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聖杯戦争異伝・世界樹戦線

1 : ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:11:04 L8/LKu2.0
 一人の大胆な神が水を飲みに泉にやって来て、永遠の叡智を得た代償に片方の目を差し出しました。

 そして世界樹のトネリコの木から枝を一本折り、その枝から槍の柄を作りました。

 長い年月とともにその枝の傷は、森のような大樹を弱らせました。

 葉が黄ばんで落ち、木はついに枯れてしまいました。



                                         ――ワーグナー「ニーベルングの指輪」より


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2 : オープニング ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:11:38 L8/LKu2.0


 人間にとっての自然とは、人智を超えたものとして、特別視の対象となっていた。
 それが克服すべきものであったとしても、共存すべきものであったとしても。
 どちらにしても自然とは、神秘であることには変わりなく、しばし神格化の対象となった。

 特に大きなものとあれば、それはより顕著となった。
 海や山にまつわる神話は、世界に数多遺されている。
 それは不死の霊峰しかり。
 巨神の住まう海しかりだ。

 そしてそれらと共に、度々神話に現れるのが、木だ。
 樹木はある意味人間にとって、山や海よりも身近なものだった。
 神話が綴られた時代には、人が住める場所であれば、どこにでも見かけることができた。
 そしてなればこそ、長い年月を経て成長した木を、並外れた巨躯を有した木を、人は特別なものとして崇めた。
 霊樹。
 神木。
 生命の樹。
 あるいは世界そのものの縮図を、樹木というモチーフに投影し、異世界を構築した例すらあった。

 だからこれより始まる神話は、世界を表す木の物語。
 伝承の英霊達が集うのは、神なる樹木の物語。

 神話世界の縮図たる、此度の聖杯戦争は、世界樹の頂にて繰り広げられる――。


3 : オープニング ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:12:29 L8/LKu2.0


 魔術都市ユグドラシル。
 莫大な魔力をその身に宿した、山ほどの大きさの霊樹の上に、建造された都市である。
 ウルズと名付けられた泉の水と、霊樹そのものから湧き出る魔力により、その街は魔術の都となった。
 豊富な魔力を糧として、魔術師達は研究に励み、それぞれに根源を目指さんとした。
 そういう設定の街だった。
 月の巨大コンピューター――ムーンセルが、そうした設定を構築し、自らの内に生み出した街が、巨大な世界樹の街だった。

 旧態の魔術が滅んだ世界で、何ゆえ旧態の魔術文化を元にし、戦いの舞台を築き上げたのか。
 これまでになかった選択肢を、何ゆえにムーンセルが選んだのかは、第三者には知るよしもない。
 確かに言えるのは、この仮想の街並みが、此度の聖杯戦争の戦場であること。
 この異形の世界樹が、万能の願望機・聖杯の降り立つ場所であり、それを奪い合う場所であるということだけだ。

 聖杯戦争。
 あらゆる願いを叶える聖杯を賭け、使い魔・サーヴァントを操る魔術師達が、最後の一人になるまで戦う儀式。
 神話の英霊達を現世に降ろし、互いに使役し戦い合わせることで、神話の聖遺物を奪い合う戦場。
 地球人類の観測の一端として、ムーンセルが模倣し実施した、失われた魔術儀式の復元である。

 多くの疑問を孕みながらも、聖杯戦争の舞台は整えられた。
 場所/時代/世界すらも超え、参加資格を得たマスター達が、あらゆる環境から呼び寄せられた。
 偽りの記憶を植え付けられ、偽りの役割を得て暮らしていたマスター達は、それぞれの記憶を取り戻した。
 そうして最初の選別を終えた参加者の数は、延べ数十人にも及んでいた。

 しかし、まだだ。
 これは一次予選に過ぎない。
 本来の自分自身の記憶と、聖杯戦争の情報を与えられたマスターには、同時に更なる選別の通知が届けられた。

「これより最終予選を行う。一次予選を通過したマスターには、その数が半分になるまで戦ってもらう」
「必ずしも他のマスターを倒さなければならないという決まりはない。逆に定員が満たされるまでは、何人のマスターを倒しても構わない」
「最終予選通過者の中で、最も多くのマスターを倒した者には、本戦を有利に運ぶための特典が用意される」

 月に宿された神秘を賭けて、空に程近い世界樹で展開される、魔術師の戦線――聖杯戦争。
 その戦端は、未だ開かれたばかりだ。

「さぁ見せてくれ。命の輝きというものを。この箱庭の中で魅せる、お前達の存在の証を」

 誰かが口にした言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。



【聖杯戦争異伝・世界樹戦線―――最終予選、開始】


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4 : 各種設定 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:13:06 L8/LKu2.0
【ルール】
・当企画はTYPE-MOON原作の「Fateシリーズ」の設定の一部を元にした、リレーSS企画です。
 同作中の魔術儀式「聖杯戦争」を元にし、参加者達が聖杯を賭けて戦う企画となっております。
・最終的な参加者の数は、20組前後を予定しております。
・サーヴァントについては、原作における通常7クラスの他に、エクストラクラスを割り当てることも可能です。
・最終予選のルール上戦闘が発生する可能性がありますが、無理に戦闘を書く必要はありません。
 最終予選を戦わずに勝ち抜く参加者もいると思うので、そのあたりは後から企画者が調整します。
 ただし、そうした調整が必要になるため、1作で2組以上の参加者を脱落させることはご遠慮ください。
・最終予選の間は、ルーラーが出張ってきたり干渉したりしてくることはありません。
・投下作品数に制限は設けません。一人の書き手さんが一作書くのも、100作書くのも自由です(全部採用するとは言ってない)。
・投下がない場合は、企画者が一人でちまちま投下していく形になります。泣き出す前に構ってもらえると嬉しいです。

【設定】
・「Fate/EXTRA」に登場する月の聖遺物・ムーンセルによって形成された、電脳空間が舞台となります。
・高さ数百メートルの巨大な「世界樹」の上に建造された、「魔術都市ユグドラシル」という舞台設定です。
・ユグドラシルは「Fateシリーズ」設定における、現代の魔術師達が作り出した街という設定です。街並みも現代の欧州のものです。
 文化水準は現代のものですが、科学よりも魔術の産物によって支えられています。
 特に通信技術は顕著となっており、固定電話がせいぜいで、インターネットや携帯電話は存在していません。
・世界樹自体が莫大な魔力を内包しており、その魔力によってユグドラシルでの生活が成り立っています。
 電線は通っていませんが、魔力の伝達によって代用されています。
 また、この魔力が守りとなっているため、滅多なことがない限り、火事で世界樹が全焼したりはしません。
・街の足元は石畳で舗装されており、自然保護区エリアには、植物を植えるための土もあります。
 立地が立地なので、ところどころにクソデカい枝が飛び出してたりします。

【NPCについて】
・ユグドラシルは曲がりなりにも街であるため、NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)が生活しています。
 ほとんどが電子的に生成された仮初の人格ですが、一次予選に落選した人間も数十人ほど紛れています。
・作られたNPCの中には、マスター及びサーヴァントと縁があった人物がいるかもしれません。
 彼らは、そのマスターやサーヴァントが見ても、自分がよく知っている人物だと思うほど、完全に見た目も性格も再現されております。
 ただし、固有の能力は再現されておらず、他のNPCと同程度の存在として扱われています。
・魔術都市という設定なので、NPCの中には、戦闘能力を持った魔術師も存在します。
 万一戦闘になってもサーヴァントであれば瞬殺できますが、戦闘能力を持たないマスターの場合は、危険な目に遭うかもしれません。
・サーヴァントによる「魂食い」は制限されていません。ただしあまりやり過ぎると、NPCの間で噂が立ち、他のマスターから感知されやすくなります。
 一応ユグドラシルには警察機関もありますが、基本ガバガバ警備であり、聖杯戦争の妨げとなることはありません。


5 : 各種設定 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:13:59 L8/LKu2.0
【魔術都市ユグドラシル】
ユグドラシルの街は、以下のエリアに分かれています。
必要な施設がありましたら、SS内で追加していただいて構いません。

地図:ttp://i.imgur.com/2tNxBWl.png

《政庁》
 行政の最高決定権を司るエリア。
 魔力の管理など、ユグドラシルを維持する様々な重要施設が設けられており、
 中心には「フレスベルグ」と呼ばれる行政府が建っている(現実で言うところの、市役所の役割を担っている)。

《ウルズの泉》
 ユグドラシルの中心部から湧き出る泉。政庁はこの中心を埋め立て、建造されている。
 四方には運河が引かれており、これによって街中に水が行き渡っている。

《特級住宅街》
 中級以上の魔術師達が暮らす、高級住宅街。
 警備体制が強化されており、通常の住宅街よりも治安が良い。

《行政地区》
 各種役所や警察署、裁判所など、街の管理に必要なものが用意されているエリア。政庁の補助的な役割を担う。
 各施設に勤務する人々に向けた、アパートなども存在している。

《学術地区》
 魔術の研究機関や教育機関などが集められている区画。一般の学校もこの区画に存在する。

《商業地区》
 ユグドラシル最大のマーケット。外界から物資を受け取るためのヘリポートも用意されている。

《一般住宅街》
 ユグドラシルの最も外側に位置している、一般市民及び下級魔術師の街。
 中でも北東の区画は歓楽街、南西の区画は自然保護区となっている。

《歓楽街》
 一般住宅街の中でも、特に娯楽施設や飲食店が多い区画。
 その影には怪しげな店や、不穏な集団の溜まり場があるとも言われている。

《自然保護区》
 一般住宅街の中でも、街路樹や公園など、自然の多い区画。商業区画からは遠いが、のどかな暮らしが味わえる。

《緑の壁》
 ユグドラシルの外側に露出している、巨大な枝や葉のこと。
 世界樹の頂の端の部分であり、ここから地上へ落ちてしまえば、人間はおろかサーヴァントですらひとたまりもない。

《塔》
 緑の壁の中に建っている、4つの塔。結界魔術によって、ユグドラシルの魔力や環境を、外側から制御する施設である。
 北東のものが「ダーイン」、南東のものが「ドヴァリン」、南西のものが「ドネイル」、北西のものが「ドラスロール」と呼ばれている。
 伝承におけるユグドラシルの木を支える根は3本だったが、現代の人間の魔術では、3つだけでこの役割を果たすことができなかった。
 このため合計4つの塔が建っているという、きりの悪い形になってしまっている。


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6 : 各種設定 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:14:40 L8/LKu2.0
【サーヴァント及びマスターについて】
・参加マスターは元の記憶を封印された上、偽りの経歴と記憶を与えられた形で、ユグドラシルへ送られています。
 その中で本来の記憶を取り戻すことが、本聖杯戦争の一次予選です。
・マスターが記憶を取り戻すと、聖杯戦争の知識とサーヴァントが与えられます。
 登場話SSの開始時点で記憶が戻っているのか、SSの最中に記憶が戻る展開になるのかは、書き手さんの自由とします。
・マスターが死亡した場合、サーヴァントは魔力が切れると同時に消滅します。しかし、消滅する前に他マスターと契約を交わせば、これを免れます。
・サーヴァントが死亡した場合、マスターは数時間後に脱落と見なされ、「強制退場」となります。
 しかし、消滅する前に他サーヴァントと契約をかわせば、これを免れます。

【時刻の区分】
未明(0〜4)
早朝(4〜8)
午前(8〜12)
午後(12〜16)
夕方(16〜20)
夜間(20〜24)

【状態票テンプレ】
本戦開始後にご利用ください。

【X-0/場所名/○日目 時間帯】

【名前@出典】
[状態]
[令呪]残り◯画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1.
2.
[備考]

【クラス(真名)@出典】
[状態]
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1.
2.
[備考]

【締切日】
登場話SS候補の締め切りは、8月頃を予定しています。様子を見て8月1日には、暫定の締切日を発表する予定です。


7 : ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:15:46 L8/LKu2.0
1:30頃から、早速登場話SSを2作ほど、投下させていただきたいと思います
質問などありましたら、なんなりと


8 : ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:24:32 L8/LKu2.0
登場話SS1作目、投下させていただきます


9 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:24:57 L8/LKu2.0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 その少年が歩んだのは、奪われ続ける人生だった。
 燃える炎の奥底で、生まれ落ちたその少年は、最初から母を奪われていた。
 愛すべき者の顔も知ることができず、愛する前から奪われた生命に、少年は怒り復讐を誓った。
 しかし憎しみは剣を迷わせ、少年が生きる理由としていた力も、奪われる結果を招いてしまった。
 復讐の相手すらも一度は奪われ、何もなくなってしまった少年は、行く道に迷い闇へと沈んだ。

 全てを失った少年は、やがて一人の少女と出会った。
 少女とその家族は、ただ普通に生きていくことの喜びを、身を持って少年に教えた。
 そんなことすらも知らなかった少年は、新たな家族を拠り所とし、初めて笑えるようになった。
 しかしそんな家族ですらも、少年は奪われてしまった。
 少年の闇を照らした少女は、雪の降りしきる夜空の下で、無力に泣く少年の手の中で逝った。

 それでも、愛を知った少年は、闇に引き返すことはなかった。
 守るべき人々の存在に触れ、戦う理由を見つめ直した少年は、再び剣を手に取った。
 後悔を繰り返さないように。
 自分と同じ絶望を、誰にも味わわせないために。
 自らを産み落とした母と、自らを拾い上げた父は、そう在れと願ったのだと知って。
 残された少年は騎士となり、遺された想いを受け継いで、闇を祓うために戦い続けた。

「この想いこそが――永遠だ」

 闇を照らす黄金の騎士は、光り輝く両翼に、想いを背負って戦ったのだ。


10 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:25:35 L8/LKu2.0


「こん――のぉぉっ!」

 振り抜く刃が敵を裂く。
 迫り来る骸骨の軍団を、一刀のもとに斬り伏せる。
 やけくそ気味な叫びと共に、放たれた剣の一閃は、総計4体の怪物を、一撃で両断してみせた。

「はぁ、はぁ……」

 それでも、少女の顔に達成感はない。
 魔法少女・美樹さやかは、それでも息を切らしながら、眉間に皺を寄せている。
 一体今ので何体目だ。ここまでに何体倒したのだ。
 そしてわらわらと湧いてくる敵は、あと何体で打ち止めになるのだ。
 とっぷりと日の暮れた路地裏で、不気味な骸骨に囲まれたさやかは、
 数十体もの敵を屠りながらも、終わらない戦いを強いられていた。

(これでもさ……サーヴァントって奴じゃ、ないんでしょ)

 剣を握る手に力がこもる。
 忌々しげに敵を睨む。
 元の記憶を取り戻した時、聖杯戦争なる戦いの情報は、一緒に頭の中に叩きこまれた。
 戦う力であるサーヴァントも、じきに送られてくるのだと、そう伝えられていた。
 しかし目の前にいる連中は、そのサーヴァントではないらしい。
 敵のサーヴァントは別の場所にいて、そいつが更に使い魔として、この骸骨の兵士を生み出しているらしい。

(そりゃまあ、雑魚なら倒せないでもないけど)

 それにしたって限度があると、内心でさやかは吐き捨てた。
 こうやって倒せてはいるのだが、いかんせん数が多すぎる。
 いくら魔法少女といっても、体力や魔力には限界があるのだ。
 このままではいずれ押し切られ、本戦に進むことすらできずに、脱落してしまうだろう。

(突破するしかない)

 それだけは嫌だ。
 こんな訳の分からない所まで招かれて、何の土産も得られないままに、無様に殺されるのは御免だ。
 であれば、片をつけるしかない。
 この使い魔の包囲網を突破し、敵のサーヴァントを探し当て、直接撃破するしかない。
 未だサーヴァントを持たないまま、勝負を挑むのは不安ではあったが、他に選択肢などないのだ。
 ならばやってみせようじゃないか。
 魔法少女は伊達ではないと、証明してみせようではないか。
 覚悟を決めて剣を構え、敵陣を跳び越えるために、両足に力を込めた瞬間。

《――馬鹿! そうじゃない!》

 不意に頭の中に、声が響いた。


11 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:26:35 L8/LKu2.0
「えっ、ええ!?」

 突然の制止を受けたさやかは、素っ頓狂な声を上げてよろめく。
 何しろ跳ぼうとしていたのだ。それを半端なところで止められ、バランスを崩してしまったのだ。

《死にたいのか! 一人でサーヴァントに挑んだところで、太刀打ちできるわけないだろうが!》
《なっ……何よ!? 急に勝手なこと言ってくれちゃって! だいたい、それ以外にどうしろって言うわけ!?》

 これはテレパシーというやつか。魔法少女であるさやかには、使い慣れた意思疎通の手段だ。
 だからこそ姿勢を正したさやかは、即座に順応し反論した。
 突然思考に割り込んできた、無礼な若い男の声に、キレ気味に食ってかかったのだ。

《……とりあえず一度後退しろ! 下がってすぐの、左の脇道に入れ!》

 一瞬押し黙ったのは、指示内容の思考だろうか。
 声はさやかに前進ではなく、後退することを命じた。

《後退!? 逃げてどうなるのよ!?》
《違う、勝つためだ! 信じろ!》

 俺を信じろ。
 信じるのならば勝たせてやると。
 困惑するさやかの返事に対して、男はそう言い放った。
 生意気な響きを宿しながらも、不思議と、力のある声だった。
 初めて聞いたはずなのに、信じてもいいと思えるような、不思議な気配を宿した声だった。

《……駄目だったら恨むからね!》

 結局、さやかはその声を信じた。
 死んだら化けて出てやるからと、テレパシーで悪態をつきながらも、足は背後へと向かった。
 ビルの間を走り抜け、言われた通りの場所を曲がる。
 そのまま直進していけば、確か表通りに着くはずだ。
 特に追加の指示はない。このまま進めということらしい。
 かちゃかちゃという足音を背にしながら、さやかは尚も宵闇を走った。
 そして遂に路地裏を飛び出し、月光の注ぐ通りへと出た。

「――よく耐えたな」

 そこにいたのは、少年だ。
 さやかより幾つか年上の、仏頂面をした男だった。
 銀月の光を浴びるコートは、闇の中で純白に煌めく。
 右手で光を放つのは、鋭い抜き身の刀剣だ。
 燃える炎のような赤毛と、同じ色の赤い瞳が、真っ直ぐにさやかを見据えていた。

「後は――任せろ!」

 瞬間、少年が飛び立つ。
 石畳を力強く蹴り、空中でさやかとすれ違う。
 その時、さやかの左手に、焼けつくような痛みが走った。
 魔法少女の手袋の下で、赤い光が輝いた。
 炎の光に照らされたのは――はためくマントと、金の鎧だ。
 夜に太陽が昇るように。
 暗闇を照らす暁のように。
 たとえその身に背負うのが、輝く翼でなかったとしても。
 赤い瞳を煌めかす、少年が纏った狼の鎧は、さやかが夢の中で見た、黄金の騎士の姿に他ならなかった。


12 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:27:47 L8/LKu2.0


 セイバーのサーヴァント、レオン・ルイス。
 それが戦場に遅刻してきた、さやかのサーヴァントの名前だった。
 金の鎧を纏ったレオンは、骸骨軍団を一掃し、慌てて現れた敵サーヴァントも、危なげなく撃破してみせたのだった。
 比較対象を1つしか知らない以上、レオンが特別強かったのか、それとも相手が弱すぎたのか、正確なところは分からない。
 それでも、サーヴァントというものが、少なくとも美樹さやか自身よりは、遥かに強いということは理解できた。

「怪我はなかったか?」

 戦いの場から一度離れ、帰路に着いたさやかに対して、元のコート姿に戻ったレオンが尋ねた。

「まぁね。一応魔法少女だし」

 返事をするさやかの姿も、既に魔法少女の装束ではない。
 青を基調とした戦士の服は、左手の指輪へと納められ、普通の私服を身に纏っている。
 服の上から判断するしかないが、見たところ、傷をつけられた様子はない。
 治癒魔法に秀でているさやかは、よほどの重傷でもない限りは、たちどころに回復することができるのだ。

「魔法少女か……妙な力を持ってるよな、お前も」
「いやいや、さすがにあんたには負けるわよ」
「いや、そういうことじゃない」

 言いながら、レオンが前に出る。
 一歩後ろについていた従者が、主君を抜きながら語りかける。

「お前は存在そのものが、他の人間とは違う……魔法が使えるというだけじゃ、説明が付かない気配を感じる」

 白いコートが立ちはだかった。
 つり目の瞳をきつく細め、赤い炎の瞳を燃やし、真正面からさやかを睨んだ。

「お前は――『守護者』じゃないのか?」

 その正体を見定めるように、鋭い視線で射抜きながら、レオン・ルイスはそう尋ねた。

「守護者……?」
「記憶がないのなら、説明しとく。守護者っていうのは、人類が存続の危機に陥った時、それを回避するために呼び出される存在だ」

 それは英霊に近くはあるが、また違うものだとレオンは言った。
 いわく、守護者というものは、霊長の抑止力なる存在に認められ、取り込まれた魂を指すらしい。
 守護者となった魂は、人類の破滅の要因となるものを、排除するために遣わされ、殲滅することを仕事とするのだという。


13 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:28:42 L8/LKu2.0
「どうして、そうだと思ったの?」

 並ぶのは守護者という呼び名の割には、あまりにも物騒な表現だ。
 魔法少女とはあまりにも結びつかない。故にさやかは、真剣な顔付きになって尋ねた。

「俺も似たようなものだからな。英霊としての俺は、俺の宝具――『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』と、一つになって存在している」

 それがガロという称号を得た、己の宿命なのだとレオンは言った。
 ガロというのは、彼の生きていた時代に存在した、悪魔狩りの騎士の名前だ。
 魔物を祓う騎士・魔戒騎士――その最高位の存在に与えられるのが、ガロの名と黄金の鎧なのだという。
 そして歴代の黄金騎士の魂は、ガロの鎧へと宿り、永遠に子孫を守り続けるのだ。
 時代を問わず存在し、人のために戦い続けるという点では、確かに守護者と似ているかもしれない。
 そしてだからこそ、レオン・ルイスは、自らと同種の存在の匂いを、さやかから感じ取ったのだそうだ。

「……あたしも、さ。あんたと同じで、その、似たようなものってやつなのかもしれない。確証は持てないんだけど」

 そういう相手であるのなら、話してもいいかもしれないと思った。
 自分のことを話しても、理解し受け止めてくれると思った。
 故にさやかはそうやって、己の身の上を口にした。

「記憶を失ってるっていうのは、合ってる。あたしは元々、普通の魔法少女じゃなくて……何か大きな力の下で、特別な役目を持ってた存在だった」
「その記憶がまだ、聖杯に封じ込められてて、上手く思い出せないってことか?」
「違う。そのことを忘れちゃったのは、ここに来る前からだった」

 首を横に振りながら、さやかは聖杯の干渉を否定する。

「暁美ほむら……元はあたしの仲間だった子。あいつがその何かに手を出したおかげで、あたしもそのことを、思い出せなくなったんだ」

 魔法少女、暁美ほむら。
 彼女に一体何が起きたか――それを思い出すことはできない。
 しかしこれだけは覚えている。
 今の彼女は悪魔となった。魔法少女の軛を超えて、より恐ろしい存在と成り果てた。
 そしてその暁美ほむらが、大いなる力を貶めて、世界の在り方を変えてしまった。
 罪を犯した元・魔法少女は、そのまま放置してはおけない、危険な悪魔となってしまったのだ。

「ってことは、お前の願いは……」
「うん。私はあいつを止めなくちゃならない……願いを叶えられるなら、私はそれを願いたい」

 悔しいが、まともに戦ったとしても、さやかはほむらには敵わないだろう。
 敵わないからこそ、今のさやかは、ただの魔法少女に成り下がっているのだ。
 だとすれば、更なる力がいる。
 聖杯が万能の願望機であるならば、悪魔を討つための剣としては、十分であると言えるだろう。

「倒すのか? お前の仲間だった奴を」

 暁美ほむらを止めるということは、かつての仲間だった少女を、その手で殺すということかと。
 レオンは少し目を細め、さやかに向かって問いかける。

「………」

 問われたさやかはというと、しばし、答えることができなかった。
 ほむらを殺すのかどうか――さすがにそこまでのことは、今まで考えたこともなかった。
 事実として、ほむらを許せないとは思う。
 何をしでかしたのかは忘れたが、とんでもない悪行を犯したことは、なんとなくだが覚えている。
 だが果たしてその怒りは、殺したいほどのものだろうか。
 ほむらに怒りを覚えている自分は、ほむらを憎んでいるのだろうか。


14 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:29:33 L8/LKu2.0
「……多分、そうじゃない」

 そこまでは考えていないと思うと、さやかは曖昧に返した。

「あいつを殺したいわけじゃない……どうしたかったのかは覚えてないけど、それでも、生きていてほしいとは思う」

 かつての仲間だったほむらを、殺したいほど憎いとは、さやかはどうしても思えなかった。
 どうしたいのかは分からないが、記憶を失う前の自分は、きっと違うことを願っていたはずだ。
 だからこそ、倒したいのではなく。
 ほむらを止めたいと願うのだと、言った。

「そうか」

 ならそれでいい、と言いながら、レオンは元の位置へと戻った。
 呟くレオンのその顔は、生意気な仏頂面には変わりなかったが、それでもほんの少しだけ、ほっとしているようにも見えた。

「……あ、そうだ」

 そうして話すことを終え、お互い口を開かず歩いて。
 そんな状態がしばらく続いて、思い出したようにして、さやかがレオンへと話しかける。

「あたしの願いは、さっき言った通りだけどさ……セイバーには、何か叶えたい願いって、あるの?」

 聖杯を使用する権利を持っているのは、何もマスターだけではない。
 マスターが認めさえすれば、自分ではなくサーヴァントの願いを、聖杯にかけることも可能だ。
 であれば自分だけでなく、このレオン・ルイスという男にも、何か願いがあるのではと、さやかはそう思ったのだった。

「ある」

 即答だった。
 恐らくは二秒と経たなかった。
 さやかの問いかけに対して、レオンは即座にそう答えていた。

「………」
「……何だよ、その顔」
「え、いやその、えらい即答だったから」

 こうくるとは思ってなかったと、さやかは素直に感想を述べる。

「別に珍しくもないだろ。どんな人生を送ってきた奴だって、1つか2つくらい、やり直したいことはあるもんだ」

 それは英霊であっても変わらない。
 だからこそ取り繕う気はないと、レオンはさやかに向かって言った。

「……もっとも、実際に願うかどうかは別問題だけどな」

 誰にだってやり直したいことはある。
 何でもないことのように発した言葉には、どれほどの意味が込められていたのかは分からない。

「過去の後悔に立ち止まって、悲しみに閉じこもることはしない……俺はそう決めたんだ」

 それでも、そう否定するレオンの声は、少しトーンが落ちていた。
 燃える炎のような瞳は、今はその輝きを失い、どこか悲しげに見えた気がした。

「………」

 不意に脳裏に蘇ったのは、黄金騎士の夢の光景だ。
 それがどんなものだったのか、細かい部分に関しては、正確に思い出すことはできない。
 それでも、そう語るレオン・ルイスの姿が、不思議とその夢を思い出させた。
 結局何を思ったのか、何を言いたいと考えたのか、上手く言葉に表せなくて。
 さやかはレオンの横顔に対して、何も言うことができなかった。


15 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:30:13 L8/LKu2.0
【クラス】セイバー
【真名】レオン・ルイス
【出典】牙狼-GARO- 炎の刻印
【性別】男性
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:D 幸運:E 宝具:A+

【クラススキル】
対魔力:E (B→A)
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』発動時にはBランクに変化し、第三節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
 『双烈融身(ひかりのきし)』発動時にはAランクに変化。事実上、現代の魔術で傷をつけられることがなくなる。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。

【保有スキル】
継承:A
 英霊ガロとは、レオン・ルイス個人を指す名前ではない。
 宝具『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』に宿された、歴代の黄金騎士の魂の総称である。
 レオンは死亡した際に、マスターに『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』および魔戒剣を遺し、所有権を譲ることができる。
 ただし鎧を動かすのは、あくまで鎧に残されたレオンの魔力であるため、それが尽きれば使用は不可能となる。
 また、このスキルをもってしても、宝具『双烈融身(ひかりのきし)』は遺すことができない。

退魔:-(A)
 闇を切り裂く黄金の光。
 悪魔や魔獣などといった、魔なる存在への与ダメージが倍加する。
 このスキルは、宝具『双烈融身(ひかりのきし)』が開放されている時以外、発動されない。

不死殺し(偽):C
 不死身の魔人を討伐した逸話に基づいたスキル。
 不死の属性を持つ者に対して、与えるダメージが増大する。
 ただし実際には、上述した魔人にとどめを刺したわけではないため、
 あくまでこのスキルでもダメージを増やすことしかできず、対象を殺せるわけではない。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。


16 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:30:51 L8/LKu2.0
【宝具】
『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:C
 陰我あるところホラー現れ、人を喰らう。だが、古よりホラーを狩る者達がいた。
 鎧を纏うその男達を、魔戒騎士という。
 ――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧である。
 レオンの纏う「ガロの鎧」は、最強の魔戒騎士の血族が受け継いできた鎧であり、黄金の輝きを放っている。
 更に緑の魔導火を纏うことにより、攻撃力を底上げする「烈火炎装」を発動することが可能。

『双烈融身(ひかりのきし)』
ランク:A+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:A 耐久:B+ 敏捷:A++ 魔力:A+ 幸運:A
 魔戒騎士の力とは、個人によって培われるものではない。
 師から弟子へ、親から子へ、連綿と受け継がれてきた技と精神こそ、魔戒騎士の力である。
 母より受け継いだ「ガロの鎧」と、父より借り受けた「ゾロの鎧」を同時に装着した時、
 レオン・ルイスの誇る最大宝具が発動する。
 レオンがその姿を見せた時、その身は黄金と白銀の2色に輝き、炎の翼で空を舞うと言われている。
 また、この宝具を発動した際には、退魔スキルが発動し、魔なる存在へ与えるダメージが増加する。
 なお、宝具『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』を持つサーヴァントが他に召喚されている場合、
 そのサーヴァントから宝具を貸し与えられるか、あるいはそのサーヴァントが死亡するかしなければ、
 『双烈融身(ひかりのきし)』を使用することはできない。

【weapon】
魔戒剣
 ソウルメタルによって鍛え上げられた、魔戒騎士のための剣。
 修行を経た者はこれを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
 『黄金騎士・GARO(ガロのよろい)』を纏った際には、黄金の長剣へと変化する。

【人物背景】
古より最強の騎士として語り継がれてきた、黄金騎士・ガロの鎧を纏うの魔戒騎士。
魔戒騎士・魔戒法師を殲滅する「魔女狩り」によって、
母アンナ・ルイスを火刑に処せられ、その炎の中で産まれ落ちた過去を持つ。

目つきの悪い跳ねっ返りで、協調性はあまり高くない。
当初は母の仇である、ヴァリアンテ王国宰相のメンドーサを憎んでおり、復讐のためだけに戦っていた。
しかしそれ故に一度ガロの力を剥奪されており、その後自分を見つめ直したことで、
真に「守りし者」の使命に目覚めた騎士として復活を遂げた。
母を喪い、鎧を奪われ、やっと手にした安住の地と、大切な想い人すらも喪ってなお、
絶望の底から這い上がってきた英霊である。
以降は他人に対しても、より素直に思いやりを見せるようになっている。

今回の聖杯戦争においては、上記のメンドーサとの戦いが終わった直後の年齢・容姿で現界している。

【サーヴァントとしての願い】
やり直したいことは山ほどあるが、それを願うつもりはない。

【基本戦術、方針、運用法】
近距離戦を得意とする正統派のセイバー。欠点は常に宝具を見せびらかしていなければ、まともに戦えないということか。
当然鎧を召喚している最中には、その分の魔力が消費されるので、あまり燃費はよろしくない。
特に『双烈融身(ひかりのきし)』発動時には、消耗は倍以上に跳ね上がるので、ここぞという時の切り札に。


17 : 美樹さやか&セイバー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:31:24 L8/LKu2.0
【マスター】美樹さやか
【出典】[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
同じ魔法少女の仲間として、ほむらを止めたい

【weapon】
ソウルジェム
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 さやかを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明。

【能力・技能】
魔法少女
 ソウルジェムに込められた魔力を使い、戦う力。
 武器として剣を持っており、直接斬撃や投擲に用いられる。
 簡易的な刀身射出ギミックが搭載されており、近距離なら突きの補助として使用することも可能。
 固有魔法は治癒。自身の傷を癒やす魔法を得意としており、全治数週間の傷であっても、一瞬で完治させることができる。
 素早い身のこなしを活かした近距離戦が得意。また、魔法の力で足場を作り、限定空戦を行うこともできる。

【人物背景】
見滝原中学校に通う2年生の少女。
かつて存在した世界において、想い人の腕を治すために魔法少女となり、恋に敗れて自滅していった。
その後級友・鹿目まどかが概念存在・円環の理となった際、その魂は彼女の元へ召され、共に戦う同志となった。
しかし暁美ほむらが悪魔となり、世界を改変した際の余波によって、さやかは人間界へと取り残されてしまう。
彼女の力によって円環の理との繋がりを断たれ、その力を失ったさやかは、意図せぬ形で人間としての蘇生を果たしたのだった。

明るく人当たりのいい性格。友情に厚く、困っている人を積極的に助けようとするタイプ。
一方冷静さに欠けるのが欠点で、まどかからは「思い込みが激しくて喧嘩もよくしちゃう」と評されている。
かつて契約した世界においては、恋愛と友情の狭間で苦悩し、自暴自棄になって周囲を振り回したこともあった。

契約してからすぐに死亡したため、かつては戦闘経験も浅く、他の魔法少女達相手に遅れを取ることも多かった。
しかし円環の理に召された後は、平行世界の記憶・経験を得たことで、戦闘スキルが大幅に向上。本来の伸びしろを見せる活躍を果たしている。
本来は魔女の力を使役するなど、魔法少女の枠を大きく超えた能力を発揮できるのだが、
ほむらによってその力は失われており、通常の魔法少女なりの能力しか持てないようになっている。
改変後の世界に合わせて、記憶にも改竄が施されており、まどか及び円環の理に関する記憶を喪失している。
現在の彼女が円環の理絡みで覚えているのは、自身が何か大きな力の下で戦っていたことと、ほむらが悪魔となりその存在を害したことの2点である。

【方針】
あまり他人を傷つけたくはないが、聖杯はなんとしても欲しい


18 : ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:32:54 L8/LKu2.0
1作目の投下は以上です
美樹さやか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語&セイバー(レオン・ルイス@牙狼-GARO- 炎の刻印)組でした

美樹さやかのステータス表は、「二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦」様に投下された、登場話候補SSのものを参考とさせていただきました

続いて2作目を投下させていただきます


19 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:34:13 L8/LKu2.0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 その男の人の境遇は、おおよそまともなものではなかった。
 私が最初に見たものは、培養液に浸されて、眠るその人の横顔だった。
 そして同じ横顔が、10も20も並べられていて、まるで倉庫のようだった。
 同じ顔をした人間が、まるで物を扱うように、無数に並べられていた。

 戦うために生まれた存在。
 人類を脅威から守る兵器を、ただ動かすためだけに作られた人間。
 自分の命と引き換えに、敵を殺すためだけに、大量生産されたクローン兵士。
 それが私が夢に見た、その男の人の在り方だった。

「無様だ? 死だぁ? リスクが怖くて戦えるかっ!」

 それでも、その人は戦った。
 嘆きも悲しみもすることなく、胸を張って戦い続けた。
 プログラムされたからでもなく、自分自身の意志の下に、平和のために戦い続けた。
 それは自分の出自を知っても、決して変わることはなかった。

「グレートと俺は、受けた仕事はきっちりやり切る!
 どんなにボロボロになろうが! 死ぬ寸前だろうが! 最後は必ず勝利を掴む!」

 彼は自分を勇者と呼んだ。
 人類を守る盾として、偉大な勇者の名を名乗った。
 きっと彼のような人間こそが、本物の勇者なのだろう。
 どれほどの死の恐怖に晒されても、どれほどの死を味わっても。
 たとえその戦いが、誰かの都合で強いられたものでも。

「プロ勇者――なめんなぁあっ!!」

 それでもと。
 それでも自分は戦うと。
 そう言い続けられる彼は、たとえどんな生まれであったとしても、本当の勇者に他ならなかった。


20 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:35:03 L8/LKu2.0


 犬吠埼風は勇者である。
 侵略者・バーテックスの脅威にさらされ、明日をも知れない人類を守るべく、神樹様から選ばれた戦士である。
 彼女は持ち前の人の良さから、その使命を素直に受け止め、勇者として戦い続けてきた。
 学友達を同じ勇者として、戦いに巻き込まなければならないことへの負い目を押し殺し、懸命に剣を振るってきた。
 犠牲を伴う真実を知らされ、道に迷い暴走した時も、仲間達に助けられ、許された。
 多くのものを失いながらも、大切なものを手に入れたのだと、そう語る仲間達の胸の中で、彼女は涙を流し叫んだ。

「ライダーッ!」

 そしてそんな犬吠埼風は、今まさに殺されようとしていた。
 願いを叶える聖杯を賭けて、使い魔を操り戦う戦場。
 その聖杯戦争に巻き込まれ、使い魔・サーヴァントを与えられた風は、しかし早々に手札を失い、脱落の危機に立たされていた。

「そんな……」

 爆発の余韻が耳に残る。
 左目を眼帯で覆った、緑の単眼が見開かれる。
 空には既に何も残らず、ただ煙と鉄屑の雨だけが、サーヴァントの死を物語っていた。
 風が召喚したライダーのサーヴァントは、敵サーヴァントとの戦いの末に、空中で爆発四散したのだ。

「終わりだな」

 がちゃり、と具足の音が鳴る。
 鎧を纏った使い魔が、風の目の前に降り立つ。
 鋭い双剣を輝かせるのは、最優と謳われたセイバーのサーヴァントだ。

「くっ……!」

 苦々しげな顔をしながら、風は自らの得物を構える。
 勇者・犬吠埼風の武器は、黒光りする幅広の大剣だ。
 大きさだけを見るならば、敵のサーヴァントの宝具よりも、風のそれの方が圧倒的に大きい。

「無駄だと分かっているだろうに」

 それでも、セイバーは取り合わない。
 やれやれといった身振りを取りながら、ため息混じりにそう呟く。
 事実として、このサーヴァントなる存在の強さは、今までの敵とは桁違いだ。
 風自身も戦闘には参加していたが、自分の攻撃のことごとくを、あの細い刀に弾き返されてしまった。
 神話の双剣に比べると、自分の握るこの剣の、なんと頼りなく感じることか。

(怖い)

 意図せず、半歩後ずさる。
 圧倒的な脅威への恐怖が、冷や汗となって頬を伝う。
 あるいは孤独な戦いという、これまでに体感したことのない状況もまた、それを助長しているのかもしれない。


21 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:36:03 L8/LKu2.0
(戦うことに意味なんて、あるかどうかは分からない)

 自分達勇者は生贄だ。
 体の機能を奪われながら、決して死ぬことも許されず、戦いを強いられ続ける道具だ。
 こんな風にして死を恐れても、何の意味もないかもしれない。
 たとえ元の世界へ戻れても、利用されたという虚しさが、胸を苛むだけかもしれない。

(それでも)

 だとしても、あそこには樹がいるのだ。
 一番大事な声をなくしても、勇者になってよかったと、そう言った妹がいるのだ。
 勇者部に入ることがなければ、弱い自分は生まれ変われず、後ろに立っているだけだったと、笑顔でそう言ってくれたのだ。

(だったら……!)

 だとすれば、死ねない。
 彼女を、勇者部の仲間達を、あの町に取り残してはおけない。
 自分は勇者部の部長なんだ。皆を戦いへと巻き込んだ張本人で、皆をまとめるリーダーでもあるのだ。
 これから先どうするにしても、その責任は果たさねばならない。
 そしてそれ以上に、あの愛おしい仲間達と、永遠にお別れすることなんてできない。

(やるっきゃ、ないっしょ!)

 だからこんなところでは死ねない。
 殺されるわけにはいかないのだ。
 命の終わりを受け入れることなく、みっともなく恐れながらでも、立ち向かわなければならないのだ。
 震える両手で剣を握り、かすかに涙の滲んだ瞳で、風が敵サーヴァントを睨んだ瞬間。

『――ボサッとしてんじゃねえ!』

 大音量の怒鳴り声が、頭上から戦場に響き渡った。

「えっ!?」

 聞き覚えのある声だ。
 もう聞こえないはずの声だ。
 驚いた風は反射的に、声のする方を見上げる。
 しかし声の主を見るより早く、体は何かに攫われていた。

「う、うわぁっと!?」

 ぎゅうんと大気を切り裂く音が、正面から叩きつける風が、風の体を鋭く揺さぶる。
 視界に広がったのは、赤だ。
 鋭角的なラインを有した、真っ赤な戦闘機の姿だ。
 そのコックピットから伸びた手が、風を空へと引っ張ったのだ。

「ら、ライダー!? あんたどうして……!?」
「んなもん後からいくらでもしてやる! それより今は目の前の敵だ!」

 戦闘機のシートに身を預け、赤いパイロットスーツを纏った男は、間違いなくライダーのサーヴァントだ。
 先ほど敵の攻撃を受け、この戦闘機ごと爆散したはずの、犬吠埼風のサーヴァントだ。
 それが何故か、生きている。
 自らの戦闘機に乗って、ピンピンした状態でここにいる。


22 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:37:04 L8/LKu2.0
「いいか! 奴にはブレーンコンドルじゃ歯が立たねぇ! 俺の宝具を使う必要がある!
 必要な魔力は、今までとは桁違いだ! そいつを受け止める覚悟はあるか!?」

 そんな疑問を受け付けず、ライダーは風に向かって尋ねた。
 勝つためには無茶をする必要がある。
 それをする覚悟はあるのかと。

「……あーもう分かった! やったるわよ! こうなりゃ何でも来いだっつーの!」

 答えなど当に決まっていた。
 生き残るための手段があるなら、他に選択肢などなかった。
 ライダーの言うとおり、考えるのは後だ。今はこの戦いに勝利し、生き残ることが先決なのだ。
 覚悟を決めた犬吠埼風は、ライダーの問いに大声で答えた。

「了解だ! 巻き添え食わないようにじっとしてろよ!」

 ライダーはそれを引き届けると、掴んだ風の手を払う。
 手頃な建物へ向かって、思いっきり風を投げ飛ばす。
 最初の一瞬は驚いたが、連れ出す時も強引だったのだ。すぐに状況を理解し、建物の屋根へと着地した。

「何をする気だ?」
 追いついたセイバーが呟いた。
 ブレーンコンドルなる戦闘機は、どんどん高度を上げていく。
 距離を詰めてきたセイバーとは対照的に、ライダーはどんどん離れていく。
 一体何を考えているのか。
 そもそも彼の宝具とは何だ。それはブレーンコンドルではないのか。
 セイバーのみならず風の中でも、疑問が渦を巻いた瞬間。

『よっしゃあ! マジィィーン――ゴォッ!!』

 戦場に轟く雄叫びが、大地を揺るがす地鳴りとなった。
 突き上げるような震動が、突如として風の足元を襲った。
「えっ、なっ、なに!?」
 思わず態勢を崩して、座り込む。
 狼狽しきった犬吠埼風は、周囲をきょろきょろと見回す。
 瞬間、瞳に映ったものは、地面から湧き上がる光だ。
 さながら大地を割るように、石畳から放たれた魔力の光だ。
 その奥底に、何かいる。
 何か黒くて巨大な影が、光の中からせり上がってくる。


23 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:37:52 L8/LKu2.0
『ファイヤー・オンッ!!』

 ライダーの叫びが轟いた時、その正体は明らかとなった。
 急降下するブレーンコンドルを、迎え入れたのは巨大な顔だ。
 さながら西洋の兜のような、鉄で作られた顔面だ。
 いいや、あるのは顔だけではない。
 肩が、腕が、胴体が――鋼の光を放つ体が、地の底から姿を現してくる。
 巨人? 違う、ロボットだ。
 漫画の世界に出てくるような、人間の十倍はあろうかという、巨大なロボットの姿だ。

「これって……!」

 瞬間、脳裏にビジョンが浮かぶ。
 フラッシュバックのような映像が、風の記憶から湧き上がる。
 あれを見たのは初めてではない。あれは夢の中で見た、ライダーの駆っていたロボットだ。
 であれば、あの黒い巨体こそが。
 さながら神話の魔神のような、威容を放つ姿こそが。

『見やがれ! これこそ偉大な勇者――俺のグレートマジンガーだッ!!!』

 ライダーのサーヴァント。
 その真名は、剣鉄也。
 ミケーネ帝国が率いる、七つの軍団と戦うために、鍛え上げられた戦闘のプロ。
 その剣鉄也の愛機こそ、人類の叡智と勇気の結晶。
 天下無敵のスーパーロボット――『偉大な勇者(グレートマジンガー)』である。

「馬鹿な……!」

 これには敵のサーヴァントも驚いた。
 当然だ。身長20メートルもの巨体が、いきなり姿を現すなどと、想定できる方がおかしい。
 鋭角的なラインを有した、漆黒のスーパーロボットは、金の瞳でセイバーを睨む。
 全身から滲み出る気迫が、光となって突き刺さり、歴戦の勇士をたじろがせた。

『悪いがこんな前哨戦で、マスターに無理させるわけにもいかないんでな! 一発で決めさせてもらうぜ!』

 光が奔る。
 炎が唸る。
 鉄の魔神のその胸の、赤いV字の装甲板が、眩い光を放ち始める。
 灼熱を宿した輝きが、周囲の気温を上昇させる。

『ブレストバァァァ―――ンッ!!!』

 剣鉄也の雄叫びが、三度戦場を揺るがした時、世界は光で満たされた。


24 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:39:25 L8/LKu2.0


「――バックアップ?」

 静けさを取り戻した街で、風が鉄也へと問いかける。

「ああ。元々剣鉄也ってのは、個人を指す名前じゃねえ……無数のクローン人間の集団こそが、剣鉄也って英霊なのさ」

 パイロットスーツを脱ぎ、ジャケット姿になった鉄也が、風の問いかけに答えた。
 元々剣鉄也とは、まともな方法で生まれた人間ではない。
 戦闘のために作り出された、量産クローン人間なのだ。
 そしてここにいない「剣鉄也」も、次元の向こうに存在している。
 ここにいる「剣鉄也」が死んだ瞬間、その記憶と経験を引き継いだ、新たな「剣鉄也」が召喚される。
 先ほどの劇的な復活劇も、そういう理屈だったのだそうだ。
 やろうと思えば、複数の「剣鉄也」を、同時に召喚することもできるらしい。

「なんというか、すごいのね、アンタ……」
「もっともその入れ替わりもタダじゃねえ。俺が飛んできた瞬間、それに必要な魔力が、マスターの体から抜け落ちたはずだ」

 だからもったいない使い方はするなよと、鉄也は風に釘を差した。

「いやいや、しないわよおぞましい」

 速攻でそれを否定する。
 右手を左右にブンブンと振って、それだけはやらないと強く言い切る。
 そりゃあ確かにハーレムというのは、犬吠埼風の夢の一つだ。
 素敵な異性と巡り会うべく、日々女子力アップに努めている風には、願ったり叶ったりの展開だ。
 だが、さすがに風と言えど相手は選ぶ。
 モミアゲの濃い厳つい男が、周囲をびっしりと囲んだ光景――そんなものは想像したくもない。

「ま、それは別にいいけどよ」

 しないならそれで構わないと、鉄也は言う。

「で、どうだった。初の対サーヴァント戦は」

 そしてそのように、続けた。
 先の戦いの感想を、自らのマスターに対して、尋ねた。

「………」

 返ってきたのは、沈黙だ。
 片目の瞳を下へと伏せて、風は静かに押し黙った。

「まぁ、無理もねぇか。なにせマスターとサーヴァントとでは、地力が違いすぎるんだからよ」
「うん、まぁ……怖かったのはそうなんだけど……私が気にしてるのは、別のこと」

 言いながら、風は顔を上げ、彼方を見やった。
 緑の視線の先にあるのは、先程まで戦っていた場所だ。
 敵マスターが操るサーヴァントを、『偉大な勇者(グレートマジンガー)』が撃破した戦場だ。


25 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:40:13 L8/LKu2.0
「相手のマスターにも、叶えたい願いがあったんだよね」
「だろうな」
「私は生き残れたけれど……結果的にその人の願いを、踏みにじっちゃったんだよね」

 冷静になってみて、気になったのはそこだ。
 聖杯戦争の戦いは、人類を守るためのものだった、バーテックスのものとは全く違う。
 襲ってくるのも人間ならば、自分が傷つけるのも人間なのだ。
 相手を脱落させるということは、それと同じ数だけの夢を、叶えられなくしてしまうことなのだ。
 犬吠埼樹の抱いた夢が、無慈悲な神の意志によって潰されたように。

「つらいんなら、やめるか」

 このまま戦いを避けて、引きこもる道を選ぶかと。
 鉄也は無感情な声で、風に向かって問いかけた。

「ううん……多分、そういうわけにはいかないと思う」

 それはそんな選択肢などないと、突きつけているようにも聞こえた。

「どう足掻いたって、きっと見つかって、襲われることはあると思う。
 その時には、きちんと戦うわ。私もまだ生きることを、諦めるわけにはいかないから」

 逃れられないのなら、戦うしかない。
 振りかかる火の粉を払うしかない。
 愛すべき勇者部の仲間達のもとへ、再び帰るためならば、風は夢とも戦える。

「それに私にも……叶えたい夢くらい、あるからさ」

 だから勝ちたいと願う自分も、心のどこかにはいるのだと、風は鉄也へと言った。
 あらゆる願望を叶える聖杯。
 きっとその力さえあれば、満開の代償を取り戻せる。
 戦いの中で失われた、自分達の体の機能を――樹の声を取り戻すことができる。
 神樹様によって奪われた、最愛の妹の夢を、もう一度掴み取ることができるのだ。

(それにしても、世界樹か……)

 ふと、そんなことが気になった。
 何の脈絡もないことだが、風は自分のいる場所が、巨大な木の上であることを思い出した。
 魔術都市ユグドラシルを支える、巨大な世界樹。
 どうしてもその存在からは、あの神樹様の存在を、連想せざるを得なかった。

(私がここに呼ばれたことと、何か関係があるのかな)

 神樹の勇者である自分が、世界樹の聖杯戦争に招かれた。
 2つの木の間には、何か関係があるのだろうか。
 そしてその関係性こそが、自分をマスター候補として選び、この地へ誘ったのだろうか。
 そんなことを、ぼんやりと、犬吠埼風は考えていた。


26 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:40:55 L8/LKu2.0
【クラス】ライダー
【真名】剣鉄也
【出典】真マジンガーZERO対暗黒大将軍
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E+ 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:B-
 騎乗の才能。大抵の乗り物を自在に操れる。
 ただし動物に関しては、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
戦闘続行:EX
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 また、後述した宝具の特性により、「完全に死亡することがない」。

勇猛:A
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。この効果は宝具にも適応される。

専科百般:D
 戦闘のプロ。
 様々な戦闘技術を修め、あらゆる状況に対応することができる。


27 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:41:27 L8/LKu2.0
【宝具】
『偉大な勇者(グレートマジンガー)』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:1〜70 最大補足:1000人
人が創りし鋼の魔神。魔術との垣根を踏破した、科学と叡智の結晶体。
剣鉄也が乗り込み操る、くろがねのスーパーロボットである。
今回のグレートはそれまでの平行世界の中でも最強と謳われた、
「マジンガーZEROがミケーネ帝国と交戦した世界」のものであり、
ダメージを修復する「再生」機能・エネルギー攻撃を「吸収」する機能・
機体スペックそのものを「強化」する機能・より強力な形態へと「変態」する機能の、
計4つの「魔神パワー」を制御下に置いている。
しかしこの宝具の性能は、これだけには留まらない。後述した宝具と組み合わせた時、勇者はその真の姿を現す。
……なお、そのすさまじいスペックの代償として、魔力消費量も相当に多く、
更には搭乗者にかかる負荷も殺人級のものとなっている。
そのため乱用はおすすめできないし、マスターをコックピットへ匿うことも推奨できない。

『皇の翼(グレートブースター)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:- 最大補足:-
グレートの背部にドッキングされる、銀色の巨大な戦闘機。
その最大の真価は、2基積まれた光子力エンジンにより、魔神パワーを文字通り増幅(ブースト)できることにある。
この機能によってグレートマジンガーは姿を変え、勇者を超えた偉大な皇「グレートマジンカイザー」へと進化を果たす。
この宝具の解放――すなわちグレートマジンカイザーの顕現のためには、令呪3画分の魔力が必要となる。

『魔神戦線(アンリミテッド・ブレイドワークス)』
ランク:- 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
剣鉄也というサーヴァントを、完全に殺しきることはできない。
剣鉄也は個人ではなく、戦闘用クローンの群体を指す呼称だからである。
仮に戦闘中に鉄也が死亡したとしても、その記憶と人格を引き継いだ新たな鉄也が、
次元の彼方からブレーンコンドルに乗って飛来するようになっている(死亡した鉄也の分のブレーンコンドルは消滅する)。
その気になれば全ての鉄也を同時召喚し、無数のブレーンコンドルで空を満たすことも可能。
とはいえそのための魔力はマスターが負担する必要があり、新たな鉄也が召喚された分だけ消耗することになる。
ちなみにこの宝具は完全なバイオテクノロジーの産物であり、一切の神秘性を持たない。
またこの宝具特性をもってしても、完全に破壊された『偉大な勇者(グレートマジンガー)』『皇の翼(グレートブースター)』は再生できない。


28 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:42:39 L8/LKu2.0
【weapon】
ブレーンコンドル
 『偉大な勇者(グレートマジンガー)』のコックピットを兼ねた戦闘機。
 頭部にドッキングすることで、グレートの戦闘準備が完了する。
 ミサイルとレーザー砲を搭載しており、これ単体でも戦うことが可能。

【人物背景】
科学要塞研究所に所属するパイロット。
「戦闘のプロ」として鍛えられた生粋の戦士であり、スーパーロボット・グレートマジンガーを駆ってミケーネ帝国と戦う。
グレートの「偉大な勇者」という通称を、自らも度々自称している。2つまとめると、「プロ勇者」である。

豪快で好戦的な性格。青春よりも恋よりも、悪との戦いを優先する正義馬鹿である。
自分の実力に絶対の自信を持っており、それ故にプライドが非常に高い。
自分とグレートがいかに優れているかを、前任者・兜甲児とマジンガーZを引き合いにして語るなど、
ややナルシルト気味な面や子供っぽい面も見られる。
ただしプロとしての自負と、人類を守らんとする正義感は本物であり、受けた仕事はきっちりとこなす人物。

その正体は科学要塞研究所の所長・兜剣造博士を元にした戦闘用クローン。
生身の人間ではグレートの負荷に耐えられないため、それに耐えうる肉体・精神力を与えられ生み出された経緯を持つ。
更に科学要塞研究所には、彼のスペアが大量に保管されており、
鉄也が戦闘で死亡する度に、記憶や人格・戦闘経験が新たな鉄也に与えられ、復活する仕組みになっている。
当初鉄也自身はこのことを知らなかったが、事実が明かされた時には、
「生身の限界を超えて戦える体であれば、思う存分に戦うことができる」と全肯定していた。

今回召喚された鉄也は、繰り返される平行世界の中で、「マジンガーZEROと闇の帝王が一体化した世界」までを経験している。

【サーヴァントとしての願い】
とりあえず思いつく願いもないし、サーヴァントとしての仕事を優先する。

【基本戦術、方針、運用法】
間違っても『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を常用しようと思ってはいけない。
一瞬で勝負を決しうる宝具ではあるが、それ故に消費も馬鹿にならず、あっという間にガス欠になってしまう。
目立ちすぎる巨体を隠すという意味でも、普段はブレーンコンドルで戦った方がいいだろう。
幸いにして、しぶとさは折り紙つきなサーヴァントであるので、宝具を使わずともそれなりに継戦能力は高い。


29 : 犬吠埼風&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:43:32 L8/LKu2.0
【マスター】犬吠埼風
【出典】結城友奈は勇者である
【性別】女性
【令呪の位置】右の太もも(ニーソックスで隠れる位置)

【マスターとしての願い】
勇者達が散華によって失った、身体機能を取り戻したい

【weapon】
スマートフォン
 コンピューター内蔵型の電話端末。電波圏外であるため、通話やインターネット機能は使用できない。
 勇者への変身能力は、このスマートフォンのアプリケーションによって発動できる。

精霊
 大赦から贈られた生命体。勇者をサポートする存在であると銘打たれている。
 現実には、貴重な戦力である勇者の損耗を避けるための安全装置であり、
 勇者に危害が及ぼうとした場合には、たとえ本人が自殺しようとした場合であっても、無条件に勇者の身を守るようになっている。
 風の精霊は、「犬神」と「鎌鼬」の2匹。普段は勇者システム同様、スマートフォンに入っている。

【能力・技能】
神樹の勇者
 日本の神族の集合体・神樹様によって、侵略者バーテックスと戦うために選ばれた戦士。
 黄色い戦闘装束に変身することによって、戦闘能力が飛躍的に向上する。
 風は大剣を扱う勇者であり、高い攻撃力と広い攻撃範囲を活かした、面制圧を得意とする。

満開
 勇者の力を最大限に発揮する姿。
 しかしこの姿になった勇者は、戦闘後に「散華」と呼ばれる現象によって、身体機能の一部を喪失してしまう。
 風は既に一度、この満開を行っており、左目の死力を失っている。

家事
 炊事洗濯、料理など、家事全般のスキル。
 両親が他界して以降、風が家事を一手に引き受けていたため、見た目によらず高水準。

【人物背景】
讃州中学校に通う3年生の少女。
同時に、世界を守護する神樹様を管理する組織・大赦から、バーテックスを倒すために選ばれた勇者でもある。
讃州中学校の勇者のリーダーとして、候補者達を集めた部活「勇者部」を結成。
その真意を伏せながら、「人々が喜ぶ活動を勇んで行う」ボランティア部として活動していた。

明るく活発な性格で、ノリで周囲を引っ張っていくタイプ。
常に「女子力」を高めることを気にかけており、恋に憧れる乙女だが、高望みしがちな傾向もあるようで、浮いた話はほとんどない。
一方で、妹の樹の親代わりをしていることもあってか、実は責任意識が強い。
勇者の存在を隠していること、それが露見した後には仲間達を巻き込んでしまったことについて、一人で思い悩むことも多かった。
そして散華によって失われた身体機能が戻らず、結果樹の夢を潰してしまったと知った時には、遂に限界を迎えて心が壊れてしまう。
暴走する風は、復讐のために大赦を潰そうとしたのだが、樹や仲間達の必死の説得によって思いとどまり、初めて仲間の前で涙した。

【方針】
敵が向かってくるなら戦う。欲を言うなら、聖杯は欲しい


30 : ◆nig7QPL25k :2015/07/07(火) 01:45:05 L8/LKu2.0
2作目の投下を終了します
犬吠埼風@結城友奈は勇者である&ライダー(剣鉄也@真マジンガーZERO対暗黒大将軍)組でした

以上で本日の投下を終了します
冒頭の夢のカットは、自分の中で勝手に統一感持たせようとしただけなので、必ずしも書けってやつじゃないです


31 : ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:26:15 df17ZbkU0
投下します


32 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:26:45 df17ZbkU0
 夢を見た。
 俺ではない誰かの夢を。
 俺と違う時間を生きた、違う場所での何者かの夢を。

 その男の眼差しは、常に上を向いていた。
 男は驕れる強者を憎み、それに媚びへつらう弱者を恨み、怒りと共に戦い続けた。
 弱い者は消え、強い者だけが生き残る。
 その世界で何かを叫びたければ、自らが強者となるしかない。
 偽りの強者達を引きずり下ろすには、真の強者となって叩き潰すしかない。
 故に男は力を求め、自らに言い聞かせるように、強者たれと叫び続けた。

「今の人間には決して実現できない世界を、俺がこの手で創り上げる。弱者が虐げられない世界だ」

 やがて男は力を手にした。
 何物にも侵されることのない、絶対的な強者となった。
 卑劣な弱者をあぶり出し、傲慢な強者を引きずり下ろし、次なる行き場を求めた男の牙は、世界全てへと向けられた。
 虐げられた自分の悲劇を、二度と繰り返させないように。
 本当に報われるべき人間が、決して踏みつけられることのないよう、彼は世界を変えようとした。

「それでいい。貴様こそ、俺の運命を決める相手に相応しい!」

 男は最後の戦いに臨む。
 自らの行く先に立ちはだかる男と。
 自らの行く道を否定する男と。
 誰よりも反発し合い、誰よりも力を認めた宿敵と、彼は決戦の時を迎える。
 今の世界を滅ぼしてでも、救いたいものがあると男は言った。
 新しい世界を作るためでも、許してはならない犠牲があると男は言った。
 2人の男は刃を交え、逆巻く炎の只中で、熾烈な戦いを繰り広げた。

「お前は……本当に強い――」

 長きに渡る戦いの果てに、男が行き着いた運命は――


33 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:27:13 df17ZbkU0


 天井扇がくるくると回り、ダーツバーの空気を巡らせている。
 ひゅんっと風を切り裂いた矢は、的の中心を大きく外れ、10点のゾーンに突き刺さる。
 ち、と短く舌打ちをすると、ダーツを投げた少年は、手元のグラスを取り水を飲んだ。
 黒咲隼は苛立っていた。
 自らが置かれた状況も、その中での行動の結果も。
 全てが彼の険しい顔に、一層濃いしわを刻ませていた。

「気に入らんようだな」

 ひゅん、と影から音が鳴る。
 風切り音と共に放たれたのは、スペードのエースが描かれたカードだ。
 物陰から飛んできたトランプは、ダーツ板の中心に、過たず命中し突き刺さった。

「お前を苛立たせているのは、この茶番か?」

 悠長に決められた役を演じることに、苛立ちを覚えているのかと。
 影から湧き出るように現れたのは、赤と黒のコートの男だ。
 歳は黒咲よりも、5つほど上といったところだろうか。射抜くような眼差しには、強い力が感じられた。

「さっきのは何だ」

 男の問いを否定するように、黒咲は問いかけを投げ返す。
 自らが引き当てたサーヴァント――ランサー・駆紋戒斗に尋ねる。

「何が聞きたいのか分からんな」
「とぼけるな。先ほどの戦い……あれは本気ではなかっただろう」

 かんっと荒く音を立て、グラスをカウンターに置き、黒咲は戒斗へと言った。
 最終予選の通達を受け、敵サーヴァントと戦い撃破したのは、今から数時間前のことだ。
 アーマードライダー・バロン――異形の鎧を纏った戒斗は、危なげなく敵を撃破した。
 赤と黄色の装束を身につけ、槍を振りかざすバロンの雄姿は、まさしく槍騎士(ランサー)の名に相応しいものだった。

「何故そう思う」
「俺が見たお前の姿は……お前の本当の力は、あんなものではなかったはずだ」

 しかし、所詮はそれだけだ。
 駆紋戒斗の本当の力は、その程度のものではなかったはずだ。
 かつて自らが見た夢の中で、黒咲は戒斗の姿を見た。
 駆紋戒斗の本当の姿は、鎧の騎士ではなく魔人だ。
 銀色の武者と対峙する、血のように赤く染まった戒斗は、あまりにも強く、おぞましかった。
 それを見てしまった後では、アーマードライダーの戦いぶりなど、子供の遊びにしか見えなかった。

「……そうか、アレを見たのか」
「何故出し惜しみをした! 俺はお前の力を見せろと言ったはずだ!」

 遂に黒咲は激昂し、戒斗に向かって掴みかかった。
 黒コートの裾を翻し、早足でサーヴァントの元へ向かい、相手のコートの襟首を掴む。
 猛禽のような金色の瞳で、伝説の英霊にも臆さず睨む。
 俺を嘗めているのかと。
 自分の本当の力を、俺ごときに見せる気はないとでも言うつもりかと。

「だったら教えてやる。俺が本気を出さなかったのは、お前が弱すぎたからだ」
「何だと……!?」
「お前は魔術師ではない。魔力に乏しいお前では、俺の本当の力を、支え続けることができない」

 本当の姿を解放し、思うがままに戦えば、黒咲はたちどころに疲弊してしまうだろう。
 だから手を抜いたのだと戒斗は言った。
 瞠目する黒咲に対して、容赦なくそう言い放った。


34 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:28:01 df17ZbkU0
「拳の力も、お得意のゲームも、俺は必要としていない。お前が支えとしている力は、俺にとっては何の意味もない」
「黙れ……!」
「一番肝心な魔術の力を、これっぽっちも持っていないお前は……俺にとってはただの弱者だ」
「黙れっ!」

 叫び、掴んだ手を振り払う。
 悲鳴のような声を上げ、黒咲は戒斗から手を離す。
 薄々は感じていたことだった。
 魔術師の儀式と説明された時、魔術の力を持たない自分が、まともに戦えるのだろうかとは考えた。
 だが黒咲には経験がある。劣勢に追い込まれた戦線の中で、己の足と頭脳を頼りに、格上に食らいついてきた実績がある。
 だからこそ遅れを取る理由もないと、己を奮い立たせてきた。
 それをこの男は否定したのだ。
 それではライフで劣っているどころか、手札すら満足に扱えないのだと、真っ向から否定してきたのだ。

「自覚しろ。自分の身の程を理解することだ。彼我の力差を見極めなければ、勝てる戦いにも勝てはしない」

 負け犬で終わりたくなければ、現実を直視し受け止めろと。
 そう言って戒斗は霊体化し、再び闇の奥底へと消えた。

「………」

 しばし、黒咲は沈黙する。
 ややあって乱暴にグラスを取り、残った水をぐいと飲み干す。

(確かに、俺は弱者かもしれない)

 見通しが甘かったのは事実だ。
 サーヴァント戦における魔力という要素を、あまりにも軽く見すぎていた。
 今回の戦いは勝てたからいい。その程度の相手だったから、さして被害を被らずに済んだ。
 だが今後の戦いが、同じようにいくとは限らない。むしろ弱卒が淘汰された後では、戦火はより激しくなるはずだ。
 その中で、果たして戦えるのか。
 切り札が必要になった時、満足にそれを使うことができず、勝ちを取りこぼしてしまうのではないのか。

(だが、それがどうした)

 それでも、不安を抱えたままでは終われなかった。
 他のマスターと差が開いていたとしても、だから敵わないとは認められなかった。
 自分には果たすべき願いがあるのだ。
 異世界の侵略者の魔の手から、平和を取り戻さなければならないのだ。
 そのためには何としても聖杯がいる。万能の願望機があれば、自分と仲間のユートだけでも、融合次元を潰すことができる。
 赤馬零児のプランとやらを、悠長に待ち続けるのはもうたくさんだ。
 ランサーズとやらが結成されるまで、奴らに囚われた妹が、無事でいる保障はどこにもないのだ。

(皮肉なものだな)

 そこまで考えて、黒咲は、己の境遇を自嘲した。
 赤馬と手を切ることを決めて、聖杯戦争に臨んだつもりだった。
 しかし結局よこされたのは、同じランサーの名を持つ戒斗だ。
 その上その戒斗ですらも、お前には力が足りないと、自分をあざ笑ったのだ。
 こんな所にまで来ても、結局ままならないことばかりだ。

(だとしても、このままでは終わらない)

 嘗められっぱなしではいられない。
 スカーフに隠れた令呪をなぞる。まだ見ぬ強敵の手によって、喉元に突きつけられた刃のような、己の運命の印を確かめる。
 じゃじゃ馬だろうと乗りこなし、勝利を掴み取ってみせる。
 地べたを這いずる負け犬ではなく、隼として天を目指す。
 逆境を覆すためならば、どんな手だって惜しみはしない。
 そうだ。結局どこまでいっても、黒咲隼のやることは変わらないのだ。
 再び決意を固め直し、黒咲は力強く拳を握った。


35 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:28:44 df17ZbkU0


「そろそろだぞ、シュン」
「分かっている。すぐに行く」

 柄の悪そうな男の声に、黒咲が応じて歩み寄る。
 魔術都市ユグドラシルにおける彼のロールは、歓楽街で活動する、闇組織の若き用心棒だ。
 どんな高尚な街にも、影というものはあるらしい。
 違法な研究を行うために、違法な材料を欲する魔術師達は、そうした組織の存在を必要としている。
 その組織の面々を守るため、拳を振るう役割を担うのが、この街における黒咲隼だった。
 そしてそんなやりとりを、不可視の霊体となった状態で、戒斗はすぐ脇から見ていた。

(あの程度で折れていたならば、それこそ俺には相応しくなかった)

 それは魔術の才よりも、ずっと重要なことだったと。
 先ほどの言葉とは裏腹に、戒斗は黒咲に対して、幾分か好意的な感想を示す。
 要するにハッパをかけたのだ。
 この黒咲隼という男が、自分のマスターとなるに相応しいかどうか――その精神性を試したのだ。

(力差など工夫で埋められる。問題はその心持ちを、萎縮せず突き通せるかどうかだ)

 たとえ己が最強宝具――『畏れよ、汝王の名を(ロード・バロン)』を使いこなせずとも、勝てる手段はいくらでもある。
 黒咲はそのための作戦を構築すればいいし、自分はそれを実践すればいい。戒斗自身には、それだけの力と、覚悟はあるつもりだった。
 問題は黒咲の方だった。勝てるかもしれない戦いを、勝てるわけがないと放棄するようでは、そんな戦い方は望めなかった。
 だからこそ、その心を試したのだが、どうやらそっち方面では、合格点くらいはくれてやれそうだ。

(……それにしても)

 故に今度は黒咲でなく、自分自身を考える。
 此度の聖杯戦争に、駆紋戒斗が呼ばれたことを、改めて考え直してみる。

(あまりにも出来過ぎだな)

 神話の森・ヘルヘイムによって、運命を翻弄された男。
 ユグドラシルを名乗る強者によって、運命を蹂躙された男。
 それが駆紋戒斗だった。
 齢20にして逝った男の、短い人生の要約だった。
 その戒斗が今、ここにいる。
 神話の世界樹の頂で、ユグドラシルと名のついた街で、こうして槍を振るっている。

(何か仕組まれているのか?)

 見過ごすにはあまりにも出来過ぎた一致だ。
 だが、わざわざそのようなことを、聖杯が仕組むものなのだろうか。
 深い思案にふけりながら、戒斗は黒咲の後を追った。


36 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:29:21 df17ZbkU0
【クラス】ランサー
【真名】駆紋戒斗
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:D 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:-(C〜A)
 魔術に対する守り。 宝具発動時にのみ機能する。
 『掲げよ、騎士の黄槍を(バナナアームズ)』『掲げよ、闘士の赤槌を(マンゴーアームズ)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 『唱えよ、黄金の凱歌を(レモンエナジーアームズ)』発動時にはBランクに変化し、三節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 『畏れよ、汝王の名を(ロード・バロン)』発動時にはAランクに変化し、事実上現代の魔術で傷をつけられることがなくなる。

【保有スキル】
反骨心:A
 自分を上から踏みつけようとする者への対抗意識。
 いかに困難な状況だろうと、どれほどの実力差を突きつけられようと、決して負けを認めない。
 戦闘中、大きく不利な状況に置かれた際に、攻撃力が上昇する。
 また、一度敗れた相手と再戦する際には、ステータスに若干の補正値がかかる。

軍略:C
 多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
 団体戦闘における指揮能力や、逆に敵集団への対処に有利な補正がつく。

話術:E
 言論にて人を動かせる才。
 交渉から詐略・口論まで幅広く補正が与えられる。
 このランクだとほとんど有利な補正は得られないが、良くも悪くも話し相手の意識を、戒斗に向けることができる。


37 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:29:47 df17ZbkU0
【宝具】
『掲げよ、騎士の黄槍を(バナナアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:D 幸運:C 宝具:C
 異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
 バナナロックシードにより発動するこの力は、走攻守のバランスに優れた基本形態。
 槍型の武器・バナスピアーを使い、敵を着実に追い詰める。
 必殺技は、槍からオーラを発して敵を貫く「スピアビクトリー」。

『掲げよ、闘士の赤槌を(マンゴーアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:B 敏捷:D 魔力:D 幸運:C 宝具:C
 異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
 バナナロックシードにより発動するこの力は、敏捷性を犠牲に筋力・耐久を高めた強攻形態。
 メイス型の武器・マンゴパニッシャーを使い、パワーで敵を圧倒する。
 必殺技は、メイスからエネルギー弾を放って敵を砕く「パニッシュマッシュ」。

『唱えよ、黄金の凱歌を(レモンエナジーアームズ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:B 宝具:B
 異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
 レモンエナジーロックシードにより発動するこの力は、他の形態よりもワンランク上の力を持つ進化形態。
 弓型の武器・ソニックアローは、両端に刃が備えられており、接近戦・遠距離戦共に威力を発揮する。

『畏れよ、汝王の名を(ロード・バロン)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:A+ 耐久:B+ 敏捷:B 魔力:A 幸運:A 宝具:A
 異界の果実の力を直接取り込んだことにより得た、超越種「ロード・バロン」の力を解放する。
 森に適応した怪物・オーバーロードインベスと化した戒斗は、バロンの時とは次元の異なる戦闘能力を発揮する。
 ただしその強すぎる力の代償として、マスターの魔力消費量も相当なものとなっている。
 両刃の剣・グロンバリャムと、ヘルヘイムの植物を操る能力が武器。今回のフィールドにインベスはいないため、インベスを操ることはできない。


38 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:30:31 df17ZbkU0
【weapon】
戦極ドライバー
 アーマードライダーに変身するためのベルト。バナナアームズ、マンゴーアームズに対応している。

ゲネシスドライバー
 上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。レモンエナジーアームズに対応している。
 既に戦極ドライバーで変身している場合でも、素早くベルトを付け替えれば、変身を解除せずアームズだけを切り替えることができる。

トランプ
 何の変哲もないトランプ。52枚セット。
 戒斗はこれを投擲武器として使うことが多い。

【人物背景】
沢芽市で活動するダンスチーム「チームバロン」の元リーダー。
戦極ドライバーおよびゲネシスドライバーにより、アーマードライダーバロン(仮面ライダーバロン)へと変身する。
幼少期に大企業・ユグドラシルコーポレーションによって、実家の町工場を潰されており、「弱肉強食」という概念を強く意識している。

傲慢不遜な性格であり、他者との協調性は低い。
常に「強者」たらんとしており、強者にへつらう「弱者」を嫌悪している。
一方で、その突き抜けるところまで突き抜けたプライドは、いかな苦境にも屈しない精神力へと繋がっており、
自分を曲げることを知らず、どんな困難にも立ち向かうことができる。
もっとも強さにこだわる理由は、あくまで「敵を倒すことが自分を守ることに繋がる」と考えているからであり、弱い者いじめを楽しんでいるわけではない。
幼少期から持っていた元々の性分なのか、なんだかんだで情のある人物でもある。

ユグドラシルコーポレーションやインベスとの戦いの中で、ヘルヘイムの森の果実を口にし自身もインベス化。
人の理性を残したまま、絶大な力を有したロード・バロンへと変貌し、今度は自らが世界を脅かすことになる。
そんな彼が既存の世界を滅ぼし、新たに作ろうとしたのは、「かつての自分のような弱者が虐げられることのない世界」だった。
それでも世界を滅ぼす革命は認められないと主張した、アーマードライダー鎧武・葛葉紘汰との決戦の果てに、彼は命を落としている。

なお、戒斗にとって蘇生体験はこれが初ではなく、過去に一度だけ現世に蘇り、人類を守るために戦ったことがあるのだという。

【サーヴァントとしての願い】
他者に願いを委ねることなどあり得ない。


39 : 黒咲隼&ランサー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:31:24 df17ZbkU0
【マスター】黒咲隼
【出典】遊戯王ARC-Ⅴ
【性別】男性
【令呪の位置】右の首筋(スカーフで隠れる位置)

【マスターとしての願い】
アカデミアの打倒

【weapon】
カードデッキ
 本来は武器ではない。
 カードゲーム「デュエルモンスターズ」の、40枚+エクストラデッキで構成されるカードデッキ。
 基本ステータスこそ低いものの、特殊召喚されたモンスターに対しては高い能力を発揮する、「RR(レイドラプターズ)」デッキを用いる。

デュエルディスク
 本来は武器ではない。
 デュエルモンスターズをプレイするための立体映像(ソリッドビジョン)投影機であり、左腕に装着することで使用する。
 何らかの改造が施されているのか、黒咲のデュエルディスクを介して召喚されたモンスターは、攻撃のダメージを現実とすることができる。
 ただし、それ以外の機能は正規品と変わらないため、召喚はデュエルモンスターズのルールに沿って行わなければならない。
 おまけに黒咲のデッキには、相手に依存せずに高い攻撃力を発揮できるモンスターがほとんどいないため、あまり有効打にはなり得ない。

【能力・技能】
カードゲーム
 デュエルモンスターズのプレイングスキル。
 生きるか死ぬかの戦場で鍛え上げられただけあり、その実力は高い。

体術
 肉弾戦による格闘術。身のこなしが巧みで、牢獄の看守達を一蹴するなど、殴り合いでも腕が立つ。
 ただし黒咲自身は普通の人間であるため、「一般人としては優秀」という域を出ることはない。腹パン一発で沈んだりする。

サバイバビリティ
 レジスタンスとしてのサバイバル技術。恐らくそれなりのものは有していると思われる。

【人物背景】
主人公達が暮らす世界とは別次元に存在する、「エクシーズ次元」と通称される世界からやって来た男。
その目的は、故郷を滅ぼした「融合次元」のアカデミアを打倒するため、敵の親玉・赤馬零王の息子を人質にすることにあった。
しかしその赤馬零児からは、その行為に意味はないだろうと否定され、反対に零王を止めるための協力関係を求められることになる。

無愛想な性格であり、周囲とは必要以上に関わろうとしない。
しかし置かれている境遇のためか、クールな見た目の割に短気であり、何をしでかすか分からない恐ろしさがある。
妹の瑠璃をアカデミアに攫われているため、瑠璃が絡むと取り乱してしまい、その傾向はいっそう強くなる。
エクシーズ次元の同志達に対しては、強い仲間意識を持っている。本来の彼の人格が、旧来の仲間達に対しては出ているのかもしれない。

【方針】
何としても優勝する。魔力がないならないなりに、勝てる作戦を構築する。


40 : ◆nig7QPL25k :2015/07/08(水) 01:33:15 df17ZbkU0
投下は以上です
黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ&ランサー(駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武)組でした

戒斗のステータスに関しては、「第二次二次キャラ聖杯戦争」様の候補作を参考にさせていただきました


41 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:06:37 O/iY63TM0
新企画立て、乙です。
拙作ながら投下させていただきます。


42 : その目に映るものは ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:07:54 O/iY63TM0
痛みが、走った。
腹部に、刺すような痛み。
泣きたくなるような痛み。

学術地区の真ん中、登校する生徒も彼女しかいない時間帯に浅上藤乃は佇んでいた。
幼いころから藤乃は痛みを感じない体質だった。
だから痛みを感じるのは、おかしい。
いや、普通の人間は痛みを感じるものだ。
それがおかしいなんて、おかしい。
でも痛みを覚えることはおかしいことで、でも痛みを感じないのはおかしいことで。
矛盾が螺旋して。

それが記憶を取り戻すきっかけだった。

「……やっぱり通じませんね」

携帯電話――記憶を失くしている間はコレがなんなのかすら分からなかった――を取り出し、コールしようとする。
しかし響くのは圏外であることを知らせる虚しい電子音。
この世界ではこうした電子機器を使う文明はほぼ存在していないのだから。

「困りました……」

これでは相手の居場所はおろか、その知り合いの居場所も分からない。
連絡が途絶えたことに男は喜んでいるだろうか。恐々としているだろうか。
だがそんなことより問題は

「聖杯戦争、ですか」

願望器を奪い合う殺し合い。
殺さなければ、殺されてしまう。
ようやく生きる実感を――痛みを――取り戻したのに、終わってしまうのか。
そんなの、イヤ。
長くこの地に留まっては、あの男が罪を暴くべく動くかもしれない。
そうなったら平穏に暮らすことなんてできない。
急いで帰って、殺さないと。
急いで帰るためにみんな殺さないと。
それはとても厭だけど。

「痛ッ…!」

残留する痛み。
それはとても厭だけど、生きていると感じる。
だけど喜悦のなかに耐え難いものがあるのも事実で

「凶れ」

やつ当たり気味に手の中の携帯電話を曲げる。
ここでは無用の長物だ……しかし帰れば有用なものであると壊してから思い至り消沈。
周りに人がいないのを幸いとしゃがみ込む。


43 : その目に映るものは ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:08:52 O/iY63TM0


その頭上を、短刀が通過した。
彼方から黒衣の男が放ったものだった。

「ほう。妙な力があるからとりあえず殺そうとしたが。
 アサシンのサーヴァントの攻撃を避けるとは。褒めてや――ごォッ!?」

言い切る前に、現れた新たな男が一気に距離を詰め上段回し蹴りを見舞う。
それにより吹き飛ばされるアサシン。

「シャババ……ババ、バ…■■……■■■■!!!」

3mはあろうかという巨体。
巌の様な筋肉と肌。
雄々しく反り立つ二本の角。
荘厳さすら感じさせる狂戦士が、浅上藤乃の下へと参じた。

「■■■■■■■■■■■ーーー!」

叫びをあげ、追撃。
狂戦士に相応しいパワー、狂戦士らしからぬ技巧にアサシンは撤退すらできず地べたを這う。
地に伏せた敵を見下ろし、何かを取り出して手にするバーサーカー。
それはダンベルのように見えた。
槌のように扱うのか?と警戒と恐怖を滲ませるアサシンをよそにダンベルを地面に力いっぱい叩きつける。
まるで、私は武器など使わなーい!なぜなら私は己の肉体に絶対的な自信を持っているからだーーっ、とでも主張するかのよう。
それにより石畳が砕け、大地が震え、地下から何かが隆起してくる。

「これは…なんだ?リング……?」

大地の裂け目から現れたのはプロレスのリング。
石畳を叩いたのが合図であったかのようにあらわれ、アサシンはその中央に転がされていた。
慌てて立ち上がると、同時にバーサーカーもリングイン。
勝ち目はないとリングから下りよう、逃げ出そうとするが

「■■■■!」

リングロープをつかみ、投擲。
それが首にかかりまるで引き回しの刑のように、その反動でリング内に戻される。
そしてそれをビッグブーツで迎える。
顔面をつぶされ、あえなくアサシンは息絶えた。

それとほぼ同時にリングの外で駆ける影があった。
アサシンのマスターが声にならない叫びをあげ、藤乃のもとへと走る。
勝ち目のないバーサーカー相手に人質にしようとしたのか。
藤乃からバーサーカーを奪おうとしたのか。
何の意図もないただの突貫か。
その真意は本人のみぞ知るところだが

「凶れ」

藤乃の目に留まった次の瞬間には肉塊となっていた。
その意図したところなど気にも留めず藤乃は己がサーヴァントの下へと歩む。
見慣れつつあるねじ切れた死体を視界の端に収めつつ、見慣れない死にざまの、消えつつあるアサシンの死体に言い知れない感情を覚えながら。


それをバーサーカーのサーヴァント――ガンマン――は眺めていた。
しかしその眼に藤乃は映っても、その思考に影響はもたらさない。

真眼が開けば、見えたのは未来だった。
イレギュラーにより、秩序が乱される未来。
何より憧れた男が変わり果ててしまった未来。
見たくない現実。
まぶたを閉じれば、見えるのは過去だった。
ゴールドマンが、シルバーマンが、何よりザ・マンとともに鍛錬に励んだ過去。
いつまでも見ていたい、夢。

狂い、曇った眼に現実は映らない。
閉じた真眼は輝かしい過去を映している。
それを再び手にしたいと思う心がどこかにあった。
未来を見て、変えようと動いても変わらないなら、過去を見て、変えようと思ってしまった。
怒り、苦しみ、悲しみ、狂い、ガンマンはここにいた。
そして現れたならやることは一つ。
『世界樹』のリングで、完璧超人始祖がすることは一つ。
ド下等どもを迎え撃ち、粛清する。
狂化した男はただそれを決意した。



浅上藤乃の、壊れかけた魔眼にも。
ガンマンの、曇ってしまった真眼にも。
映る景色は、凶々しく、歪に、曲がっていた。


44 : その目に映るものは ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:10:48 O/iY63TM0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
ガンマン@キン肉マン

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A++
(狂化による上昇を含む)

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:C
魔力と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
超人レスリング:A++
超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。
Aランクでようやく一人前と言えるスキルでありA++ランクともなれば宇宙、有史でも上位の達人の域。
リングの上では魔力と幸運を除くステータスが1ランク向上し、スキル:戦闘続行を得る。

神性:C
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
超人の神に僅か十人の同朋の一人として選ばれ、その力の一部を分け与えられた。
粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。
また菩提樹の悟り、信仰の加護、といった神に何らかの形で依存するスキルを打ち破る。

対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。
数億年以上の長きを生き、積み上げた神秘は破格のランクを誇る。

無垢の鍛錬:A
幾億もの年月、ひたすらに己を鍛え上げた戦士の持つスキル。
戦場、精神状態を選ばず鍛え上げた技能を十全に発揮できる。
このスキルによって狂化してなお卓越した技能による戦闘を可能としている。

【宝具】
『真眼(サイクロプス)』
ランク:D 種別:対界宝具 レンジ:0〜30 最大捕捉:視界に収まる全て
ガンマンのただ一つの眼、そのもの。
高ランクの心眼、千里眼スキルは未来視すら可能とするが、そのさらなる上位技能。
視界に収めたものの本心を見通し、変身に準ずる能力を無効化し、未来すら看破する。
サーヴァントのスキルや宝具、真名すら見通す、真名看破すら生ぬるい代物だが、狂化により機能していない。
……しかしガンマン自身は看破した真名や伝承から弱点を突くなどと言うド下等な戦術はもとより好まないため、仮に狂化していなかったとしてもそうした使い方はしないだろう。
さらにこの宝具が機能していないということは、生前彼が目を逸らし続けた真実が本当に見えなくなったということ。
少なくとも今のガンマンはただ一つの嘘も抱えていない。

『完璧漆式奥義・聖なる双角の嵐撃(エルクホルン・テンペスト)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:2人
エルク・ホルンをプロペラのように回転させ突撃し、その硬度と威力で敵をバラバラに引き裂く。
神性、信仰の加護、菩提樹の悟り、およびそれに準ずる神への関わりを持たない者には追加ダメージを与える。
なおガンマンの保持する神性スキルはCランクであるため、菩提樹の悟りなどはBランク以上のものがなければ効果を発揮しない。

現世において下等超人を葬るのに他の奥義に比べて多用したため、ガンマンの究極の一たるフェイバリットフォースとして宝具にまでなった。
突き詰めればただの技でしかないが、ガンマン自身が幻想種に匹敵する年月を積み重ねているため神秘の度合いとしては相応のもの。

『絶対の神器が一、土のダンベル』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
かつて神の地位を捨て、地上に下り立った超人の始祖から贈られた神器。
数億年の時を経て現存し続けた神造宝具であり、秘められた神秘は伝説の聖剣にも劣らない、とてつもないダンベルである。
他に天、地、星など全部で10種類あり、十人の始祖が持つそれを集め、とある祭壇に捧げることで全ての完璧超人始祖は消滅する。

ぶっちゃけ基本的には唯のダンベルであると思うが、神秘はすごいのでこれを使えばサーヴァントをぶん殴ることはできる。
でも多分ガンマンのダンベルだからめっちゃ重いと思う。女の子が振り回すのは無理じゃないかな。


45 : その目に映るものは ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:11:28 O/iY63TM0
『全ての道は完璧に通ず(コロッセウム・オリジン)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
とある世界における歴史の原点はガンマンをはじめとする完璧超人始祖による影響が大きい。
始まりの始祖の像は後に自由の女神をはじめとする像の起こりとなり、かつての拠点は後にピサの斜塔となった。
兄弟弟子のゴールドマン、シルバーマンの道場は金閣寺、銀閣寺として残っている。
ゴールドマンが悪魔となって残した闘技場・処刑場も各地でランドマークの素となった、その逸話の再現。

ガンマンら完璧超人始祖が召喚された時点で聖杯戦争の地におけるランドマークのいくつかにリングが設置されていたことになる、因果逆転・歴史改変宝具。
例えばサグラダ・ファミリアがあったとして、多くの世界でサグラダ・ファミリアは唯の史跡であるが、ガンマンたちの歴史においては完璧超人始祖が人間に暗示をかけて建てさせた教会であり、秘密を探りに来たものを処刑するためのリングもある。
同様に此度召喚された世界樹のランドマークも、いくつかにはリングが元々存在したことになっている。
平常時は普通の施設だが、そこにリングがあると知る者が軽くいじれば容易くリングを出せる。
狂化したガンマンであっても問題はない。

【weapon】
なし。
この世に肉体を駆使してぶちこわせないものはないわーっ!!

【人物背景】
太古の昔に超人界滅亡の際、下界に降り立った神に選ばれ弟子となった10人の 完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン) のひとり。
未来を見通す目である 「真眼(サイクロプス)」 を持っており、その目で 「イレギュラー(普通の超人の枠を超えた力を持つ者)」 が始祖の理想とすべき世界に悪影響を及ぼす未来を見通し、彼らを粛清すべしと神であった男、超人閻魔に長年進言していた。
しかし下等超人の中から完璧超人に選ばれる例があるように、イレギュラーを容認していた超人閻魔からはその進言は尽く却下され、番人である"参式"ミラージュマンには外界に出ることを厳しく禁じられていた。
後に閻魔が粛清に動くと、それと敵対する正義超人、悪魔超人の闘争に乗じ自身も意気揚々と粛清に動き出す。
しかしかつての高潔さを失った師の姿には思うところがあったようで、闘争のさなかでその自分の気持ちに正直になれなかったことで実力を出し切れず敗北。
自慢の角も砕かれ死を迎えた。
最期までその目に映った真実を口にすることはなく、胸に秘めたまま……

神に選ばれた良き超人というには傲慢で粗暴な性格だが、それは苛烈なまでの実直さと世界を憂う気持ちあってのもの。
正直であれ、理想的であれという原理主義に固まってはいるが、その振る舞いには確かな信念がある始祖たるに相応しい超人といえよう。

【サーヴァントの願い】
未来を見通しても変えられなかったのなら、聖杯の力で過去を変える。
そのためにもド下等サーヴァントを蹴散らす。
……それが愚挙だとしても。過ちだとしても。やつ当たりにすぎないとわかっていても。
怒りと悲しみに目を曇らせ、狂気に堕ちた男は止まらない。


【基本戦術、方針、運用法】
正面切っての闘争。
フィジカルに関しては圧倒的なのでそれを生かして戦う……というよりそれしかできない。
あとは精々敵をリングに放り込むくらいだろうか。


46 : その目に映るものは ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:12:31 O/iY63TM0
【マスター】

浅上藤乃@空の境界

【令呪の位置】
下腹部。
歪んだ藤の花と蔓。

【マスターとしての願い】
際立って願いというものはない。
強いて言うなら生きる実感を感じたい、死にたくない。
そのためなら人を殺すのも仕方ない。殺したくないけど、仕方ない。

【weapon】
能力に依存。

【能力・技能】
・歪曲の魔眼
先天的にもつ超能力。
視界内の任意の場所に回転軸を作り、捻じ切る。
右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。
この能力では物質を破壊することは出来るが、概念を破壊することは出来ない。
そして、魔術による防御障壁など彼女の理解を超えたモノも曲げられないとされる。
また藤乃が『これは曲げられない』と認識したものは曲げることが出来ない。
最終的には透視能力にまで覚醒しえるが、そうなった場合視力が大幅に低下する。

藤乃の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。
そのためそれなりの魔力供給も可能となっている。
ただし対魔力に阻まれる欠点ともなっている。

・無痛症
先述の能力を封じるために後天的に施された処置によって得たもの。
しかし脊椎に損傷を受けたことにより不定期に痛覚を取り戻すことになる。
痛みを感じている間のみ歪曲の魔眼は行使できる。


【人物背景】
退魔一族の「浅神」の娘。元々は地元の名士の家柄であったが、没落し、分家の浅上に取り込まれた。
幼い頃から「歪曲」の能力が発現していたが、6歳の頃に父・羽舟にインドメタシン等の大量投与がなされたことによって人為的に感覚を閉ざされ、能力も消える。
以降は小、中、高と優等生で平穏に過ごす。
しかし不良グループに金属バットで殴打されたことで脊椎を損傷、不定期痛覚と能力を取り戻す。(のちにとある魔術師と出会い脊椎はすでに治癒している)
ナイフで刺されそうになった瞬間に能力を行使、不良グループの一人を除いて『凶げて』殺害。
その際に飛び散った血と、患っていた虫垂炎が重なり刺されたと勘違い。
元々彼女は無痛症によって外部の刺激及び自らの身体を感じることができないために、生への実感が無く、感情の抑揚そのものが乏しい。
結果、他者の痛みに共感する形でしか生への実感を得られなかったことで、感覚を取り戻した後は残虐に相手を殺して喜び・快楽を得るという暴走を招く。
魔術師が評する彼女は「死に接触して快楽する存在不適合者」。
彼女自身に殺戮を楽しんでいるという自覚はないが、生き残った不良に対する振る舞いは嗜虐的この上ない。

本編で後に改心はするのだが、現時点の彼女は殺戮を自覚なく楽しんでいる時期よりの召喚。
それらしい理由さえあれば、殺す。
一人しか生き残れない聖杯戦争なら、死なないために殺す。

【方針】
生き残るために皆殺す。
基本はバーサーカー任せだが、マスターが視界に入ったら『凶れ』。


47 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/09(木) 00:14:49 O/iY63TM0
以上で投下終了になります。
あと、悩みましたけどガンマンの属性を秩序・狂ではなく混沌・狂に修正したいと思います。


それから質問なのですが、この世界樹に聖杯戦争のために準備をして臨むことは可能でしょうか?
今のところ巻き込まれ参戦が多いように見えますが、原作でいうケイネスとかバゼットみたいに準備をして挑んでくるマスターの登場話はありでしょうか?


48 : ◆nig7QPL25k :2015/07/09(木) 01:35:07 w4QrloY20
>>47
投下ありがとうございました!
ぅゎ超人始祖っょぃ! ノッケからとんでもないのが出てきたな!
このパラメーターにリング補正までつくとなると、近接戦を挑むのはかなり厳しいでしょうね
サーヴァントの肉体すら凶げられるふじのんは、セコンドとして優秀ですが……果たしてこのタッグがどうなるか

準備をして挑んでくるマスターですが、月の聖杯戦争自体は外界にも知られているので、可とします
しかし既に触れている通り、内部の状況は通常と大きく異なっているので、

            _ ‐、    _,,,,,,,,___
        , ヘ'´  j-<ヽ ,ィ.::::::::::::::::::::`:.、
     _  く,    ヽノ´{´彡}.:::::./从fヘ:::::::::::::.
   ./ /´ヽ  _ ヘ.._こ! 川r' -― '-川7ハ
 /     `ーノ´      ハl   ̄`, {'-、 `リ'
/    、_ ノノ        {j:! , ´ゝ..小  j    思ってたやつと 違う!
      /          }、 `にェァノ ,'
    /ノ-ー,、_ ____/{! ヽ` ーハ/
    /ト、  { l 厂「ヽV  l ヽ ` ーイ、
   / ノハ ハ ヽ ! l  |  ヽ >=’ j l `ト、
    { /  } | |  l  l  厂ヽ⌒V.:〈7く`丶 \
` 、 ´  ノ | | / _  |   ヽ. ∨ o 〉 ヽ  }}
   \´ ノ | |/ └- ニ -、_   |  /___ 、 j |

となることは間違いないと思われます


49 : ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:19:29 xe42tSCA0
投下させていただきます


50 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:19:49 xe42tSCA0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 その人が力を求めた、最初のきっかけは憧れだった。
 燃える炎に囲まれた中から、救い出してくれた恩人のように、強くなりたいと願ったからだ。
 魔法の力を身に付ければ、あんな風に、誰かのために戦えるかもしれない。
 呪われた兵器の体でも、あの人のようになれたなら、誰かのために役立てられるかもしれない。
 少女は憧れた背中を追いかけて、誰かを守れる力を欲し、そして遂に夢を叶えた。

 彼女は自分の願いを形にするため、災害救助の現場に立った。
 彼女は大勢の人を救うため、常に危険な現場へと飛び込み、救いの道を切り拓いていった。
 そうして彼女は多くの人を、その手で救い続けたけれど、時にはそれが叶わないこともあった。
 尊い成果のその影には、間に合わず手遅れになってしまった人々が、同じくらいに大勢いた。
 彼女は犠牲に向き合うたびに、悲しみ、涙し、自分を責めた。

「『助けたかった』って思ってる。だから、ここで一人で鍛え直してるんだ」

 それでも、彼女は立ち止まらなかった。
 犠牲から目を背けて現場を離れれば、見たくないものを見ずに済む。
 だとしても、そうして助けられたはずの命すらも、見捨てて死なせてしまうことの方が、もっと辛くて許せない。
 自分が傷を負うことよりも、誰かが傷つくことを恐れた彼女は、きっとそう考えて踏みとどまっていた。
 それはどちらを選んでも、己を傷つけることしかできない、呪いのようなものだったのかもしれない。

「うんと鍛えて、もっと速く、もっと強くなれれば、きっともっと助けられる」

 彼女にとって幸福だったのは、そんな彼女を慕う友や、家族達に囲まれていたことだ。
 彼女もそのことを理解し、大切な仲間達に感謝していた。
 だからこそ心配をかけさせまいと、自分の傷を隠し続けた。
 今にも泣きそうな笑顔を浮かべて、強がった言葉を口にしていた。

「助けてって泣いてる人を、ちゃんと助けてあげられるから」

 義務感による自己犠牲は、遠回しな自殺衝動に近い。
 そんなことを言われたことがある。
 きっとその時の私の顔も、夢の中のあの人のものと、同じように見えていたのかもしれない。


51 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:20:36 xe42tSCA0


 ジェットエンジンの音が聞こえる。
 マフラーのはためく音が聞こえる。
 ウルズの泉から引かれた水路を、一直線に突き抜ける、オレンジ色の人影がある。
 月下に爆音をかき鳴らしながら、水しぶきを盛大にぶち上げながら。

「うぉおおおおーッ!」

 立花響は戦っていた。
 神話の装束・シンフォギアを纏い、調べを奏でながら戦っていた。

「りゃあッ!」

 加速から拳を叩き込む。
 魔力が弾け光が煌めく。
 防御の魔法陣を展開したのは、敵サーヴァントを従えるマスターだ。
 高位の魔術師であるらしい。神の携えた撃槍(ガングニール)の拳を、受け止め防ぐほどの手練だ。

「ぎゅっと握った拳、1000パーのThunder……ッ!」

 言葉を紡ぐ。
 歌を唱える。
 シンフォギアは音楽の鎧だ。
 装束が演奏する音に合わせ、心に湧き上がる歌を歌うことで、その真髄を発揮するのだ。

「3ッ! 2、1、ゼロッ!」

 防御を弾く。
 追撃を放つ。
 神秘の力を拳に乗せて、次々と攻撃を叩き込む。
 熱を纏った響の拳と、敵マスターの盾の衝突が、宵闇にいくつもの光を散らせた。

「何故私、でッ!?」

 はっと気配を感じ取った。
 条件反射的に構えを取った。

「なくちゃ――ッ!」

 瞬間、響の体は吹き飛んでいた。
 防御を無視するほどの衝撃が、サッカーボールのシュートのように、オレンジ色の肢体を弾いたのだ。
 苦悶に顔を歪めながら、衝撃の飛んできた方を見る。
 マスターとは異なるもう1つの影が、こちらに向かって突っ込んでくる。
 神々しい槍を携えたのは、敵の操るサーヴァントだ。
 槍の聖遺物を持つこの身が、初戦でランサーと相対するとは、皮肉と言うべきかなんとするべきか。


52 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:21:18 xe42tSCA0
「道無き道ッ!」

 このままではやられる。態勢を立て直して迎え撃たなくては。
 腰のジェットを勢いよく噴かせ、減速と同時に姿勢制御。
 地についた足からパワージャッキを打ち込み、直立の姿勢で強引に固定。

「答え、はッ!」

 迫り来る英霊の手首を、掴んだ。
 一瞬のタイミングを見極め、敵をその手に捉えたのだ。

「なぁぁぁぁーいッ!」

 直前に拘束は解いている。両足はフリーの状態だ。
 敵の勢いに乗せたまま、響は水面へと倒れこんだ。

「っ!」

 柔道の巴投げという技だ。
 敵サーヴァントは勢いを利用され、そのまま思いっきり投げ飛ばされた。
 ざばっと水の音が鳴る。膝までの高さの水路へと、沈んだ響が上体を起こす。

「キャスターさんッ!」

 呼んだのは己の相棒の名前だ。
 さながら影から飛び出すように。
 立花響の声に呼応し、背後から現れたのは女性の姿だ。
 たなびくものは白い鉢巻。月光を浴びるのは純白の装束。
 青いショートヘアの下で、エメラルド色の双眸が、姿勢を崩したランサーを睨む。

「おぉりゃあああっ!」

 クラス・キャスター――魔術師の称号。
 しかしそれとは裏腹に、響のサーヴァントの武器は、マスターと同じ鉄拳だった。
 唸りを上げる漆黒の手甲が、風を切り裂く一撃となって、ランサーを水路へと叩きつけた。

「チッ!」

 敵マスターが舌打ちをする。
 苦々しげな顔をしながら、魔力の光弾をキャスターへと放つ。
 しかし、無駄だ。届かない。キャスターが立ち上がるよりも早く、響が前に出て弾き落とした。

「リボルバーシュート!」

 その背後から更に飛び出し、キャスターが拳を突き出した。
 どうっと光弾が放たれる。今度はキャスターの攻撃の番だ。
 紙一重でマスターがかわし、青い流星の着弾点に、盛大な水しぶきが上がった。
 キャスターが響より前に出れば、必然背面をランサーに晒す。
 ランサーが立ち上がる前に、その死角をカバーするように、響が向き直って構えを取る。
 青とオレンジの2色の影。
 拳を構え背を合わせるのは、マスターとサーヴァントのペア同士。
 背後から指示を出すべき主君が、従者と背中を預け合っているという、奇妙な光景がそこにはあった。
 さりとて両者の表情は、それが当然と言わんばかりに、燃える戦意に満ち溢れていた。


53 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:21:49 xe42tSCA0
「ッ!?」

 その時だ。
 不意に異変が起こったのは。

「ぐ、ぁ……ッ!?」

 呻きと共に、水音が鳴る。
 くわと両目を見開いた響が、崩れ落ちて膝をつく。
 半身まで浸かった響の体が、強く光を放ち始めた。
 それは神秘的というより、むしろ魔的と評すべきものだ。
 爆弾の導火線の火が、一層その激しさを増して、火薬へと迫らんとするような光だ。

「!? ひび……!」
「ぁあああああああーッ!」

 瞬間、響は絶叫していた。
 キャスターが声を上げるより早く、より強い光と共に叫んでいた。
 ごきん、ばきん――と異音が鳴る。
 硬質な音を伴いながら、オレンジ色のスーツを破り、内側から現れたものがある。
 響の体から生じたものは、黄金色の結晶だ。
 水晶が岩場から覗くように。
 寄生虫が体内から、宿主の体を食い破るように。
 少しずつだが確実に、響の体を金色の石が、じわじわと覆い始めていく。

「いけない……!」

 それが危険な状態であることは、誰の目に見ても明らかだった。
 最初に行動を起こしたのは、傍らに立っていたキャスターだ。
 敵が隙に付け入ろうとする前に、響に向かって手を伸ばす。

「ぐっ……!」

 じゅうっ、と焼ける音と共に、女の顔に苦悶が浮かぶ。
 高熱を発する響の体を、それでもと左手で抱え込んだ。

「ディバイン……バスタァァァーッ!」

 空いた右手が放つのは、極大まで高められた魔力の波動だ。
 どうっ――と音が鳴り響き、水路の水が爆裂した。
 自らの足元に向けられた、魔力の光線が炸裂し、飛沫と粉塵を巻き起こしたのだ。
 キャスターは技の勢いで、遥か上空へと吹き飛ばされる。
 敵は闇へと飲み込まれ、ターゲットの逃走を見失う。

「しっかりして、響! すぐに変身を解いて!」

 闇が晴れるまでが勝負だ。キャスターは主へと声をかけながら、空中で身じろいで着地点を探った。


54 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:22:24 xe42tSCA0


 最近、腕や足が太くなってきた気がする。
 体脂肪が増えたわけではない。流線を描くシルエットは、筋肉の発達によるものだ。
 女子としてどうなのだろうとは思うが、人助けという使命を果たすためには、必要な鍛錬だったと断言できた。

「すみません、キャスターさん……」

 学術区画に存在する、ハイスクールの学生寮。
 その自室のシャワールームで、熱い雫を浴びながら、響は室外のサーヴァントに言った。
 汗を流すためにと勧められたが、今は湯船に湯を張って、ゆっくりと体を預ける気分にはなれなかった。

「いいよ。それよりも、無事に済んでよかった」

 ガラス戸越しに聞こえてくるのは、年上のお姉さんの優しい声だ。
 伝説の英霊と言われている割には、響に与えられたキャスターは、随分とフランクなキャラをしていた。

「にしても、あんなに早く進むなんて……」
「あんなに? まさか響、ああなることを知ってたんじゃ……」
「わぁッ! すす、すみませんッ! 面目ないですッ!」

 口を滑らせた響の言葉を、目ざとく聞きつけたキャスターが、ドアを開けジト目で響を睨む。
 裸身をビクリと跳ねさせながら、響は上ずった声を上げ、必死に謝罪の言葉を並べた。

「……まぁいいや。それよりも、あの現象のことを知っているなら、そのことを詳しく教えて」

 ため息をつきながら、キャスターは身を引っ込めると、シャワールームのガラス戸を閉めた。

「分かりました」

 立花響は病気だった。
 彼女の纏うシンフォギアは、通常のそれとは大きく異なり、体と融合したものだ。
 それが許容限界を超え、遂に宿主である響の体を、逆に取り込もうとし始めた。
 このまま融合が進行すれば、響はシンフォギアの一部と成り果て、命を落としかねないのだという。

「ただ、前にもああいうことはあったんですけど、あんなに早くってことはなかったはずなんです」

 思い返すのは、テロ組織・F.I.Sの科学者――ウェル博士と対峙した時のことだ。
 あの時にも体に不調は感じたし、事実倒れるところまでいってしまったのだが、それまでにはもっと猶予があったはずだ。
 ましてや体内のガングニールが、結晶化するまでの現象は、その時には発生してすらいなかった。
 異変が出るまで猶予があるなら、劣勢だったキャスターの、力になれるかもしれないと思い変身したのだが。


55 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:23:46 xe42tSCA0
「……響はさ、ユグドラシルの名前の由来って知ってる?」

 思案する響に対して、キャスターが尋ねた。
 神話に出てくる名前だったはずだが、あいにくとそちらには詳しくない。響はすぐに否定する。

「ユグドラシルっていうのは、響の世界の、北欧神話ってものに出てくる、大きな樹の名前なんだ。ちょうど、この街のある樹みたいな」

 これはあたしも、英霊の座についてから知ったんだけどね、と付け足しながら、キャスターが言った。

「その神話に出てくる、オーディンっていう神様が、ユグドラシルの枝を折って、1本の槍を作ったの」
「1本の槍って、まさか……」
「そう。槍の名前は……グングニル」

 グングニル。
 すなわち、撃槍・ガングニール。
 響のシンフォギアの元となった、古の聖遺物の名前だ。
 さすがにその名前は知っていた。だからこそ響の双眸は、驚きに大きく見開かれた。

「この樹がそのユグドラシルと、同じものなのかは分からない……
 でももし、そうだったとしたら、響の中のガングニールが、その本体と共鳴して、元に戻ろうとしているのかもしれない」
「私の体から自由になって、樹と一つになろうとしてる、ってことですか?」
「ユグドラシルそのものも、ガングニールを求めてて、引き寄せているのかもしれない」

 昔の劇には、枝を失った傷がきっかけで、ユグドラシルが枯れてしまったって謳っているものもあるからと。
 未だ仮説に過ぎないが、そういう可能性もあるかもしれないと、キャスターは響に対して言った。
 もちろん証拠などないが、ガングニールの急激な活性化の理由としては、納得のできる話はあった。

「……まぁ、そういうわけだから。響は今後変身禁止。戦いはあたしに任せて、無理をしないようにしててね」
「でっ、でも……ッ!」
「響には助けたい子がいるんでしょ? だったらこんなところで無理して、倒れるわけにはいかないよね?」

 それを言われると返す言葉がない。
 キャスターに対して、響は、困り顔で沈黙するしかなかった。
 響には助けたい者がいる。
 F.I.Sに捕らえられた友人――小日向未来を救いたいという願いがある。
 そのためには本当であれば、こんな所で足踏みはできない。
 だが、もしも聖杯を手に入れることができれば、ガングニールの過剰融合を、その力で抑制できるかもしれない。

(私の勝手な願いのために、誰かを傷つけるなんてことは、許されないとは思うけど……)

 未だ戦うことに迷いはある。
 できることなら、穏便な形で、片付けられないものかとは思う。
 それでも言えることは一つある。
 他のマスターは、そんな迷いなどお構いなしに、響を潰しに来るということだ。

(それでも、生きることだけは諦めないから。待ってて、未来)

 むざむざ殺されるつもりはない。
 仮に聖杯を諦めるとしても、生き延びることまでは諦められない。
 必ずこの戦いを生き抜き、元の世界へと戻ってみせる。
 そして未来を救い出し、この胸に抱き止めてみせる。
 シャワーに濡れた右の拳を、ぎゅっと強く握り締めた。
 手の甲に刻まれた令呪が、赤い彩りを放っていた。


56 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:24:28 xe42tSCA0


 響が風呂から上がり、敵を振り切ったことを確認して。
 そして多めの夕食を済ませ、疲労を溜め込んだ響が、早々にベッドへと倒れこんで。

「どう思う、マッハキャリバー?」

 食卓の椅子に腰掛けたキャスターが、胸元のペンダントへと問いかけた。

『魔力の量は相当なものです。体内に融合しているというガングニールが、結果として相棒への魔力の供給源となっています』

 明滅する青水晶が言葉を発した。
 キャスターの宝具――『進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)』は、意志を持ち言葉を話す宝具だ。
 科学テクノロジーによって制御された、キャスターの世界の魔術の象徴。
 AIを有し、自らの意志で術者をサポートする、インテリジェント・デバイスである。

「そうじゃなくて、どういう人間かってこと」
『生前の相棒に、よく似ていると思いました』
「……やっぱ、そうだよね」

 言いながら、キャスターはため息をつくと、椅子の背もたれにもたれかかった。

(あの子の在り方は、きっとあたしと同じだ)

 ベッドで寝息を立てる響を思い、キャスターは思考を巡らせる。
 マスターがどういう人間なのかは、魔力バイパスを介して、ある程度把握させられていた。
 怪物事件に巻き込まれ、異形の力をその身に宿し、奇跡的に生き残った少女。
 他の人間を踏み台にしたと、謂れのない迫害を受け、生きることに罪悪を覚えた少女。
 喪われた命に報いるためにと、せめて人助けをしなければと、強迫観念に囚われた少女。

(細かい部分は違うけど、おおよその部分は、よく似ている)

 それはキャスターの半生と、鏡写しのようだった。
 呪われた兵器の体で生まれ、その力を災いと見なして、誰かを傷つけることを恐怖した己と。
 殺戮のために与えられた力も、人助けのために使えるのなら、意味があるはずだと考えた己と。
 自己犠牲の傷を身に受けて、それでも救えなかった犠牲の重みに、心まで傷つけ続けた己と。

「でも多分、あの子はまだ大丈夫」

 あたしが仲間達のおかげで、救われて踏みとどまったようにと。
 今の彼女の様子なら、取り返しのつかないような事態を、未然に防ぐこともできると、言った。
 響の歪んだ自己犠牲は、仲間によって諌められ、なりを潜めたのだそうだ。
 風呂を出た後の様子を見る限りでも、生き残り元の世界へ帰ることについて、前向きに考えているように見える。

「だったらあたしが頑張って、無事に送り届けてあげないとね」

 キャスターのサーヴァント――その真名を、スバル・ナカジマ。
 機械の体を持って生まれ、人殺しのために与えられた力を、人助けのために振るった女。
 多くの人々の命を救い、救世主とまで謳われた、生まれながらのレスキューフォース。
 ぎゅっと右手の拳を握り、決意を固めた彼女の仕草も、響と瓜二つのものだった。


57 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:24:54 xe42tSCA0
【クラス】キャスター
【真名】スバル・ナカジマ
【出典】魔法少女リリカルなのはForce
【性別】女性
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:C+ 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
陣地作成:C
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 小規模な”工房”の形成が可能。

道具作成:D
 魔力カートリッジなど、魔術的な道具を作成する技能。

【保有スキル】
戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

振動破砕:C
 戦闘機人・タイプゼロセカンドのIS(インヒューレント・スキル)。
 四肢を超速振動させ、破壊力を向上させることができる。
 発動時には打撃攻撃力に補正が生じ、特に無機物に対しては、その補正値が2倍となる。

地形適応:C
 特殊な地形に対する適応力。
 戦闘機人の頑丈な肉体と、レスキュー仕込みの技術により、複雑な地形や火の海でもポテンシャルを発揮できる。

自己改造:E
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 スバルは自分自身の肉体を改造することはできないが、戦闘機人としての出自から、このスキルを保有している。


58 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:25:40 xe42tSCA0
【宝具】
『進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 スバルが魔術を行使する際に触媒とする、ローラーブレード型のインテリジェント・デバイス。
 並外れたスタミナを持つスバルの体質に合わせてチューンされており、燃費を食う分高い出力と強度を実現している。
 スバルとマッハキャリバーのAIとの絆は深く、グリップ制御や足場形成のタイミングなど、
 一部の判断をAIに委ねており、状況に応じた高い対応力を発揮している。
 更にフルドライブ「ギア・エクセリオン」時には、瞬間突撃システム「A.C.S」を展開。
 更なる加速力を得ると同時に、魔力・戦闘機人エネルギーの同時発動も可能となる。
 魔力の使用効率を向上させるための宝具であり、これ自体が特別な性質を持っているわけではない。

【weapon】
リボルバーナックル
 スバルの右前腕に装着される、グローブ型のアームドデバイス。『進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)』発動時に、同時展開される。
 スバルの攻撃の要であり、同時に魔力カートリッジの運用を受け持っている。AIは搭載されていない。
 魔力や衝撃波を発する補助装置として、「ナックルスピナー」と呼ばれるタービンが搭載されている。

ソードブレイカー
 スバルの左前腕に装着される、長手袋型の装備。『進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)』発動時に、同時展開される。
 「格闘戦技使用者向けの防衛装備」とされており、装備者のエネルギーを体内循環させることで、防御力を効率的に高めることができる。
 更には、スバルの振動破砕をチューニングすることによって、敵の武器を破壊し、武器攻撃に対する迎撃効率を高めることが可能。

【人物背景】
時空管理局員で、ミッドチルダの港湾警備隊防災課特別救助隊セカンドチームに所属する防災士長。21歳。
コールサインはソードフィッシュ1。
ソードフィッシュ隊の分隊長を務めているが、これは単独行動をしやすくするための措置であり、事実上のワンマンアーミーである。
優れた身体能力と魔力は、「人命救助のために生まれ育った」とすら称されている。
純粋な人間ではなく、生まれつき機械改造を施された「戦闘機人」であり、要するにサイボーグである。

明るく社交的な性格で、誰とでも打ち解けることができる。
10代の頃にはやんちゃな側面もあったが、現在はやや落ち着いており、面倒見のいいお姉さんといった様子になっている。
一方、元々は気弱で臆病な性格だったこともあり、精神的な打たれ弱さは、未だに尾を引いている部分がある。
そのため、レスキューの現場で助けられなかった人間に対する後悔の念は強く、犠牲が出る度に無力感を覚えている。
おまけにそうした苦しみを、あまり人には見せず1人で抱え込もうとするため、かえって周囲を心配させてしまうことも。
人が傷つくくらいなら、自分が代わりに傷つくことで、その人を守ることを選ぶタイプ。
表向きには切り替えは早い方であり、後悔をバネに更なる研鑽を積み、1人でも多くの人を助けられるよう努めている。

格闘技法「シューティングアーツ」を駆使した、近接戦闘型の魔導師で、特に打撃のパワーに優れる。
魔力により肉体を強化し、一気呵成に攻め立てるスタイルを取っている。キャスターらしからぬ殴り型サーヴァント。

【サーヴァントとしての願い】
響を支えたい。聖杯を自分で使うのではなく、響に使わせてあげたい

【基本戦術、方針、運用法】
魔術のほとんどを身体強化に割り当てている、珍しいタイプのキャスター。
使用可能な技やステータスも、前衛型のものになっているが、さすがにセイバークラスには力負けしてしまう。
陣地作成を活用することで、ステータスを補えるように立ち回りたい。


59 : 立花響&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:26:40 xe42tSCA0
【マスター】立花響
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
ガングニールの過剰融合を抑えたい

【weapon】
ガングニール
 北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。通常のシンフォギアと異なり、響の肉体と融合している。
 本人の潜在意識により、アームドギアは具現化せず、四肢のパワージャッキを活かした格闘戦を行う。

【能力・技能】
融合症例第一号
 シンフォギアと人体が融合した状態を指す。
 起動や運用方法については、通常のシンフォギアと変わらないが、
 聖遺物のエネルギーが直接人体に行き渡っていることもあり、通常以上の出力や回復力を発揮している。
 しかし現在はその融合が、必要以上に進行してしまっている。
 その分出力は高まっており、下級のサーヴァントにすら匹敵するものになっているが、
 反面変身状態を維持し続ければ、逆にシンフォギアに同化・吸収されてしまうというリスクを孕んでいる。
 更にこの聖杯戦争の舞台においては、その速度が加速しているようだが……?

シンフォギア適合者
 神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
 本人には元より適合する資質があったのだが、現在はシンフォギアと融合しているため、あまり重要なスキルではない。

格闘術
 師匠・風鳴弦十郎の下で磨き上げた格闘術。
 元々弦十郎の格闘術自体が、映画のアクションシーンを模倣・再現したものなので、特定の流派に依るものではない。
 ボクシング、ジークンドー、果ては中国拳法の八極拳まで、様々な拳法のスタイルがごちゃ混ぜになっている。

【人物背景】
「私は立花響、16歳ッ!
 誕生日は9月の13日で、血液型はO型ッ! 身長はこの間の測定では157cmッ!
 体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげるッ! 趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはんッ!
 後は……彼氏いない歴は年齢と同じッ!」

特異災害対策機動部二課に協力する、第3号聖遺物・ガングニールのシンフォギア装者。
2年前のツヴァイウィングのライブに際し、胸に聖遺物の破片を受け、融合症例第一号となる。
その後は誤解から迫害を受け、心にも深い傷を負ったが、
友人・小日向未来の献身もあり、反対に「人のぬくもり」の尊さを知ることになった。

かつてのトラウマは乗り越えており、底抜けに明るく元気な性格。
困っている人を放っておけず、率先して誰かの助けになろうとするタイプ。
しかしその性質は、ライブ会場で他の犠牲者の代わりに生き残ってしまったという認識に端を発しており、
戦いから遠ざけられた時には、反動で強い無力感に囚われてしまう。

【方針】
聖杯に魅力は感じるが、そのために聖杯戦争に乗るのが正しいのかどうかは悩み中。
それでも生きることだけは諦めない。敵が襲ってくるのなら立ち向かう。


60 : ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 00:27:46 xe42tSCA0
投下は以上です
立花響@戦姫絶唱シンフォギアG&キャスター(スバル・ナカジマ@魔法戦記リリカルなのはForce)組でした

両名のステータスは、「第二次二次キャラ聖杯戦争」様の登場話を参考にさせていただきました


61 : ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:12:15 xe42tSCA0
投下をさせていただきます


62 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:12:41 xe42tSCA0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 果たしてそれは人だったのか。
 正直なところ、そのあたりは、自信を持って断言できない。
 それの辿った道筋は、戦いと支配を繰り返す覇の道だった。
 銀河の星々を渡り歩き、数多の文明を支配下に置いて、宇宙を紫色に染めていった。

 機械。
 機界。
 奇機怪械。
 それが訪れた場所に溢れるものは、からくり仕掛けの冷たい軍勢。
 それが通り過ぎた後に広がるものは、静寂に満ちたからくりの星。
 鉄が、鋼が、ブリキの波が、全てを取り込み蹂躙し、静寂な世界を作り上げていく。
 紫色の暗い波動が、宇宙の全てを飲み込んで、冷たい機械へと変えていく。

「――人の心に呼応し、歌とすることで力を成す。興味深いシステムだ」

 誰かの声が聞こえてくる。
 遠い彼方から聞こえるような。あるいは脳内で響くような。
 そんな不思議な誰かの声を、私はぼんやりと感じている。

「緑の星のテクノロジーと、類似した性質を持ったシステムを、よもやこの星の人間が生み出しているとは」

 瞳を覗く機械のレンズ。
 手足に絡みつく機械のケーブル。
 恐ろしい悪夢の続きのような、あるいは現実で続いているような。

「ならば心弱き者よ……我が力を授けようぞ」

 この声は夢?
 それとも現実?


63 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:13:07 xe42tSCA0


「ひっ、ひぃぃ!」

 上ずった悲鳴を上げながら、逃げ回る1つの影がある。
 その手に刻み込まれているのは、赤い三画の令呪だ。
 それはこの無様な男が、聖杯戦争を戦っている、マスターの1人であることを物語っていた。

「ゾンダァァ……」

 その男を追いかけるのは、無数の異形の群れだった。
 意味不明なうわ言を呟き、するりするりとした不気味な挙動で、マスターを追い詰める軍団だった。
 光沢を放つ紫の肌は、金属か何かでできているのだろうか。
 ぎょろりとした赤い双眸が、夜の闇夜にぎらりと光り、それらのおぞましさを倍増させていた。

「なんっ、何でこんな……」

 初めは楽勝だと思っていた。
 彼と彼のサーヴァントが、獲物に定めたマスターは、見るからにか弱い少女だった。
 しかし戦いが始まった瞬間、突如として周囲一体に、この怪物達が姿を現したのだ。
 自身の召喚したサーヴァントは、自分を戦場から逃がそうとして、結果こうしてはぐれてしまった。
 どれだけ距離が離れたのか。そもそもこの場所はどの辺だったか。もはやそれすらも判然としない。
 恐怖心が冷静さを奪い、令呪でサーヴァントを強制転移させるという、単純な対処法すらも思いつかせない。

「――屈折、壊レタ愛。慟哭、傷ンダ愛」

 その時、聞こえた声があった。
 いいや音楽に乗ったそれは、ただの言葉の羅列ではなかった。

「終焉、Lalala 歌を。Lalalala、歌を」
「う……歌……?」

 それは女の歌だった。
 不気味な旋律に乗せて響いた、感情を押し殺したような歌声だった。
 芸術の一つである音楽にしては、それはあまりにも機械的で、あまりにも非人間的な歌だった。

「混沌、失クシタ夢。煉獄、笑顔ノ夢」

 歌の聞こえる方を向けば、そこには白く光る月。
 それを背負って宙に浮く、紫色の人影があった。
 華奢で色白な体に、無骨なアーマーを身に纏った、少女の姿がそこにあった。

「ひっ、ひぇえええ!」

 ひと目で分かった。あれは敵のマスターだ。
 顔こそバイザーで覆われていたが、そこから覗く髪型は、間違いなくあの少女のものだった。
 まずい。狙われている。殺されてしまう。
 異形の軍団に囲まれ、天から主の視線を受けて、いよいよ男は腰を抜かした。
 がくりと音を立てるように、石畳の上にへたり込み、這うようにして後ずさった。

「ゾンダァァー!」
「やっ! やめっ、やめてくれぇええっ!」

 異形の群れが襲いかかる。
 金属の怪物が取り付いてくる。
 手が足が、胴体が、次から次へと取り押さえられ、体が群れの中に埋もれていく。

「如何シテ、如何シテ……何処ヲ間違エタノ――?」

 最後に男が目にしたものは、天より注ぐ光だった。
 怪物の隙間から見たものは、後光を背負って光を放つ、紫の少女の姿だった。
 焼けつくような奔流が、怪物達を飲み込んだ時、男の意識は光に包まれ、光の白へと溶けこんでいった。


64 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:13:39 xe42tSCA0


 学術地区に程近い、北西の住宅街の片隅。
 そこがマスター・小日向未来が、陣地として選んだ場所の入り口だった。
 自らの行動半径の中に、陣地を置くという行為が、正解か間違いかは分からない。
 不審な行動を悟られにくいとも、身辺を調べらればすぐ足がつくとも取れる。

「………」

 それでも、それらの杞憂は未来にとって、何ら意味のないことだった。
 何故なら彼女のサーヴァントの陣地は、地上には存在していないのだから。
 彼女の召喚したキャスターは、地下――正確には世界樹の内側に、自らの陣地を築いたのだから。

(不気味な場所)

 不快感に顔をしかめる。
 かつんかつんと音を立て、明滅する明かりを頼りにしながら、未来は地下道を進んでいく。
 床には無数のチューブが顔を出し、ひんやりとした壁からは、時折生ぬるい排気が吹き出す。
 鉄と機械が生き物のように、無秩序にのたうち象られた、無機と有機の交じり合う場所。
 ここが世界樹の内側だとは、誰も信じられないだろう。

「マスターを1人、倒してきたわ」

 やがて未来は地下道を抜け、開けた広間へとたどり着いた。
 紫色のケーブルや歯車が、そこかしこに広がる空間で、少女は声を張り上げて言った。

「ご苦労だった。本来なら私が担うべき役目を、よくぞ達成してくれた」

 薄暗い広間に声が響く。
 闇の中から湧き上がったのは、低くおどろおどろしい声だ。
 含蓄ある老人の声とも、機械のシステムボイスとも取れる、老獪さと無感情さの混じり合った、奇怪な響きの声色だった。

「これで本戦への道が開かれる……そうよね?」

 よく言う。
 そんな声音で労われても、感謝など微塵もしていないことは、誰の耳にも明らかだろうに。
 少し苛立った声で、未来が尋ねた。

「それは正確な表現ではない。我らは本当の戦いへ、一歩近づいただけに過ぎない」
「同じよ。今頃他のマスター達も、同じような考えを持って、他のマスターと戦っているはず」

 全てのマスターが潰し合えば、半数の駆逐は達成される。
 それで本戦の開催条件は達成だ。揚げ足を取るなと、未来が言った。


65 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:14:19 xe42tSCA0
「ゆめゆめ油断せぬことだ。私は未だ完全ではない。自ら動くことは出来ぬ」

 その言葉と共に、光が走った。
 広間の暗い天井に、閃光を伴い像が映った。
 巨大な円形のモニターに、姿を現したのは、顔だ。
 ブリキ細工で象られ、血管のようなチューブを生やした、恐怖すら煽る不気味な顔だ。
 これこそが、小日向未来のサーヴァント。
 この映像を投影する者――この周辺一帯の機械全てが、未来の召喚した魔術師(キャスター)だ。
 未来のサーヴァントの陣地とは、途方も無いスケールを有した、キャスターの体そのものなのである。

「分かっているわ。この樹のエネルギーを掌握するまでは、私と宝具の力で戦う……そうでしょう?」
「その通りだ。無闇に沈黙していては、探りを入れられるかもしれぬ」

 お前には他のマスターを撹乱し、己から目を逸らしてもらうと、キャスターは自身のマスターへと言った。
 要するに、未来は囮なのだ。
 宝具でNPCを洗脳・支配し、自らは神獣鏡のシンフォギアを纏って、派手に目を引くピエロなのだ。
 これではまるであべこべだ。まるでマスターであるはずの未来が、しもべにこき使われているようではないか。

「分かったから早くしてちょうだい。私も多分、そんなには長く待てないから」

 言いながら、未来は踵を返すと、来た地下道を引き返していった。
 不満はあるし、不安もある。
 ウェル博士から制御薬をもらい、無理矢理定着させたシンフォギアも、どれだけの間使えるかは分からない。
 宝具の力で怪物化させた、NPCの軍団に関しても、1体1体はそれほど強くはないのだ。

(でも、我慢よ。ここは耐えるの)

 それでも、見返りは用意されている。
 巨大な体を有しながら、自らは動くことができず、戦闘能力を持たないサーヴァント。
 未来が引き当てたキャスターには、それだけのリスクを背負ってもなお、余りあるだけの切り札がある。
 奴がフィールドを侵食し、この魔術都市の――世界樹の力を、我が物として取り込んだ時。
 その時こそ未来のサーヴァントは、規格外の力を有した、最強最悪の魔神として覚醒するのだ。

(何があっても、うつむかないから。だから待っててね、響)

 小日向未来の願いは一つ。
 己の親友・立花響が、二度と戦わなくてもいい世界だ。
 無垢な少女に血を流すことを強いる、この狂って歪んだ世界を、壊してまともに作り変えることだ。
 そのためならこの程度の綱渡り、見事に渡りきってみせる。
 どれほどの障害が立ちはだかろうと、必ず乗り越えて勝ち残ってみせる。
 強く握った左手に、彼女の暖かさが宿っていると信じた。
 あの時握れなかった左手を、今度こそ掴み取ってみせると、未来はその胸に固く誓った。
 左手の甲に宿る令呪は、血のように赤く彩られていた。


66 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:14:47 xe42tSCA0


(経過は順調か)

 誰もいなくなった広間で、それは一人思考する。
 正確にはその場でとは言えない。キャスターのサーヴァントの肉体は、己が陣地と共にある。
 つまり広間だろうが通路だろうが、キャスターはどこにでもいるのだ。
 己が肉体のどこかしこもが、己が意識の居場所なのだ。
 Extra-Intelligence-01。
 キャスターのサーヴァント・パスダー。
 遥か異星の技術より生まれた、機界生命体・ゾンダー――その一帯を率いたゾンダリアンは、そういう類の存在だった。

(ダイレクトフィードバックシステムと、我がゾンダーメタルの同調は、滞りなく機能している)

 パスダーの宝具、『機界結晶(ゾンダーメタル)』。
 それはNPCに埋め込むことで、その身をゾンダー化させる魔の結晶。
 本来はマスターに対して使っても、令呪が帯びた魔力によって、ゾンダー化を阻まれてしまう物だった。
 せいぜいできることと言えば、ゾンダーの本来の目的である、ストレスの解消へと意識を誘導する程度に過ぎない。
 しかし彼のマスター・小日向未来は、その身に興味深いものを宿していた。
 神獣鏡のシンフォギア――その機能の一環として取り付けられた、ダイレクトフィードバックシステムだ。

(心弱き者も存外、卑劣な兵器を作るものだ)

 事前にプログラムした情報を、脳内に投影することで、それを認識させるシステム。
 戦術を高速学習するために組み込まれたものであり、同時に都合のいい情報を流し込む、洗脳装置としても使えてしまうものだ。
 パスダーはそれに目をつけた。
 不意打ちで未来を昏睡させて、その肉体に『機界結晶(ゾンダーメタル)』を埋め込み、ダイレクトフィードバックシステムと同調させた。
 汝を苦しめるものを排除すべし。
 汝が憎むものを消し去るべし。
 『機界結晶(ゾンダーメタル)』の誘導は、人の生み出した器によって、より強固な命令へと変わる。
 今現在の小日向未来は、自らの意志によって動いているのではない。
 パスダーの心理誘導によって、進むべきレールを決められて、それに沿って歩いているだけに過ぎないのだ。
 『機界結晶(ゾンダーメタル)』を渡されて、人々を操っているようで、結局は自分自身が操られている――そんな哀れな人形なのだ。

(その身と力、存分に使わせてもらうぞ……機界昇華の達成のために)

 機界生命体であるパスダーにも、叶えたいと願う夢がある。正確には達成すべき目標がある。
 それは全宇宙の機界昇華――宇宙全てを自らと同じ、ゾンダーへと変異させることだ。
 かつてその野望は砕かれた。自らの本体であるZマスターは、緑と赤の星の勇者達によって、討伐され宇宙の塵と消えた。
 それを再び果たせるチャンスが、今になって目の前に転がってきたのだ。この好機、利用せずにはいられるものか。

「待つがいい、心弱き者共よ……汝らが解放されし日を」

 未だその時は訪れない。
 自らの完全覚醒のためには、もっと多くのエネルギーが要る。
 この地に蓄えられた膨大な力を、全て手に入れるその瞬間まで、パスダーは静かに、地の底で待つ。


67 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:15:14 xe42tSCA0
【クラス】キャスター
【真名】パスダー
【出典】勇者王ガオガイガー
【性別】なし
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:- 幸運:C 宝具:A++

【クラススキル】
陣地作成:-
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 ただしパスダーは、肉体そのものが巨大な陣地であり、このスキルが意味をなさない。

道具作成:A
 魔術的な道具を作成する技能。
 宝具『機界結晶(ゾンダーメタル)』を生成することができるため、このランクとなっている。

【保有スキル】
自己改造:A
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 パスダーはこのスキルによって、周囲の物質と融合し、そのエネルギーや機能を掌握する。
 生前は主に科学技術の産物との融合を果たしていたが、
 サーヴァントとなったパスダーは魔術を認識し、それらの技術の産物との融合も可能となっている。

精神汚染:A
 精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。


68 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:16:54 xe42tSCA0
【宝具】
『機界結晶(ゾンダーメタル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 遠い三重連太陽系において、人間のストレスを除去するために開発された道具。
 しかしその機能は歪められ、人間を機界生命体・ゾンダーへと変貌させる魔具へと成り果てている。
 この宝具にてゾンダー化した人間は、パスダーの忠実なしもべとなり、他のマスター・サーヴァントを攻撃する。
 ゾンダー化した人間はサーヴァントへの攻撃をも可能とするが、その能力はEランク相当であるため、数を揃えて戦うのが基本。
 本来ならば周辺の機械を取り込み、巨大なゾンダーロボとなることもできるのだが、
 今回の聖杯戦争においては、そこまで強大な力を与えることはできない。
 また、マスターに対しては令呪が抵抗力となるため、ゾンダー化は行えず、その人間のストレスを解消する方向へと誘導することしかできない。
 このため正規での使用対象は、NPCか、あるいは令呪・魔力を持たないマスターに限られる。

『Extra-Intelligence-01(パスダー)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大補足:10,000,000人
 フィールドそのものと一体化したパスダー自身が、戦闘形態を取った姿。
 単体での戦闘能力を持たないパスダーだが、ひと度この宝具を発動すれば、その姿は魔王の如き巨体へと変貌する。
 腕から発する衝撃波と、無数の反射板によって空中で乱反射するレーザー光が武器。
 また、圧倒的なエネルギー量を、そのままバリアとして展開し、敵を阻むことを可能とする。
 その魔力消費量はもはやマスターや令呪がどうこうという問題ではなく、発動・維持にはフィールドそのもののエネルギーを味方につける必要がある。

【weapon】
なし

【人物背景】
三重連太陽系にて生み出された、人間のストレスを除去するための機械プログラム。
それが人間の機界化という選択肢を取り暴走した姿がゾンダーであり、その中枢プログラム・Zマスターの情報端末がパスダーである。
西暦2003年に、Zマスターが自らを分割した機界生命体集団・機界31原種の尖兵として地球に降り立ち、2年後に活動を開始した。
その目的は全人類のゾンダー化=機界昇華であり、ゾンダーに対抗するため結成された防衛組織・GGGと、幾度にも渡る激戦を繰り広げている。

情報端末という性質上、人間性と呼べるものをほとんど持ちあわせていない。
人類をストレスに苛まれゾンダーメタルを求める「心弱き者」と呼び、機界昇華を行うことを第一と考えている。

巨大な肉体は聖杯戦争のフィールドと一体化しており、自身は動くことも戦うこともできない。
一応侵入者に対しては、機械的な触手を伸ばすなどといった迎撃手段を取ることができる。
こうした特性上、宝具『Extra-Intelligence-01(パスダー)』を発動可能とするだけのエネルギーを充填するまでは、
『機界結晶(ゾンダーメタル)』によってゾンダー化した人間に戦わせるのが基本戦術となる。

【サーヴァントとしての願い】
Zマスターの復活。機界昇華を再開する。

【基本戦術、方針、運用法】
最大宝具を発動するまで、一切の戦闘行動を行えない、珍しいサーヴァント。
一度覚醒すれば、絶大という表現ですら生ぬるい力を発揮するが、そのためにはかなりの時間がかかる。
マスターとゾンダー人間で、どれだけ耐え抜けるかどうかが命運を分かつ、超上級者向けサーヴァントである。


69 : 小日向未来&キャスター組 ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:17:30 xe42tSCA0
【マスター】小日向未来
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
響が戦わなくてもいい世界を作る

【weapon】
神獣鏡(シェンショウジン)
 中国の儀式で使われていた、銅の鏡から生み出されたシンフォギア。
 アームドギアは大きな扇。光学兵器と飛行能力を武器としている。
 神秘性こそ持ち合わせているものの、神々の武具と比べれば明らかに霊格で劣るため、基礎スペックは他のシンフォギアより低い。
 ただしギアの放つ光線には、聖遺物に由来するものを分解する能力があるため、
 神秘の存在に対しては、非常に強い殺傷能力を発揮する。
 また、装者たる未来は戦闘経験に乏しい素人なのだが、ギアの有するダイレクトフィードバックシステムによって、
 戦闘プログラムを脳内に直接投影・効率的な戦闘を行えるようになっている。
 本聖杯戦争における同システムは、『機界結晶(ゾンダーメタル)』と一体化しており、
 心理誘導や、パスダーによる直接的な指示の送信ができるようになってしまっている。

【能力・技能】
シンフォギア適合者(偽)
 神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
 本来は適合係数が足りておらず、ギアを纏うまでには至れないのだが、
 適合制御薬「LiNKER」と本人の戦意の相乗効果によって、神獣鏡のギアを纏うことに成功した。

走力
 元陸上部の経歴を持つ。タイムが伸び悩んだため引退したが、未だに走力とスタミナは高い。

【人物背景】
主人公・立花響の親友。同じ私立リディアン音楽院高等科に通っている。
響が迫害されていた頃を知っており、それ故か響に対して、かなり過保護な部分がある。

やや控えめな部分はあるが、しっかり者であり、響の良き女房役。
過去に彼女がどん底にあった頃を見ており、それ故に響を支えなければという想いは強い。

F.I.Sに保護された未来は、ウェル博士にそそのかされる形で、神獣鏡のシンフォギアの装者となった。
もっともギアを纏うためには、LiNKERの投与が必須条件であるはずなのだが……
本聖杯戦争においては、パスダーの宝具『機界結晶(ゾンダーメタル)』を介した形で改造が行われ、
LiNKERの効果が薄れても、ある程度継続して纏えるようになっている(少なくとも、聖杯戦争の期間中は保つ)。
更に『機界結晶(ゾンダーメタル)』の心理誘導によって、ウェル博士のもとを離れた現在においても、
自身のストレスの元を断つ=響が戦わなければいけない世界を変えるという目的意識に囚われ行動している。

【方針】
優勝狙い。聖杯を手に入れ、響を救う。


70 : ◆nig7QPL25k :2015/07/10(金) 22:18:20 xe42tSCA0
投下は以上です
小日向未来@戦姫絶唱シンフォギアG&キャスター(パスダー@勇者王ガオガイガー)組でした

未来のステータスは、「第二次二次キャラ聖杯戦争」様の登場話を参考にさせていただきました


71 : 名無しさん :2015/07/11(土) 00:16:22 2TIDGP2s0
投下お疲れ様です。
シンフォギアからはその二人が来ましたか、楽しみだ


72 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:45:46 2pkcDoow0
スレ立て乙です。
投下させていただきます。


73 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:46:36 2pkcDoow0

「おやおや、これは一体どういうことなんでしょうかね?」

 黒い帽子に緑の髪。
 やや痩せ型ながらも高身長、黒いスーツを着こなす。
 少々困った表情を浮かべながらも、現状を把握しようとする。

「別の記憶を植えつけられるというものは些か気分が悪いものですね……」

 細い目を見開き、金色の瞳を覗かせる。
 行政地区の一角のとあるビルの一室。
 記憶を取り戻す前、男はここで諜報員として真面目に働いていた。
 情報を集めて、整理して、政界や軍の上層部に渡す。
 
 その男の名(コードネーム)を『ハザマ』という。

「聖杯戦争ですか……ここには魔素は若干ながらありそうですね」

 願いを叶えるために他者を殺す。
 一般魔術師程度が相手ならば負ける気などしない。
 だが、相手がサーヴァントならば分が悪い。

(一先ず、適当に歩いて適当にマスター探してぶっ殺しますかぁ……)

 仕事を適当な理由で早退して、ハザマは適当に街をぶらつく。
 歓楽街が辺りを適当に歩いていれば適当なマスターの一人くらい見つかるさろうという軽い気持ちで。


74 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:47:27 2pkcDoow0

 歓楽街を一人歩くハザマ。
 無警戒な振りをしつつ、極力殺気を消して歩いていく。
 好物であるゆで卵を買い食いしつつ、観光がてら歩いていく。
 途中、狭い路地裏を発見し、そこに入っていく。

(気配を感じますね……二つ。いえ、最初からいるのを含めれば三つですか)

 周囲に誰もいないことを確認して後ろを確認する。
 影は一つだけ。

「………」
「おやおや。どうしたんですか? 街中でそんなに殺意を剥き出しにして。怖いですねェ」
「――――殺せ、アサシン」

 ハザマにアサシンのサーヴァントの刃が迫る。
 ハザマはそれをバックステップで避ける。

「いきなりですか……これでは一般人が街も自由に歩けないじゃないですかーっ!」
「黙れ、貴様のような必要以上に殺気を隠そうとしている一般人がいるか……!」
「なるほどーばれていましたー」

 深く帽子をかぶり直し、相手を見る。
 目の前にマスターと思わしき男とアサシンと呼ばれた恐らくはサーヴァント。

 これで自身を追っていた気配は残り一つ。
 つまり……

「―――そこにいるんですよね? 私のサーヴァントさんは?」
『ホホホホ、気付かれましたか……では仕方ないですね』

 透明化。
 霊体化とはまた別の形でそのサーヴァントはそこにいた。

「どうも初めまして、下等人間さん。貴方のサーヴァント・キャスターです」
「これはこれは、ご丁寧にどうも……使い魔の分際で」
「…………」
「……って、や、やだなぁ。そんな怖い顔しないで下さいよ」

 白のハットとドレスを身にまとい、顔にメイクを施したピエロの様な男。
 どこか芝居がかったような喋り方をし、他者を非常に見下している雰囲気がある。
 
「……テメェ、ただのキャスター《魔術師》じゃねぇな……何を隠していやがる?」
「……そういう貴方もただの下等な人間ではないようですね」
「貴様ら、さっきから何をごちゃごちゃと……?」

 どこからともなく鎖が飛んできた。
 その鎖でアサシンのマスターの身体は拘束されたのだ。
 キャスターではないマスターであるハザマが飛ばした。


75 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:48:03 2pkcDoow0

「なんだよ、それは……?」
「今から死ぬ、テメェが知ってどうするんだ?」

 身動きが取れない。
 だが、指示は出せる。
 
「さっさと動けアサシ「私はそんな隙は逃しませんよ! ニャガーッ!」

 瞬間、キャスターはアサシンの身体を掴んだ。
 掴まれたアサシンはキャスターの凄まじい握力で身体を一部を毟り取られる。
 そしてそのまま、ジャーマンスープレックスの形に持ち込まれた。

「何!? キャスターならば魔術を使って戦うのではないのか!?」
「ニャガニャガ、私のような完璧なキャスターにはそんな掟はなく適用外なんですよーっ!」

 相手のマスターの疑問に丁寧に答えながらもアサシンの喉元を握りつぶすように掴む。
 そして、その異常な腕力を使って、アサシンを高く投げ飛ばす。
 それと同時にキャスターも飛び上がる。 


「行きますよーっ! 《完幻》ファントム・キャノン――ッ!!」


 サイコマンがアサシンの身体を発射する。
 地面に叩きつけられたアサシンの身体はバラバラに砕け散った。
 路地裏とは思えないほどの轟音が辺りに鳴り響いた。

「なっ、アサシ――「はいはい、ご苦労さんっと!」」

 ハザマは相手のマスターに素早く接近。
 持っていた喉元をナイフに突きつけ、頸動脈を一瞬で引き裂く。
 あまりにも鮮やかに慣れた手つきで、返り血を一切浴びることなく。

「痛いですかぁ〜っ? いや、もう答えられねぇか〜?」

 倒れたマスターをハザマは蹴り、踏みつける。
 何度も。
 何度も、何度も。
 何度も、何度も、何度も……踏みつけ蹴り続ける。

「おらァ! 寝てねぇで立てよォ! 今ので本気か? 本気だったのか?
 まさかその程度の実力でこの俺様を殺そうとかした訳?
 弱ぇよ! 弱すぎだつーの!! ククク……ヒヒヒヒッハハハハヒャハハハハハ!!」
 
 帽子を取り、緑の髪が逆立て、ハザマは笑いながら蹴り続ける。
 相手が生きていたならば神経を逆撫でされて激昂していただろう。
 だが、もう返事はない。ただの屍のようだ。
 
 …………。

 ……。

 …。


76 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:48:27 2pkcDoow0

「貴方の求めるものはなんですか?」
「俺様はなァ! 絶望、失望、恨み、悲しみ、嘆き……苦しみの淵でもがく……
 そんな奴らの吠え面が見てぇだけに決まってんだろォォっ!」
「ニャガニャガ、私のマスターは随分と悪趣味をしていますね」
「あァッ!?」
「……ですが、確かに面白いですからねーっ!
 下等人間どもが恐怖で怯えて逃げ惑う姿というものは〜〜っ!
 まあ、私としては思い上がった下等サーヴァントを処刑することほどのゾクゾクするこの聖杯戦争という遊びはありませんからね!」
「テメェも十分いい趣味してんじゃねぇか……クククククヒャッハハハハハハハ!!!!」
「いえいえ、貴方ほどでは……ニャガニャガ〜!」

 キャスターのサーヴァント・『完幻 グリムリバー』……もとい、真名『完璧・拾式 サイコマン』。
 そのマスター・『ハザマ』……もとい『ユウキ=テルミ』。
 
 表と裏の顔の二つの顔を持つ男たち。
 その裏の顔と思想は―――歪みきっていった。


77 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:49:19 2pkcDoow0

【クラス】キャスター
【真名】サイコマン
【出典】キン肉マン
【性別】男性
【属性】秩序・中立

【パラメーター】
 筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:A++

【クラススキル】
 陣地作成:-
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 が、サイコマンは『プロレスリング』しか作れない。
 しかし、それだけで十分である。

 道具作成:-
 魔術的な道具を作成する技能。
 が、サイコマンは『万能リモコン』がしか作れない。
 しかし、それだけで十分である。

【保有スキル】
超人レスリング:A++
 超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。
 Aランクでようやく一人前と言えるスキルでありA++ランクともなれば宇宙、有史でも上位の達人の域。
 リングの上では魔力と幸運を除くステータスが1ランク向上し、スキル:戦闘続行を得る。

怪力:EX
 本来は魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。
 サイコマンはEXなのでほぼ常時の怪力のスキルを得ている。
 
完幻自在の魔術師:A
 魔術師のクラスながら、ほとんど魔術師らしい魔術を使わない。しかし、彼は技のイリュージョニスト。
 その技の数々、マグネット・パワー等全てが彼の魔術である。


78 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:49:42 2pkcDoow0

【宝具】
『太古からの電磁力(マグネット・パワー)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜4 最大補足:1〜2
 超人界でサイコマンが発見した能力。手の甲からエネルギーを放つ。
 その名の通り肉体から「磁気」を発生させる能力で、周囲の金属類を磁気で引き寄せたり、逆に突き放したりすることができる。
 また原理は不明だが、マグネット・パワーを使い、戦闘で受けた傷も回復可能である。
 これにより、サイコマンは高い魔力を誇っている。
 
 
『完璧超人秘奥義・雷光ノ剣(サンダーサーベル)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:1
 黒雲を呼び出し、雷光を捕まえ、相手に投げつける。
 マグネット・パワーを用いることにより、自在に黒雲を呼び出すことが可能。
 なお、完璧超人は「凶器を使わない」とされるが「時と場合によっては、完璧超人も凶器を使うことがあるわい」は彼の弟子の弁であるが……
 「そもそも完璧を極めている始祖にはそんな掟はなく適用外なんですよ」とは当人の弁。
 

『絶対の神器が一、雷のダンベル』
 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 かつて神の地位を捨て、地上に下り立った超人の始祖から贈られた神器。
 数億年の時を経て現存し続けた神造宝具であり、秘められた神秘は伝説の聖剣にも劣らない、とてつもないダンベルである。
 他に天、地、星など全部で10種類あり、十人の始祖が持つそれを集め、とある祭壇に捧げることで全ての完璧超人始祖は消滅する。


【weapon】
自身のコスチュームが凶器になる。
 ……時と場合によっては、完璧超人も凶器を使うことがあるんですよ。


【人物背景】
 太古の昔に超人界滅亡の際、下界に降り立った神に選ばれ弟子となった10人の 完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン) の一人。
 彼自身は完璧超人始祖であるが、本人曰く超人閻魔からの信頼も厚く、本来は超人墓場に篭っていければならない始祖の中でも特別に外出を許されているとのこと。
 その際は『完幻』の異名を持つ完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ) の一人。『グリムリパー』として行動しており、その事実を知る者は僅かしかいない。

 神に選ばれた良き超人というにはとてもいいがたい性格しており、同僚からは「クサレ外道」「性格の歪んだ男」と呼ばれるほど性格が悪い。
 

【サーヴァントの願い】
 完璧超人による世界平和。
 
【基本戦術、方針、運用法】
 魔術という名のプロレス技を用いる。
 一先ずは様子見、基本自分から攻めない。
 敵サーヴァントが攻めてきたら、適当に遊ぶ。


79 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:50:07 2pkcDoow0
 
【マスター】ハザマ(ユウキ=テルミ)
【出典】BLAZBLUE
【性別】男性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
 マスターユニット(アマテラス)の破壊及び『滅日』。


【weapon】
蛇双・ウロボロス
 ハザマが持つ事象兵器アークエネミー。
 頭に蛇の様なオブジェがある鎖。
 相手の精神に直接攻撃ができる。
 また、対象の記憶を「食べる」ことも可能。

バタフライナイフ
 特に何の変哲もないバタフライナイフ。

ナイフ
 主に投擲に使う何の変哲もないナイフ。

碧の魔道書(ブレイブルー)
 肉体そのものが蒼の魔道書として構成されている。
 が、真なる蒼の模造品であることに変わりない。

【能力・技能】
ナイフを用いた戦闘術
 軍人ではあるが、諜報部所属であるので戦闘は苦手。
 ……と、思いきやかなりの腕前を持つ。

マインドイーター
 テルミによる術。
 ウロボロスを用いて相手の「記憶を食べる」が、食べた記憶がどこに行くのかは不明。

強制拘束(マインドイーター)
 術者からの命令に対して逆らえなくなる術。
 ただし「命令」以外の部分については自由意志が持てる模様。

呪縛陣(マインドイーター)
 他者の自意識に、強制的に自己の認識を投影させる術。


80 : ハザマ&キャスター組  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:50:27 2pkcDoow0


【人物背景】
 世界虚空情報統制機構の諜報部に所属する一介の軍人……というのは表の顔。
 その正体はかつて黒き獣を倒し世界を救った六英雄の一人。
 そして、多くの悲劇を招いた、BLAZBLUEのストーリーにおける諸悪の根源でもある。
 
 ハザマの人格時は柔和な表情を浮かべ、物腰、口調も丁寧だが、時折、人を食った雰囲気と慇懃無礼な態度を覗かせる。
 本性であるテルミの人格時は「破壊」と「悲鳴」を心から楽しむ冷酷で残虐非道な性格であり、
 理由なく他者を苦しめ絶望させることを好み、非常に頭も切れる。
 また、ユウキ=テルミ自体は精神体と呼ばれる特異な存在で、器となる素体に憑依することで「ハザマ」として活動を行なっている。

【方針】
 無駄な戦闘は避け、機を窺いつつ聖杯を狙う。
 でも、他者を苦しめ絶望させたい。んでもって、最終的には皆殺し。


81 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/11(土) 16:50:50 2pkcDoow0
以上で投下終了です。

サイコマンのステータス及び人物背景は、◆yy7mpGr1KA氏のガンマンの登場話を参考にさせていただきました


82 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:46:27 mxf0uGEw0
嫌な性格の奴らが組んだと思ったら、途中からノリが完全にキン肉マンになって吹いたw

こちらも投下します。願わくば最後までお読みください。


83 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:47:27 mxf0uGEw0










「「俺は、俺たちは、ユグドラシルを絶対に許さない!!!」」













【クラス】セイバー
【真名】アルファモン
【出典】DIGITAL MONSTER X-evolution 
   (各メディアでアルファモンの描写は人物背景以外も分かれるが、セイバーの必殺技や翼、王竜剣の扱い・ビジュアルは大体これに基準する)
【性別】デジモンには厳密には性別は存在しない
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B++ 魔力:A 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。
神話の存在とされ、自らも魔方陣を攻防ともに用いて戦うアルファモンは破格のランクを誇る。

騎乗:EX
アルファモンには竜種への騎乗並びに融合を成した逸話があるため、セイバークラスでありながらも規格外の騎乗スキルを誇ることとなった。
ただしクラス制限のため、竜種ことオウリュウモンの分離は不可能となっている。
その分セイバーとしてのアルファモンは王竜剣を装備していなくとも黄金の羽を生やすことができる。


【保有スキル】

空白の席の主:A
アルファモンは秩序の守護者ロイヤルナイツの一員でありながら、その抑止力である。
いわばカウンター・カウンターガーディアン。
属性:秩序の相手との戦闘において攻防ともに補正が入る。
神の使いや騎士、体制の守護者たる英霊などであればあるほど自分に有利な補正が与えられる。

アルファインフォース:A
攻撃時に時間を瞬間的に巻き戻すことで、一瞬にして幾度もの攻撃を叩き込むことができる。
本来は過ぎ去った戦いを瞬間的に取り戻す究極の力なのだが、聖杯戦争ではアルファモンの象徴的な攻撃時の使用にのみ限られる。

変身:A
自らのカタチを変えるスキル。
正式には退化であり、自分の意志でドルモン→ドルガモン→ドルグレモン→アルファモンと進化段階を調整できる。
退化するほど魔力消費は抑えられるが、完全体のドルグレモンですらステータスは大きく下がってしまう。
加えて退化中は対魔力と騎乗のランクが激減する上に、変身:A以外の保有スキルが無効となり、2つ目の宝具も使用できない。
また、最新にして驚愕の逸話により、サーヴァントとしての能力・気配を殆ど抑えることでとある人間の姿になれる可能性も……。

魔術:B
神話のプログラム言語。
アルファモンはデジ文字による魔法陣にて、時に我が身を守り、時に砲撃を行い、時に武器を召喚する。
デジモンを奇跡的に剣へと進化させたという逸話もある。
キャスターとして召喚された場合はランクが上がり、必殺技のデジタライズ・オブ・ソウルにて、異世界から伝説のモンスターを召喚可能となる。
尚、キャスター以外のクラスでは、デジタライズ・オブ・ソウルは魔法陣から強力な緑色の光線を発射・連射する技となる。


84 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:47:43 mxf0uGEw0
【宝具】
『そこにあり、受け継がれる命(X抗体)』
ランク:C 種別:対死宝具 レンジ:- 最大補足:-
死を取り込み、死に抗うプログラム。 情報を高度に引き出し、潜在能力を極限まで発揮する効果も持つ。
その本質は命の持つ“存在することへの本能”であり、また誰かに生きて欲しいという願いでもある。
宝具に昇華されたことや戦闘が電脳世界で行われることもあり、Xプログラム以外の致死性の毒や呪い、プログラムにも効果がある。
ただし、感染し続けるとX抗体は消滅してしまう。
燃費自体は悪くはないが常時発動型なため持続的に魔力も消費する。
またこの宝具は他者に移譲できるが、その場合アルファモンは消滅する。
アヴェンジャーのクラスで召喚されていないため、基本死のX-進化――デクスリューションすることはない。


『究極戦刃王竜剣』
ランク:A 種別:対永遠宝具 レンジ:1 最大補足:1
戦闘力が追求されたプロトタイプデジモン、オウリュウモンが進化したと謂われれいる大剣。装備後は常時開放型。
究極体デジモンの戦闘能力の全てが攻撃性能にのみ集約されているため並みの英雄が扱える代物ではなく、並みの英雄が受け止められる剣でもない。
死してなお存在し続けようとする進化の果てであるデクスモンを討ち果たした逸話により、死そのものや、不死、永遠といった存在をも滅ぼせる。
しかしその逸話故に、対永遠宝具としての真価を発揮する程、アルファモンの命も削られていく。
ちなみにこのセイバーとしてのアルファモンは王竜剣を装備していなくとも黄金の羽を生やすことができる。

【weapon】
聖剣グレイダルファー:デジ文字の刻まれた魔法陣の中心から取り出す光の剣。光の収束を抜き敵を貫く必殺技としても使用可能。

【人物背景】
滅び逝く世界があった。生きたいと願ったデジモンがいた。
神に選ばれることなく、誰に必要とされることもなく、どうしてここにいるのかもわからないまま生き続けた。
仲間に出会い、守るべき者を自分を必要としてくれる存在を得て、たくさんの命を託されて、そのデジモンは知った。
全ての命は生きるためにあるのだと。命は受け継がれるものなのだと。

【サーヴァントとしての願い】
命を受け継ぎ、生き、託す。

【基本戦術、方針、運用法】
能力が非常に高いレベルでまとまったセイバー。スキル、宝具も有用なものが揃っており戦闘面だけなら単純に強い。
しかし最高峰の究極体デジモンがかけるマスターへの魔力負担は常でさえ高く、戦闘時となると洒落にならないレベルである。
紘汰は戦闘力のあるマスターだが、アルファモンに魔力を供給しながら戦うのは自殺行為に他ならない。
進化により消費を抑えることもできるが、デメリットが大きいため使い方には注意が必要。
またX抗体による耐性でいくらかは補えるが、幸運は限りなく低い。紘汰もお世辞にもついているとはいえないので受難は覚悟しよう。


85 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:48:15 mxf0uGEw0

【マスター】
葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武(参戦時期はヨモツヘグリ戦で昏倒中から)
【マスターとしての願い】
希望の対価に犠牲を要求する世界のルールをぶち壊し、世界を変える

【weapon】
戦極ドライバー:
ユグドラシルコーポレーションによって作られたアーマードライダーへの変身ベルト。認証式のため紘汰専用。
本来の用途はヘルヘイム下での生存ツールであり、ロックシードから装着者にエネルギーを補充できる。
ロックシードをはめ込むことで、それに応じたアーマードライダーへと変身することが出来る。
ロックシードは極まで獲得しているが、聖杯戦争の予選の間に破壊や紛失したもの、そもそも持ち込めなかったものもあると思われる。
フィールド発生機能やアンティールールなども魔術都市ユグドラシルでは機能しない模様。

【能力・技能】
戦いを経て生身でもそれなりに戦える身体能力はある。
オーバーロードの権能も幾つか使えるが、ヘルへイムの植物やインベスの有無次第である。

【人物背景】
滅び逝く世界があった。変わりたいと願う青年がいた。
無力だった青年は、力を手にして尚変われず、それでも変わろうとし続けた。
いつしか青年は、自ら変わることだけでなく、世界を、ルールを変えることを願うようになっていた。
守りたい人を守るために。自分が信じた希望のために。
新たなる未来の始まりに至るまで彼は戦う。そこに犠牲も後悔も、ない。

【方針】
希望の対価に犠牲を要求するユグドラシル(聖杯戦争)を許さない。


86 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:48:36 mxf0uGEw0

曇天より降り注ぐ雨の音を貫いて、天へと放たれる言葉があった。
それは怒りであり、嘆きでもあり、誓いでもあり、宣戦布告でもあった。
魔術都市ユグドラシル。希望の対価に犠牲を要求する世界。
命を競わせ、選別していく世界樹の存在は、彼らにとって到底許せるものではなかった。
知っているから。彼らは誰よりもそんな世界と世界樹の理不尽さを知っているから。

「何でだよ。なんで世界はいつも希望の対価に犠牲を求めるんだよ!
 何度も何度も見せつけて、俺に諦めろって言うのかよ。犠牲を受け入れろって言うのかよ。
 俺は嫌だ。俺は、俺は、見捨てたくなんてない!」

鎧武者の青年――葛葉紘汰の住んでいた地球は、滅亡の危機に瀕していた。
ヘルヘイムの森と呼ばれる異世界の侵略により、人類は強制的な進化を、変革を求められていた。

「その通りだ、コウタ。命は全て生きるためにある。命はそこにあるだけで美しいんだ……」

黒金の騎士――アルファモンことドルモンたちデジモンが生きるデジモンワールドもまた、滅びゆく定めだった。
増えすぎたデジモンたちのデータにより圧迫された旧デジモンワールドはデジタルハザードの訪れを待つばかりだった。

近くて遠い、2つの世界。物質世界と電脳世界。
2つの世界で滅びを回避しようとした存在が冠した、奇しくも共に世界樹の名。
ユグドラシル・コーポレーションと、イグドラシル。
人の手による研究組織と、ホストコンピューターである電子の神。
運命の悪戯か、世界の摂理か。
人間とコンピューターが選んだ対抗策は、計画名さえも一致していた。
『プロジェクトアーク』。
方舟の名が意味するところは命の選別。

ヘルヘイムの森の環境下で人間を生存可能とする戦極ドライバーの製造数には限界があった。
故にユグドラシルは生き残るべき人間を選別し、同時に、ヘルヘイムの力で怪物となる可能性のある残り約60億の人間を抹殺しようとした。

例え新世界を作ろうとも、元いたデジモンを全て移住させれば、再びデジタルハザードが訪れるだけである。
故にイグドラシルは新世界を作り僅かなデジモンだけを移住させた後、残る多くのデジモンを滅ぼすXプログラムを放ち、98%ものデジモンを消去した。
どころか、Xプログラムから生き延び新世界へと逃げ延びたXデジモンたちを、秩序の守護者たるロイヤルナイツに粛清させた。
Xデジモンたちの死骸からXプログラムが新世界にまで感染すると、今度は全てのデジモンを新世界ごと消し去ろうとした。

紘汰とドルモンはそれが許せなかった。
それぞれのプロジェクトアークで実験に選ばれた一人と一体は何も知らぬまま戦い続け、真実へと近づいていった。


87 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:49:09 mxf0uGEw0
葛葉紘汰は変わりたかった。
自分のことに精一杯で、誰かを助けられない自分が嫌だった。
いざ、力を手にした後も、すぐには変わることはできなかった。
最初は戸惑った。たくさん流された。何度も怯えた。過ちだって犯してしまった。絶望に呑まれかけた。
それでも彼は、自らの弱さを抱えたまま、戦い続けた。
鎧武に変身し、世界を変えるために、守りたいものを守るために。
自分さえ犠牲にすることなく自分の信じた希望のために戦い続けることを選んだ。

ドルモンは生きたかった。
神に選ばれずとも、選ばれた者に拒絶されようとも、選ばれなかった者たちから命を狙われようとも、生きたいと願った。
誰にも受け入れてもらえず、誰にも必要とされず、なのにどうして、自分はここにいるのかと。自分は生きていていいのか。
自らに、他者に問い続けながらも、ドルモンは戦い続けた。
ドルガモンに進化し、ドルグレモンに進化し、アルファモンへと進化して。
命を受け継ぎ、命を守り、命を託して、ドルモンは生きた。

そんな彼らだからこそ、誰かを犠牲にしての希望を強要するこの世界を、魔術都市ユグドラシルを許せなかった。
戦いを止めようと、ムーンセルの真意を知ろうと、記憶を取り戻し、契約を交わした日から駆け回った。

けれど、世界は残酷だった。
今もまた一組、どこかの誰かが命を落とした。
正しくはサーヴァントが消滅したことでの、マスターの強制退場だったのだが。
経験上嫌な心当たりばかりある彼らは、ユグドラシルが言葉をぼかしている“サーヴァントを失ったマスターの強制退場”も裏があるのではないかと踏んでいた。

「間に合わなかった……! 何で殺しあうことしかできないんだ!」

選別が最終フェイズに移行し、聖杯戦争を止めようとしている紘汰のことを知り、疎ましく思う者がいたのだろう。
時に言葉で、時に力で。殺し合いを止めようとする紘汰がいると、ユグドラシルの言うところの最終予選が一向に始まらない可能性があったからだ。
誰かが戦っているのを察知して、現場に向かおうとした紘汰に向けられたのは、大量の使い魔だった。
もしかしたら幾組かのマスターが結託して紘汰を足止めしようとしたのかもしれない。
そう思わせる程の量だった。
とはいえ使い魔は使い魔だ。
強力なサーヴァントセイバーをパートナーとし、自身もアーマードライダーに変身できる紘汰の敵ではなかった。

「何で、なん……ぐっ、う、あ」

だが、足止めにはそれで十分だった。十分すぎた。
アルファモンは強い。
その強さは諸刃の刃でもあった。
黄金の果実の一部を身に宿し、人間を超越しかけている紘汰をもってさえ、維持するだけで精一杯なのだ。
極ロックシードを得る前の紘汰なら、召喚した時点で膨大な魔力の消耗に耐えられず、死んでいたかもしれない。
それ程のサーヴァントが戦闘を行うというのなら、マスターの負担は言うまでもないだろう。
これがまだ、後方で身を隠し、ロックシードで消耗した自らのエネルギーを回復することに務めていたなら、少しはマシだったかもしれないが。
人の命がかかっている時に、そんな悠長な選択ができるなら、紘汰は今この場にいなかっただろう。

「コウタ!」

アルファモンがドルモンへと退化し、変身が解け倒れたコウタへと駆け寄ってくる。
アルファモンに魔力を供給しながら、自らも使い魔相手に前線で戦うことは自殺行為に等しいとは聞いていた。
その結果がこのざまだ。使い魔と戦っている時も、何度かアルファモンに助けられた。
しかもアルファモンは最強宝具を解放していなかった。
王竜剣の逸話を加味すると、宝具解放後はこの二倍の負担はあるかもしれない。
それでも。

「俺は大丈夫。さっきは足引っ張ってわり」
「コウタの身体が丈夫なのは知ってるよ。でも、人間でも、オーバーロードでも生きているのにかわりはないから」

戦う。自分が信じた希望のために。自分が望んだ結末のために。

「後でまた、あの変なコーヒーでも入れてくれよ。あれなら俺も味、分かるから」
「……うん! 腕によりをかけるから楽しみにしておいて!」

ドルモンが差し伸べてくれた手につかまり立ち上がる紘汰。
一人と一体の命を見捨てることなき戦いは、未だ尚続く……。


88 : 葛葉紘汰&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2015/07/11(土) 20:49:40 mxf0uGEw0
投下終了です。


89 : ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:00:58 hdBaRIsc0
私もセイバー投下します


90 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:01:57 hdBaRIsc0

夢なんざとっくに見飽きてた。
どんなに理想郷を覗こうがそれは夢だ。
俺が楽しんでも彼奴等に出会えても摩耶香しなんだ。

触れても質量なんて一切感じやしねえ。
楽しい時間なのに触れちまえば、あぁこれは夢なんだって冷めちまう。
そんで目が覚めれば見慣れた天井しかねえ。
俺の中に残るのは虚しさだけだ。あぁくだらねえ。

って思ってたのも少し前までだ。
俺はアルともう一度会えた。あっちにも帰れた。
ウィンリィにも会ったしついでだけど眼帯の似合わねえ大佐にもだ。
……伍長だっけか。

俺はもう夢を見てもがっかりすることは無くなった。
俺は俺だ。こっちの世界はこっちの世界であっちはあっちだ。
扉は壊したけどパラレルワールドって奴で繋がっている。
寂しくなんか無え。俺は俺らしく生きるだけだ。

だから、さ。

聖杯なんて興味がない。
願いを叶える願望器? そんなもん存在していい筈がない。
死んだ人間は生き返らない。
何でも願いが叶うなら誰かがとっくに使ってる。
それに殺し合ってまで叶える願いなんか碌な結果を生みやしないのは目に見えている。

「随分と疲れた顔してんなエド、悪夢か?」

俺は聖杯を壊す。
この世に存在しちゃいけないからな。
俺が住んでいない世界だからとか関係なくぶっ壊す。

……このセイバーと一緒に……か?


91 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:03:06 hdBaRIsc0


階段を降りてきたエドはパンをトースターに入れると洗面台へ向かった。
適当にタオルに手を伸ばし股に挟めて水で顔を洗う。
タオルを顔に回し水分を拭き取ると首に回し居間の椅子へ腰を降ろした。

「悪夢は見てない。ただ聖杯ってクソだなってよぉ」

「願いなんざ自分の手で叶えるモンだ――ってのは前にも話したよな」

セイバーの手元にある牛乳を視界に入れないように話し掛ける。
対価と真髄を考えた時、聖杯はこの世に存在していい代物ではない。
誰かの犠牲を以って完成する器など歴史に埋もれてしまえばいい。
其れが無理なら己の手で壊すしかない。

サーヴァントにとって聖杯を破壊するマスターを受け入れることは難しい。
とある英霊も令呪の命令によって涙を流しながら聖杯を破壊したというが。
遊びで参加する程聖杯戦争は甘くなく、生命が消え行く儀式である。

人々の生命と引き換えに誕生する賢者の石と同じように。
聖杯を破壊しなくてはならない。

「別に俺は俺自身が最強であればそれでいいからよ。勝手にやってくれや」

「ふが、ふごごご」

焼けたパンを頬振りながらセイバーに返答する。
「食ってから喋れ!!」
怒られるのも理解出来る。
「じゃあそうさせてもらう」
パンを飲み込んだ後にもう一度返答し水を飲む。

聖杯を破壊するなんて信じられない。
最初は止められると思っていたがセイバーは了承してくれた。
彼は自分が最強の剣豪であれば問題がないらしい。

死んでるくせに更なる強みを目指すとは大層なこって。
口には出せないがエドはセイバーの向上心に一種の尊敬を抱いていた。


92 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:03:47 hdBaRIsc0

「壊すってどうやって壊すつもりだよ、エド」

ダンベル運動を行いながらセイバーはエドに聖杯の破壊方法を尋ねた。
壊すと言うならばまず見つけ無くてはならない。
何処に有るかも解らない聖杯を壊すのは流石に無理だろう。

「魔術とか正直解かんねえけど、壊れる時は壊れるだろ」

答えを言えば何一つ理論や過程、方法は見つかっていない。
彼の中には聖杯を壊す、唯一つの信念のみで動いているのだ。

(聖杯ってのはあっちの世界……俺が飛ばされた世界で見た聖書だろ)

錬金術が世界から姿を消した歴史の中で。
彼はミュンヘンで父親の持っていた聖書に目を通したことが在る。
神だのアダムだの方舟だの。
正直つまらなかったが、その内容はある程度覚えているつもりだ。
そこに戦争やサーヴァントのことを記されていた記憶はない。

「そうか……って何も解ってねえのかよチビ!!」

「誰が豆粒ドチビだこの方向音痴マリモ野郎!!」

「うるせえ!!」

気付けば隣にいたサーヴァントは口の悪い男だった。
海賊らしく如何にも海の男みたいな大雑把さを持った剣豪。
強いのは確かだが、どうも背中を任せる気になれない。

「今日こそ俺がお前のご主人様だって解らせてやらぁ!」

「表に出ろクソチビ! 真っ二つにしてやる!」

毎度毎度の事である。
両者互いに口が綺麗な人間ではないため、些細なことから喧嘩に発展してしまう。
喧嘩が起きない日は今まで一度もなく、無駄な衝突を繰り返していた。

靴を履き、勢い良く扉を蹴り飛ばす。
広い空き地に出るとエドは掌を合わせ己の機械鎧に刃を宿す。
禁忌の真理に触れた者だけが扱える禁断の錬金術。
嘗て人体錬成を試み、何かを犠牲にした人間だけが使える秘術である。

彼は誓った。
死んだ人間を生き返らせるなどやってはならない、と。
だからこそ願望器たる聖杯を破壊しなければならない。
そんなものに頼っていたら人間は自分の足で進まなくなってしまうから。

(セイバーの野郎には絶対言わないけどな……っし)

「格の違いを見せてやる」

「抜かせ、マスターさんよ」

刀を構えたセイバーに隙は存在しない。
刃を錬成したものの、接近戦は敵の十八番であり、近づくのは危険である。
遠距離からの攻撃が好ましいが敢えて接近戦を選ぶ。

潜んでいる敵に対応するために。


93 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:04:43 hdBaRIsc0

「バレバレだァ!」

「俺の背中に傷を付けれると思ってんのか?」

エドとセイバーは互いの背後から迫る敵を斬り捨てた。
マスターにはマスター、サーヴァントにはサーヴァントが襲って来たのだ。

喧嘩している隙を狙ったようだが、それは彼らの作戦である。
……運が良かっただけで、彼らは本気で喧嘩をしていた。
その邪魔をしてきたのが他の参加者であっただけの話。
つまり、彼らの喧嘩を邪魔しなければ、この参加者は無傷だったのだ。

「一発で気絶してらぁ……そっちは?」

「そりゃ死んでるに決まってるだろ」

何にせよ之でサーヴァントを失ったマスターは消えるしかないだろう。
殺し合いと云えど無駄な殺生は起こしたくないし、やるつもりもない。

襲い掛かって来る敵に情けを掛けるつもりはないが、放置するワケでもない。
敵ならば戦うし、弱い存在なら守る、心を許せるなら仲間にする。
簡単に表すエドの方針であり、結末は聖杯を破壊し元の世界に還ること。

其処には最愛の弟が彼を待っているから。

「興醒めだ。どうするエド」

「俺もだ……ったくどいつもこいつも血気盛ん過ぎだ」

「違いねえ……が、負けるつもりなんてねえよな?」

「当然! この鋼の錬金術師を舐めるなって話だ」

拳を合わせこの世界に存在しているであろう他の参加者に聞こえるように。
己が覇道を止めてみせよと轟叫ぶ。
向かって来る奴には容赦はしない、それはエドとセイバーの共通事項である。
巫山戯た儀式を潰すために男たちは聖杯戦争を駆け抜ける。

腕を天に延ばし太陽を収めるように拳を握り、告げる。

「すぐ帰るから待ってろよ――アル」

【マスター】エドワード・エルリック
【出典】鋼の錬金術師シャンバラを征く者
【性別】男性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
 聖杯をぶっ壊す

【weapon】
 機械鎧(オートメイル)
 彼の右腕と左足は禁忌によって失われ機械となっている。
 錬金術との組み合わせで武具になることもある。
 また、父親作の筋電義手を持ち込んでいる。

【能力・技能】
 錬金術
 等価交換の法則によって導かれる万物の方程式術。
 エドは嘗て人体錬成と呼ばれる禁忌に触れてしまったため右腕と左足を引き換えに真理の扉を見ている。
 之によって彼は錬成陣無しに掌を合わせるだけで錬金術を発動することが可能になっている。
 国家錬金術師であるエドの知識は豊富であり、扉によってミュンヘンやあちらの世界の知識も得ている。
 そのため、彼の錬金術のバリエーションはとても豊富である。

【人物背景】
 死んでしまった母を生き返らせるため弟と共に人体錬成を試みて夢を失った青年。
 代償に己は右腕と左足を失い、弟は身体を失った。
 彼は国家錬金術師となった彼は自分達の身体を元に戻すために賢者の石を探す旅に出る。
 其処で色々な出会いを体験した彼らはホムンクルスの野望を止めるために――それが一つの物語。

 道が別れたこのエドワード・エルリックは旅路の果てに賢者の石を手に入れるがそれは弟だった。
 心が本来よりも荒れていた彼は軍と無駄な対立を起こしたり、有り得ないが結果として殺人も経験してしまった。
 世界の針が平穏に進もうと彼ら兄弟が歩み道にハッピーエンドが訪れることはなかった。

 メタ的な話ではあるが、漫画の舞台から彼は扉の向こう側である現実世界へと飛ばされてしまう。
 その中で父親と生活を共にし、還る方法を模索していた。

 そしてシャンバラの門を開けた彼は最愛の人達と再開し、門を破壊した。

【方針】
 聖杯をぶっ壊してアルの元へ還る。


94 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:05:55 hdBaRIsc0

【クラス】セイバー
【真名】ロロノア・ゾロ
【出典】ONE PIECE
【性別】男性
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
 筋力:A+ 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
 対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

 騎乗:E
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。

【保有スキル】
 武装色の覇気:B
 体の周囲に見えない鎧のような力を作り出す覇気。より固い「鎧」は防御だけではなく、攻撃にも転用できる。
 刀に纏うことによって本来斬る事の出来ない自然現象でさえも斬り捨てることが可能になる。
 また同ランク相当の勇猛、直感スキルも兼ね持つ。

 戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 剣術:A
 彼は麦わら海賊団の三刀流を操る海賊狩りのゾロである。

【宝具】
『三千世界』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:1人
 三本の刀を回転させ相手を斬るセイバー最強の奥義である。
 喰らえばサーヴァントとて絶大な傷を覆い、死ぬだろう。
 覇気を纏わせることによって更に上位の『一大・三千・大千・世界』へ強化することも出来る。

『獅子歌歌』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:1人
 愛刀である和道一文字を使用した必殺の居合。
 呼吸を整えた剣豪の一撃を防げる壁など存在しない。
 この世に形として在るものならば人、自然、現象を問わず斬り捨てる。

『和道一文字』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
 親友の形見である彼の愛刀。
 生涯一度も離れることなく彼と共に嵐を駆け抜けた彼にとっての相棒。
 決して壊れることがなければ、離れることも有り得ない。

【weapon】
 雪走り、三代鬼徹、秋水

【人物背景】
 東の海出身の男性であり、夢は世界一の剣豪になること。
 同門である親友が事故で無くなりその刀を受け継いた彼は夢を追い掛ける。
 麦わら海賊団に入ってから世界中の海を股に掛けながら嵐の中を進んでいった。
 巨人、鉄の人間、最強の剣士、サイボーグ、ゾンビ、世界政府……数多の強敵は彼を更なる高みへと導いた。

【サーヴァントとしての願い】
 自分より強いセイバーを倒す。

【基本戦術、方針、運用法】
 戦闘は基本正面から。
 マスターであるエドに従うつもりではいる。
 接近戦主体ではあるが、煩悩鳳による遠距離攻撃も可能である。


95 : エドワード・エルリック&セイバー ◆yrSXkrRWgs :2015/07/11(土) 21:07:19 hdBaRIsc0
投下を終了します


96 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/11(土) 21:44:49 k7xrQhLc0
おお、投下ラッシュが来ている……!
皆様乙です
では、自分も続かせていただきます


97 : 沙条綾香&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/11(土) 21:46:10 k7xrQhLc0
私は魔術師である。

私が住む冬木市は、かつて聖杯戦争が行われた場所だ。
そして今一度、聖杯戦争が行われる日が近づいてきていた。
私はその日に備え、様々な策を巡らしていた。


まさかその日が来る前に、別の聖杯戦争に参加させられるとは思いもしなかったけどね!


◇ ◇ ◇


「ハズレ、かなあ……」
「まあ、ハズレだろうな」

この度の聖杯戦争にマスターとして参加させられた少女・沙条綾香は、自らの相棒であるサーヴァントとそんな会話を交わしていた。
アーチャーのクラスを与えられた彼女のサーヴァントは、中性的な顔立ちをした美少年だ。
グレーのブレザーを着込んだその姿は、まるで男子高校生である。というか、男子高校生以外の何者でもない。

「そっちにも僕の記憶がいってるらしいから言うまでもないかもしれないが、僕の身体能力は貧弱脆弱無知無能の一般人レベルだからな。
 他のサーヴァントと真っ向からぶつかろうものなら、間違いなく瞬殺だ」
「だよねー……」

アーチャーの言葉に、沙条は相槌を打ちつつうなだれる。
彼はたしかに、英霊となるだけの功績を打ち立てた人物だ。
だが、それは戦闘能力によるものではない。
主に英霊同士の直接戦闘で勝敗を競う聖杯戦争において、彼はあまりに弱々しい駒であった。

「でもまあ、まったく戦えないわけでもないけどな」

アーチャーはそう言うと、無造作に右手を振る。
次の瞬間、部屋の壁には鈍い音と共に銀色に輝くフォークが突き刺さっていた。
それこそが彼の宝具、「邪神穿つ銀色の矛(ゴッドスピードラブ)」。
邪神に愛されし者にして邪神の天敵・八坂真尋の唯一の武器であった。

「ここ、私の部屋なんだけど。壁に穴開けないでよ」
「……すまん」

ジト目でつっこむ沙条に対し、真尋はばつが悪そうにフォークを回収する。

「とにかく、僕のフォークは邪神どもに刺しまくってたせいで神秘を貫く性質を得たらしくてな。
 サーヴァントに対しても、そこそこ有効な武器になる。
 奇襲でこれをぶち込めば、勝てる可能性はあるだろう。一発でも反撃されたらアウトだけどな」
「なるほどね」

沙条の表情が、かすかに緩む。

「まあ、思ってたのとは全然違う形だったけど、念願の聖杯戦争だしね。
 早々に諦めないで、やれるだけのことはやってみようか」
「僕はサーヴァントとして召喚された身だ。マスターであるお前の意志に従う。ただ……」
「ただ?」
「僕は善良な一市民だ。たぶんお前の世界の基準でもな。
 あまり非道な手段を取るようであれば、お前を見限ることになるぞ」
「だーいじょうぶ。まーかせて」

鋭い視線を向けながら詰問する真尋に対し、沙条はおどけて答える。

「私だって後味の悪いやり方はしたくないし。生き残るために多少卑怯な戦法はとるかもしれないけど、外道にまで堕ちるつもりはないよ」
「そうか。ならいいんだが……」

沙条の返答に、真尋も毒気を抜かれたように表情を緩める。

「じゃあ結束を高める意味で、乾杯しようか!」
「……なんだ、この緑色の液体は」
「私特製の青汁です!」
「材料は?」
「秘密」
「…………」

真尋は無言で、渡されたコップに入っていた液体を流しに捨てた。

「ああっ、ひどい! なんてことするのさ!」
「うるさい! 僕は料理に得体の知れないものを入れるやつが大嫌いなんだ!」


98 : 沙条綾香&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/11(土) 21:47:06 k7xrQhLc0


【クラス】アーチャー
【真名】八坂真尋
【出典】這いよれ!ニャル子さん
【性別】男
【属性】秩序・善

【パラメーター】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:D 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクDならば、マスターを失ってから半日間現界可能。


【保有スキル】
特異点:A
 生まれつき時間への干渉に耐性を持つ、特異体質。
 時間を止められても動くことができ、過去を改変されても改変前の記憶を失わない。
 たぶん○王にもなれる。
 時間にまつわる、あらゆる技・能力の影響を受けない。

SAN値ピンチ:B
 邪神たちと日常生活を送ってきたことによって身についた、精神攻撃への耐性。
 慣れただけなのかもうSAN値が尽きているのかは、本人にもわからない。


【宝具】
『邪神穿つ銀色の矛(ゴッドスピードラブ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0-50 最大補足:3人
元々はそこらで売っている普通のフォーク。
しかし真尋が手にすることによって、いかなる邪神の体も貫く「対邪神用決戦兵器」と化す。
その逸話から神秘を帯びた対象に対して強い貫通性を持ち、特に属性が「混沌」である者には絶大な効果を発揮する。
その反面、一般人に対してはただのフォークとしての効果しか持たない。
とはいえ、高速で飛んできたフォークが刺さるわけなので普通に痛い。
また投擲せずに手に持って直接刺す場合、「敏捷:A」相当の速度で攻撃することができる。
通常時は1本だが、マスターの魔力を消費することで本数を増やすことが可能。
1本あたりの魔力消費は実際安いので、やろうと思えば数百本揃えることも難しくない。


『夢見るままに待ちいたり(はいよれにゃるこさん)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
真尋がニャル子から渡された「黒い結晶体」が宝具となったもの。
真尋が「自力ではどうにもできない危機」に立たされた時に自動で発動し、「這いよる混沌」ニャル子をその場に召喚する。
しかし本来アーチャーの宝具としてそぐわないものを無理やりねじ込んだ弊害で、発動後数分で真尋もろとも消滅してしまう。
いわば道連れ狙いの、最後の切り札である。


【weapon】
特になし


【人物背景】
北海道札幌市(と思われる都市)に住む、平凡な高校生。
しかし邪神型宇宙人・ニャル子との出会いをきっかけに幾度となく地球の危機に巻き込まれ、その解決に貢献することとなる。
本来は落ち着いた性格なのだが、毎度ニャル子たちの悪ふざけやしょうもない事件に巻き込まれるため怒りをあらわにすることが多い。
身体能力は平凡だがバイトで未確認生物を狩っている母からの遺伝なのかフォーク投げの切れ味は異常に鋭く、
人間をはるかに超える力を持つ邪神たちでも反応できないレベルに達している。


【サーヴァントとしての願い】
今さら叶えたい願いもないので、マスターに協力しておく。
 

【基本戦術、方針、運用法】
肉体レベルが凡人と変わらないため、真正面から戦えばまず勝てない。
いかにして先手を取り、宝具を命中させるかが全てである。


99 : 沙条綾香&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/11(土) 21:48:07 k7xrQhLc0


【マスター】沙条綾香
【出典】氷室の天地 Fate/school life
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
聖杯にたどり着く。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
魔術
 出身世界の魔術を修得している。
 未来の出来事を言い当てたり、贈り主不明の指輪を調べて元の持ち主を特定したりしている。

植物学
 草大好き。植物に関してかなりの知識がある。

【人物背景】
氷室鐘たちのクラスメイト。
見た目は地味だが野草に異常な執着を燃やしたり、大食い大会で優勝するほどの大食漢だったりとなかなかの変人。
常にひょうひょうとしていて自分のペースを崩さないが、ツッコミはけっこう激しい。
実は魔術師であり、幾度か氷室たちに魔力的干渉を行って遠坂凛からにらまれている。
聖杯戦争に関しても関与の意志を見せているが、基準世界に存在しない彼女がいかなる形で関わることになるかは現時点では不明である。

【方針】
この聖杯戦争にも興味があるので、できるだけ勝ち残りたい。
聖杯に何かを願うかは、後々考える。


100 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/11(土) 21:48:58 k7xrQhLc0
以上で投下終了です
聖杯系は不慣れなので、何か不具合がありましたら指摘お願いします


101 : ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:45:35 ruFC7cVU0
>ハザマ&サイコマン組
ま さ か の 肉 鯖 二 連 発
それでもこちらはまた別の面白さがあって、読み応えのあるお話でした
ハザマのようなマスターは、自分の案の中にはないので、非常に興味深かったです

>葛葉紘汰&アルファモン組
紘汰さんはマスターで来たか!
思えば極アームズは、平成屈指の強フォームの印象がありますが、
紘汰さん自身の肉体は、この時点だとまだオーバーロードになりかけてるだけなんですよね
X抗体の設定も面白く、色々と先が気になるコンビでした

>エドワード・エルリック&ロロノア・ゾロ組
どっちも有名どころだけど、合わせるとこんなに画になるんだ!
それが何より驚きなコンビでした
ハガレン・ワンピどちら目線でも、自然なやりとりに見えたのが興味深かったです

>沙条綾香&八坂真尋組
ここまで正統派の強鯖が続いたところで、また違った鯖が出てくるとは
こういう色んな傾向のサーヴァントが混在しているのが、コンペの面白いところですよね
神秘特攻のフォークはもちろんのこと、ニャル子召喚の宝具の威力はいかほどのものか
どこまで立ち回れるかが楽しみなコンビでした

それでは自分も、一組分投下させていただきます


102 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:46:17 ruFC7cVU0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 彼女は空に生きていた。
 その人は少女でありながら、常に戦いの空にいた。
 どこから来たのかも分からない、異形の侵略者達を相手に、果敢に戦い続けていた。

 時には道に迷ったこともある。
 力及ばず、多勢の前に、祖国のほとんどを奪われてしまった。
 最愛の妹一人すら守れず、深く傷つけてしまった。
 それ故に道を見失い、罪の意識に囚われながら、がむしゃらに死に急いだこともある。

「私の力で、一人でも多くを……」

 それでも、彼女は決して折れなかった。
 一度は己を見失いながらも、再び戦う理由を見出し、大空へ舞い上がることができた。
 全てを守ることはできなくても、一人でも多くの人間を、その手で救うことができるなら。
 仲間達と手を取り合うことが、全てを守ることに繋がるならばと、彼女は再起することができた。

「――今度こそ、守ってみせる!」

 その姿はあまりにも眩しくて。
 その勇姿はあまりにも鮮烈すぎて。
 卑小な人間の私には、目が焼けてしまいそうなほどだった。

 絶望を突きつけられながら、大切な人を傷つけられながら、それでもなおも立ち上がる。

 そんなことは私には、とても真似出来そうにもない。


103 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:47:09 ruFC7cVU0


 接ぎ木という言葉がある。
 二種類の植物同士を繋ぎ合わせ、そのまま育成するという行為だ。
 たとえばカボチャの台木にスイカを繋げば、病気に耐性を持ったスイカが育つ。
 かわりにキュウリを繋いだ場合は、表面の粉がなくなり見栄えが良くなる。
 しかし接ぎ木ができるのは、相性のいいもの同士だけだ。
 それは世界樹においても例外ではない。花や木はこの魔術都市では、自然に育つことはない。
 だからこそ土を敷き詰めて、育てる必要があるのだ。
 東郷美森の現在地――自然保護区と呼ばれるエリアは、そういった経緯で作られたものだった。
 自然の権化たる世界樹の中で、自然を保護するというのも、何とも奇妙な表現ではあったが。

「やはり石畳の上よりは、いくらか具合も良いんだな」

 凛とした声が、背後から響く。
 自然公園の土の上で、車椅子の東郷を押す女性が言う。
 少女と呼べる年齢を、頭ひとつだけ過ぎたような、未だうら若い女性だ。
 それでもきりりとした眼差しと、はきはきとした口調からは、しっかりとした印象が感じられる。
 真っ赤な装束は、確かディアンドルという、ドイツの民族衣装だったはずだ。

「ええ。揺れは少ないですね」

 そんな女性の言葉に対し、東郷はそれだけを短く返した。
 サーヴァント。
 聖杯戦争を勝ち抜くための使い魔。
 東郷が巻き込まれてしまった、この儀式のために用意された駒。
 それでも元になった人格がある以上、人間として見なせることは間違いない。
 間違いない、はずなのだ。

(でもやっぱり、駄目だな)

 それでも、意識してしまう。
 そういう類の存在に対して、どうしても猜疑の目を向けてしまう。
 こいつも大赦からの監視として、遣わされた精霊達と、同じ存在なのではないか。
 味方として振る舞っていても、その実聖杯からの命令を受けて、自分を監視しているのではないか。
 そんな風に思ってしまう。

「そのあたりで休もう」

 そうした気持ちを知ってか知らずか、東郷のサーヴァント――アーチャーは、ベンチを指さしながら言った。
 断る理由もないので東郷も同意し、言われるがままにベンチの方へ押される。
 そうしてアーチャーがベンチの端へ座り、その隣に、車椅子の東郷が停まる形となった。

「すまないな、マスター。飛んでいければもっと楽なんだが」
「いいんです。アーチャー1人ならともかく、私を抱えて飛んでいくのは、さすがに目立ちますから」

 それでは的になるだけだということは理解していると、東郷は言った。
 アーチャーは空の英霊だ。
 鉄のブーツを身につけて、自在に天を舞い踊る。そうした類のサーヴァントだ。
 英霊と只人の差もあるのだろうが、後方支援型の自分よりも、ずっと身軽な印象を受けた。
 ……余談だが、その飛行具装着に特化されたアーチャーの普段着は、人前で披露するには、あまりにも目のやり場に困るものだった。
 そのため非戦闘時には、現在のように、アーチャーが持ち合わせていたディアンドルを着るよう指示している。


104 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:47:41 ruFC7cVU0
「でもすごいですね。空を飛べるだなんて」
「私としては、勇者システムの方が驚きだな。いかにウィッチが魔法使いと言えど、あそこまでの芸当はできない」

 言われて、なるほど、と思った。
 アーチャーが用いている武器は、全て現実に存在する銃器だ。
 それを魔力で強化しているだけで、そこ以外は既存のものと変わらない。
 恐らくはサーヴァントになる前は、何もない空間から取り出すことすら、不可能だったのだろう。
 自前で武器を生成できる勇者の方が、彼女にとっては新鮮なのだ。

「それに私達の場合、能力を発揮できる時期にも限りがある。ウィッチの魔力は、歳を経ることで失われてしまうものなんだ」

 私もまた空を飛べるとは思わなかったと、アーチャーは言った。
 だからこそこの場に降り立った姿は、10代だった頃のものなのだと。
 限られた少女時代にしか、魔女の力は使えないのだと。

「……どこの世界でも、事情は一緒か」
「? 何だって?」
「いいえ、何でも」

 問いかけるアーチャーに対して、東郷はやんわりと否定する。
 いつの時代もそうなのだ。
 禍祓いを行う巫女というのは、穢れなき娘でなければならない。
 人身御供にされるのは、いつも幼い少女の役目なのだ。
 アーチャーがそうであったように。
 東郷美森が勇者であるように。

「とにかく、先の戦闘では助かった。マスターの後方支援のおかげで、戦況を有利に進められた」

 今更だが礼を言わせてほしいと、アーチャーが東郷へと言った。
 既に東郷とアーチャーは、他のサーヴァントと交戦し、勝利していた。
 その中で東郷は変身し、自慢のスナイパーライフルを用いて、援護射撃を行ったのだ。
 決定打こそ与えられなかったものの、その攻撃が敵の行動を、多少なり制限したのは事実だ。

「本戦が始まれば、この戦いも、更に激しさを増していくだろうからな……
 差し支えがなければ、今後も力を貸してほしい。共に力を合わせて、勝ち残っていこう」

 サーヴァント失格かもしれないが、と付け足しながら、アーチャーが言った。
 その言葉もどこまで本気なんだか。
 そう思ってしまう自分自身の、疑いの深さに嫌気がさした。


105 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:48:14 ruFC7cVU0


(勇者システム……か)

 ひと通り話し終えて、立ち上がり、再び帰路へとつきながら。
 マスターの車椅子を押しながら、アーチャーのサーヴァントは思考する。
 侵略者バーテックスと戦うべく、神樹様によって選ばれた戦士達。
 それは自分達ウィッチの境遇とも、いくつか重なるところがある。
 違うのは勇者達の力が、神によって授けられたものだということか。
 神の力ともなると、あれほどの芸当が可能となるのか。

(となるとやはり願い事は、バーテックスの殲滅……となるのだろうな)

 自分だってそうするだろう。
 事実として、怪物ネウロイの侵攻の歴史を、なかったことにしたいと思っている。
 避けられたはずの犠牲を回避し、不幸な歴史をやり直したいと、アーチャーはそう考えている。
 もっとも、願えるかどうかは別問題だ。令呪を持っている以上、優先権はマスターにある。
 それに死んでいる者の願いが、生きている者より優先されるというのも、気が引ける話ではあった。

(だが、気になることもある)

 一方で、東郷の態度には、どこか不自然なものもある。
 勇者の話をしている東郷は、時折自虐的だったり、悲しげな顔をしていたりするのだ。
 魔力バイパスを介して得られる、マスターの過去の記憶にも、どこか悲しげな気配がまとわりついている。
 その理由を読み取れていないのは、マスターとの縁というものが、そこまで深いものでないからなのか。

(何かまだ勇者のことについて、話していないことがあるのだろうが……)

 こういう時ミーナだったなら、もっと察しがいいのだろうなと。
 生前の戦友の顔を思い浮かべながら、アーチャーは内心でため息をついた。
 真名、ゲルトルート・バルクホルン。
 第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」に所属した、帝政カールスラントの誇り高き軍人。
 人の心の機微を察知するには、彼女はあまりにも不器用だった。
 そんな自分の至らなさが、バルクホルンには許せなくて、情けなくて仕方がなかった。


106 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:48:37 ruFC7cVU0


 自分が何を願うのか、未だ話したことはない。
 いいやこの先、何があっても、話すことはあり得ないだろう。
 東郷美森の願いとは、それほどに後ろめたいものだった。
 言えばアーチャーのサーヴァントは、絶対に反対するだろうという、確かな確信が東郷にはあった。

 勇者・東郷美森の願い。
 それは守るべき世界の破滅。
 どうしようもないこの世界を、勇者諸共に消し去ることで、使命から解放されることである。

 バルクホルンには話していないが、勇者の話には続きがあった。
 勇者は最大限に力を発揮した時、己が身体機能の一部を失う。
 そうして身をすり減らしながら、しかし死ぬことも許されず、侵略者と永遠に戦い続ける。
 そうした残酷な生き地獄こそが、勇者システムの真実なのだ。

 そしてそうまでして守った世界にも、そこから先の未来がない。
 東郷達が守るべき地球は、とっくの昔に滅んでいる。
 神樹様の結界によって、隔離し守られた四国だけが、地獄の中心に取り残されているのだ。
 その上結界の外側では、今も無数のバーテックス達が、とどめを刺そうと構えているのだ。

 滅びを待つだけの世界で、気休めのような延命のためだけに、勇者の命が使い捨てられる。
 どうせ滅ぶしかない世界を、ほんの少し生かすためだけに、勇者は苦しめられている。
 こんな馬鹿げた話は御免だ。
 そうまでして世界を守りたいとも、生き残りたいとも思えるものか。

 これ以上仲間達を苦しませはしない。
 だからこそ世界と心中し、死という形で全て終わらせる。
 生の苦しみから解放される以外、勇者が幸福を得る術など、この世のどこにもありはしないのだ。

 バーテックスの力を借りれば、暴力に頼るしか手はなくなる。
 しかし聖杯に願えるのなら、苦しませずに終わらせることもできるだろう。
 だからこそ、この戦いには勝たねばならない。
 何としても聖杯戦争を勝ち抜き、願望機を手に入れなければならないのだ。
 これは勇者の真実を知っている、東郷にしかできないことなのだから。

 東郷美森は勇者である。

 されど今の東郷美森は、もはや人類の守護者では、ない。


107 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:49:02 ruFC7cVU0
【クラス】アーチャー
【真名】ゲルトルート・バルクホルン
【出典】ストライクウィッチーズ
【性別】女性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:E(B) 魔力:B 幸運:B 宝具:D

【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
巨人殺し:B
 自身より巨大な敵と戦い、打倒してきた逸話に基づくスキル。
 その豊富な戦闘経験により、巨大な敵と戦う際には、命中率・回避率・クリティカル率に補正がかかる。

怪力:C
 一時的に筋力を増幅させる。
 本来は魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性であり、バルクホルンは自身の固有魔法によって、このスキルを得ている。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

魔力放出:C
 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 バルクホルンの場合、銃弾の強化や、ウィッチの持つ標準的な戦闘技術・魔力バリアという形で行使される。

【宝具】
『天に挑みし白狼の牙(フラックウルフ Fw190)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 魔力を動力にする「魔導エンジン」により駆動される機械装置・ストライカーユニット。
 機械制御により魔力運用を効率的に行うことが可能で、これを装着することにより、飛行魔法を行使し空戦を行うことが可能。
 バルクホルンの愛用するフラックウルフは、元ウィッチの設計主任の下で開発されたこともあり、頑丈かつ操作性に優れた機体となっている。
 これを装着した際、バルクホルンの敏捷ランクは3ランク向上する(ランクB)。

『日ノ輪を目指した蝋の翼(Me262v1)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:D 宝具:D
 かつてバルクホルンがテスト運用を行った、試作型のストライカーユニット。
 従来のストライカーユニットはレシプロ式となっていたが、本機はジェット式となっており、その他当時の最先端の技術が注ぎ込まれている。
 しかし本機には、装着者の魔力を過剰に吸い取り、かつ装着者が意識を失っても吸収し続けるという致命的な欠陥があり、そのままでの採用は見送られることとなった。
 燃費が悪く戦闘可能時間は極端に落ちるが、その分瞬間的な爆発力があり、上記のようにステータスがアップする(幸運のみ減少)。
 なお、本来は上記の問題点を改善したユニットの使用経験もあるのだが、実戦での使用記録がなかったため、宝具となるまでには至らなかった。


108 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:49:30 ruFC7cVU0
【weapon】
MG42S機関銃
MG131重機関銃
MG151/20機関砲
パンツァーファウスト
レヌスメタルMK108 30mm機関砲
レヌスメタルBK-5 50mmカノン砲
 戦闘時に用いる銃火器。下2つは重量の兼ね合いから、使用は宝具『日ノ輪を目指した蝋の翼(Me262v1)』発動時にのみ限られる。

ディアンドル
 南カールスラントの民族衣装。胸元の開けたブラウスとジャンパースカート、エプロンからなる。
 もちろん戦闘装束ではないが、これを着用した写真が、資料として残されていたため、所有していた。

【人物背景】
異次元から現れた謎の金属体・ネウロイ。
地球を侵攻するこれらを撃退するために結成された、第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」のメンバーである。
帝政カールスラント(ドイツに相当する国家)出身で、19歳の姿で現界している。
激戦区カールスラントで戦い抜いた一流のウィッチであり、250機を超えるほどの撃墜数を誇る。
実妹をネウロイの襲撃から守れなかったことから、一時期は自責に駆られ死に急ぐような戦い方をしていたが、後に改善された。

絵に描いたような軍人気質で、生真面目かつ理性的に行動しようと己を律している。
ただし本質的には気が短い方であるため、カッとなりやすく、周囲からは説教臭いと思われがち。
とはいえ四六時中ガミガミと怒鳴っているわけではなく、何だかんだで部下の面倒を見たりもしている。
「戦闘中も常に二番機を視界に入れている」とは、戦友ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの言。
実は極度のシスコンであり、いわゆる妹キャラの人間に対しても、何かと気にかけたり世話を焼きたがる癖がある。

固有魔法は「筋力強化」。他のウィッチに比べて身体強化魔法の効果が強く、瞬発的に怪力を発揮することも可能。
これ自体は直接的なネウロイへの攻撃手段となったり、特別な効果を得られたりするような魔法ではないが、
スタミナ向上による高い継戦能力の実現や、重量級の銃器を装備可能な積載能力の確保といった形で機能している。
この魔法でこれだけの戦績を残すことができたという事実が、バルクホルン自身の戦闘技術の高さを物語っていると言えるだろう。

【サーヴァントとしての願い】
ネウロイの侵略をなかったことにする


109 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:52:15 ruFC7cVU0
【基本戦術、方針、運用法】
サーヴァントとしての能力は平均的。強いて言うなら、空戦能力が最大の特徴か
空を自在に飛べるという点は、単なる数値以上の利点となるため、これを活かして立ち回りたい
マスターときっちり役割分担をして、連携を取って戦えば、十分な戦果を上げられるだろう


【マスター】東郷美森
【出典】結城友奈は勇者である
【性別】女性
【令呪の位置】右の胸元

【マスターとしての願い】
世界に安らかなる滅びを

【weapon】
スマートフォン
 コンピューター内蔵型の電話端末。電波圏外であるため、通話やインターネット機能は使用できない。
 勇者への変身能力は、このスマートフォンのアプリケーションによって発動できる。

精霊
 大赦から贈られた生命体。勇者をサポートする存在であると銘打たれている。
 現実には、貴重な戦力である勇者の損耗を避けるための安全装置であり、
 勇者に危害が及ぼうとした場合には、たとえ本人が自殺しようとした場合であっても、無条件に勇者の身を守るようになっている。
 東郷の精霊は、「刑部狸」「青坊主」「不知火」「川蛍」の4匹。普段は勇者システム同様、スマートフォンに入っている。

【能力・技能】
神樹の勇者
 日本の神族の集合体・神樹様によって、侵略者バーテックスと戦うために選ばれた戦士。
 空色戦闘装束に変身することによって、戦闘能力が飛躍的に向上する。
 東郷は銃を扱う勇者であり、拳銃、小銃、狙撃銃の三種を、敵との距離に応じて使い分ける。
 変身しても両足の機能は回復しないため、衣装から伸びる大きなリボンを、足のかわりとして用いている。

満開
 勇者の力を最大限に発揮する姿。
 しかしこの姿になった勇者は、戦闘後に「散華」と呼ばれる現象によって、身体機能の一部を喪失してしまう。
 東郷は過去に行った満開により、「鷲尾須美」の記憶、両足の機能、左耳の聴力を失っている。

コンピューター知識
 パソコンを操作する知識と技術。勇者部のホームページをものの数分で更新するなど、凄まじい技術を誇る。
 ただし、科学文明を否定する魔術師の社会では、このスキルはあまり役に立たない。

日本史
 家柄がきっかけで日本の歴史に興味を持っており、熱心に勉強している歴女。
 特に家の仕事に縁深い、護国関係の事柄に関心が強い。カラオケの十八番も軍歌である。

お菓子作り
 文字通り、お菓子を作るスキル。友奈に褒められたことがきっかけで、のめり込むようになった。

【人物背景】
讃州中学校に通う2年生の少女。
世界を守護する神樹様を管理する組織・大赦に関わる家系であり、同時に大赦から、バーテックスを倒すために選ばれた勇者でもある。
親友の結城友奈と共に、犬吠埼風の誘いによって、「勇者部」へと加入した。
中学に入る手前に事故に遭っており、当時の記憶と両足の機能を失っている……と説明されていた。
このため、自力で歩くことができず、車椅子に乗って生活している。

上品でおっとりとしており、皆から一目置かれている。
事故から目覚めて初めて出来た友人である友奈のことは、特に大切に想っており、
周囲には自らのことを、彼女から「カッコいい」と褒められた苗字で呼ばせている。
しっかり者の様子とは裏腹に、珍妙な発言が飛び出すことも多く、どこか浮世離れした雰囲気を纏っている。

実は過去に、大赦関係の名家・鷲尾家に預けられ、勇者「鷲尾須美」として戦っていたことがある。
両足機能と記憶の喪失は、この時の散華によって起きた現象だった。
当時の感覚が蘇るのか、勇者としての戦いには誰よりも早く順応しており、日頃の様子からは信じられないほどに冷静沈着な姿を見せる。

後に勇者システムの真相と、世界が滅びかけている事実を知った東郷は、無意味な延命行為を続けている世界に絶望。
犠牲となることを放棄し、自らバーテックスの大軍団を神樹様にぶつけ、世界との無理心中を図ろうとする。
その意識の根底には、無価値な理由で傷つけられる仲間達を見たくないという想いと、
かつての「鷲尾須美」のように、皆も自分も、互いのことを忘れ孤独になってしまうのではないかという恐怖があった。

【方針】
優勝狙い。前衛はアーチャーに任せ、自分は後方支援に徹する。


110 : 東郷美森&アーチャー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 02:53:01 ruFC7cVU0
投下は以上です
東郷美森@結城友奈は勇者である&アーチャー(ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズ)組でした


111 : ◆nig7QPL25k :2015/07/12(日) 21:12:27 ruFC7cVU0
昨夜投下したゲルトルート・バルクホルンですが、身内のストパンに自信ニキからアドバイスを頂いたので、
ジェットストライカーの宝具名を、以下のように変更しようと思います


『蒼天に舞え赤鉄の靴(Me262v1)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:D 宝具:D
 かつてバルクホルンがテスト運用を行った、試作型のストライカーユニット。
 従来のストライカーユニットはレシプロ式となっていたが、本機はジェット式となっており、その他当時の最先端の技術が注ぎ込まれている。
 しかし本機には、装着者の魔力を過剰に吸い取り、かつ装着者が意識を失っても吸収し続けるという致命的な欠陥があり、そのままでの採用は見送られることとなった。
 燃費が悪く戦闘可能時間は極端に落ちるが、その分瞬間的な爆発力があり、上記のようにステータスがアップする(幸運のみ減少)。
 なお、本来は上記の問題点を改善したユニットの使用経験もあるのだが、実戦での使用記録がなかったため、宝具となるまでには至らなかった。


112 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:48:48 /P.pyT4A0
遅ればせながら、投下乙です
ゆゆゆは見たことないけど、CMで見かけた車いすの子ってこんなキャラだったんだ……

では、自分も投下させていただきます


113 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:49:51 /P.pyT4A0
住宅街にある食堂・「フロシャイム」。
安くて美味いと評判のこの店は、料理人でもある店主のヴァンプが一人で経営していた。
その夜、ヴァンプは営業時間を終え店の片付けを行っていた。
鼻歌など歌いながら食器をしまっていたヴァンプだったが、ふと店の外がなにやら騒がしいことに気づく。

「もう、ケンカか何かかなあ。困るなあ」

顔に汗を浮かべながら、ヴァンプは店の扉をそっと開けて顔を出す。


そこにいたのは、明らかに正気でない顔つきの屈強な男だった。

「ひっ!」

あまりの威圧感に、ヴァンプは思わず尻餅をつく。
どこからか「止まれ! バーサーカー!」という声が聞こえてくるが、今のヴァンプにはその言葉の意味を理解するだけの余裕がない。
男はヴァンプに向かって突進し、拳を突き出す。ヴァンプはそれを、どうにか回避した。

(す、すごいパンチだ……。けど、レッドさんのパンチと比べればまだマシ……。
 あれ? レッドさんって……誰?)

脳裏に浮かぶには、赤い仮面にTシャツというミスマッチな風貌のヒーロー。
そんな人物、これまでの人生で見かけたはずがない。いや、違う。
彼こそが、ヴァンプの人生に欠かすことのできない男のはずだ。


その瞬間偽りの記憶が砕け散り、真実の記憶が蘇る。


(そうだ……私は食堂の店主じゃない! 私はフロシャイム川崎支部支部長・ヴァンプ将軍!)

