■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
シンクロニシティ・バトルロワイアル
-
非リレー企画です。
【アカメが斬る!】9/9
◯アカメ/◯タツミ/◯ラバック/◯チェルシー/◯エスデス/◯セリュー・ユビキタス/◯ウェイブ/◯クロメ/◯シュラ
【メルヘヴン(アニメ版)】7/7
◯虎水ギンタ/◯ドロシー/◯アラン/◯シャトン/◯ロコ/◯イアン/◯キメラ
【遊戯王ARC-V】5/5
◯榊遊矢/◯黒咲隼/◯紫雲院素良/◯赤馬零児/◯セルゲイ・ヴォルコフ
【Fate/Grand Order】5/5
◯ジャンヌ・オルタ/◯ジル・ド・レェ/◯イアソン/◯メディア・リリィ/◯クー・フーリン・オルタ
【暗殺教室】5/5
◯潮田渚/◯赤羽業/◯茅野カエデ/◯寺坂竜馬/◯烏間惟臣
【ソードアート・オンライン】4/4
◯キリト/◯シリカ/◯シノン/◯PoH
【キルラキル】3/3
◯纏流子/◯鬼龍院皐月/◯針目縫
【僕のヒーローアカデミア】2/2
◯緑谷出久/◯轟焦凍
【この素晴らしい世界に祝福を!】2/2
◯佐藤和真/◯めぐみん
42/42
"
"
-
「フィールド魔法、『バトルロワイアル・ビフォア』発動」
静謐に包まれた白塗りの世界に、どこか自己陶酔したような男の声が響いた。
それと同時に、招かれた者達は目を覚ます。
だが、それだけだった。
彼らが目を覚ますことは許されても、自由に動くことは許されていなかった。
身体を戒める茨の縄が、ぎちぎちと嫌な音を立てて暴れる者の身体を締め上げる。
力自慢の巨漢ですらも、力を強めれば強めただけ比例して強くなっていく拘束に程なく音を上げたほどだ。
そんな愚かしい足掻きをせせら笑うのは、一枚のカードを手にした面長の男だった。
「無駄ですよ、本能字学園風紀部委員長・蟇郡苛。
あなたの馬鹿力は確かに目を見張るものがありますが、しかしあなたがどれだけこの場で頑張っても、それは無様な徒労に終わるのみだ」
蟇郡と呼ばれた巨漢はその言葉に、苦々しげに顔を顰める。
訝しげに細められた眼差しに宿る感情は、男への鋭い敵意。
もしも拘束が存在していなかったなら、すぐにでも彼はカードの男に襲いかかっていただろう。
誰の目からもそれが明らかなほど、彼は大変に憤慨していた。
その理由は、蟇郡が忠誠を誓ったとある人物にも茨の戒めが施され、冒涜されていることにあったのだが。
「――ロジェ! お前……どうして俺達を!」
「そう焦らずとも、すぐにご説明して差し上げますよ、榊遊矢。
あなた達には申し訳ありませんが、既に私には、あの大会に固執する理由もなくなったのでね」
ロジェ、それが男の名らしかった。
見れば蟇郡のように単純な憤慨を示している者の他に、相手の人となりを知った上で反感を示している者がいる。
彼らは元々、このロジェという男を知っていたのだ。そして彼らとロジェの間柄が、決して親しいものではなかったというのは、榊遊矢少年の口ぶりから誰にでも理解できよう。
そう、彼らは元からロジェと敵対していた。
ただしその時、正確にはその次元では、ロジェは此処まで直接的かつ強引な手段を取ることはなかった。
とあるカードゲームの大会を利用し、自身の目論見をその裏で遂行しようとはしていたが。
では、その計画を全て反故にしてまで――果たして彼は何をしようとしているのか?
「単刀直入に言いましょう。私があなた達に求めるのは、とあるゲームに興じてもらうことです」
言葉通り単刀直入に告げると、ロジェは懐から新たな一枚のカードを取り出す。
そこには海の真ん中に浮かぶ孤島の航空写真が描かれていた。
カード名の欄には、「バトルロワイアル」との名前。
その単語を目にした瞬間に顔を青褪めさせた者が、ロジェから見えただけでも十数人以上はいた。
彼らは理解したのだろう。
それが何を意味するのか。
どれほど恐ろしく、おぞましい趣向を象徴しているのかを。
-
「殺し合い、というのが最も正しいでしょうか?
制限時間は無期限、その代わり勝者が決定するまで誰一人フィールドからは脱出出来ない。
ルール無用、奇襲、謀殺、自殺――あらゆる全てがこのゲームでは受容される」
この響きに、ときめきを覚える方もいるのでは?
