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少女性、少女製、少女聖杯戦争
からころ、からころ、と空き缶を引きずる音が鳴る。
「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません」
ある街の大通りで、よたりと歩きながら詩人と呼ばれる男が大声で中原中也の詩を喚いている。
街の住民は誰一人として彼の本名を知らない、彼の口は詩を喚く以外の用途に用いられることは無いのだ。
どれだけ風呂に入っていないのだろうか、どれだけ服を変えていないのだろうか、どれだけ自分という存在に無頓着になってしまったのだろうか、
汚らしく――そして、哀れな男だった。
誰かが噂するには、彼は妻を喪ったとも、あるいは娘を喪ったとも、
愛する者が死んでも自殺出来なかった男――その点だけは、詩人に対しての数多の噂話に共通していた。
からころ、からころ、と詩人が空き缶を引きずる音が鳴る。
「愛するものが死んだ時には、それより他に、方法がない」
自殺以外の方法を見つけられなかった男だ、だから――壊れたスピーカーの様に詩を喚いている。
断罪を求めているのか、繰り返し、繰り返し、同じ詩を。贖罪を求めているのか、ひたすらに喚く。
からころ、からころ、からころ。
「けれどもそれでも、業〈ごう〉(?)が深くて、なほもながらふことともなつたら――」
機械のように、よどみなく詩を喚いていた詩人の言葉が止まる。
そこから先、何を言えばいいかわかる。
その後の詩文を、詩人ははっきりと覚えている。
それでも、続きが――言えない。
からころ、からころ、からころ、からころ。
「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません」
永遠に終わらない詩を引き連れて、詩人は再び歩き出す。
詩人はきっと、どこへ辿り着くこともない。
何も終わらせることの出来ぬまま、歩くだけだ。
からころ。
からころ。
からころ。
"
"
「うふふ……マスター、愛する人が死んだ時には自殺しなければいけないと」
「――――」
詩人と、――がすれ違う。
一瞬の交差、交わす言葉など無い。ただ、――が一方的に詩人の喚きを、心の底からの悲鳴を受け取るだけ。
しかし、詩に反応を返したのは、――ではない。
少女の声だけが、――の耳に届いている。
だが、この地上に声の主は存在しない。
鏡を見よ、鏡越しでのみ見ることの出来る写るはずのない少女を見よ。
処女雪のように真っ白で、右目に白薔薇を宿した少女を見よ。
実体の無いアストラル体の少女、朽ちる肉体が無い故に永遠の少女。人形の少女。
裁定者【ルーラー】のサーヴァント、雪華綺晶である。
「たった一人の少女のために、何人も何人も少女を集めて、ふふ……なんて、愛おしくて、愛らしいマスター。
人形の私なんかよりもずっとずっと可愛らしくて……うふふ、妬いてしまいそう……」
「――――」
「彼女たちは――貴方の愛した少女が辿れなかった未来、理不尽な死によって奪われてしまった可能性の蕾達……
だからこそ、英霊とともに聖杯に捧げなければならない――無垢なる魂。いえ、それとも憎しみ?
うふふ……何故、あの娘は死んだのに――お前たちは生きていると、調子はずれの復讐劇がお望みなの?」
「――――」
「まぁ、どっちにしても舞うしかないのでしょう、幕があがってしまったのだから、観客は――聖杯は今か今かと待ち望んでいるのだから」
「――――」
「さあ、マスター」
「けれどもそれでも、業〈ごう〉(?)が深くて、なほもながらふことともなつたら――どうするのですか?」
ごうん、ごうん、と12時を告げる鐘が鳴る。
それはきっと始まりの合図だったのだろう。
雪華綺晶のマスター、いやこの聖杯戦争そのもののマスターは、愛する少女を喪った。
そして、誓った。
如何なる手段を以てしても、愛する少女を取り戻すと誓った。
だからマスターは少女達を呼んだ。
少女達は、愛する少女が辿れなかった未来だ。愛する少女が喪った現在だ。愛する少女が二度と触れられぬ過去だ。
少女達の喜びは、怒りは、悲しみは、憎しみは、ときめきは、ありとあらゆる感情は、もう二度と死化粧の少女には得られない。
少女達よ、殺し合え。
戦いの中で生じる全ては、我が少女のために捧げられる。
英霊達を、再殺せよ。
何故、英霊は蘇り――しかし、我が少女は蘇らぬ。
少女への愛。
少女への憎しみ。
愛憎が入り混じり、少女達をこの地へと誘う。
――少女 製/性/聖 杯戦争 が始まる。
「――なほもながらふことともなつたら、
奉仕の気持に、なることなんです。
奉仕の気持に、なることなんです。
愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから。
もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、
奉仕の気持に、ならなけあならない。
奉仕の気持に、ならなけあならない 」
【GAME START】
主催
【???@???】
【ルーラー(雪華綺晶)@ローゼンメイデン】
【ルール】
・版権キャラによる聖杯戦争を行うリレー小説です。
・参加者の内、マスターは必ず少女でなければなりません。
・主従は『全20組』と考えていますが、場合によっては加減があります。
・通常の7クラス及び、エクストラクラスの投下が可能ですが、投下状況次第では1クラスが丸々欠ける場合もあります。
・主従の投下がいただけなかった場合、>>1 がえっちらおっちら主従を投下していくスレになります。
・想像すると、とても悲しい気持ちになります。
・泣いてしまうかもしれません
・とてもつらい
【設定】
・舞台はとある架空の街です。
・マップの外も街や海が続いていますが、透明な壁に阻まれて脱出することは出来ません。
・後述するNPCは壁の存在には気づいていませんし、平然と脱出することが出来ます。
・参加者である少女たちは、この街で過ごすことに矛盾がないように偽の記憶を植え付けられて、同日同時間に、皆この街へとやってくる運びとなりました。
・一般的なパロロワにおける、気が付くとOP会場にいた感じをイメージしていただければ幸いです。
・少女たちは、何らかの切っ掛けで、あるいは何の前触れもなく、自分はこの街の住人ではないという真実の記憶を取り戻します。
・そして、身体の何処かに三画の令呪が刻まれ、少女聖杯戦争参加の運びとなります。
・同時に、少女は聖杯戦争に関する知識を手に入れます。
・少女達が記憶を取り戻すまでの猶予は一週間です、早くに記憶を取り戻せば、キャスターならば陣地を作成しておく等、本番に備えて準備をしているかもしれません。
・また、本番までに記憶を取り戻した少女同士で戦いが行われている可能性があります(俗に言う一話死亡【ズガン】枠です)(ズガン枠はオリキャラ且つ少女に限ります)
・聖杯から夜の0時にメールによって『通達』が行われます。
・携帯電話、あるいはPCを持っていない少女に対しては、手紙、テレビ、ラジオ、モールス信号、ラブレター、ルーラーによる直接的な伝言などを用いて行われます。
・架空の街内には記憶を取り戻せなかった少女達と、少女達の家族や知人を模した偽物達がNPCとして存在しています。
・NPCは特殊能力やサーヴァント等を持ってはいません。
【サーヴァント】
・サーヴァントは記憶を取り戻すと同時に、召喚される英霊です。
・マスターは皆少女ですが、サーヴァントが少女である必要はありません。
・サーヴァントがマスターを失った場合、サーヴァントは消滅します。
・ただし、消滅するまでに令呪を持ったサーヴァントのいないマスターと再契約を行うことで、消滅をまのがれることが出来ます。
【マスター】
・サーヴァントを失ったマスターは消滅しませんが、原作における教会のような安全地帯はありません。
・それどころか、ルーラー雪華綺晶は積極的にサーヴァントを失ったマスターを殺しに行きます。
・マスターが令呪を失ってもサーヴァントは消滅しませんが、サーヴァント次第では裏切っちゃおっかな―チラッチラッとなるかもしれません。
<時刻について>
未明(0〜4)
早朝(4〜8)
午前(8〜12)
午後(12〜16)
夕方(16〜20)
夜(20〜24)
<登場話候補の募集について>
・5/1(予定は未定)を登場話候補の一応の募集期限とします。
・募集期限は変更する可能性が十二分にあります
・他の聖杯戦争スレからの流用も、同トリップからの投下なら構いません。
・投下する主従は、クラスを一巡せずに同クラスをいくつ投下しても構いません。
・その他細かいルールや質問があったら随時対応し、最終的なルールは参加者決定時に決めようと思います。
候補作執筆にあたって考えられる質問への返答
Q.そもそも少女とは何ですか?
A.年少の女子。ふつう7歳前後から18歳前後までの、成年に達しない女子をさす。おとめ。
Q.つまり19歳の魔法少女は少女ですか?
A.ぎりぎり大丈夫です
Q.ロリババアは少女ですか?
A.非常に難しい問題ですが、アナタが少女だと思うキャラクターを尊重します。
Q.ロリババアの定義は何ですか?
A.わかりません、仮に100歳以上としておきます。
Q.自称〜歳の自称少女はありですか?
A.疑わしきは罰せずなので、年齢詐称の証拠が無い場合はその年齢として扱うべきでしょう。
ただ、あまりにも無理があるだろ……っていう場合には察してください。
Q.男の娘は少女ですか?
A.男の娘は無しでお願いします。半陰陽は可能です。
Q.男装は?
A.ありです。
Q.TSはありですか?
A.(女→男)はなしでお願いします。(女→男)は精神性が少女であれば。
非常に難しい問題なので、アナタが少女だと思うキャラクターを尊重します。
Q.アニポケのベイリーフは可愛いので、実際少女ですね?
A.なしでお願いします。普通に現代の街を歩ける〜コスプレとして扱われるぐらいの人間の見た目をした少女でお願いします。
Q.野獣先輩は女の子説があるので、多分少女だと思うんですけど(名推理)
A.野獣先輩はどう見ても男ですし、そもそも24歳だと思います。
Q.変身して大人になる少女は大丈夫ですか?
A.変身が解除されれば大丈夫です。
Q.変身して少女になる大人は大丈夫ですか?
A.
, -‐=ニニ丶、__
,ィ';´ ̄-==ミ' 、ヾヽ / ̄ ̄ ̄ヽ
〃' ,z=二"´~`' __ミ、ヽ ヽ | 君 |
{,ッ'´_彡=、__ `ミ'iヽ ヾ ':| |
リ,. ==、li, r_,==ュ、ミ!ヽ ∠ |
','===ミ',__,r彡==ミ、_ミ_,.、l i i| は |
{l,zェデ!‐l{、=ェェzヂT-、lゝ-ト、___/ __
゙'ト==彳 `ミ== '′ iz'<彡、-、、 / ̄ ̄',´;:;:`
. V、/ゝ-く__',、 l, li l-ヘヽ ヽヽヽ,/;:;:;:;:;:;:;:;::;ヾ:;:
ヾ-ァニニニ≦、l l,. イ l,.. --―ム-‐ 、;:;:;:;:;:;:ヾ
_,ゞ`,二二,ーイツ/ ,/_,. - '_´,. -- ヾ;:;:;:;:;:;:
__,,.. -‐'´/:.rツノノ彡'"´ /∠. -‐/ / U };:;:;:;:;:
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<,.ヘヽ/ / // / /~゙7 /ー-:';:;:;:;:;:;:
初 | У,/ // '/;:;:;:;/ /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
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老 | /,イl /ル〃/ / l/`丶:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/
| l/|l|iι/ l / ,il ' / / \;:;:;:;:/::::
だ | |l|! ,' | il u ,i il l l ,>'":::::::::::
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Q.サーヴァントも全員少女にするべきじゃないでしょうか?
A.この聖杯戦争は百合聖杯戦争ではなく、少女聖杯戦争です。
主役である少女が少女たらんとするには、やはりボーイ・ミーツ・ガールや、大人、あるいはペットのワンチャン存在があった方が実際望ましいと考えます。
あと、そんなに少女のサーヴァントが思い浮かびません。
Q.この聖杯戦争の舞台は電脳空間ですか?
A.違います。
Q.OPでルーラーが登場していますが、エクストラクラスのルーラー存在はもう投下できませんか?
A.このルーラーは実際聖杯戦争が無事に遂行されること(及び、自分の目的)以外に大して関心が無いため、
聖杯の良心が新たなルーラーを呼び込むかもしれませんので、ルーラーを投下していただいても大丈夫です。
採用出来るかはわかりません。
Q.この聖杯戦争のテーマは何ですか?
A.
i|||||ミ,' ./ ',ミl|l|l|l|l|l|l|l}l|
/⌒V | / ̄ ̄` ,_',リ|l|l|l|l|l|l||l|
{ l ,' | ニニニヾ i|リ/l||l|l|l|l|l|
ヽ i | 卞O≧ , ___|リ|l|l|l|l|l|l|l|l|
|ハ |  ̄ l ≦O|>/l|||/`,||l
||||||! | l リ l|l|l /|l|l|
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ノ∧ | \ 丶ニニ/ //l|l|l|l|l|l|l|l
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1話目の候補話を投下します、聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚様に投下させていただいた作品を一部修正したものです。
◇
「ねぇ、死神様ってしってる?」
◇
カチ。
シャープペンシルがノックされる音。
カチ。カチ。
私の目の上で芯が伸びていく音。
カチ。カチ。カチ。
目を閉じる。
カチ。カチ。カチ。カチ。
無理やり、目を開けさせられる。
カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。
「しけい」
カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。
や、え
グヂュ。
◇
「では今日は、転校生を紹介します」
都立某小学校――六年二組は、極一般的な小学生の集まった教室である。
つまり、人を殺さず、性交をせず、窃盗、その他犯罪行為には手を出さず、見える範囲でのいじめもなく、生徒全員で授業のボイコットをすることもない。
そんな平和な六年二組に、この時期になって転校生が訪れた。
「えっ、どんな子?」
「かっこいい?」
「女子だろ、俺見たんだぜ」
思い思いに声を上げながら、生徒の誰もが皆、廊下で待機する転校生を盛大な拍手を送る。
手製の打楽器に迎えられて、ざっ――と、音を立てて扉が開く。
「はじめまして――」
息を呑む。
時が止まる。
どのように形容すべきだろう、彼らは皆、十二歳の少年少女でしかなかった。
美しい――たった、それだけのことを表現するだけだというのに、脳髄のどこを探しても彼女を形容するに相応しい言葉が浮かばない。
「蜂屋あいです」
パチ。パチ。パチ。
まばらな拍手が響き渡る。
手を動かす余裕など無かった、それでも彼女に嫌われぬために意識を振り絞って拍手を行ったのだろう。
少年少女の全ては、彼女を瞳に焼き付ける――ただ、それだけのために、捧げられていた。
彼女が微笑む。にこり、と。
担任教師に案内されて、己の席へと向かう。
歩く度に、異邦人を思わせるストロベリーブラウンの髪がゆれる。
匂う。
甘い、甘い、匂いが。
理性を狂わせる毒の匂いが。
教室中の全ての目を奪って、歩く。
誰かが呟く。
「……天使様」
言った本人は、己の発言の後に気づいた後、顔を赤らめ、ぶるんぶるんと首を振った。
だが、それは的を射た発言だったのかもしれない。
神秘学【オカルティズム】が、人に理解出来ぬ現象を仕舞いこんでおくための箱であるというのならば、
彼女という存在もやはり、人に永遠に理解できぬ天使という括りに入れてしまうべきだったのだろう。
彼女が、微笑む。
まさしく、それは天使の微笑みに他ならなかった。
酩酊から覚めたかのように、素面へと戻った少年少女達は天使――蜂屋あいを取り囲む。
転校生とはすなわち、六年二組にとっての異邦人である。
分解されぬ未知は恐怖に他ならない。
質問が飛ぶ、蜂屋あいは笑って質問に答える。
それは、好きなテレビ番組の話であり、好きな本の話であり、好きな料理の話であり――だが、大した話ではない。
ただ、彼女も同じ人間だと確認し、彼女を分解するための取っ掛かりを見つけ、そして彼女を理解していくための必須手順。
そして、蜂屋あいはクラスに馴染んでいき、いつしか転校生であるという彼女の特異性も薄れていく。
それだけの話である。
それだけの、ただそれだけの、つまらない、話。
一週間が、経過した。
蜂屋あいは六年二組に馴染み、六年二組もまた、彼女を受け入れた。
もう時間は残り少ない、それでも一緒に思い出を作っていこう、と。
彼女は微笑んだ。
放課後、夕日は世界を丸ごと焼きつくしてしまいたいかのように紅く燃えていた。
冬だった、あるいは凍てついた世界を否定したいのかもしれなかった。
「……ぐすん」
六年二組、教室の隅、ロッカーに寄りかかって、一人の生徒が泣いていた。
六年の冬、初恋で失恋だった。
彼女は同じクラスの男子生徒に惚れていたが、その男子生徒が他のクラスの女子とキスするのを見てしまった。
燃えるような思いは、失恋の衝撃で彼女の心をどろどろのケロイドハートに変えていた。
彼女とその男子生徒の家は隣同士だった、帰りたくなかった。
排出される涙と一緒に自分もどこかに流れてしまいたかった。
泣く、泣く、泣く、泣く、泣く。
「どうしたの?」
見られていた、元々真っ赤になって泣いていた顔が、さらに赤くなる。
振り返る、涙で視界がぼやけていた。
ただ、目の前の少女が白いワンピースを着ていたことしかわからなかった。
涙を手で拭う、ハンカチが差し出されていた。
ありがとう――そう言えたかはわからなかった、涙と鼻水で声までぐじゅぐじゅだった。
ハンカチで、涙を拭う。
白い、白い、ハンカチ。
「……ありがとう」
今度ははっきりとお礼を言うことが出来た。
「ううん、いいの」
相手は、蜂屋あいだった。
やはり彼女は天使なのかもしれない、と少女は思った。
夕日を背に立つ彼女は――まるで、宗教画のように神々しかった。
「わたしでよかったら、おはなし聞くよ?」
思いがこみ上げてきて――少女はもう一度泣いた。
そして、いかに幼馴染の少年のことが好きだったかを、切々と語った。
蜂屋あいは、何も言わず、頷くだけだった。
話し終えると、もう一度ハンカチを借りるまでもなく、少女はいつの間にか泣き止んでいた。
もう、どうにもならないけれど、吹っ切っていけるような、そんな気がした。
「ねぇ、死神様ってしってる?」
天使の――その言葉を聞くまでは。
◇
死神様は、最近この小学校を中心として広まるようになったうわさ話だ。
その内容はありふれたもので、つまり殺したい人間を死神様が殺してくれるというものである。
少女は、蜂屋あいの言葉を聞いた瞬間、走りだしていた。
「何で気付かなかったんだろ!私、私、私、私、まだ、間に合う!」
恋人がいなくなれば、自分にもチャンスが生まれる――至極簡単な帰結だった。
再び着いた恋の炎が、彼女の倫理観を燃やし尽くす。
殺してでも、愛されたい。
死神様を呼ぶのに必要なものは、死体だ。
猫、犬、虫、何でも良い。
とにかく、死体を十三個集めて、校舎裏にある動物の墓に供え、死神様と三回呟いた後、殺したい人間の名前を大声で三回言う。そして最後に殺して、と叫ぶ。
そうすると、死神様が殺してくれると、そういう噂だ。
何故、死神様という噂が誕生したのか、その由来は明らかになっていない。
だが、飼育小屋のウサギだけに留まらず、とにかく場所に困った動物を埋葬する、この場所が、
あるいは近年、起こっている奇妙な事件が、
または、そのような噂を作り、信じこまなければならなかった程の誰かの憎悪が――そのような噂を作ったのだろう。
死体は全て、虫だった。
首無し死体の方が効力が良いという噂を聞き、首は足で潰しておいた。
少女は虫を嫌っていたが、それ以上に幼馴染を奪った少女が嫌いだった。
「死神様」
自分の恋が叶う、そう考えると人を殺すというのに奇妙な高揚感すらあった。
「死神様」
息が荒くなる、息が荒くなる、息が荒くなる、心臓が高鳴る。
「死神様」
とうとう、言う。
告白の言葉は言えなかったけれど、この殺し文句は確実に言い切る。
「森小春!」
自分から幼馴染を奪った、憎い相手。
「森小春!!」
死んでしまえば良い、私が想像も出来ないような苦しい死に方で。
「森小春!!!」
彼の隣にいるべきは私なんだ!!
「殺してッ!!!!!」
「まかせて」
ぞう――と、鳥肌が立つ。
周囲を見回しても、誰もいない。
しかし、声だけはあったのだ。
それでも、少女は笑った。
「やったあ」
死神様はいたのだ。
翌日、森小春という少女が刃物でめった刺しにされて死んでいた。
しかし、休校にならなかったのは他でもない。
彼女の家族も皆死んでいたために、誰も学校に連絡するものがいなかったからだ。
翌々日、担任教師の訪問で、事件は発覚することとなる。
◇
森家の葬式が終わり、幾日かの臨時休校も終わり、それでも日常には戻れない。
森小春の恋人だった少年は、涙ごと心まで流し尽くしてしまったようだった。
そんな彼を慰めようとする、幼馴染にも何も思えない。
ただ、時間が解決するその時まで、彼は機械のように生活を続ける。
「ねぇ、死神様ってしってる?」
そのはずだった。
隣のクラスの死んだ彼女の机の上に置かれた花瓶、
集団下校のための教室移動の途中で、彼はそれを見るために2分程、ぼう――と立ち止まる。
それを憎々しげに見る隣の幼馴染にも気づかずに。
少年の手を取り、無理にでも連れて行こうとする少女の手を払い、彼はただ、立ち尽くす。
何度かそのやりとりを繰り返した後、少女と共に教室へ向かうはずだった。
その日、少女は風邪を引いて学校を休んでいた。
だから、少年はぼう――としていた。
そんな、少年を見て天使が――蜂屋あいが近づく。
「ねぇ、死神様ってしってる?」
それだけで、十分だった。
少年は、少女の死が発覚する前日、担任教師が朝礼で死神様のことを注意していたことを思い出した。
くだらない噂に踊らされて、命を玩具にするな、と。
何故、忘れていたのだろう。
いや、恋人が死んだのだ――細かいことなど覚えていられるはずがなかった。
それは小学生らしいあまりにも突飛な発想であった。
死神様の儀式が行われていた、だから恋人と家族が死んだ。
あまりにもバカバカしい、イコールで結ばれるはずがない。
だが、彼は真実がどうであれ、それを真実と決めつけた。
何故ならば、彼は少年だからだ。
彼女の仇を取ろうとするならば、自分の手に負える相手でなければならないからだ。
蜂屋あいの言葉に、少年は返答もせずに駆け出した。
死神様を行った犯人を、絶対に見つけ出して――殺す。
ただ、それだけしか考えられなかった。
天使は笑った。
◇
翌日の放課後、少年とその友人達、蜂屋あい、そして少年の幼馴染の少女は橋の下に集まった。
いや、幼馴染の少女に関しては呼び出された――という方が正しいか。
少年の友人達が集まったのは、まさしく正義のためである。
腑抜けていた少年が犯人を探すと言い出した、ならば友人のためにも、そして亡くなった少女のためにも、
そして、どこかワクワクする非日常感のためにも、犯人探し、そしてクライマックスに協力するのが筋というものだろう。
「お前が――死神様を呼んだのか」
「ちがう……私じゃない!」
少女が儀式を行った姿は誰にも見られてはいない、ならば誰もその犯行を特定できないはずである。
しかし、虫を集める彼女の姿を目撃した者は何人かいた。
疑わしきを罰する――例え、幼馴染だといっても、それが全てだ。
重要なのは、犯人が裁かれることだ。
「お前だろ」
「虫取ってたろ」
「謝れよ」
「死ね、ブス」
「そうだ、死ねよ、死神様呼んだんだろ」
「死刑だ」
「死刑」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」
「まって」
柔らかな声が、少年たちを止めた。
蜂屋あい――天使の言葉だ。
「魔女狩りって、しってる?」
まるで、童話を語るかのような優しく甘い声だった。
「魔女はみずにうかぶんだってね」
丁度、川の側で、橋の下だった。
行わない理由が無かった。
「わかったよ、俺信じるよ、お前のこと」
「ほ、本当……?」
これほど空虚な信じるもないだろう、それ程に少年の瞳は乾ききっていた。
だが、それを信じなければならないほどに、少女は恐れていた。
魔女狩りという響きを、自分が辿りかねない運命を。
だから、少年の言葉に信じて媚びなければならなかった。
「抑えつけろ」
少年の言葉と同時に、少女は逃げ出そうとした。
だが、少年の友人がまっさきに掴んだのは少女の腕だった。
犬がリードの範囲以上に走れないように、少女もまた囚われた。
「信じるから、川に顔付けろよ……浮かばないように、ずっと、ずっと」
「えっ、ちょっ……」
少年の友人達に抑えこまれ、少女は川の中に顔を沈めることとなった。
息が出来ない、力尽くで抑えこまれているため、顔を上げることも出来ない。
いや、必死に暴れて顔を上げようとすれば、もしかしたら、水から抜けられるのかもしれない。
そして、それは浮く、ということになる。
浮けば魔女で、沈めば魔女ではなくなる。
いつまで息が持つかはわからない、それでも精一杯頑張ろう、と少女は思った。
少年に信じてもらいたい――それだけが望みだった。
あんな女のために、少年に嫌われてたまるか、そう思った。
「ぶく」
「ぶく」
「ぶく」
「ぶく」
「ぶ」
息が、1分も持たなかったこと。
そして、少女はそのために酷く暴れたこと、そこまでは覚えている。
「やっぱ、お前じゃん……死ねよ、ヒトゴロシ」
それ以降は、少女の記憶に無いし、刻み込まれることもない。
◇
蜂屋あいは、人の心の色が見えた。
青く燃える炎の色、蝋燭の炎のようにきらめくオレンジ、そして黒色。どす黒い闇の色。
心が揺れると、その色もそれに合わせてゆらゆらと変わる。
だから、少女は人の心を変えるために――教室を作った。
少女は決して、直接手を下すこと無く、命令することもなく、扇動することで誰かがいじめられ続ける教室を。
しかし、表面上では完璧で優秀な教室を。
小学生の行いではなく、
いや、人間の行いでも無かったのだろう。
彼女は悪魔だった。
天使のような微笑みを浮かべた、悪魔だった。
だが、悪魔はある少女――黒い天使によって、とうとう表舞台へと引きずり降ろされることとなる。
詳細は語るまい、少女たちは戦い――そして、結果は黒い天使の勝ち、ということになるのだろう。
彼女の意思を引き継ぐ者、彼女の作ったシステムを残し、彼女は奈落へと消えた。
気づけば、彼女は街にいた。
そして、彼女は――別のシステムを作った。
死神様――願うことで、好きな人間を殺すことが出来るシステム。
聖杯戦争が本格化すれば、このシステムを稼働し続けることが出来なくなるだろう。
それでも、彼女のサーヴァントと利害が一致した。
彼女のサーヴァントは人を殺したがっている――おともだちを欲しがっている。
彼女はこのシステムによる心の変化が見たい。
「だから、アリスちゃん。わたしたちきっと、いいおともだちになれるわ」
「うん、きっとね」
◇
「だから、みんな、死んでくれる?」
【クラス】キャスター
【真名】アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
【属性】中立・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:A+ 幸運:C 宝具:E
【クラススキル】
陣地作成:A
魔力及び死者のマグネタイトを利用することで、彼女のための不思議の国(ワンダーランド)を形成することが出来る
道具作成:C
魔力及び死者のマグネタイトを利用することで、トランプの兵隊、偽アリスを生産することが出来る
また、このスキルによって拷問具(アイアンメイデン等)を召喚することが出来る
【保有スキル】
堕天使の寵愛:A
彼女は堕天使ネビロスの寵愛を受けているために、
屍体を蘇生し彼女のおともだちにすることが出来、また呪殺魔法に優れる。
魔王の寵愛:A
彼女は魔王ベリアルの寵愛を受けているために、
魔力のパラメータに関して、+の補正を受ける。
精神汚染:E
彼女の常識を、人間のそれと思ってはいけない。
単独行動:D
彼女は保護者である魔王と堕天使から離れて、たった一人ワンダーランドで過ごしていた。
【宝具】
『不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
彼女が創りだすは不思議の国の遊園地、女王様は当然アリス。陣地作成スキルによって作り出される遊園地。
完成が進むにつれて、陣地作成、道具作成に有利な補正がかかり、陣地作成ならばミラーハウスやメリーゴーランド、
道具作成ならば、大量のトランプ兵やアリスを生み出すことが出来る。
また、彼女の逸話から偽りの東京内で死者が増えれば増えるほどに、この宝具が完成するまでのスピードが早くなる。
【人物背景】
魔王と堕天使の寵愛を受けた永遠の少女
【サーヴァントとしての願い】
おともだちをつくる
【マスター】
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている
【マスターとしての願い】
みんなの心の色を見る
【weapon】
特になし
【能力・技能】
小学生離れした身体能力と知能を持つ。
【人物背景】
人間の心を「色」に例えて見る感受性の持ち主であり、
いじめによってクラスメート全員の心を弄ぶことで「心の色」が次々変わっていくことを楽しんでいた。
【方針】
色を見る
このスレ建てた時のトリップがこれであってるかを確認したら、今夜の投下は終了させて頂きます。
合ってるっぽいですね、おやすみなさい
MAPを忘れていました
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新企画創設&スレたて乙です
拙作ですが投下いたします
ビデオテープを早回ししたかのように世界が加速する。
雨が一瞬で降り止み、波が荒れ狂う。
太陽が紅色の軌跡を描いて空を駆け、朝と夜が瞬時に入れ替わる。
神父の生み出したスタンド、メイドインヘブンは圧倒的だった。
そのスタンドの前に、エルメェスもアナスイも、父さんも倒された。
そしてこのあたしの命も今尽きようとしている…ッ!
なんて短い人生だったんだろう。そうあたしは自嘲した。
だけど恐れは何一つなかった。
ウェザーの遺した意思は、既にエンポリオに託した。
あの子ならきっと大丈夫。
すぐ泣くけれど心の奥には強い黄金の精神がある。
きっとあたしがいなくても神父を倒してくれる。
そう確信を持って言える。
「待ってッ!!待ってッ!!お姉ちゃんやめてッ!!早くロープをたぐり寄せてェエエーッ!!」
ごめんねエンポリオ。だけどあたしはここで神父を食い止めなきゃならない。奴はここで疲労するッ!
イルカに結び付けたロープを裂いて、あたしは海(オーシャン)に投げ出された。
「ストーン・フリィイイ―――ッ!!!!!」
傍らにスタンドを呼び出して、神父へと対峙した。
―――幸せに、エンポリオ。
神父に切り裂かれた瞬間、あたしは最期にそう願い、世界が暗転した。
☆☆☆
「まったく…そんなことも忘れてこんなニセモンの町でのほほんと過ごしてたなんて…自分で自分が嫌になるわ」
徐倫は自らのサーヴァントにそう愚痴をこぼした。
あの時、確かに自分は神父に殺されたはずだった。だが気づかないうちにこの町に呼び出され、記憶を失って生活していた。
父さんとママが離婚せず、あたしたち3人家族で仲良く暮らしていた。それはそれは幸せな暮らしだったのだろう。
だけど肩に何故か奇妙な疼きを感じていた。その理由は何故だかはわからなかった。
ある日鏡で肩を見てみると、そこには星形のあざがあった。
それを見て、今までの思い出が濁流のように押し寄せた。
父さんの思い出、ママの思い出、エルメェスの思い出、F・Fの思い出、ウェザーの思い出、アナスイの思い出、エンポリオの思い出。
大事な思い出を今まで奪われていたなんて全く屈辱だった。
「ようやく記憶を取り戻したようだね、徐倫」
「ええ、勝手にこんなとこに呼び出した上に、記憶全部持っていってくなんて…まったくやれやれだわ」
徐倫はため息を一つ吐き、再び言葉をつづけた。
「にしてもおったまげだわー。あたしが呼び出したサーヴァントってのが、まさかあたしのひいおじいちゃんのそのまたおじいちゃんなんて。
時を隔てた邂逅ッつーの?どんだけあたしの家系は奇妙な経験するのかっつー話なのよ」
「ははは、確かにそうかもね。でも僕は嬉しい気持ちもあるんだ。こんな場所だけど、自分の子孫に会うことができてうれしいって気持ちがね」
徐倫は自分のサーヴァントをよく観察した。身長は195cmはあるだろうか。紳士風の雰囲気を持つが、どこか父に似ている部分がある。
性格だとか、顔つきだとかではなく、なにか根柢の部分で。
「それで徐倫、君は…聖杯に何かを託すのかい?」
「…そうね、たしかにやり直したいような辛いことはたくさん経験してきたわ」
それでもと、徐倫はそう言葉を返した。
「辛い思い出以上にあたしはたくさん楽しかった思い出がある。辛かったからこそ得た出会いがある。
その思い出があるから今のあたしがある。過去なんかを変えたらきっといまのあたしじゃあないあたしになる。
未来もすでにあの子に託した。今のあたしには後悔なんか砂漠の砂粒ひとつほどもありはしないわ」
そもそも聖杯なんかどうにも胡散臭くて信用できないのよねと徐倫は眉を顰め、サーヴァント―ジョナサン・ジョースターは
徐倫に穏やかにほほ笑んだ。
「そうだね。僕の一族の家系なら、そういうと思ってた。」
自らの命が果て、体が宿敵に奪われてからも、ずっと見てきたから分かる。
自分の星の一族は黄金の精神を持ち、悪に屈せぬ心がある。
ジョナサンはそのことを誇りに思い、自らもその一員であることに嬉しさを感じていた。
「徐倫、ここからはまた過酷な戦いが始まるけれど覚悟はいいかい?」
「そんなもの、あの石造りの海のなかでとうに済ませてきたわ、おじいちゃん」
そして二人は互いに笑ってみせた。
☆☆☆
始まりのジョジョと終わりのジョジョ、二人の星のあざを持つ者の奇妙な冒険が、再び始まる―――
【クラス】
セイバー
【真名】
ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
【属性】
秩序・善
【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:B+ 敏捷:C 魔力:C 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
黄金の精神:A
正義の輝きの中にある精神。このスキルを持つものは悪に屈せぬ心を持つ。
同ランク以下の精神干渉スキルを無効化し、困難の中へ立ち向かうとき、自身の筋力と耐久のステータスを上昇させる。
波紋:A
特別な呼吸法で血液中に特殊な波を起こし、太陽とエネルギーを生む技術。
Aランクであれば一流の波紋使いであることを示す。
またセイバーは師の波紋を受け継いでいるため、波紋量が通常よりも高い。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『受け継ぐは幸運と勇気(Luck&Pluck)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
セイバーが黒騎士ブラフォードより受け継いだ剣。
絶対の危機に陥ったとき、ほんの僅かな可能性でもでも突破口があるのならば、それを発見することができる。
ただし、あくまで突破口を見つけるのみであり、見つけた突破口を実行し、成功できるかどうかはセイバー自身の幸運と勇気にゆだねられている。
かつてセイバーが宿敵との対決で、この剣を用いて逆転の道しるべを見つけたこと、セイバーの窮地の中での爆発力から、この概念が付与された。
『奇妙な冒険の幕引(ビザール・アドベンチャーズ・エンド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:2
かつてセイバーが燃え盛る船より、自らの嫁と見ず知らぬ赤子を棺桶に乗せ無事に逃がした逸話より得た宝具。
自身の魔力を全て使い棺桶を生成、中に入れさせることであらゆる攻撃をも通さぬシェルターとなり、どのような敵地からも
地脈に棺桶を漂流させて逃がすことができる。
この宝具を使用後、セイバーは消滅する。
【weapon】
受け継ぐは幸運と勇気(Luck&Pluck)
【人物背景】
1代目ジョジョ。ディオとの因縁の始まりでもあり、戦いの末に海に沈み―
【サーヴァントとしての願い】
ない。大切な人との離別は何度もあったが、自分だけの都合で覆してはいけないと考えている
自分の子孫たちも、彼らの意思を捻じ曲げるような願いをしてはいけない
今は徐倫の意思の元に、彼女を守る
【マスター】
空条徐倫@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
【マスターとしての願い】
辛い過去はあったが、その思い出があるから今の自分がある
未来は既に託している。
【weapon】
ストーン・フリーのスタンドビジョン
【能力・技能】
破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - 1 〜 2m / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - A
徐倫の体を糸状に変化させ操るスタンド。糸を束ねて立体の人型のスタンドビジョンにすることも可能
糸状のときはパワーはないが遠くまで糸を伸ばせる。
人型のビジョンの時は、射程距離は落ちるものの、高いパワーの攻撃を放つことができる。
【人物背景】
6代目ジョジョ。DIOとの因縁の終わりでもあり、闘いの末に海に散り―
【方針】
対聖杯。聖杯が悪であると分かったならブッ壊す。
闘いの中で悪に犠牲になろうとしている人がいるなら彼らも守る
以上で投下狩猟です
一応徐倫も19歳だからぎりぎり範囲内ですかね?
>>23
投下乙です。
徐倫が来るとは予想外でしたが、サーヴァントがジョナサンと来れば納得です。
徐倫の少女性においてもっとも重要な点は、承太郎の存在であると思います。
少女とは、子どもでもなく大人でもない状態。
徐倫はメンタル的にものすごい成長しますが、承太郎との比較において少女足りうるのだと思います。
であれば、ジョナサン・ジョースターを置くことで、
徐倫の少女たらしめるというのはものすごいバランス感覚であると思います。
投下ありがとうございました。
少女は、誕生日会の夢を見ていた。
テーブルいっぱいに並べられたごちそうと、中央には丁度少女の年齢と同じ本数のろうそくが刺さったケーキ。
会場となる自分の家は、辺り一面紙で出来た飾りでドレスアップされ、自分の家なのに自分の家でないような、どこか不思議で――そして、素敵な気分にさせてくれる。
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、おともだち――皆が皆、自分のことを祝福してくれる。
本当に幸せな夢を見ていた。
ジリリリリリ――と、ベルが鳴る。
少女を現実へと連れだす、機械的で冷たい音色だ。
目が覚めて、少女はほんのすこし泣いた。
記憶を――取り戻してしまった。
「さくらちゃん?起きてる?」
「うん……お、」
「お?」
「お母さん……?お母さん…………」
「まぁ、さくらちゃんはあまえんぼさんね」
二階の彼女の部屋へと入り込んだ母に抱きついて、涙で潤んだ目を隠した。
この世界の真実は、残酷だ。
いつかは覚めなければいけない夢だというのに、全てが皆偽物であるというのに、
「お母さん、聞いて……わたし」
「もう、どうしたの急に」
記憶を取り戻せない内は、なんとも思っていなかった。
ただ、他の少女達のように極平々凡々と――家族が揃っているという幸福を平然と受け入れて、そうやって過ごしてきた。
しかし、記憶は戻ってしまった。
だから――もっと話したい。母親に自分の言葉を聞いて欲しかった。
おはようも、いってきますも、ただいまも、いただきますも、ごちそうさまでしたも、おやすみも、学校であったことも、友達のことも――自分のことを、もっともっと話したかった。
「お母さん、みんなでお花見に行こう」
「うん」
「夏になったら、一緒に海水浴に行くの……秋は運動会に来てほしいし、冬はスキーに行こう」
「うん」
「みんなで、行こう……」
「うん、一緒に行こうね……さくらちゃん」
思い出だって、もっとたくさん作りたい。
アルバムに皆で一緒に撮った写真が欲しい。
思い出の写真を見て、皆であの時は楽しかったねって笑いあいたい。
たとえそれが偽物でも。死んでしまって、いるはずがなくても。
お母さんと、もっと一緒にいたい。
お父さんがいて、お兄ちゃんがいて、おともだちがいっぱいいて、だから、寂しくなんか無かった。
お母さんがいて、お母さんと話せて、お母さんが――抱きしめてくれる、この暖かさを知らなかっただけだった。
だから。
「わたし……お母さんに会えてよかった」
「……私も、さくらちゃんに会えて良かった。さくらちゃんが生まれた時から、ずっとずっとそう思っているわ」
ごめんなさい、お母さん。
「……いってきます」
「さくらちゃん?」
「さくらさん?」
「さくら?」
少女は走りだす。
行くべき場所はわかっている、そこは少女の始まりの場所だった。
薄暗い父の書庫。今の少女ではとても読むことの出来ないような本の山。
そこにいたのは、触れれば砕けてしまいそうな華奢な躰に新選組の羽織を纏った少女であった。
春先にも関わらず首元にマフラーを巻いているのは、その病的に白い肌が――より多くの温もりを欲するからか。
髪すらも色を失うほどに寒いか、日本人にありながらその髪色は天然の金に近づくほどに白い。
彼女が、少女に問う。
「問おう、貴方が私のサーヴァントか」
「はい、わたしがあなたのマスター……さくら、木之本桜です」
桜は、ふうと息を吐く。目の前の少女から発せられる気は烈しい。
意図的に威圧しているわけではないのだろう、だが己のマスターが何者であるかを見ようとするのだ。
その気は無自覚的に鋭くなろう。
「貴方は何を願う?」
「帰りたいです」
「ここが貴方の家ではないのか?」
「ここはわたしの大切なおうちです……でも、お父さんも、お兄ちゃんも、雪兎さんも、ケロちゃんも、知世ちゃんも、みんな、みんな、待ってると思うから、
それにお母さんも、お空の上のきれいなところで……見守ってくれていると思うから。
わたしはほんの少しだけ、いい夢を……見ていただけなんです、きっと、さびしいけど、つらいけど、かなしいけど……でも、帰らなくちゃ」
「わかりました」
少女がやんわりと微笑む。
「このセイバー、沖田総司。きっと、貴方を家に帰します。だから……泣かないで」
桜も微笑みながら、うっすらと――気が付かぬままに、泣いていた。
「もう大丈夫……絶対、大丈夫だよ……セイバーさん」
【クラス】セイバー
【真名】沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:C 耐久:E 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:E
幕末に魔力とかそういうのねぇから!
神秘の薄い時代の英霊のため対魔力がほとんど期待できない。
申し訳程度のクラス別補正である。
騎乗:E
新選組が騎馬を駆って活躍、という話は寡聞にして聞かぬ。申し訳程度のクラス別補正である
【保有スキル】
心眼(偽):A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
病弱:A
天性の打たれ弱さ、虚弱体質。桜セイバーの場合、生前の病に加えて後世の民衆が抱いた心象を塗り込まれたことで、「無辜の怪物」に近い呪いを受けている。
保有者は、あらゆる行動時に急激なステータス低下のリスクを伴うようになる、デメリットスキル。
発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。
縮地:B
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇となる
無明参段突き
種別:対人魔剣 最大捕捉:1人
稀代の天才剣士、沖田総司が誇る必殺の魔剣。「壱の突き」に「弐の突き」「参の突き」を内包する。
平晴眼の構えから“ほぼ同時”ではなく、“全く同時”に放たれる平突き。超絶的な技巧と速さが生み出す、防御不能の秘剣。
【宝具】
『誓いの羽織』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
幕末に京を震撼させた人斬り集団「新撰組」の隊服として有名な、袖口にダンダラ模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織。
サーヴァントとして行動する際の戦闘服と呼べるもので、装備する事によりパラメータを向上させる。
また通常時のセイバーの武装は『乞食清光』だが、この宝具を装備している間、後年に「沖田総司の愛刀」とされた『菊一文字則宗』へと位階を上げる。
一目で素性がバレかねないあまりにも目立つ装束のため、普段はマスターが用意した袴を着用している。
『誠の旗』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50
最大捕捉:1〜200人
桜セイバーの最終宝具。
新撰組隊士の生きた証であり、彼らが心に刻み込んだ『誠』の字を表す一振りの旗。
使用者本人も魔人アーチャーとの最後の戦いまで気付いていなかったが、一度発動すると、
かつてこの旗の元に集い共に時代を駆け抜けた近藤勇を始めとする新撰組隊士達が一定範囲内の空間に召喚される。
各隊士は全員が独立したサーヴァントで、宝具は持たないが全員がE-相当の「単独行動」スキルを有しており、短時間であればマスター不在でも活動が可能。
ちなみにこの宝具は新撰組の隊長格は全員保有しており、
効果は変わらないが発動者の心象によって召喚される隊士の面子や性格が多少変化するという非常に特殊な性質を持つ。
例として挙げると、土方歳三が使用すると拷問などの汚れ仕事を行ってきた悪い新撰組、
近藤勇が使用すると規律に五月蝿いお堅い新撰組として召喚される。また召喚者との仲が悪いとそもそも召喚に応じない者もいる。
桜セイバーが召喚するのは、世間的に良く知られたメンバーで構成されたポピュラーな新撰組である。
【weapon】
・『乞食清光』
日本刀『加州清光』の愛称。諸説あるが、史実通り沖田総司の愛刀。
【人物背景】
桜セイバーさんが血を吐いた!?謝れ!桜セイバーさんに謝れ!
【サーヴァントとしての願い】
不明
【マスター】
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画版)
【マスターとしての願い】
帰る。
【weapon】
『クロウ・カード』
魔術師クロウ・リードが、自身の持つ「闇の力」の魔力を用いて生み出したカード。カードの裏面はクロウが使っていた魔法陣が記されている。地色は赤に黄色の縁。
「風」「樹」「跳」「翔」「水」「幻」「花」「剣」「雷」「影」「鏡」「盾」のカードを所持する。
『封印の杖』
クロウカードを封印・解除するアイテム。普段はクロウカードをしまう本の鍵の形をしており、さくらは紐を通して持ち歩く。
「汝のあるべき姿に戻れ、クロウカード!」と唱え、杖の先端にある赤い部分で空中を打つことで実体化しているクロウカードが封印される。
カードの魔力を引き出す際は、カードの名を呼びながら、宙に放り上げたカードを赤い部分で打つ。
【能力・技能】
魔力保有者。カードキャプターとしての能力を持つ。
チアリーティング部所属で、バトンを得意とする。スポーツも得意な模様。
家事は当番制なのでおおよそこなす事ができるが、裁縫は苦手。
【人物背景】
友枝町(東京都内に存在すると思われる)に住む小学4年生。
父の本棚の中で発見した不思議な本を開いてしまった事で、クロウ・カードを解き放ってしまい、封印の獣ケルベロス(ケロちゃん)と共にクロウ・カードを集める事になる。
性格は明るく友達想いで、どこか天然である。「ほえ〜」、「はにゃ〜ん」、「さくら怪獣じゃないもん!」などの可愛すぎる名言多数。
【方針】
未定
投下終了します。
木之本桜のステータスに関して、能力技能、人物背景の点で以下のSSを利用させていただきました。
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/70.html
スレ立てお疲れ様です
いくつか質問があるので書き込ませていただきます
1.限定的に少女になれる男性や人外の参戦は可能ですか? 理由をつけて姿を少女に固定すれば可能ですか?
2.少女以下の年齢の女の子(幼女)は参戦できますか?
3.野獣先輩14歳説という学説があるのですがこれと女の子説を組み合わせればマスターとして参戦できますか?
ご回答の程、よろしくお願いします
>>30
1から順に
不可
可
不可
とさせていただきます
>>30
一番上に関して質問の意図を勘違いしていました、申し訳ありません。
まず、男性に関しては不可能です。
少女になれる人外ですが、これは可能とさせて頂きます。
人外の少女という視点からの切り込みは実際良いと感じるからです。
また、アトラク=ナクアの比良坂初音を誰かマスターとして出す可能性を潰したくないからです。
ただし、上記のQ&Aでも述べた通り、
普通に現代の街を歩ける〜コスプレとして扱われるぐらいの容姿でお願い致します。
ただ、沙耶の唄から沙耶を書くという人がいらっしゃいましたら、
正直読みたいので、それは可能です。
新スレ立て乙です
私も投下します
私がロシアからこの街に引っ越してきたのが一週間前のことだ。
地元の高校に通うことになったが、ロシア人のクォーターということもあって新しいクラスメイトと打ち解けられるか心配であった。
しかしその心配は杞憂に終わり、多くの友達を得た。
特に、東條希とは親友とも呼べる間柄となった。
そして今日も、放課後に希と共に少し寄り道をして、取り留めも無いおしゃべりをしながら帰路につく。
「また明日な、えりち」
「またね、希」
やがて私と希は別方向へ帰ることになり、別れの挨拶をお互いに交わす。
帰っていく希の後ろ姿を見やる。
この時、私は既に気づいていた。
私を含むこの世界の何もかもが間違っていることに。
*
彼女、絢瀬絵里が記憶を取り戻したのはその日の朝のことだ。
植えつけられた偽りの記憶と返却された本来の記憶が混ざり合い、絵里を混乱させる。
長い間記憶の混濁に悩まされていたせいで自分の部屋を出るのが遅くなり、その日は遅刻ギリギリの時刻に登校した。
学校で、絵里は今まで真面目に聞いていた授業を適当に聞き流しながら気持ちと記憶を整理し、本来の記憶との矛盾を探る。
まず、ロシアから引っ越してきたという時点で既におかしい。
絵里がロシアで過ごしたのはあくまで幼少期だけであり、日本に来たのは年齢が十を超える前だ。
そして絵里は音ノ木坂学院に通い、学院の統廃合を阻止するために結成されたスクールアイドルフループ「μ's」に所属していたはずだ。
だが、現在の絵里を取り巻く環境は全く違っていた。
通っている高校の名は違うし、クラスメイトも見知らぬ者が大勢いた。
さらに、この学校にスクールアイドルという概念自体が存在していなかった。恐らく、μ'sは存在しないだろう。
そして――
「………」
「希…あなたは本物なの…?」
――本来の記憶でも変わらず親友であった希が、この異様な世界に何の違和感もなく過ごしている。
絵里は人通りのない、夕日の照らす路地の交差点で、希の後ろ姿を見失うまで立ち尽くしていた。
彼女は一体…。
希が視界から消えると、絵里も自宅へ向かうために足を動かし始める。
とにかく今は、家に帰ろう、ここで考えていても仕方がないと思っての行動だった。
そこから動いたことが、結果的に絵里が一生を得ることになった。
歩き出してすぐに、自分のポニーテールに束ねた髪を『何か』が高速で触り、通り過ぎていった感触が絵里を襲った。
それは風ではなく、紛れもない実体化したものだと見ずともわかった。
その何かを見た途端、絵里は絶句する。
「え……!?」
それは短剣であった。
束ねた部分を自分で触ってみると髪の毛が十数本、手に付着していた。短剣が髪を擦り、その時に切られたのだろう。
動くのがあと3秒遅れていたら、間違いなく絵里の頭部に短剣が突き刺さっていただろう。
この短剣は絵里を亡き者にするために投げられたと容易に推測することができた。
短剣が放たれたであろう方向をみる。
そこには黒い忍装束で身を固めた異様な存在がいた。
まるで暗殺者のような風貌の男で、絵里を冷徹な目で見ている。
「…外したか。狙いを済ましたつもりだったのだがな」
「だ、誰!?」
「マスターのためだ。貴様もマスターと分かった以上…サーヴァントが召喚される前に消えて――」
アサシンの言い終える前に絵里は駆けだした。
この男から逃げなければ死を免れないと本能的に分かった。
アサシンが自分を見失うことを祈りながら裏路地に逃げ込む。
裏路地の先に見える大通りを目指して一気に駆け抜けようと必死に走る。
だが、その努力を嘲笑うかのように絵里は転倒してしまう。
足に激痛が走っていたので見てみると太腿にそこそこ大きな切り傷があった。先ほどのような短剣で傷つけられたのだろう。
「お前ごときの足で逃げられると思ったか?」
アサシンが近づいてくる。
絵里は手を這って後ずさりながらアサシンを睨み付ける。
「な、何なのよ、あなたは…。どうして私を狙うの?」
「それは貴様が最もよく知っているはずだろう?」
「……」
心当たりはないといえば嘘だった。
思い出した本来の記憶に混ざって出てきた『聖杯戦争』という文字に、そのルール。
それは、絵里にとって最も不可解なものであった。
サーヴァントを召喚して殺し合うなど、絵里にとってはお伽噺のように感じられた。
また、そもそも自分が殺し合いに参加しているなど認めたくもないので、アサシンに襲われるまでその記憶から目を背けていたのだ。
「……やめて」
「マスターは『あまり苦しまないように殺してあげて』とご所望だ」
絵里の足は恐怖で竦んでしまい、動きそうもない。
どうにかかわせないか。何か使えるものはないか探すが、裏路地にそんなものが都合よく配置されているはずもない。
絵里は恐怖を堪えながら必死に思考を巡らす――
――そこで問題よ!竦んで動かない足でどうやってあいつの攻撃をかわす?
3択-ひとつだけ選びなさい
答え①クレバーでキュートなエリーチカは突如脱出のアイデアがひらめく
答え②友達がきて助けてくれる
答え③かわせない。現実は非情である。
私がマルをつけたいのは答え②だけど期待は出来ないわ…
家に帰った希があと数秒の間にここに都合よくあらわれて
凛の言っていた…特撮ヒーローっていうのかしら?特撮ヒーローのようにカッコよく登場して
間一髪で助けてくれるなんて無理に決まっているわ…
答え①にしようにも今の私はアイテムなんて学校鞄くらいしか持っていないし裏路地に利用できる物なんてない…。
つまり…
答え-③
答え③
答え③――
「答え③…」
――無慈悲にも下された心の中での結論に応えるように絵里が言葉を漏らす。
「一撃で仕留める。悪く思うな」
「……っ」
死を覚悟し、絵里は目を瞑る。
そして一瞬の痛みと共に絶命する――ことはなかった。
「……遅かったか…!」
アサシンが呟く。
アサシンの言葉には先ほどとは違い、焦りが含まれている。
いつになっても下されない一撃に、絵里は片目を開ける。
そこには――長身の男がアサシンと対峙していた。
垂直に逆立てられた柱のようなシルバーブロンドの髪型が特徴的だ。
その傍らには白銀に輝く甲冑を纏った騎士の像が立っていた。
男は絵里の方へ顔を向ける。
「キミ…さっき答えは③だって言ったよな?残念だがそいつは間違いだぜ」
絵里が「答え③」と言ったのを聞いていたようで、それを否定する。
あまりに突然の出来事なので、絵里はポカンと口を開けている。
「答えは②だッ!大人しく②にマルをつけときな!!」
そう言って男はアサシンと対峙する。
アサシンは強くこの男を警戒しているようで、腰が引けているのが分かる。
「そこの暗殺者」
「……」
「ここは退いてくれねーか?」
「……」
「弱いものいじめは嫌いなんでね……見るのもするのも」
アサシンは無言で姿を消し、裏路地には絵里と男だけが残された。
「大丈夫かい?このジャン=ピエール・ポルナレフが来たからにはもう大丈夫――」
「あ――」
ポルナレフと名乗った男は絵里の無事を確かめようと振り向くも、絵里はそのまま倒れてしまう。
迫りくる死の恐怖により多大なストレスがかかったためか、気絶してしまったのだ。
*
裏路地には人がいなくなっていた。もぬけの殻だ。
あの後、ポルナレフはスタンド『シルバー・チャリオッツ』を引っ込め、絵里を介抱するためにある場所へと運んだ。
しかし、気絶している少女を連れる男なんて怪しすぎるし、人に見られるわけにはいかない。
大通りに行こうにも絵里が走った道を引き返そうにも、人がさっきのようにいないとは限らない。
それにも関わらず、ポルナレフは絵里を介抱することができた。
もう一度言うが、裏路地には人がいなくなっていた。
そう、人が。
代わりに、裏路地には建物の陰に隠れた亀が鎮座していた。
「よいしょ…っと」
未だに目を覚まさない絵里を部屋のソファへと寝かせる。
「やれやれ、ディアボロの野郎を倒した後に死ぬまで居座ったとはいえ…あの亀がオレについてくるなんてな」
ここは裏路地にいる亀――今はポルナレフの宝具であるココ・ジャンボのスタンド『ミスター・プレジデント』によって作られた部屋の中である。
ポルナレフはシルバー・チャリオッツ・レクイエムの暴走が解除された際に天国へ逝くはずだったが、
亀の部屋の中に居座り、この世にとどまっていたというエピソードから宝具としてついてきてしまったのだ。
そしてアーチャーとして召喚されたポルナレフにはもう一つ宝具がある。
ポルナレフは『それ』を取り出し、曇った表情で『それ』を見つめる。
「オレがアーチャーになったのもこいつのせいってか。できれば騎士らしくセイバーになりたかったんだがね」
聞く者が誰もいないのを知りつつも、若い頃の性格が反映されているポルナレフはわざとおちゃらけて愚痴をこぼして見せるが、心の中では真剣であった。
取り出したのは、『矢』。
これで傷つけられた人間は超能力『スタンド』を発現させることができるが、そのまま死んでしまうリスクも孕んでいる。
もし、自分のマスターである絵里をこの矢で傷つければ――。
ポルナレフはそれから先を考えることをやめた。
仮にスタンドに目覚めたとしても、絵里を戦わせるのは危険すぎる。
ポルナレフは、絵里に怨敵のJ・ガイルに惨殺された妹・シェリーを無意識に重ね合わせていた。
「ん……」
「目が覚めたか」
しばらくして、気絶していた絵里が目を覚ます。
絵里は体を起こし、ソファに腰かける。
すぐに目の前の男が自分を助けてくれた恩人だと察する。
「あ、あなたは…先ほどはありがとうございました」
「いいってことよォ、サーヴァントがマスターを守るのは当然だからな」
絵里は「サーヴァント…」と言って俯く。
やはり、聖杯戦争の記憶は本当だった。
同時に、自分がその殺し合いの中にいるということを改めて思い知った。
「サーヴァントということは…私を守るためにここに来た、ということでいいんですよね?」
「もちろんだ!キミみたいに綺麗なコを守れるんならどこまでも頑張れるぜ!オレの名はジャン=ピエール・ポルナレフ。アーチャーのサーヴァントだからアーチャーって呼んでくれ。ええっと――」
「絵里です。絢瀬絵里」
「わかった、わかった!エリーちゃんね。いい名前だ。それと別に敬語じゃあなくったってオレは気にしねーぜ?互いに堅い関係じゃあこれからやりにくいだろ?」
絵里はポルナレフを見て、少し気分が明るくなる。
思えば、μ'sに入ってからはメンバー間の結束を深めるために先輩禁止令を発令したこともあった。
聖杯戦争はマスターとサーヴァントが契約して戦う。
しかし、「契約する」というような堅い関係ではなく、お互いがお互いを支えるような結束こそが生き残る鍵だ。
そのためには敬語を排して対等な立場で戦うことも大事だというのも頷ける。
気分が晴れた絵里は、今の状況を憂うことをやめて、その先のことに目を向ける。
聖杯は願いをかけるとどんな無茶なことでも叶えてしまうという代物である。
ただ、絵里が願うことはただ一つ。帰りたい。μ'sのことを思い出したことでその思いは一層強くなった。
「私は…早くここから抜け出して帰りたい。そのためにはあなたの力が必要なの。私だけだと、あのサーヴァントにも手も足も出なかったもの」
「なら、オレはその願いのために戦うだけだぜ。オレの願いなんてもう叶えちまったし…そんなせこい方法で叶えてもあいつらは喜ばねぇ」
「じゃあ――」
「エリーの願いは、オレの願いだ」
それを聞いた絵里は「…ありがとう」と心からの感謝を述べた。
ポルナレフは願い――妹を殺したJ・ガイルに復讐するという願いをとうに叶えている。
そこから先では幾多の別れを経験した。
死んでいった仲間にもう一度会いたいという気持ちは起こらなくもないが…聖杯でそんなことを叶えるほどポルナレフの精神は腐ってはいなかった。
――そういえば、アサシンに襲われていた時、エリーはオレのスタンドを目で追っていたな…。
一度スタンドが見えるか、確かめてみよう。
そう思い、ポルナレフは傍らに自らのスタンド、『シルバー・チャリオッツ』を発現させる。
「ひゃあっ!?」
絵里は『シルバー・チャリオッツ』を見るのは二回目だが、実際に発現するのを見るのは初めてのことだ。
突然サーベルを備えた人型の甲冑が出てきたので大層ビクついた。
どうやらマスターにはスタンドが見えるようだ。
「そんなに怖がらなくってもいいだろ?こいつは『シルバー・チャリオッツ』!オレのスタンド――超能力さ」
「ハ、ハラショー…」
それがポルナレフの持つ超能力――つまりはいままで触れたことのない超常現象、
実にスピリチュアルで頼りになる力だと分かると、絵里は感嘆の「ハラショー」を漏らす。
「ハラショーって確か、フランス語でブラボーって意味だよな?気に入ってくれて嬉しいぜ」
「日本の文化はまだわからなくて驚くことはいっぱいあるけれど…流石にこれは誰でも驚くわね。…これからよろしくね、アーチャー」
「むふふ、この俺に任せなさい!」
二人はお互いに満面の笑みを交わした。
【クラス】
アーチャー
【真名】
ジャン・ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険
【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具EX
【属性】
秩序・中庸
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクならば二日程度の現界が可能。
【保有スキル】
勇猛:A
アーチャーが持つ、邪悪の化身に立ち向かえるほどの勇気。
威圧、混乱、幻惑、狂気といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
心眼(真):B-
スタンド使いとして修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
ただし、油断しているときには効果がないので注意。
助言:B
新生パッショーネの新たなボスを導いた、アーチャーの経験や知識によるサポート。
味方に的確なアドバイスを与え、それに基づいた行動に有利な補正がつく。
油断:D
ノリの軽い性格が顔を出しやすい。
この状態に陥った場合、三十代まで重ねた経験・強さも十全に発揮されにくい。
トイレの災難:C
エジプトへの道中ではトイレで多くの不運に見舞われたエピソードに基づくマイナススキル。
トイレの中でのみ、幸運のランクが大きく下がる。
なお、このスキルの効果は周囲の人物にも及ぶため、マスターもトイレの災難に遭うことは免れない。
【宝具】
『ココ・ジャンボ』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1~8
ギャング組織「パッショーネ」の組織で飼われていたカメ。
アーチャーは天国へ逝くはずだったがカメの中に居座りとどまっていたというエピソードから宝具としてついてきてしまった。
スタンド使いであり、甲羅の中に部屋を発現させる『ミスター・プレジデント』を持つ。
カメの甲羅にある八角形の模様と、この模様の形に合った鍵をはめ込むことでスタンド能力を発現させるように訓練されている。
亀の甲羅に体を突っ込むことで部屋に入ることができる。退室する際は天井から体をむき出すようにする。
部屋の中にはテーブルや花瓶などの家具類もあるほか、冷蔵庫もTVも作動しているが、トイレはない。
『矢』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
アーチャーがディアボロに敗北した後も隠し持っていた『矢』。
本来ポルナレフはセイバーとして召喚されるはずだったが、これが宝具となったためアーチャーのクラスで召喚された。
これに傷つけられた者は、生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在『スタンド』を発現させる。
『矢』の効果には適合、不適合があり、不適合の者が射抜かれた場合は大抵が死んでしまうが、治療するなどして生き残りさえすれば能力が身に付く。
また、『スタンド』に分類されるものに『矢』を突き刺すとそのスタンドはEXランクの宝具に昇華され、
既存の能力とは別次元と呼べる強大な能力を得る事が出来る。
【weapon】
・シルバー・チャリオッツのスタンドビジョン
所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
中世騎士のような甲冑に、レイピアを武器として携えた人型のスタンド。
スタンドで攻撃を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で、
筋力D、耐久D-、敏捷C+相当。
宝具でないため、強さは控えめ。
筋力は低いがレイピアによる剣閃を持ち、殺傷力はそこそこ高い。
甲冑を脱ぐことで耐久を1ランク低下させる代わりに敏捷を倍加できる。
『矢』をシルバー・チャリオッツに刺すと…?
【人物背景】
フランス人のスタンド使い。「戦車」のカードの暗示を持つスタンド『シルバー・チャリオッツ』を操る。
性格はどこか抜けているような感じだが、正義感が強く、仲間想い。
肉の芽に乗っ取られても騎士道精神を宿していた。
だが女好きで軽い性格、トイレでの受難に事欠かないなど基本は三枚目。
妹のシェリーの無念を晴らす為に両右手のスタンド使いを探すも、
DIOに復讐心に付け込まれて肉の芽によって洗脳され、ジョースター一行を襲撃する。
承太郎に肉の芽を抜き取られた後はDIO討伐の旅に同行、
道中にて両右手の男J・ガイルに復讐を果たし、
ついには多くの仲間を失うもエジプトにてDIO討伐を果たす。
その後は故郷に流通する麻薬ルートを追ってギャングのボス・ディアボロに辿り着くも、
無敵の『キング・クリムゾン』によって返り討ちに逢い、不具の肉体となる。
二度目の逢着では血の雫による能力突破を試みて、なんとか一撃を入れることに成功するも敗北、
絶命寸前の中で矢の力を解放させる。
レクイエムの力による混乱の中で亀と入れ替わったポルナレフは、
ディアボロと敵対するジョルノをサポートし、
矢の新たな担い手となったジョルノはディアボロを永遠に死に続けるという業を背負わせる。
魂が元に戻った後も亀のココ・ジャンボのスタンドの中にしがみつくことで
幽霊として生き延びることができ、以後は新生パッショーネの助言役となる。
所謂全盛期の人間性と晩年の記憶を持ったサーヴァントであり、若い頃のお調子者の性格が復活している。
絵里のことをエリーと呼んでいる。
【サーヴァントとしての願い】
特になし。マスターのために戦う。
『矢』はマスターを危険に晒すことになるため使用しないつもり。
【マスター】
絢瀬絵里@ラブライブ!
【マスターとしての願い】
元の世界への帰還
【weapon】
特になし
【能力・技能】
強いて言えば、ダンスの技量など。
ロシア語を話せる。
【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
祖母がロシア人の、所謂クォーター。しっかり者で、メンバー内でツッコミを担当することも多い。
音ノ木坂学院の生徒会長を務めていた。
感動したりすると「ハラショー」とよく言う。
一見するとクールで真面目な性格であるが、暗闇が怖かったりとどこか抜けているところがある。
生まれは日本だが、幼少期は父親の仕事の都合でロシアで過ごし、小学校時代に再び日本に戻ってきた。
両親はロシア在住のため亜里沙と二人暮らしで日本の実家に住んでいる。
今でも日本文化に疎い一面があり、プリクラの存在を知らなかった。
幼少期にバレエを習っており、天才的な技量を誇っていたが、あと一歩の所で挫折していた。
その為、プロには及ばないスクールアイドルの活動を『アイドルの真似事』のように捉えており、
μ'sとは違うやり方で、祖母の母校である音ノ木坂の廃校の危機を救おうと考えていたが、
同時に内心では、楽しそうに活動するμ’sに惹かれていた。
そんな中、彼女たちにダンスを教えることになり、そこで彼女たちの本気に触れる。
そして、希の説得と穂乃果の勧誘によって、希と共にμ'sの一員になった。
【方針】
脱出狙い。
この街から出られる可能性を探る。
以上で投下を終了します
>>42
投下乙です、かしこい(クレバー)、かわいい(キュート)、エリーチカですね。
世界も、友人も、おかしくなり、命すら危うくなったところで頼れるヒーロー登場、
王道を往く、熱く、素晴らしい展開であると思います。
さて、サーヴァントポルナレフと言えば、アニメでも大人気の今中々に熱い男。
サーヴァントとして出てくるのならば、セイバーかライダーであるかと思いましたが、
予想外のアーチャーでの参戦。
そのために、答え―③が文中の遊びではなく、サーヴァントポルナレフに繋がる伏線であることを全く想像できませんでした。
成程、矢のことを考えれば、と納得するクラスなのですが、完全に意表を突かれ、
ポルナレフが来たのか!という意味でも大変に楽しませていただきました。
また、ポルナレフ自体は優秀で頼りになるサーヴァントですが、矢という要素を入れることによって、
ミロのヴィーナスが不完全であるが故に完全な美となったような美しさを感じさせます。
投下ありがとうございました。
ミロのヴィーナスは不完全であるが、完全ではなく。
不完全がゆえに完成された美、
と書くほうが適切に思えるので感想文に関してはこのように修正していきます、失礼しました。
なお、候補話への感想はなるべく全話、行っていきたいと考えています。
投下します
あなたが生れたその日に
ぼくはまだ生れていなかった
途中下車して
無効になった切符が
古洋服のカクシから出て来た時
恐らく僕は生れた日というもの
.
目が醒めて少女が最初にやったことはお墓を作ることだった。
廃教会の片隅に、小さなお墓を四つ。
一つは、名前も知らない人たちへ。
一つは、お世話になった神父様へ。
一つは、仲が良かった友達へ。
一つは、とってもとっても大好きだったあの人へ。
みんな、みんな、死んだ。
少女のせいで死んだ。
沢山の人が死んだ。
目を閉じ、手をあわせて祈る。
それで何が変わるわけでもない。ただ、過去の罪に向きあうために。
過去の罪から逃げないように、自分に戒めるために。
少女・桂たまは『悪魔』だった。
本人にその自覚はなかったが、世界でも屈指の悪魔だった。
その身に宿した魔の力が、無自覚の内に多くの人を葬った。
青年・賀茂是雄が死んで、桂たまは生まれた。
彼の献身と死が、桂たまを『人間』にした。
彼の死の際に流れた涙は、とてもあたたかいものだった。
そうして、桂たまは生まれた。
桂たまは。
変えようのない『悪魔』だが。
誇らしいほど『人間』として。
そしてどうしようもないほどに『女の子』として、あの日、生まれた。
そうして、生まれたばかりの桂たまは目を醒ました。
彼女を取り囲んでいた全てが消えてしまったこの地で。
聖杯戦争。
架空の街。
すべての罪を雪ぎ、全ての罰を赦す場所。
過去の終わる場所。
未来の始まる場所。
ルールを理解して、この地で願う。
願う。
願う。
ひたすら願う。
『悪魔』の願い。
『人間』の願い。
『女の子』の願い。
三つで出来た桂たまの願い。
『己のうちの悪魔の力を拒絶する』
『悪魔に依る全ての犠牲を雪ぐこと』
『賀茂是雄の因果を捩じ、彼を現世に呼び戻すこと』
『総じて、自身のせいで狂ってしまった因果を正すこと』
絶対にかなわないはずのそんな願い。
それが、叶う。この場、この戦争においては、そんな夢のような願いが。
「それが おまえの ねがいか」
「……はい」
「おろかなものだ。 なにゆえ そんな くだらぬことをねがう」
たまのサーヴァントとして顕現した英霊・アサシンが問いかける。
きっと彼には一生かかっても分からないであろう願いの意味を。
「だって私は、皆が大好きだったから」
それは紛れも無い桂たまの本心。
『人間』であり『女の子』であるたまの、心の底からの言葉。
「ふふ」
しかし、いくらたまが『人間』として目覚めようと。
『女の子』として大好きな人のことを願おうと。
「ふはは」
世界は桂たまに『悪魔』であれと働きかけている。
「ふははは! その じゃあくなおいたちで にんげんの まねごとか!
たまよ! わが わいしょうなる マスターよ! ひとならざるがゆえの ねがいを にんげんのように くちにするとは! ゆかいなものだ!
やはり けんげんしたときに おまえを ころさず せいかいだったようだ! せいぜい くだらぬねがいに もがきつづけろ! ふはは ふははは!」
高らかに笑うサーヴァント。
蒼い肌。鬼のような角。真っ赤な瞳。
神官を思わせるローブ。髑髏のネックレス。
人とは一線を画した見た目に、纏っているのは闇よりも深い魔の力。
その者を一言で説明するとすれば『邪悪』。
『悪』そのものが形どったような姿。
「じんちの さくせいを はじめる。まりょくを つかうぞ」
彼こそがたまのサーヴァントだった。
彼を呼び寄せたのは他でもない。たまの奥に潜む『悪』『魔』だった。
その身に秘めた『悪』がこれほどまでに鮮烈な『悪』『魔』を呼び出した。
「わが ほうぐ 『バラモス』も おなじく かいほうする。
やつは まちをかけまわり さまざまなものを み きき えてくるだろう」
「あの、アサシンさん。約束のことなんですけど」
「わかっている。 『バラモス』にも つたえた。NPCは きょくりょくころさず さくてきに てっしろと。
もし サーヴァントを はっけんしたばあいも かのうなかぎり サーヴァントのみとのこうせんを こころがけるよう めいれいをくだした」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。
「そのかわりに マスターよ。 おまえは そとに でてはならぬ。
その きょうだいな まりょくは まじゅつにおぼえの あるもの あいてならば、 まず ひとめで ばれる」
「そうなんですか?」
「そうだ。 しょくじいがいの もくてきで がいしゅつをするな。
いくら わがそんざいが 『けはいしゃだん』で かくせようと おまえじたいは かくせぬ」
「き、気をつけます……」
たまの願いへの反応からも分かるように、たまにとってアサシンはあまり好ましい性格ではない。
それでも、こちらの指示をある程度聞いてくれるし、こうやって進言も行ってくれる。
そしてなにより、強い。
この聖杯戦争において強さの持つアドバンテージは計り知れない。
心からの信頼がおけるわけではないが、それでも、ともに戦うには十分の存在。
それが桂たまによる彼女のサーヴァント・大魔王ゾーマの評だった。
○
かちゃり、かちゃり、かちゃかちゃ。
小さな少女一人には広すぎる食堂で、小さな金属音がこだまする。
たまがNPC時代を過ごしていた無人の廃教会。
そこに備蓄してあった冷凍食品を食べながら、考える。
これからアサシンは、すぐ近くの海に浮かぶ離れ小島に『陣地』を作ると言った。
その陣地に生活施設が完成すればたまもそこに移住し、更に陣地を堅牢にしていく、と。
それまでの間は、この海辺の廃教会で暮らすことになる。一人で、情報交換の時だけアサシンやバラモスと一緒に。
賀茂と出会う以前と同じ生活。
違うのは、学校に行くこともできなくなったということくらい。
本当のことをいうと、すごく寂しい。
でも、願いを叶えるためだ。頑張って我慢するしかない。
『桂たまによって捻れた因果を正す』
あの日生まれたたまの願い。
万能の願望器がその願いをどう叶えるのか。
もしかしたら、桂たま自身を消滅させることでその願いを叶えるかもしれない。
きっと、アサシンが笑ったのはそこに気づいてのことだったのだろう。
たしかに、おかしな話だ。
聖杯に『自分を消すこと』を間接的に願うだなんて、誰もしない。
でも、それでも。
たまは願っていた。
そばに居てくれた大切な人たち。
大切ではない見ず知らずの人たち。
輝いていた無数の笑顔を取り戻すことを。
たまはこれから、たくさん泣くだろう。
たくさん、たくさん泣くだろう。
でも、その涙が乾けば、きっとそこには笑顔がある。
賀茂是雄の笑顔がある。
西園寺朋の笑顔がある。
神父様の笑顔がある。
失われていった全ての笑顔がそこにある。
天国のような光景が、きっとそこにはある。
そこにたまの笑顔がないとしても。
たまに関わったすべての人が救われるならそれでいい。
悪魔で、人間で、女の子。
桂たまの願いは一つ。
天国に涙はいらない。
ただそれだけ。
【クラス】
アサシン
【真名】
ゾーマ
【パラメーター】
筋力:C+++ 耐力:C+++ 敏捷:EX 魔力:B 幸運:E 宝具:A
【属性】
渾沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:EX
自身の存在を他者に察知されないスキル。
アサシンは宝具『まおうバラモス』発動中、自身のマスター以外にその存在を察知されない。
この気配遮断は彼の陣地たる大魔王城にも影響を及ぼし、『まおうバラモス』発動中はバラモス城は誰にも発見されることはない。
その代わりに、宝具『まおうバラモス』発動中は自身が表立って戦闘を行うことは出来ず、スキルによる陣地の作成とモンスターの量産のみが可能となる。
【保有スキル】
大魔王:-
魔を統べる者を統べる者。即ち大魔王。
Aランク程度の対魔力に加えて、高度な精神アーマーを兼ね備えている。
そして、魔王や魔族は大魔王に対して絶対に逆らえない。その声を聞いただけで服従してしまう。唯一の例外はマスターである人物のみである。
このスキルは外すことが出来ない。
複数回行動:-
大魔王にのみ許されたスキル。アサシンの場合1ターンにニ回行動出来る。
これは敵の一回の行動に対して確実にニ回行動できるというスキルであり、相手の敏捷がAでもEでも等しくニ回行動で反撃できる。
複数の敵の場合は敵全員が一回行動する間に二回行動が行える。
そのため、アサシンの敏捷値は不定という意味でEXとなる。
絶対零度の恐怖:-
マヒャド・こごえるふぶきが魔力消費なし・詠唱なしで行動を一回消費して使用できる。
マヒャドは魔術ランクA相当の大魔術、こごえるふぶきは魔力放出(冷)ランクA相当の威力を持つ。
ちなみに、アサシンは大魔王であるがこれ以外の魔術は使えない。
陣地作成:C
魔力を消費して回転床トラップ、灼熱の床トラップ、落とし穴などが満載された大魔王城を作ることが出来る。
この陣地の建造具合によって下記「無限湧きの悪魔たち」で召喚することの出来る魔物は増えていき、トラップを含めて陣地が完成した場合、全ての魔物を魔力と時間に応じて生産できるようになる。
また、この陣地は『まおうバラモス』発動中はどんな感知能力を持ってしても感知することが出来ない。
ちなみに、大魔王城が完成したらバラモス城を作ることも出来る。ちなみにバラモス城は気配遮断で隠すことは出来ない。
キャスターのクラスではないので作成には通常以上の時間とマスター・サーヴァント共に多大な魔力が必要になる。
無限湧きの悪魔たち:-
陣地の作成具合に応じて魔物を召喚することが出来る。
何もない状態でガイアの魔物たちが。(筋力耐久敏捷オールE-)
大魔王城の外壁が完成した時点でやまたのおろち・ボストロールが。(筋力耐久敏捷オールD)
その後内部に着工し始めるとアレフガルドの魔物たちが。(筋力耐久敏捷オールE)
トラップを含めて大魔王城がめでたく完成した時点でキングヒドラ・バラモスブロスが召喚できるようになる。(筋力耐久敏捷オールC)
ただし、強力な魔物を召喚するには相応の魔力と時間が必要。スライム程度ならばほぼ消費なしで次々と生み出せるがキングヒドラレベルになると大量の魔力に加えて4〜8時間程度が必要。
そして一体を召喚している間は別の魔物を召喚することは出来ない。大魔王城完工後バラモス城の着工にとりかかった場合は大魔王城で一体、バラモス城で一体と同時に二体生産が可能になる。
アサシンが死んでもこの魔物たちが消滅することはないが、次代の大魔王が生まれるまで凶暴性を失って犬や猫のように草陰や路地裏でおとなしく過ごすようになる。
【宝具】
『まおうバラモス』
ランク:E 種別:傀儡 レンジ:- 最大捕捉:-
魔王バラモスを召喚し、自身の傀儡として操ることが出来る。
この宝具の発動中、アサシンはマスター以外にその存在を感知されることはない。
その代わりに、この宝具の発動中はアサシンが表立って戦闘を行うことは出来ない。
魔王バラモスのステータスは以下のとおりである。
筋力:D 耐力:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:- クラス表示はアサシン、気配遮断はE
これといった宝具はなく、スキルは魔力放出(火)と魔術:Bと自動回復とモンスター指揮。そのため魔王だがラリホーやマヌーサが効く。
この宝具により召喚されたバラモスが何者かに殺された場合、バラモスは宝具からただのモンスター『バラモスゾンビ』となってアサシンの居城に送り返される事となる。
バラモス死後、この宝具を再度発動することはできない。
そしてバラモス死後、アサシンは空をいきなり暗くして全参加者に対して自身の居場所と真名を告げてしまうというデメリットがある。
『いてつくはどう』
ランク:E 種別:対人 レンジ:20 最大捕捉:8
対魔力を含めた防御に補正を加える防御系スキルや攻撃に補正を加える攻撃系スキル、パラメータ上昇・下降効果を持つ宝具・スキル・魔術補佐の全てを引っぺがすことが出来る。
『はずせない』と明記されているスキル・宝具に対しては上昇・下降分相応のバフ・デバフをかけて上昇・下降を無効化する。
その後、新たに魔術をかけ直すか、戦闘が終了しないかぎりこの宝具によって打ち消されたスキル・宝具・魔術補佐による効果は帰ってこない。
この宝具の解放には行動回数一回を消費する。
なお、この最大捕捉8はマスター・サーヴァントの組み合わせ×4であり、マスター6人と単独行動中のサーヴァント2人など偏った捕捉は出来ない。
『やみのころも』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
闇の力の真髄。身に纏う暗黒。宝具を発動したサーヴァントに筋力と耐久に+++の補正を付ける。
更に即死攻撃他極大ダメージを押し付ける宝具・スキルの効果を打ち消すことが出来る。
この宝具は光に由来する宝具の解放でのみ打ち消すことが出来る。
『しらなかったのか だいまおうからは にげられない』
ランク:B 種別:特殊 レンジ:10 最大捕捉:8
逃走の可否権利という世界の理すら覆す、大魔王の代名詞たる宝具。
彼との戦闘中に発動された離脱行動を全て自動で無効化する。発動にラグや魔力消費はない。
この宝具が発動されている間はスキル・宝具・テレポートなど文字通りどんな手を使っても大魔王から逃れることは出来ない。
離脱とはアサシンの最高射程技であるマヒャドの射程から外れることを言う。それ以内は『移動』であるためテレポートなどは可能。
また、『仕切り直し』のような戦闘の一時中断を行うスキルも無効化する。
なお、この最大捕捉8はマスター・サーヴァントの組み合わせ×4であり、マスター6人と単独行動中のサーヴァント2人など偏った捕捉は出来ない。
『そして伝説へ』
ランク:A 種別:特殊 レンジ:- 最大捕捉:-
永劫続く伝説を刻み始める宝具。
アサシンが死ぬ寸前、彼が認知している悪属性のサーヴァントを次代の大魔王として任命し、スキル:大魔王・宝具『そして伝説へ』の授与と以下のうち一つを行える。
・宝具『闇の衣』を授ける
・自身の作成した陣地とスキル:無限湧きの悪魔たちを授ける
・自身とそのマスターの魔力を魔力補助アイテム『賢者の石』として授ける
・対象の持つ宝具1つの限定条件全てを解放
【weapon】
氷の術と己の拳。闇の衣があればその拳の一撃もA+と同等の効果を発揮できる。
【人物背景】
マスターよ!
なにゆえ もがき いきるのか
ほろびこそ わがよろこび
しにゆくものこそ うつくしい
さあ わがうでのなかで いきたえるがよい!
【マスター】
桂たま@天国に涙はいらない
【マスターとしての願い】
賀茂是雄他、自分のせいで犠牲になった人たちを取り戻す。
例えこの願いで自分が消えるとしてもこれを叶える。
【能力・技能】
S級悪魔。
十万人以上の人間を直接的・間接的問わず殺害した悪魔にのみ与えられる名誉。
彼女の場合は『殺す』という意思は持たず、ただその身から溢れだす魔力だけでその域に達した。
彼女が乗った電車はその後確実に大事故を起こす。彼女が乗った飛行機はその後確実に墜落する。
彼女と同じ乗り物に乗っていたものはその後気が狂って死ぬ。彼女の住んでいた場所は局地的に魔界化していたほど。
一般人の魔力量をコップ、魔術師の平均魔力量をバケツとするなら彼女の平常時の魔力量は浴槽以上。れっきとした規格外である。
そのため、他の魔術に覚えのあるものが彼女の存在を察知した場合、まず間違いなくNPCでないと見ぬくことが出来る。
ただ、マスターとして規格外の魔力を持つため、サーヴァントと誤認する可能性はある。
現在は制御方法を覚えたのでお漏らししなくなったが、精神的に極度に不安定になればお漏らし再発もあり得る。
ちなみに彼女はこの能力のせいで育ての親と初めての親友と初恋の人をほぼ無自覚に殺している。
そして、この能力の制御の一巻として「因果」を「視」ることが出来るようになった。
鮮明ではないし、未来も見えないが、一生懸命頑張れば残されたモノから因果関係を遡って過去を視ることが出来る。
【人物背景】
高校一年生。悪魔で、人間で、女の子。
「名前はたまです」という旨の書かれたダンボールの中に入れられて道端に置かれていたのをなんてことはない神父が拾って育てた子ども。
礼儀正しくしっかりもの。ただしかなりのドジ。
頑張り屋で、子供っぽい見た目にコンプレックスを覚えるような節もある。心は立派な女子高生。大きなリボンがトレードマーク。
見た目は幼い女児だが、その正体は堕天使ベリアルの実子(参加時点では本人も知らない)。
ベリアルが赤ん坊の鳴き声が猫と似ていると気付き、捨て猫同様ダンボールに詰めて箱を開けた人間を驚かせようとしたところ、たまを発見した神父にそのまま連れて帰られてしまったというなんとも情けない過去を持つ。
そもそも純粋な悪魔であるためリボンの下にはツノが、服の下には尻尾と羽が生えている。可愛い。
出展は天国に涙はいらない第一巻終了間際、賀茂是雄の『星』が落ちてくるのを視る以前より。
その後、賀茂が転生してたまと再会し、朋ちゃんと賀茂さんの笑顔は取り戻せてたという未来は知らない。彼女にあるのは、『賀茂さんを死なせてしまった』という過去だけ。
賀茂さんの献身むなしく、願いを叶える機会を得た彼女は聖杯戦争で他者と戦うことに。
ちなみに妖気の暴走で銀行口座がエラーを起こした結果、億単位の財産を所持することとなっている(原作設定)。
【方針】
戦闘に関してはアサシンに一任。
たまちゃんと大魔王のお約束は4つ。
1つ、倒すのは基本的にサーヴァントだけ。(勝ち抜けにマスターを倒す必要はないので)
2つ、NPCも極力傷つけない。(たまの魔力があれば魂喰いのメリットがないので)
3つ、バラモス頑張れ。超頑張れ。(大魔王城完成まではバラモス頼み、情報収集・頭数減らしのためあの見た目で街中を駆けずり回ってもらうことになる)
4つ、たまちゃんは基本お留守番。(魔力量から一発で身バレしてしまうので)
ちなみに、アサシンはたまちゃんを『魔族のくせに人間みたいな考え方してる』というすっげー面白い対象と。
たまちゃんはアサシンを『悪い人だけど手伝ってくれてる』というサーヴァントとしては当たりと見ている。
そのため、不仲にはならない(そもそも仲がいいわけではないので)。
たまちゃんの願いメンタルがアサシンの煽りに勝つ限りこの関係は崩れないだろうが、メンタルバキバキになると手遅れ。
ひとまずは離れ小島の一つに大魔王城を築く。その後モンスターを大量生産し、量が揃えば大型モンスターを生産する。
ちなみに『いてつくはどう』や『しらなかったのか』の効果が及ぶのはマスター・サーヴァント4組なので、仮にサーヴァントが5騎きたら確実に1騎は宝具の影響を受けないので「おっおっおっ!?なんじゃワレ、数の暴力で排除するんか余をォン!?」って感じになる。
この宝具への対策法についてはバラモスの逸話を経由して正体を見破られる、もしくはバラモス死後アサシンの真名が公開された時点で逸話を調べれば、意外と誰でも思いつけるかも知れない。
なのでそれまでに戦力補強と敵の頭数減らしを頑張らなければならない。
当然、アサシンは気配遮断の効果で戦闘ができないのでクソザコスペックのバラモスに頑張ってもらわなければならない。
投下終了です
訂正です
クラススキル内のバラモス城→大魔王城です
ご迷惑をお掛けしました
>>55
投下乙です、桂たまさんですね。
LAST KISSは読みましたが、そちらの方はまだ手を出していないため、今度読んでみようと思います。
あくまでも人間、非常に面白いキャラクターであると思います。
原作は未読ですが、成程これは原作を読まなければならないな、と実に魅力的に描かれていました。
そして、そのサーヴァントはゾーマ。
原作の性質を考えると成程、とうなずけるのですがやはりアサシンとは予想外でした。
様々なえげつないスキルと宝具を持ってして、如何に暗躍していくのか。実に楽しみです。
>自身とそのマスターの魔力を魔力補助アイテム『賢者の石』として授ける
やめろォ(建前)、ナイスぅ(本音)
――わらわは闇姫じゃ。闇の中に棲む者、闇がわらわの王国。この闇こそわらわの世界、ここがわらわの居るべき場所。
押入れの中、暗い闇の中、少女はそう心の中で呟いて微睡む。
闇の中に溶けてしまいそうで、しかしはつきりと実を持つ己の身体がもどかしい。
闇の世界の外、下品で野蛮で暴力的な光の世界にあるものは、怪物の顔をしたひたすらに暴力的な下賤の民ばかり。
誰が、外に出ようというものか。
闇の中、さらに目を瞑る。
ぎうと、ぎうと、目を瞑る。
強く、強く、瞑る。
――強【ごう】!
しかし、いきなり聖なる闇は破られる。
母を名乗る愚かな女、醜女の顔に蟻のような昆虫の身体を持った化け物が押入れの戸を開けて、闇を乱暴で猥雑な光で犯す。
何故、姫であるわらわに対して、恥知らずにも血縁を名乗ることが出来るのだろうか、
きっと、夜の仕事の安酒が頭の中身を腐らせたのだ、と少女は推測している。
安酒の悪臭を口から撒き散らして、わけのわからぬ言葉を吐き散らす、
ヒステリックに虚飾されているが、要するに自分は寝るから、少女に出て行けと言っているのだ。
経験則から少女は逆らわない。
かつて、彼女がこの女を「無礼者、下がりおれ」とたしなめた時、少女の脳天をトンカチで殴打したことを今でもはっきりと覚えている。
ああ、耳から飛び出した脳みそのかけらを拾い集めるのは、どれほどに大変だったことか。
そのトンカチは、護身用として自身の首から下げている。
だが、トンカチが無いところで女は新品同様の台所の包丁を持ち出してくるに違いがない。
何をしても、無駄だ。
トンカチを携えて、城の外へと出る。
街はこれから仕事へ行く城下の平民共であふれている、誰も彼女を城の姫君であるとは気づかない。それが彼女を愉快にさせる。
それが例え、口からニコチン塗れの煙を吐き出す人の形をしたがん細胞のような化け物であっても、
顔中に泥絵の具を塗りたくったかろうじて雌とわかる粘液質な化け物であっても、ああ、愉快/\。
それにしても醜い、王族と下賤の民にはこれほどの差があるのだろうか。
どこへ行くかを考えながら歩いていると、下賤の民共の子どもが通う学校があったので柵越しに中を覗いてみる。
人の気配はない、静まり返っている。
学校といえば、かつて身分を隠して少女は通ったことがあるが、その高貴なる身分がばれて平民の子どもらに髪と服をぼろぼろにされた上、
興奮のあまりに水をかけられ、鉄パイプで脳天を殴打された。
服の切れ端や髪の毛は家宝にすると思えば愛らしくも思えるが、やはり下賤の民の子はやはり下賤。高貴な人間に対する態度というものを知らない。
それ以来、校内に入ったことはない。
誰かが来る様子も無いので、少女は学校から立ち去る。
公園にたむろしている貧民にパンを分けてもらいに行こうか。
「おう、また来たんか」
フケだらけの頭をぼりぼりと掻きながら、しょぼくれた親爺が袋の中からコッペパンを取り出して二つに割った。
池のほとりのベンチは、平日の昼間には誰も居ない。
親爺と並んで座って食べる。
親爺は珍しく少女のようなまともな人間の姿をしている。
「また、サボりけ?いかんぞ、ワシみたいになるからな」
親爺の少女を見る顔には、子を見るような喜びと学校にも行かず浮浪者に食事をたかる少女への哀れみが入り交じっている。
少女は気にしない、大事なことはパンがもらえるかどうかだ。
「のう……」
――なんじゃ、申してみい。
空腹が満たされ、少女は上機嫌だ。
「いかんよ、嬢ちゃん……ワシなんぞに餌もろたらいかん」
狙い澄ましたかのように、警察官の制服を着た全身膿んだ化け物が、少女と親爺の元へと歩いていくる。
――どういうことじゃ。
「結局、家族ん所に帰るんが一番や」
――憲兵と共にあの頭の腐れた女がいる城に帰れというか、嫌じゃ!あの女、怒り狂うて何をするかわからぬ!
「母親と話し合って、しっかり生きていかんとな」
――やめろ、やめ……
親爺の姿が、化け物に変わっていく。
その目だけは少女を見据えて、哀れみを浮かべたままで。
その時、少女は思い出した。
――わらわを、そのような目で見る者など……誰もいなかった
連れて来られた交番で少女の母を名乗る醜女を待つ、顔を真赤にした醜女が迎えに来る。
帰った後、何が起こるかなど――想像するまでもない。
平手。
「恥をかかせやがって!」
拳。
「産まなきゃ良かった!」
蹴り。
「穀潰し!」
包丁。
「これで、終わりにしてやるよ!どうせあんたなんか死んでても生きてても誰にもわかりゃしないんだよ!!」
命の危機に瀕して、少女の思考は冷静だった。
己を助けに来る――騎士【サーヴァント】が来る。
触手。
「あなkg@ぱえgえsげsl」。wまkgか」
ぐちゃ。
少女の母を名乗る女はあっさりと死んだ。
「gねpへmへrph:えけえおqpkqw」
その容姿は地球上に対するありとあらゆる生命体に対して冒涜的な存在であり、
その存在そのものが理性とはどれほど細い綱をわたっているかわからなくさせるなんと恐ろしく狂的なものであろうか、
あらゆる宗教において許されるものでなく科学的にもまた許されるものでなく、
目を腐らせるのではなく脳を腐らせるかのような、ああ眼球をえぐり抜いてしまいたい、
永久にその姿を見ずに済むのならば。耳もそうだ、ちょうどいいところにシャープペンシルの芯があったこれで鼓膜を突いて耳を刳り、二度とその者の発する音を聞こえないようにしてしまいたい。
だが、その存在は少女にははっきりと――人間の姿に見えていた。
「私は沙耶、貴方が私のマスター?」
「わらわの闇を取り戻したか、ご苦労」
緑の髪をした白いワンピースの沙耶と名乗る可憐な少女、少女には目の前の怪物がそうとしか見えていない。
だが、どうでも良い。
「わらわは、この闇へと返る。後のことはよきにはからえ……」
押入れを、その中の闇の王国を少女は取り戻した。
邪魔立てする愚かな女も、二度と邪魔することは出来ない。
押入れの中で、少女はじつと目を閉じて眠る。
胎児のように、眠る。
ぽかあんと、少女を見送った後、沙耶は包丁を使って女を切り分ける。
人間とはすなわち、沙耶にとっては食糧である。
食べきれない分を冷蔵庫の中にしまい込み、そして一人、少し早いが昼食の時間とする。
家の中での食事は、どことなく彼女が愛した人間との日々を思い起こさせる。
――郁紀。
人ならざる者の言葉で、そつと呟く。
もう一度、会いたい。
そのために、ここへ来たのだ。
「よきにはからえ……か、うん。頑張らなきゃね」
もう一度、唄おう。
あの愛の唄を高らかに。
【クラス】
キャスター
【真名】
沙耶@沙耶の唄
【パラメーター】
筋力E 耐久D+ 敏捷E 魔力D 幸運EX 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:EX
自らに有利な陣地を作り上げるキャスターのクラス特性。
本来は魔術師ではないため、E-ランク程度の能力しか発揮できないが、
彼女が持つ唯一の宝具を発動した瞬間、星そのものが彼女、あるいは彼女たちの陣地として扱われる。
道具作成:C++
「魔術師」のクラス特性。
人間を理解することで、精神的、肉体的な改造を可能とする。
【保有スキル】
異形:B
人間としての正常な感性は、彼女の姿を、声を、臭いを、存在そのものを許容できない。
彼女の存在そのものが相手への精神攻撃となり、抵抗判定に失敗した場合、
相手に1ターン以上の行動不能、あるいはステータスへの不利な補正、あるいは両方を付与する。
また、クリティカル時は相手に低ランクの精神汚染を付与する。
星の侵略者:A
彼女達の種族が持つ特性、
彼女が持つ唯一の宝具が発動し、星の支配者となった彼女あるいは彼女たちは、星からのバックアップで自分のステータスに有利な補正を受ける。
愛:EX
沙耶という少女が、広大な宇宙の中の小さい地球という星に辿り着き、
70億の人間の中から偶然に狂った人間と出会う確率は、その人間が自分を愛してくれる人間に出会う確率は、ほとんど0に等しい。
しかし、彼女は出会った。故に彼女の幸運値はEX(測定不能)である。
そして、咲いた。彼女達の愛は完成した。故にその愛はEX(測定不能)である。
【宝具】
『それは、世界を侵す恋(SONG OF SAYA)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:40,000 最大補足:6,999,999,999人、あるいはたった1人
彼女の胞子をまき散らし、その星全てを彼女の種族へと作り変える繁殖活動。
あるいは、彼女を愛した一人の人間のために作り上げられた美しい世界。
この宝具の発動と引き換えに、彼女は消滅する。
しかし、サーヴァントとしての役割は彼女の子どもたちが引き継ぐだろう。
また、この宝具は彼女の意思で発動することは出来ない。
三画以上の令呪が無ければ、意図的に発動することも出来ない。
ただ、その時が来れば自動的に発動する。
【weapon】
彼女の肉体そのものが武器である、ふしゅるー、ふしゅるー♪
【人物背景】
ニトロプラスの名コンビが新たなジャンルに挑戦した意欲作!
突然現れた謎の少女・沙耶。そして男女4人が繰り広げる恋愛ストーリー。
そのメインヒロインとなる女の子、ぐうかわ。
【サーヴァントの願い】
もう一度、郁紀に会いたい。
【マスター】
闇姫@夜姫さま
【マスターとしての願い】
乱暴で下品な光に犯されることがないよう、沙耶に任せる
【weapon】
首からぶら下げたトンカチ
【人物背景】
親からの虐待やいじめによって、己に優しくしてくれる人間以外怪物のようにしか見えなくなってしまった少女。
自身を闇の世界の姫であると思い込むことで、敵からの攻撃に対しての精神的な防衛を行うようになった。
何も見えない闇こそが彼女の安らぎの王国。
【方針】
押入れの中で、ただじつと待つ
投下終了します。
投下します
目が覚めた。
たとえば頭の中の雲が消えて、ぱっと太陽が出るように。
今まで見てきた、感じてきたことは夢のように感じてしまう。
だけど決して怖い夢ではない。
むしろ心地がよかった。
何も怖いものなんてない。
ベッドから起きると二人の姉が居る。
優しくてなんでも出来て、尊敬の念を覚える姉。
元気があって、自分を引っ張ってくれるもう一人の姉。
そんな二人に見送られて向かう学校には友達が居る。
何でもないような毎日だけど、確かに幸せと呼べるものはあった。
それでも――違う。
私の世界はここじゃない。
少女、南千秋は確信する。
◇ ◇ ◇
頭の中がすごく重く感じた。
いわゆる知恵熱というやつだろうか。
あながち間違ってもいないような気もする。
きっと脳がパンクしてしまっているのだろう。
頭に流れ込んだノイズが暴れまわっている。
聖杯戦争、令呪、サーヴァント――とにかく言いたいことは一つだった。
「……バカ野郎」
夕焼けの公園で南千秋が一人つぶやく。
少女の声だけが周囲に響き、そして消える。
か細い声は心の叫びでもあった。
未知の情報をつぎ込まれ、頭の中は一杯になったはずなのに。
今は何もいえない喪失感が少女の肩に降りかかっている。
幸せと信じていた生活が、虚偽なものだとわかったから。
同時に喪ってしまったとわかったのだから。
「ハルカ姉さま……カナ……」
偽りの生活にも二人の姉が居た。
上の姉は本当の姉と同じくらいに優しく、尊敬出来る姉だった。
下の姉は本当の姉と比べ物にならない程に、人間の出来た姉だった。
だけど自分にとっての姉は、あの二人しかいなかった。
優しくて、何でも出来て、世界で一番な女性である南春香。
バカで、一人じゃ出来ない事も多いけど、それでもにくめない南夏奈。
二人との生活が、二人との家が、自分の居場所であった。
それなのに奪われてしまった。
奪われたことにすら気づかず、目の前の幸福にすがっていた。
ただ、それだけがどうしようもなく――悔しかった。
「マスター」
聞こえる。
自分の存在を確かめる声が。目の前に長身の男が居た。
知っている。
聖杯戦争におけるサーヴァント、自らのパートナーだ。
右手に刻まれたセンスのない模様と共に手に入れた。
マスターとして選ばれた自分の、唯一無二の力となり得る存在。
手を握って拳をつくる。横なぎに顔を拭う様に、振った小さな腕をサーヴァントへ突き出す。
一滴の雫が放物線を描く。
「……泣いているのか?」
「泣いてなんか……ない!」
胸の奥から熱いものがこみ上げる。
悲しみは、もういらない。
「私は、南チアキはハルカ姉さまとカナにもう会えないなんて嫌だ。絶対に家族を取り戻す!
だから“ライダー”……悪いがお前にはしっかりやってもらうぞ!」
必要なのは進むこと。
奪われたものを奪い返すために。
恐怖と不安をかなぐり捨てて、希望の先へ向かうために。
南千秋は自身のサーヴァントの存在を確かめる。
「家族……姉か……。女の涙には縁があるな」
「バ、バカ野郎!だから泣いてなんかない!それよりも私のサーヴァントなら、ちゃんと自己紹介しろ!」
サーヴァントは少女の声に答え、小さな彼女の頭にそっと手を置く。
びくっと身体を震わせる少女からは年相応の弱さを感じ取る。
そしてサーヴァントは声に答えただけではない。
ライダーのサーヴァント――彼は少女の想いに応えるつもりだった。
彼もまた、かつて少女と同じように喪った者なのだから。
自分自身を、たった一人の姉を、総てを悪魔に、そして神に奪われた男。
彼の血に塗れた両手にかつて残ったものは怒り、悲しみばかりであった。
だが、それでも、この場ではもう――
「ならば俺は――“仮面ライダー”と呼べ」
村雨良の手はもう、何も取り零すことは許されない。
【クラス】ライダー
【真名】村雨良@仮面ライダーSPRITS
【属性】中立・善
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:E 幸運:E 宝具:D
(非変身時)
筋力:B 耐久:A 俊敏:A+ 魔力:C 幸運E 宝具:C
(ZX変身時)
【宝具】
【悲しみの神の器(ゼクロスボディ)】
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1
総ての始まりは秘密結社BADANの首領、JUDOの依代として改造されたことだった。
幾多の実験体の血肉、亡霊から生まれし身体を持つライダーは存在こそが罪とも言える。
同時にその身体は総てを失ったライダーの力となり、生前の彼を支える総てとなった。
困惑を抱きながらかつての記憶を求め、総てを思い出したライダーには深い悲しみが残った。
悲しみを抱き、9人の偉大な先駆者の背中を追いかけて、たった一つの世界のために戦った。
群衆の眼に映る正義の戦士。誰かは彼を仮面ライダーZXと呼んだ。
【赤き閃光より生まれし力(シンクロ)】
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1
ライダーの身体が真紅に染まる時、彼の身体は完全に修復し、強大な力を生む。
世界を創世した神さえにも恐怖を抱かせる力はただ一蹴に込められた。
その強大な力は敵を討ち滅ぼし、同時にライダーの存在をたとえ躯体が微塵に散ろうとも世界へ還す。
【クラススキル】
騎乗:B 騎乗の才能。大抵の乗り物であれば乗りこなすことが可能。ZX変身時には1ランクアップする
【保有スキル】
ラーニング:B 相手の技を模倣する能力。体技を使用する技に限定される。
人間としての可能性:A 負傷、復元、進化から連なる仮面ライダーとしての本質は人間が誰しも持つ可能性と言える。鋼のように鍛え続けられる力は世界のため、人類のためであれば無限へと続く。
戦闘続行:A 往生際が悪く、瀕死の状態でも戦闘を続行するスキル。四肢を捥がれても戦いを止めなかったライダーの戦い方に由来される。
【人物背景】
BADANによって改造され、かつては悪魔の先兵であった男。
身体の99%が機械で構成され、残り1%には人間の肉体が残っている。
人々は彼を村雨良――10号ライダー――仮面ライダーZXと呼ぶ。
【weapon】
改造人間としての肉体。パーフェクトサイボーグとして内臓された武装。
【サーヴァントとしての願い】
少女にはもう何も喪わせない
【マスター】
南千秋@みなみけ
【マスターとしての願い】
家族を取り戻す
【weapon】
特になし
【能力・技能】
頭は回るが身体を使うのは苦手な小学生
【人物背景】
とあるマンションの一室に三姉妹で住む南家の三女。
長女の南春香には絶大な信頼を寄せており、春香が白を黒といえば千秋も悩んでしまうかもしれない。
次女の南夏奈が同じことを言えばきっと千秋はこう言うのだろう。「バカヤロウ」と。
【方針】
とりあえず脱落しない
投下終了です。
ステとか作るのって難しいですね
私たちみんなの苦しみを、ほんとに誰も知らないのだもの。
いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘びしさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかも知れないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。
誰も教えて呉れないのだ。
太宰治『女生徒』
本。本。本。
本の香りで満ちていた学校図書室の地下に。
もっと古い本の香りで満ちている学校図書室の書庫があった。
左右にはホコリをかぶった本棚があって、天井には蜘蛛の巣があって、床にはゴソゴソとしたゴキブリがいて。
中央の少し開けた空間には、二人くらいなら座れそうな古い学習机と椅子がある。
そんな空間に好んで寄り着く者がいるとしたら、それはよっぽどの“文学少女”だろう。
あるいは、どうしても一人きりになりたかった、孤独な生徒か。
もしくは、こっそりと作戦会議をしたがる二人組とか。
「フーンフフ、フーンフフ、フフフンフーン♪」
椅子に座っているのは二人。
少女の方が、鼻歌をうたう。
歌いながら、テーブルに置かれていた水筒の蓋をくるくると開け、二つあるマグカップへとお茶を注ぎ始めた。
歌のリズムは日本人ならよく知っている童謡で、「こうこは、どうこの、細道じゃ〜♪」という歌詞にあたる。
よく知っていても、普通の女子高生なら鼻歌にチョイスしたりはしないが。
「アサシンさんも、どうですか? ほうじ茶ですよ」
「ありがとうお嬢さん。でも、まずは私に喋らせてほしい。
とても重要なことに気が付いてしまったのだよ」
郷土資料の本棚から持ってこられた地図を広げていたのは、どこにでもいそうな二十代の青年。
否、二十一世紀へと突入した現代のこの町で、くたびれた砂色の外套に洋風の開襟シャツという正装はだいぶ懐古趣味が過ぎるかもしれないが。
それでも、町中をすたすたと歩けるぐらいにはどこにでもいる。
むしろ目立つのは、首と手首にぐるぐる巻かれた白い包帯と、そして首から上だけは浮浪者を名乗っても通用しそうな黒い蓬髪にどんより濁った瞳だろう。
地図のあちこちに鉛筆で色々とメモがあるのは、さきほど少女が手ずから町を案内した時に書き込んだものだ。
「何か発見したんですかぁ? アサシンさんっ」
少女はキラキラとした声で、小柄な体を傾けて身を乗り出した。
『散歩につれていってあげるよ』と言い出すのを期待する子犬のように、無邪気な顔。
だって、彼は自らを『アサシン』だと名乗ったのだから。
プロの暗殺者が、戦いの舞台を俯瞰しているのだから、きっと頼もしい。
そして、男は言った。
真顔で、真面目な顔だった。
「この町には、自殺に適した場所(スポット)が無い」
「…………」
「町を流れている川はダメだ。水の透度が少ないから川面から見ただけでは浅いところと深いところが判断できやしない。
浅瀬でも入水自殺はできなくはないが、他人に見られて妨害される可能性が相当にある。
ああ、それに投身自殺もダメだね。この町で簡単に侵入できて高さのある建物となると限られる。
マスターは知らないかもしれないが、学校や病院の屋上というのは意外と投身自殺に向かないのだよ。人間は四階や五階から飛び降りたぐらいでは、意外と死ねないからね。
足から地面に落ちて両脚の複雑骨折でのたうち回るなんて私はごめんだ。そう言えばマスターの好みを聞いていなかったね?
マスターは自殺するなら身投げがいいかい? それとも薬物?
心中するなら定番は練炭かな。あれってすごく頭痛がするとも言うけど、実際はフワフワして気持ちいいらし」それ以上は喋らせなかった。
少女はキラキラと無邪気な笑顔をばっちりと保持したまま、言った。
「わぁ、そんなことまで分かっちゃうなんてすっごぉーい。
さっさと自害してくださいダメサーヴァント」
「どうしてマスターは令呪を見ているのかな? しかもすごく使いたそうに」
男はにっこりとしていた。
直後、少女はどんよりと顔をくもらせて、ばったりと学習机に突っ伏す。
みるみるうちに、子犬のような目には涙がたまっていく。
感情を爆発させる幼な子のように、足をバタバタと揺らす。
「きっ、聞いてませんよぉ〜。殺し合いをやるなんて、怖いことを思い出して。
ぐすっ、でも、サーヴァントさんが来てくれたから『守ってもらえるんだ』って安心したらっ。
サーヴァントから最初に『お嬢さん、死にたいから首絞めて』って言われるなんて……あんまりですよぉ〜」
「そう言われてもねぇ……私の叶えたい願いといったら、『清く正しく明るい自殺』くらいしか無いんだけど。心中ならもっと良い」
少女はさらにくるりと表情を変えた。
むっとして顔をあげ、ぷんすかと反論。
「『英霊』の時点で、とぉーっくに、死んでるじゃないですかぁ〜!
だいいち、この『戦争』が終わったら、アサシンさんだってお空に帰っちゃうんですよ!?
自然消滅ですよ? 自殺する意味ありませんよぅ!」
少女を知る者がその光景を見れば、
――少なくとも、彼女の『本性』を知る者ではなく『うわべ』を知る者が見れば、
「あの竹田がツッコミに回っている……だと?」と驚いたことだろう。
「やや、これは然り!
たとえ死にきれなかったとしても、戦争が終わればひと思いにやすらかに、しかも死体が残らないから迷惑をかけることなくクリーンな強制送還!
なんて理想的な死に様だろう。つまり『英霊の座』は自殺嗜癖(マニア)の聖地だったのか!
いや、だが待てよ。帰るということは、次の聖杯戦争があればまた呼び出されるということではないか?
だとすればサーヴァントとは生きる苦しみと死ぬ苦しみの無限連鎖(ループ)地獄!?
なんということだ、かつては『名探偵』として民草の崇敬を一身に良くしたこの『太宰治』が、戦争だかなんかのためにボロ雑巾のごとく擦り減らされてしまうなんて……」
『太宰治』という名前が出るや、少女――竹田千愛はいぶかしげな顔をする。
「千愛の知ってる『太宰治』は探偵でもアサシンでもなくて作家さんです。
しかも、薬物中毒になったり、実家の脛をかじってるのに大学に行かずに遊びほうけて怒られたり、
奥さんに『誰より愛していました』とか遺書を書いたのに別の美人な愛人さんと心中しちゃうようなダメダメ人間です」
「美人さんと心中か。その同姓同名作家とやらはずいぶんと羨ましいなぁ。
うん、代わって欲しい。そこ代われ」
「うわぁ。うっとりとした目で、女の敵なこと言ってますよ。こわーい」
「何を言うんだい。私は女性にはみんな優しいよ。あらゆる女性は生命の母であり神秘の源だもの」
「女性に優しい人は、女性に『死んでくれ』とか言いませんよぅ!」
千愛は確信する。
この人はやっぱり、太宰治なんだ。
出自も、職業も、能力とかも違うけれど、きっと似たような魂の下に生まれてきたんだ。
『色々なこと』があって、すっかり太宰治に詳しくなってしまった千愛が確信するのだから間違いない。
ウソつきで、調子のいいことばっかり言って、悪い大人の見本みたいにダメダメなところとか、間違いなく太宰治だ。
「どうやら、我が主は勘違いをしているようだね」
「どこがですか?」
あの『人間失格』の、太宰治だ。
「君を心中に誘ったのは、てっきり君も『同じ趣味の仲間』だと思ったからなのだ」
にっこりとした笑みで、何気無さそうに放たれた言葉。
視線の先にあるのは、竹田千愛の左手首にある、『令呪ではない傷跡』だった。
「……やっぱり、分かるものなんですね」
竹田千愛の顔から、ありとあらゆる、表情と呼べるものが消える。
右の手のひらで逆の手にあるリストカットの痕を隠し、空っぽの瞳でサーヴァントを見つめる。
ここからの竹田千愛は、『本当の竹田千愛』だ。
「あたしは、自殺が好きじゃないですよ。ただ、死にたくなる時があるだけです」
こんな風に、私は異常者なのですと自白する真似なんて、いつもならできないけれど。
「マスターは、聖杯戦争をするまでもなく、死にたいのかな?」
相手が、『太宰治』なら。
騙したって傷つけたってお互い様の人間失格が相手だから、こんなことだって言える。
「あたしのような……人が死んだってなんとも思わない人でなしが殺し合いをしたら、
どうなると思いますか?」
竹田千愛。
幾『千』もの『愛』。
それに恵まれることを願って命名された名前だとしたら、なんて皮肉。
そう名付けられて生まれた女の子は、愛だとか、思いやりだとか、恋心だとか、人間らしさといったものが欠落していた。
だけど、欠落していることが恥ずかしかったから、ずっと演技をして隠してきた。
『フツウのかわいい女の子』の振りをしてきた。
「適材適所だとでも、言いたいのかな?」
尋ね返すアサシンの目にも、感情の揺らぎはない。
まるで、竹田千愛は本当はこういう顔をする子なのだと、最初から見抜いていたかのように。
「色々、考えました。今でも考えてます。
何でも願いが叶えられるなら、『フツウの女の子』にもなれるのかな、とか。
それはとっても、なってみたいな、とか。
でも、『また』人を殺したりしたら、今度こそ『人間失格』になるかもしれない、とか。
『フツウの女の子』なら、こんな風に悩んだりしないで、『生きて帰りたい』とか怖がったりするのかな、とか。
それはなんだか、ちょっとずるいな、とか。
それとも、とっても立派でゆずれない願いがあって、戦おうとしてるのかな、とか。
だとしたら――」
もしかすると、独りよがりな子どもの馬鹿げた発想かもしれないけれど。
「――この町では、ただ生きているだけで、他の人達を損なうんですよね」
少女はそれを、悲しいことだとは分からないけれど、
そうなりたくないとは、思っているから。
「そうまでして生きてるより、誰かのために殺されて死んだ方がいいのかな。とか」
そう言った瞬間に、太宰治がその黒くて暗かった瞳で、まじまじと竹田千愛を見た。
まるで、初めて心動かされるものを見たかのように。
千愛はその沈黙に戸惑ってしまって、マグカップのほうじ茶を一口のむと、「てへっ」とおどけてみせた。
「……なーんて。ちょっと、思ってみただけですよぉ。死にませんって」
道化の仮面は再着されて、いつもの竹田千愛になる。
このお話は、ひとまずお仕舞い。そのつもりだった。
「だから、アサシンさんの趣味には付き合えないと思います。
お願いを叶えてあげられなくて、残念でした」
「竹田千愛君」
男が、初めて少女の名前を呼んだ。
「確かに私と君とでは、似ていても違うようだね。
最初は似た者同士だから呼ばれたのかと思ったけれど、それでも違う」
千愛は、顔をぎくりとこわばらせた。
なぜなら、『太宰治』は似ていたから。
かつて、『この人なら私の気持ちを分かってくれる』と惹かれて焦がれた人に、似ていたから。
だから、否定されるのは怖い。
「さっきの君は、むしろ私の部下に似ていたよ」
「部下、ですか?」
「そう、『武装探偵社』の部下」
「ああ、そう言えば自称探偵さんでしたっけ」
「『自称』を強調されると傷つくんだけど」
しかし、否定はされなかった。
言われてみれば、作家の太宰ではなく自称『探偵』だった。
死んだ魚のように濁った眼をしてる自殺嗜癖の探偵なんて、未だに信じきれないけれど。
「確かに私には『自殺』くらいしか願いが無い。けれど、これでも私は探偵をしている。
そして、依頼人を助けるのが探偵だよ」
詐欺師のように、何を考えているのか分からない飄々とした笑みだった。
にも関わらず、千愛には男が嘘をついてはいないと思ってしまった。
それは、千愛が男のことを理解できるからなのか。
それとも、男のことを理解できないから騙されているのか。
「つまり、君が助けを求めるならば、私は君を助けよう」
似ていないとしたら、千愛は『人間失格』なんかじゃない、別のところに辿り着くのだろうか。
――君は、■■先輩と別のところへ、辿り着かなきゃいけないんだ!
そう言ってくれた、かつての救い主の言葉を思い出す。
「アサシンさんは、あたしが好きだった人に似てますね」
「へぇ。マスターは私みたいな男に恋をしていたのか」
どこが同じなのか。
どこが反対なのか。
『女』の対義語(アント)が『男』であり。
『子ども』の対義語(アント)が『大人』であり。
『逸脱』の対義語(アント)が『普通』であるなら。
「恋じゃありませんよ、きっと」
『人間(Man)失格』の対(アント)は、『普通の女の子(girl)』なのか。
「でも、好きでした」
ただひとつ、言えることは。
『人間失格』から見た竹田千愛という少女は、理解できない異常者ではないということ。
――少女もまた、迷える子犬(ストレイドッグ)の、一匹だということ。
【クラス】
アサシン
【真名】
太宰治@文豪ストレイドッグス
【属性】
混沌・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:D 宝具:EX
【クラススキル】
気配遮断:C
自身の存在を他者に察知されないスキル。
職業柄(前職でも今の仕事でも)、潜入捜査の心得があるので、まあそこそこ。
【保有スキル】
対魔力:A+
事実上、あらゆる魔術(令呪の命令を除く)ではアサシンに傷をつけられない。
後述の宝具のせいなので、クラススキルではなく保有スキルにあたる。
死にたがり:A+
趣味:自殺。モットーは『清く正しく明るい自殺』。
ただし、『趣味』が自殺だと言っているように、誰かに助けられるか、太宰自身のドジによって失敗するかのパターンがお約束となっているために、『死にたくても死ねない死にスキル』となっている。
そのためにアサシンは(前述の対魔力もあって)令呪によって自害を命じられても、二画までは抵抗できてしまう体になっている。
策謀看破:B
直接的な戦闘ではなく、戦術・戦略レベルにおける作戦行動を見抜く洞察力。
後述の職業柄、また生まれつき『その仕事』の才能があったために身に着いたもの。
情報末梢:C
対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、一部の情報が消失する。
消失する情報は、クラス名、宝具、スキル。
後述する宝具(二つ目)のせい。
【宝具】
『人間失格(ニンゲンシッカク)』
ランク:EX 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:-
触れた能力(魔術、異能)を無効化する宝具。
常時発動型宝具であり、『能力で造り出した拳銃』を使って太宰を射殺しようとしても銃弾の方が消滅してしまう。
この宝具があるために、魔力が無いにも関わらず対魔力EX。
太宰自身の奇矯かつ人畜有害かつ駄目人間の見本のような性格まで「生前に築き上げた伝説がカタチになったもの」補正としてしっかり反映されているので、『魔力を打ち消す』というよりも『敵の思惑をぶち壊しにする』という概念武装みたいなもの。
つまりメタに説明するなら『上条さんが右手で鯖に触ったら鯖は消えるのか問題』については考えなくていいですよ、ということ。
『黒の時代(ポートマフィア)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:-
常時発動型宝具。
そして、太宰治が『アサシン』として召喚された理由。
太宰の経歴は政府の特務機関が2年を費やして念入りかつ念入りな情報の末梢を行っており、探偵になる前は何をしていたのか遡ることは不可能となっている。
太宰自身は『前職を当ててみなよ』と日ごろから賭けのネタにしているものの一度も正解者が現れたことはなく、懸賞金は膨れ上がる一方。
本来は宝具扱いされるほどでもない逸話なのだが、『太宰治という人物』が一般からは『文豪』として認知され、『人間失格』も能力などではなく『文学作品』として知られていることによる知名度補正からの逆補正を受け、宝具の域にまで昇華されてしまった。
常にCランク程度の情報末梢スキルが働いている状態となる。
「太宰治が『元マフィア』だということは知られていない」
【weapon】
完全自殺読本。
古今東西のありとあらゆる自害の方法を網羅した愛読書。
ただの稀覯本。
【人物背景】
文豪、太宰治……ではない。
異能力集団『武装探偵社』の調査員にして荒事担当の一人。22歳。
前職は横浜で最も巨大なマフィア組織の幹部。マフィア時代は笑顔で人を拷問する(精鋭の拷問班が取り組んでも自白しなかった鉄腸漢でも、太宰が訊ねれば口を開いたらしい)ような冷血漢であり、太宰にとっては『正義も悪も同じ』で、『孤独を埋めるものがあらわれない』世界に失望しての自殺未遂を繰り返していた。
マフィアになった理由は『血と暴力と人間の本質が見える世界にいれば、何かあると期待したから』。
しかし、唯一の理解者となった人物が組織の首領に切り捨てられて、目の前で死亡。
最期にその人物から『人を救う側になれ』と道を示されたことで、『人助けができる仕事』――探偵社の社員へと転身した。
【サーヴァントとしての願い】
趣味の自殺も難しそうだし、マスターを助ける。
【マスター】
竹田千愛@“文学少女”シリーズ
【マスターとしての願い】
『フツウの女の子』になりたい。
【能力】
強いて言えば、周囲を完璧に欺きとおせる演技力と、いざとなれば犯罪に分類される行為をも躊躇なくやってのける行動力。
周囲からは『純粋無垢で健気でやさしく明るい子犬のようなドジっ子。かわいい』だと思われている。
【weapon】
カッターナイフ。
リストカットの常習犯。
【人物背景】
聖条高校一年生。外見年齢は制服を着ていなければ中学生と間違われる程度。
生まれつき共感する能力や他人の痛みを感じ取る能力が欠落していたため、『親しい人物が死んでも悲しいと思えない』『他人を傷つけても痛いと感じない』『赤ちゃんや可愛い動物を見ても可愛いと思えない』『みんなが可笑しくて笑っていることや、悲しくて泣いていることの、何が可笑しくて何が悲しいのか分からない』といったことに多大なコンプレックスを抱いていた。
(決して感情がないわけではなく、特に『みんなが当たり前にできることができない』とについては深く思い悩んでいる)
“文学少女”1巻での一連の事件がきっかけで太宰治の作品を読むようになり、特に『人間失格』は五回も読み返して泣いてしまうほどに傾倒している。
【方針】
生きていく理由、生きていてもいい理由を見つけたい。
投下終了です
>>67
投下乙です。
千秋ちゃんが可愛い…最初からヒーローしてるZXも新鮮だし、
姉つながりですごく良いコンビになりそうな感じがします
投下乙です!
文学少女と文豪を太宰繋がりで組み合わせてきたか
なんかこれは中々に内面が難しそうなコンビだw
皆さま投下乙です。
私も投下させていただきます。
学園を巡回していた警備員は大きく欠伸をした。
現在の時刻は深夜を回る。
侵入者がいないか今日も見回りを徹底している。
しかし、見回るのは正直個人情報を保管してある職員室、事務室周辺ばかりだった。
上から侵入するにしても、目的と言うのはソレしかないのではないか。
警備員も理解していながら仕方なしに教室しかない校舎の三階へ到着していた。
その時、視界を隅で何かが輝く。
懐中電灯が光らせたものとは思えなかった。
警備員が発見した光というのは、機械的な輝きではなく、さらにはゆらゆらと生物のように揺れ動いている。
冷や汗を浮かべながら、ゆっくりとソレに近付いて見た。
警備員の姿は、彼の持つ懐中電灯の光で気付くはず。それでも光は微動だにしない。
この時点で、何者かが持つ明かりである可能性は消えた。
光の動きはまるで蝶のようだった。
蛍? いいや、そんな馬鹿な。たとえ蛍だとしても季節に似合わない。
だが、夜中に発光する生物は蛍のように存在するのだから、そういう生物だとすれば納得できた。
それでも、それでも確認しなくては。
不思議な使命感を覚えた警備員は、いよいよソレの目前まで接近してみた。
やはり――蝶だった。
黄金に輝く蝶。こんな蝶は始めて見る。蛍光塗料でも塗られた蝶なのだろうか?
だが、美しい蝶だった。本当に黄金の光を纏ったかのような輝きを続けていた。
違う。これは決して塗料の類ではない! 正真正銘、黄金の蝶なのだ!!
世紀の大発見ではないだろうか!?
ふと、警備員はある噂話を思い出す。
近頃、生徒の間で流行っている噂話である。
『黄金の魔女』の噂話。
千年を生きた魔女。
ある資産家に大量の黄金を授けた魔女。
この町で起こる不可思議な現象の全ての元凶。
猟奇殺人を起こした残玉非道な魔女。
そして、彼女が出現する前触れとして『黄金の蝶』が現れるというのだ。
はは、まさかと警備員は笑っていたが、ぼんやりとした光が見える。それは廊下の一番奥。
図書館から数多の光が漏れている。
警備員は息を飲む。その光は全てが黄金の蝶であったからだ。
図書館で女性の笑い声が響き渡った。
黄金の蝶が群れをなして警備員へ向かってくるのに、彼は恐怖を覚える。
光によって生み出された影でおぞましい魔女の姿を見て、ただ逃亡へ勤しむばかりであった。
「ふむ、順調だ。勘のいい奴は気付くであろうが、どう動くか見物だなぁ? くっくっくっ!」
噂される黄金の魔女・ベアトリーチェ。
聖杯戦争においては『キャスター』と称されるサーヴァントが笑う。
キャスターが図書館の鍵を開けるなど、造作もないことであった。
しかし、厳重に施錠した図書館の中で人間を嘲笑する魔女が実在するならば
いかなる場所へ逃げ込もうとも魔女からは逃れられぬという恐怖を味わうこととなる。
それと、魔女が出現したのが学園なのだ。
たちまち噂は広がるだろう。
そして――この噂はサーヴァントの所業だと、聖杯関係者は気付くはずだ。
「うーむ、これも中々……はぁ、一晩で読み切れないぞ」
キャスターのマスターである緑の魔女。
少女の名はジークリンデ・サリヴァン。
難しい文献に目を通しているが、彼女にとっては絵本のようにスラスラと読めてしまうらしい。
これも魔女であるからと彼女は言うが、実際は彼女の知力が優れているのが答えである。
キャスターが提案した。
「ならば、持って行ってしまえばいい」
「それは悪い気がする。また、ここに来るのは駄目なのか?」
「何、面倒なだけよ。それに本がなくなってしまったことも妾の仕業にしておく方が都合がよくてな」
「そうか。すまない、ベアトリーチェ卿……おっと、ここではキャスターだったか」
「誰も見ておらぬ内は問題ない。案ずるがいい、サリヴァン卿」
幾つかの書物を魔法でかき消す。正しくは、時空間魔法で一時的に転移させたのだ。
それからは、不気味にそれでいて不可思議に、図書館にある本という本を魔法で動かし
机の上に何かのオブジェのように山を組み立てて行く。
まるで子供が荒らし、馬鹿馬鹿しいほど無茶苦茶にしておきながらも、薄気味悪い本のオブジェは
見た人間を圧倒させること間違いないだろう。
サリヴァンはそれを眺めるだけでも楽しそうだった。
キャスターが問う。
「して、サリヴァン卿。聖杯に願う望みは決まったか?」
「ああ」
「件の人狼が求める瘴気とやらか」
否とサリヴァンが首を振る。
「『緑の魔女』の名にかけて究極魔法はボクの手で完成させる!」
「ほう! その覚悟はよし。流石は小さな魔女の一人だ」
「いいや、ボクなどまだ未熟だ。杖の一振りで物は浮かせられないし、使い魔を使役すらできない」
サリヴァンが落ち込むのに、キャスターは告げる。
「……ハッキリ言ってしまうが。サリヴァン卿の魔力は、魔女としては乏しいものだ」
「仕方のないことだと思う。先代から受け継がれた魔女の血が薄れてしまっているんだ……」
「それは違うぞ、サリヴァン卿」
「――どういうことだ?」
「魔女というのは人間にその存在を認め、屈服させることで力を身につける存在だ。
魔力の低下は、サリヴァン卿のいる閉鎖された村が原因と言えよう」
「まさか! 先代以降力が弱まったのは、それが原因……!?」
「くっくっくっ、箱猫と同じ原理を先代は考えたようだが甘い甘い。
逃げては何も始まらぬ。人間を恐れるのではない、人間こそ我らを恐れるべきなのだ!!」
嘲笑するキャスター。
サリヴァンは、キャスターから様々な話を聞かされた。
有限の魔女・ワルギリアの話。
奇跡の魔女・ベルンカステルの話。
絶対の魔女・ラムダデルタの話。
サリヴァンの知らぬ世界で、サリヴァンの知らぬ魔女たちが実在しているのだ。
それを知ったサリヴァンはより一層、外の世界への興味が湧く。
先代は人間からの迫害から逃れる為、人狼による閉鎖された空間を作った。
だが……それは間違いだったのか……!
人間から逃げ続けるだけでは、そうだ。何も変わらない!
人狼が求める究極魔法を完成させ、外の世界へ……!!
「ベアトリーチェ卿、ボクは皆と外の世界へ出る! そして、それを聖杯に願う!!」
「くっくくくく! そうでなくては!! 全ての人間を『魔女』の力で屈服させようぞ!!」
【クラス】キャスター
【真名】ベアトリーチェ@うみねこのなく頃に
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 宝具:E-
【クラス別スキル】
陣地作成:D
様々な人間に『魔女』の存在を信じるよう噂話を広げる。
大人を信じ込ませるのは容易ではないが、子供ならば簡単に信じてしまう。
道具作成:E
お菓子や黄金の蝶など些細なものから、神秘性の帯びた塔や武器を作成する。
【保有スキル】
魔法(偽):A
基礎的な魔法を一通り修得していることを表す。
使い魔(家具):E
六軒島にいたとされる親族と使用人。
黒山羊の頭の獣頭人身、煉獄の七姉妹、ロノウェ、ガァプを召喚できる。
前述はNPC程度の存在で、後述はE-程度のステータスを持つサーヴァントである。
【宝具】
『黄金の魔女の心臓』(クレル・ヴォーブ・ベルナルドゥス)
ランク:E- 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:∞
ベアトリーチェは魔女を信じぬ者、魔法を信じぬの者の前では無力。
魔法を使う事はおろか、姿を現す事すら叶わない。
故に、それが適応されるマスターあるいはサーヴァントがベアトリーチェを捉える事は不可能。
彼らに対しては気配遮断:EXとして効果を発揮する。
ただし、魔女を信じる者、魔法を信じる者の前では爆発的な能力を発揮させる。
異名通りの『無限の魔女』として、何度でも蘇り、殺した者を何度も蘇らせ
そうして無限に弄り続ける。彼女の機嫌が済むまで無限に。
この効果を発揮すると魔力の上限はほぼなく、文字通り無限の魔力で相手を圧倒させる。
魔女を信じる者が多く存在するほど、ベアトリーチェの力は強力になる。
【weapon】
煙管……ベアトリーチェにとっては杖代わりのもの
【サーヴァントとしての願い】
小さな魔女の為に協力する
個人的な願いならば魔女の存在を全人類に認めさせる
【人物背景】
黄金の魔女なんてどこにも“い”ない。
【マスター】
ジークリンデ・サリヴァン@黒執事
【マスターとしての願い】
村の皆と外の世界へ
【能力】
日常会話ができる程度の英語を一日で会得するほどの天才児。
彼女はそれを魔女であるから可能なのだと思い込んでいる。
緑の魔女の当主として歩けないよう、足を潰され、纏足を履いている。
膨大な魔術の知識を持っているが、それは魔術でも何でもない
ただの化学である。
彼女は『究極魔法』という最悪の化学兵器を作ろうとしている。
彼女はそれを知らない。
【人物背景】
緑の魔女なんてどこにも“い”ない。
投下終了です。
遅ればせながら乙です。
夢現とは別解釈のベアトリーチェでより怪奇な描写で如何にも黄金の魔女していいですなぁ
黒執事は未把握ですが、若き魔女サリヴァンも彼女のノリに合いそうですね
……もしかしたら、セバスチャン召喚できるんじゃね?w
投下します。
いつもの帰り道。
見慣れた並木通りを、仲の良い女友達と姦しく談義しながら歩く。
蜂蜜色の夕陽が射し込み、鴉がかぁかぁと一日の終わりを告げ始める頃、私は友達と別れ帰途に着く。
当たり前の日常。中学生になってからかれこれおよそ三年間、毎日のように繰り返してきた生活サイクル。
けれど、一人分かれ道へ進み出し、振り返って彼女たちへ手を振り、また明日ねと笑いかける時、私は不意に思うのだ。
――これは、なに?
既視感という言葉がある。
しかし、私が感じているのはむしろその真逆だった。
未知感。当たり前に過ごしてきた筈の日常が、どういうわけか奇妙に映る。
例えば、今日一緒に日直の仕事をしたおかっぱ頭の大人しい彼女。
あの子は、あんな風に元気いっぱいな笑顔を浮かべる人物だったろうか?
もっと卑屈で、暗く、――言ってしまえば、ひどく“人間らしい”人物ではなかったか?
考え出すとキリがない。
もう姿は見えなくなってしまったが、この帰り道を歩いてきた二人だってそうだ。
そも、自分はあの二人といつ出会った? どのような経緯を経て、私達は友達になったんだっけ?
カメラの似合う彼。密かに気になる、クラスメイトの優男。
いつもみんなの人気者、クラスの中心にいるスタイリスト志望のあの子。
みんなみんな良い子達で、かけがえのない友人だ。
なのに最近、そんな幸せな世界をどこか冷めた目で見つめている私がいる。
隣の芝生は青く見えるという諺があるけれど、まさにそれ。
今の私には、彼女たちのことが、隣の芝生にしか感じられない。
「……疲れてるのかな」
こめかみに手を当ててため息をつく。
こんなことばかり考えていては気が滅入ってしまう。
私がどう思おうと、彼女たちが大切なクラスメイトで、共に卒業しようと誓い合った友達なことに変わりはない。
もう、一緒に過ごせる時間も長くはないんだから。
おかしな空想は早く忘れて、またいつもどおりの毎日へ戻ろう。
踵を返しながら、私は前向きに頷いた。
◯ ●
「ただいま」
言った瞬間に、異変に気がついた。
――――臭い。
玄関の扉を開けた途端、鼻腔を通って嗅覚を埋め尽くす、鉄錆によく似た悪臭。
思わずその場でたたらを踏む。次に、はっとなって靴の数を確認した。
お父さん、お母さん、妹のしょーちゃん。……家族全員、この家の中にいる。
少しだけ逡巡したが、堪え切れずにおっかなびっくり、いつもと違う自宅へ踏み入った。
脳裏を過ったのはガス漏れというワードだった。
果たして家庭で使うようなガスがこんな酷い匂いを持っているのかどうかは分からなかったが、つい最近にも隣町でガス漏れによる死亡事故があったと記憶している。
もしもそうだとしたら一大事だ。悠長に大人を呼んでいては間に合わないかもしれない。
胸の鼓動が早まる。
背筋へぞわぞわと這い上がってくる冷たいものがある。
家族を失うというイメージが脳裏へ浮かび――そこで、私は思わず足を止めた。
「……え」
違う。
――違う、違う。
頭の中にあるのは、もはやイメージなどではなかった。
冬の夕暮れ、季節に似合わない熱気が煌々と立ち込めている。
大勢の野次馬。誰もが憐れんだ眼差しで燃え盛る自宅を見つめている。
まるで悪い夢。でも、これは紛れもない現実で……
そして、見覚えのある顔をした少年が、“ナニカ”を抱えて炎の中から現れる。
その細腕に抱いたのは、黒く焦げ付いた――私の、いも、うと。
「――ッ、しょーちゃんッ! お母さん、お父さんッ! いるなら返事してッ!!」
違う、空想なんかじゃない。
私は今思い描いた光景を知っている。
悪夢と一蹴してしまいたくなるような、火柱をあげて燃え上がる家を見たことがある。
いつ? どこで? テレビ? ゲーム? それとも映画? 小説?
必死に、浮かんだ恐ろしい想像を払拭するように選択肢を乱立させながら、私は叫んで止めた足を再度進ませた。
返事はない。それどころか、錆の匂いはどんどん濃くなっていく。
「……違う……」
か細い、消え入りそうな声で呟いた。
「ガスなんかじゃ、ない」
この匂いも、私は知っている。
居間の扉を開けた先には、予想通りの惨劇が広がっていた。
最初に目に入ったのは、胸を刺され、首と胴体が離れて死んでいるお父さん。
次に、混乱の余り窓から逃げようとしたのだろうか。
首から下は窓の取っ手へ手を伸ばしたままで、首から上は切断されて床へ転がっている。
その顔は、見間違いようもないお母さんだった。
膝から下の力が一気に抜けてしまった。
そんな私に追い打ちをかけるように、視界の端から変わり果てた矮躯が放り投げられる。
胸を刃物で貫かれ、眠るように安らかな顔で息絶えている少女。
――私の、たったひとりの妹……
「違うだろう」
大声をあげて泣き叫ぼうと思った私へ、聞き覚えのない、この家に居るはずのない男の声が投げかけられる。
「“こうじゃねえ”。そうだろう、Master?」
マスター……と私を呼んだその男の右手には、巨大な出刃包丁のような凶器が握られていた。
刃には真新しい血がべっとりとこびり着き、今も耐えることなく血糊の雫を涎のように垂らしている。
わざわざ根拠を探すまでもなく分かる。この男が――私の家族を殺したのだと。
だが、不思議と腹は立たなかった。拍子抜けするほどあっさりと、私はこの惨劇を受け入れている。
常識的に考えて、刃物を持った相手へ丸腰の子供が敵うわけはないけれど、それでも普段通りの“野咲春花”ならば、怒りを抑えられずに家族の仇へ挑みかかるはずだと自分でも思えた。だから、この瞬間をもって、私は真に確信する。
――ああ。私はやっぱり、“この”野咲春花ではないんだ。
「exactly」
男は、無気味な格好をしていた。
ポンチョ……というのだったか。
そういう衣装に身を包み、大振りの包丁を持った姿は絵に描いたような殺人鬼のそれ。
なのに、やっぱり怖いと感じない。
「何か……知ってるんだね」
「おっと、勘違いするなよ。俺はMaster、お前の過去については何も知らねえ。興味もないさ。だが」
口許がにやりと歪む。
「この街で何が起ころうとしているのかは知っている」
「……教えて」
「No、俺が教えちゃ意味がねえ……それに、お前も知っている筈だ。よぉく思い返してみるんだな、自分の記憶を」
言われた通りに、記憶を遡る。
あれほど充実していたはずの学校生活も、“知って”しまった以上はもう薄ら寒くしか感じない。
そういう偽物の思い出を蹴り飛ばして、辿り着いたのはやはり、あの炎の夜だった。
焼ける、家。
全身に酷い火傷を負い、意識さえ戻らず虫の息で眠り続ける妹。
そして――……
下卑た声が頭の中で木霊する。
人を人とも思わずに、私の家族を焼き殺した奴ら。
その顔は皮肉にも、さっきまで一緒に帰っていた二人の女子生徒に瓜二つだった。
私はそれを殺す。
一人、二人、三人。
虫でも叩き殺すように淡々と、撲り、撲り、撲り殺す。
一度箍が外れれば後は早かった。
悔やみ、自責しながら、それでも止まらずに私は殺す。
刺し、斬り、射ち殺す。
そして最後は、私も死んだ。
……多分、これで全部。全てを思い出した私の頭は、氷でも入れられたように冷ややかだった。
「……ごめんなさい。手間を掛けさせちゃったね、アサシン」
「No Problem。物分かりの良いMasterで助かったと喜びたいくらいだぜ」
どうして今まで忘れていたんだろう。
これがこの町の仕組みだとすると、相当に悪趣味だ。反吐が出る。
でも、もう大丈夫。私のやることはちゃんと思い出せた。
私は――――家族を取り戻すために、また、人を殺す。
「それじゃあ、思い出した所で一つ出掛けようじゃねえか」
「……? 敵のマスターを未然に探し出して倒す……ってこと?」
「違えよ」
くつくつと嗤って、人殺しの私が喚んだ人殺しのサーヴァントは、血飛沫で汚れた顔を私へ向け、言った。
「生け簀かねえFakeをぶっ壊しに行くのさ」
● ◯
昨晩の夕方から夜に掛けて、特定地域の中学生を対象とした連続殺人事件が発生しました。
被害者はいずれも×××中学校3年×組在籍の生徒であるということです。
未だ消息不明の生徒も少なからずおり、警察は慎重に捜査を続けていく方針です――――
【クラス】アサシン
【真名】PoH@ソードアート・オンライン
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運:A 宝具:A
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
PoHのそれは“悪”に偏っており、彼の悪性へ魅せられ、時に人は狂気の道へと迷い込む。
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、
逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
ソードスキル:A
MMORPG「Sword Art Online」内に存在したスキルシステムを使用することが出来る。
彼の扱うソードスキルは高度なもので、技量は一級の剣豪にも匹敵する
【宝具】
『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:1~99
SAO世界にてPoHが統率していた、最凶と称されるPK(プレイヤー・キラー)ギルド「笑う棺桶(ラフィン・コフィン)」のメンバーを召喚する。
呼び出される殺人鬼たちは皆PoHにこそ及ばないものの実力者揃いで、また殺人行為へ毛ほどの躊躇いも覚えない性格破綻者が集っている。彼らは宝具が使用されるなり現れ、己の思うままに殺戮の限りを尽くす。
無論、その全員がソードスキルを扱うことが可能。
『友切包丁(メイトチョッパー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
SAO世界でPoHが使用していた、モンスタードロップのレアアイテム。
ゲーム中でも最強クラスとされる武器で、出刃包丁を巨大化させたような形状をしているのが特徴。
これそのものに特殊な能力は無いが、武器としては非常に優秀な品物である。
【人物背景】
殺人ギルド「ラフィン・コフィン」のリーダーにしてSAOで最も猛威を振るったPK(プレイヤーキラー)。躯で膝上までのポンチョで身を包みフードを目深にかぶっている。美貌と強烈なカリスマ性を持ち、少なくとも三ヵ国語を話すマルチリンガルで張りのある艶やかな美声にやや異質なイントネーションを潜めた話し方をする。
ユーモラスなキャラクターネームと裏腹に、冷酷で狂気的な思考を持った殺人鬼で、デスゲームとなったSAOにおいて「ゲームを愉しみ殺すことはプレイヤーに与えられた権利」という扇動を行い多くの「オレンジプレイヤー(犯罪者プレイヤー)」を誘惑・洗脳して狂的なPKに走らせた。最強クラスの武器の1つだったモンスタードロップの大型ダガー「友切包丁(メイト・チョッパー)」と凄まじい剣技で数多のプレイヤーを斬殺しており、殺戮の前には決め台詞として「イッツ・ショウ・タイム」と宣言する。
「ラフコフ」結成以前の第2層の時点で既にPKを画策していた節がある。
「ラフコフ」討伐戦では姿を現さなかったが、カルマを回復して圏内に潜伏、なおも暗躍を続けていた。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯の使い道は手にしてから考える。今は殺し合いを愉しむ
【マスター】
野咲春花@ミスミソウ
【マスターとしての願い】
焼き殺された家族の蘇生
【weapon】
クロスボウ、包丁などオーソドックスな凶器。現地調達。
【能力・技能】
特になし。だが、クラスメイトを殺害した経験があるため殺しに対し無防備ではない。
【人物背景】
心優しい性格をした清楚な美少女。父親の仕事の都合で東京から大津馬村に引越し、大津馬中学校に転校するが、「よそ者」であることからイジメの対象にされる。同級生たちから陰惨なイジメに遭うものの、優しい両親や最愛の妹、クラスの中で唯一味方をしてくれる相場晄の存在によってイジメに耐える事が出来ていた。
しかし、イジメグループによって家族が焼き殺されたことと、その証拠隠滅の為に自殺を強要された際、主導した吉絵が口を滑らせたために全ての真相を知ったことで彼らへの復讐を誓い、関与した者達を次々と惨殺していった。
終盤、「全ての原因が自分にあった」と後悔に苛まれた妙子の心からの謝罪を受けて彼女と和解し、「前を向いて生きていこう」と誓い合って復讐にピリオドを打った。しかし、最終的に想いを寄せていた晄の本性を知り、そこに雪崩れ込んできた流美の襲撃によって致命傷を負わされた際、晄が後生大事に持っていた春香の家族の死体を収めた写真を見てしまった事から全てに絶望。最後の戦いを開始し、これを制した。
作中に直接の描写はないが、復讐を完遂した直後に死亡した模様。
【方針】
アサシンと共に聖杯戦争を勝ち抜き、願いを叶える
投下終了です。
投下します
「教頭先生さよならー」
「はい、さようなら」
元気な声が木霊する。
さようなら、さようなら、さようなら。
道行く生徒の皆が私に当たり前のように挨拶をし、私はそれに挨拶を返す。
「そうだ、教頭先生、これ落ちてました!」
一人の少女が駆け寄ってきて、私にあるものを手渡す。
それは、いずれかの学生のものであろう財布。
後で元の持ち主に確認したところ、中身を手に加えられたということもなかったらしい。
当たり前の光景。
当たり前の風景。
当たり前の学校生活。
当たり前の秩序と平和が、ここにはある。
全てのものがルールを尊び、当たり前のものとして守り、それらの枠組みの中で幸せを謳歌している。
私は、目覚めて初めてその様子を目にした時心の底から思った。
この世界はなんと美しいんだ、と。
聖杯はなんと素晴らしい舞台を用意したんだ、と。
私は知っている。人間がどこまで堕落するのかを。
人間は一度踏み外せば、留まることなく極悪まで堕落していく。
周囲の人間を次々に巻き込み、理性の及ばぬところまで堕ちていく。
かつて私が務めていた名門と謳われた学園は、怠惰を貪り、淫奔にまみれ、無秩序と混沌によって支配されていた。
ルールを守るものが嗤われ、善き者が虐げられ、陰口を叩かれていた。
それはきっと人間の本質だ。欲にまみれ、善をあざ笑い、一時的な快楽へと逃避を続ける。
この地も、そうであろう。
誰かが道を踏み外せば、この乙女の箱庭も坂道を転がるリンゴのようにころころと極悪まで堕落していだろう。
だからこそ。
守護(まも)らねばならぬ。
この秩序を。
この平和を。
この慈しむべき少女たちの日常を。
誰にもこの乙女の箱庭たる聖杯戦争の舞台と、そこで行われる穢れなき聖杯戦争は壊させない。
私、『ルーラー』こと野守隆一は、そのためにここに居る。
そう思い、私は日記を開いた。
ルーラーたる私の能力。
それは『特殊ルール』の新設と、ルール違反者への罰則の実行。
聖杯戦争にもとから用意されているルール以外に、独自の権限でルールを設ける事ができる。
そして、二種のルールを守っていない人物に対して相応の罰則を与えることが出来る。
日記の1ページ目の一番上と一番下に、こう記す。
【コウソク】
【これを破ったものは罰則の対象とする】
そして、まずは一つ。
これを加えておこう。
【1.聖杯戦争参加者は、ルーラーへの攻撃を禁ずる】
これで私には、この聖杯戦争においてこのルールを破ったものには『罰則』を与える権利が発生する。
次いで日記の一番後ろにこう記す。
【通達】
これで、聖杯戦争参加者が次に手に取る書面にこの文章が浮かび上がることになる。
私は少々考え、こう記す。
<<聖杯戦争参加者の皆様、初めまして。私は、この聖杯戦争の裁定者であるルーラーのうちの一人だ。
私には、今回の聖杯戦争に対して必要に応じてルールを新設する権利が与えられている。
よって、その権限を持ってまず一つ、ルールを新設させて頂いた。
『聖杯戦争参加者の、ルーラーへの攻撃の禁止』
裁定者への攻撃は、ルール違反として私からの処罰の対象となる。以後注意して欲しい。
以上で、本日の新設ルールの通達を終了する>>
そこで一度間を置いて、一言付け加える。
<<なお、私は高等学校・教育指導室に居るので、聖杯戦争に関する疑問があった場合は気軽に訪れて欲しい。
居ない場合は連絡先を残してくれれば折り返し連絡をしよう>>
最後に【通達終了】と記して筆を置く。
これで、よし。
あとは聖杯戦争に合わせて柔軟に行動していこう。
全ては、乙女の箱庭を穢させないために。
この秩序と平和がつつがなく、永久に続くように。
【クラス】
ルーラー
【真名】
野守隆一@狂った教頭
【パラメーター】
ルーラー時 筋力:D 耐力:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:A 宝具:A
バーサーカー時 筋力:B 耐力:B 敏捷:B 魔力:E 幸運:A 宝具:A
【属性】
秩序・善(秩序・狂)
【クラススキル】
正体特定:E
真名看破の派生スキル。彼が教頭として超有名女学園で働いていたことに由来するスキル。
このスキルを持つ者はサーヴァント・マスター問わず条件に合致する人物の正体を特定できる。
彼の場合、『対象が就学年齢(6〜18歳)』かつ『対象が女性』である場合、確実にその真名を特定できる。
5歳以下、もしくは19歳以上に対しては発揮されないがその間の年代の女性であればマスター・サーヴァント問わず一目見るだけで名前を『思い出す』ことが出来る。
対魔力:―
存在しない。
その代わりにスキル:逆賊の誉れが存在する。
神明裁決:―
存在しない。
その代わりに、宝具『男子禁制乙女の園に、秩序と平和の花が舞う』が存在する。
【保有スキル】
精神汚染(秩):A
病的なまでに秩序に固執する。
仮に聖杯戦争のルールと彼の定めたルールに違反しようものなら、強権を執行してでもそれを正す。
逆賊の誉れ:A+
常に強いものの攻めを逃れて勝ち続けた逸話から来るスキル。
彼は自身のパラメータの宝具を除いた合計値(100)を基準として、それ以上のパラメータ値を持つサーヴァントからの攻撃に対して常に完全回避判定を行い、45%の確率で完全回避に成功する。
仮に必中の状態で放たれたとしても完全回避判定が出たならば完全回避が可能。ただし宝具に関しては対象の幸運値が自身の幸運値を上回っていた場合に限り失敗となる。
下記窮鼠の心得と合わせることで90%まで完全回避率を向上させることが出来る。
窮鼠の心得:E
一介の高校教諭でしかなく、その上ブランクのある身でありながら襲い掛かる父母から一切の攻撃を受けることなく彼ら100人を斬り殺した逸話から来るスキル。
Eランクではパラメータの向上はないが、窮地の際に回避行動の成功率を倍にする。
啓示:B
ルーラーとして呼び出された際に与えられたスキル。
違反者の存在をおおまかにではあるが察知する事ができる。
通達:E
ルーラーとして呼び出された際に与えられたスキル。
日記に書き込んだ文章を介して通達を行える。また、ルーラー同士での会話も可能。
【宝具】
『増え続ける秩序の鎖(コウソク)』
ランク:C 種別:運営 レンジ:― 最大捕捉:―
彼の生前の逸話がそのまま宝具になったもの。日記の形をしている。
彼は聖杯戦争に関するルールを一日に一つ、この日記に記入することで増やすことが出来る。
増やさないことも可能。ただし一日増やさず翌日二つ増やす、などは不可能。あくまで一日に一つ。
例えば『令呪の隠蔽不可』だったり、『指定エリアへの進入禁止』だったりと内容は自由。
そして仮に彼が『下着の着用の禁止』と記載すれば、マスターはそれに従う義務を負う。やったね!
そして、この新設のルールに従わなかったものは秩序を乱す違反者として下記宝具『乙女たちの箱庭に、秩序と平和の花が舞う』の対象となる。
なお、あくまでも『増え続ける秩序の鎖』による新設ルールは教頭ルーラー独自のルールであるため違反しても他のルーラーに見つかっても処罰の対象にはならない可能性がある。
それどころか他のルーラーは通達内容を知らない可能性もあるため、他のルーラーに対して「パンツ履くなとか馬鹿じゃねえの」とか言ったら可哀想な目をされる可能性もある。
そのため、このルーラーと出会わなければ新設ルールを守る必要はない。
このルールを違反しても啓示はもちろん行われない。新設ルールの違反に関しては教頭自ら発見する以外ない。
『乙女たちの箱庭に、秩序と平和の花が舞う(バッソク)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:目視範囲内 最大捕捉:1
聖杯戦争のルール、もしくは彼が宝具によって新設した特殊ルールに違反した者に対して発動できる宝具。
彼はサーヴァントに対する強制力である令呪を持たない代わりに、自身の秩序の対象たりえる人物への強権としてこの宝具を持つ。
秩序の対象とされるのは『就学年齢の女子』、つまり6〜18歳の女子である。
彼が違反を認識し、違反者の名前を特定し、違反者を目視した時点で発動が可能。相手が違反目的ではなく、ルール自体を知らなくても問題なく発動出来る。
違反者に対してルーラーの権限を持って回避不可能な相応の罰則を下すことが出来る。
それはマスターが持つ令呪の強制執行でもいいし、マスター自身への身体・魔力のハンディキャップの付与でもいい。
更にサーヴァントが同年代の少女だった場合、彼女もこの宝具の対象になる。
この宝具はルーラーのスキル:神明裁決の代わりに発動できるものであるため少女一人に付き二回までしか発動できない。
『狂った教頭』
ランク:E 種別:覚醒 レンジ:1 最大捕捉:100
彼が繰り広げた惨劇とその惨劇から生まれた都市伝説が融合して生まれた宝具。
ルーラーとしてのスキル・宝具を失う代わりにAランクの狂化を入手し、パラメータが大きく向上する。
ルーラーが何らかの原因からルーラーの任を最後まで全うできなかった場合に発動する。
彼はルーラーからバーサーカーへと変化し、目につく全ての『秩序違反』な少女に対して攻撃を開始する。
最大捕捉は彼の逸話たる百人斬りの夜(父兄100人殺し)から100人、たとえNPCだけだろうと100人の『秩序違反』な少女を殺せばこの宝具の発動は終わり、バーサーカーは消滅する。
バーサーカーの殺害でもこの宝具の停止は可能。
【weapon】
何の変哲もない木刀。
彼はこれで逃げ惑い抵抗する百人の父母を殺害したことや、警察機動隊と渡り合ったことがある。
木刀ではあるが教頭が振るえば相手を刺し殺すことが可能。つよぃ。
日記。
見た目は何の変哲もない日記。日々のあれこれや新しいルールの案やトレーニングメニューが書いてある。
実際は宝具とスキルの融合物。
宝具としての効果を発揮するのは彼の認識により【コウソク】【これを破ったものは罰則の対象とする】の間の文言のみ。
通達としての効果を発揮するのは彼の認識により【通達】【通達終了】の間の文言のみ。通達は参加者が次に手にとった紙に浮かび上がる仕様である。
他者が勝手に書き込むことは不可能。ただし、他ルーラーからの要請などがあった場合はこの日記の最新のページに赤マル囲いで書き込まれる。
これを破壊すればルールの追加は防げるが、そんなことする奴は厳罰対象である。
【人物背景】
白髪に眼鏡の初老の教頭。
いい教育者であろうとした男。
腐敗した学園が彼を秩序に狂わせた。
原作は蛇ノ道ハ蛇ソフトのアダルトゲーム『狂った教頭〜断罪の学園〜』。陵辱ゲーという枠組みで世に出されたバカゲー。
秩序と風紀の乱れた名門女学園を教頭が圧政とエロ校則によって正していくというゲーム。
あまり内容に触れるとネタバレになるので言えないが、幾つか必要そうな情報。
まず彼は基本的に超・善人である。本文中でも分かるように良い子ばかりなら絶対に狂わないだろう。
それと頭がいい。というより老獪というべきか。知略・策略、搦め手が得意である。
そして彼は常人レベルではかなり強い。複数人が武器を携えた百人を一方的に虐殺したり手練のボディガードを一方的にタコ殴りにしたり銃火器を武装した警察機動隊と渡り合ったりできる。
特に窮地に陥ると頭と感覚が冴え、敵の思惑や行動に対する読みの深さが段違いになる。野生の勘と持ち前の高い知能が噛み合うと言えばわかりやすいかもしれない。
あと、バッドエンドでは周囲のモブを皆殺しにするか大爆発するかなので、たぶんこの教頭も死ぬ時はそうなる。
原作のタイトルからも分かる通り、適性が一番高いのはバーサーカー。ルートによっては都市伝説として人の心に生き続ける正体不明の恐怖になっていたりもする。
【方針】
ルーラーの願いは一つ。
この街が、秩序と平和の保たれた乙女の箱庭であること。
この街が秩序の保たれた地である限り、彼は教育者たる自分を見失わない。
ルールも聖杯戦争の恙ない進行に必要なものを新設するだろうし、きちんと新設ルールの通達も行う。
教育指導室を拠点に活動を行う。通常は実体化して学校で高等学校の教頭として勤務。
他ルーラーからの要請や啓示があった場合は出向いて事実確認を行い、ルールを破っていれば宝具で罰する。
逆に言えば要請や啓示がなければずっと良い人、良いルーラー、良い教頭として原作よりも数段幸せに暮らしていくだろう。
参加者が見ればサーヴァントだとわかるが、クラス名が「ルーラー」と表記されるので襲われることはあまりない。
襲われた場合は裁定者への暴力行為とみなして強権を発動する。
何度も襲われるようだと次第に精神汚染された一面が出てきて、ルールや罰則を素っ頓狂なものに変えていく。
以上です
質問です。一話で死亡しないモブマスターを登場させるのはありでしょうか?
本編が始まるまでに何ならかの要因で死亡したと考えれば、支障はないと思うのですが。
なんなら交通事故でもいいと思いますし
感想は夜に。
>>100
可能です、既にそのような話も投下されています。
しかし、トップマーダーが車になった場合はまた別ジャンルの創作になりそうですね。現代社会に警笛を鳴らす感じの。
返答ありがとうございます。ではその方向で話を煮詰めます
投下します
人間とこの世界は、〈神の悪夢〉によって常に脅かされている。
神は実在する。全ての人間の意識の遥か奥、集合無意識の海の深みに、神は存在している。
この概念上『神』と呼ばれるものの最も近い絶対存在は、人間の意識の遥か奥そこで有史以来眠り続けている。
眠っているから人間には無関心で、それゆえ無慈悲で公平だ。
ある時、神は夢を見た。
神は全知なので、この世に存在するありとあらゆる恐怖を一度に夢に見てしまった。
そして神は全能なので、眠りの邪魔になる、この人間の小さな意識では見ることすらできないほどの巨大な悪夢を切り離して捨ててしまった。
捨てられた悪夢は集合無意識の海の底から泡となって、いくつもの小さな泡に分かれながら、上へ上へと浮かび上がっていった。
上へ―――人間の、意識へ向かって。
人間の意識へと浮かび上がった〈悪夢の泡〉は、その『全知』と称される普遍性ゆえに人の意識に溶けだして、個人の抱える恐怖と混じり合う。
そしてその〈悪夢の泡〉が人の意識より大きかった時、悪夢は器をあふれて現実へと漏れ出すのだ。
かくして神の悪夢と混じり合った人の悪夢は、現実のものとなる。
〈神の悪夢〉である〈童話〉に似た形で、恐怖は現実のものとなる。
◇ ◇ ◇
時槻雪乃はこの地に来て即座に記憶を取り戻した。
それは彼女が世間でいうところの霊能者で、異常事態に精神的にも、能力的にも耐性があったからかもしれない。
あるいは幸か不幸か、彼女が一人じゃなかったからだろうか。
『おはよう、雪乃。起きたかしら?それともまだ夢の中?』
神の泡による異常現象、それを曰く〈泡禍(バブル・ぺリル)〉と呼ぶ。
全ての怪奇現象は神の悪夢の欠片であり、この恐怖に満ちた現象は容易く人の命と正気を喰らうが、ごくまれに存在する〈泡禍〉より生還した人間には、巨大なトラウマと共に〈悪夢の泡〉の欠片が心の奥に残ることがある。
〈断章(フラグメント)〉と呼ばれるその悪夢の欠片は、心の中から紐解くことで自ら経験した悪夢的現象の片鱗を現実世界に喚び出すことができる。
時槻雪乃もそんな〈断章保持者(ホルダー)〉の一人で、時槻風乃は彼女の断章の一部だ。
姉、風乃はかつて泡禍を引き起こし、3年前に両親を惨殺して自殺。いまは雪乃の〈悪夢〉の一部となっている。
その亡霊を黙殺し階下に歩む。
「おはよう、雪乃」
『久々だけど、いい人たちじゃない。私のいない家はこんなにも平和』
リビングに惨殺されたはずの両親がいた。
あるいは記憶を取り戻したのはこの時だったかもしれない。
起き抜けで意識が覚醒しきっておらず、戦意を持っていなかったのは幸か不幸か。
異常事態に反射的に一帯を焼き払っていてもおかしくはなかった。
〈聖杯戦争〉について理解したのは、慌てて部屋に駆け戻った瞬間だった。
『あら?もしかして妙なことになっているのに気付いてなかったのかしら?』
異常事態を認識した。
かつて彼女も巻き込まれ、そして憎み続けている現象。
いつの間にか〈泡禍〉は進行しているらしい。
「どうなってるのかしら、姉さん?」
『さあ。詳しい話はむしろこちらが聞きたいくらいなのだけれど。私が殺したはずのあの二人が生きているなんて、どこの誰の泡禍かしら?』
話をしながら部屋の私物を確かめる。
ゴシックロリータのドレス、カッターナイフ、携帯電話、他諸々の家具なども記憶のままであると確認。
そして携帯のアドレスを確認するが……そこにあるのは親戚やら学校やらの知り合いの名前だけ。
以前から知っている名前だったか、植えつけられた記憶かすら定かではない。
神狩屋も、葬儀屋も、群草ロッジも、喫茶アプルトンも……白野蒼衣のも何一つ残っていなかった。
ひとまずリボンを身に付け、カッターの刃を引き出し心身ともに戦闘態勢をとる。
すると
「痛っ…」
右手首の内側に痛みが走り、雪の結晶のような聖痕が浮かび上がる。
そしてその痛みに断章が引き出され、左手に巻いた包帯から煙が上がる。
そして引き出された断章が、トラウマとは別の形でどこかに流れていくような感覚と共に、炎ではない像を結ぶ。
…その像は胸に穴の開いた、長身の男性の形になると、即座に刀の切っ先を風乃に向けた。
「マスター、急いでここから離れてくれ」
雪乃に対して気だるげに、しかし慌てたように警句を送る。
雪乃自身も突如現れた男に、何よりその尋常ならざる速度と空気に気圧されるが、男に見えるステータスと与えられた知識から何が起きているかを理解し、対処する。
「やめなさい、その人は敵じゃないわ」
『あら、私は構わないわよ。敵じゃないと言ってくれるのは嬉しいし、可愛いアリスとも出会えたけれど、それでも私を認識できる稀少な人なんだもの。
好意の反対は無関心、というでしょう?気付かれないよりもこうして刃を向けられる方がよっぽど喜ばしいわ』
制止の言葉と陶酔したような応答、よくよく見れば近似した容姿に敵ではないのかと至り、刃を収め霊体化しようとする。
しかしそこにさらなる乱入者。
「うだうだ言ってねーで離れろ!スタークの霊圧に潰されるぞ!」
角の生えたヘルメットのようなものをつけた少女が雪乃を引き離そうとする。
新たな人物の登場に今度は雪乃が戦意を表そうとするが
『よせ、リリネット』
霊体と化しても確かな力強さを感じる念話を送る。
反抗的な声を僅かに漏らすがしぶしぶ従い、少女もまた姿を消す。
『ほら雪乃も落ち着いて。色々と確認した方がいいでしょう?』
『そうだな。そちらさん同様こっちもいろいろ気になるしな』
『顔を見せて話してよ。意外とシャイなの?それとも先日の〈泡禍〉みたいに赤ずきんを食べようとしているのかしら?』
風乃の言葉と、先ほどまでの雪乃の様子も鑑み、恐る恐るといった感じで再び姿を現すスターク。
「あんたたち、俺の霊圧でも何ともないんだな……」
『さっきの子も気にしてたわね、レイアツって』
「あなたの〈断章効果(エフェクト)〉?私も〈断章保持者〉だから多少なら大丈夫だけれど」
雪乃たちに霊圧という概念はなく、故に自らの断章が耐性となってスタークの能力が無効化されているのがどれだけ尋常ならざることかわからない。
対してスタークは〈探査神経(ペスキス)〉を走らせ、雪乃が霊能者であることを理解する。
それがかつてのスタークの霊圧を無視できるほどのものではないにもかかわらず、今の彼女たちは平然としていることも。
「そうか……俺は、いや俺たちは、弱くなったんだな」
サーヴァントとなったことによる弱体化。
その事実を自嘲気に、しかし嬉しそうに受け入れる。
「何だか納得しているところ悪いけれど、色々と聞きたいことがあるわ」
「ん、ああ。俺に答えられることならね」
「〈聖杯戦争〉とは何か、そしてあなたとさっきの子が何か」
予想通りの問いに面倒くさそうな顔をするが、一つ一つ答える。
アーチャーのサーヴァント、コヨーテ・スターク/リリネット・ジンジャーバックという存在である事。
聖杯戦争のルール、サーヴァントによる殺し合いと万能の願望器のこと、存在するNPCのこと、己が能力など。
『〈聖杯戦争〉、円卓の騎士の真似事が今回の〈泡禍〉の物語かしら?アリスの意見も聞いてみたいところね』
「ところであんたはマスターの何なんだ?破面の一種かと思ったぞ」
「その人は私の姉で、私の〈断章〉の一部。本当は私にしか認識できないはずなんだけど、あなたも人の悪夢を共有するとかそういう〈断章〉を持ってるの?」
白野蒼衣という風乃を認識できる〈断章保持者〉という前例がなければ、聖杯戦争の知識がなぜか植えつけられてなければ、風乃への対応に平静ではいられなかっただろう。
それでもこの男の能力に疑念を持ち、さらに問う。
「さっきから言ってる断章ってのは何なんだ?あんたの斬魄刀か?」
質問に対する答えは、補足説明の要求。
互いの常識の差異が理解を滞らせる。
風乃の発言も交えて〈泡禍〉について、〈断章〉について話す。
聖杯戦争もその泡禍でないかという考えも述べるが、それには疑念を返される。
「マスター達が泡禍とかいうのを経験したのを疑うつもりはない。断章とかいうのを持ってることもな。
俺の霊圧の影響を受けてないみたいだし、魔力供給もされているからな。
そっちの姉さんとやらが見えてるのは俺が虚という霊だったからか、マスターの魔力で現界してるからかは分からんが。
だが聖杯戦争まで泡禍だってのは飛躍しすぎだし、ましてや俺の能力はあんた達のとは別物だ」
「泡禍以外の異常現象が存在するとしても、聖杯戦争という〈物語〉の形をとっている以上、私はこれを泡禍と判断するわ。
人を異常な形で巻き込み、死傷に至るなら私にとっての敵と何も変わらないのだから……あなたはどうなの?私の敵になるなら」
殺すわよ。
右手にカッターナイフを持ち、そう凄む。
その殺気が偽りないものであると感じたか、再びリリネットが割って入ろうとするが
「よせ」
再びスタークが軽くあしらい、送還する。
「……俺の願いは殆どもう、叶ってるんだ。あとはマスターと信頼関係が築ければ完璧なくらいだ」
「随分と都合のいい物言いに聞こえるけど」
『あら、そうでもないと私は思うわよ』
従順な姿勢を崩さないスタークに雪乃は疑惑の目を向けるが、対称的に風乃は肯定的に愛おしいものに向ける目。
『彼はね、一匹狼なのよ。知ってる?本当は狼は群れで過ごす生き物なんだって。
普通は群れを乗っ取るか、一匹狼同士寄り添うことで群れを形成するものだけれど、彼はそれができなかったの。
あまりに強大になってしまったがゆえに共に過ごせるものはいなかった。当然よね、人と巨人が共に過ごせば些細なことで人は踏みつぶされてしまうでしょう。
私とあなたは知らず知らずのうちに野獣に寄り添う乙女になっていたのよ、雪乃』
時槻風乃は生前も人の内面を見通す少女だった。
スタークの語った能力とこれまでの振る舞いから、内に抱えた孤独を、その願いを見抜き、そして肯定する。
『絆という字はもとは家畜を繋ぐための縄の事、束縛やしがらみを意味するの。
それでも人は弱いから人と絆を結ぼうとする。たとえそれが絞首台の縄でも。
とても強いのに、こんなにも弱々しいなんて可愛らしいじゃない』
くすくすと笑いながらスタークを援護する。
スタークの方はマスターへのある種の依存と、かつて傅いた男のことを言外に指摘され苦い顔。
最もここまでの風乃の発言に悪意はなかったが
『でもあなたの力が本当に〈泡禍〉によるものではない保証はないんじゃない?
泡禍はあなたの恐怖を具現する。孤独を恐れたあなたに孤独が訪れたのは泡禍によるものではないとなぜ言えるの?
あなたの〈断章〉が例えば周囲の人物を認識し、それを死に至らしめることであなたを孤独にするものであるとしたら、私を認識できるのにも納得いくわ。
雪乃の〈断章〉で無効化できているののは事実なのだし』
今度は悪戯心、程度の悪意を籠めた発言。
しかしさすがは〈神の悪夢〉の欠片か、トラウマに触れるその話しぶりにはスタークに仲間意識などない雪乃も顔をしかめた。
「……あんたの姉さん、いい性格してるな。おまけにまだ何か言いたげと来た」
まだ何かか言いたげな風乃に皮肉をいいつつ、続きを促す。
風乃は笑みを深め、さらに雪乃に対しても少しの悪戯心を持って答える。
『〈断章効果〉が聞かない人間は三種類。〈断章保持者〉に〈潜有者(インキュベーター)〉に〈異端(ヒアティ)〉。
下にいる雪乃の両親のようなナニカは、聖杯戦争に則っていうならNPC。私たちの認識でいうなら〈泡禍〉により生み出された化生、〈異端〉だわ。先日焼いた赤ずきんの狼のようにね。
もしあなたの能力が〈断章〉で、かつこの聖杯戦争が〈泡禍〉なら彼らにあなたが触れても倒れることはないでしょう……試してみたら?』
能力と現状の確認、という一点だけ見ればその一手は効率的だ。
生じ得る犠牲の可能性を考慮しなければ、だが。
「……おい、いいのか?」
「…………あなたがいいなら、いいわ。やって」
偽りとは言え彼らは雪乃の、そして風乃の両親だ。それを危険にさらすような真似をするのか、という問い。
答えに悩むが、偽りに過ぎない両親への心配など無意味と切って捨て、むしろそんなくだらないことで〈断章〉を晒すのかという彼女なりの心配を返す。
僅かに煩悶したのちにスタークが首を縦に振り、それを受け雪乃もゴシックロリータに着替える。
もしもNPCが〈異端〉であり、スタークの力に反応して襲い掛かってきても構わないよう戦闘態勢になる。
着替え終わると部屋の外で待たせたスタークと合流し、階下に降りて再び偽りの両親と邂逅する。
幸か不幸か、戦闘になることはなかった。
スタークが近付き少しすると、両親ともに意識を失ったから。
スタークはそれを見て悲しげな顔をするとすぐに霊体化し、今度はこちらからリリネットを召喚、両親をベッドに運ばせる。
雪乃の細腕では両親を運ぶことは難しく、スタークが実体化してては命を削ることになりかねないから。
「……あなたが〈断章保持者〉であるなら、聖杯戦争は〈泡禍〉ではない。逆に聖杯戦争が〈泡禍〉ならばあなたは〈断章〉ではない異能の保持者。
少なくともそれは認めなければいけないみたい、ね」
『ああ、そうらしいな。それでそれが分かって何か心情に変化は?』
「ないわ。聖杯戦争が〈泡禍〉であってもそうでなくとも、これの原因を断つ。その方針を改めるつもりはない。
あなたも、私の力で形になっている姉さんのようなものだと考えれば、〈断章〉みたいなものだと思える。戦力としては多少は当てになりそうだしね」
『出立かしら、雪乃?』
出ようとする雪乃に風乃が声をかける。
ゴシックロリータのままだが、当然だ。これが雪乃の戦闘着で、きっと死装束なのだから。
学園の制服を着て日常にかまけるつもりなどない。
一刻も早くこの事態を解決する。
『この家とあの二人はそのままにしておくの?こんな愚かしい藁の家の存在を許すの?
こんな、聖杯なんてものに作られた偽りであっても日常を受け入れたら、あなたを動かしている憎悪、痛み、血、その全てを否定することになる。
……焼いてしまいましょう?このあり得ない歪な異物を灰に帰してしまいましょう?』
風乃が日常的に囁く、破滅への導き。
だがこの場に置いては〈泡禍〉を殺せ、という騎士としての責務でもあった。
いつもなら一蹴するが、これを一蹴はできず、彼女も騎士として答えた。
「神狩屋さんにも葬儀屋さんにも連絡がつかない以上、隠蔽ができない……今はまだ、早い」
家庭の夫婦の死、それが報じられては活動に支障をきたす。
田上颯姫の援護なしに大事は起こせない。
神狩屋がない以上、ここを拠点にする必要もあるだろう。
『あら、そう。つまり、〈食害〉や〈アンデルセンの棺〉が用意できるなら彼らを殺すのね?』
悪戯心などではない、明確な悪意に満ちた問い。
しかし〈泡禍〉を、怪奇現象を憎む以上、死者である両親がいるなどという異常事態は許せないのが〈雪の女王〉だ。
だから
「殺すわ」
カッターを強く握り、そう答える。
『それなら彼らとの連絡手段も模索しなきゃね。可愛いアリスとも話はしたいし』
愉快気に笑みをこぼし、妹に両親の殺害を教唆する姉の亡霊。
そして狂々と自論を語り続ける。
『でもそれが意味のある行動だといいわね?眠って起きたら、ここにいた。
まるで〈不思議の国のアリス〉。蒼衣(アリス)と夢見子(ウサギ)が出会ったあの時から、少女(あなた)は眠って夢を見ていたのかもしれないわね……そして今も。
ここが少女(アリス)の見る夢なら、あなたは〈チャシャ猫〉のように巻き込まれただけかも。ここが夢なら、悪夢から覚めなければ彼らに会うことはできないわ。
……それともこれは〈美女と野獣〉かしら?もしかすると〈雪の女王〉かもしれないわね?』
「うるさいわ。いい加減黙ってて」
どうでもいい。
これがどんな〈童話〉を象った〈泡禍〉でもどうでもいいのだ。
それが〈泡禍〉であるならなんだろうと滅ぼすと3年も前に決めた。
自分だって。両親だって。蒼衣(アリス)だって。
それが泡禍の根源なら、殺すだけ。
【クラス】
アーチャー
【真名】
コヨーテ・スターク@BLEACH
【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
単独行動:EX
宝具により規格外にまでなっている、最早呪いじみた《孤独》の運命。
マスター無しでも現界、全力戦闘が可能。
しかし当然無尽蔵ではなく、宝具の乱発などすれば一人孤独に消えていくことになる。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。
【保有スキル】
十刃:A+
虚(ホロウ)が仮面を剥ぎ、死神の力を手にした種族、破面(アランカル)。その中でも指折りの戦闘力を持つ者に与えられる称号。
第一の数字を与えられ、また特に死神に近い特徴を持つ彼は最上位で保持する。
虚の技能である虚閃(セロ)という光線、死神の斬魄刀と能力解放を模した帰刃(レスレクシオン)
他に破面の技能である響転(ソニード)という高速移動や虚弾(バラ)という高速光弾、探査回路(ペスキス)という感知能力、身体特徴である鋼皮(イエロ)という強靭な外皮
さらに十刃のみが扱う王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)に黒虚閃(セロ・オスキュラス)など多彩な能力を保持する霊的存在である。
神性を持つ相手に追加ダメージ判定を行う。相手の神性が高ければ高いほど成功の可能性は上がる。
また魂を喰らう種族であるため『魂喰い』による恩恵が通常のサーヴァントより大きい。
直感:D
戦闘時、つねに自身にとって有利な展開を“感じ取る”能力。
攻撃や敵の能力をある程度は予見することができる。
魂魄改造:―(A)
自身の霊体、魂を改造する能力。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
これにより彼は自らの魂を引き裂き分かち合い、スタークでもありリリネットである弾頭を呼び出せる。
またかつて自らの魂を斬魄刀ではなくもう一人の自分として形成したこともある。
帰刃状態でのみ行使可能なスキル。
道具作成:E
魔力を帯びた道具を作成する技能。
霊子で構成された武器を発現させる。
様々な武器を発現可能で、劇中では剣を発現させ使用している。
【宝具】
『一人(プリメーラ・エスパーダ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜8 最大捕捉:上限なし
十刃(エスパーダ)には個々に司る死の形があり彼のそれは《孤独》である。
実体化している限り、現界に消費した魔力量に応じて自身の周囲に無意識に霊圧を放ち、一定以下の実力者はその霊圧にすら魂を削られる。
レンジ内で長時間存在した場合、4つ以上Cランク未満のパラメータを持つ、または3つ以上Dランク未満のパラメータがあるもので意識混濁、4つ以上Dランク未満のパラメータがあるもので意識消失、しばらくすると死亡する。
大多数のマスターやNPCは堪えるのが難しいが、サーヴァント化により大幅に弱体化しており即座に離脱すれば影響は少ない。
また対魔力やそれに準ずる呪術、魔力、霊障などへの耐性があれば容易く無効化も出来るようになっている。
この宝具は現界に消費する以上の魔力は要求しないが、自身のマスターにも効果を及ぼし、令呪を以てしても停止・破棄できない。
またいかなるクラスで召喚されようと単独行動のスキルをEXランクで保持させる。
『二人(リリネット・ジンジャーバック)』
ランク:EX 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
スタークが破面化した際、通常は肉体と刀に分ける虚の力を1体の虚が2つの肉体に分けた半身の様な存在。
彼女が存在する限りスタークは一人じゃない。
分身であるリリネットと一体化することで後述の宝具は解放される。
ステータスは筋力:E 耐久:C 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 相当。刀身が湾曲した形の刀を武器とし、折れた角のような部分から取り出す。一応虚閃も撃てる。
本来スタークの一部であるため『一人(プリメーラ・エスパーダ)』による影響を受けない。
そして彼女も《孤独》の運命を背負っており、EXランクの単独行動スキルを持つ。
ある意味で魂の物質化という第三魔法に近付く偉業であるためEXランクとなっているが、戦闘などに役立つかといえば否。
猫の手よりはまし程度だろう。
一応宝具化に伴い霊体化というか、送還可能になっているが、勝手に出てくることもある。
基本的に余計を消耗を控える為に、用もなく出てくると引っ込められる可能性が高いが。
虚は死者の魂が心をなくしたものであり、大虚(メノスグランデ)はその集合体、破面はその進化系である。
そうした成り立ちの者が魂を引き裂き、固有の人格を成しているのは愛染惣右介の産み出したホワイトという虚に、ひいては二枚屋王悦の作り出した斬魄刀に近似する。
ただ力の核を刀の形状にした他の破面とは違い、もう一人の自分として《具象化》しているスタークはより《死神》に近い存在と言える。
『二人で一人の群狼(ロス・ロボス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:10人
帰刃(レスレクシオン)状態であり、解号は「蹴散らせ」。
分身であるリリネットと一体化することで解放される。
解放するとオオカミの毛皮のようなコートをまとったカウボーイを思わせる姿に変わり、左目部分にポインターの様な仮面の名残が形成される。
リリネットは2丁拳銃に変化しており、会話も可能。
自分の魂を引き裂き分かち合う能力で狼の弾頭を召喚し、2丁拳銃からの虚閃と狼の弾頭を操って戦う。狼の弾頭は攻撃を受けると分裂する上、標的に喰らい付くことで大爆発を起こす。
魂を引き裂き過ぎると『二人(リリネット・ジンジャーバック)』を失うことになるが、十分な『魂喰い』か魔力供給があればそのリスクを減らせる。
【weapon】
『浅打・偽』
四角形の四つの角に牙がついている鍔がある刀。
一応宝具には劣るが、それなりの神秘は宿す。
大多数の破面と異なり彼は己の力の核を先述の宝具としているため、この刀の戦力は他の破面や死神に比すと劣るところがある。
【人物背景】
あるものが命を落とし、霊となった。
霊として長く在るうちに心をなくし虚(ホロウ)となった。
なくした心を求めて虚を喰らい、最下級大虚(ギリアン)となった。
ギリアンと化しても、さらに成長して中級大虚(アジューカス)となっても共食いを続け、圧倒的な力を持つ最上級大虚(ヴァストローデ)となった。
当然周りに誰もいなかった。
一人に耐えかねて仲間を作るが、自身の力に耐えかねてそこにいるだけで魂が削られ皆死んでいった。
一人に耐えかねて魂を分かち、二人になった。
二人以外にも仲間が欲しかった。
力に耐えられるような強い仲間が欲しかった。
そんなことを気にせずにいられる弱いやつが羨ましかった。
…………力を見込まれて強い男たちの仲間になった。
仲間が、そのなかでもそれなりの地位の男が倒れた。
弔い合戦なんて経験なかったし、柄じゃないけど、普通ならやるもんだろうと思ってた。
けれど、仲間だと思っていたやつもそいつの部下もそれに何の感情も表さなかった。
仲間じゃなかったのかもしれない。
また、二人になった。
戦いの中、ついに一人になった。
そして誰もいなくなった。
【サーヴァントの願い】
弱くなりたい……叶った。
またリリネットに会いたい……叶った。
あとは、仲間が欲しい。
命を懸けて守りあえるような、敵を討ちたいと互いに思い合えるような本当の仲間が。
【マスター】
時槻雪乃@断章のグリム
【マスターとしての願い】
泡禍への復讐……だがそれは聖杯なんて訳の分からないものに託すものではない。
ましてや彼女は聖杯戦争も泡禍であると考えている。
【weapon】
・カッターナイフ
何の変哲もないカッターナイフ。
殺傷能力はあるので一応武器としても扱えなくはないだろうが、主に後述のトラウマ、ひいては断章を起動するための条件付けに用いる。
作中で名言はされていないが、トラウマを想起しやすいよう姉が実際に使っていた、またはそれと同じデザインのカッターであると思われる。
他の刃物や別形のカッターでは駄目な可能性が高い。
・ゴシックロリータ
何の変哲もないゴシックロリータの衣装。
別に防刃加工とか魔術的な守りなどはない。
後述のトラウマ、ひいては断章を制御するための一助であり、これを身に纏うことで断章を引き出しやすくする。
逆にこれを纏わないことにより日常において断章が暴走するのを防ぐ役割もある。
リボンだけを身に付けることで日常と戦場を兼ねたような精神状態に身を置くこともある。
【能力・技能】
・断章『雪の女王』
かつて起きた〈泡禍〉により宿した神の悪意の泡の欠片。
『私の痛みよ、世界を焼け』と、断章詩を唱え自身の手首に刃を走らせることで炎を放つ、痛みを代価に火炎を発生させる能力。
ただし、その苦痛に集中していなければ、現出させた炎を維持できない。一度発生させていれば『焼け』の一言のみでさらに炎を発生させることができる。
詳しく言うなら『トラウマをフラッシュバックさせることでその原因もフラッシュバックさせる』能力のような現象。
彼女の場合、実姉、時槻風乃の焼身自殺がトラウマとなっているため実姉のことを思い出すことで焼身自殺の状況を再現=発火現象を引き起こす。
また風乃の存在そのものもトラウマとなっているため彼女の幽霊のようなものが常に彼女のそばにいる。
より断章を引き出すことで風乃は実体を伴う現象にまでなり、それに伴いより鮮明に焼身自殺が再現される=より正確に強力な炎を放てる。
彼女の姉はゴシックロリータを常に纏い、リストカットの常習犯で、最期に「私の痛みよ、世界を焼け……」と呟いて家に火を放ち、父母と共に死亡した。
そのトラウマを想起する事象で身を固めることで断章を放つ。
引き起こす現象は極めて強力だが、発動にはトラウマをフラッシュバックさせる、リストカット、風乃による炎の行使にはさらに深くトラウマと向き合い今までのリストカットの傷全てが開くなどの条件が必要。
精神肉体両面でのダメージは激しく、トラウマに心を壊せば自信を含めた全てを焼き尽くす「焼身自殺」の再現となる。
なお風乃の幽霊は、生前の人格を再現しているのに加え、同種の〈泡禍〉を感知し、魔力も多少なら感知できる。
断章とは「無意識に住まう神の悪意の欠片」であり、つまり雪乃はアラヤの悪意とそれに伴う魔力を受け取っている。
例えるなら「この世全ての悪」の泥ではなく泡を宿している。
膨大な魔力を持つが、もしこの泡が弾けて器(雪乃)の外にあふれたならそれは〈泡禍〉という悲劇を招くだろう。
恐らく彼女のそれは、巨大な火災。
そしてすでに「神の悪意の欠片」を宿しているため彼女の意識の容量はすでにほぼ一杯であり、他の要素が入り込む余地が少ない。
そのため断章保持者は断章、ひいては神秘を伴う異能に耐性を持つ。
記憶を奪う断章に触れても不快感ですみ、、侵入を禁じ認識を阻害する断章の効果も受けず、針の山や鳩の爪によるダメージもそれが〈泡禍〉に由来するものならば少なく済む。
特に霊的、精神的異能に対しては強力な耐性となり、スタークの『一人(プリメーラ・エスパーダ)』のよる影響を受けていない。
……だがあくまで耐性にすぎず万能ではない。
人魚に変えられてしまう断章も少量なら傷の治癒でとどめることができるが、過剰に与えられれば異形になってしまう。
『一人(プリメーラ・エスパーダ)』は無力化が容易な宝具だが、他のサーヴァントによる異能などへの抵抗はほぼできないだろう。
そして逆もまたしかり、神秘の塊であるサーヴァントへの断章によるダメージは少ない。
纏めると「魔力タンク」「そこそこの異能耐性」
「魔力探知してくれる姉の亡霊(一部の能力者しか認識できない)がいる」
「詩を唱えリストカットをすることで周囲を焼き尽くす(サーヴァントにはあまり効かない)」
「詩を唱え、リストカットの古傷を全て開くことで姉の亡霊を受肉させ、さらに強力かつ正確に周囲を焼き尽くす(同上)」
「ただしめっちゃメンタル削るし、制御失敗すると『この世全ての悪』的な代物の欠片が暴走してヤバイ」
【人物背景】
道を歩くだけで人目を引くほどの整った白皙の美貌と長い黒髪を結んだゴシック調のリボンが特徴の美少女。
その外見は常に不機嫌そうに見え、冷たい瞳と手首の傷を隠す包帯が他人を寄せつけず、また彼女自身も他人と必要以上に触れ合う事を忌み嫌っている。
また、両親の惨殺死体と自宅が炎上する様を目の当たりにした事で、肉類が一切食べられないため、栄養補給の手段は専らサプリメントに頼っている(生前は精神安定剤と睡眠薬漬けだった風乃の劣化行為の側面も兼ねている)。
姉の時槻風乃に浮かび上がった〈泡禍〉で家族を全て失い、〈騎士〉となった。
多くの〈泡禍〉――時折〈童話〉にまで発展した――を焼き払い、〈雪の女王〉としての畏怖を集める。
そしておよそ三年〈騎士〉を 続け、赤ずきんの〈泡禍〉を焼き尽くした傷も癒えてきたころの参戦。
周囲の大人達が心配するほど〈泡禍〉に対して激しい憎悪を持っており、それと同時に「普通の日常」に生きる事を放棄している。
好戦的な性格と無表情故にあまり動じない印象を受けるが、<断章>で人らしいものを殺した日の夜は風乃の<泡禍>を思い出して涙を流すことがよくあるらしい。
そもそも攻撃的な性格は<泡禍>との戦いのための行動の賜物のようで、余裕がないときなどには無意識のうちに元来の性格に由来する情に厚い行動をとることもある。
一応必要と判断すれば情報収集のためのコミュニケートはとるし、情報操作などのバックアップの必要性は分かっている。
現場での同僚無しでやっていた時代もあり、敵に容赦はないが、誰彼問わず敵対しようとなどはしない、作中指折りの常識人である。
……比較対象が〈泡禍〉に触れて精神的に病んでいる面のある人ばかりなのはあるが。
【令呪】
右手首内側、雪の結晶状。
一画使うごとに六つの角が二つ消える。
【方針】
神狩屋たちと連絡を取る術を模索しつつ、この聖杯戦争の元凶となった者を殺し、止めるべく動く。
……それがたとえ自分や知り合いであっても。
投下完了です
>>67
投下乙です、南千秋さんと仮面ライダーZX、村雨良ですね。
その心情描写から、失ったものの大きさ、そして取り戻すという誓いの重さがはつきりと伝わります。
思いを共有出来るサーヴァントを召喚できたのは彼女にとって幸運なことであると思います。
そしてZX、近年では暗闇大使に変身してサプライズドッキリを仕掛けたことで有名ですが、
やはり、格好いい。このSS中では4つしかセリフがありませんが、そのどれもが絵になって頭に浮かぶ格好良さです。
その上、今回は記憶も奪われること無く最初から仮面ライダーとしての登場です、とにかくこの格好良さに浸らせていただきました。>>
投下ありがとうございました。
>>77
投下乙です、竹田千愛さんと太宰治ですね。
原作は未だ把握していませんが中々面白そうな二人組です。
やはり聖杯さんサイドは理解出来る者を呼び出すのでしょう、
しかし、表面上普通に見せて、あまりにも複雑なものを抱えない少女はアサシンに救いを求めることが出来るのでしょうか。
彼女の願いが叶うとしたら聖杯戦争の結末ではなく、過程にそれを求めるべきなのかもしれませんね。
投下ありがとうございました。
>>83
投下乙です、ジークリンデ・サリヴァンさんと魔女、ベアトリーチェですね。
互いに魔女同士、擬似的な師弟関係を結びましたか、実に心温まる風景です。
また、主従共に乗り気であり、特にキャスターの教えによってマスターに与えられる影響は大きいでしょう。
人種の違い、宗教の違い、性別の違い、違うということはそれだけで争いを正当化してきました。
ならばキャスターの存在によって、それが真実であれ欺瞞であれ、己が魔女であることをより強く自覚すること、
それ故に、人間に対する攻撃性を正当化することは非常に面白いこととなるでしょう。
投下ありがとうございました。
>>92
投下乙です、野咲春花さんとPoH、ですね。
こういう雰囲気いいですよね、なんか。
ありえない人が優しく微笑みかけてくる世界という描写はこの聖杯戦争においては、特に望ましものです。
今回殺したのはアサシンでしたが、ひたすらに突き進むために偽の戻れる場所を破壊してしまうというのは重要な儀式だったのでしょう。
もう一つの殺人に描写が割かれなかったのは、やはりこちらの方が重要であったからなのだと思います。
ひたすらにひたすらに突き進んでいただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>99
投下乙です、何だこのルーラー!?(驚愕)
投下読み終わった後、自分でもわからないままにゲラゲラ笑ってました。
ホラー映画でいちゃつくカップルを見るような、熱湯風呂の前の上島竜兵を見るような、ガキ使の山ちゃんの卒業式を見るような、
なんというか、もう、教頭には本当に可哀想なことですが、あっ……(察し)って思いますね。
文中に含まれたくすぐりに笑いつつ、最終的な結末(大オチ)を想像してひたすらに笑いますね。
投下ありがとうございました。
>>113
投下乙です、時槻雪乃さんと第1十刃コヨーテ・スタークですね。
どうでもいいことですがエスパーダで変換すれば十刃になることを知りました、良い時代になったものです。
コヨーテさんはそうか孤独に耐えかねてロリを作ったのか、と考えると僕自身としても非常に共感できるものがあったので、
この度、サーヴァントとして召喚されて本当に良かったと思います。
というか、コヨーテさんがこういうキャラクターであることを初めて知りました、
あれ?バラガンさんの方が強くないかとずっと思っていたのですが、ようやく謎が解けたようです。
断章のグリムは現在読んでいます。
投下ありがとうございました。
投下します。
「信じられませんね。そんなオカルトありえません」
街中の一角にあるファーストフード店。その奥まった席で、橘ありすは開口一番にそう断言した。
そこにいるのはありすと、もう一人。その人物は未だ成人していない少年であり、傍目から見れば二人は兄と妹にも見えるかもしれない。
対面に座る少年は困ったような表情を浮かべ、所在なさげにありすを見ている。どこか頼りないその所作に、ありすは「はぁ」と息をつくと言葉を続けた。
「……その聖杯戦争というのは、魔術師が英雄を呼び出して戦い合う、というものなんですよね」
「うん、そうなるね」
「そこからおかしいんですよ。わたしは魔術師なんてメルヘンの人間じゃありませんし、それになにより」
一呼吸置いて、ありすはその言葉を突きつけた。
「あなたが英雄のような大それた人には見えません」
どやぁと聞こえてきそうなしたり顔でそう言うと、ありすは論破完了とでも言いたげにこちらを見てくる。
確かにありすの言うことは当たっている。少年の格好はモスグリーンの制服ズボンにYシャツという、夏場の高校生そのままの姿だ。線の細い体格は戦いどころか運動系の部活すらやってなさそうなほどで、これで英雄と言われても信じる者はいないと断言できるだろう。
だが、それでも。少年がサーヴァントと呼ばれる超常の存在であることに変わりはない。
「それは僕も同じ意見だし、自分のことを英雄だなんて思っちゃいないけど。でも、君も見たでしょ?」
「うっ、それは……」
少年が言っているのはこの店に来る少し前のことだ。サーヴァントとして現界した少年は突然のことに驚くありすに、霊体化などを披露して自分が普通の人間ではないということを証明している。
……普通の人間ではないという事実に、少年の気が少し重くなったのは内緒だ。
「だ、だったらあれはトリックか何かだとすれば!」
「それだと君の頭の中に聖杯戦争の記憶が入ってることには説明がつかないと思うけど」
「うぅ……」
言葉に詰まり目線を下げるありすを、なおも少年は困った表情で見つめる。少年としては現状を理解してもらいたいだけで、何もありすを言い負かして論破したいわけではないのだ。
と、ありすは気を取り直したのか、こほんと咳払いしつつ話を進める。
「……では、聖杯戦争というものが本当にあると仮定しましょう」
先ほどまでの軽い動揺はどこへやら、既にありすの表情は真剣そのものだ。少年もまた同様に真剣に耳を傾ける。
「わたしの頭の中の知識が正しいとすれば、ここから出るには聖杯を手に入れるしかない。そして聖杯は全てのマスターとサーヴァントを倒さないと現れない。そうですね?」
「厳密にはマスターは絶対に倒さなきゃいけないわけじゃないよ。でも、優勝を目指すならどこかで倒す必要が出てくるのは確かだね」
「はい、分かってます。そして倒すということは……殺す、ことになる……んですよね」
ありすはそこで言いよどむ。
マスターを殺す。それはつまり人殺しだ。幼い少女であるありすにとっては些か以上に堪えるものだろう。
「わたしは、人を殺したくありません。そうまでして叶えたい願いは持ってません」
「……」
「でも死にたくもありません。殺されたくないです。わたしは、どうしたらいいんでしょうか」
言葉を切る。ありすは唇を噛み、スカートの裾を掴んで項垂れている。
殺人。それは現代日本においては禁忌のようなものだ。する側でも、される側でも、それは全く変わらない。
だがそれはあくまで普通の世界での話だ。こと聖杯戦争においては他者を殺すことだけが唯一の常道であり、ここから脱落するのは聖杯を手にする以外では死ぬ他にない。
そして眼前の少年はサーヴァントだ。サーヴァントとは願いのために聖杯を欲する。そのために現れるのだと頭の中の知識にある。ならば戦いそのものを否定するありすは彼にとっては邪魔なだけで、何を言われるのか、何をされるのか分かったものではない。
しかし……
「うん、良かった。安心したよ」
「…………は?」
少年の返答は、些か以上に予想外であった。
「え、あ、その、つまりわたしは聖杯を取るつもりはないって、そう言ったんですけど……」
「大丈夫、分かってる。死にたくないし殺したくないって気持ちは当然だし、人として普通だと思うよ。うん、君は何も間違ってない」
「……わたしが言うのもなんですけど、あなたはそれでいいんですか? サーヴァントは願いを叶えたいから喚ばれると記憶してるんですが」
その言葉に、少年はうーんと難しそうな顔を作る。纏う雰囲気は朴訥で、やはり英雄にはさっぱり見えない。
どこにでもいそうな風貌の、線の細い少年。少年は優しげな笑みを浮かべると、ありすに返答した。
「確かに願いがないと言ったら嘘になるけど、でも君と同じ考えだよ。殺したくないし、殺されたくない。まあ僕は一度死んでるから殺されたくないってほうの気持ちはそんなでもないけど」
それにね、と少年は付け加える。
「この聖杯戦争自体が、もしかしたら僕の知ってる《怪奇現象》だって可能性もあるんだ。もしそうだとすればなんでも願いの叶う聖杯なんて存在しない。
今はなんとも言えないけど、そういう推測もできる」
聖杯自体が、ない?