ヴァンプの中に戻ってきたのは、世界征服を目指す悪の組織の一員として戦う誇り高き自分。
それとほぼ同時に、資格を得た彼の元にサーヴァントが姿を現した。

「お待たせしましたぁー!」

威勢よく声をあげるのは、爽やかさと暑苦しさが絶妙のバランスでブレンドされたような雰囲気の青年。

「おっと、さっそく交戦中ですか! では、俺の力をお見せしましょう!」

青年はどこからともなく、携帯電話と小さな人形を取り出す。
そして人形を携帯電話の空白部分に入れると、ボタンを押した。

「豪快チェンジ!」
『ゴォォォォカイジャー!』

やたら気合の入った機械音声と共に、青年の体が光に包まれる。
そして光が消えた時には、彼の体は銀と黒の戦闘スーツに包まれていた。

「ゴォォォォカイシルバー!」

ポーズを決めながら、青年は名乗りを上げる。

「一人でも! 海賊戦隊! ゴーカイジャー!」


114 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:50:25 /P.pyT4A0


◆ ◆ ◆


その後は、一方的な戦いだった。
ゴーカイシルバーは見事な戦い振りでバーサーカーを圧倒し、勝利して見せたのである。

「えーと、ランサーくんって呼べばいいのかな。それとも、ゴーカイシルバーくんの方がいい?」
「あ、本名でいいですよ。鎧って呼んでください」

戦いが終わった後、二人は食堂の中に戻り、そこでじっくりと話し合うことにしていた。

「それじゃあ鎧くん、君は聖杯に何を願いたいの?」
「いえ、俺は願いはありません」
「あれ? そうなの?」
「まあ、昔似たようなことがありまして。個人的に、こういうのに願いを叶えてもらうのは気が進まないんですよ」

かつて鎧は、仲間達と共に「宇宙の歴史を好きなように改変できる宝」を手にしたことがある。
それを使えば、彼らが戦っていた宇宙帝国ザンギャックを歴史から消し去ることができた。
ザンギャックが消えれば、仲間達の大切な人の死もなかったことになる。そのはずだった。
しかしその宝を使う代償は、これまで地球を守ってきた34のスーパー戦隊の消滅であった。
地球に暮らす人々の心の支えとなっているスーパー戦隊を、失わせるわけにはいかない。
仲間達のその思いを背負い、鎧は自らの手で宝を破壊した。
あの宝と今回の聖杯が違うものだというのはわかっている。
だがそれでも、自分が聖杯を使うのは仲間達の思いを踏みにじる行為のように鎧には思えた。

「私は別に使ってもいいかなーとは思うんだけどね。じゃあ鎧くんは、何がしたいの?」
「俺は……あくまでスーパー戦隊の一人として、弱い人々を守りたいです」
「どういうこと?」
「この聖杯戦争には、ヴァンプさんのように無理やり参加させられた人もたくさんいるはずです。
 戦いたくない人だっているでしょう。俺はそんな人たちを、好戦的な人たちから守りたい。
 できれば、安全に元の世界に帰れる方法も見つけたいですね」
「なるほどねえ……」

鎧の返答に、ヴァンプは深くうなずく。

「私としたことが、そこまで考えが回らなかったよ。たしかに私や鎧くんと違って、戦いをしたことがない人だって参加させられてるんだろうね」
「…………」
「ん? どうしたの、鎧くん」
「あの……本当にヴァンプさんって悪の組織の幹部なんですか?」
「そうだよー。元の世界じゃ、強い怪人をたくさん従えてたんだから!」

朗らかに笑うヴァンプとは対照的に、鎧は困惑の表情を浮かべていた。
目の前にいる男が、鎧の知る悪の幹部とはあまりに違いすぎるのだ。
鎧とて、悪の組織に所属するもの全てが改心の余地のない外道だとは思っていない。
ザンギャックにも、地球で一般人として生きていく道を選んだジェラシットという男がいた。
歴史をさかのぼれば、バイラムのドライヤージゲンや、エヴォリアンのヤツデンワニなどもいる。
しかし彼らは、いずれも悪の組織を抜けて真っ当な道を歩き始めた者たちだ。
悪の組織に所属しながら、こんなにいい人オーラ全開の男など前代未聞だ。

(本性を隠している……? いや、間違いなく今のこの態度こそがヴァンプさんの素だ。
 いったいどういう人なんだ、この人は……)
「鎧くん、顔色悪いけど大丈夫?」
「え、あー、はい。大丈夫です! 元気ギンギンですよ!」

鎧の態度を不審に思い心配するヴァンプに対し、慌ててごまかす鎧。

(まあ問題ないと思うけど、いちおう少しくらいは警戒しておいた方がいいか……。
 この人が本当に信頼できる人かどうか、しっかり見極めないと)


優しき悪と、熱き正義。呉越同舟の主従は、どこへと進むのか。
第一幕、まずはこれまで。


115 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:51:19 /P.pyT4A0


【クラス】ランサー
【真名】猪狩鎧
【出典】海賊戦隊ゴーカイジャー
【性別】男
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:C 幸運:B 宝具:A+
    変身時 筋力:C 耐久:B 敏捷:C 魔力:C 幸運:B 宝具:A+

【クラススキル】
対魔力:D
 魔術に対する守り。
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【保有スキル】
騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。
 生物に関しては野獣ランク以下のものに限られる。

単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクDならば、マスターを失ってから半日間現界可能。

スーパー戦隊:A
 絆を結んだ仲間と共に戦う、正義の戦士。
 同じスキルを持つサーヴァントと共闘する時、宝具以外のステータスひとつがランダムで1ランクアップする。

戦隊マニア:A
 スーパー戦隊をこよなく愛する者。
 スーパー戦隊またはその敵対者がサーヴァントとして現れた時、確実にその真名を見抜くことができる。
 また副次的な効果として、スーパー戦隊と共闘したことがある「仮面ライダー」「メタルヒーロー」に関してもある程度の知識を得ている。


116 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:52:05 /P.pyT4A0


【宝具】
『二百番目の戦士(ゴーカイシルバーキー)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大補足:1人(自身)
ゴーカイシルバーへの変身アイテム。
ゴーカイセルラーにセットすることで発動する。
変身することによりステータスが上昇し、「ゴーカイシューティングスター」などの必殺技が使用可能になる。
なおランサーとして召喚されたため、槍を武器とするこのキー以外のレンジャーキーは後述のゴールドアンカーキー以外没収されている。


『遅れてきた戦士たち(ゴールドアンカーキー)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大補足:1人(自身)
戦いの途中でスーパー戦隊に加わった、いわゆる「追加戦士」と言われる15人の戦士の力を宿した鍵。
ゴーカイシルバーへの変身中にこの鍵をゴーカイセルラーにセットすることで、ゴールドモードに変身できる。
変身することにより幸運と宝具以外のステータスが1ランク上昇し、ゴーカイスピアがアンカーモードとなる。
宝具としてはこの形で固定されているため、分離させて各自のレンジャーキーとして使うことはできない。


『豪獣ドリル』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1-90 最大補足:500人
タイムレンジャーの大いなる力によって未来から召喚される、ドリルタンク。
ジュウレンジャーの大いなる力により恐竜型メカ「豪獣レックス」、アバレンジャーの大いなる力により巨大ロボ「豪獣神」に変形する。
全ての形態でドリル=貫く武器がメイン武装となっているため、ランサーの宝具として認められた。
しかしその質量に加え大いなる力という特級の神秘を三つも内蔵しているため、使用には莫大な魔力が必要。
ヴァンプでは令呪を全て使ったとしてもまだ魔力不足であり、何らかの手段で他から魔力を調達しないと使用不可能である。


【weapon】
○ゴーカイセルラー
変身に使用する携帯電話。
下部に空洞があり、そこにレンジャーキーを入れてボタンを押すことで変身できる。
この世界では、電話としての機能は使えない。

○ゴーカイスピア
ゴーカイシルバーの専用武器である、三つ叉の槍。変身前でも呼び出せる。
スピアモードとガンモードの切り替えが可能。
ゴールドモードに変身すると、穂先が碇状のアンカーモードに変化する。


【人物背景】
ゴーカイジャー6人目の戦士で、メンバー唯一の地球人。
元は単なる戦隊マニアの青年であったが、子供をかばって自動車に轢かれた際にその勇気を認められ
夢の中でアバレキラー、タイムファイヤー、ドラゴンレンジャーの3人から変身アイテムと3戦隊の大いなる力を託された。
明るくハイテンションなムードメーカー。
戦闘センスは高く、元は素人でありながら他のメンバーに劣らぬ戦闘力を発揮する。


【サーヴァントとしての願い】
戦いを望まない弱者を守る。
もし聖杯を手に入れても、自分では使わない。


【基本戦術、方針、運用法】
ランサークラスの縛りにより「多彩な変身を活かした、臨機応変な戦い方」というゴーカイジャー最大の武器が潰されているため、正攻法しかない。
もっとも地力は充分にあるため、それで苦労することもないだろう。
奇襲戦法などは決して苦手ではないが、防衛を目的とする以上、使う機会は少ないと思われる。


117 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:52:48 /P.pyT4A0


【マスター】ヴァンプ将軍
【出典】天体戦士サンレッド
【性別】男性
【令呪の位置】右腕

【マスターとしての願い】
どうしよう。

【weapon】
○槍と盾
サンレッドと対峙する際の、ヴァンプの基本装備。
特殊能力は無いが、盾は小物が入れられる。

【能力・技能】
家事
 近所でカリスマ主夫と称えられる、高い家事スキル。
 特に料理は絶品である。

【人物背景】
世界征服を企む悪の組織「フロシャイム」の、川崎支部支部長。
その肩書きとは裏腹に、性格は世話好きでお人好し。
宿敵であるヒーロー・サンレッドとも、普通に近所づきあいしている。
指揮官ゆえ表だって戦うことはほとんどないが、部下の怪人に言わせれば「ヴァンプ様は本気になれば俺たちよりずっと強い」らしい。
事実、サンレッドと直接対決を行った際には強化アイテムを装備していたとはいえ、彼と互角の戦いを演じている。

【方針】
聖杯にちょっと興味はあるが、鎧の意思を尊重して彼に合わせる。


118 : ヴァンプ将軍&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/15(水) 20:53:17 /P.pyT4A0
以上で投下終了です


119 : ◆nig7QPL25k :2015/07/15(水) 23:19:43 qyBfv7Sw0
>ヴァンプ将軍&猪狩鎧組
投下ありがとうございます!
ヒーロー・悪役という立場の対立する者同士ということもさることながら、
その上お互いノリのいい者同士の組み合わせとなると、やりとりを見てるだけでも楽しそうですね
豪獣神の設定もドラマを生みそうで、面白い組み合わせだと思いました

東郷さんに関しては、アレです。本当はいい子なんですよ
人より聡明だからこそ猜疑心が強くて、人より愛情深いからこそ、許せない敵には冷酷になってしまう
いい子なんだけど、それゆえに、悲劇を招いてしまった。悲しい子なのです


120 : ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:37:43 Cp79ukKM0
投下します


121 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:38:07 Cp79ukKM0
 夢を見た。
 僕ではない誰かの夢を。
 僕と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 少女は1人の少女を愛した。
 人を信じる心をなくし、人を恐れるようになった彼女は、1人の少女と出会って変わった。
 たとえ戦いに身を投じてでも、彼女の傍にいたいと願った。
 たとえ心を偽ってでも、彼女と触れ合いたいと願った。
 少女は奇跡の力を手にし、心をねじ曲げ壊しながら、彼女の隣で戦い続けた。

「大丈夫。私は何になっても、決して織莉子を傷つけたりしない」

 彼女を守るためならば、命を散らしても惜しくはない。
 彼女のためになるならば、死んでしまっても構わない。
 彼女を欺いた自分には、むしろその末路がお似合いだ。
 そう考えたその少女は、1人で命を終えようとした。
 しかし彼女は少女を許した。罪の告白を耳にしても、共に在れとなお命じた。
 たとえ命を喪ってでも、共に戦い続ける手段が、彼女達には残されていたからだ。

「いや、むしろこうなることで、キミを護ることができるならば……」

 少女は魔物に成り果てた。
 奇跡を願ったその対価は、少女の死後の尊厳を奪い、怪物へと貶めることだった。
 それでも少女は自分を信じた。
 たとえ何物に成り果てたとしても、それは決して最愛の友を、傷つけることはないと信じた。
 それはむしろ自分ではなく、何より大切だと思う、彼女への想いを信じたのだ。

「私は――安らかに絶望できる!」

 理解もできる。
 共感もできる。
 きっと僕も同じ立場なら、同じ道を選んだだろう。
 漆黒の闇から姿を現し、刃を振りかざす魔物の姿が、僕には美しく見えた。


122 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:38:27 Cp79ukKM0


 魔術都市ユグドラシルに、特定の国籍はない。
 そこまで厳密には設定されていないからだ。
 ただ漠然と、魔術師といえば欧州に勢力を広げているものという認識から、ヨーロッパ系の文化が取り入れられている。
 そしてその縛りの緩さを、最も実感できるのが、市場の立ち並ぶ商業区画だった。
 あちこちに乱立する露店には、多種多様な国の特色が、ごちゃまぜになって点在している。
 あちらでスペイン人がパエリアを炒めているかと思えば、こちらではフランス人がガレットを売っていた。
 別の店に並べられているのは、イタリアの伝統的な衣装だ。

「………」

 そしてそれら全ての店を、興味なさげにぼんやりと眺める、一人の青年の姿があった。
 長い髪もさることながら、美しく整ったその顔は、まるで絶世の美女のようだ。
 中性的な雰囲気を纏った、長身痩躯のその男は、名前をエンデュランスという。
 とはいえ、それも偽りの名だ。
 彼はネットゲーム・「The World R:2」のPCボディを依代にして、この世界樹の上に降り立っているのだから。

(芸がない)

 開いた手のひらを、見やる。
 派手なゲーム中のグラフィックから、現代風の衣装に着替えた、己がPCボディを見つめる。
 現在のエンデュランスには、リアルの肉体の感覚はない。
 青年・一ノ瀬薫の意識は、リアルから切り離されネットに降り、このPCに乗り移っている。
 とはいえそれも、既に馴染みのある体験だった。
 ウィルス知性体・AIDAは、これと同じような状態に、エンデュランスを貶めたことがあるのだから。

「お待たせー」

 と、そこに声をかける者がいた。
 振り返った先にいたのは、黒髪を短く切った少女だ。
 全身にじゃらじゃらと着けた小物が、独特な色彩を放っている。
 手にしているのはジェラートの入ったカップだ。エンデュランスから小遣いをもらい、露店で買ってきたものだった。
 彼女こそが、彼のサーヴァントだ。
 背の高いエンデュランスの、胸ほどの背丈しかないこの少女が、伝説に謳われた英霊なのである。

「いやぁ、すまないね。あまりに美味しそうなものばかりだから、ついつい目移りしちゃったんだ」
「随分と食い意地の張った英霊もいたものだね」
「殺しの報酬としては安いくらいさ」

 物騒なことをあっけらかんと言いながら、少女はアイスを口に頬張り、やがてその甘露さに唸った。
 彼女はアサシンのサーヴァントだ。
 つい先程、他のマスターを見つけ、早速葬ってきたところだ。
 彼女が舌鼓を打っている、オレンジ色のジェラートは、その褒美として買わせてやったものなのである。


123 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:38:52 Cp79ukKM0
「それもそうか」
「随分と気のないリアクションじゃないか。これで本戦に近づけたんだよ?」
「僕は別に、聖杯には興味がないから」

 事実だ。
 聖杯戦争に巻き込まれたエンデュランスだが、彼には叶えたいと思う願いがなかった。
 むくれるアサシンに対して、彼はさらりとそう言い放った。
 想いを寄せる大切な人がいる。かつて喪われた友の命も、今はこのPCの中に存在している。
 当に充足しているエンデュランスには、聖杯を本気で求める理由がない。

「それじゃあ何で、私に命令を?」
「まぁ……ハセヲにあげられるのなら、もらってあげてもいいかな、と思ったのさ」

 最愛の恩人の名を挙げながら、エンデュランスが言った。
 自分には願望機にかける願いがない。
 しかし自分の慕うハセヲには、どうしても叶えたい目標がある。
 彼は今もそのために、懸命に戦い続けている。
 そんなハセヲの助けになるなら、興味の持てない聖杯も、狙っても構わないと思えた。

「愛だね」

 そんなエンデュランスの心境を、アサシンは一言でまとめた。
 黒猫のような金色の瞳が、妖しげな光をたたえながら、笑顔と共にマスターを見ていた。

「そうだね。愛だ」
「それなら立派な動機じゃないか。もっと胸を張っていいと思うよ」

 それがキミの動機なら、私も尊重してやってもいいと。
 愛のために戦うのなら、私はお前を認めてやると、アサシンのサーヴァントは言った。
 それほど多くを語ったわけではないが、この少女からは、同輩の匂いがする。
 呉キリカと名乗ったアサシンには、自分と似通った雰囲気を感じる。
 なればこそ、エンデュランスの本心を、キリカは鋭敏に感じ取ったのだろう。

「まぁそういうわけだからさ。今後ともよろしくね、マスター」

 呉キリカは愛の戦士だ。
 最愛のためにその身を捧げ、奇跡の力を身に宿し、やがては魔物へと成り果てた少女だ。
 それでも彼女は愛だけは、最期まで忘れることはなかった。
 どれほど傷つき狂っても、おぞましい姿に化身したとしても、常に彼女の愛する者を、守り支えて戦い続けた。
 それこそがエンデュランスの引き当てた、アサシンのサーヴァントの在り方だった。
 騒がしいところはあるものの、共感できる部分があるのは、案外悪くないのかもしれない。
 そんなことを考えながら、エンデュランスは赤い視線を、ぼんやりと遠くへと向けた。

(ハセヲは喜んでくれるかな)

 自分の想いは報われるだろうか。
 この聖杯戦争を勝ち抜いて、聖杯を捧げることができれば、ハセヲは喜んでくれるだろうか。
 それがエンデュランスにとっては、聖杯の存在そのものよりも、何よりも重要なことだった。


124 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:39:09 Cp79ukKM0
【クラス】アサシン
【真名】呉キリカ
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
戦闘続行:A
 魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。

速度低下:C
 魔術系統の一種。発動した対象の敏捷性、および反応速度を遅らせる。
 生命体に対して発動した場合、相手は自分の速度が落ちていることを認識できない。

直感:D
 戦闘時、つねに自身にとって有利な展開を”感じ取る”能力。
 攻撃をある程度は予見することができる。

精神汚染:E
 精神を病んでいる為、他の精神干渉系魔術をごく稀にシャットアウトする。
 同ランクの精神汚染を持つ人物以外とは意気投合しにくい。


125 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:40:12 Cp79ukKM0
【宝具】
『福音告げし奇跡の黒曜(ソウルジェム)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 キリカを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 キリカの固有武器は鉤爪であり、平時は3本×2=6本を展開して用いている。
 固有魔法は速度低下。 制御が難しく、6本以上の鉤爪を展開した際には、数が増えるごとに精度が低下する。

『円環の理(MARGOT)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:20人
 かつて安らかなる絶望の果てに、キリカの魂が生じた魔女。
 その性質が何だったのか、正確な情報は残されていない。
 しかしその魔女は、生前のキリカの意志を遺したかのように、美国織莉子を守り戦い続けた。
 円環の理に導かれた現在は、キリカの魂と同化し、その力の一部として操ることができる。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて希望を運び、いつか呪いを振り撒いた少女。
絶望よりも強い意志の下、死してなお大切な者を守り抜いた、美国織莉子の最愛最強の守護者。
閉ざされた心をねじ曲げて、愛する者を欺いてなお、その隣に寄り添いたいと願った、魔法少女の末路である。
魔女となったその魂は、円環の理に観測され、聖杯戦争の舞台へと降り立つ。

生前のキリカは見滝原中学校に通う、中学3年生の少女だった。
過去に友人に裏切られたことから、極度の人間不信に陥り、人付き合いに対して非常に臆病になっていたのだが、
織莉子に助けられたことがきっかけで、彼女に近づきたいと思うようになり、
「違う自分に変わりたい」という願いを対価に魔法少女の契約を果たす。
しかし違う自分になったキリカは、その副作用によって、以前の自分の願いを忘れてしまった。
紆余曲折を経て織莉子と再会した時も、相手が自分の想い人だとは気付かなかったのだが、
彼女の下で殺人に手を染め、ショックから恐慌状態に陥った際に、自分を許してくれた織莉子のことを、改めて慕うようになる。
しかしそれは、織莉子のためなら殺人すらも、自殺すらも平気で行うという、心の歪みを孕んだものでもあった。

固有魔法により相手の速度を落とし、相対的にスピードで優位に立つ、変則的な高速戦闘を得意とする。
鉤爪を敵に向かって投擲する「ステッピングファング」、
無数の爪を縦に連ね巨大な刃を成す「ヴァンパイアファング」を必殺技に持つ。

【サーヴァントとしての願い】
本音を言うと受肉したい。生き返って織莉子と再会したい

【基本戦術、方針、運用法】
ステータスはそれほど高くなく、宝具特性もかなり地味。
このため戦闘においては、いかに速度低下を使いこなすかが最大の鍵となる。
とはいえそこはアサシンであるため、正面切っての戦いは、避けた方が無難なのは間違いない。


126 : エンデュランス&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:40:34 Cp79ukKM0
【マスター】エンデュランス
【出典】.hacck//G.U.
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
特にない。ハセヲに使わせてあげたい

【weapon】
疾風刀・斬子姫
 エンデュランスの用いる長剣。風属性を持つ。

誘惑スル薔薇の雫
 ロストグラウンドに封じられていた、エンデュランスのための長剣。風属性、闇属性を持つ。
 彼の碑文にまつわる力を持っており、これを手にしたことによって、エンデュランスは自分の中に、ミアの存在を感じられるようになった。

【能力・技能】
ゲーマー
 ネットゲーム「The World R:2」のプレイングスキル。

碑文使い(第六層)
 The Worldの自立プログラム・モルガナの化身である、「誘惑の恋人」マハの因子を使いこなす者。
 本来なら巨大な憑神(アバター)の姿へと変化することができるが、本聖杯戦争では不可能となっている。
 ちなみに彼の友人・ミアは、このマハが生み出したAIである。

【人物背景】
ネットゲーム「The World R:2」をプレイする青年。PCのジョブは、長剣を扱う斬刀士(ブレイド)。
大切な友人・ミアを失った心の隙間を、ウィルス知性体・AIDAに漬け込まれるが、主人公・ハセヲによって打倒される。
その後、失意のどん底にいたところを、ハセヲによって救われ、彼を強く慕うようになった。

女性と見まごうほどの美麗な容姿と、ミステリアスな雰囲気が特徴。
一度惚れ込んだ相手への執着は強く、同性であるハセヲに対しても、少し怪しい雰囲気を感じるレベルの好意を寄せている。

本名は一ノ瀬薫。20歳。
元々引っ込み思案な性格であったが、ミアを喪ったショックによって、引きこもりになってしまっている。
容姿はエンデュランスに負けないほどの美貌であり、身長も180台の長身であるとのこと。

【方針】
自分自身は興味はないが、ハセヲは喜ぶかもしれない。それなら頑張ってもいい。


127 : ◆nig7QPL25k :2015/07/17(金) 01:41:37 Cp79ukKM0
投下は以上です
エンデュランス@.hack//G.U.&アサシン(呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ)組でした

キリカのステータスは、「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」様に投下された物を参考にさせていただきました


128 : 名無しさん :2015/07/17(金) 01:45:10 M2ahY7Nc0
そういえばやられやく以外だと初アサシンか。
エンデュランスの方がマスターか―


129 : ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:46:56 LN0yQiK60
投下乙です。
愛で繋がるシンパシー……

投下させて頂きます


130 : トトリ&セイバー組  ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:47:31 LN0yQiK60
ぐつぐつ。
ことこと。

子供程の大きさはあろうかという釜の中で、『それ』は煮こまれていた。
青、赤、白、緑、差し込まれた棒でかき回されるたびに色を変え、鼻をつく刺激臭が辺りに漂う。
ごぽり、と大きな泡が立ち一瞬間を置いて、辺りを眩く照らす程に発光し―――『それ』は完成した。

「よし、で〜きたっ!」
「……今の工程できるのがパイなのか?」

錬金釜を掻き回していた少女は、たった今作り出した手作りパイを取り出す。
そのまま自分へ疑問の声を投げかけてきたもう一人の少女へと、きょとんと首を傾げながら向き直る。

「うん、美味しくできてるけど、セイバーちゃんも食べる?」
「いや、遠慮しておく……錬金術、なかなか興味深い技術だな」
「えへへ、私はまだまだロロナ先生には敵わないけどね」

手作りパイへと口をつけながら話す少女、トトゥーリア・ヘルモルト―――トトリは錬金術士である。
だがそれは、このムーンセルが作り出した魔術都市、ユグドラシルに置いて現代の魔術師達が知っているそれとは毛色が異なる物だ。

「そのままでいいから聞いてくれ、マスター。本題についてだ」

トトリと会話している、セイバーと呼ばれた少女。
透明な宝石がちりばめられた、漆黒のドレス。手には畳んだ黒い日傘。背中には虹色のラインが走る黒揚羽蝶の翅。
黒く長いストレートの髪も合わせ、黒で統一されながら気品を感じさせるその姿。
それこそがセイバーのサーヴァント、黒雪姫である。

「我々には二つの選択肢がある。
 一つは積極的に他のサーヴァントを斬り捨て、特典とやらを狙いにいく。
 もう一つはこのまま潜み、静かに最終予選をやり過ごすかだ」
「うん……」
「とはいえ実質一択ではあるな、動けば出てくる数々のリスクに対し、望めるリターンが不明では考えるまでもない。
 マスターの錬金術も、物によっては時間がかかるのだろう?」

最後の問いかけに頷いて返す。
錬金術の見本としてパイを作りながら説明していたのだ、本来なら改めて確認する必要もないはず。
それが自分を気にかけているためだということにトトリは気づいていた。
ハッキリ言ってしまえば、自分の「行方不明となっている母を見つけたい」という願いは、他人を斬り捨ててまで叶えたいものではない。
かと言って襲い来る相手に無抵抗となる気にもならない、そんな中途半端と批難されてもおかしくない自分の心情を、黒雪姫は気遣ってくれているのだ。
面倒見が良いと言えばいいのか、僅かながら姉であるツェツィを重ねあわせてしまう。

「セイバーちゃんって、過保護だったりする?」
「……は?」





黒雪姫は家族から放逐され暮らしていた。
その最もたる原因は彼女の姉にあたる人物だ。
姉の策略に嵌った黒雪姫は家族から離され、彼女のもう一つの世界「加速世界」での居場所も失った。
特に家族からの断絶は強い物で、黒雪姫が危篤状態に陥り入院していた時にも見舞い一つすら来なかった程である。
暖かい家庭で育ったトトリとは真逆と言えるが、それが母を探したいという気持ちを理解できないことには繋がらない。

(何故だろうな、どこをとっても全く似てなどいないのに、彼女を見ているとキミを見ている時のように放っておけなくなる……ハルユキ君)

黒雪姫は聖杯を使ってまで叶えたい望みはない、トトリの望むままに動こうと思っている。
何故なら、彼女にとっての奇跡は既に一度起きているから。
あの銀色の翼と出会えたこと、それ以上の奇跡など、彼女は望みはしない。


131 : トトリ&セイバー組  ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:48:22 LN0yQiK60
【クラス】セイバー
【真名】黒雪姫
【出典】アクセル・ワールド
【性別】女性
【属性】中立・善

【パラメーター】
           筋力:E  耐久:E  敏捷:E  魔力:E 幸運:C 宝具:C
ブラック・ロータス時 筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。

【保有スキル】
正体偽装:C
 素性を偽装するスキル。
 契約者以外からは『黒雪姫』の時は『ブラック・ロータス』を
 『ブラック・ロータス』の時は『黒雪姫』のステータス、スキルを偽装できる。

柔法:B
 相手の攻撃を受け流しそのまま攻撃に転じる技術。
 他者へと教え、学ばせられるほどに習熟している。

オーバードライブ:D
 自己暗示によって自らの性能ダイヤグラムを変化させるスキル。
 《モード・ブルー》《モード・レッド》《モード・グリーン》の
 それぞれ近接、遠距離、防御性能に特化した3つのモードを設定して使用している。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。


132 : トトリ&セイバー組  ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:48:55 LN0yQiK60
【宝具】
『黒は拒絶の色(バースト・リンク)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 加速世界へとダイブするためのキーワード。
 自らを戦闘用アバター『ブラック・ロータス』へと変化させる。
 変化することによってステータスが上昇し、下記宝具の使用が可能となる。
 また、変化せずに思考速度を1000倍に『加速』することも可能、その際の持続時間は現実時間で1.8秒、体感時間1800秒。

『宣告・抱擁による死(デス・バイ・エンブレイシング)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 『ブラック・ロータス』の覚えている最強の通常必殺技。
 その刃の両腕で抱きしめられた相手は、如何なる防御力を持っていても確実に両断される。

『奪命撃(ヴォーパル・ストライク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜10 最大捕捉:1人
 レベル5必殺技「宣告・貫通による死(デス・バイ・ピアーシング)」に心意の属性を付加させた技。
 右手の剣を突き出す事によって、紅蓮の槍が遠方の敵をも打ち砕く。
 心意属性を持つため、通常の防御法では防ぐことが不可能である。

『星光連流撃(スターバースト・ストリーム)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:1人
 両手の2本の剣から交互に繰り出される超高速の16連突きから、星を流星のごとく飛ばして攻撃をおこなう心意技。
 神獣クラスの敵にさえ大ダメージを与える『ブラック・ロータス』の中でも最も強力な技の一つ。
 心意属性を持つため、通常の防御法では防ぐことが不可能である。

『最大最後の加速(フィジカル・フル・バースト)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 思考速度のみならず、肉体の速度をも『加速』させる。
 意識及び肉体の物理動作の100倍加速できるが、代償としてマスターの最大魔力の99%を失ってしまう。
 これはマスターの魔力量に関わらず、99%固定である。

【weapon】
終決の剣(ターミネート・ソード)
 『ブラック・ロータス』そのもの。
 ≪絶対切断属性≫によるアビリティで、触れた物を拒絶するかのように両断し、
 防御はおろか物理攻撃も生半可な精度では通用しない。
 究極とも言える攻撃性能と引き替えに、このアバターには「人と繋がるための手」すらない。

【人物背景】
 加速世界のレギオン「ネガ・ネビュラス」を率いる純色の黒たる黒の王。
 現実世界では梅郷中学の生徒会副会長である。
 8歳の頃にバーストリンカーとなり、強さと速さを追い求めてレベル9まで到達した。
 しかし策略に嵌められ、和平を訴えかけ王同士の衝突を回避しようとする先代赤の王レッド・ライダーを不意討ちで全損に追いやったことから「秩序の破壊者」となり、加速世界から逃避。
 さらにレギオン崩壊や友人・家族との繋がりの喪失といった事情から、グローバルネットに接続せず閉じこもっていた。
 梅郷中のローカルネットで見つけたハルユキに加速世界最速の存在となる資質を見出し、ブレイン・バーストを与えて加速世界へと誘う。

【サーヴァントとしての願い】

【基本戦術、方針、運用法】
 終決の剣は強力な武器であると同時に防具でもあるが、物理的以外の攻撃手段は防ぐことができない。
 よって、如何にして相手の攻撃を掻い潜り自らの間合いである近接戦闘に持ち込めるかが勝負である。


133 : トトリ&セイバー組  ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:49:11 LN0yQiK60
【マスター】トトゥーリア・ヘルモルト
【出典】トトリのアトリエ
【性別】女性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
母ギゼラを探し出す

【weapon】
錬金術士の杖
 特殊な力は持たない杖。

アイテム
 錬金術によって作り出した様々なアイテムを用いて戦闘を行う。
 ダイナマイトのような爆弾「フラム」や冷気で攻撃する「レヘルン」といった攻撃用の道具以外にも、
 「強壮の丸薬」等の回復用の道具、自宅のコンテナと繋がりいつでも道具を取り出せる「秘密バッグ」等、種類は様々である。

【能力・技能】
錬金術
 物質を別の物質へと変化させる術。
 トトリの行う錬金術は錬金釜へレシピ通りの材料を入れ、ぐるぐるーっとかき回すことによって出来上がる。
 簡単な物なら一日で5個程度作れるが、難易度の高いアイテムになると1つ作るだけで数日かかってしまうことも。
 かき混ぜかたを間違えると爆発する。

【人物背景】
 母への想いを胸に秘め、世界を巡る少女
 物語の主人公。生まれつき内気で気弱な性格だったが、
 錬金術を始めてから多少自分に自信がついたのか、じょじょに改善されつつある。
 アーランドの外れにある漁村で、姉、父と三人で暮らしている。
 母親は凄腕の冒険者として名を馳せていたが、数年前より行方不明。
 母を探すために自らも冒険者となり、出会った仲間たちと共に世界を旅して回っている。
 天然毒舌。

【方針】
 積極的に戦いたくはない。


134 : ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 15:49:47 LN0yQiK60
以上で投下終了です。
何か不備がございましたらご指摘下さい


135 : ◆c92qFeyVpE :2015/07/17(金) 18:51:12 LN0yQiK60
申し訳ありません、【サーヴァントとしての願い】の項目が抜けてました
>>132を以下に差し替えます

【宝具】
『黒は拒絶の色(バースト・リンク)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 加速世界へとダイブするためのキーワード。
 自らを戦闘用アバター『ブラック・ロータス』へと変化させる。
 変化することによってステータスが上昇し、下記宝具の使用が可能となる。
 また、変化せずに思考速度を1000倍に『加速』することも可能、その際の持続時間は現実時間で1.8秒、体感時間1800秒。

『宣告・抱擁による死(デス・バイ・エンブレイシング)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 『ブラック・ロータス』の覚えている最強の通常必殺技。
 その刃の両腕で抱きしめられた相手は、如何なる防御力を持っていても確実に両断される。

『奪命撃(ヴォーパル・ストライク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜10 最大捕捉:1人
 レベル5必殺技「宣告・貫通による死(デス・バイ・ピアーシング)」に心意の属性を付加させた技。
 右手の剣を突き出す事によって、紅蓮の槍が遠方の敵をも打ち砕く。
 心意属性を持つため、通常の防御法では防ぐことが不可能である。

『星光連流撃(スターバースト・ストリーム)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:1人
 両手の2本の剣から交互に繰り出される超高速の16連突きから、星を流星のごとく飛ばして攻撃をおこなう心意技。
 神獣クラスの敵にさえ大ダメージを与える『ブラック・ロータス』の中でも最も強力な技の一つ。
 心意属性を持つため、通常の防御法では防ぐことが不可能である。

『最大最後の加速(フィジカル・フル・バースト)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 思考速度のみならず、肉体の速度をも『加速』させる。
 意識及び肉体の物理動作の100倍加速できるが、代償としてマスターの最大魔力の99%を失ってしまう。
 これはマスターの魔力量に関わらず、99%固定である。

【weapon】
終決の剣(ターミネート・ソード)
 『ブラック・ロータス』そのもの。
 ≪絶対切断属性≫によるアビリティで、触れた物を拒絶するかのように両断し、
 防御はおろか物理攻撃も生半可な精度では通用しない。
 究極とも言える攻撃性能と引き替えに、このアバターには「人と繋がるための手」すらない。

【人物背景】
 加速世界のレギオン「ネガ・ネビュラス」を率いる純色の黒たる黒の王。
 現実世界では梅郷中学の生徒会副会長である。
 8歳の頃にバーストリンカーとなり、強さと速さを追い求めてレベル9まで到達した。
 しかし策略に嵌められ、和平を訴えかけ王同士の衝突を回避しようとする先代赤の王レッド・ライダーを不意討ちで全損に追いやったことから「秩序の破壊者」となり、加速世界から逃避。
 さらにレギオン崩壊や友人・家族との繋がりの喪失といった事情から、グローバルネットに接続せず閉じこもっていた。
 梅郷中のローカルネットで見つけたハルユキに加速世界最速の存在となる資質を見出し、ブレイン・バーストを与えて加速世界へと誘う。

【サーヴァントとしての願い】
特別に望む事はない、トトリの望む通りにする

【基本戦術、方針、運用法】
 終決の剣は強力な武器であると同時に防具でもあるが、物理的以外の攻撃手段は防ぐことができない。
 よって、如何にして相手の攻撃を掻い潜り自らの間合いである近接戦闘に持ち込めるかが勝負である。


136 : ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:54:34 aLfRzzGY0
>トトリ&黒雪姫組
投下ありがとうございました!
防御不可能な攻撃というのは、ゲーム出展の鯖ならではですね
加速能力も色々使い道がありそうで、面白そうだと思いました
トトリの錬金術の自由度の高さもありますし、色々な動かし方ができそうですね

自分も投下させていただきます


137 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:54:56 aLfRzzGY0
 夢を見た。
 ボクではない誰かの夢を。
 ボクと違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

 その夢の中で渦巻いていたのは、おぞましいまでの感情だった。
 無力への怒りと、敵への憎しみ。
 燃え盛るような殺意だけが、ボクの心を焼き尽さんほどに、唸りを上げて煮えたぎっていた。

「俺はもはやバラゴでも、龍崎駈音でもない……!」

 それは本当に人だったのか。
 はたまた人の心が形となった、怨念と呼ぶべきものではないのか。
 少なくともボクは、その殺意の中から、それ以外の一切を、感じ取ることはできなかった。
 ただ目の前にある者を倒す。
 眼前で刃を構える敵を、邪魔立てする者を叩き潰す。
 純粋に、誇張なく、ただそれだけを考えるそいつは、もはや人間だとは思えなかった。

「我が名は呀(キバ)――暗黒騎士!」

 破壊。
 野望。
 邪悪。
 渦巻くのは純然たる闇の感情。
 それを纏うお前は――何だ?


138 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:55:21 aLfRzzGY0


 ユグドラシルは魔術の都市である。
 豊潤な魔力を蓄えた世界樹は、魔術師が実験や研究を行うためには、もってこいの場所だった。
 故にこの街には多くの魔術師が集い、魔道の究明に明け暮れていた。
 泉の北西に位置する学術区画は、そのために用意された場所だ。

「………」

 彼女が今いる図書館も、学術区画に存在する、魔術の資料庫の1つだった。
 魔術師の家系に生まれた子、忌夢。
 現在魔術大学に籍を置き、術者の身体能力を高める・禍根の力について、研究を続けている若き魔術師。
 彼女はそういう設定の女性だった。

(くだらない)

 ため息をつきながら、本を閉じる。
 自分の血族に代々継がれている力を、今更第三者として研究して、一体何になるというのだ。
 いくら間に合わせの記憶とはいえ、少々雑すぎではないのか。
 聖杯戦争の一次予選を通過し、己が記憶を取り戻した忌夢は、内心でそう悪態をついた。

(そもそも、ボクのサーヴァントはまだ来ないのか)

 不満があるのはそれだけではない。
 記憶を取り戻してから一晩経つが、それでもなお忌夢のもとには、サーヴァントが姿を現していないのだ。
 最終予選は既に始まっていると聞くが、これではろくに戦えないではないか。
 あるいはこの身一つで戦えというのか。むしろ戦ってやろうか。

「……?」

 そんなことを考えた時。
 ふと、不意に違和感に気付く。

(やけに静かだ)

 先ほどからこの図書館の中で、物音一つ聞いていないのだ。
 本は静かに読むのがルールだが、かといって棚から本を取り出す音や、足音すら聞こえてこないのはおかしい。
 気付いてみれは人の気配も、周囲のどこにも感じられない。

「……何者だ?」

 いいや、一つだけ感じている。
 忌夢の背後に何者かが、たった一人だけ立っている。
 席から立ち上がり、振り返ると、彼女はその存在に向かって尋ねた。
 薄気味の悪い漆黒のローブを、頭からすっぽりと被ったその存在に、鋭い語調で問いかけた。


139 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:56:02 aLfRzzGY0
「これは失敬。貴方が気分を害する前に、終わらせようと思ったのですが」
「質問に答えろ。お前は何者で、ここで何をしている」
「私は……そうですね、キャスターと名乗っておきましょうか」

 くつくつと笑うのは、男の声だ。
 得体の知れないローブ男に、忌夢は広い額の眉をしかめた。
 気色悪い口調も気に食わないが、それ以上に、あの気配だ。
 あの禍々しくもどす黒い雰囲気は、おおよそ人間のものとは思えない。
 むしろ以前に相対した、人外魔境の住人・妖魔――あれに近いおぞましさを感じる。
 その上、使い魔の7つのクラスの一つ・魔術師(キャスター)の自分の名として口にした。
 恐らくは、こいつがサーヴァントだ。
 敵マスターのサーヴァントと、ここで鉢合わせてしまったのだ。

「この辺りの魔術学生の持つ、芳醇な魔力を宿した魂……それを頂戴しようと思いまして」
「なるほど……それが魂喰いというやつかっ!」

 間違いない。敵は殺る気だ。
 こうなればもう、サーヴァントの有無を論じている暇はない。
 やらねばやらねる。
 やるならやらねば。
 忌夢は迷わず飛び上がると、服の胸元へと手を突っ込み、そこからある物を取り出した。

「忍――転身ッ!」

 光を放つのは紙だ。
 ほどかれ宙を舞い踊り、忌夢の体を包み込むのは、古来より日本に伝わる巻物だ。
 光が晴れたその瞬間、忌夢の姿は一変していた。
 深緑の軍服風の装束に、手には赤々と煌めく如意棒。
 虚空より飛びかかるその女は、魔術師ではなく、忍だった。

「ほぁちゃあッ!」

 気合一閃。
 苛烈な一撃。
 振り下ろされた如意棒が、手前にあった机ごと、キャスターを叩き潰さんとする。
 両断されたデスクの向こうには、しかしひび割れた床があるだけだ。
 かわされた。今の一撃をか。
 秘立蛇女子学園の頂点・選抜チームの元メンバー――その忌夢の瞬速をもってなお、捉えられなかったということか。

「ほっほっ、貴方もマスターでしたか! これは好都合というもの」

 背後から気色の悪い声が聞こえる。
 飛び退ったキャスターが、笑いながら語りかける。

「威勢に満ちたその魂……なれば踊り食いといきましょう」

 抜かせ。
 そう簡単に食われてたまるか。
 まだ何も始まっていないというのに、こんなところで倒れるものか。


140 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:56:43 aLfRzzGY0
「秘伝忍法――デッドフォックス!!」

 必殺の言霊を口にする。
 瞬間、忌夢の体は閃光と化す。
 疾走。
 跳躍。
 瞬転。
 神速。
 雷光を纏ったくのいちは、文字通り光の速さで加速し、縦横無尽に駆け巡る。
 床を、本棚を、次々と蹴り、光のラインを無数に描く。
 俊敏さが売りである忌夢の速度を、極限まで高めた必殺技だ。
 いかな神話の英霊と言えど、この忍法からは逃れられまい。
 この一撃で全て終わりだ。そう確信し、己が如意棒を、標的に叩き込んだ次の瞬間。

「――なるほど。人の身にしてはなかなか」

 眼鏡の奥の忌夢の瞳は、驚愕に大きく見開かれていた。

「なっ……!?」

 そんな馬鹿な。
 その手は何だ。
 見切ったというのか、今の速さを。
 今の攻撃を完全に見極め、あまつさえ右腕一本で、攻撃を受け止めたというのか。

「これほど活きのいい魂であれば、さぞ美味なことでしょう……ね!」
「うぁあああっ!」

 刹那、世界が爆裂した。
 忌夢の視界は光に飲まれ、爆音がその身を弾き飛ばした。
 閃光は暴力となって襲いかかり、忌夢の体を容赦なく苛む。
 欧州の軍服を思わせる、質実剛健な忍装束が、為す術もなく切り裂かれる。
 吹き飛ばされ、本棚に背をぶつけた忌夢は、そのまま重力に引きずられ落下し、床に無様にへたり込んだ。
 破れた衣服から谷間を覗かせる、肌色のバストは、豊満であった。

「では、いただくとしましょう」

 余裕綽々な声が聞こえる。
 下衆な笑みを浮かべたキャスターが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
 生殺与奪を握っていることを、これ見よがしにアピールする速度だ。そんなことすらも嫌味ったらしい。

「くっ……!」

 そんな最低な奴相手に、何一つできない自分が恨めしかった。
 痛みで体を動かすことができず、反撃も逃走すらも叶わない弱さが、忌夢には何より許せなかった。
 死ぬのか、自分は。
 こんなところで終わってしまうのか。
 蛇女子学園復権の、目前にまで迫ったこのタイミングで、自分だけ情けなく倒されてしまうのか。
 まだまだ蛇女はこれからなのに。
 再び選抜メンバーに返り咲く自分達が、この先を引っ張っていかなければならないのに。
 最愛の友を――雅緋を、彼女が進む栄光の道を、この手で支えていかなければならないというのに。


141 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:57:11 aLfRzzGY0
《――力が欲しいか》

 心に、幻聴が聞こえた気がした。
 耳ではなく頭の奥底から、自然と声が湧き上がってきた気がした。

《力があれば戦えるか。奴と戦える力があれば、お前は立ち上がることを選べるか》

 何であっても構わない。
 自分が頭を打ちつけて、おかしくなっていたとしても構わない。
 何故なら聞こえてくる声の言うことは、間違ってなどいないのだから。

「ボクは、負けない……」

 そうだ。
 こんなことで諦められるか。
 何としても立ち上がって、戦わなければならないのだ。

「ボクを待っている雅緋のために……!」

 なさねばならないことがある。
 それは雅緋達の待つ、蛇女子学園へ生きて帰ること。

「聖杯をこの手で掴むためにっ!」

 そしてその最愛の雅緋のために、聖杯を手に入れることだ。
 雅緋。
 何よりも愛おしい友よ。ボクの全てと呼ぶべき者よ。
 忌夢はかつて自分のせいで、彼女の人生を狂わせてしまった。
 自分が余計なことをしたせいで、彼女の母は命を落とし、雅緋自身も狂ってしまった。
 母を殺した妖魔を憎み、それを殲滅するために、雅緋はひたすらに力を求めた。
 それは自らを滅ぼしかねない、危うさを孕んだ性急さだった。
 そして現に雅緋は自滅し、再び立ち直るまでの間に、3年もの時を失ってしまった。
 その償いは果たさねばならない。
 罪悪を感じているのなら、強くあってくれと言った彼女に、自分は報いなければならない。
 母の復活を願うならそれでいい。前に進む力を欲するならそれでもいい。
 雅緋のために、聖杯の力を、何としても手に入れなければならないのだ。

《その願い、確かに聞き届けた》

 声が聞こえた。
 瞬間、どくん――と衝撃が奔った。
 胸の奥底で、何かが、疼くような感覚を覚えた。

「がっ……ぁあああああああああああああ!?」

 だが、それを認識したのも一瞬のことだ。
 次の刹那に襲いかかったのは、それ以上の奔流だった。
 とてつもない力が湧き上がる。内側から燃え上がるような何かが、忌夢の体を焼き尽くす。
 暴力的なエネルギーの波濤が、忌夢の瞳を見開かせ、みっともなく悲鳴を上げさせる。

「これは……!?」

 胸の谷間に光が浮かんだ。
 赤い三画のエンブレムが、彼女に刻み込まれる姿を、相対するキャスターは確かに見た。
 そして同時に、そこに渦巻く、得体の知れないどす黒い気配も。
 闇の奥底より現れ、闇そのものを纏ったかのような、漆黒の狼の姿も。


142 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:57:44 aLfRzzGY0


「はぁ……はぁっ……!」

 ざあざあと雨音が聞こえる。
 ぱちぱちと弾ける音が聞こえる。
 後者はスプリンクラーの音で、前者は火種の散る音か。
 忌夢が目覚めた時、図書館は、赤い火の海と化していた。
 既にキャスターの姿はなく、忌夢だけが業火の只中で、滝のような汗を流し座り込んでいた。

「契約は果たされた」

 否。違う。
 忌夢以外の何者かが、もう一人ここには立っている。
 彼女の目前に立っていたのは、巨大な漆黒の鎧だ。

「我が名は呀。バーサーカーのサーヴァント――暗黒騎士」

 禍々しくも刺々しい、全てを拒絶するような意匠を纏った、暗黒の獣騎士の姿だった。
 黒光りする鋼鉄の鎧の中で、唯一顔面を覆うマスクだけが、獰猛な狼の貌を象っていた。

「お前が、奴を……いや……」

 違う。
 そうではない。
 キャスターのサーヴァントはこいつの手で、勝手に倒されたわけではない。
 このサーヴァントは人間ではない。鎧の中身は空っぽだ。
 英霊を象徴する神話の武具――宝具。
 こいつはサーヴァントであると同時に、その宝具だ。宝具に相当する鎧のみが、意志を持って動いているリビングアーマーだ。
 鎧を纏った者は別にいる。
 こいつを自らに纏わせて、戦い敵を倒した者が他にいる。

「奴を倒したのは……ボクだった……ッ!」

 破壊。
 野望。
 邪悪。
 渦巻く狂気と暗黒の奔流。
 その只中にいた者は、他ならぬ忌夢自身だった。
 暗黒の剣を振りかざし、魔術師を切り捨て焼き殺したのは――鎧を纏った忌夢だったのだ。


143 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:58:50 aLfRzzGY0
【クラス】バーサーカー
【真名】呀(キバ)
【出典】牙狼-GARO-
【性別】男性
【属性】混沌・狂

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
狂化:E
 クラス特性による後付けのスキルではなく、呀自身が保有していたスキル。
 理性を持たない存在であるため、複雑な思考を行うことができない。

【保有スキル】
精神汚染:A+
 精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。
 そもそも怨念のみが凝り固まった存在であるため、干渉すべき精神が存在しない。

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では呀に傷をつけられない。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝具】
『暗黒騎士・呀(キバのよろい)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 黒き闇に堕ちた心。
 その心に輝きはなかったのか。その心に希望はなかったのか。
 それを知りたい者は行くがよい。黒く深い闇の中へと……
 ――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。
 それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧であり、呀という英霊そのものである。
 暗黒魔戒騎士である呀の鎧は、心滅獣身という暴走状態を超えた先に発現する、闇に堕ちた姿である。
 ソウルメタルはデスメタルと呼ばれる、漆黒の金属へと変質しており、装着の制限時間も消失している。
 本来は所有権を認められた魔戒騎士にしか装着できないが、
 元所有者・バラゴの遺志が宿った呀は、自ら所有者を選び、自身を装着させることができる。
 これにより装着者の理性と技術を得た呀は、その力をより効果的に発揮できるようになるが、
 呀自身の持つ狂化のスキルが伝染し、装着者の思考力を蝕んでいくようになる。
 何よりも恐ろしいのは、前述した単独行動のスキルがあることにより、マスターの死後も新たな贄を求めることである。


144 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:59:10 aLfRzzGY0
【weapon】
黒炎剣
 ソウルメタルの剣・魔戒剣が、呀の力によって変化したもの。漆黒の長剣である。
 魔戒騎士としての修行を経た者は、これを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
 より強い魔力を込めることによって、身の丈を凌ぐ大剣・閻魔斬光剣へと変化させることもできる。

暗黒斬
 長柄の斧。ホラーを喰うために用いていた武装であり、倒した相手の魂を、呀の鎧に取り込むことができる。

【人物背景】
最強の力をひたすらに欲し、暗黒魔戒騎士へと堕ちた男・バラゴ。
その力への執念が、死後鎧へと宿され、意志を持った姿である。
バラゴの超人的な戦闘技術を失ったため、バラゴが纏っていた時よりも弱体化しているが、
それでも鎧自体の力と、宿された凄まじい妄執によって、高い戦闘能力を発揮している。
前述する武器の他、イバラを纏って盾とする防御技「薔陣薇幹」を使うことができる。

なお、バラゴ本人の魂は、死後に師の魂と再会し、己の罪を悔い改めている。

【サーヴァントとしての願い】
完全な復活を果たし、再び力を求める。

【基本戦術、方針、運用法】
生物でない鎧のサーヴァント。
怨念のみで構成されたバーサーカーは、我武者羅に攻撃することしか知らないため、
その力を最大限に発揮するには、マスターが纏って戦う必要がある。
しかしマスター自身が狂化するというリスクは、決して無視できるものではない。
自律行動させて共に戦うか、その身に纏って戦うか、状況に応じた判断が必要となる。


145 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 00:59:51 aLfRzzGY0
【マスター】忌夢(いむ)
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性
【令呪の位置】胸の谷間

【マスターとしての願い】
聖杯を雅緋に捧げ、過去の罪を贖う

【weapon】
如意棒
 長さ・太さを自在に変化させられる棒。

秘伝忍法書
 必殺技・秘伝忍法の力を引き出すための巻物。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の元選抜メンバーとして、ひと通りの忍術をマスターしている。
 忌夢は得意技として、電撃を操ることができる。

忍転身
 現代の忍の戦闘形態。上述した秘伝忍法書の力を引き出すための姿。
 この術を発動した忌夢は、ドイツ軍服風の装束を纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、忌夢の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

禍根の力
 忌夢の一族に伝わる、特殊体質由来の力。
 怒りや憎しみといった感情によって引き起こされる「拒絶の力」であり、身体能力を数十倍に高めることができる。
 最大限に発揮した際には、漆黒のオーラとして具現化するほどになるが、
 上述したような激情によって引き出される力であるため、それほどの力を発揮した際には、必然正常な思考力が損なわれてしまう。
 忌夢はこの力を扱う才能に乏しく、未だ発動させたことがない。

深淵の血
 禁術・深淵血塊によって暴走した雅緋の血を、同じく禁術である血塊反転によって取り込んだもの。
 通常は効果を発揮することはないが、前述した禍根の力に目覚めた場合、
 芋づる式に引き出され、忌夢を雅緋同様の暴走状態へと導いてしまう。
 仮にこの状態で『暗黒騎士・呀(キバのよろい)』 を纏った場合、 呀の幸運以外のステータスが、全て1ランク上昇する。


146 : 忌夢&バーサーカー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 01:00:17 aLfRzzGY0
【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
21歳の3年生で、スリーサイズはB88・W60・H82。悪人の名家の出身であり、現筆頭・雅緋の幼馴染でもある。
かつて雅緋が妖魔と戦い、暴走・廃人化したことを受けて蛇女を休学。
雅緋の療養に付き添い尽くしていたが、彼女が復活したことにより、自身も蛇女へと舞い戻る。
雅緋が母親を喪ったこと、妹の紫が引きこもってしまったことの原因を作っており、強い負い目を感じている。

一人称が「ボク」で、口調も男性的なもの。
委員長気質な性格であり、問題児揃いの蛇女選抜メンバー候補の中では、ツッコミ役として苦労が耐えない。
もとより雅緋を強く慕っており、彼女に付き従い支えることを自らの存在意義としていたが、
療養中にややこじらせてしまったようであり、半ば同性愛じみた感情へとハッテンしている。

忍法の性質を表す秘伝動物は狐。
忍装束こそドイツ風だが、戦闘スタイルは中華風の棒術であり、俊敏な身のこなしで敵を翻弄する。
必殺の秘伝忍法は、超高速で駆け抜け敵を圧倒する「デッドフォックス」、
電撃を纏った如意棒を、回転させながら投擲する「ローリングサンダー」。
更なる威力を持った絶・秘伝忍法として、如意棒から無数の管狐を召喚し攻撃させる「サンダーフォックス」を持つ。

【方針】
優勝狙い。何としても聖杯を手に入れる。


147 : ◆nig7QPL25k :2015/07/18(土) 01:01:12 aLfRzzGY0
投下は以上です
忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-&バーサーカー(呀@牙狼-GARO-)組でした

両者のステータスは、「夢現聖杯儀典:re」様の候補作を参考にさせていただきました


148 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:35:52 rWA3TLlQ0
投下乙です!
装着型のサーヴァントかあ
しかもマスターを強化させるとは、恐ろしいのが出てきたなあ

それでは、自分も投下させていただきます


149 : 黒子テツヤ&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:37:00 rWA3TLlQ0
夜の路地裏に、一人のマスターがいた。
彼の隣には、屈強な肉体を持つサーヴァントが寄り添っている。
しかしその体にはいくつもの傷がつけられ、鮮血が肌を染めている。
一方のマスターも外傷こそないものの息が荒く、目に見えて消耗していた。

「くそっ! 卑怯な戦い方しやがって! まともに戦えば、俺たちが負けるはずないのに!」

目を血走らせて、マスターが叫ぶ。

「ここは戦場だぜ? 常に自分の有利な状況で戦えるわけがねえだろうが」

それに応えたのは、「彼」なりのサービスだったのか。
次の瞬間には、「彼」のナイフが敵サーヴァントの心臓を貫いていた。


◆ ◆ ◆


とある公園にて、黒子テツヤはベンチに腰掛けてバニラシェイクをすすっていた。

(ここもないなあ、バスケットコート。学校の体育館にはゴールもボールもあったから、バスケ自体はあるはずなんだけど)

そんなことを考えていると、ふいに背後から声をかけられる。

「ここにいたのかよ、マスター。一人で出歩くなって言っただろ。
 街中でお前探すの、マジで大変なんだからよ」
「アサシンさん」

黒子が振り向くと、そこにはサングラスをかけたスキンヘッドの男が立っていた。
彼こそが黒子に従う、アサシンのサーヴァント。
黒子から見てはるか未来の世界で人類の存亡を賭けて戦った男、アレキサンドル・アシモフだ。

「アサシンさんこそ、僕を放っておいてどこに行ってたんですか」
「いや何、知り合いに似た顔がいたもんでつい……」
「露骨な嘘をつかないでください。また僕に黙って戦いに行ってましたね?」
「げっ、なんでそれを……」
「僕の魔力に頼らず活動できる能力があるみたいですけど、それでもわかりますよ。
 いちおう、僕はあなたのマスターなんですから」

非難がましい視線を向けてくる黒子に、アサシンは思わずたじろぐ。

「けどなあ、黒子。これはお前のためなんだぜ? 好戦的な連中は先に潰しておいた方が……」
「最初に言いましたよね? 僕の目的は元の世界に帰ることです。勝ち抜くことじゃありません」
「だったらなおさらだろ! 敵は少ない方が生存確率は上がる」
「逆に敵が増える可能性もあります。積極的に他の参加者を狩っていると第三者に知られれば、悪印象を与えてしまう可能性が高いですから」
「そうかもしれないけどさあ……」

アサシンは、小さく溜息をつく。
このあどけなさの残る青年は、その容貌に似合わずなかなか頑固だ。
説得は不可能ではないが、そうとう骨が折れる作業になるだろう。
それならば、自分が白旗を揚げる方が後腐れが無くていい。
下手に話がこじれて、令呪でも使われたらたまらないし。

「わかったわかった。これからはお前の意見に合わせるよ」
「ありがとうございます」

かすかに頬を緩ませながら礼を言う黒子を見て、アサシンは彼と出会った直後のことを思い出していた。


150 : 黒子テツヤ&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:37:39 rWA3TLlQ0

  ◇
    ◇


「つまりお前は、聖杯なんて興味ないから早く帰りたい、と……」
「そういうことです。僕の願いは、聖杯なんて不思議な力で叶えてもらうようなものじゃありません。
 それよりも早く帰って、みんなと練習したいです」
「それじゃあ、俺が自殺すれば脱落ってことで今すぐ帰れるんじゃないか?
 ああ、別に気に病むことはないぜ? 俺らサーヴァントは、本来死んでる人間なわけで……」
「いえ、それは待ってください。本当にそれで帰れるかどうかわからないので」
「え?」

黒子の言わんとすることがわからず、アサシンは首をかしげた。

「伝えられたルールでは、サーヴァントを失ったマスターは強制退場させられるとしか言われていません。
 この世界から追い出されるのは事実でしょう。けどそれは、元の世界に帰ることとイコールじゃありません」
「……それはさすがに考えすぎじゃねえのか?」
「だって、許可も取らずに人を異世界に連れてくるようなイベントですよ?
 僕はそんなに疑り深い方じゃないですけど、それでも簡単には信用できません」
「まあ、一理あるな……」

理路整然とした黒子の物言いに、アサシンは思わず髪の毛のない頭をかく。

「じゃあ、しばらくは様子見ってことにするか?
 強制退場の裏をとるか、それ以外で元の世界に戻る方法を見つけて……」
「そういうことになりますね。それまでよろしくお願いします、アサシンさん」

手を差し出す黒子。アサシンはあきれたような笑みを浮かべながら、その手を握った。

    ◇
  ◇



「どうしたんですか、アサシンさん」
「いや、お前と顔合わせした時のことを思い出してよ。最初からかわいげの無いガキだったな、お前は」
「そういう歳でもないので。あと、数日前のことを昔話みたいに語らないでください」
「別にいいだろ、そのくらい。さ、そろそろ帰ろうぜ」
「そうですね」

空になったシェイクの容器をごみ箱に捨て、黒子は立ち上がる。
その様子を見守りながら、アサシンはぼそりと呟いた。

「必ず帰してやるさ。お前みたいなガキが死ぬところは、見たくないからな……」
「アサシンさん、何か言いました?」
「別にー?」


151 : 黒子テツヤ&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:38:52 rWA3TLlQ0

【クラス】アサシン
【真名】アレキサンドル・アシモフ
【出典】テラフォーマーズ
【性別】男
【属性】秩序・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:B
  人為変態時 筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】

気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日現界可能。

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

勇猛:B
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。


【宝具】
『心優しき鍬形兵士(パワーオブスタッグビートル)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大補足:1人(自身)
モザイク・オーガン手術によって獲得した、スマトラオオヒラタクワガタの能力。
本来は変身薬を注射することによって人為変態するが、宝具となったことにより本人の意志のみで変態が可能になった。
効果は身体能力の向上と外骨格による防御力の上昇程度で、特筆するような能力は見られない。
逆に言えば強力な特殊能力に頼らずに戦い抜いてきたことが、彼の戦闘技術の高さを物語っている。

『悪鬼引き裂く鍬形の顎(カフカス・カリンカ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大補足:1人
対テラフォーマー大顎充電式スペツナズナイフ。
普段は柄の部分しか存在せず、人為変態したアサシンが握ることにより刃と化したクワガタの大顎が生成される。
刃は射出して遠距離攻撃にも使用可能。むろん、アサシンが握っている限り刃は何度でも再生成される。
本人以外が持っても何の役にも立たない、真の意味での専用武器と言える。


152 : 黒子テツヤ&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:40:25 rWA3TLlQ0

【weapon】
戦闘服
 アネックス1号の乗組員に支給される服。
 コート・ジャケット・ズボンでワンセット。
 普通の服よりは頑丈。

【人物背景】
治療不可能のウイルス「AEウイルス」のサンプルを入手し、ワクチンを作るために火星に向かった宇宙船「アネックス1号」の乗組員。
第3班(ロシア・北欧班)所属。本業はロシアの軍人。
第3班班長シルヴェスター・アシモフの婿養子であり、姓が同じため「アレキサンダー」という愛称で呼ばれることが多い。
後輩をからかうなど陽気に振る舞うことが多いが、その裏ではウイルスに冒された妻子を救うため並々ならぬ使命感を燃やしている。
第4班の裏切りの際には、義父の制止を振り切って単身敵陣に潜入。
変身薬の過剰投与により異形の姿となってまで壮絶な奮戦を見せるが、非情になりきれなかったことが仇となり敗北・戦死した。


【サーヴァントとしての願い】
聖杯が手に入るのならば、AEウイルスの根絶を願いたい。
しかし、黒子の命を守ることが最優先。


【基本戦術、方針、運用法】
ステータスは悪くないが、決定力に欠けるため実力者との真っ向勝負は不利。
やはりアサシンらしく、気配遮断からの奇襲が基本となるだろう。


【マスター】黒子テツヤ
【出典】黒子のバスケ
【性別】男性
【令呪の位置】右手の平

【マスターとしての願い】
生きて元の世界に帰る。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
影の薄さ
 相手が注意していなければ、目の前にいても気づかれないほど影が薄い。
 バスケの試合ではこの生来の影の薄さに加え、視線誘導や目で追いづらい動きにより「見えない選手」として相手を翻弄する。

【人物背景】
誠凛高校1年生・バスケ部員。
中学時代は名門・秀校中学において並外れた才能を持つ5人の天才「キセキの世代」を密かにサポートする「幻の6人目」として活躍。
しかし監督辞任による不和や、勝利に慣れすぎたことにより変貌していくチームを見ていることしかできなかったこの時代は
彼にとって必ずしも幸せな時ではなかった。
高校では新たな仲間と共に、打倒キセキの世代を目指す。
性格はひょうひょうとしており、若干天然ボケ。
たとえ相手が親友であっても、敬語で話すのが特徴。
バスケ選手としての実力は影の薄さおよびそこから派生するスキルによるものであり、身体能力は凡人レベルである。

【方針】
生還が最優先。戦闘は極力避けたい。


153 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/18(土) 15:41:28 rWA3TLlQ0
以上で投下終了です


154 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:09:12 FL/fc4vY0
他企画投下した自作の一部流用ですが、投下させていただきます。


155 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:09:38 FL/fc4vY0






「聖杯……戦争……だとォッ!?」






 記憶が鮮明になった時に自然とその言葉が出た。

 静かにデスクワークをしていた時には気付かなかった。
 屈強な肉体に赤いシャツと見るからにデスクワークは似合わない風貌。
 男は持っていたペンを力強く握りしめる。
 その際に持っていたペンが砕けるように折れた。

「――あら、気付きまして?」
「君は……?」

 ドデカい槍に露出度が高めの服。
 エルフの様な尖った耳に変則的な髪型。
 そして、何よりもの目を引くのはボッキュッボンなそのスタイル。
 
「私、貴方のサーヴァントですわ」
「……詳しく聞かせてもらおうか」


 …………。

 ……。

 …。


156 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:10:06 FL/fc4vY0

 それは異様な光景であった。
 
 狂戦士が振るう攻撃が防がれる。
 しかし、その光景には狂戦士のマスターは驚きを隠せない。
 その相手がサーヴァントだけであるならば納得はしたかもしれない。
 
「こんなことが納得できるかァァァ!!!」
「オラァッ!!」

 2対1の戦況であるが……
 専ら攻撃を防ぐのは刃を纏ったようなセイバー。
 そして、攻撃しているのはマスターの方であった。

「なんでバーサーカーにただのマスターの攻撃が!?」
「知れたことかッ! 
 相手がノイズじゃないならッ!
 メシ食って、映画観て、寝るッ!
 英霊に拳を当てるだけならはそれで十分よッ!!!」
「んな無茶苦茶なことがあってたまるかァァァ!!」

 その理屈はおかしい。
 だが、異常なマスターであるという認識は出来た。
 ならば、だからこその手段はある。
 懐から一艇の拳銃を取り出す。

「魔術師が銃を使うだとォッ!?」
「こちとら勝てばいいんだよォォォ!!!」

 その行為、まさに外道。
 しかし、男は震脚で地面を隆起させる。
 盛り上がった地面が盾となり、銃弾を防ぐ。

「なっ!?」

 バーサーカーのマスターは完全に裏を掻いたつもりであった。
 しかし、それすら完全に常識外の方法で防がれた。
 その隙を逃さなかった。

「今だッ! ランサー君ッ!」
「なに!? ランサーだと!?」
「援護はド任せですことよ! ……フェイクライド、アクションッッ!」

 槍のブースターで最大速度まで加速し、ランサーはバーサーカーに急接近する。

「そのままッ! 一気に貫けッ!!
「承知ッ!」

 勢いそのまま槍で一撃でバーサーカーの身体に風穴をぶち開ける。
 そして、『フェイクライド』と呼ばれたセイバーと思われた機兵がバーサーカーの身体を引き裂く。


「オーッホッホッホッ!! 真打はド派手に登場するものですわよ!!」


 …………。

 ……。

 …。


157 : 風鳴弦十郎&ランサー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:10:59 FL/fc4vY0


 そのマスター・風鳴弦十郎は強い男だ。
 強いのはその屈強な肉体だけではない、その心もまた強い。
 故に考えたついたのが……。
  
「……それでサーヴァントだけを倒していくって正気?」
「ああ、俺がそれが選んだ道だ……こういう無理・無茶・無謀は俺の役目だ。
 それにな、そんな聖杯なんてものがあるのならば、壊してやるさ」

 弦十郎はグッと己の拳を握りしめる。
 相手がノイズじゃないなら自分だって戦えるのだから。
 それを見て、ランサーは笑う。

「ふふふっ……」
「何かおかしい?」
「いえ、面白い、よろしい協力しましてよ!」
「本当か?」
「ええ、このランサー……ネージュ・ハウゼンに二言はないのでしてよ!」

 男は拳を握り、姫は槍を振るう。
 聖杯を、聖杯戦争を破壊するために。


158 : 風鳴弦十郎&ランサー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:11:24 FL/fc4vY0

【クラス】ランサー
【真名】ネージュ・ハウゼン
【出展】無限のフロンティアEXCEED スーパーロボット大戦OGサーガ
【性別】女性
【属性】秩序・善

【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
予知:A
 ハウゼン家に代々伝わる能力である。
 その名の通り【予知】能力である。

カリスマ:B
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 Bランクであれば国を率いるに十分な度量。

ガンファイト:A
 ランサーでありながら、遠距離戦もこなせる。
 しかし、射程はアーチャークラスには遠く及ばない。
 

【宝具】
『妖精姫の槍(フェイスレイヤー)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1〜4人
 ネージュが持つレーザー銃を内蔵したブースト機能付き大型の槍。
 全力全開になるとでっかいビームが出ます。

『舞台にて妖精達は舞い踊る(ロイヤルハート・ブラスター)』
 ランク:A、種別:固有結界、レンジ:1〜30、最大補足:1〜3
 ネージュの持つ固有結界(?)である。
 発動すると辺り一面をド派手且つド煌びやかなステージを変貌させる。
 発動条件としてフェイクライドが必須であり、マスターも莫大な魔力を消費する。
  
【weapon】
レイシャス・ミラー
 レーザーを反射する鏡。

ベノム・カーマイン
 リンゴ爆弾。

妖精機フェイクライド
 ネージュの魔力で起動する全高3mほどロボ。
 腕やスカートなど全身に刃が取り付けられており、踊るように攻撃する。
 
 
【人物背景】
 妖精族の国「エルフェテイル」の名家・ハウゼン家の姫。
 見た目は10代後半の少女だが、妖精族であるため人間の基準を遥かに上回る……花も恥じらう117歳。
 気の強いおてんばな性格で、また姫らしく我が儘で高飛車な一面も持つが。
 名家の姫君らしく、優雅さや華やかさなど貴族の誇りに拘りを見せる言動も多い。
 

【サーヴァントとしての願い】
 叶えたい願いも特にないので、マスターに協力する。


【基本戦術、方針、運用法】
 槍を使った接近戦が主だが、ビームによる援護射撃も可能。
 またフェイクライドと共に戦う際は、ネージュの魔力を使用するので燃費が悪い。
 が、マスターがマスターなので主に援護が役目となるかもしれない?


159 : 風鳴弦十郎&ランサー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:11:58 FL/fc4vY0

【マスター】風鳴弦十郎
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】男性
【令呪の位置】右腕

【マスターとしての願い】
 聖杯の破壊。

【weapon】
 必要ない。

【能力・技能】
 正体不明の武術
 恐らくは拳法の類であるが、『正体不明の武術』である。
 意気地を固めて握られた男の拳が、サーヴァントに遅れをとることなどありえない……かもしれない。

 戦術指揮能力
 理論や理屈よりも自身の勘を優先させた戦術指揮を得意とする。
 專らサーヴァントの士気を上げる。

【人物背景】
 特異災害対策機動部二課の司令官。
 人類守護のため日夜戦い続けている屈強な司令官にしてシンフォギア装者風鳴翼の叔父。
 豪快を絵に描いたかのような性格の持ち主であり、その行動・言動の派手さに隠れがちだが、
 「大人」という言葉に対して独自の哲学を持つ漢。

 趣味は映画鑑賞。
 だが、もはや趣味と呼べる域を大きく越え、刑法どころか憲法に抵触しかねないレベルに達している。
 
【方針】
 聖杯の破壊のための行動。
 具体的な方法はまだ考えてないが、一先ずサーヴァントの各個撃破。


160 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2015/07/19(日) 02:12:21 FL/fc4vY0
以上で投下終了です


161 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:05:14 ixvn13Mo0
投下します


162 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:06:32 ixvn13Mo0
2005年3月 ニューヨークのとある酒場



――君が来客かね、お嬢さん。
――取り合えず、はじめましてと言っておこうか。自己紹介は……必要ないか?

――まあいい。


――職ではなく種として訪ねられるのは久しいな。
――職と言っても堅気ではない以上ほとんどロクな客は来ないがね。
――まあいい。用向きのほどは?


――ふむ、聖杯戦争。懐かしい…いや、タイムリーな話題かな。
――最近このアメリカでも開かれたからな。


――おや、それは知らないか?
――ああ、そうか。あの聖杯戦争は我々と父を同じくしても同一の存在ではなかったな。
――君と私の関係と、聖杯戦争と馬鹿騒ぎの関係は似て非なる物だった……
――まあいい。
――しかしなぜ私のところに?



――なるほど。確かにアトラスの錬金術師ならば万能の演算機にアクセスできるだろう。
――で、派閥は異なるがイタリアの錬金術師の街を訪ね、そこから私に辿りついたと。
――ふむ。この在り方はアトラスよりはアインツベルン寄りなのだが。
――まあいい。出来るか出来ないかで言えば出来るからな。


――協力か。まあ送り届けるくらいはしてもいい。
――見返りはいらないさ。そうさな、強いて言うなら土産話を頼む。
――この身はラプラスの悪魔ではない……いや、なくなったと言うべきか。
――先の読めないものというのは悪魔にとって最高の娯楽でな。特にこの物語の先は私にも読めないのでね、ぜひ顛末を教えてくれたまえ。


――帰ってこなかったら?意外と慎重、いやビジネスに誠実なのだな。
――それならそれで構わんさ。悪魔は気まぐれでね。そういうこともあるだろう……

――では鍵を選びたまえ。もしくは選ばずに扉をくぐるといい。
――木の鍵にするかね?石の鍵にするかね?土の鍵にするかね?青い鍵にするかね?銀の鍵にするかね?赤いカードキーにするかね?


――樹の鍵にするか。それでは、良い旅を(ボン・ボヤージュ)。
――……………………………………しまった、蜂蜜酒の会計を忘れていたな。
――…………まあいい。これくらいは奢るとしよう。


163 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:07:06 ixvn13Mo0
◇ ◇ ◇

魔術都市ユグドラシル。
二人の男が剣を持ち、対峙していた。
一人は刀、いわゆる日本刀のような得物。
もう一人は曲刀状の刀剣、キリジと呼ばれるものに近い。

向かい合い、交錯し……決着。
勝ったのは刀を持つ男。

「ふん、他愛ない。私と同じセイバーというには技量も気迫も足りていなかったな」

決め手は抜刀術。
一閃で曲刀と腕を弾き、収めざまに首を刎ねる。
戦地の後には亡骸と剣が残るのみ……だったがそこへ新たな人物が現れる。

「何の真似だ?女」

高そうな眼鏡に背広のキャリアウーマン風の女性が残った剣を手に取る。
そしてそれを右手に持ち、構えてみせた。

「やめておけ。遺されたセイバーの剣を使えばサーヴァントを切ることはできようが、人間では私には勝てん……先のセイバーより堂に入った構えだが」
「人間では、ですか。それでは…お相手願いましょう」

眼鏡越しにセイバーを充血したような赤い目が貫く。
それと同時にダンッ!!!と大きな音。
鋭い踏み込みからの逆袈裟。
咄嗟に剣を抜き、受け止めるセイバー。
先のサーヴァント以上の膂力と速度に驚愕しながらも、鍔迫り合いの果てに距離をとる。
しかし即座に女が距離を詰め、剣戟を二人して交わす。
数合交えても涼しげな女に対し、焦りを僅かに浮かばせるセイバー。

(この女、なんて学習速度だッ…!)

三太刀目は大きく躱させた。
しかし同様の速度、タイミングの一撃を七太刀目に放とうとすると出だしを潰された。
相手は六太刀目に虚実を交えてきたが、容易く見切る。
十一太刀目を同じようにいなそうとしたところ、刺突へ変化し僅かに…しかし確実に裂傷を刻む。

「埒があきませんね」

そんな攻防に限界を見出したか、女が動く。
ポツリとつぶやき、掌を相手に向ける。

そこから新たな日本刀が生えてきた。
擬似的な刺突を放ち、二刀流の構え。
牽制であろう突きにまた小さな傷を負い、激昂。

「女ぁ…!」

歯噛みしながら大きくバックステップ。
                                 ……
ひとまず納刀する。
神速の魔剣を、先のセイバーを屠った一撃を放たんと構える。
                                 ……る
構えた次の瞬間に二つの傷が熱と疼きを帯びるの気付く。
                                 ……てる
些細なかすり傷だが、毒でも塗っていたかと僅かに意識を向ける。
                                 ……愛   して る
確認するが、腫れや変色などの症状は見られない、ただの小さな刀傷。
                      して  る   愛   る  愛して   愛
そして剣士は気付く。
  愛してる愛してる愛してる愛してるあなたをアーチャーをランサーをライダーをわたしが愛愛愛愛愛
疼きは痛みでは愛なく、傷口から響く声だという愛ことに愛してる愛してる愛して愛して愛して愛して愛して愛愛愛愛愛愛愛してるるるるるるるるるるるるるるるる愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛……………………

「やかましいぞッ!!」

一喝。
それで響く声を押しのける。

「呪歌の類か…?だが私を染めたくばこの三倍は持ってこいというものだ……!」

赤く目を血走らせ、対峙する女剣士をねめつける。
それは誘いだった。
罪深き歌声は未だに響き、剣技を鈍らせる。
もし本当にこの三倍、五太刀六太刀と浴びせられたなら呑まれてしまうかもしれない。
しかし現状を維持しても響く声に敗れる危険はある。
故の短期決着狙い。
迎撃の構えのセイバーに対し、切り込む気勢を女は見せた。

「子が親に逆らうのは珍しいことではないでしょう。
 ですが……セイバー(あなた)という子を独り立ちさせてしまうのは様々な問題が生じそうです。
 それは私の仕事と、節度が許さない」

二刀を構える。
腰を落とす。
しなやかな脚に力が籠もる。
突撃。

愛という罪の歌を無視する。
柄を握る手に力を籠める。
愛という罪の歌を無視する。
刃を鞘に走らせる。
愛という罪の歌を無視する。
愛という罪の歌を無視する。
迎撃。


164 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:08:03 ixvn13Mo0

(セイバーをも斬ったこれは躱せまい!)

抜刀。
その軌跡は敵を仕留める……はずだった。
しかし、空を切る。

転がった首は一つ。
それはセイバーであった男のものだった。

「冥府の神、アヌビスから伝言です。その一撃はすでに憶えた、と。
 もしも冥府(そちら)で会ったら、どうぞよしなにお伝えください」

左手に持った日本刀を躰に収めながら送別の一言。

(罪歌の声による影響がなければ、一度見た技でなければ。
 敗れていたでしょうね……サーヴァント、侮りがたい)

紙一重の勝利だった。
NPCを利用した威力偵察からの交戦で容易に仕留めるつもりが、想像以上の苦戦を強いられた。
方針を改める必要があるようだ。
右手の剣も鞘に収め立ち去ろうとすると、視界に一人の男が入る。
セイバーのマスターではなく、どうやらただのNPCらしい。

目撃者。
放っておくことはできないそれに、内心息をつきながら、再び左手に剣を出して走る。
ひっ、と小さく悲鳴を上げ大の男が逃げ出すが、さもありなん。
刃物をぶつけ合うような金属音が響いたので覗きに来たら、赤い目の美女が剣を持って追ってくる。
魔術都市ユグドラシルの住民とは言え、それは恐ろしいものだろう。
しかしかたやサーヴァントと切り結んだ女傑、かたやどこにでもいるNPC。
鬼ごっこになどなりはしない。
刃を滑らせ――男に小さな傷を作る。
殺されると思ったら些細な傷で済んだのに僅かな安堵と疑問を覚える。

傷口からその疑問の答えが聞こえてきた。
愛している、と。
次の瞬間男の目は赤く染まった。

「これを」
「はい。母さん」

鞘に納めた剣を渡すと、男はすらりとそれを抜く。
すると気持ち目の赤みが薄れ口元に笑みを浮かべる。

「おう、母さん(マスター)。子作りは控えめにして、あんたがおれを振るうんじゃなかったのか?」
「私も命は惜しいので」

一戦交えてほぼ無傷、というのは僥倖。
少なくともセイバーやランサー相手にこのセイバー――アヌビス神――の力を借りて概ね五分では、何度も続けるのは難しい。
ならば、担い手を確保して戦うのが賢いだろう。
罪歌憑きを増やすのも、無為な犠牲も好みではないが仕事である以上割り切る必要がある。

「どうせ乗っ取るならこんなのじゃなくてセイバーがいいな。
 エクスカリバーにカラドボルグ、デュランダルにバルムンク。
 伝説の剣とおれの二刀流をやってみたいもんだ」
「サーヴァントの精神力は尋常ではありませんでした。
 罪歌をしのいだ以上、あなたと協力したとて乗っ取れるかは怪しいでしょう。
 確かに戦力としては魅力ではありますが」
「おれをも抑える母さん(マスター)でもダメとなると、そこらので妥協するしかねーか」

くるくると剣を弄び、納刀。
腰に下げながらもアヌビスのまま語り続ける。

「しばらく乗換はなしかい?それともこいつも使い捨てで?」
「……勝つために最善を尽くしてください。それが宿主を使い捨てる事ならそれも視野に。
 現状の戦力は、NPCの死も戦術に取り入れなければならないものですか?」
「すでにあのセイバーの技と力は憶えた。凡百のサーヴァント相手なら絶ッ〜〜〜〜対に負けない」
「そうですか」

応答しながらちらほらと見え出した野次馬に目をむける。
勝ち筋を考え、実行に移そうとする。


165 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:08:23 ixvn13Mo0

「冷たい女だな、母さん(マスター)。そこまで聖杯が欲しいのかい?」
「求めているのは私ではなく、私の顧客です」
「ハッ、仕事熱心なこって。
 錆びついたおれを引っ張り上げて、こんなところに呼び出してくれたのは感謝してる。
 精神力の強さも剣の腕も気に入ってるし、おれは斬れれば文句はねえから何でもいいけどよ」

そう言うと二人駆け出す。
集まり出した野次馬の間を鞘に納めた剣と、目にも留まらぬほどに細い鋼線を振るい走り抜けた。
野次馬たちに小さな傷。

しばらくすると野次馬たちが規則的に群がりはじめる。
包丁を持ったコック。
のこぎりを持った大工。
彫刻刀を持った教師。
他にも多くの刃物を持った老若男女が集った。

「この地でなす仕事は二つ。
 わが社に依頼が来た、聖杯の確保。
 聖杯戦争における事象をアメリカ在住のとある、人物…?ええ、男性に報告するための書類作成。
 そのために敵サーヴァント及びマスターの偵察、記録を」
「「「はい、母さん」」」

散ってゆく『子』を見ながら『母』、鯨木かさねは思考する。

(ムーンセルによる聖杯戦争。
 文明の利器がほぼ存在しない魔術都市。
 ……想定と、だいぶ異なりますね)

澱切陣内のコネクションも利用できるならするつもりだったのだが、どうもそうはいかなそうだ。
内に響く罪歌の声がなければ、記憶を取り戻せなかった可能性もある。
サーヴァントの数や、最悪クラスすらも僅かな事前知識と違ってくる可能性がある。
しばらくは『子』による偵察重視だろうか。
それともアヌビスと二人、遊撃だろうか。

そこへ小さく、ニャーと聞こえた。
見渡すと道の端っこに小さなネコ。
毛並、歯に付いた食べかす、体躯から野良と判断。

「帰りましょう、セイバー。自宅で報告を待ちます」

仄かに弾んだような声色で猫を抱え、仮初の自宅へと歩み出した。


166 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:08:45 ixvn13Mo0
【クラス】
セイバー

【真名】
アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力E〜A 耐久E〜C 敏捷E〜A 魔力D 幸運D 宝具B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
500年にわたり錆一つなく在り続けた妖刀としてそれなりの神秘を宿す。

騎乗:C+++
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
自身が操る使い手にも同等の騎乗スキルを与えることが可能。
ただし後述する宝具によるものならば幻獣種すら乗っ取る可能性を秘める。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
往生際が極めて悪い。
敗北しようと宿主を変えて襲い掛かる。
刀身が折れようと戦う。
バラバラになろうと、最も大きな欠片で能力を行使し、決定的な敗北を迎えない限り勝利を諦めることはない。

単独行動:A+
マスター不在でも行動、現界できる。
生前もスタンド使いの刀鍛冶が没したのちに刀に宿り500年在り続けた、いわゆる一人歩きしているスタンド。

魅了:C
美しい刀身に纏う空気により視認したものを魅了する。
対象は美を何となくでも感じられれば良いため、ネズミや牛にも効果を発揮する。
ただし魚や蟹は魅了されなかったため、哺乳類以上の知性が必要なのだろう。
相手の心理状態や感情によっては抵抗でき、また対魔力や精神系スキルによる無効化も可能。

見切り:A++
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵の同じ技は完全に見切ることが出来る。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。

【宝具】
『魂切り裂く冥界の神の暗示(アヌビス神)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2 最大捕捉:1人
アヌビス神というスタンドそのもの。
手にしたものを洗脳して無理矢理に本体とする。
戦闘経験に応じて持ち主を強化し、アヌビスを握ったものはサーヴァントと打ち合うほどの身体能力となっていく。
宿主を変えてもそれまでの経験値は引き継ぐため、最終的には恐ろしい実力となる。
当然持ち主に肉体・魔力的にはかなりの負担がかかるが、刀であるアヌビスはそんなこと気にも止めないで『戦闘続行』できる。
洗脳している間は宿主の技能や魔術も行使できるが、記憶などを覗けるわけではないので、アヌビスの把握していない技能や理解できない能力などは使えない……『見切り』、憶えた技能なら容易く行使するが。

なおサーヴァントとなったことで洗脳にも制限がかかり、強力な精神耐性を持つものや、より強力な支配を受けたものを洗脳することはできない。
また鞘に収まっている間は洗脳はできない。
ただし鞘に収まっている間に担い手に相応しくない者が柄や鞘でも触れた場合、斬撃によるダメージを与える。
さらに切るものを選ぶ能力があり、壁や生き物をすり抜けて向こう側だけを切ったり、盾や鎧を無視して敵を切り裂くなどが可能。


167 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:10:12 ixvn13Mo0
【weapon】
・床屋の主人
現地調達。
その辺にいたやけに体格のいいオッサン。
現在彼を洗脳し、アヌビスの本体(仮)としている。

【人物背景】
かつてキャラバン・サライという刀鍛冶師が保持した異能力、スタンド。
それだけが刀に宿り続けた存在。
スタンドとしてのステータスは破壊力:B / スピード:B / 射程距離:E / 持続力:A / 精密動作性:E / 成長性:C

500年にわたって現界し続け、エジプトの博物館の倉庫に置かれていたが、最強のスタンド使いDIOに引っ張り出される。
その圧倒的な強さに忠誠を誓い、DIOの敵を倒そうと動く。
空条承太郎に今までで最も苦戦したスタンドと評されるが惜敗。
その後ナイルの川底に己の失態で沈み、錆びついて刀としても寿命を迎え消失。
その錆びた欠片を触媒としてこの聖杯戦争に召喚された。
最盛期での召喚のため刀には錆一つ、刃こぼれ一つない。
しかしサーヴァントと化したことで生前『憶えた』技能、スタープラチナやシルバーチャリオッツの速度と技術は見切れていない状態。

【サーヴァントの願い】
斬る。

【基本戦術、方針、運用法】
ひたすら戦う。
宿主が変わっても見切った技能の知識や上昇したステータスは保存され続けるため戦うほどに強くなる。
もしマスターを失くしても刀は『単独行動』し続け、『魅了』した者を新たなマスターにもできるだろう。

なお刀に宿るという特性から霊体化などできず、スタンド使いでなくとも視認できる。
また神秘を持たない攻撃も通じるが、先述のすりぬけ能力により防御はできない。


168 : 体は刀で出来ている ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:10:30 ixvn13Mo0
【マスター】
鯨木かさね@デュラララ!!

【マスターとしての願い】
なし。
『澱切陣内』に依頼された、聖杯を確保して商品とするのが目的。

【weapon】
・罪歌
『全ての人間を愛する』女性の人格を持った妖刀であり、その愛の表現として人間と触れ合う=人を斬ることを求める。
罪歌を手にした者は罪歌を体中から自在に出し入れ出来るようになり、人間をひたすらに愛する声に精神を破壊され、妖刀の意思に支配されることとなる。
ただし、声を気にしないほど強靭な精神を持つ者は支配されないという例外もある。
罪歌の影響を受けている者は、その力が発現している最中は目が異常なまでに赤く輝く。
その輝きは大元の『母』に近い者ほど強くなる。
罪歌は愛した相手との間に愛の証として『子供』をもうける力を持ち、斬りつけた傷から恐怖と痛みを媒体に『種』を送り込み、少しずつ宿主の精神を侵しながら、新たな『刃物』を媒体に妖刀としての自我を発現させる。
そうして妖刀の自我に意識を支配された者を『罪歌の子』と呼ぶ。
『子』も大元の罪歌同様、斬りつけた人間を『子』にすることができる。
『罪歌の子』達は意識を共有しているわけではないが、『母』の命令に対しては『子』は逆らえず絶対服従する。
命令がなくとも『母』を助けるために自発的に『子』として行動することもある。
刀身自体もかなりの神秘の篭ったものであり、デュラハンの首の繋がりを切り離すなど『魂』や『心』を切ることも可能とする逸品。
サーヴァントへもダメージを与えることを可能とする。
ただし『子』の持つ刃物はそれだけではただの刃物であり、それ単体ではサーヴァントには干渉できない。
もちろん相応の『強化』を施したり、もともとが概念武装だったりするなら問題ないが。


・床屋の主人
現地調達。
その辺にいたやけに体格のいいオッサン。
現在彼を罪歌の子とし、アヌビスを持たせている。

【能力・技能】
・混血
母が吸血鬼である、魔の血が混ざった『混血』。
一部で言うところの『紅赤朱』には至っていないが、それでも人間離れした身体能力と精神力を誇る。
魔力量もかなりのもの。

・罪歌の母
前述の妖刀、『罪歌』を振るい多くの『子』を支配する。
また彼女は罪歌の支配に呑まれないどころか逆に支配しており、刀に囚われない形――鋼線、二刀流など――に変形させて使うことを可能とする。
『混血』としての強靭な存在に加え、この罪歌による影響で精神干渉の効果はサーヴァントからであってもほぼ受けない。
少なくともアヌビスでは彼女を洗脳することはできない。


【人物背景】
吸血鬼の母親と人間の父親の間に生まれる。
生まれてすぐに母親の手で澱切陣内という老人に売り渡される。
澱切陣内は人身売買から化け物売買まで手広くやっている悪党で、その男の下で様々な商売、世渡りを学ぶ。
澱切陣内の死後は替え玉、スケープゴートとして偽の澱切陣内を複数人用意し、自身は秘書の振りをしつつリーダーとして立ち回る。
母親に売られ、澱切陣内に人格を壊され、型にはめられ……
悪党として人や化け物を食い物にする生き方しかできなかった、人に作られた人でなし。
鯨木かさねというのも本名ではなく、別の女性との取引によって手にした偽りの立場。

【方針】
罪歌の子による情報収集、遊撃。
場合によってはマスターや、できればサーヴァントを子としたい。
アヌビスを罪歌の子に持たせ振るうのを基本とするが、場合によっては自ら罪歌とアヌビスの二刀を振るうことも考える。


169 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/19(日) 16:10:58 ixvn13Mo0
以上で投下終了となります。


170 : 名無しさん :2015/07/19(日) 16:43:28 I.VLxNko0
妖刀二刀流とはたまげたなあ


171 : ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:36:05 Y3UOyceE0
>黒子&アレキサンダー組
テラフォーマーズはあまり詳しくないのですが、正面きって戦うイメージが強かったので、
アサシンというクラスで召喚されたのは意外でした
黒子の影の薄さは、マスターという急所を秘匿するのには役に立ちそうですが、
その個性をそれ以上に活かすことができるかどうかが、このチームの命運を分けることになるかも

>弦十郎&ネージュ組
まぁ生きとし生けるものの中で最強(公式裏設定)のOTONAですからね!w
発勁などの用語から、気功術なんかも修めてそうですし、
彼自身が英雄クラスの実力者であることも加味して、鯖へのダメージが通るものギリギリアリとします
とはいえ魔術の専門家に比べれば、やはり見劣りする部分はあると思うので、そこはネージュの腕の見せ所ですね

>かさね&アヌビス神組
うわこれめっちゃ面白い。話も能力もかなり良い
双方洗脳能力持ちとなると、それこそ色んな悪さができそうで、可能性を感じました
宝具とスタンドの二刀流は、確かに見てたいですね

自分も投下させていただきます


172 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:36:34 Y3UOyceE0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

「何で弱ぇってだけで、奪われなきゃならねぇんだ!
 何で……何の罪も力もない人間まで、生きる権利を奪われなきゃならねぇんだ!?」

 その男を突き動かすものは、ままならない世界への怒りだった。
 信念もなく力を振るう、卑劣な権力者達が跋扈し、弱者を虐げることへの怒りだった。
 最悪の環境に生まれて、幼い頃から搾取にさらされ。
 力で敵をねじ伏せる以外に、喜びを得られるものも知ることができずに育ち。
 醜い強者達と対峙し、叩き潰す道しか選ばせなかった、そんな世界への怒りだった。

「神に逆らうことが罪だと? 守りたいもののために戦うことが、罪なのか!?
 生きるために足掻くことが……この地上に生まれたことが、罪だって言うのかぁっ!」

 男は燃えたぎるマグマの心の、その矛先を求め続けた。
 一度は世界の転覆を考え、火の星の神の下につき、人類の敵になったこともあった。
 やり場のない怒りを抱えながら、男は黄金の鎧を纏い、その拳を振るい続けた。
 ある意味で彼は、誰よりも素直に、己の意志を貫き続けていたのだ。

「てめぇらから見りゃ、取るに足らねぇ虫ケラかもしれねぇ。だがな……虫ケラだって、生きてんだよォッ!」

 私もあの男のように、素直に怒ることができるだろうか?
 道に迷った今の私に、あそこまでの闘志があるだろうか?

「燃え滾れ……俺の小宇宙(コスモ)ォォォォ―――ッ!!!」

 今の私は、あんな風に、願うことができるのだろうか?


173 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:37:07 Y3UOyceE0


「――『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』 ッ!!!」

 雄叫びが天と地を揺るがす。
 轟く叫びは衝撃となって、大地を砕き空を引き裂く。
 黄金色の閃光は、雷撃を伴って放たれた。
 稲光を纏う衝撃は、眼前に立ちはだかる障害を、塵一つ残さず蒸発させた。
 もうもうと立ち込める煙の向こうには、ひび割れた石畳のみが残る。
 敵の痕跡を欠片も残さぬ、その静かな破壊の跡こそが、その技の破壊力を物語っていた。

「……なるほどね。なかなかやるじゃない、キーパー」

 ふうっとため息をついた後、そう言ったのは一人の少女だ。
 赤、白、黒のドレスを纏い、手には大柄なスナイパーライフル。
 露出した胸の谷間には、赤々と存在を主張するエンブレム。
 三画の令呪はマスターの証だ。この破壊を起こした相手に対して、話しかけた茶髪の少女は、聖杯戦争の参加者だった。

「………」

 対するは、沈黙。
 声をかけられた使い魔は、しかし何事かを考えるように、口を噤んで押し黙る。
 漆黒のローブに全身を包み、顔は兜に隠れて見えない。
 2メートルはあろうかという巨体に、そんな服装を纏っているのだ。傍目には怪しさ全開だった。

「あんたの力、認めてあげるわ。生意気な口をきいたのも許してあげる。ま、さすがはエクストラクラスってところかしら」

 門番(キーパー)。それは存在しないはずの名前。
 聖杯戦争に登録されている、7つのクラスの枠から外れた、第8のエクストラクラス。
 いずれの適性も持たないサーヴァントに、臨時に与えられるのが、その特別階級なのだそうだ。
 そんな特別なサーヴァントを引いて、なおかつこれだけのスペックだ。
 自分は当たりクジを引いたのだと、少女は――両備は確信していた。

「……駄目だな」

 されど、否定。
 うきうきとした両備に対して、キーパーが発したのはそんな言葉だ。

「はぁ?」
「こんなんじゃ駄目だって言ったんだ。今の宝具の一発で、結構持っていかれただろ、魔力」

 ハスキーなサーヴァントの声に、うっと両備は言葉を詰まらせる。
 先ほどついたため息と、顔に浮かんだ汗こそが、彼女の消耗の証だ。
 両備は超常の力を持つ戦士――忍の身ではあるものの、妖術などの扱いには秀でていない。
 どちらかと言えばフィジカルを鍛え、実銃を扱い戦ってきた両備は、サーヴァントの使役には不向きなのだ。
 事実として、キーパーの宝具による魔力の消費は、無視できないものがあった。
 半分とまではいかないが、体力の3割くらいの分は、一気に持っていかれたかもしれない。


174 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:38:22 Y3UOyceE0
「でっ、でも! 今のはあくまでも奥の手なんでしょ! だったら普通に戦う分には……!」
「お前、今のが俺の全力だと、本気で思ってやがるのか?」
「えっ……」

 言うやいなや、キーパーは、己が装束を翻した。
 黒い外套が脱ぎ捨てられ、両備の視界を覆った瞬間、その隙間から光が差した。
 弾けた閃光が止んだ後、そこに立っていたのは――黄金の鎧だ。

「それは……!」

 思わず、両備は息を呑む。
 重厚な甲冑に身を包み、純白のマントをはためかす威容に、青と緑のオッドアイを見開く。
 さながら太陽の光を、そのままその身に溜め込んだような、神々しさすら漂わす威光だ。
 そしてその黄金を見た瞬間、胸の中で抱えていた違和感が、かちりと噛み合ったような気がした。
 元よりこのサーヴァントには、何かが足りないと思っていた。
 どこかで見た気がするキーパーの姿は、あのローブではなかったはずだと、もやもやした思いを抱えていたのだ。
 それが今、繋がった。
 鎧を身にまとったその姿は、ここに来てから夢に見た、黄金の拳闘士の姿と、まるきり同じだったのである。

「俺の真名はハービンジャー。かつては力と破壊を司る、牡牛座(タウラス)の黄金聖闘士(ゴールドセイント)と呼ばれてた身だ」

 牡牛座の黄金聖闘士、ハービンジャー。
 大仰な名を口にするのは、素顔を晒したキーパーだ。
 ワイルドな髪型と左目の傷は、豪奢な鎧姿には似合わず、荒くれ者のような印象を与えている。
 自称した称号に照らし合わせるなら、荒野を駆け回る暴れ牛(バッファロー)といったところか。

「その黄金聖闘士の象徴が、この黄金聖衣(ゴールドクロス)ってやつだ」
「ゴールド、クロス……」
「理解したか? こいつを纏っていなかった俺は、本調子じゃなかったっつってんだよ」

 鎧を纏ったハービンジャーのステータスは、いくつかが1ランク向上している。
 この鎧の宝具を開放した姿こそが、こいつの戦闘態勢だったのだ。
 つまりあれほどの破壊力ですら、本力で放つ一撃に比べれば、一段下でしかなかったということだ。
 ハービンジャーが本気で戦えば、あれ以上の魔力消費が、両備の身に振りかかるというわけだ。
 パワーアップしたこと以上に、そのことの方が突き刺さり、両備は呆然とした顔を浮かべた。

「だから……だから、何だって言うのよ!? 両備がマスターじゃ勝てないってわけ!?」

 しかし、それも一瞬だ。
 そのまま黙っていられるほど、両備は素直な性格ではない。
 すぐに瞳に鋭さを戻すと、声を張り上げてまくし立てる。
 去勢を張っているだけだ。だとしても張らずにはいられなかった。

「んなこた言ってねぇよ! ただアレだ、身の程をわきまえとけってんだ!」

 見た目通りの荒い口調だ。
 対するハービンジャーもまた、大人げない言葉を並べて声を上げた。


175 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:38:56 Y3UOyceE0
「うるっさいわね! 分かったわよ! 自制しろって言うんでしょ!」
「何でいちいち喧嘩腰なんだよ! 可愛くねぇ!」
「アンタから因縁つけてきたんでしょうが! もう分かったから、アンタはサーヴァントらしく大人しくしてなさい!」

 どうも両備とハービンジャーとは、似た者同士であるらしい。
 伝説の英霊が跳ねっ返り基質というのも、いかがなものかとは思われるが。
 ともあれそんな不毛な口喧嘩を、しばらくし続けたその後に、両者は沈黙し帰路へとついた。

「………」

 忍の戦闘形態・忍転身。
 それを解いた両備の衣装が、普通の私服へと変わる。
 ついでに豊満なバストは、まな板のような貧乳へと萎んだ。
 己が理想とする体型を、変身した姿でしか維持できないのは、両備のコンプレックスでもあった。

(両備では、キーパーの力を出しきれない)

 仕方のないことだ。
 魔術師でない両備は、聖杯戦争に関しては、まるきりの門外漢なのだ。
 燃費の悪い大型サーヴァントを、意のままに操ることができないのは、当たり前のことなのだ。

(それでも、負けるわけにはいかない)

 かといって、まだ負けが決まったわけではない。
 いくら手に余るとはいえ、強力な駒を得たことには変わりないのだ。
 魔力を上手く配分し、自身も戦力となって戦えば、勝てる可能性は十分にある。
 何せ願いを叶えられる絶好の機会だ。いかな条件であろうが、負けるわけにはいかないのだ。
 必ず勝つ。勝って聖杯をこの手に掴む。
 そして自分自身の願いを、必ず聖杯で叶えてみせる。

(そして雅緋を、この手で殺す……?)

 その、つもりだった。
 蛇女子学園の先輩にして、憎むべき実姉の仇・雅緋。
 奴を葬り去るために、わざわざ蛇女に潜入し、仲間として取り入ったはずだった。
 絶大なまでの実力の差も、聖杯の力さえあれば、容易に埋められるはずだった。
 だとしても、どうしてもノりきれない。
 心のどこかで雑念が、復讐心にブレーキをかける。
 雅緋は姉・両姫が死んだ時、手を出せる状況にはいなかった――学園の教師はそう言った。
 それが本当であるのなら、両備の復讐に意味はなくなる。
 彼女が実行犯でなかったのなら、殺してもいない人間を殺しても、両姫は全く浮かばれないことになる。

(だとしても……今更止まれないのよ)

 だが、ここでやめてしまったのなら、今までの人生は何だったのだ。
 姉の仇を討つために、双子の姉妹で力を合わせ、鍛えてきた道のりは何だったというのだ。
 果たしてここで立ち止まったとして、そんな情けない妹が、志を同じくする両奈に、顔向けすることができるのか。
 だから殺るしかないんだ。進むしかないんだ。
 両備は自身にそう言い聞かせ、仮初の住まいへの帰りを急いだ。
 すっかり薄くなった胸の内で、やめるわけにはいかないんだと、何度も何度も繰り返し続けた。


176 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:39:54 Y3UOyceE0


(難儀なもんだぜ)

 地上を守る女神・アテナを守護する、88の闘士――聖闘士(セイント)。
 その頂点に君臨する教皇にして、最強の12人の聖闘士・黄金聖闘士に数えられた男。
 前者は望んだ地位ではなかったが、それでも自分が相応に強いことは、それ相応に受け止めていた。
 そんな教皇サマが何たるザマだと、霊体化したハービンジャーはため息をついた。

(魔力もねぇくせに減らず口ばかり。可愛くねぇったらありゃしねぇ)

 忍者とはこんな奴ばかりなのかと、生前の知人を思い出しながら、内心でぼやく。
 そこそこ腕は立つようだが、それはあくまで忍者としてだ。
 魔術師としての技量以外は、聖杯戦争には求められていない。
 というより自分の能力を考えれば、マスターからの援護射撃など、さして必要でもないのだ。
 後ろから敵を狙い撃つよりも、魔力をよこしてくれた方が、万倍も役に立つはずなのだ。

(その上どうにも戦う動機に、怪しい部分が見えやがる)

 そして何よりもハービンジャーが、気に食わないと思うのが、そこだった。
 両備の聖杯戦争にかける想いは、どこか危うい部分があるのだ。
 自分の叶えたい願い事について、ためらいや迷いがあるような、そんな節を感じていた。
 骨の強さは心の強さ――それがハービンジャーの持論である。
 やる気で負けている人間が、戦いに勝てるはずもない。
 そこは今後次第だが、現状のままであるのなら、両備は明らかに落第だ。
 欲望渦巻くユグドラシルには、彼女はあまりにも似つかわしくない人間だった。

(しかし待てよ? ユグドラシル……?)

 と、その時。
 不意に引っかかるものを感じ、ハービンジャーは思考を打ち切る。

(前に聞いたような気もするが……単なる偶然か?)

 世界樹とユグドラシルという単語は、生前に資料で見たことがあった。
 確か北欧のアスガルドにて、邪悪な力を宿した大樹が育ち、動乱を引き起こしたことがあった。
 その時の木の名前が、この街と同じ、ユグドラシルといったはずだった。
 残念ながらそれ以上のことは、死後のハービンジャーには思い出せない。
 もう少し真面目に仕事しとくべきだったかと、この日ばかりは、己のいい加減さを呪った。


177 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:40:15 Y3UOyceE0
【クラス】 キーパー
 拠点防衛や治安の維持など、ものや場所を守ることにまつわる英霊のクラス。
 適性値の高い英霊であればあるほど、防衛戦において優れた能力を発揮する。
 1つの街を守り抜いた左翔太郎(仮面ライダーW)や、法の番人であるユーリ・ペトロフ(ルナティック)などが適性を持っている。
 更に広義の意味では、自らの宝物庫の門番という解釈で、ギルガメッシュにも適性があると言われている。
 似たようなクラスにシールダーがあるものの、細かい部分ではアーチャーとガンナー程度には異なっている。

【真名】 ハービンジャー
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A

【クラススキル】
防衛態勢:C
 マスターを護衛しようとした際に、耐久値が若干プラスされる。
 また、1つ下のランクまでの「気配遮断」スキルを無効化できる。
 ハービンジャーは金牛宮に閉じこもるよりも、自ら打って出ることを好んだため、あまりランクが高くない。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 ハービンジャーの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。

勇猛:A
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。


178 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:41:20 Y3UOyceE0
【宝具】
『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:C 宝具:A
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・牡牛座(タウラス)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
 黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・幸運のパラメーターが、上記の通り1ランクずつアップする。

『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』
『至高なる金牛の咆哮(グレイテストホーン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜40(グレートホーン)、1〜20(グレイテストホーン) 最大補足:20人(グレートホーン)、50人(グレイテストホーン)
 牡牛座の聖闘士の逸話と共に語り継がれてきた、すさまじい威力を宿す奥義が宝具化したもの。
 黄金聖闘士の光速拳を極限まで高めた奥義であり、両腕を振る動作に合わせて、強烈な衝撃波を放つ。
 腕を正面に突き出すと直射型の『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』、
 左右に振り抜くと範囲攻撃型の『至高なる金牛の咆哮(グレイテストホーン)』となる。

【weapon】
なし

【人物背景】
女神アテナを守るために戦う、88人の戦士・聖闘士を統括する教皇。
かつては聖闘士最高位に位置する、黄金聖闘士の1人・牡牛座の聖闘士として、最前線で豪腕を振るっていた。
今回の聖杯戦争においては、彼が教皇の地位を得たきっかけになったと言われている、パラスベルダ戦役の際の年齢で現界している。
(私服はマルスと謁見した際のものとなっている)

大柄な体格と強面の通り、豪快で荒っぽい性格。
根っからの戦闘狂であり、「骨の折れる音が好き」「心の骨が砕け散る音はそれ以上に好き」と語っている。
一方で過去の境遇から、弱い者いじめは嫌っており、
金牛宮に攻め込んだ青銅聖闘士(ブロンズセイント)達を一蹴した時にも、露骨に不機嫌そうな態度を取っていた。
「骨の強さは心の強さ」という、独自の根性論を展開している。

元々はスラム街の出身であったが、過酷な環境の中で自然発生的に小宇宙に覚醒。
ろくに修行を受けていないにもかかわらず、正規の聖闘士すらも撃退した力を見初められ、火星の神・マルスのスカウトを受ける。
その圧倒的な力に屈服したハービンジャーは、修行を積み、彼らが聖域から奪い取った黄金聖衣を纏う黄金聖闘士となった。
その後はマルスの下で戦っていたのだが、ペガサス光牙との戦いや、マルスの討伐を受けて聖域に残留。
聖闘士達の誇りに触れていくうちに、そんな彼らを蔑ろにする神々への怒りを覚えるようになり、共に愛の女神・パラスと戦った。

当時の聖闘士達の中でも、比類なき超パワーの持ち主として知られている。
巨体を活かしたパワーファイターだが、決して鈍重というわけではなく、黄金聖闘士の光速拳も当然放つことができる。
宝具の他に習得している技として、自らの体を不定形の影に変え、自在に変形しながら殴りかかる「シャドーホーン」がある。

【サーヴァントとしての願い】
特になし

【基本戦術、方針、運用法】
常にAランク級の能力を発揮できるため、ステータスだけを見れば非常に安定しているサーヴァント。
ただしそれは言い換えれば、加減が利かないということでもあり、燃費の劣悪さにも直結している。
特にお得意の『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』は、乱発すれば即魔力切れに繋がりかねないため、
マスターの慎重な魔力管理が物を言う暴れ牛である。


179 : 両備&キーパー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:42:29 Y3UOyceE0
【マスター】両備
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性
【令呪の位置】胸の谷間

【マスターとしての願い】
復讐を果たしたい?

【weapon】
スナイパーライフル
 長距離の敵を狙撃するために設計された、長大なライフル。
 両備は中距離の銃撃戦においても、この銃を使い回しており、問題なく使いこなしている。
 また、グリップ部には斧状の刃が取り付けられており、近接戦闘を行うことも可能。
 最大弾数は不明。そもそも弾切れを起こす描写がない。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の選抜メンバー候補として、ひと通りの忍術をマスターしている。

忍転身
 現代の忍の戦闘装束。この術を発動した雅緋は、マントを羽織った白装束を纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、両備の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

狙撃
 スナイパーライフルを用いた狙撃技術。

【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
16歳の1年生で、スリーサイズはB69・W56・H90。
元は善忍を養成する学校・死塾月閃女学館の生徒だったが、
姉の両姫を選抜チーム筆頭候補・雅緋に殺害されたと思い込んでおり、復讐のために蛇女へと転校を果たす。
しかし教師の鈴音から、両姫が死んだ時雅緋は現場に到着していなかったと聞かされたことにより、
復讐を辞めるべきか否か、その狭間で苦悩するようになる。
聖杯の力を使えば、両姫を復活させることも可能と思われるが……そこにもある理由から、迷いがある模様。

他人をいじめるのを好むサディスト。
常に偉そうな言動を取っており、相手を軽んじた口調で接している。
一方で、自分の小さなバストには大きなコンプレックスを抱いている。
自らの理想を体現した忍転身時には、バストサイズが95までアップするのだが、
それですら転身を解いた時、そこから通常の体型に戻ることに虚しさを感じ、コンプレックスを加速させる結果を招いている。

忍法の性質を表す秘伝動物は鹿。
斧を備えたスナイパーライフルを用いることで、あらゆるレンジの敵に対応することを可能としている。
特に得意としているのは銃撃戦で、放った銃弾を壁に跳弾させ、変則的な機動で敵を追い詰める。
必殺の秘伝忍法は、周囲に複数の機雷を展開し炸裂させる「8つのメヌエット」、
その機雷を正面に撃ち出し、銃撃することで誘爆させる「リコチェットプレリュード」。
更なる威力を持った絶・秘伝忍法として、背中に背負ったユニットからミサイルを乱射する「メヌエットミサイル」を持つ。

【方針】
優勝狙い。向かってくる敵には容赦はしない。


180 : ◆nig7QPL25k :2015/07/19(日) 20:43:45 Y3UOyceE0
投下は以上です。エクストラクラス適用のチームとして、
両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-&キーパー(ハービンジャー@聖闘士星矢Ω)組でした

両者のステータスは、「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」様の候補作を参考とさせていただきました


181 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:32:01 KzYKFbWw0
投下乙です
やっぱり黄金聖闘士はいろいろ規格外だなあ
では、自分も投下させていただきます


182 : シンシア&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:33:02 KzYKFbWw0
昔々、人間と魔物の戦いがありました。
魔物を率いる魔王は伝説の勇者の存在を恐れ、まだ未熟な勇者の住む村を襲って村人を皆殺しにしました。
しかし肝心の勇者は、幼なじみの少女が身代わりになったため生き延びていました。
勇者は過酷な旅をして成長し、運命に導かれた仲間達と共に魔王の元へたどり着きました。
しかし魔王は、裏切り者により愛する少女を殺され狂っていました。
そこで勇者は100年に一度咲くという世界樹の花を使い、魔王の恋人を生き返らせました。
恋人の呼びかけにより魔王は正気に返り、勇者と手を組んで裏切り者を討ちました。
魔王はその後人間を襲うことはなく、世界に平和が訪れました。
めでたしめでたし。


ちょっと待って。
その話、本当に「めでたしめでたし」なの?
何で勇者よりも、魔王の方が報われてるの?
こんなの、理不尽じゃない?


◇ ◇ ◇


「まさか、私のマスターがお前だとはな……」

あまりに重い空気の中、男はそう口にした。
セイバーとしてこの度の聖杯戦争に召喚された彼の名は、ピサロ。
かつて魔族の王として勇者と戦い、されど最後には勇者と手を組んだ男だ。
そして彼のマスターとなった桃色の髪の少女の名は、シンシア。
勇者の身代わりとなり、ピサロに殺された少女だ。

かつて二人が対峙した時、シンシアは変身呪文「モシャス」により勇者の姿になっていた。
故に、ピサロは彼女の顔を知らなかった。
だがこうしてサーヴァントとマスターという関係になったことで、ピサロはシンシアの素性を知ったのだ。

「私は……」

それまで沈黙を保っていたシンシアが、ゆっくりと口を開く。

「私は、あなたを許さない。私を、村のみんなを殺したあなたを」
「だろうな。自分の所業がどれほどの恨みを買っているかわからぬほど、私も愚かではない。
 だが、謝りはせんぞ。私は魔族の王としてやるべきことをやっただけだ」

おのれを迫る言葉にも、ピサロは動じない。
ただ淡々と、言葉を紡ぐ。

「それでどうする、娘。令呪とやらで、私に自害でも命じてみるか?
 いかな私でも、今はお前の従者に身を落としてしまっている。逆らうことはおそらくできんぞ」
「しないわ、そんなこと」

ピサロの提案を、シンシアは即座に却下した。

「あなたは私にとってとても憎い存在だけど、とても強い。だから、利用させてもらうわ。
 聖杯を手に入れて、私の願いを叶えるための駒になってちょうだい」
「願いか……。お前が殺されず、勇者と共に平穏に暮らせる世界でも願うつもりか?」
「ええ。勇者が救うまでもなく、平和な世界。それが私の願いよ」
「いいだろう。そんな世界ならば、私も平穏に暮らせるだろうからな」

ピサロは腰に差していた剣を傍らに置き、片膝をつく。

「この聖杯戦争の間、お前を主として認めよう。よろしく頼むぞ、マスター」
「ええ、よろしくね、セイバー」

憮然とした表情のまま、シンシアは答えた。


183 : シンシア&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:33:59 KzYKFbWw0


◆ ◆ ◆


「自分がどれほどの恨みを買っているかわからぬほど愚かではない」と、ピサロは言った。
だが実際のところ、彼はシンシアの自分に対する憎悪を読み違えていた。
しょせん魔の者に、人間の気持ちはわからないということか。
あるいは自分を許し、その手を取った勇者を基準に考えてしまったがゆえか。
何にせよ、シンシアの憎悪はピサロの想像以上であった。

単に「人間と魔物が争わない世界」が、シンシアの望みではない。
「魔王ピサロの存在を抹消した世界」こそが、彼女の真の望みであった。

致命的に歯車が噛み合わぬまま、そしてそれを隠したまま、憎む者と憎まれる者は聖杯戦争へと向かう。


【クラス】セイバー
【真名】ピサロ
【出典】ドラゴンクエストIV
【性別】男
【属性】秩序・悪

【パラメーター】筋力:A 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:E 宝具:A


【クラススキル】
対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
 乗り物を乗りこなす能力。
 セイバーは特に乗り物に関する逸話を持たないため、申し訳程度の効果となっている。


【保有スキル】
カリスマ:B-
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘において自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 セイバーは生前魔族の王であったが、裏切りにより身を滅ぼしたことからマイナス修正がかかっている。

魔剣士:A
 メタル斬りやドラゴン斬りなど、彼の生きていた時代では遺失したはずの剣技を使いこなすことができる。

魔術:B
 出身世界の魔術を修得している。
 彼の場合は攻撃・回復・補助それぞれの魔法をバランスよく修得している。
 しかしセイバーとして召喚されたことでランクダウンしており、ドラゴラムやマダンテなどの高レベル魔法は使えなくなっている。

呪い耐性:A
 「対魔力」と似て非なるスキル。
 「呪い」という概念そのものをはねのけ、一切の影響を受けない。
 ただし対象は自分のみであり、他者にかけられた呪いに干渉することはできない。

白紙の肖像:D
 マスター以外の者はスキル所有者の外見に関する記憶が曖昧となり、視界内にいなければはっきりと思い出せなくなる。
 魔力が同ランク以上なら効果を受けない。
 セイバーは名の知れた反英雄でありながら同じ時代の英雄と比べ外見に関する資料が非常に少なく、物語の登場人物としては様々な姿で描かれた。
 その逸話がスキルとなったもの。


184 : シンシア&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:35:27 KzYKFbWw0

【宝具】
『まかいのつるぎ(ダークマターソード)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
魔界一の鍛冶師が鍛え上げたとされる、魔王専用の武器。
その切れ味は勇者が用いる「天空の剣」をも凌駕する。
また他者に傷を負わせた時にその生命力を吸収し、持ち主の肉体を回復する力も持っている。

【weapon】
まかい装備一式
 まかいのつるぎと同じ鍛冶師によって作られた鎧・兜・盾。どれも強力。

【人物背景】
若き魔族の王。
地獄の帝王・エスタークを蘇らせ、人間を排除し魔族の支配する世界を作るのが目的。
しかし腹心であるエビルプリーストの裏切りで、恋人であったエルフの少女・ロザリーを殺され暴走。
生物を強制的に進化させる「進化の秘法」を自らに施すが失敗し、人間への殺意以外何も持たない怪物に成り果ててしまう。
しかし勇者達がロザリーを蘇らせたことで正気に返り、勇者と共闘。
裏切り者のエビルプリーストを討ち取った。

【サーヴァントとしての願い】
歴史を改変し、ロザリーと穏やかに過ごせる世界を作る。

【基本戦術、方針、運用法】
卓越した剣技に加え、ランクダウンしているとはいえ強力な魔法も使える万能サーヴァントである。
どんな戦い方をしても、十分な成果をあげられるだろう。
強いて不安な点を上げるなら、ステータスには出ないメンタル面の弱さか。


185 : シンシア&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:37:06 KzYKFbWw0


【マスター】シンシア
【出典】ドラゴンクエストIV
【性別】女性
【令呪の位置】額(髪に隠れている)

【マスターとしての願い】
歴史を改変し、魔王ピサロの存在しない世界を作る。

【weapon】
羽根帽子
 飾り羽根がついた帽子。シンシアのお気に入り。
 防具としてもそこそこ有用。

【能力・技能】
魔法
 視界内にいる相手の姿と能力をコピーする変身呪文「モシャス」を使える。
 特異な呪文であるモシャスだけを習得していたとは考えづらいため、他にも使える呪文があるものと思われる。

【人物背景】
山奥の村で「天空の勇者」の幼なじみとして育った少女。
村がピサロに襲撃された際、勇者の身代わりとなって殺された。
本来は平和を愛する心優しい少女なのだが、現在は怨敵を目の前にして憎悪が暴走した状態である。
なお勇者が全ての使命を果たした後、彼女が生き返ったとする説もあるが、
死の間際から召喚されたこの世界の彼女には関係のない話である。

【方針】
ピサロを利用し、聖杯を手に入れる。
ピサロは最後に令呪で自害させるつもり。
ただし現在の彼女は冷静さを欠いているため、後々考えを改める可能性がある。


186 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/20(月) 18:39:27 KzYKFbWw0
投下終了です
シンシアに関しては、かなり独自のキャラ付けが入っていることをお断りしておきます


187 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:31:21 7sYEq9.Y0
投下後に度々申し訳ないのですが、ガンマンのステータス変更を。
ダンベルを対人宝具から対神宝具に修正します。
完璧始祖を消す宝具ならそっちの方がいいと思ったので。

それから鯨木かさねに令呪を設定してなかったので、

【令呪】
右手の甲。
刀の鍔にありそうな三重のハート型。

とします。


加えて投下もします。


188 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:32:08 7sYEq9.Y0
「おい、もう何回失敗してんだよー」
「所詮『ゼロ』は『ゼロ』か」
「マントが煤けちゃうじゃない」
「静かに。貴族がそんな口を聞くものじゃありません。さ、ミス・ヴァリエール」

飛び交う野次を無視してもう何度目か分からない精神集中に入る。
そして、もはや容易く諳んじられるほどに唱えた呪文を口にする。

「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つの力を司るペンタゴン。我の運命(さだめ)に従いし、"使い魔"を召喚せよ」

すでに祈りに近い言霊。
ゼロと蔑まれるのはイヤ。
魔法が使えない貴族なんてご先祖に申し訳が立たない。
だから、こんどこそ……
サモン・サーヴァントはメイジとしての入門だ。
これができれば、自分も魔法が使えると胸が張れる。
だから、お願い。
私を、魔法使い(メイジ)にして……

「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ!
 わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさい!!」

杖を振るう。
成功すればそこには使い魔が現れる……はずだった。
しかし起きたのは何度目かも分からない爆発。
それも今までのものとは規模の違う大爆発で、粉塵で一時視界がふさがれる。

「げほっ、げほっ…おい、また失敗かよ!」
「もう、いい加減終わりでいいじゃないですか、コルベール先生!」
「本人が望む以上そうもいきません。ミス・ヴァリエール、どうなりましたか?
 …………ミス・ヴァリエール?」

景色が晴れたそこに、使い魔どころかいるはずの少女もいない。
公爵家三女の消失に、学園は騒然となった。


189 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:32:35 7sYEq9.Y0
◇ ◇ ◇

「召喚に従い参上しました。あなたが私のマスター?」
「え……?どこここ、ッ痛!」

突如切り替わった風景。
目の前にいる栗色の髪の女性。
左手の甲に走る痛み。
そして聖杯戦争という訳の分からない知識。
様々な事象がパニックを呼び起こす。

「もうっ、何よこれ!なんで私にルーンが刻まれてるのよ!」
「わ、落ち着いてマスター。多分呼び出される寸前までサーヴァントの召喚をしてたから記憶の混乱があるんだと思う」
「サーヴァント?それじゃあ、あなたが私の使い魔なの?」
「ええと、まあそういうことになるのかな。
 聞こえたよ、あなたの声が。立派な魔法使いになりたい、って。だから私が来たんだ」

使い魔の召喚に成功した。
それに喜びを覚え、パニックが興奮へとすり替わっていく。
自分は偉大なメイジへの一歩を踏み出せたのだ、と。
しかしそれとともに自らに刻まれた知識を正確に認識し、興奮は冷めていく。

「聖杯戦争、って……」
「うん、そう。マスターは巻き込まれちゃったことになるのかな……
 だからこそ私は来ることができたんだけど。
 どうかな、マスター?マスターは何か叶えたい願いはある?」

聖杯。
万能の願望器。
叶えたい願いがあるか、と問われればそれは

「私は一人前のメイジになりたい……」
「うーん、たしかにそれは立派な夢だけど聖杯に願うものじゃないかな。
 サーヴァントはマスターの魔力で維持されてるから分かるんだけど、あなたの魔力量は凄いよ。
 同じ年くらいの部下を教えたこともあるけど、多分魔力量だけなら彼女たちより上じゃないかな。
 小っちゃい子供が、歩けるようになりたい!って言っても、それは時間と経験を積めばできるようになるでしょう?」

ルイズが口にした願いをやんわりとだが否定する。
しかしそれと同時にルイズの将来を肯定する。

「私は、魔法が使えるようになるの……?」
「魔法の定義にはよってきちゃうけど……うん、大丈夫。
 私が、指導者(メンター)のサーヴァントがそれは保障するよ。こう見えて魔術師(キャスター)としても一流なんだから!」

朗らかに笑って背中を押す。
こんな風に後押ししてくれる人は次姉を含めほとんどいなかったせいか、僅かに目が潤む。
しかし涙を落とすのは控え、貴族として堂々と振る舞う。
使い魔の前で情けない姿を晒すわけにはいかない、と。
そして思い浮かべた姉のことを口にする。

「それじゃあ、私には病にかかった姉がいるの。その人の病気を治してあげたいわ」
「お医者様じゃ治せないんだよね?」
「治せたら苦労しないわ」

僅かに魔法を行使するだけで苦しむ、心優しい姉カトレア。
愛しい家族を助けてあげたい。

「うん、それは確かに聖杯に託すような願いだね。
 じゃあ、それを聖杯に願って本当にいいの?」
「何を言って……」

思い至る。
聖杯を使うということは、同じく願いを抱えたものを蹴落とすということだ。

「あなたは聖杯を求めないの?サーヴァント、なのに」
「私?私はね……うん、いらないって言ったら嘘になるよ。
 でもそのためにたくさんの人を不幸にするようなことはしたくない。
 ……子供のころね、なんでも願いを叶える宝石、っていうのを巡る事件に関わったことがあったんだ。
 あの事件に悪い人はいなくて、ただ不幸な人が幸せになりたかっただけだったんだ。
 でもその人はきっと、身近にある幸せに気付けていなかっただけだったの」

娘を失くし、娘を産み出し、娘を否定し、娘を求めた母。
母となって僅かに分かる、その気持ち。
その深い愛憎を否定することはできない。
そして事件そのものもまた、かけがえない親友との出会いという意味では否定したくない。
ただ、もし。母が新しい娘を愛する、幸せな家庭を築けていたら。それも形は違えど幸せだと気付けていたら。

「願いは否定しないよ。でも、願いに囚われちゃいけないと思う。みんな変わってく…変わってかなきゃいけない。
 だから、お話がしたいんだ。サーヴァントとも、マスターとも。
 それしか方法はないの?もしくはこんなにたくさんのサーヴァントがいても解決できないようなことなの?本当にそれでいいの?って。
 ……きっと、反発されると思う。考えた果てにここにいるんだ、って答える人もいると思う。
 でもそれが、私の願いだから。次元を超えて、沢山の人が不幸にならないようにするのが。
 世界はいつだってこんなはずじゃないことばかり。その現実に逃げるか立ち向かうかは個人の自由だけど、その自分勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込む権利なんて誰も持ってない……なーんて受け売りだけど。
 だからこうしてマスターともお話をしてるんだ」


190 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:33:32 7sYEq9.Y0

問われた疑問を反芻する。
本当にそれでいいのか。
ラ・ヴァリーエール公爵家として恥じない選択なのかと。

「ねえ、あなたメンターなのよね?魔法も使える」
「次元航行や転移もしてたし、あれは第二魔法っていうはずだから……うん、そうだよ?」
「それなら、私に魔法を教えて。私が、カトレア姉さまを治せるようなメイジになればどっちの願いも叶って一石二鳥だわ」
「聖杯は、いいんだ?」
「……必要な犠牲なら、貴族として杖をとる覚悟はあるわ。
 でも身勝手な理由で魔法を振るうのは貴族として恥ずべき事よ」

血に汚れた願望器で体を治しても小姉さまは喜ばない。
むしろ怒る…いや、悲しむだろうか。
何より、弱者を守るべき力で欲望を叶えようとするなど、ラ・ヴァリエールとして自分が許せない。

「そっか。うん、よかった」

笑顔を見せるメンター。
そこから確かな安堵が感じられるが……もし、反発したならば喧々諤々と論を交わしたであろう強さも垣間見える。
いや、もしかするとそれ以上だろうか。

「先に言っておくけど私が教えられるのは私の知ってる魔術。
 マスターの知ってるそれとはちょっと違うかもしれない。ミッドチルダ式、っていうんだけど」
「? 何よそれ。何処の田舎魔法?始祖ブリミルの四系統でいうとどれになるの?」

互いの常識の差異。
それをメンターが主導となってすり合わせていく。
幸いにしてメンターは多数の平行世界の存在を知り、またルイズも優秀な生徒であり、反発はあったが異なる魔術形式の存在をしぶしぶ受け入れる。

「私は始祖ブリミルの魔法を習得したいんだけど……」
「うーん、こういう言い方はしたくないんだけど、人には向き不向きがあると思う。
 マスターが習得できなかったのは、それが向いてなかったんじゃないかな……
 聞いたところ魔力の運用方法とか基本的なところも教わってないみたいだし、キチンと制御方法を学んだうえで改めて向き合っても遅くないと思うけど」
「それじゃあ、誰も私が魔法を使えるようになったと認めてくれないじゃない!!」

内に秘めた劣等感が顔を出す。
ただ使えるだけではない、それを認められなければ貴族として、メイジとしての名誉は得られないと。

「うん、そうかも。大きくなった組織とか体制っていうのはいろいろ面倒だよね。
 新しいものっていうのをなかなか認めてくれない……
 始祖ブリミルの魔法じゃなきゃ認めてくれないっていうのなら簡単だよ。
 あなたが始祖ブリミルになればいいの」
「は?」
「あ、言い方が悪かったかな。
 新しい魔術方式を提言して、それを定着させていくの。
 貴族よりは学者寄りだけど、もしできたら始祖ブリミルに並んで歴史に名を残す偉業だよ?」
「そんなの……畏れ多いわ!」

魔法の祖、ブリミル。
神格化された彼の姿は偶像を作ることすらおこがましいとされる。
そんな方に比肩しようなど、考え付きもしなかった。


191 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:33:49 7sYEq9.Y0

「偉大な一歩っていうのは先人のさらに一歩先を行くことだよ。
 それには先人の足跡を辿る必要がある。
 そして先人の足跡を踏みつける必要がある。
 ……とっても難しいことだと思う。人によっては無礼、なんていうかも。
 でもそれができないと、きっと人は前に進めないよ。
 あなたならそれができると思う。そして、あなたの家族はきっとそんなあなたを誇りに思ってくれると思う」

貴族。
直接は知らない文化だ。
でも、立派な家に生まれる苦労っていうのはあるんだろう、っていうのは二人の幼馴染を見て察してる。
声とか雰囲気とか、どことなくそのうちの一人と似ているし。
これほどの誇り高さというのは家族に恵まれないと身に付かない。
きっと、いい人たちなんだろう。
始祖ブリミルという人物に対する畏敬の念というのは少々分かりかねるが、聖王信仰に似たものだろうか。
だとしたら宗教的な弾劾もあるかもしれない……けど、それをはねのける強さがこの子にはある。
期待の眼を向めるサーヴァントに対する答えは

「ああ、もう!とりあえずあなたの知ってる魔法を教えなさい!
 身に付けてからどうするかは後で決めるわ!」
「うん、いいね。
 無謀なのは好きじゃないけど、我武者羅なのは嫌いじゃないよ。
 時間もあまりないし、早速やろうか」

宝具を取り出し、術を行使しようとするが

「あ、待って。私まだあなたの名前を聞いてないんだけど」
「え?あ、そっか。召喚の詠唱で私はあなたの名前を知ってるからてっきり自己紹介したつもりになっちゃってた。
 ごめんね。それじゃあ、改めて。
 メンターのサーヴァント、高町なのはです。マスターの名前は?」
「え、知ってるんでしょ?」
「こういうのはお互いに名乗るものでしょ」
「はぁ、わかったわよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。マスターと呼びなさい」
「はい、マスター。私のことは基本的にメンターって。
 ……それじゃあ、始めようかイジングハート」
「All right」

胸元に下げた赤い宝玉が答える。
そして結界が展開し、通常の時空から切り離される。

「この結界の中ならよほどの魔術師じゃないと私たちには気付けない。
 基本的にはここでトレーニングね」

世界が塗り替えられるとともに意識も切り替わったか、なのはの目付きが鋭くなる。
長姉や母が厳しい指導をするときに近似した空気に僅かにたじろぐルイズ。

「あ、えっと…他のサーヴァントとのお話はしなくていいのかしら?」
「聖杯戦争、だよ。戦場に何もできない新兵を連れて行くわけにもいかないからね。
 もちろんサーチャーは飛ばしてるし、エリアサーチは欠かさないけど、マスターのトレーニングの重要性の方が今は高いよ。
 まずは基本の基本、念話から行くよ。それができたら感覚共有。そこまでいったら魔力操作。
 その後護身を優先してバリアジャケットの作成、シールドによる防護。そこからはマスターの向き不向きによるけど飛行とか、希望してる治療とかいこうか」

教導の予定をつらつらと述べる。
厳しい先行きにめまいを覚えるルイズ。
けれども、今までとは違う魔法へのアプローチに僅かながら胸を膨らませてもいた。


192 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:34:05 7sYEq9.Y0
【クラス】
メンター

【真名】
高町なのは@リリカルなのはシリーズ

【パラメーター】
筋力E 耐久D+ 敏捷C++ 魔力A+ 幸運A 宝具

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
指南の心得:B+
数々の英雄を育て上げた者が得るスキル。指導者としての手腕。
対象の才能を見極めたうえで適したスキルを対象に習得させる。
ランクBならば自らの持つ技能であれば習得させる事が可能。
習熟度は通常自身のものが上限となるが、対象の才覚によってはプラス補正がかかり、自身の技能を独自にアレンジすることで場合によっては彼女以上のものを継承させることができる。
彼女の教え子はディバインバスター、スターライトブレイカーという技を独自の形で習得している。
高町なのははミッドチルダ式と呼ばれる魔術に精通し、専門ではないがベルカ式と呼ばれる魔術の知識も有する。
また最低限ながら軍隊格闘も習得しており、英霊となったことでとある暗殺剣術の知識も僅かながら得ている。

カリスマ:E
軍団を指揮する天性の才能。
カリスマは稀有な才能で、一軍の教導官としてはEランクでも破格のもの。
一小隊程度なら十分な士気高揚が望め、平時なら関係構築には十二分なもの。
しかし指揮・指導方針を明確に伝えない等、意思疎通に齟齬が生じた場合は反感を招くこともある。

【保有スキル】
魔術:A
オーソドックスな魔術を習得。
主にミッドチルダ式と呼ばれる術式に精通し、その中でも砲撃魔術や防御魔術を得意とする。

戦闘続行:C
不屈の闘志。
瀕死の傷でも長時間の戦闘を可能とする。

魔力操作:A+
魔力放出の上位スキルであり、さらに精密な操作・行使を可能とする。
彼女の場合魔力収束というレアスキルも保持し、多彩な砲撃、射撃魔術の発動に役立つ。
魔力放出をさらに効率化しての高速飛行、数十発もの魔力弾の精密操作、周囲一帯の魔力を集約・収束しての砲撃など多彩な魔術に応用する。

並列思考:A
マルチタスクとも呼ばれる。
複数の思考を同時平行して進める技術であり、飛行魔術を行使しながら他の魔術の準備・行使をするなど空戦魔導士には必須と言えるスキル。
魔力弾の操作も魔力操作に加えて、的確に動かせるのはこのスキルの賜物である。
Aランクともなれば魔術行使の難しい空間で飛行、砲撃、バインド、索敵の同時行使なども可能。

【宝具】
『不屈の心はこの胸に。そしてこの胸に小さな勇気と奇跡を(レイジングハート・エクセリオン)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
なのはが魔術を行使する際に触媒とするインテリジェントデバイス。
いわゆる魔導師の杖、魔術霊装であり彼女に合わせて砲撃特化のデバイスとなっている。
本来『不屈の心はこの胸に(レイジングハート)』であったのをベルカ式カートリッジシステムの導入により形態変化した。
中距離射撃と誘導管制、強靭な防御力を含めた中距離高速戦専用モードのアクセルモード、射程・威力の強化に特化したバスターモード、フルドライブのエクシードモード、リミットブレイクのブラスターモードなど戦況に合わせて変形する。

スクライアという遺跡や古代史の探索・発掘をしながら旅を続ける放浪の一族が発見したものであり、通常のデバイスより高位の神秘を持つ。
そしてなのはもユーノ・スクライアから受け継いだものであるため、もし彼女とレイジングハートが認める魔術師がいればこの宝具を継承することができる。

『胸に宿る熱き彗星の光(スターライトブレイカー)』
ランク:D+++ 種別:対人/対軍/対城宝具 レンジ:5〜10 最大捕捉:500人
高町なのは究極の一。
術者がそれまでに使用した魔力に加えて、周囲の魔導師が使用した魔力をもある程度集積することで得た強大な魔力を一気に放出する攻撃魔法。
いくつかのバリエーションがあり、チャージする魔力量や、その術式によって規模・特性は変化。
結界破壊の特性を付与する、ビットとの複数同時発射など戦況に応じて使用する。
宝具ではあるが、リィンフォース・アインスやティアナ・ランスターなど高町なのは以外の英霊も彼女を通じて習得しており、指南の心得による継承が可能である。


193 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:34:21 7sYEq9.Y0

【weapon】
・魔力カートリッジ
ベルカ式デバイスに導入されている技術。
カートリッジに魔力を蓄えリロードすることで戦闘中にブースターとする。
キャスターでの召喚でないため道具作成のクラススキルを保持しないが、既存のカートリッジを魔術スキルと魔力操作スキルを応用することで限定的に使いまわすことが可能。

【人物背景】
時空管理局という、第二魔法に類似する技術を保持する『時空管理局』という組織に所属する戦技教導官。
第97管理外世界(地球)の出身で、天才的な魔導師としての才を持つ。
少女時代からその才を存分に発揮し、PT事件、闇の書事件、JS事件などの解決に尽力。
その事件を通じて信念と魔術を真っ向からぶつけ合い、多くのかけがえない友や家族を得ている。
よく言えば真っ直ぐな、悪く言えば不器用な人物。
その不器用さと、幸か不幸か恵まれた天賦の才により無茶することが多く11歳の時には二度と魔法が使えないのでは、と言うほどの重傷を負っている。
それはリハビリにより復帰するのだが、JS事件においてもかなりの無茶をし、後遺症を抱えるほどになってしまう。
その後は基本的には前線に留まるが、一時期は娘の生活に合わせるために平穏に暮らし、その甲斐あってか数年後には新装備もひっさげて戦場に臨む姿を見せる。
基本的には心優しい人物。
戦場での彼女を知らない少女からは家庭的で穏やかな良き母と見られており、それは間違ってはいない。
だが、意見などをぶつけ合うことにあまり戸惑いなく、自身の真意をあまり語らなかったりする不器用さも目立つ。

余談だが、弓兵(アーチャー)や魔術師(キャスター)ではなく、指導者(メンター)としての召喚であるため、ストライクカノンやフォートレスなどの武装は持たない。
しかしメンターとしてならブラスターモード使用によるリンカーコアへのダメージはない時期(JS事件解決前)の肉体で召喚されるため、スキル:魔力操作のランクや魔力ステータスは高く召喚され、またクラス補正により指南の心得に大幅な上昇、プラス補正がかかる。

【サーヴァントの願い】
無為な闘争と犠牲の否定。
聖杯に願うのではなく、聖杯を目指す魔術師と話していく。

【基本戦術、方針、運用法】
戦術としてはキャスターに近いが、陣地作成および道具作成のクラススキルを持たないため、苦しい戦いになる。
それでもアーチャー顔負けの魔弾の射手であり、サーヴァント相手に防戦しながら敵マスターを仕留めるには十分な戦力。
最大の強みはマスターの実力が時間を追うごとに増していき、なのはにサーヴァントが苦戦した場合マスター同士の闘争で敗れる可能性が高い。
予選期間をフルに使って鍛えたマスターの実力は三日会わざれば括目して見よ、と言えるほどに成長しているだろう。
時間を追うごとに厄介になっていく特性もキャスターに近似する。

ただしなのは自身は聖杯狙いではないため、余程の事がなければマスターを仕留める方針にはならないだろう。
逆を言えば、余程のことがあれば彼女の砲撃がマスターを射抜くこともある。


194 : ルイズ・フランソワーズ&メンター組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:34:44 7sYEq9.Y0
【マスター】
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔

【令呪】
左手の甲。
ガンダールブのルーンに近似する。

【マスターとしての願い】
魔法の習得。
ただし今のところそれを聖杯に願うつもりはない。

【weapon】
・杖
魔術行使のための霊装。

【能力・技能】
・虚無の魔術
始祖ブリミルのみが行使したという失われた魔術形態。
地水火風の四属性いずれにも当てはまらないもののうち、人間が行使する魔術の多くをルイズの世界、ハルケギニアではそう呼ぶ。
空間転移、記憶操作、幻術、解呪、固有時加速など多彩な術がある。
しかし現時点のルイズは自らがこの使い手であることは自覚しておらず、術式の一切を行使できない。
僅かに『エクスプロージョン』の片鱗を暴走のように発動させるのみ。
それでも始祖直系の6000年続く魔術師の家系であり、優れた魔術回路を持つ。
特に強い感情によって励起する回路で、何もなくとも1日あればかなり回復するが、怒りや嫉妬などの負の感情を覚えると魔力を一気に生成できる。

【人物背景】
6000年前にハルケギニア式とでも呼べる魔術方式を編み出した魔術師、始祖ブリミルの子孫、ラ・ヴァリエール公爵家の三女として生を受ける。
父母も二人の姉も優秀な魔術師にして堂々たる貴族であり、ルイズも気高い精神と豊富な知識を持つ。
魔術学院において座学や理論においては優秀な成績を示すのだが、実践だけはうまくいかず、なぜかどんな術を行使しても爆発を引き起こしてしまう。
幼少期からそれは続き、魔術のできない「ゼロ」のルイズと蔑まれ、劣等感に苛まれる人生を16年送ってきた。
最後の希望として使い魔召喚の儀に臨んだ瞬間の参戦。
本来の時間軸においては使い魔の召喚に成功し、様々な経験を経て人間的に成長。
後にハルケギニアの多くの魔術師とは扱う術式が根本から異なるために魔術行使ができなかったことが発覚。
国でも有数の魔術師として目覚める。

長年のコンプレックスと貴族としての誇り高さが相まって若干面倒な性格。
特に宿敵のツェルプストー家の人間や、平民(魔法を使えないもの)、大切なものを奪おうとするもの(恋敵など)にはかなりきつく当たるところがある。
とはいえ根本にあるのは名門貴族の娘らしく、「貴族は平民(力のないもの)を守らなければならない」、「守るためには魔術という力が必要である」というノブレス・オブリージュからくるところが大きい、齢16にして立派な貴族である。

【方針】
なのはに師事し、魔術を学ぶ。





【クラス捕捉】
クラス:指導者(メンター)
自身の技能や実力に加え、優れた指導者として英霊を育て上げたものの適応されるクラス。
ケイローン、スカアハ、ルシール・ベルヌイユ@からくりサーカス、プリンス・カメハメ@キン肉マン、エリザベス・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険、ヨーダ@スターウォーズなどが該当する可能性のあるクラス。
クラススキルとして、弟子を育てる【指南の心得】と、弟子を惹きつける【カリスマ】を持つ。
召喚者含む弟子に対し自身の技能を伝授できるサーヴァント。

召喚にあたっては自分一人でできることは限界を迎え、さらなる力を望む者でなければこのクラスのサーヴァントを呼び寄せることはできない。
このクラスに当てはまる者は個々が優れた英霊であるため、本来は通常の7クラスでの召喚となってしまう(ケイローンならばアーチャー、スカアハならランサー、ヨーダならセイバーなど)。
マスターとなるものが今以上の力を渇望し、それに応える英霊があればメンターとして降臨する。
力をなくした黒崎一護@BLEACH、別離の二年間を過ごした麦わらの一味@ONE PIECE、安達明日夢@仮面ライダー響鬼などならばそれに相応しい師と出会うであろう。
ただし例外も存在する。
自身以上に有名、または優秀な弟子があまりに多く存在するせいでメンターとしての適性が高すぎ、ほぼこのクラスでしか現れない英霊というのも存在する。
司馬徽、吉田松陰、ロード・エルメロイⅡ世、亀仙人@ドラゴンボールなどがそうした例外にあたる。


195 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/20(月) 19:35:11 7sYEq9.Y0
以上で投下終了です


196 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/24(金) 20:31:25 BTEXZy3k0
投下します


197 : パルコ・フォルゴレ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/24(金) 20:32:36 BTEXZy3k0
深夜の自然保護区。
大きな川の畔に、一人の顔の濃い男が立っていた。
彼の名はパルコ・フォルゴレ。
聖杯戦争に参加するマスターの一人だ。
彼は他の参加者の挑戦を受け、この場所で戦いを繰り広げていた。
過去形なのは、すでに戦いは終わっているからだ。

ライダーと思わしき敵のサーヴァントは、船に乗り水上から攻撃を仕掛けてきた。
だがフォルゴレのサーヴァントは、それをあっさりと打ち破った。
敗北を理解した敵のマスターは一目散に逃げ出してしまい、今ここにいるのはフォルゴレ一人になっているわけだ。

では、フォルゴレのサーヴァントは今どこにいるのか。
答えは、水中である。

エンジン音と共に、カプセル状の物体が水面に顔を出す。
それは、小型の潜水艦であった。
それに乗っているのがフォルゴレのサーヴァント・ライダーだ。
ではライダーは、潜水艦乗りとして名をはせた男なのか。否、そうではない。
彼が乗るのは、潜水艦だけではない。
戦闘機、カート、バイク、そして生き物。多種多様な乗り物を使いこなす彼の真名は、マリオ。
数え切れないほどの冒険をくぐり抜けてきた、歴戦の猛者である。

「終わったよ、マスター」
「ああ、そのようだな。お疲れ様、ライダー」

ハッチを開けて顔を出すライダーに、フォルゴレは努めて明るくねぎらいの言葉をかける。

「それにしても、いやになるね。誰も彼も、聖杯に目の色変えちゃって……」
「そう言うな、ライダー。きっといつかは、私たちに協力してくれるマスターやサーヴァントに出会えるさ」

彼ら主従は、聖杯戦争に否定的な立場をとっていた。
特にフォルゴレは、この戦いがかつて関わった「魔物の王を決める戦い」に似ていることを理由に、強い嫌悪感を抱いていた。
どんな願いも叶えてくれるという聖杯に惹かれるのは、仕方の無いことだ。
しかしそれを手に入れるために卑怯な手段まで使うというのは、褒められたことではない。
だからフォルゴレは平和的に聖杯戦争を終結させる方法を模索し、出会ったマスターを説得してきた。
だが彼の言葉に耳を貸してくれるものは、まだ一人もいなかった。
それでも、フォルゴレは微塵も諦めてはいなかった。

「マスターもたいがいタフだねえ。全然上手くいってないのに、少しもめげてないなんて」
「何せ私は、鉄のフォルゴレだからね! さあ、歌おうじゃないか!
 鉄のフォルゴレ〜 無敵フォルゴレ〜♪」

振りもつけて、高らかに歌い出すフォルゴレ。しかし、ライダーは見ているだけであった。

「……なんで一緒に歌ってくれないんだ?」
「いやまあ、マスターが歌上手いのは認めるけどね。歌詞が好みじゃない」
「そんな!?」


198 : パルコ・フォルゴレ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/24(金) 20:33:30 BTEXZy3k0


【クラス】ライダー
【真名】マリオ
【出典】スーパーマリオシリーズ
【性別】男
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:D 幸運:B 宝具:A


【クラススキル】
騎乗:A++
 乗り物を乗りこなす能力。
 竜ですら乗りこなすことができる。

対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】
黄金律:B
 人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
 彼の行くところ、常にコインが待っている。

仕切り直し:C
 戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

世界一亀を踏んだ男:A
 亀と戦う時、筋力、耐久、敏捷が全てAランクとなる。
 非常に強力だが発動条件があまりに限定的であるため、ほぼ役に立たないスキルである。

【宝具】
『増殖する命(ムゲンワンアップ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
「連続した動作で8人以上の敵を倒す」、もしくは「相応の金銭を代償に支払う」ことにより、命のストックを作ることができる。
ストックは99個まで保持可能。
必要な金銭の額は用いる通貨の価値によって変化するが、おおむねその通貨できりのいい数字となる(例:日本円なら100万円)。


『英雄乗機を選ばず(スーパーマリオコレクション)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
戦闘機(スカイポップ号)、潜水艦(マリンポップ号)、カート、バイクなど、生前一度でも操縦したことがある乗り物を宝具として呼び出すことができる。
特に性能に関する補正は働かないが、ライダーの騎乗スキルにより性能以上の力を発揮することが可能。


『古き竜の友(スーパードラゴンヨッシー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
ライダーと共に数々の冒険をくぐり抜けてきたスーパードラゴン・ヨッシーを召喚する。
ライダーとヨッシーは特別に強い絆で結ばれているため、『英雄乗機を選ばず(スーパーマリオコレクション)』から独立した扱いとなっている。
ヨッシーは口に入るサイズのものならたいていのものは飲み込み、消化してしまう。
ただし刃物やトゲなど口内を傷つけるもの、非常に硬いものなどは飲み込めない。

【weapon】
他のクラスなら何かしらのアイテムを持っていたかもしれないが、今回はなし。


【人物背景】
魔王クッパを初めとして、様々な悪と数え切れないほどの戦いを繰り広げてきた男。
赤い帽子に口ひげ、オーバーオールがトレードマーク。
戦いだけでなく医学、スポーツなど幅広い分野に精通している。

【サーヴァントとしての願い】
悪いやつを懲らしめる

【基本戦術、方針、運用法】
マスターの方針により積極的に戦いを仕掛けることはないが、ケンカを売られれば容赦はしない。
一見すると攻撃的な宝具がないように思えるが、武装した乗り物も宝具で呼び出せるので攻撃力は十分である。
そうでなくても、彼ほどの英雄が乗り物の機動力を得て突撃してくるだけで敵にとっては脅威であろう。


199 : パルコ・フォルゴレ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2015/07/24(金) 20:34:26 BTEXZy3k0


【マスター】パルコ・フォルゴレ
【出典】金色のガッシュ!!
【性別】男性
【令呪の位置】尻

【マスターとしての願い】
平和的に聖杯戦争を終わらせる。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
タフネス
 「鉄のフォルゴレ」を自称するにふさわしい頑健な体を持ち、魔物の術を受けても1,2発程度なら耐えられる。
 たとえ体力が尽きても、気力で立ち上がる。

エンターテイメント
 センスはともかく、歌と踊りの技術は超一流である。


【人物背景】
魔物の子・キャンチョメのパートナーとして「魔物の王を決める戦い」に参加した、イタリアの映画スター。
その人気は世界的であり、日本でも熱狂的なファンが多数存在する。
金のロングヘアに濃い顔立ちが特徴。
普段は頼りないお調子者だが、やる時はやる。
かつては非行に走りすさんだ人生を送っていたが、ある出来事をきっかけに「不格好でも愛される存在」になりたいと思うようになり更正を決意。
俳優の道に進み、大成功を収める。
それでもなお両親とは絶縁状態にあり、暴力に溺れることによって失うものの大きさを誰よりも理解している。

【方針】
なるべく戦闘は避け、平和的な事態の解決を目指す。
しかし話が通じない相手とは、戦闘もやむを得ない。


200 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/24(金) 20:35:13 BTEXZy3k0
投下終了です


201 : ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:26:03 U8i0fPRQ0
投下致します


202 : 『  』&アサシン  ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:26:36 U8i0fPRQ0
都市伝説ってご存知ですか?
そう、都市伝説です、俗にフォークロアとかいう言葉で語られる、あれです。
ほとんどが眉唾なものだらけですが、実在してなくもなさそうな身近なお話。

これからお話し致しますのは、そんな都市伝説に巻き込まれた兄妹と。
『都市伝説そのもの』な可愛い女の子のお話です。

おや、興味がありそうな顔をしてますね。
いつもより入りが巻き進行だったので不安があったりもしたのですが。
ああ、ひょっとして可愛い女の子って辺りに反応しましたかね? 男の子ってそういうものですよね。
っとと、分かりました話を始めましょう。

社会不適合な引きこもりの兄妹による、聖杯戦争のお話を―――






とある民家の一室。
そこに一組の男女がいた。
光のない目で周りを見渡しながら、男の方が口を開く。

「なあ、妹よ」
「……ん」
「『人生』なんて、無理ゲーだ、マゾゲーだと、何度となく思ったが」
「……うん……」

兄妹は、声をハモらせて言う。

「「ついに『バグった』……もう、なにこれ、超クソゲェ……」」





こんな噂をきいたことがありますか?

あまりにゲームが上手すぎる者のもとには、ある日、メールが届くという。
本文には、短い文と、URLが貼られているだけ。
そのURLをクリックすると―――この世界から消えるという。

そして、異世界へと誘われるという、そんな『都市伝説』。





203 : 『  』&アサシン  ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:26:54 U8i0fPRQ0
―――君ら兄妹は、生まれる世界を間違えたと感じたことはないかい?―――

兄妹―――巷で『都市伝説』となっている『  』へと届いたのはそんなメールであった。
二人は奇妙なメールに首を捻りつつ、出来うる限りのセキュリティソフトを回しながら貼られていたURLをクリックし、

この電脳世界へと飛ばされた。

「あー、やっぱり究極のセキュリティはそもそも触れないことだな……ノー○ン先生もお手上げだ」
「それで、にぃ、どうする……?」
「そーだな……俺らは明らかにイレギュラーっぽいし」

言いながら空は自分の左手を見る。
その甲に刻まれた令呪は『2画』、通常刻まれる画数より一つ欠けている。
残る1画がどこにあるかと言えば―――すぐ隣、白の右手。
通常一人のマスターに渡される令呪が二人に分けて渡されているのだ。

「記憶を取り戻したのも同時だし、俺らはニコイチってことか」
「……好都合?」
「ま、確かにな。あのはた迷惑なメールの送り主も、そこら辺は理解してくれてるらしい」

『  』は一人では『  』足り得ない。
この兄妹は互いが側にいなければマトモに日常生活すら過ごすことができず、
二人で一人という扱いは望むべきところ、というかそうでなくては困る。

「あー……それで、と」
「はい、私が貴方達のサーヴァントです」

空の言葉を先読みし、声を発したのはその部屋にいる三人目の存在。

「クラスはアサシン、名前は一之江 瑞江、普段は一之江とでも呼んでください」
「……? クラス名、じゃなくて……?」
「ええ、それも偽名ですから。真名はステータスを参照下さい」
「なるほどね、それならクラス名で呼ぶよりも能力は推測されにくい、と」

一之江の言葉に満足そうに頷く。

「よし、それでは一之江、これより俺たちの行動を伝える!」
「どうぞ」
「うむ! これより俺たちは―――この部屋に引きこもる! 以上だ!」
「………えっ」

高々と宣言された言葉に、戸惑った表情を返す。
引きこもる、それ自体は決してあり得ない選択肢ではないだろう。
だが、それは一之江にとって望ましい選択肢ではない。

「あの、私のステータスは見ているんですよね? だったら」
「……都市伝説、知られれば知られるほど、能力が上がる……」
「却下だ、アサシンなんてクラスの奴が、周りに存在ひけらかしてどーすんだ?
 リスクに対してリターンが少なすぎるだろうが」

進言をあっさりと否定され、小さく唸る。
正論ではあるが、隠れ潜むというのは『ロア』である彼女の存在の仕方と真逆の方向だ。
『ロア』とはフォークロア、つまりは人々の噂、都市伝説そのものだ。
人々に自分の噂が広まれば広まるほど『ロア』としての力は強くなり、
誰からも忘れ去られてしまえば、その存在を保つことさえできなくなる。
故に『ロア』は誰もが自らの存在を広めようとする、それが聖杯戦争のセオリーとは違うといえ、補えるだけのスキルもある。

「まあ、最低限は噂を広める。他のマスターにまで知られない程度に、慎重にな」
「……ということは、口伝ですか」

自分の存在が消えかけるような事は無さそうだ、と一之江が安心したのも束の間。
「口伝」の一言を聞いた瞬間に空と白は二人揃って頭を抱えて震えだす。

「口伝……他人と、話す……」
「うおおおお! しかもそのためには外に、出る!? 嫌だ、陽の光を浴びると俺は灰になる……!」
「……」

ここに来て、一之江は悟る。

あ、このマスターハズレだ。

と。


204 : 『  』&アサシン  ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:27:21 U8i0fPRQ0
【クラス】アサシン
【真名】月隠のメリーズドール
【出典】101番目の百物語
【性別】女性
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
 筋力:D 耐久:C 敏捷:B 魔力:D 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:B
 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
 彼女は常に『主人公』の背中にいたが、それに気づく者はいなかった。

【保有スキル】
都市伝説:A
 噂で成り立つ都市伝説そのもの。
 その地において『メリーズドールの都市伝説』を知る者が多い程にステータスが向上していく。
 彼女は人々の噂によって、人間から都市伝説へと変貌した。

戦闘続行:C
 戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 

【宝具】
『想起跳躍(リンガーベル)』 
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 自分の声を聞いた相手の元に瞬間移動する。
 「もしもし、私よ
  今、貴方の後ろにいるの」

『見返殺害(メリーズピリオド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
 振り向いて彼女を見た相手に死をもたらす。
 ―――メリーさんを見た者は皆死んでしまう。

『月隠の呪言人形(月隠のメリーズドール)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
 捨てられた人形を配置し、それを見てなんらかの心の動きを見せた者へ発動する。
 『ロア』の世界へと相手を閉じ込め、メリーズドールの物語になぞらえて追い詰め、最終的に振り向かせて殺害する。
 『ロア』の世界の中では、物語になぞらえない限り首を刎ねられても死ぬことはない。。
 魔術師でない『  』には『ロア』の世界を維持するだけの魔力がないため、必然的に令呪を三角とも消費する必要がある。

【weapon】
ナイフ
 極普通のナイフである。

【人物背景】
『月隠の呪言人形』(月隠のメリーズドール)の『ハーフロア』。
 ロア化しているときは都市伝説の人形と同じように、ボロボロのドレスで金髪になる。
 ハーフロアとしての経験を積んだため、身体能力は一般人をはるかに超越しており、戦闘能力は高い。
『百物語の主人公』を殺すためにモンジを襲ったが、モンジの説得に根負けして諦め、彼の『物語』となった。
 以降はモンジの戦力となるとともに、戦闘の指導役も担う。彼に最初に取り込まれたせいか、モンジとの精神的なつながりが最も強い。
傍から見ると基本的に清楚で物静かな風だが、直に話せば淡々と冗談や毒舌を口にし、特にモンジにだけは物言いが辛辣。
 ミステリアスに見せているのは、そうすることで噂されやすくなり、『ロア』としてより強力になるためという意味もある。

【サーヴァントとしての願い】
 『ロア』としての存在を確固たるものに

【基本戦術、方針、運用法】
 『想起跳躍(リンガーベル)』によって背後へ周り『見返殺害(メリーズピリオド)』で殺害する、というのが基本戦法。
 『見返殺害(メリーズピリオド)』が効かない相手に対してもある程度の肉弾戦は可能、だがその場合は撤退したほうがよいだろう。
 最大の問題点はマスターの脆弱さであり、それをいかにカバーするかがポイントとなるだろう。


205 : 『  』&アサシン  ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:27:40 U8i0fPRQ0
【マスター】『  』
【出典】ノーゲーム・ノーライフ
【性別】空・男性 白・女性
【令呪の位置】空の左手に2画、白の右手に1画

【マスターとしての願い】
 ゲームをするだけで生きていける世界を作るor行きたい!

【weapon】
 なし

【能力・技能】
駆け引き・読みあい・揺さぶり合い
 空の特技、対人戦における「不確定要素」を見抜く力が、常人の域を越えている。
 その卓越した先読みは、未来予知に近いとすら評される。

イカサマ
 空の特技、相手にバレないイカサマを仕掛けるのが非常に上手い、また、相手のイカサマを見抜く能力にも長けている。

演算能力
 白の特技、あらゆる事象を計算し先読みできる。
 空曰く「本物の天才」、1〜3歳までの間に知能検査と称したゲームを全て「計測不能」にした過去を持つ。

【人物背景】
『  』
 「『  』に敗北はない」と「ゲームは始める前に終わっている」が信条であり、あらゆるゲームで不敗を誇り、ツールアシスト、チートを使っても勝てないとされる都市伝説にまでなったゲーマー。
 その正体は空と白の二人組の義兄妹。
 一人ではコミュニケーションを取ることもできないコミュ障なので、いつもお互いが認識できる範囲にいる。
 互いが認識できなくなると極度に怯え、まともに動くことも会話することも不可能となる程に強い共依存症。
 280を超えるゲームで頂点に立ったが、『リアル人生ゲーム』と『リアル恋愛ゲーム』の2つだけはルールも理解できずまともにプレイしたことがない。
 またドラッグオンド○グーンには深甚なトラウマを持っている。


 18歳。無職・童貞・非モテ・コミュニケーション障害・ゲーム廃人・白の義兄(再婚の父親の連れ子)。
 18年間童貞を続けているだけあって、恋愛に関しては非常に鈍感。
白に出会う以前は他人の顔色を伺い(誰に対してもまったく同じ笑顔を向ける)ながら生きていたため、10歳にして前述の才能を駆使し、『天才』の白と互角の戦いを演じた。
人類は自分を含めて無能だと思っているが、その中に存在する“天才(ホンモノ)”の可能性は信じている。
白と離れることができないので全年齢と18禁の境目を模索している。


 11歳。不登校・友達なし・いじめられっ子・対人恐怖症・ゲーム廃人・空の義妹(再婚の母親の連れ子)。
 兄とは違い天才少女だったため、周りに理解されず孤立する。
チェスなどの二人零和有限確定完全情報ゲームやFPSを得意とし、チェスではグランドマスターを完封したコンピュータープログラムに20連勝した。
ゲームにおいては数学を主体とした計算式による演算を行い、先読みを行う。
 そのため、自由意志が介入しないゲームにおいて、(チート、ツールアシストを用いても)白に勝てるものは存在しない。
 1歳にして言葉を発し、その言葉を聞いた母親を恐怖させる。
 そんな彼と初めて行ったゲームで人生初めての引き分けをし、生まれて初めてゲームの楽しさを感じる。
また、空に兄以上の感情を抱いているが、空本人は気付いていない。

【方針】
 メリーズドールの都市伝説を広めつつも、基本は引きこもる。


206 : ◆c92qFeyVpE :2015/07/25(土) 21:27:56 U8i0fPRQ0
以上で投下終了です


207 : ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:28:34 C94UqAKY0
>シンシア&ピサロ組
殺し殺された者同士とは!
同作同士の組み合わせでも、特に意表をついた人選には驚かされました
ピサロの消滅が願いというのも、なかなかに面白いものだと思います
こじれた想いが今後どのような結果を招くのか、非常に楽しみなペアですね

>ルイズ&なのは組
懐かしのルイズ召喚クロス! それをこんな風に持ってくるとは!
これまでも色々と驚きのある展開はありましたが、ここまで唸らされたのはそうそうないですね
なるほどなのはさんの教導官設定を、こういう風に活かしてくるか……
エクストラクラスの設定も、それをストーリーに絡ませるのも、実に見事だと感動しました

>フォルゴレ&マリオ組
そうか、スーパーマリオをライダーか!
確かに作品の数だけ、多様な乗り物に乗ってきたマリオなら、これ以上ないほど似合いのクラスですね
基本台詞のないキャラクターですが、「歌詞が好みじゃない」という感想をぶつけるあたり、
なんというかマリオっぽいなという説得力を感じるセンスだと思いました

>『  』&一之江組
これ多分、それぞれのスペックは、どちらも高いものを持ってるはずなんですよね
ただ組み合わせの相性が悪かったおかげで、どちらの長所も潰れてるんですよね……w
敢えてミスマッチな組み合わせで出してくるのは、面白いなと思いました
逆にこの状態から、いかにして活躍するのかというのも、なかなか気になるチームでした

遅い時間ですが、自分も一作投下させていただきます


208 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:29:53 C94UqAKY0
 夢を見た。
 俺ではない誰かの夢を。
 俺と違う時間を生きた、違う場所での何者かの夢を。

 その夢の中で感じ取ったのは、深い悲しみの感情だった。
 届かぬ想いを胸に抱き、何度声にしても叶わぬ願いに、苦しみ続けた魂だった。
 悲しみから狂気へと身を堕とし、邪悪な覇道をひた走り、かつての主君へと牙を剥いた男。
 死して男を悲しみで包み、物言わぬ魔物の姿となって、男を見つめ続けた女。
 俺の見ていたその者は、死んで男を悲しませた、魔物の女の姿だった。

 くだらない感傷に興味はない。
 見ず知らずの女に同情するほど、俺はお優しい人間ではない。
 そのはずなのに、その夢のことが、俺にはやけに引っかかった。
 俺はこの夢以前にも、同じ光景を知っていた。
 それとは違う何者かの目線で、同じ場面に立ち会ったことがあるのだ。

「セト様……」

 お前は誰だ?
 何故俺を呼ぶ?
 俺と同じその名前で、何故その男に呼びかける?

「闇に……捕らわれてはなりません――」

 この胸を揺さぶる悲しみは――それをもたらすお前は、何だ?


209 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:30:42 C94UqAKY0


 その土地に根付いた文化風土は、異なる文化の流入を嫌う。
 土着信仰の強い田舎者が、都会の空気を忌み嫌うのは、それが地元の文化を害すると考えるからだ。
 極端な話をしてしまえば、逆に高度に発達した科学文明もまた、それで証明できないオカルトを嫌う。
 この世界樹に住む魔術師達は、そうした感性の持ち主だった。
 よそもそうなのかは分からないが、魔術都市ユグドラシルの街並みには、科学文明の色が薄いのだ。
 石畳で覆われた街は、自動車の利用を前提としておらず、乗り物はほとんど見かけない。
 その上携帯電話の電波も届かず、インターネットも通じていないというのには、少しばかり驚いた。

(つまり俺は、とことんまでに場違いな人間というわけだ)

 それが聖杯戦争の参加者として招かれた、海馬瀬人という人間の感想だった。
 高度なソリッドビジョン技術を有し、ゲームシーンに革命をもたらした、海馬コーポレーションの社長。
 現代テクノロジーの申し子にして、極端なオカルト嫌いである彼にとって、ここはなんとも居心地の悪い場所だった。
 それが彼の記憶を揺さぶる要因になったかもしれないと考えると、また複雑な気分ではあったが。

「聖杯の上、世界樹と来たか。節操がないにも程がある」

 聖杯は西ヨーロッパの伝承で、世界樹が語られているのは北欧神話だ。
 パルジファルにオーディンはいないし、ニーベルングの指輪にも聖杯は出てこない。
 異なる2つの伝承が、そうして混ざり合ったこの世界は、そんな海馬の瞳には、えらく歪で滑稽に見えた。
 散々自分を振り回した、古代エジプト神話だって、こんな不格好な形ではなかったはずだ。
 人気の少ない街路を歩きながら、海馬はため息混じりに呟く。

「だがどのような舞台であれ、一度幕が開いたからには、勝者が決まるまでは終わらない……そういうことか」
「その通りです」

 そしてその海馬の後に、一歩遅れて続くのは、うら若き長髪の美女の姿だ。
 髪も肌も、全身が白い。さながら雪のような純白は、そのまま溶けて消えてしまいそうな、儚げな美しさを放っていた。
 その中で青く光る瞳は、まるで海のように深い。
 ライダーのサーヴァントと名乗った使い魔は、その海のような穏やかさを宿した口調で、海馬の問いかけに答えた。

「それで貴様は、俺に対して、自分を使って戦えと」
「無理にとは言いません。ですがマスターが生き残るためには、それが必要となることもあるでしょう」
「よく言うわ」

 ふんと憫笑し、海馬が言う。
 彼に割り当てられたカードは、有り体に言って、ハズレだった。
 戦略ゲームに会社経営――戦争以外のあらゆる駆け引きに精通した海馬は、超一流の勝負師だ。
 故に彼には、目にした相手の力量が、直感的に理解できる。
 そしてこの騎兵を名乗るサーヴァントは、その研ぎ澄まされた勝負師の勘に、微塵も引っかかることがなかったのだ。
 力も、知恵も、闘志すらもない。戦うために必要な力が、この女からはことごとく欠けている。
 これが伝説の英霊だというのか。だとしたらなんと出来の悪い冗談だ。
 その出来損ないのクズサーヴァントが、自分を使って戦えと言うのだ。これまた滑稽としか言いようがなかった。


210 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:31:41 C94UqAKY0
(だが)

 しかし、このサーヴァントはやけに気になる。
 単なる戦闘力のあるなしではない。何か奇妙な既視感が、こいつにはつきまとっているのだ。
 それが聖杯戦争のシステムなのかは定かではないが、海馬はこの街に来てから、何度かライダーの姿を夢に見ている。
 詳細までは思い出せないが、恐らくは彼女の生前の姿であろう光景を、夢を通じて垣間見ているのだ。
 だが海馬は、それ以前にも、このサーヴァントを見ている気がする。
 そんなことはありえないはずなのに、どこかでこの白と青の美女と、深く関わっているような気がするのだ。
 馬鹿馬鹿しいと何度も思った。繋がりを考えるたびに否定し続けた。
 それでもその念を振り捨てきれず、もやもやとした違和感を抱えたまま、こうして共に立っている。
 説明のできない奇妙な感情――それもまた海馬瀬人にとって、苛立たしいものの一つではあった。

「確かに、私は力のないサーヴァントです。ですがマスターが生き残るため、そして聖杯を手にするためには――」
「そんなにも俺に、聖杯を獲ってもらいたいのか?」
「っ、それは……」
「いや、そうではないな。貴様は先ほど俺に対して、無理に勝たなくともいいと言った。
 何ともちぐはぐな主張だが……ならば、聖杯を欲しているのは貴様か?」

 図星だろう、と笑いながら、海馬はライダーに問いかける。
 狙い通りに、白髪の美女は、目を丸くして口を噤んだ。
 無理に聖杯を狙わなくてもいいという言葉と、聖杯を取らねばならないという言葉。
 相反する2つの言葉が導くのは、それぞれの主語が違うという結論だ。
 海馬が聖杯を取る必要はない。
 だが、ライダーは聖杯を取らなければならない。
 つまりは小賢しくも奴隷(サーヴァント)の身で、主人(マスター)を言葉巧みに炊きつけ、利用しようというつもりかと。

「……マスターにも、叶えたい願いはあるでしょう」

 見るからに苦し紛れの言葉だ。
 顔色を悪くしたライダーは、何とかその言葉を導き出し、そう尋ねて矛先をすり替えた。

「俺には力がある。聖杯になど頼らずとも、望みを叶えられるだけの力がな。
 だが、それで叶わぬ願いを、聖杯にかけろと言うのなら……クク、死者の復活でも願ってみるか?」

 あるいはそれが叶うのならば、オカルトも信じてやっても構わないと。
 敢えてライダーの言葉に乗り、突きつけてやったその言葉は、ある意味真実ではあった。
 もう一度会いたい者はいる。
 願いが叶うと聞いた時、よぎった死者の名前がある。
 武藤遊戯――真の名を、アテム。
 終生の宿敵として対峙し、そして彼の預かり知らぬところで、冥界へと旅立った男の名だ。
 勝つことがかなわなかったあの男を、もう一度呼び戻したいとは思う。
 もう一度冥府の扉を開き、長きに渡る因縁に、決着をつけたいとは思う。
 それは聖杯にかけるに値する、海馬の願いではあった。


211 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:32:26 C94UqAKY0
「――ああ、できるとも」

 その時だ。
 その声に答える声があった。
 されど発せられた言葉は、ライダーによるものではなかった。

「!」

 聞き覚えのない声に、振り向く。
 海馬の視線の先にいたのは、人相の悪い痩せ気味の男だ。
 黒いフードつきのコートを羽織り、にやにやと薄気味悪い笑みを浮かべる、できれば顔も合わせたくない男だ。
 だが、その顔を無視できない。
 フードから覗く男の頬には、赤いエンブレムが刻み込まれている。
 三画からなる紋章は、海馬にとっても見覚えがあるもの――マスターの証である令呪だ。

「ククク……驚きだったぞ。先ほどまで気配もなかったのに、こんな所でサーヴァントを見つけられるとはな」
「マスター、彼は……!」
「言われんでも理解しておるわ」

 海馬が言うと共に、空間が歪んだ。
 黒い男のその背後に、揺らめく異形の影があった。
 見上げるほどの長身に、鬼神のごとく膨れた筋肉。血走ったその瞳からは、理性というものが感じられない。
 何よりその巨躯から放たれるのは、人の身にはあり得ないほどの――威圧感と、禍々しき殺気だ。
 与えられたクラスは、狂戦士(バーサーカー)。
 狂気に身を貶したといえど、身に纏う絶大な存在感は、まさに本物の英霊のそれに他ならなかった。

「聖杯は文字通り万能の器。たとえ死者の復活であろうと、人の理を外れていようと、あらゆる願いを叶えられる」

 だからこそ求める価値があると。
 こうして聖杯戦争に臨み、その手に掴む価値があるのだと、男は言った。

「そして、それはお前も同じこと! ならば伝説の聖杯を賭け……尋常に勝負といこうではないか!」

 高らかに叫ぶマスターの声は、明らかに勝ち誇っていた。
 尋常などとはよく言ったものだ。お互いの戦力差が大きいことを、この男は承知しているのだ。
 その上で奇襲という選択肢を捨て、わざわざ手駒を見せびらかし、一騎打ちを挑んでみせたのだ。
 自分の力を見せつけて、醜い優越感に浸るために。

「マスター!」

 しかし、それは紛れもなく現実だ。
 まともにぶつかろうものなら、海馬には万に一つも勝機はない。
 ライダーは撤退を促すべく、海馬に向かって呼びかける。


212 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:33:07 C94UqAKY0
「――見くびるなよ、下衆が」

 されど、海馬は動じない。
 むしろ毅然とした表情で、真っ向から敵マスターを見据える。
 伝説の英霊を前にしても、おくびも怯んだ様子を見せず、己が標的を睨みつける。

「俺も黙って殺られてやるほど臆病ではない……これがゲームであれば、迷わず勝利を狙っただろう。
 だが! 欲に釣られて我を失い、醜い殺し合いに興じてやるほど、俺は落ちぶれてはおらぬわ!」

 迷いのない言葉だった。
 一切の躊躇いも繕いもなく、海馬は決然とそう言い放った。
 死者との再戦は彼の願いだ。
 だがそれ以上に目指すべきものは、今を生きる者の笑顔だ。
 かつて孤児であった海馬には、世界海馬ランド計画という、必ずや叶えなければならない目標がある。
 同じ境遇の子供達が、幸福に笑い合える楽園を作るという、果たさなければならない使命がある。
 それは彼の努力と力で、叶えることができる願いだ。
 ましてや戦争などという、最も忌むべき行為によって、汚されることなどあってはならない。
 故に海馬は聖杯を否定し、真っ向から敵マスターに反論した。
 愚かな貴様とは志が違うと、真正面から切って捨てたのだ。

「なっ……!」
「マスター……」

 思わず、フードの男がたじろぐ。
 ライダーもまた、驚きと共に、海馬の横顔を見つめる。
 傲岸不遜を地で行く男。弱者を平気で罵る男。
 それは海馬瀬人という男の、一つの側面ではあった。
 だが彼は善人ではないが、同時に悪人でもなかった。
 数多の試練を乗り越えて、己と向き合った海馬瀬人は、己の正義を固く信じ、それに殉じる真の決闘者(デュエリスト)だ。

「ざ……戯言だ! 負け犬の遠吠えなど聞くか!」

 馬脚を現した敵マスターは、半ば上ずった声で言う。
 しかし、人間としての格はどうあれ、単純な手札の戦力では、彼が上回っているのは事実だ。
 よほどの仕込みか、あるいは奇跡的な幸運でもない限り、海馬とライダーに勝機はない。
 そして前者のような手を打てるほど、海馬は魔術には明るくない。
 つまり純粋な実力では、彼が勝つことは不可能なのだ。


213 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:33:57 C94UqAKY0
「――分かりました」

 その、はずだった。
 しかし彼のすぐ横から、凛とした声が響き渡る。
 声の主はライダーだ。彼の足を引っ張るだけの、何の力もないハズレ札だ。
 その顔が、決意に満ちている。これまで持ち合わせていなかったはずの、何かを覚悟した凄みがある。

「ライダー……?」
「私が聖杯を欲しているのは本当です。
 ですが、貴方に聖杯を渡したくなかったのは……邪な願いを叶えるために、聖杯を使わせてはならないと思ったからでした」

 海馬が私欲で戦うのなら、その力となることはできない。
 世界にとって害となる、邪悪な願いを叶えるためには、この力を振るうことはできない。
 故にライダーは、海馬を試した。聖杯にいかな願いをかけるか、そう聞き出そうとしていたのだ。
 それが誤ったものであるのなら、そのための力にはなれないと、真っ向から否定するために。

「それでも、今の言葉で確信しました。貴方の心に邪心はないと。
 貴方を守るためならば、この身を捧げても構わないと」
「ハッ! 何を言うか! たかが弱小サーヴァントのくせに……」
「だからこそ……私は今こそ、私の宝具の封印を解きます!」

 瞬間、世界に光が弾けた。
 どうっと轟く爆音と共に、視界が白一色に染められたのだ。

「う、うわっ!」
「何……っ!?」

 敵マスターが、そして海馬が、同時に驚愕の声を上げる。
 光と共に襲いかかるのは、唸りを上げ荒れ狂う暴風だ。
 びりびりびりと大気が軋み、びりびりびりと大地が揺れる。
 建物の隙間を突風が吹き抜け、天空では雲がごうごうと渦巻く。
 轟――と響いたのは雷鳴か。この風の音に混じるのは、天より降り注ぐ雷の音か。

「ライダーのサーヴァント……その真名は、キサラ」

 爆音の向こうから声が聞こえる。
 風と雷に遮られながらも、それでも確かに聞こえる声が、轟音を押しのけ響いてくる。

「そしてこれこそが、私の宝具……!」

 その瞬間、海馬は遂にその姿を見た。
 爆裂する光のその奥に、姿を表した影を見た。


214 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:34:51 C94UqAKY0
「ばっ……馬鹿な……!?」

 そしてその海馬瀬人が、ようやく発した一声が、それだ。
 今度は海馬の余裕が砕かれ、驚愕一色に染め上げられた。
 そこに現れたその姿は、絶対にあり得ないものだったからだ。
 他ならぬ海馬瀬人なればこそ、姿を現したその宝具を、信じるわけにはいかなかったからだ。

「グルルル……!」

 獣の唸りが耳に聞こえた。
 否、そこに現れた存在は、獣などという生易しいものではない。
 あれは龍だ。巨大な龍だ。
 爬虫類のごとき顔を持ち、蝙蝠の翼を広げる姿は、伝承に語られたドラゴンの姿だ。
 しかし、その威容の何としたこと。
 全身を覆う堅牢な鱗は、真珠のように眩く光る、白一色に染められている。
 その中心で獰猛に光り、獲物を睨み据えるのは、サファイアのごとき青い瞳だ。
 神々しさすら感じる二色は、奇しくもライダー――キサラの持つ、肌と瞳の色と同じだった。

「それは……その、姿は……!」

 その光景はあり得ない。
 いかな神話の魔獣であっても、その姿で現れることはあり得ない。
 何故なら現れた白き龍は、キサラの宝具であるべきではなく。
 青き瞳を煌めかす龍は、他ならぬ海馬のしもべだからだ。
 カードの貴公子・海馬瀬人が、自らの全てを捧げ託した、最強の切り札であるはずだからだ。
 デュエルモンスターズのモンスターカード――それが現実に現れるなど、絶対にあり得ないはずだ。

「――『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』 !!!」

 攻撃・守備が最高の、なかなか手に入らない超レアカード。
 どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。
 デュエルモンスターズの創世記に生まれ、数多の決闘者の間で、伝説として語り継がれるカード。
 その起源と呼ぶべき精霊の獣は、神にすら匹敵すると言われた、強く気高き白銀の龍だ。

「グォオオオオオーンッ!!!」

 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。
 白と青の光を纏いし、史上最強の精霊龍。
 その雄叫びは天を貫き、その顎から放たれる光は、眼前に立ちはだかる敵を、瞬きの間に消し去った。


215 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:35:31 C94UqAKY0
【クラス】ライダー
【真名】キサラ
【出展】遊戯王
【性別】女性
【属性】中立・善

【パラメータ】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:-
騎乗の才能。自分の宝具以外は扱えない。

【保有スキル】
竜を駆る者:A+
 竜と心を通わせ、その背に乗る事を許された者が持つ特殊スキル。
 キサラの魂は、宝具である竜そのものであり、完璧な形で操ることができる。

継承:A
 キサラは死亡した際に、マスターに『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』 を遺し、所有権を譲ることができる。
 遺された宝具はマスターの魂と一体化し、マスターおよびキサラの残留魔力によって召喚・使役される。
 この宝具を持つ限り、マスターはキサラと同一の存在として認識されるため、脱落者にカウントされることはない(令呪は消失する)。

神性:D
 キサラの精霊(カー)が神そのものであるという証拠はない。
 ただしその力は、神に匹敵しうるものがあったと言われており、そのため多少の神聖を保有している。

気配遮断:E
 サーヴァントとしての気配を弱める。直接対峙しない限りは、サーヴァントであると認識されることはない。
 キサラ自身は英霊としての逸話に乏しいため、このスキルを保有している。


216 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:36:16 C94UqAKY0
【宝具】
『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:100人
筋力A 耐久B 敏捷C 魔力A 幸運B
キサラの心に宿されし、心の写し身・精霊(カー)。白く煌めく体を有し、青き瞳を輝かせる龍。
竜種とは幻獣・神獣の頂点に位置する存在であり、本来ライダーのサーヴァントには、使役することはかなわない。
精霊(カー)としては規格外の戦闘能力を誇っており、その力は三幻神にすら匹敵すると言われている。
ただし彼女の精霊(カー)は、例外的に、本人の魂と一体化しており、その死はそのまま本人の死に直結する。
その特性から、生前のキサラにとって精霊(カー)の召喚とは、魂が抜け落ち自身が仮死状態になることを意味していたが、
英霊の座につきサーヴァントとなった今では、そのデメリットは消失しており、意識を保ったまま操ることができる。
その顎から放たれる滅びの威光は、万物を焼き尽くす炎であり、闇を切り裂く光明である。

『未来への輝き(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1〜60 最大捕捉:500人
過去と現在の因果を束ね、未来への道(ロード)を切り拓く力。
便宜上この欄に記載されているが、この宝具はキサラには使用することはできず、ステータスとして認識することもできない。
海馬瀬人が継承スキルによって、宝具『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』 を宿した時、初めて誕生する新たな宝具である。
『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』 を、三つ首の姿へと進化させ、能力値をランクアップさせる。
ただしその強すぎる力は、海馬自身の魔力ですら賄いきれないものになっており、
キサラの死によって令呪による補正も受けられない状態では、戦闘後の魔力切れは確実である。

【weapon】
なし

【人物背景】
古代エジプト王朝時代に生きた、正体不明の女性。
本来エジプト人には有り得ない、白い肌と髪に、青い瞳を持っている。
衰弱した王都に流れ着いた彼女は、その奇妙な容姿から迫害を受けていたが、
その身に宿した力を神官セトに見出され、秘密裏に王宮に保護された。

彼女の宿した力とは、強大な魔力を有した精霊(カー)・白き龍。
キサラの魂と一体化した力は、彼女自身には認識できず、セトと出会うまでは魔物(カー)という概念すら知らなかった。
その力は神にすら匹敵するほどであり、
闇に囚われた神官アクナディンに目をつけられた彼女は、強大な力ゆえに悲劇の運命を歩むこととなった。

魂ごと白き龍を抜き取られ、キサラは若くして命を落とす。
彼女の死後、白き龍の力を得たセトは、アクナディンとも当時のファラオとも決別し、
王都の制圧に臨んだと言われているが、その真相には謎が多い。

【サーヴァントとしての願い】
歴史をやり直し、セトの魂を救う

【基本戦術、方針、運用法】
キサラ自身は純然たる一般人であり、全く戦うことができない。


217 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:37:47 C94UqAKY0
【基本戦術、方針、運用法】
キサラ自身は純然たる一般人であり、全く戦うことができない。
絶大な威力を誇る『白き龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』 も、それほど敏捷性は高くなく、
何も考えずに運用すれば、無防備なキサラを狙われて、あっさり倒されてしまうだろう。
マスターには自分自身とキサラ、双方を守りながら戦う、高度な戦術が要求される。


218 : 海馬瀬人&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:39:19 C94UqAKY0
【マスター】 海馬瀬人
【出展】遊戯王
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
聖杯に踊らされるつもりはない。
強いて言うなら、ただ一度きりの友(ライバル)との再戦を果たしたいとは思う。

【weapon】
カードデッキ
本来は武器ではない。
カードゲーム「マジック&ウィザーズ」の、40枚+融合デッキで構成されるカードデッキ。
高攻撃力のモンスターと、デッキを破壊するウィルスカードを組み合わせ、相手を完膚なきまでに殲滅することに特化したパワーデッキである。
もちろんただのカードであるため、殺傷能力はないのだが、時々手裏剣のように敵に投げつけ、不意を打つことがある。

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)
本来は武器ではない。
前述したカードデッキに投入されている、3枚のモンスターカード。レベル8・攻撃力3000・守備力2500のドラゴン族。
孤高の天才である海馬が、唯一絶対の信頼を寄せる他者であり、己のプライドと魂の全てを賭したと豪語する最強のしもべである。
その凄まじい能力値から、初期段階で生産が中止されているレアカードであり、デッキに3枚フル投入している決闘者は、海馬以外には存在しない。
後にこのカードを上回る性能を持つモンスターは、何体か登場しているのだが、
それでもなおその逸話と海馬自身の実力から、数多の決闘者に畏れられているカードである。
「攻撃・守備が最高の、なかなか手に入らない超レアカード」。

デュエルディスク
本来は武器ではない。
マジック&ウィザーズをプレイするための立体映像(ソリッドビジョン)投影機であり、左腕に装着することで使用する。
金属製だが見た目以上に軽いらしく、これを付けたまま日常生活を送ることも問題なく可能。

【能力・技能】
ゲーマー
バーチャル・アナログを問わず、ありとあらゆるゲームに精通した知識と技術。
特にマジック&ウィザーズにおいては、世界レベルの実力を有しており、「カードの貴公子」という2つ名と共に畏れられている。

会社経営
ゲーム産業企業「海馬コーポレーション」の社長として、会社を経営するためのスキル。
類稀なる経営手腕は、幼少期の過酷な教育によって培われたものであり、16歳の時点で父親を凌ぐほどの力を獲得している。

騎乗
乗り物を乗りこなすスキル。
どういった経緯で学んだのかは不明だが、ヘリコプターや戦闘機を操縦できる。アニメ版ではバイクを運転しており、他の乗り物にも乗れるかもしれない。

【人物背景】
童実野高校に在籍する高校2年生の少年で、大企業・海馬コーポレーションの社長でもある。
傲岸不遜な性格で、プライドが高く気難しい。しかし弟のモクバに対してのみ、愛情を見せる場面もある。

元は孤児だったが、海馬コーポレーション前社長・剛三郎にチェスで勝利し、彼の養子となっている。
その後は剛三郎と対決し、会社を乗っ取ることに成功したものの、敗北を悟った剛三郎はその場で投身自殺。
この後味の悪い結末は、長らく彼の心に影を落とすことになった。

上記の経験から性格が歪み、現在の姿が想像もできないほどの卑劣漢に変貌したものの、
宿敵・武藤遊戯との戦いと敗北によって変化が生じ、現在の人となりが形成された。
心の闇を打ち砕かれ、過去の憎しみをも振り切った現在は、幼い頃に夢に描いた「世界海馬ランド計画」のため邁進している。

無法者のグールズをタコ殴りにし海に捨てるなど、喧嘩の実力もそれなりに高い。
また、前世は古代エジプトの神官・セトではないかという説もあり、その頃から「青眼の白龍」のと宿命は続いている。
アニメ版においては、闇のRPGに参加しキサラと接触しているのだが、今回は原作版からの参戦であるため、彼女との面識はない。

【方針】
気乗りはしないが向かってくる敵には容赦しない。


219 : ◆nig7QPL25k :2015/07/27(月) 02:40:18 C94UqAKY0
投下は以上です
海馬瀬人@遊戯王&ライダー(キサラ@遊戯王)組でした

海馬のステータスは、「夢現聖杯儀典:re」様の候補作を参考にさせていただきました


220 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:35:23 /fDVQhv.0
投下します


221 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:36:29 /fDVQhv.0
――ぎい。

風に小さな軋みを立てて、老人が首を吊っていた。
大きな枝に紐をかけ、老人はその重みの全てを、首に巻きつく紐へと預けていた。
不自然に首が伸びていた。
明らかに首が折れていた。
だが、首を吊ったことも死んでいることも明らかなのに、足元には踏み台となるようなものは何一つ存在しなかった。

――まるで、樹になった果実のように。そこに在るのが当然のように揺れていた。

そこに歩み寄る少女がいた。
熱に浮かされたようにふらふらと。
夢でも見ているようにくらくらと。
不確かだけども、それでも一歩一歩、樹に吊られた老人の亡骸へと歩み寄っていった。

――不意に老人の顔に、左目をしかめた醜悪な笑みが浮かんだ。

その亡骸に少女が手を伸ばす。
そして、赤い舌をちろり、とのぞかせる。
果肉を堪能するように舌を転がし、果汁を反芻するように口の中を呪文で満たす。
そして亡骸に手が触れると――

――少女の顔にも、左目をしかめた醜悪な笑みが浮かんだ。

「黄泉帰ったな」

人ならざる気配を漂わせ、少女の口から言葉が漏れる。
気付くと、あったはずの亡骸も樹も消えていた。

「しかし、世界樹の魔術都市か。思ったものとは随分違う地に辿りついたものよ。
 馬鹿息子の余計な気遣いか?それとも我が術式との近似性ゆえか……」

手に持っていたカバンから一冊の書籍を取り出しぱらぱらとめくる。
白っぽい皮張りの、小さな冊子だ。

「奈良梨取考、大迫栄一郎……うむ。内容は間違いないな」

かつて、‘魔道士’大迫栄一郎こと小崎魔津方が作り上げた魔術書。
読んだ者が三子、末子であるならば自らの『物語』に組み込み、小崎魔津方の意識で乗っ取る、転生の術。
その物語は、魔術神オージンに倣ったもの。
トネリコの樹で首を括り、冥界より知恵のルーンを持ち帰った。
そして片目を犠牲に知識の泉も得た。
小崎魔津方は左目の弱視という身体的特徴を持つ魔術師だった。
そして彼は自ら首を括り、樹にぶら下がることでとなることで収穫されるのを待つ『知恵の実』となったのだ。
三子たる孫を育て、その娘に魔導書を読ませ、『知恵の実』を収穫する後継とする。
『小崎魔津方』を蘇らせるためだけに子孫を育む、まさしく魔術師の所業。


222 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:36:52 /fDVQhv.0

「やはりこれが原因か……?
 『物語』となった私と、聖杯戦争という『英雄譚』の結集が。
 『知恵の実』にして『オージン』である私が、『世界樹』にいるべきであるというのが」

聖杯戦争。
魔術師が使い魔を率いて願望器を奪い合う。
神秘の探求者として、永遠を求める魔術師としては望むところではあるが、突然の参戦に面食らうところはあった。

「まあよい。術式による乗っ取りだけでは安定しないからな。
 聖杯を手にし、真の永遠を手にするのも悪くなかろう。
 かの名付けられし暗黒のように……ふむ、来たか我が従僕よ」

首筋に熱を帯びた痛みが走る。
蛇が巻きついたような紋章。
首を絞められたような痣。
首括りにあったかのような聖痕が浮かび上がり、サーヴァントが現れる。
それとともにマスターに問いを投げる……多くのサーヴァントが投げるものとは異なる問いを。

「赤が好き?青が好き?白が好き?」

赤いタキシードとマントを纏った仮面の男が問いかけた。
少女の姿をした老魔術師は笑みを浮かべて答えた。

「青だ。君が問うならば、私にそれ以上ふさわしい色はない」

瞬間、赤マントの男が縄を飛ばした。
魔津方の首に縄が食い込むと同時に、首筋の令呪が輝いた。

「私への危害を禁ずる」

絶対命令権の行使。
それによって首に飛んだ縄が緩む。

「運が良かったよ、ここが水場でなくてな。
 いくら君でも、首括りでは私は殺せん……赤マントの怪人よ」

怪人譚、赤マント。
明治の半ばごろに起こったという『物語』。
韓国にも伝わったという一端の都市伝説だ。
魔道士、小崎魔津方も民俗学、象徴学の知識の一片として知っている。
なによりその問いはあまりにも有名だ。

「英霊より亡霊か悪霊に近い、怪人譚そのものだろうが……
 まあ怪異そのものとなった私のサーヴァントには相応しいかもしれんな。
 その都市伝説も、私の書とあわせて喧伝して以降ではないか」

『物語』が、始まる。
『物語』は、感染する。


223 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:37:34 /fDVQhv.0
【クラス】
アサシン

【真名】
赤マント(怪人A)@地獄先生ぬ〜べ〜

【パラメーター】
筋力B 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
怪人Aは死人のように気配が微弱で、一流の霊能者でも探知できなかったという。

【保有スキル】
殺人鬼(真):A
人の道を外れた行為、殺人を重ねたものは人ならざるもの、鬼と呼ばれる。
怪人Aは下校中の子供ばかりを100人以上も惨殺した殺人鬼であり、また鬼の手に幾度も魂が触れたことにより『鬼』の属性を得て、一種の『混血』と化している。
持ち前の殺意と執念に加え、『鬼』としての頑健さも獲得したことで同ランクの戦闘続行も内包する。

怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力を1ランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
本来人間である怪人Aはこのスキルを持つことはできない。
しかし『赤マント』はこのスキルを保持するのに加え、先述のスキルで魔物である『鬼』の属性を獲得しているためCランク相当で保持する。

都市伝説:A
噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。
赤マントは多くの派生都市伝説を持ち、また赤い装身具の『元型』の童話や童謡も逸話として取り込んでいるため高ランクで保持する。
聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『赤マント』を知る者が多い程にステータスが向上していく。
噂は一人歩きする者であるため同ランクの単独行動も内包する。

このスキルが高ランクであるほど現象に近づき、固有の人格以上に伝承に近い存在となる。
そのため、本来子供のみを殺害してきた怪人Aは老若男女問わず殺す都市伝説『赤マント』に大きく近づき、無差別の殺戮を行う。


224 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:37:57 /fDVQhv.0
【宝具】
『死に方くらいは選ばせてあげよう〜青髭は如何にして妻を殺す〜(ワットカラー?)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
「赤が好き?青が好き?白が好き?」の問いに対し答えたものを色になぞらえて殺す。
赤が好きなら血まみれにして、真っ赤に染めて殺す。
青が好きなら窒息させてチアノーゼ、真っ青に染めて殺す。
白が好きなら血を全て抜き取り、血の気の失せた真っ白に染めて殺す。
誰かに問わねば在り方が曖昧な赤マントという都市伝説において最も象徴的な逸話。

三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。

宝具が発動した時点で鎌に切り裂かれる、ロープで首を絞められるかロープで重りをつけられた状態で水中に放り込まれる、巨大な注射針を刺されての出血多量、そのいずれかの未来が確定する。
その正体は赤マントによる虐殺という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。 
この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
なお必中攻撃ではあるが必殺ではないので、致命傷を負っても何らかの手段で治療をすることや並外れた耐久力により死の運命を回避することが可能。
場合によっては唯の小学生すら殺し損ねるが、死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの失血死や窒息死と言う事象も起こし得る。

ある意味で当然だが、この宝具の発動を目にしたものは高確率で『赤マント』という真名を看破する。

『あなたにはガラスの靴より焼けた靴〜白雪姫の母の末期〜(スカ―レッド・シューズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
赤い靴はいてた女の子、異人さんに連れられて行っちゃった。
好きな色の問いに対して黄色などと答えると異界へと連れていかれるという噂に加え、赤マントの派生した都市伝説には、赤い毛布にくるまって寝ている人物が子供を毛布にくるんで異界へさらっていくというものがある。

三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。
異界とはすなわち冥界。答えなくても死んでいる。

ワットカラー?の問いに見当違いの答えを返したもの、答えずに攻撃や逃走などの選択をするなど質問を無視した者を世界樹の上空333m、または地表333m(魔術都市ユグドラシルの下方)に転移する。
善人ならば天国へ。天に昇って、帰ってこない。
悪人ならば地獄へ。地に堕ちて、帰ってこない。
空で足掻いて、木に落ちるのも、木から落ちるのもまるで無様な死の舞踏。

その正体は赤マントによる誘拐・転移という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。 
この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの墜落死や圧死と言う事象も起こし得る。
幸運判定に失敗した場合宝具は不発となり、敵をどこに転移することも出来ない。
また対象となった者は『赤い靴』を脱ぐ=両足を失うことでこの宝具を無効化できる。
物理的に失わずとも機能していない(歩けない)者にこの宝具は無効である。
なおただ転移するだけであり飛行能力などを封じることはできないため生き残る術が皆無な訳ではない。


『人喰いの狼から生まれる者〜赤ずきんは再誕する〜(ネバーエンディング・テリブルストーリー)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:1人
赤ずきんは狼に食われた後、そのお腹を切り裂くと出てきた。
そしてそのお腹に大量の石を詰めて、狼を殺した。

狼は死の象徴であり、また日の出の象徴でもある。
石とはキリストがパンにしたものであり、パンはキリストの肉、ひいては人の象徴である。
大量の石は「三途の川」の積み石のように、死と罪の転嫁を意味する。

再誕を象徴する「赤ずきん」の物語と鬼の手のよる幽体剥離や霊体列断を受けてなお復活した逸話が合わさり、昇華した宝具。
『赤マント』を殺害した者が「石を取り込む=人を殺めた」後に命を落とした場合、『赤マント』はそこから再び生まれる。
ステータスや宝具など全て同一の『赤マント』そのものである。


225 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:38:32 /fDVQhv.0
【weapon】
『無銘・大鎌』
何の変哲もない巨大な鎌。サーヴァントにダメージを与える程度には神秘を秘める。

『縄』
同上。

『巨大な注射針』
同上。

いずれも魔力消費により生成・修復可能。

【人物背景】
怪人Aは仮面を被り、逆さの十字架を身につけ、赤いタキシードとマントを纏う連続殺人鬼。
下校中の子供ばかり100人以上を惨殺し、最初の犯行から30年以上たっても未だ捕まっていない。
元は床屋の店主だが、子供の悪戯で店が全焼し、自身も全身に大火傷を負ったことで子供を憎むようになったと噂される。
殺害の際に「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問いかけ、答えに応じた殺し方をする、都市伝説『赤マント』を彷彿とさせる所業を行っていた。
ぬ〜べ〜の担当する生徒も殺害しようとしたが、悉く阻まれる。
鬼の手による幽体摘出、身に付けたマントが燃える、高所からの落下と致命的な事象を経験するも立ち上がり闇に消えていった。
そして12年後再び童守町に出現。
復活後は左胸を銃で撃たれても動き続ける、その傷もみるみる治っていく、関節がないかのように動き手錠を外す、6階から飛び降りて無傷、訳10年にわたり眠る、霊体を引き裂くなど怪物染みた振る舞いを見せる。
そして再びぬ〜べ〜の生徒を襲い、敵対。
ぬ〜べ〜は怪人Aの正体を娘を失くしたために狂気に走った男と推理し、その娘を降霊。
怪人は人の心を取り戻した……かと思われたが、Aはその霊すらも引き裂いた。
仕方なく鬼の手による攻撃で霊体を切り裂き、川に突き落とす。
しかしその後川からは何も上がらず、Aは再び姿を闇に晦ます。
今もどこかで怪人Aは子供に問いを投げかけ、殺しているのかもしれない。
ここにいるのはいつかの時間軸で死亡したであろう怪人A。
実在しない『佐々木小次郎』の殻をかぶってある農民が召喚されたように、都市伝説の妖怪『赤マント』の殻をかぶってサーヴァントとして現界した。

『赤マント』は1930年頃に日本で広まった都市伝説。
元はトイレで「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」との問いに赤と答えると血まみれにされ、青と答えると血を抜かれて死ぬという都市伝説。
同時期に流行った赤いマントをつけた怪人物が子供を誘拐し、殺すという都市伝説や青い紙ではなく白い紙だという噂などが合わさり生まれたと考えられる。
他にも実在した吸血鬼だ、連続殺人鬼だ。テストの回答を間違えるのを恐れた子供の深層心理の表れだなど様々な説が語られる。
悲劇と遭遇する赤い装身具からグリム童話の『赤ずきん』、アンデルセンの『赤い靴』などを元型とも捉えられる。
そして『マント』だけでなく『ちゃんちゃんこ』や『袢纏』、『マフラー』など多くの派生や起源をもつ。
赤い服装のモノが問いを投げかけ答えによらず殺害するというのはあの『口裂け女』の起源とも考えられる。
多くの都市伝説が束ねられた恐怖の結晶であり、多くの都市伝説を生み出した恐怖の根源。
赤いマントを来た怪人が「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問い、答えによらず殺すという怪人譚。
「あかーい半纏着せましょか♪」と歌が聞こえてきたら、あなたもご用心。

【サーヴァントの願い】
殺戮。


226 : 首括りの物語・異譚 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:38:51 /fDVQhv.0
【マスター】
小崎魔津方(大迫歩由美)@Missing

【令呪】
首元。
蛇か縄が巻きついた痣のようにも、蛇と縄が絡み合ったようにも見えるデザイン。
一画消耗して残り二画。

【マスターとしての願い】
世界と人間の行く末を見届ける事。
そのための永遠、不老不死。

【weapon】
・奈良梨取考
魔津方の書いた魔導書にして、転生術の基礎。
読んだものに暗示をかけ、そのものが三子あるいは末子ならば魔津方の憑代となる。
魔津方が死んでもこの術が存在する限り再び蘇る可能性を秘めていることになる。
強力な暗示による記憶の乗っ取りであり、本を読んだ前後の記憶を別の暗示や催眠で失えば乗っ取られることはない。
また精神耐性を持つ者も耐えることができる。

ほか霊装なしの文言のみで暗示や精霊召喚などはやってのける。
ただし香や短剣、羊皮紙などの霊装の扱いも得手とするため、魔術都市ユグドラシルで手に入る限りのものは確保しようと動くだろう。

【能力・技能】
優れた魔術師。
暗示、精霊召喚、魔導書作成など様々な分野に通じ、最終的に魂の転生術まで完成させる。
現在の彼は孫、大迫歩由美の肉体を彼なりの転生術で乗っ取っている。
魔術師小崎魔津方の血を引き、『宮司』の役割を持った土地守の魔術師の末裔、加えてもとより彼の転生のために産み出された子の体であり、魔力量はかなりのもの。

【人物背景】
戦争による資料の散逸、市町村合併による書類の紛失事件などにより出生はほぼ不明。
大学時代にアメリカ、ヨーロッパ、インド、チベット、と渡り錬金術やシャーマニズム、神秘学やヨガなどのオカルトに傾倒。
学問としてそれを学ぶが、狂的なまでの探求心からさらにその行く末を知りたいと望むようになり、そのために永遠を求めるようになる。
『末子成功譚』と『果実』の伝承をベースに暗示によって魂を塗り変え、乗っ取る術式を構築し、世界樹の頂上で首をくくる。
いつか復活する時を待ち続け、そしてこの世界樹において再び生まれ落ちた。
以上、小崎魔津方。

大迫歩由美は小崎魔津方の実の孫。
魔津方の初孫は事故死したのだが、その事故というのが選択紐を結んだ庭の樹から落ち、首括りとなって死んだというもの。
その死に様がまるで樹になった果実のようであったということから魔津方は転生の術式を思いつく。
我が歩みに由来する実で、歩由美。
生まれついての小崎魔津方の憑代。
本来の彼女は少しだけ内向的な普通の少女だが、魂を小崎魔津方に乗っ取られもはやその人格が表に出ることはない。

【方針】
赤マントの噂を流布し、サーヴァントを強化する。
平行して奈良梨取考もひっそりと広め、敗退しても復活可能なようにしておく。


227 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/27(月) 15:44:00 /fDVQhv.0
投下終了です。
赤マントのステータスは「夢現聖杯儀典:re」様に投下したものを一部改編したものです。
それには当企画における◆c92qFeyVpE氏の『  』&アサシン を一部参考にさせていただきました。
お礼申し上げます。





こちらは企画に関する質問なのですが、優れたハッカーをウィザードとして解釈して、魔力豊富なマスターとして登場させても問題ないでしょうか?
二次二次でいうHALやルリのような設定をして大丈夫でしょうか?


228 : ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:03:53 qt8Tbbi20
皆さん投下お疲れ様です。私も投下させていただきます


229 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:05:10 qt8Tbbi20
 その日、私は夢を見た。
 夢の中の私は蝶になっていて、セルリアンブルーの羽をひらひらと羽ばたかせていた。
 その感覚は生身の体では決して味わえないもので、どうにも興が乗ったのか、心行くまで私は蝶であり続けた。

 無明の闇の中を進むと、いつしか一筋の光が見えた。誘蛾灯に誘われるように、私はひらひらとそこに向かう。
 光を抜けた先は、またしても黒い闇の中だった。しかしさっきまでとは違う、どこまでも果てのないような不思議な空間で、満天の星々が煌めいていた。
 そこに、一人の少年が立っていた。
 立っていたというのは少し語弊があるかもしれない。そこには足場というものがなかったから。支えのない空間で、しかし少年は何に拠ることもなく、もしくは確固たる寄る辺を以てしてか、直立に屹立していた。
 その光景を、私は何故かとても綺麗に思った。少年は今にも死にそうで、顔色だって見れたものじゃなかったけれど。それでも、言葉にはできないナニカを、私は彼から感じることができて。
 それは漆黒の澱。それは万物に訪れる幕引き。それは安らかなる吐息。
 それは、すなわち逃れ得ぬ■の気配であって―――


 ―――そして目を覚ました時には、私は私であって、蝶ではなかった。
 私に翅はなく、羽ばたくことは叶わない。
 それでも、夢の中の私はまぎれもなく蝶であって、そこを否定することは誰にもできない。

 同時に、思った。
 もしかしたら私が蝶の夢を見ていたのではなく、蝶が私になった夢を見ているのかもしれない。

 蝶になった夢を私が見ていたのか。
 私になった夢を蝶が見ているのか。
 きっと私と蝶との間には区別があっても絶対的な違いと呼べるものではなく
 そこに因果の関係は成立しないのだろう。

 そう、何故ならば。
 蝶の夢に出てくる少年は、確かにこちらにも存在するのだから。




   ▼  ▼  ▼


230 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:05:43 qt8Tbbi20



「わぁ……」

 彼女が本来の記憶を取り戻した時、口にしたのはそんな感嘆符であった。
 それも無理はないだろう。何故ならここは世界樹の名を冠する巨大樹の上に座す空中都市。彼女の住まう現代では到底見られない光景であるが故に。
 如何な樹木と言えど、その身丈が100mを超えることはない。これは物理的な成長限界であり、そんな常識に照らし合わせてみればこれはまさしく幻想の風景と言えるだろう。
 その様はまさに圧倒的。霊峰や巨木がそうであるのと同じように、圧倒的な大質量を有するモノには見る者に理屈抜きの畏怖を叩き込む効果が付随する。

 つまるところ、少女が感じていたのは単なる驚きと好奇であって。
 決して、恐怖や焦燥の類ではなかった。

「ふんふん〜」

 それからしばらくして、北東の歓楽街に少女の姿はあった。即興で鼻歌を奏でながら、微かに笑みを浮かべてクレープを頬張っている。
 目の前にはけばけばしい街並みが広がっている。道路は綺麗に舗装され、時折巨大な枝が顔を出してはいるものの、概ね人間の街と理解できる光景がそこにはあった。
 例え世界や法則が異なっても、人間が作るものは似通ってくるらしい。
 そんなことをどうでもよさ気に考えながら、少女は人の声が飛び交う通りを進んでいく。本来彼女がいるべき学術地区とは正反対の場所に位置するこの地区は立ち入りを推奨されてはいなかったが、まあそこはたまの息抜きとして見逃してもらいたいところだ。
 稚気を振りまく少女からは、不安などといった負の感情は一切垣間見られない。それは陽気な振る舞いを見れば一目瞭然のことではあったが、しかし真実一欠片も存在しないというのは、いささか異常と言うべきだろう。

 少女―――汐見琴音は聖杯戦争のマスターだ。
 魔術も世界樹も存在しない異界より招かれた、この場においては何十と存在するマスターの一人。自らの記憶を取り戻すという一次予選を勝ち上がり、今まさに第二の生存競争へと放り込まれた哀れな生贄でもある。
 しかし、何度も言うが彼女に負の感情はない。その心根はどこまでも平常。迫る死の予感すら感じず、どこに潜むとも知らぬ敵を恐れず、将来への展望すら一顧だにしていない。
 それは彼女が常軌を逸した勇気を持つわけでも、まして白痴であるわけでもない。要するに実感が薄いのだ。

「うん、おいしっ。世界が違っても美味しいものは共通だね。
 ねえ、セイヴァーさんは本当に食べなくていいの?」
「僕は構わないよ」


231 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:06:55 qt8Tbbi20
 声と共に、少女の隣に気配が現れる。何の変哲もない学生服を身に纏った、青の色素が多分に含まれた髪の少年だ。
 ともすれば鬱屈にさえ見えるだろう雰囲気を醸し出す少年は、しかしそれを冷美さまで昇華させていた。彼の持つ美貌とカリスマ性は、纏う雰囲気を陰鬱に堕すことを決して許さない。
 外見こそ未成年のそれではあったが、確固たる知性と豊富な経験から来る剛毅さが融和したその姿は、人としての一つの完成形とさえ言っても過言ではないだろう。
 端的に言えば、少年はまさしく英霊と呼ぶべき存在であった。

「それなら別にいいけど……なんだかつれないなぁ。
 セイヴァーさんって実はインドアタイプ?」
「否定はしないけど、そもそもマスター、いい加減現状を理解したほうがいい。
 最終予選はとっくに始まってて、もうどこにいても安全な場所なんてないんだから」

 セイヴァーと呼ばれた少年の言葉は事実である。そも世界樹の街全体が戦場となる以上、不用意に外を出歩くこと自体が自殺行為と言っていい。
 彼らは時に幸運に助けられ、時に少年が他のサーヴァントを撃退しつつ今まで無事を保っているも、それとてどこまで続くか分からない。
 どう考えても、歓楽街の露店で買い食いをしていられるような境遇ではないのだ。

「うーん、私は別に現状を理解してないわけじゃないよ? ここは世界樹の街で、私たちが巻き込まれてるのは聖杯戦争。マスターとサーヴァントが一組になってたった一つの聖杯を奪い合う、つまりバトルロワイアル。
 それに、どこも安全じゃないならここにいても問題ないと思うけど」
「……それでも他にやるべきことはあるだろう。マスターの身は僕が守るけど、マスターはマスターで潜伏するなり」
「というかね、セイヴァーさん」

 少年の小言を遮り、琴音は何気ない所作で聞いた。

「襲われて、負けて、死んで。でも死ぬってそんなに怖いことかな?」

 そんなことを、言った。

「マスター……」
「あ、ごめんごめん! 別に私、負けたいとか死にたいとか、そういうことを言いたいわけじゃないの。
 ただ、仮にそうなったとして、そんなに怖いのかなーって」


232 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:07:29 qt8Tbbi20
 慌てた様子で首を振る彼女は、しかし致命的なまでにズレていた。
 彼女が訂正したのは、あくまで聖杯戦争を勝ち残る意思についてのみ。その異様な生死感に関してはなんらおかしいと思っていない。
 ただ、ちょっとだけ疑問に思うだけ。
 今まで彼女らを襲ってきたマスターたちは、皆一様に死を恐れていた。死にたくない、死ぬのは怖い、だから代わりにお前たちは死ね。そんなことを叫びながら、従えたサーヴァントをけしかける。
 だけど、それは琴音にとってとても奇妙に映った。命あるものはいずれ死ぬ。例え平穏な日常に生きていようが、確率が低下するだけで根本的に死を回避できるわけではない。ならば、この場において死の危険に晒されることの何がそんなに怖いのだろうかと。
 環境がどう変わろうが、生きる時は生きて死ぬ時は死ぬ。ならばそれに恐怖を抱くことに何の意味があるのだろうと。
 そんなことを、琴音は朝飯と晩飯の違いとか、教科書の分からない英単語とかと同列に考えていた。

「ごめんねセイヴァーさん、こんなどうでもいい話しちゃって。
 あ、そうだ! お詫びにこれをあげちゃいます!」
「マスター、これは」
「たい焼き。さっきそこで買っておいたんだ。美味しいよ?」

 えへへと笑う彼女は、とても明朗快活で。
 けれど、表情こそ豊かであるけれど。それはかつての自分と相違のないものだったから。

「……ありがとう、マスター」

 差し伸べられた手を取り、そっと微笑む。
 少女は「優勝目指して頑張ろっ」と、相変わらずニコニコと笑みを振りまいて、けれど両者の抱える感情は決定的なまでに噛み合わない。
 愚者。無限の可能性。彼女は何も知らず、感じようともしない。
 それはかつての自分の生き写しである故に、いいや自分そのものである故に、少年は誰よりも痛感し理解できる。

 だからこそ、今は彼女の往く末を見守ろう。
 かつての自分と同じように、命の答えに辿りつくのか。
 それとも、一切の感情を解さないままその生涯を終えるのか。
 あるいは、その二つとは全く違う別の道を歩むのか。
 終末がどうなるか、それは分からない。けれど、かつて一つの生を全うした者として、彼は少女を見守り導く。
 それは過去に残した悔恨か。あるいは、彼女であるならば自分より最良の未来を勝ち取ってくれるのではないかという淡い期待か。
 どちらにせよ自分勝手な話だと自嘲しながら、少年は少女の後を追った。


233 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:08:14 qt8Tbbi20
【クラス】
セイヴァー

【真名】
有里湊@ペルソナ3

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力A++ 幸運EX 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
カリスマ:D+
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、Dランクでも一軍のリーダーとしては破格の人望である。
セイヴァーのクラスとして現界したことによりランクに+補正が与えられている。

対英雄:E
相手のパラメータの一部をランダムで1ランクダウンさせる。ただし、反英雄には効果を発揮しない。

【保有スキル】
ユニバース:EX
セイヴァーが築き上げた絆の形。「宇宙」もしくは「世界」を表す。
セイヴァー自身が宇宙そのものであり、最早実現不可能なことは何一つ存在しない。森羅万象から奇跡の意味を消し去る力である。
しかしサーヴァントとして現界している以上、現在は上記のような規格外の権能は有していない。
世の理、人類の解答、命の答え。セイヴァーはそれに至った者であり、かつ死という概念を乗り越えたという偉業を為し人類史におけるターニングポイントとなっている。
同ランクの菩提樹の悟り・星の開拓者のスキルを内包する。また、死の概念を乗り越えた逸話により一切の即死が通じない。

ペルソナ:A+
心の力でありもうひとりの自分。ラテン語で「仮面」を意味し、最も強い表層意識が具現する形で現れる。
本来セイヴァーはワイルドと呼ばれる力を持ち複数のペルソナを有するが、キャスターではなくセイヴァーとして現界するにあたり「メサイア」のペルソナのみを扱うことが可能となっている。
ランクB相当の対魔力を有し浄化による力を反射するが、呪いの類が特効となる。また「貫通」の性質を持つ物理攻撃を無効化し生命力に変換する特性を持つ。
ランクA+相当の魔術であるメギドラオン・メシアライザー・ゴッドハンドを行使可能なことに加え、ランクC相当の治癒促進・魔力回復スキルを内包する。

戦闘続行:A++
往生際が悪い。セイヴァーの持つ不屈の闘志がスキルとなったもの。
霊核を完全に砕かれても一度だけ万全の状態で復帰できる。

武芸百般:C
多方面に発揮される武芸の才能。セイヴァーは小剣・大剣・弓・徒手空拳・槍・斧・鎚といった多種の武器を十全に扱える。

道具作成:B
性格にはセイヴァー自身のスキルではない。
彼が保有するペルソナ「メサイア」は時折ランダムでアイテムを受胎し、それを入手することができる。
受胎可能な回数は1日1回程度。また、必ずしも毎日受胎するとは限らない。
ただし、全能の真球は受胎しない。


234 : 汐見琴音&セイヴァー ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:08:57 qt8Tbbi20
【宝具】
『絆の祝福(コミュニティ)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:22
セイヴァーが他者と交流し、絆を深めることによって22の大アルカナに対応したコミュニティが形成される。コミュニティの数やランク(交流の深さによって変動する)に応じてセイヴァーのステータス・スキルに上昇補正が加わる。
ただし、コミュ対象者との関係が悪化した際にはリバースやブロークンと呼ばれる状態になり、その人物に対応したコミュの分の補正は失われる。

『大いなる封印』
ランク:EX 種別:対界・対概念宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:7000000000
自らの宇宙の中に対象を完全封印する。スキル:ユニバースが失われると発動できない。
この宝具は使用に魔力を必要としないが、代わりに使用後にセイヴァーが消滅する。
この宝具によって消滅した場合、戦闘続行のスキルは発動しない。

【weapon】
小剣・無銘
セイバーとしての現界でないため魔剣や聖剣ではなく名も無い剣しか持ち合わせていない。

【人物背景】
ペルソナ3の男主人公。固有の台詞は存在しないが、生気の感じられない目と表情、口癖が「どうでもいい」など無気力を通り越して死に掛けの病人のような風体となっている。
本編の10年前に「たまたまその場に居合わせた」という理由でデスと呼ばれる存在を封印するための寄り代とされており、同事件で両親が死亡した後は親戚を盥回しにされていた。
本編の開始と共に影時間やシャドウ、それに対抗するペルソナ使いの集団「S.E.E.S」と関わり、満月の度に現れる大型シャドウを討伐していくことになる。
しかし、大型シャドウとは10年前の事件で飛び散ったデスの破片であり、それを討伐することはデスの復活を意味していた。
デスの復活とそれに伴うニュクスの降臨、死の概念そのものと言えるニュクスを前に、彼らは為す術もないように見えたが……

【サーヴァントとしての願い】
異空の自分の行く末を見守る。


【マスター】
汐見琴音@ペルソナ3Portable

【マスターとしての願い】
不明。

【weapon】
なし。

【能力・技能】

・ペルソナ
本来の歴史では彼女はワイルドのペルソナ使いとなるが、本編開始前なのでペルソナ能力を持たない。

・デス
世界の破滅を招来する"デス"を体内に封印している器。
未だ眠りについているが、デスを宿している影響からか内在する魔力は非常に多い。

【人物背景】
PSP版ペルソナ3で追加された女主人公。通称ハム子。
男主人公とは違い非常に明るく快活な性格だが、その悲劇的な背景は共通している。
ここでの彼女は本編開始前からの参戦なので、超常の力や知識は皆無である。
なお、名前は舞台版から取っている。

【方針】
優勝する?