なぶるような問いかけに、誰かの奥歯を噛み締める音が聞こえた。
「無論、無理を言っている自覚は私にもありますよ。なので、此処は一つ賞品を提示しましょう。
―――優勝者は、どんな願いであろうとも一つだけ叶える権利を手に入れることが出来る。
死者の蘇生、無限の富、愛する者との永遠……あるいは、私がこの計画を『実行に移さなかった』と事実を書き換えるようなものでも構わない」
「……そんな話を信用しろと言うのか? 馬鹿馬鹿しい……」
吐き捨てるような台詞に、ロジェは肩を竦めた。
確かに、その通りだ。
途中まではまだしも、最後の願いを叶えることでロジェに生まれるメリットがない。
「確かに、もっともな意見です。では、ご信用いただくために――」
だが、それしきのことで総崩れになられては困る。
ロジェの笑みが一層深くなった。
それに皆が不穏を覚えるよりも速く、会場席から一人の少女が引きずり出される。
「ッ……アスナ!」
叫ぶ声は悲痛なものだった。
拘束を振り解いて愛する者を助けに行こうと暴れる少年を、理知的な印象を受ける少女が必死に抑えている。
アスナ。
ロジェによって無作為に選び出された不運な少女が、叫んだ彼にとって単に親しい親しくないの間柄で語り尽くせるような人物でないのは、誰の目から見ても分かる。
当然、ロジェも同じだ。
彼はいかにも「かわいそうに」と言った表情を作ると、気丈に自分を睨み付ける少女へ微笑みかける。
「……何をするつもり?」
この世の終わりのような顔をしている少年へ、自分は大丈夫だと小さく告げてから、アスナは問いを投げた。
自分をどうするつもりなのか。
それ以上に、皆を殺し合わせて何を目論んでいるのか。
そういう意味を含めた問いだったが、ロジェは答えを返さなかった。
その代わりに――
「私が願いを素直に叶えるかどうかを証明することは出来ませんが、しかし、力があるということを証明することならば、今この場でも出来るのでね。
彼女には一つ、実験台になってもらおうと思います」
「な――」
絶句の声。
それを無視して、アスナが何か言葉を発するのも待たずに、ロジェはひょいと軽く右手を挙げた。
「あ」
次の瞬間――
-
「あ゛――ああああああぁぁ゛ぁぁぁ――――!!!!」
アスナの絶叫が響き渡った。
それと同時、彼女の身体が勢いよく内側から弾け飛び、四散する。
決して安らかな、痛みを感じないような死でなかったのは、その絶叫から十分に窺い知れるだろう。
だが、彼女に安息がもたらされることはない。
「命を、戻す」
散り散りになった肉片が、まるで時間を巻き戻したかのような動作で元あった位置へと戻っていく。
かつて閃光と謳われた凛々しく可憐な少女の形が成形され、程なく彼女は完全に元通りになった。
しかし。
「やめろ……」
ロジェの手が、再び挙がる。
少年の震えた声など聞く耳も持たずに、剣士の身体が再度膨れ上がって、爆ぜた。
生きながらに身体を爆散させられる激痛の断末魔だけが、命なき骸の亡き後に哀しく響く。
「あ……ああ……」
「そう心配せずとも、もう彼女が苦しめられることはありませんよ」
肉片となったアスナの身体は、もう動くことはなかった。
一度死に、それからまた生き返らせられて、また惨たらしく殺された少女。
彼女がこれ以上の苦しみを味わうことは、確かにない。
ただその代わりに、奪われた生命が再び戻ってくることもまた、ないのだ。
少年の眼差しは鷹のように細められ、そこから血涙のごとく涙が溢れてくる。
常人ならば失禁してもおかしくないほどの憎悪が、視線を通じてロジェへ浴びせられる。
だが、ロジェは笑ったままだった。
当然だ。
どれだけ気迫があったところで、動けないのでは恐れるにも値しない。
「殺す……!」
一つの仮想世界を救った英雄。
『閃光』を妻に持つ、黒の剣士。
数えきれないほどの敵を勇猛果敢に打ち倒してきた彼は、今この場では、単なる凡人にも劣る無力な存在だった。
向けた殺意と気勢は、何も変えられずに空回りする。
愛する少女を殺した男は、今も五体満足で、嘲り笑っていた。
ゲーム盤の支配者はあまりにも圧倒的で――これまで彼が戦ってきたどんな敵にも優る理不尽さを武器にして、黒の剣士の前に立ちはだかっていた。
-
「……殺して、やる……!!」
「んふふ、出来るといいですねぇ」
虐殺によって、ロジェの力は証明された。
参加者として呼ばれた者の中には、もう誰一人として彼の力を疑っているものはいない。
抱く感情はどうあれ、ジャン・ミシェル・ロジェという男の強大さだけは、身に沁みて理解させられた。
「それでは、そろそろセレモニーには幕を下ろすとしましょうか」
『バトルロワイアル』のカードを、その右手に装着されたディスクへと挿入する。
「フィールド魔法、『バトルロワイアル』発動」
世界が、変わっていく。
白い足場は虚空に消え失せ。
代わりに広がっていくのは、緑であったり、青であったり、人工的であったりと各々異なる、『フィールド』内の景色だった。
その次に、彼らの首へ『とあるもの』が装着されていく。
「装備魔法、『シンクロニシティ・ソウル・リング』発動」
それは、白い金属製の首輪だった。
繋ぎ目のようなものは見当たらず、どうやら完全に一体化している。
「最後の助言です。その首輪は強制的に外そうとした場合、ごくごく小さな爆発を喉元で引き起こすのです。
命が惜しくば、軽率な行動は慎むように――まあ、死にたいというのならば別ですがね。フフフ……」