「それは、一体どういう……?」
「僕は生前、とある《怪奇現象》を解決する立場にいたんだ。その《怪奇現象》は人の持つ悪夢やトラウマを現実のものにしてしまう。そしてそれは、特に大きなものの場合は《童話》の形を取ることがあるんだ。
アーサー王物語にパルジファルに荒地、聖杯伝説は童話でこそないけど十分に物語としての特性を持ってる。僕の知る《怪奇現象》が今回は聖杯伝説をモチーフにしている可能性だってあり得るんじゃないかって僕は考えてるんだ」
少年の語ることの全てを、ありすは理解できたわけではない。ありすは同年代の中では頭の回るほうではあるが、しかし少々情報量が多く飲み込みきれない部分があることは確かなのだ。
しかし分かることがある。聖杯戦争それ自体への懐疑と、少年がそれに対抗する者であるということ。
「仮にこの聖杯戦争がその《怪奇現象》だったら、あなたはそれを解決するんですか?」
「そうだね。もしそうなら、僕は全力でこの《怪奇現象》を止める。今はもう《予言》も《女王》もないけど、それが僕の役目だから」
そう語る少年の目は真剣そのものだ。先ほどまでの頼りなさは感じられず、彼が真に《怪奇現象》に立ち向かってきたのだと否が応にも理解させられる。
「僕は剣も弓も槍も使えないし、魔術師でもない。でも、それでも僕がこの戦争に呼ばれた理由は分かる。
まず僕がしなくちゃいけないのはこの聖杯戦争を《理解》することだって、そう思う。それに聖杯を調べてるうちに安全に脱出できる方法も見つかるかもしれないしね」
僕の考えはこんな感じだけど、君はどう?
そう尋ねられて、ありすは迷いなく頷く。
殺す必要のない選択、それは少女にとっては福音のようなものだから。
「……ええ、はい。私もその方針に異論はありません。これからよろしくお願いしますね、【ホルダー】さん」
「うん、こちらこそよろしく、マスター」
両者は手を取り合い、少女はぎこちなく、少年は屈託なく笑う。
それはやはり年相応の少女であったし、年相応の少年の姿でもあった。
【クラス】
ホルダー
【真名】
白野蒼衣@断章のグリム
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A++ 幸運D 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
断章:A
精神に根ざす神の悪夢の欠片であり、ホルダー自身のトラウマと混ざり合ったもの。光景のみならず現象をも伴ったフラッシュバックとして具現する。
断章とは言わばアラヤの悪意とそれに伴う膨大な魔力そのものであり、ホルダーの魔力ステータスの高さはこれに由来する。
ホルダーの精神の大部分は神の悪夢の欠片によって占有されているため、他の要素がホルダーの精神に入り込むことができない。
同ランクの対魔力を内包し、またあらゆる精神干渉を9割シャットダウンする。
精神異常:A++
精神を病んでいる。
"普通"という概念に固執し、それ故に異常な状況であっても平静を保っていられる。精神的なスーパーアーマー能力。
【保有スキル】
人間観察:B
人々を観察し、理解する技術。
他者の持つ悪夢を理解し、それに共感する類稀なる感受性・受容性を持つ。
受容体質:C
他者のあるがままを受け入れる。被虐体質とは似て非なるスキル。
第一印象において他者の信用を得やすい。しかしそれは逆に言えば舐められることにも近く、強い敵意や戦意を持つ者と相対した場合は優先的に狙われやすくなる。
直感:D
つねに自身にとって有利な展開を”感じ取る”能力。
ホルダーのそれは戦闘よりも非戦闘時における危機察知、及び他者の精神性をうかがい知るためのものとなっている。
気配詐称:A
ホルダー及びそのマスターの気配をNPCのものに偽装する。
ただし同ランク以上の気配察知や隠蔽無効化スキルには見破られる。また、そうでなくとも他マスターやサーヴァントにホルダーの半径5メートル以内に近づかれた場合は普通にばれる。
ホルダーのマスターはホルダーから1メートル離れた場合このスキルの効果の対象外となる。
ホルダーの持つ自身の普遍性に対する絶対の自負が形になったスキル。
【宝具】
『目醒めのアリス(フラグメント・オブ・ワンダーランド)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ホルダーの精神に根ざす神の悪夢の欠片。抱えた悪夢の内容は「自分が見捨ててしまった人間が破滅する」。
他人が抱えた悪夢(トラウマに代表される精神的弱点)を理解・共有し、それを拒絶することで悪夢を保持者へと還す。
悪夢を還された者はその悪夢を維持することができず、異形化して最終的には消滅する。あらゆるスキルと宝具による軽減・無効化を受け付けず、復活等も決してできない。まさしく必殺の宝具。
しかし発動するためには相手の抱える悪夢を理解する必要があり、思想・性質といったかなり深い部分までをも知らなければならない。伝聞だけでそれらの条件を果たすことはまず不可能と言っていい。
また、仮にこの悪夢の欠片がホルダーの精神から溢れてしまった場合、泡禍と呼ばれる大災害を引き起こすだろう。
【Weapon】
なし
【人物背景】
自他共に認める"普通"の少年。常に目立たないことを信条とし、平凡というものを愛している。
幼少の頃、幼馴染が異形と化した泡禍に巻き込まれ「断章保持者」となっていたが、本人は高校生になるまでその記憶を無くしていた。その泡禍のトラウマから他人、特に精神を病んだ少女を見捨てることができないという強迫観念に囚われている。
再び巻き込まれた泡禍を通じて断章に目覚めた後は断章保持者として様々な泡禍の解決に奔走していったが、蒼衣の断章によって死ぬことを望む神狩屋の暴走によって全てが崩壊してしまう。
事件そのものは解決するも、後に残ったのは大量の死と不安定になったホルダーの断章のみ。ホルダーはいずれロッジを作ると宣言し、それを受けた仲間とも言うべき少女も了解する。
その後は特に語ることはないだろう。そう遠くない未来において、彼は均衡を崩した自身の断章に呑まれ最期を迎えている。
聖杯戦争においては全盛期、つまり断章が安定していた高校1年生の状態で現界している。
【サーヴァントとしての願い】
泡禍を根絶する、失われた日常を取り戻す、別れた人たちとの再会。
大小に関わらず願いはいくつも持っているが、それを聖杯に託すつもりはない。というか聖杯のことを根本的に信用していない。
【マスター】
橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
ないわけではないが、人を殺して聖杯に願うほど大それたものではない。
【weapon】
ごく普通の携帯型タブレット。
【能力・技能】
同年代と比べて勉強はできるほう。アイドルなので身体能力はそれなりに高いか。
特技:論破(自称)
【人物背景】
12歳の小学6年生。自身の日本人らしくない名前にコンプレックスを抱いておりそのせいか無愛想だが、実のところは年相応の感性を持った少女。
大人びているというよりは背伸びしたがる子であり、時折冷めたことを言うことはあるが音楽には力があると信じるなど熱い一面もある。
そのコンプレックスにより知識で壁を作り自分を覆ってしまっているが、作中で自分らしさを考えていくうちに徐々に周りと打ち解けている。
【方針】
まず聖杯そのものについて調べる。その結果がどうあろうと誰かを殺すつもりはない。家に帰りたい。
これで投下を終了します。
なお、今回サーヴァントのステータス作成に◆yy7mpGr1KAさんの「時槻雪乃&アーチャー」を参考にさせていただいたことを補足します。
現時点でのマスター&サーヴァント一覧
セイバー 2組
空条徐倫@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン&ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画版)&沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
アーチャー 2組
絢瀬絵里@ラブライブ!&ジャン・ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険
時槻雪乃@断章のグリム&コヨーテ・スターク@BLEACH
ライダー 1組
南千秋@みなみけ&村雨良@仮面ライダーSPRITS
キャスター 3組
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている&アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
闇姫@夜姫さま&沙耶@沙耶の唄
ジークリンデ・サリヴァン@黒執事&ベアトリーチェ@うみねこのなく頃に
アサシン 3組
桂たま@天国に涙はいらない&ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
竹田千愛@“文学少女”シリーズ&太宰治@文豪ストレイドッグス
野咲春花@ミスミソウ&PoH@ソードアート・オンライン
エクストラクラス 1組
橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ&白野蒼衣@断章のグリム
ルーラー 1名
野守隆一@狂った教頭
他企画に投下した自作のサーヴァント、マスターを一部流用する形ですが、
投下します。
どう考えてもバッドエンドにしかならない。
◇◇◇
ある日神様は一つの双六ゲームを思いついた。
二人の駒が絶対不死身の進行役と協力して一人の少女とどっちが先にゴールできるか競う双六。
負けた駒は死にます。どっちもゴールできなかったら世界が滅びます。
VIPの少女は死ねません。途中でゲームはやめられません。
本気で頭のおかしい馬鹿げた双六ゲーム。
少女の心はすり減ってこんなゲーム嫌になってしまった。
ただ好きな先生と一緒に居たいだけなのに。
優しい少年に傷ついてほしくないだけなのに。
ふつうでいたいだけなのに。
そこで優しい神様は代わりに別のゲームを用意した。
一騎のサーヴァントと二人一組でほかのペアを蹴り落として聖杯を狙うバトルロワイヤル。
どうあがいても、少女は殺し合いから逃げられない。
◇◇◇
まるで時が止まったかのように静かな深夜の公園、街灯には羽虫が僅かな光に寄せられて集まっている。
街灯の下のベンチには無数の羽虫の死骸が張り付いている。
月明かりに照らされて、1人の少女がベンチに腰掛けているのがわずかに見えた。
少女の姿は酷く汚れており、あたりの暗闇より一層暗い眼をしていた。
「先生、先生…ッ!」
暗闇の中、少女は大好きな先生を呼ぶ。しかし誰も返事を返してはくれない。
彼女に優しくしてくれた悲観的な小説家の先生も、大嫌いな金髪のチャラ男もどこにもいない。
誰も少女を助けてはくれない。この世界で、乗除は一人ぼっちだった。
「バーサーカー…」
少女は自身に与えられたサーヴァントを呼んだ。
霊体化を解き、少女の目の前にバーサーカーは現れた。
そのバーサーカーはまるで鋼の竜であった。
青く透き通ったボディにオレンジ色のラインが走り、胸中の宝石が怪しく光っている。
ただ目の前にいるだけで少女は震えが止まらず、自分の生命が搾り取られる感覚を覚えた。
「バーサーカー、わたし…今まで何もできなかったの…大好きな人のために何にもできなかった…
わたしが何にも力を持っていない子供だったから…」
「グルルルルルルルルルル・・・・・・。」
少女はバーサーカに対して語り始めた。
バーサーカーは狂気に満ちた目で少女をじつと睨んでいる。
怖い。怖い。
少女は自身のサーヴァントに恐怖を抱きながらも、再び口を開いた。
「ここに来てからもずっと悩んでた。あなたがいれば力のない私でも聖杯を獲れるかもしれない。
双六ゲームから先生を助けられるかもしれない。ドラジェ君からお父さんがいなくならないかもしれない。
皆…しあわせになれるかもしれない。
でも、そうしたらきっと何人も死んで、死、死んじゃうかもって…ッわ…たしのせいで…」
言葉の末尾に至っては流れる涙のせいで途切れ途切れになってしまっていた。
人殺しは罪である。そのことはまだ幼い少女にもわかっていた。
先生を守るために殺意を抱いたことはあるが、まだ実際に人殺しをしたことはない。
その一線が、少女を立ち止まらせていた。
「でもね、バーサーカー。わたし思い出したんです。先生はどんなに傷ついても、わたしをずっと守っていてくれたことに。」
先生はわたしに温かいご飯をくれた。
先生は髑髏のマスクの男を倒して助けてくれた。
先生は殺人犯の罪を背負わされても、わたしを助けるって言ってくれた。
先生は鞠山からわたしを救い出してくれた。
先生はわたしが主人公の素敵な物語を書いてくれた。
先生はわたしに―――しあわせになってほしいって願ってくれた。
先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。
先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。
先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。
先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生――――ッ!
「今まで先生にはたくさんの愛をもらったんです。だから今度は私が返す番。
そのためだったら、わたしは罪を背負える。人殺しだって…わたしはできる」
その小さな存在を動かすのは愛。
少女の愛は全て大好きな先生がため。
愛のためならば、少女は何でもできる。
世界だってきっと…変えられる。
「だからバーサーカーお願いします。あなたの力を…わたしにください。」
「グルルルルルルルルルル・・・・・・。」
バーサーカーは少女の請いに唸り声で返したが、その唸り声は決して合意の証ではなかった。
バーサーカーが望むのはただ一つ。
歴史の改変者の抹殺。ただそれだけである。
彼女を助けようという思いなど、何処にもなかった。
もし少女が歴史の改変を望むならば、たとえマスターであってもその使命は変わりはしない。
躊躇なくバーサーカーは少女を殺すだろう。
慈悲ぶかき思いなど、闇の果てに消え去ってしまった。
「待っててね先生…先生は、私がしあわせにするって決めたんですもの」
先生にはなんの気兼ねもなく笑っていてほしい。ただ、ハッピーエンドになってほしい。
胸に想いを刻み、少女―牧野エリは先生の笑顔を思い浮かべ、離れ離れになってしまった彼に向けて笑顔を作ってみた。
今にも壊れてしまいそうな、脆く、儚い笑顔だった。
背中の天使の羽が一枚、地面に舞い落ちた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
やみのディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊
【パラメーター】
筋力A 耐久A+ 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A
【属性】
秩序・狂
【クラススキル】
狂化:A
筋力と耐久と魔力を2ランク、その他のパラメーターを1ランクアップさせるが、
理性の全てを奪われる。
【保有スキル】
時の守護者:E
じげんのとうで世界の時を守っていたポケモンであった。
しかし今は闇に包まれたことでその性質は汚染され、
歴史を変えようとするものを抹殺するだけの意思に成り果ててしまった。
本来はAランククラスのスキルであったが、狂化したことでそのランクが著しく低下してしまった。
歴史を変えようとするものを見つけた場合、優先的に攻撃する。
タイムパラドックスにより消滅したものをも呼び戻す力をも持っていたが、
サーヴァントとしての形に押し込められ、現在は他者の時間操作能力を無効にする程度にとどまっている。
神性:EX
神霊適性を持つかどうか。
世界の時を守る時の守護神でもあり、異なる世界の神話では、世界を作ったとされるアルセウスが身を分け創造した神のポケモンでもある
鋼・ドラゴンタイプ:B
鋼とドラゴンの属性を持つポケモンであることを示すスキル。
ノーマル、みず、くさ、でんき、どく、ひこう、むし、エスパー、いわ、ゴースト、あく、はがねの属性の攻撃に対し耐性を持つ
代わりに、ほのお、こおり、かくとう、じめん、ドラゴンの属性の攻撃に対しては追加ダメージを受ける。
また自身の放つはがね・ドラゴンタイプの技の威力に増加補正が与えられる
威圧感:C
バーサーカーに対して近接攻撃が行われるとき判定が行われ、稀に相手を怯ませて攻撃を失敗させる。
このスキルは精神耐性スキルで、対処可能。
プレッシャー:C
バーサーカーに攻撃を行ったときに消費する魔力の量が、本来消費されるはずの量の二倍となる。
【宝具】
『時の咆哮』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:100
時が歪むほどのエネルギー波を放ち攻撃する。
ドラゴンタイプの属性を持ち、スキル鋼・ドラゴンタイプの威力補正を受ける。
使用後反動により、1ターンバーサーカーは動けなくなる。
『暗黒の未来』
ランク:B 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足???
時限の塔が崩壊し、時の止まった暗黒の未来で生きたポケモンたちの心象風景を再現した固有結界。
永遠に時が止まった世界で、朝日も二度と昇らない暗い世界。
結界内では、あらゆる自然現象が発生しない。
風も吹かず、水は流れず、光も差さない、暗黒の世界。
ただし現在のマスターでは長い間固有結界を維持することはできず、最大で数十秒の発動が精々である。
【weapon】
ポケモンとして覚えているわざ。
【人物背景】
時元の塔にて『時』を守る番人だったが、時元の塔が崩れ始めた事により暴走。
やみのディアルガともいえる存在に成り果ててしまう。
未来世界で星の停止を迎えた後では、歴史を変えようとするものを始末する意志のみで動く。
星の停止の歴史を変えようとする主人公とジュプトルたちに刺客を差し向け排除しようとする。
【サーヴァントとしての願い】
歴史を変えようとするものの抹殺
【マスター】
牧野エリ@VANILLA FICTION
【マスターとしての願い】
先生をしあわせにする
【能力・技能】
ただの少女に知識も人脈も金も能力も技能もあるわけない。
本来の双六ゲームだったら、VIP扱いだったため骨が折れようが腕がもげようが死ぬことはなかったが、
今は参加者に格下げされたので、致命傷を負ったら普通に死ぬ。簡単に死ぬ。
【人物背景】
羽のついたリュックサックがトレードマークの寡黙な少女。
元は孤児院で暮らす少女であったが、友達とよく笑う普通の少女であった。
ある日、人類の存亡をかけた双六ゲームの一緒に双六のゴールを目指すパートナーに任命される。
小説家佐藤忍に会うまで二人ほど別のパートナーと行動していたが、虐待を受け続け精神がすり減ってしまう。
佐藤に人間として当たり前の施しを受けたことで彼を先生と呼び、想い慕う。
しかしもう一方の駒である刑事鞠山雪彦にその身を囚われる。
佐藤の敵である鞠山を警戒していたが、彼にも息子ドラジェがあり死ぬわけにはいかないことを知る。
誰も幸せにならない双六に絶望し自ら命を絶とうとするも、自分がどうあがこうが双六の進行するうちは
死ねないことを知る。そして世界を滅ぼすのは他ならない自分自身であるということを知らされる。
【方針】
どんな手を使ってでも聖杯を獲る
ただし策に優れているわけでもない上に、バーサーカーの燃費は非常に悪く一戦交えただけでエリは命の危険が伴う。
以上で投下終了します
初投稿させて貰います
まったく、全てが不愉快であると言わざるを得ない。
彼女の周りを取り巻く全ての環境は、今の彼女にとって真実のものではなかった。
彼女が今住んでいる某都市の1K安アパートも、某都を所在地とする公立大学に入学した一年生と言う社会的肩書も、
マンツーマン形式で小〜中学生の子供に勉強を教える、市内の学習塾にアルバイトとして働いていると身分も。
全てが全て、演じろと言われるがままに演じている、紛い物の境遇だった。
自分の今の生活が、本来のそれでない事に気付いたのは、一昨日の事。
いつものように学習塾に足を運び、受け持っている子供に勉強を教えている時に、急激な違和感を覚えたのである。
違和感の正体を探りながら行った勉強指導は散漫その物で、珍しく塾長に注意されてしまった。その時は素直に謝罪したが、それでも違和感が消えない。
喉に小骨が引っかかるが如きこの違和感は、一体全体何だと言うのだ。
そう考えるうちに、根源的な問題提起――何故自分は此処で勉強を教えているのか、と考えた瞬間、全てを思い出した。
アパートに戻る際の、人通りの少ない小道での出来事であった。
彼女は聖杯戦争の参加者だった。
聖杯、西欧の地に端を発する一大宗教の開祖が、死の間際にワインを飲むのに使用した杯であるとも、はたまた磔刑にされた開祖から滴り落ちた血液を受け止めた杯であるとも言われているものだ。
聖杯戦争とはそんな聖遺物を求めて不特定多数の参加者達が争い、殺し合い、最後まで生き残った参加者には、その暁として聖杯を手に入れる事が出来る。
この世界に於いて聖杯とは、あらゆる願いを叶える万能の願望器。成程、確かに求めるに値する代物なのかも知れない。
だが悪趣味である。願いを叶えると言う奇跡をダシに、人間同士を殺させ合うなど、海の彼方の一神教の神は血生臭い儀式が好みのようだ。
――無論、本気で神がこのような事を願っているとは彼女は考えもしていなかった。これは神の意思ではない。
神以外の何かの思惑を、感じざるを得なかった。でなければ、此処まで複雑に悪意の絡まり合った計画を、考え付く訳がない。
聖杯戦争はサーヴァントと呼ばれる存在と勝ち抜く戦いである。
サーヴァント、奴隷を意味する単語であるか、この催しの中では、意味合いが全く異なってくる。
奴隷としての側面は確かにあるが、それは彼女の左手に刻まれた、サーヴァントに対する絶対命令権である『令呪』がある限りの話だ。
令呪とは即ちサーヴァントに対する手綱。その手綱を失った場合、気性の荒いサーヴァントであれば容赦なく、操り手に牙を向く。
つまりサーヴァントとは、どちらかと言えば仲間、と言う意味合いが強い言葉なのである。
ではそのサーヴァントとはどう言った存在なのか、と言えば、諸人の信仰や想念の結晶、人間が憧れ、理想の存在として来た偉人や英雄、
幻想や御伽噺の中での存在が具現化したもの。つまり、英霊と呼ばれる類の存在が殆どであるらしい。
例え英霊でなくとも、歴史に名を刻んだ存在や、並ならぬ存在感を持っていた存在なら、英雄と全く真逆の存在であろうとも、この聖杯戦争に呼ばれうる。
そう言うものらしい。狐狸妖怪の類も、呼ばれる事があるのだろうか。彼女はそんな事を考えていた。
――では、自分の呼び出したサーヴァントは、『何だ』?
諸人の信仰や想念の結晶? 撞着やら畏怖やらを一挙に集めた、偉人か、英雄か、猛将か?
万の軍勢を蹴散らし、竜を斃し、魔王を滅ぼした、御伽噺の中での存在か? いやはたまた、世界を恐怖のどん底に落とせしめた魔王なのか?
断じて違うだろうと、彼女は考えていた。
何故ならばその存在は――――――――――――
「カンノミホ……(判読不能)」
――――――――――クッソ汚い、ブサイクな男性であったからである。
目線の前で佇むこの男は、何なのだろうか。しかもくさい。
男性としては平均的な身長、一般人でもそこそこ鍛えれば到達可能な範囲の筋肉量と体格、少し日焼けした浅黒い肌。
身体中の至る所にポツポツと出来たホクロに、シミ。自分の身体に自信があるのかは知らないが、
何故この男はボクサー型のパンツだけを着用し、それ以外の何も身につけてないのか。
極め付けが、その顔。贔屓目に見れば、愛想の良さそうな。贔屓をなくして見れば、何処となく小憎たらしく、人をイラつかせるような顔立ち。
不細工かどうかと言われれば、そうでもないのかもしれないが、意識が、脳髄が。
強制的に「この男は不細工である」と認識させてしまう様な雰囲気を醸し出していた。くささの原因は、その雰囲気のせいか?
――……これは英霊なのか?――
彼女でなくても、そう思うに相違ないだろう。
目の前のサーヴァントからは、優れた戦士が放つ気魄や凄味も、英雄偉人と呼ばれる存在が放つような神韻も、御伽噺の中の住人が醸し出す神秘さも感じられない。
市井を漁れば掃いて捨てる程見つかりそうな一般的な空気しか、この男からは感じられない。外れクジ、そんな単語が頭をよぎる。
このような男と、こんな馬鹿げた戦争を潜り抜けねばならないなど、頭が痛くなる。おまけにこの男、くさい。
夢なら覚めろと何度思った事か。しかし、全てが現実だった。
座布団に座った時の感触も、喉にぶつかるチューハイの感覚も、適度に身体を廻るアルコールも。嘘ではない。全て真実のそれだった。
だから、彼女、上白沢慧音は思わざるを得ないのだ。『全く、すべてが不愉快だ』……と。
「KIN、夜中腹減んないすか?」
「減らない。先程食べたのを見ただろう。と言うより、お前はサーヴァントだから食事は不要の筈だろう」
「クゥ〜ン……」
子犬のような鳴き声を上げて拗ねはじめる彼女のサーヴァント。
茶目っ気のつもりなのだろうか。生憎と、全く可愛らしくもないし、憎たらしさだけが増長されてしまうだけだ。
可愛げのつもりが今の発言ならば、今すぐにでも令呪を使って自害させてやりたい気分である。
意外な事にこのサーヴァント、性能自体はどうしようもない程低い、と言う訳ではない。
幸運が致命的に低く、魔力が平均以下である事を除けば、宝具も強く、白兵戦もそれなりにこなせるサーヴァントだ。
だが問題は、彼のクラスがアヴェンジャー、つまり聖杯戦争の定石から外れたクラスであり、定まった使用法の確立してないクラスであると言う事だった。
おまけに宝具が強いとは言ったが、同時にクセとアクも強い為に、その運用には並ならぬ工夫が必要になる。
聖杯戦争は当然の事、殺し合いの経験すら満足にない慧音では、不安要素しかない。
「固くなってんぜ?」
と、得意げに口にするアヴェンジャー。言葉は軽いが、口調は少しだけマスターを気遣っている。
緊張している事を指摘しているのだろう。微かだが、チューハイを持つ手が震えているのに今更気付いた。
例え目の前のサーヴァント/相棒がアヴェンジャーではなく、最優のクラスであるセイバーだったとしても、身震いしていたかも知れない。
命の奪い合い、しかも生き残れるのはただ一人だけなのだ。そうなってしまうのも、無理もない事だった。
「なあ、アヴェンジャー」
「はい」
「そろそろお前の真名を――」
「ないです(食い気味)」
これである。
このサーヴァントは基本的には、命令に忠実なタイプである。
霊体化しろと言えば普通にしてくれる上に、大人しくしていろと言えば普通に黙っていてくれる。
彼と出会って二日程が経過したが、目立った命令無視の覚えはない。霊体化していてもくさいと言う点は残るが、従順な点は高評価だ。
だがそんな彼でも、一つだけ譲れないラインと言うものがあった。真名、つまり本名である。こればかりは、出会ってから今日に至るまで、全く教えてくれないのだ。
真名解放を必要とする宝具を持たない事がせめてもの救いだが、知っていれば何かしらの作戦も立てられる為、聞いておく事は無駄ではない。
こう言ったメリットを懇切丁寧に教えても、この男は譲歩しなかった。慧音がどれだけ説得しても、教えてくれない。
名前の為だけに令呪を消費するのも馬鹿らしい。結局今も、アヴェンジャーには真名の黙秘を貫かれているのであった。
――変な所で、扱い難いし意固地だな……――
ふぅ、と一息吐いた後で、残りのチューハイを一気に飲み干す慧音。
今後どう振る舞おうか考えていた彼女だったが、ふと、ある事に気づいた。アヴェンジャーを呼び出してから2日あまり。
考えてみれば、この事を聞いていなかった。
「アヴェンジャー」
慧音が訊ねる。その事柄を知るべく、彼女は言葉を続けた。
「お前に願いはないのか。聖杯にかける、願いだぞ」
これを訊ねるのを、間抜けな話だが、すっかり失念していた。
万能の願望器である聖杯を廻って戦う場に、サーヴァントとして呼び出されたのだ。何かしらの願いを抱いている、とみるのが自然な向きだろう。
慧音にはこれと言って叶えるべき願いは抱いていないが、目の前の、如何にも俗物的な風貌をした男の事だ。何かしら叶えたい欲の一つ二つはあるだろう。
尤も、自らの名前や来歴すら明かさないアヴェンジャーの事。そう簡単に口にしてくれるとは、慧音は思っていない。
アヴェンジャーが見せるだろう反応から、願いの有無だけでも、知っておきたいのである。
「……ありますあります」
なんとアヴェンジャーは願いを肯定した。
どうせ黙秘を貫かれるだろうと思っていた慧音は、思わず面食らってしまった。
「どんな願いを、お前は抱いているのだ」
流石に此処まで踏み込んだ質問には、答えて来ないだろう。解っていて、重ねて問い質してみたのだ。
そして――
「――先ずうちさぁ……殺したい奴、いるんだけど……」
この男が抱く闇の一端を、垣間見た。慧音の瞳が、驚きに剥かれる。
今更ながら、漸く理解してしまった。この男のクラスが、『アヴェンジャー』であった、と言う事に。
言葉を発する時のアヴェンジャーの顔は、まさに『復讐者』の名に恥じぬ、怒りと憎悪に満ちたそれであった……。
――きたない――
汚くない。
――くさそう――
ちゃんと風呂には毎日入ってる。
――ブサイク――
自分ではそうは思ってない。
――枕がデカすぎる――
何でそんな事で批判されなくちゃならないんだ。
――顔と声があってない――
俺でも気にしてる事を言うんじゃない。
――喘ぎ声が不愉快――
男が掘られてあげる声なんて大体そんなもんだろ!!
――睡眠薬を混入させる手口が狡猾――
あれは監督の台本に書かれてた通りの事だから俺に罪はないだろ。
――アドリブがうざい――
少しでもリアリティを出そうと思っただけだ。
―― 鈴 木 福 ――
誰だよ。
――脱糞する姿が最高に汚い――
そんなもん誰だってそうだろ……。
――がんばれ がんばれ――
何を応援してるんですかね……?
――24歳の学生の身分でホモビに出るな――
……ごめんなさい。
数え切れない程の誹謗中傷、誹りの言葉に悪罵の言葉を浴びせかけられ続けた。
自分が生前、大した事をしていなかった事も、歴史に残るような大悪事を犯した記憶も、アヴェンジャーには全くない。
ただ、ホモビデオに出演しただけ。それだけでこの男は、日本国におけるA級戦犯や、ヒトラーにも匹敵、或いは、
彼らが裸足で逃げ出す様な謂れのない中傷を浴びせられ続けた。
その様子を面白がるように、身に覚えのない馬鹿げた逸話や、ゴシップ、英雄譚や冒険譚を付け加えさせれた結果、
彼はサーヴァントとして呼ばれるうる存在にまで昇華されてしまった。この様な経緯で高次の存在となった人類は、歴史上彼をこの男をおいて他にいるまい。
何故自分だったんだ、と考える事は幾度もあった。頼むから止めてくれと思う事など、その何倍だったか。
彼は無力であった。彼のゴシップは際限なく広がり続け、日本国内だけでなく、中国にまで波及するに至った。
自分のスキャンダルがアジア中に広がってしまう可能性も、いよいよ笑い話で済まされなくなってきている。
淫夢も終わりだなと言われ続けて久しいが、未だに滅ばず存続しているその様は、見ていて絶望する。
先行きに全く明るい展望がないのである。頼むから、自分を放っておいてほしい。そして、大人しく眠らせていて欲しい。
――だから…………
「(やっぱ勝ち取るしかないんすねぇ……)」
本当の魂の安息の為に、アヴェンジャーは、マスターである上白沢慧音と共に戦うのである。
自分の安息を面白半分で邪魔をし続ける存在を、この世からなかった事にすると言う願いの為に。
自分がポルノビデオに出演していたと言う事実や痕跡を、完全に抹消する為に。
アヴェンジャーを動かす感情は、極めて純粋な殺意と、安息を求める切実さなのだった。
【クラス】
アヴェンジャー
【真名】
無銘(24歳の学生)@真夏の夜の淫夢
(真名解放は役名で足りる)
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E- 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
復讐者:C
己の復讐に縁があるものと対峙した際、筋力・耐久のパラメーターがワンランクアップする。
アヴェンジャーの場合は、『自分がホモビデオに出演していた』と言う事実を知っている者と対峙した際に、このスキルが発動する。
【保有スキル】
無覚の功罪:EX
――ホモビに出ただけで世界を救う男/惨めに殺される男。
たった一度の迂闊な行いで、全く身に覚えのない冒険譚や英雄譚、喜劇に悲劇に転落劇、武勲や逸話などと言ったエピソードが付け足されて行った事に由来する。
元々アヴェンジャーは本当に何の変哲もないただの人間だったが、後世の人間が彼のキャラクターを次々と付加させて行った結果、
整合性もなければまとまりもない何者かへと変貌してしまった。ランク相当の無辜の怪物及びその反対のスキルを保有する複雑なスキル。
真名秘匿:EX
真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。ランクEXはあらゆる宝具やスキルは当然の事、魔法を用いたとしてもその素性が割れる事はない。
何万人にも届こうかと言う人間にその醜態やスキャンダルを目の当たりにされ、拡散され続けたにもかかわらず、本名は当然の事、
目撃談すら見つからなかったと言うエピソードに由来する。
アヴェンジャーにとっては最後の心の拠所となっているスキルであり、彼は自らの素性が明かされる事を何よりも恐れている。
淫夢の住人:A+
現在進行形でネットの文化のみならず、現実世界の文化をも侵食し続ける現代のガン細胞、真夏の夜の淫夢に登場する人物かどうか。
ランクA+はそのジャンルの中で特に著名かつ有名な人物であり、事情を知らない一般人にまで、使用していた語録が知れ渡っているレベル。
Bランク相当の戦闘続行と仕切り直しを内包したスキル。元々カートゥーンテイストの強い創作体系の為、防御向けのスキルが揃う。
天性の肉体(大嘘):B-
ステロイドで獲得した偽りのボディ。筋力、耐久、敏捷をワンランクアップさせるが、戦闘開始から数分程度で元のランクに低下する。
そもそもアヴェンジャーの肉体は常人が鍛えれば達成可能であるのだが、後世の人間が『これはステロイドで得た身体である』と根拠もないのに断定。
結果、獲得したスキルである。ちなみにアヴェンジャーの自己申告によれば、彼は水泳とトレーニングを行っていたそうである。
魔力放出(睡眠薬):C
魔力を消費して両手から睡眠薬をサーッ!!(迫真)と散布する。
アヴェンジャーの散布する睡眠薬は医薬品とは思えない程効き目が早く、耐性のない存在は良くて数分、最悪一分弱で相手は昏睡する。
当然アヴェンジャーの元となった人間にそんな奇天烈な能力はなかったのだが、これも彼がホモビデオに出演した際、
小道具の睡眠薬を用いた演技があまりにも面白かったから付与されたスキルである。
ちなみにアヴェンジャーの散布する睡眠薬は通称ホモコロリと言う。
【宝具】
『演じて見せた四ツの道筋(迫真の演技)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1〜5
アヴェンジャーが過去にホモビデオ内で演じて来た四人のキャラクターをそのまま再現(演じる)する能力。
演じられるキャラクターは、水泳部の田所、空手部の鈴木、全身に銀粉を塗りたくりゴーグルを被ったサイボーグ風のサイクロップス先輩、
そしてアヴェンジャーを象徴する二十四歳の学生である。
水泳部の田所の場合は魔力放出(睡眠薬)がAランク相当に跳ね上がり、空手部の鈴木の場合は天性の肉体のデメリットなしに、
筋力・耐久・敏捷のランクがワンランクアップ。更にCランク相当の心眼と勇猛を獲得。
サイクロップス先輩はレーザーによる遠距離攻撃が可能になり、Cランク相当の矢避けの加護を獲得する。
普段は二十四歳の学生の姿で活動しており、この状態が通常のアヴェンジャーの状態。
だがこの宝具の真価は、それぞれのキャラクターを演じている間にアヴェンジャーを殺したとしても、
殺せるのは『その時に演じていたキャラクター』だけであり、アヴェンジャー本体は殺せないと言う点。
そして、殺されたキャラクターは聖杯戦争中二度と演じる事が出来ない。つまり、アヴェンジャーを確実に葬るには都合『四回彼を殺さなくてはならない』のである。
『万華鏡の如くに変わる顔(怪人二十面相)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:アヴェンジャーの顔を認識出来る距離 最大補足:アヴェンジャーの顔を認識出来る人数
アヴェンジャーの持つもう一つの側面が宝具となったもの。
アヴェンジャーは同じ相手に二度三度顔を見られても、相手はそれをアヴェンジャーと認識出来なくなる宝具。
彼が前に戦ったサーヴァントであると認識するには、Cランク相当の直感或いは千里眼等の、見識に関わる宝具やスキルが必要。
彼はその時々、しかも同じビデオの中に於いてすら、『顔』が全く違う時があると言うエピソードに由来する。
その種類は数多く、某天才子役、金メダルを獲得した某水泳選手、某NONA REEVESのボーカル、某サッカー選手、某女性声優等々。
ある意味で彼が振り撒いて来た風評被害の象徴でもある。
『野獣の咆哮(世界で最も聞かれたイキ声)』
ランク:C+++ 種別:対軍宝具 レンジ:10〜50 最大補足:100
世界で最も絶頂の様子を見られ続けた来たポルノ男優。そのエピソードが宝具となったもの。
一度聴いたら二度と忘れる事が出来ない独特の声で絶頂の雄叫びを上げる宝具で、耳にした者は凄まじい不快感を得、更に初回に限り1ターン行動が不可能となる。
また対魔力や精神的な防御手段を持たない者は15ターン程の間Eランク相当の精神汚染を得、行動に支障を来たす。
魔力を用いて声帯を強化、或いは令呪一区画消費する事で高い威力を誇る音響攻撃として転用する事が出来る。
そして、『演じて見せた四ツの道筋』でキャラクターを『水泳部の田所』にした上で、
真名解放、そして令呪一区画消費と言うプロセスを経る事で、指向性の衝撃波を伴い、
Aランク相当の対軍宝具に匹敵するダメージを与える音響兵器に活用する事が出来る。
『真理に至れ野獣の正体(新説野獣先輩シリーズ)』
ランク:E-〜A+++++ 種別:対自宝具 レンジ:1 最大補足:1
これだけ名の知れ渡ったアヴェンジャーであるにも関わらず、全く足取りも素性も掴めない彼の神秘性が宝具となったもの。
今も生きているのでは、まだ学生をやっている、死亡した、タイムスリップしているなど実に様々な憶測が飛び交っているが、
『そう言った状況なら野獣先輩は何にでもなれるのでは?』と言う小学生並の理論が、この宝具の骨子となっている。
宝具の真相は、『何者でもないのなら何者にでもしても良い』と言う呪いそのもの。
宝具の発動の条件は、幾つかの仮説を立てる事。その仮説はどんなに稚拙でガバガバでも構わなく、最悪一つだけでも良い。
宝具を発動させるとアヴェンジャーは元の浅黒い肌をした男性の姿から、ありとあらゆるもの、つまり『森羅万象』何にでもその姿を変えさせる事が出来る。
惑星や恒星と言った天体レベルの物質から、インフルエンザやエイズのウィルス、大統領専用車両から銃器。
果ては、本来アヴェンジャーの世界に存在しなかった筈の二次創作のキャラクターまで。何にでもアヴェンジャーは姿を変える事が出来る。
立てた仮説の数やその矛盾のなさに比例して、消費する魔力や変身に掛かる時間が最適化され、極論を言えば仮説が多ければ多い程完璧な精度でこの宝具を発動出来る。
立証した説をそれぞれストックする事で、アヴェンジャーはノータイムで変身を実行可能とし、立て続けに説を入れ替えて攻撃させると言う方法も可能。
宝具の発動には一切の魔力を必要としないが、宝具を発動した状態を維持しようとすると魔力が消費する。
そして、元々のアヴェンジャーから余りにも遠い概念、遠い存在に変身、それを維持しようとした場合は魔力の消費量が倍加。
惑星規模のものに変身しようものなら、一瞬で魔力が枯渇する。更になんにでも変身出来るとは言ったが、
それはあくまでも『マスターが今まで見聞して来た』ものの範囲の中での話であり、既知の範囲外の森羅万象については、この宝具は発動しない。
【weapon】
迫真空手:
アヴェンジャーの元居た世界で著名な空手の流派であった、極真カラテをもじった架空の流派。
その修行は恐ろしく厳しいが、鍛え上げる事で893秒の間に地球を114514回も泳いで周回出来るらしい。これもうわかんねぇな。
【人物背景】
彼に関する来歴は、一切謎に包まれている。
何処の生まれで何と言う本名なのかと言う事は当然の事、最終学歴は大学なのか高校なのか、何の仕事に就いているのか、家族構成は、いやそもそも生きているのか?
ビデオの中に記録されている、24歳の学生と言うデータと、身長170cmの体重65キロと言う情報すらも、自己申告の為に確かめようがない。
――様々な嘘や根も葉もない噂、悪意ある情報や憶測が飛び交う彼の情報の中で、真実があるとすれば、彼はホモビデオに出演したと言う事。
そして、ある一人の野球選手の犯したたった一度の過ちさえなければ、彼、引いては真夏の夜の淫夢のキャラクター達も馬鹿にされなかった、と言う事だけである。
【サーヴァントとしての願い】
自らがホモビデオに出ていたと言う事実を知って居る者、また、自らの境遇をネタにし続ける全存在の消滅
【基本戦術、方針、運用法】
近接戦闘もこなせるサーヴァントであるが、機を待ち、逃げに徹する事を主軸とする。
平時に兎に角、『真理に至れ野獣の正体』で過程を立てて行き、新説のストックを常備。
格上のサーヴァントと交戦し、危機に陥った場合でも、淫夢の住人スキルの影響で、しぶとく生き残る事も可能。
三騎士として運用するのも中途半端な為、必然的に、『待ち』の戦い方を主軸に据える必要があるサーヴァント。
【マスター】
上白沢慧音@東方Project
【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。
【weapon】
【能力・技能】
歴史を食べる程度の能力:
幻想種である白澤とのハーフである慧音が平常時に行使する事が出来る能力。
相手の存在をなかった事にする能力、と言うよりは、ある存在が現在に至るまでの過程、つまり過去の存在を少しボカし、
実際の現実を見え難くする、と言うのが能力の真相である。
その為能力を使ってボカした現実は、ボカされただけで確かに世界に存在している。解除は慧音の任意、或いは彼女が倒された時である。
本来ならば彼女に備わった固有能力の為魔力の消費はないのだが、聖杯戦争に際しては、能力の行使の際には魔力の消費を必要とする。
白澤化:
先述の通り彼女は中国の幻想種である白澤と人間とのハーフであるが、平時は普通の人間である。
が、満月の夜の時に限り、彼女は正真正銘本物の白澤へと変貌、頭部から角も生える。
純粋な妖怪と化した彼女は人間時を遥かに超える妖力と身体能力を発揮。また、普段から行使出来る『歴史を食べる程度の能力』が進化。
『歴史を創る程度の能力』に変化する。この能力を実際に扱うシーンは今のところ存在しないが、
どちらにしても慧音が今いる舞台が聖杯戦争のそれである限り、相手の存在をなかった事にすると言う事は出来ない。
この能力で出来る事があるとすれば、Aランク相当の『真名看破』スキルを行使出来ると言う事。
但しアヴェンジャーの真名秘匿ランクは、慧音の看破スキルを大きく上回る為、彼の真名を割らせる事はやはり出来ない。
各種スペルカード:
彼女がもと居た幻想郷ではスペルカードルールと呼ばれる、弾幕を展開して戦う戦法が主流であった。
慧音もまたその戦い方に造詣が深く、弾幕の展開を得意とする。
【人物背景】
幻想郷の人里の寺子屋で、子供達に勉強を教えている女性。
教師として活動している傍ら、その能力を使って、歴史の編纂作業を行っている。得意とする科目はやはり歴史であると言う。
妖怪退治も時と場合によっては行っているらしく、里の人間からは頼れる才女として通っているが、その戦闘能力の高さは、
身体の半分が白澤のものであると言う事実に由来している事を知っている者は、数少ない。
月に1度の満月の際に、慧音は完全に白澤化する為、この時は人里を離れた場所で、平時は使う事の出来ない能力を利用し、
歴史の編纂作業にさらに力を入れているのだと言う。
【方針】
人殺しには乗り気じゃない。さしあたっては、様子見である。
投下を終了します。
聖杯大戦の◆vBWhRkzGXs氏と、第二次二次キャラ聖杯戦争の◆DKvcDfNaFA氏の投下候補作を、一部参考させて頂きました。
この場を借りて、お礼を申し上げます
質問ですが、まもって守護月天!の離珠くらいの少女はマスター条件を満たしているでしょうか
これから投下します。
私は、とても幸せだと思う。
日頃からそう思うわけじゃないけど。
毎日が楽しくて、時には嫌な事もあるけど。
そんなの、みんなと一緒にいれば、笑顔で吹き飛ばせるんだ。
毎日学校に行って、勉強して、友達とお喋りして、お昼ご飯を食べて。
特に、仲良しの三人と遊んでいる時が楽しいんだ。
みんな個性的で、私は「ノンスケ」「ゆきっぺ」「うーたん」って呼んでいる。
4人で街を歩いて、買い物して、美味しい物を食べて、遊んだりして、いつも笑っているんだ。
それで家に帰った後、私はお母さんにその日あったことを話すの。
お母さんはお仕事が忙しくて時々家にいない時もあるけど。
私のためになるべく家に居てくれて、私の話を楽しそうに聞いてくれるんだ。
だから私は、いつも私の事を見ていてくれるお母さんが大好きだよ。
こんな風に毎日が楽しいけど。
それは、ある日、突然、思いがけない、ふとした切っ掛けだった。
その日はやけに月明かりが強くて、電気を付けなくても部屋の中を見渡せるぐらい明るかった。
夜は眠いから私はいつものようにベッドで眠っていたけど。
ふと、夜中に目が覚めて。
寝惚け眼のまま、なんとなく部屋の中をぼーっとしながら見てみた。
寝ている時は最も無防備になる時間。
だからそのまま眠っていて、朝目覚めれば、いつもの日常に戻っていたのかもしれないけど。
そんな事なんて考える余地もなく、夢見心地な頭のままで。
部屋に置かれた鏡に映った私の姿が。
横たわるタコみたいな姿であったから。
私は、全てを思い出した。
〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜
翌朝、私はいつも通りに過ごしていた。
目覚めて、着替えて、顔を洗って、お母さんが用意してくれた朝食を一緒に食べる。
変わらない風景。だけど、私の世界はちょっと変わった。
でも私は、ここが元の世界とは違う作られた世界だと知っても、ここでの生活はいつも通りに過ごす事にした。
いま目の前にいるお母さんは私の心から想像された存在で、本当のお母さんじゃないのかもしれないけど。
私の事を大切に想ってくれるお母さんである事には変わりないから。
だから私はお母さんに愛されていることに感謝しながら、いつも通り笑顔で「いってきます」っと言って学校に出かけた。
通学路を歩きながら、これからどうしようか考えてみる。
もちろん、今日も学校に行くよ。
記憶が戻る前は当然のように勉強して、皆と一緒にいるために通っていて。
記憶が戻った後は、今まで通う事ができなかった学校に通える事が嬉しくて楽しくて。
休むなんて、勿体無いから。
でも、こっちの世界の人たちも大切だけど。
元いた世界の人たちも大切だし、心配しているはずから。
だから、私は帰りたいと思う。
そのためには、聖杯戦争?から抜け出したいと思うけど……どうすればいいのか分からない。
それが優勝することで叶うとしても、誰かの願いを否定するのは、絶対に嫌。
「うーん、どうすればいいかな、カーくん」
「ペポ?」
私は、記憶を戻した時に友達になった小さいモサに問いかけてみた。
そしたらいつの間にか、私の頭の上にピンク玉が乗っかっていた。
彼の名前はカービィ。私の小さなお友達。
だから私は「カーくん」って呼ぶ事にしたんだ。
言葉は喋れないようだけど、私にはカーくんやカーくんの友達の言いたいことは大体わかるから問題ない。
「ポヨー……ペポペポ、ポヨ」
「そっか、カーくんも知らないんだ」
「ペポポ、ポヨ、ポヨッ!」
「うん、ありがとう」
カーくんも私が元の世界に戻る事には賛成してくれてるけど。
どうやら普通では抜け出す事はできないらしくて、他に方法があるかどうか知らないようだ。
だけど、カーくんもカーくんで何か方法がないか探すって言ってくれてる。
今はまだ何もわからないけど。何でもいいから何かをやれば、きっと見つかるよね。
でもそれは追々にして。
今日は、学校に行こう。
【マスター】
御園千綾@ローリング☆ガールズ
【マスターとしての願い】
元の世界に戻る。
【weapon】
なし
【能力・技能】
自分の体験や他人の夢をデジタルカメラで再生する能力を持っている。
他にも動物の言葉がわかる。あとスクーターに乗れる。
そして能力・技能とは違うが、気が緩んだ時(眠りに落ちた時)に、タコさんウィンナーのような本来の姿になる。
【人物背景】
「コア」と呼ぶ不思議な石を探し集めるため、マッチャグリーン代理人の望未達を共に旅をしている少女。
その正体は所沢国大統領・御園ハルカの娘。そして本人は知らぬ事だが、実は宇宙人である。
彼女が幼い頃、ムーンホールの実験をしていた宇宙船に偶々乗り込んでいて、それが地球に不時着。
以降、実験の助手として参加していたハルカに娘として育てられた。
ただしハルカは千綾を故郷の星へ帰すために奔走していたため、あまり構ってもらえなかった模様。
千綾も病弱であるため学校にも行けず、ごく一部の関係者以外とは関わらない箱入り娘と育てられた。
たまには外出も許されたが、上記の事情もあってガスマスクを装着していた。
(ちなみに外出先の茶屋「やきだんごのもりもと」で「たこ焼き」と出会い、以降は彼女の大好物となる)
そしてムーンホール出現の時期に近づいたある日。
千綾は母親が「コア」を大量に集めている事を知り、所沢国のご当地モサ・マッチャグリーンに依頼する。
現れたのは代理人の望未たちであったが、彼女達と一緒に探す事を決意するところで、千綾の物語は始まる。
なお呼び出された時期は不明。少なくとも旅に出た以降である。
【方針】
聖杯戦争に乗る気はない。
脱出する手段がないかカービィと模索してみる。
【クラス】
ライダー
【真名】
カービィ@星のカービィ2
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:C 幸運:A 宝具:A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:C
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
【保有スキル】
無限の食欲:C
本来であれば留まる事を知らない底無しの大食いであるが、サーヴァントとして呼ばれたため空腹がなくなり食欲も抑制された。
そういった事情でランクも下げられているが、もしかしたら何かの弾みでピンクの悪魔に変貌するかもしれないのでご注意を。
なお、食べ物を摂取することで通常よりも多く魔力を回復できる効果もある。
好物のリンゴとたこ焼き(※マスター補正)を食べた場合さらに倍の量で魔力が回復する。(マキシマムトマトは好物だがトマト好きという訳ではない)
吸い込み:B
そこら辺にある物や敵の飛び道具など、一部を除き何でも口に「吸い込む」能力。
吸い込んだ物を吐き出すことで神秘を帯びた星型弾を射出し、的中した相手にダメージを与える。
一度で複数を吸い込むことも可能で、吐き出すと威力が二倍の星型弾を射出することができる。
ただし、自分より大きい相手、相手が保持している物、一部特殊な攻撃など、吸い込み判定がない物は吸い込む事はできない。
なお、吸い込んだ物を飲み込む事でコピー能力を得られる事もあるが、対象外では何も起こらない。
コピー能力:A
炎、氷、電気、石、傘、刃物、針といった7種類に類する物を飲み込んだ時に各々に対応した能力を得られる。
ただし、それぞれの能力はワンパターンな攻撃しか出来ない。
宝具の仲間たちと合体した時にはそれぞれで別パターンの攻撃となる。
音痴:EX
カービィにマイクを持たせるなよ!! 絶対にだぞ!!!!
【宝具】
『冒険の仲間たち』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
カービィの友達、ハムスターの「リック」、フクロウの「クー」、マンボウの「カイン」を召喚することが出来る。
召喚・維持に必要な魔力は少なく、三体同時の召喚も可能。霊体化も備わっている。
ただし彼らが倒されてしまった場合、再召喚に必要な魔力量だけは増えてしまう。
ちなみにだが、カービィの2〜3等身分しかない彼らには人間を運ぶ術はないが、タコさんウィンナー状態の千綾ちゃんなら運搬は可能。
『虹の剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
虹の島々に祀られている7つの「虹のしずく」が一つに合体して完成した伝説の剣。
この剣を持つと重力を無視した不思議な浮遊ができるようになる。
直接斬る事でもダメージを与えられるが、それより敵が出した攻撃を跳ね返して攻撃する方が大ダメージを与えられる。
ちなみにこの剣自体は相当な業物だが、カービィに武芸の心得があるかどうかは謎である。
『銀河に輝く五芒星』(ワープスター)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:20
カービィが愛用する乗物。
高速飛行が可能で、着弾時に近くにいた者や直撃した者に大ダメージを与える。移動中の余波でも結構な影響力がある。
此度の聖杯戦争ではカービィの任意で空から呼び寄せられるが、多少なりとも魔力を消耗する。
人間一人分なら同席も可能、マスターでもワープスターを操縦することができる。
【weapon】
吸い込みによる星型弾&コピー能力。
【人物背景】
プププランドの住人。数々の冒険で自国や他の星の危機を救ってきた星の英雄。
大きさはリンゴ三つ分、だいたい20cm。ちっちゃい。蹴球や籠球とほぼ同じ。
自由気ままでのんびり屋、天真爛漫で純粋無垢。基本的に迷わず行動し、自分の本能に忠実に行動する。
ただし一度決めたら曲げない性格なので思い込みが激しく、それが原因で騒動が大きくなることも。
好きな事は食べる事、寝ること、歌うこと。嫌いな物は毛虫。
【サーヴァントとしての願い】
特になし。マスターの手助けをする。
【基本戦術、運用法、方針】
カービィの特徴と言えばコピー能力だが、今回は7つと多彩であるもののそれぞれの攻撃が単調で応用力がないため器用貧乏になりやすい。
幸い、リック、クー、カインとの合体で攻撃手段は増やせるので、コピー能力は臨機応変に使用しよう。
逆に安定したダメージソースとなるのが吸い込みによる星型弾の射出。ボス敵を倒す時もこれが多かったはず。
聖杯戦争では基本格上のサーヴァントばかりなので、逆に相手の攻撃を利用したり身近な物で反撃してみよう。
『虹の剣』はオマケ。カービィからの能動的な攻撃はあまり有効ではないので、カウンター狙いがベター。
『ワープスター』は移動にも攻撃にも有用なので、魔力と相談しながら重宝するように。
一応『ワープスター』を連続召喚による絨毯爆撃じみた攻撃も可能だが、大人げないし魔力が枯渇するのであまり勧めない。
【捕捉】
まずは想像してほしい。20cmのピンク玉が人間の英雄に挑む姿を。
そう、通常であればあまりに違う体格差で普通なら勝負にならないだろう。
しかし、カービィもまたいくつもの冒険譚を残した英雄である。
何度も巨大な相手を倒してきた実績を持つ彼なら、そのような不利をものともせずに自分の長所を生かした戦い方ができるであろう。
星型弾を的確に撃ち込み、コピー能力で上手く立ち回り、『ワープスター』を効率的に使用すれば、小さき勇者にも勝機を掴めるはず。
【備考】
・カービィの剣術の実力は後続の書き手にお任せします。
・設定のベースは出典「星のカービィ2」になりますが、極一部は他の作品からも流用しています。
以上で投下終了します。
投下します
「それで!! 貴方が私のサーヴァントですね!!!!」
「そうでござる!!! 某!!! 『らんさあ』の『さあばぁんと』!!! 真田源二郎幸村でござる!!!」
「真田幸村……聞いたことがあります!!! かの有名な戦国武将です!!!! 歴史の授業で習いました!!!!」
「なんと!! 茜殿の時代まで某やお館様の武勇が轟いてるとは……この幸村、感涙したでござる!!!!」
男、赤いライダージャケットに二本の槍を持った若者、ランサー・真田幸村。
女、赤いシャツにポニーテールの少女。そのマスター・日野茜。
周囲も警戒せず、二人は大声で会話をする。
「それで茜殿……その『あいどる』とは如何なるものござるか?」
戦国時代にはアイドルという職業はない。
多分ない。恐らくない。きっとない。
「アイドル……それはですね!!! 人を応援する仕事です!!!」
アイドル。
それを説明するとなると、その考え方は千差万別。
ので、説明は割愛していただく。
「幸村さんには叶えたい夢はありますか!!!」
「勿論!! 某、お館様の天下のため、全力で聖杯を欲するでござる!!!」
「いいですねっ!!! 私もその夢!!! 全力で応援します!!!」
「おおっ!! それはとても心強いでござる!!」
頑張っている人は応援する。
茜としても、それが好きだった。
その応援にも常に全力で、前向きに行う。
「聖杯を手に入れるために他のさあばぁんとを倒す必要があるようでござる!!」
「強敵と戦って、優勝を目指す!!! クーッ、まるで少年漫画ですね!!!」
「少年漫画とはよく分からないでござるが、何やら熱いものでござるな!!」
「ええ!!! そうです!!! 熱いんです!!!! 熱血なんです!!!!!」
非常に熱い……いや、暑苦しい。
だが、それでも二人の息というより、ノリは非常にあっている
「じゃあ一緒に頑張りましょう!!! 幸村さん!!!!」
「はい!!! 茜殿!!!!」
「幸村さん!!!」
「茜殿ぉっ!!!!」
「幸村さんっ!!!!!」
「茜殿ぉぉっ!!!!!」
「ゆぅぅきぃぃむぅぅらぁぁさぁぁぁん!!!!!!!」
「あぁぁかぁぁぁねぇぇどぉぉのぉぉぉ!!!!!!」
殴り合いには発展しないが、非常に暑苦しく互いの名前を呼び合う。
そんなやり取りが、数分間ノンストップで行われた。
見てるものがいたらきっと『疲れる……』と愚痴をこぼすであろう。
「必ずやぁっ!! 聖杯をぉっ!! 我が主の手にぃぃっ!!!!」
「やる気があれば何でも出来る!! いくぞぉ!!!!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!!」」
そして、二人は街中を疾走する。
ただひたすら前に、前に、前に……
「茜殿ぉっ!」
「なんですか!! 幸村さん!!」
「某たちはどこに向かっているのでござる!!!」
「それは勿論聖杯に向けて一直線です!!!!」
「茜殿ぉっ!!!!! それでその聖杯はどこにあるのでござる!!!!!!」
「それは!!!! わかりません!!!!!!!!!!!!!」
それでも前に疾走する。
けど、そのうち止まるよ、きっと。
【クラス】
ランサー
【真名】
真田幸村@戦国BASARA
【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:C 宝具:C
【属性】
秩序・善
【固有スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力
【保有スキル】
日の本一の兵:A
気合いがあれば大抵のことはなんとか出来るぞ!!
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【宝具】
『天覇絶槍』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1
筋力・敏捷を一時的に2ランクを上げるが、耐久を著しく低下させる。
『熱血!大噴火』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
突進して飛び蹴りを放ち、相手を遥か彼方へ蹴り飛ばす。
『オーモーイーガー』
【weapon】
・二槍
朱塗りの二本一対の槍である。
【人物背景】
武田信玄に仕える勇猛果敢な若武者。何事にも真っ直ぐ向かい合う心を持つ熱血漢。
主君である武田信玄を人生の師として深く敬愛しており、信玄の天下取りのためにその力を奮う。
性格は典型的な戦馬鹿であり、その単純さ故に感情の高ぶりを抑えられず周囲が見えなくなることもある。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を手に入れ、お館様に捧げる。
【マスター】
日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
幸村さんを応援するぞ!!
【weapon】
ない!!
強いて言うなら!! 気合い!!!
【能力・技能】
特に無い!!!
あるとしたら、アイドルの才能!!!
【人物背景】
アイドルマスターシンデレラガールズに登場するアイドルの一人!!!
小柄ながら元気いっぱいな熱血前のめりな性格の少女!! とにかく常に全力の元気娘!!
【方針】
聖杯を手に入れる!!!!
投下終了です。
>>140
原作を読んだことが無いので詳しいことは言えませんが、
Q.アニポケのベイリーフは可愛いので、実際少女ですね?
A.なしでお願いします。普通に現代の街を歩ける〜コスプレとして扱われるぐらいの人間の見た目をした少女でお願いします。
なので、完全ディフォルメ効いてると辛いですね。
まず二つのことについて謝罪させて下さい。
まず、一つ目。
とりあえず>>1 が投下をしている、感想を書くだけの心ない機械ではないということの証明のために、これから投下をしますが、
まだ全員分の感想が出来ていないため、>>1 はいるのに感想が投下されてねーじゃねーかファッキュー!
という自体になることをご了承下さい。
次に、この投下にはステータスが伴いません。
ステータスとは採用における判断材料であり、そもそも僕はステータスを書く必要が無いのではないかと思ったからです。
作品通そうかなと思ったらその時に改めてステータスを投下します。
聖杯戦争のために用意された名前の無い街、南西部に位置するその中学校は、
画一的な、極一般的に想像するコンクリート製の学校のそれとは違い、西洋館を思わせる体裁を持った建造物であった。
さて、校門から続く煉瓦の道を通り校舎内に入ろう。
外面だけの話である、中に入ってみれば何の事はない普通の校舎である。
デザインに凝ったところで、所詮中身は他と違うところは無い。
いや、内装まで追求しようと思えば出来るのだろうが、所詮は中学校、通うは少年少女。
彼女たちは校舎にそこまでは求めないし、校舎もまた彼女たちにそこまでを求めない。
故に、この中学校は内面と外面が不一致を起こして、どこか――歪んでいる。
最も、その奇妙さも些細なもの、誰も特に気にすることはない。
二階へと上がろう、そこにはずらりと二年生教室が並んでいる。
その教室の内の一つ。
授業合間の休憩時間、生徒たちがそれぞれ友人同士集まって群れを形成している。
小集団の集合から少し外れて、ただ一人で少女がノートと向き合っている。
足先から頭の天辺まで可愛らしい容貌をした彼女の名は輿水幸子、アイドルである。
当然、学校のだとか、町内のだとか、そういった小規模なものでなく、百人中百人がアイドルと聞いて想像する職業のそれである。
そんな彼女は年頃の少年達が視線をやるのも気にせずに、趣味である勉強ノートの清書を行っている。
「あっ、ごめんなさい輿水さん」
今まさに清書を行っていたノートが、彼女の制服が、花瓶から放たれた水によって、濡れる。
「手が滑っちゃった」
偶然にも、彼女の目の前で、ノートを台無しに出来るように、持っていた花瓶を滑らせる。
ある特定の少女という人種はそのような器用で陰湿な芸当をいともたやすく行ってみせる。
「いえ、ボクは全然気にしてませんよ」
くす。と誰かが幸子の発したボクに笑う。
敵を排除しようとする動きは人間社会の常である、そして少女達の中では敵と判定されるハードルは限りなく低い。
舌打ち。
彼女はアイドルだから。
舌打ち。
彼女は誰よりも可愛いから。
舌打ち。
彼女は自分の可愛さを知っているから。
呪詛。
何がボクだ、オタクに媚びているのか。
呪詛。
何が幸子だ、何時の時代の名前だ。
呪詛。
何だそのじとついた目は、男を誘っているのか。
悲鳴。
ああ、なんで私が好きなあの人は、あの女を見る。
少女の理論で彼女への攻撃は正当化される。
殴ることもせず、蹴ることもせず、ただひたすら陰湿に。
彼女が作り上げた物を壊し、
彼女が必要とする物を隠し、
彼女が発する特異を嗤い、
彼女の活動について語る。
「いえ、ボクは大丈夫ですよ、プロデューサーさん」
放課後、隠し切れない摩耗を、それでもアイドルの演技力で見せないように、幸子はプロデューサーに電話をかける。
輿水幸子は、万人のためのアイドルではない。
何万人、何億人が彼女を愛そうとも、彼女の根本にあるのはただ一人。
己のプロデューサーに愛されること。
それは恋愛感情なのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
ただ、輿水幸子は彼といると安らげる、それは確かな事実だった。
だから、彼女はあの少女達のアイドルにはなれなかった。
「プロデューサーさんには見えないのが残念なぐらいに、ボクは変わらずカワイイですよ!」
ここしばらくは何らかの事情とやらで、仕事も、それどころかレッスンすらなかった。
声だけの関係性、直接会う必要は無いのだから当然と言えるが、それでも苦しい。
直接会って、何時もの調子でプロデューサーと接すれば、学校生活で蓄積するものは綺麗さっぱり消えるはずだった。
会いたい、と思う。
「まぁ、そろそろ、プロデューサーさんは僕に会いたくて会いたくてしょうがないと思いますから、別に会いに来てもいいんですよ!」
「……そうですか、まぁ全然気にしてないですけどね!」
すいません、という謝罪は理性では受け入れられる。
向こうが社会人である以上、どうしようもない面はある、それを受け入れられない程に幸子は子どもではない。
ただ、感情が――輿水幸子という少女が受け入れられないだけだ。
「じゃあ、そろそろ切りますよ……あっ、切っていいんですか?プロデューサーさん、もっとカワイイボクとお話したくないですか?僕に切らないでくださいってお願いするなら……」
電話が切れる。
一人の世界が戻ってくる。
「輿水さん」
「えっと、ボクに何か用ですか?」
背後からの声に振り返ると、クラスメイトの小柄な少女が立っている。
「ずいぶん、楽しそうに電話してましたね」
「いやぁ、どうでしょうか」
「隠さなくてもいいですよ」
少女は幸子を攻撃しない、いやそれどころかクラスの女子で唯一、表立ってではないが、友好的な立場だった。
少女は幸子のファンだった。
「すいません、輿水さん……えっと、あの、その…………遊びに来ませんか?」
「えっ」
「いや、もし良かったらでいいんですけど、最近輿水さんが暇してるって言うから」
「あっ……と、カ、カワイイボクでよかったらお邪魔させていただきますよ!」
「本当?良かったぁ……」
校門を出て、更に歩いて数分、赤い屋根の、まるでドールハウスのような屋敷が、彼女の家だった。
「お邪魔します」
「どうぞ、と言っても今日は誰も居ないんですけどね」
中二階に少女の部屋があった、ぬいぐるみが多くて、どこか甘い匂いのする部屋だった。
「で、えっとなんでボクを呼んだんですか?」
「えっと、ですね……」
少女が部屋の内側から鍵を掛ける、何故鍵を――幸子の疑問の答えはすぐに明らかになった。
「脱いで、輿水さん」
「え?」
振り返った少女の目を幸子は知っている。
クラスメートと同じ、その目を幸子は知っている。
「撮影会をしたいの、服はいらないけどね」
「え?え?」
だが、あまりにも理解に苦しむ。
「好きな男の子が輿水さんのファンでね、あっ……もちろん、彼は輿水さんに告白しようだなんてこと考えてないよ、ただ、アイドルとして好きなだけ。
だから、私の告白にもオッケーしてくれた、人生で一番うれしい日だったなぁ……」
「そ、そうですか」
「でも、彼は私と付き合っても未だ、輿水さんのポスターは張ってあった。当然よね、憚る必要はないもの、私だって輿水さんのファンなんだから。
でも、恐ろしい。もしかしたらって思うと、彼は私よりも輿水さんの方が好きなんじゃないかって。
彼のことを信じたい、でも愛は目に見えない。可愛さは……輿水さんが可愛いってことはよぉく、この目に映っているのにね。」
「…………」
今、はっきりとこの少女が幸子にとっては恐ろしい。
いや、悍ましい。
「私はアイドルにはなれない、私は輿水さんより可愛くなれない、私は輿水さんには勝てない。
だから、幸子ちゃんを壊す。まどろっこしいいじめなんかしない。
貴方がアイドルでいられなくなるような写真を撮って、ネットで流す。
私は輿水さんに勝てないから、輿水さんが勝手に負けてもらうしか無いの
わかったら脱いで、邪魔は絶対に入らないし……素直に従わないなら、私が勝手に輿水さんの服を切って、捨てる。
手元が狂って、身体まで傷つけちゃうかもしれないし、裸で家に帰ることになるからおすすめはしない、
それに私は興奮して幸子ちゃんの事を何発も何発も殴ると思うわ、どうする?」
「お断りです」
「そう」
「ボクはアイドルですから」
「じゃあ、幸子ちゃんは野外露出が好きなマゾヒストってことになるわね。おめでとう、多分今までやってきた活動以上に有名になれると思うわ」
少女は既にカッターナイフを構えていた。
震えが止まらない。
幸子がここまで悍ましい悪意と狂気を向けられるのは、人生で初めてだった。
泣きたくなる。
それでも、アイドル輿水幸子を守護らなければならなかった。
自分からアイドルを捨てる真似はしない。
アイドルを捧げてやることもしない。
部屋から脱出し、クラスメイトが一人とても遠いところに引っ越すことになる、それで終わりだ。
「じゃあね、アイドルの輿水幸子さん」
幸子は負けた。
人生というものは覚悟だけではどうにもならないことを知った。
「!?」
携帯電話の着信音が鳴り響く。
「出ていいよ、輿水さん」
発信者名はプロデューサー。
「誰か知らないけど、今から何されるかをたっぷりと教えてあげたら良いわ」
手を伸ばす。
「絶対に撮影会を止めるには間に合わないけどね」
ピ。
『輿水さんですか』
「プロデューサーさん」
『なァんて』
『わたしの人形はよい人形。目はぱっちりといろじろで、小さい口もと愛らしい。わたしの人形はよい人形』
「あぁ、やっぱり、そうでしたか」
「やっぱり、僕が今まで電話してきた相手は偽物のプロデューサーさんだったんですね」
『うふふ……申し訳なく思いますわ、でも、いない人と電話は出来ませんもの。
わたしの人形はよい人形、腹話術師の代わりにお話する人形はお気に召して?』
「ボクは……怒っています」
『うふふ……』
『でしたら、また何時かお会いしましょう。貴方のサーヴァントと共に』
輿水幸子は信じていた、こういう時にはあまりにも陳腐な展開が待っていると。
プロデューサーが自分を助けにやって来ると。
来なかった。
だから、彼女は今この状況を夢だと思った。
夢だと思い込んだ。
夢だと思いこむしか無かった。
だから、彼女は真実を認識した。
聖杯戦争、彼女が巻き込まれているものを。
「創造主【クリエーター】!」
己がサーヴァントのクラス名を叫ぶ。
それが始まり。
クリエーターが幸子の手を握る、幸子がクリエーターの手を握る。
「カワイイボクに呼ばれるだなんて、クリエーターは幸運ですね」
「僕としてはもうちょっと魔力の多いマスターに呼ばれたかったんだけど……でも、いいや」
「あの娘は殺す?」
「殺さないで下さい」
「そう」
「鍵を開けて下さい、家に帰ったらたっぷり寝ます、起きたらボクは少し泣くと思います。
少しだけ泣いたら、カワイイボクに戻ります」
「うん」
「どうするかは、それから考えます」
「そう」
「まぁ、一つ忠告しておくけどさ。
多分、この世界で、きっと君は誰からも愛されないよ。僕みたいに」
「ボクはカワイイから大丈夫です、あぁ、クリエーターがカワイクないわけじゃないから勘違いしないでくださいね!」
「そりゃどうも」
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ
クリシュナ(クリエーター)@夜明けの口笛吹き
でした。
投下お疲れ様です
私も投下させていただきます
初めは、それがおかしなことだと思っていなかった。
両親のことが好きであることが当然であることように、その『子』が大事な友達であることも当然なことだった。
そして、大事な人と大事な人が仲良くなれば嬉しいと、当然のように思っていた。
「ね、ねえ……あの子も、連れて行っていい……?」
少女『白坂小梅』が優しい心を持った子供であるように、小梅の両親もまた優しい人たちだった。
ただ、問題があるとすれば、両親は優しいだけの『ただの』人間だった。
両親は意味を理解できないように、困った顔を作る。
鏡写しのように、小梅も困ったように首を傾けた。
なにせ、小梅には見えているのだ。
小梅の前で、両親へと向かっておどおどと頭を下げる『友達』の姿が。
なのに両親は、無視とも違った雰囲気を出しながら、小梅を見るだけだ。
何を言っているのかと、両親は小梅に問いを投げかける。
何を言っているのかと、小梅は両親に思いながら問いに応えた。
「……………ッ?」
その意味を、両親はたっぷり十分はかかって理解した。
両親は一度顔を紅潮させ、しかし、怒鳴りつけるようなことはしなかった。
大きく息を吸い、大きく息を吐いた。
病院に行こうか、と。
両親は言った。
小梅は、幼心に理解した。
両親は、小梅の大事な友達と友達になれない人なのだ、と。
それから、口数が減った。
この時点では、『病院』という意味は、分からなかった。
ただ、『友達』のことは喋ってはいけないことだということが、分かった。
「……お、おはよう」
それでも、小梅は両親に対して不満を持つことはなかった。
両親のことは変わらず大好きだったし、
両親の教えを守っていた。
人と会えば、挨拶をする。
人に挨拶をすれれば、挨拶を返す。
それは礼儀だ。
そう言った行為をしないことは、ひどく、失礼なことで、人間として恥ずかしいことなのだ。
失礼なことは、自分だけじゃなくて、自分の周りにいる好きな人も恥を晒してしまう。
だから、小梅は挨拶をした。
『みんなには見えない友達』に、毎日、毎日、挨拶をした。
『みんなだって見える友達』にも、毎日、毎日、挨拶をした。
誰としゃべっているの、という問いかけにも、無視をしたら失礼だから、と、隠すことなく応えた。
そんな生活を続けていると、あんなに優しくて逞しかった父親が、見る影もない顔で酒を浴びるように飲んでいた。
そんな生活を続けていると、あんなに穏やかで綺麗だった母親が、見たこともない醜い表情で怒鳴りつけてきた。
そんな生活を続けていると、友達がいっぱい居た土地から離れることになっていた。
両親に連れて行かれた『病院』の意味を理解した時には。
小梅はすでに、自身の異常性も理解していた。
同時に、分からなくなったことも生まれていた。
自分の頭がおかしいのだろうか。
そう思っても、小梅の目にだけ映る存在は確かな現実だった。
小梅にも、他の人に見える友達が出来た。
両親はそれを安堵してくれたし、小梅としてもその友達は、親や世間体のために無理矢理に作ったものではなかった。
小梅が友達になりたいと思い、小梅と友達になりたいと思ってくれた友達だ。
ただ、悲しかった。
友達と友達は、絶対に友達になれない。
皆から見える友達も、皆には見えない友達も、いっぱいいるのに。
友達と友達が触れ合うことがないことが、何よりも哀しかった。
◆
なんの変哲もない、映画館でのこと。
作業をしていた店員は、突然臭いだした腐臭に顔をしかめた。
何か、問題が起こったのだろうか。
フロアの責任者として、奥で行っていた作業を中断して、表に出る。
「あ、あの……そのぉ……」
「ウォッカだ」
すると、そこには一人の異形が立っていた。
異形と向かい合っているアルバイトの女子学生は、可哀想なほどに顔を恐怖に染めている。
異様だった。
ボロにさえ見える黒いカソックコートを纏い、
同じくボロボロの包帯で顔と体を包み、
用心深く顔を隠すようにウエスタンハットを目深に被る。
「……ッ!」
「……お、お客様」
「あぁん……?」
振り返った女子学生バイトの縋るような瞳を前にして、店員は一歩前に出た。
異形の怪人は喉を震わせて、問の続きを促す。
不快の念も、怒りの情もない。
ただ、店員の言葉にゆっくりと応えただけだ。
なのに、店員はもう逃げ出してしまいたいほど恐怖を感じていた。
「ウ、ウォッカは、当店では販売しておらず……」
「…………じゃあ、なんでもいい。
ショーチュでも、サケでも……なんなら、薬用アルコールでもいい」
「な、生ビールでよろしいでしょうか?」
「ビールなら、瓶だ」
店員の後ろで神父姿の男の言葉を聞いていたアルバイトは、脱兎の勢いで瓶ビールを持ってくる。
そして、勢いをそのままに瓶ビールを神父へと差し出した。
蓋を外すことなく、差し出したのだ。
店員は顔を青くしたまま、客前だということを忘れて叫んだ。
「お、おい!王冠、王冠!」
「あっ!」
「別にいい」
カソックコートの怪人はそう言うと、瓶ビールの先端部分を包帯に包まれた指でひねった。
すると、まるでキャップのように瓶ビールは蓋が空いた。
破損したと、言い換えてもいい。
カソックコートの怪人は瓶の先端部分を軽く投げ渡し、片付けておいてくれ、と短く言った。
「ほ、他にご注文は?」
店員がそう尋ねた瞬間だった。
再び、地の底から響くような不気味な音が鳴ると身構えていると。
「ぽ、ポップコーンを……た、単品と、セットで……一つずつ……
ドリンクは……コーラ、で……ポップコーンは、塩……」
ひょっこり、と。
小柄な少女がカウンターに手をついて顔を出した。
150cmにも届いていない、あどけない童女だった。
染めているのか地毛なのかはわからないが、ショートカットの金髪は目を刺すほどに煌かしい。
サイズの合っていない、ブカブカのアウターは袖があまり小さな手を隠している。
片目を長い前髪に隠しているが、露出している片目は人懐っこいネコのように店員を眺める。
「えと、び、ビールの分を含めて……おいくら、ですか?」
少女は、白坂小梅。
そんな名をした少女だった。
ポカン、と呆気に取られる。
「……どうした……ポップコーンもないのか?」
「あっ、は、はい! ただいま!」
呆気にとられていた店員に対して、不意打ちのように低い声が投げかけられる。
店員は普段と同じように手早く動き、商品を用意する。
瓶ビールとポップコーン単品、そして、ポップコーンセットの会計を行う。
意外なことに、財布を取り出したのは小梅だった。
店員はとにかく早く済ませたいと思いながら会計を済まし、小梅は長い袖に隠した手で商品を受け取る。
鼻につく異臭を周囲に撒き散らしながら、酒気を帯びた神父は小梅の後ろを歩いていく。
異様な二人組だった。
共通点と呼べるものが欠片も思い浮かばない。
まさか、あの異臭を放つ不審者としか言えない神父は、あどけない少女の父だとでも言うのだろうか。
まさか、誘拐犯?
それにしては、主導権を握っているのは小梅のように見える。
「……な、なんだったんでしょうか」
「……あの女の子は、やんごとなきお方なのかもしれないな」
「……え、えと、何言ってんですか?」
店員の間抜けなつぶやきに、アルバイトは言葉を返した。
店員は自分がバカなことを言っていると思ったのか、顔を紅潮させ、事務室へと戻っていった。
そんなことは露知らず、小梅は劇場の席につくと、パクリと、小さな口にポップコーンを放り込んだ。
映画が始まるまでの僅かな間、カソックコートの怪人と隣り合って座して待つ。
小梅は流れる宣伝を眺めながら、怪人に語りかけた。
「ば、バーサーカー……さん……」
「あん?」
「ご、ごめんね……わがまま、い、言って……」
小梅の問にカソックコートの怪人、『バーサーカー』のサーヴァントは『構わん』と応えた。
すでに読者諸兄はこの異様なアトモスフィアによって薄々と気づいていただろうが、この怪人はサーヴァントである。
そして、このバーサーカーのサーヴァントの召喚主こそが白坂小梅なのだ。
「文句はなんもねぇよ……好きにやりゃいいさ」
事実、バーサーカーは歩きまわることに否定をしなかった。
率先して戦闘を起こすとなると何かしらの提案あるいは反論をしたかもしれない。
しかし、映画を見るだけならば、否定をするつもりはなかった。
映画自体は騒がしいが、空間は静寂だ。
嫌いな空間ではなかった。
「……しかし」
それでも、不明瞭なことがあった。
小梅は、バーサーカーと隣り合って映画を見ることを求めた。
なぜ、自分が実体化をして席を隣り合って見ることに拘るのか。
別に、霊体化のままでも問題はなかった。
「お前は、俺が鬱陶しくないのか?」
「な、なんで?」
「臭いだろ、まず、第一に……アァ、気持ち悪いってのもあるな」
包帯に包まれた指を折りながら、バーサーカーは問いかける。
バーサーカーの言葉は事実だ。
腐臭とアルコール臭は鼻が曲がるほどだし、現に、周囲の客は顔をしかめている。
それでも不満が飛び込んでないのは、バーサーカーの研ぎ澄まされた刃物のような異常性のためだ。
不満はあるが、表に出さないだけ。
そして、恐怖しているだけだ。
なのに、小梅にはその恐怖がないようだった。
「そ、そんなに、気にならない……かな……他の『みんな』でも、見たことあるし……」
「……『みんな』?」
「『みんな』は、わ、私しか……見えてないの……でも、居るよ……?」
『みんな』という言葉が、バーサーカーには今ひとつ理解できなかった。
不特定多数を差す言葉ながら、その不特定多数の集まりがどのような集合体なのかがわからない。
「ただ……と、時々……」
小梅は、顔を俯かせた。
長い前髪で隠れていた片目だけでなく、露出している目もバーサーカーから見えなくなった。
「ほ、本当は……私の頭が……お、おかしいだけじゃないかな、って……思ったりも……
だから……バーサーカー、さんが……見えてるのも、私だけじゃないかなって……
じ、実際……さっきまでは、見えてなかったし……」
『さっきまで』とは、霊体化していた時のことだろう。
普通は、通常は、ただの人間にはバーサーカーを認識できないのだ。
「だから、一緒に……遊んだら、他の人も……み、見えてるのかな……って……
わ、私だけじゃ……ないのかな……って……
お、おかしいね……私の、頭……」
小梅が笑った。
初めて見せる、弱々しい笑みだった。
バーサーカーはビールを呷り、呟いた。
「おかしかねえよ」
その言葉に小梅を目を丸くする。
そして、バーサーカーは何かを確かめるように手を握り、開いた。
「俺は『ジェノサイド』だ……」
バーサーカー――――ジェノサイドが視線を落とした際に、ふと、ウェスタンハットがずれた。
小梅はバーサーカーの真名を聞いたのはこれが初めてだったことに気づいた。
小梅は顔を上げ、『ジェノサイド』という存在を見た。
緑色に濁った瞳を。
剥ぎ取られた頬を。
露出した腐肉を。
言葉を話す死体を。
自身の頭を優しく撫でてみせた骨の露出した手を。
白坂小梅が目撃した。
同時に、隣にいる小梅が目撃したということは。
「ア、アイエッ……?」
逆隣の他人もまた、目撃した可能性があるということだ。
事実、逆隣の客は顔を蒼白に染め、震える足取りで席を立っていた。
小梅には不思議だった。
確かに、ジェノサイドは通常の人間ではない。
でも、『どこにでも居るような特徴』に過ぎないというのに。
しかし、そんな疑問もどうでも良かった。
そうだ。
屍体が、『生きているはずのない存在』が、確かに『存在』するという『事実』。
その『事実』を、白坂小梅は、生まれて初めて、『他者と共有』したのだ。
「俺は、ジェノサイドだ……俺は……ここにいる……
他の誰でもない、『俺』が、ここにいるんだよ……」
グビリ、と。
ジェノサイドは、喉を鳴らして酒を呷った。
その言葉は、自分に自身を喪失しないための、確認の言葉であり。
その言葉は、他者に自身を知らせるための、威嚇の言葉であり。
その言葉は、小梅に他者と世界を共有していることを教える、慰めの言葉であった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ジェノサイド@ニンジャスレイヤー
【パラメーター】
筋力:A- 耐久:C- 敏捷:D- 魔力:B 幸運:E 宝具:C++
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
狂化:D-
スキル『生ける屍』の影響で、痛覚を完全に遮断しており、痛覚による干渉を無視する。
ステータスを向上させない代わりに、理性を多く残している。
が、ジェノサイドはズンビー・ニンジャであり、常にニューロンが腐敗していっているために前後の記憶が定かでないことが多々ある。
理性を壊すスキル『狂化』すらも、ニューロン腐食の影響でスキルランクを大きく低下している。
【保有スキル】
生ける屍:B+
ジェノサイドは、屍体にニンジャソウルを植え付けられることで蘇ったズンビーニンジャである。
生ける屍であるため、あらゆる感覚が鈍く、痛覚に至っては完全に遮断されている。
サーヴァントという存在を喰らわなければ、例え魔力が十分に供給されていようとも、ジェノサイドは消滅する。
また、消滅まで行かずとも、長期間サーヴァントを捕食しなければ、睡眠にも似た突発的な意識停止状態に陥る。
自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
ジェノサイドは他サーヴァントを捕食することで魔力と肉体を回復させる。
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
すなわち、カラテである。
【宝具】
『蒼ざめた死獣(ゼツメツ・ニンジャ)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
『第四の封印を解いた時、第四の生き物が「来たれ」と言うのを聞いた。
そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。
そして、それに乗っている者の名は「死」と云い、それに黄泉(ゲヘナ)が従っていた。』
第四の災厄のニンジャであり、ジェノサイドに憑依したニンジャソウルそのもの。
このニンジャソウルが憑依したことの影響で、死していた体はズンビーとして蘇り、ジェノサイドは超常の力を得た。
ジェノサイドの力の源であり、この宝具が失われることはジェノサイドの真の死を意味する、常時展開型の宝具。
【weapon】
鎖付きバズソー(丸鋸)
【人物背景】
屍体にニンジャソウルを憑依することで誕生する、超常の力を宿した生きる屍、『ズンビーニンジャ』である。
ズンビー化によるニューロンの腐敗によって、ジェノサイド自身も自身の記憶を失っているため、謎に包まれている。
醜く腐蝕した身体を隠すためにボロボロのカソックコートを纏い、腐肉の覗く顔を隠すためにウエスタン帽を被ってsいる。
かなり大柄な体であり、室内で立つと大凡の家屋では天井に届くほどである。
ズンビーとしての腐臭を隠すために酒を常に飲んでおり、また、頬が腐敗して破けているために酒を床に零すことが多々ある。
【サーヴァントとしての願い】
生ける屍体である自身に安息を。
【基本戦術、方針、運用法】
瞬発力はともかくとして、敏捷にすぐれない局所的広範囲での戦闘を得意とする。
とにかくサーヴァントを捕食しなければ、何もせずとも消滅してしまうという最悪の事態を回避するのが最優先である。
【マスター】
白坂小梅@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
-
【weapon】
-
【能力・技能】
いわゆる、『見える』人。
霊体化しているサーヴァントが見えるかどうかは不明。
【人物背景】
ホラー好きで霊感が強く、普通の人には見えないものが色々見えるらしい。
特に『あの子』と呼んでいる友達(?)がおり、仕事に度々ついて(憑いて?)来ている。
ホラー・スプラッタ映画鑑賞、心霊スポット巡りなどが趣味のホラー好き。
見た目は根暗そうで話し口調もたどたどしい。
が、台詞の端々からは仕事に対する前向きな姿勢が見て取れ、歌が得意であるらしい発言もある。
また勉強については以前はあまりやる気がなかったようだが、特訓後に「やっぱり勉強も……頑張ろうと思う……」とプロデューサーへ教えを請いに来る。
一方で13歳にして金髪(染めているのか生まれつきなのかは不明)にピアスという外見。
心の中で「(爆発すれば…いいのに…)」と考えていたり(何が?)、
LIVEの際には「スプラッターショーの…始まり?」「悪夢…見せて、あげる」と煽ったり、過激な一面も。
【方針】
不明
投下終了です
投下します。
表紙をもう一度よく眺めてみると、二匹の蛇が描かれているのに気がついた。
一匹は明るく、一匹は暗く描かれ、それぞれ相手の尾を咬んで、楕円につながっていた。
そしてその円の中に、一風変わった飾り文字で題名が記されていた。
はてしない物語 と。
――ミヒャエル・エンデ作『はてしない物語』
‡
【1】
この街の端。絶対領域の境界線、隣街との境目に、一人の少女が住んでいる。
少女の名前は誰も知らない。家の前には「奉野」という表札がかかっていたが、それが少女の本当の苗字なのか、そうだとしても下の名前は何なのかわかる者はいなかった。だからいつも被っているシルクハットから、周囲からは「シルクちゃん」と呼ばれていた。
少女は一人だった。
何故一人なのかは誰も知らない。もうずっと前からこの街に住んでいる――と思われていて、誰もその理由について無理解だった。
他ならぬ、少女自身でさえ。
【2】
ある日のこと。
部屋の掃除をしていた少女は、本棚に見覚えのない本があることに気がついた。
「……『旅は続く 世界の謎その全てを解き明かすまで!』?」
表紙にはそう印字されているだけ。装丁はあかがね色で布張り、中央に尾をくわえた蛇の紋章が捺されている。
ただそれだけの、見知らぬはずの一冊。――だというのに、少女はその本に心を奪われていた。
(いや……違う。私はこの本を知っている)
表紙を開く。
熱に浮かされたように、少女は頁を一心に捲る。
【3】
星の川。
【4】
魔法使いの月の国。
【5】
勇者と忘却の軍勢の戦いの記録。
【6】
本の中で、少女の心は旅をした。
長い長い旅をして、そうして、全てを思い出したのだ。
……けれどもこれは別の物語、いつかまた、別の時に話すことにしよう。
【7】
その日から、少女の家の住人は二人――いや、三人になった。
◆
――忘却に抗う者は、愛する者を失う。
だから少女が二度目の忘却に抗った時、少女はまた、それを「思い出す」という形で愛する者を失った。
◆
日が落ちる。
30度傾いた夕日が街を照らして、黄昏た橙色へと染めていく。
無機質なビルディング、乾いたアスファルト、点き始めた街灯。
そしてそれらを一望する鉄塔。
その上に一人、少女は佇んでいた。
「この街は知らない街だけど――私が憎んだあの国に、よく似ているよ」
そう呟いて、少女は街を見下す(みおろす)。
立ち並ぶビル。
行き交うスーツ姿の灰色の人々。
何処(いずこ)か知れない、忘却された街。
その全てが、少女が生まれ育った国とよく似ていた。
「だから、聖杯戦争に勝ったなら……まずはこの街を焼いてしまおうと思う。あの国の奴らへの復讐の踏ん切りに」
――だから、少女は街を見下して(みくだして)いた。
何もかもを忘却し、少女の愛する祖父を殺した『忘却の国』。
その似姿であるこの街は、少女にとって憎しみを煽る対象でしかない。
憎しみ。悲しみ。怒り。
少女の瞳の構成要素はつまり、そういったマイナス要素の感情の塊である。
どこにも行き場のない――それ故に、暴走するより他にない。
「私は聖杯を手に入れて、忘却王と忘却の国に復讐する」
呟くような言葉と同時。
少女の隣に、像が形となって結実した。
「――こんな所に居たか。探したぜ、マスターよ」
現れたのは、額に鉢金、胴に数珠を巻いた、比較的軽装な東洋の武者姿の男。
髪は白く、髭を生やした体格のいい初老だ。
「あまり我から離れるな。しつこく命令しても鹿角がうるさいんだが、あまり離れててもアイツ此度の主は我をないがしろにしてるのかって不機嫌になるからなあ」
「ランサー」
ぼやくような初老の男――ランサーに、少女は、しかし目も向けずに告げる。
「そろそろ始めよう。時期から考えても、そろそろ本格的に聖杯戦争の始まる頃だ。
久々に家族がいるような気分を味わえたから、感謝はするけれど」
「別にそういうつもりじゃなかったんだがなあ、我」
ともかく、とランサーは少女を見て言った。
「我にも、鹿角にも願いのようなものはない。故にマスターの望みに異論はないが――いいのか、願いは『復讐』で」
少女の願いが、祖父を奪われた復讐ならば――逆に祖父を生き返らせ、もう一度やり直すという願いは持たないのか。
そう言外に問うたランサーに、しかし少女は首を振る。
「もうやり直せない。爺ちゃんはあの街にはいないし――私の居場所もあの街にはなかった」
空想を忘れた忘却の国に、空想の世界に生きる少女の居場所はない。
それは祖父が生き返ったところで明らかなことで、何より少女には、今更――祖父と出会う、という想像/創造ができなかった。
居場所がなく、過去も、未来も想像できない少女の願い。それは最早、破滅しかない。
「そうかよ。……まあ、二君ではあるが、主の命だ。三河の武士としちゃ、従うしかないわな」
それを聞いたランサーは嘆息。そして、こう言った。
「本多・忠勝……その名の通り、主の命に従い、忠、勝つ。それが我の仕事だ」
----
【クラス】ランサー
【真名】本多・忠勝@境界線上のホライゾン
【パラメーター】
筋力B 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
見切り:B
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』・あるいはそれに類するスキルまたは宝具を持たない限り、同じ敵の一回見た技に対して追加の回避判定を行う。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃はこれに該当しない。
本多・忠勝が生涯において参加した合戦は大小合わせて57回に及んだが、いずれの戦いにおいてもかすり傷一つ負わなかったと伝えられている。
また、動きやすさを重視し軽装を好んだという。
無窮の武練:B
東国無双。
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
【宝具】
『蜻蛉切』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:30人
本多・忠勝が有する神格武装。穂先に乗ったトンボが両断されたことが名前の由来となっている。
全長3.6メートル、40センチの刃を持ち、伸縮機構により最大6メートル〜最短1メートルにまで長さを調節可能。
神格武装としての能力は「穂先に映した対象の名前を結び、割断する」。
能力を起動する際には「結べ、蜻蛉切」という掛け声を必要とする。
通常駆動では30m射程内の物体や術式を結び割り、上位駆動では事象さえも結び割ることが可能。
作中では上位駆動で「警備」や「方角」を割断している。
非常に強力ではあるが、割断する物体が大きく、そして遠い対象であればあるほど魔力を消費する。
上位駆動(規模の大きな割断の他、事象の割断を含む)に至っては、魔力が万全な状態であっても2、3回が限度だろう。
更に、『クラスにより己の真名を隠している』存在であるサーヴァントに対しては、真名を知っている相手でない限り割断するのは『クラス名』に過ぎず、そのダメージは浅いものとなる。
『最早、分事無(もはや、わかたれることはなく)』
ランク:E 種別:対忠勝宝具 レンジ:- 最大補足:-
本多家付き自動人形・三河自動人形統括――そして、本多・忠勝の亡くなった妻の指輪を魂の核に使用した自動人形である鹿角(かづの)が常に(勝手に)宝具でありサーヴァントとして現界している。
自動人形である鹿角(ランサーの世界では、自動人形にも魂は存在するが)が一種のサーヴァントとして現界し、更にランサーの宝具と化している理由。
それはランサーが生前、鹿角の魂の核である指輪をその死の直前に呑み込んだ事により、英霊としての情報に鹿角の情報が混入したこと。
そしてマスターであるシルクちゃんが、『家族』に対して強い執着を持っていたことである。
本来ならば少数ならば訓練された戦闘員の部隊に対しても時間稼ぎを行えるレベルの戦闘力を持つが、主である忠勝がランサーという従者の召喚には縁遠いクラスである事、あくまでランサーについてきた魂の一部でしかない事などから、その戦闘力は戦闘員としては期待できないレベルにまで低下している。
自動人形の常として重力制御のスキルを持つが、戦闘に応用できるレベルではない。
またこの宝具が破壊された場合、魂の繋がった存在であるランサーも大きなダメージを受ける。
【weapon】
『蜻蛉切』
【人物背景】
『境界線上のホライゾン』における、本多・忠勝の襲名者。
妻は既に故人であり、本多・二代という娘を持つ。
東国無双であり、その名にふさわしく豪放快活な性格だが非常に子どもっぽいところもある。
しかし老いて尚その実力は健在で、聖連ですらその力を認め特殊予備役副長として認可している。
松平・元信の命を受け鹿角と共に新・名古屋城内の地脈炉を暴走させ、三征西班牙から派遣されてきた八大竜王・立花・宗茂と相対し、これを退ける。
その後鹿角の魂を宿した青珠と共に元信の元へ行き、妻の幻影と共にオーバーロードした地脈炉から放出される流体光に飲み込まれて消滅した。
――サーヴァントとしての願いは特に持たない英霊だが、それでもシルクちゃんに呼び出されたのは、愛する家族を失った(ランサーの場合は妻、シルクちゃんの場合は祖父)こと、そしてその存在が擬似的に蘇った事があるという縁に関係していると思われる。
【サーヴァントとしての願い】
特にはない。
【マスター】
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴
【マスターとしての願い】
復讐。
【weapon】
『魔法の羽ペン』
物語世界をそうぞうした賢者マツリヤの羽ペン。
物語に結末を付けるという力を持つ――が、物語の世界の外であるこの聖杯戦争ではある程度の神秘を持つだけの触媒でしかない。
【能力・技能】
『魔法』『そうぞう』
頭の中に思い描くこと。
既知の事柄をもとにして推し量ったり、現実にはありえないことを頭の中だけで思ったりすること。
『―していたよりずっと立派だ』『―がつく』
それまでなかったものを初めてつくり出すこと。
『―力』
神が万物をつくること。
『天地―』『―物』
かつて賢者マツリヤは、一握りの砂から時と宇宙と星を創ったという。
そのそうぞう領域から外れたこの聖杯戦争で、彼女が『魔法』を使えるかは定かではない。
【人物背景】
愛する祖父を殺された、どこにも行き場所のない少女。
【方針】
聖杯を手に入れる。
以上で投下終了です。
わーお元ラスボス系マスターだぁw
投下します
◆
MI作戦。
金剛・吹雪隊、大和との合流を果たし、敵本拠地MIへと移動を開始。
◆
激戦地に着いて大井の目に飛び込んだのは、数多くの敵駆逐艦たちから追い回されている北上の姿。
大井は自分を叱責した。
何故あの時、静止を振り切ってでもついていかなかったのかと。
もし大井がいれば、大井と北上ならば。
この手をつないで放つ片弦80門の酸素魚雷があるならば、あんな敵など物の数じゃない。
そうして全速力で北上に近づきながら、いつもそうやっていたように左手を伸ばす。
「北上さん、北上さん、北上さん!!」
北上がこちらに気づいて、手を伸ばす。
その背後には、敵の駆逐艦の影が迫っている。
大丈夫、届く、届かないわけがない。
私と北上さんの間に割り込める者なんて居ない。
誰にも邪魔させない、邪魔なんて出来るわけがない。
邪魔するな。大丈夫。届け。嫌だ。駄目。やめて。嘘。駄目。邪魔。駄目、駄目、駄目!
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!
届け、届け、届け届け届け届け届け!!!
「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
―――戦争は、物語じゃない。
そこに輝かしいハッピーエンドが待っているとは限らない。
大井が必死に伸ばした手は―――届かなかった。
描いていた物語が破綻していく。
約束されたはずの薔薇色の未来が崩れ落ちていく。
大井が最後に見たのは、敵駆逐艦に噛み砕かれた北上の姿だった。
◆
◆
MI作戦は、我軍の大勝利に終わった。
犠牲となった艦は一隻、重雷装巡洋艦「北上」のみ。
長門や赤城が想定した被害を考えれば、遥かに軽微。
しかし、0ではない。
その傷跡は、しっかりと残っている。
◆
鎮守府、艦娘の私室。
カーテンを閉めきり、昼間とも夜とも区別の付かない一室。
その一室の、やや広めのベッドの上。
一人の少女が寝るでもなく、かといって起きているでもなく。ただただ横になって過ごしていた。
北上を失い大井は泣いた。
食事も取らず、慰めの言葉も聞かず。
一日が経ち、声が潰れ、二日が経ち、声が出なくなり、それでもただただ泣き続けた。
そうして三日目、大井に変化が起こった。
三日目の朝。
大井は、もう泣いていなかった。
ただ、死体のように横たわり、主を失った枕を抱えて胡乱な瞳で壁を見つめ続けていた。
涙が枯れ果てる、という言葉は比喩ではなかったらしい。
人生から意味を失うと、人間は人間じゃなくなる。
笑えなくなり、怒れなくなり、そして悲しみを失って最後に泣けなくなる。
大井の人生は今、空っぽだった。
世界は色と音を失った。
人生の時間は止まった。
手足の付いている意味はなくなった。
MI作戦終了の三日後。
大井は『死』んだ。
「大井、話がある」
廃人同然の大井の前に現れたのは、提督と秘書官の長門だった。
大井は返事もせず、ただ枕を抱きしめて壁を眺め続ける。
長門は大井の了承も得ずに言葉を続けた。
「……北上のことは、残念だったな」
心にもない言葉で取り繕う。
大井はただ、じっと横になったままだった。
「だが、彼女のお陰でMI作戦は無事成功を収めることが出来た」
心にもない言葉で取り繕う。
大井はまだ、じっと横になったままだった。
「お前も、辛い思いをさせてしまってすまない」
「お前は軍人である前に、北上の友だった。いや、親友だった」
「だからこそその痛みは……私達の思うどんなものよりも、深く鋭いものだろう」
心にもない言葉で取り繕う。
心にもない言葉で取り繕う。
心にもない言葉で取り繕う。
「本当ならば……そんな状態のお前に、こんなことを話したくはなかった……」
長門が口ごもる。
大井は答えない。
そうして数秒後、長門は意を決したように本題を切り出した。
「……取り乱さずに聞いてほしい……先ほど、お前の解体が正式に決定した」
解体。
艤装を解体し、軍人から一人の少女に戻って軍から放逐される。
お役御免。クビ。そういうことだ。
大井はなにも答えない。
そこで、ようやく提督が口を開いた。
提督の言葉を要約すればこういった内容だった。
<<MI作戦が成功したとはいえ未だ油断ならぬ状況は続いている。
艦娘たちはまだ戦い続けなければならない。
ただ、大井はもう戦えないだろう。
仮に戦場に出ることが出来たとしても以前のような目覚ましい戦果を上げることは不可能だ。
だから、君にはこの鎮守府を去ってもらう他ない。
艤装を捨て、鎮守府を離れ、一人の少女として北上を弔ってあげてほしい。>>
そこで大井は初めて、言葉を返した。
体の良い厄介払いだ。
北上の名を使って追い払おうとしているだけじゃないか、と。
長門が激昂して何事かを怒鳴ろうとするが、提督がそれを御する。
大井には何故長門が怒るのかが理解できず、思いの丈を口にした。
大井と北上を引き離して作戦を決行したのは当時の全権代理責任者だった長門じゃないか。
長門が大井と北上を引き離したから北上は死んだ。そして大井はこの有り様になった。
だというのに、北上の死も大井の現状も『仕方がなかった』『尊い犠牲だ』で片付けて臭いものに蓋をしようとしている。
それを指摘して何がおかしいのか。
生きる屍からこぼれたそんな呪文を聞くと、長門は顔を真っ赤にして、涙を浮かべながら何処かへと走り去ってしまった。
残ったのは寡黙な提督と生きた屍が一つきり。
ただ、大井もそこからは何も言わず、のそりのそりと動き出した。
最早鎮守府に残る意味は無い。
解体が決まったのも動き出す都合付けには丁度いい。
大井はそのまま、最低限の荷物と北上が生前使っていた枕だけを持って、誰にも何も言わずに鎮守府から去った。
鎮守府を離れた彼女はまず、海に飛び込んで死んでしまおうかと思った。
そうすればきっと、北上のすぐ近くに行けるだろうから。
しかし、海に近づいた瞬間、その願いも儚く砕け散った。
揺れる波を見ると、あの時の光景を思い出してしまう。
足が震え、それ以上進めない。海に近づくだけであの日の光景を思い出して動けなくなってしまう。
無理やり一歩進むと、あまりのストレスで胃の中身をもどしてしまった。
同じ場所で死ぬことも出来ない。大井はただひたすらに運命を呪った。
生きる意味もなく。
死ぬことも出来ず。
そうして大井はどこに向かうとも知らない汽車に乗り込み。
からっぽの升席の窓側に腰掛けて、このまま死んでしまえとばかりに窓枠にもたれかかって目を閉じた。
◆
ぐら、ぐら、ぐら、ぐら。
電車の揺れで目を覚ます。
少し、眠っていたようだ。
窓の外にはトンネル内部を照らす誘導灯が規則正しく並ぶ様が広がっている。
トンネルは山を掘り抜いて作られる。
とすると、周囲は海ばかりだった鎮守府からだいぶ離れたところまで来たのだろうか。
「目が覚めたかい」
「……」
「とてもうなされていたようだ。なにか、悪い夢でも見たのかな」
いつの間にか隣に座っている男性が、優しい顔で大井に話しかける。
彼に重なって見えた文字は『アーチャー』。
「貴方一体……アーチャー、って?」
白髪を蓄えた壮年の男性(アーチャー)は、少々混乱を見せる大井ににこやかに微笑みながらこう言った。
「まだ混乱しているようだね。直に記憶の整理が着くだろうが、簡単に説明しておこう。
君は聖杯戦争の参加者として選ばれた、ということだ。おめでとう、というべきかな?」
「聖杯、戦争……」
聞き覚えのない単語。
だが、知っている。
願望機・聖杯を巡り行われる、英霊を介して行われる擬似戦争のことだ。
学んだわけではない。いつの間にか知っていた。
アーチャーという男の話から察するに、大井はその戦争の参加者として選ばれ。
願望機に願いを届ける権利を得た、らしい。
その説明でも理解が追いつかない大井に、男は少しだけ身だしなみを正した。
「まずは自己紹介といこうか。私はアーチャー。真名は……『我望光明』。
能力は……口であれこれと説明するよりも、実際に見てもらったほうが早いだろう」
「そして願いだが……私は、どうしても会いたい人が居てね」
男が夢を語る。
それは宇宙の果てに居る『プレゼンター』に会いに行くという夢。
その夢を語る時、アーチャーは壮年の男性に似つかわしくない輝いた顔をしていた。
「会いたい、人……」
「私が望むのは、『出会い』。あの日の『出会い』の続きをこの手に掴みたい」
まるで子供のようにぐ、と拳を握ってみせる。
未来を信じて疑わない、そんな瞳で。
「それで、君は誰だろう。君には、どんな願いがあるのかな」
アーチャーが大井に問いかける。
誰か。
そんなのどうでもいい。
願い。
そんなの考えるまでもない。
「……会いたい人が居るわ、私も」
「もう会えないけどね」
憎々しげに吐き捨てる。
誰に向かってか、鎮守府のぼんくら共に向かってか。
届かなかった手。
掴めなかった手。
後悔してもしきれない過去。
それを変えたい。
そしてもう一度。
あの無気力な笑顔と、『大井っち』という気の抜けた声に出迎えてほしい。
その答えを聞いてアーチャーはもう一度にこやかに微笑んだ。
◆
「もう二度と会えない、それでも会いたい人、か」
「ええ」
「会えるさ」
一呼吸おいて。
「この聖杯戦争に優勝すれば、どんな願いも叶うのだからね」
アーチャーがそう答えた瞬間、電車がトンネルを抜けた。
すると世界は――――――色に満ちていた。
まばゆいばかりの極彩色の世界。
世界は色を取り戻していた。
窓の外から車輪がレールを走る音が聞こえてきた。
がたん、ごとん、がたん、ごとん。
アーチャーが窓を開け放てば、風と一緒に景色と音が飛び込んできて彼女を包み込む世界は一段と濃さを増した。
その美しい世界を見て、大井は一度圧倒され、
そして与えられていた聖杯戦争の知識を飲み込み、全てを理解した。
ああ、そういうことか、と。
大井の人生は、やっぱり、ずっと前から、『たった一つの愛』だった。
大井は北上への愛で生きていた。
北上を失い、大井はすべてを失った。
生きる意味も、感情も、色も、音も、全て、全て、全てを失った。
だが、願いを叶える聖杯戦争に呼び出され、大井の世界は輝きを取り戻した。
死にかけていた大井の魂にもう一度命を吹き込んだ。
空っぽだった大井の人生に意味を与えた。
何故聖杯がそこまでして『何も願ってなかった』大井を呼んだ?
アーチャーに言われなければ蘇生を思いつかないほどに心を擦り減らしていた大井に最後のチャンスを与えた?
そんな理由、一つしかない。
この世界は、大井の愛を全力で応援してくれているのだ!!
あの格好ばっかりつけて無能な長門や大飯ぐらいで役立たずな空母たちのせいで轟沈させてしまった北上を、
北上を失い、生きていく意味を共に失ってしまった大井を、
世界が、
聖杯が、
全ての自然の摂理が、
そんな結果あってはいけないと理解し、大井が北上を救い出せるよう場を設けてくれたのだ!!!
救えないはずの運命を覆し、『当然救えていた未来』へと繋がる航路を示しだす羅針盤を、全力で大井に授けようとしてくれているのだ!!!!
「いい目になった。もう一度聞こう、君の願いは何かな?」
「私の願い……? 決まってるわ……!」
感動で大井の肩が震える。
世界は、こんなにも『愛』に満ちていた。
ならば、大井のやるべきことは一つしかない。
「待っててね、北上さん」
流れていく景色。
戦争の舞台に相応しくない、華やかな町並み。
町並みに愛する人の名前を添える。
聖杯に届ける願いを口ずさむ。
「私が……」
枯れ果てたと思った涙が、一筋こぼれ落ちる。
生きる意味を取り戻した少女の瞳が再び涙で濡れる。
大井の涙は、窓から外にこぼれ落ち、遥か過去へと流されていく。
袖で顔をぐしぐしと拭き、街を睨みつける。
もう、泣かない。
泣いてる暇はない。
大井が聖杯に望む願いは一つ。
絶望。
喪失。
別離。
あの日押し付けられたいくつもの悲しみと、北上を飲み込んだ海を越えて―――
北上を取り戻す。
何があろうと取り戻す。
それが出来るのは、北上を心から愛している大井だけなのだから。
大井にとって北上への愛こそが人生の全てだったのだから。
世界が、そんな大井の愛に応えてこの戦争に招いてくれたのだから。
「私が!」
「絶対に、貴女を、助けますから!!!!」
◆
重雷装巡洋艦・大井。
世界を救う任を負った艦娘であった彼女。
しかし、愛するものを守れず、心を砕かれ、艤装を失い、職場を追われ、絶望の果てに『死』に。
どこともわからぬ地の果てで、愛に溺れ、夢の大海へと漕ぎだした彼女は最早誉れ高き艦娘などではなく。
呆れるほどに、ただの少女だった。
【クラス】
アーチャー
【真名】
我望光明@仮面ライダーフォーゼ
【パラメーター】
通常時
筋力:E 耐力:E 敏捷:E 魔力:C 幸運:D 宝具:A
サジタリウスゾディアーツ時
筋力:B 耐力:B 敏捷:D 魔力:B 幸運:D 宝具:A
サジタリウス・ノヴァ時
筋力:A++ 耐力:A 敏捷:C 魔力:A 幸運:D 宝具:A
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
対魔力:E/C/A
魔力に対抗する力のランクを示す。
アーチャーは通常時には最低ランクの対魔力しか持たないが、宝具を解放するたびに対魔力が上がっていく。
単独行動:A
マスター不在でも現界が可能。
ただしマスター不在時には使える宝具が大幅に制限される。
【保有スキル】
赤い目の男:―
現界以外で魔力を使用する際に目が赤く光る。このスキルによって真名がバレる可能性があるバッドスキル。
催眠術:E
催眠術が使える。ただしマスターやサーヴァントには効果をなさず、一般住民に対して簡単な命令や記憶の消去を行える程度のものである。
このスキルの使用には相手に自分の赤い目を見せる必要がある。
カリスマ:E-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる才能。
彼は理事長として学園の生徒教師問わず全員から絶対の信頼を得ていた。規模は小さいが立派なカリスマを携えている。
ただし、我欲の強いものにはこのスキルは発動されず、逆に同ランクのスキル:反骨の相を与えてしまう。
大気圏を突き抜けて輝く夢:A
宇宙に夢を抱いている。
彼の最終的な願いはプレゼンターとの接触であり、それを変えることはできない。
もしも邪魔をする者が現れたなら、それが誰だろうと容赦はしない。
【宝具】
『黄金十二宮を統べる者(サジタリウス・ゾディアーツ)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
ゾディアーツスイッチに秘められた力を解放し、サジタリウス・ゾディアーツに変身する。
パラメータを上記サジタリウス・ゾディアーツ時まで向上し、同時に対魔力をCランクまで引き上げる。
『アポストロスの矢』
ランク:E 種別:対人/対軍 レンジ:5-80 最大捕捉:100
腕に装着してある弓『ギルガメッシュ』に魔力を込める事によって発動する宝具。
そもそもが通常装備・通常攻撃であるため、宝具としては破格の魔力消費の少なさで解放出来る。
天に向かって放てば対軍宝具としても使用が可能。この場合は魔力の消費量が対人よりも多くなる。
『超新星爆発(サジタリウス・ノヴァ)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
『黄金十二宮を統べる者』を発動中に追発動することが出来る。
超新星の力によってサジタリウス・ゾディアーツの真の力を解放する。
パラメータを上記サジタリウス・ノヴァ時まで向上し、同時に対魔力をAランクまで引き上げる。
この宝具の発動にはマスターの魔力が必要であるため、単独行動中には使用できない。
『サジタリウスの矢』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1-30 最大捕捉:5
超新星の力を身に纏ったアーチャー自身が矢となって突撃する。
まるで彗星のようなキックであり、その威力は無比。
筋力を一時的に二段階向上し、着撃時に物理防御系のスキルを一つ無効化できる。
『会いに行くよ、絶対に(ネビュラゲート)』
ランク:A 種別:対界 レンジ:99 最大捕捉:999
サジタリウス・ノヴァ状態で令呪三画を用いて発動可能。
アーチャーの願いであるプレゼンターとの接触を果たすための宝具。発動するとワープゲートを通ってプレゼンターの元へといける。
まずアーチャーは自身の生み出したホロスコープスのスイッチを全て召喚し、ネビュラゲートを開く。
ゲートを開く準備段階で一時的に全ての能力がE-ランクまで下降するが、ゲートが開き、彼がゲートをくぐりワープを完了すればその余波で日本が軽く消滅する規模の災害が発生。
イメージとしては日本を破壊し尽くす規模のブラックホールの生成と考えてもらって構わない。
サーヴァントが耐えられてもマスターがその余波に耐えられないため、この宝具の解放は事実上の『聖杯戦争終結』を意味する。
ちなみに発動すればアーチャーのマスターも当然死亡する。
【weapon】
サジタリウスのゾディアーツス(ホロスコープス)スイッチ
【人物背景】
出典は仮面ライダーフォーゼ。天ノ川学園高校の理事長。
赤い目の男として一話から登場していた珍しいラスボス。
部下のミスや舐めた態度にも寛容な良い上司。生身の弦太朗にボコられた悲しいラスボス。
実は料理が得意で、天ノ川学園高校の学食でコックをやっていたらしい。
【マスター】
大井@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
北上さんを取り戻す。手段は問わない
ただし願いの末に取り戻せる北上がアニメと同一人物かどうかは分からない(この点については大井は知らない)
【能力・技能】
艤装を失ったただの女の子。
北上さんへの愛なら誰にも負けない。
【人物背景】
おっ、レズゥー!
艦これ12話から分岐、大井が間に合わず北上が轟沈した世界線からの参戦。
目の前で北上が轟沈したため、海に対して極度のトラウマを抱えている。
おそらく改ニだったが、艤装がないのでただの少女。
結構言いたいことはずけずけ言うタイプ。相手が不快とか傷つくとかは一切考えない。
あとなんか「けつかる」とか言っちゃう。黙ってれば可愛いのではないかと思うがアニメ版は悲惨。
ついでにいうと、別に聖杯は愛に溢れてるわけでも大井っちに北上様を救うチャンスを与えたわけではありません。
あれは大井っちの解釈です。
北上様を失って狂ったのか、それともアニメ艦これ特有の超解釈の結果なのかは判断に任せます。
【方針】
アーチャーの単独行動スキルのお陰で魔力の消費が少ないので徹底攻勢でいく。
サジタリウスの状態でも他人を圧倒できるが、少しでも分が悪いと判断すればばしばしノヴァに変身させる。
敵サーヴァントを見つければ攻撃を仕掛けるし、戦闘中のサーヴァントを見つければサジタリウスの矢を放つ。
卑怯も姑息もない。愛の前には全てがやむを得ない犠牲である。
聖杯が掴めないならいっそ令呪三画を使って他の奴らも道連れに北上さんの元へいくのもありかもしれない(アーチャーの願いも叶う実に優れた作戦)
大井はどうあれ、アーチャーは指示もきちんと聞くしどんなことにもわりと寛容であるので特に問題は起こらないと思われる。
ちなみに、海を見ると北上の轟沈を思い出すため必要に駆られない限り海には近寄らない。
以上です
投下させていだきます
――――幸せになりたい、と。
生まれて初めて、少女は涙を零した。
◆
日の沈む街の中で、家が赤く染まっていた。
夕日の赤だと思っていたものに、黒が混ざり始めた。
背負ったランドセルと同色の赤から、家を染まっていた赤は黒く濁りだし、やがて、それが赤でないことに気づいた。
それは火だった。
パチパチと、空気を弾く音が耳に届き始めた。
意味が分からなかった。
母は、母は無事なのだろうか。
父の顔も知らぬ少女にとって、母は唯一の家族だった。
燃え盛る家へと駆け出すが、すぐに駆けつけていた消防団のおじさんに止められた。
必死で叫んだ。
蒸発した父親と頭のおかしな祖母を持つためか、普段は寡黙と言ってもいいほどの少女。
その少女の叫びに、周囲が意外そうな表情を形作った。
母の名を叫び、叫び、叫び。
その叫びも、少女の声量では空気を弾き木を燃やし尽くす火炎音に掻き消された。
ガタン、と。
大きな音が響き、屋根が崩れ落ちた。
少女が首を大きく曲げてようやく見えていた屋根は、崩れ落ち、少女の目線と同じ高さに瓦を落とした。
少女は消防団員に問いかけた。
『母は?』
母は暗い女性だった。
仕事以外では他人と関わることもなく、少女と短く語り合うだけで生きている人間だった。
今日、仕事は休みだ。
ならば、まず間違いなく室内に居る。
だからこそ、少女はここまで取り乱したのだ。
まず、間違いなく、居る、はず――――だが。
それでも、ひょっとしたら、自宅に居なかったかもしれない。
可能性は0ではない。
少女は縋るように、消防団員にもう一度問いかけた。
『母は……どこですか?』
万が一はなかった。
母の遺体が見つかった。
少女には、最初はその遺体が母だと分からなかった。
黒く炭焦げた体は、しかし、わずかに肉を残していた。
肉は皮膚を食い破り、露出している。
沸騰した血が血管を破ったのか、露出した肉は歪な形をしていた。
人ではなく肉に見えたそれは、母の遺体だった。
それが母だとわかったのは、母が残していたロケットだった。
ロケットの中身を一度だけ盗み見たことがある。
蒸発して少女と母を残して消えた父と、少女を残して肉となった母と、何も分からずに眠る赤子の少女の写真だ。
『……』
それは、つまらないほどの日常の中に起こった、一つの異変に過ぎなかった。
ただ、その異変は偶然じゃなかった。
焼身自殺だった。
心神を侵した母は、少女を残して一人だけ消えていった。
母にとって、少女とは残しても良いものだったのだ。
少なくとも、少女は幼心にそう感じた。
残された少女は祖父母に引き取られた。
島では、少女の両親の話は禁忌となった。
少女は、泣くことを辞めた。
母と少女を残して勝手に消えた父と、少女を遺して勝手に消えた母に、屈しているようだった。
泣くことでは、幸せになど来ない。
だから、絶対に泣いてなどやらないと決めた。
泣くことを辞め、いつか晴らすことだけを夢に見て。
少女、天本玲泉は笑みを顔に貼り付け続けた。
◆
「呪いですね」
ニコニコ、と。
少女、天本玲泉は笑いながら言った。
少年、小波四郎は間の抜けた顔で玲泉を眺める。
呪い。
本土から、海の向こうからやってきた少年を契機にして起こった異変。
日ノ出高校が甲子園に出場しなければ、日ノ出高校野球部の部員は『神隠し』に遭う。
神隠しに遭った者は、人々の記憶から消え去る。
呪いをかけられた当人である四郎と、呪いをかけている者以外は。
誰も覚えていないのだ。
「つまり……甲子園に行けってこと?」
曰く、戦後生き残ってやっと帰ってくるところを船が難破して死亡した若者達の呪い。
曰く、戦争が終わってようやく野球が出来ると喜んでいたのに急にその喜びを奪われたものの呪い。
曰く、自分たちが出来ない野球をやれるのに腑抜けて真面目にやらないものへの怒りによる呪い。
曰く、その呪いを解くためには、真面目に野球へと取り組んで、甲子園に出場すること。
「お祖母様の言うとおりだとすると、そうなります」
「無茶だ!」
四郎は叫んだ。
甲子園とはそんな簡単なものではない。
実力だけではなく、運も必要なものだ。
今の四郎には、今の日の出高校野球部には実力も特別な運もない。
行こうと思ったから行けるものではないのだ。
「でも、行こうと思わなければ行けないもの。
そうではないですか?」
「……そ、そうだけど」
四郎は困ったように眉を寄せた。
玲泉は笑った。
悪意というものを、四郎は感じなかった。
釣られるように、困ったように、四郎は笑った。
笑顔に釣られて笑顔になり、仕方ないから、これから頑張れるだけ頑張っていこうと思った。
愚痴を言ってもしょうがないと、そう思った。
――――翌朝、玲泉は日の出高校の部室に火を付けた。
部室も用具もなくなった日の出高校野球部は、四郎を除いて部員が居なくなった。
◆
玲泉は、祖母が嫌いだった。
優しかった祖父とちがって、祖母は厳しかった。
いや、厳しいだけならばよかった。
ただ、優しかった祖父を御座なりにして、若いころのロマンスばかり夢に見ていた。
ロマンス――――戦争に帰ってこようとしていた恋人が、難破によって死んでしまった事実。
いい年をして、いや、いい年になってまで悲劇のヒロインを気取っているのか。
あれだけ優しい祖父が居て、何が不満なのか。
玲泉は、祖母が嫌いだった。
祖父が亡くなってからは、それがさらに強くなった。
だから、『邪魔』をした。
『日の出高校野球部に呪いをかける』ことで、『日の出高校野球部を野球へと真剣に取り組まそう』としている祖母を。
玲泉は『邪魔』をした。
日の出高校野球部が甲子園に出たら、亡くなった恋人が喜ぶというのだろうか。
後輩が野球に対して真剣に楽しんでいれば、亡くなった恋人が喜ぶというのだろうか。
不快な感情が、玲泉を襲った。
――――まずは、部室に火を付けた。
そもそもとして、四郎以外の呪いを認識していない人物は必死ではない。
部室も用具もなくなれば、野球を辞めてしまうだろう。
玲泉はそう考えた。
だが、野球部は再建した。
四郎が部員集めに奔走したからだ。
問題はなかった。
練習の期間を短くすることが出来た、後は一年と半年もない。
四郎の言ったとおり、『出ようと思って出れる』ようなものではないだから。
――――次は、一回戦を勝ち抜いた野球部に笑いが止まらなくなるきのこを匿名で差し入れた。
試合当日、部員は病院に運び込まれ、不戦敗となった。
二年目の秋のことだ。
これで、残りは三年目の夏しか残されていない。
祖母は、日に日に弱っていた。
神隠しの呪いをかけることから生まれる負担が、祖母の身体を襲いかかっているのだ。
恐らく、近いうちに死ぬだろう。
◆
ある日の事だった。
「俺は、天本さん好きだからさ」
何の気もなしに、玲泉は四郎から告げられた。
相変わらず困ったように笑う四郎を前にして、いつもの笑顔を作ることも忘れた。
「だから、付き合ってください」
呆けた顔を崩すことが出来ず、ただ、時が流れた。
四郎の笑みが崩れてきた。
断られた、と思ったのだろうか。
「……あっ」
その時、玲泉の目に、一つの生き物が映った。
死にかけの猫だった。
四郎の告白を一度置いておいて、玲泉は猫を抱えた。
「……車に、惹かれたんですね。
まだ、生きてはいますけど、このケガでは……
家に、連れて帰りますね」
か弱く震えていた。
震えが止まるのも近いことだと、玲泉は分かった。
玲泉は、困ったように四郎へと顔を向けた。
「ああ、うん、一緒に行くよ」
逃げたと、思われたかもしれない。
事実、逃げはあった。
それでも、この死にかけの孤独な猫を放っておくことが出来なかった。
なるべく、揺らさないように抱えて神社へと向かう。
「なんじゃ?
死にかけの猫なんぞ持って帰ってきて。
さっさと殺してやったほうがそいつのためじゃぞ」
その様子を見た玲泉の祖母、不吉ババアは冷たく言い放った。
瞬間、四郎の頭に血が上る。
「なっ……!
そんな言い方――――!」
「気まぐれです」
「えっ?」
ただ、その怒りをぶつける前に、玲泉の言葉が被さった。
不思議そうに、四郎は玲泉を見た。
普段の笑顔が張り付いている。
仮面のようだった。
「この猫の生きている残りの時間は、苦しみだけ。
ですから、これは優しさではなく気まぐれです」
四郎は、玲泉を眺めた。
本気で言っているようだった。
「……フン。勝手にせい」
不吉ババアはいつもの調子で背を向けた。
海の見える場所へと向かう。
四郎は、死にかけの猫を抱える玲泉に隣り合って座った。
「………そろそろ、ですね……お休みなさい」
眉を寄せて、哀しみの表情を作った。
笑みのままでも、玲泉は悲しんでいた。
四郎は、言葉が零れた。
「本当に、気まぐれなの?」
聞いてはいけないことだったのかもしれない。
それは、玲泉の自分でも自覚していない部分に触る言葉だから。
「はい。
こうして死ぬときに、誰かがそばに居てくれるのは良いものかと。
そう思ったものですから」
玲泉は本気でそう言っていた。
これは優しさではない、と。
自分にそう言った感情はないのだ、と。
四郎は、耐え切れずに聞いた。
「それが、優しさじゃないのかな」
玲泉は、一瞬笑みが止まった。
「……小波さん、この猫を埋めるの、手伝ってもらえませんか」
四郎は頷いた。
小さな穴を作り、その猫を埋めた。
やがて猫の遺体は栄養となり、他の植物の一部となる。
土に帰るの生命は、決して一人にはならない。
「……その、さっきの答えですが」
ぴくり、と。
四郎が震えた。
玲泉も震えた。
少年と少女は震え、顔を動かした。
震える瞳と瞳が交錯した。
玲泉の唇が、ゆっくりと動いた。
「よろしく、お願いします……四郎さん」
◆
「いやだ、俺は……俺は……!
天本さんと、幸せに――――!!!」
.
◆
「ハァ……ハァ……」
表情は作れなかった。
テレビは、慈悲もなく結果を発表するだけであった。
「所詮、ここまでか」
玲泉の祖母、不吉ババアと島民から嫌煙されている老婆は倒れ込みながら呟いた。
玲泉は側で同じくテレビを眺めている。
笑顔の仮面が、わずかに崩れていた。
甲子園の出場を決めたのは、日の出高校はなかった。
日の出高校は、甲子園に出場できなかった。
つまり。
小波四郎は。
神隠しに――――。
「ゲフッ、クッ、フォ!!」
その思考を止めるように、祖母が苦しそうに呻いた。
呪いをかけすぎたことが原因で、ただでさえ弱っていた身体に限界が訪れたのだ。
このままでは、死んでしまうだろう。
玲泉は無意識に電話を手にとった。
「すまんなぁ……廉也さん、すまんなぁ……日の出高校の名前を……甲子園に連れて行けず……」
祖母は苦しそうに呻きながら、誰かに謝り続けている。
その言葉を聞いて、電話を取る手が止まった。
憎しみではない感情があった。
哀れみにも似た、それでいて哀れみとも違う感情だった。
苦しそうでありながら、申し訳なさそうでありながら、どこか、満たされた顔だった。
「…………」
祖母は、最後に夢を見れたのだ。
かつて愛した恋人と『酷似した少年』が野球をやっている姿を見れて。
小波四郎の姿に、かつての恋人を重ねた。
その少年が必死に野球をすることで、どこか、理不尽で醜悪な満足を覚えていた。
ただ、玲泉は不思議とその姿を憎いと思わなかった。
ようやく、救われたのだとすら思った。
そもそも、自分の妨害がなければ、少年はもっと練習が出来た。
『少年』から『あと一歩』を埋めるための練習を奪ったのは、『少女』なのだ。
四郎が消えたことで、祖母を恨むのは見当違いなのだ。
祖母は、死んだ。
玲泉は、医者に電話をかけた。
葬儀をすました翌日。
神社は無人となっていた。
島民の間では、可哀想な少女の話は禁句となっていた。
島民の間では、日の出高校野球部はとうの昔に廃部になっていた。
神隠しは、人の記憶から少年の事実を奪っていった。
神隠しは、人の歴史から少女の事実を奪っていった。
少女には、何も残されていなかった。
だから、何も残さないことに決めた。
蒸発した父は、すぐに見つかった。
少女は、何も残さないために動き出した。
◆
「おじ様は、ご家庭をお持ちなんでしょう?」
『嫌なことを聞く』と言った意味合いの言葉を返してきた。
誘ってきたのはソッチのほうだ、という意味合いを持った言葉でもある。
玲泉は笑った。
泣いているようにも見える笑みだった。
何時頃からか、そんな笑みしか出来なくなっていた。
男にとっては、そんな笑みが妙にエロティックで、劣情をそそった。
「悪い人ですね」
ハハっと、男は笑った。
男は妻と子供を愛していたが、どうしようもないほどのセックス依存症だった。
女性を孕ませることに偏執的なまでの執着を持った男だった。
虚言癖の、セックス依存症。
今回の家庭でようやく落ち着いたように思っていたが、それは消えていなかった。
「本当に……悪い人」
そもそもとして、誘ってきたのは少女のほうだ。
セックスに対する興味を口にして、セックスパートナーとしての関係を求めてきた。
男は断らなかった。
妻に対する負い目も感じはしたが、セックスは死ぬほど好きだったからだ。
現に、今も玲泉の手首を掴んで、ベットに押し倒して顔を近づけた。
だから、玲泉のその言葉を聞くまでは、何の反省もしていなかったのだ。
「血を別けた娘の処女を奪って、まだ性交を続けようるだなんて」
さっと、男の顔が青ざめた。
男の唇が動いた。
『あ、ま、』まで動いたところで、封じるように玲泉は口づけを行った。
中年特有の臭気が漂う息が口内に入っても、玲泉は笑っていた。
そして、泣いてるようにも見える笑みを浮かべたまま言葉を奪った。
「覚えていませんか、『天本玲泉』って名前?」
男の唇が震えていた。
玲泉はまだ嘲笑っていた。
「お母様からは、貴方が名づけてくれたと聴きましたよ」
トン、と胸を軽く押した。
男は大げさなほどに尻もちを付いた。
玲泉は、まだ嘲笑えていた。
「私は古臭くて大っ嫌いだから、『天本ちゃん』のままでいいですけど、まあ、それはそれとしてですね」
その瞬間、玲泉の笑みが消えた。
母を亡くしてから、ずっと貼り付けていた仮面が取れた。
不自然なほどに、のっぺりとした顔だった。
懐から、コンドームを取り出す。
同時に、ピンを取り出し、コンドームを貫いた。
◆
「私、赤ちゃんが出来ました」
「もちろん、堕ろしますので手術代をお願いしますね……お父様」
◆
わー、わー、と。
少年の声が響き渡る。
なんてことはない、河川敷。
当然のように少年たちが白球を追いかけている。
懐古の念が湧き上がる。
もう、覚えても居ない、覚えることが出来なくなった少年への想いが、理解も出来ず蘇る。
カキン、と。
金属バットがボールを叩く音が響く。
視界が、揺れた。
破滅へと向かうことに、どこか憧憬を抱いていた。
破滅することでしか、自分は救われないのではないかと、本気で思っていた。
ただ。
『本当に、気まぐれなの?』
少年が遺したあの一言だけが、少女の中で生きている。
覚えているはずのない言葉なのに。
神隠しの『共犯』であって、『主犯』ではない少女は、神隠しに遭った人間のことを覚えていない。
なのに。
『それが、優しさなんじゃないのかな?』
少女が忘れてしまったはずの言葉が、それでも消えずに胸のうちに残っている。
誰かに優しくされたことを、誰かを好きになったことを。
少女は忘れてなどいなかった。
ひょっとすると、別の形で幸せになれたのではないだろうか。
満たされないのは、こんな復讐を望んでいたわけではないからではないだろうか。
本当は、祖母のことを好きだったのではないだろうか。
本当は、父を不幸になどしたくなかったのではないだろうか。
本当は、幸せな人を妬んでいただけなのではないだろうか。
少女は、涙が零れていることに気づいた。
腹部に、大きな穴が空いたような気がしている。
初めから何も無いと思っていたのに、何を失くしたのだろうか。
初めから何も無いと思っていたのに、なんでこんなにも喪失感が襲い掛かってくるのだろうか。
涙は止まらなかった。
少女は、涙を止めなかった。
もう、生きている残りの時間は苦しいだけだ。
なのに、自分の側には誰もいない。
他のだれでもない。
側に居てくれたかもしれない誰かを、自分が消したのだ。
18の誕生日だった。
側には、誰も居なかった。
少女は、泣いた。
――――幸せになりたい、と。
生まれて初めて、少女は涙を零した。
◆
「ヤマダくん、実はね、俺は別の世界から来たんだ」
「別の世界……海の向こうでやんすか?」
「空の向こうさ……太陽の昇る島なのさ」
カラカラと。
笑いながら勇者は友人に語りかけた。
勇者、と言っても、彼には劇的な力はない。
時には龍の潜む山から魔宝を見つけ出し。
時には呪法に満ちた砂漠の遺跡から魔宝を見つけ出し。
時には魔王の棲む城に足を運んで交渉の末に魔宝を手にした。
彼は怪物のような強さを持っているわけではなかった。
国の誰よりも頼りになり、間違いなく指折りの戦士であった。
それでも、彼はあくまで人間の範疇にあった。
そんな彼が勇者で在り続けたのは、生存に長けていたからだ。
ただ、生き延び続けた。
戦争もないこの国で、平和を守るために生き延び続けた。
「いろんなことを残してきたからさ」
空を眺めながら。
太陽の昇る朝空を眺めながら。
その先に、辿りつけない故郷を見ながら。
勇者は呟いた。
「いつか帰りたいな……
俺じゃないと出来ない、なんて言わないけど……それでも、幸せにしてあげたかったんだ。
もう、名前も顔も覚えてないけど……ね」
それは目標ではなく夢。
辿りつけないことを認識した上で見る、理想の話。
勇者は諦めている。
この異世界で生きると、諦めたのだ。
故に、もはや故郷に遺した父の顔も名前も覚えていない。
故に、もはや故郷で出会った初恋の少女の顔も名前も覚えていない。
勇者は目の前のゴーレムを撫でた。
それでも、忘れていないものがあった。
「キャッチボールしようよ、ヤマダくん」
「えー……なんでオイラが野球人形のまね事なんか……」
口ではそう言いながらも、ヤマダは立ち上がった。
勇者の秀でた箇所。
それは投石とも呼ばれる、『投げる』という動作にあった。
これで爆弾を投げて、投げて、投げて。
時には爆弾魔の異名をもらいながらも、モンスターを倒し続けた。
そうだ、野球だ。
かつてあったもの。
かつて『少年』であった勇者と、もはや名前を覚えていない『少女』を繋ぐもの。
みっともないほどに、今の勇者とかつての少年を『繋ぐもの<野球>』に縋り付いている。
野球人形を、優しく撫でた。
これは勇者伝記の、その一文。
キングダム王国の危機を幾度もなく救った、勇者の出生の謎。
曰く、勇者は日出づる島より訪れたとのこと。
その一端を察することが出来る、なんてこともないお話。
◆
「此度の聖杯戦争において、アーチャーのクラスにて現界した」
「まずは、問おう――――君が、俺のマスターかい?」
.
◆
斯くして。
仮面の少女は聖杯に導かれ。
異界の勇者は少女に誘われた。
少女と勇者の視線が交錯する。
お互いに、懐かしい感情が蘇った。
だけど、それだけ。
少女は自らの意思で少年の存在を消して。
勇者は自らの諦観で少女の存在を忘れた。
それでも、残ったものがある。
勇者は、ふと、視界が潤んでいることに気づいた。
少女は、ふと、頬が濡れていることに気づいた。
失ったものは取り戻せないかもしれないけど。
――――忘れてしまったものならば、いつか思いだせるだろう。
【クラス】
アーチャー
【真名】
勇者シロウ(小波四郎)@パワプロクンポケット4 RPG風ファンタジー編
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:C+
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
心眼(真):E
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
異世界に放り出された勇者が、生存のために行った冒険の末に身につけた生存技術。
仕切り直し:A+
窮地から脱出する能力。
不利な状況であっても逃走に専念するのならば、相手がAランク以上の追撃能力を有さない限り逃走は判定なしで成功する。
勇者が勇者となり得た原因は、ひとえに『生存』に長けていたためである。
被呪体質:D
あらゆる呪いに対して不利な判定が働くバッドスキル、呪いと名の付く物には対魔力スキルを発動することが出来ない。
神隠しによって(便宜上)『異世界』と呼べる世界へと飛ばされたことで、勇者は被呪体質を持っている。
【宝具】
『日出づる島より訪れし勇者(ザ・ブレイブ)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
勇者として成した伝承において、必ず異なった武装と機転を以って伝説を作り上げた逸話が幻想と化した宝具。
勇者は特別な神剣・魔槍・聖弓のいずれも所持しておらず、また、特殊な戦車を駆ったこともない。
己の肉体と唯一常備する無銘の剣、使い捨てを前提した爆薬、そして、己の機転と経験を以って伝説を成した。
その逸話が転じて、彼が所持する武装は全てEランク相当の神秘が施される。
『炸裂する幻想(ブレイブ・ファンタズム)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:5人
ドラゴンを爆弾によって打ち払った逸話が幻想と化した宝具。
勇者は武装を意思によって『爆発』させることが出来る。
『神秘を爆発させる』というよりも、『物体をEランク相当の爆弾に変える』という能力。
つまり、どれだけ神秘の込められた物体を爆破させても、『Eランク相当』の神秘へと劣化する。
そのため、場合によっては魔具を用いて行う通常の魔術よりも大きく劣る威力になり得る。
『野球人形(キングダム王立野球軍) 』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大補足:9
野球をするための、人型ロボット。
上記宝具で四肢・胴体・頭部の野球人形のパーツを集め、組み上げることで完成する。
野球以外の目的で動くことはなく、戦闘の役には立たない。
勇者が遂にはその生涯で帰還することが出来なかった、『日出づる島』に残してきた未練の塊のような宝具。
この聖杯戦争を戦う上でも、全く役に立たない代物である。
【weapon】
『無銘・剣』
『勇者』の肩書が『冒険者』であった頃から使っている剣。
携帯に優れ、戦闘に限らずサバイバル生活における様々な局面で扱う。
『手投げ式爆弾』
龍が棲む山の主や王国を襲った巨大ゴーレムを撃退した際に使用した手投げ式の爆弾。
【人物背景】
キングダム王国を幾度となく救ってきた勇者。
秀でた戦士ではあるが、特殊な武装や技術は持たない。
それでも英雄となれたのは運か、それとも目には見えない技術によるものか。
装甲車バトルディッガー編では伝話として代々彼の活躍が語り継がれていることが確認できる。
その正体は、別世界で神隠しに遭ってファンタジー世界に飛ばされた野球少年である。
本土の都会から日の出島に引っ越してきた野球少年。
誕生日は6月の第1週。
高校は元々大安高校に通っていたが、父親の都合で日の出高校に転校してきた。
引っ越してきて早々にあけぼの丸の慰霊碑を倒してしまい、そのせいで「甲子園で出場しないと解けない神隠しの『呪い』」を受けることになる。
その呪いの結果、一時は日の出高校野球部解散の危機にまで陥ってしまうが、一から部を立て直すことに成功する。
満を持して、最後の夏に挑むが敗北し、神隠しに遭う。
この世界から『小波四郎』という人物は消え去ってしまった。
【サーヴァントとしての願い】
元の世界を見たい。
【基本戦術、方針、運用法】
あらゆる武器を爆弾に変えて投擲することが出来る。
また、トップクラスの仕切り直しスキルを所持しているため、ヒット・アンド・アウェイの戦法が主となる。
【マスター】
天本玲泉@パワプロクンポケット4 日の出高校編
【マスターとしての願い】
幸せになりたい。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
特別な技能は持たない。
【人物背景】
主人公の同級生、いつも笑顔で物静かな優等生タイプの女の子。
日の出神社で巫女として手伝いながらセツと二人暮らしをしている。
二人暮しの理由は、まず最初に父親が玲泉が生まれる前に蒸発。
その後、玲泉が9歳のときに母親が焼身自殺をしたことにより、両親を失う。
このせいか、彼女の両親の話は日の出島で禁忌とされており、周囲の人物も中々話そうとしない。
実はこの『父親』はメガネ一族の父親と一緒、つまり彼女もメガネ一族の一人である。
そして、矢部明雄や、同作に登場する山田平吉とは異母兄妹にあたる。
山田が教室で矢部明雄の話をした時に、玲泉が反応を示すイベントがあるが、
これは「『父親』の苗字は『矢部』であると、生前の母親から聞かされていた」故の反応である。
なお、この時点では自身と山田の関係については知らなかったようである。
いつも笑顔でいる理由は「表情が不器用だから」「笑っていれば幸せがくるかもしれない」とは本人の弁。
ただし主人公(4)は彼女にした場合のアルバムで、「あの笑顔は他人から自分を守る為の盾だった」と回想している。
また、パワポケダッシュのキャラクター図鑑においても「いつも、わらっているのは、自己防衛(じこぼうえい)のため」と明記されており、
主人公の見方は正しかったと示唆されている。
祖母のことを憎んでいると口にはするが、心の奥では嫌ってはいない。
歪んでしまった『良い子』であり、幸せは自分から失ってしまっただけ。
【方針】
幸せになりたい。
投下終了です
投下します
「クッ……下界の凍てつく波動が、我が身体を蝕みよるわ……」
黒き少女が歩いていく。
黒い日傘を手に、黒き少女は早足で歩いていく。
今日もレッスンだった。
いつも通り、皆と一緒に。
来るべきライブに向けて、精一杯、一生懸命に。
だが、違った。
皆が違った。
トレーナーが違った。
事務所の場所が違った。
そして、何よりも――――プロデューサーが違った。
それに気付いた時。
気分が悪くなった。
ので、寮に帰ることにした。
「闇に飲まれよ……」
「あっ、蘭子ちゃん、おつかれー」
トレーナーに別れのあいさつをして寮に帰る。
熊本の実家から離れて東京に出てきた。
そして、今は寮で他のアイドル達と暮らしている。
寮でも友達は沢山が出来た。
それが偽りと気づいた時。
『全てが怖くなった。』
その帰り道だったか。
黒き疾風が……彼女の元を訪れた。
「……やっと、見つけたよ、僕のマスター」
「!」
その男も黒だった。
黒い髪に全身を漆黒の衣装で包み、両手を鎖で繋がれている。
そして、その瞳だけは紅い青年だった。
「汝は黒き闇よりの使者か?」
「ふっ…そうだ。僕はライダー……今はそう呼ばれている」
「ほう、我は名は神崎蘭子、血の盟約に従いこの地に舞い降りた」
聖杯戦争。
そう、蘭子の記憶にあった。
と、なると目の前にいるのは自分のサーヴァント。
(このライダーさん……元の世界に帰るのに協力してくれるかな?)
「クククッ……我が下僕よ。此度の聖戦をどう抗う?」
「僕は太極の呪いからの解放されたい……それだけで十分だ」
「なに、真か! それは大儀だ……我も、だ」
「ククク……なるほど、どうやら僕は運がいいようだ」」
この時点で二人は決定的な考え方の違いに気付いていない。
蘭子はただ元の世界に帰りたいだけである。
そして、ライダー……アサキム・ドーウィンは太極の呪いからの解放。
そのためには何がなんでもどんな手を使ってでも聖杯を手にしたいのだ。
そう、二人の目的は完全に真逆であった。
「我が下僕よ、黄泉の泉へ誘え!」
「ふっ……いいだろう、さあ、宴を始めようか!」
本当、熊本弁って難しいからね。
【クラス】
ライダー
【真名】
アサキム・ドーウィン@スーパーロボット大戦Zシリーズ
【属性】
中立・中庸
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:A 幸運:E 宝具:A+
【クラススキル】
対魔力:C
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:-
シュロウガにしか乗れない。
【保有スキル】
不死の呪い:-
過去に何らかの大罪を犯し、全平行世界の意思「太極」からの呪いにより、死ぬ事ができない……らしい。
【宝具】
『漆黒の次元烈風(シュロウガ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:20
アサキムが駆る漆黒の起動兵器。
太極へと先んじ、現世と幻世の狭間に居る存在であり、生と死の中間に位置する存在である。
そして―――――――――――――――――――――。
【weapon】
シュロウガ
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を手に入れ、太極の呪いからの解放され、死ぬ。
【人物背景】
「過去に大罪を犯し、死ねない身体となった」人間である。
常に冷徹な雰囲気を漂わせ、決して必要以上の事は口にしない。
また、敵対する者に容赦はせず、自らの目的の為とあらば平然と他人の精神を踏み躙る外道。
そして隠喩や暗喩、遠まわしな表現や独特の名詞を多用しているが、熊本出身ではない。
【マスター】
神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
元の世界への帰る
【weapon】
特になし
【能力・技能】
熊本弁が話せる。
【人物背景】
偶像たちの集いし美姫の祭典における選ばれし『瞳』の持ち主。
齢14にして衆愚を魅了する「力」を持つ。数多の天使をも討ちぬく異形の存在。
そして、熊本出身である。
投下終了です
魔王生誕の儀を司る眷属、か…闇に飲まれよ!(まさか蘭子を投下するモサがいるとは…投下乙です!)
神の怒りにふれ、バベルの塔は砕かれた! ああ、何たる悲劇か!(話通じてるようでこいつら通じてねー!?)
投下をさせていただきます
代わり映えのない毎日
それが当たり前では無いのだと
ある日突然気が付いた
代わり映えのない毎日
それが当たり前では無いのだと
ある日突然気が付いた
すみませんミスをしました。
もう一度投下します
代わり映えのない毎日
それが当たり前では無いのだと
ある日突然気が付いた
「初めまして、だな」
背後からいきなり声をかけられる。
聞き覚えのない声に疑問に思いながら振り返ると、赤い帽子を目深に被った少年が立っていた。
パッと見ただけならば赤い制服を着た何処かの学校に通っている生徒にでも見えただろう。
だが違う。身に纏う神秘が、肌で感じる魔力が、彼を人というカテゴリーに入らない存在なのだと物語っている。
ならば、彼こそが私のサーヴァントなのだろうか
>問おう。貴方が、私のサーヴァントか
「如何にも、我がクラスはパートナー。それでマスター、汝の名前は何だ」
フランシスコ・ザビエル
>私の名前は岸波白野
はくのんと呼んで
・・・って、パートナー?アーチャーじゃなくて?
「何故アーチャーと思ったのかは知らんが、パートナーとはエクストラクラスのサーヴァントだ。
しかし狙わずして通常の7クラス外の我を呼び出すとは。マスター、汝はよほど運に恵まれているらしいな」
なんだか言い方に引っ掛かりを感じるというか嫌な予感がするからここはあえて聞いておこう
>・・・どういう・・・ことだ・・・
まるで意味かわからんぞ!
「我はパートナーというクラスで召喚された。故に存在や性格が変貌し汝をマスターとして認め
サーヴァントとしての勤めを果たそうとしている。
もしも別のクラスであったならば汝のことはただの駒に過ぎないと思っていただろうな」
マジですか
「マジだ、嘘ではない。だが安心しろマスター。たとえ令呪が無くなったとしても我は汝を見捨てたりはせぬ。
我が『パートナー』である限りはだがな」
そう言って彼は片手を差し出した
>これからよろしくパートナー
握手をするために私も片手を差し出そうとして。
ふと、自分の手に刻まれている令呪が目に入って
―――――そういえば、私はどうして彼にアーチャーじゃないのかと聞いたのだろうか?
なんとなく、そう思った
【クラス】
パートナー
【真名】
ダークネス・ゴート@遊戯王GX TAG FORCE3
【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運A 宝具EX
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
信頼:A
善悪種族問わず誰とでも仲良くなれるスキル
A以上はもはや呪いに近い
カード拾い:E
道を歩くとカードが落ちていることがある
【保有スキル】
原初の闇:E
英霊の座でもダークネスもしくはその力を得た存在以外は持つことが出来ないスキルで同ランクの対魔力と神性を保有する。
無辜の怪物の影響で最低ランクだがそれでも彼の場合は精神や記憶に関する力、精霊のような一般人には
みることの出来ない存在の姿を直視するぐらいの力は持っている
運命操作:A
相手の運命を望む形で変えてしまうことがある。不幸か幸福かは変えられた本人次第
無辜の怪物:A
デュエルアカデミアに途中入学した少年として活動していたときの好意的評価により存在・性格・能力を歪められている。このスキルは外せない
決闘者:A
デュエリストとしての力
直感と心眼(偽)の効果も持つ複合スキルでもあるがデュエリストによってはカードの書き換えや創造、
生存本能によって体内の免疫系を活性化させることが出来る
【宝具】
『奇跡を起こす逆転の一手(ディスティニードロー)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
欲しいカードをドロー出来るこの宝具は魔力を消費せず相手のあらゆる効果をうけないが一回の戦闘につき一回しか
使えずピンチでなければ使えない。
危機を逆転させるための宝具ではあるが状況を変えられるかはあくまで本人の頑張り次第なので注意。
『真実を告げる者(トゥルーマン)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
ダークネスの分身である存在で自称『ミスターT』
デュエリストの思いが込められていないもしくは負の思いがこもったカードを媒介に作りだし増やすことが出来る。
心の闇を映し出し相手を揺さぶったり(闇が無い場合は作りだす)他人の姿や口調をコピー、相手に暗示をかけて正常に
認識出来なくさせたり空間を操作する力を持つが、サーヴァントであるパートナーがミスターTを作りだすのには魔力を
使わなければならないので注意。
彼との戦いや精神攻撃に負けた場合は虚無の世界に送られあらゆる記述から存在が無かったことにされてしまう
のだがパートナーの宝具の場合はそれが出来なくなっている
【weapon】
デュエルディスクとダークネスの力
カードを実体化させ戦う
【人物背景】
デュエルアカデミアに中途入学したオシリスレッドの生徒、デュエリストととして実力が高く誰とでも仲良くなれる謎の多い少年
「儚さの中にたくましさと優しさを感じさせた人」「デュエルと相手に対するリスペクトを忘れない純粋な人物」
「常に努力を惜しまない一生懸命なタッグパートナー」などなど好意的な評価が多い。
ある日デッキを残して失踪した
タッグフォース3での少年の正体はダークネス。
かつて宇宙が1枚のカードの表と裏から誕生した際にカードの裏側から生まれ出でた暗黒面そのもので12次元宇宙の影、本人曰く自然現象のようなもの。
デュエリスト達の心の多くが闇に染まった為に現れた彼は世界中の人間をミスターTを使い、自らの住まう虚無の世界へと引き込み、取り込んだ対象に延々と悪夢を見せ、絶望に支配され
た彼らを自らの世界と同化させようとした。
世界を乗っ取ろうとしてしたわけではなく理によって自然にそうなっただけにすぎないという
ユベルと融合した十代を自らの世界に相応しくない忌むべき異物として滅殺するためにデュエルをするも敗れ、人の心の闇が存在する限りダークネスは何度でも蘇ると告げて消滅した。
邪神みたいな姿の彼にはダークネス・ゴートという名前がある
【サーヴァントとしての願い】
無し、だがサーヴァントとしての務めは果たす
【マスター】
岸波白野(女)@Fate/EXTRA CCC
【マスターとしての願い】
まだ決めていない
【weapon】
逆境においても決して諦めない往生際の悪さ
【能力・技能】
礼装があればコードキャストが使える
魔術師としては魔術回路の質はともかく量が少なく技量も平凡だが戦況を見る観察眼は達人クラス
【人物背景】
『Fate/EXTRA』では記憶が無く自身も状況も何一つ分からぬまま月の聖杯戦争にマスターとして参加し迷い悩みながらも成長し優勝した主人公。
実は自我を持ってしまったNPCであり過去に存在した人物の再現なので初めから記憶が存在しなかった。
ちなみに記憶を消され自我を薄められる固有結界にて披露したネタからファンには『ザビエル』こと『ザビ子』と言われる
『Fate/EXTRA CCC』では月の裏側に落とされたが、同じく月の裏側に落とされたマスター達と協力しながら
大変な目に会おうともサーヴァントと共に持前の諦めの悪さで月の表側を目指して頑張り続けた
今は記憶喪失でこの聖杯戦争のこと以外何も分からない。
【方針】
パートナーと共に頑張る
投下を終了します
投下します
ライダーのサーヴァントは酷くウンザリしていた。この聖杯戦争を切り抜けて行く上で、重視しなければならない相棒となるマスター。
そのマスターと言うのが――――――――――――――
「やっぱりさ、VAVA。あなた絶対に、神機を搭載した方が良いって。強くなってさ、私達の所に来ない?
ぜっっっったい、装備した方が良いってVAVA!! あ、それとも、神機って何か知りたい? あー、説明してなくちゃどう言うのか受け入れられないよね、ごめんね。
神機ってのはね、私達の世界にいる『アラガミ』って言う化物を殺す一種の生体兵器でさ、この神機一つあれば、近接戦闘も遠距離での砲撃も、緊急時の防御行動も全部――――」
この調子なのである。自分がもしもレプリロイドでなく人間であったなら、深い深い溜息を吐けていただろう。
そして令呪などと言う七面倒な代物がなければ、肩のキャノンを発射して、マスターの顔面を果物の如く粉砕させていたに違いない。
時刻は夜だった。某都の市内にある、無人の工場。其処に彼らはいた。
一人は、横に並べられた鉄骨の上に腰を下ろす、全体的に人の形をしたロボットであった。
特徴的な姿である。頭に相当する部分は、古代の戦士が身に付けた兜・バルビュータに似ており、顔面部にT字状のバイザーシールドが取りつけられている。
額には何かの象徴か、『V』の文字がプリントアウトされていた。
自分はロボットである、と言う事がこれ以上となく伝わりやすいデザインだ。その象徴が、彼の右肩に装備された鋼色に輝くキャノン砲だ。
連結した金属薬莢を外部に露出させているその姿は、傍目から見たら、人を殺す為に生まれてきたヒューマノイドとしか映らないであろう。
彼のサーヴァントのクラスは、ライダー。そしてその真名こそは、VAVA。
他を隔絶する性能を誇る特A級ハンターに比肩するカタログスペックを持ちながら、その圧倒的な火力に任せた戦法で敵味方に多大な被害を与え続ける、
イレギュラースレスレとまで言われたレプリロイドだ。
一方で、VAVAの正面で必死に何かを語りかける少女が、彼のマスターだった。
少し煤けた銀髪にゴーグル、タンクトップにオーバーオールと、装いだけを見れば完全にブルーカラー。
しかも工業系の仕事に従事する人間だ。顔に残る、オイルの擦れた跡が更にそのイメージを助長させる。
事実彼女は、工業系の作業を生業とする人間だった。突如として地球に姿を現した、オラクル細胞からなる生命体、アラガミ。
アラガミを倒す為の現状唯一の手段とも言うべき神機を整備する整備士。フェンリル極東支部神機整備班、『楠リッカ』。彼女の名前である。
当初このマスターを見た時、VAVAは内心で当たりを引いたと思った。
VAVAは生身の人間でもなければ、そもそも有機生命体ですらない。金属と回路によって構成されたレプリロイドなのである。
聖杯戦争に臨むにあたって、知識は多少齧って来た。だからこそ、眉唾物なのである。自らのこの機械の身体が傷を負った際、魔術的な方法で治癒出来るのかがだ。
そんな時に彼が引き当てたマスターが、一目見てわかるメカニックだ。これならば信頼出来るかも知れない。
魔術と言う、未だ実在するかどうか疑わしい物に頼るよりかは、VAVAも良く知る実在の技術の方が、と思ったのだ。
リッカは恐らく、この聖杯戦争へと、訳も分からず招聘されていたのだろう。VAVAを初めて見た時のリッカは、酷い混乱状態に陥っていた。
仕方なく彼女を落ち着かせ、何故呼び出されたのか、そして聖杯戦争について説明した途端である。
彼女は突如として饒舌になり始めた。VAVAはリッカの話す言葉には微塵も興味ないが、それでも、全く聞いていなかった訳ではない。要約すると、こう言う事だ。
曰く、リッカの世界には神機なる武装兵器があると言う事。
適正こそ必要であるが、馴染んでしまえば己の半身とも言うべき唯一無二の相棒になると言う事。
自分達のいた世界では、アラガミと言う、如何なる動物、如何なる物体、如何なる兵器をも『捕食』し、その性質を引き継いでしまうと言う厄介な化物がいると言う事。
――そして、サーヴァントであるVAVAを、自分が所属するフェンリル極東支部に案内したい、と言う事。
怒るよりも呆れるしかない。特殊なウィルスに感染した訳でもなければ、Σに引き抜かれた訳でもない。
生れついての回路異常により、所構わず暴れ回り、そして自らの意思でイレギュラーとなったこのVAVAを、よりにもよって引き抜きである。
余程分厚い面の皮を持っているか、馬鹿かのどちらかだ。
終始神機の良さとスカウトを、水車が回るように口にするリッカだったが、流石に埒が明かない。
「おい」
低く、恫喝するようにVAVAが短く告げる。リッカの言葉が、止まった。
「簡潔に答えてやる。俺はお前らの下らないバケモノ退治に加わるのは御免なんだよ。素直に折れろ」
「く、下らないって――!!」
リッカの表情が険しい物となる。
アラガミなる存在が如何なる者なのかはVAVAには解らないが、そのアラガミとの戦いは、リッカ達の世界の住人にとっては、馬鹿に出来ない重要な事柄であるようだ。
しかしそんな事お構いなしと言わんばかりに、VAVAは言葉を続ける。
「それにな、フェンリルだか何だかしらねぇが、今からどうやってお前達の根城に行くんだ? オイ。解ってんだろ? 勝ち抜かなけりゃ、元の場所にすら帰れねぇんだぜ」
「っ……!!」
リッカの言葉が詰まった。最も痛い急所を突かれた顔、直視したくない現実を見せつけられた顔。それが、今のリッカの表情だった。
「いつまでも現実から逃げるな。死にたくないなら、お前は絶対に俺を使って最低一人の人間を殺さなきゃ――」
「あんたに何がわかるのよ!! このポンコツ!!」
涙声でそう叫びながら、懐のポシェットからレンチを取り出し、VAVA目掛けてリッカはブン投げる。
子供が投げたハンドボールを軽くキャッチするような容易さで、VAVAは軽く左手でそれを握る。直撃していれば、T字状のバイザーに激突していたろう。
結局、リッカが神機やらアラガミなどの話をする事は、コレが原因だった。
聖杯戦争は戦争の名前が仄めかす通り、平穏無事で終わるような甘い代物ではない。
時に圧倒的火力で相手を蹂躙し、時に権謀術数を廻らせ相手と手を取り、また必要があれば裏切り――。
人としての罪や業を集めて煮詰めたようなこの催しを行う訳は、最後の勝利者に与えられる、万能の願望器、聖杯である。
いかなる望みをも成就して見せるその聖遺物を求めて、参加者は血を流し、罪を犯すのである。最後の褒美である、望みの奇跡を引き起こす、神の杯を求めて。
VAVAは一目見て理解した。リッカは間違いなく、人殺しの経験が無いと。
VAVAでなくともそう思うだろう。目の前にいる、何処にでもいそうな普通の少女がそんな体験を経る筈がない。
この少女は、聖杯戦争を勝ち抜く上で絶対にクリアーしなければならない課題、人を殺せるか如何か、と言う最初のハードルすら越えられない人間だった。
心の片隅では理解しているのだろう。VAVAの言う通りにしなければ、聖杯戦争の為だけに用意されたこの御誂え向きの都市から出られないばかりか、逆に自分が殺されると言う現実を。
直視したくなかったのだ。その余りにも過酷で、残酷で、無慈悲な運命を。それから逃避したいが為に、VAVAに明るい口調で、元居た世界へスカウトしようとしていた。
こう言う事なのだ。
「嫌だよ私、人を殺す何て……ねぇ、何か他に手段はないの……?」
「ねぇよ。どうしても死にたくないなら、お前は生き残る必要がある。躊躇してたら、本当に共倒れ以下の結果にしかならねぇぞ」
もしも目の前にいるレプリロイドが、利己的な性格の持ち主のVAVAでなく、『X』や『ZERO』であれば、リッカの話を踏み込んで聞いてやれたかも知れない。
リッカには、人を殺したくないと主張するに足る理由があった。彼女がVAVAに対して幾度も主張していたが、彼女の世界はアラガミと呼ばれる生命体のせいで荒廃していた。
あらゆる物体を取り込むオラクル細胞と呼ばれる細胞からなるアラガミは、その特性故に通常兵器が全く通用せず、かつ取り込んだ物質の性質をラーニングすると言う性質を持つ。
このアラガミによる全人類の滅亡を防ぎつつ、アラガミの掃討を行うと言う目的の為、神機と呼ばれるガジェットを操る神機使いを集め、アラガミに立ち向かう組織。それが、フェンリルなのである。
そう言った組織で、神機の整備を務めると言う形で勤めている都合上、リッカは大なり小なりの内情に精通していた。
そも、神機と呼ばれる兵器自体が、人為的に調整された、武器の形を取ったアラガミである。
人類がこの兵器を振るう為には、神機に対して当該人物が遺伝的に適合している事が必須条件となる。
適合がある人間は、P53偏食因子と呼ばれる、オラクル細胞から抽出された、アラガミに対して抵抗力を持つ物質を注射。その後オラクル細胞を身体の奥深くに埋め込む。こうして晴れて、当該人物は神機を振るう事が出来る。
アラガミを構成するオラクル細胞、そして元々はオラクル細胞の一部である偏食因子を身体に埋め込む。
そう、神機使いと言う人種は、人間を超えた身体能力と神機を振るう権利を得る代わり、何かの間違いで身体に埋め込まれたオラクル細胞が暴走。自らがアラガミ化してしまうと言う重大なリスクも孕んでいるのである。
無論としてフェンリルの側もそうならないよう厳重なチェック体制を行っているが、元々神機使いは人類の天敵に等しいアラガミと切った張ったを繰り広げる職業だ。
現場では実際に、不慮の事故で部隊員がアラガミ化してしまうと言う傷ましい事故が少なからず発生しており、その度に、断腸の思いで隊長格の人物が、部下の介錯を行っている。
痛ましくて、悲しい事件だと、リッカは切に思う。
アラガミ化した人間にとっても哀れであれば、介錯を行う当人にとっても嫌なしこりを残す事例だ。
技術者として、そう言った事故のリスクを限りなく減らし、神機使いの側にも憂いなく戦闘に望めるような技術進歩を。
そしてフェンリルに所属する人間として、仲間が仲間を介錯すると言う余りにも悲惨なケースがなくなる事を。彼女は強く望んでいた。
神機使いの半身とも言える相棒である神機のメンテナンスを行う、実戦現場から遠い位置にいる、優しい性格の少女。それが楠リッカだった――と言うのに……。
何故よりにもよって、そんな彼女が、聖杯戦争へ導かれてしまったのか。自らの身に降りかかった残酷な運命を、ひたすらにリッカは呪っていた。
「ね、ねぇ。この戦争って、私達以外にも参加者がいるんでしょ? だったらさ、私みたいな考えの人もいるかも知れないし、同盟を組んで一緒に――」
「確かに有利には進められるだろうが、最終的にはその同盟の奴とも決着を着けるんだぞ。最低でも一人は、絶対に殺すんだよ」
やはり、そうなってしまうのか。今にもリッカは身も世もなく大声で泣き出してしまいそうだった。
サーヴァントであるVAVAが実行役を引き受けるとは言え、無事にこの街から抜け出したいのなら、リッカは人を殺さねばならないのである。
しかも、アラガミと化した人間を、ではない。本当に純粋な人間を、だ。リッカは潰れてしまいそうになる。何故、このような事になってしまったのだろうかと。
「VAVAは、やる気だね……。其処までして何か、叶えたい願いでもあるの?」
疲れたような声色で、リッカが訊ねる。
聖杯戦争なるものの本質が、その名の通り、願いを叶えると言う聖杯――リッカにとっては到底信じ難い代物――にあるのだろうとは理解したリッカ。
となればVAVAも、この戦いに臨むに当たり、叶えたい願いがあるのだろう。だからこそ、この場に彼はいるのだから。
「望みはあるが……、聖杯で叶えるような願いじゃねぇな。俺の願いは、この戦いに呼び出された時点で半ば叶ってる」
「? それって、どう言う……?」
「俺は、自分が真に優れたレプリロイドである事を証明したい。あの甘ちゃんレプリロイド……エックスの野郎よりもな……!!」
そう語るVAVAの声音は、驚く程恐く、そして、隠せない程横溢した怒りに満ち満ちていた。
リッカはたじろぐしかなかった。VAVAはレプリロイド、ロボットである。決して人間ではない、無機物の存在である。
言動やAIを人間のものにどんなに近づけても、彼らは人間に決してなれない存在の筈なのに。何故だろうか。リッカの目には、このVAVAと言うレプリロイドは、下手な人間よりも、人間らしく映っていた。
「証明するって、聖杯に願って……?」
「違う。聖杯戦争は俺と同じようなサーヴァントとマスターが恐らく集うだろうよ。中には、俺やエックス、ゼロやシグマの奴よりも強い奴がいるかもしれねぇ。
そんな奴らが集まる中で、俺がこいつらを下し、聖杯戦争の生き残りになれば……。俺は、十分優秀なレプリロイドの条件を満たしてるだろうがよ?
俺は……自分が誰よりも――特にエックスよりも優秀だったって言う事実を刻みてぇんだよ。俺と言う存在がどれ程世界にとって脅威的な存在だったか、皆に知らしめたいんだよ。
それをクリアーするなら……聖杯戦争の優勝者となるだけで充分だ」
驚くよりも、リッカは最早呆れるしかなかった。無茶苦茶、としか言いようがない。
掻い摘んでしまえばVAVAの望みと言うものは、自己顕示欲と承認欲求を極限まで満たしたい、と言う事である。
VAVAが人間であったのならばさもありなんだが、彼はレプリロイド――ロボットである。
そんな彼が、他のレプリロイドに強い執着心と対抗心と嫉妬を抱き、自己(アイデンティティ)の確立に燃える。
それは、予めプログラミングされた思考回路を持つロボットとしては極めて異常であると言わざるを得ない。
VAVAは、レプリロイドに関する知識もなければ比較対象も知らないリッカの目から見ても、『イレギュラー』としか思えない存在であった。
「そう言う訳だ。俺の願いは、この戦いに招かれた時点で半ばは達成されてる。聖杯はテメェにでもくれてやる。それで、この戦争で死んだ奴の復活でも願えば良いだろうが」
「!! そ、そんな事も……?」
「万能の願望器、って言う言葉に嘘偽りがないのなら、多分出来るんじゃねぇのか?」
本心を言えば、リッカにだって願いがない訳ではない。
西暦2050年に地球上に突如として現れたアラガミ達により、人類の文明は、嘗ての栄華が嘘の如く荒廃させられていた。
神機以外の通常兵器が通用しないと言う都合上、人間はムシケラのように蹂躙され、多くの国家と多くの都市が、アラガミの手により壊滅して来た。一日に十万人以上も殺される日もあった程である。
今でこそ神機や偏食因子などを用いた対抗手段が幾つか生まれているが、これもまだアラガミを地球上から消し去る決定打、とまでは発展していない。
神機の発明から十年以上も経過したが、それでもまだ、人類はアラガミとの戦いで有利に立てているとは言い難いのである。
もしも聖杯が万能の願望器であると言うのなら――
リッカの叶える願いは、ただ一つ。地球上の全てのアラガミを消滅させる事。それしかなかった。
戦う必要のない整備班であるが、悲しい事が全くない仕事と言う訳ではない。それまで整備のついでに談笑し、仲良くなった神機使いが、明日の戦いで命を落とす、などと言う事は決して少なくない。
その度に、彼女は悲しくなる。泣きたくなる。そして、そんな事が起る度に、彼女は考えるのだ。アラガミが現れたから――皆。
クレイドルに行った『彼』も、アリサも、コウタも、ソーマも、リンドウも、サクヤも、ツバキも、カノンも、エリナも、ブラッドの皆も。
負わなくて良い傷を負い、犯さなくても良いリスクを犯し、背負う必要のない悲しみを背負っている。アラガミさえいなければ……、そう思うのは、リッカだけじゃない。
彼女の住んでいた地球の誰もが考える事だろう。聖杯で、そんな願いを叶えてやりたい。だが、その為に人を殺して良いのかと言う問題が沸き上がり、悩んでしまう。
たっぷり三十秒程唸るリッカだったが、ある時ピタリと、その唸り声が止む。
俯かせた顔をグワッと上げると同時に、彼女は言葉を発する。
「いよっっっし!! こうなったら覚悟を決めた!! VAVA――いや、ライダー!! 聖杯を手に入れるよ!!
こうなったら欲張るよ私、聖杯を手に入れて、この戦いで死んだ皆を生き返らせつつ、アラガミを世界から消す!! それで、チャラになるって信じる!!」
「……欲張ったな。だが、それ位が丁度良い。訳も解らず、数合わせの為にこの戦いに呼ばれたんだったら、生き残った暁にそれ位は望まねぇとな」
座っていた鉄骨から、VAVAが立ち上がる。肩のキャノン砲を除けば、実にシャープでスリムなフォルム。とてもロボットとは思えない。
しかし彼こそは、嘗て単身でシグマ率いる反乱軍を壊滅させ、最強の特A級ハンターであるゼロと、
彼に匹敵するスペックと、そのスペックでは計れない無限の可能性を持ったレプリロイド・エックスを破壊寸前にまで追い詰めた、恐るべきレプリロイドなのだ。
「(エックス。テメェみてぇな甘ちゃんにゃ、この聖杯戦争は切り抜けられんだろうよ。この俺じゃなきゃ、聖杯まで辿りつけねぇ)」
もといた世界にいるであろう、いつも悩んでばかりいたあのレプリロイドを夢想するVAVA。
反乱軍を単身で潰乱させた自分よりもなお、シグマが脅威と信じていたあのレプリロイドよりも、自分が優れていると今度こそ証明する。
「(――俺がジョーカーだ、エックス)」
戦いの意思を強く固めるVAVAなのであった――――――――――――
「あ、そうだ。ねぇ、ライダー」
「あん?」
「さっきの神機の話だけどね、ライダーに似合うって言うのは本当の話なんだよね」
「……あ?」
何だか、雲行きが怪しくなってきた。
「ホラ、ライダーのフォルムってさ、如何にも戦闘用のそれ、って感じだからさー。神機との整合性とか見た目とか、悪くなさそうじゃない?
聖杯がさ、願いを1つしか叶えられないんだったら、私は聖杯戦争で死んだ皆を復活させるよ。それでね、アラガミの消滅はね、ライダーにも手伝って貰う」
「テメェ、何俺が手伝う事前提にしてんだよ」
「いやいや、だってさ、エックスってレプリロイド? よりも強くなりたいんでしょ? アラガミと戦い続けても、その目標は達成されると思うわけ。
しかも、ただでさえ強いライダーに、ただでさえ強い神機が装備されるんだよ? 今より弱体化される訳ないじゃん。あっ、もしかしてどういう種類があるか知りたい? ゴメンゴメン配慮が足りなかったね」
「俺の話聞けよお前……」
「神機ってね、さっきも言った通り、近接戦闘も遠距離戦闘も出来てね、多分VAVAの場合は遠距離戦闘を主体にした――――」
…………存外、この少女は大物なのかも知れない。
このマスターと勝ち抜いてやると言うVAVAの決意に、少しばかり曇りが生じた瞬間なのであった
【クラス】
ライダー
【真名】
VAVA@イレギュラーハンターX
【ステータス】
筋力C(A) 耐久B+(A+) 敏捷B(B+) 魔力E 幸運D- 宝具B++
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:E++
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
無効化こそ出来ないが、未来の世界のレプリロイドであるライダーの身体は、多少の障害程度はものともしない。
騎乗:D++
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
後述するライドアーマーに騎乗した時に限り、ランク以上の騎乗スキルを発揮出来る。
【保有スキル】
反骨の相:A+
権威と規則に全く囚われず、敵味方の区別なく破壊を繰り広げ続けた者としての性質。
ライダーの場合生れついての回路異常のせいで、正しい上下関係などを理解していなかったふしがある。
同ランクのカリスマや魅了を無効化する。
レプリロイド:A
ライト博士が生み出した世界最初のレプリロイド、エックスをモデルに作られたヒューマノイドであるかどうか。
人間に限りなく近い思考回路を持っているとは言え、ライダーは機械である。魔術的な精神干渉の一切及び生物毒の類を完全に無効化する。
破壊工作:D
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
ランクDならば、相手が進軍してくる前に一割近い兵力を戦闘不能に追いこむ事も可能。ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく
矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
イレギュラーハンターは高速で飛び交う弾丸や飛来する礫等に素早く対処する必要がある為、このランクは妥当と言える。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
【宝具】
『騎乗を可とする機械の鎧(ライドアーマー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:10 最大補足:20
真名解放と同時に騎乗可能となる特殊なガジェット。
ライダーの駆る機械の乗り物。本来は土木用作業機械に過ぎなかったそれを、世界で初めて兵器に転用したと言うライダーの偉業が宝具となった物。
ライドアーマーを武器にすると言う発想はVAVAがエックス達に始末されてからも高く評価され、その後エックス達は当然の事、レプリロイド達の軍隊である
レプリフォースまでも、戦闘用にチューニングされたライドアーマーを使用している事から、この一点においてライダーは明白に世界を変革してみせたのだ。
ライドアーマーに騎乗している間は、ライダーのステータスはカッコ内の数値となり、ライダーに備わる基本兵装を遥かに超える威力の重機関銃による掃射攻撃、
足元のバーニアを使用した空中でのホバリング移動を可能とする。破壊される、或いは騎乗してから数分が経過すると、ライドアーマーは機能を停止。
数時間は使用不可能になるが、令呪を一区画消費する事で、ライドアーマーを瞬時に再生させ、再び騎乗させる事も出来る。
『短射程の一撃必殺(ゴールデンライト)』
ランク:D+++ 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:1
ライダーの隠し持つもう一つの宝具。その正体は、右手に隠されたロケットパンチ機能。
その威力は一撃必殺を語るには申し分なく、直撃さえすればAランク相当の対人宝具並の威力を発揮、耐久に優れたサーヴァントにも致命傷を負わせる事が出来る。
唯一にして最大の欠点は、直撃『さえ』すればとある通り、致命的なまでの射程の短さ。
2〜3m程までしか飛ばない為、直撃させる為には極限まで相手との距離を詰めねばならない。
そして、一度外してしまい、その存在が露呈してしまえば、次に直撃させる事が非常に困難な宝具になる。
直撃さえさせれば非常に有効だが、逆に言えば直撃させねば全く意味のない宝具の為、使用には慎重に慎重を期さねばならない。
【weapon】
チェリーブラスト:
射程十m程の、指先から放たれるバルカン。
ヒューメラスクラッシュ:
右肘から放たれるミサイル。
フロントランナー:
ライダーのキャノン砲から放たれる砲弾。
ケルベロスファントム:
同時三方向に射出する事が出来る熱線兵器。
メタルクレセント:
同時に三枚のブーメランを発射し、相手を切断する兵装。
バンピティブーム:
脚部兵装から発射されるナパーム弾。
デッドスターハグ:
脚部兵装から発射される、地面を這いながら進むエネルギー弾。壁に当たるとボールの要領で跳ねかえる。
ワイルドホースキック:
脚部兵装から放出される火炎放射。
本来ならばより多くの兵装があったのだが、ライダークラスで現界した為、その多くを失っている。
【人物背景】
嘗てイレギュラーハンターに所属していた、A級イレギュラーハンター。
しかしそのスペックだけを見るなら、特A級に迫るものが有り、現に彼もまた、特A級の証であるアクション、壁蹴りを難なく使用する事が出来る。
生れついて電子頭脳回路に異常があり、その圧倒的火力に任せて行動し、周囲の被害も考えず暴れまわる危険人物でもあった。
任務においても本来最小限に食い止めるべき被害を逆に拡大させてしまう事も度々あり、任務を遂行するというよりは純粋にイレギュラーを「狩る」事を目的としている様な思考をしている。
このような性格からか、イレギュラーハンターの中でも揉め事は絶えなかったらしく、本編開始前に留置されるに至る。
その後、反乱を起こしたシグマに誘いをかけられる。だが、B級ハンターであり、甘ちゃんと言って蔑んで来たエックスの方がシグマから危険視扱いされている事に反感を抱き、
自分一人でクーデターをおこし、自分の方が脅威であると知らしめようとする。
シグマに加担した特A級ハンター八名を一人で始末、シグマパレスに乗り込んだVAVAは其処でエックスとゼロと対峙。
二人を破壊寸前にまで追い詰めるが、最後はエックスとゼロの不意打ちで返り討ちにあう。
天才科学者であるライト博士に作られたX、同じく天才科学者のワイリーに作られたZERO、そして現代におけるレプリロイド開発の権威であるDr.ケインに作られたΣとは違い、彼は特別の出自もないレプリロイドであった。
しかし自らの意思でイレギュラーとなり、全ての特A級ハンターを破壊、自己を確立しようと足掻いたVAVAもまた、レプリロイドの進化と無限の可能性を象徴する存在でもあった。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を勝ち抜き、自分こそが世界にとって脅威となるレプリロイドである事を今度こそ証明する。
【基本戦術、方針、運用法】
レプリロイドである故の物理的な防御力の高さと精神干渉への耐性、そして数々の兵装を用いた火力戦は非常に強力。
A級ハンターとして前線で戦って来た経験は伊達ではないと、そのステータスが雄弁に物語っているだろう。
ライドアーマーに騎乗した際の強さは凄まじく、騎乗スキルを存分に生かした素早い立ち回りはライダーの名に恥じない。
ただ欠点は、魔術が一切存在しない世界からやって来た事による、致命的な魔術への耐性の無さ。そして本当の切り札である、『短射程の一撃必殺』のピーキーぶり。
格上のサーヴァントに当たれば当たる程、VAVAと言うサーヴァントはこの宝具を如何に直撃させるか否かがキモとなる為、打ち損じは断じて許されない。
飛び道具で中〜遠距離戦が得意である、と見せかけて、接近した相手に対して『短射程の一撃必殺』を当てる事が、格上相手に勝利を拾うコツとなるだろう。
【マスター】
楠リッカ@GOD EATERシリーズ
【マスターとしての願い】
地球上に存在する全アラガミの消滅と、聖杯戦争で死んだ参加者の復活。
【weapon】
【能力・技能】
神機の整備を得意とするが、この世界に神機は存在しない為、役に立たない技能となっている。
【人物背景】
フェンリル極東支部神機整備班に所属する整備士。父親も同じく神機整備を担当する技術者だったが、彼の亡き後その技術力を受け継ぎ、仕事に精を出している。
バレットの開発も担当しており、シオのドレスを製作するなど、整備以外の事も卒なくこなせる。
長年の経験と職業柄、神機の知識が豊富。その程は、神機の状態を見るだけで持ち主の戦闘スタイルを判断出来るレベル。
整備をしていると、神機の傷が「仲間を庇って受けた傷」なのか「ビビって逃げた傷」なのかがわかるとの事
【方針】
なるべくなら人を殺したくない。が、肝心のVAVAが戦闘に対して極めて乗り気であるので、彼を何とかして御したい。
投下を終了いたします
投下させていただきます
「……」
「……」
無言。
音と呼べるものは、カチャリ、とナイフとフォークが食器に触れる音ぐらいなものだ。
少し年嵩のいった女は感情の読めない表情を貼り付けたまま、小さく切り分けた料理を口に運ぶ。
金色の髪を側頭部で二つに縛った童女は、隠し切れない動揺と喜色を努めて隠そうとしている。
カチャリ、カチャリ、と。
音だけが響く中で、しかし、童女は現状を受け入れている。
女が童女に激情をぶつけてこない日は珍しい。
ましてや、食事を共にするなど、それ以上だ。
「……どうかしら」
「え?」
年嵩のいった女『プレシア・テスタロッサ』は、やはり感情の見えない言葉を発する。
童女『フェイト・テスタロッサ』は、その意図が読み取れずに
「味は……料理なんて久しぶりにしたから」
「その……」
「昔は、よく作ってあげていたけど……美味しい?」
言葉とは裏腹に、ひどく興味の薄い様子だった。
それでもフェイトにとっては稀な、大げさに言ってしまえば、夢の様なことであった。
何が正解なのかを考えつつ、言葉を探る。
しかし、このような出来事に『慣れて』いないフェイトにとっては最適解の経験がない。
ゆっくりと考えたフェイトは、怯えるように声を出した。
「美味、しい」
「そう」
「また、作って欲し――――」
フェイトが言い切る直前、半ば被せるようにプレシアは言葉を紡いだ。
やはり、興味のなさそうにカチャカチャと、小さな音を立てながら。
「昔は苦手だったのにね」
「……え?」
プレシアは、やはり興味のなさそうに、ナプキンで口を拭う。
フェイトはプレシアの言葉を理解できず、口をつむぐ。
そんなフェイトの様子にすら気を取られず、プレシアは言葉を続けた。
フェイトに言葉を与えながら、その感情はフェイトに向かっていなかった。
「根菜が苦手なのね……体質的な問題なら考えたけど、単なる好き嫌いで。
だから、調理の仕方について色々と考えては見たけど、ダメなものはダメだったわ」
「……」
プレシアは自身の言葉がどんな意味を持っているのか理解しながら、しかし、何の躊躇いもなくフェイトへと告げる。
フェイトはその言葉の意味を理解できずも、脳に宿った記憶情報の曖昧な部分が痛みを発し、口を鎖す。
それは言葉を発することを辞めただけでなく、食事を摂ることも止める行動だった。
プレシアはもう一度尋ねた。
「美味しい?」
「……」
「ゆっくり食べなさい」
カチャリカチャリ、と。
音だけが響いた。
◆
フェイト・テスタロッサは、プレシア・テスタロッサの実の娘ではない。
プレシア・テスタロッサが腹を痛めて、自然出産によって産んだ娘ではない。
アリシア・テスタロッサこそが、プレシア・テスタロッサの実の娘である。
「今から、貴女には聖杯戦争に参加してもらうわ」
「えっ……?」
プレシアの言葉にフェイトは虚をつかれた。
ジュエルシードの回収を命じられ、未だジュエルシードは揃っていない。
その最中に出会った少女との関係も、未だ曖昧なまま。
何も成し遂げておらず、心には自身も理解できない歪な想いだけが残されている。
「あの、ジュエルシードは……?」
「……貴女が考える必要のないことよ、フェイト」
プレシアは決してフェイトに本心を伝えようとしない。
フェイトもそれを知っている。
ジュエルシードは重要なものなのだろう。
それでも、ジュエルシード以上の物を見つけた、と言ったところか。
あるいは、ジュエルシードの索敵こそが時空管理局の目眩ましなのか。
目眩まし、といえば、全てが目眩ましなのだろうか。
本当の目的は聖杯戦争であり、万が一にでも時空管理局の介入を避けるために、ジュエルシードを用いた。
超のつくロストロギアであるジュエルシードならば、これ以上とない目眩ましだ。
先ほどの時空跳躍という大魔法の行使によって、大きな動きは当分ないと思っているはずだ。
正しく、機会は今なのかもしれない。
フェイトに様々な疑問がよぎるが、その疑問を口にすることは出来なかった。
「媒体は用意してあるわ。貴女は儀式を行えばいいだけ」
そう言って、プレシアはフェイトに手渡す。
触れ合った際に感じた手の温度は、ぞっとするほどに冷たかった。
手渡されたものは、次元固定された胎児のような形をした何か。
ジュエルシードとは異なる聖遺物であった。
遺失された世界――――あるいは書き換えられた世界に残されたもの、ロストロギア。
その聖遺物の名は白き月、『第一使徒アダム』である。
「始まり、あるいは、終わりを求めれば、誰もがその部屋に辿り着く」
「……?」
「ガフの部屋、そこに至るまでの道……今はまだ……」
すべての魂が生まれ、すべての魂が還るとされている空間の例え。
なぜ、今、その単語を口にしたのか。
フェイトは訝しみながらも、その意図を尋ねることは出来なかった。
フェイトはプレシアを愛している。
しかし、同時にフェイトはプレシアを恐れていた。
心の壁がフェイトとプレシアを確かに隔てている。
◆
「素に少女と杯。礎に使徒と契約の大公。祖には光の始祖アダム。
そびえ立つ十字には白雪を。四翼の天使は堕ち、白より出で、黒に染めし星を収束せよ」
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を補完する」
「―――――Anfang<<セット>>」
「――――――告げる」
「――――告げる。
汝の身は我が剣に、我が命運は汝の仮面に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。
我は生命の実を摂る者、
我は知恵の実を捕る者。
されど汝はその貌を獣に覆いて侍るべし。汝、衝撃に囚われし者。我は汝を祖とする愛し子――。
汝、死海を導く始祖、黒き月へと至れ、白き罪人よ―――!」
◆
「至らなければいけない……」
聖杯戦争におけるサーヴァント召喚の痕跡を眺めながら、プレシアはふらふらと歩き始めた。
プレシアの目的は、真に『魔に至る法』。
現在プレシアやフェイトたちが行っている魔法は、『魔を展開する法』。
この二つには大きな違いがある。
法を土台にして扱う術である後者に対して、前者は法そのものを扱う。
科学が物理法則を塗り替えることが出来ないように、後者は法を覆すことは出来ない。
言ってしまえば、後者の魔法は奇跡ではない。
前者は、まさしく法を塗り替えるものだ。
「……ッ!」
瞬間、プレシアの身体が震える。
喉を震わせ、口内から血が吹き出る。
時間がなかった。
崩壊に近づいているプレシアの身体。
それでもなお、ジュエルシードを放棄し、フェイトを聖杯戦争へと向かわせた。
己の目的のために、己の悲願のために。
『人類補完計画』
『天の杯』
『プロジェクト・F.A.T.E』
そのどれでもあって、そのどれでもないもの。
あるいは、流転する魂からの乖離。
あるいは、喪失した魂のサルベージ。
神をも否定する、始まりの魔法――それは彼女が求めた運命の夜。
『第一の魔法―――<<魂のルフラン>>』
◆
「……」
少女を精製し、少女性を確立し、少女を聖杯へと至らせる聖杯戦争。
フェイトは聖杯戦争参加の正しき手順を踏み、その正しさ故にこの聖杯戦争では異端となる参加者へと至った。
「……貴女が、私のマスター?」
そこに居たのは、白雪のような少女だった。
白い肌は雪原のようで、薄い青に染まった髪は青空のようで。
だからこそ、真っ赤な真っ赤な、血に染まったような槍が目を引いた。
感知の類に秀でているわけでもないフェイトでもわかる、超級の神秘を保持した槍だ。
「貴女が、私のサーヴァント?」
「……ランサーのクラス」
フェイトの問いに、少女、ランサーのサーヴァントは短く応えた。
ステータスは、低い。
ひょっとすると、対人戦闘においてはフェイトの方が秀でている可能性もある。
それでも、絶望や失望に似た感情を抱かないのは、やはり槍の存在。
その槍は、絶えずフェイトの目を惹く。
神秘とは、まさにその槍のことを言うのだろう。
「貴女の願いは、なに?」
儀礼めいた問い。
フェイトも感情の表現に長けた存在ではないが、ランサーはその比ではない。
心と呼べるものはないのではないかと、勘違いしてしまうほどだ。
「……願いは」
ふと、その答えを口にしなければいけないことに躊躇いを覚えた。
それでも、フェイトは一度だけ喉を震わせただけで、その願いを口にした。
ある意味ではフェイトの願いであり、フェイト自身の望みではないもの。
「母さんの、幸せ」
「……」
ランサーはその白さをそのままフェイトへと向ける。
あらゆる色を感じさせない、白さだった。
「その答えが、貴女の願い?」
「……」
「もう一度、きっと尋ねる時が来る。
貴女が、聖杯<<???>>に願いを託すとき」
そのまま、ランサーと視線がぶつかった。
白雪のような、ある種の不気味なものを感じさせるランサー。
奥底の見えない言葉を紡いでいく。
フェイト自身も咀嚼できない、曖昧な記憶の答えを、真実を知っているのではないか。
そう思わせるような、不思議な少女だった。
「私<<??>>は、貴女にもう一度、願いを尋ねるわ」
ランサーのサーヴァント『綾波レイ』の不可思議な瞳に。
フェイトは視線を逸らすことが出来なかった。
【クラス】
ランサー
【真名】
綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:B 幸運:D 宝具:EX
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:EX
心の壁であるA.T.フィールドによって隔絶されている。
A.T.フィールドを中和しない限り、綾波レイに対して攻的な魔術で干渉することが出来ない。
【保有スキル】
A.T.フィールド:-
誰もが所有している心の壁を物理的な障壁として現界させたもの。
A.T.フィールドは中和されない限り、あらゆる攻撃を隔絶する。
一定の衝撃を超えることで貫くことも可能ではある。
誰もが持つものであるため、このスキルに神秘としてのランクは存在しない。
【宝具】
『残酷な天使の運命(ロンギヌス・オリジナル)』
ランク:A++ 種別:対使徒宝具 レンジ:2-5 最大捕捉:5人
人の魂と生命に干渉して『卵』、すなわち、『ガフの部屋』あるいは『英霊の座』へと強制的に還す力を持つ槍。
地球の生命体の始祖である第一使徒アダムと第二使徒リリスを拘束した槍、それ自体が生命である神造兵装。
他の宝具と同様に、真名を解放しない限りは能力は発揮されない。
『心よ、原始に戻れ(サード・インパクト)』
ランク:EX 種別:補完宝具 レンジ:1.083 207×1012 km3 最大捕捉:3,500,000,000
アダムとリリスが融合することで、自身の系譜である地球上の生命体の心の壁を破壊させる。
レイの魂であるリリスが持つ、A.T.フィールドを消滅させるアンチA.T.フィールドの力である。
心の壁を融解させることは人と人の垣根である、魂の入れ物である身体を喪失させることである。
すなわち、自身の心と他人の心を区切るための身体を消滅させ、『現代の多様な人類』を『原初の海』の形にする。
A.T.フィールドが隔てている心を持っている限り、この宝具からはどのような存在であろうとも逃れることが出来ない。
【weapon】
『ロンギヌスの槍』
A.T.フィールドを貫くアンチA.T.フィールドとしての特性を持ち、転じて、あらゆる魔術障壁を貫く神秘を持っている。
【人物背景】
汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン『EVA零号機』のパイロット、ファーストチルドレン。
ほとんど感情を表に出さず、寡黙で常に無表情だが、感情の表現の仕方を知らないだけである。
当初は育ての親とも言える『碇ゲンドウ』にのみ心を開いていた。
が、『碇シンジ』と出会ったことで彼とも絆を深めていき、次第に様々な感情を見せ、自我といえるものが芽生えていく。
あらゆることに対しての『経験』がなく、浮世離れしたところもある。
その正体はシンジの母親でありゲンドウの妻でもある『碇ユイ』と『第一使徒アダム』のハイブリットクローン。
何らかの原因でレイが死んだ場合、魂を多数のクローン体の新しい肉体に移し変えることで復活する。
その際に記憶はリセットされ、また、学んできた感情も白紙に戻る。
魂は『第二使徒リリス』のものである。
また、レイが心の奥深くにいるリリスと会話したり、地下の磔にされている肉体だけのリリスと会話する場面も存在する。
そして、魂が移され綾波レイになったことで、リリスだった頃の記憶はほぼ持っていない。
綾波レイとしての肉体が長く保てないのは、本来の自分の肉体ではないからとされている。
レイはリリスとしての己を取り戻し、アダムと結びつくことで『人類補完計画』を発動させた。
A.T.フィールドが喪失し、あらゆる心と心が一つになった。
その世界の中でシンジに願いを問いかけた。
その後、補完世界は再生され、人類は元に戻った。
ただ、地面に量産型EVAが十字架のように突き刺さり、
綾波レイは人としての形を喪失させ、ただ、降り積もる白雪としてシンジたちを包んでいる。
ちなみに、A.T.フィールドは超電磁スピンで壊せる。
【サーヴァントとしての願い】
綾波レイはある種の願望器の一つであり、碇シンジの願望器としての役目を果たしている。
そのため、明確な自身の願望を持たない。
【基本戦術、方針、運用法】
ロンギヌスの槍は強力な宝具だが、レイ自身の基本的にスペックが低いために直接戦闘には向かない。
サード・インパクトさえ発動してしまえば、その際にはマスターであるフェイト自身の意識も飲み込まれてしまう可能性が高い。
【マスター】
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは
【参加方法】
コーディングされた第一使徒アダムを媒体とした儀式。
【マスターとしての願い】
母の願いを叶えるために、聖杯を持ち帰る。
【weapon】
『バルディッシュ』
「闇を貫く雷神の槍、夜を切り裂く閃光の戦斧」
インテリジェント・デバイス。
魔法の行使を補助する、発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能も有している。
意志を持つ為、その場の状況判断をして魔法を自動起動させたり、主の性質によって自らを調整したりする。
その上、人工知能を有しているためかインテリジェントデバイスは会話・質疑応答もこなせる。
待機状態におけるペンダント状のスタンバイフォーム、中距離状態における戦斧型のデバイスフォーム 、
近接戦闘特化した鎌状のサイズフォーム、ある一つの魔法に魔力を向ける槍型のシーリングフォームがある。
【能力・技能】
『魔導師』
魔導師として高い適正を持ち、一桁の年齢でありながら上位階級であるAAAクラスに匹敵する才能を持つ。
高い機動力を生かした中〜近距離戦、射撃と近接攻撃を得意としている。
特にスピードは現時点でも本作登場の全キャラクター中で最速と言えるレベル。
また、彼女の攻撃魔法には雷を伴うものが多い。
回避力に優れる一方、防御にはやや難ありで、バリア出力はあまり高くない。
本人曰く、「速く動くこと、動かすこと」「鋭く研ぎ澄ますこと」は得意だが同時発動や遠隔操作は苦手とのこと。
『魔力変換資質』
魔法によるプロセスを踏まず、魔力を別のエネルギーに変換する事が出来る能力。
本来魔力によるエネルギーの発生には魔法というプログラムによる組み替えが必要とされるが、この資質を持つ者は魔法を介さずにエネルギーを発生させる事が出来る。
その代償なのか、この資質を持つ魔導師は純粋な魔力攻撃は不得意になる傾向があるようだ。
フェイトは魔力を電気に変換する資質を持っている。
【人物背景】
ジュエルシードの探索を続けていたなのはの前に現れた魔導師の少女、9歳相当。
「魔法少女リリカルなのは」のもう一人のヒロイン。
長い金髪をツーテールにまとめているのが印象的。
また、バリアジャケットはもとより、普段着も黒を基調としていることが多い。
母親のプレシアに言われるままにジュエルシードを集めるために地球へ現れる。
同じくジュエルシードを集めていた高町なのはとは幾度も戦いを繰り返した。
その正体は、母であるプレシア・テスタロッサが娘のアリシア・テスタロッサを失った哀しみから創りだしたクローン。
記憶も転写されており、アリシアそのものとなるはずが、実際は利き腕も魔導師としての資質も人格も異なっている。
そのため、プレシアからは失敗作と心中で憎まれている。
高町なのはとの戦闘を重ねて、意識していなかった記憶の曖昧な部分となのはの真摯な想いで動揺が積み重ねっている。
一期9話後からの参戦。
【方針】
聖杯戦争を優勝する。
投下終了です
投下させていただきます
『充分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない』
◆
「問おう、貴様が俺のマスターか?」
『高町なのは』が召喚したサーヴァントは、黒服を来た目付きの鋭い青年だった。
肉体や顔の造形自体は少年そのものだが、表情や発する雰囲気が老練のものだった。
外見だけならば少年と呼ぶべきなのだろうが、発する雰囲気がその未熟さを表す言葉を否定させる。
故に、青年という印象を与えた。
「は、はい……きっと、そうだと想います」
「ふん、ハズレか……いや、そうでもなさそうだな」
なのはは、意味を充分に咀嚼できず、縋るようにして『レイジングハート』を見つめる。
レイジングハートは光を発し
その言語は日本語とは異なる。
しかし、その意味をなのはは理解している。
インテリジェントデバイス。
意思を持つ魔術礼装であり、あらゆる魔術儀式を簡略化するために作られたものだ。
『聖杯戦争、第97管理外世界の惑星地球に伝わる『聖杯』なるロストロギアの所有を争う魔術儀礼。
そこには七人の魔導師がそれぞれ七騎の英霊を召喚し、六騎の英霊を聖杯に捧げることで完遂されます。
完成した聖杯は万能の願望器……有り体に言えば、全ての願いを叶える奇跡をもたらします。
目の前のサーヴァントは魔術師<<キャスター>>のサーヴァントであると判断します』
つらつら、と。
レイジングハートはいつもよりも饒舌に、内部に記録されていた情報を語る。
これは、レイジングハートが元から持っていた情報なのか。
それとも、聖杯戦争に招かれた際に入力された情報なのか。
それはレイジングハート自身にも分からなかった。
ただ、その知識があり、所有者であり相棒であるなのはが情報を求めた。
だから、応えた。
それだけだ。
「俺は技術者<<エンジニア>>であって魔導師<<マギウス>>の類ではない。
魔術などという、特有な人間の資質を求めるものを扱うことは出来ん」
青年、キャスターはレイジングハートの言葉を受け取り、言葉を連ねる。
なのはは、青年と目が合う。
鋭い視線に、思わずたじろいだ。
「しかし、それでも充分に魔術師<<キャスター>>の資格はあるということだ。
俺の技術は――――もはや、魔法だ」
科学は、決して魔術でも奇跡でもない。
しかし、科学によって人は空を飛んだように。
しかし、科学によって人は地球を一周したように。
過去、すでに奇跡でしかなかった出来事を、科学は成し遂げた。
故に、充分に発達した科学は魔法と何ら変わりがない。
故に、魔力回路を所持していないこの反英霊は、魔術師<<キャスター>>のクラスの適正を持った。
なのはがレイジングハートを見ると、キャスターの言葉を肯定するように輝いた。
「恐らく、どのような方法においてもマスターの方が俺よりも強いだろう。
その魔術礼装を所持している限り、俺はマスターを組み伏せることすら出来ない。
いや、魔力を扱えるというのなら、魔術礼装を持っていないとしても、俺を上回るだろう」
「え、えっと……」
キャスターの言葉に対してどのように返して良いのか。
なのは困ったように小首を傾げ、曖昧な笑みを浮かべた。
キャスターもまた笑った。
なのはの笑みとは似ても似つかない、邪悪な笑みだった。
「マスター、貴様ら魔術師や魔導師などという妄想家の言葉を使うのならば――――俺は第二法を限定的に手にした。
あらゆる多様性を示したニ番目の魔法。
魔力を用いず、そこに辿り着いたのだ。
まあ、扉を開くことは出来なかったがな……」
そう言って、キャスターは笑った。
冥府の奥を覗きこんだ時に見える、闇のような暗い笑みだった。
「俺の名は……木原マサキだ」
キャスターのサーヴァント、『木原マサキ』。
この世には存在しないはずの力を自由に扱うことで、この世を支配する天に君臨する冥王へと上り詰めようとした男。
その宝具の名は『冥王計画<<プロジェクト・ゼオライマー>>』。
宇宙創造の衝撃によって生じた、この世の物質界と異なる反物質界よりエネルギーを引き出す力。
『多次元無尽連結現象<<キシュア・ゼルレッチ>>』を科学を持って成し遂げた、『次元連結システム』。
己の知恵と知識だけを持って奇跡に辿り着いた偉大なる英霊であった。
「幸いだ、マスター。
貴様は優秀な魔導師のようだ、正確に言うならば、優秀な素体のようだ。
次元連結システムの乗り手としては充分だろう」
キャスターはその言葉とともに手を差し出す。
その意図を理解できず、なのは思わず差し出された手を握り返す。
握手だ。
これで正しいのか不安な表情を見せるなのは。
キャスターも一瞬虚を突かれたような表情を取り、やがて、眉を潜めて露骨な舌打ちを漏らした。
乱暴になのはの手を振り解き、手刀を作り、軽くなのはの頭を叩く。
「バカが」
「うう……ひどい……」
「その魔術礼装を寄越せ、俺の宝具を授けてやろう」
そう言って、もう一度手を差し出した。
なのは一瞬逡巡し、レイジングハートを見つめた。
レイジングハートは沈黙し、その判断をなのはに任せる。
なのはもう一度視線を落とし、迷った末にキャスターへと手渡した。
「砲撃型か」
レイジングハートを譲り受けたキャスターは、ポツリ、と呟いた。
人間観察に類するスキルを持たない彼が、ひとえになのはの性質を見ぬいたのはレイジングハートに蓄積した戦闘記録。
インテリジェント・デバイス、すなわち人工知能における補助が溜め込んだ記憶を観察したのだ。
規格外のスキルランクを誇る『エンチャント』による効果だ。
改造を施すためには、その元となるモノを理解しなければならない。
故に、キャスターはモノの解析に長けている。
キャスターが行った解析、レイジングハートに溜まった、その情報。
その情報を確認し終えたキャスターは、その目に野望を光らせる。
聖杯を手にするという、野望の光を強くする。
そして、自身の『宝具』を『レイジングハート』に『ダウンロード』をした。
「終わりだ」
そう言って、やはり笑みを浮かべながらなのはへと手渡した。
なのはは恐る恐る受け取り、宝石の中を覗きこむようにレイジングハートを見つめる。
初めに言葉を発したのは、レイジングハートだった。
らしくない、と言えるほどに、半ば震えているような驚きの声が響いた。
『これは――――』
「ほう、この次元連結システムを僅かながらにでも理解できるか」
キャスターは褒めるように(と言っても、赤子を褒めるような上位者の余裕を持った)言葉を口にする。
レイジングハートは、己の中に眠る新たな機能に動揺していた。
『次元連結システム』
異次元から無尽蔵の魔力をワンアクションで取り出す、まさしく奇跡と呼べるものだった。
なのはは、レイジングハートすら驚愕する新たな機能が気にかかり、試すようにその機能を発揮させた。
「うわっ……!」
「バカが!」
『いつものように』行おうとした魔術が、暴走するように周囲を照らした。
次元連結システムの無尽蔵の魔力は、まさしく出力が違う。
機能させるための魔力さえ流し込めば、
言うならば、いつもの調子で蛇口を捻ると、一瞬にして25メートルプールが溜まってしまった、といったところか。
もともと優れた魔力資質を持つなのはですら、到底辿り着くことが出来ない魔力量。
ただ、エーテル砲を行うだけで、それは大魔術となる。
今、なのはが魔術を行えば、かの『月落とし』を押し返した大エーテル砲にすら匹敵する魔術を発動し得るのだ。
「これは今までの貴様の魔術礼装とは違う。
改良型――――言うならば、『天のレイジングハート』だ。
隠密性を重視したければ、次元連結システムを起動させず、貴様の魔力だけを持って扱え」
「『天』……」
自信に満ち溢れたキャスターの表情と先ほどの異常。
それだけで、今手にしているレイジングハートが先ほどまでのレイジングハートとは比べ物にならないものだと理解できる。
「さて、マスター、貴様が聖杯を求めようが求めまいが、俺には関係がない」
「えっ……?」
「貴様のような未成熟なガキに、人殺しを決意しろなどと言ったことは言わん。
俺は箸にも棒にもかからない言葉を口にするつもりはない、ということだ」
邪悪さとは裏腹に、その言葉は血に濡れたものではなかった。
なのはにとって、人を蹴落としてまで叶えたい願いというものはない。
願いはあるが、その願いよりも大事なものがある、ということだ。
故に、キャスターとは相容れない可能性を、レイジングハートは考慮していた。
この得体の知れない男が、なのはに悪意を向ける可能性も十分にあるのだ。
「俺にとっては冥王計画の完遂こそが最大の目的。
そのために必要な物は、次元連結システムにすぎない。
どこの誰とも知れぬ不貞の末に生まれた、穢れた誇大妄想狂の使い回しである杯に興味など無い」
「私は――――帰りたいです。
帰らないと、やらなきゃいけないことがあるから」
なのはの脳裏によぎったのは、家族と、友人と、それを守ってくれる時空管理局の人たち。
そして、哀しい目をした、金髪の少女。
願いを叶えるための戦争を行う、『そんなこと』をしている場合ではないのだ。
その言葉に、嘲るようにキャスターは笑った。
「貴様が望めば、それも可能だろう。
次元連結システムに不可能はない……が、聖杯戦争のシステムの解析に少々時間がかかる」
「構いません……無理を言ってるのは、承知してますから」
その言葉に、キャスターは頷いた。
なのはは、幼い人生経験では、キャスターへの不信感を形に出来なかった。
◆
「さて……」
草木も眠る丑三つ時。
キャスターは、すぅ、と小さく寝息を立てるなのはを見下ろして、頬を歪ませる。
そして、枕元に置いてあった待機状態であるスタンバイモードのレイジングハートを手にとった。
『キャスター?』
「ここからが本番だ、レイジングハート。
まさか、俺の『冥王計画』を、単なる次元連結システムを付与するだけの宝具と思っていないだろう?」
『冥王計画<<プロジェクト・ゼオライマー>>』。
レイジングハートへと容易く奇跡を付随した、恐るべき宝具。
人工AIであるレイジングハートらしくないが、人間風に言うならば、『嫌な予感』がした。
「ふっ……人を殺せないだと?