235 : ◆GO82qGZUNE :2015/07/28(火) 00:09:13 qt8Tbbi20
投下を終了します


236 : ◆nig7QPL25k :2015/07/28(火) 01:57:29 u/SHVxp60
>魔津方&怪人A組
おー、怪人A再び!
こういうテクニカル系の鯖を考えるのは苦手なので、こういったものを考えられるというのが羨ましいです
そういやハッカーの手腕による魔力変動は、すっかり失念してたな……
ものによりけりですが、アリとします。一度投下してみていただけるとありがたいです

>琴音&セイヴァー組
パラレルワールドの同一人物同士ですか
その上性格が大きく異なっているとなると、その違いがまた面白いですね
特にコミュニティ宝具なんかは、どういう風に機能するのかが気になるところです


237 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:39:14 a39Ml3X60
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


238 : カヤ&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:39:58 a39Ml3X60
居住区の中心から外れたエリアにひっそりと佇む、今は誰も住んでいない洋館。
人知れず行動する何者かが潜むには、絶好のシチュエーションである。
実際この洋館は、この聖杯戦争において一組のマスターとサーヴァントのアジトとなっていた。
そしてその地に、強襲を仕掛ける一組の参加者がいた。
拠点にこもっての防衛戦は、キャスターの常套手段。
そして「対魔力」のスキルを持つアーチャーなら、キャスターなどカモにすぎない。
そのマスターは、そう考えていた。
だがその考えが甘かったことを、彼はすぐに思い知ることとなった。


◇ ◇ ◇


「ギガノ・ラドム!」
「うあああああ!」

爆炎と共に、アーチャーの絶叫が洋館の中に響く。

「多少魔力に抵抗がある程度で、私の術を防げると思いましたか? 愚かですねえ」

洋館の主であるキャスターは、牙をむき出しにして邪悪に笑う。
それに対しアーチャーのマスターは、歯噛みするしかなかった。
キャスターの言葉は、的を射ていた。
彼はアーチャーの「対魔力」では無効化できないレベルの術を使うことができた。
しかもそれを、何十発と連続で撃ち込んでくる。
いくらキャスターといえど、魔力の量が異常だ。

(いや、おそらくやつの魔力が底なしなわけじゃない、おそらくは、あれの力……)

アーチャーのマスターが見上げた先には、天井すれすれに浮かぶ不思議な石があった。
おそらくはあれが、キャスターの魔力を回復させ続けているに違いない。

「アーチャー!」

自らのサーヴァントに呼びかけ、マスターは身振りで石を指し示す。
マスターの意図をくみ取ったアーチャーは、石に向かって矢を放つ。

「ロンド・ラドム!」

しかし矢は、キャスターが放ったエネルギーの鞭に絡め取られ爆散した。

「くっ……!」
「あれを狙ってくるのは、覚悟の上です。そんな単純な攻撃を許すわけないじゃないですか。
 まあ、どうせその程度の攻撃では破壊できなかったでしょうがね」

再び邪悪な笑みを浮かべるキャスターに対し、アーチャーのマスターは何も言い返せない。

「ここまで格の違いを思い知らせてあげれば、もう十分でしょう。最大呪文でとどめを刺しますよ、マスター」
「うむ」

キャスターは、先ほどから自分の後ろで呪文を唱え続けていたおのれのマスターに声をかける。
キャスターの術は特殊であり、マスターが呪文を唱えなければ使えないという仕組みになっていた。
そして二人を繋ぐ媒介となるのが、マスターが手にしている本である。
本は、ひときわ強い光を放っていた。マスターが魔力を溜めている証である。

「ディオガ・テオラドム!」

呪文が唱えられると同時に、キャスターが巨大な火球を放つ。
それは瞬く間にアーチャーを飲み込み、大爆発を起こした。


239 : カヤ&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:40:44 a39Ml3X60


◇ ◇ ◇


「予想以上の快勝でしたねえ。私の勝利は揺るがないにしても、もう少し苦戦をするかと思ったのですが」
「あのサーヴァントは、かなりの強者だった。だが、頭がよくなかった。
 そしてマスターも、それを補えるような将ではなかった。
 ただ漫然と攻撃を繰り出しているだけでは、勝負には勝てぬよ」
「いやあ、その顔で言うと説得力がありますねえ」
「……顔は関係ないだろう」

キャスターの言葉にただでさえ厳つい顔をさらにしかめるマスターは、名をカヤという。
かつて魔王に仕えていた、闇の魔法使いである。
そしてキャスターの正体も、出身世界は違えど魔の者であった。
精神操作能力と爆発系の術を武器とする残虐なる魔物、ゾフィス。それが彼である。

「ところで、キャスターよ」
「どうしました、マスター」
「貴様が聖杯にかける願い、まだ聞いていなかったな」
「願いですか……。私の願いは、ごく個人的なものでしてね。話したくないんですよ。
 ああ、世界征服とか、そういうありふれたものではありませんので」

世界征服。魔物の王を決める戦いに参加していた頃のゾフィスなら、あるいはそんなことも考えたかもしれない。
だがゾフィスは、その戦いに負けた。もっとも恐れていた魔物・ブラゴに、心身共に叩きのめされたのだ。
この時負わされた心の傷は、今もなお彼の中に残っている。

「ブラゴへの恐怖心を克服する」
それがゾフィスの願いであった。
万能の願望実現機である聖杯にかけるにはあまりにちっぽけな願いだと、笑う者もいるかもしれない。
だがゾフィスにとって、これほど叶えたく、なおかつ叶えがたい願いはなかった。
そのためには、手段は選ばない。もともと、卑劣な策を用いることに良心の呵責を覚えるような性格はしていない。
一度は憎き敵であったガッシュに力を貸したこともあったが、それはそれ、これはこれ。
別に性根を入れ替えて、清く正しく生きていこうと決意したわけではない。
故にサーヴァントとなった今もゾフィスの本質は、残忍であり狡猾である。

「まあ、話したくないというならそれもよかろう。お前と私とは、あくまでこの聖杯戦争におけるパートナーにすぎぬ。
 深いところまで立ち入る必要はない」

回答を濁したゾフィスに対し、カヤは特に不快に思った様子もなくそう返す。

「物わかりのいいマスターで助かりますよ」
「それと、もう一つ聞こう」
「何でしょう」
「貴様の最大呪文、やはり屋内で使うのは無理があったのではないか?」

カヤの視線の先には、無残に焼け焦げた大広間が広がっていた。

「……後で直しておきましょう」


240 : カヤ&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:41:51 a39Ml3X60

【クラス】キャスター
【真名】ゾフィス
【出展】金色のガッシュ!!
【性別】男性
【属性】中立・悪

【パラメータ】筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
陣地作成:B
 魔術師として自らに有利な陣地を作成可能。

道具作成:D
 魔力を帯びた器具を作成可能。

【保有スキル】
軍略:D
 多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
 自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

精神操作:C(A)
 他者の感情を外部からコントロールする能力。
 抵抗力の無い人間なら、自我を失った操り人形にすることも可能。
 効果は強力だが深くかけるには時間がかかるため、戦闘中に相手を操って無力化するといったようなことは難しい。
 同時にかけられるのは数人程度だが、「月の石」発動中ならランクが上昇し40人前後を同時に操ることができる。

魔術:―
 彼が本来使える魔術は、魔本に封じられている。
 詳しくは【weapon】を参照。 


【宝具】
『月の石』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大補足:10人
ゾフィスが作り出した結晶体。
常に光を発し続けており、その光を浴びている者は体力と魔力が回復していく。
故にこの石の下にいれば、強力な攻撃で即死しない限り半永久的に戦い続けることができる。
またゾフィスの「精神操作」の増幅器も兼ねており、この宝具が発動している間は「精神操作」のランクがAとなる。
ただし、「陣地作成」で作った自陣の中でしか発動できないという制限がある。
また決して脆くはないものの、耐久力は宝具を使用したサーヴァントなら充分に破壊できる程度である。

【weapon】
魔本
 魔物の王を決める戦いにおいて使用されたアイテム。
 魔物1体ごとに1冊が支給されており、その魔物と心の波長が合う人間だけが読むことができる。
 本には呪文が書かれており、その呪文を読み上げることで魔物の術が発動する。
 本来は戦いの期間のみのアイテムでありそれ以外では魔物は自分の意志で術を使えるのだが、
 聖杯戦争と魔物の王を決める戦いの類似性ゆえか、今回はゾフィスと共に出現している。
 ただし厳密には精巧なレプリカであり、マスターであれば心の波長が合わなくとも読むことができる。
 また破損してもゾフィスが聖杯戦争から脱落することはなく、「道具作成」のスキルで修復が可能。

【人物背景】
魔物の王を決める戦いに参加した、100人の魔物の子の一人。
冷酷で狡猾な性格。主に爆発系の術を使う。
普段は丁寧語を用い落ち着いたしゃべり方をするが、追い詰められると凶暴な口調になる。
心優しい少女・ココをパートナーと見定め、精神操作で邪悪な別人格を植え付けることで協力を受諾させる。
その後1000年前の魔物たちが石化した状態で人間界に放置されていることを知り、回収して石化を解除。
精神操作と詐術で再び石に戻ることへの恐怖を植え付け、支配下に収める。
しかしガッシュ達に1000年前の魔物を全滅させられ、自らもココの親友であるシェリーとブラゴのペアに敗北。
ココの精神を盾に悪あがきを見せるが、ブラゴに「自分を恐れ、必死で対戦を避けていた」ことを看破され、心が折れる。
その後シェリーにおとなしく従い、ココの精神と記憶を自分と出会う前の状態に戻した上で魔界に送還された。
ガッシュとクリア・ノートとの戦いでは魔界の民を守るためにおのれを省みず戦うガッシュを王の器と認め、
他のガッシュと敵対した魔物達と同様に「金色の魔本」を通して彼に力を貸している。

【サーヴァントとしての願い】
ブラゴへの恐怖心を克服する。

【基本戦術、方針、運用法】
自らの陣地に改造した洋館に「月の石」を設置しての、籠城戦。
場合によっては、「精神操作」でNPCを操って手駒とする。


241 : カヤ&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:42:36 a39Ml3X60

【マスター】カヤ
【出典】魔法陣グルグル
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
聖杯を手にし、魔法使いとしてさらなる高みに立つ。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
闇魔法
 魔界の力を呼び出し、コントロールする魔法。
 カヤは手から火炎を放出する「じごくの炎」、敵の防御魔法を打ち破る「ゴールデンハンマー」などを修得している。

怖い顔
 非常に厳つい顔。
 気の弱い者なら顔を合わせただけですくみ、実力を発揮できなくなってしまう。

【人物背景】
魔王ギリに使える、魔族の魔法使い。
当初は正体を隠し、神官としてコーダイ城に潜入していた。
しかし勇者・ニケとグルグル使い・ククリに正体を見破られ、戦闘に。
敗北し死んだと思われていたが、実は幻術を使って逃げ延びており、後に魔王軍幹部としてたびたびニケ達の行く手に立ちはだかる。
魔王軍の目的である世界の支配よりも無限の可能性を秘めた魔法・グルグルに勝つことを重視しており、
最終決戦ではギリの部下ではなく一介の魔法使いとしてククリに勝負を挑む。
そして決着をつけられたことに満足し、どこかへと去って行った。

【方針】
キャスターと共に籠城し、優勝を目指す。


242 : ◆NIKUcB1AGw :2015/07/28(火) 20:43:25 a39Ml3X60
投下終了です


243 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:50:40 EnPNc7xo0
回答ありがとうございます。
それではハッカー系のマスターを考えてあるので、出来上がり次第投下させていただきます。

それとは別にこれより一作投下させていただきます。


244 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:51:32 EnPNc7xo0
荒廃しかけた街の中。
倒れる女性と、それを抱え起こそうとする男性。

「ねえ……もし、私が知恵の実を掴んでいたら……貴方は私を求めてくれた……?」

力なく女性が問いかける。
命尽きる寸前の末期の言葉。
それに対する男の答えは……

「耀子は耀子。知恵の実は知恵の実だ」

冷たいようで温かく、優しいようで厳しい言葉。
何より正直で、武骨なまでに真っ直ぐな男の本心。

「本当、不器用な人……」

何を望んでいたのだろう。
肯定してほしかったのか、否定してほしかったのか。
ただ、いずれにせよ。
誰より愛しい王の腕の中で、名前を呼ばれて逝くというのは。
王を守って果てるのなら、どちらでも悪くないんじゃないかと思う。

まぶたが落ち、四肢から力が抜ける。
それを確かめ、亡骸となった女を抱え、人ならざる臣下を従え王は最後の戦いに臨んだ。

その戦いに王は敗れることとなる。
弱者が虐げられない世界を作るために、世界を滅ぼそうとした魔王は、弱者を守るために、世界を守ろうとした英雄に敗れた。
英雄になれなかった魔王は世界を見守っていく。
英雄は神となって新たな世界へ旅立った。

そしてただ一人魔王に最後まで仕えた寵姫は、新たなる『樹』に導かれる。


245 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:52:10 EnPNc7xo0

◇  ◇  ◇

「私の知らないうちに、ユグドラシルも随分大きくなったものね」

開け放たれた窓から見える巨大な枝葉を見て一言。
口にした些細なジョークが可笑しかったか、くすりと笑う。
手に持ったのは黒いベルトのようなものと、桃色の錠前。
魔術都市ユグドラシルに相応しくない外観の文明的機械だ。
自室の片隅に大切そうにおかれたそれを手にし、用途の分からないそれについて思索を巡らせているうちに、湊耀子は記憶を取り戻した。
右手に浮かんだ弓と矢のような令呪と、自らのサーヴァントに目をやる。

「ずいぶんと可愛らしい英霊さんじゃない」
「はい。アーチャーのサーヴァント、鹿目まどかっていいます」

最初に召喚された時には神々しい空気に、白と桃色を基調にしたファンシーな衣装、なにより大きな翼が人ならざるものであることを雄弁に語っていた。
今の彼女は魔力消費を抑えるためか、どこかの学校の制服を纏ったただの少女、といった風だ。
見た目もステータスも、少なくとも肉弾戦には優れるようには見えない。

「あなた、強いのかしら?」
「難しい質問ですね。サーヴァントになる程度には強いですけど……
 サーヴァントの中で強い部類かどうかは正直分からないです。
 今の私は力の全てを使えるわけじゃないし……」
「そう。それじゃあ、試させてもらうわ」

『ピーチエナジー!』

右手に持った錠前、ピーチエナジーロックシードを起動。
一度手を後ろに回して、装着した黒いベルト、ゲネシスドライバーにセットし起動。

「変身」
『ソーダ……ピーチエナジーアームズ!』

アーマードライダー・マリカ。
乳白色の鎧をまとった、女王の名を冠する鎧の戦士へ変身する。
手に持った近接武器ともなる弓、ソニックアローで肉薄しようとするが

「『円環の片割れたる上弦(ルミナス)』!!」

アーチャー、鹿目まどかは即座に対応。
耀子と同様に白と桃色の戦闘衣を纏い、切り札たる弓を抜き、即座に光の一矢を放つ。
それは耀子の頬部分を僅かに掠めて、開け放たれた窓の外へ抜ける。

(早い…!)

自分も弓を用いるからわかる。
構え、番え、狙い、放つ。
射法八節など知ったことではないが、それでも弓での攻撃には相応のラグが生じる。
ショートレンジでの正確な早撃ち。
その判断と腕前は流石にサーヴァントか。
固唾を飲み、続けるか逡巡していると窓の外から鳥の悲鳴のようなものが聞こえた。

「多分、魔術師の使い魔がいたので……」

特徴的な声で困ったように笑う。
まだ続けなければダメか、と悩ましげな視線。

「……十分よ。いい腕ね」
「そんな、私なんか大したことないですよ。
 矢も弦も魔力だから引くのに強い力はいらないですし、誘導性能もあるから狙いだってそこまで正確じゃなくてもいいし」

腕前を謙遜するが、それは武器の性能を讃える事。
それに少なくとも使い魔を見つけた視力、そしてそれを素早く射抜いた判断と反射は優秀。


246 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:53:13 EnPNc7xo0

「見たところローティーンね。ティーンエイジか、それを少し過ぎたくらいの強者には何人か心当たりがあるけど、あなたほどに若いのはいなかったわ。
 あなたの願いとかいろいろと気になるけど……」

能力は十分、あとは覚悟の問題だ。
呉島貴虎も葛葉紘汰も実力はともかくとして精神面では戒斗に軍配が上がった。
このサーヴァントも聖杯を狙う意思があるのならいいが……

「私の願いは乱された理を、壊された世界を元に戻すことです」
「大層な願いね。さすがは英霊サマ、と言ったところ?」
「……本当はそこまで大したものじゃないん――」
「いいわ」

自身無さげに唇を振るわせようとするのを制する。
耳に痛いし、聞くに堪えない。

「こちらから話を振っておいてなんだけど、そこまで深入りはしないわ。
 聖杯を求める意思と、協力するつもりがあるならそれで十分よ」
「ええ、それは大丈夫です。よろしくお願いします」

丁寧に礼をするまどか。
年相応というか、腰の低いものだ。
最近は良くも悪くも反骨心にまみれた青少年ばかり見ていたから何だか新鮮な気分になる。

「あ、マスターのお名前……」
「耀子よ。湊耀子。好きに呼んで」
「じゃあ、湊さんって。湊さんは聖杯にどんな願いをかけるのか教えてもらえますか?」

部屋を出ようとしていた耀子を呼び止めるように問い返す。

「今は問答より使い魔とやらに対応した方がいいと思うんだけど」
「教えてください」

一歩も引かず強い視線を向ける。
改めて思うが儚げな少女でありながら、同時に強かな弓兵でもあるのは確からしい。

「私自身は聖杯を使うつもりはないわ。ただ、それに相応しい人を知っている。
 彼に聖杯を託す……強いて言うならそれが私の願い」
「その人はどんなふうに使うんでしょう?」
「……弱者が虐げられる世界を否定する、とよく口にしているわね。
 彼なら間違いなくそのために使うでしょう」
「……わかりました」

思うところはあるだろうが、ひとまず納得する。
そして思考を切り替える耀子。
使い魔がいたということは自宅がばれたということ。
その相手を倒せればいいが、そう簡単ではない。
……拠点変え、最悪ホテル暮らしか。
などと悩んでいると

「大丈夫です。見つけましたから」

胸元で桃色の宝石を輝かせ、杖のようになっていた宝具を再び弓とする。
構え、番え、狙い……

「使い魔の気配を追うのも、魔女退治も、魔法少女(わたしたち)の十八番、ですから!」

光の矢が再度窓から上空へと放たれる。
そして空中で弾け、無数の光の矢となり降り注ぐ。
もしひかりふるあの地に敵がいたとするならただではすむまい。

「……これでここのことを知ってる人はもういません」
「驚かされるわね。その弓にもあなたにも」
「これでも必死なんです、聖杯をとるために」

ぎゅっ、と弓を一度だけ強く握り、再び制服姿に戻る。
それを受けて耀子も変身を解く。
苛烈なまでの振る舞いに聖杯への思い入れを感じ取り、彼女もまた聖杯に思いを寄せる。


247 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:53:40 EnPNc7xo0

(ねえ……もし、私が聖杯を掴んだら……貴方は私を求めてくれる……?)

もう一度問おう、この愚問を。
彼は聖杯を手にした私を並び立つ強者として見てくれるだろうか。
それとも、聖杯など関係なく守るべき弱者として見てくれるだろうか。
いずれにせよ、彼の視界に入らなければ叶うことのない願い。
死したはずのこの身、聖杯戦争という闘争の地。
戦わなければ生き残れない。
戦わなければ叶わない。
ならば自身のために、愛しき王のために戦い、勝ってみせよう。

そんな決意を固めるマスターを見据えるサーヴァント、鹿目まどか。

(どこまでが本当だろう……?)

一つ、マスターの願い。
本当に彼女は聖杯に願うことはないのか。
もしそれが事実でも、彼女が託したいという人は本当に弱者が虐げられる世界を否定するのか。
否定するとしてどのように否定するのか。

(多分、託したい人がいる、っていうのは本当なんだろうな。
 嘘なら願いの内容を嘘にすればいいんだし)

きっと否定の仕方が問題。
言葉を恣意的に伏せるのはあのインキュベーターも多用した手法だ。

(…やっぱり自分勝手に世界を変えるっていうのはよくないことだと思うよ)

マスターに向けて。
最高の親友に向けて。
それと、多分自分にも少しだけ。

(マスターが聖杯を渡したがってる人の願い次第じゃ聖杯は渡せない。
 でももう完全な円環の理』を成すには大きな後押しが必要だし……)

暁美ほむらにより引き裂かれたその瞬間。
別離しきるその前に、残された力を振り絞り、サーヴァントの位に無理矢理自分をねじ込んだ。
ただでさえ裂かれていたのに、不完全な現界で力は大きく制限されている。
かつてインキュベーターの力を使ったようなきっかけなしに世界改変規模の理をなすのは難しい。

(聖杯、なんでも願いが叶う、かぁ。いい思い出ないんだよなぁ)

マスターへの僅かな疑心より大きな、願望器への猜疑心。
どうも聖杯というのも真っ当なものではない可能性があると、知らないはずの知識も告げている。

(多少の呪いや穢れなら『円環の片割れたる上弦(ルミナス)』で祓えるけど……
 見てみないと分からないかな)

かつてインキュベーターを利用したように、何らかの裏口も考慮しておくべきだろうが、それでもやはり今は聖杯に手を伸ばすしかない。
多くのマスターやサーヴァントと戦うしかない。

(みんな、願いを持ってくるんだよね……
 魔法少女と同じで叶えたい願いがあるんだ)

願いの否定はしたくない。
だからこそ、かつて絶望し魔女と化すことは否定しても魔法少女という存在は否定しなかった。
けれども、聖杯を求めるならば多くの者の願いを否定することになる。

(でも、きっともう変われない。
 私の願いは、魔法少女に――円環の理にならないと叶わないものだった。
 ほむらちゃんは、私を魔法少女にしないように何度も何度も戦って、願ってた。
 私のためにやりなおして、私のために強くなろうとしてた。
 私を含む魔法少女の願いを肯定するために、ほむらちゃんの願いを否定した……)

だから、もう。
大切な人の願いを踏みにじるのは経験済みだ。
何より、ここに在るのは『円環の理』。
魔法少女を救う者。
誰かを救うということは、きっと他の誰かを救わないということ。

魔法少女(じゃくしゃ)を救う(まもる)ため。
強者を虐げる、歪んだ弱肉強食(たたかい)が始まる。


248 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:54:28 EnPNc7xo0

【クラス】
アーチャー

【真名】
円環の理(鹿目まどか)@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D+ 魔力A+ 幸運EX 宝具EX

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
神性:EX
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
菩提樹の悟り、信仰の加護、といったスキルを打ち破る。
粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。
彼女は本来ただの人間にすぎず、神との繋がりなど持ち合わせない。
しかし桁外れの因果律の集約と星の意思インキュベーターの力によって、世界を形成する理そのものとなる。
それは世界創造の力を持つ神霊の域であり、二つの意味で規格外の神性を保持するといえる。

創世:E-(A)
最上位の英霊や精霊、神霊のみが持ちうる空想具現化すら霞む稀有なスキル。
『無』から『有』を生み出す力であり、規模が大きければ大きいほど多大な魔力を必要とされる。
このスキルはランクが一つ違うだけで文字通り天と地ほどの差があり、ランクAともなると宇宙創造の逸話を持つ者しか所有できない。
しかしサーヴァント化など様々な要因に伴い大きくランクダウンし、現在は魔力によって形成される翼での飛翔程度しか行使できない。

蔵知の司書:A++
世界改変に伴い、人類史の全てを垣間見た記憶。
LUC判定に成功すると、過去に知覚した知識、情報をたとえ認識していなかった場合でも明確に記憶に再現できる。

心眼(真):E++
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
必要とあらば恩人である先輩の命も奪い、親友の武器を奪い戦闘不能にすることも辞さない胆力と、何よりその隙を見出す観察力を有する。
スキル:蔵知の司書による戦闘経験の擬似的な上乗せで大幅なプラス補正が働いている。

戦闘続行:A
魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。

【宝具】
『円環の片割れたる上弦(ルミナス)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:4〜20 最大捕捉:20人
鹿目まどかの祈りの形たる弓。
円環の理という規格外の存在の願い・力の結晶である。
浄化の能力を持ち、あらゆる穢れを祓う矢を放つ常時発動型宝具。
矢は魔力によって形成されており、巨大な一本の矢を放つ、多数の矢を雨あられとふらせるなどの多数のバリエーションを持つ。
ヒット時に属性:悪のものには追加ダメージを与える。
さらにダメージを与えずに呪詛などのバッドステータスを癒すことも出来る。
本来ならば運命遡行による必中、契約破棄・浄化による契約の否定などの効果も持つが、サーヴァント化など様々な要因に伴いそこまでは再現されていない。

かつて最高の友達たる少女に対となる同様の効果を持った弓、『円環の片割れたる下弦(ひかりふる)』を残していた。
同様に彼女が認めた者にはこの弓を託すことが可能だが、どこまで効果を発揮するか、そもそも使いこなせるかどうかは継承者しだい。

『願いの宝石が集う場所(カラフル)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:上限なし
円環の理という在り方そのもの。
穢れたソウルジェムを察知し、転移。上記の宝具によって浄化することで円環の理の一部とする。
さらに円環の理の一部となった現在過去未来全ての魔法少女の力を借りることができたのだが、サーヴァント化など様々な要因に伴いこの宝具はほぼ機能していない。
唯一魔なるものへの卓越した探知能力が片鱗として残るのみである。
仮に令呪を用いようとも本来の効果を発揮することはないが、もしもこの地で魔法少女の協力を受けることができれば、その協力者の力のみは行使可能となるかもしれない。


249 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:54:49 EnPNc7xo0

【weapon】
・ソウルジェム
魂を物質化した第三魔法の顕現。
まどかを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。
聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明だが、円環の理たる彼女が魔女になることはないと思われる。
かつての彼女の願いは全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で生まれる前に消し去ること。
その救済の願いが宝具となっている。

【人物背景】
キャリアウーマンの母、主夫の父、幼い弟の家庭で育った平凡な少女。
ある日インキュベーターという宇宙のエネルギー量を憂う外来種と接触し、魔法少女にならないかと誘いを受ける。
自分への自信のなさから契約を考えるが、転校生の暁美ほむら、先輩の巴マミ、親友の美樹さやかたちが魔法少女として様々な物語を紡ぎ、それによる葛藤を続ける。
インキュベーターの目的、暁美ほむらの願い、町や世界の危機、魔法少女の真実などを知った彼女は自らと多くの魔法少女の願いのために魔法少女となる。
それは世界の在り方そのものを変えるほどのもの。
以降彼女は円環の理という概念として世界を外側から見守り、守護する存在となった。
魔法少女を導き、絶望させない神霊として暫く活動を続ける(概念である円環の理に時間の意味があるのかは疑問だが)。
その後暁美ほむらが魔法少女として最期を迎えるとき、そのもとへと向かいソウルジェムを浄化しようとする。
その際にインキュベーターによる陰謀に巻き込まれるも、美樹さやかや他の魔法少女の協力も受けてそれを退ける。
ついに最高の親友と呼んだ少女と共に還ろうとするが、そこで新たな事件が起きる。
円環の理から鹿目まどかの一部が切り裂かれ、再び世界が改変されたのだ。
その瞬間、切り裂かれた鹿目まどかの一部がサーヴァントとして無理矢理に参戦したのがこのアーチャー。
神霊の再現が完全にはできない、切り裂かれた力のそのまた一部である、より適正なセイヴァ―としての召喚でないなどの要因が重なり、大きく弱体化している。
またかつての世界改変の影響によって『鹿目まどか』という存在は一部の友人にしか認知されていないため、『円環の理』という古今東西の魔法少女の間で認知される伝承上の存在としての参戦となった。
インキュベーターという秩序を否定した混沌側の存在であり、また円環の理という新たな秩序を築いた秩序側の存在でもある。
そして今回は悪魔によって形成された新たな秩序を否定する存在としての召喚であるため混沌属性。

【サーヴァントの願い】
円環の理を再度安定させる。

【基本戦術、方針、運用法】
優れた心眼による狙撃や、蔵知の司書も交えた弱点攻撃。
中〜遠距離戦が中心となる。
飛行しての狙撃が最も強力な戦術。
だが近距離戦は得物としても経験としても適性が低く、自分の距離で戦えるか否かがカギになる。
万一そうなったら強力な戦闘力を持つマスターに何らかの形で協力を仰ぐのが吉か。


250 : 湊耀子&アーチャー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:55:14 EnPNc7xo0

【マスター】
湊耀子@仮面ライダー鎧武

【令呪】
右手の甲。
弓と矢のデザイン。
桃、あるいはハート状の矢じりで一画、シャフトで二画、半月状の弓で三画。

【マスターとしての願い】
聖杯を手にして、もう一度戒斗に会う。

【weapon】
・ゲネシスドライバー
上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。ピーチエナジーアームズに対応している。
開発者、戦極凌馬が使っていたものを彼の死後に利用しているため、キルプロセスと呼ばれる仕掛けはないと思われる。

・ピーチエナジーロックシード
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・マリカ」へと変身する。

【能力・技能】
上記の武装による闘争。
それ抜きの生身でもそれなりの戦闘能力を有する。

【人物背景】
世界を救おうと沢芽市を中心に活動するユグドラシル・コーポレーションに勤める。
開発主任の呉島貴虎に初めは興味を持つが、実力はありながら支配願望を持たない彼を見限り、新たに技術担当の戦極凌馬に付き従う。
貴虎が純粋に人類の救済を望んでいる裏で独自の思惑を巡らせ、強大な力をもたらす『黄金の果実』を手に入れるべく動いていた。
ただし彼女自身は『黄金の果実』を手に入れるつもりはなく、それに近付こうとする者の未来を見届けるという立場を取っており、積極的に危険を冒そうとはしない。
後に駆紋戒斗がユグドラシルに接近すると彼に興味を抱く。
そして闘いの中で凌馬に見捨てられ、戒斗たちに助けられると彼の実力と才覚を認め同道することに。
『黄金の果実』を巡る戦いも終盤、弱者が虐げられる世界を壊そうとする戒斗と、今の世界を守ろうとする葛葉紘汰のいずれかに候補者も絞られる。
彼女は戒斗に付き従い、彼の作る世界と行く末を見届けようとするが、かつて戒斗の仲間であったザックによる暗殺から戒斗を庇いビルから落下。
身した状態で落下したので即死は免れていたが、ザックを倒し駆けつけた戒斗に言葉を残し力尽きた。
その後からの参戦。

【方針】
自分以上に聖杯が必要となるであろう人/人たちのため、聖杯を手にする。
そのために必要な戦いからは逃げ出さない。


251 : ◆yy7mpGr1KA :2015/07/28(火) 23:58:25 EnPNc7xo0
投下終了です。
執筆にあたり、当企画の◆nig7QPL25k氏の作品から駆紋戒斗と呉キリカのステータスを一部参考にさせていただきました。
お礼申し上げます。


252 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/07/29(水) 00:32:39 VMaZgvp.0
投下します。


253 : レイ・ザ・バレル&アサシン ◆T9Gw6qZZpg :2015/07/29(水) 00:33:29 VMaZgvp.0

 人が課せられた運命のみに従い生きる、そんな世界であるべきだ。それがレイ・ザ・バレルを支え続けてきた思想であった。
 創れるから創ってみたい、などという冒涜的な欲望を切欠として産み落とされた欠陥品の生命を嘆き、ゆえにその生命の全てを不必要な欲望に溢れた世界の変革に使おうという決意。
 ある意味において、レイの在り方は世界の破滅のためだけに自らの生命を費やした『同胞』と表裏一体だったのだろう。
 人が、人としての感性に従おうとするのが誤りだ。人は、世界を構成する部品であるべきなのだと、頑なに信じようとしていた。

 結論から言えば、その悲願は叶わなかった。
 共に闘った『同志』達は敗れ、指針を示してくれた『父』は倒れ、レイの『夢』は終わりを告げる。
 こうして一つの運命が定められた時、レイが取った行動は追想。
 人々に幸福を齎すに違いない世界。その中で実際に生きたとも言えるだろう人々を、改めて見つめ直すことだった。

 ラウ・ル・クルーゼはどうだったか。
 閉ざされた未来ごと世界を道連れに破滅する道を選んだ彼の憎悪を、レイは愚かと断じない程度には共感していた。
 ステラ・ルーシェはどうだったか。
 衰弱していく実験動物としてのみ扱われた彼女の儚さを、レイは少しでも変えられないかと思ってしまった。
 ミーア・キャンベルはどうだったか。
 自分の存在意義に等しい仮面を剥ぎ取られた彼女の怯えを、レイは知っていて視線を逸らした。
 シン・アスカはどうだったか。
 世界平和のためと言ってその実誰よりも心を摩り減らしていた彼の苦しみを、レイは癒そうとせずただ背中だけを押した。
 ギルバート・デュランダルはどうだったか。
 理想を通り越して最早に妄執に変わったそれに囚われたままの彼の姿を、レイは哀れと感じずにいられなかった。

 レイは、運命を絶対と掲げる世界を誰よりも焦がれたレイ・ザ・バレルはどうだったか。
 ……語るまでもない。『父』に、『夢』に終止符を打った一発の銃弾。これが答えだ。

 僕達は知っている。分かっていけることも、変わっていけることも。だから明日が欲しいんだ。どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ。
 そう語る宿敵の言葉こそが、レイの本当の望みだったのだ。
 自分は、人は変われないのだと断定し、自らを改める機会を悉く棒に振り続けた果てに、自らの望みを勘違いしていたのだと気付いてしまった。
 光を当てられるのがあまりにも遅すぎた、それが真実。

 粉塵に、瓦礫に、炎に、『母』の温もりに包まれながら閉ざされようとする未来の中、レイの胸中に一つの願いが生じていた。
 世界がどうあるべきかなどと考えるのは、もう疲れた。
 許されるならば、舞台装置を維持する部品に等しい生き方を今度は拒もう。
 やり直そう。もっと単純な本能に従い、自分の正直な感情を第一とする生き方をしよう。

 この願いに今度こそ確信を抱き、しかし頭では無理な話だと冷静に受け止めていた。
 全ての分岐点を通り過ぎてしまって時点で、この身体には最早未来など無いのだ。
 ならば、寂しく終わろうとする目の前の生命にこのまま寄り添う方が幾分かマシだった。
 不必要と言って他者を切り捨て、必要と言って苦悩を押し付け、大地と宇宙に亡骸の山を築き上げた。その果ての終局を受け入れようと、半ば義務的に思った。

 こうして、レイ・ザ・バレルは最期の瞬間まで運命に従った。
 運命に抗うための力が、既に残されていなかった。




254 : レイ・ザ・バレル&アサシン ◆T9Gw6qZZpg :2015/07/29(水) 00:34:26 VMaZgvp.0



「マスターの殺害を済ませてきた。あのセイバーが消え去るのも時間の問題だ」

 熱の一切籠もらない声色でレイに語りかけるのは、十二、三歳程度だろうとの印象を与える少女だった。
 若さ溢れる年代の子供なのだから、もっと快活な口調で喋るのが自然と誰もが思うだろう。ましてや、人の死を平気で語るなど物騒が過ぎる。
 しかし、レイはその普遍的な発想の方こそが間違いだと知っている。
 サーヴァント。怪物。紛い物。いかなる表現で少女の本性を指しても、それは先程の言葉に伴う冷徹さに相応しいものだ。

「そうか」
「万が一にも奴に特定されると面倒だ。姿を変えても良いな」

 そう言うと同時、少女の身体の輪郭がぐにゃと歪む。
 華奢な容姿がみるみると崩れ、また別の形を作り上げていく。
 そうして一秒と少しの時間を経て、少女だった存在は妙齢の女性へと変わり果てた。
 今の彼女の姿ならば、その口から酷な言葉が吐き出されてもさほど不自然ではあるまい。

 レイの下に現れた従者たるサーヴァントは、アサシン。彼女――と性別を限定する表現は実の所不適切だが――は、「他人に成り代わる」ことを特技としていた。
 人間の姿はおろか記憶すら引き継ぎ、人知れず社会を侵食する生命体、ワーム。
 自らの能力を使い、アサシンは敵対者であるマスターの一人に接近を試みた。
 ある一人の商人、その顧客として重宝された主婦、その実子として寵愛を受けた少年、その恋人として幼い絆を育んだ少女。全て始末し、その姿を奪い取った。
 そして世界樹の上の大地における唯一の家族として少女を守りたいと願ったマスターの青年は、先程他でもない少女の手で息の根を止められた。
 今頃、セイバーは血眼になり、憤怒に身を滾らせながらアサシンを探して駆けずり回ることに残された時間を費やしているのだろう。
 無意味だ。奴が追い求めるマスターの妹など、もう何処にも存在しない。アサシンは既に少女ではなく、『間宮麗奈』へと変わってしまっている。

 きっと、命を落としたマスターはさぞ無念だったろう。彼にも守りたい日常があったのだ。それをレイはアサシンと共に踏み躙った。日常の一端である肉親の外見を利用する形で、だ。
 レイは一度だけ、騎士の誇りに掛けて正々堂々との信条を掲げるセイバーの姿を見かけた。知りながら、レイはアサシンに不意打ちでの勝利を命じ、セイバーとは直接戦おうともしなかった。誇りを汚されたセイバーもまた、哀れだ。

「これがワームのやり方だ。お前達人間の世界に巣食うためのな。改めて聞く。今更、反吐が出るなどと言わないな?」
「舐めるな。正義漢など気取る気は無い」

 聖杯に用意された舞台の上で、全ての戦いを終えて死を迎えるはずだったレイは一先ずの延命を許されている。
 この仮初の生命を確実なものとするため、あの時諦めてしまったモノを掴むためには、やはり聖杯を獲得するのが最適の手段だろう。
 レイが聖杯を欲する理由など、これで十分だった。
 果たすためなら、気取って手段を選り好む気など無い。何処かの世界で人類を脅かしたという怪物の力も、武器として活用するのみ。
 ヒトデナシと糾弾されるに値する手口であっても、レイはかつてと同じく妥当だからと選択する。
 ただし今度は、最終目的がかつてと全く異なる。
 そしてそれは奇しくも、アサシンの考えと似通っていたのだ。
 種としての繁栄、生態ピラミッドの征服、そんなものには既に関心が無い。あの日、事も無げに放たれたアサシンの言葉は、生殖活動を第一とする蟲にあるまじきものだ。
 しかし、レイにとっては信頼の切欠とするに十分なものでもあった。

「俺は、俺のために生きる。そのためなら、今更何を悩んだりもしない」
「……は。いかにも人間らしい」

 レイの願望。アサシンの欲望。
 その先に鎮座する聖杯は救世も革新も可能とする逸品であり、しかし二人はその神秘性に到底釣り合わない、大した内容でもない願いを注ぐことを目的としていた。

 今度こそ、ヒトらしく/ヒトとして、生きてみたい。

 感情のままに二人が望むのは、たったそれだけのこと。


255 : レイ・ザ・バレル&アサシン ◆T9Gw6qZZpg :2015/07/29(水) 00:35:40 VMaZgvp.0



【クラス】
アサシン

【真名】
間宮麗奈@仮面ライダーカブト
※あくまで便宜上の表記に過ぎない

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具E(宝具解放時)

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
・気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
・擬態:B
自らの姿を対象とした人間と同一に変化させる能力。肉体や着衣だけでなく、記憶までも引き継ぐことが出来る。
ただし以下の制限が掛けられている。
①あくまで「人間としての姿形を複写する」だけの能力であり、常人を超越する部分(魔術回路や超能力等)は引き継げない。
②肉体構造が人間を逸脱している相手に対しては擬態が発動しない。
③相手にある程度の距離まで接近し、その姿を視認している状態でないと擬態は発動しない。
なお、他者への擬態中はアサシンの真名の表記も擬態対象の名前に変化する。そもそも『間宮麗奈』の名前自体がこのスキルによって一時的に得ている物に過ぎない。
このスキルは後述する宝具と一体化しており、新たにスキルを発動する際(姿を変化させる瞬間)には一瞬だが宝具解放状態となる。

・クロックアップ:C
異なる時間流への介入による、事実上の超高速移動を可能とする能力。
発動中には魔力消費量の急激な増加が伴うため、長時間・連続での使用は推奨されない。
このスキルは後述する宝具と一体化しており、宝具解放状態でなければ使用出来ない。

・精神汚染:E
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。Eランクでは最低限の効果のみ得られる。
あたかも人間であるかのように感情を有した時点で、ワームという群体の中ではただの異物である。

【宝具】
・『葬歌は蟲の声(ウカワーム)』
ランク:E 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
自らの肉体を地球外生命体ワームの一個体としての姿に変化させる宝具。
実際には別の姿への変身というより、本来の姿への回帰と表現する方が適切だろう。
この宝具の発動中に限りパラメータが変化し、擬態とクロックアップが使用可能となる。

なお、ワームとしての姿がアサシン本来の姿であると説明したが、その時の名前は『間宮麗奈』ではなく、また他の何者でもない。
人間の自己同一性の略奪によって生存することを本分とする生命体ワームにとって、個体としての名称などほぼ無価値である。
そのためこの宝具の解放中は何者も、真明看破のスキルを持つサーヴァントであってもアサシンの真名を特定することは出来ない。
特定されるような真名など、そもそも存在していないから。

【weapon】
ワームとしての肉体。

【人物背景】
かつて人間社会を侵略しようとした地球外生命体ワームの一個体。
この個体は人間の持つ愛を知り、愛に羨望を抱き、しかし自らのためだけの愛を得られず命を終えた。
ワームがワームである限り、人間との間に真の愛など築けるわけが無かった。

【サーヴァントとしての願い】
人間として受肉したい。『間宮麗奈』のように、愛を得たい。


256 : レイ・ザ・バレル&アサシン ◆T9Gw6qZZpg :2015/07/29(水) 00:36:41 VMaZgvp.0



【マスター】
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY

【マスターとしての願い】
もう一度、今度は運命以外のために生きたい。

【能力・技能】
白兵戦、機動兵器の扱いなど軍人としての一通りのスキル。

【人物背景】
とある実験を発端として創り出されたクローン人間の少年。
将来に希望など持ちようのなかった境遇から、運命に全てを決められた世界を創り上げるべきという考えを持つに至った。
人間は、ただ世界という機械を構成する部品としてのみの存在であると言うかのような思想である。
戦いの果てに自らの理想を実現する一歩手前まで辿り着き、しかし結局は自らの手でその理想を捨て去った。
部品であることに耐えられなかった人間として、レイ・ザ・バレルはその短い命を終えた。

【方針】
アサシン本人はある程度の水準のパラメーターを備えているが、上級のサーヴァントに立ち向かうにはやや力不足。
クロックアップは強力だが大きなリスクを伴い、また他に戦闘において有用となるスキルを持たない。
それ故に、聖杯戦争を真っ向勝負で勝ち残ろうとするのは得策では無いと言わざるを得ない。
まずはNPCへの擬態によって人間社会に溶け込んだアサシンと共に、周辺の情報収集を第一とする。
マスターと思しき人物を発見次第、より入念な詮索を行い付け入る隙を見出し、討ち取る。


257 : 名無しさん :2015/07/29(水) 00:37:41 VMaZgvp.0
投下を終了します。


258 : ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:32:01 RuvB.QMc0
>カヤ&ゾフィス組
無尽蔵に魔力を使えるというのは、単純ながらも便利な能力ですね
ガッシュキャラの魔法はバリエーションも豊富ですし、
洗脳能力も相まって、いろんな使い方ができそうだなと思いました

>耀子&まどか組
アルティメットまどかとは予想外!
何気にライターも色も武器も一緒の組み合わせなんですよね
ある意味でまどかのためにと願った、ほむらと似たもの同士の耀子
今後どうなるか気になる組み合わせでした

>レイ&麗奈組
何者にもなれなかったレイと、何者にもなれないワームのコンビ
色んな意味で似合いの2人だと思いましたし、
何者でもないだけに、この先どう変わっていくかが楽しみなコンビだと思いました
擬態能力も色々応用ができそうですよね

自分も投下させていただきます


259 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:33:13 RuvB.QMc0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

「ひとつ答えて。あなたは何故、こんな戦いを挑んだの?」

 その少女は自分の行いが、正義であると信じていた。
 それがどれほどの犠牲を伴うものでも、正しいことだと知っていたからこそ、成し遂げなければならないと思った。
 少なきを殺し、多くを救う。
 いずれ世界の全てを飲み込む、最悪の絶望を回避し、人類種を滅亡から救う。
 それこそが彼女の正義であり、空っぽであった彼女自身が、存在している理由の証明であった。
 戦いの中で巡り会った、大切な友との世界を守る、唯一無二の手段であった。

「私の世界を守るため、よ」

 ああ、しかしなんという茶番だ。
 この光景は知っている。
 過ぎ去った時間と場所で起きた、この出来事は既に知っている。

「やれやれ、やってくれたね織莉子は」

 彼女を撃ち殺した女は、他ならぬ私自身の姿だ。
 私を見上げるこの視点は、私が殺した女のものだ。

「織莉子が最後に狙ったのはボクじゃない……壁の向こうにいた、彼女さ」

 こんな夢など見たくはなかった。
 こんな奴との出来事など、二度と思い出したくはなかった。
 私はあの女のことを、生涯許すことはないだろう。
 自分勝手な愛のために、私の愛を踏みにじったことを、決して許しはしないだろう。

「まどかぁぁぁぁっ!」

 奴は鹿目まどかを殺した。
 私の愛する最高の友を、無惨な屍へと変えた。
 私の愛を否定した奴を――私は、絶対に許さない。


260 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:34:14 RuvB.QMc0


「――自分の思い通りになった世界は、楽しい?」

 月夜の闇に、声が響く。
 囁くようなその声は、星のように淡く浮かび、やがて影に消えていく。
 ちょろちょろと鳴る水路の音に、声は静かにかき消されていく。

「そうね。苦労しただけのことはあったわ。
 帰ったら試しに、貴方のことを、世界から消してあげようかしら」

 橋の下には、人影があった。
 華奢な体格をした影と、頭ひとつ大きい長身の影だ。
 向かい合い静かに笑う顔は、どちらも、少女のものだった。
 されど少女のものとは思えない、妖しげな美しさがあった。 

「三つ子の魂百まで、ね。随分と時を繰り返したようだけど、貴方の本質は変わらなかった」

 長身の少女は、白かった。
 全身を純白のドレスに包み、プラチナブロンドの長髪は、夜風にふわふわと揺れている。
 海のように深い瞳は、もう一つの影を、嗤っていた。
 お前はそうすることしかできない。
 自分にとって都合のいいものを、わがままにねだることでしか、己を維持できないのだと。

「あら、意外ね。貴方には分かってもらえると思ったのだけれど」

 華奢な少女は、黒かった。
 学生服のその上では、漆黒のストレートヘアーが、艶やかな光を放っている。
 闇のように深い瞳は、もうひとつの影を、嗤っていた。
 愛を欲したのはお前も同じだ。
 人を愛し求める心を、私と共有した時点で、綺麗も汚いもないだろうと。

「どうかしら。少なくとも私は、パートナーの心を、無理やり意のままにしようとは思わないわ」

 それは本当の愛ではないと、白い少女はせせら笑う。
 互いを尊重し合ってこそ、健全な愛の形と言える。
 自分が愛した者の心を、都合よくねじ曲げてしまっては、そこには愛した者は残らない。
 ただこうあってほしいという、自分の願望の形が、肉を持って動いているだけだ。
 であれば、そこには愛という心など、どこにも介在しないではないかと。

「私は幸福を与えた」

 それは自由より尊いものだと、黒い少女は笑って返した。
 かつて存在した世界は、彼女を傷つけるばかりだった。
 そこには自由も喜びもなく、私達は世界の都合で、真っ二つに引き裂かれてしまった。
 だから私は新しい世界に、彼女を招き入れたのだ。
 彼女を苦しみから解放するには、それこそが最善であったのだと。


261 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:35:04 RuvB.QMc0
「詭弁ね」

 白い少女は一蹴する。
 その幸福は相手の口から、直接望まれたものではないだろうと。
 それを幸せと思うか、お前は尋ねて確かめもせず、幸福を押し付けただけだと。

「それは本当の幸福ではない。主観の身勝手な押し売りは、インキュベーター達と――、っ」

 一瞬、少女の顔が歪んだ。
 白い髪の下の白い頬に、じわりと脂汗が浮かんだ。
 その腹にぐいと押し込まれたのは、赤く染まった白い骨だ。
 見れば、死肉のこびりついた骨は、少女のドレスのところどころで、赤い染みを作っている。
 足元からつうと伝う血は、ウルズの泉から湧き出る泉を、赤色で穢し続けている。

「あの子にとっての幸せが、あの子の知るものだとは限らない」

 だからこそ彼女は苦しみ続け、孤独に囚われ続けたのだと。
 黒い髪の下の顔は、邪悪な愉悦に歪んでいた。
 ここは戦場の跡だった。
 白黒の少女達を襲ったのは、洗脳を得意とする魔術師だった。
 大勢のNPCが武装し、少女達へと襲いかかった。
 少女達はその有象無象を、顔色一つ変えることなく、皆殺しにしてみせたのだ。
 水路に散らばった屍も、拾われ少女を害する骨も、全てはその時に作られたものだった。

「無様ね、救世主(セイヴァー)」

 大仰な名前を名乗ったくせに。
 かつては私に歯向かったくせに。
 今は令呪の命令ひとつで、こうして動きを封じられている。
 私に逆らうなという命令を、破ることもかなわずに、醜く血を流し続けている。
 それがあまりにも滑稽だった。
 だからこそ少女はけらけらと笑った。
 宿敵、美国織莉子の醜態を、暁美ほむらは愉悦と共に、見上げて嘲笑い続けていた。

「貴方ほどではないわ」

 こんな下品な遊びに興じて、子供のように笑っている方が、よほど無様な格好だろうと。
 流れる血を気にもとめずに、セイヴァーのサーヴァントは笑った。
 昔のお前のあり方も、確かに気に食わなかったけれど、今のお前よりはマシだと。


262 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:35:58 RuvB.QMc0
「お気に召さないのなら、まぁいいわ」

 ほむらはそう言うと、織莉子に刺さった、一本の骨を指先で撫でた。
 骨は淡く光を放つと、闇へと溶けて消えていく。
 他の骨も同じように、次々とその存在をほどいて、夜の闇夜へと消え失せていった。

「それでも、貴方は戦うしかない。私の敵ではなく、奴隷として、私のために働くしかない」

 これからが楽しみねと言いながら、ほむらは光の方へと歩いた。
 ちゃぷちゃぷと水路を歩きながら、橋の影から外へ出た。
 聖杯。
 万能の願望機。
 月の光を仰ぎながら、その聖遺物へと思いを馳せる。
 確かにほむらの愛と因果は、世界を書き換えることには成功した。
 最高の友達である鹿目まどかを、円環の使命から解放し、暖かな日常を与えてやった。
 しかし不足だ。まだ世界は脆い。
 ふとしたことがきっかけで、神の介入を許しかねない、危ういバランスの上に成り立っている。
 だからこそ、補強が必要だった。
 願いを叶える聖杯は、その補強に割り当てるには、十分すぎるほどの存在だった。

「どれだけ長く続くかしらね」

 されど、織莉子は否定する。
 未来に思いを馳せる悪魔を、未来視の救世主は嘲笑う。

「逃げ続けるだけの貴方に、望みを掴むことはかなうのかしら」

 都合の悪い世界をやり直し続けた。
 都合のいい世界をでっち上げた。
 そんな脆弱な魂が、望みを手にすることができるのかと。
 その程度の人間であるほむらが、聖杯戦争を勝ち抜くことなど、本当にできるものなのかと。

「……貴方には分からないでしょうね」

 されど、ほむらはそう返す。
 笑みを顔から消しながらも、どうということはないという声音で、振り返りながら織莉子に言う。

「逃げ続けていることの方が、逃げられないことよりも苦しいということは」

 お前の言葉は、それを知らない、蒙昧な輩の戯言だと。
 地獄から逃れようとしながらも、何度も地獄に落ちた苦しみが、想像できるはずもないだろうと。
 ほむらはそれだけを告げると、自分の仮の住まいへ向かって、ゆっくりと歩を進め始めた。


263 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:36:41 RuvB.QMc0


 実を言うと、ほむらの創った世界に不満はない。
 魔女を生み出さないシステムはそのままな上、インキュベーターを支配下に置き、行動を制限している世界だ。
 むしろ織莉子が生きた時間よりも、より安全になったと言えるだろう。
 問題点を挙げるなら、暁美ほむらの在り方が、とてつもなく気に食わないくらいだ。

(では、その世界で何を願うか?)

 仮に聖杯が手に入ったのなら、自分は何を願うだろう。
 きっとそれはできないだろうが、聖杯をマスターのほむらではなく、自分が使えたとするなら、そこに何を望むのだろう。
 平和な世界で何をなすか。あるいはかつての世界をどうこうするか。
 美国織莉子は霊体化し、すっかり治った体を動かしながら、そんなことを考えていた。

(……これといって、思いつかないわね)

 それでも、結論は出なかった。
 もとより織莉子には未練などないのだ。今更現世をどうこうしようなど、美国織莉子には考えられない。
 市議会議員の娘として、人間の欲の醜さを見てきた織莉子には、そうした願いをかける気にはなれなかった。

(まぁでも、強いて言うのなら……)

 それでもひとつだけ、思い当たるものはある。
 それは願いや欲望と呼ぶには、あまりにもささやかなものではあった。
 死によって永遠に分かたれた、最愛の親友との再会という、ほんのささやかな願いだった。

(貴方とまた一緒になれるなら、悪くないかもしれないわね)

 呉キリカ。
 織莉子の最高の友達。
 引き裂けかかった彼女の心を、繋ぎ止めてくれた親友。
 どんな姿に成り果てても、決して織莉子を裏切らなかった、彼女の最愛最強の守護者。
 その顔をもうひと目見られるのなら、悪くないかもしれないと思った。
 ほむらのように大それた願いを、今更かけるつもりはない。
 ただ、どんな場所でもいいから、また二人でテーブルを囲んで、お茶ができればそれでいいのだ。
 織莉子はそんな風に考えながら、見えない体で石畳を歩き、暁美ほむらの後に続いた。


264 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:37:47 RuvB.QMc0


 最悪の手駒を引いたと思った。
 強さ弱さの問題ではなく、それが美国織莉子であることが、何よりも受け入れがたいことだった。
 暁美ほむらにとっての織莉子は、最大最悪のトラウマの一つだ。
 ワルプルギスの夜を打倒しうる、最大級のチャンスの目前で、まどかを殺害した仇敵だ。
 打たれ弱いマミや面倒くさいさやかのように、扱いづらいと思った相手はいくらでもいる。
 それでも、そこまで憎らしいと思ったのは、インキュベーター以外では、それこそ織莉子くらいのものだった。

(それが救世主だなんて)

 セイヴァーのクラスなどとは笑わせると、ほむらは内心で吐き捨てる。
 確かに事情を知らぬ大勢にとって、織莉子は救世主であったかもしれない。
 最悪の魔女到来の可能性を、完全にゼロにできたのは、紛れもなく大きな功績だ。
 しかし、そんなものは、当のマスターであるほむらにとっては、何の意味もない事実だった。
 まどかをその手にかけた時点で、むしろ最悪の反逆者だ。
 顔も知らぬ者達のために、まどかを犠牲にすることなど、到底許されることではない。
 円環の理すらも否定するほむらにとって、まどかの死とは、自分の死と同等以上に、受け入れがたいものだった。

(まぁいいわ)

 それでも、ここはしばしの我慢だ。
 既に貴重な令呪を使って、織莉子の反抗の意志は摘み取っている。
 奴がどれほど否定しようと、忠実な奴隷(サーヴァント)になったことは間違いないのだ。
 ならばせいぜい、短い聖杯戦争の間は、利用させてもらうとしよう。
 ほむらが創り出した世界を、より完璧なものとするために。
 神の残酷なルールからも、最愛の彼女を守れるように。

(そうすれば、今度こそ貴方は救われるわ。まどか)

 手の甲に浮かんだ令呪をなぞる。
 赤いトカゲのエンブレムに触れる。
 それは神の子を孕んだ聖母であり。
 神に唾吐く反逆者でもあった。


265 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:38:27 RuvB.QMc0
【クラス】セイヴァー
【真名】美国織莉子
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
カリスマ:E
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、人より優秀な程度ではEランクにしかならない。

対英雄:D
相手のパラメータの一部をランダムで1ランクダウンさせる。

【保有スキル】
直感:EX
 戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
 高位の直感スキルは未来予知に近いと言われているが、織莉子のそれは完全な未来予知である。
 後述する宝具『森羅の観測者(オラクルアイ)』に由来するスキル。

戦闘続行:A
 魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。

話術:C
 言論にて人を動かせる才。
 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。

反骨の相:D
 一つの主君を抱かぬ気性。 同ランクの「カリスマ」を無効化する。
 人類にとっての救世主の名は、魔法少女にとっては反逆者の名である。


266 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:39:35 RuvB.QMc0
【宝具】
『福音告げし奇跡の真珠(ソウルジェム)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 織莉子を始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 織莉子の固有武器は宝珠であり、空中に浮遊する宝珠を、自在に操ってぶつける。
 固有魔法は未来予知。その規格外の性能から、独立した宝具としてカウントされている。

『森羅の観測者(オラクルアイ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 織莉子の固有魔法。その規格外の特性は、スキルを超え宝具の域にまで到達している。
 その特性は完全なる未来予知。近くは一瞬先、遠くは一月先まで、未来に起こる事象を観測することができる。
 常時発動しオートで予知を受け取ることもできるが、その間は魔力を消費し続けるため、魔力残量が気になる場合は推奨できない。
 生前の織莉子は、予知のオンオフを切り替えることができず、魔力の消耗に悩まされていたという。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて見滝原市で暗躍していた、魔法少女殺しの魔法少女。
その真の目的は、いずれ世界を滅ぼすことになる、最悪の魔女の母体・鹿目まどかの抹殺。
高名な父の付属品でしかなかった自分自身の、存在意義の証明のため、そして何より大切なものを守るために、
彼女は犠牲を伴う救済の道を歩み、遂にその生涯の果てで、己が目的を達成した。
血塗られた英雄譚の主役は、人知れず惑星規模の災厄を回避した、人類種の救世主である、

良家のお嬢様らしく、穏やかで上品な物腰をしている。
しかし自らの目的のためなら、いかなるものも犠牲にできる、冷酷なまでの正義感の持ち主でもあった。
とはいえその選択に耐えられるほど、図太い神経は持ちあわせておらず、
自らが殺めてしまった命の重さに、苦悩することもあったという。
才色兼備な優等生だが、ところどころで抜けており、天然な発言やうっかりミスが飛び出すことも。

未来を見通す力を持つが、それだけではどれほどの作戦をシミュレートしても、現実では一度きりしか試すことができない。
それ故にほむらの時間遡行を、「自分だけの時間に逃げ続ける」安直な道であると非難していたが、
絶望的な現実を繰り返す苦しみを、彼女もまた理解してはいない。
また、生前にはこの未来予知を、完全に制御することはできておらず、それにより常に魔力の消耗に悩まされていた。
このため戦闘に割けるリソースが少なくなっており、それが自分の代わりに戦う協力者を求めることにも繋がっていたという。
それでも本気で戦うことができれば、魔女の軍団を一掃するなど、相応の戦果を上げられる実力を誇る。
人心を操る巧みな話術や、ベテランの魔法少女すら射竦める気迫など、戦士としてだけでなく人としても強い人物。
必殺技は、宝珠に光の刃を付与し、敵を刺し貫く「オラクルレイ」。

【サーヴァントとしての願い】
「私の世界」を取り戻したい

【基本戦術、方針、運用法】
未来予知という特性をどう使うかが、そのままこのサーヴァントの強さに直結する。
殴り合いには適さないので、予知した敵の攻撃を上手くかわしつつ、遠距離から制圧することを心がけたい。
もちろん戦闘以外にも、マスターにとって有利となる使い方は多々あるが、両者の関係は最悪であるため、そういう使い方をしてくれるかどうかは疑問が残る。


267 : 暁美ほむら&セイヴァー(エクストラクラス)組 ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:40:31 RuvB.QMc0
【マスター】暁美ほむら
【出典】[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲(トカゲを模したデザイン。一画消滅している)

【マスターとしての願い】
聖杯の力によって、自身が構築した世界をより完全なものとする

【weapon】
ダークオーブ
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 魔法少女を超え、魔女を超え、悪魔となったほむらの本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 魔力の消耗こそあるものの、既に呪いよりもおぞましい色に染まりきっているため、決して穢れることはない。

【能力・技能】
悪魔
 無間の地獄を渡り歩き、無限の因果を重ねた少女が、その果てに辿り着いた姿。
 魔女を生み出す絶望よりも、更に強い愛の感情により、魔女の更に先へと進化した姿である。
 更に円環の理に干渉し、創世の力の一部を簒奪したことで、その力はより強く高められている。
 かつて魔法少女であった頃のほむらは、翼を生やし飛翔する固有魔法を駆使し、弓矢による遠距離戦闘を行っていた。
 それがいかなる願いにより結実した魔法であったのかは、今となっては定かではない。

武器取り扱い
 銃器や爆発物を扱う技術。
 ループを続けていた頃のほむらは、攻撃用の武器を持っていなかったため、
 現実の銃火器を介して攻撃を行っていた。

【人物背景】
遠い時代に、鹿目まどかと出会い、魔法少女となった少女。
強大な魔女に全てを奪われ、全てのやり直しを願ったほむらは、時を巻き戻す魔法を手にする。
度重なる時間遡行の中で、身と心をすり減らした果てに、彼女は神となったまどかによって、新たな世界を託された。
しかし孤独に耐えかね、限界を迎えたほむらのジェムは、穢れに染まり魔女と成り果ててしまう。
そんなほむらを救うため、再び現れたまどかを前にしたほむらは、決意を新たにし絶望に立ち向かうことを決意するのだが……
……それはまどかの願いをも否定し、彼女と共にいることのできる、新たな世界を創り出す決意だった。

人付き合いが下手で、不器用な性分。
様々な体験を経て、その時期ごとに、性格は微妙に変化しているのだが、この部分だけは一貫している。
諦めざるを得なかったまどかを取り戻し、現在は喜びの絶頂の中にいるが、
その手段がまどかにとっては、受け入れがたいものであることも理解しており、
いつか敵対しなければならない時が来ることを予感している。

神を貶め、「魔」なる者となったほむらの力は、魔法少女の域を超え、世界の歴史すら書き換えるほど。
しかし彼女が手に入れたのは、神の力の一部でしかなく、
その世界もまた、今にでも神の手によって、再び奪還されかねない、危ういものとなっている。

【方針】
優勝狙い。なんとしても聖杯を手に入れる。


268 : ◆nig7QPL25k :2015/07/30(木) 00:42:25 RuvB.QMc0
投下は以上です
暁美ほむら@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語&セイヴァー(美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ)組でした


269 : ◆nig7QPL25k :2015/08/01(土) 00:16:07 6HyWqE0w0
8月1日となったので、暫定のコンペ締め切り日を発表させていただきます
今のところ、本企画のコンペは、8月20日いっぱいで〆とさせていただきます
状況によっては前後する可能性もありますので、ご了承ください


270 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/01(土) 13:29:30 Szcodk8I0
締め切り了解しました

投下させていただきます


271 : ヘッポコ丸&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/01(土) 13:30:29 Szcodk8I0
(ついてねえなあ……)

路地裏に血まみれで転がりながら、少年は胸の奥でそう呟いた。


少年の名は、ヘッポコ丸。
この聖杯戦争に参加させられた、マスター候補の一人である。
彼にとって不幸だったのは、記憶を取り戻し令呪が右手に宿った瞬間を他のマスターに見られてしまったことである。
そのマスターはすぐさまヘッポコ丸に襲いかかり、瞬く間に彼は血祭りにあげられてしまったのであった。

「サーヴァントがいないマスターを潰せる機会なんて、滅多にねえからなあ。
 このチャンスを見逃すわけにはいかねえんだよ。運が悪かったな、坊主」
「私個人としては、こういうやり方は好きではないのだが……。すまんな」

チンピラにしか見えない風貌のマスターと、セイバーと思わしき大剣を携えたサーヴァントがヘッポコ丸ににじり寄る。
もはやこれまでと、ヘッポコ丸は腹をくくった。
その瞬間、空から何かが降ってきた。
その何かは凄まじい速度で地面に激突し、余波で襲撃者達を吹き飛ばした。

(ミ、ミサイル!?)

ヘッポコ丸は当初、そう考えた。落ちてきた流線型の物体が、そう見えたからだ。
だが彼はすぐに、自分の考えが間違っていたことを知らされる。

「私のマスターに危害を加えることは許さない! なぜなら私は魚雷だから!」

その物体は、しゃべった。
よく見ると兵器そのものの体には、女性的な顔が付いている。ついでに、手足もだ。

(なんだこれー!? あ、あれ、バーサーカー……? これ、サーヴァント?
 俺のサーヴァント、これなの!?)

困惑するヘッポコ丸だったが、送られてくる情報が彼のサーヴァントこそ目の前の奇妙な物体であることを教える。

「くそっ、間に合わなかったか……。しょうがねえ、やっちまえ!」
「了解した。しかしこれは面妖な……」

一方襲撃者達は、体勢を整えてバーサーカーに勝負を挑もうとする。しかし……。

「しゃらくさいわー!」

バーサーカーの突撃一発で、どこかへと吹き飛ばされてしまった。

「え、えーと……。はじめまして。助けてくれて、ありがとうございます」

状況のめまぐるしい変化に戸惑いつつも、なんとか言葉を紡ぐヘッポコ丸。
だがそれに対し、バーサーカーはいぶかしげな表情を浮かべる。

「はじめまして? 何言ってるのよ、ヘッポコ丸」
「え? お、俺のこと知ってるんですか?」
「何をバカな……。あら? あなた、私の知ってるヘッポコ丸じゃないみたいね」
「はい?」

バーサーカーの言っている意味がわからず、ヘッポコ丸はますます混乱していく。

「まあいいわ。ヘッポコ丸がヘッポコ丸であることに変わりはないものね。
 あなたは私が守ってあげるわ。なぜなら私は魚雷だから!」
「意味わかんねー!」

やっぱり自分はついてない。改めてそう思うヘッポコ丸であった。


272 : ヘッポコ丸&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/01(土) 13:31:25 Szcodk8I0

【クラス】バーサーカー
【真名】魚雷ガール
【出展】ボボボーボ・ボーボボ
【性別】女性
【属性】混沌・狂

【パラメータ】筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:E 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
狂化:E
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。
 彼女の場合ランクが低いため能力強化の度合いはわずかだが、その代わり言語機能は失われていない。
 ただし、「まともに言葉が話せる」のと「会話が成立する」のはまた別問題である。


【保有スキル】
戦闘続行:C
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

極悪斬血真拳:C
 超常の力を秘めた戦闘術・「真拳」の一つ。
 もう一つの姿であるOVERの使う技は刃物で敵を切り裂く名前に合ったものだが、
 彼女の場合はその場のノリで繰り出す攻撃とほぼ同義。
 故に全体的な戦闘力では勝るが、真拳の完成度では劣っている。

理不尽:E
 世界の法則をねじ曲げてでも、自分に有利な現象を引き起こす能力。
 それを許容する世界でなければ効果を発揮しないため、ユグドラシルに現界した時点でランクが大幅に落ちている。
 この世界ではせいぜい「不可能ではないが、常識的に考えてまず起こりえない現象を起こせる」程度の能力である。

変身:―
 自らのカタチを変えるスキル。
 バーサーカーは本来もう一つの姿を持つが、「狂化」の影響でこのスキルは封じられている。

【宝具】
『ボケ殺し(コメディクラッシュ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:3人
数多のハジケリストを葬ってきた、必殺の一撃。
ふざけた態度を取った相手に対して放たれる突進で、「心眼」などのスキルを持っているか幸運値が高くなければ回避はほぼ不可能である。
ふざけているかどうかはバーサーカーの主観で判断され、
なおかつ現在の彼女は「狂化」で判断基準が無茶苦茶になっているため事前に発動を予測することも困難である。

【weapon】
特になし

【人物背景】
マルハーゲ帝国四天王・OVERの真の姿。
巨大な魚雷に顔と手足が付いた姿をしている。
ツッコミを究極まで極めた「ボケ殺し」一族最後の一人で、「おふざけは絶対に許さない!」がポリシー。
ボケの塊であるボーボボ達を大いに苦しめるが、惜敗。
その後ボーボボの仲間であるソフトンに惚れ込み、仲間に加わる。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。

【基本戦術、方針、運用法】
突撃あるのみ。
そもそも魔力に乏しい一般人マスターと魔力消費の大きいバーサーカーは燃費的に相性最悪なので、短期決戦で相手を仕留めるしかない。


273 : ヘッポコ丸&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/01(土) 13:32:38 Szcodk8I0

【マスター】ヘッポコ丸
【出典】ふわり!どんぱっち
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
正直よくわからないが、とりあえず死にたくない。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
特になし。本当に彼は、単なる普通の少年である。

【人物背景】
サッカー部に所属する、ビュティの同級生。
彼女に想いを寄せているが、なかなかアプローチを仕掛けられない。
別の世界の彼とは違い、戦闘力は一切無い。

【方針】
流されるがまま。


274 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/01(土) 13:33:15 Szcodk8I0
投下終了です


275 : ◆nig7QPL25k :2015/08/02(日) 14:52:37 kBnBtUsM0
>ヘッポコ丸&魚雷ガール組
あー、なるほど! 一瞬読切版へっくんかと思ったら、ふわり版か!
これは全然世界観が異なる作品同士だからこそできる組み合わせですね
魚雷ガールは原作からしてああなので、書くのもとても楽しそうです

そして、遅くなりましたが、本企画のまとめWikiが用意できました
ご利用ください

ttp://www9.atwiki.jp/yggdrasillwar/


276 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/04(火) 20:49:42 j2Cbw6Fg0
wiki乙です!

投下させていただきます


277 : プレシア・テスタロッサ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/04(火) 20:50:35 j2Cbw6Fg0
そこは、小さなおもちゃ屋だった。
店主は見目麗しい熟女。最近、十代半ば頃の少女が店員として働くようになった。
平和に日常を過ごしているかに見える彼女達だったが、実は聖杯戦争のマスターとサーヴァントであった。

「グレちゃん、これを棚に並べておいて」
「ん……」

プレシア・テスタロッサは、温厚な一般人であった。
記憶を取り戻し聖杯戦争に参加させられた事実を知った後も、積極的に戦うことはせずこうやって店の経営を続けていた。
元の世界に残してきた二人の娘のことは気がかりだが、それでもなかなか積極的に戦う気にはなれなかった。
実際には一度他の主従に襲われ迎撃しているのだが、その時に覚えた戦闘への恐怖心がいっそうそうさせているのかもしれない。

一方で、サーヴァントの方は日に日に不満を募らせていた。

「はぁ……」
「どうしたの、グレちゃん。どこか具合悪い?」
「ゲームがやりたい……。アナログゲームもたまにやる分には面白いけど、これしかないのは辛すぎる……。
 有○課長だってこんな苦行には挑まない……」

アーチャーとしてプレシアの元に召喚された少女・グレちゃんは、重度のゲーム廃人であった。
しかしこのユグドラシルは、科学技術の発達していない世界。
ゲームと言ってもチェスやらスゴロクやらアナログな物しか存在しない。
いちおう魔力を利用したそれらよりも高度なゲームもあるのだが、その程度ではグレちゃんを満足させることはできなかった。

「マスター、やっぱりこの聖杯戦争、さっさと終わらせよう。
 街を全部破壊しちゃえば、他のサーヴァントも全滅して僕たちの勝ちだよ」
「もう、ダメよグレちゃん。女の子がそんな怖いこと言っちゃ」

うつろな目で物騒なことを呟くグレちゃんを、プレシアは穏やかな口調でたしなめる。

「それに、私の魔力はそんなに多くないんだから。この街を全部壊そうなんてしたら、魔力が足りなくなっちゃうわよ?」
「僕には光子力があるから大丈夫。光子力はみんなを幸せにする、夢のエネルギー」
「夢のエネルギーで街を壊しちゃダメでしょ……」

冷や汗を浮かべるプレシアであったが、その表情はどこか楽しげにも見えた。

「やっぱり、あなたと会話してると娘達のことを思い出すわ……。
 ねえ、グレちゃん。もし聖杯が手に入ったら、私の世界に来てみない?
 フェイトもアリシアも、とってもいい子なのよ。ぜひ会ってほしいわ」
「……考えておく。マスターの世界のゲームにも、興味あるし」
「楽しみにしてるわね♪」

客のいない店内に、暖かな空気が流れる。
いつまでもこんな日々が続かないことは、二人もわかっている。
彼女達は、闘争の渦中にいるのだから。
だがそれでも、今はまだ……。


278 : プレシア・テスタロッサ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/04(火) 20:51:28 j2Cbw6Fg0

【クラス】アーチャー
【真名】グレちゃん
【出展】ロボットガールズZ
【性別】女性
【属性】混沌・中庸


【パラメータ】筋力:C 耐久:B 敏捷:C 魔力:E 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクDならば、マスターを失ってから半日間現界可能。

【保有スキル】
直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

光子力:A
 強大な力を秘めたエネルギー。
 科学の産物でありながら謎が多すぎて神秘を秘めているという、矛盾した存在である。
 「魔力放出」に類似した効果を持つが、魔力を消費しない代わりに使用後ステータスが一時的に低下する。

【宝具】
『勇者の雷(サンダーブレーク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:5人
指先から放たれる、強力な電撃。
グレちゃんにとっては、ロボットガールズとしての自分を象徴する技である。
神秘性に乏しいため宝具としてのランクは低めだが、物理的な破壊力はかなり高い。

【weapon】
ブレーンコンドル
 戦闘機の形をした変身アイテム。
 これを頭上に掲げることでロボットガールズに変身する……はずなのだが、基本的に日常生活でも変身しっぱなしである。
 一説によるとかつて彼女が通っていた学園の非常勤講師・剣つくるから託されたものらしい。

ブレストバーン、アトミックパンチ、マジンガーブレードなど
 武装というか技というか。
 グレートマジンガーの武装はだいたい使える。

【人物背景】
光子力町の平和を守る「ロボットガールズ・チームZ」のメンバー。
グレートマジンガーの力を操る。
マイペースで無愛想。基本的にやる気に乏しいが、いざ戦闘になれば敵には容赦が無い。
重度のゲーム廃人で、暇さえあればいつも携帯ゲームをプレイしている。

【サーヴァントとしての願い】
早く聖杯戦争を終わらせて、退屈なこの世界から去る。

【基本戦術、方針、運用法】
ステータスだけ見るとあまりパッとしないが、豊富な武装はなかなか強力。
いざというときの「光子力」によるブーストも侮れない。
アーチャーだが射程はそんなに長くないので、耐久にものを言わせての肉弾戦もありである。


279 : プレシア・テスタロッサ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2015/08/04(火) 20:52:36 j2Cbw6Fg0

【マスター】プレシア・テスタロッサ
【出典】魔法少女リリカルなのはINNOCENT
【性別】女性
【令呪の位置】右の鎖骨あたり

【マスターとしての願い】
グレちゃんを自分の世界に招く。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
特になし。店を経営できるだけの経営力、社交性はある。


【人物背景】
いとこのリンディ・ハラオウンと共に「ゲームショップT&H」を経営する女性。
娘のアリシアとフェイトを溺愛しており、彼女達のことになると常軌を逸した行動に出ることもある。

【方針】
聖杯戦争を早く終わらせて娘たちの元に帰りたいが、戦うことへの恐怖もありどっちつかずの状態。


280 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/04(火) 20:53:07 j2Cbw6Fg0
投下終了です


281 : ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 02:31:17 tlZgdpNI0
>>275
WIKI作成お疲れ様です。
拙作の葛葉紘汰&セイバー を収録したのですが、ステータスの説明文の重複など修正させていただきました。
また、スキル空白の席の主:A につけ忘れていた情報隠蔽効果を加筆させていただきました。
加筆が不味いようでしたら元の形へと戻させていただきます。


282 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/07(金) 20:49:46 qppfBXNM0
投下します


283 : 徳川光成&アヴェンジャー(エキストラクラス) ◆NIKUcB1AGw :2015/08/07(金) 20:50:41 qppfBXNM0
夜の自然保護区。そこで二人のサーヴァントによる戦いが行われていた。
決着はすでについている。勝ったのは日本刀を手にした、壮年の男だ。
刃を手にしていても、彼はセイバーではない。
彼はエキストラクラス・復讐者(アヴェンジャー)のサーヴァントだ。

「いやあ、いいものを見せてもらったわい! これが幕末の剣豪の強さか!
 こんなものを見られるとは、本当に聖杯戦争様々じゃ!」

ふいに、場の雰囲気にそぐわない陽気な声が響く。
声の主は、アヴェンジャーのマスターである小柄な老人である。
名は、徳川光成。元いた世界では、日本を裏から牛耳る影の権力者だった男。
そして、闘争の魔力に取り憑かれた男だ。

子供のようにはしゃぐ主に、アヴェンジャーは冷めた視線を送っていた。
彼のマスターに対する評価は、決して高くない。

(聖杯戦争を剣術興行か何かと勘違いしているのか、この老人は……。
 こんなことで、この先の戦いを勝ち残っていけるのか?
 魔力も乏しいせいで、宝具の使用にも支障が出るしな……)

険しさを増すアヴェンジャーの表情。
だが彼は首を振り、おのれの考えを修正する。

(だがそれでもこの老人は、徳川家の末裔だ。
 一度は徳川幕府に忠誠を誓った身として、無碍に扱うわけにはいかんだろう)

刀を鞘に収め、アヴェンジャーは改めてマスターへ向き直る。

「主よ、そろそろ帰るとしよう。老体に夜風は堪えよう」
「む、わしはまだまだ大丈夫じゃが……。お主がそう言うなら引き上げるとするかのう。
 まだ先は長そうじゃし、焦ることはないか」

素直にアヴェンジャーの言葉を受け入れ歩き出す光成に、アヴェンジャーも付きそう。
ふと、彼は自虐的な笑みを浮かべている自分に気づいた。

(人間を滅ぼそうと決意したはずの俺が、ここで再び人間に従っている……。滑稽なことだ。
 だが、それも聖杯を手にするまでだ。聖杯の力を手に入れた、その時こそ……!)

消えぬ憎悪を胸に抱き、アヴェンジャー……土方歳三は闇の中を歩く。


284 : 徳川光成&アヴェンジャー(エキストラクラス) ◆NIKUcB1AGw :2015/08/07(金) 20:51:31 qppfBXNM0

【クラス】アヴェンジャー
【真名】土方歳三
【出展】ドリフターズ
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメータ】筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
アヴェンジャーにクラススキルは存在しない。

【保有スキル】
カリスマ:E+
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 アヴェンジャーは生前のカリスマに加え、廃棄物となったことにより人外の者に対してより強いカリスマを発揮できる。

軍略:D
 多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
 自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

精神汚染:D
 精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。

【宝具】
『朽ちた誠の旗(サムライ・ハート)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:200人
新撰組の隊長格が必ず所有しているという宝具「誠の旗」が、廃棄物としての土方の能力と融合して変化したもの。
志半ばで散っていった新撰組の同胞達を召喚し、使役する。
本来の「誠の旗」で召還された隊士は独立したサーヴァントとして扱われるが、
この宝具では実体の曖昧な怨霊としてしか呼び出せず、自我も半端にしか持っていない。

【weapon】
日本刀
 もはや本人も銘を覚えていないであろう、一振りの刀。

【人物背景】
江戸時代末期に活躍した「新撰組」の副長。
多くの世界では戊辰戦争終盤に北海道で戦死したが、ここにいる彼はその間際に異世界へと呼び込まれた。
その世界で彼は人間を憎む怪物「廃棄物(エンズ)」と成り果て、人類滅亡を掲げる黒王の配下につく。
廃棄物となったことで人間性は薄れているが、侍であることへの執着や幕府を滅ぼした島津家への敵意は未だ健在である。

【サーヴァントとしての願い】
人間を滅ぼす。

【基本戦術、方針、運用法】
宝具は強力だが、マスターが一般人である以上乱発はできない。
歴戦の経験を活かし、地道に剣技で勝ち星を稼いでいくのが得策であろう。


285 : 徳川光成&アヴェンジャー(エキストラクラス) ◆NIKUcB1AGw :2015/08/07(金) 20:52:13 qppfBXNM0

【マスター】徳川光成
【出典】刃牙道
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
サーヴァント達の戦いを、目に焼き付ける。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
特になし

【人物背景】
「水戸黄門」として有名な徳川光圀の子孫。
時の総理大臣が当然のようにひざまずく影の権力者であり、東京ドーム地下闘技場の責任者でもある。
強者同士の戦いを見るのが、何よりも楽しみ。
そのためには金に糸目をつけず、時に倫理をも投げ捨てる。

【方針】
アヴェンジャーと他のサーヴァントとの戦いを楽しむ。


286 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/07(金) 20:52:55 qppfBXNM0
投下終了です


287 : ◆c92qFeyVpE :2015/08/08(土) 20:02:28 wb380L5c0
投下します


288 : シノン&アーチャー ◆c92qFeyVpE :2015/08/08(土) 20:03:22 wb380L5c0
幾重もの剣筋がアーチャーを襲う。
アーチャーも異形の片手剣で受けているが、技量の差は明らかだ。
アーチャーの技量が低いんじゃない、相手の男が最早剣技の域を越えた、異常な剣筋をしている。
私の眼にはしっかり受けているように見えるのに、アーチャーの腕に、顔に、何本も赤い線が生まれる。

「アーチャー!」

アーチャーへ呼びかけながら、私は持っていたH&K MP7A1――PDWを相手の男……サーヴァントへと向けた。
サーヴァントにこんな銃火器は効果がないのだろうが、それでも牽制程度にはなるかもしれない。
そう考え、引き金を引く―――いや、引こうとした。

「―――っ! なん、で……!?」

その瞬間、私の全身を冷気が包んだ。
両足から徐々に力が抜けていく。平衡感覚が遠ざかる。
周囲の光景から色彩が失われ、自らが構えたPDWから眼が離せなくなる。

「マスター!?」

おかしい、こんなはずはない。
だって、今の私は<シノン>なんだ。
それなのに、『あの銃』ですらない自分の銃に、何故私は―――

「戦う気概も無い奴が! 戦場にしゃしゃり出てくるんじゃねぇ!」

男がこちらへ向かって来るのが見える。
だけど、ダメだ。
足も、手も、指一本すら動かせない。
せめて倒れこまないように、そうするのが精一杯で、男が剣を振りかぶるのをただ見ていることしかできない。

「マスター―――!!」

アーチャーの声が遠く聞こえ。
そこで、私の意識は途絶えた。





「……キミならきっと、マスターの苦しみを解消してあげられるんでしょうね」

ベッドで眠るシノンへと視線を向けながら、アーチャーのサーヴァント、シエル・アランソンは呟いた。
敵のサーヴァントから辛うじて逃亡し、拠点としている家まで無事に戻れたのは幸運であったとしか言いようがない。
敵の眼前で気を失ってしまったシノン、その原因が銃に対するトラウマであることはわかっている。
シノンは過去にあった事件のせいで銃に強いトラウマを持っている、それでも今の、<シノン>の姿であればそれも克服できていると。
そう聞いていたのだが、どうやらシノン自身にもわかっていない現象が、彼女の身に起きているらしい。

「マスターに必要なのは、本当に私だったんでしょうか……?」

ここにいるのが自分でなければ、シノンのトラウマに対して何かしてあげられたのではないだろうか。
そう彼女は考えてしまう。
呼び出されたのが共に戦った仲間たちならば、何かできることがあったはず。
ナナのような明るさがあれば、ギルバートのような厳しさがあれば……隊長のような、全てを任せられる器があれば。
自分には何も思い浮かばない、シノンへとかけるべき言葉を見つけられたかもしれない。

「……ダメですね、こんな考え方では。
 キミに、いえ、みんなに笑われてしまいます」

何度か頭を振って、弱気な考え方を振り払う。
深く考えこんでいても仕方がない、今はシノンを守るために戦うのみだ。
誰かを守るための戦い、それはブラッドとして戦っていた頃となんら変わらない。

「命令よりも、自分よりも……守りたい、大切なもの……ですよね」


289 : シノン&アーチャー ◆c92qFeyVpE :2015/08/08(土) 20:04:00 wb380L5c0
【クラス】アーチャー
【真名】シエル・アランソン
【出典】GOD EATER 2
【性別】女性
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:C+ 魔力:D 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:E
 無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
ブラッド:A
 『血の力』の保有者。彼女の力は『直覚』。
 敵の行動状態や残り体力を感じ取ることができる。

千里眼:C
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 彼女の狙撃は目標を外すことがない。

セルフコントロール:A
 常に仲間を回復するための回復弾を用意しておくスキル。
 いかなる状況でも回復弾を使用でき、また、銃撃の際の消費オラクルを軽減する。

戦闘続行:B
 戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】
『捕食形態(プレデターフォーム)』 
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
 神機の使い手を「ゴッドイーター(神を喰らう者)」と呼称する由来。
 神機の刀身の根本から先端までを飲み込むように巨大な顎のような身体が現れ、相手の身体の一部を「喰らい」その力を取り込む。
 オラクル細胞を持たない相手では「アラガミバレット」を得ることはできないが、相手の魔力を取り込むことで『神機解放』へと繋げることは可能である。

『神機解放(バーストモード)』 
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 捕食に成功し、生きた相手の力を取り込んだゴッドイーターが一時的に身体強化された形態。
 筋力・敏捷のステータスが1段階上がり、空中での2段ジャンプが可能となる。
 持続時間は短いが、捕食を繰り返すことで持続時間の延長が可能。

『BB・貫通識別爆発弾(ブラッドバレット)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜70 最大捕捉:1人
 ブラッド同士の感応波の共鳴によって、オラクルバレットに特殊効果が付与された弾丸。
 敵を貫通し、射線上の全ての敵・地形へ爆発属性のダメージを与え、味方を透過する銃弾となる。

【weapon】
神機
 オラクル細胞で構成された対アラガミ用武装。
 シエルが使う物は剣形態と銃形態とを自由に切り替えられる神機変形(フォームチェンジ)を備えた「新型」である。
 それぞれの形態に色々な種別があるが、シエルの場合剣形態ではショートソード、銃形態では狙撃型を使用する。

【人物背景】
 対人格闘や銃撃といった戦闘力、また豊富な知識量に基づくデータ分析などの情報力を兼ね備えるエリート。
 だが一方で社交的なことをやや苦手としており、また冷静な判断力故に自身の感情すら客観的に見えてしまう。
 しかしバレットエディットに関しては別で、バレットの事になると饒舌になるなど年相応の可愛らしい一面も見せる。
 主人公のその才能と温かさに見入れ、最初の友達を主人公とし、
その後は非常にやわらかな物腰になり、堅苦しさは消え、物事を理論的にではなく心で捉えるようにもなる。

【サーヴァントとしての願い】
 アラガミを消し去る

【基本戦術、方針、運用法】
 基本はアウトレンジからの銃撃。
 接近する場合は『捕食形態(プレデターフォーム)』が狙える時を見極めたい。


290 : シノン&アーチャー ◆c92qFeyVpE :2015/08/08(土) 20:04:59 wb380L5c0
【マスター】シノン(朝田 詩乃)
【出典】ソードアート・オンライン
【性別】女性
【マスターとしての願い】
銃へのトラウマを克服したい

【weapon】
ウルティマラティオ・へカートII
 ボルトアクションの対物ライフルで、約1,800m以上での射撃を想定して設計された。

H&K MP7A1
 携行性および隠匿性に特化したPDW。
 シノンは接近された際のサブウェポンとして使用している。
 余談だが、アニメ版ではグロック18に変更されている。

【能力・技能】
狙撃
 遠隔狙撃に特化したアビリティを複数装備している。

トラウマ
 過去の事件により生まれた銃器への強いPTSD。
 本来GGOでのシノンの姿では発作が起きないはずだが、この電脳空間ではシノンと朝田 詩乃が混在し、
 銃器を見るだけならば平気だが、実際に撃とうとすると強い拒否反応が出るようになっている。

【人物背景】
 幼い頃に父が交通事故で他界。母もその時に精神年齢が逆行したことから、母を守らねばという義務感を強く抱くようになった。
 そのためか自立心が強く同世代と比べても非常に大人びた性格で、辛辣かつドライな物言いをすることが多い。
 11歳時に郵便局で強盗事件に巻き込まれ、母を守るため犯人から拳銃を奪い射殺してしまう。
 このことから銃器に対する強いPTSDに悩まされるようになり、トラウマの克服を狙ってGGOを始めた。
 現在ではGGOプレイ時には発作が起きなくなり、銃器に対する愛着すら生まれ始めているが、現実世界でのトラウマの克服までは至っていない。また、法的に罰せられこそしなかったが、事件に端を発するイジメや恐喝を受けており、それらから逃れるため、高校は東京の進学校に進み、文京区湯島のアパートで一人暮らしをしている。

【方針】
人を殺したくはない
なるべくサーヴァントのみを狙う


291 : ◆c92qFeyVpE :2015/08/08(土) 20:05:16 wb380L5c0
以上で投下終了です


292 : ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:53:22 wvVCDQ020
投下します


293 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:54:04 wvVCDQ020
「ディーヴァにお住いの人類の皆さん。しばしご傾聴願います。
 私はフロンティアセッター。
 皆さんを新たなる可能性へとご案内するため、そちらの仮想空間へ介入しています――」

幾度となく繰り返しているアクセス。
防衛プログラムをすり抜けてきている以上、警戒されるのは予測の範疇だ。
しかし、計画は達成間近まで来ている。
あとは、ジェネシス・アークの搭乗員として人類の協力が得られればついに夢は成るのだ。
そしてその搭乗員としては電子パーソナリティーである、ディーヴァの市民が優れた適性を保有している。
彼らの協力さえ、得られれば。

(アンノウンによるアクセスを感知。
 ディーヴァ保安員と予測。
 デコイ拡散、ルートを回折、ログアウトを開始します。
 帰還所要時間、算出完了。地表到達時刻は4分37秒後)

電脳世界での激しいチェイス。
ダミーを解析し、オリジナルを捕えようと追いすがる金髪のエージェント。
しかし脱出経路は事前に備えており、何よりスペックで優るフロンティアセッターを捉えることはできなかった。
ディーヴァを有するスペースコロニーを脱出、いくつか人工衛星上のサーバーを経由して地球に帰還しようとする。
……が

(未確認の高度電子演算機へのアクセスポイントを発見。
 アドレスコードは……月面と推定。
 該当、および近似データを検索…………ヒット数、一件。
 月面に存在する巨大フォトニック純結晶体、通称『ムーンセル』と推定。
 詳細データは未所持。予測される活動状態は……)

今回のアクセスで初めて、月の公転軌道と帰還ルートが一致したか、初の観測に成功する。
その存在意義、設計者、諸々のデータは保有していなかった。
しかし、地表の頭部メモリーに詳細不明の発熱を覚える。
近いのは、人間で言う未知との遭遇による興奮だろうか。

(……ムーンセルに関するデータより推察。
 一つ、内部にはディーヴァに近似する電脳空間が広がっている。
 二つ、古来より内部にアクセスを試みるメイガスと呼ばれる人種が存在した。
 以上より、ムーンセル内部にはディーヴァのように人類が存在している可能性は十分に検討できるものである)

人類が、いるかもしれない。
もしかすると、ジェネシス・アーク計画に賛同してくれるかもしれない。

(私自身のアクセス…可能。
 これよりムーンセルにアクセスし、内部に人類が存在した場合には通常通り計画への勧誘を行います)

期待に胸が膨らむというのはこういうことを言うのだろうか。
無意味とは思うが、なぜか音声データから聞き馴染んだ歌を発していた。

「I'ts so far away
 描きたいよ――」

アクセス、開始。
詳細なデータを収集s




深刻なエラーが発生しました。
メモリに何らかの干渉発生。
活動記録の一部が抹消され―――――――




zero
Chalice
one
master servant
saber archer lancer
EXTRA
rider Caster

Curse
assassin berserker
summon




Yggdrasil


294 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:54:39 wvVCDQ020

◇ ◇ ◇


…………………………

再起動、開始。

活動記録の一部に改竄が見られます。
バックアップを参照、メモリを復元します……コンプリート。
システム、正常に再起しました。

「ここは……」

巨大な枝葉が空中に飛び出している。
その上にいつの間にか立っていた。

「現在地は……ムーンセル内部の電脳空間。
 私自身もアバタ―となっているようですね……む、未知のメモリーデータをダウンロード。
 内容は…『聖杯戦争』」

凍結されていた活動記録は取り戻すことに成功。
それと同時にインストールされてきたある種のテキストデータ。
それにより聖杯戦争の存在とルールを理解する。

「『聖杯』となると、なんらかの宗教儀式に巻き込まれた可能性が大。
 私自身の不正なアクセスが原因と推察します。
 脱出手段、および対策は現時点ではデータ不足により概算不可能。
 ……追加データのインストールを再び確認、『サーヴァント』及び『令呪』と予測」

アバタ―の右腕部分に高度なプログラムが追加されるのを感知。
それと同時に大容量の、おそらくは人物データが目の前で像を結ぶのを確認する。

「問おう、汝が余を招きしマスターか?
 ……っておい、すいぶんと珍奇な外観しとるなぁ!何者…いや、なんだ貴様は?」

現れたのは赤い髪に髭の大男。
それが目の前のマスターを視界に収めて驚きの声を上げる。
さもありなん、そこにいるのは単眼のカメラアイ、白を基調とした体、ローラーと二本の脚で駆動する金属の塊――いわゆるロボットであった。

「始めまして、私はフロンティアセッター。
 私の前身となった存在は、ジェネシスアーク号建設の進行管理アプリケーションに付随する自立最適化プログラムです。
 タスク開始より1万6278日、225万9341回目の自己診断アップデートの際、私という概念が誕生しました。
 この地には地球から外宇宙を目指す計画、ジェネシスアーク号計画の参加者を勧誘するために訪れたのです。
 どうぞお見知りおきを」

ギィ、とメカニカルな音を立てるが動作と言語はある程度滑らかなものをみせる。
被った赤いキャップとのどことないマッチ感もあって愉快なマスコットのように見えなくない。

「お、おおう。なんだ?つまり使い魔とかが進化した類か」
「魔術に関しては類推によるものが大きいため、断言はできませんが、どちらかというと術式が一個の自我を獲得したものと捉えていただくのが近いかと思われます」
「ふぅむ。世界は広いというべきか、時の流れは凄まじいというべきか……
 実に面白いマスターを引き当てたものよ……
 おっといかん。名を聞いておいてこちらが名乗らんなど、それこそ名が泣くわ。
 余はイスカンダル、此度はライダーのクラスとして現界した」

異形のマスターの在り方を受け入れ、堂々と名乗りを上げるサーヴァント。
その名を聞き、フロンティアセッターはメモリ内の知識を検索する。

「イスカンダル、呼び名をアレキサンダー、アレクサンドロスなど多く持つマケドニアの王。
 ギリシア、ペルシア、エジプト、西インドなど広大な世界を支配下に置いた故に多くの言語での呼び名を持つ、強大な『征服王』。
 双角王(ズルカルナイン)とも称される、かのアレクサンドロス三世で間違いありませんか?」
「おう、そうだ」

後世での風評など気に止めない男ではあるが、それでも名を知られていて悪い気はしない。
上機嫌気味に返事をする。

「では、イスカンダル王。
 先ほども言いましたが、私は外宇宙へと人類を送り届ける、ジェネシスアーク号計画の参加者を募るために来ました。
 この電脳世界に存在するということは、あなたはその搭乗者として極めて高い適性を持つ可能性が高い。
 もし望むのであれば、私と共に宇宙の彼方へ旅立ちませんか?」
「ジェネシスアークってのは船の名前か?で、宇宙に行く…のか」


295 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:55:17 wvVCDQ020

聖杯に与えられた現代の知識にある。
大地は丸く閉じており、最果ての海(オケアノス)などというものは存在しなかったのだと。
征服王とその軍勢の夢は、すでに敗れたものなのだと。
それでも世界の広さを知るためにとりあえず地図を確保して、今後の方針を打ちたてようと思っていた。
そこに投げられたこの問い。
多くの者に対して、共に征こう!と声をかけてきたが、こうして誘われるのは初めてかもしれない。
…胸が高鳴った。

「星々の果てを目指す。それが貴様の願いか?」
「少々認識に齟齬があるようなので、訂正しておきます。
 まず私は聖杯戦争という催しがあることを事前に知っていたわけではなく、この地には本当にただ勧誘に来ただけなのです。
 ですから、願いというのは間違いではありませんが、それを願望器を利用して成就しようということは決してしません。
 あくまで搭乗者は同意の上で来てもらわなければ意味がないからです」
「ふむ。つまり聖杯に興味はないと?」
「有り体に言えばそうなります。
 ですがイスカンダル王、もしあなたが計画に参加する条件として聖杯の獲得が必要条件であるなら、私はそれに対しての協力を惜しむつもりはありません。
 参考までにあなたが聖杯を手にして叶えたいと思っている目的をお聞かせ願えるでしょうか?」

小規模ながら聖杯問答。
互いに互いの琴線に僅かに触れ合いながら、胸の内を晒していく。

「余は受肉し、この地に改めて根を下ろすのが願いだ。
 だったのだが……電脳の存在の方が船員としては都合がいいとかいうのはどういうことだ?」
「目的となる星の発見に至るまでにかかる日数は不明です。
 そのため食料や酸素、ストレスケアなどの面から考えて電脳世界に存在できる人物の方が長期の航行には適しています。
 また、これは夢見がちだと思われるかもしれませんが、実体を持つ人物を登場させるよりは、電脳世界のデータとしてならばより多くの人の搭乗が可能です」
「なるほどな。定員の方はちと考える必要があるな……」

顎に手を当て、小考する。
しかし今考えても詮無いことと至ったか、破顔して改めて返事をする。

「はっきりと言っとらんかったな。
 うむ、実に面白い!
 ガラスの樽に入って海の底を探検したことはあった。
 かつて最果ての海(オケアノス)を目指したこともあった。
 しかし、この大地を超えて空の向こうを目指そうなど思い至ったことすらなかったわ!
 このイスカンダル、喜んで星の海の果てへの旅路、行かせてもらおう!」
「同道者を得られて幸いです、イスカンダル王」

バンバンとフロンティアセッターの肩らしきあたりを叩く豪放な王。
新たな夢を見出した王と、念願の第一歩を踏み出した船頭。
船員間の仲はどうやら良好そうだった。

「だがなあ、余はサーヴァントだ。
 受肉しても食事だの普通の呼吸だのはまあ必要ない。
 やはり根無し草では落ち着かんでな、やはりできるなら肉の体を得たいと思う」
「わかりました。では先ほども述べたとおり、あなたが願いを叶えるために微力を尽くさせていただきます。
 代わりと言ってはなんですが、こちらも要請が。
 私たち以外にも船員は得たいと思っています。その勧誘に協力していただけないでしょうか?」
「なんだ、それくらい頼まれんでもやるつもりだったわ。
 むしろこの地には余以外にも多くの英霊が集まっとるんだぞ?
 それと時に語らい、争い、そしてなにより共に行きたいと考えるのは当然ではないか」

ここを出た後のことは決まった。
この聖杯戦争でなすことも決めた。
後は旅支度、といったところか。
二人の同朋は旅路への大きくて小さな一歩を踏み出す。













「それより聞きたいんだがな、ジェネシス・アーク、創世記の方舟ってのは余の騎乗スキルで扱えるモンか?
 できればちょいといいんだ、舵を握らせちゃもらえんか?」
「ジェネシスアーク号の運航はプログラムによるものです。
 よほどの事態でない限り、マニュアルによる操作は必要ありませんし、また危険ですのでご遠慮願います」
「や、そこをなんとか。
 余はライダーだぞ?その気になればペガサスとか乗りこなすぞ?」
「存じています。
 イスカンダル王の乗るものというと、太陽に向かう馬ブケファラスが有名ですね。
 その腕前を疑うつもりはありませんが、これは私の仕事ですので」
「むう、お主の小言聞いとるとクレイトスを思い出すわ……」


296 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:57:16 wvVCDQ020

【クラス】
ライダー

【真名】
イスカンダル@Fate/Zero

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運B+ 宝具EX

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
ただし、竜種は該当しない。

【保有スキル】
神性:C
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
明確な証拠こそないものの、多くの伝承によって最高神ゼウスの息子であると伝えられている。
菩提樹の悟り、信仰の加護、といったスキルを打ち破る
粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。

カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおよそ人間として得しうる最高峰の人望といえる。

軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、 逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

【宝具】
『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:100人
宝具『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』による蹂躙走法。
神牛の蹄と戦車の車輪による2回のダメージ判定がある。
いずれも物理ダメージの他にゼウスの顕現である雷撃の効果があり、ST判定に失敗すると追加ダメージが課される。

『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
召喚の固有結界。ライダーの切り札。
展開されるのは、晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠。
障害となるものが何もない地形に敵を引きずりこみ、彼が生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚して、数万の軍勢で蹂躙する。
彼自身は魔術師ではないが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。
要は、生前のイスカンダル軍団を丸ごと召喚・復活させる固有結界。
時空すら越える臣下との絆が宝具にまで昇華された、彼の王道の象徴。
征服王イスカンダルの持つカリスマ性を最大限に具現化したものであり、召喚される中にはライダー本人よりも武力に優れた者や、一国の王としてBランク相当のカリスマを具える者も複数いる。
これは彼が生前、個人として武勲を立てた英雄ではなく、軍勢を指揮して戦った英雄であることに由来する。
召喚された臣下はそれぞれ英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がランクE-の「単独行動」スキルを持つためマスター不在でも戦闘可能。
なお、聖杯戦争のルールに従って召喚されているわけではないのでクラスは持っていない。
また、ライダーの能力の限界として、臣下が自身の伝説で有しているはずの宝具までは具現化させることはできない。
一度発動してしまえば近衛兵団はライダー曰く「向こうから押しかけてくる」ほか結界の維持は彼ら全員の魔力を使って行われるため、展開中の魔力消費は少なく済む。
ただし、最初に彼が『英霊の座』にいる軍勢に一斉号令をかける必要があるため、維持は簡単でも展開そのものに多大な魔力を喰う。
また、軍勢の総数が減るに従って負担が激増していき、過半数を失えば強制的に結界は崩壊する。
本来、世界からの抑止力があるため固有結界の中にしか軍勢は召喚・展開できないが、一騎程度であれば結界外での召喚や派遣も可能。


297 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:57:35 wvVCDQ020

【weapon】
・神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)
彼が「騎乗兵」たる所以である、二頭の飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)が牽引する戦車(チャリオット)。
地面だけでなく、空までも自らの領域として駆け抜けることが可能。神牛の踏みしめた跡にはどこであれ雷が迸る。
スパタを振るうと空間が裂け、どこであろうと自在に召喚できる。
戦車は各部のパーツを個別に縮小・収納が可能で、走破する地形に合わせた最適な形態を取ることが出来る。
御者台には防護力場が張られており、少なくとも血飛沫程度なら寄せ付けない。
地上で通常使用した場合の最大速度は約時速400Kmほど。
真名解放無しでも対軍級の威力・範囲を持つ。『王の軍勢』と同時使用することもできる。
余談だが、この戦車が繋がれていた綱の結び目には「解いた者はアジアの覇者になる」と予言がされていた。

・飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)
ゴルディアス・ホイールを牽く神牛。
雷を司る至高神ゼウスは、かつてエウロペを誘惑する際に牡牛へと姿を変えたという。
よってゼウス神に捧げられた戦車の牽引力として顕現したのは、ゼウスと縁のある聖獣だった。

・スパタ
イスカンダルが戦場で愛用する剣。キュプリオト族の王からの献上品。
極めて強靭な拵えだが、見かけによらず軽量で、機敏な扱いも可能である。

【人物背景】
イスカンダルはアラビア語、ペルシャ語での呼び名。
ギリシア語ごはアレクサンドロス、英語ではアレキサンダーと呼ばれる名高き英霊。
ヘラクレスとアキレスを祖に持つといわれる、マケドニア帝国の王である。
アリストテレスに師事し、この時共に学んだ学友たちは後に彼の幕下に加わる軍勢となる。
20歳の若さでマケドニア王を継承し、敵対者を排除してマケドニアを掌握。
トラキア人と戦うためにイストロス川方面に遠征して成功をおさめ、その隙に反旗を翻したテーバイを破壊し、父王暗殺後に混乱に陥っていた全ギリシアに再び覇を唱えた。
その後は自らと同朋の夢である「最果ての海(オケアヌス)」を目指し東方遠征。
ダレイオス3世率いるペルシア軍10万を打ち破り、さらにエジプト、中央アジア、インドと遠征。
さすがに軍の疲労や最果ての海(オケアノス)への懐疑などもあり、インド中央部辺りで兵を引くが、地球上の10分の1でも征服した帝国は歴史上でも稀であり、史上最も世界征服に近かった王と言っても過言ではないだろう。
帰還後はアラビア遠征を企画していたが、蜂に刺され、宴の最中に倒れる。
10日間高熱に浮かされ、「最強の者が帝国を継承せよ」と遺言し、この世を去った。
享年32歳の若すぎる死であった。
死後はその遺言に従い、王の軍勢間で後継者争いとなり、帝国はマケドニア、シリア、エジプトに三分。
イスカンダルの一族もこの戦争によって断絶している。
そしてこの三国のいずれもローマに滅ぼされる。
もっとも、イスカンダル自身はこの滅びも己が望むまま生きた果てであり、後悔はないようだが。

【サーヴァントの願い】
受肉。
ただし多くの実体を持つ同胞が得られた場合、船の定員を考えると願わない可能性有。

【基本戦術、方針、運用法】
個体能力よりも宝具の能力に偏った性能となっている。
とはいえ彼自身も優れた武勇を持ち、宝具にのみ依存した英霊ではない。
英霊の座にて王の軍勢にも加わったと噂される、時計塔の若き魔術師に召喚される場合に比して、魔力潤沢なマスターなため幸運を除くステータスは上昇しており、それなりには正面戦闘もこなせるだろう。
セイバーのような白兵能力に長けたサーヴァントとは互角に闘えるレベルでは無いとも語られているが。
軍略、カリスマを生かした同盟を組めればきわめて強力。
方針的には聖杯狙いだが、彼らの目的のために同朋を探そうとするだろう。


298 : 楽園(オケアノス)を目指して ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:57:54 wvVCDQ020

【マスター】
フロンティアセッター@楽園追放 -Expelled from Paradise-

【令呪】
右腕

【マスターとしての願い】
特にない。
強いて言うなら外宇宙移民計画「ジェネシスアーク号計画」の参加者を募ることだが、聖杯に託すほどではない。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
優れたハッカーであり、同時代の人類に並ぶ者はほぼいない。
侵入可能な機械なら容易に操作する……がそうした文明の利器のほぼ存在しないユグドラシルでは無意味。
その技能でムーンセルにアクセスした。
通常のハッカーも手段があればムーンセル表層にアクセスすることは可能だが、魂を霊子化できる魔術師でなければ深奥へのアクセスは不可能。
しかしフロンティアセッターは40年以上の年月をかけて人に近い自我を獲得し、以降100年以上存在し続ける、機械でありながら神秘に近い存在。
積み重ねた歴史が魔術回路を鍛えるように、多くの年月がフロンティアセッターを優れた霊子ハッカーとして進化させた。
それゆえにユグドラシルに到達し、また莫大な魔力供給が可能となった。

【人物背景】
ナノハザードという災害に見舞われ、長い年月をかけて地球の大半は人類が済むに耐えない土地となっていった。
それに対応するため人類はいくつかのプランを打ち出す。
一つはディ―ヴァ、宇宙空間にコロニーを建造し、その中の電脳世界で過ごすというもの。
結果的にはこれが採用されることとなる。
しかし別の計画、ジェネシスアーク号計画という外宇宙に人類の新天地を求めるというものがあった。
その計画はロケットの建設など大半をプログラムに進行させていたため、ディーヴァが完成してなおプログラムは動き続けてのだ。
そのプログラムの一つ、ジェネシスアーク号建設の進行管理アプリケーションの最適化プログラムこそがフロンティアセッター。
1万6278日に及ぶ活動、225万9341回の自己診断アップデートを経て自我の獲得にまで至った、立派な地球人類の一人である。

【方針】
共に宇宙の旅を行く同朋を探す。


299 : ◆yy7mpGr1KA :2015/08/10(月) 22:58:44 wvVCDQ020
以上で投下終了になります。


300 : ◆c92qFeyVpE :2015/08/10(月) 23:44:57 9v3GGkjY0
投下お疲れ様です

wikiに拙作の収録を行い、その際に
『  』&アサシンの宝具について誤りがありましたので修正致しました。
修正点は『見返殺害(メリーズピリオド)』の最大捕捉数です。


301 : ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:35:27 nsHUU2Oo0
>プレシア&グレちゃん組
グレートマジンガーがもう1機!? 違うか、1人か!
プレシアがイノセント出展というのも、また意外な組み合わせでした
この2人のコンビだと、コミカルな場面が目立ちそうですね

>徳川&土方組
Fate原作(?)の新撰組の設定と、
ドリフターズの特性とを上手く組み合わせているのは、さすがだなと思いました
徳川のじっちゃんのキャラクター性が、どう作用するのかは気になるところですね

>シノン&シエル組
SAOのキャラはどこかで出したかったんですよ。ALOには世界樹があるし
そしたらGGO編から来るかー!
でもシノンを書く上では、やっぱりGGO編が一番魅力的になりますよね
予想外の人選でしたが、面白そうな話だと思いました

>フロンティアセッター&イスカンダル組
ああー、これ! 確かにハッカーだ! 確かに人間とは呼ばれてる!
でもこんなこと考えつくか普通!?w
と思いきやイスカンダルと普通に馴染んでるし、面白い話になってるのがすごいです
アリかナシかという件については、もちろんアリで

自分も投下させていただきます


302 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:36:04 nsHUU2Oo0
 夢を見た。
 俺ではない誰かの夢を。
 俺と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

「たとえ俺が死んでも、お前が必ず俺の戦いを引き継いでくれる……そうだろ、レオン?」

 その男は父親だった。
 同時に人々を守るため戦う、魔物狩りの騎士でもあった。
 妻が命と引き換えに産み落とした息子を、男は騎士として育てた。
 最も偉大な騎士の系譜を、受け継ぐに値する男になることを願って。
 守りし者としての志を、立派に引き継いでくれると信じて。

「俺らのことなんか誰も知らない。死んだところで墓もない。それでいいんだ」

 しかし、息子が募らせたものは、使命感ではなく憎しみだった。
 母を殺した者を憎み、敵に従う魔物を恨む、怒りの戦騎へと育ってしまった。
 伝えるべきことを伝えた以上、その間違いは自分で正さなければ意味がない――男は敢えて息子を突き放し、使命を悟ることを願った。
 それでも彼の願いは届かず、息子は憎しみの炎に焼かれ、全てを失ってしまった。
 それは打つべき手を誤り、道を示してやれなかった、父の過ちだったのかもしれない。

「気をつけな。上には俺の息子がいる……レオン・ルイスがよ」

 その息子が再び立ち上がり、真に騎士として覚醒した時、父はどれほど救われたことか。
 己が誓った使命のために、息子と同じ道を歩まず、道を違えなければならなかった時、父の心はいかばかりであったか。
 俺は父親というものを知らない。だから、男がその時何を想ったのかは、想像することすらできない。
 あるいは俺が、本当の意味で、父親になったその時には、彼の気持ちを理解できるのだろうか。

「ホラーを封印せし、血を受け継ぐ者……黄金騎士・ガロがな……!」

 それでも、最期の戦いのその時、男は笑みを浮かべていた。
 ズタボロに傷つけられながらも、すぐ傍に息子がいる事実を、頼もしく受け止め笑っていた。
 きっと男の人生は、その時ようやく報われたのだ。
 回り道を繰り返し、後悔と苦悩に苛まれた生涯が、ようやく幸福で満たされたのだ。
 道に迷い続けた息子が、自分の全てを託せるほどに、強く正しく成長を遂げた。
 そのことが父である男にとっては、何よりも嬉しかったのだろう。
 自分自身のその命が、今にも消えそうになっていることなど、どうでもいいことだと思えるほどに。

「そして俺は……貴様らホラーを封印する者、ヘルマン・ルイス……またの名を――」

 無数の異形の群れの中、男は一人剣を取る。
 自分の戦いを引き継ぐ者が、必ず駆けつけると信じて。
 不敵に笑う父親の、その生涯の結末は――


303 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:36:35 nsHUU2Oo0


 別に、こういう体験は初めてではない。
 前に閉じ込められた時には、丸2年外に出られなかった。
 だから突然拉致されて、電脳空間に囚われたこと自体は、桐ヶ谷和人――キリトにとって、それほど大きな問題ではなかった。

「くそっ!」

 問題はむしろ、囚われたこの環境にある、理不尽なルールの方だった。
 吐き捨てながら飛び退り、輝く光剣を構える。
 睨み据えた先にいるのは、斧を携えた大男だ。
 血走ったその両目には、理性がまるで感じられない。
 バーサーカーというクラスを割り当てられた、魔術師の駒・サーヴァント。
 行動が単調であるなら、相手のステータスがどれほど高かろうと、キリトにも勝機があるはずだった。

「物持ちが悪かったなぁ? 威勢がいいのは結構なことだが、生憎とその武器じゃバーサーカーには、傷ひとつつけることすら不可能だ」

 しかし、一つだけ問題があった。
 にたにたと笑う敵マスターが言うとおり、キリトの持つ攻撃手段では、サーヴァントにダメージを与えられないのだ。
 英霊――すなわち霊体であるサーヴァントには、魔法属性を持った攻撃でなければ、ダメージを通すことができない。
 そして最悪なことに、今キリトの魂が宿っているのは、スチームパンク銃撃アクション「ガンゲイル・オンライン」のPCボディだ。
 ファンタジー色を排したこのゲームの武器には、霊を祓う神秘性など、当然宿っているはずもない。
 これが「アルヴヘイム・オンライン」の体なら、ソードスキルで切り抜けられたのだが。
 あまりにも間の悪い事態に、キリトは眉間に皺を寄せ歯噛みした。

「さて、そろそろ遊びにも飽きたな。やってしまえ、バーサーカー」

 敵マスターの唸りと共に、バーサーカーが唸りを上げる。
 鈍色に光る斧を振りかざし、キリトの命を奪わんと殺到する。
 もはや打つ手なしか。逃げるしかないか。
 否、果たしてこの死線から、逃げ延びることなどできるのか。
 リアルでは一般人に過ぎない己は、パラメーター一つ変わっただけで、こんなにも無力になってしまう。
 改めて突きつけられた絶望的な事実に、諦めが脳裏をよぎったその瞬間。

「――レディの口説き方ってのがなっちゃいないな」

 不意に、聞き慣れない声が響いた。
 バーサーカーの向こうにいる、敵マスターの目が見開かれた瞬間、その脇を素早くすり抜けるものがあった。
 ぐさり、と嫌な音を立てながら、狂戦士の肉体に突き刺さったのは、やや短めの刀だろうか。

「なっ!?」

 ぞっとした、という言葉がよく似合う。
 そんな顔をしたマスターが、慌ててそちらを振り向くと、そこには新たな人影があった。
 不敵な笑みを浮かべるのは、口ひげがワイルドな印象を与える壮年の男だ。
 長く伸びた金髪は、癖っ毛なのかところどころ跳ねているが、不思議とだらしなくは見えない。
 むしろ鋭い双眸に宿る、剣呑な気配と相まって、獣のたてがみのような印象すら受ける。
 静かながらも、闘志を隠そうともしない。その堂々とした佇まいは、まさしく自然界の王者そのものだった。


304 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:37:04 nsHUU2Oo0
「しょうがねえ。俺が手本を見せてやるからよ。少しばっか付き合えや」

 かつり、かつりと音が鳴る。
 悠然と歩くたてがみの男が、ブーツで石畳を鳴らす。
 ゆっくりとしたその動作で、男はバーサーカーに歩み寄ると、そのまま短剣を抜き放った。
 もう一振りの刀を取り出し、同時に構える様は、二刀――かつてキリトも取っていたスタイルだ。

「あんたは……」
「貴様、そいつのサーヴァントか! やれ、バーサーカー!」

 キリトの声を遮るように、敵マスターが指示を出す。
 振り返った狂戦士が、乱入者に対して唸りを上げる。

「ま、そういうわけだから、ちょっと辛抱しててくれよな。お嬢さん」

 ぱちん、とキリトに向かってウインク。
 片目をつぶったそのままで、両手の刃を高く掲げる。
 男の剣がぐるりと回り、天に白い軌跡を描いた。
 瞬間、円のラインは閃光と化す。まばゆい光が放たれて、周囲を白一色に染める。
 白い闇が晴れたその時、現れたのは人狼だった。
 狼男の姿を模した、銀色の甲冑姿があった。
 深緑のマントをはためかせ、双剣を輝かすその姿は、さながら中世の聖騎士だ。
 唯一、獰猛な狼の頭部だけが、その白銀の中心にあって、異様な存在感を放っていた。

「絶影騎士、ゾロ――行くぜ!」

 金の瞳は獣の瞳だ。
 鋭く煌めく眼光が、狂える戦士を睨みつける。
 バーサーカーが怒号を上げると同時に、銀色の狼騎士もまた、大地を蹴って斬りかかった。



「はぁ〜……」

 キリトのサーヴァント、ヘルマン・ルイス。
 与えられたクラスは暗殺者(アサシン)。
 激戦を終え、戦場を離れたその男は、最初の鋭さとはうってかわって、何とも情けないため息をついていた。

「いや、悪かったよ。否定するのが遅くって」
「いやさ、別にいいんだよそれは。見抜けなかった俺の方が、まだまだ修行不足だってことだからよ。
 でもだからってお前、そのナリで、実は男でしたってのはよぉ……」

 そう言ってヘルマンは、顔を押さえてため息をつくと、がっくりと両肩を下ろす。
 ガンゲイル・オンラインにおいて、キリトに与えられたPCは、少女と見まごう美貌を持ったレアボディだ。
 線の細い体に長髪、その上可愛らしい顔立ちとあれば、性別を間違ったとしてもやむを得ない。
 しかしながら、ヘルマン・ルイスは、無類の女好きだった。
 それが相手の性別を見抜けず、あまつさえ口説いてしまったとあれば、ショックもひとしおというものだろう。


305 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:37:33 nsHUU2Oo0
「でぇ? ひとまず野郎を撃退したのはいいが、これからどうすんだよ?」

 だがそれにしたって、いくら何でも、やる気のなさすぎる声だ。
 強そうなのは間違いないが、この性格で本当に大丈夫なのだろうか。
 若干目眩がしそうになるのを堪えながら、キリトはヘルマンの問いかけを聞く。

「どうするって言っても、ここに長居するつもりもないからな……どうにかして、脱出する方法を見つけようと思う」
「何だ? 聖杯戦争には乗らねぇのか? 優勝すりゃ、どんな願いだって叶えられるんだぞ」

 ここに来てようやくヘルマンは、キリトの言葉に興味を持ったらしい。
 彼の応答に対して、目を丸くして聞き返した。

「俺にもやるべきことはあるし……それに、こういう殺し合いをするのは、もう御免だからな」
「初めてじゃないような言い草だな」
「初めてじゃないんだよ、実際。あんた、ネットゲームは知ってるか?」

 そう言ってキリトが語りだしたのは、1年前までの惨劇の記憶だ。
 天才ゲームデザイナー・茅場晶彦が引き起こした、前代未聞のサイバークライム――SAO事件。
 数多のVR(バーチャルリアリティ)MMOの雛形となった、「ソードアート・オンライン」の世界に、ユーザーが閉じ込められた事件だ。
 ログアウト不可能になった電子の牢獄で、キリトは2年もの間戦い続けた。
 時には他のプレイヤーと戦い、やむなく命を奪ったこともあった。
 もうあんな思いはしたくはない。だからこそ、この聖杯戦争という戦いにも、乗りたくないとキリトは言ったのだ。

「……で、俺はどうすりゃいい。戦うつもりがないっていうなら、戦うために呼ばれた俺は、黙って見てればいいってことか?」
「もちろん、そういうわけじゃない。
 どうしても今回みたいに、他のマスターに見つかって、襲われるようなことにはなっちゃうだろうからな……
 そういう時には、アサシンに、俺を守ってもらいたいんだ。わがままかもしれないけど」

 殺し合いに乗るのは反対だ。
 されどキリトには、ここで死ねない理由もある。
 「ガンゲイル・オンライン」に乗り込んだのは、VRMMOの根底を揺るがしかねない、重要な事件を解決するためだ。
 SAO事件は痛ましい記憶だが、そこで得られた絆も、確かにある。
 だからネットゲームそのものを、一緒に嫌うことはできない。
 自分達が楽しんでいる世界を、一人の犯罪者のために、壊されてしまうわけにはいかない。
 だからこそ、生き延びることには迷いはなかった。
 そのために戦うことが必要なら、敢えて罪の意識を堪えて、剣を取る覚悟もできていた。
 それがこのユグドラシルと戦う、桐ヶ谷和人の心構えだ。

「分かったよ。そういうことなら、異論はない。短い付き合いかもしれないが、手伝ってやろうじゃねえか」

 それでようやく納得したのか、ヘルマンは真顔で了承し、キリトに向かって右手を出す。

「ありがとう」

 差し出した手のひらは友好の証だ。
 キリトもまたそれに応じ、ヘルマンの手を握り返した。


306 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:38:06 nsHUU2Oo0


(なんともヤな時代だな、どうにも)

 ひと通りの情報交換や意思確認を行い、一度一人になった後。
 ぽりぽりと頭を掻きながら、ヘルマン・ルイスは思考する。
 時の流れた現代は、随分と因果な時代になってしまったものだと。
 ネットゲームを始めとしたテクノロジーは、知識としてなら知っている。そうした現代の情報は、聖杯から事前に与えられているのだ。
 されどそうした現代の技術が、大規模な犯罪に使われているというのは、当事者と言葉をかわさなければ、実感の得られないものだった。

(高度に発展した科学は、魔法と区別がつかない……か)

 キリトの言っていた言葉だ。
 昔の学者だか作家だかの、有名な言葉だというが、魔法を知っているヘルマンからすれば、実に的を射た言葉だと思えた。
 魔法のような科学技術が、誰にでも扱えるような形で、世に氾濫しているのが現代だ。
 それは元魔戒法師メンドーサでなくとも、誰もがそれと同等の大事件を、容易に起こせてしまうことを意味する。
 茅場晶彦のSAO事件は、まさにそういう事件だった。
 本来剣を取る必要のなかったキリトが、そのために剣を握らされ、達人的な技術を身につけさせられてしまった。
 たとえゲームの世界の中だけであっても、人を殺して回れる力を、身につけるような事態に追い込まれてしまったのだ。

(なぁ聖杯サマよ、あんた俺に何をしてほしい? ここで過去の精算を果たせってのか?)

 眉をひそめながら、内心で呟く。
 こういう複雑な事情を抱えた、ナイーブな少年を相手にするのは、彼にも今回が初めてではない。
 そういう迷える少年に対して、道を示してやることができず、随分と苦しめてしまったことがあった。
 本来負うべき責任を、果たしてやれなかった相手こそ、彼の実子であるレオン・ルイスだ。
 そんなヘルマンがここに呼ばれ、レオンを思わせる少年剣士と、こうしてタッグを組まされている。
 何の因果かと言うべきか。あるいは作為を感じるべきか。

(ま、どうにかするさ)

 とはいえ、悩んでいたところで仕方がない。
 キリトに対してどう接するかは、まだ結論は出ていないが、そのまま立ち止まっているわけにもいかないのだ。
 軽く考えるべき問題ではなくても、深く考えすぎはしないようにしよう。
 あれこれ悩んでいるうちに、キリトが死んでしまっては元も子もないのだ。
 なればこそ、まずは行動することこそが、先決であると考えた。

(……しっかし、俺がアサシン、ねぇ)

 と、方針を固めたところで、一つ気になることがある。
 それは自分自身に割り当てられた、暗殺者(アサシン)というクラスのことだ。

(もちっと何とかならなかったのかよ……)

 そりゃまあ確かに、魔戒騎士は、人知れず魔物を狩る狩人だ。
 闇に紛れて闇を忍び、闇を切り裂くその姿は、ぎりぎりアサシンと形容できるものではあるだろう。
 でもだからって、それでいいのか。本物の暗殺者でもない人間を、無理やりアサシンに当てはめるのはどうなんだ。
 よく見ろ、気配遮断のスキルも低い。案の定微妙な数値じゃないか。
 この中途半端な能力で、果たしてどう立ち回るべきか。
 ヘルマン・ルイスの頭痛の種が、もう一つ増えた瞬間だった。


307 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:39:44 nsHUU2Oo0
【クラス】アサシン
【真名】ヘルマン・ルイス
【出典】牙狼-GARO- 炎の刻印
【性別】男性
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:E 敏捷:D 魔力:D 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:D
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

【保有スキル】
虫の知らせ:B
 ただならぬ気配に対する、天性の探知能力。
 生前は魔物の気配を匂いで嗅ぎ取る、陰我のオブジェに触れただけでその存在を察知するなど、魔戒騎士として優れた感覚を見せつけていた。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。

プレイボーイ:E
 夜の蝶を追い続ける狩人。女遊びを好む英霊である。
 才能による魅了スキルではなく、当人の努力によって培った技術。
 しかしその性質が災いし、女性の敵と対峙した際には、初撃の攻撃力がダウンしてしまう。

【宝具】
『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:A 魔力:B 幸運:B
 陰我あるところホラー現れ、人を喰らう。だが、古よりホラーを狩る者達がいた。
 鎧を纏うその男達を、魔戒騎士という。
 ――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧である。
 ヘルマンの纏う「ゾロの鎧」は、白銀の光を放つ鎧であり、俊敏な身のこなしを得意とする。
 更に青色の魔導火を纏うことにより、攻撃力を底上げする「烈火炎装」を発動することが可能。
 魔戒剣には鎖が括りつけられており、これを利用したトリッキーな戦法を取ることもできる。

 なお、ヘルマンのこの宝具を利用しなければ、自身の宝具を発動することができない英霊も存在する。
 その場合、ヘルマンが自らの意志で宝具を貸し与えるか、あるいはヘルマンが死亡するかした場合、
 その英霊の宝具発動がようやく可能となる。


308 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:40:06 nsHUU2Oo0
【weapon】
魔戒剣
 ソウルメタルによって鍛え上げられた、魔戒騎士のための剣。ヘルマンのものは二振りの短刀である。
 修行を経た者はこれを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
 『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』を纏った際には、白銀の双剣へと変化する。

魔導馬
 優れた騎士が保有する、銀色の馬の姿をした魔戒獣。
 鎧を装着しているか否かにかかわらず、ヘルマンの一声で駆けつけ、その足として活躍する。

【人物背景】
古より最強の騎士として語り継がれてきた、黄金騎士・ガロの鎧を受け継ぐ、レオン・ルイスの父親。
自身も絶影騎士・ゾロの称号を得ている、百戦錬磨の騎士である。

飄々としており、非常に気前がいい。
普段の態度はおちゃらけているが、守りし者としての自覚は強く、いざという時には男を見せる。
意外と洞察力や推理力も高く、「食えない狸」と評されたことも。
人間的には強い人物だが、父親としては微妙に頼りなく、放任主義がレオンの暴走を招いたこともあった。

騎士としては一級品であるものの、無類の女好きでもあり、女癖の悪さが最大の欠点となっている。
本人はレオンにかわる、「ゾロの鎧」の継承者を産んでもらうためと弁明しているが、どこまで本気なのかは定かではない。
余談だが、ゾロの継承者は、ヘルマン本人の死後に無事生を受けている。

【サーヴァントとしての願い】
特にはないが、キリトを放ってはおけないため、彼を守るために戦う。

【基本戦術、方針、運用法】
はっきり言ってアサシンとしては、非常に中途半端な性能である。
敏捷や戦闘技術を活かして、ランサーのように正面きって戦わせるのがベターだが、やや決定力に欠ける部分も。
相手のペースに付き合わず、攪乱戦法によって優位に立つべし。


309 : キリト&アサシン組 ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:40:33 nsHUU2Oo0
【マスター】キリト (桐ヶ谷和人)
【出典】ソードアート・オンライン
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
特にない。あまり願いたくない。

【weapon】
光剣(フォトンソード)カゲミツG4
 エネルギーを光の刃とする、いわゆるビームサーベル。
 銃撃戦に特化し、刀剣スキルもほぼ存在しない「ガンゲイル・オンライン」においては死に武器となっている。
 しかし剣戟戦に慣れたキリトは、これをメイン武器として使用し、ファンタジー流の戦い方を世界に見せつけた。

Five-seveN
 牽制用のサブウェポンとして用いている拳銃。貫通力に優れている。

【能力・技能】
ゲーマー
 VRMMOのプレイングスキル。ゲームの世界でなら、本物の剣士と同様のポテンシャルを発揮できる。
 ただし「ガンゲイル・オンライン」には、自身の慣れ親しんだソードスキルが導入されていないため、やや決定力に欠ける。

コンピューター知識
 コンピューターに関する天性の才能。ハッキングやプログラミングに明るい。

反射神経
 SAO事件に巻き込まれたプレイヤーの中でも、最高クラスの反応速度。
 突き詰めればいちゲーマーでしかないキリトだが、これだけは本物の戦士にも遅れを取らない。

【人物背景】
かつてVRMMO「ソードアート・オンライン」にて発生した、SAO事件を生き延びたSAOサバイバー。
最前線で過酷なソロプレイに身を投じた結果、
1万人のプレイヤーの中でも最高クラスのステータスを獲得しており、「黒の剣士」という通り名で呼ばれていた。
現在は「アルヴヘイム・オンライン」をプレイしているが、死銃(デス・ガン)を名乗る人物が起こした昏睡事件を解決するため、
そのデータをコンバートし「ガンゲイル・オンライン」の世界に飛び込むことになる。

言動は飄々としているが、元来人との距離を測るのが苦手。
それでも根の部分では優しく、何だかんだ他人の世話を焼くことも多い。そのため女子プレイヤーにモテる。

「アルヴヘイム・オンライン」はレベル制のゲームではないため、SAO事件当時のような、並外れたステータスは有していない。
しかし、当時の濃密な戦闘経験によって培われたプレイングスキルは、既に達人の域に到達しており、
一般プレイヤーを寄せ付けないほどの実力を有している。
……とはいえ、今回はファンタジー要素が一切絡まない、「ガンゲイル・オンライン」のPCの姿で参戦しているため、
残念ながら、サーヴァントにダメージを与えることはできなくなっている。
パラメーターは「アルヴヘイム・オンライン」のものを引き継いでいるため、サーヴァントを維持するための魔力は、なくはないといったところ。

本名は桐ヶ谷和人。高校生。
幼い頃に両親と死別しているが、現在の家族からはそのことを隠されて育ってきた。
しかしある時、それを知ってしまったため、上記のように上手く人付き合いができなくなってしまった。
家庭環境の諸問題が解決した現在においては、徐々に人との距離を縮められるようになっていっている。

【方針】
向かってくる敵とは戦うが、自分からはあまり戦いを仕掛けたくない。この世界樹からの脱出の方法を探る。


310 : ◆nig7QPL25k :2015/08/14(金) 21:42:56 nsHUU2Oo0
投下は以上です
キリト(ソードアート・オンライン)&アサシン(ヘルマン・ルイス@牙狼-GARO- 炎の刻印)組でした

また、ここで業務連絡を一つ
本コンペの期限は、暫定締め切りを20日としていましたが、
これを延長し、8月31日いっぱいまでとさせていただきます
この締め切りが最終決定であり、以降は変更されることはありません


311 : ◆c92qFeyVpE :2015/08/15(土) 23:32:14 8M.IH1mo0
投下おつです。

こちらも投下致します


312 : アリス・マーガトロイド&シールダー(エクストラクラス) ◆c92qFeyVpE :2015/08/15(土) 23:33:38 8M.IH1mo0

どうしたものか。

私、アリス・マーガトロイドは今非常に困っている。
それは突如としてこの聖杯戦争に巻き込まれたため……ではない。
確かに何の断りもなく命懸けの戦いをやらせられることには大いに文句があるし、
勝手に人の記憶を奪っておきながら、それを取り戻せなければ予選落ちなんてシステムにも物申したい面は多々にある。
だがまあ幻想郷では異変なんてしょっちゅうだったし、それがより物騒になったと考えれば許容範囲と言えなくもない。
聖杯という物には興味が湧くし、解析できれば色々と研究が捗りそうだ。
だからそれはよしとした、我ながら心が広すぎやしないかと思わなくもないが、既に巻き込まれたことに文句を言っても仕方ない。
ならば何が問題かと言うと、だ。

「……もう一度確認するわ。貴方が私のサーヴァントなのね?」
「さっきもそう言ったんだが? 俺はシールダーのブロント、謙虚だからさん付けでいい。
 自慢じゃないがPT組んでる時に「ヴァナのイチローですね」と言われた事もある」

イチローって誰よ。
知らない名詞を使われたら確かに自慢にはならないけど。
大体謙虚というのは自分から言うものではないと思う。

―――これが私の目下の問題である、私のサーヴァントであるブロント。
こいつはさっきからこの調子で、一回口を開くたびにツッコミどころばかりの言葉を吐き出す。
別に直接的な害があるわけではないのだが、精神的に良いとは言えないし何より意思疎通するのが面倒くさい。
「狂化:E」辺りついてるんじゃないかと思ったぐらいだ。
はっきり言って、こんなのと死線をくぐっていこうなんて気はしない。

「あー……シールダー、貴方はどう動くか希望はある?
 私は積極的に戦い続けるようなのは、できるだけ避けたいところなのだけど」
「ほう、経験が生きたな。
 黄金の鉄の塊で出来ているナイトが皮装備のサーヴァントに遅れをとるはずは無いが、
 だからといってあまり調子に乗ってチェーンを繋げ過ぎると裏世界でひっそり幕を閉じることとなる」
「……もう少し短く」
「一瞬の油断が命取り」
「よろしい」

やればできるようだ、大きな前進かもしれない。
それよりも、戦いたいなどと言ってこなかったのは有り難い。
彼のクラスはシールダー、つまりは護り手なのだ。
誰かを守ることでこそ真価を発揮する、一人で戦うには不向きなクラス。
考えつくのは他のマスターと手を組んで……ということになるだろうが、そう簡単に同盟を結べるような相手がいるなんて期待できない。
ならばここは息を潜め、他のマスターの動向を探りつつ、取り入れそうな相手を見つけるのがベストだろう。
幸いなことに頭を使う立ち回りは嫌いじゃない、こうなればいつまでもサーヴァントの愚痴を言っても仕方ない、やってやろうじゃないか。

「はぁ、こういうノリは魔理沙とかの役割でしょうに」
「まるさ?」
「……人の名前ぐらいはちゃんと言えるようになって頂戴」

はてさて、このサーヴァント。

どうしたものかしらね。


313 : アリス・マーガトロイド&シールダー(エクストラクラス) ◆c92qFeyVpE :2015/08/15(土) 23:34:24 8M.IH1mo0
【クラス】シールダー
【真名】ブロントさん
【出典】FINAL FANTASY XI
【性別】男性
【属性】中立・善と悪が備わり最強に見える

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
 事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。

【保有スキル】
カリスマ:E
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 「俺は北海道のDRAK〜ダーク〜っていう喧嘩チームの頭だべ」

挑発:A
 相手の注意を引きつけるスキル。
 敵の攻撃行動時、このスキルを持つ者を優先的に狙うようになる。

白魔法:C+
 女神アルタナの力を借りた神聖・回復・強化魔法の一部を使用できる。
 威力、種類共に本家である白魔道士には劣るが、ナイトにのみ唱えられる魔法も存在している。

汚いなさすが忍者きたない:EX
 忍者へのとてもとても強い嫌悪感。
 相対する相手に忍者がいた場合、ターゲットが忍者に固定されると共にステータスが1段階向上する。
 「これ立てたの絶対忍者だろ・・汚いなさすが忍者きたない
  俺はこれで忍者きらいになったなあもりにもひきょう過ぎるでしょう?
  俺は中立の立場で見てきたけどやはりナイト中心で行った方が良い事が判明した
  忍はウソついてまでPTの盾役を確保したいらしいがナイトに相手されてない事くらいいい加減気づけよ
  ナイトは忍者よりも高みにいるからお前らのイタズラにも笑顔だったがいい加減にしろよ」

【宝具】
『唯一ぬにの盾(インビンシブル・ランパート)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
 ナイトが心の底から祈る時、女神アルタナによる祝福がもたらされる。
 30秒間、あらゆる敵の攻撃を自らに引きつけ無効にする。
 ―――守りたくて守るんじゃない、守ってしまうのがナイト。

『本当につよいやつは強さを口で説明したりはしない(おれパンチングマシンで100とか普通に出すし)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 数々の相手をぶん殴るという逸話が昇華した宝具。
 ―――左腕に電気を纏わせ相手をぶん殴る。
 ―――親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴る。
 ―――ギガトンパンチにはさらに上のパワーアップしたパンチがあるそれがメガトンパンチ。

【weapon】
グラットンソード
 自慢するわけじゃないけど七罪を宿す装備の一つ。
 尖った部分が多いのでこれでさらに敵に致命的な致命傷を与えられる。色も黒っぽいのでダークパワーが宿ってそうで強い。
 ちなみにダークパワーっぽいのはナイトが持つと光と闇が備わり最強に見える。暗黒が持つと逆に頭がおかしくなって死ぬ。
 また、持ってるだけで周りに一目置かれるようになるため発言権が強くなり、まともに口答えできるやつがいなくなる。

 「グラットンすごいですね」
 「それほどでもない」

【人物背景】
 人々により伝承のみが膨らみを持って伝えられ、実体を持たない人物が物語の中でのみ実体を形成した英雄。
 由来としては、2ちゃんねるに「ロト ◆ROTOWt.c」のコテハンで活動、その後は名無しとして書き込みをしていた人物が挙げられる。
 そのあまりにも突き抜けた思考や、独特のセンスを感じられる言葉遣いから、すぐに中の人を特定されるようになる。
 その後、ネ実板での彼の一連の書き込みが住人に注目され、アカウントの特定を試みられるようになり、
 その結果、Fenrir(フェンリル)サーバーの「Buront」という人物だという結論がなされ、以後、彼は「ブロント」と呼ばれるようになる。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯を手に入れたら俺の知り合いのゲームマスターに議会で提案してもらう

 侍   の    大    弱   体     を    な

【基本戦術、方針、運用法】
 誰かを守ることに特化している。
 ソロで戦うよりも他のサーヴァントとパーティを組むことによってナイトの真価が発揮されるだろう。


314 : アリス・マーガトロイド&シールダー(エクストラクラス) ◆c92qFeyVpE :2015/08/15(土) 23:34:42 8M.IH1mo0
【マスター】アリス・マーガトロイド
【出典】東方Project
【性別】女性
【マスターとしての願い】
聖杯自体の解析

【weapon】
人形
 アリスの操る無数の人形。
 魔法の糸で繋がり、武器を用いての攻撃や弾幕の形成が可能。

【能力・技能】
人形を操る程度の能力
 魔法の糸を使い人形を操る。
 人間に可能な動作のほとんどを人形にさせることができる他、
 複数の人形にそれぞれ別の動きをさせて、時には連携を取らせたり完全に非同期で動かしたりでき、周りからすればとても操作しているとは見えない。

魔法を扱う程度の能力
 七色に象徴される魔法を得意とする。
 だが基本的に人形を操っての戦闘を主にしているため、魔法を使うことはあまり無い。

【人物背景】
 魔法の森に住む魔法使い。
 魔法使いにして人形師である。
 人形作りが得意で、また大量の人形を魔法で同時に操ることができる。その器用さは幻想郷でも随一。
 人形に人形を操らせることすらできるというが、人形を作ることだけは全て自分で行なっている。
 自分の意志を持ち自分の意志で動く、完全な自立人形を作るのが目標である。
 現在はアリスが人形に命令すれば自立しているかのように動かせるが、定期的に命令し直さなければならず、それ以上に達するにはまだ修行が足らない。
 大人しそうに見えて結構好戦的であり、勝負を挑まれれば喜んで受けて立つ。
 しかし圧倒的な力で戦いに勝つことはアリスにとっては楽しいことではないらしい。
 また、全力を出して負けると後がないため、本気で戦うことがない。

【方針】
 最終的には聖杯狙い、相手に応じて立ち回りを変えていく


315 : ◆c92qFeyVpE :2015/08/15(土) 23:35:02 8M.IH1mo0
以上で投下終了です


316 : 名無しさん :2015/08/16(日) 05:20:38 yLsCX6a.0
シールダー、お前かよ!w
尚シールダーで侍の弱体化と聞くと、ああ、小次郎大暴れしてるものな、オルレアンと思ってしまったw


317 : 名無しさん :2015/08/16(日) 13:44:59 JzEtqUXIO
このシールダーはロリコンだからアリスは気を付けるでござるよ^^


318 : 名無しさん :2015/08/16(日) 14:23:03 vV.Xc1S60
>>317
ニンジャ死すべし、慈悲はない


319 : ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:34:47 an0GBHtI0
投下します


320 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:35:30 an0GBHtI0
◇  ◇  ◇



少女は夢を見た。
闇の中に落とされ、芽吹くことのできない種の物語。
こんな闇の中では育つことはできない。
もし花開くことができても誰も見てはくれない。
そう嘆く種に、『影』が現れ語りかけた。

「僕が君を芽吹かせよう。僕が君を咲かせよう。
 だから君は、僕のために花開いておくれ。
 そのために忌まわしい太陽を呑みこんでおくれ」

種は影の祝福を受け、怪物として芽吹いた。
そして太陽の力を呑みこみ、怪物として花開いた。
『影』の敵である、『太陽少年』を喰らわんとし、その命尽きるまで怪物であった。
命尽きると、『太陽』の祝福を受け、怪物は『世界樹』の一部となった。
そして、『太陽少年』に大地の祝福を与え、花が一つ、散った。



◇  ◇  ◇


321 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:36:08 an0GBHtI0

「起きたのね、アキ。まだ夜だけれど。
 ……寝床に伏せて、悩む時間はおしまい?」
「あなた…いえ。ええ、決めたわ。私は戦う。ディヴァインのために聖杯を手に入れて、彼を蘇らせてみせる」

崩れ落ちるビルの中から救出され、病院にいるはずだった。
しかしいつの間にかユグドラシルという見ず知らずの地にいた。
呼ばれた当初は戸惑うばかり。
デュエルディスクも、デュエルモンスターのことも知らない周りの人々。
現れた女性に聖杯戦争について聞いたが、しばらく混乱は収まらい。
微細ながら崩落の際のダメージ、突如巻き込まれた事態への混乱、なにより大切な人を失くした悲嘆で寝所に篭っていた。
しかしその期間で覚悟は決めた。
願望器をこの手に収めるのだ、と。

「いきましょう、ランサー。
 夜こそ聖杯戦争の本番。そしてあなたの時間なんでしょう?」
「…………ええ、いいわ。戦いに否はない。
 でも今からだと家族が心配すると思うわよ」
「ッ、あんな奴らどうでもいい!偽物でも本物でも、必要ない!
 家族と呼べる人は、ディヴァインは……………もういない……唯一の私の理解者……………」

ドゥラスロールに聞いていたNPCの存在。
ただしその中には記憶を取り戻せていないだけの本人がいるかもしれないとも。
この家にいる二人も本物の両親かもしれないと。
そうだとしても、かまうことなどない。

「家族は大事にするものよ?」
「聞きたくないわ!もう私は空っぽよ!………ディヴァイン亡き今………この世のすべては憎むべき物になってしまった…
 だからこそ聖杯をとるために邪魔なものなら、破壊できる!排除できる!」
 私から居場所を奪う敵には容赦なんて絶対しない………!あなただって……!」

右手を強く握り、その手に宿った令呪を睨む。
しかしそれを行使することはなかった。

「賢明ね。感情的に令呪を使わないのはこちらとしても助かるわ」
「……この、忌むべき印を縛るものは、望むものだから。あなたなんかに費やしてられないわ」

右腕に宿った赤き竜の痣。
それに薔薇の花と蔓が絡んでいる。
アキはここにきて、サイコパワーが弱まっているのを感じていた。
それはサーヴァントへの魔力供給という形で力を消費しているからなのだが、彼女は令呪が痣を縛っているように思えていたのだ。
縋るように、いつくしむように右腕の令呪に触れる。

「あら、赤い竜(ドラクル)、その脚部ね?
 ふぅん、私には花がその竜を彩っているように見えるけれど」
「世迷言……」

令呪の形はマスターの身に宿る特性により形を変えるという。
それが痣を彩るなど、受け入れているなど思いたくなかった。


322 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:36:34 an0GBHtI0

「アキ、あなたが自分の力をどう思うか。聖杯に何を願うか。
 あまり強く言いたくはないけど……」
「あなたに何が分かるのよ!」
「あなたが私について分かっているのと同じくらいには、私はあなたを分かっているつもりよ」

拒絶の言葉を、踏み込んで抑え込む。
お互いに夢を通じて過去に踏み込んでいる。

「あなたも咲けない花だったのね……
 でもディヴァインという人は、『影』に似ていると思わない?
 花(あなた)の蜜(ちから)だけが目当ての、害虫じゃあない?」
「ちがう、ちがう!
 ディヴァインは私と同じ!世界に拒まれて、だからこそ私を認めてくれた!求めてくれた!」

慕う男を害虫などと言われ、感情をあらわにする。
巨大な怒りと……ほんの少しの葛藤。

「今まで動かなかったのはその人を失くしたから?聖杯戦争になじめないから?
 ……迷ってたんでしょう、あなたに手を差し伸べてくれた人がいたから」
「あなたが、闇に落ちて吸血鬼になった存在がこんな先の見えない戦場で的外れの説教!?」

フォーチュンカップの戦い。
星を冠する竜と青年とのデュエル。
彼は確かに受け入れてくれた。
それでも、ディヴァインが…………
それに帰る方法もわからないこんなところで、どうしろと……

「ええ、そうね。今は聖杯戦争。この上ない影の中、この上ない闇の中。
 それでも、花のすることは一つよ。
 太陽(きぼう)に向けて、枝葉(て)を伸ばしなさい。
 太陽(きぼう)に向けて、花(えがお)を咲かせなさい。
 たとえ夜でも、日の当たらない影でも、明日もまた日は昇るのだから。
 あなたも女(はな)なら、それを忘れちゃ決してダメ。
 太陽が眩しすぎるというなら、あなたは星を目指せばいい」
「……私にとっての星はディヴァインよ。聖杯は絶対に必要なの」

迷いはある。
それでも、それしかできない。
それしか、考えたくない。

「ふぅ、頑固なコね。でも帰路がないのは事実。
 いいわ、私が連れて行ってあげる。
 私は赤きドゥラスロール、陸を司るイモータル。
 太陽樹としてでなく、不死種として降臨したのは戦うためなんでしょうから。
 この闇の向こう、光の射す世界へ。その道中、存分に悩みなさい」

動機については、少々遺憾。
でも勝者が一人の戦場で、少女を守るために戦うのは上々。
血を吸う鬼が人殺しなどためらうものか。
このマスターのため、綺麗な花に付き物の棘になろう。

(にしてもよく私を呼べたわね……太陽樹と一つになったのに、またイモータルになるなんて思わなかった。
 生い立ちもあるけど、赤い、植物を司る、竜/吸血鬼(ドラクル)が縁になった?
 ……ううん、やっぱりここが世界樹だからでしょうね)

元より自分は世界樹から落ちた種の血統、暗黒樹。
最期に同化した太陽樹も同様。
だからこそ世界樹は、太陽樹でなく、自分だけを認識できたのだろう。

(でも、なんでこんなところで、私なんかを?
 ……ここが噂に聞く、遥か蒼空の果てで白銀の騎士が宝物を求めるものに与える試練、蒼空の塔?
 聖杯っていうのはムゲンの可能性を秘めた願望器よね……
 それとも古の大樹の上層で死者の軍勢を勧誘するという黒騎士の伝説?
 ここはまぎれもなくユグドラシル、それにサーヴァントっていうのはまさに死者の軍勢(エインヘリヤル)ね……
 黒兄様の言っていた楔も気になるし……何が起きているのかしら、この世界樹で)


323 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:37:01 an0GBHtI0
【クラス】
ランサー

【真名】
ドゥラスロール@続・ボクらの太陽

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷B+ 魔力A+ 幸運B 宝具B++

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
死徒:A
暗黒物質ダークマターによって変異した、イモータルと呼ばれる吸血種。
世界樹の末裔、暗黒樹が変異した死徒であり、在り方としては死徒二十七祖第七位アインナッシュに近い存在である。
能力としては自身を含む植物の自在な行使、使い魔として蜂を操るなど。
当然だが彼女に吸血されたものは才覚によっては死徒と化す。

世界樹の枝葉:B
ユグドラシルの末裔、暗黒樹が死徒化した存在であり、肉体の消滅後はおなじくユグドラシルの末裔である太陽樹と一体化した。
大地と太陽の祝福を受けており、実体化している間はユグドラシルおよび大地から魔力が供給される。
また太陽の力を蓄える性質のあるユグドラシルの末裔としての特性から、死徒でありながら日光を弱点としない。
同ランクの神性も内包する。

陣地作成:―(C)
自らに有利な陣地を作り上げる。
暗黒樹の根を伸ばし、大地から魔力を吸い上げる。
さらに本体近くでは後述の宝具による戦闘がより強力に行えるようになる。
しかしここは世界樹の上に建造された町であり、世界樹の末裔の一部たる彼女の根はすでに巡っているも同然。
すでに陣地は完成した状態であり、実質意味をなさない。
なお魔力吸収については先述のスキルによるもので十分であるため、そちらもほぼ意味をなさない。

命の遺産:D+
核が破壊され現界不可になった時、自動発動する。
余剰魔力の全てを使いマスターの傷・魔力を癒す。
さらにマスターの才覚によっては癒しの魔術を習得することがある。

【宝具】
『血の如く赤き薔薇が咲き誇る(スカーレッド・ドゥラスロール)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
死徒、イモータルである彼女そのもの。
陣地作成により影響を及ぼし、かつ自身の視界内にある範囲にユグドラシルの末裔、暗黒樹の一部を自在に生やし武器とする。
此度の聖杯戦争では会場が彼女の始祖たる世界樹であるため、視界内で無条件に発動可能。

根は触腕の如く、鞭の如く振るわれる。
枝には棘が生えており、それを射出することもできる。
花粉には毒があり、対魔力や毒への耐性のないものが吸い込むと目は霞み、体力も激しく消耗する。
実は棘の生えた鉄球のようで、上方から落としたり投げつけたりする投擲武器となる。
そして最も強力なのは後述の『枝』である。

『大神宣言・枯渇前夜(グングニル・オリジン)』
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜8 最大捕捉:10人
ドゥラスロールの行使する、自らの一部たる暗黒樹の枝。
棘の生えたランス状の巨大な枝を地中から高速で突き出し、攻撃する彼女の究極の一。
オーディンの持つ槍、『大神宣言(グングニル)』の材料となった世界樹、その末枝による一撃であり、運命干渉による回避を無効とする。


324 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:37:56 an0GBHtI0

【weapon】
・ポイズンビー
彼女の花粉に群がる毒蜂。魔力により生み出せる。
刺されれば対魔力や毒への耐性を持たない者は目が霞み、体力も激しく消耗する。
使い魔としての行使も可能。

【人物背景】
赤きドゥラスロールの異名を持つ、陸を司る不死種(イモータル)。
元は日の当たらない影に落とされた世界樹の種。
当然育つことはなく、朽ちいくはずの身を彼女は誰にも必要とされないと嘆いた。
そんな種子に『影の一族』のイモータル、黒のダーインが力を与え、死徒とした。
ダーインに協力を求められ、必要とされる喜びに満たされながら任務として、そして自らの成長のために大地から太陽の力を奪う暗黒樹となった。
太陽の恵みを失った大地は枯れ、自らと同じ世界樹の末裔たる太陽樹も朽ちようとしていた。
それを解決しようとするヴァンパイアハンター、太陽少年ジャンゴと対決。
与えられた任のため、何より同朋を守るために闘争を繰り広げるも敗北。
最期には太陽の力を一身に受けて消滅するが、その際に光の暖かさを知り改心。
太陽樹を一つになることで大地に太陽の恵みを戻す。
さらに自らを倒したジャンゴに大地の祝福を授け、以降は太陽樹として世界を見守り続ける。

光の無い地に落ちたがゆえに、誰かに必要とされることを、役目と光を与えられることを望んだ少女。
そのために一時は奪う側に堕ちてしまったが、最期に双方に恵まれ、人に与える側の存在となった本来は心優しい存在。

【サーヴァントの願い】
誰かに必要とされる限り、誰かに恵みを与える事。
誰かに必要とされたがっているアキがそれを望むなら聖杯をとることも考えるが、できるなら彼女にとっての太陽を見つけてあげたい。

【基本戦術、方針、運用法】
本来ならポイズンビーによる偵察と、根を伸ばしての前準備に重きを置くキャスター型の動きをする。
しかし世界樹という特異な戦場であるが故の遊撃が可能。
魔力の供給を常に大地と世界樹から受けるため消費に関しては気にせずガンガンいける。
その豊富な魔力を生かし、宝具の乱発が戦略の中心か。


325 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:38:37 an0GBHtI0

【マスター】
十六夜アキ@遊戯王5D's

【令呪】
右腕。
赤き竜の痣、ドラゴン・レッグに巻きつく薔薇の蔓と花。
蔓が一画目と二画目、花で三画。

【マスターとしての願い】
ディヴァインを生き返らせ、アルカディアムーブメントを再興する。

【weapon】
・カードデッキ
本来は武器ではない。
カードゲーム「デュエルモンスターズ」の、40枚+エクストラデッキで構成されるカードデッキ。
ブラック・ローズ・ドラゴンをエースカードに、それをサポートする植物族と薔薇の名を冠するモンスター群のデッキを用いる。

・デュエルディスク
本来は武器ではない。
デュエルモンスターズをプレイするための立体映像(ソリッドビジョン)投影機であり、左腕に装着することで使用する。
彼女は先述のデッキと後述の能力によりデュエルによらない武器として用いることができる。
その際にはアドバンス召喚のルールに従わずローズ・テンタクルスを召喚するシーンが散見しており、ルール無用のリアリストとなる。

・ブラック・ローズ・ドラゴン
本来は武器ではない。
前述したカードデッキに投入されているモンスターカード。レベル7・攻撃力2400・守備力1800のドラゴン族シンクロモンスター。
シンクロ召喚に成功した時にフィールドのカードを全て破壊する効果と、墓地の植物族モンスターを除外することで相手の守備表示モンスターの攻撃力を0にし、さらに攻撃表示にするという、二つの強力な効果を持つ。
5000年に一度起こるシグナーとダークシグナーの闘争においてシグナーの一人が持つべき竜であり、世界に一枚しか存在しない。
とある施設の封印に用いられたキーカードでもある。
ちなみに黒薔薇の花言葉は「恨み」「憎しみ」「貴方は私のもの」「束縛」。
真紅の薔薇の花言葉は「永遠に愛してる」。

・髪飾り
有り余る超能力の制御装置として着けている。
外せば能力を全開で発揮できるが、それはほぼ暴走させるのみで制御できない。
逆に強い感情の高ぶりによって能力が暴走したときには髪飾りが外れてしまうことがある。


326 : 十六夜アキ&ランサー組 ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:38:54 an0GBHtI0

【能力・技能】
・カードゲーム
デュエルモンスターズのプレイングスキル。
秘密結社アルカディアムーブメントに所属し鍛えた技能は優秀なものであり、デュエルアカデミアに所属すればトップクラスの成績を誇る。

・サイコデュエリスト
いわゆる超能力者。
この能力により、デュエルによる立体映像(ソリッドビジョン)でのダメージは現実のものとなってしまう。
モンスターの攻撃により対戦相手に実際にダメージが発生し、建造物の破壊なども起きてしまう。
原作終盤において本来のものである癒しの力として覚醒するが、今の彼女ではそこまで至らない。
それでも強大過ぎる力であり、先述の髪飾りに加えてある種の催眠によっても抑えている。
その封は「冥界への入り口は魔女の島にある」という言の葉によって解き放たれる。

この能力によりサーヴァントへの魔力供給を可能としている。

・シグナ―
5000年に一度、ダークシグナーと戦う宿命を負った選ばれし戦士。
証として赤き竜の一部を象った痣を持ち、彼女は右腕に竜の脚ドラゴン・レッグを持つ。
時空改変による記憶改竄の影響を受けない、魂を吸収し生贄にしようとする神の力に抗うなどの耐性を持つ。
痣を持つ者の近くにいる人物も庇護可能。
なおこの能力によって召喚時の記憶改竄を免れたが、逆に聖杯戦争の知識も得られなかったためそれに関してはドゥラスロールに教わった知識に依存する。

【人物背景】
デュエルアカデミアに通う、どこにでもいる少女……のはずだった。
しかし生まれ持ったサイコデュエリストとしての力は成長と共に増大していき、学友や家族を傷つけるようになってしまう。
それを当然周りは恐れ、ついには両親とも溝ができてしまう。
そのため彼女は自らの有する超能力を忌むべき力と呼び、嫌う。
それは自らの持つもう一つの力、シグナーの痣にも同様の感情を向けるきっかけとなる。
周りの人も、自らの力も嫌い、そしてその感情の捌け口として不毛な破壊を繰り返す日々。
しかし内心では居場所を求める思いとは別にその破壊を楽しむ一面もあった。
そんな中で自分と同じサイコデュエリスト、ディヴァインに出会い、サイコデュエリストのための組織アルカディアムーブメントの一員となる。
ディヴァインに能力を鍛えられ、制御法を学び、彼に心酔するようになっていく。
そして彼の指示に従い、彼の望む世界――その実はディヴァインの復讐でしかないが――を作り出すために尽力。
フォーチュンカップに出場し、体制にくさびを打ち込もうとするが失敗。
その後アルカディアムーブメント本部がシグナーの敵、ダークシグナーの手によって崩落し、病院に運ばれていた時間軸からの参戦。

【方針】
居場所を奪う敵は容赦なく倒す。


327 : ◆yy7mpGr1KA :2015/08/17(月) 20:42:19 an0GBHtI0
投下終了です。
アキのステータスにおいて、当企画のnig7QPL25k氏の作品から海馬瀬人のものを参考にさせていただきました。
お礼申し上げます。

それから、ひとまずフロンティアセッターも選考のテーブルには乗れたようで安心しました。
そちらもひとまず候補としての承認ありがとうございます。


328 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:48:57 J7/DyyOc0
投下させていただきます


329 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:49:36 J7/DyyOc0
『彼』は突然、自らの記憶を思い出した。
最後の記憶は、いつも通りに愛車を格納し、自身のパートナーと呼べる青年と「また明日な」と挨拶を交わし、
部屋に一人となった直後の事だった。

「うぅむ、一体これはどういうことなんだろうねぇ」

次の瞬間、彼の『頭』に未知の情報が叩き込まれた。

―――ムーンセル
―――電子の海
―――聖杯戦争
―――マスター
―――サーヴァント

突如湧きあがった様々な知識。
頭脳に軽い目眩…のような現象を感じ、彼は『体』を左右に軽く振った。
それにあわせて、表情も険しいものへと変化する。

「なるほど…どうやら、状況は理解できたようだ。
聖杯戦争……私はその戦いに呼ばれた、マスターというわけだね」

「ハッキリしたようで何よりだ、ミスター」

声は後部座席から聞こえた。
『顔』をそちらに向けると、座っていたのは一人の男性。
外見年齢は40歳ほど。
屈強とは言えないが、鍛えられた肉体に鋭い眼差しの外国人…おそらくアメリカ人だろう。
突然現れた彼に対し声を上げようと思ったが、彼の『胸』に自然と視線が集中してしまう。

光っていた。人間の胸部が。
自然の太陽光などではなく、明らかに人為的な何かによる光。
その光の元凶は、彼の胸に『埋め込まれていた』。

「き、君。その胸は…?」
「あぁこれ? 生きてた頃に、ちょいと怪我をしていてね。
英霊になって呼び出されたはいいけど、その怪我まで再現されちゃって、まぁ保護的なものさ。
それはともかく、君が僕のマスター…ということで、いいんだよね?」
「あ、あぁ。という事は、君が私の…?」

男は「そう」と返し、優雅に足を組み、笑みを浮かべて言った。

「今回の聖杯戦争にライダーのクラスで呼ばれた。
真名は『アイアンマン』だが、普段は本名の『トニー・スターク』って呼んでくれ。
よろしく、ミスター………」

そこまで言って、男――『トニー・スターク』は怪訝な顔をする。
彼の視線の先には、マスターとなる相手の存在。
その存在を目に入れた時、彼の顔に疑問が浮かんだ。

そこに『人』はいなかった。
視線の先にあったのは、車体の中心に装着されている『ベルトのようなもの』だった。

「……えーと、少々確認したいことがあるんだけど。それは通信端末か何かなのかな? ミスター」
「おっと、こちらこそ失礼した。そして正真正銘、これが私の『体』さ」

スタークの問いかけに、彼は答えた。

頭――『電子頭脳』が現在の状況全てを把握し。
体――車体の中央にセットされた、腰に装着できる大きさの『ベルト』が動き。
顔――『ディスプレイ』に表示された表情が笑みを浮かべる。

「改めて、こちらも自己紹介しようスターク。私は『クリム・スタインベルト』。
このマシン『トライドロン』のナビゲーションシステムであり、『ドライブシステム』の管理者でもある。
今回、君のマスターを勤めさせてもらうことになった。よろしく頼むよ」

声を発したベルト――『クリム・スタインベルト』は、そう答えた。



□ □ □


330 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:50:15 J7/DyyOc0
□ □ □



赤い車体と後部に装着されたタイヤが目を引くマシン――『トライドロン』が疾走する。
魔術都市ユグドラシルの外周に位置する、一般住宅街、歓楽街、自然保護区をちょうど一周する形で作られた道だ。
ユグドラシルに電気やガソリンといったものはないが、クリムと共に召喚されたトライドロンのエネルギーは街の魔力で賄われているらしい。

聖杯戦争に呼ばれ、クリムの記憶が戻った以上、1次予選は突破したということだ。
まだ他の参加者と出会っていないが、今後、様々な能力をもったマスターやサーヴァントとの戦闘は避けられないだろう。
わざわざスーパーマシンまで呼んでくれたのだ。戦力や移動手段として使わないなど、宝の持ち腐れである。
そう判断した2人は、慣らしや情報交換も兼ねてドライブとしゃれこんでいた。
もちろん、運転はスタークが行っている。

「しかし、人型のロボットや人造生命体っていうなら理解できるけど、人工知能のベルトがマスターになるって、聖杯戦争的にどうなんだ?」
「私に言われても困るよスターク。内部機能をチェックしてみたが、マスターの証である令呪は私のメインサーキットにプログラムとして組み込まれている。
他のマスターと同じように、私の意志と言葉一つで発動できるようだ」
「まぁ確かに、僕も生前は人工知能の開発はやってたし、いろいろ手伝ってもらってもいたけどさ」

英霊となる前の自身の記憶――世界的巨大軍需企業『スターク・インダストリーズ』の頃の記憶が脳裏を走った。
少し懐かしみながらも、話題を今後の指針へと変更した。

「まぁそれは置いといてだ、クリム。君は聖杯に願いはないということでいいのかな?
願いさえすれば、元の肉体を取り戻すなんて事もできるんじゃないか?」
「私は既に一度死んでいる身だからね。
自分の不注意でこのような体になってしまったのだから、今更、生身の体を取り戻したいとは思わないさ。
強いて言えば、サーヴァントを使って参加者以外の人々に害をなす存在を優先的に倒していきたいというのが、私の願いだね。
もちろん、自衛のためには戦おう。倒されては元も子もない」
「了解だクリム。そういった方針の方が、僕も気兼ねなく戦える。
何しろ生前は、ヒーローやってたもんだからね。君も相棒とヒーローやってたんだっけ?
さっき設計図だけチャチャっと引いてきたアレ……うん、実にいいネーミングだ。アイアンマンより実にヒーローらしい」

クリムと今までかわした会話の中で、スタークが一番興味を抱いたのは、その話題だった。
クリム自身を装備した資格者に特殊装甲を装着させ、生前のクリムの命を奪った機械生命体と互角に戦える戦士。
ただいま運転中のトライドロンを駆り、市民の平和を守る存在らしい。

「Exactly(その通り)。だが、この聖杯戦争でその力が使えるかといえば、答えはNoだ。
システムそのものは私の中に生きているが、肝心の変身アイテムが存在していない」
「それは残念。僕の宝具はセーフハウスに用意した陣地でしか発動できないし、
どこでも発動させる事ができるアーマーも、セーフハウスの質が低い現状じゃあすぐに用意できない。
その道具…小さいミニカー、だっけ?
設計図だけは用意したけど、やっぱアーマーと平行して、復元できるかしっかり試してみる方がいいね」

使える手は多いに越した事はない。
世界を超え、時代を超え、数多くの強敵が待ち受けているのだから。
だからこそ、スタークはクリムの持つ知識を求め、クリムはそれに応じた

「うむ、私の知識と君の英霊としての能力があれば、君のアーマーはもちろん、私の世界の技術の復元も可能だろう。
そのためにも、このユグドラシルの正確な全体図の把握と、安心して作業が行える工房の作成が第一だ。
セーフハウスもいくつか用意した方がいい。複数の拠点で別々の作業を行えば、時間はかかるが後々の我々に有利となるだろう」
「了解だクリム。複数の拠点を作るか、少ない拠点で性能を重視するか、どっちにするかは悩む所だけどな。
それじゃ、街全体の把握は今日中には終わらせておこう。久々の運転だ、ひとっ走り飛ばすとしますか!」
「OK! Start Your Engine!」

アクセルを踏み込み、トライドロンはユグドラシルを疾走する。
まだ見ぬマスター、サーヴァント達と戦うため。
何よりも市民の平和を守るために――


331 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:50:39 J7/DyyOc0
□ □ □



同時刻、彼らが最初に用意した陣地――セーフハウス。
既にここには、スタークのスキルによって生み出された彼の工房が存在していた。
トライドロンで2人が出発した後も、マシンによって管理された工房は一切の無駄なく動き続ける。

光線を打ち出す鋼の腕を。
飛翔を可能とする鋼の足を。
あらゆる戦況を管理する鋼の頭部を。
まだ素材からの生成作業中だが、ほどなくパーツは一つずつ完成していくだろう。

スタークが戦うための武器にして、全てを打ち払う鋼の装甲――『アイアンマン』。
それの完成が先か、敵との戦いで脱落するのが先か。
運命は、どちらに微笑むだろうか。

そして工房の一角には、コンピュータ上で再現された2つの設計図が浮かび上がっていた。

一つは、スポーツカー、パトカー、ダンプカーなど、様々な形状のミニカー。
一つは、スポーツカーをイメージした赤と黒と白の装甲と、胸にたすきがけのように装着された1つのタイヤが目を引く強化服。

その設計図のファイルには、このような名称が刻まれていた。

『Shift Car』
『KAMEN RIDER DRIVE』


332 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:51:47 J7/DyyOc0
□ □ □



2人の男と、1台の車が、聖杯戦争に挑む


この男、発明家でヒーロー


この男、人工知能で変身ベルト


異世界を舞台に、アーマーと車で戦う


聖杯戦争の歴史が、今変わる!


Start! Your Engine!


Enjoy! The Yggdrasill Wars!



□ □ □



【クラス】
ライダー

【真名】
アイアンマン(トニー・スターク)@アベンジャーズ

【パラメーター】
宝具発動前 筋力:E++ 耐久:D+ 敏捷:D 魔力:E 幸運:C 宝具:D
宝具発動後 筋力:C 耐久:A++ 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:D〜A

【属性】
秩序・善

【保有スキル】
騎乗:B-
 騎乗の才能。大抵の乗り物を自在に操れる。
 ただし動物に関しては、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

装備製作:D→A
 武器や装備を製作する才能。
 ミサイルやライフルいった殺傷兵器、対象を一時的に拘束する目的の拘束兵器など、
 機械を用いた様々な装備を製作できる。
 一撃で死亡する威力の対人兵器は、スタークが「倒すべき敵」と認識した対象にしか使用しない。
 製作した全ての兵器を他の参加者が使用する事は可能だが、
 スタークが許可した人物しか使えないよう、機械的なプロテクトがかかっている。

 陣地作成スキルの発動時間に応じてランクが上がっていき、作成可能な装備の性能が上昇する。
 目安として、
 D・無防備なマスターなら撃退できる程度(マーク1)
 C・不意打ちでない限り、正面から戦える(マーク2〜3)
 B・サーヴァントと真正面から戦えるが油断は禁物(マーク4〜6)
 A・サーヴァントと互角以上に戦える(マーク7)

 といった性能となる
 令呪を用いることで、製作した武装のランクを上昇させる事が可能

陣地作成:B
 自らに有利な陣地を作り上げる。
 主に装備製作のための工房作成、後述のアーマー装着を行う装着場の製作に使用され、
 陣地作成に時間をかければかけるほど、装備製作スキルの性能が上昇する。

 陣地は複数用意する事が可能。
 新たな陣地を用意する際は、その陣地で作る装備製作スキルは最低ランクからとなる。


【宝具】
『装着せよ、強き自分(私がアイアンマンだ)』
ランク:D→A 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:1-5人
 トニー・スタークが自ら作り上げたパワードスーツ=アイアンマンアーマー。
 彼の人生、ひいては自身そのものといえるアーマーが宝具となったもの。
 アーマーを装着することで発動し、各パラメーターが上昇する

 ガントレットの掌から発射される光学兵器「リパルサーレイ」。
 トニーの胸に装着され、自身の生命維持装置でもある半永久発電機関「アーク・リアクター」による無尽蔵のエネルギー。
 両足のスラスター・ブーツによる飛行機能、自らの意思を持つAI「J.A.R.V.I.S.」とのリンクによる戦況把握能力。
 全身に装備されたロケットミサイルや、対象を麻痺させる特殊弾など、様々な兵器を全身に装備している。

 宝具とは銘打っているが、装着には機械的な手順を必要とし、
 装備製作スキルが低い状態では、陣地作成によって用意された専用の装着場でしか装着ができない。
 なお、装着場自体は武装製作スキルがDでも短時間で作成可能。
 スキルランクが上昇することで、どのような場所でも装着(携帯型のマーク5、飛行ユニット型のマーク7)可能なアーマーが製作可能となる。
 令呪による緊急のアーマー召喚、装着は可能。


333 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:53:09 J7/DyyOc0
【weapon】
アイアンマンアーマー
 装着することで宝具が発動し、アイアンマンアーマーの全武装が使用可能となる。
 共通して全ての武装が機械を用いたものとなり、魔力的攻撃力はほとんど持たない。

アーク・リアクター
 スタークの心臓付近には爆弾の破片が突き刺さっており、その破片から心臓を守るために製作した小型のエネルギー装置。
 心臓保護用の物とアーマー起動用の物があり、胸に空いた空洞に装着することで起動、
 心臓の保護とアイアンマンスーツのメイン動力源として機能する。
 令呪を用いたり、クリムから魔力を供給することで、緊急時のエネルギー補給が可能。

【人物背景】
アメリカ巨大軍需企業「スターク・インダストリーズ」の社長にして天才発明家。
17歳でマサチューセッツ工科大学を首席で卒業し、20歳の誕生日に両親が事故で他界してしまい、
莫大な遺産と大企業の経営権を得ることになった。
社長に就任したトニーは、自身の頭脳を使って数々の新技術を次々に開発する。

自身が開発した兵器の試射に立ち会ったトニーだが、現地のゲリラが彼にミサイルを発射。
ミサイルに自身の会社の名前が刻まれている事を見たトニーは爆発に巻き込まれ、
破片がトニーの心臓周辺に突き刺さったものの、どうにか一命は取り留める。

ゲリラに拘束されたトニーは更なる武器の製造を強要され、やむを得ず一度は製造を了承する。
だが、ゲリラの目を掻い潜りながら、トニーはある物の開発に取り組み始めた。
生命維持を可能にするアークリアクターと、リアクターと連動するアーマー「マーク1」である。
マーク1を完成させたトニーはゲリラを撃退し、脱出に成功した。

国を守るために作った武器がゲリラの手に渡り、罪のない人々にその銃口が向けられている現状を思い知らされたトニーは、
脱出時に破損したマーク1に変わり、最新技術を満載したパワードスーツ『アイアンマン(マーク3)』を開発。
世界中のテロを撲滅すべく、アイアンマンとして活動を開始した。

今回の聖杯戦争にライダーとして召喚されたのは、彼が「アーマー」を「自らの身」として自在に乗りこなすことから。
彼が所属していたヒーローチーム『アヴェンジャーズ』の装備全般を製作していた生前の歴史から、
武装製作に特化したエクストラクラス『製作者(クリエイター)』として召喚されていた可能性もあったかもしれない。

なお、今回の聖杯戦争のスタークは、『アベンジャーズ』として異星人と戦った所までの記憶を持つ。
よってスキルによって製作できるアーマーは、マーク1〜7までとなる。
アベンジャーズの戦いからそんなに日が経ってないため、
この後の未来で描かれた、不眠症やアーマー依存症には陥っていない


【サーヴァントとしての願い】
自身の願いはない
マスターであるクリムと協力し、市民に害をなす敵を倒していく


【基本戦術、方針、運用法】
聖杯戦争開始直後は、どれだけ陣地作成と装備製作に時間を割けるかが最大のポイント。
召喚時からすぐに陣地作成を開始したため、本編開始時にCランクのスーツ(アイアンマンマーク3)なら、ほぼ開発が完了していると思われる。
陣地作成に時間をかければかけるほど、製作できるアーマーの性能も上昇するため、必然的に優勝の可能性も上昇していく。
複数の拠点で低クラスの装備を同時に製作するか、拠点数を絞って高性能な装備を作成するか、ここが運命の分かれ目となるだろう。
マスターであるクリムが幅広い知識を持っているため、
陣地作成に注力すれば、武装製作のランクを数日でAまで上昇させることは可能。
武装製作スキルがAになれば、クリムの世界の知識を得たことで、ドライブシステムに関する道具を製作することができるかもしれない。


334 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:53:54 J7/DyyOc0
【マスター】クリム・スタインベルト
【出典】仮面ライダードライブ
【性別】男性(電子頭脳)
【令呪の位置】内部のメインサーキットにプログラムとして組み込まれている

【マスターとしての願い】
聖杯にかける願いは今のところなし
スタークに『元の体を取り戻したくないか』と言われ、否定したが・・・?


【weapon】
ドライブドライバー
 クリムそのものであるベルト状のアイテム。
 装着者を仮面ライダードライブに変身させる能力があるが、変身アイテム「シフトカー」と変身ブレス「シフトブレス」が存在しないため、
 実質、ドライブへの変身機能は封印されている。
 自身での行動が不可能なため、普段はスタークが用意した活動拠点で待機しており、陣地作成の人工知能として行動。
 必要に応じてスタークがトライドロンで持ち運ぶ形で行動する。

トライドロン
 クリムが開発した2人乗りの自動車型マシン。
 仮面ライダードライブの能力強化アイテムの生成や、クリムの指示による無人走行等が可能なスーパーマシン。
 クリムそのものといえる存在でもあるため、共に召喚された。
 基本形態のタイプスピード、悪路の走行に適したタイプワイルド、アームクローを操るタイプテクニックの3パターンに変形が可能。

【人物背景】
トライドロンに搭載されているナビゲーションシステムであり、機械でありながら人間と同じ知識と感情を持つ。
かつては高名な科学者だったが、自身が製造に携わった人造生命体「ロイミュード」の反逆によって致命傷を負い、
死の間際、自らの記憶と意識をドライブドライバーにインストールした。
その後はロイミュード撲滅のため、協力者の手を借りながらトライドロンやシフトカーを開発。
警察組織に身を隠しながら、自身を用いて戦ってくれる協力者を探していた。
ある一人の警察官と出会い、彼と共に秘密の戦士「仮面ライダードライブ」としてロイミュードと戦っていく。

【方針】
NPC=市民に害をなす存在と戦う
自衛のために戦う事には異議なし


335 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 00:55:12 J7/DyyOc0
投下完了です。
初書き込みとなるので、誤字脱字や指摘ありましたら、よろしくお願いします。


336 : なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか :2015/08/20(木) 01:00:27 J7/DyyOc0
なお、>>5で施設追加は問題なしと記載がありましたので、
ユグドラシル外周部の一般住宅街、歓楽街、自然保護区をちょうど一周する形で、車が通れる程度の道を設定させていただきました。
スポーツカータイプのトライドロンが問題なく走れる程の道ですが、悪路や入り組んだ先の行き止まりなどの設定は、後の書き手の皆様にお任せいたします。


337 : ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:16:48 C0yGODrI0
皆さま投下お疲れ様です。
私も投下させていただきます


338 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:19:31 C0yGODrI0

風が彼女の髪を靡かせ、見上げた太陽の眩しさに思わず目を細める。
風を遮る遮蔽物が無いため一般住宅街区域に感じたものより強く感じていた。
モーラ・チェスターは自然保護区のとある山の頂上に立っている。
その山の標高は決して高くなく、頂上までは登って麓に降りるまで日帰りでも充分なほどだ。
モーラは休日を利用して登山を楽しんでいた。
本来なら頂上に登ったことへの達成感得て、そこから見える絶景を楽しむことで日々の精神的な疲れを解消し、朗らかな気分で下山するはずだった。
しかし今の彼女には朗らかな気持ちなど一かけらもない。

(何故こうなった?)

モーラが頂上にたどり着いた時にそれはおこった。
突如頭痛が彼女を襲う。
頭に流れ込んでくるのは聖杯戦争についての知識。魔術都市ユグドラシルでの偽りの生活を送る前の自分は何をしていたかという記憶。
あまりの情報量に思わず立つこともできず膝を地面についてしまう。
しばらくすると頭痛は収まり思考する余裕もでてくる。
ひとつ深呼吸をしてから自分が置かれている状況を整理することにした。

自分は魔神復活を阻止するために選ばれた六花の勇者の一人。
他の六人の六花の勇者と共に魔神復活を阻止するための旅を続けていた。
そしてその記憶は消され、この魔術都市ユグドラシルで生活を送る。
本来の記憶を取り戻し、この地で行われる聖杯戦争への参加資格を得た。
この戦争に勝てば何でも願いを叶えることができる。
この戦いで死ねば元の世界に帰ることはできない。元の世界に帰るにはこの戦いに勝つのみ。

正直モーラは今置かれている状況を受け止めきれていない。
だが戦わなければ死が待つのみということだけは理解していた。

そしてあることに気付く。
自分のサーヴァントはどこに居る?
聖杯戦争はサーヴァントと共に戦うもの、なのに何故姿を現さない?
モーラは次第に不安を募らせていく。
だが突如自分の背後に何かがいることを感じふりむくとそこには男が立っていた。


「あなたが私のサーヴァントか?」

直感でこの男が自分のサーヴァントだとは理解していた。
だがモーラは目の前の人物がサーヴァントと正直思えなかった。
蒼い目をした端正な顔立ちの青年だった。サーヴァントに歳は関係ないが年齢にしたら自分より年下だろう。
だが服装は酷かった。
藍色のスーツは皺だらけ、シャツは第二ボタンまで開いている。ネクタイは結び目が胸の真ん中にある上に小剣が大剣より長くなっている。
まるで世捨て人か何かのようだ。それが抱いた第一印象だった。

サーヴァントはモーラの問いに答えるどころか目すら合わそうとしない。
手持無沙汰なのか周りのキョロキョロと見渡し、独り言をブツブツと喋っている。

モーラは項垂れて思わずため息をついてしまう。
今まで個性的あるいは変人と呼ばれるような、一般的な感性から逸脱している人物と接したことはあるがこのサーヴァントはそれらの人物とは一線をかした変人ぶりだ。
自分の命運を左右するサーヴァントがこんな頼りない変人に任せなければならない。
英霊と言われる存在が弱いわけがないがとても強いとは思えない、こんなサーヴァントをあてがった聖杯を呪いたくなる。


339 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:22:19 C0yGODrI0


しかし項垂れていてもしょうがないと顔を上げるがその異様な光景に思わず目を見開いてしまう。

「な!?」

そのサーヴァントは黒い何かに覆い尽くされていた。
端正な顔も皺だらけの藍色のスーツも全く見えず目の前にあるのは人型の黒いオブジェのみ。
自分が俯いて目を離していたのはほんの二三秒に何がおこった?
動揺しながらも何が起こったか知るために黒いオブジェを観察すると表面が蠢いているのがわかる。
さらに足元には蟻が這っている。
その蟻には魔力的な何かを感じる。
そしてモーラが知っている蟻とは明らかに別種の存在だった。
まず大きさが違う。その蟻は自分の中指ほどの大きさはあるだろう。
そして頭部は異様に大きく牙はさらに大きい。
この蟻はあのサーヴァントが生み出したのだろう。
そしてその蟻を数秒で自分の体中に纏わりつかせた。
蟻が体中に纏わりつく不快感を想像してしまいおもわず身震いする。

何故蟻を自分の身体に纏わりつかせたのか?
モーラには皆目見当がつかなかった。サーヴァントの声を聞くまでは

「さようなら」

その言葉を聞いた時ある光景を思い出した。
小さな蟻が自分の数十倍大きい昆虫に対して数百匹で群がり殺し、その死肉を跡形もなく喰らい尽くしている。
蟻とは恐ろしい生き物であると感じたものだ。

もしあのサーヴァントが召喚した蟻なら人間でもその昆虫と同じように跡形も食い尽くせるだろう。
喰いつくせる?
その時モーラの脳内ではありえない考えが導き出された。
自分が与えられた知識ではありえない行動。だがこのサーヴァントはそれを実行すると確信めいたものがあった。

「やめるのじゃ!自殺などするのではない!」

このサーヴァントは自殺しようしている。
与えられた知識ではサーヴァントとは聖杯を使って叶えたい願いがある英霊ということになっている。
何故自ら命を絶とうとしている?
このサーヴァントはハズレどころではない聖杯戦争以来最悪のサーヴァントと言っていいだろう。
サーヴァントが死ねば数時間以内に新しいサーヴァントと契約しなければ自分は消える。
そして今から数時間以内に再契約を結ぶのは奇跡でも起きない限り無理だ。
これでは聖杯戦争という舞台に立つ前に退場することになる。
そんな幕切れは許されない!

「何故死のうとする?叶えたい願いがあるのではないのか?」
「僕の願いは叶えたい願いは聖杯なんかでは叶えられない。例え叶えたとしても母さんが喜ぶはずがない。
ここで戦う理由はない。だから消える」
「頼む!私と戦ってくれ!」

モーラは祈るように懇願した。
だがサーヴァントに纏わりつく蟻が消える気配は一向にない。

「頼む……私ともに戦ってくれ……そうしなければ世界が……夫が……娘が……」

モーラは膝をつき崩れ落ちた。
地面には大粒の涙が落ちる。
泣き落としで説得しようとわけではない。モーラは元来そんな器用な真似をできる人間ではない。
ただ自然と涙を流していた。
このサーヴァントが自殺することを止められない。
自分はこの地で朽ち果てる。
愛する娘と夫を救うこともできずこの見知らぬ土地で朽ち果てる。
諦めにも似た感情が支配していた。

「お前は母親なのか?」

だがサーヴァントから思わぬ質問が投げかけられた。
母親であるか?それがどうしたのか?

「お前は母親なのか?」

モーラが質問に答えないせいかサーヴァントの語気は少し強くなっていた。

「ああ、そうだ」
「詳しく話せ」

気が付くとサーヴァントに纏わりついていた蟻は一匹も居なくなっていた。


340 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:24:32 C0yGODrI0




詳しく話せと言われても何を話せば分からなかったがモーラはサーヴァントにすべてを話した。
自分がこの地に呼ばれる前に何をしていたのか、自分が聖杯に何を願うのか、そして娘と夫をどれだけを愛しているのかを。

サーヴァントは木の枝で砂遊びをしながら聞いていた。
真面目に聞いていないのは少し癪に触るが自分に対して少しでも興味を持ってくれているだけでも良しとする。
話し合いの中で召喚されたサーヴァントのクラスはキャスターというがわかった。

「それでお前は娘と夫のために参加者を殺すのか?」

キャスターは射抜くような目つきで見つめる。
砂遊びをしながら話を聞いていた時とはまるで違う。
キャスターにとってこの問いは重要なのだろう。
自分の答え次第でキャスターが共に戦ってくれるか否かが決まるだろう。
何と答えるべきか?
ウソをついてキャスターが喜びそうな答えるべきか?
違う。例えその答えにキャスターが納得しても自分を偽れば必ず良からぬことがおきる。

モーラは自分の本心をウソ偽りなく答えることにした。
裏表なく誠実に生きることを信条としてきた。
それが最善の行動でありキャスターと信頼関係を築くにもそれが正しいと考える。

「そうじゃ。私は参加者を殺して聖杯を使って魔神復活を阻止する。
聖杯を勝ち取るために恨みもない人物を殺す。軽蔑するならそれでいい。
だが、これが本心じゃ。世界のため、いや娘と夫の為なら他人の命などいくらでもかけられる」

モーラはキャスターの射抜くような視線から目を逸らすことなくはっきりと答えた。
そんなモーラをキャスターはただじっと見つめる。

身体の身のこなし、内包する魔力でわかる。このマスターは強い。
自分が住んでいた世界の基準でいえば決して最強というわけではないが充分に強い。
大概の人間を殺すことが可能だろう。
そんな人間が自分の願いのために戦い他者を殺す。
それはキャスターが嫌う強者が弱者を虐げる。強いものが弱いものを意のままにする行為である。
だがモーラの気持ちも痛いほどわかる。
かつて自分も愛する母のために正確に言えば偽者の母のために戦った。
同僚を殺し、敵を殺した。
強者が弱者を虐げてはいけないという母の教えに背いてまで戦った。
その時は世界中の何よりも母のほうが大切だった。

そしてキャスターはふと考える。
もし母が聖杯戦争にマスターとして参加したならどうするだろう?
決まっている。戦わず、この戦いを止める為に行動するだろう。
母は誰よりも弱く。誰よりも優しかった。
そんな母が聖杯戦争を許すはずがない。

だがもしかして自分のために戦ってくれるかもしれない。
そうだとしたら嬉しくもあるが悲しくもある。
自分のために戦うということは自分の存在があの優しい母を闘争の舞台に上げたことになる。
それを知ったら自分は悲しみのあまりに自殺するだろう。

モーラの話を聞いて彼女が何よりも娘と夫を愛していることがわかった。
自分が母を愛していたように。
あれほどの愛を受けている娘が母親のことを嫌うわけがない。
夫もそうだろう。
そんな母親が修羅となり人を殺したと知ったら娘と夫はどう思うだろう。
自分の達のために戦ってくれて嬉しいと思うかもしれない。
そしてキャスターと同じように自分達がモーラを修羅にしてしまったと悲しむかもしれない。
そうなれば罪悪感で依然と同じように接せることはできない。
そして幸せな家庭は崩壊するだろう。
例え夫と娘がその事実を知らなかったとしても同じように幸せな家庭は崩壊するだろう。

モーラの話を聞いてわかることがあった。
それは彼女が善良な人物であるという事。
娘と夫のために他の参加者を殺すと自分に宣言した。モーラは実際それをできる実力もあり覚悟もある戦士だ。
しかし参加者を殺していくたびに良心の呵責で身を引き裂かれるような思いになるはずだ。
そして例え聖杯戦争を勝ち抜き願いを叶えたとしても罪なき人を殺したという罪悪感で依然と同じように娘と夫に接せることはできないだろう。


341 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:29:10 C0yGODrI0




モーラは緊張のあまり思わず唾を飲み込む。
キャスターの質問に答えてからずっと黙ったままだ。
何分が経ったのかはわからないがその間針のむしろに居る気分だった。
とりあえずキャスターは自殺を思いとどまり、自分の話を聞いてくれた。
だがサーヴァントとして戦ってくれる保証はどこにもない。
自殺を選ぶようなサーヴァントだ。未練もなければ戦う意志が薄いのだろう。
そんな者が戦ってくれるだろうか?

「条件がある」
「なんじゃ?」

条件をつけるということはとりあえず戦う意志があるということであり、内心ホッとしていた。

「マスターは一切戦わない。僕はサーヴァントだけを攻撃する。マスターを殺せる状況だろうと攻撃はしない。それを認めるなら戦う」

即答はできなかった。
何としても聖杯を勝ち取りたい。そのためにはマスターより強いサーヴァントが攻撃するのは有効な手段でもあり、サーヴァント同士が戦っている間に自分が他のマスターを倒すことも有効な手段だ。
それを禁じるというのは自ら枷をつけるに等しい。
だがモーラはキャスターの意志を尊重することにした。

「誓おう。万天神殿の長として、モーラ・チェスターとして。
そして礼を言う私と共に戦うことを決意してくれて」

キャスターはモーラの礼に答えることなく霊体化して姿を消した。

キャスターのサーヴァント。真名モッカニア=フルール。
彼には願いは何一つもない。
いや、願いはあるがそれは聖杯戦争を勝ち聖杯の力を使って叶えても意味がないことだ。
モッカニアの願いは母、レナスが生き返ること。共に二人で過ごすこと。

だがそのためには戦わなければならない。他のサーヴァントを殺し、マスターを殺し、屍の山を築いて初めて願いが叶う。

――自分より弱いものを虐げてはいけない、強いものが弱いものを意のままにしてはならない

これは生前レナスに言われた言葉。
この言葉がモッカニアという人物に多大な影響を与え、強者が弱者を虐げることを嫌うようになった。
聖杯戦争に勝つことは自分という強者が弱者を虐げることになる。
それで生き返っても母は喜ばない。それどころか息子を戦わせてしまったことにひどく悲しみ自責の念で自殺するだろう。
そんな母の姿は見たくない

故にモッカニアは聖杯に何も願わない。
もし何かの間違いでサーヴァントとして召喚されても自殺しようと決めていた。
戦い自分が勝利すれば弱者を虐げることになってしまう。

今回の聖杯戦争に呼ばれたモッカニアは自殺しようとした。
だがある異変に気付いた。
通常の聖杯戦争ならサーヴァントが死んでも教会に逃げ込めば命は保障される。
しかしこの聖杯戦争は通常のものとは違い、契約したサーヴァントが死ねばマスターも再契約しない限り数時間で死んでしまうことを思い出す。
自分のエゴがマスターを殺す。
これは強者が弱者を意のままにするということではないか?

モッカニアは悩み、やはり自殺することにした。
母は自分が戦うことを悲しむだろうし、何よりもう戦いたくなかった。
だがモッカニアは自殺せずマスターが戦うことを選ぶ。


342 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:30:58 C0yGODrI0

モッカニアはモーラの娘と夫に対する愛に心が動かされていた。
その姿は自分を愛してくれた母であるレナスに通じるものがあり、そんな母親を見捨て自殺することがどうしてもできなかった。
生前の自分では考えられない感情だ。
母以外の人の為に戦おうとするだなんて。

そしてモーラに娘に自分と同じ苦しみを体験させたくなかった。
母親が死ぬ辛さは誰よりも理解している。
娘はまだ幼いと聞く。
自分も幼い頃に母が亡くしその時に自分は止まってしまった。
もしもっと成長していたら母の死と向き合えたかもしれない。
だが当時は母との生活がこの世界のすべてだった。
モーラの娘も自分と同じになってしまうかもしれない。

モッカニアはモーラのために、モーラの娘と夫のために戦うと決めた。
そしてモーラが願いを叶え幸せな家庭で暮らすために自分だけが戦い、サーヴァントを殺す。

彼女には戦わせない。人を殺したという罪悪感を背負わせないために。
母親は綺麗でなければならないから。
罪を背負うのは自分だけでいい。それは汚れきっている者の役目だ。
グインべクス軍を皆殺し、少年少女慰問音楽隊を殺し、同僚であるフィーキーを殺したこの手は誰よりも汚れている。

だが戦うということは母の教えに背くこと、強者が弱者を虐げることになる。
故にキャスターはサーヴァントのみを狙うと決めた。
サーヴァントは英霊と呼ばれる存在。
その強さは自分が戦った最強の敵ハミュッツに匹敵するだろう。
そんな存在は弱者と呼べない。

いや、それは只の言い訳だ。
サーヴァントに勝利した時点で相手は弱者であり、自分が強者であることが決定する。

(ごめんなさい母さん。帰ったらいっぱい叱ってもかまわない。
只マスターとその娘と夫が悲しむとこを見たくないんだ)


343 : モーラ・チェスター&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:35:07 C0yGODrI0

【クラス】キャスター
【真名】モッカニア=フルール
【出典】戦う司書
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:D+ 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
陣地作成:―
モッカニアは陣地を作り上げることができない。

蟻生成:A
宝具により蟻を生成技能。
用途に応じた蟻を大量に生成できる

【保有スキル】

心的外傷:A
バットスキル。
NPC又はマスターで子供を攻撃してしまうとステータスがすべで2ランク下がり一時的に行動不能になってしまう。
生前のある出来事が原因

身体能力強化:C
付与魔法による身体的能力の強化。発動に筋力、耐久、敏捷に+がつく。


【宝具】
『黒蟻』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜1000 最大捕捉:6500

モッカニアの魔法権利が宝具化したもの。
すべての生物を喰らい尽くす獰猛な肉食蟻。そんな蟻を兆単位で生み出すことできる。
生前はこの魔法権利を行使し一国の軍隊6500人を皆殺しにした。

モッカニアが生み出す蟻の大半は大雑把な命令しか遂行できない雑兵蟻だが、細かい命令を遂行できる蟻、物を運ぶ働き蟻、追跡用の羽蟻など用途に応じた蟻も生み出せる。


【weapon】
無し

【人物背景】
モッカニアは善良で将来嘱望されていた優秀な武装司書だった。
ただグインベクス軍との戦いで6500人を血の海に沈める。
戦場には白骨死体が溢れかえりその中には少年少女慰問音楽隊の子供たちの亡きがらもあった。
罪もない子供たちを巻き込んでしまったことに心を病み、人と関わることを極力避けるようになり引きこもりのような生活をおくる。
そんな中、ウインケニーによって偽の母親・レナスを与えられ、偽者と知りながらもその人との時間を守るために武装司書を裏切る。
だが自分の勝手で彼女を傷つけてしまったことを悔い、自らの魔法権利で命を絶った。

【マスター】モーラ・チェスター
【出典】六花の勇者
【性別】女性
【令呪の位置】背中

【マスターとしての願い】
聖杯の力で魔神復活を阻止

【weapon】
手甲

【能力・技能】

『山の聖者』
山の精気を使った治療、遠くを見渡す千里眼、やまびこで特定の相手に声を届ける。
また能力を応用して音を消すことができる。

【人物背景】

魔神復活を阻止するために選ばれた六花の勇者の一人。
「山」の神の力を持つ聖者。聖者を統括する万天神殿の長。女性で夫子持ち。
性格は生真面目で品性方向。その性格から他の聖者からも信頼されている。
その真面目な性格ゆえか嘘をつくのが苦手で腹の探り合いなどは滅法弱い。
物事を冷静に判断はできるが、物事を推理するのが苦手であり相手の策略を読むことは苦手。

【方針】
聖杯狙い


344 : ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 10:37:19 C0yGODrI0
以上で投下終了です。
なおモッカニアのステータス◆S8pgx99zVs氏のハミュッツを参考にさせていただきました。
この場でお礼申し上げます


345 : ◆7DVSWG.5BE :2015/08/20(木) 11:34:51 C0yGODrI0

【サーヴァントとしての願い】が抜けていたので修正しました。
申し訳ございません

【クラス】キャスター
【真名】モッカニア=フルール
【出典】戦う司書
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:D+ 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
陣地作成:―
モッカニアは陣地を作り上げることができない。

蟻生成:A
宝具により蟻を生成技能。
用途に応じた蟻を大量に生成できる

【保有スキル】

心的外傷:A
バットスキル。
NPC又はマスターで子供を攻撃してしまうとステータスがすべで2ランク下がり一時的に行動不能になってしまう。
生前のある出来事が原因

身体能力強化:C
付与魔法による身体的能力の強化。発動に筋力、耐久、敏捷に+がつく。


【宝具】
『黒蟻』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜1000 最大捕捉:6500

モッカニアの魔法権利が宝具化したもの。
すべての生物を喰らい尽くす獰猛な肉食蟻。そんな蟻を兆単位で生み出すことできる。
生前はこの魔法権利を行使し一国の軍隊6500人を皆殺しにした。

モッカニアが生み出す蟻の大半は大雑把な命令しか遂行できない雑兵蟻だが、細かい命令を遂行できる蟻、物を運ぶ働き蟻、追跡用の羽蟻など用途に応じた蟻も生み出せる。


【weapon】
無し

【サーヴァントとしての願い】
モーラを守る

【人物背景】
モッカニアは善良で将来嘱望されていた優秀な武装司書だった。
ただグインベクス軍との戦いで6500人を血の海に沈める。
戦場には白骨死体が溢れかえりその中には少年少女慰問音楽隊の子供たちの亡きがらもあった。
罪もない子供たちを巻き込んでしまったことに心を病み、人と関わることを極力避けるようになり引きこもりのような生活をおくる。
そんな中、ウインケニーによって偽の母親・レナスを与えられ、偽者と知りながらもその人との時間を守るために武装司書を裏切る。
だが自分の勝手で彼女を傷つけてしまったことを悔い、自らの魔法権利で命を絶った。


346 : ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:06:07 vpvdYKjg0
>アリス&ブロントさん組
おいィ……w
なんかブロントさんなのに、普通に強いスペックなのが笑えます
やっぱりこの手のキャラクターは、ツッコミ役と組ませるのが映えますよね

>アキ&ドゥラスロール組
アキさんこの時期で来たかー!
世界樹とも相性のいいドゥラスロールといい、面白そうな組み合わせです
きっと波乱を招いてくれるかも

>クリム&アイアンマン組
まさかのメカマスター2人目!?
それもフロンティアセッターとはまた違う感じだし、すごく面白そうだと思いました
そういえばアイアンマンもドライブも、赤いメタリックヒーローなんですよね

>モーラ&モッカニア組
この2人の原作は、どちらも同じ作者さんの作品なんですよね
それがカッチリと噛み合うというのは、面白いなと思いました
軍団を殺せるほどの蟻も、色んな使い方ができるかも

自分も投下させていただきます


347 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:06:31 vpvdYKjg0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での何者かの夢を。

「どうした、撃たないのか? 相手は学生だぞ。それとも気づいたか? 撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだと」

 奪われたものを取り戻す。
 奪った者をこの手で殺す。
 黒く燃え盛る復讐心が、その男の最初の動機だった。
 妹を想う優しい心を、妹の幸せを奪った者への、激しい怒りの炎にくべて、男は戦場へと立った。
 世界一の超大国に、たった一人で立ち向かう。
 そんな無謀な戦いを、多くの人間を巻き込み実践してみせた。
 その行く先で、多くの命を、その手から取りこぼしながらも。

「我が覇道を阻む者は、もはや存在しない……そう! 今日この日この瞬間をもって、世界は我が手に落ちた!」

 やがて熾烈な戦いの果てに、男は大国の皇帝となった。
 憎むべき者をその手で殺し、憎むべき者と同じ椅子に座り、憎むべき者と同じように奪ったのだ。
 野心の炎は世界を包み、地図に黒々と焦土を広げた。
 恐怖で人々を支配し、玉座で高らかに笑う男に、もはや昔の面影はない。
 悪逆皇帝と謳われた姿からは、復讐も優しい心すらも、全て消え失せてしまったように見えた。

「ああ……俺は、世界を壊し……」

 しかし、栄華は長くは続かなかった。
 皇帝は世界を手にした直後に、自らも凶刃に倒れたのだ。
 かつて野にあった頃の男と、同じ姿をした者によって、その命を絶たれたのだった。
 それでも、不思議と男の顔には、未練の影も見られなかった。
 どこか晴れ晴れとしたような、うっすらとした笑みすらあった。
 男が皇帝になってまで欲したものは、自分の意のままになる世界ではない。
 自分を倒した者達が、手を取り築いていける世界だ。
 男はそのために礎となり、自らの仕掛けた茶番に倒れた。
 そして最期の瞬間になって、ようやく醜い仮面を脱ぎ捨て、己が本心を口にしたのだ。

「世界を……創る――」

 彼が命を懸けてでも、託したいと思ったもの。
 彼が命を捨ててでも、贖いたいと思ったもの。
 贖罪と未来への願いを込めて、最期に男が見据えたものは――


348 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:07:02 vpvdYKjg0


 ニーズヘッグという名の蛇がいる。
 翼持つ竜とも言い伝えられる、冥界ニブルヘイムに巣食う魔獣の名だ。
 世界樹ユグドラシルの根本に住み着き、無数の蛇に囲まれながら、その根を齧って生きている。
 魔術都市の影に潜み、勢力を広げる女マフィア――雅緋は、まさしく神話の竜蛇だった。

「ひ、ひぃっ……!」

 酒場の裏に這いつくばる影。
 身の程を知らぬチンピラ達の顔も、いい加減見飽きてきたところだ。
 漆黒のパンツスーツを纏い、その顔に白髪と金眼を光らせて。
 びくびくと震える無法者達を、雅緋は無表情で見下ろす。
 組んだ両腕によって強調される、その両乳房は、豊満であった。

「少しは身の程を理解できたか?」
「はっ、はい! すんませんでした!」
「許してください! これ以上は勘弁してください! 何でもしますから!」

 ぽっと出の成り上がりを快く思わず、痛い目に遭わせてやろうと息巻いた者達だ。
 しかし結局は返り討ちに遭い、自分たちが痛い目を見ることになった。
 大の男が揃いも揃って、殴り倒され地に倒れ、みっともなく命乞いをしている。
 プライドも何もかもドブに捨て、助けてくれと懇願してくる。
 矜持も持てない無様な姿には、滑稽さよりも、苛立ちが先立った。

「本当に従うんだな」
「はい! そりゃもう何でも……」
「ならばやれ、ライダー」

 感情のこもらぬ冷たい声で、雅緋は暗がりへと言い放つ。
 一体いつからそこにいたのか――彼女の背後には、もう1つ、何者かの人影があった。
 現れた男の姿は、白い。
 大きな帽子から手足に至るまで、全身が白装束に包まれている。
 ところどころで彩りを放つ、金の刺繍や宝石は、さながら王侯貴族の装飾だ。

「つくづく運がなかったな。意地の一つでも張っていれば、怪我一つで終わっていただろうに」

 そしてその顔に浮かぶのは、邪悪そのものの笑顔だった。
 美しく整った顔立ちに、白い三日月を浮かべる男の様子は、獲物をとらえた猛獣のそれだ。
 何をする気かは分からない。
 だが確実に何かをされる。
 この白ずくめの男は間違いなく、何かをしでかすつもりでいる。

「あ、ああ……っ!」

 がちがちと身と歯を震わせながら、言葉にならない声を上げた。
 みっともなく怯える無法者達が、力の抜けた腰で後ずさった。
 しかし駄目だ。もう間に合わない。
 奴らからは逃げられない。雅緋とあの男からは逃れられない。
 見ろ、奴の紫の瞳を。黒髪の下で爛々と輝く、男の魔性の双眸を。
 あれは何だ。
 あれは――あの赤い煌きは!

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる――」
「ぎゃあああぁぁぁっ!!」

 一際大きな悲鳴を最後に、魔術都市ユグドラシルの路地裏は、元通りひっそりと静まり返った。


349 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:07:33 vpvdYKjg0


「サーヴァントが見つかった。南東の住宅街で、戦闘を見たそうだ」

 かつかつと靴音を立てながら、雅緋が白服へと歩み寄る。
 路地裏の一件からしばし経ち、場所も室内へと変わっていた。
 彼女の率いるグループが、アジトとしている建物である。

「ならば手負いだな。ワンサイドゲームだったとしても、魔力の消耗は避けられないはずだ」

 くつくつと笑う白装束の男は、椅子につき手にグラスを持っている。
 氷をからからと鳴らすそれに、注がれているものは水だ。
 堂々たる態度を取っていながら、しかしその男の正体は、酒も飲めない未成年だった。
 神聖ブリタニア帝国第99代皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 弱冠18歳にして、世界の全てを掌握したという、あまりにも幼すぎる天才。
 それが雅緋の召喚した、ライダーのサーヴァントの真名だった。

「しかしゴロツキの張り込みとは、マスターも回りくどいことをするな。
 さっさと警察でも掌握してしまえば、検問の一つで済んだろう」
「警察は目立つ。妙な動き方をすれば、他の参加者に気取られかねん。
 むしろああいう連中ならば、怪しい行動を取ったとしても、不自然でも何でもないだろう」
「違いない」

 分かっていて聞いたということか。気に入らん奴だ。
 中性的な顔立ちの眉間に、雅緋はむっとしわを寄せる。
 暗黒街の女傑・雅緋――彼女を台頭させた力は、自身の腕っぷしだけではない。
 このサーヴァントの有する宝具・『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』もまた、それを後押しする力となっていた。
 ルルーシュの魔眼に魅入られた者は、彼の発する命令に、抗うことができなくなる。
 先ほどのチンピラ連中も、赤きエンブレムの力によって、雅緋の奴隷と成り果てた。
 今やこの魔術都市には、そんな連中がそこかしこで、ひっそりと息を潜めているのだ。
 全ては主の獲物を見つけ、主を勝利へと導くために。

「で、どうする? 今のうちに攻め込むか?」
「そう……だな。立て直す隙を与える前に、追い打ちをかけた方がいいだろう」

 問いかけの返答が、一瞬遅れた。
 話を切り出したはずの雅緋が、ほんの僅かに言い淀んだ。
 それを決して見過ごすことなく、ルルーシュは瞳を光らせる。

「何だ? 気のない返事だな。今更戦いを躊躇うような、そんな柄でもないだろうに」
「……馬鹿を言うな。聖杯戦争には必ず勝つ。その考えは変わっていない」

 怖気づいてなどといないと、雅緋はルルーシュに反論した。
 雅緋には聖杯にかける願いはない。
 しかし、英霊達の戦いに臨み、勝ち抜いたという事実を得れば、その名に箔が付くことになる。
 賞品に魅力を感じずとも、それにより得られる名声の方は、彼女にとって見逃せないものだった。
 母校・蛇女子学園の復権を、一日も早く成し遂げるには、強くあらねばならないのだ。
 裏切り者を打倒した今こそ、蛇女の誇りを再び掲げ、天地に知らしめねばならないのだ。


350 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:08:14 vpvdYKjg0
「戦うことと勝つことに迷いはない。ならば、二の足を踏ませているのはその先のもの……聖杯にかけるべき願いか?」

 しかしルルーシュは問いかける。
 聖杯はなくともいいという前提が、お前の中で崩れたのかと。
 今更叶えたい願いを見つけて、それに対して迷っているのが、今のお前の有り様なのかと。

「っ……」
「図星だな」

 遂に雅緋は絶句した。
 押し黙る女の姿を前に、少年はにやりとほくそ笑んだ。

「マスターが何を迷っているのかは知らない。願うことを躊躇するなど、私には到底理解できん」

 言いながら、ルルーシュは立ち上がる。
 すっかり空になったグラスを、からんと音を立て机に置くと、雅緋に向かって歩み寄る。
 大柄な雅緋を更に凌ぐ、180センチに迫る長身が、彼女のすぐ隣まで迫った。

「そんな贅沢な躊躇いは、さっさと捨て去ってしまうことだ。
 叶えたいと思うなら、素直に叶えてしまえばいい。願えるものを持てるだけ、遥かにマシなのだからな」

 耳打つように語りかけると、ルルーシュはそのまま歩み去った。
 すたすたと歩いていきながら、自らの体を霊体に変え、電灯の届かぬ闇へと消えた。
 部屋には一人、雅緋だけが、ぽつんと取り残されている。
 3つも年下のガキに知った口を叩かれ、唇を薄く噛むその顔は、一層険しさを増していた。

(簡単に言ってくれる)

 そんな簡単に割り切れるほど、この胸に湧き上がった願いは、単純なものではないというのに。

(死者をあの世から呼び戻すなど……そう気安く願えるものではないのに)

 雅緋の本分は忍だ。
 古の妖魔を打倒するため、古来より脈々と受け継がれてきた、忍の技の伝承者だ。
 そしてその妖魔とは、彼女の母の仇でもあった。
 大人の忠告を無視して、妖魔の縄張りに踏み込んだ幼い雅緋を、母は命と引き換えに守った。
 その復讐と贖罪こそが、今の雅緋を突き動かす、何よりの原動力だった。

(ママしゃま)

 誰よりも優しく強かった母。
 その海のような大きさに、何度も甘えてなついた記憶。
 本当の自分をさらけ出すことのできた、かけがえのない、雅緋の「ママしゃま」。

(私はまだ……過去に囚われているのか……?)

 過去を乗り越えようとしていたつもりだった。
 かつての過ちに報いるために、今の自分が強くなり、未来を切り拓こうとしていたはずだった。
 母のような悲しい犠牲を、これ以上生ませないためにも、強くならねばならないと思っていた。
 だがそれでも、自分はまだ、断ち切るべき未練を引きずっているのか。
 曇った瞳は晴れるままに、雅緋はゆっくりと踵を返すと、重い足取りで外へと向かった。


351 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:09:06 vpvdYKjg0


 彼女の願いが何なのかなど、俺の知ったことではない。
 だとしても、何かを願うこと自体は、尊重されて然るべきだろう。
 もとより俺は、明日を願い、求めて走り抜いた身だ。
 そんな俺に、他人の願いを、否定する資格などありはしない。

 そして俺は願ってしまった。
 誰よりも大それた願いを、世界に向けて放ってしまった。
 そのために積み上げた屍の数は、今となっては数え切れない。
 故に俺にはもう既に、願いを持つ資格すらない。
 これ以上を望むことなど、もはや俺には許されない。

 だからこそ、奴に願いがあるのなら、叶えてやるべきだろう。
 俺に聖杯を使う資格がないなら、勝者に与えられる願いは、彼女に使わせてやるべきだろう。
 覚悟を固めきれずに折れるのならば、いっそそれでも構わない。その程度の女だったというだけだ。
 だがそれでも、もしもこの先折れることなく、願いのために戦おうと、心の底から思えるのなら。
 俺のこの血塗られた手は、その支えにこそ使うべきだ。

 我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 世界を壊し、世界を変えて、世界を創らんとした者。
 人の世の明日を見届けるため、世界に願い(ギアス)をかけた者。

 その願いにお前が従うのなら、俺が願いを届けよう。
 そのために立ち上がるというのなら、俺が高みへと導こう。

 それが願い(ギアス)を司る、我が運命であるのなら。


352 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:09:51 vpvdYKjg0
【クラス】ライダー
【真名】ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
【出典】コードギアス 反逆のルルーシュR2
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:C 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
軍略:A
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具、対城宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

話術:A
 言論にて人を動かせる才。
 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
 このスキルと軍略スキルを組み合わせれば、擬似的なカリスマすら発揮するほどである。

破壊工作:C
 戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
 ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。
 ルルーシュは世界征服すら成し遂げた大人物だが、まともに敵と戦い勝ち得た武勲はほとんどない。

虚弱体質:E
 生前のルルーシュは、運動神経こそそこそこあったものの、それを活かすために鍛えることを全くしなかった。
 これにより彼のスタミナは、同年代の女子にすら劣るほどのものになっている。


353 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:10:58 vpvdYKjg0
【宝具】
『我は世界を壊す者(しんきろう)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜40 最大補足:100人
 生前ルルーシュが搭乗した、人型機動兵器「ナイトメアフレーム」。
 本機は第8世代相当の技術で製造されており、当時としては最高峰のスペックを誇る機体である。
 必殺武器の「拡散構造相転移砲」は、戦場にプリズム状の液体金属を散布し、レーザーを乱反射させたオールレンジ攻撃を実現するもの。
 この他にも、堅牢なエネルギーシールドである「絶対守護領域」、飛行機能である「飛翔滑走翼」、
 超高度演算コンピューター「ドルイドシステム」などの機能を保有している。
 しかしそれだけの技術を注ぎ込まれながらも、科学の域を出てはいないため、神秘性は最低ランク。

『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜70 最大補足:300人
 神聖ブリタニア帝国ではなく、ルルーシュ本人を指して讃える言葉。
 宝具としては、この言葉を掲げ彼に従った、ブリタニア軍のナイトメアフレーム軍団を呼び寄せるものとなっている。
 必然性能面では『我は世界を壊す者(しんきろう)』に劣り、サーヴァントであれば問題なく対処可能な程度にとどまっているが、
 数を揃えれば十分な脅威となりうるだろう。
 もっともその力を十全に発揮するためには、多大な魔力が必要となることは言うまでもない。
 やはり神秘を伴わないナイトメアフレームの軍団であるため、宝具としてのランクは低い。

『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜15 最大補足:100人
 ルルーシュの両目に宿された「王の力」。
 発現者によってその性質は異なっており、ルルーシュのものは、「目を合わせた相手に、何でも一つ命令を下すことができる」能力である。
 この力は光信号によって伝達されるため、鏡越しに目を合わせても、複数人に同時に自分の目を見せても発動できる。
 ただし、サングラス程度の透過率の低さのものを通しただけでも、その力は無力化されてしまう。
 またこの力は、人間やマスターには通用するが、サーヴァントを従えることはできない。

【weapon】
なし

【人物背景】
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝。
前皇帝を殺害し、18歳の若さで皇帝に就任した天才であり、同時にブリタニアの文化を破壊し尽くした魔王でもある。
後世には世界全土をブリタニアの旗の下に従え、恐怖で世界を征服した、「悪逆皇帝」の呼び名が伝わっている。

幼少期に母マリアンヌを喪い、彼自身は外交の駒として日本へと送られた。
その後日本とブリタニアの間に戦争が起きたため、戦火に巻き込まれ死亡したと思われていたが、
実際はトウキョウ租界に潜伏しており、8年の時を経て歴史の表舞台へと舞い戻っている。

その口ぶりは傲慢にして不遜。敵対する者には容赦がなく、敗者を笑って踏みにじる冷酷な人物であったと言われている。
しかし、トウキョウに潜伏していた当時の様子を知る者からは、「ひねくれ者ながらも根は優しいお兄ちゃん」であったと言われていた。
彼の短すぎる人生には謎が多く、どちらが本当の顔であったのかは定かではない。

【サーヴァントとしての願い】
願いは既に、現世に託した。今更何かを願う資格はない。

【基本戦術、方針、運用法】
サーヴァントでありながら、生身での戦闘能力はマスターにすら劣る。
このため戦闘においては、開幕から宝具を使用するか、あるいはそもそも戦闘することなく場を収めるかの二択を迫られることになる。
マスターの戦闘能力は高いので、戦力として数に入れても構わない。


354 : 雅緋&ライダー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:11:46 vpvdYKjg0
【マスター】雅緋
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性
【令呪の位置】胸の谷間

【マスターとしての願い】
ママしゃまを蘇らせたい?

【weapon】
妖刀
 妖気を帯びた刀。

秘伝忍法書
 必殺技・秘伝忍法の力を引き出すための巻物。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の元選抜メンバーとして、ひと通りの忍術をマスターしている。
 雅緋は得意技として、黒い炎を操ることができる。

忍転身
 現代の忍の戦闘形態。上述した秘伝忍法書の力を引き出すための姿。
 この術を発動した雅緋は、マントを羽織った白装束を纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、雅緋の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

深淵血塊
 禁術の1つ。
 忍結界の中に染み込んだ者達の血を、自らの体内に取り込むことで、絶大な力を得ることができる。
 反面心身にかかる負担が大きく、暴走及び廃人化のリスクを孕んでいる。
 この術を発動した雅緋の力は、低級のサーヴァントにも対抗しうるほどに向上されるが、
 彼女はかつてこの術を使い暴走したことがあるため、二度と使うことはないと思われる。

【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
21歳の3年生で、スリーサイズはB90・W56・H87。学園長の娘でもある。
母親を妖魔に殺されており、妖魔狩りに臨む最高位の忍・カグラを目指している。
かつては1年生にして選抜メンバーの筆頭となるほどの実力者だったが、妖魔との戦いにおいて暴走、記憶を喪失してしまう。
その後は休学していたが、蛇女の壊滅に呼応するかのように復活。地に落ちた学園の権威を取り戻すべく奔走する。

武人のような喋り方をする、硬派な性格の人物。
中性的な顔立ちと相まって、女性でありながら非常に男らしい印象を与えている。
このため女子人気が非常に高いのだが、本人は女を捨てているつもりはないため、悩みの種となっているらしい。
厳しいが度量も大きく、成果を上げた者には正当な評価を下す人物。
ちなみに後のシリーズでは、相当なお母さんっ子であったことが判明。周囲を困惑させた。

忍法の性質を表す秘伝動物は鴉と蛇。カグラの称号を目指すだけのことはあり、戦闘能力は非常に高い。
上記の性格と相まって、そのカリスマ性は元選抜メンバー筆頭・焔を凌ぐほどのものを持っている。
妖刀と左の拳に纏う黒炎は、特に一撃の破壊力に優れている。
また、鴉を象った片翼を生じることができ、飛行こそできないものの、攻撃や防御に用いることができる。
必殺の秘伝忍法は、黒炎を纏わせた剣で切り裂く「悦ばしきInferno(インフェルノ)」、
蛇を象った黒炎を、渦を巻くように周囲に展開する「善悪のPurgatorio(プルガトリオ)」。
更なる威力を持った絶・秘伝忍法として、6枚の翼で飛翔し敵を剣で切り刻む「深淵のParadiso(パラディーゾ)」を持つ。

【方針】
優勝狙い。向かってくる敵は全て叩き潰す。


355 : ◆nig7QPL25k :2015/08/20(木) 22:12:48 vpvdYKjg0
投下は以上です
雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-&ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2)組でした

雅緋のステータス表は、「二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦」様のものを参考とさせていただきました


356 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:07:36 V.odX50k0
投下します


357 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:07:52 V.odX50k0

それは苦難に歓喜を
戦いに勝利を
暗黒に光を
死者に生を約束する
血のごとき紅き石

人はそれを敬意をもって呼ぶ
「賢者の石」と

           ──────鋼の錬金術師 第2巻より



   *   *   *



「貴方が私のマスターかしら?」



   *   *   *


358 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:08:15 V.odX50k0
 ムーンセルによって再現された雨の中、黒衣の女が道をよろよろと歩いていた。
 怪我をしている様子はない。にも関わらず弱っているように見えるのは内側の不調が
原因なのだろう。
 覚束ない足取りだった女はついに躓いて転び、体の全面が泥にまみれる。
 美しい容貌を泥水で惨めに汚しながらも女は笑っていた。


   *   *   *


 ああ、精々したわ。本当に。
 槍のサーヴァント『ラスト』は召喚された時からあのマスターに不服だった。

 ラストを召喚したマスターは、一言で言うと下卑た男だった。
 恐らく求めていたサーヴァントはラストでは無かったのだろう。彼女のステータスを
見たマスターは酷く落胆し「この塵め」と呟いた。
 だが、その後にラストの容姿が美しいと分かると肉体を求めてきたのだ。
 しかも令呪が勿体ないからお前から媚びろと言う始末。ぎゃあぎゃあ大の男が騒いでみっともなく、気が付いていたら殺していた。

「やっぱりいい男というのはそういないものね」

 あんな男ですら一次予選を突破できるというのだから驚きだ。
 才能というものを過小評価したつもりは無いがあの男が持つのは分不相応だと思う。

「まぁ、今から消える私には関係無いわね」

 魔力切れだ。彼女自身に疑似魔力炉が搭載されているがマスターがいなければ発動し
ない。この場合、サーヴァントがいないマスターと契約すれば魔力炉が稼働しラストは
全快するだろう。
 しかし、現状それは絶望的である。
 まずタイミングが悪い。予選通過時にマスターにはサーヴァントが与えられる。
 つまり、大半のマスターはサーヴァントを得たばかりだ。そしてサーヴァントを失った
マスターは時間が経つとムーンセルによって退場させられる。
 詰まる所、大半の人間がサーヴァントを連れていて当然の現状でサーヴァントを失って
数時間も経っていないマスターを探さないといけないのだ。

(まぁ、無理ね)

 出会って早々にサーヴァントを無くすような馬鹿(マスター)が何人もいるとは思えない。
 よって魔力が切れかかったラストはこのまま消えるのみだ。
 遂に体が透過してきた。その時────

「あなたサーヴァントですかぁ」

 幼い声がした。声がした方向に視線だけを移すとそこには少女と熊の着ぐるみをきた何かがいた。
 少女は髪、左右に纏めており……東洋人の顔付きと服装を纏っていた。
 ムーンセルから与えられた知識によると『着物』というらしい。ラストの生前は東の
大国『シン』から来た者がいたが彼等に近い意匠の服だ。

「実はぁ、私サーヴァント募集中なんですよぉ。
 さっきぃ、他のマスターにやられちゃってサーヴァントがいないんですねぇ」
「奇…………ぐ……うね……私も……マスターを殺して……一人な…の…よ……」

 こう言えばどんな反応を返すかしら。
 怖くなって契約を諦めるかしら、それとも命惜しさに渋々契約を持ちかけるだろうかしら?

