグーン3
【性別】女

【weapon】
大剣

【能力・技能】

どんなゲテ物でもおいしく料理することができるほどの料理の腕前

華奢な体にそぐわない怪力

【ロール】
孤児院で働く、明朗快活な女の子

【人物背景】
青い髪と瞳を持ち、額にⅡの痣があり左頭部に青い花が咲いている女性。
ウタウタイ姉妹(『ウタ』を歌うことで魔力を行使できる存在)の三女で砂の国を治めている。

明るく快活で誰ともすぐに打ち解けられるムードメーカーで、どんなゲテ物でもおいしく料理することができるほどの料理上手でもある。

また華奢な体系にも関わらず筋力が発達しており、何かに触れるとき細心の注意を払っている。

本編においては、魔物と化した自国の兵士達と、自分の孤児院の孤児達が一体の魔物と化した姿を見て発狂してしまったが、
どうやら彼女はそれ以前の、魔物退治のために自国を空けていた時期にこの聖杯戦争に招かれたらしい。

【聖杯にかける願い】
この世界中のみんなが笑顔でいてくれること。


523 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:24:11 LrR9HTXU0
2作目の投下完了です。

3作目を投下します。


524 : 北野誠一郎&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:25:05 LrR9HTXU0
その日、この街に悪魔は現われた……。

休日の昼下がり、普段なら元気な子供が走り回り、ベビーカーを押して歩く家族の姿等が見える歩道にはなぜか人の姿が見えなかった。

その理由は、この春から高校に入学する準備をする為にやって来た彼が、準備が一段落ついた処で、街の散策に出たことが原因だった。

「今日はいい天気だな〜。ちょっと眩しいけど緑もいっぱいだし……。すがすがしいな〜。」

喋っている言葉だけを聞けば街に越して来たばかりの学生さんがこれからの学生生活に思いを馳せ、穏やかな一時を過ごしているように聞こえるが、

周りからはそうは見えていなかった。


それはなぜか?

彼の体がおかしい?

否――――確かに彼の身長は高く細見であるがあくまで常識の範囲内だ。


彼の服装がおかしい?

否?―――彼の服装は上下ともに黒で統一され昼間の公園の中では異様であったがこれが理由ではない。


ではなぜ?


彼の歩く道の先に女性が一人歩いてきた。既に二桁に上る犠牲者?がまた一人増えるのであった。

彼女はで家へ帰っている所、周りの景色を眺め歩いていたため目の前にそれが来るまで気付かなかった。

突然、道の真ん中を歩いていたはずの自分が何かの影の中に入ったように暗くなったので、それを確かめようとして上を見上げ、彼女は悪魔に出会った……。

「おはようございます!今日もいい天気ですね」

「んっ……? きゃーーーーーー!! ごめんなさーーーい!!」

彼女が見たのは彼女が生まれてこれまで見た中で一番恐ろしいものだった。

鋭く細められた目、自分を覆い隠そうとする漆黒の体。

彼女は脇目も振らず元来た道を駆けて行った。


525 : 北野誠一郎&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:25:52 LrR9HTXU0
「あれ?どうしたんだろう、さっきもあった途端走り出した人がいたし……。」 


彼は散歩を始めてからこのような形で何人もの人間を恐怖に陥れてきた。

しかし彼には決して悪気はなかった。


鋭く細められた目、その理由は眩しかったので細めただけ。

漆黒の体、これは彼の服の趣味なので仕方ない。

つまり彼は決して悪くない筈である。……たぶん。


彼の名は北野誠一郎。
どこにでも居る健全で心優しい普通の高校生の少年だ。

ただ……彼の顔は、常識をはるかに超えて……


     怖かった……。



『マスター、…この時代の人たちはみんなこうなの?』

『違うと思うんだけどな〜、何でみんな僕の顔を見るたび逃げ出すんだろう?』

そしてそんな彼のそばには、目には見えないが少女がいた。

左右非対称の髪形をした、黒髪の少女だった。

彼女は怪訝な顔をして、なぜさっきの女性が突然逃げ出したか考えているようだった。

彼女はアーチャーのサーヴァント。
青い目に若干露出の多い衣装をしている、少女である。

しかし彼女は、ある理由により人と触れ合うことが少なかったため…


_______自分のマスターの顔が怖いことに気づいていなかった。


そして彼らは散歩を続ける。

彼らに悪意は一切ないが、知らず知らずのうちに人々に恐怖をまき散らしながら…。


526 : 北野誠一郎&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:26:23 LrR9HTXU0
【クラス】アーチャー

【真名】ステラ

【出典作品】ブラック★ロックシューター the game

【ステータス】筋力A 耐久A+ 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具A

【属性】
 善/中立

【クラススキル】
単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


【保有スキル】
戦闘続行:A
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避。

無知:C
 魅了・精神干渉系魔術を無効化する。

 彼女は他者と触れ合った経験に乏しく、そういった意味では人の感情などに対し
 無知であると言わざるを得ないが故のスキルである。

戦技百般:EX
 数多の戦闘スキルを持ちそれらを戦闘中に組み立て使用する。
 ありとあらゆる敵に対して対処可能にするために刻み込まれた業。

 彼女は、ある存在により滅亡の危機に瀕した人類の最終兵器として
 造られた存在であるが故のスキルである。


【宝具】
『変幻自在の魂の砲(ロックカノン)』
 ランク:A 種別:対人、対軍、対城宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:1〜50人

毎秒20発の岩石を発射するとも言われる片手持ちとしては異様に巨大な砲であり、アーチャーの名の由来でもある。
アーチャーは砲形態と日本刀形態を愛用するが、用途に応じて瞬時に形態を変化し、
特にガトリングガン、スナイパーライフル、ビームシャワー、誘導弾など多様な銃形態を持つ。

『貴方の知識が必要(ネブレイド)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1

生命を取り込めば取り込んだだけ幸運以外のステータスが上昇していく。
また、その生命の記憶、技術さえ己がモノにする
もしサーヴァントを取り込めば、保有スキルを一つだけ自身のモノにできる。
しかし、対象の宝具を取得することはできず、
またこの宝具を使用すればするほど、正純の英雄からは遠ざかる。

ただしアーチャーはこの宝具を好んでおらず、基本的には使おうとしない。
過去に使用したのは、種の再生を行うためオリジナルが蓄積した知識を必要最低限奪った、ただ一回のみである。


【weapon】
『ロックカノン』
彼女の宝具でもある、毎秒20発の岩石を発射できる大砲
真名解放をしない限りは、変形することのないただの大砲である。

『ブラックブレード』
黒い刀身をした、刀に似た兵器



【人物背景】
右側が短く左側が長い左右非対称のツインテールにしている黒髪の少女。

実は遥か彼方、遠く別の星系から飛来し人類を滅ぼしたエイリアンのクローンであり、
人類滅亡後も死闘の末にオリジナルを討ち果たし、地球上の種の再生を行った英雄であり、
そして地球上の生物の再生を行うためにその知識をオリジナルごと吸収した存在。

人と触れ合う機会が少なく、それ故に感情表現や一般常識に乏しい少女でもあり、
そんな彼女にとってこの聖杯戦争は人類が滅亡の危機に瀕していない時代のものであるため
この時代についてもっと知りたいと思っている。

【聖杯にかける願い】
未来における人類種の再生。


527 : 北野誠一郎&アーチャー ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:26:50 LrR9HTXU0
【マスター名】北野誠一郎
【出典作品】エンジェル伝説
【性別】男

【weapon】
なし。
しかし身体能力自体は高く、格闘技に精通した人すら倒したことがある。

…ある意味では彼の凄まじく怖い顔こそが最大の武器かもしれない。


【能力・技能】
悪人と勘違いされ危害を加えられ続けた経験に基づく、本能的な自衛行動

驚いたり感情が昂ぶると「きえええええええっ」と怪人のように叫ぶ。

更に感情が昂ぶると顔にできた古傷が浮き上がってしまい、ただでさえ怖い顔がもっと怖くなる。


【ロール】
ただの善良な高校生。

…ただし怖い顔のせいで不良と勘違いされていた。


【人物背景】
天使の如く純朴で澄み切った心と、悪魔の如く凶悪で恐ろしい顔を持つ少年。

その容姿故に当初から危険人物と誤解され、転校初日から意図せずして番長となり、学校を恐怖に陥れた。

基本的には公園の掃除などかなりまともなことをしているが、周囲の状況や偶然が重なって変な誤解を生み、
周りから勘違いされまくるというある意味かわいそうな人物。

余談だが、彼は自分の顔が凄まじく怖い顔であるという自覚があまりないため、それがこの誤解を加速させる要因にもなっている。


【聖杯にかける願い】
なし。
むしろこの殺し合いを止めたいと思っている。


528 : ◆AcG9Qy0MIQ :2016/06/12(日) 22:27:37 LrR9HTXU0
投下終了です。

長時間、ありがとうございました。


529 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:30:02 wCk2OMs60
投下します


530 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:30:38 wCk2OMs60
「聖杯戦争……ですか」

広大な敷地面積を持つ研究所の一室で、1人の男が呟いた。
男はこの場に招かれた時から、既に全てを理解していた。
偽りの記憶に惑わされなかったのは、男の持つ願いの為か、それとも“体内に有るもの”の為か。
どちらにせよ男は招かれた時点で聖杯戦争に関する知識を得て、サーヴァントを召喚していた。

「目的に至る手段とその過程が変わっただけで、私の願いとやるべき事は一つですが…貴女はどうなのですか?」

左肩に乗せたハゲ人形に顔を向けて、後ろに立つサーヴァントに男は語りかけた。

「私の願いか…変わることなど無い。人類鏖殺。輪廻の輪を断ち切り、人の魂を罪の連鎖から解放する」

そう答えたのは透き通るような白いと肌銀の髪が目を引く黒衣に身を包んだ少女。外見不相応な物言いが、不思議と板についていた

「貴女の願いも終末ですか。救済が目的とはいえ私と目指すものは同じ」

変わらず人形に向かって話す男に、少女は翡翠色の瞳を細めた。

「フン、私をこのクラスで招くだけのことはある。それで、お前の目的は?」

「人類の歴史に終末を齎し人類の歴史を“完成”させる事ですよ」

「“完成”?人類の歴史など何処までも同じ、完成に至ることなく同じ愚行を繰り返し続けるだけ……」

「だからこそ終わらせるのです。物事は終わりを迎えて始めて完成します。人類の歴史も同じく」

少女は呆れた様な目で男の背を見やった、当然男には見えなかったが。

「完成など見るまでも無い、人類の歴史など終焉を迎えるまでもなく終わっている。罪の輪廻という形で……。まあ良い、お前にも見せてやろう、人類の終焉を」

「聖杯を獲る自信がお有りですか?」

少女は小馬鹿にした様な笑みを浮かべた。

「一つの世界を創り、異なる世界に住む人間を集める…。その程度なら、生前の私の七分の一の力で充分可能だ。その一人一人に英霊を宛てがうのは無理だがな。
私を招いた聖杯がどの様なものかは知らぬが、私の力と知識を超えてはいる。だが、人類鏖殺に聖杯など不要だ、私が生前の力を取り戻しさえすればな」

「しかし…その為には聖杯が要る」

「……確かにそうだな。他者の掌の上で踊らされるのは癪だが仕方が無い」

男は納得したかの様に頷いた。

「結構。では、良き終末の為に聖杯を手に入れましょう」

少女は男に応じる様に「ああ…」と呟くと、先ほどから抱いていた疑問を口にする。

「時に、どうして私に向かって話そうとしない?」

「貴女には関係ありません」

少女が僅かに怒りを露わにして男に近づくと、肩の人形を毟り取った。

「此方を向け!!」

刹那、血相を変えて男が少女に飛びかかる!!

「んん″やぁめぇろぉおおおお!!!」


531 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:31:16 wCk2OMs60
【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-

【ステータス】
筋力:D 耐久:E 敏捷:E 幸運:D 魔力:A++ 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

復讐者:B

燃え盛る復讐の心。復讐を妨げる者に対して抱く憎悪と殺意。
受けた攻撃の痛みを魔力に変える。
洗礼詠唱によりダメージを受けた場合、魔力変換量が倍増する。
アヴェンジャーの行動の動機は復讐心のみではなく、愛でもある為にこのランクに留まる。
ある宗教と関わりの深い英雄に対しては攻撃の威力が倍増する。

忘却補正:A+
その存在は忌むべきものとして記録され、その生涯は凄惨にして、ある国家と巨大宗教にとっての恥部である。
故に彼女は史書から抹消され人々に知られることは無い、記憶されることも無い。故に彼女は素性を気付かれることがなく、対峙しても別れれば記憶から薄れていき、愚かな敵が気付いた時には死命を制している。
正純な英雄に対して攻撃力を倍加させる。
姿形や戦い方、真名・スキル・ステータス・宝具の詳細も時間経過と共に忘れられていく。
ある宗教とある国家にまつわる英雄には更に効果が倍増する。

自己回復(魔力):B+
復讐を遂げるまでその命は潰え無い。復讐心が燃え盛る限りその身は立ち続ける。
魔力が自動回復する。ある宗教と関わりの深い英雄に対した時は体力も回復する。


【保有スキル】

不老不死
宝具により死ぬことが無い。斬られる端から再生し、生きながら身体が腐り、四肢もろくに動かせない状態から瞬く間に健康体になるほどの再生能力を持つ。
Aランクの単独行動スキルも併せ持つ。
宝具“虚無の魔石”が砕かれぬ限り、霊核が破壊されても再生するが、この状態からの再生にはマスター及びアヴェンジャーは莫大な魔力を消費する。
魔力が枯渇すれば当然ながら消滅する。

戦闘続行:EX
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、宝具を破壊されない限り生き延びる。

魔術:A+++
対魔力を無視して万象を飲み込み無へと還す闇精霊や、強力な炎の魔術を始めとした各魔術に長ける。

対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、魔術ではアヴェンジャーに傷をつけられない。
アヴェンジャーは3000年に渡って闇精霊の力を吸い続けた“虚無の魔石”を体内に有し、800年の時を生きた欧州最強最古の魔女であり、破格の神秘を有する。


532 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:32:45 wCk2OMs60
【宝具】
虚無(クリフォト)の魔石
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ :ー 最大補足:1人

アヴェンジャーの身体に埋め込まれている魔石。3000年に渡って闇精霊を吸い続け、漆黒に染まった石は、アヴェンジャーに無限の魔力と終わることの無い命を与えた。
キャスター自身ですら破壊する方法を見つけられなかったこの石は、単なる威力では決して破壊出来ない。
次元レベルで七分割し、七つの平行世界に飛ばす魔法でも死ぬことはなかった。
神造宝具を用いるか、無限の可能性分岐からこの宝具が破壊されている可能性を拾ってくるかでもしない限り破壊出来ない。


幻燈結界(ファンタズマゴリア)
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ :1〜30 最大補足:50人

複数の並行世界や可能性を重ね合わせて一つの世界を形作る。異なる歴史を持つ並行世界の人間を一つに集めて、元々その結界内の世界で生きていた様に認識させることすら出来る……が、
聖杯戦争の根幹を揺るがしかねない魔術の為、此処までの効果は再現出来ない。

対象の心象や記憶を取り込むことで、精神的な傷を抉ったり対象の望む世界を創ることも可能。人の心の不可侵の領域を侵す術。
この結界を破ることは非常に困難。世界そのものを見通す眼でもない限り、結界の中だと知っていても脱出不可能。
創り上げた異界の中に対象を取り込めばまず逃げられることは無い。


奈落落とし(ケェス・ピュトス)
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ :100 最大補足:1000人

闇精霊の溢れる異界への門を開き、地上を闇精霊で満たす。闇精霊は万象を飲み込み消滅させる。
上空に闇精霊の塊で有る“黒い月”として現れ、地上に落ちることで発動する。
聖杯戦争においては宝具としてすら再現されないものだが、アヴェンジャーとして現界したことと、
マスターから供給される膨大な“無の力”と、マスターの願望により再現され、使用が可能となっている。
ただし本来のものとは異なり、幻燈結界を用いて対象を血の色に染まった空と闇に覆われた異界に引きずり込み、そこに“黒い月”を落とす。という形で再現されている。
この宝具を再現した為にアヴェンジャーは本来の能力を再現されず、ステータスが低くなっている。


【weapon】
無尽蔵の魔力と数百年に渡る戦闘経験。


533 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:34:00 wCk2OMs60
【人物背景】
元々はリゼット・ヴェルトールトいう南仏の都市ベゼルスに暮らす信仰篤い清純な少女だったが、ベゼルスで信仰されていたカタリ派が異端とされ、十字軍によりベゼルスは陥落し、住民はリゼットを除いて皆殺しにされる。
一人生き残ったリゼットも見せしめとして各地を引き回され、凌辱され続ける日々を過ごすうちに信仰を失い、世の全てを呪う様になっていく。
最終的には病に冒され身体が生きながら腐り出してしまい、捨てられる。
そのまま朽ち果てる筈だったリゼットは、自らを賢者と名乗る男、ミシェル=マキシミリアンに“虚無(クリフォト)の魔石”を体内に埋められる。
怨嗟の咆哮を上げ、マキシミリアンの提案を受け入れたリゼットは魔石により回復する。
その後当代最高と謳われた魔術師“ヴェルクマイスター”に師事。魔術師として成長していき、師の死後、名を継いで『リーゼロッテ・ヴェルクマイスター』を名乗る。

この時には復讐心は薄れており、その後は欧州各地で陰謀を行い、混乱を引き起こし、『姦淫(ルクスリア)の魔女』『バビロンの大淫婦』の名で呼ばれる様になる。

1400年代ドラスベニアの王ヴェラードが、自身の持つ魔石と期限を同じくする『刧(アイオン)の眼』を持つと知り、これを奪うべくヴェラードに取り入るが、彼の持つ「人の罪を浄化する為の人類鏖殺」という夢想と、その罪を全て一人で背負う。という姿勢に惹かれ、彼を愛する様になる。

ヴェラードが部下の裏切りにより死亡した事により、再び復讐の心とヴェラードの夢想を成就する為に画策する。
そして1945年、『奈落落とし(ケェス・ピュトス)』発動に最適な条件を持つ日本の地に赴き、そこで禁書目録聖省の討伐部隊と交戦。返り討ちにするものの禁呪を受け、魔石を七つに引き裂かれ、並行世界に分割されて、リーゼロッテも記憶を失い水晶に封じられてしまう。
現実世界で60年が経過し、リーゼロッテの魔石の欠片を持つ者達が封じられた地に集まったことで、術式が起動、並行世界を一つに併せた世界を創り、リーゼロッテ本体がいる赤い夜に欠片を持つものたちを引きずり込む。
最終的に、七分の三の力で復活。その状態でも圧倒的な力を行使し、『奈落落とし(ケェス・ピュトス』を遂行しようとするが、ヴェラードの意志を継いだ当代の『刧(アイオン)の眼』を持つ主人公により魔石を砕かれその生を終える。


【方針】
他の主従を皆殺しにして聖杯を手に入れる。

【聖杯にかける願い】
全ての力を取り戻した上での復活


534 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:34:32 wCk2OMs60
【マスター】
真木清人@仮面ライダーOOO

【能力・技能】
科学者として非常に優秀な才能を持つ。
体内に紫の“恐竜系メダル”が五枚入っている。宝具に力を吸われている為、グリード化は極めて遅くなっている。

【weapon】
キヨちゃん:
ドクター真ァ木ィが他人と会話する時に必要。これが無いと話せない。
時々勝手にポーズが変わる。呼吸をしている疑惑が有る。

【ロール】
某企業の研究所の所長

【人物背景】
両親を早くに亡くし、姉の手で育てられる。結婚を控えた姉が豹変し、彼を阻害する様になった為、姉の部屋に放火して殺害する。
この事が原因で『醜く変わる前に、美しく優しいうちに完成させる』という思想を持つに至る。
メズールを求めるガメルにこの言葉を語ったり、亡き姉に瓜二つな白石知世子との会話後にも同じ事を考えているあたり、この思想は彼なりの人類愛なのかも知れない。


【令呪の形・位置】
腹の部分(ベルトのバックルがくる辺り)に三重の黒い輪が有る

【聖杯にかける願い】
良き終末を齎し人類の歴史を完成させる

【方針】
聖杯を手に入れる。障害は全て排除。

【参戦時期】
恐竜系メダルを取り込んだ直後

【運用】
スキルと宝具の関係上、消耗と手の内がバレることを気にせずに戦えるのが強み。
だが結局はキャスタークラスに近い能力なので、あまりゴリ押しは出来ない。
対魔力が意味を為さない闇精霊が強力なのでこれを軸に戦う。


535 : 終末のマザーハーロット ◆mcrZqM13eo :2016/06/13(月) 23:35:10 wCk2OMs60
投下を終了します


536 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:35:40 ybfvc1aU0
投下します
柩姫聖杯に投下したものの流用です
トリップ変わっていますが本人です。


537 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:36:30 ybfvc1aU0
「ホント…何なの?コレ?」

深夜。ビルの屋上で、霧乃タカオは独り呟く。
目に映るのは都市の夜景。ありふれた――――彼女にとっては在り得ないそれは
、不可視光線すら認識できる彼女の眼でいくら見ても綻びは見当たらない。
溜息をついて空を見上げる。随分人間らしくなったと思いながら。
そうして、今までのことを思い出す。


女子高生、霧乃タカオ。それがいつの間にか、記録に書き込まれていた偽りの記憶で有るということに気付いたのは、些細な切っ掛けだった。
――――艦体の反応が無い。
ふとそんな思いが脳裏を過ぎり、“艦体”というワードについて記録を辿るうちに、全てを思い出したのだ。
自身が“霧の艦隊”に所属する重巡であることを、401と彼女の艦長である千早群像に敗北したことを。
全ての記憶を取り戻したタカオは無闇に行動せずに、現場把握に努めた。
結果は、何も判らないということだけが判った。
仮想現実であるということは判明したが、システムにハッキングすることが出来なかったのだ。知覚出来る時間単位がピコ秒単位に及び、人類のシステムでは作り出せない演算能力を持つ自分がだ。
しかもどうなっているのか、戦術ネットワークにアクセスできず、概念伝達も使用不能。
自分の身体そのものの艦体すらも認識出来なくなっていた。艦体さえ有れば、聖杯戦争など、舞台ごと消し飛ばして終わらせることも容易いというのに。
クラインフィールドを始めとする、メンタルモデルの能力は損なわれてはいない。人間のインターネットにみ接続できるが、タカオの戦力は消失していると言って良い。
部屋のナノマテリアル製乙女グッズが有る為、僅かながら補充ができるのが幸いか。
「はぁ…」再び溜息。本当に人間に近くなっていると思う。
戦う事に否を唱えるつもりは無い、自分は兵器。戦いこそが存在意義。
メンタルモデルなるものを“霧”が獲得したのは、人と同じ境遇を体験し、人の思考法を知って“霧”自身が戦術を獲得する為。この状況は経験値を高める上では格好の機会。千早群像との再戦に益となるかは兎も角。
とは思うものの、いきなり仮想空間に取り込まれ、メンタルモデルだけという不自由極まりない状態である。

「不自由か……」

今のタカオは人で例えるなら首から下が使えないに等しい。正しくメンタルモデルを獲得するに至った理由を満たしている。

「こんな戦闘の経験積んでも意味有るのかなあ」

夜空に向かって呟いたその時。

“チ” “チ” “チ”“ チ” “チ” “チ”
人間を超越したメンタルモデルの知覚が、接近する人間の気配を伝えてきた。
素知らぬ振りをして夜景を見つめ続ける。普通の人間には眼下の景色を眺めているようにしか見えない筈だ。
ドアノブがゆっくりと回される。常人には到底聞こえない小さな音と共に。
ドアがゆっくりと開いていく。聴覚の優れた人間でも聴こえない小さな音と共に。
――――1人
タカオは既に屋上に来た者を“敵”と見做していた。やって来た者は、明らかにタカオの存在を認識し、彼女に気づかれないように動いていた。
ドアが開ききる直前、タカオは振り返り、ドア目掛けて突撃、鉄製のドアごと相手を蹴り飛ばす。
ボール紙の様にドアはひしゃげ、水平に飛んでゆく、ドアの後ろに人間がいれば、重傷を免れる事は出来ないだろう。
まさかドアが蹴り飛ばされた時の3倍のスピードで戻ってくるとは。
咄嗟に両腕で叩き落とす。ドアの後ろに追随していた全身鎧姿の男が両手に一本ずつ握った短槍のうち、右の槍を繰り出すのが見えた。
見えた瞬間に右に飛んで回避。そのまま前に出て男とすれ違いざまに左足を軸にして回転、男の延髄に全力で拳を叩き込む。
コンクリ壁すら撃ち抜く拳打を急所に受けたにも関わらず、男は僅かによろめいただけでタカオに向きなおり、立て続けに左右の槍を繰り出してきた。
常人なら視界を切先が埋め尽くした様に見えるだろう程の連撃を、タカオはクラインフィールドを展開して防ぐ。
(ウソ!?もう限界?)
一撃一撃が対物ライフルに匹敵するとはいえ、五秒と持たずにフィールドが飽和する。明らかに性能が落ちている。
あっさり崩壊するフィールド。喉元に伸びる槍を組成を鋼に変えた右腕で受け止める。
鋼の激突する凄絶な響きと共に、タカオは後方に弾き飛ばされていた。勢いに逆らわず後方に飛び、更にもう一度跳躍して屋上から飛び降りる。


538 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:37:38 ybfvc1aU0
「セイバー!!」

落下しながら叫び、着地、そのまま人間にはありえない速度で走り出す。
疾走するタカオは三十台程の車が駐車できる広さの駐車場に駆け込んだ。

「逃がさん!」

僅かに遅れて駆け込んでくるランサー、その眼前に。

「お前では我が兵法の足しにもならぬが」

タカオのサーヴァント。セイバーが現れた。
袴を履いただけの上半身裸の男。やや白髪の混じった伸び放題の髪は腰のあたりまで伸び、適当に伸ばした髭が口の回りを覆っている。
野人、という呼び方が似合う男だった。

「まあ良い、何事も斬る縁(えにし)と思ふ事こそ肝要ゆえ」

野人の右手にに一本の小刀が出現した。

「今、空を駆けるは愚策故にな」

そうして二人は一足一刀の間合いで膠着した。
セイバーは小刀を持った右手をだらりと下げ、両脚を肩幅より僅かに広く開けて、全身の筋肉を弛緩させた完全な脱力の態。
対するランサーは槍を持った両手を大きく左右に広げ、獲物に襲いかからんとする猛虎の如き態。
照明の下、時折大通りを走る車の走行音以外は一切聞こえぬ、夜の駐車場で対峙する二つの影。
メンタルモデル。超兵器である“霧”の人型情報端末であるタカオには判らなかったが、もしここに生きた人間、否、動物でもいれば、骨の髄まで凍りつくような冷気を感じたことだろう。
対峙する二人は無言。流れる川さえ氷結しそうな殺気は、更に鋭さ苛烈さを増していき。
そして実に呆気なく決着した。
傍から見ている者が居れば、タカオが僅かに動き、その事で集中を切らしたランサーがセイバー目掛けて踊りかかり、斬り伏せられた。
そうとしか見えなかったろうし、実際にそうであったが、事はもう少し複雑である。

人でない自分すら硬直する峻烈な殺気の中、タカオは考えた。――――敵のマスターを捜そう――――兵器であるタカオの取った行動は、至極単純に敵を倒すという事に集約されていた。

ランサーはタカオの動きを視界の端で捉え焦りを覚えた。あれだけの戦力を持つ女が自分のマスターと遭遇すれば、結果は火を見るより明らかだった。すぐにマスターの処に戻らねばならぬ、その為には眼前のセイバーを速やかに無力化する、或いは動きを止める必要があった。
ここにランサーの心に焦りが生まれ、隙が生じた。

そしてセイバーはタカオが敵マスターを捜しに動くことを予測し、その時ランサーが何を思うかも予測していた。
セイバーは僅かに前進し、ランサーの間合いに身を晒した。
結果は勝負を急いだランサーがセイバーの見せた隙に釣られ、踏み込んで右の槍を繰り出す。
その意図を予め察していセイバーが、ランサーが動くよりもほんの僅か――――極小の時間だが――――速く地を蹴る。
セイバーの速度は本来ランサーのそれより遅い、しかし常に心身の動きで先を取り続けたセイバーは、物理的な速度でなく、時間的な速度で勝り。
ランサーは機先を制されただけでなく、セイバーの意図した通りに動いてしまい。
そうしてセイバーが攻撃を終えようとしていた時には、既に攻撃の動きに入っていた為、受けも躱しもできなかったランサーは脳天から臍まで斬り下げられたのだった。


539 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:38:08 ybfvc1aU0
「今の技はなんていうの?」

「柳生新陰流“合撃(がっし)”今の動きの元だがな」

「それにしても、終わる時は呆気ないものね」

「主(あるじ)よ、サーヴァントと戦った経験はどうだ」

「…え、そうね。やっぱり私は有効な攻撃はできないわね」

サーヴァントの消耗を抑える為にも、できるだけ自分が戦うのが良いのだが、どうやらそれでは勝てぬらしい。
かといってさっきの様に楽に勝てる相手ばかりならともかく、宝具を使用する程の相手となると、その消耗は必ず大きくなる。何しろセイバーの戦う目的が“優れた宝具や技を見て経験を蓄積すること”なのだから。
当然、相手の神威や神技を存分に振るわせてから斃す。という運びになる。
聖杯戦争に招かれた連中なら、必ずや良い経験になる。セイバーはそう考えている様だった。
これでは消耗は必至、自分は魔力供給が出来ないことを考えると、重大な問題である。
とはいえ、陸上への攻撃を禁ずる“霧”の規定に則れば、“魂喰い”は出来ない。つくづく困り果てた状況ではあった。“霧”の規定でも、攻撃を受けた場合の戦闘や、その際の流れ弾は許容されるのが救いではあったが。

「相手の技を見るのをやめろとは言えないのよねえ」

タカオにしても未知の技や宝具を見て経験値を高めることには異存は無し。それが有用かどうかは兎も角。しかし勝つ為に有効な奇襲という手段を、自分もサーヴァントもそうそう行えない。
一度戦って手の内を全て見た相手でも無い限りは。

「ホント、どうしよう」

再びため息を付くタカオ。取り敢えず他のマスターやサーヴァントの動きや思考を観察し、良い経験値稼ぎにしようと、そう結論した。

「これなら、後に活かせるわよね」


540 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:38:36 ybfvc1aU0
【クラス】
セイバー

【真名】
宮本武蔵@装甲悪鬼村正 魔界編

【ステータス】
通常時
筋力:C++ 耐久:D 敏捷:C 幸運:B 魔力: E 宝具:A+

装甲時
筋力:B+ + 耐久:C 敏捷:B 幸運:B 魔力:E 宝具:A+

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】


心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

無窮の武練:A+
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

頑健:A
身体の頑丈さ。深手を負いながらも当世最強格の武者二名を立て続けに相手取り、神域の大技を連発して疲れを見せなかった。
通常よりも少ない魔力で、行動・治癒・宝具展開が可能。

勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。


541 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:39:04 ybfvc1aU0
【宝具】
武州五輪
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身
宮本武蔵が駆る真打劔冑。大小二振りの刀を持つ
真の兵法とは戦闘経験の蓄積の果てに成るとして、超常と術理を編纂し、兵法として確立すべく鍛造された劔冑とされる。
武者の駆使する技、劔胄の持つ陰義(しのぎ)、竜騎兵の持つ兵器を悉く吸収・再現する“術理吸収”が陰義
ただし習得する為には、武蔵が見た上で原理を理解する必要が有る。
この劔胄を装甲すれば誰でも技量に応じた形としてだが、蓄積された術理を行使可能。
神代(かみよ)より蓄積を続け未だ未完成だが、完成すれば世界大戦にも通用するとされる。
セイバーが死ぬか、聖杯戦争に勝ち抜けば『五輪書』として完成する。五輪書は他者に譲渡することが可能。

古飛器式三番叟鶴舞(ことぶきしきさんばそうつるまい)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ :1~20 最大補足:1人
刀が変化した鎌にを投擲する。『天上天下反転』の術理により前から来た攻撃が後ろから、上から来た攻撃が下から、といった具合に攻撃方向が反転する。
この効果は対象にも及び、前に振った剣が後ろに、右に振った剣は左に、といったた具合に成る。
武州五輪が吸収した術理。

高速徹甲弾
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:1人
背面が一部展開し発射される。タングステン製の弾芯を軽合金の殻で包み、着弾の衝撃で柔らかい外殻が潰れて弾芯が突出することで高い貫通力を誇る。
武州五輪が吸収した術理。

天魔返(あまのまがえし)
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大補足:500人

神代の作と伝えられる天魔反戈(あまのまがえしのほこ)の術技。気象操作系と思われるが詳細は不明。
巨大な竜巻を三本発生させ対象目掛けて撃ち放し、撃滅する。
海上で使えば巨大な旋回する水の槍となる。
使う際には両腕が一回り大きくなる。

月影
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

月明かりによって出来た影により攻撃を透過する。
あくまで透過させる物体が月明かりによって自身に生じさせた影を透過させるので、超光速だの、自身が発光するだの、完全な闇だのといった状況では効果がない。
柳生十兵衛の真打劔冑、三池典太の陰義(しのぎ)を習得したもの。

【weapon】
小刀:
セイバーの技量もあるが、劔胄の装甲を斬り裂ける程度には頑丈。

金神片:
大和の鍛治師が信仰する『金神』の欠片。体内に取り込んでいて武蔵の肉体を若返らせ、全能力を底上げしているが、これに頼ると消耗が激しくなる。

【人物背景】
生身においては剣豪と名高く、武者としては当代最高と称された。勝ちを得る為ならば劔胄すら捨て去る人物。
真の兵法の完成の為に、数多の術理を武州五輪に吸収させ、誰でも使える様に編纂していた。
主人公と戦い、敗北し。その死を以って武州五輪を五輪書へと完成させた。

五輪書が完成したことは知っているが、完成したものには無い術理を習得することで、新しい兵書が出来るのではと考えている。

【方針】
優れた敵と戦い新しい兵法の完成を目指す。

【聖杯にかける願い】
無い。

【備考】
劔胄:魂を宿す甲冑。着用者に運動能力の飛躍的な向上と、驚異的な回復力を与える。
劔胄の魂は、劔胄を造った鍛治職人か、人造人間かのどちらかである。
前者の劔胄を真打劔胄。後者の劔胄を数打劔胄と呼ぶ。
真打を纏う者を武者と呼ぶ。
真打の中には陰義と称される超常の力を使えるものもある。
劔胄は飛行能力を持ち、第二次大戦時の兵器が通用しない程度には強力。


542 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:39:47 ybfvc1aU0
【マスター】
タカオ@蒼き鋼のアルペジオ(原作漫画版)

【能力・技能】
人間を超越した運動能力。全身を構成するナノマテリアルの構成を変えることで、身体の質量を増したり、金属に変えることが可能。コアの知覚できる時間単位が極小な為に、同じ時間当たりの経験値は人にそれとは比べ物にならない。
人の域を越えた高速思考や分割思考を可能とする。
構造さえ把握していれば顕微鏡レベルでは看破出来ない人体の複製すら可能。

受けたエネルギーを任意の方向に差し替えるクラインフィールドは人類の兵器を寄せ付けない。しかし、強大なエネルギーを一気に流し込むか、放出量を上回るエネルギーを加えれば、飽和状態になって割れる。
制限により上限が抑えられており、Bランク相当の筋力、Cランク相当の宝具で攻撃され続ければ5秒と持たずに割れる。

【ロール】
女子高生

【人物背景】
“霧”が人類の思考を理解し、戦術を獲得する為に作り出した人型情報端末。
千早群像と彼が乗る“霧”の潜水艦に敗北した後、人間という部品を求めて“霧”を出奔。函館で人に混じって生活し、人を理解しようとしていた

データ弄くって幾らでも増やせるので金銭面は豊富。

【令呪の形・位置】
“天”の字が右手の甲に有る

【聖杯にかける願い】
元の世界への帰還。

【方針】
経験値を高める。将として優れた相手となら同盟を考慮する。

【参戦時期】
群像に負けた後の函館にいた時期。400と402に発見されるまでの間。

【備考】
霧:突如として現れ人類を海から駆逐した存在。
何故か第二次対戦時の軍艦の姿をしている。
尚人類の船の定冠詞が女性系だった為。船=女性と認識している。


【運用】
主従共に経験の蓄積を目的とする為、どうしても先手を打って何もさせぬまま撃破。とはなりにくい。
戦闘を経れば経る程強くなるが魔力の消費がネック。
早期に同盟を組むか、魔力を補う方法を見つけないと詰む。


543 : タカオ&セイバー ◆mcrZqM13eo :2016/06/14(火) 13:40:18 ybfvc1aU0
投下を終了します


544 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:36:21 FvbK/wPY0
投下します。


545 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:36:45 FvbK/wPY0
(聖杯戦争…)

巻菜が記憶を取り戻した刹那、左手に痛みが走る。
記憶を取り戻す直前、巻菜は某ファストフード店に簡単な昼食を摂るために入っていた。

幼い頃に幽霊を見て、"悪魔憑き"として扱われた自分だが、こんな出鱈目な現象に巻き込まれるとは夢にも思わなかった。
陣取った2階の一角から改めて街並みを眺めてみるが、支倉市のそれとはやはり雰囲気が違う。
仮想空間らしいが腰かけた椅子の感触も、口に運んだバーガーの味も現実味に溢れていた。これらが全てデータの集合とは恐れ入る。

巻菜はそこまで考えて、ふと寄る辺ない気持ちになった。
居心地の悪さが瞬く間に存在感を増していき、店内に屯する客や店員から後ろ指を差されている様な錯覚に陥る。
巻菜は弾かれたように立ち上がると、所持品を収めたデイパックだけは忘れず持ってトイレを目指した。


―まずい!まずい!

記憶を取り戻した拍子に仮面が外れてしまっている。早く顔を着け直さなければ。
「私」が私のままだと破滅してしまう。
トイレに急いで向かう途中、こちらに歩いてきた男性客に危うくぶつかりそうになった。


「ッ!?あっぶねぇな…!」

「あぁっ!?」と男は叫ぶと巻菜をキッと睨みつけた。まもなく遠ざかる巻菜から視線を外し、ぶつぶつと何事か小声で呟きながら客席に歩いて行く。
床を踏みしめる足音には走り去った女性客への怒りが籠っていたが、追いかける気はないらしい。

男の罵声を受けた巻菜の胸中に重苦しい物が広がる。鼻に辛いようなツンとした感覚が立ち昇り、視界が潤んだ。
やはり「久織巻菜」のままでは駄目だ。この程度の距離を移動することすら上手く出来ない。
トイレに辿り着くと巻菜は音を立てて扉を開け、中に入り込んだ。

鍵をかけた女性用トイレの個室内で身を屈めると、「久織巻菜」から蓄積しておいた"顔"に切り替える。
支倉で"悪魔憑き"の能力を磨いていたのが幸いした。ふぅ、と一息ついた巻菜の脳裏に、張りのある男の声が響く。

≪記憶を取り戻したようだな、小娘≫

(誰…?)

怪訝に思った巻菜だったが、記憶を手繰るうちに答えにぶつかった。

――サーヴァント

自分がまきこまれた聖杯戦争において、手を組む相手。
巻菜から魔力を吸い上げる事で敵と戦い、左手に宿った「令呪」によって、3回だけどんな命令でも実行させられる存在。
戦力の確認はしておきたいが、ここで実体化させるのは不味い。
万が一敵マスターが近くにいたら狙い撃ちにされるかもしれないし、何より男性らしいサーヴァントと個室で二人きりになるのは遠慮したかった。

巻菜はサーヴァントに霊体化したままついてくるよう促すと、トイレから退出。
荷物を背負い直すと先刻まで座っていた席に向かい、テーブルに鎮座する食べかけのハンバーガーセットを素早く処理して店を出た。




繁華街から河川敷に場所を移し、巻菜は川を横切る架橋下に身を隠す。
それなりに時間が経過し、日が少し傾いている。周囲に人気が無いことを確認すると、巻菜は従者に実体化するよう念話を飛ばす。
間も無くするとサーヴァントの姿が露わになった。

座り込んだ巻菜の隣に現れたのは、青とグレーの迷彩柄の戦闘服に身を包んだ大男。
さらに晒した顔や両腕にペイントが塗られている。薄い色の肌を青いラインが幾つも横切っている様は人型の虎のようだ。


546 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:37:06 FvbK/wPY0
「えーっと、アサシン?…でいいですか?」

一つ頷き、青の偉丈夫はつまらなそうに巻菜を見下ろす。
厳つい顔は人形のように左右対称であり、短く刈った髪は青く、瞳も同様だった。

「真名はテレンス・E・ベックという。覚えておけ」

堂々とした名乗りを受けた巻菜も頷き返す。
ただし、彼のような男には「まだ」化ける事は出来ないので、頭の片隅に留めておくだけにしておいた。
巻菜は腕を組んで立つアサシンに目を注ぐ。

「なんだ?」

男の険しい目つきに怪訝の色が浮かぶ。

「青いペイントは珍しいなぁ…と思って。軍人さんですよね?」

巻菜はにっこりと微笑んで、アサシンに問いかける。
着用しているベストにはポーチがいくつも取り付けられ、ボディスーツも色は派手だが巻菜が見る限りでは丈夫な生地で作られているらしいのが見て取れた。
そしてアサシンは腕を組んだまま、機械のように巻菜の一挙手一投足を観察している。警戒心が眼の中にありありと浮かんでおり、不審な動きを見せれば即座に対応するつもりだろう。
それらの要素から推察した巻菜だったが確証は得ておらず、あくまで見たままの印象を口にしただけに過ぎない。

「…これは迷彩ではない。トライブカラーのマーキングだ」

厳つい顔のまま、アサシンは返す。言い終わったアサシンは極僅かに目を見開いた。

「トライブ?」

巻菜は首を傾げた。知っている限りなら、部族…一族といった意味のはずだ。
カラーギャングやスポーツチームなど、ある種の集団がグループの個性を表現する色を身につける事は珍しくない。

トライブを集団を指す単語と仮定すると、アサシンが一集団に属していた事が推測できる。
彼の堂々とした立ち姿は暗殺者として闇に紛れるより、部下に指示を飛ばしている方が似つかわしい。
生前は一集団のリーダーか、それに近い立場だったのかもしれない――巻菜は見当をつけた。

「暇が出来たら話してやる」

「そうですか…まぁ、今後の事について話すのは、もう少し落ち着いてからでいいと思いますし……まずは泊まれる場所を探しましょう」

巻菜は大儀そうに立ち上がると先程まで抱えていたデイパックを背負い、アサシンを見上げた。

「いいだろう」

アサシンはデイパックにちらと視線を向けると、巻菜に背を向けて実体化を解き始める。
彼は霊体化が完了するまでの短い時間、頭上に差し渡された橋によって小さくなった青い空をしみじみと見上げていた。
アサシンの霊体化を見届けた巻菜は架橋の陰から日光の下に歩み出る。周囲には依然として人影はない。

二日三日はホテル泊で問題あるまい。その間に旅行者の様な顔で街を探索して、適当な"誰か"か"何処か"を見つければいい。
決まった役割を割り当てられていないので時間だけは十分ある。
思案しながら歩を進める巻菜の一日は、頭上を流れる雲のように緩やかに過ぎていった。


547 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:37:23 FvbK/wPY0
【クラス】アサシン

【真名】バロン・オメガ(テレンス・E・ベック)

【出典作品】DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー

【性別】男

【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A

ラーヴァナ(紫) 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運E 宝具A

ラーヴァナ(白) 筋力B 耐久A 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
後述の宝具を展開することで、この欠点を解消できる。

【保有スキル】
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

魔術:-(A)
 通常は使用できない。
 宝具を発動することで魔術を行使できる様になる。アサシンは強烈な攻撃魔法を一工程で発動させる。

喰奴:A
 「悪魔化ウィルス」を照射された事でアートマが発現した者のこと。身体の何処かにアザが刻まれるのが特徴。
 魂喰いを含む捕食行為によって、魔力を回復することができる。
 保有者に高い身体能力を保証するが、覚醒中は常に飢餓感に苛まれるデメリットがある。

 飢餓感は魔力を消耗するほど強くなっていき、NPCやサーヴァントを喰らって消耗を補わない場合、肥大化した飢餓感によって同ランクの狂化に匹敵する精神の変質を一時的に起こす。
 暴走したアサシンは飢えを満たそうと敵味方問わず襲い掛かる。満足した時点で暴走は解除される。


【宝具】
『煉獄に吹け、烈の如く(タービュランス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 左肩に刻まれた印に意識を集中させる事で"ラーヴァナ"に変身する。
 ステータスを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。発動にかかる魔力は少ないが、ステータスの向上や魔術スキルの使用が可能になった事で飢餓感が増大しやすくなっている。

 くわえてラーヴァナは自分の姿を完全に消す能力を持っている。この透明化は人間態でも行う事が出来る。
 透明化しているアサシンはBランク以上の千里眼や気配感知といった知覚系スキルを持っていない限り、捕捉することは出来ない。
 また姿を消している最中にダメージを負った場合、透明化の解除などペナルティが課せられる。

 平時は紫色の体表と6本の手足を持つ異形だが、腰に展開した外皮を着込むことで2腕2足の白い巨人に変形する。
 この形態になると透明化が使用できなくなる代わりに、敵を暴走させる波動を照射できるほか、吹き荒ぶ暴風を発生させて周囲を薙ぎ払う事が可能になる。


【weapon】
無銘:ハンドガン

【人物背景】
「アスラプロジェクト」を推進した軍属の男性。
神から情報を引き出すテクノシャーマンの力に感嘆した彼は、兵士を強化する戦闘用AI「アスラAI」を作り出そうと試みる。

しかしプロジェクトの最中にテクノシャーマンの主治医であるサーフ・シェフィールドの暴挙が原因で神が狂ってしまう。
偶然、その現場に立ち会ってしまった彼は悪魔に変化したサーフに喰い散らかされて死亡。

その情報(魂)は神の元に帰ることなくジャンクヤードに流れ着き、彼はアスラAI「バロン・オメガ」として第二の生を得た。
トライブ"ブルーティッシュ"のリーダーとして戦いの日々を送っていたが、ジャンクヤード中に降り注いだ謎の光に貫かれてアートマを獲得する。
そして、自分を食い殺した男と瓜二つのアスラAI「サーフ」と対面した瞬間、前世を思い出した。

ジャンクヤードにて死亡した直後から参戦。


【聖杯にかける願い】
AI"バロン"ではなく人間"ベック"として受肉した後、地上に帰る。


548 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:37:41 FvbK/wPY0
【マスター名】久織巻菜(ひさおり まきな)

【出典】DDD

【性別】女

【Weapon】
なし。 数十万円の現金、保険証・印鑑など個人証明、数着の着替え、転出届などをデイパックに詰めて所持。

【能力・技能】
「A異常症」
特殊な精神病。正確にはアゴニスト異常症という。通称"悪魔憑き"。
軽度の場合は感情がコントロールできなくなり、重度になるとトラウマを克服する身体機能「新部」が形成される。
患者は常人には持ち得ない能力を発揮できるようになるが、その分通常組織に負荷を掛けてしまう。

巻菜は顔の皮膚・筋繊維が変質しており、表情を自由に作る事が出来る。
入院時より成長したことで女性限定なら3人まで"顔"の切り替えを蓄積でき、体型を変える事すら可能になった。
ただし、依存性の強さと主体性の薄さから他人の真似をしないと生きていけない為、常に"誰か"を装う生活を続けなければならない。


「人間観察」
ずば抜けた解析力と学習力。
対象となる他人をじっくりと観察し、生活習慣、成績、趣味嗜好、口調、運動レベル、雰囲気を模倣することで対象に成り切る。


【ロール】
市外から流れ着いた失踪人。

【備考】
巻菜は会場内に拠点を持っていません。
住居を持つ場合は然るべき手続きを踏むか、他人のパーソナリティを奪わなければなりません。
以降、他人と接触する際はよほどの事情が無い限り、別の名前を名乗ります。


【人物背景】
オリガ記念病院の元患者。
神童と讃えられたほどの天才児だが癇癪持ちであり、物の加減を知らない。一度やると決めたら納得いくまで続ける。
際限なく教材を買い集め、覚えたら燃やして処分するという学習法を続けた結果、家計を圧迫。

ある日、家族と何気ないやり取りをきっかけに自分が疎まれていることに気付く。
家族との仲を修復することは結局叶わず、彼女は間も無くパーソナリティを喪失。自発的に何かをする事が出来なくなった。
母の何気ない一言で弟・伸也の「全て」を真似て、伸也の立ち位置を乗っ取った巻菜は巧妙に計算した上で、伸也を使って両親を殺害。
仕上げに自分も身を投げる事で弟に罪を擦り付けたが、A異常症の診断を受けてオリガに収容された。


【聖杯にかける願い】
永遠に使える「顔」を手に入れる。


549 : 久織巻菜&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/15(水) 07:38:07 FvbK/wPY0
投下終了です。


550 : ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:39:19 xHuNTBts0
投下します

モンスターの一部スキルを魔界都市〈新宿〉ー聖杯血譚ーの“美姫”を参考にさせていただきました
謹んで御礼申し上げます


551 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:41:33 xHuNTBts0
「ふざけるなっ!!」

深夜の繁華街の路地裏で荒れる、一人の男。
男の名は紅音也、聖杯戦争に招かれた不幸な者達の一人である。

「俺にはやらなきゃいけない事がある!!こんな処で下らない争いに巻き込まれている暇は無い!!」

戻せ――――そう音也は叫ぶ。愛する女と息子の為に俺は戻らなければならないと。

「此処から出るのは簡単だ」

そんな音也に背後からかけられる声。音也が振り向いた先には、漆黒の全身鎧に身を包んだ騎士を従えた老爺が立っていた。

「教えてくれよ。簡単なんだろう」

老爺の顔に裂け目の様なものが現れる。笑みであった。男を嘲笑し、侮蔑する意志がたっぷりと込められた笑みであった。

「ああ…お前が死ねば良い」

音也も笑った。老爺のそれとは違い、荒んでいるが、何処か清々しい笑みだった。

「やっぱりそうか」

音也は右手を懐に入れ、ナックルダスターの様な形状のイクサナックル取り出すと、勢い良く左手に叩きつける。

レ・デ・ィ

「変身」

そして右手のイクサナックルをベルトに嵌め込んだ。

フィ・ス・ト・オ・ン

音也の前に各所に青いラインの入った白い全身鎧が浮かび上がり、音也に向かって引き寄せられていく。
白い鎧を纏った音也は黒騎士に向かって身構えた。

「その格好、気に食わないな。イくぜ!!」

「サーヴァントを呼ばんのか?」

老爺が口を挟んできた。

「いらねえよ、俺はこんな事に乗る気は無い」

「聖杯はいらんのか?なんでも叶うのだぞ?」

「俺は俺だ、全ては俺の力でやることだ。聖杯なんて不要だ」

「阿呆よの、この世の全てを得られるというのに…。やれ、セイバー」

老爺が言うと同時、黒騎士が一気に間合いを詰め、抜剣して音也に斬りかかる。その速度、剣に込められた威力、剣を振るうというそれだけでハッキリと判る卓越した武技。
全てにおいて過去に戦ってきたファンガイア達を凌駕する剣士だった――――最後の一人を除いては。

「うおっと!」

辛くも回避出来たのは、その最後の一人、ファンガイアの王との交戦経験の故か。
まともにぶつかっても勝機が無い事を理解した音也は早々に切り札を切る。
黒騎士に渾身の前蹴りを入れて距離を取ると、フエッスルをベルトに差し込み、ブロウクン・ファングを発動する。

イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ

体勢を立て直した黒騎士が横薙ぎに振るった剣を躱し、一気に懐に踏み込んでイクサナックルを叩き付ける。
五億ボルトの電圧が黒騎士の身体を焼き、後方に跳ね飛ばした。
老爺が目を見開く。


552 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:42:02 xHuNTBts0
――――ただ、それだけ。飛ばされた騎士は体勢をを崩すこともなく着地を決め、音也目掛けて斬りかかった。

二度までは躱したものの、崩れた処に斬撃が決まり、動きが止まった処へ嵐のような連続攻撃。忽ちダメージが限界を越えて変身解除に追い込まれてしまう。

「ぐあっ!」

倒れた音也に近づく黒騎士は、絶対の死を具現化したかの様だった。
後方では老爺が厭な笑みを浮かべていた。

「クソ……コウモリもどき!!俺に力を貸せ!!」

パタパタと何処からともなくコウモリに似た姿の生き物が舞い降りてくる。

「いいのか?死ぬぞ」

「此処で俺が殺されたら真夜はどうなる!!」

「わかった」

音也の伸ばした右手にコウモリもどきが牙を突き立てる――――その時。

「やめておけ」

今日この場に集う、最後の者が現れた。

「私が必要だということが理解出来たか?マスター」

鍔広の帽子をかぶり、赤いコートに身を包んだ長身の男が、闇から滲み出る様に出現した。赤いサングラスの下の血の色の瞳が愉悦を讃えて音也を見つめている。

「まったく愚かしい男だ…まったく好ましい男だ。キバットバット二世から聞いたぞ。使うと死んでしまうのだろう?ならお前には私が必要だ。私の力が必要だ。愛おしい女のもとに戻る為に」

「お前には関係ない」

「お前がいた世界の事など私の知る処では無い。だが此処では別だ。私にはお前を守る意志がある」

「意志…?」

「ああそうだ。絶望的な強さの化け物に対し、文字通り身命を削って立ち向かう。己の愛するものの為に、己の友の為に、心折れず、諦めることなく……。お前は素晴らしい人間だよ紅音也。人を超えてしまった、人で無くなってしまった輩共の手に掛けさせたく無いと思うほどに」

男は老爺の方を向く

「都合の良い奇蹟などで欲望を満たそうとするゴミに殺させるのは惜しいと思うほどに」

黒騎士に向かって両手を伸ばす。左手には白く輝く巨銃が、右手には漆黒の巨銃が握られていた。

「この身は既に亡霊。化物(フリークス)ですらない。私の夢の狭間は既に終わった。此処にあるものは、お前に生かされ、やがて消える紛い物に過ぎん。故に音也よ、お前の前に銃を向けて私は立たぬ」

全身から放たれる凄絶な妖気。老爺は思わず逃げ出しそうになるのを堪え、黒騎士は自覚せず地を蹴って男に襲いかかった。

「私はお苗に背を向けて立とう。此の地でお前を襲う敵を全て撃ち払おう。そしてお前を紛い物では無い、本当の青空の元へと送り返すと誓約しよう。素晴らしき人間よ」

黒騎士の斬撃を躱そうともせず黒白の銃を乱射。上半身に無数の火花を散らして黒騎士が下がった処へ、頭部に銃撃を集中させる

「勝手にしろ」

「受けておけ。真夜と大牙の為だ」

キバットバット二世に応えず、音也は無言で空を見上げた。路地裏から見える空は小さく歪だったが、仮想現実には到底見えなかった。

「分かったよ。俺を必ず元の世界へ返せよ」

「認識した。マイマスター」


553 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:43:04 xHuNTBts0
【クラス】
モンスター

【真名】
アーカード@HELLSING

【ステータス】
筋力:A 耐久:D 敏捷:B 幸運:D 魔力:B 宝具:EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】

吸血鬼:A

吸血鬼としての基本的な能力を極めて高い水順で発揮出来る。
ランク相当の戦闘続行・怪力・再生・吸血による体力及び魔力回復の効果。吸血による吸血鬼作成も可能。
催眠効果を持つ魔眼も使える。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。


554 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:47:11 xHuNTBts0
【宝具】

黒犬獣(ブラックドッグ)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:5人

人間を丸呑み出来るほどの無数の眼を持った黒犬獣を身体から繰り出す。


拘束制御術式(クロムウェル)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ 1~30 最大補足:50人

モンスターに施された力を抑える術式。
三号二号一号とあり、解放するたびにモンスターの持つ力が解放されてゆく
身体から無数の百足やコウモリを出したり、無機物を融合して自在に操ったり、無数の腕を作り出したり、身体を自在に変形させることが出来る。


死の河デスマーチ・オブ・デッドリヴァー)
ランク:EX 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人

モンスターの内包する全ての命を解き放ち、死者の軍勢として敵にぶつける宝具。
人も化け物も問わず己がうちに取り込み自身の命としてきたモンスターだけあって、サーヴァントであってもモンスターに喰われればこの軍勢に加わる。
敵を殺し味方を殺し、全てを喰らい続けてきたモンスターの生涯そのものとも言える宝具。
この宝具により死亡したものは死者の軍勢に強制的に加えられる。
この宝具を使うと、後述の宝具の特性が失われる。
使用の為にはマスターが令呪を以って命ずる必要がある。


不死の暴君(イモータル・タイラント)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

モンスターの命の性質が宝具化したもの。
他者の血を吸うことで、その命を自らの内に取り込むことが出来る。
モンスターにとっての吸血とは血のみにあらず、他者の全てを己がものとする行為である。経験や知識を我が物とすることが可能。
致命傷を負っても取り込んだ命を一つ消費して即座に復活する。
これによりモンスターは戦闘続行EXを獲得している。
サーヴァントとして再現されている為に、内包する命=魔力として扱われる為、この宝具を使用する度に魔力が減っていく。
生前は300万以上の魂を内に収めたこともあるが、聖杯による再現の限度により数十万程の魂量になっている。

龍公棺(ドルグレイヤ・コフィン)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:2人

モンスターが眠る棺。手足が生えて動いたりする。死の河は此処から出てくる。


【weapon】
454カスールカスタムオートマチック
対化物戦闘専用13mm拳銃ジャッカル

モンスターが持つ黒白の銃。対化物用に法儀式が施されている。

【人物背景】
元はワラキア公ヴラド三世。神を信じ、神の国の到来を信じて戦い続けたが、遂に神は降臨せず、囚われて首を落とされた。
その直前に吸血し、人ではなく吸血鬼として生きる様になる。
19世紀末のイギリスに上陸。ヘルシング教授と愉快な仲間達に敗北し、人間の力を入れる知る。
その後はヘルシング家による改造処置を施され、英国王立国教騎士団(ヘルシング)の鬼札(ジョーカー)として運用されることになる。
生粋の戦闘狂であり強敵との戦いに嬉々として臨むが、これは永劫続く己の生を内心倦んでおり、滅びを望む心の表れとも言われている。
化け物を殺すのはいつだって人間だ。という信条を持ち、強い人間を何よりも愛する。
いかなる絶望的な状況においても人間であることをやめないものや、不断の努力を積み上げて化け物と五分の領域に至った人間といった、精神的な強さを持つ者を愛するが、
人間をやめてしまった者に対しては嫌悪を露わにする。


【方針】
マスターを守り、元の世界へと返す。

【聖杯にかける願い】
無い


555 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:48:09 xHuNTBts0
【マスター】
紅音也@仮面ライダーキバ

【能力・技能】
・セーブイクサでエンペラー倒せる戦闘能力(渡に迷いがあったとはいえ)
・タツロットにライフエナジー大量に吸われて、装着すると死ぬ闇のキバを三回装着できる生命力。(過去キンもおどろいてました)
・天才的なヴァイオリン演奏の才能。

【weapon】
セーブイクサ:
人のライフエナジーを喰う魔族『ファンガイア』に対抗する為に作られたもと軍事用パワードスーツを対ファンガイア用に改造したパワードスーツ。
並のファンガイアなら十分に通用する性能を持つが、不安定である為に装着者に尋常では無い負担がかかる。
その負担はファンガイアの中でも最上位に入るルークですら人間態では耐えられない程。
必殺技は五億ボルトの電圧を流し込む攻撃するブロウクン・ファング

ダークキバ:
ファンガイアが異種族との戦争用に作り出した鎧。
尋常では無い防御力を持ち、装着者の能力を引き上げる性能を持つ。
資格の無い者が装着すると死ぬ。

地面にキバの紋章を模したエネルギー場を作り、対象を追尾、拘束することや。上空に作って落とすことで複数の敵を潰すことが可能。紋章拘束は防御不能。ダークキバとエンペラーフォームを纏めて倒せるバットファンガイアにも普通に効く。ぶっちゃけこれだけあればやっていける。

シールフエッスル:
対象を彫像へと変えて封印する

必殺技は上空からパンチを放つダークネスヘルクラッシュ。上空からドロップキックを放つキングスバーストエンド。詳細不明の世界が滅ぶ技キングスワールドエンド。

キバットバット二世
ダークキバ装着に必要なコウモリ型魔族。厳格で誇り高い性格。

ブラッディローズ:
音也と真夜が祈りを込めて作ったヴァイオリン。

【ロール】
一等地に住む有名なヴァイオリン演奏家

【人物背景】
仮面ライダーキバの主人公紅渡の父親にしてもう一人の主人公。天才的なヴァイオリン演奏家だが性格は壊滅的で、女に対してだらしがなく、毎晩豪遊してはヴァイオリンの演奏を聴かせて踏み倒している。
その所為で息子である渡がとばっちりを受けたことも。
しかし惚れた女の為には平然と命を賭け、友情を結んだ魔族の次狼が彫像にされた時には我を忘れて逆上するなどといった情に厚い面も持つ。
音楽に対しても非常に真摯で、音楽を冒涜する者には激しい怒りを示す。
対ファンガイア組織「素晴らしき青空の会」に所属する麻生ゆりに惚れたのがきっかけでファンガイアと関わる様になる。

後に自分の為のヴァイオリン、ブラッディローズをともに作成した真夜に惹かれるようになるがその為にファンガイアの頂点であるキングに真夜共々狙われる様になり、真夜や次狼たちを守るべくキングと戦う。
音也の元に行くなら、自分と真夜との間に出来た子供を殺すとまで言うわ、真夜に対してDVやるわのキングに愛想を尽かしたキバットバット二世からダークキバを与えられキングと戦い撃破。その後死亡する。

本編では未来からやってきた息子と共にキングを撃破。次狼達に渡の事を頼み、真夜の膝の上でブラッディローズを抱え、眠る様に息を引き取った。

その自由奔放な生き方は他者に大きく影響を与え、破産した者もいれば、人を襲わないと音也に誓ったファンガイアもいたりと良きにつけ悪しきにつけ影響を与えている。


【令呪の形・位置】
右手の甲に逆十字の形

【聖杯にかける願い】
元の世界に帰る

【方針】
優勝狙い。マスターは殺さずNPCも巻き込まない。

【参戦時期】
44話終了後。ダークキバを一度装着した後


556 : 青空の下に ◆mcrZqM13eo :2016/06/16(木) 08:48:40 xHuNTBts0
投下を終了します


557 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:30:18 S91nchw60
投下します。


558 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:30:39 S91nchw60
正午過ぎの商店やオフィスが立ち並ぶ路地を、4人の少年――成人と呼んで差支えない体格の青年達が走り抜けている。
正確には3人が1人を追いかけているのだ。
追われている1人は最近、この近辺で幅を利かせるようになった外国人の若者である。

全体として彫りの深い顔立ちをしており、がっしりした顎や、一の字に結ばれた口元からはその勇猛さが窺える。
陽光をたっぷりと吸った金髪を後ろに撫でつけ、銀色のコートを羽織った姿はド派手としか言いようがないが、青年自身も負けてはいない。

日に日にストリートで存在感を増していく彼を、元々このあたりに屯していた連中は快く思わなかった。
今日、街で彼を見かけた3人組は特に予定を入れていなかったこともあり、急遽金髪の青年を襲撃することにしたのだ。


襲撃をかけられた金髪の青年は3人の姿を認めると、誘う様に今いる路地まで走り込んだ。
やがて高架下の駐車場で、青年は威圧的な格好の男達に取り囲まれる。退路を断たれても青年は微塵も揺るがない。余裕の表情で並んだ3つの顔を鼻で笑う。

それが3人の神経を逆撫でし、青年の背後をとっていたハリネズミめいた髪型の色白の男が殴りかかったのが、開戦の合図となった。
しかし状況は3人の想定外の方向に進んだ。二度と大きな顔が出来ないように痛めつけるつもりが、自分達とはあまりにも喧嘩の練度が違い過ぎた。
色白の奇襲を金髪の青年はあっさりと避ける。右腰に容赦ない前蹴りを浴びせられた色白は、身体をくの字に折って地に伏せた。

仲間があっさりと倒された一部始終を見ていた2人は瞬き1、2回程度の間、硬直してしまう。喧嘩の場においてこの隙が見逃される道理はない。
地を蹴る足音に残った2人は即座に反応したが、彼らの攻撃が金髪の青年を捉えることはなく、見る見るうちに追いつめられてしまう。
一人が落ち……そして今、最後の一人も地に沈んだ。



若者達が拳や蹴りの応酬を繰り広げている最中、その場に男が突然一人増えた。音もなく現れたその男は4人の喧嘩に加わることはせず、殴り合う彼らをじっと見ていた。
頭髪と瞳は燃えるように赤く、これなら街を行き交う群衆に紛れても瞬く間に見つかるだろう。
彼は厚い胸板の前で逞しい両腕を組んで等間隔で並ぶ柱の一つに身を預け、金髪の青年による蹂躙劇を観覧していた。



間も無く3人のチンピラを返り討ちにした金髪の青年は、左右の手で払う様に音を立てると肩で風を切って歩きはじめた。
表情の晴れない青年に赤毛の男は凭れていた壁から背中を外し、歩み寄って声を掛ける。赤毛の男はかなりの長身だったが青年も同じくらいに大柄だった。

「何をイラついてる」

受けた青年が足を止めて振り返った。
遠くを見据える猛禽のような眼差しが、赤毛の男に向けられる。

「これは戦争なんだろ!?それで人がやる気になってみれば、未だに一人も出てこない…いつまで俺を待たせる気だ!」

発酵しそうな程に溜まったフラストレーションを発散する様に腕を左右や上下に大きく振り、金髪の青年は不満の声を上げる。
出鱈目な軌道を描いていた腕が止まると、赤毛の眼前に人差し指が突き付けられた。
赤毛は退屈そうに溜息をつく。瞳だけが煌々と燃えている。

「大方、情報収集か陣地の構築に忙しいんだろうよ」

赤毛があらぬ方向に視線を向けると、腕を引っ込めた金髪の青年――サイファーは忌々しげに低く呟いた。

「チキン共が……!」

サイファーは大通りを目指して再び歩き始めた。足取りや表情には倦怠感と焦燥が滲んでいる。


559 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:30:59 S91nchw60
記憶を取り戻した瞬間のサイファーは、興奮と期待、そして歓喜に包まれていた。
勝ち残った者が万能の願望器を掴みとる死亡遊戯。これこそ、けちの付いた自分の禊の場に相応しい。

聖杯を狙う敵を尽く蹴散らし、失った誇りと夢を取り戻す。そして復活を遂げた俺はもう一度スコールの前に立つ。完璧な筋書きだった。
さぁ敵はどこだと息巻いて探索に出れば、出会うのはどうでもいいチンピラばかり。
今のサイファーは、例えるならお預けを喰らっている犬だ。早くご馳走にありつきたくてしょうがない。



「…にしても記憶を取り戻した途端、学校ってやつに行かなくなるとはな」

思い出したように赤毛が口にする。
サイファーは記憶を取り戻してから、学校に全く寄り付かなくなった。
聖杯戦争の場において目立つ行動を取るのは自ら危機を呼び込む愚行でしかないが、接敵の機会が増えるのは赤毛のサーヴァントも望む所だったので、サイファーに改めさせる気はない。

「誰が好き好んで、あんな所いくか」

サイファーが退屈そうに返した。大通りを行き交う人々が視界に入る。

「よく今まで耐えてたもんだ。……教える方も、教えられる方も、ありゃ何がしたいんだ?」


サイファーにとって、「学校」の授業は苦痛極まりなかった。
招かれるまで受けてきた「ガーデン」の授業は退屈ではなかったし、良い刺激に満ちている。教員はともかく。
戦闘技能の訓練、知識の習熟。そして世界を股にかける傭兵「SeeD」として活動するうえで必要な知識の習得。
SeeDになれなかったとしても今後の人生の糧にはなるだろう。なれる実力は既に身につけているが。

しかし学校で受けた授業は平々凡々、毛ほども心が動かない。
自分の周りで机に向かっていたあいつら――NPCとか呼ばれる再現らしいが、大元になったものはいるはずだ。
連中は学校から巣立った後で何になるつもりなんだ。街を歩きながらそんな事ばかり考えていた。


「さぁな。これだけ動いたんだ、…すぐにウンザリするほど敵が来るぞ」

赤毛の視線が油断なく周囲に走る。ややあってサイファーの隣を歩く赤毛は静かに霊体化した。

「望むところだ」

酔った様な口調でサイファーは言った。たとえ雑魚相手でも戦うのは楽しい。聖杯も、魔女も、アイツも―俺の夢は終わらない―通り過ぎてみせる。
「なぁ、ヒート」と不敵に笑うと、脳裏に愉快そうな吐息が聞こえた。実体化していたなら、ヒートと呼ばれた赤毛の青年も口の端を上げていることだろう。
歩調を緩めるとサイファーは大きく息を吸い込み、来たる戦いの予感に胸を膨らませる。
そしてアスファルトをぐっと踏み込むと、サイファーは人の列が行き来する中心街の一際高いビルを目指して駆け出した。


560 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:31:19 S91nchw60
【クラス】アーチャー

【真名】ヒート

【出典作品】DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー

【性別】男

【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具A+

アグニ 筋力A 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A+

ヴリトラ 筋力A 耐久A++ 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A+

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:E(C+、B+)
 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 アグニに変身すると第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。特に炎熱を利用する魔術に対しては高い防御力を発揮する。
 ヴリトラに変身すると詠唱が三節以下のものを無効化できる。炎熱を利用する魔術ではヴリトラに傷をつけることは出来ない。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

魔術:-(B、B-)
 通常は使用できない。
 アグニに変身することで魔術を行使できる様になる。アーチャーは強烈な火炎魔法を一工程で発動させる。
 ヴリトラ形態では使用できる魔術が制限される。

喰奴:A
 「悪魔化ウィルス」を照射された事でアートマが発現した者のこと。身体の何処かにアザが刻まれるのが特徴。
 魂喰いを含む捕食行為によって、魔力を回復することができる。
 保有者に高い身体能力を保証するが、覚醒中は常に飢餓感に苛まれるデメリットがある。

 飢餓感は魔力を消耗するほど強くなっていき、NPCやサーヴァントを喰らって消耗を補わない場合、肥大化した飢餓感によって同ランクの狂化に匹敵する精神の変質を一時的に起こす。
 暴走したアーチャーは飢えを満たそうと敵味方問わず襲い掛かる。満足した時点で暴走は解除される。



【宝具】
『咆哮す火神の顎門(ファイアーボール)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 右腕のアートマに意識を集中することで"アグニ"に変身する。ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。
 アグニは火炎属性の魔術に長け、屈強な肉体を使って敵を粉砕する悪魔である。発動にかかる魔力は少ないが、ステータスの向上や魔術スキルの使用が可能になった事で飢餓感が増大しやすくなっている。


『我は宇宙を塞ぐもの(ヴリトラ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 "ヴリトラ"に変身、ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。
 アーチャー単独で発動させる事は出来ず、魔術師が作成した陣地にアーチャーが存在していることが絶対条件。
 宝具を発動するとアーチャーが陣地全域を取り込み、丸く膨れた胴体と二本の触手、三つの口を持つ巨大な竜と化す。飢餓感については上述と同じ。

 この形態に変化したアーチャーは頭部から吐き出す極寒の冷気、超高温の熱波、思考を攪乱する怪音波、巨大な触手による叩き付けや薙ぎ払いによって敵を蹂躙する事が可能だがその場から移動することが出来なくなる。
 また、自発的に人間態に戻る事も出来ず、令呪一画によってのみ人間態に戻る事が可能。


【weapon】
無銘:グレネードランチャー

【人物背景】
セラの主治医「ヒート・オブライエン」をモデルにしたママゴトAIが戦闘AIに生まれ変わったもの。
ジャンクヤードでは、所属するトライブ「エンブリオン」のアタッカーを務めていた。
アートマを獲得してからは直情かつ好戦的な性格になり、同チームのリーダーであるAI「サーフ」をライバル視するようになる。
その性格から仲間達と違い、敵を喰らう事に躊躇いが無い。

アートマ出現と同時期に出会ったセラに対して出所不明な執着を持っていたが、ジャンクヤードからニルヴァーナ(地上)へとやってきて真実を知ると、彼は仲間を裏切りカルマ協会に加わる。
後にEGGと一体化し、ヴリトラと化したヒートはセラを含むかつての仲間達、EGGから脱出したサーフによって倒された。

太陽に情報が到着する以前から参戦。


【聖杯にかける願い】



561 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:31:38 S91nchw60
【マスター名】サイファー・アルマシー

【出典】FF8

【性別】男

【Weapon】
ガンブレード(ハイぺリオン)

【能力・技能】
「疑似魔法」
オダイン博士が、奇跡を操る"魔女"の研究から編み出したもの。
本来のそれより威力は劣るが訓練次第で人間にも扱える「偽物の魔法」。


「始末剣」
サイファー固有の技術。剣技と魔法の複合技。
火炎魔術によって標的を牽制した後、斬撃や衝撃波を浴びせる。


【ロール】
高校3年生。


【人物背景】
シド・クレイマーが「SeeD」育成のために設立した学校「バラムガーデン」で一番の問題児。
学園トップレベルの実力者ながら自己中心的かつ好戦的な性格の為、万年候補生に甘んじている。
実地試験の際の命令違反によって懲罰房に入っていたが、旧知の仲であるレジスタンス構成員「リノア・ハーティリー」の危機を知ると、ガーデンを脱走して大統領拉致を敢行。
姿を現した「魔女」イデアの目に留まり、彼女の騎士となる。魔女の騎士となった後はスコールやリノアたちと幾度となく対立、一時はガルバディア軍司令官にまで昇りつめた。

ルナティックパンドラでの戦いに敗れた直後から参戦。

【聖杯にかける願い】
追い込まれた現状をひっくり返す。くわえて聖杯戦争に勝利することで傷ついたプライドを立て直し、スコールと再戦を果たす。


562 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:32:06 S91nchw60
投下終了です。


563 : サイファー・アルマシー&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2016/06/16(木) 10:52:18 S91nchw60
拙作の宝具欄を以下のように修正します。

『我は宇宙を塞ぐもの(ヴリトラ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:陣地全域 最大捕捉:1人(自身)


564 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:07:39 lC3.vhw.0
投下します


565 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:08:40 lC3.vhw.0
 町の路地裏に一匹の犬が居る。
 真っ白な毛をした、どことなく上品さを感じる犬だ。
 そしてどこか、賢さと意志の強さを感じさせる目をしている。

 それもそのはず、この犬はただの犬ではない。
 アフリカのコンゴ盆地の奥、ヘビー・スモーカーズ・フォレストと呼ばれる地域からやってきた犬だ。
 そこは、盆地の一部が陥没し深い谷に囲まれて外界から隔絶されてしまった。
 それ以後、この閉ざされた世界では犬が進化し文明を作り上げ1つの王国が5000年間続いている。
 この犬は、その国の王子様だ。名前はバウワンコ108世の息子クンタック王子。
 そして、聖杯戦争の参加者でもある。

「ワゥ」

 クンタックはマスターであることを隠すため普通の犬をふりをしながら悩んでいた。
 この聖杯戦争に対して自分はどんなスタンスで居るべきなのかを。
 普段ならば、こんな人を無理やり呼び寄せ殺し合いを強いるものなど悪だと断じ打破するために動くだろう。
 だが今は、故郷の事を考えるとそれ以外の選択肢も浮かび上がってしまう。

 クンタックの国には今、恐るべき敵が居る。
 名はダブランダー、元は国の大臣だった悪知恵の働く男。
 彼は古代の兵器を復活させ、外の世界を自分の領土にしてしまおうと考えていた。
 その為に邪魔だったクンタックの父を殺し、クンタックを捕えた。
 そして国民には病死と発表し、生きながら埋めようとする。
 しかしクンタックは棺桶ごと湖に落ち、そのまま外の世界へ流されたのだった。

 そんな幸運があってクンタックはここにいる。
 だからこそ思う、ここで聖杯を勝ち取りその力で国を救うべきではないかと。
 聖杯は万能の願望器だと聞いている。
 ならば、自分の国を救うくらいは簡単だろう。

 だが同時にやはりこう思ってしまう。
 殺し合いに勝ち残るのは正しいのかと。
 僕のように知らない間に連れてこられた存在を蹴落とすのは正しいのかと。
 そして何より、僕は誇れるのだろうかと。
 誇り高きバウワンコの血に、そして愛している婚約者のスピアナ姫に。

「スピアナ姫……」

 普通の犬を装う事も忘れ、婚約者の名を呟くクンタック。
 だがこの自分でも意識していない呟きで、彼は決意をした。


566 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:09:09 lC3.vhw.0

「セイバー、出てきてください」

 今度は周りに人が居ない事を確認してから声を出すクンタック。
 そして、その声に応じて現れたのは青い服に青い帽子、そして青いゴーグルをつけた青一色の青年だった。
 クンタックはセイバーに言う。

「セイバー、僕はこの聖杯戦争に乗ります」
「……」

 クンタックの宣言にセイバーは何も答えない。
 思えば最初からそうだった。
 最低限の会話はしてくれるものの、基本的には無言を貫いていた。
 単にもともと無口なのか、それとも僕と喋りたくないのかは分からない。
 だが僕は彼に告げなければならない。僕の決意を宣言しなければならない。

「僕は僕の国を救わなければならない。否、救いたい。
 例えダブランダーとは何の関係もない、ただの人間を危機に追い込むことになったとしても。
 それでもあなたは、僕についてきてくれますか」

 クンタックの懇願するかのような言葉に、無言を貫きながらも頷くセイバー。
 そんな態度の彼に思わず笑顔になるクンタック。
 彼は言葉を続ける。

「それと身勝手なのですが、一つお願いがあります」
「……」
「出来るだけで構いません。倒すのはサーヴァントだけにして下さい。
 例え偽善と言われようとも、僕はなるべく無辜の民を犠牲にはしたくありません」
「……」

 クンタックの言葉にまたも無言で頷くセイバー。
 そして彼は聖杯戦争へ向けて歩き出す。
 5000年間平和が続いたバウワンコの国の王子が、戦争をすることになんてと思いながら。

 こうして彼の運命は本来の歴史とは違う方向に廻り始める。
 もし本来の歴史通りであれば、彼の国は救われていた。
 バウワンコ1世の予言にあった、10人の外国人の内5人と出会い故郷の為に共に戦う事になる。
 そして幾多の苦難の末、国と姫を救う事が出来たのだ。
 だがそんな未来はもう存在しない。
 それが良いか悪いかを知る術は、彼らは持っていない。


567 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:10:04 lC3.vhw.0
【クラス】
セイバー

【真名】
ローレシアの王子@ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々(SFC版)

【パラメーター】
筋力A++ 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

騎乗:A
乗り物を乗りこなす能力。
Aランクで幻獣・神獣ランク以外を乗りこなすことができる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

破壊神を破壊した男:A
魔法に頼らず己の腕力のみで破壊神を倒したものに贈られるスキル。
神性スキル持ちに与えるダメージが増加し、筋力のステータスに無条件で+が二つ付く。

ロトの末裔:A
偉大なる勇者ロトの血を引くもの。
混沌もしくは悪属性を持つサーヴァントに対して与えるダメージが大きくなる。

【宝具】
『ルビスのまもり』
ランク:A 種別:対幻宝具 レンジ:1-300 最大補足:???
ハーゴンの作り出した幻を解除した精霊ルビスが与えたまもり。
本聖杯戦争ではあらゆる幻術・幻がこの宝具を使用することで解除できる。
ただし、使用は自動ではなく任意なので自身やマスターが幻を知覚していない、またはこの宝具が何らかの方法で使用不可能の場合は解除不可となる。

『ロトの血筋を引く者たち』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:2
ハーゴン討伐の旅を共にした二人の仲間を呼び出す宝具。
サマルトリアの王子は物理と呪文を双方使いこなす万能型。
ムーンブルクの王女は強力な呪文を使いこなす後衛型。
ただし、呼び出そうとする場合は令呪1つを使わなければならない。
そして、この宝具は一定ターンが経過すると消滅する。再び使用する場合は同じだけ時間を置かなければならない。
ちなみに、この宝具も本体と同じく出展はSFC版なのでサマルトリアの王子の装備がてつのやりなんてことは無い。

【weapon】
いなずまのけん
ロトのよろい
ロトのたて
ロトのかぶと
まよけのすず

【人物背景】
悪の大神官の野望を阻止した王子。

【サーヴァントとしての願い】
マスターに従う。


568 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:10:28 lC3.vhw.0
【マスター】
クンタック王子@ドラえもん のび太の大魔境

【マスターとしての願い】
王国を大臣から取り戻したい

【weapon】
・宝石
バウワンコ一世の像のホログラムのようなものを出すことができ、自在に動かせる。
大きさは数メートル程度。
空気中に高圧電気を発生させることもできる。
普段は首にかけている。

【能力・技能】
・剣技
剣の名手。
一般兵程度では相手にならない。

・日本語が話せる
彼は日本から遠く離れた犬の王国の王子だが、短時間で日本語を覚えた。

・二足歩行
彼は進化した犬の為、二足歩行が可能。
普段は普通の犬を装うため、あえて四足歩行をしている。

【人物背景】
悪しき大臣に国を追われた王子。

【方針】
聖杯を手に入れる。
極力マスターは殺したくない。

【備考】
与えられた役割は街に居る野良犬です。
参戦時期は日本語を覚えた後〜のび太に出会う前です。


569 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/16(木) 17:10:49 lC3.vhw.0
投下終了です


570 : ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:21:06 1UL/fAOg0
投下します。


571 : 池袋晶葉&キャスター ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:22:25 1UL/fAOg0
ここはある廃工場、いや、廃工場だったというべきだろう。

なぜならその内部は、ある二人の人物によって何らかの研究所と呼ぶべき程に変容しているからだ。

「キャスター…陣地作成はどこまで進んでいるんだ?」


白衣をまとった少女、池袋晶葉は自分の目の前で機械をいじっている老人に対して、この廃工場をどこまで改装できているのかを訪ねていた。

「そうじゃな…いうなれば、わしが昔使っていた研究所くらいにはなっておるよ。」

そしてそれに対し、キャスターと呼ばれた老人は、自分がまだ一介の研究者だったころの話を交えながら、その進捗について報告していた。

「そうか、つまりここを聖杯戦争の拠点として使い続けることができるということか!」

「そういうことじゃ。じゃが、警備用のロボの作成と同時並行で行っておるため、まだ完全とは言えないんじゃがの」

そういうと彼は、自分が作成した4体のロボットたちを彼女に見せた。

丸いボディに簡素なロボットアームを付けたもの、"一式"…、ドラム缶のようなボディに赤子のような手足のついたもの、"二式"…、
そのロボットに体ほどもあるアームを付けたもの、"三式"…、円筒状の頭部をした人型のもの、"四式"…、

多種多様なロボットがそこにいた。


572 : 池袋晶葉&キャスター ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:22:56 1UL/fAOg0
「おお…なかなかに素晴らしいものじゃないか!
 私は自分を天才だと思っているが、ここまでのものを見せられると自信を無くしてしまいそうだ!」

「いやいや、買いかぶりすぎじゃよ…わしからすれば、君のそれもなかなか良いものじゃと思っとるよ」

そういうと彼は、彼女が作り上げたロボットについて褒めた。

兎を模した、二頭身のロボット、"お月見ウサちゃんロボ"…

彼はそれを素晴らしいロボットと評したのである。

「ほう…そう評してくれるのは有り難いのだが、どういう点で素晴らしいと思ったのだ?」

彼女は疑問に思った。

自分以上に様々なものを作り出すことのできる彼が、素晴らしいものだと評したのが気になったのだ。

「簡単なことじゃよ…その子は君が作り上げた、君の家族じゃ。その証拠に心が宿っておる…大事にするんだよ。」

彼はそう答えた。そのロボットには心が宿っている、そう答えたのである。

彼女はその答えを聞いて、少し笑んだ。


まさかそのような答えが返ってくるとは思っていなかったからだ。

そして彼女が笑ったのを見て、彼も少し笑った。


…その光景はまるで、同じ趣味を共有する家族のようであった。


573 : 池袋晶葉&キャスター ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:23:53 1UL/fAOg0
【クラス】キャスター

【真名】ドクトル

【出典作品】モンスター列伝 オレカバトル

【ステータス】筋力D 魔力B 耐久A 幸運D 敏捷C 宝具EX

【属性】
善/中立

【クラススキル】

陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 ”工房”の形成が可能。

道具作成:A+
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 十分な時間と素材さえあれば、宝具を作り上げることすら可能。
 ただし、作成される宝具のランクは現代の神秘の薄さと、
 現代で手に入る材料に左右される。

 彼が作成するのは、後述する宝具に代表されるように魔術と科学を融合させた物がほとんどである。
 また彼は生前の逸話により、"感情を持ち、人間と同じようにものを考えられるロボット"を作成することができる。


【保有スキル】

外科手術:B
 縫合糸や医療機器を用いて、マスター及び自己の治療が可能。
 彼はある逸話において、死者すら甦らせたことがあるが、
 忌むべき命を生み出した逸話でもあるためランクが下がっている。

自己改造:A
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 彼は自身の肉体の一部を機械に置き換えることが可能である。

専科百般:B
 多方面に発揮される天性の才能。
 主に機械工学の分野において稀代の才能を発揮する。

貧者の見識:C
 相手の性格・属性を見抜く眼力。言葉による弁明、欺瞞に騙され難い。

 彼はその生涯において幾多もの英雄と触れ合い、その行く末を案じ忠告し続けてきた人物であるが故のスキルである。


【宝具】

『最古の起源弾(試作魔銃)』
  ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜3
後に、ある英雄の武器として愛用されることとなる銃の試作品。

フリントロック式ピストルでありながら連射が可能となっており、通常の弾丸のほか
純銀の弾丸などが使用できる。

ただしこの宝具の神髄は、着弾した際に対象の魔力の一部を吸収し、その魔力をもって小規模の爆発を発生させる
"最古の起源弾"ともいうべき銃弾が使用できることにある。

それにより受けるダメージはたとえサーヴァントでも例外でなく、致命傷を負わせることができるだろう。

しかし上記の銃弾に関しては、アーチャーとして召喚されなかった弊害として、この聖杯戦争において5発までしか使用できないというデメリットが存在する。


『忌まれし最初の子供(フランケンシュタインズ・モンスター)』
  ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50

彼の家族の一人であり、彼が犯した罪の象徴でもある人造人間を"狂化:A"を付加した状態で
擬似的なサーヴァントとして "一時的に" 召喚する宝具。

この宝具によって呼び出された人造人間は目についたものすべてを破壊しようとするが、
生みの親である彼、そしてそのマスターには決して襲い掛かることはない。

擬似的なサーヴァントを呼び出すという点では強力な宝具であるがその分魔力消費が激しく、またほとんど制御することができないため
神秘の秘匿にかかわる甚大な被害を生み出しかねず、場合によっては監督者に目を付けられることとなりうる危険な代物でもある。

彼はこの存在を通して命について深く考えており、基本的に使うつもりはない。


574 : 池袋晶葉&キャスター ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:24:32 1UL/fAOg0
【weapon】

『試作魔銃』
彼が作り上げた、様々な機能を有するピストルの試作品。

宝具にもなっているが、厳密には"最古の起源弾"こそが宝具といえるものであり
実際のこの銃は様々な弾丸を発射できる、連射可能なフリントロック式ピストルである。

…実をいうとこの銃の完成品は第二魔法を引き起こしうる代物であり、聖杯戦争においてそれを再現することは不可能となっている。


『プロト』
常に彼の傍らにいる、掌より少し大きいくらいの小型ロボットで、彼の家族の一人でもある。

相手の動きを阻害する粘着弾などを発射することができ、
またかなり頑丈らしく、彼はこのロボットを投げつけて攻撃することがある。


【人物背景】
ロボ工学の権威であり古代の知恵袋でもある、ガスマスクをかぶったガンマン風の老人。

自分が作り上げたものすべてを"家族"と評し、愛情を注ぐ科学者でもある。

かつて死を乗り越える研究をしていたが、その過程で死体である○○○○○に
命を与えてしまったことを後悔し、研究を取りやめにした過去を持つ。

余談だが、サーヴァントとして召喚された時点で彼の身体は一部機械となっているらしく、
動くたびに機械音が鳴っている。


【聖杯にかける願い】
"あの子"が苦しまなくても済む世界。

…ただしそのために他者の命を奪うことに対して忌避感を抱いているため、命を軽視するものでない限りマスターに従う。


575 : 池袋晶葉&キャスター ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:25:03 1UL/fAOg0
【マスター名】池袋晶葉
【出典作品】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【weapon】
なし。


【能力・技能】
独力で人間大のロボットを大量生産できるほどの技術力

そのほか「全自動チョコ製造機」や「時間通りに溶けるチョコ」などロボ以外の分野についても精通している。


【ロール】
機械いじりの得意な中学生。


【人物背景】
白衣にピンクのメガネ、大きなリボンとツインテールがトレードマークな天才少女。

一人でロボットの設計・開発・量産をこなしてしまう凄腕の技術者で、
彼女自身も天才を自称するほど自らの技術力に自信を持っているが、人前に出るのは苦手らしい。

ロボアイドルを作ろうと思い立つが自分で思いとどまるなど、一応常識はわきまえているらしいが
サイボーグ手術に言及する等どことなくマッドな面も持ち合わせている部分がある。

なおプログラミングは専門外らしい。


【聖杯にかける願い】
なし。
生き残るつもりだが基本的に殺し合いをするつもりはない。

…個人的にはキャスター(ドクトル)の高い技術力とロボ工学に関する知識について興味がある。


576 : ◆2BygzVUKiA :2016/06/17(金) 23:25:28 1UL/fAOg0
投下終了です。


577 : 馬鹿×バカ ◆mcrZqM13eo :2016/06/18(土) 22:05:02 4FHZev.k0
投下します


578 : 馬鹿×バカ ◆mcrZqM13eo :2016/06/18(土) 22:05:54 4FHZev.k0
男が立っていた
広い道場の中央、月明かりを浴びて、わずかな動きも見せぬ。
その佇まいには、完全な脱力の態にありながら一切の弱さを見せぬ。
男は武人であった。

「聖杯戦争……伝説として名を残す程の強者達か…」

男の穏やかとも言える顔が、凄絶ともいえる笑みを浮かべる。
かつて倒した森守を思い起こし、男は猛る。
男の名はトゥバン・サノオ、人の身でありながら人を超えた域に到達した化物(ケモノ)である。

――――あの時の恐怖と歓喜…あれを上回る者がいる。

そう、考えるだけでトゥバンの心は沸き立ってくる。

――――この世で一番強いもの(森守)よりも強いものと遭えるのか、また魂が吼える程の強者が待っているのか。

そう、考えるだけでトゥバンの身体は歓喜に震える。
居ないなどとは露程にも思わぬ。己のサーヴァントを見れば判る。英霊とは己が今までに戦った者達を凌駕する存在だと。

「随分と嬉しそうだなァ」

いつの間にかトゥバンの正面に立っている青年。
腰に黒い帯を巻いた白衣――――トゥバンは見たことがなかったが、道着というものらしい――――を着た青年が面白そうにトゥバンを見ていた。

「お主は嬉しく無いのか?」

「殺し合いってのが趣味じゃ無いんでね。結果としての死ならまだしも、最初からどっちか死ぬまでやれっていうのはね……」

トゥバンは笑った。それまでの凄絶極まりない戦鬼のそれではなく、円熟した人柄を感じさせる笑みだった。

「だが、戦うのだろう」

「ああ…何しろ俺の一族は代々馬鹿で、俺はその中でも一番の馬鹿らしいからな」

トゥバンの笑みが深くなる。戦いの歴史とは武器の進化の歴史。槍を用い弓を用い、より遠くから攻撃出来る様、戦いの距離は時代を追うごとに開いてきた。
にも関わらずこの一族は代々素手――――最も距離の近い戦いの業を磨き続け、千年無敗を誇ったと言う。
そしてこの男はそんな殺人の業が何の意味も持たぬ平和な世に、態々己の受け継いだ業を衆目に晒して、己の業が最強であることを示したとのだという。
そんな男がこの舞台に心を湧かせぬ筈が無い。

「まあ…おっさんは此処に自分の意思で来たわけじゃ無いんだろう」

「ああ…気が付いたら此処に居た」

「だったら何の願いも無い上に戦う力も無いのに、此処に連れて来られて殺しあえと言われた奴だって居るかもしれんが、そういう奴がいたらどうする?」

「戦う力が無い者を斬ろうとは思わん」

「俺も同じさ」

だがそれでも、戦う目的を持つ者の方が多いだろう。そんな者達との闘いは避けられない。譲れない願いを叶えられる奇跡を求めるものが、そうそう簡単に身を引くとは思えない。
そういった手合いと戦うのは修羅たる二人にも重かった。

「俺たちの様なバカばかりだと気が楽なんだがな」

「ああ…全くだ」

そんな事は有り得ない。この二人の様な者達だけならば、そもそもどんな願いも叶える優勝トロフィーなど無用の長物。
只々、『強者を用意した。闘え』そう言うだけで嬉々として最後の一組になるまで闘うだろう。
そんな馬鹿ばかりでは無いからこそ、結果として彼等は不退転の決意で以って臨む者達と戦わねばならなかった。
当て止めなど有り得ない、どちらかの死を以って終わる闘争に臨まねばならない。

「お前は願いは無いのか?」

「死んでから叶えたい願いなんてないよ。おっさんは?」

「ワシにも無い…強いて言うならお主と闘いたいくらいか」

「怖いなあ…まるで鬼みたいな顔になってるぜ」

「そんなモノを前にして笑えるお主も同類よ」


二人には聖杯への願いなど無い。しかしこの聖杯戦争に招かれた誰よりも、この舞台に招かれた事を喜んでいた。
人の形をした死が、己の命を狩りに来ると知っていて猶。闘争の恐怖というものを知っていて猶。
その恐怖と死の向こうにあるものを見つめ続けていた。

恐怖を知りながら、その恐怖を乗り越え、永劫届かぬ天を目指し拳を突き上げる二人の修羅の聖杯戦争は未だ始まっていなかった。


579 : 馬鹿×バカ ◆mcrZqM13eo :2016/06/18(土) 22:06:41 4FHZev.k0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
陸奥九十九@修羅の門

【ステータス】
筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:D+ 幸運:B 魔力:E 宝具:D

【属性】
中立・中様

【クラススキル】
狂化:E-
凶暴化する事で能力をアップさせるスキルだが、
バーサーカーは理性を残しているのでその恩恵をほとんど受けていない。
しかし、筋力と耐久が“痛みを知らない”状態となっている。

【保有スキル】

修羅
代々の陸奥がその血に宿すもの。強敵との闘争に歓喜し、闘争の中で己の死を感じて笑い、己の力で立てるのならば闘える。
最強を求めるという、天に向かって拳を振り上げるが如き行為を千年続けてきた者達の通称
EXランクの追い込みの美学の効果を持ち、相手に必ず全力を出させてから倒そうとする。

相手の平均ステータスが自分のより高ければ全ステータスに+補正が掛かり、武器の性能に依らない強さで命の危機を感じれば++が掛かり、全スキルに++が掛かる。
この状態ではBランク相当の戦闘続行、怪力を発揮する。この怪力は筋力のみならず速度も上げる。
この状態を指して「修羅が目覚めた」と表現する。


臆病
バーサーカーは歴代の陸奥で最も臆病な陸奥であり。それが故に敗北を己の死よりも恐れ、結果“四門”を開くに至った。
修羅が目覚めた状態で敗北を感じた時全ステータスが1ランク上がり、“四門”を開くことが可能になる。


透化:C
無私の心。精神面への干渉を無効化する精神防御。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

無窮の武練:B
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

被虐の誉れ:B
肉体を魔術的な手法で治療する場合、それに要する魔力の消費量は通常の1/4で済む。また、魔術の行使が無くても、一定時間経過するごとに傷は自動的に治癒されていく。


580 : 馬鹿×バカ ◆mcrZqM13eo :2016/06/18(土) 22:07:25 4FHZev.k0
【宝具】
陸奥園明流
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~4 最大補足:1人

代々“陸奥”の名を冠する者により伝えられてきた徒手格闘の技術。
“陸奥”に生まれた者が、生まれた時から鍛錬を積むことで人では無い“陸奥”となる事で初めて体得出来る術技。修得の途中で頑健スキルを得る。
修得の難易度は表せるものではなく、生まれにより決まるといっても過言では無い。
武に携わる者達の間で伝えられてきたものが、バーサーカーにより衆目に晒され、人口に膾炙した為に宝具へと昇華された。
バーサーカーは歴代の陸奥の誰もが開けなかった“四門”を開けることが出来る。
千年間その身に“修羅”を宿した化物(ケモノ)と闘い、不敗を誇ったことから、人間の英霊に対して筋力・耐久・敏捷・宝具にに++が掛かる。
この効果は、陸奥の歴史で唯一、宮本武蔵に引き分けた事からA+以上の無窮の武練により無効化される。


【weapon】
短刀:
代々の“陸奥”に与えられる。戦闘で使ったのは唯一宮本武蔵と戦った時のみ。

【人物背景】
歴史の影で千年間続いた陸奥園明流を自分の代で終わらせるべく、表舞台に出て世界最強を目指す。
園明流の業が衆目に晒され、業が研究されても、ボクシングという陸奥の業がほとんど使えない戦場でも、不敗で在り続けた。
全ての闘いに勝利し、天を目指し、拳を天に突き上げ続けた。


【方針】
強者を求め、闘う。マスターと闘いたい

【聖杯にかける願い】
無い




【マスター】
トゥバン・サノオ@海皇記

【能力・技能】
大陸最強の称号を持つ兵法者。作中で行われる会戦はこのおっさん放り込めば終わるだろうとか思わせる程に強い。全力を出すと折れるなまくら剣使っても大抵の相手や軍隊に苦戦しない。
レーザーとか回避できる。全身傷だらけの状態で、超高速で動き回る森守を同じ所を精確に斬る事で倒す。
夜目が効かないが、何の枷にもならない。
人間を突き詰めて人間を超えた化物。

【weapon】
ディアブラスから貰った剣:
トゥバン・サノオの業に耐えられる剣

【ロール】
剣術道場の師範

【人物背景】

【令呪の形・位置】
右手の甲に三本の縦線

【聖杯にかける願い】
無い

【方針】
強者を求め、闘う。バーサーカーと闘いたい。

【参戦時期】
原作終了後


581 : 馬鹿×バカ ◆mcrZqM13eo :2016/06/18(土) 22:09:15 4FHZev.k0
投下を終了します


582 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:11:02 jqxGC4xk0
投下します。


583 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:12:00 jqxGC4xk0
 聖杯戦争に巻き込まれるということは、果たして幸運なのだろうか。はたまた不幸なのだろうか。
 今は、まだ判らない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――本日の出演者の白菊です……。みなさん、よろしくお願いします……。

 白菊ほたる。彼女の歩んできた13年間は決して平坦なものとは言えない。
 それでも彼女は、いつかトップアイドルになれると、幸せになれると、そう信じて。

――はぁ?じゃあ、あの辛気くさいバーターだけで番組やれってか? 無理だよ無理!今日はもうバラして! おーい、そこの……アンタ! 今日はもう帰っていいよ!