その言葉を最後に、虚空へ浮かんだジャン・ミシェル・ロジェの姿は消え失せる。
バトルロワイアル。
殺し合いの舞台として与えられたフィールドには、自然の爽やかな空気が満ちていた。
これから血と嘆きで彩られる惨劇の舞台になることを、ひょっとするとこの島自体も知らないのかもしれない。
そして、始まる。
四十人余の生贄による、たった一つの帰り道を巡ったデスマッチ。
助けは来ないし、奇跡も起こらない。
この空間を抜け出したいと思うならば――殺し、殺されるしか、道はないのだ。
【アスナ@ソードアート・オンライン 死亡】
【残り43人】
"
"
-
ルール
基本的にはオーソドックスなパロロワと変わりません。
舞台はフィールド魔法『バトルロワイアル』の中に用意された、8×8四方の絶海の孤島です。
フィールドを覆うように見えない壁が囲ってあるため、脱出は不可能となっています。
六時間ごとに主催者ジャン・ミシェル・ロジェの定時放送が行われ、そこでこれまでの死者と禁止エリアについての告知がなされます。
参戦時期
【アカメが斬る!】……ウェイブとシュラの対立以降
【メルヘヴン】……アラン死亡後
【遊戯王ARC-V】……シンクロ次元へのオベリスク・フォース襲来直前
【Fate/Grand Order】……各章終了時
【暗殺教室】……茅野が正体を表してから、殺せんせーと二度目の戦闘に入るまでの間
【ソードアート・オンライン】……エクスキャリバー編終了後
【キルラキル】……鬼龍院羅暁打倒後
【この素晴らしい世界に祝福を!】……アニメ九話終了時点
【僕のヒーローアカデミア】……ヒーロー殺し撃破後
マップ
1 2 3 4 5 6 7 8
A森森森橋森椚警森
B森E森市帝帝帝森
C森森荒市帝帝豪森
D海ハハ森帝雄シ海
Eハハハ病森シシ森
Fハ本森喫森フシシ
G森ロロ森冬冬森森
H森森ロ森冬冬海森
椚→【椚ヶ丘中学校本校舎@暗殺教室】
警→警察署
E→【椚ヶ丘中学校E組校舎@暗殺教室】
市→市街地
杜→【帝都@アカメが斬る!】
荒→荒野
豪→豪邸
ハ→【ハートランド@遊戯王ARC-V】
雄→【雄英高校@僕のヒーローアカデミア】
シ→【シティ@遊戯王ARC-V】
本→【本能字学園@キルラキル】
喫→喫茶店
フ→【フレンドシップカップ会場@遊戯王ARC-V】
ロ→【ロンドン@Fate/Grand Order】
冬→【冬木市@Fate/Grand Order】
-
いきなりですが>>1の名簿に抜けがあったので、こちらを正式版とします。
手際が悪くて申し訳ありません。
【アカメが斬る!】9/9
◯アカメ/◯タツミ/◯ラバック/◯チェルシー/◯エスデス/◯セリュー・ユビキタス/◯ウェイブ/◯クロメ/◯
シュラ
【メルヘヴン(アニメ版)】7/7
◯虎水ギンタ/◯ドロシー/◯アラン/◯シャトン/◯ロコ/◯イアン/◯キメラ
【遊戯王ARC-V】5/5
◯榊遊矢/◯黒咲隼/◯紫雲院素良/◯赤馬零児/◯セルゲイ・ヴォルコフ
【Fate/Grand Order】5/5
◯ジャンヌ・オルタ/◯ジル・ド・レェ/◯イアソン/◯メディア・リリィ/◯クー・フーリン・オルタ
【暗殺教室】5/5
◯潮田渚/◯赤羽業/◯茅野カエデ/◯寺坂竜馬/◯烏間惟臣
【ソードアート・オンライン】4/4
◯キリト/◯シリカ/◯シノン/◯PoH
【キルラキル】4/4
◯纏流子/◯鬼龍院皐月/◯蟇郡苛/◯針目縫
【僕のヒーローアカデミア】2/2
◯緑谷出久/◯轟焦凍
【この素晴らしい世界に祝福を!】2/2
◯佐藤和真/◯めぐみん
43/43
-
これにてOP、ルール、地図等の投下を終了します。
本ロワでは先人企画の「クロスオーバーワールド・バトルロワイアル」様で用いられている、キャラ指名制を導入させていただこうと思います(無許可ですので、何か問題があれば即座に撤廃します)。
それでは第一話の指名をお願いします。
>>9
-
ラバック、シノンでお願いします
-
ラバック、シノン 投下します。
-
「大丈夫かな、あいつ」
朝田詩乃。
いや、この場では『シノン』と呼ぶべきだろうか。
荒野の背景がよく似合う戦闘服を纏い、水色の短髪を夜風に遊ばせながら、彼女は愛銃を抱いていた。
彼女が背を凭れている民家は屋根が吹き飛び、火災の影響か外壁が焼け焦げた無残な有様を晒している。
そうなっているのは何も、今背にしている家屋だけではない。
シノンがざっと見て回った限り、此処ら一帯の家々は殆どこんな様子だった。
災害か戦争の過ぎ去った跡によく似た、瓦礫と廃墟の群衆地。
「……大丈夫なわけ、ないわよね」
如何に仮想世界で名を馳せたスナイパーとはいえ、現実(リアル)では所詮只の女子高生だ。
ほぼ誘拐も同然の形で見知らぬ場所へ連れて来られ、目の前で友人を惨殺された。
この状況に恐怖しない人間など、平和な現代を生きる一般大衆の中にはまず居はすまい。
実際、ゲーム開始から既に十数分が経過した今も、シノンはその胸に形容しきれないほどの不安を感じている。
しかし、シノンは取り乱してはいなかった。
足取りは重く、早々にこうして身を小さくしてじっとし始めてしまったが、それでも心は不思議と冷静だった。
彼女が僅かとはいえ平静を維持できているのは皮肉にも、あの時残酷に殺された友人のお陰であった。
アスナ。
本名を結城明日奈。
世間を大きく騒がせたデスゲーム、Sword Art Onlineからの生還者――SAOサバイバー。
数々の死線を越えて現実に帰還したのであろう彼女は、抵抗することも許されず、無残に殺された。