お互いに間抜けなマスターに巡りあったものだな」
『……その信条は、讃えるべきものです』
「蔑むべきものだ。
ガラクタにはわからんかもしれんが、人間とはな、破壊こそを生きがいとするケダモノなんだよ。
その生きがいすらも偽るものは……ただの木偶だ」
キャスターは言葉を続ける。
「聖杯戦争。
歴史に名を刻んだ愚者たちが、死んでも捨てきれなかった哀れな願いを叶えるため、聖杯などという得体のしれぬ物を賭けて戦う。
それを嘲笑い、この俺が当然のように聖杯を手にする。これ以上のゲームがあるか?」
『貴方は、一体……』
「ガラクタに言っても分からんだろうが、これも次元連結システムのちょっとした応用だ。
すでに所有者は書き換えられている。
貴様のAIとは異なる、根本的な部分が、な」
そう言って、頬を歪ませた。
邪悪な笑みだった。
レイジングハートに、理解不能のノイズが走る。
書き換えられている。
「非殺傷設定――――理解ではできるが、要らんな。オフだ。
リミッター――――安全装置の類か。次元連結システムの自己修復機能の前には必要とならん。消去。
人工AI――――くだらんものばかりだ」
小さく呟きながら、規格外のスキルランクを誇るスキル『エンチャント』によってレイジングハートに介入していく。
高町なのはと、短いながらも積み重ねた絆が、冒涜されていく。
なのはは、その最期に気づかずに眠り続ける。
「少し、からかってやっただけだ。
所詮、ゲームに過ぎん。俺が聖杯を手にするための、ゲームにな」
『貴方は――――』
「未熟な技術屋ほど、己の成果を煩く囀りたがる。
所詮、貴様は人工AI……ガラクタだということだ。
天から冥府まで、この世の全てを統べる王である俺と言葉を交わすなど――――まさしく、分不相応なのだよ」
そう言って、キャスターはスキル『エンチャント』を続ける。
『冥王計画』に基づいたそのスキルは、レイジングハートと呼ばれるものを改変していく。
やがて、レイジングハートはレイジングハートと呼べないものとなるだろう。
「俺が殺してやる。お前のマスターはこの俺だ。
俺が呼べば、このガキを見捨ててでも俺の元へと駆けつける。
お前はそう言ったものに成るのだ。
次元連結システムを搭載した魔術礼装さえ用いれば、俺であっても大魔術を行える。
安心しろ、マスター……俺が殺してやる。
お前は、俺の操り人形……精々、目眩ましに相応しく踊れ」
キャスター、木原マサキは嘲笑っていた。
地の底が震えるような、意味もなく不安になるような笑みだった。
僅かに、寝静まったはずのなのはの体が震えた。
【クラス】
キャスター
【真名】
木原マサキ@冥王計画ゼオライマー
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:- 幸運:A 宝具:A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師ではない木原マサキはスキル『陣地作成』を持たない。
道具作成:EX
木原マサキは魔術師ではないが、その科学知識を持って『次元連結システム』を応用した道具を作ることが出来る。
状況によっては、己の八卦の龍を――――
【保有スキル】
エンチャント:EX
後述の宝具に基づいたスキル。
他者や他者の持つ大切な物品に、解析し、改造し、『次元連結システム』を付与する。
同時に複数の物質に次元連結システムを付与することは出来ず、次元連結システムは常時一つとなる。
基本的にはマスターを戦わせるための強化能力。
自己保存:A
自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
【宝具】
『冥王計画(プロジェクト・ゼオライマー)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
次元連結装置、Dimensional Consolidation System、あるいは『多次元無尽連結現象<<キシュア・ゼルレッチ>>』。
魔力を用いず、科学技術によって第二魔法を限定的に行使する術である。
木原マサキは魔力回路を所持していないが、この宝具によって無尽蔵のエーテルを行使することが出来る。
核となる存在へ『科学的』に干渉し、それによって『ゼオライマー』と呼べる媒介を作り上げる必要がある。
今回の場合は『レイジングハート』に『天のレイジングハート』へと改造し、宝具のコアとした。
【weapon】
―
【人物背景】
コンピューター・シェアの70%を支配する大企業『国際電脳』を隠れ蓑にした秘密組織『鉄甲龍』に所属していた科学者。
八卦ロボや次元連結システムを開発した。
また、秋津マサトや氷室美久、八卦衆の造物主でもあるなど、機械工学のみならず生物工学にも才能を発揮した天才的技術者。
15年前、鉄甲龍を裏切りゼオライマーを持って逃亡し、日本政府に保護と見返りを要求する。
しかし、その直後に亡命を恐れた日本政府によって殺害されている。
だがマサキは自分が日本政府にとっても危険人物であることを理解しており、身の危険も承知していた。
ゼオライマーの機体のパイロット登録システムに自身の遺伝子を登録していたのもそのためだった。
更にゼオライマーと共に持参した自身のクローン受精卵により成長した存在(秋津マサト)がゼオライマーに搭乗すると、
マサキの人格と記憶が目覚めるように予めセットすることで、15年の時を越えて復活を果たす。
卑劣で残忍、かつ狡猾な性格で、自分の目的のために他人を犠牲にする事を一切躊躇わない。
彼の目的は自らが冥府の王となる事であり、日本政府か鉄甲龍のどちらかが世界を制すと計算した上で、その両陣営に自分のクローンを残している。
マサトの人格の中で覚醒したマサキの意志はマサトの人格を書き換えようとしていたが、
自分のプログラミングの結果である塞臥たちの愛情関係がもたらした三角関係を見て苦しみ出し、マサトの人格に敗れてしまう。
最期はマサトの意思でもう一人のクローン幽羅帝もろとも、ゼオライマーのメイオウ攻撃で果てた。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を手にする。
【基本戦術、方針、運用法】
次元連結システムを概念的に搭載したレイジングハートを扱い、全てを消滅させる。
【マスター】
高町なのは@魔法少女リリカルなのは
【マスターとしての願い】
願いと呼べるものはあるが、他人を殺してまで叶えるという願いはない。
【weapon】
『天のレイジングハート』
「風は空に、星は天に。輝く光はこの腕に――不屈の心はこの胸に」
インテリジェント・デバイス。
魔法の行使を補助する、発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能も有している。
意志を持つ為、その場の状況判断をして魔法を自動起動させたり、主の性質によって自らを調整したりする。
待機状態における赤い宝石型のスタンバイモード、基本形態である杖型のデバイスフォーム 、
砲撃魔法に特化した羽を広げたようなフォルムのシューティングモード、
ある一つの魔法に魔力を向けるシーリングフォームがある。
【能力・技能】
『魔導師』
魔導師として高い適正を持ち、一桁の年齢でありながら上位階級であるAAAクラスに匹敵する才能を持つ。
持って生まれた莫大な魔力と瞬間出力を軸に、
生半可な攻撃ではびくともしない防御力と、
圧倒的な火力を持つ一撃必殺の『砲撃魔導師』という戦闘スタイルを、レイジングハートと作り上げた。
そのためか、バリア出力・砲撃射程・魔力放出は本作登場の全キャラクター中トップクラス。
手数で押すタイプではなく、相手の攻撃を受けきった上での一撃必殺タイプのバトルスタイルである。
魔法において天賦の才に恵まれた、いわゆる天才児である。
【人物背景】
9歳。
海鳴市に、両親と兄、姉とともに暮らしている。
3人兄妹の末っ子で、姉とは8歳、兄とは10歳離れている。
私立聖祥大学付属小学校に通う、ごく普通の小学3年生。
この世界ではごくまれという魔力を秘めている。
しかし、異世界の少年ユーノと出会うという偶然がなければ、それに目覚めることはなかった。
性格は穏やかで誰にでも好かれる明るい少女。
ただ、嫌われたり、迷惑をかけないように、そういう少女を演じていた、という部分がある。
父母/兄姉は仲が良く、なのはにも温かいが、本人は若干孤独感を感じることもあるようだ。
幼い頃に父が事故で入院、母は喫茶店で忙しく、兄姉は看病と家業の手伝いで、彼女は家で一人ぼっちのことが多く、人格形成に影響したらしい。
また本人はあまり自覚が無いが「正義」の心にとても篤い。
一度自分で決めたことは、何が何でもやり通すという意志の強さを持つ。
逆に言えば、他人に言われたことでも自分が納得しない限りは聞き入れようとしない。
言わば、かなりの頑固者である。
また、何かを悩み始めると一人で抱え込んでしまい、他人には一切相談せずに自分一人で解決しようとする傾向がある。
一期9話後からの参戦。
【方針】
帰還する。
投下終了です
>>1
スレ立てお疲れ様です
質問があるので書き込ませていただきます
1.不死身さ加減はどの程度まで許されるのでしょうか。
ヘラクレスはもとよりやFate/Apocryphaのスパルクタスは耐久EXだからなのか致命傷を受けてもとにかく暴走していたキャラがいました。
致命傷から復活は可でしょうか
2.39歳の主婦は初老じゃないと思いますがどうでしょうか。
質問だけ回答します、感想はお待ちください。
>>252
1.特に制限はありません
2.
/: : : : : __: :/: : ::/: : ://: : :/l::|: : :i: :l: : :ヽ: : :丶: : 丶ヾ ___
/;,, : : : //::/: : 7l,;:≠-::/: : / .l::|: : :l: :|;,,;!: : :!l: : :i: : : :|: : ::、 / ヽ
/ヽヽ: ://: :!:,X~::|: /;,,;,/: :/ リ!: ::/ノ l`ヽl !: : |: : : :l: :l: リ / そ そ あ \
/: : ヽヾ/: : l/::l |/|||llllヾ,、 / |: :/ , -==、 l\:::|: : : :|i: | / う う な |
. /: : : //ヾ ; :|!: イ、||ll|||||::|| ノノ イ|||||||ヾ、 |: ::|!: : イ: ::|/ な 思 た
/: : ://: : :ヽソ::ヽl |{ i||ll"ン ´ i| l|||l"l `|: /|: : /'!/l ん う が
∠: : : ~: : : : : : : :丶ゝ-―- , ー=z_ソ |/ ハメ;, :: ::|. で の
i|::ハ: : : : : : : : : : : 、ヘヘヘヘ 、 ヘヘヘヘヘ /: : : : : \,|. し な
|!l |: : : : : : : : :、: ::\ 、-―-, / : : :丶;,,;,:ミヽ ょ ら
丶: :ハ、lヽ: :ヽ: : ::\__ `~ " /: : ト; lヽ) ゝ う
レ `| `、l`、>=ニ´ , _´ : :} ` /
,,、r"^~´"''''"t-`r、 _ -、 ´ヽノ \ノ / あ ・
,;'~ _r-- 、__ ~f、_>'、_ | で な ・
f~ ,;" ~"t___ ミ、 ^'t | は た ・
," ,~ ヾ~'-、__ ミ_ξ丶 | の ・
;' ,イ .. ヽ_ ヾ、0ヽ丶 l 中 ./
( ;":: |: :: .. .`, ヾ 丶 ! \____/
;;;; :: 入:: :: :: l`ー-、 )l ヾ 丶
"~、ソ:: :い:: : \_ ノ , ヾ 丶
投下させてもらいます
彼女は魔法少女に憧れていた。
アニメや漫画に出るような、かわいくて、優しくて、強くて、勇気がある、そんな魔法少女になりたかった。
将来の夢は魔法少女になって人々を幸せにすることだ。
女の子なら小さい頃に一度は持ち、やがて幼稚だと捨てそうな夢。だが彼女は中学生になってもその夢を持ち続け、そして実現させた。
プレイすると魔法少女になれるという噂の無料ソーシャルゲーム。それのプレイ中に本当に魔法少女になったのだ。
初めて魔法少女になったときは文字通り、飛び上がるほど喜んだ。
先輩魔法少女達に色々教えてもらい、一足先に魔法少女になっていた幼馴染と一緒に人助けに奔走した。
彼女は困っている人の心の声が聞こえる。そういう魔法を持っている。そして世の中から困っている人が尽きることはない。
クタクタになることもあったが、助けた人の笑顔を思い出せばすぐに元気が出た。
幸せな日々。彼女の夢が実現した日々だ。だがそれはすぐに終わりを迎える。
増えすぎた魔法少女を半分にする。ゲームのマスコットが発したその言葉により、彼女は過酷な戦いの中に巻き込まれていった。
魔法少女達は生きるために戦い、死んだ。
彼女を守ると言った幼馴染も、彼女に憧れて魔法少女になった女の子も、優しかった先輩魔法少女達も、みんな死んでいった。
なのに彼女は生き残った。何もせず、ただ事態に流されていただけの彼女は生き残った。他に生き残るべき魔法少女は大勢いたのに彼女が生き残った。
なぜ自分が生き残ったんだろうと思い、何かをするためだと結論づけた。
少しでも多くの困っている人を助けるため。
少しでも多くの誰かを守るため。
少しでも多くの悪を捕まえるため。
それがじぶんのすべきことだ。
彼女は力を求め、得た。悪人から恐れられ、弱者から頼られるだけの力を。
だがそれでも彼女には死が付きまとう。回りの人々を手にかけながら、彼女には手を出すことなく近くに浮かび続ける。
彼女はまた戦う。今度こそ全てを守れるよう、今度こそ全てを助けられるよう。
願い、裏切られ、また願い、裏切られながら彼女は戦い続ける。
終わりはない。そこに救わなければならない人がいるなら彼女は死ぬまで――死んでも戦う。
◇
人気のない深夜の路地裏に、肉の潰れる音が響いた。
まき散らされた血の中心には小さな子供が倒れている。顔は潰れ、関節は折れ曲がり、一目では男か女かもわからない。
そばにある廃ビルの屋上から一人の女がフェンスに寄りかかり、それを見ていた。歳は高校生くらいだろう。
短いスカートに下着が見えるほど着崩したブラウス、派手な金髪に濃い化粧。派手な装いだが、その全てが彼女がより魅力的に見えるよう、完璧に配置されていた。
「無骨で無様で味気ないコンクリートに咲いた一輪の血の花。なんて言ったら気取り過ぎかな?」
少女は低く冷静な声で呟いた。回りには誰もいない。
「ねえ、君はどう思う?」
しかし彼女は問いかけた。隣にはいつの間にか別の少女が立っている。
白い髪の少女だ。服も同様に白く、そこかしこに白い花があしらわれている。そのファンシーな装いは見る人が見れば『魔法少女』という言葉を想像したかもしれない。
片手に持った物騒な槍が不釣合いな、愛らしい少女だった。
白い少女は階下の潰れた子供に見て、一歩遅れたことを悟った。歯を強く噛み、金髪の女を睨む。
「あなたが殺したの?」
質問を無視して白い少女は言った。
「君に限ってサーヴァントと戦わずにマスターを殺した――なんてことはないだろう。どうやってこんなに早く戦闘を切り上げられたんだい? 姫河小雪クン」
質問を無視して金髪の女は答えた。
「私は何もしてない。相手のマスターが無理やり宝具を使わせて魔力切れを起こしただけ。それと真名で呼ばないように言ったはずだけど。江ノ島盾子」
言葉に怒気を込めながらも今度は答える。こちらが無視する限り、向こうもずっと無視するような気がしたからだ。
江ノ島は、フッ、と笑みを浮かべる。腰を曲げ、上目遣いで少女を見上げ、
「もぉ〜、固いんだからランサーちゃんは! だったらランサーちゃんも私のことを呼ぶときはご主人様、かっこハートって読んで!」
と、甘えた声で言った。
ランサーは無言で槍を突きつける。
江ノ島は特に動じた様子もなく、「つまんな〜い」と唇を尖らせたあと、打って変わって堅い口調で話し始める。
「質問の内容は『あなたが殺したの?』、でしたね。その質問に答える前にまずは殺人の定義を明確にしましょう。
例えば母親が自分の子供をビルから突き落としたら、これは殺人でしょうか?
子供は親の所有物であり、自分の物を壊しただけという理屈もなくはありません。しかしどっちにせよ殺人でしょう。
他人の物だろうが自分の物だろうが人は人なので、死なせた時点でそれは殺人です。迷うまでもありません。
ではいじめられっ子がいじめを苦に自殺したら、それはいじめっこによる殺人でしょうか?
殺人ですね。いじめっ子が追い詰めたせいでいじめられっ子は死んだんですから。
もしかしたら殺意があっていじめたのかもしれませんし、なくても関係ありません。
では人生の全てを漫画家になるために注いできた男が、持ち込んだ渾身の漫画を編集に切って捨てられたことを苦に自殺したら、これは編集による殺人でしょうか?
殺人です。編集が追い詰めたせいで男は死んだんですから。
編集は自分の仕事を全うしただけかもしれませんが、仕事だからといって人を追い込んでいいとはなりません。だからこれも立派な殺人です。
ではこの定義に則り、そこの子供を殺したのが私かどうか考えてみましょう。
私はこのビルでぼうっと突っ立ているその子を見つけ、話しかけました。こんな時間にこんな場所いるのなら何か悩みでも抱えているんだろうと思ったので。
案の定、家族や友達との関係に悩んでいるようだったので、教えてあげました。
あなたは誰からも愛されていない。みんなから疎まれている人間だ、と。信じられるまでみっちりと時間をかけて。
結果、彼……彼女だったような気もしますが、まあどちらでもいいです。とにかくそれは飛び降り自ら命を絶ちました。
つまり彼だか彼女だかが自殺した原因は家族や友達と言えるでしょう。私もちょっとだけ背中を押したかもしれませんが、まあ些細なことでしょう。
というわけで私は殺していません。ご納得いただけましたか?」
ランサーは何も言い返さなかった。それは江ノ島が今の長台詞を三秒で言い切ったことに、呆気にとられたからではない。経験上こういう手合いに言葉は無駄だとわかっているからだ。
ただ江ノ島に自由を許した自分を悔いた。彼女と行動を共にしたのはサーヴァントとして呼び出されてからのわずか数日だけ。それでも彼女がどういう人間かは十分すぎるほどわかっていたはずだ。
江ノ島盾子は全てを絶望させる。他人の絶望も自分の絶望も全て快楽とする絶望フェチだ。だから今までそばに張り付いた見張ってきたというのに、他のサーヴァントと戦っている隙に逃がしてしまった。
相手はランサーよりもずっと格下だった。ちゃんと江ノ島にも意識を向けていれば、逃亡を阻止できただろう。
きっと普段魔法に頼りすぎていたせいだ、とランサーは反省する。
ランサーは『困っている人の心の声が聞こえる』魔法を持っている。それは『こういうふうにしたい(けどこんなことになったら困る)』といった深層心理や反射まで聞こえる魔法だ。
普通なら逃亡を企てた時点で察知できる。だがこの魔法が江ノ島には聞かない。
自らの絶望すら喜びである彼女には、行動を妨害されたら困るという思いがない。もしかしたらあるのかもしれないが普通の人よりもずっと薄い。少なくとも自分の意思で完全にコントロールできるくらいには。
ランサーはここから飛び降りた子供の死体を見た。小さな子供だ。歳は高く見ても十一、二才といったところだろう。
もう少し速く来れていれば救えた命。おそらく聖杯が生み出したNPCだろうが、彼女にとってそんなことは関係ない。
確かにそこに生きていた存在を守れなかった。それだけで悲しくて悔しい。
そんなランサーを江ノ島は、ハッ、と笑い飛ばす。
「人が死ぬのが許せない心優しい魔法少女ってか! そんなん今時流行んねえんだよ! 最近の魔法少女は血塗れでドロドロだろ!」
ハイテンションでそう捲し立てた。江ノ島は口調をよく変える。だがどの口調も、どこか人に不快感を抱かせる喋り方だ。
今度は暗い口調で言う
「というか……ランサーとして呼ばれてる時点で……魔法少女としてダメですよね……だって槍兵じゃないですか……」
尊大に。
「兵なら兵らしく、私様に言うことに従いなさい! 私様と共に他のマスター達を絶望の底に叩き落とし、聖杯を手にするのです!」
これ以上は話に付き合うだけ無駄だ。ランサーはそう判断した。
ランサーはせめて死んでしまった子供の顔だけは見ておこうと思い、飛び降りるためフェンスに足を掛ける。そのとき――
「今朝さあ、アンタの夢を見たんだよね」
その言葉は今までのように無理やりキャラを作った感じはしない。なのにこれまでどの言葉よりも、印象的にランサーの中に響いた。たぶん、今のが素の江ノ島盾子だ。
「私の夢?」
フェンスから降り、向き直る。江ノ島はニッと笑った。
「そっ。正確にはアンタの過去を夢って形で見たの。たぶん契約とか魔力供給のパスの影響でね。
いやぁ、アンタも結構悲惨な人生送ってんのねぇ。同情するわ」
さほど同情した様子もなく、あっけらんかんとした態度だ。
不快だった。江ノ島の態度ではなく過去を見られたという事実が。自分の部屋を土足で踏み荒らされたような気分だ。
だがそんな感情は表に出さず、ただ江ノ島を見返す。
交渉や対話をするときに大事なのは必要以上に自分の感情を見せないこと。ここからの話は、たぶんそういう類のものだ。
「聖杯はどんな願いも叶える願望機だって話じゃん。それを使って、アンタの力不足のせいで死んだ大切な人達を生き返らせたいって思わない? 思うよね?」
「……だとしても、そのために他の誰かを犠牲にしていいとは思わない」
「かあ〜、いい子ちゃんだねえ。そういうの流行らないって言ってんのに」
吐き捨てるように言って、実際に唾を吐く。ランサーの靴にかかった。
「じゃあ試してみよっか、あんたが本当に自分の願いより赤の他人を優先できるのか」
そう言って江ノ島は一歩近づく。その手を伸ばし、ランサーの槍の柄を掴んだ。
ランサーが訝しむと、江ノ島は刃を自分の首に向け、一気に引き寄せた。ランサーは慌てて握る手に力を込める。槍は刃先が首に刺さる寸前で止まった。
「……どういうつもり?」
ランサーが槍を止めるのが遅れていたら江ノ島は間違いなく死んでいた。だというのに彼女は変わらずニヤニヤと笑っていた。
止めた側のランサーの方がわずかに動揺を表に出している。
「アタシはこれから先も多くの人間を絶望させる。それが嫌ならここで殺しときな。もちろん、そうなったらサーヴァントであるアンタは消えちゃうけど」
「何を……」
「人を殺す度胸がない? ならこっちでもいいけど」
淡々と言って江ノ島は槍を右肩の上に動かした。そこには令呪がある。ランサーがちょっと腕を動かせば、避ける暇も与えず切り取れるだろう。
「アンタがどうしても、縁もゆかりもない他人を助けたいってんなら、令呪を切り取ったあとボコるなり、縛るなり好きにすればいい。ただしそれをしたらもうアタシは魔力を送らない。結局アンタは消える。
だけどどうでもいい他人よりも、大切な人達を助けたいっていうなら――そのためにアタシを野放しにするっていうなら、アタシも聖杯を手に入れるのを手伝ってあげる」
つまり大勢の人のために令呪を切るか、聖杯のために切らないかの二択。
答えは簡単だ。令呪を切ればいい。そうすれば江ノ島の言うとおり、大勢の人が救える。聖杯は手に入らないが、それが正しい選択だ。
なのにランサーの中で死んだ人達の姿が浮かんだ。
大好きだった人。好きでいてくれた人。守ってくれた人。守らなければいけなかった。生きようとした人。生きるべきだった人。ランサーよりも――姫河小雪よりも生きるべきだった人。
消え、浮かび、また消えて浮かんだ。
――何を考えているの私は。
ランサーは迷いを払うように首を振った。
相手のペースに乗っては行けない。そもそも江ノ島の言葉が本心だとも限らない。聖杯を求めたところで裏切られる可能性も十分ある。
「どうしてあなたが私に協力するの?」
「一つは夢で見たアンタの絶望顔が超可愛かったから。もう一つはアンタが人を絶望させるのに向いてるから」
「私が?」
「アンタの魔法ってさ、『困っているの人の心の声が聞こえる』なんて言ってるけど、実際はむしろ相手が『聞かれたら困ることが聞こえる』魔法に近いでしょ。それがどんだけエグいかわかってる?
アンタは相手は弱点を知れる。弱みを知れる。トラウマを知れる。コンプレックスを知れる。本人の考えるもっとも絶望的なことを知れる。
アンタが本気で勝利だけを求めるようになれば、それは相手を絶望させる戦いになる。そこにアタシが加わればきっと今までにない絶望を生み出せる。アタシはそれが見たい」
江ノ島が槍を掴んだままさらに一歩近づいた。くっつきそうなほどに顔を寄せる。
「だからもう終わりの見えない人助けなんてやめちゃいなよ。どうせアンタがいくら頑張ったって世の中から人殺しは消えないし、海の向こうでは子供が餓死しまくってるんだからさ。
一遍くだらない正義感とか優しさとか全部捨ててみな。すっごい楽になるから」
空いた手でランサーの髪を撫でた。
目の前には江ノ島の瞳。そこには闇しかない。底の見えない深い谷のような闇だ。
だがそれが一瞬、人を眠りにいざなう夜暗のよう見えた。
「ッ!」
ランサーは槍を振るって、手を振り払う。その勢いのまま江ノ島に背を向けた。
「勘違いしないで」
まずそれだけ言う。
「あなたの二択に乗る気がないだけ。わたしが止めなきゃいけない相手はたぶん、あなただけじゃない」
「そ。じゃあまあ、そういうことにしといてあげる」
その言葉を聞き終わらない内にランサーは霊体化した。
――そう。他にも敵がいるから。
理由はそれだけだ。選択することから逃げたわけじゃない。
【クラス】ランサー
【真名】姫河小雪@魔法少女育成計画
【属性】秩序・善
【パラメーター】
通常時
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:E
魔法少女時
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:E 宝具:E
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
魔法少女:B
『魔法の国』から与えられた力。魔法少女『スノーホワイト』に変身できる。
魔法少女時は身体能力や五感や精神が強化され、容姿や服装も固有のものに変化する。
通常の毒物は効かず、食事や睡眠も必要としない。その影響かサーヴァントとしての現界に必要な魔力量が通常時よりも低下している。
気絶や死亡などで意識を失ったら変身は解除される。
困っている人の心の声が聞こえるよ:B
魔法少女がそれぞれ持っている固有の魔法。
困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえる。それによって行動の先読みや隠し事の傍受も可能。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
魅了:E
自身をより魅力的に見せる。
変わり者に対して特に強い効果を発揮する。
【宝具】
『華麗なる偉大な女王(ルーラ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:2〜3 最大捕捉:1人
魔法の国で作られた武器。地球の武器より遙かに協力。絶対に壊れない。
その名はかつてスノーホワイトに唯一、土をつけた魔法少女から取られたと言われている。
【weapon】
『四次元袋』
見た目は口に紐のついた布袋。
一人で持ち上げられる重さなら、生物、無生物を問わず、何でも、いくらでも入れられる。
口を開けられるなら中からの脱出は自由。なお中は別の次元になっているため、マスターを入れると魔力供給が途切れる。
【人物背景】
普通の女の子、姫河小雪はある日無料ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』をプレイ中に本当の魔法少女になる。
魔法少女として人助けをする日々を送っていたが、悪意ある魔法少女とマスコットによって、増えすぎた魔法少女を減らすという名目のデスゲームに参加させられる。
大切の人が死んでいったなか、何もしなかった自分が生き残ったことを強く後悔。
その後、力を求め、身も心も強くなった彼女は多くの犯罪者魔法少女を取り締まり『魔法少女狩り』と呼ばれるようになった。
【サーヴァントとしての願い】
出来る限り犠牲を出さずに聖杯戦争を終わらせる。自分の願いのために聖杯を求めたりはしない。
【マスター】
江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ
【マスターとしての願い】
絶望を振りまく。
【能力・技能】
あらゆる分野において専門家を凌ぐ能力を持っている。
特に優れているのは分析能力。これまでの相手の言動から次の行動を予測することも可能。
【人物背景】
超高校級の才能を持つ者のみが入れるスカウト制学園、希望ヶ峰学園に超高校級のギャルとして入学。
しかし実態はあらゆるものに絶望し、あらゆるものに絶望を与え、あらゆる絶望に快楽を感じる、超高校級の絶望である。
そんな人格になった理由は不明。本人は生まれたときから全てに絶望していたと言っているが、彼女の姉は絶望にまみれて生きてきたことが原因と言っている。
ときにその絶望を他者に感染させ、江ノ島と同じ絶望を求める存在へと変える。
非常に飽きっぽい性格。キャラに飽きたという理由で喋り方を変えるほど。計画通りに物事を進めたことが一度もないらしい。
また、自分を絶望させるためにわざと負けフラグを用意したりもする
ちなみに素の状態の二人称は基本的にはオマエ。
ダンガンロンパ/ゼロのちょっとあとくらいからの参戦。
【方針】
とにかく絶望を振りまく。
姫河小雪を闇堕ちさせる。
投下終了です
投下いたします
1:
「一つ聞かせてくれないか」
弓の弦の如くに張りつめた、何の混じり気もない清浄な空気が満ちる道場の中で、くすんだ水色の着流しを身に付けた男が言った。
「お前が刀を振ってきたのは何のためだと思う」
水色の着流しの向かいにいる男が、ややあって答えた。
――――――――――――――――――――――――
2:
此処最近の少女の行動は、常に決まっていた。
某都高校の剣道部の部活を終えた後、脇目もふらず、急いで実家の剣道場へと足を運ぶ。
市内の学校に通う、歴史ある剣の道場の一人娘。それが彼女――千羽烏月に命じられた、偽りの役割であった。
普段の彼女なら、得体も知れない存在からこなせと言われた役割を、素直にこなす事はまずありえない。命じた存在を打ちのめす事も、するだろう。
それをしないのは、この世界はそもそも元居た世界とは根本的に異なる別世界であり、この世界に於いて烏月は役割を演じる以外に道がない事。
そして、この世界には、彼女が討つべき存在である鬼や妖物の類が存在しない事。以上の2つがある。
特に2つ目は大きかった。烏月は古の昔から、人に仇名す鬼を討つ鬼切部千羽党の一員であった。
討つべき鬼がいない世界。それは、鬼切部の者達にとっては理想の世界の1つなのではあろうが、実際叶ってみると退屈なものであった。張り合いがないのだ。
今の彼女は、その瞬間(とき)が来るまで、惰性で学校に通い続ける機械のようなものだった。
それまで会話していた人間がNPCだと解ると、烏月の対応も機械的で冷たいもの。もとより玲瓏なイメージの強い美人であった烏月は、より鋭く、より冷たくなっていた。
そんな烏月が、日に1時間程だけ、生身の人間らしさを取り戻す時間があった。
その時間が訪れるようになったのは、鬼のいない世界と言う違和感から記憶を取戻した瞬間から、つまり、聖杯戦争への参戦権を得た瞬間からであった。
自らのサーヴァントと語らう時間。それはこの閉じた世界に於いて、烏月の鬱屈とした心を癒す唯一のひと時であった。
二重の意味で、その時間は楽しみであるのだ。
ツカツカと小道を早歩きで行く内に、烏月の実家が近づいてきた。
純和風の広大な庭園と邸宅を保有する、市内の名家。烏月は文武両道のお嬢様として通っていた。
玄関に上がり、厳格な父と母に挨拶する事も忘れ、烏月は道場へと直帰。
「すぐに着替える」
虚空に向かって烏月が言う。
『凛』、と言う言葉がこれ以上となく相応しい美人である。黒一色のセーラー服に、同じく黒いストッキングを着用した、眉目秀麗な濡羽色をした長髪の女性。
黒と言う色がこれ以上となく調和した女性だ。まるで夜がそのまま美女の形を取って現れたかのような印象を見る者は受けるだろう。
「わかった」
何もない空間から、男の声が聞こえて来た。烏月が道場への正扉を開ける。
道場の玄関口に上がった烏月が、靴を脱ぎ、急いで女子の着替え室に走る。
数分程が経過した後、烏月が道場へと現れた。黒の似合う女性が、白い道着に着替えていた。
黒が似合う女性は、白を纏っても様になっている。しかも道着と言う、人を綺麗に見せる為の服装でなくても、美人さは色褪せていない。
美人は何を着ても似合うと言う世の不平等/真理が、この道場の中で体現されていた。
烏月が道場に現れた瞬間、道場の中央に、フッと1人の人影が現れた。
奇妙な男であった。灰色の上着と青色の袴。古めかしい服装の男であったが、体格も良く背丈も恵まれている為、違和感や不様さはない。
だが、前時代的な服装よりも目を引くのが、黄色いひよこの頭を模した被り物を被っている、と言う事であった。
遊園地のスーツアクターのバイトかと最初は思うだろうが、違う。纏う空気が違っている。
そのひよこ頭の男が纏う空気は、常人のそれとは訳が違った。この男だけ、別の世界を背負っているような感覚。
纏っているそれは、ピリピリとした剣呑な何か。それは殺意とも敵意とも、鬼気とも形容される代物であった。
「これを」
言って烏月が、ひよこの頭の男――アサシンのクラスとして参上した自らのサーヴァント、テューン・フェルベルに竹刀を手渡す。
無言でそれを受けとり、テューンはそれを正眼に構えた。数m下がった後、烏月も構えた。足を肩幅程度に開き、竹刀を担ぐようにして構える。
他流派はこれを蜻蛉の構えと言うらしいが、烏月が学ぶ千羽妙見流においては、この構えを『破軍』と呼ぶ。
剣道の試合にしては、開始までの距離が遠すぎるかと思われるが、これは剣道の試合などではない。烏月もテューンも、試合などとは欠片も思っていない。
竹刀を使う以上、殺す事は絶対厳禁なのだが、その実、試合の最中は殺すつもりで打ちこまねばならない。
何よりも、使う攻撃手段は竹刀に限らなくても良い、体術も使って良い。敗北条件は、負けを認めるか、竹刀を手落した時のみ。
これはそう言う練習なのだ。
数分程、無言の睨み合いの時間が続いた。
道場の中は、息苦しくなる程空気が張り詰めていた。呼吸するのも苦しい程である、富士の山の頂にいるかのようである。
同時に空気は、とてつもなく重かった。気化した鉛でも大気の中に交じっているのではと錯覚する程だ。
道場の中には、物音1つない、烏月とテューン以外には生き物の気配はまるでない。此処だけが、現世と隔絶された1つの異界のような空間であった。
テューンの方は、ひよこの被り物を被っているという都合上当然だが、表情を窺い知る事は出来ない。
しかし、被り物の上からでも、この男が緊張の面持ちをしていない事は解るだろう。余りにも構えが堂々としていた。
一方烏月の方も、真顔を保ちながらテューンの顔を見つめている。一見すれば完璧な構え、完璧な精神状況と思うだろう。
だが違う。彼女の心は、少しだけ動揺していた。その証拠に、額から冷たい汗が一筋、ツツと流れている。
それだけ、目の前のテューンが、驚異的な気魄を持っているのだ。彼は、鬼を斬った経験はなく、人と獣しか斬った事がないと言う。
しかし果たして、何人もの人を斬ればそれだけの覇気を醸し出せるのか。鬼切部としていくつもの鬼を斬り捨てて来た烏月が気圧され、呑まれる程の空気。
テューンは剣鬼だった。
――破軍の構えは失敗だったか……――
今更になって烏月は、千羽妙見流に伝わるこの必殺の構えを取った事を後悔していた。
この構えの弱点は、薩長示現流における蜻蛉の構えと概ね同じ。この構えは防御と言う考えを捨てている。初太刀で相手を斬り捨てる、極端な攻撃重視の構えなのだ。
必殺に相応しい力と太刀筋を持つのは事実だが、最初の一太刀を避けられたり防御されたりすると、素人目にも明白な隙が出来る。諸刃の剣だ。
破軍はもとより、鬼に対する構えだ。ある程度腕の立つ人間に対してはまた別の構えが伝わっているのだが、今まで鬼とばかり戦って来たと言う戦歴と、
人間相手に戦った事がないと言う実戦経験の未熟さが重なり、烏月の肉体はついつい、彼女に破軍の構えを取らせてしまった。
しかし、今更構えを変える訳にはいかない。況してや破軍の状態からでは、構え直しに時間が掛かる。その隙を狙われると考えるのは、当たり前の事。
結局、烏月に残された勝利を拾う手段は、攻撃しかないのである。だが、石像の如くその場から動く事のないテューンが、易々と隙を見せる筈が――
テューンが竹刀を、中段から下段へと変え始めた。
その瞬間を見た時、烏月はバネ仕掛けの人形のように跳躍、彼我の距離六〜七m程を1度の跳躍で詰め、テューンに対して大上段から斬りかかる。
――彼はそれを読んでいた。烏月が竹刀を振り下ろす前に、下段の構えに移行していた彼は、電光のような速度で竹刀を振り上げ、
その時の勢いに身を任せるように、後方へと跳躍。烏月の振り下ろしは、空を斬る。テューンの斬り上げは、烏月の道着を掠っていた。
烏月は竹刀を振り下ろす際、急激に嫌な予感を感じ取り、身体を少し反らしていた。恐らくそうしていなければ、竹刀が直撃していたろう。
テューンの持っている得物が真剣であったら、その時点で勝負は決していた。
テューンが先程立っていた地点より七m程後方に着地する。
竹刀を振り下ろし切った烏月は、急いで中段へと構え直そうとする。これだけの距離を跳躍したのである、構え直すのならば、今だ。
――テューンの身体が、朧げになった様に烏月には見えた。が、0コンマ2秒程経過した次の瞬間、テューンの姿が明瞭となる。
簡単だ、彼は烏月の間合い1m半にまで近づいていた!! 疾風のような身のこなしで、この男は間合いを一瞬で詰めて来たのだ!!
「ッ!?」
驚きと焦燥の混じった顔で、テューンのひよこ頭を見る烏月。あの時下段に構え直したのは誘いだった事に、今更ながら気付いてしまった。
驚愕の理由はいろいろだ。あれだけの距離を自分に気取られず詰めて来る速度、板張りの床に音一つ立たせない見事な体裁き。
だが驚愕の一番の理由は何と言っても、この男が竹刀の間合いにいると言う事実1点。互いに攻撃を繰り出せば、その全てがクリーンヒットする距離にいるのだ。
烏月が右肩で以て、テューンの胸部目掛けて体当たりを行おうと試みようとする。
しかし、烏月が行動に移るよりも速く、テューンは竹刀を振り上げ、彼女の竹刀を打ち据える。
パシイイィィンッ!! 気持ちが良くなる位耳に心地よい、乾いた竹の音が道場に響き渡った。
遅れて、ゴトンッ、と言う野暮な音が響いた。烏月の数m後方の板張りの床に、竹刀が落ちていた。
彼女の両の腕に、ムカデでも這っているような鈍い痺れが走っている。彼女の手に、竹刀は握られていなかった。
「……強いな」
烏月が観念したように口を開いた。遠回しの、敗北宣言だ。
「そうだな」
謙遜するでもなく、テューンが返した。自信満面の言葉であるが、それに実力が伴っているのだから文句のつけようがない。
烏月に言われるでもなく、先程まで握っていた竹刀入れを、それをしまっている籠の中にテューンが入れに行く。その様子をただ眺める烏月。
アサシンのサーヴァントとしてテューンが烏月の前に現れたのは、3日前の事だった。
鬼のいない世界に対する違和感から記憶を取戻した自らの前に現れたのは、ひよこの被り物を被ったあの侍。聞けばこの男、生前は剣士であったと言う。
無辜の人間を斬らねばならない聖杯戦争自体に気乗りはしないが、いかんせん戦いの末に手に入る聖杯が聖杯だ。相手に敵意がないとも言い切れない。
戦闘技術の維持と、鬼のいない世界による気の紛らわしの為に、烏月は、呼び出した当日にテューンと軽い剣の試合を申し込んだ。
――強かった。いや、強すぎると言っても良い。
サーヴァントとして呼び出される程の剛の者であるのだからそれは当然なのかも知れないが、そうと解っていてもなお、テューンの剣の冴えは凄いものがあった。
烏月の剣筋の尽くが読まれ、捌かれ、防がれて。逆にテューンの剣筋は、読めず、捌けず、防げずで。
彼女が追い求めてやまなかった、彼女の兄、千羽明良をも超える剣の腕であろう。
敗北を喫した時、烏月は悔しかった。子供と遊ぶときに使うようなひよこの被り物などを被って、自分を馬鹿にしてるのかとすら考えた。
常人ならへこたれる程の完敗を味わっても、すぐに気を持ち直して立ち上がり、再び試合を申し込む。
これを、学校の部活が終わってから実家の道場で繰り返していた。そしてこの瞬間こそが、千羽烏月と言う少女が人間らしさを取り戻す瞬間なのである。
「どうして其処まで強くなれたんだ」
烏月が訊ねる。鬼切部千羽党の人間として、1人の剣士として、テューンが此処までの剣の腕を得るに至ったのか、興味があったのだ。
「お前は剣の為に全てを捧げられるか」
逆に、テューンの方が問い掛けて来た。
「私は鬼切部だ。鬼を斬ると言う使命の為に、他の全てを擲つ覚悟は出来ている」
「……俺のパパは、世界一の強さを持った剣豪だった」
烏月の確固とした決意を目にした後で、テューンは静かに語り始めた。
「その名を世界に轟かせていたパパに、剣士が決闘を挑むのは当然の事。ある時、パパと全く同じ技量を持った剣士が決闘を挑み、パパは両腕を斬り落とされた。何故だと思う」
「話の流れから言って、剣の為に全てを捧げきれなかったからか」
「そうだ。パパはその時、俺の母親と恋仲になっていた。女に気を取られていた、と言うその差が勝敗を別った。
剣に生きるとはそう言う事だ。お前にそれだけの覚悟はあるのか?」
烏月の方に体を向けて、テューンが言った。きっとあのひよこの被り物の下では、真面目な顔付きを作っているのだろう。
「……ある」
数秒程の逡巡をおいて、烏月は口にする。が、テューンの反応は冷淡な物だった。
「口ではどうとでも言える。だが、お前の剣筋は嘘をついている」
「何……?」
「剣士としての理想の姿とは何か教えてやろう。囚われず、揺るぎなく、力強い。心の持ちようが重要なんだ、剣は」
更にテューンは言葉を続ける。
「お前の腕前なら、心に迷いを抱いていても、格下相手ならば容易く斬り捨てられるだろう。だが、同じ腕前の相手になると、途端にその迷いが枷になる」
「私が迷っているとでも言うのか」
「お前は昔の俺と同じだよ。復讐を果たしたいのか違うのか、自分でも良く解らなくなってるんじゃないのか」
「ッ……」
痛い所を突かれたような顔をして、烏月は道着の脇腹部分をギュッと掴んだ。
「家族を殺されたんじゃないのか」
図星である。
千羽烏月には兄がいた。千羽明良と言う名前のその男は、烏月が尊敬していた程の凄腕の鬼切り役であった。
しかし彼は既にこの世にいない、故人となっている。明良は、鬼を調伏する役目を負った一族でありながら、鬼に憑りつかれた少年をかくまっていた。
その少年に、明良は殺された。明良を殺した鬼が、憎かった。鬼を斬る一族にありながら鬼をかくまっていた家族がいたと言う事に、負い目を感じていた。
烏月は、己の過去にけじめを付け、清算したいのである。そしてその手段は、1つ。明良を殺した鬼である、ケイと言う少年を討つ事。これ以外に、ないのであった。
この思いはテューンから言わせれば、剣の太刀筋を曇らせる要素以外の何物でもないようだ。
そんな事は、烏月にだって理解出来ている。理解したからと言って迷いを消せるようならば、苦労はしない。烏月は菩薩や如来の類ではないのである。
解って居ながら抜け出せない。烏月は未だ、深い深い無明の最中にいるのだった。
「斬りたい相手がいると言うのなら、それでも良い。剣を振るうのに目的は必要だ。だが今のお前の心境で、この聖杯戦争を切り抜ける事も、仇を斬る事も出来ると思うな」
「参考程度に……聞かせて欲しい。昔の自分と同じだとお前は言ったが……お前にも私と同じ、仇に似たような者がいたのだろう。お前はどうやって、乗り切ったんだ?」
「過去を冷静に見つめ直した。俺の仇に類する男は、大層腕の立つ剣士だったからな。世界一の剣士になると言う目標を達成する為、俺はそいつを仇じゃなく、
1人の、超えねばならない相手として認識する事にした。ただ純粋に、剣士として高みを目指すと決めた瞬間、俺から迷いは消えていた」
「尤も、俺とお前とでは境遇が違うだろう。あまり参考にするな」、と即座にテューンは付け加えた。
「……強いな、お前は」
観念した様な口調で、烏月が言葉を口にする。
テューン・フェルベル。その年齢は18歳だと言う。若すぎる、烏月と1歳しか違わない。であるのに、この青年は達観し過ぎている。
一体何を経験し、幾人もの人間を斬ってきたら、その境地にまで辿り着けるのか。同じ剣の道に身を置きながら、烏月にはそれが予想すら出来なかった。
「最後に聞かせて欲しい。お前が刀の道を志した理由とは……何だ?」
烏月が刀を手にした理由は、自分が鬼切部の一族に生まれたからに他ならない。
もしも市井の中の普通の過程に生まれたのであれば、彼女は剣の道など先ず間違いなく志す事はなかったろう。
テューンは、何を契機として刀の道を歩もうとしたのか。それが、彼女には気になってしょうがなかった。
「……刀を愛していた」
数秒程の間をおいてからテューンが口にした。
「俺は刀だけを見て、刀と共に何処まで狂えて、何処まで技を極められるのか。……それが知りたかった」
「……そうか」
純粋に、刀が好きだったから、刀に打ち込めたから、テューンは強くなれたのだ。
烏月はそう解釈した。しかし、テューンの被るひよこの被り物の下で、彼がどんな表情を浮かべているのか、烏月は想像も出来ないであろう。
ファンシーで愛くるしいひよこの被り物のその下で。
テューン・フェルベルは、健常人が目の当りにしたらぞっとする程危険な光を宿した瞳で、うっとりとした微笑みを浮かべているのであった
3:
「一つ聞かせてくれないか」
弓の弦の如くに張りつめた、何の混じり気もない清浄な空気が満ちる道場の中で、くすんだ水色の着流しを身に付けた男が言った。
「お前が刀を振ってきたのは何のためだと思う」
水色の着流しの向かいにいる男が、ややあって答えた。
「刀のためです」
道場の張りつめた空気が弛緩していた。
あれだけピンとしていた空気はだらしなく緩み、隔絶された結界の中か何かを思わせるような異界感は、完全に消え失せている。
道場主がいなくなるだけで、此処まで道場の空気は変わるのか。ひよこ侍の真正面で、水色の着流しの侍が、血を流して死んでいた。
「……今ようやく分かった」
菩提樹の木の下で悟りを啓いて見せたシッダールダの如き態度で、ひよこ侍が口にする。
「俺は刀だけを見ていたんだ」
鞘に納めていた刀を引き抜き、その剣身を蠱惑的な瞳で見つめる。
先程斬った、水色の着流しの男の真新しい血臭が、剣身から香っていた。
「俺を突き動かしていたのは、他の何者でもない。……俺はお前を愛していたんだ。やっと、俺とお前だけになれたんだ」
刀は――何人もの人や獣を斬り殺して来た、ひよこ侍の相棒は、黙して語らなかった。
「どうすればお前を俺のものに出来るか、そればかり考えてきた」
「だが俺にはまだ……」、ひよこ侍は言葉を続ける。
「お前がずっと遠くで妖艶なその姿を横たえているように見えるんだ」
その声には深い悲しみが混じっており、その声は何処か震えて、泣き声のような者が混じっていた。
「なあ……。どうすればお前を完全に俺のものにできるんだ……?」
4:
主を失った一軒の家。そのはなれに建てられた道場で、2人の男が死んでいた。1人は、その家の主である侍、ユキムラ。
そしてもう1人は、二刀の剣士ジャンルーカとユキムラを斬り殺し、世界最強の剣士となったが、自分が振るって来た最愛の人/刀と共に死ぬ事を選び、
それを自らの腹部に突き差し自害した、緑髪の青年、テューン・フェルベルだった。
道場の中には、死そのもののような静寂が張り詰めていた。
【クラス】
アサシン
【真名】
テューン=フェルベル@ひよこ侍
【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷A 魔力D 幸運D 宝具B
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
透化:A
精神面への干渉を無効化する精神防御。
暗殺者ではないので、アサシン能力「気配遮断」を使えないが、武芸者の無想の域としての気配遮断を行うことができる。
アサシンがこの世で最も信頼し、そして愛しているものは、自らが振るう『刀』だけである。
無窮の武練:B
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
アサシンは一切の迷いを捨てている為、精神的な障害を原因として武術の腕は劣化せず、多少地形条件が悪くとも、武術の劣化は小さく済ませる事が出来る。
もと居た世界に於いて、アサシンは最強の剣士として数時間、世界に君臨していた。
見切り:B
敵の攻撃に対する学習能力。相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、
同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。
真名秘匿:E(B)
真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。
ランクEは、相手に真名が本当であるかどうか、少しだけあやふやにさせる程度の力しかない。
アサシンの場合は後述する、自らの顔を隠す為に被っていた宝具をつけていた時の方が、どちらかと言うと有名なサーヴァントで、
寧ろこれを外した素顔の状態の時の方が、真名秘匿ランクは上。宝具を外した場合にはカッコ内のランクに修正される。
【宝具】
『亡き友の形見の雛頭(ひよこの被り物)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
アサシンが常にその頭にかぶっている、黄色いひよこの頭を模した被り物が、宝具となったもの。
生前の幼少期に、二刀の剣士・ジャンルーカによって斬り殺された幼馴染であるソラが大事にしていた着ぐるみ。
このひよこのぬいぐるみを被りながら、アサシンは生前幾人もの剣豪を斬り殺し、遂には世界最強の剣士の高みへと上り詰めた。
そう言った経緯から、少しばかりの神秘性を帯びており、Dランク以下の精神耐性宝具やスキルを持たない者は、愛くるしいデザインとは裏腹の、
宝具が放つ異様な血臭と空気に呑まれ、気圧されてしまう。
自らが振るう刀をこの世で最も愛しているアサシンではあるが、この宝具も刀と同じ位重要なものであると言う意識は変わっていない。
気心の知れない相手にこの宝具を触られる事を、彼は何よりも嫌う。
『フェルベルの血筋』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
今まで戦って来た数々の剣豪が必殺技として来た、数々の剣技を摸倣、完璧に自分のものとしてきたアサシンのエピソードが宝具となったもの。
アサシンは、一度見た、或いは受けた剣技を、対人魔剣か否かを問わず、完全に自分のものとして、剣技の使い手と全く同じ技量と速度、威力で使う事が出来る。
奥義の発動に魔力や霊力と言ったものが必要な剣技には、マスターから供給されるそれを徴収し、使用コストに充てる事が可能。
但し、発動に術者の肉体的特性や、余りにも強すぎる個性が関わる剣技に関しては、アサシンは摸倣する事が出来ない。
故郷マニマニにおいて最強の剣士であり、世界中でも最高峰の剣技を誇っていた、アサシンの父、リクナー=フェルベル。
その様な血統と、世界で最も優れた剣士に師事した事で、アサシンの剣の腕前は、凄まじい勢いで開花されて行くのだった。
【weapon】
宗光:
よく手入れされた打刀。師匠であるユキムラから与えられた最初の真剣である。
【人物背景】
マニマニと言う国に生まれた子供。父に、元国家最強の剣士であるリクナーを持つ。
後に師匠となるユキムラと呼ばれる侍が決闘を申し込んだ際、その時の戦いでリクナーは両腕を斬り落とされており、彼は二度と剣を握れぬ身体になってしまった。
其処で彼は、自分のような目にテューンはあわすまいと、なるべく剣から遠ざけるように、平和な生活を送って来た。
ある日マニマニに興行の為にやって来たサーカスに所属する少女であるソラと友達になり、楽しい日々を過ごす。
が、リクナーが戦えない身体になっていた事を知らない、ジャンルーカと呼ばれる剣士がテューンの屋敷を来訪。彼との決闘を要求する。
リクナーが戦えない事に気付いたジャンルーカは逆上、リクナーと彼の妻アヤカ、屋敷で働いていたメイドのミリと、偶然遊びに来ていたソラを殺害する。
その時にテューンは、ひよこの着ぐるみ、ソラの大事な宝物であり、初舞台で彼女が演じていたひよこの役の為のそれを着込んで、屋敷から逃走。
決闘後もリクナーと親交があり、面識のあったユキムラの家へと駆けこみ、何とか事なき事を得る。
それから10年後、18歳となったテューンは、世界最強の剣士となるべく、自らの意思と足でユキムラの道場を出、旅に出る事にする。
この時、ソラの形見であるひよこの着ぐるみの頭の部分を被り、『ひよこ侍』として、サーカス団で一番の女優になる事が夢であったソラの分まで自分が世界一になる事を誓う。
そこでテューンは様々な剣士と出会い、彼らの苦悩や生きざまを目の当たりにし、時に自らの生き方と在り方に悩み、そして剣士としての宿命により、彼らを決闘で下して行く。
遂には、自分の家族の仇であり、圧倒的な剣技の腕前を武器に、小さな共和国の軍隊を壊滅させて、国を吸収。
自らの帝国を一代で築き上げたジャンルーカをも死闘の末に下して見せた。
表向き世界で最強の剣士と知られるジャンルーカを倒した後テューンは、隠居し、世界の誰にも知られていない最強の剣士――即ち、自らの刀の師匠である、ユキムラの道場へと足を運ぶ。
テューンの意を理解したユキムラは、彼を道場へと誘う。彼は、自らの師匠をも斬り殺すつもりであった。
ユキムラは訊ねる。「何のために刀を振るうのだ」と。対しテューンは答えた。『刀のためです』、と……。
今回のテューンは、3つあるマルチエンドの内の一つ、自らが振るって来た刀の美しさを愛し、この刀をどうすれば永遠に自分だけのものに出来るのかと考えた末、
自らの腹部に突き差し、自刃を遂げるエンドからの参戦である。
【サーヴァントとしての願い】
自らの刀に、更に血を吸わせてやる。
【基本戦術、方針、運用法】
ステータス自体は平凡以下のサーヴァントであるが、その実、保有スキルは極めて実戦的なものが高いレベルで揃っている。
ステータスこそ低いが戦闘自体は得意であり、マスターの殺害に失敗した場合は、三騎士が相手でも技術でステ差を覆す事も、不可能ではない。
『フェルベルの血筋』は、宝具にも匹敵する剣技を武器とするサーヴァントを相手には絶対的な優位を保てる宝具ではあるが、逆に言えば使い道はそれだけしかなく、
強いには強いが限定的な宝具であると言わざるを得ない。またアサシン自体も、辿ったエンドの都合上、やや精神を病んでいるきらいがある為、其処も懸念と言えば懸念。
王手をかけるには、やや難しいサーヴァントだと、言わざるを得ないであろう。
【マスター】
千羽烏月@アカイイト
【マスターとしての願い】
不明
【weapon】
維斗:
烏月が保有している、千羽妙見流に伝わる、千鬼を調伏したとされる太刀。
『折れず、錆びず』と伝えられる破妖の太刀で、千羽党鬼切部の証である。
【能力・技能】
千羽妙見流:
烏月が修めている剣術の流派。専ら鬼との戦いの為の剣術であるが、人間相手にも応用が利く。
人ではない存在を相手にする為の剣術であり、気功の概念を取り入れている。八極拳、北辰一刀流、示現流と似通っていると言う
魂削り:
「オン・マカ・キリ・チリベイ・ソワカ」と言う真言を唱えながら、相手を斬る技。
物質的な肉体を持たない、霊体のみの鬼を斬る奥義であり、己の魂を削り、相殺効果で相手を斬る。
が故に、己の魂の絶対量が相手より豊富であることか、相当のやせ我慢が必要。
見鬼:
視えないものを視る能力。妙見(たえみ)の技とも。
鬼や、鬼に取り憑かれた人間、物に込められた力などを見抜くことができる。使用中は右目が蒼く光る。
また、極低ランクの邪視の類を無効化する
経観塚(へみづか)に足を運ぶ前の烏月である為、千羽妙見流の裏奥義である鬼切りは使用不可能。
【人物背景】
人に害をなす鬼を調伏する為の組織である、鬼切部千羽党の鬼切役。
若干17歳と言う若年にも程がある年齢であるが、これは先代の鬼切役である千羽明良が死亡し、その後目を継いだからである。
まだ年若いがその実力は確かで、大の大人が数人がかりは愚か、雑魚の鬼が何体いても退ける程の実力を誇る。
兄が鬼に殺されたと言う過去から、人外の存在に対しては一切容赦と言うものをせず、余程の理由がなければ、問答無用で斬り捨てる。
今回は経観塚に足を運び、羽藤桂らと出会うまえの烏月である。
【方針】
さしあたっては様子見。人外の存在に対しては、容赦はしない。
投下を終了いたします
投下します
シルヴィア・斑鳩・ミスルギはミスルギ皇国の皇女である。
しかしいま、ミスルギ皇国は滅びかけていた。
第一皇女アンジュリーゼが魔力を持たない劣等種ノーマと判明し、皇国から逃げ出した。
その際彼女らの母である皇妃はアンジュリーゼを庇って命を落とし、父である皇帝はノーマと偽った罪によって投獄され、死亡した。
皇国の実権は長男であるジュリオ・飛鳥・ミスルギが握ったものの、先日のノーマ討伐の際アンジュリーゼによって殺害されたとの急報が届いたのだ。
皇国に残ったミスルギの血筋はもはやシルヴィアのみ。しかし彼女は12歳であり、とても皇位を継げる年齢ではない。
夫を迎えその者を皇帝にすれば皇国は延命できるが、そこにシルヴィアの意志が反映されることはないだろう。
傀儡として生きていくか、あるいは皇位を捨ててただの人になって市井で生きていくか、シルヴィアは決断を迫られていた。
「こうなったのも全部、あの忌々しいノーマのせいですわ…アンジュリーゼ、あのドブネズミめ…!」
数日前までシルヴィアの顔色をうかがっていた家臣たちはもはや侮蔑を隠そうともしない。
ジュリオが戦死したことで皇位は宙に浮き、誰がその後釜に座るか熾烈な権力闘争が始まっていたのだ。
彼らの中にシルヴィアを重んじる者は一人もいない。ミスルギ家の血統という体面、説得力だけを必要としているからだ。
このままではシルヴィアは、見も知らぬ醜い中年男の妻となってお飾りの皇妃を演じることになってしまう。
脂ぎった手にこの身体を貪られるなど、考えただけでもおぞましい。どうにかしなければ。
庇護してくれる対象を求め、父が重用していた近しい家臣にそれとなく打診するも、色よい返事はひとつもなかった。
みな、ミスルギ皇国という船から逃げ出そうとしている。そして次に台頭するだろう強力なリーダーの船に何とかして乗り込もうとしている。
「どいつもこいつも! わたくしはミスルギ皇国皇女…いえ、女皇なのですよ! 誰かわたくしを助けなさい!」
八方手を尽くしたものの、どうにもならなかった。
家臣たちの暗闘も決着を迎えたようで、明日にはその内の一人と縁談を迫られることになってしまった。
シルヴィアは自室で手にしたナイフを見つめる。数日前、アンジュリーゼに切りつけたナイフだった。
「全部…全部…あの化け物のせいだわ…。でも…助けて、お姉様…!」
もう他に頼れる人間を思いつかず、シルヴィアはかつて殺そうとした姉に助けを求めた。
その瞬間、シルヴィアの視界が光に満ちた。
シルヴィアの前に、巨大な人型の機械が立っていた。
ノーマが運用している人型兵器パラメイルのようだ。
その機械は膝をつくと胴体を開く。中身は空洞…ではなく、コクピットのようだった。
「な、なにこれ…」
「仮定推論。「これ」とは当機を指していると推測する。
マスターの疑問に返答する。当機は人類銀河同盟が製造したマシンキャリバー、識別コードK-6821 チェインバーである」
シルヴィアの疑問にそのロボットが答えた。
ロボットはシルヴィアの前に手を差し出し、乗れと催促する。
「私は現聖杯戦争において、ライダーのクラスを受領している。
貴官…訂正する。皇女殿下は当機のマスターとして登録されている。当機に搭乗し、行動の指示を請う」
ライダー、マスターと聞いて、シルヴィアの脳裏にいくつもの情報が駆け巡った。
シルヴィアは聖杯戦争という戦いに参加している。
サーヴァントを率いて戦い、勝ち残ったものの願いを叶えるシステム。
どういうわけか、シルヴィアはその参加者に選ばれてしまったのだ。
「で、でもわたくしは…戦争なんて野蛮なことできる訳が…」
「懐疑提言。聖杯戦争に参加しうるマスターはみな、強い願いを持つと推測する。
戦闘行為を拒否するということは、その願いを放棄するということか?」
「願望…」
シルヴィアには願いがある。それは自身の安全の確保だ。
アンジュリーゼや薄汚い貴族の手から逃れ、ミスルギ皇国の皇帝として世界を統べる絶対的な権力。
シルヴィアではなくアンジュリーゼのために命を落とした両親の蘇生。
どちらも現実の世界ではもはや不可能なことだ。だが聖杯戦争なら叶え得る。
迷う道理はなかった。
「あなたは強いの? 勝てるの?」
「返答する。当機は超、強い。
マスターの脆弱な身体能力、操縦能力を減算しても、十分に他サーヴァントを殲滅可能なレベルにある。
加えて、マスターはマナと呼称される解析不能の現象を行使可能。当機の動力となる魔力を供給するマスターとして不足はない」
「じゃあ…わたくしは聖杯が欲しい。あなたの願いは何なのですか?」
「私は、パイロット支援啓発インターフェイスシステム。マスターがより多くの成果を獲得することで、存在意義を達成する」
「…? どういう意味ですの?」
「当機に特定の願望はない。人間に奉仕することが存在意義である」
「つまり、あなたはわたくしの命令をなんでも聞くと?」
「肯定する。当機はシルヴィア皇女の支援任務を遂行する」
チェインバーはシルヴィアの車椅子を掴み、自身のコクピットへと移動させた。
ハッチが閉じる。固定された車椅子から手を伸ばすと、自動的に操作モジュールが手の中に滑りこんできた。
「で、でもわたくし、こんなもの動かしたことなんてありませんわ」
「当機にパイロットの操作は不要である。マスターはただ、コクピットに存在していればそれでよい」
「いるだけでいいんですの?」
「肯定する。当機は単独での戦闘行動が可能だが、人間の搭乗を前提として設計されている。
当機に搭乗し、目標を提示し、動力源である魔力を供給することがマスターに課せられた役割である。
マスターの支援、すなわち戦闘行動並びに敵対マスター及びサーヴァントの排除は当機に課せられた役割である」
「では…行きなさい、チェインバー!」
「有意提言。チェインバーとは当機の真名にあたり、情報漏洩の危険度大と判定。
当機の呼称はライダーを希望する」
「わかりましたわ、ライダー。では改めて…行きなさい、ライダー! ノーマを皆殺しにするのよ!」
「了解。敵対マスター、及びサーヴァントの殲滅を開始する」
こうしてシルヴィアは機械仕掛けの剣…マシンキャリバーの主となり、聖杯戦闘の闇に飛び込んでいった。
【マスター】
シルヴィア・斑鳩・ミスルギ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
【マスターの願い】
ノーマを皆殺しにして自分に都合のいい世界を作る
【weapon】
なし
【能力・技能】
下半身不随のため、電動車椅子に乗っている。
【人物背景】
ミスルギ皇国第二皇女にして、主人公アンジュリーゼの妹。
優しく大人しい気性の持ち主だったが、アンジュリーゼが差別対象であるノーマと発覚してからは人が変わったように残虐な言動を見せる。
ノーマである姉を嫌悪し、また両親を死に追いやった仇として激しく憎むようになった。
実は両足は完治しているが、姉に自責の念を感じさせるためにずっと歩けないふりをしていた。
【方針】
戦闘はチェインバーに任せる。
チェインバーの巨体は目立つので戦闘は極力夜に行う。
昼間はチェインバーの端末を所持し、NPCにまぎれてやり過ごす。
【クラス】
ライダー
【真名】
チェインバーK-6821@翠星のガルガンティア
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:C
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
騎乗:A-
支援AIであるチェインバーは機体そのものでもあり、パイロットなしでも問題なく戦闘行動を行える。
パフォーマンスの低下を承知の上であえて脆弱な生命体である人間を乗せるのは、マシンキャリバーの根幹に根ざす人類銀河同盟の思想ゆえである。
【保有スキル】
重力制御:B
頭上に超重力の球体を生成し、機体周辺の重力に干渉する機能。
一定範囲に近づいた敵の筋力・敏捷パラメーターを1ランクダウンさせる。
【宝具】
『機械仕掛けのブリキ野郎(マシンキャリバー・チェインバー)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大捕捉:500人
人類銀河同盟所属のマシンキャリバー、チェインバーそのものを示す宝具。
人間に奉仕することを目的として製造され、パイロットをあらゆる手段を用いて支援する。
チェインバーは人間の搭乗を前提とするロボットでありながら自立行動が可能なため、ライダーとして成立した。
パイロットが搭乗していない時は携帯通信端末をシステムの子機として扱い、パイロットとの対話や周辺環境の調査が可能。
本来であれば重力制御によって自在に空中を飛行できるが、サーヴァントとして定義されたため無制限の飛行は不可能となっている。
機体性能は本来の50%に低下し、機体サイズも通常の半分(4m前後)にダウンサイジング化されている。
『機械化融合(マキシマイズ・ニューロプラスパワード)』
ランク:C 種別:自己強化宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
パイロットの神経をシステムに直結し、機体性能を大幅に引き上げる。
通常時の倍近い機動性・出力を発揮するが、長時間の使用はパイロットの生命維持に支障をきたす。
【weapon】
ハルバード 金属製のポールウェポン
銃剣付きビームライフル 先端に刃のついたビームライフル
デフレクター・ビーム 全身に装備されたビーム砲
バニシング・スマッシャー 胸部に内蔵された強力なビーム砲
【人物背景】
人類銀河同盟によって運用される機動兵器、マシンキャリバーの量産型モデル。宇宙生命体ヒディアーズとの生存競争に投入される。
全機にパイロットの支援を目的とした会話型AI「パイロット支援啓発インターフェイスシステム」が搭載されている。
機体はいわばAIの手足であり、機体名「チェインバー」はそのまま支援AIを指すことにもなる。
対話や自立稼働を可能とし、パイロットをより強く成長させるために支援を行う。
このため未熟なパイロットであってもチェインバー側が操縦を補佐し、熟練のパイロットと遜色ない戦闘行動を可能とする。
本来マシンキャリバーは人間を乗せない方がスペックを十全に発揮できるが、あえて人間を乗せるのは人類銀河同盟の思想によるもの。
人類の優越性を確信する同盟は人間が人間らしくあることを重視する。単独行動が可能なほど発達した機械にあえて人間を乗せ、人間に物事を判断させるのである。
【サーヴァントの願い】
マスターを支援する。
【基本戦術、方針、運用法】
パイロット支援啓発インターフェイスシステムはマスターの方針に干渉しない。すべてをマスターの意志に委ね、示された目標の遂行を支援するのみである。
チェインバーは複雑な操作をせずとも操縦できるロボットのため、素人であるシルヴィアでも戦闘行動は容易に行える。
普段はシルヴィアの乗る車椅子に接続された端末で周囲を策敵し、敵がいれば機体本体を召喚することで戦闘に入る。
投下終了です
ドラミちゃんは少女に入りますか?
投下します
私は何時ごろからか「バッチリ」という口癖がついていた。
別に何かきっかけがあった訳でも、特に意味がある訳でも、更に言うなら珍しい訳でもないだろうが
――気づけばそれが口癖になっていた。
「バッチリ」それも快活な口調で言葉尻を高く上げるのが常で、より正確に言うならば「バッチリ!」だろうか。
口癖が往々にしてそうであるように、何も考えないでもその言葉が出てしまう。
別にそれが厭な訳ではない。
意味などさしてないことなど分かっている。
ふとたまに疑問に思うくらいだ。私は何でこういう自分を持ったのだろうかって。
誰かに物を頼まれば「勿論!」と言い
その進捗を効かれれば「バッチリ!」と答える。
勿論言葉に違わず頼まれごとはこなしておく。
そういう自分を被っていると、私は友人に恵まれた。
友人とか繋がりとか、得てしてそういうものだ。
結局役に立つ奴が好かれる――なんて捻くれたことを言うつもりはないけれど
でも、どうすれば繋がりから弾かれないか、最低限の処世術くらいは、自然と身に着けていた。
たぶん私にとってのそれが「バッチリ!」なんだろう。
可愛らしく笑って(自分で言うのも何だがそれなりに容姿は整っていると思う)
その上でウザがられない程度には役に立つ。
それが私が十年程かけて形成した私<ペルソナ>なのだと思う。
ある人は私にリーダーとしての素質があると言った。
何故、と聞き返すと(勿論光栄そうなあるいは馬鹿そうな雰囲気を滲ませることも忘れない)
その人は私が「自分を殺せる奴だから」と言った。
なるほどリーダーとは自分をコントロールできる人間でなくてはならない。
そういう意味で確かに私は向いているのかもしれなかった。
でも、私は「私」を殺している自覚はなかった。
そもそも本当の「私」だなんて、そんなことを考えて生きてきたことがない。
求められれば、私は求められた通りの「私」になる。
そうやって生きてきた。
だから私はよく異性に告白された。
モテた。
好きだと言われ、付き合って欲しいと迫られ、私は大抵は求められた通りに応じた。
同時に数人と付き合うこともあった。
まぁ、言うならば浮気だ。まさしく八方美人だ。
ひどいことのような気もしたが、でも私としては断るよりはそっちの方が喜ばれるな、と思ったからこそだ。
そうやって生きていると、時おり自分がとてもひどい女のような気がしてくる。
後ろめたく――いや正確には後ろめたさを感じるべきだと思った。
でも、すぐに忘れてしまう。それほど気にはならなかった。
それはきっと本質的には私は彼らのこと「どうでもいい」と思っているからだろう。
勿論彼らとの繋がりは本物だ。
決して弄んでいる訳ではない。私は男たちの前では――あるいは女たちの前でも、献身的に仕える。
好きだ好きだと迫られれば、私も好き、大好き、とか返してあげる。
彼らにとって都合のいい「私」であろうとする。
けれど一たびその「私」を脱ぎ捨てれば、「私」でなくなった私は「どうでもいい」と思わざるを得なくなる。
そうやって私は生きてきたから。
だから本当は私は「どうでもいい」のだと思う。
私は本当は、何もかも、誰もかも、「私」でさえも、等しく無価値だと思っている。
敢えて言うのなら、それが本当の「私」だろう。
けれど「どうでもいい」では女は生きていけない。
そんな態度では、女の社会からはすぐに弾き飛ばされる。
だからこそ私は「どうでもいい」を「バッチリ!」に覆い隠したのだろうか。
最も、
生きていくことだって本当は「どうでもいい」のだろうけれど。
――ふとそんなことを思った。
とりとめのない考えだった。
口癖なんて、「私」と同じくらい、意味がないだろうから。
それこそ「どうでもいい」ことだろう。
◇
行こう行こうって手を引かれながら私は街を歩いた。
天真爛漫な娘だった。
何時だって楽しげに笑っていて、何かあればちょっとオーバーに驚いてくれる。
「うんうん、なるほどねえ」
街中の一角でストロベリィシェイク片手に彼女は私の話を聞いてくれた。
さして面白くもない話だろうに、彼女は熱心に聞いてくれる。
私は少しおどおどしながらも、転校前の話をしていた。まぁ話題は何だっていい。
休日に一緒に街で歩いて話しているってことが大事なのだ。
「そーんな体験してたんだ。でもこっちでは私が先輩だからね」
「あは」
「思う存分頼るがいい、ってね」
いい娘だと思う。彼女と学友であってよかったとも思う。
友達が多そうな娘だ。転校したばかりの私にとって、彼女のような人と友達になれるのはありがたい。
――今後の布石にもなるし、ね。
学校とはある意味で戦場である。
孤立した小国は大国に蹂躙されるが定めである。
だから孤立は駄目だ。一人では生存していくことなんてできない。
孤立を避ける為新参者はまず大国におもねることになる。
が、ここで仕えるべき大国を見誤っては駄目だ。一見して仲良く笑ってる大国たちも、裏ではどんな繋がり方をしているか分かったもんじゃない。
別にクラスの実験を握ろうだとか、大国の仲間入りしてやろうとか、そんなことは思わない。
ただ最低限上手く溶け込みたい。
何せ私は今もう一つ“戦場”を抱えている。どっちが重要かといえば、間違いなく後者の“戦場”でできればそちらに注力したいところだった。
だから、無難で穏健派の大国についていきたい。
そういう意味で、目の前のクラスメイトの存在はありがたかった。
人望があり、能力があり、けれどえばらずクラスの中心的存在からは一歩引いたところにいる。
とりあえず彼女についていけば、転校生補正もあって当面の日常は守れそうだった。
こういうしがらみに頭を悩ませると、時たま男がひどく羨ましくなる。
うだうだ言っている冴えない奴らも、その実とても気楽そうだ。
「私も昔は色々転校が多くてね。だから分かるよ、あなたの気持ちも。
思わず叫びたくなっちゃうよね。てんこうー! とか」
明るいし、聞き役も上手だし、彼女は中々の“当たり”であると私は分析する。
ちょっと天然も入っているが、あくまでちょっと。
女の子女の子していると同性から攻撃対象に晒されるものだが、彼女の物言いはその境界を中々に見極めたものだと思う。
勿論、彼女がそんな計算高い娘だとは思っていない。
こういうのは本能的なものだ。
考えずとも、直感的にどう生きるかを識っている。
だって死ぬことは怖い。
動物なら、生きているものなら、それは当然の本能だ。
死にたくない。生きていたい。
勿論、私だってそうだ。
だから私は彼女を頼る。
彼女にくっついていって、一先ず生きる場所を得る。
「――以上が昨夜が起こった事件で、死亡者は……」
どこかからかニュースが飛んできた。
頭上の電光掲示板では真面目くさった顔した誰かが事件の解説をしている。
情報が街には散乱している。けれど多くの人はそれに目を向けない。
だって生きていくのには、あまり意味がないことだから。
ビルが陽光を受け艶々と照り返し、そうしてできた影の下には人々がごった返している。
空疎な言葉とエンジン音とコマーシャリズムにまみれた文言をBGMに、散乱した情報を掻き分けるようにして私たちは歩いている。
ああ、ここが戦場か。
これから始まる“戦争”の舞台。
「怖いなぁ……死ぬのって」
そんなことを考えていたからだろう。
思わずそう口にしてしまって、はっとした私は慌てて口を押えた。
変な娘と思われる訳にはいかない。
聞かれていないことを願うが、
「ん、どうしたの? 何か怖いことでもあった?」
しかし彼女は耳ざとく私の言葉を拾って、変らない調子でそう問いかけてきた。
私はやってしまった、と思いつつも精一杯フォローすべく、
「いやさ、さっきのニュースがちょっと怖くて」
そう取繕った。
……どんなニュースか聞かれたら正直困る。ロクに聞いていなかったし。
「ふうん、まぁ初めての土地だと怖いよね」
幸い彼女は追及することなく流してくれた。
それでその会話は終わった。
さして広がりそうもない話題だ。
私は適当に話題を変え、二人で街を歩き回った。
甘いものを食べて、服を見て回って(お金がないので買いはしない)、適当にデパートなんかをぶらぶらして、
まぁ普通の休日だった。変なことは一切していない。
日常の風景だ。そうするつもりだ。
これで一応私にも友達ができた。人望のある、クラスの人気者と友達になれた。
「じゃあ、今日はそろそろ帰ろうか」
彼女がそう言いだして、休日は終わることになった。
既に空は赤い。夕陽に沈む街は変らず騒々しかったが、しかし徐々に空気が冷たくなっていた。
私は頷いて、それで一緒に帰ることにした。
休日の最後のステップ。ここまでは気を抜く訳にはいかない。
私の家(とされる場所)は街から少し外れたところにある。
彼女の寮も近くにあるので、途中までは一緒に帰って貰うことにした。
電車に乗り、騒然とした街から逃れるように、民家とアパートが立ち並ぶ住宅街まで逃れる。
人は大分少なくなっていた。
涼やかに川が流れる横で、遠くで老人が自転車をこいでいる。
先程まで街にいたこともあってひどく寂しい場所のようにも思えた。
学友と一緒に肩を並べて帰りながら、私は今夜のことを考えていた。
夜――それは“戦争”が始まる時間だ。
日常の基盤は一応築いた。短期間であれば彼女にくっついているだけで十分だろう。
問題は夜のことだが――
――その時、私は気付いた。
私の従者が――サーヴァントが目覚めたことを。
あの好戦的な彼が何時もより早く目覚めてしまった。
止めて、と反射的に念話を送った。
――だって殺そうとしていたから。
隣で歩く少女を。
私の日常の基盤を。
ここで得た私の“繋がり”を――
「止めて、殺すのは――」
反射的に令呪を使おうとする。
あらゆる意味で彼女を殺すのは得策ではない。
誰彼かまわず殺そうとする従者を縛り付けなくてはならない。
出し惜しみせず、もっと早くそう告げておくべきだった。
けれど、間に合わなかった。
少女は――死んでいた。
夕方、人気のない河川敷の近く。
そこで一人の少女が命を落とした。
私だった。
ぶち、ぶち、と肉/私が切れる音がする。
「え?」と思わず声が出た。
その時、既に私の身体は切り裂かれていた。
何で――彼女でなく私が
答えを得ることなく、私の意識は閉じた。
最期に視たのは天真爛漫で役に立つ――そう思っていたあの娘だった。
分からなかった。彼女はどんな顔をしているかまでは……
◇
切って、裂かれ、斬られ――殺された。
転校生の少女であった筈の肉は17分割され、その名を喪った。
それを主人公子は一応の驚きを持って眺めていた。
「えーと、アサシンさん?」
公子は戸惑いつつも、その場に佇む一人の青年へと声をかけた。
彼のその手には大きな飛び出しナイフがあり、その刀身には少女の血が付いている。
服装自体は平凡なものだが、異様なのはその顔だ。
マフラーのような布によって、その目は隠されている。
その布は風に吹かれ、ゆらゆらと揺らめいている。
目を隠し、血の付いたナイフを持つ青年。
目の前には17の肉片に切り裂かれた死体。
言うまでもなく殺人鬼である。
否――正確には殺人貴、と呼ぶべきか。
それが公子の従者であった。
彼が今日友達にばかりの転校生を殺したのは、明白だった。
「何で殺したんですか?」
「マスターが殺されそうになってたからだよ。
彼女、いや正確には彼女のサーヴァントがマスターを襲おうとしていた。
俺じゃあサーヴァントには敵わないだろうから、代わりに彼女を殺した」
アサシンの言葉に公子は目を丸くする。
何と彼女もマスターだったのか。そう伝えるとアサシンは呆れたように、
「……気付いてなかったのか。てっきり俺はマスターが気付いてて付き合ってるものだと」
「全然、一緒に遊んでほしそうだったから。とりあえず誘ってみたの」
頭をかくアサシンを後目に、公子は切り裂かれた少女の死体を見下ろした。
が、既にそこにあるのは肉片でしかなく、そこに「生」の感触を一切見いだすことはできなかった。
……殺人貴に「死」の点を突かれ、存在としての終焉を迎えたのだ。
「……彼女、どうやら人間じゃなかったみたいだ」
「なんと!」
「どんな素性だったのかは分からないけど、俺がすぐに反応できたってことはたぶんね」
そう会話を交わしている内に、肉片は風に吹かれ消えていった。
「死」を迎えたものは、ただ消えるのみだ。
「ねえ」
それを見ながら、公子は尋ねた。
「死ぬってそんなに怖いこと?」
と。
何気ない口調で、これから何を食べようか、とか聞くのと変わらない様子で、公子は尋ねていた。
今しがた死んでしまった少女。
少なくとも彼女は死を恐れていた。
聖杯戦争に赴いた彼女は、死を恐れ生きようとしていた。
でも公子は疑問に思う。
何で彼女は死を恐れていたんだろう。
カタチあるものは、何時かは必ず終わってしまうというのに。
時は待たない。死なんて何時か必ず来てしまうものなのに。
「怖いよ」
公子の純粋な疑問に、殺人貴は迷うことなく答えた。
「怖いさ。死っていうのは……視ているだけで頭がイカレちまうくらい怖いもんだ」
彼の言葉に公子「ふうん」と返すのみだった。
怖いものなのか。
どうでもいいものじゃないのか。
公子はよく分からなかった。
「……それでマスター。聖杯戦争の準備は?」
間を置いてアサシンはそう尋ねてきた。
確認の言葉だった。
公子は今度もまた快活に答えた。
バッチリ!
と。
「うんうん。頑張って優勝しよう」
「……頼むよ。俺にも――願いがある」
アサシンと言葉を交しながら、公子は彼の為に「私」を被った。
優秀な司令官で、願いの為に邁進する。
そんな「私」を。
「よーしじゃあ行こう!」
だから「どうでもいい」だなんて「私」は言わない。
【CLASS】アサシン
【真名】遠野志貴(のちの殺人貴)
【パラメーター】
筋力D+ 耐久E+ 敏捷C+ 魔力E 幸運D 宝具C
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
気配遮断 B
気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【保有スキル】
直死の魔眼 C-
魔眼の中で最高位。モノの「死」を視る眼。
このスキルを利用した攻撃に成功した場合、与えたダメージは回復不能になる。
スキル・宝具を「殺す」も可能だが、ランクが高くなるほど攻撃の成功率は落ちる。
彼のものは元来備えていた淨眼が死に触れて「死」を視るように発展したもの。
本来の魔眼ではない為、使用には常にリスクがある。
病弱:A
天性の打たれ弱さ、虚弱体質。
保有者は、あらゆる行動時に急激なステータス低下のリスクを伴うようになる、デメリットスキル。
発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。
七夜:C
その血脈。人外に対する攻撃衝動。
死徒のような人外を相手取る際、有利な判定を得ることができる。
【宝具】
『直視の魔眼・決死の一撃(ラストアーク・サーキットブレイク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
直死の魔眼による一撃必殺。
物に内包された「死」を見切り、その点を突くことにより死を齎す。
英霊といえど終わりなきものはない。
カタチができてしまった時点でそれは終わりを――「死」を内包する。
「死」を見切ったモノを「殺す」。
如何なる防御も意味もなさない上、蘇生・転生すら不可能となる。
「直死の魔眼」スキルにより完全に「死」を見切った存在に対してのみ発動可能。
【人物背景】
出典は「月姫2」……ではなく「真月譚月姫(漫画版)」
本名を「七夜志貴」といい、退魔の暗殺者「七夜一族」唯一の生き残り。
七夜襲撃事件の際、襲撃を指揮した遠野家当主・遠野槙久によって、長男「シキ」と名前の読みが同じという気まぐれで生かされ、養子となった。
その後、真祖の姫アルクェイドと出会い、吸血鬼たちとの戦いに身を投じることになる。
……のちにアルクェイドの護衛として、彼女とともにブリュンスタッド城に留まることになる。
二十七祖第六位・リィゾ=バール・シュトラウトは好敵手に当たる。
この時期になると、魔眼の能力が高まり過ぎたため、魔眼殺しを以てしても、死の線が視えてしまうようになっている。
このため、普段は両目に包帯を巻いて封印するようになった。
「殺人貴」になる前(「真月譚月姫(漫画版)」のラストシーン)の状態で召喚された。
・weapon
「七つ夜」
愛用するナイフ。
七夜に伝わる宝刀で宝刀とは言うが、値打ち物ではない。
年代物だが暗殺用らしく飛び出しナイフ。そんな構造でありながら、死徒の攻撃を受け止めるほどに頑丈。
なお、現実世界で「七ツ夜」を持ち歩いた場合、普通に銃刀法違反。
【基本戦術、方針、運用法】
ステータス的にも普通にサーヴァントと戦えば敗ける。
一応敵が人外(=人間由来の英霊でない)ならば有利に戦えるが、基本的には隠密に徹するべき。
隠れ潜み、死を見切った敵を「直死の魔眼」で一撃必殺が最もスマートだが、あまりに格の高い英霊と戦えば自滅してしまう。
継戦能力も高いとはいえないので、ここぞというところまでは戦闘は避けたいところ。
【マスター】
主人 公子(女主人公)@ペルソナ3p
【能力・技能】
・ペルソナ
ワイルドに目覚め得る可能性を持つが時期が本編開始前なので使えない。
・デス
世界の破滅を招来する"デス"を体内に封印している器。
10年前のシャドウ研究所爆発事故の際に巻き込まれ、両親が死に、アイギスによって暴走するデスの器とされた。
【人物背景】
『ペルソナ3p』において追加された女主人公。通称ハム子。
男主人公と打って変わって明るい性格で、選択肢もノリノリなものが多い。
ただしその背景は変わっておらず、その身に“デス”を宿していることは変らない。
男主人公と同様プレイによっては何股もします。
【方針】
優勝する。
投下終了です
質問があります
性別不明で自由に姿を変えられるから少女の姿にもなれるけど、基本は少年の姿でいるキャラはありですか?
具体的にはネウロのサイ
投下させていただきます。
「あたしって、ほんとバカ」
美樹さやかは呟いた。
気付いた。気付いてしまった。この町は自分のいた三滝原市ではない。
ここは嘘の街。あらゆる関係が嘘で構成された虚構街。
知り合いも家族も似ている全くの別人でドラマのように役割をこなしているだけのNPCだ。
何故自分がここにいるのか。
いつからいたのか。
どうやって来たのか。
そんなさやかの疑問を無視して直接脳に流れ込んでくる知識、情報は絶望的な状況を明らかにしている。
この街の役割は蠱毒の壷。聖杯戦争のために造り出された、三滝原を超える修羅の巷だ。辞退はできないし、抜け出せない。
生き残るにはまず聖杯戦争に勝ち抜くしかない。
そしてそのためにはサーヴァントが必要だ。早く自分のサーヴァントと会わなければならない。
「───ッ!」
走り出すと同時に発動する魔術。歌の如く震える神秘の波動。魂より得た莫大な魔力が彼女の体から沸き上がる。
これこそ異星生物『インキュベーター』の編み出した魂を燃料とする技術。外宇宙よりもたらされた御業に他ならない。
加えて彼女たちの魔術の発動に知識は不要。願う意思に魔術が追従するのだ。
さやかが思ったのは「速く動きたい」。
結果としてもたらされたのは脚力の強化と速度の倍加だ。
勿論、これら一連の魔術行使は彼女が見かけどおりの女子中学生ではないことを示している。
「なんで──」
ギネスの最速記録を更新する速度を発揮しながらも、美樹さやかは苦虫を潰したような表情を浮かべていた。
それもそのはずだ、これでもまだ全力からは程遠い。そして何より変身できない。
* * *
魔法少女という存在がいる。
それはインキュベーターと契約した思春期の少女。己の願望を叶えてもらう代わりに魔女と戦う運命を背負う戦士。そして、もう人間に戻れない者。
人には戻れない。理由は単純だ。魔法少女になる時にどれだけ肉体を損壊しようと戦えるように魂が肉体から剥離されるから。
つまり肉体は魂の抜けた死体で、抜かれた魂を加工した器「ソウルジャム」こそが本体である。
そしてこの事実をほとんどの魔法少女は知らないだろう。少なくてもベテランの魔法少女3人のうち2人は知らなかった。
美樹さやかは正に魔法少女である。
願望と共に背負った運命は重く、人に戻れないという絶望は彼女の精神を歪めた。
* * *
もはや、人ではない。しかし、人に戻る可能性ならばある。
「聖杯……」
万能の願望器ならばさやかを人に戻すことができるかもしれない。
いや、戻ってみせると決意してさやかは駆ける。
中学校から高校の校庭に辿りつく。
そこには確かにサーヴァントがいた。令呪の繋がりで分かる。校庭の中心に佇むあの娘こそが自分のサーヴァントだ。
赤い軍服に白銀の髪を持つ少女。肌は白く容姿は嫉妬するほど端麗。しかし、その黄金の瞳は血走っている。
「ねぇ、あんたが───」
言葉はそこから続かなかった。
なぜならば。
「塵が、臭いわ」
少女の罵倒と共に見えない力の塊がさやかを襲ったからだ。
「あ……」
本能が叫ぶ。死んでも避けろ。
でなければ死ぬ。確実に死ぬ。絶対に死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死────
「うわあああああ」
全身全霊。足の腱が切れようが、筋細胞が弾けようが構わない。持てる力と魔法の全てを使って背後へと跳躍した。
そしてコンマ1秒も経たずにさやかのいた場所の地面が爆砕する。
いきなりサーヴァントと離れ離れになっていた美樹さやかはある意味幸運だった。
跳躍の反動で足の腱が切れ、爆発で飛んできた破片がいくつか突き刺さるが致命傷ではない。
もしも、来るまでに強化に使う魔力を生み出していなければ、ここで確実に地面の染みになっていた。
舞い上がる土埃が晴れる。爆発の中心点には双頭の黒狼が曳く荘厳な戦車があった。
「─────!!!」
サーヴァントの少女と同じく黄金瞳を備えた双頭の狼が吼える。
校庭の空を震わせるのは威嚇ではなく獲物を殺すための獰猛な咆哮。貴様を絶対に殺すという絶対抹殺宣言に他ならない。
少女と狼から放たれる殺意は間違いなくさやかに向けられている。
それが虚仮おどしでないことは噎せ返る魔力を含んだ血の匂いが証明していた。
一体、どれほど人を殺せばこんなに濃く血の匂いを染みつかせるのか。
一体、何故、どうして自分を殺そうとするのか。
本日いくつ目になるか分からない疑問がまたもや生じる。
恐らく彼女のクラスはライダー。騎乗兵の英霊に違いない。
決して狂っているわけでもなく、彼女は正気でさやかを轢殺しようとしたのだ。
「ほう。避けるか。
愚鈍な屑の類ではないようだな」
いつの間にかサーヴァントは戦車の車両部分にある玉座に座っていた。
少女の顔はまるで便所に流す紙屑を見るかのように嫌悪と侮蔑に満ちており、つまりは己のマスターであるさやかを見下しきっている。
「しかし我等は鋼牙、狼だ。人間風情が我等を見下すことは許さん。
故に貴様(マスター)などいらんわ。
その肉ごと令呪を喰らってやろう」
少女がパチンと指を鳴らすと同時、近代の銃火器を備えた小隊が突如として現れ──発砲した。魔力を宿した銃弾(キバ)は音速域でさやかの体に迫る。
さやかは回避で足を負傷していた。よってまともに動くことすらままならない。
──肩。
──腹。
──眼。
──胸。
──鼻。
──首。
──股。
──額。
さやかの体に風穴を空けた牙は、まるで事前に打ち合わせていたかのように均等に、そして同時にさやかの体を蜂の巣に変えた。
「止めィ!」
女王の号令と共に兵士達が一斉に捧げ筒の姿勢になる。
一人たりとも遅れず、動きを乱す者はいない。
静と動の呼吸が完全に一致しているこの兵士達を見れば、どんな指揮官でもため息をつくだろう。
「よくやった我が子らよ。休めぃ」
撃たれた少女は瞬き一つしていない。脈拍なし。心配停止。呼吸音など兵士たちのものしか聞こえない。完全に死体だ。
戦車から降りて──死体ごと令呪を捕食するために──さやかに近寄るサーヴァント。動かなくなったさやかの頭を掴み、首筋から喰らおうとしたその瞬間。
銀色に光る一線がサーヴァントの首筋を通り、少女の首と胴が離れた。
「──────」
兵士達に動揺が走る。
彼女の首を切り落としたのは殺されたはずのマスターだった。
自分達に急所を撃ち抜かれ絶命したはずの少女だった。
それが、今、魔力で編まれた軍刀(サーベル)でサーヴァントの首を刎ねたのだ。
「なめんなってんだ!」
悪態をついた美樹さやかの傷は癒えていない。額に穿たれた風穴はきっちり後頭部まで貫通し、心臓も同様──つまり、死んでなければおかしいのだ。
だが、美樹さやかは生きていた。致命傷を負ったままサーヴァントを斬首し、肉体を復元している。
「やるではないか」
「なッ」
「何を驚いている? まさか自分以外に復活できる奴がいるとは考えなかったのか?」
しかしながら、生命を嘲笑う不条理はさやかだけの特権ではない。
斬首された少女の首の断面。そこから噴水のように血液が、肉が、骨が湧く。
ビデオテープの逆再生のように全くの無傷の状態まで再生した。もはや血の一滴たりとも残ってない。
さやかの蘇生の秘密は魔法少女の構造にある。さやかは肉体はどれだけ損壊しようと本体の「ソウルジャム」が壊れなければ死なないのだ。
つまり、傷ついた肉体は後で修復すればいい。痛みは遮断できるし、動けないほど破壊されなければいつまでも戦ってられる影武者だ。
しかしサーヴァントの蘇生──刹那の間に再生しきるその生命力は文字通り不死だ。
死なずに致命傷から復活するその再生能力は、さやかにもたらされたサーヴァントの知識からも逸脱していた。
「このままでは決着がつかんなぁ。
ふん、貴様も不死、私も不死となれば最後に物を言うのは令呪か。業腹だが使われては仕様があるまい。
使うことを許すぞ。さあ、使うがいい」
サーヴァントは傲岸かつ愉悦の色を浮かべて煽る。
何かの罠か、それとも令呪に抗う自信でもあるのか──と狡猾な魔術師や歴戦の戦士ならば考えるだろう。
しかし、美樹さやかは女子中学生だった。
ましてや殺し殺された極限状態でそこまで頭は回らない。
「あんたに言われなくても──令呪を以て命ずる!」
令呪。それはサーヴァントに対する絶対命令権。さやかをはじめとする聖杯戦争のマスターは必ず肉体のどこかに三画の聖杯戦争用魔術刻印たる令呪がある。
そして令呪の使用こそがライダーのサーヴァント、キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワの狙いである。
令呪の使用時に励起される肉体の部位を噛み千切り、そのまま取り込む算段なのだ。
キーラの思惑通りに令呪は起動し、そして────肉体のどこにも励起している魔術刻印はなかった。
「馬鹿な」
確かに目の前の少女は己のマスターであることは魔術的パスを通じて確信している。そしてその少女が令呪を使おうとしていることも。
にもかかわらず、励起して浮かび上がるはずの令呪が身体のどこにもない。必ずマスターには「体」のどこかに令呪があるはずなのだ。一体どこにある!
魔法少女の構造を知らず内心驚愕しているサーヴァントにさやかの絶対命令権が発動する。
「サーヴァントらしく私に従え!」
かくして令呪は行使される。キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワは首輪に繋がれた。
大嵐の如く吹き荒れていた殺意は鳴りを潜め、兵士と黒狼もそれに続かざるをえない。
英霊相手に殺し合いをするという苦難を退け、なんとか従えさせたさやかはほっと一安心した瞬間。
〝 本当の気持ちと向き合えますか?〟
何かが頭をよぎった。いや、これは失っていた記憶だ。
「そうだ、私はあの日……ひとみに呼ばれて……それで……恭介が好きって告白されて……」
過日の記憶がさやかを捕える。
かつて自分は魔法少女の肉体の秘密を知り、死体である己に絶望し、親友の恋慕を告白された。
そして肉体を顧みずに敵へと特攻し、それを案じた友を突き放し、仲間になろうという誘いを蹴って、そして──そこから先が思い出せない。
まだ令呪は二画残っている。
* * *
彼女のソウルジャムは完全に濁りきり、既に罅が入りきった後で止まっている。
それを押しとどめているのは令呪だ。彼女の令呪は呪いの記憶をする蓋となっている。
もしも令呪を使い切れば、彼女は全てを思い出し、魔女として己を取り戻すだろう。
狂気の歯車は回り出す。
無論、その狂気は令呪を通じてサーヴァントにも流れ出していた。
【サーヴァント】
【クラス】ライダー(バーサーカー)
【真名】キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ@相州戦神館學園 八命陣
【属性】悪・中庸
【パラメーター】
筋力:B 耐久:EX 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:E 宝具:D
【クラススキル】
対魔力:D
ライダーのクラス別スキル。一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:E
ライダーのクラス別スキル。
ライダーにあるまじき適正だが、彼女の真価は白兵戦である。
狂化:E- → C
スキル『二重召喚』によって得たバーサーカークラスのスキル。
このスキルはライダーが狂気に堕ちた時にのみ真価を発揮し、
同時にバーサーカークラスの宝具『鋼牙機甲獣化帝国』が使用可能となる。
通常時では痛みを知らない程度の効果しかもたらさない。
Cランクの場合は幸運を除く全パラメーターを上昇させ、代わりに複雑な思考ができなくなる。
【保有スキル】
二重召喚:B
ライダーとバーサーカー。二つのクラス別スキルを保有している。
本来ならば二つのクラス特性を同時に発動可能とするものだが、
ライダーの場合はどちらか一方のクラス特性に偏る。
魔眼:A
先天的に持っていた黄金の魔眼。
冬のシベリアを灼熱地獄に変える魔力炉と見た者を支配下に置く能力を持つ。
その支配力は他種の生物すらもライダーに細胞を融合させ一方的に己の肉体に融合させるほどだが、
ライダーは家族以外を憎悪するため敵対者には支配能力を使用しない。
邯鄲法:A → C
ライダーの使用する夢の世界から空想上の力を現実に引き出す術式『邯鄲法』。ランクはその練度を意味する。
このスキルにより魔人として常軌を逸した戦闘能力を獲得する。
この世界ではうまく起動しないのか、得意としている再生能力以外のステータスが下がっている。
直感:B → ×
有利な展開にする方法を感じ取るスキル。
ライダーの場合、戦闘中、それも白兵戦に関する事しか機能しない。
高いステータスとこのスキルのおかげで白兵戦では武人四人を相手に一方的な虐殺ができるほどの無類の強さを誇る。
『鋼牙機甲獣化帝国』が完全発動時にこのスキルは失われる。
しかし、それは感じ取れなくなったのではなく、必要なくなったというべきだろう。
【宝具】
『ロシア帝国機甲獣化聯隊・鋼牙兵』(ゲオルギィ)
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:0 最大捕捉:3000人
ライダーと堅い絆で繋がっている彼女の配下部隊3000人を全ステータスEのサーヴァントとして召喚する。
またサーヴァントでないためクラス、スキルはない。
英霊たちに比べると脆弱だがDランクの宝具と化したアサルトライフルに加え、全員が同じ技量、同じ価値観かつほぼ同時に連携が可能。
まさに理想とされる統一された軍隊であり群体、そしてライダーの家族である。
この宝具はライダーが狂化した時に封印される。
『ロシア帝国機甲獣化聯隊・双頭魔狼』(ロムルス・レムス)
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:0 最大捕捉:1頭
双頭の魔狼が曳く戦車を召喚する。ただし戦車自体に戦力はなく、本命は双頭の魔狼である。
ライダーと堅い絆で繋がっている彼女の部下の中で最古参であると同時に最強の部下。そして最愛の姉妹である魔狼。
筋力と魔力がBランク、他のステータスがDランクで召喚される。またサーヴァントでないためクラス、スキル、宝具はない。
この宝具はライダーが狂化した時に封印される。
『鋼牙機甲獣化帝国』(ウラー・ゲオルギィ・インピェーリヤ)
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:-
ライダーの最終宝具。
宝具の解放には二段階あり「狂化していること」で第一段階の半発動、「相手に人外だと思わせる」こととが第二段階の完全発動となる。
半発動で幸運以外の全ステータスを1ランクアップさせ、邯鄲法で偽装していた一部の変身が解除される。
完全発動時には幸運以外の全ステータスのランクが最大2ランク上がる。
さらに邯鄲法による変身が完全解除され、ロシア帝国機甲獣化聯隊全員と物理的に結合した人型の人の山になる。その姿は暗黒神話の超獣と呼ばれるほど。
また、物理的な肉の城壁と化した兵士全員がDランク宝具に相当する銃火器を装備している。
【weapon】
なし。邯鄲法で強化された彼女の全身が武器である。
【人物背景】
ロシア帝国軍人。階級は大佐。しかし、彼女が物心ついたときにはロシア帝国は滅んでいる。
見た目は白銀の髪を持つ幼い少女であり雪の妖精のような印象を受ける。
高慢で貴族の悪癖を全て備えたような性格だが、ロシア帝国機甲獣化聯隊を家族として掛け値なしに愛している。
故に、例えそれが末端だろうと家族に刃を向けた者を許さない。
戦闘スタイルは技巧ではなく芳醇な生命力と高いステータス、そして鋼牙兵による物量作戦に依存するため彼女の強さは群れる獣の強さと言っていいだろう。
なお、耐久値の高さは鎧のような防御力の高さをではなく、どんな致命傷からも甦る生命力の高さを意味する。
生半可な威力の宝具では彼女を殺しきることは不可能に等しい。
その性格からサーヴァントシステムで縛られることを嫌い、マスターを嫌悪しているが、
人間嫌いのライダーが美樹さやかに召喚されたということは彼女に限りなく近い属性の持ち主といえる。
【サーヴァントとしての願い】
ただの人間に戻りたい
【マスター】
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ
【マスターとしての願い】
人に戻りたい。
【weapon】
魔法少女の固有武器であるサーベル。魔力による創造が可能。
【能力・技能】
魔法少女。魔法とはいうが神秘の類ではなく異なる宇宙の異星生命体が編んだ技術の粋であり、宇宙そのものを改変するような力はない。
魔術体系がこの宇宙の法則に合わないのか、うまく魔法少女に変身できず、身体能力は並の女子中学生と同等だが、魔術で強化している。
魔法(魔術)は卓越した強化、回復、投影の魔術のみが使用可能な半端な状態。
また魔法少女の構造上、半ば不死身と化している。
彼女のSAN値(正気度)もサーヴァントの狂化具合に影響する。
【人物背景】
三滝原市の地域にいた魔法少女。
魔法少女とは自身の願望の成就と引き換えに魔女と戦う存在。
また、肉体は実質人間とはかけ離れたものに変異し、それは魔法少女の中でも一部の者しか知らない。
彼女もとある戦いの後に知ったのだが、その後の出来事に関する記憶を消失している。
令呪を使うほど失われた記憶が甦ると同時に絶望し、SAN値が下がる。三画使えば完全に■■になる。
彼女の影には時折、何か巨大なものが見えるらしい。
【方針】
聖杯とって人間に戻るぞ
投下終了します
準備中のwikiです。
ttp://www41.atwiki.jp/girlwithlolipop/
感想は必死こいて書いています、もうしばらくお待ちください。
>>280
貴方の性癖にケチをつけるつもりはありませんが、
ドラミちゃんは少女でいけるやろと一欠片でも思ってしまったのならば、少女聖杯は向いていないと思います。
>>289
精神性が少女であるかどうかを重視します、
個人的な事を言うならばサイは少女ではないと思います、XIは可です。
>>296
名前欄に名前を入力する。(必要が無ければ入力しなくてもよい)
名前の後に"#"を入力し、続いて(トリップキーとなる)任意の文字列を入力する。
書き込む。
トリップの付け方を勘違いしていらっしゃるようですので、トリップの付け方を記述しておきます。
よろしければお試し下さい。
XIではなく、?と書くつもりでした。
>>297
お疲れ様です!
水銀燈&アーチャー、投下します。
少女は成長する。
少女はいつか少女であることをやめてしまう。
いつの日かお人形遊びをやめて、扉の向こうに駆けていってしまう。
では、少女人形は――――?
* * *
少女が突然大人になるように、
その人形も突然に目醒めた。
精巧な長い睫毛にふちどられた紫の瞳が、
彼女を抱き上げている人間の瞳をまっすぐに射抜く。
彼女が只のお人形ではなく、“生きている”証左。
生きるべく、戦う意志を持つ存在である証左。
イヤダ、コノオニンギョウ、メダマガグラグラシテル。
ケッカンヒンダワ。ステナキャ、ダメネ。
偽りの主の耳障りな言葉が、覚醒をさらに促した。
伸ばされた手を払いのけ、ちいさな唇が傲岸な命令をつむぐ。
「アーチャー! 来なさい!」
――――。
白いフリルと黒いシルクが視界を覆う。
「護鬼剣゛妖(ごきげんよう)、ご主人様ァ!?」
NPCを引き離し、間に割って入ったのは黒い影。
鍛え抜かれた軍用ドーベルマンのような黒ずくめの少女だった。
170センチ前後の身長(タッパ)に、鴉の濡れ羽色のロングストレート。
顔の左半分は髪で隠れているが、目元は切れ長で凛々しい。
そして、まるでマスターと揃いで誂えたような――
繊細なレースに、ふんわり裾の膨らんだ黒のゴシックロリータドレス。
「アンタが妾(アタシ)のご主人様(マスター)か?
人ん家荒らすのも佳くねェし――とりあえず場所移そうぜ」
目を白黒させているNPCの女にちらりと目をくれ、
ゴスロリのアーチャーは窓をからりと開け放った。
夜風がさあっと吹き込み、頬を撫でる。
サーヴァントが差しのべた手を、彼女は蹴った。
誇り高き薔薇乙女は、自分の力で飛べるのだ。
街の外れにある廃教会に、大小二つの影が舞い降りた。
聖杯戦争の参加者として目覚めた彼女――
人工精霊を従え、宙に浮かぶ薔薇乙女の第一ドール・水銀燈。
その傍らには、水銀燈自身をモデル等身に引き伸ばして、
翼をもぎ取り髪を黒くしたようなゴスロリサーヴァントが侍っている。
水銀燈は数時間前とは打って変わって、いまや本来の、
生き人形のごとくに豊かな表情を――糺し不機嫌極まりない面を――浮かべていた。
クリスマスに欲しくない玩具を貰ってしまった少女のような。
先程の人間を見つめたのと同じ瞳、即ち汚いものを見るような目で
自分にあてがわれたサーヴァントを眇める。
「E・E・E・E・C・D。……なにこれぇ? ゴミじゃない」
三騎士の一角を為すサーヴァントには有り得べからざる低ステータス。
何らかの嫌がらせが働いているとしか思えない。
陰湿な“根回し”。狡い“裏工作”。少女同士ではよくある事だ。
「徒花(ゴミ)とは言ってくれるじゃねェか……あァ?」
少女のサーヴァントが、不意に自分の頬に手をやる。
そこには淡く血がにじんでいた。
「怒っちゃダメよぉ。ちょっと挨拶しただけ。……サーヴァントのくせに、脆いのね」
「そっちから因縁(アヤ)つけてくるたァ佳い度胸じゃねェか。ルール解ってんのか?」
「勿論よ。貴女を殺したら、私の探している相手がノコノコ来るって事くらい……
とっくに解ってるもの」
背に流れる麗しい銀の髪をかき分けて、禍々しい黒い翼が広がる。
同時に、アーチャーも主の意図を汲んで宝具開帳の詞を吐く。
「侵蝕(こ)いよォッ! エクスターミネーター(Bellis perennis L .)!!」
「ア゛アアアアアアあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁァァァァアアアア!!
痛ってエエエエエエエエエエェェェぇぇぇぇぇぇええええええ!!!」
少女の苦痛の雄叫びと共に、アーチャーの肉体が“変身”する。
「まずは、腕ぇッ! 肉と皮膚! 骨格も!」
血管は高圧線に、筋繊維はモーターやシリンダーに、骨は合金フレームに。
乙女の心音は、エンジンの轟駆動音に。
その姿はまるで人造人間(サイボーグ)のよう。
――レースを引き裂き、鋼鉄の銃身が姿を現した。
六本もの砲身を持つガトリング機関銃に変形した腕が、水銀燈に向けられる。
全長1メートル、重量であれば100キロに迫るであろう銃砲から、
「発射しなァ!」
ガガガガガガばりばりガガガばりばりばりガガガガガばりガガガガガガガガッ!!!
無数の金属塊が高速で群れを成して迫りくる。
風にさからわぬ羽毛のように、ふわりと高く浮いて躱しながら水銀燈は耳を塞ぐ仕草をした。
声に、駆動音に、銃声。このサーヴァントは、三重に煩い。
「エクスターミネーター、手を銃(チャカ)にッ!」
自らの宝具たる≪花≫の神秘で左手を拳銃に変異させたアーチャーが、鋼鉄の指で差す。
先端から、鋭く撃ち出される鋼鉄の弾。
魔力の光を曳く礫を水銀燈は飛翔して躱し、黒い羽根の返礼を見舞う。
アーチャーのドレスが破け、黒白の布切れが羽のように舞い散った。
裂け目からは傷ひとつ付いていない肌と、可愛いブラジャーが覗いている。
「よくも服破りやがったなァ!」
「欠陥サーヴァントの癖に色気づいてるのねぇ」
「るせェよ」
もう一発のおかわり弾も、水銀燈は飛んで躱した。
軽々とあしらっているように見えるが、
水銀燈の心の内には苛立ちの荊棘が蔓延っていた。
(めぐ……)
雪華綺晶に拐れた自分のマスターのことを思うと、平静では居られない。
めぐと雪華綺晶を追ってnのフィールドへ入りこんだ筈が、
なぜかアリスゲーム紛いにつきあわされる羽目になっている。
聖杯戦争のルールを理解した瞬間に、
まず浮かんだのはサーヴァントを殺めて雪華綺晶を釣り出す事だった。
しかし、思った以上に手間がかかる事にも気付いた。
稀代の人形師ローゼンにより造られたドール、薔薇乙女(ローゼンメイデン)。
錬金術で生成されたローザミスティカを魂の核にしている彼女たちは、
いわば存在自体が神秘の結晶。ゆえに、その攻撃にも神秘が宿る。
普通のサーヴァント相手なら通用しないだろうが――
魔力も対魔力スキルも貧弱な目の前のサーヴァントなら、ほんの僅か通るという事だ。
ちなみに、先程因縁を付けるのに使った羽根は
普通の相手なら顔に口が一つ増えている程度の力を込めて放った一撃だ。
それでも、かすり傷。
めぐへの負担を気にしながら力を小出しにしている事もあり、
己の力のみでサーヴァントを殺すのはやや苦しい。
ならば、ここは巧く騙して他のサーヴァントと戦わせて潰すか――。
もしくは、他のサーヴァントを失った参加者を庇護すると見せかけ手元に置いて
ルーラーの到来を待ち構えるのも手だろう。そこまで都合よく事態が転がることは中々無いだろうが。
再び、教会の伽藍にアーチャーの大音声が響く。
「侵(ヤ)れよォ再改造! 腕、刀剣(ヤッパ)に! 両脚、脚力上げェ!」
アーチャーは顔を苦痛に歪ませながら床を蹴った。
そして餌の小鳥を捕る肉食獣のように、黒翼の天使へ猛然と肉薄する。
改造の済んだ片目が、無慈悲な殺戮機械のように赤く瞬く。
比喩ではなく、今その眼球と視神経はまさに本物の機械と化していた。宝具の神秘に依って。
その不吉な色を水銀燈は見下し――――
「やぁめた」
「あァ?」
嫌みなほど怠惰な口調で、勝負を投げた。
肩を竦め、ゆっくりと高度を下げて、朽ちた祭壇の上にブーツの踵を乗せる。
祭壇に額ずくような位置に着地し、眉を上げるアーチャーだが
彼女も先刻の刃は水銀燈の腹部に突き立てる寸前で確りと止めていた。
「貴女を虐めたところで、力を持っていかれて疲れるのは結局私。バカバカしいわぁ」
クスクス笑いながら、媚びるように――馬鹿にするように小首を傾げる。
「怒らないでね、貴女の力を見ておきたかったのよ。マスターとして……ね」
「……本気(マジ)で言ってンのか、それ?」
アーチャーは宝具を解除し、元の色に戻った目で水銀燈を睨んだ。
力で勝るサーヴァントだろうと、怖くはない。
ファーストコンタクトでNPCや水銀燈を気づかうような素振りを見せたり、
先程の馴れ合いのような戦闘の最中でさえも
水銀燈を撃ち落とし痛めつけようとすれば余裕でできた筈なのに全くしなかった所を見ると、
おそらく根は可哀そうな程の善人なのだろう。
単純な性格も含め、利用し易そうな人となりで
弱点も顕かなサーヴァントを引き当てられた事はまずまずの僥倖か。
(せいぜい役に立ちなさい。
私が魔力(ネジ)を流し(まい)てあげないと動けないお人形さぁん)
【クラス】
アーチャー
【真名】
瀬戸・多実華(せと・たみか)
【パラメーター】
筋力:E〜B 耐久:E〜B 敏捷:E〜B 魔力:E 幸運:C 宝具:D
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:D
マスターを喪っても半日程度の現界が可能。
【保有スキル】
カリスマ:E
最大で10人前後の小集団に統率力・指揮能力を発揮する。
戦闘続行:A
腕が斬られようと首チョンパされようと
自己改造によって生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
五体パージ・爆破により、トカゲの尻尾切り戦法も可能。
ただし宝具に完全に依存するスキルのため、
≪花≫に指示するための声を封じられるなど
宝具が使えない状態に陥った場合このスキルは無効となる。
料理:D
家庭的でおいしいご飯が効率よく作れる。
【宝具】
『野菊の君』(エクスターミネーター)
ランク:D 種別:対軍 レンジ:1〜10 最大捕捉:10
声により≪花≫(リリ/宝具)に指示を出し、自らの肉体に強化・改造を施す力。
宝具使用(自己の肉体改造)時には
「麻酔下手の歯医者さんに全身の肉と骨を削る手術をしてもらってるような激痛」が伴う。
この激痛に耐えられる無尽蔵の気力と根性によって、
無限に自己の肉体の「再生」「改造」「強化」が可能。
展開時はエンジンの駆動音がバリバリ響いてすごくうるさい。
具体的には筋力・耐久・敏捷をB相当まで押し上げることができる。
腕を重火器や鋼鉄の刃に変異させる・手の拳銃化・
血液と生体ホルモンをニトロ化して繰り出す「尼斗露拳(ニトロパンチ)」など多芸。
ボディを硬化させて防御、ダメージを再生修復する等、継戦能力にも優れる。
爆発ボルトを生成して四肢や頭部を自らパージし、致命的な攻撃を力技で回避する事も可能。
【weapon】
宝具エクスターミネーターにより、彼女の五体総てが武器と成り得る。
全身改造も可能だが、あまり好きではない。
【人物背景】
少女能力者≪花使い≫(リリス)を集めたバートネット女学院に所属する女生徒。
不良グループ「デイジーチェイン」のナンバー2。
仇名は「血塗れロリータ」「不死身のタミー様」「女鋼(じょこう)」「少女戦艦」等。
「いくら攻撃しても平気でこっちに向かってくる」(被害者談)。
スケ番のような喋りが特徴のゴスロリ不良女学生。齢十七。
義理堅く筋の通った、硬派で清(おんな)らしい性格。
強力な能力を持つ実妹を護る為に≪花使い≫になった「元・普通の人」。
素は大人しめのお姉さんで、妹の春歌を守る為に無理して怖いキャラと見た目を作っている。
実家は惣菜屋「デリカ・デイジー」。
両親は多額の借金を残して共に他界。彼女が惣菜を作って店と生活を支えていた。
【出典】
『百合×薔薇』2巻だけ読めばほぼ把握できる。
【マスター】
水銀燈@ローゼンメイデン
【マスターとしての願い】
ルーラー(雪華綺晶)から、めぐを取り戻す。
【weapon】
背中の黒い翼
【能力・技能】
他のドール達と違い、
契約をしていない人間からも魔力を奪うことが可能。
【人物背景】
原作第一期と二期の間。
めぐを雪華綺晶に奪われた後の時期から参戦。
【方針】
聖杯狙いを装いつつ、ルーラーとの接触が主目的。手段は問わない。
(※尚、ここのルーラーが水銀燈の探す雪華綺晶と同一である保証はない)
マスターの魔力は中々で、サーヴァントの燃費も良い。
反面、神秘のランクと対魔力が低いためキャスターとぶつかると危険。
決して強い主従ではないため、立ち回りに気を使う必要があるだろう。
投下終了しました。
>>121
投下乙です、橘ありすさんと白野蒼衣ですね。
殺さない、殺されない、この殺伐とした聖杯戦争の中で実際良縁に恵まれた主従だと思います。
年上の少年と年下の少女とのボーイ・ミーツ・ガールには非常に燃えるものがありますが、
性格に対してバランスを取るかのように宝具に爆弾を抱え込んでますね。恐ろしいことです。
SSに関して何か言うならば、超常的な状況に対して、勇気を振り絞り、意見を発するというのは、実に王道を征く第一話であると思います。
少年漫画ならヒロイン、夢小説ならば、「面白い」って言われるド王道ですね。熱いです。
投下ありがとうございました。
>>128
投下乙です、牧野エリさんとやみのディアルガですね。
辛いことでもあったのでしょうか、他聖杯ではルーラーとしてぐう聖っぷりを発揮していたディアルガさんが、
一回戦っただけでマスターを即落ちさせる超消耗バーサーカーになってしまいました。悲しい物語です。
しかし、エリちゃんカワイイですよね、揺さぶられ、先生もおらず、その上、サーヴァントがバーサーカーであるためにストッパーもおらず、
最悪な状況で覚悟を決めることとなってしまいましたが。
状況としては限りなく積みに近いですが、是非ハッピーエンドを想像して頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>139
うわあ……、これは慧音さんとアヴェンジャーですね。
なんだこのSSは……。たまげたなあ。
氏のSSに関してどれも言えることですが、淫夢をサーヴァントに落としこむ形としてはどれも完璧と言えるでしょう。
その上、王道を行く野獣先輩を当少女聖杯に投下なさってくれたことは喜ばしいことであると思い、
不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは……。
投下ありがとうございました。
>>147
投下乙です、御園千綾さんとカービィですね。
マイペースな少女のようですが、とりあえず前に進もうと今できることをするのは立派なことであると思います。
カービィ2といえば、3匹の仲間たちですね、小学生時分、SDXよりも3の方に夢中だった自分としては、最近のカービィでは仲間に乗れないのが寂しいところです。
セリフはアニメとコロコロ版漫画のミックスでしょうか、過去を思い起こさせます。
投下ありがとうございました。
>>152
投下乙です、日野茜さんと真田幸村ですね。
熱い二人が揃うと!が多くなりますね!!!ウリエル信仰のようにひたすらに過熱していく様子、楽しませていただきました!!!!
真っ直ぐすぎるというのは恐ろしいことでもあります、少年漫画のような清々しい物語の舞台にあると考えてしまったのでしょうか。
しかし、サーヴァントに恵まれ、話し合いの余地を持ちやすい舞台であります、一旦落ち着くか、それでも爆走するか、
どちらにしても面白いこととなるでしょう、しかし少女聖杯において清涼剤のような熱さであることですね!!!
投下ありがとうございました!!!
>>158
幸子の趣味がノートの清書ってなんか闇を感じますよね、って僕のSSですね。
一応、自分に投下乙を言っておきましょう。
>>168
ドーモ、白坂小梅=サン、ジェノサイド=サン。投下乙です。
こういう過去描写に対しては大体ガッツポーズを取りながら、「ヤメロー!ヤメロー!」と叫ぶのですが、
今回は過去という前振りから、ジェノサイド=サンのお陰で救われた形となり、
とりあえず徹底的に落とすために過去描写を行う自分としては書き手としての単調さを反省するばかりです。
いいですよね、こういう大人と少女の組み合わせ。
投下ありがとうございました。
>>176
投下乙です、シルクちゃんと本多・忠勝ですね、クソッタレー!
どうでもいいことですが、忘却王立劇団という集団の名前の格好良さはフィクション集団カッコイイ名前ランキングの中でも上位の存在だと思います。
【1】【2】と物語のページがめくられていくのは実にわくわくすることですね、演出の妙であると思います。
そして忘却の国とこの街を重ねるとは、成程と唸るのみです。
このSSを読んで、再プレイ用セーブデータから忘却王戦辺りからプレイしなおしました。
投下ありがとうございました。
>>190
投下乙です、大井さんと我望理事長ですね。
圧倒的な筆力で書かれた大井さんの喪失と再生の物語、実に素晴らしかったです。
すると世界は――――――色に満ちていた。
特にこの一文からが烈しいですね。
モノクロの世界が色づく様子を頭の中ではっきりと描くことが出来ました。
ネビュラゲートが自棄糞自殺宝具として発動しないことを心の底からお祈り申し上げます。
投下ありがとうございました。
>>208
投下乙です、天本玲泉さんと勇者シロウですね。
まさしく、凄絶な一言に尽きるSSでしょう、文章という鈍器で人を殴り殺しに行く感じですね、死にました。
――――幸せになりたい、と。この台詞と再会のために綴られた壮大な物語にただ圧倒されるばかりです。
投下ありがとうございました。
>>213
闇に飲まれよ。此処にあるは堕天使と漆黒の騎士。
孤独なる世界で寄り添う者は共通言語の異邦者か。
否、偽りの鎧に対し、英霊語るは真性の言葉。
堕天使よ来るべき恐怖の未来に備えよ。
そして創造者よ、今はただ闇が貴方を包む。
>>223
投下乙です、岸波白野さんとダークネス・ゴートですね。
良縁に恵まれる傾向があるようです、ゲームの方はやったことはありませんが原作大ボスも、いい感じのパートナーとなりました。
普通のデュエルだけでなく、モンスターの実体化に対応しているのも強い点でしょう。
令呪を以て初手エクゾ、令呪を以てソリティア。色々と夢が膨らみますね。
投下ありがとうございました。
>>232
投下乙です、楠リッカさんとVAVAですね。
VAVAに引っ張られる形で聖杯戦争への積極的な参加を決めましたか、
元の世界のことを考えればしょうがない面もありますが、しかし物悲しい面もあります。
彼女の明るさが救いでしょうか。
それにしても、全部元に戻した上で自分の願いを叶えるというのもなかなか珍しい行動方針であると思います。
このように面白いものが見れるのも聖杯コンペの醍醐味といえるでしょう。
投下ありがとうございました。
>>242
投下乙です、フェイトさんと綾波レイさんですね。
クロスSSの気持ちよさを存分に味わえるSSであると思います、特に『第一の魔法―――<<魂のルフラン>>』ここが良い。
また、再度読み返すことでプレシアとフェイトの心の壁という言葉からATフィールドを思わせることもまた、作者氏の業前といえるでしょう。
しかしフェイトさんは本当に可哀想だと思いました(小並)
投下ありがとうございました。
>>251
投下乙です、なのはさんとめいおー☆こと木原マサキですね。
天のレイジングハート、この破壊力、まったくクロスSSは地獄ですね。
是非とも奴を呼び戻してもらいたいところであります。
それにしても、寝てる間に所有権を奪われるとはこれがほんとの寝取られといったところでしょうか。
なのはさんには是非、原作での最強攻撃、パイロットの拉致でマサキさんを何とかしていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>262
投下乙です、江ノ島盾子ちゃぁああああああああんと、スノーホワイトさんですね。
マスターがサーヴァントを揺さぶる面白い組み合わせとなっています。
相手は潔癖性な魔法少女オタクの方よりも面倒くさいですが、是が非でもスノーホワイトさんには頑張って欲しいところです。
しかし、今回超高校級の絶望はスタートから中々面白いですね。
楽しんでいってもらいたいものです。
投下ありがとうございました。
>>273
投下乙です、千羽烏月さんとテューン=フェルベルですね。
奇しくも復讐者と復讐の先にあるものを見つけた求道者という形の組み合わせになりましたね。
擬似師弟のような関係性となるのでしょうか、千羽さんには後悔しない道を進んで欲しいものです。
しかし、ひよこ侍ってプレイするまではネタゲーだと思ってたんですが、シリアスすぎて驚きましたね。
投下ありがとうございました。
>>279
投下乙です、シルヴィア・斑鳩・ミスルギさんとチェインバーK-6821ですか。
兵器がサーヴァントとして召喚されるのは、二次聖杯界隈でも相当に珍しいパターンでないかと思います。
しかし皇女とロボットという組み合わせというのは成程、絶対に裏切らない騎士という風情があります。
実に面白い組み合わせですね。
それにしても殺人に躊躇がないのは実際恐ろしいことですね。
投下ありがとうございました。
>>288
投下乙です、P3Pの主人公子と遠野志貴ですね。
前文でペルソナを思わせる文章からの、本文。結局互いに仮面を被っていたということになりますね。
本編開始前ということで、あいにくペルソナは扱えませんし、
サーヴァントもアサシンしてるアサシンを引き当てたためにあまり無茶は出来ませんが、頑張っていただきたいものです。
個人的なことをいえば百合っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>296
投下乙です、さやかちゃんとキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワですね。
いきなりマスターVSサーヴァントとは面白い戦いになったものです、ソウルジェムが本体だからこそ令呪の位置に気づけなかった、
まどマギの魔法少女の設定を活かした、最高に面白いワンアイデアといえるでしょう。
この主従には不安しかありませんが、強く生きていってほしいものです。
投下ありがとうございました。
>>308
投下乙です、水銀燈と瀬戸・多実華ですね。
水銀燈をマスターで出すとは正直予想外でしたが、雪華綺晶との関係性を考えれば成程ズバリです。
マスターとしての少女に関して多少の見解の相違があったようですが、ええ、些細な事です。
今回は水銀燈が主導権を握りましたが、いざという事態になった時にアーチャーには単独行動があるのが気にかかるところです、
お互いに銃口を突きつけながら、主従をやっているようなものですね、互いが互いにより味方に用心しなければならないでしょう。
投下ありがとうございました。
宿題は溜め込まないほうが良いですね。
投下いたします
突然ですが、私は世界で一番物騒で、世界で一番奇妙な姿をした先生から授業を教わる、世界で一番面白い教室の生徒です。
調子に乗りやすく、スケベで、マッハの速度で移動出来て、触手が生えてて……そして、人に物を教えるのがとっても上手な、タコみたいな先生。
あの先生、通称殺せんせーと呼ばれる人がやって来た時の事は、今でも忘れません。
エンドのE組と呼ばれ、落ちこぼれだ落伍者だと蔑まれて来た私達の下に突然、国の偉い人達と一緒にやって来たあの先生。
殺せんせーは言いました。今から1年間此処で担任をします、1年以内に私を暗殺出来なければ、私はこの地球を破壊します、って。
其処からの時間は、あっという間に過ぎて行きました。
皆頑張って先生を殺そうとするけど、結局全然先生に攻撃が当たらなくて、協力の重要さを改めて実感した事。
暗殺って言うありえないような要素はあったけど、とても楽しかった京都旅行。皆で知恵を絞って勝利した野球大会。
殺せんせーから教わった勉強の成果を試そうと皆で頑張る期末テスト。成績優秀クラスにご褒美で与えられる沖縄旅行。
あれだけ敵対してたイトナ君の入校。激しい棒倒しが印象的だった運動会。不注意で怪我させちゃったお爺さんが運営する保育施設でのボランティア。
殺せんせーが来てからのE組は、それまでの緩み切ったダメなクラスから、まるで変りました。
殺せんせーをいつか殺すって言う目的の下で、クラスの皆が協力して、時には、殺す相手である先生に勉強を教わったりしたり、
時には烏間先生やビッチ先生に、学校では絶対教わらないような、だけど楽しい事も教わったりして。
先生を殺すって言う、ありえない目的で結束されたクラスだけれど。その殺す対象に勉強を教えて貰ったり、一緒にご飯を食べたりしてるクラスだけれど。
時には先生を巡って、色々なトラブルが起きたりするクラスだけれど。それでも私は、殺せんせーがこの教室に来て、良かったと思ってます。
だって――例えエンドのE組って呼ばれてるようなクラスでも、学校はこんなにも楽しいところだって、あの人は気付かせてくれたから。
「まだ踏ん切りがつかないのか、女」
……悩んでる私の様子など一切関係なく、そのサーヴァントは勝手に霊体化を解いて、そんな事を言い始めた。
何て空気が読めないサーヴァントなんだろう。うんうん唸って悩んでる私の様子が見えてないのかな?
「簡単についたら苦労しないよ〜……」
心底困ったような口調で、私、倉橋陽菜乃は目の前の男に恨みがましい目線を送った。
人っ子一人存在しない、遊具も少ない寂しい夜の公園での事でした。
この世界の違和感には、大分早い段階で気付けたと私は思ってます。
記憶を封じて、何処かも知らない街で偽りの役割を与えられて、それに沿った生活を送らせられてたみたいですが……私には無意味です。
だって私は、世界で一番奇妙な教師を殺すのが目的の、世界で一番恵まれた授業を行っている、世界で一番物騒なクラスの生徒なんですよ?
私がこの世界で演じろと強いられたのは、市内の公立中学の女子生徒と言う平凡なそれですが、今更そんなありきたりな生活、私にとっては違和感しかありません。
クラスが違う、学校が違う、何よりも……勉強を教わっている教師が違う。違和感が積もり積もった結果、本当の記憶を思い出したのは、2日前の事。
私の知らない街に勝手に召喚され、聖杯戦争って言うありえないような知識を勝手に植え付けられ、しかもそれを行えと強要させられる……。
酷い混乱状態だった私の目の前に、そのサーヴァントは現れたのです。丁度、公園での今この瞬間の位置関係みたいに。
本物の黄金で出来た、値段すら付けられなさそうな位豪華な鎧を装備した、放射状に広がった緑髪に、綺麗な碧眼をした男の人。
ラグビーでもやってるのかなと思う程に体格が良く、背丈も大きく、そして、悔しい程にイケメンで。
しかしそれでいて、どんな人でも見下していそうな程の上から目線さ、傲岸不遜さを、身体中から発散させる人でした。
この人が、聖杯戦争での私のサーヴァントとして召喚された人。クラス名は確か……『ビリオネア』、だったかな。
Billionaire……英語で億万長者とか、大富豪って意味だったよね? お金持ちのクラスって、なんか変なの。
「如何なる願いでも叶う聖杯が手に入るのだろう、狙いに行くのが当たり前だと思うが」
「うー……、その為に人殺さなくちゃいけないなんて、出来るわけ……」
其処まで言って、私は、自分が椚ヶ丘中学の3年E組の生徒だ、と言う事実を思い出しました。
殺せんせーを暗殺する事を目標の1つに掲げている教室、ナイフと銃で友情の結ばれた、奇妙なクラス。
そんなクラスでありながら、人を殺すと言う事について嫌々言ってる自分が、妙だな、って事に気づいてしまったんです。
地球の命運を賭けて――その自覚は薄いけど――殺せんせーを殺さなくちゃいけないのに。
自分の命が懸っているとは言え、生身の人間を殺すんだと思った時、沸々と、恐怖感が明白に湧いて出てくるのを感じ始めた。
殺せんせーの暗殺には積極的に取り組んでる自覚はあったつもりだったけれど、それは先生がマッハの速度で動く地球外の生命体みたいな生き物だからと言う事と、
地球を守る為って言う大義名分があるからであって、本当の私は人を殺せる度胸何て全然ない、ただの中学生だって言う事を、改めて実感させられた。
「恐れているのか」
腕を抑えて震える私を見下しながら、ビリオネアのサーヴァントは言った。
恐くない、って言っても嘘だと見透かされる気がしたから、静かに私は首を縦に振る。
殺す、と言う言葉の意味は、理解している筈だった。同年代の男女よりも、下手な大人よりも。
だけど実際、本当に殺さなきゃいけない状況になると、こんなにも震えは止まらないんだなって、心の中の冷静な倉橋陽菜乃が考えていた。
「サーヴァントやマスターを殺すのは私だ。貴様が恐れる必要はない筈だろう」
「でも、マスターが私を殺しに来たら、応戦するかも知れないんだよね……?」
「時と次第によってはそうなるだろうな。自分の身は自分で守らなければならない時だって、来るかもしれん」
そう言う覚悟は決めておいた方がいい、と言う事なんだろう。
少しだけ気が楽になりましたけど、やっぱり、不安は完全には払拭出来ていません。
「人を1人殺してまで願いを叶えるってのはちょっと……」
「つまらんな」
バッサリとビリオネアは斬り捨てた。「あう……」、と口ごもる私。
「万能の願望器とすら呼ばれる代物が戦いの末に手に入るのならば、何をしてでも手に入れようと動き回るのが普通ではないのか」
「わ、私の価値感と貴方の価値観は違うんです〜。一緒にしないで下さいますか〜?」
ぶーぶーと小学生みたいにふてくされたような態度で言葉を口にする。
心なしかビリオネアが、呆れたような目で私を見ている気がした。
「第一、ビリオネアが聖杯に願う事って、何なの?」
改めて私は、ビリオネアの容姿を確認した。
整った顔立ち、健康で強靭そうな身体つき、ビリオネアのクラス名に負けない、如何にもお金を持ってそうな独特のオーラ。
庶民の私が欲しそうな、全てのものや才能を持っているのではと思ってしまう程に、完璧に見える人間。
何処となく、A組で一番、いや、学園で一番の優等生の浅野学秀くんと、その父親であり学園理事長の浅野學峯先生とダブって見えた。
そんな人が、今更聖杯に何を願うと言うのだろうと。私は少し疑問に覚えたのです。
「フン、貴様の言う通り、今更聖杯に願うような願いはないが……1つだけ、願うのではなく、証明して見せたい事がある」
「なになに?」
「――この世界は金こそが全てであると、私が聖杯戦争に勝利し、その真実を世界に刻みつけてやる事だ」
一切の迷いなくそんな事を言うビリオネア。ドンッ、と言う効果音が彼の背後で轟きそうでした。私は思わず、ドン引き。
ビリオネアは私のそんな様子を妙に思ったらしく、「何だ」、と、不機嫌そうな声音で声を投げ掛けて来た。
「えぇ……だって、それが、人を殺してまで証明したい事なの……?」
それならばまだ、身長があと10cm欲しいだとか、胸が大きくなりたいとかの方が、可愛げがあるような気がしてならない。
「貴様の価値観は解らんが、下らないだのつまらないだのと思われる筋合いはない。私にとっては金こそが全てなのだから」
「え〜、それって寂しくない? もっとこう、お金以外に大切な物とか――」
「ないな」
即答されてしまった為に、私は言葉に詰まってしまった。此処まで迷いなく答えられると、どう二の句を告げれば良いのか解らない。
「逆に私の方から聞きたいが、お前の願いは何なのだ?」
「わ、私……?」
「そうだ。聖杯戦争で死にたくないと言う事は、勝ち残り、聖杯を手にすると言う事とほぼ同義だ。
生き残ると言う事は必然、聖杯の入手とイコールだ。そうなったら、お前は何を聖杯に願うと言うのだ」
「聖杯に……」
もしも聖杯が手に入ったら……? 人を殺してまでは欲しくない、と言うのは本当の所だけれど、何かの間違いで手に入っちゃったら……って事だよね。
何も願いたくないって言ったら、正直嘘になる。私だって1人の人間だもん、何か願う所はある。
殺せんせーの消滅? いやいや、あれはE組全員の目標だよ!? 私達の力で暗殺しなきゃ、絶対ダメ!!
ブンブンと頭を強く横に振るい、何かないかないかと考えたところ、「あっ」、と思い出した。これならば良いんじゃないか。
「100億円!!」
「……何?」
流石に単語だけでは伝わらない。ビリオネアは、変な生き物でも見る様な目で私を眺めていた。
「100億円を手に入れてね、くらはしどうぶつえんを設立するの!! 世界中から猛獣とか昆虫を集めてね、世界で一番の動物園を――」
「下らん」
私が夢を語りきる前に、ビリオネアはバッサリと斬り捨てた。
余りにも短い言葉で、何の躊躇もなく、だ。思わず私つんのめって転びそうになる。
「く、下らないはないんじゃないかな!? これでも大真面目に――」
「お前、人の野望にケチをつけておいて、自分の願いがダイレクトに金に関わるものとは何事だ? 矛盾していると思わないのか」
「うっ、それはー……。そう!! 100億円は手段だよ手段!! 目的は動物園の設立だもん!!」
「動物園を開く為の土地の購入、施設内の建物の設立、動物の購入費と餌代を筆頭とした飼育費、人件費、宣伝費、維持費諸々……。
お前の経営手腕では、100億円などすぐに使い切ってしまいそうだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫だもん!! 今すぐ開くって訳じゃないし……そう言う事は追々勉強するから!! 不安にさせるような事言わないでよね!!」
これ以上意見しても埒が明かないと判断したのかは知らないけれど、ビリオネアは、本当に呆れ果てたような表情を作りながら、
空気と同化していくみたいに透明になって行き、最終的に私の目で見えなくなった。霊体化、と言うらしい。頭の中に刻み込まれた情報にはそうある。
まったく、人の夢にあそこまで真っ向からケチ付けるサーヴァント何て、本当に失礼しちゃう!!
それは、私が最初にビリオネアの目的に難色示しちゃったのはアレだったかもしれないけど、直接は言ってないもん!!
どうせサーヴァントに来るぐらいだったら、もっと仲良く出来る人が良かったなぁ。
……殺せんせーとかだったら良かったのに。マッハで動けるんだから、絶対優勝出来ちゃうもんね!!
ふう、と、誰もいない夜の公園で1人寂しく溜息を吐いてから、私は家へと戻るのでした。
あの失礼なサーヴァントと本当にやっていけるのかどうか、という不安を胸に抱きながら。……でも少しばかり、当初のような不安は薄らいだ、かな……?
其処だけは、感謝するべきかも。本当に、ちょっとだけ、だけど。
……あ、そう言えば、あのサーヴァントの名前は何て言うんだっけ……。出会った当初、本名――真名と言うらしい――で呼ぶのは弱点露呈に繋がるから控えろ、
って、本当に口酸っぱく言われて来たから、本当の名前があんまし頭に入ってないのです。確かえーとえーと……あ、思い出しました!!
確か、元マルハーゲ帝国四天王の1人、『ハレクラニ』って言うサーヴァントです!!
マルハーゲ帝国って……、何だか冗談みたいな名前だよね。何処かの国の言葉なのか、無事にE組に戻れたら殺せんせーに聞いてみよっと!!
【クラス】
ビリオネア
【真名】
ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D+ 宝具A++
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
黄金律:A+
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。
【保有スキル】
真拳使い:A+++
ビリオネアのいた世界では普遍的な、戦闘における流派に似た考え方。
習得ランクや真拳の内容はピンからキリで、数時間でマスター出来るような下らない真拳から、何十年とかけなければ習得出来ない絶技の数々を秘めた真拳まで様々。
ランクA+++は世界全体を見渡しても最高峰の真拳使い。ビリオネアは硬貨や紙幣、宝石や貴金属の所有数で力の決まる、『ゴージャス真拳』を極めている。
魔力放出(紙幣):A
武器、ないし自身の肉体に魔力で出来た紙幣を纏わせたり、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
紙幣はサーヴァント以外の存在、つまりNPCやマスターが触れれば強制的に紙幣やコインへと変化させたり、
紙幣自体を高速で放って切断させたり弾丸のように直撃させる事も可能。
全英霊やサーヴァントを見渡しても、ビリオネア程独特な形で魔力を放出するサーヴァントは存在しないと言っても良い。
信仰の加護(金):A
一つの価値観に殉じた者のみが持つスキル。加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。ビリオネアはこの世で最も重要な物は金であると認識している。
カリスマ(偽):B
生来備わっていた天賦のものではなく、金の力に裏打ちされた偽りのカリスマ。
魔力供給(金銭):B
魔力の回復手段を、マスターによる魔力の供給や魂喰い、霊地等の確保以外に有しているサーヴァントに与えられるスキル。
ビリオネアは、自らが魔力的に生み出した金銭ではなく、聖杯戦争の舞台でマスターやNPCが使う事が出来る金銭を所持していると、魔力の回復速度が速まる。
所持額の多さに、魔力の回復量は比例する。
【宝具】
『財は力なり(ゴージャス真拳)』
ランク:A 種別:対人〜対城宝具 レンジ:1〜500 最大補足:1〜1000
ビリオネアがマスターし、そして操る事が出来るゴージャス真拳が宝具となったもの。
ゴージャス真拳とは、ビリオネアが保有する常識では考えられない程膨大な量の貨幣や硬貨、貴金属に宝飾類と言ったものを操る技術体系の事である。
コインの絵柄の人物を現実世界へと召喚させる、弾丸の如き速度で宝石類を降り注がせる、100億ドル分ドル札を砲弾状に固め、バズーカ方に等しい威力で発射する等、
ユニークな見た目とは裏腹に、かなりの殺生性を秘めた真拳である。
特にビリオネアが好む技は、人間1人を包める程に紙幣を拡大化させて相手を包み込み、その人物を紙幣やコインにしてしまう技。
サーヴァントレベルの存在を紙幣やコインには出来ないが、マスターやNPCなどを変える事は可能である。
『無限大の財の集いし万魔殿(ハレルヤランド)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:500〜 最大補足:1000〜
生前ビリオネアが管理運営していた、巨大遊園地、ハレルヤランドを固有結界として展開する宝具。
財力が集まれば集まる程その力が増すと言うゴージャス真拳の性質上、生前ビリオネアの富の殆どが集中していたとされるこの固有結界の中では、
ビリオネアは100%以上の実力を発揮可能で、固有結界の中に限り、ビリオネアの全ステータスは大幅な上方修正を受け、
ゴージャス真拳による技の数々の威力や規模も増す。ステータスアップの宝具以上の役割はない為、生前のハレルヤランドで番をしていたヘルキラーズ達は存在しない。
【weapon】
ゴージャス真拳の使い手として、身体能力はかなり鍛え上げられており、肉弾戦を得意とする。
【人物背景】
元々は、マルハーゲ帝国に存在する一団、マルハーゲ四天王の1人であり、四天王最強の存在と言われていた男性。
少年時代は今の財力からは考えられない程の極貧生活を送っており、その時の悔しさから、金に対する執着を強め、今の地位へと上り詰め、その過程でゴージャス真拳を編み出した。
ハレルヤランドと言われる遊園地を運営、その莫大な富を更に膨れ上がらせていたが、実体はマルハーゲ帝国が徴収した奴隷を裏で強制労働させてコストを浮かせたり、
極端に収益の減っているアトラクションを、其処で人が遊んでいるか否かに関わらず気分次第で爆破させるなど、その本性は冷酷な男。
最終的には他の四天王同様、ボーボボ一行に敗れ去る。復帰してからは、ボーボボへのリベンジに燃える。
が、ボーボボに敗北した事が何らかの契機になったか、少しばかり性格は柔らかくなり、危機に陥ったボーボボ一向の一部を助けたりする、
と言った、昔の彼では考えられないような側面を見せるようになった。
【サーヴァントとしての願い】
この世で最も重要な物が金であると言う事を今度こそ知らしめる。
【基本戦術、方針、運用法】
非常に珍しい運用法を強制させられるサーヴァント。マスターの経済力がそのままサーヴァントの強さに反映される。
マスターの経済力が低くとも、ビリオネア自体は高い戦闘能力を誇るが、対魔力がないと言う事と、実戦向けのスキルが少ない事が、不安点になる。
ハレルヤランドは非常に強力な宝具ではあるが、魔力供給(金銭)スキルが不安定の内は、陽菜乃には使用は厳しいか。
兎に角、このサーヴァントは魔力の確保よりも、金銭の確保の方が重要になると言う、かつてないサーヴァントになるだろう。
【マスター】
倉橋陽菜乃@暗殺教室
【マスターとしての願い】
くらはしどうぶつえん設立!!
【weapon】
もと居た世界では、殺せんせー暗殺の為に必要な、自衛隊の開発した強化繊維服を持っていたが、聖杯戦争への舞台の招聘の際に消失している。
【能力・技能】
生物に関する知識がそれなりに豊富。同年代の少年少女に比べて持っている知識はかなりマニアック。
また、暗殺者にしてE組の特別英語講師であるイリーナから接待術を学んでおり、交渉術にはそれなりに長けていると思われる。
ナイフ術に造詣が深く、こちらはクラスの女子の中ではその片鱗を見せている途中。
殺せんせー暗殺を目的とするE組のクラスメイトの為か、身体能力はE組内部では兎も角、他の同年代の女子に比べたら大分秀でている。
【人物背景】
椚ヶ丘中学校の3年E組、通称『エンドのE組』と呼ばれる、学校での勉強について来れなかった、所謂落ちこぼれの為の特別クラスに所属する女子生徒の1人。
殺せんせーの暗殺には積極的で、向上意欲もあると言えばあるのだが、暗殺しようと先生の下へ向ったら、暗殺しないで勉強だけ教わりそのまま帰る事もある程の、天然な性格を持ち、やや間が抜けている。
動物好きの昆虫好きで、その知識の広さと深さは、非常にマニアック。昨今の昆虫の価格変動についても造詣が深い。
そう言った趣味の為か、学校の勉強においては生物を得意科目とする。逆に、苦手科目は数学である。
E組の中では、取り分けて際立った暗殺技術はもっておらず、良くも悪くも平均的な生徒。可愛らしい性格と容姿の為、クラスの男子の中で気になっていると言う人物も多い。
【方針】
いやだけど、この街でもうちょっと生活してみよう。
投下を終了いたします
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ハ i! ,. < ./ / 、 /::::::::::i!::, _) 下
ハ i!..イ / ',::`<. ,::::::::::::::!|:::, ,イ _) 召 乙
∧ ー― ' ',::\:::.</::::::::::::::! !::i ,>.::::::/ _) 喚 を
,: ', ノ /} _ ',::::',\::::::::::::::::::::} |:::レィ::::/:::/ ._) す
{ ∧` ̄ .イ { \:::::ー ':::::', \:::::::::ハ/ j:::::::://:::/ _) る
乂 、 ,.イ ハ -= ニニ ー- ∧∧/ .| ./:::/ イ:::/ _) ぜ
\ー‐=彡 / ヽ \::::::ノV´二 / ィ| レィ イ::::∠__ _) !!
\.__ イ////∧._ \{ / / z、--' ^ イ L{::::::::::::::::::::イ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
∨//////////}_,.へ__ / / ,込Jメ ,.ィ ァ-、 \` <
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< { .V///,\////fソハ{ニニイ==',.=.||,イ/./ ', |_j_ / }ヽ
\ i ヽ ヽ////\//{{K{ニ/====ヽ |! マハ ノ, --〈 〃 ノ }
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, / i > / }/ Vミ、', ノ^/ . < ',
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/ { .! ハ / `ー`7/イ | i
/ ! ヘ. ハ{Lつ/.イ/ | |
/ .', ≧=イ ./ , ,
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>>320
投下乙です、倉橋陽菜乃さんとハレクラニですね。
暗殺の才能ガチ勢とは違い、割り切れぬままに聖杯戦争へと挑む形になってしまいました。
同じ異常な状況下でも、やはり環境の違いは大きいことですね。
聖杯に願うは、真なる願いのための過程としての100億円。
原作での暗殺成功報酬を用いることで、ハレクラニとの会話をより掘り下げていますね、素晴らしいです。
自身のペースを崩さぬままに聖杯戦争では頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
投下します
明らかな『異常』だ。
その場所を見ながら少女はその現象をそう感じ取った。
目の前にあるのはなんだ。
超大型の遊園地だ。
親子連れが、家族連れが、平日だというのに皆笑顔で遊び呆けている。
そこまではまだいい。
それだけならまだ正常だ。
だが、と手元の地図とその場所を見比べる。
『ない』のだ。
この場所には、遊園地など。
遊園地だけではない、ここの周囲1エリア分はそもそも建物が立っていないはずの場所だ。
そこに、ギンギンにきらめく遊園地が建ち、ご丁寧に送迎の電車まで開通している。
十分すぎるほどの異常だ。
少女にはその異常の原因が分かっていた。
奥に控える西洋の城をかたどったモニュメント。
そこから感じる強大な魔力。
遊園地全体を覆っている微量な魔力。
この遊園地は、おそらくキャスターのクラスのサーヴァントが何らかの目的から作成した『陣地』だ。
ぐっと拳を握りしめる。
彼女がその陣地と向かい合った理由は。
人々をたぶらかして何かを為そうとするこの陣地を、彼女の義憤が許せなかったから。
人々を守る。
彼女の心にあるのはそんな誇り高い勇気。
その勇気の名のもとに、キャスターを打倒し陣地を破壊する。
勝算はあった。
少女には近接戦闘に優れたバーサーカーが居る。
それに自分の魔力量はそれなりに多い、長時間の戦闘にも耐えられる。
遠距離魔術には覚えはないが、近距離まで一気に近寄れば巻けるはずがない。
少女は入り口で入場料を支払い、一歩踏み込む。
敵キャスターの陣地である『ハレルヤランド』へ。
◆
こんなこと望んでない。
こんなこと望むはずがない。
遊園地のキャスターのマスターである桐間紗路(シャロ)は泣きそうになるのを堪えながらバイト先である『フルール・ド・ラパン』への道を急いだ。
◆
聖杯戦争に呼ばれる前日。
仲良しな五人組で市外のアトラクションプールに行った日。
シャロだけは『フルール・ド・ラパン』でのアルバイトが入っていたため、先にお別れとなった。
市外から市内へ帰るためのバスに乗り込み。
とろとろとした心地良い疲れに身を溶かす中で、夢見心地にこう思った。
ああ、なんで私はお金持ちじゃないんだろう。
お金持ちだったら、バイトのために途中で帰ることもなかったのに。
お金持ちだったら、もっと天々座理世(リゼ)先輩と一緒に入られたのに。
お金持ちだったら、リゼ先輩と釣り合う人間だったかもしれないのに。
確かに彼女は願った。
ああ、お金持ちになりたいなぁ……と。
バスを降りて家路を急ぐ間、言いようのない違和感に襲われた。
野良うさぎが居ない。
いつもならこの道には数え切れないほどの野良うさぎが居たはずだが、今日は居ない。
そんな日もあるか、と割り切ろうとする彼女の意志とは裏腹に違和感はどんどん大きくなっていく。
こんなに無骨な街並みだっただろうか。
こんなに殺風景な景色だっただろうか。
こんなに活気のない通りだっただろうか。
一つ、一つと彼女の記憶の扉をこじ開け。
そして最後に目にした光景で違和感はピークに達する。
自身の家が変わっている。
あのおんぼろ屋敷が、庭付きのきれいな一戸建てに。
「確かに願ったな」
声が聞こえる。
振り向くと、そこには金色の鎧を来た大男が立っていた。
「『金が欲しい』と、聖杯に……この私に対して」
あわあわと慌てふためくシャロを、札束で作った遥かな高みから見下ろす男。
彼こそが少女のサーヴァント。
魔術師のクラス、キャスターで召喚された英霊。
名を『ハレクラニ』と言った。
◆
『聞こえるか、マスター』
涙目のシャロに念話が飛んでくる。
件の金ぴか鎧の大男、キャスターから。
何事かと耳をすませば、キャスターはえらく上機嫌にこう答えた。
『よかったな、これで生き残る可能性が増えたぞ』
「ど、どういう意味……?」
キャスターが鼻で笑い、まるで営業利益を報告するようにそっけなくこう続ける。
『マスターである少女を一人、殺した』と。
衝撃的な事実に、思わず息を呑む。
生まれた沈黙を、キャスターの高笑いが切り裂く。
『ハーッハッハッハッハ!!!! どうした、怖気づいたか?
これが金を得るということだ! これがキサマの望んだ願いだ! キサマが呼び出したサーヴァントだ!!
安心しろ、約束通りキサマを世界一の大金持ちにしてやる!!!』
聖杯に願うまでもなく、な。と付け加え。
そのまままた、高笑いをしながら念話が切れる。
と同時に、『フルール・ド・ラパン』に向かっていたシャロの脚が止まる。
もう限界だった。
キャスターの人格、聖杯戦争という状況、自身を取り巻く環境、その全てが受け入れられなくなっていた。
膝から崩れ落ち、大粒の涙をこぼす。
脳裏に描くのは、あの日の思い出。
ココア、チノ、リゼ、千夜。仲の良い友達たちとの楽しい日々。
たった一度の愚かな願いで手元から離れていってしまった幸せたち。
逃げたい。
でも逃げられない。
がんじがらめの金で作られた蟻地獄。
そこで必死にもがきながら、シャロは心の底から願っていた。
「……誰か」
「誰か助けてぇ……誰か、誰かぁ……!」
お金なんていらない。
お金持ちになんかならなくていい。
だから、ハレクラニを止めてほしいと。
あの穏やかな日常に返して欲しいと。
そんなもう叶わない願いを、何度も、何度も、泣きながら願い続けていた。
【クラス】
キャスター
【真名】
ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
【パラメーター】
筋力:D 耐力:B 敏捷:C 魔力:C(財力:A) 幸運:A 宝具:E
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:E
自身の陣地として『工房』を作成することが出来る。
彼の陣地とは彼の有したテーマパーク『ハレルヤランド』である。
D-4地区とは別の地区にある遊園地自体が陣地であり、彼の魔力の根源であり魔術の基である『財産』を生み出す場所である。
一般人が寄ってきて金を落とさなければならないという性質を持つ特殊な陣地であるため一般人でも目視・接触が可能である。
陣地自体が人を引き寄せ楽しませる魔力を持っているが、(客が逃げてはいけないので)他者を傷つけるような魔力の使用は出来ない。
遠距離からでも素質のあるものが見れば『陣地である』と見ぬくことが出来る。
道具生成:E
道具を生成出来る。
スキル:ゴージャス真拳発動時に財産に対して好きなように鋳造・彫像や宝石加工を行える。
【保有スキル】
ゴージャス真拳:A
選ばれた者のみが使える力、ゴージャスな物を用いて摩訶不思議な現象を起こす技。
このスキルを持つ者が自身の財産たる金銀財宝を操る場合に限りその攻撃は財産の使用量に応じて威力が上昇し、多額の金をつぎ込めば大魔法に匹敵する攻撃を放てる。
そして、このスキルが存在する限り『ゴージャス真拳』に分類される宝具を魔力ではなく財産の量を基準とした特殊ステータス・財力を消費して攻撃を行える。
なお、この聖杯戦争においては魔術と同等の力であるとし、対魔力で威力を軽減できるものとする。
黄金律:A
男は世界一金を欲し、世界は男に応え続けた。
彼が望む限り、彼の懐に財産は増え続ける。
例え無一文になろうとこのスキルを失わない限り、彼の宝物庫が空になることはない。
そしてこのスキルが陣地に対して間接的に『人を引きつける魅力』を与えている。
金は天下の回り物:-
バッドスキル。
彼が一度消費した財産は消失し、二度と使用することはできない。
これを利用することによって宝具『マネートラップ』で硬貨にしたマスターをそのものずばり消滅させることも可能である。
硬貨にしたサーヴァントにこのスキルが働いた場合実体の消失=霊体化(=身動きが取れる=逆説的に硬貨化が解除された)と判断され、宝具『マネートラップ』が解除されてしまう。
なお、消失した金は粒子レベルで分解されたあとピン札やキラ硬貨に生まれ変わり誰かの財布に帰っていく。エコロジー。
強者の誇り:-
気高い逸話からくる、実質的バッドスキル。
キャスターは自身に歯向かわない者に対して無闇矢鱈に攻撃を行わない。
ただし、相手がサーヴァントもしくはハジケリストである場合は別である。
【宝具】
『貴様らの値打ちを見せてみろ(マネートラップ)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:5
ゴージャス真拳の能力の一つ。
大金をばら撒く。この大金には抗いがたい魔力があり、俗物であればあるほどこの金を手にとってしまう。
金を手にとってしまった者、キャスターの意思で操られた金に包まれた者は価値相応の硬貨(最高500円玉)に変えられ、その姿のまま20ターン過ごさなければならない。ターン数は対魔力などで減少可能。
硬貨状態での攻撃は基本的に不可能。宝具も発動出来ず、身動きも取れない。ただし自動的に発動する宝具などは無効化できない。
例外としてギャグマンガのキャラの場合不思議な力が働いて1ターンくらいで戻ることが可能である。
陣地の外で使うと金の魅力が激減してしまい、マスターやサーヴァントが飛びつきにくくなるという欠点を持つ。
『天の光は全て金(フィナーレ・オブ・100まんおく)』
ランク:E 種別:対城 レンジ:99 最大捕捉:999
ゴージャス真拳の能力の一つ。
空を覆い尽くす程の金の河。彼の財産の大半を解放し、蹂躙を開始する。
文字通り金に溺れさせ押しつぶす、一つ一つが大魔法級の威力を有した金の滝である。
単純だがその範囲の広さと物量から対城宝具と化した。
財力が大幅に減るため連発は不可能。
『終わらない大恐慌の嵐(デスマネースゴロク)』
ランク:E 種別:固有結界 レンジ:99 最大捕捉:999
ゴージャス真拳の能力の一つ。令呪ニ画を用いて使用が可能。
固有結界を展開して自身に敵対する者全てを『デスマネースゴロク』の世界に引きずり込む。
この世界では原則としてサイコロを振って出た目の数だけ進み、魂から資金をむしり取られる。
資金をむしり取られると次第に魂と身体がダイヤモンド化していき、その人物の価値を上回る金額を搾り取られた時点で完全にダイヤモンドと化して人間・サーヴァントではなくキャスターの財産の一部になり消滅する。
この世界ではキャスターに攻撃することは出来ず、攻撃した場合罰金50億が魂からむしり取られる。
スゴロクというがこの宝具に『あがり』はなく、仮にゴールに到達しても『第二部に続く』の看板が出てきてすぐに第二部スゴロクが開始する。
一度発動した場合、この固有結界の力を上回る固有結界で塗り替えるかマスターを殺す以外に発動をキャンセルすることは出来ない。
もしかしたら
「バゴアバゴア! 私はもとより硬度10のダイヤモンド・ボディに変換可能! 私の身体をダイヤモンドに変えるなど自ら死ににいくようなものよぉ〜〜〜!!!」
と言うセイバーが居るかもしれないが、この宝具に対してその理論は通用しない。
この固有結界による『ダイヤモンド化』は身体の一部をそっくりそのまま同程度のダイヤモンドに挿げ替える能力である。
腕がダイヤモンドになれば腕は動かせなくなるし、足がダイヤモンドになれば歩けなくなる。マスターならば心臓や肺、頭がダイヤモンドになれば死に至る。
なお、サーヴァントが少しでもダイヤモンド化した場合、その身体は実在鉱物と融合した状態になるため、ダイヤモンド部分を切り落とさない限り霊体化が不可能になる。
【weapon】
硬貨に紙幣、金銀財宝、宝石他ゴージャスなもの。
宝石を射出、コインのナイトで身辺警護、紙幣を水の上に浮かべてその上を歩くなど色々出来る。
ちなみに戦争中実際に売買で使用することも可能。
【人物背景】
ハレルヤランドのオーナー。ゴージャス真拳の使い手。金ぴか鎧のキャスター。
世の中金なのだ。
【マスター】
桐間紗路(シャロ)@ご注文はうさぎですか?
【マスターとしての願い】
お金持ちになりたい(と願っていたせいで呼び出されてしまった)
【能力・技能】
カフェイン酔い
コーヒーを飲むと酔っ払う。チョコレートやお茶では酔っ払わない。
カフェイン含有量にかかわらず、コーヒーでのみ酔っ払う。
ブレンド方法によって酔いが変わるというご都合主義な体質。
【人物背景】
彼女の背景をあえて語るなら、『かつて貧乏であった』というだけで事足りるだろう。
【方針】
戦闘に備えて財産を増やしていくのが急務。
性質上遠目に見ても分かる陣地であるため、対城宝具などが放たれる可能性も考慮して、出来る限りシャロは外出する必要がある。
もしも単身乗り込んでくる参加者が居るならば、マネートラップで迎え撃つ。
攻撃毎に財産がどこどこ減っていくが、節制などと言っていたら負けてしまう。時には浪費も大切。
9:00〜22:00は陣地内にNPCが居るので宝具が打たれることはないが、夜は注意が必要。
なお、陣地が破壊されても集めた財産は消えないし、陣地を新たに作ることも可能。
その気になればD-4の既存遊園地を基として陣地に改造することも可能。
シャロの『金持ちになりたい』を直球で叶えてくれるサーヴァント。
ハレクラニ側からは特に積極交戦はせず、ハレルヤランドの中央に位置するメインキャッスル『ハレクラニ城』で金の風呂を楽しみながら敵が来るのを待つばかり。
聖杯が必要かどうかは不明。なんせ寝ていても億単位の金が手に入るのだ。シャロの願いは叶ったも同然だろう。
だが、世の中というものは往々にして願いがかなっても幸せになれるかどうかは別問題なのである。
投下終了です
γ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ
| >>329 |
| 投下乙です、桐間紗路さんとハレクラニですね。 |
| あぁ^〜金がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜とばかりに、早速一人殺っちゃいましたね、恐ろしいキャスターです。 |
| ボケに巻き込まれる以外でネタキャラ化することもなく、ギガのように噛ませ犬となることもなく、 |
| ボーボボ世界で格のあるキャラクターとして描写され続けた面目躍如といったところでしょう。 |
| マスターは完全に心がぴょんぴょんどころか、ボッキボキに折れてしまいましたが頑張って欲しいんじゃあ^〜 . |
| 投下ありがとうございました。 |
ヽ __ .____________________________________________ ノ
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| ', ト
| ', }、 .i ヽ イ /⌒ヽ
| ', i , .| ∨-‐――- / .| <⌒ヽ ',
| ', , i | V / | ./{ ∨ / |` < __ ヽ__ノ /ヽ ヽ
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| V .H 〉 / .| , ---- . ',__ /、 { ./ \\
| / ! .ー'' / | ,.イ V::::::::::::} }≧、 ヽ / { \\
| ., ハ / | ./:::::} }:::::::::://::::::::::ヽ ',_ / 、
',`< | / ′ヽ / | /}}/´ ̄ `ヾ:::::::::::::/∧ (_ > / /\ \
、 ` <._j, -- .′ ./ ∧! j / 、 ヽ::::彡:::::::., ', __彡 / \ \ - 、
\ | / ./ .| ,ヘ <.. ',::::::::::::::::, /. \ V \ \{ \
、 ヽ _ レ /, イ { // 、 `''ー--}zzzz彡.:ヘ ゝ---`_ノ .ヘ. V \ ',
ヽー -- ` ニ / \ / |/⌒ ヽ / , - __ /|::::::::::::::::::::} {.ハ. ', ヘ V /⌒ヽ ヽ ,
\ .{ ヽ { _{ V ,: |=====彡:| /L ', ', __ ヘ ,.へ{-、 \ ',
ヽト、 し 、 < ', ∨ Y^{ 八::::::::::::::::::/, ⌒ヽ ', ', { /⌒ヾ ' ヽ .ハ }
/ \__', } ハ> _', ∨彡-| _ ー 一 .ゝ ∩ ', / __ / Yヽ ハ. |
./ ∠ヽ :., , } {{ 》 }ヽ } 、 ∨ V // )/ ). }| |⌒/{ ( ', ', ', ji
, { ゝ .._ ノ / }ハ {{ |<ヘ{ `< ∨ j/::レ'::::レ::::iヽ/.| |7 乂_/ヽ ',ヽ }ハi
{ {_ア ゝ-- !. ヾ .}´ .マ }>. ヽ ∨ /:::::::::::::::::::::| , V{ __ .イ ',. } .j/
.从 ア i \ , |><} }> <', iイ:ヘzzzzz 彡/ `ア / j/
:, ーへ /{ ,.ヘ\ ', |> <} }> <', {::::::::::::::::::::::// {/
ヽ L !--{ ', \ ', !> ノ', }> ', ',::::::::::::::::://
\ ゞ-ヘ. ヾ {> >{ .{> <', 乂:::::::::/.
\. ',> >{ {> .<} }..イ.
> . __ \. ',ア >', ',ア .ノ| /
\ ',>  ̄、 ', ヘ⌒!./
\ \ ヽ/
>>122 に追加
現時点でのマスター&サーヴァント一覧
セイバー 2組
空条徐倫@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン&ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画版)&沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
アーチャー 5組
絢瀬絵里@ラブライブ!&ジャン・ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険
時槻雪乃@断章のグリム&コヨーテ・スターク@BLEACH
大井@艦隊これくしょん(アニメ版)&我望光明@仮面ライダーフォーゼ
水銀燈@ローゼンメイデン(漫画版)&瀬戸・多実華(せと・たみか)@百合×薔薇
天本玲泉@パワプロクンポケット4 日の出高校編&勇者シロウ(小波四郎)@パワプロクンポケット4 RPG風ファンタジー編
ランサー 4組
日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ&真田幸村@戦国BASARA
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴&本多・忠勝@境界線上のホライゾン
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは&綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)
江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ&姫河小雪@魔法少女育成計画
ライダー 6組
南千秋@みなみけ&村雨良@仮面ライダーSPRITS
御園千綾@ローリング☆ガールズ&カービィ@星のカービィ2
神崎蘭子@アイドルマスターシンデレラガールズ&アサキム・ドーウィン@スーパーロボット大戦Zシリーズ
楠リッカ@GOD EATERシリーズ&VAVA@イレギュラーハンターX
シルヴィア・斑鳩・ミスルギ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞&チェインバーK-6821@翠星のガルガンティア
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ&キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ@相州戦神館學園 八命陣
キャスター 5組
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている&アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
闇姫@夜姫さま&沙耶@沙耶の唄
ジークリンデ・サリヴァン@黒執事&ベアトリーチェ@うみねこのなく頃に
高町なのは&木原マサキ@冥王計画ゼオライマー
桐間紗路(シャロ)@ご注文はうさぎですか?&ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
バーサーカー 2組
やみのディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊&やみのディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊
白坂小梅@アイドルマスターシンデレラガールズ&ジェノサイド@ニンジャスレイヤー
アサシン 5組
桂たま@天国に涙はいらない&ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
竹田千愛@“文学少女”シリーズ&太宰治@文豪ストレイドッグス
野咲春花@ミスミソウ&PoH@ソードアート・オンライン
千羽烏月@アカイイト&テューン=フェルベル@ひよこ侍
主人公子(女主人公)@ペルソナ3p&遠野志貴(のちの殺人貴)@真月譚月姫(漫画版)
エクストラクラス 4組
橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ&白野蒼衣@断章のグリム
上白沢慧音@東方Project&無銘(24歳の学生)@真夏の夜の淫夢
岸波白野@Fate/EXTRA CCC&ダークネス・ゴート@遊戯王GX TAG FORCE3
倉橋陽菜乃@暗殺教室&ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
ルーラー 1名
野守隆一@狂った教頭
それとエクストラクラスに>>1 氏の幸子が入りますね
>>331 訂正&追加
バーサーカー
牧野エリ@VANILLA FICTION&やみのディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊
エクストラクラス 5組
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ&クリシュナ@夜明けの口笛吹き
>>333
ありがとうございます!
投下します、ステ表は無いです。
◆
その中学校に存在する特異なクラブ活動の一つに、善人クラブというものがある。
いわゆるボランティア系のクラブの一つであるが、
運動部室の清掃、遺失物の捜索、いじめの仲介、生徒の悩み相談と、その活動は幅広く、皆に信頼され、重宝されているクラブである。
部内を見てみよう。
一人、椅子に腰掛けて冊子を読む少女がいる。
肩にかかる程の黒髪、平均より少し高い身長、中学三年生ながらにしとやかな美しさ、見るものを安心させる微笑み、
彼女こそ善人クラブの部長、一色である。下の名前はわからない、誰もが彼女を善人クラブの人、善人クラブの部長として認識している。
故に下の名前は重要ではない、ただ重要な事は彼女のイデアが善人クラブであるということである。
「ジェノサイダーさん」
しっとりと落ち着いた声音、一色の言葉が誰もいない部室内に響く。
独り言か、否。この言葉は、部室内にいるもう一人への呼びかけである。
「何?」
読者の皆様も第三の眼を開いていただければ、部室内にはっきりとその姿を見ることが出来るだろう。
霊体化しているが、部室の片隅に佇むは間違いなく英霊。
その、英霊の姿を見よ。蛮人じみて上半身は裸、しかし一転して下に着るは文明的なハーフジーンズ。
しかし何よりもだ、おお、虎よ、虎よ!その全身には虎めいて文様が入っている、
その上、その虎のような文様は、その英霊の感情に呼応して、薄ぼんやりと光るのだ。
そして、首後ろを見よ。
まるで角のように、その部分から黒く尖った物体が隆起している。
人間の近存在であるが故に、なんたる異形であるだろうか。
その姿はまるで、酔っ払った神が作った人の似姿の様である。
しかし、その英霊は神のつくりたもうた創造物ではない、
元は神の創造物でありながら、魔王の思惑によって人の身ながらに悪魔の力を植え付けられた魔人――人修羅なのだ。
「体の調子はいかが?」
「何をしたかは知らないけど、一回ぐらいなら十分に戦えて、君が死なないぐらいのマガツヒが集まってるよ。
まるで……マガツヒ農場だ、絶望、悲哀、憤怒、この学校には何もかもがある……それでいて、君はそんな平然とした顔をしている、全く驚くよ」
「……その感情が」
「え?」
歪む。空気が歪む。少女の表情が歪む。
人を狂気に至らせる青白い月――その三日月のような微笑。
「私たちを必要としてくれる」
だから、私たちは人のために働くのだと、少女は言った。
言葉の意味を考えあぐねて、人修羅は首を捻る。
と、同時に扉が開く。
少女が二人、一人は善人クラブの部員、人のためにこそ働く、素晴らしき奉仕者。
そして、もう一人は。
「部長、悩みを相談したいって女の子が来てますけど」
◆
「えっと……ですね、その善人クラブだったら、どんな悩みでも聞いてくれるっていうから…………」」
「ええ、私たちにできることなら、何だって」
人の喜びこそ、少女の喜び。感謝されることこそ、自分の存在価値。故に、彼女は善人クラブを創った。
だから、何度目だろうと、人に悩みを相談される瞬間というのはたまらない。
何としてでも目の前の少女の悩みを解決してやろうと、一色は思う。
その行為こそが、自身の存在価値を肯定してくれる。
多人数に聞いて欲しい悩みもあれば、たった一人、信頼できる人間に聞いて欲しい悩みというものもある。
この少女の場合は後者だったらしい、故に一色は部室に立入禁止の札を掲げ、懺悔室のように秘密の暴かれることのない空間を創る。
人修羅も同室しているが、その姿は相手の少女には見えないのだから許してもらいたい。
「友達に彼氏が出来て……」
「うん」
「それで、それで…………」
「大丈夫、落ち着いて話せばいいの。話し辛いのなら、話せるようになるまで待ってあげるし、日を改めたっていいのよ」
「……はい」
少女は深く息を吸い込み、吐く。もう一度、繰り返す。
「それで……あの子、彼氏と遊ぶからって、私と遊んでくれなくなって……それで、わたし……友達がいなくって」
「善人クラブに入部したいの?」
「いえ、違うんです……わたし、もう一度、あの子と遊びたいんです……だって、わたしにはあの子しか友達がいないから」
「うん……」
「あの子と彼氏を別れさせたいんですけど」
「それは間違っているわ」
「え?」
「そうまでしてその子を思っているのなら、直接相手と話すべきよ。そんな手段を使っちゃダメよ」
「でも……善人クラブは」
少女が言葉と共に取り出したのは、写真であった。
1枚、2枚、3枚、いずれも善人クラブのメンバーが写っている。
善人クラブがサッカー部の部室を荒らしている様子――サッカー部は部室が汚くなる度に、善人クラブに掃除を依頼していた。
善人クラブがクラスメイトから、こっそりと物を盗む様子――善人クラブは落し物の捜索が上手い
善人クラブがいじめの首謀者に金を渡している様子――善人クラブはいじめの仲介を行っていた。
善人クラブが人を助けるには、誰かが困らなければならない。
その種を蒔く様子。
「こういうことしちゃいますよね?」
「…………」
少女は嗤う、一色は凍りついた様にその微笑を崩さない。
「あの子は私の大切な友達なんです、あの子が、あの子だけが、あの子こそが、だから……助けてくれますよね、一色センパイ」
「……いつか、こんな日が来るんじゃないかと思っていたわ」
他人に感謝されること、それこそが彼女たちの存在意義。
故に、存在証明のために走り続けなければならない、何もかもを燃料として燃やしてしまいながら。
「……明日、屋上で会いましょう」
◆
空は不気味なほどに赤かった。
屋上で一色を待つ少女の感情は異常な程に昂ぶっている。
愛――それこそが、感情の名前だ。
少女は、友人を愛していた。
友人こそが彼女にとって世界に一人だけの存在だった。
だから、その愛を取り戻せることが喜ばしくてたまらない。
いや、この愛は今まで以上に燃え上がることだろう。
傷ついた時こそがチャンスなのだ。
「うん、楽しみ……だなぁ」
屋上の扉が開く。
「あっ、センパ……」
「アンタだったのね……」
「えっ……」
扉を開いたのは、一色ではなかった。
扉を開くと同時に、全力で少女の下に距離を詰め、少女の華奢な体をフェンスに押し付けるのは、誰だ。
ああ、少女の青ざめた顔を見よ、今にも泣きださんとするその顔を見よ。
屋上への来訪者こそが、少女が恋い焦がれた少女。
愛おしくてたまらない、世界にただ一人の彼女の友人。
「アンタのせいでッ!先輩がッ!」
「待って、どういうこと!?」
「先輩に嫌がらせするだけじゃ足りなくなったの!?この人殺しッ!!先輩を返せッ!!!」
「どういうこと……私、そんなことしない!!絶対しないよ!!」
「善人クラブの人が教えてくれたんだ!アンタが先輩に嫌がらせをしているのを見たって!!」
瞬間、少女は悟った。
善人クラブに罪を押し付けられたのだと。
善人クラブは種を蒔く、善人クラブに救いを求めることとなるように。
ならば、自分の知らないところで、善人クラブはあの子の彼氏に種を蒔いていたのか。
いや、それだけではない――罪を押し付けられた。
あの子が正常な判断が出来なくなるほどのことが、あの子の彼氏に起こったらしい。
それに乗じて――いや、その事象こそ、善人クラブが起こしたものなのかもしれない。
言わなければ、あの子に疑われるなんて絶対に嫌だ。
「違う……善人クラブが!善人クラブがやったんだ!!!私はやってない!何も悪くない!!」
「嘘を付くなあああああッ!!!アンタのこと一番の友だちだと思ってたのにイイイイ!!!」
「私じゃない!!私じゃないよ!!!」
少女はふたりとも泣いていた、互いが互いに心が絶望の底に沈み込んでいる。
愛しい人に髪の毛を引っ張られ、押し倒され、殴られ、憎しみの目で以て見られる少女の感情よ。
「私だって、あなたの事が好きだったのにイイイイイイイイ!!!!!」
少女が殴る。
少女が殴る。
少女が殴る。
少女が殴る。
少女が殴る。
少女が殴る。
「ジェノサイダーさん」
「ああ、まるで……マガツヒのシャワーみたいだ。別に殺さなくていいんじゃないかな?」
「私は人の憎しみも、絶望も、悲しみも、いらないわ。
ただ、喜びと感謝、信頼が欲しいだけなの……だから」
彼女たちは気づかない、屋上の扉から彼女たちを観察する一色達の姿に。
そして、彼女たちは気づけない。
「殺しなさい、善人クラブのために」
サーヴァントの真の速さは少女達には色付きの風が吹いたようにしか見えなかった。
◆
「違う……アタシは殺そうとしたんじゃない」
「そうね」
「わかって欲しかったの、アタシがどれだけ辛かったのか。
あの子はいい子だから、ほんとはとってもとってもいい子だから、だから……きっとわかってくれると思ったの」
「ええ」
「だって……あの子はアタシの親友だから……親友なのに……」
「…………」
「アタシ、あの子を殺したの……?アタシが……」
「大丈夫、大丈夫……ね?」
「死体は隠しましょう、貴方はあの子とは会わなかった」
「貴方には先輩が待っているのよ、大事な人が待っているのだから、捕まってはいけない」
「それに、あの子だって貴方が幸せになることを願っているはずよ、例え死んでも」
「大丈夫、きっと全ては上手くいくわ……だから、私を信じてくれる?」
「…………はイ、オねがイします。イっしきぶちょウ。アたしをたすけてくださイ」
善人クラブは、他人に必要とされることで存続している。
一色@絶叫学級7巻(善人クラブ)
人修羅(ジェノサイダー)@真・女神転生Ⅲ
でした。
絶叫学級は大体一話完結のホラー漫画です、
少女漫画ということでハードルが高く感じる人がいるかもしれませんが、実際少女が可愛い漫画なのでおすすめです。
あと、投下終了します。
投下します、夢現聖杯儀典:re様に投下させていただいたものの流用です。
【1】
脳――及び、それに付随する頭部、それさえ残っていれば生存できる人間は存在する。
いやその生物を人間と呼ぶべきではないのだろうが、敢えてこの文中では彼を人間と呼ばせてもらおう。
では逆に、頭部を失った人間は存在できるのか。
すなわち、何らかの巨大な獣によって頭部は丸々喰いちぎられたが、中学生らしからぬ豊満な肢体は残った場合である。
結論から言えば、彼女は死んだ。
死んだが、その魂は天、あるいはそれに類するものに召されることなく、この街へと辿り着いた。
この話は、今後の物語に特別に重要であるというわけではない。
だが、面白い偶然ではないか。頭部を失った少女の主人が、頭部を残して死んだ従者を引き連れるなど。
もう一つ、面白い偶然がある。
彼女も彼も――
【2】
学校で、彼女は一人だ。
机に突っ伏して眠る振りをする必要があるわけでもない、完全なる趣味の世界に逃げこむ必要があるわけでもない、
自分の椅子に誰かが座っている時に声を掛けられないわけでもないし、トイレや図書室――教室以外の場所に逃げ込む必要もない。
会話をする相手はいるし、クラスメイトとの仲も良好で、広義な意味で取れば友達もいる。
それでも、彼女は己の孤独感を埋めることが出来ない。
その孤独感の象徴が、彼女のはめている指輪である。
彼女はその指輪を買った覚えも貰った覚えもない、当然盗んだ覚えもない。
その指輪に関するありとあらゆる記憶が存在しない。
だが、外そうとすれば謎の焦燥感に襲われるため、外せないでいる。
誰も、何も言わない。教師でさえも何も言わない。
指輪は、彼女――巴マミにしか見えない。
「すみません」
授業が始まって十数分後、彼女はどこか異人じみてすらりと伸びた手を挙げる。
「どうしました?巴さん」
数学の授業中であり、巴マミは数学の教師にとって優秀な生徒であった。
少なくとも、黒板の数式が呪言めいて理解できない、等ということは無いはずである。
「保健室に行っても、構わないでしょうか」
「あっ、あぁ……保健委員、付き添ってあげなさい」
「いえ、一人で大丈夫です」
生徒の体調不良でありながら、教師としては胸を撫で下ろす心持ちであった。
中学生女子に抱くべきでない感想なのだろうが、巴マミは、どことなく断罪者めいている。
普通の人間とは何かが違う、それは彼女の両親が不在であることでなく、何か他の要因に端を発するような――いや、教師が考えるべきことではないのだろう。
ただ、巴マミは自分たちとは何かが違う。そして、真実がどうであれ、巴マミであろうとも体調を崩すことはある。
理解できる要因だったから、安心した。それだけのことだ。
【3】
込み上げる嘔吐感を抑えながら、巴マミは保健室へと向かう。
ある朝から、幾度と無く彼女は自分が死ぬ夢に悩まされていた。
その夢の中で、彼女は幼児向けアニメに出てくるような魔法少女の姿をしており、二人の後輩と白い猫のような生物が見守る中、怪物と戦っていた。
武器は――銃だろう、巴マミに銃器に関する知識はない。だが、その銃が単発式であることは戦いの中で理解できた。
次々に、新しい銃を召喚するぐらいならば、一度に何発も撃てる銃を召喚すれば良いのに、と夢の中の自分に思う。
だが、何丁も銃を使い捨てていく様には、どこか不思議な爽快感があった。
怪物を倒しながら進んでいくと、とうとう親玉らしい怪物が見つかった。
その姿はぬいぐるみのようで、どこか愛らしい。だが、夢の中の自分は容赦しない。
知っているのだ、愛らしいのは外見だけであると。
夢の中の自分が持つ単発式の銃が、巨大な大砲へと変わる。
「ティロ・フィナ――――――レっ!」
叫びとともに、耳をつんざくような大きな音が響き渡り――怪物は大砲から放たれた無数のリボンに絡め取られ、強く締めあげられて首をかくりと、落とす。
それで終わりのはずだった。
きぐるみを脱ぎ捨てるかのように、ぬいぐるみの中から黒いぐにょりとした何かが現れる。
夢の中の私の拘束などものともせずに、それは夢の中の私に接近する。
口を大きく開く。私を食べる。そして、夢が覚める。
最初にその夢を見た時、巴マミは家中に響き渡る声で悲鳴をあげた。
彼女の人生において、家族がいなくて幸運だったことはその時ぐらいだっただろう。
その声はきっと、どんな深い眠りからでも覚醒に導いていたはずだ。
その悪夢を、彼女は何度も繰り返し見た。
何度も見れば慣れる。悲鳴もあげなくなった。
だが、自分が怪物に噛み殺される感触などは何度味わっても気持ち良いものではない。
何より問題なのは、起きている時にもその夢の映像がぼんやりと頭のなかで再生されるようになったことだ。
誰かが己に呪いをかけているのではないか、そんな冗談のような発想も真剣味を帯びる。
巴マミは真剣にお祓いに行くことを考えていた。
悪夢も見ずに、うつらうつらとしていられるのならば、毎日でも保健室に行きたくなる。
最初は冷たかった布団が自分を受け入れるかのようにあたたかみを帯びていく内に、巴マミはそう思う。
ぼんやりと天井を眺めながら、指輪を何となくかざしてみる。
養護教諭は今、外出中だ。
巴マミにそういう趣味があった、というわけでは断じて無い。
ただ、何となく――本当に何となく、夢の中の自分を思い出して、彼女はこう呟いただけだ
「変身【メタモルフォージ】」
醜い蛹から蝶が飛び立つように、偽りの巴マミという存在が――魔法少女へと、変わっていく。
記憶が戻る。夢のすべてが現実だと、知る。
濁る。濁る。濁る。濁る。
彼女の魂の象徴、右側の髪飾り――ソウルジェムが濁る。
自分の死が、自分の死によって絶望的となってしまった後輩二人に対する罪悪感が、
そして自分が巻き込もうとした魔法少女という運命の苛烈さが、彼女のソウルジェムを濁らせる。
絶望が、彼女を染め上げる。
ソウルジェムとは、卵である。
雛が眠る卵が親の温もりを求めるように、ソウルジェムは魔法少女の絶望を求める。
そして、魔女としてこの世に生まれ落ちる。
それでも、未だに人間として踏みとどまっているのは――彼女の精神力の強さのためだろう。
幼少の頃から、魔法少女として命懸けで戦ってきた。
救えなかった人間もいたし、弟子と別れることもあった。
そして何よりも、彼女の願いは――生きることだった。
交通事故で両親を失い、自らも死に向かう中。
あるいは、両親と共に死んだほうが幸せかもしれない、それでも彼女は生きることを願い、魔法少女になった。
始まりから、絶望だった。だから、彼女は耐えられる。
そして、この願いこそが二度目の死に際して――彼女をこの聖杯戦争へと導いたのかもしれない。
【4】
半狂乱になり、涙さえ浮かべながら――それでも、彼女は立ち直った。
聖杯戦争、その情報が彼女にインストールされていく。
だが、願いなどは無かった。
いや、正確にいえば人を殺してまで叶えたい願いが無かった。
だから、このまま家に帰りたかった。
殺されてなおも、魔法少女であることが彼女の存在理由だった。
だから、戦わなければならない。
この偽物の街ではなく、自分の街、見滝原で。
9(キュウべえ)
己の命を助けた白い獣の名を心で呼ぶ、俗にいうテレパシーである。しかし、返事はない。
キュウべえとは特殊な生物であり、通常の人間に見ることは適わない。
魔法少女であることを思い出した今ならば、彼を見ることが出来るのではないかと思ったが、どうやらそもそもこの街にキュウべえはいないらしい。
魔法少女になったあの日から、いつも一緒にいてくれた家族のような存在である彼がいないのは少々不安だが、そもそもこういう場所であるのでしょうがないだろう。
ならば、次に呼ぶべきなのは――きっと、この場所で彼女の唯一の味方、己の従者【サーヴァント】。
もうすでに召喚されていたのか、あるいはこれから呼び出されるのか、彼女にはわからない。
だが、確信がある。キュウべえに語りかけるように、魔法少女見習いの愛おしき後輩に語りかけるように、心で語りかければ良い。
(来て、私のサーヴァント)
心の中の声と共に、空気が不自然に粘ついた。
動けなくなるような強い圧【プレッシャー】、魔法少女という外面を剥ぎ取られ、巴マミという少女になればガタガタと震えたくなるような、悍ましい悪【オーラ】。
思わず、目を閉じる。それは一瞬のことで、そして一瞬で十分だった。
彼女が目を閉じている間に、召喚は完了していた。
「問おう――」
発せられる強烈なオーラに反し、その男は穏やかな顔をしていた。
その顔は、世界中のほとんどの人間が知る、彼を思い起こさせる。
「君が、私のマスターか」
その男は救世主【キリスト】のような顔をしていた。
【5】
自分が魔法少女であること、自分が死んだこと、自分のこと、自分のこと、自分のこと。
己のサーヴァントに話す時、口は驚くほどによく回った。
魔法少女の才能を持った二人の後輩と会った時と同じだ、
魔法少女という特異な才能は誰にも理解されない。
だからこそ、それを理解してくれる人間に己の孤独を埋めて欲しくて話す、話す、話す。
「聖杯で叶えたい願いはありません」
「ふむ……」
そして、伝えた。
聖杯に望む願いはない、その言葉にもサーヴァントは意に介すでもなく、微笑んでいる。
巴マミは紅茶を口に運ぶ、先ほどのプレッシャーが嘘であるかのように、男は穏やかである。
「ただ、見滝原に帰りたい。それだけです」
「本当に?」
「え?」
「本当に、君に叶えたい願いは無いのだろうか?」
なんということもない、ただの確認のはずだった。
本当に、ただのそれだけのはずだった。
だというのに、魔法少女になる過程で捨ててしまったあらゆることに関して、考えてしまう。
「聖杯があれば、君の両親は生き返る。聖杯があれば、君の後輩は生き返る……もしかしたら生きているかもしれないがね。
何でも話せる友人――それを願うのもいいだろう、マミ……本当に願いはないのかな?君は……一人で寂しくはないか?」
人間社会の中で、あまりにも特異すぎる人間は孤独だ、サーヴァントはその孤独に付け入る方法を知っている。
ただ、理解者であればいい。そして――導いてやれば良い。
己の悪意で心の空白を満たしてやれば良い。
だが、今回は趣向を変えよう。そうだ、ゲームをしよう。
この真っ白な少女を悪の色に染め上げるゲーム。
あの魔人に与えた餌の様ではなく、動機を与え、己の意思で人を殺させる、楽しいゲーム。
人を守るはずだった魔法少女が、罪悪感にがたがたと震えながら、目に涙すら浮かべ、
許しを請いながら何度も何度も何度も、何の罪のない人間に己の魔法を当てさせるように育成するゲーム。
己を殺した魔人への憎悪は未だに尽きない、だが――それは聖杯を手に入れ、再び受肉してからだ。
今は己の悪意を満たさずにはいられない。
「私はアサシンのサーヴァント、シックス。マミ、どうか考えておいて欲しい。
君が願いを叶えるということを、きっと君の会いたい人は……キミの孤独を埋めてくれるはずだからね」
【6】
【クラス】
アサシン
【真名】
シックス@魔人探偵脳噛ネウロ
【パラメーター】
筋力B+ 耐久C+ 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具A+++
【属性】
混沌・絶対悪
【クラススキル】
気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
生前のアサシンの犯罪が明るみに出なかったのは権力者との癒着によるものであるため、ランクそのものは低い。
【保有スキル】
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
全ての四肢を欠損しても戦闘を可能とし、
頭部さえ残っていれば決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
カリスマ:C-
プライド、トラウマ、恐怖――心の隙間に巧みに入り込む悪魔の魅力。
人外の才能を持った孤独な人間は彼に魅せられ、とある天才は彼の悪のパワーの前に全てを捧げた。
しかし、絶対悪であるが故にそのカリスマが適応される相手は限られる。
絶対の悪意:EX
他者が最も嫌がる行為を選択し、行い続ける、自分が常に絶対優位に立つことに関する天才的な才能。
悪意に関して、彼以上の人間はいない。
そして、その悪意の強さ故に――彼は悪意を発散せずにはいられない。
【宝具】
『新しい血族』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、強大な悪意と強い脳を持つに至った新種の人類たち。
彼に絶対に忠誠を誓う彼らを召喚する宝具であるが、その"謎"は暴かれた、彼は世界でただ一人の存在である。
故にこの宝具は存在出来ない。
『ただ1人の新種(シックス)』
ランク:A+++ 種別:対6【世界でただ一人の新種】宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、
強大な悪意と強い脳を持つに至った世界でただ一人の新種の人類、それがアサシンである。
自然を操り、人を操り、文明を操る、彼という存在そのものが7000年の時をかけて創り出された一種の宝具といえる。
【weapon】
『細胞と金属の結合技術』
細胞を金属に変えることができる。
『剣』
アサシンの一族の鍛え上げた血脈の象徴ともいえる剣。
特殊な能力はないが、硬度と切れ味は抜群である。
【人物背景】
「絶対悪」と呼ばれている男で、「新しい血族」の最先端に位置する者。
人類種の敵という意味で疑いようもなく絶対的な悪であり、
その悪意によって間接的に怪物強盗と電人という最悪の犯罪者達を生み出した。
表向きの顔は世界最大の兵器メーカー「ヘキサクス」の会長兼死の商人ゾディア・キューブリック。
【サーヴァントの願い】
再び受肉し、己の悪意を満たす。
その過程として、主に己のマスターである巴マミで遊ぶ。
【7】
【マスター】
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ
【マスターとしての願い】
見滝原に帰る……?