 現実は厳しかった。売れっ子アイドルが彼女と組むのを拒否してドタキャン。収録は当然中止となる。
 必死に練習した笑顔も、事務所の人に付き合ってもらって磨いたトーク術も。更には自身の存在までもが。何もかもが否定された気がした。

 ――白菊。お前のせいで大きな仕事がなくなったよ。お前なんて移籍してこなければよかったのにな。本当、お前には『疫病神』の称号が相応しい。お前がいると、みんな不幸になる。

 プロデューサーは彼女を静かに罵って。
 そして、解雇を告げられた。頑張る場所が、帰る場所がなくなってしまった。
 所属プロダクションがなくなるのはこれで何度目になるのだろう。今までとは違って、もう彼女を受け入れてくれるプロダクションはない。
 もう、アイドルではない――何者でもなくなってしまった。
 そこからのことはよく憶えていない。気が付くと涙が頬を伝っていた。全てを忘れ去ってしまいたかった。

 涙と一緒に、嫌なことも、不幸体質も流れていってくれるといいのに。と思った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 真夜中の公園。いつの間にかベンチで眠りに落ちてしまったらしい。差し込む一条の月光に優しく目蓋を撫でられ、白菊ほたるは夢から醒める。
 記憶を取り戻してしまった彼女の右手には、己の存在を誇張するように妖しく光る令呪。
 殺し合いに巻き込まれたなど、嘘だと言ってほしかった。これは悪い夢だと。
 だが、そんな淡い期待は、残酷にも打ち砕かれることになる。


584 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:12:51 jqxGC4xk0

「アンタは……」

 ひとまず自分が今住んでいることになっているアパートへ向かおうとする彼女。戦争に巻きこまれた焦りからか、不幸にも他の参加者に発見されてしまう。慌てて逃げようとする彼女に対し、他の参加者、売れっ子アイドルから浴びせられた罵声とは……。


 ベンチから起き上がったほたるの視界には、バーターとして支える予定だった売れっ子アイドルが立っていた。距離は相当離れていた――この公園には東口と西口があり、噴水を間に挟むようにして、2人はそれぞれの入り口付近に立っている――が、それでも判るほどの、はち切れんばかりの憎悪と殺気を込めてほたるを睨んでいた。

「アンタがいたから…アンタのせいでこんな殺し合いに巻きこまれた……。アンタが疫病神だから! アーチャー! アンタのビームで早くこの疫病神を殺してっ!」
「あんなにカワイイのになぁ、殺すのはもったいないと思うんだけれど。
……冗談だってば。ちゃんと殺すからさ、そう睨まないでよ。仲良くやろうよ。ほら、スマイルスマイル」

 どこからか現れた西部ガンマン風の少年は、売れっ子アイドルに睨みつけられて渋々と了承の返事をし、懐から取り出した拳銃の銃口をほたるに向ける。

 
 「疫病神」と罵られるのはもうこれで何度目になるのだろう。所詮自分は、誰かに笑顔を。幸せを運ぶことなどできないのか。
 

(ここで終わり? こんな虚構の世界で。幸せにもなれず。笑顔にもなれぬまま。全てを失い続けて不幸のどん底で。私は…私は……)

「死にたくない……」


585 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:13:29 jqxGC4xk0

 1秒。2秒。3秒……。
 まだ生きている?
 銃口を向けられたとき、反射的に閉じた目をおそるおそる開いてみる。


 すると、そこには驚愕の表情を浮かべる売れっ子アイドルと、脇腹から血を流して悶え苦しむ少年。
――そして、彼女らの向こう側で1人の男が銃を構えていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「オレの名は地球連邦平和維持軍のエース、不死身のコーラサワー様だ! ライダーのサーヴァントとして呼ばれた。マスター、助太刀するぜ!」

 少年を撃ったとおぼしき赤毛の男が名乗りを上げる。
 自慢げな表情を浮かべ、銃を持っていない方の手をほたるに向けて振っている。自らの手柄を誇るその動作は、飼い主に尻尾を振る犬のようにも見えた。

「くっ……。サワークリームだかクリームソーダだか知らないけれど、自ら真名を明かすなんて余程の馬鹿か自信家だね。恐らく両方か」
「アーチャー! 分析なんてしてないでさっさと殺してよ! あの男のステータス、てんで低いわ! 早くビームで焼き払って!」
「言われなくたって! 不意さえ突かれなければぼくの方がっ……」

 アーチャーはしかし、言葉を最後まで紡ぐことはできなかった。
 突如としてライダーの背後に巨大なメカが現れたのだ。

「んなっ……」

 驚いた一瞬が命取りだった。その一瞬でライダーはメカに乗り込んでしまったのだ。恐らく起動の合図だろう。先程まで無色だったメカの瞳には美しい光が宿り、背面からは橙色の粒子が零れだした。

 慌ててメカに拳銃からビームを連射するも、時既に遅し。堅牢な装甲の前に、ちっぽけな熱線は虚しく飛散していくだけだった。
 有効な攻撃を与えられないアーチャーに対し、軽口をたたく余裕すらあるライダー。

「やっぱりライダーじゃなくて『スペシャル』だとか『アンデッド』って名乗った方が印象よかったかなぁ」

 ライダーは間違いなくアーチャーを追い詰めていた。――いや、追い詰めすぎていたのだ。


586 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:14:04 jqxGC4xk0

「ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるな! このぼくがあんな馬鹿野郎にいいようにされるなんてよぉ……我慢ならない! 奥の手で殺してやる!」

 半ばやけになったアーチャーが、拳銃に魔力を集中させていく。
 圧縮されたエネルギーが充填されていき、それが限界まで達した瞬間。アーチャーは引き金を引いた。
 ちっぽけな拳銃から放たれたとは思えないほどの巨大なエネルギーの波が闇を切り裂いてライダーの乗る機体に突き刺さる。

「――え?」
 先程までのものとは比べものにならない熱線に、為す術もなく貫かれる胸部の装甲。一瞬の静寂の後に、さながら花火のようにオレンジの粒子を撒き散らしながら爆発四散した。
 そして、その爆風によって、機体の周囲――公園の半分近くが死の海へと変貌を遂げた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 暴力的な熱風が吹き抜け、公園には元のように夜の帳が降りた。
 草木は枯れ果て、生物が死に絶え、噴水だったものは情けなくチョロチョロと水を流している。先程までの喧騒が嘘のようだ。
 そんな惨状の中で、ほたるは自責の念に駆られていた。

(私に関わったせいで3つもの人命が失われた……)
 爆心地にいたコーラサワーはもとより、あれだけの爆風を直に受けたアイドルも少年の生存も絶望的だ。
 何よりコーラサワーの死はショックだった。ほたるに味方をしなければ、彼が死ぬことはなかっただろう。見方によっては、ほたるが彼に死を運んだとも言える。

「私はやっぱり疫病神なんだ……」
「そんなことねぇよ、マスター。元気出そうぜ」
「ぐすっ……慰めてくれてありがとうございま……って、えぇ!?」
「そんなお化けを見るような目をするのはやめてくれよ。あの程度で死んでたら『不死身』なんて呼ばれないぜ」

 赤毛に切れ長の眼――爆死したはずのコーラサワーがそこに立っていた。

「どうして……でも、生きててくれてよかった」
「マスター、自分のことを疫病神なんて言うなよ。この『幸せのコーラサワー』様が不幸になることは決してねぇからよ。
さあ! 移動しようぜ。騒ぎになったら面倒だ」


 白菊ほたる。彼女はここ、聖杯戦争の地で劇的な出会いを果たした。自らと正反対の悪運の持ち主との邂逅によって、少しだけ幸せになれる気がした。

 願わくば、彼女らの進む道に幸福あらんことを。




 ――――逃亡のために盗んだバイクで事故を起こしてしまったのは、また別のお話。


587 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:14:38 jqxGC4xk0

【クラス】
ライダー

【真名】
パトリック・コーラサワー@機動戦士ガンダム00

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:EX 宝具:C

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、生物は乗りこなせない。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
エース:A
地球軍のエースにまで上り詰めた腕の証。
Cランク相当の直感と勇猛、MSを操縦する際の補正を得る。

【宝具】
『市民守りし平和の象徴(GN-XⅣ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:─ 最大捕捉:─
人型起動兵器『モビルスーツ』
疑似太陽路を動力に使っており、高い性能を誇る。
シールドやビームライフル、ビームサーベルを装備しており、汎用性が高い。
令呪によるバックアップをすることで、機体性能を3倍以上に引き上げる『トランザムシステム』を使うことができるが、出力を上げすぎると自爆してしまうので注意が必要。
量産機であるため、比較的少ない魔力で召喚が可能。

『不死身のコーラサワー』
ランク:A 種別:対人宝具(自分自身)レンジ:― 最大捕捉:―
夥しい数の死者を出した「対ガンダム戦」、「対ELS戦」において、最前線で戦っていたにも関わらず、無傷で生き残った逸話が宝具となったもの。
異様なまでの悪運の強さによって、あらゆる『死』及び『傷』を回避する。
ライダーの乗る機体が爆発四散しようと、通信機器の使えない状態で砂漠を彷徨う羽目になろうと、熱線の飛び交う宇宙空間に生身で放り出されようと、彼はかすり傷1つ負うことはなかった。
この宝具は、彼の悪運から来ているため、マスターの消費魔力はほぼ無い。
しかし、「彼の乗る機体は殆ど全ての戦いにおいて撃墜されてしまっている」という逸話ものこっているために、乗り物に乗っている場合、2ターンに1度何らかの理由でそれは大破する。

【weapon】
拳銃。彼の生きていた時代に流通していたもの。サイレンサー付き。

【人物背景】
スペシャルで2000回(以上のスクランブルをこなした)で模擬戦(では無敗)の男。
腕は確かだが、自信過剰すぎる性格にやや問題がある。
何度も撃墜されては無傷で生還してくるため、揶揄の意味を込めて『不死身のコーラサワー』という異名を獲得した。上司であるカティ・マネキンと結婚し、『幸せのコーラサワー』を名乗った。

【サーヴァントとしての願い】
はい、無いです!

【方針】
軍人らしくマスターの意向に従う。

【マスター】
白菊ほたる@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
帰りたい。
幸せになりたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
「不幸体質」

【人物背景】
所属するプロダクションが次々と倒産していくという不幸な事態に見舞われている薄幸アイドル。
「疫病神」と呼ばれ続けていたせいか、常に低姿勢でネガティブ思考に陥ることもしばしば。
しかし、トップアイドルを目指すことは諦めておらず、幸せになりたいという強い意志と、誰よりも眩しい笑顔を持っている。

【方針】
これからライダーと話し合って決める


588 : もう何も怖くない、怖くはない  ◆c8luDcK3zQ :2016/06/19(日) 00:15:18 jqxGC4xk0
投下を終了します。


589 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:47:53 1ozR8u920
投下します


590 : 吉良吉影&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:49:03 1ozR8u920

 聖杯戦争
 万能の願望器をめぐり、選ばれたマスターとそのサーヴァントたちが最後の一人となるまで争う儀式

 どうしてそんなものに自分が選ばれたのか、吉良吉影は分からなかった。

 日本の東北地方、杜王町の住人である、ごく平凡なサラリーマン。
 年齢33歳。
 中肉中背、決して人目を引く風貌ではない。
 自宅は杜王町東北部の別荘地帯にあり、結婚はしていない。
 仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。
『心の平穏』
 それこそ彼の最も重視する価値観である。
 出世したい、金が欲しい、威張りたい…。勝ち負け、だの、刺激的な事件、だの、そんなのはテレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い、と、常々そう思っている。
 ただ日々安心して過ごし、悩みもなくくつろいで熟睡できること。
 それこそが、彼の求める『植物のように穏やかな人生』である。

 漠然とした違和感から、自分が杜王町ではなく、見知らぬ都市で日常を送らされていたことに気がつき、そして令呪とやらが右手に宿った。

 あくまでも平穏を望む吉良にとって、まさにこの聖杯戦争は『平穏』を乱す要因であった。
 確かに、何でも願いを叶えられるという聖杯とやらに、興味がないと言えば嘘になる。それに願えば、自分の『性(サガ)』を許容した上で、より平穏を謳歌できるようになるかもしれない。だが、闘争とは平穏ともっともほど遠い行為でもあるのだ。
 そして、吉良は聖杯を疑っていた。いや、もっと言えば、聖杯戦争そのものを疑問視してもいた。
 頭に刷り込まれた筈の知識によると、サーヴァントとやらが割り当てられるはずだ。だが、彼の前にはサーヴァントどころか誰も現れなかった。
 えもすれば新手のスタンド使いによる攻撃かとも思ったが、これほど大がかりにかつ無意味な芝居を打つ必要性が思い浮かばない。
 自分のサガを知っている人間の仕業も思い浮かんだが、それを知っているのはこの吉良吉影ただ一人だということは確かだった。
 
 何にしても、マスターとして覚醒した上で、彼のもとにサーヴァントが現れなかったのは事実であった。
 記憶を取り戻した当日も、その翌日も、明後日も、何も変わらない日常が続く。
 ただ、その日から何かが変わったのは確かだった。

 
 まず、音が聞こえるようになった。
 キシリ、キキー、という、金属の擦れるような細い音を、ふと耳にするのだ。夜中にふと目を覚ました時、壁の向こうから聞こえることがあった。浴室でシャワーを止めた瞬間、換気扇から洩れる微かな音に気づくこともあった。
 錯覚かと思い耳を澄ましていると、大抵はすぐに聞こえなくなってしまう。

 そんなことが二、三日に一度の頻度で起きて二週間ほど経った頃、吉良はあれと遭遇したのだった。
 同僚からの飲み会を断り、そうそうと帰宅し自宅まで一人で歩いていたときの事だった。
 地方都市にしても珍しく、その夜は何故か不気味なほど人通りが少なかった。
それを妙だと思いつつ、かえって人目もなく落ち着くぐらいだとと受け流し、帰路につく。
 
 交差点で立ち止まり、目の前を車が駆け抜けた。エンジン音が遠ざかった後に、不意に背後からあの音が現れたのだ。


 キキュ…… キシリ……


 その響きは錯覚と決めつけるにははっきりし過ぎていた。金属が擦れるような音の発信源は、吉良に近づきも離れもせず、その場に留まっているようだった。

(まただ……何なんだ一体っ)

 吉良はそのまま交差点を渡ってしまおうかとも思ったが、奇妙な音への好奇心が勝った。
 そっと振り向くと、十メートルほど離れて大きな鳥籠を提げた男が立っていた。


591 : 吉良吉影&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:50:23 1ozR8u920

 街灯の淡い光を正面に浴びて立つ、男の身長は2メートル近くあった。黒い帽子はシルクハットに似ているが鍔がやたら大きく、端の方は少し垂れ下がっていた。
鍔の陰になって顔が見えない。黒いマントは空気を抱くように膨らみを保ち、ザラザラして見えた表面は黒い羽根をまんべんなく縫いつけているのだった。
烏の羽根だろうか。男の服は派手な赤や黄や青、緑の布きれをモザイク状に繋ぎ合わせたもので、吉良は一瞬ピエロかと思った。

 白い手袋を嵌めた指は常人よりも細長い。その左手は丈一メートルを超える大型の鳥籠を吊っている。銅か錆びた鉄か、暗い茶色の格子は頑丈そうだ。

 キシリ、キキ、という金属の細い軋みは、鳥籠が揺れる際に吊り手とのジョイント部が擦れる音だった。

 その猿でも飼えそうな鳥籠の中に、一人の少年が閉じ込められていた。小学校高学年か中学生だろう。白いタオル地のパジャマに素足だ。

 吉良は目を見開いた。それは男に驚いたこともあるが、何よりその膝を抱えた少年の指は数が足りなかったからだ。
右手の薬指と小指、左手の人差し指が付け根からない。元々ではなく、断面には血がこびりついていた。改めて見ると足の指も五本ほどしか残っていない。

 少年の顔は青白く、瞬きしない瞳は虚ろに濁っていた。どうして閉じ込められているか、鳥籠の中で何を思うのか、気になった

 少年の目はまっすぐ吉良の方を向いていた。

 男の右手は、大きな剪定鋏を握っていた。柄の間にバネの入った全金属製で、半円を描く切り刃とその受け刃は十五センチほどの長さがあった。良く手入れされた刃は街灯の光を鋭く反射している。
 
 男の右手が、動き出した。柄を握る力が緩められ、ショキ、と、鋏が開いた。僅かな欠けもない、輝く刃。
 男は左腕を動かし、鳥籠を自分の目の前に差し上げた。マントが揺れた。右手の剪定鋏を鳥籠に近づける。半ば開いた刃先を中の少年に向けた。少年の、左手の辺りに。
 少年が虚ろな表情のまま、左手を開いて格子の隙間から指を出した。人差し指のない四本の指を。

 吉良は、目を逸らすことが出来なかった。

 男が、剪定鋏を丁寧に動かして、少年の左手中指を、根元から、切断した。鳥肌が立つような、骨の切れる嫌な音が響いた。
 落ちた指が地面にぶつかる前に、剪定鋏を持った男の右手が受け止めていた。他の指もそうやって切られたのだろう、切断面から鮮血がドロリと溢れ出す。鳥籠の少年は声を洩らすこともなく、青白い顔を少しずつ、スローモーションのように苦悶へと歪めていった。濁った瞳で吉良を見据えながら。

 男が、摘まんだ少年の指を自分の顔に近づけた。大きな帽子が上を向き、街灯の光が差し込んで男の顔が見えた。
 顔の上半分は金属の仮面で覆われていた。凹凸は殆どなく、両目の部分に丸い穴が二つ開いているだけだ。
 下半分……男の露出した生身部分はそこだけだったが、細く尖った顎は極端に長く、薄い唇は両端が吊り上がって大きなV字を作っていた。人間離れした顔立ちだった。
 剪定鋏と少年の指を持った右手を顔の上に捧げ、男は指を離した。開いた口の中に少年の中指が落ちた。
 コリ、コリリ、ゴリ、グジ、と、顎の動きに合わせて不気味な音が続いた。男は、少年の指を食べているのだった。
動作の段階でまさかと予想してはいたが、吉良は身震いした。
 狂っている。自分が言うのもなんだが、と吉良は思った。


592 : 吉良吉影&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:52:08 1ozR8u920

 指を食べ終えた男が、吉良と正面に向き直った。仮面は鍔に隠れたが、吉良は男が自分を見つめているような気がした。
 鳥籠の少年も無表情に戻っていた。血の流れる切断面を押さえながらも少年は膝を抱えた。少年は黙っていた。助けを諦めているのかも知れない。
 
「……なんだ、お前は」

 吉良は問いかけた。同時に、彼の体から半身とも言うべきスタンドが現れる。しかし、それは無駄に終わった。
 鳥籠と男が、唐突に消えた。そこには街灯に照らされた暗い地面だけが残っていた。
 
「……何だったんだ」

 ツゥー、と額から冷や汗を流れる。
 明らかにあれは、普通のものではなかった。日常の、平穏の、そして正気の外にあるものだ。
 吉良はしばらく立ち尽くしていたが、ふと信号が青になっていることに気がつき、あわてて交差点をわたった。
 
 なぜだか無性に、家に帰りたかった。
 
 気がついていないのかそれともあえて気づかないふりをしているのか。
 あの男の吉良への視線は、吉良が『彼女』へと向けるものと同一のものだった。




 結論から言えば、あの鳥籠の男ーーバーサーカーは吉良のサーヴァントだ。
 吉良自身は知らぬことだが、彼はこの数日間、確かに吉良の側に居た。
 そして、今も背後からじっとついてきていることに、吉良は気づけなかった。


593 : 吉良吉影&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:53:23 1ozR8u920


【クラス】
バーサーカー

【真名】
指食い@指喰いと腐れ風神

【属性】
混沌・狂

【パラメーター】
筋力B 敏捷B 耐久B 魔力C 幸運C 宝具C+

【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせる代わりに言語能力及び理性の大半は失われている
しかしバーサーカーは、マスターの『手』に触れようとした相手を優先的に襲う

【保有スキル】
気配遮断(偽):A
バーサーカーは存在の次元がズレているため、実態化を保った上で見える時と見えないとき、物理的に関われる時と関われない時がある
怪物としての本能か、バーサーカーは理性を失った状態でもある程度は自分の意思で姿を消しているようだ

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

単独行動(偽):A
『鳥籠』がその役割を果たしている時、バーサーカーはマスター不在でも最大20日間行動できる。

【宝具】
『指切り鋏』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:20
 バーサーカーの所持する剪定鋏。その刃はよく手入れされていて、鋭く肉を断つ。

『鳥籠』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
 バーサーカーが持ち歩いている、丈一メートルを超える大型の鳥籠
 バーサーカーは獲物として選んだ人間をこの鳥籠に閉じ込め、一本ずつ指を切りとり、食べる。
 籠の中に入れられた人間は心身の活動が低下し、指を切られても血がでなくなる。

 1日に1本、鳥籠に入れられた人間の指を食べることで、バーサーカーはマスター不在でも現界を維持できるだけの魔力を補充できる

 因みに、籠の出口は約三十センチ四方しかない。どう考えても人間を籠から出すには無理のある構造をしているが、バーサーカーにとってはどうでもいいことなのだろう

【weapon】
『指切り鋏』

『少年』
吉良に姿を表す前にバーサーカーに目をつけられた不運なNPC。指は残り十三本

【サーヴァントとしての願い】
マスターの指を食いたい。

【人物背景】
『指喰い』と呼ばれる怪人。
いつから存在するのか定かではなく、最も古い登場記録は十六世紀のヨーロッパ。 
日本での目撃例は明治二十四年からで、開国と同時に西洋人と一緒に渡ってきたらしい。


594 : 吉良吉影&バーサーカー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:55:12 1ozR8u920



【名前】
吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
植物のような平穏な生活

【能力・技能】
いわゆる超能力者、スタンド使い。

【weapon】
スタンド能力、「キラークイーン」
【破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - D / 持続力 - B / 精密動作性 - B / 成長性 - A】

・「第一の爆弾」
 キラークイーンの指先で触れた物質や生物を爆弾に変化させる。人差し指の第一関節にスイッチがあり、これを押すことで爆弾に変えたモノは爆発する。
 あるいは、スイッチに関係なく他の物体に接触した途端に即爆発する、という設定も可能。
 前者はスイッチを押さない限り何をしても爆発せず、後者はスイッチ要らずだがこちらの任意では爆破できない(爆発の条件は接触のみでスイッチを押しても爆発しない)ため誤爆などのリスクがあり一長一短。
 また、爆発の種類も「爆弾に変えたモノ自体が爆発し跡形も残らない」「爆弾に触れた対象が爆発し爆弾に変えたモノ自体は残る(ただし一度爆発した時点で爆弾ではなくなる?)」の二種類がある。
 これらの性質は対象を爆弾に変えた後には変更できず、一度にひとつのものしか爆弾にすることはできない。

・「第二の爆弾『シアー・ハート・アタック』」
 キラークイーンの左手の甲から射出される爆弾戦車。自動操縦で敵を追尾し、爆破する。
 爆炎を放つ、あるいは接触した相手を爆破する、という方法で攻撃を行うため、爆発してもシアーハートアタックが消滅することはなく、残った敵を追い続ける。
 さらに非常に頑丈で、パワーも強い。
 だが自動操縦であるため単純な行動しかできず、敵を感知する方法も視覚などではなく周囲の熱を感知して温度の高い物体の方へ向かう、というものであるため人間よりも温度の高い物体があるとそちらへ向かってしまう。
 また、あくまでもキラークイーンの左手の一部であるため、ダメージや細工をされると吉良の左手にフィードバックする。

 第三の爆弾については参加時期的に持っていない。

【人物背景】 
 S市杜王町に住まう殺人鬼。
 女性の綺麗な手首を偏愛しており、自らの嗜好に合う手首を見つけると女性を殺害し、切り取り「恋人」として持ち歩く異常性癖を持つ。
 表向きは誰に対しても物腰柔らかで警戒心を与えない、という態度を装っているが、本質的にはプライドが高い。
 知能や才能も高く、それに対して自信を持っているが、「平穏な暮らし」のために隠している。


595 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/06/19(日) 05:56:26 1ozR8u920
投下終了です


596 : 名無しさん :2016/06/19(日) 09:11:54 OYNXwzUg0
質問なのですが、締め切りは6月20日とのことですが、これは20日中に投下すればOKでしょうか。
それとも、20日になったらもう終了ということでしょうか
(20日:0時までなのか、20日23:59分59秒までなのか)


597 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/19(日) 10:54:28 oJ5oOG2I0
>>596 後者の方で大丈夫です。


598 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/19(日) 18:41:34 oJ5oOG2I0
すいません間違えました、前者の方です。
明日の23:59まで投下を受付しております。


599 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 19:53:31 54rxZQOc0
投下します。


600 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 19:55:50 54rxZQOc0
あ…ああ……
崩れていく…
城が瓦礫となって崩れていく……
その瓦礫の中に倒れているのはーーーー


「はあっ はあっ」
月明かりもほとんど差さない路地裏、こんな夜遅くに人が通るはずもないそこで彼女、櫻田奏は男に追いかけられていた。男は古風な鎧をまとい、手に持つ長剣はこちらを殺す意思を感じさせる。鎧をまとっているとは思えないスピードで駆ける。明らかに常人ではない。

「まだサーヴァントを召喚していないマスターを殺すことにいささか躊躇いはありますがこれも我がマスターのため」

男が言うのが聞こえる。
サーヴァント、マスター、知らない単語のはずなのに、頭の奥で何かが疼く。まるで知っているような……
必死で走る。少しでも足を緩めれば命は無いと本能が告げている。右手が熱くなっていることに気付く。視線を動かすと右手に赤い刻印が刻まれているのが見えた。こんなものを自分で描いた覚えはない、輝じゃあるまいし……
輝?自分で考えておきながら疑問に思う。輝なんていう名前に覚えはない……
いや、覚えている。輝だけじゃない、栞、光、岬、遥、茜、葵、そして修、兄弟全員のことを覚えている。思い出した、私がいた世界と家族のことを。記憶を思い出すと同時に聖杯戦争についての知識が流れ込んでくる。
マスター、サーヴァント、クラス、令呪、聖杯、願い……
願い、私の願いはーー

「ここで死んでもらいます!」

その声で我にかえる。見れば鎧の男、セイバーはすぐそこまで迫ってきている。能力は思い出した。何か、武器を。
スタンガンを生成する。それと同時に彼女の貯金からそれと同等の金額が差し引かれる。
そして迷うことなくスタンガンを男に押し当てる。とびきり強力なものを生成した。数分間は動けなくなるはず……

「嘘!?」

セイバーは全く変わらぬ様子でそこに立っていた。100万Vの電圧が流れた様子などどこにも見えない。

「神秘を持たないそんな攻撃では私には効かない」

セイバーはそう言うと剣を振り上げる。

「だったら!」

もっと強力な武器を。そう、銃。触ったことなんてないけど、テレビで見たことはある。
そう思うと同時に手に拳銃が出現する。

「これならどうかしら!」

引き金を引く。予想以上の反動だけれどこれだけ近ければ外すこともない。銃弾はセイバーの胸に命中した。しかし命中しただけだった。銃弾が当たったというのにセイバーは砂粒が当たった程の反応も見せない。

「効かぬと言っている!」

そんな……これ以上に強力な武器を。それでも効かないかもしれない。どうしたら…

「終わりだ」

セイバーは剣を振り下ろす。逃げられない。こんなところで私は終わるの……


601 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 19:58:26 54rxZQOc0
一発、銃声が聞こえた。目を開くとそこにはショットガンを構えた一人の男、その向こうには銃撃を食らい怯むセイバーの姿。さらに数発男が弾を放つ。その弾は余さず敵の体を捉える。だが見るにセイバーにはあまり効いていない様子だ。一発目は不意の攻撃に動揺しただけということか。尚も撃ち続ける男の姿をよく見ると何かが見える。聖杯より与えられた知識が告げる、それは"ステータス"でありこの男は"サーヴァント"であると。そこに見えるサーヴァントのクラスは……

「ライダー」

そう言った瞬間その男ライダーの肩が少し震えたように見えた。

「逃げるぞ!」

これ以上銃撃をしてもセイバーを止めることは出来ないと判断したのだろう。そう叫ぶとこちらの手を取り走り出すように促す。半ば引っ張られるように走り出し振り返るとセイバーが走り出すのが見えた。ライダーは走りながらも背後に向けて銃を撃つもやはりセイバーの速度が遅くなる様子は無い。このままではすぐに追いつかれる。

「あいつをなんとか出来ないの!? っていうかサーヴァントってもっと強いんじゃないの!? このままじゃ……」

思わずライダーに言ってしまう。

「……メダルが無い」
「メダル?」
「正確に言うならセルメダル。それさえあれば……」

セルメダル聞いたこともない。そもそもそのメダルと今この逃げている状況にどう関係があるのかもわからない。けど

「それがあればあいつを何とかできるのね?」
「ああ、だがこの世界に有るはずもない、いや無い方がいいんだが……」
「出せるかもしれない」
「え?」

そう、私の能力は物質生成(ヘブンズゲート)。対価さえ払えばいかなるものでも過去現在未来問わず架空のものさえ生成できる。
とはいえ名前しか知らない物しかもいくらかも分からないものを生成できるか……でもやるしかない。


それは欲しいと思った瞬間に現れる。決意した瞬間握りしめた手の中に数個の硬い感触を感じる。手を開くと銀色に鈍く光るメダルがいくつかあるのが見えた。

「セルメダル⁉︎ なぜマスターがそれを⁉︎」
「説明は後!とにかくこれがあればいいんでしょ」
「詳しくは後で聞く。今はこれを使わせてもらう!」

メダルをライダーに渡すと、彼はその内1枚を体の前で構える。上着をはだけると腰に大きなダイヤルとスロットの付いたベルトが見えた。

「変身!」

その声とともにメダルを放す。重力に引かれるメダルはしかし地面に落ちることなく、吸い込まれるかのようにベルトのスロットに落ちる。迷いなくダイヤルを回すとベルト中央のカプセルが開かれる、まるで卵の殻が割れ雛が誕生するかのように。そう聖杯戦争という舞台に生まれたのは『仮面ライダーバース』誕生の名を冠するライダー。

「ハアアアアアアッ!」

強化された脚力で一気に敵の元へ近寄る。だがセイバーも何もせず待っているわけはない。手に持つ剣を構えライダーを切り払おうと迎え討つ。捉えたとセイバーが確信するもいやしかしその剣先にライダーはいない。

《CUTTER WING》

電子音が鳴る。セイバーが上を見ると機械の翼を広げたライダーが滞空しているのが見えた。ライダーは向きを変えセイバーの方へ加速していく。手に持つ剣をすり抜け、すれ違いざまにセイバーの脇腹を切り裂く。それは翼にして刃。単なる移動手段だと油断したセイバーは傷口を押さえ倒れこむ。その様子を深く見ることなく、ライダーはそのマスターの元へ飛ぶ。

「撤退する」

そう言うとライダーは奏を抱え上げ、セイバーとは逆の方向へ飛翔する。

「えっ。ちょっと!」

何回か空を飛んだ経験はある。しかしやはり急な飛翔には驚く。


602 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:00:11 54rxZQOc0
「なんでセイバーにとどめを刺さなかったの?」
追跡されないであろう遠方まで逃げ切り、変身を解除したライダーに向けて尋ねる。そう、私は聖杯戦争の知識を知った瞬間に決めた。これはどんな医者にも治せなかった修ちゃんの足を治せる機会。そのために私は勝ち抜く必要がある。勝つためには他者を倒すしかない。

「メダルを無駄に使うわけにはいかない。それに奴を倒すことが目的じゃない。マスターの生存が第一だ」

……は?何言ってんのこの男。聖杯から与えられた知識ではサーヴァントはマスターのために働くはずでしょう。

「そう言えばまだ名前を言っていなかった。俺は後藤慎太郎。仮面ライダーバース、さっきのスーツの装着者だ。俺の願いは世界の平和を守ること。それは難しいかもしれないが聖杯に託すような願いじゃない。」

勝ち抜くつもりがないってこと?
令呪を使うか?いや見たところメダルである程度行動は制限できるかも。令呪は最終手段にするべきか。そう考えている間にライダーは一方的に喋り続ける。

「聖杯のせいで戦いに巻き込まれた人が大勢いるはずだ。世界を守るために俺は手の届く範囲から守っていく。マスター、あんたを守ろう」

ライダーのその言葉はしかし、奏の心に届くことはない。


603 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:03:04 54rxZQOc0
【クラス】
ライダー

【真名】
後藤慎太郎@仮面ライダーオーズ

【パラメーター】
筋力:E  耐久:E+  敏捷:E  魔力:E  幸運:D  宝具:B

【属性】秩序・中庸

【クラススキル】
騎乗:D++
乗り物を乗りこなすスキル
直感的に乗りこなすことに長けてはいないが、マニュアルを読んだならば乗機の性能をこの上なく発揮させることが可能。
幻想種は乗りこなせない。

対魔力:D
一工程による魔術行使を無効化する。 
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
破壊工作:C
ライダーは爆発物、重火器等の取り扱いに優れる。事前にトラップを仕掛けるなどして敵戦力をそぎ落とす事が可能。

射撃:B+
ライダーは師の指導、絶えぬ訓練によって高い射撃技術を獲得した。また敵の飛び道具を撃ち落とすことで損害を防ぐことにも長けているため実質的に矢避けの加護のスキルを内包する。仲間を守る際にもこのスキルは発揮される。

反骨の相:D--
一つの場所に留まらず、また、一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、また、自らの王を見つける事のできない放浪の星である。同ランクの「カリスマ」を無効化する。
ただしライダーの場合、互いに信頼関係を結ぶことができたならばこのスキルは無効化され逆に共闘の際有利な補正を得る。

自己暗示:A
自らを対象にかける暗示。通常は精神に働きかける魔術・スキル・宝具の効果に対して高い防御効果を持つスキル。
ライダーは自らが石だと思えば石の頑丈さで怪物グリードにさえダメージを与えることさえ可能であるためこのスキルを獲得した。また思い込みも強い。

リ・バース:B
窮地においての逆転の可能性、逆境を打ち払う爆発力の高さを示すスキル。自らの持つ装備、置かれた状況への深い理解の元、それらを最大限に利用する行動を取ることができる。また不利な状況になるほど幸運のランクが向上する。同ランクの心眼(真)と戦闘続行を内包する。


604 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:08:11 54rxZQOc0
【宝具】
『戦士の誕生(仮面ライダーバース)』
ランク:B(D〜A) 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:C  耐久:C  敏捷:C  魔力:D  幸運:B 
ライダーがバースドライバーによって強化スーツを身に纏い変身した状態。この状態ではステータスが上記の様になる。変身にはセルメダル1枚を消費する。
セルメダルは800年前の錬金術士が生み出した物であり魔力と神秘を持つが、ライダーはこれを生み出す能力を持たない。
バースドライバーはライダーが所属する財団、鴻上ファウンデーションが開発した仮面ライダーバースのシステムを司るベルトでありセルメダルの力を最大限に解放することをコンセプトに作られている。メダル1枚で変身。さらにメダル1枚につき後述するCLAWsを1つ装備できる。メダル2枚を投入することでセルバッシュモードを発動。抽出したエネルギーを290%にまで高めて発動する。意思を持っているとする逸話もあるがこの聖杯戦争でもそうであるかは不明。少なくとも現在の状態では意思疎通の手段を持たない。
肉弾戦の他、後述するバースバスター、バースCLAWsによって近距離から遠距離までまた空中戦や水上での戦闘にも対応可能である。ライダーはバースCLAWsを駆使した戦いを得意とする。

バースバスター
ライダーが使用する銃。セルメダルをエネルギーに変換してメダル型の光弾として射出する。その特性上こまめにセルメダルを補給する必要がある。反動は大きいが、ライダーは特訓したため変身前変身後ともに使用可能である。ただし出力は調整可能であり、ライダーでなくても使用可能。メダルをいっぱいに入れたセルバレルポッドを銃口に装着することでセルバーストを発動でき強力な光弾を発射できる。現在所持しているのは1丁のみだが、相応の魔力を消費して2丁目以降を生み出すことも可能。

バースCLAWs
バースの体の各部に装着され、戦闘力を強化するユニット。建設機械等を模した形をしている。6種類ありセルメダルを1枚消費して、1つ生成、装着することができる。合体してCLAWsサソリとなる。

ブレストキャノン
胸部に装着される砲撃ユニット。火力は高いが、バースの体自体を移動砲台とするため動きがやや制限される。セルメダルを2枚以上バースドライバーに投入することで強力なビーム、ブレストキャノンシュートを発動できる。極めて多量のメダルを投入すれば、Aランク相当の威力も持てるが、その場合セルメダルの投入に時間がかかり隙が生まれるためライダー単体で発動するのは不可能。

キャタピラレッグ
両脚に装着される移動・格闘ユニット。装着すると耐久が1ランク向上する。悪路の走行に適する。キャタピラによって蹴りと同時に敵を削り上げたり、安定性を上げて武器の反動や敵の吹き飛ばすような攻撃に耐えることができる。

ドリルアーム
右腕に装着される近接格闘ユニット。ドリルの名の通り敵を穿つ攻撃の他、叩きつけて攻撃することも可能。弱点を狙ったピンポイント攻撃も可能。後述するクレーンアームと合体することができる。

クレーンアーム
右腕に装着される中距離支援ユニット。物を釣り上げるほか、敵の拘束、高所に引っ掛け自身を吊り下げる、ターザンのように移動するなど多彩な使い方が可能。先端でセルメダルを吸着させることも可能。またドリルアームと合体させることでドリルアームを射出し離れた敵を抉ることも可能。

ショベルアーム
左腕に装着される近接格闘ユニット。敵を叩きつけてダメージを与えるほかクローで掴み上げる事ができる。。装備時には筋力が1ランク向上する。

カッターウィング
背中に装着される飛行ユニット。装備時に敏捷が1ランク向上する。翼の部分は刃となっており飛行しながら敵を切りつけることが可能。また取り外してブーメランのように使うこともでき、ドリルアームをアンテナとして軌道をコントロールすることが可能。CLAWsサソリ時にはハサミとなる。

CLAWsサソリ
6種のCLAWsが合体したサソリ型の支援メカ。出現させるにはセルメダル1000枚を必要とする。バースの動きに同期して戦闘を行う他、自律行動をさせることもできる。水上や地中でも戦闘が可能。分離をしてから合体しての奇襲も出来る。強力な7色のビームを放ち敵を粉砕するが、逸話から魔術的な結界を破壊することにも長ける。


605 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:09:13 54rxZQOc0
『戦士の前兆(仮面ライダーバース・プロトタイプ)』
ランク:B- 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:C  耐久:C  敏捷:C  魔力:D  幸運:B 
仮面ライダーバース製作にあたりプロトタイプとして作られたもの。プロトバースドライバーを用いて変身する。基本的な性能はバースと変わらないが、使用できるCLAWsユニットがクレーンアームとブレストキャノンのみとなる。バースとの外見上の違いは各部に赤い線(データ収集用のセンサー)があることと、発光時の頭部が赤ではなく緑であることである。バースバスターを使用することは変わらないが、場合によってはより大型の試作型のバースバスターを使用することも可能。二連装となっており連射性能は倍になるが、メダルの消費も倍となる。

『加速する欲望の潜窟(ライドベンダー)』
ランク:D 種別:対人・対軍・対城 レンジ:- 最大補足:∞
鴻上コーポレーションが開発した自動販売機偽装型バイク。バイク型のライドモードと自動販売機型のベンダーモードの形態をとる。
バイク時にはセルメダルを燃料としており、ベンダーモード時にセルメダルを1枚入れボタンを押すと変形し走行可能となる。(おそらくヘルメット等も共に出てくる)ガス欠になった場合は再度メダルを入れる必要がある。
ベンダーモードではセルメダルを入れることでサポートメカのカンドロイドを購入できる。通常はメダル1枚でカンドロイド1つだが、ライダーは1枚で多数のカンドロイドを出現させることが可能。カンドロイドは缶の形状から動物を模した形に変形し索敵、通信、敵の迎撃、拘束、足場や綱となっての戦いのサポートなどが可能。ただしそれほど強くはない。尚、ヤミーの出現を感知できるゴリラカンドロイドは今回の戦いではサーヴァントや使い魔の出現を感知できるが、精度や索敵範囲は若干落ちている。
通常の自動販売機としても使用可能。現在所持しているのは1台だが量産品という特性から一定の魔力を消費して複数生み出すことも可能。また特殊な使い方として、ライドベンダーを乗り捨て爆発させることもできる。敵にダメージを与えられ、メダルなしでカンドロイドを出現させられるが、ライドベンダーは元には戻らない。

『奔出する欲望の騎虎(トライドベンダー)』
ランク:D+ 種別:対人・対軍・対城 レンジ:1〜10 最大補足:20
特殊なカンドロイド、トラカンドロイドとライドベンダーが合体した形態。搭載されたAIにより猛獣のごとき強力な戦闘能力を持つが、現在のライダーはこれを制御する術を持たない。ネコ科の力を持つ者や動物や機械をなだめ、または制御できる者ならば乗りこなせるかもしれない。

『伸ばす右手、掴む左手(ジョイントコンビネーション)』
ランク:E〜A 種別:対人 レンジ:1 最大補足:-
『レンジャーズストライク』に記載されたライダーの逸話に基づく宝具。
「元の持ち主のいた時代の科学技術で生まれた物、宝具としてまたはマスターの能力でそれを再現した物」を手にしたとき、それを自らの宝具とすることができる。宝具のランクは手にした物の威力、有用性等で決まる。古代、未来、地球外、異世界の技術で生まれた物、魔術的な物、動物は宝具とすることができない。


606 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:10:14 54rxZQOc0
『終焉の戦士(仮面ライダーデス)』
ランク:A- 種別:対人・対物 レンジ:- 最大補足:-
筋力:A  耐久:A  敏捷:A  魔力:C  幸運:E
仮面ライダーの名がついているがその実態はバースドライバーから誕生するヤミー。バースを禍々しくし生物的にしたような外見を持つ。バースドライバーの「すべての敵を退けて、装着者に勝利をもたらす力が欲しい」という思いから生まれたとも、後藤慎太郎の「自分より強い力を持ってるものはなくなってしまえば良い」という弱い心から生み出されたとも言われる。強い力を持つものを破壊し無に帰す行動を取る。手にした物をセルメダルに変える力を持つ。小説では重機、戦車、スーパーコンピューター、発電所などの力を無に帰す行動を繰り返した。
ライダーの持つ宝具ではあるが彼がこれを使おうとすることはない為、使用には令呪を使う等、彼の意思を捻じ曲げる必要がある。

『新たなる未来図(仮面ライダーリバース)』
ランク:A 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:A  耐久:B-   敏捷:A+  魔力:C  幸運:B 
鴻上ファウンデーションが「プロトタイプバース」「バース」に続いて開発した強化スーツ。黒地に緑を基調とした色合いのバースと打って変わり、赤と黄色を基調として各所に青色が入るスーツとなっている。バース以上の性能を誇るが、装着者にかかる負担が大きくその強烈な負担に耐えられる者しか変身できず、変身できたとしても限界時間15分を超えると強制的に変身が解除されてしまう。
ライダーがこのスーツを装着したとする記録は残っていないが、バースの装着者であるライダーがこの形態となる可能性は十分にある。

【weapon】
ショットガン、バズーカ砲、拳銃
ライダーが生前使っていた物。いずれも使用にセルメダルを必要としないが、威力は低い。

【人物背景】
巨大企業鴻上ファウンデーションに所属していた青年。世界を守りたいという強い思いを持っており本編の前には警察に所属していたがそこでは世界を守ることができないと判断し鴻上ファウンデーションに転職する。当初はファウンデーション内のライドベンダー隊の隊長であったが800年の眠りから目覚めた欲望の怪物グリードの攻撃によってライドベンダー隊は壊滅する。
その後はオーズのサポートをすることになるが、世界を守りたいという思いが空回りし、オーズを誤射してしまうなど力の無さに焦りと苛立ちを感じていた。その後バースの装着員である伊達明のサポートをすることになり、変身はできないものの戦いや特訓の中で心身ともに成長していく。その後伊達明からバースドライバーを引き継ぎ二代目バースとなる。終盤になり強化された敵とバースの性能差は否めないもののグリード、ヤミーを相手に奮闘する。本編後は警察に復帰した。
MOVIE大戦COREでは仮面ライダーアクセルと共闘したことがあるがその時の記憶があるかは不明。
魔術の素養はないが、魔術に対して科学的な分析を行う事ができる。

【サーヴァントとしての願い】
この世界の平和を守る。

【方針】
世界の平和を守るためにまずはマスターを守る。


607 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:10:56 54rxZQOc0
【マスター】
櫻田奏@城下町のダンデライオン

【マスターとしての願い】
修ちゃんの足を治す、でも…

【weapon】
何でも生成できるが、今は特に持っていない。

【能力・技能】
物質生成(ヘブンズゲート)
資産運用

【人物背景】
王族、櫻田家の次女。王族は一人一人固有の特殊能力を持ち、彼女の能力は物質生成(ヘブンズゲート)。実在、架空、過去、未来、生物、非生物を問わずあらゆる物を生成することが可能であるが、生成したものの価値と同等の金額が彼女の貯金から引かれる。欲しいと思った瞬間に生成されるためタイムラグが生じないが、キャンセルが効かないため、自らの欲望を制御しなければならないという弱点も持つ。貯金以上の物を生成した場合、生成物の価値と同じだけ彼女の所有物が消滅する。
そのため、貯金を常に充分蓄えておく必要があり、元いた世界では株運用などで国家予算規模の貯金がある。スマホで株価をチェックしている時も多い。
自身の能力からから幼い頃に兄である修に足に怪我を負わせてしまう。日常生活に支障はないものの後遺症で激しい運動は出来ないため、修のサッカー選手になるという夢を絶ってしまったと深く悔いている。
そのために王となって、国家予算を医療関係に注ぎ込んで医療を発展させ修の足を治そうとする。元の世界では選挙によって櫻田家の中から次期国王が決まるため選挙で1位になることに並々ならぬ執念を持ち、自分一人の力で1位にならなければ修への償いにならないと考えている。国民に見られる所では気品があり優しい姿を演じるなど王になるための努力を惜しむ事はない。
家族には毒舌を吐いたり、腹黒さを見せることも多い。しかしそれは愛情の裏返しという面もあり、茜が高熱を出した時には看病しいくらするかも分からない万能薬を生成しようとしたり、茜がトラックに轢かれそうになったときに4000万円もする衝撃吸収クッションを生成(これは必要以上に大きなものであり深層での茜への愛情の大きさが窺える)したりした。六女の栞には憚ることのない愛情を見せ、さながら親子のようにも見える。飼い猫のボルシチにも誰も見ていない所では普段からは想像できない可愛らしい態度で可愛がることもある。
また生徒会長を務めるなどリーダーとして素質は十分にあり、長女葵の隠し事に気付くなど洞察力も高い。
本聖杯戦争では優勝して修の足を治そうとするが躊躇いがある。
参戦時期は原作3巻以前、アニメ10話以前で高校生もしくは大学生。

【方針】
聖杯を手に入れる。そのためにライダーを利用する。セルメダルを与えないことである程度行動は制限できるかもしれないと考えているが、最悪の場合令呪を使う。


608 : 櫻田奏&ライダー ◆xy/BiHS2k6 :2016/06/19(日) 20:12:22 54rxZQOc0
投下終了です。


609 : ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 21:56:19 tpvm9ghU0
投下します


610 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:02:58 tpvm9ghU0
『吉良吉影』―年齢、『男』

         出身地は『S市杜王町』
   
         スタンド  『キラークイーン』
                『シアーハートアタック』
 
      趣味   『爪を切り取って保存する』    

             女性の  『美しい手に異常な執着』
            自身の
   
         肉親  『吉良』吉廣
                    ホリー・ジョースター





――――――『偶然』か、それとも『運命』なのか
 

                          「少しずつ」「違うが」.....
 

 
              『こいつは』『私』であり、『オレ』だ


611 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:04:18 tpvm9ghU0
―すてきな青空だった。
昼休み、港の横に繋ぎとめているヨットのデッキに、2人の男が昼食と摂っている。
男の名は「吉良 吉影」。水兵服を来ており、もう一人の男が持ってきたサンドイッチを頬張っている。

「しかし、このサンドイッチの店....『サンジェルマン』だったか?そんな店、「杜王町」には無かった気がするが....」

「記憶違いじゃあないのか?少なくとも、私が生きていたころの「杜王町」にはあったぞ。それも結構混んでて、人気の物はすぐ売り切れてしまうから買うのが大変だった....」

生前の平凡だった頃の出来事を、つい昨日の事のように思い出しながら語る男―『吉良 吉影』。彼こそが「吉良」のサーヴァントであり、『杜王町』に長らく潜み続けた殺人鬼である。

そんな彼を尻目に、黙々とサンドイッチを食べる吉良。....が、ここで『吉良』が自分の分のサンドイッチに全く手を付けていない事に気が付く。
「食べないのか?」
「あぁ、元々サーヴァントには元々必要ない行為だしな、それに『食事』なら....先ほど、済ませてきた」
「........」
「心配ないよ。『証拠』は消してきた。....跡形も無くな」

そう言って懐に潜ませている「彼女」に夢中になる彼に対し、吉良は内心どう扱っていいものか、と多少ながら困惑していた。

......何も今に始まった事ではなく....彼が召喚された時に確認も取ったし、何より彼自身、"対象"こそ違えど、そういう嗜好の持ち主である為、ある程度の理解はできる。

―――そう、"理解"できてしまうのだ。今ここにいる相手は、職業や容姿こそ違えど....本質は、核心的な部分は「自分と同じ」である、という事を。

―――だからこそ、恐ろしいのだ。自分のこれまでの人生においてこの男の様な"化け物"になる可能性が、十分あったという事を。


「――ところで」突然、思い出したように吉良が尋ねる。「君はこの聖杯戦争に置いて、どういったスタンスを取るつもりなんだ?」


612 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:05:31 tpvm9ghU0
「.....お前としてはどうしたいんだ?"吉良 吉影"」

少しの躊躇の後、吉良がそう尋ねると彼はふむ、と少し考えるような仕草を見せた後、

「私は聖杯を獲るつもりでいる」と答えた。

「....."平穏の為に"――か?」

「あぁ。私としても、"英霊"とは言え.....要するにこんな中途半端に生き返っても、全く嬉しくはない。聖杯を獲り、私は再び平穏を手に入れる。―――それが私の「望み」だ」

吉良はその答えを受け止め、少しの沈黙の後

「....そうか、――なら、決まりだ。オレ達は聖杯を獲り、あの場所に戻る事にする。
 ――――この聖杯戦争からの脱出も考えてはいたが....俺の「目的」を果たすためには、その方が手っ取り早いからな」

「..そうか、その方が私もやりやすい。改めてよろしく頼むよ。「吉良吉影」君」

「....あぁ、こちらこそよろしく頼む、『吉良吉影』」


613 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:06:33 tpvm9ghU0
そう言いながら「吉良」は、自分が連れてこられる前の、最後の記憶を思い出す。

―――あれから仗世文は逃げきれる事が出来たのだろうか。
    ホリーと京は、『奴等』の追撃から逃れる事ができたのだろうか。
   
その事だけが、気掛かりで仕方が無かった。そして、その元凶――『奴等』を殺す為なら、ホリーと仗世文を救うためなら。

何だってしよう。

目の前の男―――『吉良 吉影』と同じ、"化け物"になってやろう。

彼の両眼には、彼の祖先である『ジョニィ・ジョースター』と同じ―――『漆黒の意思』が、宿っていた。

そんな彼の眼差しが、「吉良」にはほんの一瞬だけ、あの、自分を追い詰めた「奴等」の面影と重なって―――。

―――――――――少し、嫌気が刺した。



表面上は穏やかに、午後は過ぎていく。
少なくとも、今のところは。


614 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:07:23 tpvm9ghU0
【クラス】
アサシン
【真名】
吉良 吉影(きら よしかげ)

【出典】
ジョジョの奇妙な冒険 part4 『ダイヤモンドは砕けない』

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運A 宝具B


【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:C+
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
殺人鬼(シリアルキラー):A
自分の正体を知られることなく、殺人を繰り返し続けた殺人鬼。
霊体化時に気配遮断のスキルに補正がかかり、実体化時でも一般人程度の魔力量しか感知されない。

チャンス:B
ピンチの土壇場において、「幸運」を優先的に引き寄せることが出来る。
このスキルの発動中、吉良の幸運値にプラス補正が掛かる。


【宝具】

スタンド『キラークイーン』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~4(スタンドビジョン) 最大捕捉:1
吉良吉影の『スタンド』。指先で触れた物質や生物を「爆弾」に変える能力を持つ。
爆弾には、任意で両腕のスイッチを押し爆発させる「点火型」
地雷や機雷のように何かが触れることで自動で爆発する「接触型」の2種類がある。

『シアーハートアタック』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99(移動可能な距離) 最大捕捉:1
 キラークイーンの左手から射出される自動操縦型スタンド。 
 対象の「体温」を感知し自動追尾し、接触すると爆破する。
 非常に頑丈であり、生半可な攻撃ではビクともしない。
 弱点は状態異常魔術など。ダメージフィードバックは吉良の左手のみ現れる。

 
『バイツァ・ダスト(負けて死ね)』

ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1~?(スタンドビジョンが見える距離まで)
 生前、吉良が追い詰められた末に発動した自動操縦型スタンド。
 吉良が激しく「絶望」するほどの事態が発生することによって発動する。
 吉良の情報や正体を知る人間にキラークイーンを取り憑かせ、
 その人物から『吉良吉影』についての情報を得ようとする、またその人物が何らかの攻撃を受けた時発動し、
 情報を得ようとした(攻撃した)人物を『目の中に入り』、『何人いようと』『内側から』爆死させる。
 また、その時「約一時間」時間が巻き戻されるが、その「一時間」に起きた出来事は「運命」として「巻き戻される前」と同じ行動、結末を辿る。
 当の吉良自身は無防備になる為、ループを止めるには吉良自身が任意で解除するか、吉良自身を殺害するしかない。
 また、解除した後再発動するには、再び吉良が「絶望」する必要がある。

『猫草(ストレイ・キャット)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~4
 キラークイーンの腹部に収納してある植物。
 空気を自在に操る能力を持ち、空気を圧縮して弾丸のように撃ち出して攻撃したり、
 広く展開してクッションを作り物理攻撃を防御する事が可能。
 また、キラークイーンが猫草の撃ちだした「空気弾」に触れる事により、自由な距離で操縦、爆破可能な「空気爆弾」へと変化する。

【weapon】

宝具「キラークイーン」のスタンドビジョン&キラークイーンの腹部に収納してある猫草

【人物背景】
S市杜王町出身のサラリーマン。
表向きは平凡なサラリーマンとして生活していたが、
その正体は生まれながらにして「人を殺さずにはいられない」性(さが)を持ち、
手の綺麗な女性を「48人」殺してきた殺人鬼。
長らく正体を見せずに過ごしていたが、
東方仗助等が彼の存在を知るようになり正体が発覚、幾度とない対決の末に敗北、死亡した。

【サーヴァントの願い】

優勝し、今度こそ「平穏」を手に入れる。


615 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:07:58 tpvm9ghU0
【マスター名】吉良吉影
【出典作品】ジョジョの奇妙な冒険 part8 『ジョジョリオン』
【性別】男

【weapon】



【能力・技能】
『キラークイーン』
容姿は同じだが、能力が異なる。『触れると爆発するシャボン玉を作り出すことができる』
『シアー・ハート・アタック』
容姿と能力は同じ、複数発動できる。また、赤血球レベルまで小さくすることも可能。

その他、船医としての医学知識

【人物背景】
S市紅葉区杜王町出身の貨物船勤務医師。29さい。
輸送中のコンテナが頭を直撃し重傷を負った船員を治療する際、偶然岩のような状態になっている人間、
通称『岩人間』を目撃し、彼等の持つ、"病を治すフルーツ"『ロカカカ』の存在を知る。
その後、病気である母親の「吉良・ホリー・ジョースター」の為に、
過去にホリーが助けた事のある元患者のスタンド使い、「空条仗世文」と協力し、ロカカカの奪取に成功するも、
ロカカカを奪われた事に気づいた「岩人間」達に急襲、応戦するも敗北し、岩人間の一人「田最環」から拷問を受ける。
間一髪逃げおおせるも、既に瀕死の重傷を負い、意識不明。大震災により『壁の目』が隆起し、埋められる。
その後仗世文と肉体を等価交換するも、心筋梗塞により死亡した。


【聖杯にかける願い】
元の世界に戻り、仗世文とホリーを救う

【参戦時期】
死亡後からの参戦


616 : 『吉良吉影』という男  ◆XksB4AwhxU :2016/06/19(日) 22:08:23 tpvm9ghU0
投下終了します。


617 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:43:06 i614tiiw0
投下します


618 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:44:02 i614tiiw0

 彼女――そう、彼女は生まれついての兵士だった。

 生殖という女性を女性たらしめる機能を奪われて、ただ戦うために存在する。
 その手に我が子を抱く事はなく、その手はただ主の敵を殺すためにある。
 彼女に名はない。初めから存在しない。
 今日この日、そのときまで――――彼女は特にその事を考えもしなかったし、それが当然だと理解していた。

 生物にはどうしようもなく、生まれついての差が存在する。
 金持ちの子供は当然のように資産を受け継いでその分の機会を手に入れるし、
 一方で貧乏人の子供はその貧困を脱する手段を持たない。

 彼女もまた例に漏れず、生まれたときからどうしようもない格差を抱かされていた。

 一つだけ利があるとすれば――役目があった事だろうか。
 役目を果たす事しか、彼女の脳裏にはなかった。それが全てだった。
 悩みはなかった――というよりも、悩むという機能自体持ち合わせていなかったのだ。

 生粋の、純然たる兵士。


619 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:45:47 i614tiiw0

 兵士。

 彼女は代わりが利くもので、彼女は誰でもあって誰でもない。
 そこに思考は必要ないし、個性などというものは存在しない。
 だからこそ彼女はこの場に召喚された――――誰でもあって誰でもないから、彼女こそ適任だった。

 彼女は多くの仲間の、その汎用たる例の一人だった。

 だが――。


(――――――――)


 だがここで、異物が混じった。
 呼ばれたクラスはバーサーカー。その、狂化が彼女の完璧の歯車に狂いを生じさせた。

 本来なら持ち得ない思考。
 本来なら抱くはずない欲求。
 本来ならあり得ない本能。

 でも、彼女は手にいれた。

 ただの兵士でよかったのに。
 ただの兵士なだけだったのに。
 ただの兵士に過ぎなかったのに。

 彼女は不相応にも――――――兵士以外になりたいと思ってしまった。

 彼女は、初めて、“母”になりたいと思ってしまった。

 どうして、自分は子を為せないのかと考えた。


 子を為すというのは――――――全ての生物の過程にして目標。

 それは、彼女においても変わらない。


620 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:46:40 i614tiiw0



 そして彼女は召喚の混乱から覚めやらぬその内に、反射的に宝具を使用した。

 彼女という個体は、彼女という種族全ての写し身であるが故に――――彼女の子としてではなく、種族として呼び出せる繁殖機能。

 その機能を為す生体を、人は“フェイスハガー”と呼んだ。


 彼女を呼び出したそのマスターは、今や呻く事すらできずに下水道の片隅で踞る事しかできない。


621 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:48:41 i614tiiw0

 ◇ ◆ ◇


 河のその底で沈み続ける運命を選んだ彼にとって、ここは新たな自由であった。
 自覚なく――少なめの脳みそとか、程度が低い癖っ毛とか、どうしようもないクズだとかのレッテルを張られながらも配管工事人として――。
 或いは彼を嘲笑う人間を下水の中身として捨てながら暮らしていた。

 自由だ――最中には、その事への自覚はなかった。

 やがて聖杯戦争のマスターとして記憶を取り戻したそのとき、彼は後遺症で止まらない涙と鼻水を拭いながら、喜んだ。
 或いは混乱した。

 一切の変化が、満ち引き以外が与えられぬ河の底とは違いすぎる環境。
 涎を拭う自由がある。
 記憶を取り戻したが故に『理解』した圧倒的な自由に目眩を覚えつつ、立ち眩みに苛まれつつ、彼は己が召喚したサーヴァントを見た。

 自由――それが彼のちっぽけな脳みそから、僅かな反射と反抗の機会を損なわせたもの。

 彼は――混乱から覚めやらない彼は――。

 そのサーヴァントのすぐ側に現れた卵胞から飛び出した生物に顔面を覆われ――


622 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:49:41 i614tiiw0



(お、オレは……うっ……オレは……)


 ――この日、マジェント・マジェントは『妊娠』した。


623 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:50:27 i614tiiw0

 幸いと言うなら、その生まれついての才能――【スタンド】故に体内に寄生した生物が彼にダメージを与える――彼の身体を食い破り外には出てこない事。

 災いと言うなら、一度スタンドを解除してしまえば、彼の肉体はたちまちサーヴァントの産み出した幻想に突き破られてしまう事。

 彼が唯一助かるとすれば、サーヴァントが聖杯を手にしたその時に、己の救助を聖杯に乞い願う事だけ。


 どうにもならない不幸に、ただ己のサーヴァントが勝ち残り聖杯を手にしてくれる事を祈りながら――


(うう、オレは……)


 ――マジェント・マジェントは再び、考える事をやめた。


624 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:56:31 i614tiiw0
【クラス】
 バーサーカー
【真名】
 エイリアン@エイリアンシリーズ
【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:B
【属性】
 混沌・狂

【クラススキル】
 狂化:EX
  ランクが高いほど、バーサーカーとして理性は失われる分、肉体面が強化されていく。
  本来EXランクともなれば、まともな思考や意志疎通など到底は不可能だが、そもそもエイリアンは人間とは基本的に意思疏通が不可能な存在である。
  兵隊アリ的な役割を持ち思考や欲望などとは無縁であったエイリアンに狂化を加える事で、願望というものが生まれてしまった。

【保有スキル】
 自己改造:EX
  自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
  後述の宝具の効果が加わる事で、エイリアンは姿を変化させていく。

 捕食者の軛:B
  同ランクの気配遮断、気配感知を併せ持つスキル。閉鎖空間においては攻撃態勢に移行してもランクが低下しない。


625 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:57:39 i614tiiw0

【宝具】
「天を埋めよ、我が慈愛(エイリアンズ)」
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
  常時発動型宝具。
  このエイリアンはその種族の普遍的な像(イメージ)として召喚された。エイリアンという概念そのものの写し身。
  エイリアンというイメージの代表として現れている為、霊基を分裂させて自分と同じ種族を呼び出す事ができるが、ただしその分霊格は低下する。
  個にして群、群にして個。この場にいるエイリアンは、エイリアンとして霊核を共にする。

「地に満ちよ、我が情愛(エイリアン・エイリアン・エイリアン)」
 ランク:B 種別:迷宮宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1〜100人
  閉鎖空間内に潜み、遭遇した生命体へ虐殺的な捕食を行った彼女(たち)の逸話に由来する宝具。
  エイリアンの存在する建造物、坑道、船舶等ある程度閉鎖された空間を“エイリアンのいる異界”“エイリアンの巣”に変質させる。
  この空間の中でエイリアンは気配遮断と気配感知をワンランク上昇させ、エイリアン以外は全ステータスをワンランクダウンさせる。
  また、下記と上記の宝具にて現界するエイリアンに関するものを自在に配置する事ができる。

「人を覆えよ、我が求愛(エイリアン・リザレクション)」
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
  大きな卵胞。近付く事で破裂し、開いた人の両手と女性器を合わせた形状の寄生生物が飛び出す。
  筋力にて対抗判定を行い、判定に失敗した場合“昏倒”“寄生”のステータスが付与される。
  そして一定時間経過後によって、宿主の肉体ダメージと共にエイリアンの幼生(チェストバスター)が場に現れる。
  親となった宿主を材料に身体を構成する為バーサーカー自身の霊格を損なわせる事なく誕生し、また材料とした宿主の性質を一部受け継いでいる。
  そして第一宝具の効果により、受け継いだ性質はバーサーカー自身にフィードバックされる。

  現在、マスターのマジェント・マジェントに寄生して彼の形質を獲得する事で、エイリアンはマジェント・マジェントのスタンドを所持している。

【weapon】
 爪、尻尾、強酸性の体液

【人物背景】
 人類が宇宙へと進出し、恒星間移動を行えるようになった未来――そこで遭遇してしまった生命体である。
 何らかの遺伝子操作を行われた生物体兵器の一種と考えられ、アリやハチのような女王を中心とした血族ピラミッドでの繁殖を行う。
 その兵隊アリに属するのが彼女(この表現が正しいかはさておき)であり、宿主となる対象の捕獲や調達、外敵との戦闘を行う。
 昆虫のような無機質さながらも学習能力や判断能力に優れ、宇宙船内という閉鎖空間で数多の人間を殺害した。
 真空状態の宇宙空間での長期間の生存、液体窒素や火炎放射の被弾などの厳しい環境にもある程度耐久する生命力を持つ。

【聖杯にかける願い】
 自分自身の偽りでない生殖能力。


626 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:58:20 i614tiiw0

【マスター】
 マジェント・マジェント@ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン

【能力・技能】
 『20th センチュリー・ボーイ』
  【破壊力:なし /��スピード:C / 射程距離:なし / 持続力:A / 精密動作性:D / 成長性:C】
  バッタのような被り物のスタンド。
  発動中は一切の身動きが取れなくなるかわりに、あらゆるダメージを周囲の地面などに受け流す絶対防御を行う。
  スタンドの更に下で本体に密着したダイナマイトの爆発で傷を負わなかったり、川に落とされても発動している限り溺死を免れたり(或いはそこで考える事をやめるぐらい沈み続ける事となっても)と、
  外的によらずダメージや状態変化そのものを受けつけない能力なのかもしれない。

【ロール】
 殺し屋の傍ら排水パイプの交換技師という役割を得ていたが、現在は妊婦である。
 スタンドを発現する事で身体を食い破られる事に耐えていて動けない。

【人物背景】
 聖人の遺体を手に入れたジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリに差し向けられた追っ手の一人。
 ウェカピポという鉄球使いと組みジョニィたちを追い詰めるも、敗北。その後、ジョニィらに説得されるウェカピポの裏切りを知り復讐心を抱く。
 重症で辛くも救助された彼は、ウェカピポへの復讐を行わんと再会と共に戦闘を開始する――が、
 ウェカピポに敗れ、身体にワイヤーが絡まった“スタンドを解除しなければワイヤーは外せず”“スタンドを解除すると溺死する”という抜けようがない状態で川底に沈み考える事をやめる。

【聖杯にかける願い】
 産みたくないよなぁ……なぁ、そう思わないか?

【方針】
 スタンドを解除すると体内からエイリアンの幼生が飛び出てしまうため、戦いが終わるまで動かずにおとなしくしている。
 エイリアンが勝ち残る事を祈る。


627 : オレがママになっていた ◆RlSrUg30Iw :2016/06/19(日) 23:58:42 i614tiiw0
投下を終了します


628 : ◆B.tb0EDlpw :2016/06/19(日) 23:59:53 cnApts.Q0
皆様投下乙です
自分も投下します


629 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:01:07 G.5QyXuc0

住宅街からいくらか離れたところにある川原で十歳前後の少女と二十代後半の男性が向かい合っていた。
特に男性の方は白髪に褐色の肌、何よりも常人には有り得ぬ服装とオーラが異質さをありありと物語っている。
夜間ということもあり、昨今の物騒な世情からすれば警察に通報される可能性も考えられる絵面ではあったが、幸いにして通行人の気配は何もなかった。
つい先ほど起こった別の事件に誰もが関心を向けているのだろう、と男は考えた。

「…………」
「…すまない、そろそろ名前ぐらいは名乗ってくれないだろうか?」

少女は聖杯戦争のマスターに選ばれた者の一人であり、褐色の男性はサーヴァント・アーチャーだ。
窮地に陥った幼いマスターを救い人気のないところに移動したのだが、困ったことにマスターがこちらの質問に全く応じてくれない。
思い詰めたように俯き、固く唇を閉じたままだ。

(ようやく聖杯戦争のサーヴァントとして召喚されたかと思えば冬木どころか虚構のバーチャル空間が舞台とはな。
しかもマスターは魔術師の心得があるかすら怪しい少女…つくづく世界はオレに嫌がらせをするのが好きらしい)

召喚された瞬間にたった一つの宿願を果たす機会は絶対に存在しないのだとわかってしまった。
ならばせめてサーヴァントらしくマスターを勝利させようと思うのだが、そのマスターが幼い上に何か問題を抱えている様子。
一体何故こんなことになってしまったのか。






遡ること一時間ほど前。
少女、美遊は夕飯の材料が足りないことに気づき自宅である“武家屋敷”からほど近い商店街に買い物に来ていた。
スーパーで買うのもいいのだが、やはり専門店である八百屋、魚屋、精肉店で買った方が割安で質の良いものが買える。
今日は鶏肉の塩麹焼きに添える白ネギを買ってすぐに帰ろうと足早に目的地の八百屋へと急いでいた。

「あれ?美遊ちゃん、買い物?」
「こんにちは」

途中、酒屋から一人の女性が美遊に声を掛けてきた。
蛍塚音子。兄のバイト先の酒屋コペンハーゲンの店主の一人娘である。
他人に対して無愛想で没交渉気味な美遊だがさすがに兄が世話になっている人に対してはそういうわけにもいかない。


630 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:01:38 G.5QyXuc0

「今日の夕飯に使うネギを切らしてたので、買いに行くところです」
「偉いねえ、美遊ちゃんは。そこで手抜きしようとしないあたりが特に」
「いえ、別にそれほどでも」
「んー、相変わらず表情硬いなー。美遊ちゃん可愛いんだから笑えばもっと人気出そうなんだけどなー。
エミヤんもちっとも笑わないし、そういうところは本当兄妹そっくりよねー」

容姿が良く、気配りもできる美遊はクラスで最も親しい友人共々商店街のちょっとしたアイドルになっていた。
しかし滅多に笑わない表情筋の硬さを惜しむ声もそれなりに多かった。




「……ん、あれ?兄、妹………?
何で……え?エミヤんに妹……なんて……いやでも……」
「?」

何の前触れもなく音子の様子が変わり、顎に手を当てて何やら考え事を始めてしまった。
とりあえず放置しておいて八百屋に急ごうとした時、商店街の奥の方から怒号や悲鳴が聞こえてきた。
一体何が、と思考した時それは現れた。
空中から降りてきたのだろう、ズシンと凄まじい音を立てて地面に大男が降り立った。
凶相、という言葉が似合う大男は言葉にならない唸り声を上げ手にした斧を一閃した。
たったそれだけのことでコンクリートが無残に破砕され、飛散した破片がぶつかり慣れ親しんだ商店街の店舗のいくつかが破壊された。




「何……あれ?いや、違う。
わたしはあれを……ああいう存在を知っている……!」

強烈な頭痛が美遊を襲い、たまらず蹲ってしまう。
初めて見るはずなのに、肌に突き刺さる威圧感にどうしようもない既視感を覚える。
そう、あれこそは英霊。わたしはクラスカードに封じられた黒化英霊と戦ったことがある。
けれどあれはモノが違う。まさしく本物にして正当な英霊(サーヴァント)………!


「あ」


遥か前方に立つサーヴァントが大斧で地面を抉り砕き、巨大な破片を飛ばした。
その様がひどくスローモーションに見える。これが走馬灯、と呼ばれるものなのだろうか、などと思考する自分がいる。
足。動かない。動いたとしても、今からでは避けられるはずがない。


「美遊ちゃん!!」


631 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:02:20 G.5QyXuc0


衝撃。誰かに突き飛ばされたのか、身体がゴロゴロと地面を転がった。
聞き覚えのある声に嫌な風切り音と肉が潰れたような音。
慌てて起き上がり、目の前に映ったのはコンクリート破片に上半身を文字通り“消し飛ばされた”女性の残された下半身だった。
果たしてそれが誰のものなのか、火を見るより明らかではあった。

「あ………」

あまりにも呆気ない、見知った人の死。
美遊を庇ったがために彼女は死んだ。

「い、嫌……」

大男が美遊の姿を認め、じりじりと歩み寄ってくる。
まさしくバーサーカーであるそのサーヴァントは理性を奪われども本能で美遊をマスター候補と見抜いていたのかもしれない。
真なる英霊が放つ無言の威圧感・存在感・暴力的な魔力が少女の身体を竦ませる。
逃げようとする意思は鮮明なのに思うように身体が動かないのだ。

今まで出会った人たちの顔が脳裏を過ぎっていく。
ルヴィアさん、イリヤ、リンさん、サファイア、ルビー、よくイリヤと一緒にいる同じクラスの人たち。
そして辛い目に遭ってまで美遊の幸せを願ってくれた、誰よりも大切な――――




「……お兄ちゃん」




言葉は引き金となり、近くに流れた血を媒介として英霊召喚の魔法陣(サークル)が出現した。
瓦礫を吹き飛ばしながら現れたそれは、今まさに美遊へ大斧を振り下ろさんとしたバーサーカーの懐に潜り込み、目にも写らぬ斬撃を見舞った。
無論それらはバーサーカーにとって反応しきれぬものではなく、全てが大斧で防がれ一時的に後退させる程度の効果に留まった。


「まったく、不測の事態というやつには慣れていたつもりだったのだが。
さすがにこの状況はイレギュラーにも程がある」


美遊を救ったのは、白髪に褐色の肌、赤い外套が印象的な男性だった。
その姿はあまりにも見覚えがありすぎる。もう一人の友達の戦装束とほとんど同じ。
つまり彼女の核となっているアーチャーのクラスカードの基となった英霊に違いない。

「…アーチャー」
「確認している時間が惜しいが、君が私のマスターだな?
無理なら返事はしなくていい、動けるようならどこか物陰に身を潜めていてくれ」

そう言ってアーチャーは常人には視認も不可能な速さでバーサーカーへ肉薄していった。
バーサーカーの圧倒的な膂力を、磨き上げられた人の技で以っていなし、受け流す様は美遊たちが行ってきた戦いとはまるでレベルの違う技量を感じる。
あれの前ではクロエの使っていた投影魔術による戦闘技法ですら文字通り子供のままごと同然、いやそのものだろう。
実際、ステータス自体はバーサーカーが遥かに上だがアーチャーは手にした双剣で性能の不利を感じさせない戦いぶりを見せている。
とはいえそれも防戦における話であって、攻めとなれば話は変わらざるを得ないのだが。


632 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:02:59 G.5QyXuc0

アーチャーを攻めあぐねていたバーサーカーだったが、突如光に包まれたかと思うとその場から姿を消した。
あれほど大っぴらに放っていたプレッシャーも消えた以上、完全に立ち去ったということだろうか。
アーチャーも得物を消し、得心したように頷いた。

「令呪による撤退か、どうやらあちら側のマスターにとっても想定外の事態だったらしいな。
あるいはマスターの方に危機が迫ったのかもしれないが」

未だへたり込んだままの美遊に近づき、無言で手を差し伸べるアーチャー。
美遊も手を伸ばし、アーチャーの手を取って何とか立ち上がった。
友人と似たような装束でありながら、まるで違う筋骨隆々の肉体。
目に見えるパラメーターはDと低いが小柄な美遊からすれば外見の強靭さはかなりのものだ。
逆立った白髪に褐色の肌もまっとうな日本人からすれば異端に映り、敬遠の対象となるであろう。
しかし、美遊の感想は違った。

(この人は怖くない)

論理的根拠など全く無い、けれど何故かこのサーヴァントからは警戒しなくても大丈夫という安心感を覚えるのだ。

「サーヴァント・アーチャー、召喚に応じ参上した。
重ねて問うが、君が私のマスターで間違いないかな?」
「…はい。わたしが貴方のマスターです」

聖杯戦争。美遊が知るそれとは全く形を異にするものであるが、既に概要は咀嚼できていた。
元の世界で最後に記憶しているのは並行世界からやって来たエインズワースの二人に力づくで連れ戻されたこと。
恐らく世界を越える際に何らかの不具合が起こってこちらに飛ばされたのだろう。

「ふむ、思ったよりは状況を飲み込めているようだ。
情報交換をしたいところだが、ここは少々場所が悪いな」
「えっ!?」

言うが早いかアーチャーは美遊を抱き上げて一瞬で家屋の屋根まで跳躍した。
端的に言って、お姫様抱っこと呼ばれる態勢だった。しかも明らかにこういった抱き方や力加減に慣れている。
顔を赤らめる美遊だったが、商店街から離れる寸前、自分を庇って死んだ女性の遺体が視界の端に入った。
彼女は記憶を取り戻しかけていた。だとすれば、彼女は生きた人間だったということになる。

「………ごめんなさい」






こうして人気のない場所へ移動してきた二人だが、そこで沈黙が生まれてしまった。
アーチャーとしてもマスターが何か考えているが故にこちらの質問に応じかねていることはわかるためあまり強く出られない。
もっともアーチャーの場合相手が女性という時点で手荒な真似をする可能性は低いのであるが。
とはいえこうしていても埒が明かない、気になっていたことを確かめるべきか。

「マスター、君は元から聖杯戦争に関わりのあった人間ではないのか?」

ビクッという擬音が出そうなほどわかりやすく美遊が肩を震わせた。
幼い顔には何故、と太字で書かれているかのようだった。

「何、簡単なことだよ。君はあまりにも状況を受け入れるのが早すぎる。
無論魔術師ならある程度冷静でいられることにも説明はつくし、君が見た目通りの年齢でないという可能性もないではない。
しかし魔術師の間でもさほど著名ではない聖杯戦争という儀式に対して理解が良すぎる。
あらかじめ知識なり経験なりを得ていたと考えるのが道理というものだろう」


633 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:03:38 G.5QyXuc0
とはいえ熟達した魔術師ではないようだがね、と付け加えた。
彼女からは全く血の匂いや魔術師らしさを感じられないことから少なくとも典型的な魔術師という線だけは有り得ない、とアーチャーは判断した。
さらにアーチャーにとってより見過ごし難い発言があった。

「そしてもう一つ、君は最初に私を指してアーチャーと呼んだな。
あの時私はクラス名さえ名乗っていなかったし、弓ではなく剣を持っていた。
であればクラスを断定できたのは武装の問題ではなく私という個人のパーソナリティを知っていたからだ。
君はどこかの聖杯戦争で私と面識があったのではないのか?」

美遊は表情筋が硬いだけでポーカーフェイスが得意なわけではない。
彼女の表情は「しまった」と顔に書いてあるような状態になっており、嘘をつくのが下手な人柄がアーチャーにもわかるほどだった。
能力のほどは未知数ながら、とてもではないがバトルロイヤルに向いた性格ではなさそうだ。

「……貴方に会うのは初めてです。真名も知りません。
ただ、その服装と能力(ちから)は見たことがあります。
英霊の力を封じたクラスカード、アーチャーのカードに封じられた英雄が貴方だから」
「クラスカード、だと?」

アーチャーの追及からは逃れられないことを悟った美遊は話せる限りのことを話すことにした。
クラスカードの存在と性質、カードを用いた聖杯戦争の存在。
無論、美遊自身が聖杯戦争の賞品、すなわち聖杯であることだけは話さなかったが。




「…なるほど、英霊の魂をカードに落とし込むことによって魔術師が直接サーヴァントと同等の力を振るえるようにした、というわけか。
様々な平行世界からマスターやサーヴァントを召喚しているのだとすれば、こういった事も起こり得るのだろう」

幼いわりには理路整然とした美遊の説明を受けたアーチャーは彼女の話に一応の理解を示した。
英霊ほどの魂をどのような魔術理論でカードに収めたのか、気になる点は多々ある。
しかしわざわざこんな突拍子もない嘘をつく理由があるとも思えない。
故に信じること自体にはさほどの抵抗はない。

(だがこの話が真実だとすれば、クラスカードを作り上げた者はオレを弓の英霊としてカードに封じたことになるが…解せんな。
オレ以上の弓兵など伝承にはいくらでも存在するはず……そもそもどうやって英霊の座からオレを特定した?)

気にかかることはあれど、これについてはマスターを問いただしたところでわかるとは思えない。
これから先、謎が解ける時が来れば僥倖と考える他ない。


634 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:04:13 G.5QyXuc0

「さて、幼い少女に対して酷な質問だとは思うが、サーヴァントとしてこれからの方針について問わねばならない。
簡潔に言って、マスターとして聖杯を獲るのか、あるいは聖杯を放棄して元いた世界に帰る何らかの手段を模索するかの二択だ。
前者ならば他者の命を踏み越える覚悟が必要だ。後者であっても聖杯を求めるであろう多くのマスターと敵対しなお挫けぬ精神が求められる。
私は元より聖杯に託す願いなどは持たない身でね、君の選択に委ねるさ」

方針。それならば美遊の中ではもう決まっていた。
もしアーチャーの言う脱出の手段があったと仮定しよう。
けれどそれで美遊が脱出できたとしても、結局は再びエインズワースに囚われるだけだ。
イリヤたちの住む世界に戻れたところで彼らは決して諦めはしない。
生きている限りずっとエインズワースの影に怯えることになるし、最悪イリヤたちが命を落とす羽目になるかもしれない。

だが此処には一つの希望が存在する。
聖杯。この月にあるという願望機ならば滅びの運命にある世界を、皆を救うことができる。
最高の親友との日常を守れ、最愛の兄も助かり、何より自分自身を犠牲にしなくても良い。
他の誰かを犠牲にするのだとしても、自然と譲れぬ願いとして形になる、たった一つの我が儘(ねがい)。

「…今のわたしには戦う力はありません。できるのはお願いすることだけ。
だから……お願いします。聖杯を、手に入れて下さい」

出来る限り深々と頭を下げてアーチャーに懇願する。
面食らった様子のアーチャーの表情は美遊には見えない。
知らず、美遊の口は普段ならば余計と判断するようなことさえ話し始めていた。

「わたしは、本当は道具で、皆のために死ななければいけなかった。
でも、お兄ちゃんが世界中を敵に回してわたしを助けて、逃がしてくれた。
優しい人たちや、友達に巡り会えた。だから、わたしは生きたい。皆と一緒にいたい……!
だからお願いします。わたしを助けてください。お兄ちゃんを、皆を助けて下さい………!」

何時しか嗚咽を漏らしていた美遊の姿に、アーチャーはかつて取り零した生命の影を見た。
彼女はきっと、善性悪性に関わらず人々のために切り捨てられる側の人間なのだろう。
アーチャーがかつて人であった頃、救おうと足掻き、それでも大勢のために殺すしかなかった者たちの代表格。

(そうか。今頃になって、オレは)

今度こそ救えるというのか。
守護者となり、かつての自分の抹殺を願うようになった今になって。
全てを救う、正義の味方で在ることを許されるというのか。

(まったく、つくづく世界というやつは)

あまりの皮肉に笑い出したくなる。
けれど、嗚呼。これはきっと、己にとって願ってすらいなかった戦場であり報酬に違いない。


635 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:04:47 G.5QyXuc0




「残念だがその願いを聞き届けることはできないな。
我々には決定的なものが欠けている」
「えっ!?」

つい口をついて出た意地悪に涙を目に浮かべたまま、少女が驚きで顔を上げた。
やはり素直な少女だな、などと少々場違いなことを思う。
瞬時に投影したハンカチを手渡し、彼女が涙を拭ったことを確認してから切り出した。

「私はまだ君の名前すら聞いていないのだぞ。
マスターとサーヴァントにとって最も重要な通過儀礼を済ませていないのだ。
そら、これでは戦いどころではないだろう?」
「あっ……」

指摘されて初めて、自己紹介という当たり前のことすらしていなかったことに気づいた。
そしてしばし迷う。本当の名前を言っていいのかどうか。

「…美遊です。美遊・エーデルフェルト、それがわたしの名前です」
「ん…エーデルフェルト……?いや、了解した。
美遊、君が呼び出したサーヴァントは正しく最強だ。結果で以ってそれを証明してみせよう」

迷った末に、エーデルフェルトの名を使うことにした。
ごめんなさいと、心中でのみ誠実な弓兵に詫びる。
けれどここにはNPCであっても兄や、友達がいる。
彼らが音子のように、自分のせいで聖杯戦争に巻き込まれ死んでしまえば、きっと自分は耐えられない。
だからこそ、巻き込む要素は極力減らさなければ。

「さて、マスターとして戦う意思を決めたのは良いが子供は家に帰る時間だ。
マスターに役割(ロール)が与えられている聖杯戦争の性質からしても目立つ真似はすべきでないと進言する」
「…家には帰れません。NPCだとしても、兄は巻き込みたくないんです。
無理を言ってるのはわかってます。でも出来れば知っている人は死なせたくない」
「なるほど。開始早々に難題を吹っかけられたものだ。
仕方あるまい、我が儘なお姫様の要望を聞き届けるのもサーヴァントの役目だ」

やはりアーチャーは良い人だ。
だからこそ名前を正直に言えば心配して自分の見ていないところで家を探そうとしてしまうだろう。
いつか本当の名を必ず伝えよう。きっと信頼できるこのサーヴァントに。


636 : 自己紹介はちゃんとしよう ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:05:58 G.5QyXuc0





【クラス】
アーチャー

【真名】
エミヤ@Fate/stay night

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具E〜A++

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる、魔力避けのアミュレット程度のもの。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても2日は現界可能。

【保有スキル】
千里眼:C
「鷹の目」とも呼ばれる視覚能力。ランクが高くなれば透視・未来視も可能となる。

魔術:C-
オーソドックスな魔術を修得している。ただし自然干渉系の魔術はからきしである。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す。

【宝具】

『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
ランク:E〜A++ 種別:??? レンジ:??? 最大補足:???

錬鉄の固有結界。
本来は魔術であり宝具ではないが、アーチャーの象徴ということで宝具扱いになっている。
心象風景は、燃えさかる炎と、無数の剣が大地に突き立つ一面の荒野が広がり、空には回転する巨大な歯車が存在する。
結界内には、あらゆる「剣を形成する要素」が満たされており、目視した刀剣を結界内に登録し複製、荒野に突き立つ無数の剣の一振りとして貯蔵する。
ただし、複製品の能力は本来のものよりランクが一つ落ちる。
刀剣に宿る「使い手の経験・記憶」ごと解析・複製しているため、初見の武器を複製してもオリジナルの英霊ほどではないがある程度扱いこなせる。
神造兵装の複製は不可能。
守護者として世界と契約しているため、固有結界にかかる負荷は非常に少ない。

【weapon】
各種投影武器

【人物背景】
本作の主人公、衛宮士郎が英霊に至った姿。
守護者として使われるうちに自分自身の抹消を願うようになるがこの聖杯戦争ではまた別の願いを見出したようだ。

【サーヴァントとしての願い】
美遊を勝者にする


【マスター】
美遊・エーデルフェルト(衛宮美遊)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

【マスターとしての願い】
聖杯で自分の世界を救う

【weapon】
なし。カレイドステッキもクラスカードも手元にはない。

【能力・技能】
小学生としては高い運動能力を持つ。
聖杯であるが魔力量そのものはそこまで飛び抜けているわけではない。

【人物背景】
ある平行世界の冬木に存在した「朔月家」の「神稚児」と呼ばれる存在。朔月家では代々その身に神を宿し、願いを叶える存在となる子供が生まれるが、周囲の人間の強い願いを無差別に叶えてしまうため、七歳になって能力が消えてしまうまでは結界の中で暮らすことになる。彼女もそうなるはずであったが、災害をその力で食い止めたことから衛宮切嗣に目を付けられ、連れ去られた。
切嗣の死後は士郎の妹となるもエインズワースによって連れ去られ、その後士郎に救出されイリヤたちの住む平行世界に送られた。
ルヴィアに拾われエーデルフェルトの名やイリヤという友人を得たが八枚目のクラスカードを封印した時に現れたエインズワースのドールズによって元の世界に連れ戻された時から参戦。
アーチャーに対してエーデルフェルト姓を名乗っているがムーンセルでは「衛宮美遊」として登録されており、周囲の知り合いもそう認識している。

【方針】
基本的にはアーチャーに一任。ただし家には帰らず知り合いにも会わないようにする。


637 : ◆B.tb0EDlpw :2016/06/20(月) 00:07:43 G.5QyXuc0
投下終了です
今回、NPCとして登場した名有りの原作キャラが死亡する描写が入っています
ご都合が悪いようでしたら拙作は弾いて下さい


638 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:08:32 8bgCaRBc0
投下します


639 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:08:59 8bgCaRBc0
一人の少女がいた。
彼女は誰からも愛される、聖女のような女だった。
10万3000冊の魔道書を記憶した禁書目録――――魔道図書館。
完全記憶能力を持ち、無数の魔道書を記録させられた彼女は、1年の周期で記憶を消去されなければ、生きてはいけない状態という。
それが納得できなかった、あの笑顔が、あの仕草が、二度と自分に向けられないなどと――あるいは、他の誰かに向けられるなどと。
そう考えたのが自分だけではなかったということを知らされて、できることはもう何もなくなって。
諦めらきれるものではなかった。失いたくなどなかった。それでも、そうしなければ彼女が死ぬと言われれば否応はない。
受け入れるしかないのかと、そう思っていた彼は――――

「………うま……とう………とうま! 起きてよとうま!」

学生寮の一室で、ありえない声を聞いて、ツンツン頭の少年は目を覚ました。
修道服を着た、銀髪の少女が、少年を起こそうとしていた。

「もう、とうまったら、早くしないと寝坊するんだよ?」

「は……? インデックス……!?」

飛び起きる。その声が、まだ自分に向けられているとうことが信じられなくて。
そのまま彼女の両肩を掴み、緑色の瞳を覗き込みながら、

「お前、俺のことを覚えてるのか? じゃあステイルは!? 神裂!? あの魔術師二人はどうしたんだ!?」

「……ちょっと、とうま。まだ寝ぼけてるのかな?
 ――――魔術なんて、なにをわけのわからないことを言ってるのかな」

「……は?」

言われて、記憶を振り返る。
目の前の少女――インデックスは、イギリスからの留学生で修道女見習いだ。
自分の通う高校に転校してきた、現在のルームメイトでもある。
……魔術師なんてものが介在する余地は欠片もない。
そもそも魔術なんてマンガやアニメの中でしか見たことがない、空想上の存在だ。
超能力と同じく――――?

(なんだ、これ……おかしいぞ。何かがおかしい。
 どうして俺は、そんな当たり前のことが納得できないんだ……?)