いや、弄ばれたといってもいいだろう。あの時の光景を思い出すと、腸が煮えくり返る思いになる。
だがシノン以上に、怒りに燃えている人物がこの会場には居るはずなのだ。
その人物こそ、シノンの心配の種だった。
剣の世界を終わらせた、英雄と呼ばれる少年が存在する。
彼はとても優しく、それ以上に強い。
銃の世界で戦場を共にしたシノンはよく知っていた。
彼は強い。
きっと殺し合いに乗った参加者など、歯牙にもかけないで撃退してしまうことだろう。
だからこそ、シノンは心配でならなかった。
恋人を喪った黒の剣士が、怒りに支配されてあらぬ方向へと突き進んでしまうのではないか、と。
SAOの世界をシノンは知らない。
ただ、過酷だったとは聞いている。
そんな地獄を生き抜いたのだから、ちょっとやそっとの惨事には冷静に対処することも出来よう。
その地獄を共にし、互いに想い合っていた恋人を殺されることが「ちょっと」で済むのなら、であるが。
-
「あいつに――キリトに、会わなきゃ」
言うなり、シノンは恐れることも忘れて立ち上がった。
分からないことは無数にある。
どうしてゲーム内アバターで、自分は此処に居るのか。
けれどそれを考えるのは、ひとまず後にする。
今のキリトには、人が必要なはずだ。
傍で苦しみを共有し、悲しみを分かち合える人間が居なければ――彼は本当に潰れてしまうかもしれない。
自分の中に巣食っていた呪縛を解き放ってくれた彼がそうなる姿は見たくない。
だからシノンは、恐怖すら乗り越えて行動に出ることが出来た。
そしてそのことは、程なく彼女に幸運をもたらすことになる。
「――おーい、そこの子! 急いでるとこ悪いけど、ちょっと止まっちゃくれないかい!」
急ぐシノンの足を止めたのは、若い男の声だった。
足を止め、声の主を探すとすぐに見つかる。
緑髪で片目を隠した、成人はしていないだろう少年。
武器らしいものは持っておらず、丸腰だ。
この愛銃(ヘカート)を向けて引き金を引けば、それだけで儚く散ってしまうような無防備状態。
だが、スナイパーという特別敵の動向に注意を払わねばならない職業であるシノンには分かった。
あの少年は確かに無防備に見えるが、その実隙らしいものがない。
あれは、実戦を知る人間の立ち方だ。
「……何。急いでるんだけど」
「んじゃ、単刀直入に聞くぜ。
君はこの殺し合いをどうするつもりだ?
乗るか、乗らないか」
「馬鹿馬鹿しい」
シノンは、少年を苛立たしげに睨み付けた。
そんなつまらないことを聞くためだけに呼び止めたのか、とでもいうような目だ。
「私は、あの薄気味悪い主催者の鼻を明かしてやらなきゃ気が済まない。
……友達を……アスナをあんな風に殺したあいつのことは、絶対に許せない。
だからゲームには乗らないし、むしろそれを破綻させる目的で動くわ。これで満足?」
「ああ、その意気は立派だよ。でもそれは、君一人の手で達成できる目標か?」
「………」
それに対して、答えを返すことは出来なかった。
無言は、時にどんな言葉よりも雄弁に真実を語る。
シノン一人の力で出来ることなどたかが知れている。
狙撃で戦うくらいは出来るかもしれないが、首輪を解除するような技術は持たないし、圧倒的に実力の差がある相手を一人でどうこう出来るとは思えない。
知り合い同士で力を合わせるにも、限度がある。
それこそキリトを探しに向かう内に、頭のネジが飛んだ連中と遭遇すればそれだけで詰みとなりかねない。
-
「一人で出来ることには限界がある。けど、俺も君と同じ気持ちだ。
あのいけ好かない長鼻野郎にはそれなりの報いってやつを受けさせるべきだと思ってる。そこでだ」
笑みを浮かべ、パチンと指を鳴らす。
「俺と一緒に行動するってのはどうだい、狙撃手ちゃん。実は俺も、探してる連中がいるんだ」
「誰か探してるなんて、一言も言ってないけど」
「あんなに焦って走ってたんだ、見りゃあ分かるさ」
調子の狂う男だ。
シノンは心の中で小さく毒づいた。
しかし、不思議と悪い気はしない。
それはこの極限状況で味方を得た安心感故なのだろうか。
(いや……違う)
もう一度、少年の顔を見る。
顔立ち自体はそれほどでもない。
整ってはいるが、少なくとも"似ては"いない。
「俺はラバック。これからよろしく頼むぜ、…………、えっと……?」
「……シノン。シノンよ」
ただ、声は似ていた。
こうしている今もどこかで怒りを燃やしているであろう、『彼』に。
その声を聞いていると、燻っていた不安が消えて勇気が湧いてくる。
決して口にすることはしなかったが、胸の内で出会ったばかりの少年へシノンは礼を述べた。
向かうは、互いの探し人のもと。
悪魔の仕組んだゲームに破綻という名のエンディングをくれてやるべく、殺し屋と狙撃手は残骸の街を往く。
【E-2 ハートランド/一日目:深夜】
【シノン@ソードアート・オンライン】
【状態:健康】
【所持品:へカートⅡ、不明支給品1、基本支給品一式】
【スタンス:対主催】
【ラバック@アカメが斬る!】
【状態:健康】
【所持品:千変万化クローステール、不明支給品1、基本支給品一式】
【スタンス:対主催】
-
投下終了です。
次の指名をお願いします。
>>15
また、書き忘れていましたが次からは指名キャラは一人だけでお願いします。
-
榊遊矢
-
投下乙です
ttp://www65.atwiki.jp/synchro_royal/
Wiki建ててみました
-
>>16
おおお、ありがとうございます!