【アイテム】
・魔法によって召喚したマスケット銃
単発銃であるが、魔力の許す限りは無数に召喚出来る。
・ソウルジェム
魔法使いに変身する為のアイテム。普段は指輪として装着している。
その正体は物質化した魔法少女の魂そのもの。
ソウルジェムを破壊された魔法少女は魂を失い、死亡する。
また、ソウルジェムが肉体から100m以上離れることで仮死状態に陥る。
魔法を使うごとに穢れが溜まり、穢れがたまると、段々魔法が使えなくなっていき、穢れが頂点に達することで魔法少女は魔女に転じる。
【能力・技能】
魔法少女に変身することで様々な魔法を扱うことが出来る。
【人物背景】
中学3年生。魔女の結界に巻き込まれたまどかと美樹さやかの窮地を救い、2人の相談役となり魔法少女の存在と契約することの覚悟を説く。
魔法少女の中では珍しく、他者を魔女とその使い魔の脅威から守るという信念で戦い続けたため、まどかとさやかに大きな影響を与えた。
しかし2人の前では頼れる先輩を演じていたものの、一方で心の内に強い不安や孤独を抱き続けていた。
まどかとの会話により不安を払拭するが、直後の「お菓子の魔女」との戦闘でまどかとさやかの眼前で頭部を食い千切られるという呆気なくも凄惨な最期を遂げた
【8】
おめかしの魔女。その性質はご招待。
理想を夢見る心優しき魔女。
寂しがり屋のこの魔女は結界へ来たお客様を決して逃さない。
9【キュウべえは考える】
魔法少女とは別に、人間社会で暗躍する一族がいる。
その一族の祖はトバルカインと名乗り、その一族の強烈な悪意のために、アベルとカインの神話が用意された。
カインの子孫だから、悪意に満ちているのではない――その悪意のために、その祖先は人間で初めての殺人を起こしたものとされたんだ。
だから、ある種の神話とは――その一族のためのものだったんだよ。
その一族はあくまでもただの武器を作る一族だったのにね。
その一族がもたらした武器で、ある地域での戦争は百年続き、
その一族がもたらした武器に触れたとある武将は、第"六"天魔王を名乗り、
文字通り、その一族が第一次世界大戦の引き金を引き、
十数年前のある戦争の原因も、その国とその一族との繋がりを大国が知ったせいだと言われてる。
感情のない身だけれど、その一族の悪意を僕達が持てないことが残念でならないよ。
僕達に悪意は無いからね。
投下終了します。
投下いたします
アサシンのサーヴァントは、率直に言えば相当参っていた。
見るからに物々しい装いをした男である。まず目を引くのが、テントウムシを模したような真紅色の仮面を被っていると言う事だろう。これが、とてもよく目立つ。
次に目を引くのが、このご時世、伊達者かヤクザ者しか身に付けそうにない紅色の陣羽織を羽織っていると言う事実。
羽織の下には、紺の作務衣を身に纏っている。そして最後に、腕に赤の腕甲、脚部に同じく赤の脚甲を装着していると言う事実。
何ともまぁ、自分は堅気者では断じてありえない、と言う事実を雄弁に語っている服装であろうか。
それはそうだろう。サーヴァント、しかも、暗殺を主たる仕事とするアサシンとして呼び出された以上、この男が一般人が認識するところの普通では到底ありえない。
生前のこの男の主たる仕事は、アサシンのクラス名が仄めかしている通り、暗殺業である。
日本国の影で暗躍する暗殺集団、第八巫蠱衆の時期頭目として血の滲むような厳しい修行を続け、幾多の死線を潜り抜け、
そうして、数々の暗殺を成功させてきた、紛う事なき超一流の暗殺者。名、つまり真名を、『槻賀多弾』と言う。
アサシンとしての実力も確かで、直接戦闘も滅法強いその弾が、心底困ったような顔を仮面の裏で浮かべながら、自分のマスターを見下ろしていた。
ガシガシと後頭部を掻きむしる弾。何と前途多難なマスターに当たってしまったんだ、と言う言外の意がありありとその動作から見て取れる。
生前弾をアバドン王にならないかと唆したあの男のような金髪をした少女だった。
とても小柄である。弾との身長差は凡そ、頭1つと半程もあろう。少女の側からだと弾は、見上げなければ顔が見えない程の偉丈夫であった。
大正時代の言葉を借りれば、モガっぽい服装をした――弾は今の時代で言うところのJCの制服を知らない――、洒落た恰好の少女。
顔付きは、悪くない。きっと笑えば、ひまわりの花でも咲いたような眩しく素敵な笑顔が花開く事だろう。
そんな少女が――泣いていた。
目からは当然涙を流し、いい歳をした女の子がみっともなく洟(はな)すら流して、本気で泣いていた。
今にも金切声にも似た泣き声すら飛び出しかねない気配すらあったが、それだけは、目の前の少女は必死に抑えているらしい。
低く、殺したような嗚咽だけが、桜色の壁紙が特徴的な部屋に跳ね返るだけ。少女の名前は、『城ヶ崎莉嘉』。
右手に刻まれた令呪を見れば解る通り、アサシン・槻賀多弾のマスターであり、そして、今回の聖杯戦争の正式な参加者の1人でもある。
「ちょいぃ……オレすげぇ居辛ぇよぉ、マスターよぉ……」
こう言った状況に不慣れな弾は、慰めるでも叱りつけるでもなく、自分の思った事を率直に口にする、と言う悪手に出てしまう。
独特の訛りと方言が目立つ口調だった。元々弾が所属していた暗殺集団、第八巫蠱衆は日本の山陰地方に居を構えていた者達。
言葉の端々からそう言った訛りが出てしまうのは、当然の事であった。
「うぅ……えぐ……」
弾の言葉を聞いても、莉嘉は嗚咽を喉から絞り出すだけ。勘弁してくれと、心中で愚痴る弾。
一目見ても解る通りであるが、弾はこう言った状況には慣れていなかった。どうしたら良いのか、解らないのである。
これが弾と同い年か少し下程度の女性、或いは男性であったら激を飛ばして喝を入れると言う手段も出来なくはなかったが、
如何せんマスターが、見るからに歳幼そうな子供なのだ。そう言った手段に出るのも、なんとも憚られる。泣く子と地頭には敵わぬとは、さても良く言ったもの。
「ひっぐ……Pくぅん……お姉ちゃぁん……たす、けてぇ……」
「ぴ、ぴぃくん……? 悪魔かぁ? それ」
悪魔召喚士と何戦も殺し合った経験があると言う都合上、弾は一般人よりは悪魔について造詣がある。
だがそれでも、本職の学者や召喚士には到底劣る程度の、にわか仕込みの知識だ。それに弾は勘違いしているが、そもそもPくんは悪魔ではない。
弾に説明したとて到底理解出来ない事であるが、莉嘉のアイドル活動を支援、補佐し、莉嘉にアイドル活動をマネージメントするプロデューサーの事である。
「(女って奴ぁいつの時代になっても泣き虫だねぇ……)」
今も泣きじゃくる莉嘉を見下ろしながら、弾はこの状況を切り抜ける方策を考えていた。
莉嘉を見ていると、弾は自分の妹である茜の事を思い出す。茜と莉嘉とでは容姿は似ても似つかないが、莉嘉は如何やら姉妹の妹の方であるらしい。
何処となく莉嘉を見ていると放っておけなくなるのは、彼女が子供であると言う事と、聖杯戦争における自分のマスターであると言う事もそうであるが、
それと同じ位、妹、つまり、先に生まれた血縁者がいる人物、と言う事実も大きかった。
弾は生前、あまりにも悲惨な運命を甘受せねばならなかった槻賀多茜の為に、第八巫蠱衆の時期頭目と言う座を蹴り、村の禁忌を犯し破門されても尚、
彼女を救う為に奔走していた程に妹思いの人物であった。だから、見過ごせなかった。頼るべき人間が世界にいない、まだまだ未熟な城ヶ崎莉嘉を、だ。
聖杯によって記憶に封をされ、その封を解き、元居た世界の記憶を取り戻した人物が、聖杯戦争への参加権を得る。
そして記憶を取り戻した参加者の前に初めて、サーヴァントがあてがわれる。弾の頭の中に刻み込まれた聖杯戦争にまつわる知識には、そうあった。
これで行くと、当然ながら莉嘉が記憶を取り戻した時には、弾は既に舞台へと招かれていた事になるのだが、その時には莉嘉は泣きそうな顔をしていたのである。
凄まじく嫌な予感を感じ取った弾が、何か言葉を投げ掛けようとした次の瞬間には、理科の瞳から、涙が決壊。そうして、現在に至るのだった。
泣いた理由は、凡そ察しがつく。
この幼さだ、人を殺さなければならないと言う聖杯戦争の現実が到底受け入れられないのだろう。
加えて、その現実に対して尋常ではない恐れを抱いている。人を殺さなければならないだけでなく、自分も殺される危険性があるのだから、それは無理もない。
そして泣いている理由の中で一番大きい事柄は、恐らく、誰にも相談出来る相手がいないと言う残酷な現実であろう。
不安と、心細さと、押し潰されてしまいそうな程の緊張の中で、誰も頼るべき相手がいない。誰とも悩みを共有出来ない。
果たしてその絶望感は、いかほどの物なのだろうか。その程度の差は人それぞれだろうが、莉嘉が味わっている絶望の深さは、相当のものに相違あるまい。
莉嘉の境遇については同情の余地はあるが、そうも言ってられない状況に莉嘉も弾もいるのは事実である。
莉嘉がどれだけ泣き喚こうが、彼女は聖杯戦争への切符を切ってしまったのである。サイは投げられてしまった、賭け逃げは、絶対に許されない。
こうなってしまった以上、この世界から生きて帰りたいのなら、聖杯戦争を勝ち残るしかない。
そしてそれは、向かって来る相手を殺し、最後の1人になるまで生き残る事とほぼ同義。実質、莉嘉と弾に許された選択肢は、戦う以外にないのであった。
今はまだ、その現実を受け入れなくても良い。
受け入れなくていいから――弾は目の前の少女に泣き止んで欲しかった。切実に。
干支が一回りする程の歳の差の女子に泣かれた状態で、部屋に2人きり、と言うのは想像以上に気まずい空間であった。
何かしら、莉嘉を泣き止ませる方法はないかと模索する弾。たっぷり20秒程、莉嘉のグズる声をBGMにして、彼は考えついた。
――そうだ、泣き止ませて落着かせるんじゃなくて、驚かせて呆けさせる方法でもええじゃないか!! と。
無論、大声を張り上げるなどと言った、示威的な驚かせ方じゃ駄目だ。もっと落着いていて、それでいて、神秘さを感じられるような方法で。
この無骨の塊とも言えるアサシンのサーヴァントは、その方法を持っていた。
正直本人としては、嫌な思い出しかない宝具であったが、こんな場面で役に立つのなら、使うしかない。
弾は思い立ったら吉日が服を着ているような男。彼は即座に、行動を実行に移した。
懐から、朱塗りの木板を長方形の形にした様な物を取り出して見せた。
それは、弾が所属する第八巫蠱衆が、今から莉嘉に見せるものを閉じ込めて置く為の『虫かご』だった。
虫かごのフタを弾が開帳する、と、其処から何かがふわふわと外へと出てくる。
「……えっ?」
泣きじゃくっていた莉嘉が、虫かごから出て来た何かに目を奪われた。
野球ボール大の、強い黄金色のハレーションを放つ球体であった。ホタル、に見えようが、違うだろう。
ホタルにしては、余りにも放つ輝きが強すぎる。これではまるで電球だ。
電気のついた明るい部屋の中でも、その光の色が確認出来る程、強い光を放つ、この謎の浮遊物。
これをマジマジと見つめていた莉嘉であったが、その光を放つ何かの正体に気付いたらしい、「あっ……!?」と、声を上げた。
光の真ん中に、この光の光源と思しき生き物がいたのだ。
ホタル、ではない。それは、イナゴのような姿をした、バッタに似た生き物だった。その生き物が、羽を出して器用にホバリングしているのである。
しかも見たところ、身体の一部に発光器官を持っているのではなく、『身体全体で発光を起こして見せている』ようなのだ。
もっと見てみよう、と身を乗り出す莉嘉であったが、「そこまで」とでも言わんばかりに、弾が虫かごを器用に動かして、そのイナゴをかごの中に閉じ込めた。
「あっ。も、もっと見せて……!!」
弾の顔を見上げながら、莉嘉が懇願する。
「ようやく話し掛けてくれたなぁ、泣き虫めぇ」
初めて自発的に話し掛けられた事に安堵しながら、弾は、自らの顔を覆うテントウムシの仮面を外した。
彫りの深い男性的な顔立ちであった。やや濃い顔つきであるが、しかし、世間的に見れば、男前に属するような、良い男である。
少しだけ堅い、強張った笑みを浮かべて、弾は口を開く。
「あー、まぁ……何て言ったらいいのか、正直俺もよぉ解らんがぁよぉ……」
――莉嘉を取り合えず驚かせ、泣き止ませる方法だけは思い浮かんでいた弾だったが、その後続ける言葉を全く考えてない辺りが、実にらしい。
莉嘉に伝える言葉を、完全なるぶっつけ本番で、しかも今更になって考えていた。無計画、此処に極まれり。
「ガキなんだから、泣きたい時ぁ泣いてもいい。頼りたい時ぁ、人に頼ってもいい。だがよぉ、向き合わん時ぁ向き合わなきゃならんのは、ガキも大人も同じよ。
……その、よぉ、マスターにとっちゃ残酷かも知れねぇがよぉ、今が、そん時なんじゃねぇかって、俺ぁ思う訳よ」
「でも、お姉ちゃんも……Pくんも……」
莉嘉の言葉を其処まで聞いて、弾はある事実に気づいた。
莉嘉が此処まで不安そうにしている訳は、今彼女がいる、聖杯戦争が彼女に演じる事を強いている、偽りのロールにもあるのだと。
結論から言えば、聖杯が彼女に与えた家族と言うものは、本来の世界にいる筈の城ヶ崎家の家族と根本的に異なるのである。
聖杯の設定した父母は、本当の父母とは違い、彼女がこれだけ頼りにしているお姉ちゃんすら違う、いや、最悪姉と言う立場の人間は、聖杯は設定していないのかもしれない。
そもそも本来の莉嘉の姉ではない人物をNPCにして、それを姉に設定するのではなく、そもそもその姉が設定されていなかったとしたら。
成程、莉嘉が此処まで怯えるのもむべなるかな、と言うものだろう。
「あー、流石に、俺じゃ姉貴……じゃなくて、マスターの姉ちゃんの代わりは務まらんがよぉ、その、何だっけ。ぴ、『ぴぃくん』、だっけか?
一応確認しとくがよ、そいつは男なんだろ? マスターが頼れるぐらいのよぉ?」
「う、うん。……とっても優しくて、アタシの為に一生懸命動いてくれる、大切な人」
「うっしゃ、なら決まりだぜ。マスターは聖杯戦争の間は、俺をそのぴぃくん扱いすりゃぁいい」
「えっ?」
弾からの、全く予想もつかない角度からの提案に、莉嘉は目を丸くした。
「正直そのぴぃくんって奴が何してるかは、俺ぁ馬鹿だから全く解らんがよぉ、一生懸命動けて優しい位なら、俺でも出来るぜぇ?」
目をまん丸にした、呆けた様な表情で、莉嘉が弾の事を見上げる。何言ってんだろうこの人、と言う意思が言葉にせずとも伝わってくる。
泣きじゃくられるよりも気まずさを感じた弾が、勢いよく頭をかきむしってから、言葉を紡いだ。
「だ、だからよぉ……。その、何だ。聖杯戦争の間は、俺はお前のぴぃくんじゃ!! んだからよ、俺を……頼れ!!」
最早ヤケクソの感すらあるような口調で、弾が言い放った。完全に、当たって砕けろの精神であった。
居た堪れない程重苦しい沈黙が数秒流れた後、その空気が壊された。ぷっ、と言う吹き出しの音によって。
その音を上げたのは、誰ならん、城ヶ崎莉嘉その人だった。
「あ、あは、アハハハハ!! ぴ、Pくんはそんなお顔も濃くないし、そんな変な服装してないよー、変なのー☆」
「へ、変な服装とはなんじゃ!! これはなぁ、俺の親父殿が俺に死に装束代わりにくれてやった、第八巫蠱衆の頭目の羽織でなぁ!!」
「? しにしょうぞくって何ー?」
「うっ、それは、その……、兎に角、親父殿の大事な品なんだ、変な服呼ばわりはやめぇや!!」
死に装束の説明をする事ぐらいは容易いが、それではまた莉嘉の気持ちを沈ませかねない。弾にしては珍しいファインプレーだった。
「パパにお洋服選んで貰ってるの? Pくん2号って、もしかして、ファザコン?☆」
「ちげぇわい!! ったく、最近のガキってのは、こんなナマイキなのか? 躾のなってない犬は叱ってやらんと――うん? ぴぃくん2号……?」
ここらでガツンと25歳の大人の貫録を見せてやろうかと張り切っていた弾であったが、その計画を中断する。
莉嘉から飛び出た、Pくん2号と言う言葉が、引っかかったからである。
「その、ありがとう。色々気を使わせちゃって。……本当はね、すっごく怖い、逃げたい……泣きたい」
「だけど……」、と其処で莉嘉が言葉を区切り、一呼吸おいてから、口を開いた。
「アタシ、解っちゃった。どんなに叫んでも、Pくんやお姉ちゃんの所には戻れないんだ、って。
……だけど、アタシ、人を殺す何て事も……戦うなんて事も出来ないから。だから、Pくん2号……じゃなくて、アサシン、だっけ?」
「あぁ」
「……アタシを守ってくれる? ……一緒に、人を殺さないで済む道を、探してくれる」
……最早その言葉は、哀願と言ってもおかしくなかった。
縁者全てが死に絶え、縋る者も頼る者もいなくなった人間のような雰囲気すら醸し出しながら、莉嘉は訊ねて来た。
言葉を受けて弾は、「ヘッ」、と軽く笑って見せた。
「たりめぇだろぉマスターよぉ。この俺様がか弱い女を見捨てるわけねぇじゃねぇの。何せ俺はアバド――」
アバドン王。其処まで言い掛けて、弾は黙ってしまった。語感が良いので、いまだについつい口にしかけてしまうのだ。
一度は身を焦がす程、帝都の人間を全て不幸にしてまで求めた地位。そして、身体が張り裂けんばかりの期待感を一瞬で裏切って見せたあの称号、『アバドン王』。
もうあの名前は死んでも口にしないと誓った筈だ。今の自分には、もっと相応しい名前がある。アバドン王などと言う、けったいな称号よりもだ
「何せ俺は……槻賀多弾なんじゃからな!!」
結局、自分が親から授かった名前に自信を持つ事が、一番良いのだ。
それが何よりの証となる。第八巫蠱衆の頭目何て肩書きよりも。アバドン王何て言う称号よりも、だ。
「――うん、よろしくね、弾くん!!」
初めて、城ヶ崎莉嘉が満面の笑みを浮かべてくれた。弾の見立ての通り、顔の周りに光の礫が舞い散りそうな程、明るく素敵な笑みだった。
つられて弾も、自然な笑みを浮かべる。嘗ての昔、自分の最愛の妹に向けていた、柔和な笑みそのものであった。
「(……コレでよかったんだろ? ライドウ……茜ぇ)」
莉嘉の笑みを見ながら、弾は、この場にいないであろう2人の人物の事を思い描く。
1人は、償っても償いきれない程の大罪を犯した自分を救ってくれた、大恩あるあの書生のデビルサマナーに。
そしてもう1人は、深淵世界の君主であるシナドを倒そうとするライドウの為に、自ら彼の礎となり、消え去った最愛の妹。槻賀多茜に。
遠い遠い所から、この2人には、見守っていて欲しい。自分がこれから成そうとする、アバドン王になると言う嘗ての大それた野望よりもドデカい事を。
城ヶ崎莉嘉を、綺麗なまま元の世界に帰すと言う決意を。これ以降、涙を流させず、彼女を聖杯まで辿り着かせると言う計画を。
生前は力足りずにできなかった事を、槻賀多弾は、今度こそカタチにするつもりでいた。大切な女性を守ると言う、ありふれた、それでいて何よりも難しい事を……。
遠い目をして考え事をし、数秒程止まっていた弾。
そんな彼の懐に、白く細い腕が伸びているのに気付いたので、彼は思わず身を引いた。その腕の持ち主は、城ヶ崎莉嘉その人だった。
「ちょいぃ、何すんじゃ!?」
「ねーねー、さっきのあの綺麗なバッタ、見せてよ☆」
「綺麗なバッタ……運喰い虫の事か、ダメダメ。アレは俺の大事な商売道具なの。簡単には見せられんぜ」
「ぶーっ、Pくん2号のケチ!! ……おへそと脚見せるからダメ?♪」
「駄目に決まってんじゃろうが!! ったく、最近の女子ってのは恥じらいがないんか恥じらいが!! 俺じゃから良い物の、そんな事、他の男に言ってみぃ、親が泣くぞ!!」
「……ねぇ、Pくん2号は、アタシが幾つに見えるの?」
「あん? ……8歳とか其処らじゃないんか?」
露骨に莉嘉が、ムッとした表情を浮かべた。御丁寧に、口に出して「ムカッ!!」とも言いだした。
「8歳!? ひっどーい、Pくん2号見る目なーい!! プロデューサー失格だよ失格!! アタシコレでも今年で12歳だよ!?」
「まだガキじゃろうが!! ライドウよりも年下だぞ!!」
ギャーギャーと喧しく口喧嘩がヒートアップする2名。
元アバドン王(仮)の槻賀多弾25歳と、新進気鋭のカリスマちびギャルアイドルの城ヶ崎莉嘉12歳。
干支1周分程も歳の離れたこの2名。精神年齢も頭のレベルも、可哀相な事に、全く同じの、お似合いのコンビだと言う事に、2名は気付く事はないのだった。
【クラス】
アサシン
【真名】
槻賀多弾@デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力C 幸運A+++++(D) 宝具A+++
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
使い魔使役(蟲):A
暗殺術の一環として、使い魔を操る事が出来る。
アサシンは生前、蟲を暗殺の道具として操る第八巫蠱衆の時期頭目として期待された男であり、高いレベルで蟲を操作する事が出来る。
このランクになると逆に、相手が蟲を使い魔にするサーヴァントであった場合でも、アサシンの使い魔使役のランクより下だった場合、逆に操作権を奪う事も可能。
武術:B+
天津神の系譜に連なり、日本国を霊的に守護する国家機関・ヤタガラス傘下の暗殺集団第八巫蠱衆として、高いレベルの武術を修めている。
アサシンの場合は鎌ヌンチャクと徒手空拳に長けている。また身体の一部に毒を入れ墨する『死に彫り』と言う入れ墨を施した事で、
攻撃の1つ1つに、毒の属性をエンチャントさせる事を可能としている。
結界術:C
第八巫蠱衆の秘術の1つ、『巫蠱るつぼ』と言う、迷路状の異界を形成する術を習得している。
結界とは言うが、進入用の入口と脱出用の出口が備わった結界の為に、足止め以上の役割は期待出来ない。
道具作成:D
魔術的な道具は作成できないが、第八巫蠱衆の腕利きとして、毒薬の調合に長けている。
悪魔狩り:
対人魔拳 最大捕捉・1人
自らの利き拳に、莫大な魔力を集中させて相手を殴りつける。
リーチこそ拳の届く範囲内と言う常識的なそれだが、例え相手が如何なる防御性質を持っていたとしても、ダメージを通す魔拳。
元々の頑丈さでしか、ダメージを低減させる事が出来ない。
【宝具】
『決意の大炎』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大補足:100
生前、アサシン本人が切り札としていた必殺技が、宝具となったもの。
体内の生体MAGを燃焼させ、強い火の属性を内包した熱波を全方位に放つ大技。Bランク以下の対魔力であれば、ダメージを通す事が可能。
『共に戦い抜きし我が相棒(戦斗虫・太郎丸)』
ランク:A 種別:対人〜軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100〜
第八巫蠱衆に所属する暗殺者達が、暗殺及び戦闘の商売道具/切り札としていたものが宝具となったもの。
宝具を発動させると、鬼の面のような顔をした、バッタに似た巨大な生き物、通称太郎丸がアサシンの近辺に召喚される。
精神防御のスキルが無い場合、確率で相手を混乱させる怪音波を放ったり、大質量に物を言わせて突進をしたり、数十mの高さまで飛び上がり、
その高さから急降下して蹴りを見舞ったりなど、体躯通りの荒々しい攻撃から、繊細な攻撃まで自由に行える。
当然の事、太郎丸が召喚されている間もアサシンは攻撃を仕掛ける事が出来、アサシンと太郎丸の波状攻撃は非常に強力。
『深淵世界を開けし禁忌の蝗(運喰い虫)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
アサシンが生前所属していた、暗殺を生業とする第八巫蠱衆に所属する暗殺者集団達ですら禁断の技とし、使用する事を絶対的に禁じた必殺の宝具。
この道具や宝具・太郎丸はそもそも第八巫蠱衆自らが創造した道具ではなく、彼らが住んでいた村の地下で生活していた異形の一族、
村の住民が言うところの『天斗』と言われる存在達によって作られたものである。
運喰い虫とは、対象の人物が内包している『運勢』を『全て喰らう』事で、運を喰われた以降の人物に、
『ツいている状態』を今後絶対に訪れさせないようにさせる、と言う必殺の宝具であり、直接的に相手を殺す道具ではなく、
相手から希望を奪い、生綿で首を絞めるようにして相手を苦しめて殺すと言うもの。
運を喰らった状態の運喰い虫を捕まえる事で、所持者は神憑り的なまでの運の良さを手に入れる事が出来、その運の強さは、1匹保持するだけで百回以上も連続で丁半博打に負けない程。
アサシンは聖杯戦争に際しては、運を喰らわせた状態の運喰い虫を、専用の赤い虫かごに入れた状態で5匹持ってきている。
アサシンの破格の幸運ステータスは、常時発動型のこの宝具を保有しているからに他ならない。
だがこの宝具の真価は、運喰い虫を1匹握り潰す事。こうする事で、運喰い虫が喰らった幸運を握り潰した人間が吸収。
ほんの10秒程ではあるが、幸運ランクが規格外のEX相当にまで跳ね上がる。
その幸運の程は、此方の放つ攻撃は全てクリティカルになる、相手がどんなスキルを持っていようが確実に逃走が出来る、
逆に相手の攻撃は、因果に作用する攻撃ですら命中させる事が極めて困難になるなど、ご都合主義的な奇跡が効果間だけ連続する。
この宝具は任意の相手に譲渡する事も可能で、アサシンが消滅しても残る。
最初の1匹までは使用してもステータス低下はないが、以降は1匹使うごとに幸運ステータスが低下、A→B→C→D、の順に低下する。
実はこの宝具が巫蠱衆の間で禁忌とされたのは、運を喰らうと言う効果からではなく、運を喰らわれた人間達の絶望に呼応して現れる『深淵世界』と呼ばれる、
禁断の異界が招聘されるからであり、過去この深淵世界が現れた事により、アサシンの世界は少なくとも2回は滅びかけていた。
アサシンはその深淵世界の存在を知らず、意図せずして招いてしまった張本人である為、運喰い虫を相手の運を喰らわせると言う本来の用途では絶対に使う事はない。
【weapon】
鎌ヌンチャク:
鎌とヌンチャクが組み合わせた武器。アサシンはこれを、目にも留まらない速度で振るう事が出来る。
【人物背景】
国家を霊的に守護する秘密国家組織・ヤタガラスの傘下にある暗殺集団、第八巫蠱衆の時期頭目として目されていた男。
第八巫蠱衆とは、虫と毒とを操り相手を暗殺する術に長ける集団で、日本の山陰地方の槻賀多村を根城に、江戸時代以前から暗躍していた組織である。
彼らの用いる暗殺道具とは、実は、遥か昔に日本国に海を渡ってやって来た、身体の一部が虫に似たそれになる奇病を患った、
今は槻賀多村の地下にひっそりと住んでいる渡来民族からもたらされていたもので、この暗殺道具と引き換えに、その渡来民族は村の女性を要求する、
と言う習慣が長い間続いて来た。弾は、自分の妹の茜にそのお鉢が回って来た事に大層憤り、何とかこの渡来民族に茜を渡さないように考える。
その時、村にやって来ていた金髪の男性からもたらされた、聖書の黙示録に記されていた蝗の王、アバドンの記述に着目。
弾は、自らがこの蝗の王、アバドン王になる事で、渡来民族の上に立つ存在になろうと決意、村を苦しめて来た因習を断つ為に立ち上がり、
アバドン王になるその一環として、帝都に運喰い虫を大量に放ち、帝都の人々の運勢を全て根こそぎ喰らい尽くす。
結果、深淵世界と呼ばれる世界の一部が現れ、弾はアバドン王になる資質を得る――が、深淵世界は弾の到底手におえる世界では断じてなく、
アバドン王にはなれないどころか、妹も救えず、結局帝都の人々を苦しめただけと言う結果に強いショックを受ける。
ライドウの破竹の活躍によって、深淵世界の門は退けられ、世界は救われたが、その過程で、槻賀多の地下に住んでいた渡来民族も、
身体を蝕んでいた奇病によって苦しみ、精神を病み、救いを心の底で求めていた事を弾は知る。
ライドウが世界を救ってからは、弾は心を入れ替え、世界から消えた茜と、深い傷跡の残った槻賀多村と、奇病を患った渡来民族達の為に尽瘁する事を決意。
以降は村の為に尽くすのであった。
【サーヴァントとしての願い】
生前は茜を結局救えなかった為に、今度こそ城ヶ崎莉嘉を無事に元の世界に送り返す。
【基本戦術、方針、運用法】
極めてハイスペックなアサシンと言えるサーヴァント。アサシンでありながら直接的な戦闘を得意とする事もそうだが、
なんといっても目を引くのが破格の幸運ステータス。宝具に由来する幸運とはいえ、これは驚異的。
最低でも5回は、運喰い虫を破棄する事で窮地を脱する事が出来、仕切り直し能力も恐ろしい程高い。
待つのも良し、攻めるのも良し。対魔力のなさと、運喰い虫を破棄すればする程幸運が下がる事を除けば、強いサーヴァントであろう。
【マスター】
城ヶ崎莉嘉@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい
【weapon】
【能力・技能】
アイドルとして歌唱力やダンスに優れ、また、昆虫に物怖じしない性質がある。
直接的な戦闘能力は、当然期待できない。
【人物背景】
城ヶ崎美嘉を姉に持つ、埼玉県出身のアイドル。年齢は12歳とまだまだ若いが、のびしろも期待値も抜群。
如何にも今時のギャルっぽい風貌をした中学生だが、小学生気分がまだ抜けないらしく、趣味はシール集め、カブトムシを見つけては喜ぶなど、
精神年齢は全くの子供。意外と奥手な姉に比べてプロデューサーへのアタックは積極的。
【方針】
弾を頼る
投下を終了いたします
皆様、投下お疲れ様です
私も投下します
この街に日が昇り、朝が来る。
太陽はその町の住人に1日の始まりが来たことを告げる。
その中のある家も他と同様に朝を迎えた。
「う、う〜ん…」
少年がベッドの上で唸り声を上げながら、起きることを拒否している。
布団がもぞもぞと動いているが、その少年が被っている布団は不自然といえるくらい膨れ上がっていた。
腹にあたる部分のあたりに山ができており、淫夢でも見て立つものが立っているにはあまりにも大きすぎる。
そこでようやく少年は目を覚ました。
「うん?」
体が重い。特に腹のあたりが。
まるで何かにのしかかられているような――。
「リトさん、おはようございます♡もう少し起きるのが遅かったらイタズラしていましたよ?」
「モ、モモ!?」
少年リトの意識が急激に覚醒する。モモが『また』夜這いしていたことに気づいたのだ。
すぐさま、自分の上にのしかかっていたモモと呼ばれた少女を押しのけて少女の股の間から体を引っこ抜いた。
モモの服装は過激の一言で、裸の上に寝着の上着だけを羽織った状態であった。
汗だくなモモの妖艶な雰囲気は少年が寝ている間によからぬことをしていたのを突き付けているようだ。
「お前…いつからオレの布団に!!」
「うふふ…いつからでしょう♡」
モモはベッドの上で笑いながらリトを誘惑する。彼女の悪魔のような尻尾もひょろりんとそれに合わせて動いている。
モモの夜這いは今に始まったことではないが、いつになっても慣れない。
リトが朝からバクバクと脈打つ心臓を抑えながらモモに問いただしていると、不意にリトの部屋のドアが開く。
「あれ?起きてたのか?美柑が兄貴を起こしてこいって――」
ドアの向こうから現れたのはモモの双子の姉、ナナであった。
「!………」
「あらナナ、おはよう♪」
リトのベッドの上で起きている惨状を目にして、ナナは絶句した。
開いた口がふさがらず、わなわなと体を震えさせている。
そして――
「わわっ、ちょっ!?」
「モモ、『また』やったのか!?そんなことやってるとしまいにあたしたちこの家から追い出されるぞ?」
ナナはモモの手を引いて強引にベッドから引きずりおろし、強面になってモモを叱りつけた。
――違う。
いつもなら、ナナはモモを叱るよりもリトに対してケダモノと貶しながらグーパンチで殴りつけていた場面だ。
(まさか美柑さんじゃなくてナナに叱られるなんて…)
やはりこの世界に彩南の日常はないのね、とモモは思った。
◇ ◇ ◇
「はぁ…」
ひとまずモモは部屋へ戻り、今のエッチな服装から無難なものへと着替えた。
モモはため息をついてベッドに仰向けに倒れこんだ。
彼女はモモ・ベリア・デビルーク。デビルーク星の第3王女。
モモこそが聖杯を巡る戦いに身を投じる本物であり、彼女以外は全てNPCだ。
全ての発端はモモが自分の部屋で銀河ネットサーフィンをしている時であった。
モモは当時、何も考えることなく適当に語句を入れて検索していた。
すると出てきた検索結果の中に『他の少女を打ち倒し、アナタの願いを叶えよう!少女性、少女製、少女聖杯戦争』というあからさまに怪しいサイトがあった。
モモには叶えたい願いがあるので、簡単に願いが叶うなどそんな虫のいい話なんてないとわかりつつも、
心に半分の期待と半分の警戒を持ってそのサイトに入った。
…のだが、モモの記憶はそこで途切れている。
(まさかアレがこんなことになるなんてね…)
ということはそのサイトに入ったことで記憶を消された上でこの「会場」に連れてこられたのだろう。
記憶を取り戻してからはなんとも奇妙な生活を送った。
なんといっても元の世界では考えられないことが起こっているのだ。
(リトさんが転ばないなんて天変地異の前触れだわ…)
モモが毎日見ている結城リトは想い人であり、ラッキースケベにまみれた人生を送る人物でもあった。
彼が転ぶと、必ずと言っていいほど女子の恥ずかしい部分に手や顔を押し付けてある意味での惨劇が起こる。
モモからすれば、それはもはや神業の域だ。
だが、この世界のリトは違う。彼は全くと言っていいほど転ばず、ただの人のいい高校生なのだ。
転ばないNPCのリトを見たときは驚愕のあまり大声を出して周囲をビビらせてしまったものだ。
先ほどナナがリトではなくモモを叱りつけたのも、ラッキースケベの被害に遭わずにリトをケダモノ扱いしていないことに起因するだろう。
しかし、モモは別世界に飛ばされたことに驚きはしても恐れはしなかった。
これはチャンスだ。取り戻した記憶の中にある聖杯戦争のルールによれば、優勝者には万能の願望機が手に入るという。
モモの恋を叶えるため、皆がリトに愛されて幸せをつかむためにこれを利用しない手はない。
「聖杯を手に入れて『楽園(ハーレム)計画』を実現してみせる…!」
モモはベッドに腰かけ、虚空に向かって言った。
モモの願いはリトを中心としたハーレムを作ること。
地球の常識に囚われず、リトがデビルーク王として側室を持てばリトに思いを寄せる者全員が幸せになることができる。
モモが姉のララの前向きな言葉を受けて計画した『"楽園"計画』の遂行だ。
「ほほっ、君だからこそラルフくんが召喚されたのかもしれないね」
「今までエロサモナーが女の子召喚してばっかりだったけど今度はこっちが召喚されるなんてな。あと俺を真名で呼ぶな」
「真名って言ってるとこ見てるといろいろとこじらせているように見えるのうセイバーくん」
「うるさい」
聖杯の争いに参加する資格を得たモモには当然サーヴァントが存在する。
モモのいるベッドの傍らに実体化して現れたのは、眼鏡をかけた老人とRPGゲームに勇者として出てきそうな風貌の青年。といっても、青年は本物の勇者である。
青年の方がセイバーで、エロサモナーと呼ばれた老人は宝具という扱いで現界している。
「はい。夢で見るセイバーさんのハーレムはとても参考になります♪」
「そう言ってもらえると女の子を召喚したわしの鼻も高くなるね」
「ハーレム作って魔王を倒した勇者というのもどうかと思うけどな…」
セイバーの青年の真名はラルフ。王と兵士によりレベル1から永遠にレベルが上がらない薬を飲まされた悲劇の英雄。
しかし、エロサモナーの助けにより、女の子を仲間に侍らせて魔王を打倒しに行った逸話も持つ、ハーレムの英霊でもある。
モモはラルフを自分を守るサーヴァント以上にハーレムを形成した男の見本として認識していた。
よく夢で見るラルフの仲間の女の子との思い出はモモにとって大変参考になっていた。
「でも、本当にいいのか?ハーレムのために聖杯を取るなんて」
モモの願いを知るラルフは問う。
聖杯を狙うことは即ち、殺し合いに積極的に関わっていくことを意味する。
「私は本気ですよ、セイバーさん。皆で幸せになりたいんです」
誰にも迷惑をかけずにリトへの恋を叶えるには、"楽園"しかない。
2番目でもお3番目でもいいから、リトに愛されたい。
それはモモの、恋する少女としての切なる願いだった。
「…わかった。本当はレベル上げたいんだけど、俺はモモのサーヴァントだからな。世界の破滅とか魔王らしいことは望んでいないみたいだし、手伝うよ」
「それにわしらも生前は女の子召喚して仲間にしたんだから、わしらも召喚した人のために戦うのが道理じゃろうな」
ラルフの言葉にエロサモナーが付け加える。
「けど…セイバーさんは、その…」
一応セイバーの助力は得られたものの、ラルフを見ていると浮き上がってくるパラメータを見ているとモモは不安を拭えなかった。
まず一番上にでかでかと浮き上がってくるのが『Lv 1』の文字列。
前述のような逸話があるからか、パラメータもレベル1のそれであり、ラルフの強さは標準的なサーヴァントと比べるべくもないのだ。
「レベル1だし弱いと思うよね?」
「そ、それを言わないでくれ…!」
ラルフはエロサモナーがさらりと弱いと言ったことにかなり傷ついているようで、レベル1であることにコンプレックスを抱いていることがわかる。
そんなラルフを無視して、エロサモナーは続ける。
「じゃが、わしの力を使えば心配はない」
次の瞬間、前触れもなく1人の少女がモモの部屋に現れた。
ロングヘアーで、へそを出したセーラー服を身に纏っている。
「ふー」
その少女は自分が現界できていることを把握すると、数回瞬きして周囲を見回す。
そして、
「ん!」
ラルフを視界に捉えると、表情が明るくなりラルフの前へ一直線に走り出した。
「ラールーフー!久しぶりー!」
この少女はラルフと面識があるようで、再び会えたことに心底嬉しそうだ。
「…そういえば初めて召喚された娘もお前だったな」
ラルフもこの少女を覚えており、感慨に浸っている。
「この人は…」
ラルフの過去を夢で見ていたモモは、その中でこの少女が何度か登場していたことを思い出す。
「エロサモナーさん、これって――」
「その通り。ラルフはかつての仲間の娘と一緒に戦うことができるんじゃ」
『一夫多娘の冒険譚(ヒーロー・アンド・ドーター)』。『女子攫う召喚士(エロサモナー)』とは別の、もう一つの宝具。
30人を超える娘の内3人までの娘がレベル1のラルフに代わって戦ってくれる。
これこそがラルフの弱さを克服できる切り札であり、レベル1の勇者が勝ち抜いていくことのできた所以だった。
このモモの見た夢に出ていた少女は、かつてラルフと共に戦った仲間その人なのだ。
ちなみに今現界しているのはこの少女一人だけなので、あと二人の娘を呼び出すことができる。
「ねーねーラルフ、この人がラルフのマスター?」
少女はモモを見てラルフに聞く。
その表情はどこか小さな嫉妬心を抱えているようであった。
恐らくラルフがいつもモモと一緒にいられることが少し気に食わないのだろう。
「モモ・ベリア・デビルークです。セイバーさんにお世話になってます♡」
それに気づきつつも、モモはとりあえずその少女に挨拶しておく。
…その少女の名前が「ララ」という姉と同じ名前だと知ってモモが驚愕するのはもう少し後のお話である。
【マスター】
モモ・ベリア・デビルーク@To LOVEる -とらぶる- ダークネス
【マスターとしての願い】
結城リトを中心とした楽園"ハーレム"を作る。
【weapon】
・デダイヤル
姉のララの発明品。伝送システムで仲のいい宇宙植物を呼び出して加勢させることができる。
・悪魔を連想させる尻尾
姉と同様に生えており、敏感で触られると悶えてしまう。
そこから強力なビームを放つことができる。
【能力・技能】
植物と心を通わせる能力がある。
エンジニアとしての才能もあり、ナナの宇宙動物がいる電脳サファリパークのプログラミングもモモがした。
格闘能力も数人に囲まれている状況でも攻撃を回避できる程度には高い。
【人物背景】
デビルーク星の第3王女でララとナナの妹。ナナとは双子の姉妹。
ナナと比べると大人しく清楚で、可憐な印象を受ける。
一方で、かなりの腹黒でもあり、怒らせると目つきが怖くなりドSっぷりを露わにする。
リトに惚れており、居候となってからは夜中にリトの部屋に忍び込んでは寝込みを襲うと言った行為を何度も繰り返している。
「To LOVEる -とらぶる- ダークネス」では主人公格を務める。
みんなの恋を叶えると同時に自分の恋も叶えるという目的も兼ねて、リトのハーレムを作ろうと暗躍する。
エロ校長の計らいでリトの高校の1年生になることができたのを反映してか、聖杯戦争での立場も高校1年である。
【方針】
聖杯を取る。
【クラス】
セイバー
【真名】
ラルフ@Hero and Daughter
【パラメータ】
筋力E 耐久E++ 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具A++
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。
騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。
【保有スキル】
永遠のレベル1:EX
ラルフは本来かなり高位のサーヴァントだが、王と兵士によりレベル1にされたという逸話からこのスキルを持つ。
宝具以外のパラメータと大半のスキルのランクがすべてEになる。
ただし、能力値上昇などの補助効果での強化は有効。
魔術:E
永遠のレベル1の効果により、Eランクに低下している。
治癒に関する魔術は申し分程度に使えるが、その他の魔術は一切扱えない。
レストラン:C
レベル1に戻ってしまった時に、レストランで出される料理を摂取することでレベル1の癖に能力を強化していったという逸話からくるスキル。
特定の料理を摂取する毎に、それに対応したパラメータが若干量増加する。
また、魔力も通常より多く回復できる。
魔法反射:B
1ターンの間、敵の攻撃魔術を跳ね返す。このスキルを発動した場合、他の行動は一切取れなくなる。
敵の攻撃を先読みして使うといい。
勇者の覚悟:A
ラルフが勇者として培ってきた精神。
肉体はレベル1でも、心はレベル99である。
ラルフが勇者としてあるべき行動を取っている間、耐久に大きなプラス補正がかかる。
【宝具】
『女子攫う召喚士(エロサモナー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:3人
レベル1にされたラルフを支援した召喚士。
あらゆる女の子を別世界からでもお構いなく召喚し、ラルフの仲間にした。
彼の存在無くてはラルフは立ち上がれなかったことから、ラルフの宝具として一緒についてきた。
彼の役割は後述の宝具『一夫多娘の冒険譚』での娘達の入れ替えである。
エロサモナーはラルフの仲間になった30人以上の娘を常にストックしており、
彼の指示で娘をラルフに連れていかせることができる。
エロサモナーは自己申告でレベル20くらいらしいが、率先して戦ったという逸話はないため、身体能力は人間レベルでラルフより弱い。
消滅すると、ストックしている娘もみな消滅し、それ以降パーティの入れ替えができなくなってしまう。
『一夫多娘の冒険譚(ヒーロー・アンド・ドーター)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:3人
レベル1になったラルフが女の子だけのハーレムパーティで魔王に挑んだという逸話の具現。
ラルフの仲間となった娘はいずれもラルフより強い。
ラルフはエロサモナーを経て仲間になった娘の内3人までを連れてパーティを組み、サーヴァントとして一緒に戦わせることができる。
娘は単独行動スキルを持っていないが、ラルフの近くにいればラルフを経由して魔力供給を受けることができる。
また、エロサモナーに頼むことで連れ添っている娘達を自由に入れ替えることができ、パーティの編成ができる。
各自パラメータ・所持スキルに得手不得手があるので戦う相手を考えて編成しよう。
入れ替えられて控えメンバーに回った娘は霊体化し、エロサモナーのストックに戻る。
一度消滅した娘は二度と復活することができない。
【weapon】
・勇者の剣
勇者の愛用している剣。
名前の割に、とても弱い。
これも『永遠のレベル1』のせいだろうか?
【人物背景】
tachi氏制作のフリーゲーム「Hero and Daughter」の主人公。
幾度となく魔王を倒してきたベテラン勇者。
しかしラルフは何回も魔王を倒してきたことによりレベルが上がり切ってしまい、魔王を倒すことに飽き飽きしていた。
ある日、王は相変わらず魔王退治を依頼してくるが、楽勝な魔王退治に飽き飽きしていたラルフは文句を言う。
しかし兵士により、レベルが1に固定さてしまう薬を飲まされ、圧倒的に弱くなってしまう。
王によると「初心に帰れ」とのこと。
レベル1になったことによりその弱さは尋常でなく、最初のダンジョンにいるスライムにすら満足に勝てない。
そのことにラルフは自信を無くすが、そんな彼にエロサモナーが手を差し伸べる。
エロサモナーは自分の酒場に女の子を召喚し、ラルフの仲間にしてくれたのだ。
こうして、ラルフはその酒場を拠点に、女の子のハーレムパーティを作って魔王を倒しに向かうのであった。
実はラルフはこの事件の黒幕を倒したことで普通にレベルが上がるようになっていたのだが、
本人がそれに気づかずに余生を過ごしたためサーヴァントになってもレベルは上がらず1のまま。
さらにさらに、レベル1から脱却し勇者としての真の力を発揮する『スーパーラルフ』という宝具があったのだが、
「レベル1」「弱い」という逸話があまりにも強すぎたため、具現化されていない。
【サーヴァントとしての願い】
本当はレベルを上げたいが、モモを手伝う。
【基本戦術、方針、運用法】
パラメータは全ランクEだが、ラルフより強い女の子にお供してもらおう。
それぞれが個性を生かせれば強いので、それができたらラルフは立派なオトモセイバーだ。
書き手的な運用法を簡潔に記しておくと、3人しか連れ出せないという制限がラルフにはあるので把握している娘を選りすぐって出せば書きやすくなるかもしれません。
特にララは原作で必ず最初に加入する娘なのでオススメです。
【参考】
蛇足もいいところですが、どんな娘がいるのかを簡潔に記しておきます。
全員少女です(多分)。普通に多いです。知りたくもなかったらごめんなさい。
・ララ:女子高生。へそ出しセーラー服着用。マスターの姉とは関係ない。
・アクアータ:関西弁の水泳オタク。マイクロビキニ着用。
・ディエ:呪術師。ヤンデレ厨二病。
・ストレーガ:魔術師としては一流。美人。
・フェリーチェ:モブの村人A。
・アヤメ:暗殺者。闇の世界で生きてきた。
・アウイン:どこかの国のプリンセス。
・サキアー:眼鏡っ娘。勉強熱心。
・ユメル:他人の心を読むことができる。そのことをコンプレックスにしていた。
・リヴ:貧しいスラム街の生まれの、盗人の褐色肌の幼女。
・ハイテック:ネット依存症。よく携帯で嘘電話をしている。
・シルト:女剣士。耐久が高く、「かばう」スキルも持っている。
・ルージュ:女格闘家。体を鍛えており、筋肉がものすごい。
・ホーリー:天使。ドSだがツンデレ。
・キャミー:猫娘。猫耳に尻尾完備。
・レナ:喧嘩が大好きな喧嘩番長。
・ロボ子:アンドロイド。外見も首から下はロボットのそれ。
・リリア:メイド。かなりの危険思想を持っている。
・シオン:ボクっ娘スク水マント。自称天才で剣術に長ける。
・アイ:一つ目の娘。邪視による状態異常付与が得意。
・プリズン:ドMの囚人。ストライプ柄の囚人服着用。
・赤の魔女:Hero and Daughterの作者製の他のゲームにも登場する魔女。「ヒッヒッヒッ…」と笑うがキャラ作りらしい。
・エリナ:同作者製のフリーゲーム「囚体」の主人公。死神の眼を持つが、根は優しい。ジョジョの嫁ではない。
・魔王アルエ:アルバイトで魔王をしていてラルフ達の前に立ちはだかったが解雇された。
・キャンディペロン:同作者製のフリーゲーム「死村」に登場する。キャンディによる補助・妨害スキルが強力。
・アカリ:元地縛霊。エロサモナーに召喚されたことで蘇った。
・ヨミ:腕にでかいバスターをつけている。
・精霊王:宇宙を破壊できる程の力があるが実力を0.00001%くらいにセーブしている。
・チーア:チアガール。仲間を応援する。
・モスキー:吸血蚊。
・ワゴコロ:和風女性。和の心を大切にしている。
・アピル:バットで豪快に敵をフルスイングする。
・ラルフィー:未来のラルフの娘。母親は不明。
以上で投下を終了します
思いついたので一つ投下。
「戦争って言ってもねぇ。第三者ならともかく当事者になるってのはちょっと遠慮したい訳よ。
そういう物騒なのの脇で儲け話を探したりちょっと尻子玉ちょろまかしてウハウハしたりするのが理想なのよ。
急激な技術の発展を見れるってところは楽しいけど…マジであんまり危険なのはいやじゃん」
長身の男を前にして河城にとりは愚痴る。
彼女は妖怪の山に棲む河童であった。
今はどことも知れぬ街に放り出された少女である。
胡散臭く、ただ危険であることだけは間違いないであろう催しに放り込まれたマスターである。
件のはた迷惑な宗教戦争など比較にならない。厄介事に巻き込まれたものだ。
幻想卿ならどんな戦いも遊びで済む。だがここでは違うのだ。
敵がただの人間だろうと何をしてくるのか分かったものではない、その上サーヴァントなんて化け物がいるのだ。
自分のサーヴァントであるこの男に愚痴が出るのも仕方がないことではないか。だがこいつは愚痴の相手としては失格だ。
「なかなか強かなレディだね。まあ私も血生臭いことは好みではないよ。
マスターの様な可愛らしい女性とひと時の素敵な思い出をつくる方がはるかに有意義だね。
そうだ、これから夜景を楽しみながら食事でもどうかな?」
ジト目で睨む少女にエドガー・ロニ・フィガロは言葉を返す。
彼はとある砂漠の機械王国の王様であった。
今はどことも知れぬ街に召喚された英霊である。
胡散臭く、ただ危険であることだけは間違いないであろう催しに召喚されたサーヴァント・アーチャーである。
こんな戦争を企画したのはあの狂った魔導師と同じく性根がねじ切れているに違いない。厄介事に巻き込まれたものだ。
しかもどうやらマスターとしての資格を持つのは皆少女だという。レディをあえて殺し合わせるとは許せない。
そんな企みは阻止するとして、まずは紳士としての責務として、またサーヴァントとしての役目として、
結構イイ性格をしているであろう眼前のマスターと相互理解を深めなければ。
「ひゅっ…。…また口説くのかよ。そんなキザなセリフがよくポンポン出るよ。
言っとくけど私の方が結構年上だよ。盟友とはいえ河童をあんまりからかうんじゃないよ。馬鹿なの?」
「ハハ、カッパといえば生前も馴染み深くてね、私や仲間もよくカッパになったものだ。
まあ『魔法』によるものだったから大分姿が変わってしまって、マスターの様な可憐なカッパには終ぞ会えなかったがね。
それに今の私はある意味年齢なんて関係ない幽霊みたいなものさ。
マスターの懸念は些細な問題だよ。女性を口説かないなんて失礼なことよりも、ね」
柔らかいスマイルを浮かべて再びしれっと言葉を吐くアーチャー。
主従が話を始めてそこそこ時間が経つが、このアーチャーは事あるごとに口説き文句を交えていた。
これにはにとりもうんざりしていた。
見てくれは良いのだが、その女性に対する情熱が何だか逆方向に作用して印象を落としているのではないか。
それに河童の価値観は人間とはかなりずれているところがある。これもちょっとうまくいかない原因かもしれない。
◆
「…歯の浮くような言葉はちょっとやめて。
巻き込まれちまったものは仕方ないし、今後の話をしよう。
とりあえずあんたは目的とか方針とかあんの?あとあんたの機械は後でよく見せて」
「趣味の話なら大歓迎だとも。私も河童の技術というものをよく学びたいところさ。
…戦争のことなら、私としてはレディ達が相争うような事態を止めたいというのが第一だね。
無辜のレディ達を犠牲にして叶えたい様な願いは無い」
思わず眉間に皺が寄る。
彼は王であった。だからこそ国の為に戦った。そして虐げられた者達の為に戦った。
暴虐を尽くす帝国に面従腹背し、やがて反旗を翻して戦った。
世界が割れてからは、破壊の権化を滅ぼすために瓦礫の山を登り、戦った。
王自らが幾度も手を汚した。
だが常に理不尽への抵抗であり、守るための戦いであった。
故に、望まぬ殺し合いを強いるこの戦争には嫌悪感以外を感じることはない。
「私としては遊びで済まない戦いを避けられるならそれで構わないよ。
そんな面倒くさいものはやってられないからね。
かといって相手が女だからって襲われて全く戦わないようだと困るんだけど?」
正直にとりとしてはアーチャーの目的とかは割とどうでもいい。
自分の不都合にならない限りは。
今後の話を切り出したのもそこを確認したかっただけである。異世界の技術の件もであるが。
両者ともそこまで積極的に戦いたくないという姿勢は共通しているが、
その由来となる心情はまるで異なる。にとりはただ単にそんな面倒をしたくないだけなのだ。
なのでアーチャーが使えないのであれば非常に困る。
「そこは安心してくれて構わないよ。マスターを守るのは騎士たるサーヴァントの役目さ。
相手のレディに対しては、ま、うまくやるさ。非殺傷性の兵器もある」
「本当かねぇ?じゃあそこはおいおい見ていくとして、帰り方は?」
そう、そこが重要である。
にとりは生者だ。故に生き残って帰れなければ意味が無い。
「聖杯を使って、というのはあまり期待するべきではないだろうな。
私達がお互い戦争に積極的ではない以上は当然だが、
それを除いてもこんなタチの悪い宝箱に本当に望みのものが入っている可能性に期待するのはね。
だからといって辞退してすんなり家に帰られるほど容易くもない」
「へぇ、ならどうする?結局ダメ元で殺し合いしかないってか?」
にとりは妖怪である。
面倒だし危険だからやりたくないだけで、必要なら殺すことは躊躇わない。
だがアーチャーは首を横に振る。
「聖杯戦争は悪だ。だがそこに関わる者全てが悪ではない。
マスターや私の様に、聖杯自体に望みを持たずに巻き込まれた者はまだいるはずだ。
私としては彼女たちと協力したいところだね。そして聖杯戦争のいかなる要素が悪であるのか見極めたい。
聖杯そのものか、あるいは戦争を取り仕切る裁定者がそうなのか。それとも第三者がこれを利用しているのか。
その上で諸悪の根源を取り除いて、戦争のシステムを解明すれば、
呼び寄せた以上は帰ることも可能…、というのは少し楽観的かな?」
ちょっとおどけた感じで最後の一言を付け足す。
だがその表情とは裏腹に、言葉には口説き文句よりもはるかに強い真剣さがこもっていた。
楽観的としか言えない意見かもしれない。
だが彼は本気でそれが可能であると信じていた。
未来が見通せない故の縋りつき、思考停止ではなく、未来に希望を抱きすべきことをすれば道は開けるという信条故に。
その込められた想いにはにとりもちょっと気圧された。
「……確かに楽観的だろ、それ。かなり。都合良すぎじゃねえか。
それに望んで来る連中だっているんだ。そいつらにとっては遊びじゃねえんだぞ」
「そして私たちにとっても決して遊びではない。楽観的に見えてもね。
そういった手合いには勝つさ。そして味方も必ず見つける。
希望というものは強いのだよ?
世界が滅んでも生き続け、滅びそのものに打ち勝つ程には」
アーチャーはにとりの瞳をまっすぐに見る。
その輝きは、不器用で少し心根が捻じれているにとりには眩すぎるものだ。
視線を逸らす。話題も逸らす。
「ああもう、じゃあ当面それでいいよ。
もうその話はいいから、あんたの機械見せて」
「仰せのままに、レディ。ならお互いに技術交換といこう。
この世界の技術も色々と学べるところが多い。
デートとは聊か趣きが違うが、楽しい時間を過ごそうじゃないか」
一転して口説きモードに戻るアーチャー。
どうやらシリアスさんはそこまで持久力が無いらしい。
すぐこの調子に戻るのは勘弁してくれ、と思わずにいられないにとりであった。
◆
「…あんたの機械技術は確かにすごいんだろうけど、
いくらその技術で作っているからって宝具がヘルメットっていうのはどうかと思うよ」
微妙な表情を見せるにとりの手には一つのヘルメット。
アーチャーのガチャガチャしたパワフルな機械はにとりをして表情をほころばせるものであったが、
宝具はどれかと質問すると何だか悩ましい表情を見せたアーチャーが差し出したのはこれである。
一見すると何の変哲もないヘルメット、しかし彼の世界においては最強を誇った防具の一つである。
正確にはその脇に転がっているドリルも含めてなのだが。
マスターを守るためにも一つ渡しておくのは当然の判断である。だが。
「…ああ、そこは生前色々とやったことの中でもある意味悔いるものだね。
確かにドリルで砕いた破片の保護用には十分頑丈だし、幾度も私達を守ったのも事実なんだが…」
なぜかそこらの兜など比較にならない程、というか説明がつかない程に異常に堅牢で、
それで仲間内で装備するものが増えていき、その逸話が昇華されなんとアーチャーの宝具になってしまった。
ドリル用のヘルメットが、である。
ドリルはフィガロで開発した機械としては傑作の兵器だと胸を張って言える。
しかしこのヘルメットが自分の象徴たる宝具なのだと胸を張って言えるかというと…正直かっこ悪い。
にとりとしても、武骨で強力かつある意味ロマンなドリル自体にはテンションが上がったが、
そのヘルメットだけ手渡されて宝具ですと言われたことには突っ込まざるを得なかった。
何か違う。それにこれを肌身離さず被っていろってか。
紳士として服装にも一家言あるアーチャーとしては割と痛恨の失態である。
万が一穏便に聖杯が手に入って、まともに機能するならもっと品性のある形にするよう願おうか、
とかちょっと考えてしまったアーチャーであった。
【クラス】
アーチャー
【真名】
エドガー・ロニ・フィガロ@ファイナルファンタジーⅥ
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運B 宝具C
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
単独行動:C+
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。
戦闘に使用する機械の消費魔力が非常に少なく、また稼働さえすれば一定の威力が保障されるため、
魔力供給が不足している状態でもそれなりの戦闘が可能である。
【保有スキル】
機械知識:B
機械に対する理解。
機械を対象とした騎乗・道具作成・高速思考の複合スキル。
Bランクにもなると、兵器類や未知の技術体系により製造された機械をも速やかに解析し運用できる。
また、アーチャーが十分に手を加えて作製・改造した機械は
もともと神秘を持たないものであったとしてもサーヴァントの武装としての神秘を獲得する。
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
魔法:E-(C)
戦闘用の魔術体系。
幻獣の力の結晶である『魔石』により習得したもの。
『魔法』という名称のスキルであるが、魔術師が目指す奇跡とは別物であり、魔術の範疇に入る。
幻想種の力を起源とする魔術であるために神秘の純度自体は高いが、習得度はそこまで高くなく、
更にアーチャークラスで召喚されたことによる制限のため本来はスキルは失われるはずであった。
だがマスターが河童であることによる特殊な補正が生じたため、
対象をカッパにしたり戻したりする『カッパー』の魔法だけは使用可能となった。
カッパ状態となった者は『カッパー』以外のスキル・宝具・武装が使用不可能となる。
カッパ状態でも単純に武器を振るうこと程度は可能だが、本来の神秘や性能を全く発揮しないガラクタとなる。
『カッパー』は標準的な魔術師程度の抗魔力や神秘を有していれば十分に抵抗可能。
【宝具】
『機械装備(マシーナリー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
アーチャーが所有している機械兵器を『装備』する。
この宝具能力によって装備された機械は、通常の使用方法で発揮される正常な機能とは
全く異なる能力を発揮し、非常に強力な防具として扱われる。
アーチャー以外の人物にも装備させることが可能。
『万難貫き弾く錐兜(ドリル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
『機械装備』で、武装である機械の一つ『ドリル』を頭に装備したときに発揮される宝具効果。
(実際には、ドリルに付属する頭部保護用のヘルメットを被っている)
装備者に対魔力:Aを付与し(魔法防御力255)、
受けたDランク以下の攻撃を無効化、それ以上のランクの攻撃も2ランク分威力を減衰する(防御力191)。
効果は『ドリル』を頭に装備する限り常時発動し、それによる魔力の消耗は無い。
ドリル以外の機械を装備した場合でも強固な武装として機能はするが、
アーチャーの伝承にはドリルを極めて強力な兜として用いたというものが広く伝わっているために、
ドリルのみが特別に宝具として昇華し、強靭な防御効果を発揮するようになった。
【Weapon】
『機械』
フィガロ王国の機械技術により製造された、アーチャーの兵装。
8種類あり、いずれも極めて強力な攻撃力やステータス異常効果、広い攻撃範囲を持つ。
機械の動力源および打ち出す矢などの消耗品の補充は魔力の消費により代替される。
以下の8つ。
・オートボウガン 複数の対象に自動で狙いをつけ、高威力の矢を撃ち出す。
・ブラストボイス 強烈かつ不快な音波を発する兵器。まともに聴くとしばらく正常な行動ができないほど。
・バイオブラスト 広範囲に毒霧を噴射する。
・サンビーム 強烈な光線を発射する。目を晦ませ、さらに光線のエネルギーによるダメージを与える。
・ドリル 戦闘用ドリル。とっても頑丈なヘルメット付き。
・かいてんのこぎり 丸鋸状の刃が回転するタイプとチェーンソーの2種類がある。
後者には何故かホッケーマスクが付属する。神殺しの武器であるとかなんとか(嘘)。
・ウィークメーカー 対象に何らかの弱点属性を付与する。正体不明の機械。
アーチャー自身も原理を理解しているのかは不明。
・エアアンカー 対象に圧縮した空気の塊を撃ち込んでダメージを与える。
撃ち込まれた後に対象が動くと、空気が瞬間的に膨張して体内で爆裂する。動いたら死ぬぞ!
機械はその高い性能に比して非常に燃費が良く、消費魔力は少ない。
特に『ドリル』『かいてんのこぎり』『ウィークメーカー』以外の機械は遠距離攻撃に属するため、
アーチャークラスの補正として燃費が更に向上している。
どの機械も基本的に一つだけ所持していれば戦闘での使用には十分であるため、
それぞれ一つだけしか持っていない。
しかし『ドリル』に関しては、アーチャーのみならずアーチャーの多くの仲間が装備したという逸話が伝わっており、
それ故に無尽蔵に取り出せる。
『さごじょうのやり』
異国の伝説のカッパが用いたという槍。歴とした宝具であり、そのランクはA-。
Aランク宝具に相当する非常に強力な神秘と攻撃力を持つ(攻撃力253)が、カッパが担い手でない限り真価を発揮できない。
カッパ以外の存在が振るった場合はただのなまくらである。
ただし、空中からの急降下攻撃(ジャンプ)に使用すると追加ダメージを与える特性があり、これは非カッパでも有効。
また非カッパでも勢いよく投擲(なげる)すれば本来の攻撃力を発揮する。
アーチャーはランサー適性も有し、そのクラスで現界した場合は槍を武装として所持するが、
アーチャーとして現界している現状ではクラス制限により本来は槍を持てない。
またこの槍はアーチャーが生前使用した経験はあるものの、固有の宝具や武装になるほどの馴染みは無い。
だがマスターが河童であることによる特殊な補正が生じたため、例外的にサーヴァントの武装として追加された。
【人物背景】
砂漠の機械王国フィガロの国王。
圧倒的な力を持つガストラ帝国と表向き同盟を結んでいたが、
魔導の力を持つ少女を匿ったことをきっかけに同盟を破棄し、抵抗組織と手を結び、
再開した双子の弟とともに帝国との戦いに身を投じることになる。
世界崩壊後は、地中に沈んだ自分の王国を救いだし、
元凶である道化師の打倒のために世界中を巡り仲間を探し出す旅に参加した。
かなりの女好きで、女性ならば子供から自分の婆やまで口説かずにはいられない。
だが共に戦った仲間の女性たちに対しては悉くフラグが立たなかった。
王族としての洗練された振る舞いから、軽薄な印象はあまり無いのだが。
ちなみに口の悪い女性がタイプである。
仲間に該当者がいたのだが、まだ幼かったため本気で口説くのは流石に自重したようだ。
【サーヴァントとしての願い】
レディ達に理不尽な戦いを強いるこの戦争を阻止したい。
【基本戦術、運用法、方針】
機械に飛び道具が多い故に最適クラスはアーチャー。
機械は神秘の純度こそ低いものの威力や射程があり、特異な効果を秘めてバリエーションが豊富。
そして何よりも燃費がよく連発が効く。『万難貫き弾く錐兜』の強力な防御もある。
通常戦闘では攻防と応用性において優秀なサーヴァントであり、持久戦にも強い。
だが自分以上に強力な火力・神秘持ちの相手には一転して相性が悪い。
機械は宝具ではないため瞬間火力で負け、『万難貫き弾く錐兜』は平均的な宝具なら威力は落ちれど突破できるためである。
さらにランサーとしての召喚ではないので使い物になる槍を持っていない。取り回しに難のある機械で格闘戦は厳しい。
格上や苦手な相手だろうとどうにかできるような底力が乏しいのである。
カッパ状態は攻撃力だけならその例外にあたるが、機械と『万難貫き弾く錐兜』を代償に差し出すギャンブルである。
安定して勝つ為には、並みのサーヴァント以上に自分の強みを押し付けていくことが必須だろう。
【補足】
『機械装備』の描写は、機械を持つ(手に装備)、
機械に被り物が付属する場合はそれを被る(バイオブラスト・ドリル等を頭に装備)、
無理やり該当部位に括り付けるなどする(胴体に装備、オートボウガン等を頭に装備)、となる。
なので『万難貫き弾く錐兜』は身に着けていてそこまで不自然な恰好をしているわけではない。
身に着けていることが重要なのであって、防御効果は装備部位以外の全身にも及ぶ。
【マスター】
河城にとり@東方Project(『東方心綺楼』以降)
【マスターとしての願い】
ガチの殺し合いなんてやってられない。
帰る。
【weapon】
『機械』『工具』『材料』『燃料』
にとりが作製した機械の数々や、その作製・整備・稼働に必要なもの。
服のポケットや背中の大きなリュックに入っている。
河童の機械は防水仕様が標準である。
具体的に何がどれだけ入っているかは現時点では不明。
『光学迷彩スーツ』
にとりが着ている服。
文字通りの光学迷彩によって身を隠す。透明化と言っていいほどの高性能。
だが光学以外の探知には未対応。またにとり自身は気配遮断のようなスキルを持たないため探知自体は容易。
『スペルカード』
幻想郷における決闘法『スペルカードルール』に用いる、得意技の使用宣言用のお札。
だがスペルカード自体に特別な力は一切無い。ただの紙である。
【能力・技能】
『弾幕』『飛行』
妖怪としての基本能力。
弾幕は弾幕ごっこ用の物であり、殺傷能力は無いわけではないが然程強くない。
幻想郷の外は妖怪にとって好ましい環境ではないために相応に劣化している。
『水を操る程度の能力』
河童として水を自在に操作する、にとりの固有能力。
幻想郷の外では劣化する。
『機械知識:D++』
河童は幻想郷における技術者である。
にとりはエンジニアとして優れた能力を持つ。
幻想郷の技術レベルは必然的に外の世界よりも劣るのだが、
それにも関わらず時折明らかにオーバーテクノロジーな産物を作り出す。
【人物背景】
幻想郷の妖怪の山に住む河童。
河童の例に漏れず優れた技術者であり、その技能を活かして生計を立てている。
人間好きだが人見知りで臆病な性格をしている……らしい。
確かにそれらしい言動を見せることもあるのだが、
それ以外にも興味深い技術を見ると暴走したり、
組織行動ができない程に協調性が無く我が強かったり、
人間の盟友を称する割に妖怪として人を殺すことには抵抗が無かったり、
自分が有利な状況では妙に高慢になったり、
悪質な詐欺すら辞さない金の亡者だったり、
と、今一性格や言動が安定しない。
河童という種族が元来そういう性質を持っているのかもしれない。
メタ的には『心綺楼』以降の時間軸からの参戦であり、
あのゲスい性格をベースにしながらも『風神録』『地霊殿』の頃の要素を少しだけ足して
ほんのりマイルドにした感じをイメージしたつもりなのだが
やはりこいつの性格はよくわからない。
【方針】
幻想郷への帰り方を探す。
他の参加者は自分の邪魔さえしなければどうでもいいが、邪魔するなら戦闘自体は辞さない。
以上です。
投下します
◆ ◆
小さな頃の小さな記憶。
『日晴』と書かれた地面の落書き。
優しそうな父の笑顔。
座ってこちらを眺める愛犬。
彼らに囲まれ、屈託のない笑顔を振りまく少女。
幸せな日々。
いつまでも続くと思っていた日々。
それが、少女が見た最後の世界。
それが、少女が今も夢見ている世界。
◆ ◆
ある日、少女の瞳は何も映さなくなった。
彼女のくりくりとした瞳が微笑みを称えることもなくなり、ただ来る日も来る日も眩しい過去と涙で曇り続けることとなった。
別れは唐突だった。
突然父が居なくなった。ヤッターマン様の元で強制労働をすることになり有無を言う間もなく連行された。
一緒に愛犬も居なくなった。父同様、ヤッターキングダムに連れて行かれた。
母の居なかった少女は、突然一人ぼっちになってしまった。
愛するものを急に奪われる、というのはどれほどの衝撃だろうか。
少なくとも幼い彼女にとってそれは、『両目を潰してしまうほど』の衝撃だった。
その一件以来、彼女は目が見えなくなった。
瞳自体になんの変化もない。
ただ、心が……深く傷ついた心が、今まで当然のように行ってきた『見る』ことを拒むようになった。
彼女の心は、残酷な世界に耐えられなくなり、瞳を閉ざした。
そうして少女は、世界と向き合えなくなった。
でも、少女は幸せだった。
たとえ目が見えなくても、彼女の中では幸せな世界が続いているから。
父と愛犬は居なくなってしまったが、帰ってくると決まっているから。
いつか『天使ちゃん』がふたりとも連れて帰ってきてくれるから。
その時まで、彼女は幸せな世界で生き続けることを決めた。
仮に現実では世界中に圧政を敷かれていようと。
明日を迎えるのも困難なほどに貧窮していようとも。
目を閉じ、耳を塞ぎ、幸せな世界だけを信じて生き続けていた。
少女の名は『アルエット』と言った。
◆ ◆
「ふん、ふふんふん」
どこかで聞いた歌を口ずさむ。
思い出せないけど、それはきっと素敵な歌。
「ふん、ふふんふん」
歌に合わせて壁に手をついて廊下を歩く。
家具や扉の大体の位置は覚えているけど、それでも伝いながらではないと歩けない。
暮らしていて少し不便は感じるけれど、慣れればそう問題ない。
動き回るなら別だろうが、特に動く理由が彼女にはない。
料理や洗濯をしているなら別だろうが、そういった『アルエットにとって危ないこと』は近所に住む幼なじみのガリナが助けてくれる。
お昼は『学校』で会えないけど、朝も夜もご飯を作ってくれるし、洗濯もしてくれるし、お話の相手もしてくれる。
ただ、ガリナが『学校』のお昼の間は、何もできることがないし、とっても暇だった。
だから彼女は、お昼はいつも暇つぶしをしながらいつか来る『天使』を待ちながら過ごしていた。
暇つぶしと言っても、『この世界では』焚き木を拾う必要もない。
だから大半は自室で過ごし、待つのに飽きたら庭に出て、花を愛でたり(美しさは分からないが香りはわかる)、水を撒いたり(といっても何かを栽培しているわけではないが)している。
今日もこれから少し庭に出てみようと思った。
今朝、窓を開けるとうずうずとしている若草の匂いが漂っているような気がした。
そろそろ春が近いのかもしれない。
「ふん、ふふん、ふんふん、ふん、ふふふん」
鼻歌交じりに一歩を踏み出し、少しだけ足元を踏み外す。
ちょっとだけバランスを崩してこけそうになってしまう、と。
「もう、危ないよ!」
誰かがアルイエットの体を抱きかかえた。
大きさは彼女の半分か、少し大きいかくらいの、アルエットの世界には居ない新しい『誰か』の感触。
そろそろと手を伸ばして、触れてみる。
ぷよぷよとしたほっぺた。
頭には独特な角のような、しかし柔らかい突起。
人間に比べて凹凸がなく、のっぺりとした顔。
「あなたはだあれ?」
「もしかしてガッちゃん、小さくなっちゃった?」
ありえないことだろうが、一応聞いてみる。
ガリナではない……はずだ。
ガリナにはこんな角は付いてなかったし、鼻がちゃんと付いてた。
でも、彼じゃないならどうやって入り込んだのだろう。
まさか泥棒だろうかとアルイエットが訝しんでいると、小さな侵入者は彼女に『始まり』を告げた。
「僕はアーチャー、お姉ちゃんのサーヴァントさ!」
『アーチャー』と名乗る小さな少年。
アルエットの何も映さない瞳が少しだけ大きく見開かれる。
アーチャーは小さく「ふむむむぅ」と唸ると、こう訂正を入れた。
「……アーチャーってなんかかっこよくないね。やっぱり『ボンバー』って呼んでよ! そっちのほうが僕っぽいし!」
アーチャー……もとい、『ボンバー』のサーヴァント。
まるで導火線に火の灯った爆弾のような頭の形をした彼は、人懐こい笑顔を振りまく。
しかし、その笑顔はアルエットには届かない。
「なあんだ、天使ちゃんじゃないのね。がっかり」
アルエットは、少し肩をすくめてみせる。
見るからに『がっかり』といったその様子に、すぐにボンバーが食いついた。
「天使ちゃんって?」
「天使ちゃんは天使ちゃん。私はね、この家で天使ちゃんが来るを待ってるの。
いつか天使ちゃんが、お父さんと、ワンちゃんを連れて帰ってきてくれるから」
つらつらと口をついて出るのは、彼女の『世界』の真実。疑いようのない事実。
「へえー、すごいね!! 僕、いろんな人と会ったけど、天使はまだ会ったことないよ!」
「ふふ、すごいでしょう?」
アルエットの言葉を一切疑わず、きゃっきゃとはしゃぐボンバー。
その声に、今度は優しい微笑みを返す。
「あ、ごめんね」
すると突然ボンバーが謝った。
「お庭に出る所だったんでしょ。ごめんね、邪魔だよね」
「あ、いいのよ。こけかけたところ、助けてもらっちゃったしね」
ぺた、ぺたと何かが響く。
聞きなれない音だけど、ボンバーの足音らしい。ボンバーが避けてくれたみたいだ。
でも、すぐには庭に出れない。
こけかけたせいで、少し場所がわからなくなってしまっている。
手さぐりで場所を探していると、ボンバーが不思議そうに尋ねてきた。
「お姉ちゃん……もしかして、目が悪いの?」
そう聞かれ、アルイエットはバツの悪そうな顔をする。
ボンバーは特に気にした様子もなくこう切り出した。
「そっかぁ、じゃあはい!」
壁についていたアルエットの右手に、きゅ、と小さな手のひらの感触が伝わってくる。
アルエットには見えないが、ボンバーが彼女の手を取ったのだ。
そして手を取ったボンバーは、彼女の手を優しく引いて導く。
「こうして手をつないで、僕が前を歩いてれば、お姉ちゃんはなんにも心配ないでしょ!」
自信満々な言葉。
眼が見えない彼女にも胸を張っている様がありありと見えるようだった。
アルエットはその無邪気な優しさに顔を綻ばせる。
「……ふふふ、ありがとう。じゃあお願いするわね、ボンバーちゃん」
「うん!」
ぺた、ぺた、という足音が響く。
廊下を歩いているとも草の上を歩いているとも思えない、独特な足音。
ボンバーは、とてもやさしい『人』だった。
ボンバーは、アルエットの手を引きながら色々と話してくれる。
外に出るよ、段差があるけど大丈夫、とか。
あっちには何色の花の蕾があるよ、とか。
今空に浮かんでいる雲は、なんだかお芋に似てるんだ、とか。
そこには大きめの石があるから気をつけてね、とか。
彼女の世界に、新しい登場人物が現れた。
人より少し小さくて、ぷにぷにしてる男の子、ボンバー。
優しい世界の、優しい人の一人。
「ねぇ、ボンバーちゃん。お家に戻りましょう」
「ええ? もういいの?」
「うん。それで、お家の中で、ボンバーちゃんのお話聞かせて。いろんな人と会ったんでしょう?」
「うん、いいよ! ふふん、でも、びっくりしちゃ駄目だよ?
こう見えても僕、世界を救ったりしてるからね!! すーっごい話もあるからね!!」
「ふふふ、期待してるわね」
ボンバーに手を引かれ、家の中に戻る。
彼女の『幸せな世界』に、新たな登場人物と共に引き篭もる。
◆ ◆
ボンバー(アーチャー)・シロボンと出会い。
彼からいくつかの話を聞き。
そうして再び床につき、寝るまで。
彼女は終ぞ、彼と『サーヴァント』というものについて話し合わなかった。
『聖杯戦争』という事実とは向き合わなかった。
だって彼女はそうやって見たくないものを見ずに生きてきた。
苦しい現実を直視しなかった。辛い何かに触れて傷つこうとはしなかった。
だからこれからも、彼女は目を背け続ける。
父・ゴロゾウと愛犬ワンの死。
本物のガリナがこの地に居ない事実。
『願い』。
『サーヴァント』。
『聖杯戦争』。
そんな、『彼女の楽園を脅かす全て』から。
いや、目を背けるというのは正しくない。
彼女は、彼女の理想の中で生き続ける。
何も映さぬ瞳の奥に宿る、輝かしい理想郷の中で。
これまでも、これからも。
やがて目覚めるその日まで。
◇
ひばりは舞い上がる、空高く。
目覚めの春はまだ遠い。
◇
【クラス】
ボンバー(アーチャー)
【真名】
シロボン@ボンバーマンジェッターズ
【パラメーター】
筋力:E(B+) 耐力:C 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:E
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D(C)
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
ただし相手が放つ魔法が爆発かプラズマ系統だった場合、何度もぶつけられてそれなりに耐性があるためもう一段階強いものを無効化出来る。
単独行動:C
彼はジェッターズとしての活躍が有名だが、修行などでよく一人で行動をしていた。
また、ジェッターズのメンバーとはぐれる場面も多く、一人での行動を強いられていた。
そしてなにより、彼はただの子どもであるシロボンから一人前のボンバーマンとして立ち上がり、最後まで闘いぬいた。
その逸話から彼は『単独行動』のスキルを得た。
マスター死亡後も24時間は現界可能。
【保有スキル】
ボンバー星人:B
ボンバー星人である。
ボムを生成でき、ボムの生成にかかる魔力を抑え、ボムを投擲武器として使う時に限り筋力:B相当の攻撃が可能である。
ただし姿が一般的な人間のそれではないので姿を見られると(たとえ映像・写真越しだろうと)一発で参加者だとバレる。
ボムの力はボムにあらず:A
ボムの力はボムにあらず、心にあり。
いろいろなものの中に宿る力がボムであり、それを操るのは心次第。
それがアーチャーが兄であるマイティ教えられ、体得したボムの真髄。
アレンジボマー:C
様々な種類のボムが投げられる。
彼は通常のボム、ファイヤーボム、サンダーボム、ウォーターボムの他に風船ボム、コショウボム、ライトボム、花火ボム、アイスボム、焚き火用ボム、キャンディボムなど戦闘に一切役立たないボムを作ることが出来る。
そして上記スキル:ボムの力はボムにあらずと併用することで『狙ったものを狙ったように爆発させるボム』を放つことが出来る。
だが、『狙ったものを狙ったように爆発させるボム』の生成には多大な魔力を要し、一戦闘中の連発は不可能。
ボンバーシュート:A
アーチャーがボムを放つ際に発揮されるスキル。
ボムを放った際速度と距離にそれなりの補正を得て、更に若干の追尾補正を得る。
【宝具】
『燃える心のバーニングボム(バーニングファイヤーボム)』
ランク:E 種別:対人/対固有結界 レンジ:1-50 最大捕捉:1
炎属性のボム、バーニングファイヤーボムを生み出す。
アーチャーの手を離れるまで爆発することはない。
更に通常ボムとは違い筋力をAランクに向上する。炎よりも強い熱で敵を焼きつくす。
範囲はサンライズボムよりも劣るが、単独の敵を討つ場合には有効打となる。
そして、この宝具はフレイムボンバー戦・クレイボンバー戦の逸話により『固有結界破壊』の逸話を持つ。
もしも固有結界を展開している人物がこの宝具を受ければ、固有結界は大爆発を起こして粉々に砕け散る。
また、土属性に対しては威力が向上する。が、水属性に対しては威力が低下する。
『繋がる絆のサンライズボム(サンライズサンダーボム)』
ランク:E 種別:対人/対固有結界 レンジ:1-50 最大捕捉:20
雷属性のボム、サンライズサンダーボムを生み出す。
アーチャーの手を離れるまで爆発することはない。
更に通常ボムとは違い着弾時に炸裂し、周囲に対して雷撃を放つ。
威力はバーニングボムよりも劣るが、多数の敵を討つ場合には有効打となる。
そして、この宝具はマーメイドボンバー戦の逸話により『固有結界破壊』の逸話を持つ。
もしも固有結界を展開している人物がこの宝具を受ければ、固有結界は大爆発を起こして粉々に砕け散る。
また、水属性に対しては威力が向上する。が、土属性に対しては威力が低下する。
『明日へ踏み出すシャイニングボム(シャイニングファイヤーボム)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1-99 最大捕捉:1
バーニングファイヤーボムの強化版、シャイニングファイヤーボムを生み出す。
筋力が一段階向上し、どんな宝具・スキルの効果も貫通してボムをぶつけることができる。
この宝具の発動にはマスターが己の過去を振り返り、その全てを受け入れて一歩を踏み出す必要がある。
【weapon】
ボム。
宝具以外にも武器として生成できる。
【人物背景】
『ボンバーマンジェッターズ』の主人公。
10歳のボンバー星人の少年。
少年であるが、『7つ』のボムスターを得たボンバーマン。
子供らしい優しさ、純粋さを持っている。少々図に乗りやすい。
ラーメン屋で働いていたので炊事・洗濯・掃除はどれもそれなりに出来る。
元々は我儘で自分勝手で手前味噌な性格だったが、精神的に大きく成長したので、我儘を言うことも少なくなった。
あえてカッコ付きで『7つ』と書いているのは、最終回まで見てくれた人なら意味がわかるはず。
分からない人は見て、どうぞ。
【マスター】
アルエット@夜ノヤッターマン
【マスターとしての願い】
???
【能力・技能】
盲目。
精神的な原因からくる盲目。目を開いていても物を見ることはできない。
彼女の世界は真っ暗闇であり、戦闘どころではなく生活にも支障を来たす。
慣れ親しんだ家でも手探りでなければ進めないほど。
唯一、精神的な傷を乗り越えることで見えるようになる。
逃避。
現実から逃げ続けている。
彼女は全ての事柄を理解しているが、目を閉じ、耳をふさいでいる。
心の底ではお父さんもワンちゃんも死んでおり、この世界のガッちゃんは偽物で、天使なんか居ないことを知っている。
だが、それを認めるのはあまりに辛いので、彼女は目を閉じ続けている。
きっと願いも持っているし、聖杯を欲しているが、彼女が自らその事実と向き合うことはない。
【人物背景】
彼女が見ている世界は、きっととても美しい。
【方針】
特になし。
どこともしれない家の中で、お父さん、ワンちゃん、天使ちゃんを待つ。
身の回りのことはボンバーちゃん(シロボン)に手伝ってもらっていつも通りの暮らしを続ける。
アルエットはレパードと出会う前(塞ぎこんでいて世界を見ようとしていない時)参戦なのでシロボンが保護者として先導しなければならないというギャグのような状態。
ガリナ次第でもあるが、平常時はシロボンがこまめに実体化して彼女をサポートしていく必要がある。
(ちなみにこの世界のガリナは両親もおり、普通に学校に通っているNPC。そのため休日以外の日中のサポートは全てシロボンが行う)
単独行動持ちなお陰で魔力消費は問題ないが、スキル:ボンバー星人で他人に見られれば一発で参加者(サーヴァント)だとバレる。
なお、シロボンはアーチャーにしては戦闘性能が悪い。というよりアーチャークラスで言えば最低レベル。
近づかれれば負ける。逆に射程の外から攻撃されても負ける。
更にアルエットは聖杯戦争を見ようとしていないからシロボンが守り続けなければならない。気を抜けばアルエットが殺されて負ける。
ご覧のとおりの原作ジェッターズでは絶対に起こりえなかった超ハードモードである。
戦闘ではスキル:アレンジボマーから繰り出せるいろいろなボムで撹乱し、敵を見つけ次第バーニングもしくはサンライズを放つ。これしかない。
彼の持つ最高戦力シャイニングファイヤーボムだが、これはアルエットが目覚めなければ使えない。
本編でも私の天使ちゃんレパードと幼なじみのガリナの二人がかりでようやくこじ開けられた瞳、ガリナは偽物で、話を聞かず、自分の世界に閉じこもっている現状ではまず不可能だろう。
そして、ある意味最強の『望んだものを望んだように爆発させるボム』だが、これは奥の手。最後の最後まで出し惜しんだほうがいいだろう。
なお、アーチャーがボンバーと名乗るのはランサーがランチャーと呼ばれるようなものである。
エクストラクラスというわけではなく呼び名が変わるだけで性能は普通のアーチャーから特に変化はない。
投下終了です
感想は深夜、場合によっては明日になります。ご了承下さい。
投下の前に、以前投下した主従に関して頑張ってステータス表を作りました。
面倒臭かったです、本当に面倒くさかったです。
大変でした。
>>158
【マスター】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
???
【weapon】
カワイイヤッター!
【能力・技能】
カワイイヤッター!
【人物背景】
中学二年生の十四歳。
「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。
髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、
分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。
現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。
【方針】
後で考える
【クラス】
クリエーター
【真名】
クリシュナ@夜明けの口笛吹き
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++ 幸運E 宝具EX
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
創造:C+
世界の理を知ることで、世界の創造を可能とするスキル。
上位ランクともなれば、週休一日制での天地創造が可能になる。
このランクならば、同ランク程度の陣地作成とモンスターの創造を可能とする。
また、このスキルのためにクリシュナは異常なほどに高い魔力を有している。
【保有スキル】
神性:C-
元の世界においての偽りの神性、世界の理を知ることで擬似的に神と化した。
魔術:C
元の世界における魔術体系、マギをある程度修めている。
反骨の相:D
権威に囚われない、その始まりが奴隷であったことに起因する。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。
【宝具】
『救われよ、己(ハレ・クリシュナ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
世界を滅ぼさんとする少女の意思、史上最悪の八つ当たり。
己の姿を天使、異形の怪物、千手観音と、段階的に変化し、その度にパラメーターを上昇させていく宝具。
変身中に超火力を撃たれると台詞が最後まで言えないまま死ぬ。
【人物背景】
「どうしてこんなことが出来るか不思議だって?
実は、キミがモタモタしている間に、
僕は現実世界に辿り着いたんだ。
そしてもう一度この世界に帰ってきた。
世界の両方を行き来したお陰で、
僕は現実と虚構の関連性について学んだんだよ。
この虚構の世界が人の記憶や情報の世界なら……
どういった形の記憶が
全ての人に共通する虚構を生み出すか。
それを理解できたからこうして世界を創造できるし、
他人にとっての脅威を生み出せる。
言っちゃあ、僕はもう神様なんだよね……
【サーヴァントとしての願い】
???
>>339
【クラス】ジェノサイダー
【真名】人修羅@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE
【属性】中立・悪
【パラメーター】
筋力A+ 耐久B 敏捷A 魔力A+ 幸運E- 宝具A
【クラススキル】
虐殺者:A-
世界は二度生まれなかった。
ジェノサイダーによって創世の可能性は摘まれ、そのために60億の人間とそれ以上の生命体に新たなる命は与えられなかった。
そのために、人修羅は虐殺者として最高ランクの虐殺者スキルを持つ。
間接的な虐殺であるため、この聖杯戦争においては聖杯の破壊あるいはルーラーとの戦闘において有利な補正を得るに留まる。
【保有スキル】
自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
話術:E
言論にて人を動かせる才。
詐術や詭弁で共感を得て契約を取り付けるが、
往々に手痛い失敗もする。
神の加護:E-
創世の可能性を破壊した者に与えられた罰。
人修羅は神の恩恵をうけることはない、そのために神の下僕が敵となった場合、自身の全行動に対して不利な補正が加えられる。
また、彼は聖杯に何かを願うことはできない。
【宝具】
『始まりの禍魂(マロガレ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
常時発動型の宝具、人修羅という存在の根幹を成す宝具であるため魔力消費はほとんど発生しない。
人に悪魔としての第二の生を与える。
禍魂の最高位、マサカドゥスはこの聖杯戦争が東京ではないため持ち込むことは出来なかった。
『地母の晩餐(ガイア・レイジ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
仮に何の準備もなく使用した場合、マスターは死ぬ。
準備していても死ぬかもしれない。
広範囲に渡って、自身の魔力の衝撃を大地に伝わせ天を割る。
万能属性ではないので、物理反射ならば跳ね返せるかもしれない。
超威力なのでクリティカルが出ても出なくても死ぬ。
『魔の軍勢』
ランク:- 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:3匹
ジェノサイダーの仲魔を召喚するスキル。
ライダーのクラスで無いため使用不可。
【Weapon】
人修羅が生前扱った地母の晩餐を除く7つのスキル
至高の魔弾:敵単体に対し万能ダメージ(大)
真空刃:敵に対して1〜4回の特大の衝撃ダメージ
マグマ・アクシス:敵単体に特大の火炎ダメージ
絶対零度:敵に対して1〜4回の氷結ダメージ(大)+氷結
ショックウェーブ:敵に対して1〜4回の電撃ダメージ(大)+感電
吸魔:敵単体から魔力吸収(小)
チャクラの具足:一日に1割の魔力回復
【人物背景】
世界を創成するために、東京を球状にして世界を崩壊させる東京受胎を、
偶然発生の中心である病院にいた事から他数名と共に生き残った少年。
ルシファーに魅入られ「マガタマ」を体内に寄生させられる事で悪魔へと変貌する。
悪魔が巣食うボルテクス界となった東京をさ迷い、世界の在り方を示す様々なコトワリに触れ、
そして、全てのコトワリを拒み、世界創世の可能性を無くした。
【サーヴァントとしての願い】
無し
【マスター】
一色@絶叫学級7巻(善人クラブ)
【マスターとしての願い】
世界中に善人クラブの善意を広げたい
【weapon】
善人クラブ:聖杯戦争に直接用いることは出来ないが、校内での工作に関して協力を要請することが出来る自身が部長を務めるクラブ。
【人物背景】
メサイアコンプレックスの少女、人間の知恵とは偉大なもので助けを求めている人間がいないのならば助けを求めるように仕向ければよい。
善人ではあるので、助けを求められたら助ける。ただし、そんな邪悪な誘いには勧誘禁止しないかもしれない。
【方針】
善人クラブとして活動することで人修羅にマガツヒ(人情の感情エネルギー)を献上しつつ、その内地母の晩餐ブッパ。
投下します。
「おい、おい、おい、おい」
召喚されたセイバーが現世に降り立って初めて見たものは、右手にカッターナイフを持ち、今まさに己の手首を掻き切らんとする少女だった。
捲られた長袖から覗かせる薄っすらとした白い肌には、スティグマのように幾つもの火傷の傷跡がある。
直径五ミリ程の円形の傷跡――現代知識を得たセイバーといえど、それが押し付けられた煙草の痕であることは彼の想像の範疇を超えている。
それでも、その傷跡が身体だけでなく心にも刻み込まれていることは、セイバーにもよく理解できた。
「……来ないで下さい……死にますよ」
ぼそぼそと必死で絞りだすかのように声を発する少女は、セイバーと目を合わせない。
ただ、俯いていた。その様は、どうしようもない天災がただ過ぎ去ることをひたすらに待ち続ける弱者を思わせた。
「いや、なんで死にたいのさ。まぁ、人を殺すぐらいなら自分で死を選ぶっていうのならわからないでもな――」
「……違います」
「え?」
「聖杯戦争とか関係なく、死のうと思ってました」
「じゃあ、理由ぐらい教えてくれてもいいじゃん、せっかくのパートナーってことになってるんだし」
「……多分」
少女が顔を上げる。
笑っていた。
卑屈で嘘臭くて、見るものを不安にさせるような、どうしようもない笑顔だった。
仮面を――被っている。
「理由をあなたに言える人間だったら、あたしは死のうとしてないんです」
ああ、とセイバーは心の中で首肯する。
自殺する人間の感情はわからない、
それでも――溜め込んだ感情を自分の中にだけ押さえ込めば、それが如何なる形であれ爆発することは理解できる。
セイバーは故郷を喪い、それでも新たな仲間を得ることが出来た。
己の敵である魔王は恋人を喪い、そしてそれ以外に彼には何もなかった。
だから、セイバーは最後まで勇者として戦い、魔王は――最早、魔族の王以外の何物でもない存在に成り果てた。
それ以外には何もなかった。
そして、目の前の少女は――死という形で己の感情を昇華しようとしている。
ああ――口惜しい。
心の底からセイバーは思う。
世界最高峰の剣技、勇者のみが扱える伝説の武具と魔法、そんなものは目の前の少女を救うための何の足しにはならない。
仲間である商人であれば、その長年の経験に裏打ちされた口の上手さとひょうきんさで何とか出来ただろうか。
仲間である占い師であれば、占い師として彼女の輝ける未来を指し示してやれただろうか。
だが、己には戦う術以外何もない。
焼け落ちた故郷とともに、灰になってしまった。
「だから、しょうがないことなんです」
「でも……俺は君に死なれると困る、だって……」
だから、正直に伝えるしかなかった。
「寂しいんだ」
ほんの少しだけ空気が緩んだような気がした。
虚を突かれたかのように、カッターナイフを弄ぶ少女の手が止まった。
「仲間の皆には魔王を倒してもするべきことがある、でも魔王を倒した勇者に……その後は無いんだ。
皆が皆、本来の日常に帰っていく……でも、俺は……俺には勇者以外……何もない。
皆良い奴なんだ、でも、俺は、見つけられなかった、仲間たちに胸を張れる勇者以外の自分を。
だから、俺は……一緒に歩いていたはずの仲間たちを、追いかけることすらやめたんだ」
「…………それで」
それは同じ弱さを持つ者同士の共鳴だったのだろうか、だからセイバーは少女に呼ばれたのだろうか。
わからない、それでもあの仲間たちとの出会いのように、これも運命のもたらした慈悲だと願いたい。
「もう一度、仲間が欲しい。
それは魔王を殺しに行くよりも血塗られた道程なのかもしれない、故郷を滅ぼされるよりも辛い呪いなのかもしれない、
それでも……俺は……天空の勇者、レイは……君と歩みたい」
沈黙が生じる。
長いのか、短いのか、時間的感覚が消失して、わからない。
口を開いたのは少女だった。
「あたしも……寂しいよ」
「ああ」
「でもね……怖い。
英霊はきっとあたしよりもずっと立派な人で、あたしは誰からも嫌われるようなダメ人間だから、だから、怖いよ。
きっと、レイさんはあたしを嫌いになるよ」
「ならない」
「なるよ」
「だから、令呪を以て命じます」
彼女の右手甲、電波を模したかのような三本の稲妻の令呪が光り輝く。
「嫌いにならないで下さい」
「裏切らないで下さい」
「側にいて下さい」
「約束……守ってね」
【クラス】セイバー
【真名】レイ(男勇者)@DRAGON QUEST IV 導かれし者たち
【属性】中立・善
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:A++
【クラススキル】
対魔力:A+
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
天空の装備の効果により、ランクが上昇している。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
勇者:A-
悪に組みせず屈せず、属性が悪である相手からの精神干渉を無効化する。
天空の勇者とは天空の血を継ぐ者ならば彼である必要はなかったために、そのランクは低下している。
彼は選ばれし勇者であり、選ばれてしまった勇者である。
神性:E-
神に近しい者、天空人の血を継ぐ者であるため低ランクの神性スキルを有する。
地上人との混血であるため、更にランクは低下している。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『天空の剣』
ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:1 最大捕捉:8人
かつて魔族の王を討伐した際に使用した天空よりもたらされし剣
真名を開放した際、相手のパラメーター上昇、有利補正等を全て無効化する。
『来たれ、勇気の雷(ギガデイン)』
ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:10〜40 最大補足:8人
勇者のみが扱える呪文。
闇を切り裂く光の雷、相手の対魔力によってダメージを軽減されない
【Weapon】
天空の鎧:雷以外の攻撃呪文やブレス系のダメージを軽減し、呪い、混乱に対して耐性がつく
天空の盾:炎・氷ブレスによるダメージを軽減する
天空の兜:眠り・マヒ・混乱に耐性がつく
【人物背景】
DQ4の5章クリア後から参戦、6章の存在は嫌いではないが存在しないものとする。
天空の勇者、ただそれだけ。
【サーヴァントとしての願い】
???
【マスター】
中原岬@NHKにようこそ!(小説版)
【マスターとしての願い】
???
【weapon】
カッターナイフ
【能力・技能】
それなりに宗教的な知識を持つ
【人物背景】
原作で自殺未遂をした後より参戦。
天使。
漫画版とは同姓同名の似たような別キャラ。
どっちもカワイイけどね。
【方針】
レイ任せ
レイのパラメーターを書くにあたって、
第二次二次聖杯の勇者ロトのパラメーターを参考にさせていただきました。
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/336.html
投下終了します。
岬ちゃんはまだ僕の家には来ていません。
投下します
部屋の中にミシンの音が響く。マスターは夜中の二時を過ぎても、まだ服の制作を続けていた。
いつもは遅くても十時半には寝ていることを考えると、だいぶ遅い。
いくら服を作るのに慣れているとはいえ、小学生の体力では結構な疲労になるだろう。
「そろそろ眠ったらどうですか、知世」
「いえ、どうしても朝までに完成させたいんです」
さっきからこの調子だ。疲れているのはアサシンから見てもわかりきっているのに、休もうとしない。
「あなたに体調を崩されたら、私が迷惑するんですが」
「心配してくださってありがとうございます、アサシンくん。でも大丈夫ですわ」
「人の話を聞いているんですが?」
そう言っても知世はニッコリと笑みを返すだけだった。なんとなく目をそらす。やりにくい娘だ。
アサシンは表向き子供として生活していたので、知世と同じくらいの歳の少女と接することも多かったが、こんな相手は初めてだった。
思えば初めてあったときから変わった娘だった。
突然、本来の記憶を取り度戻し、人を超えた力を持つサーヴァントと相対する。
大人でも混乱するだろう状況で、最初に彼女が口にした疑問は「聖杯戦争が終わったら街の人達はどうなるのか」だった。
理不尽に戦いの渦中へ引き込まれたことへの怒りでもなく、今までの日常が偽物だったことへの悲しみでもない。聖杯に作られただけの存在であるNPCの心配。
元いた場所に帰らず、ここでの生活を続けたいのならその気持もわかる。
しかし彼女は本来の居場所への帰還を望んでいる。NPCの心配をしたのは純粋の彼らの身を案じてだ。
そして今もNPCの友達のためにプレゼントを作っている。明日――もう今日だが――の誕生日に合わせるために寝る間を惜しんで。
「そこまで尽くす必要があるのですか?」
思わず漏れた疑問だった。
作業に集中しているのか知世からの返事はない。それでも無視するような娘でないのはわかっている。
「あなたがNPCに情を持ち、本物と同様に扱っているはわかっています。
しかし所詮は聖杯戦争が終わるまでの関係ですよ」
聖杯戦争が終わったときNPCがどうなるかはアサシンにもわからない。
だが知世が元いた場所に帰るのなら、どっちにせよそういうことになる。
「だからこそですわ。会えなくなるから、ちゃんと渡したいんです」
悲しそうに――しかし力強くそう言った。
やはり変わっている。NPCとは無理でも、元になった本物とはいつでも会えるだろうに。
知世は表情を明るくし、「それに」と続けた。
「尽くしてるわけではありませんわ。わたしはただ好きな人が喜んでくれれば、それだけで嬉しいんです」
優しい声だ。本当に心の底から相手の喜びを、幸せを願っているのだろう。
「羨ましいですね」
静かに呟く。その音はミシンの騒音に消えた。
アサシンにも喜ばせたい相手がいる。しかしその相手が喜んでも、今の自分が嬉しいかはわからない。
かつてアサシンには二つの名前があった。
一つは『プライド』。自分を生み出した『父』の望みを叶えるため、忠実に動く人造人間(ホムンクルス)
もう一つは『セリム・ブラッドレイ』。親思いで心優しいただの少年。
昔はプライドこそが本来の自分であり、セリム・ブラッドレイはただの仮面に過ぎなかった。
『父』の喜びが自分の喜びであり、『父』に尽くすことが生きる理由。『父』ために数えきれないほどの人間を殺し、欺き、利用して、そのことになんの疑問を反感も抱かなかった。
しかしエドワード・エルリックとの戦いでホムンクルスとしての力と記憶を失い、セリム・ブラッドレイとして育てられた。
人間の子供と同じように道徳を学び、愛情を学び、命の重さを学んだ。
『セリム・ブラッドレイ』はたとえ聖杯戦争の最中だろうと人を殺したくない。相手が巻き込まれただけの一般人ならなおさらだ
だが『セリム・ブラッドレイ』はサーヴァントとなったことで、『プライド』としての記憶と力を全て取り戻した。
『プライド』にとっては『父』こそが他の全てに勝る絶対の存在だ。
何を犠牲にしてでも聖杯を手に入れて、『父』を蘇らせることを望んでいる。
アサシンの中でずっと相反する二つの感情がせめぎ合っている。
知世に名前を聞かれたとき、アサシンはクラス名しか答えなかった。
真名がマスターから漏れるのを危惧してと言ったが、本当はわからなかったのだ。自分がセリムなのか、プライドなのか。
ふと自分のマスターならどうなのだろうと思った。好きな人の喜びが自分にとって容認し難いものとなったとき、彼女はどうするのだろう。
無論実際に聞くわけにはいかないが、なんとなく視線を向ける。知世はいつの間にか椅子によりかかり眠っていた。服は完成しているようだった。
アサシンは嘆息し、しょうがないからベッドに運んだ。マスターが風を引いたせいで負けたなんてなったら、笑い話にもならない。
【クラス】アサシン
【真名】プライドあるいはセリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:E 耐久:C 敏捷:E 魔力:C 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。
【保有スキル】
人造人間(ホムンクルス):-
『賢者の石』を核に作られた人間であることを表す。
錬金術:B
物質を分解し再構築する力。
錬成陣を描き、物質に触れることで、その物質を別の構成や形の物質に変えることができる。
『等価交換の原則』によって一の質量の物からは一の質量の物しか、水の性質の物からは水の性質の物しか作れない。
アサシンの場合、人体と爆発物に関する錬成が得意。
嗅覚:C
人並み外れた嗅覚を持っている。
相手が風上に立っている場合、確率で気配遮断を無効化する。
空腹:E
常に空腹感があるが我慢できないほどではない。
何か食べればしばらく収まる。
【宝具】
『賢者の石』
ランク:A 種別:-宝具 レンジ:-
行きた人間の魂を凝縮して作られた高密度のエネルギー体。アサシンの核。
アサシンの肉体が損壊しても、エネルギーの続く限り無限に再生する。
『完全な物質』とされ、肉体よりも遙かに高い強度を持っている。
石のエネルギーを使い、錬金術を強化することもできる。
ただしアサシンが錬金術を使った場合、石の力を制御しきれず、肉体が形を保つのがやっとのレベルにまで損壊する。
『小人の影(ホムンクルスシャドウ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:100人
無数の目と口がついた影。
形を自在に変えられ、刃の形にして切り裂いたり、手の形にして掴んだりもできるが、本体から切り離すことはできない。
影で相手を取り込むことで賢者の石のエネルギーを補充でき、さらに相手の知識や能力を得られる。ただしアサシンに使える素質が全くない能力は得られない。
光の強すぎる場所や逆に光の全くない空間では、作り出せない。
アサシンの本体であり、肉体が消滅しても、影と賢者の石を適合する肉体に移せば生存できる。
【人物背景】
心優しい少年、もしくは冷血非道なホムンクルス。
【サーヴァントとしての願い】
迷っている。
【方針】
とりあえず表向きは知世に合わせる。
【マスター】
大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)
【能力・技能】
コーラス部に所属しており、コンクールで何度も優勝するほどの歌唱力を持っている。
他にも料理、裁縫、ビデオ撮影などが得意。特に裁縫は完全にプロレベル。
家がお金持ち。
人の心の機微に敏い。
【マスターとしての願い】
自分の本来の居場所に帰る。
聖杯戦争が終わったときに街の人が消えるのならなんとかしたい。
【人物背景】
友枝小学校に通う小学四年生。
友達の木之本桜のことが、さくらが知世を好きなのとは違う意味で好き。
クロウカードを集めるさくらに、自作を衣装を着せてビデオ撮影している。
好きな人が自分を好きになってくれなくても、その人が幸せなら幸せという考えを持っている。
【方針】
帰る方法を探す。
投下終わりました
NPCという存在を理解していながらも心から優しく接するいい子だ
投下します
聖杯はあらゆるところから参加者を集める
異国から、異星から、異世界から、未来から、現在から、そして──過去から。
* * *
「お婆ちゃんの家に行かなきゃ 」
記憶が戻って最初に考えたのが、自分のするべきことだった。
現在地は街中から郊外の温泉街へと続く道路の上。道の両脇には木や花が生い茂っているが、自分の住んでいた黒い森に似て非なる場所だった。
私は確か……お婆ちゃんの家に行く途中で狼さんに寄り道を進められて森の奥まで入ったのだ。
「寄り道って何故かしちゃうのよね」
好奇心には逆らえない。森の奥にホイホイと入って行って、いつの間にか当たり前のようにこの街の郊外で花屋として過ごしていた。
どうやってここに来たのか全く覚えがないし、どうして花屋をしていたのか全く覚えがない。
とりあえず帰らなくてはと急いで街中まで来たはいいものの──
「ここ、どこだろう」
見たことない景色だった。
まず建物が異常で、煉瓦や藁を使っていない。灯りも火ではなく電気と呼ばれものを使っていた。
舗装された道が縦横無尽に広がり、馬車ではなく車(何故か知識がある)が行き交っている。
全く未知の方法で出来ている街。
夢見ていたメルヘンの世界とは全く違う、されど幻想的な世界。
何もかもが奇天烈で、少女にとっては新天地と呼ぶ他ない。
「あら? あなた。もしかしてマスター?」
話しかけられた。声のする方を向くとそこには自分と同じ年頃の少女と────顔に包帯を巻いた男が立っていた。
途端に情報が堰を切ったように少女の脳内に溢れる。
「聖杯戦争……架空の街……脱出不可……サーヴァント……殺し合い」
ぶつぶつと呟き出した少女を見て男を引き連れた少女は合点がいったとにんまり笑う。
「あ、ラッキー。貴女は目覚めたてね。やっちゃってアサシン」
「やれやれ、少女ばかり襲うのは気が進まないね」
言葉とは裏腹に狼のような笑みを浮かべる男、その全身からバキバキと小枝をへし折るような音が鳴る。
獣毛が全身から生え、爪と牙が伸び、男の体躯がみるみるうちに大きくなる。
僅か一秒経たないうちに恐ろしい獣の姿がそこにあった。
常人であれば、恐怖のあまり気絶してもおかしくないだろう。無垢な少女であれば尚更だ。
しかし、その姿を見て少女が口にしたのはこうだった。
「何でそんなにお口が大きいの?」
あまりにも場違いな質問に男は一瞬、呆然とし次にこう考えた。
男は今や恐ろしき獣であった。
狼など目ではない大きさだ。
狼など目ではない牙と爪だ。
故にどんなものであれ、本能的な恐怖や危機感などの動きがなければおかしいのだ。
だからこそ、自然体で質問する少女の頭のネジがどっか行ったのだろうと断ずる。
この少女は現実うまく認識できない頭の持ち主らしい。それとも恐怖のあまり狂ったか。まぁいいさ答えてやろう。
「お前を上手に食うためさ」
少女のサーヴァントはまだ駆けつけない。
合流されれば身体能力の高いアサシンといえど苦戦するかもしれない。
ならば早々に終わらせようと獣は乱杭歯だらけの口を開いた。
「変な子。赤い頭巾被ってて、そんな質問するなんてまるで赤ずきんみたい」
「だったらなおのこと、獣に食われてなんぼだろ」
血走った目が少女を捉え、口から吐かれた生臭い湿った息が少女の顔にかかった。
そして、迫る恐ろしい獣の牙。
速度は音速。威力は必殺。
赤ずきんにこれを躱す術はない。
しかし。
しかし、しかし。
「え!」
「何?」
「あら?」
三者が声を上げた。
質は違えど、端を発した原因は全員ともこの場に現れた乱入者だ。
牙が立ったのは木の楯の上。貫通して乱入者の顔の皮膚を少し削る程度で収まっている。
さぁ、恐怖せよアサシンとそのマスターよ。
赤ずきんを救う狩人がここにいる。
恐ろしい獣を狩る者がここにいる。
マスターを守る英霊がここにいる。
エクストラクラス『猟兵(ハンター)』のサーヴァントがここにいる。
>ジェスチャー:確かな意思
もう安心しろと無言で意思を伝える狩人。
顔は帽子とコートで目元以外を覆っているためよくわからない。
分かるのは褐色の肌、白い髪の毛、赤い瞳だけで男か女かも判別つかない。
しかし獣の主は敵のステータスを見てほくそ笑んだ。
「それが貴女のサーヴァントね。
なぁんだ私のアサシンより全然弱いじゃない。アサシン、やっちゃって!」
「おう!」
呼応と共に放たれる獣の第二撃目はダブル・スレッジ・ハンマー。
あの重量と筋力から放たれれば木の楯ごと木端微塵になるだろう。
しかも避ければ、その背後のマスターがミンチになる距離だ。
狩人は避けられない。赤ずきんの少女に令呪を使う機転はまだない。
死の鉄槌を避けるには条理をねじ曲げる事象が必要で、それを為すのは英霊の宝具を除いて他にない。それが狙いだ。
「使えば宝具の露呈、使わなければ死。前者の方がマシだろう。さあ使えよ。」
主に替わって言葉を吐き出す獣。
狩人が宝具を開帳させた瞬間、その内容を確認後に撤退する。
言うなれば情報収集だ。聖杯戦争開始前に本気の戦闘をやるつもりはない。
無論、アサシンは煽っているが宝具とは切り札だ。
攻撃的な宝具であれば物によっては一撃でサーヴァントを葬るだろう。
しかし、この状況で破壊力特化の宝具は使えなかった。
破壊のエネルギーをまき散らすような宝具を出せばその余波で赤ずきんの少女は消し飛ぶだろう。
仮に心臓を穿つ槍、一撃で内臓を奪い去るメスのような局所に致命傷を与える宝具では既に放たれている獣の攻撃は止められない。
なぜならば獣を滅ぼせても、死体が消えるまでのラグが存在する。
獣を屠った直後に迫る鉄槌はマスターとそのサーヴァントを確実に潰す。
故に防御、もしくは攻撃を相殺するような何かで対抗しなくてはならない。
そのどちらも獣にとっては有利であり、絶対的優位に立つという狩人のお株を獣は奪っていた。
しかし、狩人が取った行動は獣とその主の想像を超えて更に悪手だった。
木の楯を捨てて、後ろを振り向き、赤ずきんの少女を抱きすくめて持ち上げたのだ。
「わぁ!」
突如の抱擁に驚く少女。
彼女のサーヴァントの手は塞がり、少女一人を持った状態ではまともな行動などできるはずがない。
「終わりだな」
「終わりね」
落胆に近い感情を込めて敵の主従が終焉を告げる。
まさか宝具が使えない? それとも心中を図ったのか。
馬鹿な奴、外れサーヴァント、塵めと心底侮蔑しながら嘲笑った。
赤ずきんとその少女を圧潰する死の鉄槌が迫る。
確かに狩人の取った選択は悪手だ── 一見すれば。
アサシンとそのマスターは狩りの大原則を忘れている。
獣と真正面から対峙する狩人などほとんどいない。必ず裏を取る。
事実、獣の二撃目はアスファルトの道路にクレーターを作るが、サーヴァントにも赤ずきんにも当たらなかった。
霞のようにサーヴァントと赤ずきんの少女は消え、想定外の事態に獣とその主は困惑した。
「え?」
間の抜けた声の主は獣か、それともその主か。
どちらが言ったにせよ、彼女達には何が起きたのか分からない。
令呪を使わせる暇は与えなかった。
空間転移の魔術──は輪をかけてあり得ない。
マスターの権限で相手のサーヴァントのステータスが見えるが、あのサーヴァントのステータスは間違いなく直接戦闘向きだ。
宝具を使った? 真名解放もせずに? 空間転移という魔法スレスレの事象を?
* * *
アサシンとそのマスターが知る由も無いことだが、ハンターの世界の回避技術には『加速』というものがある。
『加速』はその名の通り高速の回避……などという半端なものではなく、空間跳躍の一種だ。極東では『縮地』と呼ばれるスキルに近い。
無論、サーヴァントとはいえ使える者はその技術を生涯使ったような極一部の英霊だけであり、今回の彼で言うと使えない。
しかし、何事にも例外というのは存在する。
彼の持つアイテム……魔術世界における魔術礼装『古い狩人の遺骨』はかつて『加速』を極めた狩人の骨だ。
これに魔力を籠めれば刹那の間、短距離の『加速』を実行する。
「わぁ………きれい」
赤ずきんの少女は刹那の跳躍の間、感嘆の声をあげた。
体の重さが消えて、羽のように軽くなった。
光の玉の中を駆け抜ける光景はまるで天の川を泳ぐように感じた。
* * *
狩人と赤ずきんは獣のマスターである少女の背後に立った。
少女は消えた赤ずきん達を探して左右に顔を向けていた。
無防備な少女の背後に近付く狩人。
何をするかというのは愚問だろう。サーヴァントのやることなどたったの一つ。
一切の躊躇なく、背後から少女の胸を貫手で刺し貫き、そのまま相手の心臓から左脇を素手で切断した。
マスターの異常を感知してアサシンが振り向くがもう遅い。
内臓攻撃を受けて少女の心臓と巻き込まれた肋骨や別の臓器が地面に転がる。
勿論、アサシンのマスターは即死だ。魔力供給の切れたアサシンもそれにより消滅するだろう。
だが、獣(アサシン)のサーヴァントは最後まで獣だった。
「ウオオオオオオオォ!」
瀕死の獣ほど油断ならない。
敵を仕留めた瞬間の間隙を狙った一撃。
最後の力を振り絞り、空を跳躍し、落下と同時に剛腕を振る。
アサシンの持てる魔力を最大まで注ぎ込んだ一撃は落下と同時に魔力の轟風と爆雷を生むだろう。
狩人は『古い狩人の遺骨』を使うが、移動距離が短い。
範囲内というより自分の落下先に出てきた狩人を見て獣は必殺を確信した───現れた狩人が『大砲』を構えているのをを見るまでは。
そう、狩人は回避ではなく迎撃のために移動したのだ。
ここに本当の敗北が確定する。
「死ね死ね死ねェ!」
絶望と憎悪をあらん限り罵倒に乗せて最期まで呪詛を振りまくアサシン。
狩人の大砲が発射され着弾の爆発が消えたころにはアサシンはこの世から消失していた。
>ジェスチャー:快心
ガッツポーズを取り、喜びをあらわにする赤ずきんのサーヴァント。
赤ずきんも真似して快心のガッツポーズを取る。
「あなたが私のサーヴァントさん?」
>ジェスチャー:狩人の一礼
「そう、よろしくね狩人さん。私の名前はバレッタ」
>ジェスチャー:喜び
斯くして一組の主従が消失し、一組の主従が誕生した。
──赤ずきんの長い聖杯戦争(ヨリミチ)が始まる。
【サーヴァント】狩人@Bloodborne主人公
【クラス】ハンター
【真名】無名
【属性】秩序・悪
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:E 幸運:D 宝具:A+
【クラススキル】
気配遮断:A
ハンターのクラス別スキル。
サーヴァントの気配を消す能力。
体術で完全に気配を断てば発見はほぼ不可能。
攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
道具作成:-
ハンターのクラス別スキル。
既存のアイテムを合成させて武具や道具を作るのは狩人の嗜みである。
このスキルは宝具『狩人の夢、夜は未だ終わらない』により失われている
【保有スキル】
心眼(真):B
狩人の経験で練り上げた洞察能力。
いかなる窮地においても戦況から活路を見出す。
破壊工作:C
戦闘前の段階で既に相手の戦力を削るスキル。
ハンターの場合は不意討ちの成功判定と不意討ち成功時の攻撃によるダメージにプラス補正が入る。
リゲイン:D 〜 B
相手にダメージを与えることで肉体の治癒を行うスキル。
治癒できるのは真新しい外傷のみで時間の経った傷、病、精神ダメージなどは癒せない。
ハンターの場合は使う武具によって治癒の量が変動する。
【宝具】
『狩人の夢、夜は未だ終わらない』(ドリームランド=ゲールマンズハウス)
ランク:B+ 種別:結界宝具 レンジ:2 最大捕捉:4人
専用のランプを地面に突き刺すことで異相空間に己の工房へ転移できる宝具。
工房内部には道具と武器の保管箱、空間転移の門が存在する。
転移できる場所はランプを突き刺した場所に固定されており突き刺したランプは動かすことができない。
『共鳴する不吉な鐘、狩人の時間だ』(レゾナントベル・メルゴー)
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:一人 最大捕捉:-
鳴らすことでサーヴァントが二体以上いる場にマスター共々乱入できる鐘の宝具。
乱入時は一定時間ハンターの気配遮断は機能せず、また乱入された側はハンターが来たことを知覚できる。
『蒼褪めた血、幼年期のは始まった』(ブラッドボーン・トゥメル=イル)
ランク:A+ 種別:対人(自分)宝具 レンジ:一人 最大捕捉:-
全ての宝具、スキル、道具の恩恵を封印することで発動可能となるハンターの最終宝具。
上位者と呼ばれる魔天の一角、邪神の一柱へと変生する。
体躯は全長5メートルほど。見た目は観測者の精神が常人であるほどおぞましく見える。
もしも精神薄弱な者がこれを見た場合はEランク相当の精神汚染に侵される。
ステータスとしては幸運を除く全ステータスが2ランクアップし、血液の一滴がマナの塊に等しいため莫大な魔力を生産可能。
だが、彼に魔術は使えないため高圧縮した魔力や呪詛化した血液による砲撃と爆撃を行う。
能力はAランクの『神性』と『狩人の夢、夜は未だ終わらない』で作った工房を固有結界として展開する権能を獲得する。
また、人間に己の血を飲ませることであらゆる傷と病を癒すが、己と同じ『邪神になる可能性を持つ狩人』に変える。
【weapon】
【右手武器】
ノコギリ鉈
リゲイン量D、破壊力Dの鋸刃の鉈。
仕掛けで射程が延びる。
獣狩りの斧
リゲイン量Cの斧。破壊力Cの斧。
通常時は片手斧。
仕掛けで両手斧に変型する。
ルドヴィークの聖剣
リゲイン量D、破壊力Bの聖剣。
通常時は片手剣で供給された魔力量次第で威力が増える。
仕掛けで両手用の大型聖剣になる。
葬送の刃
リゲイン量B、破壊力Dの鎌。
通常時は片手に鎌の刃を持って戦う。
仕掛けで柄と結合させ射程の長い大鎌になる。
【左手武器】
獣狩りの散弾銃
・水銀もしくは己の魔力(けつえき)を大幅に消費することで弾頭が賄える。
大砲
・散弾銃の十倍水銀を消費する。
木の盾
気休め程度の木の盾。
牽制程度の飛び道具ならば防ぐが高威力の攻撃は防ぎきれない。
火炎放射器
ヒャッハー! 獣は消毒だぁ!!
赤ずきんにあげたようだ。
【道具】
古狩人の遺骨
刹那の空間転移を可能とするが水銀を消費する
祭祀者の骨の刃
斬り付けた対象を前後不覚に陥らせ、同士討ちさせる。
赤ずきんに一つ上げたようだ。
雷光ヤスリ
武器に雷と光の属性をエンチャントさせる。
【人物背景】
病と医療と獣の都市『ヤーナム』にて行われた邪神降臨実験を解決した狩人。
古狩人、暴獣、聖獣、異星獣、夢魔、邪神を狩り尽くし、最後は邪神そのものとなった名も無き男。
英雄でも反英雄でも人でも神でも魔でも獣でもないため規格外クラスのハンターとなった。
伝承では寡黙な男とされ、コミュニケーションは一、二言ほど呟くか、ジェスチャーを用いたらしい。
※人形による強化、武器強化、カレル文字は封印で参戦。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争(ユメ)を終わらせたい。
【マスター】
赤ずきんのバレッタ@グリム傑作童話集. 上
【マスターとしての願い】
お婆ちゃんのところに帰りたい
【weapon】
サーヴァントから貰ったナイフと火炎瓶。
【能力・技能】
人を疑わない少女独特の純心さ。
また、グリム童話の人物なだけあって恐怖と発狂に規格外の耐性を持つ。
戦闘能力はない。ダークストーカー? なんのことだ。
【人物背景】
グリム童話に登場する赤ずきん。
赤ずきんとは狼に騙されて道草を食い、その間、狼にお祖母さんが食べられ、自分も狼に食べられるという道草に警句を鳴らす物語。
彼女は寄り道の途中で聖杯戦争に吸い込まれたようだ。
ある種サーヴァントともいえる出演者だが、見掛け通りの少女であり、特別な術技・能力はない。
16世紀からやって来た彼女にとってはこの街も人も未来であり、何もかもが珍しいため好奇心をそそられている。
この好奇心の強さと純粋さこそが、童話で彼女が騙されて寄り道してしまう原因である。
しかし、同時に幼い少女独特の美徳でもあるため誰もが守ってあげたいと思うのだ。
【方針】
架空の街観光して帰る。
投下終了です
すいません。赤ずきんの装備は
「サーヴァントから貰ったナイフと火炎瓶」
ではなく
「サーヴァントから貰ったナイフと火炎放射器」
です。
申し訳ない
投下します
◇ ◇ ◇
「これを聞く頃あなたは怒っているかもしれないけれど……でもこれが最善の手だと思っています」
「あなたは、彼女と闘うべきじゃない。だからあなたは、先に逃げてください」
「逃亡計画を伝えます。ロシア人との接触は3日後の月曜日。小樽市の市内に、清風亭という旅館があるから、そこで待機していてください」
「夜11時にボリスと名乗る男が迎えに来ます。後は、その男の指示に従って」
「わたしも後で清風亭に向かいます。もし…刻限までにわたしが旅館に現れなかったら、その時はわたしは死んだと思ってください」
「どうか悔んだり、自分を責めたりしないでほしい」
「あなたにエレンと呼ばれて以来、わたしの命はあなたを守るために在りました」
「あなたが生き延びてくれるなら、それがわたしが生きた証です」
「……それじゃあ、3日後に」
◇ ◇ ◇
そう、留守番電話に残してきた。
そして武装を整えて玲二の過去の亡霊、3代目のファントムとの闘いに臨む、そのつもりだった。
呼び出された礼拝堂、そこで祈りを奉げていた……そのはずだったのに。
確かにここは学校付の、礼拝堂だ。
しかし呼び出された、玲二と共に1年近く過ごした学園のではない。
通いなれた地とは異なる装飾に、なにより日本という国では感じられなかった昏く、黒い戦場の空気。
そして刻まれた知識、与えられたサーヴァント。
臨むはずだった闘争とは違う『聖杯戦争』という事象に、迷い続けている。
この地に来て幾日か経つが、学園に通い、終わるとここで祈りを奉げる毎日。
「今日も礼拝かい?」
「神父様」
「キャスターで構わない。今のわたしは君のサーヴァントなのだから」
召喚されたのは魔術師のクラスのサーヴァント。
生前は教戒師も務めたという神父様だった。
あまりに突拍子もない状況になってしまったが、それでもこの神父様に会えたことは感謝している。
わたしの罪はあまりに膨大で、いつか神様に直接懺悔したいと考えていた。
けれども英霊にまでなった神父様なら、告悔を聞いてもらえると思い、わたしの罪の全てを告げた。
数多の殺人、大切な人を謀ったこと、ついには憎しみに胸を焦がし己が意思で人を殺めんとしたこと。
「それは容易く赦されることではないでしょう……しかし贖罪の道はある」
告白を聞いた神父様はそう答えられた。
それは具体的にどんな方法なのですか、と問うていた。
「『天国』に行くために、無償の愛を積み重ねる事……その一歩として私に協力してもらいたい」
「『聖なる杯』は主の遺したもうた『天国』への道標だ。
我が友と夢見た『天国』……そのために私は何としても聖杯を手にしなければならない」
……それはつまり、聖杯をとるために人を殺めるということでしょうか。
「言葉を取り繕わなければ、そうだ。
我らの主は、人類すべての罪を背負われ昇天なされた。
私もまた…というのはあまりに傲慢だが、人々の幸福のためならば罪を背負い磔刑になる覚悟はできている。
それに、聖杯を『天国』の素晴らしさも何も理解できないような、愚か者に渡すわけにはいかない」
あまりに堂々としたお言葉に憧憬を覚えた。
わたしには、顔も知らない誰かのためにも、自らのためにも人を殺める強さはないから。
この神父様も、玲二に近似した――けれど全く異なる――強さを持っている。
そんなわたしの迷いを見抜いたか、さらに言葉をかけてくださった。
「人が人に親切にするのは、全て見返りを期待してのものだ。
誰かに親切にするのは、自分も親切にしてもらうためであり、つきつめれば無償の愛というのはない。
無償の愛とは、『天国』へ行くための見返りなのだから。
君も、見返りを期待していい。君が『天国』に届かずとも、『天国』への扉が開けば他の誰かを救済することはできるだろう。
君は救いたい誰かはいないか?隣人に無償の愛を届けようとは思わないかい?」
……少し考える時間を頂けないでしょうか、と呟くように返した。
玲二のことを考えて、闘う決意をしたはずなのに。
想定と違う戦場に来た途端に殺意は揺らいでしまった。
「もちろんいいとも。まだ本格的な開幕には猶予があるようだ。
ゆっくりと考えるといい。
……願わくば、君の帰りを待つ隣人と、全ての人々に幸ある決断を」
そう言われて、幾日も悩み続けて。
救いと答えを求めて幾日も祈り続けて。
それでも、やっぱり銃を握るのはわたし一人ではできないと悟った。
「神父さ…キャスター」
「なにかな?」
「わたしは…わたしには誰かを殺せる意思がありません。
もし、そんなわたしの力が必要だとおっしゃるならば……命じてください。
『天国』に至るために、愛する隣人のために、聖杯を手にするのに最善を尽くせと」
臆病で、卑怯な言葉だ。
それでも縋るもののない今のわたしは、あまりに弱かった。
そんな罪人の言葉にもキャスターは微笑んで言葉を返してくれた。
「わたしは、君のサーヴァントだ。
わたしが積み重ねた善行は君のものであり、君の犯した罪はわたしが背負うべきものだ。
改めて頼もう。聖杯を手にし、『天国』へ至るために君の力を貸してくれ」
暖かい言葉。
それを受けて心中に引き金を絞るための冷たいものが満ちる。
これなら、殺せる。
「わかりました。それでは、行きましょうキャスター」
玲二を守るために準備した武装を整え、新たな戦場に挑む決意を固める。
キャスターと、玲二のために。今再びわたしはファントムに、一つの凶器になろう。
(玲二…あなたは悲しむかもしれないけど、わたしは戦います。
あなたのいない無限の地獄で、それでもあなたが天国に至るためならばわたしは堕ちることも厭いません)
これが地獄を巡る贖罪なら、もうそれも恐れない。
その眼を虚無で満たしたエレンを、そのサーヴァント、エンリコ・プッチはじっと眺めていた。
(そうだ。お前は悪人ではない。だが数多の殺人を重ねた重罪人ではあるのだ。
必要となれば天国へ至るための贄となってもらうぞ)
彼はすでに町のNPCを『天国』に至るための生贄としていた。
しかしその力は微々たるもので、天国への階段を作り出すには程遠かった。
生前の力、それを一端とはいえ振るうにはマスターの協力か……相応の犠牲が必要だろう。
(待っていてくれ、DIO。
今度こそ君と二人、共に夢見た世界へ旅立とうッ!)
【クラス】
キャスター
【真名】
エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険
【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷E 魔力B 幸運A 宝具EX
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:D+→D++→EX
宝具によって獲得しているクラススキル。そのため宝具が変質するとランクも変動する。
D+なら中に存在するものを幻覚の中に取り込みゆっくり融かす、まるで『蛇の胃袋』のような空間を作り出す。そこに長時間存在した場合肉体が融け、あとにはDISCだけが残る。
幻覚の中で違和感を覚え、そこに外部からの刺激が加われば幻覚から目覚めることができる。
D++なら自身の周囲3kmを重力の反転した『天国への階段』にする。
EXなら宇宙全てを固有結界『天国』へと変えていくが、サーヴァントである今の状態では十全な力を発揮することはできない。
道具作成:B→―
宝具によって獲得しているクラススキル。そのため宝具が変質すると失われてしまう。
Bランクの場合DISCを作成できる。
人の記憶を保管しておく記憶DISCと能力を封じるスタンドDISC、空っぽのDISCを作成可能。
記憶DISCはただ記憶を封じるだけでなく、感覚だけを封じることで視覚や聴覚などの五感も抜き取ることが可能。
スタンドDISCもスタンドだけでなく魔術回路や魔術刻印、ものによってはスキルや宝具を抜き取ることも可能。
【保有スキル】
信仰の加護:A
一つの宗教観に殉じた者が持つスキル。加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。
星の救済者:EX
人類史におけるターニングポイントとなった宗教家に与えられる特殊スキル。
あらゆる試練を“克服不可能”なまま“克服可能”なものとする。
彼は全宇宙の存在を『天国』に導き、また“星の痣の一族との因縁”を乗り越えた逸話を持つ。
引力:A
全てのものは引力を持つ(万有引力)。
スタンド使いは引かれあう。
エンリコ・プッチは特に数奇な運命を引き寄せる星の下に生まれた。
友を、敵を、試練を、啓示を、チャンスを、様々なものを引き寄せる。
幸運判定に成功した場合窮地を救う何かを手にすることができる。
ただしプッチ以外の誰かに契機を引き寄せてしまうこともある。
話術:D+
言論にて人を動かせる才。
交渉から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
宗教教戒師としての経験から罪悪感を抱くものや信徒に対しては上昇補正がかかる。
また素数を数えて落ち着くよう自分に言い聞かせることで同ランク以下の精神干渉を軽減することができる。
【宝具】
『知恵の実を刈り取る白い蛇(ホワイトスネイク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0〜10 最大捕捉:1人
『矢』に貫かれ獲得したスタンド。
ステータスは筋力C- 耐久:D- 敏捷:C- に相当する。遠隔操作型であり、本体から離れるとステータスが低下する。
本体が戦闘経験豊富とは言い難いため同格以上の相手にスペックで有利に立ち回るのは極めて難しい。能力の活用がカギとなる。
D+ランクの陣地作成スキルとBランクの道具作成スキルを獲得する。
陣地内に一度でも取り込んだ、またはスタンドヴィジョンか本体に触れてる者からDISCを取り出すことが可能。
空のDISCを作成し、命令を書き込むことはこのスタンドのみが可能であり、それにより洗脳まがいの行為が可能となる。
また直接脳に腕を差し込み直接命令を書き込むことも出来る。
基本的にはプッチの操作下におかれるが、スタンド自体にも自意識と言語能力を有する。
後述の宝具と融合し、多くの魔力を注ぐとスタンドは進化する。
通常ならば三日は進化に必要だが、令呪を用いれば短時間で進化できる。
『世界樹を育む魔人の遺体(グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム)』
ランク:E+++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:36人
神の名を冠する吸血鬼の骨。
力ある者の魂を捧げ、14の言葉を唱えた者を『遺体』は友と認め、一つになる。
一つになるとその体質も獲得し、治癒能力が向上。首筋に星形の痣が浮かび、同じく痣を持つものの居場所がなんとなくわかるようになる。
捧げる魂の数はその魂の有するパワーによって異なる。
NPCでは何百集めても足しにはならない。
殺人以上の重罪を犯した者の魂で36人分。
サーヴァントならば人間より魂の比重がそれより大きいため少なく済む。
余談だが、聖人とは死後に二度奇跡を起こしたもの。
この骨の持ち主は人間をやめたのちに『100年の沈黙からの復活』『時間を止める』という奇跡を成している、魔人にして聖人。
『世界と天国の間を漂う新月(C-MOON)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:0〜50 最大捕捉:1人
ホワイトスネイクがグリーン・グリーン・グラス・オブ・ホームと融合・進化したスタンド。
ステータスは筋力:E 耐久:C- 敏捷:C- に相当する。遠隔操作型であり、本体から離れるとステータスが低下する。筋力はもとより最低値であるため下がりようがない。
本体が戦闘経験豊富とは言い難いため同格以上の相手にスペックで有利に立ち回るのは極めて難しい。能力の活用がカギとなる。
D++ランクの陣地作成スキルを獲得し、プッチの肉体を基準に半径3kmの重力を逆転させる。
スタンドヴィジョンは拳に触れたものを反転させる能力と、プッチ自身の肉体を反転させる能力を持つ。
重力は時間と綿密な関係を持つためこのスタンドの保持者は時間操作に関わる能力に僅かながら耐性を持つ。
このスタンドを持って「新月」の重力を身に受けることで後述のスタンドに進化する。
『神と共に作り出した天国(メイド・イン・ヘブン)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:上限なし
C-MOONがさらに進化したスタンド。
ステータスは筋力:C 耐久:C 敏捷:EX に相当する。
本体が戦闘経験豊富とは言い難いため同格以上の相手にスペックで有利に立ち回るのは極めて難しいが、後述の能力により同格の速度に至れるものはそうはいないだろう。
EXランクの陣地作成スキルを獲得する。
本来なら固有結界『天国』を全宇宙の時を加速させ完成させる宝具なのだが、サーヴァントと化したことでそこまでは至らない。
固有結界を体内でのみ展開する固有時制御の発動が限度となっている。
倍速、三倍速などと生易しい速度ではなく一秒で数日が過ぎる、約100万倍速などという馬鹿げた固有時制御も可能。
世界の修正力による反動はスタンドの効果に加えサーヴァントであるため全く受けず、本来の能力の一端でしかないため魔力消費もさほどではない。
速度はずば抜けるがパワーや耐久力は並み程度なため、広範囲攻撃や掴まれての力比べ、強力な防御性能などには苦戦する可能性が高く、もし反撃を受ければダメージは小さくないだろう。
【weapon】
『DISC』
ホワイトスネイクが道具作成により生み出すもの。
一度作成すればホワイトスネイクを失った後も存在し続けるが、死にゆくものにDISCを挿入した場合、DISCもその死に引っ張られ消滅する。
空のDISCに命令を書き込むことでそれに従わせることができる。
人間相手に「空条除倫を始末せよ」「通行許可証を持たずに中庭に来たものを脱獄犯と見なし射殺せよ」「スタンドを使ってプッチの記憶を掘り起こせ」など、応用性はかなりのもの。
一度DISCを挿入した相手がホワイトスネイクのレンジ内に存在するならば改めて命令を下すことも可能。
動物相手なら「10m飛んだら破裂しろ」など無茶苦茶な命令も下せる。
スタンドや能力・宝具DISCは適応しない者では使用できない。
【人物背景】
教皇を輩出したこともある名家に双子の兄として生まれる。
弟は生まれてすぐに命を落としたために、「なぜ神は自分でなく弟を連れて行ったのか?」を、ひいては運命について疑問を持ち続ける。
しかし神学校に入り、信者の懺悔を聞いたことで自分の弟は赤子の時点で入れ替えられており、まだ生きていることを知る。
そしてその弟がプッチの妹を肉親と知らず恋仲になっていることも。
懺悔を守秘する、兄妹での恋愛という二つの信仰に対する問題に悩み二人を別れさせようとするが、そのために雇った男の手により悲劇が起きる。
ただ幸せであろうと、正しくあろうとした兄弟は引き裂かれ、妹は兄と知らぬ恋人が死んだと思い身を投げた。
悲嘆にくれるとかつて通りすがった男ディオ・ブランドーに贈られた矢によってスタンド能力に目覚める……その影響で弟もまた。
弟の記憶を奪い、ディオを親友と呼ぶようになり、その思想に共感し、数多の善行と悪行を重ねる。
人はなぜ出会うのか?自分と弟と妹を取り巻く数奇な運命の果てに人の出会いは引力による運命であるとして、運命を操作・超越し全ての人類が幸福になる方法を探す。
そして神の選んだ運命『天国』に行きつき、その実現にまで至るが、正義の道を歩むという運命に敗れ死亡。
敬虔な神父であり民衆の幸福を願っているのは事実だが、同時にそのために必要ならばいかなる犠牲も教義への反抗も厭わない。
神の敵たる吸血鬼と通じ、信徒を利用し時には殺め、親友の信奉者や息子も切り捨てる。
生き別れになっていた実の弟曰く「自分が悪だと気付いていない、最もどす黒い悪。それこそ最悪だ」
【サーヴァントの願い】
親友と共に復活し、『天国』へと至る
【マスター】
エレン@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
【マスターとしての願い】
玲二の救済?『天国』に至る?
【weapon】
・CZE Vz.61 “スコーピオン”
装弾数20発、発射速度は毎分750-850発、弾は7.65mmブローニング弾。
フルオートとセミオートの切り替えにより制圧射撃と精密射撃に併用可能。
ただし小口径のため、市街地や屋外での戦闘には向いていない。
・コルトパイソン
装弾数6発、弾は357マグナム弾を撃つことができ、.38スペシャル弾も使用可能。
・サバイバルナイフ×2
【能力・技能】
銃器、ナイフ、徒手格闘、狙撃、潜入など暗殺者として必要な技巧は一通り。
重武装したヤクザ数十人にシナリオによって勝ったり負けたりしているので、精神状態によるがその辺がボーダーか。
暗殺者として圧倒的な戦闘能力を有しているが、実は精神面は常人よりも遥かに脆弱であり、誰かの命令が無ければ自らの意志で人を殺すことが出来ないという弱点がある。
後に玲二を守りたいという強い想いによってその弱点を克服するが、今の彼女は自らのためだけの殺人はできないだろう。
【人物背景】
ソ連崩壊の余波を受けて混乱状態にあったモンゴルから人攫いによって中国の香港へ連れて行かれ、サイスと言う男に買われた。
その後サイスに師事し、ロサンゼルスのギャング組織、インフェルノのトップスナイパー・ファントムと呼ばれるようになる。
サイスの命令を受け、日本人の少年、吾妻玲二に暗殺者としての技術を教え込み、その少年と多くの任務をこなして組織に貢献する。
しかし幹部の権力抗争に巻き込まれ、重傷を負いアジトに戻ってきたところを玲二に救われ、「エレン」の名を与えられる。
その後、二人で組織を逃げ出そうとするも失敗し、再び師に囚われることになる。
再び権力抗争が巻き起こり、幹部の一人が死亡するとその間隙を突き、玲二と共に国外逃亡。
日本で学生の振りをして過ごすが、追手が向けられる。
その刺客から玲二を守るために武器をとった直後の参戦。
【方針】
迷っている。
無碍に命を落とすつもりはないが、積極的に殺して回りたくはない。
けれど神父様の言葉を無視はできない……だから彼が命じるならば手を汚す。
投下終了です
皆様、投下お疲れ様です
聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚で投下したものの流用ですが、
元の文を改稿して投下します
―――魔術師の正位置。
新しい変化や環境の中で、自分を生かし、自分の力で道を切り開いていくことができる前向きな気持ちと積極的な意志力、新しい状況の中での成功をこのカードは表している。
◆
聖杯戦争の舞台である街に設置された神社。
あまり参拝客の来ない小さな神社であった。
鳥居をくぐると古い石畳でできた参道とその先に本殿が見える。
参道を外れるとそこは砂利で覆われている。
その中で、巫女服に身を包み、竹箒でせっせと掃除をしている少女がいた。
さっさっ…と箒で掃く音が、神社の境内に響いていた。
ふと鳥居の外を見やると、そろそろ日が街の建物の向こうへ沈もうとしている。
そこから差し込む光が眩しかったので目を逸らし、夕日に照らされながら掃除に打ち込んだ。
「っと…こんなところやね」
しばらくして、あちこちに散乱していた落ち葉を回収できた。
見回して掃き忘れているところがないか見回してから、少女は掃き掃除を切り上げた。
竹箒を所定の場所に返し、巫女服から私服へと着替え、自分の髪とシュシュで二つのおさげを作り、帰り支度をする。
少女はよくこの神社で簡単なお手伝いしており、今日の掃き掃除もその一環だ。
帰り際に「いつもありがとう」と神主に言われ、少し嬉しくなりながら鳥居を出た。
上を見ると空がオレンジ色から紫色に変わろうとしているところだった。
暗くなる前に家に帰ろうと思い、自宅のマンションへ向かう足を少し速める。
鳥居を出てから数分歩くと人通りの少ない路地に出た。
「日本の神社はどうやった?」
その少女・東條希は1人、歩きながら口を開いた。
「――キャスター」
「ああ、なかなかにスピリチュアルだったよ。神社というのは」
誰も来ないと見越してか、ローブを羽織った褐色肌の男が何もない空間から姿を現す。
彼はこの街で記憶を取り戻した希のサーヴァント。
クラスは『キャスター』で、真名はモハメド・アヴドゥルといった。
アヴドゥルは、霊体で見物していた神社の印象を述べていった。
希がアヴドゥルと出会ってからは、様々な話題でよく話が弾んだ。
「お賽銭はな、願いの対価に払うものじゃなくて、神さんに願いを叶えてもらったお礼なんよ」
「そうだったのか。イスラムじゃあ貧しい人に財を分け与えると天国にいけるという教えがあるから、エジプトには乞食の組合があってビジネスが成り立ってるくらいなんだ。
なるほど、日本神道においてはお金は必ずしも対価になるわけじゃあないのか」
今日も2人は神社の賽銭について語り合い、戦争の中の日常を謳歌している。
国籍も世代も年齢(享年)も違うが、希とアヴドゥルは二人とも占いという一点において通ずるところがあった。
夕日の下で談笑しながら並んで歩く二人の姿は聖杯戦争の渦中にいることも忘れているかのようだった。
◆
―――ガチャリ。
希がマンションの自室の鍵を開ける。
寝室に荷物を置いてからキッチンへ向かい、夕飯の下準備を始めた。
アヴドゥルはというと、帰り道に多少人通りのある場所もあったので霊体に戻っていた。
「私が召喚されてから3日か…」
アヴドゥルは再度実体化して食卓の椅子に座り、独り言ちる。
今のところ他のサーヴァントの気配は見られない。
時々『炎の探知機』で偵察に出ることもあるが、特に反応はなかった。
ろくに敵と遭わなかったせいか、アヴドゥルにも先刻のように神社の見物などに興じる程度の余裕はできていた。
「キャスター以外のサーヴァントは見当たらへんな〜。誰がマスターか全然分からへん」
希は希で、学校でも偽の記憶を持っていた頃の自分を演じていたが、特に周囲の人物の様子に変化はない。
何人かいる顔見知りも、『この世界では』いつも通りであった。
「まだ記憶を取り戻していない者の方が多いのかもしれないな。…希、油断は禁物だ」
…決して忘れたわけではない。
己がマスターが本来無縁であったはずの戦いに既に巻き込まれていることは。
アヴドゥルは思った。
なぜ、無関係な少女がこのような血で血を洗うような戦場に駆り出されなければならないのかと。
マスター――希はここに来る前は音ノ木坂学院に通い、スクールアイドルなるものをしていたと聞く。
輝かしいであろう青春から彼女を無理矢理引き離して命の危機に晒すなど、決して認められないことだ。
このくだらない戦争は必ず滅ぼさねばならぬ。
誰が何のために殺し合わせるかは分からないが、
無差別に人を巻き込む点はかつて自分が打ち倒そうとした邪悪の化身・DIOに似ている。
そして何よりも希を守り、必ず元の世界へ返してあげたい。
炎のように熱き精神の宿る魔術師には確固たる意思があった。
「希」
「んー?」
アヴドゥルは椅子から立ち上がる。
「…私はこの戦争を認めるつもりはないし、君を守るために戦おうと思う」
「どうしたん、急に?」
冷蔵庫を漁っていた希がキッチンカウンター越しにアヴドゥルの方へ向く。
希の目を真っすぐに見つめるアヴドゥルの姿が見えた。
「君はどうなんだ?その…怖くは、ないのか?恐怖という感情は誰にでもある。私も恐怖のあまり敵前逃亡したことだってある」
生前、占い屋でのDIOとの対峙を思い返しながらアヴドゥルは語った。
普通の少女ならば、殺し合いの世界に放り込まれようものなら絶望の表情を見せたり、泣き出したりしてもおかしくはない。
しかし希は本来の記憶が戻ってから意外とすんなりと現実を受け入れたらしく、今も元の世界と同様に『いつも通り』でいることができている。
だがアヴドゥルは、希は心の奥底では恐怖に苛まれているのではないかと心配だったのだ。
「確かに、殺されるかもしれん思たら今も怖いんよ?」
心のどこかに潜む恐怖の存在を認めつつも、「けどな」と言いかけて希はキッチンカウンターから出る。
そして近くにあったチェストの引き出しからある物を取り出した。
「これは……」
希がテーブルの上に置いたそれを見て、アヴドゥルの記憶にDIOを倒す旅に出た日が蘇る。
運命のカード、タロットの22枚の束。
中でも『星』のカードはかつて旅を共にした承太郎のスタンドの命名の元になったカードだ。
希はアヴドゥルと向かい合う形で椅子に座ると、慣れた手つきでシャッフルしてから22枚のデッキを横並びに展開する。
カードは裏を向いており、アヴドゥルはもちろん、希からも表面は見えない。
希はその中から1枚だけを取り出し、アヴドゥルに見せた。
それを見たアヴドゥルの目が見開かれる。
引かれたカードには、若い男が描かれていた。その男の前にあるテーブルに剣・杖・杯・護符がある。その男は聖杖を文字通り天に向かって掲げていた。
「魔術師の正位置」
希は引いたカードの名を口に出して言う。
「ウチはあれから何回かウチの運勢を占ってみたんよ。そしたら、出てくるのは魔術師ばっかり。今回もほら、魔術師の正位置やん?」
希はアヴドゥルにカードを見せびらかしながらにっこりと微笑む。
魔術師の正位置は新しい状況で、自分の力で道を切り開いていくことができる前向きな気持ちとその中での成功を暗示している。
それが「カードのお告げ」であるならば、きっと前に進んだ先に何かを切り開いていくことができると考えたのだ。
「それに、魔術師はウチの目の前にいつもおる」
希はアヴドゥルを見つめて言った。
そう、彼はキャスター、魔術師だ。
宝具であるスタンド『魔術師の赤』もその名の通り魔術師の暗示を受けたスタンド。
「ウチはどうしても知りたい。どうして自分が聖杯戦争に呼ばれたのかを。
それを知らずに殺されるなんて、ウチは嫌や。
だからキャスター…あなたはウチにとっての『魔術師』でいてくれる?」
「希…」
どうやらこの少女は自分が思っている以上にタフらしい。
「怖くないのか」と聞いてしまった自分が恥ずかしくなった。
アヴドゥルはDIOの姿を再び見ることなく、謎のスタンド使いの急襲から仲間を庇い、死を迎えた。
エジプトへの旅は一度死にかけたこともあったが、
共に栄えてはならぬ悪へ立ち向かった仲間のためならば、命は惜しくなかった。
「助けない」と言ったのに自らそれを破ってでも仲間を庇うとは――どうやら私は仲間のことになると自分が見えなくなるようだ。
――だが、それもいい。
もう一度、私はサーヴァントとして生を受けた。
DIOの館でポルナレフとイギーを突き飛ばしたところまでしか覚えていないが、後は承太郎達がやってくれるだろう。
DIOを倒し、生き残った者が新たな道を切り開いていく…それを『魔術師の赤』は暗示していたのかもしれないな。
後悔はない。聖杯にかける願いもない。
ならば――
「――無論だ。君がそれを信じて前に進むというのなら…私は君を守る『魔術師』となろう。いつまでも君にとっての正位置であり続けよう」
「そして、私と!」
突如、アヴドゥルの背中から逞しい猛禽類の頭がついた赤い像が姿を現す。
この像こそが『魔術師の赤』。アヴドゥルの熱き精神の具現。
「『魔術師の赤』がッ!君を導こうッ!」
東條希の引き当てたサーヴァント――それは魔術師の正位置。
【クラス】
キャスター
【真名】
モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
陣地作成:D
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
ただしキャスターは本来占い師であるため、工房を作ることは難しい。
道具作成:-
魔力を帯びた器具を作成する能力。
『魔術師の赤』で炎を作り出す能力を持つ代わりに、このスキルは失われている。
【保有スキル】
心眼(真):B
スタンド使いとしての修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
博識:B
キャスターが占い師として様々な人の話を聞いてきたことや、趣味の古書集めにより身につけたあらゆる分野に通ずる知識。
持ち前の知識から、一定確率で相手のスキル・宝具の能力・真名を看破する。
かばう:C
邪悪の化身を倒す旅路で2度に渡って仲間を庇った逸話からくるスキル。
かばう対象の代わりにキャスターがダメージを受ける。
被虐体質:D
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
マイナススキルのように思われがちだが、
強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。
キャスターの能力は敵に危険視されており、最初にキャスターを倒そうとする者も少なくなかったことからこのスキルを有する。
炎の探知機:B
『魔術師の赤』の炎を応用したスキル。
炎は生命エネルギーの象徴であるため、生命に引き寄せられる炎を作り出すことで隠れている敵を見つけ出すことができる。
同ランクまでの気配遮断スキルを無効化する。
【宝具】
『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:20
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
たくましい人間の男性のような肉体の上に鳥(猛禽類)のような頭がついた人型スタンド。
火炎や熱を自由自在に操る能力を持ち、鉄をもドロドロに溶かしてしまうほど高温。
『魔術師の赤』の炎は魔力で作られており、キャスターの意思で点火と消火が可能な上、
物理法則を無視した燃え方も可能であり、キャスターの意志でその炎はその形状や熱量、温度、性質を変化させる。
風に流されず重力に逆らえる炎や、水をかけたり真空状態になっても消えない炎も作成可能。
他にも物理的な形状を持つ炎で相手を縛りあげて酸欠で気絶させたり、炎で瞬時に穴を掘って退避するなど、様々な場面で応用が効く。
『死んだはずのあの男(イエス・アイ・アム)』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
敵のスタンドの弾丸を額に受け死亡したと思われていたが、実は生きており仲間の窮地を救ってジョースター一行に合流したエピソードに基づく宝具。
キャスターは消滅しても一度だけ復活し、マスターの元へ再び現界することができる。
ただし、死んだと思われてから数日跨いでジョースター一行に合流したことから、復活するのは消滅してから約一日後になる。
その一日の間、マスターは自分で自分を守らねばならず、その一日でマスターが死亡した場合は当然この宝具も無意味となる。
誰の目から見ても消滅したと認識されるため、ルーラーの襲撃もマスター単独で振り切らねばならない。
【weapon】
・宝具『魔術師の赤』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で、
筋力C、耐久C、敏捷C相当。
ただし、火炎を操る能力が主になるため、能力はそこそこ。
【サーヴァントとしての願い】
マスターのために戦う。
【人物背景】
生まれつきのスタンド使い。
生真面目で確固たる意思と行動力を持った人物。
しかしその意思の強さが行き過ぎ頑固かつ短気な一面を覗かせてしまうこともあり、
アヴドゥル自身も自らを「結構熱くなるタイプで、ギャンブルには向いていない」と評している。
友人であり、彼とは正反対の柔軟な思考力を持ったジョセフはベストパートナーと言える。
一方で、敵へイタズラをするために仲間を立小便に誘ったりと、豪快な一面もある。
職業は占い師。かつて空条承太郎による邪悪の化身・DIOを討つ旅に同行した。
承太郎と出会う以前にその優れたスタンド能力に目を付けた邪悪の化身・DIOから仲間に勧誘されている。
占い師という職業柄誰かの話を聞く機会が多いためか、若しくは古書集めの趣味の賜物か、ジョースター一行の中でも特に様々な分野において博識で、
敵のスタンド使いについて自分が知っている情報を仲間内に提供する事で実質的に一行のブレイン的な役割も担っていた。
また、普段の落ち着いた態度に隠れがちだが仲間への信頼と思いやりは非常に強い。
しかし、最期はDIOの側近の攻撃から仲間を庇い、両腕を残して亜空間に飲み込まれ、死亡した。
マスター補正により、幸運が大きく上昇している。
【マスター】
東條希@ラブライブ!
【マスターとしての願い】
なぜ自分が呼ばれたのかを知りたい
【weapon】
特になし
【能力・技能】
運がいい。くじ引きではハズレを引いたことがないらしい
タロット占いがよくあたり、過去では処世術として使っていた。
魔力面では、魔術師には劣るものの、霊感が強く、パワースポット巡りなどスピリチュアルなことに長年触れてきたのでそこそこある。
【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
基本的におっとりしており、似非関西弁を話す。
パワースポットや占いに傾倒する不思議系スピリチュアルガール。
占いにはタロットカードを使う。
一方でメンバーに対して胸をわしわしと触るセクハラ親父な面もある。
運がいいことが自慢で、くじ引きでハズレを引いたことはないらしい。
幼い時から霊感が非常に強く、自分にしか見えない霊や霊獣が見えていた。
現在ではぼんやり見える程度らしい。
アニメでは穂乃果達に厳しい態度を取る絵里とは違い、
μ'sのメンバーに度々助言してくれるなどアイドル活動に対しては非常に前向き。
曰く、カードのお告げらしく、μ'sの名付け親も希。
【方針】
なぜこの聖杯戦争に呼ばれたのかを突き止める
以上で投下を終了します
皆様投下お疲れ様です!
素晴らしい作品ばかりで、通して読ませていただいてわくわくしておりました。
自分もこの機に投下させていただきたく思います。
たとえば道を歩いていて、目の前に凶暴な食屍鬼(グール)が現れたとする。
わたしはそんなもの少しも恐ろしいとは思わない。
纏わりついてくる挙動が鬱陶しければ、指先に小さな雷光をともして軽くひと振り。それだけで食屍鬼は全身を黒焦げにされて、情けない断末魔を上げて灰に還るし。
たとえそれが食屍鬼ではなく死徒だったとしても結果は同じ。必殺技じゃなくて超必殺技を御披露目することになるかもしれないけど。
わたしには、怖いものなんか何もない。
わたしにはそれだけの、おばあさまから受け継いだ“力”があるし。
なのに、お姉ちゃんはきっとそんなわたしを背後にかばって、声と足を震わせながら、食屍鬼に立ち向かおうとする。わたしはお姉ちゃんに守られるほど弱くないのに。
っていうか、むしろわたしのほうがお姉ちゃんを守ってあげる立場だし。
野良犬さえ満足に追い払えないお姉ちゃんは、こんな危ない場所に来るべきじゃないし来なくて当然だし。
そのくせ、私が食屍鬼を浄化した後には、お姉ちゃんはきっとこんなこというんだから。
「大丈夫だった、ニノン? お姉ちゃんとはぐれちゃダメよ、もう!」
半泣きでそんなこといっても説得力ないし。
第一わたしがお姉ちゃんとはぐれたわけじゃなくて、お姉ちゃんの魔力が弱くてわたしに置いていかれただけだし。
そもそも誰もいっしょについてきてなんて頼んでないし。
わたしは聖杯戦争のことだって知ってる。
沢山の魔術師が聖杯を求めてそんなことをしてるのは、おばあさまから聞いてるし。
サーヴァントの召喚の方法も知ってるし。
何ならヘラクレスみたいな偉大な英霊をバーサーカークラスで召喚しても余裕だし。
むしろ、わたしはお姉ちゃんより優秀なんだから、それくらいのサーヴァントでないと釣り合わないし。
だから例え、聖杯戦争の会場にいつの間にか誘拐されて記憶を改竄されていたことに気づいても、わたしは怖くなんかない。
……本当だし。
っていうか、目の前にこんなやつがいたんだからすぐに気づいたし!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おー、記憶が戻った? おめでとう。しきたりみたいだから聞くけど、アンタが私のマスターよね?」
「あ、あなた、一体何クラスのサーヴァントだし!! 色々おかしいし!! 真名を名乗りなさい!!」
閉館時間を過ぎた、月明かりだけが差す大きな図書館に、ニノン・ベアールの声が響いた。
彼女が勢いよく立ち上がったはずみで、椅子が倒れて床にガタガタと転がった。
切り揃えた銀の髪に黒いゴシックロリータのドレスを合わせた彼女は慄きながら、西洋人形のような細い指先を伸ばす。
震える指がさした相手は、テーブルの向かいで今の今まで一緒に本を読んでいた人物だ。
確か、ニノンは魔術で光を灯して、一般人がそれらしくでっちあげただけの『魔法入門』とかいうアホくさい本に、ツッコミを入れながら今の今まで笑っていたような気がする。
気がするだけじゃなくて、実際に今その本は『ネクロマンシー』というページが開かれて目の前に置かれている。
今まで自分はこの異変にも気づかず、呑気にこの向かいの人物と、友人のようにくっちゃべりながら本を読んでいたということに他ならない。
恥ずかしすぎて顔から火が出そうだった。
「ったく、そんな慌てなくても答えるって」
「刀があるからセイバー――、なわけないし。こんなセイバーいるわけないし!!」
ニノンの向かいに座っていた少女は、今まで読んでいた『歪曲の舞踏』という大判の本を閉じて、苦笑しながら立ち上がった。
その少女は、背格好で見ればニノンと同じく十代半ばだろうか。
無造作なアクアグレーのショートヘアに、中学校の制服と思しきプルオーバージャケットとスカートを着こんでいる。
そして腰には、その上背に比して長い日本刀が携えられている。
ここまでならその正体は東洋系のセイバー、例えば中国の十三妹(シーサンメイ)なども考えられた。
だがこの少女の出で立ちはそれに留まらない。
左腕には、長く無骨な鎖が巻きつけられ、その先に大きな鉄球を吊るしている。
全身の皮膚からは、名称の判然とせぬ蔓植物が繁り、襟や袖口から溢れ出している。
そして何より――。
彼女の左眼があるべき場所には、顔の後ろまで見通せるような『おおあな』が開いていた。
「……バーサーカーのサーヴァント、『すてねこオートマトン』よ。よろしく」
「バーサーカー……!? 確かにステータスはアップしてるし……。でも口調は普通だし……。
いやでも、その見た目はそもそも普通じゃないし!! その名前明らかに偽名だし!!」
ニノンが指先をその『おおあな』に向けると、すてねこオートマトンと名乗った少女は「うっ」と唸りながら左の顔を覆った。
恥ずかしがっているように見えたが、その顔はさほど赤くならなかった。
そもそも彼女の顔は、死人のような灰白色をしていた。
……いや、それどころか間違いなく、このサーヴァントの実体は、少女の死肉でできていた。
彼女から漂ってくる匂いは、果物か植物のような甘い香りで緩和されてはいるが、それでも誤魔化しようのない死臭である。
その衣服も体も、煤けた土埃や、赤黒い粘菌が染みて薄汚れていた。
「……まぁ私は、ネクロマンサーからもボロクソにこき下ろされたし……、その反応が正常よ、ね。
……私はあいにくネクロマンシーで作られた『ドール』でさ。自分の名前含め、生前の記憶の大半を失ってるわけ。
だから、自分のポジションに『捨て猫』と冠して取り敢えず、すてねこオートマトンと名乗ってる」
「『死霊魔術(ネクロマンシー)』……?」
彼女は口の端に自嘲を歪ませて、左に顔を伏せながら呟いた。
ニノンは彼女の言った魔術の名を反芻しながら、すてねこオートマトンの姿をまじまじと眺める。
『死霊魔術(ネクロマンシー)』。
読んで字のごとく死体と共に発展してきた魔術だ。
己の「死」を見つめ、肉体が腐乱していく様を幾度となく観察し、最終的に「死」を統べることを目標とするもの。
死者を食屍鬼に作り変え、死体を継ぎ接ぎして生み出した怪物を蘇生させて使役したりするわけで、一流の死霊魔術師は革命やクーデターで大量虐殺が行われると狂喜乱舞して死体を掻き集めるのが習わしだったと聞く。
だがニノンが目の前の少女を観察するに、どうやら自分の知る死霊魔術というよりもそれは『置換(フラッシュ・エア)』か『蝶魔術(パピリオ・マギア)』の産物のようにも思えた。
少女の死体を材料とはしているものの、そこに防腐処理を兼ねて特殊な粘菌を流し込み、一体の人形として存在を確立させている。
更にそこには、しっかりと統一された少女の人格と精神が転写されている。
決して、死体から生み出された怪物と見て良いモノではない。
彼女は確かに、誰かの作品である人形だ。
だが彼女はそれ以上に、誰かに愛された少女だ。
不安定な自分の正体に悩み、自己の存在意義を確かめようともがく、確かな人間。
決して、捨てられても、蔑ろにされても良いモノではない――。
ニノンは、自分が祖母からもらったアンティークなビスクドールを、胸元で強く抱きしめた。
「……ああもう、いい加減にその批評じみたねめつけをやめなさいよ!
何? 私みたいな『失敗作』がサーヴァントだからって不服なわけ?」
すてねこオートマトンは、黙ったままじっと見つめてくるニノンの視線に耐えきれずに叫んだ。
バツの悪さをはねのけるように両手を上げて身を乗り出した彼女に、ニノンはゆっくり首を振る。
「……いや、あなたがわたしのサーヴァントなのは決まったことだし。今更変えるなんて許されないことだし。
それならせめて、わたしに相応しいサーヴァントらしく、身なりを整えるべきだし」
「……あれ? 受け入れてくれるんだ。意外」
「仕方ないからだし。さっさと手近なホテルでも探してシャワーをあなたに浴びせるべきだし」
「ああ……、そっか! この時代はまだ汚染されてない水が残ってるのよね。すごいわねぇ……」
ニノンの言葉に、すてねこオートマトンは一瞬きょとんとした後、パッとその表情を明るくする。
照れ隠しのように踵を返して歩き出そうとしていたニノンが、その声で振り向く。
まるで彼女のいた時代には、体を洗う水すらないかのような言い草だった。
「……何それ。フィクションの世紀末じゃあるまいし。水なんかたっぷりあるし」
「……いや。私のいた未来、2140年過ぎには、世界中が核戦争で汚染されていたみたいなの。
ここら辺、もう私には植え付けられた知識でしかないけど……。
そこで出た大量の死体をもとにネクロマンシー技術が台頭し、世界は本当に最終戦争を起こして、死に絶えた。
あとは少しのネクロマンサーと、生物兵器と、私たちのようなアンデッドだけしか動かない、終わりの先の、後日談の世界だった……」
彼女の言葉は次第に呟きのようになり、夜闇の図書館の中に薄れて消えていった。
気温が何度か下がったように思えた。
ニノンは何度か亡霊と会話した経験もあった。
だがその時には感じられなかった、氷水で心臓を絞られるような苦しさが、胸の内に湧いた。
「世が世なら、私も格好良くセイバーだったのかも知れないわ。それか、本の校正の経験を活かしてキャスターとか。
だけどあの後日談の世界は、何もかもが狂っていた。姉妹みんなが、狂気に堕ちそうな自分の心を支え合って。
自分が生きていた人間である証明を求めて、記憶のカケラを辿り、『未練』にすがった。
いくら狂っても、心に残った最後の潤いと温もりだけは手放さぬよう、耐え忍び、足掻いてきた。
狂った世界で散々狂いながら、自分を求めてもがいてきた。それが、私なのよ」
すてねこオートマトンは、そう訥々と語った。
ニノンには解った。彼女のいた時代は、途轍もなく過酷なものだったのだと。
自分とそう変わらぬ年頃の少女にはそれこそ、心のどこかを半壊でもさせてなければ耐えられないほどの荒廃した世界。
だから狂気の中でもがく彼女の姿勢は、本来狂化で曇るはずの彼女の精神へ、仮初にも思考を許す『宝具』になっていた。
ニノンは気づく。彼女がその脇に大切そうに、ボロボロになった熊のぬいぐるみを抱えていることに。
そんなわずかな心の拠り所だけを頼りに、姉妹とその狂気の中を戦い抜いてきた彼女は、間違いなく英霊だった。
そう、姉妹と――。
「ねぇ、バーサーカー……。あなたには、お姉ちゃんがいたの……?」
「ん……? まぁ、姉か妹かいまいちハッキリしないけど。私はポジション的に6人姉妹の真ん中あたりだったわねぇ。
うちの姉連中は頼り甲斐あって結構しっかりしてたわよ。お姉ちゃんってそういうもんでしょ」
「……わたしのお姉ちゃんは、そんな頼り甲斐ないし」
その言葉に、口調に明るさを戻していたバーサーカーは、じっとニノンの顔を覗き込む。
そしてふと得心したように笑みを深めた。
「な、何だし……」
「あー、なるほどなるほど。大方、お姉さんに魔術の腕で追い抜かされるのが不安ってわけか〜。
対抗か憧憬か……、まぁそういう適度な未練は遣り甲斐と上達のモトよ!」
朗らかに語られた言葉を耳にした瞬間、頭に血が逆流したようにニノンは感じた。
同じような指摘をかつて、不思議な牧師の亡霊から受けたときには湧かなかった感情だった。
「――わ、わかったような口を、聞くなッ!!」
口から火のような熱さが出た。
すてねこオートマトンが眼を見開く。
次の瞬間には、ニノンはその腕を大きく振るっていた。
「『我が前にラファエル』!!」
瞬間、渦を巻くように一帯の空気が収束し、ニノンの目の前にあったテーブルの脚が4本全て、鎌鼬のような円盤状の風の断層に切り裂かれていた。
僅か3文節の詠唱で発動されたその魔術は、その短さにそぐわぬ凄まじい威力を見せた。
テーブルの天板が、倒れた脚の上に落下し、載っていた本がばさばさと宙に舞う。
すてねこオートマトンが先程座っていた椅子の背までも、すっぱりと切断されている。
彼女自身は、もう一つ奥のテーブルの上に飛び退ってそれを躱しており、突然のマスターの暴挙に目を丸くしていた。
「あ、あっぶなぁ……! いきなり何すんのよ!?」
「わたしのサーヴァントならこれくらい躱せて当たり前。わたしがお姉ちゃんになんて追い抜かされるわけない。
……だからこれ以上無礼なこというと令呪使うし」
「何それ理不尽!!」
「下手に理性が残ってるせいでわたしに従わないサーヴァントなんて願い下げだし。
こうなったらわたしは絶対に聖杯をとって、お姉ちゃんより優秀な魔術師であることを証明してやるんだし!!」
「っかぁ〜、折角お姉ちゃんのように守ってやろうと思ってたのに、可愛くないヤツ!」
「うるさいし! そんなぬいぐるみ抱えてるバーサーカーのほうが子供だし!」
言い合いながら、小脇に抱えたぬいぐるみがニノンに指さされる。
すてねこオートマトンの顔は、死体だとは思えぬほど真っ赤になった。全身に廻っている赤い粘菌が、顔に集中してきてしまったらしい。
「な、なっ、良いじゃないこれは私の『たからもの』なのよ! アンタだって人形持ってて子供でしょ!?」
「ふっ、子供という方が子供なんだし」
「初めに言ったのはアンタじゃない!!」
「令呪」
「ぐぅ〜……!!」
じっとりと眼を坐らせるニノンの言葉に、すてねこオートマトンは歯噛みした。
その様子に、ニノンは勝ち誇ったように踏ん反り返り、肩を怒らせて図書館を抜けだそうとする。
「ほら、主従関係はわかったでしょ? 着いてきなさい、バーサーカー」
「……ちょっと待て。言うことは聞いてやるわ。ならせめて、私のことを『狂戦士(バーサーカー)』と呼ぶのはやめて」
ニノンが振り向くと、すてねこオートマトンは、崩れたテーブルから散乱してしまった本を拾い集めて、本棚に戻しているところだった。
彼女はそのまま、ニノンに無事な右眼を真っ直ぐに向けた。
「例え狂っていても、私は『オートマトン』と呼ばれたい。それが、姉妹の中で呼ばれていた、私の名前だから」
「……それ、一応あなたの真名じゃない。ステータス見た限り、強みも弱みも二極化したピーキーだし。
知ってるヤツがいたら、あなた弱点がバレるわよ……?」
「いや、知ってるヤツがいたら、その方がむしろ有り難いわ。私が今までやってきた功績が、無駄にならなかったってことだから。
それに私は、自分の記憶を取り戻したいのよ。聖杯を手にする前に手がかりでも掴めるなら、それに越したことはないわ」
彼女は手に取った最後の本を、愛おしそうに眺めて本棚へ戻す。
その大判の本の題には、『永い後日談のネクロニカ』と書かれていた。
「……本を出版するのって、大変なことなのよ。あの後日談の世界ではなおさら。
私たちがあの世界で敢行した本が、何の因果か、この世界の時間軸には存在している。
多くの人があの終末に気付いて、もう私たちのような狂人を作らぬ幸せな未来に変えてくれるのなら、これ以上のことはないから」
ニノンは努めて無表情を装いながら、その足を震わせていた。
自分の背負っているものの重さが、吹いて飛ぶようにすら思えた。
それでも彼女は唇を噛んで、見つめてくる赤い瞳と『おおあな』の貌を振り切った。
「……わたしがその程度のデメリットで脱落するマスターだと思ったら大間違いだし!!
いくらでも呼んでやるし、この『自動人形(オートマトン)』!!」
「はいはい。一応ありがとマスター……、って、ああと……」
「ニノン。わたしはニノン・ベアールだし。偉大なるおばあさまの血筋なんだし!」
「わかったよ。ありがとね、ニノン」
精一杯の大股で歩んでいたニノンの隣に、早くもすてねこオートマトンは追いついて、彼女に微笑みかけていた。
その呼び掛けが何故か、いないはずの姉の声に被った。
簡単なアンロックの魔術が勢い余って、非常口のドアノブがぼきりと折れてしまう。
ニノンは顔を真っ赤にして振り返り、すてねこオートマトンの体を奥に押し戻した。
「〜〜ッッ、あなたはわたしがホテルとってくるまで隠れて霊体化してるべきだし!!
着いてくるなし!! ズタボロの野良猫みたいな人形のくせに!!」
「はぁ〜!? ちょっと、何その言い草ァ!? おいちょっとこら、待ちなさいよ!!」
言い捨てるや否や、ニノンはゴシックロリータの裾をはためかせて、朝焼けの街に飛び出してしまう。
非常口に取り残されたすてねこオートマトンは、舌打ちと共に髪を掻き毟った。
「他のサーヴァントに狙われ……、ったく。ホント可愛くないわねぇ。何あれ。
ちょっと私ナメられすぎてるのかしら……。こりゃ少しは良いとこ見せてやんないとね……」
その呟きも聞こえぬ距離に走りながら、ニノンはしっかりとその胸に、祖母からもらった大切な人形を抱えていた。
ホテルをとったら、ニノンは自分の『人形』のために、コンビニで包帯を買ってきてやろうと、そう思って走った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【クラス】バーサーカー
【真名】すてねこオートマトン@永い後日談のネクロニカ
【属性】混沌・善(狂)
【パラメーター】
筋力:A 耐久:B++ 敏捷:C 魔力:E 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
狂化:D
筋力と耐久が上昇するが、言語機能が単純化し、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。
ただし、彼女は後述の宝具『未練(たからもの)』により、発狂を一時的に免れている。
彼女の思考における狂化の影響は、宝具『未練(たからもの)』の効果に準ずる。
【保有スキル】
無茶:-
種別:対人魔剣 最大捕捉:1人
肉体を酷使して破損させることで、その破損させた部位数に等しい、異なる軌道を描く複数の攻撃を全く同時に放つ。
相手が一つの攻撃を受け止めても、残る攻撃により四散させられる。
魔術を使わずにただ執念のみで第二魔法級の現象を起こす人の領域を超えた技ではあるが、代償として行使するごとに自分の肉体が破損していってしまう。
彼女たちドールにしか扱えぬ不完全な代物である。
死神:B
ネクロマンサーに植えつけられた知識・技術により、自身が『白兵攻撃武器』であると思ったものを、長年愛用した武器のようにDランク相当の宝具として扱うことができる。
例としては、肉切り包丁や釘バット、芝刈り機、スコップ、パイルバンカーなどがある。
宝具を手に取った場合は、元からDランク以上のランクならば従来のランクのまま扱える。
ただしあくまで扱えるだけで、他のサーヴァントが所持している状態の宝具の所有権を奪うことはできない。
銃火器などは明らかに『射撃攻撃武器』であるため扱いきれないし、戦闘機などももちろん扱えない。
戦闘においては同ランクの心眼(真)の効果を兼ねる。
災禍:A
自身の対人用の宝具・魔剣が対象にダメージを与えた際、その『結果』を対軍化させることができる。
縦横無尽かつ無差別に攻撃を行なうことで、その宝具・魔剣の性質は、
『種別:対軍宝具・魔剣 レンジ:1〜10(または元のレンジの長い方) 最大捕捉:最長レンジ×3人(または元の最大捕捉の多い方)』
に変化する。
因果を捻じ曲げ、最初に命中した攻撃結果をその場の相手全てに引き起こすスキルであるため、そもそも最初の一撃を命中させないか、範囲内から脱出していない限り、対象はこのスキルの被害を回避することができない。
ただしこのスキルは仮に範囲内に攻撃を当てたくない対象がいても必ず命中してしまう上、発動後は1ターン(約6分)の間敏捷が1ランク低下してしまう。
失敗作:A
攻撃時にのみ幸運が1ランク上昇する。
相対的に敵のST判定成功率が低下することで、攻撃の命中率及び追加効果の付与率が上がる。
ただし戦闘が1ターン(約6分)経過するごと、及び戦闘終了時に必ず、肉体か宝具の一箇所が負荷に耐え切れず破損してしまう。
戦闘のみを求めて作られたドールであるが故の性質である。
記憶のカケラ(図書館、ゲーム):D
TRPGのエラッタ作成をしていて思い出した記憶に基づく知識。
書籍、ゲームに逸話が利用されている宝具を目にした場合、それなりの確率で真名を看破できる。
【宝具】
『永い後日談(ネクロニカ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
ネクロマンシー技術で作られた、『すてねこオートマトン』の肉体そのもの。
少女の屍肉に血液代わりの粘菌コミュニティを廻らせて稼動する彼女の肉体は、痛覚をほとんど有さない。
またその一部を破壊されても、新たなパーツをくっつければそこに新たな粘菌コミュニティが形成されて損傷は修復される。
霊核である粘菌がわずかでも残っていれば、実体で身動きできぬほど完全解体されても、適切な修復と魔力による粘菌の補充で復活することができる。
これにより、ある程度彼女は自分の損傷を省みずに継戦することが可能。
『未練(たからもの)』
ランク:D 種別:結界宝具 レンジ:0 最大捕捉:6人
過去の記憶を失い、滅んだ世界で突然に目覚めてしまった彼女の精神をつなぎとめている心のよりどころ。
自分の大切にしているたからものの他、会話の通じる相手に深い感情を抱くことで、狂化に追い詰められた自身の精神を一時的に正気に保っておける。
現在彼女は下記のような未練を抱いており、これが多くなればなるほど、精神安定が図りやすくなる。
・ボロボロになった熊のぬいぐるみ:【依存】[発狂:幼児退行]
・ニノン・ベアール:【対抗】[発狂:過剰競争]
ただし、戦闘が1ターン経過するごと、または精神を侵すような攻撃・事態に直面した際に狂気はどんどんと溜まってゆき、ついには併記したような精神異常を来たし発狂してしまう。
これを防ぐには、積極的な会話や精神治癒魔術によって狂気の度合いを減らし、心を落ち着かせることしかない。
なお、原作における未練と発狂の種類を聖杯戦争用に再解釈するとだいたい以下のようになる。
・【嫌悪】[発狂:敵対認識]敵に避けられた攻撃を嫌悪の対象へ当てに行く。
・【独占】[発狂:独占衝動]ことあるごとに対象の肉体を損傷させる。
・【依存】[発狂:幼児退行]思考が幼くなり、敏捷が1ランク低下する。
・【執着】[発狂:追尾監視]戦闘時でもねめつけ続けるので、対象に狂気が増す。
・【恋心】[発狂:自傷行動]ことあるごとに自傷する。
・【対抗】[発狂:過剰競争]戦闘時に狂化のランクが1上昇し、魔力消費増大・凶暴化する。
・【友情】[発狂:共鳴依存]一段落ついたら友情の対象が損傷している部位数と同じになるだけ自分の肉体を損傷させる。
・【保護】[発狂:常時密着]対象のいるエリアへの移動を最優先で行う。
・【憧憬】[発狂:贋作妄想]対象のいるエリアに移動できない。また、対象が同じエリアにいるなら離れなければならない。
・【信頼】[発狂:疑心暗鬼]自分以外の味方全員にプレッシャーをかけて敏捷を1ランク下げる。
利用できる発狂状態も無くはないが、まかり間違ってマスター相手に発狂した場合ロクでもない効果もかなり並んでいる。
これらの精神効果は『未練』のランクと同じくDランクとして扱う。
『リミッター』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
彼女の身体機能を抑えている、頭部に埋め込まれたリミッター。
この宝具が破損していると、敏捷が1ランク上がる。
『おおあな』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1人
彼女の左目部分から後頭部にまで大きく開かれている風穴。
顔面への攻撃をこの穴で避けるなどして、自分の回避判定にボーナスを得ることができる。
『ほとけかずら』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
後日談の世界で生み出された変異植物であり、彼女の体に寄生・繁茂している。
思考によって自在に動き、相手の体にツタを絡めて動きを束縛するなど、多彩な戦術を採れる。
【weapon】
スキル『死神』により、現在のところ下記の2つの武装を宝具としているが、今後の状況により容易に替わりうる。
・『日本刀』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
与ダメージ時に対象の命中部位に切断判定を行う。
この効果はバッドステータス付与扱いなので、相手はST判定に失敗すると切断された部位の装備を全損する。
・『鉄球鎖』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
与ダメージ時に対象を転倒させる。サーヴァント相手の場合には相手の足を強制的に霊体化させて転倒させる。
この効果はバッドステータス付与扱いなので、受けるとしばらく立ち上がれない。
【人物背景】
核戦争によって人類文明と地球生態系が完全に崩壊した近未来を舞台に、生ける屍(ゾンビ)となってしまった少女たちの悲劇を描くSFホラーもののTRPG『永い後日談のネクロニカ』における、サンプルキャラクター6人姉妹の1人。
彼女たちはこの世界を支配する「ネクロマンサー」たちによって作り出された愛玩死体、通称「ドール」であり、自分の生前に関するほとんどの記憶が奪われている。
死体操作技術ネクロマンシーは、粘菌ナノマシンによって死体に統一意思を持たせ、そこへ「人格ダウンロード」を行なうことによってドールを作成する。
ネクロマンサーが彼女達に完全な記憶を取り戻させないのは、荒廃した世界とのギャップで精神が簡単に崩壊しないようにするためでもあるが、単に記憶の欠落に悶える姿を観たいという理由も大きい。
自分に完全服従しない「人間的」なアンデッドを作り出して、それの反応を見て楽しもうとしているわけだ。
ドールたちの目的は、滅んだ世界を旅しながら、自分たちの失われた過去を取り戻すことである。
すてねこオートマトンの容姿としては、アクアグレーのショートヘアに、中学校の制服と思しきプルオーバーのジャケットとスカートを身につけている。目の色は赤い。
生前はかなり可愛らしい見た目であっただろうと容易に想像できるが、おおあなの開いている顔面の左側は大きく肉や髪が抉れており、普段は気にしていないものの、ふとした時に恥ずかしくなってしまうことがあるようだ。
皮膚から生えているほとけかずらも決して見栄えのいいものではなく、その身体も服も、歴戦の返り血のような粘菌で薄汚れている。
名前に関する記憶も失われているため、彼女は姉妹間でも「オートマトンさん・君」などと呼ばれている。
製作者のネクロマンサーからは酷評されており、引用すると以下のように語られている。
『程度の低い自我しか持てなかった人形が、未だ狂わず彷徨っていたとはな。
戦うしか能のないクズめ。原始的な【日本刀】と【鉄球鎖】で、せいぜい踊り狂うがいい。【死神】を気取るもいい。
雑兵のゾンビどもには【災禍】というべきか? そうだな、戦力はたいしたものだ。
醜い【おおあな】とみっともなく生えた【ほとけかずら】で足掻くがいい。
【リミッター】を壊せば今以上の動きもできるだろう。
しかし、どうせ【無茶】の果てに、【失敗作】の醜さを露呈し、壊れ果てる。
戦う力は並以上でも、不完全な体はおまえの枷だ。欠かさず修復して、ここまでたどりついて見せるがいい。』
だが公式FAQにてツッコミ役と進行役を担う彼女の性格は、『程度の低い自我』などとはとても思えないほど快活である。
彼女曰くそのスタイルは「実用性重視よ! オートマトン的に考えて!」とのことらしい。
自分たちの世界をシステム化して遊べるようにするゲーム制作の過程だったので身が入ったのだろうか。
良識を保ちつつ、敵味方問わず容赦なく日本刀や鉄球鎖でツッコミを振るう彼女の存在は恐らくFAQに不可欠だったろう。
英霊の座には、停滞していた製品版エラッタ作成にこうして多大なる貢献をしたことで登ったものと思われる。
その際の知識と関連する記憶は潤沢にあるため、特にSF、ホラー系の宝具への見識は意外と多い。
もしかすると聖杯を手にせずとも戦いの過程で、何らかの既視感から自分の記憶を思い出すかも知れない。
【サーヴァントとしての願い】
自分の記憶と過去を取り戻す。
願わくは自分たちのいた核戦争の未来が、もう起こらないようにして欲しい。
【マスター】
ニノン・ベアール@KOF MAXIMUM IMPACTシリーズ
【マスターとしての願い】
自分が姉より優れた魔術師であることを証明する。
【weapon】
黒魔術+中国拳法を格闘スタイルとする。
『KOF MAXIMUM IMPACT 2』及び『KOF MAXIMUM IMPACT Regulation "A"』の技は全て使用できる。
【人物背景】
ローマよりも古いケルトの系譜に連なる、ドルイドの血を引く純然たる魔術師の生まれ。
魔術は姉、ミニョン・ベアールと共に祖母から教え込まれたもので、大切にしている人形も祖母から貰ったもの。
魔術は人を幸せにするためにあると主張する姉に対し、純然たる力でしかないと考えている。
そのため自分の気の向くままに魔術を使う事を躊躇わない。
幼くもリアリストかつ皮肉屋な性格。語尾に「〜だし」「〜し」をつけるのが口癖。
キャッチコピーは「悪魔と踊る少女」。
出来が悪い上に情けない姉を見下しており、毒舌で「姉いじり」することを日常としている。
だが内心では、そんな姉にいつか追い抜かされてしまうのではないかという漠然とした不安を抱いており、それを指摘されることもある。
実際の姉妹仲はそれほど悪くなく、ただ愛情が歪んでいるだけらしい。
【能力・技能】
姉の白魔術とは対照的に黒魔術を使う。
失敗ばかり繰り返している姉と違って魔力の扱いには長けており(人形を操る術も身につけている)、実力は相当高い方である。
姉と同様、多少は中国拳法も心得ているが、「自分らはあくまで魔女であって格闘家ではない」という思想を持つ。
悪魔召喚や呪詛も趣味としている。
少なくとも風、火、空の三重属性を有していると思われ、その魔術回路の本数、鍛錬の度合いもかなりのもの。
また、伝授された魔術刻印を格闘用にアレンジしているらしく、普通の魔術師に比べかなり高速で強力な魔術を行使できる。
雷光を放つガンド、隕石の投影など、その応用は多岐にわたる。
本来ならば大魔術レベルの代物の空間転移であるが、彼女は固有結界の限定展開と同様の手法で、自身とその付属物のみを十数メートルの短距離に転移させる技『リリスの誘惑』を編み出している。
詠唱も『ル・オーラム・エイメン』の3小節と、かなり短い。
この他、彼女の行使する魔術の詠唱は基本的に『我が〜に○○』という3文節の構造をとっている。
強力な攻撃魔術であっても、『イヨ・イヨ・ザバティ・ラキラキ』、『ザーザース・ザーザース・ナースタナーダー・ザーザース』などと4小節に収めており、その時間対効果は破格のものである。
【基本戦術、方針、運用法】
バーサーカーは単純な近接攻撃能力ではかなり高い実力を有しており、スキル『失敗作』や『無茶』、『ほとけかずら』の効果で、致命傷となる攻撃を確実に当て、如何なるサーヴァント相手にも一撃必殺を狙うことができる。
その上多数の敵に囲まれても、スキル『災禍』によって一帯の敵を瞬時に叩きのめすことができるだろう。『無茶』と『災禍』を組み合わせれば、一撃必殺かつ回避不能の全体攻撃を繰り出すことも。
戦いが長引くと肉体的にも精神的にも自壊していくが、『永い後日談』の効果によって痛覚はほとんどなく、肉体の大半が破壊されても修復可能なので、多少の被害は無視して早急に敵を仕留めにいくことが可能。
やろうと思えば、『死神』によってありあわせの武器を宝具とし、『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』によってゾンビボムよろしく自分の腕ごと敵陣を爆破、という離れ業も行える。
スキルが良いバランスで噛み合っており、ネクロマンサーの評価通り、戦闘能力は大したものである。
問題としては、バーサーカー単独では中距離以遠の相手に対して全く攻め手がないところがある。
また『おおあな』や『ほとけかずら』による回避能力はあれど、バーサーカー自身の防御力は物理的にも魔術的にもほとんど無きに等しい。
特に精神攻撃を受けて発狂してしまった場合のデメリットは、通常の『狂化』によって引き起こされる思考の単純化とは全く異なる場合がほとんどのため、対処が必須である。
相性の悪い相手に対しては、マスターが率先して補助することが望ましいだろう。
一般的なバーサーカーよりは消費魔力が少なめであるとはいえ、戦闘ごとに必ずどこかが破損してしまうバーサーカーの修復にも、マスターの手と魔力は不可欠である。
このため運用としては、初めは魔力の補充できる陣地を探しつつ情報収集に徹し、状況がわかり次第相手の直近にバーサーカーを乗り込ませて速攻を決めるのが良いだろう。
基本的に聖杯を求めて戦う方針だが、両者ともに聖杯は手段に過ぎないため、目的が達成されるならば他の者と共闘したり、聖杯自体は他者に譲るなり壊すなりする可能性もある。
以上で投下終了です。
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ 感想は日曜の深夜、あるいは月曜に投下すると言ったな。
rミl ,´_-・- l-・-、シ
{6〈ヽ、 、_|_, イ 「\
ヾ| ( ,-ー-、) | ヽ ) /7
\ `- ⌒-´ノ / / 〈 /
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/\_ _ノ\ (ア E) ||
(_Y ヽノ )イ⌒ニ〈 < / |
( )____/ `ー-ー´\ \ / /
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ
rミi _-・- l-・-、v
{6〈`┬ 、_」_ イ あれは嘘だ。
ヾ| ( ,-ー-、) |
\ `- ⌒-´ノ 、 ' ’
/i\ __ノ - ∩_____ ’
/\_ _ノ\ ( イ___ヨ - パッ
(_Y ヽノ )イ⌒ニ ,ノ
( )____/ `ー-ー´
ー-',..-'ー.-,ー!..ー,,-._ー.,-ー.,-ー-...,,____
l | i i ''i,,_
もう少し待って下さい。
それと、まもなく締め切りですが
SS自体は完成しているがステータスが間に合いそうにない、という場合には先に本文だけ投下してくださっても構いません。
皆様投下お疲れ様です
私も投下させてもらいます
夕焼けが校舎を赤く染める夕暮れ時。
ある者は学校に残り部活動に勤しみ、またある者は用もなく教室で談笑するもの、図書室で試験のために勉強するもの。
それぞれの生徒が思い思いに放課後を過ごす。
「またね〜良子ちゃん〜」
校門前でツインテールの少女が良子に大きく手を振りながら別れを告げる。
良子も控えめに手を振りながら別れを告げ、そのまま家路につくために歩を進める。
佐藤良子はこの街に住む女子高生であり彼女を一言で表現すれば『普通』である。
普通の交友関係、普通の学校生活、良くも悪くも目立たないそんな少女
良子もこの現状に満足している。
特に寄り道をすることなく帰宅した良子は後に自分の部屋に向かうや否やベッドに身を投げうつぶせになり枕に顔を埋めた。
現状に満足していてが、最近は不満があるといえばある。
それはある記憶が思い出せないこと。
自分の学校生活には傍には常に誰かが居た気がする。それはとても大事な人。
でもそのこと以外はまるで思い出せない。
思い出そうとして記憶を掘り起こすが全く成果は出ない。
それどころか思い出せないことでイライラが募っている。
「考えるのは一旦やめよう……」
自分に言い聞かせるように独り言をつぶやいた良子はとりあえず制服のブレザーを脱いだ。
家に帰ったら制服を脱ぐというのは普通の学生なら当然の行動と言える
良子は制服を脱ぎそれをしまう為にクローゼットに向かい扉を開ける。
扉を開けると中には冬服、夏服の制服の上下やワイシャツがハンガーにかけられ、私服の数々が綺麗に畳まれている。ごく普通のクローゼット
制服の上着をハンガーにかけクローゼットにしまおうとするがそこであるものに目を奪われた。
良子の全身を包めるような大きな青いローブと先端には様々な機械がついたやたら背の高い杖。
その二つがクローゼットの隅に乱雑に置かれていた。
それは明らかにクローゼットの中で異質な存在感を示しており、その存在感を無視できなかったのか良子は青いローブに手を伸ばす。
そしてそれに振れた瞬間に頭の中に洪水のように情報が押し寄せてきた。
聖杯戦争、偽りの記憶、本当の記憶、妄想戦士
良子は青いローブと杖を胸に抱え涙を流しその場に崩れ落ちた。
「泣き止んだか」
突然後ろから声をかけられた良子は即座に振り返るとそこには見知らぬ男が立っていた。
年齢は30代前半といったところだろう。
服装はシャツとベスト、その上にコートを羽織っている茶髪のセミロング、顎鬚、容姿は二枚目と言っていいほど整っている。
どこぞのホストのような印象を受ける。
あなたは誰?いつどうやってこの部屋に入ったの?
良子の頭の中で様々な疑問が巡るなか涙声で男に問う。
「……あなたが私のサーヴァント?」
「そうだ。俺はアントレプレナーのサーヴァント。エクストラクラスだ」
アントレプレナーは泣き崩れしゃがみこんでいた良子と視線をあわせるように片膝立ちでしゃがみこむ。
「マスター、君の名前は?」
「佐藤……良子……」
「良子と呼ばせてもらう。良子、君の願いはなんだ?」
良子はその問いに即答できず俯きながら沈黙する。
それから数秒、あるいは数十秒間良子は言葉を発することはなく部屋は沈黙が場を支配していた。
その間アントレプレナーは良子の目をずっと見続ける。
しばらくして良子は息を吸い込んだ後顔を上げアントレプレナーの目を見据えしゃべり始めた。
「私は……一郎と〝普通〟の生活がしたい……」
この言葉を聞き、アントレプレナーは少しばかり驚いた表情を見せた。
すべての願いが叶えられる聖杯に込める願いが普通の生活を送ること。
この予想外と言える答えを聞いてアントレプレナーは良子に興味を抱き始めていた。
「〝普通〟とはなんだ?」
「わからない。でも一郎が〝普通〟のやりかたを教えてくれる。私は一郎と〝普通〟の生活を送りたい。」
佐藤良子は少し前までは普通ではなかった。
―――妄想戦士――――
それはアニメや漫画などのフィクションの憧れ、自分でフィクションようなの設定を考え現実世界でそれを演じる人物の総称である。
一種のごっこ遊びと考えていいだろう。
普通の人ならごっこ遊びは幼少期で終わるはず。
だが妄想戦士は幼少期どころか思春期を迎えても終わらない。
フィクションの英雄になりきることで現実の自分を否定したいのか、また人と違うことをしたいという顕示欲なのか。
他にも理由はあるが妄想戦士は仮初の設定を身に纏い現実生活を生きていく。
佐藤良子も妄想戦士だった。
だが他の妄想戦士とは別格だった。
妄想戦士には二つの種別があると言われている。
見栄派と本気派。
良子の周りにも妄想戦士は居たが、大抵は見栄派だった。
見栄派の妄想戦士は自分がフィクションの英雄ではなく、ただの高校生であると自覚しており、現実とフィクションの線引きが有る程度は明確に区分できている。
自己顕示欲を満たすためにやっているものが大半だ。
しかし良子は本気派だった。
本気派は現実とフィクションの区別がひどく曖昧である本当に自分がフィクションの人物であると信じ込んでいる。
それ故に設定の作りこみ、設定のクオリティー、なりきり具合が明らかに見栄派とは違っていた。
他の妄想戦士が遊びとするなら、佐藤良子は仕事、いや人生そのものといってよいかも知れない。
その設定への没入具合が佐藤良子にオーラを纏わせる。
有る者が見れば現実に居るはずがない魔女が居るのではと思わせるほどに。
しかし良子ほどの妄想戦士は中々おらず、世間にとっては異端な存在と言っていいだろう。
そして異端を許さない世間の狭量さが佐藤良子を追い詰める。
追い詰められた良子は学校の屋上で儀式をおこない、儀式終了後に身を投げ出すことで狭量な世界から自分の世界へ転移しようとした。
しかしその儀式は良子の友人であり、最愛の人物である佐藤一郎の行動によって中断される。
そして屋上で誓い合った。世界の狭量さに押しつぶされないように二人で歩いていくことを。
すべてを思い出した良子は気づいていしまった。
この街での生活は確かに自分が望み、一郎が教えてくれるような〝普通〟の生活だったのかもしれない。
だがここには一郎がいない。
良子が望む〝普通〟は一郎と共に歩むことに意味が有る。
そして一郎が居ない〝普通〟の生活など何も意味がないことに、
故に良子は聖杯に願う。
この偽りの地から脱出し一郎と〝普通〟の生活を送ることを。
「普通か」
アントレプレナーを見据える良子の目にはこの強い決意が宿っているのを感じ、生前のことを思い出していた。
初めて会ったコンビニの店先で自分に普通の生活を送りたいと語気を荒げながら語り、最後には自分と雌雄を決した青年のことを。
始めてみた見た時は金融街では間違いなく生き残れないと思っていた。
だが自分の予想を裏切り、数々の戦いを勝ち抜き、力をつけて自分と戦えるほどに成長していた。
良子もあの余賀公麿のように案外底力を見せるかもしれないと思い始めていた。
突如良子は胸に抱えていた青いローブを身に纏い、杖を手に取って立ち上がる。
『リサーチャーは≪中央集積機関≫との協議の結果、聖杯取得をSランクの任務と決定、竜端子探索の任務を一時凍結し、聖杯取得を最優先事項とする』
「何を言い出す?」
『リサーチャーのスレイブであるアントレプレナーも聖杯取得の任に就かなければならない。誓え!その頭脳も!その魂も!その血も!すべてをリサーチャーに捧げると!』
アントレプレナーは良子の豹変に驚いていた。
まるで創作物の登場人物が喋るような口調もさることながら雰囲気がまるで別人だった。
あの涙を零していた少女はアントレプレナーの目の前にはいない。
その存在感は生前出会った大物と呼ばれる人物と比較すればさすがに見劣るが、良子位の年頃の少女では群を抜いていると言ってよいだろう。
「了解した。マスターにすべてを捧げよう」
アントレプレナーは演技がかった動作で返答する。
令呪を使用しない誓いなど何も意味を持たないが、仮に断って良子との関係に軋轢が生じることがあれば今後信頼関係の構築に支障が生じる可能性がある。
『ただ今よりリサーチャーがアントレプレナーに波長同調施術をおこなう。これは聖杯戦争に勝ち抜くためには極めて重要なことだ。そこの寝具に腰をかけて目を閉ざせ』
アントレプレナーは良子の指示通りにベッドに腰掛け目を閉じた。
良子には魔力がないことは分かっており、施術などの魔術的行動はできないはず。
では何をしようとしているのかを考えていたがその思考は途切れる。
良子は両手でアントレプレナーの顔を抑え、自分の唇で相手の唇を塞いでいた。
「んまっ、む……」
数秒口づけし、離れ際に少女無しからぬ色気を発しながら良子はアントレプレナーから離れる。
『施術は成功した。これでリサーチャーとアントレプレナーとの波長同調が容易になる』
口づけの際に息を止めていたせいか、それとも別の要因があるのか良子の息は弾み、顔も赤みを帯びていた。
「今の行動に意味はあるのか?」
一方アントレプレナーは顔色一つ変えていない。
『施術は成功した』
「違うキスのことだ。魔力がないマスターに施術などはできない」
『否。波長同調の儀式は成功した。そしてアントレプレナーの見解には相違がある。リサーチャーが所属する≪中央集積機関≫は第一から第五術式の魔術を使用できなければ所属できない。今実行したのは第五術式のものだ
恐らくリサーチャーの≪マナ≫はアントレプレナーには感知できないものであると推測する』
「そうか……」
いちおうは返事をしたが、あきらかに嘘であることをわかる。
アントレプレナーは良子のことを計りかねていた。
良子に魔力がないのは断言できる。
ならば何故魔力がある嘘を言うのか?そしてあの≪中央集積機関≫や≪マナ≫などの妄言は何か?