そう、おかしい。この文句のつけようのない現状に違和感を覚えた自分がおかしい。
そうでなければ彼女はどうしてここにいるのだ。
と、そう考えた彼を業を煮やした彼女はぷんすかと怒りながら急き立てた。

「とうま、そろそろいかないと遅刻するんだよ!」

「あ、ああ……そうだな。着替えるから先出ててくれ」

「わかった」

ベッドから降りて、外に出る彼女を見送り、上条当麻は――――

「……出てきてくれよ、サーヴァント。
 これは聖杯戦争とかいう願いを叶える競争で、お前が俺とチームを組む相棒なんだろ?」

そんな言葉を、唐突に口にした。
当然、それに応える者などいるはずもない。常識で考えれば、だが。


640 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:09:46 8bgCaRBc0
「おやおや、これはまた随分と手際のいい。こうも早く記憶を取り戻したか。
 先ほどのやり取りを見る限り、あの少女が原因かな? いや素晴らしい。
 愛の奇跡、見せてもらった――――と、まあ評しておこうか」

応じて、現れたのは真紅の巨体。まるで機械のごとき前進と、赤髪たなびかせた仮面の男。
サーヴァント――――そう呼ばれたこの男こそが、上条当麻の相棒になるという。
自身に埋め込まれたその情報を、少年は受け入れていた。

「まずは名乗らせてもらおうか。アサシンのサーヴァント、マルス-No.ε。
 お前さんの相棒、ということになるらしいな――少年」

その眼光、威圧感は常軌を逸したものがあった。
第一印象は、端的に言って怪物だ。悪の組織の怪人とも言えるか。
とはいえ、少年からすればそれも含めて、現状もっとも重要なのは、

「聖杯――あらゆる願いを叶える願望器って話だけどよ。
 具体的にはどうなんだ? どこまでの願いなら叶えられる?
 魔術を駆使してなお救われなかった女の子を助けられるのかどうか、まずはそこを教えてくれ」

自己紹介すら省いての質問攻めは、相手によっては不快に感じられたことだろう。
だが巨体のアサシンは、欠片の困惑すら見せずに答えてみせた。

「ずいぶんと焦っているように見えるな、相棒。
 まあ、おおよその理由は察せるが。魔術を持ってして救われない少女。
 起きてからの会話を見るに、さっきの修道服のNPCの元となった存在だろう。
 ――明確に可能だと断言はできんが、過去に死んだ存在すらサーヴァントとして呼び戻す力はとてつもない。
 万能の願望器というのは伊達ではないと、オレは思うがね」

「可能性は……あるわけだな」

そう思いたい、というのが正直なところかもしれない。
あの少女を自分が助けられる可能性がある、と信じたいだけかもしれない。
それでも、自分自身の手で彼女を助けられる可能性があると思えただけで。
全身が歓喜に震えていた。

「ふむ。随分とやる気のようだが、覚悟はあるかね?
 他者の願いを踏みにじり、その命を奪ってでも願いを叶える、という覚悟は」

勿論、必ず殺さねばならないということはない。
マスターとサーヴァントの片方を脱落させればいいという話である。
サーヴァントを打倒すればマスターが死ぬ、というわけではないのだし。
サーヴァントはそもそもが死者であるというのだから、願いの為なら納得できる範疇だろう。
だが、

「サーヴァント同士の戦闘は苛烈を極めるだろう。
 確実な勝利を、とはオレにも言えん。願いがあるならマスターの殺害も行う必要はある。
 そのことに関して、おまえさんはどう思うのか――聞かせてくれよ、我がマスター」

試すように、あるいは値踏みするかのように、アサシンは問いかける。

「俺はあいつを助けたい。失敗したくないんだよ、だったら答えは一つだろ」

できればサーヴァントだけを倒したい、と思う。
他のマスターを殺したくない、という感情は当然のものだ。
それでも、一度目の前でインデックスという聖女を失いかけた男は、堕ちる。
彼女との離別を経験した、いつかどこかで出会うはずだった錬金術師と同じように。

「聖杯を手に入れて、あいつを救う。必要ならなんだってやってやるさ」

少年は、口にした。


641 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:10:11 8bgCaRBc0
アサシン――マルスと名乗る巨漢は、マスターの値踏みを終えた。

「救いたい少女の為に、自分と他者の命すら擲つ行為。
 ――――いい物語だ。共感する者は多いだろう。
 まんざら否定されるべきことでもないぜ、我がマスターよ。
 理由を聞けば、なるほどそれなら仕方がないと、そう思う者もいるだろうよ
 ならばオレもまた、おまえの願いを叶える為に全力を尽くすとしようか」

少年の決意、覚悟、そしてその底にある迷いを見て取った。
総じて素晴らしい、と称賛するように、その想いを認めたのだ。

「まだ迷いはあるようだが、それもまた当然だろう。
 そうも簡単に決められることではないのだからな。
 ……安心しろよ、相棒。ああは言ったが、マスター殺しは必須じゃあない。
 案外、誰一人殺さずに聖杯を得られるかもしれんぞ」

あくまで万が一の場合の覚悟を確かめたまでだ、と。
そんな、思っていない言葉ばかりを並べ立てて。


アサシンは生粋のシリアルキラーだ。ただ殺したいから殺す、という感情だけで構成された殺人鬼。
だが生前彼はその動機を隠し、なにか事情があるかのようにふるまった。
時には悪徳な借金取りに天誅を下したかのように。
時には見知らぬ他人を相手に旧知の友を仕方なく殺したかのように涙を流し。
時には戦場で、人の命の輝きを守っているかのように。
そうした殺戮の果てに捕縛され、処刑され、今の身体に成り果てた。
その彼からしてみれば、少年の語る動機は、言い訳として、大義名分として申し分ない。
聖女を救わんが為に、ただ殺戮を続ければいい。

「いいマスターに出会えてオレは幸運だよ」

それは確かに、本音だった。

「ではまあ、一応聞いておくとしようか。なあ相棒、お前さんの名前は?」

「あ……わ、悪い! 上条だ、上条当麻。
 異能の力なら、原爆級の火炎の塊だろうが、戦略級の超電磁砲だろうが、神様の奇跡だって打ち消せる。
 そんな、何の役にも立たない右手を持った、普通の高校生だよ」

大仰な物言いで、令呪の宿った腕と逆の手を見せつけながら。
その力が役立たずだと言い捨てるその姿。
それもまた、らしい振る舞いではあるのだろう。
一般人であったが故か、魔力供給が僅かしか行われていないのもまた、魂喰いの伏線としては悪くはない。
総じて素晴らしい。殺人許可証を得る為の役者として、これ以上のものはないだろう。

「では行こうか、相棒。一人の少女を救う為に戦うその姿。
 オレは決して否定しない」

「……ありがとうな、アサシン」


642 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:11:40 8bgCaRBc0
【クラス】アサシン

【真名】マルス-No.ε

【出典作品】シルヴァリオ ヴェンデッタ

【属性】混沌・悪

【能力値】
筋力:B 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:B--
サーヴァントとしての気配を断つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
ただしアサシンの殺意の巨大さゆえ、僅かでも攻撃の意思を持てば、その時点で気配遮断は無効となる。

【保有スキル】
狂言回し:B
剛毅、かつ実直。独自の美学を持つ戦闘狂。あるいは使命に殉じる敬虔な使徒。
そうであるかのように見せかける技術、嘘と偽りで獲物を揺さぶる言葉の奇術師。
生前から行い続けてきた動機の偽装を可能とした話術スキル。
殺戮の動機を偽り、他者に信じさせる技能。サーヴァント化により、自身の属性の偽装が可能となった。
同ランク以上の看破系スキルを保有するか、あるいは言動の矛盾を突かなければ看破は不可能。
アサシンの場合、下記のスキルの都合上、全力を出した場合、このスキルは無効となる。

人造惑星:B
魔星。眷星神とも呼ばれる星辰奏者の完全上位種。
その正体は素体となる死体を元にオリハルコンを宿して製造された生きた死体。生前の衝動に強く引きずられる性質を有する。
自身の出力を任意に変化させることが可能であり、筋力、耐久、敏捷、魔力のパラメーターを1ランク上昇、あるいは低下させる。
上昇に応じて魔力消費が激しくなり、生前の衝動を発露させる。
アサシンの場合、ステータスを上昇させると殺人衝動が強くなり、気配遮断、及び狂言回しの効果が無効化する。
擬似的な神性としての側面も有しており、神殺しに類する宝具・スキルの効果を受ける。


【宝具】
「義なく仁なく偽りなく、死虐に殉じる戦神(ディザスター・カーネイジ)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
分子間結合分解能力。
物体を跡形もなく消滅させる、漆黒の波動を生み出すアサシンの星辰光。
その正体は、物体の結合力そのものを崩壊させる物質分解能力である。
銃弾から戦車砲まで、無機有機関わらず接触した森羅万象を瞬く間に崩壊させるため、傍目から見ると突然消え失せたと感じるほどの分解速度を持つ。
付属性、維持性に優れた性質を有し、闇色の星辰を長時間体躯に纏わせながらの攻防一体の戦闘法を可能としている。
全身に展開するため、同ランク以上の宝具がなければ打ち破れない。
一方で気体や非物質による攻撃には効果が薄く、風や磁力、魔力などはこの影響から外れている。

【weapon】

【人物背景】
鬼面を纏った怪物。鬼を連想させる姿をしており、アドラー第三帝国に突如出現し大虐殺を行ったという。
その暴力性に反して基本的に冷静、かつ理知的であり、高い教養が伺えるが、一転して享楽的な振る舞いを演じるなど、真意を読み取るのが非常に困難。
その本性は生まれながらのシリアルキラー。思わせぶりな言動はすべて相手を惑わせる為のものである。
そんな事情ならば仕方ない、という物語の理屈を現実に持ち込むことで連続殺人犯でありながら多数のシンパを獲得し、長年の逃亡生活の末に逮捕され、処刑台に送られた。
死後、人造惑星として蘇り、再び殺戮の限りを尽くした。
戦闘狂ぶった言葉を重ねながらも、本質的には質より量。より多くを殺すことを目的とし、目の前の強敵を倒すより、数多くの容易く殺せる相手を優先する。
身体能力の高さに反して戦闘技術は低いものの、口舌により相手を惑わせる手管は極めて高い。
一方で、その虚飾による揺さぶりが通じない相手には非常に弱い。
迷いのない精神強度を持つ英雄こそが天敵であり、戦闘における技量の低さも相まって、対サーヴァント戦は不得手と言える。
その為、自身の嘘が通じない相手を密かに毛嫌いしている

【聖杯にかける願い】
なし。あえて言うなら受肉して再び殺人を繰り返すこと。


643 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:12:03 8bgCaRBc0
【マスター】
上条当麻@とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
インデックスの救済

【weapon】
なし

【能力・技能】
・幻想殺し(イマジンブレイカー)
あらゆる魔術・超能力を打ち消す異能の右手。
範囲は右手のみであり、一定時間あたりに処理できる異能の種類・個数・量には限界がある。
あまりにも強大なものは打ち消すのに時間がかかり、継続的に放たれるタイプのものは本体に触れなければ完全には消滅しない。
とてつもない効果範囲を持つ場合、自身への影響を打ち消すに留まる。
また、莫大な力を連続的に放つ異能の場合、打ち消し切れず押し負ける。
また異能の力そのもの、またそこから発生する超自然現象にしか作用せず、二次的な物理現状を打ち消す効果はない。
自身の全身を対象とする異能は右手に接触していなくても打ち消すが、右手を効果範囲に含めていない場合打ち消せない。
一方で、ものによれば影響の出ている部分に触れることで打ち消すことが可能となる。
霊装や魔道書などに触れた場合、そのものを消滅させたりはしないものの、発生させる魔術効果を解除し、物体の魔術的要素を消し去る。
神の加護、祝福の類も消し去る為、上条当麻本人の『幸運』も打ち消している。
その正体は「すべての魔術師の怯えと願いが結実したもの」
魔術によって世界を歪めることの弊害が発生し、元の世界を思い出せなくなってしまうかもしれない。
しかし魔術の影響を受けないものがあれば、それを基準に元の世界を思い出すことが可能となる。
その「世界を元に戻す為の基準点」が幻想殺しの正体である


【人物背景】
学園都市に住む高校1年生。ツンツン頭をした少年。右手に生まれつき幻想殺しを有している。
路地裏の喧嘩程度の経験はあるが、相手が複数いれば逃げるしかない。
比較的低レベルの高校に通っているが、その学校でも成績は悪い。
正義感が強いものの、過去の経験からひねくれたのか自虐的な言動が多い。
インデックスとは初対面でわずかに会話した程度だが、その時点で彼女とのつながりを失いたくないが為に彼女の修道服のフードを返さずにいた。
その後、彼女を追う魔術師達と戦うことになるが、その中で彼らの真実を教えられる。
曰く、インデックスは完全記憶能力を持ち、脳内に魔導書を記録している為に1年で記憶を消さなければ死ぬ、と。
彼女の記憶が失われることを嫌い、科学によって解決できないかと行動したが、期限が数日程度であったこともあり失敗。
魔術師たちの好意により、最後の別れを行うことになった。
が、そこで聖杯戦争に招かれた。
原作ではこの後にインデックスの救済に成功するが、タイミングの関係上失敗したと認識。
失敗していた場合、人の道を外れ、他者を巻き込んででもインデックスを救おうとするような人間になっていたと原作者に語られている。


644 : ◆zSWxMkbbas :2016/06/20(月) 17:42:56 8bgCaRBc0
投下終了しました


645 : ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:18:30 mv4gJsYQ0
投下します。


646 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:19:11 mv4gJsYQ0
1人の少女がリスのように机の下で丸く縮こまり、ガタガタと身を震わせている。
彼女の名は森久保乃々。この聖杯戦争に招かれる前の世界では
アイドル事務所に所属しているアイドルの1人であった。

 「どうして、私がこんな目に……」

学校に通うだけの平坦な生活。
しかし、そこにはプロデューサーに懇願され、アイドルとして活動する
せわしなくも、華やかな生活は存在しなかった。
それを思い出した瞬間、頭の中に流れ込んできた聖杯戦争のルール。
何の力も無いただの少女である彼女にはいつ来るやも知れぬ
死の恐怖に怯えることくらいしかできなかった。
自分の机の下に籠ってどのくらい時間が経っただろうか。
ふと時計を確認しようと顔を上に上げると―――

 「ご気分はいかがですか、森久保殿?」

ずるりと落ちてきた顔と目が合う。

 「ひぃぃぃぃぃいいい!!!」

乃々はビクリと体を縮み込ませる。
白く長い髪に、覆面に覆われた顔から唯一覗かせる鋭い金色の眼。
森久保のいる机の下をまるで命を刈りに来た
死神のような風貌の男が上から覗き込んでいたのだった。
彼こそ森久保乃々の呼び出したサーヴァント、アサシンであった。

 「何をそんなに怯えているのです?先ほども申したでしょう。
  このアサシン、南光坊天海にお任せあれ、と」

  「むーりぃ……」

乃々はアサシンの視線から目を反らす。
彼女は元来、人と目を合わせて会話ができない引っ込み思案な性格ではあるが、それだけではない。
アサシンの瞳をじっと見つめていたら意識を吸い込まれてしまいそうな、危険な気配を感じ取っていた。

 「主殿のお気持ちはよ〜く分かりますとも。突然知らぬ地に飛ばされた上、殺し合いをしろと。
  そんなことを言われて、困惑するのも無理はない。嗚呼、本当に可哀そうな森久保殿……」

アサシンは天を仰ぎ哀れむ素振りをする。
しかし、そんな姿を見ても乃々の心は少しも晴れることはなかった。

 「私、こう見えて僧侶なのですよ?」

 「そ、そうなんですかぁ……?」

乃々は恐る恐るアサシンの姿に目を向ける。
紫の袈裟を着て、坊主頭という彼女が知っていた「僧侶」と、
自身のことを『僧侶』と呼んだこのサーヴァントとはかなりかけ離れていた。
何よりもアサシンの両手に持っている鎌のような武器。
人の死を悼むよりも、むしろ人に死を届けるためにあるように見えた。

 「そうです。迷える民草に救いの手を差し伸べるのは僧侶の務め。
  貴方をこの聖杯戦争から救って差し上げます」

 「どうやって……?」

 「この地にて召喚されたサーヴァントは私だけではありません。
 我々と手を結んでくれる者達を探してまいります。しばし、お待ちを……」

そう言ってアサシンが教室から出ていこうとするのを乃々は
慌てて自分のサーヴァントを引き留めようとする。

 「ア、アサシンさん!どこへ……」

 「心配はいりませんとも。もし森久保殿の身に危機が迫ったのなら、その令呪で私を呼んでください」

アサシンは、乃々の手の甲に指を差す。
そこには宝石の形を模した令呪が赤く光りを放っていた。

 「それでは行って参ります」

アサシンはゆっくり学校の廊下へと歩いて行く。
乃々は、何も言えずただ見送るだけしかできなかった。


647 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:19:50 mv4gJsYQ0






 「あ、そうそう。大変申し訳ございません、森久保殿。先ほど言い忘れていたことがありました」

乃々のいる机を見やりながらアサシンはわざと
己のマスターに聞こえないように小さく呟く。

 「実は私には生前では果たされなかった未練、この聖杯戦争で叶えたい"願い"があるのですよ……」

アサシンが果たせなかった未練。
それはかつての主を二度裏切り、自らの手で殺めることであった。
その野望を達成するため、生前のアサシンは儀式を用い、かつての主を現世に呼び戻した。
しかし、アサシンの前に現れたのは「かつての主の姿をした別の何か」だったのだ。
自分の名を呼ばれぬ絶望の中、「魔王」の炎に焼かれ消え去る。それがアサシンの最期だった。
だが、今回使うのは万能の願望機とされる『聖杯』。
アサシンがかつて謀叛にて殺めた「あの日の魔王」を再び現し世に呼び戻すことができる。
アサシンはそのためにこの聖杯戦争の召喚に応じたのだ。

 「さて参りましょうか。まだ戦は狼煙を上げたばかり。
  愉しみはもう少し先に取っておきましょう
  クククククッ……待っていてくださいね……!」

アサシンは愉悦の表情の浮かべながら姿を霊体に変え、
夕闇の光が差す廊下へと消えていったのだった。


648 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:20:39 mv4gJsYQ0
【クラス】
アサシン

【真名】
天海@戦国BASARAシリーズ

【パラメーター】
筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:B 幸運:C 宝具:C

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【固有スキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

話術:B
言論によって人を動かせる才。
国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
自身の真意を悟らせず、信頼を勝ち取ることが可能。

反骨の相:A
自らの欲望のためにかつて仕えていた最初の主を裏切り、
殺害した謀反人としての性質。同ランクの「カリスマ」を無効化する。

畏怖:C
アサシンの持つ鋭い視線は、見た者に恐怖を与える。
サーヴァントには効果は薄いが、並みの人間が見た場合は、
"恐慌"のバッドステータスを付与、あるいは意識を失ってしまう。

【宝具】

『恍惚的 吸収(こうこつてききゅうしゅう)』
ランク:C 分類:対人宝具 レンジ:2〜5 最大補足:1
錫杖鎌を相手に突き刺し、魔力と生命力を直接吸収する宝具。
吸収中のアサシンは身動きが出来ず、周囲に対し無防備になる欠点を持つものの、
魂喰いをせずとも、直接サーヴァントやマスターから魔力を吸収でき、大量に吸収することにより、
マスターからの魔力供給がなくても長期間の戦闘と単独の行動が可能。
生命力も吸収する為、戦闘時の負傷を回復することも出来る。
また、この宝具を使用する度にアサシンの"快楽"が上昇し、後述の宝具の効果を向上することも可能である。

『呪詛的 千刺(じゅそてきせんきょく)』
ランク:C 分類:対軍宝具 レンジ:5〜18 最大補足:10
アサシンの周囲に刺状の衝撃波を発生させる宝具。
この衝撃波は威力が低い反面、発射スピードが早い特性を持っている。
また、ヒットした相手の動きを短時間ではあるが壁や地面に縫い付け、拘束できる効果がある。
宝具『恍惚的 吸収』により"快楽"が上昇している場合、
範囲と拘束時間が向上する効果を持つ。

『守護的 鎧骨(しゅごてきがいこつ)』
ランク:C 分類:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
アサシンの周囲を3つの不気味な髑髏を模した魔力の障壁を生み出す宝具。
この髑髏はアサシンの受けるダメージを1度だけ防御する壁となってくれる。
またこの宝具を解放する瞬間、あるいはアサシン自ら髑髏を砕くことにより、
敵に"恐怖"のバッドステータスを付与することができる。
この効果は対魔力で抵抗可能。

『腐食香炉(ふしょくこうろ)』
ランク:B 分類:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大補足:50
黄緑色の禍々しい煙が噴出する髑髏の形をした香炉を作成する宝具。
この煙の範囲内にいる者の鎧、あるいはそれに類する防具が腐り始め、耐久力が最低のE-ランクになる。
その防具が宝具だった場合は、効果が無効化される。
ただし、この効果はアサシン自身やアサシンのマスターにも例外なく適用される上、
香炉が破壊されると腐っていた防具は元に戻ってしまう。


649 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:21:42 mv4gJsYQ0

【Weapon】
《錫杖鎌》
僧侶であるアサシンが使用する二対の錫杖。先端には大鎌と鋭い刺の装飾が施されている。
この武器で相手に傷をつけることにより、闇の属性のダメージを与えることが出来、
生命力と魔力を吸収することができる。

【人物背景】
「戦国BASARA3」及び「戦国BASARA3宴」の登場人物。小早川秀秋の傍にいる正体不明の高僧。
優柔不断な秀秋に対し、甘い言葉を囁き知恵を授けて決断を促そうとする。
小早川軍の兵士達には『慈悲深き天海様』と呼ばれ慕われており、
優しく心の広い性格と、慈しみのある言葉に救われた者も多く、頼りない秀秋に代わり、
実質的に小早川軍を指揮している。
その正体は織田信長のかつての配下であった、明智光秀。
本能寺で敬愛する信長を殺害し、普通の人間として生きることを決意するも、
豊臣軍との戦闘の最中に"首級"を失い、不安と絶望に苛まれる。
自暴自棄になったところに松永久秀に出会い、「殺戮を好む狂人であろうと人間は人間である」と、
本質を突かれた光秀は『名前』を奪われ、放浪の末に小早川軍に流れ着く。
しかし、再び信長と殺しあう願望は捨てきれず、信長の妹であるお市を利用し、信長を復活させることには
成功したものの、真の魔王と化した信長は最早光秀のことなど覚えておらず、彼によって殺されてしまったのであった。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力でもう一度あの御方と……

【方針】
聖杯狙い。まずは協力者を探す。


650 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:22:08 mv4gJsYQ0
【マスター】
森久保乃々@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
臆病な心を直したいという願望はあったが、
今は早く元の場所に帰りたい

【令呪の形・位置】
左手の甲に刻まれている。宝石に似た形(クール属性のエンブレム)

【weapon】
なし

【能力・技能】
特別な能力はなし。
強いて言うのならばアイドルとしての歌やダンスの技能を習得している。

【人物背景】
アイドルマスターシンデレラガールズに登場するキャラの1人。属性はクール。年齢は14歳。
臆病な性格で、セリフに「〜ですけど」が多くつくのが特徴。
初登場時には「アイドルを辞めたい」と言っていたほど自分に自身がなかったが、
プロデューサーにプロデュースされる中、徐々にアイドルとして成長してく。
しかし、元来の後ろ向きな性格は今でも変わらず。
イラストではいつも目が泳いでおり、目を合わせるのは苦手。
アイドル事務所内ではプロデューサーに発見されたくないためか、机の下にいることが多い。
同じ机の下仲間である星輝子と仲がよくユニットを組んだほど。

【方針】
死にたくない。聖杯戦争には極力関わらない。


651 : 森久保乃々&アサシン ◆OOggPY4fk. :2016/06/20(月) 20:22:41 mv4gJsYQ0
投下終了です。
アサシンの一部の記述は
二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦◆QyqHxdxfPY氏のものを参考にさせていただきました。
この場を借りて、お礼を申し上げます


652 : ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:33:52 S9p27FLI0
――世界は、変わらなかった。変えることが、できなかった

スメラギ・李・ノリエガが取り戻したのは、数週間も前の事だった。
死んだはずの恋人が愛を囁き、逝ってしまったはずの仲間たちが笑顔で自分たちを祝福してくれている。
そんな偽りの日常に、酒に逃げるようには溺れきることができなかったのだ。
これが単に病気や事故で死んでしまった大切な人たちがそこにいるだけならよかった。
けれど、彼らが死んだのはどこかの誰かのせいでもなければ、誰のせいでもない不幸によるものでもない。
他ならぬ、彼女、スメラギ・李・ノリエガ自身の判断ミスのせいだった。
自分が、死に至らしめてしまった人たちに囲まれて幸せに過ごせるほど、彼女は厚顔無恥でもなければ図太い人間でもなかったのだ。
スメラギはむしろ、繊細な人間だった。
自らが成してしまったこと、その責任とトラウマにどこまでも追いかけられてきた人間だった。
だからこそ、記憶を取り戻し、聖杯戦争の知識を得た時、彼女は、聖杯を望んだ。
被害を最小限に抑え、人命を救う。今度こそ、今度こそ……。
粉々に砕かれたかつての夢を、二度に渡り犯してしまった失敗からの逃避を。彼女は望んだ。

にも関わらず、サーヴァントは彼女の前に姿を現すことはなかった。
令呪すらも、その身に現れることはなかった。
ただ、彼女が記憶を取り戻した自室に備え付けられていたパソコンや情報端末のモニターが輝き、謎のアプリがダウンロードされただけだった。
アプリの名はjungle。
それは彼女のサーヴァントを名乗る者の仕業であり、ソレスタルビーイング時代以来の新たなる“ミッション”の始まりだった。


それから彼女は着々とミッションをこなしていった。
焦りや苛立ちがなかったと言えば嘘になる。
しかしこのミッションを送ってきているのが彼女のサーヴァントと思わしき存在である以上、無視するわけにはいかなかった。
驚くほどに高性能なアプリjungleは、利用者にミッションを発令し、こなせばこなすほどポイントが貯まり、ランクが上がる仕様になっていた。
ミッションの内容はどこそこに何かを運べといった簡単なものから、他のマスターやサーヴァントに関わるような命を危険に晒すものまであった。
ミッションの参加選択権は利用者に委ねられているが、難易度が高ければ高いほど、クリア時のポイント加算も高い方式だ。
またランクを上げさえすれば他の利用者――なんとjungleは一般的に配布されているのだ――にミッションを発令する権限も得られる。
スメラギは時間と点数、危険度などを秤にかけ、時に大胆に、時に繊細に、ミッションをこなしていきランクを上げていった。
異能の力を得られるとされるgランカーに達した時、スメラギの手に令呪が一画輝いた。
この令呪を使ってしまえば、今すぐサーヴァントを呼び寄せられるのではないか。
何度かそう考えたこともあったが、その度に、安易な案を理性で抑えこんだ。
聖杯から与えられるはずの令呪を自身で管理し、マスターに与えることのできるサーヴァントだ。
まっとうに令呪が効くとも思えない。
それにこの頃には、自身のサーヴァントがどうしてこんな回りくどい真似をするのか、スメラギには薄々見えてきていた。
少なくとも、サーヴァントが令呪をマスターへと渡す=マスターに従う意思があると確認できた以上、今はそれで十分だ。
スメラギはランクとともに増した権限を使い、jungleユーザーのNPCも巻き込んでますますミッションに励んでいった。
ニ画、三画と令呪を増やし、jungleの運営に会えると噂されるjランカーへと到達した時。
遂にスメラギのもとに、サーヴァントから迎えがやってきた。


653 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:34:41 S9p27FLI0

そして、今に至る。
サーヴァントからよこされた使い魔、緑のオウムに案内されてやってきたのはいかにも悪の秘密基地を思わせる地下空間だった。
これがサーヴァントの“工房”なのだろう。
今はまだ作りかけのようだが、異彩を放つお茶の間とちゃぶ台には何の意味があるのだろうか。
甚だ疑問だがスメラギは意識を切り替える。
今は訳の分からないちゃぶ台を気にかけている暇はない。
何よりも重要なのは彼女を迎え入れた己がサーヴァントだった。

「驚愕です。予想以上です。新記録です。
 スクナがいれば、悔しがり、張り合ったはずなのですが、残念です」

彼女を迎え入れたサーヴァント、キャスターは見るからに変わった男性だった。
拘束具を着こみ、自らを拘束し、その上で特殊なデザインの車いすに鎮座している。
一般人からすれば関り合いになりたくない容姿である。
だが、スメラギは一切動じることはなかった。

「ああ、挨拶が遅れてしまいました。謝罪です。
 直接にははじめまして、マスター。元ソレスタルビーイングの戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガ。
 俺はサーヴァント、キャスター。真名は……ご存知のはずです」

何故なら彼女は彼の真名を知っていたから。

「ええ、知ってるわ。緑の王、比水流(ひすい ながれ)。
 最強クラスの“王”が私のサーヴァントだなんて光栄ね。
 それで? 私の新記録はあなたのお気に召したかしら」

他ならぬ彼が発令したミッションにて、彼の情報マトリクスを集めさせられたからだ。

「あなたほどのプレイヤーなら歓迎です。
 ですがお気に召したかは俺の質問でもあります。
 ――あなたは、俺と一緒に夢を、見てくれますか?」

不健康な外見に似合わぬ、力を帯びた緑の瞳に飲み込まれそうになる。
それは英霊の持つ風格に加えて、王としてのカリスマがなせるわざだろう。

比水流。
このサーヴァントがわざわざ情報マトリクスを集めさせたのは、主従として“絆”を結べるか、その大切さを知っているからだろう。
自分の手で調べさせられただけあり、スメラギは、キャスターの生い立ちや性格、理念についてかなり理解が深まっていた。
共に戦っていけるかどうか、それを判断できるくらいには。
言うなればjungleによるミッションは、スメラギのマスター適性を測るテストであると同時に、スメラギが比水流を測る材料にもなっていたのだ。

「そうね、正直言えばあなたの目指した世界は、私たちが目指した世界とは大きく異なっているわ。
 人類の“変革”……。誰もがあなたたち、英霊のような力を持ち、己の責任で、己の欲望を成し遂げる自由な世界。
 きっとそれは混沌に満ちた世界なのでしょうね」

比水流が理想としたのは、武力を始めとした力を与えられた人々による混沌に満ちた自由な世界。
武力による戦争の根絶を目指したソレスタルビーイングの理念とは相反する世界だ。
けれども、今ここにいるスメラギ・李・ノリエガは最早ソレスタルビーイングの戦術予報士ではない。
自らが聖杯戦争という、戦争を行う側に立ってでも、願いを叶えようとする一人の人間だ。

「……でも、一人ひとりが力を持てば、襲い来る理不尽な死をも振り払い生きていけるというあなたの意思、その一点には理解を示せる。
 他ならぬ被害者であり、犠牲者であるあなたの言葉は、誰よりも重い」

ソレスタルビーイングの同僚であり、自らが守れなかった人間の一人、リヒティを思い出す。
彼は幼少期に戦争で生身を失い、身体をサイボーグ化していた。
生きているのか、死んでいるのか分からない。
死に際にそう漏らした彼と、緑の王の生い立ちは似ていた。
否、比べていいものでもないが、身体を半分失ったリヒティですら、比水流と並べることはできない。
何故なら比水流は英霊となる前の生前、世界を変えようとしていた時にはもう死んでいたのだから――。


654 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:35:07 S9p27FLI0

「確かに俺は聖遺物に全てを奪われた人間です。ですが同時に新たな全てを得ました。
 人は己を守り道を切り開く力を持つべきです。聖杯はそれを与えてくれます」

比水流が自らの拘束を解き、二本の足で大地を歩む。
はだけられた上半身、その服の下には、本来あるはずのもの、心臓がなかった。
ぽっかりと空いた穴に、緑の雷だけが迸っていた。

「これがドレスデン石版由来の王の力……。
 同じ聖遺物由来の力かつ、あなたと相性のいい電脳空間なら自身の令呪を操作できたのも納得ね。
 でも、マトリクスでは知っていたけど、これじゃまるでフランケンシュタインの……ごめんなさい、酷いことを言ったわね」
「構いません。俺は生きています。俺自身がそう思っています」

この雷こそが緑の王の力。“変革”“改変”を司る異能。
“死んでいる”状態を“生きている”状態に改変し続けることで比水流は現界しているのだ。

「ただ、俺が無理やり生きながらえているのは事実です。
 全力で戦える時間は限られています」
「把握しているわ。あなたは言ってしまえば“トランザムでしか”戦闘を行えない。
 粒子――魔力があるうちは圧倒的だけど、魔力が切れると大幅に能力が低下し、消滅の危機に瀕してしまう。
 しかもトランザムをあまりし過ぎるとあなたはダモクレスダウン――自爆してしまう」
「だからこそのjungleです。使い方はここまでのミッションで分かっているはずです」
「おかげさまで。jungleも聖杯戦争もチュートリアルはばっちりよ」

jungleにてNPCを、時には他のマスターやサーヴァントさえ利用して、間接的に参加者を減らしていく。
直接戦うのは此処ぞという時だけだ。
それがこのキャスターの勝ち筋であり、スメラギに課された戦術プラン作成の前提条件だ。
幸い、ここまでのミッションでjungleの使い方や、聖杯戦争そのものがどれだけ熾烈なものかは体験済みだ。
後は今度こそ、絶対に失敗しない戦術を組み上げなければならない。

「心強いです。では改めて契約成立です、マスター。俺と一緒に遊びましょう」

スメラギの心中を知ってか知らずか、流は笑みを浮かべ軽い言葉で手を差し出してくる。

「よろしくね、キャスター」

戦争をゲームと言うキャスターに思うこともあるが、スメラギはぐっとこらえその手を握り、刹那――

「最後に一つだけ。
 マスター、もしもあなたが天上人として世界を変えるよりも、人間としてちゃぶ台を囲むことを望むのなら。
 俺はそれを止めるつもりはありません。
 自由です。立派な欲望です。尊い夢です」

緑の王は、囁いた。
どこか遠くを見つめて。
今までになく穏やかな声で。





「何のことかしら」
「ただのひとりごとです」


655 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:35:32 S9p27FLI0


【クラス】キャスター
【真名】比水流@K RETURN OF KINGS他
【属性】混沌・悪

【ステータス】
筋力:C+ 耐久:E 敏捷:A+ 魔力:A 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
陣地作成:B+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”の形成が可能。
また現実にだけでなくネット上に陣地を形成し、大規模な術を使うこともできる。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
流は情報端末やアプリなどの情報機器関係に特化しているが、魔力を帯びない道具ならクランズマンを利用して作らせることが可能。

【保有スキル】
王権者:A
大いなる力を持ち、この世の理を体現した存在。
緑の王である流は第五王権者であり、「変革」「改変」を司る。
同ランクの魔力放出(雷)、対魔力を内包し、クランの生成やクランズマンへの能力授与も可能にする複合スキル。
このスキルが機能すればするほど、ヴァイスマン偏差は臨界に近づいていく。

破壊工作:C+
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
クランズマンによる物理面と自身による情報面の両方から、直接的・間接的に被害を与えることが可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。
 
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。

潜伏技能:B+
緑の根はどこにでも密かに伸びゆく……。
サーヴァントとしての気配を断つ潜伏技能。
体術的な気配遮断ではなく、王としての力を抑制した上での暗躍能力であり、潜伏時や大衆に紛れた時に見つかりづらくなる。
情報社会と相性のいい緑の王の力によるハッキングや情報痕跡抹消能力やjungleの特性も加わり潜伏力はかなりのもの。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると効果が切れるだけでなく、ダモクレスの剣の出現により、居場所が大々的にバレてしまう。


656 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:35:51 S9p27FLI0

【宝具】
『ダモクレスの剣 (ソード・オブ・ダモクレス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ヴァイスマン偏差と呼ばれる王の異能による因果律の歪みの度合いが一定数を超えるとその頭上に顕現する剣の形をしたエネルギー結晶体。
王の状態も表しており、限界状態だと剣も崩壊していく。王が死ぬと消滅する。
流は英霊になる前から、既に死した人間であり、死んでいる状態を、生きている状態へと改変して生きながらえていた。
それはサーヴァントになってからも変わらず、普段は自らの生命維持にのみ力を割いている。
この宝具の使用により、戦闘モードに移行した流は自身の身体能力を操作し、雷や制限なしに変革の力を振るえる反面、加速度的に魔力を消耗してしまう。
そのため、魔力が切れると生命維持が不可能になる流は短時間しか直接戦闘することができない。
この宝具が機能すればするほど、ヴァイスマン偏差は臨界に近づいていく。

『王権暴発(ダモクレスダウン)』
ランク:A+ 種別:対王宝具 レンジ:999 最大補足:700000
王の力が暴走したり、力を出し切る、王を殺すなど、ヴァイスマン偏差の臨界に達すると発動する現象。
サーヴァント殺しには王殺しに近い負荷がかかり、2・3人殺すとまず発動してしまう。
ダモクレスの剣が落下し、大爆発を引き起こす。
かつて別の王の暴発は関東南部を中心に半径数十㎞を壊滅させ、王自身を含めて70万人以上の犠牲を出した。
ある逸話から破壊不能とされる物も壊すことができるため、真っ当な手段で防ぐことは不可能。
剣が落ち切る前に王を殺すことで現象を回避できる。


『星をも呑み込む緑の大樹(jungle)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000
緑のクラン。
王権者は自らの臣に異能の力を与えることができるが、緑のクランは端末とアプリを通じて不特定多数の人間からなる特殊な形態である。
利用者に様々なミッションを課し、クリアした者にポイントを与え、上からj・u・n・g・l・eの各ランク分けされる。
知らぬ間にゲーム感覚で犯罪に加担させることや、トカゲの尻尾きりも容易で、足がつきにくい。
流の展開する広域結界サンクトゥムでクランズマンは更なる力を引き出すこともできる。
今回、もっぱらの対象となるNPCでは異能の力をぎりぎり与えられるgランカーかよくてnランカーになるのが関の山であり、戦力としては微妙である。
この宝具に強制力はなく、あくまでも自発的にミッションを受けてもらう形である。
また、他のマスターやサーヴァントでも、jungleのユーザーにはなれる。

『伝令なりし我が同胞(コトサカ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
緑のクランズマン。
オウムだが、jungle最古参は伊達でなく、緑の力を使い電撃による戦闘が可能。
流の媒介役としての役割も担っている。

【weapon】
なし。戦闘は雷や力場を纏っての徒手空拳や縦横無尽の疾走で行う

【人物背景】
第五王権者「緑の王」。
聖遺物に全てを奪われ、新たなる全てを得た者。
王たちの間を暗躍し、灰色の王や仲間たちと世界変革にあと一歩まで迫るも、白の王、青の王、赤の王に阻まれる。
敗れはするも満足して死者へと戻った。
彼にもまた、絆を結んだ者たちと囲んだちゃぶ台があった。

【サーヴァントの願い】
世界を変革し、全ての人間が自分の力と責任で、己の欲望を成し遂げる自由なゲームの世界にしたい。

【基本戦術、方針、運用法】
耐久は低いながらも、「改変」が可能な間は死なないためほぼ負けることがないサーヴァント。
緑の力の特性上、即死や状態異常といった押し付けも実質無効化できる。
身体能力も操れるため、近接戦も得意。結果、キャスターでありながら正面からの力押しが可能。最強クラスの王は伊達ではない。
ただし魔力切れ=死亡なため短時間しか戦えず、下手にサーヴァント相手に無双してもダモクレスダウンが起こってしまう。
そのため、マスターを狙ったり、情報やjungleを駆使して間接的に他の主従を倒すことが求められる扱いの難しいサーヴァントである。
相手の異能を封じるタイプも要注意。原作的にある程度までなら効かないが、万一「改変」や不死性を封じられた場合即死である。


657 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:36:07 S9p27FLI0


【マスター】スメラギ・李・ノリエガ @機動戦士ガンダムOO(1stシーズン終了後から2ndシーズン開始前の間)

【マスターとしての願い】 聖杯を手に入れて願いを叶える。

【能力・技能】

『戦術予報士』
国連が認める国際的な民間技師資格の一つ。
統計学や戦術史等の様々な分野を基にして過去の事例から戦術を立案・予測する。
スメラギの戦術は大胆さと繊細さを併せ持つ。

【人物背景】
作戦ミスにより、味方同士を同士討ちさせてしまい、恋人も失った過去を持つ。
その傷を払拭しようと参加した紛争根絶を目指すソレスタルビーイングも壊滅。
大切な仲間を守ることができず、世界も変えられなかった彼女は、いつしか電脳空間に溺れていた。

【方針】
jungleによるNPC導入や、情報戦も活かし、キャスターの制限時間やダモクレスダウンに注意しながら勝ち抜く。


658 : スメラギ・李・ノリエガ&キャスター  ◆fHywygcDNs :2016/06/20(月) 21:36:37 S9p27FLI0
投下終了。
投下宣言を忘れていました、申し訳ありません。


659 : ウィルソン・フィリップス上院議員&アサシン  ◆hHKdU9lVEw :2016/06/20(月) 22:20:29 /FeVcdhQ0
投下します。


660 : ウィルソン・フィリップス上院議員&アサシン  ◆hHKdU9lVEw :2016/06/20(月) 22:21:08 /FeVcdhQ0
聖杯戦争。その凄絶な舞台に巻き込まれた哀れな仔羊が今宵もまた1匹。
 
「殺し合いだとッ?」
(ふ、ふざけるな……このわしを殺し合いなんぞに巻き込んでいいはずがない……わしは…わしは……!)

 高校・大学と成績は1番で卒業、大学ではレスリング部のキャプテンをつとめ、社会に出てからもみんなから慕われ尊敬されて政治家になった。25歳年下の美人モデルを妻にし、ハワイに1000坪もの別荘を持っている。税金はなんと他人の50倍をも払っている。どんな敵だろうとぶちのめしてきた。大統領にだってなれる。

 そう、彼の名は―― 「ウィルソン・フィリップス上院議員だぞーーーッ!」



 彼は、激しい焦燥感と恐怖感に襲われて自慢の高級車で歩道を飛ばし、すれ違う歩行者たちすべてを轢いている。しかし、彼とすれ違ってなお、五体満足でピンピンしている者が1人だけいた――
「おそろしく速い車、オレでなきゃ轢かれちゃうね」

 唯一の生還者はそう呟き、フィリップスの車が去った方向へと足を向けた……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 殺風景な部屋だった。トイレの他には家具1つなく、ただただ絶望の匂いが染みついているだけだ。
 ここは留置場。フィリップスはあの後、危険人物として現行犯逮捕されてこの留置場へと放り込まれたのだ。


661 : ウィルソン・フィリップス上院議員&アサシン  ◆hHKdU9lVEw :2016/06/20(月) 22:21:59 /FeVcdhQ0

「ふざけるなッ!わしは上院議員だぞッ!こんなことをして許されると思っちょるのかッ!わしは…わしは……!」

 高校・大学と成績は1番で卒業、大学ではレスリング部のキャプテンをつとめ、社会に出てからもみんなから慕われ尊敬されて政治家になった。25歳年下の美人モデルを妻にし、ハワイに1000坪もの別荘を持っている。税金はなんと他人の50倍をも払っている。どんな敵だろうとぶちのめしてきた。大統領にだってなれる。
 そう、彼の名は―― 「ウィルソン・フィリップス上院議員だぞーーーッ!」
 
 しかし現実は非情であった。元の世界では上院議員の彼も、ここ聖杯戦争の地では一介のサラリーマンにすぎない。犯罪をもみ消すだけの権力も持ち合わせておらず、このまま裁判で死刑判決を待つのみだろう。

「おそろしく厳重な警備、オレでなきゃ突破できないね」

 全てに絶望しきったその時。彼の留置場へ1人の男がやってきた。
 フィリップスはその男と面識がなかったが、看守でないことだけは一目でわかった。ラフな服装にベレー帽、こんな格好をした人間が看守であるわけがないからだ。それに、なんと言っても1番の決め手は殺気だ。膨大な殺気を隠そうともせずに全身から放出していた。

「オレはアサシンのサーヴァントだ。別に真名は教えなくてもいいよね、だって真名で呼ぶことなんてないもん。マスター、アンタの名前を聞かせてくれ」
「わ……わしはウィルソン。高校・大学と成績は1番で卒業した。大学ではレスリング部のキャプテンをつとめ…社会に出てからもみんなから慕われ尊敬されて政治家になった…ハワイに1000坪の別荘も持っている…25歳年下の美人モデルを妻にした……税金だって他人の50倍は払っているし、いずれ大統領にだってなれる……わしの名はウィルソン・フィリップス上院議員だ。」
「おそろしく長い自己紹介、オレでなきゃ聞き逃しちゃうね」

(今回の聖杯戦争、なにか異質だ。血の匂いがする。オレのような殺人狂の匂いが。クク……血が騒いできた……)
 アサシンは、マスターに見られないようにそっぽを向いて口を醜く歪ませる。


 聖杯戦争の地に囚われた哀れな仔羊。彼は偽りからの脱獄を果たせるのだろうか。


662 : ウィルソン・フィリップス上院議員&アサシン  ◆hHKdU9lVEw :2016/06/20(月) 22:23:20 /FeVcdhQ0

【クラス】
アサシン

【真名】
団長の手刀を見逃さなかった人@HUNTER×HUNTER

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:D

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しいが、アサシンは血の匂いをわざと垂らしているため、同類(殺人狂)にはすぐに見つかってしまう。また、攻撃態勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

【宝具】
『おそろしく速い手刀だ、オレでなきゃ見逃しちゃうね(アイズ・オブ・ゴッド)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:─ 最大捕捉:─
その場にいた人物が誰一人として視認できなかった手刀を、映像を1度観ただけで視認したという逸話が宝具に昇華したもの。あらゆる手刀に対して補正を受け、見切ることが可能。

【weapon】
念能力、ナイフ

【人物背景】
幻影旅団に対抗するために雇われた暗殺者の1人。
暗殺界最強と謳われるゾルディック家と渡り合えると見立てられており、実力は相当高いことがうかがえる。

【サーヴァントとしての願い】
人を殺したい

【マスター】
ウィルソン・フィリップス上院議員@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 『スターダストクルセイダース』

【マスターとしての願い】
元の世界へ帰る

【weapon】
なし

【能力・技能】
カリスマ性が高い。

【人物背景】
ジョースターエジプトツアーご一行とDIOの最終決戦の際に登場。
DIOのアシとして使用された。歩道を走行し、多数の死傷者を出してまで自分は助かろうとしたが、結局DIOに殺されてしまった。


663 : ウィルソン・フィリップス上院議員&アサシン  ◆hHKdU9lVEw :2016/06/20(月) 22:24:00 /FeVcdhQ0
投下終了します


664 : ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:00:25 gTdCyaUQ0
投下します


665 : Holocaust  ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:01:31 gTdCyaUQ0
月が高く昇り、街を光で照らす深夜。

辺り一面は焦土と化した地獄から体を引きずって、この場から離れようとする男。這々の体で逃げる様は無様というほかなかったが、そんなことは今の男にとってはどうでもいいことだった。

男は優秀だった。一流に迫るほどの魔術の才能を持ち、短時間で質の良い陣地を作る手際。
呼び出したサーヴァントは大技を持たないまでも小回りの効くランサー、関係もビジネスライクとしてそれなりに良好なものであった。
自分であれば必ず勝ち残り、聖杯を手に入れるのだと確信していた。決して単なる自惚れではなかったはずだった。

そんな彼にとって不幸なことだったのは二つ。
一つはこれが聖杯戦争であったこと、魔術師として優秀であっても、戦闘に関する経験がなかった。

もう一つは襲撃者が生粋の戦士であったこと。そして、それがとてつもない暴力の化身ということが彼を破滅に導いたのである。


666 : Holocaust  ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:02:55 gTdCyaUQ0

◆     ◆     ◆

そこで行われたのは戦闘ではなく、蹂躙だった。
襲撃者のサーヴァントは魔術師の男が築き上げた陣地の力を得ているランサーを地力だけで叩き潰した。
白髪のマスターの方はこちらの攻撃を全て躱し、動きに反応できない男は相手に翻弄され、深手を負った。
絶望的な状況であり、このままいれば確実に殺されると思った彼は這い蹲りながら彼らから少しでも離れようとする。
どこに逃げればいいかは分からない、ただ彼らから離れなければいけないという意思だけで動いていた。

だが--

「逃がすわけねえだろうが、クソが」

逃げようとした男の身体が相手のマスターに蹴り上げられる。蹴り上げられた男は叫び声をあげる体力すら無くなり、痛みをただ感じるぐらいしかできなくなっていた。

「無駄な手間かけさせんじゃねえよ。こちとらテメエみてえなカス、こんな状態じゃなきゃ喰いたかねえんだよ。
クソが、どこの誰だか知らねえが舐めた真似しやがって。とっととすませ「ま、待て」--あ?」

「わ、わざわざ私を殺す必要はないのではないか? 私はサーヴァントを失った、令呪もここで放棄しよう。
これ以上、この聖杯戦争には関わらない。そうすれば君が私を殺す理由は無くなるだろう? だ、だから命だけは「うるせえ」--ぎっ、ああああああああ!?」

「テメエを殺す理由? さっき言っただろうが、テメエの魂を喰うためだ」

「ひっ――」

「そんな訳だ、これ以上の御託を聞く気はねえ。とっとと死ね」

「や、やめ--」

そう言って白髪鬼は何の躊躇いもなく、男の頭を無造作に踏み潰した。
最期の命乞いは徒労に終わり、栄光を掴むはずだった男の命はあっけなく終わったのである。
そして、そんな男の最期を見て、少しばかり鬱憤が晴れた白髪鬼――ヴィルヘルムは自身のサーヴァントであるバーサーカーの方を見た。

「終わったか?」

「ああ、ちょうどな。ただどうやら喰える魂ってのはマスターだけみてえだな、NPCつったか? ありゃ、単なるカスだ。腹の足しにもなりゃしねえ」

エイヴィヒカイト――カール・クラフトが開発した聖遺物と霊的に融合し、超人的な力を揮うことが可能となる魔術。
人を殺せば殺すほどに魂が聖遺物に回収され、その回収した魂の量に比例して術者は強化される。
その強化の度合いは凄まじいもので、百人殺して百の魂を得たものは常人の百倍に相当する生命力を有した異種生物になるのである。
しかし今のヴィルヘルムは完全に枯渇し、自前の魂しか残っていない。この状態で無理に使おうとすれば、自前を削り己が欠けてしまう。
そんな愚行を彼はこの聖杯戦争において、やるつもりはない。ゆえに今の彼は身に宿す魔業は全てを実質封じられている。
マスターの魂を集めても同じである。初期段階の活動位階までなら何とか使えるかもしれないが、その上にある形成と創造は聖杯で魂を補充するまでは使えない。
バーサーカーへの魔力供給に力を割いている状態でそれらを使えば、大した威力も出せずにすぐ魂が枯渇し、魔力供給に支障が出るからである。


667 : Holocaust ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:04:09 gTdCyaUQ0

「本当ならこんなクズを喰う気はねえんだが、贅沢は言ってられねえ。こんな所で死ぬ気はねえんだからよ」

この聖杯戦争に自分を呼び出した存在に対して苛立ちを募らせるヴィルヘルム。
殺し合いで願いを叶えるのは構わないが、極上の獲物を喰らう直前で自分を呼び出した存在にはかつてないほどの怒りが湧いていた。

「聖杯なんて大層な名前つけてるみてえだが、どうせロクでもねえ代物だ。殺し合いで貰える願望機ってのが、真っ当なはずがねえし、そんな願望機を素直に渡すような奴がいるとは思えねえ。
 まあ、そんなもんでも腹の足しぐらいにはなるだろ、くれるつもりがねえのなら奪い取ればいいしな」

ヴィルヘルムが最も優先しているのは魂の補充である。バーサーカーへの魔力供給を十分に行うためでもあるが、マスター殺害をもっと早く済ませるためでもあった。

「本当ならマスターよりもサーヴァントの魂を喰った方が効率は良いんだろうが、生憎と今の俺は元の世界で出し尽くした後でな、サーヴァントとやり合えるような状態じゃねえ。
だからサーヴァントのことはテメエに任せる。異論はねえな、バーサーカー?」

「好きにしろ、俺は聖杯なんてどうでもいい。ただサーヴァントとして敵を殺し続けるだけだ。それ以外に興味はない」

「そうかい。ま、テメエとの関係はこの戦争の間だけで、別に馴れ馴れしくするつもりはねえが、俺個人としちゃ気に入ってるんだぜ。
いちいち文句つけてくるような奴じゃねえし、殺すことに何の躊躇いもねえ。俺にとっちゃテメエは大当たりだ、バーサーカー」

「世辞を言っている暇があるなら、さっさと次の獲物を探しに行け」

「おお、ワリィワリィ。英雄とやり合えることなんてよ、貴重な経験だからな。こんな時でもなけりゃ、思う存分楽しんでいたのによ。
今の俺がやれるのは全部喰らって前に進む、それしかねえ。あの馬鹿女を喰らうためにな」

求めるものは死闘ではなく殺戮、一切の愉悦(あそび)を捨てて戦い抜く。
すべてを呑み込み、喰らって膨れ上がることこそが己が覇道。彼にとってこの戦争は自身の願いを叶えるための単なる通過点に過ぎない。

「待ってろよ、クラウディア」

我が初恋(はじまり)よ 枯れ落ちろ――。
ただそれだけ――彼女の全てを奪うために彼はこの戦争の全てを喰らう。


668 : Holocaust ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:05:48 gTdCyaUQ0

◆     ◆     ◆

大地は血を飽食し、空は炎に焦がされる。

人は皆、剣を持って滅ぼし尽くし、息ある者は一人たりとも残さない。
男を殺せ。女を殺せ。老婆を殺せ。赤子を殺せ。
犬を殺し、牛馬を殺し、驢馬を殺し、山羊を殺せ。
――大虐殺(ホロコースト)を。
目に映るもの諸々残さず、生贄の祭壇に捧げて火を放て。

この永劫に続くゲットーを。

超えるためなら総て焼き尽くしても構わない。



【クラス】
バーサーカー

【真名】
クー・フーリン[オルタ]

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B+ 敏捷:A+ 魔力:C 幸運:D 宝具:A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
 狂化:EX(C相当)
 バーサーカーでありながら、意思疎通が可能。ただし、その性格は冷酷かつ狂暴であり、戦いと殺戮をひたすら求める戦闘マシーンそのもの。
 本人がまともに意思の疎通を図る気が無い状態に近い。

【保有スキル】
精霊の狂騒:A
クー・フーリンの唸り声は、地に眠る精霊たちを目覚めさせ、敵軍の兵士たちの精神を砕く、精神系の干渉。敵陣全員の筋力と敏捷のパラメーターが一時的にランクダウンする。

矢避けの加護:C
飛び道具に対する対応力。使い手を視界に捉えた状態であればいかなる遠距離攻撃も避ける事ができる。
ただし超遠距離からの直接攻撃、および広範囲の全体攻撃は該当しない。

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

神性:C
神霊適性を持つかどうか。
高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】
『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:5〜50 最大捕捉:100人
ホーミング魔槍ミサイル。クー・フーリン本来の宝具。
オルタの場合は自らの肉体の崩壊も辞さないほどの全力投擲であるため、通常の召喚時よりも威力と有効範囲が上昇している。
敵陣全体に対する即死効果があり、即死にならない場合でも大ダメージを与える。
(ルーン魔術によって「崩壊する肉体を再生させながら」投擲しているため、クー・フーリンがダメージを受けることはない―――途方もない苦痛を除けばだが)

『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:─ 最大捕捉:1人
荒れ狂うクー・フーリンの怒りが、魔槍ゲイ・ボルクの元となった紅海の怪物・海獣クリードの外骨格を一時的に具象化させ、鎧のようにして身に纏う。攻撃型骨アーマー。
着用することで耐久がランクアップし、筋力パラメーターはEXとなる。この宝具を発動している最中は『抉り穿つ鏖殺の槍』は使用できない。

【weapon】
宝具であるゲイ・ボルク

【人物背景】
ケルト・アルスター伝説の勇士。赤枝騎士団の一員にしてアルスター最強の戦士であり、異界「影の国」の盟主スカサハから授かった無敵の魔槍術を駆使して勇名を馳せた。
通常とは異なりバーサーカーとして現界している。何らかの要因によって全身の装備が変化し、性格も反転。北欧の魔術刻印であるルーン魔術は己の肉体の補強のみに使用している。
表情は冷酷、宝具である魔槍も黒混じりの赤となっており、禍々しい気配を湛えている。

【サーヴァントとしての願い】
特になし、ただひたすら敵を殺すのみ。


669 : Holocaust ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:06:46 gTdCyaUQ0
【マスター】
ヴィルヘルム・エーレンブルグ@Dies irae 〜Interview with Kaziklu Bey〜

【マスターとしての願い】
燃料となる魂を補充して、呼び出されたあの瞬間に戻る

【weapon】
『闇の賜物』
ヴィルヘルム・エーレンブルグがその身に宿す聖遺物。
エイヴィヒカイトを習得した人外の力を得た正真正銘の超人にして魔人なのだが、今回の聖杯戦争では燃料である魂が空になっていることとバーサーカーへの魔力供給に力を割いていることにより、身に宿す魔業は全てを実質封じられている。
マスターの魂を取り込むたびに魔力供給量の増加と身体能力の強化の恩恵が得られる。ある程度まで魂を取り込めば、肉体の損傷・欠損を再生と活動位階を発動することが可能となる。
活動位階で不可視の杭を飛ばすこともできるようになる。不可視の杭は常人には充分に致命的だが、サーヴァントから見ればさほど威力はないものである。
ただしNPCはエイヴィヒカイトの燃料となるほどの質は持っていないため、どれだけ殺しても一人分すら溜まらない。またサーヴァントの魂は今のヴィルヘルムの容量を超えているため、取り込むことはできない。

【能力・技能】
生身の身体と同然になっているとはいえ、エイヴィヒカイト習得前から持つ半ば人間をやめている身体能力は今も健在。
体術は完全な我流で、その暴力に彩られた出自故の類稀な戦闘センスと膨大な実戦のみをもって培われたもの。
実の父親と姉のヘルガ・エーレンブルグとの近親相姦で生まれたアルビノであるため、日光を始めとする光を嫌うが、夜になると感覚が研ぎ澄まされる特異体質でもある。

【人物背景】
聖槍十三騎士団・黒円卓第四位『串刺し公(カズィクル・ベイ)』。
かつては凶悪犯罪者上がりの軍人でかなり気性の荒い、殺人・戦闘狂の危険人物。日本人を「猿」と呼んで憚らない筋金入りの人種差別主義者だが、強者であれば人種や男女の区別なく、彼なりの敬意を払う。
同胞である騎士団員にも遠慮なく殺意を振りまく狂人であるが、同時に騎士団員達を「戦友であり、家族である」と称するなど彼なりの仲間意識を抱いている。

今回はクラウディアの創造が発動したところで呼び出されたため、戦闘を楽しむ気は一切ない。

【方針】
昼間は屋内に篭り、夜を主な活動時間としている。面倒事を避けるため、NPCの殺害は極力しない。精々、路地裏でカツアゲするぐらい。
願いを最優先、魂の補充のために目についたマスターは全員殺す。


670 : ◆z710QqxI4Y :2016/06/20(月) 23:07:30 gTdCyaUQ0
投下終了します


671 : 名無しさん :2016/06/20(月) 23:13:38 5ol.VsKc0
三作投下します


672 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:14:59 5ol.VsKc0
「私は願いなんてものは特に無いけど、アサシンは?」

「無い。まあこの様な欲に塗れた催しに我を呼びつけ、あまつさえ刺客などという役を割り振った輩に報いを受けさせてやろうとは考えているがな」




某月某日。自然公園近くの夜道を歩いていた下校途中の女子中学生がトラックに轢き逃げされた。
タイヤに巻き込まれ、原形すら留めぬ無惨な死体と成り果てた少女。
通常ならば此処で少女の物語は終わりである。
世の常の少女ならば。
少女は只人ではなかった。故に少女の新しい物語は此処から始まる。





 ――――何故私はこんな処に居るんだろうか――――

事故現場から離れ、今いる竹林に至るまで思考を占め続ける疑問。
そもそも此処は何処なのか?月の内部というのは解る。何時の間にか脳に刻まれていた知識がそれを教える。
が、そもそもその知識に実感が無い。書物や映像のみで知る異国の地に突如放り出された様な。そんな境遇に少女はいた。

――――聖杯戦争。令呪。サーヴァント。どんな願いも叶える。最後の一組。マスター――――

脳裏を駆け巡る言葉に少女が混乱していると、腹部に焼ける様な痛みを感じた。p

「痛っ!な…何が」

痛みは時期に収まるものの、気になった少女は服を捲り上げて腹部を見る。
「うわぁ」思わず声が出る。
蜘蛛の意匠の刺青の様な代物が何時の間にか有った。

「土蜘蛛になら似合うのに。私には合わないよね。これ」

ブツブツと独り呟く。

「ならば何なら似合うのだ」

「鳳凰」

後ろから不意に聞こえた声に間髪入れずに答え、愕然と振り向く。

「――――え?」

振り返った先、3mと離れていない場所に其れは居た。
長い烏帽子を被り、平安貴族の衣装を纏った、黄金の蜘蛛が描かれた扇で目から下を覆った青年。
この時代の目で見れば異装としか言いようがない格好であるが、この青年が街中を歩いても、誰も格好など記憶に留めまい。

「なんて…綺麗……」

こちらを見つめる黒瞳は扇の下の顔が美しい――――それも少女が今まで見たことが無いほどに――――ことを確信させた。

「なんて…怖い……」

その澄んだ瞳は深く冷たく、まるで月無き冬の静夜の如く――――恐ろしい。

「鳳凰とは随分と大きく出たの」

笑い――――嘲笑では無く、純粋に面白がっている笑い――――を含んだ声に、思わず頭に血が上った。

「名乗りもしないで人のことを笑うなんて……」

誰何の声が尻切れトンボになったのは、青年が扇を下ろしたからだ。
月が地上に降りてきたかの如く輝いて見える美貌に、少女は言葉を失った。

「ふむ。名乗らずにいたのは礼を失する行為であった。我は藤原紅虫。かつて平安の都で栄華を誇った藤原氏の出よ。それで娘、お主が我の主か」

「――――は?」

藤原?藤原氏の出?それに懐かしいこの格好は……

「千二百年ぶりか……」

思わず口をついて出た言葉に青年――――紅虫が怪訝な目を向ける。

「私は妹紅。藤原妹紅。藤原不比等を父に持つ藤原氏の出」

紅虫の目が呆気に取られたかの如く開かれた。

「フン…不比等には名を伝えられておらぬ娘が居たというが、それがお前か」

「そうさ、私の方が目上だね」

「むう……」

平城と平安、二つの都に生まれた藤原は、互いに縁の深い月で、こうして出会ったのだった。


673 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:16:19 5ol.VsKc0

【クラス】
アサシン

【真名】
藤原紅虫(ふじわらのあかむし)@退魔針シリーズ及び外伝 紅虫魔殺行

【マスター】
藤原妹紅

【ステータス】
筋力C+ 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具B

【属性】混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:C サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。ただし戦闘状態に入ると気配遮断は解ける。が、攻撃の種類によっては効果が現れるまで相手に気付かれない。
【保有スキル】

美貌:B
美しさ。アサシンの美貌は神秘に根差したそれでなく、持って生まれた天然の美貌である。それ故に精神力を保証するスキルでしか防御出来ない。
性別問わず、Cランク以下の精神耐性の持ち主は、顔を直視するだけで茫然としたり、怯んでしまったりする。常時発動している天然の精神攻撃とほぼ同義。
ランク以上の精神耐性の持ち主でも、確率如何では、その限りではない。人間に近い精神構造の持ち主なら等しく効果を発揮する。
後述の威圧と合わさることで効果に++が付く

威圧:B
生前,対峙した妖魔を悉く恐れさせてきた鬼気。同ランク以下の精神耐性ではその鬼気に竦んでしまう。臆病や怯懦といったスキルの主は高確率で狂乱する

単独行動:B
マスター不在でも二日間ほど行動可能。予め食い溜めしておくことで期間を延ばせる

魔性:B+
『向こう側』の妖魔と融合して産まれ、千年の時を生きたアサシンは高ランクの妖魔である

対魔性:C
前世で破壊神とも言うべき異界の妖魔を封じ、生前に復活した異界の妖魔を再度封じ、世界中の妖魔を殺して回ったことにより得たスキル。
魔性のものと戦うときあらゆる判定がある程度有利になる。
本来ならば最高クラスのランクだが、アサシンは自身を魔性と定義しているため大幅にランクダウンしている

動物会話:D
蜘蛛と意を交わし、自在に使役できる。


674 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:16:46 5ol.VsKc0
【宝具】
魔人・藤原紅虫
ランク:B 種別:対人宝具 最大補足:自分自身
巨大な蜘蛛の身体に紅虫の上半身が生えているという異形の姿に変わる。
幸運と宝具以外の全ステータスが1ランクずつ上がりAランクの怪力スキルを得る、代わりに美貌スキルが消滅する。
姿を変えずとも体内には常時発生しており、体内に千を越える牛馬を食い溜めしておくことが可能。千年の間土中に封じられていた時このおかげで飢えずに済んだ。
またAランクの戦闘続行スキルと、Bランクの再生スキルも常時発動している。

妖蛛
ランク:D〜C 種別:対軍宝具 最大補足:50人 レンジ:1〜99
アサシンの身体の中に無数に居る蜘蛛。魔力を消費することで幾らでも増やせる。様々な種類が居る。
アサシンの身体を喰ったり、アサシンに寄生したものの体内に入り中から食い荒らす
全身を無数の紅蜘蛛に変えて攻撃を回避し、相手を貪り喰う
人間の死体に蜘蛛入れて生きてるように動かせる。会話もできるし脈も有る
生きている人間の中に入れ、アサシンに不利な行動をしようとすると激痛に襲われる様にすることも可能

傀儡蜘蛛…雲の中から糸を垂らし、糸をくっつけた人間をアサシンの意のままに動かす。壁にぶつけたりとかできる

探り蜘蛛…糸を通し様々な情報をアサシンに伝える。平安貴族のアサシンが現代に順応できたのはこの蜘蛛のおかげ。

涙蜘蛛…鉄をも溶かす酸を出す

蜘蛛を用いた攻撃は、高い探知能力の持ち主でなければ効果が現れるまで気づかれない。
この宝具を使用した攻撃は、気配遮断スキルの効果を下げずに行える。

大摩流鍼灸術:ランク: ー(C) 種別:対人宝具 最大補足:1人 レンジ:1
ー(C)
森羅万象に存在する『脈』を探り、その『ツボ』を突く事により様々な効果を発揮する技術体系。退魔の技だが、一般的な鍼灸術としても使用可能。
極めれば自らを死人と化してあらゆる攻撃を無効化する事や、空間に穴を開けることも可能だが、アサシンは妖魔を斃す為にのみ習得した為に、使える技術は限られている。
但し習得した範囲内においてはアサシンは教えを乞うた宿敵にも匹敵する技量を持つ。
サーヴァントの霊核を物理防御を無視して貫くことが出来る角度を見極められる。
なお失敗した場合。相手が魔に属するもので有れば千倍万倍の強さを得る。聖杯戦争に於いては対象のステータスを宝具と幸運を除き2ランクアップさせる。
このスキルはアサシンの宿敵への拘りも有って通常は封じられている。
アサシンがこの技を使うとき、それはアサシンが己の力では斃せぬ敵と判断した時。
実質的な敗北を認めた時である。


【weapon】
糸:
口や指先から出す糸。アサシン曰く如何なる刃でも断てず、地獄の業火でも溶けない。
Aランク以上の宝具を用いた攻撃でなければ切断不能。
この糸を用いた斬撃を防具で防ぐにはBランク以上の宝具で無ければ防げない。
一度対象に巻きつければどれだけ離れても異次元に放逐されても対象の元にアサシンを導く。
粘着性にも優れ、土石流を二本の糸で止めることも出来る。
この糸を用いた最も恐るべき攻撃は巻きつけてからの締め潰しであり、耐久や防御を無視したダメージを与える。

針:
ステンレス製の針。大摩流鍼灸術を使う際に必須。


675 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:17:10 5ol.VsKc0
【人物背景】
千年前、栄華を誇った藤原氏の一人として生まれるが、『向こう側』の存在と融合して産まれてきた為に、あらゆる史書から存在を抹殺され、『夜狩り省』により地中深く封じられた平安貴族。
時を経て、現代で『向こう側』の存在に憑かれた少女詩織の手により復活。己を封じた、鍼師・大摩童子と拳士・風早狂里の子孫に復讐する為に動き出す。
数度の戦いを経たのち、詩織の所為で暴走した、かつてムー大陸を滅ぼした妖魔、ザグナス・グドにより全身を焼かれる。
その後ザグナス・グドを斃す為に『向こう側』と『こちら側』の征服を目論む狂科学者、藤尾重慶の手により更なる強さを得て復活。ザグナを撃破する。
そして大摩との決着を望むも詩織から用済みとされ、怪光線で頭部を貫かれる。
それでも死ぬことがなかった紅虫は、生きていて完全に力を取り戻し、発狂して荒れ狂うザグナス・グドを、前世でムー大陸で共に対妖魔の任に当たっていた大摩・風早達と共に封じ、何処へかと去っていった。


その後世界各地を放浪しながら「魑魅魍魎と恐れられるのは我のみでよい」という考えの元、立ち寄った地の妖魔を皆殺しにして回る。
韓国の地で最後の一匹を滅ぼした時、日本から吹いてきた風に妖物の気配を感じ、再び日本の地を踏む。
そこで『ワライガオ』なる妖物に先祖代々憑かれてきた家系の少女、みどりと出逢う。
みどりから求婚され、これを受け容れて、ワライガオとの魔戦を開始する。
無限に進化するワライガオの前に紅虫は斃す手立てを失い、宿敵である大摩に大摩流鍼灸術の教えを乞う。
そしてみどりと共に大摩流鍼灸術を習得し、ワライガオとの決戦に臨むもみどりがツボを打ち間違え、ワライガオは究極の強さを得て、地球すら喰いつくそうとする。
紅虫も大摩も手の打ちようがない事態にたった一人。みどりだけが立ち向かい、ワライガオを滅ぼした。己の命と引き換えにして。
そして生涯で唯一人愛した少女を失った紅虫は大摩との再会を約し、月へと去っていったのだった。

性格は傲岸不遜で容赦が無い。一人称は『我』千年間埋められていたが現代の知識は豊富。知識だけは。
海外経験から英語とスペイン語を話せる。古来の礼儀作法やしきたりにはわりとうるさい。
あと主人公時の無敵オーラが異常。けど作中ではボスクラスに勝った試しが無い。

【サーヴァントとしての願い】
無い。自分の強さを妹紅に見せたいと思っている。


676 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:17:32 5ol.VsKc0
【マスター】
藤原妹紅@東方Project


【能力・技能】
死なない程度の能力。
蓬莱の薬を飲んで以来不老不死。魂を起点に肉体を再構成出来る。毒も薬も無効。病にならない。
しかし痛みは感じるし疲れるし腹は減る。
千年以上戦ってきた経歴を持つ為身体の扱いが上手い。妖術の類も複数使える。炎を操るのも自前の能力であり蓬莱の薬は関係無い。
本来は魂だけの状態で行動できるが、制限を受けてできなくなっている。
サーヴァントに魂喰いをされると死ぬ様に制限を受けている

【人物背景】
父に恥をかかせた蓬莱山輝夜に意趣返しをするべく輝夜が残した壺を奪い取ろうと、壺が運ばれる富士山頂に先回りするも、行き倒れてしまい。壺を運ぶ一行のリーダー、岩笠に救われる。
その後、魔が差して岩笠を殺害。蓬莱の薬を奪って口にし、不老不死となった為、各地を放浪する。
人間に追われたり妖怪を殺して回ったりしているうちに幻想郷に行き着き、蓬莱山輝夜と再会。輝夜と楽しく殺しあう日々を過ごしながら、住んでいる竹林で道案内兼護衛をやっている。

【聖杯にかける願い】
帰還

【方針】
取り敢えずいつもの異変とするなら、邪魔する奴を倒して黒幕沈めて終わり。


677 : 二都・藤原乱舞 ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:18:47 5ol.VsKc0
一作目終了します


678 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:20:42 5ol.VsKc0
二作目投下します

一作目と二作目は柩姫聖杯に投下したものの流用です
トリップ変わってますが当人です


679 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:21:41 5ol.VsKc0
深夜の山道。縦に不法駐車された5台の乗用車から、10mほど離れて一組の男女が立っていた。
赤銅色の肌と銀髪が特徴的な男は、精悍な美男子と言えなくも無かったが、
口元に浮かぶ、鮫の様な獰猛な笑みと、血に狂った人喰い虎でさえ尻尾を巻いて逃げ出しそうな狂猛な眼が、男の印象を魔獣のそれにしていた。
男のやや後方に立つのは、二十歳位の娘。筋肉の付き方や、立ち姿から、かなり鍛え込んであることが判る。
整った顔立ちだが、美人と呼ぶにはやや童顔であった。美少女、と呼ぶべきだろうか、大きめの瞳が不安げに揺れている。

「俺の実力を疑うと言うなら、見せてやろう。嘗てメジャーで屍山血河を築いたこの一投!」

男がそう言い、前傾姿勢を取り右手を高く掲げる。野球の投法でいうアンダースローの構えだ。
見よ。その右手から燃え上がる漆黒の炎を。手にした球が漆黒に染まっていく様を。

「見るが良い監督!!これが俺の!!!!」


猛 り 奔 る 黒 犬 獣(ブラックドッグ)


投げ放たれた球がイギリスの伝説に語られる魔獣、黒犬獣の姿を取って奔るのを女は見た。
猛り狂う魔獣は凶悪な牙を剥き出し、路駐された5台の車の最後尾に喰らい付き、
一気に5台の車両を粉砕しながら貫き、奔り抜けて行った。

「……………………」

呆然と眼前の光景を見守る女に。

「今ので二割…といったところだ」

傲然と男は言い放った。


680 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:22:44 5ol.VsKc0
◆遡ること八時間前◆


結城千種はプロレスラーである。
彼女は親友兼ライバルの武藤めぐみ共々未来の日本のプロレス界を背負って立つ逸材である。
そんな彼女はタッグ式バトルロイヤル、ホーリー・グレイル・ランブルの優勝目指し、召喚したサーヴァントと共に戦うのだ。

などということは無かった。

「はうぅぅぅぅぅ……」

結城千種はホテルの部屋で頭を抱えていた。
武藤めぐみと組んで、大空みぎり&ジェナ・メガライトのタッグと戦い。バックドロッププリンセスと呼称される彼女の必殺技、バックドロップでメガライトを沈めたのが一昨日。
昨日はホテルで一日眠りこけ、激闘の疲れを癒していたのだった。
そして今日。ふと窓から外を見た時、思い出したのだ、自分の本来いるべき場所を
額然とする千種の脳裏によぎる聖杯戦争に関する知識。

「どうしよう…めぐみ」

混乱と恐怖から親友の名を呼んでも、その親友はNPC。本物の、千種の知る、武藤めぐみでは無い

「はうぅ…どうしたら……」

頭を抱えて俯いた時、そのサーヴァントは顕れた。

「娘。お前が俺の監督か」

俯いて頭を抱えていた千種の前に、いつの間にか立っていた男。
顔を上げた千種の眼に映ったのは、鍛え抜かれた赤銅色の肉体。全身から立ち上る獰猛な覇気は、目の前にいきなり熊が現れても、素手で立ち向かっていきそうだ。

「へ……?」

千種は何の反応も返さなかった。ひたすら硬直しているだけだった。

「……おい」

焦れた男が短く怒気を発した時。

「ひぃやああああああああああ!!!!」

頓狂な悲鳴を千種は上げ、男は自分が全裸だということに気が付いた。


681 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:23:11 5ol.VsKc0
十数分後。叫び声を聞きつけてやってきためぐみを何とか誤魔化し、男と改めて相対した時、男は黒いロングコートの様なものを身につけていた。

「済まんな。なにせあの世に旅立った時、俺だけ服を着ていなかったので
な。それはそれとして、娘。お前が俺の監督か」

眼に炎を燃やし、サメの様な歯を剥き出しにして聞く男。心なしか銀髪が逆立っている様な気がする。

「え、え…と、そう、みたいですけど…あの、監督って?こういう時は、『聞こう、貴方が私のマスターか』みたいな感じな事を言うんじゃないんですか?」

怯えながら聞く千種に、男は怪訝な顔をした。

「リーガーである俺を招いたのなら監督だろうがッッ!」

「はぅぅ〜ごめんなさい〜」

思わず謝る千種。ふと気付く。

「あの、リーガーということは、野球選手だったんですか?」

「野球…?ふん。俺を成仏させたサムライに免じて、その呼び方を許そう」

恐ろしく尊大な態度だった。

「あ…ありがとうございます」
千種が思わず礼を言ってしまう程に。

「確かに、そう、俺は野球選手だった」

千種は愕然とした。歴史に名を残した強者や神話の英雄を相手に、事もあろうに野球選手が挑むのだ。勝ち目が有るなど到底思えなかった。

「アーサー王、ジークフリート、ヘラクレス、さぞかし殺(や)りがいがあるだろうな。世界中より集った猛者共ですら、一握りの本物を除いて、俺の前には立て無かったが、奴等はそんな腑抜けではあるまい」

今度は待つ必要が無さそうだ――――と獰猛な笑みを浮かべるリーガー。その自信はどこから来るのか千種は考え、一つの結論にたどり着いた。

「ひょっとして…聖杯戦争って……野球?だったら私、頑張ります!9番ライトだったけど、未経験ってわけでも無いですし!!野球は好きだし!!」」

僅かに見えた希望に縋る千種。しかし、

「殺し合いに決まっているだろうが」

無慈悲に打ち砕かれる希望。へなへなと崩れ落ちる千種を横目にリーガーは猛る。

「安心しろ監督。立ち塞がる敵は全員屠って優勝トロフィーをくれてやる。最も敵が屑ばかりならトロフィーを叩き壊すが」

「な…なんでそんなに自信満々なんですかっ!?」

絶叫する千種。同業者には喧嘩で大の男を血祭りに上げるヤツや、過去に人殺したことがあると言われても納得できる性格の奴もいるが、彼女は喧嘩などしたことが無い、普通の性格と感性の持ち主である。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、しかも自分の相方は野球選手。これで冷静でいろというのは酷だろう。

「フ…監督。俺の名を聞けば納得できるぞ。俺の名はジョン・ウェイズ。アランズ・ロードと言った方が良いか?ベースボールが好きならば、聞いたことが有る筈だ」

「うぅ…誰ですか?そんな人知りません!」

「なにぃいいいいいい!!!!」


リーガーのサーヴァント、アランズ・ロードことジョン・ウェイズ。
彼が生きた球場(フィールド)で繰り広げられた戦い。
それが己の知る野球とはかけ離れたものであり、球場(フィールド)に生きるリーガー達が人知を超越した修羅であることを結城千種が知り、
ベースボール=修羅の国の競技。という認識を抱くのはもう八時間後のことである


682 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:23:35 5ol.VsKc0
【クラス】
リーガー

【真名】
アランズ・ロード(ジョン・ウェイズ)@サムライリーガーズ

【ステータス】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 幸運:C 魔力:E 宝具:A++

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
メジャーリーガー:D
メジャーリーガーとしての能力。投擲スキルと飛来物を打ち返す技能と、集団で行動する際にプラス補正が加わる。
リーガーは投手としては史上最強の豪速球投手であったが、チームワークが存在しない上に打者としての活動も無いので低ランクに留まっている。
B+の投擲技能を得る。

【保有スキル】
威圧:B
投球フォームに入った時、その殺気は荒れ狂い。球場全域に暴風となって荒れ狂う。
Cランク以下の耐性ならば気絶。Bランクならば硬直する。
Aランク以上でも確率次第で竦む。

情報抹消:B
アランズ・ロードというリーガーは経歴が存在しない。リーガーの過去やスキルは知ることができない。
ジョン・ウェイズの名を知られれば過去やスキルが明らかになる。

荒ぶる魂(ソウル・エフェクト)A+
人間の脳に直接イメージを送り込むことで、存在しないものを存在していると誤認させる。言わば意思力によるヴァーチャル・リアリティ。
低ランクのものはただの幻だが高ランクになれば、対象の精神を砕く事が可能。
リーガーの荒ぶる魂は黒犬獣やケルベロスとして現れる。
威圧スキルと合わさることで威圧のランクを一つ上げ、抵抗に失敗した者に魔獣ケルベロスに食い殺される幻を見せて気絶させられる。
この幻を見た者はその後も魔獣の幻影に悩まされ続ける。

完全なる人類(ファイネスト・シングス):A
人類として最高と言われ、唯々力に任せて荒れ狂うだけで屍山血河を築き上げたジョン・ウェイズの肉体に、肉体的には恵まれないながらもそのポテンシャルを引き出し、世界をねじ伏せた比類無きサムライ、王漸源路郎の脳を移植して完成した肉体に基づくスキル。
高ランクの天性の肉体スキルと頑健スキル。身体運用に関してのみA+++の日本武道スキルを発揮する。


683 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:24:04 5ol.VsKc0
【宝具】
一球勝負(フルカウント・ショウダウン)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:2人

2ストライク3ボールの状態にして崖っぷちの一球勝負を相手に挑むリーガーの決闘スタイルが宝具化したもの。
リーガー達の戦場であるドラゴンシティの球場が固有結界として展開される。
リーガーが敗れた場合は48時間実体化が不能となるが、リーガーが勝った場合は何も起こらない。但し、対象は必ずバッティングを行わなければならない。
バッティングを行わなければ結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
なおこの勝負において不正を働いた場合。結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。

発動条件として、対象がこの宝具の詳細を知っている状態で、対象とリーガーどちらかがショウダウンを宣告。申し込まれた側が受けることが必要となる。
勝負を断れば、クラスが48時間の間【臆病者(チキン)】へと変わり、勇猛・カリスマ・反骨の相・皇帝特権・星の開拓者・各クラスの固有スキルが使用不能となる。

この宝具の発動時は令呪によるバックアップは不正とみなされる。
既に行われている場合は発動不能。
宝具の発動は不可能。常時発動型を除く宝具の効果や、真名開放も不正とみなされ認められない。
リーガーが令呪のバックアップを受けている場合は使用不能。
バッターが素手でボールを触ることを禁ずるメジャーボールのルール上、素手で戦う相手には使用できない。

猛り奔る黒犬獣(ブラックドッグ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大補足:1人

リーガーの必殺球が宝具化したもの。体内の鉄分でボールを覆い、地を這う様なアンダースローで投球、体内電流で射出する電磁砲。黒犬獣のソウル・エフェクトが出現する。
触れるもの全てを破壊するその投法はCランク以下の宝具を破壊する。


最後の一投・一球入魂(フルブラスト・ショウダウン)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:2人

2ストライク3ボールにした上で、ランナーを三塁に進めた状態で、ピッチャーが即引退を賭け、バッターを指名して行うメジャーボール究極の決闘方が宝具化したもの。
リーガー達の戦場であるドラゴンシティの球場が固有結界として展開される。
リーガーが敗れた場合座へと送還される。
この場合も対象は必ずバッティングを行わなければならない。行わなければ、結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
なおこの勝負において不正を働いた場合。結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
発動条件として、対象がこの宝具の詳細を知っている状態で、リーガーがフルブラストを宣告。相手が了承する必要がある。
この宝具はピッチャーであった者しか発動できない。
この宝具は断ってもペナルティは発動しない。
この宝具を使用している時のみ、リーガーの真の宝具が発動できる。
この宝具の発動時は令呪によるバックアップは不正とみなされる。
既に行われている場合は宝具の発動は不可能。
宝具の効果や真名開放も不正とみなされ認められない。
リーガーが令呪によるバックアップを受けているときは使用不能。
バッターが素手でボールを触ることを禁ずるメジャーボールのルール上、素手で戦う相手には使用できない。

神裂き喰らう地獄の黒犬(ケルベロス・ザ・ブラックドッグ)
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大補足:1人

リーガーが全力で投げる一投。体内の鉄分でボールを覆い、地を這うようなアンダースローで投球、体内電流で射出する電磁砲。三つ首のケルベロスのソウル・エフェクトが出現する。
大地を揺るがし、神すら屠る。対城宝具の粋に有る威力を持つ対人宝具。
Aランク以下の宝具で受けると破壊されてしまう。
最後の一投・一球入魂(フルブラスト・ショウダウン)発動時でなければ使用不能。


684 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:24:47 5ol.VsKc0
【weapon】
ボール:
魔力により作られるボール。普通の硬球だが、リーガーのプレーに耐えるだけあってCランクの宝具並みに頑丈。

グローブ:
ボールと共に作られる。リーガーのプレーに耐えるだけあってCランクの宝具並みに頑丈。

炎斬(ほむらきり):
日本刀の形状をした抜刀(バット)王漸源路郎の記憶から再現している。劣化している為Dランク並みの宝具と同等の強度


【人物背景】
月刊ヤングキングアワーズで連載されていた『サムライリーガーズ』のラスボス。
30年前にイギリス代表のチームとしてメジャーボールに参加。
たった半年間で対戦した数多のバッターを死亡・病院送りにし、遂には打者がバッターボックスから出て、ピッチャーを敬遠するという前代未聞の事態を生み出した、“イギリスの悪魔”ジョン・ウェイズ。
そのジョン・ウェイズが最強の兵士を造るアメリカ軍の計画に参加し、人類最高峰の肉体を活かせる脳(パーツ)の出現を待つため、事故死を装いコールドスリープにつく。
30年後、恵まれ無い身体の能力をフルに引き出し、世界をねじ伏せた比類無きサムライ、王漸源路郎の脳を移植され、完全なる人類(ファイネスト・シングス)としてメジャーボールにアランズ・ロードと名乗り帰還する。
この時、二つの人格が混じり合い、アランズ・ロードという人格が誕生するも、研究機関のトップにより消滅させられ、ジョン・ウェイズが完全に現世に甦る。

研究機関の意向に基づき、新チーム、ブラック・ゼウスを旗揚げ。各チームにヘッドハンティングをかけて優秀な選手を実験材料として集め、ブラック・ゼウス優勝の暁には、全チームへの強制トレード権を獲得することを運営委員会に認めさせる。
そして優勝を賭けた一戦で、源路郎の弟、全力を持って屠るに値すると認めた王漸一路太と、伝説の決闘方フルブラスト・ショウダウンで激突。
必殺のケルベロス・ザ・ブラックドッグを、地球と共に受け止めた一路太が返した打球により、魂を肉体の外に叩き出される。
そして源路郎に導かれ、彼岸へと旅立って行った。全裸で。

彼が最も強かった時期はアランズ・ロードの名で活動していた時期である為。リーガーは表向きはアランズ・ロードとして召喚されているが本当の真名はジョン・ウェイズである。

【方針】
一路太に匹敵する強者を探す。立ち塞がるものは全て屠る。

【聖杯にかける願い】
無い。聖杯を優勝トロフィーとしか思っていない。
強者と巡り会えなければ下らない勝利の証として叩き壊そうと思っている。


【備考】ユルゲン:
メジャーボールで主審を勤めていた人物。人外の域にあるメジャーリーガー達を裁くその姿は、選手達に負けぬ人気を誇った。
試合の進行を妨害する者には容赦が全く無く、鉄拳制裁(パニッシュメント)により強制退場させられる。
その人気と、選手達からの畏敬により座へと召し上げられたのちも、リーガー達の元に訪れ、厳正中立な審判を行っている。

メジャーボール:
野球の皮被った何か、多分修羅の国発祥の狂技。プレーの自由度が半端では無く。
ピッチャーはボールを殴って飛ばそうが、蹴って飛ばそうが問題無く。
バッターはバットをピッチャー目掛けてブン投げたり、バットを蹴り飛ばしたり、果てはボール投げてピッチャーの投げたボールにぶつけたりしても問題無い。
球場で行われているのは文字通りの死闘である。おい野球しろよ。


685 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:25:09 5ol.VsKc0
【マスター】
結城千種@レッスルエンジェルス Survivor2

【能力・技能】
資質的には世界最高クラス。特技はバックドロップで“”バックドロッププリンセス”と呼ばれるほど。
根性がかなり有る。
元ネタが蝶野正洋なんで使う技も蝶野がベースになっている。

【ロール】
新日本女子プロレスの興行で来た。
一応あと何回か興行が有る


【人物背景】
身長161cm 3サイズB85W58H88 愛知県出身 2月28日産まれ CV川澄綾子

おっとりとしていて、自分に自信が無さげだが、根性が人一倍あり逆境にも強い。
常に笑顔を絶やさない嘘を言わない明るい娘。武藤めぐみと違って、「来島さんじゃ勝てない」とか言いそうにない。
趣味は野球だが下手の横好きで、万年ライトで9番
フィジカル面はかなり強い。
武藤めぐみと出会った切っ掛けは、新女のテストを受けに行った時、道に迷って通りすがりの武藤に泣きついたのが馴れ初め。

【令呪の形・位置】
三つ首のケルベロスを模したものが腹部に有る。

【聖杯にかける願い】
おうち帰る

【方針】
出来るだけ戦わない殺さない。周りも巻き込まない。

【参戦時期】
15〜30歳まであるけれど21歳で

【備考】
団体経営ゲーのサバイバーは設定自体がほとんど無く、シナリオは存在していませんので、旧シリーズの設定も参考にしています。

【運用】
物陰からこっそりビーンボール黒犬獣が一番有効だが、リーガーが絶対にやらないのが難点。
出来るだけメジャーボールの説明をして回ってショウダウン発動させるのが賢明か…と思いきやこれまたリーガーが相手を選ぶという……。


686 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:26:18 5ol.VsKc0
三作目投下します


687 : 地獄の番犬(ガルムレイド) ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:26:42 5ol.VsKc0
晴れ渡った夜。にも関わらず星が少ないのは、満月が煌々と空を照らしているからだ。
そんな月明かりの下、とある女子校の寮で眠る因幡月夜はふと目を覚ました。
生来の盲目の代わりに異常発達した聴覚と積み重ねた鍛錬が、彼女が眠る寮の中で起きる異常事態を悟らせたのだ。

─────何かが居る

何か、少なくとも生物では無い何かが、寮の部屋を訪問して回っている。

─────まだ此処に来るには時間が有りますね。

そそくさとベッドから出て着替え、亜鉛合金製の摸造刀を持って廊下へ出る。
待つことしばし、廊下の角を曲がって“ソレ”は来た。
盲目の月夜には見えなかったが、“ソレ”の姿を見ずに済んだのは幸いだった。
“ソレ”はマネキン人形だった。マネキン人形が夜の寮内を徘徊しているというのも異常だが、その目は異常などというものでは無かった。
赤い血の色をしたその目は、悪意そのものとでも言うべきものを湛えていた。
一目見てしまえば、長い間夢に怯えることになるであろうその怪物を、盲目の少女は見えないが故に─────ではなく異なる理由から怖れない。

「貴方が何者なのかは知りませんが、痛い目を見たくなければ降伏しなさい」

少女は盲目ではあるが、代わりに聴覚が異常なまでに発達している。数百m離れた人間の関節の駆動音すら聞き取れるほどだ。にも関わらず、目の前の相手からはなにもきこえなかった。
呼吸も脈動も、何もかも。骨の擦過音も筋肉の収縮音も。
それでも少女は怖れない。摸造刀を鞘に収めたまま佇んでいる。
人形が此処に来るまでに聞こえていた“移動する時の音”をその耳は精確に捉え、人形が一歩を踏み出そうとした刹那。閉じられていた月夜の瞼が開かれる、その下に有ったのは紅い瞳。
しかし、其れを人形は認識し得たのだろうか、月夜の瞼が刹那の間も置かず閉じると、人形の頭が砕け散ったのだった。

「一体何なのでしょうか?感触は人形のものでしたが」

呟いて屈み込み、触ってみる。冷たい感触は確かにマネキンのものだ。
手に取ってしげしげと考え込んでいると、不意に横に女が立っていた。
己の耳に全く捉えられずに出現した女に驚愕した月夜に、女が蹴りを入れる。

「がはっ!?」

廊下を転がる小さな身体を見て、女が忌々しげに呟く。

「こんな餓鬼に私の使い魔が壊されるとはね」

なんとか立ち上がった月夜にまっすぐ伸ばした手に魔力の輝きが宿る。

「まあ良いわ、あの人形よりも優秀な道具になりそう」

「ただの子供にしか見えんとは、大した英霊でもないな」

「何者だ!?」

真後ろから不意に聞こえた声に、女が驚愕して振り向き。

「その場に案山子の様に突っ立ったままとはな。阿呆が」

そのまま女の首は宙に舞った。

血を撒き散らし、二つの肉塊が廊下に転がり、すぐに消えた。

後に残されたのは、月夜と長身痩躯の狼の様な気配の男。

「貴方は…」

「フン…異常聴覚に示現流。斬った相手ばかりじゃ無いか。しかもこの場所は……生前の因果という奴か」

盲目の少女と狼の如き男。死者と生者の剣の魔物は此処に出会ったのだった。


688 : 因幡月夜&アサシン ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:27:42 5ol.VsKc0
【クラス】
アサシン

【真名】
斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷: B 幸運:C 魔力:E 宝具:C

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】

牙突
生前にアサシンが到達した剣の理合い。戦術の鬼才、土方歳三が考案した左片手平刺突(ひだりかたてひらづき)を磨き上げ一撃必殺の技へと昇華した剣技。
全局面に対応すべく、複数の型を持つ。
素手でも強力な打撃技として使える。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

貧者の見識:B 
相手の性格・属性を見抜く眼力。
言葉による弁明、欺瞞に非常に騙され難い。
陰謀渦巻く幕末の動乱を生き抜いた経験によるもの。

反骨の相:EX 
犬はエサで飼える

人は金で飼える

だが、壬生の狼を飼うことは

誰にもできん

己が正義にのみ殉じ、その為なら所属する勢力にも拘泥せず、己の信念以外のありとあらゆるものに縛られなかったアサシンの生涯。
カリスマや皇帝特権等、権力関係や魅了などといった精神系スキルを無効化する。

話術;D
相手を逆上させる話術に長ける。



【宝具】悪・即・斬
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

アサシンが生涯貫き通した信念が宝具と化したもの。
私欲に溺れ、世の安寧を乱し、人びとに災厄をもたらす者と対峙した時、真名解放とともに、全ステータスを1ランク上げ、Aランク相当の戦闘続行スキルを得る。
実際に対象となるものが、宝具の発動条件を満たしていると判明しない限り発動不可能。
通常時はアサシンにAランク相当の信仰の加護(偽)を与えている

【weapon】
日本刀・無銘:
無銘の刀だが、結構な業物

【人物背景】
元新撰組三番隊隊長で、明治の世には警官となり、世の安寧を乱し、人々に災厄を齎す者を斬り続けた。
史実通りなら
退職後、東京高等師範学校(東京教育大学を経た、現在の筑波大学)の守衛、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)の庶務掛兼会計掛を務める[ことになる。

【方針】
聖杯戦争の中で悪を行う者を斬る。聖杯戦争の主催者も悪として斬る。

【聖杯にかける願い】
無い


689 : 因幡月夜&アサシン ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:28:05 5ol.VsKc0
【マスター】
因幡月夜@武装少女マキャヴェリズム

【能力・技能】
聴覚:
広い女子寮の中の出来事を完全に把握出来る

薬丸示現流抜刀術:
「抜即斬」と言われる駿速の抜刀術
達人剣士の剣技見切れる主人公が2m位の距離から視認出来ない速度で、
地面に降りて抜刀して首筋に刃当てて納刀する。ということをやってのける。
踏み込みからして尋常な速度ではなく、移動し終わってから移動したのがようやく分かる速度

【weapon】
模造刀:
亜鉛合金製で重量はあるが強度が無い。

【ロール】
女子高生

【人物背景】
元々女子高だった学園が共学になった際に男子生徒を恐れた女子生徒のための風紀組織、愛知共生学園“天下五剣”の中で最強と言われる剣士。
銀髪紅眼の盲目の美少女。中等部だが飛び級しているので実年齢は小学生並み。
異常なまでの聴覚と、神速の踏み込みと抜刀術の才を持つが、盲目なのは、優れた剣の才能を世に誕生させる為に父親に当たる男が行った近親相姦の所為。
その為に生来病弱。
基本他人と関わろうとせず、五剣の会議にも殆ど出席しない。
「ガッカリです」が口癖。話出すとかなり長い。

【令呪の形・位置】
狼の形をしたものが右手の甲にある

【聖杯にかける願い】
帰りたい

【方針】
なるべく戦わないで楽して目的を叶えたい

【参戦時期】
本編開始直前


690 : 因幡月夜&アサシン ◆mcrZqM13eo :2016/06/20(月) 23:29:37 5ol.VsKc0
投下を終了します。長い間すいませんでした。

三作目は>>687からです


691 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/20(月) 23:57:43 I0SKRf6.0
投下します


692 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/20(月) 23:58:51 I0SKRf6.0

 マンションの一室――正しく言うならばマンションというほど高級ではなく、頼りない壁作りのアパート。
 新聞が束になりドアから腸を飛び散らせ、悪霊を封じ込める護符めいて――或いは為政者を糾弾する瓦版めいて扉に背をつけた張り紙。

 その内――。
 レジ袋に無造作に纏められた、潰された酒の脱け殻。
 盗賊が集めた宝物じみて室内に纏められ安置された可燃ゴミ。
 流し台をところ畝ましと覆ったカップラーメンの開き容器の汁は淀み、内壁に寄りかかる割り箸を伝わり異臭を放つ。
 テーブルには――――無造作に置かれたチラシと、ギャンブルの特集雑誌。料理の皿を並べる置き場などなく、そもそもここに料理が並んだ事はない。

 それがこの舞台で、登場人物に与えられた【役割(ロール)】と【環境(アイテム)】。

 そんな部屋が――騒がしい。

「ドゥフ、着ぐるみ系アイドルキタコレですぞ!」

 聞くものに嫌悪感を与える言葉。

 声よりも何よりも、その口調というのがおぞましい。
 石の下で眠っているのが相応しい団子虫が、何を勘違いしたのか厚顔無恥に日の光の下に飛び出してきたなら人はそう思うだろう。


693 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:02:17 EBpqVaRE0

「いや、これは所謂一つの萌えの極みですな! フォカヌポォ!」

 なのに構わず、そんな言葉は並ぶ。

 したためた豊かな髭。
 独特の垂れ目を余計に細めて――
 好色よりも非生産的で、恍惚よりも消極的で、喜色よりも堕落的で、美術品の審査眼よろしく他人めかしながらもうっとりと脂ついた笑顔。
 なのになんと言うか――その男は大きかった。

 比喩抜きで語るとするなら、その上背が常人離れしている。優に二メートルはあろうかという長身。
 しかしあまり威圧感を感じさせない……よく言えば無駄に肉がない、悪く言えば多少見劣りがする体つき。
 虚弱でもなければ、同じだけ堅牢でもない。
 筋骨隆々とは評価のし過ぎで、痩せぎすというには力強さがある。強いて言うなら“どことなく引き締まっている”というものか。

 ただ、神代の彫刻めいた肉体美でもなければ。
 絵画に現れる妖しさもなく。
 運動家の如き爽やかさもない。
 だが――だからこそ、異様な迫力があった。
 海の引き潮を見てその後の大津波を思わせるように、何かの予感を感じさせる得体のしれない大きさ。

 あるがまま、何かに直面していたら自然と出来上がるような――。
 風が海を波立たせるような何かがある。

 そんな彼に相対して椅子に腰かけるのは、動物の着ぐるみらしきものを纏った年若い少女。
 ほとんど半裸の長身髭親父と、ティーンにも満たない少女。

 一言で言うなら、事案である。

 だというのに特に少女には気にした様子はなく――俯きがちで、男は一人頬を緩めながら早口で捲し立てる。


694 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:04:54 EBpqVaRE0

「デュフフフフフ、それにしてもニーナちゃんはどうして着ぐるみなんで? 脱がす楽しみ? そういうサムシング?
 おっと、失敬失敬……拙者とした事がなんでも萌えを見出だすとは良くない癖ですな! ついマニアックに見てしまいまする故!
 ドゥフ、拙者のストライクゾーンは揺りかごから墓場まで! 所謂一つのノンケでも食っちまうんだ的な?
 いや、BBAは対象外ですがな!
 でもロリババアはリリンが産み出した文化の極みですぞ! 抑止力バンザイ!」

 誰しもが思わず顔を顰めたくなる話し方に――しかし少女は。
 市原仁奈は、眉一つ動かす事なく僅かに考え淀む風に口を開いた。

「キグルミを着ていると、構って貰えるでごぜーやすよ」

「……オゥフ」

 特に悲哀を感じさせぬその物言いにも関わらず、男は先ほどまでの耳障りなほどの多弁を止めた。


 暫しの、沈黙。

 メモ紙が貼り付けられた古い型の冷蔵庫が立てる唸り声。
 ぽつり、仁奈が口を開く。

「せーはいせんそー……なんとなく、仁奈にも判ったでごぜーます」

 今だ十に満たない彼女とて、脳に直接情報を流されれば否応なく理解できた。
 むしろそれは――ある種の大人よりも、本質をついたものかもしれない。
 手前の前提や立てられた理屈ではない。ただ、ここで何が起こるのかを――――本能的に理解した。
 或いはまさに、その場に立った参加者の気持ちに(まさしく事実として彼女はそれであるが)――もしくはそれを集めた主催者の気持ちになりきったのか。


695 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:06:15 EBpqVaRE0

 畢竟、

「仁奈は……死ぬんですか?」

 僅か九つの子供の口から出たのは、そんな言葉だった。

「ずっと、ひとりぼっちになるですか?」

 果たして人が死を理解するのは幾つの年齢からか――――そこに議論は尽きまいが。

 市原仁奈は少なくとも、死というものが怖いものだと思っていたし。
 だからこそ、彼女は、死を咀嚼した。
 恐らくは自分が怖いと思うものの中の、もっと怖いものだろうと。

「……ずっとひとりぼっちになるのは、こえーですよ」

 膝の上、キグルミを握り締めた指。

「……」

 俯いてしまった仁奈に、年端もいかない少女にかけられたのは、彼女を思いやった言葉――

「――ナマ言ってんじゃねえぞ、小娘が」

 ――ではない。


696 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:08:41 EBpqVaRE0

「ああ、死ぬときゃ一人だ。どうしようもなくクソッタレに一人で、魚の餌になって死んでいくんだよ」

 眉間に皺を寄せて、顔が険を形作る。
 年若いものは愚か、成人男性すらも身を震わせるほどの迫力。

「魚の餌なんざ上等な方だ。
 親でも判らねえぐらいに膾にされるか、腐って二目と見れねえ蝿の寝床になるか……死ぬのが綺麗で終わるなんざ思ってるんじゃねえ」

 無論の事仁奈も目を見開き、己を見下ろす男の表情に身を竦ませる。

 この世界の、この舞台で与えられた役割――――彼女を放置する母親とその粗暴な不倫相手よりも恐ろしい、本物の一喝。

 これが、暴。

 これが、死。

「ひとりぼっちなんざ決まってるんだよ。そうやってどいつもこいつもクソみてえに死んでいくんだ」

 それが死。

 それこそが死。

 そこに幻想や感傷の余地はなく、ただただどうしようもない現実とどうしようもない破滅が待ちわびているだけ。
 冷や水をかけられたように、男の剣幕から仁奈は――――己がこの先辿る運命を想像し、足を竦ませた。

 そうとも。

 死とは、戦いとは、恐怖の本質とはそれだ。


697 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:10:38 EBpqVaRE0

「でもなあ……」


 ――――だが。

 ――――だが、そうだとしても。


「いいか、やるだけやって好き放題奪い放題して殺したり殺されたりひとりぼっちで死んでいくのは海賊の領分だ。てめえみてえな小娘の出張る話じゃねえ」


 その死が降り注ぐのが正しいか、否か。

 相応しいか否かは――別の話。


「俺たちゃ海賊だ。どうしようもねえ海賊だ」

 ライダーは。

 このライダーのクラスのサーヴァントは。

 海賊として名を馳せ、荒事を振り撒き、恐怖と暴力で海を駆けた彼にはそんな死がお似合いだった。


 それが悪党。救えない最期を迎えるから、だから悪党。

 そんな生き方しかしてこなかった。だから、そんな死に方しかできなかった。

 それが彼の常識で――それが彼の現実だった。


698 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:11:55 EBpqVaRE0

「積み荷は奪うもんで、運ぶなんてのはお宝だけだが――」


 しかし、そんな現実は/幻想は――遥か彼方の遠い海の物語。


「――今回は。今回ばかりは、黒髭の名にかけて……てめえを親の所にしっかりと届けてやるよ」


 故に彼は。

 故に黒髭は。

 故にエドワード・ティーチは。

 死を理解した上で、そんな死を前に高笑いするのだ。


 くだらねえと。

 馬鹿馬鹿しいと。

 法に縛られぬからこその海賊で、海の潮目なんていうのは時間(じだい)で向きを変えるのだと。

 それが――海。

 それが――――――海賊。


699 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:15:21 EBpqVaRE0

「くろひげさん、でごぜーやすか……?」

 彼の言葉に若干の落ち着きを取り戻し。

 或いは理解できずともその勢いに高揚した仁奈が向けた目の先に居たのは――。


「つまりこれから拙者プロデューサーによるアイドル育成計画ですな!
 大船に乗ったつもりで任せておけ的な?
 拙者、これでも海賊ですし? ロマンの海に漕ぎ出すのは大好物というか大興奮ですし?
 デュフフ、霊体化してれば他のアイドルの着替えが覗けるなんて思ってませぬぞ! ンフフ、失敬、ドゥッフ!」


 ――やはり突然変わる潮流の如く、態度を崩したライダーだった。


700 : ひとりぼっち ◆RlSrUg30Iw :2016/06/21(火) 00:18:27 EBpqVaRE0
ここまで投下して申し訳ありませんが操作ミスをしてしまいましたので、>>691-699をなかった事にしてください。
申し訳ありません


701 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 03:59:09 gmWejzuE0
皆様、沢山のご投下ありがとうございました。

これから考査&OP執筆に入りますので、しばらくお待ち下さい。

>>1のプライベートから2週間後になる可能性がありますが、よろしくお願い致します。


702 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 04:37:32 gmWejzuE0
それでは感想を。

>>松永久秀&アーチャー
BASARAからマスターが出るのが驚きました!
シング・ラブも相当強力なサーヴァントですし、かなり強力な陣営となりそうです。
果たして、この二人の好奇心に殺される者が何人来るか…


>>トウ&セイヴァー
漢という一文字を体現したこの少年が、まさか救世主に選ばれるとは…
とても頼りになりそうなサーヴァントですね。火力が少し心配ですが。
ご投下ありがとうございました。


>>北野誠一郎&アーチャー

おお、これはまたとても聖人(顔はともかく)なマスター!
そして召喚したのはステラ!とても強力なサーヴァントですね!
彼等の行く末が楽しみです!ご投下ありがとうございました!