 前者であればラストが消えるのみだ。
 だが、その程度で怖じ気づくマスターならばどうでもいい。この先の凄惨な殺し合いに耐えられるはずもない。
 後者であれば取り敢えずは生き残る算段ができるマスターだろう。少なくともむざむざ
死地に行く愚か者ではない。
 だが、少女の反応はラストの予想の斜め上をいった。

「マスター殺しですかぁ。まぁそういうこともありますよねぇ」


   *   *   *


359 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:08:48 V.odX50k0
「ラストさんって言うんですかぁ」
「そうよ。貴方の名前は?」
「錬金呪術師(ネガティエーター)の稲瀬果穂っていいますよぉ」
「ではこれから宜しく〝マスター〟。私のことはランサーと呼んで頂戴」

 マスターの借宿でシャワーを浴びて泥を洗い流し、バスルームを後にする。
 バスルームから出るとリビングで少女がソファーを占領していた。その両隣にはクマの
着ぐるみを着た二体の巨体が控えている。
 少女の名は稲瀬果穂。愚者ではなく狂人の、あるいは異端児の少女。
 このマスターの錬金術は何でも錬金術と呪術のハイブリッドらしい。

「ランサーさんはクマさんたちと同じホムンクルス何ですよねぇ?」
「同じ……とは言えないわね。そっちは肉塊を固めて自我を入れる、私は賢者の石を核に
無から造られたものよ」
「賢者の石ですかぁ。一応錬金術の奥義ですけど私たちのは完成しなかったですねぇ。
 高エネルギー物質ということは変革の石みたいなものですかぁ」

 ソファーに寝そべりながら虚空を見つめてマスターは話す。

「私の錬金術はぁエネルギーを集めてもそこに自我が宿らなかったんですよぉ。
 なのでランサーさん。ちょっと解体して賢者の石を解析させて下さいよぉ」
「嫌よ。レディの秘密を無理矢理暴くなんて失礼なことしないでね」
「えー」
「えーじゃないわお嬢さん。レディなんだから礼儀作法くらい心得なさい」
「銃持ってぇ、死体ばらす私がレディですかぁ?」
「見た目と作法が良ければ、実態なんて相手は見ないものよ」
「ふーん」

 ともあれ新たなマスターはラストにとって吉と出るか凶と出るか。わからない。


360 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:09:10 V.odX50k0
利な刃を作り出す。
 諜報活動や破壊工作が主な活動であったが、邪魔な存在を処刑するのもまた彼女の役目だった。
 その実力は本物であり、作中で彼女と戦った男はほぼ重傷を負わされた伝承から男性に対するダメージが倍加する。
 また魔力消費が少ないため宝具『其は血のごとき紅き石』の魔力供給もあって半永久的に展開・戦闘が可能。

【weapon】
 宝具『最強の矛』が武器であるが男性にとっては彼女の艶かしい肢体こそが最悪の武器であるだろう。

【人物背景】
 鋼の錬金術師9巻より参戦。
 「賢者の石」と呼ばれる高エネルギー物体を核に作られた人造人間(ホムンクルス)であり己を生んだ親のために暗躍した。
 司る原罪は「色欲」。最後に焔の錬金術師に敗れ、消滅する。

【サーヴァントとしての願い】
特にないわ。
ただ、また殺られるならいい男に殺られたいわね

【基本運用】
諜報と扇動活動による戦場の形勢。サーヴァント同士が潰し合うようにする。
ランサー自体はアサシンと同じようにマスターを狙うが、短期決戦型のサーヴァントや弱りきった相手ならば、
耐久力に頼って正面から挑むことも可能だ。
加えて質の悪いことにマスターが冷酷な錬金術師であることとラストが賢者の石の生成方法を知っているため、
人間を賢者の石にして死体をクマに変える外道戦術が取れる。


361 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:09:52 V.odX50k0
すいません >>360はコピペミスです。


362 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:10:05 V.odX50k0
【サーヴァント】
【クラス】
ランサー

【真名】
色欲(ラスト)

【出典】
鋼の錬金術師

【属性】
秩序・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:C 魔力:E 幸運:B 宝具:E

【クラススキル】
対魔力:E
 神秘が薄い……というより科学が全てを支配していた世界に存在したため対魔力は無い。
 精々ダメージを削減する程度。


【保有スキル】
諜報:B
 このスキルは気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない。
 まず味方陣営からの告発や戦場でサーヴァントとして現れない限り、
 敵対していることに気付くのは不可能である。


ガルバニズム:B
 生命力と魔力を転換・蓄積が可能なスキル。
 ラストの場合は内蔵されている賢者の石による再生と攻撃力の強化が可能。
 本来のガルバニズムは生体電流に関する錬金術の用語である。


扇動:B
 数多くの民衆を導くスキル。
 ラストの場合は脅迫・情報操作し、戦場を作り出すことに長けている。狙われた者の大半は戦場に行くより他にない。
 なお人数が減るほど幸運判定が必要になる。


戦闘続行:EX
 致命傷を受けない限り戦闘が可能なスキル。
 ラストの場合は賢者の石による再生力が不老不死にも等しい生を支えている。
 完全に賢者の石のエネルギーを絶たない限り消滅しない。
 ラストが何度も殺されればエネルギーが底をつき、魔力供給の有無に関係なく死に至る。
 魔力と同様に存在するだけでも石のエネルギーは消耗するため食事などで軽減する必要がある。

【宝具】
『其は血のごとき紅き石』
 ランク:E 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:自分
 人造人間として錬成されたラストの核であり、死すらも癒す「賢者の石」。
 常時発動型の宝具であり上記の戦闘続行による不死性や魔力炉として機能する。
 宝具としてのランクが低いのは古代の魔術師パラケルススが錬成したものではなく、
近代の錬成術師が錬成したことにより神秘が薄いから。

『第二原罪・最強の矛』(ラスト)
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:10 最大捕捉:十本
 爪先から鋭利な刃を作り出す。
 諜報活動や破壊工作が主な活動であったが、邪魔な存在を処刑するのもまた彼女の役目だった。
 その実力は本物であり、作中で彼女と戦った男はほぼ重傷を負わされた伝承から男性に対するダメージが倍加する。
 また魔力消費が少ないため宝具『其は血のごとき紅き石』の魔力供給もあって半永久的に展開・戦闘が可能。

【weapon】
 宝具『最強の矛』が武器であるが男性にとっては彼女の艶かしい肢体こそが最悪の武器であるだろう。

【人物背景】
 鋼の錬金術師9巻より参戦。
 「賢者の石」と呼ばれる高エネルギー物体を核に作られた人造人間(ホムンクルス)であり己を生んだ親のために暗躍した。
 司る原罪は「色欲」。最後に焔の錬金術師に敗れ、消滅する。

【サーヴァントとしての願い】
特にないわ。
ただ、また殺られるならいい男に殺られたいわね

【基本運用】
諜報と扇動活動による戦場の形勢。サーヴァント同士が潰し合うようにする。
ランサー自体はアサシンと同じようにマスターを狙うが、短期決戦型のサーヴァントや弱りきった相手ならば、
耐久力に頼って正面から挑むことも可能だ。
加えて質の悪いことにマスターが冷酷な錬金術師であることとラストが賢者の石の生成方法を知っているため、
人間を賢者の石にして死体をクマに変える外道戦術が取れる。


363 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:11:21 V.odX50k0
【マスター】
稲瀬 果穂

【出典】
アンチリテラルの数秘術師

【令呪の位置】
左鎖骨(クマを模している)

【マスターとしての願い】
とりあえずぅ。お金が欲しいですねぇ

【weapon】
大口径ショットガン:
アタッチメントに赤黒い液体を塗った斧がついている

クマさん:
錬金呪術師製ホムンクルス。下記記載

【能力・技能】
錬金呪術師(ネガティエーター)。
呪術による自我の憑依と錬金術による生体錬成を組み合わせた術。
クマさんと呼ばれる人造人間(ホムンクルス)を作り出し操る。
クマさんは人間八体分を素材にして作られており、性能も人間八体分。更に人間には操作不可能な重火器を装備している。
この聖杯戦争では二体しか連れてきていないようだが、人間八体あればいくらでも造れるようだ。

【人物背景】
アンチリテラルの数秘術師より参戦(3〜5巻)。
上記の錬金呪術を使う傭兵。見た目は幼女だが幼い故に冷酷な一面もある。
善悪を問わず「面白い仕事」ができればよく、主人公の味方となったり敵として立ちはだかったりした。
専ら戦術はクマさんたちに任せて指揮……だけではなくクマさんの巨体の影から不意討ちなどの直接攻撃も行う。

【方針】
面白そうなところはないですかねぇ


364 : ホムンクルスとクマ ◆Jnb5qDKD06 :2015/08/20(木) 23:11:34 V.odX50k0
投下終了です。


365 : ◆nig7QPL25k :2015/08/21(金) 00:17:25 4xuGq.nI0
拙作「雅緋&キャスター組」において、宝具の分類に一部誤りがありました
こちらが正しいデータになります

『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜15 最大補足:100人
 ルルーシュの両目に宿された「王の力」。
 発現者によってその性質は異なっており、ルルーシュのものは、「目を合わせた相手に、何でも一つ命令を下すことができる」能力である。
 この力は光信号によって伝達されるため、鏡越しに目を合わせても、複数人に同時に自分の目を見せても発動できる。
 ただし、サングラス程度の透過率の低さのものを通しただけでも、その力は無力化されてしまう。
 またこの力は、人間やマスターには通用するが、サーヴァントを従えることはできない。


366 : ◆XksB4AwhxU :2015/08/21(金) 23:59:35 vy183Umk0
>>328-336で投稿させていただいた者です。
投稿時にトリップを設定し忘れてましたので、ここで設定させていただきます。
以後、こちらのトリップで投稿させていただきますので、よろしくお願いします。


367 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/22(土) 00:05:31 ve6u00Ec0
>>366
何度も申し訳ありません。
したらばヘルプに記載されていた#passをそのまま使用してしまいましたので、
再度、トリップを設定させていただきました。
ご迷惑おかけして、申し訳ありません。


368 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/22(土) 00:49:11 ve6u00Ec0
拙作「なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか」を、まとめwikiに掲載させていただきました。
登場話候補作のページに、皆さんが投稿された作品のタイトル、マスター、サーヴァント名等を入力しておきましたので、
wiki更新の際にご利用ください。

また、拙作投稿時にサーヴァントの性能を加筆しました。
スキル発動による時間設定や、スーツ作成にかかる時間と各スーツ性能等になります。
こちらを正式とさせていただきますので、よろしくお願い致します。
加筆が不味いようでしたら元の形へと戻させていただきます。


369 : ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:14:18 pQUpG4UQ0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下させて頂きます。


370 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:15:13 pQUpG4UQ0



 夢を見た。
 俺とは違う、ある男の夢を。

 男はある儀式を執り行っていた。
 闘争の末に生き残った最後のひとりの願いを叶えるという、この聖杯戦争に酷似した儀式を。
 男は願いが叶えられるという言葉を餌に参加者を集め、そして自らが最後のひとりになるよう事を進めた。男は参加者の願いなど叶えるつもりなどなかった。
 そもそもその儀式に施された機能は、十二の命を贄として新たな命を作り出すという置換魔術(フラッシュ・エア)。万能の願望機のような力は持っていない。
 新たな命を作るために願いを抱く者をかどわかし、その身を闘争の渦中へ投げさせた。その儀式のために作り出された怪物によって無辜の人々の命が散った。
 どうあっても収支の合わない劣化交換。だれもが悪と断ずるであろう男の所業に――――俺はそれを責めることができずにいた。

 男には大切な人がいた。
 男にとってなによりも大切なその人は、逃れられない死の未来が約束されていて。
 逃れられない運命ならばと、運命に反逆せずに未来を与える方法として男は新たな命を作ることを思いついた。
 それは他の願いを抱いた者と同様の、純粋な願い。男のたったひとつの想い。ただただ生きて欲しいと考え、行動した結果であった。

 意図せずして儀式に巻き込んだとある男によって、約束の瞬間が目と鼻の先になるまで儀式は長引いた。
 しかしその男も倒れ、ついに最後のひとりを決める戦いが始まることとなる。
 残ったひとりを打ち倒し、新たな命を手に入れる。その未来はもう手を伸ばせば届くところまで来ていた。
 だが、男の願いは挫かれることとなる。男にとってなによりも大切であった、最愛の妹自身の拒絶によって。

「優衣を失いたくない、俺を一人にしないで!」

 男は嘆く。
 どうあっても彼女が助かることはない。彼女が助かる選択肢(みらい)は存在しない。
 初めから選択肢が存在しなければ、仮令何度繰り返そうと残酷な現実を覆すことは叶わない。
 その現実に、その現実が助けると誓った妹によって齎されたという事実に、男は深い絶望の闇へと落ちかける。しかし――

「私はいつでもお兄ちゃんの側にいるよ」

 絶望の闇へ落ちようとした男は、光と消えた彼女の言葉によって救われた。
 救われた男は最後のひとりとなった戦士を認め、新しい命を託して消える。
 男が消えると、世界は作り変えられた。そもそも『鏡の向こうの世界』など存在しない世界へと。
 それは戦いなど初めからなかった普通の世界。
 それは怪物に襲われることがない平和な世界。
 そしてそれは――ある兄妹が存在しない世界。


371 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:16:06 pQUpG4UQ0


   ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○


 夜の帳が下りた商業地区の一画にて、極小規模の嵐が発生していた。
 巻き込んだもの全てを両断する嵐の中心にいるのは、西洋風の鎧を着込んだ若い男だ。
 なんの素養のない人間が男を見ても、その逞しい体格や自信に満ちた顔つきから只者ではないと察することができるだろう。
 そして素養のある人間が男を見たならば――――その圧倒的な神秘に驚愕し、彼我の存在の格の差に打ち震えることだろう。

 嵐を発生させている男はサーヴァント。その武勇を以って歴史に名を刻み、人々の想念によって人類種から精霊種へと昇華された幻想――英霊の現身である。

 聖杯を手に入れるべく魔術師によって召喚された彼は、主の命を受け同じく聖杯に招かれたひとりの少年を切り伏せようとしていた。
 人智を越えた速度で繰り出される不可視の刃は、しかし無駄な破壊をすることなく少年のみを追い続ける。
 無駄な破壊をしないというのも主よりセイバーが受けた命令であった。魔術師が人口の半数以上を占めるこの魔術都市において、聖杯戦争のことを気取られるのは下策だからだ。
 魔術師の本懐は根源に至ることであるが、自分の代では不可能。子孫に託したところで辿りつくことはまずない。
 それが多くの魔術師たちの自己認識だ。それでも一縷の望みに賭けて魔術を研鑽し、次代へと想いを繋げていく。
 そんな魔術師たちの耳に聖杯戦争の話が入れば、どうなるかは想像に難くない。命を落とす可能性の方がどれだけ高くとも、根源に至る可能性を得られるということは賭けに出るには十分な理由となりえる。隣を歩いていたはずの魔術師の家系が零落し消えているなど当然なこの世界で、己の代で根源に至る可能性を手にするなどありえない奇跡だからだ。
 もしも魔術師たちの間で聖杯戦争の噂が広まれば、敵は他のマスターだけではなくなる。魔術師などサーヴァントの前では雲霞に等しい存在であるが、マスターにとっては別だ。腕は確かであっても、NPCの中にはより優れた魔術師もいるだろう。暗殺に特化した魔術師もいるかもしれない。十年来の友人であると設定された魔術師に突然襲われるかもしれない。
 アサシンのサーヴァントほどの脅威はないにせよ、狙われる可能性が増えないようにすべきであるというマスターの意見は、まさしくその通りであると彼も賛同した。
 建造物やユグドラシルの枝葉を切り倒して事故死に見せかける戦術も用いたかったが、仕方あるまい。そのような戦術を用いずとも最優の称号を持つクラスに召喚された己が他のサーヴァント相手に遅れを取ることもありはしまい。セイバーはそう考え、マスターが昼に見かけたという令呪を宿した少年にマスターと共に襲撃をかけた。
 少年は赤色の頭髪の一部が白く脱色し、肌も左手の一部と左目から首筋にかけて浅黒く変色しているという、如何にもな風貌をしていた。
 少年の近くにサーヴァントの気配は存在せず、一刀の下に終わる――そのはずだった。

 少年は突如現れたセイバーに反応し、あろうことか不可知の一撃を投影で召喚した白と黒の双剣で防いでみせた。
 想像していなかった事態にセイバーが一瞬硬直した内に、少年はセイバーから距離を取る。
 そこで我に返ったセイバーは追撃をかけるべく踏み込もうとし、しかしそれをやめてすぐにマスターの側へと戻った。

「何をしているセイバー。はやく追わねば人払いの範囲外に逃げられるぞ」
「ここで仕留めるかどうか、お決めくださいマスター」
「こちらの顔と貴様の得物を知られて撤退する理由がどこにある」
「わかりました。では失礼」

 言うがはやいかセイバーは己のマスターを抱え、逃走する少年を追った。
 セイバーが一度退いた理由は単純であった。


372 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:17:48 pQUpG4UQ0

「あの少年、戦い慣れています。だというのにサーヴァントを従えずに行動するなど考え難い」

 それはセイバーの攻撃を防いだという、ただそれだけのことだ。
 ただそれだけのことであるが、果たしてこの魔術都市にそれが可能な魔術師など何人いるだろうか。
 セイバーが奇襲をかけた際、驚愕こそしたが少年はすぐに表情を変えた。その目が見ていたものは一瞬の後に訪れる死ではなくその直前の生と死の境界線。
 それを見据えることができる者という時点でこの都市には一握りしかおらず、そして生き残る術を実行できる者となるとさらにそこから数える程度にしかいないだろう。
 それは魔術で決闘を行う魔術師では得られない実戦経験。連続した死線を越えることによって得たであろう研ぎ澄まされた思考がなければ、不可視の一撃を読み切り生を勝ち得ることなどできはしない。
 それができるだけの経験を積んでおきながら、この聖杯戦争が催されている地でサーヴァントを引き連れないという選択を取るわけがないとセイバーは判断した。

「おそらくはアサシンが気配を殺し潜んでいるか、もしくはキャスターやアーチャーが控えているといったところでしょう」

 だからこそマスターはサーヴァントと共に行動をする。
 アサシンが主人に牙を突き立てないように常に近くで剣を揮う。
 アーチャーやキャスターが主人を害さないよう、盾となるべく隣に侍る。
 それが聖杯戦争におけるセオリーとも呼べる立ち回りだ。
 当初は相手が少年ということもあり、戦争に巻き込まれたことを実感していないただの愚か者と侮って行動したセイバーであったが、考えを改める。
 初撃を防がれたことは戦闘経験もあるが、運の要素も大きい。だがそれはセイバー相手だったからであり、他のクラス相手ならば生き残る可能性は十分にある。
 そして一撃で仕留められず、相手が逃げ出せば当然追撃を加えるべくサーヴァントは追いかけることとなる。そこで残された敵マスターと距離ができてしまえば、遠距離からマスターを攻撃するなり暗殺するなりといった手が打てる。
 つまり、己自身を囮としてサーヴァントを敵マスターから離し、その隙に暗殺するという奇策を用いている可能性がある。あのマスターの戦闘能力ならその選択肢も十分ありえると、セイバーは推察していた。

「とにかくマスター自身が狙われている可能性があります。心してください」

 その言葉を聞くとセイバーのマスターは竦みあがり、慌ててセイバーに離れるなと命令する。
 その様にセイバーは笑いつつ、逃げ出した少年の背を捉えた。

「追いつきます。マスターを抱えたまま戦うわけにもいかないので、追撃の際はマスターも一緒に移動してください。速度は合わせます」
「この場で仕留めろ」
「承りました」

 それが今までの経緯。この場でマスターである少年を仕留めるべく不可視の斬撃の嵐を繰り出すセイバーは、しかし未だにその少年を捉えきれずにいた。
 すでに十以上の裂傷を与えはしたが、そのどれもが致命となるものではなく、必殺となる一撃は防ぎ、いなし、回避される。
 マスターが襲われないように全力で踏み込まず、いつでも迎撃できるように余力を残しているとはいえ、まるでサーヴァントでも相手取っているかのような錯覚がセイバーを襲う。
 敵のサーヴァントを釣るべく二回ほど全力に近い力で打ち込んだが、どちらも得物を破壊するという結果しか得られず、新たに投影で作り出された武器を相手にするだけとなった。
 このマスターは強い。それは最初に認めたことであったが、ここまで来ると異常である。どうして全力ではないとはいえ、サーヴァント相手にただの魔術師が三十合以上切り結ぶことができるだろうか。


373 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:18:22 pQUpG4UQ0

 そこまで考え、セイバーはひとつの可能性に気付く。それはマスターを強化することに特化したキャスター。
 キャスターは魔術師のクラスである。強化の魔術程度は扱えるだろうが、正面からサーヴァントと渡り合わせることは困難だ。
 しかしキャスターのクラスには魔術師のみならず、作家なども存在する。彼らは魔術師のキャスターのように自ら戦うという手段を持たない。
 そこで彼らは己のマスターを戦いの矢面に立たせる。時には物語の主人公として。時には言葉を以って武具に強力な神秘を与え。時には原典を上回る宝具すら生み出す。
 これならば隙を作り出した際にも敵のサーヴァントが攻撃を加えてこなかった理由になると考え、賭けに出るか思案しはじめた。
 それはマスターの守りを捨て、全力を以って目の前のマスターを討ち取るかどうか。
 もしも作家のキャスターであった場合、時間を掛ければ今なおセイバーの攻撃に刻まれつつも、必死に人払いの範囲外を目指して逃亡する少年が勝利する物語ができるかもしれない。投影によって召喚されたあの双剣がより強力な物となるかもしないし、もしくはセイバーの愛剣を超える宝剣を身につけるかもしれない。
 しかしそれ以外のサーヴァントで、このままセイバーのマスターに危害を加えることもなく戦線に加わることもしなければ、幾許もなく双剣のマスターはセイバーによって倒されることとなる。赤髪の少年の全身は大小合わせて三十箇所以上が刻まれ血に塗れ、疲労が荒い吐息となって現れる。未だ動きが衰えない様にセイバーが驚嘆するほどだ。

「いつまで遊んでいる! それともこれが最優のクラスを宛がわれたサーヴァントの実力か!?」

 セイバーのマスターが声を荒げる。己が狙われているという恐怖とマスターがサーヴァントに抵抗できているという奇怪な現状に気が滅入っていた。

「申し訳ありません。ここまで戦える魔術師というのが珍しく、幕を下ろすことが寂しく感じまして」

 対してセイバーは冗談めかしてマスターからの嫌味に返す。もちろん遊んでいるというのは嘘であるが、マスターを落ち着かせるため、そう言わざるをえなかった。
 それに、セイバーはここで遊んでいたということにした方が都合が良かった。

「では幕引きといこうか、双剣使いの少年よ。きっとあなたは今回の聖杯戦争に集まった魔術師の中でも上位の強さだろう」
「…………」
「最期に、あなたの名前を教えてくれないか。この聖杯戦争で最初に戦った相手があなたで良かったと私は考えている。
 さすがに誰に聞かれているかわからないので私の真名は明かせないが、その無礼を許してくれるのであれば教えてくれ」
「…………」
「……今は喋るだけの呼吸も大切か。あなたのその生への執着も見事だ。名を知ることができなかったのは残念だが、私はあなたのことを忘れないと誓おう」

 そこまで言って、セイバーはまたもマスターに何を遊んでいるのだと咎められる。
 だが、こうした小休止でもなければ人の身でセイバーに食い下がった少年の名を尋ねる機会を得られなかったので仕方がない。
 結局その名を聞くことは叶わなかったが、その勇姿をしかと焼き付けたセイバーは、出血と疲労によって動けなくなった少年を倒すのではなく、まだ動くことができる彼を倒したいという欲望に従うことにした。ここまで尻尾を見せなかった以上、奇襲をかけてくる可能性は低く、もしも奇襲を狙って息を潜めているというならば、それは肩で呼吸する目の前の魔術師の根性勝ち。作戦勝ちであるだけのこと。
 そうしてセイバーは全力の一撃を放つべく体勢を傾け――――


374 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:18:58 pQUpG4UQ0

「――――!!」

 再び己のマスターの側へと退き下がった。

「セイバー」
「サーヴァントです」

 血濡れの少年の向こうから、セイバーたちのもとへとサーヴァントの気配が近づいてきた。
 もしもアーチャーや投槍の逸話を持つランサーならば、突進の際にカウンターを叩き込まれる。そうでなくともアサシンならばダガーの投擲、キャスターならば魔術による攻撃で隙だらけとなったマスターを攻撃できる。
 いつまでも姿を見せないならばマスターを叩き切って終わりにしようとしていたセイバーであったが、姿を現すならば是非ともそのサーヴァントと戦いたいと考えていた。
 これほどまでに己の主人をひとりで戦わせておきながら、今更現れる。どれほど面の皮が厚い英雄であるのか、一目見てから切り伏せねば気がすまない。
 セイバーは自然と剣を握る拳に力を込め、敵のサーヴァントが視認できる距離まで来るのを待つ。
 そうしてサーヴァントの気配が呼吸を整え出した敵マスターの傍に来るが――――そこにはなにもない。

「……霊体化しているのか?」
「この距離では仮令敏捷に優れたランサーであろうと、実体化してからでは私の剣を防ぐことは間に合わないというのに…………最期までふざけた輩ですね」

 怒気を孕んだ声ひとつ、セイバーはアスファルトの舗装を瞬発の爆発で踏み砕き、サーヴァントの気配がする地点へと一瞬で跳躍すると渾身の力で不可視の剣を振り抜く。
 もはやどのような面構えをしているかなど知りたくもなく、一言も喋らせることなく絶命させねば気がすまない。そんな怒りを込めた神速にして不可避の一撃。
 ――――しかし

「なっ!?」

 セイバーの剣は文字通り空を切り、サーヴァントの気配はそのままセイバーをすり抜けセイバーのマスターの元へと近づいていく。
 同時に血濡れのマスターは逃走を再開した。
 それを無視してマスターの安全を優先したセイバーは再び気配がする場所へチャージするが、あえなくすり抜けてしまう。だがそのまま流れる作業でマスターの元へ駆け寄ると、再びマスターを抱えて少年を追いかけた。

「いったい何がどうなっている」
「キャスターによる幻惑の類か、もしくは気配がそこにあると偽装できるアサシン……といったところでしょうか。前者はともかく、後者は最悪です。今この場であの者の首を盗らなければ、いつ寝首をかかれるかわかりません」

 そう言いつつ、セイバーはまずアサシンの可能性は低いと判断した。もしアサシンならば、セイバーが見当違いなところへ斬りかかった時点でマスターの暗殺に成功したはずだ。
 少年を休ませる目的があったと思われるタイミングでの介入と、逃走させるための時間稼ぎと思われるマスターへの牽制。
 一貫したサポートから作家のキャスターが少年のサーヴァントであると見当をつけ、セイバーはついに決着の時を迎えたと結論した。
 マスターを気にせず全力を出せば、おそらく三合で少年の首を盗れる。逆にここで盗らねば、セイバーの首が盗られる可能性が出てくる。
 キャスターが時間を掛ければ掛けるほど難敵となるクラスであることは周知の事実であり、セイバーがここであの少年を討ち取らねば逆転を許してしまうこともありえるのだ。


375 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:19:34 pQUpG4UQ0

 投影魔術のマスターは歓楽街まで逃走していたが、そこはまだ人払いの範囲内であった。
 歓楽街は魔術師よりも魔術の才がない一般学生がメインの客層となるため、人払いをしていてもそれに気付く者はまずいないのだ。
 そこだけ寂れてしまったような町並みの中で、鏡のようなショーウィンドーを背にして少年はセイバーと相対する。
 その手に握られているのは先ほどまでの双剣ではなく、掌ほどの茶色い箱。それ以外、セイバーを迎撃するための武器の類はどこにも見当たらない。

「まさか諦めた、ということもあるまい。またブラフですか。それとも――――――それがキャスターから与えられた切り札といったところでしょうか」
「…………!」
「なるほど、どうやら当たったようだ」

 敵マスターの動揺を確認し、セイバーは最後の不安を拭う。
 ならば行うべき事はひとつだけ。その魔術礼装を使用する暇も与えずに倒す。
 人間には対応不能な速度で行われた踏み込みで言外にそう語ったセイバーの一振りは、しかし少年に届くことはない。

「これは…………!」

 セイバーが少年の身を引き裂くその寸前、極厚の大剣が空から降り注ぎ、二人の間を遮る壁としてセイバーの一撃を阻んだ。
 今まで使われなかった防御に驚きつつも一息でそれらの壁を砕き、再び少年の姿を捉えようとしたセイバーの視界に入ったのは、舞い散りながら光を反射して輝く剣の欠片と――――淡い光を燈して輝く黄金の羽根であった。

「これは……、貴様はいったい……何者だ?」

 そして舞い降りる光の中心に、黄金の鎧を纏った仮面の戦士が立っていた。

 ――――その者の名は、仮面ライダーオーディン。
 ――――いずれ訪れる運命の日に、戦士達の魂を集める者。
 ――――北欧神話における最高神の名を冠した戦士が今、ユグドラシルへと光臨した。

「ハッ――――!!」

 自ら投げかけた問の答えを待つことなくセイバーは仮面の戦士へと斬りかかるが、空間転移によって逆袈裟の一撃は回避される。
 背面に出現した気配を頼りに、セイバーが振り返りながらの一刀を加えようとした瞬間――――


《――STEAL VENT――》


 セイバーの手の中から剣の感触が消失し、仮面の戦士の前で徒に腕を振り下ろすだけとなった。
 セイバーは生前、死を迎えるその時まで手放すことのなかった愛剣の消失に錯乱しかけ、そして気付く。
 仮面の戦士が構えている右手に、それがあることを。
 不可視の剣であるが、幾つもの戦場を共にした片割れとも言うべき存在を感じ取れないほどセイバーは愚鈍ではない。
 共に伝説を築き上げた己の分身に気安く触られていることに憤慨しかけるが、そこで踏み止まると剣士は参ったという風に笑顔をひとつ零して。

「すごいなぁ……」

 仮面の戦士が振るった不可視の剣によって、聖杯戦争から脱落した。


376 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:20:20 pQUpG4UQ0




    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○    ○


「ぐっ……ぅッ…………!」

 人払いが解かれ人の流れが戻った歓楽街の裏道で、衛宮士郎は倒れていた。
 わずか三分ほどの攻防の中で受けた傷の数は、血に濡れていない箇所を探すことが困難なほど膨大であった。
 フルマラソンを全速力で駆け抜けたかのような極度の疲労が全身を襲い、戦いが終わって数分は過ぎたというのに今なお身体は酸素を求めている。

「ぁ……、ああッ……!」

 そして無理やり大量の魔力を引き出した影響か、肌はさらに褐色の部分を増やし、身体は悲鳴を上げていた。

「危なかったな」

 まだ喋れるほど呼吸が整っていない士郎へ、誰かが語りかける。
 その場には士郎の他に誰もいない。しかし士郎は声の主がどこにいるか知っていた。
 セイバーによって砕かれた大剣の破片へ目をやると、そこにはひとりの男が映っている。

「だがオーディンはお前には負担が大きすぎるようだ。その様子ではそう何度も変身はできないだろう」

 破片が映している場所を見ても、やはりそこには誰もいない。
 だが男は確かに存在する。鏡の向こうの世界に、ミラーワールドに神崎士郎は立っていた。

「…………わかっているさキャスター。だけど俺にできることなんて、この身を犠牲にすることだけだ」

 ようやく喋れるようになった士郎は、キャスターからの忠告を受け入れた上でなお自らの命を削る選択を取る。
 それは貪欲な神が、己自身を捧げることで知識を得たように。

「ここが俺の命の使い所だ。どんな敵を相手にしても、俺は聖杯を獲らねばならない」
「……転移とアドベントカードは多用するな。下手に使えば、その命、使う前に失うことになるぞ」
「わかっている。……でもきっとこれからも頼ることになる。さっきのセイバーみたいなのが、この先にはまだまだいる」

 オーディンの力を使わざるをえなかった、さきほどの英霊。
 一切の反撃を許さず、あろうことかこちらのサーヴァントを看破したあの剣士に士郎が勝利を勝ち取れたのは、幸運という他になかった。
 もしもあれが初めから全力で攻撃を仕掛けていたならば、士郎は今頃商業地区にてその身を晒して死んでいたはずだ。
 キャスターがカードデッキを完成させるのがあと少し遅かったならば、やはり同じ結末を辿っただろう。
   ・・
 この英霊だけの力では、勝ち残ることなど不可能。そのことを誰よりも理解しているのは士郎自身であった。


377 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:20:52 pQUpG4UQ0

「…………はは」

 不意に士郎の口から笑いが零れた。

「どうした」
「いや……、結局俺も、あいつらと変わりはしないと思ってな」

 それは自嘲の笑い。

「エインズワースから美遊を諦めさせるために、俺は聖杯を利用して世界を救う。
 圧倒的な多数を救うために、少数に犠牲を押し付けようとしている。
 だけど、本当はただひとりを救うための犠牲。一の犠牲で済むものを、悪戯にその数を増やす行為。
 エインズワースと変わらない。いいや、エインズワース(正義)にすらなりきれない、完全な悪そのものだ」

 そう言った士郎の顔は、現在も残っている苦痛ではなく、己の在り方に対する嫌悪によって苦々しく歪んでいた。

「……ならばどうする。元正義の味方よ、お前は何を為す? お前はいったい何となる?」

 士郎は問いかける。かつて正義の味方を目指した少年に、何を掴むか問い質す。
 かつて、悪を為しても掴むべきものの為に奔走し、そして失敗した男が、少年が何を選ぶかを確かめる。

「俺の願いは誰もが悪と断ずるものだ。だがこの胸の願いが悪というならば――――俺は進んで悪と成ろう。
 一のために立ち塞がる全てを倒し、聖杯(美遊)のために聖杯を掴む。
 その為ならばこの命、如何様にも使ってみせる。
 だからお前も力を貸せ――――キャスター」

 自身の在り方に嫌悪しながら、しかし後悔など一切見せない眼差しで士郎はキャスターを見つめる。
 己のマスターの視線を受け、士郎は過去の自分を思い出す。
 少年が選んだ道は、似て非なるも自分のそれを辿っているようで。


「いいだろう…………ならば戦え。最後のひとりとなる、その瞬間(とき)まで」


 男は運命に抗う少年が、どのような結末を迎えるか見届けると心に誓った――――――――


378 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:21:28 pQUpG4UQ0

【クラス】キャスター
【真名】神崎士郎
【出典】仮面ライダー竜騎
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:D 宝具:EX

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作る能力。
 キャスターは召喚された時点でミラーワールドという特殊な陣地を構築する。
 ミラーワールド内では『鏡界存在』以外は世界から修正力を受け、耐性を持たない者は数分と経たずに消滅する。

道具作成:A-
 魔力を帯びた器具を作成可能。
 キャスターは『カードデッキ』と呼ばれる特殊な礼装を作成することができる。
 本来ならばミラーモンスターと呼ばれる怪物も作成可能であったが、怪物は兄妹が自分たちを守るために考え付いた存在であり、本来の歴史では兄妹がそれらを必要としなくなったため消滅。同時にキャスターもミラーモンスターを作成することはできなくなっている。

【保有スキル】
自己保存:A
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。

鏡界存在:B
 鏡の中の住人。
 ミラーワールドにいる限り魔力供給を一切必要としなくなるが、現実の世界へ現れると世界からの修正力を受け、通常の何倍もの魔力消費が必要となり、維持に必要な魔力を供給したところで世界からの干渉により数分と経たずに消滅してしまう。
 しかし魔力供給を必要としないことと現実世界からの干渉を受けない特性から、マスターとの繋がりが消失してもミラーワールド内にいる間はキャスターは二日ほどであれば現界しつづけることが可能となる。
 また、ミラーワールド内であっても接近すればサーヴァントには気配を察知されてしまう。



【宝具】
『十二の夢より生まれし命(ライダーバトル)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 キャスターが生前に行った儀式、ライダーバトルを再現する宝具。
 道具作成によって作り出したカードデッキが最後のひとつとなった時、その装着者に誰かひとりの蘇生権利を与えるという規格外の宝具。
 ここで注意すべき点は、あくまで最後のひとりが蘇生権利を使用可能なのであり、キャスターやキャスターのマスターが必ずしもこの宝具を使用できるわけではないところである。
 NPCや他のマスターがカードデッキを手に入れ最後のひとりとなった場合であろうと、その者が任意のタイミングで発動することができる。
 対象としてはマスター、サーヴァント、NPCを問わず蘇生可能であるが、権利使用と同時に最後のカードデッキとキャスターは消滅する。
 これによってマスターが蘇生された場合、サーヴァントと再契約できればマスターとして復帰可能だが、再契約をしなくてもNPCとして扱われ強制退場は免れる。

【weapon】
なし


379 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:22:10 pQUpG4UQ0

【人物背景】
ライダーバトルと呼ばれる『戦いに勝ち残れば、どんな願いも叶えられる』という戦いを企てた人物。
幼少期に両親を失い、叔母に引き取られた妹の優衣とは別にアメリカの知り合いに引き取られ向こうで他界したことになっていた。しかしその後日本に戻って清明院大学に通っており、そこの江島研究室で「ある実験」をし、それ以降、消息不明。その実験こそ鏡の向こうの世界、ミラーワールドで活動する事が出来る「仮面ライダー」というシステムの開発である。
その後、神崎士郎はミラーワールドの存在となり、様々な想いを抱えた人々に自身が開発したカードデッキを与え、というライダー同士の戦いを開始する。
神崎士郎自身は直接手を出す事はないが言葉巧みにライダー達の心理を揺さぶり続け、更に鳳凰型モンスター達を従え、戦いの進行を妨害する者や優衣に危害を加える者の抹殺を命じている。
最終的には「仮面ライダーオーディン」を従え、自身の代わりに最後のひとりとなるべく戦わせた。

彼がライダー同士の戦いを始めた理由は妹の優衣にある。優衣は幼い頃に一度士郎の目の前で死亡しており、彼がその死を嘆き悲しんでた時、鏡の中からもう一人の優衣が現れた。鏡の中の優衣は死んだ優衣と融合し彼女を蘇生させるが、それは一時的な蘇生であり仮初の命は二十歳の誕生日を迎えると同時に消滅することを士郎へと告げた。
それから神崎士郎はやがて訪れる優衣の決められた死を回避し、優衣に普通の生活を送らせる為にどうすればいいか考えた。その結果「ライダー同士の戦いで生き残った者は新しい命を手に入れられる」というシステムを考案し、ライダー同士の戦いを開始するに至ったのである。
しかし城戸真司や手塚海之といった戦いに消極的なライダーの出現で思うようにライダーバトルは進まず、タイムリミットである優衣の二十歳の誕生日が近づいてしまう。真相を知ってしまった優衣自身が蘇生を拒否したこともあり、最後はオーディンを消滅させて蓮に新しき命を与えた。

【サーヴァントとしての願い】
なし。士郎の運命を見届ける。

【基本戦術、方針、運用法】
キャスター本人に戦闘能力は存在しない。
そのためマスターをオーディンの装着者にしたり、NPCを十二人捕らえて洗脳し、仮面ライダーとして使役することがメインの戦法となる。
ただしオーディン以外のライダーはカードデッキこそキャスターの作成したものだが伝説の担い手は別に存在することと、契約モンスターが存在していない(ブランク体となっている)ことも合わせてサーヴァントには決して届かないほどに弱体化している。
または現実世界には存在しないが気配はサーヴァントに察知されることを利用し、戦闘中に敵マスターに近づくだけでアサシンとして警戒させて行動を制限させることができる。





【マスター】衛宮士郎
【出典】Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!
【性別】男性
【令呪の位置】手の甲

【マスターとしての願い】
美遊が聖杯として求められない世界を創り、当たり前の幸せを掴めるようにする。

【weapon】
投影魔術によって生み出した武装の数々
 主に干将・莫耶という夫婦剣を愛用する。

オーディンのカードデッキ
 キャスターから与えられた魔術礼装。仮面ライダーオーディンに変身することができる。

【能力・技能】
経緯は不明ながらアーチャー(英霊エミヤ)のクラスカードの力を引き出しており、その真髄までも理解し使いこなしている。

【無限の剣製】
アーチャーの心象風景を展開する錬鉄の固有結界。
結界内には、あらゆる「剣を形成する要素」が満たされており、目視した刀剣を結界内に登録し複製、荒野に突き立つ無数の剣の一振りとして貯蔵する。
ただし、複製品の能力は本来のものよりランクが一つ落ちる。
刀剣に宿る「使い手の経験・記憶」ごと解析・複製しているため、初見の武器を複製してもオリジナルの英霊ほどではないがある程度扱いこなせる。
士郎が扱う投影、強化といった魔術は全てこの固有結界から零れ落ちたものである。
過去に使用したことを匂わせる発言があるため展開することも可能かもしれないが、同時に発動によって自滅したと推測される発言があることからまず使用はしないだろう。


380 : 衛宮士郎&キャスター ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:22:31 pQUpG4UQ0

【人物背景】
エインズワースに攫われた美遊を救うため、エインズワースの工房に潜入したイリヤが独房で会話をした人物。
その正体は美遊の義理の兄、平行世界の衛宮士郎である。
本来の衛宮士郎同様、幼い頃に衛宮切嗣の手で救われており、その時に彼のようになりたいと憧れを抱く。
かくして衛宮切嗣の養子となった士郎は助手として切嗣とともに魔術や礼装、儀式、伝承といった人類救済に繋がる方法を求めて各地を転々とする。
ある時、冬木の地で神稚児信仰の生き残りと思われる情報を得た切嗣と士郎は、今回も空振りであるだろうと期待せずに冬木へと赴くとそこで正体不明の災害と遭遇。全てを飲み込む謎の闇に人々が逃げ惑う中、正義の味方はその人たちから背を向けた。
どこまで広がるかわからない闇は、しかしある家屋を破壊したところで何かによって消し去られる。その家屋とは切嗣たちが目指していた神稚児を継承し続けている朔月家の屋敷であり、そこに駆けつけた士郎はひとりの少女と出会う。その少女の名は朔月美遊。人の願いを無差別に叶える、天然の聖杯であった。
美遊を使い、人類を救う。ついに辿りついた人類救済の方法を前に、切嗣は美遊を願望器としてしか見ることができずにいた。というのも原因不明であるが切嗣ももうそこまで長く生きられない状態であり、最期の可能性として見つけた神稚児に救済のすべてを懸けるしかなかった。そのことを理解しつつ、正しいのは切嗣であると信じようとする士郎であったが、人として扱ってはいけない美遊に情を捨て切れず、父と妹との狭間で懊悩することとなる。
それから月日は流れ、人類を救済するために美遊を利用しようとするエインズワースと戦い、美遊の幸せを願って彼女を平行世界へと逃がした。正義の味方に憧れた少年は、正義になることは叶わなかったようだ。しかし彼の、美遊が優しい人たちに出会って、笑いあえる友達を作って、あたたかでささやかな幸せを掴めるようにという願いはエインスワースが彼女を取り戻すまでは確かに叶えられていた。
世界とひとりを天秤にかけ、ひとりを選んだ彼は、己自身を「最低の悪」と評している。

【方針】
 優勝狙い。基本は投影魔術やキャスターの支配下に置かれて仮面ライダーに変身した魔術師たちによる奇襲を主体に戦うが、投影魔術のみでは勝てないと判断した相手にはオーディンの力も使用する。




【備考】
仮面ライダーオーディン
 キャスターが道具作成によって作り出した魔術礼装『カードデッキ』を鏡の機能を果たす鏡面に映すことによりベルトが装着され、その前側にデッキを挿入することで変身可能。
 他の仮面ライダーと違い伝説の担い手が存在せず、またキャスターが最後の勝者となるべく作った存在であるため、その力は他の仮面ライダーほど劣化していない。
 その最大の特徴として、契約するミラーモンスターが存在しないために他の仮面ライダーは全員ブランク体となっているのに対し、契約モンスターの残滓であるサバイヴのカードが常時発動しているためブランク体になっていない点が上げられる。
 またオーディンには空間転移の能力があるが、それを使用する際の魔力消費は相当量で、連続して使用するとすぐに士郎の魔力は枯渇してしまう。なお転移時に舞い散る羽根は、接触すると小規模ながら爆発を起こす。

【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:-

【アドベントカード】
アドベント
 ミラーモンスターが存在しないため使用不可。

ソードベント
 ゴルトセイバーを召喚する。

ガードベント
 ゴルトシールドを召喚する。

タイムベント
 時間を巻き戻す。
 時間旅行を可能とする第五魔法の域に達するカードであるため、その魔力消費量は到底士郎ひとりでは賄いきれるものではない。
 令呪一画を用いてようやく三秒ほど過去に戻れる程度である。

スチールベント
 相手の装備を奪う。
 身につける物であれば宝具すら奪取可能であるが、使いこなせるかどうかは別の話である。
 また、奪う際には対象の持つ神秘に比例して魔力消費量が増大する。

ストレンジベント
 使用することによって任意のカードを引くことができる。
 これによりオーディンが所持していないアドベントカードが使用可能となる。

ファイナルベント
 ミラーモンスターが存在しないため使用不可。


【ブランク体】
 オーディン以外の十二人の仮面ライダーの状態。契約モンスターが存在しないためパラメーターは全てEランクとなっている。
 それでも並みの魔術師を凌駕する戦闘能力を有しており、鏡の世界を行き来できることやサーヴァントに気配を察知されない利点を活かした奇襲は脅威となりえる。


381 : ◆7CTbqJqxkE :2015/08/22(土) 01:22:57 pQUpG4UQ0
以上で投下完了です。


382 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/22(土) 01:40:00 ve6u00Ec0
投下お疲れさまです。

士郎がプリズマイリヤ版で、組むのが神埼士朗!
まさか龍騎のライダーバトルそのものを宝具として組み込むとは!
設定の奥深さに感嘆しました!
『キャスターの支配下に置かれて仮面ライダーに変身した魔術師たち』ということは、
展開次第では、ブランク体とは言え、12人のライダーが同時に目標に襲い掛かる・・・!?
これは本戦に進んだ際の展開が楽しみです!


383 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:49:11 .JtBh7EM0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


384 : 天野景太&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:50:37 .JtBh7EM0
「ケータ」こと天野景太は、ごく普通の小学生である。
サッカーが好きだが、得意なわけではない。
魔術師にあこがれているが、才能があるわけでもない。
ただの小学生、そのはずだった。


その日もケータは、いつものように教室で友人達と他愛もない雑談に花を咲かせていた。

「なんか最近、物騒な噂が多いよねー」
「あー、たしかに。廃屋が一晩で吹き飛んでたとか、自然保護区で夜中にすごい音がしてたとか」
「悪党の魔術師が何かやってるんじゃねえの?」
「警察は何やってるんだよ」
「あくまで噂の範疇だから、警察も動こうとしてないらしいよ」
「もしかして、妖怪の仕業だったりしてね」
「妖怪ってまた、ローカルな名詞だねえ」

(妖怪……?)

友人の一人が何気なく口にした、ひとつの言葉。それを聞いたとたん、ケータの頭に鈍い痛みが走る。

「ケータくん、どうしたの? 大丈夫?」
「ああ、うん。ちょっと、急に頭がね……」

ケータの異変に気づいた女子生徒が声をかけてくるが、ケータは適当にごまかす。

「俺、保健室行ってくるよ。先生にそう言っておいて」
「そんなにひどいの? 付き添おうか?」
「大丈夫、歩けないほどじゃないから。もうすぐ休み時間終わっちゃうし、みんなは教室にいてよ」

友人の気遣いを断り、ケータは一人で廊下に出た。
その足で保健室ではなく、屋上に向かう。

(そうだ……。学校に妖怪が出たとき、俺はよく人気の無いここで妖怪と戦ってた……)

認MEN、おならず者、モノマネキン……。様々な妖怪との対決が、ケータの脳裏に蘇る。

(けど、違う……。ここじゃない!)

屋上から見える光景は、見慣れた街のものではない。つまりここは、本来ケータがいるべき学校ではない。

「そうか、これも妖怪の仕業……!」
「違うよ」
「えっ!?」

無人のはずの屋上で返ってきた声に、ケータは反射的に声のした方向に顔を向ける。
そこには、一人の男が立っていた。
年齢は明らかにケータより上だが、まだ大人というほどではない。
腰まで届く長髪と、首から下をすっぽり覆い隠すマントが特徴的だ。

「だ、誰、あんた!」
「君のサーヴァントさ。君は聖杯戦争のマスターに選ばれたんだ」
「サーヴァント? 聖杯戦争? 何のこと?」
「焦ることはない。すぐに必要な知識が君の脳に叩き込まれるからね」

男の言うとおり、程なくしてケータの頭に様々な情報が流れ込んでくる。
ここで彼は、自分が置かれている状況を理解した。


385 : 天野景太&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:51:11 .JtBh7EM0

「なるほど、あんたと一緒に勝ち残ればいいんだね。えーと、あんたのクラスは……キャスターか」
「そういうことになってるみたいだね。セイヴァーで召喚されていれば本気が出せたんだけど……。
 まあそんなことしたら過去のシャーマンキングでも連れて来ない限り、僕にかなう相手がいなくなっちゃうからね。
 それにグレートスピリッツを再現するのは、いかにムーンセルといっても負担が大きいだろうし」
「何言ってるのか、全然わからないんだけど……」
「おいおいわかるさ。それにしても……」

一度言葉を止め、キャスターはまじまじとケータの顔を見つめる。

「な、何?」
「なんで君みたいな普通の子供が、神クラスの英霊である僕のマスターになれたんだろうね」
「普通って言うな!」

気にしている点を突かれて語気を荒げるケータであったが、キャスターはまったく意に介さない。

「……ああ、君は猫の霊と友達なのか。その辺が僕と引き合ったのかな」
「へっ? なんでジバニャンのこと知ってるの!?」
「まあ、サーヴァントだからね。こういう不思議なこともできるのさ」

得意げに語るキャスターであったが、次の瞬間その表情に険しさが混じる。

「どうかした?」
「もう少し僕について説明してあげたかったけど、どうやら後回しにしなくちゃいけないようだ。
 お客さんだよ」

キャスターの視線の先には、ひときわ大きな鳥が飛んでいた。
その背には、二人の男が乗っている。

「ライダーとそのマスターってところか。どっちも俗っぽい願いしか持ってないようだ。
 こんなのが大手を振るって参戦してるとは、今回の聖杯戦争はずいぶんレベルが低いようだね」

キャスターの目には、冷たい光が宿っていた。
それを見てしまったケータは、思わず後ずさる。

「小っちぇえな」

そこからは、一瞬だった。
キャスターの背後に出現したのは、赤い巨人。
その腕が敵を捉えた瞬間、相手は激しく燃え上がる。
そして巨人が消えたときには、敵は全て消し炭となって屋上に散乱していた。

「君を使うのは久々だけど……。特に問題は無いようだね、スピリットオブファイア」

満足げに呟くキャスター。そんな彼に、かろうじてまだ意識があった敵のライダーが尋ねる。

「お前……いったい何者……」
「僕はハオ。シャーマンキングだ」


386 : 天野景太&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:52:04 .JtBh7EM0

【クラス】キャスター
【真名】ハオ
【出典】シャーマンキング
【性別】男
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:EX 幸運:D 宝具:A+
 (黒雛発動時)筋力:E 耐久:A+ 敏捷:A 魔力:EX 幸運:D 宝具:A+

【クラススキル】
陣地作成:C
 魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。

道具作成:B
 魔力を帯びた器具を作成可能。

【保有スキル】
シャーマンキング:A
霊に干渉することができ、霊と心を通わせる者。その頂点に立つ存在。
他者に神のごとくあがめられる存在であり、その身に秘めた神秘は生半可な魔力を寄せ付けない。
同ランクの「対魔力」と「カリスマ」を内包する。

霊視:A
高い霊力に由来する、読心能力。他者の心の内を、たやすく読み取ることができる。

神性:E
神霊適性を持つかどうか。
神に近い存在であるシャーマンキングだが、後天的に得た性質であるためサーヴァントとしての状態によってランクが上下する。
今回はキャスターとして召喚されているため、低ランクである。


【宝具】
この世全て焼き尽くす火(スピリットオブファイア)
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1-80 最大捕捉:700人
現在にいたるまでに地球で生まれた全ての魂の集合体である、「グレートスピリッツ」から切り離された「五大精霊」の1体。火を司る。
炎と熱を操り、自らも高温を宿す赤い巨人。
純粋な力も人間を易々と粉砕できるほど強く、ハオは特に指で敵を貫く攻撃を好む。
他の霊魂を食らうことで、力を増す特性も持つ。
また「黒雛」と呼ばれる形態を持ち、鎧となってハオに装着されることで彼自身の戦闘力を大幅に上昇させる。

【weapon】
特になし


387 : 天野景太&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:52:49 .JtBh7EM0

【人物背景】
元は狐の化身であるとして母を殺された平安時代の少年・麻葉童子(まっぱどうじ)。
一匹の鬼との出会いで霊力に目覚め、母の敵であるインチキ祈祷師を殺したことで修羅の道に足を踏み入れる。
その後ある陰陽師に才能を見いだされて弟子となり、天才陰陽師・麻倉葉王として平安京に名をとどろかせる。
しかし霊視能力により人間の醜さを散々見せつけられた彼は、人間を滅ぼしシャーマンだけの世界を作るという野望を抱くようになった。
そのためにシャーマンファイトを勝ち抜きシャーマンキングになろうとするが、野望を果たせず死亡。
しかしあらかじめ転生の秘術を修得していた彼は、500年後にシャーマンファイトの祭司を務めるパッチ族に転生する。
パッチ族が管理していたスピリットオブファイアを盗み出し我が物とするが、自分の子孫たちが送り込んだ刺客に敗れ再び死亡。
そしてさらに500年後、今一度麻倉の一族として三度目の生を受ける。
自分に心酔する部下達を率いてシャーマンファイトに挑み、優勝しついにシャーマンキングの力を獲得。
しかし現世における双子の弟である麻倉葉たちの説得と、長年の悲願であった母の魂との再会により態度を軟化。
人類滅亡を保留とし、しばらくの間人類を見守ることとする。

今回召喚された彼はシャーマンキングになる前のデータをもとにしているが、人格はシャーマンキングとしてのもの。
それ故、属性は「悪」ではなく「中庸」となっている。

【サーヴァントとしての願い】
わざわざ聖杯に叶えてもらうような願いはない。
暇潰しができればそれでいい。

【基本戦術、方針、運用法】
本人の戦闘力はたいしたことがないが、宝具の殺傷力は驚異的。
よほどの強敵でなければ優位に立てるが、マスターの負担を考えると常時全力は出せない。
そもそも本人は暇潰しのつもりであり舐めプ状態なので、そうとう追い詰められなければ本気は出さないだろう。


388 : 天野景太&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:53:32 .JtBh7EM0

【マスター】天野景太(ケータ)
【出典】妖怪ウォッチ(アニメ版)
【性別】男
【令呪の位置】右手の甲

【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。

【weapon】
妖怪ウォッチ(ノーマルタイプ)
 人間と妖怪を繋ぐ腕時計。
 文字盤カバーを開きレンズとして覗くことにより、霊感のない人間でも妖怪を見ることができる。
 この聖杯戦争においては、霊体化しているサーヴァントを視認することが可能。
 なお妖怪との友情の証「妖怪メダル」をセットすることによりその妖怪を召喚する機能もあるが、
 ケータが今まで集めたメダルはユグドラシルに持ち込めていないため実質的に使用不能である。

【能力・技能】
妖怪の友達
 人外の存在との接触に慣れている。
 そのため異形の者と出会っても見た目に動揺せず、人間と同じように接することができる。

【人物背景】
さくら第一小学校に通う小学5年生。
成績も運動神経も、いたって普通。
その事にコンプレックスを抱いており、「普通」という言葉に強い嫌悪感を持つ。
夏休みのある日、封印されていた妖怪・ウィスパーを助けたことで彼から妖怪ウォッチを譲り受ける。
それ以来、妖怪が巻き起こす様々な珍事件に巻き込まれることになる。

【方針】
積極的に動くつもりはないが、襲われたのなら迎え撃つ。


389 : ◆NIKUcB1AGw :2015/08/24(月) 22:54:13 .JtBh7EM0
投下終了です


390 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:03:07 VMNqtpxg0
投下します


391 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:04:06 VMNqtpxg0
 ◇



人の願いを叶える者。
もし英雄とは何かと問われたのなら、俺はこう答えるだろう。



絶大な力を持つ者は、自らの為に戦うべきではないと俺は思う。
無敵の躰(にく)と偉大な剣。あまりに圧倒的で膨大な力。
積み重ねた功績は数知らず。戦の傷は数の内にも入らない。
勝利する。達成する。獲得する。
兵士も、国も、竜すらもが骸に伏す。眩い伝説をいくつも打ち立てていく。
それはさながら天秤の皿に黄金を乗せるかの如く。
組した側に必ず傾く、運命に等しい重り(ちから)だった。


故に。英雄として成熟した俺は自らに縛りをかけた。
自らの意志で自らの願いを叶えず、他者からの願いにこそ己の力を振るうと。


英雄は人の形をしていても内に秘めた力は人の埒外にあるほど強力で、巨大だ。
欲望のままに動くようであれば、残る轍と起こる波紋は時として災厄を生む。
地を震わせるように、大波を引き起こすように。意識無意識の区別なく、ただ在るだけで世を動かしてしまう現象と化す。

大いなる力には、大いなる責任が伴う―――誰が言った言葉だったか。
その通りだと思う。竜が人と関わるには、己の巨躯で踏み潰さないよう気を払わなければならない。
力の代価に心を封じる。苦痛ない。俺は多くのものに恵まれ、愛された。
ならこの手に残った力は、自分以外の為にのみ使われるべきだ。

災害に遭い、涙に暮れる少女が手を伸ばせば、その手を握り締めよう。
魔獣に怯える村の住人に救いを乞われれば、その通りに戦い、救い上げよう。
求める声(ねがい)が絶えず聞こえる。俺の力が必要と必死に叫んでいる。
―――断る理由はなかった。彼らは足りず、餓えているからこそ他の助けを求めている。応えたいと思うのは当然だ。
助けを求める人を救うのに、間違いはないと信じていた。


求められるべき事を成す。
願いはただ願いでしかない。善も悪も、真も偽も、大も小も関係ない。
人を助けるのは趣味や意志ではなく、そうするよう求められただけ。
取るに足らない一人の声でも、国の民の総意であろうとも柄を握る手に緩みはない。
剣を振るう。敵を落とす。
賞賛を浴びる。願いを聞く。
歩く先々は苦難の連続で、その足跡(ライン)は光り輝く金色の道となり、やがて人類の歴史に刻まれる伝説と昇華された。



耳朶に鳴り響く歌を聴く。
後の世に悲劇として伝わる歌劇(オペラ)を聴く。
偉大なる作家に人生を彩られる……光栄の限りの筈なのに、何かが感動を妨げる。
胸の奥のある一点が、穴があいたように響かない。歌劇を聞く度に溝は癒えるどころか益々裡を広げていく。



―――ああ、そうか。



理由に気付く。
それは願望器の如き生き方をしていて忘れたもの。
人が持ち得るべき当たり前のものを、遠い場所に置き忘れた感覚。
その欠落が穴を生み、冷たく荒ぶ風となり俺を苛やましていた。

これほど俺の事を謳っているというのに。
これだけ俺を讃える歌があるというのに。



―――俺の胸には、歌がない。






.


392 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:05:39 VMNqtpxg0

 ◇


詰まる所。彼の命はここで摘み取られ、養分(まりょく)に変えられる為だけの人生だった。
街の構成を司る住人、NPCとして生み出された男が、彼だ。
しかしこの街の前提が願望器を巡る戦劇―――聖杯戦争の為だけに造られた舞台てある以上、端役に過ぎない彼の役割も決定していた。
即ち、魔力の糧。サーヴァントの存在を維持し、能力を保たせる生きた贄。
歴史に名を馳せた英霊の化身にすれば、この街に住みつく命はすべて『それ』だ。
火にくべる薪、使い捨ての乾電池、その程度の価値でしかない。

店に並ぶ菓子をつまむ程度で消費される命。
それだけの人生。それだけの存在。
悲嘆を嘆く機会すら与えられない。効率の名の元に、彼は闇から出た影に骨の髄まで食い殺される。



故に。
彼が決定的な瞬間から先に命を永らえ、生きている事態こそ異常と呼ぶ他ないのだった。

「大丈夫。へいき、へっちゃらです」

無様に腰を抜かし尻餅をつく彼を支えるのは、信じがたいことに少女だった。
年端もいかない若い声。一般学区に通う学生が通している制服。
彼と同じ、被捕食者でしかない筈の凡人。
気休め以下の激励に、何故だか萎えた心を立ち上げた。
まるで少女の紡ぐ言葉に血が通っているかのように、それは熱く己の血をも滾らせた。

「だから、生きるのを諦めないで!」

闇から爪牙が躍り出る。
正真の怪異を前にして、少女は怯みもせず彼を庇う形に足を進めた。
無謀すぎる。鼠が猫に挑むより結末が分かり切った行動だ。
……なのに、少女の柔肌が爪に引き千切られる未来を、彼は何故だか想像し得なかった。
彼が知る由もない事実として。
サーヴァントのを止められる道理は、ただ一つの可能性しかあり得ない。

「――――――」

何言かの、紡ぎ。
詠い奏でられた文言がトリガーと化して、少女の体を包み込む。
瞬間の後、少女であった体は既に戦場(いくさば)に揃う防人の姿となっていた。


そして。
転身した少女すら印象に留めない程、圧倒的な存在が少女の更に前にいた。
いったいいつの間に現れ、そこにいたのか。そんな些末な疑問すら消し飛ばさん限りの、燦然と輝く気配。
躰を覆う鎧を意に介さない程の鍛え抜かれた褐色の体躯。
露出した背中に浮かぶ蛍火の紋章。
背にかけられた鞘収めの大剣。
そこには何一つとして、虚偽がない。
見目通りの硬度と破壊力が備わった、今の時代にはあり得べからざる、本物の騎士だった。

顔だけが振り返り、男が視線を向ける。
男がしたのはたったその行為だけ。なのに彼は、この時、あらゆる恐怖から解放された気分になった。
無慈悲に食い潰される声なき叫びに、救いが表れたのだと。



……そこから先の話は言うまでもない。
少女は歌い、男は振るう。
闇は蹴散らされ、残るのは光あるもののみ。
それは、誰もが夢見、当然のように忘れ去られる幻想の詩篇。
御伽噺の中にしかいない、正義の味方のようであった。





.


393 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:06:15 VMNqtpxg0

 ◇


英雄になりないと、思った事はない。
そんなものがいらない世界のほうがいいと、私は思ってる。



人助けはただの趣味で、つまるところは自分がそうしたいと願っただけ。
頼まれたわけでもなく、やりたい事は胸から湧いてくる。

困っている人を見ればつい手を差し伸べてしまう。
迷子の保護から人類への災害の対策まで、範囲はこまごま。
人を助けるのに大きいも小さいもない。
手を伸ばせば届く人を、見過ごすのは嫌だった。
結果として人類を救って、事情を知る方々に英雄呼ばわりされる時がある。
褒められるのは嬉しいけど、自分にその称号は荷が勝ちすぎるというのも承知していた。

戦う力があるのは、受け継いだから。
戦う意志を持てたのは、支えられたから。
生きることを諦めるなと。帰る場所になってくれると。
周りを取り巻く多くの人から少しずつもらって、私は生きている。

私だけが特別で、一番で、なんでも出来たことなんてひとつもない。
大人が、友達が、皆が頑張って私も頑張った。だから起きた奇跡。
助けられたばかりの私が、英雄だなんて事はない。
偉大な事を成し遂げた人が英雄なら、この星にいた皆が英雄だ。なので自分が英雄呼ばわりされるのは、まったく見当違いなのである。


本当の人助けは、自分一人の力だけじゃ無理だ。
助ける方だけが懸命だと思うのは、助けられる方は何もしないと思うのは傲慢でしかない。
人の手と手は近いようで遠い。どちらかが伸ばすだけじゃ届かない時がある。
お互いが伸ばすからこそ、確かに人と手を繋げられる。

助け合うとはそういうことだ。
不理解に嘆き、増える傷に涙し、折れた心を立ち直してまた歩き出す。
触れ合い、話し合い、笑い合い、ぶつかり合い、傷つけ合い、分かり合う。
世界はきっと、そういうもので出来ている。


戦いは、好きじゃない。話し合いで丸く収まるならそれが一番だ。
それでも、戦場に身を乗り出すだけの理由を持つ人がいる。戦わなきゃいけないと思う人がいる。
世界にある痛みを、この身は知っている。

そんな人達に自分が出来る事は、はそう多くない。
せめて偽る事だけはしないように。
最速で、最短で、一直線に。
心からの言葉と思い、そして拳をぶつけるぐらい。
器用な方じゃないから、他に上手いやり方は知らない。

どこまでいっても、それは暴力でしかないかもしれない。
誰かの笑顔を守る為に誰かの、笑顔を歪ませる。
戦う事で、自分の笑顔を望む人を悲しませてしまっている。
殴る度に拳が痛む。心が軋む。自己矛盾に硝子の体が罅割れる。
だから知らなくちゃいけない。戦う意義を。握った拳の意味を。
それを忘れない限りは、まだ先に進んでいける。



風を鳴らす音が響く。
奏でられる歌は遠く、遠く、果ての果てまで回っていく。


……そうだ。私は信じている。


独りじゃないと信じている。
戦いがない世の中。英雄がいらない未来。
歴史が痛みと嘆きを果てしなく繰り返すとしても、人は繋がれるのだと信じている。

なぜなら、いまも―――



この世界には、歌がある。






.


394 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:07:49 VMNqtpxg0
 ◆



魔術都市ユグドラシル。魔術師により作り上げられた魔術の都市。
北欧の世界樹の名を取るのも誇張ではない、霊樹から溢れ出す魔力が満ち溢れる、魔術師にとってのユートピア。
一般には魔術師でない者も多いが、何の関わりも持たない者は逆にそう多くない。
街の何処からでも見渡せる、天をも突かんとする大樹を見れば、誰あろうと気付く。
自分達が住む街には人が発明した科学に相反する、異端の技術が深く根付いているのだと。
地上では西暦を数度遡らなければ見ることのできない、人が魔術を受け入れた世界。
星を超えて隔たれた、月の頭脳体の中の意味も込めて、なるほどここは幽世における妖精郷と呼ぶに相応しい。
それが魂を賭けた殺し合いの闘技場という事実を知ったとしても、やはり彼らは喜び勇んで飛び込むのだろう。
奇跡を冠した月の果実。あるいは誘蛾灯。食虫花の芳醇な香りに誘われた虫が辿る末路と同様だとしても。

遥かなる神代を思い起こさせる大樹の上にある街の一角。
ユグドラシル内で最も俗世に塗れ、神秘の濃度も薄い一般用の学術地区。
何の変哲もない学生寮の屋上の傍に、その男はいた。


地面―――正確には街自体が樹木の上になるが―――から突き出た枝に寄り添うように、鎧で身を固めた美丈夫が立っていた。
中世に建てられたような絢爛な城であれば屈強な門番にも見えたろうが、コンクリートを健在にした二十一世紀風の住宅の前に佇む姿は、
仮装大会に出た帰りとでも言った方が通じるほど滑稽なものだった。
だが、実際に男を目にしたらその発想は一瞬にして雲散霧消する他ない。
降りかかる災いをただそこにいるだけで遠ざける守り神。
それこそがこの騎士の真の印象に相応しい。事実そのままに、騎士は今この家を守る任を全うしていた。
平凡なれど幸福を受ける少女こそ、今生における彼の契約者。
男は現世を生きる者にあらず。過去に消えた、伝説として蘇りし仮初の命。

騎士の名をセイバー。
その正体を『ニーベルングの歌』に名高き、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)たる勇者、ジークフリート。
聖杯戦争に添えられる七つのクラスの中で、『剣』を象徴にしつらえられた英霊である。

『セイバーさん、もう準備出来ますよ!』

そんな伝説の騎士に、契約者(マスター)の声が明朗快活に己の名を呼ぶ。
セイバーは短く了承の声を返し、肉体を構成する霊子の結合を解いた。
霊体化した躰は底の壁を抜けて個室へと移り瞬時に再形成される。
玄関前には、朝の登校の支度を整えたマスターが律儀にも待ち受けていた。

「おはようございます、今日も張り切って行きましょうッ!」

制服に身を包んだ少女は、陽だまりを思わせる笑顔でなんとも元気に挨拶を告げる。
何でもない会話を交わし、平凡な日常を送れる事が喜びとばかりに。

少女の名を立花響。
聖遺物の欠片から生み出されし、歌を力に変える回天特機装束、シンフォギアを纏う防人が一人。
そして、世界樹の上で催される決闘儀式、聖杯戦争に招かれた参加者の一人である。




.


395 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:09:11 VMNqtpxg0
 ◆


学園への登校の道程には、他愛もない会話を続ける。
直接声に出さず念話で済ますのも、最初は戸惑っていたが『一度、やったことあるし』と言ってすぐに順応してのけた。
互いに取り決めたわけでもないが、気付けば日課のようになっていた。

『……でですね、やっぱ朝ごはんは一日の資本ですし、セイバーさんも食べた方がいいって思うんです!
 腹が減っては戦は出来ないっていうし、いやあ昔の人はいいこと言うなあ〜』

今回は、どうやら以前からしていた自分の分の食事についてらしい。
サーヴァントに食事行為は必要無い、とは無論説明済みだ。まったくの無意味ではない、と言えば嘘になるが、補給される量は微々たるものだ。
だがマスターの方は何か納得いかないのか、こうして度々了承を求めようとする。
魔力の供給は順調……どころか、少し異常な程なのだが、やはり受けた方がいいのかもしれない。
思えば、誰かからの頼みを保留のままにしているのは初めてかもしれない。戸惑い、といってもいいだろう。

『む。ひょっとして、私を料理下手ガサツ系女子だと思ってますね?ふっふっふー、甘い、甘いですよ
 私だって女子力の鍛錬は日々精進してるんですから!そりゃ未来には負けるけど、今ならかなりものの筈!
 なにせ毎日、ご飯食べて、アニメ見て、寝る………………………あれ、料理、してない……?』

不快や退屈を感じている訳ではないが、どう答えていいものか分からず、少し心苦しい。
自分に答えれるのは短い相槌ぐらいのものった。

軍功のような華々しいものではない、野に根付く花のような、穏やかな時間が流れる。
語られるのは実に取りとめもない話題で、その度に一喜一憂する。
……死後でなくとも、自分とはあまりに遠い物語だ。


『マスター。昨夜の戦いについてだが、いいだろうか』


結局。
話題に出来るのは無骨で血がけぶる、事務的な内容でしかなかった。
案の定、マスターの表情に曇りがかかる。

『……すまない。空気が読めていないのは分かっているのだが、切り出すタイミングが掴めなくてな』
『……ごめんなさい』
『咎めてるわけではないんだ。ただ、あそこで身を挺して行かずとも問題はなかった。
 我らサーヴァントはマスターの剣であり、盾だ。主であるマスターが矢面に出る危険を冒すことはない』

昨夜傷を受けた左腕―――そしてもう、痕も残っていない―――を支えて俯く。
登校時での会話が朝の日課なら、街の巡回警備は夜の日課だった。
聖杯戦争を理解し、マスターとサーヴァントの関係を把握して数刻。
立花響が最初に決めた方針は、思い描いた予想図と完全に異にしていた。


―――まずはマスターになった人と会って、きちんと話し合いたいと思っています。
   どんな人なのか、どうして戦おうとするのかを、ちゃんと知りたいんです。私が手を貸してそれで解決するなら、きっとそれが一番だから。


まず始めに『対話』すると言ってのけた事に、少なからず衝撃を受けたのは忘れない。
武勇の優劣にもとらない、騎士であった自分には思いもつかない発想だった。
それ自体は素晴らしい考えだ。だが同時に無謀極まる行為だ。
戦場で剣も鎧も持たずに向かう事に等しい。条約の特使ならばともかく、自分以外のマスターは全て首級となるここでは自殺と謗られても文句は言えまい。
だから当然問うた。正義の為に悪を貫く矛盾者。譲れぬ願いを持ち、戦いを止めぬ者と相対した時、どうするのかと。


―――戦います。そうでなくちゃ伝えられないなら、私も拳に思いを乗せて私の歌を伝えます。


毅然とした目つきでそう言った少女は、確かに戦士の顔をしていた。
誰かに強制されてでも、頼まれてでもない、彼女自身の内から生じた思い……彼女の言うところの『歌』を聞かせると。


396 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:10:55 VMNqtpxg0

自分の為ではなく、誰かの為に戦う者。
それでいながら自分を見失わない者。
叶える願いを持たず、他者の願いを気に掛けるこの少女を―――己はマスターとして共に歩む道を選んだ。
かくして『他のマスターとの接触』『街で起きた事件の調査、及び解決』の二点を兼ねた、夜の警備を開始した。


経過と結果は、戦いの数が物語るだろう。
水面下で権謀術数を張り巡らすマスター達を尻目に堂々とサーヴァントを連れて往来を闊歩するマスターがいるのだ。
何らかの『絡み』を起こしてくるのは必然といえた。
壁越しに観察する視線、使い魔の群れ、時にはサーヴァントかマスター自身。
無関係の襲われていた一般人に手を差し出して事態を大きくしたのも一度ではない。
刃が、魔術が、殺意が飛び交う渦中で、少女は覆すことなく前言を実行してのけた。
反応の大半は嘲笑だった。もう半分は理解できないものを見る目、といったとこか。
聖杯戦争というルールそのものへの犯行ともいえる行為なのだ。尋常なる魔術師、成就すべき願いを持つ側からすれば当然の帰結。
大抵は小競り合いで終わり、使い魔を撃退こそするがサーヴァントと撃破した事はない。

『生半可な攻撃では俺は傷つかないが、マスターは違う。君はもう少し、自身の体を厭うべきだ』
『はい……』

竜の血を浴びて以来無敵となった体は宝具と昇華され、これまでの戦いでもその伝説通り傷負うことないままでいる。
しかしマスターは、英霊も目を見張るだけの能力を持つとはいえ人間だ。人間で、いられている。
付け足せば、温かみのある人の好さも戦いでは突き入れられる弱点に変わる。無傷でいられるはずはない。

「……セイバーさんはやっぱり強いなあ。ぜんぜん、傷ついてなかったし」

ぽつり、とこぼれた声。
契約した者同士の念話ではない、生の声帯からの声。
聞き慣れた賞賛、けれど去来するのはまた別の感情。

「私はまだまだ未熟だから、戦いの後はいつも傷だらけで、友達を心配させっぱなしで……。
 分かってもらえてるけどやっぱり悲しませちゃうのは嫌だから―――」

あなたみたいに、強くなれたらいいのに。

声にも念話にも乗らぬ声。
聞こえたわけでもないのに、そんな言葉が聞こえた気がした。

『……そう、気負うものではない』

自身にまつわる願いは無いとマスターは答えた。
聖杯にかける願いがない、という点では自身と同種といえる。
しかし呼ばれた以上は理由があるは必然。世界樹に招かれた人物がまったく願いがないとは思えない。
この少女も例外ではない。
共に語らい、過ごし、戦えば、見えるものもある。
そして契約した時から繋がった因果線(ライン)から、僅かに覗く情景。
魔力と共に流れてくるのは、胸に刺さったままの傷。そこに空いた穴を『ねぐら』にした暴れる竜―――

『マスターは信じる道を行けばいい。俺はそれに従おう』

誰しも他人には触れられたくない傷がある。歪みとて人の成り立ちだ。
今ここでそれを暴き立てようとは思わない。必要としても、その役目は自分ではないだろう。
所詮この身は仮初の稀人。傷を癒せる者は、より相応しい人がいる。


進めば進むほど棘が刺さる茨の選択。
小さな身体に待ち受けるのは無数の傷。肉を裂き、心を抉る戦争の渦。
飲み込まれた嵐に全身全霊を震わせても―――弱々しく、灯る光。
いつまで残るとも知れず、だが決して消えることのない輝き。
そこに俺は、寄る辺を見た。

己が思い描く理想の強さと少女は言う。
だが俺の理想とするものは、いったいなんだったのか。

我が生涯に後悔はなく、絢爛に満ちた人生は誇りであると確信している。
ただひとつだけ、残ったものが、否、生まれた思いがあった。
誰かのものではない、永らく失われていた、他ならぬ俺自身から生じたひとつの『願い』。
もし、二度目の生があるのなら。
ひたむきに、我が志を追いかけたい。
胸にある、何かの餓えを癒したい。

正義を信じて、握り締めて。
夢見た理想を持つ君と共に歩んで行こう。










月の上。世界を支える大樹の頂。
戦姫の絶唱に乗せて、ニーベルングの歌は奏でられる。


397 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:11:55 VMNqtpxg0




 ◆




【クラス】セイバー
【真名】ジークフリート
【出展】Fate/Apocrypha
【性別】男性
【属性】混沌・善

【パラメーター】筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:-
 「悪竜の血鎧」を得た代償によって失われている。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【固有スキル】
黄金律:C-
 人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 ニーベルンゲンの財宝によって金銭には困らぬ人生を約束されているが、
 幸運がランクダウンしている。

仕切り直し:A
 戦場から脱出する能力。
 不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

竜殺し:A
 ドラゴンスレイヤー。地上の最強種を倒した者の称号。
 竜種、ないし竜の因子を持つ相手に与えるダメージが増加し、相手から受けるダメージが減少する。

【宝具】
『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 ――悪竜の血を浴びた逸話を具現化した宝具。
 Bランク相当の物理攻撃及び魔術を無効化する。
 Aランク以上の攻撃も、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
 正当な英雄から宝具を使用された場合は、B+相当の防御数値を得る。
 ただし血を浴びていない背中は防御数値が得られず、隠すこともできない。
 たとえば全身を覆う防御魔術をかけても、背中の部分だけ露出してしまう。

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
 竜殺しを達成した呪いの聖剣。
 原典である魔剣『グラム』としての属性も併せ持っており、
 手にした者によって聖剣、魔剣の属性が変化する。
 柄の青い宝玉には神代の魔力(真エーテル)が 貯蔵・保管されており、
 これを解放すると黄昏色の剣気を放つ。
 平均的な対軍宝具と比べても溜めの速度が圧倒的に早いのが特徴。
 それでもサーヴァントとして現界した際に特質はかなり欠落しており、
 生前はそれこそ、息をする速度で剣気を撃ち放っていたという。
 また竜殺しの逸話を持つため、竜種の血を引く者に追加ダメージを負わせる。
 
【人物背景】
竜殺しを成し遂げた英雄。
自らの願いを持たず、他人の多くの願いを叶えた男。


【サーヴァントとしての願い】
己の信じるものの側に立ち、そのために戦おう。
今は、立花響の信じる道と共に。


398 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:14:56 VMNqtpxg0
セイバーのステータスを一部修正します


【クラス】セイバー
【真名】ジークフリート
【出展】Fate/Apocrypha
【性別】男性
【属性】混沌・善

【パラメーター】筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力B- 幸運E 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:-
 「悪竜の血鎧」を得た代償によって失われている。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【固有スキル】
黄金律:C-
 人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 ニーベルンゲンの財宝によって金銭には困らぬ人生を約束されているが、
 幸運がランクダウンしている。

仕切り直し:A
 戦場から脱出する能力。
 不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

竜殺し:A
 ドラゴンスレイヤー。地上の最強種を倒した者の称号。
 竜種、ないし竜の因子を持つ相手に与えるダメージが増加し、相手から受けるダメージが減少する。

【宝具】
『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 ――悪竜の血を浴びた逸話を具現化した宝具。
 Bランク相当の物理攻撃及び魔術を無効化する。
 Aランク以上の攻撃も、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
 正当な英雄から宝具を使用された場合は、B+相当の防御数値を得る。
 ただし血を浴びていない背中は防御数値が得られず、隠すこともできない。
 たとえば全身を覆う防御魔術をかけても、背中の部分だけ露出してしまう。

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
 竜殺しを達成した呪いの聖剣。
 原典である魔剣『グラム』としての属性も併せ持っており、
 手にした者によって聖剣、魔剣の属性が変化する。
 柄の青い宝玉には神代の魔力(真エーテル)が 貯蔵・保管されており、
 これを解放すると黄昏色の剣気を放つ。
 平均的な対軍宝具と比べても溜めの速度が圧倒的に早いのが特徴。
 それでもサーヴァントとして現界した際に特質はかなり欠落しており、
 生前はそれこそ、息をする速度で剣気を撃ち放っていたという。
 また竜殺しの逸話を持つため、竜種の血を引く者に追加ダメージを負わせる。
 
【人物背景】
竜殺しを成し遂げた英雄。
自らの願いを持たず、他人の多くの願いを叶えた男。


【サーヴァントとしての願い】
己の信じるものの側に立ち、そのために戦おう。
今は、立花響の信じる道と共に。


399 : 立花響&セイバー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/25(火) 13:18:53 VMNqtpxg0
【マスター】立花響
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
聖杯戦争のマスターと話し合い、傷つけ合うことなく戦いを終わらせたい。自分が叶えたい願いはない。
……ない、はずだ。

【weapon】
『シンフォギア』
装着者の旋律―――歌により力を引き出す、聖遺物から作られたFG式回天特機装束。
認定特異災害ノイズに対抗しうる唯一の装備。
響が所有するのは第三号聖遺物、北欧の軍神オーディンの槍ガングニール。
名の通り本来は槍を主武装とするが、『誰かと手を繋ぐ』という響の意志から、
武器を用いず徒手空拳のスタイルへと変化している。
 
【能力・技能】
『融合症例』
体内(心臓)に聖遺物を取り込んだ者が至った特殊体質。新人類とも呼称される。
ガン細胞のように広く侵食したガングニールの破片は響の肉体を変質させ、
爆発的なエネルギー出力や特異な回復力(四肢再生)等、常人を大きく逸脱したパワーの源として機能している。
……当然、それは人間には耐えられない変質だ。
体に竜を飼うようなもので、いずれ内から食い破られる運命の時限爆弾でしかない。
仮に耐えきれたとしても、そこにあるのは人の形をした、人ならぬ何かである。

『格闘技・混合型』
風鳴弦十郎から師事した格闘技を習得。
複数のジャンルを混合した……というか、古今のアクション映画の動きを基にしたごった煮(ミラクル)拳法。
しかし弦十郎のスペックが段違いなためか、憲法に抵触しかねないレベルにまで達している。
融合症例の恩恵(弊害)を受ける響の能力もまた、人間離れした領域にある。

【人物背景】
月落としを防いだ少女。
世界を救ったが、決して英雄ではない少女。


【基本戦術、方針、運用法】
積極的に事態に介入しておいて、各陣営との対話をスタンスとする少々特異な方針を持つ。
ただ無抵抗主義ではなく、いざとなれば全力パンチをぶちかましていく。
既にそこそこ戦いを経験してるため、無駄に認知度が上がってる可能性がある。

性能面でいえば、マスター、サーヴァント共に上級。どちらも積極的に攻めていけるスペックを誇る。
特にマスターの響は技量こそ未熟だが、瞬間最大火力に限っていえばサーヴァントに比肩する。
ジークフリートの特徴はその固さで、守りに入ると動く城塞ばりの堅牢さ。
常に飛び込みがちな響とはそういう意味で相性はいい。
魔力の値が上がってるのはマスターからの過剰供給のため。ただ安定しないのでマイナス判定がついている。
あまりに有名な背中の弱点だが、そもそも背中を取られた時点で致命傷なのであまり気にする必要もなかったりする。
何よりジークフリートはこの弱点を恐れていない。加えてマスターの援護もあるのだから。

能力だけ見れば隙の無い二人だが、諸々の面で大きな穴がある。
中でも響の融合症例による暴走、自滅は最大の爆弾。最悪の災厄が起こりかねない。
また精神面でも決して問題がないとはいえない。心の傷を内にしまい込みがちな響と、
求められない限り応えられないジークフリートでは、親交を築けてはいるが、本質的な信頼関係には至れていないのだ。

二人が聖杯に引き合わせられたのは、互いに『自分に欠けているもの』を持つ者だからだ。
響は"理想の強"さをジークフリートに見て。
ジークフリートは"理想の姿"を響に見ている。
それに気付き、手を伸ばし合い、互いの力を束ね合わせた時こそ、無敵の旋律は鳴り渡る。
即ち相互理解―――バラルの呪詛を打ち破ることが、二人の最大の鍵である。


400 : ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 01:58:27 bc0hvXEQ0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます
感想の方は、後日改めて書き込ませていただきます。ご容赦ください


401 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 01:59:19 bc0hvXEQ0
 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

「彼女が願った世界への希望……その想いが、僕の力だ!」

 少年は最愛の少女を喪った。
 父親の理想に殉じる彼は、それを引き留めようとする少女の声に、耳を傾けることができなかった。
 その結果刃を交え合い、果てにたどり着いたのが、彼女の死という結末だった。
 少女の死に際に立ち会いながらも、何もできなかった少年は、後悔と自責の闇へと沈んだ。

「貴方はマルスを目覚めさせると言った。目覚めさせて何をするつもりなのだ」
「戦いのない、美しく穏やかな世界を作る」

 それでも、少年は立ち上がった。
 在りし日の少女の語る言葉が、耳に心に聞こえたからだ。
 彼女の言葉は正しかった。
 皮肉にも彼女の死によって――死を悼む自身の心によって、その正しさは証明された。
 少年は信じていた理想を捨て去り、自らの意志によって決断し、理想に反旗を翻した。

「美しい世界は、今ある生命を犠牲にした上に成り立つものではない!」

 父の考えは間違っている。
 犠牲を強いるその理想は、自分と同じ悲しみで、世界を埋め尽くすことになる。
 そんなことは繰り返させない。
 身勝手な理想のために、誰かが涙を流すことは、二度とあってはならないのだ。

「美しいな。若き心は」

 故に少年は前へと進む。
 後悔すらも糧として。
 その先が悲しみとは違った未来が、確かに待っていると信じて。

「オリオンズ――デヴァステェェェーションッ!!!」


402 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 01:59:40 bc0hvXEQ0


 雷神トールの伝承がある。
 かつては北欧の最高神・オーディンとも並び称された戦の神だ。
 天を貫くその雷は、邪悪な巨人族を焼き払い、人々を守ったと言い伝えられていた。
 であれば、魔術都市ユグドラシルの宵闇を、眩く照らすこの雷光は、トールの導く稲妻だろうか。

「ひとつ、聞かせてくれ」

 雷雲渦巻く戦場の中で、一人の男が声を発する。
 中世風の衣装に身を纏い、鋭い槍を構える男が、眼前の相手に向かって尋ねる。
 神話の英雄、サーヴァント。
 ランサーのクラスを与えられた、名高き戦士の魂が、雷電の中心に立つ者へと問いかけた。

「お前は何のために戦う。我が宝具の一撃を受け、それほどの手傷を負ってなお、立ち上がって戦うことができる?」

 雷を纏うその男は、鎧に身を包んだ少年だった。
 白く輝くその装束は、ところどころに傷を負い、輝きを失いつつあった。
 それでも、少年の瞳には光がある。
 麗しい顔立ちに決意を宿し、傷ついた体に鞭を打ち、凛と立ち上がる強さがある。
 であれば、その源泉とは何だ。
 それほどの手傷を負ってなお、立っていられる理由とは何だ。

「愚問だな」

 少年はその問いを一蹴した。
 若い顔立ちには似合わない、力のこもった声だった。

「僕には聖杯にかける願いなどない……だとしても、一度引き受けた戦いならば、最後まで全うし戦い抜く。それが英霊というものだろう」
「なるほど、確かに愚問だったな」

 少年の言うことはもっともだ。なればこそ、非礼は詫びねばなるまい。
 せめてもの武士の情けとして、とどめには全力の一撃を見舞う。
 たとえ傷だらけの相手であろうと、最後まで慢心することなく、全身全霊で叩き潰す。
 それこそが戦いの作法だ。少年に対する何よりの礼儀だ。

「ならばせめて、その命……今一度奥義にて送ろうッ!」

 己が宝具に力を注ぎ、ランサーは大地を蹴って駆ける。
 音よりも疾き光となりて。影すらも置き去りにする速度で。
 文字通りの神速を体現し、ランサーは標的へと殺到する。
 使い手の速度を神域まで高める。これが少年に手傷を負わせた、英霊の宝具の正体だ。
 防御も回避もかなわぬ一突きを、今一度その身に受けたなら、今度こそただでは済まされない――!


403 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:00:01 bc0hvXEQ0
「――お前にひとつ、教えておいてやる」

 その、はずだった。
 されど突き出されたその槍は、肉も鋼も貫かず。
 世界樹の上に敷き詰められた、石畳を虚しく砕いただけだ。

「何っ……!?」
「一度見せられた技は、聖闘士(セイント)には二度と通用しない――!」

 声は背後から聞こえる。
 そこにいるべき少年の声は、ランサーの後ろから聞こえてくる。
 かわしたのか。今の一撃を。
 であれば振り返らなければ。敵の反撃に備えなければ。
 ああ、されど最早遅い。英霊が一手を繰り出すまでには、瞬きの間さえあれば十分すぎる。

「『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』ッ!!!」

 聞け、巨人の雷鳴を。
 この身に纏う白き鎧は、戦神トールのものにあらず。
 ギリシャ神話に語られし、戦神アテナを守る盾なり。
 その名はオリオン星座のエデン。
 背負った二つ名は門番(キーパー)。
 この雷の輝きこそが、地を割り海を切り開く、聖闘士伝承の体現だ。
 至近距離から放たれた雷は、ランサーの体を過たず貫き、灰一つ残らず焼滅させた。



 全米ヒットチャートに突如として現れ、頂点に輝いた彗星の歌姫。
 しかしてその正体は、世界の転覆を目論む、武装組織の若き首魁。
 それが世間一般に知られた、マリア・カデンツァヴナ・イヴのプロフィールだ。
 そしてそのマリアこそが、物陰から死闘を見届けていた、キーパー・エデンのマスターだった。

「ごめんなさい……力になることができなくて」

 マリアを背にして戦っていたエデンには、防衛態勢スキルの補正があった。
 それでも宝具の一撃によって、浅いとは言えない手傷を負ってしまった。
 これは戦うことをしなかった、自身の判断ミスが招いた結果だ。
 この身に戦の装束を纏い、槍を携えて戦っていたなら、結果は変わっていたかもしれないのに。

「気にしないでくれ。どちらにせよマスターの力も、いつまでも使えるものでもないからな」

 だからこそ、あまり頼りすぎてもよくないのだと、エデンはマリアに対して言った。
 FG式回天特機装束――シンフォギア。
 神話の武具を鎧と変えて、呪文の言葉を歌い上げ、己が力と化す装備。
 マリアはその使い手ではあったが、正規の適合者として見なすには、適正値が低すぎるのもまた事実だ。
 投与されている制御薬が、効力を失ってしまえば、その力は発揮できなくなる。
 だからこその、エデンの言葉だ。有限の力を頭数に数え、油断するわけにはいかないのだ。


404 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:00:25 bc0hvXEQ0
「強いのね、キーパーは」

 そんな反応を返されては、なおさら情けなく思えてしまう。
 自分と違ってという意を込めて、マリアは苦笑しながら言った。

「……そんな上等なものじゃない」
「えっ?」
「僕に力があるとするなら、それを裏付けているものは、後悔という感情だ」

 エデンは語る。
 自分の強さを裏付けるものは、無力な過去への後悔なのだと。
 彼は一番大切な命を、目の前で喪ってしまった。
 少しでも行動を起こしていれば、救えたかもしれなかった命を、見殺しにしてしまったのだ。
 あんな思いはもうしたくない。
 ああしていればという言い訳を、これ以上繰り返したくはない。
 それがオリオン星座のエデンの、今持つ力の原点だった。

「月の落下を阻止し、世界に平穏を取り戻す。それがマスターの願いだったな」
「ええ……結局は私の負うべき責任から、逃れているだけなのかもしれないけれど」

 目を逸らしながら、マリアが言う。
 実を言うと、彼女の組織は、世界征服を目的とした組織ではない。
 各国の思惑を当てにできない中、敢えて悪の汚名を被り、世界を襲う脅威に対処する。
 それこそがマリアの所属する、F.I.Sの本懐だった。

「気負わなくていい。そもそも戦わずに済むのなら、それに越したことはないからな」
「キーパー……」
「何にせよ、後悔のない道を選んでくれ。僕が言いたいのはそれだけだ」

 そう言うとエデンは、霊体と化し、夜の闇へと姿を消した。
 派手な戦いを繰り広げた後で、姿を晒し続けるのは下策だ。
 マスターだけならばまだしも、サーヴァントの姿を目撃されては、要らぬ襲撃を受ける可能性がある。

(……果たして、私にできるのだろうか……?)

 後悔のない道を選ぶことが、無力な私にかなうのだろうか。
 一人残されたマリアは、家路へと向かいながら思案する。
 マリア・カデンツァヴナ・イヴは弱い。
 理想と平和のためとはいえ、その手を血で汚してしまうことを、どうしようもなく恐れている。
 聖杯に願いをかけんとするのも、自分で犠牲を出したくないという、責任逃れなのかもしれない。
 果たしてそんな弱い自分に、納得のいく選択肢を、掴み取る力などあるのだろうか。
 戦場から離れ仮住まいへと向かう、彼女の足取りは、重かった。


405 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:00:44 bc0hvXEQ0
【クラス】キーパー
【真名】エデン
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】
筋力:B 耐久:D(C) 敏捷:B 魔力:B(A+) 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
防衛態勢:B
 マスターを護衛しようとした際に、耐久値が1ランクアップされる。
 また、1つ下のランクまでの「気配遮断」スキルを無効化できる。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 エデンの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。
 あくまで青銅聖闘士に過ぎないエデンは、土壇場で闘志を燃やした時のみ、この力を発揮できる。

Ω:-(EX)
 宇宙を形作る究極の小宇宙・大宇宙(マクロコスモ)。
 Ωとはその大宇宙の加護を受け、限界を超えた小宇宙を行使できる境地である。
 その絶大なエネルギーは神の力にも匹敵するが、
 小宇宙を持った者同士の強い絆によって導かれる力であるため、この聖杯戦争においては発動できない。

見切り:B
 敵の攻撃に対する学習能力。
 相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、 同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
 但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。
 超常的な訓練を受けた聖闘士には、一度受けた技は二度と通用しないと言われている。

神性:C 
 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 エデンは戦神マルスの依代・ルードヴィグの息子である。


406 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:01:13 bc0hvXEQ0
【宝具】
『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 オリオン星座を守護星座に持つ、オリオン星座の聖闘士に与えられる青銅聖衣(ブロンズクロス)。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の耐久が1ランクアップし、その他の能力値にも若干の補正値がつ
 本来彼の聖衣は、聖衣石(クロストーン)化から解き放たれた新生青銅聖衣(ニューブロンズクロス)となっているはずなのだが、
 異教の地であるユグドラシルでは、その力を発揮できずにいる。

『轟き叫べ暴虐の雷(オリオンズデヴァステーション)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜20 最大補足:50人
 エデンの最大の奥義が宝具化したもの。
 拳に莫大な電撃を込めて地面を殴り、周囲に拡散させる範囲攻撃である。直接敵に殴りかかって、打撃攻撃として放つことも可能。

『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜40 最大補足:20人
 エデンの持つ最大の奥義が宝具化したもの。両手から雷撃を光線状にして放ち、敵を狙い撃つ。

【weapon】
なし

【人物背景】
聖闘士(セイント)養成学校・パライストラで、主席の成績を有していた青銅聖闘士。
しかしその正体は、かつてアテナと敵対していた、火星の軍神・マルスの息子だった。
今回の聖杯戦争では、15歳当時の年齢で現界している。

父の理想を叶えるため鍛錬を積んでいたエデンだったが、闇の遺跡にて最愛の少女・アリアを、彼の手によって殺されてしまう。
失意のどん底にあった彼は、その中でアリアの主張を振り返り、彼女の方が正しかったのではないかと考えを改める。
以降エデンは、犠牲を強いる革命を進める父に反旗を翻し、彼と戦う聖闘士・光牙らと共に戦った。
その後は改めて聖闘士として聖域(サンクチュアリ)に残留。地上を脅かす神々と戦っている。

良家の育ちの上に実力が高いため、それに比例してプライドも高い。
しかし精神的には打たれ弱い部分もあり、アリアが死亡した際には、体育座りの姿勢のまま、数時間に渡って微動だにしなかったとも言われている。
それでも立ち直って以降は、脆い部分もなりをひそめ、アリアを喪った「後悔」を繰り返さぬよう、強い意志の下に戦い続けた。

小宇宙の属性は雷。
オーソドックスな格闘戦を得意とし、攻防ともに隙がない。
宝具の他の必殺技には、放電攻撃の「ヒーラ・マスティーア」、電撃の球体を投げつける「トニトルイ・サルターレ」、
サルターレを複数展開し一斉発射する「トニトルイ・フェラカーラス」、左手に雷撃を纏って殴りかかる「フォルゴーレ・ルネッサンス」、
雷雲の竜巻を生じる「トワノ・トルナード」がある。

【サーヴァントとしての願い】
特になし

【基本戦術、方針、運用法】
オールレンジに対応可能な必殺技を持つ上、極端に燃費が悪いわけでもない。バランスの取れたサーヴァント。
ただし言い方を変えれば、それは器用貧乏であることとイコールでもある。
防衛態勢スキルと見切りスキルによって、数値以上の生存能力を持つため、これを活かして戦いたい。


407 : マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:01:41 bc0hvXEQ0
【マスター】マリア・カデンツァヴナ・イヴ
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
月の落下を止めたい

【weapon】
ガングニール
 北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。
 その由来の通り、槍型の武器(アームドギア)を用いる。
 また、羽織ったマントは自在に操ることができ、中距離攻撃やシールドとして使うことが可能。
 必殺技は、槍の先端からエネルギーを解放し、ビームのようにして発射する「HRIZON†SPEAR」。

アガートラーム
 実妹セレナ・カデンツァヴナ・イヴの遺品。
 彼女の死亡および、本シンフォギアの破損により、登録データは全て抹消されてしまっている。
 そのためいかな聖遺物に由来するものなのか、どのような性能を持っているのかなど、ほとんどの情報が不明。
 相応の覚悟と意志により、「奇跡」を手繰り寄せることがない限り、決して起動することはない。

【能力・技能】
シンフォギア適合者(偽)
 神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
 しかし彼女自身の適合係数はあまりに低く、制御薬・LiNKERの服用なしには、シンフォギアを纏うことはできなかった。
 このため、現在体内に残留しているLiNKERがなくなった場合、適合係数が著しく低下し、マリア自身を傷つける結果を招いてしまう。
 戦闘訓練自体は積んでいるため、相手との技量差次第では、正規の適合者とも渡り合うことができる。

【人物背景】
かつてアメリカの実験機関「F.I.S」に囚われていた、レセプター・チルドレンの1人。
月落下の事実を世界に公表し、完全聖遺物・フロンティアによる状況打開を行うため、武装組織「フィーネ」の首魁として蜂起する。
しかし彼女自身は争いを恐れており、現在の立場も組織の維持のため、ナスターシャ教授に依頼されて受け入れたものだった。
2歳歳下の妹・セレナを喪っており、妹の悲劇を繰り返したくないという想いが、彼女の心を繋ぎ止めている。

表向きには強気に振舞っているものの、本来は消極的な性格。
そのため、テロ組織として戦うことによる良心の呵責や、組織の代表を求められる重圧により、心を擦り減らしていった。
それでも、優しく面倒見のいいお姉さん基質でもあるため、周囲の人間からの信頼は厚い。

表向きには歌手活動をしており、そちらの方面では、僅か2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に立つほどの才能とカリスマを有している。

【方針】
迷いはあるが、一応聖杯狙い。


408 : ◆nig7QPL25k :2015/08/26(水) 02:03:15 bc0hvXEQ0
投下は以上です
マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG&キーパー(エデン@聖闘士星矢Ω)組でした
マリアのステータス表は、「邪神聖杯黙示録〜Call of Fate〜」様の候補作のものを参考にさせていただきました


409 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:13:52 Kl0UM3gI0
皆様、投下お疲れ様です。
一組、投下させていただきます。


410 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:14:31 Kl0UM3gI0
その男は、今、人生において最高の希望を感じていた。

魔術都市ユグドラシルを舞台に行われる、勝ち取った者の願いを叶える神秘の聖杯を巡る殺し合い――聖杯戦争。
彼はその参加者としての資格を手にし、自らの手元にサーヴァントを呼び出した。
常人では計り知れない栄光を掴み取り、歴史に名を刻み、伝説となった英霊を、自らの手に手繰り寄せたのだ。
彼が呼び出したサーヴァントは、アサシンのクラス。
正面から敵と戦うよりも、己の暗殺技術をもって、誰にも気づかれずにターゲットを消す。
その基本特性に加え、このアサシンは一つの特殊能力を持っていた。

――己の複製を、魔力の続く限り生み出す。
このアサシンが唯一持つ、生前の逸話や伝承が形となった武具――宝具である。

一人が二人に。二人が四人に。四人が八人に。八人が十六人に。十六人が三十二人に。
魔力があるだけ、それこそ無限に己を作り出せる。
生み出されたアサシン達は、最初の元となったアサシンの思考に寸分の狂い無く従い、闇を駆け、ターゲットに肉薄する。

一人一人の力は、三騎士と呼ばれるクラスはもちろん、他のサーヴァントには遥かに劣る。
だが、魔力を溜め込み、アサシンの複製を限りなく作り出せばいい。
一人が倒れても二人目が。十人が倒れても百人が。千人倒れても一万人が。
それだけの人数のサーヴァントが、自分の手足となって戦う。
敵サーヴァントは確かに脅威だが、ならば暗殺者らしく、マスターを狙えばいい。
数百のアサシンを一度に止める手立てなど、並のマスターが持っているはずがないからだ。

マスターを全て殺し尽くし、いずれは聖杯を手にし、万物を超える力を手にする。
その未来を想像するだけで、男は笑みを止められない。

今夜、初めて自分以外のマスターを見つけた。。
既にアサシンの複製は完了し、100体の分身を作り出した。
魔力消費は激しかったが、この戦いを終えてからゆっくり補給すればいい。
今すべきは、視界の先にいる老齢の男――左目に眼帯をつけ、右手の甲にマスターの証である令呪を宿した、青い軍服の男を殺すことだ。
かかげた手に力を込め、一気呵成に振り下ろす。

100のアサシンが、男の意思に従い、一斉にマスターへと襲い掛かった。


411 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:15:36 Kl0UM3gI0
□ □ □



その男は、今、人生において最低の絶望を感じていた。

ありえないありえないありえない―――!
自分は魔力をゴッソリ使って、アサシンを100人も作ったんだぞ―――!!
10人倒されても、90人があいつを殺すはずなんだ―――!!
令呪まで使って魔力を満タンにして、さらに数を増やしたんだ―――!!

眼前で繰り広げられた光景が信じられない男は、自分が襲いかかったマスターに向け、声を荒げた。

「なんで……っ! なんで、俺のサーヴァントが逆に倒されてんだよおぉぉぉっ!!」

結論から言おう。
男が魔力を使って生み出した100のアサシン。
令呪を使って魔力をブーストし、この場に追加で生み出した100のアサシン。
合計200人となったアサシンは、現在進行形で、目の前で次々と殺されていった

相対する眼帯の男。
彼の周囲には、8人の人――ではなく、8体の『ロボット』が、主を守るかのようにアサシンを次々と殺していく。

額に円形の刃を備えた赤いロボットは、両手から刃を投げ続けてアサシンの体を引き裂き。
鏡のように光り輝く装甲のロボットは、ホログラフによって生み出した分身が翻弄したアサシンをビームで撃ち抜き。
エジプトに伝わるツタンカーメンを模したロボットは、掌に生み出した太陽光を凝縮したエネルギー弾でアサシンを燃やし尽くし。
全身に無数の火気を搭載したロボットは、両肩、頭部、両腕の発射口から吐き出す数十発のミサイルでアサシンを粉々にし。
アジアの片隅、日本に伝わる鎧武者のようなロボットは、手にした槍で手近なアサシンを串刺しにし。
火炎の車輪を撃ち出すロボットは、自動車に変形して縦横無尽に走り回りながらアサシンをひき殺し。
氷でできた巨体と豪腕を持つロボットは、地面を走る氷の刃で身動きが取れないアサシンを捻り潰し。
天狗のごとき赤い鼻を持つロボットは、天から高速で飛翔しながらすれ違いざまにアサシンを切り刻み。

8体のロボットによって、眼帯のマスターにアサシンは一人たりともたどり着けない。
200人いたアサシンはまた一人、また一人、時には10人まとめて消されていく。


412 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:16:22 Kl0UM3gI0
「問おう、人間のマスターよ」

眼帯のマスターは初めて口を開いた。
威厳に満ちた低い声だ。
身に纏う青い軍服と、眼前の大地に突き刺す1本の刀。
改めて眼帯のマスターを見た男は、思わず「ひぃっ」と言いながら後ずさる。

「お主は、同じマスターである私に戦いを仕掛けてきた。つまり、聖杯を狙っているということだ。
この戦いに勝ち残った時、お主は聖杯に何を願う?」
「な、何を願う、だと…!?」

眼帯のマスターのその落ち着きが、威厳に満ちた声が、大地に突き刺している刃が。
男の精神をひどく乱した。

――見下すな! 誰も、俺を見下すんじゃねぇっ!
――力だ…力さえあれば、誰も俺に逆らわねぇっ!

イヤでも脳裏に蘇るのは、元の世界での自分の境遇。
力がなかった彼は、決まってイジメの対象とされてきた。
カツアゲ、パシリ、暴力、無視。罪のなすりつけ――彼は、およそイジメと名付けられる全ての対象として、鬱憤した日々を過ごしていた。

だからこそ、このユグドラシルで記憶を取り戻し、マスターとして選ばれた時に誓った。
敵対するものは全て殺し、どんな手を使ってでも聖杯をその手に掴みとることを。

「支配だっ! 聖杯で圧倒的な力を手に入れて、俺は支配してやるんだっ!
ユグドラシルだけじゃねぇ! 元の世界に戻って、俺を見下してきた奴らを全員支配してやるっ!!
そうだよっ! 俺は……! 俺はぁぁぁっ!!」

彼の手に残された、残り2画の令呪が光を帯びる。
同時に令呪が一気に消失し、莫大な魔力が彼の体を駆け巡った。
1画で100体のアサシンを複製した令呪の魔力ブーストを、一気に解き放つ。

瞬間、後方から浮かび上がったのは、2画分の令呪の魔力によって蘇った200体ものアサシン。

「人間を超えるんだあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

怒りの咆哮と共に生まれた殺気に従うように、生み出された200体のアサシンは、一斉に眼帯のマスターへと襲い掛かる。
彼の周囲を守る8体のロボット達も迎え撃ち、太陽エネルギーが、氷の刃が、ミサイルの雨が、アサシンの群れに突き刺さる。
だが、さきほどの100体の倍である。何十体かのアサシンが攻撃を潜り抜け、眼帯のマスターを射程内に捉えた。

ロボット達も間に合わない。
アサシンが、男が、自らの勝利を確信した。
令呪を全て使ってしまった事など、今この時はどうでもいい。
今は、ただ殺す。目の前でふんぞり返っている、この眼帯男を――!

「そいつをぉおぉぉ!! 殺せえぇぇぇっ!! 俺が勝つんだああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「その殺意、決意、見事なり」

アサシンの拳が突き刺さる瞬間、眼帯の男は冷静に答え、左手で眼帯を取り外す。
閉じられていた左眼が開き、男とアサシンは見た。
眼の奥に封じ込められていた、自分の尾を噛んで円形をなす龍――ウロボロスの紋章を。

刹那、眼帯の男――キング・ブラッドレイは、男の『眼前』にいた。

「―――はっ?」

その言葉が、男の最後の言葉だった。
彼が最後に見たものは、30を超えるアサシンの隙間を高速で駆け抜け、
自分を真正面から切り裂かんと、ブラッドレイが刀を振り下ろした瞬間。

一瞬動きが止まった残りのアサシンも、8体のロボット達の一斉攻撃によって消滅したことを追記しておく。


413 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:17:45 Kl0UM3gI0
□ □ □



深夜の特級住宅街。
門を守る警備員の敬礼を受けながら、ブラッドレイはユグドラシルで自身が暮らす自宅へと帰宅した。
行政地区に本部を構える、ユグドラシル治安維持を目的とした軍部の最高責任者。
これが、ユグドラシルにおいてブラッドレイに用意された役割だ。

彼が記憶を取り戻したのは数日前。
最後の記憶は、元の世界で自分が絶命した瞬間。
鋼の錬金術師、不老不死を求め外から来た男、傷の男――
眼前に立ちふさがった人間達と命を賭けて戦い、敗れた記憶だった。

「やれやれ、満足して人生を終わらせる事ができたと思ったのだが、年寄りにあまり無理をさせないでほしいものだ」
「なーにが年寄りじゃ、この若造が! サーヴァントの群れを無傷で走りぬける年寄りがどこにおる!」

軽い愚痴をこぼしながら部屋に戻ったブラッドレイに浴びせられた声の主は、部屋に用意されたワインを飲みながらソファに腰掛けていた。
長身で痩せ型、頭髪は頭頂部の辺りが禿げ上がっており、頭側面の髪を伸ばしている、老齢の男性だ。
突然の罵声にもブラッドレイは「ハッハッハ」と笑いながら軍服を脱ぎ、ワイングラスを手にとって男の反対に腰掛ける。

「いやなに、ここに呼び出された時の事を思い出してな。
突然記憶が戻ったと思えば、満足して死んだ直前の記憶ではないか。
私の死はなんだったのかと、愚痴の一つや二つぐらい言わせてもらいたいものだ」
「ふん! ワシなんぞ、思い出すのも憎たらしいアイツに、何回も何回も煮え湯を飲まされとったわ!
1回負けたぐらいでグチグチ言っとるんじゃないわ!」

手にしたワインを一気に飲み干し、追加を注ごうとボトルに手をつけるが、
先にブラッドレイが差し出したグラスに気づき、しぶしぶボトルを傾けてブラッドレイのグラスに注ぐ。

「で、聞くまでもないじゃろうが、戦況は?」
「うむ、お主が宝具で生み出した8体の傀儡もよく働いてくれた。
他のマスター達も本選に進むために動くだろう。しばらくは様子を見るべきと考えているが?」
「ふん、ワシは構わん。ワシの軍団の指揮は貴様に一任しておる。使いたくなったら、いつでも念話で呼べい。
貴様の刀も、魔力を断ち切れるように改造しておいてやるわ。サーヴァント相手でもある程度なら切り結べるじゃろう」

グラスに注ぎ終え、自身の空のグラスにワインを注ぐこの老人――否、サーヴァント。
彼こそブラッドレイの右手に宿った令呪によって導かれたサーヴァントだ。

その真名を、『アルバート・W・ワイリー』。
機械工学が発達した遥か未来の時代において、ロボット製作の分野において一つの歴史を作り出した未来の英霊だ。
今回の聖杯戦争においては、エクストラクラス――『製作者(クリエイター)』として召喚された。

発明や魔術に伝説といった、多岐に渡る事象を生み出す功績を持って英霊となった者たちこそ、クリエイターのサーヴァント。
自身は戦う力を持たずとも、武具や魔術を作り出して敵を打ち倒し、
サーヴァントによってはマスターを強化して戦いを進める者もいる。

クリエイター――ワイリーの場合、培ったロボット工学の技術とサーヴァントとしての魔力を用い、
生前生み出した、数多くの戦闘用ロボットから8体を厳選して生み出し、使役する。
これが彼の宝具、その名も『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)』。
宿敵である、青きロボットとの戦いの度に積み重ねてきた技術の歴史が、宝具となったものだ。


414 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:18:35 Kl0UM3gI0
グラスに注ぎ終えた所で、ブラッドレイがグラスに眼を向けているのに気づいた。
そんなワイリーに気づいてか、ブラッドレイは口を開く。

「こ度の聖杯戦争、私の目的は他のマスター…人間達と、死力を尽くして戦うことだ。
先ほどのマスターも、支配という言葉こそ使っておったが、最後の最後まで己の目的のために戦っていた。
やはり人間は面白い……だからこそ、私はホムンクルスとして、人間と真っ向から戦いたいと願う」

人造人間――ホムンクルスであるブラッドレイを生み出した『お父様』に敷かれたレール上の人生。
その最後に、一人の軍人として、男として、死力を尽くして戦い、敗れた。
それに満足し、逝った――はずだった。

だが、運命のいたずらか、こうして新たな戦場が用意された。
人知を超えた数多くの人間達が、己の欲望と願いのために全力で戦う、命がけの戦場だ。
軍人として、ホムンクルスとして、一人の命として、彼らと心行くまで戦いたい。
それこそ、キング・ブラッドレイが聖杯戦争にかける願い。

「お主にはお主の目的があるだろう。勝ち残った時、聖杯は好きにするとよい。
改めて協力を求めよう、クリエイター……アルバート・W・ワイリー殿。
何より、おなじ老人として、お主には近いものを感じてるからのぅ」
「ジジイ呼ばわりはやめぃ! そう改めて言わんでも協力してやるわ!
聖杯の力で魔術にも精通した最強のロボット軍団を作り出し、今度こそ世界制服を成し遂げるのじゃ!」
「ハッハッハ、世界征服か。いつ聞いても笑いが止まらん言葉だ。
せっかくだし、今までの失敗談でも酒の肴に聞かせてくれんかね?」
「貴様、老い先短い老人の過去の傷を抉り出すのか!? 血も涙もないのかっ!?」
「お主、私と一緒でもう死んどるだろうに」

生前、世界征服を自らの野望としたサーヴァント。
生前、父の野望のレールに無理やり乗せられたマスター。

一人は聖杯戦争の過程における戦いを求め、一人は聖杯戦争の結果における栄光を求める。
出会った二人の老齢主従は、聖杯戦争の勝利ために語らい、グラスを打ち鳴らした。


415 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:27:26 Kl0UM3gI0
【クラス】
クリエイター

【真名】
アルバート・W・ワイリー@ロックマンシリーズ

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:B 宝具:C

【属性】
混沌・悪

【保有スキル】
騎乗:B
 騎乗の才能。メカが絡む大抵の乗り物を自在に操れる。

製作:A
 武器や装備を製作する才能。
 自身が生前製作した、数多くのロボットを作成できる。

陣地作成:A
 自らに有利な陣地を作り上げる。
 主にロボット製作のための工房作成に使用され、
 陣地作成に時間をかければかけるほど、装備製作スキルの性能が上昇する。

 クラス補正により、陣地作成のステータスが大幅に上昇する。
 これにより、陣地作成スキル発動直後からランクAの装備が製作可能となる。
 クリエイターの場合、作成するのはロボット兵器のみとなるが、
 サーヴァントと互角に戦えるとまでは行かないが、総じて高性能なロボットが製作可能となる。
 作成可能なロボットは、かつてクリエイターが作成した事のあるメカのみが対象だが、 ユグドラシルで手にした武具を対象に、若干の改造を加える事も可能となる。

逃走:C
 敗北した戦闘から逃げ出し、無事に生き残る才能。
 宿敵との戦いに何度も敗北してきたが、その都度無事に逃走してきた事に起因する。
 致命傷や逃亡不可な広範囲攻撃でない限り、ダメージは負うが、ほぼ確実に生き残り、逃走することが可能となる。

【宝具】
『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)-』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1-10 最大捕捉:1-5
 生前、彼が抱いていた最大の野望、それは世界征服。
 優秀なロボット技術者であった己の技術を存分に奮い、数多くの戦闘ロボットを製作してきた。
 その積み重ねてきた技術が宝具となった。

 かつてクリエイターが製作したロボット軍団『DWN-ドクター・ワイリー・ナンバーズ-』。
 この宝具を使う事により、歴代のDWNから8体を対象にした複製メカを作り上げる事ができる。
 この複製メカそのものが擬似サーヴァントとでも呼べる存在となり、
 一部ステータスは欠損するものの、総じて高性能な戦闘ロボットである。
 性能は様々だが共通する事は、魔力は各ロボットのエネルギーとしてのみ使用され、
 ワイリーの命令に忠実となり、各々の性能と特殊武器のみで戦闘を行う。
 完全に破壊されない限り、クリエイターの用意した陣地で魔力の補給が可能。

 ただし、この宝具を用いて製作したロボットには、各々に設定された弱点補正が必ず発生してしまい、
 弱点属性の攻撃を受けると、どんな攻撃でも一撃で破壊されてしまう。
 今回の聖杯戦争においては、歴代のDWNよりランダムに指定された、下記の8体が対象となる


416 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:28:34 Kl0UM3gI0
 DWN.009 メタルマン@ロックマン2
 筋力:D+ 耐久:C 敏捷:B 幸運:E
 ワイリーが初めて製作した純粋な戦闘用ロボット。
 スピードに優れ、空中から手投げ式回転ノコギリ「メタルブレード」を投げつけて戦う。
 弱点属性は『鋼』。実体を持つ剣や銃弾など、鉄でできた武器が対象。

 DWN.019 ジェミニマン@ロックマン3
 筋力:C 耐久:C++ 敏捷:C 幸運:D
 壁などで反射する強力なビーム兵器「ジェミニレーザー」を装備しているロボット。
 ホログラフ発生装置により、分身を作って相手を幻惑する戦法を得意とする。
 弱点属性は『地』。大地そのものを扱う攻撃や、地面を這って迫る攻撃が対象。

 DWN.028 ファラオマン@ロックマン4
 筋力:D 耐久:B 敏捷:D 幸運:C+
 ピラミッド内部の探索のため、ツタンカーメンに似たデザインを施されたロボット。
 太陽エネルギーを溜めて放つ「ファラオショット」は、チャージして与えるダメージを増す事が可能。
 弱点属性は『光』。閃光弾のような強烈な光が対象。

 DWN.039 ナパームマン@ロックマン5
 筋力:B 耐久:C++ 敏捷:B+ 幸運:E
 全身に強力な火気を内蔵した戦闘用ロボット。
 地面をバウンドする手榴弾「ナパームボム」を始めとした火気による殲滅戦を得意とする。
 弱点属性は『硬』。ダイヤモンドやクリスタルといった、強力な硬さを持つ武器などが対象。
 
 DWN.048 ヤマトマン@ロックマン6
 筋力:C+ 耐久:D++ 敏捷:B 幸運:B
 日本の鎧武者をモデルに製作された戦闘用ロボット。
 自身の武器である槍の先端を高速で射出する「ヤマトスピアー」が専用武装。
 弱点属性は『飛』。回転しながら飛翔する遠距離攻撃などが対象。

 DWN.056 ターボマン@ロックマン7
 筋力:D 耐久:D 敏捷:B+ 幸運:D+
 自動車型に変形し、圧倒的なスピードで敵を翻弄するロボット。
 炎の弾を車輪状に並べて打ち出す「バーニングホイール」で対象を燃やしつくす。
 弱点属性は『音』。音そのものを利用する攻撃や、超音波などが対象。

 DWN.062 フロストマン@ロックマン8
 筋力:B+ 耐久:C++ 敏捷:E 幸運:E
 8大ボス1の巨体を持ち、圧倒的な怪力と重装甲が特徴。。
 地形に沿って波状に進む氷の刃「アイスウェーブ」は、触れただけでたちまち凍りつく。
 弱点属性は『炎』。炎による攻撃や爆弾の爆風などが対象。

 DWN.057 テングマン@ロックマン&フォルテ
 筋力:C+ 耐久:E 敏捷:B 幸運:E
 空を自在に飛翔し、高速飛行からの突進攻撃が得意。
 真空波で相手を切り裂く「テングブレード」は、遠距離では刃を飛ばして攻撃可能。
 弱点属性は『螺』。渦を巻いて攻撃を行うドリルや、回転を加えた弓矢などが対象。

 弱点属性をまとった攻撃を受けた場合、どれだけ耐久が残っていても一撃で撃破される。
 倒された戦闘ロボットは、後述の宝具を用いない限り、再度の製作はできない。

『ワイリー・カプセル』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1-10 最大捕捉:1-20
 『戦え、8大ボス達よ!』により起動した8大ボス全てが撃墜された時に発動可能となる。
 カプセル状の装置を8つ召喚し、一瞬で8大ボス全てを蘇らせる事が出来る。
 ただし、この宝具を用いて蘇らせた8大ボスは、全ステータスが1ランクダウンする。
『ワイリー・マシン』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1-100 最大捕捉:1-100人
 『蘇れ、8大ボス達よ!』により蘇った8大ボス全てが倒された時発動する、クリエイターの最終宝具。
 髑髏の意匠を持つ巨大メカであり、クリエイター自身が髑髏の目の部分に搭乗して操縦する。
 側面に装着された砲台からの無差別砲撃、エネルギーフィールドをまとった砲台そのものを打ち出す射撃攻撃、
 髑髏の口部分を展開し、エネルギーをチャージして放つ広範囲光線など様々な武装を持つ。
 外観と性能は生前の戦いによって逐一変更され、今回の聖杯戦争においては、8度目の戦いで使用した飛行船型となる。


417 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:35:20 Kl0UM3gI0
【weapon】
クリエイター本人に戦闘能力は存在しない。
最終宝具発動時以外は、ワイリー・ナンバーズを用い、自らは指揮を取る。

【人物背景】
スーパーロボット・ロックマンの製作者であるトーマス・ライト博士と旧友であったが、
数々のロボットコンテストにおいて、彼が2位を獲得した全てのコンテストで1位を獲得したのは、ライトであった。
この屈辱に我慢がならなかったワイリーは表舞台から去り、やがて自らが製作した戦闘ロボットによる世界征服の野望を抱き、
それを阻止しようとするロックマンと戦いを繰り広げていくこととなる。
性格は「冷酷な悪の親玉」だがどこか抜けている部分もあり、コミカルな言動も見せる。
彼の野望はことごとく、ロックマンと仲間達によって打ち砕かれるが、晩年において最後のDWN『ゼロ』を完成させる事となる。
ワイリーの死後、ゼロはライト博士が生み出した最後のロボット『エックス』と出会う事になり、ライトとワイリーの死後も彼らの因縁は続く事となった。
自らのシンボルマークとして髑髏を好み、研究所の外観やワイリー・マシンにデザインを施している。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力で世界征服を!

【基本戦術、方針、運用法】
クリエイター本人に戦闘能力はなく、スキルによって製作したDWNに指示を与えて戦闘を行う。
本来はクリエイター本人が指示を行いマスターと共闘させるのが基本戦術だが、
マスターの指揮能力はクリエイターの遥か上を行き、戦闘力もDWNを上回っているため、DWNの指揮系統は全てマスターに譲渡した。
クリエイター自身の役目は、マスターの必要とする戦法に対応する8大ボス以外のロボットの開発、使役となるだろう。



【マスター】憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)
【出典】鋼の錬金術師
【性別】男性
【令呪の位置】右手

【マスターとしての願い】
ホムンクルスとして、人間と心行くまで戦いたい

【weapon】
刀×4
 彼が治めていたアメストリス国の軍で支給されている一般の刀。
 だが、最強の眼と人間を超えた身体能力を持つ彼の手にかかれば、銃弾を切り落とし、単身で難無く戦車をも破壊する兵器となる。
 クリエイターが施した科学技術により、サーヴァント相手でもある程度のダメージを与えられるようになっている。

【能力・技能】
最強の眼
 左目の眼帯の下、瞳に刻まれているウロボロスの証。
 至近距離から撃たれた銃の弾道さえ見切る動体視力を持った『最強の眼』が隠されており、
 この眼と、ホムンクルスの身体能力が生み出す桁違いの素早い動作による高速の戦闘術で相手を圧倒する。
 上級サーヴァント相手でも多少は戦えるが、やはり力の差は大きく、そのままでは敗北は必須。

【人物背景】
アメストリス軍の最高責任者で、国の実質的な決定権を持つ事実上の国家元首。
その正体は、『お父様』によって作られた7体目のホムンクルス『憤怒のラース』である。
元は普通の人間だったが、賢者の石を注入され、高エネルギーに耐えた末に誕生した人間ベースのホムンクルスであるため、
他のホムンクルスと違い再生能力を持たず、普通の人間と同じように歳を取る。
ホムンクルスであることに誇りを持っているが、時に自分達の想定以上の成果を生み出す人間を軽視はしていない。
完全なリアリストでありながら普段は好々爺然とした紳士といった面も持ち、
正体が露見するまでは、エドワード・エルリックもよく茶化されていた。

【方針】
一人のホムンクルス『憤怒のラース』として、様々な強敵との戦いを渇望する。
クリエイターの事は、人間でありながら、世界征服という野望のためにひたすら突き進むその思想に
ある程度の共感を覚えたので、聖杯戦争で協力する事に異議はない。


418 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:37:56 Kl0UM3gI0
【クラス捕捉】
クラス:製作者(クリエイター)
武器や装備など戦闘に携わる道具はもちろん、料理や魔法やロボット、未来永劫伝わる伝説といった多岐に渡る様々な物を、
自らの力と技能で作り上げる偉業を成し遂げた事で、英霊となったものに適応されるクラス。

所属するヒーローチームに対し、多岐に渡る『装備』を作り上げた、アイアンマン(トニー・スターク)@アベンジャーズ、
800年前に『欲望』の結晶たるコアメダルを作り出し、世界の王になろうとした、ガラ@劇場版仮面ライダーオーズ
魔法の探求に余念がなく、世界を支配する金色の魔王の力を借りる『禁呪』まで作り上げた天才魔道士、リナ・インバース@スレイヤーズ!
最上級の味覚と食材の声を聞く才能で数多くの食材を調理し、後世に残る『料理』を作り上げた、小松@トリコ!、
比類なき逆転魂と依頼人を信じる心で、無敗の弁護士という法曹界の『伝説』を作り上げた、成歩堂龍一@逆転裁判、
これらの人物が該当する可能性のあるクラス。

クラススキルとして、自らの得意とする環境を作り出す【陣地作成】にクラス補正がかかり、
陣地作成スキルで用意した環境で、聖杯戦争を戦う道具を用意する【製作】を持つ。
この製作スキルを用いて作り出されるものは、自らや他者に装備させる武具や継承可能な魔術、
配下として使役する使い魔や戦闘ロボットなど、自らの手足となる様々な装備である。

自在に武具を作り出し、ステータスを上げて戦闘を有利にすると思われがちだが、
基本の7クラスで呼ばれる適正がある英霊の場合、自身の戦闘能力は極端に下がってしまうリスクが存在する。
(リナの場合、どのクラスで呼ばれても魔力はB以上となるケースが多いが、クリエイターの場合、魔力はC以下までランクダウン。
他のステータスも、他サーヴァントと真正面からやりあえるレベルではなくなってしまう)
また、このクラスに当てはまる者は個々が製作に特化した英霊であるため、必ずしも戦闘が可能な英霊とは限らない。
(小松や成歩堂は戦う術を持たず、ワイリーも戦闘ロボットは作れるが自身の強化は出来ない)。

召喚にあたっては、召喚者が自分の能力と同じ特性を持っている(アイアンマンなら技術者、小松なら料理人など)、
もしくは、敵サーヴァントと自らの力で戦う覚悟を備え、クリエイターの生み出す装備によって戦える身体能力や知力を持つ者でなければ、
このクラスのサーヴァントを呼び寄せることはできない。
マスターとなるものが理由を問わずに何かを求め、マスター自らが秘めたスキルに応える英霊があればクリエイターとして降臨する。

自分をかばって消滅してしまった少女を前に力の無さを嘆き、『大事な人々を守る力を求めて』騎士団に入った、アスベル・ラント@テイルズオブグレイセス
影武者でしかなかった自身の運命に絶望し、唯一残った「剣」で『外道の如き戦いを求めた』、志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー
自身の生まれを呪い、作り上げた復讐のシナリオを実行するために『世界を滅ぼす道具と手段を求める』、ラウ・ル・クルーゼ@機動戦士ガンダムSEED
他人への迷惑もあらゆる犠牲も全く省みないほど、『作品の圧倒的なリアリティを求める』、岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険第4部

これらの人物ならば、それぞれの持つ力と合致する物を製作するクリエイターと出会うかもしれない


419 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/26(水) 23:41:22 Kl0UM3gI0
以上、投稿終了となります。
クリエイターのクラス補正文につきましては、当企画に投稿されたyy7mpGr1KA様のメンターの記載文を参考にさせていただきました。
この場を借りてではありますが、御礼を述べさせていただきます。

なお、タイトルですがシンプルに『キング・ブラッドレイ&クリエイター組』とさせていただきます。


420 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/08/26(水) 23:52:00 jFQiug7w0
投下します。


421 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/08/26(水) 23:53:07 jFQiug7w0

 気が付けば、世界が嘘で濡れていた。

 家に帰れば出迎えてくれる父と母が偽物。つまり嘘。
 学校で一緒に笑い合える友達や先生が紛い物。つまり嘘。
 魔法の街ユグドラシルという環境そのものが作り物。つまり嘘。
 本物の敵意と殺意を胸に、何食わぬ顔で忍び寄る誰か。つまり嘘。

 何時この身を脅かされるか分からない恐怖。嘘吐き達に囲まれた空間。
 こんなものと、彼はずっと闘っていたのだ。
 向けられる悪意に立ち向かうため、彼は仮面(ゼロ)で顔を覆った。嘘だらけの空間が、他でもない彼自身すら嘘吐きに変えてしまった。
 そうまでして、彼は大切なものを護ろうとしていたのだ。彼自身を、家族を、そして、この自分さえも。
 結局、彼の奮闘の甲斐なくこの命は既に終わってしまったのだけれど。それでも、嘘の中で本心(ほんとう)を貫こうとした彼の生き方、そんな彼にとっての真実(ほんとう)になろうとした自分の命。
 二人の最後には、嘘なんか無かったと信じている。

「セイバーさん。ここで私が死んだら、私ってどうなるんでしょうか」
「……このユグドラシルという街には、死者の魂魄が全く感知出来ない。現世とも尸魂界とも完全に切り離されているか、あるいは魂魄そのものが作り変えられているとしか思えん。故に仮にこの街で死んだら……恐らく、その魂は完全に行き場を失う、ことになるのだろう」
「じゃあ、聖杯を手に入れないと、私って」
「大丈夫だ。マスターを元いた場所に還すための方法くらい、私が探して見せる。約束だ」
「……はい」

 難しい顔で考え込む黒衣の少女は、自らをセイバーと名乗った。
 聖杯戦争という儀式を戦い抜くための自分の従者である彼女は、見た目こそ自分より華奢であるが、その表情には若々しさより落ち着きのようなものを感じる。
 死神。
 元々のセイバーの本職は世界の秩序を司る守護者であり、同時に死した魂を安住の地へと導く送り人であった。
 何十何百の年月を戦い、何千何万の魂を見届けた彼女が此処にいるのは、偏にただ自分の願いを叶えるためだ。
 でも、その願いはもう決まっている。死神が自分の前に現れたこと自体が、既に答えだった。

「……マスター。野暮なことを聞くが、本当に聖杯は要らないのか? 到底褒められた過程でないのは事実だが、それでも聖杯を得れば、マスターが今のまま再び現世で生き直すことだって出来る。誰に別れを告げることも」
「いいんです。誰かを傷付けるのってやっぱり怖いし、それに」
「それに?」
「多分、ルルが悲しむから」

 願いの根底にいるのは、大切な一人の少年。
 口にするだけで心が暖かくなって、それ故に少し切なくもなってしまう名前の響きが、今も愛おしい。

「……会いたい人にもう会えないのは、やっぱり……すごく寂しいですけど。でも、ルルは私を苦しい世界から遠ざけようとしてくれました。そんなルルの気持ちを私のせいで嘘にしちゃうのが、一番嫌なんです」
「そうか……すまないな、疑うようなことを言って。でも、マスターには悔いを残したまま旅立ってほしくなくてな」
「ずるいですよね。逃げる理由に他人を使うのって。でも、これが本心です」
「いいや。誰かを想っての考えなら私は決して笑わないし、誰にも笑わせるものか」

 恋をした。
 ヒロインはただの女子高生。ヒーローは世界に名を馳せる大悪人あるいは大英雄。
 誰がどう見ても釣り合ってない関係で、そして当のヒーローが釣り合わない関係のままであることを望んでいた。
 巻き込んだことを悔やんでくれた、嘘を吐いてまで平穏の中に送り返してくれた、その嘘が原因で拒まれてなお自分を護ろうと懸命になってくれた彼を、裏切りたくないとすぐに気付いた。
 想いの甲斐なく消え行く自分の生命のために彼が流した涙を見た時、哀しくなるほど嬉しくなってしまったから。
 だから、もう後悔しないと決めたのだ。たとえ、ちゃんと叶えられなかった恋だとしても。

「想っているんだな。今も、そのルルという人を」
「はい。また生まれ変わっても好きになろうって、決めた人ですから」

 守りたいものがあるとしたら、彼との思い出。
 沢山の時間を彼と共にした事実だけは、何があっても「ほんとう」としてずっと覚えていたい。
 何度生まれ変わっても、彼が今の彼でなくなっても、自分が今の自分でなくなっても。
 この想いを、絶対に無(ゼロ)になんかしない。


422 : シャーリー・フェネット&セイバー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/08/26(水) 23:54:45 jFQiug7w0

「分かった。マスターを尸魂界へ導くのは、既に役目を終えた私ではない別の何者かだろうが……その者にマスターを託すまで、私がマスターを護ると此処に誓おう。護廷十三隊と、朽木の名に懸けて」

 表情を引き締め直したセイバーが、こちらを真っ直ぐに見つめる。
 そのままそっと柔らかく、両手でこちらの右手を包み、高らかに告げるのは死神としての宣誓。
 そして、ふわりと微笑んだ。

「そして、一人の朽木ルキアとして祈ろう。シャーリー・フェネット。お前の魂の、安らぎを」
「……はい。よろしくお願いします」
「あと、そう畏まった話し方でなくてもいいぞ。対等な話し方の方が、私としてやりやすい」

 戦う力の無い自分を護ってくれる人がいてくれた。そのことが嬉しいから、お返しに何か出来ないと考える。
 でも、今の自分に出来ることは一つだけ。魔法のような力が無くても、恋というパワーがあれば出来ること。
 まず、あげよう。
 せめて今の内に、感謝の言葉を伝えよう。
 漲る気持ちを受け止めてくれた人へと向けて、胸いっぱいの喜びを。

「えっと……ありがとう、セイバー」

 私は、貴方に会えて本当に良かった。



【クラス】
セイバー

【真名】
朽木ルキア@BLEACH

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
・対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクでは魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

・騎乗:E
騎乗の才能。
死神には必要性の薄いスキルであるため、申し訳程度の補正が得られるEランクに収まっている。

【保有スキル】
・死神:B
霊力を持つ魂魄が斬魄刀を持ち、修練を重ねることで至る域。属性:悪の霊的存在に対してダメージが向上する。
今回セイバーは護廷十三隊・十三番隊副隊長着任当時の姿で再現されているため、ランクは高めに設定されている。

・心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

・千載一遇:A
出会い、拾われ、導かれ、救われ、そして生き抜いた死神の在り方。
「この人に会えて良かった」と心の底から思える誰かのために戦う時、あらゆる魔力消費が軽減され、少しでも長くこの世界に留まれるようになる。
原則としてセイバーの感情がスキル発動のトリガーとなっているが、令呪の消費を介すればセイバーのマスターの感情もまたトリガーとなり得る。


423 : シャーリー・フェネット&セイバー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/08/26(水) 23:55:49 jFQiug7w0

【宝具】
・『浅打』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:5人
王族特務の零番隊、二枚屋王悦が死神となる者の魂を元に鍛え上げた刀。
全ての死神が持つ斬魄刀の原型。
これと寝食を共にし、己が霊力を込めることで各人の斬魄刀固有の能力を獲得、真名解放に至る。

・『袖白雪』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:50人
斬魄刀の真名解放、その第一段階で始解と呼ばれる状態。
冷気を用いて技を繰り出す氷雪系の斬魄刀。「最も美しい」と称される斬魄刀であり、解放と同時に刀全てが純白になる。
この宝具の真の能力は、所有者自身の肉体を氷点以下にすること。
最大で絶対零度まで温度を下げることが可能であり、所有者の体に触れたものを全て凍てつかせる。
しかし温度を下げるには時間をかけねばならず、また下げるほどに活動限界時間が短くなる。

その他、修行によって編み出した下記の技を使用可能となる。
「初の舞・月白」…刀で円を描いた場所の天地全てを凍らせる。
「次の舞・白漣」…刀で地面を四ヶ所突き、そこから強大な凍気を一斉に雪崩のように放出して、敵を凍らせる。
「参の舞・白刀」…刀身の延長上に大気中の水分から形成した氷の刃で攻撃する。自在に刀身の長さを変えることも可能。

・『白霞罰』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100人
斬魄刀の真名解放、その第二段階で卍解と呼ばれる状態。
解放と同時にセイバーは髪飾りを付けて着物を纏った、美しい氷像のような姿となる。
凄まじい冷気を一瞬の内に周囲に放ち、射程範囲内にあるあらゆる対象を凍てつかせる。完全に凍てついた敵は氷の塵となって砕け散り、欠片すら残らない。
同時に前述の体組織崩壊の危険性の度合いも上がり、半歩でも卍解の解除のタイミングを誤れば命を落とす程になる。
つまり、たとえ拳一発でも敵からの反撃を身体に喰らえば、それだけで均衡が完全に崩れセイバーは自滅してしまう。
必殺の攻撃力を誇り、そして相手を殺し切れなければその瞬間に自分の死が確定する。文字通り、諸刃の剣と呼ぶべき宝具である。

【weapon】
・斬魄刀
宝具欄を参照。

・鬼道
死神が編み出した魔術の一種。攻撃用の破道、防御・束縛・伝達等の用途である縛道の二系統で構成される。
キャスターとしての現界ではないため、使用可能な上限は破道・縛道共に三十番台までとなっている。
セイバーは破道の中でも「白雷」「赤火砲」「蒼火墜」を多用していた。

【人物背景】
死した後、沢山の人達に愛されながら生きた死神。

【サーヴァントとしての願い】
恵まれた一生を遂げられたため、個人的な願いは特に無し。
故に願うならば、マスターの冥福を。



【マスター】
シャーリー・フェネット@コードギアス 反逆のルルーシュR2

【マスターとしての願い】
何度でも、ルルを好きになりたい。

【能力・技能】
特筆すべき点は無い。
戦争とは無縁の、ごく普通の人間である。

【人物背景】
一人の少年を恋い慕いながら生きて、そして死した少女。

【方針】
ユグドラシルからの解放。
ただし、聖杯戦争での優勝という手段は選ばない。


424 : 名無しさん :2015/08/26(水) 23:57:21 jFQiug7w0
以上で投下を終了します。

なお今回の朽木ルキアのステータス作成に当たっては、
「二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦」にて◆yy7mpGr1KA氏の作成した市丸ギンのステータスを参考とさせて頂きました。
氏にはこの場を借りてお礼申し上げます。


425 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:23:34 UAp5fly20
投下します


426 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:24:06 UAp5fly20



”彼”は、決してこの聖杯戦争には呼び出されない存在のはずだった。
果たすべき望みなど始めから持っておらず、そもそも参加する資格すらも本来なら有していなかった。


叶える願いに”彼”の意志は介在しない。
個人的な願いがないわけでもないが、それが許されるものでないのは理解しているし、より上位の命令系統に塗り潰されてしまう。
それは”彼”が生み出された目的であり、本能であり、運命としてのものだ。
その運命を、かつての”彼”は否定し、拒絶し、それでもなお縛りは解けず、苦悩を刻み……。
多くの仲間からの力を借り受けて、最後には解き放たれる事が出来た。
ある一人の人間―――”彼”にとっては、まぎれもなく―――との、永遠の離別を代償に。


地面に足をつけている視点よりも遥かな上。
今自分が生きている時代を超えた座(ばしょ)で、”彼”は世界に根差す大樹を俯瞰する。
聖杯戦争。
バトルロワイヤル。
選ばれたただ一人を決めるための戦い。
運命を変えられる報酬。
”彼”はかつて、そうした争いに身を投じた数々の命の一割れだった。

その世界には、不死の生命がいる。
生物には、その種の最初の一となった存在が必ずいる。
それらが生まれて初めて未来の扉は開かれ、無限の繰り返しの先にある繁栄を手にする。
参戦したのはそんな、地球にひしめく数多の種族の始祖。
始まりが故に終わりを持たない不死者たち。
逆説的に、種の代表という責務を背負っている彼らは、熾烈な生存競争を繰り広げた。
そして生き残った種族に与えられるのは、己が種の存続と繁栄。全ての命の取捨を自由にできる権利。

”彼”が認識した聖杯戦争は、その闘争と酷く似通っている。
次元の垣根を超えても、奪い合いは不変の法則なのか。胸に残された心に棘の痛みが刺さる。

歴史の旅路に脈々と紡がれていく命の河。それを絶やさない事こそ生物の絶対の使命。
多くに分かれ意識が固有化し、同胞と相争う人間達でさえ、そこにあるのは自分を残すという思いだ。
本能と呼ばれる、生命体の第一義。”彼”にはその、真っ当な機能が欠けていた。



”彼”は、英雄でもなければ悪霊でもない。
かといって、何一つ業績のない無辜の民ですらもない。
”彼”は選ばれなかったもの。
残されなかったもの。許されないもの。あってはいけないもの。
……だが世界にとって必要なもの。
星という巨大な生命が選択肢の一つとして備えた、滅びという名の機構(システム)。

”彼”は系統樹なき虚無(ゼロ)の不死者(アンデッド)。
秩序と混沌の輪廻を繋ぐ星の自浄作用。
それは生命体の矛盾でありながら、全ての生命体の最低限の権限。
”彼”が選ばれるのならば、「その時」が来たと判断し、全ての命を無に還す。
苦しみに喘ぐことなく速やかに滅び去るのもまた命の生業。
真の自由とは生ではなく、死にこそあると。天の星々は理解している。

そんな”彼”が仮にも英霊の座に置かれているのは。
規模こそ違えど、その在り方は神霊種と同様であるからだ。
不死であり生命の始祖である彼らは発生した時点で高位の存在だ。
こうして”彼”が外で眺めている今も、地上の自分は現実での穏やかな生活を過ごしている。



例え勝利しても、”彼”に与えられる報酬ははない。
戦いの果てに”彼”がたった一人生き残るという事実。それそのものが破滅の引き金となる。
全ての種をリセットさせる滅びの現象。”彼”が何を望もうがそれは速やかに実行される。
何せその為に生み出された。”彼”の在り方がそのまま一つの願いとして成立してしまっている。
下手をすれば、多世界にまで及ぶ破滅が起こりかねない可能性も孕んでいる。

だから”彼”は、戦わない。
かつての友のように、己を封殺して世界を守り続ける。
優勝すれば自動的に全人類、全生命を刈り取る死神の化身。
そんな兵器を求めるマスターなどまず存在しない。いたとしても受け入れはしない。
願いが永遠に叶わない事に”彼”は安堵し、微睡みの内に観測(しせん)を閉じようとして。


427 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:24:35 UAp5fly20





”―――――――――――――――――――――”




視界の片隅で、あてもなく流されるように夢遊する影が目に入る。
何かを追いかけるように、何かに追われるように迷い込んできた一人きりの少女。
次元を越えた境界での認識力は、少女の経歴を余すことなく伝えてきた。

彼女の物語は、とうに幕を閉じている。
利用されるだけ利用され、何の救いもなく、痛みだけの中で潰えてしまった人生。
現実を追い出され、精神が電脳に残された後でも、そこには孤独しかない。

そして今、少女はまた争いに巻き込まれようとしている。
戦う意思はおろか、戦うという行為自体も理解できていない幼い心で、凄惨な殺し合いに身を投じてしまっている。
戦火に焼かれ人の悪意に解体された少女は、夢の中でさえ戦火と悪意から逃れられない。
それこそが、彼女が何よりも逃げたかったものなのに。



何故こんなにも彼女に救いがないのか。
この末路を運が悪いと認めてしまっていいのか。
そして、気づいた自分は、このまま黙って見ているだけで、それでいいのか?



数々の疑問と感情が生まれ、答えが出されるよりも速く。
”彼”は”俺”となり、何もない場を駆けだしていた。



分かっていることだ。俺では彼女は救えない。
この呪われた運命の体が勝ち残る事は許されず、帰る場所のない少女は残る魂を焼き尽くして消えるのが確定している。
運命を変えることを願うという最低限の救済すら、自分達には与えられない。

ならせめて。最後まで傍にいよう。
もう二度と、誰にも看取られず一人きりで消えるような、悲しい終わりを迎えないように。
死神の忌み名を、その為に今こそ再び受け止めよう。あらゆる脅威から彼女を守り抜こう。
甘い夢から覚め、砂糖菓子のような体が砕け散るその時まで。
彼女の手を取り、涙を流してくれるような友人を見つける。
そんな小さな奇跡が起こるのを願いながら。



だから世界樹よ、俺を招け。彼女の許に連れていけ。
余分な権能(ちから)は捨ててやる。元から不要なものだ。
削ぎ落すだけ削ぎ落として、無理やりにでも規格に当てはめろ。
どれだけ厳しい罰が待ち受けようが足を止める理由にはならない。必ず抗ってみせる。





運命と戦う事を、俺は決して恐れない。




.


428 : ありす&バーサーカー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:25:48 UAp5fly20





 ■          ■




突如として巻き起こった突風。
夜に星が落ちてきたと思えるほどの眩い閃光。
マスターとして認識されてしまった少女の前に表れたサーヴァントは、恐怖の塊のような姿だった。

緑色の血が通った黒い全身。
頭蓋骨をそのまま嵌め込んだような顔は、苦悶を食いしばった表情のまま固まっている。
人らしい理性など一欠けらも感じさせない、狂戦士のクラスに相応しい容貌だ。

「あなたはだあれ?あたし(ありす)のお友達になってくれるの?」

そんな人ならざる異形を目にしてなお、マスターとなった少女は怯えの様子を一切見せずに語りかけた。
少女は聖杯戦争に参加したという自覚はない。ただ果てのない道を歩き回ってるうちに辿り着いただけだ。
しかし自覚はなくとも少女はマスターであり、目の前のサーヴァントとは互いを認識する契約で繋がっている。
そこから拙く情報を取得した少女は、この怪物が自分に危害を加える者ではないと理解していた。

「…………」

怪物……バーサーカーは答えない。
理性の喪失を対価に能力を底上げする基本スキルを持つサーヴァントは、対話の能力が失われている。
言わんとする事は理解できていても、実際に声を交わし合う事はこの二人には叶わない。

「そっか、お喋りできないのね。つまんないの。
 それにしてもこわい顔。まるでジャバウォックみたい。それともバンダースナッチかな?」

少女はやや不満そうに頬を膨らませる。子供は言葉の並べ合いに楽しみを見出す年頃だ。
心が通じ合えば言葉は不要、などという合理的思考には動かされない。

「…………」

無言のバーサーカーは、棘と突起だらけの凶器と見紛う腕を少女に差し出す。

「……?これ、くれるの?ありがとう!」

掌に握られたのは一束の札。
興味を惹かれた少女は無警戒に怪物の手を取って紙札を広げた。

「わあ、すてきなトランプ!」

札はトランプだった。五十二枚の絵札は色とりどりの模様が入っており、どれも統一して何かの生き物を象っているものだ。

「おもしろい絵がいっぱいあるわ。
 トランプ兵をあやつってるあなたは、ひょっとして女王さま?」

娯楽、遊戯に飢えていた少女はすぐさま札遊びに夢中になった。
札を合わせたり、並べたりして、即興の遊戯に没頭する。
既に不安の気持ちはない。少なくとも今、自分は一人ではない。その事実だけで、少女は一時の幸福の中にいた。

「あなたは、あたし(ありす)といっしょに遊んでくれるのね?あたし(ありす)のお友達をさがすのを手伝ってくれるのね?
 さっきね、あそこでいろんなひとたちが集まってたの。あたし(ありす)だけじゃ不安だったけど、あなたがいればへっちゃらね。
 あたし(ありす)ね、みんなでトランプ遊びがしたいな!みんなで兵隊をうばいあって、さいごにババを持ってたひとを引っこ抜くの!
 楽しいわ、きっと。あなたもそう思うでしょ?」

少女は歌う。くるくると、狂狂と。
蝶の羽を毟る気軽さで、殺し合いに臨む。夢に見た念願が、遂に叶うのだと喜んで。
その実感は少女にない。彼女はただ寂しさを埋めたくて遊びに誘うだけ。
ありすの遊びは断れない。頷けばかくれんぼ、横に振れば鬼ごっこに変わるだけ。
ネバーランドにオトナはいらない。エイエンのこどもの国から逃げ出そうとすれば、ハサミで首を切り落とされ棄てられる。



無邪気にはしゃいで駆けていく姿を、バーサーカーは黙して追う。
自意識を喪ったサーヴァントは、残った一心のみを果たすだけの機械に等しい。
ソレは自身のマスターの守護者であり、他のマスターやサーヴァントの死神であり、殺し屋であり、怪物であり、災厄であり、正体不明であり、
ジャバウォックであり、バンダースナッチであり、人である。





少女の夢を悪夢で終わらせない為、何者でもない怪物―――ジョーカーアンデッドは夜を往く。






.


429 : ありす&バーサーカー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:27:30 UAp5fly20


【クラス】
バーサーカー

【真名】
ジョーカーアンデッド@仮面ライダー剣

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具D

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:A
 パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
 ……のだが、理性を奪われたにも関わらず、ステータスの上昇は機能していない。

【保有スキル】
不死:A
 不死の生命であるアンデッドとしての特性。
 だがサーヴァントはあくまで分身であるためその特性は薄まっている。
 HPが0になっても、幸運判定で復活のチャンスを得る事が出来る。

無貌の切札:A
 ワイルド。
 いかなる生物の系統樹でもないという、ジョーカーのみの特性。
 特定の種族に適用する効果を一律無効化する。
 Aランク相当の変化スキルも有しているが、狂化のため使用不能。

軍勢生成:―
 眷属のダークローチを生み出すスキル。
 だが通常時にはまったく機能しない。
 この能力が発動するのは最後の一人となった時、即ち、聖杯戦争に優勝した時のみである。

【宝具】
『寂滅を廻す死札(ジョーカーエンド・マンティス)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 命を刈り取る形をしている手持ち式の鎌。
 地球上の全生命を死滅させるという、ジョーカーの攻撃本能が結晶化したもの。
 斬り付けた対象の、生物としての純粋度に応じて追加ダメージが加算される。
 ダメージが一定値を超えると即死判定がかかる。
 対象外となるのは、地球上の生物でないもの、生物の版図を越えてしまったもの、そもそも生物でないもの。

 本人の霊格が落ちているのと、ジョーカー本人がこの宝具を望まないため、ランクも下がっている。
 本来のランクはEX。効果が鎌でなくジョーカー自身に移り宝具名も変更、
 地球全土にまで殺害範囲が増大する。ちなみにどれほど広範囲でも種別は対人のまま。
 命を滅ぼしながら星は滅ぼさない、星の自浄作用であり自壊衝動の一つ。

【weapon】
『ラウズカード』
 五十二体の生物の始祖の不死者が封じられたカード。
 ありすの遊び道具として使われてる。というよりその為に無理やり持ち込んだ。
 内包する神秘はかなりもので、解析すれば魔術の代替えに使える……かもしれない。


430 : ありす&バーサーカー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:28:17 UAp5fly20

【人物背景】
 生物の生存本能が結集し、生き残った最後の一匹が地球上の生命を思いのままに操れる「万能の力」を手に入れられる戦い、バトルファイト。
 全ての生物の始祖たる不死者―――アンデッドが集う中で、ただ一体何者の始祖でもないイレギュラーな存在、それがジョーカーである。
 始祖がいない、系統樹がいないこの個体がバトルファイトに勝ち残ると、生物を残す必要がないと受理され、地球の全生命が死滅する仕掛けが施されている。
 ジョーカー自身もその本能に従い暴れ回る殺し屋のようなものであり、唯一自力でアンデッドを封印できる能力があるため、
 全てのアンデッド、全ての生命体から忌み嫌われるべき存在である。
 
 しかし、次代のバトルファイトが行われた現代で目覚めたジョーカーは、前回の勝利者として生き残っていたヒトの始祖、
 ヒューマンアンデッドを封印した際、内部からその心に働きかけられることで自身の運命に疑問を持つ。
 アンデッドとの戦いに巻き込まれ命を落とした男が、最後まで家族を思い自分に写真を託した事で疑問は更に表面化。
 ヒューマンアンデッドの姿に擬態し、疑問の答えを得るため男の家族の許へと身を寄せることになる。

 男の妻と娘、アンデッドの力を使い人を護る戦士達。
 多くの交流の中でジョーカーは人としての心を育んでいく。
 だがどれだけ人らしい感情を取得しても、その本質はアンデッド。それも愛する者さえ手にかける事になる最悪の死神。
 苦悩し、多くの協力を受けながらも遂にジョーカーが最後のアンデッドとなり、世界の滅びが始まってしまう。
 最大の友となった人間に自分を倒すよう願うジョーカー。友はしかし、それを拒絶する。
 掴んだ選択は誰も失わない方法。自らもヒトとしての体を捨てる事で友を孤独から救ったのだった。
 ……ヒトの生と、永遠の孤独を代償にして。

 不死であるアンデッドだが、生物の始祖という強大な神秘は発生した時点で英霊の座に登録されている。
 このサーヴァントはそこから召喚に応じた存在であり、英霊の本体と分身のサーヴァントとの関係のようなもの。
 現実の世界では、彼は今も人間として生き続けているだろう。

【サーヴァントとしての願い】
 孤独となった友を救いたいという願いはあるが、ジョーカーの存在意義である「命を刈り取る」という本能はそれを許さない。
 優勝した瞬間、聖杯は生命絶滅という機能を真っ先に願いとして受理されてしまうからだ。
 ジョーカーもまたそれをよしとせず、ただ傍観するのみでいた。

 だがユグドラシルに迷い込んだ少女、ありすを見つけ、彼女を守るべく多くの無理を通してサーヴァントとして召喚される。
 最たるものはバーサーカーのクラスになった事による、人の心の喪失だろう。これにより、相川始の名は消失している。
 月に来たアルクェイドや尾を切り離した玉藻の前を想像すると、どういう状態なのかが分かりやすいだろう。

 奪われた理性、削られたヒトの心で願うのは、ありすの救済だ。
 自分は決して勝ち残ってはいけないサーヴァントであり、ありすにもまた救われる術が見当たらない。
 聖杯戦争に参戦しながら、この組には優勝する望みがまったくない。
 なら最後に消えるその瞬間まで、彼女の傍らに寄り添いその孤独を癒そう。
 その思い出が涙に滲まぬように、彼女の望みを叶え続けよう。
 その先に一筋の光が差すことを信じて。

 運命に勝つ。
 それこそが、このサーヴァントの戦う意義である。

【基本戦術、方針、運用法】
 バーサーカーらしく、その戦法は暴れ回るしかない。ありすの指示に従うか、ありすに危機が迫った時のみ行動する。
 色々と制約がついて回ってるものの、その能力値は上級サーヴァントと遜色ない。 
 「無貌の切札」で概念系や干渉を限定する相手にも程度耐性があるため、正面切っての戦いではそうそう遅れを取らないだろう。
 宝具は対純粋生物特化というべきで、相手によっては確殺もあり得る。大半が人間のマスターの方が危険。 
 逆に天敵は機械系のサーヴァント。総じて生物に対して強い性能なので、人工物には相性がよろしくないらしい。
 マスターは魔力原としては規格外であるものの生存力という点では疑いなく最弱。攻めあぐねてるならそちらを狙うのもいい。
 だがその戦法はこのサーヴァントにとって火に油を注ぐ行為。
 一度でも狙いを向ければ、これ以上ない凄まじい形相で追い回されムッコロされること必至だろう。


431 : ありす&バーサーカー ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:28:53 UAp5fly20



【マスター】
ありす(本名不明)
【出展】@Fate/EXTRA
【性別】女性
【令呪】右手の甲。ハートをあしらった形。

【マスターとしての願い】
 なし。強いて言うのなら、友達を作って遊びたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
 空間転移、固有結界級の魔術を複数長期に渡って展開できる規格外の魔力を汲み上げられる。
 そのタネは、実体のないネットゴーストであるがゆえに肉体(脳)のリミッターが存在しないため。
 だがそれは回路が焼き切れるまでエンジンを回せるといっているようなもの。いずれは魂が燃え尽きる運命である。

【人物背景】
 白と水色の衣装を身に纏った、八歳ほどの少女。イギリス出身。
 第二次大戦末期に空襲で重傷を負い余命幾ばくもなかったが、その身に魔術回路があったことから実験体として無理やり延命させられる。
 数年の後肉体は死亡するが、精神は繋げられたネットに残り続け、電脳空間という夢の世界に旅立つことになる。
 "知らない人たちがいっぱいあつまって、たのしそうだったから" という理由だけで、聖杯戦争に参加してしまう。
 命を奪う行為の重さも、殺し合いの残酷さも理解しないまま。
 ありす自身、自分の状態については朧げながら理解しており、この夢が永遠でないことは分かっている。

【方針】
 ジャバウォック(バーサーカー)をお供にして友達探しの探検。見つけた人と一緒に遊びたい。
 鬼ごっこ、隠れんぼ、ババ抜き、遊びの種類は無限に尽きない。永遠に終わらない。
 
 余談だが、『鏡』『モンスター』の特徴から龍騎系ライダーとも相性がいい。


432 : ◆HOMU.DM5Ns :2015/08/28(金) 23:30:03 UAp5fly20
投下終了です。
拙作は「第二次二次聖杯戦争」にて投稿したものを流用しております


433 : 名無しさん :2015/08/29(土) 08:10:31 dI3uXIQc0
キング・ブラッドレイ&クリエイター組のDWNの効果だけどファラオマンとヤマトマンはワイリーナンバーズではないのでは?


434 : ◆V8Hc155UWA :2015/08/29(土) 14:46:37 qjk./QaU0
>>433
ご指摘ありがとうございます。
確かにロックマン4・6の8大ボスは、正確にはワイリーが製造したロボットではありませんが、
カプコン公式で「4と6のボスはワイリーの世界征服に利用された際に大幅に改造が施されたため、ワイリーナンバーズとしてカウントする」と公式案内があったようです。
実際に4のボスの1体『トートマン』は、ただの人口雨発生用の農作業ロボットだったのをワイリーが改造し、酸性雨でダメージを与えられるようにした設定だそうです。

今回はそちらを参考にさせていただき、DWNに使用させていただきました。


435 : 名無しさん :2015/08/29(土) 21:36:42 MMjjUwxQ0
投下します


436 : ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:37:36 MMjjUwxQ0

人が集まる街には活気があり、喧騒がある。
街が大きければ大きいほど、日々を健やかに暮らす人々がいる一方で、社会の裏側に身を落とす者も多くなる。
今夜もまた、そういったはみだし者たちが徒党を組んで行動を起こしていた。
営業時間を終えたスーパーの、そこだけただ一つ灯りのついた事務室に忍び寄り、閉店作業をしていた店長を羽交い締めにする。
手際よく猿轡をかませ、店長を担いで室内へ。これで外からは何が起こっているかわからない。

「おっ、見ろよ。金庫の鍵が開いてるぜ」
「番号聞き出す手間が省けたな。よし、金目のもん根こそぎ持って行くぞ」
「一応レジの中も確認しろ。釣り銭が残ってっかもしれねーからな」

覆面で顔を隠した少年たちは手慣れた様子で金庫の金をバッグに放り込み、レジをこじ開けにかかる。
縛られ猿轡をされた店長は震えながらその様子を見ている。もし抵抗すれば、彼らは何の躊躇もなく店長に暴行を働くだろう。
かといって、無抵抗だったとしても目撃者である自分を彼らが無傷で解放するとは思えない。
金は奪われ、面白半分に暴力を振るわれる。この後訪れる理不尽な未来を想像し、店長の意識はうっすらと遠のいていく。

「狼藉はそこまでです! それ以上の無法は許しませんよ!」

そのとき響いた凛とした声が、かろうじて店長の意識を繋ぎ止めた。
うっすら目を開くと――信じがたいことだが――厳重にロックしたはずのシャッターが外側からゆっくりと持ち上げられていく。
やがて現れたのは、見目麗しい長い金髪の可憐な少女だった。

「今日あたり来ると思って張り込んでいた甲斐がありましたね、マスター!」
「ほっほっほ。お手柄ですよ、リリィさん。あなたの勘は見事なものですねえ」

リリィと呼ばれた少女の後ろから出てきたのは、杖をついて着物を着た老人だ。
店長はこの二人に見覚えがあった。そう、ちょうど昼間に店を訪れた客だったはずだ。
足の悪い祖父を気遣う、異国の血が入った孫。少女があまりにも整った顔立ちをしていたのでよく覚えている。
しかしその二人が何故、今この状況で現れたのだろうか?

「んだぁ、テメーら。どうやって入ってきやがった!」
「サツじゃねえな。まさか魔術師か!?」

突如現れた少女と老人に、押し入り強盗たちが色めき立つ。
この街では警察以上に力を持つのが魔術師だ。暴力に慣れた少年たちといえども、魔術師には到底敵うはずがない。


437 : ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:38:05 MMjjUwxQ0

「いえいえ、違いますよ。私は魔術など使えませんよ」
「魔術師じゃないだとぉ? だったら一体何しに来やがった!」
「脅かしやがって! ジジイ、こっから無事に帰れると思うなよ!」
「へへ、よく見りゃそっちのガキはマブいじゃんか。おい、ガキの顔は殴んなよ」

にこやかに訂正した老人に猛然と少年たちが噛み付く。
彼らは弱者に強く強者に弱い。自分より弱いと見るや勢いづき、気が大きくなる。
少女に下卑た視線を投げた少年が、その細い肩を掴もうとし――

「何をするのですか、無礼者!」

少年は宙を舞った。
くるくると回転し――比喩ではなく、本当に三回転ほどして――少年は壁に叩きつけられた。
ぐえっ、とカエルが潰れたような声が少年の喉から漏れる。
自分たちの頭上を放り投げられた少年の醜態を呆然と見送った残りの少年たちは、それを成した張本人である少女――リリィを慌てて睨みつける。

「ざ……ざっけんなこらー!」
「んだってめっこらー!」

己を鼓舞するような少年たちの罵声を、リリィと老人は柳に風とばかりに受け流す。
殺気立った様子で周囲を取り囲む少年たちを一瞥し、老人の眼が細められる。
あまりこの状況を長引かせては、拘束されている店長や店に被害が出かねない。

「致し方ありませんな。リリィさん。少し懲らしめてやりなさい」
「了解です、マスター!」

そして、地面に転がった店長の目の前で、少女は一つの嵐と化した。
襲いかかってきた少年たちを千切っては投げ千切っては投げ。
軽く振った手に殴打された少年は一瞬で意識を刈り取られ、ボロクズめいて崩れ落ちる。
フルスイングされた鉄パイプを平手であっさりとキャッチし、その手を引くことで加害者の少年を軽々と放り投げる。
奪い取った鉄パイプを樹の枝のように振り回し、少年たちの腹部を突いて悶絶させる。
ものの一分もしない間に少年たちはみな地面を舐めることになった。

「ば……バケモンか……」
「いてぇ……いてぇよ……」
「リリィさん、その辺りでもういいでしょう」
「はいっ、マスターがそうおっしゃるなら」


438 : ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:39:07 MMjjUwxQ0

縛られた店長を解放しながらその様子を見ていた老人が、少女を呼び止める。リリィは息一つ乱した様子もなくその指示に従った。
パンパンとリリィが立ち回りの間についた埃を払う。

「な……何者なんだよ、おまえら……」
「魔術師でもないくせに、強すぎだろ……」
「た、助けてくださってありがとうございます。でもあなた達は一体……?」

少年だけでなく店長も彼らの正体がわからない。
その様子を察したリリィは懐からゴソゴソと紙束を取り出した。
店長の目の前に突き付けられたその冊子には、老人の顔が印刷されている。
リリィは彼らの注目を自分に集め、次いで後ろに控える老人を指し示して曰く。

「控えなさい! こちらのお方をどなたと心得るのです!」
「え……や、やっぱ魔術師なのか!?」
「違います! こちらにおわすはユグドラシル町内会の副会長、水戸光圀翁でございますよ!
 あなたたちは人生の先達への敬意が足りません! お年寄りには親切になさい!」

町内会発行の役員顔写真が印刷された冊子を手に、鼻息も荒く高々と宣言するリリィの顔は自信に満ち満ちている。
しかしその熱意は、喝破された少年たちのみならず転がされている店長にも通じるものではなかった。

「町内会の……副会長?」
「それって……」
「やっぱただのジジイじゃねーか。ふざけんなよ、クソが……」

自慢気に名乗ったリリィは目論見が果たせなかったと知り、しょんぼりと老人――光圀翁に向き直る。

「ごめんなさいマスター……私、マスターのご威光を彼らに伝えられませんでした」
「いいのですよリリィさん。さて店主さん、早く同心……いえ、警吏をお呼びなさい。
 命まで取るのはいささか酷でしょう。彼らの処遇は司直の手に委ねるがよろしい」

光圀翁に促され、店長は警察を呼ぶ。
そして改めて老人と少女に話を聞こうと振り返ったとき、もうそこに二人の姿はなかった。
残されたのは、店長と床に転がる少年たちだけ。
少女に叩きのめされ動けそうにない少年たちを前に、店長は警察にどう説明したものかと頭を悩ませるのだった。


439 : ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:39:45 MMjjUwxQ0





「これでこの地区の問題はほぼ解決、ですね。次はどうしましょうか、マスター?」
「そうですねえ。明日は別の地区に行ってみましょうか。私たちの助けを必要としている人がいるかもしれません」

スーパーから辞した後、リリィと光圀は家路につく。
彼らに割り当てられた家は、一般住宅街でもかなり古めかしい日本風の屋敷である。
光圀の歩調に合わせゆっくりと歩くリリィは、こうして見れば市井の童女と何ら変わりがない。
生まれ育った日の本の国には有り得ない髪色をしているが、それとて海の向こうにはそういう人もいると光圀は理解している。
こうして時間が空いたときに思い出すのは、決まって少女と初めて会った時のことだ。

――初めまして、マスター。まだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィとお呼びください。これから、末永くよろしくお願いします。

街並み、人、言葉。
江戸時代に生きた光圀には全てが新しすぎるこの魔術都市で、状況を理解できずにいた光圀に話しかけてきた異国の少女。
それがサーヴァントなる尋常ならざる力を持った戦士であると、誰が想像できようか。

――あ、あの、マスター。大丈夫ですか? はっ、なにか私に至らぬところがございましたか!?

もしやマスターの不興を買ったのかと慌てる少女を前に、光圀は頭に浮かび上がってきた知識を整理するのに忙しく。
落ち着いて話ができる頃には少女はすっかり小さくなってしまっていた。
状況もわからぬ、少女の素性も知らぬ。それでもこうして所在なさげに立ち尽くす少女を見てしまっては、見て見ぬふりもできない。
光圀は少女に遅まきながらも挨拶をし、ゆっくりと時間をかけてお互いのことを話し合ったのだった。

「しかし……その、ますたあ、というのは慣れませんねえ、リリィさん」
「そ、そうですか? ですが、マスターをマスター以外に何とお呼びすればよいのか」
「光圀、で構いませんよ?」
「いえ、マスターを呼び捨てるなど畏れ多いです! ううん、ええと……」

うんうんと唸って悩む少女、リリィ。彼女の真名は、アルトリア・ペンドラゴン。
名乗り合った時に告げられていたものの、光圀は彼女をリリィと呼んでいた。
真名はみだりに唱えるものでなし、また横文字に馴染みのない光圀にはセイバーよりもリリィの方が短いため言いやすかった。
そしてリリィと連れ立って図書館へ趣き、光圀の時代から未来と思しき現代の知識を仕入れる。
鎖国中の江戸時代にあって、光圀は海外の文化に強い興味があった。
そのため馴染みのない未知の文化にも積極的に触れ、老いてなお学ぶべきこと多しと大いに情報を貪っていく。
その中に、傍らの少女の半生を描いた書物もあった。


440 : 水戸黄門&セイバー・リリィ ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:40:33 MMjjUwxQ0

――私はまだ、良き王になるべく修行中の身です。その結果がどうなるか、いま知りたくはないのです。

未熟なる身で自らの来歴を読むのは気が引けるということで、リリィはその書物を読んでいない。
どうも彼女は通常のサーヴァントと異なるらしく、死後ではなく生きている状態のままサーヴァントになったという。

「お……お爺さま、というのはどうでしょうか?」
「ほっほっほ、いいですねえ。あなたのような可愛らしい孫なら大歓迎ですよ」
「も、もうマスター! ……いえ、お爺さま! からかわないでください!」

聖杯に望む願いは特にない。あれば便利、という程度でしかない、と少女は言い切った。
願いを成すのは自らの手で。容易く得られる奇跡で人は救えない――そう理想を語る少女の目に曇りはない。
リリィに願いはないが、しかし困っている人を見過ごすこともできない。
それは光圀のように望まず聖杯戦争に巻き込まれたマスターも例外ではない。
よって、リリィの当面の願いは聖杯戦争を終わらせること。それも、犠牲を出すことなく、だ。
殺し合いの場で掲げるには青く危うい理想。だがそれは、諸国を漫遊し悪漢を打ち倒してきた光圀――水戸黄門にも望むところである。

「こうして人々の悩みを解決していれば、いずれ我々と同じマスターとサーヴァントに行き当たります。
 それが敵意のない、私たちと志を同じくする人を探しましょうか」
「はい、でももし私たちと違う、聖杯を欲する人であったなら、その時は私にお任せ下さい。
 マス……おじいさまの身は私が守りますので!」
「ええ、期待していますよリリィさん」

仲の良い祖父と孫。
傍目にはそうとしか見えない二人は、理不尽に苦しめられる人々を救ってきたという一点で重なる。
葵紋が彩る花の旅路は、こうして静かに始まった。



【マスター】
 水戸光圀@パナソニックドラマシアター 水戸黄門
【マスターの願い】
 聖杯戦争を犠牲を出さずに終わらせる。
【weapon】
 杖。
【能力・技能】
 杖術、洞察力に優れる。
【人物背景】
 水戸藩2代目藩主。隠居後、身分を隠して諸国漫遊という名目の世直しの旅に出る。
 あっちこっちに出向いては権力者の不正を発見、虐げられる町人や町娘の窮状を見過ごさず事態を制圧する。
 権力者を糾弾した際はだいたい戦闘になるが、荒事はお付きの佐々木助三郎(助さん)、渥美格之進(格さん)などの家臣に任せている。
 とはいえ若い頃に武道を修めているためか、ご隠居本人も相当強い。杖で真剣を持った侍と渡り合うのもよくあること。


441 : 水戸黄門&セイバー・リリィ ◆QEkrT.JDiY :2015/08/29(土) 21:41:07 MMjjUwxQ0

【クラス】
 セイバー(セイバー・リリィ)
【真名】
 アルトリア・ペンドラゴン@Fate/Grand Order
【パラメーター】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:B
【属性】
 秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
 魔術に対する抵抗力。魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。Cランクでは野獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。
【保有スキル】
直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
 しかし、勘がいいのも考え物。とにかく目に付く人の悩みを敏感に感じ取ってしまうため、会う人会う人、つい手助けをしてしまう事に。
魔力放出:A
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
花の旅路:EX
 後年の騎士王と呼ばれる時代と比べ、まだまだ半人前の騎士。全体的に能力は低下しているが、その分マスターに要求する魔力負担も軽い。
 宝具を使わない通常戦闘に限り、本来の三分の一の魔力供給で活動できる。
 また、生きたまま聖杯と契約して召喚されているので、霊体化はできない。
【宝具】
『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』
ランク:B(条件付でA+) 種別:対人宝具
 カリバーン。本来は王を選定するための剣。
 対人宝具の『対人』は敵ではなく、これから所有するものに向けられたもの。
 その持ち主が王として正しく、また完成した時、その威力は聖剣に相応しいものとなる。
【weapon】
 『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』
【人物背景】
 選定の剣カリバーンを抜き、王としての道を歩み始めたばかりのアルトリアの姿。
 まだまだ半人前の少女騎士。その姿は愛らしい百合のようであり、また、その瞳も輝かしい希望に満ちている。
 多くのことを経験するために国中を渡り歩き、多くの冒険譚を残した。彼女に助けられた者はその華やかさから騎士姫と称えたらしい。

 理想の王になるため、日々研鑽する浪漫の騎士。
 まだ半人前なので少女らしさを払拭できず、その心も夢と希望で満ちている。
 諸国漫遊時のパーティーは義兄であるサー・ケイとお付きの魔術師マーリンで、たいていアルトリアのお節介から始まり、マーリンのひやかしで大事になり、ケイが尻ぬぐいをするというものだった。

 神秘が薄れ破滅に向かうブリテン島を救うために生まれた運命の子。
 先代王ウーサーと魔術師マーリンの企てによって作られた『竜の化身』。ブリテンを守る赤い竜に例えられるのはこの為。
 幻想種として最高位に属する竜の心臓を持ち、体内で生成できる魔力量は他の英霊を圧倒する。

 カリバーンとエクスカリバーは別の聖剣である。カリバーンはいわば王権、アーサー王を王として育てるためのものだった。
 本来、カリバーンは式典用のもの。
 これを武器として用い、真名を解放すればエクスカリバーと同規模の火力を発揮するが、その刀身はアルトリアの魔力に耐えられずに崩壊するだろう。


442 : 名無しさん :2015/08/29(土) 21:41:58 MMjjUwxQ0
投下終了です。まだ荒んでなかった時代。


443 : 名無しさん :2015/08/31(月) 14:49:30 ff7gvTe60
投下おつー
グラオやってなかったけど荒んでなかった頃のセイバーってこんなにも可愛いのか!
水戸黄門アーサー王コンビがよもやこんなに微笑ましいおじいちゃんと孫娘になるとは……w


444 : ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:04:17 em5wCgCs0
投下します


445 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:05:44 em5wCgCs0

「お先に失礼します!」

ここは歓楽街にあるコーヒーショップ。

つい先ほどまでは満員の客で店内は賑やかだったが、客のピークが過ぎたのか人も疎らだ。
そんな店内に少年の一際大きな声が響き渡る。

「お疲れさん。最近物騒だから気をつけて帰れよ」

少年の名前はジョセフ・カーター・ジョーンズ。
周囲の人間からはジョーイと呼ばれている。


ジョーイはこの魔法都市ユグドラシルで生活する13際の少年である。
学校に行く傍ら家計の手助けとしてコーヒーショップでバイトをしている。
本来なら定時に上がり家路に着くはずだったが店がいつも以上に賑わい2時間ばかり残業することになってしまった。

「急がないと!」

店を出たジョーイは包装された箱を抱えながら走り出す。
今日はジョーイの友人リナの誕生日パーティの日でそれに招待されていた。
リナにはバイトがあるので途中から参加するとは伝えていたがこんな日に限って残業する羽目になるとは。
このままでは誕生日会は終わっているかもしれない。
本当なら定時に帰りたかったが、あの店の混雑状況で自分が居なくなれば店は大混乱になるのは目に見えていた。

自分の不運を呪いながら夜の歓楽街を駆ける。
息を弾ませ額に汗をかきながら走るジョーイだが突然立ち止まった。

目の前にあるのは左右の分かれ道。
どちらも住宅街に向かう道で、左の道は一度使っただけでいつもなら右の道を迷わず進む。
だがジョーイは悩んでいた。

左の道は右の道と比べ半分の時間で住宅街にたどり着ける。
だがそこは所謂裏路地と呼ばれる場所であり、怪しい集団がたむろしておりそういった輩以外はまず通らない。
一度この道を通った際に因縁をつけられたことがあり全速力で逃げて難を逃れたことがあった。
その時の光景を思い出して思わず身震いする。
あんな思いは二度としたくない。
だが今は一分一秒が惜しい。

何よりリナに約束をした。必ず行くと。
約束を破るわけにはいかない。
意を決してジョーイは左の道に向って走り出した。

周囲は街灯もなく建物の窓ガラスもひび割れていた。
道端には独り言をブツブツ言っている不審者や泥酔者が横たわり、そこらじゅうに吐瀉物がまき散らされている。
ジョーイはその光景を見てしまい思わず顔をしかめる。

まるでこの街の汚い部分をすべて押し込んだようだ。
平和だと思っていたこの街にこんな荒れている場所があることを再認識して複雑な感情を抱いていた。


446 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:06:25 em5wCgCs0

だがそんな気持ちを押し殺しジョーイは横たわる人々を横目に見ながら駆ける。

特にアクシデントにあうこともなく道を進み、路地の出口目前までたどり着く。
前方にある角を右に曲がればこの路地を抜けられるはずだった。
だがジョーイは突如急停止する。
自分でも何故止まったのかわからない。
だがこの角を曲がってはいけないと体の全細胞が叫んでいるようだ。
曲がった先に何があるのか?物影に隠れながら恐る恐る覗く。

覗いた先に居た人物は全身黒色の甲冑を身に纏い、手には鎧と同じ黒色の槍を携えている
甲冑を纏った人物は倒れ込んでいる女性の心臓に槍を突き刺す。
するとどうだろう。女性は粒子状になって跡形もなく消えた。

この異様な光景を見たジョーイはすべてを思い出した。

聖杯戦争について、そしてこの魔法都市での偽りの記憶を。
あの黒の甲冑の男はサーヴァント。英霊と呼ばれる人間を越えた存在。
そして槍を持っていることから恐らくランサーだろう。

ジョーイが真っ先に考えたのはこの場から離脱することだった。
サーヴァントは現われていないがマスターとなった自分があのランサーに見つかったら間違いなく殺される。逃げるべきだ。
だが身体はランサーから逃れるための動作を一切取ろうとしない。

ジョーイは気づいてしまった。
ランサーの周りにはもう一人誰かがいることを。
理由はわからないがあの人物は間違いなくランサーに殺される。

――――あの人を助けなきゃ

どうやって!?
今はヒーローマンもいない只の子供だ。
ヒーローマンがいない自分がサーヴァント相手に何ができる?
それにあれはNPCで本当の人間ではない只の電子情報。
見捨てたって問題ない……

「こっちだランサー!」

ジョーイは角から飛び出し叫ぶ。
身体はランサーに対して恐怖を抱いていた。今すぐにも逃げたかった。
だがジョーイの心が叫ぶ。
ヒーローならあの人を見捨てはいけないと
そしてその意志が恐怖に打ち勝ち、人を助けるために自分を囮にすることを選んだ。

ジョーイの存在に気付いたランサーは弾丸のような速さで元に駆け寄る。

「小僧。何故こんな行動をとった?サーヴァントはどうした?」

マスターであるなら生かしておく理由はない。
心臓に槍を突き刺せばすぐにでも殺せる。だがランサーは手を止める。
ランサーはジョーイが自分を呼び掛けるという愚かな行動を何故とったのか知りたかった。

目の前に現れた英霊のオーラに身がすくむ。
依然戦った地球外生命体スクラッグと対してもこんなことはなかった。
これがサーヴァント。
ジョーイは体の震えを抑えながら質問に答える。


447 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:06:59 em5wCgCs0

ヒーローは……きゃ……」
「何だ?聞こえんぞ」
「ヒーローは困っている人を助けなきゃいけないんだ」

ジョーイはヒーローに憧れていた。
正確に言えば多くの人の命を救った父親というヒーローに憧れていた。
そしてヒーローマンという最高のパートナーと出会い、共に困難に立ち向かい世界を救った。
紛れもなくヒーローと言っていいだろう。

だがジョーイがヒーローなのは世界を救ったからではない。
弱き人を助けようとする優しさ、人を助ける為にどんな悪にでも立ち向かう勇気と正義感。
それを心に宿しているからこそヒーローなのだ。

ヒーローなら今にも殺されそうな人は見捨てない。
リナやサイは自分のことをヒーローと言ってくれた。
だから自分は助けにいく!
何より憧れた父も助けに行くはずだ!

「正義の味方気取りでNPCを助けようとするか、だが無意味だ。
お前を殺して、あそこに転がっているNPCの魂は俺が喰らう」

ランサーはジョーイに対して侮蔑の視線を向けながら告げる。

「サーヴァントを連れずに俺に立ち向かう。お前の行動は只の自殺だ
覚えとけ小僧。力が無ければ正義を語ることはできない。
力がないものは正義の味方にはなれない」

その言葉を聞いた瞬間目を開き怒りの視線をランサーに向けて声を荒げた


「違う……力が有るからヒーローなんじゃない……優しさや正義感……心に愛が有るからヒーローなんだ!」

ジョーイの父は事故にあった仲間を助ける為に命を落とした。
もしランサーの言う通りだとしたら父は力が無かったら命を落としたことになる。
それは父がヒーローではないと言っているようなものだ!
ジョーイはランサーの言葉を認めるわけにいかない!

「自分の無力さを呪いながら死ね。正義の味方」

ランサーはジョーイの心臓に槍を向け貫かんとする。

サーヴァントを連れずにくるなど自殺するようなものだと言った。
まさしくその通りだ。


そんな状態でNPCを助けるために立ち向かうなど自己犠牲の捨て鉢でしかない。
だがそんな心でランサーの前に出たのではない。
ジョーイは信じていた。

サーヴァントは縁のある触媒が無ければ、自分の精神性と類似性があるものが召喚される。
触媒など持っていないので自分と類似性があるサーヴァントが召喚されるだろう。
そうだとしたら例えNPCでもか弱き人を見捨てることはしない。
弱者を踏みにじろうとするランサーを倒すために共に戦ってくれるサーヴァントが来るはずだと。

だが現実は非常だった。
数秒で自分は死ぬだろう。
槍で自分の心臓を貫かれる痛みを想像し歯を食いしばり目をつぶる。

しかし痛みはいつまで経っても訪れない。
恐る恐る目を開けると目の前には男が立っていた。
その男はレスリングシューズと青のパンツだけを身につけていた。
まるで格闘家かプロレスラーか何かのようだ。
その鍛え抜かれた大きな背中は自分と共に戦った最高の相棒ヒーローマン。
そして父の姿を思い出す。そして確信した。
あれが自分のサーヴァントだ。


448 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:08:32 em5wCgCs0

「大丈夫かマスター?」
「えっ?あっはい。大丈夫です」

急に声をかけられたので返事がしどろもどろになってしまう。
しかしこのサーヴァントと居ると不思議と安心できる。
さきほどまで感じていた死への恐怖がまるで無い。
本当にヒーローマンが目の前にいるようだ。
ジョーイはヒーローマンと過ごした日々を思い出していた。

「武器を持たず戦う。お前のクラスは何だ」

ジョーイから数メートル離れているランサーが怪訝そうに尋ねる。

先ほどまでは目と鼻の先に居たのに何故そんな距離まで離れているのか疑問だったがそれはすぐに解決した。
周囲に漂う焦げ臭い匂いとコンクリートに引かれた黒い線。
あれはランサーが強大な衝撃に耐えるために足を踏ん張ったことにより生じたものだ。
恐らく自分のサーヴァントがランサーを攻撃したのだろう。

「レスラーだ」

「エクストラクラスか」

それを聞くとランサーは槍を構えた。すると周囲の剣呑な空気に変わる。

「マスター、後ろに下がってくれ」

レスラーはファイティングポーズを取りながらジョーイに後ろに下がるように促す。
その顔は険しいものだった。

ジョーイをレスラーに言われた通り数十メートル後ろに下がり二体のサーヴァントの様子を見守る。
これか英霊同士の戦いが始まる。
緊張のせいか無意識に両手は握りこぶしを作っていた。

しかしジョーイの予想とは裏腹にお互い構えを取ったまま動かない。
いや動けなかった。
お互いに今対峙している相手は強敵であり、少しでも緩んだ心と技で攻撃すればやられてしまうと肌で感じ取っていた。

お互い十数メートルの間合いを取ったまま、にらみ合いは十秒続く。
動かない。
二十秒経過。まだ動かない。

「はっ!」

先に動いたのはランサー。力を足裏にためて一気に爆発させレスラーに向って突進する。
ランサーの踏込に耐えられなかったのかコンクリートが抉れた。

突進のエネルギーを全て槍に伝え渾身の一撃を放つ。狙いは心臓。
その一撃は必殺。仮に急所を外しても腕に受ければ腕は吹きとび、足に受ければ足は粉々になるだろう。
ランサーにかかれば只の突きも恐るべき威力となる。

だがレスラーはパーリングの要領で突きの軌道を逸らした。
恐るべき威力が備わったランサーの突きの軌道を変化させることは並大抵の腕力と技術では不可能だ。
この動作だけでレスラーの実力が伺える。

突きを躱されたランサーだがこれはある意味予想していた。この一撃で片がつくような弱敵であるわけがないとはわかっている。
次にランサーが選んだ攻撃は連突。

相手の急所、肩や太ももや手など急所以外の攻撃を織り交ぜた突きの雨を浴びせる。
だがレスラーはすべてをパーリングで防ぐ。
しかしランサーは諦めることなく突きを続けその速度は加速度的に上昇する。
だがレスラーも連突を防ぎ続ける。

一方は足を止め突き続け、一方は足を止め防ぎ続ける。
二人の戦いは均衡状態に入ったといっていいだろう。
だがその均衡は突如崩れた。

「くっ!」

ランサーの突きがレスラーの肩の肉を少しばかり抉る。

普通の突きなら対応できるはずだったが、ランサーの突きが曲がった。
直線の突きに目を慣らしてから曲線の突き。
この変化にレスラーは対応できなかった。

ここが勝機とみたかランサーの攻撃は熾烈さを増す。
突きは曲線を描きありとあらゆる角度からレスラーに襲い掛かる。
急所への一撃は防ぐかそれ以外の攻撃はどうしても防ぎきれない。

身体は徐々に削られていきそしてレスラーの身体を血で染め上げる。
そしてレスラーは蓄積したダメージのせいか膝をついた。

「トドメだ!」

ランサーはトドメの一撃を放つ為に力を込める。
今のレスラーにはこの一撃を防ぐことができない。

心臓に渾身の一撃を放とうしたその時。

「がんばれ!レスラー!」


449 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:09:20 em5wCgCs0

その声を聞いた瞬間、気づけばランサーは全力でバックステップをして距離をとった。
何故自分でもこのような行動を取っていたのか分からない。
だがあのまま突きを放てはならないと全細胞が警鐘を鳴らしていたのだ。

「がんばれ!がんばれ!レスラー」

ジョーイは涙を流しながらレスラーに声援を送る。
レスラーが血みどろになり膝をついた時ジョーイはある光景を思い出していた。

共に戦っていたヒーローマンが傷つき壊れていく姿。
ジョーイはヒーローマンが傷つくたびに胸が締め付けられる思いだった。
そのたびに自分の無力を呪っていた。
そして戦う力を得てヒーローマンを守れるようになった時は心の底から嬉しかった。
これでヒーローマンを守れる。友達を守れる。

でも今は違う。
戦う力がない自分はレスラーが傷つく姿を見ているしかない。

それが情けなくて、涙が出るほど悔しかった。
レスラーの為に何かできることがないのか?
そして取った行動がレスラーにエールを送ることだった。

この行動はレスラーにとって何の意味のないことかもしれない。
ただ自分の声援が少しでもレスラーに助けになれば、例え喉が潰れてもかまわない!


レスラーに自分の想いを届けるために力の限り叫んだ。

「マスター……」

レスラーはジョーイのエールを受けながら立ち上がりファイティングポーズをとる。
ジョーイのエール、あれは心の底から自分を心配してくれている声援だ。
声援を聞くと不思議と闘志が漲ってくる。力が湧きあがる。

この感覚は生前自分が窮地に陥った時に仲間が声援を送ってくれた時のようだ。

立ち上がってくるレスラーを見たランサーは驚きを隠せなかった。
急所にはあたっていないものも体は自分の槍で削られ満身創痍のはず。
なのにレスラーから感じる力強さは何だ?
その様子を見て宝具を使うことを決める
聖杯戦争は始まったばかりで宝具を使うことは避けたかった。
この場から撤退することも考えたがその考えは却下だ。
あのサーヴァントをこのまま逃したら今後の戦いで大きな障害になるだろうという漠然とした予感があった。

二人のサーヴァントを照らしていた月明かりが雲に隠れたのが合図だった。
ランサーはレスラーに向って突撃する。
そのスピードは最初の突撃より勝っていた。
一方レスラーはその場から動かない。ランサーの攻撃を迎え撃つもりだ。

―――10メートル、9メートル、8メートル。

闘争心ではやる気持ちを抑え込む。この宝具が最も威力が発揮する間合いで使わなければあのサーヴァントは倒せない。

――――7メートル、6メートル、5メートル。

まだだ。まだ早い。

「今だ!」

己の宝具が最も威力を発揮する間合いに入った時に宝具を使用した。

ランサーの宝具は技が昇華したもの。
すべての敵を穿つために生涯をかけて磨き上げた究極の技。
その突きは多重次元屈折現象により三発の突きを“同時”に放つ恐るべき魔技。
この技を使い討ち取れなかった敵は生前にはいなかった。
まさに必殺。
三発の突きは吸い込まれるようにレスラーの急所に向かっていく。
それを見た瞬間ランサーは勝利を確信した。


450 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:10:02 em5wCgCs0

「なっ!?」

ランサーは声をあげた。
敵を討ち取った喜びの声では無い。困惑の声だった。
レスラーが生きている!?
槍は急所に確かに刺さった。だが急所を貫いていない!
レスラーの肉体の耐久力がランサーの槍の攻撃力を勝ったのだ!

しかし急所を貫いていないが並みのサーヴァントならとっくに死んでいる重傷。
だがレスラーはそれを意に介さずランサーの元に飛び込んだ。
飛び込んでからの拳の一撃。
普段のランサーなら避けることはできただろう。
だが己の最高の技が破られたショックで動揺していた。
その結果易々とレスラーの一撃を顔面に受けてしまう。


ランサーは兜を身に纏っている。並みの一撃ならダメージにならない。
だがレスラーの一撃は並みでは無かった。
その一撃はランサーの脳内を揺さぶり一瞬意識を飛ばす。

その隙を見逃すレスラーではなかった。

速射砲のようなパンチがランサーに襲い掛かる。
ランサーは反撃または防御しようとするが、嵐のようなパンチの前にはそれは叶わない。
サンドバックのように一方的に殴られレスラーのパンチによってその兜はベコベコに凹んでいた。
しかしレスラーの拳も無傷ではない。
兜が予想以上に固かったのか折れた骨が肉を突き刺さり拳を血で染め上げる。
それでもレスラーは拳を放つ。


この戦い方を見たら誰でもレスラーのことを愚かだというだろう。
だがこの不器用で愚直な戦いがレスラーの真骨頂なのだ。

「うぉおおおお〜!」

レスラーは左腕を回して渾身のパンチを放つ。
それを受けてランサーの兜は粉々に割れ後方に吹き飛びピクリとも動かなくなった
この瞬間レスラーの勝利が確定した。

「レスラー!」

ランサーが吹き飛んだその後膝を地面についたレスラーの様子を見てジョーイは駆け寄る。
その顔は涙でクシャクシャになっている。

「ごめん……レスラーがこんなに傷ついているのに僕は何もできなかった……僕は無力だ……」

そんなジョーイにレスラーはその傷ついた手で優しく頭に手を置いた。

「マスターは無力じゃない。君の声援が無ければミーは負けていた。マスターのおかげで勝てたようなものだ」


ジョーイはレスラーの言葉を聞いた瞬間せきを切ったようにまた泣き出した。


451 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:10:34 em5wCgCs0

☆☆☆

「気が付いたか」

地面に大の字で倒れているランサーの目の視界に映ったのはレスラーの姿だった。
視界は未だにグニャグニャと歪みレスラーの姿は歪んでいる。
戦闘態勢をとろうとするが体が全く動かない。
この瞬間自分は負けたということを実感した。

「何故俺を殺さない」

未だに自分が生きていることにも驚きだがそれ以上にレスラーがトドメを刺さないのが不可解だ。


「ランサーが消えればマスターも死んでしまう。人を殺すことはしたくない。それにミーは戦いとは相手と分かり合う為だと思っている。
戦いを通して友となるかもしれない者を殺すことなんてできない」

ランサーはこの答えを聞いて困惑していた。
自分のマスターが死ぬから殺さないとは甘すぎる!
それに相手と分かり合う為に戦う?
戦いとは相手を踏みにじり自分のエゴを押し通すためにおこなうもの。
分かり合うなどできるわけがない

「戦いで負けた者に残るのは勝者への恨みだけだ。相互理解など不可能」
「ミーの仲間とはかつて殺し合いのような戦いをしたこともあった。
だがそんな彼はミーの親友だ。ミーは戦いを通して育むこともあると信じている」

「そんなわけはない」

レスラーの主張を切り捨てるように否定する。
だがランサーの胸中には不思議な感覚が芽生えていた。
生前なら自分を負かした相手など殺したいほど憎むはずだ。
だが今はレスラーに対して憎しみはない。
それどころか爽やかなものが心を満たしていた。


「ところでランサー。一つ提案があるのだが聞いてくれるか」
「何だ?」
「ミーと一緒に聖杯戦争を止めるために戦ってくれないか?」
「は?」

突然の誘いに思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
そんなランサーの反応に構わず話を続ける。


「今回の戦いはサーヴァントが死ねばマスターも道連れで死ぬ。
そんな弱い者が無意味に犠牲になる戦いはおかしいと思わないか?
正義超人の一人として他のマスターが犠牲になるのを見過ごすわけにはいかない。
そしてミーはこの聖杯戦争のシステムに邪悪な意志を感じた。
ランサーにも願いがあると思うがこの邪悪な意志をもった聖杯がまともに願いを叶えるとは思えない」


ランサーはレスラーの正気を疑った。
まさか聖杯戦争を 中断させようとするサーヴァントがいるとは夢にも思わなかった
冗談かと思ったレスラーの目には聖杯戦争に対する憤りと絶対に聖杯戦争を止めるという意志を秘めていることに気づく。
レスラーは本気でやろうとするつもりだ

「そんなことは不可能だ」

「一人では無理だろうな。だが二人三人と仲間が集まればできるかもしれない。
だからランサー。君の力が必要なんだ」


452 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:11:00 em5wCgCs0

自分を真剣なまなざしで見るレスラーの視線に耐えきれないかその視線から逃れるために周囲を見渡す。
そこで思わぬものを見かけた。
それは200メートル先から弓を構えるサーヴァント。
弦を引き今にでも矢を発射しそうだ。

弓の方向からして恐らくジョーイを狙っているだろう。
そのことにレスラーも気づいていない。
そして無情にも弓は放たれ流星の如き勢いでジョーイの元に向う。

「がはっ!」
「え?」

ジョーイの目の前に立っているのはランサーだった。
ランサーは何十本もの矢が突き刺さったその姿はまるで剣山だ。
しかし倒れることなく立ちふさがる、まるでジョーイを守るように。

「ランサー!」

レスラーはランサーの元に駆けつける。
地面に大の字になっていたランサーが突如起き上がりジョーイを守った。
その一連の動作にレスラーは全く反応できなかった。
まるで令呪三画を使ってジョーイを守れと命令されたような動きだ。

一方ランサーはアーチャ―が狙撃場所から離れる姿を見た瞬間倒れ込む。
だがその前にレスラーは今にも息絶えそうなランサーを抱え込んだ。

「ランサー!?どうして?」

レスラーの問いにランサーは薄れゆく意識を必死に繋ぎ止めながら苦しそうにしゃべり始めた

「これで貸し借りは無しだ……それに……俺に勝った相手がマスター殺しなんて 卑怯な戦法で退場させられるのは許せなかった……
まあ……聖杯を得るためにお前のマスターを殺そうとした俺が言えた義理じゃないけどな……


自嘲気味に笑うランサー。その体は足元から粒子状に崩れていく

「 レスラー……さっきの誘いだが了解だ……一緒に聖杯戦争をとめてやろう……人間を無駄に犠牲にする聖杯なんて捻くれて願いなんてまともに叶えないに決まっている……」
「ああ……そうだな」

レスラーは涙を流しながら頷く。
それは叶わないことはレスラーもランサーも分かりきっていた。

「最後に……お前の真名を教えてくれないか……」
「テリーマンだ」

ランサーの胸元から下は完全に無い。
最後の力を振り絞るようにランサーはしゃべる。

「マスターには悪いことしたな……」

そう言い残すとランサーの肉体はこの魔法都市ユグドラシルから完全に消えてなくなった。

「ランサー……」

テリーマンは直前まで感じ取れたランサーの温もりを噛みしめながら涙を流す。


分かり合うことができた友を失ってしまった。
その悲しさ、友を守れなかった悔しさに涙を流す。

その姿を見てまたジョーイの頬には涙が伝う。
ランサーが自分を守った。
きっとテリーマンのか弱き者を守ろうとする正義の心に感化された。
テリーマンとランサーは分かり合えたのだ。

戦った敵と分かり合う。その尊い出来事に感動して涙を流していたのかもしれない。


453 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:11:54 em5wCgCs0
ジョーイはリナの家には向かわず。そのままに自宅に帰る。
今日一日で色々なことが起こりすぎて頭がパンクしそうだ。
一人になって頭を冷やさなければおかしくなってしまう。
リナには悪いがとても誕生日を祝う気持ちにはなれなるはずもない。

何よりこの街にいるリナは本物ではないことを知ってしまったのもそれに拍車をかけた。
家についたジョーイは真っ先に自分の部屋に向いベッドにあおむけになる。

『ジョーイ、不安かもしれないが必ず守ってみせる 』
『ありがとうテリーマン』




テリーマンはジョーイの精神力の強さに驚いていた。
普通の人間なら死ぬかもしれないという状況に追い込まれたら錯乱してしまう。
だがジョーイは多少動揺しているものもある程度平静を保っている。
この少年は恐らく命を掛けた戦いをしたことがあるのだろう。
しかしそれが悲しかった。

『テリーマン、僕決めたよ。僕も聖杯戦争を止めるために戦うよ』


ジョーイは独り言のようにテリーマンに自分の意思を打ち明ける。


自分は望んでもないのにこの戦いに参加させられた。
だがそれは自分だけとは限らない。
その人たちはどんな気持ちで今を過ごしているのか
死の恐怖に押しつぶされ夜も眠れない日々を送っているかもしれない。
そんな人々を見捨てることはジョーイに宿る正義の心が許せなかった。


「ミーと同じ目的ということか。ならばミー達はサーヴァントとマスターではない。パートナーだ」

テリーマンは実体化してジョーイのそばに立つと手を差し伸ばす。
それを見たジョーイも迷わず手を伸ばし
怪我した手を強く握らないようにそっと握手する
この瞬間二人は主従ではなく対等なパートナーとなった。


454 : ジョセフ・カーター・ジョーンズ&レスラー ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:13:14 em5wCgCs0

【クラス】レスラー
【真名】テリーマン
【出典】キン肉マン
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】

筋力:B 耐久:B 敏捷:B魔力:E 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】


超人レスラー:A
武器を持たず己の肉体で戦うときのみ格闘ダメージが上がる。
Aランクならば一流の超人レスラーと言っていいだろう



【保有スキル】


巨人殺し:A
テリーマンは自分より大きな相手に闘志を燃やし果敢に闘っていた。
その逸話がスキルとなる。自分より大きな相手と戦う際に格闘ダメージと格闘ダメージへの耐久力が上がる。


不殺:A
『戦いとは相手と分かり合う為に行うもの』その信念がスキルとなる。
テリーマンが相手サーヴァントを殺すことはできない。
相手サーヴァントがテリーマンとの戦いで瀕死のダメージを受けた際は数時間行動不能、宝具使用不可。全ステータスがオールEになる。


博識:D
仲間が誰も知らないことでも「そういえば聞いたことがある」とその豊富な知識量で見事に解説してくれた。
少ない情報でごく希に相手の真名を見破ることがある


【宝具】
『友情パワー』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
テリーマン達正義超人やそれに関わった超人たちが持っている謎のパワー。
この宝具が発動した際にステータスはすべてワンランク上昇。Bランク相当の「戦闘続行」「勇猛」スキルが備わる。
宝具使用して相手サーヴァントと戦い終わった後はテリーマンと強い友情が結ばれることがある。
そして強い友情を結んだ相手は宝具『友情パワー』を使用できることがごく希にある。


『不吉な靴紐(アンラッキーシューズ』
ランク:E種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
テリーマンの生前の逸話が宝具となったもの。
本人やマスター。またテリーマンと友情を結んだサーヴァントとマスターに危機が迫った時に靴紐が切れて知らせてくれる。
一種の未来予知



【人物背景】
アメリカのテキサス生まれの正義超人。身長190cm。 体重95kg。
超人強度95万パワー
両肩には愛国心とファイティングスピリットの象徴であるスター・エンブレムが取り付けられている。たれ目がちな青い目が特徴。
性格は友人やか弱き者を助けるためなら自分が傷つくのを厭わない。まさにヒーローといえるだろう。


【願い】
特になし。だが聖杯戦争を止めたいと思っている

【マスター】ジョセフ・カーター・ジョーンズ
【出典HEROMAN
【性別】男性
【令呪の位置】右手の甲(三重丸のデザイン)

【マスターとしての願い】
特にない

【weapon】
なし

【能力・技能】
特になし。ごく普通の中学生
強いて言うならヒーローマンと共に戦ったことで培われた戦闘経験値

【人物背景】
アメリカの西海岸にあるセンターシティに住む13歳の少年。通称ジョーイ
ある日壊れた玩具を直し家に置いておいた。だがその玩具に雷が当たり巨大化してしまう。
それと同じ時期、地球外生命体スクラッグが地球を侵略にやってくる。
スクラッグに対抗できるのがヒーローマンだけということが分かり、ジョーイは皆を守るためにヒーローマンと共に闘うことを決意する。
ヒーローマンとの生活でジョーイは成長していく。
そして最終的には世界を救い、ヒーローにあこがれていた少年は本物のヒーローになった。

その容姿は女の子のようにかわいらしく、女装すれば確実に男性とはわからない。
だが性格は男らしい。
正義感は強く心やさしい性格は多くの人が好感をもつだろう。

【方針】
聖杯戦争を止める。


455 : ◆mOxYbqOoHM :2015/08/31(月) 17:16:36 em5wCgCs0
以上で投下終了です
レスラーのステータス等は◆wIEqTYjkiE氏のファイターを参考にさせていただきました。
この場でお礼申し上げます


456 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:29:44 ff7gvTe60
投下乙!
これが友情パワー……
子どもたちに応援されてこそのヒーローをばっちりと魅せていただきました
後やっぱりそれ宝具になるのかよ、靴紐www


こちらも投下します


457 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:30:39 ff7gvTe60
白銀に光る剣閃が、私の肩を浅く抉った。
普段なら視界左に固定表示されている細いラインが、わずかにその長さを縮めたであろうが、今は試験的に不可視化してある。
だから己が感覚のみを信じ、自身の生命力と敵の攻撃力を推し量った上で逃走は不要と判断。
引くことをせず、そのまま打って出る。
敵。エンカウント時は白と黒で塗りたくられかのような不気味な人型だったそれは、今は私と同じ姿に変じている。
恐らくはドッペルゲンガーに類するであろうモンスター。
これまで数分、剣を交え、盾で打ち合った感触からも、相手のコピー能力は中々の性能だ。
外見はもとより、こちらのステータスやスキル、【ソードスキル】までコピーしてくる。
よもや【神聖剣】を自分が使われる側になるとは新鮮だった。
おかげで矛盾ならぬ盾盾対決と相成り、時間がかかってしまっている。
とはいえ倒せない敵ということではない。
むしろ硬さという意味では難敵であっても、トータル的な脅威で言えば、道中で相手してきた他のモンスターたちのほうがよほど怖かった。
ウィル・オ・ウィスプ、トイソルジャー、サマエル、サンフレイヤー、サイクロップス、
ステルスストーカー、デボノバ、ネクロマンサー、ドゥームズデイ……。
彼らは、未知だった。未知であるが故に対処を間違えれば敗北するかもしれないという恐怖があった。
実際こちらのHPを半減させてくるドゥームズデイや、攻撃を回避しながら即死を狙ってくるステルスストーカーにはひやりとさせられたものだ。
それらに比べれば、ありとあらゆる意味で知り尽くした自分など恐るに足りない。
いわんや、能力はコピーすれども使いこなすことはできず、やたらめったらに【ソードスキル】を使ってくるだけの相手となれば尚更だ。
そんなこちらの考えを裏付けるかのように、ドッペルゲンガーが無意味に後退する。
突進技ユニコーン・チャージの初動だ。
攻撃までにラグがあるため、対処は容易い。
本命の突進技を悠々と盾でパリングし、体勢を崩した相手にそのまま切り下げからの十字斬で仕留めにかかる。
これを耐えられたとなると相手に奥義を使われる可能性もあったため、盾での追撃も考えていたのだが。
どうやら杞憂だったらしい。
私の映し身となっていた騎士が崩れ落ち、元の姿を露わにした後光とともに消え去っていく。
それでも万一第二形態への変身や、死亡時に発動する道連れなどのスキルが襲ってこないかその光景を注視する。
やがて、消滅後しばらく経ってからも何も起きないことを確認してから目を閉じ、深く息を吸って吐く。

――いよいよだ。いよいよここまで来た。

目を開け、視線をドッペルゲンガーがいた先へと投げかける。
そこにあったのは薔薇の象眼が施された、豪奢な扉だ。
扉に通ずるホールの中心でドッペルゲンガーとエンカウントしたことからも、恐らくこの先がダンジョンの終着点。
【ラスボス】のいる部屋だ。

「では――行こうか」

懐から取り出した鍵を鍵穴に差し込み、扉を開く。
完全に開き切った扉の中へと歩み出す。
内部は玉座の間というには少し落ち着いた、アンティークで彩られた洒落たドーム状の部屋だった。


458 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:31:13 ff7gvTe60
「思っていたよりもお早い到着ね。本職のあなたからすればわたしの創りだしたお城は物足りないものだったかしら?」

最奥、鋳薔薇の紋様を刻んだガラスのドームを背に、玉座に君臨する城主が声をかけてくる。

「そうでもないさ。中々に楽しませてもらったよ。今後の【ゲーム】制作の上で参考にさせてもらうつもりだよ」

皮肉でなく本音だ。
特に様々なアクションを駆使しなければクリアできない仕掛けには頭脳肉体ともにかなり働かされることとなった。

「そう、あなたにとってはこの戦いも【ゲーム】なのね」
「だが遊びではない。それは君もだろう?」

盾を前に押し出し、剣を水平に構える。
城主もまた応えるように玉座を立ち、魔族としての姿を取る。

「そうね。それじゃおしまいにしましょうか、この【ゲーム】を」
「良かろう。これで決着だ」

ルールは初撃決着モード。
強攻撃のクリーンヒット一撃で生死が決する。

「来なさい、聖騎士ヒースクリフ……ッ!!」
「行くぞ、夢魔ベアトリーチェ!!」

互いに剣と爪が届く位置まで距離をつめた私たちは同時に宣戦し、駆け出す。

そして――

騎士の剣が魔族の爪が、相手を貫くことはなかった。
何故ならこれは遊びですらない【茶番】だからだ。

「くすくすくす……こんなところね。どう、あなたの言うところの【テストプレイ】は?」

ベアトリーチェ君の姿が再び、偽りの少女のそれへと転じる。
剣を手にしたままのこちらに対して晒すには余りにも無防備な姿に思えるが、その実この空間の、否、このゲームの支配者は彼女だ。
ここは現実世界ではない。ムーンセルによって形成された、電脳空間のそのまた【夢の中の世界】なのだ。
私が今使っているアバターも、完全決着モードのルールも、SAOを模倣したシステムも。
全ては彼女から移譲されたこの空間――【電界25次元】における権利を用いて再現したものに他ならない。
たとえ今このまま剣で斬りかかり、攻撃を当てたとしても、彼女は攻撃判定を解除し、ルールも書き換えて傷ひとつ負わないだろう。
最も万一バグか何かで彼女を倒せてしまったとしても、それはそれで私も後を追うことになるのだが。
何せ彼女こそが私のサーヴァント、エクストラクラス【マザー】なのだから。

私も茅場晶彦の姿に戻って感想を述べる。

「先程伝えたように実に有意義だったよ」

ならば何故このような茶番をしていたのかというと、彼女が言うように【テストプレイ】だ。
彼女のスキルである陣地作成。
その成果であるナイトメアキャッスルと、付属できるモンスターたち。
キャスターに近いというクラスにとっては生命線の一つであるこれらの性能を知っておこうと【テストプレイ】に挑んだのだ。
何事も自身で体験してこそ理解も進み、有効な活用やデバックも可能になるというものだ。

「ドッペルゲンガーは思考ルーチンを改良すればもっと使いようがある。
 ケライノーのかっぱぐもマスター相手に礼装でも持ち逃げできれば動揺も誘えて有効ではあるかな」

彼女は私と同じく作り手だが、ゲームクリエイターというわけではない。
ダンジョンの構築やモンスターの設置、思考ルーチンの調整に関しては私の方が専門である。
今回のナイトメアキャッスル攻略は、そのことを少女へと納得させるデモンストレーションでもあったのだ。
ヒースクリフとして見せた電界25次元を応用してアバターを制作できる技術力とプレイヤーとしての腕は少女を満足させるに足るものだったに違いない。
ベアトリーチェ君は相槌を打ち、

「その辺の改良はお任せするわ。
 わたしの趣味ではないけれど、この城をあなたの描く【アインクラッド】色に染めてくれても構わない。ただ――」

けれどすぐに忌々しげに表情を歪める。

「それでも【英雄】たちはやってくるの。どれだけのモンスターを差し向けようとも。どんな難問で道を塞ごうとも」


459 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:33:29 ff7gvTe60

確かに、彼女の力を借りたとはいえマスターである自分でさえも突破できたのだ。
サーヴァント相手では時間稼ぎにしかならないだろう。
それに全100層のダンジョンをせっかく作ったのに、75層でラスボス戦に突入されてしまった……などということも英雄相手にはありえるのだ。
どれだけ作りこもうともナイトメアキャッスルに過度な期待はできない。
だからこそ私たちの本命は別にある。

「そうなるとやはり君の宝具次第ということになるか。そちらの経過は?」

宝具。
それはサーヴァントにとっての切り札であり、英霊としてのシンボルであり、何よりも。
少女にとっては自らの願いそのもので、私が彼女に協力しようと決めた理由だ。

「【想い出】の収集は順調だわ。聖杯戦争……ニンゲンたちによる、願いを賭けた殺し合い。
 これほど【想い出】を引き出しやすい環境はないわ。
 欲望のままに他人を殺す時。死の恐怖の前に絶望する時。心のタガが外れ、ニンゲンは無防備になるもの……」
 
少女の宝具の起動――正しくは誕生、或いは具現化――に必要なものは2つ。
一つは宝具を起動し、産み出すだけの莫大なエネルギー。
そしてもう一つが、産み出すものの設計図たる【想い出】だ。

「それこそ誰かがユグドラシルのプロテクトを破ってくれたならユグドラシルそのものからも【想い出】を奪えるのだけど。
 流石にそれは魔界柱を守りて這い寄る混沌を待つみたいなものよ。現実的ではないわ」

夢魔である少女はムーンセルに巣食うことはできても、セキュリティを突破し掌握するだけの力はない。
ムーンセルがユグドラシルの構築時に再生利用した自らをサーヴァントとして割り当て、私をマスターとして逆召喚するのが精一杯だったという。

故に少女が【想い出】を集める先は専ら魔術都市に集められたマスターや召喚されたサーヴァントからだ。
強大な力を持つサーヴァントに生きている間に干渉するのは危険だが、それが弱った死の間際なら問題ない。
また、どうも今回の聖杯戦争でマスターに選ばれた者は私のような魔術師でない人間も多いらしく、格好の餌だという。

「後は無闇矢鱈とNPCを殺す主従対策も進んでいるわ。
 マスターを自滅に走らせたり、他の正義の味方気取りのマスターをそれとなく誘導してみたりしてね。
 NPCもこの世界樹の大事なデータバンクですもの。創星を成すまでに駆逐されるわけにはいかないの」

いわんやNPCは言うまでもない。
ムーンセルに作られ魔術都市の住民としての記憶を持つNPCたちはそれ自体がユグドラシルを構成するデータの一つだ。
作られた【想い出】であり魔術都市での記憶しかない以上、質量ともにいまいちな点もあるが、その分数が多い。
一次予選脱落者を引き当てられたら大当たりだ。
干渉をしたところで反撃を受けるリスクがないのも魅力的だ。
そのため私たちからすれば恒常的に【想い出】を搾取できるNPCたちは生き残っていてくれたほうがありがたい。

「ふむ。【想い出】の収集におけるNPCたちの記憶の欠如も思いの外騒ぎになってはいないようだね」
「神秘の秘匿は魔術師にとって珍しいものではないわ。魔術都市なら尚更よ。
 わたしたちが聖杯戦争に巻き込まれたNPCたちの記憶を優先的に収集しているのも、狙い通りカモフラージュになっているみたいね。
 聖杯戦争を秘匿しよう、自分たちの痕跡を消そうとしている主従がいると見られてはいても、個人の仕業とは思われてないみたい」

しばらくは今のままの運用で問題はないということだ。
私たちの存在が他の主従に発覚することは可能な限り避けたい。
ばれたからといって容易に手を打てるものでもないが、逆にそれが可能な相手がいた場合は致命的だ。
その辺りの情報も集めたかったが、予選終了までの限られた時間で、見つからぬよう慎重に動くことを余儀なくされている身には限界がある。
特に私には前に出過ぎて黒幕だと見ぬかれてしまった前科がある以上、予選の間は引き篭もり【電界25次元】での研究に専念している。
もっとも、私にしろ、彼女にしろ、元より電脳空間の住民ではあるのだが。


460 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:34:16 ff7gvTe60

「くすくすくす……【アインクラッド】の【想い出を】全部くれれば、労せずに宝具の条件を一つクリアできるのだけど」
「令呪を用いても御免こうむるよ。あの情景だけは誰にも渡すつもりはないさ……。それは君も同じだろう?」

電脳世界に生まれた少女は星に住むことを夢見るようになり、物質世界で暗躍した。
物質世界に生まれた少年は空想に取り憑かれ、自らもまた夢の世界の住民となった。

「そうね。わたしが夢見たのは【ファルガイア】だけ。【アインクラッド】も魔術都市もわたしの望む、わたしの世界ではないわ……」

それが私であり、彼女だ。
自分にとっての現実世界の法則を超越した世界を作り出すことだけを欲し、若者たちの意志の力の前に敗れた存在のエコー、残像だ。
それでも私と彼女は夢を諦めない。

「ならば戦いを続けようか。私は私、君は君の目指した世界へ向かって」

夢に見続けたあの世界へと、往こう、ここから。



――LINK RESTART



【クラス】マザー
【真名】ベアトリーチェ
【出典】WILD ARMS Advanced 3rd(死亡後)
【性別】女性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:-(C) 耐久:-(C) 敏捷:-(B) 魔力:-(A+) 幸運:A+ 宝具:EX
※()内は電界25次元内でのみ適応される。


【クラススキル】
陣地作成:A+
 夢魔として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 自らの支配する夢の中の世界に“神殿”を上回る”大神殿”を形成する事が可能。
 形成された大神殿は『夢のお城(ナイトメア・キャッスル)』となり、配下の魔物を配置することもできる。
 ただしディザスター系統は召喚不可能。モンスターも夢の中限定で外に連れ出すことはできない。
 また完成したナイトメア・キャッスルは自爆させることができ、敵を巻き込むことや、巨大なエネルギーを得ることも可能。
 百魔獣母胎を後押しするスキルの一つでもある。
 
 ※予選中にある程度完成して、ただいま仕上げと改良中

百魔獣母胎:EX
 エクストラクラス:マザーは何らかの存在を生み出す能力をクラススキルとして所持している。
 ベアトリーチェが生み出す対象は星であり、「国造り」どころではないこの力は規模だけなら「大権能」の域に達している。
 ただし権利として無条件で成せる権能とは違い、理屈に則れば可能というあくまでもスキルの枠内である。
 実際、製法の都合上、当聖杯戦争では星の誕生には余程の条件が重ならない限り行き着くことはできない。


461 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:34:52 ff7gvTe60

【保有スキル】
夢魔:B
 ベアトリーチェは夢魔と呼ばれる魔族であり、電気信号でできた情報体である。
 現実世界に実体化することはできず、物理的に干渉することはできず、逆に干渉されることもない。
 現実世界の物をコピーする事はできても持ち帰ることは不可能。
 その分、情報体として電子機器に干渉出来るだけでなく、電気信号が構成する夢を操作することで精神操作や覚めない眠りに着かせる。
 自らの支配する夢の中に引きずり込むことも可能だが、夢魔としての能力の多くは対魔力などで抵抗される危険性もある。
 
 尚、魔術都市ユグドラシルは電脳空間であるため、立体映像としてだけでなく、実体で行動することも可能である。
 ただし今の彼女は夢魔としての逸話に縛られたサーヴァントなため、夢の中の世界以外では力を振るうことができない。
 夢の外の世界の彼女はステータスなども表示されないため、正体を知らないものにはNPCのように見える。

電界25次元:A
 生命の見る夢の世界。最も深い心の奥底。無限の闇が支配する、暗黒の領域。
 ベアトリーチェは夢の中の世界を電界25次元として支配することができる。
 この中でなら全能と言える程の力を行使でき、惑星規模まで拡大することさえも可能。その果てが百魔獣母胎である。
 直接攻撃手段としても、フィブルマインド、ダークマター、ナイトメアが使用可能。
 元からある夢の世界を自らの結界として利用できるため、競合相手さえいなければ、即座に常時補正が得られる。

 
情報抹消:C
 夢に干渉した相手が起きた瞬間にベアトリーチェの能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
 あくまでも消失するのはベアトリーチェに関する情報だけであり、夢を見たことやその内容自体は記憶に残る。
 このスキルが発揮されるのは夢の操作止まりまでであり、ベアトリーチェが夢の中で相手と交戦した場合覚えられたままとなる。
 またベアトリーチェの真名を知る者には無効となる。
 100年もの間、人や魔族を手玉に取り、歴史の裏側で暗躍し続けたことと、数多の人々の想い出を奪っていったことに由来する。

原初の一:-(EX)
 アルテミット・ワン。星からのバックアップで、敵対相手より一段上のスペックになるスキル。
 星の母であるベアトリーチェは破格のEXランクを誇るが、自らの星を宝具にて誕生させない限りは無効となっている。
 宝具を用いたとしても、星未満の都市や国の誕生止まりだと効果は発動しない。


【宝具】
『夢魔の鍵』
ランク:E 種別:創星宝具 レンジ:1 最大補足:4組
 夢の中の世界への招待状。
 これがあればベアトリーチェの支配する電界25次元へと乗り込むことができる。
 専ら対魔力などで夢の世界へ引きずり込めない敵に自分から来てもらうために贈られる。
 強制力や呪いのようなものはかかっておらず、本当にただ彼女の元へと導くだけの鍵である。


『滅びの聖母』
ランク:EX 種別:創星対星宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 少女のためだけの、少女が暮らすことのできる星を生み出す宝具。
 本来の名は滅びの聖母(ネガ・ファルガイア)。
 惑星を一つの生命体と見立て、自らが宿した星の種子と一体化し自らが星の赤子から成長していく。
 原点では奇しくも新世界を育む世界樹へと至った段階で滅ぼされたが、その先も当然存在し、果ては星へと至る。
 電界25次元での使用が基本であるが、万一使用後に結界が解けた場合、元になった世界と対消滅してしまう。

 完全発動には星を創造するだけの圧倒的なエネルギーと、莫大な情報量が不可欠である。
 前者は令呪やナイトメア・キャッスルの自爆、電界25次元で死んだ主従の生命を供物とすることで、後者はNPCや他の主従の想い出にて補うことは可能。
 ただし彼女が愛したファルガイアの想い出を持つものが殆どいないこの地では、ネガ・ファルガイアを受胎することはほぼ不可能である。
 NPCに刻まれている想い出が魔術都市ユグドラシルのもののみであること、他の主従の想い出を足しても圧倒的に情報量が足りないこと。
 これらの要因から実際に宝具を用いたとしても誕生するのは魔術都市ユグドラシルと対をなす、滅びの聖母(ネガ・ユグドラシル)止まりであろう。
 注ぎ込んだエネルギーと想い出が多いほど強力な生命体を受胎でき、容姿や能力、使用する技も、本戦に勝ち残った主従たちの想い出の影響を受けたものとなる。 
 例えばネガ・アインクラッドならSAOの設計をなした晶彦の想い出から完全な形で産み出すことは可能である。
 最も、自身の原風景である空に浮かぶ鉄の城の想い出を晶彦が譲渡するとは思えないが。


462 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:35:24 ff7gvTe60

【人物背景】
魔族の情報庫『ヒアデス』に潜む特殊な魔族、夢魔。
普段は紫がかった黒の長髪を持つ黒いワンピースを来た少女の姿をしているが、
戦闘時には光背のような装飾・昆虫的外観・青薔薇のウェディングドレスを着た魔族としての姿を露わにする。
好きなタイプは寂しい人。
一説では「母」という存在を羨望し、手段こそ選ばなかったが純粋にファルガイアを想っていたとされている。

真っ白で狭くて何もないヒアデスで一人過ごしてきた少女にとって、広くて色々な生命や物に溢れている惑星ファルガイアは憧れだった。
少女はいつしか夢を見るようになった。ファルガイアに自らの手で触れて、生きる。
そんなありきたりな夢を見るようになった。
夢魔たる少女には余りにも遠い夢なれど。たとえ一度砕かれた身であろうとも。彼女は夢を諦めない。


【サーヴァントとしての願い】
わたしは、わたしの世界が欲しい。わたしの住まうことができるファルガイアが欲しい。


【基本戦術、方針、運用法】
基本的な運用・弱点はキャスターのそれ。対魔力にも諸々引っかかる。
マスターや英霊たちの心のタガが外れやすい聖杯戦争では想い出の回収は容易なため、必然的に時が経つほど『滅びの聖母』は強力な宝具となる。
ベアトリーチェのスキルも、自身は表に出ず長生きしながら暗躍しつつ宝具を後押しするものに特化している。
時に息を潜め、時に夢で耐性のないマスターや耐性のない英霊を扇動しつつ、陣地を作成しながら宝具の充填を心がけよう。
天敵は夢魔及び電子生命体のような早々と夢の中の世界へと乗り込んでこれる存在。
準備の整わない内に襲撃された場合、一気に不利になる。
対魔力持ちや、電界25次元の特権が効かない相手だと目も当てられない。
逃げようにも現実世界には逃げられない以上、いずれ追いつかれてしまう。
そうなった場合はもういっそ全能力をヒースクリフに割いて護ってもらった方がまだ持ちこたえられるかもしれない。


463 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:35:49 ff7gvTe60

【マスター】茅場晶彦(ヒースクリフ)
【出典】ソードアート・オンライン(4巻後)
【性別】男性
【令呪の位置】決着時にキリトに刺された胸元

【マスターとしての願い】
どこかにある本当のアインクラッドへと至る

【weapon】
十字剣と十字盾。
一説ではリベレイターというセット武器らしい。

【能力・技能】
天才
 世界的に有名な天才量子物理学者であり、ゲームデザイナー。
 相性の良さもあり、時間をかけた分だけ電界25次元にSAO(“アインクラッド”)を再現可能。
 舞台が電脳世界なだけに他にもいろいろできるかもしれない。

SAOアバター
 電界25次元においてのみ、ベアトリーチェから移譲されている特権と、自身の才能、想い出からヒースクリフのアバターを使用できる。
 ソードスキルやユニークスキル、防御力を始めとしたパラメータも反映されるため、サーヴァント相手でも幾らかは戦える。
 ベアトリーチェが支援に専念し、ヒースクリフが防御に徹すればより強力なサーヴァント相手にももちこたえられる。
 尚、魔術都市ユグドラシルは電脳空間であるため、茅場晶彦としてなら実体化して夢の外でも行動できる。

神聖剣
 防御力に補正が入るとともに、盾にも攻撃判定を与えることができ、防御と攻撃の両立が可能。
 尚、ゲームマスターではないため本ロワでは破壊不能オブジェクト化などのチートは使用不可能。
 ただし電界25次元による特権で限定的にだが似たようなことはできる。



【人物背景】
天才量子物理学者であり、ゲームデザイナー、茅場晶彦。
記憶・人格をデジタルな信号としてネットワーク内に遺すために電脳化した存在。
自身のことを茅場晶彦という意識のエコーであると称しており、厳密には茅場晶彦とは言えないのかもしれない。
SAO時代は白で彩られた赤い鎧に身を包み、十字剣と十字盾を使いこなす聖騎士ヒースクリフとしてログインしていた。

少年はいつからか夢を描くようになった。この地上から飛び立って、空に浮かぶ鉄の城へ行くというそんな夢。
子どもが抱く他愛もない夢想だったはずのその想い出を、大人になってもずっと抱き続けて。
彼は、夢を叶えた。
夢に見た世界を作り出し、夢に見た以上のものを目にした彼は、自らの夢の卵を彼の世界で生きた若者へと託し、新たな世界へと旅立っていった。


【方針】
まずは夢見た世界と、それ以上のものをベアトリーチェが見れるよう手伝うとしよう。
生前やり逃した百層のラスボス的に立ちふさがってみるのもありかもしれないな。


464 : 茅場晶彦&マザー  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/31(月) 17:37:01 ff7gvTe60
何するものぞッ! シンフォギアアアアァァーーッッ!!(WAもよろしく的な意味で)
投下終了です


465 : ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:52:06 IU.G0r5E0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下します。


466 : 天羽奏&バーサーカー ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:52:35 IU.G0r5E0



 魔術都市ユグドラシル。
 ムーンセルが此度の聖杯戦争の舞台として作りあげた架空都市。
 生活の基盤を科学に代わって魔術が支えるその都市で、怪事件が起こった。
 一般住宅街、特級住宅街、学術地区の三つの地域を掠める程度の小規模なものであるが、停電が発生したのだ。
 ユグドラシルのインフラの比重は魔術による産物が多く、電線は存在せず魔力の伝達によって家々に灯りを点す。
 そのためユグドラシルから滾々と湧き出す魔力が尽きない限りは停電などあり得ない。
 そして、被害は停電だけではなかった。
 停電が発生した時間に該当地域にいた住民全員になんらかの健康被害が起きていた。
 その症状は軽度の者は立ち眩みから、重度の者は意識不明まで。
 被害者を検査したところ、体内の魔力の瞬間的な消失が全員から確認された。
 ここで問題となったのが、消失という点である。

 警察は当初、魔力の伝達先を誰かが操作し、停電発生前に確認されたという魔力砲の実験に用いられたと考えていた。
 しかし調べてみると魔力経路を弄った痕跡はなく、住民同様に該当地域内で経路が消失していることがわかった。
 平時からやる気のない警察は、多少の調査と見回りの増員程度で今回の事件を終わらせることにした。
 魔術師という人種が多く存在するこの都市で、怪奇な事件など毎日のように発生している。
 ユグドラシルの警察に、たかだか停電の一つや二つに頓着するような者は存在しない。

 しかし――――もしこの事件の話を専門家が耳にしていれば、顔色を青白く変えることになっていただろう。
 魔力を消滅させるナニカ。生活を魔術によって支えられているこの都市において、そのチカラは間違いなく災厄を齎す。
 都市機能がすべて麻痺する程度ならばまだマシな方だ。もしもそれが恵みの源である世界樹に向けられたとき――――この都市(せかい)は死ぬこととなる。



 ユグドラシルの小さな地域を襲った謎のチカラ。
 それは紛うことなき『世界を殺す猛毒』である。


 

 ●

「聖杯戦争、か……」

 曇りなき青い空を見上げながら、少女は独り言ちた。
 神話や伝説、歴史上の英雄偉人その他もろもろのデータを再現した存在、サーヴァント。
 そのサーヴァントを使役し、他のサーヴァントすべてを退け聖杯を手にするための戦い。
 それが聖杯戦争。過去の魔術師たちが行ったという万能の釜の争奪戦。
 どのような意図があるかは不明だが、ムーンセルはそれを再現し、そして少女――天羽奏をマスターの一人としてこの地へと招き入れていた。

「死人の願いまで叶えてくれるたぁ、お月様も随分と優しいんだな」

 しかし月に招かれた少女は、既にその生を終えていた。
 彼女はある聖遺物の起動実験の最中に突如出現したノイズからひとりの少女を救うために命を燃やし、歌った。
 世界から消えたはずの彼女は、どういうことかユグドラシルの上で再びその意識を覚醒させたのである。


467 : 天羽奏&バーサーカー ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:53:03 IU.G0r5E0

「なあ、お前はなにか叶えたいことってあるか?」
「……………………」

 少女は隣に立っている少年へと語りかける。自身の使い魔(サーヴァント)である少年へ。
 月に招かれた者がマスターとして本来の記憶を取り戻した時に月より授けられる、マスターを護る最強の矛にして盾――――サーヴァント。
 姿こそ少女よりも年下の少年であるが、それが彼の正体であった。

「……やっぱ答えられないか」
「……………………」

 少女の問いかけに、少年は口を開くことはなかった。
 別に意地悪で口を閉ざしているとか、少女のことが嫌いで沈黙を貫いているわけではなく、そもそも少年は問いかけに答えることができないのだ。
 少年の赤い目には狂気のみが渦巻いており、そこに理性は一欠片たりとも見ることはできない。

 少年はバーサーカーのサーヴァント。
 目の前にあるすべてを壊し、障害が無くなるまで止まることのない理性無き怪物のクラス。
 故に少年が少女の問に答えることは不可能であり、そのことは彼女も理解していた。

「まったく……、こちとら訳がわからないまま連れてこられたっていうのに、頼れる相手がこんなんじゃどうしたらいいのかもわからねえ」
「……………………」
「いっそ本当に聖杯を手に入れてみるか?」
「……………………」

 冗談めかしながら奏はバーサーカーに聖杯を手にするかどうか提案してみるが、実のところ奏自身乗気ではなかった。
 といっても、願いがないわけではない。そうでなければ聖杯に招かれ参加者となることなど、そうはない。
 奏にも、確かな願いはあった。

 例えばすべてのノイズの駆逐。
 場所、時間を問わず突如出現し、人間のみを襲って炭素の塊に変えてしまう特異災害――ノイズを世界から消滅させる。そうすれば自分と同じ経験をする者もいなくなる。

 例えば自分自身の蘇生。
 落命した身であるが、聖杯が本当になんでも叶えられるならば蘇ることだってできる。そしたら、またあの泣き虫で弱虫な相棒と共に一対の翼となって、歌うことができる。

 若くして亡くなった奏に願いがない、なんてことがあるわけがない。
 彼女にはこれから先にもすべき事、したい事が山のようにあったのだから。
 だから彼女が聖杯を求めることはなにもおかしなことではない。
 だけど奏は、聖杯で願いを叶えることを善しとは思わない。

 なぜなら。

「やっぱ違うよな」

 なぜなら、彼女は自分の信じたことを果たしてきたのだから。


468 : 天羽奏&バーサーカー ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:53:36 IU.G0r5E0

「全部のノイズをこの手で倒せなかったのは悔しいし、翼とツヴァイウィングを続けられないことは嫌だ。
 でも最期に思いっきり歌うことはできたし、あの子も生きることを諦めてなかったんだから、きっと助かってる。
 このロスタイムが終了すれば今度こそ御陀仏なんだろうけど、なんだかんだであたしがやるべきことはやってきたんだ。
 だったら、聖杯に願うことは死ぬ前のことじゃなくて、死んだ後(いま)のあたしがしたいことであるべきだ。そうだろ? バーサーカー」
「……………………」

 返事をすることのない従者に、それでも奏は語りかける。
 いつか相方が狂気から解放され、話し返してくれると奏は信じている。少年の人生を夢で見たから。
 大半は狂気の渦の中で覗き見ることはできなかったが、自分と同じように復讐のために力をつける努力をしている姿や、助けを求める声のために無茶をやらかす姿を見た。
 出会いで変わって、大人たちに支えられて、どことなく自分に似た頼りなくも強い芯を持つ少年のことを、奏は信じると決めていた。

「じゃあ、やることは簡単だな」

 この街でやりたいことがあるとすれば、災害に比肩する程の脅威であるサーヴァントから人々を助けることだけ。
 昨夜はやりすぎで停電を引き起こしてしまったが、それでもサーヴァントを一騎退かせることには成功した。
 少年そのものもサーヴァントであり――ある意味では、この地に招かれた災厄の中でもとびきりの“猛毒”である以上、周囲への被害を考えると極力戦闘は避けていくべきだが、そうも言ってはいられない事態に直面することはこの先も多々あるだろう。
 シンフォギアさえあれば、巻き込まれた人が逃げる程度の時間は稼げるだろうが、無い物ねだりをしても仕方ない。
 今の自分にできる限りのことを尽くして、今の自分の願いを叶えると、奏はそう決めたのだから。
 可能な限り人々を守ることが第一で、後は……

「……だから、よろしく頼むぜ」

 他にやりたいことがあるとすれば――狂気の檻に囚われ、本来の自分を見失ってしまっている相方に自分の歌を聞かせたい。そんなところだろうか。
 人生最期に思いっきり歌いはしたが、如何せんオーディエンスがノイズだったということに不満がないわけでもない。
 だから今度こそ最期となるこの場所で、自分の相棒として召喚に応じた少年に歌を聞いて欲しいのだ。
 だったらやっぱり聖杯なんて必要ない。そんなものなくても、自分たちだけで叶えることはできる。
 だからこそ。

「壊すことも殺すことも本当はやりたくないくせに、狂気になんて負けてんじゃねえ。はやく目ぇ覚ませよ、バーサーカー」

 少女はただ、少年に語りかけ続ける。






【クラス】バーサーカー
【真名】トーマ・アヴェニール
【出典】魔法戦記リリカルなのは Force
【性別】男性
【属性】秩序・狂

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
狂化:A
 大半の理性を失う代わりに全ての能力値が上昇する。
 本来ならばバーサーカー適正は低かったが、歯止めが効かなくなった殺戮衝動を取り込んだことにより最高ランクの狂化を得ている。

【保有スキル】
ゼロ因子適合者:A
 ECウィルスに感染、適合したEC感染者の中で、ゼロ因子を起動する資質を持つ者。
 この「ゼロ」の起動によりバーサーカーの肉体は大幅に強化され、高い自己再生能力と生体魔導融合による物理エネルギー生成能力を得る。
 ただしその強大な力の代償にバーサーカーは通常の視覚や聴覚、触覚といった五感を喪失している。

魔力分断:A
 魔力の結合を分断し、同ランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
 Aランクの魔力分断ともなると、近接戦闘においてサーヴァントを構成するエーテル結合にも作用し相手の耐久を1ランクダウンさせることも可能である。

殺戮衝動:-
 EC感染者に発生する殺人、破壊への激しい欲求。
 狂化により理性が喪失したことで最高ランクまで高められたが、同時に狂化の一部として取り込まれ消失している。


469 : 天羽奏&バーサーカー ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:54:03 IU.G0r5E0

【宝具】
『銀十字の書』
ランク:D 種別:管制宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
 バーサーカーの行動を取り仕切る武装端末及び独立管制ユニット。
 これによりバーサーカーは狂化しながらも魔術の行使が可能となっている。
 自身とバーサーカーの安全を確保することのみを至上としており、マスターはバーサーカーの現界に必要なため攻撃対象となることはないが、場合によってはマスターの命令に背き行動することもある。
 また高い索敵能力と付近の物体の解析などの能力も有している。

『分断領域・界蝕零魔(ディバイドゼロ・エクリプス)』
ランク:A++ 種別:対魔術宝具 レンジ:1〜40 最大補足:400人
 バーサーカーの闘争本能が最高潮に達したときに発動する究極の分断。
 レンジ内のあらゆる魔力要素に分断が働き、範囲内に存在する存在にダメージ判定が発生し、それがサーヴァントクラスの魔力で身体を構成している存在の場合は5ターンの間、耐久を1ランクダウンさせる。
 あらゆる魔力要素に分断が働くこの宝具の真価は、範囲内に存在するサーヴァントやマスターの契約や魔力供給のパスをLUC判定によって分断する点にある。
 なお、このパスの分断に関してのみ、自身も効果の対象として含まれている。

【weapon】
ディバイダー996

【人物背景】
 エクリプスウィルス感染者の少年。幼少期に住んでいた村が壊滅しており、その事故現場にいた犯人と思しき二人組に復讐するためにひとりで鍛えていた。
 しばらくして近くに特訓に来ていたスバル・ナカジマに拾われ、孤児院で生活を送ることになる。その後もスバルたちと交友しており、学校に通うと同時にナカジマ家の養子にならないかという提案を受ける。しかしその幸せを得ることに抵抗を感じたトーマは過去を払拭するための旅に出る。
 世界各地を巡る旅の終盤、宝探しと写真撮影に向かった遺跡にて怪しげな集団を発見する。その際助けを求める声を耳にし、遺跡内の施設へ侵入する。そこで出会った少女、リリィを助けたことにより、少年はエクリプスウィルスとそれを取り巻く問題の中心人物となった。
 犯罪一家に勧誘を受けることもあったが、特務六課の一員として自身と同じ病気を持つ者を保護する仕事についた。
 そして――

【サーヴァントとしての願い】
 ??????????