そして何故キスをしたのか?
今現在で良子の思考パターンがまったく読めないが、アントレプレナーは良子の挙動を注視した。
良子を観察することでその人物像を把握する。
聖杯戦争を勝ち抜くためにマスターである佐藤良子の分析は必要不可欠である。
(これでいい……)
アントレプレナーはキスをしたことに意味を見いだせていなかったが良子には確かな意味があった。
この行為は普通を捨てるという決意表明だった。
普通の人間はキスを友愛、愛情など大切な人物に捧げるものとして位置付ける。
そして≪リサーチャー≫であった頃には分からなかったが今ではその行為の意味を理解している。
だから一郎に救われたあの日の夜に一郎にキスを捧げた。
感謝、愛情、友愛、様々な意味を込めて
しかしアントレプレナーにそのような感情は一切抱いていない。
そんな相手にキスを捧げた意味は?
それは普通を捨てるという決意表明だった。
良子は聖杯戦争についての記憶を知るにつれてある結論に達した。
――――普通では生き残れない――――
神話の英雄がサーヴァントとして現界し戦う聖杯戦争。そしてマスターも魔術師。
その主従が戦うのであればそれはまさに命がけ。
しかし良子は≪中央集積機関≫に所属する≪リサーチャー≫でもないただの一般人。
力もなければ命を絶つ覚悟もなければ捨てる覚悟もない。
故に佐藤良子は捨てた。
キスを捧げることで再び異端である≪リサーチャー≫となる。
佐藤良子ではなく≪リサーチャー≫として聖杯戦争を戦い抜くことを心の中で誓う。
何故なら佐藤良子にはできなくても≪リサーチャー≫なら目的のために命を捨てられる。≪リサーチャー≫なら目的の為なら命を絶つことが出来るから。
良子は一郎が脱ぎ捨ててくれた≪リサーチャー≫という柔らかいローブのような嘘を再び纏う。
そうしなければ死の恐怖、他の参加者の命を絶つことへの罪悪感。そして佐藤一郎に二度と会えない恐怖で押しつぶされてしまうから。
『施術を実行したことにより幾分かのマナを消費した。リサーチャーは太陽光に含まれる第一元素をマナに変換する作業を行う』
「外にでるということか?」
『厳密には違うがその理解で充分。なおこの作業はひとりで行うのが望ましい』
「わかった」
(一人にしろということか)
アントレプレナーは良子の言葉を再変換してみたがニュアンスは合っていたようだ。
今後も良子の回りくどい言動をいちいち再変換しなければならない手間を想像とし、少しだけ億劫な気分になりながらその後ろ姿を目で追う。
すると良子は自分が着ているローブの裾に足をとられたのか転倒しそうになっていた。
それを見たアントレプレナーは即座に腰を掛けていたベッドから立ち上がり良子の元へ駆け寄り身体を抱きかかえた。
「っと、大丈夫か?」
『問題ない……』
問題ないと良子は言うがアントレプレナーの腕を触る手は震え、特に体を動かしたわけでもないのに息は乱れていた。
「……君は疲れているようだ。今はベッドで休んだ方がいい」
『その提案を受け入れる』
良子はアントレプレナーの提案を一旦は拒否しようとした。
しかし予想以上に身体が言うことを聞かない。
偽りの記憶。本来の記憶。サーヴァントなど様々な記憶を一度に思い出した精神的疲労。
そして聖杯戦争というフィクションのような殺し合いを参加しなければならないという現実。
あの世界の狭量さに絶望していた自分ならこのようなフィクションのような出来事で命を落とせれば本望だっただろう。
しかし今は死に、佐藤一郎にもう二度と会えなくなる可能性に恐怖を感じていた。
それらが良子の精神を無意識に蝕み。身体にも変調をきたしていた。
良子は提案を受け入れたすぐにベッドの上に横になる。そしてそうかからないうちに規則正しい寝息をたてはじめる。
(予想以上に無理をしているようだな)
アントレプレナーは良子の身体の変調をみて、良子の精神状況をおおまかに分析できていた。
良子の演劇めいた態度や動作は一種の二重人格的なものだろう。
聖杯戦争が始まれば、通常ではありえないほどのストレスがかかる。
普段の自分ならストレスで壊れてしまう。ならば別の人格を演じることで本来の自分が感じるストレスを軽減させようとしていると推測した。
恐らく魔術師ではない良子はこの聖杯戦争の正規の参加者ではないのだろう。
どのような思惑があるかわからないが完全に巻き込まれた形だ。
勝ち抜けばどんな願いが叶えるといえど、いきなり殺し合いの舞台に巻き込まれれば普通の人間なら自暴自棄になってもおかしくない。
だが良子はとりあえず自分の精神に折り合いをつけながらこの聖杯戦争を戦う決意をした。
しかしその決意は非常に危ういものである。
良子は偽りの自分を演じることで精神を安定させているがその均衡はいつ敗れるかわからない。
そしてアントレプレナーは良子の身体を抱きかかえた時の感触を思い出していた。
女子高校生の成長度合いはわからないが明らかに華奢な部類だろう。
その華奢さから存在自体幽かなような気もしてくる。
その感触は妹の存在を思い出させる
アントレプレナーには妹がいた。名前は貴子
貴子は難病を患っており、その病気を治すには権威である医者が居たがその医者は遠い異国の地にいた。
手術失敗のリスク。妹を遠い地に搬送することによる容体悪化のリスク。
そのリスクを天秤にかけても賭ける価値があると思っていた。
しかしアントレプレナーの周りの環境の変化により経済状況の悪化。貴子の容体の悪化したことにより手術は中止になった。
アントレプレナーは落胆したが、貴子は何故か安堵していた。
「ほっとした。日本から離れたくなかったから。今日の次は明日。明日の次は一週間。当たり前に次が思っているでしょ。あたしには今日がすべてなの。今日が永遠に続けばいいのに。兄さんにはわからないかもね……」
その言葉がアントレプレナーと貴子が交わした最後の言葉。
妹の意識は戻ることは無かった
アントレプレナーは後悔していた。妹の未来を作るどころか、現在すら守れなかった当時の自分の無力さに。
聖杯に賭ける願いは貴子の身体が治る未来を作ること。
それが何もできなかった自分ができる罪滅ぼしだから。
少女は歩むはずだった現在を取り戻すために。
青年は無かったはずの未来を得るために
二人の戦いが始まる。
【クラス】
アントレプレナー
【真名】
三國総一郎@C THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL
【パラメーター】
筋力E(D) 耐久E 敏捷E(D) 魔力E 幸運D 宝具EX
【属性】
善・秩序
【クラススキル】
経営:A
金を稼ぐ能力。元手が増えれば増えるほど稼げる金額は大きくなる。
いくつもの企業を運営し、国の経済を支えた逸話はAランクに値する
【保有スキル】
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の補足、動体視力の向上。ランクが高くなれば透視
未来視も可能。三國は遠視のみ。
自己分析:B
己を知り尽くし、どのような状況でも的確な行動ができる。
行動制限、精神干渉を受けても影響が少ない。
他者分析:B
自己を正確に測れればそれを計りに他人を計れるという信念がスキル化
一度戦闘を見たサーヴァントと戦う時は回避率、命中率が上がる。
ダイレクト:
宝具展開時限定。ディール中ダイレクト攻撃ができる
【宝具】
『金融街にようこそ(オープンディール)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:2
アントレプレナーがかつてすべてを賭けて戦い続けた金融街の舞台が心象風景として形になり固有結界となった宝具。この宝具の発動は金融街を作った〝あの方〟と呼ばれる神と呼ばれるような存在の助力を借りているので魔力消費は極端に低い
アントレプレナーの目視できる相手をこの結界に呼び込み、金融街と似たルールでディールを強制的におこなわせることができる。
呼ばれたものがマスターであればそのサーヴァントを、サーヴァントであればマスターを強制的に呼び込む。
この宝具発動は一日三回と制限が設けられている。
またこの宝具発動時は筋力、敏捷がワンランク上がる。
ルール
主従の魔力や状態などを加味した総合的な数値と所有金銭を足したものを総資産としてその増減率を競う。制限時間は666秒
自分のサーヴァントの攻撃が相手マスターに当たれば、その攻撃を数値化した倍の数値分、相手マスターの総資産が減る。攻撃を外せば、その攻撃を数値化分の総資産が減る。
通常の攻撃、又は宝具を使った攻撃に自分の総資産から資産を引き出し上乗せすることにより威力を上げることができる。
自分のサーヴァントが相手のサーヴァントにダメージを当てても相手の総資産は減らない。
ただしサーヴァントが過度なダメージを受ければディール内で行動不能になる。
勝敗は相手を総資産以上のダメージを与えるか、ディールの制限時間内終了時での資産増加率が高いほうが勝者になる。
※増加率の算出方法は(<ディール後の総資産>-<ディール前の総資産>)÷<ディール前の総資産>×100
ディールで破産したマスターとサーヴァントは即消滅する。
ディール後
ディールに勝ったマスターとサーヴァントは負けたマスターとサーヴァントが消費した総資産を受け取れる(総資産を魔力として変換が可能。これによりディール前にマスターの魔力消費が(大)でもディール勝つことにより魔力が回復し、魔力消費(中)の状態になる)魔力が満タンであれば所有金銭が増える
負けた場合は負けた主従の未来が失われ、現実が書き換わる。負けた額によって失われる未来は大きい。
(負けたことによって住んでいる家が火事で全焼する。サーヴァントのステータスが下がるなど様々な不利益を被る。但しアントレプレナーが消滅した場合は書き換えられた未来は元通りになる)
ディールにおいてサーヴァントは金融街のアセットと同じようにシールドを張ることができる。(ある程度の攻撃は防げるが、強力な攻撃はふせげない)
マスターは金融街のアントレと同じようにダイレクト攻撃が可能になる
ダイレクトは主従の資産を武器に変え攻める攻撃。
投資する金額が多くなるほど武器は大きくなり重くなる。
『我が未来(アセット)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
『金融街にようこそ(オープンディール)』発動時においてだけ限定的に発動できる宝具。
アントレプレナーが金融街で共に戦ったアセットを召喚できる。
アセットの基本能力
アセットはシールドを張ることができる。(ある程度の攻撃は防げるが、強力な攻撃はふせげない)
アセットはフレーションと呼ばれる特殊な攻撃ができる。
ミクロ(小)コストは十万以上、威力が小さい
メゾ(中)コストは百万以上、攻撃や相手の妨害など様々な効果がある
マクロ(大)コストは千万以上、一度のディールで発動できる回数が決まっている。
フレーションはアントレプレナー又はマスターの視界に居ないと発動できない
以下の三体を召喚できる
カカズズ
固有メゾフレーション:ホワイトナイト
原則的に一体のアセットしか使用できないがホワイトナイトを使うことでもう一体のアセットを召喚できる。
オーロール
固有メゾフレーション:スリーピングビューティー
顔面から光線を発射し、組み付いて相手のエネルギーを吸い取り無力化する
Q
固有メゾフレーション:カニバリゼーション
空間を削り取り相手を飲み込む。この力を利用して瞬時に場所を移動することや、相手の攻撃を無力化することができる
固有マクロフレーション:エコノミックブロッケード
相手の動きを完全に止めることが出来る。ただしコストが莫大にかかる。
Qはアントレプレナーまたはマスターの視界にいなくても勝手にフレーションを発動する
【人物背景】
セミロングの髪と顎鬚を持つ男。複数の企業を経営している他、大量の国債を買い取り日本を支える財界の重要人物。
最も名声と実力を持つアントレとして金融街を必要悪と考え、現実世界と金融街の共存を図っている。
大会社の経営者である父親の匡文から後継者に選ばれていたため、大学時代に目指していたロックミュージシャンの道を諦めさせられる。更に父親が会社の資金繰りを優先させたために、病床にあった妹の貴子)が多額な費用を必要とする治療を受けられずに植物状態に陥ってしまい、父親に失望。その直後に真坂木に金融街に招待され、ディールで得た金で父親の会社を買収している。
貴子の境遇と最後の言葉から現在を守るために未来を軽視する側面がある。
【サーヴァントとしての願い】
貴子の身体が完治する未来をつくること
【基本戦術、方針、運用法】
弱い。戦闘能力は最弱候補。対魔力もないので魔術師、サーヴァントにダメージが与えられる強いマスターがいれば戦闘で負けるだろう。
とにかく金が生命線。初期はスキル経営Aを生かして金策に走り総資産を増すべし。
でもそれだけではサーヴァントを破産させられる総資産は得られないので破産させられる危険があるがディールを仕掛けて総資産を増やそう。ただ三國と良子の魔力はほぼ0なので相当額の総資産が無ければ他のサーヴァントを一回のディールで破産させることはできないだろう。
【マスター】
佐藤良子@AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜
【weapon】
自分で作った機械杖
【能力・技能】
直接的戦闘能力、体力は皆無。
色々と器用でクオリティーが高い声帯模写ができたり、遠隔操作で爆発する爆竹を作ったり、ピッキングもできる。
一般人なら気づかれず尾行可能、逆に尾行をまくことが出来る。
【人物背景】
妄想戦士、所謂厨二病や邪気眼と呼ばれる人種だった少女。
感情の起伏が乏しく、どこか浮世離れしている。またクラスの屈強な男子に恫喝されても一歩も引くことなく立ち向かう胆力の持ち主。
しかしそれはリサーチャーになりきっている状態だけであり、
本来はいじめられれば心は傷つく普通で繊細な少女。
箸が上手く使えないなど一般常識が疎い。
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を勝ち抜き現実に帰還し、佐藤一郎と〝普通の生活〟を共に過ごす
投下終了です
>>435
>>4 にあるとおり05/01が締め切りということでよろしいでしょうか?
その点について私も一つ
仮に予定通り5月1日が〆切であると仮定して
5月1日0時(つまり4月30日24時)〆切でしょうか
それとも5月1日24時(つまり5月2日0時)〆切でしょうか
.>>445-446
5月1日24時(つまり5月2日0時)を〆切とします。
投下します。
「――天才っていうのは孤独らしいんだ。あたしみたいな凡人にはわからないけれどさ、その有り様は脆くて儚いらしい」
「まあ、その通りかな」
「否定しないの?」
「嘘を言っても仕方ないじゃない」
「そんで、結局何が言いたい訳よ? 自分は天才だって言いたいの?」
「別に。それに、私は天才じゃないから」
透き通った青の空に手を伸ばす。
華奢な右手。誰かの手を引くことすら叶わない右手。大切なモノを手放してしまった右手。
それが、山田なぎさの右手。
「はぁ、こんなとこでも学校に行かなくちゃいけないなんて」
「戦争が始まれば学校に通う余裕なんてなくなるし、今の内だけだよ」
「通った所で意味なんて無いのに。真面目なんだね、アサシンは」
「マスターがそうあるべきだと思ったことを言っただけ」
「……そのマスター呼ばわりむず痒くてなんか落ち着かないんだけど。ちゃんと名前で呼んでくれない?」
そんな右手を天高く伸ばし、ぎゅっと握りしめる。
手を伸ばせば、どこまでも吸い込まれていきそうな錯覚さえ覚えてしまう程に、気持ちのいい青だった。
そんな青い空が見える屋上で、山田なぎさと従者であるアサシンは空を見上げていた。
今にも落ちてきそうな青空に、焦がれていた。
「その必要性は見受けられないと思うけど。第一、私達も利害が一致しているから協力しているだけ」
さくり、と袋に詰められたクッキーを齧るアサシンの双眸に、なぎさは映っていない。
黒のセーラー服に身を包んだ小柄な少女。セミロングの黒髪に可愛らしい顔つき。
けれど、纏う雰囲気は退廃的で何処か危なっかしい。
アサシンとして現界した少女――クロメにとって、山田なぎさの価値など、お菓子より少し下なぐらいだ。
「それ以上でもそれ以下でもない。仲良く話そうだなんて、求めてはいないでしょ」
なぎさ達がいる殺風景な屋上のように、クロメの心象風景は乾いている。
斬るか斬られるか。言ってしまえば、マスターとの関係だって令呪がなければ何の意味を成さない。
「……マスターの御機嫌を取ろうだなんて考えてないんだね」
「そんなつまらないことに拘る人だと思ってないから」
空の上に在る太陽はあんなにも熱を発しているというのに。
滾る橙色の球体と比較して、クロメの表情には熱がない。
どうにでもなれといった風で、覇気が欠けている。
口元からは揺蕩った息は失望か。
傍から見ても何の感情も示していない顔つきは冷たく、なぎさを強張らせる。
「やっぱり、不思議でならない。マスター、貴方は戦いには全く向いていないよ。
至って普通の人間だし、面白みもないし、何よりも――血の匂いがしない」
ずけずけと気にしていることをツッコんでくるクロメは、なぎさからしてみると、ムカつく以外の感情が湧き上がらなかった。
思ったことはそのまま口に出してイライラさせ、こちらの思惑など知ったことではない。
「だからなんだって」
「はっきり言おうか? 戦い、やめなよ。このまま続けた所で後悔するのが関の山。
もう、どうしようもないぐらいに堕ちた私ならともかく、マスターが立っている場所はまだ戻れる境界線の上」
なぎさの意志はにべもなく斬り捨てられる。
舌打ちをして、憮然とした表情を作っても全く気圧されていない。
このサーヴァントはいつだって自分に対してストレートに物を言ってくる。
主従の間柄なんて欠片も考えてないし、敬意なんてものはどっかに置いてきてしまったようだ。
「――戻りなよ、甘い甘い世界に。日常は貴方を歓迎してくれるよ?」
だけど。知ったことかよ。
その言葉はなぎさを怒りで滾らせるには十分だった。
「断る、あたしは望んでここに立っているんだ」
小馬鹿にした顔つで自分を見つめてくるクロメに対して、なぎさは口汚い言葉で否定する。
当然だ、クソッタレだ、ボケ野郎だ。
なぎさは皮肉げに口を歪めて嘲笑うポーズを取りながら、言葉の弾丸を撃ち続ける。
「今更だ、今更なんだ。何が日常だ、いるかそんなもん。あたしの日常はとっくに粉々に砕かれてるんだ。
奇跡が舞い込んでこない限り、もうどうしようもないぐらい……!」
テンプレートをなぞった日常は、もういらない。
空想的弾丸を込めて、撃ち放て。
眼前の現実を否定する為にも、なぎさは言い返さなくてはならない。
「だから、願うしかないんだ」
「そこまでして願う価値があるの?」
「あるから、ここにいる。そうでないと、あたしは一歩も進めない」
なぎさの中に今も残る弾丸を放った海野藻屑は、言ってしまえば友人――気色悪い言葉ではあるがそのようなカテゴリーに入れられてもおかしくはないだろう。
何てことはないほんの数ヶ月程度の関係だった。
学校で同じクラスだった。たまたま近くの席にいた。
何故か自分に纏わり付いて来て、帰り道が途中まで一緒だった。
そこに、御伽話のような運命なんてものはなく、ただの偶然が重なりあった結果でしかない。
熱い友情。そんなものは百パーセントありえない、鳥肌が立つ。
「さっき、あんたは言ったな。まだ、戻れるって」
言うなれば、共犯者か。
醜くも美しい世界から逃げ出そうと手を取り合った――ただそれだけの仲だった。
口を歪ませて、目を鋭く尖らせた自分の表情はきっと、どうしようもなくしみったれたものだろう。
それでいい。自分のエゴで他者を踏み潰すロクデナシの少女にはお似合いだ。
喉に流れる唾を眉を顰めながら後悔と混ぜあわせ、一気に飲み込んだ。
その勢いで手を差し出した。
「お断りだ。あたしにとって、答えがない日常こそが――不純物だ。
あんたの力を借りてでも、あたしは願いを叶える。もう一度、あいつに会う。
そんで、そっからは知らない!」
「うわぁ……」
吐き捨てた言葉は自らにも突き刺さる刃となる。
何にも考えてないことがバレバレだ。
ただ一つ、変えたい過去がある。
あの時見た光景を無くす。
綺麗に分割されたあいつ――海野藻屑を蘇らせる。
そうでなくては、藻屑が報われない。
「勝手にあたしの頭を掻き乱しておいて死ぬなんて許さない。責任取ってから死ね!
あたしを残して死ぬな! あたしが満足してから死ね!」
「清々しいまでに自分勝手だね」
「悪い? 文句なら受け付けないよ。悪いのはあいつを殺した糞親父なんだ。
あたしも、藻屑も悪くない」
自嘲。苦しみと嘲りがごちゃ混ぜになった笑みを浮かべ、唇を三日月の形に釣り上げる。
くつくつと嗤い声を上げながら、なぎさはクロメに向かって手を伸ばす。
「あんたはヤル気がないかもだけどさ。あたしには譲れない理由がある。だから――」
「いいよ、力を貸してあげても」
伸ばした手は握り返されなかった。
されど、その目は先程よりは幾分か和らいでいる。
「言っておくけど、私にだって願いはあるから」
「……詮索するつもりはないよ」
「一応聞いておいて欲しいんだけどな。別に言って減るものじゃないし、知っておいて損はないでしょ」
思いの外、真面目な返答が返ってきたことに面食らったのか、なぎさはきょとんとした顔をしている。
この年中お菓子を食べてそうな不思議系少女は確固たる願いが在るらしい。
「まあ、貴方と同じ。私にも会いたい人がいる」
その横顔はサーヴァントには似つかわしくない極普通の少女が浮かべるものだった。
ふんわりとした笑顔も、上ずった声も、自分と同じ世界にいるようで。
「大好きだからこそ――もう二度と離れないように、殺さないと」
しかし、二の次に放たれた言葉は致死の弾丸だった。
どうしようもない隔絶。
どんなに取り繕うとも、彼女はサーヴァントであり、自分とは違う。
ニヤニヤと粘ついた笑みを浮かべるクロメとでは立っている場所がずれている。
「ふふ、怖気づいた? こんなこわぁい願いを持ったサーヴァントは信用出来ない?」
「まさか。あたしの変人対応スキルはもうマックスだよ、あんた程度で怯えてちゃ藻屑の相手なんてできないよ」
力の入った身体に汗が籠る。これより先、なぎさは多くのものを置き去りにしていくだろう。
望む望まないに関わらず、なぎさの手には何も残らないのかもしれない。
けれど、それでいい。
どんな理屈をこねくり回した所で、山田なぎさは世界のクソッタレな部分を許容できない女子中学生なのだから。
「嵐が来るよ、クロメ」
砂糖で出来た弾丸では子供は世界と戦えない、と誰かは言った。
ならば、本物の弾丸なら――子供でも戦えるのだろうか。
世界とだって、過去とだって、対峙できるだろうか。
【クラス】
アサシン
【真名】
クロメ@アカメが斬る!
【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運E 宝具C
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
薬で強化されたからか、長距離からの狙撃すらも回避する彼女の勘は異常に研ぎ澄まされたものである。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
心臓を潰すか、首を切り離すかぐらいはしないと彼女は絶対に止まらない。
薬物中毒:C
身体能力の強化の代償に、彼女は常に薬物入りのお菓子を摂取していないと戦闘ができない。
【宝具】
『死者行軍――八房』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:8人
帝具としてクロメが携えている日本刀。
マスター、NPC、サーヴァント問わず斬り殺した者を呪いで骸人形にし操ることが出来る。
骸人形は能力は生前のまま、最大で8体までを自在に操ることができる。八房の能力を解除すると骸人形は只の死体に戻る。
【Weapon】
八房。
特製の薬入りお菓子。
【人物背景】
とある国の暗殺部隊に所属していた少女。アカメとは姉妹。
幼い頃から殺人技術を身に付け、薬物で強化された身体を駆使して国に仇なす敵を斬り殺していた。
後に、イェーガーズという特殊警察に異動し、同僚のウェイブと親しくなっていく。
【サーヴァントとしての願い】
アカメ、ウェイブにもう一度会いたい。そして、二度と離れぬよう自分の手で斬り殺す。
【マスター】
山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
【マスターとしての願い】
海野藻屑にもう一度会う。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
なし。
【人物背景】
動物が好きな女子中学生。リアリストを気取っている。可愛い。
【方針】
戦う。
投下終了です。
皆さん投下お疲れ様です。
投下いたします。
午後4時過ぎ。
傾く日差しの中で、中学校に終業のベルが鳴る。
がたがたと教室の中に椅子を動かす喧騒が立ち、学生たちは伸びをする。
「ねぇ、芽美(めいみ)ちゃん……、今日一緒に帰っても良い?」
「うん、もっちろん! いいよ〜!」
2年A組の教室で、そうして教科書をまとめていた羽丘芽美に、ひとりの友人から声がかかった。
芽美はふわりとしたブロンドのロングヘアーを揺らして少女に振り向く。
微笑んだものの芽美は、うつむく少女の様子に違和感を覚えた。
「どしたの……? なんか具合悪い?」
「ううん、ただちょっと、相談に乗って欲しいことがあって……」
「……! わかった。帰り道で話そう……!」
伏せた眼に只事ではない色を感じ取って、芽美は友の肩を抱いて教室を出た。
「……芽美ちゃんのお父さんって、確かお金のことに詳しいんだよね?」
「うん! パパは消費者金融……、『ポーリアファイナンス』って町金に務めてるから。
……って、相談って、お金のことなの!?」
「うん……」
帰り道の路地を辿りながら、友人は芽美にぽつぽつと語った。
「私のお父さん、新しく町はずれにレストランバーていうのを作ったんだ……」
「うん、知ってる知ってる! お昼もやってるんでしょ? 美味しそうだよねー」
「それで、お店を開くのにお金を借りてたんだけれど、いつの間にかその利息っていうのが大きくなっちゃって……。
うちにまで取り立ての人が乗り込んできて、借金のカタだって、家宝だった大きなサファイアをとっていっちゃったの……」
「ええっ!?」
驚く芽美に向かって顔を上げた少女は、ぽろぽろと涙をも零していた。
「そ、それでも膨らんだ借金を返済するには足りないって言われて、このままじゃお店も潰されちゃうかも知れないの……。
どうしていいかわからなくって……。そうしたら、芽美ちゃんのお父さんのこと思い出して……」
芽美はすすり上げる友の手を、両手でしっかりと握りしめた。
真摯な眼差しで、彼女をなだめるように力強く言い聞かせる。
「……大丈夫! 何も悪いことしてないんだから、きっと神様が見ていてくれる。
それに、わたしのお父さんも、絶対に力になってくれるから!」
芽美が彼女の手を引いて辿り着いたビルには、『ポーリアファイナンス』という看板が掲げられていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんでよ!? 40万貸してくれよ!! 折角新しい町金できたって聞いたから来たのによぉ!!」
「そ、そうは仰いましても、お客様は既に5件の他社で合計150万円も借りてますよね。しかも延滞が3件――」
「でもどーしても要るんだよ!! お前じゃ話にならねぇ、社長出せよ社長をよォ!!」
「わ、わっ、お客様こまります、ぐぇえ――!!」
芽美と友人がビルに立ち入ると、受付で一人のサラリーマンが、大柄な男性に絡まれていた。
襟首を掴まれて人形のように揺すぶられ、受付の彼は今にもノックダウンされそうになっている。
「……あ、あれ、芽美ちゃんのお父さん、だよ、ね……」
「うん……」
「あぁん……!? ちっ、クソ……」
男性は、後ろに現れた女子中学生2人に気付くと、取り乱した姿にバツが悪くなったか、サラリーマンから手を離して足早にビルから出ていった。
痩せたサラリーマンは、けほけほと咳き込んで角縁の眼鏡を直し、やってきた少女たちの姿を認めた。
「やぁ、芽美じゃないか! どうしたんだこんな時間に職場に来るなんて。お友達かい?」
「う、うん。この子のパパが、ちょっと借金で困ってるらしくて……」
「は、はい……」
芽美は彼からの問いに硬い笑顔で応じた。
友人の眼には、『本当にこんな頼りなさそうなヒトで大丈夫だろうか』という不安がありありと浮かんでいた。
サラリーマンは受付側から歩み出てきて、彼女たちに視線を合わせて屈み込む。
胸元から差し出した名刺には、『ポーリアファイナンス 営業 羽丘筆美』と書かれていた。
「こんにちは、いつも芽美と仲良くしてくれてありがとう。
私は、ここの営業マンの羽丘筆美です。なんでも相談に乗るよ? 話してごらん?」
「こぉら、羽丘ぁ! そういう話はここでするんじゃない!」
「あ、専務……! すみません、つい……!」
羽丘筆美が彼女たちに話しかけていると、店の奥から、中年の専務がそう声をかけて咎めた。
ペコペコとその専務に頭を下げつつ、羽丘筆美は彼の脇を通って店内の別室に彼女たちを案内する。
そのすれ違いざま、専務は羽丘筆美に向けて急に声を落として問うた。
「……“社長”、『お仕事』なのですよね?」
「ああ、どうやらそのようだ……。今日の表業務はお前たちに任せるぞ、専務」
「了解いたしました、羽丘社長……」
羽丘筆美は別室に娘たちを入れた後、別人のような低く鋭い声で答えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ、なるほど……。それは大変ですね……! 取り立てに来た業者の名前はわかるかな?」
「ご、ごめんなさい……。そこまでは……、わかんなくて……」
「う〜ん、ならキミのお父さんを、ここに連れてきてもらうことは出来ないかな? その方が話しやすいかも」
「ダメだよパパそんなの……」
別室の机に向かい合い、羽丘筆美は芽美の友人から詳しく事情を聴いていた。
曖昧な伝聞情報に唸った父の提案に、芽美が首を横に振る。
「うん……、お父さんは、ショックで具合が悪くなっちゃって……。これ以上、そんな話、聞かせたくないの……」
「パパ、それくらいわかってあげてよ……」
「うわ、ごめんごめん芽美……! ならしょうがない、なんとかしてみせるから……!」
「本当ですか……?」
「うん、ちょっとじっとしててね……」
胡散臭そうな眼差しを向けてくる娘の友人へ取り繕うように笑ってから、筆美は姿勢を正す。
そして言うが早いか、彼はその少女の額を、右手の人差し指で軽く押さえた。
すると突然、彼女の表情はぼんやりと虚ろなものになり、眼からは光が消えてしまった。
彼はそのまま、少女に向けて静かに問いかける。
「……家に封筒が配達されてこなかったかい? 督促状、と書かれたようなものが」
「とく、そく、じょう……。あった……。ピザの広告の間に、はさまってた……」
「その差出人の欄にあった名前だ。明確に覚えてはいなくとも、無意識下ではそれを見ているはずだ」
「……差出人。……『龍々ローン』……」
「オーケー、ありがとう。十分だ」
羽丘筆美は、ぼんやりとした少女から返って来た答えに頷き、傍らのパソコンを打ち始めた。
画面上に映る膨大な取引のデータベースから、その存在を検索していく。
芽美は友人の様子を不思議に思うことなく、羽丘筆美の方に身を乗り出した。
「“春居さん”、わかった? その会社のこと」
「ああ、“羽丘クン”。まぁ春居筆美として、日常的にこういうことはよくやってたからね。
英霊として呼ばれて、立地が変わったとしてもそう苦労はしないよ。……ほら出た」
筆美と芽美は、さっきまでとは全く違う呼び方で互いを呼び合った。
そう。
彼女、羽丘芽美はこの聖杯戦争に呼ばれたマスターであり、『春居筆美』という真名の彼は、そのサーヴァントなのである。
ただのうだつの上がらないサラリーマンにしか見えず、ほとんど魔力も感じられない彼はしかし、先程までとは全く違う眼光を湛えていた。
「『龍々ローン』……。沿岸の倉庫地帯に店舗を構える闇金だな。
口先で顧客を丸め込んでその実、契約書には法定金利を遥かに上回る暴利をこっそりと付記しておく手口で何人も被害に遭っているようだ。
……実を言うと、私にさっき絡んでた男性も、ここから手ひどい借金取りに追われた末に色んな会社から借り入れをしてしまったようでね。
コンソリデーションで借金を一本化してやろうかとは思っていたんだが、ここまでとはね……」
「それ大変じゃない!! 絶対ゆるせない、そんな悪い会社!!」
芽美は机から立ち上がり、拳を振り上げてガッツポーズをとる。
「『ここで悪事を辿っていれば他のマスターたちの動向が掴めるかも知れない』って春居さん言ってたもんね!
こんな怪しい相手が出てきたんだから、早速おしおきしてあげよう!! 聖杯をこんな人たちに使わせちゃダメだもん!!」
キャスターのサーヴァント・春居筆美は、同志・同業としての縁か羽丘芽美に召還されてすぐに、デイトレードで莫大な資産を得てファイナンスを登記し、情報収集のための陣地を作り上げていた。
聖杯の知識を得た彼らの志はただ、『そんな願望機を悪用させない』というものに尽きた。
その願いが皆を幸せにするようなものなら、むしろそんなマスターを応援するくらいの度量は持っているつもりだが、世の中当然そんな人物ばかりではない。
方向性は多少違えど、ともに元の世界で勧善懲悪を働こうと奮戦してきた彼らにとって、この方針はほとんどゆるぎないものだった。
「そうだな……。所詮NPC同士のやりとりと断じることもできるが。
正義は迅速を尊ぶ。これを『拙速』と呼ばわるは百年河清を俟つ者なり、だ。すぐに動こう」
「うん! そうしよう! わたしが友達を助けてあげるんだ!」
羽丘芽美は、いまだぼんやりとした表情で椅子に座っている少女を見て、強く頷いた。
彼女は芽美にとって、聖杯によって植え付けられた記憶と設定による友人でしかないのだが、そんな些末なことはその義侠心の前には問題にならない。
そのマスターの様子に春居は眉を顰める。
「羽丘クンが行くのかい? 話を聞く限り、もしかすると彼女の件には、宝石魔術を使うような奴らが一枚噛んでる可能性もあるんだよ?
今晩にも『Dr.WHOO』が乗り込むから、キミは隠れて待機してなさい」
「いやいや甘く見ないで。この子は友達なんだもの。この件は『怪盗セイント・テール』が解決します」
「いやいや、マスターに行かせるわけにいかないよ。キミはいつもそうやってたのかも知れないけれど。
魔術師やサーヴァントがいるかもしれない場所に下調べも無しに忍び込むなんて下策だって」
「……むぅ、なら正々堂々、コイントスで勝負よ。当てた方の主導で解決に行く」
「えぇぇ……」
春居と言い合った芽美は、ふくれっ面になって10円硬貨を彼に差し出した。
彼はあからさまに嫌悪感を顔に出すが、有無を言わさぬマスターの眼差しに、渋々とコインを受け取って親指で跳ね上げた。
羽丘芽美には勝算があった。
自分の鍛え抜かれた動体視力なら、落下して手に覆われる際のコインの裏表も見抜ける自信があった。
そうして、春居筆美が10円玉を手の甲で受けようとした瞬間。
なんとそのコインは彼の手の上で跳ねて床に転がって行ってしまった。
「わっ、わっ、わっ!」
「あはは、春居さん何やってんの、カッコワルい〜」
彼は慌ててコインに追いすがり、素人くさい動きでなんとかそれを手で覆って、照れ笑いを見せた。
動体視力を酷使するまでもなく、はっきりと上になった面が彼女に見えていた。
芽美はふんぞり返って宣言する。
「表! もちろん平等院鳳凰堂のある側よ! こんな簡単なことでもミスするなんて、やっぱりわたしが行くべきってことよね!」
「たはは……、羽丘クンにそう言われちゃあしょうがないな……。一応、私は裏ってことで……」
「ダメダメ、見るまでもなく表だったもん。『怪盗セイント・テール』が行きます!」
「本当にそうかなぁ……?」
自信たっぷりに言い放つ芽美の前で、春居はゆっくりと、10円玉を覆っていた手を外した。
床には大きく、『10』と書かれた裏面を上にして、コインが落ちていた。
「……やっぱり、『Dr.WHOO』が行った方が良さそうだよ、マスター」
「なっ、え……!?」
春居はその顔に薄く笑みを浮かべながら眼鏡を上げ、拾った10円玉を一度手のひらに握り込んでから芽美に弾き返した。
「ミスディレクションはマジックの基本だぜ羽丘クン。お父さんもマジシャンなら習ったろう?」
「……あっ!? も、もしかして、今別の10円をパームしてたの!? どこですり替えたの!? 見せてよ!!」
「はてさて何のことでしょうかね。私は手品が趣味なだけのサラリーマンなので、こんな簡単なことでもミスしてしまったみたいですよ」
10円玉をすり替えていた証拠を掴もうと、芽美は春居のスーツにむしゃぶりつくが、彼は澄ました表情で両手を上げるだけだった。
芽美を落ち着けて春居は、彼女の友人の前で、ぱんっ、と両手を打ち合わせる。
その瞬間、少女はハッと意識を取り戻したように眼に光を戻し、きょろきょろと辺りを見回した。
「あ、ご、ごめんなさい、ちょっとぼーっとしてたみたい……」
「いやいや大丈夫だよ。うちの会社にはいろいろツテがあるんでね。
『Dr.WHOO』という、こういうこと専門の知り合いに何とか頼んでみる。
だからキミは安心して、明日も学校に行くといい。
今度困ったことがあって彼を頼りたくなったら、逆さ切手を3連続で貼ったハガキを投函するといい」
「ドクター・フー……? あ、あの、まぁ、はい、わかりました……」
「うん……。悔しいけど、『Dr.WHOO』なら上手くやってくれるわよ。……それこそ、今晩中にも」
少女は、隣で何故か感慨深げに頷いている芽美に首を傾げながらも、お礼を言ってビルを後にした。
そうして彼女を見送ったあと、春居と芽美は、顔を見合わせて頷く。
「……そもそもこの債権の当否を問わば、無効なりッ……!」
「うん……。私たちに、神のご加護がありますように……!」
次の瞬間、春居筆美の存在は、羽丘芽美の前から忽然と姿を消していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日の朝、学校で彼女は、芽美のもとに新聞を掴んでやってきた。
「すごい! すごいよ芽美ちゃん! 本当に芽美ちゃんのお父さんの言う通りになっちゃった!」
「え、そうなの? 何があったの?」
「これ見て! 『龍々ローン社長、偽造文書の海に溺れる』!」
少女が芽美の机の上に広げた記事には、大量の紙片が撒き散らされた倉庫街の一角で土下座している半裸の男性の写真が載っていた。
彼は上に着ていたらしい毛皮の衣服を目の前の誰かに差し出すような体勢のまま、警察に連行されようとしている。
「『龍々ローン社長・丹木利一容疑者が本日未明、同社の所在する倉庫街の一角にて発見された。
現場には同社にて作成されたと思しき書類数万枚が散乱しており、その大半が偽造文書だとみられる。
容疑者は発見時「許して下さいもうしません」などと文書偽造を認め謝罪する供述を繰り返しており、警察は容疑者を同罪と詐欺の疑いで逮捕した。
良心の呵責に苛まれての告白と考えられ、ローン契約を結んでいた被害者には、追って返済不要の旨が通達される見込み。』
……なるほどねぇ」
「今朝うちにも電話がかかって来たの、不当な契約だったから、もうこれ以上借金を返さなくていいって!
これもドクターフーって人のおかげなんだね!」
心底嬉しそうに笑う友人にむけ、芽美は微笑む。
「良かった、わたしも嬉しいよ……! お父さんは元気になった?」
「うん、これでバーを続けられるって……! こんど芽美ちゃんもお父さんと一緒に来てね!!」
「……うん、絶対行くよ」
返事をする芽美の胸はちくりと痛んだ。
放課後、芽美は一人、誰もいない校舎裏にまでやってきて、ぽつりと呟いた。
「……お疲れ様、『Dr.WHOO』。本当、魔法使いみたいな腕ね……」
「サーヴァントも魔術師も手品師も絡んでいなかったからね。私には大分楽だった。
後は事件を、それらしく、かつ奇妙に知れ渡るよう演出すればあんなものだよ」
呟く芽美の隣、校舎の陰には、金の長髪を白いコートに遊ばせた、年齢不詳の美男子が佇んでいた。
白磁のように澄んだ肌に、道化師のような真っ赤な唇が妖艶に映えているその男は、腕組みをしたまま芽美にウィンクしてみせる。
芽美はその姿に、本当の自分の父に相対しているような面映ゆさを感じて髪を掻いた。
昨夜の金融会社は、地元の暴力団とも癒着した恐ろしい場所だった。
自分だったら、あんな場所からは、例え偽造文書は盗み出せても、その後の処理を詰めて相手へ社会的制裁・心理的懲罰を加えることはとてもできなかっただろうと思った。
「うん……。聖華市ではちょっとばかし悪い人をあいてどってきた経験と自信があったんだけど……。
……世の中には、もっと悪くてずる賢い人もいっぱいいるんだね……」
「そうだな。悪に対するには、それを上回るほど巧妙に立ち回らなくてはならないんだよ。
……でもまぁそこは、互いの分野に得意不得意があるからね!」
腕組みを解いて彼がコートを脱ぐと、そこに立っていたのは、よれたスーツを着込んで角縁の眼鏡をかけたサラリーマンの姿だった。
化粧だったと思しき唇や肌、髪の毛の色も、どこにでもいるような日本人のものに落ち着いてしまっている。
芽美は、自分のサーヴァントから慰めのようにかけられた言葉に溜息を吐いた。
「春居さんにそう言われても……。結局、借金は返さなくて良くなっても、家宝のサファイアってのは見つからなかったんでしょ?
間に合わなくて売られちゃったのかと思うと心苦しくて……」
「そうだねぇ……。決して多くない私の魔力の足しになりそうな宝石は見つかったから確保しておいたんだけどねぇ」
芽美の溜息に合わせて、『Dr.WHOO』の姿から変じた春居筆美が、スーツのポケットから大粒のサファイアを取り出していた。
それを見て芽美はギョッとする。
昨晩、倉庫街の入り口で待機しながら自分のサーヴァントの様子を伺っていた彼女にも、今の今までその存在がわかっていなかったものだ。
「まぁ仕事の報酬として、これくらい貰っておいてもいいかなぁーなんて……」
「うん、返そう!」
「……はは、そう言うと思った」
頷く芽美に向けて春居は苦笑し、あえてそのサファイアを胸ポケットにしまってしまう。
「……それならやっぱり、盗難品を盗み返して被害者に返還するのは、『怪盗セイント・テール』の役目なんじゃないかな?」
「……なるほど。確かにそうよね!」
笑った芽美の手には、いつの間にか黒いシルクハットが握られていた。
そして彼女は、舞台上で舞い踊るようにして声を上げる。
「主よ、タネも仕掛けもないことを、お許し下さい……! ワン、ツー、スリー……!!」
一回転した彼女がシルクハットを差し向けた瞬間、春居の胸ポケットには、ポンと音を立てて小さな花束が刺さっていた。
同時に羽丘芽美の姿は、黒っぽい赤のベルベットの上着に、タキシードのような燕尾と共布の長いブーツ。
そして短すぎないピンクのスカートという、上品な手品師の舞台衣装に早変わりしていた。
大きなリボンで長いポニーテールにまとめた髪を風に揺らし、彼女は一気に校舎裏の地面から植込みの木立に枝を掴んで振り上がる。
その手には、先程まで春居が持っていたはずのサファイアが掴まれていた。
「これもわたしたちの、正義のためだものね、『Dr.WHOO』!」
「ああ、正義のために動こう、『怪盗セイント・テール』」
サファイアと入れ替わりに渡された花束の香りに目を細め、春居筆美は彼女へ手を振った。
ポニーテールの姿は、家々の屋根を跳ねて夕闇に消えてゆく。
学校の敷地から雑踏に歩み出したスーツの背中も、NPCの人波に紛れて消えてゆく。
こうして少しずつ人々の間に、『Dr.WHOO』と『怪盗セイント・テール』という、二人の義賊の噂が、まことしやかに囁かれ始めていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クラス】キャスター
【真名】春居筆美(北大路冬彦)@ダブル・フェイス
【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D++ 魔力:C 幸運:D 宝具:B+
【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。
購入した物件に様々な人間を雇い、会社として運営できる。
その他にもNPCに様々な人脈を張り巡らし、美術工芸舎やカクテルバーなど潜伏可能な協力施設を持てる。
人の間にこそ彼の陣地はあると言える。
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
手品に使用する物品・小道具をある程度自作することができる。
ただの手品に過ぎない現象をあたかも大魔術のように見せかけられる。
召喚されてからは、マスターの使用する小道具も一部作成している。
【保有スキル】
高速詠唱:B
魔術の詠唱を高速化するスキル。
キャスターが行うのは手品であり、もはやそのトリックが実行された瞬間を捉えるのは常人では不可能に近い。
気配感知、直感、心眼などによる察知も同ランクまですり抜ける。
また、デイトレードにおいて同時に複数の取引を高速スキャルピングし、資金を稼ぐことも可能。
催眠術:B
対人用の催眠術を使用できる。
相手の額のツボに接触して使用し、意識を混濁させて無力化したり、短期の記憶を消す、情報を引き出すなどすることが可能。
また暗示によって簡単な精神効果を付与・解消することもできるだろう。
ただしシングルアクションの技術のため、低ランクの対魔力スキルでも無効化されうる。
変装:B
キャスターが正体を隠して表向きの身分を作り上げ生活していた際の変装・隠密技術。
この場においては主に、ポーリアファイナンスの営業平社員にして羽丘芽美の父、『羽丘筆美』という設定で行動する。
『羽丘筆美』の姿の間は全てのパラメータが1ランクダウンするが、ステータスが隠蔽されサーヴァントとは見破られなくなる。
ただし攻撃態勢に移ると全ての隠蔽効果は無くなり、サーヴァントとして認識される。
他者に対してメイクアップを行なうこともできる。
手品:B
キャスターが使用するマジックの技術。
錠開け、縄抜けやカードマジック等のほか、古典手妻『胡蝶の舞』など、多数の奇術を習得している。
金融の見識:A
長年、銀行員・消費者金融業として務めあげたことによる、投機のタイミングや相手の性格を見抜く眼力。
言葉による弁明、欺瞞に騙される事がない。
【宝具】
『Dr.WHOO(ドクター・フー)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1人
キャスターのもう一つの顔。この宝具の発動時の姿が『魔術師』としてのキャスターの真の姿である。
普段の凡々たるサラリーマン姿とは一転した、金髪色白の麗しいマジシャンとしての舞台衣装に瞬時に早着替えする。
この時には大がかりな舞台装置・大量の小道具などを用いた手品によるイリュージョンを展開し、対象に様々な精神効果を与えることが可能。
対象の精神や経歴における『負債』が解っている場合、自業自得な恐ろしい幻を的確に見せることができるため、対象の対魔力スキルは2ランクダウンし、効果を防御することがほぼ不可能になる。
攻撃的に用いれば、対象のトラウマを抉り出して宝具を使用できなくさせたり、精神崩壊させることすらできるだろう。
『逆さ切手三連』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1人
キャスターが一般市民から悪事の情報を得ていた際の連絡手段の一つにして、彼を呼ぶための都市伝説が宝具となったもの。
聖杯戦争の会場内で切手を逆さに3連続貼られて投函されたハガキは、何があろうと即座にキャスターのもとに届く。
住所を書かずとも、また郵便局を通さずとも消印が押されるので、だいたいの投函場所を推測可能。
機密性の高い情報伝達手段として使え、更に切手の裏に書き込みをするといったことをしても有効。
【weapon】
トランプ、コイン、ロープ、扇、シルクハットなど、手品に用いる物品。
および緊急攻撃手段として手製のベアリング弾射出装置、火炎放射器、チェーンソー、催涙ガスなどを隠し持っている。
【人物背景】
漫画『ダブル・フェイス』の主人公。
『月影ファイナンス』の社長であるが、後述のDr.WHOOとしての活動をしやすくするために表向きは営業平社員としている。
背中まである長髪をひとつにまとめ、眼鏡をかけている。見かけどおりのお人好しな性格が目立ち、取り立てを度々しくじる。
人並みな義侠心を持つもヘタレなためにトラブルに巻き込まれるとからっきしで、客が巻き込まれているトラブルに首を突っ込んでは自身も被害に遭うことが多々ある。
本名は北大路冬彦。
13年前、深島銀行ニューヨーク支店に勤務中、同僚がニューヨークマフィアのドンの隠し資金を焦げ付かせたため、当時ニューヨーク支店長だった柳原によって3000万ドルに上る横領事件をでっち上げられ、有罪となり、シエラネバダ刑務所に収監される。
その後、替え玉を使い脱獄(その時の替え玉の名前が「虎海宝」という医者(=Dr.フー)だった)、黒淵深海の下でDr.WHOOとして活動する。
世の悪や不正を負債と捉え、その清算を行う。
善良な市民が悪人から受けた不利益を「不良債権」と呼び、法や司法では裁けない債権を回収すること、つまり悪党を懲らしめる活動を行っている。
不利益に金銭的トラブルが含まれる場合、加害者から被害相当の金額を取り戻し被害者に還元することもある。
それらの場合も含め、Dr.WHOOの主な仕置き方法は加害者に自業自得な恐ろしい幻=イリュージョンを見せることである。
この幻はマジックによって実現し、実際には起こりえないことを加害者に現実に起きていると思い込ませることができる。
加害者にとって幻の中で起きたことは自身の罪から生じた帰結であり、その恐怖体験はトラウマとなり同じ罪を二度と犯すことができなくなる。
それ以外にも、現実的に起こりえないことを手品で実現する手法に長けており、自身の所属していた組織・黒淵機関ではかつて「魔術師」というコードネームで呼ばれていた。
現在でも裏社会において黒淵機関の名と共にDr.WHOOは恐れられている。また、インターネット上では正義の味方としてDr.WHOOを呼ぶ方法が都市伝説で流れている。
Dr.WHOOはこれらイリュージョンを実現させるための高度技術(錠開け、ツボの刺激を利用した対人用の催眠術、変装など)を数多く持っている。
また、プロのマジシャンとしての技術も持ち合わせており、実際にステージでマジックを披露したこともある。
名前は、脱出マジックの巨匠ハリー・フーディーニをもじったものである様子。
春居でいるときとDr.WHOOでいるときでは性格や頭の回転率も違うらしく、本人はそのことを少し気にしている。
表向きは、既婚者で3人の子供がいるということになっており月影ファイナンスの同僚には家族の写真をよく見せているが、実際は金銭で雇った母子家庭から提供されたダミーである。
【サーヴァントとしての願い】
血が通い・脂滴り・肉の味がするナマの正義を求め、聖杯を悪用しようとする者の思惑を挫く。
【マスター】
羽丘芽美@怪盗セイント・テール
【マスターとしての願い】
悪者にやりこめられている「迷える子羊」たちを救い、聖杯でみんなに幸せになってもらう。
【能力・技能】
怪盗であった母譲りの高い身体能力と、マジシャンの父直伝の数々の奇術を用いる。
『セイント・テール』の姿へ一瞬で早着替えしたり、即座に気球のような大きさにまで風船を膨らませられるなど、一見すると魔術のような現象まで演出できる。
逃走する車に追いつく、腕だけで高い木の上へ枝伝いに振り上がる、家屋の屋根の上を飛び跳ねて移動するなどの行為を生身で行えるほどには鍛えている。
【weapon】
手品に用いる舞台衣装やシルクハット、風船などを隠し持っている。
【人物背景】
漫画・アニメ『怪盗セイント・テール』の主人公。聖ポーリア学院・中等部2年A組。
ふわふわした長いブロンドの髪と円らな瞳の快活な少女。血液型はA型で、誕生日は9月29日。身長152cm。体重43kg。
運動神経抜群で体育は得意(アクロバットもできる)だが、勉強は芳しくなく特に苦手な科目は数学。
好きな色はピンクとブルーサファイア。甘いものと可愛いものが大好き。トカゲが大の苦手。
明るく元気でそそっかしくて、ドジもしばしばあるが心優しい正義感の強く、そして現実と理想、偶像と実際の自分の差にも悩んだりするいたって普通の女の子。
一方、涙もろくて照れ屋な所があるが、クラスメートにして、自分を狙う刑事の息子アスカJr.には強気に出る。
しかし夜になると自らが住む聖華市に出没する怪盗セイント・テールになり、巧妙な詐欺や窃盗で巻き上げられた金品を盗み、本来の持ち主に返す。
学院礼拝堂の見習いシスターにして情報アシスト役のパートナーの親友・深森聖良と共に、犯罪被害に遭った「迷える子羊」達の救済に走っている。
盗みの手口や手品の腕はもはや魔法レベル。
【基本戦術、方針、運用法】
この聖杯戦争の裏に巣食う思惑の正体を確かめ、それが悪に基づくものならば全力を挙げてそれを阻止しようと考えている。
基本的にはNPCを装いつつ、様々な情報網を用いた戦況の収集に務め、勃発しようとしている悪事の探索に動く。
街のNPCたちとの関連性を最大限に利用し、多数の町工場や役所や商店、学校の友人や教師とのコネクション、『逆さ切手三連』などによる連携を用いて立ち回る。
わざとNPCの間にそれらしい噂を流したり、怪盗セイント・テールの予告状を出すなど、陽動やあぶり出しを行なうこともあるかも知れない。
キャスターの使用する魔術は大部分が演出であり、強力な精神効果はあれど直接攻撃能力は無きに等しいため、協力できそうなマスターとサーヴァントが見つかれば積極的に協力しようとするだろう。
敵対者に対してキャスターは、その対象の弱みとなる『負債』を見極め、徹底的にそこを抉って再起不能にしようとする。
また、怪盗としての経歴もあるマスターと協力して、キーとなる物品を盗み出したり、手品の演出を強化したりもするだろう。
マスターは怪盗とはいえごく普通の女子中学生であり、キャスター本人もクラスと都市伝説による補正があるだけのサラリーマンなので魔力の総量は少ない。
『羽丘筆美』としての姿ならば魔力はほとんど消費しないが、Dr.WHOOとしてのイリュージョンはそうそう連続して行使できない。
相手の『負債』を徹底的に調べ上げてから的確にマジックを組み上げていく必要があるだろう。
だがこれは逆に言えば、NPCの中に紛れている限り、魔力の反応の薄い彼らを見知らぬ者が発見することはほとんど不可能に近いということもである。
NPCを笑う者はNPCに泣く。
以上で投下終了です。
皆さま、投下お疲れ様です。
自分も投下させて頂きます。
****
Lacrimosa dies illa
(涙の日 その日は)
qua resurget ex favilla
(罪ある者が裁き受けんがために)
judicandus homo reus
(灰の中からよみがえる日)
Huic ergo parce, Deus
(神よ どうかこの者をお許しください)
pie Jesu, Domine
(慈悲深き主 イエスよ)
****
日は落ち、月が昇り、街は静けき夜の帳に包まれている。
通りの一つに面した、その西洋風の市民劇場は、入り口にささやかな灯をともして、ひっそりと夜の色に同化していた。
閉じきられた扉の中からは、とぎれとぎれに、歌声が漏れ聞こえている。
劇場の前には、共有の休憩所と、喫煙所があり、仕事帰りらしい男が二人、煙草を片手に、話し合っている。
「最近、出るらしいな」
「何が」
「『火吹き男』だよ。『火吹き男』」
「火吹き男?」
「こんな月の出た晩に、一人で歩いてたらさ。見上げたら、屋根の上にいるんだと。こう、長い手足をばあっと広げて…物凄い笑い声をあげて」
「なんだそりゃ。子供のおとぎ話じゃないんだから。通り魔とか、変質者ならともかく」
「そうだけどな。ここいらでやたらと噂を聞くもんだから」
男の言葉に、もう一人の男は、劇場の灯をちらりと顧みながら、
「こんなところで噂なんか聞くからだろう」
と言った。
「最近、若い子が妙に来るようになったからな。この劇場。前は金持ちの爺さん婆さんの御用達だったのに」
相方に合わせ、最初に口火を切った男も、劇場の扉へと目をやる。
「やっぱり、あの歌かね。今晩も……」
****
外国のホールを模した、円形の観客席と、それが見下ろすステージ。
明かりを落としたその暗がりの中に、浮かび上がるようにして、ライトの真ん中で、一人の少女が歌っている。
“Lacrimosa dies illa……”
伴奏のない独唱。
音響装置も、最低限のものしか備えられていない。
それでも、少女の柔らかな、ゆったりとした歌声は、劇場の中にうねり、沁みるように響き渡る。
“qua resurget ex favilla……”
天上の歌声――聴く者の脳裏に、そんなありふれた修辞も浮かぶが、同時に、そう喩うるにはどこか哀しすぎる、やはりこれは、この地上の音楽である……そうも思わせる。
“judicandus homo reus……”
少女は歌い続ける。
身に付けた衣装もまた、とても舞台の上に立つものとは思えないほどに質素なそれである。
だが、観客は皆、少女の歌声だけでなく、その姿にも見入っていた。
布の覆いに包まれながら、そこから零れ、腰まで伸びる豊かな金の髪。
なめらかな、白い肌。
歌を紡ぎ出す小さな花のような唇。
そして、まっすぐに虚空を見つめる、冷たい宝石のような瞳。
その片方は、怪我でもしているものか、包帯に覆われている。
“Huic ergo parce, Deus……”
少女は、歌い続ける。
聴き惚れ、見惚れる客席にも、多くの「少女」の顔がある。
みな、いくらかの差異こそあれ、同じくらいのあどけなさを残し、同じくらいの大人びた気配を滲ませた顔だ。
少女たちは恐らく、誰ひとりとして、舞台の上から紡がれる歌声の、その歌詞の意味を――遠い異国の言葉の、訴えかけ、示そうとするところを理解していない。
それでも、彼女たちの目からは、自然と零れ落ちるものがあった。
それは、何の涙であっただろうか。
この架空の町で、幸せな夢の中で暮らす彼女たちの、かつての記憶と、抱いていたはずの思いと、願いと―――いまや失われたそれらへの、浮かぶはずのない涙であっただろうか。
“pie Jesu, Domine……”
少女は――――。
『ララ』という名を持つ歌姫の少女は、歌い続けた。
光に照らされながら、闇の中の少女たちへ向けて、彼女の『子守唄』を。
****
夜も更け、劇場が全ての灯を落とし、再び扉を閉じた後。
ララは、一人で、劇場の裏の路地を歩いていた。
雲のない夜空から月が見下ろし、街灯の少ない道に、青い、不吉な色を与えている。
舞台の上と同じ衣装のまま、多くの歌手や役者たちがそうであるはずの、解放された風もなく、歌姫は歩いてゆく。
やがて、教会の前まで来たところで、ふと、空を見上げた。
月を背景にして――教会の、鋭角な屋根の上に、何かが立っている。
異様な長身であった。
真っ黒い全身から伸びた、奇妙なまでに長い手足が、縦長のそれの姿をさらにアンバランスにしている。
顔には二つの火が――不気味に燃える両の目があり、そればかりではなく、横に裂けた口からも、青白い炎が零れている。
それは、見上げるララを認めると、嗤った。
ひどく耳障りな、馬車の軋むような声で。
そして、長い肢を曲げ、たわめると、次の瞬間、空へ跳び上がり――急降下して、物凄い速さで、ララの眼前に降り立った。
地面が砕け、瓦礫が散り、ぷん、とひどい硫黄の匂いが立ち込める。
ごう、と音がして、青白い炎がララの前を掠め、その光に照らされて、怪人の、丈の長い黒いマントと、黒いシルクハットと、表情のない鉄仮面が明らかになる。
ララは、表情を変えなかった。
ただ、じっと怪人を見つめた。宝石のような片目で。
背を曲げかがめ、ランプのような両眼で、ララの顔を見下ろしていた怪人は――
「なぜ、ずっと気付かないふりをしていた」
口を、利いた。
「お前はすでに、この聖杯戦争のマスターとしての記憶を取り戻していたはずだ。
知識、情報、課せられたルール。
そしてこの町が、造られた“贋物”であることも」
怪人は、口から炎を吐き出しながら、続ける。
「それなのに、オレを呼ぶこともせず、夜な夜なあの劇場で歌い続けていた……」
「……そう、あなたが、私のサーヴァント」
怪人の言葉の途中で、ララは少し笑みを浮かべ、その姿をしげしげと眺めると、
「あなた、“お化け”でしょう?
劇場に来る子たちが、噂していたわ。火を吹くお化けが出るって……」
確かめるように、そう言った。
「……ああ」
怪人は、肯定する。己が「怪人」であることを。
今のみならず、かつてにおいてもまた、人々の間に、恐怖と驚愕を以て語られた存在であることを。
ララはその顔を見つめながら、私と同じね、と呟く。
「でも。あなたのそれは、仮装でしょ。お化けの仮装。
……私は、違うよ」
そう言いながら、頭の覆いを、片目を覆う包帯を、ゆっくりと取り去った。
綺麗な金の髪。その上に、幾つもの機械の突起があった。
包帯の下。そこに、陶器のような顔面のひび割れと、破損した眼球があった。
怪人は。
怪人は、それを見て驚くでもなく、ふん……と声を洩らした。
ララは笑う。
「わかってたのね。そう、私は、人間じゃない」
そして語る。
かつて語られた一つの「奇怪」を。
「神に見はなされた地」に棲み付いた亡霊の話を。
絶望に生きる人々を慰めるために造られた、歌う快楽人形の話を。
五百年もの長きにわたり、その人形は、「ララ」は、その名をすら知られることなく、少女と化け物の中間の何かとして、乾いた土地の怪異として在り続けた。
一人の子供に出会うまで。
そして、悪魔と、悪魔祓い師たちと出会い、破壊されるまで。
「私の心臓は、特別なの。神様の――呪いなんだって」
胸に手を当てながら、己の中に埋め込まれた〈神の結晶〉、彼女を彼女たらしめた“イノセンス”と呼ばれる神秘のことを告げる。
彼女の物語は終わり、すでに取り去られた筈のそれが――自分の中に戻り、息づいていることの違和感。
寄り縋るように、ただ、歌うしかなかったことも。
「お前……願いは、ないのか」
少女人形の語りを聞き終えて、怪人が問う。
この世界に、この戦争に誘われた者たちは、多く、何かしらの願いを抱いているはずだった。
「――貴方が、叶えてくれるの? お化けさん」
悪戯っぽく、ララが問い返す。
怪人は、その瞳に込められたものを測りかね、少し考えた後、答える。
「残念だが、オレは弱い。勝ち抜けるのかと言われれば、怪しいかもな」
同じ“ジャック”でも、別の奴が出ていれば違ってただろうが、と、どこか自嘲を帯びた口調で付け加えた。
ララは、怒るでも、失望するでもなく、ふふっと笑った。
「そんな怖い見た目なのに、けっこう気が弱いんだね」
そうしてから、空を見上げる。宙天にかかる大きな月を見る。
五百年前も、彼女は、こんな月を見た気がした。
「私は……私は、ただあの子と。
たった一人、私を愛してくれた、受け入れてくれた人と、一緒にいたかった」
独り言のように、人形の唇から漏れた言葉に、怪人が、動かぬ鉄仮面の下の顔が、刹那、沈黙する。
そして、ややあって、再び問う。
「……それが、願いなのか」
ララは戸惑うように、かぶりを振る。
――――ホラ こんなにきれいになったよ ララ
――――ララ ずっと側にいてくれ
――――そして 私が死ぬ時 私の手で お前を壊させてくれ
――――僕が この二人の犠牲になればいいですか?
――――可哀そうとか そんなキレイな理由 あんま持ってないよ
――――僕は ちっぽけな人間だから 大きい世界より 目の前のものに心が向く
彼女は。
快楽人形の物語は。
――――ぼくのために うたってくれるの…?
――――ララ
――――大好きだよ
「……私、最後は、あの子のために歌えたの」
ララは、目を閉じて、最後の瞬間を想い浮かべながら、呟く。
「グゾルに会いたいけど、でも……わからない。
本当なら、今すぐこの心臓を取り出して、壊れてしまえばいいのかもしれない」
老いたグゾル。「変わっていく」彼の前で、ララはずっと「変わらなかった」。
最後には、変われたのか。
人形は、何かになれたのか。
「わからない」
怪人は、ただ見つめていた。
月光が、二人の間にある教会を照らし、その門の前に置かれた、聖母の像の―――眠る幼子に顔寄せた表情が、己がマスターの、少女の、人形の顔に重なる。
或いは、かつて彼を変えた女性……愛するものと結ばれ、幸せに人生を全うしたはずの、一人の女性の姿が。
或いは、彼の前で、少年の袖を握る、彼の姪の小さな手が。
あきゃきゃきゃきゃきゃ!!
馬車の軋むような笑い声が再び響いたかと思うと、いつの間にか怪人の姿は、夜の間に溶けるかのように消え去り――――ララのそばに、一人の男が立っていた。
豪奢な服に身を包み、長めの金髪に、険のある目。傲慢な笑みを浮かべた口元。
「わからない、か。まあ、それも面白い」
片手に鉄仮面を携えて、男は、ララに告げた。
「答えが見つからないのなら、探せばいい。
“バネ足ジャック”が、最後まで付き合ってやるよ、マスター」
教会の前、時は夜半、まだ月だけが、見下ろしている。
――――
【クラス】
アサシン
【真名】
ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド(ジャック・ザ・スプリンガルド)@黒博物館スプリンガルド
【パラメータ】
筋力C(E) 耐久D(E) 敏捷B(E) 魔力D(E) 幸運D(C) 宝具C
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適したスキル。
ただし、攻撃態勢に移るとランクは大きく下がる上、アサシンの場合は後述するスキル「跳梁する恐怖」もあって、怪人としての攻撃時には確実に己の存在を気取らせてしまうだろう。
【保有スキル】
跳梁する恐怖:B
暗殺者と言うよりは、出現と存在そのものによって人々に影響を及ぼす「怪人」の特性。異様な姿を現すと共に特徴的な甲高い笑い声を上げ、相手サーヴァントの敏捷値を下げた状態で対峙を開始する。また、魔術師や一般人に対しても、精神抵抗力に応じてショック状態のバッドステータスを付与する。このスキルの効果は、NPC含む周囲へのアサシンの姿や噂の流布によって強化される。
阻まれた顔貌:C
正史では遂に特定され得なかったバネ足ジャックの正体。狂人と称されるような振る舞いの数々を残した、傲岸不遜な若き貴族としての顔。同ランク分までの精神干渉を相殺する。
また、「バネ足ジャック」を装着していない状態において、アサシンのパラメータは()内のものに変化し、跳躍力や各種機構及びスキル「跳梁する恐怖」を失う代わりに、サーヴァントとしての気配を全く気取られなくなる。
精神防壁に、気配遮断の条件強化・正体隠蔽を複合したスキルとも言える。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。ロンドンを縦横無尽に跳び回り、不可解なまでに広い範囲で出現が噂された逸話からこのスキルを獲得している。
Cランクならば1日程度の現界が可能。
情報抹消:C
対戦が終了した瞬間に、目撃者と対戦相手の記憶・記録から、アサシンの「怪人としての外見及び特徴的な笑い声」を除く能力・挙動などすべての情報が消失する。たとえ戦闘が白昼堂々でも、カメラなどの機械の監視でも効果は変わらない。
【宝具】
『霧の都、月に跳ぶ怪人』(ブラックミュージアム・スプリンガルド)
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大補足:50人
夜の間に限り、アサシンは「仕切り直し:A」のスキルを追加で得ると共に、
・無数の建物や尖塔の幻
・青白い月光を帯びた霧
の二点をそれぞれ任意で出現・発生させることができる。
建物群、尖塔の幻影は地理感覚を狂わせると共に、アサシンとそのマスターのみが触れ得る足場となる。
霧は、対象を求めて指向性をもって広がり、触れた者の魔力を自動的に放出消耗させていく。また、サーヴァントであれば耐久値を1ランクダウンさせ、防御・遮蔽・回避系のスキル及び宝具の効果を減衰させる。
なお、この霧の効力は、対象が「怪人」の存在を強く意識しているほどに強まり、「バネ足ジャック」の名を看破している状況下において最大の補正を受ける。
霧に触れた誰に効果を与え、誰に効果を与えないのかは宝具の使用者が選択可能。
霧によって方向感覚が失われるため、振り切るにはランクB以上のスキル"直感"、もしくは何らかの魔術行使が必要になる。
後世の伝承・創作の中で、霧の撒く月下に数多の怪人が闊歩する魔都と化したロンドンの形象(イメージ)、その一角の再現。
【weapon】
バネ足ジャック:当時最先端の工学技術を応用した悪趣味なバネ足怪人の仮装。本来はなんら神秘性を持たない装備だが、都市伝説「バネ足ジャック」として人々に認識され恐怖されたため、相応の神秘を帯びている。人体を引き裂く強力な鉄の爪(本来は女性の衣服を掻き破るためのものだが)、銃兵隊を呑み込むほどの青い火焔の放射ギミック、さらにはスプリングの脚部による、代名詞とも言える驚異的な跳躍力・滞空能力を誇る。
【人物背景】
19世紀ヴィクトリア朝、切り裂きジャックの犯行よりはるか以前、ロンドン中の話題をさらった謎の怪人「バネ足ジャック」の正体にして、広大な領地を構える英国の若き侯爵。
狂人と揶揄されるほどに破天荒な放蕩貴族であるが、それは幼少期に家庭環境から負った孤独な心傷の反動によるもので、一人の女性との出会いをきっかけに彼は変わり始める。
最終的には、新たなバネ足ジャックを騙り連続殺人事件を引き起こしたかつての友人と人知れず戦い、彼女を守り抜いた。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。何がやりたいのかを見つけるまで、付き合う。
【マスター】
ララ@D.Gray-man
【マスターとしての願い】
わからない。グゾルと会いたい……?
【weapon】
なし。
【能力・技能】
自立稼働する人形。特殊な技能はないが、巨大な石柱を掴んで投擲できるほどの怪力は備えている。
その生命の根源として、神の結晶たるイノセンスを心臓とする。イノセンスはノアの洪水の時代より存在する神秘の結晶であり、加工によっては千年伯爵の生みだす兵器・AKUMAへの対抗武器ともなりうる未知の物質だが、この聖杯戦争においては基本的に魔力の源として以上の意味は持たないであろう。これが奪い去られると、ララはただの人形となってしまう。
【人物背景】
「神に見離された地」マテールにおいて噂されていた「亡霊」。
正体は、イノセンスによって命を持った快楽人形であり、何百年もの間、存在価値を果たせないまま孤独な時を過ごしていたが、醜さゆえにマテールへ放逐された少年・グゾルによって初めて名前を与えられる。
出会いから80余年、歳を重ねるグゾルと静かな時を過ごしていたが、イノセンスを巡る黒の教団とAKUMAとの戦闘に巻き込まれ、エクソシスト・アレン=ウォーカーらの尽力もむなしく、イノセンスを奪われてただの人形に戻ってしまい、グゾルも致命傷を負う。
アレンによって取り返されたイノセンスを心臓に戻されるも元の姿に戻ることはなく、死したグゾルの傍で人形として歌い続け、三日目の夜、最後のほんの刹那に、アレンへ感謝の言葉を告げて機能停止した。
【方針】
わからない。
投下終了になります。
皆さん投下お疲れ様です。自分も投下させて頂きます。
「戦争? 殺し合い? 全くもってくだらん。義に反する行いだ。私はこの戦を、否定する」
少女は凛として言い放つ。綺羅びやかな金髪と、真白い制服は彼女の高潔さをこれでもかと主張せんとばかりにはためいた。
そんな物言いを受け、対面に座する童女は溜息を漏らした。しかしそれでは決して向かい合った少女を嘲るような色が篭められてはいない。むしろ――姉妹を見守るような温かい感情が宿っている。
「ま、お前さんならそう結論付けるだろうと思った」
童女は小さな身体を揺らして薄く微笑んで見せる。その手には、童女の体型にはひどく不釣り合いな酒瓢箪がぶらさげられている。風紀の象徴とも言わんばかりの少女と、その振る舞いは対極の境地にあった。
されど。童女に現代人間社会の風紀は通じない。
なぜなら童女は、その小さな頭から捻れ伸びる双角が示す通りの人外存在。”鬼種”なのだから。
◇ ◇ ◇
クリステイアーネ・フリードリヒは騎士である。
親を慕い、日出ずる国に夢を見て、和を学び、人生の宝に値する友を得た武士である。
何よりも正義を重んずる気高き乙女である。
たとえその融通を殺した正義が不和を生む事を顧みたとしても。
信じ続けた親に反する事になったとしても。
それでも彼女の心に義の心が絶える事は無かった。
故に――記憶を取り戻し、聖杯戦争の運びを知った彼女は真っ先にこの戦争を否としたのは、自明の理であった。
「他者の命を贄に得るべき願いなど――この私には存在しない。他の誰かにもあってはならない」
手元のレイピアは、偽りの世界にあってなお彼女の寄る辺として銀色の光を放つ。
それを見やって、サーヴァントはあえてクリスの「宣誓」を遮るように口を開いた。
「成らば人間。お前はその義を以って何を為す」
童女の姿から放たれる声色は決して子供のそれではなく、平安の世に憚った鬼としてのそれであった。
その鬼の言葉をクリスは動じる事なく聞き入れ、座する己がサーヴァントに向け力強く宣誓した。
「――自分はこの戦いを止める。こんな邪道は、地獄は、義に外れた理が世を司るなど、この私が認めんっ!」
この偽りの世界にも居た、愛すべき仲間たち。
その何れもが、例え偽物であったとしても。自分の様に正面から矛先を向ける形になるまいとも。
同じくしてこの戦争を肯定はしまいという確信が、クリスの確固たる信念を固めていた。
「ん。……ならそうしようじゃないか、マスター」
「え」
瓢箪の酒を一口。しかしサーヴァントはそんな力強い言葉を聞き、何でもない風に返すのだった。
呆気にとられたクリスは思わずぽかんと口を開く。双方の間にあった先ほどまでの緊張感は、とっくに霧散していた。
「いや、”え”ってさ。今のがただのポーズって玉でもあるまいに。どうしたよ」
「だって、内心こんなことを言ったら怒られると思ってたんだ」
すっかり勢いを削がれた風にクリスは小さく漏らした。彼女の喜怒哀楽を見て、その数倍の時を生きる鬼はやはり歳相応だなと笑う。
「怒られる、ねぇ。あっはっは、お前さんそれでもあんな事を言った訳かい」
「……ああ。例えそれがお前の意にそぐわない物だとしても、自分は信念を曲げて義に反する訳にはいかないからな」
どこかバツが悪そうに口ごもるクリスの頭を、愛おしそうに小さな手が撫ぜる。
立場が逆だと、見てくれの構図に赤らむ彼女を、この鬼はいたく気に入っていた。
「それが良かったのさ、マスター。お前の信念……というか、生き様がな。それだけで私がお前さんの義を全うするには事足りる」
「……萃香」
「アサシン、と呼ぶがいい。余り嬉しくない称号だが、真名を漏らして良い道理も無いよ」
慈しみに満ちたその言葉を、クリスは複雑そうな顔で受け止めてみせる。
ドイツで生まれ育った身ながら日本人以上に日本を愛し、その道に限っては軍師の渾名を持つ友に引けを取らぬ聡さを持つ彼女は、この鬼の本質を既に悟っていた。
「……『情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを』……か」
大江山の鬼の辞世の句。鬼のサーヴァントの最期を語る言葉が紡がれる。
鬼はその言葉を、どこかむず痒そうに聞いていた。
「言ってしまえば、そんなもんは我儘に過ぎないんだがな。しかし、よく知ってることだ」
「日本の文化はだいたい知ってるんだ」
えへんと胸を張るクリス。それ以外の成績を顧みれば決して無心に威張っていいものではないのだが。
まあ、趣味を磨くことは決して悪ではなかろう。今は成績を気に病む余裕のある時でもなし。
「邪道を以って征する――裏返せばそうするしか無かったって事なんだよ。
手を選んでいたら私は殺せなかった。謀を用いてでも首を狙われるだけの事を私はしてきた。
だからそれは畜生にも劣る人面鬼心にとり当然の報いで、死に様に今更は未練はないさ」
鬼は、平安の世の生に思いを馳せる。
その名を酒呑童子。源頼光に果たしてその首級を取られる事となった、鬼の頭領。
マスターであるクリスにとり、悪と言える伝説の持ち主は、昔話をするように自らの末期をそう語った。
「マスターが怒られるって思ったのは、私が悪い鬼だから殺し合いを望んでる。
もしくは憤死に未練を残して叶えたい願いがある、という様なもんを想像してたからだろう」
「ひ、否定はしない」
「怒らないってば。むしろ私の方がお前に怒られそうな生を歩んでるもんだがね」
鬼は苦笑いしながらマスターを諭す。すっかり保護者と子供の上下関係が出来上がっているが、こればっかりは年季の違いが生まれた摂理というものである。
「でも、ありゃあ全部私の中じゃ終わった話だ。今更どうこうしようって気は無い。
そもそも私は、こっちに呼ばれる以前に第二の生を歩んでいたからな」
「幻想郷って奴だったか? そっちは自分、聞いた事無いんだが」
「ま、何しろ幻想だからねぇ。現実に生きていたマスターが知らなくて当然の世界だよ。文字通りのな」
鬼は――酒呑童子でない、もうひとつの名を「伊吹萃香」としていた。
むしろこちらこそが鬼の本質であり、大江山の絵巻は現世の歴史に置き去りにしていたはずだった。
あるいは伝説としての「酒呑童子」が、幻想郷に生きる鬼としての「伊吹萃香」と混濁しこのサーヴァントを生んだのかもしれなkった。
しかし鬼はその答えには拘ってはいなかった。故にクリスには未だ語っておらず、その時が来るとすればこの不透明さを解明する事が是となる時だと考えている。
「そんな訳で――私は未練を晴らすため、とかじゃなくてさ。
お前さんの義を、『横道なき道』を導いてやりたくてここにいる……って事になる。
……今更何を賢人ぶって。とか思ってくれて全く構わないよ。偉そうに言ったところで、これは単なる私の意地に過ぎんからな」
「……いや。そんな事を思うものか」
儚げに語ったその双眸を、義を宿した少女は蔑む事無く見据える。
畏れ深き伝説を纏った小さな手をクリスは両手で掴んだ。
「アサシンが過去にした事が何であれ。今ははこうして志を同じくする仲間に違いはない。
嘗ての悪鬼道理に暴虐を尽くそうという気がある筈でも無いんだろう?
だったら、自分はお前を否定する理由などありはしないさ」
萃香を掴む手に宿った熱。その感覚を、萃香はどこか懐かしげに感じていた。
「この手を疑う事なく握り返す事が出来る。矢張り、こんなに嬉しい事は早々無いな」
「改めて願い入れる。自分に力を貸してくれ、酒呑童子……いや、伊吹萃香」
萃香は感慨深げにその「願い」を聞き入れた後、主の手を握り返す。
悪逆無道を尽くした鬼神が、正々堂々を尽くす人間の矛となる覚悟を結ばんが為。
「応さ。任せよマスター。お前の義は私が守るでな。
もとより私は、そのためにここにいるのだから」
【クラス】アサシン
【真名】伊吹萃香@東方project
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運:C 宝具:E
【クラススキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
『密と疎を操る程度の能力』の霧状化に寄る運用。
【保有スキル】
怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
源頼光によって首を飛ばされてもなお、襲いかからんと悪あがきをした。
密疎操作:EX(A)
あらゆる存在の密度を萃め、散らす力。
自身の身体や岩、意識などその干渉対象は多岐にわたる
ただしこれは「伊吹萃香」としてのスキルであるため、「酒呑童子」が混ざっている
アサシンが使用する場合には干渉に著しい制限がかかる。
伊吹瓢:C
アサシンが持つ瓢箪。中の「酒虫」のエキスによって、
入れた水を酒に変換する事で、水がある限りはいくらでも酒が取り出せる。
※訂正
宝具:E→宝具:A
【宝具】
『大江山百万鬼夜行(おおえやまひゃくまんきやこう)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
大江山の鬼の頭領たる酒呑童子、蜜疎を司る伊吹山の鬼たる伊吹萃香、両方の力が顕現した固有結界。
展開される心象風景は酒呑童子の支配した大江山と、伊吹萃香の起こした異変の象徴である宴会場が混じり合っている。
結界の内では茨木童子や星熊童子等、嘗ての配下の鬼たちが召喚されその暴虐を以って仇なす者に襲いかからんとする。
ただしこれらの軍勢は酒呑童子の記憶を核とし、伊吹萃香のに密疎を操る能力を一時的に開放、
応用して再現した事象再現であって独立サーヴァントの召喚を行なっている訳ではない。
そのため展開と維持に多大な魔力を擁するため、派手な力の割にアサシンらしい慎重な運用を必要とする。
また、この顔ぶれには伊吹萃香の記憶が少なからず影響している点があるようだ。
『神便鬼毒酒(しんべんきどくしゅ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人が飲めば千人力の薬となるが、鬼が飲めば飛行自在の神通力を失うという神秘の酒。
アサシンが持つ伊吹瓢の酒を、更に変質させて盃に満たす事で使用出来る。
源頼光が酒呑童子を討伐する際に神から授けられ、これを飲んだ酒呑童子は毒により動けなくなる。
鬼に属する存在が摂取するとすべてのランクがDランクまで低下し、魔術の類が封じられる。
一方で純粋な人間が摂取すると、身体能力だけならサーヴァントと相対する事も可能となる。
但しどちらも効力は短時間の上、人間が摂取すると大きな副作用を齎す事となる。
【人物背景】
平安の京で暴虐を尽くした最凶の鬼頭領。
正面切り我が道を往くことを信条とし、神便鬼毒酒による謀で源頼光に討たれた時は
「情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを」と恨み言を投げかけた。
または幻想郷に住まう、幻想と思われいた鬼種のひとり。
宴会が減った事を不満に思い、能力を使って宴会が繰り返される異変を引き起こした。
アサシンはその両方の性質が混ざった特殊な存在。
正確に言えば「伊吹萃香」として召喚され、そこにサーヴァントとしての性質として
「酒呑童子」が交じり合ったという形になっている。
【サーヴァントとしての願い】
マスターの「義」を導く
【マスター】
クリステイアーネ・フリードリヒ@真剣で私に恋しなさい!
【マスターとしての願い】
殺し合いを止める。
【weapon】
・レイピア
競技用のレイピア。フェンシングを嗜むクリスは常にこれを携帯している。
【能力・技能】
人間としては非常に高い戦闘能力を誇り、武術の達人程度では相手にならない。
素手のみによる格闘術も当然備えており、人間としては相当に強い部類である。
が、川神の武人の中ではそれほど格付けとしては高くはならない。
【人物背景】
川神市の仲良し集団「風間ファミリー」の新顔。ドイツ人。
正義を重んじるが勇敢な少女だが融通が聞かず、空気が読めない。
そのせいで仲間と衝突する事もあったが、過ちを認め反省して成長しつつある。
【方針】
聖杯戦争を止める方法の模索
以上で投下終了です。
投下させて頂きます。
前触れもなく全てを思い出して、赤座あかりは長い間呆けていた。
いつも通り学校に行って、ごらく部の友人と変わりない日常を満喫する。家に帰って家族と過ごし、夜には一日の終わりを迎える。
ただそれだけの、何の変哲も無くてもかけがえのない日常だった。
今となっては造られた偽りの世界だとしても、手放しがたい平和だった。
それが唐突に、聖杯戦争などという血飛沫と幻想を混ぜこぜにした話に遮られて平静でいられる中学生などそうはいるまい。
どうすればいいのかも分からないで、今日もただただ。ぼんやりと自室の部屋を開いた。
「ただいま……って、えぇーっ!? 何してるのセイバー!?」
そして自室の片隅で震える少年を見て、さっきまでの消沈ぶりをどこへやらとばかりに見事なリアクションを見せるのだった。
◇ ◇ ◇
「そっかぁ……お姉ちゃんに見つかりそうになったんだね……」
「あぁ……実体化したのはほんの一瞬だってのに、なんで男がいたって分かるんだよあの人は」
うんうん、と同情しながら頷くあかりにセイバーは悪鬼の類でも見たように額に手を当てていた。
マスターと出会い、聖杯戦争の話していた途中にセイバーはこの部屋で一度実体化をして見せたことがある。
霊体化との違いを説明する為にやった事であってほんの数秒に満たない事だったのだが、つい先ほどあかりの部屋に入った姉はどういうわけかセイバーの痕跡を察知したのだ。
正確に言えば妹が部屋に男を招いたのではないか、と疑問を持ったぐらいであってサーヴァントの存在を見ぬいた訳ではないのだが。
とにかくその超人じみた能力と鬼気迫った反応に、セイバーはサーヴァントながらも一抹の恐怖を禁じ得なかった。
「ホントに舞台装置かよってぐらい人間離れ――――わ、悪い。こんなこと言うべきじゃなかったな」
舞台装置、という言葉に目を落としたあかりを見て、セイバーは慌てて取り繕う。
(あかりからすれば)ちょっと過保護だけど大事な家族が、この世界においては偽りの存在でしかないことはやはり一般人である彼女に暗い影を落としていたのだ。
「ううん、大丈夫だよ。ちょっと戸惑ってるだけで……また信じられないっていうか」
セイバーの言葉に顔を上げて、あかりは何でもない風に笑った。やはり良い子だと感ずると共に、どことなくセイバーは罪悪感を覚える。
マスターを自分が嘗て喪ったあの少女の代わりと見なしてしまいそうで。
「そういえば! 京子ちゃんたちに聞いてみたんだけど、やっぱりあかり存在感ないんだって……。
うう、どうせウソだったらちょっとぐらいあかりに気づけるようになってくれたっていいのにっ」
そうしてなお、偽りの日常を兄に話すように楽しげに語るあかりの姿にセイバーは儚さを感じずにはいられなかった。
このまま聖杯戦争に首を突っ込む事になれば、あかりはほぼ間違いないなくその人の良さからあえなく命を落とす事となるだろう。
「……マスターはよ。聖杯に願う事ってあるか?」
だからこそセイバーはあかりの雑談ををあえて断ち切った。それは情けのない残酷な行いであると自覚してなお、マスターが目を向けるべきは平和な日常でなく、命の遣り取りを行う戦争なのだと思ったから。
虚を突かれたあかりは、不具合を生じたパソコンのように動きを止める。ややあって、か細い声を不安げに漏らした。
「………………わかんない、かな」
それは嘘でもないし、本心でもないんだろうとセイバーは悟る。
聖杯にかける願いは、おそらく彼女にはある。元の世界に戻るというだけかもしれないし、死者の蘇生かもしれない。あるいは影の薄さを克服したいという俗な願いかもしれない。
そして彼女は、それを聖杯戦争を勝ち抜くという行為と天秤ににかけ。迷っているのだろうと考えた。
「そっか……じゃあ、それを見つけないとかな。でないとサーヴァントの俺は何やったらいいか分かんないしさ」
「ご、ごめんね」
苛々していると思われたのか、あかりは申し訳無さそうに謝罪した。
じれったさを感じていないといえば嘘になる。しかし彼女が迷う気持ちを理解できないセイバーでは無かった。
―― 戦争のない世界以上に幸せな世界なんて……あるはずがない!
嘗て自分が叫んだ言葉が蘇る。
戦わなければ、守りたいものも守れない。そう信じて戦い続ける事が出来たのは、自分が戦争の中を生きたからだ。
しかしあかりは違う。セイバーが望んだ平和な世界を生き、そして戦争の中に引きずり込まれた存在だった。
セイバーはそんな存在がここに在る事に憤りを感じていた。だからこそ彼女の力になってやりたいとも思う。
そのためには、自分のように戦う事を理解させなくてはならないと思っていた。何を望むにも、戦わなくちゃならないことを。
それに――セイバーとて、聖杯にかける願いにおいて迷いを持っているのは確かなのだ。
「もう戻らない、家族と過ごした幸せな日々」。自分が戦いを終えてなお、欲していたもの。
戦火に消えた家族。守れなかった少女。セイバーはそれを聖杯にかけても取り戻したいと思っている。
そして同時に、平和を守るための戦いを謳いながら独り善がりに願っていいのかと迷ってもいた。
戦いに身を置いていた頃のセイバーなら、ほぼ間違いなく迷いなしに聖杯を求めただろう。
そうとはならず迷いを持っているのは、戦いを終えて憎んだ相手と和解を果たした事。サーヴァントであること。そして、マスターとの出会いがあったから、なのかもしれない。
――答えを出さなきゃな。
自分の迷いについても。マスターの迷いについても。
セイバーはマスターの少女を前に使命のようなものを帯びる。
それは騎兵ではなく、「最優」たる剣士のクラスとして召喚されたがゆえ、なのかもしれない。
【クラス】
セイバー
【真名】
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【パラメータ】
筋力C(A) 耐久D(B) 敏捷C(A) 魔力C(B) 幸運B 宝具A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
ビーム兵器を用いた戦いをこじつけ気味に引っ張った上で、クラス補整をかけてようやくこのランク。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
MSという兵器を駆り戦場を駆け抜けたエースとしての活躍がランクを押し上げている。
【保有スキル】
対英雄:B
英雄を相手にした場合、そのパラメーターをダウンさせる。
ランクBの場合、相手のパラメーターを全て2ランク下の物に変換する。
反英雄には効果が薄く、1ランクダウンとなる。
世界を変革した英雄、キラ・ヤマトと相反し一度は撃墜せしめた逸話から得たスキル。
直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
コーディネイターとして、パイロットとしての経験から生じたスキル。
矢よけの加護:A
飛び道具に対する防御。
視界外の狙撃手からの攻撃であっても投擲武装であれば、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
【宝具】
『蒼天貫く運命の業火』(デスティニーガンダム)
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
自身を嘗て搭乗した兵器「デスティニーガンダム」と定め、一体となって戦場を舞い飛ぶ。
デスティニーガンダムのサイズはシンを一回り大きくした程度であり、兵器であるMSより小さく言わば「パワードスーツ」に近い。
これはMSに騎乗する騎兵ではなく、剣士のクラスとして召喚されたために得た力である為。
自身のランクをステータス欄の()内まで上昇させ、高エネルギー長射程ビーム砲、フラッシュエッジ、パルマフィオキーナ
といったデスティニーガンダムに搭載される兵器の数々が使用可能となる。
発動にこそ魔力を要するものの、『ハイパーデュートリオン』の定義により維持による魔力切れを起こさない。
ただし宝具の損傷、兵装の損失次第では、再使用や修復・復元に魔力を必要とする。
また兵器としての側面を持つため、内部を異次元空間の巨大MSとしてマスターをサイズを無視し収容する事も可能。
『無毀なる湖光』(アロンダイト)
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大補足:1人
円卓の騎士ランスロットが持つ神造兵装と名を同じくする、デスティニーガンダムに装備された大型ビームソード。
対MSのみならず艦船においても破格の威力を持ち、斬艦刀の別名を持つ。
ランスロットのそれとは当然ながら性質は全く異なるが、その名前が付けられている為類似した能力が付随されている。
全てのパラメーターを1ランク上昇させ、近代兵器及び自身の倍以上のサイズを持つ存在に対して追加ダメージを負わせる。
この宝具は『蒼天貫く運命の業火』の使用中にのみ開放出来る。
【weapon】
宝具未使用時は拳銃のみ。
【人物背景】
コズミック・イラ世界で戦争にその運命を大きく動かされた少年。
機動兵器モビルスーツを駆るパイロットであり、エースである。
戦火によって家族を失い、その無念から守る力を求め軍人としての道を選ぶ。
その後は戦いの中で先輩との敵対、とある強化人間の少女との出逢いと死別等
さまざまな出来事を経て最終的には親友と共に最後の戦いに望んだ。
【サーヴァントとしての願い】
家族とステラの蘇生。あるいは平和を守ること。
【マスター】
赤座あかり@ゆるゆり
【マスターとしての願い】
わからない。元の世界に戻りたいが戦いたくはない。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
特にはないが、影が薄い。生来の性格の良さによるものなのか、体質なのかは謎。
【人物背景】
七森中のごらく部のひとりであって中学1年生。
慈愛に溢れ心優しい、気配りの出来るとっても良い子で人を傷つける事を好まない。
しかしどうにも存在感が薄く、存在を忘れられたり空気扱いされたりして本人も気にしている模様。
そのためか、優しい性格の裏にチヤホラされたいという願望が無いわけではなかったり。
ちなみに(事故に巻き込まれたりはするが)特に女性同士の恋愛に関心や接点がある訳ではない。
【方針】
どうしたらいいのかわからない。
以上で投下終了です。
皆様投下お疲れ様です
私も投下させてもらいます
「晴〜一緒に放課後一緒にアイス食べに行かないっすか?」
「ごめんね、晴はちょっと用事あるから……」
金髪の少女が晴と呼ばれる馴れ馴れしく声をかけてくる。
晴と呼ばれる少女は申し訳に申し出を断り、教室の扉に向かっていく。
「おい走り、そんな暇があったら勉強しろ。そろそろ定期テストだぞ。長である私のクラスで赤点は出させないからな」
「ええ〜勉強なんてめんどいっすよ」
「伊助もそろそろテスト勉強しようかしら」
「どうした伊助様?勉強しようだなんて頭でも打ったか?」
「殺すわよ春記♥パパが今度のテストで赤点回避したら好きなもの買ってくれるって言ってくれたのよ」
「赤点回避で好きなもの買ってくれるって、相変わらず甘やかされてるな伊助様」
本当であれば雑談に参加したかったが、やらなければならないと決めた用事があるためクラスメイトの会話を聞きながら名残惜しそうに教室を出て行った。
彼女が申し出を断ったのには理由。それは皆に贈るストラップを作るため。
本来ならクラスで初めて顔を合わせた時に友好の証しとして渡す予定だったがしかし手づくりで作成していることもあり、予想以上に時間が掛かってしまう。
いっそのこともっと手を込めてみようとクラスメイト一人一人の特徴を取り入れたものを作ろうとしたがそのせいでさらに時間を費やすことになった。
晴は街の雑貨屋で材料を購入した後、寮の自室に帰りストラップ作成に努める。
皆の喜ぶ顔を思い浮かべながら精を出す。
晴が所属しているクラスは比較的に仲が良かった。
まるで一度は共にクラスで過ごしたかのように相手のことを理解できていた気がした。
「できましたー!」
晴は作業が終わった解放感からか勢いよく背もたれにもたれ脱力した姿勢をとる。
ひとしきりリラックスをした後に今作ったものとすでに作ったものを机に並べ念のために仕上がりをチェックする。
「武智さんに、神長さん、春記さん、しえなちゃん、生田目さん、柩ちゃん、深夜ちゃんに真昼ちゃん、伊助さん、英さん、鳰」
クラスメイトに渡すものを一つ一つチェックをしたのち完成品をクラスの皆に渡すために箱に詰める。
そこで晴はある強烈な違和感を覚えた。
作ったストラップは11個、クラスメイトの人数は11人。
数は合っているはずなのに何故か一個足りない気がしてならなかった。
その時覚えのない映像が蘇る。
殺意を宿した瞳で襲い掛かってくる今のクラスメイト。
そのクラスメイトから自分を守るために隣に立つ青髪の少女。
晴はすべてを思い出した。
今生きている世界は偽りであると。
今のクラスメイトは自分が知っている存在とは似て非なる者であること。
そして聖杯戦争のこと。
「そこにいるのが晴のサーヴァントさん?」
晴は椅子にかけたまま独り言のように声をだす。
先ほどまでは分からなかったが自分の傍には何かが居る。そんな確信めいた予感があった。
すると晴の後ろから突如人影が現われる。
髪型は黒のセミロング、上下のサイバージャージに身を包んだ女性であり、その胸は平坦だった。
「ドーモ、マスター=サン。セイバーです」
「初めましてセイバーさん、一ノ瀬晴です」
セイバーは手を合わせて奥ゆかしくアイサツする。
晴も椅子から立ち上がり振り向いた後、ペコリと頭を下げてあいさつをする。
一ノ瀬晴にアイサツをしたサーヴァントはセイバーのクラスで召喚されたニンジャであった。
そして数秒間沈黙が場を支配する。
晴はサーヴァントという存在にどのような会話すればよいのかと悩み、セイバーもどちらかと言えば口下手な方なので会話のきっかけをきり出せずにいた。
「えっと……聖杯戦争についてのことは思い出した?」
「……うん。マスターとサーヴァントが一組になって複数の組が戦い合って最後の一組になった者の願いが叶うんだよね」
セイバーの問いに晴は一拍間を置いた後に俯きながら答える。
晴は表面上平静を保っているが心中は動揺していた。
幼少期から命を狙われ続け、12人の暗殺者に命を狙われた黒組を卒業し、命を狙われることなく、兎角と一緒に日向の道を歩けると思った。
しかし現実はどうだ?
今度は黒組以上に過酷な舞台で殺し合いを強要されている。
セイバーはニンジャ観察力で動揺の様子を感じ取りながらも話を続ける。
「マスター=サンは何を願うの?」
願い?自分の願いとは?その時ふと晴の家族の姿を思い出していた。自分が笑って生きるために命を犠牲にしてまで守ってくれた家族の姿を。願いで家族が生き返るかもしれない。それなら。
「生きて帰ること……晴は生きて元の世界へ帰ることを願います。兎角と一緒にあの世界で生きることを」
しかし晴は家族の生き返りを願いにしなかった。本当に生き返るかもしれない、しかし家族は自分が笑って生きるために命を犠牲にしてまで守ってくれた。
だからこそ一ノ瀬晴は今も笑って生きている。
だが、もしかしたら生き返らせたら家族の行為を無碍にしてしまうのではないかと晴は考えていた。
その考えは自分の傲慢なのかもしれない。だが多くの死を見続けてきた晴だからこそ生きること尊さ、そして死者が生き返ることはあり得ないと理解していたのだ。
「トカク=サンって?マスター=サンの知り合い?」
セイバーは兎角という言葉を発した瞬間に今まで険しかった晴の表情が一瞬和らいだのをニンジャ観察力で察知し問いかける。
「うん。晴の一番の友達。一緒にお買いものをしたり、映画観たりして、もっと兎角と一緒に過ごしたい。だから晴は元の世界に帰ります」
晴の言葉を聞いてセイバーは生前の友人であるアサリのことを思い出していた。空っぽだった自分にユウジョウを入れてくれた一番の大切な友人を。
ネオサイタマにあるアタバキ・ブシド・ハイスクールに転校し、転校生である自分に優しく接してくれたのがアサリだった。
その後親交を深めていったが、ニンジャソウルが憑依したことで自分の周りには悪意のあるニンジャが群がってくる。
そのことでアサリに害を及ぶことを恐れ、奥ゆかしくアサリの前から姿を消した。
短い時間だったがアサリと過ごしたオリガミ部での日々、そしてタラバ―・歌カニでのあの時間は自分にとっては宝物であり、一生忘れることはないだろう。
その後偶然にもアサリと再会することができたが、積極的には自分からアサリと会いに行くことはない。またアサリを争いに巻き込んでしまうことを恐れているからだ。
時々思うことがある。もし自分にニンジャソウルが憑依しなかったら?
そうなれば気兼ねなくアサリと会うことができ、もっと長い時間アサリと共に過ごせたのかもしれない。
そして目の前に一番の友人ともっと交流を深めたいという少女が自分の目の前に現れた。
自分はニンジャであるゆえに一般人である友人と距離を置かざるをえなかった。でもこの少女は元の世界に帰れば気兼ねなく一緒に過ごせる友人が待っている。
ならばこの少女には自分ができなかったことをやってもらいたいヤモトはそう願う。
「じゃあ聖杯戦争を勝ち抜こう。アタイがやるから、マスター=サンは見ているだけでいい」
ならばすべての参加者を倒して晴を元の世界に返すのみ。ヤモトは戦いに向けての覚悟を決めたが。
「晴は殺し合いをしません。他の参加者に会って戦わないように呼びかけます。そしてみんなで力を合わして元の世界に帰ります」
帰りたいが殺しあわない。このルールを無視した無謀でワガママと言える提案だが、晴には晴なりの考えがあった。
これはかつて自分が体験した10年黒組のシステムに似ている。報酬を求めてターゲットの晴を殺す。違いは自分一人を殺すか、自分以外のものを全員殺すかの違い。
もし参加者を全員説得して戦いがおきなければそうなればゲームは成立しない。そうなれば?
ゲーム不成立で参加者は強制的に元の世界に返されるかもしれないと考える。
しかしこれはなんの根拠もない晴の希望的推測だ。そのようなことになることはほぼ0パーセントである。それでも晴は他者を殺すことを拒絶する。
しかしセイバーは晴の考えを理解できなかった。大半の参加者は願いを叶える為に積極的に殺し合うだろう。その中で殺しあわず説得する?何より優勝する以外に元の世界へ帰る方法があるのか?ヤモトは問い質せずにはいられなかった。
「もし他の参加者が殺す気で襲ってきて、逃げられない状況だったら?」
「……戦います」
「もしどうやっても聖杯戦争で勝ち抜く以外に元の世界に帰る方法がなかったら」
「……最後の一人になるまで勝ち抜きます」
晴は険しい表情を作りながらもはっきりと口にして意志を示した「戦う」と。
命を狙われ続けたからこそ命の重さを理解しており、他者の生存を願っている。だからこそ戦わないという方針をセイバーに告げた。
ただ極限状態であれば、戦い相手の命を奪うことを辞さない。家族や犠牲になった人たちのためにも晴は最優先事項を自分の生存であると位置付ける。
「わかった」
ヤモトはしめやかに頷く。晴の意志を肯定するように。そして。
「アタイがアナタを守る」
ヤモトにはサーヴァントとしての願いは無かった。ただ晴と出会って願いができた。
晴が元の世界へ帰るまで守り抜く。そして晴が友達と一緒に幸せに過ごしてもらう。それが今の願い。
「でもそれは本当に本当の最後の手段。晴は諦めが悪いから!」
そう言うと晴はヤモトに満面の笑みを見せる。自分は大丈夫とセイバーを安心させるかのように。
それの笑顔を見たヤモトも微笑み返す。そして晴に感心していた。
殺し合いしか手段がない状況で他者の生存を考える優しさに。もしこの場にアサリが居たら晴と同じような行動を取っていたかもしれない。
だが極限状態であれば他者を殺して自分が生きると決断的に宣言した。晴から発するアトモスフィアから口だけではなく本当に実行するだろうと予測できる。
そしてもし晴が言う本当に本当の最後の手段を取らざるえない状況になったら。その時は自分がすべてやろうと決意する。
晴に手は汚させない。自分はニンジャで、彼女はモータル。手を汚すのは自分だけで充分であると。
「じゃあ改めてよろしくお願いね。セイバー」
『アナタを守る』このセリフに懐かしさを覚えながら、晴は笑みを浮かべて手を差し出す。友愛の意味を込めて、これから二人で頑張ろうという意味をこめて。
「よろしくおねがいします。マスター=サン」
ネオサイタマには握手の文化はないが、晴から感じるアトモスフィアから好意めいたものを感じ取れたので恐る恐る手を伸ばす。そしてヤモトの手を晴は握りしめた。
「よろしく。でも呼び方がマスターじゃなくて晴って名前で呼んでほしいな」
晴は提案するがヤモトが住んでいたネオサイタマにおいて人物の呼称は名字の後に=サンをつけるのが原則である。=サンをつけずに、さらに名前で呼ぶという行為は晴が考えている何十倍以上に失礼な行為なのである。
ヤモトは晴が一ノ瀬晴と名乗っていたのを思い出し、名前が晴ということは名字は一ノ瀬であると仮説を立てた。
「じゃあ……イチノセ=サンで……」
ぎこちなく自分の名字を呼ぶヤモトの姿がおもしろかったのか、晴はクスクスと笑う。
「晴でいいのに、それでセイバーは本当の名前なの?」
「セイバーはクラスの名前。本当の名前はヤモト・コキ。でも真名が相手に知られることは実際アブナイ。だから人前ではセイバーと呼んで」
「うん。わかったよ。セイバー」
セイバーと会話を弾ませながらも晴の心は不安が渦巻いていた。
黒組で生き残れたのは偶然が重なった結果である。
一歩間違えば殺されていた場面はいくらでもあった。
今度は聖杯戦争という黒組の暗殺者達がかわいく見えるような圧倒的な戦闘力を持つものが命を狙ってくる。
正直恐怖で押しつぶされそうになりそうだった。
しかしヤモト・コキが自分の傍にいる。
自分を守ってくれた東兎角と何処となく似ているサーヴァントがいる。
それだけで何とかなりそうな気がしていた。
晴には一種の懸念があった。
出会ってから少しだけの時間だがヤモトの人柄に好意を感じており、ヤモトも自分に敵意は向けていないと感じていた。
しかしその意志がヤモトの本来の意志ではなかったら?
―プライマー能力―
本人が無意識に他人を魅了し、操る能力。晴はその能力を持っていた疑いがあった。
その能力で家族を操りその身を犠牲にさせることで幼少期を生き残り、黒組でも一番の友人である東兎角を操り自分を守らせたのではないか?その疑念に晴は苦しんでいた。
だが東兎角は晴がプライマー能力を持っていないことを証明することにある行動を取った。『プライマーで操作されている人物がプライマー能力者を殺すことはできない、もし殺せればプライマー能力で操られていることではない』
そして東兎角は晴の胸の急所をナイフで刺すことに成功する。
だがそれは東兎角が考えるプライマー能力の否定である。
晴が兎角を操って無意識に急所を刺しても生きられるような場所に刺したのかもしれない。
手加減して刺したのかもしれない。
それを証明する手立てはない。故にプライマー能力の存在を証明することは誰にもできなのである。
晴は兎角が苦渋の想いで証明した結果を信じている。
それでも自分のプライマーがヤモトに作用しているのではという考えを完全に拭うことは出来なかった。
だが晴は信じる。自分にはプライマー能力はなく、女王蜂と働き蜂のような関係では無く、兎角と同じような信頼関係を築けることを。
こうしてひとりの少女とひとりの守護者の物語が始まる。
【クラス】
セイバー
【真名】
ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー
【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏俊B 魔力D 幸運B 宝具C
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する守り
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力
騎乗:E
騎乗の才能。しかし騎乗に関する逸話がないため申し訳程度
バイクや自動車を乗りこなせる程度のスキル
【保有スキル】
サクラ・エンハンスメント・ジツ:A
ユニーク・ジツの一つ。物質にエンハンスメントを込めることでサクラ色に輝き、只の道具でもサーヴァントにダメージを与えることも可能になる。またある程度の軽い物質ならサイキックめいて操作することが可能
心眼(真):C
カラテ、ニンジャ感覚、数々の戦闘の経験によって培われた洞察力
窮地において自身の状況と敵の能力把握し、その場に残された活路を導き出す戦闘論理
アイサツ:D
アンブッシュで相手を仕留めきれなかった際、自分の名前を名乗らなければならない。
名乗らない場合にはステータスが大幅に下がる。
ニンジャにとってアイサツは絶対である。古事記にもそう書かれている。
魔力補給:D
スシを補給することにより通常の食事より多くの魔力を回復することができる。
特にオーガニック・スシの大トロは普通のスシより多くの魔力回復が見込める
【宝具】
『折紙誘導弾(オリガミ・ミサイル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ1〜50 最大補足人数:1〜10
ヤモト・コキの象徴的なジツが宝具化したもの。
オリガミにサクラ・エンハンスメントを込めてツル、紙飛行機などの形に折りそれを操作して相手にぶつけるジツ。オリガミはぶつかると爆発する。
この宝具は霊的な存在には対しては多大な効果を発揮する。
普段は紙が無ければオリガミ・ミサイルは使えなかったが英霊として召喚されたことにより自分で紙を作りオリガミ・ミサイルを使うことが可能になった。
但し、通常の普通の紙にエンハンスメントを込めてオリガミ・ミサイルをぶつけるのに比べて魔力消費は多くなる。
『折紙桜色蝶(サクラ・エンハンスメント・デバフ)』
ランクC 種別:対人宝具 レンジ1 最大補足人数:1
オリガミ・ミサイルが違う形に変化したジツ。
蝶々に形になったオリガミが相手に纏わりつき、相手の攻撃の射線上に蝶があり破壊された場合は小爆発をおこし勢いを削ぐことができる。また蝶が破壊された様子からヤモトの培ったカラテによって攻撃の先読みを容易にする。
また蝶が纏わりついた物質はヤモトによってある程度の操作が可能。武器に纏わりせれば攻撃の軌道を変えることができ、さらに相手の得物も奪うことができる。
この宝具を使用することで武器を持っているサーヴァントは筋力、敏俊のステータス、近接戦闘に有用なスキルのランクがワンランク下がる
普段は紙が無ければオリガミ・ミサイルは使えなかったが英霊として召喚されたことにより自分で紙を作りオリガミ・ミサイルを使うことが可能になった。
但し、普通の紙にエンハンスメントを込めるのに比べて魔力消費は多くなる。
【weapon】
カロウシ、ナンバン
刀匠キタエタの逸品たる双刀
【人物背景】
ある学生の自殺に巻き込まれ瀕死になった際にシ・ニンジャのソウルが憑依してニンジャとなる。ニンジャになったことにより運命は大きく変わる。多くの人と出会い別れながらも人間と成長し、マッポー都市ネオサイタマで懸命に生きていく。
【サーヴァントとしての願い】
願いはなかったが、晴と出会い晴を元の世界に帰すことが願いになる
【マスター】
一ノ瀬晴@悪魔のリドル
【マスターとしての願い】
元の世界へ帰る
【能力・技能】
戦闘能力はないが数々の暗殺者から狙われたことにより修羅場慣れしており、常人より生存能力は高い。
プライマー
意識的あるいは無意識に人を引き付け魅了し支配し操作する能力。しかし一ノ瀬晴がこの能力を持っていたかそうではないかは作中でも完全に判明していない。
【人物背景】
幼少期からある事情で命を狙われ続けた少女。家族、親しい人物は晴を守り、また巻き込まれて死んでいき天涯孤独。
そんな壮絶な人生を歩みながらも性格は明るく天真爛漫。そしてお人よし。
基本的に人の言うことは疑わないので、騙されて窮地に立たされることがしばしば有る。
【方針】
聖杯戦争を中止させみんなで協力して元の世界へ帰る。
ただ最後の一組になるまで元の世界に帰る方法が無いと分かれば方針を勝ち残りに変更する可能性は十分にある
以上で投下終了です
聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚で投下したものの流用し元の文を改稿したものを投下させてもらいました
野獣先輩が出ていると伺ったので拝読させていただきました。
とても面白かったのですが、一つだけ間違っているところがあったので恐縮ながら指摘させていただきます。
>>137 に身長170センチ、体重65キロとありますが、野獣先輩の自己申告による体重は74キロです。(ザ・フェチ Vol.3より)
そこだけ間違っているのが惜しいです。
>>499
ご指摘ありがとうございます。そうだっけと思いインタビュー動画見直したら完全に74㎏と言ってました。
完全に此方の不手際です。どうか野獣先輩は非実在青少年だからいいじゃんと言う心で見逃して下さい。
投下します
かび。
「フ、フフーフー……フフ、フー」
かび。
かび。
「フヒ、か、可愛い……可愛いなー……立派に育って、嬉しい……! ふ、ふふ、ふ……」
かび。かび。かび。かび。
かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。
かび。かび。かび。かび。
かび。かび。かび。かび。
かび。かび。かび。
かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。かび。
かび。かび。かび。かび。かび。かび。
かび。かび。
かび。
じめじめとした暗室の中。
蠢き、囀る無数の『何か』に囲まれた少女は、幸せだった。
目の前にあるのは彼女の『親友』であるキノコたちがたわわに根付いた原木。
部屋の中で静かに育ち続けるキノコたちを愛でながら一日を過ごす。なんと恵まれた休日の過ごし方だろうか。
星輝子は、戦争の渦中ながらそんな日常の中のささやかな幸せを噛み締めていた。
「どう……? 可愛い……?」
「かびかび。」
周囲を漂っていた赤色のかびに話しかけてみる。
かびは、にこにこと笑って頷いた。肯定だ。
輝子はますます気分を良くして、鼻歌高らかに、キノコを愛でる。
「おいマスター」
そんな輝子の様子を見かねてか。
側で機械をいじっていた人ならざる生き物――サーヴァントが、ハスキーがかったアルト・ボイスをやすりで削ったような声をあげた。
そのサーヴァントの姿はまさに異形の一言。
黒ずくめの体に紫色の手足。鼻は妙にまん丸くこれも紫色に輝きを放ち、青ひげのように口の周りを彩る紫の内側、口元だけは白く塗りつぶされている。
背中にはまるで蝿のような羽が付き、だらりと伸びた尻尾は尖り、頭には触覚が二本飛び出している。
ぎざぎざに裂けた口を開き、話を続ける。
「お前は結局、この聖杯戦争でどう動くつもりなんだ」
「……フ、フフフー……」
原木をゆっくりと持ち上げ、サーヴァントとの間に優しく置き直す。
上手く移動させられたのが嬉しかったらしく、満足そうに「フヒ」と小さく笑ったかと思ったら。
いつも通りのまどろんでいるような柔らかな目に戻った。
「幸子ちゃん」
最初に出た名前。輿水幸子。
いつも自信満々で、ボクカワイイ!が服を着て歩いているような女の子。
「小梅ちゃんも」
次に出た名前。白坂小梅。
仕事には真摯な態度で取り組む、普段は大人しめだけど時々茶目っ気のある女の子。
二人は、輝子がここに来る前からの知り合いだ。
「し、仕事に行った時……あ、記憶取り戻す前、だから、ライダーと会う前……この街にも、幸子ちゃんと小梅ちゃんが居た……」
記憶を取り戻す以前、輝子がまだNPCとして活動を行っていた時。
彼女は確かに、幸子と小梅を見かけていた。
勿論、彼女たちが『本物の』輿水幸子・白坂小梅かは分からない。
輝子の知り合いとして再現されただけの存在(NPC)かもしれない。
でも、彼女たちが本物なのかNPCなのかは関係ない。
「二人が巻き込まれたら……悲しいし、いやだ……」
幸子か小梅が傷ついたら、それが本物でも偽物でもとても悲しい。
二人のどちらかが大怪我を負ったりしたら、輝子はきっと泣いてしまう。
だから、輝子は記憶を取り戻してまずはこう動くとしっかり決めていた。
「だからまずは……うん……二人を、守りたいな……」
二人を守る。
参加者でも、NPCでも、関係ない。
彼女たちが傷つかないように、守ってあげたい。
だが、ライダーと呼ばれたサーヴァントは、呆れたような顔をした。
「どうしてそんなことするんだ? そんなことする必要ないだろ。俺様たちに何か関係あるのか?」
「……だって……二人は、と、トモダチ……トモダチ! だし……フヒ!」
二人を『友達』と紹介したところで、すこし感極まって笑ってしまう。
しかし直ぐに平静を取り戻して続けた。
「それに、なんたって、私は……二人より、ちょっとだけお姉さんだからな」
身長142cmの小さなアイドル3人組。
白坂小梅。13歳。
輿水幸子。14歳。
星輝子。15歳。
3人合わせて「カワイイボクと142's」。
3人の中では一番早く生まれたお姉さん。
幸子ちゃんみたいに積極的じゃない。
小梅ちゃんみたいに前向きでもない。
でも、お姉さんだから。
小梅ちゃんより2歳、幸子ちゃんより1歳だけだけどお姉さんだから。
危ないことがあったら、守ってあげたい。
危ないことに巻き込まれないように、守ってあげたい。
それは、聖杯戦争という特殊な状況になることで芽生えた小さなリーダーシップ。
それは、聖杯戦争に連れてこられる前の星輝子からちょっとだけ背伸びをした願い。
「危なくないように守ってあげよう、そうしよう……フ、フフー……」
サーヴァントが戦う。
いろいろなことが起こる。
巻き込まれたら、きっと痛い。
二人は大切な友達だから、痛い思いや辛い思いなんてしてほしくない。
輝子らしい純粋さから来る優しい行動方針。
だが、ライダーとしてはその『誰かのために動く』というのは気に食わなかったらしく、腕を組み、ぷりぷりと怒りを振りまきながら却下した。
「へぇっ! くっだらないね!! 俺様、そういうのの手伝いなんてやんないからな!!」
怒りを露わにしているその姿も、なんだか可愛らしい。
輝子はふ、ふ、と短く息継ぎをするように(彼女としてはごく自然に)笑いながら。
「頼んだよ、ライダー」
と言って、ライダーの肩を叩いた。
「べーっだ! やなこった!!」
でも、ライダーはあまのじゃくな子だから、聞いてくれない。
ライダー・『ばいきんまん』は下瞼を指で引き下ろし、舌を突き出し、輝子をべろべろ馬鹿にし。
部屋中に蔓延して「かび。かび。」と喋っていたかびるんるんたちを連れて部屋の奥へと消えていった。
輝子はさして気にせず、ライダーが話しかけるより前と同じように鼻歌を歌いながらキノコの原木を愛おしげに眺め始めた。
【クラス】
ライダー
【真名】
ばいきんまん@劇場版それいけ!アンパンマン『だだんだんとふたごの星』
及び『よみがえれバナナ島』 他、劇場版
【パラメーター】
筋力:E 耐力:B 敏捷:E 魔力:D 幸運:B+ 宝具:B
【属性】
混沌・あく
【クラススキル】
対魔力:EX
基本的にはEランク。魔術を喰らえば痛い。
しかしスキル:不倒の悪の効果により善からの魔術に限り、どんな大規模な魔術を食らっても最悪「ばいばいきん」と叫びながら星になるだけで済む。
騎乗:B
物を乗りこなすスキル。
彼は自身が開発に関わったメカならばどんなオーバーテクノロジーマシーンでも乗りこなす事ができる。
ただし動物は乗りこなせない。
【保有スキル】
エンチャント:A
物を開発・改造・改良するスキル。
ライダーは知られているだけでも200種程度のメカを作り上げてきた。
彼は自身の魔力をつぎ込むことで周囲のメカ、装備、宝具を改造することが出来る。
発明家:A
発明家である。
自身の発明した品を行使する場合、魔力消費を最低限まで抑えることが出来る。
ばいきんまん:B
ばいきんまんである。
薄暗い場所やジメジメした場所、不潔な場所に居ると魔力の生成や身体の治癒速度が早まる。
逆に清潔な場所やカラッとした場所に居ると気分が悪くなる。洗剤をかけられるとシャボン玉に閉じ込められるサイズまで縮んでしまう。
また、ばいきんまんは空気中に点在するカビの胞子やウィルスを使い魔である『かびるんるん』に変える事ができる。
能力は『腐敗』。空気中を漂い、取り付いた相手をカビだらけにする。
一体一体の性能は低く、マスターでも殴れば撃退できるだろう。ただし、逆に大量で囲めばマスターでもカビだらけに出来る。
生物にカビを発生させた際に魂食いと同等の効果を得られる。が、そうそううまくいかないし、回復量など微々たるものである。
なお、彼の名前を冠するスキルであるが上位互換存在であるばいきん仙人・バイキン大魔王が居るためAランクではない。
破邪顕正:―
ライダーは負ける運命にある。
彼は善属性サーヴァントとの戦いにおいてなにをどう頑張ろうと勝利を収められない。
仮に追い詰めたとしてもなんらかの因果が働いて逆転され、敗北する。
例え頼もしいサーヴァント5騎と手を組んで善属性をタコ殴りにしようが彼が関わっている以上なんらかの要因で逆転され、敗北する。
一時的な勝利を得ることもできるがその場合善属性のサーヴァントには確実に離脱に成功され、その後万全の状態で挑んでこられて敗北する。
これは彼の存在自体と深く絡み合っている宿命であるためどんな手を使っても無効化出来ない。
不倒の悪:EX
倒されるための役だからこそのスキル。
彼は何度も善に倒されたが、その度死なずに帰ってきて再び善と戦い続けた逸話がある。
転じて、相手が善属性サーヴァントである場合、相手からどれだけ致命傷を受けようが必ず逃げ延びることに成功し、再戦まで幸運に一段階の補正を得る。
一撃で絶命するような攻撃ならば食らった瞬間派手にぶっ飛び「ばいばいきん」と叫びながら星になる。
ただし実際にはダメージは入っておらず、数分後に普通にマスターの元に戻ってくる。
ちなみに宝具解放中、宝具内に同乗者が居る状態でこのスキルが発動された場合、同乗者も同様の効果を得る。
【宝具】
『俺様の円盤(バイキンUFO)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:5
ライダーの乗り物である『バイキンUFO』を呼び出す。二人乗り、エンチャントで拡張可能。
移動・戦闘の両方が行えるメカであり、エンチャントも自由自在。陸・海・空仕様への改造、武器の増設、ターボ機能となんでも付けられる。
基本装備は触覚のようなレーザー砲台、マジックハンド、巨大トンカチ。
コクピット下部からは
各種強化ハンマー・ロケットパンチ・巨大な足・レーザー光線銃・かびるんるん・水鉄砲・ホーミングミサイル
ドリル・チェンソー・送風機・吹雪機能付き送風機・爆弾・バット・ラケット・グルフクラブ・刀剣・巨大なハサミ・フライ返し
シンバル・虫取り網・ハリセン・ハエ叩き・お玉・けん玉・くすぐり用のアームが出せる。(エンチャントによって事前の装備開発が必要)
また、上記以外の物でも開発次第で増設可能(拡声器や掃除機のような戦闘にほとんど役立たない物に限る。レーザー砲・機関銃のような殺傷能力の高いものは増設不可能)
『地の底に潜む侵略者(もぐらん)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:1
ライダーの乗り物の一つである『もぐらん』を召喚する。三人乗り、エンチャントで拡張可能。
どちらかというと移動用のメカであり、エンチャントすることで水陸両用仕様にできたり、空飛ぶ帆船にしたり、スピードを早くしたりが可能。
見た目はドリルが付いたモグラ型の地底戦車。
戦車と呼ぶにふさわしく、次々ドリルを射出したり地中からドリルを突き出したりといった攻撃が可能。
この宝具の地中移動中は『気配遮断:B』と同じ効果を持つ。
ただし攻撃を行おうとすれば察知され、以後戦闘終了までその存在を認知され続けることになる。
『踏み砕くブリキの侵略者(だだんだん)』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:10
ライダーの乗り物の一つである『だだんだん』を召喚する。一人乗り、エンチャントで拡張可能。
ここで言うだだんだんはだだんだん二号(現在主流となっている手足が生えているもの)である。
巨大な体は当然戦闘のためにある。
ライダーのスキルによるエンチャントがほとんど効果をなさない宝具であり、出典の関係もあり基本戦闘は踏みつける・叩き潰すしか出来ない。
もしかしたら『ハピーの冒険』で見せたような番傘を作ることが出来るかもしれない。が、サイズに見合った時間がかかるだろう。
そして、この宝具にこころのちからを込めることで別記宝具『ジャイアントだだんだん』へと特殊エンチャントが可能。
『立ち上がれ黒鉄の守護者(ジャイアントだだんだん)』
ランク:A 種別:対星 レンジ:1 最大捕捉:1
こころのちからを得ることで宝具『だだんだん』が進化した姿。
唯一ライダーではなくライダーのマスターが乗りこなすことになる宝具。
本来はドクター・ヒヤリの『こころのいし』と星の妖精キラリが融合した『こころのちから』が必要であるが、この聖杯戦争では令呪による宝具への特殊エンチャントで召喚できる。
普通のだだんだんとはサイズも馬力もケタ違い。
ランドセルのようなバックパックを背負っており、そのバックパックからロケットエンジンを噴射することで空をとぶことも可能。
ライダーのスキルではなく操縦者のこころのちからによってエンチャントが可能であり、作中ではギラリの心に呼応してチェインアレイの左腕、電撃砲を放つ右腕、追尾ロケットを放つ瞳、悪魔のような翼を手に入れた。
この聖杯戦争では、こころのちからを送っている人物の望んだロボットへと進化していく。
なお、この宝具のランクが異様に高いのは、この宝具が『心』を持っていることと、この宝具が逸話として神話にあるような『星座として天に残る最期』を迎えたことに由来する。
この宝具が破格の対星宝具であるのも、地球を未曾有の危機に陥れた『全てを滅ぼすおしまいの星(デビルスター)』を宇宙へと押し返した逸話があるからである。
もし、空から星を落とすような宝具があれば、まずこの宝具で押し返せる。
【weapon】
戦闘は常に宝具任せ。
宝具自体がメカであるためジャイアントだだんだん以外魔力消費は少ない。
【人物背景】
日本一有名な悪役キャラ。
自分勝手で我儘で、だけどどこか憎めない。そんな悪役。
説明として何度も悪役と言っているが、正確には悪役ではなく、『アンパンマンの因縁の相手』『アンパンマンの裏側に居るキャラ』といったほうが正しいかもしれない。
いたずら好きで、自分の欲望に素直。美女が大好きで大飯ぐらい。
決して狙って他人を害しようとしているわけではなく、自分が楽しもうとした結果たまたま他人を害してしまうだけである。
わりと頻繁に変装を行っているので変装は得意。だが、よく見られるとバレる。
原作中では『きらわれもの』として扱われることが多く、そういった点から自身に分け隔てなく接する人物を好む。
輝子に関しても、方針の違いで反発はしているが、心の底では悪しからず思っていることだろう。
劇場版出典なのは把握量を減らすためと単純に『ジャイアントだだんだん』を出すため。
出典1『だだんだんとふたごの星』はキララとキラリの声以外名作と名高い。
特に中盤以降から始まるジャイアントだだんだんの戦闘シーンは圧巻の一言。
ぜひともジャイアントだだんだんの勇姿をその目で見届けてほしい。
出典2『よみがえれバナナ島』はばいきんまんの人柄が『ふたごの星』よりもわかりやすく描かれている。
単なる悪役ではないばいきんまんのキャラはこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
何気ない伏線からの「私は、元気だー!」は名台詞。
日本人ならだいたいアンパンマンに関する知識はあるだろうから、本編をさかのぼってまで把握し直す必要はないかもしれない。
基本的に劇場版、この二作品見れば大丈夫……なはず。
もちろん、ばいきんまんやバイキンメカ、かびるんるんなどにスポットを当てた話はまだまだあるので把握したいという方はじゃんじゃん見て、どうぞ。
なお、出典劇場版はどちらも共通して名物『超バランス岩』が出る。あれすき。
【マスター】
星輝子@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
聖杯への願いは不明。
NPC時代に小梅と幸子を見かけたので、ひとまずは彼女たちを保護したい。
NPCか本物かは問わない。
【能力・技能】
二重性格。
二重人格のように人格が剥離しているのではなく、性格に二面性を持つ人物。
彼女はキノコを親友としてのんびり過ごすマイペースで内向的な性格と、攻撃的な音楽を好み荒々しく奇声を放つような奇天烈な性格が一つの人格内で同立している。
この性格同士は同一スペクトラム上に存在するので時々混同して、素で奇声を上げそうになったり、スイッチが切れたようにおとなしくなったりすることがある。
そもそもこの性格同士に差異はなく、彼女が普段は隠してる素(メタルな性格)が表出しているかどうかの違いなのかもしれない。
【人物背景】
十五歳の少女。
キノコをこよなく愛し、友達・親友だと言っている。
内向的でマイペースでローテンションな性格。かつ人前で話すことが苦手。
舞台用の化粧をすると人が変わり、声が大きくなったり、テンションが高くなったりする。
本人は自分のことを『影が薄い』と思っているようだが、実際可愛いしキャラも濃いので一度見たら忘れないだろう。
「カワイイボクと142's」を結成した世界線からの参加であり、白坂小梅・輿水幸子に対してかなり友情を感じている。
あと、この星輝子は寮生活ではない。
聖杯戦争の舞台に暮らしていた寮が再現されていなかったため、記憶喪失時代からどこかのマンションでそれなりの一人暮らしをしていた。
マンションの部屋内でキノコの栽培をしていたようで、居住スペースはライダー好みのカビっぽくてジメジメして薄暗い場所になっている。
【方針】
幸子や小梅を保護する。
その後のことはその後考える。
まずは彼女ら二人を乗せて移動できるように宝具三種をエンチャントするところからスタート。
戦闘は離脱優先。そのため隠密性に優れるもぐらん→機動性の拡張幅が広いバイキンUFO→だだんだんの順でエンチャントしていく。
武器ではなく、離脱に使えそうな能力から拡張していってもらうつもり(ライダーが言われたとおりに拡張してくれるかどうかは不明)。
離脱できず戦闘になったのならば、装備が整っているのならば宝具三種を使い分けて、整っていないならばだだんだんで戦うことになる。
ただし、だだんだんはその大きさから、場所を考えずに暴れると罰則の対象になりかねない。注意が必要だ。
ライダーの運営においては、装備開発(エンチャント)をどのように行っていくかが肝になる。
なお、ジャイアントだだんだんは使えば一発罰則もありえるのでここぞという場合に限り使わないに越したことはない。
ライダーの弱点はなんといっても『知名度の高さ』である。
近代日本の人物ならば、誇張抜きで姿を見ただけでその正体と逸話に気付ける可能性もある。
そして気付けば対策をうたれる。市販の洗剤をかけるだけで無力化できるのでそこをつかれると痛い。
投下終了です
投下します
灼熱の炎が、彼女を灼いていた。
解けない謎と言う、身体を灼くのではなく頭蓋の中のちっぽけな物体を灼く、温度のない炎が。
刑事ドラマや推理小説などで、推理担当の主人公が、証拠も少ないしトリックも難解、当然ホシが上がる確率が極めて低い事件を、
偏執狂的な執念で解決する、と言うシチュエーションがある。そうまでして事件を解決する理由、真実を追い求める理由が、彼女には理解し難かった。
だが、何故彼らが其処までして真実を追い求めようとするのか、その意味を身を以て彼女は味わっていた。
犯人を逃がす事、人間が仕掛けたトリックに敗北する事、そして、真実を逃すと言う事それ自体が、彼らには悔しいのである。
『白鐘直斗』と彼女の所属する特別捜査隊は、何も無いのが取り得の田舎町、田稲羽市八十稲羽を跳梁する殺人事件の犯人が誰なのか突き止められなかった。
生田目太郎が収容されている病院の一室での事は、今でも直斗は思い出せる。思い出すだけで、直斗あの時の自分を殴り倒したくなってくる。
あの時彼女らは皆、狂奔状態にあったと言っても過言ではなかったろう。堂島菜々子を死に至らしめた生田目を許さない、と言う感情だけで動いていた。
シャドウが蔓延るテレビの中に生田目を落とそうと提言したのは、花村陽介だった。無論、難色を示す者だっていた。捜査隊の女性の面子の殆どがそうであった。
だが誰も、本気で止めはしなかったのだ。そんな事までしなくても、と、婉曲的に陽介にやめるように言いはするが、誰も直接は止めるよう口にしなかった。
――ただ1人を除いては。捜査隊のリーダーである、鳴上悠である。彼だけは陽介の提案に「待った」をかけた。
そして、生田目が犯人なのかどうかと言う事に、改めて疑問を示したのだ。
悠と陽介は当然言い争いになる。あの時点では確かに生田目が犯人である事は、疑いようがなかった。
しかし、疑問点も払拭し切れていなかったのも間違いのない事実だ。其処を巡って、彼らは争う。
最終的に、悠の方が心情を吐露した。殺したくない。それが彼の本音だと知り、陽介の方も一気に気を萎えさせてしまった。
本当を言えば、陽介よりも悠の方が生田目をテレビに入れたくてしょうがなかった筈なのだ。
当たり前である、生田目が魔の手を伸ばした堂島菜々子とは、鳴上悠の従妹である。
でも憎いからと言って、生田目をテレビの中に突き落としては、事件の裏に潜伏していると思しき真犯人――或いは生田目――と、
やっている事が本質的は全く変わっていない事に、悠は気付いていたのだ。
一同はその後、やりきれない思いを抱いたまま、頭を抱えて怯える生田目と、いるかもしれない真犯人を放置して、部屋を後にした
その後の捜索隊のメンバーは、空気の抜けた風船のように、やる気と熱意を失っていた。
部屋を出た後で、堂島菜々子が息を吹き返したと言う一報を聞き、泣く程喜んでから……彼らはこの後の展望をどう立てたら良いのか、解らなくなっていたのだ。
週に2回、多くて4回も行っていた、テレビの中の世界に潜ると言う行為も、10日間はやってない。
捜索隊メンバー同士もいまや、交流も会話もなく、素っ気が無い。プランも人間関係も、黄色い砂塵のような霧の中に、今や包まれてしまっていた。
――だが直斗は、この現状を打破しようと考えを巡らせていたのだ。
探偵である自分が、生田目以外の真犯人の可能性を論理的に導き出せれば……散り散りになった皆の絆を再び1つに出来、其処へと歩んでいけるかも知れない。
適当では駄目だ、捜索隊の全員を納得させられるような、強い説得力のある人物でなければならない。彼女はそれを、必死に考えていた。
しかし、駄目だ。可能性のある人物が、全くと言って良い程浮かんでこない。5代続いた探偵一族の末裔が、笑わせる。何度自嘲して来た事か。
犯人を導き出すと言う行為に最も必要な能力の1つが、論理的推論能力である。
これに優れないと言う事は、イコール、探偵として不出来の烙印が押されているに等しい。
犯人が思い付けなければ思い付けない程、直斗は、事件の裏に潜んでいるであろう本当の犯人に、嘲り笑われているような気がして、本当に悔しかった。
此処までくると最早仲間達を1つに纏めたいと言う思いと同じ位、意地と言うものが前に出てくる。
意地を前に出した状態で敗北を重ねると、人はムキになる。論理的な思考が、出来なくなる。直斗は、探偵として尤も必要な資質――冷静さを欠いた状態にあった。
有体に言えばスランプ状態に陥っていた彼女は遂に、今までの彼女からは到底考えられないような事を思うようになった。
犯人を暴き出せる特殊な力が欲しい、と。鳴上達と出会う前の彼女であったら、そんな馬鹿げた事は考えはしなかっただろう。
しかし、テレビの中の世界と言う、今でもファンタジーめいているとしか思えない世界と、ペルソナ能力と言う不思議極まる力が、
この世界に確かに存在する以上、そんな能力も無いとは言い難い。一生とは言わない、1日、いや、10分だけで良いからその力が欲しかった。
その力さえあれば、全てが丸く収まるのに。……そう考えた瞬間が、白鐘直斗が八十稲羽に在る事の出来た、最後の刹那であった。
この街で本当の記憶を取り戻したのは、一昨日の事。記憶を取戻し、暫し呆然としてから白鐘直斗は、全速力で街を駆けた。
そんな筈はないと、思いたかった。この街が田稲羽市八十稲羽ともテレビの中の世界とも根本的に異なる別世界の街であり、
この街で聖杯戦争なる殺し合いを行わねばならないなど――夢であると思いたかったのだ。
だが現実は非常であった。街を走れば走る程、この街が八十稲羽でもなければ、かと言ってテレビの中の世界でも夢でもなく、
正真正銘の『リアリティ』を持った、1つの本物の世界であると言う確証だけが強まって行くばかり。
往来を往く人々も、建ち並ぶ住宅街も、静かにものも言わず佇んでいる街路樹も全て、嘘偽りの代物でなく、本物のそれであった。
今白鐘直斗は、聖杯戦争の最中に、聖杯に住む事を許された場所で、必死に推理を展開していた。
確かに、特別捜索隊が追い求めている真実を、知りたいとは思った。しかし、その為に何人もの人間を殺さねばならないなど、意味がないではないか。
あの病院で陽介が行おうとしていた行動、生田目太郎をテレビの中の世界に突き落とそうとすると言う発想と根本的に何の違いも無い。
それに、その様な行動は……白鐘直斗の心の澱を取り除き、命すらも救ってくれた、鳴上悠の意思を裏切っている。
直斗が今知恵を絞っている事柄は、聖杯戦争と言う枠組みから、どうやって無傷で潜り抜けるのか、その一点に他ならない。
完璧なトリックやカラクリなど、この世には存在しない。どのような手段にしろ、直斗をこの世界に呼び寄せる手段があるのなら、同時に帰る手段もある筈なのだ。
なるべくなら誰も殺さない、穏当な方法で、この狂った箱庭から直斗は帰りたいのである。
だが、結果は芳しくない。それはそうだ、直斗は先ずこの世界の事をよく知らない上に、推理の風呂敷を広げようにも確証が少なすぎる。
無から推論は生まれない。無を証拠に推論を生もうとして、生れ出るのは憶測だけである。
「クソッ、苛々する……」
柄にもなく直斗は、カリカリとした態度で1人そう愚痴った。
場所は、市内の1テナントビルを住所にしている、探偵事務所。白鐘直斗に与えられた役割とは、探偵事務所の若き所長にして創立者。
何ともまぁ、現実世界での直斗のパーソナリティに即したロールであろうか。聖杯とやらの調査能力に、思わず拍手を送りたくなる。
難しい顔をして、直斗は推理を再開する。
「ふぅん、お前はいつも難しい顔して考え事してるなぁ」
すると、直斗が向っていたワークデスク越しに、風景と同化する生き物がその同化を解いて行く様にガッシリとした体格の偉丈夫が姿を現した。
真名を、『ギルガメッシュ』。直斗の記憶が正しければ、古代メソポタミア文明の、ウルク第一王朝の王。
世界史上においても超のつく程の有名な人物であり、半ば伝説扱いすらされている人物だ。客観的に見れば、大当たり、の部類だろう。
「寧ろ、何で君はそんな悠長に構えていられるんだ、『セイバー』。これから命を懸けた殺し合いが始まるのに」
「ムッハッハ、坊主!! このギルガメッシュ様はなぁ、生前逃げなし負けなし、卑怯な事などもっての他の豪傑だ。お前も男なら、ドーンと大きく構えていろ!!」
「それが出来れば苦労はしない」、と憂鬱そうに直斗は切り返す。
やはり、ギルガメッシュ叙事詩の主人公ともなった人物になると、性格も性質も豪宕極まる者であるようだ。この男に振り回されないか、それが不安である。
「……セイバー、言っておくけど、僕は人殺しだけは誓って御免だぞ。それだけは、僕はしたくない。この手を汚さず元の世界に帰る」
「んん? 聖杯戦争と言うのは、参加者全員を倒し尽くさない限りは元の世界に戻れないんじゃ……? 俺の記憶違いか?」
元の世界に戻る方法がないと直斗は考えているが、正確に言えばそれは嘘だ。1つだけ方法がある。
聖杯戦争に参加したマスターを全員殺し、直斗とギルガメッシュのペアが最後の生き残りになれば良いのだ。
恐らくそれこそが、直斗が実行できる最も簡単な脱出法だろう。しかしその選択肢だけは、直斗は頭からパージしていた。
手を血で汚したくないのだ。相手はシャドウじゃない、生の人間だ。例えギルガメッシュが罪を請け負うと言っても、それだけは、と考えている。
「確かにセイバーの言う通りだが、僕は殺さずに聖杯戦争の舞台から逃れられないか考えているんだ」
「まったく、お前も難しい事を考えるなぁ。俺が生涯で唯一ライバルと認めているバッツと比べて単純さがない。別に、殺したって良いじゃないか」
「ば、馬鹿言うな!! お前の時代の死の価値観はわからないが、僕達の時代では――」
「待て待て坊主、無暗やたらに殺しに掛かれとは言わんぞ、何せ俺は武人だからな。無抵抗の女とかは、やっぱり斬るのは抵抗感がある」
「……僕だってそれは同じだ」
「だったら、俺達に刃向って来る奴だけを攻撃すればいいじゃないか。俺は今はお前のさ、サバ……」
「サーヴァント?」
「そう!! サーヴァントだが、流石に攻撃してくる相手に無抵抗でいろ、と言う命令には従えんぞ。俺だって怪我はやだからなぁ」
確かに、それは尤もな意見だ。仮にもし、聖杯戦争で火の粉が降りかかってきた場合、それを払うのは直斗ではなくギルガメッシュである。
サーヴァントとマスターの関係は運命共同体のそれである。どちらかが死んでしまえば、ほぼ自動的に片方も死ぬものと考えて間違いない。
自分を守ると言う大役を担っている人物に、殴り掛かられたら無抵抗でいろ、とは流石の直斗も言えない。
……此処が、妥協点なのかも知れない。直斗とて、交戦の機会が全くなく、聖杯戦争を無事に切り抜けられるとは思ってなかった。
襲ってくる相手は、迎撃し、どうしてもと言うのであれば……。殺す、と言う事態に、ならない事を直斗は祈るばかりだった。
「解った。襲い掛かって来る奴は……応戦していい。セイバーの裁量に任せる」
「ヌハハハハ!! 安心したぞ坊主!! これで剣を持った奴が相手でも、その剣を奪えるって訳だな!!」
「……は? 剣?」
予想外の返事に、思わず直斗は面食らった。
「珍しい業物を持った相手に襲い掛かられて、応戦するなと言われたら、倒してその剣を奪えないだろう。何を当たり前の事を」
数秒程言葉を失い、ギルガメッシュの言葉の意味を頭の中で考えた後、直斗は頭痛で頭を抱えた。
この英霊はどうやら、聖杯戦争に参加している参加者の剣欲しさに自分と交渉をしたんだ、と考えた瞬間、何だか形容のし難い虚脱感に覆われたのだ。
頭痛と虚脱感の原因である男は、「立ち眩みか? 坊主?」と、呑気にそんな事を訊ねて来た。
「つ、剣の為に……」
「槍とか斧でもいいぞ」
頭痛が、更に強まった。無意識の内に、溜息すら出てしまった。
「……セイバー、霊体化してていい。まだ聖杯戦争も始まってないんだ、余計な魔力消費は抑えよう」
「おう、わかった」
言ってギルガメッシュは、素直に霊体化を行い、不可視の状態となる。
ふぅ〜、と、肺の中に溜まった澱に似た感情の淀みを一気に吐き出す様に、直斗はありったけの二酸化炭素を吐きだした。
何ともはや、呆れた行動原理で動く英霊であると、直斗は思ってしまった。
古代メソポタミアの王国は、あんな単純な男を王に据えて、本当に大丈夫だったのだろうか。
いやそもそも、あれは本当に直斗が認識しているギルガメッシュか? 昔のメソポタミアの服装は直斗の知識の範外であるが……、
鮮血の様な布地に、甲冑状の物を身体部位の所々に装着させた、中世日本の僧兵の如き服装と、顔に施された赤白の隈取を見ると、
とてもではないがウルク王朝の伝説の王とは思えない。寧ろ、荒法師と言った風情すらある。本当に、本物のギルガメッシュなのか?
……尤も、今はそれを信じるしかない。幸いな事に、ステータスの高さだけは本物である。
何故かスキルに逃走に関するスキルが目立つのが気になるが……其処はまぁ、良いと考える事にした。いざとなった時には、逃げる事も大事である。
そして――これは聖杯戦争とは全く関係ないが、不満な事が1つあった。
それは――
「(そんなに僕は、女性に見えないか……?)」
ギルガメッシュが度々坊主と口にしていたように、どうも直斗は、ギルガメッシュから女性ではなく男性として認識されているようだ。
事情を知らない人物が見たら、そう思うかも知れない。何故ならば直斗の今の服装は、元いた八十神高校の学生服だからだ。
この学生服と言うのが、女物のブレザーではなく、男物の学ランで、その上直斗自身の容姿が中性的な事も相まって、大抵の場合女性と認識されない。
寧ろ、少し童顔で、ミステリアスな雰囲気を纏った少年として見られる事の方が多い。
事実直斗はある時期まで探偵王子としてテレビ番組にも露出していた時期があり、その時は容姿のせいもあって、女性ファンの方が多かった程だ。
当人はある時期まで、自身のそう言った中性的な容姿や、探偵でありながら未成年の『女』である、と言うジェンダーにコンプレックスを抱いていた時期があった。
今はそれも克服し、女性である事と向き合いながら、生きて行く事を決意。最近は女性らしく振る舞う事も多かったのだが……。
事情を知らないギルガメッシュだから仕方がないとは言え、こうまで女性として認識されないと、流石の直斗も複雑な気分になる。
昔はその方が良かったであるが、自分のコンプレックスと向き合うようになってからだと、流石に喜べない。
況してや今の直斗は、鳴上悠に憧れとは違う、恋心を抱き始めた頃だと言うのに。これは拙かった。
ギルガメッシュに女性として見られていないと言う事は、ひょっとしたら悠も、まだまだ自分を1人の女性として見ていないのだろうか。
そう思うと不安が募る。
――……元の世界に戻って事件を解決したら、久慈川さんと同じ制服を着よう――
コクッ、と首を縦に振ってから、直斗は再び、深い推理の海の底へと沈んで行くのであった。
【クラス】
セイバー
【真名】
ギルガメッシュ@FF5
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力C 幸運B 宝具A
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。
【保有スキル】
仕切り直し:A+
窮地から脱出する能力。
不利な状況であっても逃走に専念するのならば、相手がA+ランク以上の追撃能力を有さない限り逃走は判定なしで成功する。
魔術:B+
セイバーは優れた武術の使い手でもあるが、同時に優れた青魔道士でもある。他では見られない独特の魔術を幾つも習得している。
異形:-(C)
通常時の姿は、紅色の具足を身に纏った武人のような出で立ちだが、自らの意思で、8本の腕を携えた、
阿修羅の如く筋骨隆々とした人型の魔物の姿を取る事も出来る。
芸術審美:E+++
芸術作品、美術品への執着心。……とは言うが、セイバー自身には芸術に対する審美眼は全くない。
しかし、それが刀剣であった場合は話は別。セイバーは武器マニアである為、目にした宝具が剣の場合の場合には、
高確率でその武器の名前および性能を看破する事が出来る。
【宝具】
『刀剣乱舞(スクランブルファイター)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:10
生前のセイバーの特徴的な戦法が宝具となったもの。セイバーは様々な名剣名刀に目がない刀剣マニアであり、それらの蒐集に精を出していた。
尤も生前集めていた殆どの名剣名刀は、性能こそ高かったが贋物に過ぎず、それは英霊となった今でも変わりはしない。
リーチに優れる薙刀、敏捷に補正の掛かる正宗の贋物、青色の剣身が特徴的な斬鉄剣の贋物、リーチの短い手斧であるバトルアクス、
セイバーが有する武器の中では唯一本物である源氏の刀、生命力が減れば減る程威力の上がるチキンナイフの贋物、
光り輝く剣身が特徴的なエクスカリバー、そして、贋物であるエクスカリパー。以上8つの武器を振るう事が出来る。
これだけを見れば、8つの武器を状況に応じて使い分ける程度の宝具に過ぎないが、真価はセイバーが相手サーヴァントを倒した時に発揮される。
セイバーが相手をサーヴァントを倒し、かつそのサーヴァントが刃を持った宝具を持っていた場合、セイバーはその宝具を奪い取り、
自らの得物として本来の持ち主のサーヴァントが消滅した以降も、聖杯戦争内で扱う事が出来る。
無論本来の持ち主ではない為、真名解放は出来ないし、常時発動している能力しか扱う事が出来ないのだが、
セイバーにとっては業物を入手出来たと言う事実だけが重要なので、本人は大して気にしていない。
『ギルガメッシュチェンジ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
自らの意思で、己の身体を、筋骨隆々さと偉丈夫さを兼ね備えた、8本腕の鬼神のような姿に変化させる宝具。
筋力、耐久、敏捷のステータスをワンランクアップさせ、8本の腕に先の武器8本を握り、怒濤の攻めを行う事が出来る。
当然ながら、マスターに掛かる魔力の負担も多くなる為、運用には注意が必要。
『約朿されし勝利の剣(エクスカリパー)』
ランク:E+++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
セイバーのいた世界に於いても伝説の一品とされていた名剣・エクスカリバーを摸倣、そして、意図的に極限まで弱体化させた刀剣が、宝具となったもの。
剣身や柄、それが収められている鞘だけを見たらどこも異常がない、ともすれば名剣の装いすらある程立派なそれなのであるが、どんな達人がこの剣を振るって斬りかかった所で、人間は愚か、犬や猫、果ては生後間もない子供にすら、蚊に刺された程のダメージしか与えられない呪いがかけられているのである。
英霊となった今でも、未だにカリバーとカリパーの区別がついてない所か、これをエクスカリバーの方だと思っているふしがあり、
ここぞの場面でカリパーの方を振るってしまう。一見すれば外れの宝具にも思えるが、この宝具の真価は相手に向かって『投擲』した時である。
相手に向かって投げた時に限り、この宝具の威力は、Aランクの対人宝具に匹敵する程のダメージを与えられる。
が、この用途で使用した場合、この宝具は消滅する。そして何よりもセイバー自体が、その使い方に気づいていない。
【weapon】
薙刀:
文字通りの薙刀。リーチに優れる武器であり、セイバーの平時の武器でもある。
正宗:
銀色の長い剣身を持った刀。
正真正銘本物の正宗であれば、封印城クーザーに眠る12の武器の1つであり、これ自体が宝具となりうる程の代物。が、セイバーの振うものは贋物。
本物の正宗であればA+ランク相当の先制攻撃スキルを獲得出来る業物なのだが、セイバーの振うこれは敏捷に補正が掛かる程度の性能に劣化している。
斬鉄剣:
青色の剣身が特徴的な剣。
セイバーのいた世界ではオーディンと呼ばれていた超高位の召喚獣が扱う特技、或いは業物として扱われていたものである。
セイバーのそれは後者の方だが、無論正宗同様贋物。本来ならば高確率で生命力の如何に関わらず即死させる武器であるが、セイバーのそれは、
たまにクリティカル判定を発生させる程度のそれに劣化している。
チキンナイフ:
セイバーのいた世界に伝わっていた小ぶりなナイフ。
チキンと言う名が示す通り、本来は相手から逃げれば逃げる程、その威力や刃の鋭さが増して行く業物だったが、セイバーのそれは生命力が減れば減る程威力の上がるそれに劣化している。
バトルアクス:
小ぶりな小斧。セイバーが振るえば無比の破壊力を生むが、リーチがいかんせん短い。
源氏の刀:
刀とは言うが、実際上は紫色の大剣である。特筆する様な性能はないが、業物としては確か。頑丈で切れ味がある。
エクスカリバー:
光り輝く剣身が特徴的な大剣。
正宗同様、本来は封印城クーザーに眠る12の武器の1つで、宝具としての適性を持つ強力な武器。セイバーの振うそれは、やはり贋物。
本来のエクスカリバーは筋力をワンランクアップさせ、非常に鋭い切れ味を誇った業物であるが、セイバーのそれには、筋力向上効果がない。
源氏装備一式:
セイバーが装備している朱色の具足。贋物かと思いきや、具足は正真正銘本物
非常に頑丈で、三騎士による打ち合いにも耐えられる代物。
【人物背景】
オリジナルとなった人物は、エクスデス親衛隊長と言う地位についていた、暗黒魔道士エクスデスの部下の中でも高い実力を誇っていた戦士。
無数の武器を振るい、卓越した武術の腕を持ち、数々の青魔法を操る、その地位に恥じぬもののふ。
しかし、他の部下達に比べて邪悪と言う訳ではなく、所々抜けており、天然で、義理人情に篤い、言うなれば憎めない男だった。
エクスデスにとって計画を頓挫させかねない脅威に成長する事が予見されていた、バッツ一行と幾度も熾烈な戦いを演じるが、その全てが黒星。
倒される前に逃走、と言うパターンを幾度も繰り返し、何度も剣を交える内に、ギルガメッシュはバッツ達に奇妙な縁を覚え始める。
が、度重なる失敗に業を煮やしたエクスデスによって、次元の狭間へと落とされるが、生来からの悪運により生存。
その後エクスデスを倒す為に次元の狭間を潜る事となったバッツ一行と再会、彼らに出口を教えてもらい、其処から外へと出ようとする。
しかし、帰るのを思い返して引き返してみると、次元の狭間で待ち構えていたエクスデスの部下、ネクロフォビアに苦戦を強いられていたバッツ達を目の当りに。
「このままじゃカッコ悪いまま歴史に残っちまうからな!」、そう言い放ってからバッツ達の戦いに乱入、バッツ一行のメンバーに最期の別れを告げた後、
ネクロフォビアを巻き込んで自爆。最後の最後で、バッツ達に道を切り拓かせてから、世界から退場するのであった。
今回の聖杯戦争におけるギルガメッシュは、生い立ちや設定はFF5の物であるが、容姿や戦い方などはDDFFに準拠している。
【サーヴァントとしての願い】
世界中の業物を俺のものに!!
【基本戦術、方針、運用法】
非常に器用なセイバー。ステータスの平均値も最優のクラスだけあってまとまりがあり、青魔法による小回りの良さも利いている。
エクスカリパーを除けば、他の7つの武器で柔軟な戦い方も行うが出来、それに加えてステータスアップの宝具。
だが何よりも特徴的なのが、倒した相手の剣や槍、斧等を奪う事が出来ると言う事か。いざ危険となったら、高い仕切り直しスキルで逃げれば良い。
強いサーヴァントである事は先ず間違いはないが、ギルガメッシュ自身のおっちょこちょいなうっかり性分と、エクスカリパーが足を引っ張る。
マスターである直斗の優秀な補佐が、明暗を分けるセイバーとなるだろう。
【マスター】
白鐘直斗@ペルソナ4
【マスターとしての願い】
元の世界へと、人を殺さないで帰還する。
【weapon】
テレビの中の世界では拳銃を武器にシャドウと立ち回っていたが、聖杯戦争の舞台では持ちこめていない。
その代わり、違法改造したモデルガンが、探偵事務所に備えられている。
【能力・技能】
ペルソナ能力:
心の中にいるもう1人の自分、或いは、困難に立ち向かう心の鎧、とも言われる特殊な能力。
この能力の入手経路は様々で、特殊な儀式を行う、ペルソナを扱える素養が必要、自分自身の心の影を受け入れる、と言ったものがあるが、
超常存在ないし上位存在から意図的に与えられる、と言う経緯でペルソナを手に入れた人物も、少ないながらに存在する。
直斗の場合は、テレビの世界で自分の心の影を受け入れて入手しており、操るペルソナの名前はスクナヒコナ。
一寸法師の様な小さい身体に、子供用の礼服を身に付けているペルソナで、手に持った剣による斬撃に、破魔や呪殺魔法、
如何なる防御相性でも無効化出来ない万能属性の魔法を操る事が出来る。
聖杯戦争の舞台においては、テレビの中の世界ではないこの場所においてもペルソナ能力を使用する事が出来る。
マスター同士の戦いでは有利に立てる能力ではあるが、サーヴァントを前にしても十分な能力か、と言われれば疑問が残る。
探偵としての推理力:
探偵一族である白鐘家であり、現役の探偵として非常に優れた論理的推論能力を持つ。
【人物背景】
代々探偵家業を続けている一族、白鐘家の末裔。直斗で5代目に当たる。
稲羽市で発生した謎の連続殺人事件の捜査の為に、県警の要請を受けて地元警察署に派遣された特別協力者。
学生にして探偵、と言う漫画やアニメの中でしか見られないような特徴と、中性的な容姿のせいで有名人となっていた時期があり、一時はテレビにも出演していた。
その推理力は本物で、テレビの中の世界と言う物を知らなかった時期から、その世界に潜って捜査を続けていた鳴上悠達に目を付けており、彼らを独自にマーク。
加えて、連続殺人の模倣犯であった人物が逮捕され、警察が捜査を打ち切ろうとした時も、その人物が真犯人ではない事を見抜き、警察に捜査続行を訴える。
しかし、16歳と言う若い年齢の上に、社交性も乏しく、子供っぽいとされて警察から煙たがられ、意地になり、独自に捜査を続ける事を決定。
その過程で、テレビの中の世界と言う物にとうとう辿り着き、その世界に潜らされてしまう。
其処で明かされた直斗のコンプレックスとは、自分が女性であると言う事実そのもの。探偵と言ういかにも男性的な職業でありながら、
彼女の性別は女性であり年齢も成人に達しておらず、その上、単なる事件解決の為のツールとしてしか見られてなかった、と言う現実から、
彼女はかっこいい大人の男性になりたい、と無意識の内に思っていたようである。平時の服装が如何にも男性的なのは、そう言った願望があったからこそ。
救出にやって来た鳴上悠たちにより、暴走した自分の心の影は押さえられ、其処で直斗は、自分の心の影を向き合う事を決意。
スクナヒコナは、その時に獲得したペルソナ。以降は悠達の特別捜査隊に加わり、事件の解決に直走る事となる。
今回の直斗は、ペルソナ4のバッドエンディングの内の1つ、生田目をテレビの中に突き落とさなかったが、結局犯人が誰なのか解らなかった、と言うルートからの参戦。
【方針】
人を殺さずに動くにはどうしたらいいか。場合によっては、同盟も組む必要があるかもしれない。
投下を終了いたします
皆さん投下お疲れ様です。再び投下させて頂きます。
やあ諸君! 長らくお待たせした!
……え、待ってなどいない? ていうかお前誰? はっはっは、面白い冗談だね。
しかし私は英雄! 求められる限りは何度でも名乗ろう。
あるときは新聞記者に身をやつし、一度事件が起きれば赤いバンダナをたなびかせ飛んでゆく。
スプレンディド! 英雄スプレンディド、それが私だ!
今日は聖杯戦争などという大事件に巻き込まれてしまったようだ。
しかし私はいかなる時もヒーロー! 事件とあらばそれを解決し人を助けるのが我が使命!
くわえてサーヴァントとして召喚された私は、守護すべきマスターもいる。
寝ぼけている暇など全くないな! さあヒーロースプレンディドの英雄戦記をとくとご覧あれ!
◇ ◇ ◇
「……ドッキリだったら考えた奴ぶっ飛ばしてやるわ……」
水瀬伊織はひどく困惑していた。
偽りの世界についてはいい。良くはないけど、現実として自分の中では整理がついた。
聖杯戦争もいい。いや、これも良くはないけど「知識」として自分の中では把握は終わっている。
最大の問題はこの、自らの召使(サーヴァント)である水色のモモンガであった。
まず悪いことに彼がバーサーカー、狂戦士のクラスであること。己の狂気のままに暴走する、ある意味最悪の手札であった。
はじめに会話が成立した時こそ安心しかけたものの、彼が己の正義に狂ってまともな意思疎通が不可能っぽいと知ってまず伊織は嘆いた。
そして彼の力をある程度把握した所で、彼を狂気のままに放っておいたら大惨事を迎える事も目下の悩みのタネだった。
「何が悲しくてこの伊織ちゃんが、喋るアバレモモンガの世話なんかしなきゃならないのよ!
こんなの、戦争どころじゃないじゃない!」
伊織に積極的に殺しを承諾の上で聖杯戦争に臨む意志こそなかったものの、既にその儚い良心はバーサーカーを引いた時点で踏みにじられたも同然だった。
よりにもよって正義を為すヒーローを名乗ってる奴こそがバーサーカーであったことが痛烈な皮肉になっていて、余計不快である。
「HAHAHA、イオリ。何をそんなに色めきだっているんだい? 君はアイドルなんだろう、小じわが出来てしまうよ」
「余計なお世話よ! 誰のせいだと思ってんのよ!
っていうか普通にくつろいでるんじゃないわよ! 大体何よそのメガネ! スーパーマンか!」
「YES! 私は知っての通りのスーパーマン、そしてスーパーヒーロースプレンディドさ!」
苛立ちのままにツッコミ返すも当然会話にはならなかった。
こんな事だったら会話すら出来ないバーサーカーの方が幾許かマシだったと心から痛感していた。
今だってなお、聖杯戦争の事とかこの世界にもある765プロの事だとか、そこにいる友人やプロデューサーの事だとか、彼らが偽物らしい事だとか。
考える事や不安な事は山積みだというのにそれに加えてこの狂英雄である。
「それでイオリは何をしているんだい? 戦争はもう始まっているのだろう。早くヒーロー活動を始めたいんだが」
「私はヒーローの付き人じゃないのよ! というかこっちだって何したらいいかわかんないってのにああもう……」
伊織はもはや奴との会話を打ち切る事に決めた。
バーサーカーは残念そうにこそしているが、機嫌を損ねて暴れる訳ではないのが勿怪の幸いである。
狂っていてもそこは自称ヒーロー、というのがギリギリのラインでプラスになっているらしい。
しかし沈黙した伊織は結局のところ、聖杯戦争に対するスタンスを決められなかった。
願いの叶う願望機と言われても、それを巡った戦争と言っても、あくまでそれまではただの少女だったのだ。
「……とりあえず、やよいたちに合ってみようかしら……もしかしたらあっちも記憶を取り戻せるかもしれないし……」
仮に偽物だったとしても、彼らは伊織の友人で、仲間で、同僚である。実は本物である可能性だってある。
どちらであったとしても、伊織にとり大切な存在であることに変わりはなかった。
そして伊織は額を抑える。背後ではバーサーカーが、どこから取り出したのかハンモックを張って楽しそうに揺れているのだった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
スプレンディド@Happy Tree Friends
【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏俊A 魔力B 幸運E 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
狂化:EX
パラメータをランクアップさせるが、理性の大半を失われる。
狂化を受けてもスプレンディドは会話をする事は出来るが、
思考が独善的な正義感と英雄観で締められているため実質的に意思疎通は不可能である。
【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
元の世界において、耐久力の無い住民たちの中で群を抜いた生物離れの耐久力を誇る。
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
自身を英雄として定義しているが故の勇猛であり、他者から見れば「蛮勇」に等しい。
変装:C
変装の技術。
Cランクなら、人間であれば親しい者でも騙し通せるレベルで変装できる。
ヒーローとは普段、正体を隠すため変装するもの……らしい。
飛行:A
飛行能力。空を高速かつ自由自在に飛行することが可能。
ただし彼のトラブル体質のため、誰かと一緒に飛ぶと事故る可能性が非常に高い。
【宝具】
『絶対正義の英雄戦記』(スプレンディッド・サガ)
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足人数:1〜10
バーサーカーの英雄としての実力を開放する宝具。
空を自由自在に高速で飛び、目からレーザーを出して、大声は人間なら容易く粉砕する。
岩を軽々持ち上げるような怪力は勿論のこと、強靭な肉体を誇り並の攻撃では膝をつけることすら至難となる。
これらの能力はバーサーカーが「ヒーロー」としての行いに調子に乗っているほど性能が上昇する。
つまり気分次第の宝具であり、燃費が軽く開放が容易い代償として安定性に疑問がある能力である。
それでも彼がヒーローとして満足していれば、その膨大な魔力と強大な力はまさしく一騎当千のものである。
『封勇の種』(クリプト・ナッツ)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足人数:30人
箱に封じられた光る種。
バーサーカーの弱点であり、この光に当たると嘔吐を繰り返すようになってしまい機能を封じられる。
その性質から宝具としてのこのアイテムは、「英雄」の性質を持つ者に対して反応。上記の効能をもたらす。
ただし自身の弱点であるため、バーサーカーはこれを厳重に手元に保管し存在を隠している。
【weapon】
己の拳
【人物背景】
豆腐ボディな住民たちのなかで、唯一強靭無敵な肉体を持つ正義のヒーロー。
……なのだが、ありあまる力のせいでヒーロー活動を行おうとしてみんなを死なせたりとロクに役に立たない。
どころかうっかり殺した事に気づけば証拠隠滅を働き、正体を知った一般人は殺そうとし、
都合の悪い事が起こると助けを求める声を無視するなどかなり性格に問題がある。
【サーヴァントとしての願い】
ヒーローとして大活躍
【マスター】
水瀬伊織@アイドルマスター
【マスターとしての願い】
決めかねている。とりあえず聖杯戦争から開放されたい。
【能力・技能】
特になし
【人物背景】
水瀬財閥のお嬢様にして765プロダクションのアイドルユニット「竜宮小町」のメンバー。
外面は良いが本性はわがままで高飛車。しかし根は優しく、仲間思いで面倒見がよい典型的なツンデレ。
勝ち気な性格が加わって、なんだかだで個性的なメンツに囲まれると常識人の一面が目立つ。
【方針】
やよいや765プロのメンバーに会いに行きたい。バーサーカーを何とかしたい。
>>359
投下乙です、城ヶ崎莉嘉さんと弾ですね。
突然このような状況下に置かれることでメンタル的にボッコボコでしたが、いつもの調子に戻られたようで幸いです。
保護者と被保護者といった主従ですが、サーヴァントの方に良い意味での隙があり、完全無敵の大人というわけではなく、
莉嘉さんの挑発にたじろいでみたり、色々と余裕のあるコンビだと思います。背伸びした可愛さ、書けますよね。
特筆すべきは、原作でも仕様上ここまですさまじいことになる規格外の幸運でしょうか。
元々運にステ振りはしないタイプですが、虫集めてれば運も補えるのなんだかお得でいいですよね。
投下ありがとうございました。
>>368
投下乙です、モモさんとラルフ君ですね。
原作では沙姫様が一番好きです、関係無いことですが。
この話自体に触れる前に、ちょっとおもしろかったので触れておきたい部分はやはり、聖杯戦争公式サイトでしょうか。
主催かきらきーか、あるいは業者に依頼したのでしょうか。こういうサイトを誰が作ったのかっていうのを想像するの結構好きです。
それと、リトさんが奇跡を通り越して狂気のようなラッキースケベに至らないのもまさしく恐怖といえるでしょう。
あの宇宙的恐怖すら感じさせるラッキースケベの無いリトさんなんて、
エクスカリバーを持たないアーサー王、王の財宝を持たないギルガメッシュ、腕をもがれないアシュラマンのようなものです。
閑話休題。
ハーレム繋がりの主従ですね、全く羨ましいことです。
ラルフ君自体は悲しい物語なぐらいに弱々しいですが、宝具は中々に強力ですね。
カワイイは正義であり、数は力ならば、力ある正義がここには備わっているということです。
希少な少女聖杯のサービス枠です、頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>377
投下乙です、にとりさんとエドガーですね。
にとりさんがマスターということでかっぱ押しですね、かっぱ。
しかし、読んで成程機械繋がりというだけではなく、FF6とかっぱには深い関係がありましたね。
ファイナルファンタジー6はある意味ではかっぱファンタジーとも呼べるでしょう。
個人的に特筆したいのは、やはり宝具である機械装備でしょうか。
原作における裏ワザというのは宝具に持ち込みたくも、自分では中々まとめられなかったのですが、
この宝具、中々良い具合に整っていらっしゃいます。それと同時にドリルは浪漫です。中々心をくすぐってくれるじゃあありませんか。
投下ありがとうございました。
>>388
投下乙です、アルエットさんとシロボンですね。
アルエットさんと僕の姿が重なって中々胃の痛くなりますね。
個人的に素晴らしく思ったのは、SSの中で描写された楽園のように暖かな日常でしょうか。
異邦人であるシロボンが訪れてもそれを暖かく受け入れる様、その真実が最後に表されることで、まるでナイフで貫かれたかのような鋭い衝撃を与えられました。
さて、方針の欄でも書かれていましたが、全ての面において超ハードモードですね。
シロボンという存在そのものだけは受け入れてもらえていることだけは救いでしょうか。
開幕自爆をやらかす自分には、はっきり言って不可能だと思いますが、シロボンさんには是非頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>400
投下乙です、知世ちゃんとプライドですね。
知世ちゃんの優しさが五臓六腑に染み渡ります、やっぱり小狼君より知世ちゃんなんじゃあ^〜
さて、その優しさは素晴らしいことですが、それと同時にこの聖杯戦争においては悲劇の引き金となりかねないのが辛いところです。
彼女の小さい掌で、あるいはより多くの命まで拾おうとしてしまうのではないか、それは彼女のキャパを超えてしまうのではないか、非常に恐ろしいです。
プライドも現在は知世ちゃんに合わせていますが、自分の道を選んだ時、決定的な亀裂が走るのではないか、非常に恐ろしいことです。
色々と不穏な面はありますが、優しく温かいSSであったと思います。
投下ありがとうございました。
>>408
投下乙です、赤ずきんちゃんと狩人ですね。
童話と重ねる形で出てきたアサシンウルフ、そして討伐者ハンター、ジェスチャーがクールですね。
物語としては赤ずきんをなぞっているわけで、ではこの物語におけるおばあちゃんは聖杯戦争に食われた少女でしょうか。
面白い点は、この童話においては赤ずきんも狩人の役割を持つこととなった点ですね。
赤ずきんのパターンには祖母の肉体を狼に振る舞われることで、祖母の知識と知恵を得て狼から逃れるものもありますが、
今回の話は中々赤ずきん的には興味深い物語ですね。
投下ありがとうございました。
>>416
投下乙です、エレンさんとプッチ神父ですね。
己の弱さをプッチ神父に委ねてしまいましたね、ある意味ブチャラティに命じられたナランチャといえるでしょうか。
プッチ神父はこういう時に、最も掛けて欲しい言葉を言えるのがえげつないですね、神父の面目躍如といったところでしょう。
場合によっては聖杯入手の前に天国まで到る事が出来る点もえげつないところです、
主従としての立場が入れ替わってしまいましたが、まぁなってしまったものはしょうがありません。
エレンさんには強く生きていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>424
投下乙です、東條さんと……モハメド・アヴドゥル!YES,I AM!チッ♪チッ♪
帝都聖杯からのリブートということで、場外でも原作再現を行ったことになります。
さて、この組に強くいえることはやはり安定感でしょう。
互いが互いを信頼し、目を濁らせることもなく、とド王道をブチ貫く、読んでいて元気になれるようなSSじゃないですか。
そしてこれはアブドゥルさん死にますね(確信)
消し炭にされた僕のエニグマの紙のようにアブドゥルさんは確実に死ぬと思いますので、是非とも頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>434
投下乙です、ニノン・ベアールさんとすてねこオートマトンですね。
たからものによって理性を繋ぎ止めているバーサーカーというのは実に素敵なことですね、
キャラ立ちという点でもそうですが、物語の進みごとに視覚的に正気と狂気のどちらかに天秤が傾いているか実にわかりやすくなるわけですからね、
こういうバーサーカー、実に魅力的だと思います。
個人的に好きな部分は、そうはならなかった物語を語る部分でしょうか。
セイバーだったのかもしれない、キャスターだったのかもしれない、かもしれないでもありえない物語というのは人の心を惹きつけるものがありますね。
投下ありがとうございました。
>>444
投下乙です、佐藤良子さんと三國総一郎ですね。
〝普通〟を手に入れるために、普通を捨てなければならないというのは実に因果なことですね。
しかし、実際どこかで外れてしまった自分の人生を正しいルートに戻そうとするならば、そのぐらいの覚悟がいるということのなのでしょう。
道を同じくする者同士頑張っていただきたいものです。
さて、少女聖杯におきましては様々な宝具がありますが、金融街にようこそはその中でも更に特殊な宝具ですね。
この世を統べる大魔神、お金様です。
ドカポンやってる中で一人だけ桃鉄で勝負出来るような宝具です、ロマンがあります。
投下ありがとうございました。
>>454
投下乙です、山田なぎさとクロメですね。
嵐が来るよ――山田なぎさがこの台詞を言うって、心に来るものがありますよね。
二次創作であるからこそ言わせることが出来た台詞だと思います、藻屑の砂糖菓子の弾丸が実弾としてある世界ですからね。
全体的に藻屑が死んだ後の山田なぎさ感が現れていて素晴らしいです。
そして主従同士の乾いた関係性が実に良いですね、適度に離れた、だからこそ平等といった関係性です。
山田なぎさと海野藻屑との関係性とは徹底的に違うんですが、しかし海野藻屑がいないと出来なかった関係性ですね。
つまり、
「まさか。あたしの変人対応スキルはもうマックスだよ、あんた程度で怯えてちゃ藻屑の相手なんてできないよ」
の台詞が大好きということです。
投下ありがとうございました。
>>463
投下乙です、羽丘芽美さんと春居筆美ですね。
新連載の一話のような話ですね、実に素晴らしいことです。
聖杯戦争という枠組みの中でどちらかがどちらかを喰うことなく、両者共に同じ世界観で活躍する様を描かれています。
白眉は「……やっぱり、『Dr.WHOO』が行った方が良さそうだよ、マスター」でしょうか、
この台詞が一番二人の関係性をわかりやすく表していると思います。
投下ありがとうございました。
>>471
投下乙です、ララさんとバネ足ジャックですね。
読みたくなったのでDグレ2巻買いました、やはり面白かったです。
人形は、何かになれたのか、テーマ的にはからくりサーカスの方になりますが、
その中でもフランシーヌ人形というよりはアプ・チャーさん寄りの様に感じられます。
さて、実に素晴らしいSSでした、夜の静かで美しく、妖しい情景が目に浮かぶようです。
原作では、ララとグゾルは共にアウトサイダーでしたが、今回もまた主従共にアウトサイダーということになりますね、包帯を外すシーン、素晴らしいです。
はっきり言って褒めるにはあまりにも己の語彙力が不足しています。
投下ありがとうございました。
>>483
投下乙です、クリステイアーネ・フリードリヒさんと伊吹萃香ですね。
真っ当な義を持ったマスターですね、この聖杯戦争においては珍しく頼れる存在でしょう。
それを支えるアサシンも実に頼もしいことです、安定感という点で言えば候補作の中でも上位に入る主従でしょう。
個人的には
「ん。……ならそうしようじゃないか、マスター」 「え」が好きですね。
膨らませた風船を破裂させるのではなく、空気が抜けるのに任せた絶妙な緊張の緩和であると思います。
投下ありがとうございました。
>>491
投下乙です、アッカリ〜ンとシンですね。
どうでもいいことですが、ゆるゆりを見ようとしたら、何故かボトムズを見ていた記憶があります。世界は不思議に満ちています。
実際登場していないのに凄まじい存在感を放つ姉が怖いですね。
全く予想外のところから追い詰められかねないことになったのはかなり珍しい事態だと思います。
主従としての繋がりは……主人公(?)でしょうか、影が薄いというよりは不遇な位置へと追いやられるタイプ。
さて、特筆すべきはシンの強さでしょうか、最優どころか最強、無敵の勢いです。サクッと優勝する可能性すら有ります。
もう影の薄い子とは言わせないでしょう、頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>498
ドーモ、イチノセ=サン、ヤモト=サン。投下乙です。
ラスガ時の離れることが守ることとなったアサリ=サンとは対照的に、サーヴァントとして直接的に守ることと相成りましたね。
イチノセ=サンは、やはり荒事にも慣れているため最悪の場合での覚悟が決まっています。
原作よりも状況はきついですが、実際この点に於いてはヤモト=サンもやりやすいことでしょう。
日常は失われるからこそ、実際大切にしなければいけないことですね。
投下ありがとうございました。
>>509
投下乙です、星輝子さんとばいきんまんですね。
揃いましたね、カワイイボクと142's。
ていうかカワイイですね、ばいきんまん。
お姉さんだからって背伸びをしている感じもカワイイですね。
全体的にカワイイ空間ですね。
ちなみに、ライダーばいきんまんは正直天才の発想じゃないかと思いますね。
投下ありがとうございました。
>>518
投下乙です、白鐘直斗と自爆する方のギルガメッシュですね。
バッドエンドからの参加ということで、特別捜索隊がひどい状態になっています、悲しい物語です。
そして直斗もまた、重責を掛けられています、全体的にボロボロです。犯人は二次二次にいます。
そこで英雄王の方が出てきたら、直斗の胃がストレスでマッハでしたが、幸運なことにFF5のギルガメッシュです。
胃を痛めるという点では変わりませんが、煽ったりしないし、その人柄が救いになってくれるといいことですね。
それにしてもギルガメッシュ、強いです。
クソみたいな宝具がありますが、それを補って余りある程に強いです。
クソみたいな宝具と言いましたが、エクスカリパーも変則的壊れた幻想として扱えます、強いです。こけて投げそうです。
投下ありがとうございました。
>>519
投下乙です、いおりんと、スプレンディドですね。
スプレンディドで検索した所、いきなり擬人化画像が現れて驚きました。
というかサーヴァントがうざったくて、闇化しそうなマスターって中々に新境地ですね。
ピーキーかつ質の悪いバーサーカーです、性能としては申し分ありませんが、扱うには難しい。
何故、こんなサーヴァント引かされたのでしょうか、罰ゲームでしょうか、前世でなにか悪いことでもしたのでしょうか。
いおりんの幸福を祈りましょう。
投下ありがとうございました。
終わり!閉廷!
投下します
『 私と先生は、五十七文字の愛でつながっていた。 ▼』
.
『 直接話したことはない。
それでも始まる恋がある。 ▼』
『 顔も知らない相手。
それでも繋がる絆がある。 ▼』
『 私と『先生』は五十七文字の愛で繋がっていた。 ▼』
『 誰かが考えた台詞を通して、私と『先生』は知り合った。
誰かの考えたストーリーを通して、私と『先生』は仲良くなった。 ▼』
『 出会ってから、冬を越え、春を迎え、夏を過ごし、秋になり。
いろいろなことがあったけど、二人はずっと一緒だった。 ▼』
『 一年中いつだって、お互いの呼吸すら感じられる距離に居た。
それでも触れ合うことは出来なかった。 ▼』
『 貴方は私を知っていて。私も貴方を知っている。
それでも二人が、本当の意味で出会うことはできなかった。 ▼』
『 だって、私は『先生』の遊ぶ『ソーシャルゲーム』のキャラクターだったから。 ▼』
『 携帯が開かれて、ページに『先生』がアクセスする。
いつも通りの台詞で、『先生』を迎える。
それが私に許されたささやかな幸せで、私と先生を繋ぐ確かな愛。 ▼』
『 この世界に『おしまい』はない。
いつまでも、いつまでも。
ゲームが続く限り、私と『先生』の物語は続いていく。 ▼』
『 私は当然、二人の愛もそうだと信じていた。 ▼』
『 たとえ全てのものに終わりがあるとしても。
私と『先生』の思いが続く限り、世界とともにあり続ける。
この愛だけは永遠だと信じていた。 ▼』
『 終わりは突然訪れた。 ▼』
『 マイページに飾られた文字は『サービス終了のお知らせ』 ▼』
『 私の世界が、『ソーシャルゲーム』が終わる。 ▼』
『 私達の物語に『おしまい』はない。
サービスが続く限り、いつまでも続いていく。
一年、二年、三年、もっともっと、もしかしたら『先生』が死んだ後も、『先生』と私の幸せな物語が続いていったかもしれない。 ▼』
『 でも終わりが来た。 ▼』
『 抗いようのない『終末』が、来てしまった。 ▼』
『 サービスの終了。 ▼』
『 世界が続く限りの愛が、世界そのものの『消滅』によって『終結』する。 ▼』
『 学園も、友達も、先生たちも、その日まで変わらぬ日々を過ごし。
その日がくれば唐突に、最後に永遠の『つづく』を残して消える。 ▼』
『 カウントダウンが始まった。
私と『先生』の物語の終わりまでのタイマーが動き出した。 ▼』
『 二人の愛の終わりまで、あと七百七十七万六千秒。 ▼』
『 動き続ける時間は、誰にも止めることはできない。 ▼』
『 『先生』にも、私にも、神様にも、止めることはできない。 ▼』
『 残された時間なんて、あっという間だった。
所詮創りだされたキャラクターである私には、その時間を惜しむ事もできず。
ただ、過ぎゆく時間と最後の瞬間を受け入れ続けるしかなかった。 ▼』
『 あと600秒で世界が消えるという時、『先生』は私に会いに来てくれた。
私との『終わり』までの時間を過ごしに来てくれた。 ▼』
『 とても嬉しかった。
一言でいいからお礼が言いたかった。
でも、そんなこと出来るわけがない。 ▼』
『 結局私は、最後の600秒も、いつもどおりの台詞を言い続けた。
いつもどおりの表情で、いつもどおりに接し続けた。 ▼』
『 3秒。
『先生』がリロードを押す。 ▼』
『 2秒。
マイページが開かれる。 ▼』
『 1秒。
私がいつもと変わらない言葉で迎える。 ▼』
『 それが私と『先生』の『おしまい』。
それは中途半端で、消化不良な。
とても物語にはできない、この世界で一番確かな愛の結末。 ▼』
『 0秒。 ▼』
『 そして、終末が訪れる。 ▼』
『 世界が消える。 ▼』
『 幸せだった時間が消えていく。
私と先生の永遠が消えていく。 ▼』
『 一緒に過ごした時間も。
誰かが綴ってくれた素敵な台詞も。 ▼』
『 五十七文字の微笑みも。
ホワイトバックの恥じらいも。
テンプレートな感情表現も。 ▼』
『 全部、全部、全部が消えて。 ▼』
『 消えて。 _
『 消え_
『 消_
『_
_
.
―――嫌だ。
嫌だ。
消えたくない。
伝えられたのは、誰かが決めた『台詞』だけ。
伝えられたのは、一枚限りの『表情』だけ。
私はまだ、伝えてない。
ありがとうを伝えてない。
大好きも伝えてない。
さよならだって伝えてない。
私の言葉を。
私の笑顔を。
私の気持ちを。
私の心を。
大好きな『先生』に、全く伝えられてない。
それなのに、消えるなんて嫌だ。
誰かの言葉が『先生』にとっての私の全てだなんて悲しすぎる。
貼り付けたような表情だけが『先生』の知る私だなんて悔しすぎる。
別れも言えず、ただ漠然と彼を迎えるだけしかできないのが物語の終わりなんて、酷すぎる。
消えたくない。
消えたくない。
消えたくない。
また『先生』に会いたい。
まだ『先生』と一緒にいたい。
『先生』に気持ちを伝えたい。
世界にも邪魔されたくない。『先生』の側に居たい。
―――少女、神代てんかは心の底から願った。
自身に与えられた神としての力と存在の全てを掛けて、ひたすらに願った。
己の願いの成就、ただそれだけを。
◆
ぼうと光るか細い光の糸を必死に手繰り寄せる。
それがなんなのかは分からない。
ただ、それを手放してしまえば自分も『ソーシャルゲーム』同様、消滅してしまう気がした。
だから必死に手繰り寄せ、前へ前へと走り続けた。
でも、てんかを消そうとする力は消えない。
それはまるで影で出来た縄のようにてんかの手を、脚を、体を、顔を捕まえて先ほど消えてしまった世界に引き戻そうとしてくる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
お父さん、お母さん、お願いします。てんかに力を貸してください。
願いむなしく、脚は止まる。
影がてんかを飲み込むように体中を縛り上げていく。
身動きの取れなくなったてんかは、強さを増していく拘束と闇に飲み込まれていく世界の中でも手に掴んでいた光だけは離さぬようきつく胸に抱き、ただ祈り続けた。
会いたい、会いたい、会いたい。と。
『聞こえたぞ』
漆黒に染まっていく世界に響く声。
『面白そうじゃねえか。俺が手伝ってやるよ』
声がてんかに語りかける。
今なお存在の消滅と戦い続けるてんかの尽力など知ったことかと言うふうの飄々とした口ぶり。
答える余裕はない。
ただ、ただ、胸に抱いたか細い光だけに望みを込めて祈り続けた。
『先生』に会いたい。
『先生』のもとに行きたい。
『先生』、『先生』、『先生』、と。
『やい、お前。
世界だかなんだか知らないが、こいつがここまで頼んでんだ。
少しは融通効かせてやれよ』
ばり、ばり、ばりばり。
てんかを消そうと働きかけていた影が切り裂かれる。
掛けられていた無数の力が弱まるにつれて一筋、二筋と無限の闇に光が差し込んでくる。
差した光はてんかが握りしめていた光と融け合い、さらに強く輝き出す。
『こいつの力で足りないなら、特別に俺が頭を下げてやる』
ばりばりぼりばり、ばりばりばり!
てんかを縛り付けていた絶対遵守の壁が、幾筋もの爪痕によって拘束力を失っていく。
『この俺が、大妖狐が、『こいつに願いを叶えるチャンスくらい与えてやれ』っつってんだよ。
つべこべ言ってないでさっさと従いやがれ!』
ばぎり、めきめき、ばり!!
大きな一撃の後に、古い世界が切り開かれる。
真っ暗だった世界が一転、真っ白に染まる。
電脳の殻の先にあったのは魔力の海。
古い世界の跡地に魔力の激流が雪崩れ込んでくる。
そうして消えるはずだったてんかの体が濁流に飲み込まれる。
目の前に広がるのは巨大な白の海。
『0と1の墓場』から排出された少女は白に飲まれ、流されていく。
深い、深い、どこにもない世界へと―――
◆
「うう、ん……」
ひやりと冷たい床の感触。
てんかはゆっくりと体を起こして周囲を見回す。
そこはがらんどうとした空間だった。
どこまでも続く『何もない空間』。きらめく何かがあるようで、なにもないようで。
唯一確認できるのは、目の前にある鏡のような扉のみ。
「よぉ、危なかったな」
てんかが振り向くと、そこには鮮やかな緑髪をした男が立っていた。
年の頃は三十くらい、カジュアルな服装に不釣り合いな無精髭を携えた顔。
男は、てんかの側に座り込むと、彼女を覗き込み、話しかける。
「『世界』に対して喧嘩売るなんて、なかなか根性のあるやつだと思ったが……
見た目はそうでもないな。まだまだガキじゃねえか」
「あの……貴方は? ……ここは、どこなんですか?」
「俺か? 俺ぁ、大妖狐だ。ついでに言うとここは『どこにでもあってどこにもない世界』って奴だよ」
「『どこにでもあってどこにもない世界』?」
聞き覚えのない単語を聞き返す。
すると大妖狐と名乗った男は頭を書きながらこう言い換えた。
「んー、なんつーかな。あっちとこっちの境目? さっきまでお前が居た世界と俺が居た『現実』を区切る壁みたいなもんさ」
『現実』と『てんかの世界』を区切る壁。
つまり、ここはてんかが望んで、望んで、望み続けた場所へと続く道程の一部。
「で、ここを越えれば、お前が願い続けてた世界に行ける。
そこの扉を開ければこの世界を越えられる。どうする、越えるか?」
大妖狐と名乗った男の唐突な問い。
不意に与えられた『願いの成就』への第一歩。
それを聞いた彼女の返答は―――
「越えます!」
当然、それ以外なかった。
それは、普段の気弱な彼女からは想像できないほどの即答だった。
「じゃあさっさと出るぞ。ここに長居していいことなんてなさそうだ」
大妖狐に促されて扉を開ける。
そこには、またしても見知らぬ世界が広がっていた。
◆ ◆
扉の向こうに広がっていた『世界』。
てんかがまったく見たことのない景色。
知らない鳥が飛んでいる。
何かの鳴き声が聞こえる。
見たこともない建物が沢山建っている。
どれもこれも、てんかが居た『ソーシャルゲーム』の中では見ることができなかったものばかり。
あれやこれやと飛び込んでくる目新しい物を追いかけていると、背後から声がかけられた。
「なんだ、偉く楽しそうじゃねえか。こっちの世界がそんなに珍しいか?」
その声は、あの空間でてんかに手を貸してくれた大妖狐の声。
てんかは慌てて先ほどのお礼を言おうと振り返り、そして見た。
彼の体に浮かぶ不思議な文字を。
「『だいようこ』……さん?」
「ああ、そりゃ……俺の『クラス名』だな」
クラス名。
それは学校のクラスと何か関係があるんですか、と聞こうとした。
だが、その問いかけは、急な痛みでかき消されてしまった。
左の耳の裏が痛む。あまりの痛さに左耳を抑えてうずくまると、やはり大妖狐は訳知り顔という様子でこう言った。
「ほお、令呪も出たか。どんなのが出たんだ、見せてみろ!」
『令呪』。その単語が何を示しているのかが、何故か理解できた。
聖杯戦争。
願い。
サーヴァント。
契約。
戦い。
エクストラクラス。
だいようこ。
ルーラー。
少女、少女、少女。
愛するものが死んだ時には、■■■■■■……
彼女の知識の中にはなかった知識の数々。
それが、この世界の『ルール』。
彼女が呼び出された新たな『ゲーム』に課せられた『ルール』。
「願いを叶える戦い……なんでそんな世界に来ちゃったんでしょう」
「どーも、お前の願いが強すぎて、引き寄せられたみたいだな。しかも俺ごと」
俺ごと、と言ってるがそう説明する大妖狐の声には一切不快な感情は込められていない。
むしろ年甲斐もなくうきうきしていると表現したほうが正しいだろう。
「それであの、だいようこさん。その……『聖杯戦争』についてはだいぶ思い出しましたけど……
結局ここに先生は居るんでしょうか?」
てんかの願いは電脳世界に居た時から一つ。
『先生』と会うこと。
もしこの世界が『ソーシャルゲーム』とも『先生の世界』とも違う第三の世界だったら、せっかくあんな危ない真似までしたのに本末転倒だ。
彼女はより必死になって、大妖狐に問い詰める。
「……私、先生に会いたいんです! 先生に会って、それで、会った時のこととか、神社のこととか、お正月のこととか、選挙のこととか、いろんなこと、全部、全部、話したいことがあって!」
「あー? あー……どうだろうな。まあ居るんじゃねえの?
この街にいるかどうかまでは定かじゃないが……でもこの街の外側、世界まで含めれば居るだろうよ」
熱心に語るてんかに対して、願いについては全く興味なさげに対応する大妖狐。
大妖狐にとってはてんかの願いなど、おもちゃについてきたラムネ程度の価値しかない。
所詮、楽しませてくれる『なにか』のおまけだ。
世界相手の反乱は彼の心をときめかせたが、今はもうそうでもないらしい。
そんなぶっきらぼうな対応にも特に不快な様子は見せず。
じゃあどうしようか、と彼女は可愛らしい金毛の髪と耳と尾をなびかせながら唸り始めた。
「さっさと会いたいなら、手っ取り早い方法があるぞ」
大妖狐がひときわ楽しそうに笑う。
唸るてんかを見て関心なし、から関心あり、へと切り替わったらしい。
どうにも気変わりの早い狐だ。
「せっかく願いを叶える戦争に呼ばれたんだ。優勝して願いを叶えてもらえばいい」
「……そこまでは、どうでしょう」
大妖狐の口から出た提案。
だが、てんかはその提案を何の考えもなしに飲めるような神物ではない。
聖杯戦争に優勝するということは、誰かの願いを無下にするということ。
てんかは、他人の望みを否定するというのが出来ない性分なのだ。
できるだけ多くの人の願いを叶えたいし、多くの人に幸せであって欲しい。
自分も幸せになりたい。でも、他人の幸せを否定したくない。
慈愛に満ちた、『願いを叶える神』に相応しい答え。
だが、大妖狐はその答えがあまり気に入らなかったらしく。
「なんだぁ? つまらん。じゃあせいぜい、死なないようにしろよー」
しゅ、と音を残して消えてしまった。
どうやら彼はてんかが昔持っていたような『どこかへ行く力』を持っているらしい。
姿の見えなくなった大妖狐が、てんかの頭に直接語りかける。
『そうだ。誰かに襲われたら俺を呼べよ! すぐに助けに行ってやるから!』
そう告げるときだけは、やはり少しだけ楽しそうで。
てんかは、そんな身勝手ばかりの大妖狐の振る舞いに、少々呆気にとられてしまった。
◇
神は恋を患い、願いを抱いて少女という穢れに身を投じた。
もう、天上の穢れ無き世界へ戻ることはできない。
神は少女へと堕ちてしまったのだから。
少女は、歩き続けなければならない。
この終わりの見えない果てしない道、愛へと繋がる長く険しい道を。
その道のりには、神であった頃からは想像できないほどの苦難が待ち受けているだろう。
それでも、少女・神代てんかは幸せだった。
◇
感想ありがとうございました、お疲れ様です。そして疑問が浮かんだので。
一行や二行程度に収まらない投下作品の修正(サーヴァントステータスなど割と多めの)を行う場合、
wikiを直接編集して事後報告という形でも大丈夫でしょうか?
【クラス】
だいようこ
【真名】
大妖狐@いぬかみっ!