>>真木清人&アヴェンジャー

まさかのドクター真木!未だグリード化は進行していない時期ですが、
メダルが代わりに魔力炉になって魔力供給は捗りそうですね。
終末が願いだというこの二人は、一体何処へ行くのか…
ご投下ありがとうございました。


>>タカオ&セイバー
うわぁ…運動能力の高いマスターまた来ちゃったよ…
武蔵も相当強そうですし、結構、やっていけそうですね。
ご投下ありがとうございました。


>>久雄巻菜&アサシン
ほう、ラーヴァナとは、これまた強力な羅刹…じゃねえな悪魔。
アサシンならざるこの戦闘力ですが、しかし頼りになりそうなサーヴァントですね。
ご投下ありがとうございました。


>>紅音也&モンスター

死ぬ前のおとやんが参戦というのも驚きましたが、おとやんの鯖が旦那とは!
つくづく吸血鬼に縁のある音也らしいサーヴァントです。
でも音也はアーカードが気に入りそうな人物ですので、仲良くやれそうですね。
ご投下ありがとうございました。


703 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 05:41:21 gmWejzuE0
>>サイファー・アルマシー&アーチャー

この世界にウンザリしているマスターですが、しかしこの聖杯戦争は彼にとって
救命ボートになったのかもしれません。果たして、彼等の運命は…


>>クンタック王子&セイバー
のび太の大魔境懐かしい!
のび太がクンタックと友達になるシーンは今でも印象的でした。
セイバーも(喋りはしませんが)一応従ってくれているので、勝ち抜けそうです。
ご投下ありがとうございました。


>>池袋晶葉&キャスター

オレカバトル!懐かしい!
どっちもロボット作りが得意とは…
彼等は一体どんなロボットを作り上げていくのか!?
ご投下ありがとうございました。


>>トゥバン・サノオ&バーサーカー

あ、絵に描いた様な戦闘狂が二人…
きょうふってなに?ばかぁ?だからなんだって?
ぼくたち、いろんなつよいやつと、いーっぱいあそびたいんだ。
ご投下ありがとうございました。


>>白菊ほたる&ライダー

コーラさん!00随一のラッキーマンのコーラさんじゃないですか!
アンラッキーなマスターにはラッキーなサーヴァント、これでプラマイゼロだぁ!
駄目だ…死ぬ気がしない…
ご投下ありがとうございました。


704 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 06:21:12 gmWejzuE0
>>吉良吉影&バーサーカー

手のパーツが好物という共通点からですね、分かります。
ってそんな呑気な事言っている場合じゃねェェェ!!これを見ている俺らの指も
斬られちまうぞォォォォ!
ご投下ありがとうございました。

>>櫻田奏&ライダー

おお、後藤ちゃんじゃないですか!
しかし、トライドベンダーや小説版のデスまで宝具とは愛を感じます。
もうとにかく一目で愛を感じるステシでした。
ご投下ありがとうございました。


>>吉良吉影&アサシン

誰かが描いていたであろうW吉良吉影。
果たして何人の手首がやられることやら…
ご投下ありがとうございました。


>>マジェント&バーサーカー

ギェェェェアァァァァ妊娠しちゃったァァァァァ!!
彼等はドンドン繁殖していきます、ドンドン生殖していきます。
産むな!頑張れ!後少しだ!踏ん張れ!
あっ…俺も妊娠しちまった…(嘘

>>美遊・エーデルフェルト&アーチャー

美遊が喚んだのは、未来のお兄ちゃんにしてあの弓が描かれていたクラスカード。
凄く運命的です、只サファイアがいないのが少し寂しい。
ご投下ありがとうございました。


>>上条当麻&アサシン

こんな殺人鬼が鯖とかとうまマジ不幸。こんな調子で果たしてとうまはインデックスを救えるのか。
ご投下ありがとうございました。


>>森久保乃々&アサシン

へ、変態だァァァァ!聖杯大戦にもいた変態だァァァァ!!
かなりの実力者とはいえ、こんなサーヴァントで大丈夫なのか?
ご投下ありがとうございました。


>>スメラギ・李・ノリエガ&キャスター

ビリーと暮らしながらやけ酒飲んでいた頃のスメラギさんか。
世界を変えようとする采配者という点ではキャスターと共通しますが、
しかし彼等は戦術のプロ、かなりの脅威となりそうです。


>>ウィルソン・フィリップス&アサシン

モブコンビか…もうこの時点で不幸過ぎる…
でも頑張れ!吸血鬼のタクシーにされたからってなんだ!頑張れ!
ご投下ありがとうございました。

>>ヴィルヘルム&バーサーカー

只管苛ついているこのお二人様。
ご機嫌取れる者はいるのでしょうか、おおコワイ。
さあ何人の血が流れることやら。
ご投下ありがとうございました。


>>藤原妹紅&アサシン
今日は俺とお前でダブル藤原だからな。
妖怪繋がりでもある、正に和風を体現した組み合わせですね。
ご投下ありがとうございました。


>>結城千種&リーガー

野球鯖とはこれまたたまげたなぁ
さあ今回の大戦チームは全7組。
頑張れリーガー選手、プレイボール!
ご投下ありがとうございました。



>>因幡月夜&アサシン

オー!サムライ・コンビ、ベリーアメイジング!
そう言えば十本刀にもいましたね、盲目の剣士。
ご投下ありがとうございました。


>>市原仁奈&ライダー

黒ひげマジイケメン。いやごめんなさい、
キモヲタとかおれらとか言ってごめんなさい。
最後まで書けなかったのが残念です。
ご投下ありがとうございました。


705 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 06:21:31 gmWejzuE0
以上で、投下を終了します。


706 : ◆lkOcs49yLc :2016/06/21(火) 21:34:43 gmWejzuE0
>>700

了解しました、破棄します。


707 : 名無しさん :2016/07/06(水) 07:30:48 2EqSA/tk0
投下来ないね……


708 : 名無しさん :2016/07/06(水) 08:13:31 zTP4qlE20
10日までは待つ


709 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 05:58:22 SqbJmKAI0
皆様遅れて申し訳ございません。

OPは実は「4章」に分かれて投下しようと思ったのですが、書く時間があまり取れずに予定した時間を遅れてしまいました、
申し訳ございません。それでは投下したいと思います。


710 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 05:58:42 SqbJmKAI0
「小羊がその七つの封印の一つを解いた時、わたしが見ていると、四つの生き物の一つが、
雷のような声で『きたれ』と呼ぶのを聞いた。 そして見ていると、見よ、白い馬が出てきた。
そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。」


〜新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章より〜



◆  ◆  ◆

1つの大きな部屋があった。しかし其処には重力はなく、代わりに青い光の粒子が漂う、とても無機質な雰囲気であった。
周囲の壁は、まるで冷蔵庫の内部を拡大したかのように感じられる、だが最も注目するべきは、最奥部にある巨大な蒼い球体と、
その前に浮かんでいる1人の少年である。

少年の名は「リボンズ・アルマーク」、此度の聖杯戦争において、ムーンセルより聖杯を託され「制」のルーラーのクラスを以って現界したサーヴァントだ。
そして今、リボンズがいるこの無機質かつ神秘的なこの空間は、「変革の叡智(ヴェーダ)」、このルーラーの本体でもある存在だ。

サンスクリット語で「知識」を意味するそれは、同じくその名を冠するインドの聖典の如く、世界を変革させる「教え」となる事を意味している…と思われる。
ソレスタル・ビーイングの「ガンダム」のバックアップ、そして指令の提示を行っていたこのヴェーダは、今リボンズ・アルマークという殻を以って「裁定者」
として現界したのであった。

だが、今ヴェーダの「人格」として現れたリボンズは、その役割を放棄していた。
「教え」となる事は放棄していない、寧ろその為に今までやってきたのだから。彼が放棄しているのは、「聖杯の管理」についてだ。


「願いを叶える願望機…か…実に素晴らしい物だよ、『聖杯』は。」

リボンズは冷たい表情を浮かべ、直ぐ様否定的な意見を呟く。

「だがそんな物を、あんな下等生物に渡して、本当にいいのかな?」


711 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 05:59:12 SqbJmKAI0
リボンズは、人間に聖杯を渡す気は無かった。
何故なら、人間に「何でも願いを叶えてくれる」道具を渡したらどうなるかを、リボンズは知って…いや、決めつけていた。
きっと、その人間は己の欲を満たすために使うであろうと。
己がための富を、美味を、権力を、才能を、色欲を、全てを手に入れるためにその願望機を使うであろう、と。

そして、リボンズは確信していた、自分なら、もっと有意義な事に、この万能の力を使えると、そう思い、リボンズは笑う。

「愚かな欲望のためにこの力を使わせるのは勿体なさ過ぎる…だけど僕は違う…僕は聖杯を使い、この世界を変革させる…誰にも渡すつもりはない。」

だがリボンズは知る由もないであろう、その願望も、その行動理念も、結局はその「下等生物」と何ら変わりないということを。
しかしリボンズは、再びその笑顔を潜め、苛立ちが混じった不快な顔を作る。

「しかし、驚いたよ、またもや、君が僕を邪魔しに来てくれるとはね。」

其の直後、彼の眼の前にモニターが出現した。映っているのは、1人の黒人の青年であった。
リボンズはヴェーダの情報を基に「SE.RA.PH」の監視を行っていたのだが、偶々見つけたのが、よりにもよってこの男であった。

その姿を、リボンズは心の中に強く刻みつけていた。

僕を眠らせた男。
僕の思想を否定した男。
僕の考えを覆した男。
僕を斬り裂いた男。

決して忘れはしない、決して許しはしない。


だが、これはリボンズにはチャンスにも見えた。
今度こそ、あの男を倒せるのだから。
自分の全てを否定した、あの男を。
まずは聖杯をどうにかして使えるようにして、願いを叶え、彼を倒そう。
そうしたら、現世に舞い戻り、この世界を変革させよう。

そう考えながらも、リボンズはモニターに映った青年の顔を睨みつけていた。

「次こそ…君の最期だよ…刹那・F・セイエイ。」


「ホワイトライダー」の名を冠したルーラーは、その名を発し、傲慢な笑みを浮かべた。
それが、虚勢なのか、本当の自信からかは、我らが知る由もない。


712 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 05:59:50 SqbJmKAI0
【クラス名】「制」のルーラー
【出典】機動戦士ガンダム00
【性別】男
【真名】リボンズ・アルマーク
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具A


【クラス別スキル】

対魔力:A-
魔力に対する耐性。
現代の魔術師では傷を付けられない・・・はずなのだが、
一切の神秘を持たない人造生命体であるため、クラス補正で
付けられた様な形になっている、そのためあまり働かない。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。


真名看破:A++
相手の真名を見破る能力。
ヴェーダのバックアップにより魔力的な干渉がないなら完全に看破出来る。


【固有スキル】


自己改造:B
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。
彼は幾つもの肉体を「端末」と認識しており、
本体はヴェーダと一体化している。


革新者(偽):A-
人類を新たなるステージへと導く存在。
反英雄に対しパラメータに補正がかかる他、
「カリスマ(偽)」「直感(偽)」の特性も兼ね備えている。
ルーラーは「イノベイター」と呼ばれる
存在に到達したが、彼は人類に道標を教える使命にあるにも
関わらず無理矢理人類を引っ張る存在になろうとした
ためにランクが減少している。



魔力放出(GN粒子):A
魔力でGNドライヴを起動し、GN粒子を生成して
GN粒子を放出させ、「トランザム」と呼ばれる状態になることが出来る。
ただし、使用したGNドライヴは焼き切れてしまう。


反骨の相:B
決して他者に従おうとしない人物だが、自らもまた王の器ではなかった。
同ランクまでのカリスマを無効化する。



【宝具】

「変革の叡智(ヴェーダ)」

ランク:A+ 種別:情報宝具 レンジ:- 最大捕捉:10000

ルーラーが生前アクセス権を独占した、私設武装組織「ソレスタルビーイング」
に司令を送るスーパーコンピュータ。
世界やソレスタルビーイングに関する重要な情報が満載のデータベース。
モビルスーツに情報を送り込み、戦闘を補助する。
リボンズ・アルマークはヴェーダのアバターとして呼ばれた存在で、
ある意味ルーラーの本体とも言える存在。 現在はSE.RA.PHの「ある場所」に
置かれており、SE.RA.PHのあらゆる情報を把握できるようになっている。


「世界よ、我が下に再誕せよ(リボーンズガンダム)」

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大捕捉:500

「変革の叡智(ヴェーダ)」の手で生み出したリボーンズキャノンが、
真名開放と共に変形した姿であり、ルーラーが自称した「救世主(ガンダム)」。
ダブルオーガンダムのデータを応用した「ツインドライヴシステム」を利用しており、
新たに追加された装備に加えリボーンズキャノンのGNキャノンは生きているために強力な火力が打ち出せ、
特に2機の太陽炉による「トランザム」の戦闘力は他のサーヴァントを凌駕する。


【Weapon】

「モビルスーツ」

あるエリアに立ち入りが不可能な工場が置かれており、其処からヴェーダのデータを基に作り出している人型機動兵器。
同じく工場で肉体を製造され、ルーラーと意識を共有している人造人間「イノベイド」が操縦桿を握っている。
リボーンズキャノンがない限りまともに戦えぬルーラーにとっては、唯一の「武器」と成り得る存在である。


713 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:00:16 SqbJmKAI0
【人物背景】

イオリア・シュヘンベルグの計画の中にあったヴェーダの生体端末「イノベイド」
当初は0ガンダムのガンダムマイスターとして、
武力介入を繰り返しながら彼の思想のために動いていたが、
自らが後々用済みとなったら死ぬという事を知らされ、
争いを終わらせない人類を卑下し自らの手で統括するという野望を持つようになる。
その後イノベイド達を率いヴェーダのアクセス権を奪い取る。
そしてヴェーダを悪用することで世界を実質上支配下に置き、
独立治安維持部隊「アロウズ」を裏で操ることにより反乱分子を始末していく・・・
が、リジェネ・レジェッタがソレスタル・ビーイングにヴェーダのアクセス権を
返却したことで戦況は逆転、追い詰められた所をリボーンズキャノンで
ソレスタル・ビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイと交戦、
ダブルオーライザーの太陽炉と0ガンダムを持ち出したりと往生際の悪い行動を
取るも、刹那の駆るガンダムエクシアリペアⅡに敗北する。
一見穏やかに見えるが根は極めて尊大な性格。
人を食った様な態度を取る一方、プライドが高く詰めが甘い他、
キレると手を出したり銃を向けたりする等振る舞い方によらず器が小さい。


【聖杯にかける願い】

聖杯を利用し、再び世界を我が物とする。




◆  ◆  ◆


714 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:00:34 SqbJmKAI0
此処一体を管理する市役所には、特殊な「部屋」があった。だがその部屋の扉にはドアノブはおろか鍵穴すら付いていない。
しかも驚くのは、上層部ですら中身を見たことがないという話だ、誰も、この部屋を開けたことがない。
その上外部の人間はこの存在を全く知らないという話だ、その部屋の存在はインターネットですら掴めていない。

正に「開かずの間」の言葉を体現したような扉だ。此処に近寄る人間は殆どといっていない。
「どうせ開かないから」とか、「不気味だから」とかで。こんな所に来るのは、入りたての新人か余程の物好きだ。

しかし、この部屋の存在を知り此処に来た【後藤】も、そういう「物好き」に当てはまる人物であった。

市長である広川剛志の知己にしてエリート役員、それが後藤に与えられた「ロール」であった。
その縁から噂を聞いて此処に来た後藤は、「何となく」興味を持ち、「何となく」此処に来た。

「確かに開けられなさそうだな」

そう言いながら後藤は思考した、「いっそ切ってしまおう」と。そして冷たい目でその扉を見つめた後藤は、首から「何か」を出した。

それは、まるで鎌のように見えたが、形成しているのは人間の肌でありとてもグロテスクに感じさせる。
その鎌を使い、後藤は表情を何一つ変えずに肉眼では凝視できないほどの凄まじいスピードで扉に無数の線を描いた、

しかし、扉は相も変わらず閉ざされたままであった。

否、扉は確かに切れた、だがその直後扉は直ぐに再生し塞がれてしまった、その一部始終を研ぎ澄まされた後藤の視覚は見通していた。

それを知ったかと思えば、後藤は直ぐに回れ左をしてその場を立ち去ってしまった。

その扉の先に、自らを導いた存在の一角がいる事も知らずに。


そして、その男は、自らの捕食活動に関して何の処罰も施していないということも。

後藤は、五刀は、五頭は、三木は、向かう。本能のままに、餌を喰らうために。


◆  ◆  ◆


715 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:00:53 SqbJmKAI0
「にしても、連続猟奇殺人って…。」

警察署の近くにあるそば・うどんの店で、【加賀美新】は、【亜門鋼太朗】と共にカウンター前のテーブルに座って共に食を囲んでいた。
加賀美はそば、亜門はうどんを食べていた。加賀美は何処か疑問から抜け出せないような表情をし、そして亜門はうどんを睨みつけていた。


「つい最近刑事課に配属された警官」というのが加賀美の聖杯戦争におけるロールであった。警官になるのには中々苦労はしたが、
しかし刑事になれたというのは、とても誇らしい。「親父のコネ」なんて馬鹿げた話もあったが、ともかく実力で入れたのは確かであった。
そして今加賀美は、先輩に当たるであろう宜野座、亜門と共に休憩時間に昼食を取っていた。

ZECTにいた頃は、上司の実家が老舗蕎麦屋で、先輩の好物が「かけそば」だった為にしょっちゅう一緒に何度も蕎麦屋に立ち寄った事で、
蕎麦の味の良し悪しの違いは少し、分かる気がした。うん、この蕎麦は美味い、と。天道や剣程ではなくとも、まあまあマシなグルメレポートは書けそうな気は…する。
しかし「今」、加賀美達3人の食卓での話題が「もう少し明るければ」、もっと蕎麦を美味しく感じられるだろう、と加賀美は思う。


今回、加賀美達が所属する刑事課が担当することになったのは、何と「猟奇殺人事件」であった。

何と、死体がバラバラに「散らかされて」道に転がっていたという、まるで漫画にでも出て来るような悪質な手口だ。
しかも、身体の一部は見つかっておらず、断面は、「まるで食べられたかのような」痕跡が確認されている、と言うのだ。

「にしても、本当にあるんですね、こういう事件。」

加賀美はそう言うと、そばを箸に絡めて、ズルズルと啜った。すると、宜野座も箸を手に取る。

「俺が捜査した事件の中には、死体で悪趣味な彫刻品を作るような連中もいたからな…俺はこの手の事件には慣れっこだが、
お前が堪える気持ちも分かる。」

そういった後に、箸で掴んだ蕎麦を一気に啜る。すると、今度は亜門が加賀美に口を開く。

「加賀美、お前には…この一件が、どう見える?」

「どうって…そりゃ、許せませんよ、こんな事…やって良いはずが無いですよこんな事、絶対に。」

加賀美は不思議と、本音を容易く吐露することが出来た。
ワーム、ネイティブによる人殺しを幾度も見て来たとはいえ、やはり人が殺されるのは、ましてや人間が殺したなんて、
そんな事を容易く割り切る事は今の加賀美には難しかった。その為やや複雑な心境に陥っていた所を、亜門が本音の扉を
開いてくれた、と言うべきか。

「そうだろうな、俺も、こんな真似事は絶対に許せない…」

亜門は影を落とした表情のままでうどんを一気にズズズッと啜り、ゴクンと飲み込むと、そのまま悔しそうに歯噛みし、言葉を続ける。

「しかも監察では、『亡骸は一部を喰われた』というらしい、そんな事を、そんな歪んだ所業が、この世界を歪めている…俺はそう思っている。」

亜門も加賀美同様割り切れた訳ではなかった、「喰種」の存在が確認されていないこの月においても、相も変わらず人が喰われている事件が起こっているのが、
彼には許せなかった。今、亜門が食べているうどんも、「喰種に喰われた」同僚が行きつけのうどん屋で毎日の様に食べていたという話から、彼がよく其処で
食べるようになったことが関わっていた。

「そうですね。」

加賀美は、それに答えるかのように頷き、そして、再び蕎麦の入った丼に箸の先端を浸からせた。
亜門もそれに答え頷き、残ったうどんを一気に啜り出す。



「そう言えば、宜野座さんは何処に行ったんですか?」

「宜野座なら、今客を出迎えている。」

「客?」

「ああ、なんでも、国際警察から派遣された人間らしい。」



◆  ◆  ◆


716 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:01:26 SqbJmKAI0
駅郊外の裏側に、あるアンティークな雰囲気を漂わせるメキシコ料理店があった。

メキシコ人からグルメな日本人まで沢山の人が来ていた店の、一番左奥の位置のテーブルに【宜野座伸元】と、【R(アール)】は座り、食を囲んでいた。
この店は、駅の近くにあるとはいえ目立ちにくく、その為知られにくい話し合いには持って来いの店であった。

アールは、日伊双方に関わるある「問題」を解決するために送り込まれたスパイで、その為「インターポール」の名を騙ってこの警察に潜入した、というロールにあった。
幸い、ソウといた時に偶々発行してもらっていた偽造IDのおかげで、何とか騙されずに此処に潜入できた、と言う事らしい。
埋め込まれていた記憶には、作るのに苦労したと、ソウが語った姿があったが、よく分かる。何せスパイの天敵のような組織だから、幾ら天下の合衆国お抱えのCIAでも作リ方を練るにはかなり大変だったらしい。
ココが唸ってしまうほどには精巧に作ってあるのだから。とにかく、これで日本の警備は潜り抜け、何とか日本の警察に忍びこむのは叶った、と言う…事らしい。


先程、前菜が二人の前に置かれた所で、アールはじゃがいもをグラタンの様にクリームで煮た「パパス・コン・ナタ」、一方の宜野座は
イカや白魚に玉ねぎと唐辛子を和え、とうもろこしを添えた「セビチェ」をテーブルに置いていた。

アールは、テーブルの端にあったタバスコを大量にかけて混ぜ込み、それをスプーンで掬い口に入れていた。

やはりイタリアンらしい嗜好だな、と宜野座はその様子を見つめ、セビチェをフォークとナイフを器用に扱いぱくりと口に入れた。
オリーブオイルの滑らかさと塩と唐辛子の刺激が上手いこと味を引き出している、うん、これはいけると感じた。

元いた世界では自宅では料理が全自動で行われ、トレイに自動的に出される、という方式が取られていたが、やはり人の手で作られた物は何処か違う。
全自動料理システムにおいて「メキシカン」はあまり選んだ事は無い事もあり、宜野座は初めての味に舌鼓を打ちながらフォークとナイフを扱った。

するとアールが、突然に話題を持ち出す。

「所で、本日の要件について先にお伝えしたいのですが…今回は、『鬼兵隊』の一件で此方にお伺いさせていただきました。」

宜野座がそれを聞いて、口を引き締める。「鬼兵隊」といえば、日本から始まり、今や世界を騒がせているとされているテロリスト集団だ。
様々な国家や組織の要人を狙った残忍な爆撃テロ、ヨーロッパでは「デーモンズ・クラウド」という通称で喚ばれている始末だ。
この前はイタリアも被害に合っていたと聞くが…まさか、この一件でか?と察する。

「今回、我々は鬼兵隊が日本に潜伏している、という情報をキャッチし、そして日本の警察とインターポールの橋渡しをすべく送り込まれたのが、この私ということです。」

「そうですか、遠路遥々ご苦労でした、ミスター・アール。」

宜野座はそう答え、一旦腕時計を確認した後、再びアールに顔を向けた。

「そろそろ警部がいらっしゃる頃です。」




◆  ◆  ◆


717 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:01:53 SqbJmKAI0
「お会計は全部で1500円、早く出しな。」
宜野座とアールが会話をしている一方、ドアの前にあるカウンターで、【エルメェス・コステロ】は、とても性には合わないレジ打ちをこなし、客の会計を行っていた。
もうあの世にはいないはずの姉は、今はメキシコ料理を勉強しに母の祖国へと帰っていき、店番は結局自分と父がやることになっていた。
しかし、姉が殺された事を思えば、今こうしてレジを打っている自分は、とても幸せなのではないのかと思う。
それに、店も場所が繁華街に比較的近めだということもあり、前よりは中々繁盛している。今の自分は、とても恵まれている。

しかしこれが、自分の戦う理由にも繋がるというのは、皮肉ながらも事実であった。

今の自分が、一番過ごしたいと思っていた日々。そしてそれは今の彼女の後悔と憎しみの「象徴」と成り得る物であったから。
こんな日々と「脱出する」という願いが、姉を殺したあの男への憎悪をより一層燃えたぎらせている。


値段を口で告げたエルメェスに対し、カウンターに立った黒人の青年、【刹那・F・セイエイ】は、財布から千円札二枚を引き抜き、
カウンターに置いた。

「2000円、貰っとくから、お釣りは500円な。」

レジを慣れた手つきで動かし、ドロアを開いて札を素早く閉まって直ぐに500円玉をカウンターに置く。
流石に敬語はとても言えなかったが、然程でもないとか。


「すまないな。」

刹那はそう言うと500円玉を受け取って回れ右をし、ドアを開いて出て行く。



◆  ◆  ◆


『美味かったか?刹那。』

『ああ、悪くはなかった』

ウルティメイトブレスレットブレスレットとなって刹那と一心同体になったアーチャーと、刹那は何気ない会話(というか念話?)を交わしながら、雑音響き渡るこの街を歩いていた。
先程、偶々近くにあったことで立ち寄ったメキシコ料理店で食事を摂り、再び刹那は街の散策に戻った。

刹那が与えられた「ロール」は、「クルジス共和国からの留学生」という物であった。恐らく自分達は、アリー・アル・サーシェスの引き起こした宗教的紛争には
巻き込まれず、刹那も平凡な時を過ごした、と言う事になるらしい。なのにも関わらずソレスタル・ビーイングの制服を着ているのは少しどうかとは思うが。
「生活費」はまあまあ残っているが、其処まで長くはいられないであろうこの聖杯戦争の間には
其処まで持たないという訳ではない。明日は大学の講義があるが、さて、どうしたものか、と考えながらも空を見上げていると…
何か、素早く飛ぶ小さな物体があった。


718 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:03:05 SqbJmKAI0
「!?」

『どうした!?刹那?』

心配げに刹那に問いかけるアーチャーの声を尻目に、刹那は目を金色に光らせ、素早い動作で鞄のファスナーを開き双眼鏡を取り出す。
CBの潜入調査においてスメラギから受け取っていた物だが、まさか此処で役に立つとは。

そう思いながら、双眼鏡越しにその物体を目で追いかけながら照準を最大にすれば…刹那は驚愕と苛立ちの混じった表情を見せる。

(モビルスーツ…やはり、まだいたのか…)

アロウズが使い捨てていたGN-Xの系統の機体だが、こんなカラーリングの代物ではなかったはずだ。
少なくとも、「今の」刹那の記憶には存在しない。そして、刹那は確信した。

「何かがおかしい」と。
最も月の中で違う生活を送り願いをかけて殺し合う事自体おかしな話だが、これはその中での話だ。

モビルスーツは一瞬で遥か遠くへと消えて行き、それを見届けた刹那はゆっくりと双眼鏡を目から離す。
やはり曇った表情は隠せず、そしてそのもやもやの原因をアーチャーに問いかける。

「アーチャー。」

『どうした?刹那。』

空とウルティメイトブレスレットを交互に見上げながら、刹那は曇った表情を見せている。

『やはり、何かがおかしい、と思わないか。』

その言葉を聞き、アーチャーも察した。

『確かにな、あのメカ、確か刹那のいた世界にいたやつだろ?昨日も思ったが、確かに毎回毎回見かけるのは不自然だよな、
あの時はサーヴァントの気配もしなかったし、あんなに大量に湧く姿は極めて不自然…だったな。それと…』

「どうした?」

『もうあんな無茶な偵察はやめろよ、敵の目とか、魔力とか、そういうものの大切さとかてめえみてぇな奴が一番分かっていると思ったのによ。』

そう、昨夜刹那は、一旦ゼロに変身し、空中を飛び偵察に出た。何とか敵に見つかることは無かったが、しかしとても驚いた物を見つけた。
無数のモビルスーツ軍団である。それは刹那が既に交戦経験のある機体であったが、しかしこれはかなりの異常事態と思われる。
追う事も考えたが、深追いし過ぎると面倒な事になるので引き返してしまった。


「ああ、分かっている。」

刹那はそう返すと、顎に手を置き考える。

(サーヴァントの仕業か…?)

成る程、それなら話が付く、しかし、一体誰がこんな芸当を行える。

どうあれ刹那には、1つ確信できることがあった。
誰かが、何かとんでもないことをやらかすのではないか、と。

先程から疼きを見せている脳量子波が、それを証明している。「嫌な予感がする」と、革新者としての直感が示していた。


そしてそれが皮肉にも的中することは、今の刹那は知る由もない。



◆  ◆  ◆


719 : 初めの一捲り〜「制」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:04:24 SqbJmKAI0

刹那・F・セイエイが見上げる空を、【白菊ほたる】と、そのサーヴァント、ライダーが乗ったモビルスーツは飛び回っていた。
ライダーが座っているコックピットと、その横に寄っかかっているほたるは、メインカメラに映る広大な世界を拡大図付きで鮮やかに写しだしたモニターを
眺めていた。


最初の話し合いの結果、「敵の情報がまずわからない」という議題が持ち上がった。聖杯戦争は、謂わば「情報戦」も視野に収まっている。
どんなサーヴァントが、どんな能力を持ち、どんな風に戦うのか、それを知ることで、自ずと勝利への道は浮かび上がっていく。
好戦的なライダーとは対照的にほたるは戦う気には未だなれなかったが、しかし最低限の情報は掴んでおきたい、と考えての事だった。


空を飛ぶサーヴァントや、「千里眼」という力を持ったサーヴァントも幾らかいるのかもしれないため、なるべく高めの高度で飛んでみせた。
モビルスーツの構造上マスターの耳は詰まらずに済むので、一応心配はない。それに太陽炉で動いている以上機動力も抜群なので、

追われることは「多分」無いと思う。

「見つかりませんね…やっぱり。」

モニターを眺めているほたるに対し、ライダーはいつもの調子で答える。
暗いほたるに、明るいライダーは、やはりベストパートナーであった。

「まァ、今は昼間だからな、多分連中も姿を隠しているんだろう、あ、そんな気にすんなよ!マスターのせいじゃねぇって!」

「うぅ…すみません。」

「そんな謝ることねぇって…ていうか、寧ろ敵さんともあまり当たらねえしこの時間帯の方がいいかもしれねぇぜ。」

な〜んて大佐が聞いてたら小言聞かされるかもなぁ、と思いながらも、ライダーはほたるに励ましの言葉を送る。

陽気なライダーと、控えめなほたるは、そんな会話を繰り返しながらも、モニターを見つめる。
もう飛び回ってかれこれ一時間、今日は日曜日ではあるが、今の所収穫は無し。もう一時間は飛んでいるが、とても敵の目にビビりながらの索敵は
エースパイロットでも決して楽ではない、というより、ライダーの性に合わない。

それからかれこれ10分、退屈で窮屈で迫力とスリル満点(?)な飛行ツアーに、ライダーもそろそろ飽きてきた、と思い始めた。
さっきまでの明るさは何処に言った。


「ハァ〜やっぱし疲れてきたかもな、ていうか俺暴れるのと生き残るのが本領だしな、流石にうろつくのはちょいと疲れるわぁ…」

とうとう愚痴まで漏れてしまった、ほたるが心配そうに見ている。と、その時。

「あ…ライダーさん、見てください。」

ほたるが恐る恐るモニターに指をさす。

「ん?どうした?」

ライダーがその指のさした先を見て…首を傾げ、拡大のコマンドを押してその先を確認すると…


其処には、何かしらの「物体」があった。見た所黒い板のようだが、しかしそれはまるでねじれこんにゃくの様にひね曲がっており、
しかもそれが空中に浮かんでいるという。あまりにも不可思議な現象だ、それにライダーは何か気配を感じた。

「間違いねぇ、マスター、この変な蒟蒻、多分サーヴァントだ、近づいてみるぜ!」

ライダーがそう言ってGN-XⅣの速度を上げ、一気に近づいてみると、やはり其処には人一体分のねじれこんにゃくがあった…
のだが、それは直ぐに粒子と化して消滅してしまった。オバケのように、どろんと。


「何なんだ、ありゃ…」

蒟蒻のサーヴァントが霊体化して逃げた様子を見て、ライダー、そしてほたるも、唖然としていた。
二人はそのまま、偵察する気力も失い、ヒョロヒョロと、帰って行ったとさ。

その蒟蒻が、自分達を招いた「一柱」である事も知らぬまま


                                            【「争」の章に続く…】


720 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 06:05:50 SqbJmKAI0
以上で投下は終了です、遅れて申し訳ございません。
今後は出来る限り時間を作って執筆するつもりですが、時間は中々掛かりそうにあります。


721 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 07:16:42 SqbJmKAI0
修正点を一つ。
加賀美と亜門さんが食事するシーンで、
何故か宜野座さんが紛れていたので、
wikiに追加する際に修正しておきます。


722 : 名無しさん :2016/07/08(金) 17:28:28 vNnpboi.0
投下乙です
次回はいつくらいになりそうですかね


723 : 名無しさん :2016/07/08(金) 18:31:46 jRQSt7Mc0
投下乙です。リボンズが認識してるせっさんは映画版ですかね?


724 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/08(金) 21:09:31 SqbJmKAI0
>>722 次回も2週間はかかる可能性があります、暫くお待ち下さい。

>>723 今回出てきた刹那は2部〜劇場版の間からの参戦です。因みにGN-XⅣの存在は知らないようで、
このSSでも一瞬見えたコーラさんのGN-XⅣを見て「何だありゃ!?」となっています。


725 : 名無しさん :2016/07/10(日) 14:26:30 BNKgPKyUO
先に参戦キャラクターだけでも発表した方が良いと思うけど……
オープニングあと三話で各二週間なら、開始までさらに一月半待ちだし


726 : 名無しさん :2016/07/10(日) 15:06:32 Aa59kv8w0
賛成です
書き手の皆様方も先にキャラが発表されていた方が把握や執筆を進めやすいのではないかと


727 : 名無しさん :2016/07/10(日) 19:20:50 CoEQI56c0
同感


728 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:19:46 zmWMrarU0
皆様返事が遅れて申し訳ございません。

OP1章ごとの執筆期間が二週間というのは最悪の場合での話でした、申し訳ございません。

私の執筆速度の都合上、当選主従をOPより先に公開するというのは私も考えていましたが、それだと何かつまらなくなる、
ということでやめてしまいました、申し訳ございません。一応、把握資料は既に完成しているので、1章投下する毎にWikiの「把握資料一覧」を順次更新していくつもりでいます。

皆様大変長らくお待たせいたしました、それでは第2章を投下いたします。


729 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:20:43 zmWMrarU0
「小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。
すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、
地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。」

〜新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章より〜


◆  ◆  ◆



1万年前に、現代の生物学を覆した、「ある戦い」が起こった。
氷河期が終わって間もない頃、地上に53体の「怪物」が姿を現した。

クワガタムシ、カブトムシ、熊、鷲等、様々なモチーフを持つ彼等は、本能のままに殺しあった。

知恵と力を振り絞り、怪物達は殺し合い続けた。その度に一体、また一体が倒されて行き、
それを示すように彼等の腰にあった装飾品がパリッと開く。
その瞬間、上空に巨大な石版が出現し、倒された怪物の肉体を吸収した。

そして吐き出されたのは、その怪物のモチーフが描かれた一枚のカード。
今の人間が生み出した「トランプ」というカードに良く似たそれは、その怪物に勝利した一体の手に取られ、
一体はそれを己の戦利品と見なしまた他の敵を狩りに向かう。何故こうして、彼等は戦うのか。

答えは単純明快。それは全て、己の子孫の繁栄の為であった。

それが「バトルファイト」、生物達の「進化」への限りない欲望が生み出した、知られざる戦い。

殺し合う宿命にある怪物「アンデッド」は、最期の一体となるまで殺し合い続けた。
そしてそれをいつも上空から眺めていたのは、「バトルファイト」の首謀者にして、
「アンデッド」を生んだ巨大な石版モノリス、その名をアンデッド達は「統制者」と呼んだ。


◆  ◆  ◆


そして今、「人間」のアンデッドが勝利し人間の時代が始まっても尚も、
月の海の中で殺し合う数多くの英霊達を、同じように「統制者」は眺めていた。

一万年前のあの時と全く同じように、統制者は、このバトルロイヤルを調和し、
ゲームセットへと導く事を使命とし「裁定者」のクラスを以って現界した。

しかし此度の聖杯戦争において、統制者には、自分にとっては唯一許せない参加者がいることが唯一つ許せなかった。

剣崎一真―仮面ライダーブレイド―ブレイド・ジョーカー。

この男は、自ら第二のバトルファイトの参加者となることで「戦いを永久に長引かせようとし」、
そのせいで300年はバトルファイトはある種の休戦状態に。
自らと対をなす「破壊者」と手を組んでまで「ジョーカー」と「ブレイド・ジョーカー」を戦わせようとしたのにも関わらず、彼等はそれに抗った。

そしてその結果己は、彼等の刃の下に斬り伏せられ消滅し、バトルファイトは永遠の終結を告げた。それが進化を促した存在の最期であった。

だからこそ許せない、あの男が、剣崎一真が。何としても、あの男を、この戦いにおいて封印してやりたい。
そんな思いが、「統制者」の審判としての公平さに、歪みを生じさせた。


あまりにも「石版らしからぬ」その思いを胸に、「統制者」は真下からその男を見下ろしていた。
だが「統制者」はその性質上掟を破る真似は出来ない。しかし同時にその性質に僅かな亀裂が走っている、
このままこのモノリスが「裁定者」で在り続けるとはあまり断言できない。

果たして、このモノリスはこのまま公平なる審判であり続けるのか、

それとも復讐者であろうとするのか。

それはまだ、誰にも分からない。


730 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:21:38 zmWMrarU0


【クラス名】「争」のルーラー
【出典】仮面ライダー剣(小説版も含めます)
【性別】無
【真名】統制者
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具EX


【クラス別スキル】

対魔力:EX
魔力に対する耐性。
神代の魔術を含めるあらゆる魔術を無効化する。
原初の存在に、魔術など通じるはずもない。



【固有スキル】


変化:A-
漆黒の悪魔の姿に変化できる。
ルーラーは、嘗て悪魔の姿に転身したという逸話が残されているが、
その際には「破壊者」との融合が必要であったため、ランクが下がっている。



自己保存:-
自身はまるで戦闘力がない代わりに、
あらゆる危機から逃れることができる。
ただし、悪魔の姿に変化した瞬間、このスキルは消滅する。



原初の一:EX
アルテミット・ワン。星のバックアップを完全に受け取り、霊脈と結合し魔力を無尽蔵に吸収、
更に己のみ抑止力が効かない様にしてしまう。




【宝具】


「捨てられた五十二の手札(シール・イン・ミスカード)」

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:20 最大捕捉:53

ルーラーが生前、バトルファイトから脱落したアンデッドをカードに封印した逸話から。
サーヴァントを吸収し、カード内に閉じ込める。閉じ込められた瞬間サーヴァントは脱落とみなされる。
第三魔法に相当するその力故にランクは規格外の数値を叩きだした。



「繁栄を求める不死の始祖達(バトルファイト)」

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:53

ルーラーが生み出した、地球上の全ての種族の始祖。自らが生み出した53のアンデッドを召喚することが出来る。
しかし、此度の聖杯戦争においてはどういう訳かダイヤスートとクラブスートのアンデッドしか生み出せずにある。
その代わり、別の並行世界に存在した「アルビノジョーカー」や、二体のジョーカーを貶める為の世界で生んだアンデッドなど、
オリジナルのアンデッドを作ることは出来るが、それらのアンデッドには不死能力が無い。


731 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:23:02 zmWMrarU0
【人物背景】

生きとし生ける全ての生物の欲望が形となった、神であって神でない存在。
一万年前、53体の不死生命体「アンデッド」を生み出し、52の種族の何れかの繁栄か、それとも世界のリセットか、
それらをかけた「バトルファイト」を引き起こした存在。基本的にはねじれこんにゃくみたいなモノリスの様な姿で
行動し、テレポートで移動し、素手で殴られても粒子化したかと思えばすぐにまた現れる。バトルファイトの集結により
姿をくらましていたが、モノリスがある1人の資産家によって発掘され、全てのアンデッドが封印から解き放たれていても
暫くは発掘した男に従っていたが、その者が死んだ途端にバトルファイトの統制者としての行動を再開する。
そして、生き残ったアンデッドが、世界を仕切り直すジョーカーのカテゴリーを持つ者となった
瞬間、大量のダークローチを生成し世界を破滅に向かわせようとするが、
ある1人の人間がジョーカーとなりバトルファイトの参加権を手にしたことでバトルファイトを
再開と見なし、世界の破滅を一旦、終わらせる。
しかし、それから300年後、バトルファイトを強制的に再開させようと、
ある別の世界に二人のジョーカーを呼び寄せるも失敗。更には自らと対を成す「破壊者」と融合するも、
二人のジョーカーと、ジョーカーの接触に利用した二人の戦士によって消滅する。



【聖杯にかける願い】

バトルロイヤルの管理者となるべく生まれた統制者に願いなど無い。
だがそれでも、此度の聖杯戦争に現れた剣崎一真への憎悪は消えない。




◆  ◆  ◆


732 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:23:41 zmWMrarU0


午後、帰宅の途に付く人が出始めた頃、駅近くの街にケータイショップがあった。
同じく帰宅途中であった【網島ケイタ】と、右手に握られている彼のバディ…セブンは、
偶然にも見かけたケータイショップで、ガラス越しにあるショーケースにある
「フラネット」が新たに発売したスマートフォン「ミゼル・ジーン」を眺めていた。

『ジーン…か…』

セブンが懐かしがるような声と、しかし訝しげな表情で呟く。
「ジーン」は、ケイタ、そしてセブンにとって忘れられない存在となった。

海外にいるロク、宇宙にいるネクスト、そして本来の用途とは異なるジャッジを除いた、
全てのフォンブレイバーが抹消されるきっかけとなったフォンブレイバー。
思えばジーンも、こうした格安値段で端末がばら撒かれ、
そしてそれら全てが並列分散リンクして大きな存在となっていった物であった。

デザインはやや未来的にイメージさせられる長方形の薄型。
ちょっと綺麗な、されど何の変哲も無いスマートフォン、という印象であった。

しかし、もっと注目するべきは値段だ。最新のスペックの割に本体料金はたったの980円(税込)、
スマホ業界においてはあまりにも破格過ぎる数値だ。

だが、ケイタとセブンが注目しているのはそんな物ではない、二人は、ショーケースの背景となっているフラネットの広告にある、
穏やかな顔を浮かべた青年の姿を直視していた。

「間明…」

『やはり奴も、NPCとして再現されていた、と言う事か…』

「何で気付かなかったんだよ、俺ら…」

「間明蔵人」、ケイタとセブンにとっては忘れられない相手だ。
並列分散リンクを行うために自分達アンダーアンカーに危害を加え、ゼロワンを殺し、
挙句世界までも巻き込もうとした男である。

アンダーアンカーが潰れ関係者全員が徹底的な事情聴取を受けている中、
彼だけはフラネットを捨てて行方を晦ましている…らしいが、まさかこんな形で相見えるとは。

「なあ、セブン。」

『む?どうした。』

「NPCって、皆に危害とか加えないんだっけ…?」

『そうだな、幾らこの男であろうと、 NPCである以上はあのような真似をするはずは無いだろう…多分な。』

◆  ◆  ◆


733 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:24:02 zmWMrarU0


マスターがこうしている中、其処の近くにある、
街が見渡せる展望台の柵に手をかけているボロボロの紺色のジャケットを着た青年…剣崎一真もまた、
上空に、彼にとって忘れられない、あるものを眼にする。

「…統制者!?」

忘れもしない、天王寺が覚醒めさせ、始の意志を無視して世界を滅ぼしたモノリス。
時折ねじ曲がる巨大な石版の様な姿、その記憶は、300年経とうが剣崎の心にはしっかりしがみついていた。

此度の聖杯戦争において、「セイバー」のクラスを以って現界した剣崎は、
上空にいる統制者の姿に慄然としていた。それもそうだろう、あれは彼が「人間」であった頃に出会い、
そして自分や橘、睦月、そして始の運命に多大なる歪曲を齎した存在だ。

また、何かとんでもない事をするのか。それとも、アンデッドになった自分を追いかけてきたのか。
恐怖と驚愕の入り混じった表情となって、剣崎の恐れが露になっていく。

だがしかし、そんな彼の心境とは裏腹に、統制者は、剣崎のそんな気持ちなど察せず、直ぐに姿を消してしまった。
一瞬で、アニメで見るような忍者の如くドロンと、粒子化を初め上空にあるモノリスは姿を晦ました。

それでも、剣崎の中にあるモヤモヤは消えることは無かったが、その時。

「どうしたんだよ、セイバー。」

『酷い顔だな、一体何があった?』

近くにいた自分のマスター、網島ケイタと、
彼の右手に握られている喋るガラケー、「セブン」が、剣崎に声を掛ける。
剣崎はそれに咄嗟に気付き、ハッとケイタの方を振り向いた、未だ草臥れたような表情のまま。

「あ、いや、何でも…」

「本当に大丈夫か?」

『如何にも「疲れているような」表情だったぞ、汗も流れっぱなしだ。』

ケイタとセブンが表情を濁している中、剣崎も言葉を濁しながらも、その御蔭で我に返った。
ふと考えてみると、自分は今までもこうして「仲間」に救われてきた気がする。
自分がこうして1人で何でもかんでも背負い込もうとしている中、皆はそれを手助けしてくれていて、
だから、あの頃の自分は本当に幸せ者だったなと、尚更思い出させる。

そしてそんな気持ちが、剣崎を笑顔に呼び戻す。

「ありがとうな、ケイタ、セブン、俺なんかの事心配してくれて…でも、もう大丈夫だから、気にするなって。」

はにかんだ笑顔をケイタとセブンに見せる、1人と1機がそれを見てホッと息を着いた途端、ピロロロ〜リリ〜とセブンから着信音が鳴り響く。

『アンカー本部からのメールだ。』

セブンは一瞬でメールアプリを起動、受信ボックスから新着メールを開く。セブンの顔が表示されていたディスプレイには其処には「こう」書かれていた。


734 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:24:29 zmWMrarU0




『GALAXに正体不明のプログラムが発現、現在セカンド、サード、フォースが対処を行っていますが、作業は依然困難を極めます。
至急網島君とセブンも本部に向かってください。


                                      アンダーアンカー本部長   美作千草』




「今度はGALAXかよ…」


「GALAX」といえば、巷で大流行しているソーシャル・ネットワーキング・サービスである。
アメーバピグやLINE、mixi等も、今ではその影に隠れているほどに大人気なスマホ用のアプリケーションだ。

質問は全て「X」というアプリが解決、アプリの所有者で力を合わせ社会の様々な問題を解決していく、
そんな画期的過ぎる素晴らしいアプリケーションだ。ケイタも一応スマホは買い与えてもらっているが、
仕事で愛用しているのがこの太いガラケーなので、少なくともインストールはしていない。

そして先程、其処のサーバーに未知のウィルスプログラムが侵入した、との情報だ。
見た所そちらのサーバーのファイアウォールも鉄壁のそれだったが、そのウィルスプログラムはどういう訳か容易くそれを突破、
このSE.RA.PHにおいて、セカンド、サード、フォース等の大破したはずのフォンブレイバーは生存しており、
未だ高校生ののケイタにもある程度暇が出来るぐらいにはシステムの制圧やフォンブレイバーの実験は間に合っていた。、

それでも対処が難しいというのだ。

「とにかく、急がないと!」

ケイタは直ぐにセブンを閉じ、本部に向かって足を急ごうと街の歩道を走り出す、剣崎もそれを追う。




◆  ◆  ◆


735 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:25:30 zmWMrarU0
◆  ◆  ◆


『世界をアップデートするのはヒーローじゃない、僕らだ。』

街中の広告板に張られている世界的SNS「GALAX」のキャッチコピーが、それだ。
GALAXは基本的には、従来のSNSアプリケーションとは大差なく、
アバターを会話させてコミュニケーションを取る、という物でしか無い。

しかし、このGALAXには、極めて特異なそれがあった。
このシステムは、1人が抱える些細なトラブルから、ニュースに載るような事件に至るまで、
アプリの利用者同士がネットワークを通して協力する、という機能があった。

アプリケーションの管理プログラム「X」が解決法を導き出し、それを利用者に教え事を解決する、
「ネットワークを通して協力し合う」という、「世界を改革した」というべきシステムだ。

そしてそのアプリケーションを独自に作成したとされる少年、【爾乃美家累】は今、
自宅の高級マンションのリビングにて驚愕の表情を浮かべていた。
何が起きたか、というと、いつもなら眼の前の巨大ディスプレイで
「GALAX」に関して起きている出来事を伝えているはずの「総裁X」に異常が起きているのだ。

累のいつもの落ち着いた雰囲気は崩れ、
全身に冷や汗がだくだくと流れていた、有り得ない事であった。

「X」がクラックされると言う事は、絶対に。
人々の「改革」への道標となる存在であるXは、いかなる方法で入ってこようと、
即席のファイアウォールを瞬間的に作成し抜け穴を封鎖してしまう…はずだった。
だが、今のXはどう考えても異常状態にある、地球を表す球体の色はワインレッド、それもノイズがブツブツと入っている。

「どういう事だ…おいX!X、返事をしてくれ!」

『I am Mizell,I am Mizell,I am Mizell.....』

「ミゼ…ル?」

「ミゼル」という言葉を反芻し続けるXを前にして累は呆然としながらも、自らの詰めの甘さが憎く思えた。
しかしその時、ブゥンという効果音とともにディスプレイの映像が切り替わる。

其処に映っていたのは、はにかんだ笑顔を見せた青年であった、
累はその顔を知っている。

「間明、蔵人…」

『やあ、初めまして…と言った方が良いかな?爾乃美家累君。』

【間明蔵人】、近頃、超格安スマホ「ミゼル・ジーン」を発売し
急激に業績を伸ばしているとされている、携帯電話会社「フラネット」の若社長。

新聞を読んでいれば一回は目に着く程知られている男だし、
一応ではあるもののその業界の人間である累が知らないはずがない。
何故、よりにもよってこの男が、自分の前に。

『どうしても君とは直接話がしたかったんだけれど、君は常にXに応対を任せているというのがどうも残念でね、
彼には少し眠ってもらったよ。安心してくれ、用が済んだらすぐに元に戻すから。』

「…!貴方がこの一件を!」

「私はミゼル」、「総裁X」が呟いたこの言葉、
確かにこの男が売っている「ミゼル・ジーン」とかけ合わせれば、話は付く。
あまりにも直感的な結論だが、これもまた、彼が一ノ瀬はじめから受けた影響だからだろうか。

『まあ落ち着いてくれ爾乃美家君、ほんの少しだ、ほんの少しだけ質疑応答をさせてもらいたい、僕はただ、君の考えが知りたいんだよ。』

「僕の考え?…それなら、GALAXのキャッチコピーを…」

『「世界をアップデートするのはヒーローじゃない、僕らだ」、でしょ?知っているよ、
何せ殆どの広告バナーを独占している言葉だからね。爾乃美家君、僕はそれについて問いたいんだ…
いや、君の「考え方」について知りたいんだ、「GALAX」を使って、世界を変えた、君の考えが。』


736 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:25:59 zmWMrarU0
累の眉間に皺がじわじわと寄せられ、それに反比例して画面越しに映る
間明の笑顔は少しずつ明るくなっていく、
累にとってこんな人物は類を見ない、強いて言うならあの
「ベルク・カッツェ」の同類、と言った方が良いだろうか。

『君が作った「GALAX」は、福祉医療からちょっとした事故に至るまで、多種多様な所で活躍し、
今の社会は「GALAX」によって構成されていると言ってまず差し支えないだろう、だが考えたまえ爾乃美家君、
もしだ…フフフ、もしもだよ…。』

画面に映って熱弁している間明は、何かしら笑いを堪えているように見えていた、そして丁度、累も1つ確信を覚えた。

―ああ、この男は狂っている、と。

『もし…君のGALAXが崩壊したら、世界はどうなると思う?』

恍惚たる笑みを浮かべた間明の口から吐き出された言葉は、正しく狂人のそれ、しかしその瞬間、
それまで間明の顔のみが映し出されていたディスプレイに小さなウィンドウが出現、
其処には「X」を失った事でパニックを起こした者達が大勢いた。

累はそれを見て立ち尽くすしか無かった。


◆  ◆  ◆


737 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:26:32 zmWMrarU0
「あれ?何で使えねえんだよ『X』。」

GALAXの象徴となる「X」が乗っ取られた事で、勿論それは数多くの利用者にも被害は及んでいた。
【佐藤和真】もその1人であり、先程までポテチ片手に自室でスマホを弄りながら「GALAX」で情報収集を行っていた。

しかしやはりというか大した成果は得られなかったが、それでもやはり出来る限りの事はカズマもしたかった。
自らのサーヴァント、ランサーは遠距離の物も容易く見渡すことが出来る千里眼の持ち主であったが、
それでも視野の外にあるサーヴァントを探すのは困難、なので自分はネットで目ぼしい情報を探し当てて行動することにした。

今回も、何かを「X」に聞こうとしたら、このザマだ、幾らXボタンをタッチしても全然反応しない。
「X」が使えなくて何がGALAXだ、とっとと運営仕事しろよ、と言いたくなる。

しかし冒険者に転生して暫く経つが、やはりというか舞台が舞台なのであの世界とは行動を切り替え無くてはならない。
ギルドも無ければ、あの愉快な仲間達もいない、いるとしたらあの学ランを着たランサーだ。まぁ、十分すぎるほどに頼もしいからいいが。
それに魔法が使えてネットが使えるというのは悪くない、金もクエストで稼ぐ必要なし(こらそこ、親のすねとか期間限定の金じゃないかとか言うな)。
中々悪くはない、ネットに関しては、GALAXの「X」が使えなくなったのは痛手だが、それでもGALAXは一応ただのSNSとしても便利過ぎる程使えるアプリだ。

(っても、全ッ然入らねぇよなぁ…情報。)

ハッキリと言わせてもらうと、カズマはこの世界に居座るつもりも無ければ、願いを叶えるつもりも無い。
強いて言うなら脱出方法を知りたいのだ。だがスマホをパチパチして抜け出せるのなら苦労はしないだろう。

(はぁもう最悪…)

溜息をつきながらも、取り敢えず宝具を使って辺りを見回しているランサーに念話をかけてみる。

『ランサー、誰かマスター見つかったか?』

『…数人ほどは目についた、この家に来るかどうかは知らねぇがな。』

『サンキュー、後でそのマスターの特徴とか教えといてくれ。』

念話を済ませた後、カズマはまた袋からつまみ出したポテチを口の中に入れ、
咀嚼しながらまたスマホを手にとった。

(そろそろランサーが見たいって言ってた相撲の時間だよな…)

と思ったその時だった、漸くGALAX運営からの通知が入った。

やっとかよ、とカズマは溜息をついた。


◆  ◆  ◆


738 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:27:32 zmWMrarU0

「えっと…Xに不調…?」

【橘ありす】は、自室でタブレット端末でGALAXを操作し、其処のメッセージボックスに届けられた運営からのお詫びを見て、
少し残念な気になった、「GALAX」といえば「X」という程これは重要なアプリだが、これが使えなくなるのはやや辛い。

だが、どのアプリケーションにおいてもバグが起こるのはしょっちゅうあることだ、パッチが配られないアプリの方が寧ろ珍しい。
その内直るだろうと考え、ホームボタンを押した後ブラウザを起動してもう一度銃の撃ち方を読みなおそうとしたその時である。

『トナカイ、お前の作ったいちごパスタ、中々美味く出来ていたぞ。』

自らのサーヴァント、キャスターの念話が届く。両親がいない間、先程作ったありすの料理をキャスターは平らげていた。
苺と苺のムースをパスタのトッピングに使ったありすのパスタは、料理本を読みかじった彼女が作った自信作であるが、
気に入ってもらって良かった、とありすは思った。

『そう、良かった。』

キャスターにそう返事を返すと、もう一度タブレットを手に取りブラウザを起動し、一旦机にあるコンテンダーに目をやった後、
直ぐにタブレットに書かれている文章に目を通す。生半可な気持ちでは生きて此処からは帰れない。それはありすも重々承知していることだ。

ならばどうするか、キャスターが教えてくれた答えは1つ。「生き残れ」だ。その為にも、この銃の扱いにもある程度慣れなければならない。
そう思い、ありすは勉強机にある銃を取り上げ、タブレットの説明を読みながら構え方を練習し始めた。

◆  ◆  ◆

「何ですって!?Xが動作不良?」

運営からのメッセージを苛立った表情で睨みつけて【逸見エリカ】もまた、自宅でネットサーフィンの傍ら、スマートフォンで情報収集に徹していた。
戦争とは、より相手の事を知るものこそが長生き出来る、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というが、まさにその通りである。
そしてそれは戦車道においても、聖杯戦争においても変わりはしない。

だが現在、インターネットで収集できている情報は、

「GALAX」の「X」がやられて半ばパニックとなっていること。
「鬼兵隊」と呼ばれるテロリストが幅を聞かせていること。

ほんのそれだけだ、まだまだ敵の事を知らなさ過ぎる。まだまだ調べる必要がある。
そしてその為にも「X」をうまく使って良い話を手に入れようとしたら、こういう有様だ。

「何をやっているのよ!運営の人間は!」

もうダメだ、ネットは一旦お預けだと、エリカは叫びながらそう考えた。
エリカのインターネットを使った情報集めは、あくまで趣味の範囲内にすぎない、勿論ハッキングなんて真似事は難しいであろうし、
そもそもこういうのも気休めなのではないのか、やはり眼で直接調べていった方が良い。

(一旦街に出た方が良いかしらね…)


エリカはそう考えると、勉強机からスクッと立ち上がった。


◆  ◆  ◆


739 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:28:42 zmWMrarU0
(Xが不調…これだと今の所GALAXの力を借りることは難しい…か…)

中学校の剣道場、ヤァ、メンといった掛け声とカンカンと竹刀がぶつかる音が喧しく響き渡るこの木で仕切られた空間で、
素振りをしている新入部員の【能美征二】は、加速研究会から借りた「BIC(ブレイン・インプラント・チップ)」を使用して
ネットを密かに使用していた。

今道着でうまく隠してあるニューロリンカーとは異なり、これはバレずにネットにアクセスすることが可能となる。
お陰様で能美は学業ではトップクラスの成績を取ることが出来た、全教科満点、文字通りの完璧だ。

今の能美は知る由もないであろうが、このBICはブレイン・バースト喪失の瞬間消滅する様に細工されていた物であった。
だが彼がポイント全損の直前の時期からムーンセルへと飛ばされた影響で、このBICも生きていた、と言う事になる。
そしてBIC、及びニューロリンカーはどういう訳か、此処ではスマートフォン時代の旧型アプリもインストール出来る様になっていた。
いや、元々理論上は可能だったのかもしれないが。

そのBICを使って、能美が使用していたアプリケーションの代表が「GALAX」だ。「X」というアプリで万事を解決する素晴らしいシステム。
それを能美はかなりの頻度で使用していた。此処の舞台は2010年代になるそうだが、その40年後の未来からやってきた能美からしても
このアプリは驚くべき代物だ、恐らくは「ブレイン・バースト」といい勝負であろう。

そのGALAXが駄目になった、という。基本的に気にする必要は無い、何せスマートフォンの時代において、アプリのバグと、
それを埋めるためのメンテのイタチごっこ等しょっちゅうある話だ、それは歴史の授業で習っている。
何れ直るだろう、と能美は直ぐに開き直った。

その時、自分の名前が、顧問の声から出た、そろそろ出番だ、と能美は思い、直ぐに防具を装着し相手の前に構える。

「始め!」

顧問の合図が発された瞬間、何時も通り能美は直ちにブレイン・バーストを起動し、コマンドを心内で叫ぶ。

(バースト・リンク!)

その瞬間、彼の思考は常人の千倍と化した。相手の動きはたちまちスローになり、振りかざした竹刀は動きを鎮めた。
彼の視界は、まるで世界が静止したかのように見えてきた。この間に、彼は戦略を立てる。
「バースト・リンク」、ブレイン・バーストを所持する人間のみに許される加速の力。それが能美征二の剣を形作っている。
最も、それは一種のドーピングと変わらない戦法だが。

気がついた時には、相手選手は一本を取られてしまっていた。まるで自分の剣を読み取られているような動きだった彼の剣に、
今だに混乱しているのだ。

その後能美が対戦相手と互いに視線を合わせ、礼をした直後だった。


740 : 初めの一捲り〜「争」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:29:47 zmWMrarU0
「へえ、結構凄いね、その剣。」

不意に、道場の扉から少年のような声が響く。一斉がそれに振り向き、その顔を見た直後に、ここにいる部員は全員直ぐに頭を下げた。

「「押忍!」」

能美もそれに気づいて直ぐに合わせた、何せこの声の正体は、此処にいる人間の殆どは知っている顔であったからだ。
それも頭を下げなくてどうする、という様な存在である。

「いいよいいよ、そんなに畏まらなくても。」

笑いながら手を振る少年の名は【瀬田宗次郎】、この中学のOBにして、1年にしてこの剣道部の主将となった逸材である。
どういう訳か一昔前の袴を着て脇差し(のレプリカ?)をさしているというあまりにも時代錯誤な格好。
そして、まるで貼り付けられたかのように不自然に絶やさぬその笑顔、あまりにも変わり者という言葉が似合うのが、
この少年の出立ちであった。


全国大会で「天剣」と呼ばれ恐れられ、数々の高校から寄せられた推薦を全て蹴飛ばして引退直後に姿を消したとされる宗次郎。
そのロール上の設定における宗次郎の実力が、志々雄真実の元を去る直前の彼の腕には到底及ばないことは、彼を除いて知る人なし。

ともかく宗次郎は、こうして剣道部の面倒を時折見に行っていた。別に後輩が可愛い訳じゃない。只の、ほんの一時の気まぐれに過ぎなかった。
感情を持たぬ前に、歴史に埋もれた志々雄真実に見初められ、あの大久保利通を斬り、かの人斬り抜刀斎と互角に戦った宗次郎にとっては、
道場を見に行くというのは公園で小学生のサッカーの試合を眺めるような感覚ではあったが、しかし時々、興味深い後輩を見つけることがある。


ふと、宗次郎は能美に声を掛ける。

「ねえ、確か君、新しく入った後輩だったっけ?」

「はい、今年入部した能美征二です、よろしくお願いします。」

能美はその声に気付き、飾りつけた可愛らしい態度で即座に反応した。
オォ、と一部から声が漏れた。1年であの天剣に声をかけられたなど凄いものだからだ、当然であろう。

「君の剣、見せてもらったけれど、本当に凄いよ。」

更に周囲がざわつき始める、1年で、況してや全国を軽く破る程の実力者に見初められた等快挙そのものであった。
能美も当然誇らしげに宗次郎の顔を見つめる、しかし次の言葉でその自信のある顔は崩れる音を立てた。

「君の剣は、まるで未来を先読みしているように見えていたよ、まるで糸の縫い目を素早く見分けるような動作、
とても並の人間の頭では難しいやり方だ、あんな芸当は僕も驚くよ。」

「瀬田先輩に褒めていただき、誠に光栄です、ありがとうございます。」

能美は丁寧な態度で返したが、しかし心内では驚いた。
誉められるのならまだしも、タネがバレていないとはいえまさか「ブレイン・バースト」による思考加速を使った戦い方を見破られるとは。
況してや彼は当然「ブレイン・バースト」の存在も知らない、そんな事は前代未聞だ。恐らく、いや確実に彼は只者ではない、
もしこの男が加速世界にいたらレベル9の王達も只では済まないのではないのか、と能美は一瞬思ってしまった。


◆  ◆  ◆


そんな中、既にサヨウナラの挨拶を教室で行い自宅へ向かう所謂「帰宅部」の生徒達は、明るく談笑を交わしながら帰宅の途についていた。
その中にも当然、手の甲に赤い紋章を宿した人物は幾らかはいた。



                                                【「飢」の章へと続く】


741 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/14(木) 18:33:04 zmWMrarU0
以上で投下は終了です。
把握関係の解説は以下のページで紹介していくので、OPの執筆中の把握に役立たてていただけたらな、
と思っています。

ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/12.html


742 : 名無しさん :2016/07/14(木) 19:09:06 lQVGS8iY0
投下乙です
今のところ把握しやすいのが多いかな?


743 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:37:06 NQQVl.eM0
大変長らくお待たせいたしました。
第3章、投下します。


744 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:38:03 NQQVl.eM0
「また、第三の封印を解いた時、第三の生き物が「来たれ」と言うのを、わたしは聞いた。
そこで見ていると、見よ、黒い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、はかりを手に持っていた。
すると、わたしは四つの生き物の間から出て来ると思われる声が、こう言うのを聞いた、
『小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。オリブ油とぶどう酒とを、そこなうな』。」

〜新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章より〜


◆  ◆  ◆


―それは、ずっと昔は私にとって当たり前の日常で、今の私にとっては、もう二度と味わえない日々だった。

朝起きて、タツヤとじゃれ合って、ママに格言を教えてもらって、パパの手料理を平らげて、学校に行って、
さやかちゃんや仁美ちゃんとお喋りして、勉強して、放課後の喫茶店でお話して…
そんな日々を、まさかこんな形で過ごすとは、夢にも思わなかった。

今の私は、過去未来現在、全ての魔女を消し去るために時間を飛んでいる、そう、今も。
ムーンセルによると、今こうしている私は、この行動そのものを「形」にして現界した、
「サーヴァント」と呼ばれる存在らしい。でも、私に願いを叶える権利は無かった、
そもそも私には願いといえる願いすら無い。強いて言うなら「裂かれた私の一部とほむらちゃんを円環の理に送り返す」
くらいの物かな…私の事を思ってくれていたほむらちゃんには本当に申し訳ないと思う、だけど私にも、もっと大事な、
やるべき事がある、その為にも、ほむらちゃんを迎えに行こうと思う。


私が与えられた役割は、「願いを奪い合うゲームの管理者」という役割であったからだ。

しかし、「身体は呪われても願いは必ず叶う」のと、「殺し合いに勝てば願いは叶う」の、どちらが良いのだろう。
いや、自分が傷付くのも、他人が傷付くのも、どっちも良くない、私はそう思う。

私にとって「何でも願いが叶う」と言って真っ先に思い浮かぶものは、「魔法少女」の契約だ。
素質のある少女を監視しているインキュベーターに願いを言えば、願いと魔法少女の力が同時に手に入る。

思えば、本当に虫の良い話だったと思う。でも、そんな事はなかった。
「負担無しに一攫千金なんて甘い話はない」と、公民の授業で先生が言っていた気がする。
本当にその通りだと思う、魔法少女になった人達は、皆ソウルジェムを濁らされ魔女を産んで消えたのだから。


「聖杯戦争」、願いを叶える「聖杯」を取り合う為に、「月の海」の中で「英霊」を仲間とし、
参加者同士で殺し合うという、とても残酷な戦い。その戦いを見届けるのが私の役割だと、
ムーンセルは囁いた。


745 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:38:36 NQQVl.eM0
私は、今は私とそっくりそのままの「只の中学生」という「ロール」のNPCを拠り所にして今ここにいる。
とても変わったやり方らしいけれど、あの日々帰れた事を考えれば寧ろその方が心地良かった。


でも、私に「審判」なんて役割は務まらないかもしれない、と私は思う。
昔は「公平に物事を考えられるから良いじゃん」とやらされたことはあるけれど、
命の奪い合いを管理するなんて、多分私には出来ない。

例えば感情が無いキュウべぇなら、冷たく達観しながらこの戦いの審判を務められるかもしれない。
でも、私にそんな事が出来るだろうか、よく周りに甘いと言われる、そんな私に。
多分出来ないかな…ううん、出来ないんじゃない、「やりたくない」んだ。


ともかく、審判として喚ばれたからには、私なりに、何か出来ることはやっておこうと思う。


746 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:39:06 NQQVl.eM0



【クラス名】「飢」のルーラー
【出典】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女
【真名】円環の理
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力D 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A++


【クラス別スキル】

対魔力:EX
魔力に対する耐性。
多種多彩な魔法を理解している彼女には、
いかなる魔術も効かない。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。





【固有スキル】

蔵知の司書:EX
彼女の記憶の中にはいくつもの魔法少女の記憶が複合されている。
例え明確に認識していなかった場合でも、
LUCK判定に成功すれば過去に知覚した情報・知識を記憶に再現できる。


神性:B(A+)
神霊適性を表すスキル。
観測データの中で「神」として扱われていた彼女は、最高ランクの神性スキルを持つ・・・
のだが、一部が剥ぎ取られてしまったためランクが減少している。


魔法少女:A-
願いと引き換えに自らの体を呪った者達。
このサーヴァントの姿の元となった、
「円環の理」を生み出した魔法少女は、
「世界最強の魔法少女」として観測されているが、
何故かうまく機能していない。


【宝具】

「願望に呪われし魔法少女(プエラ・マギア)」

ランク:C〜A++ 種別:魔術宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー

「円環の理」に導かれた魔法少女達の因果・魔法。
「円環の理」の一部として認識されている魔法少女の装備や
得意な魔法を、一時的に使うことが出来る。
ただし、暁美ほむら、美樹さやか、百江なぎさ等、
円環の理に存在しない魔法少女の力は使えない。



「泣かなくていい、絶望しなくていい(ステア・オブ・ザ・ヘブン)」

ランク:C+++ 種別:対人宝具 レンジ:40 最大捕捉:1


「円環の理」のあり方そのものが宝具として昇華された力。
桃色の光と共に放たれた矢を敵にぶつける。
ダメージは一切ない、しかし、矢を当てられたサーヴァントは、
その時の精神状態の悪さに比例した魔力を失い、魔力が枯渇すれば
そのサーヴァントは消滅する。


747 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:39:27 NQQVl.eM0

【人物背景】

自らの魂を宝石に変化させ、願いを成就させる魔法少女の魂を、
「魔女」と呼ばれる化け物に変化する前に迎え入れ、
融合していく、一種の現象の様な存在、それがサーヴァントとなった、
一種の概念。
この現象を生み出したのは、魔法少女の存在を知った1人の少女だった。
力を失い、絶望し、魂を化け物に変えて他の魔法少女の餌にされていくという
残酷な有様を憂いた彼女は、その最強の魔法少女としての資質で

「過去未来現在、全ての魔女を、『この手で』消し去る」

という願望を成就させ、輝きを失った魔法少女達の魂を、彼女が迎え入れる姿が、
「円環の理」という現象になった。とされている。
しかし、現在はその少女の部分が裂かれ、やや不完全な状態になっている他、
一部の魔法少女の部分もまた剥ぎ取られている。
円環の理を生み出した少女の姿と人格をアバターとしている。
控えめだが仲間思いで争いを好まない心優しい人物。


【聖杯にかける願い】

円環の理を安定させたい・・・と思っているが、
立場上それは難しいため、そこが悩みどころ。




◆  ◆  ◆


748 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:39:46 NQQVl.eM0
此処らの中学校の帰りの会が済まされてから数十分が経過した頃、繁華街は寄り道をしている学生で溢れかえっていた。
寄り道をするのは「めっ!」というのは親の教えだが、思春期の子に果たしてそんな言葉が通じると思うだろうか。

答えは見ての通り。彼等は授業のストレスを発散するためにデパートやレストランに立ち寄ってばかりだ。

最近此処らで猟奇殺人事件が起こったとテレビも言っているのに呑気な物だが、何れにしろ、
教師からプリントが配られるのは既に職員会議で決まっている。



「鹿目まどか」の皮を被った「円環の理」も、【美樹さやか】、
志筑仁美の三人と一緒にとある喫茶店を目指して繁華街の歩道を歩いていた。
かなり有名な大手のチェーン店で、三人の常連となっている店だ。

「でさー!中沢の奴、何か最近RPGにハマりだしたとか言ってて〜!」

さやかはそんな調子で、平凡な話をいつもの様に陽気な態度で語る。
そしてまどかや仁美がそれに反応を示して…の繰り返し。

そんな何気ない毎日を、まどか、そしてさやかは演じていた。

さやかは、いつも何か悩み事を自分の中に抱えている癖がある。
今回だってそうだ、此度の聖杯戦争においてマスターとして選出されたさやかは、
「殺し合い」をする羽目になったことを、NPCであろう二人に隠している。

そしてまどかも、己がサーヴァントであることを隠している。

魔法少女を知ってから、二人はよく隠し事が多くなった、とはいえ、それはとてももどかしさを感じさせる。

それでも彼女達は嘘を吐き続け、その影で戦い続けようとするであろう。

自分の願いのために、自分の希望のために。
美樹さやかは聖杯が許せないが、鹿目まどかはその聖杯を「許容」せねばならなかった。
片や参加者、片や審判、とても相容れるのが難しい。

今、此処でいつもの様にお笑い合っている彼女達の笑顔は、偽りか誠か、それは定かではない。
二人は確かに互いに騙し合っている、しかし、それでも…
この平凡な日常を謳歌していることは、彼女達にとっては笑っていい事だと思う。

そろそろ、目的地が見えてきた。

「お、島が見えましたぞ!それではあたしが一番乗りで見てまいりま〜す!」

「ちょ、ちょっとさやかちゃん!」

「あまり速く走らないでくださいよさやかさぁ〜ん!」

まどかと仁美もそれを追い、三人は喫茶店の自動ドアに入り込んだ。



◆  ◆  ◆


749 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:40:42 NQQVl.eM0
皆様申し訳ございません、タイトルを間違えてしまいました、
正しくは、「病」ではなく、「飢」です、申し訳ございません。


750 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:41:50 NQQVl.eM0
そんな風にして談笑している少年少女は、無論まどかやさやか達だけではない、
それもまた、事実である。

まどか達が入った喫茶店にも、勿論聖杯戦争の関係者はいた。
二人の友人とともに珈琲を飲んでいる【最上リョウマ】も、その1人であった。

リョウマは、自分が元の世界から持ってこられた数少ないアイテム、「クロスローダー」を弄っていた。
弄っていたというより、動作確認と言った方が正しいだろうか。

どういう訳かクロスローダーに入っていたはずのデジモンは全て置き去りにされてきているらしい。
仲間である黒兜のセイバーの実力は未知数だが、しかし仲間が少なくなったのは少しネックな気がする。

クロスローダーは超進化やデジクロス等、デジモン関連の機能が主な端末だが、
しかしそれ以外にも中々有用な機能は備えられている。
しかし工藤タイキも使っていたとされている立体マップの展開は、やはりデジタルワールドだけではなく、
リアルワールドやこのSE.RA.PHにおいても有効であった。だが基本的にあまり使わなかった機能ではあるし、
何より今の御時世、地図の確認など何時でもどこでも「スマートフォン」で済ませられる。
が、圏外のエリアではその限りではないし、立体映像で確認できる以上スマートフォンよりは見やすい。

それにデジモンハントにおいて重要だった「タイムシフト」、及びデータや時空間に関する攻撃に対する魔除けとしての機能は、
今だに生きていた。この場において必要な機能を、クロスローダーは幾つか揃えている。
それに、リョウマにはこのクロスローダーを手放さずにある、ちゃんとした理由があるのだから――



「リョウマ、お前いつまでその玩具弄ってんだよ。」

「おも…ちゃ…!?」

向かいの席でスマホを手に取っているベレー帽の少年、戸張レンが、ジュースのコップにささったコップを咥えながら
ジト目でリョウマを見つめていた。リョウマは、彼の言葉にショックを受ける。

この喫茶店においてはこれは単なる玩具である事、それをリョウマは良く知っていた、
だがこのクロスローダーは、リョウマにとっての宝物だ。
クロスローダーを手に入れて、あこがれの工藤タイキに一歩近づいたと感じた時の思いは、今も尚胸に張り付いている。
最上リョウマにとっては、己の夢への道へと繋ぐ切符だった物だ。
自覚していたとはいえ、やはり他人に「玩具」呼ばわりされると少し憤る。

「ッ……何が玩具ですか…!」

唇とクロスローダーを握った手をワナワナと震わせながら、リョウマは壁に立てかけておいた鞄にクロスローダーをさっと仕舞い込み、
そのまま置きっぱなしだったコーヒーカップに口を付けながらレンをその細い銀色の目でギロリと睨みつけた。

「あー!分かった分かった悪かったよ!分かったからそう怒るなよ!こんな事でキレるなんてお前らしくねーって!」

いつものリョウマと様子がおかしかったからか、レンが両手を振って宥めようとする。
落ち着いた振る舞いに整った容姿、そんな人間がキレる姿はかなり恐ろしい。
するとテーブルの大部分を独占してケーキを美味しそうに堪能していたポニーテールの少女、洲崎アイルがクスクスと笑い出す。

「へぇ〜意外!クールなアンタが玩具如きで拗ねるなんて!アンタ、意外とお子ちゃまなのねぇ〜!」

―洲崎さん、貴方にだけは言われたくありませんよ、せめて貴方を囲んでいる大量のケーキと珈琲にかけたシュガースティックの数を数えてから言ってください―

リョウマは心の中でそう呟くと、もう一度コーヒーカップの先端に口をつけ、中身をズズッと啜った。



◆  ◆  ◆


751 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:43:00 NQQVl.eM0
一方その頃、最上リョウマ達が談笑しているテーブルの隣では、
【二宮飛鳥】と【輿水幸子】の二人が、互いに席を向け合っていた。

幸子はスマートフォンを操作し何かを見つめている中、飛鳥はケーキを添えたコーヒーをズズッと啜っていた。
飛鳥がコーヒーを飲む動作は、一目見れば中々優雅と言えるであろう…
周りにシュガースティックとミルクの入れ物が散らばっているのを除けば。


『砂糖は入れ過ぎないようにしておけ、珈琲の味が台無しだ。』

ランサーからのお節介な念話がかかってきた、しかし飛鳥も落ち着いた口調で言い返す。

『医学がそれ程発達していなかった頃は、苦味こそが有毒の印だった…
つまり人が苦味から逃げるのは一種の生存本能からなんだよ。生憎だけれど僕には苦痛を悦とする趣味は無くてね。』

コーヒーの味が楽しめなくなる、と注意するランサーの念話に言い訳をして返す飛鳥。
彼女の発言は、随分と捻くれた言い方に聞こえるが、要訳すると、「誰だって苦いのは嫌に決まっているでしょ!」
という所だろうか、結局は子供なのだ。すると、またランサーが言い返してくる。

『コーヒーの苦味は、相乗効果によりケーキの甘味をより一層引き立てる…
砂糖に塗れたコーヒーにケーキ等加えたら余計甘ったるくなって余計楽しめなくなるぞ。』

彼女のサーヴァント、ランサーは、「ケーキ作りが得意」という意外な一面を持っていた。
嘗ては後に己が求める女となる女神に腕をふるった事もあるとか、まあ夢のなかで見た話だが。
そのことからか、ランサーはやたらと洋菓子について拘る発言をしている。
これが世界を壊しかけた反英雄の言う言葉かと思うと、中々面白い。




一方幸子は、ケーキをテーブルに置いてスマートフォンでネットニュースを見ていた。
流石にコーヒーは無理だったのか飛鳥のと比べるとそれ程減っていない。


記事の見出しには、『○×プロダクション所属の期待の新人、島村卯月のコンサートが3日後に開催!』と書かれている。
島村卯月といえば、幸子にとっても面識のある人物であった。そう、幸子の元いた世界においては彼女もまた、
346プロダクションのアイドルであったのだから。しかし、この事務所はまるで聞いたことのない名前であった。

だがこの世界に346は存在しない、元の世界で346にいた皆は自分も合わせて他の事務所にいる。
卯月も例外ではなかったのだろう。しかしそれにしても、卯月がコンサートを開くとなると、
同じ346のアイドルとしては、応援せずにはいられなくなる。
そしてそれは、己の熱意をも高めていく事に繋がる。例え相手が只の贋作の人間であろうと、
「互いに競い合い、高め合う」というライバル精神は変わってはいなかった。
だがそれは戦いが終わってからの話だ、今はアイドルどころではない、今自分は殺し合うためにここにいるのだから。

(頑張って下さいね、卯月さん……ボクもボクで、必ず生き残ってみせますから)

そう心の中で呟いた幸子は、ニュースの記事をスライドしていく。
記事には、日時、場所、チケット購入のURL等の詳細な情報が掲載されていた。
更には、関係者へのインタビューも、より詳細に載せられている。
そして更にスライドさせていくと、卯月の【プロデューサー】の顔写真が載っていた。


◆  ◆  ◆


752 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:43:18 NQQVl.eM0
某芸能プロダクションのビルの部屋で、プロデューサーと彼のサーヴァント、アサシンは、
PCのスピーカーから流れている曲に耳を澄ませていた。
プロデューサーは机の椅子に座りながら腕を構えてはにかんだ笑みを浮かべて聞き、
一方のアサシンはプロデューサーの後ろに立ちながら恍惚とした表情を浮かべている。
スピーカーから流れる静かなBGMに彼女の明るい歌声がのせられて、部屋中に響き渡っている。
島村卯月が、コンサート用の曲「S(mill)ing!」を練習した音声だ、もう繰り返しの所が終わりの所に近づいている。

二人は、この曲の視聴に集中し、何処か歌詞を間違えていないか、かんではいないか、或いは音響にミスがあったかなど、
それらを詳しくチェックし、まるで宝物を掘り当てるかのように曲の細かい所にまで掻き分けて聞いていた。

そして遂に曲は終わりを告げ、スピーカーから流れた音はピタリと止み、部屋中に静止が訪れた。
プロデューサーはそれから一瞬間を置いて考え、「うん」と頷いた。

「良く出来ています、流石は島村さんです…それと、アサシンさんのボイスレッスンのおかげでもあります。」

「いえいえ、然程のことでもございませんよ…私は寧ろ、あのクリスティーヌの歌声にちょっと仕上げをかけた程度ですから。」

素晴らしい、あらゆる面で非の打ちようが無い、前と比べて随分と上達し、そうでありながら彼女の個性は未だ生きている。
いや、寧ろ彼女らしさが増大したとも言える。その素晴らしい歌声にプロデューサーは感嘆すら覚えた。
そしてこれは自らのサーヴァント、アサシンのボイスレッスンのおかげでもある。

隠れた名優クリスティーヌ、彼女の歌手としての才能を引っ張りだしたのも、このアサシンであったからだ。
書物に書かれたその歌の指導家としての実力は折り紙付きだ。

コンサートの日はすぐ其処にある。ステージの仕上げにリハーサル、やる事は山のようにある。

そう思い直すとプロデューサーは、中々の高級品らしき腕時計に目をやり、スクッと立ち上がり部屋から出て行く。
アサシンは立ち去る彼に顔を向けると、霊体化をして姿を消した。
彼等は戦わない、彼等はそれを求めないから。求めるとすれば―歌姫の成長―そして現実世界への帰還である。



◆  ◆  ◆


753 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:43:43 NQQVl.eM0

プロデューサーが部屋から出た丁度その時、
事務所のビルが建っている所を青年、【カオスヒーロー】が走り去って行った。
三人がかりだったとはいえ悪魔と対等に戦える力を持ったカオスヒーローの瞬発力は高かった。

しかし走りに走ってかれこれ数時間。流石にもう限界となったカオスヒーローはよろけながらも、
すぐ横にあった白いガードレールに座り込んで息をついた。


「ハァッ…ハァッ…ハァッ……」

息を切らして座ったカオスヒーローは、今の自分の状況とは逆に青く澄んだ空に顔を向け今の自分はまったくもって無様だと自嘲した。
あの時は、悪魔にだって逃げなかったのに。勝つことすらままならなかったもののオザワにだって、抗えたのに。
どうして今の自分はこうして逃げているというのだ。

記憶を取り戻して以降、家には帰っていない、というかあんな飲んだくれのいる家なんてゴメンだ。
しかし所持金だって決して多くはない、殆どは親父が酒にしてしまって我が家は火の車。
持ってきた毎月の小遣いなんて雀の涙だ。

偶々目のあったヤクザを脅せばある程度は手に入るものの、
そうすれば噂が流れ流れて此方の居場所が突き止められて追いつめられる。

それに、その中にもマスターがいる可能性だって十分にあるのだから。
そんな事を一々続けていれば余計自分の身の安全が危険となる。

元の世界で手に入れた護身用のベレッタは置いてきた、
だが此処は英霊同士の殺し合いを許可している割に吉祥寺と違って銃刀法に甘くはない。
子供相手に銃や軍用ナイフ等売ってくれるはずもない、まあ神秘なき物を持ち込んだ所でどうにもならないが。

それにカオスヒーローには「魔界魔法」という力がある、異界の幻想種「悪魔」に対抗できる魔術基盤。
彼が夢から醒め一人の「英雄」と出会った時に手に入った力。それならサーヴァントにも対抗できるだろうに、
何故、カオスヒーローは逃げ続けるのだろうか。そう、「名前」だ。



カオスヒーローは名を書き換えられた参加者である。
「混沌の英雄」等という異名で使うべき名を、彼は本名と同じ様な扱いを受けてこのSE.RA.PHにいる。
一体誰がどんな悪戯でこんな真似をしたのか知りたい。

一体どういう冗談だ、仮にも折角死んだお袋が付けてくれた名だというのに。

おまけにどういう訳か自分を助けた「■■■」の名は「ザ・ヒーロー」としか発音できなくなってしまい、
更にそいつと一緒にいた「■■■■」の名までもが「ロウヒーロー」としか呼べなくなってしまった。
ここにいる自分はともかく彼奴等の名までこれかよ、一体どうなっているんだ。

同じ夢の世界でバッタリ会って、現実世界で一緒に悪魔退治に専念して、
今度は名前まで一緒に書き換えられる事になるのか、本当に馬鹿げている。


(せっかく怯えることのない力に近づいたってのに…クソッ!)


とにかく、カオスヒーローはこんな所に燻っている暇はないのだ。
「力を手に入れる」という願いは元の世界で叶えるから良いとして、
あそこには「■■■」と「■■■■」がいるのだ。

彼奴等には借りがある。二人が助けに来なければ俺は路上でくたばっていた。
何よりオザワへの復讐は終わっちゃいない、アイツを倒さないと俺は気が済まない。

その為に、元の世界に帰る方法を見つけるために、俺は生きよう…
そう考え、カオスヒーローがスクッと立ち上がったその時……

「おい!何処にいたんだよカオスヒーロー!探してたんだぞ!」

「!?」

己を呼ぶ声に反応し、餌を嗅ぎつけた犬のように声の出る方向へと目を向ける。
其処には、自分がこの月の海で出会った少年、【エレン・イェーガー】の姿があった。
エレンとは路地裏で喧嘩に入り浸っていた頃に腐れ縁となった仲だったが、
記憶を取り戻し一定の場所に留まるのはマズいと判断した直後に別れたのだった。


754 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:44:02 NQQVl.eM0


「チィッ!」


カオスヒーローは舌打ちをし直ぐに回れ左をして猛スピードで去って行く。
エレンはどういう事か足が相当速い、鍛えられているのかとでも言いたくなるほどに。

エレンは当然追いかけて来る。カオスヒーローは可能な限り走り、
繁華街を抜け人気の無い所まで走りぬけ、其処の路地裏へと入り込む。

エレンもそれを追って路地裏に入り、辺りを見渡すが…

(見失ったか…クソッ)

路地裏は、チンピラが多いことで有名で、エレン、カオスヒーローもまた、此処で喧嘩に明け暮れていた。
エレンにとっても馴染み深く、其処に土地勘が無いわけではなかったが……
しかし其処には廃墟のようにボロボロな建物が大量に建っており、それが迷路の如く複雑に並んでいた。


これでは見つけようが無い。
そもそも、何で自分は一人の人間を探すのにこうもムキになっていたのか、今思うとバカバカしくなってしまった。
もう帰ろうか、と思ったその時、エレンの身体に、痛みが走った。

「ぐっ!」

エレンは突然の痛みに足を跪く、エレンにはこの感覚に覚えがあった。
そう、「サーヴァントに魔力を吸収されている時の痛み」だ。

「いきなり何やってんだよバーサーカー……抑えてくれ…」

だが霊体化していながらもバーサーカーは言う事を聞かない。
まるで餌に飢えた犬のように、バーサーカーはエレンの魔力を吸う。
バーサーカーの声がエレンの脳に響き渡った。

『ステラァァァァ………』

その声が表したのは喜びか、悲しみか、憎しみか、はたまた悔みか。
それはエレンの知ることではない。

そしてその頃、エレンがいる場所の丁度真上には一人の少女【ステラ・ルーシェ】が、
己のサーヴァント、バーサーカーに抱えてもらい空を飛んでいた。

ステラの「ロール」は、よりにもよって身売りに出された少女。
あまりにも不憫過ぎる、兵士の次は慰み者だというのだ。

ステラは「エクステンデッド」、所謂「強化人間」だ。
コーディネイターに抗う力を求めたブルーコスモスが生んだ戦士。
戦うために鍛えられ、肉体を弄られた、哀れなる戦う人形。
されどそれは、あのコーディネイターよりもずっと残酷で悲惨な者であった。

強大過ぎる力には、必ずそれに対する「対価」が必要となってくる。
それはエクステンデッドであろうと例外ではない。

ステラは、専用のカプセルで療養しない限り正常な状態を保てない。

それは例えコーディネイターの医学であろうと決して覆せずにある。
ちゃんとした病院に行って適切な治療を受ければ、ある程度命は伸ばせる。
だが改善は出来ない、敵だったためにほぼ実験体に近い扱いだったとはいえ、
ナチュラルを凌駕するコーディネイターが幾ら手を尽くしても気休め程度の物だ。

決して長くは持たない、近い内に安楽死が求められるべき状態に陥ることは、まず間違いない。

この聖杯戦争において存在する病院で、それを確保することは出来る。
だが、果たしてそれで、彼女が長く保つのか。

バーサーカーのデメリットでまず槍玉に挙げられるのが、「燃費の悪さ」だ。
バーサーカーは謂わば燃費を無視した超馬力の怪物マシンだ。

燃料補給を一切無視し、速さだけを求めて走り続ける道路の怪物。

もしバーサーカーが安易に戦い続ければ、ステラの身体は朽ち行くに決まっている。
それでは彼女は生き残れないのだ。

丁度その時、バーサーカーが街の大病院を飛び越えた。




◆  ◆  ◆


755 : 初めの一捲り〜「飢」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:44:51 NQQVl.eM0
バーサーカーが飛び越えた病院にいた患者の中には、「身体に赤紫色のクリスタルがこびりついている」
人間が複数いた、それについて、ちょっとだけ紹介しておこう。


『人体が結晶化?正体不明の病気が発生』

『結晶の仕組みは不明?周期表に記されていない謎の物質』

『治療法 依然見つからず 現在ワクチンの開発が進められている』


このSE.RA.PHには、マスコミが寄り付く様な大スクープのネタが山のようにあった。

テロリスト集団「鬼兵隊」の今後の動向。
カニバリズム説が浸透している連続猟奇殺人事件。
フラネットが作り出した「ミゼル・ジーン」


そしてそれに並ぶのが、正体不明の病原菌「アポカリプスウィルス」であった。
聖書の「蒼ざめた馬」が由来なのか、「黙示の病」などという随分と洒落た名前を持った病であった。
主な症状は、「身体の結晶化」である。

「キャンサー」と呼ばれる正体不明の物質に身体が少しずつ変化していき、
臓器がキャンサー化していくことで生命機能が侵され、やがて肉体は完全にキャンサー化し崩壊する…
ハッキリ言って前代未聞だ、まず肉体が物質に侵食されていく時点で「ハァ?」と言ってしまいそうな程に。

しかも、これはつい最近学会で発表された「日本の病気」だ。海外での発症者は発見されていない。
そんな病気によく西洋の教えを名前の由来に出来るものだが、まあ其処は置いておこう。
驚いたことに感染者は数十人程にしかならないというのだ、この大病院に収容されている人間で、
ほぼ全員と言って差し支えないであろう。


しかし最近、この病院の研究結果から、思わぬ内容の結果が出された。
何と、患者の身体的特徴からは異変も突出して共通する所は無く、免疫力もバラバラで、
やはり健康だったものから弱っているものまで複数いた。

その患者達に共通するところと言えば……「手の甲に宿された赤い刺青」ぐらいのものだろうか。




                                【「病」の章へと続く〜】


756 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 01:45:56 NQQVl.eM0
以上で投下は終了です、誤字脱字、その他変な所がありましたら教えて下さい。


757 : 名無しさん :2016/07/19(火) 19:15:43 8M1GFezEO
投下乙です

まどかのステータスがさやかに見えないのは、NPCの殻を被ってるから?