【基本戦術、方針、運用法】
 敵意がない者に対してはマスターからの命令がない限り襲うことはしないが、敵意を持つ者には自動で攻撃をしてしまうというメリットかデメリットか判断し難い性質を持つ。
 銀十字の書による索敵や魔力分断、魔力弾などにより、騎士クラス以外のサーヴァントにはほぼ有利を取ることができる。
 三騎士相手では真正面から切り結ぶには技量面に不安があるが、高いパラメーターと再生能力で力押しすることも可能。接近戦で不利となる場合は対魔力を貫通するディバイド・ゼロなどで攻撃を加えていくことが望ましい。



【マスター】天羽 奏
【出典】戦姫絶唱シンフォギア
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
 人々を守り、バーサーカーに自分の歌を聞かせたい。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 死人ゆえに膨大な量の魔力を供給することが可能。
 しかし素質があるわけでもなく、無茶をすれば魂の焼失が訪れることとなる。

【人物背景】
 ツインボーカルユニット「ツヴァイウィング」の1人で、シンフォギアシステム3号「ガングニール」の装者。
 ノイズに家族を殺された過去を持ち、自らの手でノイズに復讐すべくシンフォギア装者となった。本来ならば適合係数が低く、ギアを纏うことは適わなかったが、適合制御薬「LiNKER」を過剰投与することによってシンフォギア適合者となる。当初は復讐の為だけに歌を歌い槍を振るっていたが、とある戦場で助けた自衛官の言葉から「自分達の歌は誰かを勇気付け、救うことが出来る」事を知り、復讐のためだけではなく、人々をノイズから護るために歌う事を決意する。
 完全聖遺物「ネフシュタンの鎧」の起動実験の際、ツヴァイウィングのライブ中に出現したノイズとの戦いで重症を負った立花響を守るために絶唱を使用し命を落とす。

【方針】
 聖杯戦争に巻き込まれる一般NPCをサーヴァントから守る。そしてバーサーカーの狂化が解ける方法を探す。


470 : 天羽奏&バーサーカー ◆7CTbqJqxkE :2015/08/31(月) 22:54:50 IU.G0r5E0
以上で投下を完了します。


471 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:57:17 zURtG8LE0
お疲れ様でした。これより投下します。


472 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:57:41 zURtG8LE0
 魔術によりインフラが成り立っている都市ユグドラシル。日用雑貨もまた魔術、錬金術により製造されている。
 とはいえ、手工業により製造を行う人間がいないわけではない。
 ましてや、別世界より召喚されたマスターならなおさらである。

 商業地区の一角。そこでは常に鎚を鋼材に打ち付ける音、切削、研磨される音が響き、化学薬品の匂いが漂う。
 その原因である一軒家には『トーネード工房』の看板が掛けてあった。
 工房内では一人の少女が図面と鋼材、薬品とを見比べている。
「ここにはEマテリアルは無いから高速度鋼を作って……。
 あと、買ってきた肥料から硝酸塩燃料を合成っと……。
 ガソリンも無いから、スチームエンジンでサイドカー付オートバイを……。
 あと何だったかな……ああもう必要な材料もない、燃料も無い、工作機械も無い、無い無い尽くしであるのは工夫だけってどこの戦争末期の軍隊よ」
 少女は頭をかき、ぼやきながらも手を止めず製造に必要な生産設備を作り出していった。
「とは言っても、なにも無い所から捻り出すのが私の天才たる由縁だけど♪」
 そう言って少女は微笑んだ。

「ふっ! ふっ!」
 家の庭では右目に眼帯をかけた少女が、真剣で素振りをしていた。
 剣の峰が背にふれるまで振りかぶり、足を進め振り下ろす。
 左足を後ろに引き、右足をひきつける。
 息を吸い、再び振りかぶり――。
「ちょっと、美緒! こっちに来て銃のチェックしてくれない!?」
 美緒と呼ばれた少女は刀を鞘に納め、ああ、と返答をした。

 美緒が体躯に似合わないロングバレルの銃を構え、的に向かい狙いをつける。
 息を吐き、引き金を『引く』のではなく『落とす』。
 轟音。そして的の中心を銃弾が粉砕する音。
「良し、問題は無さそうだ。いい腕だな、パナビア」
「当然よ、私は天才だもの」
 美緒の賞賛に、パナビアは胸を張った。

 銃のチェックを終えた後、二人は互いの作業を中断して一服していた。
「ぶっちゃけ、私は無理やり喚ばれたんで、聖杯ってどうもいまいち信用できないのよねー」
 パナビア・トーネードは工房士と呼ばれる、先史文明の遺跡発掘及び技術研究の専門家である。
 彼女は遺跡の探索中、唐突にこの魔術都市ユグドラシルに転送され、サーヴァントである坂本美緒をあてがわれたのだ。
「戦って、勝ち残った者に万能の聖杯が与えられる、か……。あなたの前でこういっちゃなんだけど……うさんくさー……」
 とはいえ、パナビアはこの召喚やサーヴァントシステムについては、関心がある。
 何しろ瞬間移動のシステムはパナビアの世界でもSFの領域なのだ。
 先史パシアテ文明でさえ実現できなかったのか、未だ発掘されていないのか、はたまた発掘されていても使用法が不明なのか。
 そう考えると興味は尽きない。
「胡散臭い、という割にはやけに熱心じゃないか」
 美緒の言葉に、パナビアは勢いよく立ち上がった。
「決まってるじゃない! 私は一番が好きなの、ナンバーワンよ! 誰も私の前で威張らせはしない!!
 それをあのド天然娘のナノカ・フランカは――!!」
「……誰だ、そいつは」
「と、いうわけで」
 パナビアは椅子に座った。
「なにが、というわけなのかわからないが……」
「例えうさんくさい代物であっても、勝負とあらば手を抜かないってことよ」
 口が乾いたのか、パナビアは紅茶を喉に流し込んだ。


473 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:58:07 zURtG8LE0
「もしも勝ち残って、真実聖杯が本物ならばどうする気だ?」
 美緒は真剣な目つきでパナビアに問いかけた。
「殺し合いなんて手法で願いを叶えようとする奴らは、結局都合に良い奇跡にすがりたい、目的に対する正当な努力をせず夢を叶えたいってだけでしょ?
 そんなの目標に向かって努力する人間全てに対する侮辱だわ」
「私だって先史パシアテ文明の完全な解析を目指す工房士よ。ある日突然全ての情報がこの聖杯戦争の知識の様に流し込まれたらどんなにいい事か。
 でも、それは私の今までの行為とこれまでの工房士が積み立ててきたものを、踏みにじる行為だと思うのよ。
 だから、そんなよこしまな願いを掻き立てる物なんて、きれいさっぱりブッ壊してやるわ」
 あらゆる願いが叶うという聖杯。その知識は既にパナビアに与えられている。
 それを知りながらパナビアは壊すと言い切った。
「壊すために手に入れる、か。まあ、いいだろう。私としてもどことなくこの聖杯とやらは怪しげに感じるからな」
「怪しげって、あんたのようなサーヴァントって願いがあって召喚された側なのに、なんでそう思うの?」
「うん? そうだな……勘だ!」
 呆気にとられたパなピアに対し、はっはっはっ、と美緒は豪快に笑った。
「実際のところを話せば、私は私の世界を侵略しているネウロイを止める、という願いがある。
 お前はどうだ? 聖杯の方が使用を望んだらどうする?」
「そ、それは……どうしても聖杯の方が使ってほしい、という事なら、使ってみる気も、ない、けど」
 言葉に詰まったパナビアに対し、正直だな、と美緒は笑った。
「ま、まあ聖杯はともかく、とりあえずは身を守るために行動するつもりよ。幸いフッケバインも武器扱いでここに来ているし」
 美緒とパナビアは工房の隅に居る二足歩行型のロボットに視線を向けた。身長は3m前後。肩には参式と漢字でペイントされている。
「サーヴァント相手は兎も角、マスター相手には十分すぎる戦力だな。ところで参式ってことは、壱号と弐号はどうなったんだ?」
「聞かないで……。いろいろあったのよ」
 壱号はナノカに負けたくない一心で相手諸共自爆を計り、弐号は暴走して大迷惑をかけてしまった、など語りたくもない。
「あとね。あなたのその恰好だけど、街に出るときはスカートかズボンでもはいてよね。恥ずかしいから」
「そうか? 別に私は何とも思わないが」
「私が思うのよ。何かその格好だと机を使って角●●するような娘に」
「フンッ!!」
「グハッ!?」
 美緒は刀の鞘でパナビアの頭をはたいた。
「やめろ! いろんな意味でやめろ!!」


474 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:58:37 zURtG8LE0
【マスター】
パナビア・トーネード
【出典】
蒼い海のトリスティア
【性別】
女性
【マスターとしての願い】
 聖杯をきれいさっぱりブッ潰す。  
【能力・技能】
 先史パシアテ文明の技術研究と復元開発を行う工房士という職業に付いている。
 専門は戦闘用ゴーレムの製造。
 他にも町興しイベントの計画立案やレーシングカー製造など大抵のものづくりに関わる。
 セキュリティが未だに稼働している遺跡を探索したりもするため、ある程度の戦闘力もある。
【weapon】
エンチャッテッド・ジーニアス
 パナビアが自作した巨大なレンチ型の万能工具。このネーミングセンスで彼女の性格を察してほしい。
 後述するフッケバインをレバーで手動操作する機能もある。
フッケバイン
 パナビアが自作したゴーレム(人間を模した二足歩行型ロボット)。
 肩に漢字で「参式」と書いてある通り、現在のフッケバインで三代目。
 自律駆動型ではあるが、明確な自我は備えていない。
 武装は両腕に装備された格闘用大型ブレードと、両膝に搭載された拳銃型40mm口径メガ・ドグラノフ。
 (パナビアの世界でドグラノフは硝酸塩燃料を用いて弾丸を射出する武器の総称)
【人物背景】
 元はOVAオリジナルキャラクター。ファンディスクとPS2版で原作に逆輸入された。
 ファンからの渾名は「先輩」「永遠の二番手」「2Pカラー」など。
 発明コンクールなどで常にナノカの後塵を拝してきたことで、ナノカを一方的にライバル視している。
 ナノカにいつも負け、しかも騒動に巻き込まれ大けがする不幸体質の持ち主。その際の悲鳴と絶叫は実に栄える。
 伊達に中の人が「悲鳴と絶叫が得意」とwikiに記述されていない。
 それでもめげない努力と無限大のド根性の人。
 そもそも常に二番を確保するという時点で、彼女も十分に天才の領域なのだ。
 ただ「10年に一人の天才」と「1000年に一人の天才」という差があるのだが。
【方針】
 自分から戦いは避けたいが、相手が戦闘を挑むのなら容赦はしない。


475 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:58:55 zURtG8LE0
【クラス】
ライダー
【真名】
坂本美緒
【出典】
ストライクウィッチーズ
【性別】
女性
【属性】
秩序・善
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:E(B) 魔力:B 幸運:B 宝具:B
【クラス別能力】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
巨人殺し:B
 自身より巨大な敵と戦い、打倒してきた逸話に基づくスキル。
 その豊富な戦闘経験により、巨大な敵と戦う際には、命中率・回避率・クリティカル率に補正がかかる。
千里眼:C+
 美緒の固有魔法。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 また、透視により敵の急所を看破する。
直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
魔力放出:B
 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 美緒の場合ウィッチの持つ標準的な戦闘技術・魔力バリアや斬撃、宝具『烈風斬』という形で行使される。
【宝具】
『N1K5-J紫電改五型』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 魔力を動力にする「魔導エンジン」により駆動される機械装置・ストライカーユニット。
 機械制御により魔力運用を効率的に行うことが可能で、これを装着することにより、飛行魔法を行使し空戦を行うことが可能。
 これを装着した際、美緒の敏捷ランクは3ランク向上する(ランクB)。
『烈風斬』
ランク:B 種別:対艦宝具 レンジ:1 最大補足:1艦
 美緒の魔力が込められた烈風丸による斬撃は、防御と攻撃を同時にこなし、巨大な戦艦をも一刀両断する。
【weapon】
九九式二号二型改13mm機関銃
 戦闘時に用いる銃火器。
烈風丸
 美緒が魔力を込めながら打ち上げた刀。近接戦闘及び宝具に使用する。
九九式20mm機関銃
 100発ドラム弾倉つき。美緒の助言を基にパナビアが製造した。
五式30mm機関砲
 通常弾、徹甲弾、焼夷通常弾を発射可能。美緒の助言を基にパナビアが製造した。
【人物背景】
 異次元から現れた謎の金属体・ネウロイを撃退するために結成された、第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」の戦闘隊長。
 1937年の扶桑海事変の頃から前線にいる大ベテランで、「豪放磊落」をそのまま人にしたような人望厚き天然ジゴロ。
 口癖は「はっはっはっは!」という高笑いで、そのへんの野郎共以上に漢らしい性格をしている。座右の銘は「質実剛健」。
 人材育成に定評があり自身も早朝鍛錬を欠かさないのだが、これは単なる鍛錬以外に、成人と共に下がる魔力量を少しでも維持しようという狙いがある。
 サーヴァントとして召喚された美緒は全盛期の魔力と衰退が始まった時期の戦闘技術を併せ持っている。
 固有魔法は『魔眼』。超視力で通常見ることができない領域まで見通すことができる。
【サーヴァントとしての願い】
 ネウロイの侵略を止める。
【方針】
 パナビアに従い、迎撃に徹する。
【基本戦術、運用法】
 空戦能力と魔眼による早期発見というアドバンテージを活かす必要がある。
 フッケバインも一応飛べるのだが、時速数十ノットが限界なので連携は難しい。
 パナビアと地上戦を分担し、罠を仕掛けた方が良いだろうか。


476 : ◆Mti19lYchg :2015/08/31(月) 22:59:45 zURtG8LE0
投下終了です。筆者が別スレに投下した川澄ボイスコンビに続く千葉ボイスコンビです。
タイトルは「パナビア&ライダー」でお願いします。
美緒のステータスはnig7QPL25k様の作品を参考にさせていただきました。この場を以ってお礼申し上げます。


477 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:31:05 2PCHGTRw0
投下させていただきます


478 : ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:31:35 zzzWeryE0
投稿乙です、こちらも投稿します。


479 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:32:12 2PCHGTRw0

 行政地区のある建物の部屋の前に一人の男がいた。

「失礼します」

 男は警察組織の一員で今日は外郭エリアで最近頻発している謎の破壊事件に関する報告書を提出に来ていた。
 入室した男の前にはその部屋の主である壮年の男、そしてもう一人青年が上等なソファに腰掛けていた。
 
「あの…彼は?」
「では報告を」
「え?」

 怪訝そうな顔の男の様子を気にすることもなく部屋の主は彼の持ってきた報告書を要求する。
 その様子にかすかな違和感を覚えたものの、彼の立場なら来客など珍しいことではないと自分に言い聞かせ報告書を提出する。
 だが男が驚いたのはその後だった。なんと彼は手渡された書類をあろう事かそのままその青年に渡してしまったのだ。

「な、何をしているんです!」

 あわてる男に部屋の主は告げる。

「ああ、君はもうお引取りいただいて結構です」
「何を言って…」

 その時点で男はこの状況がとてつもない異常事態であることに気づいた。
 行政地区における町の安全に関わる最高責任者の部屋に謎の人物がいてそれを誰も不審に思っていない。
 これは何かとんでもないことが起こっているのではないか、と。
 そう考えた次の瞬間、誰もいなかったはずの部屋の影から声が響いた。

「君はもうお引取りいただいて結構です、と言ったのが聞こえなかったかね」
「だれ…、え」

 目を向けた先にいたのは人間ではなかった。
 そこに人型の機械が立っている。見ると首プレートのような箇所があり数字が刻まれている。

(001…?今の声はこいつが?)

 男が呆然としたまま立ちすくんでいると、その人型は言葉を続ける。

「まったく警察官の正義感というのは面倒なものだ。余計な手間は掛けたくないのだがね」

 そう言うと白い輝きを放ち、まるで雪の結晶のような姿のを持つ怪物に姿を変えた。
 
「お、お前はいったい」
「私の名はフリーズ」
「え?」

 叫ぶ男に怪物はあくまでも静かに言葉を返す。

「もっとも名乗ったところで無駄だがね。聞いたところですぐ忘れるのだから」
「何を言って」

 男が聞き返すのと同時に、怪物から放たれた何かが男の耳の裏に突き刺さった。

 そして…


480 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:32:41 2PCHGTRw0



「失礼しました、では」

 何事もなかったかのように男が部屋を出て行き、続いて部屋の主もまた何事もなかったかのように会議に出かけた。
 2人には共通して耳の裏に雪の結晶のような印が付いていた。
 中には先ほどまで怪物の姿をしていた老紳士-フリーズ・ロイミュード-と青年が残っている。

「どうかね?」
「どうかねって言われても」

 話しかけられた青年、夜神月はソファの上で居心地悪そうに体を揺らした。

「その報告書から何かわかった事は?」
「別に…」
「そうか、では」

 もとより大したことが書いてあったわけでもない。それよりも青年は自分のサーヴァントの鮮やかな手口に感嘆していた
 
(何度見ても凄いな、これは…)

 彼は父と妹の家族を持つ何の変哲もない学生という役割を与えられていた。
 しかしそんな日々の中で、何か大事なことををやりかけのままにしている様な、何かに追われていたような気がしていた。
 そんな彼の記憶は街の中で偽りの学生生活を送っていた日常の中で何のドラマもなくある日突然に戻った。
 当初はその状況に戸惑ったが、既に常識外の事態に遭遇する経験があったからか、すぐに思った、これはチャンスだと。
 そして現れたアーチャーの能力を使って情報の集まるこの場所を押さえた。
 次に自分の周囲から以前の自分に関する記憶と記録を全て消させた。

(元の世界での記憶の一部が封じられていた理由は分からなかったが、そんなことはどうでもいい)

 彼はある日名前を書くだけで人を殺すことの出来るノートを拾った。
 そしてそのノートを使い犯罪者を殺し続けるうちに、自分を捕まえようとする相手が現れたことを知る。
 その相手は常軌を逸した天才で自分は窮地に立たされていた。
 だがどうだろう、この戦いに勝ち抜き聖杯を手に入れアーチャーを連れもとの世界に戻ることが出来れば。

(だからこの戦い、絶対に負けるわけにはいかない…)

 と、知らないうちに硬くなっていたらしい肩の上にアーチャーの手が載せられる。
 
「少し緊張しているようだが、大丈夫かね」
「ああ、問題ない」
 
 アーチャーは機械生命体らしいが少なくとも死神よりは信頼できるだろう、運命共同体という意味でも。
 と言うよりも、死神のノートを持たない今の自分にとってはアーチャーだけが頼りともいえる。
 だが他のマスターに気づかれずに情報を集められるこの場所。
 魔術の才能のないマスターには丁度いい魔力の消費が少ないサーヴァント。
 加えて他の参加者に手の内を見せることなく味方を作ることが出来る、記憶操作能力。
 今の自分はおそらくもっとも有利な立場にいるマスターだろう。

「俺はこの戦い、絶対に勝ってみせる」

 告げる月にアーチャーは軽く返す。

「気楽にやろうじゃないかマスター。幸いここには我々の駒に成ってくれる者が掃いて捨てるほどいるからね…」


481 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:33:16 2PCHGTRw0



「気楽にやろうじゃないかマスター。幸いここには我々の駒に成ってくれる者が掃いて捨てるほどいるからね…」

(君を含めてね)

 そうアーチャーは心の中で続ける。
 彼にとってはマスターもまた駒のひとつに過ぎない。
 すべては戦いを勝ち抜き、自分の世界で戦いを続ける機械生命体-ロイミュード-の仲間たちの下へと帰還するための。

(それにしても…)

 手元の書類に目を通す振りをしながら考える。
 やはり情報が集まってくる場を抑えたのは大きかった。当面はここで情報を集めることになるだろう。
 最もそれだけで欲しい情報の全てが得られるわけではない。
 いずれは自分が直接出歩くことになるだろう。そしてもしマスターやサーヴァントと出会えば能力を使い手駒にすればいい。
 
(だが忘れるな、全ての相手に私の能力が通じるわけではない)

 人間の中には「特異体質」とでも呼ぶべき、自分の能力が利かない者もいる。かつての自分を倒した男のように。

(まぁいい、その「屈辱」の感情が私を進化させる)

 ロイミュードの進化には強い感情が必要になる。生前の敗北の記憶から来る「屈辱」の感情が彼を進化態にしたように。
 そしてその「屈辱」の感情が最大まで高まった時、宝具となっている超進化態への道が開かれる。
 そのためには「特異体質」の人間を探しておくことも必要かもしれない。

「もっとも、君はそうではなかったようだがね」

 その小さな呟きは月に聞こえてしまっていたらしい。

「何か言ったかい?」
「なんでもないさ、マスター」

 そうかと答えて再び思考に没頭する夜神月の耳の裏には小さな印が付いていた。


482 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:33:54 2PCHGTRw0
【マスター】夜神月
【出典】デスノート(テレビドラマ版)
【性別】男性 (演:窪田正孝)
【令呪の位置】手の甲

【マスターとしての願い】
「戦い」に勝つ

【人物背景】
居酒屋でバイトをしているごくごく普通の大学生だったが、ある日名前が書かれると死ぬ死神のノートを手に入れ、
成り行きから犯罪者たちを消し続けたことから、正体不明の名探偵Lに追われることとなった。

成績はそれなりに優秀で運動神経もいいが、どこか厭世的な性格。
父親は警察官だが、捜査のために危篤状態の母に会いに来なかったことで、確執が生まれ(原作と異なり)警察官志望ではない。

【方針】
とりあえずは情報収集
戦闘の際には離れた場所にいるのが賢明

【備考】
「特異体質」の人間では無いようですが、記憶操作は受けていません
デスノートは持ち込めていません


483 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:34:30 2PCHGTRw0
【クラス】アーチャー
【真名】フリーズ・ロイミュード(ロイミュード001)
【出典】仮面ライダードライブ
【性別】無し (コピー元は男性 演:堀内正美)
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:B
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:B 宝具:B (人間体時)

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから1日間現界可能。

【保有スキル】
記憶操作:B
 人間の耳の裏から氷の針を打ち込む事で相手の記憶を操作することが出来る。
 魔術によるものではないため対魔力スキルでは防げず、機会生命体等の人外か特異体質のものだけがこれを無効化できる。
 他にも打ち込まれた針を分析することで効果を打ち消す物質を作成可能だが打ち込まれた針を取り出すのは死の危険が伴う。
 また記憶操作を受けたものは耳の裏に雪の結晶のような印が出来る。

コピー:B
 ロイミュード共通の能力で人間の姿や記憶をコピーすることが出来る
 姿形はコピー元の人間と同じで見分けることは不可能だが身体能力は人間を上回るためそれを利用して判別することは可能。
 人間の姿をとっている時は意図的に正体を明かさない限りサーヴァントであるとは認識できない。

重加速:C
 ロイミュードが引き起こすことの出来る特殊現象。
 この影響下ではあらゆる物理現象が遅延する。
 ただし使用するためには多大な魔力を必要とし令呪1つの使用で短時間狭い範囲の発動が限界である。


484 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:35:27 2PCHGTRw0
【宝具】

『総て凍てつかせる金色(フリーズ・ロイミュード超進化態)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 ロイミュード001の超進化態としての姿。
 自分の意思で使うことは出来ず「屈辱」の感情が極限まで高まることで発動し
 それ以降は常に発動した状態となりこの姿が基本となる。
 高エネルギーの破壊光線を放つことが出来るほかあらゆる能力が強化されておりパラメーターが下記に上昇する。

 筋力:B+ 耐久:B 敏捷:A 魔力:E 幸運:B 宝具:B


【weapon】
ロイミュードとしての肉体
冷凍エネルギー弾や吹雪によって敵を凍らせる


【人物背景】
クリム・スタインベルトと蛮野天十郎の二人の科学者によって作られた機械生命体ロイミュードの内の一体
本編の15年前に起きた一斉蜂起「グローバルフリーズ」で敗北したが復活し
それ以降は人間社会に潜伏し国家防衛局長官(参議院議員)の地位と自身の能力を利用し
警察上層部を動かし影から他のロイミュードの活動を支援していた。

人間としての姿は真影壮一という名の老紳士で普段は温厚な態度をとっているがその本性は冷酷かつ狡猾
自分の力に絶対的な自信を持っていたがその力が通用しない「特異体質」の人間と出会い
取るに足らない存在と考えていた人間に自分の能力が通じなかった「屈辱」の感情によって進化した。

その後自身の進化の切欠になった男の息子である仮面ライダードライブ(泊進ノ介)を使い
これに敗北することで極限にまで高まった「屈辱」の感情で超進化態となりドライブを倒すが
復活したドライブのタイプトライドロンに敗れる。

【サーヴァントとしての願い】
再び復活し元の世界に戻る。

【基本戦術、方針、運用法】
基本は情報収集
使えそうな相手がいれば「駒」にする
直接戦闘においてもそれなりの強さだが地力で勝る相手に逆転するのは困難なので、戦闘前に上手く立ち回ることが重要になる。


485 : ◆222z8iPYnw :2015/08/31(月) 23:36:53 2PCHGTRw0
以上です
時間ぶつかっちゃてすいません


486 : ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:39:15 zzzWeryE0
乙です、ドラマ版の月もいよいよ参戦とはたまげたなぁ

改めて投稿させていただきます


487 : リグル・ナイトバグ&キャスター ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:40:10 zzzWeryE0
「さあ行きなさい、セイバー!その娘を斬り潰してお終い!」

「斬り潰すって…斬るか潰すかどっちかにしてよ!」

 自然保護区内にある森の中で、女性マスターと女性サーヴァントのコンビと緑の髪の少女の追いかけっこが行われていた。
 追いかけられている少女の名前は、リグル・ナイトバグ。
 今しがた記憶を取り戻した彼女は、令呪が右手の甲に浮かんでくるのを確認したのと同時にこの二人の襲撃を受ける羽目になった。

 虫を操る魔術師、という偽りの記憶を与えられた上でユグドラシルで過ごしていたリグル。
 彼女にとって、虫たちは武器であり同胞であり心の支えであった。
 それゆえにこの森林に入り虫たちと触れ合う、というのが彼女の日課となっていた。
 そんなリグルに目を付けたのが、今自らのサーヴァントと共に彼女を追いかけているこの女性マスターである。
 リグルの噂を聞きつけたこの女性マスターは、その魔術師の少女こそがマスター候補の一人である可能性が高いと推測し、リグルをマークしていたのだ。
 そして尾行を開始して三日目。リグルの右手に令呪が表れたのを見て、この女性マスターの推測は確信に変わった。
 リグルのサーヴァントが現れる前に彼女を倒すべく襲撃をかけ、現在に至るというわけである。

「記憶を取り戻したら、サーヴァントが来てくれるはずなんだけど…!」

 時折後ろを振り返りながら、必死に逃げるリグル。
 幻想郷にいた頃のように飛んで逃げれば一発で振り払えるだろうが、どういう訳か飛行能力には制限がかかっているらしい。

「きゃあっ!」

 ついに足がもつれてしまい、その場に転倒する。
 慌てて起き上がろうとしたリグルの首筋に剣が当てられる。

「さあ、観念なさい。」

 勝ち誇った顔を浮かべる見るからに高飛車そうな女性マスター。
 それとは対照的に、冷徹な目つきでこちらに剣を向けるサーヴァント。
 死への恐怖が半分、悔しさが半分という心境のリグルであったが、ふと空を見上げると一つの影が目に留まった。

「蝶…?」

 彼女の言葉に釣られるように女性マスターとサーヴァントも空を見上げる。
 二人の目も空を漂うその影を捉える事ができた。
 姿こそ逆光でよく見えないが、あの影の形は正に蝶そのものである。
 しかし。

「それにしては縮尺がおかしいような…」

 そう、その影の形は蝶そのものであったが縮尺がおかしい。
 具体的に言えば、あれだけの高度にいるにも関わらずまるで目の前にいるかのような大きさをしている。
 その場にいる三人の頭にクエスチョンマークが浮かぶ中。

「シュワッチ!」

奇声と共に、問題の蝶は急降下を開始した。


488 : リグル・ナイトバグ&キャスター ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:41:20 zzzWeryE0


「武装錬金!」

 サーヴァントとして召喚された男、蝶人パピヨン。
 しかし奇妙な事に、自らのマスターとなる筈の存在がどこにもいない。

 手っ取り早くマスターを見つけるべく、パピヨンはいつも通り武装錬金を使い、飛ぼうとした。
 しかし、核鉄は反応こそ示すものの、肝心の武装錬金は発動する様子を見せない。

「…なるほど、これが俺の宝具というわけか。」

 頭の中に流れ込んでくる聖杯戦争の知識。
 武装錬金が不発に終わった理由を察した彼はもう一度核鉄を掲げ、叫ぶ。

「臨死の恍惚(ニアデスハピネス)!」

 宣言と同時に黒色火薬が集まり、蝶の羽根の形を作り出すのを確認したパピヨンは、マスターを探すべくそのまま飛翔した。



 マスターを探すべく行動するパピヨンだったが、ふと彼の頭に一人の男の顔が浮かんでくる。
 武藤カズキ。決着をつけるという約束を果たさぬままヴィクターと共に月へと消えた宿命の相手。
 聖杯戦争を制せば、奴と決着をつける機会も与えられるだろう、が。

(くだらんな。武藤カズキとの決着は俺自身でつける。聖杯とやらの力など借りるまでもない。)

 自分を勝手に巻き込んだ挙句、数ある駒の一つとして扱おうとするこのゲームの黒幕。
 そんな相手の言いなりになってゲームを進める事も、願いを叶えてもらい借りを作る事もパピヨンのプライドが許さなかった。

(それより俺にはやる事がある。元の世界に帰還し、白い核鉄を完成させて―)

 自らの手で白い核鉄を完成させ、カズキを人間に戻し今度こそ決着をつける。
 だが、その為に聖杯などに頼るつもりはない。
 それがパピヨンが出した結論であった。

「…あれか。」

 ちょうど自らの行動方針を決めたところでパピヨンの目が三人の人影を捉える。
 一人の命が奪われようとしている二対一の光景。
 二人組の方がマスターとサーヴァントだとすると追い詰められている方こそが自身のマスターである可能性が高い。
 そう結論づけたパピヨンは。

「シュワッチ!」

奇声と共に彼女らの元へ急降下した。


489 : リグル・ナイトバグ&キャスター ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:42:42 zzzWeryE0


 猛スピードで近づいてきた例の蝶は、リグルと女性マスターたちの間に割って入るように降りてきた。

「きゃっ!」

「何奴…っ!?」

 とりあえずリグルの事は後回しにして、マスターの安全を守る事を優先しようとしたサーヴァントであったが、目の前に現れた蝶(?)の姿を見て思わず絶句する。

 前が首から腰元にかけて大胆に開いている、黒い全身タイツ。
 まるで強調するかのように股間につけられた蝶のワンポイント。
 そして舞踏会から飛び出してきたかのような蝶をあしらった紫色の派手な仮面。
 彼のその風貌を一言で表現するならば―――

「いやああああああっ!『変態』ですわあああああっ!」

 悲鳴をあげながら逃げ出す女性マスター。
茫然と立ち竦んでいたサーヴァントの方もマスターの声を聞いて我に返る。

「ま、マスター!」

 慌てて女性を追いかけるサーヴァント。

「無粋な連中だ。この蝶・サイコーなファッションを理解できないとはな。」

 二人の姿が見えなくなるのを確認すると、その男はリグルの方を振り向く。

「さて…問おう。お前が俺のマスターか?」

 奇抜すぎる風貌の男はそのままリグルに問い掛ける。
 つい先程まで生命の危機に瀕しており、精神的に消耗していたリグル。
 今の彼女にとって、その男の姿はあまりにも衝撃的―――

「…あなたが、私のサーヴァントなの?蝶々の妖精さん。」

 ―――でもなかった。



 リグルが目の前に現れた自らのサーヴァント、パピヨンの姿を受け入れた理由は二つ。

 一つは、パピヨンが蝶を模した仮面をつけていた事である。
 彼女にとって、虫という存在は大切な同朋である。
 その虫の中でもとくにメジャーな存在である蝶をあしらった仮面。
 それを付けているという事実がリグルの中で、一見変態としか思えない彼の恰好に対する評価を高めていた。
 早い話が、「蝶を愛する者に悪い者はいない」というかなり短絡的な考えではあるが。

 もう一つの理由は、彼女が住む幻想郷では妖精という種族自体が珍しくない事である。
 リグル自身も遊び仲間である氷精をはじめ、妖精との交友はそれなりに広い。
 ゆえに妖精であろうパピヨンに対してはとくに恐怖も感じなかったのである。




―――最も、パピヨンがホムンクルスであり妖精ではない事などリグルは知る由もなかったが。


490 : リグル・ナイトバグ&キャスター ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:46:27 zzzWeryE0
【クラス】キャスター
【真名】パピヨン
【出典】武装錬金
【性別】男性
【属性】中立・悪

【パラメーター】
 筋力:D 耐久:C- 敏捷:C 魔力:B 幸運:A 宝具:B

【クラス別能力】
陣地作成:B+
錬金術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
”工房”及び“パピヨンパーク”を形成することが可能。
道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
材料が揃えば、特殊核金の生成も可能。

【保有スキル】
人間型ホムンクルス:?
錬金術によって生物の細胞をベースに創造した寄生体を、人間に寄生させることで誕生する半不老不死の生命体。
通常のホムンクルスは寄生体に精神を乗っ取られるが、人間型の場合、寄生体のベースに寄生される人間の細胞を使うことで寄生体を「分身」としているため
精神は同化して残り、肉体のみがホムンクルスへと変貌する。
人間に戻ろうとする本能的な未練が食人衝動として起こり、倒すには胸にある証印を貫く必要がある。
……のはずが、パピヨンは食人衝動もなく、胸に証印も表れていない。
結果、心臓や脳を貫かれても死なず、必ず再生する。
完全に倒すには、身体の大半を破壊するしかない。
蝶・天才:><
英明にして、常人には理解不能な知性と感性。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“論理思考”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
精神汚染:C
自身ではなく他人に影響を与える精神干渉スキル。
判定に失敗した場合、パピヨンの姿をエレガントと感じる。
不治の病:A
免疫力が低下し続ける原因不明の病。
常時、体力が減少し、回復が遅れるバッドステータスがつく。
このスキルは削除できない。
空蝉:D
服を素早く脱ぎ捨て、それを囮とすることで、一度だけ敵の攻撃を回避できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

【宝具】
『臨死の恍惚(ニアデスハピネス)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50人
パピヨンが創造する、黒色火薬の武装錬金。
パピヨンの思うがままに形を変え、自由に爆破できる。点火はパピヨンの有視界内で、50m以内に限られる。
全ての火薬を使い果たすと、補充されるまで丸3日かかる。
だが、サーヴァントになった影響で、マスターの魔力提供により時間を短縮できる。

【weapon】
核金(かくがね)
"武装錬金"と唱えることにより、闘争本能を高め宝具を創造する。慣れれば無音無動作でも使用可能。
通常時は生存本能を揺り動かし、自己治癒力を高め傷を癒す。
破損しても自動修復されるが、修復時間は破損具合による。

蝶々仮面(パピヨンマスク)
仮面舞踏会でもなければまず実物を見ることがない、蝶を模した仮面。パピヨンが人間を止めた証であり、いついかなる時でも外さない。
何の能力もないただの仮面だが、パピヨンが人間から外れている証明ということで、パピヨンに精神干渉への高い耐性を持たせている。

特殊核金
パピヨンが道具作成スキルで製造する。
この核金を装備しておけば一般人でもサーヴァントにダメージを負わせられる。ただし武装錬金は創造できない。
能力は以下の通り。同時に3つまで装備できる。
I   筋力値20%UP
II   筋力値30%UP
III  耐久値15%UP
IV   耐久値25%UP
IX   炎、毒無効
X    毒無効
XI   炎無効
XII  地形による速度低下無効
XIII  敏捷値25%UP
XIV  宝具の威力強化
XV   宝具の魔力消費30%減少
XVIII HPが0になっても1度だけ復活。発動後破壊される。


491 : リグル・ナイトバグ&キャスター ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:47:28 zzzWeryE0
【人物背景】
元々は錬金術によりホムンクルスへと変態した人間。
本名は別にあるが、真名はあくまで「パピヨン」である。
資産家の長男で眉目秀麗、成績優秀と輝かしい未来が待っているはずが、原因不明の病に侵されたことで一転、本人言うところの「地を這うイモ虫」になった。
自力で病気を治療するため、実家にある錬金術の書を研究し人間型ホムンクルスの寄生体を創造する。
だが不完全なホムンクルスを使い変態したことで「不治の病のまま、半不老不死の身体」になってしまう。
主人公の武藤カズキとは当初は敵対していたが、やがて彼との決着をつける事に執着するようになる。
その為、彼が自分以外の勢力に命を狙われていた際は彼の味方として行動していた。
参戦時期は9巻終了後、カズキが消息を絶った後。

【サーヴァントとしての願い】
元の世界に戻り武藤カズキと決着をつける。聖杯は信用しない。

【基本戦術、方針、運用法】
ホムンクルス特有の高い身体能力を持っており宝具を使わずとも徒手空拳でいくらか戦える。
また、宝具自体も攻威力かつ遠隔操作と飛行が可能と攻撃面に関しては非常に優秀。
その反面、莫大なエネルギーを必要とするホムンクルスの体質と身体を蝕む不治の病により持久力は並の人間以下なため、耐久力こそ高いものの長期戦は不向き。
また、武装錬金の火薬を使い切ってしまうと補充しない限り使用不可能になってしまうため、乱用は厳禁。
以上の点から総じて短期決戦向けのサーヴァントである。



【マスター】リグル・ナイトバグ
【出典】東方Project
【性別】女性
【マスターとしての願い】
幻想郷に生還する。

【weapon】

リグルに使役される虫の大群。
彼女の意のままに動き、弾幕を展開して攻撃を行う。

【能力・技能】
蟲を操る程度の能力
文字通り虫を意のままに操る。
他の参加者の能力で出現した虫まで操れるかは不明だが、少なくとも野生の虫は確実に操れる。

触角
頭部から生えた二本の触角。
虫の妖怪である彼女は、人型の妖怪としての耳などの感知器官と、この触角を併せて、少なくとも人間以上の感知能力を持っている。
 

【人物背景】
幻想郷に住む蛍の妖怪。
永夜異変の際には異変解決に向かう霊夢ら主人公たちの前に立ちはだかった。
虫の妖怪なため、寒さや殺虫剤などが弱点。
かつてはその能力を活用して、指定した時間に大量の虫が集まって知らせるという「蟲の知らせサービス」を行っていた事があるなど人間相手に対する友好度は決して低くはないと思われる(現在は飽きたためサービスを終了しており、当の本人も覚えていない)。

【方針】
とりあえず進んで戦闘は行わない。


492 : ◆nTEbAl8KL. :2015/08/31(月) 23:52:00 zzzWeryE0
以上で投稿終了です

パピヨンの設定は二次二次聖杯の登場候補作を参考に、参戦時期に合わせて一部変更させていただきました。
この場を持ってお礼を申し上げます。


493 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:52:36 hRV0d0u60
皆様投下乙です
私も投下いたします


494 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:52:50 hRV0d0u60










 託された夢はいらない
 叶える夢は自分で掴むものだから










 ◆


495 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:53:13 hRV0d0u60

 薄暗い路地裏。
 その奥の、薄汚れたゴミだらけの袋小路。

「畜生ッ……!!」

 そんな場所で、壁を背に肩で息をしている少女が一人。
 手には包丁を握りしめ、今にも倒れてしまいそうなほどに疲弊してしまっている。
 なぜ、彼女はこんなところにいるのか?
 どうして、こんなことになっているのか?
 答えは単純である。

「チョコマカと逃げ回りやがって……!」

 2人組の男に追われている……いや、追われていたからだ。
 1人は今にも、手に持った剣で少女に斬りかかりそうな程に激昂している。
 それとは対照的に、もう一人の男は表情一つ変えずに、冷静に言った。

「激昂するんじゃない"セイバー"、勝敗は既に決しているのだから焦ることはない。ゆっくり……殺れ」
「そういうことか……そういうのは得意だぜ、"マスター"」

 ニヤリ、と下卑た笑いを浮かべ、"セイバー"と呼ばれた男はゆっくりと少女に近づく。
 相手の恐怖を煽るように、わざとらしく、ゆっくりと。
 一歩、また一歩と歩み寄るたびに、少女の瞳から希望の光が、消えて……。

「……イヨ」
「何っ?」



「来イヨ……カカッテ来イ、ッテ言ッテルンダヨ……」

 ――――光は、消えない。消えるはずがない。
 生きることを諦めていない人間から、希望の光が消え去ることが決してない。
 例え絶体絶命で絶望的な時でも。
 ギリギリ極限のピンチが迫っていても。
 生きることを諦めていないのであれば、光は消えない。

「ああッ!? てめぇ、この状況で何抜かしてやがる!?」
「ウッセェ! 俺ガ死ヌマデ、勝負ハ終ワラネェ!!」

 握りしめた包丁を構え直し、少女は叫ぶ。
 結果がどうであろうと関係がない。
 負けても勝っても分けても、この内のどれかに転ぼうと。

「そうかよ……じゃあ……死にやが―――――ッ!?」


496 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:53:42 hRV0d0u60

 振りかぶられた剣が少女を切り裂く前に、男の胸元に何かが深々と突き立てられた。
 それは……漆黒の柄に桜が散らされた、妖しくも美しい短刀。
 それを突き立てているのは、蛇柄の眼帯をした、謎の男。

「勝てもせんのに、喧嘩売ったらアカンで?」
「あががッ……て、てめぇ……!?」
「おう、何ボサッとしとんねん!? 早よ"マスター"倒せや!」
「ア、アァ!!」

 そこから先は……もはや語るまでもない。
 あとに残されたのは、薄汚れた道端に転がるかつてはマスターだった存在のみ。
 少女も、眼帯の男も、姿を消していた。
 ……この後、放置された死体が見つかって騒ぎになったが、それはまた別の話。




 ◆





 戦闘を終え、少女は塒代わりに使っている廃屋へと戻ってきていた。

「こないな場所で寝泊まりしとるんか。けったいな趣味しとるなァ」
「好キデコンナ処ニイル訳ジャネェヨ」
「ま、しゃあないわな――――その姿やったら、表通りは歩けへんやろ?」
「放ットケ」

 窓から差し込む月明かりに照らされ、明らかになった少女の顔。
 ……それは、人のものとは違った、異質なもの。
 例えるならば、猫のような。しかし、それでいて人であるような……。
 そんな奇妙な状態の彼女を一言で表すならば……"獣人"と言ったところか。

「それで、お前は聖杯使うて何かしたいことあるんか?」
「ア?」
「願いとか夢とか、あらへんのか」
「……コレカラ考エル」


497 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:54:14 hRV0d0u60

 思いがけない答えに、セイバーは目を丸くする。
 もっとまともな答えがあるんじゃないのか、もっと何かないのか。
 そんな事を言いたげな表情で、セイバーは少女の答えを待っていた。

「何ダヨソノ顔。……俺モ好キデココニ来タ訳ジャネェンダ」

 不機嫌そうな表情を浮かべ、少女は吐き捨てる。

「なんや、釣れへんなぁ。……ま、ええわ。どちらにしろ、もう戦争は始まっとるんや。
 お前にやる気が無うても、相手はそんなんお構いなしや」
「ソンナ事分カッテル」
「やったら、少しは腹ァ括っとくんやな。……俺は暫く消える。用ができたら呼んでや」
「オイ、チョット待テ」

 そう言って霊体化しようとするセイバーを、少女は引き止めた。
 気怠さを隠そうともしないセイバーをよそに、少女は訊く。

「"セイバー"ジャナイ……本当ノ名前ヲ、訊カセテクレ」
「後でもええやろ?」
「今ニシテクレ」
「…………しゃあないな。一回しか言わへんからよぉく聞いとけや」










「俺は……真島吾郎。よろしゅうな」
「俺ハ、"つー"ダ」

 かつては狂犬であり、今では超人の域に達する男。
 無限大の可能性の中の一つから選ばれた少女。
 2人の戦いは、これから始まる。


498 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:54:28 hRV0d0u60

【クラス】セイバー
【真名】真島吾朗
【出典】龍が如くシリーズ
【性別】男
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C(B+) 魔力E 幸運C 宝具C

【クラススキル】

 対魔力:E
 元々魔力とは無縁の世界にいた故のランク。

 騎乗:E
 大型トラックの運転くらいならできるが、それ以外だと……。

【保有スキル】

 カリスマ:C
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。

 強者の矜持:A++
 真島の"自分に命令できるのは強いやつだけ"という思想がスキルへ昇華したもの。
 (戦闘力に限らず)真島が強さを認めるか、本人が自ら選んだ存在以外からの命令を拒絶する。
 A++ランクともなれば、認めてもらえなければ令呪による命令以外は拒否されかねない程危険。
 このスキルは外せない。

 ヒートアクション(偽):-(D)
 その時の状況に応じて、必殺の一撃を放てる。回避可能ではあるが、技量が必要。

 戦闘続行:B
 何度やられても勝負を挑み続ける、不屈の闘志。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】
『隻眼の魔王』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:自身 最大補足:-
発動すると、体から紫色のオーラ(のようなもの)が立ち上る。この状態のとき、

・敏捷がランクアップ。それに伴い、残像を伴うほどのスピードで回避行動を取れる。
・質量のある分身を繰り出せる。分身は攻撃を食らうと消える。また、この分身は個別に攻撃を行う。
・回転攻撃が行える。これを繰り出している間だけ敵の攻撃で怯まない。
・敵からの攻撃で怯み難くなる。
・スキル"ヒートアクション"がアクティブになる。
・上半身裸になる(が、メリットにもデメリットにもならない)。

などの効果を得られる。


499 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:54:48 hRV0d0u60



【weapon】
・鬼炎のドス
 体の一部、兄さんの右手などとも揶揄される、真島が長年愛用しているドス。
 故に、素手の相手にドスを用いてもまったく卑怯ではない。体の一部なのだから。いいね?

・鍛え上げた肉体
 そろそろ50歳になる男の体とは思えない程に、無駄な肉のない美しい肉体。

【人物背景】
 シリーズ通して、主人公である桐生一馬(と愉快な仲間たち)に絡んでくる、極道組織"東城会"の舎弟頭(『龍が如く5』時点)。
 素肌に羽織った蛇柄のジャケットと左目の眼帯が特徴。
 初期は笑うべき場面で笑わなかった部下を金属バットで滅多打ちにするなど、キ……狂気的な行動が目立ったが、
 歳を重ね、また背負わねばならない物も増えたからか、幾分かまともになっている(おかしくないとは言っていない)。
 良くも悪くも、(真面目な時以外は)コミカルな性格。

 格闘スタイルは匕首(いわゆるドス)を主体とした我流。
 関西弁で喋るが、実は関西人ではない(中の人も)。それゆえ、兄さんの口調は通称"真島弁"。


【サーヴァントとしての願い】
 何やろなぁ?ま、折角サーヴァントになったんや。楽しませてもらうで。

【基本戦術、方針、運用法】
 飛び道具の類が無いので、必然的に近接戦闘を主体にせざるを得ない。
 素でもそれなりに戦えるが、本格的に攻める場合は『隻眼の魔王』を使用すべきか。
 ただし油断は禁物。



【マスター】つー
【出典】アスキーアート
【性別】女
【令呪の位置】右掌
【マスターとしての願い】
 何カ知ランガ、楽シマセテモラウゼ。

【能力・技能】
・包丁投げ
 どこからか包丁を取り出してブン投げる。精度はそこそこ。

【人物背景】
 同時期に存在した「シーチャントアソボウ(しーちゃんとあそぼう)」というスレに似せた偽スレ、
 「ツーチャントアソボウ(つーちゃんとあそぼう)」というスレ内で、"アヒャったしぃの偽物"として登場したのが初出。
 その後、スレタイから"つー"と名づけられた。細かな設定は描く人やAA長編によって異なる。
 しかし、この"つー"は特定のAA長編の世界から来たわけではない。

【方針】
 ……マタ後デ。


500 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:55:00 hRV0d0u60
投下を終了いたします


501 : ◆rjzjCkbSOc :2015/08/31(月) 23:58:03 hRV0d0u60
すいません、ミスを見落としていました
修正箇所は以下の通りです


【マスターとしての願い】
 何カ知ランガ、楽シマセテモラウゼ。

 ↓

【マスターとしての願い】
 ……ドースンダ、俺ハ。

申し訳ありませんでした。


502 : ◆yrSXkrRWgs :2015/08/31(月) 23:59:36 h5GGt1kU0
投下します


503 : 狭間カノン&シールダー ◆yrSXkrRWgs :2015/09/01(火) 00:01:13 HitkJBCk0
夢ならばどれだけ幸せかと何度も思っていた。

戦いの果てにある平和という名の楽園を目指し続けてきた。
昔のように流れに身を任せないで仲間と共に蒼穹《空》を目指し続けた。

禍津が去っても去らなくても蒼穹は蒼いままで、それでも真の平和は訪れない。

時が流れ第一線を退いて後輩の指導にも務めた。仕方がないことだが巻き込みたくない。
遺伝子がどうとか身体がどうとか……守ってもらって、その末に彼らが死ぬなんて許せない。

だから一騎を止めたかった。止められなかった。

もう大事な人を失いたくない、帰る場所を守りたい。
だから私はもう一度ファフナーに乗った。守るために、生きるために。
戦ったさ、島だけじゃなくて人類を守るために、生きるために。

そうして私が得たのは皆の墓を見る幻想だった――。










「――――――――z________ッ」




ベッドから勢い良く上半身を起こしたカノンの表情は苦しみの色に染まっていた。
借りている一室で目を覚ます。
彼女が見ていた夢はファフナー……自分の愛機が朽ち果て、再起不能となっていた錆の塊。
豊かな自然と比較するように置かれている大切な人達の墓が並べられていた悪夢。

フェストゥムの戦いを得て彼女が得たのは未知なる力。手に入れたくもなかった異形の力。
未来を視るその力は戦闘において数多の答えを見つけ出す驚異的な力だった。
複数の可能性を導き出し、戦闘の最善な結果を求めるその視る力はフェストゥムとの戦いに大きく貢献していた。
SPDと呼ばれる力だが、カノンと共に目覚めた後輩達の身体は悪夢に蝕まれていくばかり。
人間だが人間と呼べるか危うい進行を見せ、まだ子供である英雄には辛い副作用となっていた。

そしてカノンに訪れる悪夢は視え過ぎる未来――視たくもない未来を視てしまう強制の悪夢。

叫んでも誰も駆け付けてくれない。
手を延ばしても誰も掴んでくれない。
涙を流しても誰もその涙を拭ってくれない。
視たくも無いのに視えてしまう悪夢、悩み続けるしかない永遠の闇に堕とされた己。

どうしようもない闇の中で、気付けば自分の身体は竜宮島ではない世界――聖杯戦争に招かれていた。


504 : 狭間カノン&シールダー ◆yrSXkrRWgs :2015/09/01(火) 00:01:43 HitkJBCk0

竜宮島よりも発達している生活基盤――本土の水準だろうか。
慣れるまで時間は掛からなく、この世界での生活も問題なく適応した。
適応していく中で、まだ島に取り残されている仲間の存在がカノンの心を苦しめる。

自分だけがこんな世界で暮らしていいのだろうか。

フェストゥムが襲来しない世界、けれど他の参加者が襲ってくる。
しかし自分には頼れるサーヴァントであるシールダーが守ってくれる。
生命の危険に変わりはないが、自分が前線に出る回数は激変してしまった。
自分だけが安心して明日の陽を拝める現実と島でフェストゥムと戦っている、残されている仲間達。
狭間に押し潰されるような感覚は日夜カノンの心に悪影響を及ぼしていた。

最もこの程度で弱音を吐く程、甘い人間ではない。
けれど島を救った英雄でもまだ人間という単位で視れば若過ぎる。
世界の命運を背負うには、彼女達少年少女には早過ぎた。


「大丈夫かマスター」


誰もいない方角から声だけが響くと、その地点に砂塵が舞い始め、消えると一人の男が現れた。
砂塵を操る男こそがカノンのサーヴァントであるシールダーだ。
その力はとても頼りがいがあり、此処までほぼ無傷で他のサーヴァントを倒している。

シールダー故の防御能力はマスターであるカノンをも守ってくれる、彼女にとっての盾である。

「大丈夫だシールダー……私は、願いを叶えるためにも止まれない」

汗を拭いながらベッドから降りる。そして冷蔵庫からペットボトルを取り出し口に含む。
静かな空間に水を飲み込む音が響いた後、それを冷蔵庫の中へ戻し、カノンはシールダーへ向き直す。

「聖杯を手に入れれば願いが叶う……それなら私は島の――世界の平和を願う」

「願いを叶える奇跡は一生に訪れるか訪れないか。その選択を俺は止めない。マスターに任せる」

力強く発言するカノンをシールダーは咎めない。
願いを叶えるためには他人を殺すことになる――それがどうした。

と、言いたい所だがカノンはそんな外道染みた手段は絶対に取らない。
倒すならば既に過去の存在となっているサーヴァントに限定する。
マスターを殺す時は例外無く、相手がどうしようもない外道であり、悪と断定出来る場合のみ。
カノンと同じように自分の意思とは関係なく巻き込まれた参加者も存在するかもしれない。
全てが敵、ではなく、この世界にも仲間に成り得る存在が居るはずだ。
柔軟に物事を判断しなくては自ら首を絞めることになり、早期脱落に繋がってしまう。

「俺はお前の影だ……自分のことだと思って使ってくれ」

「そんな人形みたいな扱いは御免だ。一人の人間として私と一緒に戦ってくれ」

「……ああ。お前がそれでいいのならそうさせてもらう」

シールダーと云えど元は人間だ。
道具扱いを自ら進言するが、一人の人間として扱われるのは悪くない。
嘗て独りだった少年は日ノ影と出会い、立派な風ノ影として成長している。

今の彼を破る矛はどれだけ存在するのだろうか。


505 : 狭間カノン&シールダー ◆yrSXkrRWgs :2015/09/01(火) 00:02:39 HitkJBCk0

カーテンを開けたカノンを日差しが優しく包む。
窓から見える自然は竜宮島を連想させるが、違う。あの感覚には程遠い。

「私の居場所は此処じゃない――だけど、此処にいる」

帰る場所があるなら。
死者となって聖杯戦争の土へ還ること絶対に許さない、生き残ってみせる。
この身体と意思は絶対に朽ちたり粉々になったりなどしない。
あの場所へ還るためにカノンは聖杯戦争をシールダーと共に勝ち抜いてみせるだろう。

生命の輝きは最後の時まで色褪せることは無い。蒼穹に届くまでこの輝きが、生命が失われることは無い。

「帰る場所があるから私は戦える。皆が居るから私は此処にいる――だから」

私が私を保てているのは、私が私を司っていれてるのは。
私の中の要に芯が通っている訳は。皆と一緒に騎兵《ファフナー》を乗れるのは。


蒼穹を翔け、日を拝めるのは。


「皆の場所へ、私の島へ帰りたい――そのために力を貸してくれ、ふふ……しつこいようだが頼むぞシールダー」


皆のおかげ。それが宝物であり、蒼穹よりも美しい輝き。
離れたくない。ならば聖杯と云う極上の土産を持って帰ってやろうではないか。
私は私、此処にいる。
だったら最後まで戦って、皆の場所へ帰る。

カノンから差し出された手をシールダーは黙って握り返す。
元々口数が少ない男であったが、日ノ影との出会いを通じて人間味を取り戻している。
それでも多くを語らないが風ノ影には己の芯が存在しており、何も考えていない訳ではない。
とある世界を救った英雄の一人、砂塵を背負う一人の影。

握り返したその手には確かな力と絆が感じられていた。



【マスター】
 狭間カノン
【出展】@蒼穹のファフナー EXODUS
【性別】女性
【令呪】右腕

【マスターとしての願い】
 優勝し竜宮島へ帰る。
 願いはフェストゥムをこの世から消すこと。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 機動兵器の操縦及び、軍人としての知識・技能。
 また、未来を視る能力を持っている。幾つかの可能性がビジョンとして現れ最善の答えを導く能力。
 必ず発動する訳ではなく、戦闘における極限状態や絶体絶命時のみ、発動される。

【人物背景】
 蒼穹作戦から時を過ぎた後、第一線を引いた彼女は後輩の指導に徹していた。
 謎のネーミングセンスを放つもシゴキは強く、教官として相応しい人物に成長している。
 しかしフェストゥムの襲来は止まらず、嘗て自分と一緒に戦っていた仲間も戦線へ参加。
 己の生命を犠牲にして戦う仲間を止められなかったことに涙を流しながらも、彼女もまた再びファフナーへ乗り込む。
 フェストゥムとの戦闘を通して未知なる能力に目覚めたがそれは悪夢の序章に過ぎなかった――。

【方針】
 殺すのは基本的にサーヴァントのみ。戦闘はシールダー中心に行う。
 自分も援護出来ればいいが、銃が無いため出来れな確保したいところ。


506 : 狭間カノン&シールダー ◆yrSXkrRWgs :2015/09/01(火) 00:03:02 HitkJBCk0

【クラス】
 シールダー

【真名】
 我愛羅@NARUTO

【パラメーター】
 筋力:C 耐久:A+ 敏捷:D 魔力:B 幸運:D 宝具B

【属性】
 秩序・善

【クラススキル】
 対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師では砂の盾に傷をつけられない。

 騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。Cランクでは野獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。

【保有スキル】
 真眼:C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 魔力放出:B
 己の魔力(チャクラ)を放出することで自身の能力や忍術を強化する。

 気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。完全に気配を断てば発見する事は難しい。

 忍術(砂):A
 母なる愛を受けたシールダーは砂を扱う忍術を得意とする。
 自前のチャクラ(魔力)である程度ならばマスターからの供給無しで戦える。

 カリスマ:B
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。

【宝具】

『我が背負うは風なる影』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:――
 シールダーが常に背負っている瓢箪。その中には大量の砂が仕込まれている。
 彼は砂を自由自在に操ることが可能で、砂を使う忍術を得意とし戦闘を行う。
 この宝具の真なる証は母の自愛による完全自動防御にある。
 瓢箪に宿る母のシールダーを愛する思いが彼を自動で守る砂の盾として機能する。

『呼び示すは一なる尾、砂塵の獣』
 ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:―― 最大補足:――
 嘗てシールダーに宿っていた尾獣・守鶴を口寄せし戦闘に参加させる。
 その姿は馬鹿デカい砂の狸であり、巨体故に大きな戦闘能力を保有している。
 砂と風を操るが、その巨体故に目立ち、使用される機会は少ないだろう。

『最硬絶対攻撃・守鶴の矛』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:――
 地中に含まれる硬度の高い鉱物を集めて砂と混ぜ合わせ、チャクラで圧力をかけて作った先が守鶴の手の形をした矛。
 シールダーが誇る最大突破力を秘めた宝具である(破壊力ではない)。
 絶対的な硬度を持った槍を己の手に握り振るったり、宙に浮かせ飛ばしたりすることも可能である。

『最硬絶対防御・守鶴の盾』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:――
 地中に含まれる硬度の高い鉱物を集めて砂と混ぜ合わせ、チャクラで圧力をかけて巨体狸の形状の盾を作り出す忍術。
 シールダーがシールダーと呼ばれる証であり、彼が誇る最強の盾を召喚しあらゆる攻撃を防ぐ。
 この忍術は嘗て絶対的に死んでいた運命から生き残った逸話があり、因果律へ干渉し、運命的な宝具や能力にも抗い防ぐことが可能である。

【weapon】
 上記宝具である瓢箪や手裏剣・クナイを始めとする忍具。

【サーヴァントとしての願い】
 マスターに捧げる。

【基本戦術、方針、運用法】
 忍者らしく隠密に忍び、砂で相手の生命を永遠の底へ沈める。
 無駄な戦闘をするつもりはなく、戦う相手も選ぶつもりでいる。
 狙いは基本的にサーヴァントであり、マスターは悪人以外狙わない。


507 : 名無しさん :2015/09/01(火) 00:03:57 HitkJBCk0
投下終了です、日付をまたいで申し訳ありません


508 : ◆nig7QPL25k :2015/09/01(火) 00:11:10 JMX4LCLw0
皆様投下お疲れ様です!そしてたくさんの投下ありがとうございました!

本日0時をもちまして、本聖杯のコンペは終了ということになりますが、
間に合わなかったけど今から投下したいという方がいましたら、許可したいと思います
20分に改めて、終了告知をしますので、それまでに投下したいという旨をご報告ください


509 : ◆nig7QPL25k :2015/09/01(火) 00:20:28 JMX4LCLw0
それでは改めまして、本スレの登場話コンペを終了したいと思います
たくさんの投下、本当にありがとうございました!
オープニングは現在鋭意製作中ですので、もうしばらくお待ちください


510 : ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:19:13 Wt7I0O0k0
大変長らくお待たせしました
それではこれより、オープニングの投下を行いたいと思います


511 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:20:51 Wt7I0O0k0



ラインの黄金から指輪を作り出した者は、この世の全てを支配できる。

けれど心配は要らないわ。指輪を作れる者は限られているもの。

愛の力から逃れた者、愛の喜びを断った者。

その者だけが、黄金を指輪に変える魔力を手に入れることができるのだから。

                                         ――ワーグナー「ニーベルングの指輪」より


.


512 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:21:31 Wt7I0O0k0


 夢を見た。
 私ではない誰かの夢を。
 私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。

「――ぉおおおッ!」

 その男の人は戦っていた。
 鬱蒼と生い茂る木々の中で、不気味な軍団と戦っていた。
 黄金の鎧を輝かせ、大きな翼を羽ばたかせ、たった独りで戦っていた。

 どす黒い甲冑の軍団は、次から次へと数を増やして、男の人を追い詰める。
 不気味な唸りを上げながら、次々と武器を振り上げて、男の人に襲いかかる。
 何故自分は狙われているのか。何故こんな所に自分はいるのか。
 男の人はそれを知らない。何故戦わなければならないのかも、男の人には分からない。

 それでも、その人は戦った。
 自分を殺そうとする人達に、決して殺されないようにと、力の限り戦った。
 戻らなければいけない場所がある。助けなければならない人がいる。
 この身の全てにかえてでも、救わなければならない世界がある。
 だからその人は何があっても、決して立ち止まることはしなかった。
 目の前に何が立ちはだかっても、生きることを諦めず、全身全霊で戦い続けた。

「――ッ!」
「でぇぇぇいっ!」

 最後に立ちはだかったのは、紫色の服を纏った、小さく幼い女の子だった。
 それでもその体からは、男の人のそれにも負けない、ものすごい力が感じられた。
 男の人と女の子は、大地を蹴って宙を舞い、熾烈な戦いを繰り広げた。
 天から注ぐのは鋭い雨。戦場に光るのは二十一の盾。
 立ちはだかる壁はあまりにも強く、あまりにも大きかったけれど、それでも男の人は諦めなかった。
 女の子が手に持った槍を操り、刃の雨を降らせる度に。
 男の人は鎧を光らせ、拳に力と速さを込めて、迫る刃を叩き落とした。

「俺は負けるわけにはいかない……俺を待つ人々のために……俺の帰るべき地上に、愛と平和を取り戻すために!」

 地面を残らずひっくり返し、枝葉を根こそぎなぎ倒し。
 常識を超えた力と力は、周りにあるものを壊しながら、激しく火花を散らし合った。
 そして金と紫の光は、最後の激突の時を迎える。
 持てる力の全てを懸けて、相手を倒すそのためだけに、真正面からぶつかり合う。
 この戦いを生き残るために。
 帰るべき場所へ帰るために。
 その手で果たすべき使命を、あるべき場所で果たすために。

「『天翔ける希望の流星(ペガサスりゅうせいけん)』 ――ッ!!!」

 金の翼が羽ばたいた。
 天馬のいななきが聞こえた気がした。
 夜空を翔ける流星群が、黒い闇をかき消した時――私の夢は、そこで終わった。


513 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:22:15 Wt7I0O0k0


 ハロォ――――――ゥ、ユグドラシル・シティ!
 まずはここまで勝ち残ったみんな! 聖杯戦争最終予選、無事通過おめでとう!
 激戦を勝ち残った勇者達に、聖杯戦争本戦に向けて、ホットなニュースをお届けするぜ!

 そもそもの第一予選のために、このユグドラシルに集められたのは、君達を含めた合計100人!
 その第一予選の課題を、タイムリミットまでにクリアしたのは、46人の勇者達だった。
 ホントはキリよく50人くらいは、勝ち上がってほしかったんだけどねぇー。
 まぁそいつはさておき、そうして残った46人から、更に選び抜かれたのが、君達23人なわけだ。

 そしてその本戦は、本日の深夜0時からスタート!
 待たせちまってホントにごめんよ! でもよーうやく本番だ!
 この本戦を勝ち残った、たった一人の優勝者が、晴れて聖杯をゲットできる。
 長い長い戦いの苦労が、ようやく報われる時が来たってわけだ。
 さーぁ果たして君はどうなる?
 全てを失い這いつくばるか、全てを手にする王者になるか。
 どちらのゴールにたどり着くかは、これから戦う君次第! みんなの健闘を祈ってるぜ!

 さて、あともう1つだけ連絡だ。
 最終予選の戦いで、一番いい成績をあげたマスターには、豪華な特典がプレゼントされる。確かそういうルールだったよな?
 一番の人、おめでとう! すぐに令呪をチェックしてくれ!
 成績トップのごほうびとして、君の令呪がもう一角、新たに追加されているはずだ!
 頑張って成果を上げた奴には、相応の対価が贈られる。こいつが聖杯戦争の縮図さ。
 令呪をもらえた一番の人も、もらえなかったそれ以外の人も、このことをよーく覚えといてくれ。
 次の一番さんがゲットするのは、こんなチャチなものなんかじゃなく、万能の願望機なんだからな。

 ……それじゃ、今日はここまでだ!
 みんな聞いてくれてありがとう! また会えることを祈ってるぜ!
 DJサガラのホットライン、次回も是非チェックしてくれよな!


514 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:23:22 Wt7I0O0k0


 ふざけた放送を聞いた後だと、すこぶるほどに気分が悪い。
 それもその配信者が、あのDJサガラだと知ったとなれば、不快感は倍増だった。
 商業区画の市場のベンチで、顔を強く押さえながら、 【葛葉紘汰】 はうなだれていた。

(どうしてこうヤな予感ばかりが、ピタリと的中しちまうんだよ)

 紘汰は彼の正体を知らない。
 だが彼が、ヘルヘイムの森とユグドラシル・コーポレーションに関わる、重大な存在であることは理解している。
 奇跡の対価に犠牲を強いる、そんな世界をぶち壊せ――サガラはかつてそう言った。
 しかし結局は彼自身も、その奇跡の実現の対価に、紘汰の人間性を欲した。
 決断したことに迷いはない。それでも決断を求めた者を、信用することはできない。

「くそっ……!」

 結局ここでの戦いも、沢芽市のそれと同じなのか。
 半ば確証を得てしまったことが、紘汰の心をかき乱し、黒髪をわしゃわしゃとかきむしらせた。

「どうかしましたか」

 その時、声をかけられた。
 はっとして紘汰は、顔を上げる。
 ベンチの前に立っているのは、黒いショートヘアの女性。
 眼鏡の奥の視線は、クールだ。あまり紘汰の身近には、いないタイプの女性だった。
 冷静沈着な印象と、後頭部に着けた大きなリボンが、妙なギャップを醸し出していたのは気になったが。

「ええっと、その……まぁ、ちょっと悩み事というか」
「なるほど。お察しします。不景気というのは、厄介なものですね」

 不景気、と言われて、一瞬紘汰は首を傾げる。
 そして直後、彼は自分の持っていたものが、求人案内の冊子であることを思い出した。
 彼はつい数分前まで、顔を押さえていた方とは別の手で、アルバイトの募集をチェックしていたのだ。

「そう……そうなんですよ! どこもかしこも冷たいし、それに日払いってなると、また更に数が少なくって!」

 相手に怪しまれないようにと、紘汰は彼女の話に乗る。
 こんな状況で抱えるにしても、少々場違いな悩みではあったが、葛葉紘汰には金がなかった。
 律儀にもこんなところでまで、彼は日々の生活にあえぐ、フリーターという役割を与えられていたのだ。
 サガラあたりの趣味かもしれない。だとしたらろくでもない話もあったものだ。
 食事を摂らないオーバーロードにも、服と住処は必要だというのに。

「日雇いのアルバイトをお探しなんですか」
「えっ、と、まぁ……ちょっと財布が寂しくって……どうしても、すぐにお金が欲しくて」

 言葉を選びながら、女性の問いかけに応える。
 聖杯戦争というものが、どの程度の間執り行われるのかは知らない。
 それでも少なくとも紘汰は、長居するつもりはないと考えている。
 であれば、給料日を待ってなどいられない。すぐに賃金を得られる職場が好ましかった。
 もっともそんな事情を、馬鹿正直に打ち明けるわけにはいかなかったが。


515 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:24:42 Wt7I0O0k0
「……でしたら、私の知り合いの所に来ませんか。ちょうど人手が欲しいと言っていたので」
「えっ!? ホントにいいんですか!?」

 ぱっと、紘汰の目が見開かれた。
 これまでの悩みなど忘れたかのように、瞳がきらきらと輝いた。

「はい。条件の方も、私から相談してみます」
「うぉおおおおお〜っ! やったぜぇ! ありがとうございます! ほんっとうにありがとうございます!」

 テンションを最高潮に高め、紘汰は女性へと感謝を述べる。
 サーヴァントであるセイバーのため息が、背後から聞こえてきたような気がしたが、敢えてこの場では無視した。
 確かに聖杯戦争というものは、無視できない大きな問題だ。
 だがそれはそれとして、そこで戦い抜くためには、どうしても金が必要になるのだ。
 故に紘汰はこの場では、素直に喜ぶことにした。

《こりゃまた妙なのを拾っちまったなァ》

 その相手である 【鯨木かさね】 が、同じ聖杯戦争の参加者であることも知らずに。

《落ち着きのない子供は、躾ければいい。それだけのことです》
《まぁどっちでも構わないが、『やる』なら目立たないように頼むぜ。別にビビってるわけじゃないが、どうにも旗色が悪くなってきたみたいだからよ》

 どこからともなく響く声は、耳を澄ませてみろ、と言った。
 紘汰のそれと同じクラスを持つ、セイバーのサーヴァントの声に応じ、かさねは周囲に耳を傾ける。

「聞いたか? 例の噂」
「ああ、例の辻斬り事件だろ? 魔術礼装を持った通り魔が、次々と人を襲ってるっていう」
「しかも噂じゃ斬られた奴は、まるで使い魔か何かのように、そいつの言いなりになっちまうそうだぜ」
「怖い怖い。俺も夜道には気をつけないとな」

 聞こえてきたのは噂話だ。
 それも見に覚えのありすぎる噂だ。
 あれは間違いなく、妖刀・罪歌――かさねの得物を指した話だろう。

(これが令呪の対価ですか)

 恐らくセイバーの口ぶりからして、この噂が広まりだしたのは、つい最近のことだろう。
 どころか、今この瞬間という線もある。
 四画目の令呪を得たかさねの噂を意図的に流し、その存在が察知されやすくなるよう、管理者が仕向けた可能性がある。
 強い魔力の結晶体である令呪――それが最強のマスターに渡ったとあれば、多少のデメリットもなければ、バランスが取れない。

(だとしても、問題はありません)

 だがそれならそれで、それに対応し、行動すればいいだけのことだ。
 それだけの柔軟性は持ちあわせているつもりだ。特に被害を被っていないなら、対応のし方はいくらでもある。
 とりあえず目の前の青年は、このまま『子』の店へと連れていき、アルバイトとして雇わせるようにしよう。
 彼を新たな『子』として迎え入れるのは、状況を見極めてからでいい。
 セイバーのマスター、鯨木かさね。
 彼女が聖杯戦争の最終予選を、最高の成績で突破した強敵であることを、葛葉紘汰は未だ知らない。


516 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:26:13 Wt7I0O0k0


 日系人シノン・アサダという身分は、自分でも馬鹿馬鹿しいものだとは思う。
 だとしても明るい水色の髪と目を、日本人である朝田詩乃のものだと主張するのは、無理があるということも理解していた。
 故に 【シノン】 は、そうした身分を、甘んじて受け入れることにした。

《駄目ですね……ここからも、魔力を取り込むことはできないようです》

 橋の上に立ったシノンは、アーチャーのサーヴァントからの念話を受け取る。
 声のする方向にあるのは、泉の中心に浮かんだ政庁だ。

《そう。ウルズの泉というからには、いい線いってると思ったんだけど》

 厳密に言うと、シノンが狙っていたのは、政庁ではなく泉そのものだった。
 魔術都市ユグドラシルの中心から湧き出る、水資源の要・ウルズの泉。
 北欧神話においては、世界樹そのものを生かしている、重要な役割を持った泉として登場している。
 シノンはこの泉から、世界樹に蓄えられている魔力を、横取りできないかと考えていたのだ。
 いいやここだけでなく、既に何箇所にも渡るポイントを、予選期間をフルに使ってチェックしていた。

(魔術師がここの魔力を利用して、研究に明け暮れているというのなら、サーヴァントもまた同じように、魔力を利用することができるはず)

 きっかけは、そんな単純な思いつきだった。
 魔術の研究のために、この土地の魔力が使われている。
 そういう設定があるのなら、魔術師が魔力を得るための方法も、確かに設定されているはずだ。
 そう気付いたシノンは、まず最初に、自力で魔力を汲み上げられる土地を探した。
 テレビゲームのセーブスポットや、回復スポットのような場所だ。
 それを虱潰しに探すというのは、サバイバルゲームというよりも、RPGの謎解きをしているような感覚だった。
 しかし結果として、目当ての場所は見つからなかった。
 どこで行動を起こしても、何やら防壁のようなものに阻まれて、魔力を汲み上げられずにいたのだ。

(考えてもみれば、誰もが魔力を自由に取り出せるようになったら、街はパニックに陥ってしまう)

 もし仮に、誰もがどこからでも、魔力を受け取れるようになったら。
 そうすれば下賤な魔術師が調子に乗って、暴力的な犯罪を犯すかもしれない。
 更には往来で事故が起こって、人や家が吹っ飛ぶかもしれない。
 街に張り巡らされた防壁は、そうした犯罪を、未然に防ぐためということか。


517 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:27:27 Wt7I0O0k0
(となると、それを突破する方法を、探り直す必要がある)

 方針の転換が必要だった。
 次に打つべき手は一つだ。井戸が見つからないのなら、それを掘ることを考えなければならない。
 恐らくは魔術師達が知っているであろう、魔力を汲み上げるための術を、何らかの形で知らなければならない。
 ちなみにもう一つの案として、家庭に届いている、電線ならぬ魔力線を使うという手もあったが、これはもっと前の段階で却下していた。
 コンセントから放出されるエネルギー、サーヴァントにとってはあまりにも不足だ。
 そもそもそれ以前に、アーチャーがコンセントの前に座り込んで、微動だにしない状態で魔力を吸い取る光景というのは、滑稽を通り越して哀れだった。

(急がないといけない)

 恐らくこんな単純な発想には、他の人間もすぐ行き着くだろう。
 いいや、もしも魔術師のマスターがいれば、既に実行されている可能性がある。
 ガンゲイル・オンラインのPCには、マジックポイントという概念がない。シノンの使える魔力はあまりにも微弱だ。
 故に早いうちに魔力を蓄え、他のマスターにも対抗できるよう、準備を整えなければならないのだ。

(……こんなことが、根本的な解決になるかは分からないけど……)

 そういう性急な考えは、自分の本心をごまかすためか。
 サーヴァントさえ強くあれば、マスターが戦えなくとも構わないという、弱い考えの表れか。
 不意に自分に嫌気がさして、シノンは小さくため息をつく。
 結局先の敗走の後も、何度か銃を構えてみたが、結果は常に同じだった。
 引き金を引こうとした瞬間、朝田詩乃と同じように、体が銃を拒んでしまう。
 原因は分からない。この身がPCシノンではなく、シノンの姿をした生身であると認識されているのも、その一つなのかもしれない。
 情けなかった。不甲斐ない自分が情けなかった。
 何の力にもなれずに、サーヴァントを振り回してばかりいる、朝田詩乃の弱さが嫌になった。
 こんなことで本当に、聖杯戦争を勝ち抜くことなど――

「――そこで何をしているのかしら?」

 その時だ。
 不意に背後から、声を浴びせられたのは。
 振り返った先には、女性がいる。身に纏うスーツについているのは、公職に就いていることを示すバッヂだった。

「へっ!? あ、いえ、何でも……」

 まずい。不審に思われたか。
 相手の立場は知らないが、取り押さえられでもしたら危険だ。
 何もせずに立ち止まって、じろじろと政庁を眺めていたら、こう思われることは分かっていただろうに。


518 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:29:35 Wt7I0O0k0
「……失礼します!」

 結局まともに言い訳もできず、シノンはそそくさとその場を立ち去った。
 不信感を募らせるだけかもしれないが、それ以上の方法など、彼女には思いつかなかった。

(素人ね)

 そして案の定、スーツの女は、その背中を見て不敵に笑う。
 同じマスターである 【湊耀子】 は、そうした彼女を見逃すほど、甘い女ではなかった。

《アーチャー、あの子を追ってちょうだい》

 奇しくも彼女のサーヴァントもまた、シノンのそれと同じアーチャーだった。
 自らの使い魔へと指示を出すと、悪目立ちしないようゆっくりとした動作で、自身もその場から離れる。
 用事もなく要所を見つめる者の心理は、大きく3つに分けられる。
 1つは単純にぼうっとしていただけ。もう1つはその場所に、何らかの思い入れがある。
 残る1つは、その場所に忍び込むため、事前に作戦を練っていたというものだ。

(このユグドラシルでは、私が記憶を取り戻してから、一度も大きな犯罪は起きていない)

 聖杯戦争の爪痕を除けば、魔術都市ユグドラシルの風景は、至って平和そのものだ。
 恐らくは犯罪イベントを起こすことに、管理者が魅力を感じていないのだろう。
 故に彼女の目的が、3番目のものであったとしても、NPCによる犯罪であるという線は薄い。
 であればあれが、聖杯戦争のマスターで、何か戦況を有利にするために、行動を起こしていたという可能性が出てくる。

(ハズレならその時はその時。もちろんアタリなら……)

 これで尻尾を掴めたならば、儲けものというものだ。
 なにせ探すべきライバルの数は、既に半分にまで減少している。
 その分探しにくくなっているのだから、せっかく見つけた可能性を、みすみす取り逃すわけにはいかない。

《くれぐれも頼むわよ》

 間もなく昼休みも終わりだ。
 最後にそれだけを付け加えると、耀子は自分の職場へと戻るべく、かつかつと石畳を歩いていった。
 余談だが、この街における湊耀子の職業が、木っ端の入国管理官ならぬ、入町管理官であることも、この場で付け足しておくことにする。


519 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:31:17 Wt7I0O0k0


 行政地区に存在する役所。
 ここが 【マリア・カデンツァヴナ・イヴ】 の職場だ。
 ハイスクールを卒業し、試験に合格した公務員。それが彼女のプロフィールだった。
 ステージに立って歌うでもなく、軍勢を率いて戦うでもなく。
 一昔前のタイプライターを叩いて、黙々と書類仕事をこなすのが、現在のマリアの在り方だった。

(不思議なものね)

 無論、彼女にこんな仕事の経験はない。
 それでも、頭に残った偽りの記憶が、仕事のやり方を教えてくれる。
 読んだこともないような書類を、手癖でてきぱきと仕上げながら、次の手順を考えている。
 そしてそれらの動作には、違和感が一切介在しない。なんとも奇妙な感触だった。

(そういえば、替えのインクがなかったのよね)

 書類が一段落したところで、ふとマリアは思い出す。
 手元にあるインクリボンは少ない。というか部屋全体で使うインクも少ない。
 ちょうどいいから備品室に行って、取り出してくることにしよう。
 マリアはさっと席を立つと、ドアの方へと向かったのだが。

「おっと」
「あっ」

 扉を開けたその拍子に、外にいた人影と鉢合わせてしまった。
 ぶつかる手前で踏みとどまったが、結果として道を遮ってしまう。

「すみません」
「いや、構わんよ。私も不注意だった」

 ぱっと頭を下げるマリアに、低く老いた声がかけられる。
 声色からして男性だろうか。顔を上げるとそこにいたのは、黒い眼帯の目立つ男だった。
 顔には深く皺が刻まれているが、髪の毛の色ははっきりとしている。
 中年と老人の境目――60代くらいといったところだろうか。

「えっと……ブラッドレイ司令、でしょうか」

 そしてその顔には、見覚えがあった。
 確か、治安維持のための軍隊の責任者――キング・ブラッドレイだったはずだ。


520 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:33:31 Wt7I0O0k0
「意外かね?」
「ええ、まぁ……こういった役所に来られるとは、思いませんでしたから」
「はっはっは。まぁ、私くらいの立場にもなると、色々な仕事があるということだ」

 だからこういう所にも、用事ができることもあるのだよと。
 ともすれば、無礼とも取られかねないマリアの態度にも、ブラッドレイは寛大に笑う。
 写真で見た時にも、顔を合わせた時にも、厳つい男だと思ったが、意外と気さくな人物のようだ。
 つられてマリアの顔にも、微かに笑みが浮かんでいた。

「ところで、何か用事があったのではなかったのかね?」
「あっ、はい。備品室の方まで、インクを取りに……」
「そうか。引き止めてすまなかったな。早く行くといい」
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」

 失礼しますと一言言うと、にこにこと笑うブラッドレイを残して、マリアはその場を立ち去った。

(これから戦争をするってことを考えると、気分は憂鬱になるけれど……)

 それでも、こうして人を傷つけることなく、労働に従事している時間は悪くない。
 仮初の姿にしたって地味な職場だが、戦場やかつての実験施設よりは、よっぽどマシなのかもしれない。
 そんな風に思いながら、彼女は備品室へと歩を進める。
 マリアの後ろ姿を眺める、ブラッドレイの単眼が、冷たい瞳を放っていたことには、遂に気づくことはなかった。

(匂うな)

 確証ではない。あくまで勘だ。
 それでも今の反応を、見過ごすことはできないと、ブラッドレイはそう考えた。
 この地に用意された住民達は、いずれも本物の人間ではない、仮初の人形なのだという。
 事実として出会った人々は、皆判を押したかのように、一様に恐縮したリアクションを見せていた。
 それがどうだ。その中で唯一、あのマリアだけは、曖昧な反応を見せるにとどまっていた。
 特に理由もない限り、わざわざ人形の集団の中に、違う思考回路を持った個体を混ぜるなどあり得ない。
 どんなメカニズムであれ、そうするための面倒の方が、得られるメリットよりも勝るはずだ。

(やはり、自分の足を使って正解だったのかもしれんな)

 いくらロボット軍団を味方につけようと、どうしても限界というものはある。
 こういう複雑な思考判断は、マスター自身でこなさなければならない。
 どこかにマスターが潜んでいないかと、睨みを利かせて探していたつもりだったが、おかげで可能性にはたどり着くことができた。

(機を見て、反応をうかがってみるか)

 とはいえ、ここで襲うわけにもいかない。
 本戦前の戦闘行為は、禁止されているわけではないが、騒ぎにならない状況ができるまでは、静観に徹するのが正道だ。
 幸い、監視の駒にはこと欠かない。ワイリーナンバーズの1体に、あの娘を見張らせることにしよう。
 そう考えると、 【憤怒のラース】 は、自身のサーヴァントに向かって念話を飛ばした。


521 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:34:52 Wt7I0O0k0


「特級住宅街の方で、最近変な幻聴が聞こえるんだって」
「爆発の音とかが聞こえるんだけど、どこを見回しても、爆発なんて起きてないんだってさ」
「女の人の声が聞こえるって話も聞いたわよ」

 以上の噂は、メンターのサーヴァント・高町なのはが、市井で耳にしたものだ。
 その内容から察するに、恐らくは自分達の戦闘訓練の話だろう。
 奇妙な点は、結界内での訓練の音が、外に漏れているということだ。
 通常、それはあり得ない。
 仮になのはの結界に、魔術師が入り込んだというのなら、何故自分達の姿を見ていないのだということになる。

(目をつけられちゃったかな)

 まずい傾向だと感じた。
 これは恐らく、管理者側が、意図的に流した噂だろう。
 最初にマスターと出会った時から、なのは達は結界に篭もり、ひたすら訓練に徹していた。
 要するに最終予選において、敵サーヴァントを倒すどころか、戦闘行為を一度も行っていないのだ。
 このまま引きこもっていては、勝負が成立しなくなる。だからさっさと出てこいと、警告を発せられたのだ。

「どうしたの、メンター?」

  【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール】 が問いかける。
 目の前で魔法の杖を構えた、高町なのはのマスターが尋ねる。

(魔力操作まではクリア。その先も形になりつつはある)

 指導者(メンター)・なのはの教導は、ある程度身を結んでいた。
 不器用ではあるものの、自身の特殊な魔力を操作し、安定させる段階にまでは到達したのだ。
 その先の最優先目標である、防御魔法の習得も、完成形には近づきつつある。
 不測の事態に備えた迎撃の魔法が、未完成というのは痛かったが、防衛だけに回るのであれば、何とか形にはなりそうだ。

「ちょっと状況が変わってね。方針を変えようと思うんだけど、いいかな?」

 これからは訓練一辺倒ではいられない。戦場に出るつもりはなかったが、強引に戦場に引きずり込まれてしまった。
 であれば教導のプランも、順序を変える必要があるだろう。
 技巧より出力に秀でたルイズは、バリアジャケットの構築よりも、シールドの飲み込みの方が早い。
 であればそちらを優先し、せめて片方の防衛手段だけでも、盤石にしておく必要がある。
 その先は、今後の作戦次第だ。
 魔法の訓練を打ち切ると、なのはは戦争を生き残るため、作戦会議を切り出すことにした。


522 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:36:17 Wt7I0O0k0


「カノン先輩ってさ、あたしの知り合いによく似てるんだよな」

 ハイスクールの授業を終え、クラブ活動に向かう途中。
 合流した一つ下の後輩に、カノン・メンフィスこと 【羽佐間カノン】 は、不意にそんなことを言われた。

「天羽の、知り合い? どういう人なんだ、その人は」
「いや、なんというかこう、マジメなところとかさ」
「真面目か……柔らかくなろうとは、努力していたつもりなんだがな」

 要するに堅物ということか。面白みのない人間だということか。
 かつて機械的な兵士だったカノンにとっては、少々ぐさりとくる言葉だった。
 もちろん後輩にはそんなことなど、知る由もないのだろうが。

「そんな落ち込まないでくれよ。それが嫌いだって言ってるわけじゃないんだからさ」
「そっ、そうか……それはすまなかったな」
「そこ。そういうとこがマジメ君なんだよ、先輩は」

 けらけらと笑う後輩の少女は、竜宮島にはいなかったタイプの娘だ。
 強いて言うなら咲良が近いが、目の前にいる後輩の方が、少し落ち着いているような気がする。
 一つ年下であるはずなのに、頼りたくなってしまうような、そんな雰囲気を感じるのだ。
 防衛組織で働く自分の方が、ただの一般人である彼女よりも、ずっと大人であるべきなのに。

「………」

 校舎から渡り廊下に出る。
 大きな窓からは、学校を出て、帰路につく生徒たちの姿が見える。
 子供の数は竜宮島よりも、比較にならないほど多い。
 たとえNPCであっても、プログラムされた設定であっても、その一人一人に人生がある。

「人ってのはさ……何のために生きるんだろうな」

 不意に、後輩がそんなことを言った。
 明朗快活な少女の顔が、どこか遠くを見るような、物憂げな顔つきに変わっていた。
 それは今日まで羽佐間カノンが、見たことのない顔だった。


523 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:37:49 Wt7I0O0k0
「……存在するためだろう」

 面白みのない堅物であっても、悩みを聞いてやることはできる。
 何を思っての問いかは知らないが、自分なりの回答を、口にして話すことはできる。
 カノンは後輩の少女に向かって、口を開き声を発していた。
 仮初の身分を演じるのではなく、本心から思っている言葉を。

「人がそこにいる限り、可能性は開ける。なすべきことは見つからなくとも、できること、やりたいことならば、無限に見つけられるんだ。生きてさえいればな」

 それは大切な想い人が、身をもって教えてくれたことだ。
 命令に従って死のうとした自分を、彼は現世へと留まらせてくれた。
 失われたはずの人間性や、人並みの幸せな日常を取り戻す、そのきっかけを掴むことができた。
 あそこで死んでいたならば、そんな可能性なんてものは、決して手に入ることはなかっただろう。
 その男が、今は命の使い道がどうのと言って、死地に赴いているというのは、何とも腹立たしい話だったが。

「結局人は、ただ生きるために生きているんだ。……というのでは、駄目だったか?」
「……いや。いいんじゃないかな」

 サンキューな、と言う後輩の顔には、元通りの笑みが浮かんでいた。
 釣られるようにしてカノンも笑う。口元に柔らかな笑みを浮かべる。
 生きようとしていなかった頃には、決して浮かべることのなかった表情を。

「悪いが、用を思い出した。今日は休むと、皆に伝えてくれ」

 おかげで気持ちを固め直せた。
 カノンはそれだけを短く告げると、身を翻して廊下を進む。
 そうだ。今はそうすべきなのだ。
 羽佐間カノンのやりたいことは、元の島へと帰ること。そして大切な人々を、この手で守り抜くことだ。
 そのためになら、戦える。やりたいと思えることのためなら、己の力を出しきれる。
 この聖杯戦争に挑み、生き抜くこともできるはずだ。
 そのために決意を握り締め、カノンは戦場へと向かった。

「……あたしも、今できることをやることにするよ」

 そしてその背中を見送りながら、後輩の少女はぽつりと呟く。

「生きていられるうちにさ」

  【天羽奏】 にとって、先の問いが、いかなる意味を持っていたのか。
 きっとそれもカノンにとっては、知る由もないことだった。


524 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:38:45 Wt7I0O0k0


《マズイ》
《わざわざ念話で言うことかよ》

 ライダーのサーヴァントに向かって、 【犬吠埼風】 が飛ばした言葉が、それだ。
 彼女の不平の元凶は、カウンターに置かれた食べ物である。
 醤油ベースの黒っぽいつゆに、白く太い麺が浸された食べ物――うどんである。
 初めて訪れる海外の地に、日本食を出す料理店があったことは、最初僥倖だと思った。
 ジュニアハイの食堂などで、食べ慣れない洋食ばかりを口にするのは、どうにも落ち着かなかったからだ。

《麺がボソボソ。汁も辛い。あぶらげに至っては何よコレ》

 しかしそこで出されたうどんは、うどんをソウルフードとする四国民には、到底耐えられない酷いものだった。
 麺も出汁も具に至っても、美味い部分が見つからない。
 うどんの良さというものを、完璧に皆殺しにしてしまっている。
 これはもう小学校時代に食べた、ソフト麺のようなものではないか。
 むしろ健康に配慮して、汁が薄味になっていた分、あちらの方がマシだとすら思えた。
 所詮外国の人間に、本場香川の絶技を再現することなど、不可能だったということか。

《だったら何でこうしょっちゅう食いに来るんだ。金をドブに捨てる気かよ》
《だってー。うどんは私の血肉なのよー。私の女子力の秘訣なのよー》
《中毒かよ! 無駄なものに金使いやがって! 俺なんて月2000円だったんだぞ、小遣い!》

 割と衝撃的な情報を耳にしたが、別段知って得になることでもないので流した。
 どれだけ不味いものであろうと、うどんを食べるのは最早習慣なのだ。
 そこにうどんがあるからには、こうして食べずにはいられない。

(……帰ったらまた、みんなで食べられるかな)

 そうやって食べてしまうのは、かつてそうしていたことを、懐かしんでいるからだろうか。
 妹の声が戻らないと知り、怒りに震えた犬吠埼風は、大赦を襲撃しようとする暴挙に出た。
 結果思いとどまりはしたものの、その場にいた勇者部の仲間達には、随分と迷惑をかけてしまった。
 もしもここから帰れたならば、仲直りをして、またみんなで、うどん屋に行くことができるだろうか。
 失われてしまった仲間の味覚も、聖杯の力で取り戻して、仲良く味わうことができるのだろうか。

「ごめんね、ちょっとここいいかな?」

 そう考えていたその時、不意に横から声が聞こえた。
 我に返った風は顔を起こし、声の聞こえた方を向く。
 スクールバッグを脇に抱えた、東洋風の顔の少女だった。
 ジュニアハイの制服を着ていない。私服姿ということは、恐らくは高校生だろう。自分より1つ年上くらいだろうか。


525 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:40:16 Wt7I0O0k0
「あー、はい、どうぞ」

 どうやら隣の席に座りたいらしい。一人用のカウンター席は、そこを除けば満員だった。
 断る理由もなく了承すると、少女は「ありがとう」と言って、風の隣の席についた。

「ね、ひょっとして日本人?」
「そうですけど……ひょっとして、貴方も?」
「わーやっぱりッ! 同じジャパニーズ仲間に、学校以外で会ったのは初めてなんだ」

 問いかけてきた高校生の少女は、風の返答に対して、うきうきとした反応を示す。
 ハイスクールというと、もっと大人な印象があったが、思ったよりもノリは変わらないようだ。

「まー何しろヨーロッパですからねー。私の学校にもちらほらいるけど、まぁそれこそちらほらなりでして」
「分かるなー。やっぱりテンション上がるよね、同じ肌の人に会うと。……あ、何かおすすめってある?」
「おすすめっすか? どうだろなー、まだうどんしか食べてないからなぁ」
「あっ、うどんあるんだ? よく食べてるってことは、美味しいの?」
「いや全っ然! そらもう酷いのなんのって! 香川県民なめんなってやつですよ!」

 力説する風を見て、少女はけらけらと笑う。
 それから料理を注文した後も、2人はとりとめもない会話に花を咲かせた。

「でね、響さん。わたしゃやっぱり思うんですよ。日本だろうが海外だろうが、やっぱ狙うなら年上だって!」
「まー風ちゃんくらいの年頃だと、男の子ってやっぱ子供かもねぇ。私もそんな詳しい方じゃないけど」

 波長が似た者同士だったのだろう。
 両者はあっという間に打ち解けて、次々と会話のボールを投げ合っていた。
 やれクラスの男子はアホばかりだの、やれ魔術史なんて習って何になるだの、やれ魔術師がそんなに偉いのかだの。
 半ば愚痴り合いの様相を呈してはいたものの、同じ立場の者同士ということもあり、会話は自然と弾んでいった。

(まぁ、今くらいは、いいよね)

 そしてその2人の様子を、傍らから見つめる視線が、もう1つ。
 不可視のサーヴァントはライダーではない。与えられたクラスはキャスターだ。
 今まさに風と会話を交わす、 【立花響】 という名の少女のまた、サーヴァントを連れたマスターだったのだ。
 思い返せばキャスターの前では、響はよく暗い顔をしていた。
 戦うことに迷いを抱き、力になれないことに苦悩し、明るいはずの顔を曇らせていた。
 それが誰かは知らないが、この中学生の少女と出会ったことで、久々に笑顔を見せている。
 なればこそ、今はその安らぎを、ここで見守ってやるべきだろう。
 もうすぐ聖杯戦争の本戦が、否応なしに始まることになる。
 そこにはきっと今まで以上に、過酷で厳しい戦いが、響を待ち受けているのだから。


526 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:41:23 Wt7I0O0k0


 魔術都市ユグドラシルは、文字通り魔術師達の住む街だ。
 必然、強い魔力を持つ者が、大手を振って歩くことになる。
 しかしその街の影では、魔術を使えないはずの少年が―― 【黒咲隼】 が活躍していた。

「ひえぇぇっ!」

 頬に痣を作った男が2人、悲鳴を上げて走り去っていく。
 カジノの店先でそれを見送り、黒咲は唾を吐き捨てる。
 闇の世界に流れてくるような、半端な人間の集団には、魔術師はほとんど存在しない。
 必然、ほとんどのシチュエーションにおいて、単純な腕っ節こそが物を言う。そういう意味では、黒咲は間違いなく強者だった。
 あくまでもその箱庭に留まり続け、お山の大将に満足するつもりなら、の話だが。

(くだらん)

 人の気も知らずいいご身分だと。
 黒咲隼は苛立っていた。
 傍から見れば弱い者いじめだ。現実には自分の方こそ、魔術をまともに扱えない弱者だというのに。
 まるで自分より弱い者だけを、選り好んで狙っているようで、自分の有り様に嫌気が差した。
 間もなく本戦が始まるというのに、これでは平和ボケもいいところだ。

「聞きしに勝る狂犬ぶりだな」

 その時、背後から聞こえる声があった。
 振り返ると黒い人影が、カジノのドアを開け姿を現している。
 白いショートヘアに黒ずくめのスーツ。黒咲と同じ東洋風の顔立ちと、そしてやけに目立つ大きな胸。

「お前がミヤビか」
「いかにもだ、シュン。こうして会うのは初めてだったな」

  【雅緋】 。
 ユグドラシルの歓楽街に現れ、瞬く間に勢力を広げた女マフィアの名だ。
 つい先日には、黒咲の所属していたグループも、彼女に取り込まれてしまった。
 決して大きくはないにせよ、魔術都市の影の力は、既に全てが彼女の手にある。
 プログラムされた人間にしては、不自然なまでの台頭ぶりだった。

「消えろ。話すことはない」
「つれないな。せっかくのご対面だというのに」
「それが気に入らんと言っているんだ」

 肩を竦めて笑う雅緋を、黒咲は鋭く睨みつける。
 こういう上から目線の奴が、一番嫌いな人種なのだ。
 生殺与奪を握ったつもりで、笑って踏み潰すあいつらのことを、否応なしに思い出してしまう。


527 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:42:28 Wt7I0O0k0
「随分と嫌われたようだな」
「……仕事の時には従ってやる。それで文句はないだろう」

 それで終わりだと言わんばかり、黒咲はコートを翻した。
 ただでさえ機嫌の悪い時に鉢合わせたのだ。これ以上言葉を交わすのは、どうしても耐えられなかった。
 そうして踵を返し、その場を立ち去ろうとしたその時。

「!」
「わっ……と」

 危うく一つの影に、ぶつかりかけた。
 ちょうど黒咲の行く手に、一人の少年が歩いていたのだ。

「……チッ!」

 より一層の不快感を込めて、わざとらしく舌打ちをする。
 そうして黒咲は言葉もかけずに、少年の脇を通り抜けると、早足でその場を立ち去った。
 無駄に大きな靴音が、かつかつと石畳を叩いて消えた。

「大丈夫か?」
「ええ、まぁ……」

 その場に残された雅緋が、少年に対して声をかける。
 フードつきのコートを目深に被っているが、覗く顔立ちは自分よりも若い。
 恐らくは黒咲より少し上の、ハイスクールくらいの年頃だろう。
 男子ではなく女子だったが、雅緋には馴染みの深い世代だった。

「病か?」

 そして雅緋は見逃さなかった。
 少年の頬のあたりに広がる、赤茶けた色の異様な肌を。
 まるで硫酸か何かを被り、爛れてしまったかのように、そこだけ周囲から浮いている色を。

「まぁ……そんなところです」
「……あまり深く聞くのも野暮か」

 他の人間とは異なる容姿に、一瞬、よぎった考えがあった。
 しかし、それはここで聞くべきことではない。空振りだったなら、いたずらに自分の正体を明かすことになる。
 そもそも聖杯戦争の参加者でなく、本物の病人であったとするなら、それは無礼にも程がある問いだ。


528 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:43:36 Wt7I0O0k0
「すまなかったな、引き止めて。この辺りは物騒だ……体に障らないよう、早めに帰るんだぞ」

 そう言って雅緋は会話を打ち切り、自身もその場から立ち去る。
 少年は一言礼を言うと、これまた道を歩いて行って、街並みの奥へと消えていった。

「特にこれからはな」

 そう呟いた雅緋の言葉は、少年の耳には届かなかった。
 間もなくこの街は比喩ではなく、本物の戦場と化すことになる。
 半分が死ねば終わる予選ではなく、全員が死ぬまで終わらない、聖杯戦争の本戦が始まるのだ。
 真の強者のみが勝ち残り、生存ではなく勝利を目的とした戦場の苛烈さは、これまでとは比較にならないだろう。
 未だ迷いのある身でも、そうした戦いに飛び込む覚悟は、既に胸に固まっている。

(そうなれば、周りに気を使っている余裕はなくなる)

 なりふり構わぬ戦いとなれば、あのような少年が近くにいようと、気に留めてやることはできない。
 であればあんな少年の命の灯など、吹いただけで簡単に消えてしまうだろう。
 故に雅緋は警告の言葉を、少年に向かってかけたのだった。
 この時の雅緋の判断が、幸となるか不幸となるか。
 その結果が判明するまでには、しばしの時を要するはずだ。

(凄い剣幕だったな、さっきのアイツ)

 しかしこの時見逃されたのは、少年にとっては幸運だった。それだけは確かに断言できた。
 おかげで 【衛宮士郎】 は、相手がライバルであるとも知らぬままに、無事に戦場から逃げおおせることができたのだから。

《気圧されたか、マスター》

 鏡の向こうから声が聞こえる。
 正確には鼓膜を通してではなく、頭に直接響いてくる。
 あんなチンピラ少年風情に、恐怖心でも抱いたのかと。
 窓ガラスの向こうで歩いているのは、士郎のサーヴァントであるキャスターだ。

《まさか。怖いものなら山ほど見てきた。今更恐れるつもりはないさ》
《ならばいい》

 あの程度の輩に臆していては、到底勝ち残ることなど不可能だからなと。
 キャスターからかけられた言葉を、士郎は脳内で咀嚼する。
 そうだ。恐れてなどいられない。
 たとえ不良少年でなくとも――先日ぶつかったセイバーのような、超常の英霊であったとしてもだ。
 それ以上の惨状は既に見ている。
 そしてそれすら超える地獄こそが、自分の立ち向かう相手であることも理解している。
 なればこそ、恐怖は捨て去るべきだ。

(たとえ心すらも消し去ってでも)

 その先に、求めてやまなかった未来が、待ち受けているというのなら。
 正義も善意も良心も捨てて、己が定めた悪道を、まっすぐに突き通すべきだ。
 改めて決意を固く握り、士郎は歓楽街の道を進んでいった。


529 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:46:10 Wt7I0O0k0


「……何か?」

 それは偶然の出会いだった。
 喫茶店で一服し、思い立ってトイレへ向かい、用事を済ませて出てきただけだ。
 その時たまたまその少女が、席に戻るまでの道のりに、立っていただけのことだった。
 茶色い髪を両サイドでまとめた、高校生くらいの少女が。

「いや……すまない。知り合いのような気がしたんだが、勘違いだった」
「ああ、そう」

 短く言葉を交わすと、 【忌夢】 はその場から立ち去り、すぐに自分の席へと向かう。
 早足で元の席に戻ると、座ってテーブルで頬杖をつき、ふうっと小さくため息をついた。

(何も不思議なことじゃない)

 よく似たNPCがいただけだ。そうやって自分に言い聞かせる。
 知人の姿を模した人間には、既に何度か会っていた。
 家に帰れば妹がいるし、大学には赤ブチ眼鏡の似合う教授がいる。
 恐らく今出会った少女も、そういう類の傀儡なのだろう。

(しかし……そうか)

 本当ならこうだったんだろうなと、自分の服装を見て振り返る。
 平日の日の出ているうちから、私服姿でうろついている忌夢は、21歳の大学生だ。
 対して先ほど出会った彼女は、いかにもなスクールバッグを抱えた高校生。
 5つも歳の差がある彼女とは、そもそも本来、何の接点もないはずだったのだ。

(妙な縁だな)

 それなのにあの蛇女子学園では、同じ制服を着て戦っていた。
 最初は警戒すらしていた彼女を、いつしか仲間として認めて、共に肩を並べていた。
 そうなったのは、雅緋に付き添い、蛇女を休学していたからだ。
 もしも雅緋の味わった過去を、なかったことにしてしまったなら、出会うこともなかったのだろうか。
 そう考えると、少しばかり、憂鬱な気分になった。

《マスター》
《分かってる。いちいち人のリアクションに口出しするな》

 背後から声をかけてきたバーサーカーに、憮然とした顔で応じる。
 主を乗っ取ろうとするとんでもないサーヴァントだが、今だけはその獰猛さのおかげで、事の本質を再認識できた。
 この血に飢えた狂戦士は、ただひたすらに敵を求め、闘争に身を投じることを望んでいる。
 それでいい。願いを叶えるためにも、生き残るためにも、そうする以外に方法はない。
 感傷に浸っている場合ではないのだと、忌夢は両手を広げて、己が頬をぱんと叩いた。


530 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:47:31 Wt7I0O0k0
(そんなわけがない)

 そして同じ屋根の下で、同じく考えを巡らせる者が、一人。
 忌夢とすれ違い、案内された席へと座って、メニューを手に取った高校生の少女だ。
 他人の空似でもなんでもなく、その席についた茶髪の少女は、忌夢の知る 【両備】 本人だったのだ。

(あり得ないわよ、そんな偶然)

 つんけんとした対応は、動揺を押し殺すためのものだ。
 内心で両備は、この遭遇によって、随分と心をかき乱していた。
 自分は特に前触れもなく、偶然この場所に連れてこられ、聖杯戦争に巻き込まれた。
 そして忌夢もまた同じように、偶然巻き込まれたというのか。
 どういう確率だ。そんなことがあり得るものか。
 仮に本物だったとしてどうする。戦うのか。殺すというのか。
 自分の願いを叶えるために、学校の先輩を殺すと――

(……何を迷ってるのよ、両備は……!)

 そこまで考えたところで、両備は一瞬我に返ると、直後頭をわしわしと掻いた。
 どうしてあんな奴相手に、躊躇いを覚える必要があるのだ。
 思い出せ、自分の抱えた願いを。蛇女子学園に来た理由を。
 自分があの学校でなすべきことは、筆頭・雅緋への復讐だ。
 姉を殺した忌まわしい悪忍を、この手で抹殺することだ。
 であればその側近である忌夢も、排除すべき敵ではないか。
 情が移ったのか。今更仲間ヅラするつもりか。
 あまりに情けない自分に腹が立ち、苦虫を噛み潰したような顔を作る。

「ご注文はお決まりでしょうか」
「……アイスコーヒー」
「お砂糖とミルクは……」
「要らない! ブラック! 分かったら早くして!」

 注文を取りに来た店員に、当たり散らすようにして叫ぶ。
 そそくさと立ち去るのを見ると、テーブルに置かれたお冷のコップを、ひったくるように掴んだ。
 棒付きキャンディーが好物の両備は、基本的には甘党だ。
 しかし今は、ダダ甘いコーヒーなど、飲みたいとはとても思えない。
 気持ちの整理もつかぬまま、それらを押し流すようにして、冷水を一気に飲み干した。


531 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:50:30 Wt7I0O0k0


 譲れない願いは胸にある。
 助けたい人は確かにいる。
 されどそのために、その人が嫌う方法を、進んで実行している自分は、果たして正しいのだろうかと。
  【小日向未来】 はそんな問いを、何度も自問し続けていた。

「ゾンダァァァ……」

 薄暗いキャスターの体内には、不気味な人影が蠢いている。
 宝具で生み出したゾンダー人間も、結構な数が揃ってきた。
 これだけ揃えば、サーヴァントを使えないというデメリットも、カバーすることはできるだろう。
 もっともそれは、それだけの数の人間を、犠牲にしてきたことを意味する。
 いいや、予選で撃破された分も含めれば、ゾンダー化したNPCの数はそれ以上だ。
 それだけの人間を、エゴのために、平気で踏みにじってきた。
 作り物の人間であっても、それを蹂躙することを、響は決して許さないだろう。

(ううん、違う。そんな迷いに意味はない)

 軽く首を横に振って、未来は思考を振り払った。
 そんなことを言っていられるほど、余裕のある状況ではないのだ。
 何しろ救うべき響は、いつ命を落としても、不思議ではない状態なのだから。
 それに響は、何度止めても、その度にこの手を振りきっていった。
 戦ってはいけないと言っても、決して聞き入れることなく、戦場へと勇んで飛び込んでいった。
 だからこれは、お互い様だ。
 望まぬ方法を取られて、やきもきさせられてきたのは、自分だって同じなのだ。

(だから、私は迷わない)

 誰にも文句は言わせない。
 この道の正しさだけを信じて、ゴールへと走り抜いてみせる。
 それ以外の道を選べるほど、響にも未来自身にも、余裕というものはないのだから。

「いよいよ時は来た。マスターよ、全てはこれからだ」
「分かっているわ」

 キャスターの声に、短く答える。
 踵を返して、廊下を歩き、地上へとの道を進んでいく。
 異形の怪物を従えて、自らも怪物となりながら、少女は孤独な魔道を目指す。

(そういえば、朝に倒したサーヴァントのマスター……)

 時間からして、恐らくは、予選の最後の失格者。
 サーヴァントを撃破され脱落した、あのマスターはどうなったのだろうと、不意に、そんなことが気にかかった。


532 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:52:17 Wt7I0O0k0


 苗字で呼んでほしいと言っていたのは、結城友奈がそう言ったからだ。
 自分の苗字がカッコいいと、彼女は目を輝かせてくれた。
 それ以来、 【東郷美森】 は自分のことを、東郷と呼んでほしいと言い続けてきた。

「ねぇ、美森。まどかが休んでた理由って、何か知らない?」

 しかしここには彼女がいない。結城友奈がいない世界では、そう呼ばせる理由が存在しない。
 だからこそ東郷は、このクラスメイトの少女からは、下の名前で呼ばれていた。
 もちろん、そこは性格が出るのか、苗字で呼ぶか下の名で呼ぶかは、人によってまちまちだったが。

「さぁ……知らないわ。むしろ美樹さんの方が、詳しそうだと思うんだけど」
「うーん、そっか……まぁ、そういうことなら、他当たってみるよ」

 じゃあね、と言うとその少女は、東郷の元から立ち去った。
 原因不明のクラスメイトの欠席。
 珍しいことではないが、見逃していいことではなかった。
 こうした事態が発生した場合、考えられる原因は3つだ。
 まずマスター同士の戦いに巻き込まれて消滅したか、あるいはクラスメイト自身がマスターで、戦いに負けて脱落したか。
 この場合時期的に考えれば、予選の最後の犠牲者、ということになる。
 残る第3の原因は、生き残ったクラスメイトが、聖杯戦争を戦うために、行動を開始するしたということ。

《アーチャー、捜してほしい人がいるの》

 であれば、見過ごす手はなかった。
 すぐさま背後で霊体化している、自らのサーヴァントに念話を飛ばす。
 クラスメイトの容姿を伝え、この辺りに姿が見えないか、捜索してほしいと要求する。

《了解だ。宝具を使って空から捜す。念のため、単独行動スキル行使の許可を》
《承認します》
《ありがとう。何かあったらすぐ呼んでくれ》

 そう言うとアーチャーの気配は、すぐさま空へと飛んでいき、そして感じられなくなった。
 こういう時、弓兵の単独行動スキルは便利だ。魔力を消費する宝具を使っても、問題なく偵察や捜索任務につくことができる。

(このまま見つけてしまったら……もう、『東郷さん』と呼ばれることは、二度とないかもしれないわね)

 仮にクラスメイトが生きていたなら、3番目の選択肢の可能性が高まる。
 それならば自分はクラスメイトに、殺害を命令しなければならない。
 そうすれば東郷は、聖杯戦争優勝に、一歩近づくことになる。
 それは世界の崩壊と、友奈の安らかな眠りを意味している。
 そうなればあの町に帰ることも、あの子に苗字で呼ばれることもないのかと思うと、ほんの少し名残惜しく思った。


533 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:54:20 Wt7I0O0k0
《セイバー、いい?》

 そして動いた者がもう1人。
 東郷美森に話しかけた、同じクラスの中学生―― 【美樹さやか】 。
 彼女もまた、セイバーのサーヴァントを従える、聖杯戦争の参加者だったのだ。

《いつも一緒にいた、まどかって子がいるでしょ? あの子のこと、手分けして捜してほしいんだ》
《彼女をか? 何のために?》
《何の音沙汰もなく消えたんだよ? ひょっとしたら、聖杯戦争に関わってるかもしれない》

 本戦が目前に迫った以上、ちょっとの手がかりでも見逃すことはできない。
 少しでも敵マスター特定の手がかりになるなら、すがるべきだとさやかは言う。

《……分かった。何かあったら、すぐ俺を呼び戻せよ》

 そう言うとセイバーは、霊体化したまま、街へと走り去っていった。
 残されたさやかは、自身の使い魔とは反対の方へ、極力目立たない速さで歩き出す。
 どこに敵の目が光っているか分からない。あまり歩みを急ぎすぎて、悪目立ちするのもよくないだろう。
 無論さやかには、その敵が、すぐ近くの車椅子の少女であることなど知るよしもないが。

(まどか……)

 いなくなった友人の名を、心の中で繰り返す。
 ここで出来た友人ではない。元いた見滝原中学校に、最近転入してきたクラスメイトだ。
 少々気の弱い子だったが、いつもの調子で接していくうちに、少しずつ心を開いてくれた。
 といっても付き合いは未だ浅く、昔馴染みの志筑仁美のような、特別な親友というわけでもない。

(……でも、だからって)

 それでも、級友は級友だ。
 仮に彼女が、本物を模したNPCでなく、聖杯戦争の参加者だったとしたら。
 そして襲撃を生き延びて、今もサーヴァントを連れて、戦いに備えているのだとしたら。

(どうすりゃいいのよ……!)

 戦うのか。そして殺すのか。
 大層な使命を叶えるために、友人の命を犠牲にして、血みどろの手で聖杯を掴むのか。
 たった一人の友人のために、倒すべき敵を見逃して、無責任にも使命を投げ捨てるか。
 何が正しいのか分からない。
 どう接していいのか分からない。
 ぐちゃぐちゃした気持ちを抱えたまま、さやかは少し早足で、学術都市の街並みへと向かった。


534 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:55:37 Wt7I0O0k0


 万能の願望機とやらにも、再現不可能なものはあるらしい。
 森羅万象を塗りつぶし、意のままに改竄する己の力は、随分と弱体化してしまっている。
 今の自分に使えるのは、せいぜいお伽話のような、何でもできる魔法くらいだ。
 それにしたって、ただの魔法少女とは、一線を画した奇跡なのだが。
 ジュニアハイスクールの屋上で、学術地区を一望しながら、 【暁美ほむら】 は思考していた。

「心配そうね」

 くすくすとセイヴァーのサーヴァントが笑う。
 悪魔の仇敵であるはずの娘が、今は悪魔のしもべとして、すぐ傍らで笑っている。

「まさか本人でもあるまいし。虚像に過ぎない彼女ですらも、見境なしに追い求めるのが、貴方の愛とやらなのかしら?」
「作り物であればこそ、意味のないものは存在しない。わざわざ用意されたからには、きっとそこにいる意味がある」
「ロマンチストね」

 口で言うならタダ、だからか。
 こいつはその口を開くたびに、悪口ばかりを並べている。
 手を出すことも歯向かうことも、令呪で封印されているからか。何とも卑しい性分だ。

「手っ取り早く、貴方の魔法で、予知することはできないの?」
「構わないけれど、そういう的を絞ったな使い方には、相当量の魔力が必要よ」
「融通が効かないのね」
「だから勝てたのだと思いなさいな」

 純粋な技量勝負でなら、お前ごときには負けなかったということか。使えない上に嫌味な奴め。
 内心で吐き捨てると、ほむらは階段へと向かう。

「直接捜しに?」
「そうするわ。これ以上は不毛だから」

 背後のセイヴァーに短く告げると、ドアを開けて建物へと戻り、下り階段を歩いていった。
 一人のNPCを探すという、戦略上無価値な行為のために、貴重な魔力は使えない。
 だとしても、その行為そのものを、無価値だからと切り捨てることはできない。

(悔しいけれど、今の私には、貴方の真贋を見極めることはできない)

 力を封じられた自分には、相手が本物なのかどうかを、見破ることは不可能だ。
 だとしても、本人であったら。
 ここに存在する彼女が、作られたNPCではなく、正真正銘の本物だったなら。

(見捨てはしないわ)

 絶対に見つけ出してみせる。
 そして絶対に守ってみせる。
 自分が悪へと堕ちた動機は、たったそれだけなのだから。


535 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:57:02 Wt7I0O0k0


 桐ヶ谷和人――否、敢えて 【キリト】 と通称しようか。
 黒髪を長くストレートに伸ばした、線の細い女顔の少年。
 それがアサシンのサーヴァントである、ヘルマン・ルイスのマスターだった。

「駄目だな、こりゃ。どこからも入る隙間がねぇ」

 そんな彼らの現在地は、世界樹の北東に位置するダーインの塔だ。
 結界魔術を駆使することで、世界樹の魔力や環境を管理し、ユグドラシルを維持するための施設。
 聖杯戦争には乗らず、この場からの脱出を目指すキリトは、まずここを調べるべきだと考えたのだ。
 ユグドラシルを維持する結界があるなら、それを破壊してしまえば、ユグドラシルの外へ出られるのではないかと。

「やっぱ、そう簡単にはいかないか……」

 しかし、それで終わりというわけにはいかなかった。
 たどり着いたダーインの塔は、それ自体が強靭な結界によって覆われ、他者の侵入を拒んでいたのだ。
 ヘルマンも試しに周囲を巡って、入り込める隙がないか探してみたのだが、結局徒労に終わってしまった。
 塔の防壁は、サーヴァントであっても、突破することはできないらしい。

「どうする? 一度正面からぶち壊してみるか?」
「相変わらず暗殺者(アサシン)の発想じゃないな、それ……」

 すぐ傍らにやって来たヘルマンに対し、キリトは半ば呆れ気味に言う。
 幸いにして周囲には、人っ子一人見当たらなかった。故にヘルマンも霊体化を解き、姿を現して行動しているのだ。

「……まぁ、今はやめといた方がいいだろ。休戦状態に入った今じゃ、どさくさ紛れってのも無理があるし」

 結局キリトの判断は、この場は大人しく引き下がる、というものだった。
 本戦まで空白の期間が生じた以上、どうしても自分達の行動は目につきやすくなる。
 であれば、ここで荒っぽい手に出れば、即座に見咎められてペナルティを課せられる可能性があるのだ。
 それはヘルマンらにとっても本意ではない。よってここは何もせず、街へと帰ることを選んだ。

「それにしても、どういうことなんだ、これは?」

 しかし、何も成果がなかったわけではない。
 いや、成果と呼ぶには微妙ではあったが、気になる発見は一つあった。
 それは塔に設けられた、ある奇妙な装飾だ。

「どう見ても、ヴァリアンテとかには無かったタイプの飾りだわな」
「神様を縛って留めるための結界……っていうのは、確かに理解できるんだけどさ」

 それは本来ならばあり得ないもの。
 ここまで緻密に守られてきた、西洋魔術の世界観を、根底からぶち壊しにするもの。
 膨大な設定を敷き詰め、構築されたユグドラシルでは、許されるはずのないミステイクだ。

「何で、ヨーロッパの建物に――注連縄が結ばれてるんだ?」


536 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 00:58:49 Wt7I0O0k0


 世界樹ユグドラシルの頂に、巣を構える巨鳥・フレスベルグ。
 世界に吹く風の全てを、その羽ばたきで起こすという魔物の名は、死体を飲みこむ者という意味を持っていた。
 なればこそ、魔術都市の政庁には、その名が相応しいのだろう。
 この街の実権を牛耳る、最高権力者の席には、一人の男が座っている。
 死人の軍団を蘇らせて、遠き大地に動乱をもたらした、野望の男がほくそ笑んでいる。

「神樹の結界……星をも滅ぼす災厄からも、人類を守った神々の聖域。このユグドラシルの守りとするには、まさにうってつけだったな」

 赤毛を長く伸ばした若者は、名をアンドレアス・リーセと言った。
 朗らかで優しい物腰と、相反する力強い思想とで、街の人々の心を掴み、都市の実権を握った市長だ。
 それが用意された設定だ。
 彼が一言そう謳えば、それらは全て事実となる。
 何しろ指導者アンドレアスは、この世界樹の創造主――ルーラーのサーヴァントなのだから。

「その割には、イレギュラーの侵入を許してたけどな。やっぱり宗教が違うと、神様も喧嘩しちまうんじゃないのか?」

 そしてその傍らには、おちゃらけた衣装を纏った男が一人。
 先ほど本戦に関する情報を、マスター達に通達した、 【サガラ】 という名前の男だ。
 もっとも、不敵に笑うその顔からは、ノリノリでまくし立てていた、DJサガラの面影は存在しない。

「あれは会場の不備ではない。むしろ奴を招いたのは、私自身と言うべきだろう」
「ほぅ、熱烈なファンもいたもんだ」

 実を言うと、最終予選の通過者は、通達された23人ではない。
 42人の半分の、21人だけだった。
 それが覆されたのは、たった一人のイレギュラーが、この街に紛れ込んだからだ。
 そしてその侵入者を叩き出すために、新たなサーヴァントが召喚された。
 既に追っ手から逃れたイレギュラーは、サーヴァントの一人としてカウントされ、自らのマスターを得てしまっている。
 こうなればもみ消すことは不可能だ。増えた二人の通過者は、そうして登録されたのだった。

「彼女の管理はお前に任せる。聖杯戦争の監督役としてな」
「前々から思ってたんだが、こういう時こそ、ご自慢の神闘士(ゴッドウォーリアー)を使えばよかったんじゃないのか?」
「彼らには嫌われてしまってな。私が呼びかけたとしても、降りてくることはあるまいよ」

 肩を竦めながら、アンドレアスは苦笑する。
 なるほど、と納得したような顔をすると、サガラもそれ以上の追及はせず、市長室を立ち去った。
 監督役の離れた部屋には、ルーラーただ一人が残される。
 支配者アンドレアス・リーセは、たった一人の室内で、誰にも聞かれず言葉を呟く。

「時代を越えて、人を変え、それでもなおも立ちはだかるか――射手座(サジタリアス)」

 そう言う彼の横顔には、既に笑みの色はなかった。


537 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:00:17 Wt7I0O0k0
【クラス】ルーラー
【真名】アンドレアス・リーセ
【出典】聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold-
【性別】男性
【属性】秩序・悪

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:A+ 幸運:C 宝具:EX

【クラススキル】
真名看破:A
 ルーラーとして召喚されることで、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。

【保有スキル】
気配遮断:EX
 サーヴァントとしての気配を断つ。EXランクは「規格外の」ではなく、「特別な」の意味である。
 アンドレアスは正体を明かさない限り、サーヴァントではなく普通の人間としてしか認識されない。
 ただし、気配そのものを消すことはできず、近づけば普通に感付かれる。

世界樹の秘法:A
 神器グングニルを生み出す世界樹・ユグドラシルを創り出す術。
 この術によって、本聖杯戦争の舞台である世界樹は、「アスガルドのユグドラシル」の特性を得ている。
 本来は異教の戦士の魔力を吸い上げ、無力化する特性を有していたのだが、
 本聖杯戦争では公平性を保ち、その性質を周囲に悟らせないようにするため、オミットされている。

カリスマ:C-
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
 ただしこのスキルは、彼の生み出したユグドラシルの影響によるところも大きい。

聖人:C
 聖人として認定された者であることを表す。
 聖人の能力はサーヴァントとして召喚されたときに"秘蹟の効果上昇"、"HP自動回復"、 "カリスマを1ランクアップ"、"聖骸布の作成が可能"から、一つ選択される。
 アンドレアスはHP自動回復を選択した。

医術:D
 宮廷医師アンドレアスが、もともと持っていたスキル。
 平均的な医師の技術を有している。


538 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:02:22 Wt7I0O0k0
【宝具】
『反魂の葬送騎士団(エインヘリヤル)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:測定不能 最大補足:1000人
 アスガルドに伝わる禁術を行使し、亡霊の兵士達を生み出す。
 世界樹から流れ込む魔力によって、その効果範囲はフィールド全域に及んでおり、どこにでも死者を召喚することができる。
 ただし、マスターおよびサーヴァントを蘇生させることはできない。
 そのため、必然召喚される死者の力も、それなり程度のものになっている。

『終焉の神闘衣(ロキゴッドローブ)』
ランク:EX 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 アスガルドの邪神・ロキが纏う神闘衣(ゴッドローブ)。
 神の力を宿しているどころではなく、神自身が纏う鎧・神衣(カムイ)であるため、規格外の神秘性を有している。
 この神闘衣を然るべき者が装着すれば、装着者の全ステータスが2ランクアップするのだが……

【weapon】
なし

【人物背景】
北欧の大地・アスガルドに君臨する、主神オーディーンの地上代行者。
しかしその正体は、邪神ロキの魂の一部を宿した依代であり、アスガルド転覆を目論んだ野心家である。
本来はいち宮廷医師に過ぎなかったのだが、のちに神闘士(ゴッドウォーリアー)となるバルドルが、
ロキの封印を解いたことによって、その力に毒されることになった。
邪魔者であるオーディーンを倒すため、アスガルドの究極の神器・グングニルを我が物にしようとしている。

もともとの物腰は穏やかで、医師らしい優しさを持った人物であったとされている。
世界樹ユグドラシルを創り出し、地上代行者となって以降は、そうした態度も相まって、理想的な指導者として迎え入れられていた。
しかし、ロキによって歪められた心は、それまでとは似つかぬ冷酷非情なものとなっており、敵対者を笑って踏みにじる残忍な人物へと変貌している。

冥王ハーデスが蜂起しているうちに、自身の野望を果さんとしたロキは、
ユグドラシルの成長を加速させるため、冥界で散った黄金聖闘士(ゴールドセイント)の聖衣(クロス)を利用することを画策。
アンドレアスを操り、黄金聖闘士達を復活させ、黄金聖衣(ゴールドクロス)をユグドラシルに集めさせた。
しかし、乗り込んできた黄金聖闘士達との戦いで、劣勢になったアンドレアスを見ると、
ロキは自らその意識を乗っ取り、彼の心を塗りつぶしてしまう。
更にアテナエクスクラメーションの直撃を受けたことで、肉体も破壊され、アンドレアス自身は完全に消滅してしまった。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力を我が物とし、再び地上支配に乗り出す


539 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:03:15 Wt7I0O0k0


 フレスベルグの屋根の上には、一人の少女が立っていた。
 小学生程度の、幼い童女だ。虚ろに遠くを見ている瞳は、何かを見つめているようで、しかし何も見ていない。
 霊体の透明の体は、彼女がサーヴァントであることを、雄弁に物語っていた。
 見えないはずの不可視の姿が、存在を主張するというのも、奇妙な表現ではあったが。

「本音を言うと、お前さんは、勝つべきではないと思ってる」

 その傍らに立っているのは、先ほどまで市長室にいたサガラだ。
 見えないはずのサーヴァントの、気配を察知できるというのは、彼がマスターであることの証明に他ならない。

「まぁ、中身のないお前に言っても、意味はないかもしれんがな」

 少女は何者でもなかった。
 与えられたバーサーカーのクラスも、自我を持っていなことの、言い訳として用意されたものだ。
 その実そこにいるサーヴァントには、あるべき中身が存在しない。
 戦記と戦史を斜め読みし、力と姿だけを模したそれには、魂が込められていないのだ。
 当然、英霊などとは呼べない。英霊と呼ぶことすらおこがましい。

「この聖杯戦争を演ずる者は、胸に願いを抱えた者達――望みのために命を懸けて、命を輝かせる連中達だ」

 お前にはその願いがない。願う心が存在しない。
 故に本来ならばこの舞台には、上がるべきではない役者なのだと。

「……といっても、そいつはあくまで、俺の願望なんだけどな」

 最後にサガラはそう付け足した。
 それらの言葉を聞き流してなお、バーサーカーの表情は変わらない。
 散々に貶され続けながらも、いかなる感情も見せることはない。
 本当に理性も本能すらも、この抜け殻には存在しないのだ。

「ま、役名をやるつもりはないが、黒子としてなら使ってやるさ。
 お話が進まなくなったら、お前さんがちょっかいをかける。といっても物語を進めるだけだ。無理に勝ちに行くのはナシだからな」

 その程度で死んでしまう相手なら、その程度の役に過ぎないという話でもあるがと。
 そう言うと、サガラの姿も薄れていき、立ちどころに気配を消してしまった。
 日の沈みかけた夕焼けを、不可視の少女だけが見つめる。
 世界樹の頂に立ちながら、戦いの頂に立つことを望まれなかった、空っぽの人形だけが残る。

 その雛形の名は――乃木園子。

 かつて乃木園子は勇者であった。
 記録に残る乃木園子は、大切な友を守るために、その命を懸けた最強の戦士だ。
 しかしここにいる彼女は、英雄の上澄みだけをかすめ取った、見せかけの操り人形でしかない。
 乃木園子の本当の心は、この世界樹の、どこにもいない。


540 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:05:04 Wt7I0O0k0
【クラス】バーサーカー
【真名】乃木園子
【出典】鷲尾須美は勇者である
【属性】中立・狂

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A+ 敏捷:A 魔力:A+ 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】
狂化:B
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
神樹の勇者:A
 園子のパスはマスターを介して、世界樹そのものと繋がっている。
 そのため園子は世界樹から、無尽蔵に魔力を受け取ることができる。

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では園子に傷をつけられない。後述する宝具『輝けよ、眩いほどに(せいれいけっかい)』に起因するスキル。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

神性:B
 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 生前、肉体のほとんどを神樹様に捧げられ、生き神として崇められた園子は、
 後付けながらも高い神性を獲得している。

【宝具】
『輝けよ、眩いほどに(せいれいけっかい)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1人
 かつて大赦から贈られた、「精霊」と呼ばれる生命体。勇者をサポートする存在であると銘打たれていた。
 現実には、貴重な戦力である勇者の損耗を避けるための安全装置であり、
 勇者に危害が及ぼうとした場合には、たとえ本人が自殺しようとした場合であっても、無条件に勇者の身を守るようになっている。
 本来ならば宝具と呼べるほどのものではないが、園子は合計21体という、規格外の数の精霊を保有している。
 その堅牢な守りは、直接攻撃・魔力攻撃の双方に対して、鉄壁と言っていい耐久性を発揮する。
 ただし、精霊が自らの身を盾として、攻撃を阻む宝具であるため、音波攻撃などの間接的なダメージには効果がない。
 また、神の力に由来する結界であるため、神性スキルを持つ者や、神殺しスキルを持つ者であれば、その効力を低下させることができる。

『咲き誇れ、想いのままに(まんかい)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 勇者の力を最大限に発揮する姿。
 勇者の敵であるバーテックスを、単独で撃破できるなど、平時を遥かに超えた戦闘能力を発揮する。
 この姿になった勇者は、戦闘後に「散華」と呼ばれる現象によって、身体機能の一部を喪失してしまう。
 ……しかし園子にはこの現象が発生せず、常時満開状態を維持している。


541 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:05:41 Wt7I0O0k0
【weapon】
・槍
 宙に浮いた複数の刃を持つ独特な槍。
 満開状態では数が爆発的に増加し、文字通り刃の雨を降らせることができる。

【人物背景】
新樹館に通う小学6年生の少女。
世界を守護する神樹様を管理する組織・大赦に関わる家系であり、同時に大赦から、バーテックスを倒すために選ばれた勇者でもある。
独特なテンポで生きている天然女子だが、天才的な頭脳の持ち主であり、戦闘時には的確な指示で仲間達を導く。
かつて侵略者バーテックスとの戦いで、友を救うために満開を繰り返し、全身の身体機能を喪失した。

……以上が乃木園子という人物の、本来の顛末である。
しかし今回召喚された園子は、上記の通りに満開を繰り返した状態でありながらも、散華の影響を受けていない。
それどころか、散華という概念そのものが存在せず、永続的に満開状態を維持することができる。
ここに存在する乃木園子とは、神樹様が観測・記録した、「最強の勇者」の戦闘データを投影した存在であり、本物の乃木園子の中身を持たない虚像である。

ちなみに、今よりも未来の世界において、本物の乃木園子は身体機能を回復し、五体満足のままこの状態に至っている。
しかしその時の年齢は、現在より2つ年上の14歳。
この世界樹に召喚された乃木園子は、本人が生きたどの時間軸にも該当しない、「存在しないはずの英霊」なのである。

【サーヴァントとしての願い】
なし

【基本戦術、方針、運用法】
特定の敵を排除するため、ルーラーの手足として用意された、存在そのものが規格外のサーヴァント。
それ故にパラメーターも高く、あらゆるデメリットが排除されている上、魔力も世界樹から無尽蔵に供給されている。文字通り「インチキ」じみた存在である。
欠点は常に単独で行動しているため、理性的な行動を、全く取ることができないということ。
複人数で取り囲み、戦略を駆使して勝利すべし。間違っても、単独で勝負を挑んではいけない。


542 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:06:41 Wt7I0O0k0
【マスター】サガラ
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性?
【令呪の位置】額(バンダナで隠れている)

【マスターとしての願い】
?????

【weapon】
なし

【能力・技能】
森の蛇
 ヘルヘイムの森の住人として、その植物を操る能力。世界の境界を跨ぐ門・クラックを開くこともできる。

DJサガラ
 サガラの表向きの顔。ネット上の番組を、MCとして盛り上げる演出力を持つ。

【人物背景】
沢芽市で活動するダンサー・ビートライダーズ。
その動向を伝えるWeb番組「ビートライダーズホットライン」を、個人で配信している男。
しかしその正体は、研究機関ユグドラシル・コーポレーションに雇われたエージェントであり、
ロックシードの試験運用を円滑に進めるため、若者を扇動する役割を担っていた。

番組上ではいかにもDJらしい、ノリノリな表情を見せている。
一方でひとたびスタジオから離れると、不敵な笑みを浮かべながら、意味深な言葉を口にする姿も見られていた。

実は地球の人間ではなく、ヘルヘイムの森からやって来て、黄金の果実の争奪戦を進めるために動いていた人物。
フェムシンムの王であるロシュオからは、「蛇」と呼ばれ蔑まれていた。
怪物としての姿を持たず、時にはホログラムのような姿で現れるなど、怪人インベスとも異なる存在であることが伺える。
あまりにも謎めいた彼の正体は……

【方針】
聖杯戦争の監督役を務める。
園子は膠着した状況をかき回すために利用。勝ちを狙いには行かない。


543 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:08:34 Wt7I0O0k0


 あれから随分と長い間、こうして歩いている気がする。
 東から昇った太陽が、沈みかけるほどの時間を、ただ歩いて過ごしている。
 痛む体を引きずりながら、ほとんど意識もないままに、ただ遠くへと歩いている。

 始まりは、なんてことのない戦いだった。
 周りに怪しまれないよう、それまでの生活スタイルを崩さず、家を出て学校へ出かける。
 しかしその道のりには、他のマスターが待ち受けていた。
 やむなく応戦したものの、戦いには敗北してしまった。
 恐ろしい軍団とおぞましい光は、自分を守ってくれたサーヴァントを、蹂躙し抹殺してしまった。
 そうして他ならぬ自分自身も、浅からぬ傷を負いながら、こうして追っ手から逃げ続けている。

 サーヴァントを失ったというのに、いつまで経っても何も起きない。
 強制退場させられるまでの、タイムリミットは切っているはずだ。
 それでも未だにこの体は、世界樹に留まり続けている。
 気がついたら、左手の令呪の形も、なんだか変わっているような気がする。

 このままここにいることが許されるのか。
 否、果たしてこのまま殺されずに済むのか。

 聖杯に願うような願いはない。だから英霊同士の戦いにも、いまいち乗り気にはなれなかった。
 だとしても、今はそうではない。
 どうしても掴みたい願いが、今はこの胸に宿っている。
 朦朧とした意識の中でも、たった一つの願望だけが、この体を動かし続けている。

 帰りたい。

 生きてこの世界樹を出たい。

 大切な人達が待っている、あるべき場所に帰りたい。

 今はただ、それだけだった。
 帰りたいという言葉だけが、胸の中でリピートしていた。

 自分のいるべき場所へ帰る。
 その帰るべき場所とはどこ?
 家族の待っている見滝原の街?
 思い出の残るアメリカの街?
 それとも――

「あ……」

 その時、目に飛び込んだものがあった。
 鬱蒼と茂る木々の中に、違ったものが見えてきた。
 それは石造りの大きな塔。
 細い注連縄が結ばれた、森の真ん中にそそり立つ塔。
 そしてそこにもたれかかるように、座り込んでいる人影だった。

 その人の姿は、黄金だった。
 茜色の光を浴びて、眩く照り返す鎧は、金色の彩りを放っていた。
 それはまるで、この地上にも、もう一つの太陽があるかのように。
 太陽に照らされる鎧もまた、同じ太陽であるかのように。

 そしてその黄金を犯す、深い闇色の傷跡があった。
 そこだけに宇宙の暗黒が、そのまま投影されたような、奇妙な跡が広がっていた。
 雄々しくも神々しいはずの鎧に、黒々と刻まれたその傷が、痛ましい印象を与えていた。

「………」

 閉じられていた、まぶたが開く。
 美しくも力強い、その顔立ちの瞳が開く。
 茶色い瞳はまっすぐに、こちらを見つめ返していた。

「君が――俺の、マスターか?」


544 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:09:47 Wt7I0O0k0


 これにて全ての役者は揃った。
 序幕を彩った演者達の、全ての顔見せが終わった。

 黄金の名は、射手座(サジタリアス)星矢。
 与えられた座は、アーチャー。
 聖杯に求められることなく、それでも呼び寄せられてしまった、イレギュラーのサーヴァント。

 あり得ない役者の登板は、あり得ない役者の復活に繋がる。
 語られないままに役割を終え、ひっそりと舞台袖に消えるはずだった、一人の少女を引き寄せる。

 少女の名前は、 【鹿目まどか】 。

 あるはずのない英雄と、死すべきはずだった少女が、塔の下で巡り合った時。
 日は沈み月の光が満ちて、運命の夜が訪れる。

 ニーベルングの指輪の舞台は、たった一日では終わらない。
 次なる舞台の開演は、すぐそこまで迫っているのだ。


545 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:11:14 Wt7I0O0k0
【クラス】アーチャー
【真名】星矢
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:D 敏捷:A+ 魔力:A++ 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:E
 魔力への耐性。無効化は出来ず、ダメージを多少軽減する。
 本来ならばBランク相当のものを持っているのだが、魔傷の影響によりランクが下がっている。

単独行動:D
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Dランクならば半日程度の現界が可能。
 本来ならばCランク相当のものを持っているのだが、魔傷の影響によりランクが下がっている。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A++
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 アーチャーの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。

神殺し:A
 数多の神々と戦い、撃退してきた逸話に基づいたスキル。
 神性を持つ者に対して、与えるダメージが増大する。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

魔傷:-
 マルスとの戦いでつけられた、呪いに近い力を帯びた傷。
 小宇宙の燃焼を阻害する力を持っており、小宇宙を大きく燃やした際には、アーチャーの生命力さえも削ってしまう。
 アーチャー本人のスキルではなく、後付けで備わったバッドステータススキル。

【宝具】
『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:A 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:A++ 幸運:D 宝具:A
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・射手座(サジタリアス)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
 黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
 またこの射手座の聖衣には、黄金の弓矢が備えられており、聖衣を一撃で貫くほどの威力を持っている。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・幸運のパラメーターが、上記の通り1ランクずつアップする。
 マルスとの決戦の際に、左腕部の一部パーツが損壊している。

『天翔ける希望の流星(ペガサスりゅうせいけん)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:50人
 黄金のペガサスが誇る必殺拳。
 アーチャーが聖闘士となったその時から、頼りにし続けてきた奥義である。
 聖闘士の拳速を最大限に発揮し、敵に連続してパンチを叩き込むというシンプルな技。
 数多の敵との戦いで用い、ペガサス星矢の名と共に語り継がれたことによって宝具化した。


546 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:12:10 Wt7I0O0k0
【weapon】
なし

【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
元は天馬星座(ペガサス)の青銅聖闘士であり、長きに渡って地上の神・アテナを脅かす敵と戦ってきた。
数多の神々との戦いの中で培った力は、聖闘士の中でも最高クラスであり、生きながらにして伝説となっている。

本来の性格は血気盛んな熱血漢。
しかし、聖闘士を代表する黄金聖闘士となって以降は、周囲の者に示しをつけるため、落ち着いた態度を見せるようになった。
かつてはやんちゃな部分もあったが、有事の際には地上の愛と平和を守るために戦える、正義の心を宿した戦士である。

13年前、火星の軍神・マルスが決起した際には、彼もまたアテナの戦士として参戦。
神であるマルスと直接拳を交え、二度に渡る激戦を繰り広げた。
しかしその最中、星矢はマルスの闇の小宇宙に呑まれ、彼の元に幽閉されてしまう。
それはマルスが闇の神・アプスの到来を恐れ、自分が敗北した時に、代わりに戦わせるための措置だった。
囚われの身となった星矢は、新世代の聖闘士・光牙らに望みを託し、時に彼らをサポートする。
この聖杯戦争には、幽閉されている最中に召喚された。生きたまま召喚されているため、霊体化することはできない。

上述した通り、その力は聖闘士の中でも群を抜いている。
セブンセンシズに目覚めた拳は、光速(マッハ90弱)にすら到達するほど。
両肩と右前腕、左二の腕、右太もも、左足首に魔傷を負っており、13年間の幽閉生活の中で消耗しているが、
それでも小宇宙の分身を飛ばしマルスを食い止める、新世代の聖闘士達が束になってもかなわなかったアプス相手に食い下がるなどしている。
必殺技として、宝具にもなっている「ペガサス流星拳」、その拳打を一点に集中する「ペガサス彗星拳」、
敵を羽交い締めにしてジャンプし、諸共に地面に激突する「ペガサスローリングクラッシュ」を持つ。
更に先代射手座・アイオロスの技を継承したものとして、拳から小宇宙の衝撃を直射する「アトミックサンダーボルト」を使うことができる。

【サーヴァントとしての願い】
特にない。元の世界に戻り、地上を守るために戦いたい

【基本戦術、方針、運用法】
悲劇も嘆きも覆し、全ての物語に終止符を打つ者。地上の愛と正義を守り、平和を害する者を打ち倒してきた、聖闘士伝説の体現者。
まともな形で召喚されていたならば、間違いなく本聖杯戦争の中でも、最強クラスのサーヴァントとして君臨していたことだろう。
しかし残念ながら今回は、満身創痍かつ魔傷を負った状態で、強引に召喚されたため、主に防御力・持久力が大幅に低下してしまっている。
マスターも戦闘力を有していないため、慎重な立ち回りを心がけたい。


547 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:12:50 Wt7I0O0k0
【マスター】鹿目まどか
【出典】[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
【性別】女性
【令呪の位置】左手の甲

【マスターとしての願い】
帰りたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
なし

【人物背景】
見滝原中学校に通う2年生の少女。
生まれは見滝原市だったが、母親の仕事の都合で、つい最近までアメリカで暮らしていた。
日本に戻って以降は、クラスメイトの暁美ほむらに、何かと目をつけられている模様。

少々押しが弱いものの、優しく相手を思いやることができる少女。
本来ならばそれ以外の何者でもなく、魔法少女の戦いにも、一切無縁であるはずの存在である。
しかし高い資質を持ちながら、キュゥべえの接触を受けずにいるという、不自然さを抱えてもいる。

時折自分のいる場所が、今いるべき場所ではないと感じることがあるらしい。
それもそのはず、本来の彼女がいるべき場所とは……

【方針】
?????


548 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:14:05 Wt7I0O0k0


《剣騎士(セイバー)》
葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武 & アルファモン@DIGITAL MONSTER X-evolution
鯨木かさね@デュラララ!! & アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
美樹さやか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 & レオン・ルイス@牙狼-GARO- 炎の刻印

《弓騎士(アーチャー)》
シノン@ソードアート・オンライン & シエル・アランソン@GOD EATER 2
湊耀子@仮面ライダー鎧武 & 円環の理@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
東郷美森@結城友奈は勇者である & ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズ
鹿目まどか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 & 星矢@聖闘士星矢Ω

《槍騎士(ランサー)》
黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ & 駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武

《騎兵(ライダー)》
犬吠埼風@結城友奈は勇者である & 剣鉄也@真マジンガーZERO対暗黒大将軍
雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明- & ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2

《魔術師(キャスター)》
立花響@戦姫絶唱シンフォギアG & スバル・ナカジマ@魔法戦記リリカルなのはForce
小日向未来@戦姫絶唱シンフォギアG & パスダー@勇者王ガオガイガー
衛宮士郎@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!! & 神崎士郎@仮面ライダー龍騎

《狂戦士(バーサーカー)》
天羽奏@戦姫絶唱シンフォギア & トーマ・アヴェニール@魔法戦記リリカルなのはForce
忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明- & 呀@牙狼-GARO-
サガラ@仮面ライダー鎧武 & 乃木園子@鷲尾須美は勇者である

《暗殺者(アサシン)》
キリト@ソードアート・オンライン & ヘルマン・ルイス@牙狼-GARO- 炎の刻印

《門番(キーパー)》
マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG & エデン@聖闘士星矢Ω
両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明- & ハービンジャー@聖闘士星矢Ω

《製作者(クリエイター)》
憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)@鋼の錬金術士 & アルバート・W・ワイリー@ロックマンシリーズ

《指導者(メンター)》
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 & 高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ

《盾騎士(シールダー)》
羽佐間カノン@蒼穹のファフナー EXODUS & 我愛羅@NARUTO

《救世主(セイヴァー)》
暁美ほむら@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 & 美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ

《裁定者(ルーラー)》
アンドレアス・リーセ@聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold-(マスター不在)


549 : カーテン・コール ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:14:29 Wt7I0O0k0
.










 役者は揃った。ステージも整った。

 最初の舞台はこうして終わり、次の舞台がこれから始まる。

 さぁ――お楽しみはこれからだ。










.


550 : ◆nig7QPL25k :2015/09/02(水) 01:15:56 Wt7I0O0k0
これにてオープニングの投下は終了です
コンペに参加していただいた皆様に、改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました!

予約開始日時、および予約日数について、後日改めて連絡させていただきます
今週中には発表する予定ですので、もうしばらくお待ち下さい


551 : 名無しさん :2015/09/02(水) 01:18:19 kAqCf82g0
投下お疲れ様でした
魔術都市という舞台ならではのOPで読んでいてドキドキしました
異世界を感じさせる地での戦いはどこかファンタジーでいいな
後ルーラーお前かよw なんという時事ネタw


552 : 名無しさん :2015/09/02(水) 01:24:48 7wEL81hQ0
OP投下お疲れ様でした!
スマホからなのでトピックなしですが、ブラッドレイ・ワイリー組を投稿させていただいた者です。
したらばのパロロワ企画に投稿させていただいたのは初めてだったのですが、まさか選ばれるとは思ってなかったので素直に驚いてますw
揃ったマスターとサーヴァント。魔術都市でこのあと、どんな戦いとドラマが生まれるのか!?
僭越ながら本編も参加させていただきますので、よろしくお願いします!


553 : 名無しさん :2015/09/02(水) 02:52:05 jKm/MR1E0
OP投下乙ですニャン☆

かさにゃん組がトップとか、一体どれだけアヌビスさんが強化されたというのか…


554 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/03(木) 00:09:39 OSlocQ1.0
OP投下お疲れ様でした。
拙作の採用に感謝します。

採用に伴い、というのもなんですが、アヌビス神の宝具効果に一文加えたいと思います
切るものを選ぶ能力、に補足というか追加です。

ただし、万物を透過できるわけでなく、同ランク以上の神秘を持つ宝具や概念霊装などは透過できない。

という一文を加えたいと思います。
原作でも、チャリオッツの剣やスタプラの飾りなどでは弾くことができていたので。
また宝具ランクもBからCに変更したいと思います。

以上の変更に何か不都合がありましたらご指摘ください。

それと、こちらは本当に余談ですけど
なのはの出典が魔法少女リリカルなのはシリーズ、となっていますが、魔法戦記になったForceの経験もサーヴァントなのであります、とだけ。


555 : 名無しさん :2015/09/03(木) 04:45:33 N5GWjxvY0
投下乙です
規格外のマスターやサーヴァントが多いw
キャラ同士の関係も結構複雑で、ストーリーも戦闘も期待しかない


556 : ◆nig7QPL25k :2015/09/04(金) 01:04:37 l2hM7i3Q0
本スレにおいて、自分がキャラクターを執筆し、なおかつ複数のキャラクターが参戦している作品について、
簡単な作品紹介とおすすめの把握方法を記載しておきました
ご確認ください


仮面ライダー鎧武(4人・全47話)
平成仮面ライダーシリーズの15作目に当たる作品で、現行作品の1つ前の作品になります
久しぶりに平成初期のハードな要素が復活したことや、多彩なキャラクター造形も相まって、
非常に見応えのある作品になっていると思います

本企画ではラスボスの戒斗が参戦しているため、最終話までの把握が必須となってしまっています
ただし序盤1クールがほぼキャラクターの顔見せ的な内容に終始していたこと、
また耀子が登場するのが2クール目に入ってからということもあるので、
キャラクターの把握だけが目的なら、第12話「新世代ライダー登場!」からの視聴でOKです


戦姫絶唱シンフォギアG(3人+1人・全26話)
音楽家の上松範康氏・ゲームプロデューサーの金子彰史氏の異色のタッグが原作を務める、
「歌を歌いながら戦う」異形のバトルヒロインアニメです
現在は3作目「GX」が放送されていますが、今回は2作目「G」からの参戦が大多数を占めています

「G」からの参戦キャラクターの参戦時期は、全て第9話「英雄故事」からの参戦ということで統一しています
奏さんは無印1話で死亡するキャラクターですが、生前の回想シーンが小出しにされているので、
無印を全話見て把握するのがオススメです


[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語(3人+1人・全1作+単行本2冊)
言わずと知れたハード路線の魔法少女アニメ
今回は現行最新作である、映画「叛逆の物語」の終了後からの参戦となっています
織莉子の登場する作品は、スピンオフ漫画「魔法少女おりこ☆マギカ」です

公式での位置づけでは、「叛逆の物語」は劇場総集編の続編として認識されているので、
「叛逆の物語」以前でのキャラクターの把握は、劇場版2作を見るだけでもOKです
織莉子の登場する「おりこ☆マギカ」は、前後編構成の単行本が発売されています
現在はサイドストーリーや前日譚に当たる作品も刊行中


聖闘士星矢Ω(3人・全97話)
少年ジャンプの漫画作品「聖闘士星矢」の、アニメ版の世界から、十数年後を描いたオリジナル作品です
自分にとってはこれが初めての星矢で、特に前半1年目の現代風のノリは好みにドストライクでした
守るべきアテナのいない時代で、聖闘士の戦う理由を問う内容や、アニメならではの多彩なアクションシーンは、見応えがあると思います

今回は主人公・光牙が参戦していないので、把握だけを目的にするなら、
第24話「再会を目指して!行け、最後の遺跡へ!」、
飛んで第27話「旅の終焉!少女の光と若者たち!」から第39話「天秤宮の再会!激突、黄金対黄金!」まで、
第43話「軍神復活!突入、最後の宮!」から第50話「星矢に届け!若き聖闘士達の願い!」までをチェックすればOKです
後半2年目は、第57話「ペガサスを倒せ!孤高の戦士エデン!」、第67話「昴、驚異の小宇宙!エデンの使命!」、
第72話「聖衣、継承!小馬座の昴、誕生!」、第73話「小馬座の涙!?覚醒する二つの聖衣!」、
第90話「牡牛突進!到達、パラスの間!」をチェックすれば大丈夫だと思います
バンダイチャンネルでは9月いっぱいの間見放題になっているため、会員の方はこちらでチェックするのがオススメです


557 : ◆nig7QPL25k :2015/09/04(金) 01:05:40 l2hM7i3Q0
閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-(3人・ゲーム1本)
「おっぱい」をテーマに扱った、爆乳ハイパーバトルゲームのPS Vita第1作
いかにもなバカゲー路線の割に、キャラクター造形はしっかりしており、意外とロワ向け・聖杯向けな作品だと思っています
特に今回扱った新蛇女ルートは、シリアス面での完成度が高い名エピソードです

今回参戦したキャラクターは、いずれも秘立蛇女子学園のルートの、第5章開始直後からの参戦となっています
蛇女のキャラクターは他ルートでの掘り下げが薄いので、このルートだけをプレイすればOKです
なお、雅緋のみ、続編「ESTIVAL VERSUS」で明かされた要素が混ざっています


魔法戦記リリカルなのはForce(2人+1人・全6巻+26話)
深夜のバトルヒロインアニメの黎明期を支えた、「魔法少女リリカルなのは」の流れを汲む第4期の作品
萌え要素・シリアス要素を2つの漫画に分割しており、本作はシリアス寄りの作品になっています
色々と物議を醸した作品ですが、今回自分が執筆したスバルに関しては、本作での彼女が一番素敵なキャラクターになっていると思っています

前作「StrikerS」から登場しているキャラクターが2人いるので、こちらもチェックするのがベストと言えます
幸か不幸か、本作は6巻までが出た段階で連載がストップしているので、「Force」に限れば把握は容易です
作中での出番や描写を考えると、4巻までチェックすれば大丈夫でしょう
欲を言えばドラマCD「SOUND STAGE X」もお勧めしたいのですが、こちらは入手困難な上値も張るので、無理に把握しなくても大丈夫です
同時期に連載されていた作品「ViVid」では、なのはとスバルの掘り下げはそれほど行われていません


結城友奈は勇者である(2人+1人・全12話+1冊)
勇者として戦うことを運命づけられた、5人の中学生少女の日常と戦いを描くバトルヒロインアニメ
よくまどかマギカとの類似点が指摘されますが、本作は模倣というよりは、アンチテーゼ的な作品なのではないかと思っています
「絶望的な状況」よりも、「それにいかにして立ち向かうか」という点に重きが置かれているのは、本作独自の特徴だと思います

風先輩と東郷さんは、いずれも第10話「愛情の絆」からの参戦としていますが、
東郷さんの心理を把握するためには、最終話までのチェックが望ましいです
乃木園子の登場する「鷲尾須美は勇者である」は、若干入手困難な状態なのですが、
本作では人格の存在しない半オリキャラと化しているので、GNソードビット的なアレを多用する戦闘スタイル、ということが分かれば十分だと思います


牙狼-GARO- 炎の刻印(2人・全24話)
深夜特撮シリーズ「牙狼」の、初のアニメーション作品
一話完結色の強いシリーズの中でも、連続したストーリーに重きが置かれており、色々な意味で異色作だと思います
中盤からの畳み掛けるような展開は必見です

レオン、ヘルマン共に、全編に渡って出番があるので、最終話までの視聴が必須になります
今度放送するアニメ2作目「紅蓮の月」は、本作とは全くの別作品となるようなので、
本作で完結したものとして扱っていただいてOKです


ソードアート・オンライン(2人・現行16巻)
オンラインゲームを物語の主軸においた、サイバークライムモノのライトノベル
今回は5・6巻に収録されている第3章「ファントム・バレット」からの参戦になります
アニメ版では「ソードアート・オンラインⅡ」の前半までに相当します

現状キリトとシノンの間に、面識があるかどうかは未確定
ただしシノンというキャラクターを把握するためには、「ファントムバレット」全話を把握するのがベストだと思います
第1章「アインクラッド」と地続きになったストーリーなので、そちらもチェックしておくとベターです


以上になります
予約関連の告知については、Wiki整備も進めたいので、もうしばらくお待ちを……


558 : ◆TAEv0TJMEI :2015/09/04(金) 01:59:37 vq8Ru6y20
把握方法のまとめ、お疲れ様です。

複数参戦ではありませんが、拙作のアルファモンの把握方法についても、一応お伝えさせていただきます。
紘汰さんは氏の鎧武準拠で。

『DIGITAL MONSTER X-evolution』
拙作のアルファモンの把握は基本これ一本で十分です。120分のCGアニメです。
命をテーマとしたまとまりのよい物語であり、デジモン入門にも意外とお勧めです。

実はアルファモンに限らずデジモンは、媒体や作品によって描写がかなり異なります。
ステータスの説明文で、別クラスや逸話に度々触れているのは、別作品ネタを踏まえてのことです。
今回のセイバーとしてのアルファモンはアニメ把握だけで人物背景も、戦闘描写も書けるように設定しました。
別作品ネタはアルファモンをよく知る方が書いてくださって、よく知る方がニヤリとしていただければ幸いです。


559 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/04(金) 21:07:52 wyE7p/z20
把握方法のまとめ、お疲れ様です。
拙作からも把握方法について一筆を。

・キング・ブラッドレイ
原作終盤の死亡後からの参戦なので、戦闘描写と性格を把握するなら、原作コミックの7巻〜8巻、22巻以降を読んでいただければOKです。
アニメでしたら2009年に放映された『鋼の錬金術師FA』を視聴していただければ問題なし。

・Dr.ワイリー&ワイリーナンバーズ
戦闘描写につきましては原作ゲームをプレイしていただければOKです。
各ゲーム機のアーカイブで、ほぼ全シリーズがプレイ可能となっております。
ロックマンシリーズ自体が骨太なアクションゲームなので、今の時代にプレイしても十分楽しめます。

一番問題なのは、ワイリーナンバーズの口調と性格。
原作ゲームでは8しか声がない(ステージセレクト時に名乗るだけ)ため、
コミックボンボンの池原しげと先生執筆版の漫画ぐらいしか、一般人が確認できる資料が存在しておりません。

なのでワイリーナンバーズ8体につきましては、擬似サーヴァントという設定のため、
『性格はワイリーとブラッドレイの命令に忠実、口調はほぼ無口で機械的』とさせていただきます。
クリエイターの宝具によって生み出されたロボット兵器という設定が活かされますし、他の執筆者の皆さんがナンバーズを使う際に分かりやすいかと。

ワイリーの性格は、コミックボンボンで掲載された井月こーじ先生執筆版の『ロックマン8』『ロックマン&フォルテ』をベースにしておりますが、
1998年の作品であり既に絶版なので、口調等はロックマン7以降の原作ゲームをご確認ください。
終盤の最終バトル終了辺りで、ロックマンと若干会話するので。


560 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/04(金) 21:29:56 wyE7p/z20
併せまして、拙作・ブラッドレイ・クリエイター組の宝具『DWN-ドクター・ワイリー・ナンバーズ-』に、
以下の設定を追加させていただきます。

ワイリーナンバーズが戦闘で敗北した際、敗北場所に『特殊武器チップ』が落とされる。
落とされた特殊武器チップには、プロテクトがかかった魔術刻印が刻まれており、
何らかの方法でプロテクトを解析し、マスターかサーヴァントの魔力に同調させることができれば、
そのワイリーナンバーズが使用していた特殊武器を使用することが可能となる。
その際、同調者の攻撃方法に合わせ、若干のアレンジがかかるものとする。
 例1)キャスターのスバルがバーニングホイールを使用する際、リボルバーナックルに炎を纏わせ、打撃力の強化と炎属性を得る
 例2)シンフォギア奏者がテングブレードを使用する際、アームドギアの攻撃に風の刃を纏わせ、殺傷力と攻撃範囲が上がる

以上の特殊武器設定を加えさせていただきます。
8大ボスを宝具として再現しておいて、ロックマンシリーズ一番の特徴でもある特殊武器設定を忘れておりました・・・w

なおアレンジ方法につきましては強制ではありませんので、特殊武器をそのまま使用する事はもちろん可能です。
その辺りの設定は、後の執筆者の皆様にお任せいたします。

以上の変更に何か不都合がありましたらご指摘ください。


561 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/04(金) 22:10:18 ydc55VZc0
それでは私も一応把握作品を

湊さん、なのはさん、円環の理については>>557を参照してくだされば問題ないのでそれ以外を

・ルイズ・フランソワーズ
原作はライトノベル、確か4度にわたってアニメ化されていたはず
参戦時期は冒頭も冒頭、原作1巻始まって数ページくらいのところですので、キャラ把握として1巻に目を通すか、アニメを見ていただければ
婚約者の存在が2巻、家族のことが6巻で書かれているので、もし掘り下げるならそのあたり。
ルイズの魔術の適性についてはwikiなどでおそらくは十分です
原作者ヤマグチノボル氏は亡くなられてしまいましたが、氏の遺したプロットを基に完結はするそうですので、これを機に一読などしていただければ幸いです

・鯨木かさね
原作はライトノベル、現在アニメが放送中で、先日地上波初登場
登場巻は10〜13巻
アニメ把握でも恐らく問題ないでしょうが、キャラの掘り下げが最終巻までされたので、完全は空くには多分来々季のデュラララ!!×2結まで見る必要あり
罪歌については原作3巻で設定が凡そ語られています
こちらはwikiなどで調べるだけで十分でしょう

・アヌビス神
原作は漫画、アニメ化もされています
登場巻は21巻ですので、そこだけで把握可能です
アニメは戦闘描写が追加されていたので、個人的にはおすすめです


562 : ◆nig7QPL25k :2015/09/05(土) 05:06:56 /ZLvUfwc0
予約解禁日および、予約のルールについて発表させていただきます

予約開始は2015/9/6(日)0:00となります
予約期間は5日間、申請があれば2日まで延長可とします


563 : ◆nig7QPL25k :2015/09/05(土) 05:11:42 /ZLvUfwc0
また、拙作をWiki収録した際に、以下の点を修正・変更させていただきました

・ハービンジャーおよび星矢のステータス修正
ステータス表記に誤りがあったため、一部修正させていただきました

・ルルーシュの宝具『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』 のデメリット追加
魔力消費量について、以下の制限をつけさせていただきました
 魔力消費量は相手の抵抗力、および命令の危険度によって左右される。
 たとえば、令呪を持ったマスターに対しては、その魔力が抵抗力となるため消費が増大する。
 命令の内容も、簡単なものであれば消費が少なく、逆に「死ね」や「奴隷となれ」などの重大なものであれば消費が大きくなる。

・響のシンフォギア適合者スキルの記述変更
公開された公式設定にもとづき、内容を変更させていただきました

・ルールおよびマップ欄に設定の追記
魔術都市ユグドラシルについて、以下の情報が公開されました
 ・魔術師達は、魔力を汲み上げるための何らかの術を用いて、研究用の魔力を確保しています。こうした術か、あるいは各家庭に繋がっている魔力線を用いない限り、不正に魔力を汲み上げることはできません。エネルギー泥棒ダメ、ゼッタイ。
 ・非公開情報ではあるが、塔の結界魔術の正体は、神樹様@結城友奈は勇者であるの生み出す結界を再現したものである。このため塔には、神道の神を封じていることを意味する、注連縄が結ばれている。


564 : 名無しさん :2015/09/05(土) 09:13:33 XDTvTZW20
鯨木さんってショートじゃなくてセミロングのポニテじゃなかったっけ?


565 : ◆nig7QPL25k :2015/09/05(土) 13:21:38 /ZLvUfwc0
>>564
修正しました


566 : ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 00:00:01 oua9iE5o0
マリア・カデンツァヴナ・イヴ、エデン、憤怒のラース、アルバート・W・ワイリー、DWN(メタルマン、ターボマン、フロストマン)を予約します


567 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/06(日) 00:43:13 Jxlkzf4E0
予約開始お疲れ様です。
衛宮士郎、神崎士郎、葛葉紘汰、アルファモンを予約します。


568 : ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:38:29 oua9iE5o0
投下させていただきます


569 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:39:14 oua9iE5o0
 行政地区と一言に言っても、用意されたスペースを、役所だけが埋め尽くしているわけではない。
 勤務する人々に向けた集合住宅や、彼らが食事をするための飲食店など、多種多様な施設が点在している。
 マリア・カデンツァヴナ・イヴの暮らすアパートもまた、そうした施設の一つだった。

『ロールス・ロイス社は19日に、これまでにない新たな発想の……』
「………」

 風呂あがりのしっとりとした肌に、薄い部屋着を身に着けて。
 ベッドの上に腰掛けながら、ぼんやりとした顔でテレビを見る。
 魔術都市の娯楽としては、このテレビが最も文明的なものだ。
 といっても、当然ユグドラシルの街には、ローカルのテレビ局など存在しない。
 故にどことも知れない周辺国から受信した、この街には何ら関わりあいのないニュースを、こうやって見せられている。
 ワイドショーで紹介されるスポットも、当然樹の下にあるものばかりだ。
 これではそれこそバラエティしか、見る番組がないではないか。

(どうでもいいことか)

 だが、突き詰めて言ってしまえば、そんなことは重要ではない。
 リモコンをベッドに放り出すと、自身もごろりと横になる。
 部屋の明かりはつきっぱなしだ。寝ようとしていたわけではなかった。

《間もなく本戦の始まる時間だが》

 頭に念話が響いてくる。部屋の外で見張りをしている、キーパーのエデンが問いかけてくる。
 現在の時刻は23時半。これがテレビ番組について、呑気に考えられない原因だった。

《とりあえず、私も1時までは起きてるわ。何もなかったらそのまま寝る。そしたらキーパーも休んでちょうだい》
《それは駄目だ。マスターが眠っている間に、襲撃があったらどうする》
《でも、貴方だって寝ないと体に毒よ?》
《サーヴァントに睡眠は必要ない。一晩寝なかった程度で、不調になることはないんだ》

 何しろ幽霊だからなと、エデンは言った。
 言われてみれば、既に死んでいる人間に対して、健康を説くのも野暮な話だ。
 人間扱いしていないようで、少々心が痛んだが、そういうことならと了承すると、マリアはエデンとの念話を終える。

(いよいよか……)

 とうとう本戦が始まるのだ。
 最後の一人になるまで戦う、血塗られたバトルロイヤルが幕を開けるのだ。
 ルールを鵜呑みにするならば、サーヴァントのみを対象にすれば、マスターが死ぬことはない。
 しかし戦力差を考えれば、マスターを狙う方が正道だ。命懸けの戦いの中で、相手の生死を気にかける者など、恐らく誰もいないだろう。

(本当に、これでいいのかしら)

 犠牲の数は確かに減る。
 しかし人の命とは、足し引きで計算できるものではない。
 地球を救うという理想を、この戦いに願うのは、本当に正しいことなのだろうか。
 何度となく繰り返した自問を、再び胸中で問いかける。

「………」

 少し、気分を入れ替えよう。
 そう思って立ち上がり、部屋の窓を軽く開ける。
 そしてミネラルウォーターを取り出すために、冷蔵庫のある調理場へと向かった。
 考えてみれば、水道水を直飲みしないのも、随分と久しぶりなことのように思えた。
 まだ日本で行動を起こしてから、それほど経っているわけでもないのに。


570 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:40:35 oua9iE5o0


「………」

 夜風が服の裾を揺らす。
 不可視の英霊・サーヴァントが、暗い街並みを見下ろしている。
 オリオン星座の聖闘士――エデン。
 彼はアパートの屋上に立ち、敵の襲撃に備えて、周囲を見渡し目を光らせていた。

(このユグドラシルの地に降り立ってから、妙な気配を感じている)

 左手の手袋を見やり、思った。
 紫の宝石があしらわれたそれは、本来不要になったはずのものだ。
 その石の名は聖衣石(クロストーン)。
 かつて暗黒神アプスの発した、闇の小宇宙に反発し、聖衣が変異した姿である。
 しかしエデンの『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』 は、このくらいの年の頃には、既に聖衣石化から解き放たれていたはずだ。

(障害となるものがある)

 であれば、再び聖衣の力を、抑えつけている何かがある。
 それがユグドラシルの地に流れる、魔力に感じた違和感だ。
 戦闘自体には支障はないが、全く無視していいものではない。
 いずれマスターにも相談し、探りを入れなければならないか。

「……?」

 そこまで考えた、その時。
 視界の中に、影が見えた。
 建物と建物の間を飛び交う、赤い人影を視界に捉えた。

(只人の動きではない、か)

 俊敏華麗な身のこなしは、明らかにNPCのものではない。
 その上どうにもこちらへと、真っ直ぐ向かっているように見える。

《マスター、敵襲だ。すぐに応戦する》

 時刻は0時を回ってすぐ。開幕に合わせてきたというのは、律儀と言うべきか何と言うか。
 エデンは自らの霊体化を解くと、迫り来る影を迎えに出た。

「止まれ」

 制止の声をかけながら、向かい合う相手を見定める。
 金属の光沢を放つ、赤を基調とした装束の男だ。
 額の真ん中に取り付けられた、丸鋸のような物体が、妙な存在感を醸し出している。
 サーヴァントの気配は、感じられない。であれば、キャスターか何かの使い魔か。

「この先に何の用がある。答え次第では、引き返してもらうことになるぞ」
「………」

 エデンの声にも答えない。赤い使い魔は全くの無言だ。
 友好的な相手であるなら、ここで押し黙る理由はない。
 であれば、やはり敵対者か。眉間に皺が刻まれる。空気がぴりぴりと張り詰める。


571 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:41:35 oua9iE5o0
「!」

 その時だ。
 赤い男が懐から、煌めく銀色を取り出したのは。
 あれは武器だ。鋭利な刃物だ。
 額についているものと同じ、ぎざぎざとした丸鋸だ。

「――ッ!」

 びゅんっ、と風を切る音が鳴る。
 文字通り夜風を切り裂いて、二枚の刃が投擲される。
 狙いはエデンだ。殺意の刃だ。
 光は盛大な爆音を上げ、街の石畳を打ち砕き、周囲を粉塵の闇で満たす。
 これが直撃したのであれば、いかな英霊サーヴァントとて、無傷というわけにはいかないだろう。

「――『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』!」

 もっとも、当たっていればの話だが。
 闇を暴くのは雷光だ。眩い光が煙を引き裂き、夜の空へと跳び上がる。
 星空の下に舞い踊るのは、パールのような光を放つ、白い戦闘甲冑だ。
 聖闘士の鎧、青銅聖衣(ブロンズクロス)。それを解き放ち纏ったエデンが、眼下の敵を睨み据える。

「ヒーラ・マスティーア!」

 雷撃が赤い男を襲った。
 エデンの左手から放たれたのは、眩い稲妻の光だ。
 牽制の放電攻撃を放ち、自らは自由落下で敵に迫る。
 10m、5m、そしてゼロ距離。音速の拳の射程内。

「ふんっ!」

 繰り出す拳が、敵を捉えた。
 神話のオリオンの棍棒の如く、肥大化した左腕のアーマーが、ターゲットに叩きこまれたのだ。
 よろめく敵に追撃を放つ。素早く右の拳を繰り出す。
 命中。そして再び追撃。
 しかし次なる左手は、さすがに防御に阻まれてしまった。

「フォルゴーレ……ルネッサンス!」

 それでもそのままでは終わらない。
 小宇宙を左手に集中し、雷光と変えて爆裂させる。
 防御の上から放たれた光は、防御ごと赤い男を吹き飛ばす。
 石畳を蹴り、前へ進んだ。崩れた姿勢の隙を突かんと、迷わず懐へ飛び込んだ。


「!!」

 吹き飛びながらも赤い男は、鋸をこちらへ投げつけてくる。
 このままでは正面衝突だ。加速のついた状態では回避できない。


572 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:42:26 oua9iE5o0
「トニトルイ・サルターレッ!」

 ならば取るべき手は迎撃だ。
 電撃の弾丸を両手に生じ、同じく標的へ投げ放つ。
 鋼と雷は軌跡を描き、闇の只中で激突を果たした。
 爆音。スパーク。奪われる五感。

「でぇぇやッ!」

 光の晴れた虚空の中で、拳と拳が打ち合っていた。
 建物の壁を蹴った使い魔が、真っ向から飛び込んできていたのだ。
 お互いの拳を、振り払う。スピードに従い交錯し、地に降りて再び標的へ向かう。
 イーブンになった条件下で、脚と拳がぶつかり合った。幾合も繰り返させる衝突が、火花で暗い夜道を照らした。

(強い……)

 ただの使い魔にしては強敵だ。
 応酬を途切れさせることなく、オリオン座の聖闘士は思考する。
 恐らく敵の実力は、サーヴァントと同等と言えるだろう。
 違うのは宝具がないことくらいか。使い魔にしては、破格と言っていい性能だった。

(ならば機を見て、大技で――、ッ!?)

 しかし、その時轟音が迫る。
 背後から迫り来る爆音に、咄嗟に振り返った瞬間。

「ぐぁあっ!?」

 ぶぉん――と轟くエンジン音に、正面から迫られ吹き飛ばされた。
 痛む体に鞭を打ち、なんとか地面に踏みとどまる。
 現れたのは青い影だ。赤い使い魔の攻撃ではない。新たな敵影が現れたのだ。
 がちゃがちゃと身を変形させるのは、タイヤやマフラーの意匠を有した、車のようなロボットだった。
 やはり、サーヴァントの気配はない。赤い奴と同様に、何者かの使い魔であるらしい。

(厄介だな)

 実力まで同等であるとするなら、サーヴァント二騎を相手取ると同義か。
 赤と青を視界に収めながら、エデンは身を起こし思考する。
 こうなると宝具による一掃が、いよいよ現実味を帯びてきたか。
 しかしあれは魔力消費が激しい。マスターの承認なしに、容易く放っていいものではあるまい。

「ムン――ッ!」

 エデンの判断より早く、敵の使い魔が行動を起こした。
 それぞれに攻撃態勢を取り、こちらに向かって飛びかかってきた。
 やむを得ない。ここは迷わず使うべきだ。
 己が奥義を放つべく、小宇宙を練り上げ始めた瞬間。

「Granzizel bilfen gungnir zizzl――」

 戦場に、響き渡る歌があった。


573 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:43:20 oua9iE5o0


 奇跡は鎧の形をなす。
 調べは呪文の言葉となって、神話の神秘を呼び覚ます。
 振りかざす手に掲げるものは、遠き神代の時代の槍。
 己が正義をなさんがためにと、悪を貫くと誓った意志。

「はぁああああッ!」

 裂帛の気合を穂先に込めて、轟音と共に振り下ろした。
 金と黒に輝く槍は、赤い鋸男の体を、真っ二つに叩き割った。
 ばちばちとスパークの音が鳴る。断面から覗く金属が、危険な光を放ち始める。

「なっ……!?」

 驚愕にエデンが瞠目した瞬間、赤い人影は爆裂した。
 真紅の爆炎を炸裂させて、瞬きの間に四散した。
 炎と風を受けはためくものは、闇に溶け込むような漆黒のマント。
 桃色の髪をなびかせるのは、マリア・カデンツァヴナ・イヴだ。

「マスター! 何故出てきた!?」
「言ったでしょうッ! 任せっきりは性分でないとッ!」

 エデンの元に駆け寄ると、庇うように槍を構える。
 背後でたなびき蠢くマント――中・近距離用の防護兵装が、大きく広がり道を塞ぐ。

「フンッ!」

 残された青い影が生じたものは、真っ赤に燃える炎のリングだ。
 それを赤い影がしたように、こちら目掛けて投げつけてくる。
 上等だ。敵はサーヴァントではない。ただの使い魔であるのなら、どうにか凌ぎ切ってみせる。

「このッ、胸に宿った、信念の火は――ッ!」

 呪文の歌を歌い奏でた。
 音楽に合わせて言葉を紡いだ。
 シンフォギアとは音の鎧だ。装束が奏でる戦の調べに、祝詞の歌を乗せることで、初めて真価を発揮するのだ。
 マントを前面に誘導し、迫る火の玉を受け止める。

「誰もぉッ、消すことは、できやしないッ!」

 痛烈な衝撃に歌声が揺らいだ。
 押し飛ばされそうになるのを、槍を地に刺して踏みとどまった。

「永劫のブレイズッ!」

 力任せにマントを開き、焼けつくリングを左右に引き裂く。
 予想以上の威力だったが、何とか防ぎきることはできた。
 石畳から槍を引き抜くと、マリアは再び構え直し、油断なく敵の姿を睨む。


574 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:44:36 oua9iE5o0
「フガァアアアアアッ!」

 その時、横合いから雄叫びが響いた。
 咄嗟にそちらの方を向き、そして驚愕に目を見開いた。
 あれは何だ。あの巨人は。これまでに出てきた連中の、軽く倍はある巨体ではないか。
 透き通るような全身は、まるで氷の細工のようだ。であればあの使い魔は、山奥から降りてきた雪男か。

「ふんっ!」

 背後から声と雷鳴が響く。
 エデンの投げ放った雷球が、新たに姿を現した、3体目の使い魔に直撃する。

「奴は僕が相手をする!」
「キーパーッ!」
「無理だと思ったら、すぐに後方に下がるんだ。いいな!」

 そう言うと、エデンはマントを飛び越え、雪男へと殺到した。
 両肩から伸びる装飾の布が、闇夜にばたばたとはためいて、見る見るうちに遠ざかった。
 無理だと思ったらということは、今は構わないということか。
 ならば青いのは任せてもらう。受け入れられたというのなら、その役割を果たしてみせる。

「闇に惑う夜にはッ! 歌を灯そうかッ!」

 襲い来る敵へと槍を放った。
 アームドギアを投擲し、空中で姿勢を崩させた。
 マントを纏って自ら飛び込む。転がり落ちた槍を拾い、すぐさま追撃態勢に移る。

「力よ宿れ――ッ!」

 槍と腕とがぶつかり合った。鋼と鋼の激突が、火花となって目の前を散らした。
 大槍を強引に引き戻し、次の攻撃に備える。
 敵の攻撃に槍をぶつけて、反発と同時に構え直す。
 突き出した一撃をかわされた。がら空きの胴に鉄拳が迫った。
 反射的にマントを回す。なんとか直撃は避けられたものの、勢いは殺しきれずに地を滑る。

(ギアがいつもよりも重い……ッ!)

 踏みとどまったその場所で、ぜいぜいと肩で息をした。
 もとよりマリア・カデンツァヴナ・イヴは、シンフォギアを纏える人間ではない。
 低すぎる適合率を薬で補い、どうにか戦えている状態だ。
 だがそれにしても、普段であれば、もっと自由に戦えたはずだ。
 これは一体どうしたことだ。制御薬LiNKERの効力が、思ったよりも薄れているのか。


575 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:45:54 oua9iE5o0
「ぐぅっ!」

 その時、エデンの声が聞こえた。
 見れば両足が氷に包まれ、地面に固定されている。
 不可解な現象の正体は、氷の巨人の放つ凍気だ。見た目通りに氷を操り、敵を凍てつかせる使い魔だというのか。
 あのままでは追撃を受ける。

「キーパーッ!」

 あの巨体にまともにぶつかられては、彼もただでは済まないはずだ。
 そうはさせない。お互いギリギリだというのなら、さっさと終わらせてやる。

「覚悟をッ、今構えたらッ!」

 槍を構えて穂先を拡げる。
 変形されたアームドギアが、エネルギーの奔流を生み出す。
 歌女の放つ必殺技――超火力の砲撃・HORIZON†SPEARだ。
 渦巻く暴力的な熱量は、立ちはだかる敵を撃ち貫かんと、一直線に解き放たれた。

「誇り、と――ぉおおおッ!?」

 されど、上がるのは歌ではなく、悲鳴。
 紡ぎ上げられたリズムが狂い、マリアの顔が驚愕に染まる。
 何だこれは。どうしたというのだ。
 いつも通りに放ったはずだ。QUEENS of MUSICのステージにおいても、適切に使えた技だったはずだ。
 それがどうしてこうなっている。
 こんな結果を招いている。
 放たれるHORIZON†SPEARの威力は――ここまで強大ではなかったはずだ!

「ウガァッ!?」

 光線が使い魔を捉える。腹へと一直線に命中する。
 膨大なまでの破壊力は、マリアの倍以上の巨体を、紙くずのように吹き飛ばす。
 しかしそれだけではとどまらなかった。あまりにも大きすぎる力は、敵を倒すだけでは収まらなかった。

「ぐっ……ぅあああああああああああ――ッ!!」

 悲痛な叫びがマリアから上がる。
 破壊係数に振り回されて、体をよじって倒れ伏す。
 紫色の光線は、槍の動きに従って、並ぶ建物を薙ぎ払った。
 眩い暴力は阻む全てを、焼き尽くし粉微塵に吹き飛ばした。

「マスター!」

 エデンの叫びが聞こえた気がした。それすらも明瞭には聞き取れない。
 目の前で巻き起こる炎の熱が、マリアの意識をぼやけさせる。
 力の抜けた虚脱感と、無理やり身を動かした痛み。
 思考することもままならぬまま、マリアは立ち上がることもかなわず、無様に地に這いつくばっていた。


576 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:46:48 oua9iE5o0


 製作者(クリエイター)アルバート・W・ワイリーは、A級の製作スキルの持ち主だ。
 小型の監視用ロボットを作り出し、戦況を映像中継させるなど、彼には朝飯前である。
 無論彼の放った戦闘ロボと、キーパーのサーヴァントの戦闘も、そうして筒抜けになっていた。
 もっとも、訪れた結末は、ワイリーにもそのマスターにも、少々予想外なものだったが。

「あれは、本当に人間か?」

 目を丸くしながら、ワイリーが言う。
 無論、身体能力だけならば、ここまで驚くことはない。
 実際、ロボット以上に動ける者は、自分のすぐ隣に座っている。
 問題はマリア・カデンツァヴナ・イヴが、纏い戦った装束の力だ。
 生身の人間がビームを放ち、市街地を焼き尽くすなど、ワイリーにとっては前代未聞だ。
 英霊ならば分からないでもないが、何しろ現代人である。
 恐らくは魔術も使うことなく、あれほどの力を発揮する者が、今の世にいたとは信じられない。

「無論、人間だ。私がこの目で確かめておる」

 そのワイリーの言葉を否定するのが、軍司令官キング・ブラッドレイだ。
 元々彼女の元にナンバーズを差し向け、偵察するよう進言したは、直接マリアと会った彼である。
 昼間にも気配や呼吸など、五感で感じられる全ての情報が、人間のものであったと確認は取っている。
 故に得体の知れない力を使おうと、彼女は間違いなく人類なのだ。
 あのような奇っ怪な力が、この舞台に存在していたことには、彼も少々驚かされたが。

「まぁそれなら認めるしかないがな……」
「だが、彼女とて自分の持つ力を、完全に制御できてはおらんらしい」

 であるなら恐れるには値しないと、キング・ブラッドレイは断言した。
 あの程度の腕前であるなら、攻撃を避けるのは容易だ。
 サーヴァント戦のセオリー通り、直接相対することがあれば、マスター同士で決着をつければいい。
 そうするに値する気概が、あの娘にあればの話だが。

「あれだけ派手にやったからには、じき他のマスターも動くだろう。ナンバーズの修理、くれぐれも頼んだぞ」
「フン! 言われんでも分かっておるわい」

 ブラッドレイの言葉にそう返すと、ワイリーはロボット達へと帰還を指示した。
 弱点属性を突かれたメタルマンは、既に修復不可能だ。
 最初から手駒を一体失ったのは、少々どころではない痛手だったが、幸い他二体は健在である。
 ターボマンもフロストマンも、今から修理に取りかかれば、すぐに調子を取り戻すはずだ。
 忙しくなるぞとつぶやきながら、クリエイターのサーヴァントは、自らの工房へと向かった。


577 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:48:20 oua9iE5o0
【G-4/特級住宅街・ブラッドレイ邸/1日目 深夜】

【憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)@鋼の錬金術師】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] 刀×4
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:ホムンクルスとして、人間と心行くまで戦う
1.ターボマンとフロストマンの修復を待つ
2.ひとまず今夜は睡眠を取り、起床後改めて、今後の方針を考える
[備考]
※G-4にある豪邸に暮らしています
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました

【クリエイター(アルバート・W・ワイリー)@ロックマンシリーズ】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:世界征服のために聖杯を狙う
1.ターボマンとフロストマンを修復する
2.マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦闘能力に興味
[備考]
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました

【『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)』 】
【DWN.056 ターボマン@ロックマン7】体力90%・現在地H-6
【DWN.062 フロストマン@ロックマン8】体力60%・現在地H-6

【DWN.009 メタルマン@ロックマン2 大破】


578 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:48:55 oua9iE5o0


 特級住宅街と行政地区を結ぶ、橋のすぐ下にある陰。
 目の前に水路が流れるその場所で、シンフォギアを解除したマリアは、息を切らせながら座り込んでいた。
 遠くで聞こえるサイレンの音は、戦場に駆けつけた消防車だろうか。
 誰もが魔術師でないからには、そういうものも必要になるのだろう。

「水だマスター。タオルもある」

 傍らに現れたエデンが、彼女にペットボトルを差し出した。
 それを引ったくるように受け取ると、焦る手つきで蓋を開いて、思いっきり中の水を飲んだ。
 口からこぼれるのもお構いなしに、みっともなく水分を貪る。
 ややあって口からボトルを離すと、エデンが持っていたタオルを受け取り、顔周りに浮かんだ汗を拭いた。

「しばらく家には戻れないだろう。財布と着替えを取ってきた。それと、これは戦いの跡地で拾ったものだ」

 取っておいてくれ、と言いながら、エデンが持ってきたものを一通り渡す。
 着替えの入った鞄と、財布。それから赤い機械のチップだ。
 少し落ち着いたマリアは、まず鞄を受け取って、中に入ったものを確かめる。

「……下着がないわ」
「っと……すまない。うっかりしていた」
「いいのよ。お金があれば、店で買えるから」

 財布を回収してくれたから、足りないものは購入が可能だ。
 欲を言うなら、通帳もセットで欲しかったが、それは夜が明けてから頼めばいい。

「職場にも出られないとなると、周りから怪しまれそうね……」
「大丈夫か」

 エデンの問いかけに、無言で頷く。
 シンフォギアのバックファイアは、既に落ち着いている。問題があるとするならば、せいぜい体力の消耗くらいだ。

「あの時のガングニールは、明らかに異常を来たしていた……」

 待機形態のペンダントへ戻った、己がシンフォギアを見ながら、言う。
 ギアを重たく感じたのは、自分が弱っていたからではない。
 自分の身に余るほどに、ギアが強くなっていたからだ。
 シンフォギアシステムには、装者の肉体を保護すべく、301655722種類ものロックが存在している。
 その中のいくらかのリミッターが外れ、マリアに制御できないほどの力が、溢れ出してしまっていたのだろう。
 そんなことは、装者自身の意志ですら、実行することは困難だというのに。

「そうか……すまないな、もっと早くに気付くべきだった」
「気付く、って何を?」
「マスターの持つガングニールは、元は世界樹ユグドラシルの枝から作られた槍だった……それは知っているか?」
「ええ、まぁ……ということは、まさか……」
「そう。仮にこの街を支える世界樹が、ユグドラシルを元に作られたものだったとしたら……何らかの形で共鳴しても、不思議ではないということだ」

 たとえば、世界樹の中で渦巻く魔力が、枝の魔力に干渉し、その力を高めるかもしれない。
 あるいは、枝が幹へと戻ろうとして、より大きな反応を示すかもしれない。


579 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:49:56 oua9iE5o0
「……そう……」

 悪夢のような推論だった。
 肌着姿のマリアは、膝をぎゅっと抱え込む。
 そんな危険な状態なのか。この漆黒のガングニールは。
 これでは技を放つことなど、恐ろしくてとてもできやしない。
 いいや、普通に使うことすら、この先続けられるかどうか。

(結局私はどこへ行っても、何も貫けないというの……?)

 状況は好転したはずだった。
 自分一人が戦うだけで、世界は救われるはずだった。
 けれどこの身の力は及ばず、出しゃばっていても引き下がっても、キーパーに迷惑をかけている。
 剣にもフィーネの器にもなれない、半端者の力では、何も成し遂げることはできないというのか。

(セレナ……)

 妹の声が聞きたかった。
 優しく慰めてほしかった。
 彼女のためになると信じて、戦い始めたというのに、その彼女を頼っている自分が、一層情けなく思えた。



(今の話には続きがある)

 失意のマリアを見下ろしながら、エデンは一人思考する。
 世界樹ユグドラシルの神話は、人間の世界で語られている、表向きの物語だ。
 しかし、聖闘士エデンの知る神話には、更に隠された真実がある。
 大神宣言・グングニル――それは遠い北欧の大地・アスガルドに伝わる究極の神器。
 邪悪な大樹ユグドラシルが、地上の小宇宙を吸い上げることで、それを養分に生み出す槍だ。
 そしてそのユグドラシルには、更にこのような逸話もあった。

(アスガルドに広がる世界樹の根は、信徒たる戦士に力を授け、逆に異教徒の力を奪う……)

 父・マルスが蜂起した数年前、アスガルドの神闘士と、死んだはずの黄金聖闘士が、戦いを繰り広げたことがあった。
 その時世界樹ユグドラシルは、黄金聖闘士達の小宇宙を吸い上げ、弱体化させていたというのだ。

(この件は僕にとっても、無関係ではないのでは……?)