ありがたく使わせていただきます。
-
そう言ってもらえれば何よりです
今後も応援してます
-
榊遊矢、ロコで投下します
-
「くそっ! ロジェの奴、こんなことまでするなんて……!!」
無人の酒場の片隅で、榊遊矢は木製テーブルに拳を叩き付ける。
ビリビリと手から伝わってくる鈍痛が、これが夢ではないことを物語っていた。
夢であって欲しいと祈ったことなら腐るほどある。
次元戦争のこと、幼馴染の柚子が消えたこと、シティに蔓延る暗雲……。
悪夢のような出来事ばかりが、遊矢の周りでは連続している。
だがその中でも、今回の一件は頭の二つ三つは抜きん出た最悪の事態といえた。
(殺し合うだなんて、出来るわけない……ロジェ、お前の思い通りには絶対にさせないぞ)
最早、デュエルですらない。
カードではなく武器を取っての殺し合い。
たった一つの椅子を巡った、四十二人の椅子取りゲーム。
皆を幸せにするためにあるデュエルを殺し合いの道具にするなど、断じて認めるわけにはいかない。
遊矢は力強く拳を握り、それから自分の片腕に取り付けられたデュエルディスクに視線を落とした。
(俺のデッキ、俺のカード……これを使って戦えっていうのか)
リアルソリッドビジョンという技術を駆使すれば、確かに可能には違いない。
現にエクシーズ次元はアカデミアのモンスターによる侵攻で蹂躙されたと聞く。
モンスターを兵器代わりに使うことで戦争まがいの真似が出来るのだから、殺しの道具にも当然使えるのだろう。
そうでなかったとしても、ロジェのことだ。何らかの改造が加えてあるのは優に想像できる。
「……ふざけるな」
怒っているのは、自分だけではない。
体の内に眠るもう一人の魂……ユート。
彼もまた、言葉にはせずとも激しい怒りに燃えているのが分かった。
「俺のカードは……オッドアイズやEMのみんなは、殺し合いの道具なんかじゃない!」
デュエルは戦いだ。
しかし、憎しみをぶつけ合うものではない。
カードを通じて互いの戦略を駆使し、魅せるもの。
見ている者にも当人達にも笑顔を与える、素晴らしいものだと遊矢は心得ている。
だから彼には、許せなかった。
デュエルやカードを弄び、命を奪う凶器としてしか見ないジャン・ミシェル・ロジェという男のことが。
「俺は、誰も殺さない。皆で力を合わせて、必ずお前の野望を打ち砕いてやる……!!」
自分から殺すのでも、殺し返すのでもない。
皆で手を取り合い、このデスゲームを打ち砕く。
それが、榊遊矢の出した答えだった。
今は自分の中で眠る心優しい少年に託された願いを叶えるためにも。
故郷に置いてきた仲間達や母に胸を張って再会するためにも。
誰も殺すことなく、デュエルで笑顔を与え、倒すべき巨悪を討つ。
人々を楽しませることを生業とするエンタメデュエリストの回答としては、まさに模範といえるだろう。
幸い、デッキはある。
デュエリストにとっての剣は、変わらず手元にあるのだ。
これなら戦える。
戦いの中で、タクティクスを駆使して相手を魅せ、笑顔にすることだって出来る筈。
「――よし!」
名簿にあったランサーズの名前は、黒咲と零児の二人。
素良はアカデミアの人間だが、ここぞという時には協力してくれる心強い仲間だ。
セルゲイには注意が必要だろう。
あのデュエルマシンによる犠牲者が出る前に、皆へ注意を喚起して回らなければ。
やるべきことは無数にあるが、やらなければ悲劇で終わってしまう。
笑顔でこの悪夢を終わらせるべく、若きエンタメデュエリスト、榊遊矢は酒場を飛び出し夜の帝都へ走り出した。
-
◆
(ダメですね、あの人は)
榊遊矢の去った酒場。
無人であると思われていたその場所に、一人の小柄な少女の姿があった。
彼女は遊矢が滞在していた頃からずっと、精算カウンターの向こう側に身を潜めていたのだ。
何故そんなことをしていたのかといえば、信用に足る相手かどうかを見極めるため。
彼女は、自分が殺し合いを生き抜けるほど強い人間でないことを知っている。
だから当然誰かと一緒に行動するのが最善――だがもし人選を誤れば、一緒に奈落へ真っ逆様となりかねない。
遊矢から、邪念のようなものは感じなかった。
彼はきっと真っ直ぐな少年で、心からロジェに怒りを燃やし、反旗を翻すつもりでいるのだろう。
「誰も殺さない――そんなことを考えていては、このゲームはきっと生き残れません」
そこが、駄目だ。
誰もが笑顔で分かり合えるなどと考えている時点で、破滅の未来は見えている。
心置きなく背中を預けられる点では良いかもしれないが、
余計なトラブルに巻き込まれる可能性は可能な限り避けておくに越したことはない。
「……最悪なことになる前に、気付けるといいですね」
同情したようにロコは呟いて、彼女もまた、酒場を後にした。
【C-6 帝都:酒場付近/一日目:深夜】
【榊遊矢@遊戯王ARC-V】
【状態:健康】
【所持品:榊遊矢のデッキ、基本支給品一式】
【スタンス:対主催】
【ロコ@メルヘヴン】
【状態:健康】
【所持品:不明支給品2、基本支給品一式】
【スタンス:保身】
-
投下を終了します。
次の指定お願いします。
>>23
-
投下乙です