758 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/19(火) 20:12:36 NQQVl.eM0
>>757
そうですね、その解釈で合っています。


759 : 名無しさん :2016/07/20(水) 22:44:21 bzFL9XTc0
ラゼィルの宝具の効果をこう変更したいのですが。今のままだとさやかを騙せませんので

白貌(ホワイトフェイス)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ ー 最大補足:自分自身

エルフの遺灰と骨粉から作った白粉。
顔に塗ることで自身のステータスを下記のものと誤認させる。
水に濡れても平気だがエルフの血には弱い。
真名看破スキルか、宝具ランク以上の貧者の見識及び直感スキルで無効化される。

【クラス】
キャスター

【真名】
ラゼィル・ラファルガー@白貌の伝道師

【ステータス】
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 幸運:B 魔力:B 宝具:A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:C
自らに有利な陣地を作り上げる技術。“神楽”を行う“祭場”を作り出せる。
“祭場”の中ではキャスターとその同胞は全ステータスに+が付く。

道具作成:B
魔力を帯びた武器や道具を作成できる。

【保有スキル】
信仰の加護:EX
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
限りなく敬虔で純粋な信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性を備える。
神我一如の域にある狂信はおよそあらゆる精神干渉、それに付随するバッドステータスを完全に無効化する。
同じ信仰に準ずるものに対し、Cランク相当のカリスマを発揮する。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。闇夜でも遠隔の遮蔽物に身を隠した標的を精確に捉えられる

魔術:B
影の中に武器を収納したり、武具に対するエンチャントに長ける。

計略:B
集団に対する内部分裂、離間工作、他勢力への取り入り、暗殺といった行為に有利な判定を齎す。

単独行動:B
神への信仰を貫くためにキャスターは故郷を捨て、1人地上を征く。

殉教の英雄:A++
生前信仰の為に戦い、伝説となったキャスターの生涯から得られたスキル。
対立する属性の者と対峙した際、ステータスが宝具を除き1ランクアップしA+相当の戦闘続行スキルを得る。








【宝具】
龍骸装
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜20 最大補足:15人
ラゼィルが仕留めた白銀龍の骸から自作した武具。
曲刀『凍月』短槍『群鮫』鎖分銅『凶蛟』無数の手裏剣。籠手と胴着からなる。
手裏剣と鎖分銅は籠手をつけていなければ己の手を切り裂く。
ラゼィルが擬似生命体として加工している為、自己修復機能を持つ。


我が麗しき神楽の舞い手(バイラリナ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ 1〜30 最大補足:10人

嘗てキャスターに従った少女、アルシアが死して宝具と化したもの。
アルシアの身体が隠れる程の祭器『嘆きの鉈』を生前習得した戦闘技術を駆使し機械じみた精密さで振るう。
筋力:B 耐久:D 敏捷:B+ 幸運:E 魔力:E 宝具:ーのステータスのサーヴァントとして扱われる。
Cランク相当の怪力スキルとBランク相当の戦闘続行スキルとDランク相当の単独行動スキルを持つ。
更に精神が無い為如何なる精神干渉を受け付けない
『嘆きの鉈』はCランク相当の宝具に匹敵する。


龍骸装・凄煉
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

龍骸装の中でも最強の一品
白銀龍の肺胞を加工した武装であり、いかなる生物であろうとも耐えること敵わぬ鏖殺の一撃「竜の吐気(ドラゴンブレス)」を発動する。瘴気と灼熱の息吹は例え直撃せずとも、血と骨を瞬時に腐敗させ、金属すら容易く融解させる。
ただし、吸気して炎を吐くまでに100秒かかる。

神の眼
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー

ラゼィルが信仰する神の神像から抉り取った宝玉。文字通りの神の眼であり、この隻眼を通じ、異なる位相の宇宙から、神は信徒達の神楽を、地上の生命を観る


760 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:25:47 0PW9dyms0
皆様大変お待たせしました、それでは第4章、投下いたします。


761 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:26:23 0PW9dyms0
「小羊が第四の封印を解いた時、第四の生き物が「きたれ」と言う声を、わたしは聞いた。
そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、
それに黄泉が従っていた。彼らには、地の四分の一を支配する権威、および、剣と、飢饉と、死と、
地の獣らとによって人を殺す権威とが、与えられた。」

〜旧約聖書「ヨハネの黙示録」第6章より〜


◆  ◆  ◆


遥か上空に、1つの丸い空間があった。
透明なガラスが、円形になって空中に浮かんでいるその不自然な様は、まるで空を舞う巨大なシャボン玉にすら見える。
そして最も特筆すべき所は、その中にいる1人の少女だ。腕と髪に飾り付けられたのは紫色のクリスタルの装飾品。
その身に纏ったゴシックロリィタのドレスから露出している、陶器のごとく白い肌と赤い目に滑らかな口に白い髪という、
非常に整った容姿をしていた。そして丸の中で踊り続ける彼女の姿は、妖艶さすら感じさせる。

「病」のルーラー、「桜満真名」。

嘗て宇宙から飛来した「アポカリプスウィルス」が、世界を再構築する「イヴ」として選んだ、只の少女「だった」者。
魂をウィルスに汚染され、「アダム」を求め、一度は意識を失いながらも蘇り、やがて「魔王」の手でその役割を終わらせられた、
1人の「少女」だった者。それが真名だ。だが、彼女は、「四度目の黙示録」は、「役割」をすり替えられてもう一度蘇った。

そして少女は踊りながらも「彼」を求める。

「集……」

自らの弟の名を、「アダム」の名を呟く。真名に残るウィルスの本能は、今だに集を求めていた。
アポカリプスウィルスの意志に操られ、今迄で一番近くにいた集を、真名は「アダム」に選び、
そして恋慕の情を向けるようになっていった。だが彼はそれを拒み、真名はその身を暴走させた。


このSE.RA.PHに蔓延する「アポカリプスウィルス」は、真名が流行らせた。と言っても、今はごく僅かだ。
アポカリプスウィルスに感染した者の大半は、この「聖杯戦争」においてルール違反を犯した人間のみだ。
今の真名には、ある程度自我を保つことは出来る、ダウトがいないせいだろうか、ムーンセルからの制御からかは不明だが。

しかし、彼女は例えアポカリプスウィルスに蝕まれていなくとも、集を求めるであろう。
それが彼女の「願い」であり、悔みであったから。

真名は求めていた。、あの幸せな日々を。
集と、トリトンと、三人で過ごしたあの日常を。
あのクリスマスの夜、自分が壊してしまったあの世界を。


762 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:26:46 0PW9dyms0
今、あの「飢」の娘はNPCの皮を手にしていたが、もし私もそれを手にしていたら、と現界してから何度思ったことか。
この身に宿る聖杯に願いたい、叶うなら願いたい…もう一度、やり直したい…

そう思うたびに、真紅のダイヤモンドが宿った目から涙がポロリと流れ、クルクルと踊り回る身体に乗せられて涙の雫はは宙に舞う。

「会いたいわ……集…トリトン……」

思い返せば、また涙が溢れてくる、だがアポカリプスの本能はそれを許さない。
彼女が「イヴ」である限り、彼女の精神がクリアになることは決してない。
哀しさに満ち溢れたその顔は再び、弧を描き出し、少女は幸せそうな顔で踊り続ける。







―この歌が聞こえてる、月にいる愛する友よ、
悲しみの夜を超える時、必ず本当の私が望む願いを―叶えるから―


763 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:27:20 0PW9dyms0




【クラス名】「病」のルーラー
【出典】ギルティクラウン
【性別】女
【真名】桜満真名
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運E 宝具A


【クラス別スキル】


対魔力:A
魔力に対する耐性。
現代の魔術では傷を付けられない。


神明裁決:A
ルーラーとしての特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。



【固有スキル】


精神汚染:A+
精神が蝕まれている。
精神干渉系の魔術を高確率でシャットアウトする。
また、ウィルスに感染した人間の精神を汚染することも出来る。


終わりなき使命:-
アポカリプスウィルスに決定づけられた、「イヴ」としての役割。
何度殺しても蘇る。他のクラスで現界した際にはこのスキルは
外されるが、監視役たる「ルーラー」のクラスで現界したことで外されなかった。







【宝具】



「死曲唄う病の結晶(アポカリプス・ウィルス)」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

ルーラーを蝕むと同時に、彼女の力となるウィルス。
これを感染させる。
症状が進行すると「キャンサー」と呼ばれる結晶に
肉体が侵食されていき、やがて肉体が全てキャンサー化して
砕け散る。また、ルーラーの唄を聞くと、病状が一気に進行する。


【人物背景】

宇宙から来た病原体「アポカリプスウィルス」の最初の感染者。
ウィルスに精神を蝕まれ、自らの「アダム」となって黙示録を
遂行するために弟の集に迫ろうとするも、クリスマスのある日、
弟同然の仲であったトリトンを殺そうとしたことから「化け物」
呼ばわりされ暴走。そしてウィルスを周囲に感染させ、自らも
崩壊、「ロストクリスマス」を引き起こす。
その後、代わりの肉体を以って復活するも、集、そして
トリトンこと恙神涯に倒された・・・・かと思われていたが
その魂は入れ物の肉体にいる楪いのりの中に潜み、襲いかかってきた
人間を容赦なく殺していた。そしてそれは涯がいのりの心を
削除したことで表面化し再度復活を果たす。集に「アダム」となるよう迫るも、
既にいのりの心にある集にそれを拒否されたことから、
世界を滅ぼそうと涯をアダムとし踊りと唄でウィルスの
侵蝕を広げようとするが、集が涯を止めた事で役目を終わらせられ、
涯共々消滅した。この通りウィルスに操られているだけあって
破綻者にしか見えないような人物だが、海に漂着した涯を助けたりと
根は優しい人物であることが伺える。



【聖杯にかける願い】

集と、トリトンと、また一緒に―――





◆  ◆  ◆


764 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:27:43 0PW9dyms0


自然の中に囲まれた喫茶店「ハカランダ」は、木の壁と明るい日差しがとても良く似合う雰囲気だ。
且つそれが自然の香りとインテリアを与えてくれている趣のあるのがこの店の長所の1つだ。
客は大勢来ていて、1人の青年と小学生ぐらいの少女と中学生ぐらいの少女とが客に料理を運んでいた。

ロールの中で非日常に飢えていた【桜満集】は、「偶には違う体験をしてみたい」と
度々考えており、その中で立ち寄った経験のある店の中の1つが、この「ハカランダ」であった。
今にして思えば、集の中にあった日常への不満足な感情は、あのロストクリスマスを起こしてしまったことへの
後悔が起こしていた物であったのだが。

店の右端のテーブルを独占していた集は、ニュースに出てきていた「身体が結晶化していく病」について考えていた。
集はその病に覚えがあったのだ。何せ集は半生をその病に振り回されてきたのだから。
そして集には多くの疑問点が浮かび上がる羽目となった。
そもそもアポカリプスウィルスは、もう消滅したのではないのか。
いのりが、涯が、その身を投げ打ったことで。

(どうして、こんな所にまでアポカリプスウィルスが……)

あの悲劇は忘れもしない。姉を、友を、愛する人を奪い取ったあの悲劇は。
しかし、何故それがこのムーンセルに再現されているんだ?
集には分からないことだらけだ

(何で……あんな辛いことをまた繰り返させなくちゃいけないんだよ……!)

目をつぶり、歯を食いしばる。ああ悔しい、ああ悲しい……
と考えていた矢先だった。

「お待たせしました、ナポリタンです。」


と其処に、ボロボロのコートを着たウェイターの青年が此方のテーブルにナポリタンを運んできた。
口調は穏やかだが、顔はその限りではなく何処か疲れた表情を見せている。
ハッ、とした矢先に集は直ぐにウェイターの手をテーブルに導く。

「あ…すいません、ありがとうございます。」

コトン、とテーブルにナポリタンが美味しそうな香りを振り撒きながら置かれた。
その後直ぐに青年は立ち去って行く姿を、集は見届けていた。
ナポリタンが来ても、それを食わず相変わらず集は俯いたまま考えこんだままだった。

(僕は一体、どうすれば良いんだよ……)

ムーンセルに飛ばされ、聖杯戦争という殺し合いに巻き込まれ、紺色のジャケットを着たライダーと出会い、
そして今度は滅んだはずのウィルスまでもが蘇ったというのだ。
今、集にはとても辛すぎる出来事が連続で起こっていた。

(……何だ、簡単じゃないか。)

だが、自ずと集は直ぐに答えを見つけていた。
いや、今の集には答えを見つけることは然程難しいことではなかった。
涯が憧れていたその思い切りの良さが、ようやく開きかけていたというべきか。
集は答えを見つけた。

(まずは、アポカリプスウィルスについて調べるんだ……どうにかして…!)

だが「どうすればいい」のかが今の集には分からない。
しかし、だからと言って立ち止まる訳には行かないことぐらい、今の集には分かる。
それを指し示すように集はスプーンとフォークを取り、まるで元気を取り戻したかのように
ナポリタンを丸めて口に入れる。





◆  ◆  ◆


765 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:28:49 0PW9dyms0


「休憩に入ります。」
「良いわよ、ゆっくり休んでおいでね。」

店長の女性に声をかけられたウェイターの青年……【相川始】は丁度休憩時間に入り、
壁にあった扉を開き其処から下の階へと続く階段を降りて行った。
そして廊下にあるドアを開き、その奥にある大きくも小さくもない部屋に入り込んだ始は、
俯いたままベッドに腰掛ける。

始がこの部屋に入るのは、随分と久し振りの事であった。

此処に住んでいたのは、もう300年も前の事だったのだから。

「喫茶店ハカランダで世話になっている傍ら、カメラマンの仕事をしている」

というのが、始の聖杯戦争における「ロール」であった。
だから始は今こうして店で働いていられる。
最後に見た時には老婆になっていた天音は未だ10代頃の姿のままだったのに。
それどころか既に逝去していたはずの遥香までもが生きていて、彼女もまた2004年の時の姿のままハカランダの店主として働いていた。


766 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:29:27 0PW9dyms0

確かに、300年前に世界がディストピアとなる前の幸せな一時を過ごせたのは、今の始にとっても悪いことではなかった。
だが、今の始に、そんな事を考えている余裕は無かった。

(何故だ……)

始は想起する、SE.RA.PHで見かけたあのレリーフを。
始の眼は限界スレスレまで開かれ、口はゼェゼェと息を吐いている。

(何故貴様が……)

その捻れた形状を、空に浮かんだその姿を、彼は忘れるはずがない。
あの日、その存在のせいで始達の運命の歯車は狂わされ、その過程で友は姿を消したことを。

「何故貴様が此処にいる……統制者!」

思わずその名を声に出してしまう程に彼の感情は高まっていた。
始は信じられなかった。何故統制者が此処にいるのだと。
統制者は決して倒せない、死という物は彼には無かったのではないのか。
ともかく、始の方針はこれで決まったも同然だ。

(俺は統制者を探し出す……)

拭えない疑問点と恐れを潰すには、それしか無い。
そして願いならとうに決まっている。
その願いを思い出すように、始は嘗ての友の姿を思い返す。

―俺達は二度と会うことも無い、触れ合うこともない、それで良いんだ―

(剣崎……)

自分が生き残ったことで、世界は滅びを迎えてしまった。
始は、自分が封印されることを拒まなかった。
自分のせいで、大切な人達が消え行く様を見るのは、もうゴメンだったから。
しかし剣崎はそれを良しとしなかった。
故に彼はアンデッドとなり、バトルファイトを放棄して何処かへと去っていった。

なんて馬鹿な真似をした、と始は思った。
消えるのは、自分で良かったのに。
只の人間を、犠牲にしてまで生きたくなかったのに。

それからかれこれ300年が過ぎた。
多くの友が死に、残ったのは自分だけになった。

始の願いは、「もう一度やり直す」事だ。
52体のアンデッドが封印されたあの日に時間を巻き戻す。
そして統制者を消滅させ、剣崎がアンデッドにならないようにする。

(それが…俺の願いだ……)


その時、自らのサーヴァントから念話が届く。

『始さ〜ん!何しているの〜!』

己のサーヴァント、キャスターからだ。
キャスターは普通の人間の服装になることが出来る。
その姿で彼女は店の手伝いをしているのだった。

実は料理にも凝っているらしく、遥香に料理のレシピについて話したこともあった。
前には始のたこ焼きも美味しそうに感想を言っていたこともある。

『いや……少し、昔の仲間の事を考えていた。』

『仲間って……始さんがまた一緒になりたいっていう……?』

『そうだな、アイツの事だ。』

『あ、ゴメン、そろそろお客さんが外に出るから見送らないと!話は後でね!』

始にとっては、キャスターは意外と心を許せる存在であった。
その底抜けに明るい性格から打ち解けやすかった事もあるが、やはり一番は「友」の事であろうか。
キャスターもまた、友の為に戦い、そして友を失った者であった。
それにキャスターは互いに背中を預け合う関係だ。
友好関係が良くならなければ生き残れるのも生き残れないであろう。




だが、忘れないで欲しい事が2つある。

1つ、彼等は人間ではない、人の皮を被った化け物だ。
2つ、だが、それでも彼等は、人間として生きることを決めた。


だからきっと、二人は人間だ。
例え身が化け物でも、心は人間なのだから。


767 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:30:44 0PW9dyms0



【クラス名】キャスター
【出典】魔法少女かずみ★マギカ
【性別】女
【真名】かずみ
【属性】中立・中庸
【パラメータ】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具A


【クラス別スキル】

陣地作成:A
自らにとって有利な陣地を作成する能力。
自らに有利な「工房」果ては「結界」を生み出せる。


道具作成:C
魔力を帯びた道具を生み出すスキル。
スマホアプリ等を作り出せる。



【固有スキル】

魔法少女(偽):B-
願いと引き換えに自らの身体を失った者。
彼女は魔法少女という皮に詰めた魔女である為にランクが下がっている。



動物会話:B
動物と会話が出来る。
宇佐木里美の固有魔法。


直感:C
常に最適な展開を「感じ取る」能力。
簡単に言えばとても勘が鋭い。



【宝具】

「我らは魔を奏でる七つの星(ウィッチ・オブ・プレイアデス)」

ランク:C〜A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

キャスターが手にした、プレイアデス星団の仲間達の魔法であり、
彼女達の絆の残りカス。


物質を「破戒/破壊」する魔法。

対象を「解析」する魔法。

運動能力を「向上」させる魔法。

「電撃」を操る魔法。

動物と「会話」する魔法。

ぬいぐるみや魔物を「使役」する魔法。

物質を「再生成」する魔法。

これらの固有魔法が使用できる。


「我は紛い物にして呪いの主(マレフィカファルス)」

ランク:A 種別:対願宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

キャスターの本来の姿である、「魔女」としての力。
周囲に結界を展開させ、敵に呪いの魔法を掛ける。
本来なら魔女になる宝具なのだが…バーサーカーのクラスでないがために
それは出来ない。


【Weapon】

「杖」
キャスターの標準装備。
そのまま殴打武器としても使えるが、先端から魔力光線「リーミティ・エステールニ」を放つ。


768 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:31:04 0PW9dyms0

【人物背景】

記憶を失い荷物の中に紛れていた女の子、でも実は魔法少女でした!
天真爛漫で好奇心旺盛、料理が得意。プレイアデス星団と出会い仲間になる。
得意な魔法は「破壊/破戒」。


〜魔女のソーセージの作り方〜

材料は魔女とその本体の亡骸。
作り方は少し難しいです。
まず、あの魔法を使ってこうして…あーもーややこしいので掻い摘んで説明します!
魔女の亡骸を元の遺体に詰めれば、ジャジャ〜ン!完成〜!
身体を皮、魔女を肉と考えれば、結構イメージつくんじゃないかな〜。
ちなみにこれ、つくるのに失敗しやすくて、この料理を考えた人達は完成するまでに13回は失敗したらしいよ〜
でも大丈夫、魔法と知恵と絆さえあれば、つくるのはそう難しくはない…らしいよ〜!


後に「昴かずみ」という新たな人間として生きていったのだが、
マスターとの「人間になろうとした化け物」という点で引き合ったため、
この姿で召喚されている。


【聖杯にかける願い】

特に無い。


769 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:31:27 0PW9dyms0





【マスター名】相川始
【出典】仮面ライダー剣(小説版も含めます)
【性別】男

【Weapon】

「ラウズカード×13」

始が愛用していたハートスートのカード。
本来なら全てのラウズカードはカテゴリー2を残して
BOARDが厳重に保管していたが、どういう訳か始は13枚全てを所持している。


「カメラ」

自らが原因で逝った男性の形見にして、彼の大事な一品。


「ホンダ・XR250」

始が愛用しているバイク。
カリスに変身することで「シャドーチェイサー」へと変化する。


【能力・技能】

・アンデッド

子孫の繁栄権を賭けて争い合う53の不死生命体。
始が属する枠は引かれた瞬間にゲームをリセットさせる「ジョーカー」。
ジョーカーが優勝したその瞬間に、世界は仕切り直される。
この相川始は、ジョーカーがカテゴリー2「スピリット」をラウズした姿であり、
カテゴリー2の働きかけによりこの人格は保たれている。武器は斬り裂いたアンデッドを
カードに封印する鎌、そして読み込んだカードのアンデッドの姿を借りるバックル型カードリーダー「ジョーカーバックル」。


・仮面ライダーカリス

カリスラウザー(ジョーカーバックル)にカテゴリーAのカードを装填して変身する姿。
正式にはカテゴリーAの姿を借りた姿であるが、ジョーカーの力とカテゴリーAが融合することで、
ライダーシステムに近いような戦い方が出来るようになり、「醒弓カリスアロー」を武器として戦うことが可能な他、
他のラウズカードと合わせた戦い方も出来る。更に、「カテゴリーK」をラウズすることで「ワイルドカリス」へと
変化し、「ジョーカー」の力と併せることで13体のアンデッドとの融合を果たした。



【人物背景】

「ジョーカー」は、52の種族の繁栄を賭けた「ゲーム」を仕切り直すワイルドカードであった。
1万年後、人類の始祖は「ジョーカー」を「相川始」に変えた。
「相川始」は人間を愛し、人間性を求め、人間を守る「仮面ライダー」となった。
しかし、それをジョーカーの本能は許さず、遂に己はゲームマスターに引かれてしまう。
滅びが終わったその直後、「相川始」が見たのは何処かへと消え去る戦友の姿であった。






【聖杯にかける願い】

剣崎がアンデッドになったことを「無かったこと」にする。



【方針】

「統制者」を探し出す。



◆  ◆  ◆


770 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:31:58 0PW9dyms0
「「ありがとうございました〜!」」

見送る1人の少女……キャスターを背に、【百夜ミカエラ】はハカランダを出た。
しかしその表情はとても冷たかった。

ハカランダから街へと続く道には、横に沢山の木々があった。
多分ウィルスが蔓延していなかった頃には、木々の手入れも行き届いていて、こういう景色も良く見られたのかもしれない。
辺りを見回しながらそんな事を考えていた帰り道の中でミカは、先程口に入れた食事を思い返す。
久し振りに摂った人間の食事だが、決してあの血の滴るステーキは不味くはなかった。
このSE.RA.PHで孤児院の仲間が常連だった店だったのが此処だったが、中々悪くはない。
食事といえば試験管に注がれたクルルの血を吸う8年に、漸く別の何かが入ったという感覚だ。
ただ……腹が一杯になった気がしない、あのステーキが血肉になった感覚が全くしない。


(相変わらず……か……)


「吸血鬼」となったミカにとって、人間の食事は意味を成さない。
それに「血」を求めることを除けば欲望というものが極端に浅薄な為、そもそも人間の食事にも興味を持たない。


今回レストランに来たのは気まぐれだ。
記憶を取り戻すまでは、人間の食事はきちんと食べることに戸惑いは無かった。
だが今はこのザマだ、やはり人間の食事など満足に味わえない。
しかし、あのフェリドでも無いのに気まぐれなどでこんな真似をするなど、自分も可笑しくなったかとでも少し思った。

この聖杯戦争では吸血衝動は抑えられているが、やはり食事は取れなくなっている。
結局、自分は何処までも吸血鬼となってしまったのだろうか。


(そろそろ、戻ろう……)


とにかく、そろそろ帰宅しようと思う、あの「孤児院」へ。
其処には、8年前に殺されたはずの仲間達が、すっかり大人になった姿で待っている。

ミカにとって幸せだった場所こそ、あの孤児院だったのだ。
だが、やはりその孤児院も元の世界でミカがいた物のそれとは全く別だ。
まず、運営しているのがあの「百夜教」ではない。
ただその名残でカトリック系になっているが、決してカルトや呪術には一切関わっていない場所だった。

運営しているのは「ドナート・ポルポラ」というロシア人の神父だった。
とても面倒見が良くて知的な「皆のお父さん」と呼ぶべき存在だった……らしい。
ただ、それは強ち間違ってはいないと思う。
しかし、その鋭い目と見透かしたような態度は何処かクルルを思い出してしまう。



何はどうあれ、ミカには彼処こそが「家」だということには変わりはないのだ。
例え友と別れようが、吸血鬼の飼い犬にされようが、彼処こそがミカの居場所。
殻を破った雛が親鳥に終始付いて行くように、彼はそこを帰る場所としていた。

だがその親鳥が消えたのも、また事実である。
そしてそれが、ミカの「願い」の原動力に繋がっている。
仲間の中で唯一生き残った「百夜優一郎」を救い出す、それがミカの願いだ。

もう今更思い出に耽っている場合ではない。
躊躇う必要はない。
自分が8年も願ったことを瞬く間に叶えるその力が、もう眼の前にあるのだから。

(僕はこの手で聖杯を手にする……それまで待っててね、優ちゃん……)

ただ一人残った親友の名を、心の中で口にする。
それが、血とは別の意味でミカの原動力となっていく。
友を救うという決意を新たにしたミカは、尚も道をテクテクと歩き続けていく。


果たして、ミカは気づいているだろうか。
自分の背後に、何かしらの奇妙な形をした二足歩行の「何か」が此方を見つめていることに。



◆  ◆  ◆


771 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:34:37 0PW9dyms0

「ふぅ〜ん、吸血鬼でもプライベートで人のご飯食べるんですねぇ〜」

柊邸にある地下室にて、【柊シノア】は、キャスターの道具作成スキルによって大量生産された使い魔、号竜の可視情報にあるミカエラの姿を見ていた。
キャスターの発明品「号竜」は、彼の打ち出した術式(コマンド)により自動的に戦闘を行う使い魔。
更にキャスターの考案により号竜の目と耳に映し出された情報を羅針盤に送り込む機能が追加された。
これによりシノアが生まれる前の世界で言う「ドローン」に近い役割を果たせるようになった。
お陰で確認できたマスターの数は非常に多くなり、此方が手にした情報は相当な物となった。
シノアの秘密基地と化したこの地下室には、キャスターの作成した大量の魔道具が散乱しており、後ろではキャスターが机に座ってまた号竜を作っている。

シノアがミカを確認したのは、学校で偶々見かけた時だった。
その時ミカは3年であったが、しかし此方の存在に気づかれなくて良かった。
すると、キャスターが声をかけてくる。

「マスターは、何故あの少年ばかりを見つめているんでしょうか?」

確かに気になることだ。
マスターを監視することは、確かに不自然ではない。
しかし数多く確認されているマスター達の中でも、何故この少年が気になるのか。
サーヴァントのステータスは確認できないが、しかしとても気になることであった。
だがシノアはそれを聞きニヤリと笑う。

「いやぁ〜単なる一目惚れですよぉ〜!この年頃の女の子の考えることなんて簡t…」

「真面目に言ってください。」

キャスターの冷静なツッコミに思わず「あぅっ」と戯けたふりをしたシノアは、遂に本音を吐き出す。

「あはは…というのは冗談で……」

「あの人、どうやら私の仲間の仲間らしいんですよ。」

「仲間の仲間って……」

「ええ、碌に会話したことすらないんですがねぇ。」

彼が百夜優一郎の知己であることを知ったのは、優の口からだった。
貴族達と行動を共にしているのを見るに、どうやら彼は吸血鬼にされてしまったらしい。
それも恐らく、相当の上流階級の実力者に。
しかしまさか彼までもが、この聖杯戦争に参加しているとは思いもよらなかった。

兄達なら聖杯等餌に飢えた狂犬のごとく嗅ぎつけてくるだろうに、何とミカがそこにいるのだという。
優は、なんとかして彼を救いたいと言っているのだが、果たして彼が説得に応じるだろうか。
映像で確認した彼のサーヴァント、バーサーカーはかなりの強敵だ。
今迄ずっと穴蔵に篭っていたために実戦こそしてはいない為に確認はしていないが、キャスターの宝具も戦闘向きらしい。


772 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:35:01 0PW9dyms0
キャスターは退魔専門の騎士であったらしい。
だがどういう訳か彼は、まだ騎士の称号を賜ったばかりの状態で召喚されてしまい剣の腕はまだまだ未熟だという。
宝具の神秘性は恐らく鬼呪に匹敵するだろうが、火力は恐らく黒鬼には及ばない、と言う事か。
何にせよ実際に目にしたことがないので分からないが。

「でも、私の仲間の内の1人は、どうしても彼を味方にしたい、と言っているんです。」

シノアは「家族」という物を知らなかった。
いや、厳密にはあったが、少なくとも絵本に載っているような家族の愛とやらは知らない。
少なくとも自分などいらない存在だと思って生き続けていた。

だが彼等は自分を「必要」だとしてくれた。
だからそれに答えようと思ったのだ。
一瀬中佐は自分達軍を「家族」と言っていた。
もし、彼等といる時の暖かさが「家族」といる時のそれだとしたら。
自分は、その暖かさを守ってみたい。
己が必要とされた事に、答えてやりたい。
それは例え敵であろうと変わらない。

「まあ、向こうが此方の話を聞いてくれるかは別ですが……」
「いえ、例え敵であろうと、きっと分かり合えると思いますよ。」
「え?」

意外、という表情をしているシノアに、キャスターは語りかけるように話す。

「……僕にも生きていた頃、大切な仲間達がいました。
彼等は本当に優しい方達なのですが、昔は皆その優しさを覆い隠していた時期があったらしいんです。
ある方は冷徹に生きようとし、ある方は復讐に生きようとし、またある方は秩序の下に実の妹を殺めかけた……
それでも今は、名実共に優しい心を持った、正真正銘の「護りし者」となりました。

魔戒騎士は、「護りし者」であるが故に、冷たく生きなければならない。
ホラーを誘き寄せる陰我等に囚われない、剣士としての冷たき日々を歩め。
彼等はホラーを狩りゆく中でそう悟っていく。
だが、彼等はきっと思い出す。
人の絆や愛は、決して汚れてはいない。
寧ろそれは輝いている。
絆は人と人とを繋いでいくのだ。
そして、人を支え、それは受け継がれていく。
敵だってそうだ。
兄のシグマだって、元々はあんなに仲が良かったんだし、何より鋼牙さんとも友達だったじゃないか。


「その心の変わりようにも、大切な人との繋がり、仲間達の姿があるからこそ、仲間は仲間としていられるんです。
ですからマスター、もし彼との繋がりが僅かの一本でもあるのでしたら、それを信じてみる、というのはどうですか?」

その言葉に、シノアの心に暖かみがまた宿った。

「そうですね、その通り。」

そうして再び羅針盤に目を通したシノア。
ミカはもう孤児院につきそうになっている。

だがふと、羅針盤に記されている号竜の位置マークの異変に気づく。
それを見てシノアは驚愕の表情を浮かべる。





「どうかしましたか?」


「高級住宅街を見張っていた号竜の反応が……消滅しました……。」

「なん……だって……」


キャスターはその場にばたりとへたり込み、頭を抱える。
それもそうだろう、号竜はキャスターにとって自分の子と同じ存在だ。
壊れてしまったらそれは落ち込んでしまうだろう。



◆  ◆  ◆


773 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:35:23 0PW9dyms0
此処らの高級住宅街には、色とりどりの綺羅びやかな邸宅が大量に建っていた。
そして建てられた家には、金持ちの別荘として使われているのもある。
【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト】が住んでいるこの豪華な屋敷も、その1つであった。
そしてケイネスは今、呆れた顔で新聞をパラパラと捲っていた。


(鬼兵隊…連続猟奇殺人……この島は平和主義国家にしては随分と物騒だな。)

以前時計塔の講義に来ていた日本人の魔術師は「彼処の国は結構平和なんすけどねぇ」等と言っていた。
しかしその印象はこの瞬間ぶち壊された。

(何が東洋の平和な島だ!あのホラ吹きの小僧めが!)

現在、ケイネスはSE.RA.PHの調査に乗り出している。
勿論、何処にマスターが集まりやすいかを調べる為である。
ケイネスは、己の魔術師としての才能に絶対の自信を持っている。
名門アーチボルトの当主にして若き時計塔のロード。
凡百の魔術師には付けられんであろうこの経歴と称号は、自らの実力の何よりの証だ。

おまけに己のサーヴァントはアイルランド一の大英雄とされるクー・フーリンだ。

無論下準備も忘れていない。
まずは安定した陣地。
この洋館に配置されている魔術工房はこの洋館の余分な面積をふんだんに使い切った完璧な工房だ。
ケイネスの持てる才能を使い切った所を神代のルーン使いであるランサーの助けもあり土台作りは万全。

ケイネスの戦力に死角無し、と「今なら」言える状態だ。

だが、それでこの聖杯戦争の主催者に抗えるか、と言ったら答えはノーだ。
ケイネスは己の才能を過信することはある、だが無謀さは然程持ち合わせていない。
何せ自分達を此処に無理やり呼び出し、英霊までポンポンと召喚してしまうのだから。
例えクランの猛犬が相手であろうと容易く捩じ伏せる姿は容易に想像できる。

ならばどうするか、仲間集めだ。

だがケイネスのロールは「つい最近」日本に来た英国貴族だ。
故にマスターはおろかNPCとのコネすら碌に持ち合わせていない。
だからマスターが何処にいるか調べる必要がある。
その為にも使い魔やランサーを各地に飛ばしているのだ。

もし、戦いに消極的な主従を発見したら、機会を作り次第コネクションを取る。
向こうがそれを了承したら、共に共同戦線を結び主催者を打倒する。

それがケイネスの方針だ。
ふと、ランサーから念話がかかってくる。

『おいマスター、ちょいと使い魔みてぇなモン拾ったんだが、ちょっと見てもらえねぇか?』

『一体どんな使い魔だと言うんだ。』

そう言いながらもケイネスは、魔力バイパスを通してランサーの視界を此方に映し出す。
其処から写ったのは、壊れた人形の様にぐったりと倒れた「小型の竜」だ。

『ほぉ……』

初めて見るその異様な形状の使い魔に、ケイネスは感嘆の声を漏らす。
ティラノサウルスの様に水平に身体を傾けた形となっているその姿勢。
黒い鉄の様な何かで組み立てられたとしか言い様がない無機質さも兼ね備えていた。
ゴーレムや竜牙兵の一種だろうか、だがこんな使い魔はまるで見たことがない。
ゴーレムの様な羊皮紙も無ければ、竜牙兵よりは無機質ではなかった、寧ろ生物に一歩近づいている。

魔術師は科学者の如く探求する生き物、ならばケイネスがこんな新発見を見逃すはずがない。

『ランサー、直ぐにその使い魔を此方に運んで来い、直ぐに調べる。』

『了解だ、アンタならそう言うと思ってたぜ。』

其処でランサーとの念話は切れた。

所で今、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは考えついたであろうか。

マスターが「近所の人」だった場合の事を。
もっとも、対主催か参戦派かどうかは別の話だが。


◆  ◆  ◆


774 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:35:47 0PW9dyms0
此処一体の高級住宅街にいるセレブは、ケイネスだけとは限らない。
此処に別荘を持つ程の金のある外国人が、彼だけとは限らない。
今この洋館に住んでいる【ラウ・ル・クルーゼ】もまた、其処に大きな館を構える権利のある「ロール」である人間の1人であった。

クルーゼの「ロール」は、「オーブからの外交官」という扱いであった。
どうやらクルーゼは真人間として生き、アルともムウとも普通に接していた、という事になるらしい。
まさか死ぬ直前まで対立していたオーブの国籍に入っていておまけに外交官等というのは思いもしなかったが。


そんなクルーゼは、今居間のソファーに座り込み、電話をかけている。
使用している携帯端末には用意周到に傍受対策も施してある。
それ程面倒な処置を施す程、この通話は内密な物であったのだ。

それもそうだろう、電話の相手は何と【高杉晋助】、現在世界を騒がせている「鬼兵隊」のリーダーだ。
今のクルーゼは、高杉と内通関係にある。
クルーゼは彼に土地の情報の他ロールを利用した手回し等を行い、交渉の結果高杉達鬼兵隊の拠点などを与えることが出来た。
高杉の城は彼の元々の居住区だったのだが。

外交官がテロリストと癒着している、というのは本当に酷い話だ。
公務員としての正義は、何処へ行ってしまったのだと、真面目な人間なら誰だって言えるだろう。

だが高杉もクルーゼも知っていた、こんな物など至極当然。
ブルーコスモスに兵器データを流しこんだクルーゼと、見廻組と手を組んだ高杉だからこそ良く分かる話だ。

『しかしアンタも随分と酔狂な奴じゃァねえか、こんな壊し屋なんぞに手を貸して。』
『ちょっとした共感に近いものだよ。君の思想に興味を持った故に力を貸した、それだけの話だ。』

クルーゼの回答は早かった。
高杉は嘗て語った、「この世界を壊してやる」と。
その眼は本気だった、その眼は狩人の眼だった、それにクルーゼは興味を持った。
嘗て己を産んだこの世界に怨みを持ったこのクルーゼだが、この男は一体何故にこの世界を壊そうとするのか。
それに対して彼は強い興味を持ち始めたのだった。

『そう言えば聞いていなかったね、タカスギ君、君は何故この世界を憎む?何故この世界を壊そうとする?』
『護りてぇもんをぶっ壊された……信じていたモンに裏切られた……それだけの事さ。』
『ほう……つまり私怨かね?その気持ちは良く分かるが、つまり君は何もかも失ったからこんな世界が嫌だと――』
『それ以上馬鹿げた詮索をするんじゃねぇ、これ以上無駄口叩くなら直ぐにたたっ斬るぞ。』

図星を突いたかどうかは知らんが、彼にも彼なりの深い闇があった。




『そういや、此処の国の裏社会でおもしれぇ情報が入ったぜ。』
『ほう?』
『テロリストだよ、俺達鬼兵隊を除くあるテロリストがこの国に現れたらしい……。』

だが無論、今の所公に姿は現してはいない、という。
しかし鬼兵隊だけで世論が騒がしくなっているというのにそのテロリスト集団の存在が明るみになったら、多分飛んでもないことになるだろう。

『そいつらの名は――葬儀社――』

『葬儀……か、我々を棺桶に入れる、等という単調な理由では無さそうだねぇ……。』




◆  ◆  ◆


775 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:36:11 0PW9dyms0



「また私は見た。海から一匹の獣が上がってきた。
これには十本の角と七つの頭とがあった。
その角には十の冠があり、その頭には神を汚す名があった。」


〜新約聖書「ヨハネの黙示録」第13章より〜






柱となる4の獣に、7つのラッパを巡る「三十一」の聖者達。
多くの候補者の骸を土台として、遂に役者は出揃った。
現在4の裁定者には通達が送られている。

それではこれにて――


776 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:36:44 0PW9dyms0
























いや待ってみよう、後1組残っている。
だが、ムーンセルは聖杯戦争の予選を終了させた。
7組のマスターの願いを、24組の生け贄を以って叶える聖杯戦争。
だが明らかにムーンセルは鯖を読んでいる。
これは「バグ」である、人智を逸脱した演算装置に、バグが起こったのだ。


777 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:37:12 0PW9dyms0




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778 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:37:42 0PW9dyms0













―異常事態発生、残存マスター数「32人目」の状態において予選が終了―













◆  ◆  ◆


779 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:38:08 0PW9dyms0

「今こそ我々が、この世界を導き、この世界の歪みに葬儀曲(レクイエム)を奏でよう!」


1つの廃墟に、大きな喝采が鳴り響いた。
それはまるで救世主の声を湛えている様。
其処では1人の銀髪の美青年が、右手の甲に銀色に輝く冠の紋章を掲げて叫んだ。
そしてパチパチと手を叩きそれを賞賛している者達には、必ず異様な形状の「武器」があった。


其処の会場のステージで喝采を受けている青年の名は、【恙神涯】。
今こそ身を潜めているテロ組織「葬儀社」のリーダーである。
影に潜みながらも、葬儀社は今も尚着々と準備を続けている。



葬儀社を率いる涯には、不思議な力があった。
自身の体内から引き摺り出した銃を人の胸に狙いを定め撃つことで、その人間から武器を引っ張りだす力だ。
今、涯の演説に感動している人達が手に取っているその武器も、涯の手で創りだされたもの。
足に着けるジェット装置、重力制御銃、立体コピー機等、その種類は多種多様。
そして涯はそれらを、「お前達の心象を形作った物だ」と称するが……


とにかく、恙神涯という人間には謎が多い。
経歴は不明、分かるのは、潜り込むように人の本質を見抜くその卓越した洞察力。
そして、武器を引き摺り出す不思議な力を持っている事、それだけだ。

そしてその涯は今、拍手の嵐の中ステージを去り自室へと戻っている。
自室には、既にもう一人の人間が壁に突っ立っていた。
纏っているのは「黒棺」のワッペンが貼られた黒いジャケット、彼もまた葬儀社の人間だ。
黒髪に褐色の肌、そしてその顔立ちから察するに、アフリカ系の人種かと思われる容姿だ。
だがその瞳は、まるで悟ったかのように煌めいていた。


「終わったか?」
「ああ、たった今な。」

そんな素っ気ない会話を、涯と青年は交わす。
ベッドに腰掛けて涯は軽く溜息をつく。
それから制服の左側の袖を捲り、左手の甲を露出させる。
それから赤い紋章―令呪の刻まれた左手を、天井の蛍光灯に翳してみた。

赤く手の甲に刻まれたのは、「弓の先端から伸びて来る手」。
まるで自分の「ヴォイド」を象徴しているようであった。

―あの時、涯は進んで自ら「魔王」となり真名のアダムとなった。
そして集といのりがそれを止めてくれた。
それこそが涯の狙いであった、真名と運命共同体となった自分が死ねば、真名は「イヴ」の役割から切り離されると。
そして自分は真名諸共集の「ヴォイド」に取り込まれた―筈だった。

気がつけば嘗て自分が率いていた「葬儀社」のリーダーとして動いていて、世界の「改革」を行おうとしていた。
そして記憶を取り戻し、今目の前にいる己のサーヴァントとの契約も果たし、こうして今の涯はここにいる。

「何を話していた?」
「SE.RA.PHの全域を掌握する、という事を彼等に話した、無論聖杯戦争のことは話していない。」
「そうか……。」


780 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:38:43 0PW9dyms0
涯が行う方針はまず、「このSE.RA.PH一体の掌握」だ。
国を取る、という作戦は元の世界でもGHQを相手にやっていた所業だ。
このSE.RA.PHを葬儀社の支配下に置き、マスターを炙りだすという作戦。
しかし頭脳明晰な涯にしてはあまりにも大胆且つ無謀な作戦だ。
四分儀が聞いたら首を傾げるだろうが、なまじ部下には建前で「世界の革命」等と謳っている。
特に疑問などは向こうからは出なかった。
この方針を行う理由には涯の「ある目的」があった。


それは「同盟」と主催者の「打倒」だ。
確かに、マスターを探すためだけに「街を支配する」というのは些か遠回りだ。
しかし、「仲間を探し、団結し、強敵を倒す」というには、中々に最適な方法だと涯は思っている。

この聖杯戦争が安易に壊せる存在ではないことを、涯は重々承知している。
己のサーヴァントは確かに強力だが、それでも自らを喚び出した存在に勝てるとは限らない。
仲間がいれば、対話し合えば、一つになれば、きっと、この聖杯戦争とも「分かり合える」であろう。


「分かり合うのは至極簡単な事、例え誰であろうと心は通じ合える……本当にお前はそう思うか?セイヴァー。」

そう、この男のクラスは「救世主(セイヴァー)」、人々と分かり合う事を実現させ世界を救った英雄である。
そしてその問いかけに対し、当然だ、と頷いたセイヴァーは答える。

「ああ、そうだ。確かに人と人はすれ違うこともある……だがそのズレは『ほんの僅か』なそれだ。
たったそれだけで人は争い合い、苦しみ合う……それだけで人は分かり合うことを拒む。
でもそれは違う、人と人は分かり合える……世界は本当に『簡単』なんだ。」

セイヴァーの言葉の重みは、涯にズシリと来た。
英雄の言う事は本物だ、それは数十人もの人間を束ねている涯にも良く分かった。
そしてその言葉が涯の心の重りをほんの少しだけ抜き取ってくれる。


「……すまないな、お陰で楽になった。」


一瞬だけ安堵の表情を見せた涯は、直ぐに表情を引き締め扉を開く。
セイヴァーもそれに着いて行く。

「これから作戦会議に向かう。今後の俺達には、お前の力が必要なんだ。」
付いて来てくれ、セイヴァー……いや、『刹那・F・セイエイ』。」

「了解した。」



主の怒りによって起きた滅びの中で生まれたのは一頭の巨大な獣。
本来置かれるべきではなかった配役が、偶然の例外として表れてしまった。
かの「子羊」と同じく「救世主」の名を冠した対話の英雄は、今此処に聖杯戦争の崩壊を願いこの戦いに臨む。
人は争わなくていい、「話せば、きっと分かり合える」、そう信じて。



このイレギュラーの到来を、四柱の獣は理解しているのだろうか。


781 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:39:54 0PW9dyms0


【クラス名】セイヴァー
【出典】劇場版 機動戦士ガンダム00 A wakening of the Trailblazer
【性別】男
【真名】刹那・F・セイエイ
【属性】秩序・善
【パラメータ】筋力B 耐久A 敏捷B++ 魔力C+ 幸運C 宝具A++(ダブルオークアンタ搭乗時)


【クラス別スキル】

革新者(純):A
イノベイター。
人類を新たなステージへ導く存在。
反英雄に対しパラメータに補正がかかる他、
「カリスマ」「直感」の特性も兼ね備えている。


対英雄:C++
英雄を相手にした際、パラメータを1ランクダウンさせる。
対話が難しい相手程補正が強くなる。


【固有スキル】


魔力放出(素粒子):A
魔力をGN粒子に変えて放出する。
GNドライヴは所謂永久機関であるため、
半永久的に戦い続けていられる。
また、「トランザム」を発動することで
パラメータが増強されるが、
一定時間経つとGNドライヴがうまく
働かなくなりパラメータが下がり、
魔力を供給出来なくなる。


騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は乗りこなせる。


戦闘続行:A
生還能力。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。


単独行動:C
マスターとの魔力供給を断っても限界していられる。
マスターが死んでも一日は現界を保っていられる。


782 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:40:16 0PW9dyms0

【宝具】

「対話を結ぶ救世の剣士(ダブルオークアンタ)」

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大捕捉:1000人

セイヴァーが「ELS」との対話に使ったとされる機体。
数多くの星を旅した逸話と合わせ、科学の域を
超えていないにも関わらず最高ランクの神秘性を誇る。
また、「トランザムバースト」を発動することで、
敵と念話で語り合う「対話」を実現することが可能。
尚、本来なら「ELSクアンタ」として呼び出されるべき
宝具のはずだが、争うための機体でないそれは
呼び出す事は絶対に不可能とされている。


「心を繋げる光の手(クアンタムバースト)」

ランク:A+ 種別:対話宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞

ダブルオークアンタに搭載された、「ELS」への対話を実現させた機能。
GN粒子を最大限にまで放出させ、対象の心に、本質に入り込み、「対話」を実現させる。
ただし、聖杯戦争を破綻させかねないこの宝具は、ムーンセルからのプロテクトという名の抑止力により
対話が妨害されており、プロテクトを破壊して発動するにも令呪を一画以上は使わせる程の消費魔力を要求されている。
この宝具を発動するには、ムーンセルからの「許可」が必要となる。


【Weapon】

「GNソードⅤ」
「GNバスターライフル」
「GNソードビット」
「GNバスターソード」

「対話を結ぶ救世の剣士」の装備一覧。
詳細はWikiで。




【人物背景】

傷付き傷付けられる世界で、少年は「救世主」を見た。
争いを止める戦いで、少年は「救世主になるため」に戦い続けるも、やがてそんな思いは消え去り、彼はやがて革新者となった。
そして遂に、彼は「救世主」となった。蝶や花に囲まれた今の救世主に、剣を振らせる日が来ないことを、祈ろう。

【聖杯にかける願い】

そんな物などない、聖杯を破壊し、この戦いを終わらせる。


783 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:40:46 0PW9dyms0



【マスター名】恙神涯
【出典】ギルティクラウン
【性別】男

【Weapon】

「ヴォイド」
涯が自らヴォイドゲノムで取り出した、「恙神涯の心象を具現化した武器」。
銃の様な形状をしており、対象の胸を撃ちぬくことでその人間の「ヴォイド」を強制的に抜き取れる。
人間の本質を覗ける涯の在り方を象徴する様な武器である。



【能力・技能】

・人心掌握
相手の本質を見抜き、心に付け込む能力。
それは彼を象徴するカリスマ性にすらなった。

・軍略
多人数を動員した戦闘における戦術的直感能力。

・ヴォイドゲノム
桜満集から奪い取った「王の力」
アポカリプスウィルスを解析して得られた遺伝子コードを基に生み出された、
人の心を具現化する力。左手の甲に宿した王の刻印からその力を顕現させる。
対象と互いに視線を合わせることで、対象の体内から「ヴォイド」と呼ばれる
武器を取り出す。武器の形状は対象の心象を表した物となる。武器を抜き取られた対象は
抜き取られる前後の記憶を喪失する。尚、サーヴァントからヴォイドを抜き取られるかは不明。




【人物背景】

少年は海で目を覚ました。
少年は血塗られた聖夜に全てを知り、すべてを失った。
やがて少年は戦士となり、魔王となった。
其の果てに、魔王は自らを犠牲に滅びを終わらせた。
恙神涯は、嘗ての「彼」になることが出来たのだろうか。


【聖杯にかける願い】

そしてこの聖杯戦争に終止符を。


【方針】

まずはSE.RA.PH全域を掌握し、同盟を結びやすくして共に聖杯を打倒する。
しかし例え刹那一騎でもルーラー相手には心細いので同盟を組むも考えている。


◆  ◆  ◆


784 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:40:59 0PW9dyms0



【マスター名】恙神涯
【出典】ギルティクラウン
【性別】男

【Weapon】

「ヴォイド」
涯が自らヴォイドゲノムで取り出した、「恙神涯の心象を具現化した武器」。
銃の様な形状をしており、対象の胸を撃ちぬくことでその人間の「ヴォイド」を強制的に抜き取れる。
人間の本質を覗ける涯の在り方を象徴する様な武器である。



【能力・技能】

・人心掌握
相手の本質を見抜き、心に付け込む能力。
それは彼を象徴するカリスマ性にすらなった。

・軍略
多人数を動員した戦闘における戦術的直感能力。

・ヴォイドゲノム
桜満集から奪い取った「王の力」
アポカリプスウィルスを解析して得られた遺伝子コードを基に生み出された、
人の心を具現化する力。左手の甲に宿した王の刻印からその力を顕現させる。
対象と互いに視線を合わせることで、対象の体内から「ヴォイド」と呼ばれる
武器を取り出す。武器の形状は対象の心象を表した物となる。武器を抜き取られた対象は
抜き取られる前後の記憶を喪失する。尚、サーヴァントからヴォイドを抜き取られるかは不明。




【人物背景】

少年は海で目を覚ました。
少年は血塗られた聖夜に全てを知り、すべてを失った。
やがて少年は戦士となり、魔王となった。
其の果てに、魔王は自らを犠牲に滅びを終わらせた。
恙神涯は、嘗ての「彼」になることが出来たのだろうか。


【聖杯にかける願い】

そしてこの聖杯戦争に終止符を。


【方針】

まずはSE.RA.PH全域を掌握し、同盟を結びやすくして共に聖杯を打倒する。
しかし例え刹那一騎でもルーラー相手には心細いので同盟を組むも考えている。


◆  ◆  ◆


785 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:41:23 0PW9dyms0


<<ルール変更>>


・勝ち残ったマスターが7人になった瞬間、4つの聖杯が起動し、
4つの聖杯を「柱」とすることで巨大な「大聖杯」が召喚されます。
(ただし、その「7人」に[[恙神涯]]&セイヴァー([[刹那・F・セイエイ]])は含まれていません。






◆  ◆  ◆


786 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:41:47 0PW9dyms0





―汝らに問う、汝らは捧げる24の敗者となることを望むか、それとも捧げられる7の勝者となることを望むか―

―或いは、この物語に終止符を打つことを望むのか―

―なあ、諸君、君達は此処で何をどうしたい?―


787 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:42:11 0PW9dyms0



<<剣騎士(セイバー)>>


【網島ケイタ@ケータイ捜査官7 & 剣崎一真@仮面ライダー剣】

【最上リョウマ@デジモンクロスウォーズ 時を駆ける少年ハンターたち & モモン/アインズ・ウール・ゴウン@オーバーロード】

【宜野座伸元@PSYCHO-PASS & 朽木白哉@BLEACH】

【カオスヒーロー@真・女神転生 & ガッツ@ベルセルク】


<<槍騎士(ランサー)>>

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を! & 空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】

【能美征二@アクセル・ワールド & スカルナイトモン@デジモンクロスウォーズ】

【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero & クー・フーリン@Fate/stay night】

【二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ & 駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】


<<弓騎士(アーチャー)>>

【亜門鋼太朗@東京喰種 & X3752ストライカー@翠星のガルガンティア】

【高杉晋助@銀魂 & ガルバトロン@トランスフォーマー・ザ・ムービー】

【アール(レナート・ソッチ)@ヨルムンガンド & 北岡秀一@仮面ライダー龍騎】

【刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00 & ウルトラマンゼロ@ウルトラシリーズ】


<<騎乗兵(ライダー)>>

【桜満集@ギルティクラウン & シモン@天元突破グレンラガン】

【間明蔵人@ケータイ捜査官7 & ミゼル@ダンボール戦機W】

【白菊ほたる@アイドルマスターシンデレラガールズ & パトリック・コーラサワー@機動戦士ガンダム00】

【爾乃美家累@ガッチャマンクラウズ & フル・フロンタル@機動戦士ガンダムUC】


788 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:42:34 0PW9dyms0
<<魔術師(キャスター)>>

【柊シノア@終わりのセラフ & 布道レオ@牙狼-GARO-〜MAKAISENKI〜】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ & ラゼィル・ラファルガ―@白貌の伝道師】

【橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ & ナーサリー・ライム@Fate/EXTRA|Fate/Grand Order】

【相川始@仮面ライダー剣 & かずみ@魔法少女かずみ★マギカ】


<<暗殺者(アサシン)>>

【瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- & シルベストリ@からくりサーカス】

【プロデューサー@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)& ファントム・オブ・ジ・オペラ@Fate/Grand Order】

【後藤@寄生獣 & ぬらりひょん@GANTZ】

【ラウ・ル・クルーゼ@機動戦士ガンダムSEED & 大道克己@仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ】


<<狂戦士(バーサーカー)>>

【百夜ミカエラ@終わりのセラフ & 黙示録の獣@.hack//G.U.TRILOGY】

【エレン・イェーガー@進撃の巨人 & シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】

【ステラ・ルーシェ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY & 朽木ルキア@劇場版 BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ】

【エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険 & インターラプター@ニンジャスレイヤー】



<<救世主(セイヴァー)>>

【恙神涯@ギルティクラウン & 刹那・F・セイエイ@劇場版 機動戦士ガンダム00 A wakening of the Trailblazer】



<<盾騎士(シールダー)>>

【加賀美新@仮面ライダーカブト & リディ・マーセナス@機動戦士ガンダムUC】



<<復讐者(アヴェンジャー)>>

【逸見エリカ@ガールズ&パンツァー & エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order】

【輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ & 輿水幸子@グランブルーファンタジー】


◆  ◆  ◆


789 : 初めの一捲り〜「病」の章〜 ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:43:00 0PW9dyms0
―君達はこの月で、何を望む?―

―この四つの災禍の名を冠した願望機に、何を縋る?―


―さあ、手札は揃った―
―登場人物の紹介は、これにて終わり―




―さあ、それでは本編(聖杯戦争)が始めよう―


790 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/22(金) 21:46:40 0PW9dyms0
以上で、OP全4章の投下が終了いたしました。
約1ヶ月間、長い間お待たせいたしまして本当に申し訳ございません。

予約の解禁日は2016/07/28 00:00 となります。


791 : 名無しさん :2016/07/22(金) 21:53:35 HxxWb7ts0
ギルクラってことは来るだろなあとは思ってたけどサーヴァントまさかのそいつかよw
マスターとサーヴァントどっちもとは流石刹那、ぶっ飛んでる……w


792 : 名無しさん :2016/07/22(金) 22:33:17 0sZ1zutU0
投下乙です

この面子でキラがNPCに居ると思うと胸熱


793 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/24(日) 11:54:16 jFf87jRs0
先程、Wikiを更新し、簡易的な物ではありますがマップを作成しました。
それと、ライダー(フル・フロンタル)を出すに当たって他のガンダム作品のサーヴァントの宝具であるMSの説明に以下の文章を追加させていただきました。

聖杯戦争においては半分程度である10m前後の大きさでしか召喚できない。
これはモビルスーツが魔術の概念とは相反する科学の産物であり、聖杯による十分な再現が出来ないためである。

マシンキャリバーとガンメンに関してはそれ程大きくないのでこの設定は付いておりません。


794 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/24(日) 17:38:40 jFf87jRs0
それと、先程「小ネタ」の部分も追加いたしました。
その際「剣崎一真」のジャックフォーム、キングフォームのパラメータも公表しました。


795 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/28(木) 01:15:16 5OMJYXYM0
本日より予約が解禁されました。それでは早速ですが、

能美征二&ランサー(スカルナイトモン)
柊シノア&キャスター(布道レオ)
エレン・イェーガー&バーサーカー(シン・アスカ)

で予約します。


796 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/28(木) 13:18:55 5OMJYXYM0
申し訳ございません、更に予約延長し

最上リョウマ&セイバー(モモン)
二宮飛鳥&ランサー(駆紋戒斗)を追加予約させていただきます。


797 : 名無しさん :2016/07/29(金) 14:44:45 cUYxKVIg0
一気に結構でかい予約を入れるとは1のやる気あるなー
そして出会うかは分からないけど初っ端からデジモン勢が一緒にか!
こいつら原作的には会ったことないけど何気にスカルナイトモンは少年ハンターの最後持って行った要素なだけに楽しみ


798 : ◆lkOcs49yLc :2016/07/29(金) 19:53:04 oupmQxd20
申し訳ございません。
予約期間について更新したことを忘れてしまいましたので追記いたします。

・予約期間は10日、3回(1回につき3日)の延長も可能です。
ズガンはNPCのみ可能です。


799 : ◆mcrZqM13eo :2016/07/30(土) 14:47:52 orITsFIg0
美樹さやか&キャスター (ラゼィル・ラファルガー)
プロデューサー&アサシン(ファントム・ジ・オペラ)
ランサー(クー・フー・リン)

予約します


800 : ◆1U2WbYpZO6 :2016/07/30(土) 19:03:22 f37xJJvY0
OP投下お疲れ様です。
白菊ほたる&ライダー(パトリック・コーラサワー)
で予約します。


801 : ◆mcrZqM13eo :2016/07/30(土) 22:26:24 orITsFIg0
すいません。追加で 橘ありす&キャスター(ナーサリー・ライム)予約します


802 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:31:31 59NEbQBY0
皆様予約ありがとうございます。
それでは、

能美征二&ランサー(スカルナイトモン)
柊シノア&キャスター(布道レオ)
エレン・イェーガー&バーサーカー(シン・アスカ)
を投下します。申し訳ございませんが残りの2組に関しては暫しお待ち下さい。


803 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:32:12 59NEbQBY0
走る、走る、走る、走る。
ある家族が、辺りで爆発が起こる中走り続けていた。
上空には幾つもの人の形をした鉄の兵器が火を吹き、刃を振りかざし、争い合っていた。
そこから湧き出てくる火の粉は、当然のごとく彼等にも振りかかる。

ふと、流れ弾と言うべき光弾が、此方に向かって来る。
その内長男はギリギリ離れていたが故に、吹き飛ばされた程度で辛うじて生き残った。
暫くして立ち上がった少年は、家族を探そうと、焼け野原になった周りを歩き始めた。
しかし、家族の姿は見当たらなかった、家族の顔は何処にもなかった。

『父さん……母さん………マユは!?』

そして、その結末は絶望的であった。
少年はふと、逃げ道に沿っていた位置にある地面に、少女らしき腕を見つけた。
その細い腕には見覚えがあった。
先程、少年が拾った携帯電話を握っていた、あの腕。
それは、少年に答えを、現実を教えつけるように、道に転がっていた。


辺りを見回すと、他にも肉の残骸が散らばっていた。
それは少年を絶望と孤独感に叩きつけるには十分すぎた光景だった。
少年の目から涙が零れ、眼は虚ろになり、

『あ……あ……ああ……あ…あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』



少年は泣いた、天を仰ぎ、地に手をつき泣き叫んだ。
まるで負の感情を涙と声に変えて発散するかのように泣き続けた。
やがて泣き声は収まり、涙は枯れ果てた、しかし眼は虚ろなままだった。
彼の精気もまた枯れ果てたのだ、無理もない、それらは全て涙となって消えていったのだから。



◆  ◆  ◆


804 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:32:49 59NEbQBY0

「がっ!……ハァッ……ハァッ……夢か……。」


そんな夢に魘されたエレンは、自室でガバリと跳ね起き、目を覚ました。
他人の夢を見ることは、エレンの経験には殆ど無い。
いや、微かにそのような夢を見た経験をエレンは既に持ってはいるが、どんな夢なのかは覚えていないのだ。
多分、過去に見た数々の詰まらない夢と共に記憶の中に埋没しているのだろう。


時計は未だ8時を指している、そして窓からは静寂な暗闇が見えていた。
あまりにも清潔過ぎる白い空間、アチコチを飾り付ける見たこともない置物。
そして、壁に貼り付けられたカレンダーから見える「2016」という年号。
そして聞いたこともないのに理解できる日本語という言語。
それら全ての光景が、エレンが「聖杯戦争」の世界に投げ込まれたことを象徴するには十分すぎた。


荒い息が鎮まった後、エレンはそれを見回して、ハァと溜息をつき、暫くの間目を瞑って考えこんだ。
彼は既に聖杯戦争に乗ることを決めている、理由は簡単だ。
エレンには、どうしても叶えたい願いがある。
『巨人の駆逐』そして『まだ見ぬ世界の果てに行く』事だ。
しかし一方で、エレンは例えこの願いが叶わなくてもそれ程悔いはないのだ。
それなら、元の世界に舞い戻って叶えるだけの話なのだから。
そしてどの道、エレンは此処で死ぬわけには行かない。まだそれを果たしていないのだから。



―だが、此処でジッとしていて何になる?
成る程、確かにロール上の生活を謳歌していく専守防衛も悪くはない。
だがこんな所でで立ち止まっていては何も手に入らない、何も掴めやしない。
それは壁の中での百年と大差ない。
壁の中でジメジメした日々を送るのは真っ平御免だ。

「俺は調査兵団だろ…だったら前に進むに決まっている……。」

まずは敵を探していく事が先決だ。
巨人の情報を「調査」していく兵団に所属していた自分にとってはかなりピッタシな行動だ。
幸い、エレンの側にはバーサーカーが控えている。
彼のバーサーカーはかなりの実力を持ったサーヴァントだ、並大抵の敵に屈するような生半可な力は持っていない。
初っ端から負ける危険性はそれ程ないと思う。
ふと、ジャンが「死に急ぎ野郎」と皮肉げに言う姿が思い浮かんだ。
そしてそれに対して早速言い返してやる。

「ああ、上等だ……。」

そうと決めたエレンは、自室のドアを開き廊下へと歩いて行く。



◆  ◆  ◆


805 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:33:08 59NEbQBY0
自宅の正門を開き外へと出たエレンは、まずは歩道を歩き始めた。
時間帯が時間帯なので、それ程この町を歩く人の姿は見当たらない。
本来立体機動装置があったならそれを使う手もあったが、生憎エレンが月に飛ばされた時点では彼の腰には下げられていなかった。
エレンが愛用していた装置はライナーに奪われ、しかも最悪な事に予備の装置が支給される前に此処にとばされてきてしまったのだ。

これでエレンの武器はデメリットの塊である「巨人の力」を残して全て置いて行かれた。
此処に強力なサーヴァントがいなければ万事休すの状況だ。
しかし此処で立ち止まるわけには行かない、もう自分は壁の外に投げ捨てられたも同然なのだから。

◆  ◆  ◆

そう考えながら歩いていく内に、エレンはいつの間にか海岸に足を運んでいた。
海というのは、エレンの世界においては存在しないものだった。
いや、確かに「存在していた」とはされているものの、それは三層の壁の内にあるはずもない。
水が流れる様が見られるのは街にある川が精々だ。
それどころか海の存在が記されている文献までもが発禁物だというのだ。

だからこそ、エレンにとって「海」というのは神の如く神秘に満ちた、夢で見た存在なのである。

「これが……」

そう呟き、海にそっと近づいてみる。
アルミンとの会話でしか出てこなかった海、エレンが壁外で見ようとした存在の1つ。
それが、今彼の眼の前にあるのだという。
エレンにとって、これ程感動的に思えることはないと言えるだろう……
だがその時である。


806 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:33:25 59NEbQBY0

「おやおや、こんな所で何をしているのかい?坊や。」
「!?」

ふと声のした方向に目を向けると、其処には二等身の騎士がいた。
顔は甲冑で覆われ、腹には骸骨をあしらった装飾品がある。
そして両肩にはスピアーの如く尖った肩パッドが付いていた。
だが最も注目するべき所は、その騎士を見つめた瞬間に謎の数値と「Lancer」という文字が脳内に浮かんだ所である。
エレンはそれを見て驚いた表情を浮かべる。

「サーヴァント……ランサーか!」
「ご名答だよ、しかしそれを知っているようだと、やはり君もまたマスターの1人であるようだねぇ。」

ランサーは気取った口調でそう言うと、肩に装着されているスピアーを外し両手に嵌める。

「そうなれば実に残念だが、君には此処で消えてもらう必要がある……。」

ランサーはスピアーをエレンに向け、此方にゆっくりと歩を進める。
だがエレンは表情を引き締め、まるで恐怖を抑えつけるように此方を睨みつけているまま。
そしてエレンは叫ぶ、己のサーヴァントの名を。

「来い!バーサーカー!」

『――――――――――――!!』

「何ぃ!?」


其の直後、上空から此方に向かって「何か」が落ちてきた。
そしてそれはエレンとランサーを阻むような位置に着地する。

全身が金属で出来たかのようなメタリック、トリコロールカラーのボディに、道化師の如き吊り目が付いた甲。

これがサーヴァント、バーサーカー。エレンの相棒たる英雄である。
そしてそのバーサーカーは着地したと思えばすぐにビームライフルを取り出し、ランサーに照準を定めて引き金を引く。
そしてその後にエレンは物陰に隠れようと引き返す。
「死に急ぎ野郎」と云えど殺し合いを巻き込まれやすい位置で観戦するほど彼は馬鹿ではない。

ランサーは直ぐに後ろにジャンプしてバーサーカーの射撃を躱し、そのまま上空に浮かんだまま両手にあるスピアーを離す。
上空に浮かんだスピアーはそのままランサーの両肩に戻る。
そしてランサーは着地した直後、禍々しい装飾が施された紫色の電子端末を手に取り、空に翳す。
この端末こそが、ランサーの宝具である。

「さてと、早速だがこれを使わせてもらおうか。」

―『闇・電子獣融合端末(ダークネスローダー)』―

ランサーが嘗て天野ネネを利用して手にした負のエネルギーを元に創りだした、デジモンを「強制的に」融合、吸収する力。
それがランサー……スカルナイトモンの誇る宝具である。
このダークネスローダーには、ランサーのクラスに当てはめられる際、彼が「三騎士の槍兵」として相応しき戦いが出来るデジモンが内包されているのだった。
本来ならキャスターのクラスでこそ発揮されるこの宝具。
その為に他の端末へのエンチャントやデジモンの外部への召喚「リロード」が不可能になっている。
オマケに7体のデスジェネラルを初めとする殆どの配下デジモンが喚び出せなくなっているのだが、それでもランサーにとっては十分な戦力だ。
そしてランサーは詠唱する、己の名を、クロスするべきデジモンの名を、義兄弟の名を、我が甲冑の名を。



―『スカルナイトモン』―『デッドリーアックスモン』―



掲げられた彼の真名、しかし真名開放はこの狂戦士と戦う前から既に済ませている。
なのでリスクは殆ど無い、全力でこのバーサーカーを叩き潰し、屈服させるまでだ。



―『デジクロス』―


807 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:34:09 59NEbQBY0
融合の詠唱が唱えられたと同時に、ダークネスローダーの先端にある牙状の装飾品がガバリと開き、穴が露出する。
万物を喰らわんとする魔物の口の如き穴には、何処までも深そうな闇がうねっていた。
そしてダークネスローダーから放出された闇はランサーをその紫色の禍々しい光の中に包んでいく。
光に包まれたランサーはグニャグニャと形を変え、図体も倍以上になっていく。
そして光が収まった頃には……ランサーの姿は無かった。

いや、サーヴァントの気配は相も変わらず残っている。
しかし其処に立っているのは、あの二等身の骸骨の騎士ではない。

代わりに立っているのは、バーサーカーに近い程の大きさを持った巨大な甲冑の騎士だった。
兜の形状は独特な角が生えた物へと代わり、顔面の防備部分は顔に近い様なデザインになっている。
胴体を飾る頭蓋骨は馬の骸骨に近い形状になり、右手には両サイドに刃の付いたスピアーが握られ、左肩にはやや大きめの斧が装備されている。

これぞダークナイトモン。
スカルナイトモンが義兄弟「デッドリーアックスモン」と一つになった姿。
伝説では殆どこの姿で行動していた彼にとっては、正に「象徴」の1つとも言える姿だ。
この姿こそ、ランサーの本気なのだ。
そしてランサーはその必殺武器ツインスピアを、バーサーカーに向けて構える。

「さあ―始めようではないか、バーサーカー。聖杯戦争と言う物を。」

ランサーは早速飛び上がり、スピアーを突き刺さそうとバーサーカー目掛けて飛びかかる。
するとバーサーカーは背中から光の翼を発出、上空へと飛び上がりランサーの攻撃を避ける。
そしてそのままランサーの刃の先端は砂中に埋まる。
既にバーサーカーは空中に浮かんでいる、そして槍を引き抜いたランサーも直ぐにそれに気づく。

「ほう、狂戦士にしては、随分と動けるじゃないか。」

そしてバーサーカーは、背中から大振りのビームソードを取り出す。
「アロンダイト」、ヨーロッパの伝承にある竜殺しの剣の名を冠したその刃を、バーサーカーは構える。
そしてそのまま地面へと落下するようにランサー目掛けて斬りかかる。

「ふん!」

そしてランサーもバーサーカーのいる上空に向かって大きくジャンプする。
バーサーカーはまるで野球のボールを打つようにアロンダイトを振りかぶる。
しかしランサーはジャンプした勢いとともに左腕を構える。
そしてそのまま肩に飾られたビッグアックスをバーサーカーのアロンダイトにぶつける。

「詰めが甘いよ、狂戦士君。」

そしてそのままスピアーを、バーサーカーの心臓―コックピット、即ち霊核にぶち当てようとする。
霊核に当たれば、バーサーカーの敗退は必然だ。
だがバーサーカーの開花された直感能力がそれを許さなかった。
危機に感づいたバーサーカーは直ぐ様足でランサーを蹴飛ばし弾き飛ばす。


808 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:35:03 59NEbQBY0
「くっ!」

ランサーは予想外の攻撃に宙を舞い落ちようとする。
しかしバーサーカーの猛攻が此処で終わるはずもなく、バーサーカーの投擲した二本のビームブーメランが牙を剥く。
ランサーはそれを槍とビッグアックスで弾き返そうと構える。

確かにビームブーメランは弾き返せた、だがその反動までは弾き返せてはいない。

「ぬぅっ!!」

その衝撃でランサーが地面に落ちる速度は更に上がる。
だがランサーが此処で終わるはずもない。

ランサーはダークネスローダーを手に叫ぶ。

―『クロスオープン』―

その詠唱とともにランサーの姿はダークナイトモンからスカルナイトモンへと戻る。
持ち前の質量が下がれば、地面にぶつかる衝撃もある程度は軽減できる。
それに元々の頑丈さも合わさって、地面に落下したスカルナイトモンは辛うじて着地できた。
衝撃で砂埃が辺りに舞う。

しかし砂埃が薄らいできた頃に空に見えたのはバーサーカー。
往生際悪くバーサーカーもそれを追い此方に向かって飛んで来たのである。
アロンダイトを仕舞い代わりに手にとったビームライフルで、此方を牽制しながら。

「ハッハッハッ、幾ら撃とうが無駄な事だよ。」

余裕めいた言動を取りながらもランサーはバーサーカーの銃撃を軽快に避ける。
時にはジャンプして避け、そして飛びながらも回転しながら避け、そして時にはスピアーで跳ね返す……
そんな華麗な芸当をランサーは容易くやってのけた。

しかし遂にバーサーカーがランサーの眼の前に着地。
ズシンと大きな音を立てて地面に足を付けたバーサーカー。
蝶を思わせるその光の翼は消え、代わりにアロンダイトを再び引き抜き両手でランサーの眼の前に構える。

そして姿勢を立て直したランサーも、それに答えダークネスローダーを取り出す。

―『デジクロス』―

詠唱とともにランサーは再びダークナイトモンの姿を取り戻す。

「さあ、斬り合いを再開しようではないか。」

ランサーはその大振りの槍、「ツインスピア」を構え、彼に挑発をかける。
そしてバーサーカーは両手で右肩の隣に取っ手が来るようにアロンダイトを構え、再びその光翼を出現させ此方に斬りかかってくる。
ランサーもそれを待っていましたとばかりに地面を蹴り、槍をバーサーカーの大剣にぶつける。
ガキィン!という金属音を立てて両者の得物はぶつかり合う。


809 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:35:40 59NEbQBY0
しかしジェット噴射をかけていたバーサーカーのパワーの方が上だった。
スピードを上げたバーサーカーは勢いに任せて槍を弾く。
ランサーは姿勢を正しながらも宙を飛ぶ。
しかしランサーはある程度ズリズリと滑り仰け反りながらも直ぐに着地。

だがやはりバーサーカーは攻撃を続ける。
遠くにいたはずのバーサーカーはまるで光と一体化したかのようなオーラを纏い一瞬でランサーとの距離を詰める。
更にランサーの周りをくるりと回転し、彼の後ろに素早く移動する。

「なっ……!」

後ろを振り返ったランサーが驚いたような表情をする。
そんな事を気にも留めないバーサーカーは左手の平の中央にある穴から光を発し、ランサーにそれをぶつけようとする。

―パルマフィオキーナ。
バーサーカーの宝具「改革を護る運命の剣(デスティニー)」の特徴的な装備であるビーム砲。
手の平から至近距離でビームを放ち、敵を爆発四散させる装備。
これが当たれば、ランサーのダメージはかなりの物となるだろう。

しかし、ランサーは再びダークネスローダーを手に取る。

「等とこの私が言うとでも思ったのかね?」

―『クロスオープン』―

その瞬間、ランサーは禍々しい光とともにスカルナイトモンの姿を再び取り戻し、バーサーカーの真上を縦に回転しながら彼の背後に向かう。
そして不意を付きバーサーカーの翼に両手にあるスピアーをぶつける。
ドリルの様にキュィィィィンと音をたてながらランサーの槍はバーサーカーの翼を削っていく。
光翼は光の粒となって消え、赤い塗装がバキバキバキと音を立て割れていく。
まるでスクラップにでもされるようにバーサーカーの翼は破壊されていく。
回路がショートした翼はバチバチという音を立てながら余剰エネルギーを吐き出す。

「大事な翼ががら空きだよ、バーサーカー。」

ランサーはそう言い槍を翼から外し空中で回転しながら地面に立つ。
もうバーサーカーの翼は使えない。
一応ランサーも「スカルサタモン」とのデジクロスという形で、飛行能力を手にすることは出来る。
だがそれらは切り札だ、クラス補正で殆どの部下デジモンが持って来られない今、こんな序盤から使って良いのは精々がこのデッドリーアックスモンぐらいだ。

だからこそ、翼をもぎ取って接近戦に持ち込んだのはいい策だ。
ランサーは騎士型デジモンであるが故に近接戦には非常に長けている。
例え翼があろうと、地での接近戦に持ち込めば意味を成さないのはランサーが生前剣を交えたシャウトモンX5が証明してくれている。
ただ、この敵が決して三下の類に入らないということはランサーもジリジリと知らされてはいるが。


だからこそ、此処で捩じ伏せるためにランサーは再びダークネスローダーを取り出す。

―『デジクロス』―


810 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:35:55 59NEbQBY0
またまたその詠唱とともにダークナイトモンの姿となったランサー。
一方バーサーカーもよろけながらもアロンダイトを構え此方に目を向けている。
バーサーカーは格闘技術に長けている上に天才児軍団とも言えるZAFTのエースだ。
たかが翼で地に伏すはずがない。
背中がやられていることも構わずバーサーカーはアロンダイトでランサーを貫かんと地面を蹴って飛びかかる。

「翼が消えても威勢の良さだけは相変わらずの様だねぇ……。」

しかしランサーは己の槍でバーサーカーの大振りの剣を弾く。
しかしバーサーカーは直ぐに第二撃をランサーにぶつけんともう一度剣を振りかざす。
ランサーもそれに即座に反応し槍で弾き返す、だが往生際悪くバーサーカーが続く第三撃の剣を振る……
というやり取りが大凡15回程繰り返された
ガキンガキンガキンガキンと激しく鉄の打たれる音が連続で響き渡る。
バーサーカーが剣を振る度に、ランサーは槍でそれを弾く、というやり取りが連続で行われる。
そして再びガキィン!と、互いの刃が激突する。
だがこの一撃では互いの得物が弾かれることはなく、代わりに刃をぶつけたままギチギチという音を立てて互いを押し合っていた。

「ふむ、中々やるではないか、伊達に予選を突破したわけでは無さそうだねぇ。」

ランサーは声が聞こえないと分かっているにもかかわらずバーサーカーに余裕めいた言動を取る。
だがランサーはこの斬り合いで勝利する気はなかった。
ランサーは勝利に強い執着を持つが、見かけによらず騎士道に拘る節はない、正々堂々と戦うなど以ての外だ。
故に、彼は策謀による卑劣な勝利をもまた「良し」とする……それがランサー……ダークナイトモンの戦い方なのだ。

確かにバーサーカーの翼は破壊されたが、それでもバーサーカーの卓越した武技は健在だ。
多くのゾーンで勝利を収めたシャウトモンX4とメタルグレイモンが束になってかかってきても寄せ付けなかったランサーの力は本物だ。
しかしそれにしてもバーサーカーは動きが大変器用だ、その上ランサーが幾ら攻撃しても往生際悪く立ち上がってくる。
それも、あのクロスハートのデジモン達の様に。

ランサーが望むのは無論「この聖杯戦争に勝つこと」だ、だが予選が終わり決勝が始まってまだ一日も立っていない。
決勝まで来たのにこんな最初からやられるなど真っ平御免だ。
ならばどうするか、早期決着だ。



◆  ◆  ◆


811 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:36:56 59NEbQBY0



砂浜の岩陰に、エレンは隠れながらバーサーカーとランサーの戦いを伺っていた。
だが今のエレンの眼にあるのは、「恐れ」だ。
まさかバーサーカーの翼が破壊されるとは思いも見なかった。
エレンのサーヴァント、バーサーカーは本当に強い。
その飛行能力と卓越した銃術と剣術は負け知らずであった。
だが今はそのバーサーカーが押されている。

アニが戦闘力の低いエレンにやられかけたように、どんな強い物でも、所詮無敵ではない、ということなのだろうか。

「彼奴に、無理をさせちまったのか……俺は……。」

エレンには何も出来なかった。
立体機動装置は置いてきた、そもそも刃やガスのスペアがない以上意味を成さないだろうが。
いや、エレンには「巨人の力」がある。
だが、その巨人の力を安易に使ったらどうなる。
もしかしたらエレンはまた暴走し、聖杯戦争どころではなくなるのかもしれない。
サーヴァントにうなじを裂かれる可能性だってある。
それが、エレンのバーサーカーへの「無意識」への甘えとなっているのだが、エレンはそれを知っているのだろうか。

だがともかく、エレンがバーサーカーに無茶をさせたと思い、引き返そうとしたのは確かだ。
自分は無暗に走り過ぎた、功を焦らせすぎたと省みながら。

(早く、バーサーカーを連れて此処から……)

「見つけましたよ。」

とその時、背後から声が聴こえてきた。
エレンがハッと振り返った所には、「黒い男」がいた。
だが赤い丸だけがあるその顔は異様で、且つ全身は黒い鎧で纏われている。
如何にもサーヴァントという様な格好だが、しかしステータスは表示されない。
もしかしたらマスターなのか。
そしてその黒い男に、エレンは強い視線を向けて問いただす。

「お前は、マスターなのか?」
「だからこそこうして貴方を探していたんですよ。
ご名答、僕はこの聖杯戦争のマスターの1人であり、貴方のサーヴァントが戦っているであろうランサーのマスターですよ。」

黒い男、能美征二は、ランサーからの念話を受けてエレンを探していた。
ランサーはしかし強いが、やはり早期に決着を付けたいという思いがあったのだろう。
彼は慎重な面もあるが、しかし早々に敵を減らし優勝に近づきたいという思いもあった。
故に逃がしたマスターを探しだし、バーサーカー諸共消滅させようという作戦に入ったのだ。
エレンの顔は既にランサーに知られている、なので身体的特徴を教えてマスターに殺させるのは簡単だった。

「しかし、昼間は近辺に遊び相手がいなかった物ですから随分とつまらなかったですよ。
マスターは見つからず、結局偵察の成果はゼロ。
そして焼け石に水と言う事を前提にこうして夜の街を歩き回っていたら、出会ったのが貴方。
実に幸運ですよ僕は、こうして貴方を踏みにじり、奪い取り、敗者に貶めることが出来るんですからねぇ!!」
「ッ……テメェ………。」
「ハハハッ、何ですかその吠え面は?まるで負け犬ですよ。」

饒舌にそう語りながら、能美は右腕から出現させた紫色の光の鞭を、レイピア状の形に変える。
恐らくはそれでエレンを切り裂くつもりでいるだろう。

憤怒の表情……彼の言う「吠え面」をしたままエレンはそれを見ていた。

「しっかし呆気無い物ですねぇ、こうして反抗的な顔を浮かべている癖に、今の貴方には為す術が何一つ無い。
結局貴方の強みはあのバーサーカー程度の物だったのですよ、でもそのバーサーカーももう直死ぬ。
僕に剣を向けられた貴方の命は最早風前の灯火、僕から見れば蟻も同然ですよ。」


812 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:37:14 59NEbQBY0
尚も余裕を見せ喋る能美を尻目に、エレンは思考する。

(どうやってくぐり抜ければ良いんだよ……)

エレンには武器がない。
だがこの黒いマスターには武器がある。
となれば避けることも逃げることも正面突破も……?

(いや、武器ならまだある……『巨人の力』なら……)

「巨人の力」それなら、この黒い男から潜り抜けることが出来る。
確かに暴走するリスクから目を背けられない、だが、それと自分の命と周囲への被害及び己の理性。
どちらを賭けるとしたら、無論前者だ。
死ぬよりは遥かにマシな選択だ、そもそも巨人の力だってこういう危機において使ってきた力ではないか。

そう決断したエレンは、直ぐに令呪のある手を自分の口に持ってくる。
そして一息付いた後口を大きく開く。
「巨人の力」というのは、自傷行為によって作用される。
エレンの場合は、大きな衝動とともに手を噛み千切る事が発動のキーとなる。
そして今、そのキーをエレンは発動するつもりでいるのだ。

「やれやれ、どうするおつもりですかな?」
「悪いな…俺は此処で―」

手の親指の付いている部分がエレンの口に近づく。

「少々お喋りが過ぎた様ですね、それでは、さよ―」
「―死ぬわけには行かないんだよ!!」

能美が剣を振りかざし、エレンが今だ、と思い手を噛もうとしたその時である。
突如小さな「何か」が、能美の剣を弾いたのだ。

「なっ!」
「!?」

二人が目で追った先には、ある奇妙な「何か」があった。
二足歩行で動いていると思わせるその二本の足。
そして竜を思わせる顔と胴体。
まるで「トカゲ」を思わせる形状だが、しかしシルエットは明らかに鶏と大差ない。
二足歩行のトカゲなどいる訳もないだろう。

「邪魔だぁッ!」

能美はそう言うと、そのトカゲを斬ろうとする。
しかし、今度は左右の方向に全く同じ姿をしたトカゲが出現、翡翠色の光弾を吐いた。
能美はそれをも直ぐ様に避けるが、しかし其処に新たなる第四撃が襲いかかる。

「ハァッ!」

その不意を付いた突然の剣撃に能美は弾かれる。
其処にいたのは、片刃剣を手にとった騎士であった。
能美のアバター、「ダスク・テイカー」同様その紫色の鎧は夜に紛れている。
されどその兜はまるで狼、獰猛たるその顔には牛の如き角が付けられていた。

そしてこの騎士はサーヴァントだ、エレン、能美の両者の眼にステータスが映っていることが何よりの証明だ。
その実力からしてセイバー、もしくは三騎士に当てはまっているのが妥当ではあろうが、しかしその予想は裏切られた。

「…キャスター!?」

能美は目を疑った。
キャスターといえば基本的にパラメータが低いサーヴァントだ、拠点に籠ってこそ真価を発揮する。
だがこのキャスターは鎧を纏い、剣を手に取っている。
パラメータも明らかにセイバーのクラスに相応しい水準だ、こんな魔術師など聞いたことがない。
そしてそのキャスターは、其処にいた3体のトカゲの様なメカに目を向け、命令を送る。

「よくやったお前ら、危ないから早く引き上げるんだ。」

その命令に応え、3体のメカは其処らに散っていった。
それを確認したキャスターは再び剣を能美に構える。


813 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:37:33 59NEbQBY0
「ウォォォッ!」

エコーの効いた叫び声を放ちながらもキャスターは能美にフェンシングの様に剣を突く。
能美も触手を変化させた剣でキャスターの剣を受け流そうとする。

「うっ!ぐぅっ!」

だがキャスターの剣術は能美を遥かに凌駕している。
彼も一応は剣道を齧った身ではあるが、しかし眼の前の剣士の腕前は剣道という枠組みですら到底抑えきれない程に達している。
最早人外の域に入りかけていると言いたくなるほどにだ。

「ハァッ!」
「ぐはぁっ!」

キャスターの一突きが、能美を数メートル先にまで飛ばす。
能美には、触手を変化させて剣を防ぐ、という手もあったはずだ。
だがキャスターの剣はそんな機転さえも与える時間はくれなかった。
彼の剣の速さはあの時戦ったシアン・パイルやシルバー・クロウと同等以上とも言えるだろう。
あの3体のトカゲらしきメカは、キャスターの使い魔と言って差し支えない。
キャスターらしく歩兵もきちんと調え、その上本人も剣術に精通しているという。
そんな芸達者な連中は加速研究会のメンバー以来だ。

(随分と器用な奴だなぁ……)

赤いマスクの下で能美はギリギリと歯ぎしりをする。


◆  ◆  ◆


彼等の戦いをエレンは見つめていたが、その時近くにある岩の影から、エレンと同年代ぐらいの1人の少女が姿を表す。

「おーい!そこの貴方ー!迷子なら此方で受け付けますよー!」

からかっているような笑顔を浮かべ両手でメガホンを作り叫ぶ少女……柊シノアはニヤリと笑い手の甲にある令呪を見せびらかす。
能美はキャスターとの戦いで気づいていない、だが気づいたエレンは彼女のいる方に視線を向ける。

「誰だよアンタ、マスターか!?」
「ええビンゴです、しかし貴方の敵と言うわけではありませんからご安心を〜。」

掴みどころのない態度を取るシノアに対し、エレンは眉間に皺を寄せる。
それもそうだろう、突然ひょっこりと出てきて令呪を見せるなんて挑発行為にすら見えるし、何より自分の正体を露見させているも同然だ。

「あ、あのキャスターのマスターだと言ったら信用しますかねぇ?まぁとにかく、生き残りたいのなら此方に付いて来てください。」

エレンはそれを聞き、訝しみながらもシノアの後を着いて行く。
こんな状況では、他者を一旦信じてみるしか無い。

「……分かったよ!」

そう考え、エレンはシノアの後を追った。


◆  ◆  ◆


814 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:38:15 59NEbQBY0
「う……くっ……。」

だが地に伏した能美は直ぐに立ち上がり、爪状に変化させた触手を構える。

「ハァ、ハァ……見くびっていましたよ、キャスター。」
「力量と修練の差です。」

確かにキャスターの言う通りだろう。
彼が生涯かけて培ってきたその力は、能美であろうと到底及ばない。
だが能美には、「フィジカル・バースト」という切り札がある。
バーストポイントを通常の5倍消費して発動する、「自身の肉体を限定的に動かす力」
剣道で見せたその力はかなりの物だ、並の雑魚なら寄せ付けないだろう。
だがブレイン・バーストがない以上ポイントの補給場所は絶たれた。
その上加速世界には移動が出来なくなっている、ならばエネミー退治でのポイント集めは不可能。
だからこうして限られたポイントを温存しておく必要がある。
ロールでふんだんに使っているとはいえ、こんな所で5ポイントも使っていいものだろうか。
だが死ぬぐらいなら使っておいた方が良いだろう、しかしそんな物を使って、この三騎士に勝るとも劣らぬキャスターの武技に勝てるのだろうか。

それはとても難しい話だ、こうなれば引き上げるほかない。
勝利を絶対とする彼にとっては度し難い方針だが、だからと言ってプライドに突き動かされるままに暴れるほど彼は馬鹿ではない。
だがその時、待ってましたとばかりにランサーから念話が聞こえて来る。

『セイジ君、たった今バーサーカーが逃げた直後だ。
魔力もかなり使った、我々がこれ以上此処に留まる必要もないだろう。』

そう考えると、あのバーサーカーのマスターも逃げたと言う事になるのか。
確かに辺りにはいなさそうだ。
それにこのキャスターを相手にしている暇はない。
ランサーを此方に向かわせる手もあるが、魔力をかなり使ったとなればランサーもランサーでかなりの消費を強いられることになる。
そうなれば、やはり撤退と言うことになるのだろう。

『了解だよランサー、霊体化して撤退だ。』

ランサーに念話で命令した直後、能美も直ぐに行動に移る。

「……この勝負、お預けにしますよぉ!」

能美はそう叫ぶと、海岸の更に陸側に向かって連続でジャンプし素早く姿を消す。
その闇に溶け込みそうなカラーと相俟って、能美の姿は直ぐに視認できなくなった。

「よし……これで敵は追い出せた。」

彼がそう言った直後、キャスターの身体を守っていた具足が幾つものパーツに分解され上空へと飛び散っていった。

キャスターの宝具「閃光騎士・狼怒」
不死の魔物ホラーを討伐する魔戒騎士の称号が1つにして、キャスターがそれとともに受け継いだ鎧。
その力と剣術は、例え相手が凄腕ゲームプレイヤーのアバターであろうと冴えたままであった。

能美が去った事を確認したキャスターは、一息付いた後回れ右をして霊体化をした。

それと同時にキャスターが目を向けていた方向に向けていた方向に、先程其処らに散って隠れていた3体のメカがぴょんぴょんと飛びながら移動していく。
彼等こそ「号竜」、キャスターのサーヴァント、布道レオの偉業とも言える人工的な魔戒獣なのだ。

そしてこの海岸からはまた皆が姿を消し、ここから流れる音に剣撃の音ではなく、元通り波の音のみとなった。


815 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:38:37 59NEbQBY0


【C-1/海岸/1日目 夜(20:15)】

【能美征二@アクセル・ワールド】
[状態] ダスク・テイカーに変身、若干の負傷
[令呪]残り4画
[装備] 触手、パイロディーラー、火炎放射器
[道具] ニューロリンカー
[所持金] 貧乏(中学生の小遣い)
[思考・状況]
基本行動方針:勝利する。
2. キャスター(布道レオ)に若干の警戒
3. 敗北して逃げる羽目になったことにイライラ
4.学校でマスターが見つかり次第直ぐに貶め殺すつもりでいる。
5.取りあえずは帰宅する。
[備考]

・キャスター(布道レオ)の宝具を確認しました。
・予選においてあるマスターから令呪を一画奪い取っています。
・彼のバーストポイントの残り残数に関しては後続の書き手様にお任せします。




【ランサー(スカルナイトモン)@デジモンクロスウォーズ】
[状態] ダークナイトモンにデジクロス、魔力消費(中)
[装備] 槍、ビッグアックス
[道具] ダークネスローダー
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針: 勝利する
1. 基本的に能美に協力するつもりでいるが、状況によっては代わりのマスターが見つかり次第始末する可能性もある。
2. 狂戦士にしては随分と小回りの効く奴だったよ……
3.魔力が持たないので直ぐにクロスオープンする。
[備考]

・バーサーカー(シン・アスカ)の宝具を確認しました。
・宝具を連発したことにより魔力をそれなりに消費しています。



◆  ◆  ◆


816 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:39:23 59NEbQBY0
とある小さな公園のベンチに、エレン、そしてシノアは腰掛けていた。
眼の前にある砂場では、先程実体化したキャスターが使い魔の頭を撫でていた。
しかしあの狼頭の甲冑は纏っておらず、今では黒いコートを纏った青年の姿をしている。
あの時は鎧騎士の姿だったのにそれを「私のキャスターです」なんかと言われて頭に疑問点が浮かんでしまったが、今では直ぐに解決している。

あのマスターとの戦いの後、エレンはシノアに連れられて此方の公園に来た。
マスターにしては随分と土地勘のある人物だなとエレンは思った。
丁度落ち着いてきた所で今、エレンとシノアは話し合いをしている。
無論デートの話とかそういう訳ではない、彼等は本当に真面目な話をしているのだ。

「俺と同盟を?」
「ええ、その通り。」

確かに同盟はいい話だ。
巨人との戦いにしたって、1人で駆け抜けられるような物ではない。
それは聖杯戦争でも変わらないのだろう。
だがエレンには1つ気がかりなことがある。
早速それをシノアに問う。

「そういや、何で俺がここにいるのが分かったんだよ?」
「それは僕から説明いたします。」

その時、砂場で使い魔を撫でていたキャスターがこちらを向いてスクッと立ち上がる。

「とても不快に思われるかもしれませんが、貴方の居場所を察知したのは、これのおかげです。」

そう言いながら、キャスターは黒いコートにあるポケットにゴソゴソと手を突っ込み何やら板が括りつけられた小型の弓状のアイテムを取り出す。
そしてそれをエレンに見せる。

「これに術を掛けることにより、光の玉の様な使い魔を呼び出すことが可能です、エレン君、貴方も、こうして見つけた1人なんです。」

実際は、号竜にカメラの様に視覚を共有する術式をかけてアチコチを徘徊させて発見したのだが、その号竜での探索は行っていない。
サーヴァントとなった事で号竜を作成するスピードは格段に上がったが、しかしサーヴァントに号竜を破壊され残骸を持って行かれた一見で考えは変わった。
他のマスターに持って行かれて号竜の仕組みを解析されることを未然に防ぐことと、むざむざ使い魔を無駄死にさせるわけには行かないという事だ。
それに号竜はキャスターにとっては自分の子供のような存在だ、壊れるのは何より辛い。
だからこうして、自分の前で戦わせるのが方針になった、そもそも号竜は戦闘用に作られたのだから、理に適っている。


817 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:40:13 59NEbQBY0


「しかし、僕の実力では、到底マスターを勝ちにいかせるのは難しいです、何せ……。」
そこをシノアの言葉が遮った。
「火力がありませんからね…」
「ッ……マスター、あまりそこまでキッパリと言わなくても……。」

キャスターが困った表情をしているのを尻目に、シノアは話を続ける。

「其処で私は同盟相手を探していました、まずは火力が優れていて、何より此方と同盟が結びやすい仲間を。
その運命の相手が……貴方だったんですよ〜エレンさん。」

シノアが探していた同盟相手は、まず此方との相性、そしてキャスターの火力の低さを補えるほどの強い実力を持つ者。
それにまず合いそうなのが、余分な魔力に乏しく且つ洗練されたパラメータを持つバーサーカーのマスターだ。
しかしそれに合うマスターの殆どは気がついたら予選で倒れ、彼を除き現在明らかになっている百夜ミカエラはこの通り言う事を聞いてくれそうにない。
しかしエレン・イェーガーはその限りではなかった。

まず見た所、予選において彼のバーサーカーは強い実力を持っていた。
シノアの世界では絶滅危惧種となった銃火器を難なく使いこなす鋼鉄の巨人。
少なくとも純粋な戦闘力においては相当な実力を持つ。

「確か、エレンさんには魔術に関する心得と情報が無いんでしたよねぇ?」
「ああ、そうだけれど……って、何で知ってんだよ!」
「貴方がバーサーカーの背後で見ている映像を確認し、貴方が周りを探索することばかりしかしていないのからして一目瞭然でしたよ〜。
あ、大丈夫です、入浴シーンとかは全く見えてませんから〜アハハ〜。」

それを聞き、エレンは溜息をついた。

(こいつ、相当面倒くせぇ……)

多分ハンジ隊長と同じタイプの人間なのだろうか、とエレンは思った。
そしてシノアがまた話を続ける。

「それに、此方も勿論、交換条件は持ってきていますよ。
今同盟を結べばぁ〜……なななななぁ〜んと!他のマスターの情報をもれなくプレゼント!
お値段は、無料、無料です!仲間と女の子が同時に出来た上に情報が無料で頂けます!
お客様、これを逃す手はありませんよぉ〜!」

(同盟か……)

エレンはそれについて考える。
使い魔でストーキングされた、ということを聞けば彼女が余計怪しく見える。
今なら情報が手に入る、とシノアは言っており、その上先程は自分を助けてくれた。
ならばその恩返しもしなければならないし、死ぬリスクが減る。
そして何より、仲間がいるというのは本当に心強い。
エレンの考えはこれで纏まった。

「分かった、同盟を組むよ。」
「その言葉を待っていましたぁ〜!宜しくお願いします。」

エレンははにかんだ笑みを浮かべ、相も変わらず達観した笑顔を浮かべているシノアに返す。
これで、同盟は成立した。


818 : 無秩序な切っ先 ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:40:44 59NEbQBY0
【C-4/公園/1日目 夜(20:25)】

【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、願いを叶える。
1. シノアと手を組む。
2. 取り敢えず帰宅する。
[備考]

・キャスター(布道レオ)の宝具を確認しました。
・夢の中に出てきた少年がバーサーカー(シン・アスカ)だとは気づいていません。



【バーサーカー(シン・アスカ)@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
[状態] 宝具の翼を損傷、魔力消費(中)
[装備] デスティニーガンダム
[道具] デスティニーガンダムの装備一式
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針: ■■■■ー!
1. ステラァァァァァ……
2.
[備考]

・翼をランサー(スカルナイトモン)に破壊されました。宝具の特性上修復はされますが、時間はかかります。
・柊シノアと同盟を結びました、連絡先の交換は後程行うそうです。



【柊シノア@終わりのセラフ】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備]四鎌童子
[道具] 呪術関連の道具を幾つか
[所持金] そこそこ裕福
[思考・状況]
基本行動方針: サーヴァントを全て倒し、優勝を目指す。
1. エレンとの同盟の成立が完了!
2. ミカさんに対する警戒、一応仲間の家族なので出来れば和解したい。
[備考]

・エレン・イェーガーと同盟を結びました。
・幾つかのマスターの情報を所持していますが、詳細に関しては後続の書き手様にお任せします。



【キャスター(布道レオ)@牙狼-GARO-〜MAKAISENKI〜】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] 魔戒剣、魔導衣
[道具] 号竜×3、その他多くの魔導具
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを護る。
1. 取り敢えずは術による偵察と、号竜の作成に専念する。
2. あぁ、号竜で偵察なんてしなきゃ良かった……
[備考]

・号竜を3体程連れています。
・マスターに提供してもらった柊邸の地下室に、大量の号竜が置かれています。
・1体の号竜の残骸がケイネス・エルメロイ・アーチボルトの手に渡っています、号竜の仕組みが流出する危険性も十分にあります。


819 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/02(火) 20:41:45 59NEbQBY0
以上で今回分の投下は終了です。
残り2組に関しては後日投下しますので暫しお待ち下さい。


820 : 名無しさん :2016/08/02(火) 21:15:42 M2lr/k0.0
前半投下おつー
おお、いきなりの大型同士の対決は意外にもダークナイトモン側に軍配が上がったか
やはり狂化や立体機動装置などの紛失で本領発揮できないのは痛いか
能見もダスク・テイカー化は正体も隠せて便利だよな
言われてみればエレンは終わりのセラフの主人公に似たとこあるしシノアは苦手かーw