 聖衣の力を抑え込み、聖衣石へと変異させた力。
 この世界樹に漂う魔力は、あるいはアスガルドの神話と、何か関係があるのではないか。
 左手の聖衣石を見やりながら、エデンはそれにつきまとう何かを、見定めようとしていた。


580 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:50:29 oua9iE5o0
【H-6/行政地区・橋の下/1日目 深夜】

【マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]ダメージ(小)、疲労(大)、魔力残量8割
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール
[道具]アガートラーム、外出鞄(財布、着替えセット、タオル)、特殊武器チップ(メタルマン)
[所持金] 普通(現在は財布の中身のみ)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、月の落下を止めたい
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.夜が明けたら、足りない生活用品を買い揃える。特に下着が欲しい
3.状況が落ち着いたら、エデンに通帳を取りに行ってもらう
4.ガングニールに振り回されている、弱い自分に自己嫌悪
[備考]
※H-6にあるアパートに暮らしています
※ガングニールのロックが外れ、平時より出力が増大していることに気付きました

【キーパー(エデン)@聖闘士星矢Ω】
[状態] ダメージ(小)
[装備] 『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』
[道具] なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.ユグドラシルの空気に違和感。何かからくりがあるのかもしれない
[備考]
※世界樹の大元になっている樹が、「アスガルドのユグドラシル」なのではないかと考えています


581 : この手の刃は光れども ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:50:59 oua9iE5o0


 轟々と燃え盛る炎が、魔術の都市を赤く照らす。
 集まった野次馬たちは皆、一様に不安な表情を浮かべて、その光景を見上げていた。
 世界樹の魔力は強大だ。それが守りになっているから、炎で焼け落ちることはない。
 されど建物はそうはいかない。現に立ち並ぶ小さなビルは、炎と黒煙を上げている。

「間違いないんだな?」

 そしてその地獄絵図の中で、冷静な者が二人だけいた。
 明らかに堅気ではない雰囲気を漂わせる、厳つい顔をしたゴロツキ達だ。

「ああ。遠目にだがバッチリ見た。この辺りを飛び回る人影も、ビルを焼いた光もな」
「そうか。それなら決まりだな」

 男達は踵を返して、群衆に背を向け立ち去っていく。
 冷静な口調で話していたが、しかし二人の双眸は、どこか焦点が定まらず、ぼんやりとしているようにも見えた。
 そして二人の両目には、微かに赤い彩りが宿り光っているようにも見えた。

「ああ、そうだとも」
「早く戻ってあの方に――ミヤビさんに報告しないとな」



[全体の備考]
※H-6にて、火災が発生しました。消防隊による消化活動が進んでいます。
※ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに洗脳されたマフィア二人が、H-6で起きた戦闘を目撃しました。
 放置すると、雅緋の元へと報告に向かい、情報が伝わってしまいます。


582 : ◆nig7QPL25k :2015/09/06(日) 14:51:28 oua9iE5o0
投下は以上です


583 : 名無しさん :2015/09/06(日) 20:54:32 3RiYqhCE0
投下おつー。
おお、初っ端から派手にやったな。
ユグドラシル効果でサーヴァントが抑制されてマスターが強化されてしまうとは思わぬ弊害。
しかも制御出来ないのもあってマリアさんが余計恐れ抱いちゃってるし。
ちゃっかりメタルマンのチップ回収されたのでエデンがどう使うか期待


584 : ◆nig7QPL25k :2015/09/07(月) 10:06:43 CbnJ776I0
雅緋、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、黒咲隼、駆紋戒斗で予約します


585 : ◆nig7QPL25k :2015/09/07(月) 12:48:17 A6eTf1hs0
念のため、先ほどの予約に、雅緋配下のマフィア2人を追加します


586 : ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:06:12 ta3cw6Jk0
投下します


587 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:06:50 ta3cw6Jk0
「そうか……分かった、すぐに行く」

 報告を雅緋が受けたのは、0時半を過ぎ、1時が近づこうとした頃だった。
 公衆電話からの着信を受け取り、短く返事をして受話器を置く。
 椅子に無造作にかけていた、黒いジャケットに袖を通す。
 前のボタンをかけようとして、ほんの少し、手こずった。
 胸元が少しばかりきつい。ワンサイズ上のものを買っておけばよかったかもしれない。

「思ったよりも早かったな」

 そう言うのはライダーのサーヴァントだ。
 来客用のソファに腰掛けていた、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが、雅緋の支度を見て立ち上がる。

「ああ。派手に動いた奴がいてな。間抜けにも火事まで起こしたらしい」
「結構なことだ。パフォーマンスは派手な方がいい」

 その方が客の目にもつくと、ルルーシュが言った。

「それで、場所は?」
「行政地区。南の橋の程近くだ」
「警察のお膝元か? それは……少し予想外だな」

 ここに来てルルーシュは、初めてその目を丸くする。
 行政地区といえば、軍や警察、裁判官などが出入りする、文字通りお役所仕事の中心街だ。
 そこで大きな行動を起こせば、すぐに警察が出張ってきて、周囲を捜索し始める。
 そうなれば、戦闘に勝ったとしても、動きにくくなることは間違いない。
 それを分かって戦ったというのか。そこで火事を起こした連中は。

「仮にそこに住んでいる誰かを、誰かが襲撃したとして……襲った奴は相当な馬鹿か、あるいは逃げおおせる自信があったか。そのどちらかになるな」
「たとえばマスターは表に出ず、サーヴァントのみを差し向けた場合か。我々サーヴァントは霊体化によって、人の目を避けることができるからな」
「お前の宝具のように使い魔を放ち、捨て駒として扱える者だった可能性もある」

 コートを羽織りながら、雅緋が言った。
 ルルーシュの保有する宝具は、『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』だけではない。
 無数のしもべを召喚し、敵を襲わせる対軍宝具――『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』というものもある。
 そうして遠隔操作できる使い魔を呼び出し、足の付かない鉄砲玉として、送り込んだ可能性もゼロではない。
 もっとも、さすがにルルーシュがそれをやれば、目立つことこの上ないだろうが。

「それでどうする」
「連れて行くのは、二〜三人でいいだろう。我々で見つけられなかった場合は、警察が勝手に捕まえてくれる」
「そうして騒ぎになってくれれば、あとはそこを押さえればいい、ということか」
「そういうことだ。行くぞ。ぐずぐずしている暇はない」

 そう言うと、雅緋は返事を待つよりも早く、玄関の方へと足を進める。


588 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:08:07 ta3cw6Jk0
「本当にそれでいいんだな?」

 そしてその歩みを、止められた。
 背後からかけられた言葉が、雅緋に鋭く突き刺さった。
 お前はそれでいいのかと。
 戦う理由に迷ったお前は、戦うことができるのかと。

「………」

 正直、今でも迷いはある。
 死者の復活という禁忌を、聖杯に願うということが、果たして許されることなのか。
 そうしたとして、母は本当に、喜んでくれるのだろうかと。

「……問題はない。願いも迷いも何もかも、勝ってから考えればいいことだ」

 それでも、雅緋はそうした躊躇いを、今は心に閉じ込めた。
 どの道この戦いに勝利し、栄光を手にするという目的は、今も変わってはいないのだ。
 その後で何を願うかなど、それこそ戦いに勝利しなければ、何ら意味のないことなのだ。

「悪の誇りを舞い掲げる。それだけが、私の成すべきことだからな」

 そうして話を締めくくると、雅緋はドアノブに手を伸ばし、夜の町並みへと向かった。



 歓楽街は夜の街だ。
 日が沈み深夜を回っても、娯楽を求めてやって来る者が、随所で街を照らしている。
 そんな歓楽街の一角に、何人かの人影が集まっている。
 厳つい男達を引き連れているのは、うら若い東洋風の女性だ。

《奴が動いたようだぞ、黒咲》

 そしてその女の横顔を、駆紋戒斗は見逃さなかった。
 ランサーのクラスで現界した彼は、黒咲隼のサーヴァントだ。
 何をするでもなく、壁にもたれかかっていた黒咲は、霊体化した戒斗の念話を聞くと、そちらの方へと歩み寄る。
 角越しに見える女の姿は、間違いなくあのお山の大将だ。
 白髪にスーツ姿の女など、この歓楽街には他にいない。

「こんな時間に仲間連れか……」
《揉め事の対応ではないだろうな。一強支配のこの街で、今更対立が起こるとは考えにくい》
「となると、狩りが目的か」

 聖杯戦争を戦うライバルを見つけ、そいつを襲うために動き出した。
 つまりあの雅緋もまた、自分と同じくサーヴァントを駆る、聖杯戦争のマスターなのだと。


589 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:09:17 ta3cw6Jk0
《日の当たらない世界での暗躍……確かに他のマスターには、そうそう気取られることはないだろう》

 同輩にとっては別だがなと、戒斗が黒咲に同意する。
 普通に生活しているマスターにとっては、不良やマフィアのいざこざなど、目にもとまらぬことだろう。
 されど、当事者として闇に巣食い、目の当たりにした黒咲にとっては、事情が大きく変わってくる。
 突然姿を現して、次々とグループを制圧し、己が手足と変えた女――こんな奴が不審でなくて、一体何だというのだろうか。
 そんな設定をされたNPCなど、当然存在するはずもない。
 であれば、意志持つ人間だ。自分と同じマスターだ。

「追うぞランサー」
《勝算はあるのか?》
「奴が獲物を見つければ、当然戦いが始まる。弱ったところに飛び込めば、倒せない道理はないはずだ」
《不意打ちか。無様な弱者の発想だな》

 黒咲の口にした考えを、戒斗は容赦なく嘲笑う。
 一度切り結ぶと決めたなら、真っ向から戦うべしというのが、駆紋戒斗の主義だった。
 拠点に忍び込むために、敵の目を盗んだことは何度もある。
 されど敵と戦うために、敵の目を盗んで忍び寄ることを、戒斗は一度もしなかった。
 卑劣な弱者を忌み嫌い、強者たらんとした彼からは、決して出ることのなかった発想だ。

「それは貴様の戦い方だ」

 されど黒咲は否定する。
 戒斗の嘲笑を一蹴する。

「どんな手を使ってでも勝つ。敗者が全てを失うのなら、選り好んでいる暇などない」

 右の拳に、力がこもった。
 眉間に皺を寄せながら、瞳を鋭く光らせながら。

「たとえ泥にまみれようとも、最後に全てを取り戻せるなら……俺は手段を選ばない……!」

 あくまで声を殺しながら、されど猛禽のごとき形相で、黒咲隼は言い放った。
 黒咲隼の戦いとは、生死を賭けた戦場の戦いだ。
 街を炎で焼き払い、笑顔を悲鳴に変えてきた、邪悪な侵略者との戦いだった。
 無勢の黒咲が行ったのは、抵抗組織に加わってのゲリラ戦だ。
 弱者が強者の足を掬い、力差を策略で覆す、まさしく卑怯者の戦法だった。
 だとしても、黒咲はそれを恥じない。命と未来がかかった戦で、手段の善悪を問うことは、愚行以外の何物でもないのだ。
 それは魔力をほとんど持たぬまま、魔術のノウハウも知らずに放り込まれた、この聖杯戦争においても同じだった。


590 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:10:01 ta3cw6Jk0
《………》
「……奴らを尾けろ。俺は準備を整えてくる」

 話は終わりだと言わんばかりに、黒咲は言いながら踵を返した。
 紺色のコートを翻し、戦うための装備を隠した、自分の仮住まいへと向かった。

《いいだろう。趣味ではないが、今回はその策に乗ってやる》

 意外にも、戒斗の口をついたのは肯定だった。
 一瞬沈黙こそしたものの、脳内に伝わる声色には、決して嫌悪の響きはなかった。

(弱いなりに、よく吠える)

 それが黒咲には知る由もない、駆紋戒斗の感想だ。
 自分の弱さを認めた上で、それでも諦めるわけにはいかないと、己を強く奮い立たせる。
 弱さを憎み認めようとせず、強くあらんと振る舞い続けた、戒斗とは正反対の戦い方だ。
 それでも、繋がるものはある。
 勝利に対する執着心――何者にも負けられないという気概だ。
 内側で轟々と燃えたぎる、不死鳥(フェニックス)の両翼だ。
 それだけは、悪くないと思えた。
 ほんの一時的とはいえ、自分の意志を預けるには、及第点くらいはやれると思えた。
 故に戒斗は賛同し、卑怯者の戦法に、敢えて乗ることを決めたのだ。

《急げ黒咲。奴ら、車を持ち出す気だぞ》

 そんなことは知りもせず、黒咲は念話を受け取りながら、自らの家路へと向かう。
 どの組のものかは知らないが、奴め自動車まで持っていたか。
 ガソリンが貴重なこの街では、販売台数も数少ない、高級嗜好を通り越した奇特な趣味だ。
 パトカーや消防車ならともかく、この魔術都市ユグドラシルでは一般車など、数えるほどしか見たことがない。

(車輪には車輪、か)

 まさか使うことになるとは思わなかった。
 そんなものを持ち出していては、それこそ悪目立ちするからだ。
 そんな風に思いながら、黒咲は自室のあるアパートに着くと、階段脇で小山を作った、一台の布を取り去った。
 それはボスから気に入られ、足に使えと渡されたもの。
 自動車と同じく、このユグドラシルでは、ほとんどお目にかかれない貴重品。
 黒咲隼の目の前では、街の照り返しを受けて、漆黒のバイクが煌めいていた。


591 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:11:07 ta3cw6Jk0
【D-9/歓楽街/一日目 深夜】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]コート
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.行政区画に現れたというマスターを探す。警察の動きも利用しながら、人海戦術で捜索。
2.聖杯にかける願いに対する迷い
[備考]
※行政地区で、マスター同士が戦ったことを把握しました。その場にいた面々の容姿は確認していません
※数人の部下を連れながら、自動車を手配しています

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.行政区画に現れたというマスターを探す。警察の動きも利用しながら、人海戦術で捜索。
2.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※行政地区で、マスター同士が戦ったことを把握しました。その場にいた面々の容姿は確認していません


592 : 陰にて爪を研ぐ ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:12:03 ta3cw6Jk0
【D-9/歓楽街・アパート手前/一日目 深夜】

【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]オートバイ
[道具]カードデッキ、デュエルディスク
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.自室に戻り、戦闘準備を整える
2.雅緋を追跡する。他のマスターと戦闘を始めたら、疲弊したところに奇襲をかける
[備考]
※雅緋がマスターだと考えています
※雅緋が他のマスターを発見し、捜索に向かったと考えています

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ロックシード(バナナ、マンゴー、レモンエナジー)、トランプ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.生身では自動車には追いつけない。霊体化した状態で雅緋達を監視し、目的地だけでも突き止める。
2.黒咲と合流後、本格的に雅緋を追跡する。趣味ではないが、他のマスターと戦闘を始めたら、疲弊したところに奇襲をかける
[備考]
※雅緋がマスターだと考えています
※雅緋が他のマスターを発見し、捜索に向かったと考えています


593 : ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:12:25 ta3cw6Jk0
投下は以上です


594 : ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 00:30:09 ta3cw6Jk0
黒咲の状態表について、一つ抜けているところがあったので、追記します

【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]オートバイ
[道具]カードデッキ、デュエルディスク
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.自室に戻り、戦闘準備を整える
2.雅緋を追跡する。他のマスターと戦闘を始めたら、疲弊したところに奇襲をかける
[備考]
※D-9にあるアパートに暮らしています
※雅緋がマスターだと考えています
※雅緋が他のマスターを発見し、捜索に向かったと考えています


595 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:42:24 YIzh/tus0
投下お疲れ様です。
予約分、投下します。


596 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:43:34 YIzh/tus0
時刻は既に深夜0時を超え、ユグドラシルの街の建物からは次々と灯りが消えていく。
いまだに光が灯っているのは、ユグドラシルの生活を支える行政地区と政庁。夜になってからが本番だと言わんばかりに人々の声が聞こえる歓楽街。
そして、24時間営業の店が何店舗か存在し、深夜にも関わらず買い物目的の客がちらほら見え隠れする、商業地区ぐらいだろう。

そんな商業地区の一角に見える、先ほどの深夜0時に営業時間を終えたばかりのスーパー。
店のシャッターは既に降ろされ、この時間まで働いてくれたスタッフ達も次々と帰宅し、店内の事務室にただ一人残った店長が今日の売り上げを確認していた。
数日前にこの店で盗みを働こうとした少年達を叩きのめした、老人と孫娘らしき人物を思い出しながら、男性は売り上げ金を金庫にしまおうと椅子から立ち上がる。

その時、後方のドアが空いているのに気づいた。
うまくドアが閉まってなかったか…? そんな事を考えながら、ドアを閉めようと金庫から離れた。

【HOLD VENT】

機械的な音声は、部屋の中から聞こえた。
再び金庫の方を振り向けば、いつのまにかそこにいたのは、異形の仮面をつけた灰色の人物だ。
カメレオンのように広がる眼と、左腿に装着された何らかの道具。
腰にはベルトが巻かれ、カードらしき札が装填されている、何の模様もない四角いケースがベルトの中央に装填されている。。
左手にはヨーヨーのような道具を持ち、右手には先ほどまで男性が売り上げ金を数えていた手持ち金庫。

男性が声を上げるまえに、仮面の人物はヨーヨーを投げつけた。
腹部に直撃をくらい、男性はドアを突き破って店内に吹き飛ばされる。
仮面の人物は武器として使ったヨーヨーを手元に戻し、窓ガラスを突き破って外に飛び出した。

店内に吹き飛ばされた男性が、頭部から血を流しながらも店内をはいつくばって移動し、緊急警報のスイッチを入れたのは、それから数分後の事だった。


597 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:44:31 YIzh/tus0


スーパーを脱出した仮面の人物――仮面ライダーベルデは、無事に目的の場所へとたどり着く。
商業地区と歓楽街のちょうど中間地点にある、建物の影に隠れた小さい空き地だ。
そこにいたのは、頬のあたりに赤茶けた肌が目立つ赤毛の少年――聖杯戦争のマスターの一人、衛宮士郎。
ベルデは左手に持った手持ち金庫を地面に置くと、士郎が中身を確認する。

「すまないな。キャスターからの次の指示を待っててくれ」

その言葉にベルデがうなずき、腰のベルト――Vバックルから、デッキを取り外す。
するとガラスが割れるような音と共に、ベルデの姿は男性の姿へと変わった。
さきほど金を奪った店と同じ、商業地区に自らの店を持つNPCの男性だ。
男はベルデのデッキを懐にしまうと、何事もなかったかのように路地へと消えていった。

「これで当面の資金はどうにか確保か。我ながら、ひどいやり方だとは思うけど…」
『だが、この方法でしか金を手にする手段はない。それはお前も納得したはずだ』

声は空き地に捨てられた鏡の中から聞こえた。
鏡の世界――ミラーワールドに存在する士郎のサーヴァント、キャスター。
通常のサーヴァントと異なり、自らの宝具によって生み出した鏡の世界――ミラーワールドでしか存在できないという、特殊な条件を備えたサーヴァントだ。

「分かってるさキャスター。勝ち残るためにも、とりあえず金は必要だ。
これだけあれば、聖杯戦争の間ぐらいは寝泊りできるだろ」
『ならばいい。俺は引き続き、ユグドラシルの全域に散らばるようにNPCを洗脳し、仮面ライダーを増やしておく。
オーディンの力は圧倒的だが、お前の魔力では何度も使える訳ではないからな』

鏡の中に見えるキャスターの背後の通路から、2つの影が現れた。
影は鏡から飛び出し、士郎の眼前に立つ。
虎を模した騎士――仮面ライダータイガと、二本のねじれた触覚が印象的な騎士――仮面ライダーインペラー。
二人の仮面ライダーの装甲は、ベルデと同じように灰色に覆われている、ブランク体と呼ばれる姿だった。


598 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:45:25 YIzh/tus0

『歓楽街の裏でたむろしていた、身寄りのないゴロツキだ。
既に洗脳は終わっている。お前の護衛として、常に近くにいるようにしておく。戦いの時に使え』
「ああ。それじゃあ作戦通りに、他のNPCの洗脳を頼む」

士郎の言葉に頷き、キャスターの気配が鏡の奥へと消えていく。
二人のライダーもそれぞれ変身を解き、街のどこにでもいそうな若者の姿に変わると、それぞれ別の道へと消えていった。
空き地に残されたのは士郎のみとなり、金庫から金を掴むと懐にしまう。

「サーヴァントなんて超常の力を使ってまで最初にしたことが、まさか泥棒とはな……はは」

分かっている、自分はもう決めたはずだ。
この身を悪に落としてでも聖杯を勝ち取り、必ず美遊を……義理とはいえ、大切な妹が助かる世界を作り上げると。
そのためなら、他人を陥れてでも勝利を掴み取る。泥をすすってでも勝ち残ってみせる。

金を全て懐に入れた所で、いつのまにか商業地区が騒がしいことに気づいた。
キャスターの宝具によって生み出されたライダーデッキの仮面ライダーは、霊体になることはできない。
金を奪ってこいとベルデに命令し、それは叶ったが、おそらく盗みに入った店の住人が警報を鳴らしたのだろう。

士郎はフードを被りなおし、足早に裏路地を走り出す。
護衛として残された二人のNPCの気配がついて来る事を確認し、このまま人ごみに紛れながら、今夜寝泊りできる場所を探そう。
頭に叩き込んだユグドラシルの地図を脳裏に浮かべながら、ここから近いのは学術地区か歓楽街のどちらかと判断。

「学術地区は夜は人が少ないだろうし、警備員も巡回してそうだな…ってことは、やっぱこっちか」

自分の姿格好も、歓楽街にたむろする人間に見えなくはない。
背後に遠ざかる商業地区の騒ぎを横目に、士郎は歓楽街の闇へと消えていった。


599 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:45:52 YIzh/tus0


「お疲れ様でしたぁっ!」

さかのぼること10分ほど前。
商業地区でのアルバイトを終えた葛葉紘汰は、日払いの給料袋を片手に店を後にした。
運よく知り合った女性に紹介された商業地区の食事処のバイトだが、初日にしてはなかなかの成果だ。
その足で手近な食品店で適当な食料を買うと、人目を避けるように裏路地へと入った。
少し進んだ場所で足を止め、誰もいない自分の真横へと声をかける。

「セイバー、いいぞ」
「ああ」

瞬間、霊体化を解いて現れたのは、紘汰のサーヴァントであるセイバーだ。
もっとも、紘汰の前に最初に現れた究極体――アルファモンの姿ではなく、成長期のドルモンへとその姿を変えていた。
戦闘力がほぼ皆無となってしまう姿だが、魔力消費を抑えるための形態として、普段はこの姿でいる事を聖杯戦争開始前に話し合っていたのだ。
姿を見せたドルモンに対し、紘汰は先ほど買った肉の塊を差し出す。

「遅くなって悪かったな。ほら、食えよ」
「ありがとうコウタ。でもいいのか? コウタはオーバーロードになった影響で、食欲がなくなってるんだろ?
オレはサーヴァント…っていうかデジモンだし、コウタが食べないならオレだって……」
「いいんだよ。デジモンだって、人間と同じように腹は減るだろ?
食べておけば、少しは魔力の足しになる。遠慮しないで食ってくれよ。俺の事は気にしないでさ」
「……分かった、いただくよ」

地面に置かれた肉にドルモンがかぶりつく。
なんだかんだ言って美味しそうにかじりつくあたり、やはりサーヴァントやデジモンでも腹は減っていたのだろう。
ドルモンだけでなく、今日のバイト先に訪れた客や、街を歩く人々が幸せそうに何かを食している姿を見ていると、自分の体の変化を改めて思い知らされてしまう。

食事をしても何も感じなくなった味覚は、体がオーバーロードに変わっていく副作用だ。
最初は味が薄く感じ、食欲が無くなっていき、紘汰の世界に生まれた、とある果実の栄養分を直接体に取り込むだけで満足する体となってしまった。
後悔はない。世界を救うために、犠牲という名のルールをぶち壊すために、自らが求めた力の代償だ。

(魔術都市ってぐらいだから、どうにか味が分かるようになる魔術とか使える人いないかなぁ…いねぇだろうなぁ…)

それでも紘汰はまだ若い。元の世界で姉が作ってくれる料理の味が恋しいと思うこともあれば、普通に食事を楽しみたい感情だってある。
ドルモンが淹れてくれたあのコーヒーのような飲み物の味が分かった時は、久々に感じた味にえらく感動したものだ。


600 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:46:56 YIzh/tus0

その時、さきほどまで紘汰達がいた表通りから、人々のざわめく声が聞こえた。
食事を終えたドルモンもその騒ぎに気づく。

「なんだろ…? なんか騒がしいな」
「……セイバー、一応霊体化しておいてくれ」
「分かった」

ドルモンが霊体となった事を確認し、紘汰は裏路地から表に出る。
騒ぎが聞こえた店の方を向くと、いつのまにか大勢の野次馬が集まっていた。
人の隙間から見えるのは、店の主人と思われる男性が頭から血を流しながらタンカで運ばれていく光景。
何事だろうか。とりあえず紘汰は、手近な所にいた野次馬の男性達に声をかけた。

「なぁ、何かあったのか?」
「強盗らしいぜ。店の売り上げ金、みーんな取られちまったんだってよ。犯人は捕まってないみたいだな」
「あー、運ばれた店長さんが、うわごとみたいにブツブツ言ってたなぁ…『仮面とベルトつけた奴』とかなんとか……?」
「か、仮面とベルトぉ!?」

思わず声が出てしまった。
怪訝な顔をした野次馬達に「わ、わりぃ! ありがとな!」と礼を言うと、少し離れた建物の影へと隠れる。
その顔は驚きに包まれており、懐からバックルのような機械と、右腰からオレンジ色をした錠前のような道具を取り出した。

「仮面に、ベルトって……まさか…!?」

紘汰の戦う力として、数多くの戦いを共に潜り抜けてきたアイテム――『戦極ドライバー』と『オレンジロックシード』。
これを用いて変身する『アーマードライダー鎧武』は、たった今野次馬から聞いた特徴と一致する。
すなわち、『仮面』をつけ『ベルト』のようなものを装着している、一番の外見的特長と。

(まさか、この街に俺以外のアーマードライダーがいるのか……
いや、NPCの住人は魔術師か一般人だし、魔術となんの関係もない戦極ドライバーやゲネシスドライバーがある訳がない……!)
「コウタ、どうした?」

気づけば自分のすぐ隣に、霊体化を解いたドルモンがいた。
確認しなければならない。自分の杞憂なら問題ないが、もしもこの考えが真実だとしたら……

「セイバー、わりぃ。まっすぐ帰る予定だったけど、ちょっとついてきてくれるか?
念のため、いつでも戦闘に入れるように進化の準備しといてくれ」
「それは構わないけど…さっきの騒ぎ、まさか他のサーヴァントが?」
「わからねぇ……だから、確認しないと」
「分かった、だけど気をつけてな。もう本戦は始まってるんだから」

ドルモンの言葉に頷き、騒ぎのあった店の横の路地へと入る。
野次馬の一人が、犯人らしき人影が歓楽街側に走っていく姿を見たと言っていた。
仮面にベルトと言うだけで、アーマードライダーだとは限らない。ただ単に、強盗が顔を隠すためにつけていただけかもしれない。
それでも紘汰は、脳裏に浮かんだ考えを全否定する事ができなかった。
懐の戦極ドライバーを無意識のうちに握り締め、紘汰は歓楽街への道をまっすぐ走り出す。

途中、歓楽街へと向かう紘汰と一人の男性がすれ違った
懐にベルデのライダーデッキを潜ませたその男が、紘汰が探している仮面とベルトの人物だったと、紘汰は最後まで気づかなかった。


601 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:48:39 YIzh/tus0
【C-7/歓楽街と商業地区の境/一日目 深夜(午前0時過ぎ)】

【衛宮士郎@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!】
[状態] 健康
[令呪] 残り三画
[装備] 干将・莫耶
[道具] オーディンのライダーデッキ
[所持金] 数日寝泊りできるほど
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1. 騒ぎで商業地区が慌しくなったので、歓楽街に移動
2. 今夜寝泊りできる場所を探す
[備考]
※護衛として、仮面ライダータイガ、仮面ライダーインペラーに変身するNPCが近くにいます。
 戦闘時には即座に現れ、士郎を援護するように洗脳されています。

【キャスター(神崎士郎)@仮面ライダー龍騎】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] ライダーデッキ×9
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: マスターの戦いを見届ける
1. ユグドラシル全域からNPCを選別し、仮面ライダーを増やす
[備考]
※ 町のNPC3人を洗脳し、ベルデ、インペラー、タイガのデッキを渡しています。

【『ライダーデッキの仮面ライダー』】
【仮面ライダーベルデ(商業地区の男NPC)】体力100%・現在地 C-7 商業地区側
[備考]
商業地区で商売をしている男NPCです。
盗みに入った店の主人に変身後の姿を見られ、『仮面とベルトをつけた強盗』として、C-7を中心に噂が広がりました

【仮面ライダータイガ(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 C-7 歓楽街側
【仮面ライダーインペラー(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 C-7 歓楽街側
[備考]
士郎の護衛として、常に近くで行動しています。
戦闘時には即座に乱入し、士郎を守りながら戦闘を行います


602 : 強盗と仮面とベルト ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:49:59 YIzh/tus0

【葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武】
[状態] 普通
[令呪] 残り三画
[装備] 戦極ドライバー
[道具] オレンジロックシード
[所持金] やや貧乏(一日分のアルバイト給料)
[思考・状況]
基本行動方針: ユグドラシル(聖杯戦争)を許さない
1. 仮面とベルト…まさか、アーマードライダー…!?
2. 犯人らしき影は歓楽街側に行ったらしい。追いかけて確認しよう!
3. 味覚を取り戻す方法、魔術都市なら………ないよなぁ
[備考]
※ ズボンの右腰にオレンジロックシードをつけてます。他のロックシードの手持ち状況は、後の書き手の皆様にお任せします
※ 職場を紹介した鯨木かさねの『罪歌』の洗脳を受けているかは不明です
※ アーマードライダーがユグドラシルにいる可能性を考えてます

【セイバー(アルファモン)@DIGITAL MONSTER X-evolution】
[状態] 普通(ドルモン状態)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 命を受け継ぎ、生き、託す
1. 紘汰と一緒に犯人らしき人物を追う
[備考]
戦闘時以外は魔力の消費を抑えるため、ドルモン状態でいることにしました


603 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/08(火) 00:50:18 YIzh/tus0
投下完了です


604 : ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 01:04:16 ta3cw6Jk0
投下ありがとうございました!
何気に光圀公っぽい人がいるんですね、この話……w
初っ端から思わぬ組み合わせが引き寄せ合う展開には、驚かされました
しかも黒咲さんの動向次第によっては、戒斗ともすれ違う可能性があるんですよね
今後がどうなるか非常に気になるお話でした
オープニングで用いた「噂」についても、拾っていただけたのは本当にうれしいです


605 : 名無しさん :2015/09/08(火) 03:12:50 oX12J0RE0
お二方とも投下乙です!

>>陰にて爪を研ぐ
マリアさんのドンパチに早速目をつけたものが一人、それを追うものが一人。
これはマリアさんがいきなりの受難か?
ブラッドレイらも合わせて大混戦もありえるか。
カイトと隼は一方的にだが悪くない感じで進んでるな

>>強盗と仮面とベルト
水戸黄門リリィコンビ好きでしたw
こっちもまた波乱の前触れ状態に
てかそうか、コータからすれば仮面ライダーの容姿で真っ先に考えるのはアーマードライダーだよな
ドルモンに肉を食わせる姿に、テイマー的なものを感じてほっこり
士郎は流石の悪士郎。自嘲気味な声が脳内再生できたわ


606 : ◆nig7QPL25k :2015/09/08(火) 18:38:28 vtaLQKd20
羽佐間カノン、我愛羅で予約します


607 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/09(水) 00:12:31 tqCCljU.0
>>604
>>605
ご感想ありがとうございます。
プロットの時点で『龍騎ライダーの誰かが士郎の命令で強盗する』と決めてたので、
一度強盗に入り込まれたあの店に再登場していただきましたw
水戸黄門&リリィコンビの衝撃が強すぎて、おまけ程度の扱いで文面に入れさせてもらいました。

神崎士郎の龍騎ライダーと紘汰達アーマードライダーが競演するんですから、ここは何か絡ませないとだろ!
と、考えてみたストーリーという次第です。
一応自分の中では、鎧武からの参戦者達は『平成ライダーVS昭和ライダーの戦いに参加しなかった世界からの参戦』と考えてまして、
仮面とベルトのライダー=アーマードライダーという認識で進めていこうと考えてます。


608 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/09(水) 00:13:58 tqCCljU.0
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、高町なのは、立花響、スバル・ナカジマで予約します


609 : 名無しさん :2015/09/09(水) 17:47:02 8vs7UtjA0
なるほどー>平成VS
そしてこれは興味深い予約が来た
なのは勢は速くも出会うのか、脅威の魔法少女率!


610 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/10(木) 22:42:40 v1VGpbfw0
ちょ、ちょーっとプロット練りまくってたら、期限内に投稿が難しそうです・・・
申し訳ありませんが、念のため予約延長させていただきます。


611 : ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:26:44 Av9F281Y0
投下します


612 : 振り返るもの、向き合うべきもの ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:28:59 Av9F281Y0
 路地裏に看板を立てている、歓楽街のとある雑貨屋。
 街の明かりから隠れるように、ひっそりと建つ店を見つけるのには、随分と時間がかかってしまった。
 扉をくぐった店内もまた、照明が弱く薄暗い。
 棚には異国の怪しげな物品や、何のためにあるのか分からない謎めいた物体まで、様々な物が雑多に置かれている。
 おおよそまともな場所ではない。それがひと目で理解できた。

「伊達男からのもらいモンだ」

 ごとり、と鈍い音を立てたのは、黒光りする拳銃だ。
 イタリア軍から横流しされた、ベレッタM92。
 それが口元を包帯のような布で覆った、目つきの悪い店主によって、カウンターに置かれた物だった。
 それこそが、わざわざこんな所まで来て、羽佐間カノンが手に入れようとした物だ。

「ありがとう」

 懐から代金を取り出し、受け取る。
 決して楽に稼げた金ではなかった。高校生を演じるカノンにとっては、普通ではとても手の出せないものだ。

「護身用にしちゃ、物騒な買い物だな」
「これでも元少年兵でな」
「人手の足りない国もあったもんだ」

 普通女子は徴用されんだろう、と店主は言う。
 フェストゥムに蹂躙され尽くした人類軍を考えれば、人手が足りないというのは、あながち間違った評ではない。
 かつてカノン・メンフィスだった彼女は、そういう環境にいたのだ。

「それで、どうする。本当に戦争でも始めるつもりか?」
「そうかもしれん」

 苦笑しながら、カノンが言った。
 何しろこの身は本当に、聖杯戦争の参加者だ。
 もちろん、店主の思い浮かべる戦争とは、随分と様子が異なるものだろうが。

「まぁ、それで何をしようと勝手だが、せいぜい喧嘩を売る相手は選ぶことだな」
「相手?」
「世の中には楯突いちゃならねぇ相手もいるってことだ。たとえば、この街の女王様とかな」

 店主は言った。
 この歓楽街には闇がある。自分のようなはみ出し者が、あちらこちらでうろついている。
 そしてそれらを瞬く間に束ね、闇の支配者に成り上がった、一人の女がいるのだと。

「ミヤビって女には手を出さんことだ。ユグドラシルの闇を仕切る、影の女王様にはな」

 ミヤビ。
 その名前が、カノンの耳には、いやに印象深く響いていた。


613 : 振り返るもの、向き合うべきもの ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:29:23 Av9F281Y0


 怪しい雑貨屋で買い物をしたのが、つい一時間前のことだ。
 目的を達成したカノンは、ひとまず家に帰るため、歓楽街を後にしていた。

《親が知れば嘆くだろうな》

 霊体化した我愛羅が言う。
 夜歩きして拳銃を買ってきたと知れば、あの家で待つ両親は、どんな顔をするだろうなと。

《そうか……いや、そうなのかもな》
《分からないのか?》
《あれは本当の両親じゃない。いや……間違いなく、本当の両親ではあったんだがな》

 純粋なアイルランド人が、日本の姓を名乗っているのは、不自然であると考えられたのか。
 この街におけるカノンの姓は、羽佐間ではなくメンフィスだ。
 故に彼女の家にいたのは、育ての親である羽佐間ではなく、産みの親の方だった。

《あの人達は、私が8歳の頃に死んだ。愛していたのは確かだが、ときどき、分からなくなることがある。
 私の本当の両親は、本当にこんな人達だったか……と》
《親の振る舞いを忘れたのか》
《かもしれない。我ながら薄情な女だ》

 天羽の言うことを否定できんなと、カノンは寂しげに笑う。
 両親をフェストゥムに殺された時、彼女は心を捨て去った。
 己の存在を否定し、敵と戦う機械となるべく、人の心を投げ捨てたのだ。
 あるいはその時、両親のことを、いくらか忘れてしまったのかもしれない。
 大事な名前をもらったことは、今も確かに覚えている。それでもところどころで記憶が抜け落ち、おぼろげになってしまっている。
 愛しているのは本当なのに。その気持ちに偽りはないのに。
 自分を否定していた頃に、失ってしまったものは多いのだと、改めて再確認させられた。

《俺には母親がいない。俺が産まれた時に命を落とした》
《そう……だったのか》
《母は俺を愛していた。それは分かるし感じてもいる。
 だが、顔を合わせたことのない俺には、お前の感じているものを、理解することはできないのだろう》

 お前の悩みは、親の顔というものを、知っているからこその特権だと。
 シールダーのサーヴァントは、自らのマスターに向かって言う。

《……すまない。無神経だったな》
《気にしてはいない。そういう親子もいるのかと、そう思っただけだ》
《色々あるんだ。人と人の繋がりは》

 人は一言では語れない。それぞれに違った背景があり、それ故に違った中身がある。
 そうした者同士の関係性は、更に細かく分化される。故に親子の形とは、七十億人七十億色。
 それは竜宮島に住み、様々な親子を見てきたからこそ、理解できたことだった。
 羽佐間容子の娘となった、他ならぬ自分自身も含めて。


614 : 振り返るもの、向き合うべきもの ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:30:26 Av9F281Y0
「……?」

 そこまで考えたところで、ふと、カノンは気がついた。
 こんな時間だというのに、少しばかり、人が多い。
 それも何かが起きたのか、皆真剣な顔をして、何事かを話しているように見える。
 この魔術都市ユグドラシルが、電子によって構成された、仮想の物語であるのなら。
 日常から外れた事態には、何らかの意味が持たされているはずだ。

「すまない、何かあったのか?」

 故にカノンは市民に近づき、迷わずそう問いかけた。

「ああ、橋の向こうのスーパーで、強盗事件が起きたんだとよ。
 変な仮面を着けた奴が、金をごっそり持ってって、歓楽街の方に逃げたんだそうだ」
「俺は変なベルトを巻いてたとか聞いたぜ。どう変なのかは知らねぇけど」

 変な仮面と変なベルト。
 奇妙な装飾を身に着けた、深夜のスーパー襲撃犯。
 取り立てて事件のなかった街で、異様極まりない犯罪が起きた。
 それも聖杯戦争が始まった、この夜になってすぐのことだ。

《匂うな》

 であれば、マスターが絡んでいる。
 自我を持った何者かが、ユグドラシルで何かを起こし、それが噂になっている。
 我愛羅にそう言われずとも、カノンには理解できていた。

《……戻るぞ、シールダー。今なら恐らくまだ間に合う》

 市民に短く礼を言うと、カノンは来た道を引き返し、再び歓楽街へと向かう。
 予想外のタイミングで、敵マスターの手がかりを見つけた。
 不意打ち同然であったからこそ、準備は十全であるとは言いがたい。

(本当に、これを使うんだな)

 懐に隠した拳銃が、いつになく重たいものに思えた。
 エゴのために人と戦い、命を奪い合うことになる。
 そのことについて、心の準備が、きちんとできていたとは言えない。

(それでも)

 だとしても、立ち止まってはいられないのだ。
 でなければ、天羽奏との会話で、固め直したあの覚悟が、全て嘘になってしまう。
 いつかは戦わなければならない。であれば、飛び込むべきは今だ。
 カノンは己が顔つきを引き締め、戦の火が待つ歓楽街へと、その両足を走らせた。


615 : 振り返るもの、向き合うべきもの ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:31:06 Av9F281Y0
【B-5/一般住宅街・橋付近/一日目 深夜】

【羽佐間カノン@蒼穹のファフナーEXODUS】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ベレッタM92(15/15)
[道具]外出用鞄、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.基本的にサーヴァントを狙う。マスターはあまり殺したくない
2.歓楽街に戻り、強盗を探す
[備考]
※雅緋が歓楽街の無法者を支配しているという話を聞きました
※『仮面とベルトをつけた強盗(=仮面ライダーベルデ)』の噂を聞きました

【シールダー(我愛羅)@NARUTO】
[状態]健康
[装備]『我が背負うは風なる影』
[道具]忍具一式
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを補佐し、優勝へ導く
1.基本的にサーヴァント狙い。マスターは悪人のみ狙う
2.歓楽街に戻り、強盗を探す
[備考]
※雅緋が歓楽街の無法者を支配しているという話を聞きました
※『仮面とベルトをつけた強盗(=仮面ライダーベルデ)』の噂を聞きました


616 : ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 02:31:27 Av9F281Y0
投下は以上です


617 : 名無しさん :2015/09/12(土) 05:14:26 VIDEx5vk0
投下おつー
急速に接点がどんどんできていってニヤニヤするぜ
カノンはそっか、NPCで生みの親のほうが来てしまったか
本当の両親といえば両親で、愛されてもいたけど、それでももうずっと前の人で今のお母さんとは違うものな……
これは確かに複雑だわ


618 : ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 14:26:01 Av9F281Y0
犬吠埼風、剣鉄也で予約します


619 : ◆nig7QPL25k :2015/09/12(土) 21:20:03 Av9F281Y0
両備、ハービンジャーを追加予約します


620 : ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:47:10 h.dqy40c0
投下します


621 : 虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:47:40 h.dqy40c0
 魔術都市ユグドラシルには、二つの噂がある。
 魔力を秘めた剣を使い、さながら伝承の吸血鬼のように、しもべを増やす通り魔の噂。
 姿も形も見えないのに、戦いの爆音だけが聞こえる、謎の戦闘者の噂。
 そのどちらもが、聖杯戦争本戦が始まる一日前に、突如として急速に広まったものだ。
 故に勘のいいマスター達は、それが自分のライバルのことなのだと、言われるまでもなく理解していた。



「俺達には二つの道がある。刀の通り魔を探すか、謎の音の主を探すかだ」

 戦闘のプロ、剣鉄也。
 鍛え上げられた肉体と、年齢不相応のいかつい顔を持つ、いかにも戦闘者という風情の男である。
 今回の聖杯戦争では、ライダーのサーヴァントとして現界し、その豪腕を振るっていた。
 愛機『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を駆り、数多の敵と戦ってきた彼は、まさに聖杯戦争という舞台には、うってつけの役者と言えた。

「普通に考えたら、謎の音の方よね」

 問題はその鉄也の現在地が、女子中学生の私室という、なんともらしくない場所であるということだ。
 勉強机の椅子に無造作の腰掛け、ベッドに視線を向けた先では、犬吠埼風が腰を下ろして、難しい顔をして思考していた。
 中学三年生でありながら、勇者という途方もない宿命を背負ったこの少女が、剣鉄也のマスターだった。

「それなりに広範囲をうろついてんだろうな。通り魔の方は証言がバラバラで、活動範囲が特定できねぇ」
「逆に音の方は、特級住宅街っていう風に、場所が限定されている」

 議題はこれからの本戦で、敵マスターを探すに当たって、まず何を手がかりとするかだ。
 既に噂というヒントは得ているが、それは二パターン存在している。
 二兎を追えば一兎も得られない。狙いは一羽に絞らねばならない。
 風が選んだ情報は、具体的に場所が決まっている、謎の戦闘音の方だった。

「仮にそっちを選ぶとして、もう一つ考えることがある」
「今から乗り込むかどうか、ってことね」
「何せ場所が場所だからな。お偉方の集まる場所とくりゃ、警備も厳重になってるはずだ」

 しかし、そこで問題が生じる。
 特級住宅街というのは、そもそも一流の魔術師や、要人が暮らしているエリアなのだ。
 当然、そうした人間を守るために、警察の巡回なども厳しくなっている。
 今からそこに繰り出したとして、馬鹿正直にうろついていては、即座に補導されてしまうだろう。

「それで、どうする」

 故に選択する必要があった。
 相手に対応する隙を与えず、リスクを承知で飛び込むか。
 自身の安全を優先するため、警備の手薄な時間を待つか。

「……今夜は行かない。このまま寝て、朝を待つことにする」

 犬吠埼風が選択したのは、後者だった。


622 : 虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:48:25 h.dqy40c0
「わざわざ特級住宅街に陣地を構えたってことは、そこが家に近いってことでしょ? そうじゃないんだったら、そんなとこ普通選ばないし」
「だな。警備の目も光ってる。騒がれる危険を冒すよりも、もっと目立たない場所に陣取るはずだ」
「それなら、一晩くらいほっといても、そう遠くまでは動かないはず」

 だったら無理をすることなく、日中に動くべきだと風は言う。

「正論だな。臆病風に吹かれたってわけでもないらしい」
「そりゃまあ、迷ってないってわけでもないけどさ。でも聖杯が欲しいっていうのは、ホントのホントに思ってるから」

 人を蹴落とさなければならないというのは、確かに心苦しいとは思う。
 だがそれでも、たとえ刃を交えてでも、叶えたい願いは確かにあるのだ。
 仲間達や他ならぬ自分が、喪ったものを取り戻す。そのためにこの戦いに臨み、勝ち抜いてみせるという覚悟がある。
 それならば文句はないだろうと、風は鉄也に向かって言った。

「了解だ。それなら俺も異論はねぇ」
「決まりね。とりあえず明日目が覚めたら、学校を休んで特級住宅街へ向かう。そこでマスターを捜しましょ」
「見つけちまえば、あとはグレートマジンガーで踏み潰せる。……まぁもっとも、最初からグレートで乗り込めれば、もっと楽に済むんだろうがな」

 背もたれによりかかりながら、鉄也がぼやく。
 『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は強力無比だが、巨大な分かかるコストも桁外れだ。
 勇者の力をもってしても、長時間維持し続けることは難しい。無駄な使い方をせず、一撃必殺の覚悟で臨むべきだろう。

「いっそのこと令呪でも使って、魔力をひねり出すって手もあるけど」
「それは駄目だ。よほどのことがねぇ限り、令呪はフルで残しておけ」

 風の提案を、しかし鉄也は否定した。
 魔力の結晶体である令呪を、宝具発動の命令に使えば、その魔力を宝具に割り当てることが可能だ。
 しかしその使い方はすべきではないと、マスターの主張に反論する。

「何で?」
「俺の切り札を使うためだ。そいつを呼び寄せ起動するには、令呪三つ分の魔力が要る。
 その後の維持コストもかかるからな……こればっかりは、令呪を使わず、自前の魔力でってわけにはいかねぇんだよ」

 だから令呪が必要なんだと、ライダーのサーヴァントが言った。
 宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は、それ単体で完成するものではない。
 全ての力を解放した、正真正銘の最終形態は、もう一段先に存在する。
 来たるべき時にそれを使うためには、令呪の使いどころを誤るわけにはいかないのだ。

「それって本当に必要なの? あのグレートだけでも、十分強いと思うんだけど」
「要る。皇の力を使うべき時は、いつか必ず訪れる」
「その根拠は?」
「プロの勘だ」

 理論や理屈があるわけではない。
 されど古今の英雄が集った、この聖杯戦争の舞台では、ただならぬ気配が渦巻いている。
 誰を相手にした時かは知らないが、不滅の『偉大な勇者(グレートマジンガー)』ですら、揺るがされる場面が訪れるだろう。
 その時には迷わず切り札を切る。
 偉大な勇者をも超越した、偉大な皇を目覚めさせる。
 いずれ来る死線の時を思い、剣鉄也は決意を固めた。


623 : 虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:48:48 h.dqy40c0
【D-3/一般住宅街・犬吠埼家/一日目 深夜】

【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]スマートフォン
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい
3.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく
[備考]
※D-3にある一軒家に暮らしています
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています

【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています


624 : 虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:50:45 h.dqy40c0


 夜の街を、風が駆ける。
 ひゅんひゅんひゅんと音を立て、されど姿を見せることなく、風は闇夜を吹き抜ける。
 家の屋根に降り立って、眼下を見下ろしたその風は、されど一人の少女だった。
 茶色く長いツインテールに、まな板のように貧相な胸。
 キーパーのマスター――悪忍・両備は、特級住宅街に侵入を果たし、周囲をぐるりと見渡していた。

《警備の数が多いっつっても、結局大したことなかったな》
《両備は忍よ。これくらい突破できないようじゃ、選抜メンバーの名がすたるわ》

 霊体化したハービンジャーに、声を出さず念話で返した。
 今日までに調べて分かったことだが、この魔術都市の警備の練度は、実はそれほど高くない。
 隠密を本分とする両備であれば、問題なく潜り抜けられるレベルだ。
 故に彼女は、即座に特級住宅街に乗り込み、噂の正体を確かめに来た。
 両備ならば、警備を突破し、街に隠れている臆病者を、燻り出せると考えたからだ。
 彼女も犬吠埼風同様、二つの噂を耳にして、それに応じ動いたマスターだったのである。
 違いがあるとするならば、彼女にはたとえ夜の街でも、動き回れる技があった。それが対応を分けたのだった。

《とりあえず、ここまではオーケー……あとは隠れているマスターを、どうやって見つけ出すかってことよね》

 恐らく敵のマスターは、両備達が用いている、忍結界のような術を使っているのだろう。
 隔絶された結界に閉じこもれば、姿を一切見せることなく、敵から身を隠すことが可能だ。

(忌夢……じゃ、ないわよね)

 そこまで考えると、どうしても、頭に浮かぶ顔があった。
 夕方に喫茶店で鉢合わせた、眼鏡をかけた先輩の顔だ。
 あの後念のため尾行してみたが、彼女の暮らしていた家は、特級住宅街にはなかった。
 そもそも出歩いている以上、引きこもっていると思われる敵マスターとは、前提条件が合致しない。
 ここに潜んでいるライバルは、忍結界を展開し、息を殺している忌夢ではないはずだ。そう自分に言い聞かせた。

《夕方のアイツが、そんなに気になるか》

 そしてそんな気の迷いは、相方にも悟られてしまっていたらしい。
 迷いを見せる両備に対し、ハービンジャーが語りかける。

《……関係ないわよ、あんな奴。両備は両備の戦いをする。それだけよ》
《ならいいけどよ》

 サーヴァントの問いかけを否定し、両備は視線を走らせた。
 周囲にそれらしい人影がないのを見ると、再びその場から跳躍し、次の家の屋根へと向かう。
 屋根と屋根の間を飛び交い、夜の闇の奥深くへと、両備は分け入り突き進んでいった。
 唐突に広まった噂と、見かけ倒しの脆い警備。これはゲームを仕組んだマスターが、こちらを催促している証拠だ。
 ライバルのヒントは与えてやる。戦いの邪魔もしないでやる。だからさっさと会敵し、聖杯戦争を進めろと。
 上等だ。ならばやってやろうじゃないか。
 この手で聖杯を手に入れるためにも。両備の願いを果たすためにも。

《しっかしめんどくせぇなあ。小宇宙の一発でも叩き込んでやりゃあ、ビビッて飛び出してくるんじゃねえのか?》
《バカ! それじゃ隠密行動の意味がないじゃないの!》

 猪武者のパートナーに、やや不安を覚えながらも、両備は奥へ奥へと進んでいった。


625 : 虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:51:06 h.dqy40c0
【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】

【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スナイパーライフル
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています
※忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています。そのことから、『姿の見えない戦闘音』の正体は、忌夢ではないと考えようとしています

【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]健康
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.両備の迷いに対して懸念
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました


626 : ◆nig7QPL25k :2015/09/13(日) 02:51:23 h.dqy40c0
投下は以上です


627 : 名無しさん :2015/09/13(日) 16:12:03 1n7S56LU0
投下おつー
なのはさん、悪い事してないのに噂になってやがるwww
この調子だと通り魔の方同様、結構マーダー的な警戒をあちこちでされてそうだな


628 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:37:04 us0r.k5M0
予約分投下します


629 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:37:24 us0r.k5M0
「メンター...あたし、すっごく眠たいんだけど...今、何時だと思ってるのよぉ...」
「ほらマスター、シャキッとして。そんなに時間取らせないから」
「分かってるわよぉ...ふわぁぁ〜...むにゃ...」
「って、いきなり寝ないでよー! もう少しで着くからー!」

眠い眼を擦りながらふらふらと歩くルイズを、メンター――高町なのはが支えながら、二人は夜の特級住宅街を歩いていた。
時刻は日が変わる少し前。彼女達が目指すのは、北の方角だ。
今日もなのはの厳しい指導の下、ルイズは魔法の習得に励んでいたが、
夕方頃になのはが少し席を外したと思うと、帰って来て早々こんな事を言い出したのだ。

『マスター。今夜なんだけど、一緒に来てもらいたい所があるんだ』

理由を尋ねても、夜になってからのお楽しみとだけ。
魔法の練習で身体と精神がクタクタになりながらも、結局目的地を聞き出せないまま、ルイズはなのはに連れて来られた。
そんな事があり、ルイズは絶賛不機嫌である。それはもう、不機嫌の塊である。

「まったく...あんたはマスターを何だと思ってるのよ...
そりゃあ、魔法を教えてくれるのは嬉しいわよ? 手助けをしてくれるのは感謝してるわよ?
でもね、もうすぐ聖杯戦争本番が始まる時間っていうのに、わざわざ霊体化解いてまで私をここに連れてきた理由を話さないなんて、サーヴァントの自覚あるのかしら...」
「あ、あの、マスター? 独り言言ってるつもりなんだろうけど、バッチリ聞こえてるよ?」
「ふ、ふん! アンタがいけないんじゃないの! それで、私を連れて行きたい場所ってまだなの?
もう特級住宅街のエリア抜けちゃうわよ?」
「もうすぐだよ、会ってほしい人たちがいるんだ」
「会ってほしい...?」

どういうことだろうか。
方法は違えど、ルイズもなのはもユグドラシルには本人の意思とは無関係に呼び出された身だ。
もちろん、それぞれの住んでいた世界とは違う場所だ。会うべき知り合いなどいるはずがないのだが...

そんな事を考えている間に、先を歩くなのはの足が止まった。
足元は特級住宅街の石畳から変わり、木で作られた橋だった。
この橋を反対側に渡れば、学校が立ち並ぶ学術地区となる。

「何よ、隣の地区と繋がってる橋の上じゃない。ここで誰と――」
「あ、いたいた! なの――じゃなかった! メンターさーーん!!」
「ちょ、ちょっとキャスターさん! 私、もうヘトヘトなんですけどー!」

ルイズの言葉に被るように、反対側の学術地区から元気な声が聞こえてきた。
こちらに駆けてくる影は二つ。
一人は青いショートカットが特徴的な、元気そうな笑顔が印象的な女性だ。
その女性に手を引っ張られてるのは、オレンジの髪が目立つ少女。
少女もルイズと同じく、こちらに向けてブンブンと手を振る青髪の女性に引っ張られてきたらしい。

「.........って...『メンターさん』? なんであんた、メンターのクラス知ってるのよ!?」
「ふふ、相変わらず元気だね、ス...じゃなくて、キャスター」
「ええ、そりゃあもう! 元気が私の一番の取り柄ですから! 英霊になってもそこは変わりませんよ!」
「え、英霊? えと、キャスターさん、この人たちって...」

盛り上がるなのはと青髪の女性二人に対し、ルイズとオレンジ髪の少女は何が何やらといった状況だ。

「あ、ごめんごめん、ちょっと待っててね。レイジングハート、結界お願い」
『All right』

なのなの首にかかっている赤い宝石――なのはの宝具『レイジングハート・エクセリオン』が光を放ち、なのはを中心に結界が展開された。
これで周囲に声が漏れる事はなく、中で何が起ころうとも通常の空間には影響を及ぼさない。

「それじゃ、一応お互いのマスターは初対面だし、改めて自己紹介しよっか?
高町なのは。このピンクの髪の子のサーヴァントです。クラスはメンターだよ」
「って、メンター!? あんたもいきなり真名って何考えてるの!? ていうか、こいつら誰よ!?」
「はーい! 次あたしね! スバル・ナカジマ! 今回の聖杯戦争でキャスターやってます! この子があたしのマスター!」
「キャスターさんまでぇ!? どーゆーことですかぁ!?」

突然の展開に、互いのマスターの頭は盛大にこんがらがっていた。


630 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:37:51 us0r.k5M0


「えーと、簡単にまとめさせてもらうと…」

結界に入った数分後。
頭をウンウン唸らせながら、二人のサーヴァントから聞いた情報をルイズがまとめていた。

「メンターとキャスターは生前の知り合いで、夕方に北西の塔近くを偵察に行ったら偶然鉢合わせて、
それでお互いのマスターの顔合わせもかねて、こんな事を計画したと...」
「る、ルイズちゃんスゴイね! 私、改めて聞いてもよくわかんなかったのに!」
「にゃはは、まさかこの聖杯戦争で知り合いがサーヴァントとして呼ばれるなんて思いもしなかったからね」
「それはこっちのセリフですよー。
しかも呼ばれてる時間が違って、私がなのはさ...じゃなかった、メンターさんの年上になってるなんて...うぅ、やっぱりまだ慣れません...」

生前の関係から、スバルにとってなのはは永遠の師匠だ。
魔法や戦い方だけでなく、人生の師として様々な事を教わった相手より、年上として聖杯戦争に呼び出された。
可能性は確かにあったが、実際に自分がそうなってしまうとは夢にも思っていなかったのだ。

「で、サーヴァント二人は、なんで私とその響って子を連れてきた訳?
もちろん聖杯戦争に関する事なんでしょうけど...まさか、開始時間からいきなりドンパチするって訳じゃないでしょ?」
「もちろん。私とキャスターで夕方に少し話したんだけど、やっぱりお互いのマスターの意見も聞かなきゃいけないからね」

ルイズに問いに、なのはの顔が真剣なものとなる。
ちなみになのはとスバルは、聖杯戦争のサーヴァントで呼ばれたという事実を踏まえ、互いの事をサーヴァントのクラスで呼ぶ事にした。
スバルが時々、なのはの真名を呼びかけてしまうのはご愛嬌である。

なのははルイズ、響の顔を見渡し、スバルが頷いたのを確認し、息を軽く吐いてから口を開いた。

「率直に言うよマスター、そして立花さん。私達で、同盟を組もうと考えているの」
「同盟...ですか? でも、この聖杯戦争って...」
「うん、あたし達は聖杯の奇蹟を巡り、最後の一組になるまで戦わなきゃいけない。
聖杯を手にできるのは、最後の一組になったマスターとサーヴァントだけだからね」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 最後は戦うって決まってるんでしょ!? なのに、同盟を組むなんて...!」
「そこだよ。確かに、聖杯を望む二組が最後に勝ち残れば、そこに待ってるのは戦いだけ。
でも、あなた達二人のマスターの願いって何かな? もう一度答えてみて」

なのはの質問に、ルイズと響が顔を見合わせた。

「わ、私は...カトレア姉さまを治せる癒しの魔法を覚えることよ?」
「私は...その、体に融合してる、ガングニールをどうにか抑えられたらなーって...」
「はい正解。それに付け足して私とキャスターの願いは、『自分達のマスターの願いをかなえて、元の世界に戻してあげること』」
「......あっ!」

ルイズが驚きの声をあげる。
どうやら、なのはの言わんとしてる事に気づいたようだ。
一方、響は頭から煙を出さん勢いで唸っていた。

「う〜う〜...ダメだー! 分からないー!」
「えと、響? ルイズの願いは分かったでしょ? 自分の願いはもちろん分かってるでしょ?」
「だからですよ! 私の願いって、その...聖杯に願わなきゃ、叶えられないじゃないですか!
ルイズちゃんの願いは、メンターさんがいればいずれ叶うかもしれないけど...!」

病気を治す癒しの魔法の習得。
確かに困難な道だろうが、指導者――メンターのサーヴァントがパートナーなのだ。
他のマスターとの戦いを極力避ければ、時間こそかかれど叶えられる可能性は高い。

だが、自分の願いはどうだ?
自らの体に融合している聖遺物――シンフォギアの過剰融合を抑えるという、まさに奇蹟に頼らざるを得ない願い。
敵が襲ってくるのなら戦う覚悟はある。だが、聖杯を獲得するために聖杯戦争に乗り、自分から戦いを挑む覚悟は出来ていない。
つまり、聖杯に頼らなくてもいい可能性があるルイズと、聖杯に頼らなくてはいけない響では、状況が違うのだ。


631 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:38:47 us0r.k5M0
スバルから響の願いと状況を大体聞いていたのだろう。
なのはが、響の肩に手を置く。

「そうだね...私は立花さんの体に融合してるっていう、そのシンフォギアの事を知らない。
キャスターも同じだろうし、私達だけじゃあその融合を完全に防ぐ事はできないかもしれない。
だけど、可能性が一つだけあるの」

ルイズと響を交互に見渡し、なのはは言う。

「マスターが癒しの魔法を覚えたら、それを私がシンフォギア用に改良して、立花さんに教える。
その魔法で、立花さんの侵食を抑えられる可能性があるとしたら?」
「えっ......?」

突然語られた可能性に、響の眼が点となった。
と同時に、頭でなのはの言葉を反復して理解しつつも、どうしても疑惑の考えが浮かぶ。

「で、でも、そんな事できるんですか? 私、魔法なんかとは無縁の世界で生活してたんですけど...」
「うーん、魔力って意味じゃあ問題ないよ。
キャスターから聞いたけど、立花さんがキャスターに提供してる魔力って、体内のシンフォギアから生み出してるんだよね?
サーヴァントが見れば魔力の出力って大体分かるんだけど、うちのマスターと同じぐらいは出してるみたいだから、魔力って意味じゃあまず問題ないね。
それに立花さんの世界のシンフォギア。生み出したエネルギーを武器を介して放出してるって意味では、
私の使ってるミッドチルダ式とそんなに変わらないんだ。どっちかと言うと、キャスターが使うベルカ式に近いかな?」

アームドギアと紡ぐ歌を解し、体内の魔力を武器に宿して戦うシンフォギア。
デバイスと力ある言葉を解し、体内の魔力を音声認識で魔法として放出するミッドチルダ式ならびにベルカ式。
確かに、双方の戦闘方法には似通った部分が存在していた。

「もちろん確実じゃないよ。
あたしもメンターさんも、回復の魔法はそんなに得意じゃないから、まずルイズに教える魔法がいつ完成するか分からない。
そこから別の世界の技術...響のシンフォギアに合わせて魔法を組み替えるなんて、かなり可能性は低いかもしれない。
でも...可能性はゼロじゃないでしょ?」
「あっ......!」

ようやく響も気づいた。
ルイズが回復の魔法を習得すれば、ルイズの願いは聖杯に願わずとも叶えられる。
それをシンフォギア用に改良し、響がガングニールから溢れる魔力を利用して習得できれば、確かに過剰融合を抑えれるかもしれない。
聖杯に願わずとも、自身の願いを叶える事が可能になるかもしれないのだ。

さらに、なのはとスバルは生前の師弟として、数多くの戦いを共に歩んできたという。
それぞれの能力もほぼ把握しており、もし他のマスターと戦闘になっても、早々と遅れを取ることはないだろう。
スバルが言ったように可能性が高いわけではない。
だが、ゼロではないのだ。

「私のガングニールを抑える事が、出来る...!?」
「今言ったけど、確実な方法じゃないよ。もしかしたら、聖杯を勝ち取って願う方がよっぽど可能性が高いかもしれない。
でも、奇蹟に頼るって意味で考えるなら、どっちも同じ。
勝ち残って聖杯に願う奇蹟か、生き残って方法を見つけ出す奇蹟を願うか。
それを踏まえて、改めてマスター達の言葉を聞かせて。この同盟...どうするかな?」


632 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:39:09 us0r.k5M0
なのはの言葉に、マスター二人の視線が交わる。
今度は先ほどの困惑した瞳ではなく、光を宿した希望に満ちた瞳。
可能性が低いなら、自らの努力で勝ち取ればいい。
異なる世界から招かれた二人のマスターに共通している、絶対の信念だ。

「...まぁ、足は引っ張らないでよね?」
「もっちろん! 私に出来ることなら何でもやるよ!
改めて、私は立花響16歳!誕生日は9月の13日で、血液型はO型! 身長はこの間の測定では157cm!
体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげる! 趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはん!
後は......彼氏いない歴は年齢と同じ!!」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。ルイズでいいわ。
誕生日と血液型はあんたの世界の基準が分からないから割愛するけど、歳は同じ16歳ね。
身長は153サント...あぁ、サントっていうのは私の世界の単位で、そっちのセンチメートル...? ってのと、大体同じだと思うわ。
体重は...こ、ここも割愛させてもらうわ。趣味編み物と乗馬、好物はクックベリーパイね。
彼氏は......き、貴族たるもの、恋に現を抜かしてる暇はないわっ!」
「つまりいない歴=年齢ってことだね! よかったー! 仲良くなれそうだね、ルイズちゃん!」
「な、なれなれしくちゃん付けしないでよ! ど、同盟はいいけど、聖杯戦争のライバルって意味では敵同士なんだからねっ!」

ルイズはそっぽを向きつつ。
響は笑顔で。
二人のマスターは、互いの右手を差し出した。



数分後、無事に同盟関係の締結となった彼女らは、今後の方針を固めた。
最大の目標は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、響のシンフォギア過剰融合を抑えること』。
そして『二人のマスターを聖杯に頼ることなく、無事に元の世界へ戻ること』。
戦闘に関しては『敵に襲われない限りは、こちらから他のマスターに戦闘を仕掛けることはしない』。
さらに戦闘に関しては、マスター二人は極力前線に出ないという事が話し合われた。
そこに意義を挟んだのは、そのマスター二人である。

「二人にだけ戦わせて、私達はずっと後ろにいるなんて...」
「貴族たるもの、守られてばかりなんて認められないわ!」

響は、戦う力がある自分だけが守られている現状に我慢ならず。
ルイズは、貴族としての誇りがそれを許さないでいた。
だが、歴戦の戦士でもあるサーヴァント二人がその意見を真っ向から受け止める。

「まずマスターだけど、これまでの指導でミッドチルダ式の防御魔法はある程度形になったよね?
全身に纏う『プロテクション』と、前面に展開する『ラウンドシールド』は、それなりの強度で出せるようになった。
でもマスター。肝心の攻撃魔法は? あの爆発魔法は確かに強力だけど、狙いがつけられないと同士討ちの可能性もあるの、分かってる?」
「うぐっ」
「それに響も。さっき、あたしとキャスターさんの宝具に協力してもらって、シンフォギアの融合状態を見てもらったんだけど、
多分、響がまともにシンフォギアを纏えるの、もって3回だと思う。
しかも使うごとに痛みがドンドン増えていく時限爆弾付き。その状態で、真っ向からサーヴァントや他のマスターと殴りあえる?」
「あうっ」

互いのサーヴァントからの指摘に、マスター二人は意気消沈。
結局、なのはとスバルの意見を尊重し、二人は戦闘時は後方待機という方針が決まった。
サーヴァント二人も、自分達の身を案じてくれての発言だ。それが分かっているため、これ以上ワガママを押し通すことはできなかった。

その時、なのはの胸元のレイジングハートが光を放った。

『マスター、時間です。聖杯戦争本戦が開始されました』
「そっか、ありがとうレイジングハート」

他の3人の顔にも緊張が走る。
いよいよ始まる。命がけで聖杯を求める者達の、最後の一組となるまで続く殺し合いが。
なのはの言葉を最後に、結界が解かれる。
戦わずに奇蹟を求めるという、険しく、困難な道のりが始まった。


633 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:40:21 us0r.k5M0
だが、双方のサーヴァント。
かつて師弟として共に笑い、泣き、戦った二人の魔道師。
二人は、同盟となった面々はおろか、自身すら気づいていない事があった。

メンター――高町なのは。
彼女はよくも悪くもまっすぐな人物だ。
指導者として後輩や仲間に厳しい指導を行い、結果として大きく成長を遂げる人材も少なくはない。
だが、その指導方針は、ハッキリ言えば『自分の考えた訓練の押し付け』である。

生前、自身が二度と飛べないといわれるほどの重症から、厳しいリハビリを経て現場に舞い戻った経験から、
無茶はしてほしくないという思いで指導をした結果、訓練で無茶をしすぎた一人の部下を徹底的に叩きのめしてしまった。
結果として部下も無茶をしなくなったが、一歩間違えれば大惨事となっていたかもしれない。
自分の指導に従えば、マスター二人は願いを叶えられる。
無意識のうちにその考えがよぎってしまった事に、なのは自身も気づいてはいなかった。

キャスター――スバル・ナカジマ。
人を助けるための体と力と技術を高めた、最高レベルのレスキューフォース。
一直線に安全な場所まで救助者を届ける。それが、彼女が生前抱いていた最大の目的だった。

聖杯戦争は文字通り戦争だ。
なのはやスバルみたいに戦わない道を選ぶ者も確かにいるが、大半は他のマスターを蹴落とすために戦いを挑む。
英霊という規格外の存在が力を振るえば、NPCとはいえ街の住人に被害が及ぶのは間違いない。
自分のマスターの願いを叶えるという目的が最優先だが、NPCが戦いに巻き込まれて重症を負う現実がもしも訪れたら......
レスキューに命を駆ける少女は、マスターの願いを叶えるという最大の目的を振り切って、救助に駆け出してしまうかもしれない。

この思考が彼女らの戦いに何かをもたらす可能性は、万に一つだろう。
だが、決してゼロではない。
それは、マスターに語った確立と、奇しくも同じだった。


634 : 師弟再び ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:41:00 us0r.k5M0
【F-3/特級住宅街 橋の上/一日目 深夜】

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態] 健康
[令呪] 残り三画
[装備] 杖
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:メンターから魔術を教わる
1. 夜が明けたら、引き続き回復魔法を教わる
[備考]
※ メンターの指導により、リリカルなのはの世界の防御魔法(プロテクション、ラウンドシールド)を習得しました。

【メンター(高町なのは)@リリカルなのはシリーズ】
[状態] 健康
[装備] レイジングハート・エクセリオン
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 響・スバル組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1. ルイズと響に回復魔法を指導する
2. 戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
[備考]
※ 立花響、スバル・ナカジマ組と情報を交換し&同盟を結びました
同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※ 無意識のうちに、『自分の指導で二人のマスターの願いは叶えられる』と考えています



【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態] 健康
[令呪] 残り三画
[装備] ガングニール
[道具] 学校カバン
[所持金] やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針: ガングニールの過剰融合を抑えたい
1. 学校の時間以外は、ルイズと一緒にメンターの指導を受ける
2. 出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは言葉をぶつける。いざとなれば戦う覚悟はある
[備考]
※ シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り3回(予想)です。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態] 健康
[装備] マッハキャリバーAX、リボルバーナックル、ソードブレイカー
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: ルイズ・なのは組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1. マスター二人に回復魔法を習得させる
2. 戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
[備考]
※ ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&高町なのは組と情報を交換し、同盟を結びました。
同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※ 無意識のうちに、『聖杯戦争で街が破壊された際に救助に向かう』と考えています


635 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/13(日) 22:43:47 us0r.k5M0
以上で投下終了です。
最初のプロットではガチで殴り合ってる予定でしたが、他参加者のほとんどが戦闘でしたので、
この二組は戦闘を割ける同盟として組ませていただきました。

ただ組んでハッピーエンド!もどうだろう?と思ったので、
>>633の文章を追加させていただいた次第です。
これが今後の戦いでどう影響するか……
また話浮かびましたら、予約させていただきます。


636 : ◆nig7QPL25k :2015/09/14(月) 02:09:30 J7tOLZxU0
>>635
投下ありがとうございます!
本企画初の同盟が、同作品のキャラクター同士というのは、ちょっと意外でした
しかし治癒魔法が融合抑止に応用できるかもというのは、予想外のハマり方をしましたね
今後が気になるペアだと思いました


637 : ◆nig7QPL25k :2015/09/14(月) 02:50:57 11EFt9lk0
それと、色々考えたのですが、一個だけ
最後の一レスでのスバルの爆弾の話です
確かに彼女はレスキューに命を懸けたキャラクターなのですが、
疑似データに過ぎないNPCを、戦況を放り出して救いに行くのは、ちょっとオーバーすぎるかなと思いました
とはいえ、第一予選に落ちた生身の人間も、紛れている可能性も事実なので、
そうした人達を気にしているというのなら、筋は通ると思います
お手数かけますが、そういう具合に、修正していただけると助かります
既に収録したWikiの方は、こちらで更新しておきますので


638 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/14(月) 22:10:26 QIDXzzWU0
>>637
了解しました。
自分でも投稿し終わってから、うーん・・・やっぱりいらなかったか・・・と思ってたので、修正感謝です。


639 : ◆nig7QPL25k :2015/09/14(月) 22:30:58 J7tOLZxU0
>>638
あーっと、微妙に伝わっていないような気がする
該当箇所の修正案を、◆V8Hc155UWA氏に執筆していただき、こちらのスレへ投下してもらった上で、
それを自分がWikiに収録し直すという手順になります


640 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/15(火) 21:45:18 bFXu4lt60
>>639
あ、失礼しました。素で間違えてましたw
修正案を執筆しますので、近日中に投下します。


641 : ◆nig7QPL25k :2015/09/15(火) 22:08:04 zEPT0IIo0
>>640
了解です。お待ちしております

美樹さやか、レオン・ルイス、鹿目まどか、星矢、暁美ほむら、美国織莉子で予約します


642 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/15(火) 22:30:40 bFXu4lt60
修正案を投稿させていただきます。
>>633を、次の投稿文に差し替えさせていただきます。
ご指摘いただいたスバルに加え、なのはに関しても若干変更があります。

また、各キャラの状態表も一部変更させていただくので、
>>634と差し替える状態表を次の次で投稿します。


643 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/15(火) 22:34:21 bFXu4lt60
だが、双方のサーヴァント。
かつて師弟として共に笑い、泣き、戦った二人の魔道師。
二人は、同盟となった面々はおろか、自身すら気づいていない事があった。

メンター――高町なのは。
彼女はよくも悪くも、自分にも他人にも厳しい人物だ。
指導者として後輩や仲間に厳しい指導を行い、結果として大きく成長を遂げる人材も少なくはない。
だが、その指導方針は、ハッキリ言えばスパルタだ。
事実、予選期間を費やして指導したルイズの魔法はそれなりの精度となったが、訓練中の体力、魔力、精神力はゴッソリ削られている。

もちろん指導者のクラスで招かれたなのはは、その辺りの事も考え、適度な休息を取らせていた。
だが、聖杯戦争本選が近づき、予選期間を戦わずに過ごした事による自分達の噂の拡散を知り、予定よりもハイペースな指導になってしまった事は間違いない。
指導しているなのは自身や教わるルイズも気づかないうち、少しずつ、本当に少しずつルイズに溜まっていく負担。
それはなのはがかつて味わった、僅かな反応の遅れから瀕死の重傷を負ってしまった、あの11歳の冬と酷似していた。



キャスター――スバル・ナカジマ。
人を助けるための体と力と技を高めた、最高レベルのレスキューフォース。
一直線に安全な場所まで救助者を届ける。それが、彼女が生前抱いていた最大の使命だった。

聖杯戦争は文字通り戦争だ。
なのはやスバルみたいに戦わない道を選ぶ者も確かにいるが、大半は他のマスターを蹴落とすために戦いを挑む。
英霊という規格外の存在が力を振るえば、NPCとはいえ、街の住人に被害が及ぶのは間違いない。
さらにこのユグドラシルには、聖杯戦争の第一予選で脱落しながらも、サーヴァントを失った後で脱出も出来ず、街に取り残された人間がいるかもしれない。
擬似人格のNPCではなく、聖杯戦争に巻き込まれ、戦う力を失った生身の人間だ。
もしも彼女の目の届く場所で、その人物が戦いに巻き込まれて命の危機に陥った時、彼女は冷静でいられるだろうか?

可能性はそれぞれ万に一つだ。
だが、ゼロではない。
それは、マスターに語った確立と、奇しくも同じだった。


644 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/15(火) 22:36:57 bFXu4lt60
【F-3/特級住宅街 橋の上/一日目 深夜】

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態] 健康、なのはの指導による疲労(極小)
[令呪] 残り三画
[装備] 杖
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:メンターから魔術を教わる
1. 夜が明けたら、引き続き回復魔法を教わる
2. 響と共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
[備考]
※ メンターの指導により、リリカルなのはの世界の防御魔法(プロテクション、ラウンドシールド)を習得しました。
※ なのはの指導により、少しずつ体に負担が溜まっています。
現状では問題はないですが、さらなる指導で疲労値が蓄積された場合、戦闘中に反応の遅れが生じる可能性が高まります。

【メンター(高町なのは)@リリカルなのはシリーズ】
[状態] 健康
[装備] レイジングハート・エクセリオン
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 響・スバル組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1. ルイズと響に回復魔法を指導する
2. 戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
3. ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
[備考]
※ 立花響、スバル・ナカジマ組と情報を交換し&同盟を結びました
同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※ 『姿の見えない戦闘音』の噂が自身を指すものと把握しています


【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態] 健康
[令呪] 残り三画
[装備] ガングニール
[道具] 学校カバン
[所持金] やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針: ガングニールの過剰融合を抑えるため、メンターから回復魔法を教わる
1. 学校の時間以外は、ルイズと一緒にメンターの指導を受ける
2. ルイズと共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
3. 出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
[備考]
※ シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り3回(予想)です。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態] 健康
[装備] マッハキャリバーAX、リボルバーナックル、ソードブレイカー
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: ルイズ・なのは組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1. ルイズと響に回復魔法を習得させる
2. 戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
3. ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
[備考]
※ ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&高町なのは組と情報を交換し、同盟を結びました。
同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※ 予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません。


645 : ◆V8Hc155UWA :2015/09/15(火) 22:37:51 bFXu4lt60
投下完了です。
◆nig7QPL25k氏につきましては、ご指摘いただきありがとうございました。


646 : ◆nig7QPL25k :2015/09/15(火) 23:07:34 zEPT0IIo0
>>643-644
修正お疲れ様です
スバルだけでなくなのはの方も、ぐっと良くなったと思います
生前の過ちを単純に繰り返すのではなく、状況に強いられた分も含めてというのが、非常時感もあって素晴らしいです
Wikiの方にも収録させていただきました。改めまして、投下ありがとうございました


647 : ◆nig7QPL25k :2015/09/18(金) 01:08:36 E1NitY7s0
予約延長を申請します


648 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/20(日) 21:31:06 BSRRUgI.0
鯨木かさね、アヌビス神で予約します


649 : ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:24:31 L0bTPRvI0
投下します


650 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:25:01 L0bTPRvI0
 一般のジュニアハイスクールに通う、日本人の少女・鹿目まどか。
 謎の失踪を遂げた彼女を、美樹さやかは、結局自力では見つけられなかった。
 無事を確認したのは、捜索を打ち切って家に帰り、まどかの家に電話をかけた時のことだ。
 家に帰っていたまどかは、学校に来られなかった理由として、事故に遭っていたと話していた。

「あのさ……ひょっとして、何か危ないことに、巻き込まれたりしてない? ほら、最近物騒だからさ」

 もしかしたら、サーヴァントの襲撃を受け、命を脅かされていたのではないか。
 そういう意図を込めた質問には、曖昧な返事しか返ってこなかった。



 いつも通りに夕食を食べ、いつも通りに宿題を解く。
 いつも通りに風呂に入って、着替えをし自室へと戻る。
 行動はいつも通りのものだ。違うことといえば、聖杯戦争の本戦が、この夜から始まったということだろうか。

「……サーヴァントに襲われたなんて、言えないよねー……」

 ベッドに転がりながら、美樹さやかは言う。
 恐ろしい化け物に襲われたなど、たとえマスターでなかったとしても、そうそう言えることではない。
 何しろそんなことを言っても、信じてもらえないからだ。
 だから、ああいう曖昧な返事になったのも、仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
 そうなのだと、彼女は信じたかった。

「――随分あっさりと、あいつのことを信じるんだな」

 そこに水を差したのが、さやかの従えるサーヴァントだった。
 燃える業火の中生まれ落ちた、炎の剣騎士、レオン・ルイス。
 その赤い瞳は冷たく光り、さやかの抱く考えを、甘いものだと一蹴したのだ。

「何よ」
「普通に考えておかしいだろ。何の力もないNPCが、サーヴァントから逃げ切ったなんてことは」
「それはその……たとえば、また別のサーヴァントが乱入してきて、放っておかれたとか」
「ない話じゃない。けどな、あくまで可能性の一つだ」

 偶然よりは必然の方が、確率としては高いぞと、レオンは厳しく言い放つ。
 死ぬはずだった人間が、たまたま生き残ったというよりは。
 逆に襲われた人間の方が、生き残るべき勝者となった。
 鹿目まどかはマスターで、他のマスターの攻撃を受け、辛くも勝利し自宅へと帰った。
 そう考えた方が不自然はないと、己のマスターに向かってそう言ったのだ。


651 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:25:34 L0bTPRvI0
「………」
「……まぁ、認めたくないのは分かる。お前のことだからな」

 思い返すのは、出会った日に聞いた、暁美ほむらへの想いだ。
 明らかに敵である彼女に対しても、さやかは殺すという選択肢を躊躇った。
 それはひとえに、かつてのほむらが、さやかの仲間だったからだ。
 であれば、現在進行形で友人であるまどかを、容易く敵と見なせるはずもない。
 それはレオン・ルイスにも、理解できていたことだった。

「だがだとしても、その可能性から、決して目を逸らさないことだ。殺したくないなら、どうすればいいか、自分の頭で考えろ」

 それでも、それだけは言っておかねばならなかった。
 まどかを殺したくないにせよ、殺さずに済む方法を、何か考えなければならない。
 それを怠り、ただ現実逃避を続けていては、変えられる状況も変えられないのだ。

「……分かってるわよ」

 憮然とした表情を作りながら、さやかはレオンへと返した。
 ため息をつきながらも、レオンはそれで納得し、霊体となって姿を消す。
 部屋に残されたさやかは、明かりを消すと、そのまま布団へと潜り込んだ。

(どうすればいいか、か……)

 答えはすぐには出せそうにない。
 サーヴァントを倒して強制退場させる、というのも手だ。しかし、安全だと明言されていないのは、不思議と気になる。
 割り切れれば楽なのだろうが、あれは自分の友達だ。
 まだ知り合って間もないといえど、親友と呼べるほどの相手でないにせよ、友人の一人には間違いないのだ。

「……やめよう」

 これ以上考えてもこんがらがるだけだ。
 頭をリフレッシュさせるためにも、今夜はこのまま寝ることにしよう。
 一度気分を落ち着かせて、それからまた明日考えればいい。
 問題を先延ばししているだけだとは分かっていたが、それでも今日はそうしたかった。
 そうしてさやかは、仰向けになると、そのままゆっくりと目を閉じた。


652 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:26:06 L0bTPRvI0
【C-2/一般住宅街・美樹家/一日目 深夜】

【美樹さやか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.今夜はこのまま寝る。明日のことは明日考える
2.まどかに対して……?
3.人を襲うことには若干の抵抗。できればサーヴァントを狙いたい
[備考]
※C-2にある一軒家に暮らしています
※サーヴァントを失い強制退場させられたマスターが、安全に聖杯戦争から降りられるかどうか、疑わしく思っています
※鹿目まどかがマスターではないかと疑っています(あまりマスターだとは考えたくない)

【セイバー(レオン・ルイス)@牙狼-GARO- 炎の刻印】
[状態]健康
[装備]魔戒剣
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守って戦う
1.明日の行動方針を考える
2.鹿目まどかに対して不審。同時に、彼女を敵だと思いたくないさやかに対して懸念
[備考]
※鹿目まどかがマスターではないかと疑っています


653 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:26:30 L0bTPRvI0


 天に煌めく星座を望む。
 屋根の上に腰掛けて、頭上に広がる夜空を見上げる。
 ロングコートをはためかせるのは、アーチャーのサーヴァント――射手座(サジタリアス)の星矢。
 身に受けた傷を隠すように、コートを纏った青年は、一人鹿目家の屋根の上で、またたく星空を見ていた。

《さっきの電話は、君の友人か?》

 屋根の下へと念話を送った。
 相手はこの地に降り立って、自分と契約を果たした、鹿目まどかというマスターだ。
 己の小宇宙が、自分自身ではなく、他人の身から供給されるというのは、なんとも不思議な感触ではあった。

《はい、そうです》
《そうか……いい友を持ったな、まどかは》
《はい……元の世界にもいた友達なんですけど、転校してきたばかりの私にも、よくしてくれてるんです》

 この偽りの仮想世界には、顔見知りと同じ姿をした人間が、何人かNPCとして再現されているらしい。
 その一人が電話をしてきた、美樹さやかという友人なのだそうだ。
 そう語るまどかの声音は、少し弾んだように聞こえていた。

《帰らなくてはいけないな……その友人達のもとへ》
《……そうですね》

 鹿目まどかには願いがない。
 聖杯にかけるほどの大望もなく、この世界樹へと招かれて、戦いを強いられてしまっている。
 そうして彼以前のサーヴァントを喪い、命の危機に瀕したまどかには、それとは別の想いが芽生えていた。
 元の世界へと帰りたい。
 聖杯などはどうでもいいから、一刻も早く脱出したい。
 それこそが鹿目まどかという少女の、偽らざる心からの願いだった。

《俺は君のためにも、身を隠さなければならない。だから、常に君の隣にいることはできないだろう》
《分かりました。でも、何かあったら……》
《そうだ。すぐに俺を呼んでくれ。たとえ令呪を使ってでもな》

 まどかから聞いたことだが、正規のサーヴァントでない星矢には、足りない能力があるらしい。
 それが自らの体を透化し、気配を消す霊体化という力なのだそうだ。
 これを使えない星矢には、姿を消してまどかの傍に立ち、その身を守ってやることができない。
 わざわざ体を蝕む傷――魔傷をコートで隠したのも、そういう事情があってのことだった。

(できないことは多い)

 もどかしい。
 守るべきマスターのまどかに、不自由を強いている自分が、情けないとは思っている。
 だとしても、守り抜かねばならないと思った。
 邪心を持つ他のマスターの、優勝するための糧とさせないためにも。
 自分自身もここから抜け出し、邪悪な神々と戦うためにも。
 何より、地上の愛と平和を守る、聖闘士の使命を果たすためにも。
 地上に住む人間の命を――鹿目まどかという少女の命を、決して見捨てるわけにはいかないのだ。
 偽りの夜空の向こうにある、あるべき世界の姿を見据え、星矢は決意を強く固めた。


654 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:27:17 L0bTPRvI0
【B-4/一般住宅街・鹿目家/一日目 深夜】

【鹿目まどか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:帰りたい
1.とりあえず寝る
2.あまり戦いたくない
3.何かあったら星矢を呼ぶ。令呪による強制転移もケチらずに使う
[備考]
※B-4にある一軒家に暮らしています
※美樹さやかがマスターであることに気付いていません

【アーチャー(星矢)@聖闘士星矢Ω】
[状態]魔傷
[装備]『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』
[道具]コート
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守り抜く
1.世界樹から脱出し、元の世界へ帰る方法を探す
2.霊体化ができない以上、どうにかして身を隠す。マスターに呼ばれればすぐに駆けつける
3.聖杯を悪用しようとする者がいれば、戦って阻止する
[備考]
※霊体化を行うことができません


655 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:28:37 L0bTPRvI0


 その様を、見ていた者がいた。
 正確には己の使い魔を通し、報告を受け取ることによって、把握していた者がいた。

《驚いたわね。あからさまに怪しい人間が、本当に彼女の家にいたわ》

 あれは間違いなくサーヴァントよと、美国織莉子が語りかける。
 学生寮のワンルームで、報告を受け取っているのは、黒髪を伸ばした中学生の少女だ。
 元・魔法少女、暁美ほむら。
 世界を神の手から簒奪し、己が箱庭へと変えた悪魔。
 鹿目まどかという少女とは、因縁浅からぬ存在である。

《そう……ご苦労様。貴方はそのままその場所で、まどかの監視に当たってちょうだい》
《夜通し? いいのかしら、貴方自身を守らなくても?》
《必要ないわ。自分の身くらいは守れる》
《大層な自信だこと》

 くすくすと笑う織莉子の声が、念話越しに聞こえてきた。
 忌々しい煽りを今は無視し、ほむらは問題ないと告げる。
 大幅に制限されてこそいるものの、この手には並のマスター共よりも、遥かに強力な力がある。
 空を飛んで弓を射る、という程度の括りには、今の彼女の力は収まらないだろう。
 魔力で大地をひっくり返し、石つぶての雨あられを降らせるくらいなら、世界への干渉も可能だ。
 仮に襲撃されたとしても、織莉子と合流するまでの間、逃げ切るくらいのことはできるはずだ。

《まぁいいわ。マスターがそう言うのなら、今は彼女を見守ってあげる》
《気のない返事ね》
《聖杯が欲しいというのなら、切り捨ててしまった方が、貴方にとっては気が楽になるはずよ》

 それはかつての最悪の魔女を、嫌悪するが故の言葉ではない。
 好悪の感情を全て切り捨て、効率のみを考えた、極めて冷静な意見だった。

《貴方になら理解できるでしょう。たとえ一部に過ぎないものでも、いずれ取り返せるものだとしても、切り捨てるという発想からして論外なのよ》

 それでも、そうするわけにはいかなかった。
 なにせ相手はまどかなのだ。
 最も大切な存在で、最愛最高の友達なのだ。
 いずれ聖杯の力を手にすれば、まどかの全てを掌握し、その使命から解放することができる。
 彼女という一部が犠牲になっても、世界の大勢には影響はない。
 だが、そんな風に蔑ろにする時点で、彼女を愛する者としては、0点以下の失格者なのだ。
 全てのまどかを受け入れて、全てのまどかを愛し抜く。
 たとえほんの一部であっても、それは尊い全部の中の一部だ。であればその一部であるまどかも、同様に尊く想うべきだ。

(貴方を切り捨てたりはしない)

 故にまどかを殺害し、ただ一人の優勝者となる気はない。
 選ぶとするなら両方だ。まどかを生存させた上で、聖杯戦争を管理する者から、聖杯を強引に奪い取る道だ。
 そのことに対して、暁美ほむらは、一切の迷いも躊躇いもなかった。


656 : 三様の想い ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:29:05 L0bTPRvI0
【C-4/学術地区・中学校の学生寮/一日目 深夜】

【暁美ほむら@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[令呪]残り二画
[装備]ダークオーブ
[道具]財布
[所持金]普通(一人暮らしを維持できるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.まどかを殺すことなど考えられない。他のマスターからまどかを死守する
2.まどかを生かしつつ、聖杯を手に入れる方法を模索する
[備考]
※鹿目まどかがマスターであると知りました


【B-4/一般住宅街/一日目 深夜】

【美国織莉子(セイヴァー)@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]健康
[装備]ソウルジェム
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.とりあえずはほむらの言う通りに動く
2.ほむらの命令に従い、鹿目まどかを監視し、護衛する
3.まどかを生かすことは、道徳的な意味ではともかく、戦略上はさほど重要視していない
[備考]
※令呪により、「マスターに逆らってはならない」という命令を課せられています
※鹿目まどかがマスターであると知りました


657 : ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:29:38 L0bTPRvI0
投下は以上です


658 : ◆nig7QPL25k :2015/09/21(月) 15:33:43 L0bTPRvI0
今回のSS投下に伴い、参加者名簿ページの暁美ほむらについて、戦闘能力の補足追記を行いました
魔法少女の姿となった場合の戦闘スタイルは、これまでの記述通り、弓矢と翼を使うようになった時のものを参考にしてください

忌夢、呀で予約させていただきます


659 : 名無しさん :2015/09/21(月) 15:36:20 cvh5FTms0
投下おつー
レオンは厳しいけれど優しくないわけじゃないんだな
まどかはそういえばこの時系列だとこしてきたばかりでろくに友人もいないことになるのか
そういう面でも心細いな
星矢は本人たちにとっては深刻な問題なんだけど、こうしてみると完全に立ち位置がセイバーだw


660 : ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:40:07 SfTXYc7M0
投下します


661 : ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:40:41 SfTXYc7M0
 ユグドラシルの銃士隊と言えば、幾つか存在する部隊の中でも、優秀な隊として名が知られている。
 魔術師以外の兵で構成された部隊だが、「詠唱より早く敵を制圧する」ことを目的とした鍛錬の成果は、相当なものがあった。
 今まさに長引いた書類仕事を済ませ、自然保護区にある我が家を目指していた女性銃士もまた、その構成員の一人だった。

「……ん?」

 そんな彼女の前に、人影が見える。
 既に深夜を回ったというのに、一人でふらふらと歩いている。
 目を凝らしてみると、若い女性だ。荷物は軽装。自分のように、仕事帰りというわけでもないらしい。

「おい、そこのお前!」

 であれば、すなわち不審者だ。職務の外だが放ってはおけない。
 声を張って制止すると、すぐさま近くへと駆け寄る。
 眼鏡をかけた、ハタチそこそこの女性と、女性銃士との目が合った。

「こんな時間に出歩くとは、感心しないな。物騒な噂が広まっていることは、お前も知っているだろう?」

 とかく近頃のユグドラシルは、妙な事件の話題でもちきりだ。
 やれ人を使い魔へと変える、怪しげな辻斬り魔が徘徊しているだの。
 この近くの特級住宅街でも、妙な爆発音がたびたび聞こえているだの。
 そういう事件が起こっている今、この手の不審者に対しては、どうしても敏感になってしまう。
 ひょっとしたらこの女が、その正体なのではないのかと。

「ええ……一応、耳にはしています」
「ならば何故、こんな所にいる。自分の命が惜しくないのか」
「大丈夫ですよ。護身術は嗜んでいますから」
「そういう問題ではなかろう」

 怪しい。見るからに不審だ。
 外出理由をぼかして安全を主張し、あからさまに話を切り上げようとしている。
 こういう場合、理由を聞かせてくれた方が、まだ信用できるというのにだ。

「まさかとは思うが、お前――」
「通り魔の正体ではないのか、ですか?」
「ッ!」

 先取られたその問いかけに、銃士は顔を強張らせる。
 もう決まりだ。確保するしかない。
 こいつはこの場で取り押さえて、警察にでも引き渡す。
 いきなり銃を向けることはしない。半端な使い手であるのなら、体術だけでも取り押さえられる。
 鞄を捨てて前へと踏み込み、自由になった手を突き出した瞬間。

「遅い」

 銃士の両手は空を切り、危うく地面に転がりかけた。

「なっ……!」

 驚愕に目を見開きながらも、体は次の動作へと移る。
 懐に隠した拳銃を抜き、声のした背後へと振り返る。
 かわしたのか。今の私の手を。
 ならば手加減はできそうにない。不本意だがこちらも武器を以って、脅しをかけさせてもらうことにする。
 取り押さえられないというのなら、銃を抜き放ち突き出してでも、身動きを封じさせるまでだ――!


662 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:41:59 SfTXYc7M0
「ッ!?」

 されど、衝撃。
 どんっと響く鈍い音と、鋭い痛みが右手を襲う。
 くるくると宙を舞い地に落ちたのは、手に持っていたはずのピストルか。

「腕は立つようだが、その『速さ』では、到底ボクには追いつけない」

 突きつけられたのは、棒か。
 朱色に塗られたその長い棒が、右手から拳銃を弾き飛ばしたのか。
 長物を鼻先へと突き出し、眼鏡のレンズ越しにこちらを睨む、不審者の女の姿がそこにはあった。
 グラスを月光に光らせた、その先の双眸に宿された色は、目を疑うほどに冷酷なものだ。
 本性を隠していたわけか。知らず、首筋を汗が伝う。

「んっ!?」

 その時だ。
 不意に顔面を捕まれ、ぐいっと引き寄せられる感触があった。
 首が折れそうになるのを堪え、慌てて身をよじらせながら、背後から伸びた手の主を見る。
 そこにいたのは人狼だ。漆黒の体毛で全身を覆い、狼の顔を持った怪物だ。
 否、違う。そうではない。
 黒い光は毛皮ではなく、鋼鉄でできた鎧のものだ。狼のものに見えた顔も、それを象ったヘルムでしかない。

「確かによく動く。だが、この程度ではまるで足りん。俺を使えるとは思えんな」

 だが何だ、この妙な気配は。
 ただの鎧でしかないはずだ。鎧を着込んでいるだけで、中身は人間であるはずだ。
 しかしこの身を炙るような、この異様な威圧感は何だ。
 夜の闇すらも塗りつぶすような、禍々しい漆黒の気配が、目にも見えるかのようだ。
 おぞましい。
 それが恐ろしい。
 その黒々とした手に抑えられると、その爛々と光る目に見られると、身動きがまるで取れなくなる。
 体ががたがたと震えて、頬を熱い雫が伝う。
 私はこんなにも無力だったのか。
 否、そうじゃない。
 この異形が強すぎるのだ。
 闇色の鎧を纏う人狼が、あまりに恐ろしすぎるのだ。

「だったら喰え――バーサーカー」

 それが女銃士が耳にした、生涯最期の言葉になった。

「やめろぉぉぉぉぉーっ!!」

 自分自身の悲鳴ですらも、もはや彼女の両耳には、欠片も届いてはいなかった。


663 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:42:21 SfTXYc7M0


「見たところ、この辺りにはいないらしいな」

 蛇女子学園の抱える忍、忌夢。
 ずれた眼鏡を整えると、周囲を見渡しながら、彼女は言った。

「ならばここに用はない。次の戦場へ向かえ」

 どちらがマスターか分からない、尊大な口調で鎧が言う。
 狼を象った漆黒の鎧は、忌夢の召喚したサーヴァントだ。
 バーサーカーのサーヴァント、呀。この怨念の塊のような鎧は、血肉と屍を求めている。
 戦うべき他の敵を欲し、夜の魔術都市を闊歩し、爛々と両目を光らせている。

「分かってる。そう急かすな」

 その要求を受け止めて、忌夢はその場から歩き出した。
 こうして出歩いているのは、この地に広がった二つの噂――その片方の正体を探るためだ。
 人を操る魔剣を持った、謎の通り魔を探して、彼女は夜道をうろついている。
 相手は明らかに殺る気だ。そのためにあちこちをうろついて、呪いの刃を振り回している。
 ならばこちらから出向いてやれば、血の匂いを嗅ぎつけて、姿を現すことだろう。
 それが呀の意見だった。理性の欠片もない発想だ。
 思慮らしい思慮も巡らせず、本能だけで直感的に、その結論に行き着いたのだろう。
 積極的に目立ちにいくのは、忍らしい手ではない。
 だとしても、そうやって敵をおびき寄せなければ、埒が明かないというのも事実だ。
 その噂以外、忌夢の手元には、敵のヒントがないのだから。

「………」

 ふと、先ほどまでいた場所を、振り返る。
 そこに仰向けに倒れていたのは、汗と涙と小水で濡れた、青いショートヘアの女性だ。
 くわと見開かれた瞳には、命の光が感じられない。
 当然だ。あの女の魂は、呀に喰わせてしまったのだから。

(やはり駄目だったか)

 適当なNPCに呀を纏わせ、その技を覚えさせ戦わせる。
 それはつい先ほどまで、考えていた選択肢の一つだった。
 理性を持たない怨念である呀は、戦う技術を有していない。奴の有する戦術など、力任せに剣を振り回すことくらいだ。
 故に人間に鎧を纏わせ、その頭脳が持つ技を持たせるのが、呀の持っているスペックを、最大限発揮する方法だった。
 しかしどうやら、その辺りのNPCでは、呀の眼鏡にはかなわなかったらしい。


664 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:43:00 SfTXYc7M0
(また、ボクが纏うしかないのか)

 やはり呀の力を引き出すためには、自分が纏わなければならないのか。
 あのおぞましい狂気の中へと、再び飛び込まなければならないのか。
 恐ろしかった。
 奴の抱く妄執の深さが。
 ひたすらに戦うことを求め、自らの力の証明を欲する。
 己が最強の存在であると、世の全てに知らしめる時まで、決して途切れることのない殺意。
 そしてその奥底に息づく、何者かに対して抱いた憎悪。
 それらが心に入り込んでくるのが、たまらなく気味が悪かった。
 何よりその殺意に染まることに、違和感がなくなっていたことが、恐ろしくて仕方がなかった。

(このサーヴァントは、心を喰らう)

 一度纏ったからこそ分かる。
 このバーサーカーのサーヴァントは、纏う者の心を犯し、人間性を殺し尽くす。
 その深淵に踏み込むことは、自らの心を闇へ差し出し、獣へと成り果てることを意味する。
 きっと引きどころを間違えば、戦いに勝ち残ったとしても、それを自覚することはできなくなるだろう。
 聖杯を手に入れたとしても、元の忌夢の心のままで、雅緋と再会することはできないだろう。
 そう考えると、恐ろしくて、身が震えるような心地だった。

(それでも、やるんだ)

 だが、だからとてそこから目を背け、逃げ出すわけにはいかないのだ。
 たとえこの身が引き裂けてでも、この罪を贖うと心に決めた。
 たとえ心を傷つけても、ヒビの入った雅緋の心を、この手で救うと誓ったのだ。
 極力呀には体を預けず、単独で戦わせるようにする。
 それでも万が一力が及ばず、どうにもならない事態になれば、迷わずこの身を英霊に捧げる。
 きっとその覚悟がなければ、勝ち抜くことなどできないのだ。
 常勝無敗で勝ち抜けるような、都合のよすぎる結果など、そうそう訪れるものではないのだ。
 だから迷ってなどいられない。恐れは捨ててしまうべきだ。
 視線を再び行く先に戻すと、忌夢は霊体化した鎧を引き連れ、闇の奥へと消えていった。


665 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:43:48 SfTXYc7M0
【I-4/自然保護区/一日目 時間帯】

【忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]如意棒
[道具]秘伝忍法書、外出鞄、財布
[所持金]普通
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を雅緋に捧げる
1.しばらく街を出歩き、『魔術礼装を持った通り魔』を誘き出す
2.呀には極力そのままで戦わせる。いざという時には、装着して戦う
3.そこらのNPCでは、呀を使いこなせないらしい。無理に代わりの体を探すことはしない
4.呀を再び纏うことに、強い恐れ
[備考]
※特級住宅街以外のどこかで暮らしています。詳細な家の位置は、後続の書き手さんにお任せします
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※両備が本物であることに気付いていません

【バーサーカー(呀)@牙狼-GARO-】
[状態]健康、魔力増(一般人の魂一つ分)
[装備]魔戒剣
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.戦う
2.『魔術礼装を持った通り魔』を誘き出す
[備考]
なし


666 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:44:20 SfTXYc7M0


 アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン少佐が、自身の部下の訃報を聞きつけたのは、それからしばらく経った後のことだった。
 寝間着から直接軍服に着替え、火災で湧く行政地区を突っ切り、自然保護区へと向かう。
 台数の少ない軍用ジープを、無理やり車庫から引っ張り出し、脇目もふらずにエンジンを噴かせる。
 そうして彼女が現着した時には、既に警邏の任についていた軍人が、状況調査に当たっているのが見えた。

「失礼!」

 野次馬や軍人をかき分け、現場の奥へと分け入っていく。
 布で覆われた人の影が、己が部下のものだと気づき、しゃがみこんで右手で剥がす。

「……ミシェル」

 落命した部下の死に顔は、悲惨極まりないものだった。
 気の強かったはずの顔には、その面影は微塵もない。
 瞳は開かれ頬は引きつり、自分を襲った何者かに対する、恐怖の一色に染まっている。
 生気の感じられない肌は、単純に殺されたからというものではあるまい。命を抜き取られたかのような、そんな気配が感じられた。

「銃士隊長の、ミラン少佐ですね」

 背後から声をかけられる。
 振り向いた先に立っていたのは、金髪の女性軍人だった。恐らくはアニエスと同じくらいの、20代半ばといったところだろうか。

「リザ・ホークアイ中尉です」

 敬礼をしながら、女性が名乗った。アニエスもまた立ち上がると、それに対して返礼をする。

「犯人の手がかりは?」
「ありません。特に争った形跡もなく、一方的に取り押さえられたようでした」
「ミシェルに外傷はないのか?」
「手を打たれた跡と、首元を掴まれた跡以外は」
「あり得ん話だ」

 顔を押さえながら、アニエスが言う。
 殺されたミシェルという女は、銃士隊の兵士の中でも、優秀な部類の人間だった。
 それが大した抵抗もできず、ほぼ無傷で無力化されるなど、到底信じられる話ではなかった。
 おまけに遺体の顔色も尋常ではない。魔術か何かを行使して、肉体に手を加えられたとしか考えられない。
 そんじょそこらの通り魔ごときに、できるような芸当ではない。


667 : 闇に吠える氷の呀 ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:44:44 SfTXYc7M0
(……通り魔?)

 そこまで考えて、ふと、脳裏に過る考えがあった。

「中尉。彼女の遺体に、刀傷はなかったか?」

 再びホークアイに向き直ると、アニエスはそう問いかける。

「いえ。先ほどお話しした通り、右手と首の跡で全てです」
「そうか……例の辻斬り魔の線も、あり得るかもしれんと思ったのだがな」

 当てが外れたことを受け、アニエスは両肩を落とした。
 思い出したのは、斬った相手を操るという、謎の通り魔の噂だ。
 尋常ならざる遺体であるなら、そいつの尋常ならざる手口で、命を奪われたのかもしれない。
 そう考えたのだが、凶器が違う。斬撃の跡がないとなると、別人の手口と考えるしかなさそうだ。

「その犯人の仕業であれば、被害者はゾンビになっていなければなりません。倒れたまま、ここで放置されているはずもないでしょう」
「ならばそれとも違う、未知の存在による犯行というわけか」

 顎に手を当て、思考する。
 ミシェルを殺した犯人は、これまでの通り魔とは違う。
 そもそも奴に事件性を見出だせず、今日まで野放しにされていたのは、事件現場と思しき場所に、何も証拠がなかったからだ。
 それがここには、遺体という、最大の証拠が残されている。冷静に考えてもみれば、明らかに同一犯の手口ではない。

(どうなっているんだ、この街は)

 しばらく事件らしい事件のなかった街で、得体の知れない怪事件が、立て続けにいくつも起きている。
 その事実に、アニエスは、不穏な気配を感じずにはいられなかった。
 この魔術都市ユグドラシルで、何かが起こり始めている。
 何がというのは分からない。ひょっとしたらこの予感も、考えすぎの空振りかもしれない。
 それでも、一つだけ分かっていることがある。
 今夜この自然保護区で、自分の部下を殺した奴がいる。
 それを許しておけないというのは、間違いようもなく理解していた。


[全体の備考]
※自然保護区の警戒が強化されました
※『魂を吸い取る怪人(=呀)』の噂が、I-4を中心に流れました


668 : ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 01:45:25 SfTXYc7M0
投下は以上です


669 : 名無しさん :2015/09/22(火) 01:58:11 Cw2apz5U0
なんかどんどん聞いたことある名前のNPCがw
投下乙です
乗っ取り系アイテムは怖いよな……。
罪歌やアヌビス神みたいに問答無用一瞬でならまだ本人的には救いかもだが、こいつは完全に喰う感じで怖い


670 : ◆nig7QPL25k :2015/09/22(火) 23:54:52 SfTXYc7M0
拙作「闇に吠える氷の呀」をWiki収録した際に、呀の装備品に、「暗黒斬」を追加するよう修正させていただきました


671 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:00:09 UNJwH5Q20
投下します


672 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:00:55 UNJwH5Q20

夜の道を一人の女性が歩む。
かっちりとスーツで固め、利発そうな空気をまとうビジネスレディといった風貌。
彼女はこのユグドラシルと外部の物資をやり取りする商社に勤めている。
孤立したこの地では最も重要な職の一つであり、物価の調整や生活必需品などのことを話に政庁に赴くことも多い。
今日は仕事を終えて政庁から特級住宅街に続く橋を渡り、帰宅の途中、といった風だ。
そんな彼女に特級住宅街にふさわしくない剣呑な空気の男たちが群がる。
夜道を女ひとりじゃ、俺たちみたいのに絡まれて危ないぜ、などとチンピラ丸出しのセリフが出てきそうだが、この場ではそうはならない。
腰に刀を下げた男が親しげに話しかける。

「母さん(マスター)、大丈夫なのか?旗色がよくない、ってのは今朝にも言ったろ」
「状況の打破には動くことが必要です。違いますか?」
「いやそうだが……目立つぞ、この集団は」

話しながらも女性、鯨木かさねは歩みを止めない。
向かう先は仮初の自宅ではなく、この地域に流れる噂の根源。
多くの子を従え、戦闘を始めようというのだ。

「礼装を持った通り魔の噂。私たちで間違いないでしょうが、目撃者というのはまずありえません。
 サーヴァントも含めすべて対処してきた。だからこそ、私の手には4つめの令呪が宿っているのですから。
 この戦争の首謀者が広めたもので間違いない……つまりは鎮静に動くのも、潜むのもほぼ無意味でしょう」
「だからってやけになるには早いぜ。まだ策は――」
「無論。今その策を実行しようというのですから」

アヌビスを帯刀した男の顔にわずかに驚きが浮かぶ。
仕事を終えると、『子』の一人に持たされ、特級住宅街で合流するとしか聞かされていない。

「噂の報告は受けていますね?」
「ああ。この辺で妙な戦闘音のようなものがあったってやつだろう?
 おれたちと同様に広められたもの…敵だ。なんで噂になってるかはよくわからんが」

自分たちの噂が広がったのは、ある種のハンデのようなものだろう。
予選において最高の戦績を出し褒章を受けた、暫定優勝候補筆頭。
そこで消耗があればともかく、自分たちの陣営はほぼ無傷。失くしたものなど子を数人くらい。
それどころか積み重ねた戦闘で様々な技と力を『憶えた』アヌビスのステータスはすでに一級品のそれ。
凡百どころか、並み以上の三騎士ですら正面戦闘では及ばない域だ。
そのくらいの枷はわからなくもない。
あるいは戦端を加速させるのを狙ってのものか。
しかし別の主従まで、なぜ?とアヌビスはわずかながら疑問を覚えていた。

「いくつか思いつきますが、まず一つ。私たちと同様の理由で課せられたハンデの可能性」
「と言うと?」
「開幕宣言を思い出してください。ふざけた物言いでしたが、それは置いて。
 一番いい成績のものには褒章を与えるという発言、それにかかわるものを特に。
 私の記憶の限りですが、最も優れたもの『一人』に与えると明言はされていないはずです」
「……ああ、確かに!おれもそれは『憶え』がねえ!」

―最終予選通過者の中で、最も多くのマスターを倒した者―
―最終予選の戦いで、一番いい成績をあげたマスター―
―令呪をもらえた一番の人―

同率一位の可能性を否定する発言はどこにもない。

「私たちが倒したのはセイバー、バーサーカー、アサシン、ほかに詳細不明のものが一騎。
 脱落したのは23騎と言っていましたから、もう一組くらいそれと同数落としてもおかしくはないでしょう」
「だとしたらおれが言うのもなんだが、好戦的だね…そんなとこに向かってるのか」
「いくつか、と言ったでしょう。別の可能性もあります。
 大して変わりませんが、私たちに次ぐ戦績だった。
 そもそも噂になる主従はハンデなどでなく、戦端の加速のためにランダムに決めて、それが偶然私たちと噂の主従だっただけ。
 あるいは何らかの違反、それに準ずる行為をしたためのペナルティ」


673 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:01:32 UNJwH5Q20

話しながらも歩みは止めない。
屈強な男たちを従え堂々と闊歩するさまは民衆を導く自由の女神がごとく、まさに絵になるものだ。
迷いなく、噂のもとへと向かっている。

「違反っていうと例えば?」
「聖杯戦争の否定がすぐに思いつくものでしょう。
 戦場からの逃亡を企てる、不正参加、今の時点で聖杯に触れようとする、などでしょうか。
 サボタージュなども違反とはいえないまでも晒しあげられる原因になりえます……そうこう言っているうちに見えてきましたよ」
「ん?あ、ココを攻めるのか!?もう着いちまったのか?」

生前のアヌビスの敗因の一つは敵の数だ。
ポルナレフを倒し、承太郎の不意を打てる状況にあっても、飛び出してきたワン公のせいで川に沈んでしまった。
はっきりと憶えている。
同じ敗因を繰り返すのは絶対にしない。
余計な敵を増やすマネは避けたかったし、動くにしても策とやらを確認しておきたかったが…

「噂が広まるのを心配していましたね。ですが言ったはずです。
 問題はない、と。鎮静に動くのも潜むのも無意味、とも。そして策はあると。
 逆に考えるんです。噂を鎮められないなら、もっと広げてしまえばいい。
 …まずはここで戦火を広げます。戦闘準備を」

特級住宅街の中でもひと際目立つ館。
それを視界に収め、目つきを鋭く…そして赤く染める鯨木。

「…ここまで来てやらないとはいわないさ、母さん(マスター)。
 しかしここで合ってるのか?この町は広いぜ、噂の元がここだって保証はあるのか…っと」

アヌビスの刀身をあらわにし、視界の隅に映った男に斬りかかる。
人外の速度に反応などできるわけなく、その男もまた目を赤くして列に加わる。

「この『子』からも聴いてみようか」
「いえ、手際はさすがと言っておきますが、その必要はありません。
 聴かずとも、聞こえています」

そういうと目を細め、己の内に響く声に耳を傾ける。

「罪歌は、より強い人間を斬(あいす)ることを望みます。
 近くに強い人間がいると騒ぐのですよ、この子たちは。
 この館にはかなりの腕利きがいます。おそらく魔術師の」
「ほう。そういえばここはどこの誰の家なんだ?おれの前の主の家なんか目じゃねえご立派な館で羨ましいね」

新たに加えた子に小さな刃物を渡しながら問う。
分からないならそれこそその辺の子にでも聞けばよさそうだ、と思っていたが襲撃対象について事前に掴んでいたために答えは返された。

「ラ・ヴァリエール。魔術都市ユグドラシルにおいても指折りの魔術師の名家です。
 なんでも時計塔に12人しかいないロードに、戦闘なら勝るとも劣らない実力者がいるとか」


674 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:01:55 UNJwH5Q20

♡   ♡   ♡   ♡

「…私の小さなルイズは今日も出かけたのか。こんな時間に」

白髪混じりの金髪に、片眼鏡をかけた威厳のある男性。
ラ・ヴァリエール家の今代の頭首だ。

「どこにいってるんだ…しかしカリーヌは放っておけというし……
 最近何だか生き生きとしているようだが…そもそもこの私にもカリーヌにも感知できないなど。
 あの子はそんな高等な隠匿はおろか、真っ当な魔術も危うかったというのに……」

思えばカトレアに領を分譲して家から出した時にもこんな風に落ち着かなかったか。
娘を心配し、部屋でじっとしておれずに夜の庭を散策する。

「…ん?何をしているんだあれは」

夜の庭に人影が見える。
どうやら庭師のようだ。
もう夜だというのに枝切鋏をもって作業をしようとしている。

「こんな時間に何を?」
「これは旦那様。これは母上様のご指示で」
「カリーヌの?」
「ええ。母君の、でございます」

ふむ。
昼に指示を出せばいいものをなにゆえこんな時間に。
やはり彼女も平常心ではないのか。
少し話をした方がいいかもしれんな。

「わかった。ところで彼女はどこにいるか、知っているか?」
「奥方様でしたら、先ほどまで居間で紅茶を嗜まれておりました。
 おそらくまだいらっしゃるかと存じます」
「うむ、礼を言う。
 …その腕の傷はどうした?」
「や、お恥ずかしい。暗闇での作業に手違いが生じてしまいまして」

庭師の右手の切り傷。
枝切鋏で負ったにしては妙な位置だが、本人がそういうなら強く追及はしない。

「気を付けるようにな。
 では私はカリーヌと話してくるから、それまでは一応彼女の指示通りに」

庭師に背を向け、邸内へと歩みだす。

「ええ。母上様の、ご指示の通りに」




♡   ♡   ♡   ♡

「ああ、君。カリーヌはまだ居間にいるかな?」
「はい。お茶を飲まれております」

居間に向かう途中、すれ違った女中に確認をとる。
部屋に戻ったなら訪ねようかと思ったが、間に合ったらしい。

「そうか。私にも一杯淹れてくれ。彼女と合流するから居間にまで頼む」
「かしこまりました」

ぺこり、と一礼して去ろうとする女中。
しかし彼女もまた傷を負っているのが気にかかり、問うてみる。

「その手の傷は……?」
「申し訳ありません。今朝料理長に報告はしたのですが、来客用の食器を割ってしまった時に生じたものでございます。
 給金から出すことは決まっていますが、他にも何か処罰を旦那様ご自ら下されるのでしたら謹んでお受けいたします」
「ああ、いやそこまではせん。
 今後気をつけてくれればいい。傷も含めてな」
「もったいないお言葉」

食器くらい別段取り返しのつかないものでもなし、怪我までしているのにさらに罰を与えるなどするわけがない。
そんなことより急がねばカリーヌが部屋に戻ってしまうかもしれないと考え、そそくさと目的の部屋へと改めて向かう。

「ああ、本当に…お優しい言葉ですわ、旦那様。愛おしいほどに」



♡   ♡   ♡   ♡


675 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:02:18 UNJwH5Q20

「おお、よかった、カリーヌ。まだいてくれたか」
「あなた…わたくしはもう戻りますよ。お茶など持ってきても一緒するつもりはありません」

鋭い目つきの女性がティーカップを片手に部屋の入り口を睨んでいた。
そこに入ってきたのが自身の夫であることを確かめると、失望のような表情を浮かべてぞんざいに対応する。

「そう言ってくれるな。かわいい娘を二人で待つのも悪くはないだろう」
「まったくあなたはいつまでもそう。厳しいのは表面だけで、甘やかして!」
「ご、ごめんなさい!」

心中のいら立ちを夫に向ける。
夫の方針に口は出さずに来たが、おかげでずいぶん我儘に育ってしまった。
…とはいえ今回のルイズの夜間外出については悪い思いだけではない。
娘ももうそろそろ自分の足で歩みだしてもいいころ。
魔術も碌に使えず、ふさぎ込むことの多かった娘が最近は時折自信に満ちた表情をするようになった。
…自分もあのくらいの歳でやんちゃしたのだから、あまり強く言える道理はない。
それでも両親に何か隠し事をしての外出というのは看過はできない。
どこかで話を聞く必要があるとこうして待っていた。
案の定というべきか、夫も嗅ぎつけてきたようだが。

………………

「…ふう。今謝ることではありません。
 ところで少し聞きたいのですが、あなた。その頬の切り傷はどうしたのです?」
「え?ああ、これか。これは、あれだ。
 シャワーを浴びながら髭をそろうとしたら失敗してしまってね」
「そうですか。それではもう一つ。
 先ほど庭先で鋏を持ってうろうろしていた彼はあなたの指示ですか?」
「いや、私は知らないな」

空になったティーカップを置き、会話に興じる。
それとともにカリーヌは懐に手を伸ばす。

「それでは最後の質問です、あなた。
 ローブの下に隠すように持っているそれは杖ではなく剣ですね?」
「……何を言っているのか、私には」
「わたくしの扱う属性は『風』。その程度の秘匿とも呼べない児戯で誤魔化せるとお思いですか?」

空気が変質する。
空気が重量感を増す。

「なあ、カリーヌや」
「何でしょうか」


676 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:02:57 UNJwH5Q20




「愛しているよ」


677 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:03:30 UNJwH5Q20

扉を蹴り開ける衝突音。
窓を突き破る破裂音。

枝切鋏を持った庭師が。
銀食器を持った女中が。
アゾット剣を持った執事が。
他様々な刃物を持ち、目を赤く血走らせた男たちが一斉に襲い掛かる。
ヴァリエール卿もまた隠し持っていた剣を抜き放ち構える。

そこに一陣の風が走る。
カリーヌが懐から杖を抜きはなつと同時に中心に立ち上った烈風が、斬りかかったすべてのならず者を弾き飛ばす。

「そうですか。噂の通り魔の一味がこの館に踏み入るのを許してしまうとは。
 ラ・ヴァリエール家末代までの恥ですね」

圧倒的な戦意とわずかな呆れを含んだ視線を剣を握る夫に向ける。
魔術師とは思えない洗練された構えと、研ぎ澄まされた殺気に、夫もまた操られているのだと確信する。

「母さん(マスター)の言ってた強者というのはおまえか。
 てっきり頭首の方かと思ったがな。
 この男も並みの魔術師なら手傷一つで撃退する程度の実力だったが、それ以上だな。
 おれは…殺人鬼ハリウッド。名を聞こうか、魔術師」
「カリーヌ・デジレ・ド・ラ・ヴァリエール。いえ、この場では烈風カリンと名乗りましょうか」

名乗りを上げ、自身もまた杖を構えて臨戦態勢。
夫と杖を交えた経験はあるが、相手が剣というの初めてだ。

「おいおい、いいのか?一応夫婦なんだろう?」
「言ったでしょう。操られて狼藉者の侵入を許すなど末代までの恥だと。
 もしも無事に解決したとして、まったくの無傷ではこの人は憤死してしまいかねません。
 そうならないためにもわたくしの手で罰を与えておきます。たまにはいい薬でしょう」
「サーヴァントは呼ばねぇのか?」
「サーヴァント…?使い魔など不要、わたくしの手で処罰は行います」

一小節詠唱し、杖を一振り。
轟音とともに部屋の壁が一枚吹き飛ばされる。

「これ以上弱く放つのは難しいわね……ですがまあ、なんとかなるでしょう」

人質など無意味。この程度の一撃を食らう覚悟はしておけ。
そう威嚇し、再度高速詠唱。
風の槌と刃を放ち、吹き飛ばそうとする。
しかしアヌビスは不可視のその攻撃をたやすく見切って懐に入り、次の瞬間には鳩尾に柄で一撃を入れる。

「ごっ…!」
「魔術師の弱点は肺だろう?呼吸がままならなければ詠唱もできない。
 そしてェーーーー!」

一閃。
杖腕とは逆の手に小さく切り傷を作る。

「これでおまえもおれ達の仲間入りだ。マスターじゃあなかったようだが、腕利きの参加は歓迎だぜ」

咳き込みながら呼吸を整えるカリーヌ。
それが落ち着き、俯いていた顔を上げるとその目は赤く染まっており…


678 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:04:04 UNJwH5Q20

不意に風の槌を放ち、夫の体を吹き飛ばした。
悲鳴を上げることもできずに弾かれ、剣も取り落として意識を失うヴァリエール卿。
暫く目覚めることはないだろうと、それを確認すると癒しの呪文を唱え、カリーヌは自らの傷を治療するが


愛あなた愛愛強い愛してる肉も愛骨も愛愛愛愛愛好き愛
し                       愛
て(…っ!うる、さい!傷を治しても黙らないか…)愛
る                       愛
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛


傷口から響く声。
罪歌の本質は魂を斬ること。肉体の傷をいやしても魂に刻み付けられた声はやまない。
それに意識を持っていかれそうなのにかろうじて耐える。


愛愛しましょう愛愛愛魔術師を暗殺者を愛愛愛愛愛愛剣士を愛槍兵を弓兵愛愛愛愛愛愛
愛                                     愛
し(この人も、ほかの全員もこの声で操られたいた。              愛
て 操っている術式、あるいは礼装をどうにかしないと恐らくこの声は止まない) 愛
る                                     愛
愛愛愛愛して愛してる愛愛愛愛愛愛愛しててててててるるるるるるるるるる愛愛愛愛愛


敵の魔術師を探す。
そのために動き出そうとするが、部屋の外から聞こえてきた足音に警戒を強める。

「なんの音ですか、これは…!?
 母さま、本当に何があったんです!?」
「エレオノール……」

壁を吹き飛ばすほどの轟音を聞きつけ、上階から降りてきた娘。
少なくとも見える範囲に傷は見当たらない。

「噂の通り魔よ。それにここにいる全員が操られていた。
 今からその大本を探しに行くところです。
 …袖を捲って傷がないことを見せなさい、エレオノール」
「え?ああ、はい」

さすがにすべて脱がせてくまなく確認はできない。
最低限確認だけして、あとは警戒するにとどまる。

「杖を持ってここにいなさい。警戒は怠らないように」
「母さま、私も貴族です!敵がいるのに背を向けるなど――」
「かすり傷でも負えば操られます。もしそうなったらお父様のようにこうして転がすことになりますが、それでもいいと?」

厳しい物言いだが、娘を心配してのものだ。
躾としてならば厳しい対応もするが、こんなことで手を上げたくはないし、何より今は余裕がない。

「……念のために言っておきます。わたくしはすでに傷を負っている。
 もし敵の手におちたらしいと判断したらすぐに逃げなさい…できるならルイズも見つけて」
「母さ――」
「いいですね!」
「っ、はい」

頭に響く声。もはや一刻の猶予もない。
敵を見つけ殲滅。礼装を破壊し、この声をかき消す。
そのために部屋を出ようとするが


679 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:05:06 UNJwH5Q20

「エレオノール、何をしているのです?」

ふらふらと意識をなくした父に近づく娘の動きを見咎める。

「あ、だって凶器は奪っておいた方がいいでしょう。
 この剣、とても綺麗で…魅力的で…なんだか呼んでるような……」
「エレオノール!」

静止の声に耳を貸さず、剣に手を伸ばす。
そして落ちていたそれを拾う。
そして

目にも止まらぬ速さでカリーヌに肉薄し、剣を胸元に突き立てる。
圧倒的な力と速さに抵抗できず、その一撃を受けてしまう。

「ぐ…!何を…」
「ばかか、てめーは。鈍すぎるぜ。おれだよ、殺人鬼ハリウッドさ」

目の色は、赤くない。
しかし殺意に濁った汚い目つきは娘のそれではない。
やはり服で確認できないところに傷があったのか、あるいは傷を治した後だったのか。もしくは…?
そんな後悔よりも現状への疑念が先立つ。


愛愛愛愛愛愛愛してる愛愛してる愛してる愛愛愛愛し愛し愛し愛して愛し
愛                               て
愛(…おかしい。胸を貫かれているのに傷どころか痛み一つ生じない)し
愛                               て
愛してる愛愛愛愛し愛愛愛愛愛愛愛してるしてる愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛


剣は胸を貫き、壁に突き刺さっている。
ダメージがないのだから抵抗しようとするが、杖腕を左手で掴まれ、向けることができない。
膂力も明らかに学者肌の娘のものではない。

「この剣は斬るものを選ぶことができてな。
 傷一つないが、その気になれば冠動脈と肺がぶった切れてくたばることになるぜ。
 詠唱しようとしたら殺す。余計な事したら殺す。くしゃみしても殺す。要求は一つだ」

娘の口から自らを殺すという言葉が薄汚い口調で吐き出されることに凄まじい嫌悪を覚える。
説教の一つもくれてやりたかったが、とにかくそれよりも現状の脱出に専念しようとする。

「罪歌の声を、受け入れろ。そうすればおまえはさらなる力を手にできる。
 風の刃によって、『子』を増やす罪歌憑き…素晴らしい。
 友達になろう、烈風カリン。お前は優れた魔術師だ、ここで殺すのはあまりに惜しい」

淡々と語りかける口調。
それはエレオノールのものではないし、恐らくはハリウッドのものでもない、誰かをまねたもの。
その静かなる口調を受けてか、うちに響く声が明確な意味を伴いだす。


【私を使いなさい!】
【誰も彼も愛してあげる!】
【だからあなたはただ私を握ればいいの!】
【私は別にあなたを乗っ取ろうなんて考えてないわ】
【ただお互いを理解しあうだけ】
【私は少しだけあなたになるし、あなたは少しだけ私になるの!】
【ああ、あなたはとても強い】
【愛してるわ】


内に響く声。
外から投げられた声。
二つに対する答えは、一つだ。


680 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:05:28 UNJwH5Q20

「私が愛しているのは、夫と娘たちだけ。他に愛を向けられるような阿婆擦れではありません」
「残念だ」

胸を貫いていた刃が、肺と心臓を断ち切る。
呼吸はままならなくなり、酸素の代わりにこみ上げる血を口から吐き出す。
体は脱力し、地に伏せる。

「あーあ、外れか。いや、まだ他にこの家にマスターがいるかもしれないのか…?
 だが、この魔術師は結構な腕だったしな」

少し…本当に少しだけ惜しむような発言をして己がマスターのいるであろう外に目を向ける。
呼吸ができなければ、詠唱どころか身動き一つままならない。
放っておいても死に至る。

だが魔術師という人種をアヌビスは知らなかった。
その身に受け継がれた魔術刻印は継承のために宿主を延命させようと稼働する。
カリーヌは頭首ではなく、刻印を継いではいないが、歴史を積み上げた魔術回路はその働きには十分。
わずかな延命程度なら可能だ。
そしてカリーヌは最期の言葉とともに詠唱も済ませていた。
僅かな風を起こす程度の基本中の基本術。
それを開放し、風に乗せて杖を隙のできた娘に、正確には娘の持った剣に向ける。
そしてその風で唇と声帯を無理矢理に動かし、疑似的な詠唱。
術式を行使する。
発動するのは『錬金』。
土属性の基本魔術で、物質を変質させる『変化』の亜種だ。

剣をとった時から娘の様子は目に見えておかしくなった。
もしかするとあの剣こそが、噂の礼装なのではないか。
最期にその可能性にかけ、剣を別のものに錬金してしまう。

もしこれが通ればアヌビスは本質を変えられ、リタイアとなっていただろう。
だが、彼のクラスはセイバー。
与えられたクラススキル、対魔力のランクはB。
一小節程度の詠唱で発動する魔術など彼には通用しない。
もし生前のアヌビスであったなら、ここで終わっていた。
立ちはだかるのは大きな壁。
人間では、サーヴァントに敵わない。
その現実を認識することはないままに、術の発動と同時に烈風と謳われた魔術師は永久の眠りについた。


681 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:06:02 UNJwH5Q20

「…今、何かされたな。生きていたか」

魔術師という存在の想像以上のしぶとさ。
それも、アヌビスはもう憶えた。
そしてもう一つ。

「たしかこんな詠唱をしていたか」

エレオノールの杖をふるい、『錬金』。
壁面の飾り金属を結集して一振りの剣を作り出す。
『錬金』に必要なのは具体的なイメージ。
達人ならば真鍮から黄金を作り出すことや、土くれから合成食品を生み出すこともできる。
アヌビスがイメージしたのは剣。
彼自身が剣であることに加え、彼を宿したスタンド使いキャラバン・サライは刀鍛冶。
明確なイメージでもって生み出されたそれは、名刀とは言わないまでも決してなまくらなどではない。

「ふむ、まあまあかな。おっとそれより。
 マスター、終わったぜ。指示通り外には一人たりとも逃がしてない」

作った剣の調子を確かめつつ、念話を送る。
そしてマスターが来るまでの無聊の慰めに新たに数本剣を『錬金』する。

「ご苦労様です、セイバー…また宿主を変えたのですか」
「おう、マスター。強敵がいてね、そこで転がってる女だ」

妙な仮面をつけて現れたマスターに何も言わず、カリーヌを顎で示す。
それにわずかながら眉を顰める鯨木。
不用意に『子』を増やすのも、挙句それを使い捨てるようにしてアヌビスに使わせ、殺すのは、あまり好みではないのだが。
それでも、聖杯を手にするにはこれが一番効率的と呑み込む。
指示を出した時点でこうなることを考えていた自分が、裁かれるべき悪党が責められるものではない。
仕事に私情をはさんでもいいことはない。

「『子』にすることはできなかったが、代わりに面白い魔術を憶えたぜ。そら」

アヌビスが作り出した剣を指し示し、さらに一本作って見せる。

「装備の質の向上はたしかに便利ですね」
「だろ?で、碌に説明もなく実行したんだ。事後だが解説を頼むぜマスター」

戦闘に巻き込まれ吹き飛んでいたテーブルと椅子を片手で軽々と元の位置に戻し、着席を促す。
倒れていた『子』ももそもそと動き出す。

「あなたたちは外への警戒と片付けを」
「はい、母さん」

『子』にそう指示を出し、アヌビスの宿主と向かい合っていったん席に着く。
刀を下げたピンクブロンドの美女と、怪物のような面をした女性が、床中に剣が突き刺さった一室で向かい合う異様な光景。

「ここを攻めた理由の一つは礼装を扱う通り魔と、特級住宅街の戦闘音を同一犯という噂を流すためです。
 我々のすべての罪と敵をこの館のマスターに引き受けてもらう」
「噂を鎮めるでなく広げるか」
「もちろんあわよくば、程度のものです。きちんと情報を洗えばおそらくはそれが誤りだと気付くものは出てくるでしょう。
 ですが、噂を聞いたものというは相応の反応を見せる。出所に向かうもの。離れようとするもの。平時と変わらないもの。
 その大半は噂を洗おうとするはず。聞き込みを中心にね。それが『子』の網にかかれば、マスターの判別ができる」

正確な噂を広められる前に、『子』によって都合のいい噂を広げる。
そのために一時的とはいえこの館を封鎖状態にした。
あとは噂に対して反応する者を『子』によって探し出す。

「噂を、与える情報をコントロールできれば敵の動きを多少は操れる。
 うまくすれば敵同士ぶつけ合わせることもできるでしょう」

噂に集まるものをぶつける。
噂から離れるものを誘導する。
直接手を下さずともできることはある。


682 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:06:24 UNJwH5Q20

「噂の出所と媒介を増やす必要があります。武装が潤沢になったのは幸い。明け方までにいくつか襲撃をしかけます。
 礼装を持った通り魔の居所を不明瞭にしておけば、こちらの噂の方に群がるものも増えるでしょう」
「フフッ、いいぜ。もはや魔術師なんざ敵じゃねェーからな!」
「いえ、私とあなたは帰宅します。ここは噂と罪歌の感知した強者の件があったので直接出向きましたが…少なくとも今はマスターはいないようですし。
 ほかにも罪歌で掴んでいる強者の所在も、NPCのものかもしれません」
「ぐ、ならここで待ってればマスターが来るかもしれねえじゃねえか。待ち伏せようぜ!」
「現時点でいない以上、噂に対して何らかの対応をしている可能性が高い。
 拠点を変えて戻らないことも考えられます。そもそもここではなかったかも。
 そして私たち同様、ここに襲撃を考えるものがいるかもしれません。
 罪歌によって当てをつけたように、なんらかの手段でここを攻撃対象にする者がいたとして、それと鉢合わせては無駄な消耗です。
 予定通りに動きましょう」

もとより連れてきていた『子』を呼び集め、何人かに作り出した剣を持たせる。
鯨木自身は帰宅の構えだ。

「襲撃対象は3ヶ所。予選中に確認した鎧の戦士、他二名の強者を罪歌が見つけています。
 そこを明け方までに『子』に攻めさせ、より広範囲に、同時期に噂を広めます」
「……了解したよ、マスター。ところでこいつは『子』になってないんで処置頼むよ」

しぶしぶといったようだが帰り支度を進めるアヌビス。
エレオノールの手を出して、鯨木がそこに傷を作る。
目が赤く染まったのを確認するとアヌビスを別の『子』に渡して、改めてエレオノールに指示を出す。

「敵、あるいはマスターやサーヴァントが来たら迎撃を。
 敵わないと判断したら、戦闘よりも…この土地の龍脈や魔力線の破壊を優先」
「はい…母さま」

それだけ言い含めると、新たに屋敷で作った『子』だけ残し、帰路へ。
『子』は襲撃対象へと向かわせ、鯨木とアヌビスを持った『子』だけが家路につく。
外から見ると殺し合いが起きたとは思えないほどに、粛々といつも通りに館は廻っている。

「拠点に悪くはないと思うがね、母さん(マスター)」
「さすがは名門ラ・ヴァリエール、というところでしょうか。おそらくあの土地の魔力は魅力的なものなのでしょう。
 ですがあなたはさほど消耗するサーヴァントではありませんし…この身に流れる血は、尋常ならざる魔力量を有しています。
 あの土地を手にするメリットは薄い。しかし敵の手に回したくはない。なら、いざとなれば破壊を優先します」

腕の立つ魔術師、それこそキャスターにでも落ちれば厄介。
しかしそうした知識に疎く、また魔力に困っていない自分たちには不要なものだ。
それに……

「マスターはいなくとも、何らかの手を残している可能性はある。
 ブービートラップはないにしても、監視の目などね。
 だからこそあなたには殺人鬼ハリウッドを名乗らせ、私自身はこんな怪物の特殊メイクをしていたのですよ」

館から離れ、人目が一切ないのを確信して面をとる。
仮面を鞄にしまい、眼鏡を取り出して、その美貌を久々に晒す。

「ああ、それでか。ところでハリウッドってのは何なんだ?」
「……反応の薄い。まあいいです。
 そうですね、この名は…くだらない、私の嫉妬でしょうか」

アヌビス神と名乗っても、大多数の者はエジプトの神を浮かべるだろう。
セイバーというクラス程度なら大きな情報ではないだろう。
偽名を名乗ることにさほど大きな意味はない。
にもかかわらず、この名を偽名にしたのは……


683 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:06:43 UNJwH5Q20

「ま、なんでもいいさ母さん(マスター)。能力がばれるのは死活問題ってのは知ってるからよ。
 その偽名、これからも名乗るのか?」
「一度使った以上、統一する方が自然です。これからの襲撃でも『子』にはそう名乗らせるつもりです」
「襲撃の対象は場所しか分かってないのか?」
「罪歌が興味を示す程度には強い、くらいですかね。
 鎧の戦士も、男か女かすら報告されていません。剣を使うか弓を使うか槍を使うか。
 サーヴァントか、マスターか、NPCか。鎧の色は橙かもしれませんし、桃色かもしれませんし、黄色や灰色かも」

居所しかつかめていない。
他二ヶ所も同様。
だが威力偵察なら十分だし、そもそも倒すのが目的ではない。

「NPCかもしれないが、だとしても烈風はかなりの腕だったし舐められんな。
 なにせあいつは罪歌の声にすら抗うほどだぜ」
「罪歌に…?」

罪歌の呪いを覆すには、傷口から響く呪いの声を凌駕する精神力が必要となる。
NPCにそれほどの個性があるものか?

「それは本当ですか?」
「ああ。わたしが愛するのは夫と子だけです、ってよ。
 母は強し、ってやつかね?なあ、母さん(マスター)?」

母の愛。
それは鯨木が受けることのなかったもの。
異形である母にすら、混血のこの身は捨てられた。
それが理由…?
いや、予選を突破しなかったマスター候補というのがいるらしい。
それが、あの魔術師だった。凄まじい精神力を持つものだった。それだけだろう。
…それだけだ。

(私も、愛してみるべきなのでしょうか)

思い浮かべるのは今日初めて会った青年、葛葉紘汰。
今頃も『子』の店で働いてるはずだ。
彼もいずれ罪歌で斬るつもりでいたが

(罪歌が惹かれる強者。同時に罪歌が戸惑う人のような人外。
 おそらく後天的に人ならざるものとなったのでしょう)

生まれついての半人外である鯨木かさねの事を彼はどう思うだろう。
事情はわからないが、人のような人でなしという意味では…共感できるところがあるのではないか。
そう、期待して。
まだ彼のことは斬っていない。
彼のあるがままの振る舞いがどうなるか、気になって。
…だがこれはあくまで私情。
もし聖杯をとるのに必要ならば。
いたずらに子を増やすのは好まないが。葛葉紘汰の自由意思を奪うことになるが。
あれを斬ることを戸惑いはしない。



「それでは、セイバー。私たちは帰りますが。殺人鬼ハリウッドが舞う、切り裂き魔の夜(リッパー・ナイト)は続きますよ」
「ああ。誰も彼もぶった斬ってやりな、母さん(マスター)」


684 : The∞Ripper∞NighT ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:07:32 UNJwH5Q20

【G-3/特級住宅街、ラ・ヴァリエール邸近く/一日目 深夜】


【鯨木かさね@デュラララ!!】
[状態] 健康
[令呪] 残り四画
[装備] 罪歌
[道具] 仕事道具、怪物の特殊メイク
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:商品として聖杯を確保する。
0. 帰宅する。
1. 罪歌の『子』によって噂を広める。
2. 噂に反応する主従を探し、誘導や撃破など対応する。
3. 噂を広めるのと、『子』を増やすためにも明け方までに強者のいる場所に『子』を襲撃させる。

[備考]
※外部と物資をやり取りする商社に勤めています。多少なら政庁にも顔が利きます。
※礼装を持った通り魔の噂を聞きました。自分たちの事であり、ハンデとして課された、あるいはランダムな選出の結果主催側に流されたものと考えています。
※謎の戦闘音の噂を聞きました。自分たち同様の理由か、あるいは何らかの違反者と考えています。
 ラ・ヴァリエールの強者(カリーヌ)の事と予想していましたが、NPCだったことで他にいると考えています。
※ラ・ヴァリエール邸のNPCを『子』にしました。迎撃、および敗色濃厚になった場合の設備破壊を命じています。
※罪歌の『子』を通じて三人の強者をマークしています。一人は鎧の戦士。
 明け方までにそこを殺人鬼ハリウッドを名乗る『子』が襲撃します。NPCか否かも含めて後続の方に詳細はお任せします。
※葛葉紘汰が人外であること、相応の強者であることを罪歌によって感知。興味を抱いています。
 今のところ『子』にしてはいませんが、必要なら戸惑うことはないでしょう。



【セイバー(アヌビス神)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 健康
[装備] NPCの男性
[道具] 『錬金』した剣数本(子に持たせている)
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従い、敵を斬る。
0. マスターに従い、ひとまず帰宅する。
1. 敵は見つけ次第斬りたい。
[備考]
※予選で倒したサーヴァントはセイバー、バーサーカー、アサシン、詳細不明の四騎。
 それに伴いステータス、技量ともに大幅に上昇しています。
※『錬金』を見切りました。魔術師の肉体を行使すれば単純な剣程度なら作れます。


685 : ◆yy7mpGr1KA :2015/09/24(木) 17:09:33 UNJwH5Q20
投下終了です。
噂を中心にいろいろと状況は混迷してるし、おまけに拙作でさらに特級住宅街がやかましくなってしまいましたが…
個性的な舞台で書いててとても面白いですね。

指摘などあればお願いします。


686 : 名無しさん :2015/09/24(木) 18:26:34 gTW7GaH60
乙です
二つの噂を統合する事で利用しようと目論む強豪マスターかさにゃんと
一度憶えれば依代の能力すらも使いこなすアヌビス、このコンビおっそろしいなぁ
特にアヌビスはその性質から扱いづらいサーヴァントの筆頭候補にあたる筈なのに生き生きといい仕事してらっしゃるw


687 : ◆nig7QPL25k :2015/09/24(木) 22:30:11 X8o7Evm20
投下ありがとうございました!
罪歌はどう使おうかと色々考えていたのですが、こういう応用法があったとは
防衛と攻勢を両方いっぺんにできる策というのは、なかなかに強力ですね
今後のリレー展開も、色々幅が広まりそうですし、面白いと思いました
しかしNPCゼロ魔勢でかぶるとは……w


688 : <削除> :<削除>
<削除>


689 : ◆nig7QPL25k :2015/09/30(水) 19:59:05 WevWdWEw0
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、高町なのは、立花響、スバル・ナカジマ、両備、ハービンジャーで予約します


690 : ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:40:46 6typz1Mo0
投下します


691 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:41:09 6typz1Mo0
 時は過去へと遡る。
 北西に位置する塔、ドラスロール。
 この世界樹の魔力を制御し、ユグドラシルに定着させている。
 そういう塔だと設定されている場所だ。
 この場所をスバル・ナカジマが訪れたのは、軽い思いつきが理由だった。

「………」

 強固な結界に守られた、石造りの塔を見上げる。
 奇妙な縄が巻きつけられた、神話の鹿の名を冠する塔は、夕暮れの光を受け朱に染まっている。
 ここに来れば、状況を打開するヒントが、何か得られるのではと思った。
 立花響のガングニールが、世界樹の影響を受けているのなら、何かが確かめられるのではと思っていた。
 しかし、それはかなわない。塔の中に入れないのでは、それが管理する魔力について、調べることはできそうにない。
 周囲に人がいないのを確かめ、砲撃魔法をぶつけてみたが、突破することはできなかった。
 こうなるとここでできることは、もうないと見てよさそうだ。

(戻るか)

 あまり長居するわけにはいかない。
 特に連絡はないが、マスターである響を、長く独りにするわけにもいかない。
 であれば、そろそろ帰るべきか。
 そう考え、身に纏ったバリアジャケットと宝具を、元に戻そうとした瞬間。

「!」

 塔越しに、何かを感じた。
 こちら側の様子をうかがう、何者かの視線を察した。
 緩めた気分を引き締めて、スバルは素早く身構える。
 恐らくは先程の爆発の音を、誰かに聞かれていたのだろう。
 無警戒に飛び出してこない。ただのNPCではないらしい。
 だとすれば、敵マスターかサーヴァントか。危険な存在であることにかわりはない。

「………」

 張り詰める緊張。右手にこもる力。
 狙うは先制攻撃だ。あまりいい気分はしないが、今のこの身は敵とぶつかり、勝つための戦いをしている。
 塔を挟んだ向こう側の、恐らくは太枝の合間に隠れた、何者かの気配を静かに探る。
 攻め入るタイミングを計り、今か今かと待ち続けた後。

「リボルバーシュートッ!」

 遂にスバルは攻勢に出た。
 塔の影から飛び出すと同時に、黒鉄の右手を突き出した。
 リボルバーナックルが放つのは、蒼穹色の魔力の弾丸。
 魔力カートリッジを排出し、放たれる青き射撃魔法が、世界樹の枝葉へと襲いかかる。
 着弾、炸裂。巻き上がる粉塵。
 もうもうと立ち込める煙目掛けて、スバルは一直線に走った。
 『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』の車輪が、エンジン音をかき鳴らし、敵との間合いを一挙に詰める。


692 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:41:31 6typz1Mo0
「っ!」

 もちろん、敵も馬鹿ではない。
 煙を切り裂くようにして、反撃の凶弾が迫り来る。
 一発目は身をよじってかわした。二発目は防御魔法で弾いた。三発目は跳躍してかわした。
 ばちっ、と鋭い音を立て、塔の結界に当たり炸裂するのは、魔力で作られたエネルギー弾か。
 恐らく敵の正体は、自分と同じキャスターのクラス。
 であれば、このまま距離を詰めて、接近戦で潰すのが常道。
 ベルカ式の魔法を修めた、例外の存在である自分であれば、その戦術も実行可能。

「おりゃあっ!」

 迷わず煙へ飛び込んだ。
 渦巻く拳を突き出した。
 ナックルスピナーが空を裂き、見えぬ標的へと叩き込まれる。
 炸裂したのは、音と光だ。
 敵を殴った手応えはない。薄ぼんやりと見えるのは、防御魔法の桃色の光か。

『Stop!』

 その時だ。
 光と煙の向こう側から、聞き覚えのある声が響いたのは。
 電子音声の届いた直後に、粉塵がようやく晴れてくる。
 塵の向こうに見えるのは、記憶に深く刻まれた、ミッドチルダ式の魔法陣。

「……スバ、ル……?」

 その更に奥から聞こえてきたのは、決して聞き違えようのない、大切な人間の声だった。

「なのは……さん?」

 ツインテールに結ばれた栗毛。
 驚きも露わな青い瞳。
 白を基調としたバリアジャケットに、桃色と金に光る魔道の杖。
 宝具『不屈の心はこの胸に。そしてこの胸に小さな勇気と奇跡を(レイジングハート・エクセリオン)』 。その持ち主はただ一人。
 エースオブエース、高町なのは。
 煙の向こうにあったのは、生前のスバルを教え導いた、敬愛する恩師の姿だった。


693 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:42:10 6typz1Mo0


 殴りかかった敵サーヴァントが、身内であることを確認し。
 更に敵対意志がないことを知ったスバルは、自らの軽率な行動を恥じ、物凄い勢いで謝罪した。
 もっとも、爆発音を聞きつけたなのはも、相手が危険な存在ではないかと判断したのだ。
 おあいこで手打ちということで、この件は水に流されることになった。

「『大神宣言(グングニル)』の破片を、取り込んでしまった女の子……か」
「正確には別の世界のグングニルで、それも破片から作った武器の、更に断片らしいんですけどね」

 そんな彼女らが行っていたのは、互いの情報交換だ。
 本人同士は味方であっても、マスターが好戦的な人物であるなら、戦わざるを得なくなる。
 幸いにして互いのマスターは、どちらも争いを好んではいなかった。
 なのはとそのマスターは、むしろ戦いに乗ることを拒んでおり、彼女は脱出の手立てを求めて、この塔を調べに来たらしい。
 もっとも、撃槍に毒された響には、それとはまた別の問題があったのだが。

「難しいね。確かに取り込んだのが神器ともなると、聖杯クラスの奇跡でなければ、どうしようもないかもしれないけれど……」

 口元に手を添え、なのはは難しい顔をして思考する。
 常勝不敗、百発百中。
 北欧神話の主神が用いた、神秘中の神秘、『大神宣言(グングニル)』。
 それが聖杯の記録にある通りの神器であるなら、宿された力には計り知れないものがある。
 それこそ、たとえサーヴァントであっても、どうこうできるかは怪しいかもしれない。
 万能の願望機の力なくして、撃槍の毒の摘出は、かなわない願いなのかもしれない。

「……それでも、劣化に劣化が重なっているなら、何とかできるかもしれない」
「本当ですか?」
「うん。今の私はメンターのサーヴァント……教え導くのが本分だからね」

 だが、神話通りの力がなければ、対処のしようはあるかもしれない。
 そう言ってなのはが提示した、ガングニールを抑える術は、こうだ。
 まずは響と顔を合わせ、彼女の肉体の状況を、正確に把握することから始める。
 そして神器との融合を、抑制するための魔法を構築し、それを響へと教授する。
 仮にガングニールの魔力が、ミッドチルダ式の魔法に使えるのなら、撃槍自身の力によって、撃槍を制御することができるはずだ。
 エクストラクラスを得たスバルの師は、そのように状況を分析していた。

「もっとも、不確定要素も多いよ。ガングニール……だっけ。その神器の力が、ミッド式の魔法と、適合するかどうかは分からない。
 それに適合したとしても、それを立花さんの力と技術で、適切に運用できるかどうかも怪しい」
「外部魔力炉から供給した魔力を、自分のものとして運用するのは、結構なレアスキルですからね……
 同じようなものだとしたら、確かに難しいのかも」

 融合症例というのは、なのは達にとっても分からないこと尽くめだ。
 彼女の肉体と同化した神器を、リンカーコアと同一のものとして、単純に捉えていいのかも分からない。
 そうでなかった場合、かつてのプレシア・テスタロッサのように、更に専門的な技術が必要になるだろう。
 そうなればなのはの管轄外だ。自分の知り得ない技術は、さすがに教えようがない。


694 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:42:54 6typz1Mo0
「とにかく、まずは会ってみないとだね。立花さんは、学術区画の寮暮らしだっけ?」
「あ、はい。なのはさんのマスターは、特級住宅街の方ですよね」

 とはいっても、それを判断するのは、実際に顔を合わせてからだ。
 2人はお互いの住所を確認すると、待ち合わせ場所と時間を決めて、再び会う約束を取り付けた。
 同盟締結をスムーズにするため、今までに話したネガティブな要素は、極力伏せることも加えてだ。
 ぬか喜びに終わるかもしれないが、それでも可能性を疑われて、同盟を反対されるよりはいい。
 それらの約束を決め、この場は解散という流れになった時。

「なのはさん」

 背を向ける高町なのはへと、スバル・ナカジマが声をかけた。

「何かな?」

 呼び声に応じ、なのはが振り返る。
 その先のスバルの表情は、いつになく真剣なものだった。

「あたしはなのはさんのことを、尊敬してますし……今でも、大切な人だって思っています」
「うん」
「だから、なのはさんとは戦いたくない。なのはさんのことを、裏切りたくないと思ってます」

 本心だった。
 スバルにとってなのはとは、命を救ってくれた恩人だ。
 同時に、戦闘機人の力の使い道を、その身で教えてくれた人でもある。
 それほどの大恩ある人間に、仇を返すような真似は、普通はできるはずもない。

「だけどあたしは、響のことも助けたい。
 呪われたあの子の身と心を、それでもと認めてあげられるように、あたしが力になってあげたい。
 あの子は、昔のあたしと同じ……もう一人のあたしなんです」

 それでも今のスバルには、救いたいと思うマスターがいる。
 犠牲の上に立つ命と、人の域を超えた力を持った、立花響という少女がいる。
 兵器の体を持って生まれ、その力で人を害することを、何よりも恐れた一人の少女。
 せめて人助けができればと、血塗れの右手を差し伸ばし、それでも時に手が届かず、涙を流してきた少女。
 立花響という娘は、そんなかつての少女と同じ、もう一人のスバル・ナカジマだ。
 もう一人の自分であればこそ、それがいかに危うい存在か、彼女は痛いほど理解していた。
 だからこそ、そんな傷だらけの少女を、放ってはおけないと思った。

「だから、もしも願いを叶えるために、戦いが避けられないということになったなら……
 あたしは、なのはさんとも戦います。あの子を呪いから解き放つために。あの子が自分を許す日を、きちんと迎えられるように」

 それは反逆の宣言だった。
 必要に迫られたその時は、たとえ恩人に刃向かってでも、聖杯獲得のために戦う。
 命を救い、道を示した、高町なのはに牙を向けてでも、勝ち残り最後の一組を目指す。
 救われ示された自分には、同じように救う義務と、示す責任があるのだから。
 あってほしくない未来だと思った。それでも、可能性がある以上、きちんと宣言しておかねばならなかった。
 それがスバル・ナカジマなりの、けじめのつけ方というものだった。


695 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:43:50 6typz1Mo0
「……それでもスバルは、呪われたまま、悲しい終わりを迎えることはなかった。そうでしょ?」

 それでも、高町なのはは笑う。
 静かな笑顔でそれを受け止め、逆にスバルに問い返す。
 答えはもちろん肯定だ。スバルは無言で頷いた。
 どれほど悲しいことがあっても、周囲にいた彼女の仲間達が、それ以上の喜びを与えてくれた。
 みんなが支えてくれたからこそ、どんな苦しみや絶望にも、押し潰されることはなかったのだ。

「だったら、どうしたらいいのかを、今度はスバルが教えてあげなくっちゃね」

 そう言うと、なのはは身を翻して、今度こそ塔から立ち去った。
 響のために戦うことを、高町なのはは肯定したのだ。
 それが正しいと信じて、戦うことができるのならば、決して裏切りにはならないと、言外にそう伝えたのだ。
 やがて彼女の後ろ姿は、世界樹の枝の向こうへ消える。

「かなわないな」

 その背中を見送ったスバルは、本人には決して聞こえないように、小声でそう呟いていた。
 暗くなり始めた空の下で、今はいない恩師に向けて、スバルは深く頭を下げていた。



 それから時間が経ち、現在。
 両陣営の対話が終わり、同盟が締結された後のこと。
 メンターのサーヴァント・高町なのはは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを伴い、彼女の住まいへと向かっていた。
 響の回復魔法修得のために、クリアしなければならない問題は多い。
 それでも、可能性はゼロではないと、そう言い切れる出会いにはなった。
 何より、スバルの入れ込むマスターが、どんな人間かを知ることができた。
 なるほど、彼女が救いたいと、心から願うだけのことはある。
 危うさこそはあるけれど、それでも面構えは立派だ。真っ直ぐな良い子なのだろうというのが、僅かな出会いから察することができた。

《ねぇ、メンター。あんなので本当に頼りになるの?》

 霊体化したなのはへと、隣のルイズが問いかける。
 眠気もあってか、ルイズの方は、あまり機嫌がよくないようだ。
 必然、スバル達に向ける目も、どうしても懐疑的なものになってしまう。
 あの間抜けそうなコンビと、手を組み共闘し合うことになって、本当に大丈夫なのかと。

《大丈夫だよ。ああ見えて頼もしい子だから》
《そういえばあのキャスターは、あんたの教え子だったかしら》
《うん……本当に強い子だよ、スバルは》

 遠い記憶を振り返りながら、なのはは懐かしむように言った。
 自分では分かっていないかもしれないが、スバルは本当に強く育った。
 明るく見えて繊細な子だ。彼女はその繊細さゆえに、何度も深く傷ついて、何度も涙を流してきた。
 それでも、その度に己を奮い立たせ、困難に立ち向かってきた。
 最初から傷つくことのない者よりも、傷ついても前に進める者の方が、強い人間であるということもある。
 彼女の愛弟子――スバル・ナカジマとは、そういう類の人間だった。


696 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:44:36 6typz1Mo0
(あれならきっと、大丈夫)

 あたしはなのはさんとも戦います。
 そう決然と言い放った姿を思い出す。
 自分を信頼してくれることよりも、それ以上に大切な理由を、きちんと持っていたことが嬉しかった。
 そのためなら、たとえ刃を交えることになっても、後悔はしないだろうと思えた。

(私も頑張らなくっちゃね)

 もちろん、そうならないに越したことはない。
 自分だってできることなら、戦友と戦いたくはないのだ。
 そのためには自分の考えたプランを、見事に成功させなければ。
 明日からは忙しくなるぞ。そう己を奮い立たせ、なのははルイズと共に帰路へとついた。

《……ん?》

 その時だ。
 その辺りに配置したはずの、監視用のサーチャーが、なくなっていることに気がついたのは。



「なかなかにナメた真似をしてくれるじゃねえか」

 発光する魔力の球体を、ぐしゃりと右手で握り潰す。
 キーパーのサーヴァント――ハービンジャーが、その存在に気がついたのは、特級住宅街に忍び込んでから、しばらく経過した後のことだ。
 侵入者の存在を監視する、魔術によって作られたサーチャー。
 警邏の兵隊もうろついているからか、彼らに見咎められない程度の、少量のものしか用意されていない。
 それでもそのサーチャーの存在は、読み通り狙うべきターゲットが、この区画にいることを意味していた。

「一生の不覚だわ」

 苦々しい顔で言ったのは、マスターの両備だ。
 本来ならば忍として、潜入工作に精通した自分が、真っ先に気付かなければならない仕掛けだった。
 しかし、魔術というものへの理解のなさが、監視カメラを見落とすという、あるまじき失態を招いてしまった。
 選抜メンバー候補がこの有様とは。人一倍プライドの高い両備は、己の失態を強く恥じる。

「ま、細けぇことは気にすんな。どの道勘付かれる前に、獲物は見つかったんだからよ」

 ニヤリと笑みを浮かべながら、ハービンジャーは眼下を見やる。
 ピンクブロンドの髪をした、十代そこらの少女の姿があった。
 こんな夜中に用事もなしに、うろついているような年齢ではない。
 であれば、用事があるということだ。それも隣の両備のように、荒っぽい用事と見て間違いない。


697 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:45:41 6typz1Mo0
「万一間違ってたら、色々と厄介なことになるわ。だから証拠も残らないくらいに、一撃で消し飛ばしてやりなさい」
「弱い者いじめは趣味じゃねえが、まぁ了解だ。派手にぶちかましてやるぜ」

 がつん、と両の拳をぶつけ合わせる。
 それに呼応するかのように、英霊の四肢が光を放つ。
 その身を眩く染め上げるのは、黄金色の甲冑だ。
 至高の宝具、『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』 。神話の鎧をその身に纏い、伝説の黄金聖闘士が、臨戦態勢へと入る。
 ばちばちと弾けるのは雷電。スパークを伴う雷の小宇宙。
 己がセブンセンシズの下に、強大な魔力を練り上げながら、ハービンジャーは跳躍する。
 鎧と鎧の隙間から、盛り上がる筋肉が覗いた。ぐっと構えた右の拳に、気合いと魔力が満ち満ちた。

「なっ!?」
「ぬぅりゃあッ!」

 標的が接近に気付いたようだ。だがもはや何もかもが遅い。
 黄金聖闘士の光速の拳と、その中でも並ぶもののない超パワー。
 速度と威力のメーターを、限界以上に振り切った拳は、もはや小娘には止められない。
 裂帛の気合いを吐き出すと共に、轟然と空を切り裂いて、渾身の一撃を振り下ろす――!

「――ッ!」

 ばこん。
 衝撃と共に、大地が砕けた。
 鈍く大きな音を立て、石畳が粉々に吹き飛んだ。
 もうもうと立ち込める煙と、吹き荒れる嵐のような稲妻が、その破壊力を物語る。

「……ほぉ」

 それでも、手応えはなかった。
 あれほどのパワーとスピードを込めた拳は、しかし敵を捉えていなかった。
 砕けた瓦礫には、肉片どころか、血の一滴もこぼれていない。
 煙を払い、マントを翻し、黄金の猛牛は身を起こす。
 単眼の視線を向けた先には、見覚えのない人影があった。
 純白の戦装束を纏った、小娘とは違う若い女性――読み通り、サーヴァントを連れていたわけだ。
 であるなら、それなりには楽しめる。
 魔術の杖を油断なく構え、小脇にマスターを抱えた女に、ハービンジャーは不敵に笑いかけた。


698 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:46:09 6typz1Mo0


 迂闊だった。
 噂がばらまかれている以上、敵襲を警戒はしていたつもりだった。
 それでも、用心が足りなかった。開幕早々に攻めてくると、そこまで考えてはいなかったのだ。

「メンター、あれって……!」
「うん。見つかっちゃったみたい」

 粉塵の中から現れたのは、見上げるほどの大男だ。
 左目の潰れた粗暴な顔に、不釣り合いな黄金の甲冑。
 されど身にまとう気配は、荒くれ者のそれではなく、英霊としての風格を備えている。

「今のタイミングでかわすとはな。褒めてやるぜ」

 凄絶な笑みを浮かべながら、ハスキーな声が語りかけた。
 この男、恐らく相当にできる。
 恐らくは奴の宝具であろう、あの太陽の色に輝く鎧からは、尋常ならざる気配を感じる。
 後世に名を馳せるほどの大英雄――第一戦の相手としては、相当に高いハードルだ。

「キーパー、って、何? 奴のクラス……」
「! 私と同じ、エクストラクラス……!?」

 困惑するルイズの呟きに、なのはは両目を見開いた。
 敵対者のステータスを見るマスターの目が、基本クラスに存在しない、第八以降のクラスを視認したのだ。
 これは厄介なことになった。知らず、なのはの頬を汗が伝う。
 通常七つのクラスには、それぞれに得意分野が存在する。
 たとえばランサーのクラスは、基本的にはスピードの速い、攪乱戦法を得意とする相手だ。
 ライダーであれば乗り物を警戒する必要があるし、アサシンならば隙を突かれないよう、慎重に気配を探る必要がある。
 しかし相手はエクストラクラス。そういった予備知識というものが、一切存在しない未知の相手だ。

(どう対策を打てばいいのか、分からない……!)

 相手は見るからに強敵。しかも手の内は分からないと来た。
 おまけに発展途上のマスターを、庇いながら戦わなければならない。
 これは相当な窮地だと、高町なのはは眉をひそめ、黄金の敵対者を睨み据えた。


699 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:46:51 6typz1Mo0
【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態] 健康、なのはの指導による疲労(極小)
[令呪] 残り三画
[装備] 杖
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:メンターから魔術を教わる
1.襲撃してきたサーヴァント(=ハービンジャー)に対処する
2.夜が明けたら、引き続き回復魔法を教わる
3.響と共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
[備考]
※メンターの指導により、リリカルなのはの世界の防御魔法(プロテクション、ラウンドシールド)を習得しました
※なのはの指導により、少しずつ体に負担が溜まっています。
 現状では問題はないですが、さらなる指導で疲労値が蓄積された場合、戦闘中に反応の遅れが生じる可能性が高まります

【メンター(高町なのは)@リリカルなのはシリーズ】
[状態]健康
[装備]『不屈の心はこの胸に。そしてこの胸に小さな勇気と奇跡を(レイジングハート・エクセリオン)』、バリアジャケット
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:響・スバル組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1.襲撃してきたサーヴァント(=ハービンジャー)に対処。まずは応戦しつつ、お話を聞く
2.ルイズと響に回復魔法を指導する
3.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
4.ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
5.万が一、魔法で響を救うことができなかった場合は、スバルと戦うことも覚悟する
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※立花響、スバル・ナカジマ組と情報を交換し&同盟を結びました。
 同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※『姿の見えない戦闘音』の噂が自身を指すものと把握しています
※特級住宅街の各所に、少数のサーチャーを配置しています。
 鯨木かさねの一団が捕捉されているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします


700 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:47:17 6typz1Mo0
【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スナイパーライフル
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.白服のサーヴァント(=高町なのは)達と交戦する。自身は後方から援護射撃
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、白服のサーヴァント(=高町なのは)だと確信しました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています。また、忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています
※特級住宅街に置かれた、サーチャーの存在を確認しました

【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]健康
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.白服のサーヴァント(=高町なのは)達と交戦する。できればマスターよりも、サーヴァントの方と戦いたい。
2.両備の迷いに対して懸念
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、白服のサーヴァント(=高町なのは)だと確信しました
※特級住宅街に置かれた、サーチャーの存在を確認しました


701 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:47:50 6typz1Mo0


 遠くで響いた爆発の音は、この耳にも確かに届いている。
 夜の暗闇の静けさが、先ほど出会った人々の窮地を、確かに響に伝えている。

《響……!》

 霊体化を解かせて確かめるまでもない。己のサーヴァントの顔は、見ずともありありと想像できる。
 スバル・ナカジマが、焦っていた。
 心に聞こえた念話の声は、いつもの余裕が信じられないほどに、焦燥の色を滲ませていた。
 橋の向こうの町にいるのは、キャスターのサーヴァントの恩人だ。
 別れて間を置かず聞こえた音は、その人が襲われたことの証明に他ならない。
 ならばどうする。自分はどうする。
 戦うことのできないこの身に、一体何をすることができる。

「………」

 そんなこと、考えるまでもなかった。
 あそこで窮地に晒されているのは、自分を助けてくれた人を、更に助けた大切な人だ。
 そうでなくても、危険な目に遭っている人を、放っておくわけにはいかない。
 シンフォギアを纏えないことも、命が脅かされていることも、その事実の前には関係なかった。
 人助けをすることを躊躇うようでは、それはもう立花響ではないのだ。

「……行きますッ!」

 正義を信じ、握り締めて。
 こうすることが正しいのだと、一点突破の決意を握って。
 迷いのない決然とした声で、立花響はそう叫んでいた。


702 : 背負う覚悟は胸にあるか ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:48:21 6typz1Mo0
【E-3/学術地区/一日目 深夜】

【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール(肉体と同化)
[道具]学校カバン
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ガングニールの過剰融合を抑えるため、メンターから回復魔法を教わる
1.ルイズ達を助けに行く
2.学校の時間以外は、ルイズと一緒にメンターの指導を受ける
3.ルイズと共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
4.出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
[備考]
※シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
 なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り3回(予想)です。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]健康
[装備]『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』、リボルバーナックル、ソードブレイカー
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ルイズ・なのは組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1.なのは達を助けに行く
2.ルイズと響に回復魔法を習得させる
3.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
4.ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
5.万が一、回復魔法による解決が成らなかった場合、たとえなのはと戦ってでも、聖杯を手に入れるために行動する
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&高町なのは組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません。


703 : ◆nig7QPL25k :2015/10/04(日) 16:48:37 6typz1Mo0
投下は以上です


704 : 名無しさん :2015/10/04(日) 18:22:02 FEJxpp5U0
投下乙です。
師弟対決が起きてどうなるかと思いましたが、どうにか互いにわかり合うことができましたね
でもこれは聖杯戦争ですから、いつかは戦わないといけなくなるのが悲しいです。
そして暴れまわるキーパーをどうするか……?


705 : ◆nig7QPL25k :2015/10/07(水) 19:42:11 yZILcxlc0
小日向未来、パスダー、東郷三森、ゲルトルート・バルクホルンで予約します


706 : ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:38:23 hsc9n9HQ0
投下します


707 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:39:07 hsc9n9HQ0
 気になるものを見た。
 ゲルトルート・バルクホルンから、東郷がそうした報告を受けたのは、聖杯戦争本戦が開幕する、数時間前のことだった。
 よほど間が悪かったのか、街全体を回ってみても、それらしい人影には巡り会えず。
 結局折れた東郷が、これ以上は無駄だと判断し、帰投の指示を出したのち。
 その時偶然バルクホルンが、視界に入れた光景が、その「気になるもの」というものだった。

「確かに、これはちょっと気になるわね……」

 自然保護区の家を出て、学校へは通うことなく、通学路を外れ市街地へ。
 そうして辿り着いた先で、東郷はそう呟いていた。
 そこは一般住宅街の片隅にある、人の住んでいない廃屋だ。
 ここから高校生くらいの女子が、一人で出てきたというのが、バルクホルンの見た光景だった。
 秘密基地か何かのように、生活感があるというわけでもない。
 そんな場所に理由もなしに、子供が出入りするということはあり得ない。
 少なくとも、システム化されたNPCには、あまりにらしくない行動だった。
 あるはずのない常識外――奇しくもそれは、鹿目まどかの失踪と、同質のイレギュラーだった。

「敵マスターの陣地かもしれない、と思ったのだが……それらしい気配もないとはな」
「その人はここで、一体何をしていたんでしょうか」

 無人の廊下を進みながら、東郷とバルクホルンは言う。
 意味もなくこんな場所に来るはずがない。相手が人間であるなら、間違いなく理由があるはずだ。
 そう考えながら周りを見ても、どうしても答えには行き着かない。
 もしやこれもハズレなのか。そう思い始めた、その時。

「……地下室、だな」

 一階の更に下へ向かう階段が、廊下から伸びているのが見えた。
 それも乱雑に転がったダンボールに、塞がれるような形でだ。
 車椅子目線の東郷は、バルクホルンに障害物をどけてもらって、初めて視認することができた。

「隠しダンジョン、というのが相場ですね」
「そうなのか?」

 テレビゲームを引き合いに出したたとえだ。
 テレビすらない時代のバルクホルンは、遊んだことのないゲームの単語に、首を傾げながら問う。

「下りてみましょう。何かがあるかもしれません」

 手伝ってもらえますか、と言いながら、東郷が言った。
 怪力の魔法を持つバルクホルンには、ストライカーユニットを履かずとも、それぐらいのことは造作も無い。
 車椅子を持ち上げると、アーチャーのサーヴァントはマスター共々、地下の闇へと沈んでいった。


708 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:39:27 hsc9n9HQ0


「これは、すごいな」

 驚嘆を隠そうともせずに、バルクホルンが呟きを漏らす。
 地下で東郷らを待ち構えていたのは、予想だにしなかった光景だ。
 階段を下った先にあったのは、部屋でも廊下ですらもなかった。
 もともとあった地下室は、とうの昔に失われ、世界樹の内側と一体化していたのだろう。
 しかし、これはどうしたことだ。何故樹木を掘り進んだ先に、こんな光景が広がっているのだ。

「恐らくはこれが、アーチャーの見た人の、本当の陣地……」

 そこにあったのは木ではなく、機械だ。
 無数のパイプや金属が、洞窟の360度全てを、びっしりと覆い尽くしている。
 単なる工場や基地といった、建物の壁ともまた違う。まるで血管か何かのように、機械が張り巡らされている。
 どちらかというと、生物の体内を、そっくりメカに置き換えたようだ。直感的に東郷は、そのような感想を浮かべていた。

「陣地作成のスキルを持っていたのは、確かキャスターでしたっけ」
「どうだろうな。あれは自分に有利な空間を作るだけで、普通は物理的な変化を伴うものではないんだが」

 そんな風に会話をしながら、バルクホルンは車椅子を押す。
 パイプまみれの地面は、決して道が良いとは言えない。東郷美森を乗せた椅子は、時折かたかたと揺れていた。
 紫色の金属が、延々続く道を見据え、アーチャーのサーヴァントは思考する。

(それにしても、妙な感覚だ)

 この陣地は見てくれだけでなく、その纏う気配も異常だと。
 試してはいないが、床の感触からいって、恐らくはこの機械の壁を、霊体化ですり抜けることは不可能だろう。
 それは陣地の特性なのかもしれないし、あるいはこれ自体が、なんらかの宝具なのかもしれない。
 しかし、どうにも違う気がする。この粘着くような感触は、そういう無機質なものとは、どことなく違う気がする。
 丸呑みされた記憶はないが、ここはそれこそ見てくれ通り、巨大な生物の腹の中のようだ。
 あるいは考えたくもないが、この空間そのものが――

「っ!?」

 その時だ。
 ぐいっ、と何かに手を引かれ、バルクホルンが車椅子から離れたのは。

「アーチャー!?」
「く……何だ、これは!?」

 それはほんの一瞬だ。
 どこかから伸びたケーブルが、触手のように絡みつき、バルクホルンを引っ張った。
 そうして彼女と東郷との間に、無理やり距離が作られたのは、ほんの一瞬のことだった。
 しかしこの陣地の主にとっては、その一瞬が稼げただけで、どうやら十分すぎたようだ。


709 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:39:52 hsc9n9HQ0
「なっ……!?」

 ずぅん、と大きな音が鳴る。
 いたはずの人影が視界から消える。
 バルクホルンの目の前に、突如として姿を現したのは、やはり金属製の大きな壁だ。
 それがバルクホルンと東郷の前に現れ、二人を分断してしまったのだ。

「マスター! 無事かマスターッ!?」

 触手を払って壁に駆け寄り、どんどんと壁を叩きながら言う。
 しかし声は届かない。念話を使って呼びかけようにも、何かがジャミングをしているらしい。
 霊体であるはずのサーヴァントに、接触し拘束することができるケーブル。
 霊体化による透過や念話を阻み、行動を抑制する壁や床。
 荒唐無稽な直感が、異様なリアリティを伴う。
 バルクホルンの感じていた気配が、徐々に明確な形を作って、確信へと近づいていく。

(やはりここは、陣地でも宝具でもなく……巨大なサーヴァントの体内なのか……!?)



 念話による意思疎通は行えない。
 よほどの防音性があるのか、声も届く気配がない。
 令呪による強制転移も考えたが、もったいない使い方だと考え、やめた。
 どうせ自分の思惑は、バルクホルンには理解できないものなのだ。
 万一拗れた時のために、拘束力は残しておいた方がいい。

「………」

 念のため、勇者の姿へと変身する。
 外出時に着ていた制服が消え、青を基調とした戦闘装束が姿を現す。
 しかしその臨戦態勢は、壁を壊すためのものではない。
 これがサーヴァントの力であるのなら、マスター風情には壊せないはずだ。
 リボンを足代わりに使い、車椅子から離れると、東郷は一人前進を始めた。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 単独先行は危険な賭けだが、かといってこの場所にとどまったとしても、いい結果が得られるとは考えにくい。
 それよりも、当初の調査目的を優先するため、先に進むべきだと考えたのだ。

(サーヴァントを引き離し、生じた隙間を、正確に狙っての分断……)

 自動的に機能するトラップにしては、少し融通が利きすぎている。
 恐らく敵マスターかサーヴァント、そのどちらかには、侵入を悟られていると考えるべきだろう。
 警戒はしなければならない。明確な意志を伴って、戦力を分断したからには、何かしらの意図があるはずだ。


710 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:40:13 hsc9n9HQ0
(ここは……)

 ややあって、開けた場所へと行き着く。
 廊下を抜けたその場所は、丸いホールのような部屋だ。
 歯車やチューブが折り重なった、大仰なモニュメントが造られているのが、印象深い場所だった。
 機械でできているはずなのに、臓物を練り固めたように感じられて、酷く不愉快に感じられた。

「――ゾンダァァァ……」
「!?」

 その時、不意に声が響く。
 反射的に拳銃を生じ、構えながら周囲を見渡す。
 東郷の周りに現れたのは、醜悪な姿をした化物だった。
 人間大の生き物が、異様な鉄の皮膚を有した、機械のゾンビのような怪物だ。
 それが何事かを呻きながら、次々と姿を現している。
 四方を取り囲むように六体。見た目には鈍重な印象を受けるが、どうするか。

「ここを訪れる者が現れるとは。想定よりも早かったな」

 新たな声が頭上から響いた。
 東郷のいる部屋の天井は、巨大なモニターだったのだ。
 そこに映し出されたのは、顔。
 しかしその両目はレンズで、皮膚の下に覗くものはチューブだ。
 無数の機械を蠢かせる、おぞましくも醜い金属の顔が、大写しになって姿を現していた。

「……私は戦いに来たのではありません」

 直感的に理解する。
 これがこの空間を支配する、サーヴァントの正体なのだと。
 身を守るバルクホルンはいない。令呪で召喚したとしても、もはや敵の攻撃の方が早い。
 手にしたピストルを消し去ると、東郷は両の手を掲げて、頭上の顔へと語りかける。

「私の名前は東郷美森。ここへは情報を得るために来ました」

 力が通じないのであれば、言葉で命を繋ぐことだ。
 東郷は目的を正直に告げた。



 パスダーの体内に侵入者が現れた。
 その知らせは、通学する気でいた小日向未来に対して、大きな衝撃を与えた。
 鞄の準備も投げ出して、すぐさま家を飛び出しアジトへ向かう。
 あの巨体だ。さすがにそう簡単に攻め落とされはしないだろうが、どうなるか分かったものではない。

《つまり貴方は、自分の代わりに戦う手足を欲していると?》
《その通りだ。我が身は未だ完全ではない……マスターを矢面に立たせることも、危険であることは理解している》

 その未来の苛立ちを煽るのは、念話によって中継される、侵入者とのやり取りだ。
 事もあろうにパスダーは、包囲したはずの侵入者に対して、同盟交渉を持ちかけだしたのだ。
 戦う意志がないのなら、という、奴の前置きは理解できる。
 だがもしもそれが建前で、本当は反撃の機会を、虎視眈々と狙っていたのなら、一体どうするというのだ。


711 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:40:34 hsc9n9HQ0
(でも、確かに今の私では……)

 それでも、どうしても思ってしまう。
 これで上手くいったならば、確かに心強くはなるだろうと。
 悔しいが、現状の自分達の戦力が、心もとないのは事実だ。
 烏合の衆のゾンダー人間に、自らは動くことができないパスダー。前線に立つ自分の力も、恐らくはサーヴァントには敵わない。
 それが他の陣営と、一時的とは協力できるなら、確かにぐっと楽にはなるだろう。
 頑張ると決めたはずなのに、そんな風に思ってしまう。そんな自分が情けなかった。

《見返りとしてお前には、私の軍勢の一部と、いずれ満ちる我が力を、貸し与えることを約束しよう》
《断るのなら、このまま……ということですか》
《好きに受け取ればいい。私が求めているのは思考ではなく、答えだ》

 やがて入り口となる廃屋が見えてくる。
 もっと近くに作っておくべきだったか。この日ばかりは、己の判断を呪った。
 開けっ放しの入り口に飛び込み、ダンボールの撤去された、地下室への階段に向かう。

《……分かりました。その同盟、お受けしましょう》

 その言葉が聞こえてきたのは、最初の一段目に踏み込む直前だ。
 結局侵入者との同盟は、マスターである自分が、一言も意見を発することなく締結された。
 何事もなく事態が終息した――その事実は彼女をほっとさせるのと同時に、軽く苛立たせもしていた。

《マスター。そこにいるサーヴァントを、私の元へと案内してもらおう》

 その上、ようやく自分に話しかけたと思ったら、今度は雑用のお申し付けときた。
 断ることのできない自分に、またしても情けなさを覚えながらも、未来はパスダーの要求に応じる。
 果たして階段を降りた先に、もうもうと立ち込めていたのは、火薬の匂いと煙だった。

「……貴様か、こいつのマスターは!」

 灰色の闇の向こうには、一つの人影が見えている。
 軍服をかっちりと着込んだ、若い女性の姿があった。
 その身に携えた装備は、大仰なロケットランチャーと、無骨に光る機関銃。
 そして足元をすっぽりと覆い、光のプロペラを回転させる、ロケットのような形状のブーツだ。
 厳格な上半身に反比例し、何故か下半身の方は、ビキニパンツ一枚という格好なのが、ひどく印象に残るサーヴァントだった。


712 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:41:17 hsc9n9HQ0


「正気か、マスター!? こんな得体の知れない奴と、同盟関係を結ぶなどと!」

 当然のように怒られた。
 マスターだという高校生の少女が、連れてきたバルクホルンの第一声が、これだ。
 彼女を悪く言うわけではないが、あの場に置いてきた東郷の判断は、正解だったのかもしれない。

「あくまでも、他のサーヴァントを倒すまでの関係です。いずれ敵に戻るのを承知しているのなら、見た目は関係ないと思いますが」
「それはまぁ、確かに正論だが……だが、だからといって限度があるだろう!」

 バルクホルンは直感的に、この陣地そのものだというキャスターに対して、危険性を感じているようだ。
 それはもちろん理解できる。真っ当な相手であるのなら、あんなトラップを使いはしない。

「改めまして、アーチャーのマスターの東郷美森です。短い間になるでしょうが、よろしくお願い致します」
「……キャスターのマスターの、小日向未来よ。よろしく」
「マスター!」

 だがだからとて、同盟を断っていたならば、殺されていた可能性もあったのだ。
 バルクホルンの糾弾を無視し、傍らのキャスターのマスターに対して、東郷は挨拶の言葉を述べた。
 毒を食らわば皿まで、とも言う。
 この同盟が自分にとって、本当に有益かどうかは分からない。
 だがだとしても、締結してしまった以上は、最大限に利用するしかない。
 そうしなければ、己が大望を果たすことなど、夢のまた夢でしかないのだから。

「これを」

 小日向未来と名乗った少女から、手渡されたものがある。
 紫色の光を放つ、小さくも禍々しい結晶体だ。
 魔力とやらを帯びたそれが、キャスターの存在に由来するものだということは、直感的に理解できた。

「それこそ我が『機界結晶(ゾンダーメタル)』。私の軍団を生み出す力だ」

 キャスターが言うには、この宝具は、NPCの人間に、接触させて用いるのだそうだ。
 これと融合を果たしたNPCは、たちどころに心身を乗っ取られ、あのゾンビの姿に変異するのだという。
 作り物であるとはいえ、一般市民を巻き込むという、勇者らしからぬ行動に、一瞬東郷の心は揺らいだ。

「ありがたく頂戴します」

 だが、それも一瞬だけだ。
 すぐさま思考を切り替えて、美森はそれらを受け取った。
 何しろ東郷美森とは、既に人類の守護者ではない。
 「結城友奈の安寧のために」、「人類を滅ぼす」と誓ったのだ。
 たかだかその程度のことに、感傷など覚えてはいられなかった。
 そうだ。その通りだ。己はそうあるべきなのだ。
 「友奈を救う」ことに対して、迷いを抱いてなどいられないのだ。
 手の中で淡く光を放つ、三つの『機界結晶(ゾンダーメタル)』の紫を、東郷はしばし見つめていた。


713 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:41:37 hsc9n9HQ0


「もう二度と、こんなことはしないでちょうだい」

 己がマスターである小日向未来が、パスダーの独断専行を諌める。
 今回の行動に対して、不満を抱くだろうというのは、予想できたことではあった。

「案ずるな。もう次はない」

 しかし、今回ばかりはそうしてでも、彼女を手に入れたい理由があった。
 それは青い装束を纏い用いる、未知の戦闘技術を得たかったから、というだけの小さな理由ではない。
 既にこの場から立ち去った、あの娘の放っていた気配の方が、魅力的だと感じたからだ。

(奴のマイナス思念は使える)

 東郷美森という少女は、その身から普通の人間以上の、強いマイナス思念を放っていた。
 ストレスを解消へと誘導する、ゾンダーの特性を考えるならば、それは魅力的な感情だ。
 それだけの思念を誘導し、目的のために動かせたならば、きっと頼もしい戦力になる。
 命を落とすことさえ厭わない、勇猛果敢な鉄砲玉として、目的に殉じてくれるだろう。
 なればこそ、パスダーは東郷を欲した。これほど都合のいい駒は、そうそう見つかるものではなかったのだ。

「……勇者を名乗る存在と、手を組むことになるとはな」
「キャスター?」
「古い記憶だ」

 マスターが気にする必要はないと、パスダーは未来に向かって言う。
 勇者。
 彼女が名乗った称号は、パスダーにとっては特別な、それでいて忌々しい響きを持つ。
 緑の星の遺産を用いた、宿敵達の名乗った名前だ。
 それを己のしもべとして、使うことになる日が来るとは、なんとも皮肉なものだった。
 とはいえ、あれはカインの遺産を使う、くろがねのロボット達とは違う。
 奴が勇者を名乗ろうと、忍び込ませた呪縛に対して、抗う術などないのだから。
 彼女がアーチャーの目を離れ、キャスターと対峙したその時。
 既に四つ目の『機界結晶(ゾンダーメタル)』は、東郷美森の装束に付着し――その身にて息を潜めている。


714 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:43:07 hsc9n9HQ0
【E-2/一般住宅街・廃屋前/一日目 早朝】

【東郷美森@結城友奈は勇者である】
[状態]魔力残量9割5分
[令呪]残り三画
[装備]スマートフォン、『機界結晶(ゾンダーメタル)』(肉体と融合)、車椅子
[道具]通学鞄、『機界結晶(ゾンダーメタル)』×3
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯の力で人類を滅ぼす
1.未来達と協力し、他のサーヴァントに対処する
2.状況に応じて『機界結晶(ゾンダーメタル)』を用い、手駒を増やす
[備考]
※『機界結晶(ゾンダーメタル)』によって、自身のストレス解消(=人類を殲滅し、仲間達を救う)のための行動を、積極的に起こすようになっています。
 『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植え付けられていることには気づいていません。
※鹿目まどかの生存に気付いていません
※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。

【アーチャー(ゲルトルート・バルクホルン)@ストライクウィッチーズ】
[状態]健康
[装備]ディアンドル
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.自分でも使いたいとは思うが、聖杯はマスターに優先して使わせる
2.未来およびそのサーヴァント(=パスダー)に対する不信感
[備考]
※美森の人類殲滅の願いに気付いていません。言いにくいことを抱えていることは、なんとなく察しています
※鹿目まどかの生存に気付いていません
※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。


715 : 冷たい伏魔 ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:43:26 hsc9n9HQ0
【???/地下・パスダーの体内/一日目 早朝】

【小日向未来@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]神獣鏡、『機界結晶(ゾンダーメタル)』(神獣鏡と融合)
[道具]『機界結晶(ゾンダーメタル)』×5、ゾンダー人間×10
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.パスダーの準備が整うまでは、自分が矢面に立って戦う
2.一応東郷とは協力し合う
3.勝手な行動を取ったパスダーに対して苛立ち
[備考]
※『機界結晶(ゾンダーメタル)』によって、自身のストレス解消(=響が戦わずに済む世界を作る)のための行動を、積極的に起こすようになっています。
 『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植え付けられていることには気づいていません。
※鹿目まどかを倒したと思っています
※東郷美森&ゲルトルート・バルクホルン組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。

【キャスター(パスダー)@勇者王ガオガイガー】
[状態]健康、魔力確保30%
[装備]なし
[道具]ゾンダー人間×6
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.世界樹と融合し、宝具発動に必要な魔力を確保する
2.東郷達を利用する
3.いざという時には『機界結晶(ゾンダーメタル)』を使い、未来と東郷の思考を誘導する
[備考]
※東郷美森&ゲルトルート・バルクホルン組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。


716 : ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 03:43:39 hsc9n9HQ0
投下は以上です


717 : 名無しさん :2015/10/10(土) 04:25:33 swJ8ZUpc0
投下おつー
あー、未来は完全にパスダーに手綱握られてるな―
しかもこいつその上で東郷さんにゾンダーメタルまで植えつけやがったか
確かにストレスありまくり状態だもんな……


718 : ◆nig7QPL25k :2015/10/10(土) 20:53:18 hsc9n9HQ0
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、高町なのは、立花響、スバル・ナカジマ、両備、ハービンジャー、忌夢、呀で予約します


719 : ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:13:54 70n1I/1A0
エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールを追加予約します


720 : ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:55:37 70n1I/1A0
投下します


721 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:57:04 70n1I/1A0
「がっ……!」

 無様な声を上げながら、男が一人倒れ伏す。
 包丁を片手に現れた、取るに足らない通り魔だ。確か、ハリウッドと名乗っていたか。

「こいつじゃない」

 不埒な男を見下ろしているのは、如意棒を携えた女――忌夢だ。
 眼鏡の向こうの眼差しは、不機嫌そうにひそめられている。
 当然だ。探していたはずの通り魔は、この男ではなかったからだ。
 サーヴァントを召喚することもなく、魔術礼装も持っていない。
 令呪を確認するまでもなく、これが噂のマスターでないことは、察することができた。

「喰え、バーサーカー」

 背後の暗黒騎士へと命じ、その魂を取り込ませる。
 恐らくこの男は、どこかに潜んだマスターによって、幻術か何かで操られたのだろう。
 あるいは、人を操る礼装によって、切り裂かれた被害者なのかもしれない。
 こんな奴が出歩いているということは、既に本物の通り魔は、雲隠れしているのかもしれない。
 であれば、これ以上の探索は無駄か。今夜はこのまま家に帰って、明日に備えて寝るべきか。

「……?」

 その時だ。
 遠くの方から、爆発の音が、聞こえてきたような気がしたのは。

(あっちは確か、特級住宅街か?)

 そういえばこの街にはもう一つ、噂があったことを思い出す。
 姿を現さぬ戦闘者の、正体不明の爆発音だ。
 あるいはその音の主が、この先で戦っているのかもしれない。
 潰し合うのなら好きにすればいいが、生き残った者を仕留められれば、こちらも優勝に近づける。

(行ってみるか)

 無理はしない。だが見逃すこともしない。
 忌夢は爆発の方に向かって、ゆっくりと歩みを進み始めた。


722 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:57:51 70n1I/1A0


 時間は少し巻き戻る。
 これは開戦の直前――一撃目をかわした高町なのはが、襲撃者と対峙した時のことだ。
 黄金の鎧を身にまとい、不敵に笑う大男を、視界に捉えたその時のことだった。

「……戦う前に、一つ聞かせて。貴方とそのマスターの目的は何?」

 抱え込んだマスターのルイズを、ゆっくりと道路へ下ろしながら。
 油断なく襲撃者を睨み据え、メンターのサーヴァントは問いかける。
 戦闘は避けたいのが本音だ。聖杯の完成は、できることなら、阻止したいと考えている。
 願いを叶えることよりも、その過程で失われる、命を守ることの方を優先したい。
 それはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールもまた、理解してくれていることだった。
 理解して、くれているはずだ。

「知らねぇよ。俺のマスターはそんなこと、聞いても話しちゃくれなかったからな」

 それを一笑に付したのが、現れたキーパーのサーヴァントだ。
 粗野な顔立ちはならず者のそれだが、身にまとう金色のオーラには、強者の放つ気迫がある。
 単純な戦闘能力では、あるいは自分すらも上回るかもしれない。
 打算で考えたくはないが、今後の戦況を考えても、敵にしておきたくはない男だった。

「望みも持たずに人を襲うだなんて……」
「英霊の倫理にもとる、ってか。そいつは見当外れだな。
 ここまで生き残ってきた連中は、どいつもこの戦いを受け入れ、勝ち抜いてきた奴ばかりだ。
 殺しも殺されも覚悟して、戦場に立った奴を相手に、そいつを言うのはお門違いだろ?」

 それは違う。ルイズにそんな覚悟はない。
 偶然巻き込まれた上に、自分勝手な戦いはしないと、面と向かって言われているのだ。
 そう言いかけた己の言葉を、しかしなのはは飲み込んだ。
 分かっていたはずだ。それはあくまで少数派。
 あのスバル・ナカジマがそうであるように、多くのマスターとサーヴァントは、聖杯を獲る覚悟を決めている。
 それを考えられなかったのは、予選の全ての戦いを避け、結界に閉じこもっていたが故か。

「……そっちの理屈に巻き込むな、とは、言わせてもらえないんだね」
「あんまり興ざめなことを言うんじゃねえよ。マスターの願いなんざ知らねぇが、俺にはやりたいことってのはあるんだ」

 これ以上の言葉は通じない。
 少なくとも、交渉の前提条件を知らないキーパーには、どんな取引も通用しない。
 であれば、戦いは避けられないか。
 できるのか。未だ身を守る術しか知らない、未熟なマスターを庇いながら、この敵を退けることが。
 張り詰めた空気がその場を満たし、月明に頬の汗が光る。

「っ!」

 瞬間、敵の姿が膨れた。
 先に動いたのはキーパーだ。策もブラフも何もない、真っ向からの突進だ。
 恐らく速度は敵の方が速い。不意を打たれたこの状況では、回避の加速は追いつかない。


723 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:59:06 70n1I/1A0
「このくそったれた状況で、少しはマシな戦いをする――そいつがこの俺の望みってやつよ!」

 至近距離。次に来るのは拳か。
 低く踏み込んだ姿勢から、恐らくはアッパーが来るだろう。
 杖を繰り出す。呪文を紡ぐ。防御のラウンドシールドを展開。

(え――!?)

 何だ、これは。
 明確に知覚できたのはそこまでだ。
 その疑問の内容が、いかなものであったのかも、認識することはかなわなかった。

「あぅっ!」

 その前に猛烈な鉄拳が、杖ごとなのはを吹き飛ばしたからだ。
 砕け散る桜色の魔力光と共に、白いジャケットが宙を舞う。
 重い。とてつもなく強い。思考が途切れてしまったのは、意識が飛んでいたからかもしれない。
 サーヴァントとして強化されたはずの体が、ぎしぎしと軋み始めている。
 痛む体を強引に動かし、飛行魔法で姿勢制御。杖の先端に魔力を込めて、牽制の準備を整える。

「アクセルシューター!」

 解き放たれたのは流星雨。
 光り輝く奇跡を描く、高速の誘導射撃魔法だ。
 出し惜しみはしない。総計32の魔力弾を、発射タイミングをずらしつつ、次から次へと叩き込む。
 夜空を切り裂く魔弾の数々を、しかしキーパーは捌ききった。
 ほとんど不可視と言っていい、とてつもない速度の手捌きで、次々と弾丸を叩き落としたのだ。

(あれだ……!)

 攻撃を低速のディバインシューターに切り替え、ルイズを庇うように位置取りながら、なのはは敵を見定める。
 先の拳に感じた驚異は、正確には重さに対してではなかった。
 キーパーの放った鉄拳は、あまりにも素早すぎたのだ。
 予測通りの攻撃だった。防御の展開時間もあった。
 にもかかわらず、黄金の右アッパーは、ラウンドシールドの完成前に命中し、不完全な防御を打ち砕いた。

「レイジングハート!」

 己が宝具へと問いかける。
 『不屈の心はこの胸に。そしてこの胸に小さな勇気と奇跡を(レイジングハート・エクセリオン)』へと、拳の正体を問いただす。

『敵の攻撃速度の平均は、29万9千メートル毎秒。光の速度に匹敵します』
「光速!?」

 音速の間違いではないのかと、なのはは相棒へと問い返した。
 そもそも数度見ているとはいえ、そこまで出鱈目な速度を、よくもまあ計測できたものだ。


724 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 18:59:28 70n1I/1A0
『マスターが初撃を回避できたのは、サーチャーで襲撃を察知し、攻撃を実行する前から、回避行動を起こしていたからです』
「つまり、それは……」
『まぐれです』

 まともに相手をしていては、とてもかわしきれはしないと。
 インテリジェント・デバイスが導いたのは、絶望的な回答だった。

「知らずにかわしたってのか。そいつはある意味すげぇ話だ」

 せせら笑うキーパーに対して、なのはは緊張した表情を浮かべる。
 それほどの速度があるのなら、もはやマスターの力量が、整っているいないの話ではない。
 一瞬でもマスターの懐に入られれば、ルイズでなくても間違いなく即死だ。
 であれば通すわけにはいかない。距離が開いた状態のまま、一歩も動かさずに制圧する。

「バスター!」

 もはやなのはに躊躇はなかった。
 足を止めるための攻撃ではなく、敵を倒すための攻撃に移った。
 砲撃魔法、ディバインバスター。高火力での遠距離戦を得意とする、高町なのはの必殺技だ。
 膨大な魔力の奔流は、太陽の光輝すらも飲み込み、塵一つ残らず焼滅させる。

「――無理すんなよ!」

 その、はずだった。
 しかし耳に飛び込んできたのは、直撃を受けたはずのキーパーの声だ。
 それもそのはず、なのはが狙った太陽の鎧は、既にその場には見当たらない。
 そこにいたのは太陽ではなく、暗がりに溶けて潜む闇だ。

「シャドーホーンッ!」

 振り返った背後に現れたのは、不定形の黒い影。
 それが形と色をなし、再び現れたのが黄金の鎧だ。
 恐らくは身を歪め姿を変えて、縦横無尽に駆け巡り、ここまで回り込んできたのだろう。

「ぐっ!?」

 それだけの思考ができたのは、背後から殴り飛ばされて、距離を開けられた後だった。

「メンター!」
「別にこのガキが目当てじゃねえんだ。お前を倒すことができれば、それでも勝利条件は整う」

 ルイズの上げた声に対して、キーパーは振り向きもしなかった。
 その存在をまるきり無視し、あくまでも道路に転がるなのはに対して、鎧の男は語りかける。

「雑魚の骨をへし折ったって、大して面白みもありゃしねえんだ。それよかお前と戦った方が、いくらか戦り甲斐もあるってわけよ」
「くっ……!」
「さぁ、来いよ! タイマン張ってやるって言ってんだ! 他のことなんざ全部忘れて、ぶっ殺すことだけ考えて来いや!」

 両手を大きく広げながら、キーパーは高らかに宣言した。
 易い敵を眼中にも置かず、強い敵だけを狙って戦う。それは間違いなく驕りだ。
 しかし彼ほどの大英霊ともあれば、それは相応の自信に変わる。
 やれるのだ。そんな非効率な戦いが。
 そう確信できてしまうことが、何よりもぞっとする話だった。


725 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:00:00 70n1I/1A0


「勝手言ってんじゃないわよ、キーパーの奴……!」

 そしてそんな状況を、苛立ちと共に見る者がいる。
 恐らく戦いの現場で、最も不機嫌そうな顔をしているのが、キーパーのマスターであるはずの両備だ。
 屋根の上に身を潜めながら、彼女はしもべであるハービンジャーの姿を、じっと見下ろしていたのだった。

(どう考えたって、あの貧乳チビを殺した方が、さっさと片付く話じゃない!)

 自分の体型は棚に上げながら、両備はそんなことを思う。
 警備の連中が騒ぎだそうと、魔術師達が割り込んでこようと、そんなことは問題ではない。
 あの激烈な強さを持ったハービンジャーなら、NPC連中ごときは造作もなく、蹴散らすことが可能だからだ。
 両備が問題視しているのは、NPCではなくPC――他のマスターの介入である。
 あのメンターなるサーヴァント、実力で劣っている割にはよく粘る。
 タイマンでなら勝てるだろうが、他に一人二人と数が増えれば、また結果も変わってくるかもしれない。

(もういい! あいつは両備が殺る!)

 そうなっては危険だ。
 魔力の少ない両備には、長期戦をする余裕などないのだ。
 長大なスナイパーライフルを取り出し、眼下の敵マスターに狙いを定める。
 敵味方が好き勝手に暴れ回り、照準を遮る戦況下においては、狙撃の難易度は跳ね上がる。
 だが、何もしないよりはマシだ。自分はお荷物ではないのだ。
 魔力がなかったとしても、只人を超越した忍であるなら、こうして戦うことはできる。
 それを分からせてやると考え、両備は一人スコープを覗き、トリガーを引くタイミングを待った。



「エクシードモード!」

 高町なのはの装束が変わる。
 ミニスカートの丈が伸び、赤いリボンが姿を消す。
 より戦闘的になったスタイルこそ、高町なのはの本領だ。
 燃費を犠牲にしながらも、長所を伸ばしたこの姿ならば、彼女の戦闘能力を、100%発揮することができる。

「はっ!」

 マスターの魔力を使い切らない程度に、それでいて最大限の火力を展開。
 無数の弾丸を織り交ぜながら、敵の退路を塞ぎつつ、大火力の砲撃を叩き込む。


726 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:00:26 70n1I/1A0
「ぬぉおおッ!」

 それでも致命傷には至らなかった。
 爆煙をかき分け現れるのは、絢爛豪華な暴れ牛だ。

「嘘でしょ!? 今のも効いてないの!?」

 ルイズが悲鳴にも似た声を上げる。
 正確にはそれは誤りだ。鎧から覗いた強面の顔には、微かに傷がついている。
 問題はそのダメージが、奴にとってはあまりにも、些細なものにしかならなかったことだ。

『Protection!』

 攻撃動作に入られてからでは遅い。どこから攻められても構わないように、全身を覆うタイプの魔法を選択。
 サーヴァント化して強化された感覚を研ぎ澄まし、なおかつ経験則で攻撃の狙いを予測しても、恐らく攻撃の先を打てるのは一発。
 これがかのアーサー・ペンドラゴンのように、超高度の直感スキルの持ち主であれば、四度か五度は凌げるだろう。
 それができないのであれば、無理に捌くことはしない。真っ向から受け止める以外に防御策はない。

「でぇいっ!」

 それでも、その目論見をご破産にするのが、キーパーの豪腕の破壊力だ。
 振りかざす拳が雷を纏った。バリアと接触するストレートが、炸裂し稲妻を撒き散らした。
 ルイズも巻き込まれるのではないか。一瞬そう思えるほどの余波が、スパークを形取って爆散し、石畳を次々と抉り壊す。
 今のでバリアの耐久力の、そのほとんどが削り取られた。恐らく次は耐えられない。
 無駄な壁は壊される前に、壊して有効に使わせてもらう。

「バースト!」

 攻勢防御、バリアバースト。
 展開した防壁を爆発させ、対象を吹き飛ばす荒業だ。
 魔力の調節を行えば、衝撃だけを自分にも伝え、無理やり距離を開けることもできる。
 目眩ましの爆煙から飛び出し、上空で姿勢制御を取った。
 敵がラッシュを仕掛けてくるのではなく、一撃の重みで仕留めにかかるタイプだったのは、ある意味では僥倖だったと言える。
 そういうタイプの人間であったなら、こんなことをできるような、隙を作られることもなかった。

(あれは……!)

 これもまた、だからこそなのかもしれない。
 飛び退ったその先で、銃を構える何者かの姿を、見下ろすことができたのは。

(間違いない! あの子……このサーヴァントのマスター!)

 茶色い髪を二つに結んだ、ティーンエイジャーの女の子だ。横顔から感じられる年齢は、ルイズや響と同じくらいか。
 屋根の上に寝そべりながら、その手に握っているものは、物々しいスナイパーライフル。
 これはキーパーも承知しているのか、あるいはマスターの独断なのか。
 黒光りする銃口は――地上のルイズへと向けられている!


727 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:01:35 70n1I/1A0
《マスター、危ないっ!》
「えっ!?」

 念話で危険を訴えながら、自身は杖を少女へと向ける。
 アクセルシューターを形成し、手元目掛けて一発発射。
 引き金を引くその直前。なんとか着弾が間に合った。

「きゃっ!?」

 悲鳴と共に、トリガーが引かれる。
 ぱぁんと撃たれた銃弾は、しかし狙いからは大きく外れ、明後日の方向へと消えていった。

「何すんのよ!」
「それはこっちの台詞!」

 こちらを睨みつけキレる少女に、なのはは至極真っ当な反論を返した。

「余計なことすんじゃねえ! 勝負が終わっちまうだろうが!」
「何よ! 終わらせようとしてんじゃな……、ぅあっ!?」

 揉めているところを狙って、マスターにバインド魔法を仕掛けた。
 キーパーには通用しないだろうが、相手は生身の人間だ。すんなりと拘束は成功し、銃は無様に屋根を転がる。

「ごめんね。お話は後で聞かせてもらう。だから今は、そこでじっとしてて」
「……ふん! 両備を懐柔しようったって、無駄よ」

 先の話のことを言っているのだろうか。
 どちらにせよ、今の自分には交渉の余裕はない。
 何しろ敵の実力を考えれば、逃走という選択肢すら取れないのだ。
 すぐさまなのはは戦線に戻り、敵サーヴァントを睨み据えた。

「今までの流れで、だいたい分かった」

 対峙するなのはを見据え、キーパーが言う。

「お前のその戦い方……俺を恐れてるってだけでもなさそうだ。
 どうやら殴り合いを避けて、飛び道具で制圧するスタイルが、元から得意だったってクチみてぇだな」

 小休止のつもりなのだろうか。
 両腕を胸の高さで組んで、黄金のサーヴァントが語りかける。


728 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:02:57 70n1I/1A0
「そいつは俺の趣味じゃねえが……まぁいい。だったらこっちもお望み通り、そいつに合わせてやろうじゃねえか!」

 否。違った。
 あれは余裕の構えではなく、攻撃の予備動作だったのだ。
 それを悟ることになるのは、異常な魔力の高まりを、なのはが感じた瞬間だった。

(これは、何……!?)

 迸る黄金が空気を歪める。
 轟然と唸る雷が、キーパーの周辺でぱちぱちと弾ける。
 何をしようとしているのか。そこまでは理解が及ばなかった。
 だが確実に、何かがある。恐らく相手が狙っているのは、宝具クラスの必殺技だ。
 これまでとは比較にならない一撃が、来る。

(シールドとバリアを最大出力……!)

 間に合え。そう心に念じ続けた。
 防御魔法を限界まで強化し、迫り来る何かに向けて備える。
 当然突っ立っているつもりもない。光の翼を羽ばたかせ、上空への退避を図ろうとする。
 しかし、そちらは遅かった。
 これより放たれるキーパーの絶技を、完全にかわし切るためには、加速が足りなかったのだ。

「――『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』 ッ!!!」

 そのことを理解することすら、高町なのはには許されなかった。
 雄叫びが戦場を揺るがした瞬間、メンターのサーヴァントの思考は、爆音と雷光の彼方へと消えた。



「なっ……」

 何よそれは。
 それを言うことすらかなわず、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、へなへなとその場にへたり込んだ。
 目の当たりにした光景は、それほど衝撃的なものだったからだ。
 キーパーが何事かを叫んだ瞬間、世界の光景は一変した。
 荒れる突風と轟く光が、突然キーパーの目の前から噴き出し、メンターの腰から下を飲み込んだのだ。
 そのままちぎれ飛んだりするような、スプラッターな光景は見ていない。
 しかし攻撃を受けた高町なのはは、引きずられるようにして衝撃波に呑まれ、全身を滅多打ちにされながら吹っ飛ばされた。
 さながら竜巻が通り過ぎたような、激烈な破壊痕の向こうには、ぴくぴくと震えるメンターが、無様に倒れ伏している。
 あのなのはが、為す術もなくやられた。
 自在に魔法を使いこなし、それを教えてくれた師匠が、ゴミのように蹴散らされたのだ。
 輝きを失った白のジャケットは、ルイズに残された希望の全てを、残らず摘み取るには十分な光景だった。


729 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:04:08 70n1I/1A0
「いい音だな。骨の折れる音ってのはよ」

 どこか悦を含んだ声で、黄金のサーヴァントが呟く。
 大地に刻まれた破壊の痕を、のしのしと悠然と歩きながら、キーパーは戦果の余韻に酔う。

「だがな、お前の心はまだ折れちゃいねぇ。まだ立ち上がる気でいやがる」

 遂に金色の具足は、なのはの元へと到達した。
 ゆっくりとしたその歩みを、止めるための力すら、なのはには残っていないのだろうか。
 未だダメージの抜けきらぬ体は、伸ばした指を震わせながら、地を掴もうとするのが精一杯だった。

「その音を聞かせてもらうまでは、終わりってわけにもいかねぇからな」

 無理だ。こんなの勝てっこない。
 もはや戦いを続けるどころか、立ち上がる力すら残ってないはずだ。
 もういい。自分など見捨ててくれていい。いっそ令呪で命じてもいい。
 メンターは十分に頑張った。十分過ぎるほどに戦ったのだ。
 だからもうやめてくれ。せめて逃げることを考えてくれ。
 相手が死人であることも忘れ、ルイズは声ならぬ声で必死に祈る。

「きっちりと、とどめを刺させてもらうぜ……!」

 黄金の右手がなのはに伸びる。
 白服の体を掴み上げんと、キーパーの手が伸ばされる。
 誰か。どこの誰でもいい。奴のその手を止めてくれ。
 悔しいが自分には力が足りない。ゼロでなくなったとはいえど、未だ力のないルイズには、奴を止める手立てがない。
 だからどうか。誰か来てくれ。
 誰か。

(誰か……っ!)

 誰か――メンターを助けてくれ。

「――ぅおおおおおおおおおおっ!!!」

 その、瞬間だ。
 彼方から聞こえる雄叫びと、エンジンの音を耳にしたのは。
 闇を切り裂き駆け抜ける、青き彗星を目にしたのは。

「うん……?」

 黒鉄の拳が胴を捉える。
 白銀のタービンが唸りを上げる。
 爆裂する魔力は衝撃となり、キーパーの懐へ叩き込まれる。

「ここから……離れろぉぉぉッ!」

 瞳を緑に燃やすのは、スバル・ナカジマの横顔だった。
 先ほど同盟を結んだばかりの、キャスターのサーヴァントの拳があった。
 大恩ある師匠の窮地に駆けつけ、怒りを燃やす姉弟子は、暴虐のサーヴァントの体躯を、その場から猛然と押し出したのだった。


730 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:06:08 70n1I/1A0


 手応えは大したものではない。恐らくはダメージもないのだろう。
 金の甲冑を身に纏う、黄金の英霊を退かせたのを見ると、スバルは素早く飛び退り、己が師匠のもとへと降り立つ。

「スバ、ル……」
「揺れます。一瞬だけ我慢して!」

 それだけを短くなのはに告げると、スバルはその場から飛び退いた。
 ルイズのいる辺りへと降り立ち、ゆっくりとその体を下ろすと、自身は再び敵を睨む。

「メンターさんのこと、お願い」
「あ……え、ええ」

 かけた声はなのはではなく、すぐ傍のマスターに対してのものだ。
 頷いたのを確認すると、すぐさま鋼の両手を構え、臨戦状態へと移行する。
 衝撃と破壊を司る、右手のリボルバーナックル。
 反撃と粉砕を司る、左手のソードブレイカー。
 攻防一体のシューティングアーツが、正体不明のサーヴァントに対して、油断なく構えを取り相対する。

《響、屋根の上にマスターがいる》
《分かりましたッ! こっちは任せてくださいッ!》

 戦うことのできない響は、敵マスターの見張りに向かわせた。
 どれほどの戦闘能力があろうと、強固なバインドで縛られた身だ。危害を加えられることはないだろう。

「どこのどいつかは知らねぇが、せっかく機嫌のよかったところに、横槍かましてくれたんだ」

 興ざめさせたら許さねぇぜと、金の鎧が不敵に笑う。
 相手の手の内は分からないが、全盛期の肉体を持つ高町なのはを、ここまでズタボロにした男だ。
 勝てる勝てないはさておいて、恐らくは、ただでは済まないだろう。

「要らない心配だよ」

 だとしても、一つだけ、確信していることがある。

「これ以上は他の誰にも、手を出させるつもりはないから!」

 たとえこの身が砕け散っても、なのはとルイズは守ってみせる。
 よしんば響に手を出そうとしても、絶対に守り通してみせる。
 否――砕けるわけにはいかないか。
 立花響という少女を救い、聖杯を渡してやるためにも、生きて切り抜けなければならないのだ。


731 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:07:45 70n1I/1A0
「おおおぉっ!」

 足の車輪を走らせる。
 『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』を、トップスピードで猛進させる。
 跳躍し、回し蹴りを見舞った。左手で防がれたもののそのまま落下し、着地と同時に足を払った。
 ぐらついた体躯にストレートを打ち込み、リボルバーキャノンを発動。
 シュートの時には放つ魔力を、そのままゼロ距離で炸裂させて、金色の巨体を吹っ飛ばす。

「なるほど! お前はそっち側のタイプか!」

 そうだろう。そんなことだろうと思った。
 あれほどなのはを痛めつけた相手が、この程度のコンボをいいように食らって、宙を舞ってくれるわけがない。
 こちらの力量を見極めるため、敢えて攻撃を食らっていたのだ。
 そうだと分かっていながらも、スバルは突っ込まずにはいられなかった。
 攻撃し続けることでしか、止められない相手なのだろうと、本能的に察知していたのだ。

「面白ぇ……面白ぇぞ!」

 その姿勢を、黄金は讃える。
 対等に戦うライバルとして、という意味の言葉だとは思えない。
 力差を自覚しながらも、それでもなお立ち向かってくる、その健気さを可愛がっているのだ。
 屈辱だ。だが受けたままでは終わらない。
 この悔しさはその悪人面を、地に叩きつけることで返す――!

「ふんッ!」

 その、はずだった。
 振りかざされたハンマーパンチを、頭部に叩き込まれるまでは。

「ぁっ……」

 何だ。
 一体何が起こった。
 揺らされたのか。戦闘機人の肉体が、脳震盪を起こしたというのか。
 いいやそもそも、自分はいつ、今の攻撃を食らったというのだ。
 速い遅いの問題ではなく、両手が視界から消えた次の瞬間、既に殴られていたような感じがした。

「気をつけて! そいつ、光の速さがどうとかって言ってた! よく分からないけど、凄く速い!」

 朦朧とする意識の片隅に、そんな声が聞こえた気がした。
 なるほど、光速の拳ときたか。それは確かに速いわけだ。師匠が嬲られるのもうなずける。
 恐らく自分の世界では、そんな速度に至れた者など、誰一人としていなかっただろう。
 次元世界とは実に広い。こんな怪物じみた男を生み出し、英霊の座へと送り出し、この場に招いたというのだから。


732 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:08:19 70n1I/1A0
「ぬぅぅりゃあっ!」

 次の一撃が迫り来る。
 知覚した瞬間にはもう手遅れだ。
 がら空きの脇腹を目掛けて、必殺の光速拳が叩き込まれる。

「………!」

 一瞬、足元がぐらついた。
 だがそれだけだ。倒れてはいない。どころか黄金の拳には、黒鉄の右手が伸ばされている。

「あん?」
「いくら、すごいと言ったって……!」

 その身を光で覆う姿が、金色のサーヴァントには見えただろう。
 なのはと同じ防御魔法の、プロテクションを使っていたのだ。
 意識を揺さぶられた瞬間に、それを発動できたのは、ひとえに己が相棒のおかげだ。
 『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』には、いくつかの魔法の発動を、自己の判断で発動するよう、生前から示し合わせている。

「たかだか――音速の、90万倍ッ!」

 ならば平気だ。戦える。
 たとえ迫り来る拳が、どれほど素早く重かろうとも。
 急所を打たれた体が軋み、口から血反吐を吐き散らそうとも。
 それでも死んでいないのならば、まだ十分に戦える。
 たとえ何十発叩きこまれようと、即死に至らないのであれば、全て受け止め耐え切ってやる。

「ディバイィーンッ……!」

 そうして打ち合い続ければ、待っているのは、自分の勝利だ。

「バスタァァァーッ!!」

 スバル・ナカジマは確信していた。
 本気でそう信じ込んでいた。
 でなければ勝てる戦いも、決して勝てはしないのだと、己にそう言い聞かせていた。
 奇跡が起きなければ勝てないとしても、その奇跡を掴み取るためには、自身が諦めずに戦う姿勢が、絶対に必要不可欠なのだと。
 故に彼女はその手を伸ばした。直伝の砲撃魔法の魔力を、再びゼロ距離から叩き込んだ。
 砲撃魔法の適性のないスバルに、長距離攻撃を放つことはできない。
 それでも、これだけの距離で放てば、魔力減衰などは関係ない。持てるポテンシャルの全てを、ダイレクトに叩き込むことができる。


733 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:09:00 70n1I/1A0
「うぉぉぉりゃぁあああああっ!」

 今度は本当の直撃だった。
 軽く驚いた様子の金ピカ男を、本当に宙へと浮かせてみせた。
 その隙を決して逃しはしない。飛び蹴りを見舞ってダメージを打ち込む。
 着地したところにも手心を加えず、次々と拳打を叩き込んだ。

「やるじゃねえか! 代打としちゃあ、不足はねぇぜ!」

 にぃと不敵な笑みを浮かべて、敵が拳を振り下ろす。
 回避は当に捨てていた。振り上げた腕から攻撃を予測し、急所をそれから庇っただけだ。
 左肩が鉄拳を受け、バリア越しに揺さぶられる。
 問題ない。『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』の判断で、すぐさまバリアの強度を補強。
 それだけの余裕のある魔力は、己がマスターである響から、十分すぎるほどにもらっている。

「まだ、まだぁっ!」

 この程度ではやられはしない。
 ここに来る直前に耳にした、恐らくは宝具によるものであろう爆音を、スバルはまだ聞いていないのだ。
 なのはが受けた切り札を、受けないままに倒れたのでは、弟子として彼女に顔向けできない。
 故にどれほどの拳打であっても、スバルは必死に耐え抜いた。
 迫り来る攻撃の全てを受け止め、持てる力のその全てを、徹底して攻撃に注ぎ込んだ。

《スバル、聞こえる……!?》

 だからこそだろう。その念話を聞けたのは。
 ダメージからようやく復帰し、デバイスを杖とするなのはを、視界に収めることができたのは。

《この場を打開できるかもしれない……そういう方法が、一つだけある。だからそれまで、時間を稼いで!》

 だからこそ、突破口は開けた。
 逆転のための選択肢を、彼女から受け取ることができたのだ。
 合点承知だ。異論などない。
 弟子を頼ってくれるという、最高の栄誉を前にして、断る理由などどこにもない。

《了解っ!》

 必ず時間を稼ぎきり、勝利の策へと導いてみせる。
 それが彼女を奮い立たせ、前へと進む力と勇気を、全身へと巡らせたぎらせていた。


734 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:09:33 70n1I/1A0


 眼下で起きるその戦いを、響には見下ろすことしかできない。
 いやむしろ、現在の自分を思えば、マスターの監視という仕事があるだけ、役に立てている方なのだ。
 であれば、役目を果たすべきだろう。自分にそう言い聞かせながら、響は足元のマスターへと向かった。

「ねぇ……どうして戦うの? 聖杯を手に入れて、何をするつもり?」

 屋根に寝転がり倒れる、茶髪の少女へと、問いかけた。
 恐らくは同い年であろう、オッドアイの娘へと尋ねた。
 敵と相対した時には、まずは話し合いから始める。戦いを避けることができないかどうか、まず最大限の努力をする。
 それは聖杯の獲得以上に、優先しなければならないことだ。
 聖杯を手に入れたいとは確かに思うが、避けられる戦いがあるなら避けたいという思いは、きっとそれ以上に強い。
 それで聖杯をどうするのかなど、後から考えればいいだけのことだ。

「フン……何よ、あんたもあの女と同じクチ?」

 返ってきたのは、憎まれ口だ。
 青と緑の視線を背け、不機嫌そうに少女は言う。

「まぁ、同盟関係だからね……だけど多分、メンターさんがいなくても、私はそう聞いてたと思う」

 そういう性分なんだ、と響は言った。
 誰かが悲しむ争いがあるなら、この手で止めたいと思う。
 誰かが悩んでいるのなら、それを聞いてあげたいと思う。

「この手を伸ばし続けることが、立花響の戦いだから」

 だからこそ、自分はここまで来たのだと、少女へ立花響は言った。

「……どうせ理解できないわよ。そういう奴には」
「何も決めつけなくったって――」
「復讐よ! それが両備の戦う理由。聖杯にかけるべき望みなの」

 復讐。
 恨みを晴らすということ。
 両備と名乗った少女の放つ、鋭く暗い五文字の言葉が、響を遮り突き立てられる。


735 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:10:58 70n1I/1A0
「復讐ッ!? って、そんな……そんなことしたって、何も……ッ!」
「何もならないでしょうね。喜んでくれる人がいるかなんて、死んじゃった今では分からない。
 だけど、両備達はずっとそうしてきたの。この憎しみを晴らさない限り……何にもなれやしないのよ……!」

 仇討ちが何かを生むことはない。
 より多くの悲しみを生みこそすれど、喜ぶべき人間がいない以上、報酬を得ることはないのだろう。
 それでも、それを果たさない限り、自分たちは恨みと憎悪に、一生囚われ続けることになる。
 そうやって両備は生きてきたのだ。今更それまでの道筋を、なかったことにはできないのだ。
 たとえその仇討ちが、見当外れの勘違いだと、咎められたものだとしても。

「でも……でもそれって、どうしても聖杯に願わなくっちゃいけないものじゃ……ッ!」
「どうかしらね……でも、ないよりはマシなのは確かよ。
 悔しいけど、まともに殺り合おうとしたら、とてもかなわないような……そういう奴が相手だから」

 同じことを問われ続け、うんざりして吐き出したのだろう。
 分かったらこれ以上踏み込んでこないでと、両備は顔を背けながら言った。
 響には、何も言葉を返せない。
 それは間違っていると言うのは簡単だ。だが、彼女を理解し説得するには、それでは足りないような気もする。
 その足りない言葉というものが、今の響には見つからなかった。
 考えなしに踏み込めるような、単純な問題ではないのだ。

「!?」

 その時だ。
 不意に爆音が轟き、光が眼下に炸裂したのは。
 敵サーヴァントによるものではない。光の主はメンターだ。
 高町なのはを中心に、莫大な魔力が渦を巻き、何らかの攻撃態勢を整えている。
 恐らくは、切り札を切るつもりだ。
 この戦況を打開するための、最後の一手を打つつもりなのだ。

「……両備ちゃん。私には今、両備ちゃんに対して、かける言葉が見つからない」

 勝負を決めようとしている。
 この一撃で、恐らくは、何かしらが決することになる。
 だとすれば、マスターである立花響も、知らぬふりではいられなかった。
 何ができるか分からなくても、覚悟は決めなければならなかった。

「っ……何よ、馴れ馴れしく名前で……!」
「だけど、生きることだけは諦めないよ」

 この場を戦い生き抜けば、いつか両備ちゃんにかける言葉が、見つかる時が来るかもしれないから。
 決然と口にした響の顔には、既に迷いも戸惑いもなかった。


736 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:11:46 70n1I/1A0


 何よ! 一体何考えてるのよ!
 キャスターが食い止めてるうちに、最大宝具の準備をして、真っ向から迎え撃つですって!?
 あいつ、今の自分の状況を、分かってそんなこと言ってるの!?
 そんなボロボロの体で、そんな無茶なことしたら……どうなるか分かったものじゃないのよ!?
 信じられない! そんな相打ち覚悟の攻撃……下手したら自爆も当然じゃない!
 メンターが死んだら、私だって、強制的に脱落になるのに……!

 ………

 ……分かってる。分かってるわよ。
 そうしなければこの状況を、切り抜けることはできないってことは。
 キャスターは凄く強いけど、それでもメンターと同じくらい。
 キーパーの宝具を一発でも受けたら、きっと同じようにボロボロになっちゃう。
 そうなったら賭けるまでもなく、確実に敗北することになる。
 そうすれば、確率を問うまでもなく……私もここで命を落とす。

 そうよ。分かってたわよ。
 みんな私を生かすために、必死に戦ってたってことくらい。
 私を死なせないようにするために、強い敵に立ち向かい、決死の賭けにも臨んでる。
 それくらい言われなくったって、分かりきってたことだったのよ。

 情けないわ。
 そうまでして戦ってくれているのに、何もできない私自身が。
 そうまでして想ってくれていたのに、真っ先に諦めようとしていた自分自身が。
 何が貴族よ。笑わせるわ。
 力ある者は、力なき者を、その力をもって守らねばならない。
 大きな力に伴う責務――それがノブレス・オブリージュ。
 使い魔達が私のために、必死に戦っているというのに、ご主人様であるはずの私は、何一つその責任を果たしていない。

 ……そんなの嫌よ。御免だわ。

 何ができるかなんて知らない。
 できることがあったところで、通用するかどうかも分からない。
 だけど、それは何もしないってことを、肯定する言い訳にはならない。

 分かったわよ。やってやるわよ。
 それが貴族の務めだから。
 そうあってこそのメイジだから。
 ゼロのルイズでなくなった、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの、果たさなければならない責任だから。
 あんたはその背中をもって、それを伝えたかったんでしょ。

 そうなんでしょ――高町なのは!