クー・フーリン・オルタ
お願いします
-
投下します
-
一つの大きな戦いがあった。
宇宙から飛来した『戦う繊維』――生命戦維。
寄生生命体である生命戦維を受け入れ、地球を贄として宇宙にその種子をばら撒こうと目論んだ女が居た。
鬼龍院羅暁。生命戦維を崇拝し、彼らの繁栄の糧となれることを最大の栄誉と考えた元人間。
しかし彼女の野望は、二人の娘達によって打ち砕かれた。
"わけのわからないもの"を力の源に立ち上がった人間達の底力の前に、生命戦維は敗北したのだ。
最後の神衣は無力化され、計画は白紙と帰し、羅暁は差し伸べられた手を拒んで自らの心臓を潰した。
これが、先の戦いの顛末である。
「信じられねえ……」
生命戦維が消え、陰謀が散り、極制服も用を成さなくなった。
これからは好きな服を着、好きなように生きる時代だ。
そしてそれは、鬼龍院羅暁を破った少女・纏流子にとっても同じだった。
彼女が相棒として着用していた神衣・鮮血もまた、戦いの終わりとともに失われたのだ。
最後まで彼女を守りながら、生命戦維の消えた未来にエールを送って、大気圏の塵と消えた。
「本当に、お前なのか……鮮血ッ!」
『ああ。……信じられないが、どうやらそのようだ。私という服は、完全に再生している』
その筈だった。
どんな技術を使っても、あの超高熱で焼き切られた衣服を再生させるなど不可能だろう。
しかし現に今、鮮血は再び流子に着られていた。
羅暁を破り、自分が燃え尽きた記憶までも引き継いだ上でだ。
『だが、どうやら再会を祝すのは後にしなければならないようだぞ、流子よ。
お前も分かっているだろう。今、何が行われているのか』
「……! そうだ、そうだったな……!!」
短い間とはいえ身を預け、数々の戦いを共にした相棒だ。
ある筈がないと思っていた再会の時に、流子はすっかり怒りと緊張感を忘れてしまっていた。
鮮血に諭され、喜びと驚愕に満ちていた頭の中がスっと冷えていく。
いや……冷えているのではない。
一旦は消えた感情の炎が、再び燃え上がり始めているのだ。
「思い出しただけでも胸糞が悪くなるぜ。趣味の悪い真似しやがってよ……」
『同感だ。あの男は救いようがない』
「目に物見せてやらねぇと気が済まねえな……! 人様に犬っころみたく首輪なんざつけやがって……!!」
流子がロジェという男に抱いた印象は、小物だ。
これまで戦ってきた連中は誰も彼も、その形がどうあれ信念を持っていた。
生命戦維に立ち向かうため、支配の陰で牙を研いでいた皐月。
あの羅暁や憎き針目縫でさえ、天種繭星の実現という大望に向けて戦っていたのだ。
しかし奴には、そういうものを感じなかった。
ひどく浅い――目先の利益だけを求めて突っ走っている、典型的な小物。
器や野望の大小で、悪行が正当化される道理はない。
それでも、何故あんな男の為にあの少女は死ななければならなかったのかと思うと、胸に熱いものが込み上げる。
-
「―――ロジェの野郎をぶっ倒すぜ、鮮血」
『無論だ。その為にも、また私と共に戦おう。流子よ』
「おう!」
戦いが終わり。
もう二度と着ることも、着られることもなかった筈の一人と一着が、再び此処に交わった。
あり得ざる再会を果たした彼女らは、打倒ロジェを掲げ志を同じくする。
必ずこの腐ったゲームを破壊し、高慢ちきに笑っている主催者に痛い目を見せてやる。
今もどこかで会場を眺めているのだろう男を睨み付け、宣戦布告を果たした流子達に――早速、波乱が訪れた。
「――――〝抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)〟」
地の底から響くような声だった。
全身が総毛立つ感覚を、流子は覚えた。
羅暁や皐月と戦った時とも違う、もっと別な威圧感。
それに一瞬でも気を取られた時点で、本来であれば詰んでいた。
命拾いをしたのは皮肉にも、主催者ロジェの細工のお陰であった。
朱く輝く光が夜闇を切り裂き、流子のもとへ爆速と言っていい速さで猛進してくる。
その光が、投擲された槍の放つものであると気付いた時には――流子と鮮血は、余りの衝撃に宙を舞っていた。
「が……ッ!!」
地を転がり、どうにか受け身を取って起き上がる流子。
敵愾心を剥き出しにした目で、彼女は攻撃の主を睥睨する。
その男は、異様な出で立ちをしていた。
ローブを纏い、胸板を露出させた偉丈夫――その下半身からは幾つも鋭利な棘が生え、無骨な尾さえ伸びている。
まさにフィクションの世界から抜け出てきた、怪物のような姿の男だった。
強い。仮に初撃を加えられていなくとも、一目でそう分かる。
片太刀バサミを構えて動向を窺う流子を尻目に、魔人は怪訝な顔をした。
「妙だな。明らかに威力が落ちている」
「嫌味のつもりか、トゲ野郎!」
「……それを差し引いても腕は立つ、か。なら、丁度いい」
魔人は再び魔槍を構え直す。
その動作を流子は、どこからでも来いという意思表示だと受け取った。
地を蹴り急加速して、片太刀バサミの刀身を袈裟懸けに振り下ろす。
が、それは苦もなく魔槍の前に受け止められた。
-
(こいつ……びくともしねえッ……!!)