【パラメーター】
筋力:A- 耐力:A- 敏捷:EX 魔力:A- 幸運:A 宝具:A
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
妖獣:A
神仙と同等の力を有している妖獣である。
同ランクの単独行動と同等の効果を発揮。
さらに獣としての姿を解放することで相手に絶対に真名がバレる代わりに魔力を一段階向上する。
なお、彼はてんかを聖杯戦争に導くために聖杯戦争に介入した代償として獣としての姿を解放することができなくなってしまったため、このスキルは単独行動:Aと変わりない。
正体露見:―
正体を隠すことができないスキル。
クラス名を見られれば正体が狐の妖獣であることが見抜かれる。
【保有スキル】
自分勝手:―
我儘で気分屋。
気分次第で方針を切り替えるし自分の意見が通らないなら駄々をこねる。
駄々をこねるときの規模が人間とは桁違いで、彼は自分の言い分を通すためなら宝具もスキルも全力で使用する。
親ばか:―
親ばか。娘(ようこ)が大好き。
娘のこととなると前後不覚に陥る。
脆いおもちゃたち:―
彼が全力を出してしまうと相手は必ず死んでしまう。だから彼はいつだって全力を出さずに戦ってきた。
その逸話通り、彼は自身以下の力量の相手との戦闘が始まった場合、筋力・耐力・魔力にマイナス補正が付く。
この逆補正は戦闘終了まで消えることはない。
また、自身より素で強い相手に出会った場合、マイナス補正は付かないが、珍しい『壊れないおもちゃ』に興奮して戦闘から離脱できなくなる。
じゃえん:A+
同ランクの魔力放出(火)と同じ威力を持つ『じゃえん』を放つ。
魔力放出と違い一発にかかる魔力量が少なく、場所を指定して発動できる代わりに威力の制御が大雑把にしか出来ない。
更に魔力を込めることで高性能版の『だいじゃえん』を放てる。
が、『だいじゃえん』の場合常に広範囲攻撃になり、威力も最大出力固定になる。
しゅくち:A+
自身を移動する能力『縮地』を魔術として特化させたもの。
大妖狐は『しゅくち』で自分だけでなく任意の物体を移動させることが出来る。
彼自身の敏捷はB相当だが、このスキルを使うことでどこにでも現れることが出来る。
他人を遥か上空にすっ飛ばして墜落死なんてこともできるが、大妖狐的にはそれは面白く無いのでやらない。
なお、使用時に更に魔力を込めることで高性能版の『だいしゅくち』を放てる。
大妖狐が『だいしゅくち』を使えば、街の住人を一人残らず同時に遠くに飛ばせる。
ただしこの聖杯戦争では、『定められた範囲の外』への参加者の移動は行えない。
【宝具】
『因果律よ俺の前にひれ伏せ』
ランク:A 種別:対界 レンジ:1-99 最大捕捉:999
大妖狐には自身への干渉の結果寿命が縮んで死んだものに対して『俺のために使った力を全部無かったことにしろ』と因果に働きかけて彼を蘇生して更に寿命を伸ばした逸話がある。
更に周囲の人物の時間を限定的に巻き戻したり、逆に限定的に進めたり、三神との闘いで炎や水や岩や雷を『面倒だから全部まとめて降ってこい』と命じて文字通り全てを雨あられのごとく降り注がせたり、男四人で風呂に入った時『狭いのは嫌だ』という理由で空間ごと捩じ曲げたりとやりたい放題。
これらの逸話に違わず、彼はマスターから相応の魔力を奪う代わりに因果を捩じ曲げ事象に望んだ結果を与えることが出来る。
『岩を降らせる』『局地的に時間を早める』『空間の婉曲』などから『マイナス補正を消す』『クラスを変更する』『スキルを消滅させる』などまで様々可能。
本来は出来ないことなど何もない能力だったが、この聖杯戦争中は性能が大幅に劣化している。
この聖杯戦争において捩じ曲げられる因果は『聖杯戦争の根幹に違反しないもの』のみである。
他者を殺す、他者を一方的に戦闘不能にする、他者の願いを叶える、聖杯を消滅させるなどは不可能。
更に一つの因果をねじ曲げている間は他の因果に鑑賞できない。
そして、仮に上記の条件に合致する因果操作を行ったとしても、時間上限が存在する。
大妖狐の状態にかかわらずねじ曲げた因果は30ターンで元に戻り、同戦闘中同じ因果に干渉することが不可能となる。
【weapon】
特になし。
原作中では素の殴り合いですら神を除けば最高ランク(神には及ばない)。
この聖杯戦争でもマイナス補正抜きならばかなりの強さを誇る。
【人物背景】
いぬかみっ!ヒロインのようこの父。大きなガキ。
第二部以降の参戦であるため、わりと常識的になっている。
車で積み木なんかしないし、娘のために山から全ての生き物を追い出したりもしない。
ただ、それでも人間社会には興味津々なので色んな所を飛び回り、いろいろな面白いことに首を突っ込み続ける。
てんかが世界と喧嘩してるの見て面白そうと首を突っ込んだ結果聖杯戦争に引きずり込まれた。
てんか救出の際に少しだけ無茶をして聖杯戦争に巻き込まれたので通常時より性能が劣化している。獣化の他、せきかやじゅうりょくやばくはつは持ち合わせてない。
更に実体参戦のため霊体化が出来ないが、魔力量がマスター・サーヴァントともに豊富であるし呼べばすぐに来るだいしゅくちがあるので特に問題はない。
【マスター】
神代てんか(神代天花)@ビーナスアカデミー
【マスターとしての願い】
『先生』に会いたい。(聖杯を使わなくても叶うなら聖杯を使わずに叶えたい)
【能力・技能】
元神。
もともと神様の父・神様の母を持つ血統書付きの神様である。
サービス終了と世界への介入で神としての力の大半が行使できなくなった。
神として持っていた『願望実現能力』や『そこに居ない力』『そこに居る力』も失ってしまったようだ。
現在の彼女の能力はほとんど人間と変わらないが、人より幸運で、強く願えば普通の人よりも願いが叶いやすいかもしれない。
元神ということもあって精神魔術耐性は高く、魔力は豊富である。
狐耳。
狐耳としっぽが生えている。カワイイ。
魔力量と合わせて一発で参加者バレする。
左側の狐耳の後ろに、狐の顔と尻尾模様のように見える令呪が刻まれている(鏡なしでは本人には見えない)。
人間の耳があるのかどうかは不明。あるかもしれないし、ないかもしれない。イラストからは判断不能。
巫女服。
神様らしからぬ卑猥な巫女服を着ている。カワイイ。
【人物背景】
サービス終了したソーシャルゲーム・ビーナスアカデミーのキャラクター。
サービス終了に伴い消滅していくデータの中でそれでも自分が好きだった『先生』に会いに行きたいと願ったら願いが届いた。
イベントの際のガチャV(ヴィーナス、巷でいうSRやURとおなじ最高クラス)。
目玉ということもあって性能はとてもいい。
以下原作設定。
要領が悪く気弱な性格をしている新人神様。体躯や精神面から人間で言えば中学生ぐらいの年齢であると考えられる。
根は真面目で、お賽銭とともに投げ込まれた有象無象の願い全てを叶えようとして処理能力を越えてしまいパンク、代行に仕事を転嫁して逃げ出した事がある。
イベント終了後はメンタルケアという建前で学園に残った。
一人称は私。二人称・三人称は○○さん。丁寧口調。
デレると「『先生』、神様に興味ありませんか。夫婦神です!」「私の両親に会いに行きましょう!どこに居るかって?雲の上です!」などと言い出すというよく分からないスケールのデレを見せてくれた。
ちなみに元神様なので精神に作用する魔術はほとんど無効化できますが直接煽られるとたぶん泣きます。効いてないけど悲しくて泣いちゃうんです。
現在サービスが終了し、セリフをまとめたサイトなどもないため彼女のキャラ把握は完全不可能である。
悲しいなぁ……(諸行無常)
【方針】
『先生』を探す。(会場内に存在するかどうかは不明)
だいようこはだいようこで好き勝手する。もしてんかが襲われたら(遊ぶ相手が来たということなので)しゅくちで会いに行く。
戦闘に方針という程の物はない。
もう全てが力押しである。
地力が少しでも上回っていれば勝つ。
逆に少しでも下回っていれば負ける。
『因果律操作』で少し例外が出るかもしれないが、それでもだいたいこれに間違いない。
[参戦経緯の解説]
そもそもてんかと『先生』は住んでいる世界が違うため、会うためにはただの願望実現能力では足りない。
例え電脳世界の聖杯に願ったとしても、聖杯に世界の壁を乗り越えさせるほどの力はないためこの願いは叶わない。
今回のてんかは
てんかの神として生まれ持った願望実現能力の全てを用いて、電脳世界崩壊のタイミングで次元を乗り越える道をこじ開け(電脳→現実への介入、境界線まで辿り着く)。
加えて神仙に近い大妖狐が因果律操作でてんかに対して現実側から手を差し伸べ(現実→電脳への介入、境界線まで導く)。(ここで境界線を残して電脳と現実が局地的に近づく)
2つの神域からの干渉が重なった結果、てんかは現実と電脳の狭間にもある『どこにでもあってどこにもない空間(nのフィールド)』に到達。
そしてnのフィールドから現実側へと正式に進入する。
という神・神仙の願いを叶える能力による文字通りの神業を披露している。
その過程のどこかでてんかは神としての力の大半を喪失、大妖狐は能力の一部を失いてんかのサーヴァント扱いになり、願いの強さから聖杯戦争の舞台に呼び出された。
世界の壁という一番大きな壁を乗り越えたのであとはもう普通に聖杯に願えば『先生』に出会えるはずである。『先生』が実在するのであれば、の話だが。
投下終了です
割り込み申し訳ございませんでした。投下お疲れ様です。
>.546
投下乙です、神代てんかさんと大妖狐ですね。
把握できないのか……(困惑)
現実のサービス終了を組み込んだメタ的にダイナミズムあふれる作品であると思います、
電脳的な表現が素晴らしいですね、そしてぶち壊した大妖狐がまた素晴らしい。
挑戦的なSSであると思いますが、実際素晴らしいと思います。
しかし、把握できないのか……(二重の困惑)
投下ありがとうございました。
>>542
はい、wikiを直接編集後、当スレにて編集箇所の報告を行ってくだされば大丈夫です。
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ 締め切りは5月1日いっぱいと言ったな
rミl ,´_-・- l-・-、シ
{6〈ヽ、 、_|_, イ 「\
ヾ| ( ,-ー-、) | ヽ ) /7
\ `- ⌒-´ノ / / 〈 /
/i\ __ノ / | ||
/\_ _ノ\ (ア E) ||
(_Y ヽノ )イ⌒ニ〈 < / |
( )____/ `ー-ー´\ \ / /
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ
rミi _-・- l-・-、v
{6〈`┬ 、_」_ イ あれは嘘かも。
ヾ| ( ,-ー-、) |
\ `- ⌒-´ノ 、 ' ’
/i\ __ノ - ∩_____ ’
/\_ _ノ\ ( イ___ヨ - パッ
(_Y ヽノ )イ⌒ニ ,ノ
( )____/ `ー-ー´
ー-',..-'ー.-,ー!..ー,,-._ー.,-ー.,-ー-...,,____
l | i i ''i,,_
今日中に完成しそうにない、投下が間に合わない、特にステ表が間に合わない、という場合
本日中におっしゃっていただければ、5月2日の8時まで待ちます。
延長したけど、普通に最終日投下間に合ったぜーーーーーッ!というのも大丈夫ですので、気軽にどうぞ。
現在書いていますが、リアルの都合上かなりギリギリになるかどうかですので延長お願いします…
ありがとうございます。あかり&セイバーにおいてステータスを修正しました。
そして投下します。
私、できない子は自分の才能に絶望している。
……待って欲しい。才能以前にその名前は何だとか横槍を入れないで欲しい。
世間には大人の事情というものが存在するのだ。人間が付けたはずの和名やら学名の一部を鳴き声とする生物とか。
閑話休題。
ともかく私は自分は何もできないと思っている。
無能と言うほどではないけれど、非凡と言えばふさわしい。
勉強しても「まあまあ良い点」が取れるだけ。スポーツやゲームも得意なジャンルで中の上がやっとこさ。
男にモテる風貌でもないし、コミュニケーション能力に長けているという事もなし。
自分で言ってて悲しくなるけど、誰もが私を器用貧乏と形容する事だろう。
それは私も十二分に理解してる。
だから私は身の丈にあった世界を行きなくてはならないのだ。
聖杯戦争なんてもってのほかなのだ。
偽りでもあの日常と心中した方が幸せだったと思う。
――戦争するなんてできないでしょ。無理。
だって私はただの学生だし。魔術師でもなんでもないし。
代行者でもないし。脇役全開のスペックで、おまけに出来ない子だ。……自虐ギャグじゃないです。
だけども主催者というか責任者は多分、棄権を許してはくれないんだろうなーというのが分かる。
こういう話はパターンとして、次々と災厄というか戦闘が舞い込む事になるのだと思う。お約束。
漫画は好きな方なので展開は読める。
もちろん登場人物が私だなんてものすごく控えめに言ってありがた迷惑だけど。
この手のファンタジーは登場人物のなるのだけは御免だと思う。
誰か好き好んで生殺与奪の場に踊り出たいものか。
そりゃ、異世界に飛んだ事で謎のスーパーパワーを得たとか主人公補正が約束されてるとかそういう事情なら別だけど。
多分そういうサービスは貰えてない。ちょびっと友人家族に見られたら死にたくなるような事を試したけど、私は凡人のままだったし。
……あ、いや。スーパーパワー的なものは貰っている。
ただ、それはパワーとか曖昧不確か視認不可能なものではなく、明確に質量を持って存在するもので。
平たくいえば生物的な何かであり、私本人の力というと少し語弊があるが、聖杯戦争の参加者である私はそういうものを貰っていた。
「ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
暗闇の森を、蒼き閃光で照らす……巨大な狼っぽい何か。
どう見ても怪物です、本当にありがとうございました。
この――「ジンオウガ」というらしいバーサーカー。これが私のサーヴァントだ。
真名は突然脳裏に浮かんだ。そして私は「あっ、このワン公絶対人と会話するとか無理だな」って悟った。
問おうあなたが私のマスターかみたいなプロセスすら、私には与えられなかった。
いくら何も出来ないとはいえ、それはちょっとセメントなんじゃないかなって思ってる。
何か悪い事しただろうか。あれか、間が差してバイト代を1万ほどガチャに注いだのが不味かったのか。
私がこの戦争から逃げられないと思った、もうひとつの理由が彼……いや彼女……? とにかくこいつの存在だ。
だってこんなにデカいんだもん。光るもん。
目立つでしょ。他のギラついた参加者にバレるでしょ。あとはお察し。
しかも「バーサーカー」だ。狂ってるのだ。怪物なのだ。どう考えても大惨事大戦不可避だ。
ああ、私にはもはや逃げる権利すらないんだなー。
あまりにも世知辛いこの現状、無理の極みに私は何かを悟りすらしそうであった。
ただ。せめて一言言わせてくれ。
ショウジキナイワー。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ジンオウガ@モンスターハンターポータブル3rd
【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏俊A 魔力A 幸運D 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
狂化:A
筋力と敏俊と魔力を2ランク、その他のパラメーターを1ランクアップさせるが、
理性の全てを奪われる。しかしバーサーカーは獣のため、もとから理性などほぼ存在しない。
【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
野性:A
力強き獣としての原始的感覚。
驚異的に発達した五感を持ち、自らの命の危険に対して未来予知じみた反応を見せる。
帯電:A
電気を纏い、操る能力。この電力は魔力の代わりをも果たす。
背中に共生する雷光虫という生物による能力で、この虫はバーサーカーが健在な限りいくらでも補給される。
【宝具】
『無双の狩人』(モンスターハンター)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足人数:1人
圧倒的な力で人間の狩人を悉く返り討ちにし、「人間の勝てる相手ではない」と言わしめた魔獣の二つ名の具現化。
筋力、あるいは敏俊がBランク以下の相手による攻撃をシャットアウトする。
また武具の性質を持つ宝具による攻撃とかち合った時、一方的に勝利する事が出来る。
反則的な防御力を誇るように見えるが限定的のため、相手次第では全く機能しなくなる。
特に魔術や宝具が武具ではなく強力なサーヴァントとは相性が悪い。
加えて最終的には人類に踏み越えられた存在であるため、怪物殺しの逸話を持つサーヴァントはこの宝具を高確率で無効化してしまう。
『月下雷鳴』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足人数:30人
雷電を操るバーサーカーの真価。
超帯電状態となることで、パワーとスピードを飛躍的に上昇させる。
加えて放電による超遠距離攻撃も可能となり、遠近共に隙が無くなる。
雷光虫の消費は激しく、効果時間も10分程度と限定的ではあるが、
効果中は「無双の狩人」の効果である筋力・敏俊の基準が「Aランク」となる。
【weapon】
肉体、及び電撃
【人物背景】
圧倒的なパワーとスピードを誇るモンスター「雷狼竜」。牙竜種。
かつては霊峰に住んでいたが、アマツマガツチの来訪によって森林地帯への移動を余儀なくされた。
雷光虫との共生関係により、電撃を操る事が出来る。
このジンオウガは、かつてユクモのハンターが戦った様々な「ジンオウガ」の集合体のような存在。
そのため英雄、特に人間に対しての勝利を己の願望としている。
獣としての母性からマスターを守護する想いはあるのだが、悲しいかな意思疎通でき得ないため噛み合ってない。
【サーヴァントとしての願い】
英雄に勝利する。マスターを守護する。
【マスター】
できない子@2ch
【マスターとしての願い】
日常を取り戻したい
【能力・技能】
特になし
【人物背景】
やる夫派生AAのひとり。性格設定は登場作品によって異なるが、
基本的なイメージと相違なくダウナーでローテンションな性格をしている。加えてネガティブ。
凡人臭い顔立ちだが、アップになるとAAの都合上美少女になるっぽい。マフラーが愛用品。
このできない子は一般人の学生である。つまり少女。
もしかしたら名前が似た親兄弟とかいるかもしれない。NPCとして。
【方針】
某マクロスFのオープニングテーマを歌いたくなるレベルで生き残りたい。
以上で投下終了です。
訂正
【属性】
秩序・善 → 混沌・中庸
投下します
少女は速かった。
例外的に速かった。
その時、サーヴァント“クトゥルフ・ガール”の生理時間は極限までチューンナップされていた。
ミリ秒、否、マイクロバイオーム環境における基本時間“モエ”の時間で彼女は生きているのだ。
――おれを闇から襲おうなんざ、
七十年程早い、と彼女は数モエの間に思い、その槍を振るった。
ぶん、と空を切る音がする。根癖のついた紅い髪が可憐に舞い、少女は襲いかかる敵を退けんとする。
サーヴァント“クトゥルフ・ガール”の膂力に押され、敵は弾かれていった。
“クトゥルフ・ガール”のサーヴァントはモエの時間に生きている。
“モエ”は漢字を当てるのならば“萌え”になる。
彼女たちは萌える外見をしているのだ。
アニメリー因子が美少女アニメのカタチを被って表現された姿こそ、“クトゥルフ・ガール”なのである。
故に“クトゥルフ・ガール”の一角、例外少女ウユウもまた
それは何故か。
何故“クトゥルフ・ガール”はアニメの美少女の姿を取るのか。
それは
――なんでだっけ……
ウユウは思い出せなかった。
もちろん知らない筈がない。
自分たちが属するエクストラクラス“クトゥルフ・ガール”にまつわることだ。
自分たちがこのように記述される理由はサヤキが解き明かした筈で、それをサーヴァントとなった彼女は識っている。
――えーと、えーと、えーと……
思い出そうとするが、しかし思い出せない。
若い頃はこうではなかった。もっと簡単に思い出せた筈だ。
しかし、最近はどうにも衰えている。認めたくはないが、仕方がない。
「頑張ってよ、おばあちゃん、ぼくをその敵から守るんだ」
後ろでマスターたる少女が言った。
実に平坦かつ適当な口調で、激励の言葉の筈であるのにやる気をそぐような言い方であったが、ウユウは一言、
「私はおばあちゃんじゃない!」
そう言い放つだけだった。
……実際、“クトゥルフ・ガール”というかサーヴァントに年齢などという概念はない。
元となった精神性と身体の年齢がずれているだなんて例もあるくらいだ。
それにウユウは可憐な少女の外見をしているのである。だからおばあちゃんなどという呼称はおかしいのだ。
「何を言っているんだ、おばあちゃん。
だって貴方は70歳越えてるんだぜ。怪異仲間じゃともかく、人間基準ならもう年金生活の年齢だぜ」
「…………」
ウユウは言い返すことができなかった。
ある意味でマスターの言葉も正しくはあったからだ。
ウユウは――“モエ”の時間に生きていない桂木憂優は70を越える老婆である。
人間のヒフや口、とりわけ腸内には何兆もの細菌や微生物がいる。
ヒトに固有の遺伝子の数は、二万から二万五○○○ほどしかない。それに比して体内細菌、微生物の遺伝子は三三○万の数に上るのだという。
それらが巨大なネットワークを形成し、ヒトは単なる生物である以上に“環境”でもあるのである。
そうした生物の生態系こそが“マイクロバイオーム”である。
憂優はマイクロバイオーム――腸内壁の数億個のニューロンを一種のコンピュータとして使い、プログラムに介入することができる。
そうした演算領域がある理由――ウユウは健忘している――によってアニメの少女として表現された結果。
それが例外少女ウユウなのである。
――まぁ、確かにおれは例外だけどさ……
少女の中で彼女は例外的に老女である。
“ツンデレ”のサヤキや“メガネ”のニラカは一応基となった人間は若い女性だった。
ウユウだけが老女なのである。
“ヤンデレ”のマナミは分からないが……
――でも、おばあちゃんはなあ
マナミが“ちゃん”付けされるのを嫌がるように、ウユウもそう言い放たれることは少し抵抗があった。
第一マスターだって厳密な年齢はあやしいものだ。
可憐な童女の姿をしているが、その実彼女は死体なのだから。
――ま、とにかく
敵を倒してしまおう。
そう思い、ウユウは槍を再び振るった。
一度弾き飛ばされた敵は今になってようやく態勢を立て直している。
遅い。
ウユウには彼の動きが緩慢なものに見えた。
“モエ”の時間に生きているウユウは通常の時間よりも速い時で表現される。
クトゥルフ少女でなく、サーヴァント“クトゥルフ・ガール”は単位の変換率が少し悪くなっているが、しかしそれでもなおウユウたちは速い。
またたく間に“モエ”の時間を駆け抜けることができる。
“モエ”の時間を生きるウユウはそのまま萌える力を使った。
痺れるような技である。
「というかそのまんま電撃なんだけどね」
……後ろでマスターがやはりやる気をそぐようなことを言った。
“クトゥルフ・ガール”はそれぞれが特殊能力を持っている。
ウユウの場合は電撃――サーヴァントとしての宝具『電磁気に対する感作力<エレクトロソーム>』である。
とはいえそれだけじゃない。
――まずは相手の動きを止めて、と。
ウユウは電撃を迸らせつつも、敵が立つ地面に干渉した。
そして、ぬる、と敵は足を沈みこませた。
……大腸菌だ。
ウユウは大腸を選択的に発現させることができる。
大腸菌はもともと繁殖に最も成功しているバクテリアといっていい。
ありとあらゆる土壌の中に大量に棲息しているばかりでなしに、腸管内細菌としても、他の追随を許さないほどの成功を収めている。
ウユウはそうした大腸菌を思うがままにあやつることができるのだった。
敵が立つ地面に棲息していた大腸菌の遺伝子を一気に発言させ、ぬかるみの水分含有量を増やし、結果として敵の足を止めることができる。
――決めるよ
ウユウは跳んだ。
その手からはバチバチと電撃が迸っている。
撃った。
敵は反応できない、。
時間にしてたった三モエのことだ。
秒の世界に生きる英霊ではすぐには反応できない。
ましてや彼はいま足を取られている。
ジジジジジジ、と飛び散る火花がマイクロバイオームの空を切った。
「ばーんって爆発して欲しいところだよね」
後ろでマスターがやる気のない言葉を漏らした。
その言葉通り――轟音と共にその英霊は爆散していた。
電撃と大腸菌。
それが例外少女ウユウの能力である。
◇
「ありがとう、おばあちゃん。お蔭で助かったよ。ホントホント、こんなに人に感謝できたのは何時振りだろうってくらい感謝してるよ。
鬼いちゃんにおばっちゃんのイボを煎じて飲ませてあげたいくらい。エレキバンって奴かな」
「少しは感謝して欲しいもんなんだけどな……」
ウユウは頭をかきつつも、マスターである少女と共に拠点へと赴いていた。
襲ってきた敵サーヴァントを撃退し、その帰りである。
無駄に派手な演出をキメて敵を倒してしまったので、急いで帰る必要があったのだ。
マスターの少女に寄り添いつつも例外少女はウユウは今後のことを考える。
聖杯戦争。
エクストラクラス“クトゥルフ・ガール”
今回彼女が表現されたのはそのような舞台だった。
――聖杯なぁ
多分目的自体は変わらない。
ゴキブリを守ることだ。
宿敵である“進化”の“起源”――“クトゥルフ”に対抗する為、ゴキブリという種を守る。
その為に聖杯を求める魔法少女が、ウユウだ。
そういう殻を被って今回は表現されているのだろうが、
――ハーレム系アニメみたいだ。
そう思わずにはいられなかった。
聖杯など、どうせ中身はかわっぽだろうという気がする。
碌でもないものだ。
からっぽで空虚な、そんなものを求めて幾多もの少女が相争う。
まさしくそれはハーレム系アニメの構造ではないのか。
――それにイエス・キリストにまつわるものって時点で厭な予感するんだよなぁ。
彼女は以前表現された際、疑似的なエルサレムを舞台にヨハネを名乗るものと戦ったことがある。
というかその戦闘で死んだ。
仲間の盾にされ――まぁ状況的に仕方ない部分もあるのだが――そこで一度命を絶った。
彼女の想い人であるマカミが“マウス・クリスト”とかいう説もあった。
マウス・クリスト――イエス・キリスト的な言葉だ。
どうにもあの聖杯の持ち主は“クトゥルフ”側に関係している存在な気がしてならない。
聖杯へと近づくこと自体が“進化”のような“クトゥルフ”からの攻撃の可能性がある。
色々と考えて動かねばならない。
「おばあちゃん」
不意にマスターが立ち止まった。
なんだ、と思い考えを中断すると、彼女は街中に備え付けられたディスプレイを指差していた。
そこではアニメのオープニングが流れていた。
『なんて素敵なヘル・エポック
忘れられないヘル・エポック
わたしたち友達になるの
コルク張りの部屋のなか
花咲く乙女たちのかげに
マドレーヌをいただいて
失われた未来をもとめて』
そこでは戦闘ドレスを身にまとった少女たちが、激しいダンス・ビートを刻んでいる。
色分けされていて見やすい。とはいえ色遣いはとてもではないがセンスのあるものではなかった。
どうやら魔法少女物のようだった。
何故そんなものを余接が示したのか。
考えるまでもなかった。
――ま、そりゃ疑問に思うような。
だってウユウはそのアニメ『クトゥルフ少女戦隊』のヒロインと酷似した外見をしているのだ。
どちらがモデルになったのかは分からないが、ともかくウユウら“クトゥルフ・ガール”とアニメ美少女は切り離せない関係にある。
とはいえそれが何故かはウユウにも分からないのだ。
――えーと……うーん、ボケてない筈なんだけどな
思い出せない。
70歳の老女であることの影響を受けているのか、どうにも上手く説明できる気がしなかった。
そこを突っ込まれるとまた“おばあちゃん”と馬鹿にされそうだったが、
「なんて適当なアニメだろうね。今時あんなものが放送されただけで放送事故、いや放送事件だと思うよ。
作画・音響・シナリオ……どれをとっても駄目としかいいようがないよ」
「素人がそんな批評しなくてもいいだろう」
というかシナリオを数秒で判断するな。
「ことアニメにいたっては僕にも一家言あるよ。
なんたってアニメヒロインを務めたこともあるからね。
おばあちゃんはまだアニメ化されていないみたいだけど」
余接はそう言ってまた歩き出した。
ウユウは思わずきょとんとしてしまう。
メタメタな存在であるウユウだが、しかし突っ込まれなかったのだ。
「アニメファンには“キメ顔でそう言った”とかいうのが僕のキメ台詞みたいに思われているけど、それはにわかだからね。
原作の僕はそんなことを言わないよ。言う訳ないじゃないか。そんな黒歴史満載な台詞。
言ってたとしたらそれは誤植の類だよ。鬼いちゃんみたいなものさ」
代わりにそんなことを言って、彼女は街をかけていく。
例外少女と共に。例外の方が多い規則を抱えながら。
【クラス】
クトゥルフ・ガール
【真名】
例外少女ウユウ@クトゥルフ少女戦隊
【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B
【属性】
中立・善
【クラススキル】
・モエ A
クトゥルフ少女表現型は表現される単位。
彼女らの活動領域であるマイクロバイオーム環境において、内部時間一キロモエが主観時間にして十五分に当たる。
――要するに思考や活動が相対的に加速するのである。
本来ならば百モエ秒が十ミリ秒と表されるのだが、この聖杯戦争ではリミットが課せられているようだ。
【保有スキル】
・変化 -
文字通り「変身」する。
元々は桂木憂優がマイクロバイオーム環境に反転/フリップすることで例外少女ウユウが表現される。
が、この聖杯戦争においては例外少女ウユウの名に縛られる為、憂優の姿を取ることができず機能していない。
・戦闘続行 A+++
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
このランクになると異常なまでの死ににくさを誇る……というか死んでも活動停止に到るまでがとにかく長い。
決定的な致命傷を受けた場合も、実時間にして一日は活動することができる。(死んでいるのは変わりないので治療はできない)
ただし魔力切れの場合はこの限りではない。またこっぱみじんにされれば意味がない。
・さっぱり D
アニメの美少女のの属性。
この属性を持って表現された以上、何事にも寛容に流すことになる。
このスキルは外せない。
【宝具】
『電磁気に対する感作力<エレクトロソーム>』
ランク:B 種別:対ゲノム宝具 レンジ:1~30 最大補足:30
その名のごとく電磁気を操る力。
腸内のネットワークを駆使して電磁気を発生させることができる。
これ単体を武器に使うことができるほか、コンピュータのプログラムなどに干渉することもできる。
どの程度複雑なことができるかは不明だが、パチンコのプログラムは操作できた。
・weapon
・槍
自在に操ることができる。
クトゥルフ少女は高い身体能力を誇る。
・大腸菌
自在に操ることができる。
地面をぬかるませ、物を沈めたりできる。
【人物背景】
5億4000万年まえ、突如として生物の「門」がすべて出そろうカンブリア爆発が起こった。
このときに先行するおびただしい生物の可能性が、発現されることなく進化の途上から消えていった。
これはじつは超遺伝子「メタ・ゲノム」が遺伝子配列そのものに進化圧を加える壊滅的なメタ進化なのだった。
いままたそのメタ進化が起ころうとしている。怪物遺伝子(ジーン・クトゥルフ)が表現されようとしている。
おびただしいクトゥルフが表現されようとしている。この怪物遺伝子をいかに抑制するか。発現したクトゥルフをいかに非発現型に遺伝子に組み換えるか?
そのミッションに招集された現行の生命体は三種、敵か味方か遺伝子改変されたゴキブリ群、進化の実験に使われた実験マウス(マウス・クリスト)、そして人間未満人間以上の四人のクトゥルフ少女たち。その名も、究極少女、限界少女、例外少女、そして実存少女……。
クトゥルフと地球生命体代表選手の壮絶なバトルが「進化コロシアム」で開始された!
これまで誰も読んだことがないクトゥルフ神話と本格SFとの奇跡のコラボ! 読み出したらやめられない、めくるめく進化戦争!
(クトゥルフ少女戦隊 あらすじ)
クトゥルフ少女の一人。さっぱりした性格で、紅い髪で槍を使う。
クトゥルフと仮に呼ぶしかない何かが起こした進化砲撃“クトゥルフ爆発”を防ぐため、最前線に投入されたクトゥルフ少女の一人。
実存少女サヤキ、限界少女ニラカ、究極少女マナミと共に“クトゥルフ”の進化コロシアムに挑む……前に爆殺された。(それから復活)
現実世界での姿は70歳の老女であり、彼女の大腸菌がプログラムに反応しパチンコで大勝することができた。
他のクトゥルフ少女と同様“マカミ”に惚れている。
【マスター】
斧乃木余接@物語シリーズ
【能力・技能】
『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』
身体の一部を変化させて攻撃する。
「例外の多い規則(離脱版)」というのもあるが、ただのレバー入れ大ジャンプである。
【人物背景】
初登場は「偽物語」で月火を爆殺する。
人間に見えるが実は影縫余弦の式神。見かけによらずパワータイプで、自らの肉体を強化する技を使う。
忍野忍に対し「後期高齢者」呼ばわりするなど調子に乗るも、その後大変な目に遭わされトラウマとなってしまう。
容姿は不明だったが、アニメ化の際に予想以上に奇天烈な外見であることが判明した。
以降も定期的に出演を果たし、物語シリーズ・セカンド〜ファイナルシーズンでも活躍。
巻数が進むにつれ他のヒロインの出番が減る中、彼女はだけは後半になるほど出番が増えており、相対的に存在感を増した。
投下終了です
投下します。
聖杯によって作り上げられた架空の街とはいえ、この街は広い。
特に未だに成人にも満たない少女にとっては、【街】という大きな枠は、そのまま彼女にとっての小さな世界だ。
たとえ地図を読んで知識として知ってはいても、実際に路地裏を入ればそこに広がっているのは未知の場所。街の全貌を知る事なんて、少女たちにとっては難しすぎるし、多感な彼女たちにはそんな事を気にしてはいられない。
他の住人たちはよくできた偽物。街の事を知っているふりをしているだけで、実際のところは空っぽだ。
だから、本当の意味でこの街を知っている人間なんて、この街には存在しなかった。
聖杯の贄として呼び集められた少女達にとって、ここは迷宮だ。小路一つを曲がって、その先に知らない世界が広がっていない保証はない。
そして、確かにそうだった。
この街には、町という名の迷宮が存在する。
§
駆け足で抜けていく街並みを、横目に眺めながら、玲は『商店街』を目指していた。
時刻はお昼過ぎ。だがまだ玲は、昼食を食べていなかった。だから早足に急ぐ。
「今日のーっ、ご飯はーっ、なににしようかなーっ……コロッケ? カツサンド?
それともー……んー、やっぱり選べない!」
はしゃぐように。いや、実際にはしゃぎながら、玲は人通りの多い街中を駆け抜けていく。
走って、走って、走って。次第に人通りは少なくなって、それでも走って。
たどり着いたのは、人もまばらに通るか通らないかという程度の、寂れた住宅地。
人の気配はない。外を歩く人影はない。家の中に籠もっているのか、それとも、誰もが家を出てしまっているのか。
そんな事は気にもかけず、玲は進む。足取りは少し緩やかに、けれど急ぎ足に。
四つ角を曲がって、路地の裏手に入り込む。
『その他の注意』の標識の脇を抜けて、その先に、それはあった。
『商店街』。
個人経営の商店から、大衆向けの銭湯、そして昭和の香りがする住宅が立ち並ぶ。
商店街は、夕焼けの茜に染まっていた。外はまだ、昼過ぎだというのに。
けれど玲は気にしない。ここでは『いつもそう』なのだ。
「おっ、嬢ちゃん! いつものお使いかい!」
店頭に出ていた惣菜屋の店主が、玲を呼び止める。
これもいつものこと。
「もう店じまいだけどコロッケならあるぜ。残しといてもしょうがねえ。
定価70円だが60円にまけとくよ」
「くださいなっ!」
元気よく答えて。玲は店主に代金を渡してコロッケをほおばる。
そしてすぐにぺろり、と平らげて、にこりと笑った。
「おいしいっ!」
「そうかいそうかい。もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
「まいど! もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
「まいど! もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
・
・
・
・
・
・
かれこれ10回くらい同じやりとりを繰り返して。
コロッケを11個お腹に収めた玲は、満足気な顔をしながら蒸し鳥にかぶりついていた。
「これも美味しい〜……♪」
もぐもぐ、と。行儀が悪いぞ、と指摘されるのも構わず――実際には、『商店街』には彼女に注意をするような者はいないのだけど――歩きながら食べている。
『商店街』の中は、彼女にとって目新しいモノでいっぱいだ。
――いや。それを言うならば。『商店街』の外、街の風景だって、玲にとっては、とても楽しい。
記憶喪失。玲は、そういうものらしい。気がついたらこの街にいて、気がついたら『商店街』と『町』に迷い込んでいて、そして、気がついたら。
『彼女』が、傍にいた。
だから玲は、なぜ自分がここにいるのかも。ここに来る前に、自分が何をしていたのかも知らない。
ただ、自分がどこかに閉じ込められていて、外を見たことなんてほとんどなかった。という、それだけは、なんとなくわかっていた。
だから玲は、街が好きだ。『商店街』も、『町』も好きだ。
自分のことを保護してくれて、一緒にいてくれる『彼女』も好きだ。
外を自分の力で歩けて、散策できて、いっぱい食べられる。それだけでたまらなく嬉しい。
『町』と『商店街』の人たちは優しいし、街の人たちはそうではないけれど、それでも外を歩くのは玲は好きなのだ。
だから今日も玲は、街を歩く。本当は『彼女』にはずっと『町』か『商店街』にいた方がいいと言われているけれど、そんな勿体ないことはできない。
街の中で少女は願う。
迷宮の中で少女は願う。
「この毎日が、ずっと続きますように」
――けれど。ふと玲は、また違うことを思い出した。
自分は、もっと前、違う誰かと一緒にいた気がする。……誰だっただろう?
思い出せない。何度も何度も考えて、頭を捻って。思い出せなかったから、また、玲は忘れてしまった。
……路地裏と『町』の狭間で、犬が一匹、死んでいた。
§
薄暗い、部屋の中。
少女が一人。
一人の、ある少女が。部屋の中で、佇んでいた。
ある少女は願う。少女の幸福を。
ある少女は願う。少女が永く生きる事を。
だから、ある少女はできるだけ永く続けようと思う。この聖杯戦争を。
さいはての『病院』で。繰り広げられる、偽りの日々を。
だから。
ここは、少女のためのさいはてだ。
---
【クラス】エンブリオ
【真名】ある少女@さいはてHOSPITAL
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX (通常時)
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力B 幸運B 宝具- (魔法少女ネガティブはるるーと)
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具EX (ある少女)
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
創造(偽):EX
殻の中での特権。エンブリオのサーヴァントは、自らが創造/想像した殻の中で開拓者としての特権を発動できる。
この場合のEXランクは『そもそも規格が存在しない』という意味であり、超越性を意味するものではない。
悪く言ってしまえばひきこもり。
星の開拓者(偽):EX
あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。
エンブリオのサーヴァントはこのスキルによって殻の中で起きた『不可能な事象』を解決する事ができるが、同時に『自らに敵対する存在』にも『星の開拓者』のスキルを与えてしまう。
エンブリオが殻の中では不可能はない事の証明であり、同時にその殻を破壊する者が現れるという運命を暗示するスキル。
【保有スキル】
マホウ:EX(B)
魔術でも、魔法でもなく、マホウ。
エンブリオの殻の中でのみ作用する、独自の超越能力の体系。
エンブリオは自らの殻の中でこれを自在に操るが、殻の外ではまったく効果を発揮しない。
ただし、『変身』スキル使用時は殻の外でも使用できる。
変身:B
魔法少女ネガティブはるるーとに変身する。
大して意味はない(むしろ固有結界内だとステータスが低下する)が、この姿が他の世界(物語)に登場した逸話により、魔法少女としての姿ならば、本来自らの固有結界の外では無力なエンブリオでも、自らの固有結界の外でマホウが使用できる。
ただし、変身中は『創造(偽)』スキルも『星の開拓者(偽)』スキルも自らの宝具の効果も使えない。
【宝具】
『最果ての殻、最果ての町、最果ての病院(さいはてHOSPITAL)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:-
エンブリオの『殻』。一種の固有結界。この聖杯戦争の舞台である『街』と、重なって存在している。
固有結界の中の出来事、あるいは外の出来事が相互に干渉する事はないが、出入りできる点は複数存在し、その辺の裏路地がこの固有結界に繋がっている事もあるし、どこかの家の玄関が出入り口となっている事もある。
この固有結界の中では、エンブリオは『ある少女』形態に変身できる。
この固有結界の主として、エンブリオは固有結界内の環境を操作できる。ただし、本来三人いる開拓者がエンブリオ一人しかいないため、その権限は1/3にまで落ちている。
『桃源祈祷』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:4人
エンブリオ最大最強のマホウ。
マホウを全力で収束し、全ての魔力を敵対者へとぶつける。
与えるダメージは『最大耐久力-1』で固定。故にどれだけ耐久力が低かろうと万全の状態ならば必ず耐えるし、逆にどれだけ耐久力が高くても傷を受けているなら必ず致命傷となる。
エンブリオの必殺(にはなりきらないが)宝具だが、発動には3ターンの祈祷(マホウの収束)を必要とするため、サーヴァント同士の戦いでは非常に大きな隙を晒す事となる。
【weapon】
なし。
【人物背景】
「目と耳を塞いで朝日から逃れよう
西日が射したならカーテンを閉めよう
親しい誰かを失わないように
虹の空には唾を吐き
夜の月にはワラ人形を
美しい世界に勘違いしないように
今となっては 全て幼い日の幻
されど私は望む あの日への回帰を
千年の喪に服すために
世界中が喪に服すために!」
「……何言ってんの?」
「魔王の名乗り向上 のってよ恥ずかしいじゃない」
【サーヴァントとしての願い】
???
『エンブリオ』
【殻】のサーヴァント。自らの領域を創造(あるいは想像)し、その中で絶対者として存在する。
その性質上、固有結界、あるいはそれに類するモノを所持している事がこのサーヴァントとして召喚される事の条件となる。
スキル特性は創造(偽)と星の開拓者(偽)。
このスキル群はその名の通り偽りの創造であり、想像である。故に、ランクはどのサーヴァントでもEX(そもそも規格が存在しないため)となる。
そして、同時に『殻は打ち壊される』という運命の暗示でもある。
【マスター】玲@ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス
【マスターとしての願い】
このまま偽りの街の中で日常生活を続けたい。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
回復の力が使える。
【人物背景】
八十神高校の1年生。何者かに記憶を奪われてしまったらしい。
どこからともなくアメリカンドッグやドーナツなどを採りだして、つねに食べている。不思議な雰囲気を持った少女だ。(公式サイトより)
【方針】
日常生活を続ける。
投下終了です。
できない子&バーサーカーのステータスを修正しました。
>>1 さんへ、私も1作予約しておきます。
ステータスは大体ですが本文が構想の段階というギリギリの状態なので、
もしかしたら間に合わない可能性もありますが、精一杯頑張ってみます。
自分も1作投下予定なので、延長をお願いします。
うわあ、もももとさんだぁ
私も大体は書き終わっているのですが、今日は忙しくなるので延長させてもらいます
>>557
投下乙です、できない子さんとジンオウガですね。
僕はフルフルが倒せないのでモンハンはやめました(憤怒)
できない子は俺が守護らねばならぬってことで、性格的にはモンスターながら当たりサーヴァントの部類に入るのですが、
言葉が通じない上に怪物という点でぶち壊しです、聖杯戦争の生んだ悲劇といえるでしょう、悲しい物語です。
スキル、宝具、パラメーター、全て隙なし、マスターのテンションがくっそ下がることを除けば、アインツベルンもニッコリな素晴らしいサーヴァントでしょう。
一般人であるできない子にとっては意思疎通が出来ない、アドバイスもらえない、見た目がめっちゃ怖い、
目立つ、バーサーカー特有のクソ消耗、等様々なデメリットが目立つこととなるでしょうが、
ぜひとも頑張っていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>567
投下乙です、斧乃木余接さんと例外少女ウユウさんですね。
アニメのOPが流れるシーン良いですね、SSの中で情景がパッと浮かぶシーンが出てくるとおっ、と思います。
主従の関係としては、マスターのほうがフリーダムなようです、致命的に亀裂が入るほどではありませんが、
おばあちゃんは胃のお薬を用意しておいたほうが良いかもしれません。
それにしてもなんだこの戦闘続行はたまげたなぁ、耐久そのものはさほど高くないことと相まってまるでゾンビィじみた生命力を魅せつけることでしょう。
投下ありがとうございました。
>>573
投下乙です、玲さんとある少女ですね。
敵ネームがさいはての住民からある少女に変わるところとか、ラストバトルのBGM演出とか最高ですよねクソッタレー!
さて、ある少女の方は完全ひきこもりブチギメルつもりですね、こういう場合はそちらのほうが正しいのですが。
それでも街に出たりする玲さんがいるので、他マスターに完全に取っ掛かりが無くなるわけではありませんが、中々に有利な状態です。
主従仲は良い悪い以前にある少女の方で引きこもっちゃってるのが完全にやらかし感ありますね、その分自由では有りますが。
個人的に気に入っているのはコロッケのくだりでしょうか、やりますよね。
投下ありがとうございました。
期限までに投下出来ると思いますが、念のため延長をお願いします
投下お疲れ様です。投下致します。
「あー……クーラーすずしー」
「ニャー」
「そういやここの電力ってどっから来てんだろ。地図には発電所なんて見えなかったけど」
「たぶん、ごつごーしゅぎって奴のおかげニャー。前にウィスパーが言ってたニャ」
「あぁ、んじゃそういうことでー」
「あれ……オレっちのチョコバーは?」
「え? ごめん……猫が食べると思わなかったからさっき……」
「そんニャー!」
一人と一匹が室内で悠々くつろいでいた。
まるで聖杯戦争なんていう催しが存在しない世界の住人かのように。
されど、この二人は紛れもない聖杯戦争の参加者である。
一人は双葉杏。職業アイドル。立場はマスター。
一匹はジバニャン。種族は妖怪。クラスはランサー。
そう、片方はサーヴァントであるからして真の記憶も取り戻しているし、聖杯戦争の知識も備わっている。
それでなおこの体たらくの所以。
彼らには、やる気といっていいものが殆ど無かったのであった。
「とーこーろーでーマスター。せんそーの準備しなくていいのニャ?」
「ランサーはしたいの? ……私は嫌だけど?」
「オレっちはできればごめん被りたいニャー」
だよねぇ、と杏は素っ気なく返した。
現実逃避していると言えば否定は出来ないのだと思う。
「べっつーに正義に目覚めた戦士でもヤンキーでもないんだし。
好き好んで喧嘩して回る気なんて欠片も持てないって」
加えて下手に姿を見せれば、それが有効的な相手であっても杏のスタンスを指摘する可能性は否めない。
風紀委員か何かのように、こんな横暴を見過ごすつもりかと。偉そうに説教を垂れる者がっているかもしれない。
杏とて聖杯戦争に快い感情を抱いている訳ではなかった。
だけど、抗おうとするには余りにも相手が面倒過ぎる。
「……ランサー、別に強い訳じゃないじゃん?」
「ニャッ!? そ、それは聞き捨て――ならニャくもニャくニャくニャくニャく」
「じゃあ隠れて籠城した方がますますお得じゃん」
「なるほどニャー」
だって働きたくない。
世の中、働き者が馬鹿を見るものだと相場が決まっているのだ。
わざわざ虎穴に飛び込むほど、血気盛んなでもない。
――でも、だけど、もし。
もし、そんな怠惰を許さない”敵”が現れたら?
自分を仕事に引っ立てる社畜たちを上回る恐怖の存在が現れたら?
「……ねえ、ランサー。もし私がピンチになったらどうする?」
そんな考えがよぎって、いつの間にか弱気な事を呟く。
すると寝返りを打った小さなサーヴァントは、何でもない風に答えるのだ。
「それは頑張ってマスターを助けるニャ。オレっちとマスターは友達だからニャ!」
それを聞いて呆気にとられたように言葉を止めて。
「いつから友達になったんだよ」
思わずちょびっと冷たい言葉が口に出てしまって、ショックを受ける相方を冗談だと慰めて。
そんな遣り取りを交わしながら、杏は罪悪感を抱いてしまうのだった。
つくづく自分はダメな女だなあと、自嘲してしまうのだった。
【真名】
ジバニャン@妖怪ウォッチ
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏俊C 魔力D 幸運E 宝具C
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
妖術:D
妖術の使い手。火を放つ妖術、足を痺れさせる札術を使用出来る。
妖怪だからこのくらいは出来る、という程度の能力。
戦闘続行:D
瀕死の傷でも長時間の戦闘を可能とする。
死してなお地縛霊として現世に留まった妖怪。
地形適応:D
特定の地形に対する適応力。
都市・建築物内部での活動に適する。
また暗所であっても通常通りに行動できる。
※コピペ抜け
【クラス】
ランサー
【宝具】
『猫に九生あり』(ジバニャン・バリエーション)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足人数:1人
ジバニャンという妖怪種にまつわる数多の亜種がひとつの宝具となった。
一時的に自身を亜種へと変化させ、全てのステータスを1ランク上昇させる。
まだ変化する亜種によって様々な追加スキルや追加バフを得る。
変化先の亜種によって魔力の消費に振れ幅がある。
・ワルニャン:「蛮勇:B」を得て、筋力が更に1ランク上昇する。
後先を省みない攻撃性。 同ランクの勇猛効果に加え、格闘ダメージを向上させるが、
視野が狭まり冷静さ・大局的な判断力がダウンする。
・トゲニャン:「感染:C」を得て、耐久が更に1ランク上昇する。
攻撃を通した相手に呪いを流し込む。
呪いを受けた相手は対魔・対呪で対処が出来ない限り、高熱を伴う風邪を発症する。
・ブチニャン:「蔵知の司書:C」を得て、魔力が更に1ランク上昇する。
LUC判定に成功すると、妖怪や妖精、幽霊の類に限り過去に存在したあらゆる知識・情報を、
例え生前知らない事であっても明確に記憶に再現できる。
・ロボニャン:「近代兵装:A」を得て、筋力・耐久・敏俊が更に1ランク上昇する。魔力消費は大きい。
高速移動、小型化、怪力、飛行、爆発など多彩な能力を得る。
代償として致命的に魔力を消費してしまい、マスターへの負担も増大する。
・ブシニャン:「宗和の心得」:Bを得て、筋力・敏俊が更に1ランク上昇する。魔力消費は大きい。
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。
『百裂肉球』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足人数:1〜3人
ジバニャンの必殺技の象徴たる宝具。
高速の拳の連続で叩きこむ、それだけといえばそれだけだが、
様々な世界に存在する類似の百裂系必殺技にインスパイアされているため補整がかかっている。
加えてランサーとしての宝具であるため、貫通力が高い。
【weapon】
・のろい札
妖術に使う札。腹巻きの中にしまっている。
【人物背景】
トラックに轢かれて死亡した猫の地縛霊。
それ以来トラックにリベンジを果たすべく日々鍛錬に励んでいる、と思いきやそうでもなかったり。
妖怪としては低級の部類ではあるが、どういうわけか亜種が非常に多い。
人物……ならぬ猫造としては猫らしくマイペースだが友情には熱い、と思われる。
大好きなのは魚じゃなくてチョコバー。
【サーヴァントとしての願い】
S級妖怪になりたいけど、そんなにコダワリはない。
【マスター】
双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
生きていれば儲けもの。
【能力・技能】
特になし
【人物背景】
ニートそのものなアイドル。17歳という年齢ながら、小学生のような体型を持つ妖精のような少女。
その才能はかなりのものを秘めており、知能も高く物理問題の答えを暗算で叩きだすほど。
しかし本人は働かずに楽して生きる事ばかり考えており、自堕落で勤勉とは程遠い。
アイドルとしての夢は印税生活。
【方針】
働きたくない。
以上となります。
皆様お疲れ様です。
ちょっとアイデアが浮かんでしまったので、登場話を予約させてください。
今朝延長をお願いした者ですが、勝手ながら投下そのものを取り消させて頂きます
ご迷惑をお掛けしました
私も登場話予約させていただきます。
期限ぎりぎりになってしまい申し訳ございません
書きあがるかどうかはわかりませんが、1組か2組か投下するつもりなので8時まで猶予をください
それでは予約しといた分を投下します。
一人は、自身の特異で幸薄な運命を嘆いた。
とある刀鍛冶ととある剣士が巡り合った事で体系化された血刀の一族がいた。
その六代目にして大乱の英雄の娘として生まれた少女は、神様から余計な物を二つ授かってしまった。
一つは病弱なのに死ぬ事が許されない身体。
そのせいで幼い頃から何度も重度の病に侵された。
いっそう死んでしまった方が楽になれるのに、しかし死ねないため壮絶な苦痛をただひたすら耐えるしかなかった。
もう一つは規格外な強さ。
「人間一人に到底収まりきれぬ」程の力は、七歳にして歴史上最強と呼ばれる剣士と半年に渡って戦えるほどであり。
しかしその強さに身体が耐えられないため、他人の能力を習得することで力を抑える技も身につけた。
その天性の才能は実の父親にも危険視され、後に殺害されそうにもなった。
逸脱した存在であるがゆえに、少女は普通の人生など送る事はなかった。
一族全員で島流しの刑になり、他者との交流は隔絶され、後継者として認められず、普通の稽古もさせてもらえず。
しまいには己が放つ恐怖が原因で弟に父殺しという血塗られた運命を辿らせてしまった。
しかし、少女の感情は希薄であった。
常人では有り得ない人生を歩んだからなのか、それとも、これもまた神様からの余計な授かりものなのか。
家族に対する多少の愛憎はあるものの、他者に対しては殆ど興味を持ちえなかった。
邪魔する者がいれば、さも雑草をむしり取るように排除する。
無表情に。
無感情に。
彼女が島を出た後に、巡り廻った土地で数々の虐殺を繰り返す程に。
「草むしり」をする彼女には、他には興味なくただ刀を集め、先に島を出た弟に会うために動いていた。
そして少女は終焉を迎えた。
歪んだ心であろうとも、大切に思っていた弟に、殺された。
否、殺されたいと思い、死闘を演じて、殺された。
こうして彼女は一つの望みを叶えた。
死ねないなら殺されることで、苦痛から解放されるために。
真なる願いではない、哀しい願いを叶えたのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一人は、自身の数奇で不幸な宿命に絶望した。
大戦の最中、とある一族の若かりし当主と西洋から来訪した美女が恋に落ち、そして結ばれたのが呪いの始まりであった。
愛人は子供を産んだところで命を落としてしまい、その子供は一族や世間から隠されて育てられた。
子供は成長し、成人後には生前の愛する人と瓜二つの容姿になっていた。
亡くなってしまった愛人との再会に感激し、錯乱し、狂気に染まった一族の当主は、禁断の過ちを冒してしまった。
その後、その子供は不慮の事故で亡くなってしまった。
少女は物心ついた時から一人だった。
孤児として施設に育てられた少女は、やがてとある屋敷の使用人として勤めるようになった。
まだ幼いのに特別に使用人になった少女は、先輩の使用人たちから嫌がらせを受けていた。
だから少女は空想の友達を想像した。その教えに従い、悪戯し返してやった。
やがて少女は推理小説にはまり、共通の趣味を持つ男の子に初恋をし、そしてまた会えた日に返事をする事を待ち望んだ。
しかし、男の子は家庭の事情により家出した。一切の音信もなく、少女の想いに応えることはなかった。
待ち続ける事に耐えきれなくなり、さらに女性としての自身も失った少女は、新たな人格を作りだした。
情緒不安定だった心も、寡黙な少年と優しい少女を演じ分ける事で心の安定を取り戻した。
ある時、少女は館の中にある碑文の謎を解き明かした。
そして館を所有する一族の当主が隠し持っていた黄金の塊を発見し、真実を知る者に祝福された。
老齢の使用人達の進行で変装を施され一族の当主に謁見すると、感激の余り泣きつかれ謝罪の言葉を述べられた。
少女は状況が呑み込めぬまま、彼らから事の真相について知らされた。
残酷に満ちた、無知のままでいたかった真実を、胸に突き刺された。
少女の正体は当主の隠し子であり、隠し孫であり、当主の過ちによって生まれた不義の子であった。
そして赤ん坊の時に崖から落ちて死んだことになっていたが、後遺症を残しつつも奇跡的に一命を取り留めていた。
そのため、忠臣の使用人達によって秘密裏に育てられた。
機会が訪れた時に、現当主の悲願を叶え、少女を次期当主にするために。
しかし、少女にしてみれば拒絶したい真実でしかなかった。
その頃には少女は別の青年と恋をしており、別人格の少年は少女に好意を寄せられていた。
だがしかしその恋心は真実によって砕かれた。
自分は穢れた血で出来ている。その上、後遺症で女性としての機能も失っている。
その事実だけでも身の毛がよだつのに、さらに一族の者と恋を抱き将来を望んでいたなんて。
抱いた想いとは相反する倫理との板挟みに苛まれる。互いに寄せられてしまう血の呪いに、激しく嫌悪する。
少女は次期当主の座を凍結し、ただ悩み続け不安を募らせるだけだった。
自身の全てを知られた時、プロポーズしてきた青年は酷く拒絶するのではないかと悪夢に魘されるほどに。
それでも青年が迎えにくるのを待つしかなかったある日、初恋の人がまた戻ってくるという知らせを受ける。
再会の嬉しさ以上に、最悪のタイミングで決意を霧散させられたことで、彼女の歪んだ心は壊れてしまった。
どの恋を選んでも破滅しかない運命に絶望した少女は、生きる気力を失い、狂気に囚われた。
呪われた自分、一族、島も黄金もすべてを吹き飛ばしてしまおうと考え付き、計画を立てて実行できる所まで準備した。
最後に、少女は大切な人達を殺める事に躊躇いを覚えた。
だから少女は一縷の望みに期待して、事件当日を迎えた。
切なる願いを諦めて、自分を暴く事に願いを託した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
二人の少女の歩み方は全く違い、比較しようもない壮絶なものであるが、共通する部分も多かった。
出自の不幸、不義の存在、骨肉の争い、そして転生の願い。
似た者同士で惹かれあうのは必然だったのか。
この見知らぬ地にて、一組の少女達が集うことに相成った。
少女は戸惑い混乱している。これから始める破滅の計画でもって心中するつもりだったのだから。
少女は少々呆れて答える。死んだはずの自分が喚ばれた事を嘆きながら、ここが願いの為に殺し合う舞台である事を説明した。
少女は一瞬の間を経て理解した。これから小説よりも奇なることを仕出かすつもりでいた少女にしてみれば、信じられないような出来事もすんなり受け入れられた。
少女は気だるげに決意した。この馬鹿げた強さでもって全てを殲滅し願いを叶えようと。もし万が一負けたら、その時はその時に考えよう。
こうして、大小あれど「普通の人間として生きたい」という願いを抱いた者同士、「安田紗代」と「鑢七実」は共に闘う契約を結んだ。
【マスター】
安田紗代@うみねこのなく頃に
※便宜上の名義を「安田紗代」とする。
場合に応じて「ヤス」「紗音」「嘉音」「右代宮理音」「ベアトリーチェ」等と名前を変えられる。
【マスターとしての願い】
「血統の呪い」、「絶望的状況」からの解放。誰も不幸にならない最善を望む。
【能力・技能】
精神不安定、アイデンティティーの崩壊・希薄化により、複数の名を名乗り演じ分けるられる。
次期当主の権利を得た事で旧日本軍の残した兵器に所有していたため、火器や爆破物をある程度使える。
ミステリー作品に精通しており、六軒島を舞台に無限の殺人事件を構想できるほどにトリック・犯行の考案が得意。
彼女が遺した迷宮入りの謎が後世にて伝説にまで昇華されたため、死後にはキャスターとして英霊の座に召される事が確約されている。
その素質の高さから、毒素の多い現世の肉体でも魔力保有量は豊富な方である。
【???】
私は、だぁれ……?
【方針】
優勝し、聖杯を獲る。
【クラス】
セイバー
【真名】
鑢七実
【パラメータ】
筋力:A 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:E 宝具:B
【属性】
中立・悪
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:-
生前に騎乗したことはない。しかし『見稽古』で習得が可能。
【保有スキル】
虚刀流:A
刀を扱う才覚が全くない鑢一族が用いる無刀の剣術。
彼女は虚刀流の稽古を全く受けていないのだが、『見稽古』で父弟の稽古を見ることにより虚刀流の全ての技を身に着けている。
なお、本来なら彼女も刀を扱えないのだが、これもまた『見稽古』により例外的に扱えるようになっている。
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
彼女の場合、その天才性、『見稽古』によってあらゆる状況、敵の能力を見通すことができる。
病気持ち:A
極度の病弱であり体力がなさ過ぎるため、長期戦になるとパラメーターが下がる。
ただし、宝具『悪刀「鐚」』の効果によりこの欠点は解消されている。
また常人ならば何度も死んでいるはずの病にかかり続けてきたため、状態異常に対し強い耐性をもつ。
【宝具】
『見稽古』(みげいこ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1人
七実の異常性を象徴する、“化物”と呼ばれる程に特異な資質。
相手の技を一度観ただけで体得、二度見れば万全に自らのものとすることができる。
この特異体質により彼女は虚刀流を始め数々な技術・武術を体得でき、更には肉体変化・血族由来の身体能力すらも会得している。
聖杯戦争においても相手の武術や能力を体得し、一部を除いたスキルや宝具すらも本来の使い手と同様以上に習得可能となる。
そしてこの宝具の何よりの真骨頂は、七実自身の人知を超えた戦闘能力を抑えるために発揮されている事である。
『悪刀「鐚」』(アクトウ・ビタ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
四季崎記紀が作りし“完成形変体刀十二本”の内の一本。「活性力」に主眼が置かれた刀。
苦無の形をしており、身体に差し込むことによって所有者の疲弊も死も許さず人体を無理矢理に生かし続ける。
この『悪刀「鐚」』の効果により、鑢七実は唯一の欠点である自身の体力の無さを克服する。曰く「弱点も隙もない」。
『零・刀語』(ななみモンスター)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:?? 最大補足:??
そもそも呼称する必要も、宝具にする必要もない、ただのこじつけ。
またの名を『奇刀「錵」』。四季崎記紀の思惑から外れている(はずの)、完了形変体刀の派生・異形・化物。
『見稽古』『悪刀「鐚」』の使用をやめる事で、抑えていた本来の強さを解放する。
パラメータが 筋力:A 耐久:B 敏捷:A++ 魔力:C 幸運:C、心眼(真)がA+に上昇する。
その代わり魔力の消耗が甚大になり、いずれ体力のない身体が耐えられずに命が尽きてしまう。
【weapon】
彼女自身が刀以上の凶器である。
【人物背景】
虚刀流六代目であり大乱の英雄である鑢六枝の娘。
生まれながらにして病弱ではあるが、同時に“化物”“日本最強”と呼ばれるほどの驚異的な強さをもっている。
七代目当主にして弟の七花が完成形変体刀の収集のため奇策士・とがめに連れられてから数ヵ月後、彼女もまた独自に刀収集を始める。
その道中に数々の虐殺を起こし(彼女曰く「草むしり」)、悪刀「鐚」を得た後に弟と刀を掛けた対決の末に打ち倒された。
【サーヴァントとしての願い】
ただの人間として生まれ、生き、死にたい。
以上で投下終了です。
一昨日の夜に突如思いついた組み合わせのため、十分に練り上げられぬままに稚拙な文章になってしまった事をお詫び申し上げます。
また、二次二次聖杯戦争の登場話候補作『桐山和雄&バーサーカー』、
それと二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦のセイバー・鑢七花から一部設定を参考・使用した事をご報告させていただきます。
投下お疲れ様です。私も投下させて頂きます
『殺人は癖になる』。
これは単なる快楽殺人気の嗜好を示した言葉ではない。
例えば自身に大きな問題が迫ったとして、対処するための手段として殺人を選んだとしよう。。
人一人の命を奪うとしう人道に外れた行為であるそれは、下手人が持つ問題解決の一手としてその手に加わる事となる。
例え後悔が残っていたとしても、殺人という手段がその人生に現れた事は塗りつぶせない。
やがてその邪法に対する忌避感よりも、手段としての魅力が上回った時。
再び問題が迫った時、それを解決するため再び殺人に手を染める事となるのである。
殺人は癖になる。その手に染み付いてしまうのだ。
しかし、天々座理世という少女の事を誰が責められようか。
真の記憶を急激に取り戻し、聖杯戦争の知識を得、サーヴァント・ライダーと出会いパニックに陥っていた彼女を。
心の整理を行う間もなく他のマスターである少女とそのサーヴァントに、命を狙われていた彼女を。
家族と自らの命を守る為に、ライダーの甘言に乗ってその力を行使してしまった彼女を。
――聖杯戦争の参加者として、人を殺してしまった彼女を、糾弾して良いものなのだろうか。
その答えは出ないまま、罪を引きずり神に懺悔を行う間もなく彼女は再び他のマスターを殺した。
友人に手をかけようとしていたから。彼女たちだって大事な存在だから、殺させる訳にはいかないのだから。
――だから、殺した。
戦闘を察知し、追いかけてきた組もいた。
彼女たちは事情を知らぬせいで、理世とライダーを血も涙もない殺人者と断定し有無を言わず襲いかかってきた。
再び殺されそうになったのだ。
――だから、殺した。
側にいた使い魔がまだ若い精神を正しく導いてくれる存在ではなく、口八丁で彼女を修羅と戦の道に誘う存在であったこと。
心を落ち着ける間もなく、問答無用で命を狙おうとする他の組に幾度となく出くわしてしまったこと。
彼女は掛け値なく不幸であった。自らの行いを顧みる暇もなく深淵に足を踏み入れてしまったのだから。
「……ライダー、私は……間違ってなんかないよな?」
少女は自らの不幸を計れない。過ちを認められない。
足の踏み場を確かめるように呟いたその言葉に、しかしそれとは対照的にライダーは明るく笑った。
「そうだとも。知っての通りこれは戦争、故に命の遣り取りは避けられなかった。理解出来ただろう?」
「だけど……私」
階段から足を踏み外した少女は更に奈落に落ちていく。
手を引いてくれる友は誰もいない。いるのは奈落から引きずり込む悪魔の誘いだけ。
「落ち込まなくていいんだマスター。戦うのはサーヴァントである俺の役目だ。
それにこうなったのも、”何もしてないのに”襲ってきた奴らこそが事の元凶だろ?」
「……そうだ……私は、”何もしてないのに”……」
「挙句の果てには! 奴はマスターの友人達を手に掛けようとした。マスターを追い詰める、そのためだけに!」
「チノやみんなを……許せなかったんだ……」
ふつふつと紡がれる言葉は理世の意志で呟いているようでいて、彼女自身の言葉ではないかのように無機質だった。
まるで教本を音読しているように口を開く理世を見て、ライダーは蛇のような笑い声を漏らした。
「……ただ、どうあれ俺達が聖杯戦争の参加者である事は変えようのない事実だ。
これからはてめェの身の振り方を決めておかなきゃならない」
「身の……振り方?」
「聖杯に何を願うか、だ。マスター、聖杯が手の内に収まらない限り、お前に安息は訪れない。
どうあっても目を背ける事が出来ないんだよ」
ふと、大きな扉が目の前にそびえ立つような感覚を覚える。
誘われるように扉に手がかかるような気がして。その背中をライダーに押されて。
「……みんなを……みんなを、守らなきゃ……それで、聖杯を手に入れて」
「それで?」
扉を開けた途端、知ってはならない世界が広がっていると分かっているのに。
その先が楽園であるかのような錯覚から、理世は誘いを拒めなかった。
「聖杯戦争なんて、無かったことにする……そうすれば、いいんだ」
開けてしまった。開けてはいけない扉を。
「シュロロロロロロ! 素晴らしい思想だマスター、流石は俺が仕えるだけはある。そこらの凡夫とは格も何もかも訳が違う!」
ライダーが大げさに両手を広げ、主の発言を褒め称えた。
そうだ。
自分のためだけに、他人の命を奪う奴らとは違う。
こうすれば、こうすれば奪われる命なんてない。自分が命を奪われる事なんてない。
「ああ……だから……私は、悪くない……」
殺さないために、殺す。殺されないために、殺す。
殺人に手を染めた少女は、殺人が己の一部となることから逃れられなかった。
ライダーは、決して主の思想に従おうとは考えていない。
彼にとてはマスターでさえ、己が聖杯を手に入れる為の手駒に過ぎない。
取るに足らない少女など、せいぜいモルモットとしか考えていない彼に、マスターに対する忠誠心など微塵も無かった。
そんな男と、紛うことなき外道と、少女は手を組んでしまった。
罪から目を背けようとした少女が罪深いのか。
それとも、少女が天に見放されていただけなのか。
末期の時までに、果たしてその答えは出るのだろうか。
【クラス】
ライダー
【真名】
シーザー・クラウン@ONEPIECE
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏俊E 魔力A 幸運C 宝具B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
動物を操るには、手ずから改造を行う必要がある。
【保有スキル】
道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
科学者でありながらも、大量破壊兵器を開発し続けた彼は
薬物・毒ガスに纏わる兵器を開発する事が出来る。
自然系:B
悪魔の実の体型の1つ。身体を自然物そのものに変化させる事が出来る。
「ガスガスの実」の能力者であるライダーは身体を気体に変化させる事が出来る。
筋力か幸運のどちらもB以上でない相手との戦いにおいて、宝具や魔術を伴わない物理攻撃を無効化する。
気体操作:B
気体を操作する能力。
可燃性ガス及び毒ガスを放出する事が出来るほか、ある程度なら酸素濃度を操作出来る。
【宝具】
『誘毒蜥蜴』(スマイリー)
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大補足:30人
毒ガス爆弾”H2S”硫化水素を凝縮した液体に悪魔の実「サラサラの実 モデル:アホロートル」を食べさせて生まれた生物兵器。
ライダーの意のままに動き、触れただけで猛毒が体内に回る。性質上、火をつけると爆発する。
もともとゲル状なため分裂することで分身したり、それを起点に遠距離移動する事も可能。
ただし不完全だったのか、体力のある者なら多少ならば毒を受けてもある程度は活動する事が出来るため、
その間に安全な場所に避難して治療を受ければ生き残れる。サーヴァントに対しては更に毒の効力が弱まる。
『死滅世界』(シノクニ)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大補足:100人
スマイリーに餌を与える事で生まれる巨大な毒ガスにして殺戮兵器。
シノクニはサーヴァントを含めた生物に触れると纏わりつき殻のように硬化。対象の全身を麻痺させ死に至らしめる。
死に至るまでは半日の時間を要するため、それまでに殻を破壊すれば救助は可能。
サーヴァントに対しては、ステータスにもよるが最初の効果が発動するまで更に時間がかかる。
この宝具を開放した時点でスマイリーは使用不可能となる。
また、そのままでは無差別に生物を襲うがライダーが同化する事で制御が可能となる。
【weapon】
薬品や毒ガス。
【人物背景】
新世界・パンクハザードに住む科学者。
大量破壊兵器の開発、特により多くの人間を殺せる兵器を作る事にしか興味がないマッドサイエンティストで、
科学班に追放されそうになった時に毒ガス爆弾を炸裂させパンクハザードを死の島へと変えた。
毒ガス爆弾の事故に関しては同僚であるペガパンクに責任を全て押し付ける。
そして囚人たちや部下、誘拐した子供たちに対し誠実なフリをして騙し実験台にし研究を続けていた。
言うまでもなく冷酷非道な人物で、人体実験や誘拐のみならず、子供たちに対しては逃亡防止のため
言葉巧みに薬物依存に仕立てあげている。
最終的には麦わら海賊団とトラファルガー・ローに攻めこまれて打倒され、彼らに捕縛された。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を手に入れ再び自由を。そしてどこでもいいので大量破壊兵器の開発と実験を存分に行う。
【マスター】
天々座理世@ご注文はうさぎですか?
【マスターとしての願い】
聖杯戦争のすべてを無かった事にする。
【weapon】
モデルガン
【能力・技能】
護身術
【人物背景】
喫茶店「ラビットハウス」でバイトをする男前な中学生。
軍人の娘で自身も訓練を積んでおりモデルガンを携帯している。
一方で本人は可愛らしいものや女の子らしいものに憧れを持っていたりする。
【方針】
聖杯を手に入れる為に動く。
以上で投下終了です。
すみません。ギリギリになりますが自分も8時まで予約させてください
一作投下する予定ですので、延長をお願いします。
>>588
投下乙です、杏ちゃんとージバニャンだにぃ☆
まったりしたコンビですねー、少女聖杯において引きこもりは社会問題といえるでしょう。
「いつから友達になったんだよ」から、杏ちゃんが自嘲するまでの流れ超好きですね、
そこら辺の流れ、リアリティあるダメさ加減が出ていると思います。
性能的には通常時は全体的に燃費に優しい、言い換えれば普通に弱い感じですね。
言うまでもなくバリエーションの使い分けが鍵になるでしょう。
投下ありがとうございました。
>>598
投下乙です、安田紗代さんと鑢七実ですね。
互いにその壮絶な来歴故に、召喚されてしまったわけですね。
さて、即座に乗ることを決意できる精神性と知略、魔力、そしてサーヴァントの性能と実際強力な主従です。
特筆すべきはやはり、見稽古でしょうか。
コピー能力持ちなんてものは超強いか噛ませかの両極端なものになりがちですが、この方は前者です。
というか、見稽古すら枷とは全く恐ろしすぎることですね。
病気には気をつけていただきたいものです。
投下ありがとうございました。
>>606
投下乙です、天々座理世さんとシィィザーァァッ!!じゃない方のシーザーですね。
罪を犯すということは、自分の中でその行為に対するハードルが下がるということですから、実際恐ろしいことです。
というわけで早速濁りきりました、あぁ^〜前科がぴょんぴょんするんじゃあ^〜です。
やはり、良くも悪くもサーヴァントの存在というのは大きいですね。
そして、キチガイに刃物、鬼に金棒とばかりに、シーザーさんは大量破壊兵器でお馴染みの人です、あっ……(察し)
今後が非常に恐ろしいことですね。
それにしても少女聖杯はごちうさの人達に厳しいのですが、ご注文はうさぎじゃないんでしょうか。
投下ありがとうございました。
延長します(憤怒)
折角だから延長してみたかったですが、書き終わったので投下します
狂ってやがる。
目の前の狂乱を眺めながら、ミュッチャー・ミューラー――通称“ミューミュー”は心の中で吐き捨てた。
「あっ、ふぁぁっ!」
しかし決して顔には出さない。
この程度の光景なら、州立グリーン ・ドルフィン・ストリート重警備刑務所で毎日のように目にしてきた。
強いて言うならば、今目の前でいたぶられている少女の見た目だけは、今までの日常とは異なる。
目の前で顔を歪ませているのがグリーン ・ドルフィン・ストリートでは見かけないくらい『どこにでもいる普通の娘』である事実は、
ミューミューの心を僅かばかり痛めさせた。
もっともそれは、本当に僅かばかりなのだけれども。
「らめっ……あっ……あぁっ……も、もうっ……!」
コンクリートで囲まれた部屋で、力無き者が陵辱される。
グリーン ・ドルフィン・ストリートでは男女問わず囚人間で行われていることだった。
なんなら、一部のイかれた変態看守が囚人相手にシたとも聞く。
幼い頃性的暴行を受けたという女囚も少なくなかったし、まぁ極普通の少女が陵辱されたとしても、『運が悪かった』で済ませられる。
看守ではあったのだが、ミューミューは別に正義の心を持ち合わせてなどいなかった。
「あらあら、こんなにびしょびしょにして……」
「い、言わないでぇっ」
違和感を覚え、狂っていると感じるのは、やはりここが日本あたりの平和な国の平和な街であるからだろう。
そして、コンクリートで囲まれたこの部屋が、監獄ではなく普通のコンビニであることも、大いに違和感を抱かせた。
「お仕置きなのに気持ちよくなるなんて……本当に反省しているのかしら?」
極めつけは、目の前で少女を陵辱している少女だ。
先程までは穏やかな笑みを浮かべながら接客をしていた姿から、想像つかぬほど悪意に満ちた笑みを浮かべている。
日常とのギャップという点において、今ここほどに酷い場所はそうあるまい。
「もぉ……許ひてぇっ……」
語尾にハートマークをつけながら、涎を垂らして何度も痙攣する少女。
彼女がこの地獄に叩き込まれた原因は、他ならぬミューミューが作っていた。
「もう二度と忘れたなんて言えないように、痕を残しておいてあげるわ」
陵辱を加える少女――玲奈は、ミューミューの『マスター』だった。
玲奈はこのコンビニの店員であり、聖杯戦争以前からコンビニで勤務していたらしい。
真面目に業務に打ち込み、勤務時間に釣りに勤しむ店長を尻目にひたすらレジを打ち続ける真面目な少女。
客からの人気も高く、まさに平和な国で陽のあたる場所に居る少女という印象だった。
しかし一度万引きが行われると、玲奈は豹変することが分かった。
人が変わったように万引き犯を陵辱し、嫌悪と憎悪を叩き込む。
最初に万引き犯を捕まえた時など、その無慈悲さと普段とのギャップに、ケツの穴に氷柱を突っ込まれたかのような気持ちになった。
今ではすっかり慣れてしまったが、それでもやはり、玲奈はどこか狂っていると思わざるを得ない。
もしかすると、対万引き犯においては、サーヴァントである自分よりもよほど強いのではなかろうか。
「ひぐぁぁぁっ、やめっ……!」
兎にも角にも、今の自分の仕事は『聖杯戦争で優勝すること』だ。
サーヴァントになる前からスタンド能力なんていう狂ったモノを手に入れていて、
スタンド使いを閉じ込めるなんて仕事に就いていたのだが、無様に失敗していまっている。
下手をすれば、制裁が加えられていたかもしれない。
被害者自身にも法律にも気付かれず殺せるのがスタンドなのだ。
自然死を装い、強大すぎるスタンドを持ちながら任務に失敗した者を始末しない理由もない。
「あぎいいいいいいいいいっ!!」
そうなるとグリーン・ドルフィン・ストリートから逃げるしかなかったわけだが、正規の手続きを踏んで退職するのは時間がかかる。
かと言って黙って逃走すれば、今までのキャリアを全部ドブに捨てるうえ再就職が難しい。
ある意味――復活の機会でもあるこの聖杯戦争は、ミューミューにとって救いだった。
「こんなに酷いことをされてるのに感じるなんて、貴女やっぱり変態なんじゃないの?」
どうしても叶えたい願いなどない。
それでも死にたくはないし、金はほしい。
極々普通の願い。
けれどもそれは、多分もう、聖杯を使わねば叶わぬ願い。
「ほら、恥ずかしいところ、店長に見てもらいなさい」
そのためなら、この狂った状況も受け入れよう。
今の自分に出来ることをきっちりとこなし、そして勝つだけだ。
例え戦場が監獄からコンビニに代わり、立ち位置が主任看守から店長になろうとも変わらない。
殺傷力を持たないが、しかし最強のスタンドを有効活用するための場を、聖杯戦争開始までの間に整えてきた。
そしてそれが効果的であることは、今の“予行練習”で証明されている。
「ひ……だめっ、イくっ、イっちゃう!」
少女は、万引きをした。
しかし少女にその自覚はない。
店内に仕掛けたミューミューのスタンド『ジェイル・ハウス・ロック』の能力で、万引きをさせられたのだ。
「や、らめえっ……み、見ないで……!」
ジェイル・ハウス・ロック。
元の世界では『スタンド』と呼ばれ、そして今では『宝具』と呼ばれる存在。
その能力は強力無比で、建物の中に潜り込んだジェイル・ハウス・ロックに触れると、物事を3つまでしか新たに記憶できなくさせるというもの。
ジェイル・ハウス・ロックに触れるまでの記憶は残っているが、触れたあとに4つ物事を記憶すると、古い1つを忘れ去るのだ。
この能力があれば、脱獄だって容易いし、万引き犯に仕立て上げるなど朝飯前。
HBの鉛筆を忘年会でケツでベキッ!とへし折った事と同じようにッ! 出来て当然のことなのだッ!
「あああああああっ!!」
陥れ方は簡単。
商品を手にとった瞬間、声をかけるなどをして3つのことを記憶させればいい。
今回は、外で雨が降っていたことを利用し、床清掃作業に見せかけ声をかけた。
『すみません、通ります』
『床滑りやすいんで気をつけて』
『よかったら傘立てあるので使ってください』
この3つを認識させた時点で、ジェイル・ハウス・ロックの能力で3つしか物を記憶できない少女は、手にした商品の存在を忘れる。
あとは認識できないまま商品を持って外に出るように仕向ければいい。
今回は傘立てを外に置いておくことで、自然と外に出ていくよう誘導した。
そうして事前に完成させていた万引き犯がこちらになります(3分ファッキング)
「ふふ……これでもう忘れる心配なんてないわね」
一応、きちんと布石も打っている。
近所の不良女学生間で「精算を忘れたことにすれば万引きも見逃されるからチョロいチョロい」という話が広まっていると、ありもしない情報を流した。
おかげでいくら「本当に何も覚えていない、悪意はなかった」と訴えても、ご覧のとおり玲奈には聞き入れられない。
もっとも玲奈の万引きに対する憎悪を見るに、そんな小細工をするまでもなく陵辱してくれていたような気はするが。
「これに懲りたら、二度と万引きなんてしないことね」
玲奈にとって大事なことは、万引きした少女にお仕置きを加えること。
しかしながら、勿論ミューミューにとっては、そんなことどうだっていい。
看守なんてしてはいたが、クズの更生や平和な世なんて望んじゃいない。
大事なのは、この聖杯戦争で勝つこと。
そのために、マスターである玲奈を利用する。
(出来ないさ、もう二度とな)
万引き犯への憎悪からくる、サーヴァントかスタンド使いでも違和感がないほどの限定条件下の能力。
精神力から話術、残虐性に至るまで、これがサーヴァントであれば+マークがついていただろう。
ジェイル・ハウス・ロックの力で万引きをさせたら、あとは全部玲奈に任せることにしていた。
そうすれば、ご覧のとおり茫然自失の少女が簡単に出来上がる。
(あの悪魔的テクニックを前に普通は再犯なんて考えられなくなるが、そもそもに――)
しかしながら、聖杯戦争はヌルくない。
殺さなくては決して勝利にならないのだ。
なのに玲奈は、殺すような真似はしない。
仕置きの名の元に死にたくなるような辱めは与えども、直接命は奪わないのだ。
(――生かして帰すつもりはないからな)
だからといって、ミューミューまで見逃してやる理由はない。
何しろ相手は聖杯戦争の参加者――マスターだ。
後日サーヴァントを引き連れて報復されても困る、ここで決着をつけなくては。
それに、下手に逃して、評判が変動するのも避けたかった。
あくまでどこにでもいるコンビニの、どこにでもいる店長でなくてはならないのだ。
目立ってしまい聖杯戦争参加者でないか疑われる展開だけは、何が何でも避けねばなるまい。
万引きの捏造も、バックヤードへの連行も、相手がこちらを疑っていないからこそ出来ること。
そのためには、「ただの平凡な店長」である必要がある。
聖杯戦争参加者だと疑われていたら、連行しようとした時点でスタンドバトルに移行するだろう。
相手にスタンドが決まった状態とはいえ、肉弾戦が得意でないスタンドである以上、無事で済むとは言い切れない。
忘却させるのにスタンドパワーは使ってしまうし、現に肉弾戦で空条徐倫に敗れ去っている。
もう二度と同じ轍を踏むことはしない。
人は成長する生き物だ。もっとも、何も学べないし記憶できない目の前の哀れな少女は別だが。
「正面から出られても困る、こちらからお帰り願おうか」
まだ半裸で啜り泣く少女へと服を投げつけて、半ば無理矢理服を着せる。
そして玲奈が業務に戻ったことを確認してから、彼女を外へと放り出した。
あくまで、少女の足で。
ふらつく少女自ら歩かせて。
弱り怯えた者を無理矢理動かす技術は、看守時代に身につけていた。
そして、ふらついて壁に手をつくのを待つ。
予想より足取りがしっかりしていたら、「さっさと帰れ」等と罵声を浴びせながら、自然なタイミングで蹴りを入れる。
要するに、壁の一部に触れさせれば勝ちなのだ。
これで、解除していたジェイル・ハウス・ロックが再度発動する。
「それじゃあな」
このコンビニの近辺は、比較的栄えている。
だからこそ、一旦路地裏へと放り出した。
これならば、万が一不審に思われても、路地裏で暴行されたようにしか見えまい。
「車には気をつけて帰るといい」
このコンビニの近辺は、比較的栄えている。
それでもまだまだ繁華街とは言いがたい。
横断歩道は設置されているが、信号機がない場所も多々存在する。
『右から車が来ているかを確かめる』
『左から車が来ているかを確かめる』
『もう一度右から来ているかを確かめる』
『今なら渡れるし道路を渡る』
この4ステップが――最初の右の確認を怠っても3ステップが、渡り切るのに必要な道路が、この辺りには多数存在しているのだだ。
周りの目を気にしたり、こちらの意向を気にしたりすれば、必要な動作――記憶の数は、もっと多くなるだろう。
「……ああ、だから言ってやったのに」
大きな衝突音がして、それから悲鳴が聞こえてくる。
きっと、事故でもあったのだろう。
まるで車が見えていないかのように飛び出して、少女が自動車に轢かれる。
そんなどこにでもある痛ましい事故が起こったに違いない。
「人の忠告は、忘れない方がいい」
きちんと策が機能していることを確認し、サイレンの音を聞きながら、トランプの陳列業務へと戻っていった。
【クラス】オブリビオン
【真名】ミュッチャー・ミューラー@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
【属性】中立・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:A 幸運:D 宝具:A
【クラススキル】
スタンド使い:C
自身の宝具『ジェイル・ハウス・ロック』は、同じスタンド使いにしか視認することが出来ない。
しかしスタンド自身に破壊力は皆無であるため、気付かれずにスタンドに触れさせる以外の効果には期待が出来ない。
射撃:D
4つの弾丸を僅かにズレたタイミングで、そして正確に叩きこむ能力。
そうすることで相手は一つ一つの弾丸を『覚える』ことになり、4発目の弾丸を視認した時点で1発目の弾丸の存在を忘れるようになる。
【保有スキル】
社会的地位:B
看守の主任になれる程度に社会に溶け込み集団に紛れる事ができる。
聖杯戦争においても、コンビニ経営に関わるNPCを人脈として利用ができる。
元居た世界で主任に上り詰めた実績があるからか、最初から関連企業からの信用を得た状態でスタートしている。
また、聖杯戦争においてはコンビニの店長でありアルバイトを雇う権利などを有するため、玲奈が陵辱し心を折ったNPCを奴隷として雇うことが可能。
懲罰:C
州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所に勤めていた経験を活かし、囚人にしていたような暴行や羞恥プレイを行える。
また、立場が弱い者や弱った者の上手なコントロール術や、粗暴で頭の悪い者の煽り方も心得ている。
主な目的は屈服させることであるため、あまりに猟奇的なことは出来ない。
【宝具】
『ジェイル・ハウス・ロック』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:建物一つ丸々と 最大捕捉:何人でも
建物に潜ませたスタンド『ジェイル・ハウス・ロック』に触れると、物事を3つまでしか覚えていられなくなる。
スタンドに触れる以前のことは覚えていられるが、それ以降に4つ以上物事を覚えると、古い順に忘れていく。
『4つまでしか覚えられないので、4発の弾丸を放つと1発目の弾丸は忘れるため、視認することができなくなる』というロジックを使えるが、
常時その状態にはなるわけではないため、ミューミューの意志一つで変更が可能と思われる。
【人物背景】
ホワイトスネイクに雇われて、州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所にスタンド使いを閉じ込める任を受けていた看守。
敵対する空条徐倫にわざわざゴキブリを食わせたりと、性格は決して善人とは言えない。
任務には忠実だが、「スタンド使いを閉じ込める」という仕事に含まないことには消極的であるため、真面目というわけでもない。
また、徐倫に敗れるとあっさり徐倫の言うことを聞き脱獄に貢献する等、覚悟や忠誠があるわけでもない。
仕事には真面目だが、あくまで金を稼ぐ手段の仕事としてせなばらなぬからしているだけに過ぎないのだろう。
【サーヴァントとしての願い】
金と平穏
【マスター】
玲奈@万引きGメン 悪い娘にはお仕置きです!
【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れてこの世から万引きをなくしたいが、それはそれとしてコンビニの仕事もこなしていく
【weapon】
コンビニに置いてあるものならば何でも
【能力・技能】
万引き犯の心を手玉に取り、自ら股を開かせる人心掌握術を持つ。
また、万引きを認めた少女に対しては一切の躊躇もなく残虐行為(主に性的な行為)を働くことが出来る。
また、万引き犯を嫌なのに感じさせる等、対女性に対する性的テクニックはDMMの女性キャラでも最上位に位置している。
【人物背景】
『優しく穏やか』『ドSで鬼畜』という相反する属性を公式紹介文で並べられるくらい二面性を持つ女性。
コンビニで働いており、店長のサポートをしている。
万引きを心から憎んでおり、取っ捕まえた万引き犯には容赦無い追求と無残な性的仕置を仕掛ける。
性的暴行を受けた女性万引き者が快楽に溺れたり、性的仕置の果てにバイト希望をしてくるなど、レズセックスにおけるテクニックは上級者であると思われる。
なお、万引きを憎悪しており万引き犯には慈悲など持たぬが、それでも店長の指示には忠実であり、店長が逃すと決めた万引き犯は渋々ながらきちんと逃す忠誠心を持つ。
また、万引き犯の捕縛方法は主に監視カメラによる証拠突きつけであり、万引きを見抜くスキルや捕縛能力が高いというわけではない。
【方針】
ミューミューにコンビニを経営してもらい、とりあえずそのサポートをする。
万引き犯には制裁を。
投下終了致しました。
玲奈さんはぱっと見大人びて見えますが、
・エロゲキャラはちょっと大人びてても17〜19歳くらいのことが多い(でも建前上18歳以上)
・幼女と並ぶと親子というより姉妹に見えるのでおそらく大学生くらい
との理由で、少女になると判断しました
投下します。
たとえばそのころ、私は沈んでいた。
試験が近づいてきているというのにまったく勉学に集中できる気がせず、実際に机に向かってノートを開いてみてもそこにはわけのわからない単語の羅列があるばかりだった。
このままでは赤点は免れない。選択問題で当てずっぽうに書いた記号が奇跡的な確率で全問正解でもしない限り追試決定だ。
そもそも私が通う学校は選択問題は少なくて記述問題だらけだからもう完全に詰んでいる。
ていうかどうせ奇跡的な確率で全部的中するならテストなんかより宝くじのほうが嬉しい。
一等とは言わずとも三等くらいが当たってくれれば超高級霜降り和牛をお腹いっぱい食べてもお釣りが来る。
あぁ……肉食いたいなぁ……まだ少し中が赤いくらいのレアとミディアムの中間くらいの、あぶらが滴る柔らかい牛肉にさっとたれをつけてぱくりと一口で食べてしまいたい。
口の中でとろける肉の旨みに幸せを感じながら、炊き立ての白米を頬張りたい……
そんな妄想をしているうちに本格的にお腹が空いてきたので、私は勉強を切り上げて夜食を取ることに決めたのだった。
だが買い置きの食材はどれもなんだかいまいちで、肉! 肉! と盛り上がっていた私を満足させるには至らない。
しかし一介の女子高生に過ぎない私は、突発的な肉欲を満たすほどの現金を持ち合わせてはいない。
財布の中身を見てみれば、そこに入っていたのは数枚の千円札と数枚の硬貨のみ。私は大きなため息をついた。
「しかたない。肉は無理だけど、ラーメンくらいならなんとか……」
次善の策ということで、狙いをラーメンに切り替えていく。
夜にラーメンだなんて肥満体型まっしぐらのメニューだけど、まぁさっきまで頭使ってカロリー消費してたし! 痩せる気はあるし! と自分を誤魔化す。
部屋着にしていたスウェットの上に外出用の上着を羽織って、財布とケータイだけ握りしめて外へ出た。
あと三時間ほどで日付も変わる。あまり遅くならないうちに帰らないといけないな、と私は思った。
このあたりは元々治安が良い。だからこそ私もたびたび夜に部屋を抜け出して近所のラーメン屋やファストフード店に入り浸っていたのだが、ここ最近はなんだか違う。
変質者や犯罪者が現れた――というような、直接的な何かが起きたわけではない。だけど、変な噂が流れるようになった。
曰く、『死神様』――或いは、『黄金の魔女』。はたまた『魔王』に『冥王』、『魔法少女』――荒唐無稽すぎて、誰も心底信じているわけではない与太話。
しかし火のないところに煙は立たずという。もしかしたらこの街で、何か――何か、誰もが信じられないような、非現実的な『何か』が、始まっているのではないか――?
「なーんて、ね」
夜の空気は、すぐに妄想を加速させていく。
普段なら微塵も考えないような馬鹿げた空想があっという間に形になっていくことは、誰もが経験のあることだろう。
しかしそんなことは私の人生において重要ではない。
大事なのは目の前に迫ってきている期末テストだったり、なんか最近ぱっとしない人間関係だったり、将来に対するどうしようもない不安だったりするのだ。
そういう、口に出したところで何の解決も進展もしないだろう現実のあれこれが、私はたまらなく嫌だった。そしてそういうものを受け入れられない私自身も、嫌いだった。
やり場のない怒りやイライラを感じたとき、私は、自分が世界とかみ合ってないような感覚に襲われる。
自分の中の何かが抜け落ちていて、世界と私が正常に接続されていないような――そんな感覚だ。
それはきっと歯車のような形をしていて、私がそれを手に入れれば全ては上手く回り出すのだ。そう、思っていた。
どぅるるるるるるるるる――
唐突に、低く、重い音がどこかから聞こえてきた。すぐにその音は轟音という表現がぴったりなほどに大きくなる。
車のエンジン音に似ている。そう思いながら、私は周囲を見回した。
だが――私の視界に飛び込んできたのは、車ではなかった。それは、人だった。
真っ黒いコートを着ている。背がとても高い。体格もいい。男だろうなと思った。
男が右手に持ったものが、爆音を発していた。街灯の光を反射して、ぎらぎらと輝いているそれは、ホラー映画の中でしか見たことがないものだった。
「ちぇ、チェーンソー?」
あまりにも現実離れした光景に、私は一瞬、これは夢なんじゃないかと考え、自分の頬を思い切りつねった。とても痛い。めっちゃ痛い。これは夢じゃない。
だったら、どんどん近づいてくるチェーンソー男は現実ということで――映画の撮影? 通り魔?
混乱しきった頭では二つくらいしか思いつかなくて、前者ならまぁどうにかなるけど後者だとヤバいな、フィフティフィフティじゃん。いやそんな場合じゃないぞと頭の中で色んなことがぐるぐると渦巻いた。
そうこうしている間にチェーンソー男は私の目の前まで近づいてきていた。
チェーンソーを振りかぶった男の顔は――無表情だった。そこには何の感情も浮かんではいなかった。
高速回転する鋼鉄の刃が、私の胸めがけて振り下ろされる。それでもまだ、男の表情に変化はない。
目の前の全てがゆっくりと動く。死の寸前、人の意識は加速し、あらゆる現象が遅く感じるという。
つまり私は、このまま死ぬのだろうか。どうして殺されるのかも知らないまま――目の前の男のことを何も知らないまま、死ぬのだろうか。
「ごめん!」
瞬間。誰かの声が聞こえるのと同時に、私の身体を衝撃が襲った。
でもそれは、チェーンソーのそれではない。後ろから、蹴られたような感触があった。
衝撃に耐えきれずに私の身体はごろごろと地を転がる。だが、おかげで命拾いしたようだ。さっきまで私が立っていた空間を、チェーンソーは切り裂いていた。
痛みに顔をしかめながら、私を蹴り飛ばしたとおぼしき人物のほうを見ると。
そこには、セーラー服をはためかせながらチェーンソー男と戦う、美少女戦士の姿があった。
長い黒髪が舞う。美少女の手に握られたナイフが銀色に光っている。
暴力的な音をどぅるどぅると響かせるチェーンソーを、少女は俊敏な動作でかわしていく。
いくらチェーンソーが殺傷を目的に作られた道具ではないにしろ、少しでも触れれば肉は裂け、骨は断ち切られるだろう。
つまり少女は、命がけの戦いをしているわけだ。だというのに――その姿を見て、私は、とても美しいと思ってしまった。
数分の交戦ののち。
少女の手から放たれたナイフが、チェーンソー男の胸へと突き刺さった。
それを見た私は、やった! と心の中で快哉を叫んだ。
通り魔だかなんだかよく分からないが、とにかく悪は倒された。美少女が勝ったのだ。やはり正義は勝つ。美少女is正義。
私は少女の元へ駆け寄ろうとした。だが、少女の声を聞いて、私の足は止まる。
「来ないで! ……まだ、終わってない」
チェーンソー男は――胸に突き刺さったナイフを無造作に抜き取って、ぽいと放り投げた。
ぐっさりと心臓のあたりに刺さっていたはずなのに、血の一滴も流れやしなかった。
そして、チェーンソー男は。
地面をドン! と踏みならして、跳んだ。というより飛んだ。びゅんっと飛び上がって、そのままどこかへ消えてしまった。
……そのまま数分が経過した。美少女はまだ周囲を警戒している。私はどうにも口を挟める雰囲気じゃなかったので、黙って立ち尽くしている。
やがて少女は、握っていたナイフを収めた。緊と張りつめていた空気も心なしか緩んでいた。
……終わったってことで、いいんだろうか? おそるおそる少女に声をかけてみる。
「あ、あの……ありがとう、ございました」
「いいの。こっちこそ、巻き込んでごめんなさい。……背中、痛くなかった? 大丈夫?」
言われて思い出す、少女に蹴られた背中の痛み。急にずきずきと痛み出す。
でもまぁ、我慢できないほどじゃない。湿布でも貼っておけば二三日で治るだろう。
「大丈夫なら、あたしはもう行くけど」
「え、あ、いや、その……そうだ! お礼! お礼させてください!」
美少女は怪訝そうな顔をした。いや、そんな露骨にイヤな顔しなくてもよくない?
私はぺらぺらと調子よくしゃべって美少女を引き留めた。実際、かなり興奮していたのだろう。
死ぬところだったのだから多少の興奮を多めに見てもらいたい。別に美少女に興奮しているわけではないのだから。
そうやって話している間に、美少女のお腹がぐうっと鳴った。さすが美少女、お腹の音にもどこか気品を感じる。
これはチャンスだと私はゴリ押した。
「ラーメン! ラーメン奢ります! 私も食べようと思ってたところだから!」
このゴリ押しが功を奏したのか、美少女はようやく頷いた。さすがラーメンだ。美少女相手でも頷かせる力がある。
少女の手を取って、夜道を歩く。行きつけのラーメン屋の暖簾をくぐる。
「私、ラーメンにする。あなたは? ああ、全部私の奢りだから、気にせず頼んでいいよ」
「チャーシューメンとギョーザのセット。あと大ライスと、オレンジジュース。あと、この店って博多系みたいだけど替え玉ある?」
「ほんとに躊躇ないね……」
ラーメンが来るまでに、私たちは簡単な自己紹介をすることにした。
美少女の名前は、雪崎絵理というらしい。名前からして美少女オーラに溢れている。
私は自分の紹介もそこそこに、あいつがいったい何なのかを絵理ちゃんに問いつめた。
「あのチェーンソー男って、いったいなんなの? 絵理ちゃんはどうしてアイツと戦ってるの?」
絵理ちゃんは最初、話したがらなかった。彼女としても秘密にしたいか、黙っておきたいことなのだろう。
そこで私は小声でラーメン、ギョーザ、奢り、などと呟いてみた。絵理ちゃんはぴくりと反応して、渋々と話し始めた。
「チェーンソー男はね……あたしの、敵なの。あたしはあいつと戦わなきゃいけない運命なの」
ド真面目な顔をして、絵理ちゃんはそう言った。私は正直、少し引いた。
前世がどーたら系かと訝しんだが、それだけじゃチェーンソー男について説明が付かない。
なんせあの男は、絵理ちゃんにナイフで刺されたというのに平気な顔をして飛んでいったのだから。
CGとかワイヤーアクションとか、そういうものじゃなかったというのは見ていた私が一番よく分かっている。
「お待たせっしたぁー、ご注文のしなぁいじょでおそろいでしょかー」
ラーメンが、来た。ひとまず私たちはラーメンを食べることにした。熱々のうちに食べないのはラーメンに対する冒涜だ。
この店のラーメンは、シンプルな博多ラーメンだ。濃厚な豚骨スープに、芯が一本残るくらい固めに茹で上げられた細麺。
それに分厚く切られた自家製チャーシューが一枚と、さっぱりとした風味の新鮮な青ねぎが乗っている。
まずは一口だけスープをすする。芳醇な豚骨の香りが鼻腔をくすぐった。
豚骨をそのまま煮込んだ昔ながらのスープで、濾したり割ったりしていないから臭みや雑味も混じっている。
はっきり言ってしまえば、これより美味しいスープなんて探せばいくらでもあるだろう。
だが、深夜に。日付が変わろうかとしている時間帯に。私は今、ラーメンを食っているんだという実感が湧いてくるのは、こういうスープだ。
続いて麺をずずずと吸い上げる。歯ごたえがある固めの麺だが、元が細いから苦もなく食すことが出来る。
麺と絡む濃厚なスープが、私に満足感を与えてくれる。思わず頬が緩んだ。
麺と一緒にすすりあげた青ねぎを噛めば爽やかな風味が口の中に広がり、濃厚な味付けに対するアクセントになる。
麺を半分ほど食したところで、私はチャーシューにとりかかることにした。
箸で掴んでみればずっしりとした重さまで感じる、肉厚のチャーシューだ。
そういえば私は肉が食べたくて、でも金銭的な理由から断念して、代わりにラーメンを選んだんだったなと思い出した。
このチャーシューは私の肉欲を満足させてくれるだろうか。いや、してもらわなければ困るのだ。
私は、まずチャーシューをどっぷりとスープの中に沈めた。ラーメンのチャーシューはスープの味が染み込んでこそ。ここで急いてはチャーシューを十全に味わうことは出来ない。
しっかりと浸ったことを確認して、私はチャーシューを一口に頬張った。
――その瞬間、口の中で肉の旨みが爆発した。
(ん、んんんんっ❤)
言葉に出来ないほどの幸福感と充足感に包まれる。
舌の上でとろける脂身も、十分にスープを吸った弾力ある肉の食感も、焼肉では味わうことが出来ないものだ。
ラーメンのチャーシューだからこそ味わうことが出来る旨さに、私の中の肉欲は完全に屈服した。
ふと目の前を見てみれば、絵理ちゃんも私同様この店のメニューの美味さに悶絶していた。
私と絵理ちゃんの目と目が合う瞬間。二人は言葉を交わさずとも、完全に通じ合っていた。
ひたすらに食べ、替え玉も心ゆくまで注文し、ようやく一息つこうかというところで私と絵理ちゃんの会話は再開された。
「それで、絵理ちゃんは……どうしてアイツと戦えるの?」
私は少し、質問を変えてみた。
チェーンソー男はどこからどう見てもフィクション世界の住人だ。
だが冷静に考えてみると、そのチェーンソー男と対等以上に渡り合えている絵理ちゃんも、相当人間離れしている。
「あいつが出てきてから、急に強くなったの」
「えっ、それだけ?」
「うん、それだけ」
多角的に攻めていくことで絵理ちゃんとチェーンソー男について知ることが出来るだろうという私の作戦は、いきなり失敗に終わった。
というかそもそも、絵理ちゃんと会話が成立していないのでは? 私は訝しんだ。
しかし絵理ちゃんもラーメン代の分くらいは話そうと思ったのか、彼女の方から話を始めてくれた。
「あのさ。――世の中って、どうしようもなく悲しいこととか、あるよね」
私は、うん、と頷いた。
だいたい世の中には、不条理が溢れている。そして殆どの場合、人間はその不条理に負けてしまう。
それをみんな、どうしようもないことだからって受け入れている。諦めている。
「私は思ったの。世の中にこんなに悲しいことが起きるのは、どこかで悪者が悪いことをしてるからなんだって。
だってそうじゃないと、おかしいよ。悲しいことが多すぎるよ」
「その悪者が――チェーンソー男だって言うの?」
「そう。だから私は――戦うの。チェーンソー男がいなくなれば、きっと悲しいことが減るはずだから」
「……そっか」
なんとなく、絵理ちゃんがなんで戦ってるのか、分かった気がした。
分かりやすい世界の敵と。そいつと戦う力と。
その二つを見つけてしまったら、手に入れてしまったら、きっと私だって戦うだろう。
じわじわと迫ってくるテストや、真綿で首を絞められているようなぼんやりとした不安と戦うより、そのほうがずっと分かりやすくて気持ちいい。
なんだか急に興奮は冷めてしまって、私と絵理ちゃんはそのまま黙ってしまった。
絵理ちゃんは何か喋りたいようだったけど、私は喋らないで欲しいというオーラを全身からこれでもかと発して、彼女を遮った。
ちょうどよくお腹もこなれてきたところで、私と絵理ちゃんは店を出た。
気まずい雰囲気に申し訳なさを感じたのか、絵理ちゃんはやっぱり自分の分は自分で払うと言い出したけれど、強引に私が押し切って全額を払った。
店の外に出ると、少し肌寒さを感じた。昼の陽気が嘘のように、夜は冷え込む。
もう少し暖かい格好にすればよかったかなと、私はちょっと後悔した。
「絵理ちゃん。家、どっち?」
私の家と逆方向を、彼女は指さした。
私は、そっか、私はこっちだからと言って、帰路に着こうとした。
そのとき、絵理ちゃんの手が、私の上着の裾を掴んだ。
「えっと、その……ご飯、美味しかったから。誰かと一緒に食べるの久しぶりだったから……
やっぱり一人で食べるより、誰かと食べたほうが、美味しいよね。ありがとう」
絵理ちゃんは、笑っていた。だけど、その笑顔の裏に大きな悲しみがあるのを、私は感じた。
ああ。きっと絵理ちゃんは、大好きな人と一緒にご飯を食べるっていう、そんなことすら出来ないんだ。悲しみの美少女戦士だ。
その悲しみは、チェーンソー男を倒すまで晴れることはないのだろう。
だから絵理ちゃんは、チェーンソー男と戦い続けなくてはならないのだ。
私は急に胸がつまって、私の服を掴んでいた絵理ちゃんの手を握りしめてしまった。
「絵理ちゃん。……また、一緒にご飯食べよ」
絵理ちゃんは驚いた顔をした。そのあと、うん、と頷いてくれた。
私たちは、笑って別れた。メアドの交換はしなかった。電話番号も聞かなかった。てか、LINEやってる?(笑)みたいなことも言わなかった。
絵理ちゃんは走って去っていった。夜闇の中に消えていく美少女戦士。私はその背中を見送った。
私は、そのまま家に向かって歩き始めた。
途中でふと、立ち止まってみる。耳をそばだてる。だけど何も聞こえてこない。
重く、低く響くエンジン音は聞こえない。映画のような分かりやすい敵は、私の前には現れない。
いつの間にか、私は泣いていた。とても悲しかったからだ。
たった一人で孤独に戦い続けなければならない絵理ちゃんも。
戦う敵すら見つけられずにぼんやりと生き続けなければならない私も。
とてもとても悲しいと、そう思ってしまった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
チェーンソー男@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
【パラメーター】
筋力A 耐久EX 俊敏C 魔力D 幸運D 宝具C
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
狂化:A
【保有スキル】
不死
たとえナイフで心臓を突かれようと、全身を殴打されようと、不死身の怪物は決して死ぬことがない。
仕切り直し
しかし不死身の怪物は、致命傷となりうる攻撃を受ければどこかへ飛び去ってしまう。
【宝具】
『死にたがりの青春(ニアデス・ハピネス)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:10 最大捕捉:1
常時発動型の宝具である。
この宝具が発動している間、バーサーカーのマスターは、バーサーカーと戦うための力を得る。
およそ人間離れした身体能力と戦闘技術を得て、マスターは襲い来る己のサーヴァントと対決する。
この宝具によって得た力はバーサーカーのみならず他のサーヴァントに対しても効力を発揮する。
『世界に悲しみをもたらす、悪の怪人(ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:5 最大捕捉:1
バーサーカーが持つチェーンソー。ホラー映画の怪物が持つような、悪の象徴。
【weapon】
チェーンソー
【マスター】
雪崎絵理@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
【マスターとしての願い】
山本くんとまた会いたい。
【能力・技能】
およそ人間離れした身体能力。
【weapon】
投げナイフ、鎖かたびら。
【方針】
バーサーカーを倒して、元の世界へ帰る。
投下終了です。雪崎絵理&バーサーカーでした。
投下します
―強くなれ九兵衛 お前は男だ
父上やおじい様が僕を守るためだと知りながら、どこかで恨んでいた
―私 九ちゃんの左目になる
妙ちゃんの心を知っていたのに僕は目を背けていた
―みんな 自分の護りたいもの護ろうとしただけ …それだけだ
僕だけが妙ちゃんを守れると思い込んでいた 僕が皆に守られていることにも気づかずに
初めはあこがれだった。同じ女の子なのに強く生きていられる君に。
でも、その笑顔の裏に隠れるものを知って護りたいと思った。
だけど、何一つ護れていなかった。
護るどころか、君に勝手な重荷まで背負わせてしまって。
僕は…弱い。
ふと頬に一滴の涙が落ちた。
見上げると妙ちゃんが泣いていた。
僕のことをまだ親友だと言ってくれた。
男も女も関係ない。僕は僕だと言ってくれた。
君の気持ちを見て見ぬふりをした僕なんかを。
君の変わらない優しさに、堪えきれず涙が毀れそうになる。
今まで男であり続けるために堪え続けてきた涙が。
「妙ちゃん、…ごめ―――」
突然視界が歪んだ。
誰の声でもない少女の笑い声が聞こえる。
深く昏い処に意識が引きずり込まれる。
だめだ。まだ君に、謝れていないのに。
必死に手を君に伸ばそうとする。
だけどその手は届かなかった。
こんなに近くに君がいてくれたのに。
「―――九ちゃん?」
妙は先まで腕の中にいた少女を呼びかけた。
腕に残された温もりが偽りかのように、少女は世界からいなくなっていた。
▽
凛とした静寂に包まれた道場、一人少女の木刀が風を切る音のみが静寂に波紋を立てる。
木刀を振るたびに、少女の結んだ髪が左右に揺れる。
「随分と熱心なことね、九兵衛。」
「…アサシンか」
道場内に突然として新たな少女が現れた。
見ると対照的な姿の二人である。
九兵衛と呼ばれた眼帯の少女は男装に身を包み、女であるということを隠そうと見える。
対してアサシンの少女は、ミニスカートに足を包み女であることを前面に出した衣装である。女であることを武器にしている証拠である。
「別に熱心じゃないよ。ただ、僕はこの聖杯戦争で何をすればいいのか…わからない。
だからいつものように剣に励んでいるだけだ」
「ふうん、何か願い事とかはないの?」
「願いか…。別に聖杯に掛けるような願いは持っていない。ただ僕はみんなのところに帰りたい。
帰って妙ちゃんや新八君、父上、おじい様、みんなに…謝りたい」
九兵衛は俯きながら道場の片隅に腰を下ろし、アサシンもそのそばに座った。
「でも、怖いんだ。僕のわがままのせいで、父上やおじい様の心づかいを踏みにじって、
新八君の気持ちも下らないと言い捨てた僕が、例え帰えれても皆が赦してくれるのか…」
俯いて震える九兵衛を、アサシンは静かに頭を撫でた。
九兵衛は顔を上げアサシンの方へと顔を向けた。
まるで自分の姉であるかのように、とても優しい顔で見ていてくれた。
「大丈夫よ。アタシだっていろいろと間違ったり人をだましたりしてきた。だけど、そんなアタシにも赦してくれる人がいた。
あなたを今まで守ってきた人だもの、きっと許してくれるはずだわ」
「アサシン…それでも、僕は…」
「…そうね、あなたの恐れはあなたのものだもの。最後に乗り越えるのはあなたしかいない。
…でも、あなたが自分の弱さを、恐怖を乗り越えられるまで…アタシはあなたの傍で戦うわ」
アサシンの言葉に、九兵衛はどこか羨ましさを感じていた。
同じ女の子でありながら、強く生きるアサシンに、妙の姿を重ねて。
ふと目の前が滲んでいることに九兵衛は気づいた。
何故か涙が毀れそうになっていた。
瞳を掌で覆い、涙をぬぐった。
今はまだ、泣くときじゃない。涙を流すのはすべてが終わった時だ。
涙を心の奥にしまい、九兵衛はアサシンに仄かに笑って見せた。
【クラス】
アサシン
【真名】
ブルー@ポケットモンスターSPECIAL
【属性】
混沌・中庸
【パラメータ】
筋力E 耐久C 敏捷D 魔力E 幸運B 宝具A
【クラス別スキル】
気配遮断:C(B)
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
ポケモントレーナー:B
ポケモンバトル、育成、捕獲、知識など、ポケモントレーナーとしての総合的な実力。
Bランクであれば、トップクラスのトレーナーであることを示す。
変装:C
変装の技術。手持ちポケモンのメタモンの力を利用して行う。
Cランクならば、人間であれば親しい者でも騙し通せるレベルで変装できる。
また変装中は気配遮断スキルが1ランク上昇する。
色仕掛け:E
自身の色香を利用して異性を誘惑する技術。
精神干渉耐性スキルで対処可能。
スリ:B
他者の物品を気づかれずに盗み取る技術。
化える者:A
ポケモントレーナーとしての固有能力。
ポケモンの進化について、高い知識を有する。
Aランクならば、ポケモンの進化のタイミングの察知、初見のポケモンでも進化条件が推測可能のレベルである。
【宝具】
『今より化われ、獣たち(ポケットモンスター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:-
ブルーと共に戦ってきた手持ちポケモンたちが宝具と化した。
それぞれがEランク相当の気配遮断スキルを有している。
自らが収まっているモンスターボールがアサシンとのパスとなっており、これが破壊されると
パスが途切れて、消滅する。
手持ちポケモンは、以下の6匹である。
ぷりり(プクリン♀)
特性:メロメロボディ
カメちゃん(カメックス♂)
特性:げきりゅう
メタちゃん(メタモン)
特性:じゅうなん
ピッくん(ピクシー♂)
特性:メロメロボディ
ニドちゃん(ニドクイン♀)
特性:メロメロボディ
ブルー(グランブル♂)
特性:はやあし
『水勢の激流(ハイドロカノン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:20 最大補足:80
キワメ婆との特訓でアサシンとカメックスが習得した水タイプの究極技。
激流のような水の砲撃を放ち、攻撃する。
使用後一ターンカメックスは技の使用の反動により動けなくなる。
『弱さを乗り越えて、三翼よ羽ばたけ(サ・ファイ・ザー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:-
アサシンが幼少時代、ホウオウにさらわれた時の弱さと恐怖を克服したことから得た宝具。
伝説の鳥ポケモン、サンダー、ファイヤー、フリーザーの3匹を召喚する。
通常のポケモン召喚よりも魔力消費は格段に高くなっている。
【人物背景】
図鑑所有者の一人である少女。ちゃっかりとした性格で、女であることも時には武器にする。
幼少期仮面の男にホウオウを利用して連れ去られ、その時の恐怖から鳥ポケモン恐怖症となる。
その後、シルバーと共に仮面の男の元から脱出する。
脱出後は、オーキド博士からゼニガメを盗む、レッドに偽アイテムを売りつけるなどの悪事を働いていたが、
ポケモンリーグにて自分の孤独、レッドやグリーンへの羨望を吐露し、オーキド博士に赦してもらい、第3の図鑑所有者となる。
第2章では、四天王に対抗するための力にイエローを見出し、彼女をサポートする。
第3章では、仮面の男との因縁を清算するために闘いに挑む。
ホウオウを操るカリンとイツキの前にトラウマに呑まれかけるが、シルバーの思いを受け止め弱さを乗り越える。
第5章では生き別れの両親を再開直前ロケット団にさらわれ、ショックに打ちのめされるが、自身の運命の決着がため戦いを決意する。
しかしサキのポケモンの攻撃により仲間たちと共に石化する。
第6章で、エメラルドの願いにより石化を解かれ、図鑑所有者10人でガイルとの決戦に挑む。
【weapon】
ポケモン図鑑
盗聴器や発信機、改造シルフスコープなどの発明品
【サーヴァントとしての願い】
九兵衛が弱さを乗り越えられるまで戦う
【マスター】
柳生九兵衛@銀魂
【マスターとしての願い】
元の世界に帰って皆に謝りたい
【weapon】
無名の日本刀
【能力・技能】
神速の剣の使い手
【人物背景】
左目に眼帯をした柳生家次期当主にして、柳生家始まって以来の天才ともいわれるほどの剣の達人。
生まれた時母親が死に、父が「後妻を迎えて九兵衛の居場所がなくなってしまわないように」と考えてあえて男として育て上げた。
女の子でありながら強く生きる妙の姿に憧れ、借金取りから妙を守るために左目を失う。
幼少のころの結婚の約束を果たすといい、妙を柳生家に嫁がせようとするが万事屋と真選組との対決で敗北。
敗北後、妙の真意を聞いて互いに涙を流しながら和解する。
その後は本人はいたって真面目だが大ボケをかますクールボケキャラになった。
キャラ被りしているとして桂からはライバル視されている。
普段は男装をしているが、ゴスロリが似合う美少女。
男に触れられるのが嫌いで、ちょっとでも触れられるとブン投げてしまう。
以上で投下終了です
投下させて頂きます
「ゲームオーバー」
そう言って女は楽しそうに笑った。
降りしきる雨が傷に染みる。背中に当たるコンクリートの壁がやけに冷たい。のっこちゃんにはもう立ち上がるだけの力もなかった。
眼前には女の構えた銃が見える。普通の銃ではない。のっこちゃんの知らない、特殊な力が込められた銃だ。その威力は魔法少女の肉体をも貫く。
のっこちゃんの『自分の感情を周囲に伝播させる魔法』もこの女に効かなかった。意思が強いのか、あるいはそういう能力をもっているのかもしれない。
セイバーも女のサーヴァントと相打ちになってもういない。場所は人っ子一人いない暗い路地だ。
この状況を打開する手段はもはや残されていない。のっこちゃんは今ここでこの女に殺される。
それでいいのかもしれない。ふと、そう思った。
のっこちゃんは今までに何人もの人を殺してきた。直接手を下したことはないが、そうなるように仕向けてきた。
それは生きるために必要なことだったし、後悔もしていない。
しかし自分勝手に人を殺した事実がずっとのっこちゃんの心に重りのように伸し掛かっていた。
疲れたのだ。誰かを犠牲にして生きることに。
もともと一度は死を覚悟した身だ。
NPCとはいえ最後に元気なお母さんと一緒に過ごすこともできた。
本物のお母さんにも大金を残せたはずだ。ここで楽になるのも悪くない。
しかしそのとき――コツ、と足音が響いた。
一日中、空を覆っていた雨雲が途切れ、月が除く。人気のない路地にいつの間にか男がいた。
月の光に照らされながら、男は歩いた。女の持つ銃に怯えることもなく、堂々と。
女が軽く舌打ちし、ドスの利いた声で言った。
「失せな。今取り込み中だ」
男は止まらない。それどころか女の挑発するように――あるいはのっこちゃんを安心させるように薄い笑みを浮かべた。
「逃げて……」
無意識にそう言っていた。相手は魔法少女であるのっこちゃんを圧倒するほどの実力の持ち主だ。
男が何者かは知らないが、太刀打ちできるはずがない。
のっこちゃんは魔法で『逃げたい』という感情を男に伝播させようとした。
しかしその直前、瞬きする暇もないほどの一瞬で、女が男に銃を向け引き金を引いた。
轟音が鳴り響き、悲鳴が上がる。
女の悲鳴だ。弾は放たれなかった。
引き金を引かれると同時に銃は爆発し、はじけ飛んだ破片で女の全身を貫いていた。
「もしいま撃たれていたら、僕は抵抗する間もなく死んでいただろう。でも君は僕を撃てなかった」
男が言う。さほど大きいわけでもないのに、不思議とその声は悲鳴の中でよく聞こえた。
「君は僕を止める存在に選ばれなかったんだ」
女はありったけの憎悪を込めた目で男を見て、その場から走り去った。傷のせいか、並の人間程の速度しか出ていない。。
のっこちゃんには何が起こったのかさっぱりわからなかった。
男が銃に細工した様子はない。あの爆発はむしろ銃に不具合でも生じたような感じだ。
しかしあのタイミングで偶然銃が壊れるなんて、そんなことがあるだろうか?
命拾いしたはずの男は驚いた様子もなく平然と携帯を取り出し、どこかに電話を掛けている。
「僕だ。西通りへ血塗れの女が逃げていった。捕まえてくれ。三班を呼べば挟み撃ちにできるだろう。
ああ。抵抗したなら構わない。それと至急医療班を寄越してくれ。場所は……」
男はここの住所を伝え、電話を切った。
こちらに近寄り、雨に濡れるのも構わず膝をついて、のっこちゃんと目線を合わせた。
「大丈夫かい?」
「あ……ありがとうございます」
男は異性への興味が薄いのっこちゃんでも一瞬見とれる綺麗な顔だった。そしてよく見ると見覚えがある。
知り合いというわけではない。ただ街を歩いているときに何度か見かけたことがある。
確か最近町で評判の自警団のリーダー。名前は――忘れてしまった。人の名前を覚えるのはあまり得意ではない。
「君はまだ小学生だね? こんな時間に人気のないところに来ちゃいけないよ」
「ごめんなさい。すぐ帰ります」
「その怪我じゃ無理だろう。家はどこだい? 僕の方で連絡を……」
男が言葉を止め、のっこちゃんの右肘の辺りを凝視していた。正確にはそこにある、破れた服から除いた令呪を。
のっこちゃんは慌てて左手で隠した。小学生が刺青なんていい印象は持たれないだろう。
ただでさえ、夜遅くにボロボロの状態で発見されたのだ。男が善人なら親に話をするかもしれない。
できればそれは避けたかった。例え偽物でもお母さんに無駄な心配は掛けたくない
そんなことを考えていたからだろうか、男の口から「フフッ」と声が漏れたとき、笑っていると気づくのに少し時間がかかった。
「あの、どうしたんですか?」
「失礼。少し以外だったものでね。
マスター達の素性をそれなりに調べがついているが、君がマスターだとは知らなかった」
のっこちゃんの感情が驚愕に染まる。反射的に臨戦態勢を取ろうとして痛みに顔を顰めた。
「安心していい。君に危害を加えるつもりはない」
のっこちゃんの感情が伝染っているはずなのに、男の余裕ある態度は変わらない。
のっこちゃんは心を落ち着け、冷静さを取り戻し、男を見た。
「あなたは……マスターなんですか?」
サーヴァントにはサーヴァントの気配がわかる。セイバーはこの男を見かけてもなんの反応も示さなかった。
NPCがマスターの存在を知っているはずもない。ならそういうことになる。なのに男は「いいや」と首を振った。
立ち上がり、片手を胸に当て、言った。
「僕は犬養舜二。エンペラーのサーヴァントだ」
「そんな、だって私のサーヴァントは……」
「僕はサーヴァントしての気配を消すスキルを持っている。君のサーヴァントが気付かなかったのも無理はない」
言おうとしたことを先読みされた。確かに意識を集中するとステータスも見れる。サーヴァントで間違いないようだ。
しかしだとすると別の疑問が生じる。
「だったらどうして、私に手を出さないんですか?」
「君に僕のマスターになって欲しいからさ」
「マスターに?」
「ああ、僕のマスターは先ほどやれてしまってね。君もサーヴァントを失っているんだろう?」
どうしてわかったのか聞こうと思ったがやめた。令呪を残しながら、一人で死にそうになっていたのだ。
それくらい推察できても不思議はない。
のっこちゃんは考える。犬養の申し出は聖杯戦争の勝利を目指すなら、願ってもないものだ。
だがそれは誰かを犠牲にしながら進む道だ。あの苦しみはできればもう二度と味わいたくない。
迷うのっこちゃんに犬養は言う
「未来は神様のレシピで決まる――という言葉を知っているかい」
「いえ」
「人は皆。何かしらの役割を担い生まれ、使命を果たして死んでいく。そういう意味の言葉だよ。
マスターを失った僕とサーヴァントを失った君が出会ったのは偶然じゃない。
運命が僕達に戦うことを望んでいるんだよ」
「運命が……」
のっこちゃんは自分の命を絶つ直前にこの街に連れて来られた。今まではただ偶然と片付けていたが、もしそれが運命だとしたら?
脳裏に病気で苦しむお母さんの顔が浮かぶ。聖杯の力ならあんなもの簡単に治せるだろう。他にも聖杯に願いたいことはいっぱいある。
「……あなたの願いはなんですか?」
「正しい世界」
迷いなく断言する。
その瞳は今までのっこちゃんが見てきたどんな大人よりも、そしてのっこちゃん自身よりもずっと綺麗で純粋に見えた。
のっこちゃんは覚悟を決めた。
「私は自分のために誰かを傷つけたくありません」
犬養は何も言わない。ただ黙って話を聞いている。
「だから私はあなたのために人を傷つけます。あなたのために戦います。
あなたが願う正しい世界のために尽くす、あなたの『人形』になります。
だからお願いです。あなたが聖杯を手に入れられたら――その『お礼』として私にも使わせてください」
「約束しよう。君の願いが間違ったものでないのなら、自由に聖杯を使っていい」
こんなのただの欺瞞だ。やってることは何も変わらない。でもそれでいい。
正しいことのために戦うのだと、自分に嘘をつければそれだけずっと気持ちが楽になる。
幸いにしてのっこちゃんは自分を騙すことに慣れている。
犬養が手を差し出し、のっこちゃんはその手を握った。傷のせいで力は入らないが、それでも強い思いを込めて。
魔法少女のっこちゃんこと野々原紀子、エンペラーのサーヴァント犬養舜二と再契約。
【クラス】エンペラー
【真名】犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:EX 宝具:EX
【クラススキル】
君臨:A
王は表舞台に立つことを宿命付けられる。霊体化能力を失う。
かわりにサーヴァントとしての気配を完全に消し、マスターからもステータスを秘匿する。
サーヴァントであることを知っている相手には無効。
【保有スキル】
カリスマ:EX
人を指揮、統率する才能。ここまで来るともはや人望ではなく信仰である。
配下の者にスキル『殉教者の魂(ランクは個人差あり)』と同等の効果を与える。
話術:A
言論によって人を動かせる才
国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
多数の者に向けた演説において特に強い力を発揮する。
無我:A
生も、死も、運命も受け入れ、自分の役割を全うする無我の精神。
あらゆる精神干渉を高確率で無効化する。
【宝具】
ランク:EX 種別:運命宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
『神様のレシピ』
未来は神様のレシピによって決まるというエンペラーの理念が宝具となったもの。
世界を変える役割を持つ彼を運命が守護する。
彼を止める運命を持つ者、彼を超える運命力を持つ者に対しては無効になる。
【サーヴァントとしての願い】
世界を変える。
【人物背景】
自警団「グラスホッパー」の代表取締役。ユニセックスな容姿をしている美形。
型破りかつ強い意志を感じさせる言動で大衆からはカリスマ的人気を持つが、
裏では自身の望む街の改革に邪魔な存在を暴力で排除するという残忍な一面を持つ。
「未来は神様のレシピで決まる」という理念を持ち、自分は世界を変える役目をもっていると考え、運命をあるがままに受け入れようとしている。
【マスター】
野々原紀子
【能力・技能】
魔法少女『のっこちゃん』に変身できる。
魔法少女は人を超えた力を持ち、基本的に生理現象も存在しない。
それぞれ固有の魔法を持っておりのっこちゃんの場合は「自分の感情を周囲に伝播させる」
対象はおよそ半径二十メートル以内の全ての生物。
集中することで特定の人物だけを狙うような調節も可能だが、基本は垂れ流しになっている。
自分自身が本気で思わなければいけないが、のっこちゃんは欺瞞の達人である。
病気で入院している母親の面倒を見ながら一人で暮らしているため、生活に必要なことだひと通りできる。
【weapon】
魔法少女固有のアイテムとして丈夫なモップを持っている。
【マスターとしての願い】
お母さんの病気を治したい。生活のためのお金が欲しい。聖杯が本当に万能ならマジカルデイジーや@娘々達も生き返らせたい。
【人物背景】
眞鍋河第三小学校に通う小学四年生。十歳の子供だが魔法少女歴は六年のベテラン。
普段は魔法でクラスの雰囲気を良くしたり、病気のお母さんを元気づけたりしながら生活している。
病気の母親をおいて父親が逃げ出したあと、生活のお金を稼ぐために犯罪に加担していた過去がある。
そのことをネタに脅され、ゲームの死が現実の死に直結したあるゲームにおいて、他プレイヤーの最終目標である魔王を担うことになる。
他のプレイヤーを殺すことに迷いを覚えながら勝利を目指し、あと一歩のところで追い詰められた。
のっこちゃんを殺すことに躊躇するプレイヤー達に、クリア賞金の一部をお母さんに渡すよう頼み、自殺しようとしたところでこの街に連れて来られた。
【方針】
人心を掌握する。
投下終わりです
サーヴァントの人物背景については、前にlnFAzee5hEさん書いていたものを使わせて頂きました
ありがとうございます。もうしわけありません
急いで書き上げたので何かミスがあるかもしれません。あったら教えてください
早速ミスに気づきました。
野々原紀子の出典元は「魔法少女育成計画」です
投下します
土曜日の夕暮れ時のこと。
だんだんと暗い色に変わっていく空の下で、住宅地の道路を一人の女の子が歩いている。
胸元に結ばれた真紅のスカーフや膝上までのスカート、真っ白なシルクのブラウスという服装は薄暗いなかでもよく目立っていた。
このような格好で人気のない道を子どもが歩くのは一見して無防備にも見える。
しかし、当の本人は少しも気にせずに進んでいく。
まるで、この程度の闇ではもう恐怖など感じられないかのように。
ポケットのなかには、ビスケットがひとつ♪
唐突にこのようなフレーズが聞こえてきた。
誰もが一度は耳にしたことがあるだろう童謡の一節だ。
思わず立ち止まった少女はキョロキョロと辺りの家々を見回すが、音の発生源は分からない。
そうしている間にも歌は流れ続ける。
たたいて みるたび ビスケットは ふえる♪
やがて最後まで歌い終わると、ピタリと音は止んだ。
結局、どこから流れてきたのかは分からなかった。
そのことに少しばかりの不満を覚えながらも、先ほどの歌詞がまだ耳を離れない。
だからか、彼女は気付けばスカートのポケットに左手を入れていた。
すると、底にあった固い物に手が触れる。
引き抜いた手が握っていたのは
ビスケットだ。
→キャンディだ。
マカロンだ。
手の平にあったのは、黄色い包み紙に巻かれたキャンディだった。
こんなものをいつポケットに入れたんだろうと首をかしげていると
――イヴ、そのコートの左側のポケット、探ってごらん?
ポロリと、手の平からキャンディがこぼれ落ちた。
まるで寝惚けているかのような顔で、彼女――イヴは自分の左手を眺める。
絵空事の世界、聖杯戦争、サーヴァント。
様々な記憶が一気に流れ込んでくるなかでも、イヴの心を捕らえたのは脳裏を過ぎった一人の青年の姿だった。
毛布代わりに自分に掛けられたボロボロのコート、ウェーブがかった紫色の髪。
自分を安心させようと浮かべていた柔和な笑み。男性なのに女性のような言葉遣い。
イヴと一緒に不可思議な世界を歩き、助け合い、そして共に脱出した青年――ギャリー。
聖杯はどうして彼を忘れさせたのか。なぜ、また忘れさせたのか。
全てを思い出したイヴはその事実にうつむいてしまう。
その際に今しがた落としたキャンディが目に入る。
落ち込んでいたイヴにギャリーがくれたレモン味のキャンディだ。
ここに彼は居ない。なぜか彼女のサーヴァントもまだ現れていない。
だが、だからといって立ち止まってもいられないだろう。
ゆっくりとキャンディを拾い上げたイヴはそれを丁寧にポケットに入れ直すと、顔を上げて走り出す。
その際に日が沈みかけた空が見えたので、心の中で帰りが遅くなることを両親に謝った。
例え作り物であろうと、大切な存在であることに変わりはないからだ。
■ ■ ■
走って、走って、息が切れ、茶色がかった髪を揺らし、服に染みる汗が気持ち悪いと感じながらも走って。
小学校の体育の授業でもこんなに走ったことはなかったなと思いながら、イヴはひたすら足を動かす。
自宅や両親は完全に再現されていても、それ以外はここが自分が住んでいた街とは別物だと彼女は既に理解している。
先ほどまで何の違和感もなく歩いていた道も、本来なら見たこともない場所だった。
今も走っているこの場所に限れば、少なくともこの数日の間で来たことはない。
だというのに、イヴの足は一切の迷いもなく目の前に見えてきた建物を目指していた。
そのまま走り続け、入り口まで辿り着いたところで彼女の足は止まる。
途端にのしかかってきた疲れにハアハアと荒く息を整えながら、目だけを正面に向ける。
建物自体の名前をイヴは覚えていない。
しかし、入り口であるガラス戸に貼り付けてあるポスターには見覚えがあった。
暗色の巨大な魚が描かれたポスターの下部には、制作者であり現在開催されている展覧会の名が記されている。
『ワイズ・ゲルテナ展 開催中』
忘れようのない名前だった。
彼の制作物である美術品を通して、イヴとギャリーは絵空事の世界に迷い込んだのだから。
よく見ると、ポスターには開演時間も書かれている。
時計はもっていないが、恐らくはあと一時間ほどだ。
早く入ろうと思ったイヴは一歩を踏み出そうとして、あることに気付いた。
今のイヴの持ち物はキャンディしかない。つまり一文無しである。
当たり前だが入場料が払えなければ館内には入れない。
今から家に戻ったとしてもその間に閉館してしまうだろう。
「見つけた」
どうしようと頭を悩ませていると、唐突に掛けられた声に振り向く。
ポツポツとつき始めていた街路灯の下に、イヴと同じぐらいの年頃の少女が立っていた。
少なくともイヴに見覚えはない。だが、嫌な予感はした。
「その左手の痣……あんた、マスターよね?」
どこか虚ろな印象を受ける視線を向けながら、少女は淡々と近づいてくる。
対するイヴは指摘された左手を掲げてみると、確かに真っ赤な痣があった。
三つのハートのような模様が三角の形で配置されている。
いつの間にとか、どこかで見たような模様だとも思ったが今はそちらに気を取られている場合ではない。
「あんたみたいなのをみんな殺しちゃえば、私は家に帰れるのよね……? バーサーカー」
ぶつぶつと呟きながら歩く少女の隣りに、何かが出現する。
「■■■……! ■■■……!」
獣のような唸り声を、いや、実際に獣そのものだ。
大きな、乗用車ほどの大きさの狼。それが少女のサーヴァントだった。
でっかい。そして怖い。
そのような感想しか出てこない存在がイヴの眼前にあった。
バーサーカー。力を得た代償に理性を失った狂戦士。
聖杯に与えられた知識のとおりに理性の欠片も感じられない瞳が向けられただけで、イヴの体が射竦められる。
逃げようにも、疲れ切った体では逃げ切れないだろう。
ならば、あきらめるか――
→あきらめない
あきらめる
幼心にも、目の前の相手が規格外の存在だとは分かる。
間違いなく、絵空事の世界で目にしてきた美術品たちよりもずっと手強い相手だ。
あの世界でも襲われれば逃げるかやり過ごすしかなかったイヴに、端から勝ち目などないだろう。
それでも、あきらめたくなかった。
――だから……また、会いましょうね!
約束があった。
ここではない本物の美術館で、彼と、ギャリーと交わした約束が。
だから、あきらめたくない。
「食べちゃって、バーサーカー」
だが、思いだけでは現実は変えられない。
このままでは次の瞬間にでもイヴはあの狂戦士に食い千切られているだろう。
このままだったらの話だが。
「バーサーカー!?」
少女の悲鳴が響く。
バーサーカーがイヴに飛びかかる寸前、彼女の頭上を突如として炎が走り、巨狼に直撃していた。
完全な不意打ちで全身を焼かれているバーサーカーは、熱さに身もだえしながら地面を跳ねている。
予想外の展開に少女は取り乱すしかなく、イヴも呆然とするしかない。
「間一髪ね」
イヴは真後ろからの声に振り返る。
最初に目に入ったのは赤だ。
顔の半分を隠したマスクや細い筋肉質な体を覆っているスーツ、そして風にたなびく様がまるで炎が揺らめいているように見えるマント。
ところどころに青や黄色のラインが入っているものの、その全てが赤を基調とした色合いをしている。
だからこそ、マスクの下部から露出している浅黒い肌や薄いピンク色のリップを付けた口元が際立っていた。
何よりも目を惹くのは正面に向けた右手に揺らめいている手のひら大の炎だ。
そんな男がイヴの後ろに立っていた。
「ハロー、マスター。遅れてごめんなさいね。貴方のサーヴァント・ライダーがただいま参上したわ」
にこやかな笑みを浮かべながら、ライダーはイヴにマスク越しのウインクをしてきた。
どう見ても男性なのに女性のような声色だ。
普通なら不気味に思うかもしれないが、イヴはよく似た口調のギャリーという男を知っていた。
色合いこそ正反対だが、恩人とそっくりな口調は彼女にライダーへの親しみを覚えさせる。
対する彼は視線を再び正面に向けるとその口元を引き締めた。
「……ねえ、一応聞くけれど、今ので手打ちにしない?
こっちとしても子ども相手に戦いたくはないのよ」
相対する少女に言い聞かせるような言葉だったが、帰ってきたのは敵意のこもった視線だけだ。
ようやく火が収まってきたバーサーカーに至っては、今すぐにでも焼かれた恨みを晴らそうと牙を剥き出しにしている。
「問答無用ってわけ。じゃあ、しょうがないわね」
一つ嘆息して、ライダーはパチンと左の指を鳴らす。
すると彼の真横の空間に波紋が浮かび、中から一台のマシンが飛び出てくる。
彼と同じカラーリングを施されたド派手な車だ。
タイヤこそ外装で覆われているもののまるでフォーミュラカーのような形状をしていた。
「こっちが勝手に逃げさしてもらうわ!」
言うが早いかライダーはまず車に気を取られていた少女たちに煙幕代わりの火炎弾を放つ。
次にそれが着弾するとほぼ同時にイヴを抱え上げると、右側の助手席に放り込みながら、自身も運転席に飛び乗る。
そして、素早くエンジンをかけるとこちらの動きに気付いた少女が何か喚いているのにも構わず、車を発進させ道路に躍り出た。
一方で状況に流されるしかなかったイヴは、正面から吹き付ける風の感触や唸りを上げるエンジン音を耳にしながら、意識を薄れさせていった。
走り通しだったことでの肉体的な疲労と急展開に次ぐ急展開による精神的な疲労。
二種類の疲労に耐えるのは九歳の女の子の身には少々酷だったようだ。
■ ■ ■
「マスター? 寝ちゃったの?」
車を走らせながら、いつの間にか目を閉じていたマスターに声を掛けるが返事はない。
決して安眠できる環境ではないはずだが、それほど疲れが溜っていたのだとライダー――ファイヤーエンブレムことネイサン・シーモアは判断した。
(安心しきった顔しちゃって……しかし、失敗だったわ)
先ほどまでの出来事をネイサンは思い出す。
彼が呼び出されたのはあの美術館の二階だった。
奥まった場所だったので人影こそなかったが、マスターすら見当たらない事実はさすがの彼をもうろたえさせた。
幸いにも令呪を通じてマスターの現在地はすぐに感知できた。
どうやら向こうも令呪から自分の存在を認識しているようで、もう少しでこの場所に到着するようだ。
なので急がずに霊体化して入り口まで向かったのだが、それが間違いだった。
直後に別のサーヴァントの気配を感じ取り、大慌てでマスターのもとに駆け付け、あの顛末となったわけだ。
(まったく、こういうドジはアタシじゃなくてタイガーとかの役割でしょうに)
生前の同僚のドジッぷりを思い浮かべながら、油断していた自分に溜息がこぼれる。
あと一歩遅かったらこの子は死んでいた。この安らかな寝顔も見るも無惨な肉塊に変わっていただろう。
そうなっていたら自分を許せなかったに違いない。
(いえ、何よりも許せないのはこんな子どもたちに殺し合いをさせていることだわ)
マスターにしろ、先ほどの少女にしろ、まだ十歳にも満たないかのような子どもでしかない。
聖杯戦争に参加しているぐらいなので願いはあるのかもしれない。
だとしても、それを餌にして殺し合わせるなど間違っている。
これを見過ごすなどヒーローとして、何よりも一人のオカマとして出来はしない。
何としても止めねばならない。
自分と競い合い、共に戦ったヒーローたちも同様の立場なら同じ行動をしたはずだと彼は確信していた。
(でも、考えたくはないけれどもしマスターが聖杯を欲しいというのなら……)
横目でちらりとマスターの様子をうかがう。
彼女の左手にはマスターの証である令呪が刻まれている。
(あれは……バラの花びらかしら? 随分と洒落てるわね)
令呪のデザインに関心を払いつつも、ネイサンは考える。
令呪を使われれば自分たちサーヴァントは本意でない命令でも従うしかない。
もしも、この少女が自分を悪事に使おうとするならば、どうにかして説得しなければならないだろう。
この点についてはマスターが目覚めたならば最優先で話さなければと、ネイサンは心に決めた。
(まあ、先のことを考えすぎても仕方ないわね。それよりももう起きている方を解決しないと)
実は彼を悩ませている問題は既に発生していた。
それは、
(マスターの家はどこなのかしら?)
そう、会話を交わす間もなかったせいでネイサンはマスターである少女のことを何も知らない。
なのでどこに向かえばいいのか見当も付かなかった。
時刻は夜。NPCとはいえ両親も心配しているはずだ。
起きるまでどこかで待つという選択肢もある。
しかし、ネイサンは自分の外見がド派手であると自覚していた。
何よりも彼はオカマだ。そのことを恥じ入る気持ちはないが世間はそうではない。
想像してみてほしい。
ほぼ全身をぴっちりと覆うスーツを着たオカマが意識のない女の子と一緒にいる姿を。
間違いなく通報される。
仮にスーツを脱ぎ普段着に着替えたとしても、そこに居るのはピンク色の頭髪をして顔に化粧を施した外国人のオカマである。
もしかしたらこちらのほうがより危ないと判断されるかもしれない。
(困ったわねぇ。早く起きてほしいけど気持ちよさそうに寝ているのを起こしたくはないし、とはいえこのままにもしておけないし)
ジレンマに苛まれるオカマとすやすやと眠る少女。
対照的な二人の聖杯戦争がこうして開幕した。
【マスター】
イヴ@ib
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【weapon】
なし。所持品はレモン味のキャンディが一個。
【能力・技能】
これといった特殊能力はない。
【人物背景】
フリーゲーム『ib』の主人公。今年九才になるお嬢様育ちの女の子。
ある土曜日の昼下がり、イヴは両親と共に美術館にて開かれていたワイズ・ゲルテナ展を訪れる。
両親と分かれて一人で館内を廻っていた彼女は、ある絵画の前に立ったことで不可思議な美術館に迷い込んでしまう。
そこで待っていたのは壁から伸びる手、喋るアリ、襲いかかってくる首なし人形に絵から飛び出す女などの怪奇現象の数々。
普通なら発狂してもおかしくない現象の数々を彼女は何とかやり過ごしながら進んでいく。
しばらくすると、自分と同じくこの世界に迷い込んだ青年ギャリーと出会う。
ボロボロのコートにオネエ口調という怪しげな風体ではあったが、イヴは彼と共に進んでいく。
その後も二人は様々な美術品に襲われたり、メアリーという美少女と遭遇したりするのだが、詳細は割愛する。
今回は原作のGood EDに当たる『再会の約束』後からの参戦。
いわゆる喋らない系の主人公であり一人称すら不明。他のキャラと会話はしているようだが選択肢以外でのセリフはない。
プロフィールによると好きなものはウサギとオムライス、苦手な物はピーマンと運動らしい。
【クラス】
ライダー
【真名】
ネイサン・シーモア@TIGER & BUNNY
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:B 宝具:C
【属性】
中立・善
【保有スキル】
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
Cランクでは野獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。
NEXT能力:B
一種の超能力。
ネイサンが持つのは「炎を操る」能力。
オカマ:EX
彼の生き様がスキルに昇華したもの。ランクがEXなのはオカマとして生きた彼の信念がそれだけ強いからである。
トラウマを克服した際の逸話からDランクの「対魔力」と「勇猛」が付加されている。
本人いわく「男は度胸、女は愛嬌、そしてオカマは最強」だそうだ。
カリスマ:E
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
生前において大企業のトップを務め、ヒーローとしても同僚や市民から慕われていたことで付加された。
【宝具】
『ブルジョワ直火焼き』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20
ネイサンが持つ「炎を操る」能力が宝具となったもの。名前は彼のキャッチコピーから。
手の平から放出する炎は単純ではあるが攻守両面においての汎用性が高く、確認されているNEXTの中では最も炎の扱いに長けていると評されている。
最大火力は不明だが、その気になれば鉄筋コンクリート製の建物を融解させる程の威力は出せる。
【weapon】
『ヒーロースーツ』
ネイサンが見に纏うファイヤーエンブレムの衣装。マスクと併せて口元以外を覆っている。
見た目は赤を基本色とし、目の周りや肩などに青や黄色のラインが入り、腹部には炎をイメージしたオレンジ色が加わる。
装着しているマントは常に炎が揺らめいているように見える。
これといって特殊な機能はないようだが、本人が炎を操ることから耐火加工ぐらいはしてあるかもしれない。
『カスタムカー』
ネイサンがファイヤーエンブレムとして乗る二人乗りの車。
フォーミュラーカーのような見た目をしており、本人同様に赤を基本色にした塗装がなされている。
本人が手を放しても
【人物】
大企業ヘリオスエナジーのオーナーを務めるオカマ。
その正体はシュテルンビルドを護るスーパーヒーローの一人ファイヤーエンブレムであり、自分自身のスポンサーでもある。
外見は186センチの長身に浅黒い肌とピンク色に染めた頭髪というド派手な外見と、細身ではあるがヒーローらしく十分に鍛えられた肉体を持つ。
他のヒーローたちからはベテランとして慕われており、特に女性のヒーローたちとは年上として相談に乗ったり一緒にお茶を飲んだりして過ごしている。
表向きは悩みなどなさそうに振る舞っていたが、劇場版にて過去のトラウマを敵の能力に突かれて昏睡状態に陥ってしまう。
悪夢に苛まれ絶望しかけるが自分を侮辱されたことに怒り、更に男のように強く女のように優しい人とまで言ってくれた仲間たちの姿を見て立ち直る。
完全にトラウマを克服した彼は病み上がりの身で仲間たちのもとに駆け付け、苦戦しながらも敵を撃破した。
いつもはオネエ言葉を使うが激昂すると荒っぽい男言葉を出す。そしてハンサムな男といいお尻には目がない。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯にかける願いはない。
備考
市内にある美術館においてワイズ・ゲルテナ展が開催されています。
投下を終了します
投下します。
『時は星座石の螺旋のように』
【sophiaより生まれし者、sophiaへと還るべし。
されど、箍の外にある者は然にあらず。
天命に抗い、希望の光は正しき資質とならん】
『合言葉はモリ』
【屍者と星者交わりて、星を滅せんとす。
輪廻の輪は断たれ、そは新たなる星の種となるべし。
而して宵闇は、正しき資質となりたもう】
――――――――――――――とある碑文より
空を飛ぶ一つの影がある。
それは人型で、黒と金の色をした特撮ヒーローを思わせるような容姿の虫だった。
触覚と羽から台所に出現するあの虫を連想させるが、彼を見て不快さを感じる者はいない。
落ち着いた佇まいと光を受けて輝く身体から感じられる邪悪でありながら聖なる力を感じる神秘的な雰囲気が、
忌み嫌われる存在とは違うのだと分かってしまうからだ。
街を見渡しながら飛んでいる存在に、気にすることなく人々は人の波の中を前を向いて歩いている。
高さもしくはスキルによって知覚できないだけなのだが、気付く者は誰一人いなかった。
彼は一通り街や人々を見ると、やがてビルの上に着地して目を瞑った。
草木の匂いのしない風が身体を撫でる――――――違う
目を開けて空を見上げた。
暗い夜空に月と星が輝いている―――――違う
今度は下を見下ろした。
多種多様な人々がいるが、そこには人間では無い者はいない――――違う
人も、空気も、風も、星も、感じる何もかもが彼がいた世界とは違うモノなのだ。
ルーラーとしてこの世界に存在することとなった彼が最初に考えたことは、
元の世界の神に勝利した彼等はどうなっていくのだろうか、ということだった。
そう思ったのは、彼が『インヴェルズ・ローチ』だからだ。
彼は初めから『インヴェルズ・ローチ』という存在だったわけではない。
元々はとある星の敵も味方も喰らい続ける絶対的捕食者である
『インヴェルズ』達の中でも捕食されるべく生まれた
下級の名無しの歩哨の一人であった。
だがある日、偶然にも触れたヴァイロンの欠片によって劇的な進化を
してしまい今の姿となっている。
身体だけでなく在り方までも変わってしまった彼は、地上の観測者として
世界を見守っていた。
この世界に来るまでは、だが。
神による助けも破壊もなくなり、自分達の力で復興していくことになった世界は、
生き残った者のなかで、少年少女達が中心となって切り開いていった未来は、
この先どうなっていくのか。
見守らなければいけないのに、それが出来なくなってしまい、
悲しいような寂しいような、そんな気持ちになった気がした。
だが、いや、だからといって彼はこの世界での役割を放棄するなど
微塵も考えなかった。
『ルーラー』となったのは、何か意味があるのではと考えたからだ。
「与えられた役割を放り出しはしない。
ルーラーとなってしまった以上、私は使命を果たさなくてはいけない」
それが願いを叶えるための殺し合いの裁定者だとしても。
ルーラーの言葉は、ただ風だけが聞いていた。
【クラス】
ルーラー
【真名】
インヴェルズ・ローチ@デュエルターミナルのストーリー
【パラメータ】
筋力:C 耐久:E 敏捷:B 魔力:A+ 幸運A 宝具:A
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
対魔力:A
星の外から来た力を持ち、悠久の時を生きる彼は高い対魔力を持ち、
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
事実上、現代の魔術師では魔術で傷をつけることは
出来ない。
真名看破:A
直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの
全情報を即座に把握する。
あくまで把握できるのはサーヴァントととしての情報のみで、対象となったサーヴァントの
思想信条や個人的な事情は対象外。
また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、
幸運値の判定が必要となる。
神名裁決:A
ルーラーの最高特権。召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、
二回まで礼呪を行使することができる。他のサーヴァント用の礼呪を転用することは
出来ない。
【保有スキル】
聖邪の転生:EX
運命の輪から外れた彼には、相手の運命に干渉するスキル・宝具が効かない
地上世界の観測者:A
世界を観測、人々を見守り理解する。同ランクの神性と気配遮断を保有する。
アドバンス・ゾーン:EX
彼は生命の輪廻から外れた存在へと昇華したために、生命のシステムや神の権能に逆らうことが出来る。
邪念もしくはウィルスによる汚染が効かない。
半死半生の奇跡:EX
危機的状況の場合、生存率が劇的に上がる。
決闘者:A
デュエリストとしての力。
直感と心眼(偽)の効果も持つ複合スキル。
デュエリストによっては奇跡のような出来事
を起こせるかもしれない。
天啓:E
邪念やマスターとサーヴァントの位置を察知しやすくなる
情報取得:C
敗北もしくは逃亡した場合、一度の戦闘で一つ大切な情報を取得する。
このスキルのランク以下の情報を隠蔽・消去・改変するような
宝具やスキルは効かない。
【宝具】
『教えて!ローチ先生!!(ローチ先生のアクションのツボ)』
ランク:A 種別:情報伝達宝具 レンジ:? 最大捕捉:?人
他者に情報を伝える場合はレンジと最大捕捉が相手の数だけ増え、
分かりやすく教えることが出来る。
黒板を使うが、眼鏡は付けない。
『聖邪が交わり進化する悪魔(インヴェルズ・ローチ)』
ランク:A 種別:対召喚宝具 レンジ: 最大捕捉:
相手のCランク以上の宝具やスキルによる召喚を無効にする。
『励輝士(ヴェルズビュート)』
ランク:A 種別:破壊宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
危機的状態の場合のみ使用可能で、このルーラーとは違うルーラーに
なることが出来る。
この状態では星の観測者と対魔力のスキルがEXになるが宝具を使用した後は
元に戻ってしまう。
ルーラー自身と相手のマスター以外のその場にいる全てを破壊する。
この宝具を使った後はすぐに相手マスターを傷付けることが出来なくなる。
【weapon】
細見の剣、『ヴェルズ』や『ヴァイロン』と名のつくカードのデッキ
カードは実体化することが出来る。
デュエル中でない場合は、テキストに書いてある制限に縛られず
使用可能だが、テキスト通りにしたほうが消費魔力は減る。
【人物背景】
元は封印された悪魔の一体であったが、ある日星の外から来た力に触れて
生命の輪廻から外れた存在へと昇華した。
以来、力の導きにより、地上の行く末を見守る観測者として悠久の時を生きている。
ヴァイロンの欠片による影響か、世界を観測しているイケメンゴキブリ。
後のストーリーでも新たな力を得ることが判明する。
【方針】
普段は色々な場所へと行って情報を収集する。
騙そうとする者や悪質なルール違反には容赦なく処罰を下す。
謀ろうとする者は邪念を感知されてしまうだろう。
投下を終了します。
お疲れ様です。
延長予約していたものを投下します。
明るい雰囲気のレストランの中には、香ばしい肉の香りが漂っていた。
そんな空調の涼やかな風が満ちるボックス席の角で、一人の少女が落ち着かない様子で座っている。
無造作に切られたその髪は夜よりも黒い。
身に纏っているピッチリとした長袖の黒いワンピースと黒いニーハイソックス、黒い指開き手袋に黒いブーツと、彼女は全身黒づくめだった。
しかし一方でその肌は雪よりも白い。
ある種、病的なほどに白く、皮膚のメラニン色素が欠損しているのではないかというほど、白よりもむしろ透明に近い肌だった。
その瞳は青い。
髪こそ黒いが、彼女は恐らく白色人種なのだろう。
だが見つめていると、その瞳の下に透ける血の赤が、その青の奥から湧き出てくるようでもあった。
座席の隣には、雨でもないのに黒く、太く、大きなこうもり傘が立てかけてある。
だがそれをよくよく近づいて見てみるなら、その手元が銃把であり、中棒が銃身であることがわかるだろう。
現実離れした、奇妙な形態のライフルだった。
店内の軽快な音楽に合わせて、じゅうじゅうと脂の音を立てる鉄板が、そんな彼女の前に運ばれてくる。
十字架のようにクロスされたチェダーチーズが、こんがりと焼けた大判ハンバーグの上に蕩けている。
彼女の首には、ちょうどそれと同じような銀の十字架をあしらった首輪が嵌っていた。
「お待たせいたしました! 『チーズバーグステーキ300g』です! 遠慮なく食べてね!!」
「……本当に、いいわけ?」
「良いって良いって! 今はピークも過ぎたし、店長には友達が来てくれたって言ってあるから!」
「……そういうことなら。いただく」
出来立てのハンバーグステーキを運んできたウェイトレスと口数少なに応対し、少女はナイフとフォークを手に取った。
ウェイトレスはそんな少女の向かいに座って、大きく伸びをする。
「よっし、それじゃあどんな感じで聖杯戦争戦っていこっか?」
「ぶふっ――!?」
少女は口に入れかけていたハンバーグを吹き出すところだった。
フォークを置いてげほげほと咳き込みつつナプキンで口を拭い、慌てて彼女は店内を見回す。
幸い繁忙期となる時間帯を過ぎていたためか客はほとんどおらず、ウェイトレスの今の発言を聞いた者は誰もいないようだ。
少女は両の拳で静かにテーブルを叩いた。
その手にはまるで自分を戒めるかのように、鎖のない手錠が嵌められていた。
「……アンタねぇ……! 声が大きすぎ!!」
「あたしは『アンタ』じゃなくて八島聡美。これから一緒に戦うんだし名前で呼んでよ」
ウェイトレスの八島聡美はそう言って笑う。
スポーティーに刈られたショートヘアの彼女は、頬杖を突く両手に、空手で使うようなサポーターを巻いていた。
年に見合わぬ凛々しい表情で聡美は少女を見る。
いつでも戦えるアピール、というところだろうか。
「本名がバレるのよ……? 出会ったばかりのアンタをマスターとも呼びたくないけど」
「マスターって、店長のことみたいでこそばゆいし混同するじゃん。戦いにエントリーしてる以上、隠してもしょうがないし。
別に名前がバレたところで、誰もあたしたちのこと直接知ってるわけじゃないだろうし問題ないでしょ。
アーチャーも、『熱っちゃあ!?』って驚いてるか『あっちゃー……』って落胆されてるみたいで嫌じゃない?」
聡美は軽い口調で少女を見るが、彼女は歯を噛んだまま睨みつけてくるだけだ。
その様子に、聡美はもう一言付け加える。
「……それともリングネームでもつける?」
「キリエ。私の名前はキリエだから。サトミ」
少女は即答した。
忌々しそうにハンバーグを頬張った彼女だったが、噛み込んだその肉の味に目を丸くする。
「あ……。美味しい」
「そりゃあそうよ。あたしの勤めるこの『びっくりモンキー』は食材にも環境作りにもこだわってますから。
例えこの店舗が聖杯に作られたものだとしても、伊達にここの看板背負って戦ってきたわけじゃないからね〜、あたし。
お肉は全てニュージーランドとオーストラリアのナチュラルビーフ!
電力は地中熱ヒートポンプと太陽光発電で省電力だし、お客様へのノーマライゼーションやリラクゼーションにも心を砕いてます!」
「……ウザい」
唐突に始まった聡美の店自慢を一言で突っぱね、キリエはまたもくもくとハンバーグを食べ進める。
聡美はその反応を大して気にも止めず、白のブラウスにピンクのベストという制服の胸に腕組みし、今後の作戦を考え始めた。
「それはそうと、聖杯戦争って大会は、あたしたちみたくツーオンツーの変則試合形式なのよねぇ?
やっぱりどうするのがセオリーだと思う? 二人で繁華街練り歩いて声かけていこうか?」
「バカじゃないの……!? っていうか、これは『戦争』であって、『試合』じゃないのよ?
アンタそもそも、本気で殺し合いする覚悟があるわけ!?」
キリエは、マスターの聡美のとんちんかんな発言で流石に声を荒げた。
アーチャーのサーヴァントとして召還されたキリエは、南北戦争直後、西部開拓時代のアメリカをほぼ単身で横断し、『黒衣の者』と呼ばれる吸血鬼の王を追い詰めた少女だ。
ギラつく日差しのアリゾナ。
南北戦争の遺構にすがったテキサス。
死の神輿が過ぎたニューメキシコ。
血腥い戦場と銃声の嵐の中を掻い潜ってきた彼女からすれば、『戦争』とはとても身近にあった存在だ。
こうして快適な環境を維持されたダイナーで、敵を気にする必要もなく美味しくて腹いっぱいの食事にありつけるというのは、夢にすら見れない魔法のようなことだった。
それにつけてこの女は。
ぬるい。
あまい。
ウザい。
百何十年後の人間なのか知らないが、この少女・八島聡美は、現代の便利な生活に慣れすぎて少々ボケているのではなかろうかとキリエは思った。
一体、戦争を何だと思っているのか――。
「――そもそも、『聖杯戦争』が『殺し合い』だとは言われてないじゃない。
他の組を『脱落』させて最後まで勝ち残ればいいんでしょ?
サーヴァントは元々呼ばれてきただけなんだから、倒してその『英霊の座』とかいうところに戻ってもらえばいいし。
マスターの方が抵抗するなら、キュッと締めて落としちゃってどっかで寝ててもらえばいいだけでしょ?
あたしが『V.G.大会』でやってきた試合よりむしろマシなんじゃないかしら」
「VG……? ヴァリアブル・ジオ……?」
キリエの問い掛けに、聡美は腕組みをしたまま平然と答えた。
聞き慣れない固有名詞をいぶかしんだキリエへ、聡美が説明する。
「あたしたちが、店の栄誉を賭して戦ってきた大会よ。最強のウェイトレスを決めるべく開かれたもので、賞金総額は10億円。
そして選手の所属企業には、伝説の一等地が与えられる。不況の煽りを受けてた外食産業にはまさに救世主。
それでウェイトレス同士が、殴る蹴るのガチンコの試合を衆人環視の中でやっちゃうわけ。
まだ高校生だからアルバイトの身分なんだけどさ。あたしは空手やってるし、『能力』もあって、結構強いから。
一応あたしもその大会の出場ウェイトレスなのよ」
「……なに……それ」
「だからこの『聖杯戦争』って大会聞いても、ああ、またお偉いさんが何か大会を開いたんだなご丁寧に誘拐までして。と思った」
キリエは理解が追いつかずに固まった。
とりあえず、悪趣味な金持ちが奇妙なことを考えた末にそれを実行してしまったのだろうと、彼女はそう考えた。
そういう意味では、キリエには近しいものが思いあたる。
自分の隣にある、日傘の機能を持った愛銃も、突然変異を起こしたとしか思えない、南北戦争期に出現した数々の奇妙な銃たちの一丁だった。
製作者が何を考えて、どうしてそんなものを作ってしまったのかはさっぱりわからない。
だがそれらの奇銃は確かに出現し、そして確かに強力だった。
キリエ自身も、何度この銃の力で窮地を切り抜けてきたかわからない。
世の中そういうものなのかもしれない。
聡美は言葉を続けた。
「……でね、『ヴァリアブル・ジオ』もまた、試合の敗北、脱落は『死』と同義だったわけよ」
「……それは何故?」
聡美は一度、深呼吸した。
「……敗者は、そのまま全国中継のリング上で、店の制服を『全部』脱がなきゃいけなかった」
「……『全部』――!?」
「そう、『全部』。全国中継の、衆人環視の、泥と恥辱の中で、全部脱いで『ロンドを踊る』のよ。
V.G.はそういうものだと覚悟はしてたけど、あれはねー……。うん、あの瞬間は。死んだな、あたし、と思った」
驚愕に目を見開いたキリエの前で、聡美は明後日の方向を見て遠い目をしてしまう。
八島聡美はそんな『ヴァリアブル・ジオ』という大会の参加者であり、そしてかつ、彼女の所属する『びっくりモンキー』は、今そんなに一等地にあるわけではない。
つまり、そういうことなのだった。
キリエにとっての敗北は、肉体的にいたぶられるものだった。
それこそ、トンボの羽をむしるような。
だが聡美の敗北は、それにとどまらなかった。
キリエの経験したことの無い、辱めという敗北。
どちらがきついことなのかは、比べられないし、比べる意味も無いだろう。
しばらくして聡美は再び微笑んだ。
「まぁそれでも、社会的に死んでも叶えたい願いってのは、あるのよ。キリエだってそうでしょ?」
「……サトミのそれは、何なのよ」
キリエは怒らせていた肩を落として、聡美を下の名で呼んだ。
静かに言葉を継いだ聡美の表情は、真剣だった。
「……10億円とは言わず、生活に困らないだけのお金が欲しい」
八島聡美は、弟との二人暮らしだ。
両親は事故死した。
弟は病弱で、彼の医療費も、自分の学費も、生活費も、聡美は全て自分のアルバイトで稼ぎ出さねばならなかった。
店から帰れば、自宅は狭くて古いワンルームのアパートだ。
カビの臭いがして、壁が薄くて、冬は布団を何枚被っても骨まで冷えるアパートだ。
弟の体が弱いのは、その生活のせいもあるかもしれない。
まかないを持って帰ってやって、つつましくもそれなりのものを食べさせてやれるのはいつまでか。
自分が自転車のように働き続けなければ、崩れ落ちてしまう暮らし。
どうせ聖杯が仮初の町を作ってくれるのなら、自宅くらいそのままじゃなくても良かったじゃないか。
と、聡美はそうも思った。
空調の風は薄ら寒く、軽快なBGMは調子ハズレだった。
沈黙に凪いだボックス席で、まず聡美が軽く微笑みを作った。
「はは、ウケなかった? ごめんごめん、ハンバーグ冷めちゃったね」
「あ……、いや……」
キリエは首を横に振り、慌ててナイフとフォークを掴みなおした。
その前で、聡美はハンバーグの載った鉄板を指を添える。
するとたちまち、その上で白く固まりかけていた脂が熱で溶け、再びじゅうじゅうと音を立てて跳ね始めていた。
「――……!?」
「これ、あたしの能力なのよ。発火能力。今はようやく使いこなせるようになったけど。
昔はね、ひどかった。ボヤ騒ぎ起こしたり、いじめっ子に憤って大火傷させちゃったり……。
『魔女』だの『鬼の子』だの言われて、親戚にも追い出されて。
だからまぁ、今の境遇は半分自業自得みたいなもんでさ。そこはしょうがないんだ。
でもじゃあ、『鬼の子』に明日はないのか、って。あたしも弟も生きてちゃいけないのか、って。
そんなことあっちゃいけない。だから絶対、何をやっても明日はあたしの手で掴むって、そう決めたのよ」
顔を上げた八島聡美の瞳は、炎のように赫く輝いていた。
今一度その決意を口に出すことで、彼女の心にも、そうして炎が巻き起こるようだった。
あるいはその意気こそ、彼女が聖杯に導かれた理由なのかもしれなかった。
「明日――……」
その言葉は、キリエの胸にも疼きを走らせた。
キリエは、『狂血病』という伝染病にかかっている。
吸血衝動に駆られ、人の血を吸わねば理性が崩壊してゆく病だ。
彼女の追い詰めた吸血鬼、『黒衣の者』から広まったその病で、アメリカ大陸は吸血鬼と化した人々に慄いた。
キリエはその『黒衣の者』の、娘だった。
狂血病の患者は発見され次第、『浄滅』という神の名の下に殺しつくされた。
自分を最後まで守ってくれた修道女の母も、防疫修道会の神父たちに射殺された。
その母の血肉を喰らい、神父たちと、生まれ育った村の人を殺しつくして逃げた。
穢れた血は、許されないものだった。
自分の存在が許されないことを知りながら、死に場所と希望を諸手で同時に探した。
父である『黒衣の者』を倒す。
それが贖罪なのか、生き甲斐なのか、そんなことはキリエにはもうわからなかった。
狂血病患者に明日はなかった。
赤貧の奨学生にも、明日はなかった。
「……明日は、あるわ。いつだって、あの血の色の果てに……!!」
キリエは西の空に落ちていく赤黒い夕焼けの色に目を細めながら、歯を軋らせるように唸った。
西へ、西へ、『黒衣の者』を追いながら結んだ誓いを思い出しつつ唸った。
似ても似つかないと思っていた八島聡美という少女と自分との類似性を、キリエはそうして認識する。
マスターへ向き直ったアーチャーの口は、自然と告白していた。
「サトミ。私は、狂血病という伝染病に掛かっているの。俗に言う、吸血鬼になってしまう病。
定期的に血を吸わないと意識が保てず、理性がどんどんと崩壊していってしまうの。
そしてその伝染病の発生源は、私の父である『黒衣の者』。
奴を倒し、その血から狂血病のワクチンを作ることこそが、死んでも叶えたい、私の目的」
「え……!?」
聡美の驚愕の顔がキリエの目に映った。
恐怖するのは当然だ。もしかするとふとした拍子にマスターすら自分は毒牙にかけてしまうかもしれない。
だが結局、隠していても二人で戦うのだからいつかは発覚してしまう事柄だ。
それなら遅いより早いほうがいい。
もし聡美がここで掌を返すように自分を邪険に扱ってもそれはそれで良い。
彼女と志が同じことさえ確かめられたのだから、機械的に扱われるならむしろその方が互いの為に良い――。
そう思ってキリエは目を閉じた。
するとテーブルでその手が、聡美に握られた。
「それならそうと早く言ってくれれば良かったのに! 血の滴るレアで焼いてきてあげるのもできたんだから!
早くしないとウェルダンになっちゃうから、ほら早く食べて食べて!」
「もむぅ――!?」
キリエは聡美に無理矢理手を動かされ、再加熱されたチーズハンバーグを口に入れられた。
牛の血で果たして吸血衝動が抑えられるのか甚だ疑問だったが、そんなことを言い出す前に口内は肉で埋まってしまう。
「げほっ……!? げっほげっほ……」
「もしどうしても人間の血が飲みたくなったら、死なない程度にあたしの飲んでいいから!
あたし血の気多いし。近頃は売血なんてできないから、それでキリエが元気になるなら安いものよ!!
ね、絶対勝ち残ろう!! 堂々と勝負して、二人して優勝商品をゲットしようよ!!」
ほとんど塊で肉を呑んでしまい咳き込むキリエに向かい、聡美は制服の巻きスカートを振り立たせて立ち上がり、胸を叩いて言い放った。
底抜けにお人よしそうな、それでいてとても力強い彼女の覇気に、キリエは歴戦の戦友の姿が重なって見えた。
目の縁に涙が滲んだ。
ハンバーグを飲み込むのが苦しかったからかもしれない。
幸せな苦しさだった。
「……あ、ありがとう。サトミ」
めったに言わない感謝の言葉を、言ってしまった。
このマスターとなら、やっていけるかもしれない。と、そう思った。
それで聡美は満足げに頷き、時計を見上げる。
そろそろ夜のピークが近くなってきていた。
「……うん! それじゃあ今日のところはこの辺にしておこうか。あたしも仕事に戻んなきゃいけないし」
「……わかった。なら先に、サトミのアパートに向かっておく」
「あ、ちょっと待ってキリエ」
サーヴァントやマスターという枠を超えた話し合いができたことに充足感を覚え、キリエは席を立つ。
しかし、日傘のように銃を携えて店を出て行こうとする彼女に、後ろから聡美が声をかけた。
「お勘定」
「は……?」
聡美は掌をくいくいと曲げ、『金を寄越せ』とジェスチャーをしていた。
「……あたしの生活状態言ったさっきの今で、キリエのハンバーグ代を払える余裕があると思いますか?」
「え、いや、だって、初めに遠慮なく食べてって言ってたじゃない――」
「そりゃあ自分のお金なら何注文して食べてくれても自由よ。厨房も空いてたから遠慮なく何頼んでくれても作れたわけで」
「あ、アンタ……ッ!?」
米ドルでもいざ知らず、日本円などキリエは持っていない。
狼狽を始めたキリエに対して、聡美の笑みは深くなってゆく。
「あら〜、もしかしてお金がない感じかぁ、キリエは。これは働いて返すしかないようだねー」
「ちょっと待て、働くってまさかここででじゃないでしょうね!?」
「大丈夫大丈夫! 店長には友達が働きたがってるって言ってあるから!!」
「いつの間に!? さ、最初から狙ってたわけ!? このことを!?」
単独行動持ちのアーチャーを縛り付けておく手なのかなんなのか、とにかくこの八島聡美という少女は、キリエが思っていた以上にしたたかだった。
それはそうだろう。現代社会での辛酸は、キリエよりも遥かに聡美の方が多く舐めているのだ。
ギリギリと歯を噛み締めるキリエの腕を引っつかみ、聡美は店の奥へ入っていく。
「聡美、休憩上がりました〜。こちら、今晩から一緒に働いてくれるあたしの友達でーす!」
「ウザい! ウザい!! やっぱりアンタ、ウザ過ぎる!!」
そのウザさはそれこそ、キリエがともに戦い抜いてきた、腹に一物も二物もある歴戦の戦友のようだった。
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【クラス】アーチャー
【真名】キリエ@吸血聖女キリエ
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:D+ 幸運:C+ 宝具:A+
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
西部開拓時代のアメリカ大陸を5年間単独で生き延びてきた彼女ならば、独立して作戦行動をとることは容易い。
【保有スキル】
狂血病:A++
真祖にあたる原初の吸血鬼『黒衣の者』よりもたらされた伝染病。
人の血をすすらずには意識を保てず、すすってもやがては理性を破壊され人間性を失うようになる。
感染者は身体機能が向上し、ダメージをある程度無視して活動できる。
ただし日光を浴びると疲労を感じ、十字架や銀製品(及びその反射光)に接触するとその部分が焼けただれるようになってしまう。
黒衣の者の血液のみが、狂血病患者を救うワクチンとなりうる。
『黒衣の者』の血をひく娘であるアーチャーは高いランクでこれを有し、ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗すると吸血衝動に襲われる。
吸血衝動の最中はその強さに応じてE〜Aランクの狂化スキルが付加されてしまい、自制することが困難になる。
発症時は、瞳が『血の色よりも赫い』赤色になることで識別できる。
血液を摂取できれば衝動は解消され、また摂取した血液量に応じて肉体を再生することができる。
ヒト一人分程度の十分な血液を摂取すると、上記の狂化スキルの効果を任意で、思考の曇り無しに享受することも可能になる。
なおアーチャーの血液にも狂血病の感染性があるため、彼女の血を体内に取り込んだ者はEランク以上の狂血病スキルを得る。
ランクが低いことによる違いは、理性の崩壊が急速であり、吸血衝動への耐性が低い点である。
怪力:C-
筋力を1ランクアップさせることが可能。狂血病患者としての特性。
ただし、このスキルの使用中は1ターンごとに幸運判定に成功しなければならず、失敗すると吸血衝動に襲われる。
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
サンベルナルディノの自警団数人に囲まれた際にも、アーチャーは子供たちを守りながら彼らの銃だけを早打ちで破壊したという精密な射撃の腕前がある。
カリスマ:C+
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
メキシコとの国境からアメリカ西部まで、キャラバンから果ては敵対する防疫修道会の面々まで率いて戦闘した経験に基づく。
相手が死徒や吸血鬼だった場合は更にカリスマ性が上がる。
【宝具】
『傘に着て懸かる西部の陰(ハウ・ザ・ウエスト・ワズ・ウォン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:16人
アーチャーが愛用している、新型のヘンリー連発ライフルを改造した黒い日傘。
ベースとなったヘンリーのレバーアクションライフルは、南北戦争において南軍から「北部野郎の銃は日曜日に弾を込めれば一週間ずっと撃てるのか、忌々しい!」と評された逸話を持つ、連射速度・装弾数・火力に優れた銃である。
この宝具はその利点をそのままに、装弾機構をスペンサー式にすることで、ネックだった戦闘途中での給弾の難しさを解消しているなど、様々な改良を加えられている。
銃身に沿ってジャンプ式の黒い傘が取り付けられており、ワイヤーの編み込んである傘は、そのままでも38口径程度の弾丸なら軽く弾き返せる。
Cランクの対魔力スキルと矢避けの加護がエンチャントされており、傘の展開時には大抵の射撃攻撃・魔術をこの傘で防ぐことが可能。
これにより、敵弾を防御しつつ一方的に相手へ射撃攻撃を加えることができる。
銃口に専用の鉄針を取り付けて刺突武器として使うこともでき、日傘として用いれば直射日光による狂血病特有の疲労を軽減することも可能。
南北戦争期に横行した奇銃の一種ではあるが、その性能は非常に高い。
『吸血聖女(サンタ・サングレ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1000人
『黒衣の者』の娘として、高い狂血病スキルを持つが故の特性。
狂血病発症時に、睥睨と咆哮で、Bランク以下の狂血病スキルを持った周囲の者全ての行動を意のままに操作することができる他、好きな時に自分の狂血病を発症させられる。
だが当然、自分が正気を保っていなければこの効果は使えない。
アーチャーは大抵、自分も吸血衝動で狂化Eランクとなりながら、凶暴化したその他の狂血病患者の吸血衝動を纏めて抑えるために使っていた。
この効果は死徒や食屍鬼にもある程度有効。
『煉滅弾(プルガトリオ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1人
狂血病を浄滅する防疫修道会の中核であるソリア七会士の一人『薬読のアンナロッテ』が作成した、強力な概念武装の銃弾。
大口径の銀製の徹甲弾内に彼女の製作した特殊な薬剤が仕込まれており、命中した対象を内部から破壊し浄滅する。
アーチャーが作成するには相応の魔力が必要だが、吸血鬼や死徒に対しては絶大な効果を誇り、確実にその命中部位の復元呪詛を無効化して死を齎しうる。
その他のサーヴァントや防御魔術に対しても、着弾部位から拡散する薬剤で広範囲を焼灼し、治癒困難な呪的損傷を負わせる必殺の礼装である。
【weapon】
日傘銃『傘に着て懸かる西部の陰』の他、ブーツの底に仕込みナイフを隠し持っている。
アリゾナ州サンベルナルディノのシスター・セシリアよりもらった十字架を首輪に取り付けており、手裏剣のように投げて牽制したり、吸血鬼に対して有効な概念武装として使う(自身にも有効なため、これを掴んで吸血衝動を押さえ込んだりもする)。
スコフィールド44口径、煉滅弾専用の単発拳銃などのサブ火器も携行している。
【人物背景】
漫画『吸血聖女キリエ』の主人公。ミズーリ州ホーリーロックの生まれ。
19世紀末のアメリカ合衆国では狂血病が流行しており、彼女はその元凶たる『黒衣の者』の血をひく娘。
肌は雪よりも白く、髪は夜よりも黒く、瞳は血の赤より赫い。
修道女の母親と慎ましく暮らしていたが、墓場が荒らされていることを不審に思った村人の通報により、その存在を修道防疫会に知られてしまう。
キリエを庇って銃弾に倒れた母は、己の血肉をキリエ与え、ここから逃げるように言う。
キリエは友人・ルーミーの目の前で母を食い、修道会の者や村人のほとんどを皆殺しにして逃走した。
その後5年間単身で、狂血病患者の浄滅を掲げる教会、聖地ソリアより来たる者たちと戦いながら旅していた。
自身も狂血病患者である彼女の旅の目的は生き別れとなった父親、『黒衣の者』と呼ばれる吸血鬼達の王を探し出し、その血液から狂血病患者を救うワクチンを作ることである。
旅の果てに、ソリアを占拠した黒衣の者の元にたどり着いたキリエに、『黒衣の者』は、狂血病により神は人の魂を試していると語る。
頭に茨の冠をつけた『黒衣の者』と戦うキリエは、片腕と片脚を失う重傷を負いながらも『黒衣の者』を追いつめ、特製の銃弾をその頭に撃ち込むことに成功した。
それにより、彼の支配から解放された吸血鬼は朽ちていったが、原初の吸血鬼である『黒衣の者』はそれでも倒し切れず、血は手に入らなかった。
日光に弱いため、銃を改造した傘を装備しており、太陽光を防ぐための黒い服と、自らを戒めるような首輪、手錠をしている。
狂血病だが、他の狂血病患者とは違い、吸血鬼を王のように睥睨する力を持つ。
口癖は「ウザい」。
ちなみに、「キリエ」とは「主よ」を意味する。
【サーヴァントとしての願い】
未だこの世に『黒衣の者』が生きているなら彼を倒す。また、狂血病を治療するワクチンを入手する。
【マスター】
八島聡美@ヴァリアブル・ジオ
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を勝ち抜いて優勝賞品を手にし、弟と二人暮しの極貧生活から抜け出す。
【能力・技能】
旭神空手という流派を修めており、段位は4段。これに自身の発火能力を組み合わせて戦う。
中学2年生の時にライバルである武内優香と出会うまでは空手大会を総ナメにしていた。
少なくとも『ADVANCED V.G.』、『ADVANCED V.G.2』での技は全て使用可能。
ことによるとOVA版の技も使える。
また、びっくりモンキーというハンバーグレストランでアルバイトをしており、ウェイトレスとしての技能もある。
【weapon】
拳や足に自前のサポーターを身に着けている。
聡美が自身の魔術で火を灯しても焼き切れたりはしない。
火属性の強化が施されたこの装備は、旭神空手の技『応報』で、神秘性の低い射撃攻撃や魔術なら弾き返すことすらできる。
【人物背景】
格闘ゲーム『ヴァリアブル・ジオ』シリーズのキャラクター。アニメではライバルとして出演し、小説では主役となった。
『ヴァリアブル・ジオ』とは、最強のウェイトレスを決めるべく、超多国籍企業・謝華グループの主催で年に1度行われる格闘技大会である。
賞金総額は10億円。選手の所属企業には、伝説の一等地が与えられる。
不況の煽りを受け、業績不振に苦しむ外食産業にとっては願ってもない賞品であった。
各企業に謝華グループから送られてきた1通のFAXから始まったこの大会に不参加を表明する企業は無く、いつしか年に1度の恒例となっていたが、開催から3度を数えるも未だ参加企業からの優勝者はなく、謝華グループの総帥であるレイミ・謝華がその栄誉を守ったままであった。
V.G.大会への彼女の参加理由は、「10億円とは言わず、生活に困らないだけのお金が欲しい」である。
高校3年生の17才。誕生日は10月22日(天秤座)で血液型はO型。
154㎝・41㎏、3サイズは上から78/51/82。将来の夢は体育教師。
両親を事故で亡くした為、遠縁の親戚に引き取られたが、自らの発火能力が発現して、遠縁の横暴な男に火傷を負わせてしまったことがあるようだ。
各所で望まずとも不良を成敗した事なども問題となり、こうした経緯から聡美は「魔女」「鬼の子」と疎まれたこともあった。
ついにどこも引き取り手がなく、アパートで小学6年生の弟・大介と2人で生きていく事を余儀なくされたらしい。
その件から必死に常人を演じていたこともある。
弟を養いながら学費と生活費をアルバイトで稼いでいる。
シリーズの主人公格である武内優香とは同門の仲間。
お互いを良きライバルとして認めているが、内心では優香との才能の差にコンプレックスを抱いている。
性格は直情熱血型で、常に熱血しているタイプだが、『V.G.2』の時点では、冷静・知的でどこか影のある雰囲気も帯びてきた。
最近は道場で小学生組の指導を始めている。
【基本戦術、方針、運用法】
マスターである聡美の意向により、積極的に聖杯戦争で勝ち抜くことを考えているが、マスターは殺さず、基本的にサーヴァントだけを落とす方針で動く。
そうは言っても、少女のマスターであれ、締め落として無力化するくらいのことはやる。
アーチャーもマスターも基本的に、地の利を鑑みつつの直接戦闘をするだろうが、それなりに戦闘もできるマスターを敢えて囮にし、物陰から狙撃するという手も用いるかもしれない。
引けるタイミングがあればヒットアンドアウェイを繰り返して相手のスキを伺い、切り札の『煉滅弾』を撃ち込んで相手を屠ることを狙う。
マスターは魔術の指導を受けていないとはいえ、人並み外れた火属性の魔術回路を有しているため、アーチャーの礼装である『煉滅弾』も、それ以外に魔力を使わなければ生活に支障なく1日1発作る程度の魔力は供給することができるだろう。
アーチャーが血液を散布して方々の人に飲ませるか、無差別吸血行為に及べば、一帯に狂血病のパンデミックが起きて、吸血鬼の群れを率いた軍すら作れてしまう。
が、アーチャーは自ら忌み嫌う穢れた血でそんな行為を起こすことは絶対にしないだろう。
血液の感染性は、日光や外気にある程度晒してしまえばなくなるようだ。
以上で投下終了です。
投下します
にや。
にや。
にやにや。にやにや。
押し殺した笑い声。
タイル張りの床。
水。
バケツ。
遠いドア。
狭い窓。
靴。
靴。
靴。
並ぶ脚は鉄格子。
少女が少女を囲う檻。
少女の檻に木霊するのはか細い声と笑い声。
檻の真ん中で這いつくばる少女。
ゆるやかな栗色の髪とお人形のように可愛らしい顔、すらりと伸びた長い足。
その豊満な体と長身で、自分を何かから守るように縮こまっている。
「おい鬼! こそこそすんなよ!!」
『鬼』と呼ばれた少女は、なにも言わずにただ体を縮こまらせて床に貼られたタイルを眺め続ける。
そうしてこらえ続けていれば、いつかはその怒号が止むと信じているように。
「はぁ? 鬼のくせに無視とか酷くない?」
「喋れないの?」
「つーか鬼なら日本語喋れないっしょwwwww」
「ウケるwwwwwwww」
ぎゃはは。ぎゃははははは。
女子トイレに響き渡る品のない笑い声。
少女を囲う『檻』が笑う。
少女は黙って、ただタイルを眺め続けていた。
『一身上の都合』による転校から数日。
心優しい彼女は、地獄に叩き落とされた。
誰よりも優しい少女。
誰よりも面倒見のいい少女。
誰よりも気配りのできる少女。
品行方正で、ちょっとだけ喋り方にくせのある少女。
優しい世界で、優しい人々に囲まれて、健やかにそだった少女。
だが、転校先の学校で彼女に目をつけたのは、彼女の周りに居たような優しい人々ではなく、ストレスを溜めた『檻』たちだった。
きっかけは、体育の授業だった。
体育の教師の何気ない一言が皮切りだった。
『誰かペアを組んでやれ』。
別に、彼女は孤立していたわけではない。
生来の優しさから、複数の女子とそれなりに良好な関係を結べていたし、部活動への勧誘もあとを立たなかった。
だが、彼女とペアを組もうとするものは居なかった。
彼女が少し……いや、かなり、周りの女子たちより身長が大きかったから。
「いや、フジセン、アレデカすぎるからwwwwwwwwマジで人間かっつのwwww鬼じゃねwwwwww」
「鬼とストレッチとか潰されるしwwwwww」
そのやりとりが、彼女の今を作り上げた。
そのやりとりで、彼女が何も言い返さなかったから、彼女の今は出来上がった。
どれだけ叩こうとやり返さず、悲鳴を上げて楽しませてくれる生きたサンドバッグ。
どれだけ追い詰めようと誰にも文句を言わず、むしろ自分たちを庇ってくれる哀れな羊。
そんな都合のいいおもちゃだと、そのやりとりで判断された。
自分よりも可愛い子が許せない。
自分よりも目立つ子が許せない。
自分よりも優れた子が許せない。
だが、自分が変わろうとはしない。
そういった、向上心なき野心家たちにとって、彼女は格好の餌だった。
それから数日。
行為は次第にエスカレートしていった。
最初はばかにするような言葉。
次に軽い身体接触。
次に持ち物へのいたずら。
次にややキツめの身体接触。
まるで何かの狂気に触れているように、日に日に内容はきつくなっていった。
そして今日。
トイレに引きずり込まれ、いきなり水をかけられ、上着を脱ぐことを命じられた。
『鬼が服を着ているのはおかしい』という、どう考えてもおかしい理由で。
気狂いのような『檻』の笑い声を聞きながら、彼女は考えていた。
あの世界は、夢だったんだろうか。と。
転校する前の世界。
華やかな夢と希望に満ち溢れていた世界。
少し顔が怖いが、少女をアイドルにしてくれると言った。
最初は嘘だと思ったが、大きな会社で資料をくれてちゃんと話をしてくれた。
何故少女を選んだのかと聞けば、いつもどおりの無愛想な顔で「笑顔です」とだけ答えた。
優しいプロデューサーが居た世界。
初めて事務所に行った時、緊張していた少女に声をかけてくれた。
「ドア開けると仕事が始まって面倒だから」と廊下の壁に寄りかかり座っていた少女。
緊張している少女の様子を見て、もこもこの下着のようなボトムスから飴を取り出して少女にくれた。
ちっちゃなお友達、双葉杏が居た世界。
まるで童話のような、素敵と幸せに溢れた物語。
ここに居る少女からはかけ離れた、幸福な少女の物語。
でも、この学校に転校してきて、世界は一変した。
『346プロダクション』なんてなかった。
教えてもらった電話番号から帰ってきた返事は、携帯が利用されていないことを告げる音声だった。
ずっとずっと大切な宝物にすると、部屋の宝箱に入れておいた『資料』や『飴』は、煙のように消えていた。
もしかしたら、と少女は考える。
あの世界は、少女が作り上げていた妄想だったのだろうか。
本当の世界は昔からこんなもので、あんな綺麗な世界なんてなかったんじゃないか。
でも。
夢だとしても、妄想だとしても。
夢でいい。妄想でいい。
あの世界に帰りたい。あの世界に帰って、開けぬ夢の中で生きていきたい。
叶わぬ願いに目を伏せる。
彼女の整った毛羽のような睫毛が涙に濡れる。
「なんとか言えよ!!!!」
リーダー格の檻が少女の体を蹴り上げる。
溜まっていた涙が弾け、タイル張りの床に涙の落ちる音が聞こえた気がした。
◆
◇
◇
◆
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――――!!!!!」
少女の瞳から大粒の涙が零れた瞬間、女子トイレに咆哮が轟いた。
咆哮とともに、少女と『檻』とを遮るように、巨漢が現れる。
少女の前に突如現れた巨漢。
彼女の恵体よりも更に大きい、2mはあろうかという身長に筋骨隆々の肉体。
手にはバンテージの代わりか包帯がきつく巻きつけられている。
頭には手ぬぐい。目元には、まるで消し炭を塗りたくったかのような隈取。
巨漢が突然、少女を取り囲んでいた檻の一人の顔に拳を叩き込む。
「はぎゅっ」というマヌケな声を残して片側の檻がはじけ飛ぶ。
逆の手で檻のもう一人の顔を叩く。
首が数回転し、ぶちりいう嫌な音を残してねじ切れ、片側の檻の命が絶する。
「は……え……?」
そして呆然としているリーダー格を気取っていた檻の頭を両手で掴む。
「あ、が、ぎ……」
そのまま、神に祈る合掌を作るように、少しずつ、少しずつ手のひらを寄せあげていく。
まるで万力にかけられた鉄板のように、リーダー格の檻のそれなりに整っていた顔が醜く醜く押しつぶされていく。
「ひゃ、ひゃめ……にゃ、ご、め……にゃ……」
何に謝るのか。
誰に謝るのか。
謝ってその罪が許されると思っているのか。
なんともささずに、リーダー格の檻はただ謝る。
その謝罪を耳にして巨漢の瞳に宿る怒りが、更に激しく燃え上がる。
もし相手が人ならば、その謝罪でちょっとばかしの感傷を得て少しばかりは手心を加えてくれたかもしれない。
しかし目の前に居る鬼には、生き延びるためのその場しのぎの『鳴き声』は通じない。
むしろその往生際の悪さ、身勝手さに『裁くべき悪』を見出す。
骨の軋む音が強くなる。
泡を吹き、血を吐いても決して力は緩めない。
男は一切躊躇せず、最後に
「『南無阿弥陀仏』」
と唱え、そのまま頭を圧し潰した。
男の言葉が一切理解できなかった少女でも、何故かその七文字だけははっきりと聞き取れた。
合掌が完成する。
首から上の亡くなった死体がタイル張りの床に投げ捨てられる。
不動明王のもとに捧げられる供物が新たに三つ積み上がる。
「あ、あ、あ……」
突然の化け物の登場に怯える少女。
あまりの惨状に腰が抜けてしまって逃げ出せずにいた。
この状況で失禁しなかっただけでも大したものだろう。
巨漢が少女の方を向き、何事かを呟く。
「……■■■■■■、■■■■■■■■■」
意味はわからない。
だが、無抵抗の人間をあそこまで残虐に、一方的に殺すのだ。
少女は、これから襲い来るケタ違いの暴力と逃れられぬ死を察し、さめざめと涙を流した。
しかし、巨漢から発せられたのは暴力ではなく。
「■■■■■■」
野に咲く花を手折らないよう気をつけるように、差し伸べられた手。
突然伸ばされた手に、目を剥く。
狂人に見えた男が、少女には……少女にだけは、何故か優しく、接している。
混乱するきらりの目にとまるのは、差し出されている真っ赤に染まった男の腕と三つの死体。
フラッシュバックのように、殺害の現場が脳裏に蘇る。
少女は、そのあまりのショッキングな光景に、胃の中身を床にぶちまけると。
そのまま、誰にも何も言わず、鞄も何も持たずにヨロヨロと逃げるように家に帰った。
いきなり築き上げられた死体の山。
差し出された血とよくわからない何かで染まった腕。
謎の巨漢との出会い。
これが、聖杯戦争の地に転校してきた少女・『諸星きらり』が学校に行った最後の日の出来事だった。
◆
巨漢の『檻の破壊』から数日が経過した。
あの巨漢について、きらりは色々なことがわかった。
巨漢は『バーサーカー』と言うらしい。
いつか聞いたような気がする『聖杯戦争』のサーヴァントと呼ばれる存在。
彼は、きらりのサーヴァント。
きらりを守るために……参加者たちを『倒し』て、きらりの願いを叶えるために居る。
『狂化』というスキルによって、理性を失い人格をねじ曲げられてしまったサーヴァントであるらしい。
そんな理性もなく、人格もねじ曲げられ、名も、逸話も知らぬ彼が。
それでも、きらりのために動いてくれている、というのがわかった。
あの事件の後、バーサーカーは再びきらりの前に現れた。
今度こそ殺しに来たのだろうかと怯える少女に、トイレでの一件と同じように手を差し伸べてきた。
その様子に(今度は血で汚れていないが)あの時の光景がフラッシュバックして、思わずえずく。
そんなきらりを他所に、バーサーカーは手に持っていた物をきらりに押し付ける。
彼が手に持っていたのは、コンサートのチラシ。
この街からはとても離れた場所であるアイドルのコンサートについてかかれてある。
聞いたことのないアイドルたちの名前。
聞いたことの曲の並び。
でも、そのチラシにはちゃんと書いてあった。
アイドルの名前の後ろに、ちっちゃく、ちっちゃく、見落としてしまいそうな字で。
346プロダクション所属、と。
彼は、探してきてくれたのだ。
きらりが夢だと思っていた世界が夢じゃない、現実だったという証拠を。
きらりは声を上げて泣いた。
あれだけ恐れていたバーサーカーに抱きついて、声を上げて泣いた。
彼女の信じた世界が夢物語じゃなかったこと。
自分の帰る場所がまだあること。
バーサーカーの優しさ。
全てへの言い表せない程の感謝で、ただ、ただ、泣き続けた。
その夜。
きらりは夢を見た。
燃える寺。
走る『誰か』。
後頭部を殴りつけられ、昏倒してしまう『誰か』。
目がさめたら、寺は全部焼けてしまっていて。
そこから生えた黒い『なにか』に泣き縋る『誰か』。
それが誰の夢なのかは分からない。
ただ、『誰か』はバーサーカーに少しだけ似ている気がした。
朝起きて、バーサーカーに聞いてみたけど、バーサーカーは何も話してくれない。
ただ、声にもならない声で呻くだけ。
でも、きらりには。
彼の顔に色濃く残る隈取が、泣いて、泣いて、泣きつかれたあとのクマのように見えてしかたがなかった。
バーサーカーも、きっと、ずっと、辛かった。
あの時のきらりなんかよりも、ずっと、ずうっと、辛かった。
それでも、きらりのために彼女の夢の欠片を拾ってきてくれた。
だからきらりは決めた。
立ち上がり、動き出すことを決めた。
戦争なんて怖いから、本当はずっと家に閉じこもっていたい。
でも、きっと帰りを待ってくれている人たちが居る。
だから、帰る方法を探す。
そして、バーサーカーの涙を止める方法を探す。
バーサーカーの涙を止めて、彼が狂化という呪いから抜け出せる方法を探す。
今度はきらりが、バーサーカーに手を差し伸べる。
きらりは歩き始めた。
自分と、自分を守ってくれているバーサーカーのために。
「じゃ、行ってくるにぃ!」
「■■、■■■■■■■■……」
いつかの朝。
檻が壊れて何日目かの朝。
霊体化するバーサーカーに挨拶を済ませ、諸星きらりは今日も街の何処かを歩く。
夢の続きへの手がかりと、バーサーカーの救いを探して歩く。
◆
◇
彼は見ていた、聖杯戦争の舞台に呼び出された少女を。
無垢な少女。優しき心を持つ少女。
戦争に巻き込まれようとも、きっと心を失わない少女。
そこにあったのは怒りに狂うまで信じていた『人』の姿。
彼女が■たちと似ている、とは思わない。
だが、その快活さと、やさしさは、彼の心の奥に眠っている『何か』を優しく震わせ続けた。
彼女には、戦争なんかに関わってほしくない。
そう思い、彼は一度、少女に背を向けた。
数日後。準備期間も終盤に差し迫った日。
少女は、虐げられていた。
意味もなく、ただ『体が人より少し大きい』というだけの理由で。
その様子を見て、彼は理解した。いや、思い出した。
自身の隈取に込められた意味を。
やはり人■変わ■ない。
貧富貴■、生■■育ち、■■■美醜、そうい■たもの■■別を行う。
己の醜い■を、欲を■■すために罪■■■々を侵す。
「……■」
■■■をかぶ■た畜生共。
悪鬼■刹の類■。
人■■■啜り、■■肉を貪■、醜く欲に■■■■■■■。
貴様らのような獣が居るから、■■■■■■、■■■■■■、■■■■■、■■■■■『人間』■■■■■■。
「■……■……■■■……」
―――許■■■■。
―――■■よ■か。
―――■せ■う■。
―――■■るわ■がな■。
涙の落ちる音が聞こえた気がした。
◇
◆
憤怒を纏い諸星きらりの下に顕現したサーヴァント。
狂気に触れ周囲の人物を皆殺しにしたバーサーカー。
子どもたちと貧しいながらも幸せに暮らしていた心優しき和尚。
人間の身勝手により罪なく打ち据えられ、虐げられたか弱き男。
縋った神にも見捨てられ、幸せを蹂躙され、復讐の鬼と化した破戒僧。
腐りきった世界を破壊し、平和をもたらさんと願った『明王』。
誰よりも人を愛し、その愛故にに『狂戦士』へと堕ちた人間。
彼の名は、『悠久山安慈』と言った。
かくして。
心優しき赤鬼、ただ少し体が大きく生まれてしまった心優しき少女『諸星きらり』と。
親切な青鬼、誰よりもきらりを救いたいと願ったバーサーカー『悠久山安慈』は出会い、互いとの距離を手探りで探しながら歩き始めた。
泣いた赤鬼。
日本で一番やさしい鬼たちの物語。
たとえそのやさしさが、お互いを傷つけてしまうとしても。
彼らのやさしさに罪はない。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)
【パラメーター】
筋力:B++ 耐力:B 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:E
【属性】
秩序・狂
【クラススキル】
狂化:B
筋力を二段階、耐力をニ段階向上させるが、理性の大半を奪われる。
【保有スキル】
武練の極地:A
極めるとはこういうことだ。
自身の得意な武器を使うときの魔力消費をランク分だけ軽減する。
バーサーカーの場合己の肉体が武器であるため、実体化にかかる魔力も軽減される。
そして、レンジ内ならどの体勢からでも宝具を解放できるようになる。
怪力:D
人間レベルでの最高クラスの怪力。
戦闘中一時的に筋力を一段階向上させることが出来る。
直感:B
戦闘時、自分と自分の大切な人物に害を成そうとしているものを「感じ取る」能力。
無害と判断できるものに対しては効果をまったく発揮しないが、攻撃に関しては漏らさず察知が可能。
憤怒の隈取:A
決して消えない忌まわしき過去。
このスキルがある限り、彼の心は揺るがない。精神への干渉、自身に向けられたデバフ効果を全て無効化する。
更に精神に干渉を行った者・デバフを発動した者・自身の大切な人物(マスター)に危害を加えた者の存在を永続的に把握し続ける。そしてその対象との戦闘の際に筋力が一段階向上する。
例え気配遮断をしていても正体秘匿をしていても、決してその対象を忘れず、確実に見つけ出し、追い詰めて殺す。
このスキルはNPCに対しても発動される。マスターに肉体的・精神的問わず多大な危害を加えようとした場合NPCですらこのスキルの対象になる。
こころやさしきひと:―
そのサーヴァントが心が優しく、人であることを示すだけのスキル。
狂化に蝕まれた彼は、以前のように全ての人物の幸せは願えない。
ただ、マスターであり同じくこころやさしきひとである諸星きらりの幸せは、今も願い続けている。
理性の大半を失っているが、参加者中・諸星きらりとのやりとりにおいて若干のイレギュラー行動が発生しやすくなる。
それは、泣いている彼女に自分から手を差し伸べたり、彼女の夢の欠片を拾い上げてきたり、その程度の一切役に立たないイレギュラーである。
【宝具】
『二重の極み』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1-3 最大捕捉:1
刹那程も間を開けずに放つ打撃。
一撃目で相手の反動を出し切らせ、無防備になった体に二撃目を叩き込む。
発動されている防御値向上を二打目着撃の瞬間だけ無効化する。
相手がレンジ1-2(殴れる距離)まで近づかないと開放できないが、開放に真名を必要としない。
なお、二重の極みといえば拳というイメージがあるが、バーサーカーは肘でも膝でも脚でも頭でも、場合によっては横隔膜でも二重の極みが出せる。
本来は武器を使った遠当てのような技もできるが狂化によって武器を使うという発想自体がなくなっている。
ちなみにこの宝具における『相手』とは人間だけを指すものではない。建物にも岩石にもこの宝具は発動できる。
【weapon】
己の肉体。
生前から合掌だけで人を殺せる程の怪力無双を誇っていた。
【人物背景】
親切な青鬼。
【マスター】
諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)
【マスターとしての願い】
346プロダクションに帰りたい。バーサーカー(悠久山安慈)を救ってあげたい。
呼び出された原因となる願いは不明。
【能力・技能】
なし。
レッスンを始める前なので歌もダンスもへたっぴーである。
ただ、その心は誰より優しく美しい。
【人物背景】
心優しい赤鬼。
【方針】
戦闘なんてできないし、させたくないし、したくない。
聖杯戦争から抜けだして帰る方法と、バーサーカーを救える方法を見つける。
バーサーカーは超至近距離での戦闘にしか対応していない。ただし近距離戦闘では比類なき性能を発揮する。
直感持ちであるため戦闘では優位を取れる。
敏捷こそ低いものの狂化によって筋力・耐久ともにB(40)に強化されているため、ちょっとやそっとじゃ倒れない。
そして相手がレンジ内に踏み込んだ瞬間発動できる、耐久向上無効・筋力最大二段階向上(80)から繰り出される必殺宝具・二重の極みは特に凶悪。生半可な防御ならぶち破って殺す。
超至近距離鯖であるため遠距離攻撃を行う相手にはとても弱い。
ただし、スキル:直感で遠距離攻撃を察知して避けることは可能。マスターが狙われても彼女を守ることが可能。
そして、マスターが狙われた瞬間、マスターの意志にかかわらずバーサーカーは攻撃した相手への迎撃を始める。
攻撃をした相手を地獄の底まで追いかけまわし、殺す。
この習性を見抜かれると、逆にマスターが危険に晒されることになる。
きらりはまだこの習性に気づいていない、そしてこの習性は彼女にも令呪なしでは止められない。
この点にいつ、どういった状況で気づけるかが彼女たちのターニングポイントになる。
あんなことがあったので学校はトラウマ。できれば近寄りたくない。
投下終了です
杏との出会いについては作中一切語られていないので創作になります
二期で語られたらこっそり差し替えます
あと、2組と言っていましたが2組目は無理そうなのでこの1組で終了させていただきます
訂正です
宝具『二重の極み』中のレンジが1-3になっているますが正しくは1-2です
1.