821 : 名無しさん :2016/08/03(水) 17:29:51 HrBfHljwO
投下乙です

スカルナイトモンは見た目特徴有り過ぎだし、だったら真名バレで最も警戒されるであろうダークナイトモンを出し惜しみしてもしょうがないよね


822 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/04(木) 15:20:08 ljUPE3O60
先程、アサシン(大道克己)のステータス表に、26本のT2ガイアメモリの能力表を追加しました。

ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/150.html

本来ガイアメモリの能力の全体的な把握には克己が登場していない「仮面ライダーW」本編の把握が必須ですが、
たかが能力の為に49話視聴するのは苦かと思われますので、それを省略できるようにと考え貼らせていただきました。
能力の描写に関しては出来るならばやはり本編で確認するのを推奨いたしますが、それ程強いることでも無いので各々の妄想で十分構いません。

また、「オーシャン」「クイーン」のメモリは劇中未使用なのでどんな描写かは各々の想像で構いません。


823 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:36:38 nK92lkYg0
投下します


824 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:37:31 nK92lkYg0
聖杯戦争開始一日目。ある者達は始まった戦いに備え、ある者は獲物を求めて徘徊する。
そんな面子の中で、偽りとはいえ変わらぬ日常を過ごす者達もまた存在した。

(良い、笑顔です)

本来なら二ヶ月前に決まっていたデビューが流れたにも関わらず、挫けることなく笑顔で、更なる努力を誓った卯月は本当にシンデレラの名に相応しいと思う
夜が更けるまでレッスンに励んでいた島村卯月を、自宅まで送ったプロデューサーは、別れ際の卯月の笑顔を思い出して心中呟く。
大方、聖杯戦争に関するのであろう、昨今の不穏な世情を抜きにしても、少女を一人で夜道を歩かせるわけにはいかない。
卯月の笑顔は、NPCであるにも関わらず心に残る。あの笑顔を大切に思うプロデューサーは、彼女に聖杯戦争の巻き添えで傷ついて欲しく無い。
尤も、こうやって卯月を送ることで、マスターである自分と接触があることが知られるのは好ましく無いかもしれない。
しかし、だからと言って、一人で帰宅させる訳にもいかないだろう。
変質者は自分の外見を見れば逃げるし、それでも手に負えない相手は、上空で周囲を警戒しているアサシンが対処するだろう。
聖杯戦争が終わるまで、プロデューサーは卯月を送迎する事を決め、卯月の両親にも告げていた。

─────こんな状況下では、島村さん一人だけの現状は、かえって良かったかも知れません。

何しろ全員の送迎は大変などというものでは無い。些か寂しくはあるが、護りやすさという点では今の方が望ましい。
この世界の何処かにシンデレラプロジェクトのメンバーや、346プロダクションのアイドル達が再現されているかもしれないが、神ならぬ身では知る由もない。
─────という事は無い。
この世界でも高垣楓や城ヶ崎美嘉はトップアイドルとして活躍していたし、事もあろうに卯月のデビューが流れたのは、此処に来る直前にプロデュースした“アスタリスク”が大手プロダクションから卯月のデビュー時期に重なってデビューした為だった。
幾ら何でも、大手プロダクションのプッシングを受けてデビューするユニットに、対抗する術は無く、卯月のデビューの時期をずらす事になった。
この時一番面倒だったのは、ファントムを宥めることだったが。

─────後日起きた殺人事件が気になって仕方が無いが。証拠は無いし、面と向かって聞く機会が無いので放置しているのは仕方ない。しかし早いうちに晴らしておく必要がある疑念だ。


そこまで考えた処で、付近の学校から爆発音が聞こえてきた。


825 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:38:15 nK92lkYg0
美樹さやかは夜の学校の中庭に居た。別段に夜歩きをしているわけでは無い。
元いた世界で魔法少女の先輩であった巴マミ。そのマミが同じ中学の先輩であった事を鑑みれば、学校にマスターが居るかも知れないとさやかが考えるのは無理もなかった。
その事を自身のサーヴァント、ラゼィルに相談したところ。

【陣地作成スキルを用いて、学校に布陣しましょう】

との答えが返って来た。
ラゼィルの作成する陣地は、ラゼィルとその仲間の力を増す効果が有るという。もし仮に学校で戦う様な事になった場合、さやかは決して負けるわけにも、退く訳にもいかない。
学校にはNPCとは言え、まどかや仁美がいるのだから。
其処を踏まえれば、学校での戦闘に有利になる様に備えておくのは悪く無い考えだった。無駄な備えとなれば良いが。
かくしてさやかはラゼィルと共に夜の学校に忍び込み、学校の敷地内をラゼィルの陣地としつつ、他にマスターが居ないかどうかを調べていたのだ。

さやかからの相談に応えた時のラゼィルの本心は、マスターの眼を誤魔化す手立てを講じずとも、“狩場”を人の多い処に設置出来る。というものであったとは、さやかは夢にも思うまい。
“狩場”の効果で強化された龍骸装“凄煉”を昼間に校舎に撃ち込めば、逃亡を許さぬ性質と相乗して、校舎内の人間全てを“餓えし混沌の君”への供物とできるだろう。供物の中に他マスターが居ればなお結構。

そんなラゼィルの心中を察することなど到底できぬさやかは、ラゼィルの作業が終わったと見て話しかけた。

「どうだった、キャスター。他にサーヴァントの居た気配は有った?」

「やはり人が居なくなってからでは、皆目見当もつきません。人が居る昼間に探ればまだ判るのですが」

流石にサーヴァントが校舎にいたとしても、霊体化した上で、何もしなければ、その痕跡を掴むのは難しい。
実際に『居る』ならまだしも、『居た』では発見はまず無理である。

「そうか、ならばサンタからのプレゼント。他のサーヴァントのいる場所の情報だ、ありがたく受け取れ。因みに居る場所はお前達の後ろだ」

不意に背後から聞こえた、此処にいるはずの無い三人目の言葉。

「サーヴァント!?」

愕然とさやかが振り向き。

「一応そちらのクラスも聞いておこうか」

ラゼィルが素手のまま、ゆっくりと振り向いた。

「サンタさんがライダー以外のどんなクラスに適応するのか、教えて欲しいものだ」

そう宣う淡い金色の瞳と髪の少女は、確かにサンタと言えばサンタの格好をしていて、何かが詰まった袋を持っていた。衣装の色は黒いけど。漆黒の剣を手にしているけど。

「いや、キャスターでしょ!アンタ」

マスターとしての能力で、自称サンタの少女のクラスを見たさやかがツッコミを入れる。この格好でこの言動。キャラが立ちすぎだろうとさやかは思った。

「キャスターという在り方は封印した。私はトナカイというマスターに乗るライダー。聖杯戦争に現れた一陣の烈風に過ぎない」

そうドヤ顔で言ってのけたナーサリー・ライムにラゼィルが無手のまま一歩を詰める。

「用件を聞こうか」

「こんな夜中に学校に忍び込んで、悪戯する悪い子に、お仕置きをしに来た」

【マスター、彼女のステータスを見て頂けますか】

【敏捷でこっちが優ってるけど、それ以外は向こうが上か互角。合計は向こうが上】

【彼女の属性は?】

【秩序・善…だけど】

ラゼィルは心中ほくそ笑んだ、この相手のステータスと属性なら“狩場”の中で戦えば負けはしない。

【キャスター……戦いになったら勝てる?】

【布陣は終えました。早々引けは取らないでしょう。戦いになったらマスターは事前の打ち合わせ通り、姿を隠して敵マスターの捜索を】

“狩場”でさやかを戦わせないのはラゼィルの基本方針である。この陣地はラゼィルとその同胞のステータスに+の補正を付けるが、此処で言う同胞というのはグルガイアの信徒を指す。
要するにさやかには何の恩恵も齎さない。その事がさやかに知られない様にする為、さやかを遠ざけるのだ。

そんなラゼィルの思惑を知らず、素早く念話で行動を取り決めた後、さやかは説得を試みる。
さやかの狙いは聖杯の破壊と主催者の打倒。優勝狙いでは無い為に、積極的に他の参加者と殺しあう理由は無い

「私達は……」

さやかの声を合図としたかの様に、サンタは地を蹴り、20mは有った距離を、刹那の間に零にした。


826 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:38:53 nK92lkYg0
ナーサリー・ライムは考えた。
遂に本戦始まった。はてさて困ったどうしよう。

方法としては戦わないで隠れ潜むか、若くは積極的に打って出るか。
同盟を組むという手もあるが、組むにしても、信用できる相手は居るのか?
欲得に狂った者なら、素知らぬ顔をして盟を結び、平然と寝首を掻きに来るだろう。
ありすの戦闘能力は皆無である。故に信の置け無い相手には近づいて欲しく無いし、近づきたく無い。

ナーサリー・ライムは考えた。
守る為にはどうすれば、はてさて困ったどうしよう。

考える事暫し、今の彼女の思考は、ブリテンの騎士王の其れ。己が力と剣で以って、全ての困難と敵を退けた常勝不敗の王の精神と思考を持つ。
取り敢えず外を見て回って危険そうな手合いは排除。話せそうな奴とは話をしてみる。
そう結論づけたナーサリー・ライムは、眠っているありすを置いて外に出た。
先ず目指すは学校。ありすが一日を過ごす場に、ロクでも無い仕掛けが施されているかも知れない。
そんな事が有れば、予め対処しておくのも己の務めだろう。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

振り下ろされる無音の剣撃を、ラゼィルは僅かに下がって回避する。
剣が眼前を過ぎた後、遅れて刃鳴りが聞こえた時には、既にサンタはラゼィルの腹目掛けて突きを放っていた。
凡そ人体の中で、最も可動せず的も大きい為に攻撃を回避しづらい腹部を攻撃し、動きが止まった処で仕留める算段なのだろう。
確殺を期するが故の、致命にならない第二撃目。ラゼィルはこの敵が、剣技に於いて卓越しているのみならず、人を殺すという事に精通している事を悟った。
高いステータスにこの剣技と知識、紛うこと無き強敵だ。聖杯戦争でも小細工抜きの殴り合いなら最上位に位置するであろう剣士にいきなり遭遇したらしい。
だが此方も、殺戮を技芸として嗜み、芸術の域にまで昇華させたダークエルフ族の中でも、生きながらにして伝説となった比類無き戦士。
凡そ力や速さで劣るとも、“混沌の英雄”であるラゼィルには、“人を殺す”ということに於いて、獲得した知識と費やした研鑽と積み上げた経験は、この地に招かれた英霊共の誰にも負けぬ自負が有る。

「─────ッッ!?」

驚愕の表情を浮かべて自身の間合いの外まで飛びすさるサンタ。ラゼィルが予め影に変えて右袖に忍ばせておいた1m20cm程の長さの槍『群鮫(むらさめ)』を実体化させ、サンタの口を狙って突いてきたのだ。
腹を刺された処で致命傷にはならない。だが、後頭部まで貫通する勢いで口に槍を突き込まれれば、脳幹が破壊されて絶命する。
サーヴァントと化して回復能力と耐久力が生前より向上しているとはいえ、こんな手を使う者が居るとは、サンタは全く想定しておらず、不意を突かれて大きく体勢を崩してしまった。
実際にはラゼィルは胴着の強靭さも計算に入れていたのだが、サンタには解らない。

「クッ!?」

群鮫の長さにラゼィルの腕の長さを加えれば、サンタの間合いの外から攻撃することが可能になる。サンタはラゼィルが槍の間合いの広さを活かしてくるものと予測したが、ラゼィルは再びサンタの予測の外を行った。
左の袖口から三枚の柳葉状の手裏剣を取り出すと、サンタの右肩と腹部に投擲してきたのだ。
右手一本で剣を持つサンタが、剣で受けるのが最も困難な右肩と、身体を動かして回避するのが最も困難な腹部への同時攻撃。殺すのではなく、戦闘能力を奪う為の攻撃は、『当てる』事に重きを置く為に、受けも回避も困難。

それを裂帛の気合と共に左手の袋を振り回して撃ち落とし、サンタはそのまま後ろに飛び、30m程の距離を取る。
己が相手にしているキャスターは、己と同じくキャスターとは思えない戦技の使い手。その戦い方も変幻自在で掴み難い。一旦距離を置いて仕切り直す事を選んだのだ。


827 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:39:29 nK92lkYg0
そうして改めて長身痩躯のキャスターと向かい合って─────居ない。
キャスターもそのマスターも姿が見えない。
愕然とするサンタ─────不意に首目掛けて飛来した刃を叩き落とせたのは、優れた直感スキルの賜物だ。

「ターキーにしてくれる!!」

魔力放出を用い、手裏剣が飛んできた先に有る樹木にサンタは瞬間移動じみた速度で跳躍する。
勢いのまま横薙ぎに剣を一閃。剣身が触れた瞬間、幹は爆発したかの様に爆ぜた。
其処に立っていたのが樹木ではなく鋼鉄の柱で有ったとしても、同じ結果で有ったろう。其れ程の斬撃だった。

「─────ッッ!?」

咄嗟に跳躍しなければ、サンタの両脚は足首の処から斬り離されていただろう。上空20mの距離から見下ろせば、奇怪な紋様が施されたマントを纏い、長さ90cm程の曲刀を持ったラゼィルが、這った姿勢から立ち上がる処だった。
あのマントに姿を隠す秘密があるのだろう。そうサンタは当たりををつけた。
然し今は手品のタネを解いている時では無い。
サンタは上空で殺気の籠った眼でラゼィルをしかと見据え、大きく剣を振り上げて、剣身に膨大な魔力を纏わせる。
剣に纏わせた魔力は街を瓦礫と変える竜巻の如くに荒れ狂い、それ自体が剣身を構成し、漆黒の剣を長大な斬馬剣へと変貌させる。

「イイィヤアアアアアアア!!!」

そして夜気を震わす大音声と共に─────着地した。

自在に動けぬ空中で攻撃に映れば、大きな隙を生むことになる。今までの劣勢は、此方の行動した隙にラゼィルが付け込んだ為。
ならば如何にも行動すると見せ掛けて、ラゼィルを『待ち』の状態にすれば、此方が仕切り直すまでラゼィルの動きが鈍る。

そう考えての行動だったが、巧くいったようだ。意表を突かれ、己の間合いで突っ立っているラゼィル目掛けて、サンタは膨大な魔力を籠めた剣を振るう。

─────卑王鉄槌(ヴォーティガーン)。

巨人が大槌を思い切り地面に叩きつけたかの様な轟音と激震。
これが人の形をしたものが生み出すエネルギーの生んだ結果だと誰が信じよう。
振るわれた刃が、空気を音速を超えて押し出し衝撃波を発生させる。
サンタの横殴りの斬撃を、右の曲刀と左の投槍を交差させて受けたラゼィルは、地面と水平に宙を飛び、先程のサンタの攻撃で半分になった樹に激突。ラゼィルの身体を受け止めた樹は爆散した。

「グオ……」

短く呻いたラゼィルに、サンタが止めの一撃を加えんと刃を振り上げ─────
ラゼィルを見据えたまま剣を右方に振り下ろす。
魔力で生成されたのであろう、振り下ろされた剣の軌跡に沿って生じた漆黒の刃が、地面に溝を作りながら走り─────30m程で不意に消失。
その場所目掛けて、全身に漆黒の魔力を纏ったサンタが剣の切っ先を真っ直ぐ前方に向けて突撃する。

「うおっと!?」

突如として虚空から男が出現した。
卑王鉄槌(ヴォーティガーン)を放った際、発生した衝撃波がある一点だけ不自然にみだれたのを、サンタはその超感覚で感じ取り、攻撃を放ったのだ。
結果、見事に隠れて見ていた出歯亀を釣り上げるに至った。

「初っ端がキャスターとは、ハズレも良い処だと思ったんだがな」

運命の女神は余程争いを好むのか、四人目、サーヴァントとしては三人目になる登場人物の出現だった。


828 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:40:41 nK92lkYg0
二人からおよそ40m程の距離に立つ、白い布を巻いた朱槍を肩に担いだ青い鎧の男の印象は戦士そのもの。勇猛、精悍、不屈、気迫、鋭敏。およそ戦士に求められる全てを併せ持った大戦士。
素手であったとしても千人の勇士を追い散らし、槍でも持てば万騎を撃ち破る。
そう、見るものに思わせるものが有った。


「覗き見とは良い趣味をしているな。狩られる覚悟あってのことだろうな。七面鳥」

「一応クラスを聞いておこうか」

低い声でサンタが恫喝し、淡々とラゼィルが最低限の質問をする。─────

「ランサーさ。狩られる覚悟……ねえ。自分が獲物かも知れないと思わんのか」

飄々とした態度で、然し鋼の如き強さを内に秘めて槍兵が応える。

【キャスター…】

只ならぬ戦況を感じたのだろう。さやかが不安気に念話を送って来た。

【まさか新手が現れるとは】

告げる内容は深刻だが、口調は平然たるものだ。

【私も戦う!!】

【いえ…マスターはそのまま姿を隠して、敵マスターの捜索を】

【……分かった】

ラゼィルはマスターとの念話を打ち切り、新旧の難敵を見据える。
“混沌の英雄”スキルと陣地の効果が無ければ、龍の毛を編んで作った胴着が有ったとはいえ、今の一撃で背骨が砕けて決着していただろう。
それでもかなりのダメージを受けたが、スキル効果で戦闘の継続は可能。あの妙な格好のキャスターが近づいてきたら、不意打ちを見舞うつもりだったが、青い槍兵の登場でご破算となった。
心中に舌打ちすると、ラゼィルは左の槍を影にして袖に収め、右の凍月を構え直す。
こうしている間にも、予め渡しておいた姿隠しのマントを使い、敵マスターを捜索している己のマスターが、敵マスターを捕捉するかもしれない。そうすればまた戦況は動くだろう。


【キャスター…何処…?】

一方その頃、サンタもまた、マスターからの念話を受けていた。

【おおトナカイや、起きてしまったか。ターキーの調達に出たのだが、思いのほかハードワークでな】

【戦ってるんですか?】

【中々手強い七面鳥でな、ああトナカイ。安心して待っておれ、じきに七面鳥を持って帰る】

念話で会話を終えるのを見計らったかの様に、青い戦士が話し出す。

「キャスターのクセに打ち物取って斬り結ぶとは、羨ましいにもほどが有る。」

キャスターとしての現界をした場合、『虐め』呼ばわりされる青い戦士の述懐であったが、言われた二人には到底理解でき無い事であった。

「戯言は良い、祈りは済ませたか。ターキーにしてくれる」

「七面鳥か…あいにくと俺は『鳥』じゃあ無いんでね……まあいいさ。んじゃまあ、ぶちかますかねぇ!!」

青い大戦士は一気に距離を、飛び道具のそれから槍の其れへと詰めた


829 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:41:52 nK92lkYg0
ランサーのサーヴァント、クー・フーリンが、マスターであるケイネスから与えられた指令は二つ。

・他の主従の探索。聖杯戦争に乗っているものが居れば詳細を調べる。乗っていないものが居れば、予め交渉用にある程度の布陣をしておいた廃工場の場所を教え、指定した時間に来る様に伝える。

・絶対に生還する事。無理は決してしてはならない。

この二つで有る。

ケイネスが工房の中に篭るのは、今がまだ序盤であり、様子見の時期である為だが、クー・フーリンにした処でこの方針に異存は無い。
ケイネスの目的は聖杯戦争そのものに挑む事。その為に魔術師としての頭脳と知識を活かすことに全力を傾注しなければならない。
黒幕に真っ向から対立する、ケイネスの方針に対する妨害や刺客こそ、クランの猛犬の望むもの。
望みのものを得る前に、ケイネスの身に何かが起きるのは、できるだけ避けたいのだ。
其れにケイネスの方針を支持した以上、その方針にとって最善とも言えるケイネスの籠城に文句を言える立場でも無い。

─────立ち回りは存外に慎重だな。

交渉用の場所に呼ぶという方針をクー・フーリンはそう評価した。
尊大とも言えるほどにプライドが高い割には、自らの本拠地に他者を招き入れる様な愚を犯さない。
鉄壁と呼んで良い布陣をしたにも関わらずだ。
誇りでは無く虚栄心で動く者ならこんな配慮は出来ないし、思慮では無く蛮勇で動く者ならこんな事は考えもしないだろう。
傲慢で他者を見下している様に見えて、決して聖杯戦争を侮ってはいない。ケイネスの知に於ける優秀性が顕れた指示だった。

交渉の地に選んだ廃工場を陣地化した際、何やら凄まじく嫌そうな顔をしていたのが気に掛かるが。

ともあれ、二つの指令を受けて出撃したクー・フーリンには、ある程度の裁量が許されていて、戦力を調べる為に刃を交えることや、交戦しているサーヴァントの間に割って入ることが許可されている。
ケイネスとしては、ランサーに戦わせるのはもっと後にしたかったのだが、この魂の髄まで戦士である大英雄との良好な関係を保つ為、ある程の譲歩をしたのだ。

そして今、クー・フーリンは受けた指示に従い。ラゼィルとナーサリー・ライムの戦いをある程度見て、そろそろ制止しようとしたところで、サンタに気付かれたのだった。
さて、順当に行けば、此処で戦闘を止めさせ、キャスター二人にケイネスの要望を伝えれば、彼の任務は終わりである。
しかし、登場の仕方が悪かった。隠れて覗き見していたところを見つかったのでは、幾ら何でも此方の言葉を信じてもらえそうに無い。
それに、サンタの剣技を見たクランの猛犬の戦意は、最早刃を交えなければ収まらない程に猛っていた。
そしてもう一つ。己の眼を通して、キャスター達のステータスを見たケイネスから教えられた、ラゼィルの戦力が明らかにおかしい。
スキルか宝具でステータスを向上させているとしか思えない。その謎を解明したくもあった。

─────此処で己が武威を示す事で、キャスター達とそのマスター達に、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトとそのサーヴァントの優越性を示し、ケイネスの指揮権を確立させやすくする。

咄嗟にそんな口実を考えてケイネスに伝えると、クランの猛犬は鎖を解かれた猟犬が、獲物目掛けて飛びかかるかの如くに、戦場へと駆け込んだ。


830 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:42:20 nK92lkYg0
ナーサリー・ライムは心中密かに算段する。
青い槍兵が何時から見ていたかは不明だが、最初から見ていないのであれば、おそらくもう一人のキャスターに向かうだろう。
あのキャスターの戦い方は、一見した限りでは奇手により不意と死角を突くアサシンのもの。
しかしあのキャスターとの最初の攻防。あの時自分の攻撃を僅かな動きで回避すると同時に、致命となる攻撃を精確に放ってきた。
ナーサリー・ライムは、このキャスターは決して奇手に頼るだけのアサシンもどきとは思っていない。練達の武技と膨大な経験に裏打ちされた確かな強さを持ち、その上で奇手を用いて戦う曲者であり強者だと。
だが、このランサーがそれを知っているとは限らない。
知らなければただの曲芸師と思って、あのキャスターを狙うだろう。
ならばその隙に乗じて槍兵を斬る。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

三人目が現れた時、ラゼィルは逃走を考えた。確かに此処を“狩場”としたが、未だ“神楽”の時期では無い。
“神楽”となれば、グルガイアを奉じるダークエルフの戦士達は、己の命を度外視して殺戮の業を振るう。“神楽”で死ねば魂はグルガイアの贄となる、それはダークエルフにとって最上の誉であり喜びだ。
しかし今は“神楽”の時では無い。此処で死んではグルガイアに贄を捧げることは出来ぬ。人の子に崇められ、人の子の歴史に燦然とその名を輝かせる英霊共、そんな至高の贄を捧げぬまま死ぬなどあり得ない。
そう、考えたラゼィルの足を止めたのは、青い槍兵から感じる気配だった。

闇の地下世界に生きる混沌の僕にとって、憎んでも憎みきれぬ生命と浄火の象徴。
地上に生きる者共に、此の上無い恩恵を齎す日輪。其れと同じ気配を槍兵から感じたのだ。

おそらくあの槍兵は太陽神、若しくはそれに連なる神の血を引く。

生前にグルガイアへの最後の供物とすると思い定めて、遂に叶わなかった日輪に連なるものが此処にいる。
その事実の前に退く理由は消し飛んだ。天に輝く日輪に変わり、この男を供物とすると、そう誓ってラゼィルは戦闘を継続する。


831 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:43:51 nK92lkYg0
刹那に距離を詰めたクー・フーリンが、奔る雷火の如く槍を繰り出す。青い槍兵の優越性は“速度”。気付いた時には距離を詰め、気付いた時には槍が身を穿ち、気付いた時には間合いの遥か外にいる。速度を活かし常に主導権を握り、相手に行動の自由を許さない
並のサーヴァントが一撃繰り出す間に複数の異なる種類の攻撃を行い、その全てに必殺の威を持たせられる程に彼の速度は優れている。


サンタが漆黒の剣を遥かな高空から落下してきた巨岩を思わせる勢いで振り下ろし、次いで押し寄せる津波の如き下段からの斬り上げを送る。
サンタの優越性は“威力”。鋼の装甲であろうとも、紙の様に斬り裂いて中の人体を貫き、繰り出される攻撃を武器で受ければ、武器ごと敵の肉体を撃砕する。
先手を取られたところで、繰り出される武器に剣を振るえば、武器を砕けるか、相手の体を崩すことができる。
故にその剣に触れぬ様、を全て躱すしか無い程に、サンタの威力は逸脱していた。


ラゼィルは槍兵の攻撃を捌き、効果的な追撃ができない位置に移動する。次いでサンタの攻撃を、その威力が充分に発揮できない位置で捌く。
ラゼィルの優越性は“知識と経験”凡そ人以上の身体能力を持つサーヴァントと言えど、人以外の形をしているわけでは無い。
その身体構造はあくまで人類のそれと同じ、故に身体がどう動くのかを見て取ることも、何処までしか身体を動かせないのかも、どの辺りから攻撃に最大の威力を発揮し、どの辺りから攻撃の威力が弱くなり、追撃をし辛いのかを、収めた知識と積み上げた屍山血河に基づく経験で知っていた。


他の二人を打ち倒してこの戦場に只一人立つ者となるべく、三者は三様の優越性を存分に活かし、己の全知全能を駆使して相争う。
刃圏に捉えたもの悉くを斬り滅ぼさんとするサンタの剣。
点と面の攻撃を縦横に織り交ぜ、戦場を自在に繚乱するクー・フーリンの槍。
投槍と曲刀を自在に操り、時折何処に触れても鮮血を噴きそうな、剣呑な形状の手裏剣を投擲し、籠手を用いて直接刃を払うラゼィルの戦技。
世の摂理の外に有る暴威と、世の摂理の極限域に有る術技とが、乱舞し、交錯し、激突し、争覇する。


─────これが聖杯戦争ですか。

その様子を卯月の家の前で、アサシンの目を通じて見ていたプロデューサーは只々呆然としていた。
爆発音を聞いた後、アサシンに気配遮断スキルを用いて様子見に行ってもらったのだが、其処では正しく彼が巻き込まれた事態が勃発していた。
只事では無い事態に巻き込まれたのは認識していたが、今見ているものは、人の世の理を越えている。こんなものにいきなり遭遇したら、為す術無く殺されたのでは無いか。
そんなプロデューサーの思いをよそに、戦いはより激しく、苛烈さを増していく。

音を置き去りにして舞う刃は、風を切る音も鋼の激突する響きもさせず無音。にも関わらず剣戟の音が聞こえてくるのは、遥か過去に生じた音が遅れて耳に到達したものだ。
三人の周囲が白昼の様に明るいのは、剣戟と共に舞い散る火花が余りにも多く、篝火の様に三人を照らしているからだ。

其処で行われているのは御伽噺の中の出来事。神話の再現。只人でしか無いプロデューサーには、三人の業の把握どころか、僅かな概要すら見えはしない。

然し、三者が共に『決め』に動いた、その瞬間だけは理解できた。


832 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:44:30 nK92lkYg0
「そらっ!」

瞬きすれば、その間に脛骨を切断する勢いで首を貫き、そのまま首と胴を泣き別れにする勢いで、ラゼィルの喉目掛けて朱槍が奔る。
ランサーの目的は戦う事と、ラゼィルの力を見極める事。故にマスターの意を越えて、全力で槍を振るう。槍に籠めた殺意は紛うこと無き本物。でなければ力を量る事などできはしない。

「祝え」

軌跡に在る空気原子すら撃砕しかねない勢いで、漆黒の剣が唸りを上げて、クー・フーリンの胴を薙ぐ。
展開は大きく異なったし、サンタの推測とは全く異なる理由だが、槍兵は決めの攻撃はアサシンもどきに向かって行った。故にサンタは槍兵を狙う。最初の思惑通りに。
此処でこの二人を斬る。そうすることでマスターの安全をより確かなものとする。
その意思の元に振るわれるサンタの剣に籠められる意思は必殺。目の前に立つ者全てを斬り滅ぼすと、唸りを上げる剣風がそう叫ぶ。


「フゥッ!」

短く息を吐いてラゼィルが動く。
青い槍兵の様な迅さも無く、サンタの様な暴威も無いが、無駄を完全に廃した動きで曲刀が最短距離を通り、槍兵の頭へ落ちる。
喉元へ迫る刃の軌道へ、籠手に包まれた腕を割り込ませて切っ先を逸らし、攻防一体の動きで槍兵を斬ろうとするその動きは、精巧な機械を思わせる。
人には到底得られぬ時間を、殺戮の技の研鑽と研究に費やし、費やした時間を遥かに超える長さの時を殺戮に明け暮れて過ごして獲得した殺戮の技巧。それを駆使するラゼィルの意思は必滅。
この地に招かれた英霊共とそのマスターを一人でも多く。そしてやがては一人残らず“餓えし混沌の君”の贄にするとの意思を、ラゼィルの振るう芸術の域にまで昇華された、ダークエルフの殺戮の業が告げている。

「チィッ!?」

槍を逸らされ、胴と頭に致命の一撃を受けそうになって、クー・フーリンは後ろへ下がる。
クー・フーリンが下がったタイミングを捉え、サンタとラゼィルが同時に動く。
自身の右側にいるラゼィルに向き直り、寝かせた剣をラゼィル目掛けて繰り出すサンタ。左右どちらに逃げても、刃を返す手間無く、即座に追撃に移れる追撃を含んだ一手は、既にラゼィルが先制していた為に中途に終わる。
ラゼィルは左側にいるサンタに、左手で四本の手裏剣を取り出し、自身に攻撃しようとするサンタの隙に乗じ、喉と右肩と腹を狙って投擲する。

「クッ!?」

大きく動かなければ躱すのが困難な喉と腹、剣で受けるのが困難な右肩狙いという悪辣な攻撃ではあるが、受けるのはこれが二度目、迅速に左に跳んで回避する。
サンタが跳ぶと同時にラゼィルは、残った手裏剣をクー・フーリン目掛けて投擲して動きを封じ、自身は後ろに跳ぶ。
こうしてサンタはクー・フーリンとラゼィルの間に挟まれる格好となった。
好機とみたのか、クー・フーリンが朱槍でサンタの胴を薙ぐ。槍の間合いの長さを活かし、点の攻撃である突きでは無く、面を攻撃する薙ぎを選ぶ。其処にはラゼィルだけで無く、サンタの力量を量る意図が込められている。

「ハアアアアッッ!!」

挟撃される不利を悟ったサンタはここで、『魔力放出』スキルを用い、剣に濃密な魔力を纏わせる。
同時に全身から魔力を噴出させて加速、音の速度を遥かに越えて大きく一回転した。
範囲は極小だが、強力無比な竜巻が突如発生した様なものだ。巻き込まれたクー・フーリンが横に射出された砲弾の様に飛んでいく。
槍を手から飛ばされぬ様に自分から跳んだのが、予想外のサンタの暴威により着地を決めることができずに地面に激突するも、勢いを活かして数度回転してから起き上がる。

─────居ない!?

サンタの感じた手応えは一つ。青い槍兵の朱槍を弾いた感触のみ。あのアサシンもどきは何処に─────そんな思考を貫いて、直感が警告を発した。


833 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:45:13 nK92lkYg0
「くっ!?」

第六感に従い地面に身を投げる最中サンタは見た。
大樹の根の如くしっかりとラゼ身体をラゼィルの支える下肢を。
身体を限界まで捩り、充分過ぎるほどに力を蓄えたラゼィルの上半身を。
大きく後方に引かれた右腕に握られた投槍を。
サンタがあの状態をどう脱するかを読んだ上で、予め距離を取り、投槍の準備に入っていたのだ。

サンタが優れた直感を持っていなければ、気づいた時には既に手遅れ。最悪気づく間も無く絶命していた速度と威力で投槍が放たれる。
刹那の差で投槍は、サンタの頭が在った空間を奔り抜け、石突までコンクリの壁に埋没した。

決めるつもりで放った攻撃を躱されたラゼィルも。
致命の攻撃を躱したサンタも。
サンタの暴威に弾き飛ばされたクー・フーリンも。
全員同時に立て直し、そしてそのまま膠着した。
殺気のみが、より熾烈に、濃密になっていく中で、三者は只睨み合う。
誰か一人が早いか遅いかすれば其処を軸に戦闘が続いたのだろうが、全員同時となれば付け入る隙など無く。誰かに向かって動けば他の敵に隙をを晒す。
故に三人共動けなくなったのだが、これはクー・フーリンには好都合。
マスターの意向を伝えると言う、本来の使命を果たす時。


「あ〜、一つ聞いとく。お前等とお前等のマスターに、人殺してまで叶えたい願いは有るのか?」

問われたキャスター二人は妙な事を聞く、と怪訝な顔をしたが、問いに答えるべく口を開く。無論、峻烈な殺気を微塵と緩める事無く。

「我が主の願いは聖杯の破壊と、この戦いを引き起こした者の打倒だ。そして私の願いは私の信じる神に、私の信仰を示すこと。其処に杯など不要」

「トナカイの願いは生還。私の願いはトナカイを生きて返すこと。聖杯に願うまでも無く叶うなら、それに越したことは無い」

「あ〜、うん。それなら俺のマスターの話を聞いて欲しい。俺のマスターはこの聖杯戦争の打倒を考えていて、その為に仲間を集めている。お前等にとって悪い話じゃ無い筈だ」

「確かに悪く無い話だが、それを信じろと?」

「お前が言うか?アサシンもどき。此処で何をしていたかまだ答えを聞いていないぞ」

「私の主は此処の関係者だ。故に此処で事が起きた場合に備えて布陣していた。何しろ人が多く集まるからな。大体答えるも何も、主が話す前に斬り掛かられてはな」

そっぽを向いて黙るサンタ。

「まあサーヴァントが勝手に決めて良い話でもなし、マスターと相談して決めろ。こっちのマスターと会う場所は俺が案内しよう、また此処に集まれ、集合時間は……」

「明日の今と同じ時間で構わないだろう」

ラゼィルが言うとサンタも頷き、サンタは己がマスターの許へ、ラゼィルは校舎に刺さった群鮫を回収しに、ランサーは新たな主従を求めてその場から立ち去った。


834 : 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」 ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:46:03 nK92lkYg0
【C-6/学校周辺/1日目 夜(23:37)】

【美樹さやか@魔法少女まどか⭐︎マギカ 】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] ソウルジェム(濁り無し)
[道具] 姿隠しのマント×2。一枚は効果切れ
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をゆるさない。聖杯を破壊して二度とこんな事が出来ない様にする。恭介やまどかの居る世界に帰還する。
1.
2. 取り敢えず学校で戦っているサーヴァントのマスターを捜す。
[備考]
1.キャスター(ナーサリー・ライム)を直接、ランサー(クー・フーリン)をラゼィルの目を通して認識。ステータスを確認しました。
2.現在、ラゼィルが製作した姿隠しのマント(二枚目)を纏ってマスターの捜索中です。

【C-6/学校/1日目 夜(23:37)】
【キャスター(ラゼィル・ラファルガー)@白貌の伝道師】
[状態] 健康
[装備] 龍骸装一式。神の眼。白貌(ホワイトフェイス)
[道具] 姿隠しのマント(効果切れ
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを護る。 この地に集められたマスターと英霊共を皆グルガイアの供物とする。最後の供物は……
1. あのランサー(クー・フーリン)は絶対にグルガイアの供物とする。
2. 同盟の件についてマスターの考えを聞く。
3.取り敢えず群鮫と手裏剣を回収する
[備考]
1.キャスター(ナーサリー・ライム)、ランサー(クー・フーリン)を認識。ステータスを確認、戦ってある程度手の内を知りました。
2.学校に布陣したことで、敷地内では全ステータスに+が付きます。
3.ランサー(クー・フーリン)から聖杯戦争の主催者に対抗しようとしているマスターの存在を知らされ、同盟を申し出されました。




【C-7/自宅/1日目 夜(23:37)】

【橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ 】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] トンプソン・コンテンダー&起源弾@Fate/Zero
[道具] 携帯型タブレット
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る
1. キャスター(ナーサリー・ライム)の帰還を待つ
[備考]
1.キャスター(ラゼィル・ラファルガー)、ランサー(クー・フーリン)をナーサリーライムの目を通して認識。ステータスを確認しました。

【C-6/学校/1日目 夜(23:37)】

【キャスター(ナーサリー・ライム)@Fate/EXTRA及びFate/Grand Order
[状態] 魔力消費(小)
[装備] 約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)。ラムレイ二号
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:ありすを護る。子供達を護る。
1. マスターの許へ帰る。
2. 無断出撃の言い訳を考える
3.同盟の件についてマスターの考えを聞く。
[備考]
1.キャスター(ラゼィル・ラファルガー)、ランサー(クー・フーリン)を認識。ステータスを確認、戦ってある程度手の内を知りました。
2.ランサー(クー・フーリン)から聖杯戦争の主催者に対抗しようとしているマスターの存在を知らされ、同盟を申し出されました。




【C-6/学校周辺/1日目 夜(23:37)】

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night 】
[状態] 健康
[装備] 刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)、現在はケイネスが用意した宝具の正体を隠すための呪符が巻かれておりそれを外さなければ真名解放は不可能である。
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う。強者と死力を尽くして戦う。
1. 他の主従を捜す
の件についてマスターの考えを聞く。
[備考]
1.キャスター(ラゼィル・ラファルガー)、キャスター(ナーサリー・ライム)を認識。ステータスを確認、戦ってある程度手の内を知りました。
2.同盟の申し出を受けた組には、二日目の(23:40)頃に【C-6/学校】に集まる様に伝える。


835 : 早く来てくれちひろーーー!! ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:48:17 nK92lkYg0
─────同盟ですか。

卯月の家の前でプロデューサーは思考する。
自分も加わった方が良いだろうか?その場合どうして会談の場所を知っていたかを問われるだろう。それは、まあ、素直に話すとして。

然し、問題は別の事。プロデューサーの目的は帰還もあるが、この世界の『島村卯月』をトップアイドルにする事でもある。
他のマスター達と違って、聖杯に望むことは無いし、ただ帰還だけを考えるわけでも無い。聖杯戦争の首謀者と戦うなど論外だ。
『島村卯月』をトップアイドルにした後でなら、帰る為に聖杯は要るかもしれないが、今現在は不要のもの。
同盟を結ぶという事は、聖杯戦争に加わる事。今はそんな時間と労力があるなら卯月の為に用いたい。其れはアサシンとて同じだろう。

もしあの戦場にサンタのマスターである橘ありすが居れば、また異なる決断をしたのだろうが、プロデューサーが自身に課した役割(ロール)は魔法使い。シンデレラが城に登る為の道を用意するのが彼の役割(ロール)。
この事態には─────彼が知る範囲でだが─────シンデレラは関わって居ない。シンデレラが居なくては彼は魔法を使うことは決して無い。
プロデューサーとしてはシンデレラプロジェクトのメンバーか、346プロダクションのアイドルでも関わって居ない限りは、積極的に聖杯戦争に関わろうとは思わない。
取り敢えずアサシンと合流して帰ろう。そう考えたプロデューサーは、その時大いなる過ちに気付いた。

「ちょっと君。こんな時間に女の子がいる家の前ででなにやってるの?」

どうやら卯月を知っているらしい、プロデューサーにとって─────あまり良い思い出の無い─────馴染みの格好をした男が、こちらを向いて立っていた

─────場所を変えるべきでした

「ちょっと来て貰えるかな」

職業意識、というより義務感を感じさせる声であった。

─────島村さんのことですから、きっと毎日挨拶をして顔を覚えられたんでしょうね。

思わず現実逃避をするプロデューサーだった。


【C-7/島村卯月の自宅/前1日目 夜(23:37)】

【株式会社346プロダクション シンデレラプロジェクトプロデューサー@アニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』 】
状態] 健康 ・困惑
[令呪]残り3画
[装備] 無し
[道具] 名刺×いっぱい
[所持金] 社会人として標準程度
[思考・状況]
基本行動方針:『島村卯月』をトップアイドルにする。帰還する
1. いつものイベント(職務質問)を頑張ってこなす
2.困ったことになった。多分暴れるアサシンをどうしよう……。
3.同盟には乗らない。
4.聖杯戦争とも距離を置く
[備考]
1.キャスター(ラゼィル・ラファルガー)、キャスター(ナーサリー・ライム)、ランサー(クー・フーリン)をアサシン(ファントム・ジ・オペラ)の目を通して認識。ステータスを確認しました。
2.シンデレラプロジェクトもしくは346プロダクションのアイドルが関わっていない限り、聖杯戦争には関わらない事にしています。
3.アサシン(ファントム・ジ・オペラ)が“ある殺人事件”に関わっているのでは無いかという疑いを持っています。

【C-6/学校周辺/1日目 夜(23:37)】

【アサシン(ファントム・ジ・オペラ)@Fate/Grand Order
[状態] 健康
[装備] 『地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)』
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:『島村卯月』に世界一の栄誉を受けさせる
1. マスターの許へ帰る。
2.同盟の件についてマスターの考えを聞く。
[備考]
1.キャスター(ラゼィル・ラファルガー)、キャスター(ナーサリー・ライム)、ランサー(クー・フーリン)を認識。ステータスを確認しました。
2.ランサー(クー・フーリン)から聖杯戦争の主催者に対抗しようとしているマスターの存在を知り、同盟を申し出を聞きました。


836 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/04(木) 15:49:59 nK92lkYg0
投下終了です
ケイネス先生はソラウ居ない限り前に出る人じゃ無いと思うんですよ。


837 : 名無しさん :2016/08/04(木) 23:35:35 xgnU2DC20
投下おつー
サンタさんつえええ!
完全にサンタオルタのキャラロール状態でセリフの一つ一つが面白いw
三者三様の激戦は見ものでした
ひとまずは落ち着いて同盟の話にもっていけたものの、思わぬところで太陽絡みしてしまったラゼィルが……
こいついろいろ厄介だな、ほんと……w
そしてさっそくノルマ達成してしまったプロデューサーw


838 : 名無しさん :2016/08/04(木) 23:36:29 xgnU2DC20
あ、ちなみに私もケイネスはソラウいないといいとこみせようとは思う必要ないから前には出ないと思います


839 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/05(金) 14:59:27 6avekRks0
◆mcrZqM13eoさん、ご投下ありがとうございます。
武器の長さまでも正確に描写している所に驚きました。
しかしオルタの台詞が上手く書けている上にスキルの描写まで詳しく書かれていて本当に上手だな、と思いました。
兎に角能力の表現等が非常に緻密で良く出来ていると思います。

先程マップのデータを更新しました。
解説はほぼ>>1の独自解釈なので、もし◆mcrZqM13eo氏の想像と違う設定でしたら此方に書いていただけると嬉しいです。


840 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/05(金) 15:09:27 6avekRks0
申し訳ございません、「早く来てくれちひろー!」の感想を忘れてしまいました。
はい、何というか、武内Pが平常運転でしたねw
それと早速ファントムさん疑い掛けられてしまいましたね。
まあ伝承が伝承だから仕方ない。

それと誠に勝手ながら拙作「無秩序な切っ先」について、エレンとシノアが会話していた公園の位置を、

「C-4」から、「D-2」に変更させていただきます。


841 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/05(金) 21:42:52 PmbWhoo60
>>839
更新乙です。問題ないです


842 : ◆1U2WbYpZO6 :2016/08/07(日) 18:34:46 iH3be5T20
お二方投下乙です。
いきなりの激戦、思わず手に汗握りました。


エルメェス・コステロ&バーサーカー(インターラプター)の追加予約、延長をさせていただきます。


843 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:27:22 SXX99Wrs0
>>841
返信有難うございます。
それでは、私も
最上リョウマ&セイバー(モモン)
二宮飛鳥&ランサー(駆紋戒斗)
を投下させていただきます。


844 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:28:30 SXX99Wrs0
◆  ◆  ◆




ただこの世界を生き抜けよ/頂点(トップ)極めるまで




◆  ◆  ◆



十人程の観客が金網越しに見ている中、コート内にいる目のついたVマークのユニフォームを着た3人の少年達が手を振る。
夜頃、丁度公園のバスケットコートで、中学生バスケットチーム「クロスハート」の練習が終わった。
僅か3人で構成されている小さなチームだが、それでもその熱意は誇っていいと言っていい。
丁度今、放課後から行われていた練習が終わり、チームメンバーが帰宅の途につく時間となったのだ。
学校でも有名なそのチームには、無論同級生の観客も時折見物に来ていた。
特にチーム一の美少年である天野ユウの人気は近辺にある中学でもかなりの物で、ファンクラブも出来ているという。


845 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:28:55 SXX99Wrs0
最上リョウマは今日、久々に彼等の練習を覗いていた。
リョウマは元の世界においては彼等とは知り合いであり、ライバルであった。
だがライバルと言えど、決してバスケで競い合ったわけではない。
ぶつかり合った場所はコートではない、「デジクォーツ」だ。
リョウマと彼等「クロスハート」は、元の世界では異世界の動物「デジモン」を狩る「デジモンハンター」であった。
特にリーダーのタイキは相棒のシャウトモンと共にデジタルワールドのデジモン全てを纏め上げ世界を救った英雄だ。
ユウ、明石タギルもまた、タイキに負けないほどの器量と実力を併せ持っている。

どうやらSE.RA.PHにおいてもクロスハートがNPCとして存在していると聞き、此処に来てみた。
バスケというものにリョウマは然程縁は無かったのであまり来る気はしなかった。
だがやはりコート内においても彼等はデジモンハントの時同様に輝いていた。
ユウの冷静さにタイキのリーダーシップ、それにタギルの明るさが合わさって素晴らしい連携を見せていた。

これこそ、リョウマがレン、アイルと共に目指していたクロスハートだ。
と言っても此方は戦略重視の連携だった上にレンもアイルも自分の都合で動くタイプだったので其処はまだまだだったが。




セイバーもまた、霊体化した状態でリョウマとともにクロスハートの練習をを眺めていた。
工藤タイキ達クロスハートの事は、マスターであるリョウマからも聞いている。
しかしリョウマ同様セイバーも、バスケと言う物にはあまり馴染みがない。
いやルールなどは知っているのだが、何分小卒で働くことになったセイバーにはバスケを遊ぶ暇がなかった。
それに彼は鈴木悟だった頃はあまりスポーツはやらなかったので、ハッキリ言って興味もない。
だが彼等の連携プレーは、素人のセイバーから見てもとても良く出来ていた。
成る程、リョウマが尊敬の念を抱くのも頷けるかもしれない。

最も、「アインズ・ウール・ゴウン」の42人のコンビネーションと比べればまだまだだとは思うが。



◆ ◆ ◆


846 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:29:12 SXX99Wrs0


コートの側に立っている夜光時計の短針が、8時を指す。
思えばもう夜頃だ、マスターに見つからない内に帰ろう。


『私達もそろそろ帰りましょう、セイバーさん。』
『あ、ああ、そうだな。』

セイバーとの念話を交わしたリョウマはそう言うと公園の出口を目指す。
この自然公園はコートがあるだけあってとても大きい。
テクテクとリョウマがが歩く道には、セメントで敷き詰められた道が広がっている。
やがて左右を阻む柵や壁も無くなり、代わりに木々が其処らにある小さな森が見えた。
木々の中に紛れて電灯がアチコチにある。

そして電灯の下には―

「やれやれ、夜はもうこれからだと言うのに、もう帰るのかい?」

リョウマと同年代の1人の少女が、手の甲にある令呪を見せびらかして笑っている。
その言葉に反応してリョウマは立ち止まり、ハッと驚いた顔を見せる。


(マスターか……しかもこんな所で……)


令呪を見せ、何の前ぶりもなく自分達に声をかけたのだとしたら、そうとしか考えられない。
恐らくはセイバーを感知して待ち伏せしていたのだろう。
しかし今のリョウマはあまり聖杯戦争に乗る気はしない。
何せリョウマは今だに迷っている、願いを叶えるか、叶えないかの間で。
それどころか経験上このムーンセルにすら眉間の皺を寄せずにはいられない状況にある。
なのに此処で敵と戦うハメになるとは、自分の運の悪さと詰めの甘さを思わず笑いたくなる。

(やれやれ、もっと早めに帰宅しておくべきでしたよ……)
『マスター、此処は私に足止めさせろ、依頼人をこんな所で死なせるわけには行かない。』

セイバーが頼もしい声で念話をかける。
成る程、確かにセイバーを足止めにすれば、リョウマは無事に拠点に帰還できる
セイバーは最優のクラスだと謳われるだけあって相当な実力者だ。
だが敵の実力は未知数、どんな強敵が出てくるかは分からない。
もしかしたらセイバーですら足元にも及ばないサーヴァントが来るかもしれない。
しかしこんな所で死ぬわけには行かない。
リョウマは答えすら見つけ出せていないし、何より聖杯戦争への疑いすらも晴れていない。
彼は未だスタートラインに踏みとどまっている様な状態だ。
そしてリョウマはセイバーへの号令を、頭ではなく―声から叫ぶ。

「分かりました、お願いします、セイバーさん。
ただし、窮地に陥った時には直ちに念話を掛けてください、私が令呪で呼び戻しますから!」
『随分と冷静な判断が出来るじゃないか、マスター。
だが心配はいらん、私はこんな所で死ぬ程弱くはない。』
「ありがとうございます!」

リョウマはその言葉を聞くと直ぐに暗闇へと続く道へと走って行った。
走り去る彼の後ろ姿を少女、二宮飛鳥は見つめていた。

『マスターの方は背中を向けて離脱したようだけれど、君はどう思う?』
『尻尾を巻いて逃げた奴に言う台詞などない。』

ランサーの言葉は飛鳥の想像した通りであった。
彼は「強者」との戦いに悦びを感じる生粋の戦士。
背中を向けた弱気な者に興味を示さないのはやはりの一言。
記憶を取り戻した時から彼はそうだった。

しかし逃げて行ったマスターの気持ちも分かる。
飛鳥だって戦いたくはない。
そもそも飛鳥だって最初はそんな気持ちだった。
だが今は違う、彼女は今この戦いに臨む事を「決意」している。
死ぬかもしれないという事を「覚悟」している。
そもそもそうでもしなければあの我儘なランサーが従ってくれるはずもないだろう。

そう思った時、飛鳥の眼の前にサーヴァントが現れた。

「生憎だが此処を通すわけにはいかん。」

低くも威厳のある声とともに光の粒子が収束し、其処に1人の甲冑が現れた。
真紅の布を纏っているがしかし、その甲冑は暗い紺色。
近くに電灯こそ灯っているものの、その暗い色はまるでこの暗闇に溶け込みそうであった。
恐らく、あの逃げて行った少年のサーヴァントであろうか。

(にしても、随分と豪勢なステータスだよ。)

飛鳥は、彼のパラメータを見て苦笑いを浮かべる。
このサーヴァントのステータスは、かなり高い。
クラスはセイバー、そのパラメータもまた全体的に高い水準を行っている。
ランサーも宝具を使えばそこそこは行くが、だがそれでも全体的に見ると心許ない。

『行けるかい?ランサー、恐らくだがあのサーヴァント…セイバーの力はかなりの物だ。君とて「あの宝具」のままでは勝ち目は……』
『寝言をほざくのも大概にしろ、俺は机上の空論で怯える程臆病ではない。』
『やれやれ、相変わらず君は怖いもの知らずだね、まるで猪だよ。』


847 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:31:00 SXX99Wrs0
クスッと飛鳥が笑う中ランサーは姿を現す。
見た目は人間時代のセイバーより少し年下ぐらいの青年だろうか。
その赤いコートはまるで中世ヨーロッパの洋服をあしらった様に見える。
そして青年、ランサーは自分が着ている服の赤さにも負けないほどに燃えたぎるその眼光でセイバーを睨みつける。

「ほう、それが君のサーヴァントか。」
「まぁね、少し命知らずで拘りが強いけれど、僕の信頼には十分値する相棒だ、クラスはランサーかな。」
「ふむ、クラスはランサーか、だが果たして君の槍は私の剣を折る事が出来るかな?ランサー。」
「セイバー、問う暇があるなら、まず俺にその力を示せ、貴様の強さを示せ!」
「言ってくれるな。」
「ふん。」

そう鼻で笑ったランサーは、懐からカッターナイフの様な装飾品を付けた漆黒のプレート、「戦極ドライバー」を取り出す。
腰に当てられたドライバーは、両端から黄色い太線状の光を発する。
光はベルトとなり、ランサーの腰に巻き付けられる。
そしてランサーは更に、「バナナ」の模様が彫られた派手なデザインの南京錠を取り出し、右側のスイッチに指をかける。

「変身」
『バナナ!』

ランサーの言葉とともにスイッチが押され、錠前が開く。

(あれが、奴の宝具か……)

宝具というのは、常に独特な形状が多い。
英雄を英雄たらしめるその力は、まるで英雄の個性を現すかのように特殊な形をしている。
セイバーの宝具である武具も一見只の装備であるもののそのデザインは独特な物であった。
アインズともなればその特殊さはより上になるであろうが。

―ロックシード。
異界の植物「ヘルヘイム」の果実が持つ力を人工的に制御出来る様に無機物に加工したアイテム。
ユグドラシルが生み出した「科学に御されし神の力」。
それがランサーの宝具を開く「鍵」となる。

開かれた錠前は電子音声と黄色い光を発し、ランサーはそのままロックシードをクルクルと指で回転させ戦極ドライバーのコネクタ、「ドライブベイ」に装填する。
そのまま錠前を押し込み、ロックシードはまるで施錠された南京錠の如くドライバーに装着された。

『ロック・オン!』

それが起動プロセス準備完了の合図だった。
ファンファーレの様なやかましい音声がこの静寂の闇の中に響き渡り、同時に上空の空間に突如出現した丸いジッパーがウィンと開く。
ジッパーの中から出現したのは何と巨大な「バナナ」であった。

流石のセイバーもそれには驚きを隠せない。

「バ、バナナァ!?バナナだとぉ!?」
「バナナじゃない、ランサーだ!」

そう叫びランサーはドライバーに付いているカッティングブレードを振り落とす。
プレートに当たったロックシードは切られた果実の如く、カバーをパッカリと開く。
それが宝具開放の合図だった。

『カモン!バナナアームズ!』

その電子音声が響くと同時にバナナはランサーの頭に覆い被さる。
それと同時に彼の全身は紅い西洋風の具足へと包まれていく。
更にバナナも変形を開始し、雑誌の付録の如く複雑に開いたバナナは西洋式のアーマーを模した鎧へと変形する。
見れば彼の頭もいつの間にか西洋風の兜に包まれている。

『ナイト・オブ・スピアー!』

派手な名乗り音と共に変形を完了した鎧は神々しい光を放ち、ランサーの力が上昇したことを見せつける。


848 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:31:31 SXX99Wrs0
―「刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)」。

ランサー……駆紋戒斗が「アーマードライダー・バロン」として戦ってきた逸話の再現。
沢芽市のダンスチームの用心棒として動き、やがて世界を壊した反英雄としても名を馳せた彼の象徴たる鎧。
ロックシードのクラスはA、少なくともビートライダーズの中ではトップクラスの性能を誇っていた。

「ほう、随分と騎士らしい姿になったではないか。」

そう言い、セイバーは背中に差した二本の大振りの剣「死を切り裂く双剣(スラッシング・デス)」を引き抜く。
引きぬかれた剣の刃はズシンと地面に落ち、周囲に衝撃を与える。

「うっ!」

その衝撃に一瞬飛鳥も揺れ動くが、しかしランサーは動じることは無かった。
そもそも、この程度で怯える様な者は戦士の風上にも置けない、ならば多くの死線を潜り抜けてきたランサーが怯えぬのも当然のこと。

「来い。貴様の強さを、今此処で示せ。」
『バナスピアー!』

ふざけた電子音声を合図に、バナナの皮を模した特徴的なデザインの洋式スピアー、「バナスピアー」が出現する。
「刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)」の専用装備となるこの槍は戒斗がドライバーを巻いたその時から愛用し続けてきた代物である。
そしてそれこそが、駆紋戒斗が「ランサー」のクラスで喚ばれた所以でもあった。
変身した彼の姿を確認した飛鳥は直ぐに回れ右をして後ろへと避難していく。
彼女を一瞥してそれを確認したランサーはバナスピアーを構え、二、三歩後ろに引き下がりセイバーとの間合いを取る。
そしてセイバーもそれを察し、それに応える。

「間合いか……。」

セイバーも双剣を構えランサーを兜の底からジッと睨みつける。
辺りは暗く、電灯の光も僅かな物であった。
特にセイバーの漆黒の鎧は、今にも闇に溶け込みそうだ。
されど、暗闇において無双を誇ったセイバーの眼が獲物を捉えられぬ筈がない。
一方でユグドラシルの科学の粋を集めたランサーの兜にある視覚センサー「バーンサイト」も、優れた暗視機能すら持っていた。

何方が先に動くかを捉えるため、セイバーとランサーは自分の神経を集中させて仮面の底から互いを凝視する。
辺りには風1つ吹かず、コオロギ一匹鳴かず、耳を彩るのはただ静寂のみ。
セイバー、ランサー共に、洞察力においては非常に優れている、決して動くタイミングを誤ったりはしないだろう。
二人はただ只管、刃を振り下ろすタイミングを見つけ出して行った。
それから一分が過ぎ、まず先に動いたのはランサーだった。

「ウォォォォォ!」

勇猛果敢にバナスピアーを掲げ、セイバーに突っ込んでいく。
双剣使いの戦士との戦い方ならもう散々葛葉紘汰に慣らしてもらった、今の彼にとって武器の数など所詮飾りに過ぎない。

「ハァッ!」

ランサーは槍を横に振り上げ、セイバーを斬り裂こうとする。
だが生粋のゲーマーであるセイバーの感の鋭さはそれすらも見通していた。
セイバーはまず左側の剣で槍を防ぎ、続いてもう片方の剣でランサーの装甲が届いていない腹部を狙って其処を横に斬る。

「グァァァッ!」

叫び声を上げてランサーは後方へと吹き飛ばされ、下り坂を転がるボールの様にゴロゴロと地面を転がり倒れる。

「ランサー!」

飛鳥がいつもの気取った態度をかなぐり捨てて叫ぶ。
彼女がランサーがやられるのを見たのは初めてだからだ。
だが無理もない、セイバーが狙ったのは、アームズで纏われていない部分―即ちライディングアーマー。
単体でも必殺技を気絶程度で済ませる程度の耐久力を持つのだが、セイバーの剣は仮にも宝具、ダメージは大きい。
ロックシードが装填されている分耐久力は増しているが、しかしとても痛い部分を突かれた。
更にセイバーの宝具「死を切り裂く双剣(スラッシング・デス)」はアンデッドやモンスターの肉を軽々と削ぎ続けた「魔物殺しの剣」である。
ならばオーバーロードであるランサーに追加ダメージが来るのは必須、彼が受けたダメージは相当に大きい。
オーバーロードになった分戦闘力自体は向上しているはずが、皮肉にもそれが命取りになったというのだ。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

バナスピアーを杖代わりにして立ち上がったランサーは息を荒げ、ブルブルと地面に突いた槍を握りしめる力を強くする。

「どうした?所詮は口先だけか?」

セイバーが顎をクイッと上げ挑発する。
だが其処で終わらぬのがランサーだ。

「ハァ、ハァ………ククク、ハハハ……。」

途端にランサーが身体を震わせ笑い出した。
気にでも触れたかとセイバーが首を傾げた。
その直後の事だった。


849 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:31:54 SXX99Wrs0
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

ランサーは土から這い上がったモグラの如くガバリと立ち上がり、地面からスピアーを引き抜き空を仰ぎ大声で叫び出す。
先程までの静寂を全て掻き消すかの様な雄叫びをランサーは上げる。

「!?」

セイバーはその姿に驚く。
笑ったり往生際が悪かったりという点はセイバーも言えたものではないが、しかし眼前にするととても驚く物だと改めて気付かされる。
ランサーのスキル「死の超越者」は、ヘルヘイムの侵蝕すら耐え切った彼の往生際の悪さを表したスキル。
幾ら鎧の弱点を見抜こうと、彼の頑丈な肉体と精神は断ち切れなかったのであった。
そしてランサーの目が突然光り出し、ランサーはバナスピアーの先端を眼前にいるセイバーに向ける。
するとセイバーの周りに、あのバナナが出た時と同じように空間からジッパーが出現する。
しかし数は多く、ジッパーの形状もバナナの時とは異なっていた。

「!?来る!」

危険を察知したセイバーは直ぐにジッパーが開いた位置から上空に飛び上がり、離脱する。
セイバーの虫の知らせは当たった。
ジッパーからは無数の蔦が出現し、上にジャンプしたセイバーに向かって絡み付こうと襲い掛かってくる。
蔦が伸びて来るスピードはセイバーの想像を超え、気がつけば蔦の先端は直ぐに彼の頭に近づいていた。

「くっ!」

セイバーは空中にいたまま双剣で蔦を斬り裂き払い、そのまま地面に落ちる。
だがそれがランサーの狙いであった。
ランサーはドライバーのカッティングブレードを3回落とす。

『カモン!バナナスパーキング!』
「うおおおおおお!」

明るい音声とともにロックシードのエネルギーがバナスピアーに注入され、パワーを与える。
ランサーはバナスピアーを握りしめた両手を高く掲げ、そのままスピアーの先端を地面に突き刺す。

「セィィィィィ!」

それと同時に、地面から生えたのは巨大なバナナの如きエネルギー刃。
セイバーの着地地点に生えてきたそれらはまるでセイバーを貫かんとするように立て続けに地面から伸びて来る。
まるでかのルーマニアの串刺し刑の如く突き刺さんとするように思えた。
先程の蔦は囮、ランサーの狙いは、セイバーにこの一撃を与えることである。

「成る程、それが貴様の狙いか!」
「フン!」
「だが其様な小細工に絡まるほど私は弱くはないぞランサー!」

そう言うとセイバーはバナナに突き刺さる直前に双剣を平行に構えながら空中で回転し、その状態でバナナの刃を容易く切り裂く。

「フゥン!!」

まるで空で回転する歯車の様にセイバーは縦に回りながらも連続でバナナを斬り裂く。
彼が着地したと同時に、何本ものバナナのエネルギー波は割れたガラスの如く砕け散った。
セイバーの本領は、技能もそうだが、何よりその卓越した身体能力にある。
成る程ランサーの刃は極めて高い攻撃力を持つであろう。
だがセイバーの双剣の頑強さとその圧倒的な身体能力はそれをも物ともしなかった。


「何!」

それにランサーは驚く。
そして遂に最後の一本がセイバーの手で砕かれた。

「これで終わりだ!」
「くっ!」

セイバーは上空で姿勢を正した後、剣を振りかざしそのままの勢いでランサーに飛びかかる。
だがランサーは後ろに飛び距離を置いた後、再びドライバーのカッティングブレードを落とす。

「終わるのは貴様だ!」
『カモン!バナナスカッシュ!』

ランサーが再びロックシードのエネルギーをチャージしたことにより、バナスピアーにエネルギーが集中される。
今度はバナスピアーに巨大なバナナ状のエネルギー波が纏われる。
そしてランサーはそれをセイバーにぶつけようと振りかざす。

「セィィィィィ!!」

さながらギロチンのごとくランサーに迫るセイバーの刃。
それはもう彼の目前にまで来ている。
だがバナナがセイバーの剣から彼を守ってくれた。

「考えたな!」
「ウォォォォォ!!」

両手に力を込めて槍を押すランサー。
その力に、セイバーの剣は抑えられてしまった。
魔力を込めた槍にランサーのパワーが加わり、筋力において遥かに優っているはずのセイバーを辛うじて抑えられているのだ。
しかし、やはり槍にはパキパキとヒビが入り始める。

無理もない、ランサーのロックシードが解放したエネルギーは先程の3分の1。
あれ程の槍の嵐を潜り抜けてきたセイバーが彼の槍を砕けぬ道理など無いだろう。
況してやランサーのバナナロックシードは決してパワーに秀でているわけではない。
幾ら必殺技で補強しようが筋力で負けている相手には所詮気休めに過ぎないのだ。


850 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:32:53 SXX99Wrs0
ランサーの槍を覆うバナナにヒビが入りに入り、まるで1つの脈になったかのようにアチコチのヒビが一つになった。
果たして、ランサーのバナナはセイバーの剣を前にして砕け散り、ランサーもその勢いで後ろへと弾き飛ばされる。
着地したセイバーは上空に舞うランサーを一瞥した後、追いかけずにそれを確認する。
セイバーの目的は、あくまでもマスターであるリョウマが避難する為の時間稼ぎ。
だからこそ奥の手である魔法アイテムは一切使っていない。
何よりマスターが迷っている以上、ランサーを殺す訳にも行かんだろう。

(さて、奴はどう動くかな?)

セイバーは剣を構えたまま、ランサーの動きを見つめ続けていた。

「ぐああああああああああああああ!」

ランサーの身体はサッカーボールの如く回転しながら宙を舞い、遠くにいた飛鳥が数メートル先で見ている所で地面にぶつかる。
木の下で飛鳥が驚いたような表情を浮かべている。

「ぐはぁっ!」

ぐったりと項垂れるランサーを目の前にして、飛鳥は困惑しながらも彼の前に駆け寄る。
そしてランサーが倒れている所で肘をつき、心配げな言葉を吐く。

「だ、大丈夫かい?ランサー。」
「がっ……当たり前だ……」

ランサーは再びバナスピアーを支え棒にして立ち上がる。
そして遠くから視認できるセイバーを見つめる。

「どうした?まだやるのか、ランサー。」
「当然だ、俺はもう誰にも屈しない……」

余裕じみたセイバーの挑発を跳ね返す。
そしてランサーは思考する。

「やはり此奴では力不足か……」

ランサーには、既に予選においてもう一つの宝具「殴り砕く山吹の戦棍(マンゴーアームズ)」を開放していた。
バナナと同様クラスAの錠前であるマンゴーロックシードをキーとして発動する宝具だ。
パワーに長けており、オーバーロードとなった今では次世代アーマードライダーとも張り合える程の力を有している。
だが反面機動力に長けたバナナとは対照的にスピードは劣っている。
あのパワーのある攻撃ですらもヒラリと躱してしまう可能性は十分にある。

あのサーヴァントの腕は生半可な物ではない。
「刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)」の必殺技「スピアビクトリー」すら容易く弾いた程の実力者だ。
だが切り札を使い切った訳ではない、ランサーはまだ2つの宝具を温存している。
その内1つはこんな所で使うわけには行かない代物だが、もう一つはその限りではない。
それを使えば、戦況は更に有利になるであろう。

―戦いには引きどきという物がある。
嘗てランサーに興味を持った女性の言った言葉だ。
為す術がないにも関わらず越えられない壁を目前にして足掻いていた彼に叫んだ言葉。
それがなかったら、恐らく其処で彼は砕け散ったであろう。

だが彼が逃げるのは、出せる手を使い切った時、戦闘の続行が困難だと判断した時の話だ。
だが使える手札ならこの手に残っているではないか。
勝てる可能性が僅かでもある「力」なら、「まだ」ある。
戦い続けることを決めたランサーは、まず側にいる飛鳥に声をかける。

「マスター、貴様は邪魔だ、下がっていろ。」

飛鳥は未だに不安気な表情を浮かべていたが、直ぐにはにかんだ笑みを浮かべる。

「随分と往生際の悪い騎士様だね君は。まあ、此処は僕が出しゃばるべき舞台じゃない、戦うかどうかは君の自由さ。」

彼女はそう言うと更に遠くへと走って行く。
避難していく彼女を一瞥したランサーは、もう一度視線をセイバーに向け直し、仮面越しに彼を一瞬睨みつける。

(こんな所で尻尾等振るものか……)

そう考え、新たな宝具を解放することを決意したランサーは、懐から更にジューサー型のアイテムを取り出す。

「まさか此奴を使う事になるとはな……」

ランサーはそのジューサーを、懐かしむような口調で見つめた。


851 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:33:13 SXX99Wrs0
―ゲネシスドライバー。
ランサーが戦極凌馬の気まぐれで貰った次世代戦極ドライバーの内の一機。
今ランサーが巻いているドライバー等から収集した戦闘データを元に設計されており、その性能は従来のドライバーを大幅に凌駕する。
後に回路がショートして焦げてしまったはずだが、宝具の起動装置となった今、それは彼の手の中で元通りの姿を取り戻している。

そしてランサーはゲネシスドライバーを構え、セイバーを仮面の下で睨みつける。

「まだ勝負は付いていないぞセイバー!」

そう叫んだランサーは腰に巻かれた戦極ドライバーを取り外し、代わりにゲネシスドライバーを腰に当てる。
すると銀色の光が両端から発生、ベルトとなり彼の腰に巻き付いた。

「ほう?まだ奥の手があったのか。」
「そういうことだ、此処からは第二ラウンドだ。」

そう言いランサーはスケルトンカラーのロックシードを取り出し、スイッチを押す。

『レモンエナジー!』

錠前が開かれたと同時に電子音声が鳴り響き、ギターのメロディが後に続いて鳴る。

―レモンエナジーロックシード。
「クラスS」に分類される、ゲネシスドライバー専用の次世代型ロックシード。
その性能は従来のロックシードを上回る、例え技術面で勝っていようがその性能差は簡単には埋められない。

ランサーはそれを先程のバナナと同様にクルクルと回転させ、ドライバーのゲネシスコアに装填する。

『ロック・オン!』

先程のと同じ言葉がドライバーから流れる、しかし声はずっと低かった。
まるでホルンの様な待機音がブオンブオンと鳴り始め、ランサーはドライバーのグリップ、シーボルコンプレッサーを押し出す。
それと同時にランサーの真上に開いたジッパーからは、巨大なレモンが出現し彼の上に浮かんだ。
それを見たセイバーはそのプロセスの可笑しさに驚きを隠せず、思わず突っ込みを入れてしまう。

「バナナの次はレモンか!」

『ソーダ!レモンエナジーアームズ!』

ロックシードの蓋が開き、名乗り音とともに上空のレモンは形を変える。
それと同時にランサーを覆っていたバナナの鎧は消滅し、代わりにレモンが頭上に落ちた。

『ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイ!』

先程よりもずっとハイテンションな音声が鳴り響く中、ランサーの頭上に覆い被さったレモンは徐々に鎧に形を変えていく。
飛び散った果汁の如き余剰エネルギーと共に姿を表したのは、この闇を照らすほどに黄色く神々しく輝かしい鎧であった。
背中にあるケープと頭部の冠が、より一層高貴さを映し出している。
その気高きオーラはまるで「騎士」というより、「貴族」に近い。

これこそ、ランサーの第三の宝具「射り撃つ黄金の矢(レモンエナジーアームズ)」である。
その宝具を顕現させたランサーは直ぐに専用武器である創世弓「ソニックアロー」を出現させ、弦を引き絞る。

「ハァァァァァァ!」


◆  ◆  ◆


852 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:33:31 SXX99Wrs0

(随分と豊富な宝具を揃えているな……)

兜の中でセイバーはそう見る。
バナナを被さったかと思えば次はレモン。
そして槍の次は弓だ。

(ランサーなのに弓って……そんなのありかよ……まあ俺も言えたような物じゃないけど)

だが、相手が武器を弓に変えた以上、戦い方を「対狙撃手」に変えなければならない。
ランサーは自分に向けて弓を引き絞っている。
弦の取っ手から発する黄色い光が弓を流れ徐々に鏃にチャージされていき、動力音からもそれが察せる。

(多分近い内に放たれるな……)

セイバーは剣を構え、ランサーが矢を放つタイミングをジッと伺う。
暗闇ですら見通すその眼で、ランサーが引き絞っている弦をジッと睨みつける。

「ハァッ!」

遂に、ランサーの弓から矢が放たれた。
だがセイバーはその瞬間を狙っていたのだ。

(今だ!)

ランサーの弓から放たれたのは、恐らく魔力で出来ていると思しき金色の矢。
それは真っ直ぐに光の線を描きセイバー目掛けて飛んで来る。
しかもその速さは正に光速、並の戦士なら確実に射抜かれる。
だがセイバーは決して「並の戦士」に当てはまる程弱くはない。
寧ろそんな攻撃などユグドラシルでの新人時代に散々受けてきた。
アインズ・ウール・ゴウンのメンバーからしてみれば、矢避け等朝飯前だ。

「ハッ!」

セイバーはその瞬間右手にある大剣を構え、ランサーの矢をガードしてしまう。

「何!?」

(危なかった……でも慣れればこんな物ただの樹の枝だな)

銃弾は引き金を引かれる直前のタイミングを見極める事さえ出来れば、辛うじて避けることも出来る。
それと同じようにセイバーは、ランサーが弦を離した瞬間に、剣を動かし跳ね返したのだった。
アンデッド狩りにおいて無双を誇った英雄モモン。
その武の腕は、例え光の矢であろうとも物ともしなかった。
そしてこの程度で喜ぶモモンでも無かった。
セイバー…モモンは直ぐにランサーの元へと走りだす。

(第二撃が来る前にとっとと距離を詰めてやる!)

狙撃手にとって的との距離とは命だ。
距離があれば斬られることもなく、且つ正確に射を決められる。
だが距離が低ければ引き金を構えるタイミングも照準を定める時間もなくなってしまうし、直ぐに敵に斬られてしまう。
それを狙ったセイバーは、遠くにいるランサーに向かって走りだす。

「うおおおおおお!」

だがランサーとて何も手を打たないはずがない。
ランサーは直ぐにまた懐から新たなロックシードを取り出す。

「来るか……だが行かせるか!」
『マンゴー!』

ランサーが新たにスイッチを押して錠前を開いたのは、「マンゴーロックシード」。
ランサーの第二の宝具「殴り砕く山吹の戦棍(マンゴーアームズ)」の起動キーたるロックシード。
クルリと指先で回転させたそれをランサーはソニックアローのコネクタ、「エナジードライブベイ」に装填する。

『ロック・オン!』

その手間のかかるプロセスは途轍もない技を発動させる前触れだということはセイバーにも分かる。
大空に掲げられた弓の先端から出現したのは、巨大なメイスを模したエネルギー波。
それは光の線を通してランサーの弓に括りつけられている。
ランサーは勢い良くそれをハンマー投げのボールの如く振り回す。
回転するメイスに周囲の木は薙ぎ倒されていく。
そしてランサーは回転で勢いを着けたメイス状のエネルギーを、セイバー目掛けて振りかざす。


853 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:34:25 SXX99Wrs0

『マンゴーチャージ!』
「セイーッ!」

しかしセイバーはそれをジャンプで躱し、メイスはズシンと地面にぶつかり地面にヒビを入れた後消滅する。
だがセイバーはジャンプした状態で左手の剣を勢い良くランサー目掛けて投げつける。

「お返しだ!」
「フン!」

ランサーは直ぐ様シーボルコンプレッサーをもう一度押し絞る。

『レモンエナジースカッシュ!』

電子音声が鳴り響き、ランサーの弓に黄色い光が宿る。
ランサーはそれを構え思いっきり振りかぶってセイバーの剣を弾き返す。

「ハァァァァァァ……セィィィィィッ!」

ランサーの切っ先は弧を描き、セイバーの剣はそれに弾かれクルクルと回転しながらセイバーの手元へと戻る。
そしてセイバーはそれをキャッチした後落下する勢いをそのまま乗せながらランサーにその剣を振りかざす。
ランサーはエネルギーを込めたソニックアローで剣を防ごうと構える。
だが落下した勢いにセイバーの体重が更に加算された剣の力は凄まじく、ランサーはその勢いに弾き飛ばされる。

「ぐぁぁっ!」

ランサーは勢いのままに後ろに地面を滑るが、直ぐにブレーキをかけ体勢を立て直す。
直ぐに着地したセイバーは剣を構え、ランサーに向かって斬りかかる。
そしてランサーもソニックアローを構え、セイバーにその刃を振り下ろす。

両者の刃は同時にぶつかり、二人は互いにはじけ飛ぶ。
ランサーは弦を引き絞り矢を放って牽制し、そのまま斬りかかる。
だがセイバーは矢を左側の剣で弾いた後、右側の剣でランサーの攻撃を防ぐ。
両者の斬り合いは尚も続く。
セイバーとランサーの剣は互いにガキィン、ガキィンと音を立てて打ち合いもはや互いの甲冑に刃が当たる気配すらなかった。
セイバーが力で剣を振り、ランサーがそれを刃で防いだ後後ろに飛び矢を放つ。
片や力押しな戦法、片やヒットアンドアウェイな戦法による戦いが1分ほど繰り返される。

またもやセイバーとランサーの得物が同時にぶつかるが、しかし今回は刃が滑ることなくギチギチと刃が押し合っている状況になった。
セイバーは双剣を平行に持ち両手の力をソニックアローにぶつけているが、一方でランサーも右手を取手に置き左手でソニックアローを押していた。
互いの筋力を押し合う戦いとなっていた。

だがそんな時、セイバーに念話がかかる。

『セイバーさん!生きていますか!?』
(!?)

リョウマの声だ。
どうやら無事に帰還できたらしい。

『無事か、マスター!』
『ええ、只今自宅に戻りました。』

(良かった……)

セイバーは内心胸を撫で下ろしながらも、しかし剣に入る力は緩まる気配を見せず今だランサーと力を押し合っていた。
だがセイバーは一気に体重を剣にかけてランサーの剣を押し出し、自らは後ろに飛ぶ。

「っ!」

ランサーがまた弓を構えるが、しかしセイバーは対照的に剣を背中に収める。
それを見てランサーはソニックアローを持った腕の力を抜く。

「どういうつもりだ。」

苛立ちの籠った口調でランサーが問いかける。

「マスターの避難が完了した、悪いが此処で引き上げさせてもらう。」
「逃げるのか。」
「逃げるも何も、私の目的は飽くまでもマスターが逃げる時間づくりだ。
だが、貴様と戦えたのも、悪くはなかった。」
「ほう……。」

ランサーが感心した声を上げた後、セイバーの霊体化が始まる。
そしてセイバーは、表情が見えない兜の底からもう一度だけ言葉を残す。

『願わくば、また刃を交えたいものだな、フルーツの騎士よ。』
「ランサーだ。」

そうして、セイバーの姿は完全に光に消えた。
それを見送ったランサーの後ろから声が聞こえてきた。


854 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:35:11 SXX99Wrs0
「名残惜しかったかい?ランサー。」

その声に反応したランサーが振り向くと、其処には飛鳥がいつもの様に達観した笑みを浮かべて立っていた。

「フン、そんなはずはないだろう。だが奴は強かった……それだけは認めてやろう。」
「へぇ、水が差された際の君は随分と苛立ちを見せていた様に感ぜられたけれどねぇ。
しかし本当に凄まじい戦いだったよ……あれほど激的な戦闘はこれが初だったんじゃないかい?」
「フン。」

だが、そう言う飛鳥の身体が突然よろけた。
だが彼女は気づかないようで、未だ饒舌にランサーに話しかける。

「全く、流石決勝、と断言せざるを得ない勝負だったよ……それにしても、まさか君の3つ目の宝具をご照覧になるだなんて思わなかっ……。」

そこまで言おうとした時、不意に飛鳥は回転力を失ったコマの様に徐々にヨロヨロとふらついていった。
そしてとうとうバランスを崩し、遂に横に倒れようとする。

それに気づいたランサーは直ぐ様彼女の元に駆け寄り、すんでのところで地面に倒れそうになった飛鳥を受け止め、そのまま抱き抱える。
顔を覗いてみると、彼女は目を瞑ってスヤスヤと眠っている。

(やはり魔力を使いすぎたか……)

無理もない、彼女の言う通り先程の戦闘は本当に激しかった。
本来、ヘルヘイムの森の実を加工したロックシードには魔力が籠っているはずだ。
だがアームズが宝具化した影響で、ロックシードはランサーの魔力を吸い取る形で機能している、という様に変質してしまった。
おまけに先程は必殺技を連発した上にアームズも二度召喚した。

その上序盤ではヘルヘイムの植物まで喚び出した。
あれこそランサーの切り札「運命超越す緋色の王(ロード・バロン)」の力の片鱗だ。
あの力は、アームズ召喚にも使用していた異界に繋がるジッパー型の空間の穴「クラック」を自在に開く能力も保有しているのだ。
最終決戦ではヘルヘイムが地球に侵食していたお陰でそれ程クラックを開く必要は無かったが、今回はそういう訳には行かない。
況してやこの「SE.RA.PH」はクラックすら開く気配を見せていない、強制的にヘルヘイムの植物を呼び寄せる必要があるのだ。
だが電子世界にまでヘルヘイムの世界の空間を通すとなると、その消費魔力は生前以上の物となるであろう。
それらがマスターへの負担となり、かなりの魔力を吸われた事による疲労で彼女は眠ってしまった、と言う事になる。

しかし、それ程に魔力を喰われても尚飛鳥はああも気取った態度を取っていられるのだ。
その疲労を自覚しているのかどうかはランサーの知ったことではないが、とにかく、彼女が体力の消耗にも悲鳴を上げず、弱音を吐かずにランサーの戦いを見届けていたのは、
紛れも無い事実であった。
何より彼女は生きる「覚悟」を予選においてランサーに見せつけていた。

(それで良い……お前は弱くない……)

己のマスターである彼女が決して弱者はないということを、ランサー……戒斗は改めて認めた。
そして、眠る彼女の頭をそっと撫でてやった。


月の海で見る月明かりは、今宵も変わらず美しかった。


855 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:35:30 SXX99Wrs0
【E-3/場所名/1日目 夜(19:40)】

【最上リョウマ@デジモンクロスウォーズ 時を駆ける少年ハンターたち】
[状態] 健康、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具] クロスローダー
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣いレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:答えを見つけるまで専守防衛
1. セイバーにはとても迷惑をかけたと思っている。
2. 帰宅しました。
3.明日の方針について考える。
[備考]



【セイバー(モモン)@オーバーロード】
[状態] 健康
[装備] 双剣、漆黒の鎧
[道具] その他多数の装備
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの依頼を引き受ける。
1. 「アインズ・ウール・ゴウン」の名はなるべく隠しておく。
2. 自分の正体がバレてマスターの心の傷を抉らないか心配。
3.切り札である魔法アイテムはなるべく取っておく。
4.あのランサーとはまた戦ってみたいものだ
5.にしても頭にフルーツを被るのはちょっと可笑しいよなぁ……
[備考]

・ランサー(駆紋戒斗)の宝具「刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)」、「射り撃つ黄金の矢(レモンエナジーアームズ)」を確認しました。


856 : 甲冑に隠されし超越王の矜持 ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:35:50 SXX99Wrs0
【二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 魔力消費(大)、疲労による睡眠状態
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣いレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて帰る。
1.敵は倒す、「覚悟」はとっくに決めた。
2. にしても、随分と暴れたじゃないかランサー……ムニャムニャ。
[備考]

・魔力消費による疲労で眠っています。
・セイバー(モモン)の宝具は目の当たりにしてますが、宝具だと感づいているかは不明です。
・予選時にランサーに「覚悟」を見せつけたそうです。


【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態] 健康
[装備] ゲネシスドライバー&レモンエナジーロックシード、ソニックアロー
[道具] 戦極ドライバー、ロックシード一式
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:願いを叶える
1.聖杯に招かれた英雄達に己の「強さ」を示す。
2. セイバー(モモン)に対し(本人は否定しているが)再戦を望んでいる。
3.お前は弱くない……
4.さっさと此奴を起こして戻るとするか。
[備考]

・セイバー(モモン)の宝具は目の当たりにしてますが、宝具だと感づいているかは不明です。
・「運命超越す緋色の王(ロード・バロン)」を除く全ての宝具を解放しています。
・現在マスターの二宮飛鳥を抱きかかえています、彼女が目覚め次第家に送り届ける予定です。


857 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 19:36:42 SXX99Wrs0
以上で、投下を終了します。
誤字脱字、その他疑問に思う部分がありましたら教えて下さい。


858 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/07(日) 20:05:19 SXX99Wrs0
>>842

了解しました、投下お待ちしています。

それと場所名の記述を忘れてしまいましたので追記。
場所は「自然公園」です。


859 : 名無しさん :2016/08/07(日) 21:42:17 iTJ3XUe60
投下乙
戒斗が宝具全解放したら飛鳥は耐えられそうに無い。このままだと早期に詰むかな?
そしてモモン強し。でも正体知ったら戒斗キレそう。


カオスヒーロー&セイバー(ガッツ)、ステラ・ルーシェ&バーサーカー(朽木ルキア)、アサシン(大道克己)予約します


860 : 名無しさん :2016/08/08(月) 02:14:27 iidgJLrY0
>>859
トリ忘れてますよ―。予約は楽しみにしております

投下乙です!
奇しくも共に弱者が虐げられない世界を作るために強者として君臨した超越者同士の戦いか。
モモンというかアインズは虐げる側でもあるんだけどそれでいて人と人ならざるものの共存も望んでいるという鎧武的にも面白い位置なんだよな。
鎧で真の姿を隠した二人の王同士の戦いは見応えありました


861 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/08(月) 03:39:52 UKoFyL2g0
予約ありがとうございます。
それと、地の文を見直してみたら時間帯にもミスが有りましたので報告いたします。
時間帯は夜(20:40)です。


862 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/08(月) 05:42:49 QZvU/thw0
すいません。それでは改めて

カオスヒーロー&セイバー(ガッツ)、ステラ・ルーシェ&バーサーカー(朽木ルキア)、アサシン(大道克己)予約します


863 : 名無しさん :2016/08/09(火) 19:46:41 I64RHzeg0
投下乙です、そういやコータックも極アームズのまま植物操ってたし戒斗も別にロバロンになる必要はないのか。レモンエナジーでこれだと短期決戦しかなさそうだがはてさて


864 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/10(水) 14:03:46 .KdY9i3A0
ご感想ありがとうございます。
1つの話に3つも感想が来るなんて……本当に嬉しいです!



確かにそうですね。>レモンエナジー

ちなみに今回の戒斗さんはバナナスカッシュ×4とレモンエナジースカッシュ×1、
更にマンゴーチャージ×1にクラック×3つと必殺技を連発しまくり、その結果これほどにまで魔力消費が激しくなった、という感じです。
因みに本編の様な戦い方だとレモンでも割と結構魔力は安定します、オバロンはその限りではありませんが。


865 : ◆1U2WbYpZO6 :2016/08/12(金) 18:37:54 ww5yuufI0
延長をさせていただきます。
度々申し訳ございません。


866 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/15(月) 07:19:33 HWMFocjM0
>>565
了解しました。

それと、先程Wikiに把握の難易度の表を作成しました。
これで当企画に参戦している作品の把握難易度が良く分かるかと思われます。h

ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/204.html


867 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/15(月) 10:53:36 lLqkZAx.0
予約を延長します


868 : ◆1U2WbYpZO6 :2016/08/16(火) 00:05:06 MOYk..4A0
申し訳ありません、最後の延長をさせていただきます。


869 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/20(土) 20:22:20 Ff5GP7Ig0
もう一度延長させて頂きます。


870 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:14:50 /INROW7w0
投下します


871 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:15:52 /INROW7w0
深夜の廃倉庫、所有者の居なくなったビルの前に車が停まり、複数の人間を吐き出した。
彼等は、この倉庫を格安で買った裏社会に属する組織の構成員である。
拘束され、頭に袋を被せられ、周囲を囲まれて、小突き回されているのは、彼等と異なる組織の構成員の男だった。
此処一帯は滅多に人が来ない為に、泣こうが喚こうが叫ぼうが誰かの耳に届くことはまず無い。
この立地条件を活かして、彼等はこの倉庫を、敵対組織の人間の拷問や、裏モノのAVの撮影に使用していた。

今夜、此処に連れ込まれたのは、最近姿が絶えて久しかった『男』であった。
『男』の所属していた組織は、数日前にトップ─────といっても誰の記憶にも無いが─────が怪死し、その後に起きた後目争いで、順当に行けば後を継ぐ筈だったNo.2が殺害され、組織はNo.3の男が継いだ。

この事は当然絶対の部外秘とされたが、何処にだって外部と通じている輩は存在する。
そんな輩の一人から、長年の敵対組織に起こった異変を知ったある組織が行動を開始。
今日、殺されたNO.2の側近を襲撃し、護衛を皆殺しにして捕まえ、事情を喋らせる為に此処へ連れて来たのだった。
NO.2の側近なら、消えても組織は即座には反撃に出ることは無いだろうと踏んでの強襲だった。

「テメェ等に話すことなんてねぇよ!!」

尋問の為に。袋を取られた男が威勢良く叫ぶのを黙らせるために、リーダー格の男が股間を蹴り上げる。
獣じみた声を上げて蹲った処へ、顔面に蹴りを入れて地面に転がすと、五人いる部下のうち2人に、隣室から道具を取ってくる様に命じる。

「最近はスナッフはやってないからなあ」

脅しつける意味合いを込めて呟くと、連れ込まれた男が猛然と吼えた。

「テメェ等!!カタギを手に掛けたのか!?仁義はどうしたんだよ!!仁義は!?」

「そんなもんが銭になるのかよ!!」

今度は男の腹を蹴って黙らせ、助走をつけた蹴りで頭を蹴り抜いて気絶させた時、隣室から悲鳴と共に、部下が転がり出て来た。一人だけ。

「何があった!!」

一目で部下が恐慌状態にあると見抜き、大喝して気を取り戻させると同時、残りの部下に得物を構えさせる辺り、リーダーは中々に場数を踏んでいるらしかった。

「ガ…ガキが……、カズが近づいたら…いきなり……もう一人……」

支離滅裂で要領を全く得ないが、隣室に『ガキ』が居て、其奴がもう一人が戻ってこない原因らしいと、リーダーは当たりをつけた。

「チッ…」

小さく舌打ちするリーダー。一応施錠してあったというのに、何処から入って来たのか?第一この倉庫の扉は一つで明かり取りの窓は大分高く、窓から入るのは無理だ。
浮浪者や、肝試しにやって来る連中対策に、入口の鉄扉には頑丈な鍵を付け、南京錠が掛けてある。
二つとも此処に来る際にリーダー自身の手で外している。侵入者が外した鍵を掛け直すにしても、外付けの南京錠をどうやって内側から掛けたのか?
リーダーは背すじに嫌な汗が流れるのを感じたが、此処はリーダーの所属する組織にとって存在を知られてはならない場所だった。
何しろ今まで何人もの男を惨殺し、その何倍もの女を凌辱し、解体してきた現場であり、その一部始終を録画して、裏モノのビデオとして販売し、結構な利益を上げてきた。
当然警察もこのビデオの製作者を逮捕するべく動いている。
この場所が外部に漏れ、警察に知られれば、即座に倉庫の所有者を特定され、組織がもはや組織としての態を為さなくなるまで追及されるだろう。
気味が悪いだの、嫌な予感がするだので放っておけるものでもなかった。


872 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:16:24 /INROW7w0
リーダーは自分達の装備を確認した。
一人はレミントンM870、もう1人と床の奴はベレッタM92F、床にへたり込んで震えている男からベレッタM92Fを取り上げるとベルトに差し、
ベレッタのうちの一人に捕虜を見張らせ、そのまま自分はホルスターからコルトパイソンを抜いて構える。
威力は有るが装弾数の少ないパイソンを選んだのは、弾詰まり(ジャム)が起きず、弾が不発だったとしても、そのまま引き金を引けば撃てるリヴォルヴァーの信頼性を選んだからだ。

「其処に居る奴!さっさと出て来い!!」

レミントンが一番前、ベレッタとリーダーがレミントンの左右の斜め後ろで構えるフォーメーションを取る。
出てきた処に一発弾(スラグ)を食らわせて仕留める。外した時は9mmパラと357マグナム弾の出番だ。
一発弾(スラグ)は、アメリカでは立てこもり事件に際し、警察が頑丈なスチールドアを破壊するのに使う程だ。生き物に使うならば大型動物用。人間には過剰過ぎる代物だ。

隣室との区切の安っぽいスチールドアがゆっくりと開き、銀髪の少女が姿を現した。

「はぁ?」

レミントンが思わず漏らす。それもその筈、現れた少女は痩身矮躯、大の男をどうにか出来る様には見えなかったからだ。

「殺っちまえ!!」

微妙に弛緩した空気を、リーダーの怒声が引き締める。少女が何であれ、此処を知られたからには、此処で出来た死体の仲間入りをさせる。最初から生かしておく気はリーダーには無い。容赦の無い射撃が少女に浴びせられた。
レミントンが火を噴き、轟音と共に巨弾を放つ、胸部に命中した弾丸が背中から、大量の肉と血と共に飛び出し、赤い花を咲かせ─────はしなかった。

レミントンの首が宙を舞う。刃が風を斬る音と切断音が聞こえたのは、栓を抜かれたシャンパンの様に、レミントンの首の切断面から鮮血が噴き出したのと同時だった。

「な……ぬおおおおおおあああああああああああ!!!!」

リーダーと残りの男は逆上して引き金を引きまくった。乱れ飛ぶ9mmパラと357マグナム弾の嵐が、少女の体に無数の穴を開け、襤褸布へと変え─────はしなかった。

きっかり二秒後、リーダーとベレッタがレミントンと同じ運命を辿るのを、床にへたり込んだままの最後の男が見ていた。

「ひいいぃぃぃぃぃぃいいいい!!!」

失禁脱糞し発狂状態にある男を見下ろして、少女は手にした得物を振り上げる。

「し…に…が……み」

男が得物を認識した瞬間。男は頭頂から臍までを縦に分断され、即死した。

「…………」

たった今、NPCとはいえ、五人もの命を奪った事に何の感慨も見せない少女─────朽木ルキア─────バーサーカーのサーヴァントは緩慢な動作で辺りを見回す。
此処に来たのは、マスターであるステラを風雨や外気に晒されない場所で休ませる為であり、偶々やって来た五人を殺したのは、マスターであるステラの消耗を少しでも抑える為に、魂喰いを行う為だった。
周囲に生きている人間は、拘束されて気絶している男のみ。
ルキアはゆっくりと鎌を振り上げた。さっさとこいつも食って、奥の部屋で眠っているマスターの処に戻ろう。
狂化により濁った思考で、朧げに考えるとルキアは鎌を振り下ろそうとし─────振り向きざまに水平に薙いだ。


873 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:16:51 /INROW7w0
譲れない願いを抱いて夜の街を彷徨う男がいた。名は◆◎☆▽─────聖杯により、“カオスヒーロー”という名で当人以外の全員に認識されることになった男である。
元いた世界に帰り、二人に恩を、一人に仇を返す。その為にカオスヒーローは戦う、否。戦わざるを得ない。
“カオスヒーロー”などというありえない名でしか他者に認識されない様にされた彼は、意思に関わらず聖杯戦争に乗る以外の途を選べなかった。
何しろ“カオスヒーロー”なんて名前の人間は存在しない。NPCは気にも留めないだろうが、他マスターに知られれば、即座に自分がマスターと知られる。
信用して良い相手かどうかを見極めているゆとりなど存在しない。そこでカオスヒーローの立てた方針は、襲って来る者、NPCを殺している者、話が通じない者は全て斃す。というものだった。
少なくとも皆殺しというのは考えてはいない。数も減った終盤に差しかかればともかく、こんな序盤から全方位に喧嘩を売る程、カオスヒーローは自惚れてもいないしバカでも無い。
手を組める相手が居れば同盟を組むのが賢明というものだろう。
カオスヒーローのサーヴァント、ガッツもこの方針に賛成し、取り敢えず2人は今夜の寝床と他の主従を求めて、廃ビルや無人のアパートが立ち並ぶ裏通りを歩いていた。


【サーヴァントの気配が有る】

唐突にそんな事を言い出したセイバーのサーヴァント、ガッツにカオスヒーローは不審げな目を向ける。
悪魔とそれなりに関わって来たカオスヒーローは、超常存在の気配には敏感だ。その彼が気付けないサーヴァント気配に彼は気付いたらしい。

─────烙印が痛みやがる。この近くにいるのは真っ当な英霊じゃ無いな。

生前の経験から、そう結論づけると、ガッツはカオスヒーローを先導し、ある廃倉庫の前に辿り着いた。

【此処の中から気配がする。取り敢えず俺は霊体化して様子を探るから、アンタは後から入って来てくれ】

【分かった】

そうしてガッツが霊体化して倉庫の中に入るのを、カオスヒーローは見送ったのだった。

中に侵入したガッツは直ぐにサーヴァント─────ルキアを発見。死体に囲まれ、今まさにNPCを殺害しようとしているルキアを、撃破する対象と認識。
一応は話をしてみようと実体化したところを攻撃されたのだった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

黒い剣士の胴を、上下に分かつはずの鎌が空を斬り、剣士が後ろに飛びながら投げて来たナイフを鎌の柄で払い落として、ルキアは敵サーヴァントと対峙する。
これまでに戦ったサーヴァントは無し。初戦ともなれば、通常ならば慎重に戦うだろうが、ルキアに与えられた役割(ロール)は狂戦士。思考などすることなく、己が本能に任せて斬りかかる。

ガッツはルキアを見て、話をする事をあっさり諦めた。彼が生前に飽きる程見て来た顔をしていたからだ。
人血が地を染め、屍と屍手前の者達が当たりを埋め尽くす戦場で、異形と化した骸が跋扈し、条理を越えた魔性が跳梁する荒野で。
理性を手放し、狂気に落ちた者の顔をした─────バーサーカーのクラスを与えられた─────少女を、ガッツは“敵”として認識した。
バーサーカーのマスターが居ればまだ話は別だろうが、姿が見えない以上、何処かに潜んで様子を見ているのだろう。
もし仮に、カオスヒーローの様にやむを得ない理由が有って、この行為に及んだのなら、何らかの説明をしに現れても良さそうなのだが、其れも無い以上、バーサーカーのマスターは“乗っている”と見るべきだろう。


874 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:17:26 /INROW7w0
先に動いたのはルキアだが、先に攻撃したのはガッツだった。
実体化させた宝具、全長も幅も、大柄なガッツを遥かに超える、鉄塊と見紛う巨剣を水平に薙ぐ。
嘗ての友、現の仇敵に捧げる巨剣、鍛冶屋ゴドーが鍛え上げ、ガッツと共に無数の夜を越えて宝具へと昇華された剣。
人には振るえぬ重量と大きの鉄塊が、ルキアの小さな身体を撃砕すべく、猛然と唸りを上げる。
振り抜かれた鉄塊が室内の空気を激しく乱し、ルキアの身体の在った位置を通過した時、ルキアの姿は何処にもなかった。
屠竜の剣に人の形をしたものが耐えられず、四散したのか?
否。そうで無い事を剣を振るったガッツは確信している。

─────!?