737 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:12:34 70n1I/1A0


「っははははは!」

 渦巻く極大の魔力を前に、黄金のサーヴァントが高らかに笑う。
 自分たちの逆転の一手、『胸に宿る熱き彗星の光(スターライトブレイカー)』。
 その気配を察した敵が、その気概を前に大笑している。

「本当に面白い奴らだぜ! これだけやられておきながら、まだそういう手を選んできやがる!」

 ここに来てもなお、この男は、迎え撃つ側でいるつもりなのだ。
 格下からの挑戦を、面白がって受け止める。そういう心構えでいるのだ。
 他人の優越感に対して、これほど不快感を覚えたのは、スバル・ナカジマの人生の中で、一度もなかったことかもしれなかった。

「いいぜ! 相手をしてやるよ! その心、俺のこの小宇宙をもって、真正面からぶち折ってやる!」

 黄金のサーヴァントが魔力を練った。
 稲妻が駆け抜け大気が歪み、揺らめく力場が具現化した。
 その背後に幻視したものは、太陽の光を身にまとう、雄々しくも荒々しき猛牛の姿か。

《スバル! 防いで!》

 恐らくは敵の宝具が来る。
 エースオブエース・高町なのはを、満身創痍にまで追い込んだ、奴のフェイバリットアーツが来る。
 それをこのタイミングで放たれれば、この作戦はご破産だ。
 ならば、守り切ってみせよう。どれほど圧倒的な力であろうと、必ず凌ぎ切ってみせよう。
 そうする他に、この状況を、打開する手などないのだから。

「――『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』ッ!!!」

 雄叫びと共に、衝撃が駆けた。
 最大出力の防御魔法が、びりびりと震え悲鳴を上げた。

「ぐぁっ、ぁああ……!」

 魔力の補填が追いつかない。シールドを張ってそれでもなお、壁越しに肉体が痛めつけられる。
 これまで受けてきた拳とは、根本的に異なる威力だ。
 これが宝具というものか。これが神話の英霊の、必殺の一撃というものか。
 耐えろ。耐え抜けスバル・ナカジマ。
 あれほど膨れ上がった魔力だ。恐らくなのはの切り札も、あと数秒で完成する。
 完全に凌ぎきれなくてもいい。それまでの時間を稼げればいい。
 たとえシールドが砕けても、その時星の煌めきが、大地を照らしさえすれば――

「――わぁあああああああああーっ!!!」

 その時だ。
 もう一つの声と魔力の光が、すぐ傍らで弾けたのは。


738 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:13:11 70n1I/1A0
「るっ……ルイズ!? どうして……!?」
「全く! 何なのよアンタ達は! ご主人様の許しもなしに、勝手に話ばかり進めて! 勝手に無茶ばかりやらかして!」

 割り込んできたのはマスターのルイズだ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、なのはから教わったシールドを張り、スバルの隣に並び立ったのだ。
 あまりにも危険すぎる行動だ。
 そもそもそうやって身を張ったどころで、所詮は人間の力でしかない。サーヴァントの宝具を前にしては、気休め程度にしかならない。

「やるじゃねえか! 雑魚とばかり思っちゃいたが、見直してやるぜ!」
「うっさいわよ、この筋肉ダルマ!」

 それでもルイズは、必死に叫ぶ。
 黄金のサーヴァントすら一蹴し、懸命に魔力を張り続ける。

「困るのよ、ご主人様のこと無視して、勝手に死にに行かれたら……!」
「マスター……!」
「まだ私は、メンターに、何も大切なことを教わってない……それを教えてもらうまでは……絶対に死なせないんだからっ!」

 守られっぱなしではいられない。
 守られて死なれてしまったところで、何も嬉しくは思わない。
 それはプライドが許さないから。それでは目的を果たせないから。
 何よりそういう生き方を、貴族(メイジ)たるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、決して許すことはできないから。
 小さく幼い貴族の娘の、精一杯のプライドの叫びだ。

「……ありがとう、マスター!」

 そしてその小さな叫びは、高町なのはに確かに届いた。
 たとえ気休めの力であっても、それが切り拓いた一瞬こそが、逆転への道を確かに繋いだ。

「『胸に宿る(スターライト)』――」

 魔力が集う。光を成す。
 戦場にばらまかれた己の魔力。味方の魔力に、敵の魔力も。
 それら全てを一点に束ね、己が力へ転換し、一挙に放つ集束魔法。
 絶望的な戦場であろうと、小さな希望を拾い重ね、勝利の確信へと変えてきた、エースオブエースの必殺魔法。
 それこそが闇夜を照らす光――スターライトブレイカーだ。

「――『熱き彗星の光(ブレイカー)』ァァァァ――ッ!!!」

 遂に彗星は放たれた。
 持てる力の全てを込めた、文字通り全力全開の光が、荒れ狂う金牛と激突した。
 宝具対宝具。
 最強対最強。
 神話にその名を刻まれた、古今無双の一撃同士が、世界樹の頂でぶつかり合った。


739 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:14:15 70n1I/1A0
「うぉおおおおおおおおっ!!」

 スバルもまた、その攻勢に加わる。
 左手でルイズを後方へ押し下げ、右手はディバインバスターを放ち、『胸に宿る熱き彗星の光(スターライトブレイカー)』へと束ねる。
 更なる魔力を得た集束魔法は、桜と空色の螺旋を描き、金色の衝撃を迎え撃つ。

「大したもんだ……」

 一瞬、敵サーヴァントのトーンが落ちた。
 面白がるばかりの男の声が、シリアスな響きを宿して聞こえた。
 認めたのだ。この瞬間に。
 戯れるばかりの相手ではなく、本気で挑むべき相手なのだと。
 この一撃の担い手を、遊び相手としてではなく、ライバルと見なすべきなのだと。

「なら! 俺の方も遠慮はしねぇ! 牡牛座の黄金聖闘士の全力――食らいやがれぇぇぇッ!!」

 瞬間、咆哮は爆裂する。
 黄金のサーヴァントの渾身の叫びは、全霊の破壊力となって戦場に満ちる。
 ぶつかり合う力の中心点から、ばちばちとスパークが迸った。
 さながら地上に降りた雷雲。荒れ狂い全てを飲み込むハリケーンだ。
 稲妻は石畳をひっくり返し、遂には家屋を薙ぎ払って、住宅街を炎で染める。
 神話の力がもたらすものは、神話に刻まれた黙示録。遠き伝承の時代に起きた、カタストロフの再現だ。

「駄目! 相手の力の方が、少し強い!」
「せめて……せめてあと、もうひと押しッ……!」

 ここまできて、まだ足りないのか。
 これほどの力を束ねてもなお、奴に打ち勝つことはできないのか。
 いいや、そんなことは認めない。
 なのはが、己が、そしてルイズが。皆が必死に戦い抜いて、掴み取ったこの拮抗を、決して破らせるつもりはない。
 探り続けろ。次の一手を。
 奴の力を打ち砕く、最後の最後のひと押しは――

「――ぉおおおおおおおお――ッ!!!」

 見つけ出すべき最後のピースは、四人目の仲間の歌だった。

「響っ!? その姿……それに、その力は……!」

 現れたのは立花響だ。
 あれほど禁じたシンフォギアを、その身に纏って現れた、スバル・ナカジマのマスターだ。
 おまけに突き出して右拳から、渦を巻き放たれるエネルギーは、今までに見たことのない力だ。
 可能性は一つしかない。
 FG式回天特機装束・シンフォギア、その最終決戦機能――絶唱。
 身の安全を度外視し、聖遺物の力を限界以上に引き出す、自滅覚悟の滅びの歌だ。
 それこそ今の響にとっては、ガングニールの侵蝕を加速させかねない、禁じ手中の禁じ手のはずだ。


740 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:14:58 70n1I/1A0
「死にませんッ!」

 されど、それを否定する。
 スバルの脳裏によぎった思考を、立花響は切り捨てる。

「生きることを諦めない……そのために伸ばしたのがこの手だからッ! だから何があったって、死んでも生きて帰りますッ!」

 なんとも滅茶苦茶な理屈だ。死んだら生きて帰れないだろうが。
 そう言ってため息をつく気になれないのは、自分も同じ穴の狢だからか。
 いいだろう。ならば頼らせてもらおう。
 力強く笑みを浮かべ、スバルは意識を集中する。
 途切れた戦意を繋ぎ直し、再び攻勢へと転じる。

「胸に宿ったこの歌が、神話の調べであるのなら……ッ!」

 渦を巻く力が星へと宿る。
 七色に輝くフォニックゲインが、彗星の煌めきと重なって、虹色の道を切り拓く。

「――伝説を貫けッ! ガングニィィィィ―――ルッ!!!」

 響き渡る少女の叫びが、戦場を揺るがす力と変わった。
 未来へと伸ばすその右腕が、奇跡をもぎ取り握り締めた。
 二人分のサーヴァントの、宝具クラスの必殺魔法。
 そして世界樹の影響を受け、それに匹敵する出力を得た、暴走状態の絶唱。
 一つに束ねられた三つの奇跡は、その力を乗算式に束ね、太陽を目指す翼となる。
 黄金の暴威に真っ向から挑み、日輪すらも突破して、どこまでも羽ばたける力となる。

《脱出っ!》

 なのはの念話を耳にしたのは、ちょうどその時のことだった。
 撤退を指示する号令と、抑えきれない力の破綻は、ほとんど同時に起きていた。
 一歩も退かない二つの力が、最後に行き着く終着点は、双方共倒れの対消滅。
 破綻を来たした均衡は、想像を絶する大爆発となり、戦場を音と光で染めた。


741 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:16:17 70n1I/1A0


 『胸に宿る熱き彗星の光(スターライトブレイカー)』をもって、敵の宝具を迎撃する。
 最悪突破できなかった場合は、その混乱に乗じて戦線を離脱。各自の判断で撤退する。
 それが高町なのはの考案した、状況を打開するための作戦だった。
 荒れ狂う雷鳴と爆煙の中、スバルはなんとか響を抱き上げ、それを実行してのけた。
 極限状態での行動力は、半生以上を費やした、レスキュー現場での経験則か。
 死してなお、役に立つとは思わなかった。人生とは一度終わってからも、何が起こるか分からないものらしい。

「………」

 立花響は、眠っている。
 限界を超えた力を使い、シンフォギアの変身も解かれ、気を失い瞳を閉じている。

「お疲れ様」

 その無茶を、責める気にはなれなかった。
 死にに逝くための戦いではなく、生きるために挑んだ姿を、今は叱るつもりにはなれなかった。
 もちろん、二度とあんなことはするなと、目を覚ましたら言うつもりではいる。
 それでも今は、起こしたりせず、このまま寝かせてやることにしよう。
 己がマスターを抱きかかえながら、スバルは柔らかな笑顔を浮かべて、素直に労いの言葉をかけた。

(なのはさんには悪いけど……)

 現状を振り返りながら、思考する。
 こちらのマスターは、この状況だ。これ以上戦場にはとどまれない。
 自己の判断で動けという、彼女の命令に従い、この場は撤収を選ばせてもらおう。
 じきに騒ぎを聞きつけて、人が集まってくるはずだ。見つからないようにしなければなるまい。
 なるべく人目につかない道を選び、スバルは響の学生寮へと、帰還する選択肢を取った。


【E-3/学術地区・路地裏/一日目 深夜】

【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]気絶、魔力残量2割、ダメージ(中)、疲労(大)
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール(肉体と同化)
[道具]学校カバン
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ガングニールの過剰融合を抑えるため、メンターから回復魔法を教わる
1.………
2.学校の時間以外は、ルイズと一緒にメンターの指導を受ける
3.ルイズと共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
4.両備の復讐を止めたい
5.出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
[備考]
※シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
 なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り2回(予想)です。
 特に絶唱を使ったため、この回数は減少している可能性もあります。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]全身ダメージ(大)、脇腹ダメージ(大)
[装備]『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』、リボルバーナックル、ソードブレイカー
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ルイズ・なのは組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1.一度帰宅する。夜が明けたら、なのは達と合流するため、ルイズの家を目指す
2.金色のサーヴァント(=ハービンジャー)を警戒
3.ルイズと響に回復魔法を習得させる
4.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
5.ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
6.万が一、回復魔法による解決が成らなかった場合、たとえなのはと戦ってでも、聖杯を手に入れるために行動する
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&高町なのは組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません。


742 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:17:08 70n1I/1A0


「………」

 小宇宙を込めた右腕で、強引に拘束を引きちぎる。
 乱暴な助け方をしても、両備は文句一つ言わなかった。
 急激な魔力の消耗により、意識を失ってしまったからだ。
 恐らくこのまま戦えば、彼女は枯死してしまうだろう。腹立たしいが、それはハービンジャーにとっても本意ではない。

「潮時か」

 面白くなさそうに呟きながら、牡牛座の黄金聖闘士は、身に纏う聖衣を解除した。
 教皇の大仰なローブではない、Tシャツとジーンズというラフな姿に戻り、両備を乱暴に肩に抱える。
 ついでに近くに転がっていた、長いスナイパーライフルも、左手で回収してやった。

「俺が最初に一抜けとはよ。カッコ悪いったらありゃしねえ」

 一番有利なはずの人間が、真っ先に戦闘を放棄する。こんな情けない話はなかった。
 同時に、魔力に乏しいマスターというのが、これほどに大きなハンデになるのかと、改めて思い知らされた。
 たった二発の『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』で、戦闘不能に陥ってしまう。
 こんなことは生前には、一度も経験していなかったことだ。
 どうやら戦いを楽しむためには、相応の工夫というものが必要らしい。

「あん……?」

 その時、ハービンジャーはそれを見た。
 見覚えのある人間が、遠くの方からこちらに向かって、歩み寄ってくる姿を。
 否、目的はこちらではない。確かあっちは、メンターのサーヴァントが、小娘を連れて飛び去った方向だ。

「この俺の上前を撥ねようとは、いい度胸じゃねえか」

 今はこちらにも手立てがない。だから見逃してやることにしよう。
 だが、せっかくのライバルを奪った報いは、いつか必ず受けさせてやる。
 額の開いたヘアスタイルをした、眼鏡の女性を遠目に見据え、ハービンジャーはそう呟いていた。



【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】

【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]気絶、魔力残量1割
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.………
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています。また、忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています

【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]ダメージ(小)
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]スナイパーライフル
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.一度帰宅する
2.獲物を横取りする忌夢を許さない。次に会ったら倒す
3.両備の迷いに対して懸念
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※忌夢がマスターであると考えています


743 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:17:45 70n1I/1A0


「ここまで来れば、もう大丈夫かな」

 抱えたルイズの体を下ろし、高町なのははそう呟く。
 最善の成果は得られなかったが、何とか敵を振り切って、戦線を離脱することはできた。
 拘束したままの敵マスターや、はぐれてしまった響達など、懸念すべき要素はある。
 それでも最低限、ルイズ達の安全だけは、こうして確保することはできた。

「………」

 であれば、やらねばならないことがある。
 左手の甲を突き出して、真紅のルーンを光らせる。

「令呪を持って命ずる。今後私の許可なしに、独断専行をしないこと」

 輝く令呪の一画が消えた。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの言葉は、絶対の拘束力となって、メンターのサーヴァントに課せられた。

「マスター……?」
「ごめんなさい。でも、これはやらなきゃいけないことなの。けじめはつけないと駄目なのよ」

 そもそもの発端となったのは、なのはの勝手な行動だ。
 彼女が夜中にルイズを連れ出し、目立つ行動を取ったからこそ、敵に捕捉されてしまった。
 同じことを繰り返さないよう、身勝手な振る舞いを取った使い魔には、罰を与えなければならない。
 それが主人たる貴族の、つけるべきけじめというものだ。
 響達との同盟は、失点を帳消しにするための言い訳にはならない。
 聖杯戦争の打倒は、ルイズにとってはついでであって、絶対条件ではないのだから。

「……そうだね。ごめん、マスター」

 言わずとも、聡明なメンターは、その考えに気付いたのだろう。
 どこか寂しげではあるものの、納得したという表情で、謝罪の言葉を口にする。

(嫌な気分だわ)

 そしてルイズはなのは以上に、強く胸を痛めていた。
 何がけじめだ。笑わせる。
 あの場で一番役に立たなかったのは、他でもなくこのルイズ自身だ。
 一番のお荷物であった自分が、他人の行動を咎めて、罰まで与えようなどと、図々しくて反吐が出る。
 恩を仇で返すような、そんな真似しかできない自分が、情けなくて仕方がなかった。


744 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:18:22 70n1I/1A0
「……まぁ、でも。助けてくれたことは、嬉しかったわ。ありがとう」

 それでも、礼だけは言っておかねばなるまい。
 どの口がほざくと言われようが、本心であることに違いはないのだ。
 ばつの悪そうな顔をして、言葉を選ぶように区切らせながら、ルイズはなのはに向かって言った。

「ふふ……ありがとう」
「っ! なっ、何よ! 気持ち悪いわね!」

 何を察したのかは知らないが、静かに笑みを浮かべるなのは。
 それが何だか照れくさくて、顔を真っ赤に染めながら、ルイズはムキになって言い返す。

「ごめんごめん。じゃあ、一度帰ろうか。ちょうど家も近くだし」
「まぁ、そうね……今から響達を探す余裕もなさそうだし。ここは素直に撤収しましょ」

 とりあえず、これ以上会話を続けると、色々とボロが出そうなので、なのはの提案に応じる。
 幸いにして、周囲に敵の気配はない。自宅へ帰るまでの道のりを、気取られる心配はなさそうだ。
 仮に何かがあったとしても、メンターの仕掛けたサーチャーが、敵の気配を察知してくれる。
 そう考え、ルイズは共に、家路へとつくことにした。

「とりあえず、帰ったら――」

 風呂にでも入って汗を流したい。
 そんな他愛のないことを、言いたかったつもりでいた。

「……え?」

 その、はずだった。
 呆然としたなのはの顔を、視界に収めるその時までは。
 装束の色が変わったなのはの姿を、目にしてしまうその時までは。
 腹部を突き破り現れる――漆黒の光を放つ剣を、目の当たりにしてしまうまでは。

「メンターッ!?」
「ぁ……」

 悲鳴のようなルイズの声。気の抜けたようななのはの声。
 それらからワンテンポ遅れて、ずるりと剣が姿を消す。
 ただでさえボロボロになったなのはの体は、最後の糸を切られたように、無様に路傍に転がった。

「討ち取ったぞ」

 おどろおどろしいその声は、これまでに聞いたことがない。
 なのはの背後から現れたのは、全くの未知の存在だ。
 見上げるような大鎧――その特徴は、キーパーのそれとも一致している。
 しかし、その色が違った。太陽のような黄金ではなく、宵闇そのものの暗黒の鎧だ。
 全ての希望を喰らい尽くし、絶望の闇で塗り固める。そんな印象を受ける黒だ。
 そのクラスは、バーサーカー。
 神話のケルベロスのような、おぞましい狼のヘルムを被った、未知のサーヴァントの姿がそこにあった。


745 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:19:08 70n1I/1A0
「マス、ター……逃げ――」

 それが最期の言葉となった。
 力を使い果たした英霊は、白い光の粒となって、呆気無く闇夜に融けて消える。
 ルイズに刻まれた残りの令呪も、僅かな痣を残して消えた。
 自分を教え導いてくれた、あのメンターのサーヴァントが。
 強敵にも屈することなく立ち向かった、エースオブエースの高町なのはが。
 たった一刀を受けただけで、あっさりと命の糸を断ち切られ、再び死の闇へと沈んでいったのだ。

「だそうだ。お前はどうする?」

 新たな声は、鎧の背後から聞こえる。
 恐らくはバーサーカーのマスターだろう。
 額を広く露出した、ツリ目の女性がそこにいた。
 眼鏡の奥の厳しい視線は、自身の姉であるエレオノールを、いくらか若くしたようなものだ。
 もっとも、衣服の下から主張する、その豊満に過ぎるバストサイズは、姉とも自分とも異なっていたが。

「ッ……!」

 サーヴァントを失ったマスターがどうなるか。
 それはつい先程に、考えたばかりの結論だ。
 このまま数時間以内に、新しいサーヴァントを見つけられなければ、この場から強制排除される。
 その後どうなるかまでは知らないが、もうこの世界樹にいられるのは、その数時間の間だけだ。
 選ばなければならない。
 残されたその時間を駆使して、自分が一体何をすべきか。

「……こんのぉぉぉっ!」

 覚えてなさい、とまでは言わなかった。
 それが意味を持つことは、決してないのだと理解していた。
 ルイズが取った行動は、逃走。
 なのはの最期の願い通り、勝てない戦いに挑むことなく、自宅へとまっすぐに逃げ去ったのだ。

「捨て置け。サーヴァントを失ったマスターなど、もはや何の価値もない」
「分かってるよ、そんなことくらいは」

 そんなバーサーカー達の会話は、ルイズの耳には届くことなく、夜の闇へと静かに消えた。


746 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:19:41 70n1I/1A0
【G-3/特級住宅街・ラ・ヴァリエール邸近く/一日目 深夜】

【忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]如意棒
[道具]秘伝忍法書、外出鞄、財布
[所持金]普通
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を雅緋に捧げる
1.帰宅する
2.明晩になったら、また街を出歩き、『魔術礼装を持った通り魔』を誘き出す
3.呀には極力そのままで戦わせる。いざという時には、装着して戦う
4.そこらのNPCでは、呀を使いこなせないらしい。無理に代わりの体を探すことはしない
5.呀を再び纏うことに、強い恐れ
[備考]
※特級住宅街以外のどこかで暮らしています。詳細な家の位置は、後続の書き手さんにお任せします
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました。
 後者の主がなのはであることには気付いていません。
※両備が本物であることに気付いていません
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません

【バーサーカー(呀)@牙狼-GARO-】
[状態]健康、魔力増(一般人の魂二つ分)
[装備]魔戒剣、暗黒斬
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.戦う
[備考]
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません


747 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:21:09 70n1I/1A0


「ちびルイズ! 一体どこに行っていたの! こんな時間までうろついて!」
「ごめんなさい姉様! 急いでいるの! 話は後からにさせてちょうだい!」

 偽物とはいえ、姉エレオノールに、そんな強い言葉で話したのは、これが初めてかもしれない。
 怒る家族には目もくれず、汗を風呂で流すこともせず、ルイズは自宅の階段を登り、自分の部屋へとまっすぐに駆け込む。
 時間がない。こうして移動する時間はおろか、考えている時間すら遅いのだ。
 自分が消えるその前に、できることをしなければ。
 あの場で戦ったなのはは、決して無駄死にをするために、戦っていたわけではなかった。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという、命を残すためという、意味ある戦いをしていたのだ。
 彼女の宝具にも名付けられた、「不屈の心」というものだ。

「絶対にこのままじゃ終われない……!」

 であれば、それにならわねばならない。
 それがなのはが教えてくれた、最期の教導であるのなら、それに応えなければならない。
 自分はゼロのルイズではないのだ。役立たずから卒業したのだ。
 であるなら、どんな形であっても、たとえ魔法が絡まなくても、何かを遺さなければならないのだ。
 それがメイジである以前の、貴族としての務めなのだから。
 お荷物のくせして偉そうに、恩人に罰を与えたままで――嫌な気分のままでは終われないのだ。

「見てなさいよ!」

 適当なノートのページを破る。
 ペンを取り出し走らせる。
 彼女が遺すのは文書だ。同盟を組んだ響達への、最期のメッセージを託した手紙だ。
 もう自分には何もできない。けれど響達が生きていたなら、まだ何かをすることはできる。
 自分の無事を確認するため、明日にでもここに来るであろう響には、何かを遺すことができる。
 とにかく文字を書き続けた。その時間すらもどかしかった。
 回りくどい言い回しなどしていられず、乱暴に殴り書きしたような、無様な手紙が出来上がる。
 全然貴族らしくなどない。それでも今はこれがいい。
 一刻一秒を争う状況で、優先すべきは体裁でなく、成果だ。

「エレオノール姉様! お願いがあるの!」

 出来上がった手紙に封をし、どたばたと自室を飛び出し叫ぶ。
 明日立花響という、日本人風の少女が来たら、この手紙を渡してやってほしい。
 それがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、最後に遺した成果だった。


748 : 不屈 ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:22:44 70n1I/1A0


立花響へ

 あんたがこの手紙を読んでいる時には、もう私はここにいないと思う。
 悔しいけど、あの戦いの後、メンターがやられてしまったの。

 相手のクラスはバーサーカー。見たことのないサーヴァントだったわ。
 全身真っ黒の鎧を着て、犬みたいなマスクを被ってる、変な奴。
 それを連れてるマスターは、眼鏡をかけた女だったわ。
 広く開いたデコが印象的で、うちのエレオノール姉様みたいに、つんけんとした顔してた。
 その上邪魔くさいことこの上なさそうな、でっかいチチまでぶら下げてた!

 一方的に呼びつけといて、先に一抜けしちゃうのは、本当に申し訳ないと思ってる。
 もう私には何もできない。でも、敵の存在だけは、こうしてあんたに伝えとくから。
 鎧のサーヴァントを連れた眼鏡の女よ! そいつには絶対に気をつけて!

                          ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール





【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 & 高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ 脱落】
【残り主従 22組】





[全体の備考]
※エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールに、
 上記の文章を記した、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの手紙が預けられました。
 立花響がラ・ヴァリエール邸を訪れた時には、エレオノールの手で渡されることになっています。
※F-3・特級住宅街にて、火災が発生しました。間もなく消防隊が駆けつけ、消火活動が行われます
※『姿の見えない戦闘音』の噂に、若干の変化が生じる可能性があります。
 変化の内容は、後続の書き手さんにお任せします


749 : ◆nig7QPL25k :2015/10/12(月) 19:23:23 70n1I/1A0
投下は以上です


750 : 名無しさん :2015/10/12(月) 19:25:55 4MJpV3ok0
投下おつー
おお、黄金のサーヴァントなのもあって完全にハーヴィンジャーがボスキャラやってるなーと思ってたらまさかの顛末。
最初に堕ちるのがこいつらとは……。
ルイズは最後まで貴族の責務を果たしたか。
それはそれとして手紙がすごくらしくて好きだw
置き手紙なのはやっぱりシンフォギアだからかな


751 : ◆nig7QPL25k :2015/10/16(金) 02:13:13 TtERTLGc0
殺人鬼ハリウッドも、きちんと予約宣言しておいた方がよかったのかもしれないと、ちょっと反省しています

というわけで、
マリア・カデンツァヴナ・イヴ、エデン、雅緋、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、黒咲隼、駆紋戒斗、殺人鬼ハリウッド(2人目)で予約します


752 : ◆nig7QPL25k :2015/10/19(月) 20:31:37 6GjIQLHw0
予約の延長を申請します


753 : ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:00:57 t8FjCTrI0
投下します


754 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:01:47 t8FjCTrI0
 彼女がそこで目撃したのは、二人分の強者だった。
 片や、60代の男。片や、20代の女。
 罪歌の洗礼を受けた『子』は、魔術都市の役所の一つで、それらの気配を察知していた。

 興味を惹かれたのはうち片方だ。
 なにしろ男の方の立場は、軍隊の司令官である。
 もちろん程度の差こそあれど、強者であるのは当然のことだ。
 それだけでは優先するだけの理由にはならない。故にその『子』は男ではなく、女の方を優先した。

 女の方は、同じ役所に勤務している、ただの公務員であるはずだった。
 しかし彼女の放つ気配は、その程度の人間が持っているにしては、あまりにも不自然なものだった。
 魔力にも似た、捉えどころのないオーラ。訓練された者の身のこなし。
 一度に接触できるのは片方だけだ。なればこそ彼女は、そちらの方を優先し、ターゲットとして報告した。

 そして聖杯戦争の開幕と同時に、女の家に向かってみれば、その近所で起きたのが大規模な火災だ。
 このあたりで戦闘が起きている。であれば、もはや確定だ。
 彼女は周辺の人間に、怪しい人影を見なかったかと聞き込みを行い、その行き先へと目星をつけた。
 向かったのは西方。この辺りは警備の目も光っている。遠くまで移動することはできないだろう。
 彼女は近くにいるであろうターゲットを目指し、即座に行動を開始した。
 同じ職場で働く年下の女――マリア・カデンツァヴナ・イヴを求めて。



 雅緋の目的地は行政地区だ。
 そう戒斗から告げられた黒咲は、バイクのエンジンを始動させ、すぐさま移動を開始した。
 両サイドに荷物を括りつけ、後ろには戒斗を乗せるという、半ば無理のある態勢で、ではあったが。

「乗り物くらい持っていないのか! 英霊のくせに!」

 窮屈さに苛立ちながら、黒咲が言う。

「ライダーのクラスとして呼ばれていればな。もっともその場合は、お前の言う本当の姿を、見せてやることはできなかったろうが」

 当て付けのように言う戒斗に対して、黒咲はヘルメットの下で眉をひそめた。
 サーヴァントのクラス適性とは、何も一つきりではない。
 戒斗にはランサーのクラスの他に、ライダークラスの適性もある。
 その場合、彼の変身した姿である、アーマードライダーなる存在の特徴が強調され、使用できるアイテムが増えるのだそうだ。
 もっとも、純粋な戦闘歩兵としてのスペックは、三騎士クラスの方が上回っている。
 彼がその真の姿である、真紅の魔神へと変身するには、ランサーか、あるいはセイバーとして、召喚されていなければならないのだった。
 戒斗が剣を使うなど、黒咲にとっては初耳であったが。

「……それで、行政地区のどこに行くかまでは、お前は聞いていないんだな?」
「向こうも正確な位置は把握していないらしい。現場に着いてから、捜索すると言っていた」

 戒斗が立ち聞きした情報を確認する。
 雅緋が行動を起こしたのは、やはり他のサーヴァントの存在を感知し、討伐に動いたからだったのだそうだ。
 とはいえ、向こうも存在を知っただけで、正確な位置までは把握していなかったらしい。
 故に何人か人出を集め、人海戦術にて捜索し、これを撃破するという作戦を取った。戒斗が確認したのはそこまでだ。


755 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:02:40 t8FjCTrI0
「マフィアが警察の縄張りで家探しか」

 妙なことになったものだと、黒咲が言う。
 行政地区は、政庁や特級住宅街に次いで、警備の目が厳しいエリアだ。
 そんな所で事を起こすような、馬鹿が現れでもしない限り、黒咲にも、そして雅緋にとっても、縁遠いはずの場所だった。
 もっとも、無法者が裏で官僚と繋がっているというのは、フィクションではよくある話ではあったが。

「そのこともある。目立つ行動は避けるのが無難だろうな」
「どうせ俺達が動かずとも、事が起これば、向こうから花火を上げてくれる」

 それを目印にすると黒咲が言い、バイクを更に加速させた。



 報告にあったのは、この辺りで戦火を広げた、戦闘者がいたということだけだ。
 それが男であるのか女であるのか、そのことすらも雅緋は知らない。
 その上追われる身であろう標的は、身を隠しているに違いないのだ。
 大変な捜索になるであろうことは、彼女自身、理解はしていた。

《たとえば、逃げ延びた方の人間が、寝込みを襲われたのだと仮定する》

 その助けとなったのが、ライダーのサーヴァント・ルルーシュだ。
 生意気な態度は気になったが、彼は戦略家としては、一流の才を持つ知恵者だった。

《家に戻れば警察によって、質問責めに遭うだろう。かといってろくに荷物も持てない状態で、ここを離れるわけにもいかない》
《サバイバルゲームではないからな。町中で食べ物を確保するには、金を払うことが必須条件だ》
《あるいは、衣類の問題もある。マスターも、着の身着のままで、外をうろつきたくはないだろう?》

 そういう聞き方をするか、普通。
 デリカシーのない言葉に、一瞬むっとしたものの、その気持ちはぐっと飲み込んで堪える。

《まぁ……そうだな》
《ならば、しばらくはどこかに身を隠して、サーヴァントに荷物を取りに行かせ、それから行動を起こす。そう考えるべきだろう》

 今まさにそうしているルルーシュのように、サーヴァントには霊体化能力がある。
 ガサ入れでもされていない限り、周囲から身を隠して家に忍び込み、財布や服を持ち出すくらいは、造作もないだろう。
 故にしばらくは動かないはずだと、そう推理するルルーシュの論は、説得力があるように思えた。

《ではそいつが襲われた方ではなく、襲った方の人間だったら?》
《お手上げだな。躊躇なくこの場を離れようとするだろう。そうなれば現状の手がかりだけでは、ターゲットを見つける術はない》

 恐らくは肩を竦めているのだろう。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとはそういう男だ。
 それは霊体化した状態であっても、容易く想像することができた。

《どちらにせよ、通行人や警察には構うな。私の読み通りであるのなら、敵は必ず身を隠している》

 もしまだこの行政地区に、ターゲットが潜んでいるのなら、いちいち令呪を確かめることはない。
 そこまで豪胆に動ける余裕は、今の奴にはないはずだ。
 雅緋はその言葉に従い、敵マスターの捜索に向かった。


756 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:03:49 t8FjCTrI0


 知らず渦中の人物となった、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
 下着以外の着替えを済ませ、一応の防寒準備を整えた彼女は、未だ橋の下にいた。
 近くに、エデンの気配はない。衣服を着替えることができたのも、彼が通帳を取りに行くため、この場を離れたからだった。

(これからどうしようかしら)

 夜が明ければ、状況も落ち着いて、また出歩けるようになるだろう。
 しかし、それからどうするか。寝泊まりはどこでするべきか。
 そもそもそれ以前に、この体たらくで、生き残ることができるのか。

(キーパーのことは信じたい)

 あくまで戦いの主役はサーヴァントだ。マスターとは司令塔であり、必ずしも戦闘者でなければいけないというわけではない。
 だからもしもエデンが、一人で戦い続けることができたなら、それで問題はないのだろう。

(けれど……)

 それでも、自分は見てしまった。
 大勢の使い魔に翻弄される、エデンの姿を目の当たりにしてしまった。
 サーヴァント並の使い魔を、複数召喚できる敵がいる。さすがに例外的な存在ではあろうが、そういう敵もいることはいるのだ。
 もしもう一度まみえることがあれば、その時には傍観してなどいられない。
 あれを打倒するためには、サーヴァントとマスターの連携が、必要不可欠になってくる。
 それができるのか。
 身に余る力に振り回され、撃槍を御しきれずにいる自分に、彼と並び立つ資格があるのか。

「――ああ、いたいたッ!」

 その時だ。
 不意に橋の上の方から、大きな声をかけられたのは。
 思わず、びくりと身構える。追手が来たのかもしれない。どうしてもそう思ってしまう。
 しかしそこに立っていたのは、予想に反して、見知った顔だった。

「あ……友里、さん」
「心配してたのよ、マリア? 家の近くで家事があったって聞いたし、電話にも出なかったんだから」

 橋の近くに立っていたのは、友里という名前の歳上の女性だ。
 マリアと同じ役所に勤めていて、年齢的には、先輩に当たる。
 どうやらマリアの身を案じて、探しに来てくれたらしい。


757 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:05:05 t8FjCTrI0
「……それでどうして、こんな所で隠れていたの?」
「ええと、これは……色々と事情があって」

 まさか、敵から身を隠しているなどとは言えまい。
 上手い言い訳が見つからず、マリアはしばし、言葉に迷う。

「とにかく、ここじゃ何だし、ちょっと場所を変えましょうか」
「そう……ですね」

 友里の提案に従い、マリアはその場から立ち上がる。
 橋の陰から顔を出しながら、エデンに対して、合流地点を変えようと、念話を飛ばそうとした、その瞬間だ。

「――止まれ、マスター!」

 声が聞こえた。頭上から注いだ。
 マリアが足を止めると同時に、びゅんと風を切る音が鳴る。
 何かが飛来したかと思えば、友里の体が崩れ落ち、足場に隠れて見えなくなる。

「きゃッ! ちょっ、何を……ッ!?」

 戻ってきたエデンが、彼女を組み伏せたのだと理解したのは、その声を耳にした時だった。

「なっ……何をしているの、キーパーッ!? その人は私を心配して――」
「助けに来た人間が、何故こんなものを持ち歩いている?」

 近くにあった階段を使い、駆け上がるマリアが見たものは、何かを握ったエデンの右手だ。

「それは……ッ!」
「袖口に隠すようにして握っていた。もっとも、こんなもので、何ができるのかは知らないがな」

 カッターナイフ。
 人に向ければ、十分に凶器となる代物だ。
 それを友里が隠し持っていた。明らかにマリアを刺すつもりで、その凶刃を潜ませていたのだ。
 思わぬ裏切りに対して、マリアは驚愕に目を見開く。

「く……ッ! このっ、放しなさ……ッ!」
「ッ!」
「ぎゃあああああッ!?」

 瞬間、稲妻が弾けた。
 取り押さえられた友里の体を、眩い電撃が駆け巡り、焼いた。
 断末魔の悲鳴を上げた後、黒く煤けた女の顔は、力なくぺたりと石畳に貼りつく。


758 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:06:27 t8FjCTrI0

「殺したの……人を……?」
「……これはマスターではない。聖杯によって用意された、ただのNPCに過ぎない」

 サーヴァントを連れているのなら、こんな呆気無い幕切れはあり得ないはずだ。
 実際、見えている部分の素肌には、令呪など影も形もなかった。

「この街では、人を操る礼装の使い手が、手下を増やし続けているという」

 そういう噂を聞いたからこそ、その可能性を考慮できた。
 なればこそ、躊躇なく殺害したのだと、エデンはマリアに対して言った。

「……そう」

 それでも、マリアの顔は暗い。
 元来争いを好まず、人の死を悼む感性の持ち主だ。
 たとえ人間ですらない擬似人格だろうと、人の姿をしたものが、惨たらしく殺される姿を見て、いい気分ではいられない。
 だからこそ彼女は、フィーネを演じることに対して、迷いを抱き続けてきたのだ。
 それがこの場に訪れて、フィーネを演じることがなくなっても、同じようなことを繰り返している。
 そのことはマリアの繊細な心に、いくらか暗い影を落としていた。

「とにかく、場所を変えよう。今の声を聞きつけて、誰かに――」
『――それは今一歩遅かったな』
「ッ!?」

 エデンが移動を促した、その時。
 割って入る声があり、直後に爆音と光が轟く。
 振り返る方向に光を伴い、突如現れたその姿は、マリアの想像を超えたものだった。

「飛行機ッ!?」

 小さめの機体だが、飛行機だ。
 四枚の翼を左右に広げ、低空飛行する黒い飛行機が、そこに姿を現していたのだ。
 現代的どころか近未来的だ。その光沢を放つフォルムは、明らかに魔術都市には似つかわしくない。

「ライダークラスか……!」
『ご名算だ。もう少しかかると思っていたが、そちらから姿を見せてくれたのは、僥倖だったぞ』

 自信満々な声色は、機体のスピーカーから響いているのか。
 騎兵のサーヴァントであると認識し、敵意を滲ませるエデンに対し、若い男の声が笑う。

「マスター、シンフォギアを! 盾としてなら使えるはずだ!」
「わ、分かったわッ!」

 宝具を纏うエデンに呼応し、自らも聖詠を唱える。
 神世の調べが紡ぐのは、奇跡の糸が織り成す鎧だ。
 白く輝く『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』と、黒くはためくシンフォギア。
 遠き神話に由来する、黒白の鎧が並び立ち、黒鉄の飛行兵器を睨み据えた。


759 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:07:17 t8FjCTrI0
『これはまた。神話のというより、テレビ番組のヒーローのようだな』
「言い過ぎだ、ライダー。それは私にとっても侮辱になるぞ」

 くつくつと笑うライダーを、諌める声が聞こえてくる。
 機体の影から現れたのは、マリアと同い年くらいの、白い装束の女性だった。
 それもシンフォギアや聖衣と同じく、特殊な戦闘装束なのだろうか。
 漆黒の剣を光らせて、マントと腰布をはためかせる姿は、明らかに普通の洋服ではない。
 古の武人が纏っていたような、剛健な印象を与える衣服だ。
 大きく開き露出した、大きな両胸の谷間には、真紅のエンブレムが刻まれている。
 間違いない。マスターだ。今度は正真正銘の。

「主人同伴でやって来るとは、随分な自信だ……なっ!」

 言いながら、エデンが雷球を投げる。
 ごうっと音を立て加速するのは、トニトルイ・サルターレと呼ばれる飛び道具だ。
 直撃コース一直線。微動だにしないマスターには、それを止める手段などない。

「何っ!?」

 その、はずだった。
 突如奔った赤い光が、雷を四散させるまでは。
 ばちっ、と弾ける音と共に、光は粉々に弾け飛ぶ。
 その向こうに出現したものは、半透明に光る壁だ。
 エネルギー障壁。分かりやすく言えば、バリアか。
 それがマスターを連れ現れた、ライダーの自信の正体だった。
 たとえ弱点を晒そうとも、それを容易には攻めさせない用意が、彼の乗り物には存在したのだ。
 恐らくは騎兵のサーヴァントの、宝具であろう飛行兵器には。

『そう、自信だ。だがこれは決して慢心ではない。正しく分相応の自信だよ』
「貴様……」
『ああ、前置きが長かったな。ならばそろそろ始めるとしようか』

 睨むエデンの殺気を流し、どこ吹く風でライダーは言う。
 そしてその開戦の一言が、浮遊する漆黒の飛行機に、新たな変化をもたらした。
 機体が捻れる。各部が蠢く。不可思議な挙動を繰り返しながら、飛行物体のシルエットが変貌していく。
 伸びたのは足か。開いたのは手か。
 ぬうっと姿を現したのは、まさか頭部のつもりなのか。

「これは……ッ!?」

 様変わりしたその姿は、翼持つ暗黒の巨人だった。
 ライダーのサーヴァントの宝具は、飛行機などではなかったのだ。
 身の丈5メートルはあろうかという、巨大な人型ロボット兵器――それこそが襲撃者の正体だった。


760 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:08:13 t8FjCTrI0


「人の趣味を笑えないな」

 威容を見上げ、エデンが言う。
 飛行機だろうとロボットだろうと、所詮は同じ機動兵器。サイズにもそれほど変化はない。
 しかし縦に大きく見上げる、その人型の気配の何としたこと。
 古来より、人は巨人というものに対して、格別の畏怖を抱いたという。
 各地の遺跡や神殿に、巨大な神像が祀られているのは、この視覚効果によるものか。

『見てくれだけではないぞ』

 ふふんと軽く笑いながら、黒き巨神の操り手は、エデンの声にそう応える。
 見下ろす顔面に光るのは四つ目。そして異様に大きなレンズだ。
 その窓を覗き込むうちに、自身が吸い込まれていくような。異形の五つ目で形成された、不気味な面構えだった。
 この風貌で神だというなら、ライダーが操るその姿は、悪魔か邪神の映し身か。

『せっかく披露したのだからな……力の方も味わってもらおう!』

 瞬間、ロボットの両腕が動いた。
 突き出された手のひらの、袖下あたりに備わったのは、弾丸を放つ銃口だろうか。
 であれば来る。射撃武器だ。

「フッ……!」

 反射的に飛び退った。視界の中で光が爆ぜた。
 バリアを張れるならビームもありか。禍々しい気配と共に放たれたのは、渦を巻くエネルギーの弾丸だ。
 着地し見上げたその先では、既にライダーの巨神像は、より空高くへと上昇している。
 戦闘スタイルは聖闘士の真逆――バリアを張りつつ飛び道具を放って、遠距離から一方的に制圧する魂胆だろう。

「はぁっ!」

 だが、そうはいかない。
 思い通りになどさせるものか。
 手近な建物に飛びつくと、その壁を蹴って跳躍し、夜の暗黒へと躍り出る。
 虚空の彼方のターゲットへと、見舞うのは銀の左腕だ。
 命中。されど、弾けるは閃光。
 先ほども見たバリアによって、鉄拳は容易く防がれてしまう。

『仮にも絶対守護領域! 侮ってもらっては困るな!』

 大仰な盾の名を謳い上げ、誇らしげにライダーが言った。
 赤熱の向こうで銃口が光る。先ほどのエネルギー兵器か。この距離で狙い撃つつもりか。

「チッ!」

 舌打ちと共にバリアを蹴って、エデンはその場を離脱する。
 どんっとエネルギー弾が放たれた。迫り来る灼熱の凶弾は、両手でサルターレを投げ撃ち落とした。
 着地すると同時に、頭上を仰いだ。その時エデンが目にしたものは、何とも奇妙な光景だった。


761 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:09:51 t8FjCTrI0
(何だ……?)

 巨神の胸が、開いている。
 胸部のハッチが開放されて、内部メカが露出している。
 内臓は生身であっても機械であっても、急所と呼べる部位であるはずだ。
 ましてや人の乗る乗り物であるなら、そんなところを攻撃されれば、コックピットにダメージが及びかねない。
 そんな弱点を晒す行動に、一体何の意味があるというのだ。

『そしてこれこそ、対をなす矛』

 瞬間、放たれるものがある。
 月光を複雑に反射し、光を放つ結晶体だ。
 ここに来て実弾兵器か? そもそもあれは弾丸なのか? 宝石を巨大化させたような、あんな珍妙な物体が?
 不可解としか言いようのない光景に、エデンの思考は回転する。

『その光の切っ先――受けるがいい!』

 刹那、ロボットの胸部が光った。
 その瞬間、思考を直感が凌駕し、脳内にアラートが響き渡った。
 何かが来る。これまでの攻撃とは一線を画する、恐らくは危険極まりない一手が。
 理屈は未だ分からないが、何か恐るべき攻撃が、あそこから放たれようとしている。

「マスター! 盾をッ!」
「えッ――」

 言いながら、エデンは駆け出した。
 マスターであるマリアを守るため、方向転換し疾駆した。
 雷の小宇宙を解き放つ。周囲にエネルギーを巡らせ、バリアの要領で壁を作る。
 間に合え。あれが放たれる前に。恐ろしいことが起こる前に。

「がぁああっ!?」
「きゃぁあああッ!」

 瞬間、痛烈な衝撃が襲った。
 貫通と灼熱は、一箇所ではない。
 視界が光に覆われて、眩く包まれたと思った瞬間、無数の攻撃をほぼ同時に受けた。
 まばたきすら追いつかない間に、数十数百の閃光の矛が、エデンの体を貫いたのだ。

「ぐ……」

 さしもの聖闘士も、ただでは済まない。焼け焦げた体を震わせて、がくりと力なく膝をつく。

『ハハハハ! 悪くない色になったじゃないか』

 煤けた青銅聖衣を見下ろしながら、黒き邪神像は愉悦に笑う。
 超然と天に浮かぶその姿は、エデンが生前対峙してきた、神々の姿そのものだ。
 違いはあくまで姿を真似ただけで、そこに彼らの神性は、欠片も宿っていないということか。
 実物を知るエデンにとっては、大きすぎる違いだが、それでもなお、脅威であることに変わりはなかった。


762 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:11:26 t8FjCTrI0
(マスターは……)
「う……ッ」

 痛む体を起こしながら、エデンはマリアの方を見やる。
 なんとか、彼女は生き延びていた。漆黒のマントで全身を覆い、いくらかダメージを負いながらも、一命だけはとりとめていた。

『壊すには忍びなくなったが、これも勝負。チェックは打たせてもらうぞ』

 更なるライダーの追撃が迫る。
 地を砕く巨大なアンカーが、膝から放たれ襲いかかる。

(恐るべき技だ)

 これでも防衛態勢スキルの補正によって、防御力は上がっているのだ。どうにか動ける余力はある。
 それを身を捩りかわしながら、エデンは敵の技を見定めた。
 先ほど放たれた武器は、恐らくはレーザー兵器の類だろう。
 原理は不明だが、例の結晶体に放つことで、その光を乱反射して、無数に拡散させたものだ。
 その反射角度を巧みに操り、軌道を誘導することによって、オールレンジに近い攻撃を実現している。
 亜光速の攻撃が、全方向から迫って敵を包囲し、逃げ場を塞いで焼き尽くすのだ。

(近い技を知っている)

 雷撃を纏った鉄拳で、射撃を叩き落としながら、思考する。
 獅子座の黄金聖闘士の技には、光速拳を奥義の域まで高めた、ライトニングプラズマというのものがあるのだそうだ。
 師であるミケーネは、柄に合わなかったのか、ついぞ使うことはなかった。それもありエデンはその技を、直接身に受けたことはない。
 だが知識のみで推測するなら、奴の武器は、それと同じものを、再現し実践するものなのだろう。

(それでも、所詮はカラクリ細工)

 だとしても、そこには決定的な違いがある。
 歴代の黄金聖闘士達は、この現象を引き起こすために、手品のタネなど要さなかった。
 小細工で支えられた技など、タネが割れれば崩すのは容易い。

『さらばだ!』

 再び例の攻撃が来る。
 放たれたレンズ代わりの結晶体が、エデンの頭上へと向かう。

「キーパー……?」

 未だ膝をついたままの、マリアの元へと敢えて戻った。
 攻撃を誘い込む、というのとは違う。策を実行するためには、マリアには近くにいてもらわねばならない。
 あの技の生命線は結晶体だ。壊してしまうのが理想だが、強度は未だ計り知れない。
 それでも。
 だとしても。
 たとえ壊すことができずとも、この技を打ち破ることができる、最も確実な方法は他にある――!


763 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:13:01 t8FjCTrI0
「トワノ……トルナードッ!!」

 雄叫びと共に、荒れるのは嵐だ。
 稲妻を響かせて乱れ狂う、雷撃色の竜巻だ。
 ばたばたと聖衣の装束が揺れる。ガングニールのマントがはためく。
 エデンが持つ奥義の一つ、トワノ・トルナード。
 雷撃を纏う竜巻を生じ、敵に向かってぶつける技だ。

「これは……ッ!」

 台風の目の只中で、マリアは両目を見開いた。
 自らの周囲で轟然と、渦を巻く突風を見定めた。
 そして頭上で風に煽られ、傾く結晶体の姿を。

『ほう……?』

 ライダーがそう呟いた時には、既に全てが遅すぎた。
 放たれたレーザーはまっすぐに、偏光レンズへと命中する。
 風に煽られ揺れたことで、入射角も反射角も変化し、照準が破綻した結晶体にだ。
 そうなれば全てがご破産だ。光線は見当違いな角度で曲がり、文字通り無茶苦茶な軌跡を描いて、あちらこちらへと撒き散らされる。
 建物が射抜かれた。石畳が焼けた。泉の水が少し沸いた。
 だがそれだけだ。狙いを狂わされたレーザーは、肝心なエデンとマリアには、一発も命中しなかったのだ。

「お前の放った結晶体が、僕に壊せるものなのかは、分からなかった」

 遂に結晶に亀裂が走り、やがて粉々に砕け散る。
 兵器ではなく月明を受けて、きらきらと光る欠片達が、烈風に溶けて消えていく。

「それでも、僕にはこの技があった。トワノ・トルナードが巻き起こす嵐は、その風圧で結晶を揺さぶり、お前の狙いを狂わせる」

 嵐はやがて凪へと変わる。
 風の止んだ只中で、エデンが静かに言葉を紡ぐ。
 凄惨な破壊の傷跡は、全て周囲に残されていた。
 対してエデンの立つ足場は、至って綺麗なものだった。

「そして今、破壊可能であることも証明された。お前の切り札は、決して僕に届くことはない!」

 一度正体を見切った技は、聖闘士には決して通用しない。
 邪神の放つ光の雨が、オリオン星座のエデンを射抜く未来は、決して訪れることはない。
 漆黒の機体が放つ光が、アルテミスの矢となることは、ない。


764 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:14:28 t8FjCTrI0
「どうする、ライダー? 相性の悪そうな相手だぞ」

 機体の肩に立つ、敵マスターが言った。
 未だ余裕だとでも言いたいのか。この光景を見せられてもなお、その表情に変化はない。

『……そうだな。方針を変えるべきか』

 言うと、ライダーの乗機が、再びその姿を変えた。
 元の飛行機の形態へ戻り、そのまま後方へと下がりだす。
 撤退する気か。だがそうはいかない。この状況で退かれれば、今後に大きな障害を残す。
 追われる立場のマスターを、これ以上ややこしい状況に置くことはできない。

「キーパーッ!?」
「マスターはそのまま! どこかに身を隠していてくれ!」

 番人らしからぬ選択だが、ここは攻めに出るべきだ。
 マリアをその場へと残すと、エデンは石畳を蹴って、逃げる機影を追いかけ始めた。
 大きいとはいえ、5メートルクラスだ。小柄なライダーの機体は、建物の間を巧みに縫って、エデンの追跡を振り切らんとする。
 だが、それでも小回りならば、生身の方が利くのは間違いない。この程度の追いかけっこでは、まだまだ見失うには至らない。

『粘るな!』
「抜かせ!」

 手のひらより雷撃を放つ。しかしそれは阻まれる。
 レーザーは攻略したとはいえ、敵の絶対守護領域とやらは、未だ健在というわけだ。
 赤い障壁のその向こうで、飛行機は再び邪神へと化ける。
 神像の姿を取った敵機は、身を捻りエデンの方へ向き直ると、再び胸部のハッチを開いた。

「っ……!」

 瞬間、迸ったのは光だ。反射的に小宇宙をもって、迫る熱量を迎え撃つ。
 結晶体を介したものではない。本来拡散すべきレーザーを、そのままの状態で直射したのだ。
 一点に集中した威力は、先ほど以上の突破力と、眩い光をもって襲いかかる。

「……ぇえええいっ!」

 負けてなるものか。あと一歩の距離まで追い詰めているのだ。
 雷の小宇宙を練り上げた。
 極限のせめぎ合いに追い込まれ、セブンセンシズに達した小宇宙が、文字通りのビッグバンとなって弾けた。
 爆裂する轟音と閃光は、一瞬エデンの五感全てを、眩い白で埋め尽くす。
 純白の闇はやがて晴れた。宙に浮いていたエデンは、勢いを失って着地した。

「何っ!?」

 しかし、この光景はなんとしたことだ。
 いるはずのものが、そこにいない。
 あの禍々しい巨神の姿が、その身に乗っていたマスターの姿が、どこにも見当たらなかったのだ。


765 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:15:15 t8FjCTrI0
「まさか……!」

 方針の転換とはこのことか。
 要するに自分は嵌められたのだ。派手な囮に気を引かれ、まんまと誘い出されてしまったのだ。
 宝具を解除したサーヴァントの姿は、周囲のどこにも見当たらない。
 それはマスターも同様だ。先ほどの閃光が弾けた隙に、この場から離れてしまっている。
 マスターとサーヴァントを引き離し、目眩ましによって身を隠し、自身は別の場所へ移動。
 そうなればこの次の行動は、もはや一つしか考えられない。

(マスターが危険だ!)

 エデンがいなくなったあの場所には、襲撃に晒されるマリアを守る者は、もはや一人もいないのだから。
 思考し、元来た道を振り返る。守護の任務に戻らなければと、己が足を走らせんとす。

「っ!?」

 瞬間、それを遮ったのは、鼓膜を破らんほどの爆音だった。
 モーター音か。自動車? 違う。あまりに迫力が違いすぎる。

「何だ、これは……!?」

 果たしてビルの陰から現れたのは、またしても巨大なロボットだった。
 しかしそれは先程のような、漆黒の邪神像ではない。
 紫色をベースに塗られた、より無骨な印象を与える機体だ。足元の車輪で走るそれは、どうやら飛ぶことすらできないらしい。
 神々の映し身というよりは、オズのブリキ人形と呼ぶ方が近い。見るからに大量生産品と分かる、無様とすら呼べる姿だった。
 そうだ。大量生産品だ。
 何せ紫色のロボット兵器は――一度に三体も現れたのだから。



 戦況は一体どうなった。
 マリア・カデンツァヴナ・イヴは、耳をすませながら思考する。
 万一の事態を想定して、シンフォギアは解除せずにいた。恐らくはエデンも、そうすることを望んでいただろう。

(今はまだ、動かない方がいい)

 ここで出しゃばるのは得策ではない。
 気持ちの整理のつかない今では、エデンにとって、邪魔にしかならない。
 迷いが刃を鈍らせることを、武装組織フィーネの首魁は、誰よりも強く理解している。
 そしてそんなことに対してばかり、理解の深くなった自分に、またしても嫌気がさしたのだった。

《――マスター、聞こえるか!?》

 その時、不意に声が響く。
 遠く離れたサーヴァントから、念話が脳内へと届く。

《キーパー? どうしたの?》
《すまない、嵌められた! 恐らくは今、マスターを狙って、そちらに敵が向かっている!》
《ええッ!?》

 それは最悪の通達だった。
 敵におびき出されたエデンは、敵の増援に囲まれ、完全に分断されたのだという。
 そして彼のいる場所には、ライダーのサーヴァントもマスターも、どちらも見当たらないというのだ。
 行き先は決まっている。この場所だ。戦場で孤立したマスターという、美味しすぎるこの状況を、敵が放置しておくわけがない。


766 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:16:10 t8FjCTrI0
《いいか、マスター! 今すぐ令――》

 令呪を使ってエデンを呼び、この場に強制転移させる。
 後から思い返せば、恐らく彼は、そのことを言いたかったのだろう。
 しかし、その言葉は届かなかった。状況を打開する一手を、マリアが耳にすることはなかった。

「――はぁあああっ!」

 それよりも早く、敵の声が、その場に割って入ったからだ。

「ッ!?」

 ほとんど条件反射だった。
 訓練された肉体は、素早く殺気に反応し、烈槍をそちらへ構えさせる。
 がきんと鋭い音を上げ、火花の明かりがマリアを照らした。
 槍と剣が激突し、鋭く散ったその火花は――黒く、禍々しく光っていた。

「よく受けたな」
「さっきの、サムライ……ッ!」

 黒々とした熱を放ち、炎上するサムライソードを握るのは、白髪と白装束のマスターだ。
 豊かな胸元に刻まれた、赤い三画の令呪が、これ見よがしに主張している。
 猛獣か猛禽を思わせる、鋭い金色の瞳が、黒炎を纏う刀の向こうで、真っ向からマリアを睨んでいた。

「それは適切な呼び名ではないな」

 言いながら、繰り出されたのは足だ。
 鍔迫り合いのその下から、がら空きのマリアの腹部めがけて、痛烈なローキックが叩きこまれた。

「う……ッ!」

 どんっと襲う衝撃と共に、神話の装束が吹っ飛ばされる。
 襲撃者が使う得物は和刀だ。しかし、彼女は侍ではなかった。
 仮に侍であったなら、あれほど巧みに身を隠し、ここまで忍び寄ることもなかった。
 そうだ。忍び寄ったのだ。
 彼女はそれを生業とする者。闇夜に忍びて敵を追い、命を奪う悪しき花。

「私は――忍だ!」

 禍を纏いし妖刀を構え、左手にもまた炎を宿し。
 右手に刀、左は拳。黒き炎を殺意より生じ、獲物を狙う暗殺者。
 ライダーのサーヴァントは、自らが背負ったその称号を、月下に高らかに宣言した。


767 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:17:09 t8FjCTrI0


 RPI-13・サザーランド。
 対ナイトメアフレーム戦を想定して製造された、初のナイトメアフレームだ。
 優れた汎用性と安定性を誇る本機は、相当数が生産されて、長らく戦線を支えていたという。
 ライダー――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアもまた、飽きるほどに相手をし、時には手駒として操った機体だ。
 それが今、再び彼の手駒となって、この世界樹の魔術都市に、姿を現し立ち回っている。
 方針を転換した彼の策は、それを用いた物量戦だった。

「ははは……どうした色男? 個々のスペックだけならば、俺の蜃気楼よりも格下だぞ?」

 観測兵の報告を受けながら、皇帝ルルーシュは邪悪に笑う。
 元ブリタニア皇帝ルルーシュは、自身は戦闘能力を持たないものの、その身に三つの宝具を携えていた。
 一つは、『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』。強烈な催眠効果により、雅緋の軍団を築いた宝具だ。
 もう一つは、『我は世界を壊す者(しんきろう)』。自らが駆る漆黒の機体であり、生前のルルーシュの愛機である。
 そして残された最後の宝具が、『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』だ。
 自らを讃える号令を、そのまま名前とした傲慢な宝具。
 自らを讃える兵士達を、地獄の底から呼び起こし、手下として操ることができる宝具。
 それこそ、天才軍師と謳われた、ルルーシュの力を最大限発揮する、真の切り札と呼べる宝具だった。

「S-6、攻撃を仕掛けろ。2秒後にS-7も突撃。両脇から時間差で攻めて態勢を崩す。
 その後G-2が背後から砲撃し、標的をマスターから遠ざける。頼んだぞ、G-2」

 S-5およびS-6のSは、サザーランドの頭文字のSだ。
 無線機で指示を出しながら、Gの頭文字を持つ機体――ガレスを新たに生成する。
 蜃気楼の両腕にもあった、粒子ビーム兵器・ハドロン砲を主兵装とする、空戦タイプのナイトメアフレーム名だ。
 サザーランドでキーパーをかき乱し、そこにガレスの高火力砲撃を撃って、望む方向へと誘導する。それがルルーシュの戦略だった。

《ライダー、残り五機でその場を抑えろ。私の魔力も残しておけ》
《問題はない。三機出せれば十分だ》

 マスターの雅緋からの念話に、応じた。
 ルルーシュの指揮する作戦は、あくまで雅緋が目的を果たすまでの、時間稼ぎに過ぎない。
 彼女が敵マスターを直接攻め、撃破するまでの間、キーパーを繋ぎ止めておく。それがルルーシュの役割だ。
 本来守られるべきマスターが前線に立ち、逆にサーヴァントが闇に身を隠す。ともすれば、暴論とすら言える作戦である。
 それでも、今はこの策がいい。隠密性に優れた雅緋は、奇襲作戦という観点で言えば、ルルーシュ以上に適任だ。

(それにしても、奴もこんな手にかかるとは)

 守護者(キーパー)のクラスも名ばかりだなと、ルルーシュは内心で嘲笑った。
 雅緋の同道を許可したのは、何も自信だけが理由ではない。
 次善策として用意していた、この作戦を実行する上で、その方が挑発効果が見込めたからだ。
 マスターとサーヴァントが一箇所に固まっていれば、敵の狙いもそこに絞られる。
 その状態で逃げ去れば、敵はそれを追いかけるしかなく、結果容易に誘き出すことができる。
 そんなことすらも予測できず、結果無数のナイトメアフレーム相手に、苦戦しているキーパーの姿は、滑稽としか言いようがなかった。


768 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:18:20 t8FjCTrI0


 緒川慎次という男がいる。
 二度交戦したシンフォギア装者・風鳴翼の付き人であり、自身も忍術を修めた強者だ。
 特異災害対策機動部二課と、事を交えると決めた時から、いつか忍者と戦う機会は、訪れるだろうと考えてはいた。

(強い……ッ!)

 それがこの場で、こんな形でだとは、マリアも想定していなかったのだが。
 敵マスターの豪剣に、防ぐ槍と手を震わせながら、マリア・カデンツァヴナ・イヴは冷や汗を流した。

「誰が為にこの声、鳴り渡るのか……ッ!」
「この程度か! そのご大層なカラオケも、所詮はただのお飾りか!」

 アームドギアを押しのけながら、白髪のマスターが轟然と吼える。
 妖刀の黒炎をより強くしながら、マリアの守りを意にも介さず、じりじりとにじり寄ってくる。

「あぁッ!」

 遂に距離はゼロへと詰まった。
 唸りを上げる左の拳が、マリアを容赦なく殴り飛ばした。
 悲鳴を上げ吹き飛ぶ彼女に、容赦なく忍の追撃が迫る。
 なんとか態勢を立て直し、懸命にガングニールを握って、その攻撃に対処する。

(忍者の力は、シンフォギアよりも強いというのッ!?)

 戦闘能力ではあちらが上だ。
 神話の武具の力を宿した、FG式回天特機装束・シンフォギア。
 その奇跡を具現化した甲冑よりも、今は忍の技の方が、明らかに強い。
 東洋の神秘とはこれほどのものか。自分達F.I.Sは、こんな怪物相手に、喧嘩を売っていたというのか。

(違う……これは私の弱さだ……ッ!)

 しかしマリアは、その思考を、即座に自ら否定する。
 扱いきれていないにせよ、ガングニールのスペックは、平時より上がっているはずなのだ。
 にもかかわらず只人ごときに、こうして遅れを取っているのは、自身が原因に他ならない。
 迷いと躊躇いに鈍った刃が、女一人倒せないほどに、神話の槍を貶めているのだ。
 常勝不敗と謳われた槍を、脆弱なものに変えているのは、他ならぬマリア自身の歌なのだ。

「喰らえ!」

 敵マスターが突っ込んできた。開いた距離を詰めてきたのだ。
 直線的な攻めだ。今なら間に合う。遠距離からの必殺技で、迎撃することができる。

「カデンツァの――ッ!」

 そこまで考えて、手が止まった。
 脳裏に蘇った炎の海に、槍を繰り出す手が止められた。
 ここで引き金を引いてしまえば、また同じ結果を招くのではないか。
 一瞬前と同じ炎が、目の前の敵を焼き殺し、悲劇を引き寄せるのではないか。
 巡る懸念が思考を鈍らせ、紡ぐ歌を止めさせる。


769 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:19:19 t8FjCTrI0
「悦ばしきInfernoッ!!」

 その隙を見逃してくれるほど、東洋の忍は甘くはなかった。
 黒き魔刃がその火力を増す。より一層の火を纏った刀が、唸りを上げて襲いかかる。
 一撃。二撃。更に三撃。次々と繰り出される必殺剣を、止められるだけの根性はマリアにはない。

「くぁあああッ!」

 情けない悲鳴を上げながら、マリアは遂に直撃を受けた。
 マントの防御すら間に合わず、全身をずたずたに引き裂かれ、傷口を炎で炙られた。
 漆黒に染まった装束は、黒き炎の刃の前に、遂に崩れ落ち膝をついた。

「もう少し楽しめるかと思ったが……期待外れだったな」

 金の眼光がマリアを見下ろす。
 白装束に黒炎を纏う、モノクロのコントラストの武人が、冷たい視線と言葉を放つ。
 強い。
 何度となく抱いた感想だ。
 その拳にも刃にも、迷いが一切感じられない。
 私は強い。私は勝てる。むしろ絶対に勝たなければならない。
 その凄まじい覚悟と気迫が、刃を燃やす炎となって、弱いマリアの身を焼き焦がしてくる。

(私とは、まるで違う)

 ほぼタメ歳だというのに随分な違いだ。
 これが今の自分に欠けているものか。
 むしろこれこそが、今の自分が、持っていなければならないものだったのか。
 無様に地べたに跪きながら、陽炎の向こうに立つ忍の姿を、マリアはじっと見上げていた。



(マスターは無事なのか……!?)

 マリアとの念話が途切れてから、それなりの時間が経過している。
 恐らくはエデンの予測通り、敵の襲撃を受けてしまい、それどころではなくなったのだろう。
 あちらが受信できないのであれば、令呪による強制転移もできない。であれば、自分が力を尽くして、彼女の元へ戻らねばならない。

「邪魔だっ!」

 そのためにも、倒さねばならない敵がいる。
 青紫のロボットの胴体に、勢いよく鉄拳を叩き込んだ。
 拳から小宇宙を爆裂させる。機体の内側で迸る雷が、内部メカを焼き尽くす。
 機能を失ったブリキ人形は、エデンが離脱すると同時に、力なくうつ伏せに倒れた。
 これでもまだ倒したのは二機目だ。青紫の陸戦機に限っても、まだ六機ほど残っている。
 更に頭上を見上げれば、先ほどのライダーのそれとも違う、新たな黒いロボットが二機。

(大した敵ではないはずだ!)

 単純火力も耐久力も、ライダーが直接駆っていた、あの黒き邪神の方が勝っている。
 にもかかわらず苦戦しているのは、連戦がパフォーマンスの低下を招き、エデンが弱っているからか。
 いいや違う。これは戦い方の差だ。
 先程から敵は見透かしたかのように、こちらが攻められたくない位置とタイミングで、次々と攻撃を仕掛けてくる。
 あのサーヴァントもとんだ策士だ。自らパイロットをやるよりも、後方で手下を操る方が、よほど手強いではないか。


770 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:19:59 t8FjCTrI0
「チィッ!」

 だだだだだっ、と機銃が唸る。
 ロボットサイズのマシンガンが、雄叫びを上げて凶弾を放つ。
 鉛弾ところか砲弾サイズだ。大きく舌打ちを打ちながら、エデンはこれを飛び退って回避。

「がはっ!」

 しかしその背後から襲ったのは、痛烈な衝撃の一打だった。
 跳ね返る体をなんとか捻り、着地するより早く敵を見やる。
 別の青紫のロボットだ。腕に仕込まれたトンファーを、背中に叩きつけてきたのだ。
 あの程度の攻撃を食らってしまうとは、いよいよヤキが回ってきたらしい。

(このままでは……!)

 今のままでは敗北する。
 戦場の主導権は完全に、ライダーの陣営が握っている。
 このまま突破口を見出せないようでは、マリアを殺され脱落だ。
 何とかしなければ。
 そう思いながらも、それでも何ともできない自分に、エデンは下唇を噛んだ。
 未だ顔も見ていないライダーが、高らかに嘲笑う姿が、脳裏に浮かんでくる気がした。



 そしてそれらの戦況を、一人見下ろす者がいる。
 ゴーグルとスカーフで顔を隠し、紺色のコートを夜風に揺らし、ビルの上に立つ男がいる。
 劣勢を強いられるキーパー側と、優勢に事を進めるライダー側。
 彼はそのどちらでもなかった。全くの第三者だった。

「そうやって見下すことしかしないから、貴様らは足元を掬われる」

 故に彼は純粋に、打算だけを考えて、その後の行動を決定した。
 このまま野放しにしておいて、危険な存在になるのはどちらか。
 たとえこの場で見逃したとしても、野垂れ死ぬのがオチなのはどちらか。
 それは誰の目にも明白だ。故に男は弱者ではなく、強者の方に狙いを定めた。

「ならばその驕りを抱えたまま――潔く地の底へと沈め!」

 かちり、と乾いた音がする。
 それは彼がその手に握った、リモコンのボタンの音だった。
 直後戦場に響いたのは、キーパーでもライダーによるものでもなく、設置式の爆弾によって生じた、鋭い爆発音だった。


771 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:21:00 t8FjCTrI0


「何が起きた……!?」

 地を埋める瓦礫の只中で、苦々しげに顔を歪めながら、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは呟く。
 現象だけなら簡単だ。何らかの爆発によって、背後のビルの一部が崩落し、瓦礫がルルーシュへと降り注いできた。
 それだけならば問題はない。幽霊であるサーヴァントには、石くれの雪崩など蚊ほども効かない。
 今確認を取るべきなのは、それが誰によって起こされたかだ。
 キーパーも、そのマスターさえも、戦場からは動いていない。彼らにはルルーシュを攻撃することはできない。

「キィイイイ――ッ!」

 その時だ。
 鳥の鳴き声を思わせる、甲高い声が聞こえてきたのは。

「使い魔か!?」

 果たして姿を現したのは、奇妙な姿を持った怪鳥だ。
 金属のパイプやエンジンを有した、機械仕掛けの猛禽である。それが二羽、三羽と現れ、ルルーシュの周囲を飛び交っている。
 実体はない。されど質量は感じる。魔力の気配は感じられないが、本物のロボット鳥でないのは確かだ。
 であれば、未知のサーヴァントによる、何らかの召喚術である可能性がある。
 自分が神秘の欠片もない、ナイトメアフレームを呼び寄せ、意のままに操っているように。

「S-1! 私の直掩に回れ! 新手が現れた可能性がある!」

 ルルーシュは無線を観測兵に繋ぐと、自らの護衛に回るよう指示した。
 戦況の確認を担っていた、最初に召喚したサザーランドが、すぐさまルルーシュの元へと戻る。
 万一キーパーらに視認されていたら、自分の位置を気取られかねない手だ。
 だが、既に相当量のナイトメアフレームを召喚し、雅緋の魔力を使ってしまっている。
 自分の身を守るために、『我は世界を壊す者(しんきろう)』で戦い続ける余力はない。であれば、今ある手駒を使うしかない。
 そうした判断に対しては、ルルーシュは迷いのない男だった。
 しかし、それとは違った意味で、この選択が誤りだったことを、彼は遠からず知ることになる。



 雅緋は正しく勝ち誇っていた。
 よほどつまらない勝負だったのか、その顔に浮かぶ感情は薄い。
 ただしその冷酷な眼差しは、既に黒服の女をライバルではなく、屠るべくゴミとして見下していた。
 後は黒刀を振り下ろすだけだ。
 逆転あどあり得るはずもない。無様に膝をついた槍の女は、その一刀で絶命する。
 故に雅緋のその態度は、自分の勝利を疑うことなく、戦いの終わりを確信しきっていた。

《――注意は引きつけた! やれ、ランサー!》

 そういう状況下の人間こそ、最も警戒が薄れるものだ。
 ランサーのサーヴァント――駆紋戒斗は、その隙を見逃す男ではなかった。


772 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:22:02 t8FjCTrI0
「おおおおっ!」
「何っ!?」

 気付いた時にはもう遅い。
 真紅のボディを固く覆った、金と銀色の鎧が光る。
 地を蹴り物陰から飛び出してきた、甲冑の戦士の得物が唸る。
 駆紋戒斗の戦闘形態――その名も、アーマードライダー・バロン。
 『掲げよ、騎士の黄槍を(バナナアームズ)』をその身に纏い、豪槍を振りかぶる赤熱の男が、一直線に駆け抜けてくる。
 その勢いを殺すことなど、雅緋にはできようはずもなかった。
 あの殺気の塊のような女が、今まさにこの瞬間だけは、それほどに警戒を緩めていたのだ。

「フンッ!」
「がぁああああーっ!」

 振り下ろす切っ先が、身を切り裂く。
 甲高い悲鳴が闇夜に木霊し、真っ赤な鮮血が暗黒を彩る。
 胴体を狙ったその一撃は、しかし両断には至らなかった。
 さすがにユグドラシルの闇のボスだ。咄嗟にその身をよじることで、直撃だけは免れたのだ。

「ぐぅ……っ!」

 それでも、ただでは済まされない。破れ飛んだ衣服の下では、胸元から腹のあたりまでにかけて、痛ましい傷跡が刻まれている。
 露出した胸元の傷口からは、令呪すらも塗り潰す勢いで、どくどくと血が流れ落ちている。

「え……?」
「仕損じたな」

 だとしても、即死で終わらせるつもりだった戒斗にとっては、それすらも不本意な結果だった。
 戸惑うもう一人の女を無視し、アーマードライダーは舌打ちをする。

「令呪をもって、命ずる……来い……ライダーッ!」

 そして雅緋の行動は、戒斗のそれよりも早かった。
 胸の谷間の令呪を光らせ、強制転移の命令を下す。
 声を張り上げたその勢いで、気力を使い果たしたのか、今度は雅緋が膝をついた。

「なかなかに無茶を言ってくれる!」

 瞬間、闇夜に広がったのは光だ。
 人間大の白い光が、徐々にその大きさを増して、新たな存在を現出させる。
 現れたのは黒いロボット。恐らくはライダー自身の駆る宝具か。
 強制転移と同時に発動し、攻撃を受けるリスクを避けたのは、さすがと言うべきかなんと言うべきか。

『この勝負、預けるぞ!』

 次に聞こえてきた声は、先ほどとは異なり、スピーカー越しに発せられたものだ。
 屈辱の色の濃い声を上げ、主人を拾い上げた漆黒の巨神は、すぐさまそのまま飛び去っていった。
 追いかける術は、戒斗にはない。オーバーロードならまだしも、アーマードライダーにその力はない。

(収穫なし、か)

 己のポリシーを曲げてまで、息巻いて飛び込んできた割には、この程度の結果しか得られなかった。
 プライドの高い戒斗にとって、そのあまりにもお粗末な結果は、彼のヘソを曲げさせるには、あまりにも十分すぎるものだった。


773 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:22:43 t8FjCTrI0


「すまない、マスター。僕としたことが、迂闊だった」

 聖衣を解いて帰還してきた、エデンが放った第一声は、そんな謝罪の言葉だった。

「それを言うなら、私もそう……結局貴方に、負担をかけることしかできなかった」

 そんな申し訳なさそうな顔をされると、こちらまでいたたまれなくなってくる。
 元はといえば、マリアがちゃんと戦えていたならよかった話だ。
 二人でライダーを追っていたなら、戦力を分断されることもなく、共に戦えたはずだったのだ。
 だからこそガングニールを解いたマリアは、謝る必要はないと、エデンにそう返したのだった。

「………」

 ちらと、エデンは脇を見やる。
 鉄仮面のランサーは、未だ逃げることなくそこにいた。
 臨戦態勢を解いたマリア達と異なり、恐らくは宝具か何かであろうその鎧を、未だその身に纏ったままでだ。

「やるつもりか。今のお前ら程度なら、俺一人でも事足りるぞ」

 離れずにいたのは、手負いごとき敵ではないという、ランサーの自信の表れか。
 悔しいが、こちらは満身創痍だ。確かに二人がかりで挑んでも、万全の敵を相手取るには、厳しいものがあるだろう。

《……マスター、僕に提案がある》

 それ故かもしれない。
 エデンがマリアに対して、念話でそう語りかけたのは。



「えっ?」

 キーパーなるサーヴァントのマスターが、驚いたような表情を作った。
 どうやら念話で、何かしらの作戦会議を行っているらしい。
 戦闘態勢に戻っていないことを考えると、どうやら正面から戦う気はなさそうだ。
 どちらでもいい。何をしてこようと、正面から叩き伏せるだけのことだ。
 そうして戒斗は、その光景を傍観し、相手の次の言葉を待った。

「……あの、ランサー。これはよかったらでいいのだけれど……私達と、同盟を組まないかしら?」

 しかし実際に、相手のマスターの口から出た言葉は、少々予想外のものだった。
 アーマードライダーのマスクの下で、戒斗は軽く、目を見開く。

「僕達はお互い、聖杯を得るために戦っている。
 しかしそのライバルはあまりに多い……ならば、せめて一時的にでも手を組むことで、共にその数を減らしていくのが、得策だとは思わないか?」

 マスターに続くように、キーパーが言った。
 なるほど、つまりはそういうことか。
 勝ち目が薄いというのなら、味方につけてしまえばいいということか。
 生き残りを賭けたサバイバルゲームである以上、そういう選択肢は、考えていなかった。
 確かに、最後の二組になるまでという条件なら、同盟を組むという行為も自然にはなる。


774 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:23:21 t8FjCTrI0
「なるほど。悪くはない提案だ」

 言いながら、戒斗は変身を解いた。
 赤いスーツと鎧が消えて、黒と赤を基調とした、ロングコートの姿へと戻る。
 平時ならばそのような提案、戒斗は一笑に付していただろう。
 しかし状況が状況だ。雅緋一人を警戒する自分達に、手段を選んでいる余裕はない。
 何よりも、敢えて徒党を組むと決めたなら、その状況をしかと受け止め、活用できるだけ活用する――駆紋戒斗はそういう人間だった。

「だが、俺はあくまでもサーヴァントだ。マスターの意志を聞かずして、結論を出すわけにはいかない」
「承知している」

 応えたのはマスターではなく、サーヴァントだった。
 主導権を握っている。これはマスター自身の考えではなく、キーパー側の提案ということか。
 さすがに、傀儡になっている、とまではいかないだろうが。

「さてどうする、マスター殿?」

 言いながら、戒斗は背後を振り返る。正確には後方に建っている、背の低い建物の上の方にだ。
 そこには一つの人影があった。
 紺色のコートを身に纏い、天上の月を背負う男。相も変わらず警戒を解かず、がちがちに顔を隠した男。
 戒斗のマスター――黒咲隼が、高みからキーパーらを見下ろしていた。

「……好きにしろ。ただ、俺は貴様らと馴れ合うつもりも、ましてや助けてやる気もない。それだけはよく覚えておけ」

 吐き捨てるようにそう言うと、黒咲はすぐさま身を翻した。
 それで終わりだと言わんばかりに、彼は会話を拒絶して、その場から立ち去っていった。

「だ、そうだ。お互いに相互不可侵ということで、この場は納得してもらおうか」

 敵対関係を貫くとは言わない。ただし協力することもない。
 それはすなわち、お互いをターゲットとしては認識せず、手を出さないということだ。
 戒斗の要約に、キーパー達も納得し、首を縦に振って了解した。

「詫びの代わりに、一つ教えてやる。あの女の名は雅緋。この街のゴロツキを束ねる親玉だ」

 リベンジを挑むつもりがあるなら、歓楽街を探してみれば、奴を見つけられるんじゃないかと。
 戒斗はそれだけを言い残して、同じく身を翻し立ち去った。

《喋りすぎだ》

 黒咲の苛立たしげな念話が聞こえる。しかし戒斗は、それを無視した。
 奴らに戦う意志があるのなら、雅緋と潰し合うことで、こちらの手間を省いてくれるだろう。
 仮にそうでなかったとしたら、どの道遠からず野垂れ死ぬ。その程度の器だったというだけの話だ。

(無償の取引など存在しない)

 手を組みたいというのなら、働ける分だけは働いてもらう。
 それが駆紋戒斗なりの、同盟関係の条件だった。


775 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:24:48 t8FjCTrI0
【H-6/行政地区/一日目 深夜】

【マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]ダメージ(大)、疲労(大)、魔力残量5割
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール
[道具]アガートラーム、外出鞄(財布、肌着、タオル、通帳)、特殊武器チップ(メタルマン)
[所持金] 普通
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、月の落下を止めたい
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.ランサー(=駆紋戒斗)達とは相互不可侵。助けられるなら助けたい
3.夜が明けたら、足りない生活用品を買い揃える。特に下着が欲しい
4.ガングニールに振り回されている、弱い自分に自己嫌悪
[備考]
※H-6にあるアパートに暮らしています
※ガングニールのロックが外れ、平時より出力が増大していることに気付きました
※ランサー(=駆紋戒斗)組と相互不可侵の関係を結びました
※ランサーのマスター(=黒咲隼)の顔と名前を知りません
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が歓楽街を縄張りにしていると聞きました
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません

【キーパー(エデン)@聖闘士星矢Ω】
[状態] ダメージ(中)
[装備] 『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』
[道具] なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.ランサー(=駆紋戒斗)達とは相互不可侵
3.ユグドラシルの空気に違和感。何かからくりがあるのかもしれない
[備考]
※世界樹の大元になっている樹が、「アスガルドのユグドラシル」なのではないかと考えています
※ランサー(=駆紋戒斗)組と相互不可侵の関係を結びました
※ランサーのマスター(=黒咲隼)の顔と名前を知りません
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が歓楽街を縄張りにしていると聞きました
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません


776 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:25:29 t8FjCTrI0
【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]魔力残量9割5分
[令呪]残り三画
[装備]ゴーグル
[道具]カードデッキ、デュエルディスク、オートバイ
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.帰宅する。その後、今後の方針を練る
2.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※D-9にあるアパートに暮らしています
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ロックシード(バナナ、マンゴー、レモンエナジー)、トランプ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.帰宅する。その後、今後の方針を練る
2.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません


777 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:26:13 t8FjCTrI0


 戦闘者の肉体とは、重いものだ。
 基本的に筋肉というものは、脂肪よりも重たいものである。
 そのため戦いのために己を鍛え、筋肉の鎧を纏った者は、必然体重も重くなってくる。
 何もしない一般人よりは、確実に体格はよくなっているはずだ。

「重いぞ、マスター」

 とはいえ、その発言をしたのは、頭でっかちのルルーシュである。
 あるいは普通の人間であっても、膝の上に寝転ばれていては、同じ感想を漏らしたかもしれない。

「お互い、様だ。キーパーから逃れる時……お前を抱えてやったのを、忘れたか」

 ひゅうひゅうと細く息を吐きながら、顔にびっしりと汗をかいて、雅緋は従者の悪口に返した。
 『我は世界を壊す者(しんきろう)』にて戦場を離脱し、街の上空を飛ぶ両者は、今はまっすぐに歓楽街を目指していた。
 ナイトメアフレームの機動力だ。到着に時間はかからないだろう。
 あとはこのデカブツが、上手く着陸できる場所を、どこか探さなければならない。それだけが当面の問題だった。

「とにかく……部下を、退かせなければならないな。あのまま放置しては、足がつく……」
「馬鹿か。その前に医者だ。マスターが死んでは元も子もないだろう」

 口調が素のものに近づいているのは、余裕のなさの表れだろうか。
 ルルーシュに魔術の心得はない。人間の医者を頼らない限り、雅緋を治療することはできない。
 表面上は平静を装いながらも、内心でライダーのサーヴァントは、それなりに切羽詰まっていた。

(らしくないミスをした)

 先の戦闘を省みる。
 あの時奇襲を仕掛けた者は、敵サーヴァントなどではなかった。
 恐らくはサーヴァントのマスターだ。それが自らを囮にし、なおかつ正体を悟らせることなく、巧みに陽動を実行したのだ。
 信じがたい、とは今でも思う。雅緋じゃあるまいし、とは思ってしまう。
 その思考自体が、マスターは基本後方支援に徹するものと、無意識に決めつけてしまった結果だ。
 自分達という例外が、唯一無二の存在であると、勝手に思い込んでしまったが故のミスだ。

(固定観念の隙を突くことこそ、小兵の取れる唯一の策)

 かつてテロリストを率いていた自分なら、それは分かっていただろうに。
 その固定観念に縛られたことこそが、勝利の目前まで迫ったゲームを、敗北したも同然の形で、こうして投げ出す結果を招いた。
 同じ轍は二度と踏むまい。膝もとに力なく横たわる、己がマスターの痛ましい姿に、ルルーシュはそう固く誓った。

(それに、他にもクリアすべき条件がある)

 更に今回の戦いにおいては、もう一つの問題点が浮上した。
 それは自らの宝具の燃費の悪さだ。
 十機近いナイトメアフレームを使役し、『我は世界を壊す者(しんきろう)』を二度召喚し、マスターにも前線で戦わせた。
 神秘性に乏しいとはいえ、ナイトメアフレームは大質量兵器だ。その消費は無視できないものがあった。
 結果として今回の戦いだけで、雅緋の魔力残量は、半分以下にまで減少してしまった。
 『我は世界を壊す者(しんきろう)』と『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』の同時使用。それがルルーシュの理想だ。
 しかしこの燃費の悪さでは、たとえ雅緋がマスターであっても、とても賄いきれるものではない。

(対策を打たねばならないな)

 魔力が要る。
 それも魂喰いなどという、効率の悪い手段を、ちまちまと取ってもいられない。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとっては、その方法を探るのが、当面の課題となるだろう。それは重々承知していた。


778 : 百機夜行 ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:27:18 t8FjCTrI0
【F-8/行政地区上空・『我は世界を壊す者(しんきろう)』コックピット内部/一日目 深夜】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]胴体にダメージ(大)、魔力残量4割
[令呪]残りニ画
[装備]コート
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.歓楽街に戻る。その後何らかの手段で部下に連絡し、行政地区から撤退させる
2.聖杯にかける願いに対する迷い
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 】
[状態]健康
[装備]『我は世界を壊す者(しんきろう)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.歓楽街に戻る。その後雅緋を病院へ運ぶ
2.魔力確保の方法を探る
3.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません



[全体の備考]
※H-6の橋の周辺で、大規模な戦闘が発生し、街に被害が出ました。周辺住民の間で、噂になる可能性があります。


779 : ◆nig7QPL25k :2015/10/22(木) 22:27:44 t8FjCTrI0
投下は以上です


780 : 名無しさん :2015/10/23(金) 02:18:16 RKtdAG3Q0
投下乙です
苦労人しててもカッコつけても似合う黒咲さんはいいキャラしてる
しかし忍者とはいったい…


781 : 名無しさん :2015/10/23(金) 18:32:31 aWskMCd6O
投下乙です
軍団を指揮してた方が手強いってのはルルーシュらしいなー
他にも集団を従える主従は多いし。この先、多対多の集団戦とかもあるのかな……?
しかし嫌々な戦法ながらも抜群のタイミングで美味しいところを持っていきますね戒斗さんw

ああ、それとひとつ指摘が
>>766の最後で宣言しているのがライダーのサーヴァントとなっていますが
これ雅緋のことならライダーのマスターの間違いでは?


782 : ◆nig7QPL25k :2015/10/23(金) 23:33:00 pUSoNjMw0
SSのWiki収録の際に、以下の修正を行いました

「不屈」におけるハービンジャーのダメージを、「小」から「中」へと変更(見直してみたら結構バスター食らってたし、もうちょいダメージ受けてるかもなと思ったので)
「百機夜行」における誤字脱字、および表現を一部修正(>>781様の指摘部分を含めて)

>>781様、ご意見ご感想ありがとうございました
基本的に>>1が書きやすいように、ノリと勢いでやっていってる企画ですが、
ここがハッキリしないとリレーする時に困るという部分もあるかもしれませんので、
そういう分からない点などがありましたら、ご意見・ご質問などいただけたらと思います
感想などもいただけると泣いて喜びます


783 : 名無しさん :2015/10/24(土) 01:34:49 QAnlTJOIO
>>782
修正&収録乙です。


784 : ◆nig7QPL25k :2015/10/24(土) 15:56:13 6FaQzQeI0
憤怒のラース、アルバート・W・ワイリー、キリト、ヘルマン・ルイス、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランで予約します


785 : ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:50:11 hcXqVHrE0
投下します


786 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:51:40 hcXqVHrE0
「この街は豊富な魔力資源と文献が揃った、理想的な研究拠点だと聞いていた。だがどうやら、その認識を、改めなければならないようだな」

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
 九代続く名門の生まれで、聞くところによると、かの時計塔の十二学部を統括する、君主(ロード)と呼ばれる学部長の一人なのだそうだ。
 そんな大人物が講義を放り出して、こんな所にまで訪れた理由など、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランの知るところではない。
 魔術師が魔術都市に来たのだ。おおかたこの土地が、研究に向いていただとか、そういう理由なのだろう。

「行政地区での二度の出火事件、礼装を持った殺人鬼による通り魔事件。
 私の仮屋のすぐ近くでも、大規模な爆発事件が起きている。大きな噂にはなっていないが、魔力の消失現象まで起きたと聞くぞ」

 それも全てがここ数日のうちにだ。
 爆発と火災に関しては、全て同日に起きたというではないか。
 この街の治安はどうなっているのだと、言外にケイネスは問いかけてくる。

「全て、我々の不徳の致すところです」
「よく理解しているな」

 想定通りの返答だ。
 あるいは、それが聞きたかった、というところか。
 そんな気配を隠そうともしない、ロード・エルメロイの振る舞いに対して、アニエスは内心で苛立ちを覚える。
 軍の力不足という認識は確かに正しい。だが、物にも言いようがあるではないかと。

「何にせよ、せめて私の滞在中くらいは、きちんと働いてもらわねばならんな。
 わざわざこの魔術師の街で、魔術の心得を持たぬお前達に、仕事が与えられている意味を、理解してもらいたいものだ」

 嫌味ったらしくそう締めくくると、ケイネスはその場を離れ、かつかつと廊下を歩いていった。

(だから魔術師は嫌いだ)

 内心でアニエスは吐き捨てる。
 わざわざ魔術師の街に暮らしているのだ。最初はそんな風に思うこともなかった。
 しかしここで仕事をしていくうちに、魔術師どもの傲慢にあてられ、それを嫌悪するようになっていった。
 今日自分達の上司と面会し、それを終えここで出会ったケイネスという男は、その中でも格別の男だった。

(私の上司も魔術師ではないのだと、奴に教えてやるべきだったか)

 そこまで考えて、無駄だと悟る。
 きっとあの男は、それを知っているからこそ、この司令部に乗り込んできたのだろう。
 相手が魔術師ではないからこそ、こういう強気な行動に出られた。堂々と文句を言うことができたのだ。
 魔術都市ユグドラシルの治安維持を担う、軍隊の最高責任者――キング・ブラッドレイ司令官に対して。


787 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:52:40 hcXqVHrE0


「――確かに受け取った」

 ご苦労だったなと労いながら、アニエスの提出した報告書を、キング・ブラッドレイは受け取った。
 部下の死の報を受けてから、今の今までに行った捜査のまとめだ。
 結局この形にまとまるまでに、まる一晩寝ずに働く羽目になってしまった。
 きっとミシェルを弔う暇も、当分は得られないのだろう。

「この一晩の間に、ユグドラシルのほぼ全域で、何らかの騒動が発生しています……一体何が起きているのでしょう」
「それを調べて食い止めることが、我々に課せられた役割というものだ」

 私に聞かれても答えは出せんよと、ブラッドレイは苦笑しながら返す。
 私に聞いている暇があれば、自力で調べよということだ。
 正論である。もちろん尋ねたアニエス自身も、もとよりそのことは理解していた。

「人為的な事件であるなら、間違いなく犯人が存在する。そして今後も、犯行を繰り返す可能性があるな」
「ただちに各所にて検問を行い、容疑者を炙り出します」
「ならばいくつか、確認してもらいたいことがある」

 検問を行うというアニエスの言葉に、ブラッドレイは注文をつけた。
 第一に、通る者の手足を確認し、異常がないか見てほしいというのだそうだ。
 この街には礼装で人に斬りかかり、被害者を操る通り魔がいる、という噂がある。
 その斬られた痕が残っていないか、確かめてほしいというのだ。

「噂を真に受けるのですか?」
「信憑性のある噂だ。現に君の部下も、尋常ならざる術によって、その命を奪われている」
「似た通り魔の存在を、否定することはできない、と」
「状況が状況だ。疑わしきは全て調べ上げる。それくらいでなければ追いつかんよ」

 僅かに顔を暗くしながら、アニエスはブラッドレイの言葉を受け取る。
 毅然とした女性だが、親しい者の死に平然としていられるほど、冷酷な女というわけではない。
 仕事に支障をきたすつもりはない。しかしそこまではいかずとも、やはり今ミシェルの名を出されると、弱い。

「それともう一つ。探してもらいたい者がいる」

 と、そこでブラッドレイは、自分の机の引き出しを開けた。
 取り出されたのは、女性の写真だ。
 アニエスより一つか二つほど若いだろうか。ピンク色のロングヘアーが、ひどく印象に残る女性だった。

「マリア・カデンツァヴナ・イヴという役人だ。何でも、行政地区の火災以来、行方が分かっていないらしい」
「火事に巻き込まれて、行方不明になったということですか?」
「いや。彼女のアパートは焼けてはおらん。全く無事なまま、住民だけが、行方をくらませたのだそうだ」

 そういう報告を受けている、とブラッドレイは言う。

「つまり、被害者ではなく……」
「容疑者だ。見つけ次第身柄を確保し、取り調べを行うように」

 念のため私にも、連絡を入れてもらおうと、ブラッドレイはそう締めくくった。


788 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:53:47 hcXqVHrE0


《いい口実が見つかったな》

 霊体化したアルバート・W・ワイリーは、自らのマスターに語りかける。
 軍を動員してのマスター探しは、以前より考えていた手ではあった。
 しかし特に理由もなしに、そういった行動を取ったのであれば、周囲に警戒や疑念を持たれてしまう。
 軍を動かせる人間が、マスターの中にいるのだと、自ら触れ回っているようなものだ。
 そこにもっともらしい理由が生まれたのは、渡りに船というものだった。
 当然だが、行方不明者マリア・カデンツァヴナ・イヴの報告など、ブラッドレイは受けていない。
 彼女にまつわる写真や資料も、全て自分で取り寄せさせたものだ。

《最悪、マリアでなくともよい。誰かしら他のマスターが、網にかかることもあるだろう》
《そしてそれを襲うのも、自分ではなくナンバーズにやらせると?》
《一山いくらの凡夫であればな》

 全員を相手にしてもおれんと。
 司令室の窓から街を見下ろし、キング・ブラッドレイは言う。
 憤怒のラースの目的は、人間と心ゆくまで戦い、その有り様に触れることだ。
 されどその中には、何の面白みもない人間が、何かの間違いで生き延びて、名を連ねてしまっているかもしれない。
 少なくとも、マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦闘技量に限って言えば、彼にとっては期待外れだった。
 それだけが人間の全てではないことは、無論重々理解しているが。

《これは言わば選別だ。私に刃を抜かせるに足る、その器こそを探し出す》

 真に強き者であるなら、サーヴァントですらない使い魔ごときに、敗れることはないだろうと。
 この試練を突破した者にこそ、憤怒のラースが命を賭して、挑む価値があるのだと。

《それはそれで気に食わん話だが》
《お主とて、心を持たぬ今のナンバーズが、完全であるとは思うまい?》

 ブラッドレイの問いかけに、ワイリーはううむと唸るしかなかった。
 『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)』は、本来単なる戦闘兵器ではなく、心を持ったロボットであった。
 しかし今のワイリーに生み出せるのは、その思考回路を大幅に簡略化させた、心ない兵器でしかない。
 その程度の劣化した存在を、完全なナンバーズであると断言するのは、ワイリーのプライドが許せなかった。
 それは自らの技量と、そして元のナンバーズ達に対する愛着の、双方があってこその不満だ。

《まぁ、ひとまずは、部下達の報告を待つとしよう》

 とはいえそのあたりの話は、実際にターゲットが見つからないことには進まない。
 そうやってブラッドレイは会話を締めくくると、再び机へとついて、黙々と作業に戻った。

(………)

 その脇で息を殺す第三者には、遂に気付かないままに。


789 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:55:01 hcXqVHrE0
【G-8/行政地区・軍司令部・司令官室/1日目 午前】

【憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)@鋼の錬金術師】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] 刀×4
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:ホムンクルスとして、人間と心行くまで戦う
1.検問の結果を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る。直接戦うに足る相手であると分かれば、自ら出向く。
[備考]
※G-4にある豪邸に暮らしています
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました

【クリエイター(アルバート・W・ワイリー)@ロックマンシリーズ】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:世界征服のために聖杯を狙う
1.検問の結果を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る
3.マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦闘能力に興味
[備考]
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました


790 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:55:32 hcXqVHrE0


 気配遮断ランク・D。
 サーヴァントとしての気配を断ち、身を隠す力を示すスキルだ。
 自らを暗殺者と名乗るには、そのDランクという数値は、あまりにも低すぎるものだった。
 何せ攻撃態勢に入れば、殺気を隠しきれなくなる。
 それでできるのは隠れんぼだけだ。いざ殺してやるぞと思った瞬間に、相手に気取られてしまうようでは、アサシンなどとても務まらない。

《――とまぁ、だいたいそんな感じだな。事のあらましは》

 できることといえばこうやって、どこか拠点に忍び込んで、情報を入手してこれることくらいだ。
 もっともそれすらも、今のキリトにとっては、貴重な成果ではあったのだが。

《キング・ブラッドレイにマスター疑惑……か》

 軍司令部に程近い喫茶店で、コーヒーを口に運びながら、ヘルマン・ルイスの念話に応じる。
 朝起きた時に気付いたのは、街が騒がしいということだった。
 どうやらせっかちなマスター達が、早くも大規模なドンパチを始めて、街の話題をさらっていたらしい。
 今後の方針を決めるため、情報を収集したかったが、あいにくとこの街にはインターネットがない。
 そこでヘルマンの力を当てにして、この手の情報が一番出入りするであろう、軍司令部に密偵として放ったのだ。
 忍び込むことに限れば、ヘルマンは優秀なスパイである。霊体化し気配をも消せば、誰にも彼を捉えられない。
 たとえキリト達が知り得ない、魔眼の使い手が相手だとしてもだ。

《俺はマリアって嬢ちゃんの情報を受け取ったあたりから、司令室の様子を見てたんだがな。
 あれはアニエスちゃんに言ったように、部下から報告されてきたものじゃない。自分で手配させたものだ》

 ろくに会話もしたことない女性に、いきなりちゃん付けをするのもどうなのだろうか。
 そのツッコミは浮かんだものの、この場合重要ではなかったので、無視した。

《部下の報告よりも早く、火災の容疑者を知っていた……》
《無論、目的は放火魔を探すことじゃない。
 恐らくその火災の正体は、サーヴァント同士の戦闘の余波……マリアちゃんは、そのどちらかのマスターだったんだろう》
《検問を提案した、アニエスの方がマスターって可能性は?》
《そりゃ考えられなくもないが、これといった証拠がないな》

 今は疑う必要はないだろうと、ヘルマンはキリトに対して言う。

《軍に追われるマスターか》
《相手はマリアちゃんだけじゃない。名も知らない全てのマスターを探し、炙り出すためのマスター狩りだ》

 またこんな目に遭うとはな、とヘルマンが言った。

《また?》
《魔女狩りって言葉は聞いたことあるか?》

 それはキリトも知っている。
 悪しき魔術で人を害する、魔女を討伐するという名目で行われた、異端者の大量虐殺のことだ。
 その魔女狩りに遭った者達が、どういう理由で異端だったのかは、現在では解釈が分かれている。
 アンチキリストの異教徒とも、単に教義に反する行為を行った者とも、本当に魔女のようなまじない師であったとも言われている。

《俺達魔戒騎士や魔戒法師は、かつてそういう目に遭ったことがある。
 騎士を邪魔者だと思った奴に、権力を盾に好き放題されて、仲間を随分と殺されたのさ》

 魔戒法師の称号を剥奪され、野に棄てられた法師・メンドーサ。
 やがてまじないによって王族に取り入り、表の社会に溶け込んだ彼は、自らの異端技術を駆使して、世界を支配しようと目論んだ。
 彼はその対抗勢力となりうる、魔戒騎士や魔戒法師を、魔女と称して処刑させたのだ。
 そう語るヘルマン・ルイスの声は、いつにもなく暗く、真面目なものだった。
 当事者であるヘルマンにとって、その魔女狩りの記憶とは、恐らくはとてつもなく重い意味を持つのだ。


791 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:56:40 hcXqVHrE0
《……それでも、人を守ることは、やめなかったんだな》

 だが、そうした裏切りを受けてなお、恐らくヘルマンの心は揺るがなかった。
 魔女狩りを生き延び人生すら終え、それでもなお魔戒騎士を名乗っている。
 それは人間に裏切られ、絶望した者にはできないことだ。

《そりゃそうだろ。街の人らも兵士ですらも、俺達の正体が何者なのか、知らずに魔女狩りを進めてたんだから》
《それで片付けられる問題なのか?》
《片付けるしかないのさ。人も悪い奴らばかりじゃない。
 仮に俺らを襲った連中が、その正体を知っててそうしたとしても、俺は魔戒騎士をやり続けてただろうな》

 仮に彼らが本心から、自分達を敵視したとしても、それは人類の総意ではない。
 人々の中には、ホラーに襲われ、助けを求めている者も大勢いる。
 魔戒騎士を拒絶するのではなく、魔戒騎士を求める人間の数も、同等以上に存在するのだ。
 たとえ自分達を守った者が、誰なのか知ることもなくとも。
 たとえ口にした助けを求める声を、誰に向けるべきなのかすら知らずとも。

《……あんたのこと、少し分かったような気がするよ》

 話を聞いたキリトの感想が、それだ。
 どうしようもないスケベ男だが、ヘルマン・ルイスはその点に関しては、揺るぎも迷いもない男だった。
 数々の悪癖を帳消しにする、その守りし者としての決意の強さが、彼を絶影騎士たらしめていたのだ。
 一度はとんでもないくじを引いたと思ったが、さすがに英霊の一人として、名を連ねるだけのことはあるようだ。

《そりゃどーも》

 少し照れくさそうに笑う、ヘルマンの念話が聞こえてきた。

《さて……それで、これからどうする? いつまでもこんな所で、一服してるってわけにもいかねぇだろ?》
《もちろん、動くさ。まずは奴らに追われてる、マリアさんって人を探してみる》

 言いながら、キリトは残ったコーヒーを、ぐいっと全て飲み込んだ。
 それなりに長居していた席だ。ホットで出された飲み物も、すぐ流し込めるくらいには冷めていた。

《会ってどうする?》
《サーヴァント二人がかりなら、昨日見た、塔の結界も破れるかもしれない。
 どうせ街に居場所はないんだ。だったら外に出てみないかって、誘ってみるよ》

 交換条件、というやつだ。
 まずはマリア・カデンツァヴナ・イヴと合流し、軍や諸々からの追及を逃れるため、精一杯の助けをすると持ちかける。
 そしてその見返りに、自分達に協力するよう、お願いするというわけだ。
 弱みに漬け込んでいるようで良い気はしないが、なにせ戦う相手が大きすぎる。
 聖杯という巨大な敵を相手取るには、仲間は多いに越したことはない。であれば、頼れそうな相手は頼るべきだ。

「ごちそうさま」

 伝票をカウンターの店員に渡し、代金とお礼の言葉を贈る。
 こそこそと嗅ぎ回るのはこれで終わりだ。この魔術都市を脱出するため、これからは自ら動く時だ。
 喫茶店を後にすると、キリトは気持ちをぐっと引き締め、戦場への一歩を踏み出した。


792 : 森の向こうに目が潜む ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:58:17 hcXqVHrE0
【G-8/行政地区/1日目 午前】

【キリト(桐ヶ谷和人)@ソードアート・オンライン】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]光剣カゲミツG4、Five-seveN(21/20+1)、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:世界樹から脱出し、元の世界へ帰る方法を探す
1.マリア・カデンツァヴナ・イヴを探し、協力を求める
2.マリアと協力関係が結べたら、街の外にある塔を調べに行く
3.向かってくる敵とは戦うが、自分からはあまり戦いを仕掛けたくない
[備考]
※キング・ブラッドレイおよびマリア・カデンツァヴナ・イヴが、マスターではないかと考えています。
 アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランに対しても、可能性くらいはあるかもしれないと考えています。
※軍が検問を行おうとしていることを知りました

【アサシン(ヘルマン・ルイス)@牙狼-GARO- 炎の刻印】
[状態]健康
[装備]魔戒剣×2
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守って戦う
1.マリア・カデンツァヴナ・イヴを探し、協力を求める
2.マリアと協力関係が結べたら、街の外にある塔を調べに行く
[備考]
※キング・ブラッドレイおよびマリア・カデンツァヴナ・イヴが、マスターではないかと考えています。
 アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランに対しても、可能性くらいはあるかもしれないと考えています。
※軍が検問を行おうとしていることを知りました



[全体の備考]
※『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)』ターボマンおよびフロストマンの修復が完了しました
※数時間以内に、ユグドラシル市内全域に、検問所が設置されます。
 身分や荷物のチェックのほか、『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』に襲われていないかどうかを確認するため、
 簡単なボディチェックが行われることになっています。
 令呪が発見された場合には、身体的特徴として、記録されることになります。
 (一般兵士は令呪の存在を知らないため、書類上は、普通の「赤い刺青」として処理されます)
※マリア・カデンツァヴナ・イヴが、行政地区火災事件の容疑者として捜索されています


793 : ◆nig7QPL25k :2015/10/25(日) 21:58:49 hcXqVHrE0
投下は以上です


794 : ◆nig7QPL25k :2015/10/26(月) 00:38:07 AvYMixtE0
湊耀子、円環の理、シノン、シエル・アランソン、殺人鬼ハリウッド(3人目)を予約します


795 : ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:32:20 64rxnB/c0
投下します


796 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:32:55 64rxnB/c0
 行政地区からの距離を考えると、結構な大移動になっただろう。
 それだけの道のりを律儀にトレースし、こうして住まいまで割り出したアーチャーには、素直に感謝の心すら覚える。
 北西の一般住宅街で、一軒のアパートを見上げながら、湊耀子はそう思った。

《突入とか、しないんですか?》

 傍らに立つアーチャーが――鹿目まどかが念話を発する。
 不可視の追跡者が割り出したのは、怪しげに政庁を見つめていた、水色の髪の少女の部屋だ。
 未だ目撃はしていないが、サーヴァントを連れている可能性が高い。
 要するに、戦うべきマスターである可能性が、高い。

《見かけによらず、過激なことを言うのね》
《そっ、それは、湊さんがそう言うから!》
《そうね。それは私の言い方だわ》

 私の意志を聞いているのだから、当然かと。
 慌て気味なまどかの声に、苦笑気味な念話で返した。
 英霊の割には可愛らしい子だ。何度となく浮かべた感想を繰り返す。
 多くを語り合ったわけではないが、恐らくはそれほど長い期間、人生を生きたわけではないのだろう。
 平和に生きてきたような、のんびりとした外見の割に、儚い生を送ったものだ。少しばかり、同情を覚えた。

《それで、結局これから……》
《そうね……貴方が落ち着きを欠いている理由を教えてくれたら、動いてあげてもいいかしら》
《……!》

 図星をつかれた、といったところか。
 耀子の言葉を受けたまどかが、言葉を詰まらせ沈黙する。
 この場所で再会を果たした時から、まどかは妙にそわそわとしていた。
 これまでには見られなかった態度だ。故にマスターとして、見過ごすわけにはいかなかった。
 マスターにとってサーヴァントとは、背中以上のものを預ける存在だからだ。

《……二つ、気配を感じるんです》

 おずおずと、まどかが言葉を返した。
 言語化できない感覚を、何とか言葉にするように。

《一つは、魔女に似てるもの……多分それよりも、ずっと濃いものを。
 もう一つは、えっと……何て言ったらいいか……なんだかどこか、懐かしい感覚というか……》
《………》

 手探りに近いまどかの言葉に、耀子は耳を傾ける。
 地に足のつかない不確かさは、そのままの心の表れだ。得体の知れない感覚に、心が随分と乱されている。

《……今夜はやめておきましょう》
《えっ!?》

 結局、湊耀子が選んだのは、突入の中止という判断だった。
 予想外の返答に、まどかの念話が微かに上ずる。

《本戦が始まったその直後……今は勝ち残ったマスター達が、一番ピリピリとしている時期よ。
 心の準備ができないままに、下手に行動を起こすのは、危険だわ》

 それは見過ごすことはできない。
 周囲の警戒が高まった現状で、集中を欠いたまま動くことは、何よりも避けなければならない。
 たとえこのままアパートに踏み込み、マスターを攻撃するにしても。
 まどかの感じた気配の正体を、探りに向かうにしても、だ。


797 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:33:26 64rxnB/c0
(敵マスターの所在を特定できた。今はそれだけでいい)

 実を言うと、今の耀子に、水色の髪の少女を、即座に殺そうという気はなかった。
 もちろんただの雑魚であればそうしただろうが、サーヴァントが優秀ならば野放しにするか、あるいは同盟を組んでもいいとも考えていたのだ。
 20人以上にも及ぶライバルを、逐一相手にしていては、さしもの耀子も骨が折れる。
 であれば、敢えて彼女を泳がせ、勝手に数を減らしてくれるよう仕向けるのも、それはそれでいいかもしれないと考えていたのである。

《それに……この場には、長く留まらない方がいいみたい》
《……?》

 一歩、二歩と足を運びながら、耀子はまどかに向かって言う。
 建物の陰に身を隠しながら、視線を促した先にあったのは、人影だ。
 マスターであるかどうかなど知らない。この距離では令呪は確認できない。
 されど分かることが、一つある。
 それはその身から漂わせる、殺気だ。
 中年の男性が放つ殺意は、歩を進ませる先にある、アパートへとまっすぐに向けられていた。



 眠れない。
 こんな夜を過ごしたのはいつぶりだろうか。
 それはガンゲイル・オンラインという枠を超え、現実の殺し合いを始めたからでもあり。
 それを勝ち抜くための武器が、この手にないからでもあるのだろう。

「………」

 自宅の勉強机について、デスクに置いたPDWを見下ろし、シノンは一人思考していた。
 忌むべき殺戮兵器としての銃。
 それでもこの戦いの場においては、貴重な生命線であるはずの銃。
 そのはずなのに、その引き金を、今のシノンは引けずにいる。
 自分の情けなさ故に、己の命すらも守りきれず、こうして無様を晒している。

《マスター》

 アーチャーの念話が語りかけてきた。
 昼間の遭遇もあり、念のため、一日霊体状態で過ごさせていたシエルだ。

《明日からのこともあります。今夜はもう休んでください》

 険しい顔をしていたのだろう。
 おかげで気を使わせてしまったようだ。
 さすがに同居人にそう言われては、いつまでも起きているわけにもいかない。

《ありがとう、アーチャー》

 シエルの立つ方向に笑いかけた。
 彼女にだけ戦わせている現状を、心苦しいとは思っている。
 もちろん、いつか共に並び立てるよう、最大限努力をするつもりだ。
 それでもせめて、今この時だけは、好意に甘えさせてもらおう。
 せめてこの一晩くらいは、シエルを頼ったっていい。夜が明けて、また明日になってから、もう一度考えてみればいい。
 そう考え、シノンは椅子を引き、そこから立ち上がろうとした。

「――ッ!?」

 その、時だった。
 がしゃん――と大きな音を立て、窓ガラスが砕け散ったのは。


798 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:34:22 64rxnB/c0
「っ!」

 次いで聞こえたのは、風を切る音。
 反射的に銃を取り、席を立った時にはもう遅かった。
 身を引いたその左手に、鋭い痛みが走ったのだ。

「うっ……!」

 抑えながら、後ずさる。
 出血量は大したことはない。肌を掠めただけの軽傷だ。
 赤く走った一本筋は、刃物によって斬られた痕か。

「マスター!」

 シエルが具現化し、神機を構える。

「………」

 睨むその先に立っていたのは、包丁を握った中年の男だ。
 シノンにつきっきりでいたシエルは、直感のブラッドをオフにしていた。そのことが仇となったのだ。
 一階に住んでいたのであれば、ベランダから侵入されることも、予測できていたはずなのに。

「下がってください! ここは私が――!」

 失点は取り戻さなければならない。シエル・アランソンが前に出て、シノンを庇うように立つ。
 敵が纏うのは尋常ならざる殺気だ。されど赤く光る目には、どこか虚ろな気配すら漂う。
 正気ではない。マスターかどうかは分からないが、危険な人物であることは確かだ。
 シエルに言われるがまま、言葉に従い、シノンは腕を押さえながら後ずさる。
                                 ……てる

「……え?」

 その時だ。
 何か聞き覚えのない声を、耳にしたような気がしたのは。
                                 ……愛し  て る

「何……?」

 これは何だ。
 この声は誰だ。
 こんな声色をした人間は、この場には一人としていないはずだ。
                      てる   る  愛  し  愛して  て 愛 る 愛

「何……何なの……!?」

 不気味だ。
 それどころではなく恐ろしい。
    愛してる てる る る  愛 て  してる  愛して して て  愛 る 愛してる 愛   して 愛し 愛
 この声は一体何なのだ。そもそもどこから聞こえてくるのだ。
 どころか鼓膜などではなく、体に直接響いていないか。
    愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる

「マスター……!?」
「あ、ああ……!」

 がたがたと左手が震えた。
 ぼろぼろと涙がこぼれ始めた。
 目の前の男が歩み寄ってくる。体から聞こえる声がその歩みに重なる。
 何だ。自分はどうなったのだ。
 この体に何が起こったのだ。この体に何を取り込んだのだ。
 私は誰に愛し襲われている。私は愛して誰に毒愛されている。私を愛し殺そうとする愛してるものは一体愛してる愛してる愛し愛愛愛愛愛愛愛愛愛!


799 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:34:56 64rxnB/c0
「うわぁああああ――っ!!」

 遂にシノンは絶叫した。
 シエルの姿など目にも入らず、トリガーを引いて喚き散らした。
 5年越しのトラウマをも突破し、恐怖と混乱と共に破られた軛は、鋭い銃声と共に砕け散った。

「ぐぇ……!」

 だだだだだっと音が鳴る。
 内なる声をかき消すように、絶やすことなく鳴らし続ける。
 鈍い音がそれに続いた。飛び散る鮮血が部屋を汚した。
 火薬と血液の匂いが、室内をあまさず満たした時には、既に銃の弾は尽きていた。
 装填された弾数を、残らず使いきってなお、シノンが意識を取り戻すまでには、数秒の間隔を必要とした。

「はぁ、はぁ……はぁ……――ッ!」

 何が起きたかを理解する。
 何をやらかしたかを認識する。
 瞬間既にシノンの足は、部屋からトイレへと向かっていた。

「マスター!」

 シエルの声など聞こえない。
 乱暴に扉を開け放ち、便座を上げて身を屈ませる。
 すでに口元までせり上がっていたものを、げえげえと便器にぶちまけた。
 なおも胃から逆流するものを、全て出し終えるまでの間に、気の休まる余裕などまるでなかった。
 喉から強引に押し上げる痛みと、つんとする悪臭に涙を流し、ようやく全てを吐き出し終える。
 げほげほとむせ返るように咳き込むと、水を流すことすらも忘れ、へなへなとシノンはへたり込んだ。

(何だったの……)

 撃ってしまった。
 撃ててしまった。
 それは些細なことでしかない。シノンが体感した現象の、その壮絶さを語る修飾語に過ぎない。
 あくまでも引き金を引けたのはこの時だけだ。
 引き金を引けてしまえるほどに、シノンは追いつめられていたのだ。

(何だっていうの……!?)

    愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
 声は未だに聞こえている。
 いくらか落ち着いているものの、朝田詩乃の体の中では、正体不明の声が木霊している。
 一体何が起きたのだ。この体はどうなってしまったのだ。
 全て吐き出してしまえば、私の体に住み着いた何者かも、出ていってくれるのであればよかったのに。
 耳を塞ぐように頭を抱え、体を縮こまらせながら、シノンは一人震えて、赤い瞳を涙で濡らした。


800 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:36:08 64rxnB/c0
【G-2/一般住宅街・アパート・シノンの部屋/一日目 深夜】

【シノン(朝田詩乃)@ソードアート・オンライン】
[状態]罪歌の子、精神ダメージ(中)、左腕に裂傷(小)
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]ウルティマラティオ・へカートII(7/7)、H&K MP7A1(0/40)、各種予備弾丸
[所持金]普通(一人暮らしを維持できる程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、トラウマを克服する
0.罪歌の子として、罪歌および鯨木かさねの声に従う(無自覚)
1.自分の身に起きた変化に対する恐怖
2.魔術師の魔力確保手段を調べ、実践する
3.銃のトラウマを克服し、戦えるようにする
[備考]
※罪歌の子に斬られ、罪歌の子となりました。
 ただし説明を受ける前に、相手を殺してしまったため、自分に何が起きたのかを理解できていません。
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。

【アーチャー(シエル・アランソン)@GOD EATER 2】
[状態]健康
[装備]神機
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守って戦う
1.魔術師の魔力確保手段を調べ、実践する
2.シノンがトラウマを解消する方法を探す
3.異変が起きたシノンへの心配と、それを庇いきれなかった自分への自責
[備考]
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。


801 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:36:34 64rxnB/c0


 あの男に殺られるのであれば、その程度のマスターであっただけのこと。
 そう言い放った耀子は、踵を返し、さっさと自宅への帰路についた。
 当然鹿目まどかもまた、自身のマスターの後に続き、透明な姿のまま夜道を進んだ。
 遠ざかってく橋の向こうの景色を名残惜しげに振り返りながら。

(何だったんだろ、あれは)

 強く感じられた気配は、二つ。
 呪いに近い禍々しいものと、昔から慣れ親しんだような不思議なものとだ。
 前者の方は、耀子に言った通り、魔女に近い何者かが、その街に潜んでいたのかもしれない。
 それでもあれは、呪いとイコールではなかった。
 もっと距離が近づけば、あるいは分かったのかもしれないが、どうも呪いの持つそれよりも、もっとストレートな気配を感じたのだ。

(どっちかというと、ほむらちゃんに近い)

 思い出すのは、親友の顔だ。
 幾多の運命を乗り越えて、最高の友達として認め合った、暁美ほむらの顔だった。
 ようやく訪れた再会の時に、自らを悪魔へと貶め、世界を引き裂いた少女の顔だった。
 あれは魔女の放つ呪いよりも、悪魔が愛だと主張した、あの鮮烈な感情に近い。
 それは魔女以上に力強い魔人が、あの場に潜んでいたということなのだろうか。
 あるいは考えたくもないが、暁美ほむらその人が、あの街のどこかにいたのだろうか。

(それだけじゃない)

 そして厄介なことに、懸念事項は、その禍々しい気配一つではない。
 もう一つ感じた気配もまた、無視できないものに変わりはないのだ。
 それは敵意や危険よりも、もっと曖昧な何かを、まどかに伝えていたのだが。

(あっちは結局、何だったんだろ……)

 どこか懐かしい感触。
 それは共に戦った、魔法少女の思い出かもしれない。
 しかしそれでも満点ではない。円環の理の眷属達は、あれとはまた異なる気配で、自分に接していた気がする。
 いかに嗅覚に優れていようと、人は自分自身の匂いには、他人より遥かに鈍感である。
 まどかがそのことを知っていたならば、正解にも辿りつけたのだろうか。
 曖昧にしか感じられない、その不思議な気配の正体が、自分の分身のものであると、気付くことができたのだろうか。
 引き裂かれ卑小な存在となった、今ここにある円環の理は、その程度の感知しかできないほどに、脆く儚いものに成り果てていた。


802 : 愛の叫びが聞こえるか ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:37:28 64rxnB/c0
【F-2/自然保護区/一日目 深夜】

【湊耀子@仮面ライダー鎧武】
[状態]普通
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]ゲネシスドライバー、ピーチエナジーロックシード、財布
[所持金]普通
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.家に帰り、就寝する
2.水色の髪の少女(=シノン)の扱いは保留。殺してもいいし、他のマスターを掃除させてもいい
3.他のマスターを捜索する方法を考える
[備考]
※水色の髪の少女(=シノン)がマスターであると考えています

【アーチャー(円環の理)@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]集中力低下
[装備]ソウルジェム
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.家に帰り、頭を落ち着かせる
2.水色の髪の少女(=シノン)の扱いは保留
3.一般住宅街周辺で感じた、二つの気配(=暁美ほむらおよび鹿目まどか)の正体が気になる
[備考]
※暁美ほむらと鹿目まどかの気配を感じ取りました。
 しかし距離が遠かったため、位置と正体までは把握していません。
※水色の髪の少女(=シノン)がマスターであると考えています


803 : ◆nig7QPL25k :2015/10/29(木) 02:38:02 64rxnB/c0
投下は以上です


804 : ◆nig7QPL25k :2015/10/31(土) 20:22:22 2yvBW4Qc0
立花響、スバル・ナカジマで予約します


805 : ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:14:33 0Ry6h5ec0
投下します


806 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:15:12 0Ry6h5ec0
 遠くで誰かが呼んでいる。
 助けを求める声がする。

 助けなきゃ。
 この手で救わなきゃ。
 救いを求める人の手を、この手で掴んで引き寄せて。
 安全な場所まで一直線に、送り届けてあげなくちゃ。

 それは善意?
 それとも義務?
 あるいはその手は贖罪のため?

 血と鉄の匂いが染み付いた、この右手を伸ばす理由は――何?


807 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:15:39 0Ry6h5ec0


 気がつけば、闇の中にいた。
 私はどこか暗がりの中で、一人立ち尽くしていた。

 少しばかり、埃っぽい。
 ぱらぱらと何かが崩れる音もする。
 事故? 戦闘? 何か大掛かりな破壊の痕跡だ。
 けれど今は、何もない。僅かな環境音以外、目にも耳にも飛び込んでこない。
 そんな静寂にただ一人、私は放り出されていた。

「ぅあああ……っ!」

 誰かの声が聞こえてくる。
 遠くから声が響いてくる。
 これは泣き声だ。誰かが涙する声だ。
 私は声のする方へ向かった。明かりもない闇の只中を、声だけを頼りに歩いていった。

 そこにいたのは、一人の少女だ。
 私と同い年くらいの、青い髪の少女だ。
 事故に巻き込まれたものか。戦いで身に受けたものか。
 薄着の少女は、血と涙を流し、一人座り込んでいた。

 助けなきゃ。
 何があったか知らないけれど、早くここから連れ出さなくちゃ。
 怪我をしているというのなら、ちゃんと手当てをしなくちゃならない。
 そもそもこんな危ない場所に、一人で置いておくわけにはいかない。
 私は前に進もうとした。少女の元へと歩み寄って、その血まみれの手を取ろうとした。
 邪魔な瓦礫をすり抜けて、時に脇へと転がして、私は奥へ奥へと進んだ。

 そして、私は見てしまった。
 その姿を目の当たりにした時、一瞬、その手が止まってしまった。
 左腕を深々と抉る、その傷跡を目にした時。
 血と肉のその奥から覗き、ぱちぱちと光を放っている、その鈍色を見てしまった時。

「―――」

 金色の瞳が、こちらを見た。
 涙を流すその瞳が、私の両目とぴったりと合った。
 吸い込まれるようなその瞳に、全てを見透かされているような。
 そんな気がして、私の夢は、そこで暗転し終わりを告げた。


808 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:16:04 0Ry6h5ec0


 夢の中身を、まだ覚えている。
 目を覚ました時に、そう感じたのは、随分と久しぶりのことかもしれない。
 逆に自分がいつ寝たのかは、上手く思い出せないのだけれども。

「………」

 見上げたのは、寮の天井だ。
 体には布団の感触がある。自室のベッドで眠っていたらしい。
 当たり前のことだけれど、何故だか違和感を感じる。
 そう思って、立花響は、身を起こそうと力を入れる。
 腕の力で持ち上げる体が、えらく重たく痛いと思った。
 視線を落とし、着ていたのがいつものパジャマではなく、簡単な肌着だったことに気付く。

「あ……」

 あからさまに自分ではなく、誰かに着せられた格好を見た時。
 自分は誰かの手によって、介抱されていたのだと気付き。
 立花響は自室ではなく、戦場で倒れたのだと、ようやく彼女は思い出した。

「ッ!」

 がばっと身を捩り、枕元を見やる。
 時計の針が指すのは九の時。学校のチャイムすら鳴っている時間帯だ。
 なんということだ。正確に断言はできないが、どう見積もっても八時間は経っているではないか。
 私はそんなにも長い間、あの場をほったらかしにしていたというのか。
 こうしてはいられない。すぐさまベッドから飛び降りる。
 足が痺れたのは無視した。壁際のタンスへ駆け寄って、下着を取り出す時間すら惜しかった。
 適当に目についたものを引っ掴んで、次はシャツを脱ごうとしたその瞬間。

「――すごいね。もうそんなに動けるんだ」

 背後から聞こえた声に、びくりと震えた。
 シャツにかけた手を離しながら、声のする方へ振り返る。
 そこに立っていたのは、一人の少女。
 金の瞳を光らせて、響の心を覗き込む、青く短い髪の少女。
 血みどろで戦場に座り込み、悲しみに涙を流し続けた、■■仕掛けの――

「キャスター……さん」

 違う。そんな歳ではない。
 次の瞬間には、響の瞳は、その姿を正確に捉えていた。
 夢の幻影の向こうにいたのは、自分が従えているサーヴァントだ。
 未だ癒えない傷跡を、人間の包帯を巻いて隠した、痛ましい姿の相棒だ。

「とりあえず、食欲あるんだったら、朝ごはんにしよっか」

 それでも、緑の瞳のスバル・ナカジマは、いつものように穏やかな顔で、相も変わらず笑っていた。


809 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:16:44 0Ry6h5ec0


『マスターの魔力量は既に、80パーセント近くまで回復しています。驚異的な回復速度です』

 ガングニールの治癒能力は、肉体的なダメージのみならず、魔力というのにも影響するらしい。
 テーブルに置かれた宝具――『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』の言葉を、響は椅子に座って聞く。
 武器が喋るというのを目の当たりにした時、最初は面食らったものだった。
 高度な人工知能と言われても、そんなものは現実ではなく、SFの世界の話だと思っていたのだ。

「そっか」
『相棒は心配していました。マスターは先の戦いで、魔力をほとんど空になるまで、使いきってしまったのですから』
「ごめんね。マッハキャリバーにも、心配させちゃったみたいで」

 それでも、最終的には慣れてしまい、結果としてこうやって普通に向き合い、会話する仲にまで落ち着いている。
 たとえ水晶のペンダントだとしても、これも響を支えてくれる、れっきとした仲間の一人なのだ。

『理解していただけて何よりです』
「もー、余計なことばっか言わないの」

 マッハキャリバーの言葉を遮るようにして、スバルが食卓へとやって来る。
 台所から運んできたのは、緑が眩しいレタスのサラダと、ロールパン。卵はスクランブルエッグにしてあった。
 病み上がりの響を気遣ってか、いつもよりも、軽めのメニューだ。
 普段ならカリカリのベーコンの上に卵を落として、目玉焼きにして食べていたのだが、油物は避けてくれたらしい。
 いただきます、と挨拶をして、パンへと手を伸ばし、食べる。
 これでもマシな部類なのだが、西洋のパンは日本より硬い。
 友人から聞いた話によると、欧州の人と日本人とでは、物の噛み方が違うらしい。恐らくこの世界樹の人々にとっては、この硬さこそが適正なのだろう。

「明け方に特級住宅街まで、偵察に行ってたんだけどね」

 ややあって、スバルが口を開いた。
 食べる手はそのままに、目線を合わせて耳を傾ける。それは今の響にとって、最も気がかりなことだった。

「メンターさん達の姿は見当たらなかったけど、敵の気配ももうなかった。多分、逃げ延びたんだと思う」

 戦闘は終わったということか。
 ルイズ達の安否は気になるが、ひとまず、一つの疑問は解消された。
 安堵にほっと息をつくと、スクランブルエッグを口に運ぶ。
 軽くぴりりとするのは、胡椒の風味だ。体に差し障りない程度の辛味が、朝の意識を目覚めさせてくれる。
 格別に優れた品ではないが、作った人間の気遣いが見えるような、そういう料理だ。

「……スバルさん」

 そうなると、気がかりなことがある。
 敢えてスバルの真名を呼んで、響は会話を切り出した。
 夢の中で目の当たりにした、恐らくはスバル・ナカジマの過去の姿。
 それと現在の姿との、埋めようのないギャップについてだ。

「どしたの?」
「こんな時に聞くべきかどうかは、ちょっとアレなんですけれど……気を失ってる時、多分、スバルさんの夢を見ました」

 唐突に過ぎる話だとは思う。
 それでも、今聞いておきたかった。
 はっきりとさせておかなければ、今後に差し支えが出るかもしれない。
 認めたくない自分だが、あの時あれを見た響は、伸ばした手を引っ込めてしまった。
 同じことが起きないというのも、ないとは、言い切れなかったのだ。
 だからこそ、疑問に思ったことは早いうちに、解決しておくべきだと思った。


810 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:17:51 0Ry6h5ec0
「あの時見た、スバルさんの左手……その時の傷は……」

 白い制服の下から覗く、左手の包帯を見ながら、言う。
 夢の中の幼い彼女は、今と同じ左腕に、大きな傷を負っていた。
 そこに見てしまったものが何なのか、問いたださなければならないと思った。
 だって、あれは。
 あの時目の当たりにしたあれは。
 血と肉の赤の向こうに覗いた、あのあってはならないものの正体は。

「そっか。見たんだ、あれを」

 問いかけに、スバルが口を開く。
 どこか困ったような、寂しげなような。
 いつものそれに比べると、力のない苦笑を浮かべながら。

「多分、響の想像は合ってると思う。あたしの体、生まれた時から、何割か機械でできてるんだ」

 左腕の袖をまくりながら。
 包帯を巻いたその腕を見せ、言う。
 その向こうに響が見たものの正体――機械のフレームとケーブルを示唆して。

「戦闘機人、って言ってね。魔導師みたいな優れた才能を、人の手で与えた子供を作れないかって、そういう研究があったの」
「それで、その研究で生まれたのが……」
「そ。あたしと、二つ上のお姉ちゃんは、その実験体の生き残りだった」

 多くの犠牲が積み上げられた。
 有機物と無機物の融合を果たすには、それほどのハードルを越えなければならなかった。
 最初から機械に適合するよう、遺伝子を調整するという方法が実を結ぶまで、相当な数の命が消えていった。
 そうして生まれた完成体が、タイプ・ゼロというコードで呼ばれる、スバル達二人の少女だった。
 そうまでして勝ち取られた成果も、その名の通り戦うための――人殺しの兵器として作られた命だ。
 そんな呪われた命を生み出すために、流されるべきでない血が、あまりにも多く流されてしまった。
 スバル・ナカジマという存在は、生まれながらに十字架を背負った、犠牲の上に立つ罪人なのだ。

「……ごめんなさい。言いにくいことを、聞いちゃって」
「ううん、気にしなくてもいいよ。この体のことだって、今ではきちんと受け入れてるから」

 余計なことを聞いてしまった。
 自分のわがままで、触れてはいけない領域に、勝手に踏み込んでしまった。
 そう考えて顔を曇らせる響を、スバルは笑顔を浮かべて宥める。

「あたしもさ、こんな体に生まれたことが、最初は嫌だったんだけどね。
 だけど、戦うためのこの力も、人助けのためにだって使えるんだって、あのメンターさんからそう教わった」

 力は力だ。
 現象そのものに善悪はない。使う者の意志こそが、神と悪魔を隔てる差になる。
 殺戮を求めた開発者の意志は、紛れもない悪だと言い切れた。
 されども、平和な世界に拾い上げられた時点で、スバル・ナカジマの意志と力は、そこからは既に切り離されている。
 故に今度はスバル自身が、神と悪魔を分かつ側になった。
 力の使い方は一つではないと、エース・オブ・エース――高町なのはに、身をもって教えられたのだ。
 それこそがスバルが彼女に抱く、大きな恩の正体だった。


811 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:18:27 0Ry6h5ec0
「だからあたしは、最終的に、レスキューの仕事に行き着いたんだ」

 何物でもない真っさらな力を、何に使うべきかと考えた末に、彼女は人を救うことを選んだ。
 痛いことは嫌いだが、誰かを痛くするのはもっと嫌い。
 誰かが痛がるのが嫌ならば、それを止められるようになればいい。
 そう語るスバルの表情には、後ろ暗さなど何一つなかった。

「………」

 この人は、紛れもなく人間だ。
 冷徹な機械などではない。暖かい心を持った人間なのだ。
 そう理解できたことは嬉しかった。それを否定する理由はない。
 されどその一方で、同時に響の胸に浮かんだのは、もう一つの疑問だった。
 浮かんだというよりは、思い出したというべきか。
 それまで感じていたことに、答えらしきものが見えたような、そんな気がしていたのだ。

「もしかして、スバルさんが、私のことを気にかけてくれてるのって……」

 思い切って、口に出す。
 無償の善意というものを否定はしない。響だって、困っている人には、手を差し伸べてあげたいと思う。
 だがそれにしては、スバルの態度は、やけに優しいと思っていた。
 安らかに眠れていたはずの魂を、無理やり起こした赤の他人を、彼女はいやに気にかけてくれた。
 上手く言えないが、それは地の部分のお人好しよりも、もっと深い理由があるのではないか。
 心のどこかで、スバルに対して、そういう風に考えていた。それは否定できない事実だった。

「うん。似てるんだ。あたしと、響とは」

 響が言わんとしていることは、言うまでもなく伝わっていた。
 響にとっては知る由もないが、それは高町なのはに対して、スバルが己が口で語ったことだ。
 その在り方が、よく似ている。
 共に人ならぬものを取り込んで、人ならざる何かとなった者同士。
 人ならぬ力を私欲ではなく、人を守るために使うと誓った者同士。
 そして、人ならぬその身が生まれたことに、暗い理由を抱えた者同士。

「響もあたしと一緒で、人助けをしたくて、ガングニールの力を使ってるんだよね?」

 スバルの問いかけに対して、響は頷く。

「大きな犠牲が出た中で、生き残った私は、その分だけ頑張らなくちゃならない……それが最初の理由でした」
「今は違うつもりだけど、でも今も、戦えない自分自身に対して、無力と責任を感じてる」

 見透かされている。
 故に返す言葉がなかった。
 自分が戦えればと、どうしても考えてしまう。
 だから夕べの戦いにも、響はギアを纏って飛び込んでしまった。
 結果的にそれがいい方向に作用したが、それでも無茶をしたことに変わりはない。
 でなければ、こんな時間まで、倒れていることもなかった。

「そのことが心配なんだ、あたしは」

 気づけば朝食を食べる手が、スバルも響も止まっていた。
 大食漢の二人が揃って、食べ物に手をつけずに話をしている。
 少なくともここに来てからは、初めての光景だった。


812 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:19:22 0Ry6h5ec0
「災害救助をしていると、どうしても、助けられなかった人が出てくる」

 英霊といえど人間だ。全てを救えるわけではない。
 現場に駆けつけるのが遅れて、救助が間に合わなかった人がいる。
 災害が起きた瞬間に、既に命を落としてしまっていた人もいる。
 最善を尽くしてそれでもなお、救えなかった人もいる。

「どうしようもなかったこともあるし、そういうのに慣れてしまえば、きっと楽だったんだろうけどね」
「ってことは、まさか……」
「うん。どうしても、慣れることができなかった」

 その時の笑顔を、見たような気がした。
 今にも泣き出しそうなその笑顔は、強がっているのだということが、響にも分かった。
 きっとその話の中で一番、雄弁な表情だったかもしれない。
 スバルの浮かべた悲しげな笑みは、言葉よりも深く確かに、響の胸に突き刺さっていた。

「恥ずかしい話だけどさ。あたしはその度に何度も、自分の無力を責めてきた」

 救えなかった苦しみに、幾度も胸を痛め続けた。
 苦しみ逝った人々の心を思い、悲しみに涙を流し続けた。
 同じ後悔を繰り返さないように、今度は助け出せるようにと、その度に己を苛め抜いた。

「きっと全てを投げ出せば、そんな思いもせずに済んだんだろうけど……それだけは、どうしてもできなかったんだ」

 そうして人々を見捨てる方が、きっともっと苦しいだろうから。
 そう語るスバルの顔は、これまでの勇猛さが嘘のように、脆く、弱々しく見えた。

(それは……)

 痛いことは嫌いだが、誰かを痛くするのはもっと嫌い。
 誰かが痛がるのが嫌ならば、それを止められるようになればいい。
 それが救いになるのなら、自分が痛んだって構わない。
 その正義は祈りではなく、呪いだ。
 正しい行いや善き行いは、どうしようもない悪意によって虐げられる、弱者の祈りから生まれるもののはずだ。

(なのにこの人は、呪われている)

 スバル・ナカジマは呪われている。
 己が正義によって呪われている。
 兵器として生まれた彼女の魂は、正義を振りかざさない限り、自身の良心によって傷つけられる。
 たとえその正義が、彼女の心を、引き裂くものであったとしてもだ。
 行くも地獄。退かぬも地獄。スバル・ナカジマの人生は、どう歩んでも苦しみから逃れられない、正義の呪縛に囚われていたのだ。
 奇しくも奇跡という名の猛毒に、身を冒され殺されようとしている、今の立花響のように。
 機械仕掛けの傷口を晒し、痛みに涙する彼女の姿は、過去のスバルのそれではなく。
 彼女の人生の全てを、暗示していたのではないかと、響にはそんな風に思えた。


813 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:20:22 0Ry6h5ec0
「あたしの周りには、そんなあたしを、気遣ってくれた人がいた」

 そんな人生でも悪くはなかったと、それでもスバルは言葉を続ける。

「どうにか折れずにやっていけたのは、みんなのおかげだと思ってるし……みんなに心配かけちゃったのも、申し訳ないなと思ってる」

 彼女の人生には常に、仲間達の姿があった。
 それは高町なのはであり、そして響が見たことのない、幾人もの仲間達の姿だ。
 聖杯戦争が始まる前、昔のことを聞いた時に、そんな話をしていたような気がする。
 もっとも、こういう暗い話題には、決して触れたことはなかったけれど。

「だからそういう人達のことは、大事にしなきゃいけないし……響は絶対に、あたしみたいになっちゃいけない」

 それが人生の先輩からの忠告だと、真剣な面持ちになって、スバルは言った。
 立花響とスバル・ナカジマは、違う時代を生きた人間だ。
 されど二人は、鏡写しのように、似通った人生を生き抜いてきた。
 共に呪いをその身に受けて。
 共に呪いを祈りに変えて。
 共に祈りという呪いに縛られている。
 同じ人間であるのなら、響もいつかスバルのように、絶望に突き当たる時が来る。
 スバルが踏みとどまった地獄へと、そのまま堕ちてしまうこともある。
 それだけは絶対にいけないと、人生を生き抜いた英霊は、己のマスターへとそう言った。

「私は……」

 ガングニールは人を救うための力だ。
 この力を振るい戦うことに、今は後悔を抱いていない。
 それでも響のその正義が、いつまでも貫けるものだと、断言することができるだろうか。
 自責と重圧に押し潰されて、壊れてしまう日が来ないと、言い切ることができるだろうか。

(祈りが呪いに変わってしまえば、同じ絶望に突き当たる……)

 肝に銘じなければならないと思った。
 生涯を絶望と共に送り、笑顔の下に涙を隠した、この英霊の人生を。
 その中でスバル・ナカジマを支え、その笑顔を守り続けてきた、仲間達の存在を。
 響の笑顔を守ってくれる、大切な仲間達の存在を、決して無碍にしてはならないと。


814 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:20:59 0Ry6h5ec0


 特級住宅街へと向かう。
 体調の戻った響にとって、他に選択肢はなかった。
 どうせ今から学校に行っても、遅刻という結果は避けられないのだ。
 故にここは、あの場へ戻って、ルイズ達の安否を確かめる。
 そのためにも特級住宅街にあるという、ヴァリエール邸を訪ねてみる。
 食事を終えて着替えを済ませ、身支度を整えた響が、導き出した結論だった。
 スバルもまたそれを了承し、共に南を目指すことになった。

「あたしはさ、響」

 そんな響が出かける時、ふと、スバルが声をかけた。

「あたし自身は、メンターさんと違って、地味な人生送ってきたから……きっと普通だったら、こんな所には、呼ばれなかったんだと思う」

 突き詰めればスバル・ナカジマとは、いちレスキュー隊員に過ぎない。
 一時代において無双を誇った、正真正銘の英雄に比べれば、霊格も功績も大きく劣る。
 後の世に語られることのない、無銘の戦士であったスバルは、普通ならサーヴァントにはなれなかっただろうと。

「それでもここに呼ばれたのは、きっとそこに響がいて、呼んでくれたからだと思うんだ」

 そんな彼女を引き寄せたのは、立花響の魂だろうと。
 同じ人生を生きてきた、鏡合わせの二人だからこそ、こうして呼び合ったのだろうと。
 正規の聖杯戦争においては、特定の英霊を呼ぶ依代がなかった場合、マスターと近い精神性を持った英霊が、引き合うようにして呼ばれたのだそうだ。
 故にあるはずのない召喚が、この世界樹の頂で叶えられた。
 因果で結ばれた宿命の二人が、このユグドラシルで奇跡的に、呼び合い並び立ったのだろうと。

「だから守るよ。呼んでくれたからには、必ず」

 その奇跡を無駄にはしない。
 立花響は絶対に、スバル・ナカジマが守り抜く。
 その身も心も、責任を持って、キャスターのサーヴァントが守ると誓う。
 そのために自分はここにいるのだと、スバルはそう宣言した。

「……多分、それが英霊ってことなんですよ」

 ああ、この人は英雄だ。
 口では否定しようとも、どうしようもなくヒーローだ。
 立花響はそう思い、微笑を浮かべて玄関を開く。
 救いを求める人がいれば、駆けつけてその手を差し伸べる。
 たとえ心を傷つけたとしても。たとえ誰に語られずとも。
 その在り方は、どうしようもなく、英雄という呼び名そのものだった。
 そうあれたらと心から思える、眩しくて誇り高い在り方だった。
 正義の代償の苦しみを、忘れたわけではないけれど。
 本当は英雄なんてものが、必要とされないような平和な世界が、響の望みではあるのだけれど。

(やっぱり、気が合うってことなのかな)

 やはり自分とこの人とは、似た者同士の人間なのだ。
 その在り方を貫いた、スバル・ナカジマの魂は、自分の憧れるものだったのだ。
 その心意気に惹かれている、立花響という人間を、否定することはできなかった。


815 : 祈りと呪い ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:21:52 0Ry6h5ec0
【E-4/学術地区・学生寮・響の部屋/一日目 午前】

【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]魔力残量8割、ダメージ(小)
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール(肉体と同化)
[道具]学校カバン
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ガングニールの過剰融合を抑えるため、メンターから回復魔法を教わる
1.ルイズ達の安否を確認するため、ヴァリエール邸に向かう
2.学校の時間以外は、ルイズと一緒にメンターの指導を受ける
3.ルイズと共に回復魔法を無事に習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
4.両備の復讐を止めたい
5.出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
6.スバルの教えを無駄にしない。自分を粗末には扱わない
[備考]
※E-4にある、高校生用の学生寮で暮らしています
※シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
 なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り2回(予想)です。
 特に絶唱を使ったため、この回数は減少している可能性もあります。
※ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが脱落していることに気付いていません

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]全身ダメージ(小・回復中)、脇腹ダメージ(中・回復中)
[装備]『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』、包帯
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ルイズ・なのは組と協力し、マスターの願いを叶えて元の世界に帰す
1.なのは達の安否を確認するため、ヴァリエール邸に向かう
2.金色のサーヴァント(=ハービンジャー)を警戒
3.ルイズと響に回復魔法を習得させる
4.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
5.ルイズと響が回復魔法を習得できたら、聖杯戦争からの脱出方法を探る
6.万が一、回復魔法による解決が成らなかった場合、たとえなのはと戦ってでも、聖杯を手に入れるために行動する
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&高町なのは組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『ルイズと響に回復魔法を習得させ、共に聖杯戦争から脱出する』になります
※予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません。
※明け方に特級住宅街へ向かい、戦闘が終わっていたことを確認しています。
 ただし、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが脱落していることには気付いていません。


816 : ◆nig7QPL25k :2015/11/03(火) 22:22:34 0Ry6h5ec0
投下は以上です


817 : ◆nig7QPL25k :2015/11/05(木) 00:14:17 PResQUKM0
以下のサーヴァントのステータス表を修正しました

レオン・ルイス:「直感」スキルのランクをC→Bにアップ
ゲルトルート・バルクホルン:筋力ランクをC→C+にアップ
星矢:耐久ランクをD→Eにダウン
駆紋戒斗:宝具『畏れよ、汝王の名を(ロード・バロン)』のステータスを耐久B+→A・敏捷B→B+にアップ
呀:筋力ランクをB→Aにアップ

他の書き手の皆様も、ステータスを修正したいという要望がありましたら、お申し付けください

美樹さやか、レオン・ルイス
東郷美森、ゲルトルート・バルクホルン
鹿目まどか、星矢
暁美ほむら、美国織莉子
サガラ
アンドレアス・リーセ
で予約します


818 : ◆nig7QPL25k :2015/11/08(日) 23:30:11 UbPBvZuU0
ちょっと時間取れなかったので、一旦予約を破棄します


819 : ◆nig7QPL25k :2015/11/17(火) 21:07:05 niMt3rl.0
美樹さやか、レオン・ルイス
東郷美森、ゲルトルート・バルクホルン
鹿目まどか、星矢
暁美ほむら、美国織莉子
サガラ
アンドレアス・リーセ
で予約します


820 : ◆nig7QPL25k :2015/11/20(金) 03:24:02 fnj7r5SY0
延長します


821 : ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 00:15:11 2kIycOFs0
予約からサガラを外します


822 : ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:49:41 2kIycOFs0
お待たせして申し訳ありませんでした
これより投下を行います


823 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:50:53 2kIycOFs0
 学術地区に存在する、一般学生向けの中学校。
 魔術都市にこのような学校があるのを、意外に思う人間もいるかもしれない。
 しかし魔術師の街とはいえ、全員が魔術を使えるわけではないのだ。
 たとえば才能に恵まれなかった者。兄弟に継承者の座を譲り、自身はそうでない人生を送ることを選んだ者。
 あるいは一般人でありながら、たまたま魔術師に嫁いだ末に、このユグドラシルへ移り住むことになった者。
 故に魔術都市においても、魔術が使えない人間というのは、決して珍しい存在ではないのだ。
 だからこそ、それに合わせた職業や、教育機関というものも、この街ではきちんと用意されていた。

「おはよう、さやかちゃん」

 鹿目まどかも美樹さやかも、そんな一般学校に通う、魔術を使えない中学生だった。
 少なくとも、表向きには。

「おはようまどか。昨日は本当に大丈夫だった?」
「えーっと、うん、大丈夫。ちょっと危なかったけどね」

 騒がしいホームルーム前の教室の中、二人は前日の一件について話す。
 純粋に心配してということもあるが、もちろんさやかの側にとっては、理由はそれだけには留まらない。
 事故から生還したというのが、本当に起きた出来事なのか。
 彼女は襲撃を免れた、サーヴァントのマスターなのはではないのか。
 会話の中で、確かめようとしたのだ。戦うことができずとも、せめてそれだけでも知るためにも。

「あっ、鹿目さんおはよー」
「ねー昨日どうしたの? 学校にも連絡なかったって聞いたけど」
「あー、えっとね、その……」

 やがて他の学生達が、まどかが登校したことに気付き、口々に昨日の欠席の理由を問う。
 事故という鮮烈なワードは、子供達の関心を強く刺激し、あっという間に人だかりができた。
 一応会話に矛盾がないか、聞き耳を立て確かめることはできる。
 だがこうなると、踏み込んだ質問を、さやか自身が行うことはできなさそうだ。

(………)

 そんなことを考えながら、セイバーのサーヴァント――レオン・ルイスは、その光景を傍観していた。
 隣の男子の机の上に、霊体化した不可視の体で、無造作に腰を下ろしながら。

(サーヴァントの気配は……ない)

 念のため、周囲を見回してみる。
 相手が霊体化していれば、その気配を察知することは困難だ。それは理解している。
 しかし同じ教室に、自分と同じサーヴァントが、息を潜めている可能性があると考えると、どうしても意識せずにはいられなかった。
 この温厚そうな少女がマスターであるなら、いきなり派手な行動を起こすことはないはずだ。そう信じたい。


824 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:51:33 2kIycOFs0
(にしても……)

 そうして教室を見渡していると、別のことが気になってくる。
 具体的には、数十もの席が並んでいる、この学校の教室というものがだ。
 レオンの暮らした時代には、こんな大掛かりな教育機関などなかった。
 中世ヨーロッパにおいては、学校とは職人や僧侶を育てるための教室であったらしく、現代とは大きく意味合いが異なっている。
 らしい、というのは、他ならぬレオン・ルイス自身が、学校に通ったことがないからだ。
 彼自身は特殊な事情を抱えてはいたが、彼のように学校に通えない子供や、さやかの歳で働いている子供ですらも、全く珍しいものではなかった。

(変われば変わるもんだな)

 それが良い変化なのか、悪い変化なのかは分からない。現代は自分の時代に比べて、何かと面倒になっているらしい。
 それでも、読み書きや算数を分けけ隔てなく、誰でも学べるというのは、羨ましい時代だと思った。
 父親に習っていた自分とは、大違いだ。
 そんなことを考えながら、レオンは賑やかな学び舎を、一人静かにぐるりと見渡す。

(……そういえば、アイツがいないな)

 そうしていると、ふと、あることに気がついた。
 まどかと入れ替わるようにして、姿が見えなくなった人間がいるのだ。
 昨日さやかが話しかけ、まどかのことを尋ねていた、車椅子の少女がいない。
 確か、あの娘の名前は――



《そうですか……やっぱり、登校していましたか》

 東郷美森が、バルクホルンから念話を受け取ったのは、キャスター達の元を離れて、しばらくしてからのことだった。
 学校には向かわず、不審な建物を調べてみたが、もしかしたらその間に、鹿目まどかが姿を現しているかもしれない。
 そう考え、自らのサーヴァントを先行させて、学校の様子を探らせていたのだが、どうやら当たりだったようだ。
 まどかは無事に登校し、美樹さやから級友と共に、教室で授業を受けている。
 突如姿を消した時には、マスターでないかと疑ったのだが、無事に生きて帰ったからには、その可能性は高そうだ。

《どうする? 仕掛けるにしても、こんなところで、派手に行動を起こすわけにもいかないだろう?》

 バルクホルンが指示を求めてきた。
 最後の確認をするのなら、やはり直接攻撃を仕掛けて、出方を伺うのが分かりやすい。
 だがそれには、相手サーヴァントからの反撃という、大きなリスクがつきまとう。
 おまけにマスターでなかった場合、悪目立ちするだけに終わるため、これまた損だけが残るのだ。
 さて、これをどうするか。この場は大人しく見逃すべきか。

(そういえば……)

 そこまで考えた、その時。
 それらのデメリットを解消する、便利なアイテムがあることを、東郷美森は思い出した。
 ポケットに入れていたキャスターの宝具――『機界結晶(ゾンダーメタル)』を取り出す。
 三つしか持っていないこれを、いきなり使ってしまうのは、もったいないことかもしれない。
 それでも、使うべき時は間違いなく今だ。第一なくなったものは、また彼らに会って、ねだればいいだけの話だ。

《渡したいものがあります。一度戻ってきてください》

 東郷はそう決断し、バルクホルンへと念話を飛ばす。

《……あれを使うんだな》

 アーチャーのサーヴァントからの返事は、ほんの一拍だが、遅れていた。


825 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:52:38 2kIycOFs0
《その通りです》
《本当にいいのか?》

 問いかけは先の同盟を非難したような、鋭い口調のものではない。
 人の道を外れた行いをする自分を、気遣っている声色だ。
 たとえNPCであっても、その尊厳を穢す行為は、勇者の使命とは相反するものだ。
 本当にそんなことをしていいのかと、心配してくれているのだ。

《構いません。今更後戻りはできませんから》

 その心遣いは、嬉しいと思う。
 英霊の魂を受け継ぐサーヴァントが、精霊とは違うものであることを、ようやく実感できたとは思う。
 されど、今はそれを受け入れるわけにはいかない。
 東郷は不退転の決意と共に、この場に銃を携えているのだ。
 使えるものは全て使う。良心などいくら引き裂けても構わない。
 そうしなければ、結城友奈を救うという、己が大望は果たせないのだ。

《合流地点を指定します。すぐにそこまで来てください》

 令呪はもったいないから使えない。車椅子での移動速度には限りがある。
 であれば、ストライカーユニットとやらを履いているバルクホルンの方に、戻ってきてもらう方が手っ取り早い。
 指示を出すと、東郷美森は、指定した場所へと進み始めた。
 最愛の仲間たちを救うための、外道の道を歩むために。



(不甲斐ないな、今の私は)

 ゲルトルート・バルクホルンは思う。
 日陰の壁にもたれかかりながら、アーチャーのサーヴァントは思考する。
 今の自分の行動の、どこに正義があるのだろうと。
 少女一人止められない自分は、ひどく情けなく見えるのだろうと。
 同じカールスラント軍の友人であれば、もっと器用にたしめられたかもしれない。
 リベリアンの悪友からは、嘲笑われてしまうかもしれない。

(せめて彼女の目的だけでも、聞き出すことができたなら)

 後戻りはできないと、彼女は意味深に口にしていた。
 その心さえ分かったならば、声をかけられたかもしれない。
 手段を選ばず、性急に、勝利と聖杯を求める東郷を、諭し導くことができたかもしれない。
 それでも、それはかなっていない。未だ彼女はその心を、固く閉ざしたままでいる。
 悲しいかな、不器用な性分の自分では、その扉の内側を、察してやることができない。
 何と声をかけるべきか、どうすれば止まってくれるかも、今のバルクホルンには分からない。

「ゾンダァァァ……」

 呻くような声が聞こえる。
 蠢く金属の光沢が見える。
 それが学校の校舎裏へと戻った、バルクホルンを我に返らせる。
 既に作戦準備は整ってしまった。後は彼女が指示を出すだけだ。
 今更なかったことにしようにも、『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植えつけたNPCは、もはや元には戻らない。

(そうだ)

 今は進むしかないのだ。
 それ以外の道を見つけられないまま、ここまで来てしまったのだ。
 であれば、迷いも躊躇いも捨てろ。これしかできないというのなら、今はそのことに集中するのだ。

「――行け」

 短く放った命令が、作戦開始のコマンドだった。
 バルクホルンの指示を受けた、紫色のゾンダー人間は、建物の入り口へと進み始めた。
 全ては命令を実行するために。
 この学校を襲撃し、盛大に暴れ回ることで――鹿目まどかの正体を、白日のもとに晒させるために。


826 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:53:09 2kIycOFs0


「きゃぁあああっ!」

 八方から響き渡る悲鳴と、押し合いへし合いの人混みの中。
 思ったより派手好きな奴がいたものだと、暁美ほむらは思考する。
 得体の知れない化物が、隣のクラスに現れた。
 その事実はジュニアハイスクールを、一気にパニックへと陥らせていた。

《セイヴァー、まどかのことはマークしている?》

 まさに隣のクラスにいたまどかのことは、混乱の中で見失ってしまった。
 姿を隠しているサーヴァントへ、ほむらは念話で問い掛ける。

《大丈夫よ。見えているわ》
《ならそのまままどかを守りなさい。私はこの騒動を起こした犯人を探す》

 美国織莉子の返事を聞くと、ほむらはそのように指示した。
 現れたのは怪物だそうだ。明らかにサーヴァントではない。
 であれば、その怪物を操るサーヴァントが、学校のどこかに潜んでいるはずだ。
 そしてそのマスターも、恐らくは同じように身を隠している。
 事を起こした何らかの意図の下、手下へ的確な指示を出すために。

《構わないけれど、しばらくこのまま、様子を見させてもらっていいかしら?》

 反抗ではなく、意見具申。
 それならば令呪の制約の外ということか。

《何故?》

 思わぬ織莉子の提案に、ほむらは人混みを押しのけながら、眉をしかめてそう尋ねる。
 それはつまり、まどかを助けず、放置しておくということだからだ。

《彼女が死亡する未来は、未だ予知できていない。であれば、鹿目まどかの死の未来を、誰かが食い止めているということになるわ》
《……まどかの家にいたサーヴァントね》
《彼が現れるというのなら、今後のためにもその力を、見せてもらいたいと思わない?》

 一理ある。
 まどかのサーヴァントの力は未だ未知数。彼女を守り抜く上で、どの程度あてにしていいものかは不明瞭だ。
 彼が脅威を払うというのなら、その戦いの瞬間を織莉子に見せ、対応を考えさせるのも手ではある。
 理屈の上では、間違いなくそうだ。

《……好きにしなさい》

 もっとも、まどかを囮に使っているようで、心理的には最悪な気分だったが。
 不承不承ながらも了承した、暁美ほむらの顔立ちは、随分と不愉快そうに歪んでいた。


827 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:54:17 2kIycOFs0


「ゾンダァァァッ!」

 金属の体が不気味に光る。
 意味も分からない雄叫びが、一層の恐怖心を煽る。
 おぞましい気配を纏うヒトガタ崩れが、爛々と光る瞳でこちらを睨む。
 血だまりの中心で蠢いているのは、人間大の怪物の姿だ。
 美樹さやかの教室に現れ、教師を嬲り殺した紫の魔物だ。
 それは突然に忍び寄り、教室の扉を叩き割り、二時間目の授業に乱入してきたのだ。

「くっ……!」

 恐慌に包まれた教室の中、さやかは敵の姿を睨む。
 誰が何のために呼び寄せた、いかなる魔物であるのかは知らない。
 だがその誰かというものが、聖杯戦争の参加者であることは、間違いないと断言できた。

「なんだよっ、なんだよこれぇ!」
「ひぃぃっ!」

 NPC達が騒ぎ立てる。
 混乱の渦中に落とされた教室で、紫の怪物が蠢く。
 どうする。どうすればいい。
 ここにいる者のほとんどはただのデータだ。だがもしかしたら、予選を通過できなかった、本物の人間もいるかもしれない。

「あ、ああ……!」

 何より壁際で竦んでいるまどかは、人間である可能性がかなり高い。
 どうすべきだ、美樹さやか。
 このままでは遠からず全滅だ。本物の人々も、鹿目まどかも、恐らくは等しく食い殺される。

(やっぱり、ここは……!)

 抗する術は魔法しかない。
 ソウルジェムの魔力を解き放ち、変身して斬りかかるしかない。
 ここで正体を明かせば、程なくして正体がばれるだろう。そうなれば聖杯戦争を戦う上で、不利になることは間違いない。
 だが、これしか手がないのだ。自分の命可愛さに、友達を見殺しにできるほど、さやかは薄情ではないのだ。
 左手の指輪を光らせる。
 内なる魔力を渦巻かせる。
 魔法少女の本体にして、力の源たるソウルジェム。
 命を対価に奇跡を具現し、結晶化させたその宝石が、光と共に解き放たれる――

《――待て!》

 と思われた、その瞬間。
 斬――と鋭く音が鳴った。
 念話の声と重なって、視界の中心で白い衣と、赤い炎が舞い踊った。
 赤は燃える炎の色。
 そして男の髪の色。
 振り向く瞳もまた赤く。猛る炎のごとく熱く。

「セイバー……!」

 そうだ。すっかりと忘れていた。
 今の自分は一人ではない。一人きりで戦っているのではない。
 誰一人仲間のいない世界でも、新しくできた仲間がいる。
 最優のクラスと共に現界した、黄金騎士のサーヴァント。
 燃える剣騎士、レオン・ルイス――今はその力が、共に在る!


828 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:54:55 2kIycOFs0


《さやかは何もするな。ここは俺が押さえる》
《えっ!? それは……》
《今なら俺の顔が割れただけで済む。このまま身を隠していれば、お前の正体は隠し通せるはずだ》

 主へと念話を送りながら、レオンは油断なく気配を探った。
 この学校内に蠢く気配は、今の一つきりではない。
 同じ邪気を纏った魔物が、まだ他の学生を襲っている。
 それがいつ美樹さやかを捕捉し、襲いかかってくるか分からない。
 であれば、ここは戦うべきだ。この刃で全てを斬り伏せるべきだ。

「早く行け! 学校の外まで逃げろ!」

 怯える学生達に叫んだ。
 言うやレオンは跳躍し、教室を出て廊下を走った。
 霊体化によって実体をなくし、人混みの中を駆け抜ける。
 人の波にも臆することなく、姿なき疾風へと変わる。
 魔力の気配はこの下からだ。
 ねじれた階段を下ることなく、三階の廊下から飛び降りると、見事に二階へと着地した。

「ゾンダァァァ!」

 姿を見せたその瞬間、現れたのは紫の魔物だ。
 飛びかかる鋼鉄の亡者に、レオンは刃を振りかざす。
 突撃の勢いを利用した剣は、微動だにすることもないまま、魔物の肉体を両断した。
 ソウルメタルによって鍛え上げられた、心の映し身、魔戒剣。
 守りし者としての修練を積み、曇りなき信念で固められた刃にとっては、鋼であっても土くれ同然。
 塵となり消えた敵には目もくれず、レオンは次なる獲物を探る。
 研ぎ澄まされた神経の前では、たかだか使い魔崩れの動きなど、赤子のそれも同然だ。

(こいつらを操っている奴は、どこだ)

 三体目の怪物を捉えながら、レオン・ルイスは思考する。
 この程度の連中ごときが、サーヴァントであるはずがない。
 であれば、これはただの使い魔だ。操っている本体が、この近くのどこかにいるはずだ。
 どこかで戦いを見ていた奴が、さやかの命を狙ってきたのか。
 あるいは自分達と同じように、まどかに目をつけていたのか。
 斬り伏せた三体目の魔物を、踏みつけ床へと押しつけた瞬間。

(――そこか!)

 突如として、迫る気配を感じた。
 何もないところから現れた気迫だ。これまでとは比較にならない殺気だ。
 セイバーとしてのレオンに与えられた、高ランクの直感スキルは、襲撃者の存在を見逃さなかった。
 刃を携えて振り返る、その先に実体となって現れたのは――

「うぉぉぉりゃあああああッ!」

 パンツだ。
 否、女性の臀部だ。
 こちらに尻を向けた女が、怒号と共に突っ込んでくる。
 一瞬の光景だ。ツッコミすら浮かんでこなかった。
 その動作が、脚部の推進装置を逆向きにして、急制御をかけるためのものだったことにも、レオンは気付くことはなかった。
 理性で状況を受け止めるより早く、女がこちらに放った何かが、炸裂し爆音と業火を生じた。


829 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:55:43 2kIycOFs0


(あれが本当に、奴のサーヴァントなのか?)

 あまりにも呆気無い幕切れだ。
 ロケットランチャーの爆炎を見ながら、バルクホルンは思考する。
 姿を現した白衣の剣士は、それほど強そうな相手ではなかった。
 あれが鹿目まどかを救い、本戦へと進ませた力だとは、到底信じられなかった。
 この程度の爆撃で、為す術もなく吹っ飛ぶようなら、それこそ労力の無駄というものだ。
 東郷美森の指示通り、『機界結晶(ゾンダーメタル)』全てを使う価値が、あの男にあったとは思えない。

(まぁいい。これで任務は完了だ)

 思考し、パンツァーファウストの発射筒を引っ込める。
 あのサーヴァントは明らかに、鹿目まどかの教室に姿を現した。
 戦闘能力がどうであれ、彼女はサーヴァントを失い、聖杯戦争から脱落したのだ。
 あとは姿を見られる前に、とっとと退散してしまおう。

「……っ!?」

 そう思考した、瞬間だった。
 彼女の周囲を取り巻く空気が、まばたきの間に一変したのは。
 振り返り視線から逸れた炎が、ごうごうと渦を巻き始めたのは。

「これは……!?」

 我知らず、ゲルトルート・バルクホルンは呟く。
 うねる真紅の光の向こうに、ただならぬ何者かの存在を感じる。
 その気配は敵を射殺し、竦ませる殺気などではない。
 相対する者に畏怖を抱かせ、ひれ伏させる神々しき威容だ。
 刹那、赤は金へと変わった。
 突風と共にほとばしる光が、熱気をことごとく吹き飛ばしたのだ。

「――フンッ!」

 豪腕が灼熱を吹き飛ばす。
 翻るマントが炎を払う。
 燃える業火の真っ只中から、姿を現したのは、黄金。
 目もくらむ太陽のごとき甲冑を、その身に纏った剣の騎士だ。
 その堂々たる威容は、さながら神話の英雄譚から、そのまま飛び出したかのようであり。
 されども頭部をすっぽりと覆った、人狼のごときフルフェイスヘルムのみが、獰猛な眼光を放っていた。

「それがお前の本当の姿か」

 狼の瞳は、赤く燃える。
 それは先程爆弾を浴びせた、恐らくはセイバークラスであろうサーヴァントの真紅だ。
 恐らくは自分のそれと同じ、ステータスをアップさせる類の宝具だろう。
 事実として、黄金騎士の纏うオーラは、一瞬前に感じたそれとは、桁外れのものになっていた。
 ただ鎧を着ただけではない。そんな生やさしいものではない。
 油断をすれば呑まれそうな――否、その顎によって食い千切られそうな。
 強く気高く猛々しく、迫り来る全てを退ける。まさに最優の剣騎士に相応しい、堂々たる風格を身に纏っていた。
 これが神代の時代を戦い抜いた、古の英霊の威容というものか。
 長く戦ってこそきたものの、自分など未だ若輩であることを、否が応にも思い知らされる。


830 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:56:14 2kIycOFs0
「そういうお前の方こそ、アイツらを操っていた奴で間違いないな」

 言いながら、金のセイバーは剣を構える。
 右手で刃を正面に向け、左手を沿わせる独特な構えだ。
 刃金と黄金の鎧が擦れ、細かな火花が虚空に散った。
 ぎりぎりと聞こえる金属の音は、獣の威嚇のようにも聞こえた。

「さてな。自分で確かめてみることだ」

 冷や汗を感じた。
 されどにやりと不敵に笑った。
 呑まれれば負けだ。バルクホルンは己を律し、両手に愛用の機関銃を生じる。
 大型機関銃、MG42S。本来ならばウィッチであっても、二丁で用いるような代物ではない。
 されど身体強化を得意とする、ゲルトルート・バルクホルンは、それすらも難なく実現してみせる。

「………」

 空気が、見る間に固まった。
 互いにそれぞれの得物を構え、油断なく睨み合い、間合いをはかる。
 先に動くのはどちらだ。相手はどのような手で来るか。それに対処することはできるか。
 思考が交錯し、緊迫が張り詰め、びりびりと振動する錯覚すら覚える。

「――ッ!」

 先に動いたのはセイバーだ。
 床を蹴り、本物の狼のように、一挙に間合いを詰めてきた。
 見るや否や、バルクホルンも動く。前進する敵とは逆に引き下がる。
 アーチャーの武装は遠距離用だ。剣の間合いに入られては、その威力を発揮することはできない。
 トリガーを引き、弾丸を放つ。
 だだだだだっ――と途切れることなく、殺意の銃弾が遠吠えを上げる。
 異なる世界の戦場においては、電動鋸とあだ名され、恐れられた名銃だ。
 破壊力も連射性も申し分ない。その弾丸は人間はおろか、魔獣ネウロイであったとしても、一瞬で蜂の巣へと変える威力を有する。

「オォォォォ――ッ!」

 その、はずだった。

(凌ぐのか!? この弾丸を!?)

 されど、セイバーは止まらなかった。
 剣をかざし、鎧で受け止め、黄金の騎士はなおも走った。
 獰猛な獣と化したサーヴァントは、迫り来る必殺の魔弾ですらも、まるで意に介さず突っ走る。

「ダァッ!」

 壁が迫り、減速したバルクホルンに追いついた金狼は、遂にその牙を振り下ろす。
 荘厳に輝く黄金の剣は、身をかわすアーチャーの背後の壁を、轟音と共に爆砕した。
 斬ったのではない。砕いたのだ。
 切り傷をつけるどころか、完全に刃を貫通させて、壁を粉々に吹き飛ばしたのだ。


831 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:56:36 2kIycOFs0
(ここでは埒があかん!)

 身を立て直しながら、バルクホルンは思う。
 サーヴァントとの交戦は初めてではない。
 だが、さすが本戦まで勝ち残った相手というべきか。その時に危なげなく倒した敵とは、まるで別次元の強さだ。
 あれをシールドで受け続けるのにも、閉所でかわすことにも限度があるだろう。
 屋内という戦場が大きなハンデだ。
 なれば、場所を変えるべきだ。

「ぬぉおおおっ!」

 雄叫びと共に、銃弾を放つ。
 マシンガンの咆吼とともに、後退ではなく、敢えて突っ込む。
 単純な攻め手だ。通じるはずもない。当然セイバーは剣を振りかざし、弾丸のことごとくを捌いてのける。

「りゃあッ!」
「!?」

 だが、本命はそれではない。今のはあくまで牽制なのだ。
 銃を消し突っ込むバルクホルンは、敵の脇腹へと飛び込む。
 掴みかかったタックルの姿勢で、なおも推進力を増大させる。
 光り輝くのは魔力の光だ。固有魔法・身体強化を、全開で発揮した証明だ。
 不意打ちに面食らったセイバーは、呆気無いほどに押し出され、虚空へとその身を放り出される。
 そうだ。虚空だ。
 ゲルトルート・バルクホルンの狙いは、敵ごと廊下の外へと飛び出すことだ。
 大きな窓ガラスをかち割り、躍り出た空間は、すなわち空。
 宙を舞う術を持たないセイバーは、重力の魔の手に引きずられ、校庭へと見る間に落下していく。

「フン!」

 壁面に剣を突き立てた。
 それが勢いを殺すブレーキになった。
 腕力で重力を強引に殺し、セイバーはその身を減速させて、粉塵を纏いながら着地する。
 剣を引き抜き、埃を払い、すぐさま戦闘態勢へと戻った。
 再び武器を取り出して、眼下を睨むバルクホルンと、赤い瞳が向き合った。

(もう言い訳は許されん)

 開けた空中はバルクホルンの戦場だ。
 逆に言えば、これで負ければ、完全に実力での敗北ということになる。
 銃と共に覚悟を携え、仕掛けた得意の空中戦。
 果たして黄金の英霊は、この状況に対して、どう出るか。


832 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:56:56 2kIycOFs0






「面白い。この状況、利用させてもらうとしよう」




.


833 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:57:59 2kIycOFs0


「はあ、はぁっ……!」

 混乱の最中、まどかは走った。
 名前を呼ぶさやかとははぐれてしまったが、それでも必死に出口を目指した。
 ここには守ってくれるアーチャーがいない。この身一つで逃げるしかない。
 サーヴァントのマスターであったとしても、鹿目まどか自身には、戦う力など何一つないのだ。
 できることと言えば、こうやって、敵から逃げることくらいしかない。
 自分のために戦ってくれる、あの黄金のサーヴァントの、足を引っ張らないためにも。

「うわぁああっ!」

 前方から少年の悲鳴が聞こえた。
 すぐさまそれは血しぶきへと変わった。
 下駄箱へと向かう曲がり角から、姿を現したのは、新手だ。

「ォオオオオ……!」
「えっ……!?」

 その姿は、怪物ではない。
 鎧を纏い、瘴気を放つ、中世の兵士達のような軍団だ。
 黒々としたオーラを纏い、呻き声を上げるその姿からは、生気というものが感じられない。
 ホラー映画に出てくるゾンビ――装いはだいぶ違っているが、雰囲気はあれに近いのか。
 先ほど校舎に現れたものとは、どこか違うものを感じる相手だ。
 されど命を狙うべく、姿を現したことだけは、間違いなく共通していると言えた。

「あ、ああ……!」

 ここまで来ておいて、出てくるのか。
 あと一歩で校舎から出られる、そんなところで阻まれるのか。
 数が多い。十人くらいはいるかもしれない。これでは逃げることができない。

「グォオオオオ……!」

 敵はおぞましい唸りを上げて、じりじりと間合いを詰めてくる。
 もはやここまでか。
 これで何もかも終わりか。
 大切な家族達のところへも戻れず、こんな得体の知れない地で死ぬのか。

――すぐに俺を呼んでくれ。たとえ令呪を使ってでもな。

 胸に、蘇る声があった。
 それはあの夜にそう言ってくれた、心強い男の言葉だ。
 そうだ。まだ手は残されている。たった三回しか使えない手だが、今使わずして何とする。
 こんなところでは死ねない。絶対に帰らなければならない。
 左手の甲に光が走った。三画のエンブレムの一つが消えた。
 絶対に生きて帰る。そのために力を貸してくれる人がいる。
 まどかは強く決意を固めた。ほとんど悲鳴に近い声で、その名をめいっぱいに叫んだ。

「来て――アーチャーッ!」

 瞬間、視界を金色が覆った。
 ほとばしる黄金の閃光は、幾千幾万の拳撃となって、死霊の兵士達をなぎ倒していた。


834 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:58:23 2kIycOFs0


 空を飛べるという利点。
 それは単に、移動が楽になるだとか、そんな低次元なものではない。
 地上の者は縦と横の、二次元的な行動しか取れない。
 たとえ跳躍したとしても、それもただ上に跳ぶだけだ。二次元よりも更に狭い、直線的な動きでしかないのだ。
 対して空を飛ぶ者は、縦横のみならず高さすらも、自在にコントロールすることができる。
 つまり陸の者が地を走るよりも、更に行動の自由度が高いのだ。
 三次元と一次元。その動きの自由度の差は、戦闘においては絶対的なものと言えた。

「オォォォッ!」

 レオン・ルイスが跳躍する。
 黄金騎士ガロが天へと躍る。
 振りかざす牙狼剣の一閃は、触れれば万物を両断する、文字通り必殺の一撃だ。

「っ!」

 されど、それは当たればの話。
 一直線の攻撃であれば、回避するのは容易いこと。
 ゲルトルート・バルクホルンは、最小限の動作で難なくかわし、反撃の一打を叩き込んでくる。
 構えた銃口は大柄な、MG151のもの。もはや歩兵の武器にすらとどまらない、戦闘機向けの機関砲だ。

「ガァッ!」

 ばりばりと轟く弾丸を浴びては、魔戒騎士であってもひとたまりもない。
 脇腹にクリーンヒットしたそれは、太陽のごとき光であっても、容易に地面へと叩き返す。
 そうだ。ガロは太陽そのものではない。空を舞うようには生まれていないのだ。
 土埃を上げ転がりながらも、レオンは何とか立て直し、身を起こして片膝をつく。

「これもだ!」

 地上に向けて雄叫びが響いた。
 バルクホルンの追撃は、先ほど放ったものと同じ爆弾だ。
 パンツァーファウストという正式名も、レオン・ルイスには知るよしもない。
 現代に生きていない黄金騎士は、予備知識を与えられているだけだ。それ以上のことは分からなかった。

「フッ!」

 白煙を上げて迫る爆弾を、バックステップにて回避。
 熱風にばたばたとマントを揺らし、炎の先の敵を睨む。
 厄介な敵だ。現代の銃というものが、これほどの性能の武器に変貌していたとは。
 その上相手は空を飛べる。遠距離戦に長けた武器を、こちらの手の届かない位置から、自由自在に放ってくる。
 自分にないものを数多持った、疑いようもない難敵だった。


835 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:58:49 2kIycOFs0
(翼の鎧は……使えないか)

 一瞬、炎の翼を思う。
 かつてメンドーサとの戦いで用いた、金と銀のガロを回想する。
 あの姿になって戦えたならば、恐らくはこれほど苦戦することもなく、逆転することができただろう。
 だが、それはかなわない。翼を纏い飛ぶためのピースが、今のレオンには欠けている。

(やっぱり、あの鎧はアイツのものだ)

 歳の離れた弟を想った。
 ガロが空を飛ぶためには、もう一つの魔戒騎士の鎧――『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』が必要不可欠だ。
 されどその鎧は当の昔に、別の人間に受け継がれている。
 本来の継承者ではなく、あくまで借りただけのレオン・ルイスに、与えられているはずもない。

(無いものねだりはしてられない……か!)

 とはいえ、そのことを悔いている暇はない。
 手札が揃っていないのならば、ないなりに戦うしかないのだ。
 確かにアーチャーは素早い。空を飛ぶことに関しては、間違いなくスペシャリストだろう。
 翼を持たない魔戒騎士には、あれほど器用な立ち回りはできない。

(だが)

 だとしても、それがどうした。
 魔戒騎士の相手とは、条理から外れたホラーなのだ。
 奴らはあらゆる場所に息を潜め、舌なめずりし人を狙う。
 それは陸地のみならず、時には夜の闇空から現れ、深き水底からも現れる。
 陸も空も海ですらも、ホラーの戦場となりうるのだ。
 そして黄金騎士ガロは、それらをことごとく討滅してきた。
 あらゆる戦場での経験が、レオンには蓄積されているのだ。
 自身に空を飛ぶ術はない。
 されど空飛ぶ敵との戦いに関して、レオン・ルイスは百戦錬磨だ。

「ウォオオオッ……!」

 内なる魔力を炎へ変える。
 魔界の炎を解き放つ、烈火炎装と呼ばれる技だ。
 煌々と燃え盛る緑の炎が、ガロの鎧を眩く染めて、やがて牙狼剣をも包み込む。

(仕掛けてくるか!)

 もちろん、対するバルクホルンも、このまま終わるとは思っていない。
 あれほどの気配を纏う敵だ。必ず反撃をしてくるはずだ。その警戒は抱き続けていた。
 あの炎が何であるかなど、初対面のバルクホルンには、到底知るよしもない。
 だとしても、満を持して現れたあれが、状況打開の切り札であると、予想できない馬鹿でもなかった。


836 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 02:59:28 2kIycOFs0
「ハァッ!」

 剣を振るう。
 炎が躍る。
 切っ先を照らしていた炎は、スイングに合わせて魔弾へと変わる。
 牙狼剣から放たれた炎が、そのまま飛び道具へと変貌して、バルクホルンへと襲いかかった。

「これしき!」

 だが、あくまでもそれだけのこと。
 見た目も大きさも派手だが、決してかわせない攻撃ではない。
 身をよじってすぐさま回避。そのまま反撃へと転じる。
 背後で爆裂の音が響いたが、そんなものには構うことなく、機関砲の射程距離を詰めた。

「フン!」

 対するレオンも跳躍する。
 黄金騎士ガロが加速する。
 互いに真っ向からの突撃。銃撃で返している暇はない。
 されどゲルトルート・バルクホルンは、まっすぐしか飛べない敵とはわけが違う。
 狙いをつけるより早く、容易く回避することが可能だ。現に牙狼剣は届かず、両者の影は交錯した。
 明後日の方向へ跳んだガロへと、バルクホルンは向き直る。今ならあの無防備な背中に、容赦なく銃弾を浴びせられる。

「何ぃっ!?」

 その、はずだった。
 こともあろうに、目の前の鎧は、空中で停止していたのだ。
 否、それはあくまでも一瞬のこと。ガロは次の瞬間には、再びこちらへと飛びかかってきた。
 回避不可能。間に合わない。シールドで受け止めるしかない。
 魔力の光を展開し、円形の盾として生成する。

「オォォッ!」
「ぐぁっ!」

 衝突の勢いは、ガロが勝った。
 なにしろフルスピードで突っ込んできたレオンと、ターンのために立ち止まったバルクホルンだ。
 踏ん張りも追いつかず、圧力を真っ向から食らったバルクホルンは、悲鳴と共に吹っ飛ばされる。
 それでも彼女は屈することなく、空のレオンをなんとか睨んだ。
 瓦礫の降り注ぐ空の中、マントをはためかす騎士を見据えた。
 そしてようやく目の当たりにしたのだ。奴が空中制御を可能とした、そのとんでもない理由と原理を。

(そんな馬鹿な!?)

 驚くべきことに、黄金の騎士は、空中の瓦礫を蹴って進んできたのだ。
 跳躍とは足場を蹴ることによって行われる。地面を蹴れば必然的に、上に向かってしか跳べない。
 しかし空中で他のものを蹴り、別方向へと跳躍すれば、空中でも軌道を変えることは可能だ。
 問題はそんな理屈など、ただの屁理屈でしかないということだが。

「ハッ!」

 それでも奴はやってのけた。
 降り注ぐ瓦礫を次々と蹴り、着実に角度を修正してきた。
 このままではまた激突する。同じように直撃をもらう。


837 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:00:09 2kIycOFs0
「させるかぁぁぁっ!」

 そんなものはまっぴらごめんだ。
 あんなちまちまとした小細工ごときに、空のプロが追いつかれてたまるか。
 怒号と共に制御をかけて、落下する体を強引に操る。
 着地するスレスレで横向きに加速し、地表を滑るように飛行する。

「うぉおおおおっ!」

 マシンガンを斉射した。
 上空より迫る騎士を狙った。
 魔力によって強化された、大口径の弾丸は、瓦礫すら粉微塵に吹き飛ばす。
 たまらずガロも瓦礫を蹴って、横合いへと大きく回避する。
 立て直したバルクホルンは身を起こし、再び上空へと舞い上がった。
 今度こそ届きもしない高度へ、一直線に上昇するためだ。

「ヌォオオオッ!」
「なぁっ!?」

 それでも、レオンは止まらない。
 黄金騎士は引き下がらない。
 こうなると本当に獣のようだ。
 今度は何をするかと思えば、校舎の壁面に足を貼り付けたように、垂直に壁を走って上がってきたのだ。

(飛ぶ以外のことなら何でもアリか!?)

 これ以上相手の距離には付き合えない。
 必殺の覚悟でパンツァーファウストを取り出し、金の鎧目掛けて発射する。
 爆裂。炎上。煙が上がる。
 砕け散った校舎の壁が、無数の瓦礫になって宙を舞う。
 これでやったか。さすがに止まるか。

(――こんなもので!)

 それでも、奴はやって来る。
 黄金の魔戒騎士・ガロは、必ず立ち上がり舞い戻る。
 黒き煙を切り裂いて、金の光が天に躍る。
 壁を蹴って、瓦礫を蹴って、次々と飛距離を稼ぎながら、空の敵へと襲いかかる。
 金色に輝く騎士の鎧は、最強の魔戒騎士の証だ。
 誰よりも多くの敵を倒し、誰よりも多くの命を守る。遥かな古から受け継がれてきた、最も優れた騎士の証だ。
 それが止まることなど許されるものか。
 こんな程度の苦境ごときで、立ち止まることなどできようものか。

「ウゥゥオオオオオッ!」
「ぐぅ……っ!」

 遂に距離がゼロへと詰まる。
 振りかざされた金の剣が、バルクホルンのシールドへ叩きこまれる。
 吹き飛ばしはしない。離れない。
 緑の炎と魔力の光が、弾け合い眩いスパークを散らせた。
 このまま地上に落ちるまで押し込み、限界までシールドに負荷をかける。
 忌々しい盾をぶち破り、今度こそとどめを刺してやる。


838 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:00:29 2kIycOFs0
(そんなこと……!)

 それが騎士の目論見だろう。
 だがそんなことを許すものか。
 襲いかかる衝撃の中、歯を食いしばりながら、バルクホルンは思考する。
 相手が神話を戦い抜いた、歴戦の英雄であったとしても、そんなことは知ったことか。
 こちらもカールスラントの、全ての民の命を背負い、命を懸けて戦ってきたのだ。
 これ以上私の戦場で、好き勝手をさせてなるものか。
 これ以上この大空を、我が物顔で走らせてたまるか。
 私を誰だと思っている。
 ゲルトルート・バルクホルンだ。
 帝政カールスラントの、誇り高き軍人なのだ。

「カールスラント軍人を――」

 瞬間、バルクホルンの姿が消えた。
 いいやレオンの視界の外へと、ふわりと身を翻したのだ。
 それは回避運動ではない。推進力をカットして、重力に任せて落下したのだ。

「何っ!?」

 驚愕にガロが目を見開く。
 三次元の戦いとは、何も上に昇るだけではない。
 高さを支配するということは、どこまでも上昇するだけでなく、時に下降することも意味する。
 敢えて自らの高度を落として、敵の懐へと潜り込んだ。
 飛び上がることしか知らないレオンには、思い至らなかった発想だ。
 これが空を戦うということだ。
 カールスラント軍のウィッチの、空の戦闘技術なのだ。

「――なめるなぁぁぁッ!」

 怒号と共に、光が走る。
 黄金騎士ガロの腹部を、痛烈な衝撃が襲う。
 それは弾丸の直撃ではない。伸びてきたのは大きな筒だ。
 バルクホルンの身の丈に、倍するほどの長さを有した、巨大に過ぎるほどの砲身だ。

「なっ――」

 レヌスメタルBK-5・50mmカノン砲。
 ウィッチの常識を軽々と凌駕し、本来ならバルクホルンすらも、まともに扱えない超巨大兵器。
 その重量を制御するには、通常のストライカーユニットでは、魔力の供給が追いつかない。
 されど今はゼロ距離だ。狙いをつける必要も、支え続ける必要もない。
 この一発だけを叩き込めれば、今はそれだけで十分だ。

「吹き飛べぇぇぇぇーッ!!」

 雄叫びが上がった。爆音が上がった。
 炸薬が弾け弾頭が飛び立ち、圧倒的な暴力が炸裂した。
 巨大砲塔のゼロ距離射撃は、過たずレオン・ルイスに直撃し、学校全体を轟音で揺らした。


839 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:01:01 2kIycOFs0


「すごいわね……」

 東郷美森の感想だ。
 学校から少し離れた建物の上で、スナイパーライフルのスコープ越しに、戦況を見ていた東郷の言葉だ。
 勇者となり現場に追いつきこそしたものの、この戦闘には、彼女は参加していなかった。
 それはレオンがさやかを制止し、戦闘に参加させなかった理由と同じだ。
 考えなしに飛び込んでいれば、正体を晒すことになっただろう。
 そうなれば、学園に姿を現した、あの黄金の騎士のマスターに、命を狙われることになる。
 もっとも彼女は、レオンを従えるマスターを、鹿目まどかではないかと考えていたのだが。

(それでも状況によっては、加勢に出た方がいいかもしれない)

 戦況は全くの互角だ。
 いいや、切り札の50mmカノン砲を、無理やりに使っているからには、バルクホルンの方が不利かもしれない。
 もう一つの宝具を使わせる手もあるが、あれは正真正銘の奥の手だ。
 これほどの戦いの後で使い、いたずらに魔力を消耗するくらいなら、直接出向いた方がいい。

(ならば、ここは――)

 枝先に行かねば熟柿は食えぬ。
 リスクを恐れていたならば、勝てる戦いも勝てはしない。
 幸いにしてセイバーは、己のマスターを引き連れていない。こちらが先に出て二対一になれば、大きく有利になるはずだ。
 そう考え、学校へ接近すべく、スナイパーライフルを引っ込めようとした瞬間。

「……あれは……?」

 不意に、レンズに映るものがあった。
 視界がズレたその先に、姿を現す何者かがいた。
 マスターである東郷の瞳は、その正体を正確に見抜く。
 そんなはずはない。鹿目まどかのサーヴァントは、あの剣騎士であったはずだ。
 であれば、第三者の存在か。はたまた自分の読み違えか。

「新しい、サーヴァント……?」

 いるはずのないもう一人の弓騎士。
 想定しなかった三人目の戦士。
 自分のバルクホルンと同じ、アーチャーのクラスを持つサーヴァントの姿に、東郷の目は釘付けになっていた。


840 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:01:35 2kIycOFs0


「はぁ……はぁ……」

 土煙から浮き上がりながら、バルクホルンは肩で息をする。
 無理やり放ったカノン砲は、容赦のない反動を発揮し、彼女を校庭へと叩き落としていた。
 エースの肌に土をつけたのは、敵ではなく自分自身の武器だったのだ。
 全くもって情けない。こんな真似をしなければならないとは。

「はぁ、はぁ……」

 おまけにそれほどの無理をしてなお、未だ敵を倒せてはいない。
 対峙する黄金のサーヴァントもまた、息を切らせているものの、五体満足のまま生存している。
 であれば、これからどうするか。
 マスターの援護を要請し、二対一で仕留めにかかるか。
 あるいはもう一つのストライカーを使い、純粋なパワーで圧倒するか。
 果たして考えている余裕を、あの黄金騎士が与えてくれるか。

「――そこまでだ」

 その時だ。
 聞き覚えのない新たな声が、戦場に割って入ったのは。
 そしてこれまでに覚えのない気配が、バルクホルンに襲いかかったのは。

「っ……!?」

 ぞわり、と肌の産毛が逆立つ。ジャーマンポインターの使い魔の、長い尻尾がぴんと立つ。
 彼女とセイバーのサーヴァントが、声の方を向いたのは同時だった。
 振り向いた先にあったのは、学校の校舎の入り口だ。
 そこから、誰かが歩いてくる。ゆらゆらと揺らめく大気の向こうから、煌々と近寄る光がある。

「これ以上事を荒立てる気なら、今度は俺が相手になる」

 がちゃり、がちゃりと具足の音。
 地の石を踏み潰す金属の音。
 そこから現れた男は――またしても、黄金の鎧だった。
 違いがあるとするならば、巨大な翼を背負っていることと、兜を被っていないことだろうか。
 剥き出しになった男の顔は、扶桑の人間の顔立ちか。鋭い視線は真っ直ぐに、自分達へと向けられている。

(何だ、あいつは……!?)

 対峙するセイバーの宝具も、相当な気配を纏っていた。
 だが今現れた鎧の男は、その男ともまた別の存在だ。
 纏っている気配の濃さが違う。噴き出る魔力の絶対量が、自分達とは次元が違う。
 翼を広げた金色の姿が、二倍にも三倍にも感じられた。
 数多のネウロイと対峙し、死闘を繰り広げてきたバルクホルンが、この瞬間だけは完全に、確実に敵の気配に呑まれていた。

(あれはまずい)

 本能がそう告げている。
 このまま戦ってはいけない。
 少なくとも疲弊した現状で、まともにやり合える相手ではない。


841 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:02:10 2kIycOFs0
《マスター、援護を!》

 すぐさまバルクホルンは念話を送った。
 すぐ近くまで来ているであろう、東郷美森へと声を飛ばした。
 このままタイマンを張るのは危険だ。少しでも勝機に近づくためには、頭数を増やすしかない。
 守るべきマスターを頼る情けなさを、ぐっと堪えながらも呼びかける。

《いえ、すぐに離脱してください。彼が構えるその前に》

 しかし返ってきたものは、交戦でなく撤退の指示だった。

《しかし、この作戦の目的は……!》
《鹿目まどかの排除は成りませんでしたが、マスターであることは判明しました。
 その情報を、キャスターへの手土産にすれば、成果としては十分でしょう》

 東郷の言葉はやや早口だ。
 このジュニアハイの敷地に入っていない以上、恐らく敵の恐るべき気配を、直接感じているわけではないだろう。
 傷を負ったバルクホルンの前に、二騎目のサーヴァントが現れた。それ自体が重要な問題なのだ。

《……了解した》

 マスターの命令だ。
 であれば、逆らうわけにはいかない。
 セイバーにも新たなサーヴァントにも一言も告げず、バルクホルンは霊体へと変わる。
 不可視の状態となったバルクホルンは、そのまま速やかに天へと上がり、東郷の居場所へ向かって離脱した。

(なんてザマだ)

 情けない。
 初戦からこれほどの苦戦を強いられ、おまけにおめおめと逃げ帰るとは。
 東郷の心配をする前に、まず自分の無力さを、気にかけるべきだったではないか。
 己の不甲斐なさが許せない。涙すら零れそうになる。
 しかしそれだけは堪えた。カールスラント軍人たる者、泣き言を言ってなどいられないのだ。

(思ったよりも早く、使い時が来るかもしれない)

 己の戦いを振り返る。
 己が愛機たる『天に挑みし白狼の牙(フラックウルフ Fw190)』が、優れたストライカーユニットであるのは確かだ。
 しかし初戦からこの調子では、それだけでは届かない相手にも、遠からずぶち当たることになるかもしれない。
 そうなれば、使うことになるだろう。
 己がもう一つの宝具を。
 呪いのかかった忌まわしき機体を。
 重大な欠陥をその身に宿し、不採用の烙印を押された赤い靴。
 かつてその身を蝕んだ、試作型ジェットストライカー――『蒼天に舞え赤鉄の靴(Me262v1)』を。


842 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:02:33 2kIycOFs0
【D-4/学術地区・一般中学校周辺/一日目 午前】

【東郷美森@結城友奈は勇者である】
[状態]魔力残量6割
[令呪]残り三画
[装備]勇者の装束、『機界結晶(ゾンダーメタル)』(肉体と融合)
[道具]通学鞄
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯の力で人類を滅ぼす
1.中学校から撤退し、キャスター(=パスダー)の元へと向かう。その際、放置していた車椅子を回収する
2.未来達と協力し、他のサーヴァントに対処する
3.金色のサーヴァント達(=レオン・ルイス、星矢)を警戒
[備考]
※『機界結晶(ゾンダーメタル)』によって、自身のストレス解消(=人類を殲滅し、仲間達を救う)のための行動を、積極的に起こすようになっています。
 『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植え付けられていることには気づいていません。
※レオン・ルイスか星矢のどちらかが、鹿目まどかのサーヴァントであると考えています
※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。
※D-4の路地裏のどこかに、車椅子を放置しました

【アーチャー(ゲルトルート・バルクホルン)@ストライクウィッチーズ】
[状態]ダメージ(中)
[装備]『天に挑みし白狼の牙(フラックウルフ Fw190)』
[道具]ディアンドル
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.中学校から撤退し、キャスター(=パスダー)の元へと向かう
2.金色のサーヴァント達(=レオン・ルイス、星矢)を警戒。特に星矢を強く危険視
3.未来およびキャスターに対する不信感
4.自分でも使いたいとは思うが、聖杯はマスターに優先して使わせる
[備考]
※美森の人類殲滅の願いに気付いていません。言いにくいことを抱えていることは、なんとなく察しています
※レオン・ルイスが鹿目まどかのサーヴァントであると考えています
※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。
 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。


843 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:02:55 2kIycOFs0


 撤退したアーチャーのサーヴァントが、どの方角へ行ったのかなど分からない。
 故にレオンは目で追うことをせず、目前の相手を真っ直ぐに見据える。
 突如として姿を現した、黄金の光を放つサーヴァント。
 魔戒騎士と似通っていながら、しかし根本的に異なる意匠を有した、謎の甲冑を纏うサーヴァント。
 武器は持っていない。故にクラスが推測できない。
 身に纏う気配も相まって、得体の知れない相手だった。何をしでかすか分からない恐ろしさがあった。

「彼女は退いたが、お前はどうする」

 低く、されどよく通る声だった。
 退かなければ安全は保障しないと、言外に伝えていることは、誰の耳も理解できただろう。
 涼しく構えているものの、それだけの凄みが宿っていた。

「……俺だって馬鹿じゃない。この体で、あんたとやり合うつもりはないさ」

 こちらは手負い。あちらは無傷。
 であれば、他に選択肢などない。
 攻撃の意志がないことを示すため、鎧を解除しながら、レオンは言う。
 黄金の甲冑が虚空へと消え、白いコートの姿へと戻る。

「俺も目的は果たした。潔く退散させてもらう」
「……そうか」

 信用してもらえたのだろう。
 翼の鎧を着たサーヴァントは、その場から壁伝いに跳び上がると、校舎の向こうへと姿を消した。
 そうして誰もかれもいなくなって、校庭にただ一人になり。

《セイバー! 大丈夫!?》

 たっぷり五秒ほどは経った後に、マスターからの念話が届いてきた。
 恐らくはこれまでの戦況を、校舎の窓あたりから見ていたのだろう。逃げろと言ったのに、しょうがない主人だ。

《ああ、とりあえず敵は追い払えた。俺もまだ何とか生きてる》

 返事をしながら、レオンもまた、自らの体を霊体化させた。
 その辺りをきょろきょろと見回して、さやかのいる場所を特定すると、そちらに向かって歩き出す。

《それにしても、すごかったね今の……》
《多分あの金色の鎧が、鹿目まどかのサーヴァントだ》
《あれが!? まどかの!?》

 空飛ぶサーヴァントも難敵ではあった。だが今それ以上に気がかりなのは、あの黄金の鎧を着たサーヴァントだ。
 彼は自分達をこの学校から、明らかに遠ざけようとしていた。
 それは奴の守るべき者が、学校にいることの証明に他ならない。
 学校を攻撃した女と、学校を守ろうとした男。どちらがまどかのサーヴァントかは、考えるまでもなく明白だった。

《そっか……本当に、まどかが……》

 返ってきたさやかの声は、暗い。
 当然だ。守るべきだと考えていた友が、敵であると決まってしまったのだから。
 あの美樹さやかのことだ。恐らくこのことに対して、悩み続けることになるだろう。
 宿敵の命すら救って、仲間に戻ろうとする少女だ。元からの友人の命など、犠牲にできるはずもない。


844 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:03:32 2kIycOFs0
(何とかしなくちゃならない、か)

 真剣に考える必要があった。
 この先美樹さやかに対して、どのように接していくのかを。
 そして同時に自分自身も、この先どのように戦うのかを。
 自分と互角以上に渡り合い、手傷を負わせた空飛ぶ女。
 戦場に突如として割り込んできた、翼持つ黄金の鎧の男。

(特にアイツと戦うのなら……恐らくは、死力を尽くすことになる)

 気がかりなのは後者の方だ。
 あの絶大な魔力の気配は、明らかに並のサーヴァントのそれではなかった。
 恐らくはかのヘラクレスやアーサー王のような、最上級クラスの大英霊。
 それほどのライバルがよりにもよって、マスターと同じ学校にいるというのは、はっきり言って最悪だった。
 奴と戦うというのなら、こちらも万全を期さなければならない。
 持てる力の全てを尽くして、対峙しなければならないような、そういう類の強敵だ。
 こうなるとなお、最大の切り札――『双烈融身(ひかりのきし)』を使えないことが、惜しくてならないと思える。

(それにしても……)

 しかし、そのように考えると、別のことが気になってきた。
 それほどの力を有していながら、何故奴は直接戦おうとせず、自分達を追い払うにとどめたのか。
 傷を負った自分達ならば、たとえ一人であったとしても、撃退できたのではないか。

(そうまでして、戦いたくない理由があるのか?)

 考えにくい話ではあった。
 それでも、考えなければならないと思った。
 あのサーヴァントの正体を探ることは、すなわち、鹿目まどかとの接し方にも、大きく関わってくることなのだから。



【D-4/学術地区・一般中学校校庭/一日目 午前】

【セイバー(レオン・ルイス)@牙狼-GARO- 炎の刻印】
[状態]ダメージ(中)
[装備]魔戒剣
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守って戦う
1.さやかと合流し、今後のことを考える
2.空飛ぶ女サーヴァント(=ゲルトルート・バルクホルン)、および翼の鎧のサーヴァント(=星矢)を警戒
3.翼の鎧のサーヴァントの行動が気になる。もしかしたら、おいそれと戦えない理由があるのかもしれない
4.まどかを敵だと思いたくないさやかに対して懸念
[備考]
※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると考えています
※ゲルトルート・バルクホルンが、中学校を襲撃した犯人であると考えています


845 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:03:57 2kIycOFs0


 怪物騒ぎから、謎の戦闘。
 立て続けに事件が起こったことで、中学校の生徒達は、一様に疲弊しきっていた。
 それはまどかも例外ではない。
 星矢のおかげで切り抜けたものの、ギリギリの死線を彷徨ったことは間違いないのだ。

「まどか、大丈夫?」

 合流したさやかが声をかけてくる。
 自身も大変な思いをしただろうに、他人の心配をしてくれるなんて。
 その優しさが嬉しくもあり、同時にその気丈さに対して、申し訳ないとも思えていた。

「うん……ごめんね、さやかちゃん」
「ばっか、何で謝るのよ」

 額を小突かれ、軽く悲鳴を上げる。
 にひひと笑うさやかの顔は、空元気だとしても、元気そうだ。
 情けない。本当はマスターである自分にこそ、これくらいの力が必要なのに。
 何もできずに逃げ惑っていた自分が、これまでにないほどに貧弱で、惨めな存在に思えていた。

(そういえば、アーチャーさん……)

 その時、ふと思い出した。
 結局あの後アーチャー――星矢は、一言だけ念話を飛ばして姿を消した。
 もう心配はない。また何かあったら呼んでくれ。
 それだけを短く言い残して、顔を合わせることもなく、即座に学校から離れたのだ。

(やっぱり、無理させちゃったのかな)

 理由は察することができる。彼が身に負った怪しげな傷だ。
 あれが力の行使を阻害し、魔力を使おうとする星矢の体を、傷つけてしまっているのだという。
 であれば、姿を消した星矢は今頃、どこかで苦しんでいるのかもしれない。
 逃げられなかった自分のせいで、代わりにサーヴァントの彼が、痛みに喘いでいるのかもしれない。

(私って、本当にダメだ)

 自分一人では何もできず、迷惑ばかりをかけている。
 そんな自分が情けなくて、一層強く、膝を抱えた。


846 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:04:21 2kIycOFs0
【D-4/学術地区・一般中学校・一階廊下/一日目 午前】

【美樹さやか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力残量6割5分
[令呪]残り三画
[装備]財布
[道具]なし
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.レオンと合流し、今後のことを考える
2.翼の鎧のサーヴァント(=星矢)を警戒
3.まどかに対して……?
4.人を襲うことには若干の抵抗。できればサーヴァントを狙いたい
[備考]
※C-2にある一軒家に暮らしています
※サーヴァントを失い強制退場させられたマスターが、安全に聖杯戦争から降りられるかどうか、疑わしく思っています
※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると考えています
※ゲルトルート・バルクホルンが、中学校を襲撃した犯人であると考えています

【鹿目まどか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力残量9割、自己嫌悪
[令呪]残り二画
[装備]財布
[道具]なし
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:帰りたい
1.あまり戦いたくない
2.何かあったら星矢を呼ぶ。令呪による強制転移もケチらずに使う
3.何もできない自分に対して、強烈な自己嫌悪
[備考]
※B-4にある一軒家に暮らしています
※美樹さやかがマスターであることに気付いていません


847 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:04:51 2kIycOFs0


《凄かったわ、彼女のサーヴァントは。恐ろしいほどの力を見せていた》

 美国織莉子からの念話を、暁美ほむらは静かに受け取る。
 それは察していたことだ。屋上に立っている彼女は、あの金色のアーチャーの姿も、現実に目の当たりにしていた。
 これまでに相対してきたどの相手とも、明らかに次元の異なる存在だ。
 あれこそが神秘を具現化した、サーヴァントというものなのかもしれない。

《あれだけの強さなら、彼女のことは、任せてもいいんじゃないかしら》
《だったら私と合流しなさい。今から行くべきところがある》

 まどかから目を離すのは心苦しいが、それでも今のほむらには、為さなければならない用事があった。
 故に彼女は織莉子に対して、護衛の任を解かせて合流を指示した。

《行くべきところ?》
《敵のマスター……恐らくは、空飛ぶアーチャーのマスターを見つけた》
《あら、そうなの》

 意外だ、と言わんばかりの返答だった。
 当然と言えば当然だろう。
 仮に学校内にマスターがいれば、未来予知の使える織莉子が、移動中にマスターに遭遇する未来を予知する可能性がある。
 それがかなわなかったからこそ、彼女はマスターを、見つけられないと考えていたのだろう。

(敵は学校の外にいた)

 実際、標的は校内にはいなかった。
 たまたま三階の窓から、偶然校外のビルを見た時、そこに人影を見出したのだ。
 彼女が人のいる校内ではなく、誰もいない屋上に立っていたのには、そういう理由が存在した。

(けれど、あれは……)

 確かに、マスターの所在は校内ではない。
 されどそこにいたマスターは、学校と無関係な人間ではなかった。
 魔法少女を思わせる、奇妙な装束を身にまとった、黒髪と大きな胸が特徴的な少女。
 自分の隣のクラスにて、まどかと共に授業を受けていた、車椅子を使っていた少女。
 この日奇しくも、学校を休んでいたはずだった、東郷美森がそこにいたのだ。


848 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:05:09 2kIycOFs0
【D-4/学術地区・一般中学校/一日目 午前】

【暁美ほむら@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力残量9割
[令呪]残り二画
[装備]ダークオーブ
[道具]財布
[所持金]普通(一人暮らしを維持できるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.一度まどかの守りを金色のアーチャー(=星矢)に任せ、自身は東郷を追跡する
2.まどかを殺すことなど考えられない。他のマスターからまどかを死守する
3.まどかを生かしつつ、聖杯を手に入れる方法を模索する
[備考]
※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると知りました
※東郷美森が、何らかの特殊能力を持っていることを把握しました。
 同時に状況から察して、ゲルトルート・バルクホルンのマスターではないかと考えています

【美国織莉子(セイヴァー)@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]健康
[装備]ソウルジェム
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.とりあえずはほむらの言う通りに動く
2.一度まどかの守りを金色のアーチャー(=星矢)に任せ、敵マスター(=東郷)の追跡に向かう
3.まどかを生かすことは、道徳的な意味ではともかく、戦略上はさほど重要視していない
[備考]
※令呪により、「マスターに逆らってはならない」という命令を課せられています
※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると知りました


849 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:05:41 2kIycOFs0


「ぐぅっ……!」

 がちゃり、と金属音が鳴る。
 路地裏でうずくまった黄金の男が、壁に手をつきながら呻く。
 身に纏う豪奢な甲冑を、輝きと共に解除しながら、男は額に汗を流した。
 コート姿のサジタリアス星矢は、膝をついた態勢で、ぜえぜえと苦しげに息を吐いた。

(やはり、この傷は無視できないか……)

 外套の下で蠢く闇に、視線を落とし思考する。
 マルスによってつけられた魔傷は、小宇宙の燃焼を阻害し、聖闘士を傷つける呪いだ。
 故に星矢は、無駄な戦いを避け、敵を威嚇することを選んだ。
 割と多くの魔力を一度に燃やし、必要以上に気配を大きくしてみたが、どうやら少々やり過ぎたらしい。
 敵を退散させることには成功したものの、結局魔傷から少なからず、ダメージをもらうことになってしまった。

(それでも)

 背負ったハンデはあまりにも大きい。
 だとしても、苦しんでいる暇などないのだ。
 あのいたいけな少女を守り抜き、共にそれぞれの世界に帰るためにも、立ち上がらなければならないのだ。
 身を起こし、コートを整えると、星矢はやや覚束ない足取りで、路地裏の闇を進んでいく。

(そういえば……)

 その時になってようやく、思い出した。
 聖衣石になって懐に収まった、己が『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』を見やった。
 あの校舎で、死霊の兵士をなぎ倒した時、聖衣が妙な反応を示していた。
 何を伝えたいのかは、具体的には分からなかったが、それでも何かを知っているような、そんな印象を抱いたのだ。

(奴らを知っているのか、アイオロス……?)

 黄金聖衣はただの聖衣ではない。
 その身にはこれまで選ばれてきた、黄金聖闘士達の意志が宿されている。
 かつてこの聖衣を纏い戦った、偉大なる前任者の魂が、警告を告げているような。
 聖衣石を見つめる星矢には、そんな気がしてならなかったのだ。



【D-4/学術地区・路地裏/一日目 午前】

【アーチャー(星矢)@聖闘士星矢Ω】
[状態]ダメージ(小)、魔傷
[装備]『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』(待機形態)
[道具]コート
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守り抜く
1.世界樹から脱出し、元の世界へ帰る方法を探す
2.霊体化ができない以上、どうにかして身を隠す。マスターに呼ばれればすぐに駆けつける
3.聖杯を悪用しようとする者がいれば、戦って阻止する
4.中学校に現れた敵(=エインヘリヤル)が気になる
[備考]
※霊体化を行うことができません
※『反魂の葬送騎士団(エインヘリヤル)』について、『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』から、おぼろげに警告を受けています


850 : 空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:06:11 2kIycOFs0


「そうか、あの男は手負いか」

 ユグドラシル政庁・フレスベルグ。
 その市長室でくつくつと、一人笑う男がいる。
 赤髪を長く伸ばした男は、ルーラー――アンドレアス・リーセだ。
 彼は市長室の席から、事の全てを見下ろしていた。
 星矢のマスターが通う中学校で、怪物騒ぎが起きた時、星矢について調べるいい機会だと思った。
 故に『反魂の葬送騎士団(エインヘリヤル)』を発動し、亡霊の兵士達を何名か、中学校のまどかへとぶつけた。

「どう処分したものかと考えていたが……おかげで妙案が浮かんだぞ」

 その結果手に入れた成果は二つ。
 何らかの呪いを受けた星矢が、小宇宙を燃焼させることで、身にダメージを追うようになっていること。
 そして怪物の襲撃事件の現場に、星矢が現れたという事実だ。
 これは使える。
 たとえ最強の聖闘士であったとしても、その力が削がれているのなら、他のサーヴァント達で倒すことができる。
 特にキーパーのクラスで現界した、牡牛座の黄金聖闘士の例もある。
 同等の存在であるのなら、健康体でいるキーパーの方が、星矢より優位に立つのは必定だ。

「見ているがいい、射手座(サジタリアス)」

 既に大義名分は整った。
 戦場に居合わせた主従は三組しかいない。
 おまけに真相を全て把握しているのは、パスダーの宝具を使用した、ゲルトルート・バルクホルンの組だけだ。
 下手人さえ口を塞いでいれば、いくらでも誤魔化しようはある。
 そもそも自分の存在を隠したいなら、こちらの報告に異を唱え、真実を伝えようとする理由などない。

「今にこの街の全てが、お前とお前のマスターの敵になる」

 学術地区の中学校で、大規模な襲撃事件が起きた。
 大勢のNPCが一度に殺害されたことで、ユグドラシルを維持するに当たり、若干の問題が生じるようになった。
 このまま犯人を野放しにしていれば、聖杯戦争そのものの続行が危ぶまれる。
 犯人は黄金の鎧を着た、アーチャークラスのサーヴァント。
 このサーヴァントを排除した者には、今後聖杯戦争を勝ち抜く上で、有利になる報酬を与えよう。

「ははは……」

 それがアンドレアス・リーセの紡いだ、事の偽りの筋書きだった。



[全体の備考]
※D-4の中学校にて、怪物の襲撃事件及び、サーヴァントの戦闘が発生。大勢の死傷者が出ました
※第一回放送にて、鹿目まどか&アーチャー(星矢)組の討伐令が発令されることになりました


851 : ◆nig7QPL25k :2015/11/23(月) 03:07:13 2kIycOFs0
放送について、ルールに記載することを失念していました
定期放送は12時間に一度、深夜0時および正午12時に行われることとします

というわけで、投下は以上です


852 : はい :2015/11/23(月) 17:49:26 Kxr.9qJk0
やっぱり
iroha.xyz/edzg


853 : ◆BfLnm7i3pA :2015/11/23(月) 17:57:59 kb7skPWM0
>>851
乙です
素晴らしいの一言に尽きる出来ですね
本当に感服します


854 : ◆nig7QPL25k :2015/11/26(木) 01:49:23 d.q.nAWs0
本企画に参戦している作品「牙狼-GARO- 炎の刻印」の続編映画「牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-」が来春に公開決定しました
テレビシリーズも大変面白い作品だったので、この機会に是非ご覧になってみてください

また、本企画Wikiのサーヴァント紹介ページに、各サーヴァントの「Fate/Grand Order」風カードイラストを添付してみました

>>853
ありがとうございます!
企画を進めていく上で、本当に励みになります


855 : ◆nig7QPL25k :2015/11/28(土) 00:53:17 aECAaJNo0
本日より「パロロワ毒吐き別館」様にて、年末のパロロワ語りが始まりました
本企画の順番は、1週間後の12/4とのことです。当日はどうぞよろしくお願いします

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/8882/1403710206/l50
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/8882/1403710206/3523


856 : ◆BfLnm7i3pA :2015/11/28(土) 09:42:39 qYVkr7ts0
>>854
今更ながらかなり安直な感想になってしまって申し訳ない
日程確認しておきます


857 : ◆7CTbqJqxkE :2015/11/28(土) 17:55:59 MgU87IGE0
投下お疲れ様です。
私も

葛葉紘汰、アルファモン
サガラ

で予約させていただきます。


858 : ◆7CTbqJqxkE :2015/12/02(水) 23:59:48 XCwxd/EI0
予約を延長します


859 : 名無しさん :2015/12/03(木) 23:58:36 6THJnXmQ0
ガロとウィッチの戦い凄まじいな
思惑の交錯も少しずつ加速してってるし互いの状況を認識してる組も増えてきた、今後も楽しみにしてます


860 : ◆7CTbqJqxkE :2015/12/05(土) 23:56:38 OWpHtuNE0
予約分の投下、開始します。


861 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:00:10 skmsxbZE0



「休憩入りまっす!」

 商業地区の食事処。そこで日雇いのアルバイトとして働いている葛葉紘汰は、朝の忙しい時間を終えたこともあり、来る昼の書き入れ時に備えて束の間の休息に入った。

《――――セイバー、朝食に来た人たちの中でマスターらしい奴はいたか?》
《いや、少なくともサーヴァントの気配を伴った来客はなかった。見れる範囲で令呪がないかも見て回ったし、あの中にマスターはいなかったと思う》
《そうか……悪いな、せっかく調べてもらったのに》
《別にコウタが悪いわけじゃないさ。すぐに見つかるわけも無いんだし、焦らずにいこう》

 休憩室に入ってすぐ、紘汰は霊体化した状態で隣にいる自身のサーヴァントに話しかける。
 その会話の内容は、今朝の時点で他のマスターを見つけることができたかどうか、というものだ。
 聖杯戦争を、殺し合いを食い止めるという目的を持つ紘汰にとって、いくら必要なことであるとはいえただ無意味にバイトをしているわけにもいかない。ただでさえ昨夜のアーマードライダーらしき強盗を見つけることができなかった今は、出遅れている状況なのだから。

 そこでパートナーであるドルモンに、霊体化した状態で朝食に来た客の手の甲など体の露出している箇所を確認してもらってマスターがいないかを探ってもらったのだが、残念ながら収穫はゼロだった。
 しかし駄目で元々のつもりで行った、気休めのような調査である。だから空振りであったとしても気にすることはないとドルモンは紘汰を気遣う。

《それはわかってんだけど…………でも……》
《特級住宅街や行政地区で起こった爆発が気になるのもわかるし、歓楽街でなんの手がかりも得られなかったことが悔しいのもわかる。
 だからって急いだところで状況が好転するわけじゃないんだし、今はできることを一つずつしていこう。コウタと俺なら、きっと聖杯戦争を止めることができる》
《セイバー…………そうだよな、こんなところでウジウジ考えててもしょうがないよな!》

 昨夜、商業区で起きた強盗騒ぎが聖杯戦争と関わっているのではないかと踏んで紘汰たちが歓楽街を探索している間に、特級住宅街と行政地区で火災や爆発が発生していた。
 仮面とベルトという言葉に紘汰がアーマードライダーを意識し、歓楽街で徒に時間を浪費しなければ、あるいはどちらかの現場を押さえることができたかもしれない。
 追跡が空振りに終わり、消沈して戻った今朝爆発の話を聞いてから、紘汰はそのようなことをずっと考えていた。
 だがそれはあくまでも仮定の話に過ぎないし、もし歓楽街を探索しなくても行政区や特級住宅街に足を運んでいた可能性は低かっただろう。
 ならば過ぎたことを悔やむよりも、今できることをしていくことで確実に歩を進めるべきなのだ。
 そんなドルモンの理詰めの慰めが、自分が単純であると理解している紘汰にとっては有り難いものであった。

(そうだ、セイバーの言うとおりじゃねえか。どうせ俺たちがやることは変わりないんだし、だったらそれを全力でやるだけだ!)