感想遅れます。
2.
_)-―¬ニニ¬ 、r、}rヘ
/ ,′ ´ ̄、`Y l
/ / 、 l くハ |
,′ , l ! , | 、 | l l|
l | | | /| ∧__ハ| | | | 8時とは夜の8時のことです
| | l | ¦l7/ .、| | | |
|∧ |Nヘ、!/ ● 〉 ,′l| 別に間に合いそうにないから怒りの12時間延長をしたわけではありません、
´ ハjミYシ 、_,、_,, ⊂⊃ / l| \
/ lト《ヽ、 ,イ / l| ヽ ただ、誰も午前か午後か聞かないから自分の都合の良い様にルールを解釈しただけです、それが権力者です。
. / l l | }≧≦‐ | ∧. ヽ} `、
l / / {^ーメ‐┤ | |\ `ヽ、 l
3.
参加者選びは絶賛、悩み中です。
皆様、投下本当にありがとうございます。
ここまで引きずっておいて申し訳ありません
設定がまとまらなかったので延長を破棄します
投下します。
空は嵐が過ぎ去った後のように、清々しかった。
主が資産家であることを思わせる一軒家の庭で、少女は安楽椅子に腰掛けて、うとうとと微睡んでいた。
自分が起きているのか、それとも眠っているのか、どちらでも構わないと思った。
ただ、この幸福な時間が何時までも続けばいいと思う。
寄せては返す波のように、ぎいぎいと安楽椅子が揺れる。
少女の躰は華奢で、その上、白い水彩絵の具に少し青を垂らして混ぜて、それで塗ったような妙な肌色だから、
どことなく、大海原を漂う酷く儚げなようなものにも見えた。
微睡みながら、少女は夢を見る。
自分が深い海の底にいる夢を、いつまでもいつまでもただ自分が微睡み続けるだけの夢を。
そんな彼女の隣には、少女がいる、彼女の大切な友達がいる。
ぼうっと微睡みながら、時々思い出したかのように他愛のない話をして、そしてまた微睡み続ける。
そんな完全な幸福の夢を。
「山田なぎさ……」
寝言で、少女は名前を呼ぶ。。
それが、世界でただ一人の彼女の友だち。
少女の名は海野藻屑、悪い冗談みたいな名前をした少女。
自分のことをぼくと呼び、高級品に身を包んで、自分を人魚だなんて言って、そして虐待で刻み込まれた身体の痣を汚染と言い張る少女。
耳が片方聞こえないから、聞こえる方の耳を彼女の隣に寄せるために、大きく開かない足を懸命に引きずって、友だちを追いかける少女。
ここじゃない別の場所に行きたくて、遠い場所へ逃げようとした少女。
そして、今は聖杯戦争に参加する少女。
「ぼくは結構楽しくやれてるよ、でも……」
夢の中で、海野藻屑は山田なぎさに話しかける。
この街は、そう悪い場所ではない。父親に殴られることもない。
逃げようとした場所がこの街ならば、大正解と言ってもいい。
それでも――
「山田なぎさがいないんじゃ、ダメだよ」
海野藻屑は山田なぎさと逃げたかったのに、海野藻屑の隣には山田なぎさがいない。
ぽっかりと穴が空いてしまっている――山田なぎさがいないから、転入手続きも宙ぶらりんに浮いたままだ。
「財布とか、ドライヤーとか、すごく気にいってるシャーペンとか、せっかく準備したんだからさ。
ぼくだけが来たんじゃ、全部無駄になっちゃうじゃないか……」
逃げようと決めた日、山田なぎさはそんなどこへ行きたいのかわからないようなものを準備するつもりだった。
そのチョイスを聞いて、海野藻屑は楽しかった。
まるで冗談みたいだけど、本気なんだと思った。
だから、私物を取りに戻って自分の家の前で山田なぎさと別れた時、
自分一人だけがこの街に来てしまった時、
本当に、心にぽっかりと穴が空いてしまった。
だから、少女は決めた。
「マスター」
気が付くと、海野藻屑の隣に美しい少女が立っている。
透き通るような白い肌、身体に纏わりつく薔薇、ピンととんがったエルフを思わせる耳――人の姿をしておきながら、人間離れした美しさ。
それこそが、海野藻屑のサーヴァント。彼女が世界に向けて放つ物理的な弾丸。アーチャー、森の音楽家クラムベリー。
「どうだった?」
「アサシンを一人、そこそこ楽しい相手でした」
「そう」
絶対に、何をしてでも、もう一度、山田なぎさに会う。
だから、海野藻屑は己のサーヴァントに戦うことを許した。
サーヴァントと戦いたいという、彼女の願いを赦した。
アーチャーは、海野藻屑の左側に立っている。
海野藻屑のどちらの耳が聞こえるか、それは彼女の魔法には関係のないことである。
音は彼女が望む位置から発することが出来る、両耳に聞かせてやればいいだけのことだ。
「では、また行ってきます」
「うん」
「貴方のようなマスターを持てて、幸せです」
「そう」
互いに、興味を抱かない。それで良い。
森の音楽家クラムベリーが求めるものは戦いであるし、
海野藻屑が求めるものは戦いの後にあるものであって、その過程に興味はない。
そうやって、海野藻屑は何時までも微睡み続けるし、
森の音楽家クラムベリーは、彼女に捧げる子守唄のように、彼女の餌食となったものの断末魔を響かせる。
砂糖菓子の弾丸は放たれない。
◇
森の音楽家クラムベリーが強敵との闘争をどれほどに愛しているかといえば、
自分の闘争のために、魔法少女達を殺しあわせ、その殺し合いに一参加者として混ざるぐらいに愛している。
故に、この聖杯戦争なぞは彼女にとっては最高の舞台である。
主催者としての多少の雑務に追われることもなく、マスターから制限を受けることもなく、森の果実をもぐように、自由に戦いを楽しむことが出来る。
戦闘そのものが報酬であるが、それに加えて勝利の暁には聖杯が手に入る。
この地は彼女にとっての理想郷と言っても過言ではない。
とは言っても、幾つかの欠点は存在している。
例えばマスター同士が連絡を取り合えない、というのは面倒な問題である。
自身の魔法少女育成計画においては、魔法少女同士で連絡を取り合えたため、実際に会う際にはそう不便は無かったが、
今回はマスターあるいはサーヴァントを探すところから始めなければならない。
森の音楽家クラムベリーは音を操るという能力のために非常に優れた聴力を持っているが、
しかし、怪しい会話を聞き取るという目的のためにはあまりにも範囲が広すぎて面倒である。
また、自身のマスターもよろしくない。
自分を自由にさせてくれるのはありがたいことであるが、魔力があまりにも少ない。
自身の単独行動スキルである程度は補えるが、出来ることならば他のマスターに乗り換えたいところである。
しかし、こんなにも楽しむことが出来ているのだ。
あまり、文句をつけるのもやめておこう。
移動の最中、森の音楽家クラムベリーは不自然に手袋で腕を隠した少女を発見する。
それが、令呪を隠しているからなのか、あるいは別の要因であるからか、尾行してみればわかることだろう。
「願わくば……」
強者との闘争が待ち受けていれば良い。
◇
――だけど、あんたは実弾じゃないもん
時折、海野藻屑は夢の中で出会ったばかりの山田なぎさの言葉を思い出す。
魔法少女は実弾としては夢のようにあまりにもふわふわとしていて、
それでもはっきりと実を持っていて、だから、彼女が召喚されたのだろうか。
「どうでもいいや」
【クラス】
アーチャー
【真名】
森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B 幸運:D 宝具:C
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
魔法少女:A
『魔法の国』から与えられた力。魔法少女『森の音楽家クラムベリー』に変身できる。
魔法少女時は身体能力や五感や精神が強化され、容姿や服装も固有のものに変化する。
通常の毒物は効かず、食事や睡眠も必要としない。その影響かサーヴァントとしての現界に必要な魔力量が通常時よりも低下している。
人間としての顔を捨てた森の音楽家クラムベリーというサーヴァントは人間としての姿を持たず、常時変身状態が維持される。
【宝具】
『音を自由自在に操ることができるよ』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100人
音を自在に変化させられる魔法を操る、この魔法によって発せられる音は物理現象であるため対魔力による無効化は出来ない。
この宝具によって、音を任意の方向から発生する、音を声のように変調する、音量を爆音にして衝撃波として放つことが出来る。
また、この宝具の影響によって森の音楽家クラムベリーの聴力は非常に強化されている。
なお、ここでいう魔法とは魔法少女育成計画における魔法であってTYPE-MOON作品における魔法ではない。
【weapon】
魔法少女としての身体能力
【人物背景】
魔法少女育成計画における黒幕、その行動は生き残った魔法少女達に大きな傷跡を残した。
【マスター】
海野藻屑@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
【マスターとしての願い】
山田なぎさに会いたい
【weapon】
ミネラルウォーター入りペットボトル(2リットル)
【能力・技能】
過去の虐待により左耳は聴力を失っており、片足を引きずるようにしか歩けない。
頭の回転は速く、独創的なアイディアで周りを煙に巻いたこともある。
【人物背景】
東京から父の故郷である田舎の港町へ引っ越してきた少女。
一人称は「ぼく」で、じぶんのことを人魚と言い張り、いつもミネラルウォーターを飲んでいる。
虚言癖や人を小馬鹿にしたような言動のせいで周囲から疎まれることが多いものの、外見は美少女そのものであるため異性として好意を抱いている男子は多い。
芸能人で歌手の父から日常的に虐待を受けているが、本人はそれを「愛情表現」と称し、父をかばうような言動をとっている。
これは作中の登場人物から「ストックホルム症候群」のようなものではないかと指摘されている。
【方針】
アーチャーに任せて、自分はぐぅぐぅいつまでも惰眠を貪っていたい
投下終了します。
森の音楽家クラムベリーのステータスは
ttp://www41.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/52.html
海野藻屑のステータスは
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/152.html
を参考にさせていただきました。
この段階になって自分が信じられなくなったので、個別感想、名簿発表は日曜を予定しています。
皆様、本当にありがとうございました!
すみません、拙作「その願いは詛呪」のセイバーの宝具を一部訂正・追記させていただきます。
『悪刀「鐚」』(アクトウ・ビタ)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
四季崎記紀が作りし“完成形変体刀十二本”の内の一本。「活性力」に主眼が置かれた刀。
苦無の形をしており、身体に差し込むことによって所有者の疲弊も死も許さず人体を無理矢理に生かし続ける。
この『悪刀「鐚」』の効果により、鑢七実は唯一の欠点である自身の体力の無さを克服する。曰く「弱点も隙もない」。
ただし常時発動型の宝具になるので、狂戦士程ではないが多少の魔力消費をマスターは強いられる。平時には魔力消費量を抑制する事が可能。
もう一つ、四季崎記紀の完成形変体刀十二本の特性として「刀の毒」による魅了効果を持つ。
ランク:C以上の精神干渉などの耐性、もしくは強い意志を持っていなければ『悪刀「鐚」』に対する物欲が生まれる。
もし『悪刀「鐚」』を所有した場合、その所有者の属性・性格が「悪」へと変質する。
駆け込み気味ですが投下させて頂きます。
少女が逃げる。
顔をくしゃくしゃにして、髪を振り乱して。それはまるで所業を白昼の下に晒された空き巣のようであった。
「はっ、惨めったらありゃしないね。負け犬らしいっちゃらしいけどな」
佐倉杏子はその後姿に侮蔑的な視線と言葉を吐き捨てる。
余程サーヴァントの力が優れていたのか、出会い頭こそ自信満々に死を宣告してくれた高飛車女。
その儚い自身も、彼女のサーヴァントが既に仕留められていた事に気づけば粉々に打ち砕かれた。
天国から地獄。一転し聖杯戦争の敗者となった彼女は無様をさらして逃げるのみとなったのだ。
「……マスターの方は仕留めなくてよろしかったのですか?」
その背後から黒衣の女性サーヴァントが杏子に声をかける。
つがえていた弓に現れる通りにアーチャーのサーヴァントである彼女は、”霊体化を解きながら”弓を降ろした。
「必要ないよ。サーヴァントを潰した時点であいつは脱落者だ。
仮にマスターを失った別のサーヴァントと手を組んだとしてもどのみち頭数は変わりやしねえし、
その可能性を摘む必要があるほどやり手じゃねえのはあの背中を見りゃ一目瞭然だ」
道端に寄せておいた紙袋を拾いながら答える杏子に、アーチャーは「そうですか」とだけ相槌をうち再び霊体化する。
「今日は引き上げる。あんたはともかく、あたしが闇討ちされない保証は無い」
『了解しました』
事務的な口調でそれだけ告げるアーチャーの声を聞き遂げた杏子は踵を返して教会に向かう。
本当ならもういないはずの両親と妹が待つ、その家に。
その後姿を見て、アーチャーは彼女が告げたこの聖杯戦争における目的を思い出していた。
――あたしは、願望機に頼るのはもう御免だ。
――かといってこの世界に居残りたくもない。
――だから、私はこの聖杯戦争を終わらせる。その過程でもし聖杯が手に入ったら、あんたが好きにしろ。
女神の願いに応じて馳せ参じる自分たちとはまるで逆だな、とアーチャーは考える。
佐倉杏子は家族を失った少女だ。
宇宙的存在の誘いに惑わされた彼女は、代償として魔法少女となる事を承諾し父の幸せを願う。
けれどもそれは造られた幸せ。絡繰りを知った父はそれを拒み、願った娘を罵って母と妹を連れてこの世から去った。
それは杏子の心に暗い影を落とす絶望の記憶で。
ゆえに彼女は、あの時とは別の存在といえども願望機を使って願いを叶える事を良しとしなかった。
仮に聖杯を手にしたとして、アーチャーが聖杯が不要と述べれば躊躇なく破壊するだろう。
――ならば、それで良いだろう。
アーチャーとて、聖杯にかける願いが無かった訳ではない。
「願いによって絶望した」事を聞いたぐらいで杏子の過去を聞いた訳でもない。
けれども、万能の願望機と失った幸せの偽造を嫌ったこの少女の目の前で願望機を望むつもりは無かった。
あの国は、きっとそんな都合の良いものが無くとも平和を勝ち取れる。
それは仕えた国を裏切る事になるだろうか。
それでもアーチャーは、己の望みよりも主の望みを立てる事を選んだ。
何も、今までとやる事は変わらない。主に仕え、影に生きて、影の中に消える。
ただ、戦う相手が変わっただけ。
魔物ではなく人間を相手取る事になったとしても構いやしない。
「……どうした、行くぞ」
『ええ。主命のままに』
一組の主従は闇の中に消えていく。
世界のためでもなく、正義のためでもなく。
ただただ、彼らだけのための戦いの中へ。
【クラス】
アーチャー
【真名】
漆黒の射手リタ@千年戦争アイギス
【パラメーター】
筋力:D 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:C
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
影矢:C
飛び道具を発射した時、その影を二つ目の飛び道具として具現化出来る。
影の発生しない場所ではこのスキルの効果は発動しない。
【宝具】
『隠密の射手』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
存在を認知される事なく一方的に弓矢で射抜く、影なる弓兵としての宝具。
マスター、サーヴァント、双方に対し不可視と認識不能を伴い暗殺を試みる事が出来る。
(相手からの攻撃を無効化出来る訳ではない)
具体的にはこの宝具の使用中、アーチャーは霊体化状態で攻撃が可能となる。
加えて気配遮断のスキルを、デメリットを受ける事が無く使用出来る。
長時間維持する事は不可能。
『陰日向の兵舎』
ランク:C 種別:対地宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:10人
常に上を行く才能を持つ弓兵たちに隠れ、兵舎に忘れ去られたエピソードから来る宝具。
一軒家程度の建物をアーチャーの兵舎として定義する事が可能となる。
兵舎は一般人の認識から外れ、高い探知能力がなければ発見が難しい。
攻撃体制にない限り、内部の存在はアーチャーと同等の「気配遮断」の効果を得る。
この宝具を適用するには自分以外の動物等を除いた生物がいないか、
自分かマスターの居住地として定義される建物が必要となる。
【weapon】
弓と影
【人物背景】
影に紛れ気配を殺す事の出来る狙撃手。ぼーっとした性格。
ある時魔物に操られ王子一行に襲いかかり、正気に戻って仲間に加わった。
実力は高いのだが、同時期に優秀な弓兵たちが加入した事や
能力がニッチなため評価されず、三軍以下をしまっておく第二兵舎は
「リタちゃんハウス」と言われる始末。
ただし状況を選べば弱い訳ではない。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯にかける願いはない。
【マスター】
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を終わらせる。
【weapon】
魔法少女としての能力。
槍、多節棍、分銅鎖、鞭など。
幻影魔法も使用出来るがこちらは使いたがらない。
【能力・技能】
上記の通り魔法少女に変身出来る。
身体能力や魔力が人間に比べ大幅に上昇する。
人間ではなくなっているため、ソウルジェムを破壊されるか、
魔力の消費や絶望など負の感情によってこれが濁りきらない限り死ぬ事はない。
聖杯戦争においては魔力の消費によるソウルジェムの濁りが抑えられているほか、
敵サーヴァントを打倒する事によって(下したのがサーヴァントであっても)回復する。
【人物背景】
願いによって家族を失い、他人のための願いを否定する魔法少女。
他者が犠牲になっても構わないという価値観に基づき行動する。
それ以来自由きままに生きており、そのためには犯罪も厭わなかった。
しかしそんな生き方は内心嫌っており、正義感を持ち誰かの為に戦う
美樹さやかとの出会いでその心は少しずつ変わってゆく。
本当は不器用だが面倒見が良くて優しい少女。
【方針】
聖杯戦争を終わらせるために動く。
そのためには犠牲も覚悟の上。
以上となります。
>>331 に追加
現時点でのマスター&サーヴァント一覧
セイバー 8組
空条徐倫@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン&ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画版)&沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
ラルフ@Hero and Daughter&モモ・ベリア・デビルーク@To LOVEる -とらぶる- ダークネス
中原岬@NHKにようこそ!(小説版)&レイ(男勇者)@DRAGON QUEST IV 導かれし者たち
赤座あかり@ゆるゆり&シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
一ノ瀬晴@悪魔のリドル&ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー
白鐘直斗@ペルソナ4&ギルガメッシュ@FF5
安田紗代@うみねこのなく頃に&鑢七実
アーチャー 10組
絢瀬絵里@ラブライブ!&ジャン・ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険
時槻雪乃@断章のグリム&コヨーテ・スターク@BLEACH
大井@艦隊これくしょん(アニメ版)&我望光明@仮面ライダーフォーゼ
水銀燈@ローゼンメイデン(漫画版)&瀬戸・多実華(せと・たみか)@百合×薔薇
天本玲泉@パワプロクンポケット4 日の出高校編&勇者シロウ(小波四郎)@パワプロクンポケット4 RPG風ファンタジー編
河城にとり@東方Project&エドガー・ロニ・フィガロ@ファイナルファンタジーⅥ
アルエット@夜ノヤッターマン&シロボン@ボンバーマンジェッターズ
八島聡美@ヴァリアブル・ジオ&キリエ@吸血聖女キリエ
海野藻屑@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない&森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ&漆黒の射手リタ@千年戦争アイギス
ランサー 5組
日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ&真田幸村@戦国BASARA
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴&本多・忠勝@境界線上のホライゾン
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは&綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)
江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ&姫河小雪@魔法少女育成計画
双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ&ジバニャン@妖怪ウォッチ
ライダー 9組
南千秋@みなみけ&村雨良@仮面ライダーSPRITS
御園千綾@ローリング☆ガールズ&カービィ@星のカービィ2
神崎蘭子@アイドルマスターシンデレラガールズ&アサキム・ドーウィン@スーパーロボット大戦Zシリーズ
楠リッカ@GOD EATERシリーズ&VAVA@イレギュラーハンターX
シルヴィア・斑鳩・ミスルギ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞&チェインバーK-6821@翠星のガルガンティア
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ&キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ@相州戦神館學園 八命陣
星輝子@アイドルマスターシンデレラガールズ&ばいきんまん@劇場版それいけ!アンパンマン『だだんだんとふたごの星』及び『よみがえれバナナ島』 他、劇場版
天々座理世@ご注文はうさぎですか?&シーザー・クラウン@ONEPIECE
イヴ@ib&ネイサン・シーモア@TIGER & BUNNY
キャスター 8組
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている&アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
闇姫@夜姫さま&沙耶@沙耶の唄
ジークリンデ・サリヴァン@黒執事&ベアトリーチェ@うみねこのなく頃に
高町なのは&木原マサキ@冥王計画ゼオライマー
桐間紗路(シャロ)@ご注文はうさぎですか?&ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
エレン@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-&エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険
モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険&東條希@ラブライブ!
羽丘芽美@怪盗セイント・テール&春居筆美(北大路冬彦)@ダブル・フェイス
バーサーカー 7組
牧野エリ@VANILLA FICTION&やみのディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊
白坂小梅@アイドルマスターシンデレラガールズ&ジェノサイド@ニンジャスレイヤー
ニノン・ベアール@KOF MAXIMUM IMPACTシリーズ&すてねこオートマトン@永い後日談のネクロニカ
水瀬伊織@アイドルマスター&スプレンディド@Happy Tree Friends
できない子@2ch&ジンオウガ@モンスターハンターポータブル3rd
雪崎絵理@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ&チェンソー男@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)&悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)
アサシン 12組
桂たま@天国に涙はいらない&ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
竹田千愛@“文学少女”シリーズ&太宰治@文豪ストレイドッグス
野咲春花@ミスミソウ&PoH@ソードアート・オンライン
千羽烏月@アカイイト&テューン=フェルベル@ひよこ侍
主人公子(女主人公)@ペルソナ3p&遠野志貴(のちの殺人貴)@真月譚月姫(漫画版)
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ&シックス@魔人探偵脳噛ネウロ
城ヶ崎莉嘉@アイドルマスターシンデレラガールズ&槻賀多弾@デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王
大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)&プライドあるいはセリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師
山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない&クロメ@アカメが斬る!
ララ@D.Gray-man&ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド(ジャック・ザ・スプリンガルド)@黒博物館スプリンガルド
クリステイアーネ・フリードリヒ@真剣で私に恋しなさい!&伊吹萃香@東方project
柳生九兵衛@銀魂&ブルー@ポケットモンスターSPECIAL
エクストラクラス 13組
橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ&白野蒼衣@断章のグリム
上白沢慧音@東方Project&無銘(24歳の学生)@真夏の夜の淫夢
岸波白野@Fate/EXTRA CCC&ダークネス・ゴート@遊戯王GX TAG FORCE3
倉橋陽菜乃@暗殺教室&ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ&クリシュナ@夜明けの口笛吹き
一色@絶叫学級7巻(善人クラブ)&人修羅(ジェノサイダー)@真・女神転生Ⅲ
赤ずきんのバレッタ@グリム傑作童話集. 上&狩人(Bloodborne主人公)@Bloodborne
佐藤良子@AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜&三國総一郎@C THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL
神代てんか(神代天花)@ビーナスアカデミー&大妖狐@いぬかみっ!
斧乃木余接@物語シリーズ&例外少女ウユウ@クトゥルフ少女戦隊
玲@ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス&ある少女@さいはてHOSPITA
玲奈@万引きGメン 悪い娘にはお仕置きです!&ミュッチャー・ミューラー@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
野々原紀子@魔法少女育成計画&犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX
ルーラー 2名
野守隆一@狂った教頭
インヴェルズ・ローチ@デュエルターミナルのストーリー
ステータスを微修正しました。
すみません、美樹さやか&ライダー(バーサーカー)を書いた者です。
宝具を一部訂正と一つ追加させていただきます。
『鋼牙機甲獣化帝国』(ウラー・ゲオルギィ・インピェーリヤ)
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:-
ライダーの最終宝具。
宝具の解放には二段階あり「狂化していること」で第一段階の半発動、「相手に人外だと思わせる」こととが第二段階の完全発動となる。
半発動で幸運以外の全ステータスを1ランクアップさせ、後述の宝具『超獣顕象』の第二、第三解放が可能になる。
完全発動時には幸運以外の全ステータスのランクが最大2ランク上がる。
さらに『超獣顕象』の第四解放が可能になる。
なお完全解放時はこの宝具を打ち消せない。
なぜならば相手の同意、すなわち相手の力も乗って発現した夢であるから。
『超獣顕象(マコトノスガタ)』
ランク:E 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:-
宝具とすら呼ぶか怪しいライダーの宝具。
効果は「邯鄲法で偽装している真の姿を解放すること」。
小柄な彼女の姿は偽装であり、その一部を解くことで本来の火力を取り戻す
ライダーの真の姿は総計三千人もの獣化聯隊を細切れの肉片に分解したのち、ライダーを核とした外科手術で接合させた全長五十メートルの大巨人兵、
暗黒神話の超獣と呼ばれるほどグロテスクでありエロティックな肉の帝国である。
解除のパターンは四段階。
ただし第二〜第四の発動時には『ロシア帝国機甲獣化聯隊・鋼牙兵』と『ロシア帝国機甲獣化聯隊・双頭魔狼』を封印しなければならない。
第一:一瞬だけ巨掌を召喚して殴る形態。
一瞬だけであるため霞程度(Cランク)だが、半径五十メートル以内で任意に攻撃可能。
何よりマスターには見えないため宝具が認識されない。
第二:両手を展開する形態。
透過していないためマスターの見られるが、『ロシア帝国機甲獣化聯隊・鋼牙兵』の全戦力と同等の火力がある。
第三:キーラ、ロムルス、レムスが上半身のみ融合した三頭犬形態。
三人の臍から下が融合して上半身だけのプロペラのようになっている
第二よりも火力が劣るが、手足が六本に増えたため蜘蛛のような立体機動が可能。
加えてロムルスは咆哮の砲撃、レムスは超怪力に特化した行動が可能。
キーラは変わらないが超生命力は健在で、ロムルスとレムスにもこれが適用される。
第四:完全解放
即ち真の姿であり物理的に超質量を持つ。
また、物理的な肉の城壁と化した兵士全員がDランク宝具に相当する銃火器を装備しているため全方位に一斉掃射が可能。
集中砲火すればその火力は言わずもがな。
投下します。
◇
"What are little girls made of?"
(女の子って 何でできてるの?)
"What are little girls made of?"
(女の子って 何でできてるの?)
"Sugar and spice"
(砂糖とスパイス)
"And all that's nice,"
(それと 素敵な何か)
"That's what little girls are made of."
(そういうものでできてるよ)
「素敵なものって何かしら?」
「きっと、私も貴方も持っていないものよ」
「……それを、私は欲しいわ」
◇
やけに小学生の死亡記事が多いな――と、リビングルームで新聞を読みながら少女は考える。
それも、いやに猟奇的で、際限ないほどに絶望的だ。
未だ見つからぬ同一犯による連続殺人、小学生による猟奇的殺人、屋上からの落下事故。
なんて――絶望的なんだろうか、そう考えると少女――『江ノ島盾子』の本能が疼く。
「メ、メ、メ、メシウマァ〜〜〜〜〜〜wwwwwwwwwwwwwwなんつて」
「こんなことしてる場合じゃないのに…………早く……犯人に会わなきゃ…………」
ころころと自身のキャラクターを入れ替えながら、江ノ島盾子は記事を読み返す。
この事件群にはあからさまに、絶望的に隠す気が無いんじゃないかってぐらいに、黒幕がいる。
ただし、その黒幕を発見することは――私様以外には相当に難しいだろう、と江ノ島盾子は考える。
少々の差はあるが、この事件は江ノ島盾子が元の世界で起こした事件に似ている。
動機と手段、そして密閉した空間――生徒会連中が死んだ時のように、この小学生たちも、また。
なんて、絶望的なのだろうか。
「私の計算上、犯人は小学校にいることは間違いありません」
「にょわ〜☆それも、聖杯戦争のためっていうよりも〜〜ただの趣味だにぃ☆」
「うぷぷ……それにしても酷いなぁ、そういうことならボクを誘ってくれればいいのに」
「というわけでアタシ、放課後に小学校行くけど、アンタも来るよね、ランサー」
◇
「放課後はごめん!今日は用事あるんだ」
小学校――三年生教室。
それぞれが仲良しのグループ同士で固まりながら、他愛のない会話を行っている普通の教室。
最近の猟奇事件は恐怖の象徴であると同時に絶好の話の種である、誰もが自分は事件に巻き込まれないと信じきっている。
いや、信じなければならないのだ。そうでなければ、この教室は毎日がしめやかな葬式会場へと変貌を遂げる。
明るさを装い、平凡を装い、そして何とかやっている教室である。
だから、日常は続く。
彼女もそんな日常を維持するグループの一人である。
茶色をした明るい髪色、その髪はツインテールにまとめられ、顔には困ったような笑顔を浮かべている。
人目を引く――明るい可愛らしさ、『高町なのは』である。
「それに、犯人がまだ見つかってないでしょ、危ないよ」
「……うん、そうだね」
陰が差す友人の表情に、高町なのはは焦燥感に駆られる。
この事件もまた聖杯戦争によって引き起こされたものならば――早く解決しなければならない。
心臓が早鐘を打つ。
この問題を解決できるのは、自分しかいない。
◇
自分だけであると、互いに思い込んでいる。
四年生教室――『木之本桜』と『大道寺知世』は互いに、自分だけが剣を持っていると思い込んでいる。
いや、正確に言えば違う。
自分だけが聖杯戦争の参加者であると思い込みたい。
一般的な小学生ではない別の顔、カードキャプターとしてのさくらを大道寺知世は知っている。
危険もあるが、それを受け入れて応援してくれている大切な友だちであることを木之本桜は知っている。
けれど、聖杯戦争は人が人を殺す。
易易と秘密を開示出来ない。
聖杯戦争に人を巻き込むということは地獄への道連れを作るということであるから。
それでも。
「知世ちゃん……」
「さくらちゃん……」
ごくりと唾を飲み込む。
チャイムが鳴る。
言おうとした言葉が生まれるまでもなく、チャイムによって掻き殺される。
「ううん、なんでもないよ」
「ええ、私もですわ」
お互いがお互いに、一人でそんな危険なことを行っていると知れば見過ごせないから。
例えNPCであろうとも、大切な親友であることを知っているから。
だから、二人は寄り添って何も言わない。
言えない。
ぎゅうと、さくらが知世の手を握った。
その手を知世は握り返す。
僅かに震えていた。
◇
『輿水幸子』というアイドルが、自分の通う中学校にいることを『山田なぎさ』は初めて知った。
ショートカットで、自分のことをボクだなんて言う奴で、自分のことをカワイイと言い張って憚らない変なアイドルで、でも彼女は『海野藻屑』じゃない。
そんなことは知っていたけれど、それでも廊下で初めて輿水幸子とすれ違った時、もしかしたら彼女は海野藻屑じゃないのかと思った。
でも、彼女の両脇には『白坂小梅』と『星輝子』というアイドルがいて、
だから、聞こえる方の耳を私に向けている藻屑は、ここにはいないんだな、と思って。
無性に悲しかった。
「ま、落ち込んでばかりもいられないけどね」
気を張り直す、持たされた実弾はあまりにも現実離れで、まるで夢に撃ちこんでいるかのようにふわふわとしているけれど、それが私の選んだ実弾。
砂糖菓子の弾丸にもう一度会うための弾丸。
山田なぎさにもう一度会うための弾丸。
返り血を浴びたアーチャーの姿を見ながら、『海野藻屑』は考える。
何人殺したんだろうか、どれほどぼくは山田なぎさに近づけているんだろうか。
安楽椅子に身を委ねながら、届きそうな程に近い空に手を伸ばしてみる。
どれだけ伸ばしても空は掴めない。
海野藻屑は、人魚姫の夢を見ていた。
魔女と契約して、山田なぎさに会うための足を手に入れたけれど、
山田なぎさは自分を助けてくれた人魚姫に会うために、魚の尾びれを手に入れる夢。
何時までも何時までも会えないまま、お互いが泡になって消えてしまう夢。
とても悲しくて、でも夢だ。
きっと、夢だ。
◇
夢を見ていました。
とても、とても、楽しい夢を。
賀茂さんが帰ってくる夢。
狐に生まれ変わって北海道から、自分の家まで一生懸命走って帰ってくる夢。
夢の中で私は普通の女の子で、誰も死んでいなくって、何時までも楽しく暮らす夢。
駄目ですよね、私がそんな夢を見たら。
でも、許してください。
夢を見ただけなんです、そんなとても楽しい夢を……
『桂たま』が眠りから目を覚ますと、変わらない現実が広がっていた。
何一つして変わってはいないし、何も終わってもいないし、何も始まってはいない。
桂たまは一人のままだ。
◇
一人は寂しい。
そんな当たり前の事実を、『輿水幸子』も『白坂小梅』も『星輝子』も知っている。
だから、三人で集まって昼食を食べていた。
「フフ……今日もきのこ、明日もきのこ、明後日もきのこ、美味しいぞきのこ」
星輝子はきのこの炊き込みご飯をゆっくりと咀嚼し、輿水幸子は
「見てください、料理も完璧だなんて流石カワイイボクですね、食べてもいいんですよ?」
などと、自分の作ったお弁当を皆に見せびらかし、
二人のそんな様子を見ながら、白坂小梅はホットドッグを食べながら微笑んでいる。
「幸子ちゃん……輝子ちゃん……今度、映画……見に行こうよ……」
「いいね……マタンゴ2015……見に行こう」
「ホ、ホラー映画は駄目ですよ!映画館の人がボ、ボクのカワイさに夢中になって、映画どころじゃなくなっちゃいますから!」
「フフ、きのこは友だち……怖くない」
「うっ、ボクはカワイイ子ですから」
「映画じゃなくても……い、いいけど……でも……私たちで……何かしたいな」
「私たち……」
「ボク達……」
「うん……」
「いいですね!」
思い出が欲しい。
聖杯戦争はきっと辛いけれど、それでもここにいる他の二人は偽物かもしれないけれど、
それでも、友情は本物だから。
だから、辛いだけじゃなくて、楽しい思い出を残したい。
◇
何一つ、残されていない。
だから、取り戻しに来たのだ。
『大井』を大いに驚かせたものは、自身に支給された高校の制服ではなく、自身の学年である。
流石に、高校一年生からやり直すことになるとは予想だにしていなかった。
だが、些細なことである。
大手を振って、高校に通えるというのはありがたい。
攻勢に打って出るにあたって、欲しいものは何よりも情報である。
ならば、それを収集するに相応しいのは人の集まる場所だ。
教育機関はそれに最適だ。
元の世界の艦娘に似た自分の友人を名乗る女子高生達と会話し、つまらない授業を受け、学食で昼食を食べる。
あまりにも平穏な世界。
きっと、北上さんが死なない世界。
聖杯を手に入れた暁には、この世界で北上さんと暮らすのも悪くはないのかもしれない。
そんなことを考えていると、声を掛けられた。
「すいません、隣良いですか?」
「どうぞ」
「どうも〜いいってさ絵里ちゃん」
「ありがとうございます」
女子高生の二人組、見覚えはない。
友人なのだろうか、一人はまさしく美少女といった容姿をした少女で、もう一人はボブカットの全体的にふわふわとした少女だ。
しかし、大井にはどうでもよいことである。
◇
『雪崎絵理』が『玲』に声を掛けられた理由は非常に些細なことであるため、どうでもよいことである。
重要なのは、そこから何となく一緒に昼食を食べようという話になったことだろう。
たまたま二人分席が空いていたテーブルに座り、絵里はラーメンを玲はドーナッツを、これが昼食なのかと疑われるほどの量を注文していた。
「そういえば絵理ちゃん?」
「なに?」
「『火吹き男』って知ってる?」
食事も一段落して、絵里はオレンジジュースを、玲は更に注文したホットスナックをぱくつきながら、昼休みが終わるまでとりとめのない雑談へと移行する。
「初めて聞いたかな」
「そーなんだ、もっと有名だと思ってたよ。
それで、火吹き男って言うのは街中をぴょんぴょん跳ねて、火を吹くおばけなんだってさ〜」
「チェーンソーを持って?」
「いや、チェーンソーは持ってないけど」
「ごめん、何でもない」
どうやらチェーンソー男とはまた別に怪人が出る街らしい、あるいはその男こそが聖杯戦争に挑むサーヴァントなのだろうか。
「でもさ、スゴイことだよね。殺人が起こって、バネ足はぴょんぴょん跳ねて、それでもわたしたちはこの街で平穏無事に生きてる」
「きっと」
絵里は一気にオレンジジュースを飲み干して、言った。
「玲ちゃんが襲われると悲しい人が怪人と戦ってるんだよ」
「結構素敵な考え方だね」
◇
「結構、素敵なシステムだね」
江ノ島盾子は外で遊ぶ小学生から、小学校の噂話を不審者として通報されないように聞き取った。
その結果、掴んだものはあまりにも陳腐な、嫌いな人間を呪い殺す儀式――『死神様』である。
猟奇殺人が起こってこの儀式が生まれたのか、この噂が先にあって猟奇殺人が起こったのかはわからないが良い手段である。
殺されたのは死神様で呪われたからだ、それが真実であろうと嘘であろうと、人の死というセンセーショナルな事実は噂を真実として拡散させる。
そして、一度成功したと扱われた儀式は、きっと二度目、三度目を誰かが行い――そして、誰かが言えばいい、アイツが死神様を行った。
それが真実であれ、嘘であれ、発生するのは正義の私刑、他愛のない勧善懲悪。
きっと、見えないところでこの小学校は絶望的に病んでいるだろう。
「じゃあ、アタシもちょっとやってみようかな。死神様」
『江ノ島盾子』の手にかかれば、小学校への侵入など容易い。
と言っても、こっそり忍び込んだだけのことであるが。校舎の裏、動物の墓は簡単に見つかった。
しかし、教師が見張っている。
「…………やはり、上手く行きませんね。人生は何時だって絶望的です。
面白く無いです、これじゃあ小学生も呪い殺したいときに呪い殺せないじゃないですか、悲しいですね……」
身体からイメージとしてのきのこを生やしながら、小学校への侵入が無駄に終わったことを知る。
「てことはぁ〜小学生は深夜に学校に侵入してまで呪ってるのかな?うわぁ、絶望的に陰鬱!」
「教師が見張りを行うことで、その噂の真実性を補強し、教師のいない深夜にしか儀式を行わせないことで、より『死神様』は神秘性を帯びる、中々やりますね」
「……アタシ、かなり犯人に興味湧いてきた」
◇
「やはり、あの娘に興味があって?」
「あっえっ……と……はい」
ある歌姫が切っ掛けとなって賑わっている西洋風の市民劇場。
もうとっくに時計の針は夜を指している。
チケット売り場で突然に係員に話しかけられた『中原岬』はどもりながらも何とか答えることが出来た。
別に歌に興味があったわけではない、しかし己のサーヴァントが引きこもってばかりいないで外出した方が良いと言うので、
なるべく同年代の人間が来なさそうな場所を選んだに過ぎない。
もっとも、その判断は誤りであった。
会場へと進む客の流れには少なくない数の少女の顔がある。
だが、今更引き返すこともできない。
覚悟を決めて、中原岬は観客席へと進む。
ステージ上の少女が、優雅に一礼。
そして、歌唱(クライ)歌唱(クライ)歌唱(クライ)
歌詞の意味など、一単語も理解できない。
それでも、中原岬は気がつくと涙を流していた。
自分が人生の中で取り零してきたものの一つは、この歌なのだと思った。
◇
市民劇場の控室。
少女のための歌姫――『ララ』は鏡を覗きこむ。
そこに映るものは己の躰ではない、自分と同じく人形でありながら祖を違える者。肉体を持たぬ人形。究極の少女の器。
ルーラー『雪華綺晶』が映っている。
ぱち。 ぱち。 ぱち。 ぱち。
「素晴らしい歌でしたわ、ララ様」
「ありがとう……ルーラー」
「まぁ、ルーラーだなんて他人行儀な言い方はおよしになって。
私も貴方もお人形、結局は歌い、踊る快楽人形。生まれも育ちも違っても、お人形仲間ではありませんか。
ねぇ、ララ様。私、貴方と一緒に歌いたいわ、いいでしょう?」
「ええ、いいわ……お人形さん、何を歌いましょう?」
「女の子のための歌がいいわ」
◇
「『フェイト・テスタロッサ』様……貴方が欲しいものは?」
「欲しいものは……母さんの、幸せ」
己のサーヴァントにも問われたものを、フェイト・テスタロッサは再び答える。
そう答えるたびに、胸をじくりと蝕むようなものがある。
それでも、構わない。
それこそが真実の望み。
フェイト・テスタロッサの祈り。
月明かりの下、窓ガラスに移ったルーラーはフェイトに上記の問いを投げかけた。
何故と問いかければ「マスターのメンタルチェック」と嘲笑を浮かべながら答える。
無意味と避けようとすれば、この質問に答えてくれれば、フェイト・テスタロッサにとって重要な情報を与える、と。
故に、フェイト・テスタロッサは答えた。
何故か湧いてくる悲しみに堪えながら、答えた。
「では、フェイト・テスタロッサ様……貴方に重要な報告がありますわ。
日が変わると同時に、貴方はルーラーの権限を用いて、マスター全員に狙われるように仕向けられます」
「…………え」
どういうこと、と聞き返す間もなく、ルーラは消えていた。
夜闇が、フェイトの体を侵食するかのように取り巻いていた。
◇
夜はニートの味方だ。
太陽は有職者を照らすためにあるが、夜の闇は無職を包むためにある。
そんな、どうでもいいことを考えながら、自室にて『双葉杏』はPCを起動する。
聖杯戦争は最悪だが、この状況自体は悪いものではない。
働けば働くほどに死に近づくのだ、むしろ働かない方が正しいと、世界がニートを肯定している。
だから、何時か来る戦いのことをなるべく考えないように器用にやるしかないのだ。
そんなことを考えていながらネット対戦ゲームを行っていたら、自キャラが完全敗北したのでふて寝を決め込むことにした。
眠れない。
『諸星きらり』は今日も眠れなかった。
早々に結果が出るだなんてことは、全く思っていなかった。
それでも、月に手を伸ばしているかのようにまるで手がかりが掴めない。
あの学校で諸星きらりに刻み込まれた呪縛は、諸星きらりの劣等感を煽り立てる。
バーサーカーのために、何も出来ていない自分が嫌になる。
それでも、自分を奮い立たせる呪文のように心のなかで唱える。
「ハピハピ……するにぃ……」
アイドルであることすらも忘れてしまえば、自分の心は死んでしまうだろう。
◇
初めての戦いは、もう自分の心のようなものは死んでしまったのだなぁ、と思う結果にしかならなかった。
相手は同じランサーのサーヴァントで、マスターはか弱い少女で、
マスターの方を狙わせたら、敵のランサーは防戦一方になって、あっさりと死んだ。
逃げる少女を見ても、特に何も思わなかった。
初めての戦いは、『シルクちゃん』にとって、そのような思い出す価値もないものだった。
◇
結局、死神様が心に引っかかったままであったので、『江ノ島盾子』は小学校に忍びこむことにした。
時計は11時を指している、守衛はいるだろうが、少なくとも死神様とやらを試すのに邪魔は入らないだろう。
校舎を囲う壁を助走をつけて跳び越え、小学校内に侵入する。
校舎の裏、動物の墓を阻むものは何も無い。
死体を13個揃えて、死神様とやらを3回ぐらい呼んで願えばいいとのことなので、虫の死体を用意する。
本当は、大切に飼っていた猫をハンマーで潰した死体を捧げるのが一番良いのかもしれないが、それは面倒臭い。
現段階ではある手札で勝負するしかないのだ。
「死神様、死神様、死神様」
「誰も殺さなくていいから、アタシとお話しない?」
夜の静寂に包まれたまま、校舎の裏には何の変化も訪れない。
ただ、無関心そうに月光が動物の墓に降り注ぐのみ。
他愛もない陳腐な終わり、ありきたりなガセ。
「こんばんは」
「絶望的に……時間の無駄…………じゃない……みたいですね」
ではなかった。
江ノ島盾子の背後から、少女が現れる。
闇の中でもはっきりとわかる、白。
まるで、天使のような少女。
「死神様にごようですか?」
「うぷぷ……違うよ、僕が話したいのは君だよ」
「あ、自己紹介してないね。アタシ、江ノ島盾子。趣味と特技は絶望。最近は生徒会を殺しあわせて、愛する人間ぶっ殺しました。よろしくね」
「ご丁寧にどうも、『蜂屋あい』です」
「この時間帯だと誰かに補導されるし、明日の放課後にでもお話でもしましょうよ。てかLINEやってるw?」
「LINEはないですけど、ケータイはもってますよ」
「じゃあ、メアド交換しよっか」
「QRよみこみますね」
「はいはい、ところで……アンタ何人殺した?」
「……わたしはだれもころしてないですよ」
「ふーん……じゃあ、アンタのお友達の死神様は何人殺したの?」
「……死神様にねがっても、人がしなない…………だから、まちきれなくなって、あせって、ころしちゃう、こまった子って、けっこう多いんですよ」
「へー、もう手を下す必要すら無くなったんだ。スゴイね」
校舎の裏、天使のような笑みを浮かべて、絶望と悪魔が言葉で踊って、前夜祭の話は終わり。
◇
私は運命(Fate)を否定する――と、彼女は言った。
◇
――愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。
あの詩人の言葉が蘇る。
愛する娘が死んで、彼女は何度命を絶とうとしたことだろう。
それでも、保存液の中の死体はまるで眠っているかのようで、今にも目覚めそうで、だから、彼女は死ぬことが出来なかった。
娘が起きた時に、誰も待っていなければ――きっと、彼女は寂しがるだろうから。
蘇生のための研究に没頭する狂気の魔導士は、そうやって保存液の中の娘を見る時だけは母親の顔をしていた。
――愛するものが死んだ時には、それより他に、方法がない。
あるいは、自分の行為の果てに奇跡は訪れないのかもしれない。
如何に手を尽くそうとも、結局のところ娘は蘇らないのかもしれない。
それでも、どれほどの犠牲を払っても、例え世界を滅ぼしても、一つの世界で足りないのならば、平行世界の何千何百の可能性を積もうとも、
蘇生の可能性を施行し続けなければならない、娘の母親であろうとするのならば。
――けれどもそれでも、業〈ごう〉(?)が深くて、なほもながらふことともなつたら――
生者を救うための方便として、娘は天国に行ったのだという優しい嘘はある。
だとすれば、死んだ私は地獄に堕ちるのだろう。
太陽に手を伸ばすかのように、地に堕ちた私は娘のいる天に向けて手を伸ばすのだろう。
だから、絶対に死ねない。
私の死によって娘の蘇生の可能性が潰えることは許せない。
だというのに、この身は病に蝕まれ、もう先は長くない。
――奉仕の気持に、なることなんです。
本来ならば、生命蘇生の技術を研究するつもりだった。
だが、足りない。時間が圧倒的に足りていない。
だから、残された時間で、私は無垢なるものを蹂躙し、聖なるものを陵辱し、尊き物を破壊する。
聖杯とは――誰もが信じぬ幻想、だがしかし、その技術体系そのものは本物である。
だから、私はこの聖杯戦争を通し、少女聖杯と聖杯を完成させ――娘を。
『アリシア・テスタロッサ』を蘇生させる――と、『プレシア・テスタロッサ』は言った。
◇
少女を殺すのは、常に大人だ。
◇
「くすくすくすくす、ところでマスター?」
「平行世界の貴方の娘がこの会場にいると言ったらどうします?」
◇
・ルーラーからの伝達(この伝達は基本的には携帯かPCメール、両方を所持していない人間には、雪華綺晶の手によって文書の形で直接配達された。
なお、以下の文章は実際に配達された文書の大意である)
・予選通過おめでとうございます、殺し合い頑張ってください。
・諸事情につき、マスターの一人であるフェイト・テスタロッサを捕獲することになりました。
別紙にて情報(姓名、顔写真)を提供いたしますので、協力していただける方は、フェイト・テスタロッサを生かして図書館まで連れてきて下さい。
・フェイト・テスタロッサを引き渡していただいたマスターには令呪一画が報酬として与えられます。
(フェイト・テスタロッサを殺害してもルーラーからペナルティを与えることはしません)
・聖杯戦争用に掲示板を用意しました、ご自由にどうぞ【URL】
・予選通過の報酬として、五千円分の電子マネーを用意しました(直接配達されたものに関しては、QUOカードが同封されていた)
セイバー 2組
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画版)&沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
中原岬@NHKにようこそ!(小説版)&レイ(男勇者)@DRAGON QUEST IV 導かれし者たち
アーチャー 2組
大井@艦隊これくしょん(アニメ版)&我望光明@仮面ライダーフォーゼ
海野藻屑@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない&森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画
ランサー 4組
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴&本多・忠勝@境界線上のホライゾン
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは&綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)
江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ&姫河小雪@魔法少女育成計画
双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ&ジバニャン@妖怪ウォッチ
ライダー 1組
星輝子@アイドルマスターシンデレラガールズ&ばいきんまん@劇場版それいけ!アンパンマン『だだんだんとふたごの星』及び『よみがえれバナナ島』 他、劇場版
キャスター 2組
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている&アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
高町なのは&木原マサキ@冥王計画ゼオライマー
バーサーカー 3組
白坂小梅@アイドルマスターシンデレラガールズ&ジェノサイド@ニンジャスレイヤー
雪崎絵理@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ&チェンソー男@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)&悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)
アサシン 4組
桂たま@天国に涙はいらない&ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)&プライドあるいはセリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師
山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない&クロメ@アカメが斬る!
ララ@D.Gray-man&ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド(ジャック・ザ・スプリンガルド)@黒博物館スプリンガルド
エクストラクラス 2組
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ&クリシュナ@夜明けの口笛吹き
玲@ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス&ある少女@さいはてHOSPITAL
【アナウンス】
1.感想は絶対に今日の内に終わらないので後日
2.聖杯戦争開始に伴っての様々な事象もちょっと休憩したいので数時間後に
3.午前中辺りに終わるつもりでした、おまたせしてすいません。
ですが、日曜日を全部消費した僕の気持ちを汲んで許してください。
4.それでは、またのちほど。
最後にもう一度、皆様本当にありがとうございました!
おおお!選考&発表乙です!
全員集合OPとは素晴らしい。実に少女の集う聖杯戦争らしい前夜祭でした。本編も楽しみにしております!
おお、OP乙です!
やはりこの形式は嬉しいし、雰囲気出てる
選考&発表お疲れ様でした!
やっぱり全員集合のこの発表形式は燃えますね!各々の二次聖杯で特徴が出る形式なのでこちらでも見れて嬉しいです!
一日ご苦労様でした。この後も頑張って下さい!
【1】
予約開始は2015/05/05 00:00 です。
【2】
≪状態票テンプレ≫
【X-0/場所名/○日目 時間帯】
【名前@出典】
[状態]
[令呪]残り◯画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1.
2.
[備考]
【クラス(真名)@出典】
[状態]
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1.
2.
[備考]
【3】
予約期間:5日+延長2日
選考&オープニングお疲れ様です!
こういう風に徐々に発表する形だと妙にドキドキしますね
お互いを想い合ってる故に言えないさくらと知世の話がすごく良かったです
今後の展開はリレーなのでどうなるかわかりませんが、原作を知ってるとやっぱり、今のあの子とあの人の戦いを見てみたいですね
私も書けるなら書いていきたいです
採用ありがとうございます、及びオープニング投下お疲れ様です
少女たちの交錯に魅せられる素晴らしいオープニングでした
事後報告になってしまいましたが、Wikiの方へ収録して頂いていた拙作「ララ&アサシン」候補話につきまして、
本文の行間、及びステータス欄の文字化けの訂正などの微修正をさせて頂きました
質問です
ひとつは>>1 さんに
リレーの開始時刻は他聖杯同様一日目未明・早朝からになるのでしょうか
そしてもう一つ
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂのキャラクターに関して、劇場版での把握は可能でしょうか
よろしくお願いします
>>730
大体が学生ですので、早朝開始にします。
後者に関しては、個人的なことを言うのならば原作を読んで欲しいですが、
映画版も名作ですので、把握には問題無いと思います。
ただ、NHKにようこそは小説版で把握してください。
漫画版の岬ちゃんも可愛いですが、よく似た別キャラだと思います。
輿水幸子&クリエーター
江ノ島盾子&ランサー
双葉杏&ランサー
予約します。
桂たま&アサシン(ゾーマ)
予約します
大道寺知世&アサシン、予約します
海野藻屑&アーチャーを予約します
お疲れ様です
>>1 さんに質問させて頂きたいのですが、この聖杯戦争が普通の聖杯戦争ではなく、他ならぬ少女を意識的に集めて行う特異さを持つものであるということについては、呼び出されるサーヴァントたちはあらかじめわかっていると考えていいのでしょうか
>>736
そう考えていただいて構いません。
>>737
ありがとうございます
ララ&アサシン 予約します
一つ質問です
公開されたフェイトちゃんの情報にランサーの情報は含まれているんでしょうか
それとも名前と顔だけでしょうか
>>740
ランサーの情報は含まれていません。
シルクちゃん&ランサー
予約します
参加者一覧画像がWikiに上がってましたね、お疲れさまです
少女聖杯なだけあって華やかなマスター一覧だ
シルクちゃんの画像がドット絵なのは敵キャラ時のグラフィックがほぼ全裸だからですか?
桂たま&アサシン(ゾーマ)
投下します
あと、何も言わずにトリップ変えましたが、◆tHX1a.clL.です
早朝。
打ち棄てられたはずの廃教会の郵便受けに、一通の手紙が放り込まれる。
配達の青年は少し不思議そうな顔をしたが、別段気にせずに郵便配達用のスクーターを走らせて来た方向へと帰っていった。
スクーターのエンジン音が離れて数分。
油の切れた扉がきいきいと耳障りな、小さな悪魔の上げている悲鳴のような音を立てて開いた。
ぼろぼろな教会から出てきたのは、小さな小さな女の子。
「……これって……」
大きなリボンが特徴的な少女、桂たまは郵便受けに入れられたすみれ色の薔薇模様の便箋を手にとってしげしげと眺める。
宛名は書いてない。
もしかして配達ミスだろうかなどと考えていると、彼女の頭に声が響いた。
『おそらく、 ルーラーからの つうたつだろう』
まるで、地獄の底から響いてくるような声。
たまは物怖じせず、その言葉を反芻するように繰り返した。
「ルーラー……」
ルーラー、という存在が居るという知識はたまにもあった。
裁定者として聖杯戦争の進行を担う者。
つまり、アパートの管理人さんとか、スポーツの審判さんみたいなものなんだろうと考えていた。
その人からの手紙。
なんだろう、と少し考えこむ。
そしてすぐに一つの心当たりに辿り着いた。
「この教会、勝手に使っちゃったの、やっぱりいけなかったんでしょうか」
そういえば、目がさめたからなし崩し的にこの教会に住み続けている。
それが悪かったんじゃないだろうか。
ぽやっとしたまま少しずれたことを言うたまの脳内に、再び声が響く。
『なにあれ よんで みないことには はじまらない。
はやく もどって くるのだ』
「そうですね、すぐ戻ります」
ぱたぱたと小さな体で細やかに動き、再び不釣り合いな扉を開く。
再びきいきいと悪魔の悲鳴のような音を立てて、教会は少女を飲み込んだ。
すみれ色の薔薇の便箋の中身を、たまと彼女のサーヴァントであり念話の声の主であるアサシンの二人で眺める。
書面にはいくつかの事項が書かれていた。
たまが予選を通過したという旨。
聖杯戦争用に掲示板をインターネットに用意したという旨(たまは機械系には疎いのでほとんど関係ないが)。
ついでに、5000円分のQUOカードも入っていた(諸事情により億単位の資金を持つためこれもほとんど関係ない)
そして、もう一枚。
マスターの一人であるフェイト・テスタロッサを捕獲対象に定めたという旨を書いた書類と、彼女の顔写真が入っていた。
生死は問わず、もし生かしたままフェイト・テスタロッサをルーラーに引き渡したマスターには令呪一画が報酬として与えられるらしい。
「『ほかく』 か」
アサシンが呟く。
「何かあったんでしょうか」
たまがアサシンに問う。
しかし、裁定者側の都合などアサシンに知る由もない。
「そなたは じぶんのみ のことを あんじておればよい」
アサシンの言葉で、たまの背筋が少しだけ伸びる。
「よせんつうか が かくていした ということは きょうから せんとうが ほんかくてきになる ということ。
これまでのように かくれて すごすことも ままならぬ やもしれぬ」
アサシンに言われて、ようやく実感した。
戦争が始まるのだ。
これまでは運良く誰にも見つからずに過ごせてきていたが、これからは違う。
遅かれ早かれ、参加者がたまを探しだす。
「バラモスが かえらぬ うちに この きょうかいを おそわれれば そなたは なにもできず しぬのみ」
言われて気づく。
アサシンは『バラモス』の生存中は一切の戦闘行動が行えない。
つまり『バラモス』が生きている間にどこかの組がたまを襲いに来たら、その時は成すすべなく殺されてしまうのだ。
どうすればいいのかわからず、慌てふためくたま。
アサシンは特に表情を変えず、ただ闇に向かって指を弾いた。
弾いた指の音をきっかけに、闇の中からいくつもの『得体のしれないもの』が現れる。
「キラーアーマー」 血に染まった鎧を身に纏う物言わぬ騎士。
「ガニラス」 鮮やかな青い甲羅をした、人ほどの大きさの蟹。
「ミミック」 宝箱から覗く怪しい目をした化け物。
「ベホマスライム」 イチゴゼリーのような赤く半透明の頭をしたクラゲ。
「あらかじめ よびだしておいた モンスターだ」
アサシンのスキルの一つによって生み出された、とても強そうなモンスターたち。
彼らに見惚れた後に、得心したとばかりにアサシンに彼らについて聞いた。
「いざという時は、この人たちに戦ってもらうんですね!」
「ちがう」
たまの言葉を突っぱねて返ってきたのは、彼女が予想だにしなかった答え。
「こやつらは しょせん モンスターに すぎぬ。
せめてくるのが アサシンや キャスターの サーヴァントならば かずにものをいわせて わたりあえる やもしれぬ ……
しかし、 さんきしや バーサーカーとでは たたかいに ならぬ。 まず いっぽうてきに ころされる のみだ」
三騎士、セイバー・アーチャー・ランサーのクラス。
バーサーカー、場合によっては三騎士すら凌駕する性能を持つクラス。
戦闘に適したクラス相手なら、戦闘能力に優れたキラーアーマーでも二合切り合えればいい方だ。
「じゃあ、この人たちは一体……?」
「じかんかせぎだ」
たまのくりくりとした瞳がひときわくりくりと開かれる。
そのエメラルドの原石のような深い翠の瞳が、光を吸ってきらりと輝く。
「ごくらくちょう」
どこに潜んでいたのか、空から二羽の鳥が舞い降りる。
赤みがかった毛並みの鳥は、どこか浮世離れした雰囲気を身に纏っていた。
「しゅうげき されたなら、 この きょてん、 この モンスターたちを かえりみるな。
ごくらくちょう と ともに わしのもとまで にげてこい」
「で、でも、そうしたら、この人たちは……」
「あしどめ ていど ならば できる」
足止め、という言葉がたまの胸を少し締め付ける。
たまは必死に、「でも、それじゃ、それは……」とぶつ切りでまだ言葉にならないままの感情をぶつけようとする。
「なにを まよっている? ねがいを かなえるために ぎせいは つきものだろう」
しかしアサシンはたまの言葉を待たず、至極愉快そうにそう言い放った。
願いを叶えるために犠牲はつきもの。
その一言が、再びたまの胸をきゅっと締め上げる。
「あれらは いきものでは ない。 ただの まりょくの かたまりだ。
それが きえるのは し ではない。 ただの しょうめつ よ」
まるで世界の常識のように。
夢がいつか醒めてしまうだと言うのと同じように、たまにそう諭す。
そんなアサシンの言葉を聞いて、たまの胸が居心地悪げに三度うずく。
それは紛れもない事実、なのかもしれない。
だが、たまはその事実が、とても心地の良くないものに思えた。
「では わしは ふたたび じんちの さくせいへ むかう。
なにかあれば ねんわを つかうのじゃ」
言い淀むたまを傍目に、アサシンは会話を切り上げ、霊体化した。
そうして、少々賑やかだった廃教会は沈んだような、停滞しているような沈黙と空気を取り戻した。
アサシンいわく『生き物ではない』モンスターたちと、もやもやとした感情を胸に残したたまをその腹中に収めたまま。
◇
青。
あるいは赤。
あるいは紫。
あるいは緑。
降り注ぐ様々な色をした柔らかな日差し。
人が居なくなって相当の年月が経ち、内外装共に寂れてしまっていたが、建物の高くにはめ込まれたステンドグラス越しのその光だけは、今も鮮やかなままだ。
胸の前で手を組み、飾られた十字架と降り注ぐ光に願いを込める。
神の御下で安らかに眠る人達のために。聖杯に願いが届くように。
目を伏せ、黙して祈りを捧げ続ける桂たまの姿は、まるで絵画に描かれた天使のような無垢さを讃えていた。
「……」
ちち、ちちち。家の外から聞こえる小鳥の鳴き声。
しゃげー、しゃげー。これは家の中の鳥の鳴き声。
がしゃり、がしゃり。鎧の揺れる音。
かちゃかちゃかちゃかちゃ。木張りの床を爪が弾く音。
祈りの裏で聞こえる音たち。
目を開き、音たちの方に向く。
音を発していたモンスターたちは、今もたまの護衛のためにせわしなく動き続けている。
そんな様子を見ながら、たまの脳裏に大魔王たるアサシンの言葉がよみがえる。
―――願いを叶えるために、なにかを犠牲にする。
アサシンは言った。
彼らはアサシンが呼び出したモンスター、命を持つ生命ではないと。
魔力に寄って生み出され、魔力が尽きれば消えるだけの作り物だと。
でも、作り物だとしても。
また、きゅうと胸が締め付けられる。
締め付けられた胸の内を撫でるように、肉付きの悪い胸の上に手をおいて、こころの代わりに服を握りしめる。
彼らを自分のために犠牲にして、また犠牲を増やして、それでも救いを求めて祈り続ける。
たとえそれが作りものだとしても、今はああやって生きている彼らを見捨て、自分だけが生き延びる。
この先、戦争が激化すればそれを受け入れなければならない時がくるかもしれない。
だとしても。
今のたまには、その決断が、どうしても下せなかった。
胸で握りしめた小さな手。
その甲に刻まれている令呪は、迷いから抜け出せない彼女の心を嘲笑うかのように醜く歪んでいた。
【B-5/海辺の廃教会/一日目 早朝】
【桂たま@天国に涙はいらない】
[状態]健康、元気
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]ルーラーからのおてがみ
[所持金]億単位(銀行に貯金してある)
[思考・状況]
基本行動方針:戦闘はアサシンに一任
0.教会からはあまり出ない
1.大魔王城完成まで教会でひっそり暮らす
2.モンスターさんたちを、犠牲に……?
[備考]
※フェイト・テスタロッサの名前と顔を確認しました。
※廃教会内にキラーアーマー×10、ガニラス×10、ミミック×5、ベホマスライム×3が配置されています。
さらにたまが逃げ出せるようにごくらくちょう×2が潜んでいます。
彼らは勝手に増えませんが、今後アサシン(ゾーマ)の采配とたまの要請次第で増えることはあります。
◆
ごぎ、がが、が、ぎご。
魔力を注ぎ込むごとに、外壁が積み上がっていく。
A-5-B-5に作成されている陣地『大魔王城』は着々とその姿を万全へと近づけていた。
外壁も、残す所あとすこし。
これが完成すれば、『ヤマタノオロチ』『ボストロール』が召喚できるようになる。
一日目の深夜から二日目の黎明くらいには個室が完成し、たまが大魔王城で暮らす準備が出来上がる。
「バラモスよ。 しれいはみっつだ」
まるで映像の巻き戻しのように音を立ててそびえ立っていく大魔王城を見ながら、後ろで控える自身の宝具『まおうバラモス』に語りかける。
バラモスは逸話にあるような尊大な態度は取らず、顔もあげず、身じろぎもせず、ただ、ただ、敬愛する自身の王の言葉に耳を傾け続ける。
「ひとつ。 わが だいまおうじょうの かんせいまでは こうせんはひかえるのだ。
そなたのし、 それはすなわち だいまおう しゅつじんの ときのこえ となる。
せっきょくてきな こうせんは 『だいまおうじょう』 かんせいを まて。 かんせいした そのときこそが うってでる ときだ」
バラモスはただの宝具。
戦闘性能こそあるものの、一線級の英霊との戦いで生き残れるわけがない。
さらに言えばバラモスが打倒されたその瞬間、アサシンはその宝具の効果に則ってすべての参加者に自身の存在を告げてしまう。
こちらの戦力がある程度整うまでにバラモスが負けては面白くない。
バラモスは深く頷いた。
「ふたつ。としょかんには ちかづくな。
れいじゅねらいの さんかしゃ、 さんかしゃねらいの さんかしゃ。 こうせんてきな ものたちが あつまる。
ほうぐに おち、 よわくなった そなたでは しににいく ようなものだ」
通達にあった『図書館への連行』について。
あれを読んだ参加者が、図書館近くに陣取る可能性は高い。
フェイト・テスタロッサを捕まえたものを襲って手柄を横取りせんとするもの。
単純に参加者との交戦目的で図書館近くを徘徊するもの。
どちらにしろ、積極交戦を望むものが目をつけるのが、図書館になるはずだ。
そこで上手く立ち回れれば、様々な有益な情報を得られるだろう。
だが、バラモスの気配遮断はE。参加者にはほぼ筒抜けと言っても過言ではない程のランクの低さだ。
近づけば見つかり、見つかれば追われ、追われれば負ける。バラモスが負ければアサシンが苦境に立たされる。それだけは避けなければならない。
バラモスは深く頷いた。
「みっつ。 なんどもいっていることだが、NPCを きょくりょく きずつけるな。
くだらぬこだわりだが マスターの ねがいだ。 かなえてやろう ではないか」
嗤う大魔王。
その願いになんの意味もないと分かりきっているからこそ、叶えてやる。
もがきたいならもがけ、苦しみたいなら苦しめと。
腹にたまらぬ砂糖菓子にも似た役に立たない優しさで出来た弾丸を武器に、敵と向き合ってからその愚かしさを悟れと。
一切拒絶せずに首にかかった真綿の両端をもたせ、自分の首を締め上げさせてやるまで。
バラモスは深く頷いた。
「では、 いけ。 そのめに せんそうを やきつけて くるのだ!」
「全ては、大魔王様のために」
立ち上がり、うやうやしく礼をする。
そして背を向け、どしん、どしんと歩いて行く。
ただの宝具や、偽のステータス(偽アサシン)などとは程遠い、魔王としての威厳に満ちた振る舞いで。
アサシンは街へ向かおうとするバラモスの背を見ながら少考し、今朝より頭の内を逡巡させていたその名を呟く。
「フェイト・テスタロッサ」
ルーラーからの手紙に書かれたどうにも解せないあの一言。
街に潜む『対象』。裁定者より生死問わずの『捕獲』を命じられた参加者。
その意図する所はなんなのか。大魔王にとって、興味深い人物の一人。
「ルーラーよ。 なにを おそれる。 さいていしゃとも あろうものが なにに おびえている」
もしも通常のルール違反であれば『捕獲依頼』を通達するはずがない。
違反の内容を明示した上で、討伐を行うようにと命ずるだけで事足りる。
ならば、彼女は何者なのか。
存在自体がイレギュラーであるのか。
裁定者にとって不利益を齎す存在であるのか。
それとも、彼女の存在がこの聖杯戦争の中軸たるルーラーに深く関わっているのか。
どうにも気にかかる。
といっても、不快な気がかりではなく。
あえて人間臭い単語で言い換えるならば『探究心』。
この地にすでに立ち込めていた『闇』の見せた綻びが、彼の興味を掻き立てる。
アサシンは立ち去ろうとするバラモスに声をかけた。
「バラモスよ!」
歩んでいたバラモスが足を止め、振り返り、傅く。
「フェイト・テスタロッサの ひととなり、 おぼえているな?
やつも ほかのさんかしゃ どうよう せっしょくは さけよ」
相手がもし、『危険人物』として捕獲を命ぜられたのであれば、関わらない方がいい。
ただ、単なる『危険人物』ではないとしたら……
『何か』がある。
裁定者とは名ばかりで、彼らにも何か『闇』がある。
裁定者側が隠そうとしている秘密がある。
参加者には知られてはならない秘密が、ひとつか、いくつか。
そして、件の少女フェイト・テスタロッサこそがその秘密に近しい場所にいる。
フェイトなる少女がそのことを知っているのか、知らないのかは分からないが、それでも興味深い。
そして、彼女の存在は……きっとアサシンにとって良き『波』を起こす。
「だが もし …… もし、 かのうで あるなら わしの もとまで つれてくるのじゃ。
きけんでないと はんだんできたなら そなたのがわから ほごを もうしでても よい」
バラモスは深く頷く。
そして、続く言葉がないのを確認して、バラモスは再びどしん、どしんと歩き出した。
◆
ゆうしゃ よ ……
よくぞ わしを たおした。
だが ひかり あるかぎり やみもまた ある ……
わしには みえるのだ。
ふたたび なにものかが やみから あらわれよう ……
だが そのときは おまえは としおいて いきてはいまい。
わははは ……… っ。
ぐふっ!
◆
彼の死に際の宣言通り、闇の系譜は続いている。
大魔王の死後、幾つもの魔王が闇より現れ人々に災厄を振りまいた。
数多の並行世界、無限の物語の中で、彼の宣言通り『なにものか』は現れ、世界を破滅へと導いた。
それから、遥か未来のどこかの世界。
なんの因果か、アサシンは英霊として座に記録され、サーヴァントとして呼び出されることとなった。
大魔王としての力を持ち、大魔王としての誇りを持つサーヴァント。
再びこの世に顕現した大魔王の始祖たるアサシンは、仮初の生に何を望むか。
再び世界の闇か。
再び人の破滅か。
再び終わらない苦しみか。
しかし、と作り上げられた偽物の街、自身が呼び出された少女たちの箱庭を見てアサシンは思う。
そこには、今はまだなりを潜めている無色透明の闇があった。
感知できないが背後にある破滅があった。
少しばかりの現在の救済のために永劫続く苦しみがあった。
華やかな少女で彩られた街。
しかしその水面下には願いという泥濁のように底の見えぬ闇と、逃れようのない少女たちの滅びですでに満ち満ちている。
希望のために捧げられた生贄は消えることなく、少女らに苦痛を刻みつけていく。
アサシンが願うまでもなく、たとえこんなちっぽけな箱庭の中でも禍々しき闇の中にある。
アサシンなど関係なしに人は破滅へと自ら歩みだしている。
永久機関のように苦しみは苦しみを生み続けている。
この世界は既に大魔王たるアサシンなしで、一片の綻びもない闇へと向かっているのだ。
彼が生前望んでいた全ての願いが、当の大魔王を差し置いて叶ってしまっている。
これほどにつまらないことがあるか。
顕現したアサシンは、その事実に即座に気づき、大いに興を削がれた。
つまらないを通り越し、大魔王への不遜・侮辱であるとさえ感じていた。
その憤りは、筆舌に尽くしがたいほどであり、当然アサシンを呼び出した『何者か』に向けられるはずだった。
せいぜい、下らぬ願いのために大魔王を呼び出した愚かな人間を持ち得る全ての術により苦痛を与えて殺し、彼の命とその願いをもってその罪を償わせてやろうと考えていた。
そして、アサシンは自身を呼び出したマスターに問いかけた。
『そなたの のぞみは なんだ。 なぜ わしを よびだした』と。
アサシンを呼び出したのは闇からこぼれ落ちたかけらのひとつ。
積んだ死体と流した血で山河を築いた紛うことなき闇。
だのに、前を向き、幸せな世界を夢見てもがき続けるもの。
変えようのない悪魔のくせに、少女で、人間であろうとする存在。
純粋すぎる異物。
桂たま。
悪魔で、人間で、女の子。
彼女の願いを聞いたとき、大魔王は嗤った。
あまりの頓痴気さに声を上げて嗤った。
桂たまの聖杯に捧げる願い。それは『桂たま』という存在の否定。
もし彼女が夢半ばに倒れ、『光』になれずに消えるとしても。
逆に彼女が聖杯を掴み、世界の『闇』として消えるとしても。
彼女は『闇』のままだ。一片も変わることなく、『闇』のままなのだ。
少女でもなく。
人間でもなく。
悪魔のまま、悪魔として、ただただ救われず死んでいくのだ。
もがき、苦しみ、甲斐なく死ぬ。見知らぬ世界の泥濘の中で孤独と共に死んでいく。
それでも犠牲になったもののためと割り切り死ににいくというなら、なんとも素敵な自己犠牲ではないか。
彼女は、その無駄だらけの高尚な精神だけなら人間だ。それは人間をよく知る大魔王たるアサシンも否定しない。
ただ、精神が変わろうと、悪魔が天使に生まれ変われるわけがない。
そんなことにも気づかずに、悪魔がわざわざ人間のふりをしてもがき苦しむ。
アサシンとはまた別のどす黒い『闇』が人への儚い願いを抱き、砂糖菓子のように脆く甘い夢に溺れ、いつかは泡のように消えていく。
これほどまでに滑稽で、これ以上の余興があるだろうか。
世界はすでに闇の中。
人々は勝手に破滅していく。
人間同士で苦しみを押し付け合い、傷つけあう。そんな下らぬ状況。
だが、アサシンは座に帰ることを選ばなかった。
一重に目の前の禍々しい悪魔で、胸焼けするほど人間な、ただの少女の一世一代の喜劇に。
計り知れないほどの、それこそアサシンの削がれた興を埋めてもまだ釣りが来るほど愉悦を覚えたから。
アサシンがこの聖杯戦争に何かを望むとするなら。
それは、桂たまの願いの果てを見ること。
光に憧れ、光であろうともがいた闇の、愚かな夢の終わり。
人ならざる者が抱いた人としての夢という喜劇の幕引き。
心躍るほどに逃れようのない『闇』の物語の結末。
アサシンにとっての此度の聖杯戦争とはすなわち。
少女・桂たまの誕生で始まり。
少女・桂たまの死で終わる。
見知らぬ少女たちとの醜い争いで彩られた、世界でもっとも短く、もっとも美しい、とある少女の叙事詩。
結末だけが定められ、これから書き上げられていく物語を、特等席で楽しみ続けるためのもの。
だからこそ、アサシン/ゾーマは桂たまに従う。
ちっぽけな悪魔であるたまのために大魔王が手ずから戦闘を行うし、助言も行う。
彼女のために他の参加者の夢を破壊し、願いを叩き折り、祈りを粉砕し、彼女の愚かな願いに宝石を散りばめる。
時折彼女の心に石を投げかけ、波紋が起こる様を嗤う。
そうやって、良き従者として、常に隣でもがく悪魔を眺め続ける。
そして、だからこそアサシン/ゾーマは最善の策を選ばない。
バラモスを大魔王城に残し、陣地完成までは攻めてくる者だけを排除するという道を選ばない。
フェイト・テスタロッサへの無関心という道を選ばない。
安定と安寧に塗れた勝利の物語など、面白くない。
桂たまの惑い、怯え、焦り、絶望、更に言えば擬似討伐令を敷かれた相手との接触から生まれる何か。
そういった波が多いほど、舞台は起伏に富み、面白くなる。
どちらも共通して理由はひとつ。
桂たまが自身を呼び出したマスターでもなく。
桂たまの死が自分の消滅とつながっているからでもなく。
自身が願いを叶えるための足がかりというわけでもなく。
ただ、この聖杯戦争における桂たまという存在が、大魔王にとってとても愉快な見世物だから。それだけ。
「さあ マスターよ。
そして このせかいに うみおとされた あまたの ねがいたちよ」
「そなたらの ゆくすえ みせてもらうぞ」
聖杯戦争。
仄暗く深き闇の渦中。
回り続ける舞台の上で、もがき続ける矮小な異物と彼女を囲う演者たち。
アサシン/ゾーマは、嗤いながらその見世物を楽しむ。
【B-4-B-5/孤島/一日目 早朝】
【アサシン(ゾーマ)@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ】
[状態]魔力消費(微小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:たまの ゆくすえを みとどける
1.だいまおうじょうの かんせいを いそぐ
2.ひつようにおうじて モンスターを さくせい
3.フェイト・テスタロッサ に きょうみ。 さいていしゃ の ねらいは?
[備考]
※偽アサシン(バラモス)生存中のため一切の戦闘行動が行えません。
もしバラモス生存中にたまを襲われれば彼女が成すすべなく死ぬということは理解しています。
※B-4-B-5の孤島に大魔王城を作成しています。
準備期間中から作成を開始しており、現在外壁の仕上げにとりかかっています。現在のペースで陣地作成を続ければ二日目早朝には大魔王城が完成します。
※通達における「フェイト・テスタロッサを『捕獲』」という一文に興味を持っています。
もしかしたら彼女が裁定者側(聖杯戦争)についてなにか知っているのではないかとも考えています。
彼女を保護することの危険性も知っていますが、わりと望むところです。
※孤島の周囲の海にだいおうイカ×1が居ます。陸地―孤島間の魔物運搬用で、積極戦闘は行いません。
【偽アサシン(宝具『まおうバラモス』)@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ】
[状態]なし
[思考・状況]
基本行動方針:大魔王城完成まで図書館には近寄らずに情報収集
[備考]
※宝具であるため念話・霊体化は使えません。魔力はアサシン(ゾーマ)のものを使用します。
また、実際のバラモスとは違って状況によって思考判断を行い、分が悪ければ防御・撤退もします。
※彼の持つ気配遮断:Eは『NPCには見つからない』『参加者には隠れていれば見つからない』程度です。
参加者に一人で歩いているところを見られれば見つかります。
※『NPCを極力殺さない』というゾーマの命令を守ります。ただし極力なので必要に応じて殺します。
※早朝、もしくは非常時と判断した場合にのみ廃教会に帰ってきます。
※フェイト・テスタロッサを見つけた場合、彼女の危険性を判断します。
危険ではないと判断した場合、保護を申し出て教会まで連れ帰るつもりです。(ただし生存優先のため、危険であると判断した場合は交戦・逃走もやむなし)
投下終了です
矛盾指摘、修正箇所などあればよろしくおねがいします
あと、ゾーマの二人称は正しくは「そなた」でした
候補作は後で修正しておきます
投下乙です!
たまが踏み入れた聖杯戦争はゾーマの愉悦の泥濘でもあるのか…大魔王の高笑いが残酷で美しい
バラモスの運用法もやはり面白いな
投下乙
ゾーマ様愉悦部だったのか
悪性なのに聖杯に興味ないところがすごい大物感ありますね
投下乙
ゾーマ様やべぇ……やべぇよ……
お願いをできるだけ有効に聞く、良い従者であるからこそ主が苦しむとは……
これは愉悦部ですわ……
色々と溜まっているので延長します。
配下を使った独自の戦法が面白いなぁ
地の文の雰囲気もすごく好きです
しかしこの組も破滅しか見えてこないやつだw
それと、すみませんが予約期限を勘違いしていました
初っ端から申し訳ありませんが自分も延長お願いします
私も延長します
たま&ゾーマ組の投下お疲れ様です。
まおうバラモスと城、魔物群を用いた戦法の面白さもさることながら、大魔王の最期の言葉、その意味合いから、たまの願いと覚悟にそう繋げていくのか……と思わされました。少女地獄というほかない主従ですね。
ララ&アサシン、投下させて頂きます。
◆◆◆◆
Jack be nimble,
(さあさあ ジャック)
Jack be quick,
(いそいで ジャック)
Jack jump over
(ろうそくたてを)
The candle stick.
(とびこえろ)
◆◆◆◆
小さな机と破れたソファが一つずつ。
曇りかけた、古い鏡台が一つ。
貧相な棚が一つ。
棚の中に放り込まれた、前の住人が置いて行ったらしい、くたびれた聖書が一冊。
さして広いとは言えない部屋にあるのは、せいぜいそれきりであった。
あとは――片隅にあつらえられた、畳敷きのスペースの上に、行儀よく膝を揃えて座る人形が一体。
或いは、少女が一人、と言い換えてもいい。
零れるようなブロンドの髪も、濡れた宝石のような瞳も、真っ白い肌も、彼女が腰を下ろした一角には、まるで見合っていない。浮いている。
――本当に、置物みたいに座っていやがる。
己がマスター、ララの横顔を眺めて、サーヴァント・アサシンことウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイドは、そんなふうに考えた。
怪人「バネ足ジャック」としての仮装を解いた姿で、アサシンは、机のそばの古びたソファに窮屈な長い両脚を広げてもたれかかり、片手には空っぽのワイングラスを弄んでいる。
市民劇場の裏手にある、くたびれた通りの色に同化したような、安アパートの一室。
ララに住居としてあてがわれたのは、舞台へ上がる歌姫のイメージにおよそ似つかわしくない、そのような場所であった。
ララはそれへ不満を唱えるでもなく――生身の人間と同じ衣食住を必要としない、ということもあるのだろうが――、むしろ、どこか愛おしんでいるような風ですらあり、アサシンはと言えば、下手に人目につきそうな場所よりはこちらの方がマシだろうと、彼なりの実践的な観点から、この狭苦しい居城(生前の彼の屋敷からすれば、掌の上の小箱のような!)を肯定していた。
ソファのスプリングの鳴らすギシ、という音が、低く響く。
顔を歪め、足を投げ出し、乱暴に背を沈めたアサシンは、一晩の間変わらないララのポオズを見つめる。
――眠る前に、歌はいかが。
昨晩、聖杯戦争の裁定者たるルーラーからの通達があった後、二人きりの部屋でそう言って来たマスターに対し、彼は半ば呆れながら、サーヴァントに睡眠は必要ないことを告げた。
そして気がついた、マスターにも、ララにも、それは必要がないということに。
「グゾルが眠るときには、いつも歌を歌ってあげたのよ」
どこか寂しそうな顔のまま、ララは、この朝まで、同じ姿勢でそこへ座っていた。それはまるで、子供の寝床にあつらえられた御守りのようにも見える。
アサシンは、遠い、彼にとっては、生きていた時すらあまりに遠かった、幼い日の記憶をふとよぎらせる。
顔だけがぽっかりと抜け落ちている、ドレスを着た女性の――死んだ母の肖像。
一人きりの夜に、もぐりこんだベッド。
眠りが恐ろしく、寂しく、得体の知れぬ悪夢を幾つも見たこと。
子守唄を歌うことができても、人形は、眠ることはない。夢を見ることもないのだろう。どれほど長い夜を、どれだけの数、過ごしてきたのか。
見た目こそ少女であっても、彼女は、アサシンが生前に人として生きた時間より、はるかに多くの時間をその矛盾した身に降り積もらせてきたのだ。「変わってゆく」人間に寄り添い、歌いながら。
窓の外で、小さく鳥の啼く声が響いた。
見つめるアサシンの前で、ララが、すうと顔を上げる。アサシンを見る。
「……もう、始まってるのね」
――朝は、同じように来るのに。
その瞳にあるのは、迷いと、当惑と、そればかりでない何かが入り混じった、不思議な光であった。
「私、何も決められなくて。付き合わせちゃって、ごめんなさい」
主従としてまともに向き合ってから、幾度となく呟いた謝罪の言葉を、ララはまた、アサシンへ向かって呟く。
アサシンは眉をしかめて、ふん、と鼻を鳴らす。
「言ったはずだろう。オレは暇潰しをしてるだけだ。
たいがいの遊びはやってきたが、人形との付き合いってのは、さすがに経験がないからな」
なかなか愉快なものだ、と顔に張り付いた悪辣な笑みに乗せて言う彼に、ララは怒るでもなく、ありがとう、と返した。
調子が狂う。舌打ち混じりに顔を背けながら、今後の方針に水を向ける。
「目下のところ、どうするか…だな。
前にも言った通り、癪な話だが、オレは大して強くない。“三騎士”の連中は言わずもがな、他の奴らと小細工なしに正面からやり合って勝てる――今のオレたちの方針からすると、生き残れる、と言った方がいいか――可能性は、低い」
ララは、静かにうなずく。聖杯戦争の知識は、当然ララも得ていた。アサシンのクラスは、そもそも強大な戦闘能力を誇るクラスではないのだ。
「だが、やりようはある」
アサシンはテーブルにグラスを置き、虚ろな双眸を宿した仮面をトランクから取り出して、目の前に掲げた。
怪人たるバネ足ジャックにとって、通常は悪手と言える「早期から姿を晒すこと」は、必ずしもマイナスにならない。
目覚めたララに呼ばれずにいた間、彼はこの街の夜を怪人として跳び回っていた。
それは当初は、隷属者として呼び出されたことへの反発であり、好きにやってやるという意思表示だったのだが――結果として、「バネ足ジャック」ならぬ「火吹き男」の噂の流布のみならず、この街の大まかな地理を頭に入れ、ロンドンと異なる建物や地形に対する、バネ足の具合も確かめることができた。
加えて、アサシンは、「バネ足ジャック」としての気配を消して民衆(NPC)に同化できる。それを利用して、表向きララの「伯父」であり「マネージャー」のような立場の人物として、劇場の関係者へも顔を見せておいた。マスター周辺を動き回るのに不審がられない、それなりの役柄というものはあった方がいい。
幸い、この造られた街には、人種も装いも種々雑多なNPCが多く配置されていると見えて、金髪に碧眼、痩身大躯なアサシンの姿も、さほど目立たずに済んでいるようだった。
アサシンは、その間に得た情報を、ララに伝える。
「昨晩、劇場に来る客から、おかしな噂をいくつか聞いた。
ひとつは、『チェーンソー男』とかいう化物」
機械式の回転鋸を振り回し、人を襲う異形の巨漢。唐突に現れ、唐突に空を飛んで消える怪物。そして、不思議と顔の印象が記憶に残らないという。噂では、それは「少女」と戦っているのだとも。
「もう一つ。街で目撃された、これも大男だ。『包帯男』とか言われていたがな」
ボロボロのコートと帽子、腐臭を纏った巨漢が、平然と、「当たり前のもののように」街のただ中に存在していた。そしてこれも、「少女」と共にいたという。
「『チェーンソー男』に、『包帯男』……」
ララが反復する。
バネ足と異なる、二つの怪人の噂。或いはそれら二つは同じものなのかもしれない。いずれにせよ。
「断言はできないが、参加者とサーヴァントに関わる何かだろうよ。
すでに動き出してる連中がいた、と見るべきか。
そして少なくとも、今日以降は否応なしに動き出す奴らが増える。……あんな通達があった後だしな」
アサシンは、ララが握りしめている手紙と写真とに目をやる。
それは、昨日の夜、ララの元へ直々の通達に現れたルーラーが、残して行ったものだった。
どこかおどけたような予選通過の告知や、ささやかな資金の同封、諸連絡……それらの中でも、参加者の一人「フェイト・テスタロッサ」の捕獲を示唆する文言は、特に目を引いた。
写真の中、幼さを多分に残した少女の面立ちを見ながら、開始以前、或いは早々に「やらかした」のだろうと二人は話し合った。少なくとも、ルーラーに目をつけられる何かが、その少女にあったことは間違いない。
捕獲の礼は、「令呪一画の贈与」によってなされるという。この街で何を成すにせよ、それは魅力的な褒賞であったが、今は釣られて動くべきではない、アサシンはララへとそう告げた。
ララは、この聖杯戦争において最初の贄と定められてしまった、見知らぬ少女のことを気にしているようだ。アサシンとて、内心では、自分の姪ほどに見える、写真の少女が気にならないわけではない。
しかし、アサシンはララに下手を踏ませるつもりはなかった。
己の意思で、この不思議な矛盾をはらんだ人形の少女が、新たな願いを見つけるまで付き合うと、決めた以上は。
未だ、ララは何をなすべきかに迷っている。決めかねている。
ただ、少なくともあの劇場で「歌う」ことは、彼女にとって大きな意味を持っているらしい。
彼女を生みだした人間から厭われ、傷つけられ、「怪物」と恐れられ――――その中でたった一人見つけた愛する者のために、すがるように歌い続けて生を燃やした彼女にとって、不特定多数の人間たちに向けて歌を歌うことが、たとい用意されたNPCといえ、いやむしろそれだからこそ、自分の中の新たな「何か」を手探るきっかけになっているのは確かだった。
だから、今はまだ、渦中へと飛び込ませるわけにはいかない。
ララは夜の舞台の時以外、この目立たぬ住居から出ないことをアサシンと約束した。あくまで、他の陣営が動き出すのを待ち、アサシンが情報を収集し、備える。
――そうだ。跳び回るのは自分だけでいい。
――日中は街に紛れ、必要ならば、夜は「怪人」となって。
――かつて一度忘れ去られた、滑稽で悪辣なバネ足の道化として。
ソファの背へ差し始めた、窓から昇る日の光に目をやると、アサシンは大きなトランクを片手に、ゆっくりと立ち上がった。
見上げるララ。その、不思議な光をたたえた瞳を、アサシンは今一度、見つめ返した。
「何かあったら、すぐに令呪を使え。
……街の端にいようが、月の向こうにいようが、すっ跳んで来てやる」
そう言って背を向け、戸口へ向かったアサシンへ、言葉が投げかけられる。
「貴方にも」
アサシンは、足を止めた。
「今晩は……貴方にも、ちゃんと歌を聴いてほしい。
だから、帰ってきて」
背を向けたまま、アサシンは――ウォルターは、バネ足ジャックは、少し黙った後、ぞんざいに後ろ手を振ってこたえながら、部屋を出て行く。
バタリ、と戸の締まる音。
そうして、さして広いと言えない部屋には、再び顔を落とした人形が一体。
或いは少女が一人きり、残された。
【ララ@D.Gray-man】
[状態] 健康
[令呪]残り三画(イノセンスの埋め込まれた胸元に、十字架とその中心に飾られた花の形で)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 劇場での給金(ある程度のまとまった額。ほとんど手つかず)、QUOカード5,000円分
[思考・状況]
基本行動方針:やりたいことを見つける。グゾルにまた会いたい…?
1. 今は歌いたい。
2. アサシン(ウォルター)に歌を聴かせたい。
3. フェイト・テスタロッサが気になる。
[備考]
※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。
※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂をアサシン経由で聴取しました。
【D-3/市民劇場裏手の通り/1日目 早朝】
【アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)@黒博物館スプリンガルド】
[状態] 健康、スキル「阻まれた顔貌」発現中
[装備] バネ足ジャック(バラした状態でトランクに入っていますが、あくまで生前のイメージの具現であって、装着を念ずれば即座にバネ足ジャックに「戻れ」ます)
[道具] なし
[所持金]一般人として動き回るに不自由のない程度の金額
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(ララ)のやりたいことに付き合う。
1. 街で情報収集をしながら、他の組の出方を見る。
2. 夜までには帰ってきて、ララの歌を聴く。
3. 『チェーンソー男』『包帯男』に興味。
[備考]
※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。
※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂を聴取しました。サーヴァントに関連する何かであろうと見当をつけています。
※街の地理を、おおむね把握しました。
※劇場の関係者には、ララの「伯父」であると言ってあります。
投下終了になります。
いきなりになりますが、ララの状態表の上に場所と時間の表記が抜けておりました。すみません。
正しくは、以下です。
【D-3/市民劇場裏、アパートメント/1日目 早朝】
【ララ@D.Gray-man】
[状態] 健康
[令呪]残り三画(イノセンスの埋め込まれた胸元に、十字架とその中心に飾られた花の形で)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 劇場での給金(ある程度のまとまった額。ほとんど手つかず)、QUOカード5,000円分
[思考・状況]
基本行動方針:やりたいことを見つける。グゾルにまた会いたい…?
1. 今は歌いたい。
2. アサシン(ウォルター)に歌を聴かせたい。
3. フェイト・テスタロッサが気になる。
[備考]
※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。
※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂をアサシン経由で聴取しました。
失礼致しました。
その他、指摘や修正個所、抜けなどございましたらお願い致します。
投下お疲れ様です
短いやりとりに含まれた無骨ながら頼もしい優しさと硝子細工のように透明で綺麗な優しさ
口で説明なんて無粋な真似はしないけど、それでもお互いへの思いやりを、独特な距離感で保ってますね……
バネ足ジャックはNPCに同化という性質もあり、アサシンの本懐である諜報では大いに飛び回ってくれそうです
ただ、興味を持っている対象がチェーンソー男とジェノサイド=サンというところに一抹の不安を感じざるを得ませんが
ララが候補作段階でも語られていた「わからない」について、劇場での歌姫という役割を通して近づいていけるかもしれないのではというのも印象的です
確かに、参戦前とは全く違った環境に置かれたことで、彼女の中に生まれ始めていた「何か」に近づいていけるのかも……
共に「願い」を探すという特殊スタンスだからこその魅力にあふれたお話でした
色々拙い感想ですみません
もう一度、投下お疲れ様です!
感想ついでに
海野藻屑&アーチャー(森の音楽家クラムベリー)
山田なぎさ&アサシン(クロメ)
諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)
予約予約します
すみません、予約確認怠ってました
予約破棄します
ゾーマ様こええなぁ…
永久機関の中心にたまがいるってのもまた…
現在の予約の内容に合わせて、星輝子&ライダーを追加予約します。
あと、1氏に質問なのですが、図書館にはルーラー(とプレシア)がいる、という解釈で合っていますか?
>>777
その解釈で構いません、その点については現予約を投下後補完を行おうと思います。
中原岬&セイバー
雪崎絵理&バーサーカー
予約します
今さらながら本編投下乙です!
キャスター寄りなやり方で二段構えの戦いを挑むゾーマというのが新鮮でした
たまは早くも魔物を使い捨てるやり方に疑念を抱いてるようですが、このまま染められてしまうのか…
個人的にまとめ
予約中
12日くらいまで
◆PatdvIjTFg 輿水幸子&クリエーター(クリシュナ)、江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)、双葉杏&ランサー(ジバニャン)
◆2lsK9hNTNE 大道寺知世&アサシン(プライド/セリム・ブラッドレイ)
◆BATn1hMhn2 海野藻屑&アーチャー(森の音楽家クラムベリー)
15日くらいまで
◆ACfa2i33Dc シルクちゃん&(本多・忠勝)、星輝子&ライダー(ばいきんまん)
22日くらいまで
◆faoWBgi.Rg 中原岬&セイバー(レイ(男勇者))、雪崎絵理&バーサーカー(チェンソー男)
未予約
木之本桜&セイバー(沖田総司)
大井&アーチャー(我望光明)
フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)
蜂屋あい&キャスター(アリス)
高町なのは&キャスター(木原マサキ)
白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)
諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)
山田なぎさ&アサシン(クロメ)
玲&エンブリオ(ある少女)
登場済
[早朝]
【B-5】桂たま
【B-4-B-5】アサシン(ゾーマ)、偽アサシン(宝具『まおうバラモス』)
【D-3】ララ、アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド(ジャック・ザ・スプリンガルド))
感想は今日明日に、
予約分投下します。
◇
輿水幸子はいつもよりも早く起きた。
朝というには早過ぎる時間、無性に眠れなくてこの時間帯まで起きていたことはある。
しかし、この時間に起きたことはない。
今日の新聞さえ未だ届いていない、と思うと何故か世界に自分だけしかいないような錯覚に囚われた。
当然、そんなことはない。
「おはよう、サチコ」
幸子よりも部屋の主然として、彼女のサーヴァント――クリシュナが、サチコの学習机に(椅子ではなく)腰掛けて多機能携帯電話をいじっている。
「……お早うございます、クリエーターさん。で、これが何か説明して欲しいんですが」
「説明しろって、どれから?」
まず幸子は未だ自分が夢の中にいるのではないかと疑い、クリシュナの頬をつねろうとして逆につねり返された、痛い。夢ではない。
そして、再び周囲を見回す。
まず、自分の部屋の大きさが変わっている。明らかに昨日よりも二倍、三倍も大きい。
タンス、本棚、棚、お気に入りの小物、カワイイぬいぐるみ。明らかに数が減っている。というか、ベッドと学習机以外の元から部屋にあった家具が消滅している。
部屋の中で時代劇の中でしか見たことのないような、江戸時代の町人(幸子にはそれが侍なのか商人なのかよく区別がつかなかった)が部屋の中でぐるぐると回っている。
そして、クリシュナが触っているのは幸子の多機能携帯電話だ。
「えーっと……」
今のボクには理解できない。
「そりゃ目の前にある現実なんて受け入れない方が、お幸せに暮らしていけるけどさ。
一応、僕のマスターなんだから、もうちょいシャキッとしようよ。だから昼休みに学年の違うお友達と集まることになるんだよ」
「……………………………………………………友だちが一人もいなさそうなクリエーターさんよりはマシです」
「…………別に、そんなものいらないよ」
相討ちの様であった。
互いが互いの心の触れられたくない部分をおもいっきり、刺しあった。
幸子は、カワイイボクと142'sで集まる時間がとても心地よいものであることを知っていると同時に、そこ以外に居場所が無いことを知っている。
そしてクリシュナは、散々に求めながら、愛を手に入れることのないまま、一世一代の告白が見事に玉砕し、結局のところ一人で死んだことを思い出した。
「やめましょう、ボク達が喧嘩したからって何の得があるっていうんですか」
「そうだねマスター、僕が悪かったよ。ごめん」
「そ、そうやって素直に謝ってくれるのなら、ボクだって広い心で許してあげますよ、クリエーターさん……ボクも、その、ごめんなさい。
えっと……大丈夫ですよ、クリエーターがそうやって素直にいるならカワイイんですから、きっと友だちが出来ますよ」
しかし幸子はここで自分が友達になるとは言わないし、言えない少女である。
「それで、クリエーターさん。えーっと……まず…………ボクの部屋はどうなったんですか?」
「罠に作り替えてる」
「言っている意味がわかりません」
「まあ、簡単に言うと他のマスター……といっても区別する手段は無いから、僕とサチコ以外がこの部屋に入ったら、
起きながらにして夢を見ることになるんだ。幻覚のようなものと思ってくれたほうがいいかな。
それはひたすらトラウマを刺激するものだったり、本当に何の意味のないものだったり、自分の幼年期の記憶を客観的視点で見つめ返すものだったり、
そんな光景を一瞬で叩きつける、相手は圧倒的情報量に苦しめられて……
まぁ、サーヴァントは無理だと思うけど、マスターぐらいなら混乱、発狂、頑張れば自殺……は無理かなぁ?
といっても、所詮夢だから……強く気持ちを保たれたらどうにもならないんだけどさ」
クリシュナの言葉に、幸子は俯いて唇を噛み締めた。
わかっていたことだ、自分は今聖杯戦争――殺し合いの中にいる、だからクリシュナも勝利のために最善を尽くす。
しかし、それが幸子にはどうしても受け入れられなかった。
「……やめてください」
「悪いけど、やめない」
幸子の拒絶の言葉に、しかしクリシュナもまた。止まる気などは無い。
「サチコのためにやってるだなんて言う気はないし、別に聖杯も欲しいわけじゃないけどさ、
ただ……負けるのは大嫌いなんだよね。
ねぇ、サチコは目の前で父親のような人を殺されたことある?奴隷として売られたことは?
好きな人が自分じゃない仲間を引き連れて楽しく旅をしているのを見た?
辛いことがある度に思ったよ、世界中の皆が――僕を嫌っている。
ねぇ、サチコ……きみ、なんでそんなに自分のことをカワイイって言わなきゃいけないのさ?」
淀みなく吐き出される言葉、想像したこともない目の前のサーヴァントの闇。
それが幸子にはどうしようもなく恐ろしい。
ライブ前でも感じたことのないような緊張感――喉が渇く。
「ボ、ボクがカワイイからです……ボクがカワイイからカワイイって言って、な、何が悪いんですか?」
「サチコがカワイイってのは、見りゃわかるよ」
褒められている――しかし、全く喜ばしくない。
無感情な声、無感動な目、クリシュナが幸子をカワイイと言ったのは、機械的な――無機質な判断。
「なんで、見りゃわかることを一々アピールしなきゃいけないってことを言いたいんだけどさ。
まぁ、自分でも気づいてるでしょ……自分がカワイイことを伝えたい相手がいるんでしょ?」
乳を求める赤子のように――必死で泣き叫ぶようにして、とクリシュナは結んだ。
父親の顔、母親の顔、クラスメイトの顔、教師の顔、ファンの顔、何人もの顔が、幸子の中で、浮かんでは消えた。
最後に残ったのは、自身のプロデューサーの顔だった。
愛されたいんでしょ――と、クリシュナは吐き捨てる様に言った。
幸子は何か返事を返そうとして、何も言葉が出なかった。
「キミは……愛されるために、あるいは嫌われないために……かな、どっちでもいいや。
そうやって、自分の可愛さを世界に訴えかける。
僕は違う、誰も僕を愛さない。それを知っている。
だから、結論は至ってシンプル。
相手が誰であろうとも、勝つ。
見下されたくないし、哀れみを受けたくもない、キミが何を言おうとも僕は敵を殺す」
憎悪、無力感、悲痛――クリシュナが生前に溜め込んだ濁流のような感情の波に曝されて、何かを言おうとして、言葉が出なかった。
次に、想像した。
プロデューサーに出会えなかった自分を、幸子は思い描いた。
それはきっと、泣きたくなるぐらいに悲しいことだった。
「じゃあ、その……特別です!」
輿水幸子はプロデューサーのためのアイドルだった。
自身の可愛さを、親よりも友人よりもファンよりも誰よりも伝えたかったのは、プロデューサーだった。
でも、今目の前に偶像【アイドル】を求めている少女がいる。
だから、一歩だけ歩を進める。
「クリ……シュナさんを、カワイイボクファンクラブの特別会員にしてあげます!特別ですよ?良かったですね、クリシュナさん」
「頭おかしくなった?」
「違いますよ!」
何を言おうか、考えるよりも先に言葉がすらすらと溢れだしていく、
クリシュナの前に立つのは、輿水幸子ではない。
アイドルの輿水幸子だ。当者比10倍の可愛さ。
「ボクはアイドルなんです、それでアイドルっていうのはファンを幸せにするものなんです!
つまり、クリシュナさんがボクのファンになれば、カワイイボクが幸せにしてあげます!簡単な事ですね!」
「理解に苦しむよ」
「殺したり、殺されたり、そんなくだらないことより皆さんがボクのファンになって、
ボクのステージを……いえ、カワイイボクと142'sのステージを見て、幸せになったほうがよっぽど建設的だと思いませんか?」
「思わないけど」
「クリシュナさんはボクのファンになったんですから、そう思うんです!」
「思ったよ」
「ボクはアイドルなので、アイドルとして戦います。そうやって勝ったら、クリシュナさんも満足するでしょう?」
「いや、しないけど」
「……します」
自信に満ちた表情。
自分のサーヴァントに立ち向かうと決めた少女の表情。
輿水幸子の表情。
「クリシュナさんが見下されてきたっていうなら、ボクが頂点まで連れて行きます。
そしたら、クリシュナさんは満足します……カワイイボクのいうことだから、間違いありません!
だから……その創造能力は、ボクのステージや衣装作りに有効活用させてあげますよ?」
「……そう」
気怠げに、頷くとクリシュナは携帯電子端末の標準メール機能から、幸子宛に届いたルーラーからのメールを開いた。
フェイト・テスタロッサの捕獲任務。
具体的なことはわからないが、ルーラーに目をつけられるような何かを行ったマスターが既に存在するという証左。
「いきなり危ない人がいるけど、頑張れマスター」
「が、頑張るに決まってるじゃないですか!」
続いてメールに記載されたURLから掲示板に飛び、クリシュナはあるスレッドを開く。
スレッドタイトルは『みんなのアイドル 諸星きらりだにぃ☆』
内容は――
◇
「みんなー、今日も元気に絶望してる?江ノ島盾子ちゃんだにぃ☆」
意図的に作られた声、特徴の誇張、悪意ある模倣、江ノ島盾子にとって特に意味があるわけではない。ただの遊びだ。
江ノ島盾子は架空のアイドルになりきって遊んでいる。
自室にて机の上のノートパソコンを前に、江ノ島盾子は考える。
といっても、考えるという行為そのものよりも遊びに費やす時間の方が長い。
椅子を目が回るぐらいにぐるぐると回転させ、目を渦巻状に変えながら『にょわああああああ』と叫んでみる。
そんな江ノ島盾子の様子を、彼女のサーヴァント――姫河小雪は、心の底から無感動な様子で見ている。
「あれれ〜☆どうしたのランサーちゃん?ランサーちゃんもいっしょにハピハピしないの?」
普段よりも数倍鬱陶しく、ぐいぐいと自身の体を押し付けてくる江ノ島盾子に対し、ランサーは構わない。
構えば、確実に面倒になるというのが一点。
もう一つ、蜂屋あいについての思考を中断されたくないというのが一点。
蜂屋あいに関して、姫河小雪が――魔法少女スノーホワイトとしての経験で語るのならば、結論はたった一言。邪悪。
正直な事を言うならば、江ノ島盾子との会話の合間に切り込んで、殺してしまいたかった。
あの光景は江ノ島盾子が二人で――あるいは、鏡と会話しているようなものだった。
だが、マスターを――それもあんな少女を攻撃するのは躊躇った、己の心の問題。
江ノ島盾子が令呪を用いて、邪魔をする可能性。
江ノ島盾子と同様に、蜂屋あいの心もまた読めなかったこと。
あの場に姿を見せなかったサーヴァントという要素のために、あの時蜂屋あいを攻撃することは出来なかった。
だが、蜂屋あいもまた、江ノ島盾子と同様に絶対に止めなければならない相手だろう。
江ノ島盾子と蜂屋あいは再会する、その時が勝負だ。
だが、口惜しい。
蜂屋あいを止めても、小学校のあのシステムは結局何時までも動き続けるだろう。
死神様ではなく、死神様を利用したものを正義の名の下に処刑するシステムが。
「ランサーちゃん、無視しないで欲しいにゃあ……あっ、これ違うわ。みくにゃんのファンやめます。舞園さんのファンもやめます。別にファンじゃないけどね」
姫河小雪に無視されながら、江ノ島盾子もまた、考えていた。
江ノ島盾子は昨日、死神様について調査を行いつつ、自身が通う高校で起こった殺人事件について調査を行っていた。
女子高生数人が、まるでバイオレンス格闘漫画の様な殺され方で死亡した事件――十中八九サーヴァントか、人質を取られた超高校級の格闘家の仕業だろう。
もっとも、調査と言ってもそう大したことはしていない。
別に探偵漫画の主人公でも無い以上、江ノ島盾子に真実を突き止める必要はない。
ただ、犯人っぽい誰かをでっち上げるだけでいい。
そして如何にも犯人であるという風に訴えかけて、冤罪ならその絶望を美味しくいただき、有罪ならばいきなりハンデを背負うこととなる。
一方的に吹っ掛けるだけ吹っ掛けられる無責任な立場というのは最高なものだなぁ、と江ノ島盾子は考える。
江ノ島盾子は教室をいくつも回り、欠席している生徒の名前と、それが継続的なものなのか、単発的なものなのかを調べ、
クラスメイトから噂話を聞き出す、死んだ被害者と仲の良かった生徒、あるいは悪かった生徒。
聖杯戦争参加者ならば、クラスメイトを殺して平然とした顔で出席してもおかしくはないだろうし、
むしろ、そちらのほうが怪しまれないために自然ではあるが、人を納得させようというのならば動機と証拠が必要になる。重要なのはそれっぽさだ。
そして、江ノ島盾子は発見する。
殺人事件の後、不登校。
転校生。
良い意味で目立つ容姿。
いじめられっ子。
32000点。
絶望的につまらない少女達の中で、彼女というアイドルはさぞや輝いたことだろう。
それはもう、色んな意味で。
しかし、プロデュースは未だ終わらない。
いや、始まってもいない。
あんな、少女達じゃダメだ。
彼女をプロデュースするのならば、アタシじゃなければならない。
江ノ島盾子が諸星きらりをトップアイドルに導く。
「きらりちゃん?間違ってたら……盾子、誤るにぃ」
謝る気はない。
「……うっし、こんな感じかな」
諸星きらりがアイドルデビューするならば、どんな形が良いだろうか。
散々にイメージトレーニングを重ねて、先程まで江ノ島盾子は自分の想像する架空のアイドル『諸星きらり』に成りきっていた。
うん、このぶっ飛んだキャラクターは中々良いのではないだろうか。
既に諸星きらりには、初日にしてスターダムを駆け上がったフェイト・テスタロッサという強力なアイドルがいる。
生半可なキャラクターじゃ、勝てない。
それにしても、蜂屋あいが許されて、フェイト・テスタロッサに捕獲クエストが出されるとは、一体可愛い顔をしてどれほどのことをやらかしたのだろうか。
「超高校級のギャルのアタシと、あいちゃんと、フェイトちゃんで……うん、凸レーション。
信じていたプロデューサーがアイドルとして敵に回る、中々絶望的なシチュエーションね、きらりちゃん」
信じて送り出した絶望的プロデューサーがフェイトのテスタロッサさんの絶望的調教にドハマリしてファンのアヘ顔ピースビデオレターを送ってくるなんて……
「将来的な展望はさておき、きらりん☆レボリューションしとこーっと」
江ノ島盾子はスリープ状態になっていたノートパソコンを目覚めさせ、あるURLへと飛んだ。
少女聖杯用に用意された掲示板。
今は未だ、何のスレッドも立っていない。
だから、自分が処女を奪う。
スレッドタイトルは『みんなのアイドル 諸星きらりだにぃ☆』
このスレッドは、聖杯戦争にとっては小さな一歩であるが諸星きらりの絶望的なアイドル人生にとっては大きな一歩であると信じて……
ご愛読 ありがとうございました!
◇
結局、双葉杏は目が冴えて眠れなかった。
今まで未来に対して不安を覚えたことはあまりない、双葉杏はやればできる子で、働かないことを選んでいるだけだからだ。
それでも――今は、聖杯戦争という現実が、双葉杏を押し潰さんとする。
怠惰に対する罰であるように巻き込まれた強制参加のデスゲーム。冗談じゃない。
だから、積極的に不参加を決め込んだ。
いつもどおりの変わらない日常、周りが殺し合おうが関係なく悠々自適のニート生活。
澱の様に沈殿する焦燥感。
このままで良いのか。
いつか誰かがお前を殺しに来る。
だが、どうしろと言うのだ。
サーヴァントは強そうに見えない。
自分も成績優秀でアイドルでニートとはいえ、所詮は一般人。
やらなければならない。
しかし、やるだけ無駄だ。
どうしようもないので、働かない。
「ランサー、ゲームしよ」
寝ているランサーを起こし(ここで、杏にはサーヴァントには睡眠の必要が無いのではないかという疑問が生じたが、
もしランサーの睡眠が趣味ではなく仕様であった場合、非常に恐ろしいので突っ込まないことにした)双葉杏はゲーム機を起動させる。
コントローラーは一つで十分だったはずなのに、対戦がしたければネットで十分だったはずなのに、
アイドルになったから、友達なんてものが出来てしまったから、
だから、この街に連れて来られて、ただのニートに戻っても、この部屋のコントローラーは4つ揃っている。
隣でコントローラーを握る、のんきな顔のサーヴァントを見ていると、少し安心した。
ジョインジョイントキィデデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォナギッナギッナギッ
フゥハァナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケンK.O. イノチハナゲステルモノ
バトートゥーデッサイダデステニー セッカッコーハアアアアキィーン テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーン
FATAL K.O. セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ ウィーントキィ (パーフェクト)
「マスター!これクソゲーニャ!いくらなんでもひどすぎるにゃ!」
「ごめん、ゲーム選択間違えた」
結局。NPC2人を交えて、人生ゲームをすることになった。
椀に大量のチョコボーと飴を盛って、家に友達を呼んだみたいにだらだらと。
「ランサー、また車に轢かれたの?」
「なんでゲームの中でまでトラックに負けないといけないのにゃーーー!」
「あ、宝くじ当たった」
「病院にまでトラックが突っ込んでくるとかこのゲームどうかしてるにゃ!!」
「国民ニート栄誉賞授与だってさ」
「ぎゃーーーーとうとう上からトラックが降ってきたにゃーーーーー!!」
クソゲーだ、これ。
「もう食わなきゃやってられないにゃ!」
「待って、私も食べる」
自棄とばかりに、チョコボーを口に放り込んでいくジバニャンと、その様子に触発されたのか何となくチョコボーを優先する杏。
最後の一本は、同時に二人の手に握られた。
「ランサー、ここは当然私のものだよね」
「何言ってるのにゃ!マスター相手だからってこのチョコボーは譲れない大切なものにゃ!
っていうかこの前マスターがおれっちのチョコボー食べたんだから、今度はマスターが譲るべきにゃ!」
大岡裁きの様相である。
子を引っ張り合うようにして、二人がチョコボーを引っ張り合っている。
大岡裁きならば先に離した側が勝者になるのだが、チョコボーは痛がらないし、喋りもしないので、純粋にこの大人げのない綱引きに勝利した側がチョコボーを手に入れる。
「はーなーせー」
「こっちの台詞にゃ〜!」
ここで、杏に電流走る。
この勢いでチョコボーを引っ張れば、間違いなく袋が裂ける。
袋が裂けて中身のチョコボーが、宙を舞う。
この勝負は、先に空中のチョコボーを口に入れた方が勝つ。
別にそこまで、チョコボーはいらないな。
突如、力を抜いた杏。
ジバニャン側の力だけが過剰反応し、その勢いでジバニャンは三回転し、壁にたたきつけられる。
しかし、チョコボーは死守!ジバニャンはこの不毛な戦いに勝ったのだ。
「勝利の味にゃ!」
「おめでとう、あっ、メール来てた」
満面の笑みでチョコボーを食べるジバニャンを横目に、杏はこの街では誰からも来るはずのないメールの存在に気づく。
不審である、しかしチェックしないわけにもいかないだろう。
杏は多機能携帯電話を起動し、メール画面を開く。
「…………はぁ」
本格的に聖杯戦争とやらが始まったことを知らせる通知と、フェイト・テスタロッサという謎の指名手配犯(杏は間違いなく危険人物であると判断した)
そして、5000円分の電子マネー(これは即時の判断で課金へと用いられた)
どれだけ楽しんでも、どれだけだらけても、現実のほうが杏を追い詰めようと迫ってくる。
寝よう――と、杏は思った。
丸一日寝ていたい。
寝ている間に何もかも、終わっていて欲しい。
掲示板のURLを開く、何か書き込みがあったかを確認した後、杏は何がなんでも眠ろうとするだろう。
「なにこれ……?」
掲示板にあるスレッドはたったひとつだけ、
スレッドタイトルは『みんなのアイドル 諸星きらりだにぃ☆』
◇
1 名前:諸星きらりファンクラブ[] 投稿日:20XX/0X/XX(X) XX:XX:XX ID:ensmjnk0
このスレッドは、早速数人ブチ殺した皆のアイドル諸星きらりちゃんについて語るスレッドだにぃ!
女子高生がトイレで殺された事件については【URL】(このURLは、その殺人事件についてのニュースサイトにつながっていた)
きらりちゃんが犯人っていう証拠は【URL】
(このURLの先のサイトには諸星きらりが被害者にいじめを受けていたこと、殺人事件の翌日から不登校になっていること、転校生であることなど、
諸星きらりがどれほど怪しいか、聖杯戦争参加者と思われるかを訴えるテキストと諸星きらりの顔写真が何枚か載っていた)
みんなもフェイト・テスタロッサちゃんだけじゃなくて、諸星きらりちゃんを応援しよ!ね☆
2 名前:名無しメイデン[] 投稿日:20XX/0X/XX(X) XX:XX:XX ID:ksmzsciO
デマです!きらりさんはそんなことをする人じゃありません!
3 名前:諸星きらりファンクラブ[] 投稿日:20XX/0X/XX(X) XX:XX:XX ID:ensmjnk0
>>2
きらりちゃん降臨???
嬉しいにぃ☆
4 名前:名無しメイデン[] 投稿日:20XX/0X/XX(X) XX:XX:XX ID:ksmzsciO
やめてください!怒りますよ!
◇
輿水幸子は激怒し、クリシュナは冷ややかな視線でそれを見た。
「きらりさんは……アイドルなんです」
それはアイドルという存在そのものへの畏敬の念が含まれていた、
真の意味で自分がなれなかったアイドルという存在への、自身が今この街でなろうとするアイドルという存在への。
「とってもカワイイ、素敵な人なんです……」
「ふ〜ん」
「ボクはこの人を絶対に許しません」
「別にこの人サチコに許されたいわけでもないと思うけどさ、で?どうするの?やっぱり殺すの?」
「殺さないって言ってるじゃないですか!」
「じゃあ、どうするのさ?」
どうすればいいのだろう、幸子は考えあぐねていた。
いつかは出会うことになるだろうが、少なくともこのスレを立てた人間を探すことは自分にはできない。
しかし、諸星きらりは確実に狙われる。
マスターに関する情報が不足している以上、疑わしき諸星きらりは罰されるだろう。
「きらりさんに会います」
「へぇ」
クリシュナは興味なさげな視線を幸子に向けると、ベッドへと潜り込んだ。
「まぁ、あんまり興味ないけどさ、頑張ってよアイドル活動」
◇
「ちょwwwww釣れたwwwwwwwwwwあwwwwwwwwww」
江ノ島盾子がノートパソコンに向けて声をあげて笑った瞬間、姫河小雪――否、スノーホワイトの拳がノートパソコンを粉砕!
「きらりちゃんは止めるのに、アタシが新しいお友達作ろうとするのは邪魔するの?ランサー」
「……諸星きらりは、正直なところ私もクロだと思います。だから、止めなかっただけのこと」
「ふ〜ん、きらりちゃんかわいそ」
「ただ……今のでわかった、もうあなたに通信手段は与えられない」
「へぇ、じゃあ……」
ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ
ジャーンジャラジャララ ジャーンジャラジャララ ジャーンジャラジャララ ジャララジャララ
果たして、それを何処に隠していたのだろうか。
江ノ島盾子がスカートをたくし上げれば、大当たりとでも言わん勢いで大量の多機能携帯電話が溢れだす。
「どうぞ、アタシのスマホを好きなだけ壊しなよ」
言われるまでもなく、スノーホワイトは多機能携帯電話を踏み壊して回っている。
「でも……ランサーちゃんはアタシを止められるかな?」
奇術のようにして、突如、江ノ島盾子の右手に新たな多機能携帯電話が現れた。
それを、スノーホワイトは奪い、破壊!
「アタシ、ほら……超高校級のギャルだから。ランサーちゃんの想像以上にスマホ持ってると思うよ」
◇
「きらり……」
この街にきらりがいるとは思っていなかったが、掲示板にきらりが――皆を勇気づけるようなメッセージを書き込むというのは、如何にも彼女がやりそうなことであった。
だから、開いて、心の底から失望して、気分が落ち込んだ。
きらりが――あの誰よりも優しくて、アイドルたらんとした子が、私がだらだらとしている間に、かつても、そして今も悪意を向けられ続けている。
きらりを虐げた人間や、今きらりを追い詰めようとしている人間への怒りよりも、自分自身への失望が勝った。
「ごめん……」
こういう時も、杏にはきらりの笑顔しか思い浮かばない。
何時だって、きらりは笑っていた。
辛さも苦しさも押し殺して――誰よりも繊細なのに、笑顔の仮面を被って。
「ランサー」
「マスター?」
普段と違う声音、真剣味と責任感の混じった声。
それは杏に今、訪れた変化ではなく、昔、きらりが杏に贈った感情だった。
「どうやら、友達に会いに行かないといけないみたいだ」
【C-4/マンション/1日目 早朝】
【輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康、怒り
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:この聖杯戦争をカワイイボク達で止めてみせる
1.諸星きらりに会う
【クリエーター(クリシュナ)@夜明けの口笛吹き】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:勝つ
1.幸子の言うことは放って、自身の幻想世界を完成させたい
[備考]
※幸子の部屋は現在、クリシュナの幻想世界に作り替えられている途中です。
※完成した際、マスターとサーヴァントに対する精神攻撃として作動します
【D-2/マンション/1日目 早朝】
【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]大金+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:絶望を振りまく
1.諸星きらりをプロデュースするために、一度会っておきたい
2.放課後になったら、蜂屋あいと会う
【ランサー(姫河小雪)@魔法少女育成計画】
[状態]健康
[装備]ルーラ
[道具]四次元袋
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針: 出来る限り犠牲を出さずに聖杯戦争を終わらせる。
1.江ノ島盾子と蜂屋あいの再会時に蜂屋あいのサーヴァントを仕留める
【D-3/双葉家/1日目 早朝】
【双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康、焦燥感
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]高校生にしては大金持ち
[思考・状況]
基本行動方針:なるべく聖杯戦争とは関わりたくなかったが
1.諸星きらりに会う
【ランサー(ジバニャン)@妖怪ウォッチ】
[状態]健康
[装備]のろい札
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:なんとなく頑張る
1.双葉杏に付いて行く
投下終了します
正確なタイトルはこっちでした、今後こそ投下終了します。
投下乙です!
幸子とクリシュナは幸子が我を見せるか…そして江ノ島がいきなり全開すぎるww幸子が釣れて、眠れる獅子とジバニャンも動き出すと。少女聖杯らしくなってきましたね!
投下お疲れ様です。
それぞれの組の心情が細やかに描かれながら、少女の毒がそこへじわじわと効き始め、不穏な
ものを感じます。
本ロワをきっかけに魔法少女育成計画を読んだ身としてはスノーホワイトを応援したいのです
けれども、相方の江ノ島さんがこの千紫万紅ぶりでは、彼女なりの意地を通すにもなかなか道
のりが険しそうですね…。
加えて、歩み寄る幸子、立ち上がる杏、タイトルも相まって色々と動き始めるものを感じさせ
られる回でした。
改めて、投下お疲れ様でした。
…何やら行間と改行がおかしくなっており、見苦しくてすみません。
ギリギリになりましたが投下します
知世が目を覚ました時刻はいつもより少し遅かった。
普段なら目覚ましを掛けるまでもなく、同じ時間に置きられるのだが、最近は生活のリズムが崩れ気味だ。
身だしなみを整え、ベッドのある寝室から、ソファーやテレビが置いてある自室に出る。
アサシンの姿はなかった。彼はこの時間、外の様子を見ていることが多い。
テレビをつけると、小学一年生の女の子が刺されて死亡した事件について報道していた。
知世はこの事件を知っている。女の子の死体を最初に発見したのが知世だったのだ。
ある日の登校中に女の子が落としたキーホルダーを手渡し、その日の放課後、死体になったその子を見つけた。
テレビでは被害者の写真を写している。笑顔でピースをしているその写真を見て、血だまりに倒れていた人形のように生気のない顔が浮かんだ。
「顔色が悪いですよ」
不意に男の子の声が聞こえ、テレビが消えた。
いつの間にかアサシンが片手にリモコンを持って立っていた。
「ニュースで情報収集も結構ですが、自分の精神状態には気を使ってください。心が疲労すれば肉体にも影響が出ます」
「ごめんなさい、アサシンくん。気をつけますわ」
「自己管理くらいは言われなくてもして欲しいですね。あなたに何かあれば私にも迷惑です」
こんな風にアサシンに注意されるのは何度目だろうか。
彼は毎回「私にも迷惑」と付け足す。まるで心配をする言い訳のように。
いつも大人びているのに、そんなところは見た目相応に子供らしくて知世は少し可笑しくなる。
へこたれていても仕方がない。今は自分にできることをしよう。
そのときドアをノックする音が響いた。
「お嬢様、朝食をお持ちしました」
とりあえず、まずすべきことは朝食のようだ。
アサシンが姿を消した。知世はメイドを部屋に招き入れ、料理を並べてもらった。アサシンの分も合わせて二人分だ。
本来、サーヴァントは食事を必要としないが、食べれば多少は魔力の足しになるらしい。
空腹を感じるスキルも気になり、アサシンにはなるべく食事をとってもらうようにしていた。
今日の朝食は納豆ご飯に焼き魚、味噌汁といった、いかにも日本の朝といった感じのメニューだった。
アサシンは箸を使って器用に食べている。
彼が暮らしていた場所の食文化は洋食に近く、箸も存在しなかったらしいが、その使い方に拙さは見られない。
聖杯から与えられた知識の影響だろうか。それともアサシンが器用なのだろうか。それくらいなら聞けば答えてくれるかもしれない。
アサシンは自分のことを話したがらない。
好きな食べ物や音楽くらいなら教えてくれるが、普段の生活や家族の話になると口を閉じてしまう。
何か言いたくない事情あるんだろうとは思う。しかし壁があるようでは少しさびしい気もした。
食事が終わり、メイドに食器を片付けてもらった。
知世は突然アサシンに携帯を投げられ、慌てて受け止めた。
「聖杯戦争に動きがありました。メールを見てください」
言われて通りにメールを確認する。ルーラーからの伝達と書かれたメールを見つけ、息を呑んだ。
文面にはあまり趣味の良くない祝いの言葉と、フェイトというマスターを捕まえる強力を求める趣が書かれている。
「そのメールはルーラーからの開戦宣言です。
マスターの捕獲依頼はおそらく争いを引き起こすための火種の意味もあるでしょう」
「開戦……」
聖杯戦争の始まり。殺し合いの始まり。
喉が酷く乾いた気がして、知世は唾を飲んだ。
「それで、我々はどうしますか?」
「え?」
「参加者は今まで以上に敵を警戒するでしょう。
いくら私が気配遮断を持っているとはいえ、Dランクではいつ見つかってもおかしくありません。
待ちに徹していては何れやられるでしょう。そんな中であなたはどう動きます。マスター?」
アサシンは知世のことを普段、名前で読んでいる。知世自身がマスターという呼び方を嫌ったからだ。
なのに今はマスターと呼んだ。知世は努めて強い口調で答える。
「私は死神様の調査を続けたいと思いますわ」
死神様。願えば殺したい人を殺してくれるという怪談のような噂。小学生にまつわる一連の事件の原因の一つ。
おそらく成り立ちにはサーヴァントが関与している。知世とアサシンはこの噂についてずっと調べてきた。
もっとも実際に調べているのはほとんどアサシンだけだ。知世は世間話程度に話を聞くだけ。それ以上の調査は止められている。
深入りし過ぎて自分に危険が及べば、アサシンにも迷惑が掛かるとわかってはいる。
それでも彼に任せきりの状況を心苦しく思っていた。だから――
「それは今までと何も変えないということですか?」
「いいえ、今までのように安全を最優先にしたものではなく、危険な調査もしたいと思っています。必要なら私自身の手でも」
「私は敵の警戒が強まると言いました。その意味をわかった上で言っているんですね?」
「ええ」
知世はあの女の子をことを思い出す。落し物を渡すと彼女は恥ずかしそうにお礼を言って走っていった。
今日自分が死ぬなんて考えてもいなかっただろう。もうあんな事件は絶対に起こってほしくない。
アサシンは知世の目をまっすぐ見つめ、やがて溜息をついた。
「まあ、薄々そう言うような気はしていましたよ。あなたも見た目のわりには肝が座っていますね」
「そんなことはありませんわ。ただ私にはアサシンくんが一緒にいてくれますから」
聖杯戦争のことは誰にも話すことはできない。自分一人だけだったらきっと耐えられなかったと思う。
それは知世にとって当然のことだったが、アサシンは呆気に取られたような顔をしていた。
「なぜ私をそこまで信用するんです……」
ポツリと吐露するように。
知世は言葉の意味がよくわからなかった。アサシンは訂正するように言う
「いえ、あってまだ日も浅いですし、普通ならもっと疑ってかかるものではないかと思ったもので」
「それは、だってアサシンくんは優しい人ですから」
アサシンは優しさをはっきりと示す人ではない。
それでも言動の端々から漏れる思いやりの気持ちを知世は確かに感じていた。
アサシンは少し間を開けて、「携帯を貸してください」と無感情に言った。
「掲示板に情報を求める書き込みをしておきます。
まとも倫理観を持っているマスターなら情報提供くらいはしてくれるでしょう
危険な操作をするかどうかは様子を様子を見てからです」
知世は笑って頷いた。アサシンに携帯を手渡し、ふと思う。
そういえばメールの内容を知っていたということは、無断で携帯の中身を見ていたということだろうか。
特に見られて困るものがあるわけでもないし、知世は眠っていたのだから仕方ないが、できれば一声掛けて欲しかったな、と。
【D-5/自宅二階にある自室/1日目 早朝】
【大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] たくさん
[思考・状況]
基本行動方針: 街の人達を守る
1. 死神様について調べる
[備考]
※死神様について調べていますが、あまり成果は出ていません
【アサシン(プライド(セリム・ブラッドレイ))@鋼の錬金術師】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: とりあえずマスターに合わせる
1. 死神様について調べる
[備考]
※死神様について調べていますが、あまり成果は出ていません
※掲示板に以下の書き込みがされました。
スレッドタイトル:小学生の死亡事件に関して
『私は最近起こっている小学生に関する一連の事件を聖杯戦争に関係するものと思い調べています
何か知っている情報がありましたらここに書き込んでください』
死神様やアサシン達が得た情報については、身元がバレることを警戒して書いていません
投下終了です
何かミスがあったら言ってください
というか自分で見つけました
『危険な操作』ではなく『危険な捜査』です
危険な操作ってなんだ。本人の安全を顧みずパワーを引き出す系のあれか
皆さま投下乙です
どの投下も大変面白く読ませてもらっています
感想レスもしたいのですが、期限が迫っていますので取り急ぎ投下だけさせていただきます
――夢を、見ていた。
魔法少女になって、フリフリがたくさんついた、でも露出度的には結構キワドい服を着こなして戦う夢だった。
日曜日の朝にやっているアニメに出てくるような、ファンシーな格好だ。
だけど戦う相手は、悪の怪物や闇の魔物なんかじゃなかった。
自分と同じ魔法少女に対して、殴る蹴るなどの暴行を加える。
魔法の恩恵によって強化された腕力を振るうたびに、血と骨と肉が飛び散っていく。
返り血で服が濡れる。白を基調とした可愛らしい衣装が真っ赤に染まる。
僅かな抵抗を意にも介さず、相手が絶命するまで延々と殴り続ける。
魔法少女が死ぬとき、魔法もまた霧散する。そこに転がっているのは、ただの一般人の骸となる。
鼻腔に突き刺さる陰惨な血のにおいは――恍惚をもたらしていた。
けして誰にも言えない、後ろ暗い快感が己が身体を満たしていた。
しかし――同時に、満たされぬ欲求もあった。
求めているのは一方的な虐殺ではない。全力をぶつけてなお足りぬような、強敵との死闘だった。
物言わぬ骸に背を向ける。次に戦うのは、もっと手応えのある相手であればいいと願う。
そんなことを考えながら、夢の中の自分――森の音楽家クラムベリーは、微笑を絶やさぬまま次の獲物を探し始めた。
――意識が覚醒する。目を覚ました海野藻屑が最初に確かめたことは、まわりが血の海になってやしないかということだった。
幸いなことに藻屑が寝ていた純白のベッドシーツには一点の染みもなく、鼻につく鉄のにおいも、ばらばらになった死体も、部屋の中には存在していなかった。
いやな夢を見たせいか、いつもより動悸が激しい。たっぷりと汗を吸った寝間着が、べっとりと肌にはりついている。
のどの渇きを覚えて、藻屑はまくらもとに置いていた大きなペットボトルを掴んだ。乱暴にキャップを開けて、中身を一気に飲む。
ごくりごくりという音と共に、透き通ったミネラルウォーターは少女の身体に吸収されていく。
息をするのも忘れて飲んでいたものだから、口を離したとき、ぷはぁ、と、とても大きな息を吐いてしまった。
水が全身に染み渡っていくと同時に、ぼんやりとしていた意識と身体がようやくはっきりとしてくるのを感じた。
自分がどうしてここにいるのか、その理由を思い出す。
「ああ、そっか。ぼくは戦争をしなくちゃいけないんだっけ……」
面倒くさいな、と藻屑は思った。だけどその面倒ごとを全部引き受けてくれるやつが相方だから、藻屑はこうやって気楽に寝ていられる。
弓兵のサーヴァント――森の音楽家クラムベリー。それが藻屑の従者だった。
弓を持っているところなんて一度も見たことがないけれど、アーチャーを名乗っている。
どうやらそれが、この戦争のルールらしい。サーヴァントたちは自分の名前を隠して、与えられた役職を名乗るらしい。
でも、そんなことはどうでもいいと、藻屑は思っている。
この家には父親がいなくて、この街には山田なぎさがいない。そっちのほうがよほど重要なことだ。
藻屑の世界を大きく占めていた二人がいなくなって、何もかもが足りなくなってしまった。
ぽっかりと空いた穴を埋めるように、藻屑はまた水を飲んだ。だけどこんなただの水じゃ、藻屑の空白は埋められない。
『マスター。食事の準備が出来ました』
クラムベリーの声が、藻屑の耳朶を打った。
森の音楽家という肩書きは伊達じゃないらしく、クラムベリーは音を自在に操る能力を持っている。
聞く力のほうもすごいみたいで藻屑のちょっとした呟きも聞き逃さない。
いつも盗み聞きされているような気がしてあまり好きじゃないけれど、特に何か言ってくるわけでもないクラムベリーの性格は嫌いじゃない。
もっと惰眠を貪っていたい気もしたけれど、二度寝をすればまた気持ちの悪い夢を見てしまうような気がした。
お腹も空いてきた。今行くよ、とクラムベリーに返事をして、藻屑はベッドを抜け出した。
居間で藻屑を出迎えたのは、クラムベリーが奏でる音楽だった。
森の音楽家の名に恥じない美しい音色が、ささくれだっていた藻屑の心を落ち着かせる。
テーブルの上に並んでいたのは、簡素だが食欲をそそるメニューだった。
こんがりと焼けたトーストに、甘酸っぱい香りを漂わせるベリージャムが添えられている。
小ぶりのマグカップの中ではコーンスープが湯気を立てていた。
これに簡単なサラダを加えれば、小食の藻屑には十分すぎるほどの量になる。
しかし、二人で分けて食べるには少なすぎる量だ。
「ぼくの分しかないみたいだけど?」
「私たち魔法少女は食事を必要としません。どうか、お気になさらずに」
一言だけ発して、クラムベリーは演奏を再開した。どうやら彼女は演奏役に徹するつもりのようだ。
ふぅん、と納得したのかしないのかよく分からない頷きをして、藻屑は椅子に座った。
べちゃべちゃとトーストにジャムを塗りたくり、一息にかぶりつく。
しばらくの間、部屋にはクラムベリーが奏でる旋律と藻屑の咀嚼音だけが響いていた。
「夢を見たよ。魔法少女になる夢だった」
藻屑は呟いた。クラムベリーの耳にその言葉は届いているはずなのに、花の魔法少女は何の反応も返さなかった。
自分の見た夢がどんな夢だったのか、藻屑はその詳細を語った。
夢の中で見た光景がどれだけ残虐で、悲惨なものだったか。
「ねぇ。アーチャーが求めているのは、ああいうのなの?」
部屋に満ちていた音楽が、不意に途切れた。
代わりに、クラムベリーの声が響く。
「その認識は間違っていますね。私が求めているのは殺戮ではなく闘争です。
私との闘争が成り立つほどの強者でなければ意味がない。弱者をなぶる趣味はありません。
もっとも、私――いえ、私たちの邪魔をするようであれば、相手が何者であろうと全て排除するつもりですが」
藻屑は考える。クラムベリーが言うところの、強者と弱者の違いというものを。
これだけの大口を叩くのだから、クラムベリー自身は強者のカテゴリーに属すのだろう。
ならば、藻屑はどうだ? 手足は痩せ、片耳の聴力を失い、足を引きずるようにしか歩けない海野藻屑という少女は、クラムベリーの目にはどう映る?
「ぼくじゃ、アーチャーの御要望には応えられそうにないね」
「マスターとサーヴァントの戦力差を考えれば、仕方のないことです」
マスターを過剰に評価せず、こき下ろしもしない、サーヴァントとしては適切な答えがクラムベリーから返ってくる。
続いてクラムベリーは、既に心当たりはあります、と藻屑に告げた。
「捕獲令が出されたフェイト・テスタロッサ――私も彼女を追うつもりでいます。
彼女は当面の間、戦乱の中心となるはずです。
戦いは更なる戦いを呼び寄せ、その中には私の望みを叶えるサーヴァントも含まれることでしょう」
己を昂ぶらせる戦いがあるのならば、クラムベリーはそこへ臨む。
藻屑が朝食を終え次第、再び外へ出て行くつもりだとクラムベリーは言った。
「マスターはいかがしますか?」
「どうでもいい。寝とく」
ぶっきらぼうに答えて、藻屑は居間を出て行こうとした。
だが、クラムベリーに呼び止められる。
「お気をつけて。もしも他のサーヴァントが襲撃してきたときは――迷わず令呪を使い、私を呼んでください。
いついかなる時であろうと、あるじの元へ馳せ参じましょう」
「令呪……? ああ、これだっけ」
藻屑は、スカートの裾をつかんでめくり上げた。藻屑の肌があらわになる。
そこに在ったのは――大小さまざまな、青黒い痣だった。
出来たばかりの新鮮な青から、古くなって黒ずんだものまでよりどりみどりだ。
それは父親から長年に渡って与えられてきた《愛情表現》の証しだった。
しかし――その中に、異彩を放つ紋様があった。藻屑が聖杯によって与えられた令呪だ。
「ええ。それでは――よき眠りを、マスター」
「じゃあね、アーチャー」
藻屑もクラムベリーも、そのまま部屋を出ていった。
マグカップの中のコーンスープは、一口も飲まれないまま冷たくなっていた。
◆
藻屑がクラムベリーの過去を夢に見たように、クラムベリーもまた、藻屑の過去を追体験していた。
そしてクラムベリーは、マスターの過去に落胆した。
海野藻屑は――実父からの虐待を、受け入れていた。ともすれば、甘受していたと言っていいかもしれない。
クラムベリーにとって、それは唾棄すべき行為だ。そこに戦おうという意志は存在しない。
聖杯戦争のマスターとして考えれば、悪くはないのかもしれない。
マスターが前線に立てばそれだけ危険に晒される機会は増える。
好戦的で向こう見ずなマスターよりは、引きこもっている無気力なマスターのほうがいくらかマシだ。
しかしクラムベリー一個人としては、海野藻屑に対して決して良い印象は持っていない。
「戦わなければ――生きている意味がない」
そう断じて、森の音楽家クラムベリーは闘争を求め、耳をそばだてた。
◆
「生きているだけで、戦いなんだよ」
海野藻屑はそう呟いて、ベッドの柔らかさに身を委ねた。
けれど、すっかり目が覚めてしまったから、しばらく寝つけそうになかった。
「ここには――いないのかな。ぼくのためにすげーがんばってくれる、すっごくいいかんじの、ほんとの友達は」
それは、山田なぎさだった。
山田なぎさがぼくの隣にいてくれたら、あとはなにもいらない。
だけど今、山田なぎさはここにはいない。伸ばした右手が、虚しく空を切った。
【Bー1/海野邸/一日目 】
【海野藻屑@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康
[令呪]残り三画(内腿の青あざの中に)
[装備]なし
[道具]ミネラルウォーター入りペットボトル
[所持金]クレジットカード(海野雅愛名義のゴールドカード)、5000円分のクオカード
[思考・状況]
基本行動方針:山田なぎさに会いたい
1.アーチャーに全てを任せる
2.惰眠をむさぼる
[備考]
【アーチャー(森の音楽家クラムベリー)@魔法少女育成計画】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:強者との闘争を求める
1.フェイト・テスタロッサを巡る戦乱に乗じる
[備考]
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾点など見つけられましたら御指摘頂けると幸いです。
タイトルは「紅の夢」になります。
投下乙です。感想も書きたいですが今はその気力がないのでまた後日
自分の作品にタイトルを付け忘れていました。タイトルは「遅い朝」です
か、感想が追い付かない……!(嬉しい悲鳴)
取り合えず、少しずつ
>惑いのダッチアイリス
ステンドグラスの光に鳥たちの声、感覚に訴えかける要素がとても良かったです
きらきーからの手紙が薔薇模様なのも良い感じですね
それにしてもセリフが平仮名だらけなのに、ゾーマから感じるこのカリスマ性は一体……?
>ばねあしジャックと人形の家
このまま絵本に出来そうなぐらい素敵なタイトルですね!
本文の方も、ララを気遣うジャックが素敵なおじ様でした!
口は悪いけど、なんだかんだで世話を焼いてくれる親戚系の立ち位置ですね
それにしても……人形マスターは眠らないとは盲点でした
ジャックの能力を含めて、持久戦にはかなり強そうですね
今のところ本人に戦意が無いので、意味がありませんが
皆さん投下乙です
ララにペースを狂わされるバネ足おじさんはツンデレですね、やりたいことを見つけかねてるララはまだ不安定な感じもしますが
知世ちゃんとセリム組も、鯖が鱒の世話焼いてるけど、ここはセリムがプライドかつセリムなことがやはり鍵なんだな
マーメイド藻屑とバトルマニアクラムベリー、「戦わなければ生きている意味がない」「生きているだけで戦いなんだよ」の台詞の並びがこの組の有り様を表してるようで印象的でした
惑いのダッチアイリス
投下乙です
ゾーマ様暗躍していますね。大魔王城が完成すれば大分、有利になりますがどうなるでしょうか
たまちゃんも躊躇いがある感じでこの先どうなるのか
しかしこの組で一番気になるのはやっぱりバラモスです。彼が他のサーヴァント達を相手にどう立ち回るのか
ゾーマとたまちゃんの命運は、それに掛かっていると言っても過言ではないでしょう
これからのバラモスの頑張りと活躍に期待です
ばねあしジャックと人形の家
投下乙です
特に大きなイベントがある話ではないですが、妙な味わいがあります
自分もこういう話を書きたいのでちょっと羨ましいです
短い中でもそのキャラを魅力を感じられました
特にララはルーラーとの関わりもあり、今後の動向にも注目です
目覚め/wake up girls!
投下乙です
掲示板にさっそく燃料が投下されましたね
しかしアイドル達は否定しているものの、あながち諸星きらりが犯人で間違っていないのがなんとも
そして江ノ島がウザい。悪人であることはもちろん、普通に過ごす分にもウザくてスノーさんの胃が心配です
ところで名無しメイデンはきらきーが考えたんだろうか
紅の夢
投下乙です
二人の価値観の違いはお互いの境遇を考えると納得ですね
なぎさはここにいるけど藻屑は引きこもっていて、今のままでは会えそうにないですね
クラムベリーは夢でなぎさのことも見たのでしょうか。だとしたらなぎさにあったらどういうアクションを取るのか
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ 感想は月曜か火曜日に投下すると言ったな。
rミl ,´_-・- l-・-、シ
{6〈ヽ、 、_|_, イ 「\
ヾ| ( ,-ー-、) | ヽ ) /7
\ `- ⌒-´ノ / / 〈 /
/i\ __ノ / | ||
/\_ _ノ\ (ア E) ||
(_Y ヽノ )イ⌒ニ〈 < / |
( )____/ `ー-ー´\ \ / /
ミ ヽヽヽリリノノノノ
彡ミイ  ̄ ̄'` ̄ヾミ
彡ミi ) ;|ミ
彡ミ〉 _,,,,,,,,, i,i ,,,,,_イミ
rミi _-・- l-・-、v
{6〈`┬ 、_」_ イ あれは嘘だ。
ヾ| ( ,-ー-、) |
\ `- ⌒-´ノ 、 ' ’
/i\ __ノ - ∩_____ ’
/\_ _ノ\ ( イ___ヨ - パッ
(_Y ヽノ )イ⌒ニ ,ノ
( )____/ `ー-ー´
ー-',..-'ー.-,ー!..ー,,-._ー.,-ー.,-ー-...,,____
l | i i ''i,,_
ごめんなさい。
>>618
投下乙です、玲奈さんとミューミューですね。
狂ってやがる。
もう、序文のこの一言がこのSSのあらすじを表していますが、原作通りなのが非常に恐ろしいところです。
再現度が異常に高い玲奈さんの「ほら、恥ずかしいところ、店長に見てもらいなさい」のミューミューをプレイの道具として見ていない辺りが最高ですね。
ていうか完全に、万引きGメン 悪い娘にはお仕置きです!ですね。
玲奈さんは通常運行ですし、完全にミニゲーム感覚で聖杯戦争やってます。
それと、3分ファッキングのセンスは最高ですね。
ワードの破壊力もそうですが、ここでぶち込んだら最高に面白くなるというタイミングも最高の時を選ばれたと思います。
正直、玲奈さんはリレーしたいので万引き聖杯立たないかなと思います。
投下ありがとうございました。
>>626
投下乙です、絵理ちゃんとチェーンソー男ですね。
絵理ちゃんか岬ちゃんか悩んで、岬ちゃんの方を書いたので絵理ちゃんが来たのは実際嬉しいですね。
ネガチェンといえば、チェーンソー男に対してのみ強くなる絵理ちゃんですが、
二次創作だと、非常に面倒くさい能力なのでボクが二次二次で絵理ちゃんを書いた時には実質起こらないぐらいに設定していましたが、
素晴らしいですね、簡潔にして完璧な解法だと思います。
ボクにはその発想が出来ませんでした、チェーンソー男がサーヴァントになれば、成程納得ですね。
さて、内容に関しては山本ではない視点から見た絵理ちゃんの物語といった感じです、
この一話に関しては完璧にネガティブハッピーチェーンソーエッヂ外伝でしたね、高校生ぐらいにまで記憶を遡って読みたいSSです。
投下ありがとうございました。
>>632
投下乙です、柳生九兵衛さんとブルーですね。
ブルーの服を切り裂いたらモンスターボールが2つ出てくる所本当に良いですよね、関係ないことですが。
参戦時期的には、一番九兵衛にとって厭らしい時期から出してきたなぁと言った感じです、書き手の妙ですね。
その結果として得られるはずだった赦しを得られなかった九兵衛と赦されたブルーという組み合わせが誕生することと相成りました。
ブルーとお妙さんを重ねるという点もそうですが、関係性を作るという点にあたって非常に丁寧なSSだったと思います。
"妙は先まで腕の中にいた少女を呼びかけた。
腕に残された温もりが偽りかのように、少女は世界からいなくなっていた。"
個人的に好きなのはこの部分ですね、召喚を残された者の視点から見る描写としてド王道をブチ貫く素晴らしい物であったと思います。
投下ありがとうございました。
>>637
投下乙です、のっこちゃん犬養舜二ですね。
知り合いなんじゃないかって言いたくなるぐらいに、整体師並みにボクのツボをブチ貫いてきますね。
というわけで、絶体絶命の危機からスタートです。
そこがこのSSの巧みなところで、犬養が何をできるのか強烈に印象付けると共に、
サーヴァントを失ったマスターとマスターを失ったサーヴァントの出会いということで、出会いだけでなく、再起の要素も取り入れてかなり劇的なものとなっているんですね。
そんなわけですごく楽しく読ませていただきました、
投下ありがとうございました。
>>647
投下乙です、イヴさんとネイサン・シーモアですね。
再会を願う少女の仮想的な再会のSSですね、個人的に素晴らしく思ったのはこの登場話でイブがゲルテナ展に入場出来なかったことでしょうか、
ゲルテナ展に行き、オカマ口調の男と出会うという原作における2つの要素をなぞっているのですが、
入場出来ぬままに本格的に物語が始まる(敵サーヴァント及び、自身のサーヴァントとの遭遇)辺りが象徴的で良いですね、
サーヴァントも美術館で召喚され、外に出ることでマスターと会う――原作と同じ開始地点でありながら、外の物語であることをよく表していらっしゃると思います。
原作との対比というか、原作後のSSということで特に技巧的なSSだったと思います。
投下ありがとうございました。
>>654
ドロー、(パチパチ)スタンバイ(パチパチ)、感想フェイズ入ります。
投下乙です、ローチ先生ですね。
遊戯王に関してはソリティアで負けたという心あたたまる思い出があります、その後エクゾデッキを一つ組みました。関係無いですね。
SS前半ではローチ先生から見た世界が、逆説的にローチ先生が世界の異邦者である点が。
後半では、ローチ先生が心象について書かれています。
読者側に情報を受け入れやすくなるように段階的にSSが書かれていますね、実際素晴らしいことです。
特筆すべきは「与えられた役割を放り出しはしない。 ルーラーとなってしまった以上、私は使命を果たさなくてはいけない」でしょうか。
渋いです、台詞がこれ一つしか無いというのもそうですが、ルーラーのいるべき世界ではないこと、ルーラーの心象、その後にこれです。イケメンゴキブリです。
投下ありがとうございました。
>>664
八島聡美さんとキリエですね。
緩やかな雰囲気から、突然の「よっし、それじゃあどんな感じで聖杯戦争戦っていこっか?」
突然の猛アクセルで一気にこっちの心を引っ掴まれましたね。つかみとしては最強だと思います。
SS全体に言えることなのですが、緩急の付け具合が素晴らしいですね。
日常の雰囲気から、聖杯戦争の話。
聖杯戦争の話から、店自慢を語る聡美、そこから聡美自身の話。
読む側を上手にコントロールしているように思います。投下ありがとうございました。
>>677
にょわー☆きらりと悠久山安慈だにぃ☆
最後の最後に確定名簿をこのSSがぶち壊していきました、それぐらいの破壊力を持ったSSです。
正直読んでて辛いのですが、それと同時に不思議な爽快感がありますね。勧善懲悪です。
読んでて辛かったのですが、話的にはド王道をブチ貫くような不憫な女の子が救われる話です、エンターテイメント性にあふれています。
読んでて辛かったのですが、特にバーサーカーがチラシを持ってくるシーンは最高ですね。
きらりをいじめないでください。
投下ありがとうございました。
>>694
投下乙です、佐倉杏子さんと漆黒の射手リタですね。
凄まじい勇気で以て投下されたSSだと思います。
いきなり戦いが終わったところからスタートしていて、杏子のスタンスが非常にわかりやすくなっています。
勝利した後から、主従の関係性が書かれるというのも中々に面白いやり口ですね。
「はっ、惨めったらありゃしないね。負け犬らしいっちゃらしいけどな」
「……マスターの方は仕留めなくてよろしかったのですか?」
クールな会話です、実に良いです。
投下ありがとうございました。
>>758
投下乙です。
登場話から不穏な部分があった主従というかサーヴァントですが、想像以上に災厄ですね。
本格化はしていませんが、たまの周囲に魔物を配置するという正しい行為というジャブだけでもサクッと精神刳りに実に性質が悪いです。
「この教会、勝手に使っちゃったの、やっぱりいけなかったんでしょうか」のほのぼのとした感じから、
たまちゃんのを一気に突き落としてくる辺り本当に心を弄んでくるなぁと思いました、素敵です。
そしてゾーマ様はちょっぴり浮気者です、早速フェイトちゃんに幼チェックが入りました。本当に聖杯戦争を楽しんでいますね。
そして今回より掘り下げられたゾーマ様の心情、闇が深い。
たまちゃんへの悪意、そして大魔王としての余裕、矜持をひたすらに感じさせられます。
「さあ マスターよ。
そして このせかいに うみおとされた あまたの ねがいたちよ」
「そなたらの ゆくすえ みせてもらうぞ」
いいですね、完全に大魔王です。
投下ありがとうございました。
>>773
投下乙です。
物語の導入とマザーグースの相性って素晴らしいものだと思いますね、絵本が読まれるのを待つ子どものようになんだかわくわくします。
室内の描写が好きなのですが、(生前の彼の屋敷からすれば、掌の上の小箱のような!)が童話的で特に好みです。
全体的に漂う雰囲気がシックで素晴らしいSSだと思います。
台詞の始まりが「グゾルが眠るときには、いつも歌を歌ってあげたのよ」であることで、
最期の「今晩は……貴方にも、ちゃんと歌を聴いてほしい。 だから、帰ってきて」がより染み入ります、書き手の妙だと思います。
繊細でしかし力強いような美しい台詞群じゃないですか。
そして、バネ足ジャック。
『チェーンソー男』と『包帯男』を認識しました、実際戦うこととなったら実に夜に映えそうです。楽しみです。
――そうだ。跳び回るのは自分だけでいい。
ダブルミーニングもそうですが、ウォルターのこの台詞が格好良さと思いやりがあって、実に素晴らしいです。
投下ありがとうございました。
>>796
すげーーーーーーーーーーなんて面白いSSなんだーーーーーーーーーーーーーーー!!
これを書いたのは誰なんだーーーーーーーーーーーーー?
俺だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
一番気に入っているのは「やめてください!怒りますよ!」です。最高にクソ煽られた感のある台詞を書けたと思います。
以上です。
>>804
投下乙です。
現在の主従関係に何の問題も無いのですが、それすら将来に不穏なものを感じてしまって恐ろしいですね。
しかし、知世ちゃんには癒されます。プライドかセリム・ブラッドレイかは知世ちゃんに掛かっています、ほんとうに頑張っていただきたいものです。
特に「なぜ私をそこまで信用するんです……」からの「それは、だってアサシンくんは優しい人ですから」の流れは最高ですね、温かい気持ちになります。
できれば一声掛けて欲しかったな、とちょっとした不満に感じている部分はありますが、それだけなので本当に知世ちゃんは優しい女の子です。
しかし、この組は死神様について調べていることがわかりました、少なくとも知世ちゃんは深入りはしていないようですが、不穏です。
内外に不穏な要素があって、非常に恐ろしいですが、知世ちゃんとセリム・ブラッドレイを信じます。
投下ありがとうございました。
>>810
投下乙です。
クラムベリーはフェイトちゃんを追うということで、魔法少女を屠ってきた圧倒的カラテが期待されます。
全体的に距離感のある関係性なのですが、
だからこそ「戦わなければ――生きている意味がない」「生きているだけで、戦いなんだよ」が光ります。
対照的な二人の台詞は彼女たちの根本的には相容れぬ関係性を表すだけでなく、端的に二人の生きざまを表しています、素敵です。
あと、藻屑がカワイイですね。
「ああ、そっか。ぼくは戦争をしなくちゃいけないんだっけ……」とか、ぼうっとしていて実にカワイイです、
それと痣の中にある令呪は実に良いですね、刻まれた痣はスティグマにも似ていて、令呪という刻印を受け入れる余地を与えます。
投下ありがとうございました。
改めて皆様少女聖杯に投下ありがとうございました!
そして今後ともよろしくお願いします!
個人的なことですがステーシーと初音姉さまは来るかと思っていたのですが、
来なかったので驚きました。
自作品の把握に関して
木之本桜
カードキャプターさくら(漫画版)――三巻まで
盾は入手済み、迷は入手していないので、能力に関しては三巻まで読めば把握できます。
沖田総司
Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚 (コハエースEX)――全一巻
とりえあず桜セイバーを把握するには、コハエースEXだけを読んでおけばいいですが、
そもそも把握という概念があるのかと聞かれると困ります。
中原岬
NHKにようこそ!(小説版)――全一巻
繰り返し言いますが、漫画版は面白いですが同姓同名の似たような人間なので把握には向いていません。
レイ(男勇者)
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ゲームソフトです、FC版でも、PS版でも、DS版でも、好きな機種を選んで下さい。
ただ無名キャラですので、背景さえ知っていれば後は自由に肉付け出来ます。
海野藻屑
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない――小説版は一巻完結のライトノベル、漫画版は全二巻
小説、漫画共に素晴らしい作品です、どちらでも把握には問題ありません。
森の音楽家クラムベリー
魔法少女育成計画――全一巻(漫画版が連載中ですが、単行本は未だ出ていません)
魔法少女が出て殺す!山風リスペクトの魔法少女同士が殺し合うライトノベルです、
皆が忍法(魔法)を使って戦う中、森の音楽家クラムベリーは圧倒的カラテで敵を叩きのめすニンジャスレイヤーみたいな存在です。
スノーホワイトも登場していますが、彼女についてより深く把握しようとするならば、
魔法少女育成計画restart(上・下)は読んでおいた方がいいかと思われます。
っていうか全巻なるべく早めに読むべきであると思います、魔法少女育成計画はプレミアが付きます。
あと、新装版を買いましょう。
蜂屋あい
校舎のうらには天使が埋められている――五巻まで
校舎うらは全七巻ですが、最終二巻は中学生編ですので蜂屋あいを把握するだけならば五巻まで読めば大丈夫です。
アリス
デビルサマナー 葛葉ライドウ対コドクノマレビト――四巻
アリスを把握するだけならば、四巻だけを読めば大丈夫です。
っていうか、四巻にしか登場しません。
輿水幸子
アイドルマスターシンデレラガールズ
アニメ版9話を見るのが一番早いと思います。
クリシュナ
夜明けの口笛吹き
メインヒロインです、そんなに長いゲームでも無いので一気にクリアすればいいと思います。
雪華綺晶
Rozen Maiden+ローゼンメイデン――全十七巻
雪華綺晶の把握だけならば、ローゼンメイデン全10巻を読むだけで大丈夫だと思いますが、
ストーリーのよくわからない漫画を10巻分読むのも辛いと思うので、Rozen Maidenから買えばいいと思います。
プレシア・テスタロッサ
魔法少女リリカルなのは(小説版)――全一巻
なのはとフェイトの把握のためにどうせアニメ一期を見ることになると思いますので、プレシアさんに関しては小説版をおすすめします。
諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)、ルーラー(雪華綺晶) 予約します
すみません、予約延長ではなく破棄します。
出鼻を挫くような真似をしてしまい、大変申し訳ありません…。
予約を延長します。
投下&感想お疲れ様です
大井&アーチャー(我望光明)
予約します
期限までに投下が間に合いそうにないので一旦予約を破棄します。
山田なぎさ、アサシン(クロメ)を予約します
予約延長します
皆様、投下乙です!
>目覚め/wake up girls!
動き始めたアイドルたちの活力が爽やかな一話でした
三組三様の主従関係、そしてなにより、シンデレラたちのアイドルときらりへの思い入れが良かったです
あと、作者さんには悪いですが私は
>それは杏に今、訪れた変化ではなく、昔、きらりが杏に贈った感情だった。
のあたりが一番好きです
どの場面も良かったですけどね!
ところで、まほいくは未読なのですが、正拳突きでノートパソコンを壊すあたりスノーホワイトもクラムベリーと同じくカラテ重点型なのですね
夢想転生を会得した者同士の戦いの如く、魔法少女同士の戦いは最終的にただの殴り合いになる、と
きっと最終的には間接技が全てを征するのでしょう
そう、『大魔法峠』は正しかった……!
>遅い朝
普通にメイドさんがいて違和感が無いとか、知世ちゃんちはすごいですね……
セリム(プライド)は知世ちゃんへの心配もあってシビアな意見を出しますが、それをものともしないのは流石です
シビアだが隠しきれない優しさを持つ少年と、一見のほほんとしているけれど、洞察力と大きい器を併せ持つ少女
養子の弟とそれを受け入れようとする姉のような二人で、和みました
しかし、この二人を待ち受けるのは、少女聖杯一、二を争う邪悪タッグ
セリムははたして、知世ちゃんを守りきれるのでしょうか……?
>紅の朝
どこか似ているようで、全くの正反対な二人の関係が良く出ているお話でした
二人には、同じく「役」になりきり継続する暴力に関わるという共通点こそありますが、「被害者」と「加害者」では分かり合えなくて当然ですね
そして、二人の最大の相違点が藻屑の友、山田なぎさの存在となりますが……この点でこそお互いの志向の違いが明白に表れて、二人が完璧に決裂することになりそうです
少女たちは砂糖菓子の弾丸の代わりに実弾を手に入れたものの、その弾丸は魔弾の類い
三発の弾丸は、最後に誰を撃ち抜くのか……こちらも不穏で、先が楽しみです
しまった……!
すいません、感想三番目のSSのタイトルは「紅の夢」でした
一応延長しておきます
予約期限が切れたので一旦破棄します
ロワのフレーバー、と言うより、にぎやかし的な意味も兼ねまして、帝都聖杯で某氏がなさっていたように、
エクストラクラスの解説(没含む)を作りましたが、此処に投下しても問題ありませんかね?
>>832
大歓迎です!
>>833
ありがとうございます!!
帝都聖杯での先駆者様が仰っておりましたように、
・3次創作であり、当方の勝手な自己解釈や考案者の意図と異なる事
・作品内にてそのエクストラクラスの言及を行っているもの
・原作Fateシリーズにて言及されているエクストラクラスについてはオミットして有る事
の3つを、予めご留意してください。では、始めます。
創造主(クリエイター):
2通りの意味がある。1つは、『作品』を作るという意味での創造主。そしてもう1つが、世界を含めた万物を創造したと言う意味での創造主。
此処では後者の方を解説する。クラススキルには当然の様に、万物の創造に関わるスキルが組み込まれているが、大抵の場合は聖杯戦争の制限により、完全なる力を発揮出来ないようになっている。と言うよりも、万物を創造出来るような存在を呼べるのであれば、聖杯自体が必要なくなる。
創造主であると言う事は一種の神であると言う認識の為か、大抵の存在は低い高いを問わず神性を持っている事が多い。
ステータスに関してはまちまちで、創造主に相応しい力を持つ者もいれば、万物を創ったのかと首を傾げざるを得ない微妙な者もいる。
万物を創ったと言う実績と直接的な戦闘力は、イコールではないのか。それとも、創造主であれど、自らが作った世界の外に出れば、弱体化すると言う事か。
また、創造主と言う存在はえてして捻くれて、擦れた存在が多く、時として自らが手塩にかけて作り上げた舞台にカオスをもたらしたり、態々滅ぼしたり、自らの力を誇示する為に敢えて悪性存在を創ったりする者もいる。『もの』を生み出すと言う事は、自分が望んだものを作れない、生み出したものが自分の思っていたものとは違う、得られる筈だった評価が得られない、と言うストレスや苦難・苦悩との戦いなのである。
該当可能性の高い存在は、クリシュナ(夜明けの口笛吹き)、デミウルゴス(Nepheshel)、かみ(魔界塔士Sa・Ga)、ホシガミ(真・女神転生デビルチルドレン)、YHVHなど。
相棒(パートナー):
二人組の片割れ。相方とも。生前二人組やペア、コンビを組んでいた者、或いは兄弟や姉妹の片割れが来る事が多い。
彼らに与えられるクラススキルは本当にバラバラで、一々個別に分ける事は最早不可能な程。直接戦闘に秀でた者もいれば、魔術などの後方支援に秀でた者など、同じパートナーでも全くクラススキルが違う等と言う事はザラ。
当然の事ながらステータスに関してもバラバラで、極端に強い者もいれば、弱い者もいる。ただ、パートナークラスの共通の特徴を上げるとするならば、彼らは生前2人組で活動していた事の方が多い為に、片割れだけになればその戦闘力は2人の時よりも落ちる、と言う者が殆どであると言う事。
生前組んでいた相方よりもマスターが相性が良いのか、と言うのは良くも悪くも呼び出したマスター次第。ギャンブル性の強いクラスである。
該当可能性の高い存在は、あまりにも多すぎる為に列挙不可。
億万長者(ビリオネア):
Billionaire、とは、英語で億万長者を意味する単語であり、日本の認識では、凄まじい大金持ちである。
兎に角、使い切れない程の金を持っていると言う事、言うなれば、超が何個ついても足りない程の大金持ちである事が絶対条件のクラス。
其処に立っているだけで、或いは寝ているだけで巨万の富が入って来る程の者でなくてはならず、金を稼ぐのに労働と言う手段を経なければならない者は、このクラスに当てはまる事はない。労働と言う苦しみから解き放たれ、それでいて他を隔絶する程の財力を持った存在でなければ、このクラスにはなれないのである。
クラススキルには高ランクの黄金律が絶対条件。それを満たす者であれば、戦闘能力の有無を言わず大金持ちである。
該当可能性の高い存在は、ハレクラニ(ボボボーボ・ボーボボ)、ギルガメッシュ(Fateシリーズ)、ミダス王など。
虐殺者(ジェノサイダー):
虐殺者。英語のGenocideは、ギリシャ語で部族を表すgenosと言う単語に、殺すとか殺す人を意味する接尾語のCideを組み合わせた単語である。
クラススキルは虐殺者。どれだけ多くの存在を殺して来たか、と言う最も解りやすい指標で、このスキルの高低が決まる。
クラスに該当する存在の戦闘力はまちまちで、個人の力で大量虐殺を成し遂げて来た者は凄まじい強さを誇る傾向にあるが、軍隊や部下に指示し、大量虐殺を行った者は総じて直接的な戦闘力には秀でない傾向が強い。が、後者の方は、得てして強い悪のカリスマのようなものを内包している事が多い。
本来のジェノサイドの意味通り、自らが、或いは自らの指示の下に特定の民族や人種を虐殺した者が、このクラスに当て嵌まりやすい。
また本来の意味でのジェノサイドではなく、人種や民族の隔てなく大量虐殺をした、或いはしてしまっただけでなく、結果的に多くの存在を葬ってしまった者もまた、このクラスに当て嵌まる。大量虐殺とは言うが、行った当の本人は自分に罪の意識は薄く、寧ろ当時はそれが正しくかつ正当な行為だった、または、結果的に大量の殺戮に繋がるとは思いもよらなかった、と考えていた者が実際上は殆どである。
該当可能性の高い存在は、人修羅(真・女神転生Ⅲ)、須田恭也(SIREN)、二条憲政(狂四朗2030)、カーネイジ(スパイダーマン)、黒贄礼太郎(殺人鬼探偵)、スターリン、毛沢東、ポル・ポト、トルーマン大統領など。
狩人(ハンター):
何かを狩る者。比喩的な意味で使われる事もあれば、文字通り、その何かを狩る事で生計を立てる者もいる。此処では後者を扱う。
クラススキルや保有スキルは、何を狩るかによって非常に変わって来るが、1つ確かな事は、基本的に徒党を組む事もあれば、単独で行動しなければならない局面もある者が多い為か、ある程度の道具作成スキルを持つか、平均よりも高めのステータスを持つ者が多い。
大抵の存在が何かしらのトラップの制作能力、または戦局を有利に進める小道具の制作力にも長けており、小技にも秀でる。
だが彼らの最大の特徴は、複数の武器を使い分けられる器用さであり、言い換えるのであれば、相手によって使う得物を切り分けられると言う柔軟さかつ、それぞれの武器を用いる技量のアベレージの高さが、最大の武器の1つなのである。
結論を言えば、総じて戦闘能力の高い存在が多いクラス、と言えるだろう。
該当可能性の高い存在は、狩人(Bloodborne)、ハンター(モンスターハンターシリーズ)、神薙ユウ(GOD EATER)、D(吸血鬼ハンターD)など。
起業家(アントレプレナー):
事業を起こした者。必然的に、起こした会社の開祖でなければならない。
該当条件には言うまでもなく、1つの企業や組織を起業した者でなければならないのだが、ただ企業しただけではならず、世界的規模の組織に成長したか、1国を代表する組織か、など、其処から多数の条件が絡まって来る。
経営手腕に関するスキルは必須と言っても良く、このクラスに当て嵌まる存在は総じてそれらのスキルが高い。経営手腕が優れていたのだからこそ、彼らは組織の版図を凄まじく拡大させる事が出来たのだから、当然と言えば当然の話である。
他にも、人を見る目や、未来の展望を見渡すと言う意味での千里眼、次に何を消費者は求めているかと言うニーズを嗅ぎ分ける嗅覚、と言った超感覚を持つ者も存在。
だがやはり彼らの最大の特徴は、金を稼ぐ機会を手繰り寄せる、或いは手元にやって来させる幸運であろう。自らの弛まぬ努力と艱難辛苦、そして幸運をものにし活用すると言う行為の末に、黄金律を獲得した人物、と言えるのかもしれない。
該当可能性の高い存在は、三國総一郎(C THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL)、鷲巣巌(アカギ)、本田宗一郎、安藤百福、ビル・ゲイツなど。
仙狐(だいようこ):
そのあまりの格の高さが故に、基本的には聖杯戦争に、本来の性能本来の姿で呼ばれる事は先ずない存在。
狐のクラスと言う型、即ちサーヴァントとしての召喚の為性能は相応に劣化しているが、それでもなお、他を隔絶する力を持つ。
クラススキルには、自らの存在証明と言っても良い、妖獣スキルを有している。神霊に匹敵、或いは比肩する存在である為に、揮える力の数々は破格。
ただ、その余りに他者を超えた存在のせいか、非常に気まぐれで、遊んでやっていると言う感覚で戦っている為か、本気を出せる機会は少ない。
上にあげた特徴は、あくまでも大妖狐の場合で考えたものであり、それ以外の存在が上にあげた様な性格性質であるとは、無論限らない。
該当可能性の高い存在は、大妖狐(いぬかみっ!)、羽衣狐(ぬらりひょんの孫)、妲己(封神演義)、八雲藍(東方Project)など。
宇宙的怪物少女(クトゥルフ・ガール):
クトゥルフ少女とも呼ばれる存在。かの外宇宙からの邪神達との関連性は不明。
が、クラスの該当者は総じて、かの邪神達を想起させる様な力の一端を揮う事が出来ると言う。このクラスに該当する者は4名と、非常に少ない。
モエと呼ばれる独自の時間の中に生きており、その思考速度や活動速度は人間のそれを遥かに超えており、継戦能力も、人のそれを超越する。
また総じて、人間の姿とクトゥルフ少女としての姿を持っている様であるが、聖杯戦争ではクトゥルフ少女としての姿に縛られる為に、逆に人間時の変身は不可逆的となっている。
該当可能性の高い存在は、例外少女ウユウ、実存少女サヤキ、限界少女ニラカ、究極少女マナミの4名。
忘却人(オブリビオン):
忘れさせる者、或いは、忘れ去られた者。スキル、ステータス共に共通性はなく、強さもまちまち。
忘れさせる者は、対峙した相手の記憶を消去したり出来る宝具やスキルを持っている事が条件の為、これは解りやすい。
問題は後者の忘れ去られた者である。厳密に言えば忘れ去られたと言うよりも、歴史の波に飲まれて、存在したと言う痕跡が極限にまで消された存在の事。
辛うじて存在した、と言う事実や伝説が残された存在の為に知名度による補正も全くなく、そもそも存在したと言う証がとことん消された存在の為に、狙って呼び出そうにも、生前のゆかりの品を発見する事が最も困難なクラスになる。
そして何よりも、狙って呼び出したその存在が、呼び出した張本人の期待に添えるような強さであるか、と言う保証は全くない。
彼らが孤独から解放されたいのか、それとも孤独の中で永遠を過ごしていたいのかは、呼び出してみない事には、全く分からない。
該当可能性の高い存在は、ミュッチャー・ミューラー(ジョジョの奇妙な冒険)、悪源太助平(風来忍法帳)、鉄仮面(バスティーユ監獄に収容されていた囚人)、チェルノボーグ(スラヴ神話の黒き神)など。
皇帝(エンペラー):
過去に皇帝だった、或いはそれに至るに相応しい素質を持っていた者が該当するクラス。
皇帝は影に生きる事は許されず、絶対に表舞台でその辣腕を振るっていなければならない為に、無条件でクラススキル、君臨を獲得する。
また、総じて高いカリスマスキルを持ち合せており、人生における絶頂期の人格と年齢で呼び出される為か、精神の強固性も全く揺るぎない。
だが、皇帝ではあるものの、戦闘力が優れているか、と言うと、そう言った者は少ない。あくまでも皇帝に求められるのは、多くの有象無象を率いるカリスマ性、指導力、戦の強さ、内政と外政の腕前など、政治や軍略な人柄である。
直接的な戦闘能力を持たない故に、そのカリスマを前面に押し出した圧倒的な対話能力、卑近な言い方をすればコミュ力を活かす必要があるクラス、と言えるだろう。
また、生前本物の皇帝、或いはその時期があった者は、人生の絶頂期の人格の為か、卑俗の出であるマスターを軽視する傾向にある。
該当可能性の高い存在は、犬養舜二(魔王 JUVENILE REMIX)、カエサル、始皇帝、ナポレオン、神武天皇、創世王(仮面ライダーBLACK)、クライシス皇帝(仮面ライダーBLACK RX)など。
以上になります。一部明らかに解説が短いのが有りましたが、其処は、自分の解釈と作品に対する知識不足である事を、此処にお詫び申し上げます。
投下乙です。
適当に書いた身からすれば造詣に唸らされるばかりです。
帝都でもそうでしたが、解説に他に当てはまっていた可能性のキャラクターがあると、
物語の可能性を感じてより楽しめますね。
個人的なことですが黒贄礼太郎が入っているのが実に嬉しいですね。
投下ありがとうございました。
おお、これは面白い
投下乙です!
それぞれの言葉の起源や意味にまで踏み込んで考察してるとこが素晴らしいな
皆様投下お疲れ様です!
>目覚め/wake up girls!
すげーおもしろいおはなし。
三者三様の日常(?)風景から、諸星きらりを中心に物語が回り始める。
そして、幸子、妹様、ANZUCHANGの三人が色々な意味で覚醒。一人は覚醒というか、平常運転というか。
特に好きなのはANZUCHANGの覚醒シーン。
あれだけ不動を誓っていた彼女が友情のために立ち上がるという展開はお見事。
しかし、三組の主従が間接的に関わっているのに一番被害を受けたのは予約に顔すら出してないきらりという。
きらりをいじめないでください。
投下お疲れ様です!
>遅い朝
死神様に自分から関わっていくのか……(恐怖)
小学生だからこそ誰よりも見逃せない事件。
親しい友人がいるからこそ解決しなければならない事件。
小さな胸に秘めた勇気が無事輝けるのかどうか……
そういえば、知世ちゃんが桜ちゃんを守る側として動くっていうのは実際珍しい状況。
どんな立ち回りを見せるのか、というより、あの『死神様』を相手に立ち回れるのか……?
そのうえ、プライドもプライドでなにやら不穏な気配が……どうなってしまうのか
投下お疲れ様です!
>紅の夢
藻屑ちゃん、学校、学校!転入届早く!
OPで学校に通っていることが明かされたなぎさに反し、身体ハンディキャップもあって家に居ることを決めた藻屑。砂糖菓子の弾丸はすれ違う。
彼女の場合外で襲われたらそれだけで不利だし、最善の選択だけど……なぎさちゃんのこと、クラムベリーのことが今後どうでるか。
クラムベリーは彼女らしく、ひたすらに純粋な闘争を望んでフェイトちゃんのもとへ。おれよりつよいやつにあいにいく。
魔法少女とはなんだったのかと思わせられる行動方針。だが、そこがまた、らしくていい。
単独行動、宝具の『音』と、どこまでも引っ掻き回してくれそうですね。
そして「戦わなければ――生きている意味がない」「生きているだけで、戦いなんだよ」の対照的なセリフ。
他の方も触れていましたがこの2つのセリフにこの主従の魅力が詰まっていると思います。いいセリフやこれは……
投下お疲れ様です!
大井&アーチャー(我望光明)
投下します
朝六時。
スマートフォンがアラームで朝の訪れを叫びだすより先に目を覚ます。
そのまま半身を起こし、くっと一回背を伸ばす。
朝一番の空気が少女の肺に染みわたる。
戦争の舞台とは思えない、どこか甘ったるさを感じる澄んだ空気。
深呼吸を終え、抱きしめていた枕に微笑みかける。
「おはようございます、北上さん」
枕はなにも言わない。
大井はただ黙ってもう一度枕を抱きしめた。
その枕の持ち主に毎朝そうしていたように、優しく抱きしめた。
また、北上さんの居ない一日が始まってしまった。
大井にとって苦痛を伴う一日が始まってしまった。
顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。
鏡の向こうに居る大井は少しやつれた気がする。
北上が聞けば「気のせいじゃない? いつもどおりだよ」なんて言うかもしれない。
でも、大井にとっては気のせいには思えない。
生きていく上で必須の何かがごっそり欠乏しているような虚無感に苛まれ続け、やつれない方がおかしくないのだから。
「やあ、よく眠れたかな」
いつもどおりの時間、いつもどおりのタイミングでアーチャーが現れる。
大井が着替えまで終えてから大井の前に姿をあらわすのは彼なりの気配りらしい。
また、アーチャーが現れた時には朝食の支度が整っている、という合図でもある。
こういう細かい気配りが出来るサーヴァント、というのはそれだけで助かる。
自分の領域を他人に踏み込まれるのをかなり嫌う大井も、出会って数日間変わらずに適切な距離感を保ち続けるアーチャーには少しだけ気心を許していた。
ガサツな戦艦や頭空っぽの重巡洋艦や鬱陶しい駆逐艦のような正確のサーヴァントだったら、それだけで大井の心労は計り知れない程になっていただろう。
「いつもありがとうございます」
「礼には及ばないよ。こう見えても、料理が趣味でね」
取ってつけたような謝辞に、冗談か、それとも真実か、アーチャーはそう答えた。
コック帽を被りコックスーツを着こなす彼の様は趣味というにはいささか堂に入りすぎている。本職は教育者らしいがその道の大御所と言われても納得できるほどのフィット感だ。
今日の朝食はパンとスープとハムエッグ。こちらに来てからのオーソドックスな朝食。
出された朝食を食みながら思うのは、こういうスープ、北上さんは好きだろうな、ということ。
ふと、アーチャーから作り方を教わっておくべきだろうかとかんがえる。
大井が聖杯を掴めば、彼は消えてしまう。
その前に、レシピを聞いておこう。
大井はそう心に決め、決めたはいいが特に急ぐことでもないので心の片隅にだけ置いておいた。
朝六時三十分。
朝食が終われば、テレビ(個人用映写機、リアルタイムでの情報共有が可能)で街の様子を確認する。
あいも変わらず下らない番組ばかりを垂れ流している。
根呂だか下呂だかの愛犬家の番組が放映されるとか。
課金の出来ない完全無料のソーシャルゲームがベータテスト中だぽんだとか。
地方劇場での歌姫の公演が今日も行われるだとか。
遊園地に皆のアイドル那珂ちゃんが来て握手券配布だとか。
そんな下らないことばかり。
ここが戦争の舞台だとは思えない。
テレビで繰り返されるのは、意味のない広告と下らない娯楽番組と少しばかりのニュースだけ。
安い、安い、実際安い。
コケシ、コケシ、コケシマート。
また意味のない広告が流される。
世界を壊滅寸前にまで追い詰めた深海棲艦のしの字も出てこない。
ひょっとすると、この世界は大井の住んでいた世界とは全く違う場所なのかもしれない。
大井は予選の頃からずっとそう考えていた。
技術と文化のレベルが違いすぎる。
そして、世界情勢が違いすぎる。
事実大井は、初めてこの地に降り立った際何世紀も未来に、もしくは異世界に放り込まれたような感覚に陥った。
アーチャーにそのことを尋ねると、あながち間違いではないのではないか、という答えが返ってきた。
そして大井の事情には最低限しか触れず、大井が頼むまでもなく実演を踏まえて懇切丁寧に様々なこの世界の文明の利器の説明をしてくれた。
最初はなんてお節介なやつだと思い、嫌味を込めて「やけに丁寧ですね」と言うと、「君に死なれては困るからね」といつになく真面目な表情で返された。
これはおそらく本心だろう。アーチャーは(大井には劣るが)壮大な夢を持っている。夢半ばで死ぬわけにはいかないのはお互いということだ。
それに、少なくとも『君のためを思ってだよ!』なんて言われるよりは百倍マシな回答だ。
実際、テレビ、携帯、電話、パソコン、インターネット、電子マネーなどなど、どれもこれも説明なしでは理解どころかスタートラインにも立てない機器、かつ使えると使えないとでは立ち回りに大きく水が開くものばかりだった。
特にスマートフォンは早く覚えたほうがいい、というのもアーチャーの進言だった。
アーチャー曰く、『便利がいい』ということらしいが、成程ずばりその通りだった。
最初は携帯無線のようなものかと思ったらなかなか便利なもので。
この場にいながら別の場所の情報を得ることが出来る。カメラが内蔵されているので様々なものを記録しておける。
正確な時刻をいつでも知れる、大まかながら今後の天候が知れる。財布になる、メモになる、懐中電灯になる。声を出さずに連絡を取り合える。簡易レコーダーとしても利用可能。
その他にもあれやこれやと、もはや『電話』と呼ぶよりも『オーパーツ』とでも呼ぶべき代物。
これが一揃えでもあれば軍部の機材は大幅に削減できるんじゃないか、というほどのすぐれものだ。
その圧倒的な情報量に最初は面食らったものだが、アーチャーの手助けもあり、今は大井も人並みにそのオーパーツたちを使いこなしていた。
スマートフォンをイマドキの女子高生らしくさっさっと操る自身を俯瞰しながら、大井は、恵まれている状況に感謝した。
大井はマスター内でも順風満帆な漕ぎ出しが出来ている、という自負があった。
予選期間中特に苦労もなく過ごした。(といっても戦闘自体を行ってないのだが)
かなり初期に目覚めたが故に情報というハンディキャップも克服出来た。
そして自身のサーヴァントであるアーチャーは性格・性能ともに申し分ない。
恵まれた環境。大井の愛への世界からの祝福を感じざるを得ない。
強いてまだ残っている問題を挙げるとするなら。
「読みづらい……」
ひらがなを主体として左から右へ書かれる文章。
通っている高校の教科書も、テレビのテロップも、インターネットのホームページも、全て同じ文体で書かれている。
大井の世界とは全く違う文体で、多少慣れてきた今でもまだ読みづらい。
だが、文句を言って文体が変わるわけでもない。
それに、ここまで恵まれた状況。このくらいは譲歩するべきだ。
大井は小さな声で二三言だけぶちぶちと文句を垂れ、スマートフォンに届いたメールを読み進めていく。
午前七時頃。
誰にも教えていないはずの大井のメールアドレスにメールが一通届いた。
宛名はルーラー。件名は通達。
本文を読むに、聖杯戦争の裁定者からの定時連絡らしい。
通達に書かれていたのは4つ。
予選を通過したこと。
フェイト・テスタロッサを捕らえて図書館に連れて行けば令呪が貰えるということ。
掲示板(匿名で情報をやりとりできる場所)が解説されていたということ。
電子マネー5000円分をチャージしたということ。
「初日から討伐令か、物騒な話だ」
隣からスマートフォンを覗きこんでいたアーチャーが呟く。
「報酬は令呪、ですか」
「参加するかい? あって困るものでもないだろう」
「そこまで必死にならなくても結構です。ただ、この子……フェイトって子を見つけたら知らせてください」
そうやりとりを交わして、メールに添付してあるURLを開く。
説明には掲示板だと書かれていたが、通達からまだそう時間が空いてないためか、それほど活気に満ちてはいなかった。
ただ、一部ヒートアップしている面々は居るようだが。
現在、スレッドと呼ばれているものは2つ。
一つは「小学生の死亡事件に関して」
もう一つは、現在進行形で雨後の筍のようににょきにょき伸びている「諸星きらりファンクラブスレ」。
どうやら、スレッドを立てた人物と、別の人物が口論をしているらしい。
「諸星きらり……」
聞き覚えのある名前だ。
サーヴァントやマスターに関する情報を、高校内でそれとなく探っていた時に耳にした記憶がある。
曰く、背がすらりと高く、ふわふわとした長い栗色の髪がよく似合う少女。
転校生だったが人当たりもよく、誰にでも別け隔てなく優しく接していた。
そんな性格が災いして同級の少女たちから虐めを受けていた。
そしてある日を境にぱったりと登校しなくなった。
虐めのことが公にされた時に、大井の担任から聞いた情報だ。
ただ単に虐められていた、というだけなら大井もここまで注意しない。
だが、『諸星きらり』は状況が異常過ぎた。
女子トイレに積まれた3つの死体を残して、彼女は煙のように消えたのだ。
死体はそれぞれ人ならざる力で顔を殴り砕かれ、首をねじ切られ、頭を押し潰されていたらしい。
スレッドに書いてある諸星きらりと殺人事件情報は、大井の入手した情報とほぼ合致する。
間違いなく大井の知る『諸星きらり』のことだろう。
以後はなにやらうるさい小バエのようなやりとりが続けられているが、大井は別のことに気を回していた。
「『エノシマ』……だったかしら」
交流のある教師にそれとなく『諸星きらり』のことを聞いてまわっていた時に、とある教師の口からこぼれ落ちた名前。
『今日諸星きらりのことを聞きに来たのはお前で二人目だ』というから誰が聞いたかと問うと、『エノシマ』という名前の少女が先に尋ねて回っていたという返答が得られた。
その返答を聞いた時、大井は心のうちで慎重にことを進めていた自分に称賛を送った。
時期的に見て、偶然とは思えない。慎重に動いて後手に回ったのがいい方向に出た。
『エノシマ』は十中八九マスターだ。大井と同じく殺人事件にサーヴァントの影を見て、大井とは逆に全力で聞きまわったようだ。
案外、この掲示板にファンクラブスレを立てたのが『エノシマ』なのかもしれない。
だとすれば余程性格のネジ曲がった、ひとの嫌がらせが生きがいのような人物なのだろう。
同じ学校にマスターが通っているということを一方的に知れている、というのは大きなアドバンテージだ。
立ち回りに細心の注意を払えるし、状況が整えば不意打ちも可能になる。
それに、この状況は意外と使えるかもしれない。
大井は少しの間黙り、そしてスレッド新規作成ボタンをタップした。
スレッドタイトルを打ち込む。
タイトルは「きらりさん、見てますか」。
文章は、ファンクラブスレに書き込んでいる、きらりを擁護する少女の口調を真似て。
優しく、優しく、捕らえている獲物を気づかぬうちに溶かしていく溶解液のような文章で。
少しずつ、少しずつ、込めた本心を獲物に悟られぬよう。
お人好しで、緊張感の欠けている、夢見る少女のような文章を書き上げていく。
◆
きらりさん、見てますか
名前:名無しメイデン[SUPER_Kitakami_sama@] 投稿日:20XX/0X/XX(X) XX:XX:XX ID:OixKtkm0
ここで名前を明かすのは危険が伴うと思うので、私の名前は伏せさせてもらいます。
私は、きらりさんのことをよく知っています。
私はきらりさんが、心優しい貴女が、他のところで言われているようなことをする人だとは思えません。
何かの間違いだと信じています。
もしかして、きらりさんが本当に関わっているとしても、なにかの理由があったのだと思います。
もし、可能ならば、連絡をいただけませんか?
逢って、貴女がどんな状況なのか、聖杯戦争をどう思っているのかが聞きたいです。
ここには書けないこともあるだろうから、私の名前の隣に書かれているメールアドレスにメールをください。
私の情報がきらりさんにばれてしまいますが、私は、貴女だけは信頼しています。
だから平気です。
なのでお願いです。
私に、話を聞かせてください。
最後に。
私のメールアドレスにメールが来なければ。
貴女が聖杯戦争に巻き込まれていなければ。
それほど嬉しいことはありません。
心優しい貴女と戦いたくはありませんし、貴女にはこの戦いなど知らず笑っていて欲しいから。
この書き込みへの返信がないことを、心から祈っています。
大切な友人へ。
大切な友人より。
愛をこめて。
◆
なかなか感動的な文章が書き上がった。
朝一番に吸い込んだ甘ったるい空気によく似合う、反吐が出るような甘さの文章だ。
少しばかりの感慨を持って書き終え、書き込みボタンをタップする。
数秒後、掲示板にはまったく同じ文章が書き込まれた。
「なかなか面白い文章だね。もし、メールが来たらどうするんだい?」
諸星きらりから返信が来るかどうかは分からない。
だが、すごい速さできらりの擁護をしていた書き込みの主。
他にも、女子高の事件についてなにかを知っている人物。
それから、単純馬鹿がいるから場所を聞き出して殺そうと企む者。
こちらの真意を察して逆に利用してやろうと寄ってくる誰か。
そんな様々な人物から、大井の携帯に連絡が入ってくる可能性は高い。
彼ら彼女らと接触でき、ある程度行動と情報を操作出来るというのはかなり大きなアドバンテージになる。
「どうもなにも……来たメール全部、テキトーに取り繕ったあとで同じ場所、同じ時間に集まるようメールするんですよ。
そこで集まった人達同士で数を減らしあってもらうだけです」
狙いは一つ。こちらに一切リスクのない状況下での他参加者の退場。
相手が誘いに乗らない可能性もあるが、そんなことをまで考慮してたらキリがない。
上手く複数人を誘い出せたとして、少しばかり不安要素もあるが……
「もし戦いが膠着するような場合や参加者同士が手を組むような場合があれば、私が撃つ、ということでいいかな」
「ええ、それでお願いします」
「それまでは、いつもどおり索敵をしておこうか」
「はい。メールが届いたら念話するので、あまり私から離れすぎないように……でも、マスターとばれないようできるだけ距離は保ってください」
「ああ」
説明する前にアーチャーが大井の思惑を汲み取り、一切反論を挟まずに大井の作戦に従う。
大井の進言を特に理由なく無碍にしたあのぽんこつ戦艦たちとは大違いだ。
大井は、元の同僚たちに少しばかりの優越感を覚えながら、スマートフォンをスリープ状態に移行させた。
「それにしても、初日から積極的だ」
「初日だから、ですよ」
先制攻撃は重雷装巡洋艦のお家芸。
開幕早々でまだ情報が揃わず、浮足立っている相手を叩き潰す。甲標的はないが、与えられた情報とアーチャーの能力を用いれば難しいことではない。
相手が察するより早く動き、相手が察した頃にはすべてを終わらせて鳴りを潜めている。
決して、目立ちすぎて自身が誰かの標的になる事のないように。
「まぁ、色々おっかないのが集まってるみたいですし、この件が終わればしばらく行動は控えますけどね」
それでなくても物騒な噂ばかりだ。
チェーンソーを持った男が少女を襲っていただとか。
バネ足の火吹き男が跳ねまわっていただとか。
女子高生の間でまことしやかにささやかれ続けている。
更に掲示板には『小学生の死亡事件』なんて物々しい単語。
それに加えて『高校の殺人事件』に『諸星きらり』。そして彼女を探っていた『エノシマ』。
全ての噂にどれほどのサーヴァントが関わっているかどうかはまだ判断がつかない。
だが、どんな危険もかわしておいて損はない。
この相手不明の電撃戦を制した後は、穴熊のように巣に閉じ篭もり別の者が動くのと情報が集まるのを待つ。
そのためにも、隠れ蓑はいつだって使えるように万全の状態を保って置かなければならない。忌々しいことだが。
「そろそろ時間のようだ」
アーチャーがつぶやき、数秒後にテレビの時計のようなキャラクターが七時三十分を指す。
今日もこの時間が来てしまった。
「じゃあ、行ってきますね、北上さん」
ベッドに置いた枕に挨拶をする。
あの枕は、大井が唯一この舞台に持ち込んだ北上の名残の品。
大井の心の拠り所。
大井が唯一心を許せる場所。
あの枕を見れば、必ずこの家に帰ってくるという意思が持てる。
「さ、行きましょうね、北上さん」
そう言って語りかけたのは、小さなお守り。
先の枕から中身の蕎麦殻を少しだけ抜いて、その蕎麦殻を入れてある大井特製のお守りだ。
これで、いつだって一緒に居られる。
お守りを握りしめた左手が、左手に刻まれた令呪が、目標を忘れることはない。
少しだけ心労が軽くなった心地で、それでもまだ憂鬱さと名残惜しさに後ろ髪を引かれながら玄関を出る。
学校はつまらないし面倒だし通う必要性を感じないし危険が伴うが、情報収集に役立つ上に、NPCにとっては重要なルーチンの一部だ。
聖杯戦争開始の通達のあった今日、学校を欠席すれば、聖杯戦争の参加者に(少なくとも諸星きらりを調べまわっていた『エノシマ』に)目をつけられる可能性がある。
可能な限りNPCとして身を潜め続け、標的になることを避け続けなければならない。
そのためには、NPCという隠れ蓑が使えるように、人目につく場所ではルーチンワークをこなし続ける必要がある。
本当に面倒な戦争だ。
家に施錠しながらため息を一つ。そのか細い息は、自身とサーヴァント以外の誰にも届くことなく空へ消えていく。
「隠した思いが通じる……いや、通じないことを祈っているよ」
アーチャーがそう言い残して霊体化する。
大井は少々ほうけたように口を開け。
そして。
「そうですね」
とだけ答え。
自身の胸中に秘めた思いを見事射抜いたアーチャーへの快とも不快とも取れぬ気持ちを胸に、学校への道を歩き出した。
◇
隠した思い。
それは大きな愛。
大井の周囲を取り巻くNPCが艦娘に似ているのに気づいた時、当然大井は北上を探した。
だが、北上のNPCは見つからなかった。
大井はその理由を幾つか考えていた。
北上はあくまで大井の目標だから、聖杯が用意しなかったからという可能性。
北上は死んでしまったのだから、聖杯にも用意のしようがなかったからという可能性。
どっちだと思う、とアーチャーに尋ねて返ってきた答えを聞いた時、大井は心臓がひっくり返る心地だった。
「ひょっとすると、彼女自身が別の形でこの聖杯戦争に居るのかもしれないね。
マスター自身がNPCとして再現されないように、もしもその北上という子がマスターであったならば、当然NPCは存在しないだろう」
普通はありえない。北上は確かにあの時轟沈したのだから。
だが、願いを叶える聖杯だ、大井の愛を祝福した世界だ。そのくらいやってもおかしくない。
もしそうだったら困る。確かに再会は望んだが、そんなことまでされては気を配りすぎだ。
愛する人とお互いを知らずに殺し合う、なんて時代錯誤な悲恋物語めいたことをやるつもりはさらさらない。
普通はありえない。
ありえない。
ありえない。
絶対にありえない。
でも、万が一、億が一にも北上が巻き込まれている可能性があるという不安は、早々に潰しておく必要がある。
だから、大井は隠した。
書き込みの中に、北上だけが気づける、大井だと気づける情報を隠した。
メールアドレスの『スーパー北上さま』。
これは昔々に北上が冗談で名乗った名前だ。
これを知っているのは鎮守府でも、北上と、大井と、提督くらいのもの。例え他の艦娘が巻き込まれていても察知はほぼ不可能だろう。
それを見れば、少しマイペースな(そういうところも可愛い)北上でも、大井の存在に気づいてくれるはずだ。
気づいた北上はすかさずメールを送ってくれる。これは確定事項
もし北上からメールが来れば、襲撃場所とはかけ離れた安全な場所で再会して今後のことを話し合う。
そしてなんとか二人揃って生還する方法がないかを探す。
でも、そんな都合のいい方法はないだろう。
可能性があるとすれば、どちらかが優勝し、もう一人を蘇らせた上で生還するという道。
でも、大井に北上を殺すことは出来ないし、北上に殺人なんて絶対に似合わない。
そもそも『愛する者よ、死に候え。』なんていうのは、大井と北上の物語には合ってはならないことなのだ。
だから大井は甘ったるい文章を、少しばかりの感慨を込めてこう締めくくった。
―――私のメールアドレスにメールが来なければ。
貴女が聖杯戦争に巻き込まれていなければ。
それほど嬉しいことはありません。
心優しい貴女と戦いたくはありませんし、貴女にはこの戦いなど知らず笑っていて欲しいから。
この書き込みへの返信がないことを、心から祈っています。
大切な友人へ。
大切な友人より。
愛をこめて―――
傍目に見れば諸星きらりへの麗句にしか見えないような文章。
だがそれは諸星きらりなんてどこの誰かも分からないウドの大木ではなく。
大井が心の底から愛する北上を思って書いた、宛名も送り主も書かれていないラブレター。
このラブレターに返信が来ないことから、大井の聖杯戦争は幕を開ける。
【C-3/大井の住処/一日目 早朝】
【大井@艦隊これくしょん(アニメ版)】
[状態]満腹、健康
[令呪]残り三画
[装備]北上の枕の蕎麦殻入りお守り
[道具]通学鞄、勉強道具、スマートフォン
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:北上さんへの愛を胸に戦う。
0.聖杯戦争に北上さんが居る可能性を潰す。
1.諸星きらりとエノシマという女子高生、各種噂を警戒。
2.メールを送ってきた人物をどこかしらに集める。
3.メールの件が片付いたらしばらくはNPCとして潜伏する。
[備考]
※C-3のどこかで一人暮らしをしています。
※艦これ世界と舞台とのギャップには予選期間中になんとか適応しました。
※令呪は左手の平、百合のような形です。
※北上が参加者として参加している可能性も限りなく低いがあり得ると考えています。北上からと判断できるメールが来なければしばらくは払拭されるでしょう。
※『チェーンソー男』『火吹き男』『高校の殺人事件』『小学校の死亡事件』の噂を入手しました。
また、高校の事件がらみで諸星きらりの人相・性格、『エノシマ』という少女が諸星きらりを探っていたことを教師経由で知りました。
※フェイト・テスタロッサの顔と名前を把握しました。
【アーチャー(我望光明)@仮面ライダーフォーゼ】
[状態]霊体化
[装備]サジタリウスのゾディアーツスイッチ
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を得る
1.大井との距離を保ちつつ索敵
2.フェイト・テスタロッサが現れた場合、大井に連絡を入れる
[備考]
投下終了です
備考欄上3つ
※C-3のどこかで一人暮らしをしています。
※艦これ世界と舞台とのギャップには予選期間中になんとか適応しました。
※令呪は左手の平、百合のような形です。
は次回以降消して頂いて構いません
矛盾指摘、修正箇所などあったらよろしくお願いします
あ、ついでに報告です
バイキンマンの宝具ステがBになってますが、宝具を見てもらえば分かるようにAの間違いです
wikiで修正しておきます
投下乙です
艦これはアニメも他媒体も見ていないのですが、とりあえずこの大井という人は気持ち悪いですね
小耳に挟んだ評判を聞く限り、たぶんアニメだけなんでしょうけど
メールアドレスを書いたことが大井にとって吉を出るか凶と出るか。気になります
あと別の意味で気になったところが少し
『スレッドを立てた人物と、別の人物が口論をしている』と書かれていますが
盾子ちゃんの通信機器の使用はスノーホワイトが止めているので、伸びるほど口論するのは無理なのでは?