ガッツが剣を振り抜いた勢いに任せて左に転がるのと、ガッツの首が在った空間を、刃が奔り抜けたのは同時。
瞬間移動でガッツの背後に出現したルキアが鎌を振るい、ガッツの首を狙ったのだ。
攻撃の最中という絶対の隙に、背後という絶対の死角からの攻撃を回避出来たのは、人外の魔にその名を知られる程に魔性の者共を屠り、戦場で無数の敵を薙ぎ払い、夜には烙印に引かれて来る無数の亡者に鉄塊を振るい続けた、生前の闘争の経験の賜物だ。

床に身を投げたガッツはドラゴン殺しを手放してナイフを投擲、次いで義手に連射式のボウガンを装着して、宙に浮かぶルキアの身体を狙い撃つ。
対してルキアは旋風の様に鎌を回転させて、飛来する凶器の悉くを弾き飛ばし後方へと退く、刹那の間も置かず、ルキアの居た空間を暴風の如き勢いでドラゴン殺しが奔りぬけた。

「シィッ!」

ルキアを追い、ガッツが巨剣を連続して振るう。止まることなく繰り出される暴威はさながら竜巻。
巻き込まれれば、否、触れただけで五体を砕く暴撃を立て続けに繰り出すガッツは、見るものが居れば破壊という概念が人の形を取ったかの様に様に見えただろう。
装甲で受ければ装甲ごと、武器で受ければ武器ごと両断する斬撃の嵐─────
よしんば装甲が耐えても中の肉体が、武器が耐えても支える腕が砕ける。
理性も思考も濁り切った頭でも認識できる程の脅威。ルキアは決して巨剣を受けようとはせず、唯々躱し続ける。
巨剣に薙ぎ払われた空気が荒れ狂って暴風と化し、連続して響く刃鳴りか獣の唸り声にも似て耳を震わせる。
荒れ狂う剣風に壁際に追い込まれたルキア目掛け、ガッツは己の身体を砲弾の如き勢いで射出。コンクリートの床が砕ける勢いで左足を踏み込み、下半身を旋回、踏み込みの勢いと全体重を巨剣に乗せて、ルキアの脳天目掛けて振り下ろす。
遥かな高さから落下する大瀑布の如き斬撃。巨剣の重量とガッツの筋力と理に適った身体運用の併さった剣撃は、当たればルキアの身体を切断するのではなく、四散させる威力の一撃。
巨岩をすら粉砕する巨剣は何も存在しない空間を斬り、コンクリートの床に剣身の半ばまでを埋め、直径10m程のクレーターを生じさせた。

「オオォッ!!」

またしても瞬間移動による回避。それを読んでいたガッツは剣を振るいながらその場で一回転。全方位を薙ぎ払った巨剣は虚しく宙を薙いだ。

─────!?

額然とするガッツの回転運動が終わったその時、眼前に鎌を振り上げるルキアの姿。
巨剣の斬撃を回避した時、ガッツが二の手を用意している事を読んだのか、再度瞬間移動を行い、元の場所に戻っていたのだ。

「チィッ!?」

ガッツは咄嗟に巨剣を床に突き立て、その影に身を隠す。それを待っていたかの様に振り下ろされる刃。明らかに機を逃した攻撃は巨剣に阻まれ虚しく弾き返される─────事は無かった


875 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:17:59 /INROW7w0
ガッツの隻眼が驚愕に開かれる。凡そ斬るという用途を到底果たせるとは思えない分厚い剣身を、水面を掻き分けるかの様に透過してくる刃を。
咄嗟に巨剣を放して横に転がらなければ此処で勝敗は着いていだろう。
だがガッツは致命の窮地を回避し、ルキア目掛けて取り出した炸裂弾を投擲した。咄嗟に弾いた鎌の刃部分が爆発。閃光と衝撃にルキアの動きが止まった隙を逃さず床に転がった巨剣を拾い、ルキア目掛けてナイフを投げる。
身を横にしてナイフを躱したルキアが振り下ろす鎌をもう一度転がって避け、巨剣をしっかりと握り締めた。
床に身を投げ出したままのガッツが再度放った投げナイフを鎌の柄で払い、ルキアは床を蹴って跳躍する。
僅かな間も置かずルキアの足を掠めて、足首の在った辺りの空間を鉄塊が通過する。
床に転がったままとはいえ、ガッツの膂力で振るわれる巨剣は、当たればルキアの両足を骨まで砕いていただろう。
宙に浮かんだルキアの落下速度を計算し、立て直したガッツが腰を狙って巨剣を横薙ぎに叩きつける。
鋼の装甲を纏った屈強な巨漢や、大型動物を上回る巨躯の使徒を、薙ぎ倒し宙に舞わせて来た斬撃を、ルキアは受けるでも体捌きで回避するでもなく、上昇する事で回避。
空中で前進して距離を詰めると、鎌をガッツの脳天目掛けて振り下ろす。
これをガッツはしゃがみ込むことで回避。頭上を刃が過ぎるのと同時に、巨剣の切っ先をルキアの胸目掛けて突き出す。
鋼の激突する壮絶な音と同時、鎌の柄で受けたルキアの小さな身体が縦に回転しながら宙を舞った。
短く息を吐くルキアに、ガッツは巨剣を振るい呵責無い追撃。暴風を纏い剣がルキアに迫る。
剣が直撃する直前にルキアの姿が消え、ガッツの左に出現、ガッツの命を刈り取るべく鎌が振るわれる。
ガッツの首が胴から離れる寸前、突如としてルキアの身体が燃え上がった。

「手間を掛けさせたな。マスター」

礼を言うガッツに目もくれず、カオスヒーローはルキアを燃え上がらせた魔界魔法─────アギラオ─────を再度放ち、ルキアの身体をさらに激しく燃え上がらせた。
呼吸すれば肺が焼け、ごく僅かな時間で皮膚を炭化させる熱量に包まれたルキアの姿が不意に消える。
愕然としたのも束の間、歴戦の2人が側背を警戒したその時、2人の内カオスヒーローの眼前に現れたルキアが、大上段から鎌を振り下ろした。

「ぬぅお!?」

しかし、超常の存在である悪魔と戦い続けてきたカオスヒーローの身体に刻み込まれた経験は、この不意打ちにも咄嗟に反応し、後転することで回避。
更に後ろに飛びながら魔界魔法の一つ、“アギ”を放って牽制。着地と同時に今度は右へと飛んだ。

後ろに飛んだカオスヒーローを追撃しようとしたルキアの背中が、爆音と共に爆ぜた。魔法では無い、生前にガッツが使用していた炸裂弾。今では魔力を消費する事で幾らでも生成出来る其れを、無防備なルキアの背中目掛けて投擲したのだ。
次いで連射式ボウガンを義手に装着。これまた魔力を消費する事で幾らでも生成出来る矢を、炸裂弾が直撃して仰け反ったルキア目掛けて、惜しみなく射出する。

「アアアアアアアアアア!!!」

背中に十数本の矢を受けて絶叫したのも束の間。ルキアの姿が、2人の前から消滅した。

「そっちか!」

ルキアの気配を感じ取り、壁に駆け寄ったガッツが巨剣を叩き込み、鉄筋コンクリート製の壁を、薄い木の板のように呆気なく崩壊させ、壁の向こう側を露わにした。
崩れた壁の先には、無数の拷問器具と、頭頂から股間まで縦に両断された男の死体が有るだけで、人の気配など微塵も無かった。

「奴は何処へ消えた」

「あの瞬間移動を使われて逃げられたらどうにもならない。後一押しだったんだがな」


876 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:18:28 /INROW7w0
ガッツとルキアの死闘を、倉庫の外から見ていた男が居た。
男の名は大道克己。ラウ・ル・クルーゼをマスターとするアサシンのサーヴァントだった。
克己もクルーゼも今の所闘うつもりは無い。ならば何故克己はマスターの元を離れて、この様な場所にいるのか?
克己の宝具『古き記憶は永遠の眠りへ(仮面ライダーエターナル)』は目にした宝具の機能を停止させる反則的な能力を持つ。
この能力を活用する為には一つでも多くの宝具を見ておく必要がある。宝具を通常時の武器として使用する事の多いセイバーやランサーと違い、他のクラスは宝具を常に持ち歩いているわけでは無い。
そのセイバーやランサーにした処で、真の切り札を隠している事だって有り得るだろう。刹那の判断が生死を分け、勝敗を決する戦場で、即応して切り札を切る為に他のサーヴァントの宝具を知ることは不可欠だった。
そこで克己はアサシンのクラススキル“気配遮断”を用いて、他の主従の探索と観察を行っているのだった。

そしてもう一つ。クルーゼが密かに接触しているテロリスト、“鬼兵隊”の監視の為である。
このテロリスト集団について克己はクルーゼ程の鷹揚さを持たない。無秩序に破壊を繰り返す集団は、己の目的成就の思わぬ障害になりえるかも知れないからだ。
それでなくともマスターであるクルーゼに何らかの危害を加えかねないのだ。動向を把握しておいて損は無いだろう。巧く行けば、他の主従を排除するのに使えるかも知れない。
そうして克己は鬼兵隊の動きを探った後、サーヴァントが戦っている事を期待して、人気の無い此の近辺を探っている処へ、廃倉庫へと向かうカオスヒーローとガッツを目撃。後を尾けてルキアとの戦闘の一部始終を目にしたのだった。

克己は再び夜の街に潜む。あの場所での戦いは終わった。あの場所に留まっても意味は無い。他の場所に移動して新たな情報を獲得するのが常道だった。
そうして瞬く間にかなりの距離を移動して、住宅街に有る自然公園までやって来た。

「殺し合いをやるには向いている場所なんだがな。流石に今日は店じまいか」

一時間程前に鎧の剣士とフルーツマンの死闘を観戦し、クルーゼを通じてステータスを確認した場所に戻って来たが、この場所を戦場としている者達は居ない様だった。
折を見てこの場所に監視カメラでも設置しようか、等と考えていた克己の眼前に、先刻倉庫で巨剣の剣士と死闘を繰り広げていたバーサーカーが、金髪の少女を抱きかかえて突如として出現した。

─────しまった!?

周囲にサーヴァントの気配が無かった為、気配遮断を解いていたのが失敗だった。
ステラを連れて倉庫から逃走したルキアは、身を隠せる場所を探して移動を続け、この自然公園に転移して来たのだが、そんな事情を克己に知る由は無い。

ルキアはは克己と目が合うなり、抱き抱えたステラを地面に横たえ、長柄の鎌で斬りかかった。
克己は鎌を避けようとも、鎌から逃げようともせず、少女が鎌を振るうタイミングを見極め、絶妙な機を捉えて前に飛ぶ。
結果、克己は少女とすれ違い、互いの位置を変えた処で、追撃に薙ぎ払われた鎌も前転して躱し、距離を取ることに成功。

『エターナル』

間髪入れず、腰のロストドライバーに“エターナルメモリ”を差し込み。

「変身」

『エターナル』

吹きすさぶ暴風。
右腕を広げた克己の身体が、無数の白い金属片に覆われ。一瞬のうちに黒いマントをつけた白い鎧に身を包んだ戦士が現れる。

「変身するのはもっと先になる予定だったんだがな。まあ良い、踊るぞ、死神のパーティータイムだ」

此処に嘗て生者だった死神と、嘗て死神だった少女は争闘を開始した。


877 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:18:57 /INROW7w0
巨岩をも砕くエターナルの拳が唸り、鋼柱を折る脚が空気を抉る。
元より五体そのものが凶器と言っていいNEVERの身体能力。其れが宝具を纏った時の脅威はどれ程のものか。今の克己に撫でられただけで、人体どころか羆さえ原型を留めぬ肉の塊となるだろう。
その暴威をルキアは尽く躱し、避け、空を切らせる。一見宙を自在に舞い、瞬間移動も駆使するルキアが克己を翻弄しているように見える。
実情は異なる。先のガッツとの戦闘で受けた傷によりルキアの動きは鈍く、更にはルキアの動きを事前に把握していた克己に先を読まれ、読みを外してもNEVERとしての直感を越えられない。
結果。ルキアはバーサーカーというクラスに相応しく無い、防戦一方の戦いを強いられていた。

『ヒート』

「灼熱地獄はどうだ!!」

不利を悟り、離脱するべくステラの側に転移したルキアに『ヒートメモリ』を装着した克己が火球放つ。爆炎が地面を巻き上げ、業火がステラの居た位置を中心とした30m範囲を焼き尽くす。
炎の中から火に包まれtて、ステラを抱えて飛び出してくるルキアを『ルナメモリ』の効果により伸ばされた腕が殴り飛ばした。

「さあ、地獄を楽しみな!!」

天高く跳躍した克己がマントを靡かせ2人目掛けて舞い降りる。右足に集められた破滅的なエネルギーは蒼く燃える焔と化し、∞を軌跡と描いて2人の少女の命を散らす。

その時、ルキアに抱えられたステラの虚ろな瞳が克己を見つめた。そして。

─────!?

ステラの唇が動き、何らかの言葉を紡いだその時、克己の軌道はルキアと己を結ぶ不可視の線からズレ、2人から外れた地面を轟音と共に深々と抉り、土砂を弾き散らした。

舌打ちして、振り向き様に火球を放つ。誰も居ない地面に着弾した火球は、再度の爆音と共に10mを優に超える火柱を立て、周囲の地面を硝子の結晶と変えた。

あの時ステラ─────克己には名を知る術など無いが─────は確かにこう言ったのだ。

「生きたい…」

青白い頬、血の気の失せた唇、焦点を結ばない目。確かに生者で有りながらも、既に死者の相をした残り短い命の少女はそう言ったのだ。
その言葉を聞いた時、克己の脳裏を刹那にも満たぬ間だが、失われた記憶が過ったのだ。

嘗て死を待つだけだった人々を救おうとした過去を、彼らに向かって「明日が欲しいと」叫んだ事を。ほんの僅かな間だけ。

「何なんだよ……一体」

刹那の間取り戻した記憶。もはや忘却の霧の彼方に沈んだ記憶の残滓が、克己の胸に苛立ちとして残っていた。



【E-3/自然公園/1日目 夜(21:50)】

【アサシン】(大道克己)@仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ
[状態] 健康・僅かな苛立ち
[装備] ロストドライバー、ナイフ、T2メモリ
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。他マスター達の『解放』
1. 偵察を続ける
2. 鬼兵隊の動向を警戒
3.自分からは当分は仕掛け無
[備考]
1.セイバー(ガッツ)、バーサーカー(朽木ルキア)を認識。ステータスを確認、戦うところを観察しました。
2.カオスヒーローが魔界魔法を使用したのを目撃しました。
3.二ノ宮飛鳥&ランサー(駆紋戒斗)と最上リョウマ&セイバー(モモン)を認識。ステータスを確認、戦うところを観察しました。
4.ステラ・ルーシェを視認。死期が近いことを知りました
5.バーサーカー(朽木ルキア)とランサー(駆紋戒斗)の宝具を認識しました。
6.僅かな苛立ち。

※(E-3)自然公園内に爆発で生じた穴と地面が焼けた跡が戦闘の痕跡として残っています。


878 : 迷い子達 ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:19:21 /INROW7w0
満身創痍のルキアは、ステラを抱えて夜闇の中を、宛も無く彷徨う。ルキアは現界にマスターを必要としない。それなのにステラを護るのは何故なのか。
嘗て共に過ごした姉弟の記憶か。
ルキアに融合した姉弟の意思か。
狂気に囚われたルキアの精神(こころ)が答えを出すことは有るのだろうか。


【E-3/自然公園周辺/1日目 夜(21:50)】


【ステラ・ルーシェ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY 】
[状態] 数日経てば死ぬ状態
[装備]無し
[道具] 無し
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:生きたい。


【バーサーカー(朽木ルキア)@劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ
[状態] ダメージ(大)
[装備] 鎌
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:??????
1. マスターを休ませる
[備考]
1.セイバー(ガッツ)アサシン(大道克己)と交戦。カオスヒーローをセイバー(ガッツ)のマスターと認識しました。


879 : YtoO 運命の変なオッサン ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:22:42 /INROW7w0
「貴方達!!強い上にイケメンなのね!!そういうの!嫌いじゃないわ!!!!」

廃倉庫で盛り上がる乙女が一人

「………………」

「………………」

困惑する男が二人。

どうもルキアとの戦闘中に意識を取り戻していたらしく、二人の戦いを見ていたようだった……そして何の因果か乙女心が燃え盛ったらしい。
そうして霊体化しようとしたガッツと、落ちている銃器を回収しようとしたカオスヒーローに乙女心をぶち撒けた。
乙女は何故自分が此処に居たかという事情を、二人が訊いてもいないのに洗いざらい喋って、二人に行く当てが無いと知るや、自分のと一緒に知り合いの家に来るよう勧めだす。
血の海や散乱した臓物に全く動じない辺り大した乙女である。

「………………」

「………………」

困惑する男が二人。

「……なあマスター、ぶった切っていいか?俺こういう奴苦手なんだが」

童貞を捨てる前に処女を無くしかけたガッツの過去などカオスヒーローは当然知らない。

「イヤ、この変なオッサンの家に身を隠した方が得策だろう」

純粋に損得感情で答えたカオスヒーローに、ガッツはしかめっ面をした。

「まあ、そうなんだけどよ」

死んでからも妙な奴に縁がある─────そんな事をガッツは思った。


【F-2廃倉庫/1日目 夜(21:20)】

【カオスヒーロー@真・女神転生】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] レミントンM870、ベレッタM92F×2、コルトパイソン、鉄パイプ
[道具] 一発弾(スラグ)、357マグナム弾、9mmパラベラム×たくさん(少なくとも各種20発以上)
[所持金] ほぼ無い
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。話ができる奴とは話す。乗った奴や交渉が決裂した奴は殺す。
1. 変なオッサンの知り合いの家(E-4)に行く
[備考]
1.バーサーカー(朽木ルキア)を認識。ステータスを確認しました。
2.サーヴァントに魔法を使用し、その耐久性を認識しました。
3.バーサーカーのマスターを『聖杯戦争に乗った』と認識しています。姿は確認していません。


【セイバー(ガッツ)@ベルセルク】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] ドラゴン殺し
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う
1. 変なオッサンの知り合いの家(E-4)に行く
[備考]
1.バーサーカー(朽木ルキア)を認識。ステータスを確認し、戦って手の内を知りました。
2.バーサーカーのマスターを『聖杯戦争に乗った』と認識しています。姿は確認していません。

※(F-2)廃倉庫にセイバー(ガッツ)とバーサーカー(朽木ルキア)の戦闘の痕跡と五人分の死体が有ります。


880 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 21:23:25 /INROW7w0
投下を終了します


881 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/21(日) 21:44:57 DlzABZLU0
投下有難うございます。
またしてもステラを凌辱したヤクザを殺ったルキアは、今度はワルオや克己ちゃんにまで襲いかかる!
ガッツにエターナルという歴戦の鯖と対等に渡り合うルキアの強さに戦慄しました!
幾多もの強敵をぶった切ったガッツに匹敵する腕前を狂戦士ながら見せつけたルキア、克己ちゃんの冷めたハートを動かしたステラ、彼女達は一体何処へ行くのか……
所で、ワルオに助けられてオカマになったヤクザは京水さんでしょうか?
もしそうでしたのならNPC一覧に登録したいのですが……


882 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/21(日) 22:21:45 /INROW7w0
はい。ワルオとガッツに助けられたのは京水さんです


883 : ◆lkOcs49yLc :2016/08/22(月) 03:45:48 UwNfZSjw0
有難うございます、あのオチには吹きましたwwwwww
先程WikiのNPC一覧、地図を更新させていただきました。

それと感想を間違えましたすいません、ステラは別にヤクザに犯されてはいませんでしたねよく見たら。


884 : 名無しさん :2016/08/22(月) 18:09:45 6MAaLYRs0
投下乙です

ああ、なーんか覚えのあるセリフがあったと思ったらアンタかい京水さんw 他の組の因果な巡り合わせの印象も全部吹っ飛んだぞどうしてくれるんだwww


885 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/01(木) 14:06:04 Ae9adwWY0
宜野座伸元&セイバー(朽木白哉)
アール&アーチャー(北岡秀一)

予約します。


886 : 名無しさん :2016/09/03(土) 23:45:54 wXdbMACg0
遂に司法が動くか


887 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/06(火) 04:25:16 HdjbO7n.0
それとご勝手ながら、キャスター(かずみ)の属性を「混沌・善」に変更させていただきます。
申し訳ございません。


888 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/09(金) 20:16:30 0EZlm8Rs0
予約を2回延長させていただきます。


889 : ◆mcrZqM13eo :2016/09/12(月) 22:40:25 Zc1LhdSo0
瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)、百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)、輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)

予約します


890 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/13(火) 20:16:24 DKTH/QsQ0
了解しました、それでは私も
爾乃美家累&ライダー(フル・フロンタル)
を追加、再予約させていただきます。


891 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/14(水) 15:38:09 kzVBedu20
すいません、爾乃美家累&ライダー(フル・フロンタル)の予約を破棄します。


892 : ◆mcrZqM13eo :2016/09/22(木) 19:12:59 SFTjCFXQ0
予約を延長します


893 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:08:02 ZaR95e8w0
投下遅れて申し訳ございません。投下します。


894 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:08:25 ZaR95e8w0
この廃倉庫にて行われた朽木ルキアとガッツの戦闘から、凡そ20分が経過した。
警察は未だ此処には来ておらず、朱々とした現場には未だ大量の屍がそこらに転がっていた。
この世の終わりを見たかのような顔をしながらその肌を朱く染めている者もいれば、首から上を失っている者もいた。
そしてその倉庫の中心に、白い陣羽織を羽織った一人の男性がいた。
セイバーのサーヴァント、朽木白哉。
此度の聖杯戦争において、「剣騎士(セイバー)」のクラスを与えられ現界した白哉を喚び出したマスターの職業は、刑事という物であった。
曰く、掟を破った人間を取り締まるのがその職業であるとか。
現世における死神の様な存在、と言った方が彼には解りやすいのかもしれない。

先程まで、白哉はあるサーヴァントを追っていた。
そのサーヴァントは瞬間移動能力を持っており、かなりの俊敏性を誇っていた。
白哉もまた「瞬歩」と呼ばれる死神の必須技能において非常に長けていたが、彼女はそんな小細工など使わずに姿を消してしまい、その結果見失ってしまったのだった。
死神が持つ霊圧察知能力を以ってすれば、瞬間移動をされても近い距離なら直ぐに探知出来るはずだが、しかし彼女の霊圧は直ぐに消えてしまった。
恐らく気配遮断の類を使ったのだろうか、彼女の気配を見失った。

そして今白哉は、この倉庫に彼女の霊圧に近い物を感じ取っている。
霊的存在とは、霊圧に近い痕跡を足跡の如く残す時がある。
つまり、恐らく彼女は一時此処に立ち寄ったのだろう。
恐らく、この死屍累々とした場は彼女が創りだしたものなのだろう。
彼にとってあの霊圧は感じ慣れているような物だった。
朽木白哉は彼女の姿を、名を知っている。

「兄(けい)が再びあの姿を見せるとはな……ルキア。」

妻の遺した義妹の名を、白哉は呟いた。
あの姿は、彼もまた一度しか眼にしなかった物であった。
死神の本部にして幽霊の世界たる瀞霊廷は嘗て、壊滅の危機に晒された事があった。
あの姿は、その元凶に乗っ取られた時の姿なのである。
その時はルキアに関する記憶を失っていたのだが、今でもその姿はよく覚えている。
あの姿から察するに彼女の魂は最早、彼女の物ではなくなっていた。
あるのは姉弟の魂か、それか別の何かだ。

無論、白哉とてルキアがあの姿で暴れることを見過ごす訳には行かないであろう。
しかし姉弟を憎むつもりはない。
彼等が死の間際に見せた笑顔、そしてルキアが流した涙。
あれを見れば、彼等が憎いという気持ちにもなれるはずがない。
況してや、自らが彼女を忘却した贖罪という訳でも無い。
強いて言うなら、「止めること」である。
あの姉弟が何を考えているのかは、彼等との付き合いの浅い白哉の知る所ではない。
しかし、何よりも大切な人が邪な道に進むと知れば、止めるのが己の役割だ。
彼女は今は亡き妻の忘れ形見であり、背中を預けて戦った部下の妻でもある。
例え彼女を二度目の死に追い込もうが、ルキアは己が止める。
人気のない夜空を見渡しながら、冷たい表情の裏に朽木白哉はそんな考えを巡らせていた。


しかし、聖杯戦争をさておいてもこの状況もまた見過ごせない物だ。
無数に散らばる屍をこうして捨て置くことなど出来はしないだろう。
白哉は早速思考を義妹の方ではなく、聖杯戦争の方に傾ける。


895 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:15:33 ZaR95e8w0
(マスターに念話を掛けるか)

白哉のマスターと言えば警官だ。
この手の件はその筋の人間に任せるのが妥当とも言える。


「マスター。」

白哉は己のマスターに念話を取る。

『やぶから棒にどうした、セイバー。』

己のマスター、宜野座伸元から念話が掛かる。

「何やら気掛かりな物があるのだが、見てもらえぬだろうか。」

そう言い、白哉は宜野座との視覚を共有し、死屍累々とした光景をマスターに見せつける。

『……見慣れてはいるが、酷い有様だな、何処の地点だ?』
「えふの弐地点だ」
『分かった、今からでも同僚に通報する、お前はまた好きに動け。』
「了解した。」

宜野座との念話を切った白哉は、辺りの死体を一瞥した後、フッと霊体化し姿を消した。
しかし、それを見ていた者がいた。
倉庫の上にある鏡に、一人の仮面の男が突如映った。
其の仮面の男は、鏡からフッと飛び出て、スタッと死体だらけの地面に飛び降りる。
全身を鎧で包んだ仮面の男の名は、北岡秀一。「弓騎士(アーチャー)」のクラスで現界したサーヴァントである。
北岡の宝具「消えない虹を掴むために(ゾルダのデッキ)」。
この様なライダーが持つカードデッキには、鏡の世界「ミラーワールド」に飛び込む機能が搭載されている。
彼は、ミラーワールドに閉じ籠もることで、此処らの現場を観察していたのだ。

今回、アーチャーが偵察していたのはイタリアにいた頃から既に存在が漏れていた組織である。
その組織はとあるイタリアンマフィアから武器を幾らか仕入れていたらしいが、ある事件でその事が明らかになっていた。
そして、その組織に鬼兵隊に関わる人物が関わっていたことも。
彼らの監視もまた、本人曰く台本にポツッと書かれている様な設定ではあるらしい彼の上司からの司令である。
そう言う訳で、アーチャーは彼らの事も目に入れているのだ。

ふと、北岡は緑色の装甲に包まれた己の腕を見つめる。

「しかし……ミラーワールドに長い時間いられないってのも酷いもんだねぇ……まるで水の中でしゃがみ込んでいるような気分だったよ全く。」

本来仮面ライダーは、大凡10分程ではあるが、ミラーワールドに入ることが出来る。
北岡を含める13人のライダーがサーヴァントとして喚ばれた場合、この様な能力も再現されているはず……なのだが。
それはライダーのクラスで喚ばれた場合での話だ、生憎弓兵として喚ばれた今の北岡はいつも以上にミラーワールドに滞在する事ができない。
まず、ミラーワールドと現実世界を行き来するためのライドシューターが使えない。
普通に飛ばされてミラーワールドに入るのだ。
おまけに此処に居られるのは大凡2.3分ほど、只の人間と同じ程度しか居られない。
やはりクラス制限というのは窮屈な物だ。

しかし、偵察という物は北岡には大変不相応な仕事であった。
そもそも北岡の仕事といえば弁護士、隠れんぼではなく口喧嘩が本領なのである。
資料集めならスーパー秘書こと由良吾郎の仕事だし、記者である城戸真司ならまだしも隠れるのは趣味じゃない。
セールスマンの振りをして家に入り込んだ事ならあるが。

北岡は、周りに転がる死体を見つめながら、死体を踏まないようにして出口に向かってゆっくりと歩く。
ただの人なら嘔吐しても可笑しくない空間ではあるが、北岡もまた手こそ掛けずともこういう惨状には慣れっこな人間であった。
寧ろ自分が何時病死することを待たずこの様な有様になるか分からない状況にあったのだ。
死体に何匹かハエが止まっているのが垣間見える。
出口を抜けた所で、背中を振り向き北岡は言葉を漏らす。


896 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:16:01 ZaR95e8w0
「しっかし流石に酷い有様だね、浅倉も此処まではしないでしょ。」

嘗ての宿敵、浅倉威もまた、この様な死体を何体も積んできたような男ではあった。
だが彼は時偶近くの人間を殺す程度で、一度に虐殺するような真似はそれ程はしなかった。
最も、この様な事をしてもそれ程可笑しくない人物でもあったことは確かだったのだが。
それに、こんな芸当が只の人では出来ないということは十分分かっている。
況してやこの国は平和国家を唄うだけあってそれ程一人の殺人数は他国と比べて酷くはない。
なにせ一人で30人を虐殺しただけで記録に入る程だ、だがこの屍体の数を見れば恐らくそれを超えているであろう。
そしてこの舞台のことを考えれば、この件は十中八九、サーヴァントの仕業と勘繰って間違いない。

そうとなれば、早速北岡はマスターに念話を送る事を決める。
北岡もマスターも、ゆずれない願いを賭けてこの場に立っている。
マスターはロール上それなりに情報通ではあるが、それでも時間がない。
仮にこの一件が聖杯戦争の勝利の鍵となるとしたら、北岡はそれに賭けてみたいと思った。
中々せっかちな行動だとも内心思う、多分デッキを手に入れたばかりの自分ならゆっくり動いても可笑しくないかもしれない。

(随分と俺も急ぎ足な奴になった物だな……城戸の馬鹿が移ったのかねぇ……)

心の中でそうボヤきながらも、北岡はマスターに念話を送る。

「マスター、もしもし聞こえる?」
『はい、もしもし。』

数秒の間を置いて己のマスター、アールからの連絡が届く。

「ちょっと興味深い奴見つけたんだけどさ、見てくれる?」

そう言い、北岡はアールとの視覚を共有する。
すると、直ぐにアールからの返答が返ってくる。

『オイオイマジかよ、俺もこういう光景は見慣れているけれどさ、しかし何でこんな事になったんだろうなぁ……』

アールから返ってきた声は、いつもの様な陽気な口調だった。

「こっちこそオイオイだよマスター、その口調から察するに、もしかしてアンタもこう言う光景、慣れちゃっているワケ?」
『忘れたかアーチャー?オレはイタリア兵でスパイで武器商人の商売敵を的にしまくった奴だぜ?』
「全く、良くもこう軽く言えるねぇ……俺も言えたようなモンじゃないけどさ……で、この一件、どうするの?」

ハァっと北岡がため息を付いた後、直ぐにアールの方針が帰ってくる。

『一応警察には連絡取るよ、遅かれ早かれ通報が掛かるのは時間の問題だろうし、寧ろ情報もお先に取れるかもしれねぇからラッキーかもだろ?』
「奇遇だねぇ、実は俺も似たような事、考えていた所なのよ。それじゃマグナギガをそちらに向かわせるからさ、この件の調査は警察と共同、という訳で。
それじゃ、待ってるから。」

其処まで話して念話を切った直後、北岡を纏っているゾルダのアーマーが鏡の破片となってパリンと散る。
露わになった緑色のスーツ姿を見せて、北岡は何処かやるせない表情を夜空に浮かべながら、光の粒子となって霊体化した。


897 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:20:45 ZaR95e8w0
【F-2/廃倉庫/1日目 夜(22:05)】

【セイバー(朽木白哉)@BLEACH】
[状態] 健康、霊体化
[装備] 斬魄刀
[道具]
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針: マスターを護る。
1. ルキアを止めたい。
2. マスターに居場所を教える。
[備考]

・バーサーカー(朽木ルキア)の姿を発見しました、生前に面識はありますが宝具まで知っているかは不明です。
・F-2の廃倉庫からルキアの霊圧を感知しています。
・宜野座に居場所を教えるため、当分は此処に待機している。


【アーチャー(北岡秀一)@仮面ライダー龍騎】
[状態] 健康、ゾルダ変身中
[装備] マグナバイザー
[道具] カードデッキ
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:第二の生命を手にする
1. 此奴は不味いでしょ
2. マスターに居場所を教えるため待機しておく。
3.マスターは護る。
[備考]

・ミラーワールドには長い時間(普通の人と同じぐらいの時間しか)入れないそうです。
・アールの護衛にマグナギガを向かわせています、外には出られませんが鏡越しに砲撃は出来るかと思われます。


898 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:21:28 ZaR95e8w0






◆  ◆  ◆



此処に、それなりに賑わいを見せている一軒の寿司屋があった。
チェーン店でこそ無いが、しかし中々にこの店は繁盛していた。
レトロな雰囲気を漂わす木材で敷き詰められた壁に、提灯の如く天井にぶら下がっている電球とこれまた木製なテーブル・カウンターが大変よくマッチしている店である。
如何にも老舗らしき雰囲気の店内では、老若男女問わず、様々な人間が食を囲んでいた。
建物が老朽化していようと、駅前に大手回転寿司チェーン店があるとはいえ味に関しては、この店も決して負けてはいない。
プラスチックの皿に握り終わったネタを只管カタコト置くより、カウンター越しで握る出来たての寿司の方が美味い……
そんな思いを込めて看板を支え続ける職人達のプライドが、寿司に込められ、皆の口に運ばれていった。
そしてこの寿司屋は、和食店にしては珍しく白ワインを店に置いていた。

寿司という食べ物には、日本食であるため一見日本酒が合うという先見的なイメージが強い。
しかし、プラスとプラスは噛み合わないのか、米で出来た日本酒はご飯には合わないのだそうだ。
しかし白ワインはその限りではない。
白ワインと寿司の相性の良さとは、文明開化の時点で既に発見されており、特に銀座の寿司屋で実践されていたという有名な話も残っている。


「とまぁ、そんな感じで、ウチの店もワインを出しているって訳よ。」

この店の板前は中々にフレンドリーで、彼と良く話をする常連もいるらしい。
アールという初対面の外国人相手にも、こうして気さくに会話をしている程にだ。
もう1時間程店内に座りっぱなしだが、この様にずっと話しっぱなしなのである。
しかもこの板前は、他の常連との話を代わりばんこに次々とこなしながらアールと会話しているのだという。
かの厩戸皇子も真っ青な聞き上手だ、恐らく10人の問いを直ぐに返せても可笑しくはないだろう。


「へぇ、其奴は驚きだねぇ、やっぱしワインは色んなツマミに合うモンだぜ全く。」
「アンタが日本語上手で助かるよ、それと、酒だけじゃなくて寿司もちゃんと食ってくれよ、一応此処は居酒屋とはちょっと違うからさ。
ホイ、トロマグロ二丁上がり。」
「グラッツェ。」

アールは板に乗せられたトロマグロ寿司を、ぱくりと口に入れ、直ぐにワインを口直しに飲む。
彼は中々の酒豪で、実際上司のソウからも食事より飲酒が多い、と良く言われる程である。
少なくともワイン一本で酔い潰れる程ヤワではなかった。
そして、板前はアールの隣に座っている青年、宜野座伸元にも声を掛ける。

「それに引き換え、アンタはワインのお代わりはしていない様だなオイ。」
「あまり、お酒は得意な方ではなくて。」

そう言って苦笑いを浮かべた宜野座は、板に残っているホタテを箸で掴んで食べた後、箸を置いてワイングラスを手に取り、くぴっと一口着ける。
宜野座が酒を飲み始めたのは、つい最近の話だ。
アルコールという成分は、少なかれど脳機能に悪影響を与える飲料故、犯罪係数を上昇させてしまう危険性がある。
その為、基本はバーチャル技術に近い物で代用されており、また宜野座も色相をクリアに保つために酒を絶っていた。
それには潜在犯であり酒好きであった父と一緒にされたくないという思いも込められていたのだが、その感情が無くなり潜在犯となった今では、よく酒を飲むようになった。
肝臓の働きは父ほどではない為、隣りにいるアールの様にガブガブ飲むことは出来ないが。

アールは、「鬼兵隊」の捜査の為にこの日本に送られたインターポールの捜査官だが、あまり日本のことは知らないとか。
そこで、彼と一番最初に接触した宜野座が彼の案内役を務めることとなった。
しかしアールはこの通り大変酒好きで、宜野座を連れてはこの様に店でガブガブ酒を飲む有様だ。
因みに次はキャバクラに行くとの話だ、風俗物がバーチャルで済まされており且つ清廉潔白な宜野座には馴染みのない店だ。
いや、僅かにデジャヴが感じられるが、気のせいだ。


899 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:21:51 ZaR95e8w0
(やはり、佐々山や縢に近い人柄だな……)

宜野座が脳内で浮かべた二人は、既に殉職しているのだが、何れもアールに近い性格ではあった。
酒豪な所はともかく、あのような洒脱で軽快な性格には、宜野座もよく肩をほぐされた物だ。
そういう点では、彼と出会えたのはある意味で幸運なのかもしれない。
と思ったその時である。

『マスター。』

ふと、己のサーヴァント、セイバーからの念話が届く。
彼はその卓越した霊感で、普段は偵察役に徹しているのだが、念話が来たということは、きっと何かがあったのだろう。

『藪から棒にどうした、セイバー。』
『何やら気掛かりな物があるのだが、見てもらえぬだろうか。』


◆  ◆  ◆


(マズいな……)

宜野座は、平静なフリをして心内で頭を抱える。
己のサーヴァント、セイバーが宜野座に与えた光景は、俗に言う「地獄絵図」のカテゴリに入る様だった。
その場に朱い飛沫が付着していない亡骸等一切存在せず、身体のパーツが飛んだ者が時折いるという壮絶な光景。
ハッキリと言って、これはただ事ではない。
人体で悪趣味な彫刻を作ったりすると言った猟奇的な殺人事件なら幾度も見たことはあるし、この様な事例も前代未聞という訳ではない。
ただ、やっていることが悍ましい事に変わりはない。
それに彼が無意識に父から受け継いだ刑事魂がざわつき始める。
此処にアールがいなければ直ぐに警察に連絡を取りたい所であるが、しかし此処で唐突に警察に電話したらアールに不審に思われること間違いなしだ。

そう考え、宜野座はスクッと椅子から立ち上がり、レジに足を運ぶ。

「おいおい、もう帰るのか?」

苦笑いを浮かべた店主が、笑いながら問いかけ、手でレジを弄る。

「はい。」

宜野座はそう言うと、財布から引き抜いた数枚の札を店主に渡し、釣り銭を受け取った後扉を開いて外に出る。


そしてポケットからスマートフォンを、すかさず取り出し、地図アプリを起動する。
彼が教科書でしか見たことのないスマホを使うのはこれで二度目だが、だからと言って元の世界から持ってきたウォッチを使ったら余計怪しまれる。
一応操作方法はほぼ変わらないので直ぐに起動出来た。
警察の通報は此処から出来なくもないが、警官とは言え現場から程遠い通報ほど怪しい物は無い。
そもそも現場に行かなければ始まるものも始まらないだろう。
そして次に、宜野座は今度は此方からセイバーに念話をかける。

『セイバー、今お前がいる位置を教えてくれ。』

幾ら地図があろうが、目的地が無くては話にならない。
まずはそれを知るべきだ。

『兄(けい)がいる方向から凡そ南、其処に廃工場があるはずだ、正確な位置は私が教える。』
『済まないな、お前が居てくれて助かる。』

そう返した後、宜野座は電話帳からタクシーの電話番号を探し出し、通話ボタンを押す。
本来なら車での移動でも構わないが、何せ宜野座は酒を飲んでいる。
かと言って歩いて行けば相応に時間を潰すに違いない。
幸い、金ならセイバーがくれてやる程持っているので困らない。
そう考え、宜野座はスピーカーを耳に当てる。





◆  ◆  ◆


900 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:22:07 ZaR95e8w0

「随分とノリがワリィな、アンタの連れ。」

宜野座が店から去った後、相も変わらない態度で店主はアールに声を掛ける。

「まぁ、あまり飲みに行くのは好きじゃなさそうには見えるよな。」

アールに関わらず、ココとその部下は基本飲酒に躊躇いはない。
何時死ぬか分からない裏社会での仕事、そこで生き延びて帰ってきた時に飲む酒は、寧ろ本当に格別なものだ。
それにアールは相当な酒飲みなため、本当にほぼ毎日よく飲んでいる。
そしてアールが聖杯戦争の世界で飲む何度目かのワインに口を付けようとしたその時である。

『マスター、もしもし聞こえる?』

己のサーヴァント、アーチャーからの念話が届く。
アーチャーには鏡の中に入る、と言う極めて特殊な能力があった。
彼は偵察は趣味じゃないとボヤいていたが、しかし今こうして偵察を任せていたのだ。
声をかけられたということは、何かを掴んだということなのだろう。
そう確信し、アールは応答する。



『はい、もしもし。』



◆  ◆  ◆


「グラッツィエ、店主、それじゃまたな。」

宜野座が出て数分後、タクシーの予約をしてからアールもまた、笑顔で店を出た。
曰く、彼は酔いやすいから連れて帰る、だそうだ。
しかし、それは真っ赤な嘘である。


アールがアーチャーから見せてもらった光景、あれはハッキリと言って只者ではなかった。
いや、一応何度か見た経験はあるが、しかし監視対象がああもなれば見過ごすわけにも行かない。
鬼兵隊がまた何かやらかした、とまで行くかどうかは知らないが、只事では無いことは素人だろうと分かるだろう。
もしかしたらサーヴァントの仕業という事も有り得るかもしれない。
しかしどの道警察に知らされる事も考えると、やはりこれは警察と組んだほうが都合がいい。
そう考え、アールは現場に向かって通報しようと考える。
時間も無い上に酒豪といえど酔っているので、タクシーで行くことを考える。
そう考え、現場の位置を調べた後店を出て、タクシーの到着を待とうとするが……


「って、ミスター・ギノ、何で此処にいるんですか?」

口で丸を作り、微笑んだままアールは店に佇む宜野座に目を向け指差す。
アールの存在に気づいた宜野座も、眉を曲げて少し驚いた態度を見せる。

「ミスター・アールこそ、もう帰るんですか?」
「歩いて帰ろうとしたんですけれど、やはりタクシーで帰ろうとでも思いましてね。」

もう既にアールは宜野座にタメ口を聞いていた。
酔っているのもあるのだろうが、彼は会って数時間も立たない人間に対してこの様にフレンドリーに接せられるのだ。
ココに表情の隠し方を教えただけの事はある、相当なコミュニケーション能力だ。






タクシーが到着するまで、残り10分。
此処から現場まで、5分程。


901 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:22:52 ZaR95e8w0



【E-5/寿司屋/1日目 夜(22:11)】

【宜野座伸元@PSYCHO-PASS】
[状態] やや酔っている
[令呪]残り3画
[装備] ポリスリボルバー
[道具] スマホ、ウォッチ@PSYCHO-PASS、警察手帳
[所持金] 普通
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に帰る。
1. 聖杯戦争に付いて調べる。
2. F-2にある現場に向かう。
[備考]

・後十分程でタクシーが到着します。
・高級シャンパンを一気飲みして吐くぐらいの肝臓の持ち主ですが酔っています。
・F-2の位置はセイバーが教えてくれます。

【アール(レナート・ソッチ)@ヨルムンガンド】
[状態] 少し酔っている(強い方)
[令呪]残り3画
[装備] スマホ
[道具] 銃
[所持金] 普通
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に帰る
1. 鬼兵隊について調べる。
2. F-2にある現場に向かう。
[備考]

・酒は強い方ではありますが一応酔っています。
・後10分でタクシーが到着します。
・F-2の位置はアーチャーが教えてくれてます。


902 : Case with drinknird htiw esaC ◆lkOcs49yLc :2016/09/24(土) 18:24:50 ZaR95e8w0
以上で投下は終了です。
本当は続きも書きたいのですがそれだと時間がかなり空いてしまうので此処で区切りたいと思います。
ギノ組とR組の予約は今後も受け付けますが、今後書く可能性はあります。


903 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:12:25 v6WkSEEw0
遅れましたが投下します


904 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:12:57 v6WkSEEw0
「静かですね」

高層ビルの間から見える夜空を見上げて瀬田宗次郎は呟く。聞く者など何処にもいない。虚空に向かって放たれた独り言に、応えるものがいた。

【人が皆眠るから、夜というものは静かなものなのだろう】

静かな声、宗次郎だけにしか聞こえぬ念話ではあったが、実体化していても夜の静寂を乱さぬだろう。そんな声。

「違いますよ。最近感じていた気配がしなくなったんです」

刃を交え、血を流し身を削り骨を削り、そうやって命を削り合う気配。そういった『闘争の気配』といったものが、ここ数日綺麗さっぱり消えていた。
代わりに有るのは、獲物を探し求める気配、獲物の隙を伺う気配。
闘争では無く狩猟のそれに近い気配。
死と闘争は絶えたわけでは無く、ただその気配が動から静へと変わっただけだ。

「志々雄さんや緋村さんなら、もっとはっきり判ったんでしょうが」

剣嵐血風吹き荒れる京都で闘い、幾多の死線を潜り抜け、その度に死を振りまいた二人と違って、宗次郎はそういった経験が極めて少ない。
戦乱も終わり、世が泰平に向かい出した時に剣を手にした彼は、闘争の気配をを感覚として捉えることができない。
それでもこの地に満ちる戦意と欲望は、彼の希薄な感情にもひしひしとその存在を告げている。

「何にせよ、今は戦う気になりません。ですが、他の人達には会ってみようと思います」

【戦いに行く様なものではないか】

「向こうが襲ってくれば、その時は逃げますよ」

そう言った宗次郎の笑顔が、いつものものか、それとも違うものなのか、シルベストリには判らなかった。
そうして宗次郎はブラブラと歩き続ける。この行為は単作では無く散策。宗次郎のいた時代には存在しなかった高層建築が立ち並ぶこの一帯は、ひどく宗次郎の興味をそそるものが有った。
目に映る全てが物珍しく新鮮だが、鮮烈に視覚に訴えるこの区域は何度歩き回っても飽きが来ない。
そうして当て所無く歩き回る事暫し。

突如として頭上から轟音が聞こえ、地面が僅かに震えると。

「わっきゃあああああああああああ!!!!」

彼らの頭上から素っ頓狂な声と共に少女が降ってきた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「何をやっているんですか」

「……………ふふーん♪カワイイボクは流石だと思いまして」

二人がいるのは高層ビルの屋上、バラエティ番組の罰ゲームでバンジージャンプやらされたや、演出でスカイダイビングさせられた事を幸子はしみじみと思い出していた。
あの時は半泣きになってしまったが、こんな処でも平然としていられる様になる辺り、流石はカワイイボクである。克服できないものなどカワイイボクには存在しないのだ。

「探しものでもしているのかと思いましたよ」

「探しもの………」

そう言われてボクは考え込む。ボクはここに何をしに来たのか?他のサーヴァントでも探しに来たのか?

「違う……」

ボクはそんな事のために来たわけじゃない。聖杯に願う事が有るのか自分には判らない。戦う理由がはっきりしていないのに戦う為に行動なんてしない。
只々目の前に居る『ボク』の気持ちを知りたかっただけ、あの青空で冒険していたボクはどんな気持ちで空にいたんだろうか。
そう思ってここに来たのだが、夜闇の中、見下ろす地上は、巨大な怪物が開けた大口を連想して、只々気味が悪かった。
尤も、昼の明かりの元でなら、竦んで腰砕けになるだけだろうが。

「ボク達が巻き込まれた事態をまだ理解できていないんですか?」

『ボク』と同じ処を見下ろしてボクは言う。

「いくらカワイイボクでも殺し合いなんて初体験ですしね……。今迄他の組と遭ってもいませんし」

そう言ってはにかんだ『ボク』に『ボク』は僅かに苛立ちを覚えて、苛立ちを紛らわす為に視線を上げて夜空の彼方を見やり─────。

『ボク』は『ボク』を屋上から放り投げた。


905 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:13:24 v6WkSEEw0
夜の街を彷徨する百夜ミカエラは聖杯に対する憤りを禁じ得なかった。
聖杯戦争とは複数組による殺し合い。もし仮に集められた者達が慎重策を取って戦わなかったり、あり得ないことと思うが願いを持たずに、ただ巻き込まれただけの者達がいれば、そう簡単に戦ったりはしないだろう。
そういった事情から全員が様子見に徹し。千日手に陥らぬ様に、殺し合いを円滑に行わせる為には、戦う動機を持ち、尚且つ積極的に攻勢にでる理由を持つ者が居れば良い。
その点ではミカエラは最適と言える。家族である百夜優一郎を救うという願いを持つミカエラに戦わないという選択肢は無い。更に此処での役割に基づいて与えられた『家族』がミカエラを積極策へと駆り立てる。
フェリドの戯れで惨殺された家族、最早二度と帰らぬ家族。
例え偽りのものであっても、また家族を奪われるのはミカエラには耐えられない。
故にミカエラは積極策を採るしか無いのだが─────此処に大きな問題があった。
燃費の悪いバーサーカーに疲労の回復ができない自分。必然、短期決戦を行うこととなる。だが、聖杯戦争はどれだけいるか判らない数の主従を相手取る消耗戦だ。
ミカエラ達はフルマラソンに出場させられたスプリンターの様なものだった。
『家族』を巻き込まない為にも、籠城戦は使えない。外に出て戦うしか無いが、最初から戦い続ける、などというのは愚中の愚。同盟という選択肢も、人を信じないミカエラには存在しない。
結果として、適当に街を探索し、他人が戦う処を観察、機があれば不意を突いて殺す。
そう決めたミカエラは、適当に目を付けた高層ビルに登り、優れた視力を活かして、高所から街を観察しようとしたのだった。
何しろ彼に与えられたサーヴァントは小技の利かないどころか、理性の無いバーサーカー。ミカエラ自身にも索敵の為の技術など無い。精々が高所から街を見張るくらいしか無いのだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「いきなり見つけることができるとはね」

登ったビルの屋上から見える高層ビルの屋上に、いきなり他の組が見えてミカエラは面食らった。
かなりの距離が有る為、此方に気づいていない二人組を観察するが、どう見ても同じ人間がマスターとサーヴァントをやってる様にしか見えない。
理解に苦しむが、そこは考えても仕方ないので放っておく、そんなことよりも重要な事を、わかる範囲で確認する。
ミカエラの目に見える相手のステータスは平凡そのもの、マスターも元居た世界で戦った日本帝鬼軍の者達と比べるべくも無い、只の一般人そのもの。
これならバーサーカーの宝具で不意を突けば一撃で諸共に葬り去れる。

─────殺せ。

ミカエラの殺意に獣が応えた。
獣の背後の空間が縦に裂け、全長20mにも及ぶ亀裂が生じると、絡み合った無数の刃が禍々しい切っ先を揃えて迫り出してくる。
その形状はまるで、鎌首をもたげた大蛇か、獲物目掛けて今まさに突き立てられようとする巨大なサソリの尾を思わせた。

「オオオォォォオオオオオアアアアアァァァァアアアア!!!!!!!」

最早爆音としか聞こえない怒号と共に刃の大蛇か獲物目掛けて飛翔した。
向こうのビルにも優に届く大音声であったが、刃の速度は音を遥かに超えた速度の為に、怒号が届いた時には二人の少女は原型を留めぬ程に切り刻まれた後だろう。
そう思っていたのだが、サーヴァントの方が唐突にマスターを屋上から放り投げて、自分も後を追って飛び降りた。
バーサーカーが攻撃を開始する直前、向こうのサーヴァントが此方を見たが、それで気付いたにせよ、秒も無い時間の中で、よくやったものだと感心すら覚える。
見た目とステータスからは窺い知れない、戦闘経験を持っているのだろうか?
ビルからビルへと飛び移りながらミカエラはそんな事を考えていたが、バーサーカーの攻撃で屋上どころか上部の三分の一が穴だらけになった二人が居たビルの上に降り立つと、地面目掛けて飛び降りた。


906 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:13:54 v6WkSEEw0
「おっと」

少女の落下地点に居た宗次郎は大きく後ろに飛びす去った。落ちて爆ぜた肉体から飛び散る血飛沫も届かない位置で、落ちて来る少女を見やる。

「おや」

宗次郎は宙を見上げて一声漏らす。落ちてきた少女を、同じ顔の少女が宙吊りにしてパラシュートで優雅に降りて来る処だった。

「マスターと同じ顔のサーヴァントですか」

呑気に話しかけた宗次郎の立っていた場所が爆発したのは、直後のことだった。
その時既に5mも後ろに飛んでいた宗次郎目掛けて飛来した瓦礫を、実体化したシルベストリが払い落とし、宗次郎を抱えて再度後ろに跳躍、秒にも満たぬ間を置いて、宗次郎の立っていた場所に巨大な刃が突き立った。

「カワイイボクに思わず手を出してしまうのは判りますが、イキナリ他の人に目を向けるとはひどいですね」

腰を抜かしてへたり込んでいる幸子の前に出たアヴェンジャーが大鎌を取り出し。

「いきなり殺る気の人と遭っちゃいましたか」

宗次郎とシルベストリが得物を抜いて構える。

そして、四人を前に、百夜ミカエラとバーサーカーは、無言で殺意を滾らせた。


この局面はミカエラにが非常に好ましく無い展開だった。弱小な主従を不意打ちで殺せると思ったからこそ仕掛けたのに、自業自得とはいえ二つの組を相手にする羽目になっている。
ミカエラ自身の戦闘能力も含めれば、負けはしないが楽に勝つのは困難だ。序盤から消耗する事を避けなければならないミカエラとしては、撤退を考える場面である。
更にこの状況ではマスター狙いも難しい。バーサーカーに敵サーヴァントを抑えさせて、自分がマスターを狙うという手を使おうにも、相手が2組居る以上、サーヴァントに遮られる可能性は大きい。
少女の方を手早く殺せれば楽なのだが、同じ顔をしたサーヴァントがそれを許さないだろう。
少年の方は、少女を見た時の発言からマスターと判ってとっさに狙ったとはいえ、不意打ちで仕留めるつもりだったのを完全に回避してのけた辺りかなりの強者。

敵サーヴァントのステータスを見る限り、2対1でもバーサーカーが一方的に不利とはならないが、敵のスキルも宝具も不明では、力押ししか能がないバーサーカーでは不安要素が大き過ぎる。

─────退くぞ。

狂風の様に荒れ狂う殺意以外、何も感じられない、嵐の夜を思わせるバーサーカーの思考に念話で撤退を伝えると。ミカエラの身体は宙に舞った。四人を確と見据えたまま、ビルの壁面を足場に上方目掛けて跳躍を繰り返す。

「ルオオォアアアアアアアアアア!!!!」

残されたバーサーカーの背後の空間が裂け、そこから無数の刃が切っ先を覗かせ、
バーサーカーの怒号と共に、散弾として四人に対して撃ち出される。

幸子を抱えて幸子が攻撃範囲の外へと飛び出し。
宗次郎とシルベストリも射線上から逃げ出した。

アスファルトの路面を切り刻み、道の突き当たりに有ったビルの壁に大穴を開けた刃の嵐が収まった時、金髪のマスターも赤い獣のバーサーカーも、姿を消していた


【百夜ミカエラ@終わりのセラフ】
[状態] 健康
[装備] 「剣」
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金] 学生だが孤児院住まいなのでそんなには無いだろう
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。まずはある程度情報を入手してから、
バーサーカーの火力で他の敵を潰していく
消耗は避ける
1.『家族』を巻き込まない様にする
2.慎重に行動する
[備考]
1.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました


【黙示録の獣@.hack//G.U.TRILOGY】
[状態] 健康
[装備] 無し
[道具] 無い
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:??????
[備考]
1.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました


907 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:15:10 v6WkSEEw0
「去ったな。気配を感じない」

気配を探ったシルベストリが敵が退いた事を告げる。無言で頷いた宗次郎は、刀を鞘に収めると、へたり込んでいる幸子の方に顔を向けた。


「貴女もマスターなんですね」

「……ひゃっ…ひゃい……」

いきなり話し掛けられて、幸子は呂律の回らない舌で何とか返事をする。
極々短時間に終わった戦闘だが、金髪の少年と赤いバーサーカーが叩きつけて来た真正の殺気と、己の命など簡単に奪える暴力の嵐に、幸子の思考と精神は未だ本調子に戻らない。

「そうですよ。カワイイボクが二人!略して「KBH」チームです!!」

代わりに答えたのはもう一人の輿水幸子、アヴェンジャーだった。

「カワイイボクが二人?やはり同じ人なんですか?」

「あわわわわわ…………」

幸子は頭を抱える。そもそも自分と同じ顔で有る以上、出会えばサーヴァントとマスターが同じ人物と容易に知れるのは必然。幸子が今まで戦いを避けて来たのは、出会えば正体が即座にバレる為である。
何しろアヴェンジャーは、アイドルであるカワイイボクと同じ顔をしているのだ。カワイサ2倍で否が応でも人目を引くし、簡単に真名もマスターの身元もバレるだろう。
動揺しながらも、何時の間にか精神状態が常時のものへと戻っている幸子だった。

「抜刀斎さんと緋村さんみたいなものかな?あの人も今と昔とは違うようだし?」

幸子の動揺を余所に、宗次郎は嘗て戦った男の事を思い出していた。

「マスター、この二人をどうするのだ。私とマスターなら対した障害にはならないが」

抜剣すれば確実にアヴェンジャーの首を落とせる位置で、静かに佇んだまま─────その実何時でも剣を抜ける姿勢でシルベストリが尋ねる。

「昔の僕ならそうしたんでしょうけどね」

弱肉強食。志々雄真実の掲げた理念に従って生きていた頃の宗次郎ならば、即座に2人を殺していただろう。
勝ち残った一組という、只一つの席を争う者同士。出会えば何方かが死ぬのが道理。ならば弱い方が死ぬのが摂理。
然し、今の宗次郎は弱肉強食の理に生きてはいない。否定はしていないが、積極的に実行する気にもならない。

「貴女たちは何の為に戦うんです?聖杯というものが、どうしても必要なんですか?」

何の感慨も感じさせない質問。だが2人の答え次第では、収めた刃が再び鞘走る事だろう。

「ボクは…まだ、判りません。けれど、ボクと一緒にいきたいです」

いきたい。とはどういう意味か、『生きたい』か『行きたい』なのか。

「ボクは…帰りたいんです。ボクのいた場所に。でも聖杯をその為にどう使うかは……判りません」

宗次郎は2人の答えを聞いて暫く考え込んだ。

そして─────。

「僕達も戦う理由が判らないんですよ。判らないもの同士、答えが見つかるまで、一緒に行動しませんか?」

宗次郎の提案に2人の輿水幸子は顔を見合わせた。

「ど…どうすれば?」

「見たところ荒事にも慣れている様ですし、組んだ方が良いでしょうね」

アヴェンジャーは宗次郎とシルベストリが、2人の死命を容易に制する場所に陣取って居ることを、幸子には伝えなかった。きっと怯えるだろうから。

「わ…判りました。一緒に行動しましょう。カワイイボク達をよろしくお願いしますね」

共に道を見出せぬ者達は、ここに手を取り合うことに…………なったのだろうか?


908 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:15:34 v6WkSEEw0
【D~4ビル街/1日目 夜(21:00)】

【瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 】
[状態] 健康
[装備] 無銘の刀
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金] 学生相応
[思考・状況]
基本行動方針:答えを探す。答えによっては聖杯を獲るのも吝かではない。
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
3.輿水幸子と行動を共にする事にしました

【シルベストリ@からくりサーカス】
[状態] 健康
[装備] 左手及び、身体に内蔵された剣。
[道具] 無い
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:宗次郎と共に答えを探す。
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
3.輿水幸子と行動を共にする事にしました



【輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 健康
[装備] 無い
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金] 学生だがアイドルなので一般学生よりは多い
[思考・状況]
基本行動方針:答えを探す。『ボク』と共に居る
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました
3.瀬田宗次郎と行動を共にする事にしました

【輿水幸子@グランブルーファンタジー】
[状態] 健康
[装備] 大鎌
[道具] 無い
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:輿水幸子へと帰る
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました
3.瀬田宗次郎と行動を共にする事にしました
4.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)が、人を殺し慣れていることに薄々感付いています

※四人のいる辺りは百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)の攻撃で、路面が破壊され、周囲のビルも損壊しています


909 : 邂逅 ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 00:16:16 v6WkSEEw0
投下を終了します


910 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/26(月) 02:57:39 ygO.PgzU0
投下乙です!
まず答えを見つけるために他の主従と組もうとした宗ちゃん組ですが、出会ったのがまさかのW幸子組とは!
元の世界に帰ろうとしている心優しき少女に、宗次郎は何を見るのか。
んでもってミカちゃんは人なんて信じられるかという有様、恐るべし吸血鬼。
でも血を吸うことに戸惑っている時期から来たためほぼ雁夜おじさん状態、残念。

ご投下ありがとうございます。


911 : 名無しさん :2016/09/26(月) 11:13:08 8fp/mrbU0
投下乙です

宗次郎原作より弱体化してるはずなんだけど安定してるな、何だかこっちの方が強そうだ
そばかすの歌詞が似合いそうなコンビになったがはてさて


912 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/26(月) 21:06:21 ygO.PgzU0
桜満集&ライダー(シモン)、
相川始&キャスター(かずみ)、
後藤&アサシン(ぬらりひょん)、
予約します。


913 : ◆mcrZqM13eo :2016/09/26(月) 22:01:31 v6WkSEEw0
ギノ&Rが酒飲めるのはこれが最後なんだろうなあ
明日からは公私多忙だ


914 : 名無しさん :2016/09/27(火) 11:08:55 QE6zp4Tg0
志々雄さん!空から女の子が!!!!


915 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/28(水) 05:47:13 SFi6Q/Zo0
予約を破棄します。


916 : ◆lkOcs49yLc :2016/09/28(水) 05:47:25 SFi6Q/Zo0
予約を破棄します。


917 : ◆.wDX6sjxsc :2016/09/28(水) 20:24:40 /BzaBJ.Y0
瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)、輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)、二宮飛鳥&ランサー(駆紋戒斗)、後藤&アサシン(ぬらりひょん)

予約します


918 : 名無しさん :2016/09/28(水) 21:35:20 cRwlLQHY0
遂に後藤チームが来たか


919 : ◆mcrZqM13eo :2016/09/30(金) 23:00:43 EMTKfhGQ0
佐藤和真&ランサー(空条承太郎)
逸見エリカ&アヴェンジャー(エドモン・ダンテス)
ランサー(クー・フーリン)

予約します


920 : ◆.wDX6sjxsc :2016/10/03(月) 21:52:50 H3UjOwnc0
延長します


921 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/09(日) 06:59:00 cMN..24Y0
網島ケイタ&セイバー(剣崎一真)
爾乃美家累&ライダー(フル・フロンタル)
アーチャー(X3752ストライカー)

予約します。


922 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/09(日) 07:12:28 cMN..24Y0
すいません、アーチャー(X3752ストライカー)の予約を破棄します。


923 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/09(日) 07:14:34 cMN..24Y0
百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を代わりに予約します。


924 : ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:25:51 f5J6v68o0
投下します


925 : LES ART MARTIAUX  ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:26:43 f5J6v68o0

「聖杯戦争、ねぇ」
「えぇ、もう大変な事に巻き込まれちゃったなーって、ナハハハハ」

市役所の一区画、そう広くはない会議室で、二人の男が会議机を挟んで談笑している。
その脇では二人が余り注目してないにも関わらず、
淡々と己を職務を遂行すると言わんばかりにニュースを流すテレビがあった。
ニュースキャスターは淀みない様子で最近この町で起きている行方不明事件について
話しているが、やはり二人には余り関心が無いようであった。
その元凶が他でもない二人の男のうちの片割れという事を考慮すれば無理もないが。

「俄かには信じがたいが…そう言えば後藤さんは?」
「今日は眠っておられます。最近ずっと後藤さんが出ずっぱりでしたから」

大柄な方の男、人を喰らう寄生生物(パラサイト)三木は、そう言ったのちぶんぶんと右手を振った。
その表情は所謂オーバーリアクションと言われる類の物であり、見るものに違和感を抱かせる。
だが落ち着いたもう片方の男性、人間である市長広川は、構わず三木に付き合う。
種族は違えどまるで長年からの知己の様な雰囲気が二人の間にはあった。

「そのサーヴァントとやらを実際に見せられたら信じない訳にはいかんが…件の英霊様を見せてくれるかね?」
「今は霊体化してもらってます…おーい、出てきていいよー」

優し気な口調で三木がそう言うと音もなく空中に禿頭が肥大化した奇形児の様な老人――アサシンが現れる。
禿頭のアサシンは空中に浮いたまま一言「なんぞ」と、呟き広川を見つめた。
これには流石の広川も一瞬少し狼狽した様子を見せ、三木はそれがおかしくてたまらなかった。
実際パラサイトをして変わり者と称される人間である彼が驚くのは非常に珍しい。
挨拶しろとアサシンに命じると、「ぬらり、ひょーん」と呼称し、パフォーマンスの如く姿を全裸の幼女に変えて見せる。
だが、これは逆に広川がアサシンをそう言う『超常現象的存在』として納得させ、落ち着かせてしまった様で、アサシンも三木も少しがっかり。
やっぱりNPCとして再現された存在でもこの人は変わっている。
そんな変わった存在だからこそ、荒唐無稽な聖杯戦争という催しを語るに至ったのだが。


926 : LES ART MARTIAUX  ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:27:07 f5J6v68o0

「ふむ、それで私はどう協力すればいい?」
「切り替え早いですねー…取り敢えず今まで通り食堂の管理お願いします」


食堂、とは広川一派の定めた人間を喰らう狩場のことである。
三木が元いた世界とは違い、この世界は彼の仲間である寄生生物が少ない。
この市役所に勤める数十体の寄生生物以外は三木は外で仲間に出会った事がなかった。
その分秩序だった食事ができ、今の所問題はないのだが。

「この町はいいですよね、前の場所より警戒心が薄くて釣れやすいや」
「前に君は食事を見られて慌てて逃げ出したことがなかったか」

う、と三木が痛いところを突かれた子供の様に声を上げる。
あんまりこの世界では簡単に食事ができるものだから、数日前に油断しすぎて一人の男に食事を見られていた事があったのだ。
何とか気づいて始末できたが、既に通報されていた様で慌てて顔を変え男の財布のにあった身分証だけ確認してその場を離れた。
その見ていた男性が警察関係者や著名人などでは無く、アイドル事務所のプロデューサーだったのは幸運だったと言えるだろう。
外ハネが印象的なアイドルの写真を財布に張り付けていたのを三木も見た。
その後特に騒がれる事もなく、広川の根回し等もあって事件は通り魔の犯行として処理された。
おそらく一生解決することのない迷宮入りの事件に名を連ねる事となるはずだ。
ちなみに後藤さんは、警察と戦ってもよかったのだがなと言っていた。
失点を犯した自身が言うのもなんだが、餌が手に入りにくくなりそうで正直御免こうむりたい。

「しかし大丈夫なのかね、君の説明では裁定者(ルーラー)と呼ばれる者が四人目を光らせていると聞いたが」
「それについては大丈夫だと思います。今のところアサシンの分を含めても決められた食堂と時間だけしか食事は取って無いっすから、お陰で痩せちゃいますよ、アハハハハ!」

そう、痛い目を見たおかげで三木はその軽い気質とは裏腹にアサシンの魂喰いによる魔力の貯蓄と自身の食事をきっちり時間を守って行っている。
ルーラーはNPCに向け無策に危害を加えるものにはペナルティを与えるが、全参加者に平等という性質上、秩序だった行動をする者には手を出しにくいはずだ。
もし人喰いそのものを禁じるのならば何のために自分を呼んだのだ、という話である。
後藤さんなら例の如く全方位喧嘩外交でもいっこうに構わんと言い出しそうであるが。


927 : LES ART MARTIAUX  ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:27:48 f5J6v68o0

「それならば支援は今まで通り隠蔽工作と、加えて奇妙な刺青をした者の情報提供という事で」
「えぇ、お願いします。その代わり聖杯は広川さんの言うとおり地球(みんな)の未来のために」

三木/後藤にとってはとどのつまり聖杯などどうでもよかった。
偶然巻き込まれただけであるし、願いなどない。
ただ己の、人間で言う脳にあたる所にずっと聞こえるこの種を喰い殺せという命令に従い、闘いたいから闘い、殺したいから殺す。
その結果聖杯が得られたのなら、必要としている協力者、つまり広川の意向に沿う形で使おうと決定したのだ。

話は無事纏り、テレビを消すと広川は席を立つ。
三木もさて、と、少し伸びをして立とうとした瞬間、傍らのアサシンが三木のタンクトップの裾を引っ張り、時計を指さした。
時間は午後八時半を少し回ったころ、あと少しで夜食の時間である。
連日の魂喰いのお陰で魔力は十分にあるが、あればあるほど良い。
それに、今日は初めての”練習”の日である。

「どうしたかね」
「いやぁ何でもありませんよ、もうすぐ食事と練習の時間ってだけです」

言いながら三木は外に出る支度を済ませる。
彼の顔は相変わらず笑っていたが、見る者の第六感的に伏魔を感じさせる、そんな笑みだった。






928 : LES ART MARTIAUX  ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:28:12 f5J6v68o0


月光を浴びながら、派手なコートを纏った男――ランサーは黙々と歩く。
その背におぶわれ安らかな寝息を立てるは中学生ほどの外見の美少女。
無論、少女は二宮飛鳥であり、男は駆紋戒斗である。

「おい、もうすぐ着くぞ。いい加減起きたらどうだ」

先ほど全身甲冑のセイバーと本戦初陣となる激闘を繰り広げたが、背のマスターはこれといった外傷は当然ながら負っていない。
魔力消費は大きかったがそろそろ歩くくらいはできるはずだ。
意思はできる限り汲むつもりだが、甘やかす気はない。

「ZZZ……」

そろそろ起きる?否であった。
完全に寝入っている。
ゆらゆらと揺れる肩口周りのエクステが電灯の光を反射してキラリと光るのを見ながらランサーは少し思った。
先ほどまで言っていた『覚悟』とは何であったのか。


「…どの道もうすぐ着くのなら同じか」


敵意には敏感かつどこまでも不服従な戒斗であったが、こう言った無防備な信頼には余り強く出ない性分であった。
無理に起こして今後のコンディションや関係に影響を出しても面白くはない。
そう無理矢理納得付け帰路を急ぐ。
その顔はいつもの仏頂面であったが、雰囲気はどこか穏やかなものだった。



……それをじっと見ている者がいるのも知らずに。







929 : LES ART MARTIAUX  ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:28:34 f5J6v68o0



枯れ木のような老人を思わせる風体の人形、シルベストリは民家の上で離れていく二人の背を見つめながら、自身もそっと後を追う。
あのバーサーカーに襲われた後、再度の襲撃を避けるためにあそこのエリアから移動し、
暫し行動を共にすることにしたサチコという名の少女の要望で、落ち着ける場所で話をする事になった。
その際にマスターの少年、宗次郎から周囲の索敵と警戒を命じられ今に至るのである。
サチコのサーヴァントであるアヴェンジャーの前にマスターを一人置いていくのはもし裏切られればという危惧はあったが、マスターが大丈夫と言って憚らぬため、
何かあれば令呪で呼ぶようとだけ伝え、この役目に就いた。
実際にマスターであるサチコの臆病さと善良さを鑑みればバーサーカーに襲われた直後、恐怖が残っている状態で裏切られる心配は少ないはずだ。
アレが演技なら大したものだが、そんな腹芸を彼女ができるとも思えない。
現時点では“答え”は期待できず、特筆すべき力も無いようだが”御しやすい”という点においては同行者として及第点だろう。
【アイドル】という他人を笑顔にする枠割(ロール)についているのにも興味をそそられる。

しかし、あの主従は何と言っても姦しい。

答えを出すまでの推移は見守りたいが、あの手の少女たちと群れるよりも自分にはこういった仕事の方が性に合っている、ハズだ。
マスターがそこまで察して命じたのならば大したものだが、そんなことはないとシルベストリは考えた。
彼は少々奔放に過ぎる。人を使う仕事には向かないタイプの人種だろう。
尤も、そのマスターのお蔭でまた一組、新たな主従を補足できたのだが。

どんなに魔力の放出を抑えても、実体化している以上は完全に抑えられるものではない。
それこそ、本職の暗殺者のクラスでもない限りは。
あの派手なコートのサーヴァントがどのクラスかは一見すると分からないが、アサシンでないのは確かだ。


(幾分か消耗しておるようであるし、ここで宝具を開放すれば首を断つのはたやすいが……)

『刹那のからくりサーカス』

最古の四人のうちの二人を瞬殺した宝具である剣技を以てして奇襲をかければ、確実に背におぶわれている少女の方は葬れる。

右半身を僅かに沈め、抜刀の構えをとる。


が、



(――――それは、私の目的にも、命令に背く、か)


対話も無く殺してしまっては自分の目的である【笑顔の意味】には近づけない。
無論マスターの命令とあればここで切り伏せるだけだが、それならば余計にマスターに伺いを立てるべきだろう。
そう判断したシルベストリは、目の前の主従を追跡しつつも、マスターに念話を送った。


930 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:30:36 f5J6v68o0



「美味しいですね。ここの珈琲」
「そうですね。本当は夜のカフェインはボクのカワイさの大敵なんですけど、この紅茶は美味しいです」

時は少し戻り、あの赤いバーサーカーの襲撃から少しあと、幸子とアヴェンジャー、宗次郎の三人はE-4の住宅街にあった喫茶店に身を寄せていた。

「しかしこんな時間まで空いてる茶屋があるとは思いませんでした」
「此方としても、こんな時間に若いお客様が来るのは珍しいですよ。普段はサラリーマンの方がよく来るんですけど」

黒髪の眼帯をした大学生くらいの給仕の青年ははにかみながら宗次郎に答える。
住宅街にあるここは所謂『隠れ家的名店』であるらしい。
値段も少ない学生層の客を取り込もうとしているのか、学生割引が利いて非常に格安だ。

(それにしても……)

幸子は思う。
ついさっきあんな恐ろしい怪物(バーサーカー)に襲われたのに、目の前の男の子は軽すぎないか?
自分はだいぶ平静が戻ったとはいえまだ少し怖いと言うのに。
ちら、と視線をずらし、アヴェンジャーがいるであろう方を見る。
霊体化しているから姿は見えないけれど、アヴェンジャーも同じ『カワイイボク』である以上思っている事は同じのハズだ。
何と言うかこう、もっと話すべきことがあるのではないだろうか。
幸子は談笑していた店員がカウンターに戻ったのを検めてから意を決し、話を切り出した。

「あのー、瀬田さん。少しお尋ねしたいことがあるんですけど…
って言うかカワイイボクをスルーして店員さんと話をするとは何事ですか!」
「ああ、スミマセン。こう言う茶屋に入ったの初めてで。
それで、聞きたいことってなんですか?」
「失礼かもしれないですけど……何でコスプレしてるんですか?」

青を基調とした和服もそうだが、何よりも目を引くのは腰の日本刀だ。
日本をサムライやニンジャが跳梁跋扈している国と勘違いした外国人や映画村ではあるまいし、
どこの世界に帯刀して街を練り歩く高校生がいるというのか。
幸子の困惑はもっともであったが、当の本人は目をパチクリとさせ、
何を言ってるんだこいつは、と言う顔をしていたが(非常に納得がいかない)、
数秒後風体の事を尋ねられていると合点が行ったようで、また元の笑みを浮かべ、答えた。

「学校の制服や洋服もいいんですけど、やっぱりこの格好が一番落ち着くんですよね、
この格好なら廃刀令の出てるここでも輿水さんの言うように『こすぷれ』と勘違いしてくれますし」

「廃刀令って…まさかホンモノじゃないですよね……」

【本物ですよ。言ったでしょう、荒事にも慣れてる様ですって】

「ひゃいっ!」


931 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:31:04 f5J6v68o0

突然のアヴェンジャーからのカワイイ念話に身をすくませる幸子。
まさかそんなと思いながら、けれどももう一人の強くてカワイイボクが言ってるのだからと、困惑した表情を浮かべざるを得ない。
そんな幸子の顔を見た宗次郎は仄かに苦笑し、鞘にしまわれたままの刀を静かに彼女の眼前へと突き出した。
店員たちからは席の角度的に見えない死角だ。

「確かめてくれていいですよ。少し輿水さんには重いかもしれませんから気をつけて」
「はい……」

そう言われた幸子は目の前の黒い鞘から出た白刃を凝視し、おずおずと慎重に受け取った。
重い。
刃物など包丁とカッターナイフ位しか刃物と縁のなかった幸子でもすぐにわかる存在感だった。

「ホンモノじゃないですか!は、犯罪ですよ!」
「ハイ静かに」

予想通りの反応をされる前にテーブルから身を乗り出し、幸子の口を塞ぐ。
モゴモゴと声を上げようとする幸子を制しながら落ち着いた頃を見計らって、宗次郎はゆっくりと座に戻った。

「瀬田さん……あなた一体何なんですか?」
【ボクも聞きたいですね】

「大した者じゃありませんよ。ただのアテの無い旅の剣客です」

二人の幸子の問い(もっとも、片方は霊体化しているため聞こえないが)に宗次郎はことも無げに答えた。
目の前の幸子は納得のいっていなさそうな顔をしていたが、事実なのだから仕方がない。
そう言えば自分もまだ聞いていないことがあった。
今度は此方が問う方だと言わんばかりに微笑を浮かべたまま、宗次郎は口を開く。

「今度は僕が聞いてもいいですか、輿水さん」
「な、何でしょう。カワイイボクが答えられることなら答えてあげますよ!」

最早虚勢ここに極まれり、と言った様相で幸子は応えた。少し涙がにじんでいる。
宗次郎が物腰の柔らかな少年でなければ逃げ出していたかもしれない。


「貴方、弱肉強食ってどう思います?」


ハ?と固まる幸子も置いて宗次郎は続ける。
その表情は笑顔だ。
いつもの通りの、笑顔。
『楽』だけを張り付けただけの様な、笑顔。


932 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:31:31 f5J6v68o0


「弱い者は強い者の糧となって死ぬ……自然の摂理の事です。
正しいと思いますか?
僕は、正しいと思っていました」


脳裏を過るのは幼き日の記憶。
味方はおらず、重労働と虐待の責め苦を受けながら、それでもただ笑みだけを浮かべて愚直に生きていたあの頃。
そんな自分を志々雄真実という男は解き放ってくれた。
力という生きる手段をくれた。
生きる事とは、戦うことだと教えてくれた。
生きる事とは、弱者を喰らって生きる事とだという真実を教えてくれた。


「だから僕は弱いままじゃいけない、強くなくちゃいけない」


けれどある時、宗次郎はまた新たな真実を見た。
それは強さにも色の様に種類があるという事。
志々雄真実の様に他者を踏みにじり支配する力もあれば、
緋村剣心の様に他人を守ることで力を発揮する者もいる。

「その、はずだったんです」

そう話を区切って、宗次郎はじっと幸子を見た。
彼女は戸惑っている様だった。
当然だ、目の前の少女の人生は生死を賭けた戦いとは無縁のものだったのだろう。
殺意を向けられるのも、おそらく今日の、あの赤いバーサーカーと金髪の男からが初めて。
それ位は、宗次郎にもわかった。
だから、答えられるハズが無いと、タカをくくっていた。

「…………」


自分が分からない事なのだから、目の前の女の子が答えられるハズがない、と。
故に、彼は気づいていなかった、彼女の目じりに水滴は浮かんでいないことに。
そして数分ほど経った後、目の前の少女は真剣な眼差しで、


「……ボクには正直、瀬田さんが言っている事はよく分かりません。
その摂理っていうのが正しいのかも、断言はできないです。

―――でも、その考え方はとても寂しいと思います」


容易に、宗次郎の”世界”を飛び越えてみせる。


「寂しい?」
「はい。どんなにキラキラして輝いてるものでも、どんなに素晴らしいものでも、弱かったら意味がない、死んじゃうしかないとされてしまうのは寂しいです」
「弱くても、素晴らしいモノがあると?」

ありますよ、と自信満々に、彼女は答えた。


933 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:31:55 f5J6v68o0

「例えばそう、このボクです!
ボクは戦ったりは事務所の方向的にNGですけど、それを補って余りあるカワイさでしょう!!」


そう、宗次郎の天剣がこの世界に置いても変わらない様に。
彼女にだって、不変のものはある。

宗次郎の問いを受けた時、幸子の中で一人の男が甦った。
勿論、彼女の、厳密に言えば記憶を取り戻す前の輿水幸子のプロデューサーである。
あの日、デートの約束をしたプロデューサーは死んでしまった。
余りにもあっけなく、未だ逮捕されていない犯人の凶刃に斃れた。
宗次郎の理論ではこの世界のプロデューサーは弱くて、価値が無かった事になる。
それは違うと感じた。
贋作でも、記憶を取り戻す前の輿水幸子が抱いていた彼への想いは本物で、強大で、
無意味なものなんかじゃ無かったと、断言できる。
例え元の幸子が帰るべき世界で本物のプロデューサーが待っているとしても、それは変わらないのだ。
それを初対面の人に言うのは流石に恥ずかしいし、ほかの人に言ってもこの気持ちは伝わらないだろうから、もう一つの変わらぬモノを挙げたけれど。

「そんな有名アイドルでカワイイボクと知り合えた幸運。
瀬田さんは感謝しなきゃいけませんね!」

もしこれが今後の事だとか、戦うしかない状況になったらどうするとか、そんな質問だったら答えられなかったはずだ。
しかしこの問いなら、率直な自分なりの思いを提示することができた。
きっとプロデューサーのお蔭だ。
すっかり何時もの調子でずびしと宗次郎を指さし、年相応のささやかな胸を張る。

「……正直、そんな答えが返ってくるとは思いもしませんでした」

さしもの宗次郎も、彼にしては珍しく目を細めたまま僅かに驚愕した様子を見せた。
志々雄の愛人、夜伽の由美ですらここまで自分の容姿に自信を持っていないだろう。
それを見た幸子はさらにドヤ顔を浮かべる。

「フフーン♪やっと笑顔以外の顔をしましたね」
「あ、バレてました?」

まさか作り笑いの事も看破されていたとは。
アイドルとは一体何なのだろう?
そんな彼の疑問も置き去りにするスピードで幸子はさらにドヤ顔を深めた。


934 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:32:13 f5J6v68o0

「当然ですよ。ボクはアイドルですから、
ファンの方が本当に笑顔になってるかくらい見抜けます!」
「そうかぁ。凄いですね、あいどるって
僕は輿水さんの事これっぽっちも知りませんでしたけど」
「えぇっ!?」

眼を剥く幸子を見てクスクスと笑う。
『楽』しかなかった様な先ほどまでとは違い、本当に『楽しさ』を感じている様に。
無論これは幸子の解であり、宗次郎の解ではない。
自分の答えでなければ、緋村剣心の言っていたように前に進んだとは言い難い。
それでも、彼女の答えはあの古惚けた時代で宗次郎がどれだけ縮地で駆けても手の届かなかった物だったのは確かだ。

「ありがとうございます、輿水さん」
「トーゼンです。答えてあげたんだから瀬田さんも帰るのに協力してくださいよ?」
「はいはい、分かりまし―――」

【マスター、新しいサーヴァントを発見した】

ぺこりと幸子に下げていた宗次郎の脳内に声が響く。
無論、アサシンのものだ。

「? どうしたんですか?」
「……アサシンさんからの連絡が入りました。そろそろ出ましょうか
すいませーん。お勘定!」

顔が強張る幸子をそっちのけで、足早に勘定を済ませる。
その顔は、またさ今までの『楽』を浮かべた笑顔に戻っていた。


「………悪い人じゃないみたいですけど、変な人ですね」

一言呟いた後、幸子は手を引かれ、二人は足早に店を後にする。



(そういえば、強くてカワイイボクは途中から静かでしたね?)






935 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:32:57 f5J6v68o0



中途から、忸怩たる思いでアヴェンジャー・輿水幸子は二人の問答を見ていた。
あの彼女が一言も発することなく、息を潜めていたとすら表現できるレベルでただ、じっと。
それはタイミングにして、宗次郎の問いかけから。

―――でも、その考え方はとても寂しいと思います。

―――どんなにキラキラして輝いてるものでも、どんなに素晴らしいものでも、弱かったら意味がない、死んじゃうしかないとされてしまうのは寂しいです

―――ボクは戦ったりは事務所の方向的にNGですけど、それを補って余りあるカワイさでしょう!!

もう一人の、”夢から醒めたボク”の解(こたえ)を聞いたとき、思わず息が詰まった。
無理もない。だって、

、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
その答えは輿水幸子本人であるはずのアヴェンジャーすら予想できなかったのだから。

分かっていたはずだった。
それでも、『夢から醒めたボク』と、『醒めない夢を見たボク』の違いを唐突に、不意打ちの様に自覚してしまった。
英霊として世界に召し上げられる程武功を上げ、歌い、踊り、絢爛に生きた彼女は宗次郎の語った弱肉強食の理を心中で否定していた。
人の生き方は強さや弱さの二つで測れるものではないと。
夢から醒めた自分もそう思うはずだと、きっと否定すると信じて疑わなかった。
しかし、夢から醒めた自分はその理を否定しようとせず、ただその考えは寂しいと告げた。
それを夢から醒めた自分に力が無いからだとか、宗次郎に気を使ったのだろうとか言い訳するには容易い。
けれど、力を手に入れてしまった、騎士として戦い抜いてしまった”強くてカワイイボク”には出せなかった答えだ。
一見同じようでいて、それでいて0と1の様に致命的なまでに違う解答。

その純然たる事実はアヴェンジャーの心に名前の付けようのない感情の澱を作った。

「嫌、ですね……」

“優しくてカワイイボク”なら抱くはずのない、必要のないはずの感情。
それを抱いたことが更に、お前は聖杯を獲ったとしても帰れないと、耳元で囁かれている様な気分だった。
大鎌をぎゅっと握りしめ直して、この世界で出会った知らない男の子に手を引かれる自分を見ながら彼女もまた店を出ようとする。
瞳に映った、呆れた顔をして男の子を見る”優しくてカワイイボク”の姿に、アヴェンジャーはやはり形容しがたい感情が渦巻くのを感じた。

それを敢えて一番近い言葉にするのなら、憎しみに限りなく近い羨望と、
如何なる時もカワイイ自分に対する憎悪が裏返った様な生々しい愛情。


(帰り道は、まだまだ見つかりそうにありません……)


いや、
そもそも、帰り道など残されているのだろうか。





―――――アヴェンジャーは自身のスキルにより魔力が満ちるのを感じた。







936 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:33:13 f5J6v68o0


「何だ貴様」

念話を送ろうとしたその刹那、尾行していた長コートのサーヴァントの声が響く。
シルベストリは若干の驚愕を覚えて念話の送信を断念した。
自分の気配遮断は未だ効力を発揮しているはず、気付かれる様なミスは犯していない。
考えられるとするならば索敵の類の宝具やスキルだが、
あの長コートのサーヴァントが気配察知の類の能力を持っていたならば、もっと早くに気付いていなければおかしい、それに奴は無防備な姿を自分に晒しすぎだった。
となれば、残る可能性は一つ。
シルベストリは視線を少女と長コートのサーヴァントの前方に向ける。

「新たなサーヴァント、か」


嫌に呑気な笑みを浮かべた大柄の男と、禿げ頭の背の低い怪老が、横に並んで進路を塞いでいるのをシルベストリはその眼に認めた。





937 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:33:37 f5J6v68o0


「何だ貴様」

剣呑な雰囲気を出しながら、ランサーは男達に問う。


「いやー、君サーヴァントだろ?あ、俺三木ね。こいつはアサシン。
まさか練習の日にサーヴァントに会えるなんてツイてるなぁ、アハハハハハ!!!」
「ツイておるぞ」

刺すようなランサーの視線も一向に介さず、三木はバカの様に笑った。
傍らのサーヴァントと思しき老いぼれも追従し非常にランサーのカンに触る。
即刻叩きのめしたい所だが、ここは制止するべき時だ。
マスターである飛鳥が寝ている時に戦闘に入るのは愚策に他ならない。
ランサーはその背に身を預けているマスターを一瞥した。

「マスター……」
「ああ、今起きたよ」

どうやら既に起きていたらしい。
それならばさっさと自分で歩けと文句の一つも言いたかったが、今は後回しだ。
飛鳥を横に降ろし、ランサーは問うた。

「あのサーヴァントのステータスは」
「低いね、軒並みEだしさっきのセイバーと比べるべくもない。ただし宝具は…嫌に高い」
「つまり宝具頼みの雑魚か」

その言葉に三木が手厳しいなぁとまた笑う。
タンクトップとジーパンのその姿はとても魔術師には見えないが、一般人とも思えない図太さだ。
ただの馬鹿か、それともその能天気さを支える裏付けがあるのか…
ランサーは少しの黙考ののち、飛鳥に指示を出した。

「マスター、お前はそこの横路地から先に家に帰っていろ」
「いいのかい?そうするとボクはキミの”証明“をその瞳に収められない訳だけど」
「またさっきのセイバーとの戦いの時の様に地に這いつくばられたら面倒なだけだ」

脳裏を過るのは先ほどのセイバーとの戦い。
戦闘後とはいえ魔力消費によって飛鳥は一時間ほど意識を失っていた。
無論、単独行動のスキルのお蔭で命に別状はなかったが、しばし行動に支障をきたしたのは確かである。
加えて、十全の状態の時に戦ったセイバー戦とは違い、これは今日で二戦目だ。
また飛鳥がああなるリスクは大いにあった。
戦闘時に倒れられた場合さらに最悪。
それならば、早々に安全な場所に戻らせた方がランサーとしても安心して戦えるという話である。
飛鳥もそれは分かっている様で、少し軽口を叩いたが直ぐに納得したように肯定の意を示す。

「それじゃあ、ボクとキミの帰るべきセカイで待ってるよ!」
「何かあれば令呪で呼べ」

ぴょんとランサーの背から飛び降り、走っていく飛鳥を見て三木とアサシンは目を丸くした。
その横のアサシンもそれを真似して目を丸くする。


938 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:34:05 f5J6v68o0

「れれっ?帰っちゃうの!?」
「何故ぞ」
「フン、これで貴様らを何の憂いも無く叩き潰せるというわけだ」

今までずっと笑い仮面であった三木がここで初めて顔を渋くした。
アサシンもそれを真似をして、二つの渋面が並ぶ。

「俺も今日起きたばっかりでハラ減ってるのになぁ。
それにあの子は君にとってのボディみたいなもんなんだろ?」
「何が言いたい?」
「そうだったら俺が思うに、あの子を殺せば勝ちなんだと思うんだけど
アサシンみたいに君らサーヴァントが後藤さんでも殺せないのなら、
俺がやれる訳無いしねぇ」

そう、アサシン――ぬらりひょん星人が現れた日、三木の同居人である後藤は自らのサーヴァントと既に一戦交えていた。
マスターの中でも非常に高い戦闘能力を誇る戦闘マシーンである彼らしい行動だろう。
しかし、アサシンは幾ら斬った所でまるでプラナリアの如く分裂再生を繰り返し、
田村玲子が最強と称した寄生生物後藤ですら、遂に殺しきることはできなかった。
この事から三木と後藤はサーヴァントは物理的攻撃では滅ぼす事は困難であると踏んだ。
ならば、サーヴァントにとってのボディ/マスターを狙えば良い。

「マスターを殺すか。どうやって?させると思うのか、俺が」

相手方の狙いは分かった。
ならば、此方は真っ向からその狙いを粉砕してやるだけ。
ランサーはその手に、ベルトのバックル型の黒いバックルを顕現させる。
それを腰に装着すると一瞬紫電が放出し、三木が「おおっ何だぁ!」と驚愕の声を上げた。
三木に構わず、次いでバナナの意匠が施された錠前を取り出す。

「変身」
『バナナ!』

―――――刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)

喧しい電子音と己の鬨の声を合図にして、ドライバーのコネクタに滑らかな動きで接続。

『ロックオン!!』

クラスAの錠前であるバナナロックシードはここに起動し、空にジッパー状の孔が開く。
そして、馬鹿に大きいサイズのバナナがランサーの頭上へと落ちた。

「バ、バナナ……バナナ!?」
「何ぞ、何ぞあれ?」

『バナナアームズ!ナイトオブスピアー!』

面食らう三木とその足元で跳ねるアサシン。
それを尻目にカッティングブレードを倒すと、赤と黄を基調とした装甲がランサーのその身を包む。
これにて全ての工程は完了、専用アームズウェポン、バナスピアーを握りしめ臨戦態勢に移行する。

「覚悟しろ、三木、アサシン」
「いや…なんだこれは…たまげたなぁ…」


939 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:35:04 f5J6v68o0

パチパチと三木は手を叩いてランサーを称えた。
彼ら寄生生物は基本的に合理的かつ鈍感だが、感情が存在しない訳ではない。
知的好奇心が高い個体も希少だが存在する。
無論、ランサーには興味のない事だが。

「しかし手強そうだなぁ、君のマスターは魔術師なのかい?
あの子もバナナの味がするのかな」
「……貴様、やはり人間ではないな」
「あ、分かるかな」

そう言って三木は自身の腕をまるでゴムの様に滑らかに変形させ、鉄のように硬質化させてみせる。
ランサーはそれを見ても三木のオーバーリアクションとは対照的に、大きく動じる事無くただ、僅かに眉を潜めて体勢を落す。
やはり、薄々感づいていたがこの男は危険だ。
弱者を喰らい生きる事が当たり前の存在だ。
ランサーと近しい存在意義を持ちながら、彼の理想とする新世界には決して相入れない敵。
ここで殺す。

「分かるさ、貴様からはインベスと同じ臭いがする!」


直後、アスファルトを強く踏みしめランサーが駆ける。
一息で彼我の距離を詰め、アサシンへバナスピアーの強烈な薙ぎ払いをお見舞いした。
対するアサシンは即座に対応し、それを自分矮躯を活かして横跳びで初撃を躱す。
が、甘い。『この』アサシンのスペックでは追撃までは躱せない。
ランサーは槍が躱されたと見ると即座に足を振るい、ロゥキックを放つ。
丁度跳んでいたアサシンは空中で防御も出来ず、その巨大な頭に蹴りを受け―――

「っと、そうはいかない」

その蹴りを阻むは硬質化させた三木の左腕。
寄生生物の生物として突出したポテンシャルの高さはサーヴァントの攻撃を妨害する事は可能とする。
舌打ちをしてランサーは三木の左腕を断とうとするが、相手のスピードもさる者、常人では視認することも叶わない速度で腕を引っ込める。
アサシンもその頃にはキルゾーンから逃れていたが、奇妙なことに反撃は来ず、そのまま最初の交錯は果される。


940 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:35:27 f5J6v68o0

「やる気があるのか貴様ら」

決定打は持っていないせよ、サーヴァントの攻撃すら妨害が可能なマスターと二対一の状況で攻め手に出なかったアサシンにランサーは憤りを隠せない。
だが、アサシンはそんなランサーの怒りなど全く意に介さず、感情のくみ取り難い瞳で見つめ返すだけだ。

「うーん、やっぱり俺とアサシンだけじゃ厳しそうだなぁ」
「それならさっさと倒されるがいい」

あくまでヘラヘラとした三木の態度も、ランサーの静かな怒りに油を注ぎ続ける。
こんな奴らにいつまでも付き合っていられるか。
冷静に状況を分析しながら、一気に勝負を決めるべくカッティングブレードに手をかけた。
元より、狙うは短期決戦だったのだ。
あのアサシンの身のこなしであれば、アーマードライダーバロンの必殺技であるバナナスカッシュであれば押し切れる。
宝具の存在が懸念点ではあるが、机上の空論に怯えるほどランサーの肝は細くない。
奥の手を使わせる前に仕留める。
恐れを知らぬその鋼の如き意志で勝負を決めるカードを切ろうとした、その時だった。

「興味深いぞ」

短い言霊が、戦場の空気を明確に変える。
ここでアサシンが初めてランサーの前に進み出たのだ。

「あー良かったね。アサシンが本腰で相手してくれるみたいよ」
「…その必要はない、
貴様らこれで消え失せろッ!!」

カッティングブレードがそのまま倒され、火花が散った。
それと同時にバナスピアーが、巨大なバナナの様な質量をもったエネルギーを放出させる。
地面を掘削しながらソレは肥大化し、アサシンへと迫る。
一時間前に交戦した甲冑のセイバーのステータスならば十分に耐えきられただろうが、眼前のアサシンのステータスならばそうはいかない。そのはずだ。
だが、なおもアサシンは動かず、ただ致死の攻撃を待ち受ける。
そして、アサシンの相貌が見開かれたと同時に、黄金色のエネルギーが寸分違わず着弾した。
刹那、衝撃。

激しい光の交錯と、もうもうと立ちこめる砂塵にも構わず、ランサーは正面を凝視する。

「…………ッチ」

彼のアサシンの魔力は、未だ消えてはいない。
否、それどころか数秒前まで感じなかった魔力がさらに二つ、増えている―――
砂煙が晴れる。
気味が悪い程に先ほどまでと同じ世界が、そこにあった。
けろりとした顔で立っているアサシン、ニヤニヤと張り付けた様な笑顔を浮かべる三木。
違うものと言えば、破壊された路面、
加えて、アサシンに使えるように左右の守りを固める二体の異形。

どちらも優に三メートルはありそうな巨躯であった。

一体は黒装束を纏い白い袴を履いており、背の白き翼と一つ一つが水晶玉程もありそうな首に嵌めた数珠が目を引く
表情は主を害する標的への憤怒、その貌は紅よりもさらに朱い色をしていた。
主に鞍馬等の伝承で著名な怪異、天狗である。

もう一体は白い束帯で身を包み、漆黒の鳥帽子を頭に乗せている。
一見すれば平安の貴族を思い起こしそうな格好だろう、
来ている者が天狗とは対照的な無表情を浮かべた狗でさえなければ。

これこそがアサシンの宝具の一端。

――――『百鬼夜行(大阪ミッション)』である。


941 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:35:55 f5J6v68o0

この二体の妖(あやかし)が、バナナスカッシュを着弾の直前にはたき墜としたのだ。

「フン、何かと思えば数で勝負と来たか……」


あくまで尊大な態度を崩さないランサーだが内心では舌打ちが抑えきれない。
早期での決着を望む彼にとってこれは考えうる限り最も避けたい最悪の状況であった。
アサシン本体に加え眼前の二体の化け物を相手取るのは、マスターへの負担を強いらずには厳しいと言わざるを得ない。
ステータスを観ずとも分かる、この二体は一山幾らのインベスなどとはワケが違う。
ゲネシスドライバーを使えば勝機も見えてくるが、マスターの残存魔力を考えれば難しい。
こうなると三木本体を狙うか、撤退も視野に入れるべきか。
撤退する自分を見て笑う三木を想像すると、それだけで腹を衝く様な苛立ちが湧いてくるが、背に腹は代えられない。

だが、そんな彼の目算を正しく嘲笑うかの様に状況は最悪から頗る付きの最悪へと変わる。

「そう言えば、さっきどうやって君のマスターを狙うか聞いてたよね、ランサー君?」
「貴様にそう呼ばれる筋合いはない」

今、ランサーと、三木は確かにそう呼んだ。
ちなみに飛鳥は一度もこの男の前でクラス名を呼んでいない。
これだけバナスピアーを振るっていれば看破されるのは当然かもしれないが、それにしても馬鹿面に似合わない冷静さと洞察力だ。
真に警戒すべきは、アサシンではなくあのマスターかもしれない。
と、いつの間にか三木に意識を誘導させられていたランサーに対し、三木は勝ち誇った笑みで口を開く。

「まぁそう言わないでよ……つまり、こうするんだ」
「……ッ!? 行かせん!!」

三木の言葉が放たれると同時に、狗神が三木をその肩に担いだ。
不味い。
直感的に理解したランサーは即座に展開できる全魔力を脚部に集中させる。
その魔力を活かしてバロンが出せるトップスピードで三木めがけ突貫、首を叩き落とすのだ。
何としてもこれで仕留めるほかない。
マスターを喰らう事に執心していたあの怪物を行かせてしまえば、自分のマスターの、あの少女は否応無く窮地に立たされる。
最高速度でのバナスピアーでの全力刺突。ゼロカンマ秒で到達しようとしたそれは―――しかして、打ち取るには至らず。
ただでさえ正面突撃は読みやすい攻撃なのだ。
まして焦燥が奔った状態のランサーでは、刺突が例え音速を超えていたとしても狗神は兎も角も三木を仕留めるのは不可能だっただろう。
さらに天狗が待ち構えていたのだから、なおさらである。
まるで巌の様に佇む天狗は、バナスピアーをガッチリと捕え離さない。


942 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:36:18 f5J6v68o0

「ぐ…離、せッ!!」

掴まれたバナスピアーを巡り、力比べが始まるがどうにも分が悪い。
やはり、アサシンが呼び出したこの天狗は、並のサーヴァントを凌ぐ力を有している。
否、既にここにいる怪異は天狗と狗神のみに非ず。
浮世絵にでも出てきそうな妖怪たちが気付けば数体、ランサーの退路を塞いでいる。

その時、閑静な住宅街でかつて屍戦士達が体験した地獄が、再現されつつあった。


「フフフフ、勝ったな!!!」
「待て、貴様尻尾を巻いて逃げるつもりか!?」

狗神の肩に腰掛け去っていく三木をありったけの殺意を籠め一喝するが、取り合ない。
三木はネがカルイのだ。

「――――邪魔だァッ!!」

怒りのままに槍を支点として体を半回転させる。
浮き上がった体を捻り、天狗の側頭部に憤怒を込めた蹴撃を叩きこんだ。
予想外の反撃に天狗も対応が利かず、直撃を受け吹き飛ぶ。
だが、ここで彼にできた反撃は打ち止め。
既にランサーの視界からは三木と狗神は消え失せていた。
残ったのは退路を塞ぐ数体の怪異、そして天狗とアサシン・ぬらりひょん星人。

「………いいだろう。貴様らをここで瞬殺して、三木も殺す。それだけだ」

ここまでの逆境化に置いてもランサーの戦意は衰えを知らない。
むしろ、さらに燃え上ってると言っても良い。
あのマスターは戦う術を持たない、だが、戦わないマスターが弱者とは限らない。
自分が戻るまできっと持ちこたえるだろう。駆紋戒斗は己のマスターを信じた。
信じるほかなかった。
声も無くアサシン達に無言の殺意を募らせ、その手にゲネシスドライバーを出現させる。
最後の宝具の使用も考えたが、この短時間でそこまで魔力消費を強いてはマスターの命に関わる。
最早撤退も難しくなったこの状況ならば、此方の方が適当だろう。
そんなランサーのゲネシスドライバー見て、ぬらりひょんは、

「興味深いぞ」

何が興味深いのかはアサシン自身にしか分からない。

直後、変身音が夜の闇に響き渡った。

【D-4/1日目 夜(22:00)】

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態] 健康
[装備] ゲネシスドライバー&レモンエナジーロックシード、ソニックアロー
[道具] 戦極ドライバー、ロックシード一式
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:願いを叶える
1.アサシンを倒し三木は殺す。
2. セイバー(モモン)に対し(本人は否定しているが)再戦を望んでいる。
[備考]
1. セイバー(モモン)の宝具は目の当たりにしてますが、宝具だと感づいているかは不明です。
2. 「運命超越す緋色の王(ロード・バロン)」を除く全ての宝具を解放しています。
3.アサシン(ぬらりひょん第一形態)のステータスを確認しました。
4.三木が人間でない事に気づきました。

【ぬらりひょん@GANTZ】
[状態] 健康
[装備] 無い
[道具] 無い
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:ぬらりひょーん
1.バナナ…興味深いぞ。
[備考]
1.D-4エリアに宝具『百鬼夜行』を発動しています
2.二宮飛鳥&ランサーを確認。ステータスを把握しました


943 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:37:20 f5J6v68o0





「ふむ、あのランサーの主従が脱落するのも最早時間の問題だな
運のない者達だ」

気配遮断によってランサー主従にも、禿頭のアサシンの主従にも捕捉されなかったもう一体のアサシン、
シルベストリは両者の立ち合いから顛末までを見届けるに至った。
介入しても良かったが、アサシン主従がどう出るやも分らぬ不確定要素を敬遠して見送ったのだ。
そのお陰でじっくり観察することができ、あのアサシンの宝具はどうやら怪異を呼び出す類の物であるらしいと推察ができた。
それはあの二体の側近だけではないようで、住宅地の周囲を見渡せば至る所に痩せ細った鬼、餓鬼が蠢いて居る。
よくよく確認すれば仕事帰りのNPCが夜の闇に紛れて何人か貪られていた。
恐らく同一の宝具であろう。

魂喰いによって自動的に魔力を賄おうとするとは、何とも大胆で低燃費な。

その様な分析をしつつもシルベストリは今度こそ己のマスターへ念話を送り、簡潔に説明を吐いた。


【――――成程、大体状況は掴めました】

【それで、どうするマスター】

【その二人のマスターは、シルベストリさんが欲している”答え”は持っていそうですか?】

少々予想外のマスターからの、問い。
これが聖杯狙いの魔術師であれば、アサシンの宝具やスキルの詳細をまず探っただろう。
シルベストリは僅かに間をおいてから答える。

【……二人とも持ってはいないだろうな、一人はそもそも人間では無いようだ、
そしてもう一人はもうじきこの舞台から永遠に脱落する】

【本当に?】

再びマスターから放たれる問い。
いや、これは最早駆け引きに近いだろう。

【すまないが意図を測りかねる。マスターは何が言いたいのかね】

【その女の子かランサーさんは、僕と貴方が答えを持っているかもしれない。
それを一言も話さず見殺しにするのは――――寂しくないですか?】

寂しい。
その言葉に体内の歯車が軋み、疑似体液が揺れる感覚を覚えた。

―――おじさんは、寂しかったんでしょ!