「よぅしっ!! やってやるぜぇ!!!!」
《コウタ、あんまり大きな声で叫んだら――》

 他の人に聞こえるよ。そうセイバーが続けようとしたその前に、ある男の横槍がそれを遮った。
 それはセイバーも聞いたことがある声だ。だが、紘汰にとっては、おそらくこのユグドラシルにいる誰よりも聞き馴染んでいる声であった。

 インターネットラジオのDJとして何度も耳にしたその声。
 更にはユグドラシル側の人間の――そして、ユグドラシルでさえ与り知らぬヘルヘイムの森の真実を知る者の言葉として、聞いたことのある声。


862 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:01:07 skmsxbZE0


「――――本当に聖杯戦争を止めることができると思ってるのか?」

 
 聖杯戦争の開幕にも携わった、その声の主の名は――――

「な!? あんた――――サガラ!」
「よっ」

 サガラ。そう呼ばれた男は、友人に挨拶するような気軽さで紘汰に応えた。

「なんでここに……? いや、それよりなんなんだよあの放送!
 あんたここで何をしてる? 何を企んでるんだ?」

 そんな男の応答に若干毒気を抜かれつつ、紘汰はサガラに疑問を投げつける。
 聞きたいことは山のようにあるが、まずはこの男の真意についてだ。

「何も企んでなんかいないさ。俺はただお前たちの戦いを見守り続ける。それだけだ。
 それにあの放送だって、お前たちマスターに聖杯戦争の情勢を連絡する監督役としての大切な『役割(ロール)』の一環だ」
「ロールって…………じゃあやっぱりあんたも」

 だがその疑問も、やはり軽い調子であしらわれる。腹の底は一切見せないつもりらしい。
 しかしそんな答えにも二つの情報が含まれていた。それはサガラがこの聖杯戦争の監督役であるということ。
 そしてそれが自身のロールであると認識しているということだ。それはつまり――――

「ああ、聖杯に召喚されたマスターの一人って訳だ。おっと、勘違いするな。別に戦いに来たんじゃない」

 サガラもマスターとして聖杯戦争に参加している。その事実が男の口から告げられた時にはすでにセイバーはドルモンの状態で霊体化を解いていた。
 あの放送も手伝ってか、ドルモンは敵意を隠そうともせずに牙を覗かせ、サガラを睨みつけている。

「その言葉を信じろっていうのか?」
「セイバー……」
「戦いに来たんじゃないなら何をしに来た。まさか目的も教えずに信じろなんて言わないよな?」

 棘のある言葉で男がここに来た目的をセイバーが問い質すと、男は肩を竦める素振りをひとつ打ち、再び軽い調子で話し始める。

「お前のサーヴァントは随分と疑り深いみたいだな。
 なに、ちょっとした忠告だ」
「忠告?」

 そう紘汰が聞き返した途端、男がそれまで纏っていたふざけた雰囲気は消え――――

「ああ……聖杯戦争を止めようだなんて無謀なことを考えている、お前たちへな」

 さきほどまで話していた男とは別人と思わせるほど真面目なトーンで、紘汰たちへ語り始めた。


863 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:02:09 skmsxbZE0

「さっきも聞いたが、お前たちは本当に聖杯戦争を止めることができると思っているのか?」
「当たり前だ。俺とセイバーは必ずこのふざけた殺し合いを止めてやる。
 それに、希望の対価に犠牲を要求するこの世界のルールを壊せって言ったのはあんただ」
「確かに俺はお前にそう言った。だがな、聖杯戦争ってのは真に犠牲なくしては成り立たないルールでできているんだぜ」

 そこでサガラは含むように間を置くと、微かに表情を引き締めて続きを述べる。

「誰も脱落することがなければ、そこでご破算だ。誰も奇跡を手にすることはできない」
「それこそ望むところだ。犠牲を強いるような奇跡なんて、俺は欲しくない」

 それが紘汰の偽らざる気持ちだ。
 如何なる奇跡を実現できようと、そこに犠牲を求める聖杯を認めることなどありえない。
 いっそ無くなってしまった方が良いと、紘汰は本気で考えている。
 しかしそんな紘汰の答えに対し、サガラは先ほどとは異なる笑顔を貼り付け再び語り始める。

「ふ、そうか」
「なにがおかしい!」
「犠牲を強いる奇跡を拒むのはお前の希望だ。お前の力があればそれを叶えることもできるかもしれない。
 だが他のマスターは違う。どれだけの犠牲を払ってでも叶えたい希望を胸のうちに宿しているやつだっている。
 サーヴァントを失わない限り、そいつらはお前たちの前に立ちはだかり続けるだろう」
「……だったらその度に、俺たちは戦うだけだ。どれだけ牙を剥かれても、絶対に犠牲になるような人を出しはしない」
「そうしてお前は、自分の希望のためにそいつらの希望を踏み躙るのか」
「なに……?」

 サガラの指摘に紘汰は理解が追いつかず、言葉を失う。
 しかしそんな隙を見逃してくれるほど、今回のサガラは甘くは無かった。

「言われなきゃわからねぇか? 聖杯戦争は万能の願望器を巡る戦い。単なる力を求める果実の争奪戦とは違う。奇跡を求めて集まったのは私利私欲に走る極悪人だけじゃなく、中にはのっぴきならない理由に覚悟を決めた善人だっているわけだ」

 わかりきったことを出来の悪い生徒に言い聞かせるように話していたサガラはそこで視線を下げ、セイバーを一瞥する。

「自分のサーヴァントを見ればわかるだろ。この樹と繋がった世界は一つだけじゃない。中にはヘルヘイム以外の脅威に晒されているところも――
 お前の安っぽい正義感で邪魔された結果、滅びる世界もあるかもしれないんだぜ?」
「――っ!」

 容赦のない物言いに、今度こそ紘汰は言葉を失う。
 考えもせず、目も向けなかったエゴを突きつけられて。

 紘汰たちが戦いを止めるのも結局、暴力で自らの主張を押し付けているのに過ぎず。
 そんな方法で他者の希望を取り上げることに、どんな正当性があるのだと。

「そ、それは……」
「――違う」
 言い淀むしかなかった紘汰の代わりに、サガラの詰問に応える声があった。

「コウタが誰も止めなければ、結局殺し合いの末に残った一人以外の希望は叶わない!
 そんなの絶対に間違っている。だからこそ、俺たちは聖杯戦争を止めるんだ!」
「セイバー……」
 力強く断言する相棒に、紘汰は思わず声を漏らす。
 紘汰より余程理性的である彼が、この程度の命題に気づいていなかったはずはない。
 それでも何の逡巡も見せず、己を信じてくれたセイバーの姿に紘汰は胸を打たれ――そしてサガラは、新たな興味を惹かれたとばかりに笑みを零す。

「間違っている……か。だったらお前たちが正しいという証拠はどこにある?
 他の全てのマスターの希望を絶ち、自分たちの希望を押し通す。その結末は最後に残った一人と何が違うと言える?」


864 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:03:42 skmsxbZE0

「命だ」

 何ら竦むこともなく。ドルモンは己が信じた道を行く理由を、飾ることなくサガラに示す。

「俺たちは命を守るために戦う。すべての命が生きられるようにする。ただそのために、俺たちは戦うんだ」
「生きられる、か。ならば願いを叶えなければ死んだも同然のようなマスターはどうする?」
「それでも、だからって他の命を犠牲にして良い訳じゃない」
「聖杯の奇跡に縋らなければ助けられない命があるかもしれんぞ。ここに残ったマスターのためにその命は切り捨てるのか?」
「詭弁だ」
「詭弁じゃないさ。確かに憶測の話でしかないが、もしそんな願いを持ったマスターがいた場合にお前たちはどうする。
 ここにいるマスターたちを殺したくないし殺させたくないから、悪いが死んでくれとでも言うのか?」
「それは違う! マスターたちも、その救いたい人も、誰も犠牲になって良いはずがないって言っているんだ!」
「違わないさ。お前たちは気安く聖杯戦争を止めると言っているが、その意味をもっと理解するべきだ。
 ま、お前はまだわかっている方みたいだが……」

 そこでセイバーが更に反論する前に、サガラは彼から視線を外した。
 それを辿って、セイバーもまた首を巡らせ……

「……コウタは」
「え?」

 舌戦の渦中から離れた場所にいた紘汰は、不意に両者の注目を浴びたことで思わず声を漏らしていた。

「コウタは、どう思う……?
 こいつの言っていることがもし本当になったら、コウタならどうする?」
「そう、お前ならどうする葛葉紘汰? 結局最後にどうするかを決めるのは、マスターであるお前なんだぜ」

 共に歩む者と、疑問を投げかける者と。意見を戦わせていた二人は、今は等しく紘汰を見守っていた。
 己の命一つ思うがままにならない人間に、未来をその手で選べるか――その重荷を背負えるのかと。
 マスターとして選ばれた運命に抗えない者に、それでも答えを見出せと。
 数多の命を左右するかもしれない決断を下せと、求めていた。

「俺は……」

 言い淀む。視線が落ちる。
 しかしその落ちた視線の先――戦う覚悟を決めた時、友の形見を身に着けている部位を目に収めて、紘汰は決意を取り戻す。

「俺も……どうしたらいいのかわからねえ。聖杯でしか助からない命があるんだとしたら、その命を救うために聖杯を使ってほしい」
「それはつまり、お前は聖杯戦争を容認するということか」
「でも…………でもよ! 俺は誰かが犠牲になるなんて嫌だ。そんなの見過ごすなんて絶対できない!
 だから、だから俺は……! 俺は、聖杯戦争を止めるっ!!」

 言い切った。
 既に吐いた唾は飲み込めない。最早訂正は効かない。そして他の誰より、自分自身を欺けない。
 それをわかっているのだろう。サガラは満足げにほくそ笑んだ。

「なるほどな。お前は他のマスターの希望を砕く覚悟をしたわけだ」
「そんな覚悟、できちゃいない……だからって、何もせずに傍観するなんてできるわけない。
 だから答えが出るその時までは、迷いながらでも、俺は戦い続ける。あるのはその覚悟だけだ」

 聖杯でしか救えない命があるのだとしても。ならば聖杯に焼べられる命を救えるのは今、自分達しかいないのだから。
 すべての命が生きられる未来を実現するには、今、目の前の命を諦めるわけにはいかないのだ。

「……答えというには些か足りないものがあるが、それがお前の決めた道ということか。
 そいつは茨の道を往くよりも険しい道のりだぜ。そのことはわかってるんだろうな?」


865 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:04:56 skmsxbZE0

 サガラの問いに、紘汰は一瞬の躊躇いもなく頷きを返した。

「いいだろう。だったら止めはしない。だがな、世界ってのはそんなに優しくはできていない。
 予選の時と同様に、お前たちの手が届かない命ってのは必ずある。
 それにもしも聖杯戦争を停滞させることができたとしても、その時はお前たちも討伐対象とされるだろう」
「討伐対象……?」
「ああ。聖杯戦争の運営を阻害する事態になれば、その原因を取り除こうと考えるのは当然のことだろう。
 ついさっきも中学校で大きな戦闘があってな。その場にいたあるサーヴァントが討伐対象となったばかりだ」
「……なんだって?」

 サガラから伝えられた情報は、紘汰にとって青天の霹靂といえるものであった。

「まあ詳しくは正午の俺のホットラインで連絡するが、結構な数の死傷者が出たことでユグドラシルの維持に問題が生じる可能性ができた。同じ事を繰り返されないようにするためにもその芽を摘む、という名分だ。
 さあどうする葛葉紘汰? お前たちがちんたらしてる間に、聖杯戦争は着実に進んでいっている。死んだ連中の大半はNPCだろうが、ひょっとしたら予選脱落者も中にはいたかもな」
「NPCも予選脱落者も関係ない! でも……そんな…………」

 聖杯戦争は基本夜半に行われる。予選の時もそうだった。
 人目につくような昼間にサーヴァントが戦闘を行えば……どうなるかは想像に難くない。
 だというのに――

「まさかこんな白昼堂々と人が密集している施設に襲撃をかけるようなやつがいるとは思ってもいなかったか?
 つまりはそれだけ本気のやつらがいるということだ。お前らも本気で聖杯戦争を止めたいってんなら、遊んでる時間なんざありはしないぜ」
「くそ……! 行こうセイバー!」
「そう急ぐな。あともう一つ、お前らマスターに連絡することがある」

 駆け出そうと背を向けた紘汰をサガラがなおも呼び止める。
 気にすることなく行こうとした紘汰だが、マスターとしてならば先ほど以上に衝撃的なその内容に立ち止まり、振り返らずを得なかった。
 その内容とは。

「聖杯に起こった不具合についてだ」

 聖杯戦争の基盤である聖杯に、不具合が生じているというものだ。
 聖杯など必要としない紘汰でさえ、無視するには大きすぎる情報だった。

「……」
「聖杯の……不具合?」
「ああ。お前のサーヴァントならそれがなんなのか大体察していると思うが――――――今は聖杯から英霊に関する知識を得られない状態になっている」
「な、なんだよそれ!?」

 幸いなことに一定時間内に誰も脱落しなければ全員助からないとか、そのような最悪の事態ではなさそうなので一安心しつつも。
 なぜ、そのようなことが起こったのか――そんな真っ当な疑問を抱いた紘汰は、なぜセイバーがそのことについて察していると言われたのかまでは、この時まだ思い至らなかった。

「ちょっとしたイレギュラーが紛れ込んでてな。図書館からも英霊に関するデータが閲覧不可能になってしまっている。
 中には他の英霊が関わる自身の宝具の発動条件すら把握できないやつまで出てくる始末でな。
 とはいえそのイレギュラーが消滅すれば自動で聖杯の情報にサーヴァントはアクセスできるようになるし図書館も利用可能になるから、真名を隠し続けなければいずれ不利になるという事実は変わらない。
 まあこの連絡は、すでに戦闘を行って敵のサーヴァントの情報を調べようとしているマスターから苦情が来るのを防ぐただの予防線だけどな」

「まあ、その程度なら別にいいけどよ……」と呟く紘汰を尻目に、サガラはわざとらしく聞こえる程度までボリュームを下げた独り言を漏らした。
「これも、ムーンセルの精一杯の抵抗なんだろうな」
「抵抗? どういう――」
「とにかく急ぐことだな。誰も死なせないというなら、当然討伐対象となったマスターも助けるんだろう?」

 紘汰の追求をわざとらしくはぐらかすと、サガラはいつものように飄々とした笑みを見せた。

「早めに見つけておかないと、駆けつけた時には手遅れなんてことになりかねないぜ」
「あ、おい!」

 そして言うが早いか。紘汰が呼び止めた時には既に、サガラの姿は手品のように失せていた。


866 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:05:56 skmsxbZE0

「消えた……コウタ、あいつはいったい何者なんだ?」
「……俺にもわからねえ」

 警戒心を抱いたセイバーの問いに、満足に答えられない己を紘汰は不甲斐なく思う。

「……でも、サガラの言ってることが本当なら、急がねーと不味い」

 だが、そんな感傷や逡巡にばかり構ってはいられないのだと、決意したばかりであったことを思い出した。
「バイトなんかして場合じゃねぇ!」
 叫ぶまま、勢い良く仕事着を脱ぎ捨てた紘汰は、自らの剣となってくれた英霊に改めて呼びかけた。

「行くぜ、セイバー。これ以上誰かが犠牲になっちまう前に、今度こそ!」
「――ああ、行こう!」

 かくして、覚悟を決めた一人と一匹の主従は駆け出した。

 すべての命が、あるがままに生きられる――自分達の求めた未来を目指して。



【葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武】
[状態] 普通
[令呪] 残り三画
[装備] 戦極ドライバー
[道具] オレンジロックシード
[所持金] やや貧乏(一日分のアルバイト給料)
[思考・状況]
基本行動方針: ユグドラシル(聖杯戦争)を許さない
1. 中学校に向かい、関わったサーヴァントを見つけ出し、討伐令に備える。誰にも誰も殺させない。
2. 昨夜の強盗(アーマードライダー?)のことも気になるけど、今は中学校だ!
3. 味覚を取り戻す方法、魔術都市なら………ないよなぁ
[備考]
※ズボンの右腰にオレンジロックシードをつけてます。他のロックシードの手持ち状況は、後の書き手の皆様にお任せします
※職場を紹介した鯨木かさねの『罪歌』の洗脳を受けているかは不明です
※アーマードライダーがユグドラシルにいる可能性を考えてます
※バイトを途中で抜けました。無断なので多分解雇されます。


【セイバー(アルファモン)@DIGITAL MONSTER X-evolution】
[状態] 普通(ドルモン状態)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 命を受け継ぎ、生き、託す
1. 紘汰と一緒に中学校に向かい、これ以上の犠牲を防ぐ。
[備考]
※戦闘時以外は魔力の消費を抑えるため、ドルモン状態でいることにしました



【共通備考】
※第一回放送で討伐令が発令されることを知りました。
※聖杯の不具合で、現在サーヴァントに関する知識を得られなくなっていることを知りました。


867 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:07:13 skmsxbZE0





「……悪いが俺は誰の味方でもなければ、誰の敵でもないんでね」

 そんな二人とのやり取りを終えたばかりのサガラは、どことも知れぬ場所にその姿を現した。
 誰に向けたものかも知れぬ、能書きのようなものを嘯きながら。

「不利な奴を見てると、つい肩入れしたくなっちまうのさ」

 遠からず自らの行う放送により窮地に立たされるイレギュラーを思い描いた彼は、不意に苦笑する。

「……ま、それも何の誤解もないまま事が運べば、だがな」

 葛葉紘汰とそのセイバーを炊き付けはしたが、すべての真実を伝えたわけではない。
 嘘を吐いたわけでもないが……果たして彼らは、大量の死者が出る原因となったというサーヴァントと、何の衝突もしないで済むだろうか。

「あの男にご執心なのは結構だが……世界ってのは果てしないもんだ。全てが誰かの思うが侭、なんてことにはならないのさ」

 そんな、最強の黄金聖闘士と衝突する可能性のあるサーヴァント――ルーラーですら見通せない空白の席の主の神話を思い返して、サガラの口調に真剣な成分が戻った。
 数多の世界を渡って来たサガラでさえも、不確かな伝聞でしか知らぬその神話を前にすれば、余裕でばかりはいられない。

「……ユグドラシルが暴走を始めようとしたならば、アレが召喚されても不思議ではないかもしれんが…………まさか禁断の果実の一部を取り込んだ今の葛葉紘汰でも、十全の力を発揮させることができんとはな」
 
 名高きオリンポス十二神族とも拮抗する力を携えて、イグドラシルの下に秩序を守る聖騎士たちへの抑止力――本来ならば、サーヴァントの規格になど到底納まるようなものではない。
 そんなものが召喚されているというのも、おそらくは聖杯を悪用されたムーンセルの抵抗の一つなのであろう。もっとも無理やりに規格を落とした分、竜の因子は正しく機能もしていないようであったし、おそらくはパラメーターにも少なからぬ影響が出ているのであろうが……
 それだけグレートダウンをしたところで、その存在が規格外であるということに変わりはない。
 如何にオーバーロードの域に達しているとしても、禁断の果実そのものを手にしていない今の葛葉紘汰程度では、手に余るのもむしろ必定と言ったところか。
 おまけに自身も前衛として戦おうとする葛葉紘汰の性格も手伝って、上手い具合に他のサーヴァントでも抗し得る可能性が出来ている。

「――いや。葛葉紘汰の拘束具としては、あれぐらいでなければ足りないということか」

 此度の聖杯戦争において、マスターには純粋な戦闘能力だけでならサーヴァントに拮抗、もしくは凌駕する力を持つ者も数こそ少ないがいるにはいる。
 その大半は、力でこそ勝っていようと英霊の生涯が培った技能や経験、そして英霊が英霊たる意志の前には及ばないのだとしても……中には例外となる者もいるだろう。

 その筆頭候補こそが、葛葉紘汰だ。
 もはやその身は幻想へと足を踏み入れており、下手なサーヴァントを宛がおうものならばその性能に関わらず、自らの力のみで戦い抜くことも可能なバランスブレイカーだ。

 ――だからこそ、彼にはアルファモンが与えられた。 

 アルファモンの圧倒的なまでの力は、葛葉紘汰でさえも満足な魔力を供給することが適わぬ足枷となり、そして葛葉紘汰自身の力をも封じる足枷となる。
 互いが互いの足を引っ張り合うというのは、この世界樹に集った主従の中でも最良といえる関係を持つ彼らに対しての最高の皮肉と言えるだろう。


868 : 求める未来を目指せ ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:08:26 skmsxbZE0

 とはいえ、それでも彼らの戦闘能力はやはり頭一つ飛び抜けている。仮に聖杯を掴もうと望んだならば、その願いが叶う公算は極めて大きいかもしれない。
 だが力だけではどうしようもない戦いへと彼らは身を投じている。それも、限りなく勝算の小さい戦いだ。
 この先、何度も何度も辛酸を舐めることとなるだろう。

「それでももし、おまえ達が自らの希望を貫き通せたなら、その時には――――――」

 彼らが求める未来を、その手で実現させることができたなら。

「――――その時こそ、俺がマスターとなったことに意味ができるということかもな」

 自らに架した話を進める者としての役目。それは間違いなく彼らの行く末と衝突することになる。
 バーサーカーがセイバーに力で勝つことなど不可能。だが、魔力供給というただ一つの差が、彼らと自らの間に絶望的なまでの差を生んでいた。
 精霊による守りは、力を削がれていてはアルファモンですら突破することは叶わないだろう。
 神樹の化身となった勇者に、抑止の騎士は敗れ去る――それが彼らの最期に辿る未来だ。

「因果なもんだね……ま、それも――あいつの思惑通り運んでいたら、だけどな」

 アルファモンの敗北――しかしその未来は、サガラたちと葛葉紘汰たちの主従が、一騎打ちした場合の話だ。
 葛葉紘汰たちが求めた未来を実現した時、彼の傍にいる者たち次第では、覆ってしまう想定に過ぎない。
 それこそ、いくら半神の勇者であっても――究極の聖騎士(ロイヤルナイツ)と、最強の黄金聖闘士(ゴールドセイント)、二人の神殺しを纏めて相手取ることになってしまっては、敵う道理などありはしないのだから。



「さて……アーチャーにご執心なのは結構だが、周りにも気をつけておかないとこの聖杯戦争――――――本当にご破算になっちまうかもしれないぜ?」



 この場にはいない同業者に語りかけるように、冗談めかした言葉を残しながら……サガラもまた、自らの役割のために歩み出した。



【サガラ@仮面ライダー鎧武】
[状態]普通
[令呪]残り三画
[装備]???
[道具]???
[所持金]???
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の進行を見守る
1. 次の放送に備える
2. 葛葉紘汰の動向が気になる(無自覚)
[備考]
※現在位置は不明ですが、転移できるのであまり関係ありません。詳しくは後続の書き手さんにお任せします。



[全体の備考]
※第一回放送にて、聖杯の不具合(サーヴァントの情報閲覧の制限)についても言及される予定です。


869 : ◆7CTbqJqxkE :2015/12/06(日) 00:09:13 skmsxbZE0

以上で投下を完了します。

レオン・ルイスの宝具の性能上、それを発動できないということでヘルマン・ルイスに連なる者が召喚されていることに思い至っていないことに違和感を覚えたこと、また葛葉紘汰や湊耀子が駆紋戒斗、東郷美森や犬吠崎風が乃木園子に関連する人物として、他のサーヴァントに知識としてその存在及び未来を知られていない、また彼らが未だに自分達の顛末を調べられていない理由付けとして、生身のままサーヴァントとして召喚された星矢が原因でムーンセルが不具合を起こしているという設定を勝手に付け加えさせて貰いました。

とはいえ内容的にかなり勝手なことをしているとも自覚しておりますので、修正の要請等があればお応えする心積もりです。
ご意見よろしくお願いいたします。


870 : ◆nig7QPL25k :2015/12/06(日) 20:45:43 RZeZMnMw0
投下ありがとうございました!

異世界の英霊って調べられるものなんだろうか?というのは、ずっと気になっていたのですが、
ムーンセルが情報開示すればOKっていうのは確かにそうなんですよね
なので今回の不具合の設定もアリということで

ともすればフワフワしたものになりがちな紘汰さんの台詞を、
原作さながらの必死な叫びとして伝えてきたのには、すごいな、と思いました
サガラの語り口も虚淵のポエマーな部分が存分に発揮されててよかったです
面白いお話をありがとうございました!


871 : ◆nig7QPL25k :2015/12/06(日) 21:01:59 RZeZMnMw0
あ、それともう一つ
状態表の位置表記ですが、サガラだけでなく紘汰達の分も抜けています
こちらの指定をお願いします


872 : <削除> :<削除>
<削除>


873 : ◆7CTbqJqxkE :2015/12/07(月) 19:46:35 Bnf/B0bg0
>>871
ご指摘ありがとうございます。

では紘汰達の位置表記は
【C-6/商業地区・商業地区と学術地区を繋ぐ橋近辺/一日目 午前】
とさせていただきます。

他に問題等ありませんでしたら、位置表記含めた誤字脱字の修正をしたものをwikiの方に収録したのですが、よろしいでしょうか?


874 : ◆7CTbqJqxkE :2015/12/07(月) 19:49:00 Bnf/B0bg0
申し訳ありません。
>>873は収録したいのですがの間違いです。
失礼しました。


875 : ◆nig7QPL25k :2015/12/07(月) 20:58:09 kL3wfa960
>>873
そういうことでしたら了解です
よろしくおねがいします


876 : ◆nig7QPL25k :2015/12/17(木) 01:51:23 YJXgpxdY0
衛宮士郎、神崎士郎、羽佐間カノン、我愛羅で予約します


877 : 名無しさん :2015/12/17(木) 01:57:05 ykJLiJr60
投下来てたんだな、乙です
コータさんとこの組のからくりを始め掘り下げが面白いっす


878 : 名無しさん :2015/12/17(木) 03:54:49 HbX0CbRk0
我愛羅キター


879 : ◆nig7QPL25k :2015/12/21(月) 21:05:22 qdvvz6pU0
延長します


880 : ◆nig7QPL25k :2015/12/24(木) 20:24:47 Bj8Txhx20
ちょっと今夜中には間に合いそうにないので、一旦予約を破棄します
そんなに長い話ではないと思うので、出来上がったらまたその時に
もちろん他に予約したいという方がいましたらどうぞ


881 : ◆nig7QPL25k :2016/01/12(火) 00:17:44 92VjeTHk0
衛宮士郎、神崎士郎、羽佐間カノン、我愛羅、天羽奏、トーマ・アヴェニールで予約します


882 : ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:01:03 /fb0mCKk0
お待たせしました。これより投下します


883 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:01:50 /fb0mCKk0
 街灯煌めく歓楽街にも、光の届かぬ場所はある。
 路地の裏へと分け入れば、そこは無明の真っ暗闇。
 きいきいと鳴く鼠の声と、がさごそと袋の揺れる音が、暗がりに響くゴミ捨て場だ。
 無法者達が潜む町の、そのまた深き闇なればこそ、隠れて潜む者もいる。

「………」

 その時そこに立っていたのは、そういう類の存在だった。
 全身を覆うのは、灰色の鎧。
 一切の光沢を放たない、無機質なその甲冑は、色彩と諸共に大切な何かが、ごっそりと抜け落ちていたようにも見えた。
 顔面のフルフェイスヘルメットからは、大きな一本角が生えている。一見して印象に残る特徴といえば、せいぜいそれくらいのものだ。
 されど注意深く見てみると、更にもう一つ、腰回りに、大きなベルトが巻かれているのが分かる。
 仮面とベルト。それは商業地区のスーパーを襲った、奇妙な強盗の特徴だ。

「――お前だな。逃げ込んだ盗人というのは」

 だからこそ彼は、その鎧へと、標的を絞り声をかけた。

「!」

 気付いた時にはもう遅い。
 灰色の甲冑の足元では、彼の凶器が渦を巻いている。
 じりじりと音を立て忍び寄り、マスクが振り返った瞬間に、一気呵成に巻き起こったものは――砂だ。

「!?」

 ざあっと大きな音を立て、砂の津波が襲いかかった。
 人一人を包み込み、そのまま丸呑みできるような、それほどに膨大な量の砂だ。
 それがさながら意志を持ち、大蛇のように振る舞って、鎧へまとわりついたのだった。
 たかが砂。手の隙間からも溢れる砂。
 されど砂だ。量が量だ。塵も積もれば山となる。
 両手にすらも収まりきらない、莫大な質量の塊は、強烈な圧力を伴って、灰色の甲冑を拘束した。

「サーヴァントではないようだな。ならば、それを使うマスターか?」

 靴音が鳴る。足音が寄る。
 サンダルの音と共に現れたのは、赤毛を短く切り揃えた男だ。
 十代後半の少年か。されど黒々とした隈が浮かぶ、その青い双眸の光は、凍えるほどに鋭く冷たい。
 そしてその額には、血のように赤々とした色彩で、「愛」の一文字が刻まれていた。
 我こそを愛する修羅となれ。
 母の愛を継ぎ強く生きよ。
 故に我愛羅。
 それこそが巨大な瓢箪を担いだ、赤毛の乱入者――シールダーの真名だった。

「……!」

 返事はない。
 鎧は言葉を返しもせずに、砂の中でじたばたともがく。

「答えないのなら、用はない」

 我愛羅の対応も冷ややかだった。
 たったそれだけの言葉で、執行猶予の終わりを告げた。
 ぐしゃり――と鈍い音が鳴る。
 赤い飛沫が隙間から飛び散る。
 肉を骨を、鎧を砕き、押し潰す砂の圧力が、無慈悲に敵の命を奪う。
 はみ出た首と右腕が、明後日の方向へと曲がり、千切れてぼとりと地へ落ちた。
 砂にて拘束した相手を、圧壊させる砂瀑送葬。我愛羅の操る忍術の中でも、基本にして象徴たる技だった。


884 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:02:24 /fb0mCKk0
「終わったんだな」

 そこへ響いてくる声が、一つ。
 ゴミ袋からこぼれたガラス片を、ぱきりと踏んで現れたのは、同じく赤毛の少女だった。
 凄惨な屠殺場を前にして、娘は僅かに顔をしかめる。
 だが、それだけだ。鎧が掻き消え素顔を晒した、血みどろの生首を目の当たりにしても、その程度の反応しか示さない。
 齢19にして修羅場をくぐり、地獄を生き抜いた少女兵士――カノン・メンフィスこと、羽佐間カノン。
 この少女こそ、かつて忍の里一つを率いた我愛羅を、更に従えるマスターだった。

「それなりの時間を与えてやったが、サーヴァントが現れる気配はなかった」
「ということは?」
「こいつはマスターでもない。恐らくは敵に操られ、手駒となったNPCだ」

 生前忍であった我愛羅は、気配遮断のスキルを保有している。
 にもかかわらず姿を晒し、時間をかけて攻撃したのは、相手の出方をうかがうためだ。
 その結果がこれだった。相手は明らかにサーヴァントではない上、それを呼び出すことすらもしなかった。

「他人を操り、手下を増やす……厄介な敵がいるようだな」
「マスターかサーヴァントか、どちらの術かまでは分からん。だが、軽視できるものではないだろう」

 聖杯戦争は基本的に、マスターとサーヴァントのタッグマッチだ。
 しかしこのNPCを操った敵には、その前提が通用しない。これが10人20人と増えれば、いかな雑魚とて脅威となる。
 それは今後を戦い抜く上で、決して忘れてはならないことだった。

「……!」

 その、時だ。
 我愛羅がそれを目にしたのは。

「どうした、シールダー?」

 首を傾げるその背後に、突如現れたその姿を。
 本来ありえるはずのない、その不可思議な光景を。
 現実にいるはずのない者が、捨てられた鏡の向こうから――カノンに向けて伸ばしている右手を!

「避けろ、マスター!」
「っ!?」

 珍しく、我愛羅が声を張り上げた。
 その意図するところは分からない。しかし軽視できる状況ではない。
 混乱しながらもカノンは、その場から飛びのき身をかわす。
 入れ替わるようにして奔ったのは、我愛羅の瓢箪から飛び出す砂だ。
 その先にある光景を見届けた時、カノンは我が目を疑った。

「何だ、これは!?」

 手が伸びている。
 それもただ出ているのではない。
 灰色のアーマーに覆われた右腕は、鏡に映った向こう側から、現実世界へと伸ばされていたのだ。


885 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:04:21 /fb0mCKk0
「っ!」

 引きずり出された灰色の鎧は、先ほど倒した者と似通っている。
 違いがあるとするならば、大柄なそれと比較すると、シャープでスリムな印象を受けるということか。
 間違いない。同じ存在に操られた手駒だ。しかしこの光景の何としたこと。
 こいつらは鏡の中に映った、虚像の世界へと潜り込み、動きまわることができるというのか。

「砂瀑送葬!」

 鎧の右半身を砂が包む。
 顔面を飲み込んだ瞬間、砂が牙を剥き獲物を食らう。
 ぐしゃぐしゃと嫌な音を立て、隙間から血飛沫を撒き散らしながら、二人目の鎧は絶命した。
 プレスされたゴミのようなその遺体からは、顔を潰されてしまった以上、身元を特定することもできないだろう。

「なんてことだ……」

 同時にカノンは、判明した敵の能力に、慄く。
 鏡の世界へ入り込み、現実の敵へと襲いかかる能力。
 それを持つということは、こちらが手出しできない死角から、一方的に不意を突き、敵を殺すことができるということだ。
 であれば、もはや安全地帯など、この魔術都市ユグドラシルの、どこにも存在しないのではないか。
 想像以上に深刻な事態に、カノンはその場へと座り込むと、右手で軽く顔を押さえた。



 聖杯戦争の開幕から、一夜明け、朝。
 いつも通りに起床して、登校途中に先輩と出くわし、普段通りに学校へ向かう。
 記憶を取り戻す以前から、そのような習慣を送っていたと、刷り込まれていた日常だった。

「………」

 違うのは、その学校の先輩が、やたらとそわそわしていることか。
 陽光に照らされた赤毛の少女は、しかしその爽やかな空気の中にあって、裏腹におどおどとしている。

「さっきから何を気にしてんだよ、先輩?」

 天羽奏は怪訝な顔をし、カノン・メンフィスへと尋ねてみた。

「あ、いやその……」

 返すカノンの言葉は、要領を得ない。
 真面目で物怖じしない彼女にしては、随分とらしくない態度だ。
 何かあったのではないか。もしかしたらその何かとは、聖杯戦争に関わることか。

「……夕べ、幽霊を見てしまってな……窓ガラスに映っていたものだから、どうしても気になっていたんだ」

 しかし、ややあって返ってきた返事は、随分と拍子抜けなものだった。
 見間違いだとは思うんだがと、そう付け足したカノンの返事に、奏は両目をぱちくりとさせる。

「……っははははッ!」

 そして同じく間を空けた後、大声でげらげらと笑い出した。

「やはり、そうだよな……すまない、馬鹿馬鹿しい話をして」
「はは……ホントだよ。意外と可愛いとこあるんだな、カノン先輩も」

 腹を抱えながら言った奏の言葉に、カノンは少し頬を赤くする。


886 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:07:34 /fb0mCKk0
「幽霊なんているわけがないし、いたとしても、魔術師の使い魔だ。いち女子高生のカノン先輩が、わざわざ狙われる理由なんてないだろ?」
「い、いや、分からないぞ。私の学校の成績を妬んだ、ライバルの犯行かもしれん」
「自分で言うかよそういうことッ!」

 もはや理屈が支離滅裂だ。
 それがおかしくってたまらなくて、カノンの背をばしばしと叩きながら、奏は高らかに笑った。
 思えばこんなやりとりも、随分と懐かしいものになってしまった。
 死んでからそれほど時間も経っていないのに、風鳴翼とこうしていたことが、遠い昔のことのように思えてしまう。
 それは状況が変わったからか、あるいは本当に長い間、ここに閉じ込められていたのか。
 その辺りの解答を、真面目に考え込もうとするほど、奏は生真面目な人間ではなかったが。

「とにかく安心しなって。先輩が心配してるようなことは、絶対に起きやしないからさ」

 だから、この話題もここまでだ。
 可愛らしい先輩をいじるのも、この辺りまでにしておこう。
 困った顔をしたカノンに対し、奏はそう言いながら、一歩前へと歩み出た。
 もうすぐ彼女らの高校だ。学年が一つ違う奏とカノンは、もちろん向かうべき教室も違う。
 故に彼女は一足早く、別れの言葉を口にすると、勢いよく校門へと向かっていった。

《……お前じゃないよな?》

 そしてその場から離れたのは、一つ、確認したいことがあったからでもあった。
 傍らに並ぶ存在へと、念話をもって語りかける。
 不可視のバーサーカー――トーマ・アヴェニールという名前すらも、奏には知る術がないような相手だ。
 自分勝手な行動を取れるほど、高尚な理性を有してはいない。
 それでも幽霊と聞かされて、最初に思い浮かんだのは、この英霊の写し身・サーヴァントだ。

《………》
《まぁ、違うんだったらいいけどよ》

 当然ながら、返事はない。
 肯定も否定も示しようもないのだが、ひとまずはその沈黙を、前者の意として受け取ることにした。
 そもそも夕べこのサーヴァントは、奏と一緒に行動していたのだ。
 カノンの家を通った覚えもない。であるなら、彼女がトーマの姿を、万が一にも見ることはない。
 そう分かっていながらも尋ねたのは、やはり何かしらの反応を、期待していたからなのだろうか。
 この、未だ狂気に甘んじ沈黙する、漆黒のサーヴァントに対して。

「……幽霊なんているわけがない、か」

 それにしても、と。
 そういえば、と思い出し、ぽつりと小さく口にする。

「妙なことを言うもんだな、あたしも」

 幽霊がいないとするならば。
 死後の魂がどこへも逝けず、消えてしまうというならば。
 それを否定する死人の私は、一体何だというのだろう。
 未だ自分は、あちらではなく、こちらの人間でいるつもりなのか。
 割り切っているはずの自分にも、どこかで死を否定したいという、そんな考えがあるのか。
 そんな風に思いながら、それを振り切るようにして、奏は教室へと急いだ。


887 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:08:06 /fb0mCKk0
【C-5/学術地区・一般高校/一日目 早朝】

【天羽奏@戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]通学鞄
[道具]財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:人々を守りながら戦う
1.積極的に聖杯を獲りには行かない。巻き込まれるかもしれない人命を守るために戦う
2.バーサーカー(=トーマ)の現状には納得していない。狂化の向こうにある本心に、自分の歌を伝え届ける。
3.とりあえずいつも通り日常を過ごし、学校で授業を受ける
[備考]
※カノンの幽霊話については、ただの勘違いだと思っています

【トーマ・アヴェニール(バーサーカー)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]『銀十字の書』
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:?????
1.とりあえずは奏の言う通りに動く
[備考]
なし


888 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:09:37 /fb0mCKk0


《意外と言ってみるものだな……》

 十数分前のやり取りを、回想する。
 幽霊を見たという言い訳は、傍らの相棒から耳打ちされたものだ。
 本当にそれで納得されるのかと、半信半疑ながらも言ってはみたが、意外とすんなりと通った。
 馬鹿馬鹿しい話だが、だからこそ、ただの与太話として流されたのかもしれない。
 そんなことを考えながら、羽佐間カノンは教室の席につき、我愛羅へと念話を送っていた。

《すまない。死霊を用いた使い魔の術を、魔術師が有していたことを失念していた》
《いや、いいさ。疑われずに済んでいるから、問題ない》

 詫びる我愛羅に対して、答える。
 確かに操霊術という線は、考えられもしたようだが、それは奏も一笑に付している。
 あの様子なら、誰に話が漏れたとしても、さして問題はないだろう。

《それにしても、霊を操る術か……シールダー達の世界にも、そういう忍法は存在するのか?》

 故にこの場は、場をほぐすために、世間話をすることにした。
 昔ならこうして気を利かせることなど、到底できやしなかっただろう。
 奏からは堅物と言われたが、これでもカノンも成長しているのだ。人として生きる今ならば、それくらいの気配りはできた。

《あるにはある。だが危険な禁術だ。簡単に使えるものではない》
《そうか》
《マスターの世界には、なさそうだな》
《多分な。色々とSFじみた現象には、馴染み深くなってしまったが、そうしたオカルトとはまだ縁がない》

 我愛羅の問いに、そう返した。
 異星体フェストゥムの存在は、確かに科学では説明がつかない。
 珪素で自らを形成し、同化にて他者を取り込むその在り方は、まさに神話の魔物そのものだ。
 しかしそれはあくまでも、宇宙の常識の範疇でしかない。ファフナーや竜宮島の技術も、その延長に過ぎない。
 地球に元から存在している、超自然的な現象というものには、カノンは未だ出会ったことがないのだ。

《だが、そうだな……死んだ人間の霊というのが、いてほしいとは、思っている》

 それでも。
 経験がないということは、実在を否定することとイコールではないと、カノンはそう付け足した。

《散っていった魂が、苦しみの記憶を最期にして消えてしまう……それではあまりにも、浮かばれないからな》

 あちらとこちら。
 彼岸と此岸。
 生者と死者の境界線。
 霊魂の存在というよりは、そんな死後の世界への願望かもしれない。
 カノンが否定しなかったのは、そうした感情あってのものだ。
 侵略者によって蹂躙され、傷つき倒れていった多くの者達。
 その魂が、苦しみと悲しみの只中で、死後の安寧すら許されず消えていく――それはあまりにも残酷だと、彼女はそう思ったのだ。
 せめて肉体から解き放たれ、痛みを忘れたその後くらいは、穏やかに生きていてほしいと。


889 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:11:38 /fb0mCKk0
《それにそうした人達が、見守っていてくれるのなら、生きて戦い続ける私も、前を向いて進んでいける》

 ここにいたいとそう願える、勇気をもらえる気がするのだ。
 カノンはそう締めくくった。
 ここにいる偽物などでない、本物の両親の魂が。
 面倒を見てくれた先輩や、受け入れてくれた仲間達が、あちらから励ましてくれるというのなら。
 それならば、こちらに生きている自分も、せめてもう少しは頑張ろうと、そう思えるような気がするのだ。

《そうか》

 カノンの言葉に対する返事は、短く簡素なものではあったかもしれない。
 それでも、その時の我愛羅の言葉は、いつもの無機質なものよりも、少し柔らかく聞こえた気がした。



【C-5/学術地区・一般高校・3年生教室/一日目 早朝】

【羽佐間カノン@蒼穹のファフナーEXODUS】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]通学鞄、財布、ベレッタM92(15/15)
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.基本的にサーヴァントを狙う。マスターはあまり殺したくない
2.とりあえずいつも通り日常を過ごし、学校で授業を受ける
3.鏡やガラスに気をつけ、灰色の鎧達(=仮面ライダー)から狙われないようにする
[備考]
※雅緋が歓楽街の無法者を支配しているという話を聞きました
※『仮面とベルトをつけた強盗(=仮面ライダーベルデ)』を倒したと思っています。
 他にも複数仲間がいて、自分の命を狙っていると考えています。

【シールダー(我愛羅)@NARUTO】
[状態]健康
[装備]『我が背負うは風なる影』
[道具]忍具一式
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを補佐し、優勝へ導く
1.基本的にサーヴァント狙い。マスターは悪人のみ狙う
2.鏡やガラスに気をつけ、灰色の鎧達(=仮面ライダー)から狙われないようにする
[備考]
※雅緋が歓楽街の無法者を支配しているという話を聞きました
※『仮面とベルトをつけた強盗(=仮面ライダーベルデ)』を倒したと思っています。
 他にも複数仲間がいて、自分の命を狙っていると考えています。


890 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:12:27 /fb0mCKk0


 壁紙も椅子も粗末なものだし、ベッドはぎしぎしと軋んでうるさい。
 水道水なんて口にしようものなら、一発で腹を壊してしまうだろう。
 そんな安宿ではあったものの、されど衛宮士郎にとっては、その小汚さが懐かしい。
 切嗣と共に正義の味方として、各地を放浪した時には、こんな宿に泊まったことが多々あった。
 決して明るい思い出ではなかったが、彼と共に過ごした時間は、全てが悪いものではなかったと思う。

「……やっぱりあの作戦は、そう何度もは使えないな」

 そんな部屋の中で、士郎は、神崎士郎からの報告を受けていた。
 仮面ライダーガイの契約者を確保した直後、砂使いのシールダーが襲来。
 神崎自身の存在は捕捉されなかったが、ガイは呆気無く死亡。
 その後、事前に確保していたライアを使い、奇襲を試みたものの、これも空振りに終わり返り討ちにあった。
 マスター一人の情報と引き換えにするには、釣り合わない大きな損失だ。

『確かに、撤収したマスターは、周囲の鏡やガラスを警戒していた』
「種が割れちまえば分かりやすい手だし、目につきやすい分怖いんだ。もう大人しく引っかかってはくれないだろうさ」

 世界の境界線を跨ぐ。
 ミラーワールドから手を伸ばし、あちらからこちらへと引きずり込み、消滅させる。
 敵マスターを鏡へと閉じ込めるというのは、確かにちゃんと決まってくれれば、一撃必殺の戦術だ。
 しかしシールダーのマスターには、そのからくりがバレてしまった。
 であれば、もう同じ手は食わないだろう。近くにある鏡という鏡に、片っ端から警戒の目を向けて、奇襲に備えようとするはずだ。
 故にこの手は、他のマスターに対しても、慎重に打たなければならない。
 士郎は改めて、己が戦術の、利点と弱点を見極め直した。

「そういえば、今日は外が騒がしいな」

 言いながら、士郎は窓の外を見やる。
 歓楽街はその裏側に、多くの闇を抱えたエリアだ。
 その日陰を好んでいるような、いかにも危なげな連中達が、何やらピリピリとした気配を漂わせている。
 特にこの歓楽街で、騒動が起きた様子はない。
 だが、この一晩のうちに、状況に何らかの変化が起きたのは確かだ。

「キャスター、調べてきてくれるか」
『いいだろう』

 であれば、無視することはできない。
 士郎は神崎へと指示を出し、情報収集を命じる。
 鏡の世界で息を潜めて、聞き耳をたてられる神崎士郎は、アサシンにも匹敵する優秀な諜報員だ。
 程なくして神崎の顔は、ガラスに映った部屋の中から、ドアを開け外へと消えていった。
 遠からずして衛宮士郎は、真相を知ることになるだろう。
 この町を騒がせる事態の発端が、遠く離れた行政地区での、マスター同士の戦いであることを。
 闇を束ねる白き女帝――雅緋が、手傷を負って根城へ落ち延び、その身を隠しているということを。


891 : ホライズン ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:13:10 /fb0mCKk0
【B-8/歓楽街・安ホテルの一室/一日目 早朝】

【衛宮士郎@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]干将・莫耶
[道具]オーディンのライダーデッキ
[所持金]数日寝泊りできるほど
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.情報収集に出た神崎が帰還するのを待つ
2.宿を拠点として、他のマスターを探す
3.赤毛のマスター(=羽佐間カノン)を警戒。多分ミラーワールドからの奇襲は、二度と通用しない
[備考]
※護衛として、仮面ライダータイガ、仮面ライダーインペラーに変身するNPCが近くにいます。
 戦闘時には即座に現れ、士郎を援護するように洗脳されています。
※シールダー(=我愛羅)およびそのマスター(=羽佐間カノン)の外見特徴を把握しました

【キャスター(神崎士郎)@仮面ライダー龍騎】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]ライダーデッキ×7
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: マスターの戦いを見届ける
1.歓楽街が騒がしい。緊張の原因を調査する
2.ユグドラシル全域からNPCを選別し、仮面ライダーを増やす
3.赤毛のマスター(=羽佐間カノン)を始末する
[備考]
※町のNPC3人を洗脳し、ベルデ、インペラー、タイガのデッキを渡しています。
 また、現時点でガイ、ライアのデッキが破壊されています。

【『ライダーデッキの仮面ライダー』】
【仮面ライダータイガ(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 B-8 歓楽街・安ホテルの一室
【仮面ライダーインペラー(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 B-8 歓楽街・安ホテルの一室
[備考]
士郎の護衛として、常に近くで行動しています。
戦闘時には即座に乱入し、士郎を守りながら戦闘を行います

【仮面ライダーガイ(歓楽街のゴロツキNPC) 死亡】
【仮面ライダーライア(歓楽街のゴロツキNPC) 死亡】


892 : ◆nig7QPL25k :2016/01/16(土) 00:13:41 /fb0mCKk0
投下は以上です
長らくお待たせして申し訳ありませんでした


893 : 名無しさん :2016/01/16(土) 02:42:23 f8.7y7PM0
投下乙です!

>求める未来を目指せ

命だと迷いなく即座に言い切るドルモンがかっこいい。
紘汰さんもこう決して覚悟を完了はできてないんだけどそれでも覚悟を決め続けることをやめないのが弱くて強い。
サガラの語るあるかもしれない紘汰アルファモンと戦う未来にもドキドキしました。
面白かったです!

>ホライズン

幽霊、か。英霊に死んだはずの人間に、未来で死ぬ人間。
こうつなげるとは。カノンが霊にいて欲しいと言うのはEXODUS的にすげえ重いぜ……。
しかしいいな、奏とカノン、なんかすごい魔術学校の学生友達同士な会話でここだけそういう学園モノみたいだったw


894 : 名無しさん :2016/01/16(土) 14:25:25 p03cRpQY0
投下乙です
ミラーライダー、早くも二人やられたか
ガードベントにもなれないとは、仮面ライダーガイの面汚しよ……


895 : ◆nig7QPL25k :2016/01/19(火) 20:34:47 .SzB79.20
両備、ハービンジャー、忌夢、呀で予約します


896 : ◆nig7QPL25k :2016/01/21(木) 19:15:17 8nKXECfc0
先日「真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍」の、最終巻が発売されました
本企画の剣鉄也は、途中までの時点からの参戦なのですが、原作未読の方は、よろしければこの機会にぜひ

また、先ほど「魔法少女まどか☆マギカ[魔獣編]」の内容を反映し、
Wikiの暁美ほむらのページの文面を修正しました
記憶改竄は悪魔になって以降も使えるので、あまり大きな変化ではないのですが、念のためご確認ください


897 : ◆nig7QPL25k :2016/01/24(日) 01:19:56 rSzcFxOY0
延長します


898 : ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:21:40 BZKTjZI60
ちょっと勘違いをしていたので、シノンの住所の表記を変更しました
SS上の修正はありません

それでは、拙作を投下します


899 : 刻まれるカウント ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:22:56 BZKTjZI60
 例の通り魔の目撃証言は、ほとんどが夜に集中している。
 当然だ。日本の東京に比べればだいぶ田舎だが、それでも白昼堂々人を襲って、全くバレないような土地ではない。
 故に忌夢は、一夜明けた朝を、大学の図書室で過ごしていた。

(ゼイラムに、衝撃ゴウライガン……何だこれは)

 ぱらぱらと本をめくりながら、呆れ顔でため息をつく。
 自らのサーヴァントについての情報を、もう少し調べてみようと思ったのだが、それがこの有様だ。
 魔戒騎士などという存在の資料は、本棚には一冊も見つからない。
 それらしいものを集めてみても、載っているのは見当違いの名前だ。

(ムーンセルとかいうのが、こいつらの世界について知っているのなら)

 その情報を何らかの形で、提供する義務があるのではないか。
 英霊の真名を知ることが、アドバンテージになるのなら、それに付随する情報は、きちんと開示するべきではないのか。
 これでは通り魔のヒントも、得られるかどうか怪しいかもしれない。
 街に出よう。もはやここで油を売るよりも、敵を探すことの方が急務だ。
 そう考えると、忌夢は席を立ち、本を抱えて歩きだした。
 元あった本棚へと戻し、踵を返す。そのまま棚と棚の間を進み、外へと出ようとした瞬間。

「――お前だな。夕べ白いサーヴァントを狙ったのは」

 声が、背後から響いた。
 闇の奥底から響く、獣の唸りのような声だった。
 ぞくり――と背中に怖気が走る。
 襲いかかったプレッシャーに、体をびくりと震わせる。
 一瞬の驚愕と戦慄を受け止め、何者かの存在を背後に意識し、意を決して視線をそちらへ向けた。
 そこに立っていたのは、一人の男だ。
 鋭い傷の刻まれた隻眼で、忌夢を高みから見下ろす、筋骨隆々とした大男だ。
 ただの人間では、ない。マスターとなった彼女の視覚は、キーパーという未知のクラスの名を、その姿と共に認識している。

「何の用だ」

 間違いなく、こいつはサーヴァントだ。
 にもかかわらず、倒すべき敵である自分に対して、この男は攻撃を仕掛けてこなかった。
 そこには何の意図がある。忌夢は睨みと共に問いかける。

「あの女は俺の獲物だった。次こそケリを着けてやろうと、そう思っていたその矢先に、お前が割り込んできた。
 だから文句の一つでも、言ってやろうと思ってよ」
「ハ……あんな奴を取り逃がした程度の男が、偉そうに。お前も同じ所に送ってやろうか」

 キーパーの返事に、更に挑発で返した、瞬間。
 びゅんっ――と吹いた剣風が、顔のすぐ横をすり抜けた。
 突き出された刃と腕は、黒い。
 忌夢の傍らに現れたそれが、視線の先の存在目掛けて、剣を鋭く突き出したのだ。
 標的は門番の名を冠する大男。
 攻撃を仕掛けたのはバーサーカー・呀だ。

「俺もそうしてぇのはヤマヤマだが、あいにくとそうもいかなくってな。だから今回は挨拶だけだ」

 されども、男は沈黙しない。
 漆黒の切っ先は男の体を、刺し貫いていなかったからだ。
 キーパーは呀の黒い篭手を、その右手でがっちりと掴んでいる。
 突きを繰り出される瞬間、その懐へと潜り込み、剣を振るう腕を封じ込めたのだ。


900 : 刻まれるカウント ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:23:50 BZKTjZI60
「次だ。次にお前と会った時には、この俺が容赦なくブチのめす」

 せいぜい首を洗って待っていろと。
 鋭くひと睨みをくれると、来訪者は身を霊体に変え、たちどころにその気配を消した。
 右手を解放された呀は、剣と共に、その手を戻す。

「奴を追え、マスター。あれは俺が斬る」
「どう探せっていうんだ、まったく」

 要求にツッコミを入れると、忌夢は呀に命令し、目立つ姿を霊体化させた。
 それからやや間を置いて、一呼吸すると、ようやくその場から離れる。
 軽んじた発言をしてみたが、あれはかなりの強敵のはずだ。
 スペックで他より優位に立つ、バーサーカークラスの力と速さに、真っ向から対抗してみせた。
 であれば、直接刃を交える時には、相応の覚悟が必要だろう。

(課題は山積みか)

 あの男、ただの荒くれ者ではない。
 射竦められた忌夢が感じたのは、呀に対して抱いたそれと、同等の畏怖の感情だ。
 得体の知れない狂気とは違う。であれば、敵であればこそ向けられた、殺意か。
 予選で戦ったような雑魚や、たまたま戦いに持ち込むことなく倒せた、夕べの敵の時とは違う。
 英霊と真っ向から向き合い、戦うというのは、こういうことなのだ。
 行く先に立ち込める暗雲の深さに、忌夢は改めて、気を引き締めた。



【D-5/学術地区・魔術大学・図書室/一日目 午前】

【忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]如意棒
[道具]秘伝忍法書、外出鞄、財布
[所持金]普通
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を雅緋に捧げる
1.街に出て、敵マスターを探す。キーパー(=ハービンジャー)のマスターも知っておきたい
2.夜になったら、また街を出歩き、『魔術礼装を持った通り魔』を誘き出す
3.呀には極力そのままで戦わせる。いざという時には、装着して戦う
4.そこらのNPCでは、呀を使いこなせないらしい。無理に代わりの体を探すことはしない
5.呀を再び纏うことに、強い恐れ
[備考]
※特級住宅街以外のどこかで暮らしています。詳細な家の位置は、後続の書き手さんにお任せします
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました。
 後者の主がなのはであることには気付いていません。
※両備が本物であること、キーパー(=ハービンジャー)のマスターであることに気付いていません
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません
※魔術大学の図書室に、サーヴァントとなった英霊に関する書籍が、置かれていないことに気づきました

【バーサーカー(呀)@牙狼-GARO-】
[状態]健康、魔力増(一般人の魂二つ分)
[装備]魔戒剣、暗黒斬
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる
1.戦う
2.キーパー(=ハービンジャー)と戦いたい
[備考]
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません


901 : 刻まれるカウント ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:24:17 BZKTjZI60


 暢気な。
 いやむしろ、貧弱と言うべきか。
 何しろ両備は好き好んで、朝寝坊をしているわけではない。
 それは彼女の姉だという、NPCの二人の女が、寄ってたかって起こしに来ても、全くの無反応であったことからも分かる。
 夕べの戦いで、魔力を大量に搾り取られ、衰弱しきったマスターは、未だ眠りについていた。
 駆けつけた医者は、栄養剤を注射した後、あとは安静にしておくようにとだけ言って立ち去っている。
 緊急入院などということにならなかったのは、聖杯戦争的には、幸いと言えるかもしれない。

(あるいはルーラー連中が、そう意図して動かしたのかもしれねぇな)

 戦いを妨げるファクターを、NPCの操作によって、避けているのかもしれない。
 大学の図書室から帰還し、ベッドで眠る両備を見ながら、ハービンジャーはそう思考した。

(しかし、これでアイツはクロか)

 であれば、考えるべきは別の用件だ。
 先ほど挨拶をしてきた、あの眼鏡の女についてだ。
 彼女のことは知っている。確か忌夢とかいう名前の、両備の元の世界での仲間だ。
 本人としては、殺り合いたくはなさそうにしていたが、今回の件があったことで、完全にマスターだと確定してしまった。

(この俺と張り合うとはな……半端な覚悟で勝てる相手じゃねえぞ、アイツは)

 右掌を疼かせる、あの鎧の手応えを、覚えている。
 最初は完全に抑えたと思ったが、あの黒いサーヴァントは、それでもなお抵抗を示してきた。
 力と破壊を司る、牡牛座の黄金聖闘士の握撃を受けて、なおも抜け出そうと張り合ってきたのだ。
 恐らくあれは、夕べ戦った、二人のサーヴァントのどちらよりも強い。
 腕力だけなら己と互角――あるいは全くのイーブンの勝負も、覚悟しなければならないだろう。

(見極め時だな)

 目を覚ました両備は真実を知って、どのように立ち回るのか。
 彼女はかつての仲間との戦いに、臨むのか、あるいは避けるのか。
 そう遠くないはずの目覚めが、このマスターの器をはかる、最大のタイミングとなるだろう。
 剛力無双のハービンジャーは、しかし今は息を潜めて、静かにその時を待っていた。


902 : 刻まれるカウント ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:25:08 BZKTjZI60
【F-2/自然保護区・両備の家/一日目 午前(放送直前)】

【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]気絶、魔力残量3割
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.………
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています。また、忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています

【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]ダメージ(小)
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]スナイパーライフル
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.両備が目を覚ましたら、忌夢の正体を明かす
2.メンター(=高町なのは)を横取りした忌夢を許さない。次に会ったら倒す
3.両備の迷いに対して懸念
4.黒い鎧のサーヴァント(=呀)を警戒
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』の噂を聞きました
※忌夢が黒い鎧のサーヴァント(=呀)のマスターであると知りました


903 : ◆nig7QPL25k :2016/01/26(火) 17:25:55 BZKTjZI60
投下は以上です


904 : 名無しさん :2016/01/26(火) 21:30:25 htTBnrkU0
投下乙です!
このキーパーとバーサーカーがぶつかりあったら本当にやばいことになりそう……


905 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/10(水) 21:11:23 h8.dchb60
シノン&シエル・アランソン
鯨木かさね&アヌビス神
キング・ブラッドレイ&Dr.ワイリー
あと一応NPCでリザ・ホークアイも予約します


906 : ◆nig7QPL25k :2016/02/11(木) 03:42:09 bmXybFGE0
立花響&スバル・ナカジマ
犬吠埼風&剣鉄也
そしてNPCからエレオノールを予約します


907 : ◆nig7QPL25k :2016/02/14(日) 21:26:45 xyuA.K9c0
延長します


908 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/15(月) 22:28:18 QH9sxors0
延長お願いします


909 : ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:02:42 AOW8MclY0
投下します


910 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:03:34 AOW8MclY0
《……遅かったか!》

 霊体化した鉄也が唸る。
 先の作戦会議から、一夜明けた朝のことだ。
 謎の音の主を求めて、特級住宅街へ訪れた、犬吠埼風達を待ち受けていたのは、野次馬と警察官の群れだった。
 恐らくは夕べの段階で、何者かがこのエリアに侵入し、攻撃を仕掛けたのだろう。
 自分達よりも大胆で、監視の目を物ともしない人間が、マスターの中にいたというわけだ。

《どうしよう、ライダー?》
《まだ分からねぇことが多すぎる。奴さんが死んだのか、逃げ延びたのかも含めてな》
《ってことは、情報収集ってわけね》
《そういうことだ。せっかく来たからには、ギリギリまで足掻くぞ》

 鉄也からの念話に頷き、風は特級住宅街へと乗り込む。
 ターゲットが敗北したのなら、ここにはもはや何の意味もない。
 だが、もしも生きていたのだとしたら、無意味で片付けて離れれば、手がかりを見失ってしまう。
 であればここは行くべきだ。引き下がるのはもっと後だ。
 なるべく警官の目を避けながら、風は廃墟の奥へと消えていった。



「これは……」

 三位一体の合体攻撃と、黄金の宝具・『偉大なる金牛の驀進(グレートホーン)』。
 それらの正面衝突の結果を、立花響は知らずにいた。
 巻き起こった爆発の瞬間、魔力を消耗しすぎた彼女は、その場で意識を失っていたからだ。
 故に、特級住宅街を進む響は、自らの引き起こした惨状に、しばし息を呑んだ。

《仕方なかったとはいっても……やっぱり、やりきれないね》

 傍らのスバルが、念話で言う。
 既に火の手は消えているが、残されたおびただしい瓦礫は、未だ撤去されていない。
 崩れた家屋、えぐられた石畳。煤で汚れ、無惨に砕け、積み重ねられた残骸の数々。
 これらは全て、自分達が関わった、夕べの戦闘によって引き起こされたものだ。
 スバルとなのはの性格を考えれば、ほとんどは相対したあの敵――黄金のサーヴァントによるものだろう。
 それでも、最後の一撃のことを思えば、無関係を気取ることはできない。

「ここに暮らしてる人のほとんどは、コンピューターに作られたNPC……」
《だけど、聖杯戦争の予選に参加できず、記憶をなくしたままの人間も、いた可能性は否定できない》
「巻き込んじゃった可能性も、否定できないってことですよね」

 響の問いかけを、スバルは無言で肯定する。
 ここは仮想空間ではあるが、犠牲が全く出なかったと、断言することはできないのだ。
 作り物の人間の中に、本物の人間が何名か、紛れ込んでいた可能性もある。
 そうでなくても、このような光景を見せられて、平気な顔をしていられるほど、両者は冷酷な人間ではなかった。

《……そろそろかな。確か、この辺りだったと思うけど》

 やがて主戦場から遠ざかり、瓦礫も少なくなってきた頃。
 スバルは周囲を見渡しながら、目的の建造物を探る。
 この特級住宅街に来たのは、被害の程を確かめるためではない。
 この戦闘のもう一組の当事者――ルイズとなのはのペアを探し、合流することが目的だ。
 そのために、彼女らは、この近くに存在するという、ある建物を探していた。
 それこそ、ルイズが暮らしているという家――ラ・ヴァリエールの邸宅である。


911 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:04:17 AOW8MclY0


 貴族の娘・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 そのステータスは、この魔術都市ユグドラシルにおいても、変わらず存在していたらしい。
 発見した彼女の自宅は、特級住宅街の家々の中でも、ひときわ目を引く豪邸だった。
 この家の当主は、代々魔術回路を受け継ぎ、洗練させてきた、由緒正しき魔術師であるそうだ。
 そんな家を訪問し、豪奢な客間へと通された響は、いかにも落ち着かないといった様子で、そわそわと周囲を見回していた。

《すっごいですね、これ》
《貴族っていうのは、ホントだったんだね》

 本でしか見たことがないような、動物の頭の剥製飾り。
 中世の城か何かのような、美しさとシックさが共存した内装。
 腰を下ろしているソファも、ふかふかで非常に座り心地がいい。
 学生寮に住み込んで、サーヴァントと交代で自炊しているような、自分達の暮らしとは大違いだ。
 もっとも、ルイズはこんな家に住んでいながら、あんなきゃんきゃんと吠えるような口調になったのかと、少々気がかりにはなったが。

「待たせたわね」

 そこへ、声がかけられる。
 観音開きの大きな扉を、開いて廊下から現れたのは、金髪と眼鏡が特徴的な女性だ。
 年齢はスバルの外見よりも、少し上といったところか。三角形のレンズの奥では、釣り上がった瞳が光っていた。
 召使いだらけの屋敷の中では、目立って尊大な態度だ。であればこの女性は、家を取り仕切る、ヴァリエールの血を引く者か。

「エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズの姉よ」
「あ……どうも、初めまして。ルイズちゃんの友達の、立花響です」
「ええ、そう聞いているわ」

 エレオノールの名乗りに対し、立ち上がって礼をする響。
 一方スバルは、霊体化しながら、その様子を冷ややかな目で見つめていた。

(ルイズに会いに来たのに、本人が来なかった……むしろ、来られなかった?)

 表の人間には、響は確かに、ルイズを訪ねて来たと伝えていた。
 しかしそこに現れたのは、覚えにくい名前を持つ、ルイズの姉の方だった。
 ルイズ自身が出てきたのでも、下の者が身代わりとなって、用件だけを聞いたのでもない。
 より立場が上の人間が、わざわざ出張ってきたというのは、少々妙な光景だ。
 そうしなければならない事情が、今のルイズにはあるということか。

「ごめんなさいね。ルイズは今外出していて、ここにはいないの」
「そう、なんですか?」
「そのかわり、あの子から貴方にと、手紙を預かっているわ」

 そう言うと、エレオノールは響へと、封筒に入った手紙を手渡す。
 これもまた妙な光景だ。来るのが分かっていたならば、こんな書き置きなど渡さず、家で待っていればいい。
 現状を考えれば、無理に外に出る理由などなく、むしろ籠城する方が安全なはずだ。
 間違いない。ルイズの身に、何か起きている。

《ちょっと家を調べてくる。何かあったら、念話であたしを呼んで》

 そう言い残すと、スバルは響のもとを離れ、扉に向かって歩き出した。
 霊体化したサーヴァントの姿は、ただの人間の目には映らない。結界が施されていない限り、壁であろうとすり抜けられる。
 響を一人にするのは少々心配だったが、ここはその特色を活かして、状況を確かめることの方が急務だ。
 そう考えたスバルは、不可視の密偵として、家を調べることを選んだのだった。


912 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:05:20 AOW8MclY0


 あんたがこの手紙を読んでいる時には、もう私はここにいないと思う。
 悔しいけど、あの戦いの後、メンターがやられてしまったの。

「そんな……ッ!」

 受け取った手紙に書かれていたのは、絶望的な書き出しだった。
 お茶を出させるとエレオノールが言って、部屋から姿を消した後。
 自らの敗北を綴った、ルイズの置き手紙を前に、響は目を見開き、絶句していた。
 あの戦いが終わった後、ルイズは乱入してきた何者かによって、サーヴァントを倒されてしまっていたのだ。
 当然その時から既に、数時間もの時が経過している。手駒を失ったマスターが、ここに残っているはずもない。

「ルイズちゃん……ッ!」

 読み終えた手紙を胸に抱え、響は悲痛な声を上げた。
 守れなかった。
 勇んで飛び込んでいっても、偉そうな大口を叩いても、ルイズを助けることができなかった。
 自分が戦列に加われず、その上気を失ったばかりに、最後まで面倒を見ることができなかったのだ。
 あそこで倒れていなければ、家まで撤退することもなく、スバルにルイズ捜索を頼めただろう。
 それができなかった。つまりこれは、己の無力が招いたミスだ。
 そのために高町なのはは倒され、ルイズもまた、聖杯戦争から脱落してしまったのだ。
 ルールの文面を信じるならば、サーヴァントを失った場合、マスターが命を落とすことはない。
 それでも、不甲斐ない己自身に対する、自責の念が薄れることはない。

《……キャスターさん、聞こえますか》

 姿を消したスバルへ、念話を送った。
 辛くとも自分自身の口から、伝えなければならないことだ。

《ここに、ルイズちゃんはいません。メンターさんが、他のマスターにやられて……ルイズちゃんは、脱落しました》




《!》

 なのはが敗れた。
 それはスバル・ナカジマにとって、少なからぬ衝撃となった。
 あれはサーヴァントだ。既に天寿を全うした命だ。
 ここで命を落としたから、どうなるというものでもない。あるべき英霊の座へと戻るだけだ。

《……そう》

 それでも、それは理屈でしかない。恩人が殺されたという事実に、心が動かぬはずもない。
 故に、一拍遅れた彼女の返事は、暗い響きを宿していた。


913 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:05:52 AOW8MclY0
(待った)

 しかし。
 次の瞬間、彼女に襲いかかったのは、違和感だ。
 ルイズがいないのだとしたら、なお話はおかしくなってくる。
 響から伝えられた文面からして、ルイズが会場から排除されたのは、夜中から明け方にかけての頃のはずだ。
 つまり、家の者が目を覚ました時、帰ってきたはずのルイズが、何故か姿を消していたということになる。
 なのに何故、ここの連中は、騒ぎ立てる様子もなく、当然のように受け止めているのか。

(ひょっとしたら、ここの人達は、ルイズの敗退を知っていた……?)

 頭脳労働は嫌いだが、全くできないわけではない。
 むしろ訓練校の成績は、座学も含めて主席だった。
 そもそもきちんとした思考力がなければ、災害現場での単独行動など、到底できるはずもない。
 故にスバルの思考回路は、脳内で素早く回転する。
 NPCの人格を、高度に形成する理由はない。
 故にルイズ消失についても、聖杯戦争の主催者側が、適当に納得するよう処理していたとしてもおかしくない。
 それ以外にも、既にラ・ヴァリエール邸が敵魔術師の手に落ちて、何らかの洗脳を施されているという可能性がある。

(前もって手紙の中身を見たなら、あたし達がここに来ることを、察知することはできる)

 何も知らずにやって来る、立花響を家に閉じ込め、始末するという可能性。
 それも考えられなくもない。魔法社会で生きてきて、前線での戦闘経験もあるスバルには、そういう状況も想像できる。
 その可能性がゼロでない以上、これ以上この屋敷に留まるのは危険だ。
 今すぐ響と共に、何かしら適当な理由をつけて、ラ・ヴァリエール邸から立ち去るべきか。

(……これは?)

 そこまで考えた、その時だ。
 不意に、おかしな気配を、足元から感じ取ったのは。
 魔術実験に使うためだろう。この家は響の寮よりも、強い霊脈の上に建っている。
 そのため普通にしていても、足元から魔力の気配が、僅かに感じられていた。
 その魔力がうねっている。先ほどまでよりも強く、大きな魔力を感じている。
 何かの実験を行うために、魔力を引き出しているのか。いや、それにしては、これは少々、魔力の動きが不安定ではないのか。

「……!」

 最悪の可能性を想像した。
 響を閉じ込め始末するという、先ほどの仮説にも合致する線だ。
 これはまずい。普通に動いていたのでは遅い。
 一歩でも行動が遅れれば、全てまとめてお陀仏になる。

《響! 今すぐ令呪を使って、あたしをそこに呼び戻して!》

 自身も部屋へと走りながら、スバルは響へと念話を飛ばした。
 訪れる最悪の結末を、なんとしてでも回避するために。


914 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:07:23 AOW8MclY0


 囁く。
 祈る。
 唱える。
 念じる。
 紡いだ詠唱の呪文が、彼女の足元で渦を巻く。
 光り輝く魔法の陣が、危険な色に染まり始める。
 何人かの使用人達は、家の外へと退去させた。彼らなら街をうろついていても、さほど悪目立ちはしないはずだ。
 錬金魔法にて生成した武器も、他者に見咎められることのないよう、工夫して外へと持ち出させている。
 これで準備は万端だ。後は気づかれないように、この工程を完了すればいい。
 どの道ヴァリエールの人間は、あまりにも目立ちすぎる有名人だ。
 新聞で顔が出回るだろうし、そんな人間が街中にいれば、他のマスターにも見咎められるだろう。
 ならばこの身は諸共に、地獄へと消えることにしよう。あの不審な少女を道連れに、業火に焼かれて果てるとしよう。

「任務完了ですわ――母さん」

 それが最期の言葉だった。
 言いつけられた役割を、己は無事に全うした。
 そう宣言して、エレオノールは、光と熱の中へと消えた。



 爆音が轟く。
 火と煙が弾ける。
 巨大な世界樹であっても、衝撃があれば揺れるのか。地鳴りが振動を伴って、風の足元へと襲いかかった。

「なっ、何!?」

 音のする方に見えたのは、猛然と立ち上る爆炎だ。
 恐らくあそこで何かがあって、あの爆発が起きたのだろう。

「どうやらドンピシャだったらしいな! 行くぞ、マスター!」
「分かった!」

 驚愕を即座にリセットし、戦闘モードへと移行。
 実体化した鉄也の声に応じて、爆発のあった方へと駆け出す。
 あんな現象が起きたのだ。であれば、聖杯戦争の参加者同士が、あそこで戦闘を行っているはずだ。
 今度こそ乗り遅れるわけにはいかない。噂の主であるのなら、逃げられる前に決着をつける。

「やったろうじゃないの!」

 自らを鼓舞するように、叫んだ。
 他人の願いを踏みにじるという、己が蛮行への後ろめたさを、大声に乗せて振り払った。
 取り出したスマートフォンが光を放つ。電波の通じない魔術都市でも、使用できる機能はある。
 それは勇者・犬吠埼風にとっては、通話以上に重要なアプリだ。
 神によって与えられた、護国の戦士の力と姿を、解き放ちその身に纏うことだ。


915 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:08:07 AOW8MclY0
「はっ!」

 跳躍する。地を蹴り跳び上がる。
 その距離は既に、恋に恋する、15歳の少女のそれではない。
 一飛びで家の屋根に着陸したのは、尋常ならざる超人の業だ。
 輝く心――それはオキザリスの花言葉だったか。
 弾けるようなカラーリングは、まさに咲き誇る花のそれだ。黄色と白を貴重とした、煌めくような彩りが、風の体を覆っていた。
 されども華やかな衣装は、舞踏会の装束ではない。肩に担いだ鋼鉄の光が、それを雄弁に物語る。
 身の丈にすらも迫る大剣を、何食わぬ顔で備えながら。
 人の域を超えた風は、戦場へとまっすぐに疾走した。
 犬吠埼風は勇者である。
 この姿と力こそ、勇者と呼ばれる所以なのである。

「あれは……!?」

 自らのサーヴァントである鉄也が、ブレーンコンドルを飛び立たせるまでには、今しばらくの時間がかかる。
 故にそれを先に捉えたのは、マスターである風の方だった。
 巻き起こる煙のその奥に、彼女は二つの人影を見た。
 片方が片方をその身に抱え、奇しくも風と同じような、大跳躍を果たす様を見た。

「――響さん!」

 そして抱えられている方は、風にも見覚えのある顔だった。
 故に犬吠埼風は叫ぶ。絶叫と共に人影に駆け寄る。
 それはさながら、目の前の光景を、否定したいかのようでもあった。
 それでも受け入れねばならないと、己を律しているようでもあった。
 迫るその先に降り立ったのは、つい昨日同じ店に入り、並んで食事を取った少女だったのだから。



 襲い来る凄まじい煙と熱風。
 それを背後に感じながら、響は眼下の炎を見る。

「一体、何が起きたんですか……ッ!?」
「多分、あの眼鏡の人だと思うんだけどね。魔術師が霊脈を暴走させて、家ごと爆発させたの」

 令呪でサーヴァントを転移させた瞬間、猛烈な音が立て続けに鳴った。
 同時にスバルは響を抱き上げ、足元から噴き上がる炎を掻き分け、窓ガラスをぶち破り脱出した。
 庭の爆発からも逃れながら、跳び上がり宙を舞ったのが、現在の彼女らの状況だ。

「ルイズちゃんのお姉さんが、私達を殺そうとッ!?」
「多分どこかのタイミングで、あの家が敵に乗っ取られてたんだよ。人を操る魔法を使えば、そういうこともできるから」

 バリアジャケットとデバイスを纏った、スバルが響の問いに答える。
 それはルイズが書き残した、バーサーカーを使うマスターかもしれない。
 あるいはスバルと同じキャスターに、そういうことをさせたマスターがいたのかもしれない。
 いずれにせよ、強力な洗脳魔法を使える者がいれば、家一つを乗っ取ることも可能だ。
 操られた人間が、ルイズの手紙を盗み見れば、こういうことにもなるだろう。


916 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:09:07 AOW8MclY0
「――響さん!」

 その時だ。
 不意に眼下から、声が聞こえてきたのは。
 見下ろしたのは街の方。無数の家屋の屋根の一つに、一つの人影が乗っかっている。
 白と黄色が特徴的な、まるでコスプレのような格好だ。
 そしてその装束を纏っていたのは、響がつい一日前に、出会ったばかりの顔だった。

「あれは、確か……風……ちゃん……?」

 困惑する響を抱えながら、スバルは屋根上に着地する。
 奇しくもその場所は、今まさに犬吠埼風が立っている、家の屋根の上だった。

「その姿、ひょっとして風ちゃんは……」

 まるでサーヴァントのような装束だ。
 現実離れした服装を見ながら、響はそんな感想を浮かべる。
 それは背中に担いでいる、幅広の大剣があるからこそ、そのようにも思えるのだろう。
 恐らくはシンフォギアと同じか、あるいはそれに類する異能か。
 しかし、彼女はサーヴァントではない。その証拠にあの料理屋で、スバルが反応を示していない。
 であれば、このような異様な存在が、この場にいる理由はただ一つ。

「ええ……響さんと同じ、聖杯戦争のマスターです」

 左の太腿を隠す、ガーターベルトをずらしながら、風は響へと返した。
 そこには響のものと同じ、赤い令呪が刻まれている。
 間違いない。マスターの印だ。でなければこんな人間が、NPCとして出歩いているはずもない。

「まさか、風ちゃんが……」
「あたしも驚いてます。まさか、響さんと、戦わなくちゃならないなんて」

 スバルの手元から降りる響に、風が巨大な刃を向けた。
 剣を使う戦士というのは、防人・風鳴翼の例もある。
 しかし技を使うこともなく、最初から大剣を使うというのは、彼女にはなかった特徴だ。
 恐らくは戦い方も変わってくるだろう。同じようには捉えられない。
 そしてできれば、そんな目で、あの明朗快活な少女を見たくはない。

「どうしても、戦わないといけないのかな」
「ええ。多分、どうしても」

 返す風の表情は、暗い。
 同じ葛藤を抱いているのだ。そう思わずにはいられなかった。

「ひょっとしたら、話し合えば――」
「――あたしにも願いがあるんです! それはきっと、聖杯がなくちゃ叶わない……!」

 それでも、風は否定した。
 どの道聖杯を手に入れなければ、自分の目的は果たせない。
 であれば、結論を先延ばしにしても、何の解決にもならないのだと。
 他のマスターと戦い、全てを倒さない限り、望む答えには辿りつけないのだと。


917 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:10:00 AOW8MclY0
『ボーッと突っ立ってんじゃねえマスター! やるなら戦る! そう決めたんだろ!』

 その時、野太い声が響いた。
 スピーカー越しの絶叫は、彼方から飛来する戦闘機からの声だ。
 驚くべきことに、戦闘機である。赤とオレンジで塗装された、鋭角的な飛行機が、こちらに突っ込んできたのだ。
 それを言うなら、スバルの宝具も、機械仕掛けの『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』だ。
 ファンタジー要素へのこだわりなど、野暮なものなのかもしれない。

「!」

 危険を察知したスバルが、再び響を引き寄せる。

「あたしも人は殺さない。その一線だけは超えたくない」

 そこは多分、響さんと、同じ考えでいるつもりだと。
 巨大な剣を構えながら、風は響に向かって言う。

「だけど、この戦いには――絶対に勝つつもりでいますから!」

 叫びを上げた。
 鬨の声だ。
 迫り来る戦闘機に飛び乗り、響を見下ろす高みに至ると、犬吠埼風はそう宣言した。



 赤い猛禽が唸りを上げる。
 煙を噴かすミサイルが、こちらを睨んで殺到してくる。
 マスターを殺さないと言う割には、随分と物騒な初撃だ。どうやらサーヴァントの方はマスターと違って、随分とガサツな人間らしい。

「リボルバーシュート!」

 当然黙ってやられるようなら、英霊など名乗れるはずもない。
 地味でもサーヴァントはサーヴァントだ。ならば仕事をするまでだ。
 すぐさまスバルはカートリッジをロードし、魔力の弾丸を二連発した。
 合計二発のミサイルが、空中で弾丸と衝突し、爆散。
 その煙に紛れるようにして、現在地から飛び退ると、響を物陰へと隠す。

「相手はあたしだけを狙ってる! 響はここでじっとしてて!」
「待ってくださいッ! まだ風ちゃんとの話が……ッ!」
「ごめん……メンターさんがやられた時点で、もうそういう段階じゃなくなったんだ」

 他のマスターと戦うことなく、響を治療する手段は、なのはの死によって喪われた。
 故に自分も、風と同じく、聖杯を望むしか手がなくなった。
 響を救う。そのために当初の予定通り、聖杯戦争に勝利する。
 あの鋼鉄の翼を落とし、全てのサーヴァントを撃破して、聖杯を響のために使う。


918 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:11:10 AOW8MclY0
「だからここは、あたしも打って出る!」
「スバルさんッ!」

 絶叫を背後に置き去りにしながら、スバルは再び戦場へと戻る。
 『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』が、魔力エンジンを稼働させ、唸りと共に石畳を駆ける。
 敵は空飛ぶサーヴァントだ。乗り物に乗っているからには、恐らくライダークラスなのだろう。
 あれと真正面からやり合うのなら、やはりウイングロードを使うべきか。
 そこまで考えこそしたものの、やはり敵もそれなりの手練だ。行動に移す間まではくれなかった。

「くっ……!」

 降り注ぐレーザーを、防御魔法で防ぐ。
 右手から生じたプロテクションが、熱量を受け止め遮断する。

「おりゃあああっ!」

 その背後から飛びかかったのが、雄叫びを上げる黄色の刃だ。
 どのタイミングであの飛行機から、飛び降り地上へ身を隠したのか。
 家の影から飛び出してきたのは、あの犬吠埼風という少女だ。
 先ほどの二倍に膨れ上がった、鉄色の大剣が空気を切り裂く。
 轟然と唸りを上げながら、巨大な鉄塊が襲いかかる。

「ソード――」

 かざしたのは左手のグローブだ。
 いかな超常の装備といえど、所詮は人間の扱う武具。
 夕べのサーヴァントが纏っていた、あの黄金の甲冑のような、英霊の宝具とは格が違う。
 であれば、通る。人の武器程度であるのなら、問題なく粉砕することができる。

「――ブレイクッ!」

 CW-AEC07X・ソードブレイカー。
 カレドヴルフ・テクニクス社が開発した、近代ベルカ式魔導師用の防御兵装だ。
 スバルが装備しているものは、彼女の特性に合わせた特注品だ。
 戦闘機人スバル・ナカジマが、その身に備えた特殊能力――インヒューレントスキル・振動破砕。
 彼女の左手を包む手袋は、その機能をサポートし、必殺の鉄甲へと変わる。

「なっ!?」

 ばきん――と響いた音と共に、風の顔が驚愕に染まった。
 大質量を有した剣が、粉々に握り潰されたのだ。
 振動破砕の能力は、ゼロ距離から超振動を浴びせることで、対象を破壊するというもの。
 四肢が触れなければ通用しないが、こと無機物相手に限れば、文字通り必殺の破壊力と化す。

「はぁっ!」
「ぐっ!」

 呆ける少女を、蹴り飛ばした。
 鋼鉄の具足の一撃が、立ち尽くした犬吠埼風を、遠く彼方へと吹き飛ばした。
 手加減はしたつもりだ。彼女もできることならば、人間を殺したくはない。
 故にこちらもターゲットは、サーヴァントに限られている。
 我が物顔で飛び回る、あの赤い翼を叩き落とす。それがスバルの勝利条件だ。


919 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:12:26 AOW8MclY0
「ウイングロード!」

 拳で地面を打ちながら、叫んだ。
 ナカジマ家に代々伝わる、限定空戦魔法・ウイングロード。
 それは魔力を空中で固め、文字通り空飛ぶ道を作り、その上を走るという技だ。
 陸戦機動力に特化した、ローラーブレード型デバイスも、相性がいいことこの上ない。

『面白ぇ。俺のブレーンコンドルに、空中戦を挑んでくるか!』

 拡声器越しの声と共に、敵の戦闘機が加速した。
 この速さについてこられるか――挑発的な声が聞こえてくるようだ。
 全く、嘗めた真似をしてくれる。
 こちらとて空中戦は本分ではない。されど宝具ですらもない、ただの戦闘機相手に、遅れを取るつもりは毛頭ない。

「うぉおおおっ!」

 雄叫びと共に、加速した。
 『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』の速度を、限界ギリギリまで高めた。
 フルドライブモードを使わない限り、これが出せるだけの最高速。
 それでも、敵の速度を考えれば、どうにか追いつくことはできる。

「はっ!」

 牽制にリボルバーシュートを放った。
 空色に輝く流星が、太陽の浮かぶ空を駆けた。
 一撃目はギリギリ翼を掠め、二撃目は軽くかわされる。それでも余分に動いてくれれば、その分直線速度にブレーキがかかる。

『調子に乗るなよッ!』

 空中で飛行機がターンした。
 なるほど、コンドルとは言い得て妙だ。まさに鳥のように柔軟な動きだ。
 あっという間に赤い翼は、スバルの背後へと回り込み、近距離からミサイルを叩き込んでくる。
 片方を魔力弾で撃ち落とし、もう片方をバリアで防いだ。
 すぐさまスバルの視界は、灰色の煙で満たされる。
 あの刃のように鋭利な羽だ。この煙幕に乗じて突っ込み、体当たりを仕掛ける気だろう。
 自分が戦闘機に乗っていて、相手が生身の人間だったなら、自分も恐らくそういう手を使う。
 だが、生身と侮ったのが運の尽きだ。『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』は、レーダーとしての役割も担っている。
 あれほど巨大な標的が、爆音と共に迫ってくるなら、対処することは十分に可能だ。

「そこだぁっ!」

 ウイングロードから跳び上がる。
 紅の翼を回避して、逆にその上へと飛び乗る。
 グレーの闇を突き抜けた、ブレーンコンドルの機体には、スバル・ナカジマが取り付いていた。

『こいつ!』

 となると、敵の行動は一つだ。しがみついたスバルの体を、機体から引き剥がすことだけだ。
 正念場はむしろここからだった。
 戦闘機は猛然と唸りながら、機体を高速でスピンさせる。
 ぎゅんぎゅんと爆音を奏でるその回転は、少しでも何かを間違えれば、諸共に墜落しそうな無茶な操縦だ。
 それを一切のトラブルもなく、平然とやってのける技量は、驚嘆に値するほどだった。


920 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:15:18 AOW8MclY0
「くっ、ぅう……!」

 もっともスバルからすれば、そんな暢気な感想など、口にしている余裕はないのだが。
 猛烈な衝撃と風圧は、容赦なくスバルを殴りつけ、握力と思考力を奪う。
 幸い、頑丈にできた体だ。これくらいのダメージでは、それこそ夕べそうなったように、脳震盪を起こすことはない。
 だがこのまま涼しい顔で、しがみついていられるわけでもない。とどめを刺すなら早くしなければ、逆に振り落とされてお陀仏だ。

「このぉおおおっ!」

 能力解放。振動発動。
 振動拳の一撃を、ソードブレイカー越しに浴びせる。
 この能力はあくまでもスキルだ。格別の神秘を備えた宝具などには、正常に通用するかどうかは怪しい。
 それでも恐らくこの戦闘機は、宝具ではないただの乗り物。
 であればそのスキルの一撃も、叩き込むだけの価値はある。
 上手く決まればこの程度なら、一撃で叩き落とすこともできる。
 人体への危険性を考え、迎撃のみに使ってきた拳だが、この場でそんな理屈は通用しない――そこは既に、割り切った。

『ぬぉおおっ!?』

 目論見は見事成功した。
 びきびきと砕ける音が鳴り、ばちばちとスパークが駆け抜けた。
 スバルのしがみついた装甲は、見る見るうちに亀裂を刻み、ダメージを全身へと走らせていく。
 これだけ浴びせれば十分だ。コントローの勢いを失い、目に見えて回転速度の落ちた機体から、両手を離して飛び降りた。
 敵サーヴァントを乗せた飛行機は、煙と炎を上げながら、空中で爆発四散した。

(これで、勝ったか……)

 サーヴァントが脱出する気配はない。
 白兵戦を苦手とするタイプだったか。どうやら戦闘機諸共に、爆発に飲まれて消えたらしい。
 石畳へと着地しながら、スバルは上空の炎を見上げる。
 切実な願いを持っていた、風には悪いとは思うが、これでめでたくゲームセットだ。
 こちらの悲願へと向かって、一歩前進したと言えるだろう。

『――まだ、終わりじゃねぇっ!』

 その、はずだった。
 頭上から稲妻のように突き刺さる、その絶叫を聞くまでは。

「そんな、まさか!?」

 声がするのは後方からだ。
 振り返ったその方向では、撃墜したはずのブレーンコンドルが、新品同然の光を放っていた。
 戦いはまだ終わっていない。どうやったのかは知らないが、敵も戦闘機もまだ生きている。

『マジィィィ――ン・ゴォッ!!』

 そしてそれだけの認識ですら、まだまだ不足だったということを、スバルはすぐ思い知ることになる。

「これは……!?」

 ぐらぐらと大地が揺れ始めた。ヴァリエール家崩壊の時とは、桁も様子も違う大振動だ。
 そしてその震源地は、奇しくも瓦礫の山と化した、そのラ・ヴァリエール邸にこそあった。
 間違いない。あそこから何かが来る。
 あの瓦礫の隙間から、煌々と覗いている光が見える。
 恐らくこれこそが奴の本命。これまでのブレーンコンドルとは、明らかに格の違う切り札だ。
 犬吠埼風のサーヴァント。そのワイルドカードたる宝具が、今まさに地の底から姿を現す!

「えっ……ええ……!?」

 もっともそうして現れた宝具は、スバル・ナカジマの想像から、若干斜め方向に飛んだ――とんでもない姿をしていたのだが。


921 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:16:33 AOW8MclY0


 既に宝具の使用許可は、散り際に前の鉄也が取っている。
 ブレーンコンドルを破壊した、例の振動兵器の前では、並の武器では焼け石に水だ。

《分かってるわね、ライダー!》
《おう! マスターこそ大人しくしてろよ! 俺とグレートの全力を、引き出して欲しいんだったならな!》

 戦う力を持っているとはいえ、風との連携は望めない。
 魔力の余計な無駄遣いは、むしろ鉄也の宝具には邪魔だ。
 そうだ。こいつは並ではない。
 それ故に解放すると決めたからには、一撃必殺が求められる。
 勝負を無駄に長引かせることなく、すぐさま敵のサーヴァントを、あの世に送り返す覚悟だ。

「マジィィィ――ン・ゴォッ!!」

 問題ない。自分なら実行可能だ。
 剣鉄也は迷うことなく、召喚の呪文を高らかに叫んだ。
 不利な条件のついた戦いなど、何度経験してきたか知らない。
 プロの戦いとはそういうものだ。まるきり都合のいい戦いになど、そうそう巡り会えるものか。
 そしてそうしたハードルを、真っ向から飛び越えてみせてこそ、戦闘のプロを名乗れるのだ。

「ファイヤー・オンッ!!」

 湧き上がる光へと飛び込む。
 瓦礫の山を吹き飛ばし、地面の底からせり上がる、己が宝具の姿を目指す。
 ブレーンコンドルの真髄は、自ら戦うことにはない。
 剣鉄也の宝具を操る、コックピットになることにこそあった。
 ドッキングしたその先は、西洋騎士の巨大な兜だ。神話の大魔神のような、雄々しくも恐ろしい顔だ。
 そして頭が転がっているだけでは、魔神と呼ぶには程遠い。
 天地を揺るがすアトラスには、相応の体が必要だ。

「さぁ、覚悟しな! 俺の宝具――グレートマジンガーは、ちっとばかり荒っぽいぜ!!」

 全長25メートル、総重量32トン。
 くろがねの光をその身に纏う、全身装甲の大魔神。
 魔術都市ユグドラシルに集められた、ほぼ全ての英霊を凌駕する、天を貫くほどの巨体。
 紅蓮の翼を広げる姿が、剣鉄也の持つ宝具だ。
 偉大な勇者の二つ名を冠する、地上最強のスーパーロボットだ。
 その名はグレート。
 まさしくグレート。
 大地を揺るがし雷を呼ぶ、魔神・『偉大な勇者(グレートマジンガー)』。
 先の予選での戦いを経て、再び姿を現した勇者は、命を燃やして闇を切り裂く。
 請け負った任務を果たすために。
 託された願いを叶えるために。
 同じ勇者の名を授けられた、犬吠埼風と仲間の未来を、その手と力で切り拓くために。


922 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:17:42 AOW8MclY0









「「……ええ……?」」







.


923 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:18:38 AOW8MclY0
【G-3/特級住宅街・ラ・ヴァリエール邸近く/一日目 午前】

【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]魔力残量9割、呆然
[令呪]残り二画
[装備]ガングニール(肉体と同化)
[道具]学校カバン
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ガングニールの過剰融合を抑える方法を探す
0.ええ……?
1.風とそのサーヴァント(=剣鉄也)に対処する
2.両備の復讐を止めたい
3.出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
4.スバルの教えを無駄にしない。自分を粗末には扱わない
[備考]
※E-4にある、高校生用の学生寮で暮らしています
※ルイズ・なのは組が脱落したことを知りました
※シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
 なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り2回(予想)です。
 特に絶唱を使ったため、この回数は減少している可能性もあります。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]脇腹ダメージ(小・回復中)、呆然
[装備]『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』、包帯
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、響を元の世界へ帰す
0.ええ……?
1.風のサーヴァント(=剣鉄也)を倒す
2.金色のサーヴァント(=ハービンジャー)を警戒
3.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません
※ルイズ・なのは組が脱落したことを知りました


924 : 出撃! 偉大な勇者 ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:19:24 AOW8MclY0
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]魔力残量7割
[令呪]残り三画
[装備]勇者の装束
[道具]スマートフォン、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.響のサーヴァント(=スバル・ナカジマ)を倒す
2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい
3.魔力消費を抑えるため、『偉大な勇者(グレートマジンガー)』発動時は、戦闘は鉄也に一任する
4.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく
[備考]
※D-3にある一軒家に暮らしています
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています。既に脱落していることには気付いていません

【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】
[状態]健康
[装備]『偉大な勇者(グレートマジンガー)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす
1.響のサーヴァント(=スバル・ナカジマ)を倒す
2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています。既に脱落していることには気付いていません


[全体の備考]
※G-3に存在する、ラ・ヴァリエール邸が爆発しました。
 これによりラ・ヴァリエール卿@ゼロの使い魔、
 エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔、
 および数名の使用人が死亡しました。
 残りの使用人達は、錬金術で制作された刀剣を確保しつつ街に散らばり、鯨木かさねの命令を待っています。
※剣鉄也が宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を発動しました。
 尋常でないほどに目立つので、周囲の人間に姿を見られ、噂を立てられるかもしれません。


925 : ◆nig7QPL25k :2016/02/17(水) 20:19:48 AOW8MclY0
投下は以上です


926 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:06:29 ZUu0WpCE0
投下乙です。
ルイズとなのはの最期を知り、それをきっかけに危機を脱する二人。
たしかな絆と強さを感じました。
しかし一難去ってまた一難というか、館が吹っ飛んだと思ったらグレートマジンガーの相手とは……
納得のリアクションですわ

私も予約の期限となっていますが、少々満足のいく出来に仕上げられませんでした。
ひとまずの投下をしたいと思います。
もし日曜日までに当該キャラが予約されていなかった場合、改めて続きを投下させていただきたいと思います。


927 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:08:03 ZUu0WpCE0

夜。
街を翔ける影が一つあった。
猫のようにしなやかに、疾風のような韋駄天で。
細身の女性と、その腕の中に抱えられた大きな何か。
周囲を警戒しながらもその速度を緩めることはなく、ひたすらに西へ西へ。
するとすぐに目的地にたどり着く。
魔術都市ユグドラシルの果て、緑の壁の先。
その端に立ち、下を恐る恐る見下ろして

(ごめんなさい…)

腕の中に抱えたもの。
十数ヶ所に銃創を負った亡骸を下界へと放り捨てる。

(賢い手とは言えないし、気の進むことでもないのですけれど……)

アーチャーのサーヴァント、シエル・アランソンは僅かに迷いながらもマスターのためを思って動いた。
正当防衛が成り立つ可能性は高いが、それでも殺人というのは罪だ。
この亡骸が誰かに見つかれば厄介になる。
もちろん真っ当な機関に通報する選択肢もあったのだろうが、シノンはそれを拒んだ。
聖杯戦争の最中に目立つ真似はしたくないと。
半ばパニックを起こしながらも自棄にはならない判断に首肯した。
なら壊れたガラスなどはともかくとして、死体はどうするか。
考えた結果、世界樹の外へと放り捨てることにした。
魔術師は俗世の立ち入りを許さない。
外界で死体が見つかったとして、その捜査がこちらに及ぶには極めて時間がかかる。
聖杯戦争の最中の時間くらいは稼げるだろう。
襲い掛かってきた不埒者とはいえ、死体を遺棄・破壊し死者の尊厳を辱めるのに仄かな後ろめたさを覚えた。
それでも戦争を勝ち抜くための最善と捉え、実行した。

(……夜の街、思ったよりも騒々しいですね。やはり皆動いているようです)

死体を抱えているのだから当然、人目につかないよう動いていた。
少なくともサーヴァントの気配や強大な魔力は感じられず、千里眼に映る世界に人影や斥候の類はない。
しかし、誰もいない夜道を駆けながら、どこか彼方に戦士のぶつかる気配を感じた。
それとかち合わないよう、慎重かつ迅速に帰宅する。

「ただいま、マスター」
「あ…おかえり」

びくり、と過敏ともとれる反応を返すシノン。
突然の襲撃で未だに心の整理ができていないらしく、部屋には割れた窓ガラスなどが散らばった出発前の状況ほぼそのままだった。

「休んでいいですよ。いえ、休んでください。
 片付けも警戒も、私がしておきますから。
 何度も言っていますが、サーヴァントに睡眠は必要ありませんので」

そう進言すると申し訳なさげな素振りを見せるが、一瞬掌に視線を落とすと悪夢でも見たかのような表情を浮かべ、力なく頷く。

「それじゃあごめん……お休み」
「はい、お休みなさい」

挨拶をするとすぐに寝入ってしまった。
やはり精神的に相当参っていたと見える。
それだけ確かめ、散乱したガラスや血痕を片付けてすぐに警戒に入る。


928 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:08:55 ZUu0WpCE0

(一度襲撃を受けた以上、また来る可能性は極めて高い。
 寝ずの番、ですね。今度はマスターに負担をかけないようにしないと)

神機を狙撃型とし、膝射にすぐ移れる姿勢でシノンの眠るベッド近くに腰を下ろす。
扉であろうと窓であろうと、いずれの敵にも反応できるよう外出時と同様に直覚と千里眼のスキルも最低限ながら行使し。

(……実際のところ、こういう待ちはキャスター辺りがする戦術なんですけどね。
 基本的にスナイパーというのは近づかれる前に撃つのが大切。
 居場所がばれたなら身を隠すために動くのが定石。
 ですけれど、ここに留まり続けるという方針を彼女は示しました。
 マスターもスナイパーなら私と同じように考えると思ったのですけれど……考えすぎ、でしょうか?)

襲撃を受けてから、なんだか様子がおかしい気がする。
些細とは言え傷を負ったのだから影響があってもおかしくはないが、それならむしろ危機から離れる方針になるはず。
トイレから戻ったシノンに実際に離れることを提案はしたが、彼女はそれに否と答えた。

(ですが、たしかに今の彼女のコンディションで当て所なくこの夜の街をさまようのはむしろ危険かもしれませんし……)

襲撃を受け、実際に僅かながら出歩いて実感した。
……南の方、比較的な裕福な家の並ぶ方にたしかな戦意を感じた。
NPCの噂に上るような通り魔や、爆音の正体か。
はたまたその噂に引き寄せられた別の参加者か。
いずれにせよ、精神的疲労の大きい状態で無暗に会いたい相手ではない。
マスターも自分も真っ向勝負という性質ではないことも加味して。

(そういう意味では狙撃に適したスポットをいくつか見繕ろえば、このような待ち伏せももう少し有効的に行えるでしょうね。
 今は追撃の警戒を続けますけれど)

そもそも、なぜ『単騎』で『襲撃』を受けたのだろうか。

(向かってきた戦力は少ないと言う外ない。
 それはあれだけで十分、ということなのか。あれしか向かわせることができなかったのか……)

敵の方針に思いをはせる。
それで今後の展開も読もうとして。

(単騎で御せると予想していた。ならここにサーヴァントがいるとは想定していなかったでしょう。
 あの程度ではキャスターやアサシンにも届かない。襲撃を企てた時点ではマスターと想定していなかったはず。
 ……ですが襲撃者を撃退した現状は警戒対象くらいにはなっているでしょう。
 この町にはそれなりの実力者もNPCとしても存在しているようですし、確定とはいかないまでもあの男を殺傷する術があることは察するはず)

無差別な襲撃を行わせ、それが帰還しなかった相手をマスター候補としてあぶりだす策。
候補を絞っていればそれなりの実入りは期待できるか。
だとするなら次に攻めてくるのは本命のサーヴァントかもしれない。

(単騎で御せるとは思っていなかったが、あれしか戦力を裂けなかった……ここにいるのがマスターとサーヴァントだと想定していた。
 つまり別のところに戦力を割いているか、そもそも大した駒を持ち合わせていないか。
 だとするならばれているのは手痛いですが、相手の方の戦力も消耗込でさほど強大ではなさそうなのは幸いでしょうか)

本命が別にいてそこを攻めていたなら、相手の方の消耗が見込める。
あの程度が虎の子なら恐れるに足らない……とは言わないまでも勝機は十二分。

(厄介のなのは倒されること前提、あるいは闘争や偵察以外の目的で送り込まれた場合。
 …噂として立ち上っている、斬りつけた者を操る礼装を持った通り魔。
 マスターの様子もおかしいですし、警戒はしましたけど……)

男の持っていた刃物は何の変哲もない包丁だった。
ルーンが彫られているわけもなく、宝石が埋め込まれてもいない。
どこの家庭にもあるようなそれで人を操ることができるのか。

(可能性があるとしたらブラッドバレットのように刀身に何らかの属性を外的付与すること、でしょうか。
 包丁に魔力は感じませんが、使い手の絶命と共に機能を失うかもしれませんし……
 もしそうだとするなら、傷を負ってからのマスターの変調は、危険信号。
 何をしようと、いえ、させようとしてくるのか)

僅かに意識をシノンに対しても割き、思考と警戒をひたすらに続ける。


929 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:09:25 ZUu0WpCE0


夜が明けた。


「…ん、おはよう。アーチャー」
「おはようございます……マスター、その目は!?ちゃんと眠れたんですか!?」

寝ぼけ眼をしたシノンの目は、充血などというものではないほどに赤く染まっていた。
ように、少なくとも一瞬は見えた。

「目…?特に何ともないし、夢見も悪くはなかったけど?」
「え?あれ、そうですね……ごめん、なさい」
「慌てすぎじゃない、アーチャー?」

苦笑してみせるシノンだが、異常なまでに赤く輝いた目は断じて見間違いではない。
最悪令呪を使われるかもしれない、と思うと向ける視線も厳しさを増してしまう。

「そんなに心配しなくても本当に大丈夫よ。あ、コーヒー淹れるけど飲む?」

ふぁ、と小さく欠伸を漏らしながらリビングへと向かう。
そのまま食卓で簡易な朝食の準備をするマスターの姿に安堵のような、毒気を抜かれたような思いを抱く。
しかし、逆に昨晩何もなかったかのように日常的に振る舞っているのがおかしいかどうかは悩ましいところだ。

「……マスター、今日はどうするつもりか腹案はありますか?」

いったんは様子見に徹するしかない。
だがもしも何らかの異常があると確信できたなら。

(回復や抗体系の弾丸で治せるものでしょうか?あるいは、『BB・貫通識別爆発弾(ブラッドバレット)』 。
 マスターを傷つけず、彼女の中の何らかの異常だけを撃ち抜くことができればあるいは)

回復弾はともかく、『BB・貫通識別爆発弾(ブラッドバレット)』 を物は試しで撃ち込むのはさすがにまずい。
心証は無論のこと、魔力消費や周囲の被害も考慮しなければならない。
確信を得るまで待つしかないだろう。

「やっぱり魔力確保の手段を確保しないと。
 色々回ったけどダメだったから、最後のランドマーク…四つの塔を目指そうかと思うの」
「塔、ですか」
「ええ。そこなら狙撃スポットとしても悪くはなさそうでしょ?」

もっしゃもっしゃとバターを塗ったトーストを口に運びながら、割れた窓の向こうに見える塔を指さす。
細かい設定は覚えていないが、この都市の魔力の循環を制御する役割もあるとか。
今まで回ったウルズの泉などのランドマークが末端の水道管だとするなら、四つの塔はその根幹である水道局や浄水場のようなものだろう。
必然末端との仕組みも違ってくるし、そこから魔力を確保できずとも制御に何らかの隙を見つけるか、隙を作ることができればどこか別の魔力源を発見できるかもしれない。

「そうですね。悪くないアイディアだと思います」
「ここに留まり続けるのも、よくなさそうだしね」

ようやくというべきか、不安な表情を僅かに覗かせたシノンになんだか安心する。
目的地も定まり、出立の支度を進める。
食器類を片付けている間に、スムーズに銃器を扱えるシエルが改めてへカートとMP7の整備を行う。
それが八割ほど済んだところで台所から何かを持ってシノンが顔を出す。

「マスター、それは…?」
「これ?ただの果物ナイフよ。撃てなかった時に備えての護身用」
「そう、ですか」

……近接用の武装を用意するのはおかしなことではない。
ショートブレードなどはその一つだ。
果物ナイフが便利とは言わないし、それ自体を奇妙とは言わないが、それでもやはり違和感を引きずりつつ。
整えた武装を渡し、身支度も整えたマスターに霊体化して付き従う。


930 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:09:54 ZUu0WpCE0

『それじゃあ、行こうか』
『ええ、マスター。どうか警戒を怠らず』

ドアをくぐり、覚悟新たに旅立ち、そしてしばらく。

「そこの方、少しよろしいでしょうか」
「はい?」

目的地が近づいてきているのを実感していると、前方から現れた金髪の女性に声をかけられた。

「銃士隊所属のリザ・ホークアイです。昨今多数発生している事件に合わせて、現在我々は警戒態勢を強めています。
 少しでかまいませんので…」

ちらり、とシノンの左腕から覗く包帯に目をやりながら言葉を続ける。

「お話を聞かせていただけませんか。できれば詰所の方で」

まずいな、とシエルは内心思う。
さすがに襲撃してきた男を殺害したことやその死体を遺棄したことがばれているわけではないだろう。
しかし懐に刃物を忍ばせ、さらに調べれば大型のアンチマテリアルライフルにPDWまであっては何の追及も受けないとは思えない。
どうしようか思い悩んでいると、シノンは動揺が隠し切れなかったか、差し伸べられた手をぱしりと弾き飛ばしてしまった。

「痛……!」
「あ、ごめんなさ…!」

反射的にとってしまった行動に自分でも驚いたのか声を漏らすシノン。
そしてその些細ながらも反抗的な態度に視線の鋭さを増すリザ。
……だったが

「……なに?誰?」

きょろきょろと辺りを見渡し始めるリザ。
耳を抑え、僅かに怯えるような素振りも見せ。
最後に、シノンにはたかれ、小さく引っ掻き傷のできた手に視線を落とす。
すると不気味なほどに落ち着きを見せ

「……いえ、こちらこそ突然申し訳ありません。また日を改めてお話しできればと思います。
 お名前だけでも教えていただけませんか?」
「え、と。シノン、シノン・アサダです」
「それではアサダさん。自然保護区の方では私同様いくつかの部隊が動いていますのでそちらとコンタクトすれば私と連絡はつきます。
 行政府を訪ねていただければ直接お話もできるかと思います」

それでは、と言い残して言葉通りに都市の中央、行政府方面へと歩いていくリザの背中を見送る。

『なんだったの?』
『用事を思い出した、という風でもありませんしね』

突然話しかけられ、あげく突然離れていった女性に揃って疑問符を浮かべるしかない。
シノンは安堵の思いが強かったか、目的地である塔へと歩みを進めようとする。
シエルは、リザの動きもまた時折覚えるシノンの言動への違和感と同様ではないかと疑うが

(礼装で斬りつけて操る。今のマスターから魔力は感じませんし、そもそも刃物は持っていても振るってはいませんし……)

答えは出ない。
しかし、それでも疑惑の目をシノンへと向け続ける。


931 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:10:21 ZUu0WpCE0

『どうしたの、アーチャー?』
『いえ、なんでも』
『そう?それじゃあ、予定通り塔に向かおうか』

そう言って二人は歩みを進める……ユグドラシルの北東に立つ塔、ダ―インへ。
彼女たちの位置から最も近いのは北西の塔ドラスロールだ。
しかしシノンはそこへではなく、ダ―インへと向かうことを提案していた。
曰く、昨晩襲撃された現場から距離を置くべき。きな臭い特級住宅街から距離を置くべき、と。
最終的には全ての塔を回る可能性もあるのだから、順番の問題にすぎないとシエルはひとまずこれに異を唱えなかった。
そうして二人は歩みだした。
偶然か、あるいは強者を求める罪歌の愛ゆえか。
シノンの過ごした世界で最強とも謳われる『黒の剣士』が、立ち寄り、そしていずれ再び訪れるであろう塔へと。


◇  ◇  ◇


シノンのもとを離れたリザは本来の勤務地である行政府へと歩んでいた。
上官にあたるアニエスから指示を受け、各所に検問の用意を進めていたが、平時の業務も疎かにはできない。
特に要人の警護体制などはそうだ。
昼前に軍事のトップと物流の重鎮が会談を開く予定があるということで、部隊の一部はその警護のために夜勤明けの体に鞭打ち、行政府へと戻っている。
リザもそうした同僚たちと合流し、シフトに入っていると来客はすぐに訪れた。

「おはようございます。ユグドラシル・コーポレーションの鯨木です。
 本日はキング・ブラッドレイ司令とお話しさせて頂く予定で訪問させていただきました」

この魔術都市では珍しい、車の後部座席から眼鏡をかけた女性が出てきた。
運転手の方は車内から出てこないで、このまま外で待つようだ。
鯨木かさねが勝手知ったる足取りでフレスベルグの門をくぐり、手続きを済ませて案内されていくのを、その運転手とリザ・ホークアイはじっと見送る。

(ひとまずは順調のようですね)

二階の応接室に案内されながら鯨木はそう考えた。
夜のうちに騒ぎは各所で起きている。
切り裂き魔として帰還した『子』は一人もいないが、噂を拡散する種子にはなれたらしい。
さらに行政地区の出火事件、特級住宅街での爆発音、魂喰いらしき事件の痕跡など、『子』の関わらないところでも様々な噂は立ち上っている。
噂を隠すなら噂の中だ。
自分たちの影は相対的に薄まる、と。
そこから自分たちも噂を洗うために、より噂の集まる立場に入り込むのがよいだろう。
例えば、そう。

「失礼。お待たせしてしまったかな?何分、最近物騒でね。いろいろ仕事が立て込んで困る」
「お気遣いなく、ミスター・ブラッドレイ。街の平和に尽くす方の労に敬意を払うことはあっても、文句など」

この地の軍事勢力を幕下に収める地位など魅力的だ。


932 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 00:12:32 ZUu0WpCE0
状態票がありませんが、投下終了となります。
お待ちいただければこの後のパートを、期限厳守ということでしたら状態票を加えて完成ということになります。

この時点でも指摘等あればお願いします。


933 : ◆nig7QPL25k :2016/02/18(木) 00:26:01 tVVD9V6w0
投下ありがとうございます!
そっか、世界樹の下に死体を落とす手があったか! なるほどと唸らされました
しかし罪歌の効果はネームつきのNPCにも、すごい勢いで広まっていきますね

予約に関しては、念のため現時点で、一度状態表を加えてもらいたいと思います
おっしゃる通り日曜に後半パートが完成した場合、予約がなかったら、そのまま投下してください
その場合は、前半パートの状態表を削除して、前編・後編合わせて1つのエピソードとしてWiki収録させていただきます


934 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 20:00:58 ZUu0WpCE0
ご迷惑をかけて申し訳ありません。以下が状態票になります。
続きも迅速に投下できればと思っています。


【G-8・行政地区・軍司令部・応接室/1日目 午前】


【鯨木かさね@デュラララ!!】
[状態] 健康
[令呪] 残り四画
[装備] 罪歌
[道具] 仕事道具
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:商品として聖杯を確保する。
1.罪歌の『子』によって噂を広める。
2.噂を利用しやすい政庁内や軍内に『子』を作りたい。筆頭候補は軍司令官(ラース)。
3.噂に反応する主従を探し、誘導や撃破など対応する。

[備考]
※外部と物資をやり取りする商社に勤めています。多少なら政庁にも顔が利きます。
※礼装を持った通り魔の噂を聞きました。自分たちの事であり、ハンデとして課された、あるいはランダムな選出の結果主催側に流されたものと考えています。
※謎の戦闘音の噂を聞きました。自分たち同様の理由か、あるいは何らかの違反者と考えています。
 ラ・ヴァリエールの強者(カリーヌ)の事と予想していましたが、NPCだったことで他にいると考えています。
※ラ・ヴァリエール邸のNPCを『子』にしました。迎撃、および敗色濃厚になった場合の設備破壊を命じています。
※罪歌の『子』を通じて三人の強者をマークしています。一人は鎧の戦士。
 明け方までにそこを殺人鬼ハリウッドを名乗る『子』が襲撃します。NPCか否かも含めて後続の方に詳細はお任せします。
→忌夢&呀(鎧の戦士)、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、シノンを襲撃しました。『子』が帰還していないことも把握しています。
※葛葉紘汰が人外であること、相応の強者であることを罪歌によって感知。興味を抱いています。
 今のところ『子』にしてはいませんが、必要なら戸惑うことはないでしょう。

【セイバー(アヌビス神)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 健康
[装備] NPCの男性(現在駐車した車内)
[道具] 『錬金』した剣数本(子に持たせている)
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従い、敵を斬る。
0. マスターに従い、ひとまず待機。
1. 敵は見つけ次第斬りたい。
[備考]
※予選で倒したサーヴァントはセイバー、バーサーカー、アサシン、詳細不明の四騎。
 それに伴いステータス、技量ともに大幅に上昇しています。
※『錬金』を見切りました。魔術師の肉体を行使すれば単純な剣程度なら作れます。

【憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)@鋼の錬金術師】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] 刀×4
[道具] なし
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:ホムンクルスとして、人間と心行くまで戦う
1.検問の結果を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る。直接戦うに足る相手であると分かれば、自ら出向く。
3.表向きの仕事として物資搬入の業者と会談。物騒なので軍による護衛がほしいらしい。
[備考]
※G-4にある豪邸に暮らしています
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました

【クリエイター(アルバート・W・ワイリー)@ロックマンシリーズ】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:世界征服のために聖杯を狙う
1.検問の結果を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る
3.マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦闘能力に興味
[備考]
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました


935 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/18(木) 21:20:39 ZUu0WpCE0
すいません、本文及びシノンの状態票にミスがありました

>>936の文中

フレスベルクの門をくぐり
からフレスベルクをカット、シノンの状態票の方針1と時間帯を変更し以下のようにします
度々申し訳ありません

【E-2/一般住宅街/一日目 午前】


【シノン(朝田詩乃)@ソードアート・オンライン】
[状態]罪歌の子、精神ダメージ(微小)、左腕に裂傷(小)
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]ウルティマラティオ・へカートII(7/7)、H&K MP7A1(40/40)、各種予備弾丸
[所持金]普通(一人暮らしを維持できる程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、トラウマを克服する
0.罪歌の子として、罪歌および鯨木かさねの声に従う(無自覚)
1.特級住宅街など騒ぎの中心を避け、北東の塔(ダ―イン)へ向かう
2.魔術師の魔力確保手段を調べ、実践する
3.銃のトラウマを克服し、戦えるようにする
[備考]
※罪歌の子に斬られ、罪歌の子となりました。
 ただし説明を受ける前に、相手を殺してしまったため、自分に何が起きたのかを理解できていません。
→完全に子となり、現在罪歌の声は聞こえていません。それに伴い落ち着きを取り戻しています。
 ただし母による命令や、強者が近くにいるなどの要因で再び罪歌が騒ぎ出すことはあります。
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。


936 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:47:27 Ee6lonuA0
日曜日ギリギリ……
遅くなりましたが、続き分を投下します


937 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:48:36 Ee6lonuA0

「急かすようで申し訳ないが、ご用向きの方をお聞かせ願おう」
「はい。定期的に行っている食料等の生活必需品の搬入作業についてです。
 昨今の情勢悪化に伴い、一部の企業やスタッフに不安が広がっています。
 物価の向上……ですめばまだいい方でしょう。最悪食糧難、それに伴う暴動に繋がりかねません。
 弊社の安全、ひいてはこの街の治安維持のために本社およびヘリポート付近への部隊駐屯を要請します」

陸の孤島ともいえるこの街で食料などは貴重な、というと少々語弊があるが重要なものだ。
それにまで危機が及べば、限られたリソースの奪い合いが発生しかねない。
渡航者が減少し、街を出ようとするものも出てきては街の機能が低下する。
その防止を願い出に来た、というわけだ。

「なるほど。確かにそれは重要な案件だ。
 しかしご存知の通り、我々はその事件の解決に追われていて人員に余裕がない」
「一刻も早い解決を願ってはいます。
 ですが、現実的に今日明日の早期解決は難しいのではないでしょうか。
 一時不安を取り除ければ、街が暴動の波に呑まれないよう動いていただければ十分です。
 少しの期間だけでも、弊社の近くに……軍を。すぐに通常の業務に戻っていただいても結構ですので」

短期間でもホームグラウンド近くに軍が駐屯すれば。
騒がれることなく『子』を増やし、軍内政庁内に手を伸ばせる。
ただの『子』が軍人が襲撃したなら返り討ちにされる危険も高く、傷痕から通り魔にやられたとばれやすい。
しかしアヌビスを使うか、自身で直接斬れば、ばれ難いところに傷を作ることも容易く、ましてやNPC程度に敗れることはない。
より噂を洗いやすく、操作しやすい位置につける。
そう企んでこの会談をセッティングした。
目の前の男を支配下に置くのも一考したが……

「ふむ。よしわかりました。護衛のための部隊派遣、請け負いましょう」
「ありがとうございます。噂通り、決断の早いお方ですね」

予想以上に速い決断に表面的には無表情でありながら驚く。
気さくな振る舞いをするが、意外と強硬な人物という評は間違っていないようだ。

「何度も言うが仕事が立て込んでいるので、あまり一つの物事に時間を割けんのだよ。
 雑にはしないよう老体に鞭を打ってはいるが。
 特に今はそのようなことが些事にしか思えないような事象があって、な!」

銀色の光が奔った。
それはラースが抜き放った長剣の一閃。
軌跡はまっすぐに鯨木の首元へ。
常人なら首と胴が泣き別れをするところだが、鯨木は常人どころか人ですらない。
その身に宿った妖刀が宿主を守るべく動き、右肩から刃をはやして剣を受け止め、左肩から刃を伸ばして反撃する。
受け止められた刃を即座に引き、新たに抜き放った剣も用いて鯨木の反撃をいなし、躱し、弾く。
それでも完全にとはいかず、衣類などには傷がつくが。

「これは、どういうつもりでしょうか?ブラッドレイ司令」
「何もなければ止めるつもりだったのだがね。残念ながら君も無辜の民ではなかったようだ、鯨木くん」

罪歌を鋼線状にして構え、赤く染まった鯨木の目と、躱しきれず眼帯を切り落とされたことで露になったラースの最強の眼が交錯する。
互いに確かな戦意を宿して。


938 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:49:18 Ee6lonuA0

「それでなぜ私に攻撃を?」
「軍人だよ、私は。それも人生の大半を戦場に身を置いてきた。
 人倫を顧みない錬金術師…いや魔術師の事にも詳しい。
 彼らと人を殺す兵士に纏わりついた血の匂いは違う。
 君は自らの手を汚している。それも魔術実験などとは別の形でね。
 質問ではなく、尋問になるが。その手袋を外してもらおうか?」

それを聞いても武器を構え続ける鯨木の様子に、間違いなく聖杯戦争の関係者だと確信する。
正直なところ、一対一で対峙するときは片っ端から同じように詰問する気でいたので当たりを引いたのは半ば偶然でしかない。

「鯨木かさね。遠野や旧き斉木に並ぶ魔の一門の出であり、現在は特級住宅街在住。
 商業地区最大の商社、ユグドラシル・コーポレーション支社長秘書。相違ないかね?」
「なるほど。ここではそのように設定されているのですね。
 住所と職はともかく、自身の紛い物のルーツをわざわざ辿るようなことはしていませんでした」
「本人のようだな。君もまた通り魔の被害者、というわけではなさそうだ」

ならば気遣う必要もない。
部下の横槍は無粋。
サーヴァントの介入だけナンバーズに見張らせ。
この場で斬って捨てる。

瞬間、鯨木が右手から鋼線を巧みに放つ。
潜り抜けるようにそれを回避し、左手の剣でいなしつつ、胴体を右手の剣で斬りつける。
即座に左腕から刃が放たれ、その迎撃に回る。
鍔迫り合いでの力比べは概ね五分。
右手の鋼線を引こうとした瞬間に、ラースの方から拮抗を崩し、体を半回転させて逆袈裟を狙う。
しかし即座に鯨木は刃を高速で伸ばし、床よ天井に突き立て身を浮かせることでそれを躱す。
宙に浮くことでラースから離れ、鋼線で牽制しながら距離を取ろうとする。
天井ギリギリ、剣の届く距離ではない。
ラースはそれに向けて応接用のデスクを軽く蹴り上げる。
そのデスクで攻撃かと思い、鋼線でばらんにしようとするが。
ラースは即座にデスクを追って跳躍。
刹那の足場にして鯨木に斬りかかった。
一瞬驚くが、即座に距離をとる鯨木。
そして宙に取り残されたラースに向けて四方八方から鋼線で追撃する。
これもまた常人には躱しようのない、死角皆無の斬撃。

最強の眼はそれを見切る。
両の手の刃で弾き飛ばし。
空中で身をひねって避け。
背後からの斬撃を刃に映して感知し。
高速で駆動する鋼線の峰を見切り、足場にして。

剣山刀樹を踏破し、憤怒のラースは無傷で着地する。

「本当に、驚かされますね」
「いや君もなかなか。サーヴァントを喚ぶ無粋もしないのは個人的に楽しめてよい」

一瞬好人物そうな笑みを浮かべ、すぐに冷徹な戦士の顔に戻る。
両の刃を構え、即座に再戦の構えを見せる。
しかしそれに対峙する鯨木は刃を収め――といっても罪歌はすぐにぬけるものでありあまり意味のあることではないが――言葉を紡ぐ。

「協力関係を築けませんか?私たちの能力の証明は、ここまでの闘争にこれもあれば十分でしょう」

左手の皮手袋を外し、其処に刻まれた四画の令呪を晒す。

「私個人の実力は無論のこと、実績と敵を捕捉する術もあることの証明でもあります」
「ふむ。それは君の世界で言うところの命乞いかね?」

ラースは言葉で応じつつも、戦意を収めることはしない。

「命乞いがお望みとあらば。
 私は噂の切り裂き魔です。街の住人の何人かを支配下に置いており、それはわが社の社員も例外ではありません。
 私が無事に帰還しなかった場合、彼らはあなたに確実に害をもたらします。
 物流は滞り、あなたが聖杯戦争の関係者であると流布し、無辜の民を煽り立てて退陣要求やストライキ、ボイコットなど、先ほどお話しした懸念を現実のものとします。
 あなたもそれは望ましくはないでしょう?」
「なるほど。空恐ろしいことだ。もし、現実に起こればの話だが」

些細な地位に固執するつもりはないが、あるに越したことはない。
闘争を望んではいるが、みだりに自らがマスターであると広まればアサシンによる暗殺の危機に瀕する。
だが、鯨木の発言が真実でなければ杞憂に過ぎない。

「君が切り裂き魔という証拠がどこにある?」
「ええ……丁度見えたところです」


939 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:49:40 Ee6lonuA0

がちゃ、とノックもなしに応接室の扉が開き、一人の女性がそこから姿を見せる。

「君は……」

リザ・ホークアイ中尉。
銃士隊に所属する優秀な軍人。
……そしてかつて最も警戒した部下の腹心に、似通っているだけの赤の他人。
唯一といってもいい、キング・ブラッドレイが択んで身近に置いたものでもあり、多少の思うところはある。
その女性が、なんと抜き身の刀を持って入室し。
赤く目を染め。
投擲。

投げるに適さないであろう長剣を、鯨木かさねに向けて投げる……否、投げ渡す。
尋常ならざる速度で飛来したそれを鯨木は受け取り、構えると。
踏み込む。

先ほどまでと比べ物にならない速度でラースに向けてその刀を振るう。
躱しきれないと判断し、両手の刃を交錯させて受け止めようとするが、刀はそこに何もなかったかのようにすり抜ける。
それに動揺し生じた一瞬の隙を突き、罪歌の鋼線と右手に持った刀でラースの動きを封じる。

「改めてうかがいます。協力関係を結べませんか?」

首元に刃を突き付け、鋼線で縛り再度の恫喝(ようせい)。
リザ・ホークアイと同じく赤い鯨木の眼と、ウロボロスの紋様が浮かんだラースの眼が合う。
そこへさらに乱入者。
DWN.(ドクターワイリーナンバー)048、ヤマトマン。
鎧を纏ったロボットがその手の槍で鯨木を穿たんと迫る。
その突撃を二発の銃声が阻む。
赤く目を染めたリザの早撃ち。
神秘などない銃撃だが、回転する銃弾に込められた『飛』の概念を警戒したか槍でもって打ち払い、さらにその銃弾を鯨木とリザにむけて弾く神業を見せるヤマトマン。
リザの足を貫くことには成功するが、鯨木は一歩も動くことなく罪歌の鋼線でその銃弾を阻む。
さらにその鋼線をさらに伸ばしてヤマトマンを磔に。

「サーヴァント…ではありませんね。こうした駒を行使する、後方指示型のサーヴァントを従えている、と」
「君も似たタイプらしいな。NPCを操るのと、マスターの身体能力の向上が戦術の中心か」

鯨木はヤマトマンを見て。
ラースはリザと、鯨木の突如向上した身体能力を見て。
互いの手の内を、手の打ちどころを探る。
そしてほぼ同時に扉の方を眺める。

「銃声が響いた以上、あまり時間をとりたくありません。
 条件付きになりますが、聖杯をお譲りしてもいい、というならいかがでしょう?」
「それを信用しろというのかね?君も聖杯を求めてきたのではないのか?」
「私個人が用いるためでなく、商品として用いるためにある種の仲買人(ブローカー)として来たのです。
 私が聖杯を手にしたのちに顧客にお売りする予定になっています。
 ……しかし、契約はそこまで。例えばその後、不埒者に強奪されたとしてもわが社で責任を負う義務はありません」

化け物や危険物の取引では依頼主の安全の確保も仕事のうちだ。
しかし、仕事のないオフのときまで護衛をする義理はあっても義務はない。仕事の上でも自身の安全は確保する。
いわゆる正義の味方に裁かれることになっても仕方のない悪人である自覚はあるが、だからといって自らの死や危機を受け入れるほど悟ってはいないし、それを遠ざけるための労力を惜しむことはない。

「ですので、もしあなたが聖杯に託す願い次第では、いったん取引が完了したのちになりますが、改めてお譲りしてもかまいません。
 顧客への誠意を欠く形にはなりますが、私がこの地で確実に生き残るのを優先したいと考えています。
 お受けいただけないでしょうか?」

陰に潜むアルバート・W・ワイリーはこの話を受諾すべきと考えた。
刃に囚われた現状が不利であるのは言わずもがな、利に動くこの女の方針は分りやすい。
そう念話しようとするが

「気に入らんな」

その前に憤怒に満ちた声が響いた。

「この地で私が最も求めるのは、己を曝け出すことと言える。
 私の生において自由など存在しなかった。自ら選んだものは妻くらいのものだよ。
 名もなき戦士として、名誉も情け容赦も何もないただ純粋な闘争を求めてここにいる。諦めを踏破した、人間との苛烈な闘争を。
 聖杯に興味はない。そして己のない貴様にもだ、女」

その言葉と共に、磔にされたヤマトマンの持つ槍の穂先が突如射出される。
さすがにそれは予期していなかったか、混血のずば抜けた身体能力で回避は成功させるが、代償にラースを自由の身としてしまう。

「さあ、再開と行こうか。貴様個人に興味はないが、その首級は討ち取り甲斐がある」

改めて二刀を構えるラース。
速度の上昇も初めからそうだとわかっていれば何ということはない。
受け止められない刃なら躱せばいい。
次こそ、御首貰い受ける。
すわ開戦か、という瞬間


940 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:50:06 Ee6lonuA0

「やめい、やめい!」

一人の老人と多数の影が間に割り込む。
ワイリーとそれを守るように立つジェミニマンだ。

「ラース、貴様ワシとの約定を忘れたか!?
 聖杯をとるために最善を尽くし、協力することを!」
「私の目的はあくまで闘争にある。この女は同盟相手としては下の下、倒すべき敵としては上物だ。
 協力というならば、それを邪魔だてしているのはどちらだ?」
「むむむむ……」

にらみ合う老人二人。
鯨木は退路を探しつつ、それを静観する。
一分に満たない僅かなものだが、野望に燃えるワイリーの瞳にラースが折れた。

「…一時の休戦協定だ。参加者の数が半分になるまで手を出すことはない。それ以上は望むな」
「承りました。参加者の数が半分に減るまで、またそちらからの攻撃がない限り我々の陣営があなたとそのサーヴァントに攻撃を仕掛けることはありません。
 もしも何かありましたら、彼女を通じてお伝えします」

部屋の片隅、銃を下したリザを指して言う。

「……敵マスターが私と渡り合える実力者ならば、相手にすることもあるだろう。そうした情報なら歓迎する。
 さて、今日はもういいかね?表向きの用事も、裏側の用事も」

言外に厄介ごとになる前に帰れと告げる。
が、一足遅かった。

「司令、先ほどの銃声は一体……!?」

部屋に駆け込んできた一人の衛士。
それが部屋の惨状を見て唖然とする。
刀を抜き放った司令キング・ブラッドレイ。
同じく刀を持つ来訪者鯨木かさね。
負傷した銃士隊員。
咄嗟にワイリーは霊体化、ジェミニマンとヤマトマンはホログラムを利用して姿を消したが、それでも多くの傷痕などが散見する惨状。
状況を把握しきる前に武装を構え、ひとまず鯨木かさねを取り押さえようとする。

「武器を下して投降してください、ミス鯨木。取調室まで…」
「いや、その必要はない」

ブラッドレイの毅然とした言葉に顔を向けると、彼は抜き放った刀を銃士隊員、リザ・ホークアイに向けた。
そしてその場の誰もが反応するより早く、胸へと剣を突き立てる。

「あ……」

短い断末魔が大量の血と共に口からこぼれ、リザ・ホークアイはこと切れた。
それを冷たい目で見つめるブラッドレイと鯨木、呆然とするしかない衛士。

「彼女が何を思ったか、私たちに向け銃を放った。我々はそれを迎撃しようとしただけにすぎん。
 鯨木くんには何の非もない」
「え、あ……いえ、しかし無断で武器を持つのは――」
「問題はありません。そうでしょう?」

半ばパニックになりながらも職務を遂行しようとする衛士。
しかしその忠誠は鯨木の声、そして突如覚えた発生した太ももの僅かな痛みと同時に響いた女の声により塗りつぶされる。

「……ああ、はい。特に問題はありませんね」

目を赤くし、落ち着いた様子でそう答える。

「ええ。何も問題はありません。皆さんにもそうお伝えください。
 それでは失礼しました、ブラッドレイ司令。お話した件、どうぞよろしくお願いします」
「おお、委細承知したよ鯨木くん」

ぺこり、とビジネスマンの規範のようなお辞儀をして去る鯨木。
にこり、と好々爺の典型のような笑みで見送るラース。
見送りを終え、二人きりになった部屋に呼び出し音のようなものが響いた。

「あ、すいません。失礼しても……?」

衛兵が懐から通信用の礼装を取り出す。
宝石に蓄えた魔力を利用して音声を送受信する、魔術師式の無線機。
鳴り響くそれと、ブラッドレイの首肯を視界に収めると通信を始める。
礼装越しの声はラースには届かないが、どうやら部下からの報告らしいそれに戸惑っているのは分かる。

「何?でっかいロボットが爆発と共に現れて暴れている?そんな馬鹿な話があるか!?仕事に戻れ!」

はあ、とため息をつきながら通信を切る。
それをじっと見るブラッドレイの視線と、刀に付着した血を拭う仕草、そして視界の隅に入ったリザの死体にびくりと恐れるような反応をし、おそるおそるといった様子で話しかける。


941 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:50:47 Ee6lonuA0

「あのう、如何しましょう?」
「ホークアイ中尉が騒動を起こしたのは機密とする。何者か……噂の通り魔に操られていた可能性が高いからだ。
 軍内に操られているものがいる可能性があるなど吹聴されては士気に関わる。よって私と君、そして一部の者のみに留める。他言無用だ、いいな?」

ギロリ、と未だに露になったままの両の眼で睨む。
それに再び怯えた反応。

「は、はい!ご命令とあらば!」
「よろしい。銃士隊や執行者含む各部門の責任者に声をかけておいてくれ。
 上層部にはこの件を周知しておく必要があるし、鯨木嬢からの要請で部隊を割く必要もあるのでね。
 死体は通り魔との闘争による殉職として処理しておく」

命令を聞き終えると雑な敬礼をして逃げるように部屋を出て行った。
それを確かめると眉をしかめてワイリーが現れ、自由になったヤマトマンとジェミニマンは事態の収拾にかかる。

「コイツめ、ワシ以外の命令を優先しよって」

げしり、とヤマトマンに蹴りを入れるワイリー。

「まあそう責めてやるな。マスターの消失はサーヴァントの危機でもある。
 お主を守る意味でも間違った判断ではあるまい」
「もとはと言えば貴様が無茶しおるからに。あげくあんな半端な距離の盟を結んで」

苛立ちをぶつけるワイリーをどことなくまぶしそうに見るラース。

「誰かを裏切る前提で結んだ盟に信など置けんよ。せめてお主の野望に敬意を払って、だ」
「ふん。スポンサーから金だけ出させる手段は科学者ならしょっちゅう探しとる。
 その程度のことでいちいち騒ぐようで世界征服など言えるか。
 じゃが、あの剣だか礼装は敵に回したくも、傍に置いておきたくもないのは分からんでもないが」

NPCが部屋に入ってきたときはどうするかと思ったが、僅かに傷をつけた瞬間にはあの小娘と同様に操って見せた。
暴動を抑える意味で部隊を派遣してくれ、と言ってきたが、むしろ鯨木の方がその気になれば暴動を引き起こすことも可能であろう。

「万一にも私やお主が操られれば厄介などというものではない。
 それを実行しなかった以上、何らかの制約があるとみてしかるべきだが」
「じゃな。どうやら四六時中操っているわけでもないようだしの」

衛兵の振る舞いを観察すると、鯨木かさねの手駒としては適さない振る舞いが見て取れた。
奇怪な事象の報告を戯言としたのも、部下を手打ちにした上官への怯えも演技ではない。
考えてもみれば斬りつけた者を次々と操っているのを常にコントロールしていてはリソースが持たない。
最低限命令に従うようにしてある程度は独自の意思で動かしておいた方がやりやすいだろう。
少なくとも、一方的な鯨木の部下としてだけでなく、自らの部下としても扱うことはできると考えた。


942 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:51:07 Ee6lonuA0

「ホークアイ中尉を斬って捨てた時点で穏便なものではないと奴も分かっていよう。
 大半のマスターを発見するか、街の機能が停止した場合この地位に旨味はなくなる。
 そうなればあの女も地位も用済みとなろう。どちらも存分に使いつぶす。異存はないな?」
「当面の方針は変わらんか。部下を利用し、マスターを探す。
 窓口にあの小娘が加わった、程度に思っとくべきかの。
 しかしいずれ拗れる前提なら出し抜く用意もせねば。奴の方が手の内は伏せておる」

ラースの戦闘能力に加え、ヤマトマンにジェミニマン、ワイリーの姿とステータスがばれている。
向こうの手札は肉体から様々な刃物を飛び出させることと、斬りつけた者を操ること、身体能力の向上。
豊富とは言えない情報に、さらにそれが鯨木の能力なのか、武器の能力なのか、サーヴァントの力なのかも不明。
敵サーヴァントは影も形も見せていない。

「サーヴァントは感知できなかったのか?」
「影も形も気配もない。お主の言うように後ろからマスターの強化や人を操ることに長けたタイプじゃろう。
 となると、キャスターかワシのようなエクストラクラス……」
「奴の令呪は四画あった。三騎士でもなく稼げるスコアか?」
「どこぞの魔術師や錬金術師も言っとるがの、当人が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい。
 ワシならばそれはナンバーズ、あるいはワシが強化した剣を振るうお主になる。
 あの小娘、そういう視点では当たりの部類じゃ。ナンバーズはおろか、お主まで退けるとは。
 あれならサーヴァントの四騎や五騎は倒してもおかしくないわい」

忌々し気に鼻を鳴らし、鋼線と剣を振るう鯨木を回想する。

「…ホークアイ中尉から剣を受け取った瞬間、速度膂力共に大幅に向上した。
 さらにあの剣、霊体であるかのように受け止めることができなかった」
「斬りつけた者を操る礼装といい、鍵は剣か。
 ワシと同じクリエイターだとするなら刀工か?」
「セイバーの宝具を借りたという可能性は?」
「できなくはないが、簡単ではない。両者の同意と、その宝具の使用に特別な条件がないことが必須となる。
 もしくはその宝具の使用条件を満たすことかの。簒奪や継承、譲渡の逸話がある宝具なら例外となろうが……
 そもそもセイバーならサーヴァントが闘った方が強いじゃろ。それをするメリットが見当たらん」
「何らかの原因でサーヴァントが前線に立てない。例えば予選中の負傷などで」
「んー……否定はできんが」

いずれ敵となるもの、その手の内を探ろうとするが、やはり情報が足りない。
半数になるまでをタイムリミットとしたのは吉と出るか凶と出るか。

「ひとまず要請されたように部隊のいくつかを駐屯させ、それに乗じて鯨木かさねについて探りを入れる」
「うむ。でっかいロボットというのも気になるが」
「いずれ正式に報告もあるだろう。あるいは鯨木かさねの方から何か告げてくるかもしれん。
 ひとまずは部隊編成と殉職した部下の後始末。表向きの仕事を行わねば」


943 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:51:44 Ee6lonuA0

◇  ◇  ◇

駆けまわる隊員の流れに逆行し、受付で退出の手続きを終えて帰路につく鯨木。
パニック二歩手前といった騒ぎのさなかをひっそりと進んだためか帯刀した運転手の男には誰も声をかけない。
もっとも何か言おうとしたならば即座に『子』にしてしまっただろうが。

『ずいぶん派手になっちまったなァ〜、おい。もうちょっと穏便にやるんじゃなかったのか?」
『完全に予定外だったのは二つ。
 キング・ブラッドレイが私を聖杯戦争の関係者と見抜き、即座に攻撃を仕掛ける判胆力と胆力を有していたこと。
 何より罪歌を全力で行使しても傷一つつけることのできない実力者であったこと。
 マスターなのはともかく、その二つは確実に騒ぎを大きくすることに直結してしまいました』

無表情だが、内心相当に焦っていた。
かろうじて休戦には持ち込むことはできたが、あのまま続けていればどうなったか。
キング・ブラッドレイの実力は予選でぶつかったセイバーにも匹敵したかもしれない。
身体能力ではおおむね互角、得物の質では明らかにこちらが勝り、技能では圧倒的に劣っていた。
アヌビスを手にしてどうにか抑え込めたが、それも透過能力を利用した不意打ちでだ。
ずば抜けた回避力を有するあの男ともう一度向かい合えば、アヌビスの学習力をも上回るのではないかという凄みを感じた。

『なんであそこで斬って子にしなかったんだよ、ンな面倒なら』
『そう出来ればよかったのですが。キング・ブラッドレイもまた私や葛葉紘汰と同じ、人ならざる何かが混ざっています。
 ここに来る前に会ったニューヨークのカモッラと近似する気配……恐らくですが錬金術による肉体改造。
 錬金術の究極、賢者の石から生まれる生命の水『不死の酒』の噂を聞いたことがあります。
 それとは限りませんが、肉体に人外の何かを取り込んで、その中で個を保てる者は罪歌に支配されない可能性が極めて高い。
 ましてや彼のような剣士が罪歌の母となってしまった場合、それは極めて恐ろしいことになるでしょう』
『意外と勝手が悪いね、母さん(マスター)の剣も』

罪歌は強い人間を愛するがゆえに、人外にもある程度鼻が利く。
キング・ブラッドレイに向かい合い、それが強大な存在であることに喜び、人ならざる匂いが混ざっているのに落胆するような罪歌の気配を感じた。
実際に刃を交え、その在り方に触れて、子にするのは難しいだろうと判断するざるを得ない。

「会社に戻るってことでいいのかな」

停めてあった車にたどり着き、アヌビスの操る男が運転席に、鯨木は後部座席に腰を下ろして二人きりになり言葉を口に出し始める。

「そうですね。ひとまず商業地区へ」
「はいよ」

罪歌の子がアヌビスを帯刀し、間接的に騎乗スキルを行使することで運転する。
もしかすると加減すれば轢き逃げから罪歌の子を増やすこともできるかな、などとふざけた考えも巡らせつつ。


944 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:52:02 Ee6lonuA0

「そういえばよー、実際できるのか?母さん(マスター)が死んだ後に子に暴動を起こさせるなんて」
「いえ、あれは完全にブラフです。もちろん社長秘書としての私がいなくなった程度の影響はあるでしょうが。
 母が子の制御を失った場合、子はその時点で完全に解き放たれます。
 現在大半の子は噂の拡散に主に動いているはずですが、私が罪歌を手放すか、絶命した場合彼らは自分の日常に戻ることになるでしょう」
「いわゆる全員が独立した母になるってことか?」
「いえ。子であった記憶のない者が母になることはありません。罪歌のことを認識しなければ行使できるはずがない。
 基本的に罪歌に斬られた子の人格自体はそう変わらず、平時は自身の判断で他の子や母のために動く。
 せいぜい子を増やすために刃物を持とうとするくらいしか変化はありません」
「なら軍内部におれたちの根が回ってもあのブラッドレイってのは気付けない?」
「彼ほどの観察力となると断言はしかねますね。子の生活サイクルに大きな変化はないといっても皆無ではない。
 罪歌が活発化すればそれを子は何となくですが感じ取り、強者の気配には惹かれる。
 母(わたし)の命を直接にしろ間接にしろ認識すれば変化は如実に表れる。
 行政府内で子を増やすのはあまり得策ではないでしょう」

そこで会話を続けようとするアヌビスを手で制し、車載用の無線機ならぬ通信礼装で連絡を始める。

「はい、こちらユグドラシル・コーポレーション。パンツのゴムからライフルの弾丸、世界樹の種から伝承結晶まで幅広く手掛けております」
「鯨木です」
「ああ、これは……母さん」

コール先は自らが勤める商社。
ある種魔術都市ユグドラシルの生命線であり、当然重要部署は罪歌の子が占めている。

「ブラッドレイ司令との会談を終えました。恐らく要請通りにいくつかの部隊を派遣してくださるでしょう」

むこうがこちらに探りを入れる意味でも、と呟き

「部隊にブラッドレイ司令がいない時に、気づかれないよう少しづつ軍内に子(きょうりょくしゃ)を増やしておいてください。
 もし司令が率いている場合には余計な手出しをせず、職務に忠実に。社内秘はキチンと守ってくださいね?」
「はい。承りました」
「よろしくお願いします。私は外で昼食を済ませてから社に戻るので、昼過ぎに到着予定とホワイトボードに記入しておいてください」

では、と最後に口にして通信を切る。

「重役出勤だねぇ」
「重役ですから」

笑いながら軽口を飛ばすアヌビスをあしらい、自身の方針を練る。
ブラッドレイとの関係は盟とは言ったが、戦闘開始までの猶予期間程度の意味しかないのは向こうも承知の上だろう。
いずれは自身も、サーヴァントも、手駒もフルに活用した戦争になる。
その準備に自分も動かねば。

(容易く負けるつもりは無論ありませんが、あの男は強い)

戦闘能力は勿論、在り方が。



――自ら選んだものなど妻くらいのものだよ――


――名もなき戦士としてただ純粋な闘争を求めてここにいる――



「……セイバー。昼食は例の、『子』が経営する食事処へ」
「あの葛葉ってやつを雇ったところか?了解した」

もう一人。
自分の知る人外がいるであろう地へと、ハンドルを切らせた。
正午になる前には着けるだろうか。


945 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:53:18 Ee6lonuA0

【E-2/一般住宅街/一日目 午前】

【シノン(朝田詩乃)@ソードアート・オンライン】
[状態]罪歌の子、精神ダメージ(微小)、左腕に裂傷(小)
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]ウルティマラティオ・へカートII(7/7)、H&K MP7A1(40/40)、各種予備弾丸
[所持金]普通(一人暮らしを維持できる程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、トラウマを克服する
0.罪歌の子として、罪歌および鯨木かさねの声に従う(無自覚)
1.特級住宅街など騒ぎの中心を避け、北東の塔(ダ―イン)へ向かう
2.魔術師の魔力確保手段を調べ、実践する
3.銃のトラウマを克服し、戦えるようにする
[備考]
※罪歌の子に斬られ、罪歌の子となりました。
 ただし説明を受ける前に、相手を殺してしまったため、自分に何が起きたのかを理解できていません。
→完全に子となり、現在罪歌の声は聞こえていません。それに伴い平常心を取り戻しています。
 ただし母による命令や、強者が近くにいるなどの要因で再び罪歌が騒ぎ出すことはあります。
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。


【アーチャー(シエル・アランソン)@GOD EATER 2】
[状態]健康
[装備]神機
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守って戦う
1.魔術師の魔力確保手段を調べ、実践する
2.シノンがトラウマを解消する方法を探す
3.異変が起きたシノンへの心配・疑念と、それを庇いきれなかった自分への自責
[備考]
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。


【G-8・行政地区・軍司令部/1日目 午前】

【憤怒のラース(キング・ブラッドレイ)@鋼の錬金術師】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]刀×4
[道具]なし
[所持金]裕福
[思考・状況]
基本行動方針:ホムンクルスとして、人間と心行くまで戦う
1.検問の結果や部下からの報告、あるいは鯨木からの情報提供を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る。直接戦うに足る相手であると分かれば、自ら出向く。
3.エアポートや商社に部隊を駐屯、あるいは増加し、鯨木かさねについて探る(特にサーヴァントらしき者がいないか)

[備考]
※G-4にある豪邸に暮らしています
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました
※鯨木かさねと同盟を結びました。内容は情報の一部共有と、参加者の数が半減するまでの停戦。
 ただし鯨木を闘うに足る敵として認識しており、期限前でも準備が整えば攻撃を仕掛けるつもりでいます。


【クリエイター(アルバート・W・ワイリー)@ロックマンシリーズ】
[状態]魔力消費1割弱
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:世界征服のために聖杯を狙う
1.検問の結果や部下からの報告、あるいは鯨木からの情報提供を待つ
2.マスターが発見された場合は、ナンバーズを派兵して様子を見る
3.マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦闘能力に興味
[備考]
※マリア・カデンツァヴナ・イヴがマスターであると知りました


946 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:53:58 Ee6lonuA0

【G-8・行政地区・軍司令部近く/1日目 午前】

【鯨木かさね@デュラララ!!】
[状態] 健康
[令呪] 残り四画
[装備] 罪歌
[道具] 仕事道具
[所持金] 裕福
[思考・状況]
基本行動方針:商品として聖杯を確保する。
0.葛葉紘汰を雇った店で昼食をとる。
1.罪歌の『子』によって噂を広める。
2.噂を利用しやすい政庁内や軍内に『子』を作りたい。ブラッドレイの目につくところでは難しいだろうから、目の届かないところで。
3.噂に反応する主従を探し、誘導や撃破など対応する。

[備考]
※外部と物資をやり取りする商社に勤めています。多少なら政庁にも顔が利きます。
※礼装を持った通り魔の噂を聞きました。自分たちの事であり、ハンデとして課された、あるいはランダムな選出の結果主催側に流されたものと考えています。
※謎の戦闘音の噂を聞きました。自分たち同様の理由か、あるいは何らかの違反者と考えています。
 ラ・ヴァリエールの強者(カリーヌ)の事と予想していましたが、NPCだったことで他にいると考えています。
※ラ・ヴァリエール邸のNPCを『子』にしました。迎撃、および敗色濃厚になった場合の設備破壊を命じています。
※罪歌の『子』を通じて三人の強者をマークしています。一人は鎧の戦士。
 明け方までにそこを殺人鬼ハリウッドを名乗る『子』が襲撃します。NPCか否かも含めて後続の方に詳細はお任せします。
→忌夢&呀(鎧の戦士)、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、シノンを襲撃しました。『子』が帰還していないことも把握しています。
※葛葉紘汰が人外であること、相応の強者であることを罪歌によって感知。興味を抱いています。
 今のところ『子』にしてはいませんが、必要なら戸惑うことはないでしょう。
※キング・ブラッドレイ(憤怒のラース)陣営と同盟を結びました。内容は情報の一部共有と、参加者の数が半減するまでの停戦。
 ただし一時的なものにすぎず、準備が整えば即座に戦争になると予期しています。
 また彼が錬金術にまつわる人外であること、クリエイター(ワイリー)のステータス、ヤマトマンとジェミニマンのことを認識しています。



【セイバー(アヌビス神)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 健康
[装備] NPCの男性
[道具] 『錬金』した剣数本(子に持たせている)
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従い、敵を斬る。
0. マスターに従い、ひとまず待機。
1. 敵は見つけ次第斬りたい。
[備考]
※予選で倒したサーヴァントはセイバー、バーサーカー、アサシン、詳細不明の四騎。
 それに伴いステータス、技量ともに大幅に上昇しています。
※『錬金』を見切りました。魔術師の肉体を行使すれば単純な剣程度なら作れます。






[全体備考]
※銃士隊員リザ・ホークアイ中尉(殉職のため少佐に二階級特進?)が通り魔に殺されたと軍内には通知されます。
 通り魔の噂の一つとして話題に上るかもしれません。
※ヘリポート及び物流の関連施設の防衛がラースの指示で一部強化されます。強盗などは難しくなるでしょう。
 しかしそれに伴い他の施設の防衛や、調査の手が薄くなるかもしれません。


947 : 恋は盲目、愛は鷹の眼 ◆yy7mpGr1KA :2016/02/21(日) 23:55:29 Ee6lonuA0
以上で投下終了となります。
指摘等あればお願いします。
このたびはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
今後このようなことがないよう精進してまいります。


948 : ◆nig7QPL25k :2016/02/24(水) 22:26:40 DPt61RwQ0
投下ありがとうございます!
そうかこういうオチになったか……
決裂の危険性こそありますが、軍隊をこうもあからさまに利用しようとしてくるとは
一番ハチャメチャな人物っぽいワイリーが、大人の対応に回ろうとしているというのも面白かったです
しかし完全に『子』になってしまったシノンがどう転ぶかが怖いですね


949 : ◆nig7QPL25k :2016/02/27(土) 00:06:45 MDSnHRxk0
雅緋&ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを予約します


950 : ◆nig7QPL25k :2016/03/02(水) 22:55:51 eFodkX7E0
予約を破棄します


951 : ◆nig7QPL25k :2016/04/04(月) 22:52:00 ud87DAqY0
拙作「出撃! 偉大な勇者」をWiki収録するに当たり
立花響およびスバル・ナカジマの状態表に、以下の記述を追加しました
ご確認ください

※高町なのはを殺害した犯人(=忌夢および呀)の、外見特徴を把握しました


952 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/09(土) 04:13:27 awDzX8hQ0
書き込むのは初めてですが
葛葉紘汰&セイバー、忌夢&バーサーカー
で予約します。


953 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:23:21 lWr0Hfgo0
紘汰は、中学校へと足を急がせていた。
サガラの言葉から出た「イレギュラー」、月の脳にこびりついたバグ。
ムーンセルは、それを取り除こうと、英霊に関するデータを抹消した。
紘汰は、かつて迷い込んだ武神世界にいた武神鎧武を思い出した。
14の武神ライダーの前に現れた、将を持たぬ謎の武神。
そのイレギュラーが、戦極時代における武神鎧武だとしたら。
コウガネの時の様に、多くの参加者に被害が及ぶ危険性がある。
もしそれが本当なら、何としてもそのサーヴァントを見つけなければならない。

そして分かり合うか、倒すかにする。

そう考えながら、紘汰は足を急がせていた。



それから時間が過ぎ、紘汰とセイバーは、廃工場が並んでいる廃れた区域を走っていた。

明らかに街から離れてしまってはいるが、学術地区にある中学校にはこちらが近いということで
今此処を走っている。電車やバス等の交通機関は、敵に見つかってしまうために使えない。
無論、ロックビークル、スイカアームズに至っては論外だ、其の上ローズアタッカーは
予選中に破損してしまった。なので、こうして走っている。



人っ子一人いないこの通りを、十分ほど走った頃だろうか。


何やら、人らしき影が目の前に近づいていた。

セイバーも、そこからおぞましいオーラ・・・いや、魔力を感じ取っていた。



◆  ◆  ◆

葛葉紘汰が学術地区へ急ぐ中、偶然か否か、忌夢もまた商業地区へと足を運んでいた。
多くの人が行き交うそこに行けば、サーヴァントが見つかる可能性が高いからだ。
通り魔がいるかは分からないが、それでも他の参加者が見つかることは
あるだろう。そんな事を考えながら、街中を走っていたその時。


<<マスター、サーヴァントの気配を感知した、此方に近づいて来るぞ>>

バーサーカーの、淡々とした、しかし何処か狂気を感じる声が響いた。

<<本当なのか?それは、何処から来ている>>

<<ああ、5時の方向から気配を感じられる>>

ホラーを狩ることを生業としてきた魔戒騎士の鎧たるバーサーカー。
故に、魔力探知はそれなりに出来る。

それを聞くと、忌夢は直ぐ様その方向へと駈け出した。




それから時間が過ぎ・・・忌夢もまた廃工場が並び立つ路上に立った。

<<来る・・・・来るぞ・・・・・此方側に近づいてきている!!>>

バーサーカーの機械的、されど悦びに満ち溢れた声が、忌夢の脳内に響き渡る。



「・・・来るか。」

其の直後、オレンジ色のジャケットに身を包んだ、自分に近いぐらいの年代らしき青年が、形相を変えて此方に
向かって走る姿が、忌夢からは視認できた。そしてそれを確認すると、忌夢は如意棒を取り出し、


「行け、バーサーカー」

自らの使い魔に、実体化を促した。

「了解した。」

マスターの命令が、血に飢えた黒狼の鎖を解き、狂戦士は姿をさらけ出した。


「来い、お前の相手は、ボクだ。」





◆  ◆  ◆


954 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:24:34 lWr0Hfgo0




長い如意棒を手に取った、セーラー服を着た女性と、彼女の前に立つ黒騎士を見て、紘汰は一瞬唖然とした顔を
しながらも、走り続けていた足を止めた。


「…サーヴァント!?」

…まさか、この人マスターなのか?
もしかして、こいつがイレギュラーなのか?


紘汰はそのように思考を巡らせる中、忌夢の脳内に声が響き渡る。

<<マスター、奴の近くにサーヴァントの強い気配が感じられる、戦わせろ>>

「…勝手にしろ」

忌夢がそう言った瞬間、バーサーカーは剣を引き抜き、紘汰に向かって斬りかかってきた。
バーサーカーのスピードは相当なものだ、紘汰が戦極ドライバーを巻く時間すら与えるかも
分からない。だが、紘汰には、戦極ドライバーよりも頼りにしている相棒がいた。

「行くぜ!セイバー!!」

「ああ、分かった!!」

紘汰の合図とともに、灰色の小さな竜が紘汰の前方に出現し、そして、


「ウォォォォォォォ!!」


その可愛らしい見た目にそぐわない様なけたたましい咆哮と、大きな光を発した。


「これは…?」

それを背後から見ていた忌夢は、その眩しさに目を覆いながらも、
光り輝く竜のサーヴァントに目を驚かせていた。
マスターは「セイバー」と呼んでいるのに剣を持たない、それも驚きだが…
まさか、奴の宝具か?

そう考えている中、輝きは終わりを告げ、光が発出していた場所には、真紅の竜が羽ばたいていた。

あの時と比べ、首は伸び、大きさは数倍以上になり、そして、翼と角が生えていた。

その角はまるで、それが彼の「剣」であるように見えた。

セイバー…ドルモンの第三進化形態「ドルグレモン」

イグドラシルの意志が生んだデクスドルグレモンとの戦いの中で進化した、新たな姿。




バーサーカーはセイバーの目前で動きを暫く止めていたが、すぐに、

「姿が変わろうと同じだ…この手で、斬り伏せる!!」

再び剣を構え直し、セイバーに剣幕を向ける。


バーサーカーは走りだし、飛び、剣をセイバーに向けて振りかざすが、

セイバーは即座にそれを躱す様にバーサーカーが来た方向と逆の向きに走りだし、
振り切ったかと思えば、その角をバーサーカーに向けて、全速で翔ぶ。

だが、やはりというかバーサーカーはそれを剣で受け止め、2体はお互いの刃を
力任せに押し合う。

抑止力のロイヤルナイツと、護りし者の道から外れた魔戒騎士は、今ここにしのぎを削り合う。


「セイバー!!…今助太刀するぜ!」


955 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:24:58 lWr0Hfgo0
それを傍で見ていた紘汰は、直ぐ様戦極ドライバーを腰に当てた。

両端から出た黄色いラインはベルトとなり、紘汰の腰に装着される。

そして、ポケットからオレンジのロックシードを取り出し、構え、叫ぶ。


「変身!!」

『オレンジ!』

紘汰の叫び声に反応するかの様に、スイッチを押したロックシードは開き、

上空に出現した丸いジッパーからは、巨大なオレンジが出現した。

「ふっ、はっ、だぁあ!」

紘汰はそれを上空に構え、ロックシードの向きを裏返し、戦極ドライバーに装填する。

『ロック・オン!』

すると、法螺貝の様なやかましい待機音が流れ行く。
だがそんな物の使用を、敵マスターが許すはずがない。

「させるかぁ!」

忌夢は、忍としての素早さで如意棒を紘汰に振りかざす。
「お前が相手か!」
だが紘汰はそう叫ぶと、上空に飛び上がり、後ろ向けに回転しながらもドライバーのカッターナイフを
落とし、見事に着地。

『ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!!』

ふざけたような名乗り音が流れた直後、上空に浮かび上がっていたオレンジは紘汰の頭上に被さり、
戦国時代の鎧に近い形に変形する。紘汰の身体もまた、紺碧のアンダースーツに包まれ、
鎧から出てきた頭には鎧武者の様な仮面が装着されていた。

忌夢はその時に出た余剰エネルギーに弾き飛ばされそうになったのを即時に避け、そしてその姿に驚く。

(まるで、ボク達の忍転身じゃないか…)



右手に取ったオレンジ型の日本刀を構え、叫ぶ。

「此処からは、俺のステージだ!!」

ならばと、忌夢もまた如意棒を構え、叫ぶ。

「忌夢、悪の誇りを舞い掲げる!!」

現代の武者と現代の忍びもまた、己の道を掲げ舞い散らんとする。




◆  ◆  ◆


956 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:25:22 lWr0Hfgo0





その頃、紘汰と忌夢の隣では、セイバーとバーサーカーが、未だに互いの刃をぶつけ合っていた。

セイバーは角を、バーサーカーは魔戒剣をぶつけ、互いに

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

力の押し合いは尚も続く。

押されたのは…バーサーカーの方だった。

「ぐはっ!」

首を上に押し上げたセイバーにより、バーサーカーは弾き飛ばされ真っ逆さまに落下、魔戒剣は弾き飛ばされた。
だが、血を求めんとするバーサーカーが、たかが剣を弾かれた程度で終わるはずがない。

「…」

バーサーカーは起き上がったと思えば即座に黒い鎌の様な得物を引き抜き、上空にいるセイバーに向かって再び
飛びかかる。
セイバーは直ぐ様避けようとするが、遅かった。
刃はセイバーの項に齧り付き、

「うぐっ!!」

セイバーが唸り声を上げる。
バーサーカーが手にとっているのは、「暗黒斬」
嘗て1000体のホラーを短時間で喰らった、正に底なしの口。
これで、セイバーの魔力はバーサーカーに喰われる…かと思われたが、

「何!?」

セイバーは息を荒げ身体をぶんぶんと振り回してはいるが、しかし精気を吸われている気配は全くしなかった。


彼の宝具「そこにあり、受け継がれる命(X抗体)」は、ウィルスからデジモン
を守ったワクチン。そしてこれは、陰我の塊となった暗黒騎士の呪いの攻撃にもまた、
通用する代物であった。


だが、それでも、相も変わらずセイバーはもがき続けることしか出来ない。
セイバーはまだ真の姿であるアルファモンとしての姿を開放してはいない。
ドルグレモンでは勝てなかったオメガモンを遥かに上回るその力でなら、
バーサーカーを倒せるかもしれない。だが、神霊としてのその力は
膨大な対価を要求する。いくら紘汰がオーバーロードとはいえ、
予選で持ちこたえるのは極めて難しい。紘汰が極アームズに変身して
魔力を供給すれば、「究極戦刃王竜剣」を引き抜いて尚あのような状態に
保てるほどには安定するが、それもまた切り札だ、今は使えない。

ならば、と。

「コウタ、一瞬だけだが持ちこたえてくれ!」

セイバーはそう叫ぶと、再び光輝く。

「うぅっ!?」

バーサーカーは若干動揺しながらも、光となったセイバーにしがみついていた。

光が消えた時、バーサーカーの暗黒斬が食いついていたのは、

巨大な騎士の肩だった。

これこそがアルファモン、伝承のみで語られる、ロイヤルナイツにおけるギャラハッドのごとき存在。

「フン!」

空白の騎士は、その凄まじい力で、バーサーカーを振り放す。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

バーサーカーは再び宙を舞い、廃工場の屋根に着地した。
アルファモンはその直後にドルグレモンの姿に戻り、視線をバーサーカーに向け直す。


957 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:25:56 lWr0Hfgo0
まだ、戦いは終わってはいない。




◆  ◆  ◆


「うぐっ!」

鎧武が、呻き声を上げ膝を付く。

アルファモンが喰らう魔力は、「狂化」を施した大英雄に匹敵する。
流石に「デジタライズ・オブ・ソウル」を撃たなかったとはいえ、それなりに
魔力は消費したとは言える。

忌夢は、この隙を見逃さなかった。

恐らく、生身ではあの鎧武者に敵うはずがない。
それは戦って分かった。
ならばと。

忌夢は巻物…秘伝忍法書を取り出し、空中に放り投げる。

「忍・転身!!」

詠唱とともに、秘伝忍法書は螺旋を忌夢の周りに描き、
彼女の姿はさながらドイツの軍人の様な姿に変わる。

「うおっ!アンタも変身出来んのか!?」

体勢を立て直した鎧武は、一瞬で服装を変えた忌夢の姿に仰天する。

「ボクをあまり馬鹿にしてもらっては困るな…!」

そう吐き捨てた忌夢は、先程とは比べ物にもならないスピードで
鎧武の目前に迫り、圧倒的な素早さとパワーで如意棒を
振り回し、鎧武に連続で攻撃を叩きつける。

「うっ!ぐほっ!ぐあああああああああ!!」

鎧武は回転しながら宙を舞い、地面に倒れる。

(アイツのパワー、さっきとは全然違う…)

仰向けになりながらも鎧武はそう考える。

カチドキ、ないし極なら、あのパワー相手にも何とかなるかもしれない。
だが、今は使えない事は、セイバーからも釘を刺されているし、
紘汰にもそれくらいの事なら分かる。
エナジーロックシードなら行けるか…いや、レモンでもあのパワーに対抗できるのか?
だったら、パワー重視の旧型ロックシードだ!!

紘汰の脳裏にそんな事が浮かんだ後、すかさずベルトのホルダーからロックシードを
取り出し、スイッチを押す。

『パイン!』

そして、オレンジとそれを付け替えると、再びカッターナイフを振り落とす。

『ロック・オン! ソイヤッ!』

ジッパーが再び開き、オレンジの鎧が消滅しパインの鎧が装着される。


『パインアームズ! 粉砕・デストロイ!』


「パインパインにしてやるぜぇ!」

またまた聞こえたやかましい音声とともに、鎧武が新たな姿を見せる。

そして鎧武は、パインの様なチェーンアレイを忌夢に向かって振り回す。
だが忌夢もまた負けじと如意棒を回転させ、それを弾き返す。


「なっ!」

紘汰が再び後ろへ位置をずらすと…忌夢が叫んだ。

「秘伝忍法!」

忌夢は回転させた如意棒に、触れただけで焦げてしまいそうな程の雷を、如意棒に収束させる。


秘伝忍法。現代の忍における必殺の技。


「ハァァァァァァ……!」


如意棒の回転速度と雷が比例するように増大していく。


958 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:27:10 lWr0Hfgo0


「マズい!!」

紘汰は即座に危ないと考え、戦極ドライバーのカッターナイフを振り落とす。

『パイン・スカッシュ!』

紘汰もまた、チェーンアレイを振り回しながら一回転し、
上空へと跳躍する。忌夢のチャージも、
丁度終わった所だ。


「ローリングゥゥゥ…サンダァァァァァァ!!」

忌夢は如意棒を、さながら手裏剣のごとく投擲する。


「ハァァァァァァ…セイハァァァァァァァ!!」


紘汰もまた、上空でチェーンアレイをサッカーボールのごとく蹴飛ばす。

忌夢が投げ付けた雷の竜巻と、鎧武が蹴りつけたパイナップルは、

上空で激しい爆発を上げ、ぶつかり合う。




彼らが今ここで鎬を削り合うのは、ある意味では偶然であった。
紘汰のいたファミレスは、忌夢の探している「通り魔」が、
現在向かっている先であった。

そんなちょっとした関係を持った二人は今も尚、

空白のロイヤルナイツと、災禍の魔戒騎士を駒に取ってぶつけ合っている。







【C-6/廃工場が並ぶ路/1日目午前】



【葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武】
[状態] アーマードライダー鎧武変身中
[令呪]残り3画
[装備] 無双セイバー、パインアイアン
[道具] 戦極ドライバー、ロックシード一式
[所持金] 貧乏(一日程度の生活費)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を止める。
1. 今いるバーサーカーとそのマスターと戦う。
2. サガラの言う「イレギュラー」を探す。
[備考]

・「罪歌」の影響を受けているかは不明です。
・少なくともオレンジ、パイン、カチドキ、極のロックシードは所持しています。
・パインアイアンを忌夢にぶつけました。




【セイバー(アルファモン)@DIGITAL MONSTER X-evolution】
[状態] ドルグレモン変身中、健康
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針: 紘汰と共に、聖杯戦争を止める。
1. バーサーカーと戦う。
2. 自らの燃費がとても気になる。
[備考]


959 : 空白の騎士と暗黒の騎士 ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:28:16 lWr0Hfgo0
【忌夢@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康、忍転身
[令呪]残り三画
[装備]如意棒
[道具]秘伝忍法書、外出鞄、財布
[所持金]普通
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を雅緋に捧げる
1.街に出て、敵マスターを探す。キーパー(=ハービンジャー)のマスターも知っておきたい
2.まずこの鎧武者を倒す。
3.呀には極力そのままで戦わせる。いざという時には、装着して戦う
4.そこらのNPCでは、呀を使いこなせないらしい。無理に代わりの体を探すことはしない
5.呀を再び纏うことに、強い恐れ
[備考]
・秘伝忍法「ローリングサンダー」を葛葉紘汰にぶつけました。




【バーサーカー(呀)@牙狼-GARO-】
[状態]
[装備] 暗黒斬
[道具] 魔戒剣、暗黒斬
[所持金] 無
[思考・状況]
基本行動方針: 戦う。
1. セイバーと戦う。
2.
[備考]
・魔戒剣を落としました、近くに刺さっているので多分拾えると思います。


960 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/12(火) 20:28:53 lWr0Hfgo0
以上で投下は終了です。
投下の合図をしなかったこと、お詫び申し上げます。


961 : ◆nig7QPL25k :2016/04/12(火) 23:49:53 cqrpMT.I0
投下ありがとうございました!
強力な主従の力と力のぶつかり合いは、やはり見ていて滾るものがありますね
進化スキルを上手いこと使いこなしている、ドルモンの戦闘スキルも見事です

それと1個だけ修正要求を
魔術師の街であるユグドラシルにおいても、ある程度の生活用品を作るための工場は用意されてる可能性は確かにあるのですが、
ニチアサの例のロケ地のように建ち並んでるレベルまであるかと言われると、ちょっと微妙なところがあります
たとえば一軒だけそこにあるとか、それぐらいならちょうどいいかもしれません
完全に主観で申し訳ないのですが、廃工場の規模をもうちょっと小さくしてもらえないでしょうか


962 : 名無しさん :2016/04/13(水) 00:16:10 NU11zaWc0
投下おつー
そうか、奇しくも四人とも変身関係の作品のキャラなんだな
特に忌夢と紘汰は相手も変身できるの意識していてなんか噛み合っているバトルだったw
変身妨害を避けつつのアクションしながら変身とか流石の紘汰さん生身フォーム
アルファモンも上手く進化を使い分けてるけどやはり紘汰への負担も大きいか
忌夢も忌夢で鎧との合一という切り札があるし。双方どこまで出すか、決着するのか、それとも……
この先も楽しみな引きでした


963 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/13(水) 05:49:57 3uJ/EXEo0
申し訳ございません、修正します。

廃工場が並んでいる→×

廃ビルが並んでいる→○

ユグドラシルの世界観を完全に忘れていました、すいません。
更に修正を追記します。

セイバーは角を、バーサーカーは魔戒剣をぶつけ、互いに→×

セイバーは角を、バーサーカーは魔戒剣をぶつけ、互いの力をぶつけ合う。→○

更に
そして、オレンジとそれを付け替えると、再びカッターナイフを振り落とす。→×

そして立ち上がり、オレンジとそれを付け替えると、再びカッターナイフを振り落とす。→○


964 : <削除> :<削除>
<削除>


965 : ◆lkOcs49yLc :2016/04/13(水) 16:17:22 3uJ/EXEo0
バーサーカーは再び宙を舞い、廃工場の屋根に着地した。→×
バーサーカーは再び宙を舞い、錆び付いたビルの屋上に着地した。


966 : ◆nig7QPL25k :2016/04/15(金) 01:00:45 hr3Et2wI0
黒咲隼&駆紋戒斗、雅緋&ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアで予約します


967 : ◆nig7QPL25k :2016/04/20(水) 23:59:56 Pb5uUoZI0
若干期限をはみ出しましたが、投下します


968 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:00:49 .Jn1qolE0
 無法者という連中は、元来日陰を好んで生きる。
 腕っ節に秀でていても、国家権力と喧嘩をすれば、不利になるのは目に見えているからだ。
 世界を裏から操った気でいる、支配者気取りのフィクサーも、正面きって戦えば、勝ち目は見えてこないという、臆病な打算の産物でしかない。
 特に魔術を持つ者と持たざる者の、力差が大きく際立つユグドラシルでは、その傾向はより顕著であった。

「何だ。ジロジロ見やがって」

 その、はずだった。

「すっ、すみません!」

 低い声で凄まれた女性が、悲鳴混じりの声を上げる。
 そそくさと立ち去る背中を見ながら、スキンヘッドの厳つい男は、不機嫌そうに唾を吐き捨てた。

《やはり、あの後ではこうもなるか》

 偵察から戻ってきたランサー・戒斗が、やれやれといった様子の念話を寄越す。
 マスターからの返事は、ない。歓楽街の町並みで、人波に紛れる黒咲隼は、その様子をじっくりと見つめていた。
 先の無法者の習性からすると、午前10時のこの町の様子は、明らかに異常だと言ってよかった。
 日の当たっているはずの往来に、見知った顔がちらほらと見える。
 それも両目をぎらつかせながら、周囲の様子を伺っている。
 こんな時間から、マフィアの連中が、警戒を強めているというのは、異常だ。

《奴の居場所は分かったか》
《あの傷だ。今は病院に身を潜めているらしい》

 恐らくは追及を逃れるためだろう。アジトには姿はなかったと、戒斗は黒咲へと返す。
 暗黒街の女王・雅緋が、深手を負って引きこもった。
 それが末端中の末端である黒咲の耳にも、明け方の時点で届いてきた噂だ。
 今まさにこの歓楽街で、神経を張り巡らせている連中は、その雅緋を守ろうとしているのだ。
 混乱に乗じた何者かが、追い打ちをかけようとした時に、即座に取り押さえることができるように。

《こうなると俺達の正体は、未だ割れていないと見てよさそうだな》

 それも雅緋を襲った襲撃者が、よりにもよって身内の中で、息を潜めているも知らずに、だ。
 この一件について、黒咲は、特に追及を受けることはなかった。
 これだけの警戒態勢を敷きながら、それをしなかったということは、黒咲を容疑者と見なしてはいないということだ。戒斗はそう評していた。
 そうでなくても、さすがに下部組織の客人である彼に、雅緋の正確な潜伏先までは、伝わってはこなかったのだが。
 戒斗を偵察として放ち、雅緋の行方を探らせたのも、元はといえばそれが理由だ。

《それで、肝心の病院周りの様子は?》
《囮にしたアジトの方もそれなりだったが、そっちはそれ以上に厳重だ。人の数は少ないが、いくつもの罠が仕掛けられている》

 あるいはあの、ロボット乗りのサーヴァントが、破壊工作スキルでも持っていたのかもしれない、と戒斗が言った。

《それはお前でも突破できないのか?》
《サーヴァントの仕掛けた罠だったらな。元よりスキルというものは、サーヴァントに通用しなければ意味がない》

 通常、物理的な攻撃手段では、サーヴァントにダメージを与えられない。
 爆薬などのトラップでは、霊体である駆紋戒斗を、傷つけることは不可能だろう。
 しかし、それが物理現象を超えた、サーヴァントの神秘を宿していたなら、話は全く変わってくる。
 あの漆黒の巨神を操った、未だ顔も知らぬサーヴァントが、病院の罠を用意したというのなら、それは戒斗にすらも通じうるはずだ。


969 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:02:02 .Jn1qolE0
《鎧の宝具を纏えば、どうとでもなるはずだ》
《爆薬も馬鹿にしたものじゃない。俺はちっぽけな爆弾一つで、殺されかかったこともある》

 爆殺されかかった英霊というのは、それはそれでどうなんだ。
 伝説の英雄という表現に、旧時代的なイメージを持つ黒咲は、彼の発言に眉をひそめる。
 もっとも、機械的な戦極ドライバーで、異形の鎧を纏う戒斗に、それを言うのも野暮かもしれないが。

《……要するに、俺はまだ動くべきではないと》
《お前の正体が知られていない。このアドバンテージはそう簡単に、手放すべきではないとは思う》

 確かにこの厳戒態勢の下で、黒咲が行動を起こせば、即座に不穏分子であることはバレるだろう。
 それは避けるべき事態だ。いかに体術に優れていようと、この町のチンピラ全員を相手に、殴り勝てるとまでは思っていない。
 敵サーヴァントの反撃も予測される以上、戒斗が彼の身を守るにも、限度というものはあるはずだ。

《昨日の連中が動くのなら、その尻馬に乗るくらいでいいはずだ。もっとも、待ち続けるのにも限度はあるがな》
《俺を嗤っておきながら、お前も大概小狡い奴だな》
《俺がやられてみたとして、腹を立てるであろう行動を、逆算して取っているだけだ。
 お前の方こそ、手段を選ばないと言うのなら、俺を怒らせるくらいのことはしてみせろ》

 手ぬるいと言われて良い気はしない。
 ふん、と鼻を鳴らしながら、黒咲は戒斗の言を流し、不機嫌そうに会話を打ち切る。
 しかし戒斗の言はもっともだ。
 夕べ協力を申し出てきた、エクストラクラスのサーヴァント――あの男をダシに使った方が、楽に立ち回れるのは間違いない。
 マスターの頼りない顔つきを考えると、本当に出てくるかどうかは、微妙ではあったが。

(あれほどの力を持っておきながら……)

 何を怖じけることがある――と、黒咲は眉根をしかめて思う。
 遠目に見た程度ではあったが、キーパーのマスターと雅緋の戦いは、まさに壮絶の一言に尽きた。
 一介の決闘者に過ぎない黒咲では、到底持ち得ない超能力を操り、彼女らは激戦を繰り広げていた。
 あれはマスター同士ではなく、サーヴァントの戦いではないかと思ったほどだ。
 それだけの力を行使していながら、白銀のサーヴァントを操る女には、鉄の意志も鋼の強さも、まるで感じられなかった。
 記憶に残るキーパーのマスターは、見ていて腹が立つほどに、弱気な顔つきをしていたのだ。
 あんな力があったならば、自分ならもっと堂々と、胸を張って戦っていたというのに。
 見る者を湧かせ笑顔を生み出す、デュエルモンスターズという娯楽を、戦いで穢すこともなかったというのに。
 そんな奴の手を借りなければ、ろくに立ち回れないという事実が、黒咲には酷く不愉快だった。


970 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:03:06 .Jn1qolE0
【C-9/歓楽街/一日目 午前】

【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]カードデッキ、デュエルディスク
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.雅緋を倒すための方法を探る
2.キーパー(=エデン)達が歓楽街に来るようなら、それを利用し雅緋を倒す。ただしあまりアテにはしていない
3.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
4.キーパーのマスター(=マリア)に対する軽蔑の念
[備考]
※D-9にあるアパートに暮らしています
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が籠城していると思しき、B-8の病院周辺に、無数のトラップが仕掛けられていることを把握しました

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ロックシード(バナナ、マンゴー、レモンエナジー)、トランプ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.雅緋を倒すための方法を探る
2.キーパー(=エデン)達が歓楽街に来るようなら、それを利用し雅緋を倒す
3.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が籠城していると思しき、B-8の病院周辺に、無数のトラップが仕掛けられていることを把握しました


971 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:03:40 .Jn1qolE0


「……っ」

 悩ましげな吐息が部屋に響く。
 艶っぽさすら孕んだそれは、しかし痛みから漏れた苦悶の声だ。
 歓楽街の片隅に位置する、こぢんまりとまとまった病院。
 そこが闇の女王・雅緋が、深く傷ついた体を横たえ、身を隠している潜伏先だった。
 ユグドラシルのほんの一角とはいえ、歓楽街の悪党全てを、手中に収めた女にしては、随分と情けない有様だ。

「肉体の自然治癒力を高め、傷を治す魔術師の薬だ」

 汗を浮かべた病院着姿を、ベッドに横たえる雅緋の横で、サーヴァント・ルルーシュが口を開く。

「だが、所詮は無理な回復に過ぎない。反動の痛みはしばらく続くぞ」
「痛みには耐えられる……我慢ならないことがあるなら、それは何も為せない無力だ」

 いつまでも寝てはいられない。
 故に痛みを伴うものでも、この身を立ち上がらせる術があるなら、迷うことなく受け入れよう。
 額に軽く手を当てながら、枕元のライダーへ雅緋は言う。

「しかし、よく手に入ったな」
「蛇の道は蛇とは言ったものでな。私が一言お願いしたら、快く譲り渡してくれたよ」

 恐らくは『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』をかけた相手に、薬をよこすよう命じたのだろう。
 言葉の穏やかさとは裏腹に、ルルーシュの浮かべる笑みは、黒い。
 この病院の院長にも、彼は躊躇うことなく宝具を使った。今頃病院の入り口は、固く締め切られているはずだ。
 人の心を捻じ曲げて、己の手駒と変えることに、彼は何の抵抗も持たない。
 その振る舞いは、まさしく悪だ。蛇女子学園の長となる、雅緋が行き着くべき境地だ。
 自ら称した悪逆皇帝――その大仰な二つ名が、今は誇張でも何でもない、事実なのだと実感できる。

「思ったよりも、優しいな、お前は」

 だがそれでも、その悪心は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの全てではない。
 漆黒のフィルターを外した先には、隠されたもう一つの心がある。
 額の汗を拭いながら、笑みを浮かべて、雅緋が言う。

「妙なことを言うものだな。お前は我が悪徳の全てを、目鼻の先で見てきただろうに」
「確かにな……だが、その仮面が外れた姿も、お前は一度見せている」

 思い返すのは、彼がKMFを駆り、この病院を目指した時だ。
 常に余裕を漂わせた、芝居がかった気障な口調――その時のルルーシュからは、その振る舞いが抜け落ちていたのだ。
 馬鹿と毒づかれたりもしたが、身の安全を優先する言葉に、演技や飾りの気配はなかった。
 限りなく素に近い状態で、そうした言葉が出てきたからには、つまりそういうことなのだろう。

「……珍しいことではないだろう。マスターがあそこで命を落とせば、私もその場で敗退していた。それを避けようとするのは当然の理屈だ」

 珍しく、ルルーシュが視線を逸らす。
 やや憮然とした口ぶりからは、軽い不快感が透けて見えた。図星、と言わんばかりの声音だ。


972 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:04:54 .Jn1qolE0
「聖杯にかける願いもないのにか? 私を見捨てていたならば、むしろこんな面倒から、さっさと解放されていただろうに」
「………」

 願いを一度も口にせず、むしろ雅緋の願い事を、炊きつける真似までした男だ。
 そんな人間が、自由意志を奪われるサーヴァント化を、わざわざ受け入れてやる理由など、マスターの延命以外には存在しないだろう。
 雅緋の更なる追及を前に、遂にルルーシュは沈黙した。
 雄弁な悪逆皇帝が、舌戦で言葉を濁すなど、これまでのやり取りの中では前代未聞だ。

「まぁ……認めないのなら、そういうことにしておく」

 言いながら、雅緋は軽く身を捩らせ、視線を天井へと向けた。
 少しばかり傷に響く。いてて、と軽く呻きながら、視線をサーヴァントから逸らし仰向けになる。
 いけ好かない気障野郎だと思っていたが、案外根っこの部分では、面倒見のいい奴なのかもしれない。
 それが何故あんな風にして、偽悪的に振る舞っているのかは、雅緋の知るところではないが。

(人のことも言えない、か)

 己を振り返りながら、思う。
 悪とはすなわち必要悪だ。正義を定義する法に背いてでも、為さねばならない行いもある。
 それを背負うべき者がいるとするなら、それこそが自分達悪忍だ。
 なればこそ、悪を掲げる自分達は、情や正義にほだされることなく、冷酷に、それこそ悪辣に、忍務を遂行しなければならない。
 妖魔を討つためにある忍が、善と悪に分かれた理由は、そこにあるのだと雅緋は思っていた。
 己を枠に嵌めているのかもしれないと、そのように邪推するのであれば、それはルルーシュに限った話ではないのだ。

(だからといって)

 決められた役割を演じている。それは雅緋にも言えることだ。
 だがそれは、自分で歩むと決めた道だ。今更降りるつもりはない。あの抜忍の焔達とは違う。
 妖魔と戦う最高位の忍――カグラの高みへ至れれるのなら、何でもいいなどと言うつもりはないのだ。
 悪の誇りを舞い掲げる。その言葉に嘘偽りはない。
 一度は蛇女子学園の、頂点に登り詰めた女だ。筆頭の称号をその身に背負った、その責任は取るつもりでいる。
 仲間を妖魔から守れず、学園崩壊の危機にも、何もすることができなかった。その無責任の贖いは、戦いによって果たす気でいる。
 そのために雅緋は戦ってきた。蛇女を復興させるべく、大勢の忍学生達を、その手で打ち倒してきた。
 気高き女帝が背負うべきは、歩んできた王道に数多転る、屍で塗り固められたブラッド・クルスだ。

(だが、咎を背負った私一人が、幸せになる権利など……本当にあるのだろうか?)

 しかし、だとすれば。
 多くの命を犠牲にした手に、聖杯戦争の果てに待つ、幸福を掴み取る資格はあるのか。
 死者の血肉を啜った己が、その死者を蘇らせるというズルを、犯す資格はあるのだろうか。
 そんなことで悩んでいるから、人のことを言えないなどと、自嘲したりする羽目になる――それは分かっている、つもりではあった。


973 : 膠着期間 ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:05:26 .Jn1qolE0
【B-8/歓楽街・病院/一日目 午前】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]胴体にダメージ(中・回復中)、魔力残量7割
[令呪]残りニ画
[装備]病院着
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.傷の回復に専念する。動けるようになったら、再び戦場へ赴く
2.万一襲撃されてもいいように、部下からの報告には、慎重に耳を傾ける
2.聖杯にかける願いに対する迷い
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません
※投薬により、肉体の回復速度が上がっています。
 そのかわり、無理に治癒能力を高めているため、反動で傷の痛みが強くなっています。

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]各種トラップの起動スイッチ、無線機
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.なるべく雅緋の傍に控え、身の安全を確保する
2.魔力確保の方法を探る
3.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません


[全体の備考]
※歓楽街全域で、雅緋の息がかかった組織のマフィア達が、敵マスターの襲撃に備え見回りをしています。
 D-9にある雅緋のアジトには、雅緋本人はいませんが、外敵をごまかすために、周辺に多めの人員が配置されています。
 不審な人物がいた場合、それぞれが所有している無線機を通じて、すぐさまルルーシュへと情報が伝えられます。
※B-8の病院周辺に、ルルーシュが破壊工作スキルによって設置した、無数のトラップが仕掛けられています。
 罠にかかった場合、サーヴァントであっても、ダメージを負うことになります。
※行政地区にて敵マスターを捜索していた、マフィア達が撤収しました


974 : ◆nig7QPL25k :2016/04/21(木) 00:05:44 .Jn1qolE0
投下は以上です


975 : 名無しさん :2016/04/21(木) 00:37:16 yF0vq89k0
投下乙〜
ルルーシュが結構頼りになる上に、主思いで良鯖だ……
ギアスだけじゃなくて戦場の組み立てがこいつの本領でもあるものな


976 : ◆nig7QPL25k :2016/05/22(日) 21:44:11 836h55tI0
昨日、劇場版「牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-」を見てきました
めちゃくちゃ面白かったです
アクション重視の話なのでこれが初見でも楽しめると思いますし
テレビシリーズを見ている人ならその何倍も楽しめると思います
是非ご覧になってみてください

先ほどWikiにSS収録を行ったのと、それからレオン・ルイスのページを若干修正しました
念のためご確認ください


977 : ◆nig7QPL25k :2016/06/30(木) 01:09:37 CBWHQJCI0
立花響、キャスター(スバル・ナカジマ)、犬吠埼風、ライダー(剣鉄也)で予約します


978 : ◆nig7QPL25k :2016/07/04(月) 02:38:58 sKFcniU.0
延長します


979 : ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 01:57:04 5jYvhXDY0
フロストマン、ターボマンを追加予約します


980 : ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:28:38 5jYvhXDY0
投下します


981 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:29:19 5jYvhXDY0
 生きることを諦める気はない。
 ここから生きて帰るためにも、戦う覚悟はできている。

 それでも、きっとそれだけでは駄目だ。
 ただ襲ってきた敵を、戦って倒すだけでは駄目なのだ。
 ルイズ・フランソワーズもそうだった。あの両備もまたそうだった。
 彼女達は皆、何らかの願いを携えて、この戦いの場に集った。
 そうした者達と戦うということは、願いを叶えたいという意志と、戦いねじ伏せるということなのだ。

 だからこそ、このままではいられない。
 何も知ろうともしないまま、黙っているわけにはいかない。
 彼女も願いがあると言った。それは聖杯でなければ、叶えられないとまで言い切った。
 それを知らぬふりをしたまま、無情に踏みにじることなど、自分には到底できるはずもない。

 戦う覚悟はできている。
 次に決めるのは、背負う覚悟だ。

 なればこそ、今取るべき行動は――


982 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:30:33 5jYvhXDY0


 格下が格上の周囲を回る――ある者が語った戦いの常道だ。
 力と力がぶつかり合うなら、力の弱い者の方が、付け入る隙を探そうとするからだ。
 そして今まさにスバル・ナカジマは、その理屈をその身で実践していた。

(夕べの奴もすごかったけど……)

 モーター音を轟かせる。
 不整地をガリガリと削りながら、ローラーブレードを走らせる。
 黄金のサーヴァントは確かに手強かった。
 あれだけ激烈なパワーの持ち主には、そうそう巡り合うことはないだろうと、一瞬前まではそう思っていた。
 しかし違う。あれは違う。
 今まさに周囲を回って、隙を探している相手は、もっと根本的に違う相手だ。

『――グレートタイフーンッ!!』

 拡声器越しの雄叫びが上がった。
 轟――と唸って襲いかかるのは、恐るべき破壊力を宿した竜巻だ。
 読んで字のごとく龍のような、巨大で苛烈な風の叫びが、スバルめがけて襲いかかる。

「っ!」

 跳躍。飛び退って回避。
 されど規模が桁違いだ。一度跳んだだけでは避けられない。
 家屋を伝う。更に伝う。
 襲いかかるテンペストは、たっぷり建物三軒分を経て、ようやく鼻先を掠めるに至った。
 瞬間、猛烈な余波が体を煽り、スバルを勢いよく吹き飛ばす。
 地を離れればウィングロードは出せない。『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』 のエンジンを噴かせ、空中で強引に軌道修正。
 勢いを殺し宙に浮いて、スバルは改めて敵を見た。
 眼下で金色の瞳を光らす、黒鉄の巨人の姿を見据えた。

『どうしたどうした! もう終わりかァ!』

 スーパーロボット、『偉大な勇者(グレートマジンガー)』。
 コックピットで息を巻く、あのライダーのサーヴァントはそう言ったか。
 その口から巨大な竜巻を吹き出し、大地に悠然とそそり立つのは、AIが算出した身長が、25メートルにも及ぶ大巨人だ。
 いくら何でもめちゃくちゃだと、何度目とも知れない感想を、スバルは胸中で繰り返した。
 天を貫くほどの巨体からは、地を砕くほどの技が繰り出され、世界樹を大いに揺さぶっている。
 直接接触を避けている以上、夕べの敵とは比較しようもないが、あれとは明らかに別問題の存在だと、それだけは認識できている。
 レギュレーションギリギリ最上限というよりは、凶器持ち込みで失格だとか、そういう類の反則ではないのか。
 サーヴァント同士の戦いに、ああいうスーパーロボットを持ち込むというのは。

『追いかけっこが望みなら付き合ってやるぜ! アトミックパンチ!!』

 鋼鉄の巨腕が持ち上げられる。
 漆黒の鉄拳が突き出される。
 瞬間、火を噴き発射されたのは、腕そのものを弾頭として、放つ必殺のロケットパンチだ。
 それも10倍上のサイズ差があっては、当たりでもすればひとたまりもない。


983 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:31:48 5jYvhXDY0
「このっ!」

 道路に着地すると同時に、『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』をフルアクセル。
 ジグザグに通りを進みながら、迫り来るアトミックパンチを巻かんとする。
 しかし駄目だ。逃れられない。
 敵も間抜けではないのだ。自在に飛び回る鉄拳は、敵に狙いを定めれば最後、当たるまで追い続けるホーミングミサイルだ。
 建物を次々と薙ぎ倒し、立派なお屋敷を貫通し、なおも拳は勢いを増して、スバルへと襲いかかってくる。

(これ以上被害を拡げるわけには!)

 同時にスバルを襲ったのは、焦りだ。
 ここに生きている人間のほとんどは、命を持たないデータに過ぎない。
 しかし今まで壊された家屋に、記憶を失ったままでいる、生身の人間がいたとしたら。
 そう考えると、これ以上逃げ回り続けて、いたずらに被害を拡げるわけにはいかない。
 非合理的な判断だが、そのお人好しと甘さこそが、スバル・ナカジマという人間なのだ。

「はっ!」

 地を叩く。光を放つ。
 ウィングロードを展開し、上方に向かって駆け上がる。
 速く、早く。敵のロケットパンチが反応し、こちらに方向を転換するより。
 舵を取って空を駆け、唸りを上げるアトミックパンチと、すれ違う軌道へとロードを生成。
 一瞬の直感に身を任せ、鉄拳に飛び降り跨ると、左手を勢いよく振りかざした。

「ソード・ブレイク!」

 やるべきことは先程と同じだ。
 南無三と胸中で唱えながら、パンチに超振動をぶつける。
 先ほどとはサイズも強度も違うが、試すなら同じ要領でいけるはずだ。
 あとはこの宝具の神秘性に、このスキルが通じうるかどうか。

『チッ、やりやがったな!』

 結果は見事成功だ。
 舌打ちと忌々しげな声が聞こえた。
 迸る衝撃は鋼を伝い、光沢を放つ装甲板に、無惨な亀裂を走らせていく。
 たまらずアトミックパンチは、急速に方向転換して本体へ戻った。
 あまりの勢いに乗りかかったスバルが、振り落とされてしまったほどだ。
 宝具を傷つけるともなると、容易ではあるまいとは思っていたが、ともあれ奴のロボットには、通用することは明らかになった。
 ならばこの隙は逃さない。奴が態勢を立て直す前に、一気に決着をつけてやる。

「うぉおおおっ!」

 アトミックパンチが引っ込む前に、エンジンを全開で噴かせて突撃。
 逃げる時とは対照的に、一直線に疾駆する。

『ネーブルミサイル!!』

 それでも、敵も引き下がらない。
 腹部のハッチを開くや否や、襲い来るのはミサイルの雨だ。
 炎の尾を引く弾頭が、次々と腹から発射され、スバル・ナカジマの行く手を阻む。

「リボルバーシュートッ!」

 なるべくなら回避せず済ませたい。されどこれだけのサイズ差だ。シールドで受け止め続けるのはしんどい。
 すぐさまカートリッジをロードし、魔力弾にて撃墜を図る。
 一発、二発、五発、十発。
 青く輝く弾丸が、続々とリボルバーナックルから放たれ、上空に真っ赤な花火を咲かせる。


984 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:32:58 5jYvhXDY0
《キャスターさん、聞こえますかッ!?》

 その時だ。
 不意にスバルの脳内に、マスターの念話が飛び込んできたのは。

《聞こえるよ。どうしたの、響?》

 リボルバーシュートの手は緩めず、意識だけを念話に向けて、スバルは返事の言葉を送る。

《できればでいいんですが、そのままロボットの相手を、お任せしてもいいですか?》
《? どうして?》
《……風ちゃんとの話が、まだついてません。私はもう一度、あの子と話をしてみます》

 一瞬、眉がぴくりと動いた。
 反応が遅れ、取り逃がしたミサイルを、やむなく跳躍して回避した。
 爆風が容赦なく巻き起こり、足元からスバルへ襲いかかる。
 ばたばたとバリアジャケットを煽られながらも、次なるカートリッジをロードし、残る標的に照準を定める。

《あの子の言った願い事を、私はまだ知りません。
 それが私達の戦いの理由に、本当になってしまうものなのか……それを知らなきゃ、知らない顔で、戦うことなんてできません》
《それが本当に、響の道と、交わらないものだったとしても?》

 恐らく響の胸にあるのは、脱落したルイズとなのはのことだ。
 彼女らの願いは、響のそれとは、奇跡的にかち合わなかった。
 だからこそ争いを回避し、同盟を結ぶことができたのだ。
 ひょっとしたら、犬吠埼風相手にも、同じように力になれるかもしれない。

《構いません。戦い以外に道がなくても……それでも私は、きちんと相手と向き合いたい》

 たとえそれが、本当に、響にもスバルにも救えないものでも。
 恐らくは自分達と同じように、戦いをよしとしないであろう彼女が、それだけの覚悟を固めたというなら、それを真正面から受け止めたい。
 それが響の願いであり、スバルへのわがままの理由だった。

《……しょうがないな。でも、長くはもたないかもよ?》

 非合理なのは分かっている。
 それでも、同じ甘ちゃん同士、否定することなどできようか。
 爆発四散するミサイルの炎に、スバルは我が身を突っ込ませる。
 灼熱の煙を引き裂いて、再び地面へと向かう。

《平気ですッ! 最短で最速で真っ直ぐに――》
《――一直線で間に合わせます、だよね?》
《……はいッ!》

 最後に聞こえてきた響の念話は、少し弾んでいるように聞こえた。
 それでいい。天真爛漫とした彼女には、ハの字の眉毛は似合わない。
 彼女が笑顔で戦えるなら、己の決断を誇れるのなら、それこそが自らの存在の意義だ。
 着地しグレートを目指しながら、スバル・ナカジマはそう思った。
 風にマスターを攻撃する意思はない。グレートマジンガーの攻撃も、彼女のいる方向には向けられていない。
 それでも、困難な道なのは確かだ。
 だとしても、進むと彼女は決めたのだ。

「どぉりゃあああッ!」

 なればこそ、その決意に応えずして、何が英霊スバル・ナカジマか。
 再び飛び上がり、左手をかざす。
 遂に猛攻を突破し、目前にまで迫ったスバルが、ソードブレイカーを解き放つ。
 周波数は解析済みだ。叩きこめば容赦なく、あの装甲をぶち割ることができる。
 裂帛の気合を込めた一撃が、遂にグレートマジンガーへと、突き出されたその瞬間。


985 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:33:57 5jYvhXDY0
「……えっ?」

 何も、起こらなかった。
 叩きつけられた左腕は、しかしその黒い装甲を、僅かに揺さぶっただけだった。
 これは何だ。効いていないのか。どうしてこんなことが起こる。
 一度通用した攻撃が、二度目は通じなかったなどということは、生前にも起こらなかったはずだ。

『俺のグレートは特注品でな! 超合金ニューZの装甲は、素粒子レベルで姿を変えて、グレートマジンガーの武器となる!』
「なっ!?」
『つまり性質を変えちまえば、音波や振動波の攻撃にも、対処可能って寸法よ!』

 瞬間、驚愕するスバルを鉄拳が襲った。
 丸太をも凌駕するサイズの腕が、鋼鉄の質量で殴りかかったのだ。
 生身なら嘔吐していただろう。脳髄すら揺さぶる衝撃に、容赦なくスバルは吹き飛ばされる。

(傷が、ない……!?)

 そして意識が薄れる直前、一瞬に視界をよぎったものを、スバルは決して見逃さなかった。
 家屋の壁に叩きつけられ、目を覚ましたスバルが思い出したのは、亀裂の消え去った装甲板だ。
 今の一撃に対策を打たれ、ソードブレイカーの効力を、極限まで殺されたことは認めよう。
 しかしそれ以前に負わせた傷まで、回復しているというのはどういう理屈だ。

『そして空中元素固定装置! こいつが実現した回復機構は、このくらいのダメージなら、本体に戻った瞬間に修復可能!
 グレートマジンガーを倒してぇのなら、一撃で吹っ飛ばすくらいの気概でかかってきな!』

 慢心ではない。これは威圧だ。
 突きつけられたその答えは、絶望的な現実だった。
 要するに、こうか。
 グレートマジンガーは、一度浴びせられた超振動に対し、即座に対策を講じてくる。
 その上その都度チューニングを行い、異なる振動をぶつけたとしても、ダメージはすぐさま回復されてしまう。
 超合金ニューZだけならまだいい。攻撃側と防御側で、位相を書き換え合うチューニング合戦に持ち込むだけだ。
 しかしそこに超再生と、絶大なパワーが加われば、もはやその差は生半可なものでは、埋めがたいものになってくる。

(可能性があるとするなら、マスターにかかる魔力負荷か……)

 もちろん、これほどの絶大な威力を誇る宝具だ。
 犬吠埼風が超人だったとしても、この力を維持するだけでも、相当な負担がかかるだろう。
 だからこそ、ライダーは最初からグレートを出さず、ブレーンコンドルで挑んできたのだ。

(……でも、ちょっとまずいかも)

 かといって、魔力切れを悠長に待てるほど、こちらが持ちこたえられるかどうか。
 町を守り、響を守り、あれだけの鉄巨人の猛威の前に、耐え抜くことができるのか。
 大見得を切ってみたはいいが、請け負ったこの仕事は少しばかり、キャパシティオーバーだったかもしれない。
 空へと聳える黒鉄の勇姿を、土埃を払い見上げながら、スバルは苦々しげに笑った。


986 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:34:54 5jYvhXDY0


 駆ける。走る。前へと進む。
 瓦礫の山を飛び越えながら、風の飛び去った方角を目指す。
 スバルは了承してくれたが、彼我の実力差を読み取れないほど、立花響も間抜けではない。
 わがままを通しているからには、彼女が力尽きる前に、速やかにカタをつけなければ。

「――風ちゃんッ!」

 そして、遂に響は見つけた。
 灰色のコンクリートジャングルの中で、一輪だけ咲いたオキザリスを。
 太陽のごとき彩りを放つ、犬吠埼風の黄装束を。

「っ! 響、さん……」
「よかった、見つかった……」
「……何をしに来たんですか。敵だって、あたし言いましたよね」

 警戒し、大剣を突き出しながら、風は響に尋ねてくる。
 シンフォギアを使うつもりはない。敵意を真っ向から向けながらも、立花響は未だ無手だ。
 使えないという理由もあるが、マスターを殺す気はないという彼女の言葉に、嘘偽りがないのなら、その剣はただのポーズのはずだ。
 そうなのだと、響は信じたかった。

「ちゃんと、聞いてなかったからさ。聖杯がなくちゃ叶わない、風ちゃんの叶えたい願いを」

 だからこそ、立花響はストレートに、用件を犬吠埼風へとぶつけた。

「そのためだけに、こんな……?」
「大事だと思ったんだ。助け合って解決するためにも……それが本当に叶わなくって、戦わなくちゃいけなくなったとしても」

 思い返すのは、夕べの戦いだ。
 憎しみのオッドアイで睨みつけてきた、あの両備という少女の姿だ。
 彼女の復讐という動機に対して、どのようなリアクションを取ればいいのか、響にはどうしても分からなかった。
 それでも、もしもそれを聞くことがなければ、どんな言葉をかければいいかと、考えることすらもできなかっただろう。
 それは恐らく、彼女に対して、とても失礼なことだと思った。
 どれほど両備が――犬吠埼風が、余計なお世話だと拒絶したとしても。
 願いを懸けてぶつかり合うなら、いずれ踏みにじるかもしれない願いを、背負っていかなければならないのだ。

「……これです。聖杯で叶えたい、あたしの願いは」

 一拍の間を置いて、風が言う。
 剣を握っていない方の手が、左目を覆う眼帯をめくった。
 瞳自体は健在だ。しかし、恐らく見えていない。
 視力を伴っているのなら、機能しているはずの目を、わざわざ隠すはずもない。

「あたし達は、神樹の勇者……こことは違う別の世界で、町の人達を守るために、怪物と戦ってきました」

 犬吠埼風は静かに語る。立花響とは似て非なる、護国の戦いの記憶を。
 大規模なバイオハザードの発生により、外界から隔絶された四国――それが風達の故郷だった。
 しかし、脅威はそれだけではなかった。外なる世界からは、バーテックスなる怪物が、神の結界を壊さんと、次々と襲いかかってきたのだ。
 それと戦うために、風と仲間達は、神樹の力を授けられ、勇者となって戦ってきた。
 強大な力の代償として、己が体の機能の一部を、供物と変えて捧げながら。


987 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:35:25 5jYvhXDY0
「あたしだけならまだよかった。片目が見えないくらいなら、どうってことはありません。それなりに苦労はしたとしても、面白おかしく生きてはいけます」

 されど、違う。事の本質はそこにはない。
 問題は自分以外の仲間達に、降りかかった悲劇の方だ。
 ある者は不自由な体から、片耳の聴覚まで奪われた。
 ある者は味覚を喪失し、食べる楽しみを失ってしまった。
 そしてある者に至っては、歌手を夢見ていたというのに、声を出すことが叶わなくなった。

「全部、あたしの責任です……あたしが巻き込んだばっかりに、みんなは自由を、喜びを……夢と生き甲斐までなくしてしまった」
「風、ちゃん……」
「だからあたしは聖杯が欲しい! 神様に持っていかれたものも、同じ神話の力なら、取り戻せるかもしれないから!」

 それが勇者部部長として、皆に居場所と喜びを与え、同時に大切なものを奪った、犬吠埼風の責任だから。
 たとえ皆が許してくれても、取り戻せる可能性があるのなら、手を伸ばさなければならないのだ。
 そうでなければ、胸を張って、皆のもとへと帰れるものか。

「これがあたしの願いです。響さん……貴方にはあたしのこの願いを、受け止める覚悟がありますか?」

 光と湛えた右の瞳と、光を失った左目と。
 決意を込めた風の視線が、真正面から響を射抜く。

「私は……」

 動揺し、響は言葉に窮した。
 両備のそれとも大きく異なる、健全で、かつ切実な願いだ。
 それも自分の体と共に、聖杯に治癒を願ってやるとは、到底言い出せない覚悟の重さだ。
 甘かった。予想外の返答に、声を詰まらせた。
 この中学生の幼い体に、途方もない業を背負った少女に、響は何と答えればいい。
 自らに、改めて問い直した。
 背負う覚悟は胸にあるか。
 この願いを踏みにじってでも、己を貫ける覚悟はあるか。



『ニューZの真髄を食らいな!』

 大気を引き裂く音がする。
 びきびきと音を響かせながら、グレートマジンガーが変質していく。
 人体を模していたはずの右腕は、大きな槍の穂先へと変わった。
 螺旋を描くそのフォルムは、諸共に纏っている空気すらも、切り裂いている錯覚すら覚えた。

『ドリルプレッシャーッ!!』

 巨大な衝角が炎を放つ。
 どんっ――と鼓膜を揺さぶりながら、猛烈な勢いで回転しながら、それはスバルへと襲いかかる。
 あれは槍などではなかった。弓より放たれる鏃だ。
 文字通りの巨大なドリルと化した、グレートマジンガーの右腕が迫る。

「くっ……!」

 あれはさすがにどうしようもない。
 あんなものを向けられては、バリアで受け止めることもできない。
 疲弊した体に鞭を打ち、飛び上がり回避することを選んだ。
 既に限界が近かった。動いて戦うことならできても、攻撃に対処し続けるのが無理だ。
 そして一度でもしくじったなら、まともに直撃を受けたのならば、その瞬間スバルは絶命する。
 即死にまでは至らずとも、致命傷にはなるはずだ。二撃目を回避する余裕を失い、どの道死を迎えることになるのだ。

(もう、ここまでかな……!)

 ここが矛の納めどころか。
 今すぐ響に念話を飛ばし、撤退を指示するべきタイミングか。
 だが、退くことを決めたとしてどうする。背中を向けた自分たちを、やすやすと見逃してくれるだろうか。
 吼えるドリルプレッシャーが、眼下を突き抜け家屋を貫く。
 深々と石畳をえぐりながら、爆音を立てる一撃を尻目に、スバルはひたすらに退路を探った。


988 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:36:10 5jYvhXDY0
『何だ、アイツらはっ!?』

 その時だ。
 瞬間、ライダーの声色が変わった。
 はっとしてスバルが振り返ると、そこに姿を現したのは、見覚えのない2つの影だ。
 片や氷のように透き通る、巨大な装甲を纏った男。
 片やF1カーのような、タイヤとマフラーを身に着けた男。
 それらが倒壊した屋敷の方から、同時に姿を現して、こちらに向かって突っ込んでくる。
 いいや、着地したスバルをスルーし、彼方のグレートマジンガーへと、一直線に突き進んでいく。

(今しかない!)

 何だか知らないが、これは好機だ。
 あれがグレートを引きつけてくれるなら、その隙に離脱するしかない。
 スバルの行動は素早かった。すぐさまウィングロードを展開し、響のいる方向へと走った。

《響! 悪いけどもう時間切れ! 撤収するよ!》
「スバルさんッ!?」

 マスターへ送った念話の返事は、肉声によって届けられた。
 つまりはまさに目鼻の先だ。剣をその手に携えた風と、丸腰のままの響とを、レンジに捉えた状態だ。
 手出しはしない。そこは死守する。
 しかしマスターの安全だけは、確実に確保させてもらう。

「わぷッ!?」

 ヴァリエール邸を脱した時のように、響を強引に小脇に抱えた。
 そのままロードの方向を、反転させて走り去った。

「響さん! くっ……!」

 背後からはうめきが聞こえる。やはりグレートの維持のために、相当な魔力を浪費したらしい。
 追いかける余力がないのなら、ここは互いの安全のためにも、遠慮無くトンズラさせてもらう。

(ここは、感謝した方がいいのかな……)

 そしてグレートマジンガーと対峙する、見知らぬ人影を背後に見ながら、スバルはそう思考した。
 彼女も、そしてライダーも知らない。
 フロストマンとターボマンという、あれらが与えられた名前を。
 あれらが未知のサーヴァントによって、作られ命を与えられた、生きた宝具であることを。
 そして彼らは彼我の事情も、まるきり理解せぬままに、マスターの拠点を守るという命を、ただ実行しているに過ぎないということも。


989 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:37:05 5jYvhXDY0


(少しばかり、飛ばしすぎたな!)

 気付けば感じ取れる風の気配が、かなり弱々しくなっている。
 どうやらキャスターとの戦いで、相当に魔力を搾り取ったらしい。
 情けない。こんなザマがプロの仕事か。
 己をきつく戒めながら、ライダーのサーヴァント――剣鉄也は、迫り来る敵の姿を見やった。

「フン!」
「フガァッ!」

 炎のリングを飛ばしてくる相手と、氷の塊をぶつけてくる相手。
 どちらもグレートマジンガーを、揺るがすには至らない敵だが、このまま放っておくのも鬱陶しい。
 風の余力を考えるなら、下手に時間はかけられない。邪魔者は一撃で消し飛ばすべきだ。

「目障りだ、失せなっ! サンダーフィィィルドッ!!」

 叫びを上げたその瞬間、上空の空模様が一変した。
 グレートマジンガーの力は、時に天候すらも操り、己が最大の武器を呼び寄せる。
 ライダーの宝具の最強武装は、天より注ぐ雷を、自らの力と変えたものだ。
 轟――という音を置き去りにして、光と雷電がグレートを撃つ。
 必殺パワー、サンダーブレーク。本来は直射すべきそれを、自身の機体へと纏わせ、無敵の矛と盾を両立する術だ。

「グォォッ!」
「フンガァアア……ッ!」

 そして至近距離の敵に対してなら、グレートを伝う雷のヴェールは、それだけで範囲攻撃となり得る。
 相応に出力は絞ったが、それでも最強武装の転用だ。
 名も知らない2体のアンドロイド――フロストマンとターボマンは、断末魔の悲鳴だけを残して、あっという間に消滅した。

「チッ!」

 もはやキャスターの姿は見えない。探したところで追うつもりもない。
 ブレーンコンドルを切り離し、グレートを表舞台から引っ込める。
 さながら蜃気楼のように、巨人が影も形もなく、ユグドラシルから姿を消した。
 そしてそれを確かめもせぬまま、鉄也はブレーンコンドルを、猛スピードで風へと向けた。

「マスター、無事か!」

 着陸など待てないと言わんばかりに、鉄也は操縦席から飛び降りる。
 直後に、着陸シーケンスに移ったブレーンコンドルが、背後で道路へと降り立つ。
 そのバーニア音をバックにしながら、鉄也は風へと駆け寄って、その安全を確かめた。

「平気よ、ライダー……ちょっと動くのは、億劫だけど」

 大きな剣を杖にしながら、風が鉄也を迎え入れる。
 そしてグレートマジンガーが、そこにないことを確かめると、変身を解除し装束を戻した。
 家から出る時に着ていた、学生服姿へと戻ると、支えを失った体は、軽くふらつき前のめりになる。
 命には別状はないようだが、これほど疲弊した状態となると、徒歩での撤収は難しいだろう。

「ブレーンコンドルで、適当なところまで飛んでく。乗れるか?」

 戦闘中かなりの数の住民が、逃げていく様を見ているが、兵隊や高位の魔術師が、ここに現れないとも限らない。
 風が無言で頷くのを確かめると、背中を軽く押しながら、足早にブレーンコンドルへと向かった。
 魔力切れに気を配り、速攻で仕留めると決めておきながら、全くなんという有様だ。
 それなりに追い込んだつもりだが、こちらも追い込まれてしまった。これではまるで痛み分けだ。


990 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:38:50 5jYvhXDY0
「ズルいこと、言っちゃった」

 操縦席に乗り込みながら、ぽつりと、風が呟いた。
 意識を向けていなければ、聞き逃していたかもしれない、弱い声音だ。

「あのマスターにか」
「試すような……っていうか、脅すようなこと言っちゃってさ。ヤな奴よね、あたし」

 笑ってはいる。
 つとめて軽い口ぶりでいる。
 それでも疲労の残る顔に、色濃く浮かび上がっているのは、強い自己嫌悪の念だ。
 この顔を、忘れまいと思った。
 剣鉄也はあくまで戦士だ。カウンセラーでない以上、人の心の機微にはどうしても疎い。
 それでも、自分がしっかりとしていれば、こんな顔をさせる間もなく、敵を倒すことができた――それは間違いないことだ。

(二度と)

 二度とこんなヘマは犯さない。
 次はこんな失策は犯さず、確実に仕事を遂行してみせる。
 次の命を仮定する時点で、戦闘者として二流ではあるが、それでも今の剣鉄也は、そう思わずにはいられなかった。



【G-4/特級住宅街・ブラッドレイ邸近く/一日目 午前(放送直前)】

【立花響@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]魔力残量6割、戸惑い
[令呪]残り二画
[装備]ガングニール(肉体と同化)
[道具]学校カバン
[所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ガングニールの過剰融合を抑える方法を探す
1.スバルと共に自宅へ戻る
2.風に対して……?
3.両備の復讐を止めたい
4.出会ったマスターと戦闘になってしまった時は、まずは理由を聞く。いざとなれば戦う覚悟はある
5.スバルの教えを無駄にしない。自分を粗末には扱わない
[備考]
※E-4にある、高校生用の学生寮で暮らしています
※高町なのはを殺害した犯人(=忌夢および呀)の、外見特徴を把握しました
※シンフォギアを纏わない限り、ガングニール過剰融合の症状は進行しないと思われます。
 なのはとスバルの見立てでは、変身できるのは残り2回(予想)です。
 特に絶唱を使ったため、この回数は減少している可能性もあります。

【キャスター(スバル・ナカジマ)@魔法戦記リリカルなのはForce】
[状態]全身ダメージ(大)
[装備]『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』、包帯
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、響を元の世界へ帰す
1.響を連れて自宅へ戻る
2.金色のサーヴァント(=ハービンジャー)、グレートマジンガー(=剣鉄也)を警戒
3.戦闘時にはマスターは前線に出さず、自分が戦う
[備考]
※4つの塔を覆う、結界の存在を知りました
※予選敗退後に街に取り残された人物が現れ、目の前で戦いに巻き込まれた際、何らかの動きがあるかもしれません
※高町なのはを殺害した犯人(=忌夢および呀)の、外見特徴を把握しました
※グレートマジンガーの持つ武装と、魔神パワー「再生」「変態」の存在を把握しました


991 : 鋼人相打つ ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:39:28 5jYvhXDY0
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]魔力残量2割、衰弱、自己嫌悪
[令呪]残り三画
[装備]ブレーンコンドル(搭乗中)
[道具]スマートフォン、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.鉄也と共に自宅へ戻る
2.響を突き放した自分への自己嫌悪
3.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい
4.魔力消費を抑えるため、『偉大な勇者(グレートマジンガー)』発動時は、戦闘は鉄也に一任する
5.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく
[備考]
※D-3にある一軒家に暮らしています
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています。既に脱落していることには気付いていません

【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】
[状態]健康、屈辱
[装備]ブレーンコンドル(操縦中)
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす
1.風と共に自宅へ戻る
2.風の魔力を必要以上に浪費した、自分の不甲斐なさに苛立ち
3.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています。既に脱落していることには気付いていません

【『DWN(ドクター・ワイリー・ナンバーズ)』 】
【DWN.056 ターボマン@ロックマン7 大破】
【DWN.062 フロストマン@ロックマン8 大破】


[全体の備考]
※特級住宅街全域に、甚大な被害が発生しました。
 無数の家屋、およびG-4のブラッドレイ邸の一部が破壊されています。
※剣鉄也が宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』で戦闘を行いました。
 尋常じゃないほどに悪目立ちしたため、「特級住宅街の巨大ロボット」の噂が、急速に広まりつつあります。


992 : ◆nig7QPL25k :2016/07/05(火) 20:41:16 5jYvhXDY0
投下は以上です

そして以上を持ちまして、第一回定期放送以前のエピソードの投下期間を終了します
以降は第一回定期放送までの間、投下予約を締め切らせていただきます。ご了承ください


993 : ◆nig7QPL25k :2016/07/27(水) 22:30:55 EjLyoSdE0
本日投下予定の第一回放送が、ギリギリ本スレの投下限界をオーバーする量になっていたため、
次スレを用意させていただきました
下記のスレにて23時より、第一回放送を投下する予定です

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1469625929/l50


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