全力で刃を押しているのに、押し込める気配が全くない。
表情一つ変えずにそれを受け止めていた魔人の口元が、ゆっくりと真横に引き裂かれた。
戦慄が体を這う。まるで神話の怪物か何かに睨み付けられたような感覚だった。
『いかん流子! 翔べ!!』
「分かった! ――鮮血疾風!!」
鮮血の警告に頷き、流子は空へ逃れんとする。
鮮血疾風。
元は飛行能力を持つ極制服に対抗すべく編み出した技だ。
人衣一体を果たした流子と鮮血の連携は、まさに以心伝心の域に達している。
並み入る強敵を相手取り、一人と一着で乗り越えてきた経歴は伊達ではないのだ。
「遅ぇな」
だがそれを真横から、魔槍の殴打が薙ぎ払った。
頭に星が舞う。
神衣を纏っていなければ確実に意識を飛ばされていた、強烈な一撃。
流子はこの魔人の恐ろしい点は、あの剛力と魔槍の投擲だとばかり思っていたが、それは誤りだった。
何故なら彼は敏捷性においても、最高クラスの能力値を保有している。
耐久値も決して低くはない。およそ戦闘において、この恐るべき魔人に欠点は存在しないのだ。
「そっちがそういう格好なら、こっちも合わせてやるぜ! ――鮮血閃刃!!」
瞬間、鮮血の全身から突起が生えた。
それは牙であり、爪でもある。
いわば一瞬にして、武器の数が数倍にも増えたのだ。
こうなれば最早、単に密着しただけでも攻撃として成立する。
「その器用さは認めるが、質より量なんて阿呆らしい理屈を信じてるんじゃねえだろうな」
「あんだと……!」
至近から繰り出される流子の猛攻を、魔槍の魔人は事も無げにいなしていた。
ある時は槍の石突で、ある時は先端で。
またある時は腕を細かに動かすことで、流子の攻め手を迎撃していく。
丁寧に、まるでなぞるように。
舐められている――そう直感する流子だったが、怒りよりも焦りが先行した。
-
『流子、此処は退け』
「な……正気か鮮血!?」
『どうやらこの男……お前よりも遥かに強いようだ。
恐らくは皐月や針目にも匹敵……いや、凌駕している』
鮮血が危惧しているのは、かの槍だった。
ゲイ・ボルク。
そう呼称された一撃をもう一度放たれることを、何より恐れている。
最初の一撃を不完全に浴びただけで流子は跳ね飛ばされ、余波で付近の家屋は倒壊した。
あれは槍というよりも、ミサイル弾か何かのほうが近い。
(極制服を着てるわけでもねえってのに、何なんだこいつは……!!)
退けと言うのは簡単だが、それは相手が親切にも逃がしてくれる場合に限られる。
少なくとも今の流子には、逃れる術がない。
この魔人に一太刀浴びせ、隙を強引に作りでもしない限りは無理だ。
どうすべきか――考えあぐねていた時。
魔人が、片太刀バサミの一打を前にして僅かながら仰け反った。
その瞬間を流子は見逃さず、より強い一撃で駄目押しとすべく踏み込む。
殆ど脊髄反射の域にも近い、即断即決の行動だった。
だが、もしも。
もしも流子に考える時間が与えられていたなら、彼女はこう思ったろう。
あまりにも都合が良すぎる、と。
自分のまさに思い通りのタイミングで、魔人は丁度いい塩梅の隙を晒した。
これは罠かもしれない。少なくとも、不用意に突っ込むべきでないのは確かだ。
そういう結論に至れた筈である。
「終いだ」
しかし流子には、時間が与えられなかった。
一瞬の隙を突くために、彼女は全神経を注いだ。
その隙を逃さず、魔人の敏捷性を活かした刺突が叩き込まれる。
片太刀バサミの刀身に軽く掠らせることで軌道を反らして攻撃自体は不発させ、
彼女が打って出た瞬間に生まれ、未だ繕いきれていない隙を縫って槍の穂先を遠慮なくその腹部へ突き立てた。
「ぐ―――あああああああぁああああああッ!!」
体をくの字に折り曲げて流子は吹き飛び、家屋を二つ、三つほど貫いて漸く停止する。
-
流子が止まった場所は、もはや瓦礫の山と化していた。
只でさえ投擲の余波で崩壊状態にあったのだから、無理もない話だ。
一撃入れはしたが、仕留めた手応えまではなかった。
敵を確実に仕留めるのは、戦場の基本だ。
魔人は血の滴る魔槍ゲイ・ボルクを片手に靴音を響かせ、流子が埋まっているはずの瓦礫へと足を進める。
重量優に百キロはあろう柱の残骸を苦もなく片手で持ち上げ、その下を検めるが――
「……逃がしたか」
そこに、纏流子の姿はなかった。
彼女が流したと思しき血の跡は残っていたが、それだけだ。
他に隠れられる場所がないかを確認してみても、やはりもぬけの殻。
家々の崩れる騒音と、巻き上がる粉塵による視界不良。
それを利用して、上手く逃げ果せたということか。
「いや……違うな」
あの手傷でそう機敏に動けるとは、とても思えない。
「潜んでやがったか、鼠が」
獲物を仕留め損ねるのは、気分が悪い。
爛々と獰猛な眼光を光らせながら、魔人――クー・フーリンは手負いの獲物と、それを助けた鼠を探し始める。
望まれた通り、願われた通りの狂戦士として。
彼は、破壊と殺戮の限りを尽くす。
これまでも、これからも。
たとえ此処に、彼を願った女王が居らずとも。
◆
生きた心地がしない。
ナイトレイドの殺し屋チェルシーは、あろうことか纏流子と共に路傍へ留まっていた。
にも関わらず、クー・フーリンが彼女達の存在に気付く気配はない。