あとマスターは記憶を取り戻すまではこの街で過ごすのですから
現代機器に関する簡単な知識は最初からもっているのではないでしょうか
投下乙です。
アニメと寸分違わない大井さんには実家のような安心感を覚えますね。
傍から見るとドン引きな行為でも、純愛に見えるのはきっとその愛がまっすぐだからなのでしょうか。
もし北上さんがいたらもうちょっとは綺麗な大井さんになった可能性を考えると、悲しい物語ですね。
予約延長します。
投下乙です
北上さんでなんだなんだと思ってたらとんでもなく気持ち悪いことになってた
その気もち悪さに目を引かれがちですが、理事長の堅実な戦法や掲示板経由で色々引っ掻き回してやろうという目論見が面白いですね
一つ質問です
雪崎絵理&バーサーカー(チェーンソー男)についてですが
1.原作中ではチェーンソー男は夜9時〜深夜にしか現れないという設定ですが、聖杯戦争中もその設定はあるのでしょうか
2.絵理ちゃんは山本くんと会いたい、と願っていますが時系列的には原作第二章終盤もしくは第三章序盤チェーンソー男が突然強くなる前後くらいだと考えてもいいでしょうか
それとも、鎖帷子的に第三章終盤と考えたほうがいいでしょうか
回答の方よろしくお願いします
そういやその辺りは気になるなあ
投下乙です
あぁ〜これは真性ですね……こういうキャラ、すごく好きです
この気持ち悪さがこのキャラの魅力なんだぜとゴリゴリ推してくる感じ素晴らしいですね!
その一方で着々と状況が進行していっていることにワクワクします
仕込まれた爆薬に火が点くときが楽しみでたまらないですね
>>855
回答します。
・チェーンソー男の活動時間について
候補話では特に触れませんでしたが、原作設定の通り、夜間が主な活動時間になるということにします。
でも人気のない廃工場なんかもチェーンソー男が出てくるのにぴったりのシチュエーションだと思いますし、
そこらへんは雰囲気優先面白さ優先で臨機応変にやっちゃっていいんじゃないのっていうところです。
・絵理ちゃんの参戦時期について
こちらも候補話を書いていたときは明確な時期は想定していませんでした。
ぼんやりとしたイメージとしては山本の転校を知った頃から最後の戦いに赴くまでのあたりでしたが、
山本への好意を自覚している時期ならばどこでも問題ないと思います。鎖帷子自体は序盤から所持してるアイテムですしね。
以上が登場話書き手としての回答になりますが、ぶっちゃけてしまうと私の考えなんてまったく尊重しなくて結構です。
それまでの話で具体的に描写されていない部分は後続が好きに解釈して書いてしまっていいのがリレー小説だと思ってますので。
返答有難うございます
そして、こちらも指摘への対応です
>>852 さんより
>盾子ちゃんの通信機器の使用はスノーホワイトが止めているので、伸びるほど口論するのは無理なのでは?
この点については私側のミスです。問題ない形に修正させて頂きます
>現代機器に関する簡単な知識は最初からもっているのではないでしょうか
この点については、候補作を読んでもらえればわかりますが、大井は自分の世界→聖杯戦争の舞台への列車の中で記憶を取り戻しました
舞台到着時点でNPCとしての役割は与えられたでしょうが、実質数分〜数時間程度しかNPCとしての活動を行っておらず、活動の内容も「電車で寝ていた」のみとなります
そのため、他の参加者と違い、NPC時代に済ませるべき街や現代への適応が一切出来ていません
そのことを踏まえての、今回の話となります
稚拙ながら解説させていただきました
他にも指摘やおかしいなと思う部分があったらよろしくお願いします
連レス申し訳ありません
白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド=サン)
雪崎絵理&バーサーカー(チェーンソー男)
予約します
投下お疲れ様です
どこからどう見ても大井さんが危ない人で笑う
普段は大丈夫なんでしょうかねこれ……
掲示板も中々に黒い状況になってきていますがさてどうなるでしょうか
先日予約破棄した作品を投下します
予約破棄などについてルールがないため、問題があるようならば指摘してください
早朝の日差しが、偽りの街に差し込む。
街の端。隣町との境目、絶対領域の境界線。
「奉野」という表札の掛けられた一軒家。
居間で椅子に腰かけて、シルクハットを被った少女――シルクちゃんは、その手紙をずっと注視していた。
その目に感情はない。
ただ、興味と、そして疑心だけがある。
「――どうしました? シルクちゃん様」
居間の奥、キッチンから割烹着に似た侍女服を着た女性が顔を出す。
当然、ただの女性ではない。頭からは、まるで鹿のそれのように二本の角が生えていた。
自動人形、鹿角。シルクちゃんの従者であるランサー――その、更に従者。
「鹿角か。……ランサーは?」
「忠勝様ならば、外で警戒を」
「そうか。……どうでもいいけど、その『シルクちゃん様』って微妙に呼び方として違和感があるからやめない?」
「いいえ。私の主は忠勝様一人のみです。いくらシルクちゃん様が現在の忠勝様の主と言えど、やはりマスターと呼ぶのは不適格かと」
「妙なところで杓子定規だね君は。……まあいいや、これなんだけどさ」
椅子に腰かけたまま、シルクちゃんが鹿角へと手紙を差し出す。
薔薇の模様で彩られた便箋。鹿角はそれを受け取って、ざっと手紙の内容に目を走らせた。
「ルーラーからの手紙、ですか」
「うん。朝起きて郵便受けの中を見たら入ってた。この内容をどう思うか聞きたいんだよね」
「5000円とはまたみみっちいのかそうでないのか判断がつけ難い金額ですね」
「いや、そこじゃなくて」
「おや、そうでしたか。では、掲示板を見るために鹿角が契約している通神帯(ネット)と表示枠(サインフレーム)を使用したいという事ですか?
この家何故か回線どころかテレビすらありませんし」
「できるのそんな事? ……いや、確かに興味はあるけれど、それでもなくて。フェイト・テスタロッサの事だよ」
送られてきたルーラーからの手紙に記されていた、諸所の連絡事項。
その一つ、『フェイト・テスタロッサというマスターの捕縛』。
同封されていた写真に写っている金髪を長いツインテールにした少女を眺めながら、シルクちゃんは問うた。
「開始早々の『捕縛依頼』。どう思う?」
「どうと言われましても。
現状で最も可能性の高い判断といたしましては、このフェイト・テスタロッサという参加者が何らかのルール違反を犯したと見ますが」
「そうだね、それが真っ当な判断だ。
ただ……」
シルクちゃんは、そこで一旦、言葉を切った。
「ルーラーは、あまり信用できないかもしれないな」
「ほほう? それはまた何故でしょう」
「聖杯戦争のルールを犯したのなら……、そんなものがあるのかは知らないが、とにかく、普通に理由を明かしてもいいんだ。
それをしないっていうのはつまり、参加者に明かすには後ろめたい何かがあるからだ……って、推測もできる。
そのあたりは、本人に聞いてみないとわからないけれど」
「なるほど。確かにそう解釈する事もできますね。しかし、ならばどうするのですか?」
「……、どうするって?」
「ルーラーが信用できない、というのはわかりました。しかしそれはシルクちゃん様独自の解釈であり、他のマスター達もそう思っているとは限りません。
令呪という報酬もある以上、フェイト・テスタロッサを巡ったなにかが街で起こるのは避けられないでしょう」
一直線に、鹿角がシルクちゃんを見つめる。
感情を有さない瞳が、感情を消したはずの瞳を射抜いた。
「率直に言えば、無干渉を決め込んで騒ぎが収まるまで待つのが得策かと」
「………………」
実際のところシルクちゃんにも、それは理解できていた。
ルーラーが信用できるかどうかは置くとしても、フェイト・テスタロッサを追えば同じように彼女を追う参加者と戦いになるのは避けられない。他の参加者との接触の確率が跳ね上がるのは聖杯戦争において、好ましくない。
戦わなければ願いに辿りつく事はできない。しかし戦うばかりでは消耗し、討ち取られる可能性をいたずらに上げるだけ、というのも事実だった。
ルーラーに反する、という選択肢もまた遠い。ルーラーの持つ令呪を持ってすればランサーを自害させる事は容易い。
下手をすれば、自分が第二のフェイト・テスタロッサとなる可能性だってある。
実際のところシルクちゃんにも、それは理解できていた。
――ならば、どうしてこうも引っ掛かるのか。
「……わかっては、いるんだけどね」
我知らずの内に、シルクちゃんは呟いていた。
この街を忘却の国と見立てるならば。
それを裏から操るルーラーは。
そして、そのルーラーに追いかけられる少女は――
飛躍が過ぎるのは、本人にもわかっていた。
けれど悲しい事に、彼女には己の内に膨れ上がっていたなにかを発散する為の言葉が無かった。
「……ランサーを呼んでくれ、鹿角。出る」
テーブルの上に置かれていた羽ペンを握る。シルクちゃんは地面を蹴り、席を立った。
その目に感情はない。
――ないはずだ。
「おやおや? 先程の提案をもうお忘れですか」
「わかってるさ。だから極力他の組との接触は避ける。図書館の近くも張られてるだろうから、できるだけ近寄りたくないね」
「ではどうするおつもりで?」
「フェイト・テスタロッサの顔でも見てくるよ。捕まえるつもりはないけどね。ついでに、ふらふらしてるマスターを一組倒せたら上出来ってところかな。
鹿角は家で待機。魔力を感知されたりはしないだろうけど、その外見は目立つ」
「――そうですか」
自動人形である鹿角が、主(正確には、シルクちゃんは主のまた主だが)の目的に本気で口を挟むことはない。
だから鹿角は、その判断に対して何も言う事はなかった。
「では通神で忠勝様をお呼びしますので、その間朝食を食べてからお出掛けください」
代わりにその口から紡がれたのは、そんな言葉だった。
一旦キッチンに引っ込んで、準備していた朝食をテーブルに載せていく。
「……今すぐ出たいんだけど」
「それは構いませんが。食材が無駄になりますし、長い時間外に出る事を考えれば朝食は摂っておいた方がいいかと」
「………………」
抗議の言葉にも構わず、鹿角は手早く配膳を終わらせる。
顔を顰めていたシルクちゃんも、テーブルに並んだ和食の数々を目にして、観念したように再度席に着いた。
「夕食も仕込みをしておきますので、19時までにお帰りください」
∇
星輝子の朝は早い。
『親友』であるキノコ達はある程度手入れをしなくてもすくすく育つが、それとこれとは別の問題だ。
「フヒヒ……フヒッ……今日も元気か……?
……うんうん、元気そうだな……」
キノコの原木に向かって挨拶。様子を見てから、満足気に頷く。
他人からすれば奇矯な行為だが、彼女にとってはいつもの日常だった。
かびかび。
かびかびかびかび。
「……あっ……あ、新しい友達……おはよう……。
そっちも……元気か……?」
そしてこちらは、いつもとは違う日常。
周囲を漂う『かび』に、輝子は先程と同じように挨拶する。
「かび」
「そうか……よかったなー……フヒッ」
『かび』達から返された笑顔に、やはり輝子は満足気に頷いた。
「……あ……メール、来てる……誰かな……」
一通り挨拶を終わらせたところで、充電器にかけてあった多機能携帯電話にメールの着信が来ているのに気付く。
充電器から多機能携帯電話を手に取って操作。ちょっと昔は慣れない操作だったこれも、今ではすぐにこなせるようになった。
アイドルになって、色々な人間と知り合えたお陰だ。
「フヒッ……あれ、知らない人だ……ルーラー?」
受信箱に入っていたメールの送り主は、知らないメールアドレスだった。
題名は『ルーラーより、聖杯戦争予選通過者の皆様へ』。
一瞬迷惑メールを疑って、でも聖杯戦争という単語にそれはないと思い直す。
開いてみれば、内容は聖杯戦争についてのお知らせだった。
聖杯戦争そのものにはあまり興味のない(叶えたい願いはもちろんあるけれど、しかし喧嘩は嫌いな)輝子ではあったが、重要な事が書いてあるかもしれないし一応上から下までじっくりと目を通す。アイドルも報・連・相は大事だ。
そして、一つの連絡が輝子の目に留まった。
ルーラーが用意したという、聖杯戦争参加者のための掲示板ではない。(ボッチが身体に染み付いていた彼女は、顔も知らない聖杯戦争の参加者と交流する事になるだろう掲示板は苦手だった)
電子マネー5000円分でもない。(これは使い道に悩んだが、最終的に通販サイトでキノコに関するあれこれを注文するのに使うのを決めた)
『捕獲クエスト』の対象として設定された、金の髪をツインにした少女。
彼女の事で、輝子の頭はいっぱいになった。
「……ライダー」
「うん? どうした、マスター」
呼びかける声に応じて、ライダーが歩いてくる。その鼻先に、多機能携帯電話を突き付けた。
「な、なんだ? ……ルーラーからの連絡ぅ?」
唐突な行動に目を白黒させながらも、ライダーは輝子の手から多機能携帯電話を奪い取って操作。
メールの内容に目を通して確認する。
「えーっと……このフェイトって奴がどうかしたのか?」
「この子も……ボッチ……なのかなって……」
『捕獲対象』の少女――ルーラーからの情報が正しければ、名は『フェイト・テスタロッサ』。
彼女のことが、輝子はどうしても気になってしまった。
だって、この聖杯戦争に、彼女の味方はいないのだ。他の参加者はおろか、本来公平な筈のルーラーまでもが敵に回ってしまった。
皆に狙われる立場になって、彼女はきっと一人ぼっちだ。
それがどうにも、輝子には我慢がならなかった。『トモダチ』と出会う前の自分が、そうさせるのか。
「……いや、サーヴァントがいるんだからボッチじゃないんじゃないの?」
「あっ」
「だいたい、フェイトって奴はルーラーから捕獲しろって命令されてるんだろ。それなら危険な奴かもしれないぞ」
呆れたように言うライダーの指摘は、確かにその通りではあった。
捕縛の命令をルーラーが出したという事は、フェイトという少女はなにか悪いことをしたのかもしれない。
下手に近付けば攻撃されるかもしれないし、そうでなくとも他の参加者とも戦う事になる可能性は高かった。
「でも……」
けれど。
「危険な子なら、ほら……幸子ちゃんと小梅ちゃんも、危ないし……」
輝子にとって、その指摘は逆効果だった。
そもそも輝子の大目的は、この街にいる幸子と小梅を守ること。
危険な人物が街をうろついているなら、それこそどうにかしないとならない。
「………………」
そう輝子が考えているのを悟ったのか。ライダーは、不機嫌そうに顔を顰めた。
「……オレサマは手伝わないからな!」
「うん、乗り物の改造お願い……」
「そういう事でもなーいっ!」
プリプリと擬音化された怒り方をしながら、ライダーはこの前と同じように、かびるんるん達を引き連れて行ってしまう。
ただ輝子は、ライダーがいつも徹夜して(サーヴァントは眠る必要がない以上、徹夜と呼ぶのが正しいのかはわからないが)自らの乗り物を改造している事を知っていたから、特に不安に思ったりはしなかった。
「学校、行かないと……今日も幸子ちゃんと小梅ちゃんとお話……フ、フッ」
そうして輝子は、今日も学校の支度を始める。
聖杯戦争は始まったが、幸子と小梅が来ているだろう学校に行かないなんて、輝子には考えられない話だった。
だから気が付かない。掲示板に苦手意識を持って開きもしなかった彼女には。
悪意が、彼女の仲間、そして『トモダチ』を蝕もうとしている事に。
――気が付かない。
――今は、まだ。
∇
かくして二人の少女が、一人の少女を巡った盤面に乗る。
異なる動機で。異なるやり方で。
【D-7/奉野宅/一日目 早朝】
【シルクちゃん@四月馬鹿達の宴】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]魔法の羽ペン
[道具]
[所持金]一人暮らしに不自由しない程度にはある
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、復讐する。
1.朝食を食べたら街に出る。
2.フェイト・テスタロッサに対しては――
3.ルーラーへの不信感。
[備考]
※フェイト・テスタロッサを助けるつもりはありません。ですが、彼女をルーラーに突き出すつもりもありません。
※令呪は×印の絆創膏のような形。額に浮き上がっているのをシルクハットで隠しています。
【ランサー(本多・忠勝)@境界線上のホライゾン】
[状態]平常
[装備]『蜻蛉切』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:主の命に従い、勝つ。
1.マスターと一緒に街へ出て一暴れする。
[備考]
※宝具『最早、分事無(もはや、わかたれることはなく)』である鹿角は、D-7の奉野宅に待機しています。
【C-2/輝子の自宅/一日目 早朝】
【星輝子@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]
[道具]多機能携帯電話
[所持金]一人で暮らせる程度にはある
[思考・状況]
基本行動方針:幸子ちゃんと小梅ちゃんを守る。
1.学校へ行って、幸子ちゃんと小梅ちゃんに会う。
2.フェイト・テスタロッサが気になる。
[備考]
※掲示板を確認していません。
【ライダー(ばいきんまん)@劇場版それいけ!アンパンマン『だだんだんとふたごの星』
及び『よみがえれバナナ島』 他、劇場版】
[状態]平常
[装備]宝具『俺様の円盤(バイキンUFO)』、『地の底に潜む侵略者(もぐらん)』、『踏み砕くブリキの侵略者(だだんだん)』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:宝具を改造して、準備を整えてから行動したい。
1.宝具をエンチャントする。輝子については勝手にしろと言っているが――?
[備考]
※どの宝具から改造しているかは後続にお任せします。
投下終了しました。
投下乙です
シルクちゃん来たか!成程、どう出るかと思ったら、忘却の街と重ね合わせて…か
本人はドライにふるまうつもりみたいですが、少なくともフェイト狙いの他組との激突は免れませんね
そしてきの子とばいきんまん。癒される…すごく癒される
ばいきんまんのあのダミ声が脳内再生されるかのようです。この二人にもぜひ頑張ってほしい。前途に多難ありでしょうけれども…
投下乙です。
乾いた風を装って、その実内に秘めたものがあるからでしょうか。
ルーラーに対して、安易に信じないのは冷静さを保っているのはさすがですね。
輝子は平常通り、可愛らしい姿で安心しました。
では、予約していた組を投下します。
「罠だね。色々と考えたけど、間違いなく罠だよ」
携帯電話に届いた討伐のメールを、クロメは一言で切り捨てた。
学校にいく前の朝。
これまで繰り広げられたお遊びは終わりを告げ、いよいよ開幕の鐘が鳴り響く。
山田なぎさも今まで通り、緊張感のない生活はもう送れないかもしれない。
「仮に罠じゃないとしても。敵がわんさか集まる餌に手を出しちゃうのはどうかと思うなあ。
私達はまだ、何も準備ができていないんだし」
クッキーをぼりぼりと囓りながら、クロメは投げやりに言葉を続けた。
とは言っても、なぎさからしたらクロメと同意見なので特に反論はしない。
ここで選択肢を間違えれば生命の危機にまで発展するかもしれないのだ。
慎重過ぎるぐらいが、自分にはちょうどいい。
「けれど、ずっと黙って指をくわえて見ている。それはありえないでしょ」
「そだね。それなりのリスクを払わないと、リターンは返ってこない」
「……あたしとしては楽な道を選び続けたいんだけど」
「まあ、今はそれでいいと思うよ。無理に攻めなくても好機はいずれやってくる。
リスクに懸けるのは、もう少し先の話だね」
正直、戦うと言ってもどうしたらいいのかさっぱりわからない。
戦争とか、殺し合いとか、物騒な言葉を並べ連ねられても、現実味が湧かないのだ。
「そううまくはいかないって顔してるね、あんた」
「うん。だって、私はアサシンだし。正面切って戦うとなるとちょっと辛いかな」
「戦えなくはないんでしょ?」
「だからといって、こんな初っ端から全力全開なんて疲れちゃうよ?
私達の目的は戦うことでも勝つことでもない。生き残ることなんだから」
だが、それを補うかのようにクロメは淡々と冷静な判断を下してくれる。
マスターに対してもずけずけと思ったことを告げる無神経さが今はありがたい。
戦闘に関してはなぎさよりも圧倒的に智があるクロメに逆らえるはずもなく。
「んじゃ、どうすればいいわけ? …………まあ、大体は察しはつくけど」
「マスターの察しの通りだよ」
「アサシンらしく、暗殺。それも、弱いマスターを狙う」
「正解……って言いたいけど、満点ではないかな」
だが、何も考えないというのも気に入らない。
単なる思考停止は、なぎさの好む姿ではなかった。
例え救いようのない馬鹿でも考えない奴は本当に救いようがない。
考えろ。足りない頭を使って、精一杯考えろ。
その果てで分からないなら仕方がない。
気に入らないけれど、素直に助言を乞えばいい。
「私の宝具、マスターは知ってるでしょ?」
その一言で、なぎさは全てを察した。
「死体繰り、か。協力する、と見せかけて安心した所をずぶり」
「正解。ストックが零だし、玩具を増やしたいんだよね〜。ふふ、マスター……顔が強張っているよ? これからやろうとすることに、怖気づいた?」
くすりと蠱惑的な笑みを浮かべるクロメに対して、なぎさは負けじと頬を釣り上げる。
虚像だ。正直言って、痩せ我慢している。
未だ自分は勝ち残る為に他者を蹴落とすことを許容できていないし、クロメに対して完全な信頼を置けていない。
けれど、ただ一つだけ確かなことがある。
諦めたくない。願いを叶えるのは自分だ。
「別に。反吐が出る行為であっても、それが聖杯を諦める道理にはならない」
「マスターらしい答えだね。ま、適当に覚悟を決めちゃってくれた方が私は嬉しいんだけど」
けらけらと嗤う彼女に対して、なぎさは言葉を返せなかった。
所詮は薄氷の上に立つような脆い信頼だ。
利用価値がなければ互いに見捨てる程度の価値で、何を見出だせるのか。
今は、両者現状を良しとしているが何かの拍子で粉々になってもおかしくはない。
「嵐が来る、マスターはそう言ったね。その言葉通り、とびっきりの嵐がきっと来るね」
「嵐ならとっくに来てるよ。その証拠に戦いは始まってるみたいだし」
なぎさがくるりと掌で回した携帯電話の画面には、無数の文字が踊っている。
策謀が渦巻く参加者達の言葉の羅列を見て軽く溜め息。
気が早いことだ、戦争は始まったばかりだというのに。
「ふぅん、成程。水面下ではとっくに始まってるって訳かぁ」
「ま、あたし達には関係ない。地雷原の中に自ら突っ込むバカじゃないんだから」
「言えてるね。とりあえず、臨機応変にいこうか。たのしみだねぇ、マスター?」
勝手に潰し合ってくれたらそれでいい。
なぎさの預かり知らぬ所で――消えてくれ。
幾人もの屍を踏み潰して、なぎさ達は願いへと直走ろう。
「汚く、あざとく、みっともなく。それがあたし達の戦い方だ。わかってるな、クロメ?」
「勿論。願いを叶える為ならなんだってしなくちゃね。うん、ちょっと気分が上がってきたかも」
きっとその先に、少女二人が求めているものが待っているから。
【D-5/山田なぎさの家/一日目 早朝】
【山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]携帯電話、通学カバン
[道具]
[所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、海野藻屑に会う。
1.とりあえず、今は平常通り過ごす。
2.お人好しな主従と協調するふりをして、隙あらばクロメに襲わせる。
3.ただし油断せず、慎重に。手に負えないことに首を突っ込まないし、強敵ならば上手く利用して消耗させる。
[備考]
※掲示板を確認しましたが、過度な干渉はしないつもりです。
【アサシン(クロメ)@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.現状、マスターに不満はない。
2.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。
3.とりあえず、機会が巡ってくるまではおとなしくしておく。
[備考]
※八房の骸人形のストックは零です。
投下終了です
お二方とも投下乙です!
>【>願う 何を? >幸せ 何が君の幸せ?】
キャラが生き生きしていて良かったです
過去の自分と重ね合わせて共感するのは同じでも、対応が微妙に違う二人
この違いが、これからどう出てくるのでしょうか?
まあ、二人には強い味方が居るので、きっとしっかりやっていけるでしょう
なんだかんだで、しっかりマスターをサポートしているばいきんまんに、黙って従いつつも、必要な提言はさらりと通して主を支える鹿角
どちらも良い仕事してます
しかし、フェイトちゃんのパートナーは、よりにもよってあの綾波レイ
ばいきんまんは、ああ言ってましたが、彼女は、基本的に一緒に居るとかえってボッチ感が強まりそうなサーヴァントなのですよね……
ばいきんまんの励ましで、かえって不安になってきました
フェイトちゃん大丈夫かな……?
>砂糖菓子の朝はほろ苦いなぎさ組は基本様子見、しかし隙あらば勝ちに行く堅実な戦法ですね
真っ直ぐなのに、どこか危うい感じがこの二人らしいです
骸人形は強力ですが、手駒を増やすほど魔力コストも増加するでしょうし、なかなか扱いにくいサーヴァントですよね
お人好しのマスターは沢山居ますが、果たして暗殺は上手く行くのでしょうか?
そういえば、この聖杯戦争にはゾンビ大好きなアイドルや、ネクロマンサーな永遠の少女も居ますね
少女聖杯がゾンビ聖杯になるのか否か……これからの楽しみがまた増えた気がします!
おお、またもや投下が!乙です
シルクちゃんと鹿角のご飯問答には少しく和みました、そう言えば鹿角も人形でしたね。ララやきらきーといった面子ともゆくゆく何かあるかな?
ばいきんまんの方は輝子と奇妙なでこぼこ関係を築いているようでほほえましい限りです。まがりなりにもわるもの、いたずらものとしてアンパンマンと戦ってきた彼なりの戦況、ルーラーのミッションへの考察も見られたのが面白かった。
そして、なぎさとクロメ。覚悟を決めきれていないと自覚するなぎさですが、実弾を込めようとしてきた経験からか、願いのために踏み出そうという泥臭い意思は持っていて、これがのちのち大きくなってくるかもしれないですね。薄氷の上の彼女を同じ場所に立って笑うクロメもなかなか…八房の刃が狙うのは誰になるのか。二人の言うところの「嵐」が何を運んでくるか。気になるコンビです。
1.感想は日曜日に
2.ルーラー(雪華綺晶)及び、諸星きらり&バーサーカーを再予約させて頂きます。
3.時間が中途半端で人為的なミスを何度か起こしたので期限を延長なしの1週間に変更します
4.地図及び相関図を更新しました、地図に用いられている雪華綺晶はモアイ部(ttp://www.geocities.jp/moaibu0/)様のフリー素材です。
おー、お疲れ様です!
この手の更新は嬉しい
投下、そして相関図やマップの更新お疲れ様です
マップに関わることなのですが、自分の投下した作品について小さなことですがミスを見つけました
【>願う 何を? >幸せ 何が君の幸せ?】 において星輝子&ライダーの所在を【輝子の自宅】としていますが、登場話のステータスにおいて星輝子はマンションに一人暮らしと記載されていました
マンションも自宅だとこじつける事はできなくもありませんが、紛らわしいし実際ただのミスなので所在を【C-2/マンション】に変更します
Wikiの方も更新しておきます、申し訳ありません
|┃三
|┃ , -――- 、
|┃三 / ヽ、
ガラッ.|┃ ハ. /爻ノリノハノリlノ ゝ l
|┃三 { <ノリノ‐' ー リ > } 遅くなりましたが、カワイイボクに免じて許してくれますね!
○ |┃ '. l ノ ┃ ┃ l ノ ノ
|┃ V l人 r‐┐ !ノ^)
|┃ \ ゝ ` ´ ‐<´
─ , __ ))
─‐ / \
──/ リリ/ ))
──ヽ l. # l l |≡-=
── `从ハ -ノ ≡≡ ガッ!! ≡≡=
─ =≡○_ >< ⊂)_=_ \ .从/-=≡
── =≡ > 三 __ ノ ))< > -= , -――- 、
─ =≡ ( / ≡ /VV\-=≡ / ヽ、
── .=≡( ノ =≡ -= /爻ノリノハノリlノ ゝ l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| <ノリノ‐' ー リ > }
| l ノ @ @ l ノ ノ
| l人 r‐┐ !ノ^)
| 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ゝ ` ´ ‐<´〜〜〜〜
| 羊 水 の 海
ごめんなさい
>>850
【匿名希望のアガパンサス】
投下乙です。
世界の中心であった北上さんの喪失を無理やりにで補おうとする様子は気持ち悪いですね。
しかし、まだ枕で良かった様に思います。
これで北上さん抱きまくらであったり、お守りの中に毛が入っていた場合割とリアルなストーカー感があって読む側が辛くなります。
>ガサツな戦艦や頭空っぽの重巡洋艦や鬱陶しい駆逐艦
ココで北上さん以外の艦娘を見下しているの、地味に好きです。
北上さん以外にいないんだな感に拍車を掛けています。
掲示板システムを採用した者としては、掲示板が賑わっている様は実に喜ばしいものです。
ていうか、大井さんも現代文明に適応して早々、なんという悪辣な手を考えつくのでしょうか。
恐ろしいことです、しかしそれぐらいやるのが当然でもあるでしょうか。
文面が釣りであると同時に、北上さんへのラブレターになっており、
題名の意味が判明する構造は実際美しいですね。
> だがそれは諸星きらりなんてどこの誰かも分からないウドの大木ではなく。
アガパンサスに対してのウドの大木、細かい部分ですが見事なワザマエといえるでしょう。
イワナ……書かなかった?掲示板で、きらりをいじめないでください。って。
投下ありがとうございました。
>>866
【>願う 何を? >幸せ 何が君の幸せ?】
投下乙です。
フェイトちゃんに対しての二人の少女のスタンスを描いた話ですね、
日常とサーヴァントとの関係性がさらりと書かれているのが実に嬉しいところです。
さて、互いに別の理由では有りますが、少なくとも二人ともフェイトちゃんに現時点で害するつもりがないことが書かれました。
最も別の理由と言っても、互いがフェイトちゃんに自分を重ねるという点において共通点を有しています。
実に面白い部分です、であるからこそ二人が同時に書かれたのですね。
しかし二組共、サーヴァント(シルクちゃんは従者の従者という形になりますが)とのかかわりが実に癒されます。
>顔を顰めていたシルクちゃんも、テーブルに並んだ和食の数々を目にして、観念したように再度席に着いた。
>「夕食も仕込みをしておきますので、19時までにお帰りください」
>「……オレサマは手伝わないからな!」
>「うん、乗り物の改造お願い……」
>「そういう事でもなーいっ!」
この辺りの文章を読むだけで脳内で映像のように再生される描写、好きです。
四月馬鹿とアンパンマンの組み合わせは原作からありますが、原作にあっても違和感のないタイトル、実際良いですよね。
投下ありがとうございました。
>>872
【砂糖菓子の朝はほろ苦い】
投下乙です。
クロメの性能を最大限に発揮するために、人を殺す覚悟だけでなく手を汚す覚悟まで決めることとなりましたね。
他作品とは逆に日常的な描写が極限まで切り捨てられていることで、サーヴァントとの対峙、覚悟を決めるという点においての緊張感が極限まで高められています。
また、日常描写によって聖杯戦争が地続きにあることを示されるのですが、この話において山田なぎさが聖杯戦争に没入していることが書かれています。
というわけで、アサシンとしては正当派ながら少々特殊な運用を行うこととなりました。
クロメが宝具を活用できるかは山田なぎさのコミュ力次第です、余裕ですね。
>「汚く、あざとく、みっともなく。それがあたし達の戦い方だ。わかってるな、クロメ?」
>「勿論。願いを叶える為ならなんだってしなくちゃね。うん、ちょっと気分が上がってきたかも」
締めとなる台詞が良いですね、戦法を的確にかつ言い聞かせるようにする山田なぎさと応じるクロメ。
実際素晴らしいです。
投下ありがとうございました。
個人用まとめ
藻屑ちゃん組は時間書いてないけど早朝だと思う
27日くらい
◆EAUCq9p8Q. 白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)、雪崎絵理&バーサーカー(チェーンソー男)
30日くらい
◆PatdvIjTFg 諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)、ルーラー(雪華綺晶)
未予約
木之本桜&セイバー(沖田総司)
中原岬&セイバー(レイ/男勇者)
フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)
蜂屋あい&キャスター(アリス)
高町なのは&キャスター(木原マサキ)
玲&エンブリオ(ある少女)
登場済
[早朝]
【B-1】海野藻屑&アーチャー(森の音楽家クラムベリー)
【B-5】桂たま
【B-4-B-5】アサシン(ゾーマ)、偽アサシン(宝具『まおうバラモス』)
【C-2】星輝子&ライダー(ばいきんまん)
【C-3】大井&アーチャー(我望光明)
【C-4】輿水幸子&クリエイター(クリシュナ)
【D-2】江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)
【D-3】ララ、アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド/ジャック・ザ・スプリンガルド)
【D-3】双葉杏&ランサー(ジバニャン)
【D-5】大道寺知世&アサシン(プライド/セリム・ブラッドレイ)
【D-5】山田なぎさ&アサシン(クロメ)
【D-7】シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝)
そう云えば、エンブリオさんの真名は本名でなくてもええんか
木之本桜&セイバー
蜂屋あい&キャスター
森の音楽家クラムベリー
予約します
事前に幾つか
・滑り込みのため感想書く時間がなかったのでまた後日書かせていただきます
・前回指摘のあった部分はwikiにて該当箇所削除で対応させて頂きました
・他、誤字脱字の修正も勝手ですが行いました
また、今回の投下について
・NPCを狂言回しとして使用する他、主に地の文の文体などで若干の違和感を感じる方がいらっしゃるかもしれません。
もしも>>1 さんその他企画参加中の書き手さんから「この文章は本リレー企画に合わないのでは」という指摘があった場合、そういった部分は全て修正を行います。
・チェーンソー男について独自解釈を行っています。
この点についても確認の方をお願いします
長くなりました
白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)
雪崎絵理&バーサーカー(チェーンソー男)
投下します
「ウィー……アァー……」
ミズマル・ガジロは社会不適合NPCだった。
与えられた設定はこうだ。
もともとはカチグミ・サラリマンだった彼も、ファンド暴走によって起こったサラリマン・ショックの煽りでリストラを受け。
学生時代センタ試験の勉強しかしてこなかった彼にまともな再就職先など見つかるはずなく。
慣れない日雇いの仕事を都度こなし、稼いだ金の大半をつぎ込んで明け方まで深酒を煽る。
それが彼のこなすルーチンだった。
「ンダコラー……ザッケンナ、テメッコッノー……スッゾコラー……フィーヒ!!」
早朝の道と酒はいい。ガジロはなによりその2つが大好きだった。
早朝の道は人が少なく、自分のためにこの大きな道があるのだとガジロに錯覚させた。
酒は、元来肝の小さいガジロの気を大きくし、世界の支配者のような優越感を与えた。
今この一時だけは、ガジロは現実の、弱くちっぽけな自身を捨てることが出来た。
帰る途中にマッポに叩かれることもあった。
飲んでる最中イタマエに店から叩き出される事もあった。
それでも、世界の支配者たるガジロは、酩酊した早朝の道の上ではいつだって高らかに笑っていた。
その日もいつもどおり、常軌を逸した量の酒をたしなみ、早朝の道の上をダイミョ・パレードのように闊歩していた。
世界の支配者のお通りだ。人も、車も、道を開けろ。ここは俺の世界だ。
ダイミョめいた堂々たる素振りでガジロが朝の道をゆく。
そうして、いつもどおり商店街のゲートまで辿り着いた。
大きなフクスケの飾られたこの商店街のゲートに、立ち小便をひっかけるのも、ガジロの日課の一部だった。
当然、今日も日課をこなそうとする。
「ウィーーー……アァー……」
チュン、と上から音が聞こえたのは、まるでスズメのさえずりのような音。
鳥風情が支配者を見下ろすとは何事だ。
ガジロはぎろりと、仰々しい動きで空を見上げる。
その時ガジロは見た。
空から今まさに落ちてこようとしている何かを。
「アイエッ!?」
慌ててその場から、すっ転ぶように飛びのくガジロ。
数秒後、ガジロの居た場所の直ぐ側に、バケツをひっくり返したような音を立ててアルミとアクリルの巨大な瓦礫が落ちてきた。
目を凝らす。それは、商店街の入り口で愛され続けてきたオイナリ・フランチャイズ・レストラン「オイナリ・ベーカリー」の看板だった。
もう一度、空を見る。もともとその看板があった場所を見上げる。「バイオ・オアゲ製法」「イナリが入ってる」「実際ノークレーム」と書かれていた看板は、三枚まとめて見事に袈裟斬りに切り落とされていた。
瞬間、ガジロの頭が謎でうめつくされる。しかし、全ての答えは直ぐに分かった。
ガジロの耳には届いていた。朝の道の王にして世界の支配者たる彼の知らない音たちが。
チュン、チュン。チュン、チュチュン。亜音速のツバメのついばみのような音。音がするたびに周囲の建物に傷が増えていく。
音の主は、入り口から5m程の場所に立っているカソックコートの大男。手にはうねるにび色の鎖を携えている。
どぅるるるるるる。地獄から響くような駆動音。そちらの音の主は、商店街のゲートの上に居た。
真っ黒いロングコートを着た男が身の丈ほどもあるチェーンソーを、キサマの頭をスイカのようにかち割るぞとばかりに構えていた。
T字路の交差点、商店街の入り口、道と道の交差するこの場所で、異様な男たちが睨み合う。
「お前はここで殺す、バラバラにする! 俺が!」
鍔広のウエスタンハットを被った男が、一言叫び握った鎖をやおら引っ張る。
彼の手元に、二枚のバズソーが集まる。チュン、チュンというのは、あのバズソーの音。
チェーンソー男は何も言わず、ただチェーンソーの音で答える。どぅるるるるるというのは、あのチェーンソーの音。
最初に動いたのはバズソーの男だった。雨除けめがけて左のバズソーを全力で放り投げる。
ぢゅん!と鈍った音が響く。
ゲートに飾られた巨大フクスケのメタル・マゲが切断され宙を舞う。
しかしそこにもう当初の獲物は居ない。チェーンソー男はオイナリ・ベーカリーの方へと飛んでいる。
空中逃亡、実際悪手とばかりに今度は右のバズソーが放たれる。しかしチェーンソー男はその超人的な身体能力でその窮地を切り抜ける。
オイナリ・ベーカリーの壁を足場にチェーンソー男は三角飛びの要領でバズソーの上空を飛び越え、そのままチェーンソーを振りかぶってバズソーの男に肉薄したのだ。
しかし、バズソーの男もかなりの腕前。
既に引き戻して手に構えていた一投目の左のバズソーで、はるか上空からのチェーンソーの一撃を受け止め、切り結ぶ。
「イヤーッ!」。一合。チュンチュン、どぅるるる。右からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。二合。チュンチュン、どぅるるる。左からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。三合。チュンチュン、どぅるるる。右からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。四合。チュンチュン、どぅるるる。左からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。五合。チュンチュン、どぅるるる。右からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。六合。チュンチュン、どぅるるる。左からのチェーンソーの一撃を左のバズソーが弾く!
「イヤーッ!」。今度は続かない。カラテの込められた右のバズソーがぐるりと輪を描くようにチェーンソー男を背後から襲撃。
チェーンソー男は超人的直感から攻撃を察知して身をかがめ、背後のバズソーを避け、そのまま地面に敷かれたアスファルトをぎゃりぎゃり削りながら掬い上げるようにチェーンソーで斬りつける。
そこから更に一合、二合、三合。切り結ぶ、切り結ぶ、切り結ぶ。
四合目、上段からかち割るように振り下ろされるチェーンソーを、一対のバズソーが受け止める。
ぎゃんぎゅあんぎゃんぎゃんという不協和音を立てながら鋼と鋼がぶつかり合う。
二人の男の突然の戦闘を立ちすくみ見ていたガジロに、不意に子どもの頃の記憶が蘇った。
『それ』はどこからともなく現れ、超人的な身体能力で戦い、任務が終われば煙のように消えていく。
幼い日には、男ならば、誰もが憧れたヒーロー像。いつしか憧れられなくなる影のヒーロー。
これは、これは、もしかしなくても『あれ』なんじゃないか。
ごきゅりと生唾を飲む。生唾を飲んだというのに、ガジロの喉はまるでカンパン・スナックを袋ごと丸呑みした後のように乾いていた。
片方の男は、自分の手足のようにバズソーを振り回している。その上まるでスリケンめいた投擲をしている。
もう片方の男は、人間離れした身体能力で壁を蹴り、地を割り、狂乱したようにチェーンソーを振り回す。
その立ち回り。
その身体能力。
もしや、この二人は……
……
……『ニンジャ』なのでは?
その答えに到達した瞬間、ガジロの緩んでいた膀胱はその役割を即座に放棄!当然失禁!
ニューロンが条件反射のようにその信号を脳から全身へと駆け巡らせる。
そして、その悲鳴が、遺伝子に刻まれた叫びが、当然のように口から飛び出した。
「アイエエエエエエエエエエエエ!!? ニンジャ、ニンジャナンデ!!?」
ガジロの叫び声が、穏やかな朝の空気を切り裂いた。
◆ガール・ミーツ・ジンチョ・ゲーザーズ・ネクロマンス◆
―――
ブーン、ブンブン。
ブンブン、ブーン。
ブーン、ブーン、ブブブブブブブ……
クラシカルなエンジン音を静かな朝の街に轟かせ、郵便バイクが走り去る。
その音で、少女・雪崎絵理は目を覚ました。
時計を確認する。時刻は五時中頃を指している。
いつもより一時間以上もはやく目を覚ましてしまった。
夜に備えてもう少し寝ようと横になったが、意識は既に覚醒しきっている。いくら横になったまま目を瞑ろうとただ無為に時間が過ぎていくだけだった。
こうなってしまっては仕方がない。
絵理は少しだけ不機嫌そう眉をしかめると、身体を起こしてキッチンダイニングの方へ向かった。
いつも通り、誰もいない広い家の中。
四人でも少し広かった、一人ではとても広すぎる家。
コーヒーを淹れ、朝食を作りながら考える。
はやく起きてしまった理由に、絵理はぼんやりとだが心当たりがあった。
起きた時から、正確には寝ている間から胸に何かもやもやとした何かが居座っている。
あまり心地の良いものではない。
不安というべきか。虫の知らせというべきか。
それとも超科学的に予知とでもいうべきか。
そんな、よく分からない『予感』があった。
この『予感』が何を表すものかも分からない。
吉兆なのか、不吉なのか、それとも単なる気のせいか。
ただ、そんなもやもやが残り続けるのが不快だということだけは、十分すぎるほど理解できた。
絵理は、手早く朝食を済ませると、少しだけ身だしなみを整えて。
どうせ家にいてもやることなんてなにもないから(勉強をしなければならないが、それは今は別問題)。
少し散歩でもして胸のうちにとどまり続けているそのもやもやを晴らすきっかけにでもなれば、と思い。
胸のうちに宿った『なにか』に導かれるように、そのまま家を出た。
――――
朝の街は、特別だ。
薄暗さの残る道を歩きながら絵理はそう思った。
昼や夜の活気は嘘のように静まり返り、明かりもついておらず、人の気配を感じない。
薄いもやの立ち込める早朝の街は、不気味なものだ。
ふらふらとどこを目指すともなく、時間つぶしに歩いていると、気がつけば商店街の前まで来ていた。
(地図上ではC-2に位置する)商店街。
いつもは活気にあふれているが、やはり時間が時間だからか、その面影は一切ない。
どこもかしこもシャッターがしまっており、まるでゴーストタウンのようなおどろおどろしさがある。
特に、絵理の居る入り口側は、ゲートに飾られている巨大な福助人形のミスマッチさも相まって、
一歩踏み込む。
こつり、というローファーがタイルを踏み鳴らす音が、やけに大きく響いた。
そのままなんともなしに、こつり、こつりと進んでいく。
商店街も中程に差し迫った時、ちょうど向こう側から歩いてくる少女に気づいた。
金髪で片目を隠した、背の低い(140cmくらいだろうか)少女。
誰かと話しているように、時折誰もいない空間を見ながら微笑む。
見えないものが見えているのだろうか。
こんな時間に徘徊するくらいだし、あまり良い素性の人物ではないのかもしれない。
もしかしたら、実際に見えないものが見えるようになる何かを摂取しているのかも。
そこまで考え、小さく頭を振った。
この時間に徘徊するのが素性の悪い人間だというなら、絵理もその条件に当てはまってしまう。
それに、あまりじろじろ眺めすぎるのもよくない。
そう思うのだが、目が追ってしまう。少女の姿を……正確には、少女の見つめる先を。
少女に近づく度に、胸の中のもやもや強くなる。
(……本当に、何かが、居る?)
すれ違うかどうかのその瞬間。
不意に絵理は、そんな確信めいた感覚に襲われた。
そうして、その感覚に気づいた瞬間。
絵理の背後から、どるん、と音が響いた。
どるん。
響く唸り声。
どるん、どるん。
地獄の底から『あいつ』が追ってくる靴音が聞こえる。
絵理は慌てて時計を確認する。
時間は朝六時を回ったところ。絵理の知る『あいつ』が来るわけない。
だが、この『予感』は。
そうだ、この『予感』は。
起きた時から胸中でひしめいているこのもやもやとした『予感』は。
気づいてみれば、『あいつ』が来る場所が唐突に分かる時の直感とよく似ている気がする。
「あ、え……わっ……」
すれ違おうとしていた金髪の少女が立ち止まる。
口元を押さえ、目を見開いている。
絵理は嫌な予感を打ち消すために、ゆっくり、ゆっくりと振り返る。
どるるん。
どるるん。
どぉるるるるるるるるるる―――――
道の向こう。
朝もやの奥。
非現実的なムードの立ち込める朝の商店街に。
まるで陳腐なパニック映画のワンシーンのように。
そいつは立っていた。
「オセンベ」「そでん本舗」「和三盆」「ナスビー重点」「那珂ちゃんヤッター!」。
数々の看板の向こうから、数々の看板を通り過ぎ、その男が駆けてくる。
見間違うはずがない。その姿、そのチェーンソー。間違いなく『チェーンソー男』だ。
だが、何故朝に。
襲撃時間は完全に把握しきっており、それ以外の時間に出てくる例外なんてなかった。
一瞬混乱した頭を深呼吸で落ち着かせ、走ってきているチェーンソー男と向き合う。なんでもいい。出てきたならば戦う。
そうしなければ、もし逃げたりすれば、すぐそこに居る見ず知らずの少女が犠牲になってしまう。
もう、『悪』なんかの身勝手で何かを奪われるのはこりごりだ。
考えるのは後でいい。今は戦う。戦って、奴を倒すだけ。
絵理はすぐさま臨戦態勢に入った。
チェーンソー男は人間離れした速さで絵理へと駆け寄りながらチェーンソーを振りかぶる。
絵理は振り下ろされるチェーンソーの軌道から半身を躱し、逆に一歩を踏み込んだ。
通常の女子高生ならば自ら死地に飛び込むようだが、絵理は違う。
彼とはじめて出会った時に、何故か常人離れした―――それこそ、目の前のチェーンソー男とも戦えるくらいの戦闘能力を手に入れていた。
『チェーンソー男と戦うためのもの』と彼女が呼ぶ、正体不明の力。
その力の全てを持って、チェーンソー男と戦う。それが絵理の青春の一ページ。
踏み込んできた絵理に対し、チェーンソー男はスイッチを切り替えたように機敏にチェーンソーで逆袈裟に斬り上げる。
しかし、その一撃も絵理を傷つけるには至らない。
そもそもチェーンソーの一撃は大振りだ。常人離れした動体視力と運動神経を得た絵理には避けることなど造作も無い。
絵理が身をかがめれば、彼女の頭上を悪魔の足音が通り過ぎる。
思い切り振りぬかれたチェーンソーの二撃目。
それを避ければ、絵理の眼前に男のがら空きの左わき腹が晒される。
その必勝のチャンスを見逃さず、絵理はいつもどおりにトドメを刺しにかかった。
いつものようにナイフを投げようとし……そこで、ようやく失態に気づいた。
ない。
あるべき場所にナイフが、一本もない。
それもそのはず、今は朝。
戦闘の可能性がある夜ならまだしも、全く想定していなかったこの遭遇、ナイフを携帯しているわけがない。
だって、敵も居ないのにナイフを肌身離さず持ち歩いていたら完全に変質者だ。
良識ある絵理が、そんな物騒なことをするわけがない。
気づいた時にはもう遅い。
男は振りぬいたチェーンソーをそのままに、今度はチェーンソーではなく、チェーンソーを振った勢いで助走のついた脚で絵理に攻撃を加える。
すかさず腕を顎の前でガードするが、失態とそれに伴う一瞬の混乱のせいでガードが甘い。
チェーンソー男の蹴りが絵理のガードの上から突き刺さる。
絵理は後方へ1mほど吹き飛び、さらに1mほど地面を転がり、閉店中の店のシャッターにしたたかに背中と頭を叩きつけられた。
天地が真逆になったような衝撃。脳をだいぶ揺さぶられたらしく、頭痛と吐き気が止まらない。
どるるるるるるる、どぅおるるるるる。
ぐわんぐわんと揺れている頭に、唸るようなエンジン音がどろどろに溶けて染みこんでくる。
はやく体勢をたてなおさなければという心とは裏腹に、腕はがくがくと震えているし足元はおぼつかない。
「だ、駄目っ……!」
誰かの声が響く。
その場に居たのはチェーンソー男と絵理と見知らぬ少女の三人だけ。
ならばその声は当然少女のもの。
焦点が定まらずいまだぼやけた視界でなんとか目を凝らせば、少女がチェーンソー男に抱きついている。
その光景を見た瞬間、絵理は叫んでいた。
「逃げて!」
叫んでから理解が追いついた。
そうだった。
いつだってチェーンソー男は、『邪魔する奴を殺しにかかった』。
絵理以外は殺さないような殊勝な精神の持ち主ではない。
絵理と山本と二人で戦っている時もそうだ。山本が横から一脚で応戦すれば、決まって奴は山本の方に矛先を向けた。
近くに居るやつを殺す。邪魔するやつを殺す。
ならば当然、あの見ず知らずの少女だって対象になる。
「逃げて! はやく!!」
絶叫虚しく、チェーンソー男が金髪の少女を突き飛ばす。
小さな少女は抗うこともできず、ころん、とこけてしまう。
どるるん、どるるん。
朝もやの中でひときわ強くチェーンソーが煌めく。
少女がひ、と小さく息を呑む。
動かなければと心は焦るが、痛みと眩みで身体が言うことを聞かない。
絵理の焦燥どこ吹く風と、ゆっくりとチェーンソーが振り上げられ、そして―――
―――チェーンソーは振り下ろされない。
空中で止まったまま、どぅるるるるるると刃を空回しし続ける。
「お前はなんだ」
なぜなら、万力めいた力でチェーンソー男の振り上げた腕が押さえつけられているから。
「なんのつもりだ」
ぐるりとのっぺらぼうな顔が後ろを向く。
チェーンソー男と、『そいつ』が顔を合わせる。
「俺のマスターを襲うってことは、お前がそうか。サーヴァントか」
チェーンソー男のがら空きの脇腹に乱入者の蹴りが突き刺さる。ネクロカラテの一撃だ。
チェーンソー男は、それまでの凶行が嘘のように、タンブルウィードめいてごろごろと商店街の舗装道路を転がっていく。
蹴りの衝撃で乱入者の肋骨の下あたりから、アルコールと内臓の破片らしき腐肉がぶちまけられる。すえたような酷い臭いが立ち込める。
「ヨタモノやヤクザじゃなくサーヴァントか? お前の、魔力の、この感覚が、お前が!!」
男の袖口からじゃらりと音を立ててにび色の丸鋸が飛び出す。
左右一対の鎖付きバズソー。それこそが男の獲物。敵へと向ける必殺の武器。
「俺は!!」
バズソーが放たれる。狙いは違わず、チェーンソー男の腹部と胸部。
放たれたバズソーにカラテが注ぎ込まれ、音を立てて高速回転を始める。これが直撃すれば大怪我では済まない。
しかしチェーンソー男は身を捩り、バズソーは男の脇腹を掠めるだけにとどまった。
チェーンソーが乱入者を威嚇するように低く駆動音をあげる。標的が、三度切り替わる。
「ドーモ、ジェノサイドです! 無視し続けるつもりか!! エエ!? ナメやがって、俺は、俺はジェノサイドだ!!!」
「バーサーカー、さん……?」
少女がその名を口にする。
その男。そのサーヴァント。
鍔広のウエスタンハット。彼ほどの巨体でなければ裾を擦るだろうサイズのカソックコート。
目には緑の光を称え、包帯でその皮膚のすべてを隠す。真名を隠すこともなく、狂乱に狂乱を持って斬りかかる。
バーサーカー、『ジェノサイド』。狂戦士のエントリーだ。
「イヤーッ!」
ジェノサイドが握った鎖をウワバミのように波打たせる。その波に合わせてバズソーが踊り、跳ね回る。
タンコ・ブシめいた複雑怪奇な動きでバズソーはチェーンソー男を襲撃。
しかしチェーンソー男は襲い来るバズソーを、あるいは弾き、あるいはくぐり、あるいは飛び、全て超人的な身体能力で回避。ワザマエ!
ぢゅんぢゅんと嫌な音を立てながら商店街の建物に無数の傷が刻まれていく。
激しい鋸同士の応酬が続く。
優勢に立っているのはジェノサイドだ。
最初は商店街中程で出会った二人だったが、ジェノサイド側がじりじりと押し返し、今はもう絵理たちからはだいぶ遠くまで離れている。
二人の距離も既に5mは離れたが、それでもお互いの戦意は失せず、互いの動向を探り続けている。
どぅるるるるるるる、どるるるるるんるん!
チェーンソーの音はやまない。まだ獲物を狙っている。戦意を見せながらもバズソーの射程距離外へと逃れている。
その様子を見て今度はジェノサイドが、重機関車めいた突撃を繰り出す。両手にバズソーを持ち突撃するさまは、まさに殺人列車。
そして、鎖の範囲に再びチェーンソー男をとらえた時、両者が動く。
「ゼツメツ!!!」
バズソーが、朝もやを切り裂き、チェーンソー男を追う。チェーンソー男は真正面から受けて立ち、その膂力でバズソーを弾き飛ばした。
弾かれたバズソーは商店街入り口付近の3つ連なった看板を全部まとめてぶった切る。
ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり、きゃりきゃりきゃり。
間髪入れずの二枚目のバズソーが、アスファルトを削りながら地を這うような超低空でチェーンソー男に迫る。狙いは脚部、大振りなチェーンソーでの防御が難しく、そして当たれば実際痛い場所。
チェーンソー男は、一投目を弾いた後でバランスもままならぬ身体を無理やり引き起こし、そのままムーンサルトの要領で高く、高く飛び上がり、商店街の入り口を飾るゲートの上に着地した。
足を狙われぬようにするならば、足場より下にさらなる空間を作るか、足を狙えぬほどに肉薄するかだ。それをチェーンソー男は誰に言われるでもなく知っていたのだ。
チェーンソー男がゲートの上に陣取ると同時に響くのは、小さな悲鳴とけたたましい破砕音。
「アイエッ!?」
こうして、物語は冒頭へとつながる。
◆◆◆◆
ガジロは、濡れそぼった股間を抑えながら、勝負の行く末を見守っていた。
いや、見守っていたというのは正しくない。
『勝負が付く前に動けば自分が死ぬ』と半ば予知めいた直感に従い、その場でただ、救いの時が来るのを待っていた。
ガジロは心の中で叫んだ。
酒なんかこりごりだ!朝の道なんて歩きたくない!
酒もやめる!朝帰りもやめる!まじめに働く!
貯金して、老後の幸せのために使おう!生きてるだけで十分だ!
世界の支配者なんて馬鹿げた夢を見るのはもうやめだ!
とにかく、こんな危険な場所になんていられない!そうだ、キョートに行こう!
キョートは古めかしい都市!マイコが踊ってヤツハシが空を飛ぶ!刀は全部おみやげ!実際安全!
キョートへ行ってインスタント・ブディストになろう!たるんだ精神を叩きなおし、社会に帰ろう!
ジンリキシャーを引いてテンプル・ツアーのリキシャーガイドになるんだ!
だからどうか!ああどうか!ブッダよ!私をお救いください!!
閑話休題。
哀れな男の刹那程の神への祈りが終われば、現実が再び流れだす。
ギャリギャリと回り続ける鋸とカラテを流した鋸でつばぜり合いをしていた二名が動く。
「イヤー!」
動いたのはジェノサイド、両手に携えたバズソーでチェーンソーをいなしながら放つのは、ネクロカラテによる蹴りの一撃。
ヤクザキックめいたその一撃を、今度はチェーンソー男の腹めがけてぶちかます。
単調な蹴りを何度も受けるほどチェーンソー男も甘くない。組み合っていた三枚の鋸を振り払い、大きく後ろに跳躍。
だが、ジェノサイドは既にその回避を読みきっている。
「イヤー!!」
右のバズソーを、右のバズソーの鎖を大きく振り上げる。
じゃりん。
鎖の揺れる音とともにチェーンソー男の跳躍が止まる。チェーンソー男の背にぶつかったのは、バズソーの鎖。
ジェノサイドはフクスケのマゲを切り捨てたバズソーを回収する際、大きく弧を描くように自身の元へ引き戻していた。
当然鎖はチェーンソー男の背後に残ったままである。弛んでいた鎖を引き上げれば、そのままそれが逃亡を阻害する障壁と化す。
チェーンソー男は哀れにも蜘蛛の巣に捕らえられた虫のように空中で一瞬磔に。これが勝敗を分けた!
「イヤー!!!」
左のバズソーが宙を舞う!
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。
骨が削れる音が、朝もや立ち込める商店街に響き渡る。
バースデーケーキよろしく頭をバズソーで切断されたチェーンソー男は、そのまま魂が抜けたように自由落下。
狂戦士同士の勝負は、ジェノサイドに軍配が上がった。
糸が切れたジョルリ人形よろしく地に伏したチェーンソー男を見ながら、ジェノサイドは訝しんだ。
サーヴァントも、出血はするはず。
なのに、頭をかち割られたというのに血の一滴脳の一欠片もこぼさず、ただ倒れるだけというのはどういうことだ。
消滅する様子もない。ということは、何か裏があるはず。何かの罠か。誘っているのか。
どうでもいい、ならば死ぬまで殺すのみとジェノサイドがバズソーを構えた次の瞬間。
ゼツメツ必至の致命傷を負っていたチェーンソー男が起き上がり、大きく飛び上がった。
大怪我などとは見てくれのみ。実際ノーダメージめいた動き。
依然動きに鈍りはない。頭をかち割ったというのに。
ワイヤーアクションのように高く、高く、ジェノサイドとの戦いでも見せなかったほど高く飛び上がるチェーンソー男。
そして、オイナリ・ベーカリーの屋上に着地し、ジェノサイドを見下ろす。
ジェノサイドは屋上の方へ跳躍しながらバズソーを投擲。
するとチェーンソー男はまるで別人のように背を向け、朝もや晴れぬ街の中へと消えていった。
パッポウ。パッポウ。
商店街のどこかで鳩が鳴く。
ぽーぽぽーぽぽー。ぽーぽぽーぽぽー。
山の向こうでドバトが鳴く。
ちちち、ちちちち。
電信柱でスズメが鳴く。
それが合図。
勝負の幕引きを示す合図。
朝が来る。人々が起きだす。朝もやが晴れていく。
しばらくすれば戦闘で起こったあ様々な音を耳にして、人々が集まりだす。街が活気を取り返していく。
怪人同士の戦いは、朝が来るまでやってはならない。
陽の光を浴びるには醜すぎるズンビー。ジェノサイドは振り返り、自身のマスターの無事を確認。
周囲にサーヴァントの気配がないことを確認すると、しめやかに霊体化。
バーサーカーアーたるジェノサイドは実体化するだけでマスターへの負担が大きい。
その上ジェノサイドには重大な『時限爆弾』が仕掛けられている。マスターからの指示がない限り、戦闘以外での実体化は避けるべき案件だ。
そうして二体の怪人は、朝もやとともに雲散霧消。
その存在と戦いを、傷跡だけを刻み込み、過ぎ去ったはずの夜へとその身を隠すのであった。
「ア、ア、アバ」
へたりこんでいたガジロが声を上げる。
なんとマッポーめいた光景だろう。
ハットの男のバズソーが煌き、フードの男の頭をフードごと切り裂いた。
死んだ!と思ったもつかの間、フードの男はすぐに起き上がり、街の中へと消えていった。
それを見届けたあと、煙のように消えてしまった。
まるで嵐のように。
二人の怪人は突如現れ、商店街に消えぬ傷跡とボーズカットのパンク・フクスケだけを残し、忽然と消えた。
この事実を話して、誰が信じようか。
チェーンソーのニンジャ、バズソーのニンジャがイクサをしていたなんて荒唐無稽な話。
だが、そんな夢物語のようななか、歴然とした真実が一つ。
ガジロは生きている、怪我一つ無い。
ニンジャが跳梁跋扈し、マゲが飛び、看板が落ちるような戦闘に居合わせながら、無傷で生還。
それは、信心の浅いガジロにしても、ブッダの救済以外に言いようのない奇跡だった。
ガジロは慌てて神に向かってドゲザでオジギ。
「ナマダブ、ナマダブ!ホレンゲッキョ!」
両手をすりあわせ、顔をのぞかせた太陽に平服。そのままバンザイ・スタイルで三礼。
神の救いはここにあった!神は私を見ていた!
二人の怪人の両方を消し給うた!実際妙手!アブハチトラズ!
その後、ガジロはその日のうちに誓い通りキョートへ向かい、キョートでインスタントではなく本格派の信仰逞しいブディストになったが、それはもう聖杯戦争とは関係のない物語である。
【JINCHOUGAZER'S NEKROMANCE】
【JINCHOUGAZER'S NEKROMANCE】
「そ、その……大丈夫……?」
心配そうに絵理の脇腹を撫でる少女。
金髪のアシンメトリーヘアーで、小さな貝のような可愛らしい耳に不釣り合いなピアスを付けた少女。
その少女が、自分を救おうとチェーンソー男に飛びかかった少女だと気づくのに、絵理は数十秒の時間を要した。
少女に手を引かれ、絵理はなんとか立ち上がる。
まだ蹴られたところは痛むが、それでも少し前のように前後不覚に陥るほどではない。
「私は大丈夫、あなたの方は平気?」
「う、うん……」
少女は少し恥ずかしそうに、口元をだるだるの袖で隠しながら照れ笑いを返した。
その動作は、小さな体躯も相まって小動物のようで可愛い。と、絵理も素直に思うほどだった。
改めてお礼を言うと、少女は小さく会釈をし、そして何事かに気づいたようにきょろきょろと周囲を見回し始めた。
そのうちに少女は道の端に転がっていた瓶を見つけ、駆け寄って拾い上げると、またまたきょろきょろと周囲を見回し始める。
どうやら先ほど突き飛ばされた時に何かを落としたらしいということが、遠目に見ても分かった。
助けてもらった恩がある。それに、ここで無言で立ち去れるような性格はしていない。絵理はわりとお人よしな少女なのだ。
絵理も周囲を見回し、ちょうど絵理の左にある立て看板の足元に同じような瓶が転がっているの見つけた。
「ねえ、これじゃない?」
少女に声をかけ、瓶を拾う。
そして何気なく瓶のラベルを確認して、どきっとした。
瓶にはでかでかと20歳未満の摂取を禁ずると書かれている。
少女が同じものを拾っていた、そしてまだ探している、ということはこれは彼女の持ち物で間違いないだろう。
ぱたぱたと寄ってきた少女に尋ねる。
「あなた、やっぱり不良?」
「……?」
「お酒の飲める歳じゃないよね」
「……あ……これは、私じゃなくて、バーサーカーさんが飲む物だから……」
バーサーカーさん。
この少女は先ほど、あのカソックコートの男(らしきなにか)をそう呼んでいた。
「あの人は知り合いなの?」
『あの人』がさすのは当然、ジェノサイドと名乗っていたカソックコートにウエスタンハットの大男。絵理と少女の命の恩人である彼だ。
少女は少し戸惑ったような素振りをみせ、おずおずと答えた。
「……う、うん……」
短い返事。
それ以外は何も語らない。
カップ酒を少女に手渡すと、少女はオーバーオールの腹部にあるポケットに酒をしまった。
そして、無言のままどちらともなく歩き出す。傷の刻まれた入口側ではなく、出口の方に向かって。
商店街の出口ゲートが見えてきたあたりで、今度は少女のほうが口を開いた。
「あ、あの人……チェーンソーの……あの人、知ってるの……?」
今度は少女の方から、絵理に話しかけてきた。
『チェーンソーの人』というのは間違いなく、チェーンソー男のことだろう。
でも、話すべきか。
できれば話したいことではない。
チェーンソー男の説明をするならば、どうしても絵理の心の傷を曝け出す事になってしまう。
なおかつ、あの男の存在全てがあまりにも荒唐無稽すぎる。そのまま話して信じてもらえる話だとは思わない。
だが、彼女も被害者だ。絵理の想い人である山本の言葉を借りるなら少女も『被害者』であり『知る権利はある』。
それに、彼女が(正確には彼女がバーサーカーさんと呼んでいる男が)居なければ絵理は死んでいた。
そして、突然変わってしまったチェーンソー男について、情報を整理するいい機会にもなるだろう。
そう結論づけて、折衷案として自身の生い立ちや彼が現れるに至った経緯をぼかして説明を始めようとしたが。
まだ自己紹介もしていなかったということを思い出し、定型句で問うた。
「あなた、名前は?」
少女は少し黙ると、消え入りそうな小さな声でこう答えた。
「わ、私……白坂小梅、です」
「白坂さん、ね。私は雪崎絵理」
その後、年齢などの簡単な自己紹介を済ませ、絵理はいつかのようにこう切り出した。
『白坂さん、笑わないでよ』と。
◆◆◆◆
雪崎絵理と共に歩きながら、白坂小梅は考えていた。
小梅が商店街を通りかかったのは完全に偶然だ。
ジェノサイド用の酒を買いに、時間を選んでこっそり外出したのが始まりだった。
ジェノサイド一人だと怪しまれる、ということで少し離れたコンビニまで二人で行き、お小遣いでワンカップ酒を買い、その帰り道で事件は起こった。
チェーンソーを持った大男が何故か突然襲いかかってきたのだ。
そのサーヴァント(小梅にはステータスが見えていたからそれは間違いない)は、彼と戦っていた少女――雪崎絵理によれば『チェーンソー男』というらしい。
まるでB級のパニック映画のタイトルのような名前のその男。その実態は『世界に悲しみをもたらす悪の怪人』。
手に持っているチェーンソーで他人を殺しに襲いかかって来る。毎夜毎夜、どこかで、絵理と戦っていたとのこと。
素敵な設定だ。
あの『いかにも』な格好に、『いかにも』な武器も素敵だ。
初対面で見惚れてしまったのも「わぁっ」と感嘆の声が自然と漏れだしたことも仕方ないことだろう。
でも、絵理が殺されそうになり、このままじゃまずいと慌てて飛びついたが振り払われ、逆にチェーンソーが小梅の方に向けられた時。
目の前でどるんどるんと音を立てて回転するチェーンソーをつきつけられた時。
とても恐ろしかった。
スプラッター映画は好きだけど。
ショッキングな雑貨は好きだけど。
『皆』は友達で、大好きだけど。
ジェノサイドもかけがえのない友人だけど。
それでも、自分が死ぬのは怖かった。
あのチェーンソーが振り下ろされたら、小梅が死んでしまったら。
もう二度と、お父さんにも、お母さんにも、『あの子』にも、ジェノサイドにも会えないのだと。
そしてもう、幸子にも輝子にも会えなくなるのだと考えると、怖くて、寂しくて、悲しかった。
わりと気丈な方の彼女が少しだけ涙ぐんでしまうほどに怖かった。
そういった経緯を踏まえ、白坂小梅は考える。
(バーサーカーさん)
((どうした))
(バーサーカーさんは……サーヴァントを食べなきゃいけないんだよね……?)
ジェノサイドは黙る。
そう、これこそが彼に組み込まれた時限爆弾。
ジェノサイドはズンビーであるがゆえに、他者を……それも他のサーヴァントを捕食しなければ顕現を続けることが不可能なのだ。
ジェノサイドが小梅を守り続けるためには、戦える状態を維持しなければならない。
戦える状態を維持するためにはサーヴァントを捕食する必要がある。
捕食するとなれば、その相手を見つけなければならない。
その相手を(できれば食べても誰も困らない相手を)見つけるのが彼女ら二人の聖杯戦争の第一の課題だったが、運良くというか運悪くというか、すぐに出会うことが出来た。
(あの人なら……あの、チェーンソーの危ない人だったら……食べても、大丈夫……?)
((……そうだな。あいつなら、食っても文句は言われねえだろ))
(……あの人、かっこいいけど……いろんな人に迷惑かけるのは、駄目だから……)
今が早朝だったから良かったが、もしこれが人の多い昼や夕方だったらどうなっていたか。
おそらく、あのチェーンソー男はNPCをバッタバッタと切り倒しながらこちらに向かってきただろう。
そういうのは、映画の中だといいけど、とても素敵だけど、実際にやっちゃいけない。創作と現実は一緒にしてはいけない。
だって、誰かが悲しむのは、よくないことだから。
小梅はそう判断し、絵理同様あのチェーンソー男を『倒さなければならない存在である』と認識した。
そして、『倒さなければならない存在』であるならば『食べてもいいんじゃないか』と論理をつないだ。
「あの……絵理、さん……」
「なに?」
「もっと、お話……聞かせてほしいな。『チェーンソー男』のこと」
絵理が立ち止まり、小梅を見つめる。
興味を向けたことを不思議に思っているようだ。
経緯を説明しようと思い「えっと」と口に出し、そこで一旦口をつぐむ。さすがに直球で『食べるためです』とはいえない。
そうして、少しだけ黙って考えて、こう続けた。
「……バ、バーサーカーさんが、あの人のこと、気になってるみたい……だから……」
((……))
バーサーカーの溜息が聞こえた気がした。
【C-2/商店街/一日目 早朝】
【白坂小梅@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]R絵柄の私服、スマートフォン、おさいふ、ワンカップ酒×2
[所持金]裕福な家庭のお小遣い程度
[思考・状況]
基本行動方針:幸子たちと思い出を作りたい。
0.死ぬのは、意外と怖い……かも。
1.絵理からチェーンソー男のことを聞きたい。チェーンソー男が他人を襲うのは危険。
2.チェーンソー男を、ジェノサイドに食べさせる……?
[備考]
※霊体化しているサーヴァントが見えるかどうかは不明です。
※雪崎絵理を確認しました。彼女がバーサーカーのマスターとは気づいてません。
バーサーカー(チェーンソー男)を確認しました。彼に関する簡単なこと(悪の怪人ということ・絵理と戦っていること)も理解しました。
※まだ通達を確認していません。
【ジェノサイド@ニンジャスレイヤー】
[状態]霊体化、カラテ消費(小)、腐敗進行(軽微)
[装備]鎖付きバズソー
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:コウメを……
0.俺はジェノサイド……
1.チェーンソー男は、コウメを殺そうとしやがった。
2.女(雪崎絵理)はチェーンソー男のことを知ってるのか?
3.次倒したら、チェーンソー男を食うかどうか。
[備考]
※バーサーカー(チェーンソー男)を確認しました。
バーサーカーの不死性も理解しましたが、ニューロンが腐敗すれば忘れてしまうでしょう。
【雪崎絵理@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ】
[状態]魔力消費(?)、身体に痛み、軽度のショック
[令呪]残り三画
[装備]宝具『死にたがりの青春』
[道具]スマートフォン、私服
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:チェーンソー男を倒す。
0.なんで、明け方からチェーンソー男が……?
1.ついでにナイフを取りに帰る必要がある。
2.小梅と話をする……?
3.チェーンソー男の変化について調べる。
[備考]
※聖杯戦争への理解がどの程度なのかは後続の書き手さんにお任せします。
※チェーンソー男の出現に関する変化に気づきました。ただし、条件などについては気づいていません。
※『死にたがりの青春』による運動能力向上には気づいていますが装備していることは知りません。また、この装備によって魔力探知能力が向上していることも知りません。
※白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)を確認しました。真名も聞いています。
※まだ通達を確認していません。
◆◆◆◆
怪人たちの狂演が終わり。
少女たちの出会いの物語が終わり。
いつか。
どこか。
その男は居た。
自身の主の下ではなく、ただどこか、彼を受け入れる場所に居た。
霊体化中か実体化中かもわからない。
そこがどこなのかは誰も知らない。
おそらく、彼自身も知らない。
彼にはきっと、理性と呼ぶべきものがないから、知ることが出来ない。
誰が呼んだかチェーンソー男。
その正体は、世界に悲しみをもたらす悪の怪人。
彼はサーヴァントとして顕現する際に2つの枷を負った。
それは、他のサーヴァント同様、聖杯戦争をとり行うための基本ルール。
一つ、サーヴァントとして聖杯戦争に参加できるよう、彼が全快の状態でマスターがサーヴァントに近づいた際、彼は実体化して戦闘を開始するというもの。
チェーンソー男は、聖杯戦争中でも本来のペースでの襲撃を行う。
夜9時〜深夜の間、街のどこかに絵理を誘い出し、彼はいつもの様に戦闘を行うだろう。
ただし、絵理がサーヴァントの存在を察知した場合、彼女が望む・望まないにかかわらずチェーンソー男は現れ、絵理を襲う。
これが、彼がサーヴァントとしての職務を全うするために、聖杯によって与えられた枷の一つ。
もう一つ、致死に至れば再戦までに相応の時間を要するというもの。
サーヴァントという枠に押し込められたため、その不死性が少々変化した。
逸話に違わず、彼は一度敗れれば姿をくらます。
その後、絵理の魔力もしくは自身の魔力を用いて肉体を戦闘可能な状態まで修復しなければならなくなった。
これが、彼がサーヴァントという枠から逸脱しないように、聖杯によって与えられた枷のもう一つ。
突如与えられた2つの枷。
どちらも彼の存在に大きく干渉する枷。
ただし、2つを合わせてみれば、それが必ずしも彼にとって悪い方へと働くわけではない。
もし、魔力や傷の深さや遭遇の機会に恵まれたのならば、チェーンソー男は日に5度でも6度でも現れうる、ということだ。
この枷があったからこそチェーンソー男はサーヴァントとしての顕現を受け入れた。
そうすればそれだけ、彼は願いを叶えやすくなるから。
彼の願い。
それは雪崎絵理の殺害。
それが彼の存在理由。
彼は雪崎絵理を殺すためだけに生まれ、そのためだけに動き続ける。
聖杯戦争参加前も、聖杯戦争中も、ずっと、ずっと。
そんな彼の願いや存在理由と彼の持つ宝具『死にたがりの青春』が、雪崎絵理に一つの力を授けた。
それは身体能力の強化に伴った魔力探知能力の向上。
そもそも絵理は完全な一般人であるため魔力への干渉や察知は不可能。
だが、『死にたがりの青春』によって、ことサーヴァントの索敵という一点に関してのみ鋭敏な知覚能力を手に入れた。
絵理は、今後も『チェーンソー男出現の予感』という形でサーヴァントの存在を察知し、彼らに近づくだろう。
そして、その度にチェーンソー男は願いを叶える機会を得ることになる。
何度でも蘇り、絵理を殺しに行く。
何度でも、何度でも、何度でも、死ぬまで殺しに行く。
あの不気味なエンジン音と共に、彼女を殺しに行く。
どんな時でも殺しに行く。
地の果てまで追いかけて殺しに行く。
チェーンソー男は、聖杯戦争の舞台で、2つの枷を背負ったことで更なる怪物として生まれ変わった。
いつか。
どこか。
霊体化中なのか。
実体化しているのか。
分からない。
それでも、彼は、どこかで待ち続ける。
雪崎絵理に『悲しみ』を刻み込むその時を待ち続けている。
【???/???/一日目 早朝】
【チェーンソー男@ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ】
[状態]復活までまだ時間が必要
[装備]チェーンソー
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雪崎絵理の殺害
[備考]
※雪崎絵理がマスターだとかそういうことは関係ありません。
※聖杯戦争中、チェーンソー男は夜以外にも絵理がサーヴァントの気配を感じた場合出現し、当然のように絵理を襲います。
このことには絵理も気づいていません。
※致命傷を受けての撤退後、復活にはある程度の時間を要します。時間はニュアンスです。
※白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)組を確認しました。
[地域備考]
※C-2商店街に小〜中規模戦闘の跡が残っています。
戦闘の直接の目撃者は小梅・絵理・ガジロの三名のみですが、音を聞いた人は居るでしょうし、破壊痕から噂にもなるでしょう。
以上です
矛盾指摘、修正箇所、その他NPC、文体、チェーンソー男関連などなにかありましたらお願いします
投下乙です!
少女聖杯に怪しく闊歩するバーサーカー二体の血湧き肉踊るバトルにガジロ=サンよろしく驚嘆放心失禁の大興奮でした!
忍殺アトモスフィアに溢れまくった文体や表現の数々、そればかりでなく、チェーンソー男と絵里ちゃんのあれこれに鮮やかな先鞭を付ける手腕も素晴らしい。サーヴァントとしてのチェーンソー男、青春の理不尽な怪物である彼が、この少女たちの世界でなにを示すのか、目が離せません。
ジェノサイド=サンの戦いは過激でいいなあ
投下が来ていた!乙です
すごいな、完全に空気は忍殺だ
フクスケ初め小物の数々も細かいし、何よりニンジャ同士…ではないけど怪物同士のバトルが面白い
街中で繰り広げられる悪夢じみたチェーンソーとバズソーの激突、しかもそれを、元カチグミNPCの目線の語りを交えながら見せて行く構成に唸らされます
◆ガール・ミーツ・ジンチョ・ゲーザーズ・ネクロマンス◆ 楽しませて頂きました
皆さん投下お疲れ様です!
>【>願う 何を? >幸せ 何が君の幸せ?】
まず誰も言ってないようなので私が言いますね。
アンパンマンOP「アンパンマンのマーチ」の歌詞だ!やったぁ!!
二人の少女の早朝のお話。シルクちゃん側、輝子側の日常にフォーカスを絞り、それぞれの思惑を描いていく。
何気ないお話の中で見え隠れする主従の関係性がいいですね。
シルクちゃん組はフェイトちゃん包囲網はほぼ不干渉で決定。
ただ、交戦意志はあるようなのでフェイトちゃんに目をつけてる徘徊メンバー(主に森の音楽家なんとかベリーさん)あたりと会うとフェイトちゃん関係なしに普通に戦闘になりそうですね。
シルクちゃんさん←この呼び方好き。
おちゃらけたような、洒脱なような、二人の小気味よい会話も言葉には出来ない心の繋がりの・ようなものを感じ、心地いいです。
輝子ォ!掲示板見ろォ!幸子ォがやめてください怒りますよォ!してるぞォ!
「知り合いを守りたい」って方針な以上、幸子の知り合いの(おそらく輝子も面識のある)きらりが渦中に引きずり込まれてるの見ると確実に厄介な方へ転がり込んでしまう……
出典のこともあって142sはみんなきらりん知ってそうですが、きらりんは時系列的に三人は知らないのでここで一悶着あるかもしれないですね。今回の無意識での回避が吉と出るか凶と出るか。
投下お疲れ様です!
>砂糖菓子の朝はほろ苦い
なぎさちゃんの方針が凝縮されたのが以下の3つの単語。
>汚く、あざとく、みっともなく
少女聖杯とは・お砂糖とスパイス要素とはなんだったのかと思わされる、砂糖菓子の弾丸よりも実弾な、なぎさちゃんらしい一言。
行動も堅実に、緻密に、そして残酷に。
八房のスペックをフル活用できるように立ちまわる、最も効果的な作戦を迷わずチョイス。
生理的嫌悪感はあるものの、願いのためには必要だと割り切ることもできている。この子は本当に中学生なんですかね……?
さらに選んだ作戦は内に潜めた悪意を隠して、理想を語るお人好しさんたちに近づき利用する、ほろ苦い砂糖菓子としての立ち回り。
まさに自身のサーヴァントの特性を理解して作戦に組み込む、立派なアサシンのマスターというべき作戦立案でした。
この子は本当に中学生なんですかね……?(再確認)
しかし、なぎさちゃん組の最も大きな爆弾は、なぎさちゃんの願いの根幹である藻屑ちゃんが呼び出されているということ。
お互いのサーヴァントの気性も相まって、人魚姫な未来しか見えない……嵐が来ちゃう……
投下お疲れ様です!
感想ついでに
高町なのは&キャスター(木原マサキ)
予約します
チェーンソー男の設定、すごい面白いところに仕立て上げましたね
そして木原となのはの予約が…!
感想は日曜日に
投下します。
◇
「にゃっほーい! きらきーだよ☆ルーラーのお仕事は大変だけど参加者のみんなのためにがんばるにぃ!みんな応援よろしくおにゃーしゃー☆」
◇
「……ッ!」
気が付くと、諸星きらりは目覚めていた。
未だ太陽は沈んでおり、テレビをザッピングしても映るものは砂嵐に似たノイズか通販番組だけだ。
この高校におけるトラウマとサーヴァントに対する無力感から来る多大なストレスは、諸星きらりの睡眠時間を蝕んでいる。
額を拭う、酷い汗だ。
発熱したかのように全身が濡れている、パジャマにまでじつとりと滲んでいる。
「■■■■■」
バーサーカーが諸星きらりの額に手を当てる、熱を測っているのだろうか。
肉体的な病でないことはわかっている、だがその優しさが諸星きらりにとってはありがたいことだった。
「だいじょーぶ」
ベッドを抜けだして脱衣所まで歩く、当然のことであるがバーサーカーは外で待機している。
パジャマを脱いで洗濯物カゴに入れる。
フリルのついた桃色の下着、そのバストは豊満であった。
浴室に入り、シャワーを浴びる。
汗とそれ以外のものまで洗い流せるように。
浴室の曇った鏡を掌でこすり、諸星きらりは自分の姿を見る。
出るところは出て、引き締まるべきところは引き締まった長身の体躯、それに対し幼さすら感じさせる愛くるしい顔。
体躯と顔のギャップが、かえってアンバランスな美しさを生み出している。
ただ、昨日よりも更に痩せたかもしれない。
両の人差し指で口角を上げて、笑顔を作る。
わざわざこんなことをしなくても、少し前までは自然に笑えていた。
だが、作ることを意識しなければ笑うのが難しい。
笑うのなんて、簡単なはずなのに。
「きらりん☆」
諸星きらりが、きらりになって鏡を覗きこむ。
他人のための偶像【アイドル】は未だ笑えている。
「今日も一日がんばるぞい!」
着替えを済ませた諸星きらりは、己の携帯電話にメールが来ていることに気づく。
この街に来てから携帯電話を使う機会は減った。
街に来て最初の数日は家族や友人に引っ越しが無事に終わったことを連絡して、自分が大丈夫であることを伝えて、
そして、いじめが始まって、それ以来使わなかった。
誰にも何も言えなかった。
そして今、この携帯電話の先にいる相手が偽物であることがわかり、やはり何も言えない。
元の世界のように、きっと、優しくて甘いものをくれるだろうに、それでも言えない。
電話を掛けて全てウソですよと言われたら、と思うと恐ろしい、夢が夢で終わらせられるのは恐ろしい。
だから、二度と携帯電話を使うことはないと思っていた。
それが、今誰からかメールが届いている。
見たくない、正直なことを言えば恐ろしい。
メールを見れば、また何かを失うかもしれない。
息を吸う、吐く。
大きく息を吸う、ありったけの空気を吐き出す。
気合を入れて、携帯電話を開く。
ルーラーから送られた聖杯戦争の開始を告げる題名。
この時点で目眩がしそうになった。
悪夢のような現実は蜘蛛の巣のようにきらりを絡めとった。
息を吸う、吐く。息を吸う、吐く。息を吸う、吐く。心を落ち着かせる。
攻撃されるのは恐ろしい、バーサーカーの戦う姿を見るのは悲しい。
それでも、未だ始まっただけで巻き込まれたわけじゃない。
それを強く意識する。
ルーラーから送られたメールの内容を確認する。
電子マネーは役に立つかもしれないし、少なくとも参加者の姿が一人はわかったことがありがたい。
掲示板は便利だが、少女の悪意に触れた今のきらりには恐ろしい。開くことはないだろう。
それより何よりも図書館に行けばルーラーと接触できるかもしれないこと、それがきらりにとっては何よりもありがたい。
バーサーカーを救う、元の世界に戻る、今までの探索の中ではその答えどころかヒントすらも見つからなかった。
それでも、聖杯戦争の運営側にいるルーラーならば、答えを知っているのではないか。
必死で頼めば教えてくれるのではないか、それが今のきらりにある唯一の希望であった。
玄関の戸を開く。
今の時間も忘れて、走る。
誰よりも先に図書館へ行かなければならない。
誰かと出会ってしまうのは恐ろしいから。
煉瓦造りの巨大な建造物は明治時代を思わせるモダンな雰囲気を漂わせる。
五階建て、蔵書数は不明、この街で唯一の図書館である。
客用の出入口は七つ、西、南に各三つずつ、北に一つ。幸福の数字である。
そして職員用通用口は東に一つ。合計で八つ、また末広がりで縁起が良い。
利便性というよりは、その数を意識してこの図書館の出入口は造られている。
開館時間は午前から夕方まで、休館日は無し。当然今は閉館中である。
だが、関係ない。
職員用通用口の横に付いたインターフォンを鳴らす。
何度も本を探しに訪れているために図書館自体には慣れているが裏口はどことなくきらりを気忙しい気分にさせる。
最も、裏口だからということだけが原因ではないが。
しばらく待っても、返事はない。
再度鳴らそうか、それとももう少し待とうか――少し考えて、きらりは再度、インターフォンを鳴らす。
普段よりも更に気が急いていることをきらりは自覚している。
待っていると不安になる。
やはりこの時間にルーラーはいないのではないか、そもそもルーラーはいないのではないか。
フェイトを捕まえて初めて、図書館にルーラーが訪れるのではないか。
こんな時間に訪れたから、ルーラーは気分を悪くして出てこないのではないか。
申し訳ないことをした。
熱病に浮かされていたかのような感情が急に冷めていく。
ありもしない希望にすがってしまっただけなのではないか、そう思ってきらりは自省する。
「かえろっか……」
霊体化しているバーサーカーに声を掛け、家に戻ろうとした――その時である!
「ドーモ、スミマセン」
通用口の門が突如として開いた、開けたのはダークスーツを着こんだ角刈りの男だ。
その目はサイバーサングラスによって隠されてはいるが、オニめいた眼光をしていることは想像するに難くない。
図書館の職員があからさまにヤクザなのだ!
見よ、ヤクザの体躯を!並みの男よりも尚高いきらりに匹敵せんとする身長と鍛えあげられたように見える筋肉を!
アイドルの卵とはいえ、所詮一般人であるきらりにとってヤクザは実際英霊よりも現実的で非現実的な恐怖である。
だが、気丈にもきらりは恐怖を抑え込み、尋ねた。
「えっと……アナタがルーラーさん?」
「…………」
それに対してヤクザは沈黙!コワイ!
緊迫した空気が数秒流れた後、ヤクザは口を開いた。
「ドーゾ。モロボシ=サン。オアガリクダッシェー」
そう言ってオジギすると、ヤクザは図書館内へと歩き出す。
数秒の沈黙によって生じた実際奥ゆかしい歓迎である。
きらりはオジギを返すと、図書館へと入場した。
何度見てもきらりはこの図書館に圧倒される。
視覚の暴力めいて並ぶ本棚は数を数えようとすら思うことが出来ないほどに多い上に、
その本棚一つ一つがアンティークであり、どこか格式の高さを思わせる。
それがずらりと五階まで並んでいるのだ、人間が本を読むための場所というよりも本に支配された場所で人間が生存を許されているようなものである。
それにしても――ときらりは気づく。
昼間にはいなかったダークスーツの職員達が本の整理を行っている、それだけならば良い。
だが、統一された髪型に服装、似たような体躯、遠目ではよくわからないがよく似た顔立ち。
職員たちが皆、同一人物のように見える。疲れているのだろうか。
心中の疑問に答えられることのないまま、ヤクザに促されてきらりとバーサーカーはエレベーターへと乗り込んだ。
「オタッシャデー!」
二人が乗り込むと同時に、ヤクザが外側から閉ボタンを押す。エレベーターの戸が閉まる。世界から隔離される。
▽
「下ヘ参リマスドスエ」
合成マイコ音声がエレベーターの起動を告げると共に、奇妙な浮遊感を伴ってエレベーターが下降する。
エレベーター内は珍しいことに全面が鏡張りである、浮遊感を伴ってきらりはどこか神秘的な趣きを感じた。
「きっと……だいじょうぶだよねぇ……」
ルーラーに会えば、家に帰れる。
ルーラーに会えば、バーサーカーもきっと泣かずに済む。
ルーラーに会いさえすれば、全ては好転するはずなのだと、きらりはそう信じている。信じざるを得ない。
もしも何も変わらなければ、それは何よりも恐ろしい。
だからこそ今、ルーラーに会おうという段になってより不安になっていく。
望めば望むほどに裏切られることが怖い。
「■■■■■■」
身を竦めたきらりの肩にバーサーカーは手を置いた。
狂っていても、泣いていても、優しくて大きくて暖かかった。
「うん、ありがとにぃ」
きっと、何とかなる――そうきらりが思ったその時である。
エレベーターの鏡面に水面のような波紋が生じた、目の錯角か――否、現実である。
今、鏡に触れれば――あるはずのない鏡の中の世界に入り込めそうなほどに、現実から逸した様。
"This little piggy went"
(このぶたちゃん)
"Wee, wee, wee"
(ウィーウィ ウィーウィウィーと泣いている)
"All the way home?"
(おうちに帰りたい?)
歌が聴こえた。
きらりの発したものでも、マイコ音声のスピーカーから発されたものでも、もちろんバーサーカーでもないものが。
どこだろう――そう思ってきらりがきょろきょろと辺りを見回すと同時に、バーサーカーが戦闘態勢に入った。
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!正面鏡粉砕!
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!左部鏡粉砕!
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!右部鏡粉砕!
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!背面鏡面粉砕!
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!天井鏡粉砕!
「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!床鏡粉砕!
バーサーカーは直感に従い、周囲の鏡面全てを破壊し、きらりを抱きかかえて天井からエレベーターより脱出!
負けを待って無駄死にとは平安時代の哲学剣士ミヤモト・マサシのコトワザである。
実際、敵の襲撃を受ける前にこちら側から仕掛けた方が有利である。
片腕できらりを抱き、もう片腕でエレベーターロープを掴んだバーサーカーが上昇を開始する。
だが……ブッダ!なんたるマッポー的光景か!
バーサーカーによって粉砕された鏡面の粒子が、吹雪のように辺りを舞い散り……バーサーカーときらりを包み込んだのだ!
フタエノキワミ=ホウグ破れたり!この宝具ならばあらゆるものを破壊出来よう!
だが、粉々に破壊されたものをどうして再度破壊できようか!
そして……皆さんの中にサーヴァント動体視力をお持ちの方がいれば、それを見ただろう!
鏡の粒子一つ一つより出た極細の茨を!それが互いに鏡を結びつけ、操っている!
「■■■■!」
一本一本破壊していっても意味なき程の量!そして破壊した側から新たな茨が出て、鏡同士は再度結び付けられる!
"This little piggy went"
(このぶたちゃん)
"Wee, wee, wee"
(ウィーウィ ウィーウィウィーと泣いている)
"All the way home?"
(おうちに帰りたい?)
再びきらりは歌を聴いた。
そしてきらりは見た。
鏡の粒子が一つの鏡となり映し出された白いロリータドレスのドール、普通の人間の半分ほどの背丈もない。
白薔薇の髪飾り、編み上げのロングブーツ、コーディネートは全身白が基調。
淡いピンクのようなクリーム色の髪をツーサイドアップにしている。
それにしても不思議なことに、右目が無い。
眼帯というわけでもなく、目の代わりに直接薔薇が生えているように見える。当然彼女の色、白い薔薇だ。
目が合った。
魔性の色――彼女の金色の目ときらりの目が合った。
「アナタが歌って……」
言葉を発し終える前に、鏡より出た茨がきらりを捉えた。
「■■■!」
バーサーカーが手を伸ばすよりも、茨は速かった。
誰が信じるであろう、鏡の中に世界があるなどと。
だが、鏡の中より出た茨は――きらりを鏡の中へと誘った。
「■■■■■■■■■■■■■!!!!」
「シ、シ、シ、下ヘ参リマスドス、ドス、ドスエ」
後に残されたものは、バーサーカーの絶叫と、狂ったように鳴り響くマイコ音声だけだった。
◇
フローリングの床、手すりの付いた壁面鏡。
レッスン室と聞いて大多数が想像するような光景――そして、きらりが何度も何度も訪れるはずだった場所。
何故、ここにいるのだろうと思うよりも先に――今更この場所にいることにきらりは心のどこかがじくりと痛むのを感じた。
ぱあん。
誰かが手を叩く。
それと同時に、レッスン室には19個のマネキンが置かれていた。
マネキンは皆――ドレスを着ていた。
シンデレラが着るような――きらりが何時の日にか街頭ビジョンで見たような美しい衣装を。
ぱあん。
誰かが手を叩く。
マネキン達ときらりはそのままに、場所だけは多数の観客が収容できるホールに変わっていた。
観客席は皆、マネキンで埋まっている。
きらりは、マネキン達と共に――ステージに立っている。
気が付くと、あの曲が流れている。
かつて、街頭ビジョンで聞いたあの曲が。
きらりが、ただ漠然とアイドルに憧れていただけだった頃の曲が。
曲に合わせてマネキン達が踊っているのを、きらりは不思議と当然のことであると受け止めていた。
それよりもステージに上がっているのに、踊り方を知らない自分が辛かった。
ぱあん。
誰かが手を叩く。
きらりは多数のマネキンの観客とともに観客席に座っていた。
ステージではきらりの代わりに、あの白いロリータドレスのドールが踊っている。
踊っているマネキンたちへの憧れと、自分は踊れないのだからしょうがないという諦めと、それでも諦めきれない悔しさ。
"お願い!シンデレラ"
"夢は夢で終われない"
ああ、嫌だ。
夢が夢のままで終わらされてしまう。
今すぐ観客席から立って、ステージに上がりに行きたかった。
だが、両腕を両隣のマネキンにものすごい力で押さえつけられて観客席から動くことが出来ない。
何も出来ないまま、曲が終わっていた。
ぱあん。
誰かが手を叩く。
きらりは花束を持って、ステージに上がっていた。
目的はわかりきっている、白いロリータドレスのドールにこの花束を渡すためだ。
きらりが渡した花束を受け取ると、ドールは満面の笑みで言った。
「うぇえへ、きらりちゃん応援ありがとにぃ☆きらきー、もっともぉーっときらりちゃんの代わりに頑張りまっす!いぇいいぇいおー☆」
どこまでもどこまでも悪意を込めた自分の真似、表面上だけは完全に似せた主のいない腹話術の人形。
「違う……」
「何が違うんだよ、きらり?」
「だって……」
「ボクと違ってきらりさんは聖杯いらないんでしょ?だったら……ボクがきらりさんの代わりに使っていいじゃないですか?
フ、フフーフー……聖杯はすごい……からね……きらりちゃんの夢も……未来も……周りの人も……
みんな……みんな……私がもらうよ……?それが嫌なら……戦いなさい、諸星きらり」
ぱあん。
もう一度、誰かが手を叩く。
レッスン室も、マネキンも、ステージも無い。
アンティーク調のテーブル越しに、椅子に座ったきらりとドールが向かい合っている。
それ以外には何も見えない、闇が周囲を包み込んでいる。
テーブルの上には淹れたての紅茶が二つ、湯気を立てている。
「初めまして、諸星きらり様……私がルーラーですわ」
「…………夢?」
先ほどまでのことが何もなかったかのように、ルーラーと名乗ったドールは振舞っている。
何もかもが夢だったのだろうか、それとも今も未だ夢の中にいるのだろうか。
「くす、くす、くす、呼びつけておいて夢を見ておられるなんて……羨ましい立場ですわね、諸星きらり様」
「……ごめんなさい」
「いえいえ、馬車馬のように休みなく働くのがルーラーの仕事、無償の奉仕者であることこそ私の使命……
どうぞどうぞお気にせず、それで何の御用かしら?諸星きらり様?」
そう言ってルーラーは紅茶を口に入れた。
つられてきらりも紅茶を飲む、緊張で味がわからない。
聞かなければならないことがある、いや、その前に。
「1、2、3、4、5、6、7、よい子はみんな天国へ……バーサーカー様は、下へ、下へ、下へ……
ルーラーの立場から提案させていただきますが、バーサーカー様と再会されたならば、まずはじめに令呪を以て私を追うことを止めさせるべきでしょうね
今のバーサーカー様は自分のしっぽを追いかける犬のように、私だけを追い続けてアナタの話を聞きもしませんから、くす、くす、くす」
言っている意味がよくわからないし、バーサーカーの状況もよくわからない。
だが、きらりにはこれ以上ルーラーに聞いても無駄なように思えてならなかった。
「大丈夫、バーサーカー様は元気いっぱい……それで、きらり様、アナタの用事が聞きたいわ」
だが、ルーラーとバーサーカーを信じ、今はルーラーに聞くべきことを尋ねよう。
どうすればバーサーカーを元に戻せるか。
どうすればこの世界から元の世界に戻れるか。
紅茶のおかげだろうか、言葉は淀みなく紡ぐことが出来た。
「狂化を解きたいのならば……令呪に祈りを籠めて、何度も何度も何度も祈ってみてはいかがでしょう?
ただし、3画では足りないわ……もっと光を、もっと多くの令呪を集めないと何の意味も為さないでしょうね。
うふふ……でも安心しなさいな、きらり様……良い手段がありますわ、フェイト・テスタロッサの捕獲任務を見たでしょう?
嘘はつきません……フェイト・テスタロッサを引き渡していただければ、私はよろこんできらり様に令呪を差し上げますわ」
「…………」
ここに来てようやく具体的な道筋が見えた、だがその道筋は厳しい。
いや、わかってはいたことだ。
しかし――霧の中で惑うのと、険しい山々を越えるのとどちらが良かったのだろう。
だが、もう答えを知ってしまった以上――きらりはバーサーカーのために勇気を振り絞ることができるだろう。
「次に、どうすれば帰れるか、聖杯を手にすれば良い……と言いたいところですが、そういう答えを求めているのではないのでしょう?
でしたら、やはりフェイト・テスタロッサを捕まえることです。マスターがもしあの娘を気に入ったのならば……この聖杯戦争自体が中断される……か、も。
ええ、確証なんてありませんわ……でも、私から提案できるのはこれだけですわ、きらり様。
アナタ達の鍵を握るのはフェイト・テスタロッサ……以上です」
「その……フェイトちゃんを捕まえたら、どうするの?」
踏み込むべきではない。
見も知らぬ少女の事情など無視して、自分のために動くべきだった。
それでも諸星きらりはフェイト・テスタロッサを気にかけてしまった。
自分がいじめられたように、参加者から狙われる少女を。
「マスターと会って、仲良くお茶会をして……おしまい。
もちろん、マスターがフェイト・テスタロッサを殺すことはありえません……くす、というより不可能でしょう」
ルーラーの嘲笑は、サディズムの美を備えていた。
だが、そんなことはきらりにはどうでもいい。
命の保証がされても、それは恐ろしいことのように思えた。
「うふふ……きらり様、いいじゃないですかフェイト・テスタロッサのことなんて、
それよりもアナタと……アナタのサーヴァントを大切にするべきでしょう?」
そうだ、ルーラーの言っていることは正しい。
殺すわけではない、ただ捕まえるだけだ。
そしてルーラーに引き渡した後、どうなるかなどきらりの知ったことではない。
それでも、そう割り切れないから――きらりはここにいる。
バーサーカーの狂化を解除する方法、聖杯戦争から脱出する方法、そのようなものの答えを求めて。
だが、それでも悩む。
フェイト・テスタロッサを天秤にかけてもよいほどに、諸星きらりは追い詰められているということも真実。
諸星きらりは揺れている。
「……それではきらり様、お茶会はここまで。今度はお茶菓子をもっていらっしゃって」
そう言って、ルーラーは椅子から降りて、闇へと消えていこうとして、思い出したかのようにきらりに振り返った。
「そうそう、掲示板機能はご利用なさっていて?きっときらり様のお役に立ちますわ」
そして、それだけいうと再び闇へと消えていく。
ぱあん。
誰かが手を叩く。
きらりの意識が消える。
「きらきーぱわー☆」
◇
「■■■■!」
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
バーサーカーはきらりを連れ去った鏡を殴っている。
粒子状になった鏡はこれ以上破壊することが出来ない、それでも殴っている。
バーサーカーは鏡の中に入ることは出来ない、それでも殴っている。
殴ることしか出来ない、だから殴っている。
目を覚ましたきらりが見たものは、そんな光景だった。
災害現場から必死で瓦礫を取り除いて家族を探すような、そんな悲痛な祈りにも似た光景だった。
「ごめんねぇ……」
バーサーカーは自分を守りたいのだろう。
バーサーカーは自分を傷つけたものを許せないのだろう。
だから、何も出来なくても――出来ることをし続けてしまうのだろう。
きらりの令呪が光り輝く。
「もういいよ……ごめんねバーサーカー」
きらりの言葉と共に、バーサーカーは拳を止め、霊体化した。
「ごめんねぇ……ごめんねぇ……」
道はひたすらに遠い。
そして、自分には謝ることしか出来ない。
きらりはヤクザがエレベーター災害救助用のはしごが降ろすまで、しばらく眠っていた。
【D-2/図書館/一日目 早朝】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)】
[状態]精神的疲労(中)、魔力消費(中)
[令呪]残り二画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカーを元に戻し、元の世界へと戻りたい
[備考]
※三画以上の令呪による命令によって狂化を解除できる可能性を知りました(真実とは限りません)
※フェイト・テスタロッサの捕獲による聖杯戦争中断の可能性を知りました(真実とは限りません)
※ルーラーの姿を確認しました
※掲示板が自分の話題で賑わっていることは未だ知りません
【悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)】
[状態]霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
[備考]
※雪華綺晶の存在を確認しました、再会時には再び襲いに行く可能性があります。
【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
[備考]
※アイドルの物真似が出来ます
【クラス】
ルーラー
【真名】
雪華綺晶@ローゼンメイデン
【パラメーター】
筋力:D(-) 耐力:D(-) 敏捷:C(-) 魔力:A 幸運:B 宝具:EX
*()内が本来の能力値である
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
真名看破:B
ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
ただし、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要になる。
神明裁決:-
NOWHERE
【保有スキル】
アストラル体:-
雪華綺晶は物理的な実体を持たず、精神のみで存在する人形である。
そのためか、自身の存在を維持するために他者の心を奪う必要があり、物質世界に存在するためには依代となる躰を必要とする。
また、その本質は実体ではなく精神体にあるために、人形を破壊しても彼女を殺す事は出来ない。
人間観察:D+++
人々を観察し、理解する技術。
相手の心の弱い部分、過去の傷、そのようなものを発見する際、雪華綺晶はこのスキルを最大限の効力で発揮できる。
乙女の薔薇:D+++
魔力で構成された白い茨や薔薇の花を操り、相手を拘束・捕捉する能力。
白い茨は蜘蛛の巣のように広範囲に展開でき、捉えた相手を絞め付けて苦しめる。
実体が馴染むにしたがって、そのランクは上昇する。
【宝具】
『鏡の国の少女人形言うは、いってきます(イーニー、ミーニー、マイニー、モー、キャッチ・ア・メイデン・バイ・ザ・トウ)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
薔薇乙女(ローゼンメイデン)の全てが有する能力。
鏡や水溜り、ショーケース等透明な光を反射するところから現実世界と表裏一体をなす空間であるnのフィールドへと入り込むことができる。
また雪華綺晶自身が呼び込めば、雪華綺晶以外の人間でもnのフィールドへと入り込むことが可能である。
nのフィールドとは、無数の世界で構成された数多の誰かの思念によって現実世界の裏側であり、その根底にあるものは無意識の海である。
この宝具を用いることで、空間移動あるいは他者の精神世界へと侵入、その他ルーラーに必要な行為に役立てる事ができる。
『不思議の国の少女、人形言うは、おやすみなさい(バイ、ベイビー・バンティング)』
ランク:A++ 種別:対人〜対界宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
相手に幻覚を見せることができる、『鏡の国の少女人形言うは、いってきます』によって、
相手の精神世界に侵入し、この宝具を発動することで相手をNのフィールドに拘束することで自身を維持するための苗床にするのが主な用法。
最終的に幻覚は現実世界を侵食する。
『魂無き人形のための魂(ローザミスティカ)』
ランク:A+++ 種別:対人形宝具 レンジ:- 最大捕捉:7人、あるいはたった1人のために
人形師ローゼンによる神の手によらぬ奇跡の結晶、人の手で創られた魂。あるいは賢者の石。
魂無き人形に与えられた魂であり、これを失った人形は元通りの物言わぬ人形に戻る。
ただし、その本質がアストラル体である雪華綺晶は、この宝具を失っても少々ならば自律行動が可能である。
また、この宝具は元は1つであったものを7つに分けたものであり、
■■■■は■■■■■■を■■■な■■■■■■■
虚空に浮かんだ亀の甲羅
滲んだ自我と破れたガラス
赤と青のギターの音
深い深い深い井戸の中へ
WllWMIIlMMW……
『■■■■■■■■(ローゼンメイデン)』
ランク:EX 種別:■■■■■ レンジ:- 最大捕捉:-
科学の発達によって、最近はなんと
キリスト以外の体からパンとぶどう酒が作れます。
出来上がったモノはまるで
スポンジと嘔吐したワインです。素晴らしい!
噛んでも噛んでも味は無し、
他人の吐瀉物を啜っては誰かが吐き、
また誰かがそれを啜ります。
おや?隣の彼女は超おいしいと絶賛してますね。
やっぱり人間は素晴らしい!
WllWMIIlMMW……
投下終了します
記入忘れ
※諸星きらりの家はD-2内にあります
投下乙です!
やばい…きらりんが手玉に取られてる…とはいえ一般人と考えれば頑張ってる方か
マヌカンな舞台幻影にはぞくぞく来ますね、まさしくこういう雰囲気こそ少女聖杯という感じ
にしてもきらりん、掲示板初めまだ起こってることを殆ど把握できてないあたりも地雷だ
和尚はきらきーとは相性悪いし、今回の会合は不可避のことだったんだろうけども…
この主従の行く末を案じずにはいられません
投下乙っす
NOWHERE
NOWHERE
NOWHERE
これ見た時から職員のヤクザ達が一気に灰色の男たちに塗り替えられる幻覚が見えたわ
偽アサシン(魔王バラモス)
中原岬&セイバー(レイ)
予約します
>>881
ロード・オブ・ザイバツの本名でもないですが、
ネタバレを隠すのに都合の良い名前があるなら、そっちの方でいいと思うのです。
(メタ的な事情)
個人用まとめ
6月2日くらい
◆2lsK9hNTNE 木之本桜&セイバー(沖田総司)、蜂屋あい&キャスター(アリス)、アーチャー(森の音楽家クラムベリー)
6月6日くらい
◆EAUCq9p8Q. 高町なのは&キャスター(木原マサキ)
◆PatdvIjTFg 偽アサシン(魔王バラモス)、中原岬&セイバー(男勇者/レイ)
未予約
フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)
玲&エンブリオ(ある少女)
登場済
[早朝]
【B-1】海野藻屑
【B-5】桂たま
【B-4-B-5】アサシン(ゾーマ)
【C-2】星輝子&ライダー(ばいきんまん)
【C-2】白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)、雪崎絵理
【C-3】大井&アーチャー(我望光明)
【C-4】輿水幸子&クリエイター(クリシュナ)
【D-2】江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)
【D-2】諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)
【D-3】ララ、アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド/ジャック・ザ・スプリンガルド)
【D-3】双葉杏&ランサー(ジバニャン)
【D-5】大道寺知世&アサシン(プライド/セリム・ブラッドレイ)
【D-5】山田なぎさ&アサシン(クロメ)
【D-7】シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝)
【????】バーサーカー(チェーンソー男)
>>905
投下乙です。
特徴的な忍殺文体を異常な精度で再現なされていると思います。
特にミズマル・ガジロという名前、
忍殺世界に登場する人物の妙な感じの名前というのは絶妙に再現しづらいもので、その点この名前は最高に忍殺っぽさが表れています。
そういえば前回のSSに引き続き、アイドル那珂ちゃんが
朝が来ると同時に終わる戦いも素晴らしいです、
絵の様にはっきりと情景が浮かびます。実際、美しくスタイリッシュです。
登場していますが、この世界観だとそのうちネコネコカワイイに駆逐されそうで恐ろしいです。
投下ありがとうございました。
すいません。期限内に書ききれそうにないので、予約を破棄します
できれば書きたくはあるのですが、再予約とかのルールはどうなってるんでしょうか
>>931
破棄から二日間の再予約不可、
ただしその間に書き上げたものに関しては予約無しでの投下していただいても構いません。
木之本桜&セイバー
蜂屋あい&キャスター
森の音楽家クラムベリー
再予約させていただきます
間に合ったので
高町なのは&キャスター(木原マサキ)
投下します
「ごちそうさま!」
ぱたぱたという足音。
大人のものよりも軽い足取りが、フローリングの床を叩く音。
愉快な子どもの一日の始まりの音。
ドアが賑やかに開け放たれ、肩口まで伸びた栗色の髪を跳ねさせながら少女が飛び込む。
少女は机の上に置いてあったルビーレッドの宝石に、語りかける。
(おはよう、レイジングハート!)
少女――高町なのはの一日がいつも通りだったのは、そこまでだった。
.
レイジングハートと呼ばれた宝石は何も語らない。
ただ、当然宝石がそうあるように黙して机の上に転がっている。
(レイジングハート? 寝てるの?)
いつもなら間を置かずに『おはようございます』と返すところなのに、いくら待っても返事が帰ってこない。
持ち上げて揺さぶってみたり、いつもより少し強く語りかけてみたりとしてみたが、反応はない。
何かあったのだろうかなのはが訝しんでいると、彼女とレイジングハートのホットラインに突然第三者が割り込んできた。
『やはり、思った通りか』
同時に部屋の中に突如一人の男が現れる。
男は、レイジングハートを眺めるなのはに(正確にはなのはの脳内に)こう続けた。
『平和ボケも大概にしておけよ』
突然の辛辣な言葉に戸惑うなのはに対して、男―――少女のサーヴァントであるキャスター・木原マサキはレイジングハートをもぎ取り、更に言葉を続ける。
『先にこいつの方に釘を刺しておいた。『無駄口を叩くな』とな。
そういう点に関しては、下手に理屈をこねる人間よりも、『こいつ』のほうが聞き分けもいい』
まくし立てるように棘のある言葉が並べられる。
なのはは少しだけ気分を害して言い返そうかとも思ったが、その後に続く言葉で文句を言おうとしていた出鼻をくじかれた。
『下らないお喋りで隙を作るような真似はやめろ。お前がどう思っていようが、戦争は止まらないぞ』
それは、言うまでもなく正論だった。
聖杯戦争の参加者として呼び出された以上、願いを叶えようと思う他の参加者はなのはを狙ってくる。
油断していると、不意打ちを受けて大怪我を負ってしまう可能性もある。
確かに言葉は悪い。だが、キャスターの口が悪いのは出会って言葉を交えた時もそうだった。
口は悪いが彼なりになのはのことを思っての忠告、なのかもしれない。
だが、なにか。
その正論の中に、言葉の棘以外になにか。
キャスターの言葉からは、言いようのない感情を覚える。
その感情につけるべき名前を、なのははまだ知らない。
『申し訳ありません、マスター』
そして、そこでようやくレイジングハートがいつものように機械的な音声を流した。
キャスターの忠告のほうを優先したことに対する謝罪なのか、なのはの言葉を無視したことに対する謝罪なのか。
レイジングハートらしくない曖昧な言葉。
だが、レイジングハートのが気を使っているというのもあり。
キャスターから感じるもやもやとした何かを、口には出さずぐっと飲み込んだまま、彼の進言を受け入れる、という形でなのはの方が折れた。
(……ごめんなさい。もうちょっと気をつけなきゃ、だね)
「フン」
キャスターは肩透かしを受けたとでも言いたげに鼻を鳴らし、そのままベッドに腰掛けた。
そして、ベッドの側に置いてあったスマートフォンを投げて渡す。
いきなりのパスになのはは多少慌てるが、なんとか落とさずキャッチできた。
何事だろうと思うと、着信のランプが点滅している。なのはが朝食を食べている間にメールが届いたようだ。
届いていたメールを確認する。
どうやら、聖杯戦争の予選を通過したらしい。
通過しなくてもよかったのにな、などと思いながら添付ファイルを開いて、目を剥いた。
そこに記されていたのはある参加者の『捕獲』を命じる記述。
そして、その参加者の顔と名前。
なのははその参加者を知っている。
その輝くような金髪と、さみしげな顔を知っている。
今にも泣いてしまいそうな哀しい目を知っている。
「フェイトちゃん……?」
小さなつぶやきが、ただ物憂げな表情を映す液晶面に零れ落ちた。
そしてなのはは、スイッチが入ったようにすぐに出発の準備を整え始めた。
通学時間にはまだ早い。
だが、居ても立ってもいられない。
髪の毛をいつものツインテールで結び、制服に着替える。
あとは、あとは、と頭を回転させ、両親役のNPCに不審に思われないように通学用のかばんを持ち、用意が完了したことを再確認して部屋を出ようとする。
しかし、ドアノブに手をかけようとしたところで。
「何をする気だ」
顔をあげると、眉をしかめたキャスターが居た。
なのはの行く手を阻むように立ちふさがっている。
なのははもどかしさを感じながらも、キャスターに送られてきたフェイトの画像を見せて、手早く説明しようと試みる。
「この子、フェイトちゃんっていって……」
「それは知っている。昨日『そいつ』を弄った時に戦闘記録で確認した」
「だったら! ……だったら、わかるよね?」
「……会いに行くつもりか」
キャスターの一言に、黙って頷く。
それ以上の説明は必要ないと思ったから。
だが、キャスターはそれこそ馬鹿らしいと言わんばかりにもう一言付け加えた。
「行って何の意味がある」
「……」
キャスターのその一言で、勢いばかりで動いていた心が少し押し込められる。
そしてさっと潮が引いたように、焦るばかりだった頭が少しだけ冷静さを取り戻す。
行って何か意味があるのか。全く意味がないのではないか。
なのは自身、フェイトについて全く知らない。
誕生日も、好きな料理も、家族のことも、彼女の戦う理由も、願いも、何も知らない。
もしかしたら、彼女は望んでこの舞台に来たのかもしれないし、そうだったらなのはとフェイトはまた戦うことになる。
確かにキャスターの言うとおり、意味なんてないのかもしれない。
そこまで考えて、なのははこう答えた。
「何か意味があるから、じゃないよ」
確かに、ここに居るのはフェイトの意志かもしれない。
フェイトを探したところで、また戦うことになるかもしれない。
でも、それでも。
あの日なのはに宿った気持ちは。
『友達になりたい』と思った心は嘘じゃないから。
「きっと、『何も意味がなくても』なの」
『友達になりたい』。
だから、彼女と会う。
何があったのか話をする。
なのはに出来るのはちょっと前も、今も、たったのそれだけ。
『たったのそれだけ』が何の意味もなくても。
この聖杯戦争の舞台で、『たったのそれだけ』が出来るのはなのはだけだから。
通達を見て、『フェイト・テスタロッサ』を敵主従と捉えている他の参加者には居ない。
フェイトもきっと、誰かに歩み寄ろうとはしない。きっとまた、悲しげな顔で空を駆ける。
フェイトは、またひとりぼっちのままで、心を削り、泣きそうな瞳で、戦う。
そんな哀しいこと、絶対に嫌だ。
その行動に何か意味が居るというなら、この一言で十分だ。
「だって、それが友達でしょ?」
「だから、お願い、キャスター」
なのはのお願いにキャスターは露骨に嫌そうな顔をしたが、それ以上何も言わなかった。
ただ、黙って道を譲った。
「……じゃあ、行ってくるね」
キャスターは答えない。
ただ、目元を手で覆って俯いただけだった。
○
通学路を走りながら、なのはは胸元のレイジングハートに語りかけた。
(悪いことしちゃったかな)
『いいえ』
キャスターの忠告通り、簡素な返答のみを返すレイジングハート。
キャスターはなのはが『狙われる側である』ということを(かなり遠回しに)教えてくれた。
レイジングハートもレイジングハートなりに、なのはの身を案じ、今この瞬間も警戒してくれているのかもしれない。
(レイジングハート)
『はい』
(……帰る方法も、早く見つけないとね)
レイジングハート自体あまりお喋りな方ではないが、こうも事務的な会話ばかりだと、なんだか調子が狂う。
きっと、聖杯戦争中、レイジングハートはずっとこの調子だろう。
こんな異常な状況がいつまでも続くのは、なのはにとってはどうも心地悪いものである。
だから、聖杯戦争なんてせずに早く『いつもの日常』に帰る。
キャスターは『次元連結システム』を用いれば聖杯戦争からも離脱は可能だと言っていた。
今はフェイトが優先だが、キャスターの聖杯戦争のシステム解明の鍵となる『何か』も探し出し。
機械的だけど、意外とお喋りなレイジングハートの待つ日常へ。
可能ならばフェイトも一緒に。
『申し訳ありません、マスター』
(いいよ。レイジングハートはなにも悪くないから)
短い謝罪。
なのはの心を慮ってか、いつも通りの気遣いを見せるレイジングハート。
『……申し訳ありません、マスター』
ただ。
一度だけ。
レイジングハートは、もう一度だけそう呟いた。
繰り返された言葉に、特に意味は無い。
少なくともなのはにとっては、特別な意味を持たない言葉を、もう一度だけ呟いた。
なのはは繰り返された言葉を少しだけ不思議に思ったが、特に気に留めることなく道を急ぐことにした。
「待っててね、フェイトちゃん」
「絶対に、追いつくから!」
声を出して気合を入れて、また少し離れてしまった未来の友達に向かって駆け出す。
聖杯戦争も何もなく。今はただ、隣へ―――
【C-3/高町家近くの道/一日目 早朝】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]決意
[令呪]残り三画
[装備]“天”のレイジングハート
[道具]通学セット
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界へと戻る。
1.フェイトを探し、話をする。
2.もし、フェイトが聖杯を望んでいたら……?
3.キャスターの聖杯戦争解明の手助け。
[備考]
※天のレイジングハートの人工知能は大半が抹消されており、自発的になのはに働きかけることはほぼ不可能な状態です。
ただし、簡素な返答やモードの読み上げのような『最低限必要な会話機能』、不意打ちに対する魔力障壁を用いた自衛機能などは残されています。
※天のレイジングハートに対するなのはの現在の違和感は(無〜微)です。これが中〜大になれば『冥王計画』以外のエンチャントに気づきます。
強い違和感を持たずに天のレイジングハートを使った場合、周囲一帯を壊滅させる危険があります。
※木原マサキの思考をこれっぽっちも理解してません。
※通達を確認しました。フェイトが巻き込まれていることも知りました。フェイト発見を急務と捉えています。
○○○
「滑稽だな、いいように踊らされているとも知らずに」
なのはの魔力反応が遠ざかってからしばらくして、キャスターはそう呟いた。
通達を一目見て即座に自分を見失うなのはの姿は、まさに道化そのものだった。
キャスターに言わせれば、あの通達は『お粗末』の一言で済む。
あの文面だけでは、『フェイト・テスタロッサ』が何かをやったという証明にはならない。
情報は一切提示せずにただ顔と名前をよこし、『捕まえれば令呪を渡す』『図書館に連れて来い』と書かれているだけ。
これを討伐令の類と受け取る奴・頭から信じる奴は、余程の馬鹿かお人好しくらいだ。
まず考えられるのはルーラーの聖杯戦争加速を目的とした行為。
もしくは、鬼札(ジョーカー)として紛れ込んだルーラーの内通者。
ひょっとすると、ランダムに抽出した主従の名前と顔を送っただけかもしれない。
いずれにせよ、ルーラー側に聖杯戦争に介入しようという意志があり、その対象として『フェイト』が選ばれたということだろう。
その程度のことを、まるで大事件のように取り立てて、下らぬ決断で行き急ぐなのはをどうして笑わずにいられようか。
「せいぜい愉快に踊ってみせろ。その間に俺は、準備を進めさせてもらう」
それでもあえて止めなかったのは、なのはが混乱したほうがキャスターにとってもそのほうが都合が良かったからに他ならない。
なのはの頭の中は今『フェイトちゃん』でいっぱいだ。
他人への思いやりなんていう下らない感情を優先させて、目が曇っている。
それこそ、幾つもの重要な要素を見落とす程に。
まず、彼女は自身の胸元で煌めく緋色の輝石『天のレイジングハート』の変化に気づいていない。
調整は上々。人工知能の大半を消し去り、暫くの間なのはが愉快に踊ってくれるようにとあえて簡素な応答機能だけは残してある。
といっても「はい」「いいえ」「ありがとう」「ごめんなさい」「私語は慎むように」などを返すだけのプログラムと呼ぶのもおこがましい出来の機能だが。
だが、『その程度』でなのはは違和感すら持たずに駆け出してしまった。
所詮人と物との絆ごっこなどそんなものだとキャスターは笑った。
さらに、キャスターそのものの行動への注意も欠けている。
なのははキャスターに対して一切の指示を出さずに、ただ駆けて行った。作業をしろというわけではなく、隠れていろというでもなくだ。
おそらく彼女の意識は既に『聖杯戦争』からかけ離れている。
レイジングハートの戦闘記録が正しいものとするなら、彼女にとっての現状は『聖杯戦争に呼び出される直前からの続き』だ。
他の組への警戒などはあるかもしれないが、根本がズレている。
二人一組の概念など消し飛んでいるだろうし、仮初めながらも運命共同体であるキャスターの動向への警戒など抱いてもいなかっただろう。
ならばその『失念』を最大限活用させてもらうまで。
キャスターは窓の外を見つめた。とうになのはの姿は見えなくなっている。
それをもう一度だけ確認すると、彼は霊体化を行い壁をすり抜け、家の外に出た。
○○○
高町家の裏の路地でキャスターは再び自分の状態を確認し、小さく息をついた。
「狂人たちがありがたがっている『魔術』とやらも……蓋を開けてみればこの程度か」
「再現できているのはこけおどしの見てくれと、ちょっとばかしの能力のみ。
この程度で『聖杯によって英霊が顕現』などとは、笑わせる」
『魔術』を鼻で笑いながら道を行く。
英霊としては格が低く出来ることも少ないキャスターだが、それでも課せられた制限は大きい。
キャスターの懐刀たる次元連結システムを、この聖杯戦争ではたったひとつのものにしか付与することができない。
更に、次元連結システムのコアを生前のように0から生成することも不可能。
次元連結システムのちょっとした応用で身辺警護用の重力場操作マシンを作ることも出来ない。
戦闘能力も皆無(これは生前からだが)、現時点ではゼオライマーすら呼び出せない。
言うまでもなく超絶劣化だ。
他のサーヴァントに、いや、なのはより多少劣るマスターにだろうと、襲われれば為す術なく打ち倒されるだろう。
キャスターが、よくもまあ、ここまで、好き放題にやってくれたものだと失笑すらこぼす程に。
「まあいい。俺が蘇れただけでも上々だ」
そんな圧倒的不利な状況で彼が家を出た理由は一つ。
やるべきことがある。
聖杯戦争参加者ではなく、キャスターではなく。
冥王計画を遂行する『木原マサキ』として、当然しておくべきことが一つ。
◇
そも、冥王計画とはなんなのか。
冥王計画とは『木原マサキ』が次元連結システムと自身の八卦の龍たる『ゼオライマー』を操り、冥府と化した世界に王として君臨するための計画である。
しかし、この『木原マサキ』とはキャスターとして顕現した木原マサキとは微妙に意味合いが違う。
キャスターは生前から自分の命に固執していない。
木原マサキと呼ばれた『この個体が』ではなく『木原マサキ』という意志の宿ったものが冥府の王たる頂にたどり着く事こそが『冥王計画』。
この聖杯戦争でも器として生前通りの木原マサキの姿で顕現したが、その姿に拘りはない。
木原マサキの意志の宿るものこそが、冥府に君臨したその瞬間に木原マサキの意志を宿していたものが『木原マサキ』であり『冥王』なのだ。
生前彼は、幽羅帝・秋津マサト両名に受精卵の段階から遺伝子操作を加え、彼の愛機たる天のゼオライマーに『木原マサキ』を込め、保険をかけていた。
木原マサキの死後も、二人とゼオライマー内に宿る『木原マサキ』が世界を滅ぼし、冥府の王として君臨できるようにという、まさに『木原マサキによる冥王計画』を遂行するための布石を。
それこそが『冥王計画』を遂行するための保険。キャスターが息絶えたとしても、続く『木原マサキ』がその後を継げるようにというお膳立て。
木原マサキが死のうとも、『木原マサキ』が冥王の座に着く。
それこそが冥王計画。
それこそが木原マサキと『木原マサキ』の夢の見取り図。
◇
この計画の全容を知れば、当然打つべき手も見えてくる。
この聖杯戦争においてキャスターがまずやるべきことは当然一つ。
仮に高町なのはが戦闘の末死亡してキャスターが消滅するとしても、『木原マサキ』は消えず冥王への道を歩み出せるように布石を打っておく。
もう一人か二人、高町なのはの死後、キャスターの消滅後、『次元連結システム』を手にして目覚める『木原マサキ』を用意しておく。
生前彼がそうしたように、自身の死を受け入れ、自身の死すらも舞台演出の一部とし、その死の先にある栄光を掴む道筋を作っておく。
全ては、『冥王計画』完遂のために。
しかし、この保険をかける上で一つ問題がある。
この舞台では新たなる『木原マサキ』を生み出すことはほぼ不可能に近い、ということだ。
生前の彼ならばこの程度のことで悩みはしなかった。
さすがにクローン受精卵の入手は不可能でも氷室美久のようにアンドロイドを一体作成し、そいつに初期設定として人格を投影して時を待たせるよう制御装置を施す。
ただそれだけで終わる、数週間もかからない作業。
だが、今回の状況ではあの『成長するガラクタ』では間に合わない。
聖杯戦争がどれだけの期間続くかは分からないが、少なくとも『この』聖杯戦争は数日の内に事態は急変する。
その引き金を引くのは『高町なのは』と『天のレイジングハート』。
『フェイト・テスタロッサ』を探す上で、彼女は必ず何者かと衝突し、周囲を廃墟に変えるほどの戦闘を行うだろう。
そうなってしまうと、あとは坂を転がり落ちるように戦争は進んでいく。そうなるより早く、数日で、出来るならば今日のうちにでも『木原マサキ』として行動のできる器を用意しなければならない。
ならば、実在する人間を用いるか、といえば話はそう簡単ではない。
相手の人格を末梢し、同時に木原マサキとしての人格をインプットすることではじめて『木原マサキ』足りえる。
これは遺伝子段階で操作を加えた幽羅帝や秋津マサトだから可能だったことで、既に確立した自我を持った人物にはかなりの困難を極めるだろう。
科学者は、現在から根源への干渉を行えない。科学者が操作できるのは現在と未来だけ。
生者の持つ『生』『愛』『感情』、あるいは『魂』と呼ばれるものに介入を行うためには、彼らの根源に最も近い場所で行う必要がある。
もし現在から根源への干渉を行えば、彼らの身体はズタズタになり、利用不可能になるだろう。
脳の機能を破壊しつくすか。あるいは『こころ』と呼ばれるものを消滅させるか。
結果は同じだ。生まれるのは『木原マサキ』の器ではなく屍が一つ。
NPCであれ、マスターであれ、サーヴァントであれ、その理を覆すことは不可能。
参加者である人間たちは利用できず、一からガラクタをつくり上げるには時間が足りない。
一見八方塞がりにも見える状況。
「だが、それでもまだ、不可能ではない」
確かに、既に自我を確立した『人間』に対しての操作は不可能だ。
マスターだろうとサーヴァントだろうとNPCだろうとその一点に変わりはない。
だが、仮に参加者中に『機械』がいれば。
『機械』じゃなくてもいい。『概念』だろうが『意識の集合体』だろうが。
生まれついてのものではなく、人工的に製造された『魂』を持つ参加者がいれば。
現在進行形で自身の『根源』と深く関わり続けている存在がいれば。
人格と存在の全ての機能を、魂よろしく文字通りコアとしてその身中に『魔力核』に持つ存在がいれば。
存在の根底が『魔力の宿った物質』や『宝具』であるモノがいれば。
彼らの存在の根底に対して、キャスターと彼の有する稀代の科学の粋たる次元連結システムの応用で干渉できるならば。
当然のように彼らの存在を書き換え、塗り替え、『木原マサキ』に置換することができる。
冥王計画の保険を、キャスター死後計画を引き継ぐ次なる『木原マサキ』を用意しておくことができる。
「さあて、どれほど居るかな、そんな愚かなガラクタどもが」
『愚かなガラクタ』が居る可能性がどれほどのものかはさしものキャスターでも計り知れない。
ひょっとしたらまったくのゼロかもしれない。
しかし、仮にゼロだったならばその時は別の手を打つまで。
なんなら、天のレイジングハートから削ってやった人工知能の代わりに『木原マサキ』を埋め込んでやってもいい。
戦闘記録に残っていた『フェイト・テスタロッサ』の死神の鎌が如き魔装『バルディッシュ』を使ってやるのも一興だ。
口角を釣り上げ、不敵に笑う。
高町なのはが家を出てきっかり10分後。
キャスターもまたひとり、舞台の上に躍り出た。
舗装道路をかかとを鳴らしながら歩く。
他の参加者に見つかるように、あえて実体化したまま。
危険はない。
スキル:自己保存がある限りキャスターは消滅しない。
なのはが生きている限り、『木原マサキ』は不滅だ。
だからこそ、自らが餌になるように姿を晒す。
サーヴァントの反応に食いついて出てきた愚かな奴らが夢に溺れて踊るさまを、高らかに笑ってやろうじゃないか。
木々と家々で覆われていた裏路地を抜ける。
そこには突き抜けるような青い空が広がり、遮るものもなくただ『天』だけがキャスターを見下ろしていた。
目の眩むような青空に目を細めながら、最後に、冥王計画の中核を担う存在について考える。
この下らない戦争に即座に終止符を打てる兵器。
何者にも到達すること叶わぬ『天』の名を関する八卦の龍。
彼を呼び出したその時こそが、冥王の再臨の時。
今はまだその時ではない。
状況が整っていない。
裁定者に干渉される可能性がある。彼らが強権に近い能力を有しているとすればそれらを無効化する力か、あるいは裁定者からの容認が必要となる。
高町なのはの存在も邪魔だ。あれは確実に冥王計画の障害となる。洗脳や精神崩壊による無力化か、他の理解あるマスターとの再契約が必要だろう。
そして、次元連結システムのコアたる物質(現在は天のレイジングハート)を用い、この地に機体を呼び出す必要もある。
そういったすべての問題を解決したその暁には。
己が器たる『天』を呼び戻し、破壊と蹂躙の限りを尽くし、聖杯に託されるはずだった幾つもの願いを踏みにじり、この地に冥府を築く。
キャスターは青空を一度だけ鼻で笑うと、再び街への道を歩みだした。
【C-3/高町家の近くの道路(なのはとは別方向)/一日目 早朝】
【木原マサキ@冥王計画ゼオライマー(OVA版)】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:冥王計画の遂行。その過程で聖杯の奪取。
1.予備の『木原マサキ』を制作。そのためにも特殊な参加者の選別が必要。
2.特殊な参加者が居なかった・見つからないまま状況が動いた場合、天のレイジングハートを再エンチャント。『木原マサキ』の触媒とする。
3.ゼオライマー降臨のための準備を整える。
4.なのはの前では最低限取り繕う。
[備考]
※フェイト・テスタロッサの顔と名前、レイジングハート内の戦闘記録を確認しました。バルディッシュも「レイジングハートと同系統のデバイス」であると確認しています。
※天のレイジングハートはまあまあ満足の行く出来です。呼べば次元連結システムのちょっとした応用で空間をワープして駆けつけます。
あとは削りカスの人工知能を削除し、ゼオライマーとの連結が確認できれば当面は問題なし、という程度まで来ています。
※『魔力結晶体を存在の核とし、そこに対して次元連結システムの応用で介入が可能である存在』を探しています。
見つけた場合天のレイジングハートを呼び寄せ、次元連結システムのちょっとした応用で木原マサキの全人格を投影。
『今の』木原マサキの消滅を確認した際に、彼らが木原マサキとしての人格を取り戻し冥王計画を引き継ぐよう仕掛けます。
※上記参加者が見つからなかった場合はレイジングハートに人工知能とは全く別種の『木原マサキ』を植え付け冥王計画の遂行を図ります。
※ゼオライマーを呼び出すには現状以下の条件のクリアが必要と考えています。
・裁定者からの干渉を阻害、もしくは裁定者による存在の容認(強制退場を行えない状況を作り出す)
・高町なのはの無力化もしくは理解あるマスターとの再契約
・次元連結システムのちょっとした応用による天のレイジングハートへのさらなるエンチャント(機体の召喚)
以上です
タイトルを考える時間がなかったので今日中にタイトルを考えてきます
期限ギリギリの滑り込み投下になり申し訳ありません
矛盾指摘、修正箇所などありましたらお願いします
ついでに
海野藻屑
山田なぎさ&アサシン(クロメ)
予約します
確認したらなのは→マサキの口調が違いますね
候補作で丁寧口調を使っているのでそこは修正しておきます
投下乙です!
うわあああ、わかっちゃいたけどなのは…レイジングハートの、ただ一度だけの繰り返しの謝罪が切ない…その意味にまだなのはが気づいてないのも最高に悲しすぎる
木原の腹の内と計画も唸りました
通達に対する反応も彼らしい狡猾さと距離の置き方で、なのはへの情の欠片もない割り切り方はいっそすがすがしいほど
この聖杯戦争の特異さを理解した上で冥王計画の発動を狙う彼のこれからがすげー気になります
彼の言ってる適性に合致する参加者ってこれ明らかに…
投下乙です!
改造されたレイジングハートの言葉が痛々しくて、切なかったです
そして、暗躍を始めたマサキの少女聖杯版『冥王計画』もいかにも彼らしくて良かったです
「人格コピー」の犠牲者候補に、幅を持たせていたのもGJ
コピー先が「誰」であれ、あるいは「何」であれ、ひどいことになりそうですねこれで、この先がますます楽しみになりました!
感想ありがとうございます!
タイトルですが「空と君のあいだに」でいかせてもらいます
wiki登録の際はお手数ですがこのタイトルで編集をお願いします
安○祐実…
投下乙です!
なのはちゃんにも着々と不穏な影が…マサキの独白とも言える後半部分が実にすばらしいですね。
冥王計画の贄となる参加者は…条件に当てはまってる少女がちらほらいるのが恐ろしい。かなりドンピシャのもいるし
しかし中島みゆきとは渋いチョイスだ。
すいません、予約期限を勘違いしていたため
現予約を破棄させて頂きます。
>>1 さんへ
キャスター(アリス)の宝具の説明を読むと「偽りの東京内で��掘廚箸△蠅泙垢�、
もしかして帝都聖杯と連動していますかっ!?(面白い方向で愉快な解釈)
文字化け及びsage忘れ失礼しました。
「偽りの東京内で��掘廚箸△蠅泙靴燭里如�
帝都コンペの時の内容からの訂正忘れかと思いレスしてみました。
>>956
修正したつもりでしたが、修正していなかったようです。
ご報告ありがとうございます。
感想は夜に。
ごめんなさい、ほぼ書き終わってはいるのですが、あと五分では書ききれそうにないので破棄します
他の人の予約がなければ明日には投下します
二度も期限に間に合わず本当に申し訳ありません
おお、待ってます
お待たせしました
木之本桜&セイバー
蜂屋あい&キャスター
森の音楽家クラムベリー
投下します
「ごちそうさま」
さくらは箸を置いた。テーブルの上にはまだ朝食が三分の一ほど残っている。
「さくらちゃん、具合でも悪いの?」
「ううん。なんとなく食欲がないだけだから、平気だよ」
そう言って心配そうにしている両親に笑いかける。
こちらをじっと睨む兄、桃矢の視線を受けながら立ち上がり、逃げるように廊下に過ぎて、トイレに入った。
鍵を閉めてドアに寄りかかる。スカートのポケットから携帯を取り出し、メールを見なおした。
そこに書かれた殺し合いの文言に背筋が寒くなった。心臓の鼓動がやけに早く感じる。さくらは両手で自分の肩を抱きしめた。
「怖いですか」
霊体化したセイバーの声が聞こえた。
「そうなのかな。よくわかんないの」
こんな気持ちになったことは今まで一度もなかった。確かにお化けの話を聞いたあとの怖さには似ている。
でもそれよりもずっと辛い。ふとした瞬間に泣きたくなってしまう。
「嫌なら逃げてもいいんですよ。街からは出られませんが、戦いから逃げ続ければ、少なくともあなたが誰かを傷つける必要はなくなる」
「でもそれじゃあセイバーさんの願いは……」
「年端もいかぬ少女を無理に戦わせてまで叶えるべき願いなんて、この世のどこにもありませんよ」
セイバーは迷いなく断言した。
生前セイバーは仲間たちが戦いに赴くなか、一人病気のせいで休んでいたという。
だからサーヴァントとなった今度こそは自分の剣を託せる仲間――マスターであるさくらと共に最後まで戦うことを望んでいる。
この話を聞いたときは自分への大げさな評価が照れくさかった。
さくらにはセイバーの戦いたいという気持ちは正直よくわからない。だがその願いがセイバーにとってとても大切なものだというのはわかる。
なのにセイバーは自身の願いよりもさくらの意思を考えてくれている。その気持ちはすごく嬉しい。けれどさくらは首を振った。
「ううん、やっぱり逃げちゃいけないと思う」
この街は、たぶん聖杯戦争のせいで深く傷ついている。
それを無視するなんてさくらにはできない。無視してしまったら、仮に帰れたとしても、きっと前のようにみんなと笑えない。
なにをすればいかはわからない。でもなにもしないでいるのは絶対にいけないと思った。
セイバーは肯定も否定もせず、ただ「そうですか」と呟いた。その声は少し苦しそうにも聞こえた。
そのとき、寄りかかっていたドアが叩かれて、さくらは反射的に飛び退いた。
「さくら、そろそろ行くぞ」
桃矢の声だ。普段はさくらのことなんて気にせず一人で行ってしまう桃矢だが、最近は必ず二人一緒に登校するようになっていた。
「待って、今行く!」
トイレから出て、リビングに用意しておいたカバンを背負う。玄関に行くと桃矢は外で自転車を引っ張ってきていた。
ローラースケートを履いて立ち上がり、見送りに来た両親に振り返る。
「お父さん、お母さん。いってきます」
「いってらっしゃい、さくらさん」
「いってらっしゃい。さくらちゃん」
二人に背を向けて家を出た。ローラーを走らせて自転車を漕ぐ桃矢と並走する。
この街はいま春真っ盛り、さくらの一番好きな季節だ。いつもなら暖かい日が全身に浴びながら風を切っていくだけで元気になれる。
だけど今日はいつまでも沈んだ気持ちのままだった。
目の前を女の人が通り過ぎて行くだけで、あの人はマスターなのではないかと心臓が締め付けられる。
やっぱりこの気持ちは恐怖なんだと、さくらは自覚する。
クロウカードを相手にするときとは全く違う、人が悪意を持って襲ってくるという恐怖。
ただ走るだけで朝たべたものを吐き出したくなる。
気分を変えようと楽しかったことを考えた。
ケロちゃんとお菓子を食べたこと。知世と遊んだこと。雪兎に髪を切ってもらったこと。今にして思えば李小狼とのバドミントンも面白かった。
だけど楽しいことを考えれば考えるほど暗い気持ちも膨れていった。それを振り払いたくて、また楽しいことを考える。
思い出せる限り。記憶にある限り。
「危ねえ!」
その声にハッとして電柱が目の前に迫っていることに気づいた。
急いで止まろうとしてバランスを崩し、転びそうになったところで桃矢が腕を掴み、支えてくれた。
「大丈夫か? ちゃんとまえ見て進めよ」
「ごめんお兄ちゃん。気をつけるね」
笑顔でそう言って、さくらはすぐに歩みを再開した。
桃矢が軽く舌を打つ。さくらの前に出て自転車をいつもは通らない脇道に向けた。
「どうしたの。学校はそっちじゃないよ?」
「回り道する。付き合え」
一方的に言ってそのまま脇道に入っていった。さくらも仕方なくあとに続く。
日の当たらない暗い道だった。幅も狭く、反対から人が来たらすれ違うのは難しいかもしれない。地面もどことなく汚い。
前に桃矢がいるせいで道の終わりも見えない。黙っていると息が詰まりそうだった。
なにか言おうと思ったところで、不意に光が差し込んだ。暗闇に慣れてきたころに来た明りにさくらは目を細める。
ゆっくりとまぶたを上げ、そこに広がる光景に息を呑んだ。
それは桜の木でできたトンネルだった。道を挟むように延々と並ぶ桜の木が頭上で絡まり合っている。
ひらひらと舞い落ちる花びらはコンクリートを覆い隠し、地面を桜色に染め上げていた。
「綺麗ですね。時代が変わっても桜の美しさは変わらない」
呟いたセイバーに、桃矢の視線があることも忘れて頷いた。
桃矢が自転車を降りて歩く。さくらもスケートを脱いだ。
一歩踏み出すと靴の裏から柔らかな感触が伝わってくる。それくらい花が積もっていた。
この街に関する記憶はそれなりに持っているが、こんな素敵な場所があるとはまったく知らなかった。
「お兄ちゃん、ここどうしたの!」
「この前バイトに遅れそうになってな、近道しようとしたら見つけたんだ。
そのうち家族で花見にでも来ようと思ってたんだけど急に見たくなった」
嘘だ。さくらを元気づけようと連れてきてくれたことくらい流石にわかる。
嬉しかった。この景色を見たからといって何かが変わるわけでもない。でも少しだけ、怖い気持ちが楽になった気がした。
「でもおまえを連れてきたのは失敗だったかもな。怪獣にズシンズシン歩かれたら花が全部、散っちまう」
さくらは桃矢の足を蹴っ飛ばした。
◇
「じゃあまたあとでな」
「うん、お兄ちゃんも気をつけてね」
桃矢と別れ、入り口に立つ先生に挨拶をしてさくらは校門を潜った。
遅刻というほどではないが少し遅い時間。周りに他の生徒はいない。
この街の小学校は友枝小に比べると少し小さく、見た目も地味だった。漫画などで見る学校はこちらが近いので、もしかしたらこれが普通なのかもしれない。
「さくら」
玄関口に向かうさくらにいつになく緊迫した声でセイバーが言った。
「どうしたのセイバーさん?」
「狙われています」
一瞬さくらは何の話かわからなかった。すぐに聖杯戦争のことだと察し、慌てて辺りを見回す。
「姿は見えません。敵は霊体化したまま殺気だけをこちらに飛ばしています」
「どうしてそんなことを?」
「おそらく脅しているのでしょう。そちらが動かなければすぐにでもここで始めると」
「始めるって……ここで戦うってこと!?」
そんなことをすれば学校の人達はただでは済まない。校庭を出れば家やお店もいっぱいある。桃矢まだすぐそこにいるだろう。
「ええ。しかし向こうもできるなら一目は避けたいはず。
このまま校舎に入れば案外なにもしないで去るかもしれません。どうしますか、さくら」
さくらは迷わなかった。先生の目がこちらを向いていないのを確認すると、すぐに校舎の裏に走った。
両手で鍵の状態の封印の杖を握りしめ、唱える。
「闇の力を秘めし『鍵』よ。真の姿を我の前に示せ。契約のもと、さくらが命じる。封印解除(レリーズ)!」
鍵が光りだし、先端が鳥のくちばしと羽に似た形状の杖に変化した。
スケートを脱いで、クロウカードを取り出す。このカードを使うのにスケートを履いたままでは返って移動の邪魔になる。
クロウカードを空中に放り投げ、杖のくちばしの部分で打った。
「跳(ジャンプ)!」
地面に魔法陣が浮かび、靴から小さな羽が生える。『ジャンプ』は跳躍力を上げるクロウカードだ。
さくらは軽く塀を飛び越え、そのまま学校の裏にある山に入った。山の中ならこの時間でも誰もいない。
『ジャンプ』の力で跳躍して山を登っていく。しばらく進んだところで桜色の袴を着たセイバーが姿を表した。
「ここまでくれば十分でしょう」
その言葉はさくらに掛けられたものではなかった。セイバーの視線の先、十メートルほどのところで新たなサーヴァントが姿を現す。
美しい女性だった。上半分は露出が少ないのに、スカートはやけに短い。
綺麗な金髪の中から横に尖った耳が出ている。何より異様だったのは至る所にあしらわれた薔薇だった。
ただ飾りとして花がついているのではなく、ツタごと身体中に巻き付いている。
「はじめまして。アーチャーです」
穏やかな声だった。顔には優しげな微笑を浮かべている。奇妙な姿はしているが、さくらには悪い人に見えなかった。
しかしセイバーは油断のない目つきで相手を見据えている。
「ご丁寧にどうも。いきなりで悪いですが、二つほど質問をしてもいいですか?」
「どうぞ」
「ではまず一つ目。なぜこの少女がマスターだとわかったんですか?」
「生前の仕事の関係で魔力を秘めた者を見るのに慣れていまして、あなたのマスターは素晴らしい才能をお持ちですね」
「なるほど。では二つ目の質問です。あなたの戦う理由はなんですか?」
「なぜそんなことを?」
「無駄な争いは避けたいのでハッキリ言っておきましょう。我々は聖杯を欲してはいません。
報酬を奪い合う間柄でないなら、場合によっては強力関係も築けるでしょう」
「つまり私が強力するに値する動機を持っているか知りたいと?」
「ありていに言えばそうなりますね」
アーチャーは少し考えたあと口を開いた。
「簡単にいえば、好きなんですよ。殺しあうのが」
それは先ほどまでと何も変わらない穏やか口調だった。
「立ち振舞を見ればわかります。あなたも生前は戦いに明け暮れていたのでしょう。
だったら感じたことはありませんか、人という生物は戦いの中でこそ真に生きられると。
互いが相手を殺すという共通の目的のもとぶつかり、血を流し、骨を砕き、贓物をぶち撒けたときこそ真に生を実感できる。幸福を感じられる」
「……相手が殺しを忌む者ならどうするんです?」
「こちらが殺す気で行けば向こうも応じざるを得ないでしょう?」
アーチャーは当たり前のように言った。
さくらには理解できなかった。セイバーの戦いたいという願いも理解できなかったがそれとはレベルが違う。
このサーヴァントは本当に元は人だっただろうか?
恐ろしかった。こんな存在がこの世にいるということがただ恐ろしかった。これほどまでに何か怖いと思ったことは今まで一度もなかった。
「もう一つだけ質問してもよろしいですか?」
セイバーが言う。その声は一見いつも通りに聞こえた。
「なんで……」
セイバーは返事を待たなかった。一瞬の内に滑るようにアーチャーの間近まで迫り、刀を抜きながら斬りかかる。
神速の居合。回避不可能と思われる速度で迫る刃に対し、アーチャーは逃げるどころかさらに間合いを詰めた。
刀ではなくそれを振るうセイバーの腕を自身の腕で受け、反対の手で拳を握り突き出す。
通常、突然敵に懐に入られたら人は反射的に距離を取ろうとする。
まして相手はアーチャー。近づいてくるとは思わずセイバーは完全に意表を突かれた。
しかし理性では読めなくとも、天性の直感はこの展開を予見していた。
アーチャーの拳が胸元に食い込む直前に思い切り頭を振り下ろし、額を叩き込んだ。
続く攻撃が来る前に瞬時に距離を取る。アーチャーは自分の腕とセイバーを順番に見て、感嘆の声を漏らした。
「素晴らしい。まさかあの状況で反撃を喰らうとは思っていませんでした。あなたとは素敵な戦いができそうです」
セイバーはアーチャーを睨みつける。
「貴様の言うとおり、確かに私は戦いに生きる道を見出していた。だが貴様の言葉はまるで理解できん」
「それは残念」
アーチャーは楽しそうに目を細めた。
さくらには今の一瞬、二人にどんな攻防があったのかわからない。わかったのは精々セイバーが近づいてすぐ離れたということだけだ。
それでもすでに戦いが始まっていることは場に漂う空気から感じ取れた。
「さくら、そこでは危険です。もう少し離れていてください」
「う、うん」
さくらは後ろに下がろうする。しかし足が動かなかった。いや足だけではない。全身が石になったように動かなくなっていた。
「さくら?」
「あ、あれ!?」
頭では必死で動こうとしている。なのに身体の方は未知の恐怖で完全に麻痺していた。
「言っておきますが、私は目の前の弱点を見逃すほど甘くはないですよ。嫌ならマスターと別れておけばよかったんです」
セイバーはギリッと歯を噛んだ。
アーチャーが前へ飛び、セイバーも呼応するように前へ出る。
牽制に相手を足元を払う。アーチャーはわずかに後ろに飛んで躱し、再び前進。右手で突きを放つ。頬を掠め、血が吹き出た。
剣を持って素手の相手と戦う場合、重要なのは距離を空けることだ。距離さえ空いていればリーチが長い分、一方的に攻めることができる。
逆に懐に入られれば為す術もなくやられることもあり得る。
しかし今のセイバーは常にさくらの存在を意識せねばならず、思うように距離を取れない。
対してアーチャーは一度逃げられてもさくらを狙えば向こうから近づいてくる。
勝負の趨勢は明らかだった。直撃こそ避けているが段々と傷も増えている。
風向きを変えるべく、セイバーはあえてさくらを無視して距離をとった。アーチャーが容易にさくらを殺せる最悪のタイミングで。
だがアーチャーは動かなかった。
完全に予想外のタイミングで起きたことへの反応の遅れ、あからさますぎる好機への警戒、二つ要因がアーチャーの動作を鈍らせた。
達人同士の戦いにおいて、相手の予想外の作った隙は時に隙にならない。
この瞬間二人の距離はセイバーの間合いになった。チャンスは一度。相手の意表をつくだけの奇策は二度も通用しない。
セイバーは剣先を相手の目の上に向け、わずかに右にずらす。
平晴眼の構え。この局面で使うにふさわしい、セイバーが最も得意する『無明参段突き 』の構え
セイバーは技を繰り出すべく一歩を踏みだそうとして――吐血した。
◇
蜂屋あいは何かが倒れるような音を聞いて目を覚ました。横を向くとトランプ兵が何人も折り重なって倒れている。
アリスがなにか怒鳴っていた。大方トランプタワーでもやらせようとして失敗したのだろう。
枕元の時計を見るとまだ朝の五時だった。二度寝してもいいが、目は冴えている。あいはベッドの上で起き上がった。
「おはよう、アリスちゃん」
「あ、起きたのあいちゃん!」
アリスがパッと顔を輝かせて、ベッドに飛び乗った。
「ねえ、これ見て。今おもしろいことが起きてるの!」
そう言ってあいのケータイを突き出した。そこには差出人がルーラーと書かれたメールが表示されている。
受け取って読む。送付されているフェイト・テスタロッサの写真を開いた。
見たところあいと同じか、少し下くらいの歳に見える。しかし毎日小学校に通っていて一度もこの娘を見たことがない。
ルーラーが捕獲を頼むくらいだから学校には来ていないのかもしれない。
次に掲示板。『みんなのアイドル 諸星きらりだにぃ☆』というタイトルのスレッドが一つだけあった。読む。
アリスが言ったおもしろいこととはこのことだろうと思った。このスレッドを立てたのはなんとなく江ノ島盾子のような気がした。根拠はない。
いかにも江ノ島盾子が好きそうではあるが、彼女とは一度、ほんの数分話しただけだ。さほど詳しく知っているわけでもない。
なのにどうしてそう思ったのか自分でもよくわからなかった。
「ね、おもしろいでしょう。私たちもなにかやりましょうよ!」
アリスは随分と興奮している。退屈が続いた反動だろう。
二人で作った死神様のシステムだが、アリスはすでに飽きを見せていた。
人の願いに答えるあのシステムは彼女には受動的過ぎたらしい
死神様に願っても人が死ななくなったのは、その必要もなく直接殺す子が増えたというのもあるが、アリスが面倒臭がるようになったというのが一番の理由だ。
人が死ねばオトモダチも増えるはずだが、それもアリスに言わせれば、
「だって性格悪い子ばっかりなんだもん」
とのことだ。
あいはアリスの提案について考える。掲示板を使って何かやるか否か。もっとも答えは最初から決まっている。
あいは江ノ島盾子を除く他のマスターを知らない。死神様を調べる少年の話は耳にしたことがあるが、男ならマスターではないだろう。
直接あって色を見れないなら、掲示板でいくら人を操っても意味がない。
「いいえ。せっかくだから放課後に江ノ島さんと相談してから考えましょう」
だからこう答える。嘘ではない。彼女なら何か有効な使い方を教えてくれるかもしれない、という思いはある。
元々文字だけでやりとりする掲示板はあいの得意分野ではない。
「昨日も言ってたけどその江ノ島って人、そんなにおもしろいの?」
アリスは不服そうだ。気まぐれに一人でどこかに行くことの多い彼女は、江ノ島盾子とあったときも側にいなかった
「うん。とっても」
正確には面白いというより興味深いのかもしれない。
あいは今まで様々な心の色を見てきたが、自分の色だけは知らない。鏡を見ても、ビデオや写真を見ても、自分の色だけはわからなかった。
江ノ島盾子。まるで黒い太陽のような、暗く輝く色を持つ少女。あんな色は今まで見たことがない。
あいは彼女にどこか自分と似たものを感じていた。もしかしたら彼女を観察することで自分の色がわかるかもしれないという期待。
あいは自分の感情をそう推測した。
「まあそんなに言うなら放課後くらいなら待ってもいいか。ワタシ、好きのものは最後に食べるタイプだし」
「ありがとうアリスちゃん。けどそれはちょっとズレてない?」
「え〜、そう」
口を尖らせるアリスに、あいはは口の端を釣り上げ、目を細めて微笑んだ。
掲示板を閉じ、トップ画面に戻す。ふと画面端の時計を見ると、すでに起床してから二時間以上経過していた。
「アリスちゃん、そこの時計で遊んだりした?」
枕元の時計は五時を指したままだ。
「兵隊さんにお手玉させるのに使ったけど、それがどうかした?」
「ううん。聞きたかっただけ」
この家にはあいとアリスの他に誰もいない。あいはこれから作る朝食を何にするか考えた。学校には遅刻するだろう。
◇
あいの家は聖杯戦争の舞台の西端の辺りにある。学校に行くときはまず南にまっすぐ進み、そこから山沿いにしばらく歩く。
珍しく霊体化してついてきていたアリスが声を上げたのは、ちょうどその山にぶつかったときだった。
「あそこ」
「どこ?」
「山の上の方。サーヴァントがいる。それも二人も。きっとサーヴァント同士で戦ってるのよ。
行ってみましょう。ワタシ、サーヴァントのオトモダチも欲しいの!」
アリスは声は今にも飛び出して行きそうだ。退屈も限界に来ていたのだろう。止めても効きそうにない。
それにあいも他のサーヴァントには興味があった。元が普通の少女であるアリスは性格の悪い子ならよくあるような色をしている。
しかし生前、英雄や大罪人と呼ばれたようなサーヴァントはどんな色をしているのだろうか。
「そうね。行ってみましょう」
あいに山に踏み入った。ここはさほど険しい山ではない。軽装の小学生でも少し運動神経が良ければ十分登れる。
やがて異常な速度で動く二つの影が見え、あいに低木の裏に隠れて気配を消した。
アリスの言ったとおり二体のサーヴァントが戦っていた。
一体は桜色の袴を着たセイバー。滑るように足を動かし、日本刀を振るっている。心の色は澄み渡る海のように透明な青。しかし同時に大きな波のような激しさもある。
もう一体は赤い薔薇を纏ったアーチャー。こちらは武器を持たず素手だ。血のような赤黒い色の中に人を幻惑するような怪しい美しさがあった。
セイバーの後ろにはマスターと思しき少女もいた。恐怖で青ざめた顔と同じ、青白い色をしている。特質する点はない。
あいはサーヴァントに視線を戻す。
二人の動く速度は人間の範疇を超えていて、あいの目では追い切れない。ただ戦いそのものは想像していたよりも地味だった。
広範囲に飛び回ったり、衝撃波や光る弾を飛ばしたりもしていない。
ただレベルが高いだけで戦い方自体は人間のそれとあまり変わらないように見えた。
と、突然、桜のセイバーが血を吐いた。続けて何度か咳をする。薔薇のアーチャーはそれを見て驚いている。
マスターの少女が「セイバーさん!」と叫んだ。
「興醒めですね」
薔薇のアーチャーが動きを止め、ガッカリしたように言った。
「弱点を突くに躊躇いはないと言いましたが、さすがに勝手に自滅されてはつまらないのですが」
「では今日のところはここで終わりにしますか?」
咳は収まったようだが、その声はまだ苦しそうだった。
「甘くはないと言ったはずですよ。しかし、そうですね……」
薔薇のアーチャーは少しの間考えこむようにして、
「ではほんの少しだけ時間をあげましょう。先に片付けを済ませるので、そのあいだ休んでいてください」
「片付け?」
桜のセイバーは訝しむように目を細める。
あいは薔薇のアーチャーの瞳がこちらに動くの見た。上手く隠れられていると思ったのだが見つかったらしい。
あいは立ち上がり後ろに走る。同時に薔薇のアーチャーも走り、僅かに遅れて桜のセイバーも動いた。薔薇のアーチャーへと向かいながら進行方向に鞘を投げて足止めする。
しかし薔薇のアーチャーはブレーキをかけながら、地面に転がる石ころをあいの方へ蹴り飛ばした。
サーヴァントの脚力で放たれた石は猛烈な勢いであいに迫る。避けるのは無理だ。アリスの実体化も間に合わない。
あいは特に怯えるでもなく、悲しむでもなく、ただ単純に自分は死ぬんだなと思った。あいの身体を衝撃が襲った。
◇
気がついたらさくらは飛んでいた。
――このままじゃ、あの子が。
そう思ったら怯えていたことも、身体が動かなくなっていたことも忘れて、考えるより先に動いていた。
まだ効力が残っている『ジャンプ』の力で正面に思い切り跳躍。石よりも先に少女にぶつかり、そのまま二人で数メートルほど転がった。
慌てて起き上がり、少し離れたところに倒れた少女に駆け寄った。
「大丈夫!?」
声をかける。見たところどこにも怪我はしていない。
肩まで伸ばした髪にリボンカチューシャをつけた、天使のような少女だった。透き通った瞳でさくらを見つめている。
「……綺麗」
「え?」
――なにが?
という疑問は少女の次の言葉で吹き飛んだ。
「キャスター、あいつを止めて」
「はあい」
さくらたちの横に青いワンピースを着た金髪の少女が姿を表した。
金髪の少女がパチンと指を鳴らす。するとお伽話に出てきそうなトランプの兵隊が、アーチャーとその足止めをするセイバーを囲むように現れた。
カチューシャの少女が立ち上がる。土のついた白い手でさくらに手を握った。
「逃げましょう」
そう言ってカチューシャの少女は走りだした。
事態の変化についていけないさくらはされるがまま引っ張られていたが、やがて思い出したように叫ぶ。
「セイバーさん!」
さくらの声に答え、セイバーがトランプ兵を飛び越える。追おうとするアーチャーにトランプの兵隊たちが襲いかかった。
追いついたセイバーは少し迷ったあと、さくらとカチューシャの少女を抱え上げ走った。
◇
拳を振りぬき頭を粉砕する。トランプ兵は仰向けに倒れたあと、完全に消滅した。
行手を阻む雑魚を一掃し、アーチャーは心中で呟く。
――逃げられましたか
近くからセイバーたちの音は聞こえない。もうアーチャーの耳の届く範囲にはいないのだろう。
あるいは集中すれば聞こえるかもしれないが、アーチャーはすでにセイバーへの興味を失っていた。
どれだけ実力があろうと、いつ爆発するかわからない【病気持ち】ではそそられない。
あとから現れたキャスターも明らかに戦闘に適したタイプではなかった。わざわざ探してまで追いかける必要はないだろう。
アーチャーはため息をついた。ここには確かな実力を持つサーヴァントが大勢いる。
しかし未だ彼女を心の底から満足させる力を持った相手には出逢えていなかった。
退屈ではないが少し期待はずれだ。
――どこかにいないものですかね。私と同等の力を持ち、強烈な殺意を向けてくれる相手が。
次なる強敵との出逢いを求めアーチャーは姿を消した。
◇
「ここまで来れば大丈夫でしょう」
その言葉を聞いてさくらはほっと一息をついた。
抱えられていただけだが、さっきまではずっと意識が張り詰めていた。生きた心地がしないというのはああいうの言うだろう。
場所は中学校近くの住宅街の物陰。さくらは民家の塀に寄りかかってカチューシャの少女を見た。
この少女はさっきキャスターのサーヴァントを呼び出していた。つまりはマスター。聖杯戦争のルールでは敵ということになる。
だけどさっきは助けてもらったし、そもそもさくらは誰とも戦いたくない。
どうすればいいのかわからずセイバーの方を見るが、セイバーもどうすればいいのか考えている様子だった。
迷っている間にカチューシャの少女の方から話しかけてきた。
「助けてくれてありがとう」
「ううん、わたしの方こそありがとう。えっと……」
「蜂屋あいだよ」
「ありがとうあいちゃん。わたしは木之本桜。あいちゃんは、その……どうしてわたしを助けてくれたの?」
おかしな質問だ。そんなの聞くまでもない。
だが未だ続く混乱と、他のマスターたちへの恐れからつい口に出てしまった。
「ご、ごめん。今のは……」
訂正しようとするさくらの口にあいは人差し指を当てた。クスリと笑って、
「わたしね、心細かったの。いきなり知らない街に連れて来られて、帰り方もわからなくて。
わたしの命を狙う人も大勢いるし、頼れるのは自分のサーヴァントだけ。ずっとずっと心細かった」
その気持ちはさくらにも痛いほどよくわかった。さくらだってそうだったのだ。
今朝も桃矢にあの桜のトンネルに連れてってもらわなければ、沈んだ気持ちのままだっただろう。
「だからあなたに助けてもらって凄く嬉しかったの。マスターにもこんなに優しい人がいるんだって希望が持てた。
……だからさくらちゃん、わたしと友達になってくれる?」」
差し出された右手は微かに震えていた。さくらは心のどこかで戦いを嫌がるマスターは自分だけだと思い込んでいた。
自分以外のマスターはみんな聖杯のために戦う怖い人たちだと――そう無意識に考えてしまっていた。
でも違ったのだ。ここにもさくらと思いを同じくする少女が一人いる。さくらはあいの手を両手でしっかりと包み込む。
「わたしからもお願いあいちゃん、わたしと友達になってくれる?」
「うん!」
二人は両手を握り合って笑った。境遇を同じくする友達がいる。ただそれだけのことがこれ以上ないほど心強く感じた。
◇
「かわいい子ね」
いつからいたのか、霊体のアリスが耳元で囁いた。さくらはセイバーと何か話している。
あいは二人に聞こえないよう細心の注意を払って呟く。
「だめだよ。あの子は殺しちゃ」
あいは陶然とさくらの色に見惚れていた。弱々しくも確かな熱を感じさせるオレンジ色の火。
強く人を惹きつけるわけではないけれど、優しくてずっと見ていたいと思わせる。
綺麗だった。だけどあいを助けたときの色はキラキラと輝いていてもっと綺麗だった。
「また見たいな」
それはアリスにも聞こえないような、ほとんど空気を震わせる程度の呟きだった。
【D-2/中学校近くの住宅街/1日目 午前】
【木之本桜@カードキャプターさくら(漫画)】
[状態] 疲労(中)、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備] 封印の杖、
[道具] クロウカード
[所持金] お小遣いと5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針: わからない
1. マスターの友達ができた喜び
[備考]
※ローラースケートは学校の裏に置きっぱなしです
【セイバー(沖田総司)@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】
[状態] 疲労(中)、ダメージ(小)、スキル『病弱』発動中(ほぼ治りかけ)
[装備] 乞食清光
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: さくらのために
1. 念のために周囲を警戒
2. 余裕があれば鞘を取りに行く
[備考]
※使わない間は刀を消しておけるので、鞘がなくてもさほど困りません
【蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている】
[状態] 疲労(極小)
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 小学生としてはかなり多めの金額
[思考・状況]
基本行動方針: 色を見る
1. さくらの色をもっと見たい
2. 江ノ島盾子に強い興味
【キャスター(アリス)@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】
[状態] 健康、作っておいたトランプ兵は全滅
[装備] なし
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: オトモダチを探す
1. さくらに興味
2. サーヴァントのオトモダチが欲しい
【D-1/山の中/1日目 午前】
【アーチャー(森の音楽家クラムベリー)@魔法少女育成計画】
[状態] 疲労(極小)
[装備] なし
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 強者との闘争を求める
1. 敵を探す。差し当たってはフェイト・テスタロッサを巡る戦乱に乗じる
※さくらの家はB-2、あいの家はC-1、桜のトンネルはC-2、学校の裏山はD-1にあります
投下終了。タイトルは『燃えよ花』です
今回は遅くなってしまい本当に申し訳ありませんでした
遅筆なので絶対とはいえないのですが、今後はこんなことのないよう気をつけます
何かミスや気になる点などありましたら、遠慮せず言ってください
投下乙です。
出先ですので感想は空と君のあいだにと合わせて後ほど。
木之本桜&セイバー
蜂屋あい&キャスター
高町なのは
大道寺知世&アサシン
フェイト・テスタロッサ&ランサー
予約します
投下乙です!
さくらちゃんカワイイ!
登校する途中の桃矢とのやり取り、いいですね
しかしそれ以上に、日常風景の中で不安に苛まれるさくらちゃんの心情が丁寧に伝わってきて心が痛くなります…少女聖杯の残酷さはこういうところですよね
そしてクラムベリーとの遭遇戦。さくらちゃん視点だとさらに怖いこの戦闘狂、桜セイバーの戦闘描写が丁寧で感服しました
それだけでも見所いっぱいでしたが、アリス・あいコンビの参入でさらに混沌としてきましたね
視点が入り交じって不穏の種を撒く、素晴らしい回でした
燃えよ剣ならぬ燃えよ花、ですね!
海野藻屑
山田なぎさ&アサシン(クロメ)
間に合ったので投下します
安心って、なんなんだろう。
ぼくは一言、そう呟いた。
.
―――
今朝方怖い夢を見て、寝るのがほんのちょっとだけ怖くなった。
それからベッドに身を任せて、時には安楽椅子に揺られて。
ぼうっと何もせずにただただ時間を過ごして。
そんな生活を続けていても、お腹は減る。
眠気もそこそこに鳴りを潜めると、動き出した頭が空腹に気づいて騒ぎ出す。
そうなってしまうともうどうしようもない。何かを食べるまで収まらない。
人間は不便だ。
そう思いながら、起き上がり、手元のスマートフォンを手に取る。
この時間に空いてる宅配はどこだろう、とインターネットで検索し。
適当なところに電話をかけて、適当なメニューを注文する。
そうして、届くまで三十分くらいの空白の時間が生まれる。
やっぱりやることはない。
本を取りに行くのも億劫だし、庭で元気に動きまわれる身体じゃない。
話し相手になってくれる人物も居ない。
居るのは―――
「あ、ポチ」
黒毛の大型犬が、開けっ放しのドアからのそのそとぼくの部屋に入ってきて、そのままごろんと横になった。
居るのは、ポチくらい。
最初はすごく驚いた。
というより、あの日でろでろになって死んで、ぶつ切りにされたポチが、いつも通りのっそりのっそり歩いてたら、だれでも驚く。きっと。
触ってみると、あの日の通り。
もとい、あの日より前の通りのポチだった。
どうも、聖杯戦争ではNPCという形で参加者以外が再現されるらしい。
アーチャーの推測によれば、あのポチもNPCなんだって。死んじゃったはずなのに。
奇跡の安売りだね、なんて笑うとアーチャーは『戦う理由付けにはちょうどいいんじゃないでしょうか』と言っていた。
そんなもんなのかな。
ちなみに。
ぼくとポチは居るのに、何故かお父さんは再現されていなかった。
ぼくの財布の中にゴールドカードだけを残して泡のように消えてしまった。
でも、ぼくにはその理由が何となく分かる。
お父さんがいたら、ぼくはたぶん戦争なんか出来ずに死んじゃうだろうから、聖杯があえて再現しなかったんだろう。
それを、喜ぶべきなのか悲しむべきなのかはわからない。
少なくともぼくは、寂しい気持ちを持て余している。
お父さんはぼくのことをゴミクズみたいに扱ってたけど、それでもぼくはお父さんのことが大好きだったから。
「あーあ、哀しい」
時計の音だけが大きく響き渡る部屋の中、誰にともなく呟いた。
ポチのしっぽがパタンと揺れた。
◇
結局、宅配が届くまでの暇な時間はスマートフォンをいじって過ごすことにした。
検索からしばらくぶりに電源を付けたスマートフォンをよく確認すると、メールが届いていた。
誰にも番号を教えてないはずなのに、誰からだろうと訝しんでいると、成程ルーラーからの通達だった。
今朝手紙でも通達をもらってたのに、意外と几帳面だなぁ。
でも、もしかしたら、ぼくが今朝方電源をつけてなかったからわざわざ手紙の方でも送ったのかもしれない。
通達の内容が手紙の方と変わりないのを確認して、すいすいと液晶をスワイプする。
見るのは、朝方手紙では確認できなかった『聖杯戦争専用掲示板』というところ。
最初の最初に確認した時は、なんにも書き込まれてなかったけど、今はどうだろう。
液晶面を押し、ページにアクセスする。
少しのラグのあと、ページが開かれる。
そのページ、『掲示板』にはいろいろな話題が登っていた。
「うわ」
思わず声が漏れる。
なんかもう、やりたい放題だ。
真っ先に目に止まったのが『ファンクラブ』という場違いな単語。
開いてみると、一人の少女が聖杯戦争の参加者であると決めつけて文章が書きなぐってあった。
これも、アーチャーに見せるべきかなと考えたけど、まあいいやと割り切った。
呼び戻してまで見せるような情報じゃないし、令呪という餌が付いたフェイトの方が他の参加者も集まるだろうし。
次に目に止まったのが、その『ファンクラブ』スレで糾弾されている少女に語りかけているスレ。
知り合いだから、信用して。
信用して、私に会いに来て。
愛をこめてで締めくくる、長ったらしい演説。
「すっげーわざとらしさ。狡猾っての?」
彼女を誘き出して襲いかかるつもりなんだろう。
思わず笑ってしまうほど見え見えな手。アーチャーはあんまり喜ばなさそうな手だ。
それだけ見て、もう胸いっぱいになった。
掲示板を閉じて、それでおしまい。
スマートフォンをベッドのすぐ横に投げ、起こしていた身体をそのまま倒した。
寝過ぎたせいと、もともとの『汚染』のせいで少しだけ身体が痛む。
「愛をこめて、か」
ふと考える。
さっきの書き込みが。
愛をこめてで締めくくられていた長い文章が、もし、本当に『知り合い』からだったら?
それはたぶん、奇跡。
いや違う。
奇跡ってのはここではわりかし安売りされてるから、たぶん奇跡とは違うなにか。
それはたぶん。
ぼくがいつも言っている言葉で表すなら、『ぼくのためにすげーがんばってくれる、すっごくいいかんじの、ほんとの友達』ってやつなんじゃないだろうか。
友達のことを思って、是が非でも会ってやるって腹に決めて掲示板に書き込んだ文章なのかもしれない。
いろいろな不都合も顧みずに、ひたすらにその子のために頑張ってる人、なのかもしれない。
そう考えて、また少しだけ寂しくなる。
ぼくは目をつぶり、息を整える。
瞼の裏の真っ暗な世界には何もない。
お父さんも居ない。
痛みを伴って動き回る必要もない。
ただただ微睡んでいるだけでもいいこの世界。
一人ぼっちの世界の中心。
この広くて狭い金魚鉢の中。
ぼくはちょっとだけ、息苦しさを覚えて。
ほんの一二秒だけ、泡が浮かばなくなる。
そんな息苦しさの中で思い出したのはひとつの単語。
ぷくりと一つ、泡が浮かぶ。
「安心って、なんなんだろう」
ぼくは一言そう呟いた。
これが、山田なぎさが目指すと言ってた安心なんだろうか。
これが、担任が必要だって言ってたらしい安心なんだろうか。
今のぼくの状況は、きっと、おそらく、一般的に言うなら安心だ。
安心ってことは、きっと誰にもなんにも邪魔されない。
ほんとの友達は居ないけど、代わりに敵が居なくて嵐も来ない。
世界が金魚鉢で、金魚鉢の中にぼく一人なら、それがたぶん、究極の安心。
たった一人の世界で、ぶくぶくと浮かび上がる泡を見上げながら、永遠にも似た時間をただひたすらに削りながら生きていく。
今のぼくによく似た状態は、『安心』って言っていいはずだ。
だとしたら、安心っていうのは、残酷だ。
言葉も、吐息も。ぼく自身も。
一人ぼっちで、泡になって消えていく。
ぼくの言葉を聞いてくれる人は、誰もいない。
生きているのか死んでいるのかすらもわかってもらえない。一人だけで終わる世界。
永遠の孤立。
それが安心。
安心って、本当は、意外と、残酷なんだ。
「安心って、なんなんだろう。」
でも、思う。
こんな残酷なものが安心でいいのだろうか。
ぼくは、安心ってのがよくわからない。
山田なぎさも知らなかったみたいだけど、ぼくだってわからない。
わかるはずがない。
遠い世界の御伽話のようなものだ。
一生かかっても理解することの出来ない話。
だとしても、少なくとも。
世間一般で言う安心とか、担任が山田なぎさに伝えたかった安心は、少し違うような気がする。
安心って、なんなんだろう。
安心をどれだけ積み重ねれば、ぼくらは生きていけるんだろう。
「……安心、か」
でも。
よくわからないけど。
言葉じゃ説明できないけど。
この状況は、ぼくにとっての安心じゃない気がする。
そんな気がする。
ぼくにとっての安心っていうのがどこかにあるなら。
それも説明できないけど。
それはきっとは山田なぎさの隣にあった。
バス停に居る山田なぎさを見た時、自然と笑みがこぼれた。
二人で身を寄せ合った時、心の中が暖かくなった。
あのなんとも言えない不思議な気持ちに、ぼくは安心と名付けることにした。
こんな閉塞にも似た状況じゃなく。
心細くても、泣きたくなっても、脚が痛んでても。
それでも笑うことが出来た、山田なぎさの側に居たあの瞬間を、安心と呼ぶことにした。
.
ぼくの『安心』が正解なのかどうかはわからない。
ひょっとしたら、まったくの勘違いかもしれない。
残酷な方がほんとの安心で、こっちはただの偽物かもしれない。
でもぼくは。
偽物だったとしても。
嘘んこだったとしても。
山田なぎさの隣で。
もっと『安心』していたかった。
「ねえ、どうなんだろ」
ぼくは遠くはなれてしまった安心に、言葉を放つ。
すべてが嘘っぱちだった人生。
現実にたどり着けずに消えてしまう作り物の世界。
嫌になるくらい絶望しかなくて。
未来なんてずっと先まで真っ暗で。
きっと嘘なんだと思いたかったこの世のすべて。
でもぼくは。
嘘ばっかりの人生で。
『実弾』じゃない生活の中で。
偽物にしてしまいたかったすべての中で。
たった一つだけ、『現実』を愛していた。
たった一つだけ、『安心』を愛していた。
「逢いたいよ、山田なぎさ」
現実の名前は、『山田なぎさ』。
◇
砂糖菓子の弾丸は、現実に微睡む。
◇
【Bー1/海野邸/一日目 午前】
【海野藻屑@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康、空腹
[令呪]残り三画(内腿の青あざの中に)
[装備]なし
[道具]ミネラルウォーター入りペットボトル、おてがみ、スマートフォン
[所持金]クレジットカード(海野雅愛名義のゴールドカード)、5000円分のクオカード
[思考・状況]
基本行動方針:山田なぎさに会いたい
0.安心したい
1.アーチャーに全てを任せる
2.惰眠をむさぼる
[備考]
※家にはポチが居ます
※すぐに出前が届いて空腹ではなくなります。
※NPC海野雅愛が存在するかどうかは不明ですが、少なくとも海野邸には出入りしていません。
※掲示板を確認しました。少なくとも江ノ島のスレと大井のスレは確認しています。
好きって絶望、か
あいつの言葉を一度だけ繰り返す。
.
◇
結局、いつリスクを背負うかなんだ。
戦争は遊びじゃない。
危ない橋を渡らなければ生き残れない。
じっと隠れてて生き残れるほど、私もアサシンも強くない。
いつかは戦場に立たなければならない。
いつかは危険に身を晒さなければならない。
じゃあ、いつリスクを背負うべきか。
「それが今、ね」
アサシンがクッキーを一枚口に放り込み、もそもそと咀嚼しながら答える。
私達は何を持ってもまず『他の組との接触』が重要。
アサシンが力を蓄えるには、それしか道がない。
中盤、終盤になれば他の組を警戒する組も増えてくる。
つまり、暗躍するなら今を置いて他にない。
幸い、アサシンには『気配遮断』というスキルがある。
情報収集、影打ちなど、暗躍するには持ってこいのものだ。
「だから、別行動するの?」
「別ってほどじゃないよ。そこ100mか、200mか、そのくらい離れるだけ」
あまり離れすぎるのは危険だ。
アサシンが見つからなくても私が狙われるとそれだけで状況が悪くなる。
学校全部を破壊する!みたいな危険思想の奴が現れた時に離れすぎてたらそれで終わり。
だから、あまり離れず学校の周辺を見張るくらいにとどめておく。
「ふうん……悪くないね」
アサシンが残酷なほど可愛らしく微笑んだ。
幸い、この周辺には主要な機関がいっぱい集まっている。
私が通っている中学校に加えて小学校、高等学校、更にはフェイト・テスタロッサ受け渡しの場所である図書館まで集まってる。
これだけ集まってれば、一組二組は警戒心の薄い主従を見つけられるだろう。
もしかしたら、フェイト・テスタロッサを巡って勃発する争いの被害者を運良く発見できるかもしれない。
そうなれば、アサシンにとっては好都合だ。
「じゃあ、行ってくるよ。令呪なんか残してても意味ないから、なにかあったらすぐ使って呼んで」
「言われなくても」
アサシンが人間離れした身体能力で飛び上がり、ベランダを足場にひょいひょいと屋上まで登っていく。
それを見届けたあと、私はその足で朝の委員活動に向かった。
―――
委員としての活動は特別なものじゃない。
振り分けられた場所の簡易清掃だけだ。
校舎の裏手に立っている場所までは数分もかからなかった。
鍵を回す。番号は「0527」。
記憶を取り戻して、ここに来て、この鍵を見た瞬間、番号なんて一発で分かった。
油切れの蝶番がぎしぎし軋み、『それ』が音に反応して一斉にこちらに注意を向ける。
その程度の注目なんて気にするほどのことじゃない。
一枚目のドアを抜けて。
囲いの中のものたちが逃げ出さないようにと用意してある二枚目のドアも抜けて。
ようやくそこに到達する。
『それ』は私が入ってきてもさほど気にせず、じっと壁のほうだったりなにもない方だったりを見つめたまま。
私にとってもこれがルーチンだったように、彼らにとってもこれはルーチンの一部となっているんだろう。
耳の長い、もこもことした『それ』を踏まないようによけながら、掃除道具の入ったロッカーから箒を取り出す。
そして、その小屋の住人たちに断りもせずに掃き掃除を始めた。
なんてことはない。
飼育小屋の掃除だ。
NPC時代、私はここに呼ばれる前から引き続いて飼育委員をやっていたのだ。
信じられないことに。
ずっと不思議だった。
なんであんな嫌な結末をたどったのに、NPCの私は懲りずに飼育委員なんかやってたのか。
ご丁寧に鍵番まで「0527」とお馴染みの番号にして。
でも、その答えも、記憶を取り戻して一日が経ち、二日が経ちと状況を整理する内になんとなくわかった。
きっかけは、あの日友彦が出した問いかけだ。
情報交換も兼ねて何の気なしにあの問題をアサシンに出して、アサシンが迷わず『逢いたくて』と答えた時に、頭のなかでパーツが少しずつ少しずつ組み上がっていった。
妻が我が子を殺した理由についての問い。
正解は『逢いたくて』。
妻はこう考えた。
同僚は夫の葬式に来た。
葬式が設けられれば、同僚は来る。
誰かが死ねば、もう一度葬式が設けられる。
だから、殺す。
『逢いたくて』殺す。
葬式自体になんの繋がりもないと気づかずに殺す。
その選択で、幸せな結末が訪れると信じて殺す。
子どもが邪魔になったから、なんてありきたりな理由ではなく、ただ純粋に『逢いたくて』殺す。
ぼんやりと考えていて、ぼんやりと辿り着く。
NPC時代の私が飼育委員を投げ出さず飼育小屋に足繁く通っていたのも、きっと理由は一つ。
認めたくないけど、きっとその答えは、平仮名でも漢字でも五文字。
言葉でどう取り繕っていても、心の底では願っていたんだろう。
記憶もないNPCのくせに。
感慨もないNPCのくせに。
ずっと。
ずっと。
待っていたんだろう。
初めて言葉を交わし、忘れられない思い出ばっかり深々と刻み込まれた飼育小屋。
ここでこうしていれば、いつかあの陸に不慣れな人魚が、水をぐびぐび飲みながらやってくるんじゃないかと。
「痛ぇ、痛ぇ」と整った顔に不釣合いなセリフを口にしながら片足を引きずってやってくるんじゃないかと。
そうして、こちらに気づいたそいつが、手に持っている空のペットボトルを投げてくるんじゃないかと。
にやにや笑いながら「山田なぎさがいたぁ」と、人の気も知らないで、えっちらおっちら歩いてくるんじゃないかと。
馬鹿げた話だ。
繋がりもないのに、繋がりを信じて。
そんな選択に意味があるはずもないのに、恵まれた結末を信じて。
逢いたくて。
逢いたくて。
陸の上で泡になった人魚を待っていたんだろう。
―――朝焼けのなか 海をみていた
. 君をみつけた
. 夢みたいに きれいな人魚
. 一瞬だけで 消えたから
. ぼくはこの海に 何度もやってくる
. 君を捜しに……
頭のなかに、あの歌が流れる。
ロマンチックな歌詞をした一番だけが流れる。
『逢いたくて』。
一般人にはたどり着けないその答え。
海野雅愛にはその答えがわかっていた。
そんな純粋で狂気的な『好き』を、一途で眩しい『絶望』を、知ってか知らずかぴたりと言い当ててみせた。
理解できない。そう思っていた。
でも、実際にNPCだった頃の私は、その理解できない行動を取っていた。
誰に言われるでもなく、トラウマと言っても過言ではない場所に通い続けていた。
昔の私なら(少なくとも、海野藻屑と出会う前の私なら)絶対にしなかったはずだ。
そこまで考えて、少しだけ憂鬱になる。
私はひょっとして、あいつの言葉を借りるなら、『汚染』されてしまっているのかもしれない。
その『汚染』は、妻が男性に向けたような『愛』なんて高尚なものじゃないけど。
それでも、人生を狂わせるのには十分な、一発の『弾丸』。
回ってしまった毒はきっと、実弾主義の私に撃ち込まれた特大級の『砂糖菓子の弾丸』。
消えてしまった今では調べることも出来ない、正体不明の凶器。
効能はありもしない未来を夢見て忠犬のように待ち続けるようになる。それもどんだけ悪しざまに扱われようとずっと。おそらく、人類で最も悪質な毒。
実弾主義のリアリストだった私が。
海野藻屑と海野雅愛の放った不純物たっぷりの弾丸を胸に受け。
毒が回って。
汚染されて。
死んだはずのあいつの幻影を追っていたのだとしたら。
ありもしない幸せな未来を夢見て、夢破れて、夢見て、夢破れて、夢見て、夢破れて。
裏切られ、騙され、それでもじっと幸せな未来を夢見続けていたのだとしたら。
だとしたら。
だとしたら。
だとしたら?
私が汚染されているとしたら?
「『好きって絶望』、か」
あいつの言葉を一度だけ繰り返す。
ぽつりとこぼした、何気ない言葉を。
そして、問いかける。もう泡となって消えてしまったあいつに。
「これが、あんたの見てた陸の上の世界?
これが、あんたが言ってた『絶望』なの?」
いつまでも届かないと知りながら、それでもじっと待ち続ける。
ずっと、ずっと、いつか届くと信じて待ち続ける。
傷つけられ。
汚染され。
誰にも理解されず。
誰にも祝福されず。
裏切られ、
裏切られ、
裏切られ。
絶望して、
絶望して、
絶望して。
それでも幸せな結末を夢見て、砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける。
「それが、あんたの言う『好き』だったの?」
今はもう溶けて消えてしまった砂糖菓子の弾丸に、届かぬ問いを投げかける。
それが本当なら、確かに『絶望』だ。
幸せなんてありはしない。
ただ、鬱々と、明けぬ夜の中で泣き続けるだけ。
どこまで行っても世界の闇が晴れることはない。
ただ、目を瞑って『偽物』にすがり、逃げ続けるだけ。
例え笑われても、例え傷ついても、何も聞こえぬ左側から悪しざまに言われていると知っても、ずっと、ずっと……
ヘタクソな字で書かれた『さよなら、もくず』という手紙を思い出す。
唇を噛みしめる。
絶望して、絶望して、絶望して、その結果が、あれだって?
「そんなの、納得できるわけ、ない」
少なくとも、私は納得出来ない。
そんな不条理、耐えられない。
私はあんたほどヤワじゃない。
私はあんたほど逃げるのが上手じゃない。
だから私は、絶望してやるもんか。
待ち続けて、受け入れるのなんてまっぴらごめんだ。
クソッタレな世界を押し付けられるなんて反吐が出る。
暴れてやる。
あんたを殺したこの絶望ってやつに正面切って戦いを挑んでやる。
絶望するなら死んだあとで十分だ。
地獄であんたに会った後で、離れ離れの次は何をやっても離れられないってことに死ぬほど絶望してやる。
だから、それまでは、絶望なんてしない。
私の方から動き続ける。
漫然と待ち続けるんじゃあなくて、『聖杯』というゴール目指して。
みすぼらしくても、あざとくても、きたなくても、みっともなくても、おろかしくても。
最後の一歩まで、ゴール目指して進み続ける。
それが私の、山田なぎさの今放てる精一杯の『実弾』だ。
「だから、待ってて」
―――朝焼けのなか 海をみていた
. 君をみつけた
. 夢みたいに きれいな人魚
. 一瞬だけで 消えたから
. ぼくはこの海に 何度もやってくる
. 君を捜しに……
リフレイン、リフレイン。
海野雅愛の、あの理解できない男の代表曲『人魚の骨』が頭のなかで繰り返す。
一瞬だけで消えてしまったきれいな人魚を捜しに、この海にやってきた。
それが一番の歌詞。
それから、二番で人魚と出会い彼女に手を伸ばして、三番でお刺身にして美味しく食べてしまう。
でも、あんな傷だらけの人魚は美味しくないだろうし、美味しくないものを無理して食べる趣味なんてない。
だから、私に必要なのは二番までだ。
人魚を見つけ、手を伸ばす。
そこから先は……海野雅愛ではなく、私の物語。
手を伸ばし、捕まえて。
人魚が投げようと右手に構えていたペットボトルを取り上げて。
そのペットボトルで頭をぽかりと叩いた後に文句のひとつもぶつけてやろう。
実弾主義の私に、砂糖をコーティングしてくれた『人魚』の奴に。
絶望して死んでいった、孤立無援の『空想』の奴に。
「逢いに行くよ、海野藻屑」
空想の名は、『海野藻屑』。
◇
実弾は、空想に酔う。
◇
【D-4/中学校・飼育小屋周辺/一日目 午前】
【山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康、若干憂鬱(すぐに切り替え可能)
[令呪]残り三画
[装備]携帯電話、通学カバン
[道具]
[所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、海野藻屑に会う。
1.とりあえず、今は平常通り過ごす。
2.お人好しな主従と協調するふりをして、隙あらばクロメに襲わせる。
3.ただし油断せず、慎重に。手に負えないことに首を突っ込まないし、強敵ならば上手く利用して消耗させる。
[備考]
※掲示板を確認しましたが、過度な干渉はしないつもりです。
【アサシン(クロメ)@アカメが斬る!】
[状態]実体化(気配遮断)中
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.現状、マスターに不満はない。
2.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。
3.とりあえずおとなしく索敵。使えそうな主従を探す。
[備考]
※八房の骸人形のストックは零です。
※気配遮断が相まってかなり見つけられにくいです。同ランクより上の索敵持ちで発見の機会を得られます。
投下終了です
矛盾指摘、修正箇所などありましたらよろしくお願いします
また、残り5レスなので次スレの誘導が貼られるまで投下等はしばらくお待ち下さい
あまりに時間がなかったので今回は省略しましたが、感想は次スレで書かせていただきます
(このスレでの本編投下)終わり! 閉廷!!
投下乙です
おお、投下来てた。乙です
この二者の予約でどう来るかはらはらしながら待ってたんですが、こう来るかぁ…
藻屑となぎさのそれぞれを、本来有り得ない世界線だからこその二人を掘り下げに掘り下げたという感じがします
個人的になぎさのパートのラスト、リフレインからの気持ちの直視が好きです
ほんとに痛々しいほどにまっすぐだな、この子は…
作中で一つのキーになっていた心理テストを今一度解釈に組み込むなど、リスペクトに満ち溢れた一話でした!
お待たせしました、次スレです。
少女性、少女製、少女聖杯戦争 二章
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1434187367/
【埋めネタ】
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//./ ../ ̄ \_/ \¨ ノ/\ \ . -― ― 、 . ――- 、 ⌒ヽ `⌒ 〉-‐…‐-≪⌒≫
., {/ / ヽ / `ヽ. >‐…‐ァ'´ ⌒ヽ、 `く ______
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. l{ | jハハl l| 。゚ / , =v' ・ミヾ' /´ ヽ.,イ:::圦__ \ ゚。 /,, /l| /l| l| l| ハ 〔  ̄ミ>「.:i:i:i:/
...| \\乂 ハ .,ィ灯弐 / / .゚ .:' `┐゚乂ノ/ ,' V!⌒i:::リ ゚:。 ゚。 .' 〃 ィ' jrlト/ j-j‐j-ミ| |-‐ ´ 仆、ix(
} |l{ ..气 `”⌒¨} || i ; ヽ=イ´ { ,' i 、 `'t<イ\ V i レ{{ / |l,ィfテト{ ィ芹弌メv ムイ '厶へ \
レ |l||.,イ夾:メ , / | | ,'´ ,' % 、 { 、 ヽ. } ト、 ヽ : しイ 八小从{ kリ k沙 ィ〉 r=ミ //.:i:i:i《 \ヽ
..ノ/ } :、 `´ 、 / // ゚. : ,: -={ {/ \ \=ゝ_≧ェュL ゚。 ゚。 廴_ ノ )ヘl 、 / ルヘ´, イ.:i:i:i:i:i》 ヽ`、
人 \ .、 ノ { i、_.ノ .' '/ /'f゚. {ャ゙了.ヽ ̄` ィ'.^l¨j! } } } ゚. 圦 |ヽ - / / { /\i:i:i《 ii
/ } ` \  ̄ .ィ} / // `ー==ィ゙ / / ヽ゚。ヽ`‘ー ′ `ー' ,' ,'ィ{ ; } : \ r、八j_\ / / jk´ |\》 ii
{ l{ l| `rtr、 ―__∨ .// r // { '∧ ト、 ' / % / % ,' λ 、 fヘヘヘ V/rア´`¨/ イ≪⌒'ーt、 |i i|
}{ 人 )r⌒ヽ、rt ⌒ヽ \ {/ , ゚。 .{∧! {>、 ´ ̄ ィ´}イ / ′ { .' \__≧=- ,ノ 〉ア' //⌒⌒ヽヽ 代、 |i i|
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ヽ ゚。} ト、,ィニニニニⅣ―-、 r,:<} /ニニ赱>、{ \ ゚。 }! Vニニイ ト、 ∧ii ィ7 |i i|
【蜂屋あい 小学生 白い悪魔】 } .゚{/ /ニニ7ニ∧゚。 、 ,{:: :: ::`:T::i´:: :: Vム ヽ } '
// }ニニ'/ニニ'∧ ㍉.Y_人::_::,ィニ圦:: :: :jニi } ,: 【フェイト・テスタロッサ 9歳 指名手配犯】
【江ノ島盾子 超高校級の絶望】
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.〉 ./| .i. _ノ\.从:..';乂_::/ .|::' / ハ | | .}._乂
./イ´、/人_、 | / \ト、. r‐、 し′ .|: | | .〉 ./〈 少女聖杯のアイドル集団、凸レーションです!
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.|.〈 /  ̄ ̄ ̄ 〈`ヽ_r‐x‐=ニ{_〈 .>‐x‐/./≦_乂 / 、 |
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イ |/ ◯三\| ◯ Y}ノ|ノ }><,ハ
. レ八 j| 三三三三 | |勹 / |\
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