魂から切り離された少年の言葉が、何もないずっと続く白い部屋が、記憶を駆ける。

【……自動人形(オートマータ)に寂しいという感情は存在しない】

【何か気に障ったのなら済みません。
何が言いたいかというと僕はまァ、死にたくはないですけど今は聖杯が欲しいワケでもないですし
僕達が答えに近づける可能性があるのなら、その子を助けるのも良いと思うんですよね】 

【もしランサーのマスターが聖杯を求めていたとしてもかね】

この返答には彼も押し黙った。
念話を通した二人の間に沈黙が降りる。

【―――じゃあ言い方を変えましょうか。
ここでその子を助けて、三騎士のランサーさんに恩を売っておくのは悪い事じゃない】

成程、感覚的な話ではなく利を見据えた判断という方向に切り替えたらしい。
だが、純粋に戦力の強化をはかるなら老爺のアサシンのほうについたほうが合理的である。

【詭弁だな、利を求めるならアサシンの主従に協力すべきだ】

哲学する自動人形、シルベストリは冷徹な態度を崩さない。
だが、そんなシルベストリに腹を立てる様子もなく、宗次郎は負けじと言い放った。


944 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:38:08 f5J6v68o0

【やだなぁ、アサシンは貴方がもういるじゃないですか】

殺し文句もいい所だ。恥ずかしげもなく。
あの少年のにこやかな笑みがありありと想像できる。
彼なりの打算もあるだろうがここまで期待されては、演じるほかない、か。
フ、とシルベストリはその深い皴が刻まれた頬を歪めた。

【―――と、僕達のほうも相手をしなきゃいけない方々がもうすぐ来そうなのでこれで】

【物の怪の類かね】

【えぇ、それじゃお願いしますね】

それを最後に念話が切られる。自分が断るなど一片たりとも思ってもいない様な声であった。
ここからマスター達のいた喫茶店の前までは少し距離がある。
ならばあの怪翁の宝具の射程距離は多めに見積もって一エリアほどになるだろうか、と類推する。
とは言え、マスターの所にはアヴェンジャーがいる以上さして問題ではない。
先に果たすべきにマスターに命じられた命令だ。
自動人形は主人に仕えるが定め。主人に課された使命には全力をもって答えねばならない。
さわ、と揺れるスズランの花に優しく手をやる。
自分にスズランの花を売ってくれた少女の顔が、何故か浮かんだ。


「さて、間に合うか」

脚部のバネに力を込め、老兵は月輪に飛ぶ。





945 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:38:27 f5J6v68o0

「あの、瀬田さん…」
「何ですか?」

少し肌寒い夜の気温を感じながら、言葉とともに手を離した。
視線を頭一つ分下げれば、出会った時と同じ様に不安げな顔をした女の子がいる。

「新しいサーヴァントを見つけたって…やっぱり戦ったりするんですか?」
「まぁ、そうなるかもしれませんね。もう闘ってるみたいですし」

彼女が何と言いたいか、彼にもなんとなく分かった。
多分、考えているのはあの赤いバーサーカーとの戦いのことだろう。
誰だって、初めて自分を殺そうとしてくる者の事は忘れない。
宗次郎も、志々雄から貰った脇差しで斬殺した家族の顔を忘れた日など一日も無い。

「何とか、ボク達みたいに戦わずに済ませられ……」
「難しいでしょうね」

即答であった。

「僕たちみたいに聖杯狙いにもつかず、かと言って聖杯を破壊するでもないと立ち位置は、
両方の人たちを敵に回すかもしれないって事なんです」
「でも…」

幸子にも宗次郎が言っている事は理解できる。
けれど、彼女はまだ守られるべき子供だった。納得まではできない。
年齢的に言えば宗次郎もそう変わらないけれど、志々雄真実に出会った雨の降る夜、
剣を振るったその時から彼はただの子供ではなくなった。
極意は殺生。剣術とは殺人術。
それは弱肉強食の理を持たずとも侍の概念が廃れつつある明治の世でなおも刀を持ち続けた剣客たちが共有した真実。
勿論のこと宗次郎も例外ではない。
例外では無いが―――それが今の彼の全てという訳でも決してない。
その証左として、彼は目の前の少女に告げる。

「まァ、闘うとしても本当に自衛のためだけですから安心してください」
「……本当ですか?」
「はい。火の粉を払うだけですよ」

約束する。
そこまでは言えなかった。
いずれ出るかもしれない答え次第では、嘘になってしまうかもしれないから。
緋村さんなら何と言ったのだろうか。

「―――じゃあ、今がその火の粉を払う時ですね。アサシンのマスターさん」

そんな宗次郎の言葉に反応したのは、霊体化を解き現れた彼女のサーヴァントだった。
大鎌を担ぎ、角を生やしたアヴェンジャーは、マスターの少女とは違いどこか苛立たしげな顔をしている。
同じ顔でも、表情次第で大分印象が変わるものだ。
言ったらさらに怒らせてしまいそうなので「ハイ」とだけ相槌を打ち、腰の刀に手をかけた。

「な、何ですか二人とも!」
「決まってるでしょう。カワイイボク達を狙う悪者のご登場ですよ」

また一人だけ状況が掴めていない幸子をアヴェンジャーが制する。
路地の曲がり角を睨みつけながら。

十数秒後、二人の警戒の通り、その『悪者』は姿を現した。


946 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:38:49 f5J6v68o0
「ほほほほほほほほ」
「はははははははは」

ひっとアヴェンジャーの後ろで控える幸子が悲鳴を漏らす。
出てきたのは阿亀と般若の面をそのまま長身痩躯の人間に張り付けた様な畸形。
十中八九、禿頭のアサシンが召喚した怪物であろう。
その風体、腰に差された日本刀も目を引くが、幸子が嫌悪感を覚えたのは二体の表情だ。
二体の怪異は笑う、ニタニタと、げてげてと。
相対する自分達を嘲笑するように。
加えて、歪む口元は生臭い赤色で染まっていた。
まるで小梅ちゃんが観るホラー映画の怪物の様。

「まったく、カワイイボクをこんなお化けの前に連れ出すために、ボクをダシにするなんて
アサシンのマスターさんはエスコートがなっていませんね」
「ごめんなさい、でも放っておくわけにもいかないでしょ?」
「それはそうですけど……はぁ、仕方ありませんね…」

彼女としても聖杯戦争で余計な犠牲が出るのは望むところではない。
怪物とも騎士団にいた頃に怪物退治もさんざん経験した。
目の前の二体に比べればぴにゃこら太の方が一万倍程可愛げがあるけれど。

「取り敢えず僕が引き付けますので、後詰は頼みます。僕だけじゃ勝てないみたいなので」
「貸し一つですよ。後、勝手に斬られて後ろのボクにスプラッターな光景だけは見せないでください」
「善処します」

マスターの方の幸子を守れる様アヴェンジャーが後退するのを一瞥し、宗次郎が前衛に立つ。
目の前の妖を見ても、人生に緊張という二文字を感じたことのない彼は全く動じる様子はない。
すると、それに呼応するように目の前の阿亀と般若も腰の刀を抜いた。

「最後の言葉を聞こうか…」

般若が口をきく。
その威容は正に剣鬼。
迂闊に動けばその腰の刃が鞘走り、宗次郎の胴を断つだろう。
そんな状況にも関わらず、当の本人は呑気に手を顎にやり考え込む。

「瀬田さん…」

電柱の陰で、幸子は宗次郎の名を呼ばずにはいられなかった。
どんな剣道少年でもあんな怖い鬼にはきっと勝てない。隣の阿亀の人も怖い。
それなのにあの人はサーヴァントも連れずに向き合っている。
それがどんなに危険か分かっているはずのアヴェンジャーも、鎌を向けて牽制しているが、それだけだ。
自分とそう変わらない歳の、片方は自分そのもの人なのに、どうしてこう違うのだろうか。

と、そこで宗次郎が顎から指を離し、口を開く。

「思ったより、大した事なさそうですね。
これなら緋村さんや志々雄さんのほうが強いや」

一閃。

かつて屍戦士を一刀のもとに切り伏せた般若の居合いが放たれる。
その速度、幸子には振るった般若の腕がブレたようにしか見る事叶わず。
その実は横一文字の、受ければ上半身が泣き別れる事必至の斬撃であった。
その白刃の鋭さ、彼女はこの刹那、宗次郎の死を疑っていなかった。
阿亀もニヤニヤ嘲笑を浮かべていた事から同じく、疑っていなかったはずだ。


「――――やっぱり速さは凄いけど、殺気が見え見えです」
「「! ?」」

彼が、二体の怪異の背後に現れるまでは。

確かに般若の一閃は速かった。速度と技量で言えば一流の剣客を凌ぐだろう。
だが、その怪物としての剣気を隠すのは不得手だったらしい。
いかな速度を以てしても、殺気や剣気を隠せなければどう攻撃するつもりなのか、明治のひとかどの剣客には予想が立てられるのだ。


947 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:39:13 f5J6v68o0

二体の怪異が志々雄真実や緋村剣心より弱いとした根拠がここにあった。
素人相手なら速度と膂力だけで十分真っ二つにできただろうが、宗次郎の天賦の剣才はその隙を見逃さない。

「はッはッはッはッはッ
クサイ、クサイ、キデンはクサイぞ」
「斬りたいのう、斬りたくて堪らぬぞ」

予想外の難敵の登場、しかし心底楽しそうに二人の鬼畜生は更なる死合を求めた。
対する幕末の悪鬼が育てし、最強の修羅は動かない。
一手の読み間違いが直死に繋がる相手を前に、不敵に微笑む。

「それじゃあ行きますよ、縮地」

トントンと、足の感覚を改め、

同時に、剣気が満ちる。

時空を超えた舞台の上で、羅刹達による剣舞が始まる。

【D-4(住宅街)/1日目 夜(22:15)】

【瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 】
[状態] 健康
[装備] 無銘の刀
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金] 学生相応
[思考・状況]
基本行動方針:答えを探す。答えによっては聖杯を獲るのも吝かではない。
1.目の前の怪異を倒す。
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
3.輿水幸子と行動を共にする事にしました

【輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 健康
[装備] 無い
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金] 学生だがアイドルなので一般学生よりは多い
[思考・状況]
基本行動方針:答えを探す。『ボク』と共に居る
1.瀬田さん…
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました
3.瀬田宗次郎と行動を共にする事にしました

【輿水幸子@グランブルーファンタジー】
[状態] 健康
[装備] 大鎌
[道具] 無い
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:輿水幸子へと帰る。
1.小梅ちゃんの映画みたいなスプラッターな展開にはなりませんように。
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)を確認。ステータスを把握しました
3.瀬田宗次郎と行動を共にする事にしました
4.瀬田宗次郎&アサシン(シルベストリ)が、人を殺し慣れていることに薄々感付いています





948 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:39:33 f5J6v68o0

さて、どうしたモノか。
ランサーのマスターである二宮飛鳥は、恐らく彼女の十四年の生涯で一番の『非日常』を肌で感じていた。
自らのサーヴァントにあの場を任せ、自身の家まで退避する算段をつけたまではよかった。
しかし、その後が完全に誤算だった。

(……あんなのがいるとは聞いてないよ)

横路地から顔を出し、こっそりと様子を伺う。

「けけけけけけけけッ」
「うはははは」
「きききききッ」

道路を我が物顔で徘徊する小鬼に一つ目の化け物、髪の長い幽霊の様なヒトガタに
蜘蛛をそのまま人間にした様な異形。
正しく魍魎跋扈。
異界にでも来てしまったのかと錯覚してしまいそうな景色であった。
じわ、と手に汗がにじむ。
どれだけ異端を気取っても飛鳥の感性は女学生のソレをそう逸脱してはいない。
世辞にも醜悪ではないとは言えぬ怪物達の行進を見て生理的な嫌悪感を抱くのは無理からぬ話であった。

(どう見てもボクに友好的な相手では無さそうだね…)

あの怪異たちがどこから沸いて出たのかは分からない。
だが、あれが聖杯戦争に纏わる存在というのは解る。
飛鳥は慎重に魍魎たちの様子を横目で伺いつつ、手に刻まれた紋様を見る。

(使うべきかな…でも)

あの怪物達は自分に気づいていないようだし、反対方向に進んでいる。
このままやり過ごせるかもしれない。
もしそうであれば令呪の使い損というものだ。
もしランサーが優勢の状況で呼び出されてそれが空振りだった場合どう思うか。

(きっと怒るだろうなぁ)

とは言え、あの怪物達が危険な事には変わりない。
極論を言ってしまえばただのプログラミングされた人形とはいえ、
NPCがあの怪物たちの犠牲になるかもしれないと思うと無視はできない。
周囲を確認し、怪物達がまだ気づいていないのも再び確認する。

「ランサー……」

魔力を籠め、己が僕の名を呼ぶ。
今すぐここに瞬間移動を以て馳せ参じろと。

「令呪を以て命じる。今すぐここへ―――」

「おっとそうはいかない」

「!?」


949 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:41:58 f5J6v68o0

言い終わる前に軽薄な声が響いた。
淡い光を放つその手に、万力の様な力がかかる。
大柄な男の手が、彼女の細い手首を掴んでいた。
彼女には男を知っていた。あのアサシンのサーヴァントのマスター、三木だ。
後ろには狗神が控えている。

「ぎッ……あっ……」
「やぁ、いい夜だね」

軽い声も耳に入らず、握られる手の力の強さに思わず呻き声を上げる。
三木はそんな飛鳥を見てさらに深く笑んだ。
尤も、その笑みには粘ついた雰囲気はなく、彼が加虐趣味者ではない事が伺える。
純粋にどうする?という好奇心だけを浮かべているような、そんな笑みだった。
例えるなら、虫の足をもいでその後よたよたと這いずる様を見物する子供の表情が最も近いと言えるかもしれない。

何の事は無い、後藤だけではなく彼も期待していたのだ。
魔術師という存在との戦いを。

「で?どうするの。魔術師の戦いってやつを教えてくんない?」
「…ッ!ボクは、魔術師何かじゃ……」

眼尻に涙を貯めながら必死に飛鳥が答える。
当然三木が納得する事はなく、あれ?と両手を組んで考え始めた。

「あれー、魔術師ってのがマスターをやるワケじゃないのか……
まぁ確かに、俺や後藤さんも魔術師じゃあ無いもんなぁ」
(な、何なんだ……)

目の前の軽薄さすら、今の飛鳥にとっては恐怖の対象でしかない。
うんうんと勝手に納得し、ひとしきり頷くとグルンと首を飛鳥の方に回す三木に反射的に叫んでいた。

「ラ、ランサー!」
「だから駄目だって」

みし、
という音が聞こえた気がした。
三木の痛烈な膝蹴りが飛鳥の腹を抉ったのだ。

「ばッ…うぁッ……げほっ!げほっ!」

眼球が上を向き、猛烈な吐き気が臓腑で爆散する。
痛い。痛すぎる。
これまでの人生で彼女が経験したことのないような凄絶な痛み。
しかし、寄生生物という存在を知っていればこれは望外の幸運と言わざるを得ない。
まだ三木が『食事』ではなく、闘いと思っていること。
そして、両手を変形させていなかった事。
もしこの二つの要因が無ければ、彼女は今、硬質化した触手で叩き斬られていただろう。

「やっぱり普通の女の子みたいだね…それじゃ俺や後藤さんとは戦いになるわけもないか
それならアサシンの友達に足止めしてもらうこともなかったかな」
「とも、だち…?」
「そう、君が熱心に見てた路地の先にいたでしょ?あれ全部アサシンが出したんだよね」

あの妖怪たちは目の前の男のサーヴァントが出したというのか。
自分だけでなく周囲のNPCも襲うやもしれぬのに。

「そんな事をしてキミは…ルーラーが黙ってるとでも…」

腹を押さえながら、なけなしの勇気を振り絞って弱弱しく尋ねる。
しかし三木はそんな問いを笑って一蹴した。

「多分大丈夫なんじゃないかな。範囲も時間も絞ってあるし、
聖杯戦争が始まる前に蓄えた魔力を使っててあんまり人も襲ってないはずだから。
ま、いざとなったらルーラーとやらと闘うのも悪くないかもね」


950 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:42:57 f5J6v68o0

三木はモラトリアム期間に魂喰いをして魔力を蓄えていた事を朗々と語った。
元より、後藤程ではないが彼もルーラーのペナルティをそこまで重く視ていない。
例え主従の情報を公開され討伐令とかいうものを出されても顔を自在に変えられる寄生生物には恐れる事は無いし、さらにサーヴァントは隠密行動の得意なアサシン。
令呪没収なら確かに痛いが、今の所アサシンと意識の合致は取れているし、しばらくは必要になりそうな局面は来ないはず。
加えて、ここで飛鳥を仕留めれば三木は敵主従の排除、ひいては聖杯戦争の進行に合理的な手段を取ったというだけ話になる。

「さて質問にも答えたし……食べるとするかなぁ」

冥途の土産と言わんばかりに話していた三木だが、ここで彼の両腕が粘土の様な質感に変わり、人ではあり得ないほどに伸びていく。
少女は、まだ腹部に受けたダメージのせいで動くことができない。
ただ茫然と、その様を眺める他なかった。

(何だい…あれは……)

霞む視界の中、変わっていくのは両腕だけではなかった。
ぴしり、と三木の顔に亀裂が入り、また柔軟性のある質感に変わっていく。
その風体は最早人からかけ離れ、『口だけ頭』。パニック映画のエイリアンそのもの
背後には、アサシンが出したと言うさっきの妖怪たちの姿もあり、口々に喰えー、喰えーと囃し立てている。
飛鳥はここで食べるという言葉の意味を知る事となった。
正真正銘、そのままの意味で自分はこれから捕食されるのだ。

(フッ、まったく…こんな、終焉とは、ね)

怖いを通り越して笑えてくる。
望んだ非日常は、優しいものではなかった。
恭しく世話を焼いてくれ、彼女をここに来るまで育ててくれた日常とは違って。
力なき者が求める非日常は、全てが悲劇へと帰結する。


「……いや、だ。ランサー…………」


絶望の笑みの先にあったのは、純然たる拒絶。
当然だろう、非日常に憧れを抱いていただけの彼女が、こんな結末を受け入れられるはずがない。
例え覚悟を決めていても、そこまで潔くなれるはずがなかった。
尤も、そんな飛鳥を見ても目の前の怪物は何の感慨も抱くことはない。
家畜の命乞いに耳を貸した人間がいない様に。
硬質化させた触手が振り上げられる。
その様、思いあがった者に死を与える死神の鎌の如し。
そして、

「それじゃあ」


それが、最後。
知覚すら叶わぬ情け容赦なき白刃が振り下ろされ―――

静寂。


…。
……。
……………。


「あ、れぇ……?」


951 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:43:38 f5J6v68o0



三木のどこかとぼけた声が響く。
何故か逆さまになった視界の端で、歯車を抜かれた人形のように崩れ落ちる妖怪達と首を失った自分の四体を捉える。
次いで、「選手交代だな……」と言う声を聞いた。


「ぇ…… 」

飛鳥も茫洋とした面持ちで眼を開き、血を吹き出し倒れ伏す三木と、自分の前に立つ者を見た。
最初はランサーが来たのかと期待した。だが違う。
立っていたのは、右手から刀身が伸びたサーベルを構えた老人。

「グルルルルァッッ!!!」

唯一老人の剣旋から唯一逃れた狗神が老人に迫る。

「疾いな…」

シルベストリは一言そう呟くと、白い束帯に身を包んだ狗神の剛腕を独楽回しの様に回避。
飛鳥を抱えて後跳びに距離を取った。

「大事はないかね、少女よ」
「アナタは…サーヴァント、なのかい?」
「如何にも、故あって君をひとまず助けることになった」

答えながら、狗神と先程首を断った怪物のマスターをシルベストリは睨む。
グルルルルと未だに威嚇の唸りを上げる狗神の背後に、信じがたい光景があった。
首がなくなったはずの胴の右腕が動いたのだ。当然脊髄による反射などではあり得ない。
頭を破壊されれば、自動人形ですら一部を除き行動不能に陥るのというのに。
右腕は先程の粘土のような質感で首に纏わりつき、右腕から移動するように癒着。
それを飛鳥も眺めてしまい、小さな嗚咽を漏らす。
やがて右手だったモノは姿を変貌させ、顔の輪郭を形作った。

「まるで任せてはおけんな……三木、戻ってこい」

三木とは違い、まるで能面のような無表情の男。
その男が死んだはずの三木の名を呼ぶと、三木の首がその形を変えていく。
スライムの様になり、ひょこひょこと男の方に駆けるとそのまま喪った右腕に収まった。

「いやー完全に油断してました。申し開きもない」
「お前に任せていては命が幾つあっても足りん」

丁々発止のやり取りを交わしながら、三木が右腕に戻っていく。
それを見て少女は慄き、老人はその瞼を細めた。
狗神に守られていたモノは、これにて完全体と相なる。
しなやかな肢体はギリシャの彫刻の様な荘厳さ。
その眼に滾らせるは、標的への氷点下の殺意。


952 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:44:18 f5J6v68o0

「やはり君は人間ではないようだ……失礼だが名があるのならば聞いても?」
「後藤。見ての通り、単なる野生動物さ
……お前も、人間では無い様だが」

ああ、とシルベストリは答え剣を収めると、スタスタと背を向けて飛鳥の方へ歩く。
狗神は無防備に思えるその背に今にも食いつかんと言う形相を浮かべていたが、後藤は待てと本物の犬畜生に命じるように制止する。
そんな怪物達を尻目にして、漸く身体からダメージが抜けてきた飛鳥に、シルベストリは静かに告げた。

「少女よ、これからここは猛獣を扱う舞台になる。観客席まで下がってもらおう」

「ボクは偶像(アイドル)だから本当は最後までステージに立たなきゃいけないんだけど…
生憎、猛獣使いは未経験でね。お言葉に甘えてランサーが来るまで鷹揚の、見物をさせて貰、おうか、な………」

飛鳥は何とか何時もの調子で答えようとするが、覚束ない。
腹部に受けたダメージのせいではない。これはつい一時間前に感じた感覚だ。
魔力消費による意識の混濁。
何とか意識だけは失わない様にするが、何時まで保つものか。

シルベストリは問いを投げたかったが、この様子では答えられるハズなしと断念。
彼女を抱え、邪魔にならない所に運ぶと丁重に下す。

再び霞む視界で少女が観た老人の表情は、どこか寂し気で、優しい顔をしていた。





そして、老兵は二体の猛獣に対峙する。

「待ってもらって済まない」
「なに、仕掛けるタイミングが計り難かっただけだ。
それにやはり闘いは正面からの方が、愉しい」

獰猛な唸り声を上げ続けている狗神と違い、マスターの方はいたって冷静だ。
否、冷静どころかその顔は笑い、これから起きる闘争を心待ちにしている様にも思えた。

「死ににくい所と言い、我々と対峙した時に浮かべる笑みと言い、どこか似ているが…
人間と同じく、血は赤いのだな。」
「赤くない相手と戦ったことがあるのか?」

両手を硬質化させ、無数の刃を形作っていく合間に後藤が尋ねる。
シルベストリは無言で肯首した。
彼の座に残された記録でその者達とハッキリと戦ったという情報は無い。
曖昧模糊。しかし、“自動人形“というスキルを持っている以上、彼が知らないはずは無く。

「我ら自動人形(オートマータ)を討つことだけに二百年執着した宿敵(しろがね)達は…
冷たく昏い闇色の血をしていた」

言いながら、彼も半身を沈める。
その構えは、瀬田宗次郎が扱う様な、東洋の抜刀術の構えに酷似していた。
二体一でも彼が臆する様子は寸毫程も存在しない。



「―――――さて、ゲェムを始めよう」


953 : LES ART MARTIAUX ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:44:51 f5J6v68o0





物語は回りだす。
まるで複雑に歯車の噛み合う、からくりの様に。
そして多くの人々が出会う様は、芸人たちの飛び交うサーカスのよう。
そんな舞台の上で―――彼らは何を求め、何を想い踊るのだろうか。




【D-4(住宅街)/1日目 夜(22:10)】

【シルベストリ@からくりサーカス】
[状態] 健康
[装備] 左手及び、身体に内蔵された剣。
[道具] 無い
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:宗次郎と共に答えを探す。
[備考]
1.百夜ミカエラ&バーサーカー(黙示録の獣)を認識。ステータスを確認しました。
2.輿水幸子&アヴェンジャー(輿水幸子)を認識。ステータスを確認しました。
3.輿水幸子と行動を共にする事にしました。

【後藤@寄生獣】
[状態] 健康
[装備] 無し
[道具] 無い
[令呪] 残り三画
[所持金]タクシーに乗って「何がおつりはいいからねだ!」と罵られる程度。
[思考・状況]
基本行動方針:闘う。
[備考]
1.宝具『百鬼夜行』により、狗神を従えています。
2.アサシン(シルベストリ)を認識。ステータスを確認しました。


【二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 魔力消費(大)、腹部にダメージ(大)、意識混濁
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣いレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて帰る。
[備考]
1.セイバー(モモン)の宝具は目の当たりにしてますが、宝具だと感づいているかは不明です。
2.予選時にランサーに「覚悟」を見せつけたそうです。
3.アサシン(シルベストリ)を認識。ステータスを確認しました。
4.アサシン(ぬらりひょん)を認識。ステータスを確認しました。


954 : ◆.wDX6sjxsc :2016/10/10(月) 11:45:25 f5J6v68o0
投下終了です


955 : 名無しさん :2016/10/10(月) 21:01:36 kpmW8zXY0
投下乙です
百鬼夜行を発動したぬらりは厄介。しかし後藤と三木のテンションの差が面白いですね。
マスターに負の感情を抱いてしまったアヴェンジャーも中々どうして不安。
サーヴァントではないにしても般若や阿亀と互角に渡り合う宗次郎は凄い。


956 : ◆mcrZqM13eo :2016/10/11(火) 03:11:28 WSiC2ryU0
これはランサーのピンチですな。魔力枯渇状態で泥仕合必至のぬらりとのタイマンはヤバ過ぎる
そして溜まっていくアヴェンジャーのストレス

日にちを勘違いしていて一日遅れましたが予約を延期します


957 : ◆.wDX6sjxsc :2016/10/11(火) 15:22:58 473fM4IM0
感想ありがとうございます。それと申し訳ありませんがこの話で登場したキャラ全員の位置をE-4に修正させて頂きたいと思います


958 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/11(火) 19:48:50 FNcjRfCM0
ご投下ありがとうございます。
まず幸子のP殺したのやっぱりテメェだったのか後藤さんコノヤロー!
一方宗次郎は、あんて●くみたいな喫茶店で幸子とコーヒー飲んでいますが、
しかしいつもニコニコな幸子ちゃんと笑うことしか出来ない宗ちゃんが出会うのはある意味運命なのかも。
何時しか二人が本当に笑う時が来ると良いですね。
飛鳥は戒斗さんの事をかなり信頼していたり覚悟決めていたりする所を見るに結構早めに参戦したのかな?
そしてぬらりマジチート、百点星人の名は伊達ではないな。
でもルーラーにバレたら原作同様大阪ミッションになり兼ねないからホント恐ろしい。
という訳で仕事しろルーラー、そして助けて岡。
それでは私も
刹那・F・セイエイ&アーチャー(ウルトラマンゼロ)
高杉晋助&アーチャー(ガルバトロン)
間明蔵人&ライダー(ミゼル)
を追加予約、3度延長させていただきます。


959 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/11(火) 20:04:05 FNcjRfCM0
すいません、亜門鋼太朗&アーチャー(X3752ストライカー)を追加予約させていただきます。


960 : ◆TAEv0TJMEI :2016/10/13(木) 20:37:30 .cm4rGBQ0
最上リョウマ&セイバー(モモン)、予約します


961 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:36:15 sLZRQ9aQ0
投下します


962 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:36:52 sLZRQ9aQ0
深夜の自然公園に2人の人影。屈強な長身の影と平均的な男子高校生の2人連れは、この下らない聖杯戦争に巻き込まれた佐藤和真とそのサーヴァント空条承太郎だった。
当面外へ出ずにネットで情報を集める予定の和真だったが、『GALAX』の象徴『X』が使用不能となり、情報を集める事が出来なくなった為に、外出して他の参加者と接触する事を余儀無くされたのだ。
こんな時間に出歩いているのは、まさか真昼間から殺し合いを始める馬鹿が居る訳が無いだろうと判断したから。
もし仮に、昼の往来で暴れる様な奴がいるなら、そんなイカレとは接触するのは御免被る。
そうして外に出た和真は、戦闘に向いていそうな場所として予め目をつけていた、この自然公園にやって来たのだった。

「何か判った事有る?」

「お前と同じだ。此処で高熱を操るサーヴァントが戦った事しかわからねえ。地面が硝子状になってる位だ。生身の人間ならひとたまりも無いだろうな」

二人が調べているのは、大道克己とルキアの交戦した形跡だった。
他のマスター及びサーヴァントとの接触を求めてやって来た自然公園だが、見つかったのは戦闘の痕跡のみ。
互いに炎を操る仲間を持つもの同士、痕跡から戦ったサーヴァントの能力の一端を知ることが出来たが、それ以外は皆目不明だった。

「靴跡から判断するに、此処で戦ったのは四人。その内で一番小さい奴は随分と身軽だな。かなり動き回っているのに足跡がほとんど無い」

ということは無かった。テレビのモニターに映る、闇に包まれた部屋を飛ぶ蝿を精密にスケッチ出来る『星の白金(スタープラチナ)』の眼を以ってすれば、この程度は造作も無いことなのだ。

「そんなことまで判るのか」

「生前やったネズミ狩りに比べれば楽なもんだ」

答えた承太郎は、バスケットコートの方に目線を向けた。

「向こうで戦ったのはランサーだな。地面に石突の痕が有った。結構派手に動いてダウンまでしているのに、ランサーの相手は殆ど動いていない。かなりの手練れだぞ」

「おお……」

外見に合わない観察眼を発揮する承太郎に、和真は素直に感心する。
このランサーが身に纏う歴戦の凄味は伊達では無い。

─────でもネズミ狩りって?

実はコイツも俺の様にロクでも無い事に巻き込まれたことがあるのだろうか?

「そんなに驚くことも無いさ。何しろ向こうさんの事に関しては、サッパリなんだからな」

尋ねようとした矢先。承太郎が和真の後ろに視線を向ける。
承太郎の視線の先には、爛と輝く双眸を覗かせた黒い男が在った


963 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:38:06 sLZRQ9aQ0
逸見エリカは聖杯に対する関心など欠片も無かった。
如何なる願いも叶える聖杯など知った事では無い。
叶えたい願いが無い訳では無い。だがその願いは、エリカが己の力でその手に掴まなければ意味が無い。
西住姉妹は、杯などに願って並ぶことが出来る程度の矮小な存在などでは決して無いのだ。
杯などに願って並んだところで、己が決して満たされぬであろう事は承知している。
この事態はエリカにとってみれば降って湧いた災難。戦車の行進を阻む地雷原の様なものだった。

─────だが、それでもエリカは戦う。戦う事を選んだ。

この程度の戦いを制せずして、己が目指す場所へは辿り着けない。
寧ろこの戦いを、己が糧としてより更なる高みへと登る。
それ位の気概がなければ、到底己の目指す場所へは届かないだろう。

それは、いきなり知らぬ場所で、未知の戦いを強いられた少女が、不安と重圧に押し潰されない為の、精一杯の虚勢かもしれない。
だがそれでも、逸見エリカは戦う事を決意した。敵対するもの悉くを降して凱旋する事を選んだ。
あの背中に追いつく為に、あの背中に並ぶ為に。
どの道、古の罪人の如く、顔に刻まれた令呪が敵を呼び寄せる。
ならばその前にこちらから見つけて打ち倒す。
幸いにしてエリカのサーヴァントはとても強い。一対一ならばまず勝てる。
高い火力に頑健な肉体を併せ持つアヴェンジャーは例えるなら重戦車。しかもこの重戦車はエリカの知るそれとは違い、超高速で機動する上に整備も手間入らずで燃費も良いという戦車乗りの理想を体現した破格の性能を持つ。
戦車道とは異なる全く未知の戦いに臨むに辺り、エリカには恐怖は有っても不安は無い。それ程までにエリカはアヴェンジャーを信じていた。
このサーヴァントを以って制覇する。そうして己はあの高みへと到達する。


その決意の元、戦闘に向いていそうな場所として目をつけていたこの場所にやって来たのだ。
こんな時間にこんな場所にいるのなら、戦う意思有りと見做しても良いだろう。
そして発見したのは、一昔前の不良のような格好の男と冴えない少年。


964 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:38:23 sLZRQ9aQ0
─────例えるなら、精々三号戦車といったところね。

ステータスを確認したエリカは胸中に呟く。向こうのサーヴァントの性能は此方と比するべくも無し。ケーニヒスティーゲルの装甲に四号長砲身の火力を持つアヴェンジャーとは勝負にならない。
聖杯戦争は重量制限の無い強襲戦車競技。重量制限により極端な性能差が出ない様に配慮されている強襲戦車競技から制限を外してしまえば、
事前の作戦や乗り手の練度では無く、純粋に戦車の性能が勝敗を決する最大の要因となるだろう。
聖杯戦争であれば、高い性能を持つ重戦車たるアヴェンジャーは、圧倒的な強者として戦場を支配できる。
だがそれでもエリカは図に乗って襲い掛かる真似はしない。
ステータスが戦車の性能だとするなら、スキルは搭乗員の能力を表す。此処が明らかで無い限り、侮ることなどできはしない。
第二次対戦時の東部戦線でも、兵の練度の差で、赤軍のT34に性能で劣るドイツ戦車が拮抗出来た様に。
だがこれはそう気にする必要は無いだろう。三号ではティーガーには決して勝てないのと同じで、重要なのは地力なのだから。
気にするべきなのは宝具。例え脆弱なサーヴァントでも宝具次第では強力なサーヴァントを撃ち破ることが出来る。
只の歩兵で有ってもパンツァーファウストを使えば重戦車を撃破する事が出来る様に。
故にエリカの方針は速攻。相手に宝具を使う事を許さず、速度を以って衝撃し火力を以って屠る電撃戦。アヴェンジャーはこの方針を可能とする能力を充分に有する。
撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心。その西住流の流儀にのっとり速やかに撃破する。
それでも不意打ちという発想に至らないのは、思考のベースが戦車道という競技で有るが故か。

「あの程度ならこれからの戦いの演習にちょうど良いわ、宝具を使わせずに仕留めて……どうかした?」

興味深げに学生服のサーヴァントを見つめるアヴェンジャーに、エリカは訝しげに問いかけた。

「お前の方針に異は無い。俺はサーヴァントだからな。だが、あの男…最初に当たるのがあの様な男とは……ククッ…マスター、お前には感謝するぞ」

「…?まあ良いわ、私は姿を隠して指示を出すから」

この戦いは戦車道でいうフラッグ戦。エリカが倒れればその時点で終わる戦、故にエリカは姿を隠す。いくら年齢や外見に比して体力が有ると言っても、エリカは肉体を用いた戦闘訓練を積んではいない。直に戦うのは敗北に繋がると言って良い。
第一戦力的には豆戦車でしか無いエリカを戦力として数えるなど有り得ない。
一応それなりに備えは用意したが、使う羽目になるのは避けたい。結果としての死ならともかく、積極的に人を殺すのはやりたく無い。

「最初は宝具を使わないで、誰かに見られていないとも限らない」


965 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:38:48 sLZRQ9aQ0
「ランサー、マスターの姿は見えるか?」

「いいや。巧く隠れているな。気をつけろ、不意を衝いて襲ってくる可能性が有る」

サーヴァントは自動操縦型のスタンドの様なもの、倒すのならばマスターを殺すのが楽な上に手っ取り早い。その為、事前にマスター狙いの可能性は重々言い含めて有った。
言われずともその可能性は和真も充分に認識している。現れたサーヴァントは承太郎に任せ、自分は周囲を警戒する。
承太郎は前に出てマスターを後ろに庇うと、何時でも星の白金(スタープラチナ)を出せる様にして、サーヴァントと対峙する。

「で、何の用なんだ?正々堂々正面から来るのは、話し合いでもしに来たと思って良いのか?」

「この場は戦場。ならば対峙すれば為すべき事は一つ」

「正面から来るってのは、相当自信が有るみてーだな。時にそっちのマスターは何処だ」

承太郎が気にしているのは相手のマスター。承太郎には危惧していることが一つ有る。承太郎の宝具でも有る能力、幽波紋(スタンド)は基本性能や能力次第ではサーヴァントとも五分に渡り合える。サーヴァントにかかり切りになっている時に不意を打たれれば対処するのは難しい。
そうでなくてもスタンドは不意打ちや暗殺に最適なのだ。もし仮にスタンド使いがマスターならば、和真が狙われればあっさりやられてしまうだろう。
和真の立ち回りの巧みさと阿漕さを計算に入れても、生存は難しい。そう承太郎は踏んでいた。
という訳で和真が退避するまで時間を稼ぐべく、こうやって問答しているのだ。

「教えるわけが無いだろう。知りたければそちらで探せ」

【奴のステータスはどうなんだ?】

【宝具かスキルか不明だけど全く見えない】

【やれやれだぜ】

まあステータスが判らないのはどうでも良い。生前体験した戦闘全てがそうだった。正面から対峙してくれているだけましだと思おう。攻撃して来る奴を探す手間が省ける。


966 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:39:39 sLZRQ9aQ0
「クハハハハハハハ!!」

哄笑と共にダンテスが奔る。より一層、その双眸を爛と燃え立たせ。
その眼に映すは承太郎のみ、退避する和真には目も呉れず承太郎に襲い掛かる。
承太郎は動かず、只ダンテスとの間合いを測る。
さらに高まる哄笑。ダンテスが身体の周りに黒い霧を纏い、その中から蒼黒い炎に包まれた右手が繰り出される。

「星の白金(スタープラチナ)!」

承太郎の傍に現れる人型の像(ビジョン)。承太郎以上の上背と体格を持つ、古代の拳闘士を思わせる屈強な戦士の像が、黒霧に右の拳を繰り出す。
貫手と拳がぶつかり、大質量の巨岩同士が激突したかの様な轟音を残し、二人は互いに有利な位置を求めて場所を変える。

「オラァ!」

スタープラチナの拳が唸り。

「ていや!」

ダンテスの貫手が蒼黒い炎を帯びて奔る。

スタープラチナとダンテスの正面からの攻防は五分。然し。主導権はダンテスに有った。
承太郎から2mしか離れられぬ上に飛び道具を持たぬスタープラチナに対して、戦場を縦横に駆け巡り、前後上下左右から猛攻を仕掛けるダンテスの優位は絶対。
スタープラチナの攻撃が来ると見れば距離を取り、機を窺って思いもよらぬ方向から当たれば致命となる攻撃を繰り出す。
並の三騎士なら軽く屠るこの猛攻を、承太郎はスタープラチナの性能を、生前に培った戦闘経験と勘とでフルに引き出して尽く防ぎ、隙を見て効果的な猛撃を加えていく。
両者の攻防はスタープラチナとダンテスのみを見れば五分と五分。しかし其処に歴戦のスタンド使いである承太郎の経験と観察眼と頭脳が加われば、優劣は明らか。
戦場を支配しながらダンテスは徐々に傷付いていく。

「おお!」

熾烈な攻防の中でも、鉄塔の如く揺るがなかった承太郎に僅かに生じた隙を突いて、左─────承太郎から見て右に回り込んだダンテスが、未だ繰り出した右拳を引き戻せぬ承太郎の背中に左の掌打を撃ち込む。

「オラァ!!」

それを読んでいた承太郎がスタープラチナに強烈なサイドキックを繰り出させ、ダンテスを蹴り、大きくよろめかせた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

そこへ撃ち込まれるスタープラチナの左右の拳による突き(ラッシュ)。ダイヤモンドすら打ち砕く無双の拳が立て続けに黒霧に覆われたダンテスの身体にに吸い込まていく。

「オラァ!」

拳に突き上げられ、完全に宙に浮いたダンテス目掛け放たれる渾身の右ストレート。砲弾の如き勢いで射出されたダンテスは4mも飛んでから漸く両足を地面に接地、深い二条の溝を10m程掘って停止した。

─────なんだコイツは?

承太郎が感じた手応えは大質量の鋼。生前押し潰され掛かったロードローラーが軽量でヤワに思える程の感触。
実は人間では無いのでは?などと思いつつ、承太郎は間合いを詰め、再度ラッシュを見舞おうとする。
拳を振るうスタープラチナに対して、ダンテスは不意に右手を突き出し、レーザーの如き蒼黒い炎を承太郎の胸目掛けて照射、鋼すら秒と持たずに貫く熱線が承太郎の胸を貫くべく飛翔する。
至近距離からの、今まで使わなかった飛び道具による完全な不意打ち、その速度とタイミングに、避ける術など有りはしない。


967 : 戦車の理想形 ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:40:05 sLZRQ9aQ0
「オオオッ!!」

だが、ダンテスは知らぬ。スタープラチナの速度が、光を越え時を置き去りにする程のものだという事を。
故に結果は承太郎にとっての必然、ダンテスにとっての虜外。左腕を一振りして熱線を霧散させたスタープラチナが、驚愕から棒立ちとなったダンテスに再度のラッシュを叩き込む。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッッ!!!」

再度宙を舞うダンテスの体は、公園に植えてあった樹木に激突。衝撃で幹を粉砕してなおも飛翔、派手に擦過音を響かせて、公園の地面に今度は背中で溝を掘る羽目になった。

─────おかしい、何だって魔力が増えてやがる。

先のラッシュの時に感じた違和感を確かめる為に、念入りに殴ってみたがやはり思った通りだった。
ダメージを受ける度に魔力が増えている。
生前出会った奴等には、スタープラチナのラッシュにも耐える頑丈な奴や、首だけになっても生きていて、人の御先祖様の肉体かっぱらって生きていた奴がいるが、そのどれとも違う。
ポルナレフが倒したというスタンド『悪魔(エボニーデビル)』と同タイプの性質を持つのかも知れない。

「いや、強い、強いな。宝具だろうその像もだが、それを操るお前も強い。余程場数を踏んだと見える。そてにしてもその宝具…お前の精神の形か?ならば納得がいく。その雄々しさ、勇猛さ、その強さ」

ダンテスは心からの称賛を承太郎に贈る。己を支える精神は、暗い牢獄の中で己の燃え盛る憎悪を炎とし、固く誓われた復讐の意思を鉄槌として、鍛えに鍛えられた鋼。
対して眼前に立つランサーを支える精神は、暴風吹き荒れる嵐の夜に道を示す眩い輝き。
如何なる汚濁も曇りも歳月も、その輝きを鈍らせることなど決して無いその有り様は、正しく黄金。
しかも黄金の柔さなど微塵も無い。巨大な巌の如き強さを持った、金剛石の様に決して砕けぬ黄金。
ダンテスには解る。この精神は自分の其れと同じく、常人には想像もつかぬ苦境を幾度も越えて鍛え上げられたものだと。
共に余人の及ばぬ強い精神を抱く者同士ながら、その有り様と輝きは全く逆。
ダンテスは初戦からこの様な敵と巡り合わせてくれたエリカと運命にに心からの感謝の念を抱いた。


立ち上がるダンテスの姿はあれだけの猛打を受けたにも関わらず無傷。
元々の耐久力の高さに加えて、増えた魔力を注ぎ込んで傷を回復させているのだ。

「生半可な攻撃は効かねえって事か」

ジリジリと距離を詰めながら呟く承太郎。スタープラチナ共々、その眼はダンテスを捉えて離さない。


【アヴェンジャー、ランサーの宝具は前…というより一方向にしか攻撃出来ないみたい。それにさっきからの様子だと、余りランサーから離れられない様だから、貴方の宝具ならランサーの宝具の射程外の死角からランサーを直接叩ける】

何処かに潜んで戦闘を見守っていたエリカが指示を送ってくる。

【見るべきところは確と見ている様だな】

【まさか宝具を使う程の相手とは思わなかったけど】

エリカの指示を受け、ダンテスは宝具を発動する。

「此処から先は精神の比べ合い。あの牢獄で俺を支え、今も尚突き動かすこの黒い復讐の炎。お前の黄金の精神は、黄金の精神が作り出すその像は、受けて立てるか?」

高まる魔力。加速する思考。


「虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)」


アヴェンジャーの宝具。時間や空間と言った形無き牢獄すら脱する巌窟王の精神が具現。今此処に。


968 : 強い戦車も後ろは弱い ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:43:38 sLZRQ9aQ0
─────!?

承太郎は驚愕した。いきなりダンテスの姿が眼前に在ったからだ。目線を逸らすどころか瞬きもしていないのに。

「オオオ!!」

更に動いて右側面に廻り込んだダンテスの、野獣の如き咆哮と共に繰り出される、炎熱を纏った右の貫手が、スタープラチナの胸を深々と抉り、承太郎の胸から鮮血を噴き出させた。

「オラオラァッ!!」

即座に放たれる反撃の左右の拳は虚しく空を切り、既に承太郎の上空5mに移動していたダンテスが、蒼黒い炎を光条として撃ち放つ。
これを承太郎は横っ飛びに飛んで回避。光条が地面を穿ち、散弾の様な勢いで飛来する破片をスタープラチナで叩き落とす。
哄笑とともに襲い来る第三撃、後ろから飛来する熱線。それと同時に第四撃、左側面から奔る貫手。
第五、第六、第七…重ねられる攻撃は時差(タイムラグ)がスタープラチナにすら捉えられぬ超高速の多重連撃。この攻撃に承太郎が動揺せず、致命傷を避け続けられたのは、優れた第六感の働きも有るが、生前に同様の攻撃を見たことが有るからだ。

─────銀の戦車(シルバーチャリオッツ)と同じ芸当を使いやがる。

J・P・ポルナレフ。共にDIOを倒した仲間の事を思い出す。出会ったときはDIOに肉の芽を植え付けられ、敵として自分たちと戦った。その時に披露したのが、甲冑を脱ぎ捨てて行う多重残像を作り出す程の超高速機動だったのだ。

─────あの時アブドゥルはどうやってチャリオッツを倒したっけな。

思い出してみたものの、どうにも自分には無理なので諦める。というよりアブドゥルもチャリオッツを破ったわけでは無いし。

【今まで本気じゃなかったのか?】

【さあな。だが、ヤバイ事になった】

焦りを含んだ和真からの念話に対する答えも惜しんで、承太郎は考える。
本気になったのか?宝具かスキルの効果でも使ったのか?そんな事はどうでも良い。
問題はあの速度で動き回る上に、飛び道具を使うことだ。常にこっちの射程距離外に位置し、そこから延々と攻撃を受け続ければ、待っているのは削り殺されて死ぬという結果だけだ。
どちらか一つだけならば対処できる、だが二つ同時となると流石に対処は困難だ。
考えながら承太郎は直感に従って右に飛ぶことでダンテスの放った熱線を回避、外れた熱線が立木に直撃し、幹を粉砕した。


969 : 強い戦車も後ろは弱い ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:44:24 sLZRQ9aQ0
2人の戦闘を見つめながら、エリカは勝利を確信していた。ランサーを見た目から只のチンピラと判断したミスを素直に認める。然し、其れでもアヴェンジャーの勝利を疑わない。
ランサーは確かに強い、あれもまたアヴェンジャーに劣らぬ重戦車。並のサーヴァントならとうにリタイアさせているだろう。だが、アヴェンジャーは耐えている。あのランサーの宝具の猛攻に。そして受けた痛みを充分に魔力として蓄えた。
今が宝具を使う時。アヴェンジャーの宝具ならば、鉄壁と言って良いランサーの宝具を避けて、側背からの攻撃が可能。

─────如何に正面からの攻撃に強い戦車といえど、後ろから攻められると弱いものなのだ─────

そう考えてエリカはアヴェンジャーに念話を送り、宝具を使わせた。
結果は上々。思ったよりもランサーが粘っているが、直に撃破できるだろう。

そう思って僅かに気を緩めた時、不意に服の中─────背中に何かが突っ込まれた。
驚愕して叫びそうになった矢先、強烈な脱力感がエリカを襲った。
突如として自分を襲った感覚をエリカは知っている。アヴェンジャーの性能を知る為に行ったテストの時、魔力を使い過ぎた結果起こった脱力だ。
猛烈な疲労の中、何とか後ろを向いたエリカは、ランサーと共に居た冴えない少年の姿を認めた。

「この…離れろ……変態…」

押し退けようとエリカは少年─────佐藤和真目掛けて両手を伸ばした。



公園の中を和真は走る。このままではランサーは負ける。そうなる前に何とかしなければならない。
とはいえ今の和真に出来る事が有るとすれば、相手のマスターにドレインタッチでも喰らわして、魔力枯渇状態に追い込む事位だ。
あのサーヴァントの猛攻は、かなりの魔力を消費しているだろうから、ドレインタッチで魔力を奪えば、主従共々行動不能に追い込める。
そう考えて和真は、敵マスターを求めて公園を移動し、エリカを見つけたのだった。
千里眼で観察し、サーヴァント同士の戦いに気を取られていて、周囲の観察を疎かにしている事を確認。潜伏スキルを用いて背後からにじり寄る。
そして背中に手を突っ込むと、エリカの反応に一切構わずドレインタッチを発動させた。傍目から見れば只の変態だが、心臓に近い皮膚の薄いところからドレインするのが効率良いんで仕方が無い。
一気に気絶する位に魔力を吸い上げたのにも関わらず、エリカは此方を振り向き。

「この…離れろ……変態…」

押し退けようと両手を伸ばし─────漸く気絶した。
そして妙な姿勢で気絶し、脱力したエリカの背中に手を突っ込んでいた所為で、和真はエリカに覆い被さる様にして倒れ込んだ。

余りと言えば余りな状態に、慌ててエリカの背中に廻したままになっている右手を引き抜いて、離れようとした矢先、立木の幹を熱線が粉砕した。

「ウソだろ!?全然力が落ちねえ!!」

あのサーヴァントが破格の魔力量を誇るのか?其れとも他に理由が有るのか?そんな事を考えたのも一瞬。和真はこの苦境からの打開策を得る為に、敵サーヴァントの観察を始めた。
エリカに覆い被さったまま。

そしてダンテスの動きの特徴に気が付いた。


970 : 強い戦車も後ろは弱い ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:45:32 sLZRQ9aQ0
【なあ、ランサー。アイツが攻撃してくる方向なんだが……ずっとスタープラチナを避けているだろ。仕留めに来る時もスタープラチナを避けて来るんじゃ無いか】

【確かにな】

本体よりも大きく頑強なスタープラチナを避けるのは当然だろう。問題は何処から来るか?右か左か後ろか上か、それとも下か。裏を描いて正面か?
承太郎考える事を止めた。只々感覚を研ぎ澄まし何処から襲って来ても即応してスタープラチナの拳を撃ち込むことだけに集中する。
ダンテスの動きはシルバーチャリオッツに比べれば洗練を欠く、動きを捉えられればスタープラチナで充分対処可能。


直後に承太郎は巌窟王を捉える/捕らえる事など不可能だと知ることになる。


「オオオオオオオオオオ!!!」

ダンテスの咆哮、狂獣すら正気に返って逃げ出す程の雄叫びと共に、蒼く黒く燃え盛る虎が獲物を狩るべく奔り出す。

「オオラァッ!」

正面から突っ込んで来たダンテスに渾身の拳撃を放とうとして─────スタープラチナは停止する。

承太郎はダンテスに囲まれていた。上に、右に、左に、後ろに、そして前に、総勢十を越えるダンテスが、5m以上離れた場所から両掌を承太郎に向けている。

此れこそが巌窟王が宝具“虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)”の真骨頂。如何なる牢獄も踏破する巌窟王は、時間と空間という無形の檻にすら囚われぬ。
この攻撃は多重残像の域を越え多重分身。その全てが実体。虚像など有りはしない。

─────銀の戦車(シルバーチャリオッツ)もこんな芸当は出来ねえぞ!時間でも操ってんのか!?

対処する術が浮かばぬ承太郎の隙を見逃さず、ダンテスの放つ漆黒の恩讐が殺到する。奔騰する殺意。全方位から飛来する火線が承太郎を骨も残らず焼き尽くす。


そしてダンテスは知る事になる。『世界』を支配する暴帝の、万象を縛る時の牢獄を脱した白銀の星の輝きを。


承太郎の立っていた場所を中心に巨大な火柱が立ち昇り、生じた爆発が空気を掻き乱す。荒れ狂う暴風が植えられた樹々の枝を折り、石塊を飛ばす。

「のぅあ!?」

すぐそばの樹に拳大の石がめり込んで、驚いた和真が頓狂な声を出し。

辺りが静寂を取り戻した時、承太郎もスタープラチナも、その影すら残さず消え失せ、承太郎のいた場所には爆撃跡の様な穴があいていた。


971 : この不幸な俺に救済を! ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:46:27 sLZRQ9aQ0
「ラアアアアンンサアアアアアア!!!?」

綺麗さっぱり消し飛んだ承太郎。影も形も有りはしない。
とりあえずヤバイ。この女が眼を覚ませば最初にやることは俺を殺させる事だろう。
あのサーヴァントがコッチ来る前に逃げよう。そう思って身を起こそうとしたら、
目の前にサーヴァントの姿。

─────死んだ。

此処にはあの駄女神は居ない。エリス様も居ない。つまり死んだらそれっきり。ジ・エンド。

サーヴァントの手がゆっくりと上がり。

「後ろから散々殴り廻してくれた礼は…タップリさせて貰うぜ」

九回裏二死満塁ツーアウトで、相手のバッターの打ったホームランがギリギリでファウルになった様な気分。
承太郎はダンテスが止めに来たその時、スタープラチナ・ザ・ワールドを発動。その場から離れて霊体化していたのだ。
そして今ダンテスの背後で霊体化を解いたにのだった。

「ラアアアアンンサアアアアアア!!!」

「貴様!?」

サーヴァントが振り返り、身構え様としたその時。

「オラ×610」

燃えるゴミを五回ゴミ出し出来るオラオララッシュがダンテスの前面部分全てに撃ち込まれた。
木立をへし折りながらぶっ飛んで行ったダンテスが見えなくなって少し経つと、何処かにぶつかったのか、爆発音が響いて来た。

「チョット見てくる。どうにも仕留め切れた自信が無い。こんな奴は初めてだぜ 」

承太郎が姿を消して直後。

「お前…何をやっているんだ?」

因みに和真は今だに気絶したエリカに覆い被さったままである。
その状態で最も出会いたく無い人種に和真は出会ってしまった。
その制服を見間違えることなど有りはしない。
揃いの制服を着た巨大なアフロの男と細目の男が、汚物を見る様な眼で和真を見下ろしていた。

「斎藤君、確保」

細目の男の指示にアフロが無言で頷き和真に手錠を掛けた。

和真は預かり知らぬ事だが、今夜此処が戦場となったのは今回でで三度目。回を追うごとに激しくなる轟音と震動に、遂にキレた近隣住民が警察に通報したのだった。


972 : この不幸な俺に救済を! ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:46:53 sLZRQ9aQ0
【E-3自然公園/1日目 夜(22:43)】

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] 貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:脱出優先。聖杯は手に入るなら欲しいけど優先順位は低め。
[備考]
1.アヴェンジャー(エドモン・ダンテス)と交戦しましたが、クラスもステータスも確認出来ていません。
2. 襲って来たサーヴァントのマスター(逸見エリカ)を認識しまぢた。
3.気絶した逸見エリカに覆い被さった状態で手錠を嵌められました。
4.警察署に連行される模様です


【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスター護る
1. 殴り飛ばしたサーヴァント(エドモン・ダンテス)が再起不能(リタイヤ)かどうか確認する。
[備考]
1.アヴェンジャー(エドモン・ダンテス)と交戦しましたが、クラスもステータスも確認出来ていません。
2. 襲って来たサーヴァントのマスター(逸見エリカ)を認識しまぢた。



【【マスター】
 逸見エリカ@ガーズル&パンツァー及び劇場版並びにスピンオフ「リボンの武者」】
[状態] 魔力消費(極大) 気絶
[装備] 一応の備えとして安全靴を用意している。他にも何か持っている。
[道具] 何か持っている。
[所持金] 一般学生並み
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残り、生き残り、この場を脱して西住まほ・西住みほの元に戻る事が目的であり、聖杯は副産物に過ぎない
[備考]
1.ランサー(空条承太郎)と交戦ステータスを確認し、宝具『スタープラチナ』を認識しました。
2. ランサーマスター(佐藤和真)を認識しました
3.限界に達した魔力消費で気絶しています
4.警察署に保護される様子です


【巌窟王 エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order 】
[状態] 肉体的ダメージ(大)
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う
1. ????????
[備考]
1.1.ランサー(空条承太郎)と交戦ステータスを確認し、宝具『スタープラチナ』を認識しました。
2. ランサーのマスター(佐藤和真)を認識しました
3.現在E-3)自然公園の何処かに居ます。




※(E-3)自然公園にランサー(空条承太郎)とアヴェンジャー(エドモン・ダンテス)の戦闘でかなりの損壊が発生しました。
木立が何本も折れ、地面に爆撃跡の様な穴が空いています。


973 : ◆mcrZqM13eo :2016/10/14(金) 22:49:21 sLZRQ9aQ0
投下を終了します

ランサー(クー・フーリン)の予約を破棄します


974 : 名無しさん :2016/10/14(金) 23:19:24 nPsfo4C20
壬生の狼何やってんですかwwwwww


975 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/17(月) 06:07:15 LbzDKFP20
投下乙です。
承太郎と巌窟王の頭脳戦には手に汗握らせられました。
地の文からジョジョに関する愛が徐々に伝わってきました。
女の子にセクハラしてしょっぴかれるあたりカズマさんマジカズマさん
それとラストのダブル斎藤にはビビりましたw

亜門鋼太朗&アーチャー(X3752ストライカー)
刹那・F・セイエイ&アーチャー(ウルトラマンゼロ)の予約を破棄、
代わりに恙神涯&セイヴァー(刹那・F・セイエイ)、
宜野座伸元&セイバー(朽木白哉)、
アール&アーチャー(北岡秀一)、
ラウ・ル・クルーゼ&アサシン(大道克己)
を予約させていただきます。


976 : 名無しさん :2016/10/17(月) 09:13:20 mOJPPnbQ0
投下乙です

エドモン、承太郎、共に強さの描写が非常に巧み且つテンポの良いバトルでした
カズマさんのラック値が高いんだか低いんだか分からない原作再現も楽しめました
そして壬生の狼…宗次郎がもし会ったらと想像すると面白いですね


977 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/20(木) 17:00:41 kYCo9yPk0
突然ですが、◆1U2WbYpZO6さんへ。
貴方の予約の期限から既に2ヶ月が経過していることに付いてです。
申し訳ございませんが、長期間の期限超過、及び執筆主従の束縛は、当企画の進行、及びルールの存在意義への妨げとなります。
もし、これ以上予約の期限が先延ばしにされるような事がありましたら、最悪予約を破棄させていただくことを、此処に通告します。
後一週間待ちます、それまでに投下できなかった場合は予約を破棄させていただきます。


978 : 名無しさん :2016/10/20(木) 18:19:04 d9LFRn020
予約期間すぎたら自動で破棄扱いじゃなかったの?


979 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/20(木) 19:07:40 kYCo9yPk0
>>978

いえ、投下出来る兆しが無かった場合に強制破棄宣言する、と言う形で行うつもりでした。
只今Wikiのルール欄に追記させていただきました。
説明不足で申し訳ございませんでした。


980 : ◆TAEv0TJMEI :2016/10/22(土) 17:19:25 zJDqZjpY0
延長させていただきます

>>979
延長中の身ですが、横から長文失礼します。そのあたりのルール設定はとても重要なことです。
通常のパロロワ系列の予約ありリレーSSでは>>978さんの仰るように自動で破棄扱いとなっております。
これによる一つの利点としては、別の書き手がそれなら破棄されたキャラを予約しよう、と思える・行動できる点があります。
企画を円滑に動かせるともいえます。
しかしながら、“締め切りを超えた場合には此方から強制破棄させて頂く場合もございます。”という書き方の場合◆lkOcs49yLcさん以外には破棄か企画主によるストップがかかってるのか判別がつきません。
ストップをかける場合でも実際にその書き手さんが戻ってきてくれる保証もなく、そのパートやキャラは再予約できないまま置いてけぼりを喰らってしまいます。
俺ロワなので最終的には企画主さん次第ですが、予約期間すぎたら自動で破棄か、その兆しとやらを判断できる期間を明記して、“締め切りを超えた場合に丸一日連絡がなければ破棄とさせていただきます。”位の方が良いのではと一考させていただいた次第です。
書く側としても自分が投下できなかっただけでもキャラ拘束してしまったと負い目を感じるものですが、それが延々と続くとなると予約しづらくなる人もいるかもですし。
破棄後も破棄パートが予約・投下されてなければ、期限切れの人も再予約して書くという形もとれますので。
それでは長々と失礼しました。


981 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/24(月) 18:12:06 .j8pSUkM0
>>980

成る程……確かに私の勝手な判断で切ってしまうのは他の書き手様にとっても迷惑な話ですよね。
アドバイス有難うございます。それでは
「予約期限が切れた時には強制破棄を行う、延長したい場合は再予約をする」
という事にしたいと思います。

尚、◆1U2WbYpZO6さんの投下は>>978の時と変わらず10/27まで待ちますが、それでも来なかった場合には破棄することにさせていただきます。

それでは私も
ランサー(クー・フーリン)を追加予約させていただきます。


982 : 名無しさん :2016/10/24(月) 18:58:52 fuwPJ1XM0
大量予約楽しみですが、あと20収まるものでしょうか


983 : ◆lkOcs49yLc :2016/10/28(金) 04:54:42 hg5xfFoU0
期限が過ぎたため、◆1U2WbYpZO6氏の予約を強制破棄させて頂きます。
投下する場合は再予約をお願い致します。


984 : ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:11:41 vxQk1Bcg0
投下します


985 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:13:44 vxQk1Bcg0


              1




(……霊体化か。何度やっても不思議な感覚だな……)

ランサーとの戦闘を切り上げ、マスターであるリョウマの家に向かいながらモモンはぼやく。
モモンの正体であるアインズ・ウール・ゴウンはアンデッドではあるが、スケルトンの一種だ。
レイス系とは違い、骸骨という実体を伴っていた。
そんな彼からすれば、自らの身体を死霊のごとく霊体化するというのは中々に新鮮な感覚だった。
面白いとも思うし、戸惑いもする。

(レイス系って常時こんな感覚なのかな。
 俺、スケルトン系になったせいで食べ物が食べられないとか結構寂しかったけど。
 流石に実体がない種族になってたらもっと困ってたろうなー)

偏に異業種と言っても色んな種族があることを再認識する。
アンデッドという種族一つをとってもそうだ。
スケルトン、ゾンビ、レイス、吸血鬼などなど。
VRMMORPGユグドラシルでも数多の種族がアンデッドにカテゴライズされていた。
この聖杯戦争ではどうだろうか。
モモンこと元人間、鈴木悟が住んでいた世界。
アインズとして転移した後の世界。
リョウマの住んでいる世界。
デジタルワールド。
既に4つもの世界が確認できている以上、この聖杯戦争に参加させられている主従もさらなる異世界人の可能性は大いに有り得る。
となるとモモンが知らないような種族も、聖杯にはアンデッドとして認識・設定されている、のかもしれない。

(うーん、この“認識”というのが厄介だよなあ。
 元の世界でそういった概念がなくてアンデッドとされていなかったとしても、この聖杯戦争じゃアンデッド扱いになってるかもだし。
 俺の宝具や俺自身みたいに、信仰や解釈でアンデッドになってたり、アンデッドじゃなくなってる可能性までからなー。
 くそう、その辺用語集や設定集でも用意しとけよ、運営! いやまあユグドラシルも完全手探りなゲームだったけど!)

対アンデッドの能力を持つモモンからすれば、どこからどこまでの範囲がアンデッドに設定されているのかは極めて重要な問題だ。
吸血鬼やゾンビといった分かりやすい相手ならともかく、未知の種族に出てこられたら、どうしたものか。

(やまいこさんなら間違いなく殴ってから考えるよな、うん)

脳筋気味だった仲間のことを思い出しつつ笑みを浮かべ、いざとなったらそうしようと覚悟を決めるも。
実は今、モモンを悩ませているのは判断材料が全くないこと、ではない。
下手に中途半端な判断材料があるからこそ悩んでいるのだ。


986 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:14:01 vxQk1Bcg0

――パッシブスキル、アンデッド探知。

アインズ・ウール・ゴウンの保有スキル、魔導王の一側面だ。
最高位アンデッドであるアインズは周囲のアンデッドを探知することが可能なのだ。
あくまでも可能なのは探知だけで、探知したアンデッドの種類や強さは分からない。
その代わり探知範囲と精度はかなりのものだ。
アインズならたとえ相手が遠方で完全不可知化の魔法を使っていても看破できよう。
アインズなら。そう、“アインズ・ウール・ゴウン”なら。

今のアインズはアインズであってアインズではない人間の冒険者、モモンである。
モモンにもアンデッドの大群を早期発見し討伐した逸話があり、アンデッド探知が完全に失われているわけではない。
とはいっても、範囲と精度の劣化は激しい。
加えて前述したアンデッドの定義の問題までのしかかってくる。
例えば今さっきまで戦っていたランサーがそうだ。
あのランサーには退魔系統のスキルや宝具が有効だったこともあり、モモンはアンデッド探知を全力で発動していた。
アンデッドとして探知できたならそれでよし。そうでなくてもランサーはアンデッドではないという情報を得られる。
戦いにおける情報の重要性を知るモモンは、ランサーの種族を判別しようとしていたのだ。
結果は……一応、黒。
ランサーはアンデッド……らしい。
断言できないのは、探知した反応がどうにも曖昧だったからだ。
これは一概にアンデッド探知の精度が低下していたせいだとは言い切れない。
先程のランサーの戦い方は鎧を纏い、身体能力を向上させ、武器で戦うという人間種のそれだった。
モモンのようにランサーもまたアンデッドの正体を隠しているために、探知しきれなかったのかもしれない。
唯一ランサーが用いた人間種らしからぬ能力と言えば無数の蔦を操ったことだが……。
これも判断材料としては厳しい。
モモンの知識にはあんな植物を操るアンデッドはいないが、異世界のアンデッドかもしれない。
そもそもあれがランサーのアンデッドとしての能力とも言い切れない。
ランサーの宝具がバナナやレモンといった植物を模した“変身ベルト”であり、蔦も宝具も似たようなジッパーから現れた以上、
それらがひとまとまりの宝具という可能性も捨てきれないのだ。

(……ん? “変身ベルト”?)

ふと、考察に際し意図せず使った用語に引っかかりを覚える。
確かにランサーの宝具はベルト型をしており、それを使って変身していた以上“変身ベルト”と仮称するのはそうおかしくはない。
しかし、今の自分はあまりにも自然とこの用語を使った気がしてならない。
まるであの宝具が“変身ベルト”と呼ばれるものだと知っていると言わんばかりに。

(はて、どこかで聞いたような……? んん……???)

頭を捻るも思い浮かばない。
今の自分は人間である以上、ちゃんと脳もあるはずなのだが。
いやまあ霊体化しているけど。

(なんだっけなー? 何かの神話か? にしては俗っぽいよなー。
 俺が知っている知識といえば社会人として必須だった時事問題以外だとユグドラシルについてくらい、だよな?
 でもユグドラシルのことなら忘れるはずはないだろうし。
 俺がギルド維持のためだけにログインしていた時代にでも聞いたのか?)

大切なことだったような、そうでもないような。
一度気にしてしまうとしばらく気になってしまうというよくある状況に陥りかける。
が、幸か不幸か考える時間は終わりのようだ。
消灯したままのリョウマの家が見えてきた。

(思い出せないのは仕方ないし、まずはリョウマに報告しないとな。
 ……それも、かなり厄介な報告を)

はぁ、と先ほどまでの悩みに通じるも別の問題にため息をつくモモン。
幸い、霊体化した状態のため息はマスターである少年に聞かれることはなかった。


987 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:15:08 vxQk1Bcg0





              2




「よかった! セイバーさんも無事だったんですね!」

霊体化を解き実体化したモモンに、リョウマが伏せていた顔を上げ、駆け寄ってくる。
念話や令呪でモモンの健在は理解していたとはいえ、気が気ではなかったのだろう。
モモンが殆ど傷を負っていないことを確認してリョウマは緊張を解く。

「その……流石です、セイバーさん。
 ここまで残ったサーヴァントを相手にほぼ無傷で切り抜けるなんて」
「言っただろ、私はこんな所で死ぬ程弱くはない、と。
 ……最も、今回の戦いはたまたま私にとって相性のいい相手だったのも大きい。
 油断は禁物だ、マスター」

実際その通りだった。
あのランサーはモモンにとってかなり相性のいい相手だった。
ランサーがアンデッドらしき存在であり、モモンの強みを活かせたことも大きいが、それ以上にユグドラシルで培った読みが大きく機能していた。
姿を変え、武器を変え襲ってくるボスモンスター。
RPGでは定番の相手だ。
モモンことモモンガは、ゲームと言えど何度もそんな相手と戦ってきた。
ナザリック大墳墓を攻略し、拠点として入手した戦いでは大ボスのモードチェンジやそこからの攻撃を初見で読み切り、クリアしたくらいだ。
この高難易度ダンジョンの初見攻略はユグドラシルでもモモンガたちのギルドが初めてなした偉業であり、誇りだ。
そんな彼からすれば宝具によるフォームチェンジを売りにするあのランサーは戦い慣れた相手だったのだ。

それよりも問題は……。

「あの、モモンさん」
「すまない、マスター。そのあたりの報告も後で詳しくしよう。
 今は早急に聞いて欲しいことがある」

幾つかのアイテムを実体化させ、起動するモモン。
その光景にリョウマが目を見張り、驚きの声を上げる。

「倹約家のモモンさんが惜しげもなくアイテムを使うなんて……。
 それだけの事態が起きたということですか」

ナザリックの支配者として、転移後の世界で金策に苦悩したモモンだが、それはこの世界でも変わらない。
モモンとして持ち込めたアイテムには消耗品も含まれる以上、使い時は見極めないといけなかったのだ。
そのアイテムのうちの幾つかを今使うというのは、それだけ大きな意味がある。
だから。

「そうだ。……だからマスター。君の話は後で必ず聞こう」
「……っ!! モモンさん、それは……」

モモンの無事を目にして尚、どこか心ここにあらずといった様子のマスターに確認を取る。

「隠せているつもりだったか? 私はこれでも名うての冒険者だ。
 君が困っている様子だったのは見て取れたさ。
 その上ですまないが、まずは私の話を聞いて欲しい」

モモンとて聞いてやれるものなら先にリョウマの話を聞いただろう。
灯りもつけず机に伏せてじっと考えているようだった様から、何かが起きたであろうことは言うまでもない。
それでいてリョウマは再会がしらに、まずはモモンの無事を気遣った。
このことからリョウマに起きたことは、緊急事態、と言うものではないと判断。
先ほどからどこか申し訳なさそうにモモンに切り出そうとしていたのを見るに、私用や私情と言ったところか。
ならば今はリョウマのサーヴァントとして、モモンが知ったある問題をマスターにも知ってもらうことを優先する。
それは、動揺するような何かを前にしても、自分の感情を律してまでモモンのマスターとして振る舞おうしてくれたリョウマの意を汲むことにも繋がるはずだ。


988 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:15:36 vxQk1Bcg0
「……分かりました。後でお話します」
「ありがとう、マスター。……それで私からの話だが。
 マスター、悪い報告だ。
 どうやら先のランサーとの戦いを何者かに見られていたかもしれない」
「どういうことですか?」
「実は私にはアンデッドとの戦いの中で培ったこう、勘よりはもう少し正確な、感知能力のようなものがあるのだが。
 そこに対戦相手であったランサー以外のアンデッドが引っかかったのだ。
 朧気ながらも遠くに複数。そして私とランサーの付近にもう一体」

事実とは少し違うものの、リョウマにアンデッド探知について説明する。
若干精度に問題はあるものの、見られているような位置にいればまず間違いなく探知できると。

「……なるほど、モモンさんたちの戦いを見ていた謎のアンデッド、ですか。
 その上そのアンデッドはモモンさんやランサーに気取られること無く監視できていた……」
「ランサーが気付いていながら見逃していたと考えられなくもないが、多分ないだろう。
 一度手合わせしただけだが、あのランサーはそういったこそこそした相手は嫌う気性のようだった。
 まず間違いなく気付いていたなら攻撃を仕掛けていただろうさ」

何故かそう言い切れる信頼があったが、それはさておき、問題はそこなのだ。
本職がマジックキャスターである自分はまだしも、あのランサーが気付けなかった。
そうでありながらもアンデット探知には引っかかるような存在。
例外を除けば思い浮かぶのは一種類だけだ。

「となるとやはり……アサシン、ですね」
「そうなるな。探知能力に引っかかった以上、気配遮断のランクはそう高くはないはずだ。
 隠蔽系の宝具も使用していなかったと見える。
 だが、戦いにおいて暗殺者とは最も恐ろしい敵の一人だ。
 マスター狙いだけではない。場合によっては私さえも脅かすだろう」

所謂PK(プレイヤーキラー)ギルドを率いていただけあり、モモンことアインズはその恐ろしさを熟知している。
特に仲間の一人であり良き友人であった弐式炎雷は相手に発見される前に忍び寄っては首を狩る忍者だった。
その火力は隠密スキルと併用すれば一撃に限り、ギルド内トップの武人建御雷を凌ぐほどだった。
隠密特化で一撃死させて来る暗殺者とはかくも強力な存在であり、注意すべきはマスター狙いだけではないのだ。

「ではさっき使ったアイテムも探知系や監視対策、ということですか?」
「アサシン相手にどこまで通用するかは疑問だが、用心に越したことはないだろう。
 あくまでもやり過ごすのが目的で反撃系のではないのだがね。
 過剰に対策してしまうと、向こうも自分たちの存在がバレたことを察して攻勢にでてきかねない」

モモンがアサシンらしきアンデッドに気付いたのは戦いの終わり頃だった。
ランサーよりもはっきりとアンデッド反応が出ていたその存在は、戦いが終わると同時に自らも撤退していった。
あくまでも今回は様子見だったのだろう。
もしも向こうにやる気があり浸けられていて、こうして帰宅した所をマスター共々襲われていたらと思うとゾッとする。
まあアンデッド反応が途切れたからこそモモンも普通に帰ってきたのだが、油断は禁物だ。
アサシンにいつから監視されていたのかはっきりとは分からない以上、リョウマがマスターであることはバレている危険性がある。
そうでなくともモモンの情報の一部をほぼ一方的に相手は得ているのだ。
アサシンがアンデッドであることくらいしか分かっていない自分たちに対し、相手が有利なのは変わりない。
それに今回はたまたまアサシンがアンデッドだから気づけたものの、アサシンは他にもいるのだ。
そのアサシンがアンデッドではない可能性や、より高位の隠密スキルや宝具を持っている可能性は十分有り得る。
……そこまで考えて、ふと、疑問が浮かぶ。

(……いや、でも果たしてこれは、たまたま、なのか?)

モモン自身を含めて、始めに遭遇したランサー、次に感知したアサシンとアンデッド尽くしだ。
その上なんかあっちにもいるなー、程度にしか分からないが、アンデッド反応は他にもたくさん感じられる。
どこかのサーヴァントがアンデッド創造のスキルを使っているのでもない限り、サーヴァント、或いはマスターにさえアンデッドがいるのかもしれない。


989 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:16:00 vxQk1Bcg0
(もしもサーヴァントやマスターにアンデッドが沢山いるというなら奇妙な話だな……)

アンデッドとはいつの世も虐げられる側の存在だった。
人を憎む邪悪な存在とされ、人間たちに害を成す英雄譚のやられ役だった。
ユグドラシルでもそうだ。
アンデッドを始めとした異形種は異形種であるというただそれだけで他のプレイヤーたちから虐げられていた。
能力こそ高くともそういった事情もあって全体では異形種の数は少なく、名を成したギルドはアインズ・ウール・ゴウン位のものだった。
言ってしまえば不人気かつ、敵が多い種族なのだ。
例外は吸血鬼くらいか。
何にせよ、非常に腹立たしいことだが、アンデッドは英雄というイメージには程遠い種族だ。
よくて反英雄といったところだろう。
勿論、どこかの異世界ではアンデッドも受け入れられており英雄として堂々と胸を張っているかもしれないが。

(そんな英雄としても不人気で、反英雄と合わせてそこまで数はいないだろうアンデッドがいっぱい、いる、のか?
 いや、俺としてはアンデッドが認められてるのは嬉しいことだけどさ。
 けどもしこれがアンデッドであることに何らかの意味があるなら。アンデッドを利用しようというものなら。
 やはり、放ってはおけない、か? ……む?)

思考の堂々巡りに入りかけたモモンだったが、リョウマからの視線に気づき慌てて打ち切る。
黙りこくって物思いにふけってしまったモモンを、どうやら待ってくれていたらしい。
モモンはおほんと一度咳払いをし、報告を締めくくる。

「待たせてしまったな、マスター。取り急ぎの報告は以上だ。
 少し出会ったサーヴァントの傾向について考えるところもあったが、その話はランサーについてと共に後に回そう。
 君が私に話したがっていたことを先にこなしてくれ」

若干無理やりな話題の変え方だったが、よほど話したかったのだろう、すぐに乗ってきてくれた。

「ありがとうございます、セイバーさん。
 私が話したかったことはこれです」
「……ふむ?」

そう言ってリョウマが差し出してきたのは掌大の緑の機械だった。

「確か、クロスローダーだったかな?」

デジモンハンターの証であり、それぞれのパートナーデジモンとの絆の証なのだと寂しそうに口にしていたことを思い出す。
自分たちにとってのリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンのような物なのだろう。

「はい。……セイバーさんと別れた後、このクロスローダーに反応がありました」
「なんと!」

聞いていた話ではこの聖杯戦争に呼ばれて以来、初めての出来事だ。
リョウマがいてもたってもいられないはずだとモモンは納得する。

「それで、そのデジモン反応はいったいどこから?」
「向こうの方です」

ふむ、とモモンは考える。
リョウマが示した方角は、奇しくもモモンが感じたアンデッド反応のうちの一つと重なる気がしたからだ。


990 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:16:22 vxQk1Bcg0

「……ところでデジモンにはアンデッド型もいるのだろうか?」
「はい。有名所だとスカルグレイモンやバケモンあたりでしょうか」
「ほほう!」

アンデッド型もいる、と聞けばモモンの関心も一際だ。
実はリョウマからデジモンの話を聞いたときから割りと興味はあったのだ。
モモンにはコレクターの気質がある。
アインズ・ウール・ゴウンとしてキャスタークラスで召喚されていれば、Aランクのコレクタースキルを獲得していたであろう。
そんな彼からすれば、千種類を超え、レアな個体も存在するというデジモンは、中々に魅力的な存在だ。
思わずもっとデジモンについて詳しく聞きたくなるも、なんとか自制する。

「デジモンとは想像以上に深い存在のようだな。……ん、まさか君の言うアスタモンもアンデッド型なのか?」
「いえ、アスタモンは悪魔系のデジモンです。……クォーツモンは種族不明ですが。
 それとクロスローダーが検知した反応はアスタモンのものではありませんでした」
「そうか……。軽はずみな質問をしてしまってすまない」
「大丈夫です……。この話を切り出したのは私の方なのですから。
 それでモモンさん。私は……」

しばらく待つも、続く言葉はなかった。
リョウマとしても戸惑っていると言ったところか。
突如示されたデジモン反応。
アスタモンのものではないと分かりつつも、気になって仕方がない。
けれど見に行ってどうするのか。アスタモンでもないのに。まさかハントするのか。
そもそもここは聖杯戦争の舞台だ。
そのデジモンもサーヴァントかも知れず、そうなると、むやみに接触するのは危険ではないか。
ついさっきモモンに守ってもらったばかりなのに、今度は自分から危険に飛び込むというのか。
モモンに迷惑をかけるばかりではないか。
そういったどうすればいいのか、がいっぱいリョウマの頭の中をぐるぐる回っているのだろう。
もしかしたら、モモンがアサシンの話をしてしまったせいで、余計に慎重に動くべきだと自分の感情を押さえつけようとしているのかもしれない。

(なら、彼の葛藤は俺にも責任があると言えなくもない、か。背中を押してやらないとな)

モモンは決しておせっかいでも世話焼きでもない。
だけど思うところのある少年相手に、手を差し伸べないほど薄情でもなかった。

「マスター。君は、どうしたい?」
「私は……私は……」

言葉を促され、それでも悩み葛藤するリョウマが自分の意志で、決められるまでモモンは待った。

「私は、反応のあったデジモンに会いに行きたい」

そして少年は口にした。自分の、願いを。誰に操られるでもない本当の自分の意志で。

「私はデジモンハンターだ。
 今でもそうありたいと願っている。
 だから、デジモン反応は見過ごせない。
 かつての私は時に損得で考えて弱いデジモンを放置したり、強すぎるデジモンからは手を退いたこともありました。
 ……それが私自身の判断だったのか、クォーツモンによる影響なのかは今の私には分からない」

モモンからすれば、その判断は責められるようなものではない。
メリットのない戦いに時間を割くのも、危険な戦いから撤退するのも正しい選択だ。
でも誰にだって正しいことよりも譲れない想いがある。
モモンにとってはそれが“アインズ・ウール・ゴウン”であり。


991 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:16:42 vxQk1Bcg0

「でもタイキさんならほっとけなかったはずなんです。
 タギルだって考えるよりも先に動いていました。
 それが私の夢見たものであり目指した英雄なんだ」

リョウマにとってはデジモンなのだ。

「だからお願いします、モモンさん。
 相手は危険なデジモンかもしれない。ここが電脳世界である以上、聖杯戦争とは関係ない野良デジモンかもしれない。
 モモンさんを余計な危険に晒してしまうかもしれない。
 それでも、それでも私はデジモンに会いに行きたいんです」

だったら、その想いに応えれるだけ応えてやりたい。

「……いいじゃないか、それで。
 君の願いはこの戦いを生き延びることじゃない。君としての答えを見つけることだ。
 そしてその答えに対する問いはデジモンに直結している。
 君の言うデジモンハンターとしてデジモンに会ってこそ出る答えもあるはずだ」

リョウマがいつかのように頭を下げるよりも早く、モモンは快諾する。

「アサシンに狙われているかもしれないのに無理を言って申し訳ありません」
「ならばこそ家に篭っているよりは積極的に動いている方が逆に安全かもしれないさ。
 そのデジモンがアサシンにとっても未知の存在なら、相手も慎重にならざるを得ないからな」

顔を曇らせるリョウマに、モモンはデジモンに会いに行くことの利点も挙げる。
それでもまだ申し訳なさそうにしているリョウマに、モモンはもうひと押しとぶっちゃける。

「それに私もデジモンに興味が湧いていてね。ちょうどいい機会だと思ったまでだよ」
「ふふ、モモンさんも冗談を仰るんですね」

限りなく本音なのだが、どうやら冗談と取られたらしい。
笑みを浮かべるリョウマにまあわざわざ訂正するまでもないか、とモモンもまた笑い返す。

「私の我儘を聞いてくれてありがとうございます、セイバーさん」
「何……」



「困っている人を助けるのは当たり前、さ」


992 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:17:06 vxQk1Bcg0
              3



自然と口をついて出た思い出の中の仲間の言葉に、ああ、そうか、と得心が行く。
ずっと引っかかっていた“変身ベルト”。
その単語をどこで誰から聞いたのか、思い出したのだ。

――たっち・みー

ギルド“アインズ・ウール・ゴウン”の一員にして、その前身となったクラン“ナインズ・オウン・ゴール(九人の自殺点)”の発起人。
ギルド最強、どころか、ユグドラシルでも最強の一人。
ワールドチャンピオン。純銀の聖騎士。
悪を掲げるギルドに居ながら誰よりも正義にこだわった人であり、ちょっとださい“正義降臨”のエフェクトがお気に入り。
モモンことモモンガの恩人。

そんな彼を語る上で外せないのは、彼が無類のヒーローマニアであるということだ。
特に鈴木悟の世界で150年ほど前に流行った“仮面の変身ヒーロー”が大好きで、語りだすと止まらないほどだった。
そのオタクっぷりは自身のアバターを仮面のヒーローに合わせて迫害激しい異形種の昆虫系にするほどだった。

(確か、飛蝗のヒーローだっけ? あれ、だったら果物のヒーローとは別、なのか?
 ううん、なんかしっくり来るんだよな、“変身ベルト”。
 確かそのヒーローにはいっぱいシリーズがあったらしいし昆虫系以外のもあるのか?
 そういえば何だか吸血鬼のもあるとか言ってたような……)

たっち・みーが語りだすとモモンガたちはこの癖さえなければな〜と聞き流していたものだ。
うろ覚えどころかほとんど耳に入っていない。
今になってちゃんと聞いておけばよかったと後悔してももう遅い。

(まさか、そんなわけないじゃん、とは言い切れないんだよなあ……)

ヒーロー番組のキャラクターたちが英霊として呼び出されている。
突飛もない発想だと笑う者もいるかもしれないが、あいにくモモン――アインズはゲームのキャラクターが意思を持つという前例を知っている。
彼らNPCたちの意思を尊び、仲間たちが残してくれた子どもたちのように感じているアインズからすれば。
“仮面の変身ヒーロー”が意思を持ち、この世界に存在していても何らおかしくはないのだ。
しかも“仮面の変身ヒーロー”はナザリック最強のたっち・みーが憧れた程の存在だ。
モモンどころか本来のアインズ・ウール・ゴウンより強い可能性も十分ありうる。

(願わくば、また刃を交えたい、と言ったのは早計だったか……?)

フルーツの騎士が隠していると思われる異形種としての力。
それは死の支配者(オーバーロード)アインズ・ウール・ゴウンをも上回るかもしれないというのなら、できれば再戦は願い下げだ。

(い、いや、まだあのフルーツの騎士がそのヒーローと決まったわけじゃないし。
 随分好戦的だったし。
 まさかあれでいてたっちさんのように弱い者を助ける正義の人なのか……?)

たっち・みーはたっち・みーで、正義にこだわりながらも悪のギルドに居た人だ。
案外そういうものなのかもしれない。

(……難しいんだな、正義の味方も。悪のRPなら、俺も得意なんだけどな―。
 あー、ほんと、なんだっけ、あの変身ヒーローの名前?)

変身ベルトの時以上に気になって思い出そうとするモモン。

それからしばらく悩んでいたが、案の定、その名を思い出すことはできなかった。


993 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:17:49 vxQk1Bcg0

【E-3/リョウマの家/1日目 夜(22:00)】

【最上リョウマ@デジモンクロスウォーズ 時を駆ける少年ハンターたち】
[状態] 健康、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具] クロスローダー
[所持金] 貧乏(一般学生の小遣いレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:答えを見つけるまで専守防衛
1. クロスローダーに反応のあったデジモンを探す。
2. アサシンらしき存在には最大限警戒
[備考]
※クロスローダーが、C-1/海岸でのスカルナイトモンの戦いに反応しました。
 リョウマの所持デジモンでないこと以外、なんというデジモンかなどは分かっていません。

【セイバー(モモン)@オーバーロード】
[状態] 健康
[装備] 双剣、漆黒の鎧
[道具] その他多数の装備
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの依頼を引き受ける。聖杯戦争の運営には警戒
1.「アインズ・ウール・ゴウン」の名はなるべく隠しておく。
2.自分の正体がバレてマスターの心の傷を抉らないか心配。
3.切り札である魔法アイテムはなるべく取っておくが、使い時には惜しまない。
4.感知したアンデッドのアサシンらしき存在には注意する。
5.コレクターとしてデジモンに興味
6.あのランサーがたっちさんの憧れた仮面の変身ヒーローなのか?
7.アンデッドばかりなのは気のせいか?  何か意味があるのでは? そもそもこの戦いでのアンデッドの定義は?
[備考]
※ランサー(駆紋戒斗)の宝具「刺し貫く鮮黄の槍(バナナアームズ)」、「射り撃つ黄金の矢(レモンエナジーアームズ)」を確認しました。
※かつての仲間から仮面ライダーシリーズについての熱弁を沢山聞いていますが、殆ど聞き流していたためろくに覚えていません。
※アンデッドへの探知能力はモモンの状態だと遠ければ遠いほどなんかいるなー程度になっています。


994 : その名は――  ◆TAEv0TJMEI :2016/11/02(水) 17:18:26 vxQk1Bcg0
投下終了。
一応断っておくと、公式設定です


995 : ◆mcrZqM13eo :2016/11/02(水) 20:09:44 blt5CNG.0
投下乙
言われて見るとアンデッドと関わりがあるマスターやサーヴァントやアンデッドそのものの連中が多数いますね。


996 : ◆mcrZqM13eo :2016/11/02(水) 20:13:28 blt5CNG.0
連レス済みません
自己リレーになりますが美樹さやか&キャスター(ラゼィル・ラファルガー)予約します


997 : 名無しさん :2016/11/04(金) 10:06:18 dM1pyUqI0
◆lkOcs49yLc氏の予約が大幅に期限を超過しています
投下されるにせよ、破棄されるにせよ人数が人数なので早めに知らせた方が良いのでは……
あれだけの人数のキャラがあまりに長期間拘束されていると他の書き手さんの士気にも関わりますし


998 : 名無しさん :2016/11/04(金) 12:03:46 58euwVZo0
一応前に本人が期限切れで連絡ない時は破棄って決めたばかりだけど、>>1だからね
連絡ないのは確かに心配だったり、企画疎かにしてると思われてしまうか


999 : 名無しさん :2016/11/06(日) 19:38:26 yAEi94bI0
生存報告くらいはして欲しいものですがp


1000 : ◆lkOcs49yLc :2016/11/07(月) 06:18:35 94/3Grbs0
返事が遅れて申し訳ございません。
分割投下となるのですが、其の一部が完成しましたのでご報告致します。
丁度スレが埋まるので、此処で新スレを建てさせていただきます。


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