その要因は、チェルシーに支給された一枚の外套にあった。
『顔のない王(ノーフェイス・メイキング)』。
その効力たるや何と、完全なる透明化だ。
実際に触られない限り背景と完全に同化し、気配を遮断することが出来ると来た。
もしも生前にこれを持っていたなら、最後のピンチも生き延びられたかもしれない。
やりようによっては、だが。
-
チェルシーはこの宝具を使い、ずっと流子とクー・フーリンの戦いを見ていた。
元々彼女は、戦闘員ではない。
専門は隠密行動と変装による確実な暗殺。
帝具を振るって前線で戦うなど、完全に専門外である。
戦闘の何たるかなど、分かるはずもない。
そのチェルシーから見ても、あの魔槍使いは異常だった。
強すぎる。
帝具らしき槍の強靭さもさることながら、本人の力量があまりにも頭抜けているのだ。
(しかし、らしくないことしちゃったなあ……)
あの場面で流子を助けに入ったのは、今考えても自殺行為だ。
事の始まりは、彼女が突っ込んだ家の近くにちょうど身を潜めていたことだった。
たまたま近くに飛び込んできたものだから、咄嗟に小さく千切った外套の切れ端を使い、
彼女を透明化させつつ背負うようにして瓦礫の下から引っ張り出し、あとは半ば転げるようにして移動した。
驚くべきことに、彼女は腹を貫かれて意識を失いつつある中でも、気合で瓦礫を退けようとしていた。
そのことが幸いして、チェルシーはあの重い瓦礫の下から彼女を助け出すことが出来たのだ。
流子の意地。
おあつらえ向きの好位置。
そして宝具『顔のない王』。
どれか一つでも欠けていたら、まず成功しなかった。
全部揃っていても、クー・フーリンに看破される可能性だってあったろう。
「やっぱり甘くなっちゃったのかなあ、私も」
クー・フーリンが通り過ぎるのを見計らってから、小さく呟き苦笑する。
流子は、完全に意識を失っていた。
しかし腹の傷は既に治癒しつつある――彼女もまた、何らかの帝具を体に宿しているのだろうか。
兎も角、この分ならあと数分もすれば傷は完治し、遠からず目も覚ますだろう。
完全にクー・フーリンが立ち去るまでは此処で待ち、頃合を見計らって適当な民家にでも転がり込むとしよう。
いざとなれば顔のない王を上手く使えばいい。
慎重かつ大胆に、命第一に立ち回る。
それがチェルシーの、殺し合いに対する姿勢だ。
あの時。
クロメを殺し損ね、体を切り刻まれて殺された痛みを、確かに覚えている。
あれだけされても生き残れるほど、自分は頑丈な人間ではない。
……やはり、あの場で一度死んだのだ。
チェルシーは、冷静にその事実を反芻していた。
疑問はあるが、動揺はない。
不思議なほどあっさりと、この現実を受け止められている。
(ま、命拾いできたんならそれでいいや。今度はあんなヘマ、しないようにしないとね……)
必ずや生きて帝国へ帰る。
自分だけでなく、ナイトレイドの仲間も一緒にだ。
そして来るべき革命に向け、再び動き出す必要がある。
いつかの日に願った世界を実現させるために。
今度は、途中で死んでなどやるものか。
【B-4 市街地/一日目:深夜】
【チェルシー@アカメが斬る!】
【状態:健康、透明化状態】
【所持品:顔のない王、変身自在ガイアファンデーション、基本支給品一式】
【スタンス:対主催】
【纏流子@キルラキル】
【状態:疲労(中)、気絶、腹部に刺傷(回復中)、透明化状態】
【所持品:神衣鮮血、片太刀バサミ、基本支給品一式】
【スタンス:対主催】
【クー・フーリン・オルタ@Fate/Grand Order】
【状態:健康】
【所持品:抉り穿つ鏖殺の槍、基本支給品一式】
【スタンス:皆殺し】
※抉り穿つ鏖殺の槍は、即死効果が消滅しています
-
投下を終了します。
次の指名をお願いします
>>32
-
ウェイブとPoH
-
>>32
指名は一人でお願いします
>>34
-
茅野カエデでお願いします
-
おお、なんか新しいの始まってた
-
結局アカメのシュラは参加者なんか?
正式版の名簿消えてますよ
-
>>36
変な改行が入ってるけど正式版(>>7)にも載ってるぞ
-
流石シュラさん
他の参加者とは一線を画してる
-
ヤムチャ最強
-
さすヤム
-
さすシュラ
-
ホント今更ですけど投下乙です
クーさん強ぇw
チェルシーの機転も面白いですね
ロワ初参加キャラが多いMARとFGOには期待してます!
-
クロスワと同じ形式か
あっちは止まっちゃったからなぁ
とりあえず投下心待ちにしてまーす
-
<削除>
-
<削除>
-
アカメと竿しか分かんねえや
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
<削除>
-
管理人より◆u8t29vSeLY氏へ警告いたします。
企画主よりの反応がない状態でこれ以上の過剰な連投レスを繰り返す場合は
本件を迷惑行為と認定し、書き込み禁止措置の対象とさせていただきます。
以降のご発言には充分にご留意いただくようお願いいたします。
-
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
"
"
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■